イナズマイレブン1!2!3!4!? 比企谷 八幡伝説 (投げやーりー)
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そして、熱血サッカーバカと出会う

物心ついた時から、俺はサッカーボールで遊んでいた。

別にサッカーをしている訳では無い、寧ろまともなサッカー経験は皆無まである。

 

何しろ俺は子供の時から孤立しがちで、サッカーしている集団の輪に拒否され、運良くサッカー出来ても俺と周りとのサッカーの技術レベルに差が開いており、俺のワンサイドゲームになって相手チームはおろか、自チームの空気すら悪くしてしまう。

 

そんなにこともあり、俺はサッカーでは無くずっとサッカーボールで遊んでいた。

 

だが、実際の試合を意識しながらドリブルしてみたり、一人でワンツーが出来ないか試行錯誤した結果、一人でワンツーが出来てしまい、それを利用したパス練習をしてみたり、何度も壁に向かって全力でシュートし、跳ね返ったボールをまたシュートする練習をしたりと、そんな事を繰り返すうちに、ボッチな小学生時代に幕を閉じた俺を待っていたのは……

 

親父の東京への転勤だった。

 

 

住み慣れた千葉から家族で東京に移り住む俺達、どういうわけかお袋も東京への転勤となると言う、どう考えても何らかの作為的なものが働いているような偶然を感じながらも、俺は稲妻町と言う町に引っ越して来たのだ。

 

そして、入学式…

 

俺は雷門中学校と言う中学校に入学した。

 

にしてもこの学校、まともじゃない格好をしてるやつ多くね?いや、寧ろまともな格好をしてるやつ少なくね?大丈夫なのか?この学校。

 

そんな事を思いながら入学式の校長の話とかを聞き流していく。

 

そして、教室に入り適当に自己紹介を済ませたあと、担任の話を聞き流し、学校初日を終える。

 

 

 

そして、数日後、面倒な体育の授業が早速ある。

 

今日はクラスの奴等とサッカーをするらしい。

 

クラスを二分してチームを作り、早速試合開始だ。

 

俺はディフェンスだから適当にボールを奪って、パスを繋げていった。

 

思いの外上手く行くのだが、相手側の熱血バンダナ野郎のキーパー能力が高く、素人シュートでは一点も入れることが出来ていなかった。

 

仕方がないので攻撃に転じることにする。

ひとりワンツーで邪魔する奴等を避けながら、俺の全力連続壁シュートの賜物で生まれた技をつかう。

 

ボールを蹴って少し浮かせ、黒いエネルギーを溜めた右足でシュートする。

 

「レイブンショット」

 

シュートには鴉のオーラが纏わり付き、バンダナ野郎を襲う。

 

バンダナ野郎はレイブンショットを受け止めることが出来ず、直ぐに弾き飛ばされた。

 

 

ヤバイ、熱くなりすぎてつい力んじゃったZE……

こうなったら起こりうる事態は怯えられるか、喧嘩になるか…

 

どっちにしても厄介なことに成っちまった。

まあ、悪いのは完全に俺なんで謝り倒すしか無いんですがね。

 

 

俺はバンダナの奴に急いで駆け寄り。

 

「そ、その、すまんかった。大丈夫か?」

 

 

「す…………スッゲェ!!!!お前すげぇな!あんなシュート受けたの初めてだ!!なあなあ、お前名前なんて言うんだ?俺は円堂 守!この雷門中サッカー部のキャプテンなんだ!まあ、作ったばっかで部員募集中なんだけどさ…、それでお前の名前は? 」

 

「ひ、比企谷だ、比企谷 八幡」

 

な、なにこいつ怒られるでも怖がられるでも無く思いっきり誉められたんですけどー!?べ、別に嬉しくなんてないんだからね!

 

その後もサッカーを楽しんだ俺達は意気投合し、テンションMAX状態の俺は普段ではあり得ない位の即決でサッカー部に入部した。

 

 

サッカー部に入部したことを小町に伝えると、小町はとても喜んでくれた。守りたいこの笑顔。

 

小町、お兄ちゃん頑張るからな。

 

 

そして、円堂との練習の毎日。基本的に俺は体に錘を着けて練習をしている。具体的に言うとリュックにダンベルを入れ、更に手首、足首に錘を着けて走り込みやひとりワンツーをその状態で行う。

 

これを円堂にもそれを試して貰うことにした。

 

基礎練習で体が慣れたら、お互いに錘を着けた状態で俺は円堂に向かってレイブンショットを撃ち、円堂は其を止めると言うなんともシンプルなトレーニングを行う。

 

グラウンドは他の部活が使用するため、俺らが使用するのはもっぱら河川敷の一角である。

 

最初に練習した時は、ちょっとのことでふらつき倒れていた円堂だったが、1ヶ月と少し経った今では、かなりのセーブ率を誇っている。

 

さて、そろそろ円堂にも必殺技を習得してもらうか。

 

「なあ、円堂。ちょっといいか?」

 

「ん?どうしたんだ?比企谷?」

 

「お前に、キーパーの必殺技を教えたくてな、悪いけどポジションチェンジだ。円堂、俺に向かって思いっきりボールを蹴ってくれ。」

 

「ああ、分かった。それじゃあ、いくぜ!」

 

トレーニングの成果が発揮されたのか、小学生時代のサッカー少年たちと比べて、明らかに段違いな速度でボールが俺に向かって来る。

 

俺は思い出す。ネットで50年以上過去のサッカーの試合の動画を見たときの心から震えるあの感覚を。

 

そう、あのキーパーの必殺技は正に神の手と表現するにふさわしい必殺技だった。

 

あれを見よう見まねで使えるようになったとき、俺は心から感動した。

 

俺にとって非常に思い入れのある必殺技。

 

そう言えば、あのキーパーも円堂って苗字だったな……

偶々だろうけどな。

 

さて、止めるか!

 

「ゴッドハンド!!」

 

手に貯めたエネルギーで大きな手を作り出す。その手はまごうことなく神の手と表現するに相応しかった。

 

ゴッドハンドは円堂のシュートをあっさり防ぎ、ボールは俺の手に収まった。

 

円堂は俺にシュートが止められた途端、走って俺に詰めよって来た。しかし、その表情は決して穏やかなものではない。

 

そして、円堂は力強く俺の襟元を掴んだ。

ひぇ!?な、なんだ!?俺円堂に何かしたか?確かにきついトレーニングかも知れんかったが、ここに来てストレス爆発なのか?

 

 

「な、何で比企谷がじいちゃんの必殺技を使えるんだ!?」

 

しかし、俺が耳にしたのは予想外の言葉だった。

 

「ま、ま待てって円堂、この技は昔の試合の動画で見てカッコ良かったから使わせて貰っただけで…」

何言ってんだよ俺!!こんなに恥ずかしい黒歴史確定の浅い理由を垂れ流してる上に、元祖の孫にその理由話すとか、馬鹿にしてるようなもんじゃねぇか!

「む、昔のドーガ?」

 

円堂はアホの子みたいな顔をしていた。

 

 

 

 

俺は円堂の自宅に行くことでその疑問を解消させた。

普段PCを扱わない円堂は某動画サイトの事を知らなかったらしく…

 

円堂大介の試合を見せると、

 

すげーぇ!とかおおー!とか普通に興奮していた。

 

マネージャーの木野も俺も苦笑いだったのは言うまでも無いだろう。

 

そして、次の日から円堂との必殺技特訓が始まった。

 

と言っても円堂の基礎はもういつゴッドハンドを使えても可笑しくない位の実力に成っているので、後はイメージとエネルギーの操作位だろう。

 

 

「これはあくまで俺のゴッドハンドのやり方だ。出来る保証はないぜ?」

 

「ああ、比企谷、よろしく頼む!」

 

「先ずは心臓から作られたエネルギーを手に溜めるイメージをしてくれ。」

 

「心臓から、手に」

 

「そして、溜めたエネルギーを大きな手に変えて前に突き出す!これだけだ。」

 

「溜めたエネルギーを大きな手に変えて、突き出す!」

 

円堂は大きな手をエネルギーで作り出し、ゴッドハンドを発動させた。

 

練習時間は僅か30秒、まあ、必殺技は本人に基礎能力が備わっていれば出来て当然だろう。

 

その後はひたすら技の精度を高めていった。

 

俺はレイブンショットを打ち、円堂はゴッドハンドでそれを止めるの繰り返し。その日は必殺技が使えなくなるまで練習し続けた。

 

 




比企谷 八幡
属性 山

必殺技
ひとりワンツー A
超 レイブンショット(オリジナル)
絶 ぶんしんディフェンス
超 ゴッドハンド

以上現在の八幡でした。


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そして、一年後……

円堂と木野、そして俺も加わった後、円堂は半田と言うまあまあのイケメンと染岡と言う不良みたいな奴を部員に加えた。俺も影が薄いと言うシンパシーで繋がった影野とゲーム談義で盛り上がった目金をスカウトし、選手6人体制で暫くサッカー部として活動した。

 

それにしてもスカウトはボッチの俺にすれば相当に厳しいものだった。正直話し相手に影野や目金がいる時点でボッチとしては相当に凄いことなのだが、話し相手が幾らでもいるリア充ウェーイwwwなやつらには一生理解できんだろうな。

 

特訓は新しく入ってきた奴らには円堂と同じく少しずつ重りを増やし負荷をかけていくトレーニングを実行し、1ヶ月後にはシュート、ドリブル、ディフェンスの必殺技を全員一通り覚えてもらい、更に基礎の練習を積み重ねて行った。

 

後はウェイト付きでミニゲームをしたり、河川敷でよくサッカーの練習をしている稲妻KFCと言う小学生サッカーチームと練習してサッカーの対人技術も磨いていく。

 

それにしても必殺技を教えるために俺が必殺技を身に付ける羽目に成るとは…

 

確かに基本は一緒だから使うだけなら簡単だが、どの技が誰に向いてるか等色々考えないといけないのは辛いな。それでもあいつらが必殺技を身に付けそれを自分のものへとしてくれれば俺はそれで良いと思っている。

 

だが、必殺技を数多く覚えたことで俺の戦略の幅も大きく広がった。

シュートチェイン、ロングシュート、シュートブロック、これを全部出来ると言うのは試合ではかなり有利だろう。

 

特にロングシュートはディフェンダーの俺にとって非常に使いやすい、長距離から放つという事でシュートブロックされる可能性や威力低下すると言う問題点があることは十分承知しているが、それでもシュートチェインによる勢いの強化は侮れるものでは無い。

 

実際練習試合で試したが、とんでもない威力になったのは言うまでもなかった。まさかあびせ蹴り程度の必殺技でも繋げることで河川敷のグラウンドに穴が空くと言う惨事になるなんてな…

 

 

それと、新入部員の特徴も何となく掴めてきた。

 

半田はポジションこそミッドフィールダーだが、ディフェンダーやフォワードも出来るらしく、俺としてはその経験を生かした上で、スタミナを鍛えてリベロとして活躍してもらいたいと思っている。

 

リベロであればフィールドプレイヤー全てを経験した半田にとって、上手く噛み合えば選手としての殻を破ることが出来るだろう。

 

後、以外に指導力が高く、KFCの小学生に人気がある。

 

 

染岡は見た目通りのストライカーかと思っていたが、パスやアシストがかなり上手い。

 

普段から特にこれらの練習をしている訳では無いことを考えると、これは天性の才能なのだろう。勿論ストライカーとしての潜在能力が低いと言うわけでも無い。

 

だが、パスやアシストの才能に気がついていないのと、気性の荒い性格とが重なり、自分だけで点を稼ごうとする場面が割りとあり強みを生かせていないのが痛いところだ。

 

個人的には、能力を加味してポジションはミッドフィールダーで活躍してもらいたいが、あの性格では難しそうなのでフォワードとして続投で良いだろう。

 

後は周りを見る能力とパスで攻撃を繋ぐ事を覚えてくれればこのチームには無くてはならない存在として活躍出来るだろう。

 

影野は俺より影の薄い奴だ。その薄さを生かした必殺技を習得しているため、ディフェンス、オフェンス共に活躍出来ている。本人はもっと目立ちたいらしいが、活躍は十分にしている、目立って無いだけで……

 

 

目金は運動不足な為、今のところ目立った活躍はしていない、これからの成長に期待と言ったところか…

弱音は吐くが、全くの根性無しと言うわけでも無いので

意外と化けるかも知れんな。

 

因みに必殺技のネーミング担当だ。

 

 

 

因みに俺があいつらに教えた技は、浴びせ蹴り、ひとりワンツー、そしてクイックドローと言う必殺技だ。

 

クイックドローは試合の動画でも度々使われている必殺技で、良く言えば使いやすい、悪く言えばショボい必殺技である。

 

どのような技かといえば、居合いの要領で構え、瞬時に加速しボールを奪う必殺技である。

 

 

それでも全く必殺技が無いよりはマシな状況だろう。

 

 

「おう、比企谷、ちょっといいか?」

 

そう俺に声を掛けたのは染岡である。

 

「ん?どうした染岡」

 

「比企谷は俺よりも強い必殺シュートをまだ覚えているんだよな?そろそろ教えてくれよ、あのレイブンショットとか」

 

成る程、そろそろ今覚えている浴びせ蹴りでは満足出来なく成ったか…、まあそうだよな、最初に弱い技って言ったからな……

 

使い込めば浴びせ蹴りでも強くなるが、そんなことするよりさっさと強いシュート覚えたほうが効率良さそうに見えるのは俺でも分かる理屈だ。

 

だが染岡さん、顔が怖いから詰め寄られると心臓に悪いんだよ、だから出来れば半径1m以内に近寄ってほしくない、マジで俺の寿命が恐怖でマッハだから。

 

それはそれとして、強さを求めて染岡は俺を頼ってきた。強くなるために考え始めたことは誉めるべきだろうが、それでは染岡は…

其だけじゃなく他のやつらも2流で止まることになる。

 

「そろそろいいか…」

 

「お、それじゃあ!」

 

だが、俺は染岡の期待を大きく裏切った答えを出す。

 

「染岡、いや、他のやつらにも言えることだが、そろそろ自分で必殺技作ってみたらどうだ?

 

一から作るもよし、今使える必殺技をもっと強力な必殺技に改造するもよし、俺に教えてもらっているだけじゃお前ら絶対強くなれんぞ?」

 

「あ?必殺技を作れったってそう簡単に出来るもんでも無いだろ?」

 

詰め寄んな染岡さん、顔が近い怖い。

 

「…例えば、俺のレイブンショットは当時俺がとある漫画に影響されてカッコいいと思っていた動物がカラスだったんだ。

 

だから俺はエネルギーをカラスの形にしてシュートした。」

 

「それが、レイブンショットになったって訳か?」

 

「ああ、だからお前もそんな感じでやればいいんじゃないか?別にカラスじゃなくてもお前がカッコいい、もしくは最強だと思える生物であれば、たとえそれが実際に居ても居なくても関係ないしな。要はそう言うイメージが大事なだけだし。」

 

 

うん、カッコ良かったよな…あの泥棒の王様。

まさかカラスと剣が一体化して必殺技繰り出すとは思わなかったけどな。

 

「……自分で作る…か」

 

「難しく考えなくてもいいぞ、お前はすでに浴びせ蹴りにクイックドロー、ひとりワンツーと3つも必殺技を身につけているんだ。お前は今までの練習で既に自分の力で必殺技を作れる。」

 

これは間違い無いだろう。身体能力的にも、技術的にもレイブンショットを編み出した時の俺を染岡を初め、サッカー部全員越えているからな。

 

後はあいつらの努力と発想次第だな。

 

「……へっ!お前にそこまで言われちゃ作るしかねぇな!必殺技をよ!すげぇの作って度肝抜かしてやるから覚悟してろよ!」

 

スゲーよ染岡さん、何て噛ませ犬的な台詞の数々なんだ。しかもそれを空気でも吸うように自然に話せるなんて……

 

まあ、やる気になってくれて良かった。多分、これから染岡に感化されてチーム全体で強くなろうと努力し初める。これによりチームメイト個人個人が個性を現し初めるだろう。そして、その個性を最大限に活かすサッカーを俺達で作って行きたい。

 

円堂に出会って、サッカーを初めて、人と関われて良かったと俺が思うようになるなんて考えもしなかった。

 

大半の人間なんて所詮は弱い奴を見つけ、見せしめにして嘲笑うことしか考えないものだと思っていた。そして、異分子をそれこそ杭を打ち二度と出てこないようしてくるような奴らばかりだと思っていた。

 

だが、少なくともこいつらは違った。俺の必殺技を見てもモチベーションを下げるどころか上げて、更に俺を信じて辛い基礎練習に付き合ってくれた。

 

そんな奴らだから俺はこいつらと一緒に居られるのだと思った。

 

 

 

 

それから、染岡に感化されたサッカー部は暇さえあれば必殺技を作り出すようになっていた。

 

円堂はノートの必殺技を幾つかの習得し、染岡も宣言通りにドラゴンクラッシュと言う必殺技を開発した。

 

半田も浴びせ蹴りから回転を加えることで発展させたローリングキックと言うイマイチパッとしない技を開発していた。

 

そして、俺もオーバーレイブンと言うオーバーヘッドキックで行うレイブンショットを開発した。

 

今までのレイブンショットであればカウンターシュートを狙えたのだが、このオーバーレイブンであれば、チェインシュートを行うことが出来るのである。

 

これにより、俺はシュートチェイン参加時の威力を上げることに成功したと言える。

 

因みに、これを見せると男子部員全員に囲まれた。

 

「スゲェ!なんだよ比企谷!今のレイブンショット!」

 

「いいなー、俺も比企谷見たいにもっとインパクトのある必殺技考えれば良かったぜ」

 

「チクショウ!比企谷お前!俺のドラゴンクラッシュよりカッコイイ技を編みだしやがって!こうなりゃ俺もドラゴンクラッシュを完璧にマスターしてもっとド派手な必殺技を作ってやるからな!」

 

「すごな、比企谷…俺ももっと目立つ必殺技を身に付けないとな…」

 

「比企谷君!なかなかのネーミングセンスじゃ無いですか!オーバーヘッドシュートのレイブンショットと言う意味と今までのレイブンショットと越えたレイブンショットと言う意味と掛けてオーバーレイブンだなんて!」

 

そう、男子部員のみだ。

 

木野はベンチで大笑いだ。

 

 

これがハーレムであればどれだけ嬉しかったことか……

これ以上ムサいのは勘弁して下さい。

 

 

 

 

そんなこんなで基礎練習、必殺技開発、稲妻KFCと試合のローテーションを繰り返していくうちに、俺達は2年になった。

 

 

 

新入部員は大柄でビビりな壁山、でやんすが口癖の栗松、アフロヘアーの宍戸、小柄だが中国拳法を習っている少林寺。

 

この四人が入り、サッカー部は後一人でサッカー部としての活動が可能となる。

 

さて、おさらいとして俺達先輩は一年に付き合い基礎練習を行うことにした。

 

スポーツ経験のある少林寺は基礎練習に早くも順応していったが、大柄の壁山はスタミナ不足とメンタル不足が問題で何度も挫けそうになっていたが、皆で励まし一緒に基礎練習を付き合うことで何とか基礎練習をこなすことが出来るようになった。

 

そして、基礎練習が一段落ついたら次は必殺技練習を行う。

 

一番苦心したのはここでも壁山だった。

 

シュートを体で受ける練習を怖がり、先ずは痛くないシュートを体で止める練習をしてもらい、わからないように徐々にボールのスピードを早くしていき、ボールを体で止めることが出来るようになった。

 

そしてレイブンショットを止める練習の時に、「チャーシュー麺3杯奢り」の条件を出すと、壁山は気合いを入れそびえ立つ壁を背後に出し、見事に必殺技を習得したのだった。

 

後日、俺は母が懸賞で当てた大盛カップ麺メガカップチャーシュー麺を3つ壁山に渡す。

 

後ろで後輩は「さすが比企谷先輩、せこいでやんす」

「嘘をついてないって言うのがまた比企谷先輩らしいよな」「ホントに比企谷先輩ってズル賢いよねー」

 

等と言っていた。栗、アフロ、弁髪の基礎練は重量2倍にしておくとして、肝心の壁山は「比企谷先輩の事だから適当に有耶無耶にすると思ってたッスけど約束を守ってくれて嬉しいッスー!俺、メガカップシリーズ好きなんッスよー!」

 

と、喜んでいたのでまあ、良いだろう。

 

そして、必殺技を身に付けた後輩達は、実力を発揮する場所として稲妻KFCとの試合を行った。

 

ミニゲームで学んだチームメイトの癖を後輩達も覚えていたので、初めての実戦にしてはかなり善戦してくれたと思う。

 

そして、練習のローテーションを後輩達に教えた後は、俺達は以前のローテーション通りに練習を行い実力を少しずつ身につけていった。

 

 

そうして、一ヶ月が経とうとしていたある日の事だった……

 



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こうして、帝国学園と試合する。

「…それで、一週間後の練習試合で帝国学園に勝たないと俺達廃部にされちゃうらしいんだ!」

 

と、円堂は楽しそうに言いやがった。

 

「おい!円堂!笑い事じゃねぇぞ!」

 

そう染岡が怒るのも最もなのだが、円堂は確かめたいのだろう、俺たちの力があの帝国にどの程度通用するのか…

 

だから笑っていられるのだろう。

 

「だってあの帝国と試合できるんだぜ俺達!日頃の練習の成果を思いっきりぶつけて良いんだよ!あの帝国ならきっと俺たちの全力でもまだ足りないくらいさ!」

 

まあ、シュートチェインの実験の反省は大切だよな……

あれからシュートチェイン実験は円堂がキーパーとして立ち会いの元行ってるしな…

 

「それにお前達もおんなじ相手と試合してるばっかりじゃ強くなれないって分かってるんじゃないのか?俺はもっとサッカー皆で上手くなって、そして、フットボールフロンティアで優勝するんだ!」

 

円堂は皆に対してそう言い切った。

 

「…っけ!たくしょうがねぇ!ならこの雷門のエースストライカーであるこの俺!染岡 竜吾がド派手に帝国のキーパーから点数奪ってやるよ!」

 

「俺も帝国と戦うぜ!あのイタリアの白い流星みたいに!……とはいかなくてもさ、俺は俺なりに全力を尽くすぜ!」

 

「俺もやるぞ、そして俺の存在感を見せつけてやる!」

 

「全く、しょうがない人たちですね、この目金 欠流の頭脳とサッカーのテクニックを披露しなければ帝国には逆立ちしても勝てませんよ。」

 

「先輩達がやるならオイラだってやってやるでやんす!」

 

「俺も、こ、怖いけどやるッス!サッカー部潰れるほうが怖いッスから!」

 

「俺もやりますよ!キャプテンや先輩達には敵わなくたって俺にはグレネードショットって言う必殺技があるんだ!」

 

「俺だって!皆と特訓して覚えたクンフーヘッドや竜巻旋風があるんだ!帝国にだって負けるもんか!」

 

 

こうして、全員の士気が上がるのは良いことだ、良いことなのだが……

 

「メンバーひとり足りないんだよなぁ……」

 

俺のツイートに全員が注目する。

 

何だろう、いいねよりうーんを取る自信に満ち溢れるこの感覚……

 

「そ、そうだったーー!!」

 

と、円堂が騒ぎ出し、結局スカウトにて部員を集めることになった。

 

そうして1日で集まった部員は二人、一人はたまに俺たちの練習に参加してくれた円堂の親友で陸上部のイケメン風丸、そしてサッカーに興味を持った松野ことマックス。

 

これで部員どころかベンチ要員までが揃い、俺達は更に6日間の詰め込み練習をした。

 

この詰め込み練習で著しく成長を遂げたのがマックスだった。

 

自分で器用と言っていただけのことはあり、俺の教えた必殺技をまるでスポンジのように覚えていった。

 

風丸も陸上部での速さを生かしたオリジナルの必殺技、疾風ダッシュと言う技と分身ディフェンスと彗星シュートを習得し、何とか試合で活躍出来そうだ。

 

円堂は練習の合間にも去年木戸川清修でエースストライカーをつとめていた転校生、豪炎寺をスカウトしている様子だった。染岡は「ストライカーは俺だけで良い!」と、面白く無さそうにしていたが、入ったら入ったで切磋琢磨してくれそうなので反対はしない。

 

こうして、サッカー部の命運を賭けた試合に向けて、俺達は努力し続けた。

 

 

そして、試合当日である。

 

黒い大型トラックからド派手に登場した帝国の選手達は俺達を値踏みする価値も無いような目で見ていて、正直ムカついたが、侮ってくれるぶん隙が突けるのでありがたい、だがあのドレッドゴーグル、帝国キャプテン、鬼道 有都だけは不敵な笑みを浮かべるもののどうやら油断していないようだった。

 

正直苦手なタイプだ。

 

円堂は帝国選手達に挨拶をすると、帝国選手はこのグラウンドで慣れるためにアップの許可を申し出たようだった。

 

円堂はもちろん断ることなく許可を出した。

 

こうして、帝国選手達はアップを始めた。

 

流石に全国優勝40年連続は伊達では無いらしく、チビのリフティング何かは、とある同世代の選手の動画を見て憧れを抱き、一番リフティングの上手くなった半田と同等の速度でリフティングをしていたし、他の選手のアップもどれも目を見張るものばかりだった。

 

こちらもアップを開始すると、突如ボールが円堂に向かって飛んできた。

 

円堂はそれを危なげなく片手で取ると、「張り切ってるのは分かるけど気をつけて練習してくれよー」と言って、帝国側にボールを投げ渡した。

 

こうして、俺たちのアップは完了し、ポジションに着こうとしたときに思い出す。

 

俺達は錘を着けたままアップしていたことに…、一旦ベンチへ戻り、皆それぞれ錘を外すと再びフィールドに戻り各自のポジションへと着いた。

 

 

FW 染岡 宍戸

 

MF 目金 マックス

少林寺 影野

 

DF 栗松 半田

 

比企谷 壁山

 

GK 円堂

 

 

 

風丸は控えとして待ってもらう。今回は戦力として未知数なマックスが果たしてどれだけ活躍出来るか期待したいし、データが無いから不意が突けると言う意図もありマックスを参加させている。

 

そして、遂に試合開始のホイッスルが鳴り響く。

 

何か同じクラスの角馬が実況してるが、気にしないようにしておこう。

 

 

こちらを嘗めているのか、相手側のFWは染岡にパスを回した。

 

しかもご丁寧に挑発付きで…

 

あー、大丈夫か…染岡キレて前半に必殺技を使う何てヘマやらかさないだろうな……

 

 

………

試合前のミーティングで、俺はある作戦を提案した。

 

「なに!?試合前半に必殺技を使わないって…比企谷、何でまたそんな作戦を…」

 

まあ、真っ向勝負を好む円堂らしい質問である。

 

「多分だが、帝国は今回練習試合そのものが目的じゃないはずだ。そもそもそれ自体が目的ならもっとレベルの高い所と練習試合するはずだからな。」

 

「じゃあ帝国の目的は一体何だって言うんだ?」

 

そうだよな、円堂…そこ気になるよな

 

「恐らくだが豪炎寺だろう、あいつのデータを取りたいんだろうな…」

 

「おいおい何いってんだ?豪炎寺はサッカー部に入部してないし、何より本人がサッカーを辞めたって話じゃねぇか!何だってそんな奴のデータを…」

 

噛みつくなぁ染岡…

確かに雷門の今のエースストライカーはお前だ。

 

だが、

 

「染岡君、それは帝国がそれだけ豪炎寺 修也と言う人物をマークしていると言う証拠に他ならないと言うことですよ。

 

いつ、どのような状況で豪炎寺君がこのサッカー部に入部するのか帝国はおろか僕達にすらわからない状況です。帝国としてはそのような不確定要素を減らしたいのかもしれないですね。

 

つまり、豪炎寺君のデータが入手出来るかも知れない…、帝国から見たらそれだけでも僕達雷門中と練習試合をする価値があるのでしょう。」

 

と、目金の見解だ。

 

ほぼほぼその通りだと思う。

だが、サッカーは俺が言うのもなんだが、チームプレイだ。

 

 

例えば俺の場合は普段は徹底してフォローに回り、不意をついて攻勢に回る。と言う相手の裏を常にかくタイプの選手だ。

 

染岡は普段は攻めの姿勢を全面に出すが、自分以外の味方にチャンスがあれば、絶対に最高のタイミングで最高のパスを出す。

 

サッカーはそんな、個人個人の個性を絡み合わせてひとつの作戦を作り、ひとつのチームとして戦うものであり、誰かひとりが強くてもサッカーでは勝てない。

 

全員の力が噛み合って初めてサッカーで勝つことが出来る。

 

そんなことがわからない程、帝国のレベルが低いと言うことはないと思うんだが……

 

「ま、目金が言った通りの理由で帝国は練習試合をするわけだ。

 

つまり、帝国は豪炎寺以外に本気何て出しはしないだろう。なら、出来る限りこっちの情報を漏らさないように此方を弱く見せようってだけの話だ。

 

どうせフットボールフロンティアに参加するなら同じ地区に帝国がいる限り地区予選と言う早い段階で試合することになるしな。その時にこの試合で情報を渡しすぎて負けました何て笑えないしな。

 

それに早い話、この作戦は相手の油断を誘う作戦と言う側面もある。

 

言っておくが別に無理にこの作戦に乗る必要は無いからな?全力を出すなって言ってるわけでも無いしな。実力差が有りすぎたりで無理があるなら必殺技を使ったって良いわけだし。

 

けどまあ、後半は特にこれと言って言うことは無いな。

 

帝国だろうが何だろうが本気で勝ちに行くし。」

 

 

 

…………

 

あの根拠のほとんど無い俺の強気な姿勢にチームメイトは更に士気を上げたが、何が帝国だろうが何だろうが本気で勝ちに行くって、自分で言って転げ回りたくなるほど恥ずかしいんだけどぉ!?

 

そんな俺の思いなど露知らず、試合は刻一刻と進む。

 

「染岡上がる上がる!相手のスライディングをボールを挟んでジャンプしてかわす!正面のディフェンスもヒールリフトを使ってボールを操り難なく突破!」

 

角馬の実況がかなり上手くてヤバイと思っていたら、染岡は上がってきていた半田にパスをする。

 

半田はドリブルとリフティングを的確にかつ華麗に使い、帝国選手達を抜き去ると、宍戸へパスを回す。

 

染岡や半田ほどでは無いものの、危なげなく帝国のディフェンスを掻い潜った宍戸は、染岡へパスをした。

 

パスを受け取った染岡はゴール前まで行くと、シュートを放った。

 

シュートを受けたキーパーは予想以上の衝撃に驚いたのか表情を崩し、シュートの威力で後ろへ押されつつも何とかシュートを止めていた。

 

「くっ……油断したか!まさかノーマークの弱小校がここまでの威力のシュートを出せる選手を隠し持っていたとはな…鬼道!」

 

帝国のキーパーはそう言うと、鬼道にボールを投げてパスをした。

 

鬼道はボールを受けとると……

 

「弱小校の様子見に来た筈が思わぬ収穫だった。なかなかに良い練習試合が出来そうだ……デスゾーン開始!」

 

鬼道はそう言うと眼帯にボールをパスした。

 

眼帯は先程とは見違えるような動きで攻め上がり、パスをする。

 

いや、眼帯野郎だけでなく帝国全員の動きが先程までと全く違っていた。

 

良く訓練され、統率された軍隊のそれを思わせる見事な連携に次ぐ連携に俺は舌を巻かれた。

 

そして、この連中の動きを掌握し勝利へと導く鬼道の指令が加わると思うと身震いすらする……

 

だが、そんなどうしようもない状況にも関わらず、俺は口角が上がるのが分かった。

 

どうしようもなく、俺はこの試合が楽しくなってきた。

 

やれやれ、俺も円堂のことは言えないな……

 

そう思っていた時だ。目金のディフェンスを破ったチビと眼帯と長身ドレッドがボールと共に飛び上がり、3人が同じタイミング同じ速度で回転し、ボールにパワーを送り出す。

 

そして、同じタイミングで3人がボールをシュートした。

 

「「「デスゾーン!」」」

 

黒いエネルギーに覆われた強力なシュートはゴールに吸い寄せられて行く。

 

だが、円堂は必殺技を使わずに真正面からそれを受け止める。

 

 

「うおおおおお!!!」

 

受け止めはしたが、流石帝国の必殺技、ボールは円堂ごとゴールに押し込んでいく。

 

「ま、け、る、かぁーーー!!!」

 

しかし、円堂は気合いでボールを押さえ前進していく

。すると、ボールの勢いは徐々に失速していき、遂にその勢いを止めたのだ。

 

そう、帝国の必殺技を気合いと根性で円堂は見事防ぎきってしまったのだ。

 

これは下手に必殺技を使うよりも凄い結果になってしまったと言える…な。

 

うん、ヤバイぞこれ、明らかに帝国本気で警戒しちゃうよね?確実にうちを潰しに来ちゃうよね?

 

 

どうするんだよこれ、こんなことになるなんて考えてねぇよ!必殺技封印の舐めプして負けてサッカー部廃部とか洒落になんねぇぞ……

 

「へへ、凄いシュートだぜ!だけど俺達も負けねぇ!みんな!勝つぞ!」

 

「「「「おう!!」」」」

 

円堂の一言で士気を上げた俺達サッカー部のその後の試合展開は俺の予想を大きく越えていた。

 

必殺技を使わずとも、あの帝国に渡り合えていたのだ。

 

しかも、必殺技を使用している帝国に対してだ。

 

これは嬉しい方向で誤算だったと言わざるおえない。

 

これでこの雷門中が全国レベルで通用するサッカーチームであることが証明されたのだから。だが、まずはこの試合に確実に勝つことからだ!

 



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遂に豪炎寺 修也は立ち上がる。

感想いただきありがとうございます。

調子に乗って書いたらいつもより早めに書き上がったので投稿します。

それにしてもこんなの楽しみにしてくれる人もおるんだなぁ(しみじみ)


俺達と帝国、試合の状況は拮抗していた。

 

互いの攻撃はキーパーにより遮られ、点数が入らないからだ。

 

だが、現在状況はこちらが有利だろう。何せ相手は必殺技を使用しているのだ。

 

体力的な消耗はこちらよりずっと激しい筈だ。

 

更にこちらは必殺技を使っていない上で同等のプレーをしているため、精神的なダメージも与えていることだろう。

 

スポーツにおいてメンタル面にマイナスがあると言うことは非常にまずい。

 

メンタル面の良し悪しでパフォーマンスに大きな差が付くからだ。

 

そう言う意味でも俺達が優勢なのは間違いない。

 

だが、負傷するリスクは此方のほうが圧倒的に大きいのは事実だ。

 

帝国の必殺技はどれも危険なものが多い、特にサイクロンとか言う竜巻を瞬間的に発生させる必殺技は下手をすれば大怪我間違いなしである。

 

今のところはギリギリで回避しているか、ボールを諦めるかのどちらかで対応しているが、もし誰か巻き込まれでもすればメンタル面でこちらが不利になる可能性が高くなる。

 

そして、プレーに精細さを欠き一気に攻められるなんて事があっても不思議ではない。

 

このまま無事に前半が終わればいいが……

 

そう思っていた矢先だ。

 

「サイクロン!」

 

おかっぱたらこのサイクロンで半田が吹き飛ばされた。

 

「クソっ!負けてたまるか!うおぉぉぉぉ!!ローリング!キックぅぅ!!」

 

しかし、半田はサイクロンの勢いを逆に利用し、ローリングキックの威力を底上げして放った。

 

半田のシュートはゴールへ綺麗に向かっていく。

 

「くっ、まさかこんなところでこの技を使わないといけなくなるとはなぁ!はぁぁぁ!フルパワーシールドぉぉ!!」

 

しかし、キーパーのペイントバナナはこれまで使っていたパワーシールドとやらの上位の必殺技であろうフルパワーシールドとやらを使って来た。

 

半田の渾身のローリングキックとフルパワーシールドが激しくぶつかり合う。

 

「ゴールは、ゴールは絶対に通さん!必ず守る!はぁぁぁ!!!」

 

しかし、健闘虚しく半田のローリングキックは相手に防がれてしまった。

 

そして、その半田は……

 

「クッ……」

 

仰向けになり起き上がれずにいた。

 

「半田!」「半田さん!」「半田!」「半田くん!」

 

駆け寄るチームメイト達、そのなかでもいち早く駆けつけた染岡とマックスが肩を支え半田を立ち上がらせる。

 

「痛ってぇぇー!染岡、もう少し優しく起こしてくれよー」

 

「んだよ、そんだけ軽口叩けるならもう支えなくても良いよな?」

 

「そうだね、なんなら後半もプレーする?」

 

「あ、嘘ですごめんなさい染岡様、マックス様ベンチまでよろしくお願いします。」

 

思いの外元気な様子の半田に俺は一安心した。

 

だが、流石にこの状態の半田が試合をすることは不可能だと思うので風丸に出番が来たことを伝えなければいけないな。

 

「お、比企谷!受け身のやり方教えてくれてサンキューな。あれなかったら絶対に大怪我してたと思うからさ…」

 

半田のローリングキックと言う技の特性上、勢いをつけた上で高く跳び上がるので、不測の事態で空中での姿勢が崩れた場合、大怪我に繋がりかねない。なので、俺は半田に受け身をとる練習を勧めた。

 

結果的にその練習が半田を今日助けたと言う訳だ。

 

まあ、受け身をとったところで硬い地面に背中から落ちたのだ。それなりのダメージは避けられなかったと言うことなのだろう。

 

「おう、そうか、まあ、あれだ。無事で良かったな。」

 

俺がそう言うと、半田は笑顔で「おう!!」と答え、染岡とマックスに肩を支えて貰いながらベンチへと向かっていった。

 

なんと言うか昔からこうストレートに感謝とかされたこと無いからこういう時の対応は未だに苦手だ。

 

半田のポジションへ入れ替わり、風丸がディフェンダーのポジションに付く。

 

風丸は陸上部ではあるものの、1年のときから円堂の頼みで稲妻KFCとの試合の数あわせでサッカーをしていた為、今日の試合までの一週間は必殺技を身に付ける練習以外で練習の苦労はなかったと思う。

 

だが、常にサッカーをしている俺達とは違い、風丸は陸上部のエースだ。

 

流石に技術面では俺達に数段劣ってしまうのは仕方がない。

 

なので俺は風丸にある作戦を提案した。

 

まあ、とは言っても中身は何てことは無い、言ってしまえば徹底マークである。

 

風丸の武器と言えば陸上競技鍛え上げられたあの素早さだ。普通なら足が早いならボール持たせて走らせろ何て発想になりがちだ。

 

だが、サッカーと言うスポーツにおいてボールを持たせ走らせると言うことは、ドリブルの技術が高水準でなければならない。

 

普段から練習している俺達からしても、基礎にして底の見えない技術であるドリブルは、一朝一夕で身に付くようなものではない。

 

それこそサッカー少年でも何でもない風丸は持ち味のスピードを全く活かすことが出来ない。

 

ならばボールを持つことなく活躍してもらえば良い。

 

だからこその徹底マークだ。

 

これなら風丸の早さを活かした上で選手一人の力を奪うことが出来る。

 

試合再開のホイッスルが鳴り響く。

 

 

風丸は此方へ攻め上がってきた眼帯の正面に回る。

 

眼帯は風丸を振り切ろうとするが、風丸の早さに遠く及ばない為、振り切る事が出来ない。

 

ならばとフェイントを仕掛けるも振り切ることは出来ない。

 

そう、この素早い守備が風丸の恐ろしさだ。

 

生半可なスピードやテクニックでは振り抜くことも出来ず、体力と戦力を奪われる。

 

 

結局風丸を振り切ることの出来なかった眼帯は味方のドレッドにパスを出すも俺がカットする。

 

当然狙われる俺。

 

ドレッドが走ってきて、「キラースライド!」と言いながら連続キックのスライディングをしてきたが、俺はボールを挟んでジャンプし回避する。

 

続いておかっぱたらこが「サイクロン!」と言いながらサイクロンを蹴りで作り出した。

 

しかし、俺はこれを敢えて風に身を任せ、着地の際前転受け身をとることで回避、当然ボールも保持している。

 

そして、鬼道が俺の目の前に立ち塞がる。

 

「ほう、後ろで呆けているだけの奴だと思っていたが中々やる様だ。だが、ここで流れを変えさせて貰うぞ!

スピニングカット!」

 

鬼道は、虚空に向かい回し蹴りを行う。

すると、衝撃波の壁が俺を襲ってきた。

 

しかし、スピニングカットについて知っていた俺はそれよりも早くボールを高く蹴り上げていた。

 

俺は回転をしながらジャンプし、恰も必殺技を繰り出す様な雰囲気を出して勢いの無いミスショットを出した。

 

「ふっ、何を出すかと思えば只のミスショットだとは、やはり見込み違いだった様だな。」

 

 

まあ、そうだろうな。

 

俺は鬼道の言葉に同意しながらもボールの動きを目で追っていた。

 

ミスショットは弧を描き左サイドへ飛んで行く。

 

あー、そろそろだな。

 

そろそろ右へ強風が吹く。

 

ミスショットは風に乗り、その軌道を変える。

 

そう、ゴールポスト手前だ。

 

気を抜いたところで急に襲いかかる危機。

人間、こう不意を突かれると弱いものである。

 

しかし、伊達に帝国ゴールキーパーをしていないバナナヘッドは辛うじて反応し、ボールを防いだのだった。

 

 

 

いやー、こうも上手く行くと思わんかった。

まじ、まぐれにも程があるわ。

八幡ビックリ。

 

だってこれ本来の目的高所からの緩いループショットと風を使った虚仮脅しであって、断じてスーパーミラクルシュートなのでは無い。

 

ただ、ゴールに入りそうで入らないドキドキさせるボールが狙いだっただけだ。

 

それがあんな相手に冷や汗もののボールに化けるなんて思っても見なかった。

 

見てみろ、帝国全員に目ぇ付けられたぞこれ……

八幡、お家に帰りたい、小町に会いたい、マジでお兄ちゃん疲れました。

 

とは言え時間稼ぎは完璧に成功したな。

 

だって前半終了のホイッスルが鳴ったもの。

 

 

 

───────

 

「流石あの帝国だぜ、半端なく強ぇ。それに必殺技を使ったとしてもあのキーパー相当固そうだ。生半可なシュートじゃ全部弾かれるだろうな。」

 

染岡はストライカーとしての意見を冷静に述べていた。

どうやらこの試合が染岡を…いや、チーム全員を成長させているのは間違い無さそうだ。

 

「それにあの一糸乱れぬ動きにオイラ達のペースを乱されてしまうでヤンス。」

 

「それにあのデスゾーンって言う必殺技もとんでもない威力で怖いッスよぉ~!俺、受けとめる自信無いッスよぉ~!」

 

「……けどさ、比企谷はもう僕達に必殺技を使っても良いって言ってたから少しは試合も楽になるよね?」

 

不安になった栗松、壁山を慰めるようにマックスがそう言う。

 

だが……

 

「いや、それはない。寧ろここからが踏ん張り処に成るはずだ。相手はあの帝国だぜ?それにフィールドにはあのピッチの絶対指導者とか天才ゲームメーカーとか言われている鬼道がいるんだ。

 

後半は更に厳しい展開があると考えて、覚悟して試合した方が良いだろうな…」

 

俺はマックスの言葉に口出ししてしまう。

 

前半で鬼道が指示を出すような場面は殆ど無かった。

 

もし、こちらが必殺技を使う前提でシュミレーションされていた場合、必殺技を使ったからと言って有利になるなんてことは絶対に無い。

 

中学サッカーに疎い俺でも鬼道有都の名前を、その噂を知っている位だ……

 

ここから先、どんな作戦や必殺タクティクスが飛び出すかわからん以上は気を引き締めねぇとな……

 

「お前達!!後半が始まるのにそんなに暗い雰囲気でどうすんだ!!俺達が出来ることなんてひとつしか無いじゃないか!全力で!サッカーしようぜ!」

 

円堂の一言で雰囲気が一変する。

やっぱ俺はこいつの誘いに乗ってサッカーをすることが出来て本当に良かった。

 

 

もし、負けそうになったら……その時は……

 

いや、負けることなんざ今は考えない方がいいな。

盛り上がるチームメイト達を見ながら俺は次の試合に意識を向けた。

 

 

 

 

後半のホイッスルが鳴る。

 

もうここからは染岡も本気で点を取りに行っていた。

 

「そのボール!寄越して貰うぜ!クイック、ドロー!」

 

急加速した染岡は、ボールを持っていたドレッドからすれ違い様にボールを奪うと、そのまま真っ直ぐ突っ切って行く。

 

「やらせるか!キラースライド!」

 

どや顔オールバックが染岡を止めようとするも…

 

「甘ぇんだよ!ひとり、ワンツー!」

 

染岡はひとりワンツーを使って難なく突破する。

 

しかし……

 

「甘いのはお前のようだな。スピニングカット!」

 

「ぬぐぁ!?」

 

鬼道が染岡を阻止する。

 

染岡の油断を狙ったのか……やはり鬼道は油断なら無い奴だと改めて自覚した。

 

「鳴神!」

 

鬼道はマロ眉ヘッドホンにパスをすると、マロ眉ヘッドホンは此方へ切り込んで来た。

 

「させないよ、クイックドロー!」

 

マックスが止めに入るも…

 

「遅い、イリュージョンボール!」

 

マロ眉ヘッドホンはボールを両足で踏みつけると、ボールを分裂させ、自らの回りを回るように漂わせながらマックスを抜き去る。

 

抜き去る時には、既にボールは1つになっていた。

 

「佐久間!」

 

マロ眉ヘッドホンは眼帯にパスを出す。

 

だが、素早く動いた風丸が眼帯をマークするも…

 

「鳴神!」

 

眼帯は更に前に上がっていたマロ眉ヘッドホンにパスを出す。

 

成る程…、素早く最善策を叩き出していやがる…

 

つまり、風丸はフェイントに引っ掛かったと言うことか…

 

まあ、丸分かりの徹底マークだし攻略されるのは分かる…分かるが、問題はその攻略速度の早さだ。

 

染岡を止めてからの…いや、それより前から、染岡がボールを奪った時からこの一連の流れを作っていやがったのだとしたら…

 

鬼道の天才ゲームメーカーの異名は伊達じゃねえってことか……

 

考え事に集中している間にも、マロ眉ヘッドホンはドレッドにボールをパスした。

 

だが、栗松がドレッドの前に立ち塞がる。

 

「させないでヤンス!クイックドローでヤンス!」

 

栗松は加速しボールを奪おうとするも、がら空きになっていたマロ眉ヘッドホンにパスを回され不発。

 

だが、そこに壁山が立ち塞がる。

 

「通すわけにはいかないッス!ザ・ウォール!」

 

そう叫んだ壁山の背後から壁が現れ、マロ眉ヘッドホンはその揺れに足をとられ転倒。

 

ボールは壁山の足元に転がった。

 

「比企谷先輩!」

 

壁山は俺を呼ぶ、それと同時に風丸が此方のゴール前に下がった。

 

さてと、今度はこっちのターンだ。

 

「風丸」

 

俺は風丸にボールをパスする。

 

「やるんだな?比企谷、あれを…」

 

「ああ、頼んだ風丸」

 

「よし、分かった!」

 

風丸は俺に向かってシュートを放つ。

 

いや、正確にはシュートでは無い、パスだ。

 

高速のパスは壁山から栗松へ栗松から影野へ…と、あっという間に染岡まで繋がった。

 

高速のダイレクトパスを稲妻の如く仲間に繋げ、一気に攻め上がる。

 

それが……

 

 

「「「「「「「「「必殺タクティクス!ライトニングルートパス!!!」」」」」」」」」

 

染岡は攻め上がるも、正面に巨漢ゴーグルが立ち塞がる。

 

「へっ、宍戸!」

 

しかし、警戒の薄かった宍戸に染岡はパスをした。

 

「よぉし!グレネードショット!」

 

宍戸の必殺シュートが敵のゴールに迫る。

 

「させん!パワーシールド!」

 

必殺技同士が拮抗するが、宍戸のグレネードショットをバナナヘッドが弾いた。

 

だが、大きく弧を描いたボールに人影が迫っていた。

 

それは影野だった。

 

突如現れた影野に帝国は驚きを隠せていないようだが、唐突に現れ虚を突く。これが影野の戦法である。

 

そこへどや顔オールバックが迫ってくるが……

 

「透明フェイント」

 

影野は消え、そして気がつけば、どや顔オールバックを

抜き去っていた。

 

「染岡」

 

影野は染岡へパスを出す。

 

「しゃあ!行くぜ!」

 

染岡の行く手に邪魔は無い。

 

染岡はゴール前に詰めより、シュートを放った。

 

「喰らえ!ドラゴン、クラッシュ!」

 

龍のオーラを纏ったシュートがゴールに迫る。

 

「させるかぁ!パワー!シーールドォ!!」

 

染岡のドラゴンクラッシュがパワーシールドにぶつかる。

 

染岡のドラゴンクラッシュでパワーシールドに皹が入るも、ギリギリのところでドラゴンクラッシュを弾いた。

 

ボールは鬼道に取られ、そのまま攻め上がってきた。

 

鬼道は守備を突破すると、眼帯にパスをする。

 

「デスゾーン開始!」

 

鬼道の号令と共に再びデスゾーンが放たれる。

そして、その先にいたのは壁山だった。

 

「ひ、ヒィィ!?怖いッスぅー!!」

 

駄目だ完全にビビってやがる!このままだと壁山にデスゾーンが直撃して怪我するかもしれない!

 

そう思った時だ。

 

「キョヘ!?」

 

奇声と共に目金とボールが吹っ飛んだ。

 

ボールはフィールドから出てしまったが今はそんなことはどうでも良かった。

 

「目金!」

 

近くにいた円堂や風丸、壁山が目金に近寄る。

 

「目金!大丈夫か!?」

 

「大丈夫ですよ円堂くん…ボク…を誰だと思っているんです…か?」

 

「目金さん、お、おれ、俺……」

 

「壁山君、こんな小柄な…僕でも…あのデスゾーンを…弾くことが…出来ましたよ。

 

壁山…君なら…きっと相手のシュートを…止めれる筈です。僕のなけ…なしの…勇気、壁山君、君に託しますよ……うっ!」

 

そう言って目金は気絶した。

 

その後直ぐに担架を教師が持ってきて、目金を保健室へと運んだ。

 

目金のこともショックだが……

 

此方の選手はもういない…なので10人で試合を回さないといけなくなった……

 

一体どうすれば……

 

そんなことを思っている時だ。

 

「さっきの奴の代わりに俺が出る。出させてくれ。」

 

こいつは確か…

 

「豪炎寺!ハハッ!来てくれるって思ってたぜ!」

 

そう、こいつは豪炎寺 修也……木戸川清修のエースストライカーだった奴だ。

 

「済まない、ユニフォームを貸してくれないか?」

 

「ええ、わかったわ…あっ、でも代えのユニフォームってこれしか無くて…」

 

そう言って木野が取り出したのは背番号10のユニフォームだった。

 

これを染岡が着ていないのは、染岡のシュートが俺のシュートに追い付いていないから、その事に染岡自身が納得出来ていないからだと言う。

 

「染岡…」

 

俺は染岡を見る。

 

染岡は俺を見た後、溜め息を吐く。

 

「…ったく、仕方ねぇ、分かってるよ…

おい、豪炎寺っつったか?お前、その番号の重み分かってるんだよな?」

 

「ああ、分かっているつもりだ。」

 

染岡のメンチを目の当たりにしても?、豪炎寺は正面から堂々と答えた。

 

それにしても、あの素早さがガクッと下がりそうな顔を前に良く平然としていられるな豪炎寺…マジで並の胆力じゃねぇな…

 

「ケッ、分かったよ…、信じて…良いんだろうな?」

 

「あぁ、任せろ」

 

豪炎寺がそう答えた後、染岡は何も言わずポジションに戻る。

 

そして、試合再開のホイッスルが鳴る。

 

 

スローインされたボールは鬼道に渡り、すぐさまドレッドに渡った。

 

「百烈ショット!」

 

ドレッドはとんでもない蹴りの連打をボールに叩き込みシュートする。

 

しかし、壁山がそのシュートの前に立ち塞がった。

 

「もう、もう逃げないっス!!ザ・ウォール!」

 

壁山は百烈ショットを背後の壁で弾き飛ばす。

 

しかし、ボールの着地点にはまたしても鬼道がいた。

 

「させん!佐久間!!デスゾーン開始だ!!」

 

眼帯はパスを受け取りサイドドレッドとチビと回転しながら飛び上がる。

 

「「「デスゾーン!!!」」」

 

デスゾーンは遮られることなくゴールへ向かう。

 

だが、俺はゴールを安心して見守ることが出来る。

なぜなら、円堂 守がキーパーだからだ。

 

「ゴッド、ハンド!」

 

その名に相応しいエネルギーで出来た巨大な手にデスゾーンは呆気なく止められ、円堂の右手に収まった。

 

「円堂!此方だ!」

 

豪炎寺が円堂に声をかける。

 

「よーし、いっけぇーーー!!」

 

円堂は勢い良くボールを蹴り飛ばす。

 

ボールは相手ゴール近くまで飛び、豪炎寺にボールが渡る。

 

豪炎寺はバック転してボールを真上に蹴り上げた後、高く飛び上がり脚を広げ、炎を纏い回転しながらシュートした。

 

「ファイアトルネード!」

 

「ゴールは、この俺が守る!パワーシールドォォォオ!!!なっ!?しまっ」

 

パワーシールドを呆気なく破り、ネットにボールが突き刺さる。

 

「よ、よーーーしっ!!やったぞ!!!」

 

円堂が声を上げた。

 

それに伴い、他のチームメイトも声を出し静寂を破った。

 

「お前達、試合はここまでだ撤収するぞ。」

 

鬼道がそう言うと、帝国はグランドを去っていく。

 

「お、おい!試合はまだ終わって…」

 

円堂は鬼道に詰めよりそう言うが…

 

「我々としても不本意だが、総帥の御指示だ。…どうしても決着を着けたいならフットボールフロンティアを勝ち上がれ。」

 

鬼道はそう言うとトラックへと乗り込んだ。

 

「て言うことは、オイラ達は…」

 

「勝ったってことッスよぉ栗松ー!」

 

チームのデコボココンビが喜びを分かち合ったことで、チーム全体に勝利の歓喜が押し寄せる。

 

そう、これで俺達は、サッカー部を解体せずに済んだのだ。

 

チームメイトのはしゃぐ姿を見て、俺もまた勝利の余韻に浸るのだった。

 




ライトニングルートパス

オリジナルの必殺タクティクス

技術力の関係上風丸から始動。

シュートじみたダイレクトパスをジグザグに回し、最後にFWが受け止める。

パスを繋げる際、ボールから電撃のエフェクトが発生する。

こんな感じの必殺タクティクスです。


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比企谷 八幡は、豪炎寺 修也を説得する。

試合後、俺達はミーティングをしていた。

 

「今日の問題点だが、あの試合で俺達は何が足りなかった?」

 

そして、何故か司会が俺だった。うん、いやなんで俺なの?八幡わかんない。

 

「……悔しいがシュートの威力が足りなかった…」

 

そう言い出したのは染岡だった。

 

「そんなこと言ったらオイラだってディフェンダーなのにしっかり相手を止めることが出来なかったでヤンス…」

 

次に栗松がそういった。

 

「後は単純にサッカーの作戦とかフォーメーションとか、それと技術だよね。ボクにも言えることだけどさぁ、帝国との大きな差はそこにあったとおもうよ?」

 

そして、最後にマックスがそう言った。

 

「そうだな、俺もマックスの意見に賛成だ。だから練習メニューにもっと細く、繊細な技術が身に付く様なものを取り入れていこうと思う。」

 

そう言った俺は、密かにまだ危険と思って封印していた下り坂ドリブルを練習メニューに加えないといけないなと思っていた。

 

あれをマスターすればドリブルの力加減や、回転の掛け方等の細かな技量が爆発的に上がるのだ。

 

実は半田が短期間でドリブルをマスターしたのはこの練習のお陰だったりする。当然俺の監督下で行ったので大きな怪我はしていない。

 

そのあと他の部員の意見を聞き、俺が練習メニューを再度見直す方針を伝えて解散となった。

 

 

 

その後、円堂と練習に付き合う為に一緒に鉄塔に向かっていた時だった。

 

豪炎寺を見かけた。

 

「悪い、比企谷、俺…」

 

「あぁ、俺も興味ある行こうぜ」

 

「!…おう!」

 

豪炎寺 修也が何処に向かうのか気になった俺達は尾行することにした。

 

尾行し、辿り着いたのは総合病院だった。豪炎寺は病院に入っていったので、俺達も後を追って病院に入った。

 

その後も尾行を続けると、豪炎寺は病室に入った。

どうやら誰かが入院しているらしい。

 

病室のネームプレートには豪炎寺 夕香と書いてあった為、豪炎寺の母親か姉か妹の誰かが入院しているのだろう。

 

因みに俺の直感では妹だ。

 

わざわざ誰か入院したとき、頻繁に病室に足を運ぶとしたら俺には小町以外考えられないからな。

 

千葉の兄妹は仲が良い、例え何処に住んでいても千葉の兄妹は仲が良いのだ。(断言)

 

そんな事を考えて居ると、病室の扉が開き豪炎寺と円堂が鉢合わせしてしまう。

 

「あ、そのえーっと…」

 

慌てた円堂が何か言おうと必死になっていたが、話が進まなそうなので俺が代わりに謝ることにした。

 

「悪かったな…町で見かけてどうにも俺も円堂もお前の事が気になってな、こんな真似をしてしまった。本当に申し訳ありませんでした。」

 

俺はそう言うと頭を下げた。

 

「俺も…ごめんなさい、豪炎寺が病院に入るからもしかしたら怪我でもしたのかと思ってさ…」

 

俺に続き円堂も頭を下げた。

 

「……話、あるんだろ?入れよ。」

 

僅かな沈黙の後、豪炎寺は俺たちを病室に招いた。

 

病室のベッドには6~7歳位の女の子が寝ていた。

 

「妹の夕香だ。…1年前からずっとこのままなんだ。」

 

おいおいマジかよ……想像以上に重い話吹っ掛けられて反応に困るんだが…

 

「あの日、フットボールフロンティアの決勝で帝国との試合当日、夕香は俺の応援に行く途中でトラックに轢かれた…

 

あの日、俺が試合に出なければ、そもそもサッカーなんてしなければ夕香はこんな目に遭わなくても済んだ…

 

だから俺はサッカーはもうしないと決めていたんだ…」

 

うん、いや、豪炎寺の気持ちは同じ妹を持つ俺としては解る…解るのだが……

 

「なあ、豪炎寺…、俺にも妹がいるからお前の気持ちは少しは解っているつもりだ。…けどよ、俺がお前の立場だったら…多分、いや絶対サッカー続けてるわ。」

 

「……何故だ?」

 

少し間を置いた後、豪炎寺は俺を見てそう言った。

 

「俺は応援してくれる可愛い妹のことを無視してサッカーから背を向けるなんて言う糞っ垂れなダサい兄貴にはなりたくない。ちゃんと何時目覚めて応援してくれても良いようにサッカーに全力を注ぐ兄貴で居たい。

 

まあ、少なくともこれは俺の持論であって、そう言った考えもあると言う位に思ってくれると嬉しい。」

 

俺がそう言った後、豪炎寺は俯き肩を震わせていた。

 

あ、ヤベェ、余計なこと言って怒らせたか?

 

まあ、前言を撤回するつもりは無いがな…、俺は本気でそこまで情けない兄貴になりたくないし、多分成ったら小町は絶対俺と口を利いてくれない。

 

そんなの俺には堪えられない、つまりは自殺するしか無いわけだ。

 

そんな事を考えていたら、豪炎寺が話だした。

 

「俺は……俺は最低の兄貴だ。俺は夕香を言い訳に使ってサッカーから逃げていた糞野郎だ。

 

夕香は何時だって俺を応援してくれていた。

それなのに俺はそんな夕香の気持ちを踏みにじってしまっていた。

 

そんな俺に、やはりサッカーをやる資格は無いのだろう。」

 

力が抜けつつある豪炎寺の肩に、円堂が手を乗せた。

 

「そんなこと言うなよ豪炎寺…。俺には良くわからないけどさ、豪炎寺が夕香ちゃんの気持ちを踏みにじったって思うんなら俺、豪炎寺はサッカーを続けたほうが良いって思う。

 

それに豪炎寺のあのシュートはサッカーが好きじゃ無きゃ出来ないシュートだ。

 

好きなのにサッカーしないなんて勿体無いし、それに俺、帝国との試合でやっぱり豪炎寺とどうしてもサッカーしたいって思ったんだ。

 

だからサッカーを俺達と一緒にしないか?」

 

「円堂……」

 

「それにさ、さっき比企谷…あ、こいつの事だけどさ、比企谷が言ったように夕香ちゃん、目が覚めた時に豪炎寺が頑張ってるの見たらきっと喜んでくれると思うんだ。

 

俺も母ちゃんや父ちゃん、それに死んだじいちゃんが見ても恥ずかしくないサッカーしたいからさ…」

 

 

豪炎寺は円堂の言葉を聞いた後、静かに目を閉じた。

 

そして、1分程経った後…目を開けた豪炎寺の口が開いた。

 

「円堂、それに比企谷。俺は決めたよ…

サッカー部に入らせてくれ。もう、自分の気持ちを誤魔化さない、夕香の気持ちを踏みにじる真似もしたくない。

 

比企谷の言う通り、俺も格好いい兄貴で居たいからな。」

 

そう言って豪炎寺は爽やかな笑顔を見せたのだった。既に俺より格好いい兄貴に成っているのだが…

 

これがイケメンの力かよチクショウ!

 

 

…だがまあ、これで大幅に戦力アップしたのは間違いないし、何だかんだで豪炎寺は良い奴そうだ。

 

妹思いな所とか妹思いな所とか…後、妹思いなところが。

 

それと雷門の攻撃の手札が充実したのは有難い。

 

これでパターンが広がるな…それにあのファイアトルネードと言う技…どうも応用出来る幅が広そうだ。考え付くだけでも3パターンは応用が考えつく。

 

考えるだけでワクワクしてくるぜ。

 

 

簡単な挨拶と自己紹介を改めて豪炎寺にした後、円堂と豪炎寺と別れた俺は人気の無い空き地で自主錬し、その後帰宅した。

 

そして、翌日……

 

部活の時間になる。

 

部員として加わったのは新たに2名、一人は勿論豪炎寺なのだが…

 

もう一人は音無 春奈と言う元新聞部の1年だった。

 

どうも先日の帝国戦に感動してサッカー部のマネージャーをしてくれるとのこと。

 

しかし、捲し立てるようなしゃべり方のせいで音無と言うより『やかまし』である。

 

「なあ、音無ってより」「これじゃあ やかまし だよ」

 

半田とマックスがそう小声で喋っていた。

 

多分殆どの奴らはそう思ってそうだな…

 

 

新入部員が2名も入った所で生徒会長の……やべ、集会の時、基本寝てるから名前覚えてねぇわ…

 

授業と部活と趣味を充実させようとしたら不必要な所は基本切り捨てるからなぁ…

 

だって八幡だもの(適当)

 

兎に角 生徒会長が現れた

 

どうする?

 

 

「ごきげんようサッカー部の皆さん、先日の帝国学園の試合お疲れ様でした。偶々だとは言え皆さんの健闘は私も評価しています。

 

それを踏まえて、今日は貴方達にいいお話を持ってきたのだけれど、聞きたいかしら?」

 

なんだよこのテンプレお嬢様…ここの生徒会長のだいぶ上から目線で嫌味な奴だな。

 

まあ、ギャルゲーならツンデレで好感度上げる度に可愛くなる系の人だ。まあ、しかし今俺はリアルと言うクソゲーを生きているので、目の前のこのお嬢様は純粋に嫌な奴だな(確信)。

 

それに俺達は間違いなく努力を重ねてあの試合に臨んだ。偶々…そんな言葉で試合になる程帝国は弱くねぇし、俺達の努力もやすくねぇよ。

 

取り敢えず追い返しておくか…

 

「それはそれはワザワザ私達の様な弱小サッカー部の部室に御足労いただき、誠にありがとうございます。しかし生徒会長様も色々御忙しいでしょうし私達も弱小サッカー部ですので日々練習しなければいけません、ですので…いいお話とやらはまた後日と言うことに致しましょう。では、お帰り下さい、生徒会長様。」

 

と、煽るようにそう言っておいた。大抵頭が良く、プライドの高い人間は、自分より明らかに格下な人間の無礼な態度に対して激昂することが非常に多い、

 

「あら?フットボールフロンティア出場に関するお話だったのだけれど……そう言うことなら仕方がn」

 

「申し訳ありませんでしたぁーー!生徒会長様ーー!」(土下座)

 

プライドなんて物はドッグフードに混ぜて犬に食わせてやったぜ……犬なんて飼ってないけどな。

 

それにフットボールフロンティアに出場出来るなら俺の頭なんぞ何度だって下げてやるよ!(迫真)

 

正直周りからの冷たい視線は痛いが、俺が売った喧嘩なので俺が自主回収するのは通りだろ?

 

まあ、喧嘩と言うか俺が勝手に盛大な自爆をしただけなんたけれども……

 

そりゃ周りの目も冷たくなりますわ。

 

「フフッ…全く、大口叩いた割には情けない人ね。本当ならフットボールフロンティアの話は無しにしていたところだけれど…貴方のその情けない姿に免じて許してあげます。

 

さて、長くなりましたが本題です。

 

今回の一件で一時的に貴方達サッカー部の廃部を取り止めとしますが、次の練習試合に負ければ、即刻サッカーは廃部とします。

 

ですが、もし…万が一にも勝利することが出来れば、サッカー部廃部の取り消し及び、フットボールフロンティア出場の申請をします。

 

因みに次の練習試合の相手は尾刈斗中サッカー部です。試合は今日から一週間後よ。

 

しっかりと練習して勝ちなさい。フフッそれでは、ご機嫌よう。」

 

 

こうして、俺のちっぽけなプライドと引き換えに、フットボールフロンティア出場を賭けた試合が決まったのだった。




豪炎寺に辛辣な言葉を言っていますが、僕は豪炎寺アンチと言う訳ではありません。

どちらかと言うと好きなキャラに入ります。

ただヒッキーがシスコンだからあんな風に言っちゃっただけで…

豪炎寺ファンの皆様申し訳御座いません(土下座)OTZ

後、夏未ファンの皆様も悪女みたいに仕上げて申し訳ありません(土下座)OTZ


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こうして、雷門サッカー部は成長する。

生徒会長様が帰った後、俺達は特訓を始める。

 

今日は金曜日なので、必殺技の練習・開発である。

 

当然錘をつけて練習をするのだが、初めての豪炎寺には、最初のアップ中に何とかこの錘の特訓に慣れて貰いたいものである。

 

 

あれから鉄塔広場までの道のり20往復、河川敷付近で短距離走20セット、逆立ち走20セット、腹筋30セットを完了したところで必殺技の練習に取り組む。

 

「ん?」

 

ドリブル練習だろうか、小刻みにジグザグとドリブルをする半田に正面から壁山が止めようとするが、半田に段々と雷の様なエネルギーが溜まっていき、そして、そのエネルギーは壁山へと放出された。

 

 

「ひぇ?アバババババババ!?」

 

壁山はそのエネルギーに感電し、面白いことに成っているが、それよりも半田の必殺技は何か見覚えがあった。確かあれはアルゼンチン代表の……

 

「よっしゃ!新しい必殺技が出来たぜ!その名も半田ライトニングサンダーだぁ!」

 

と、ネーミングセンスの欠片もない技名を堂々と言ったが、

 

「ねぇな」「ないでやんす」「ないね」「ないわ」「ないですよ半田さん」

 

染岡、栗松、マックス、木野、音無の順番に即却下された。まあ、妥当だな。

 

「全く……ダメですねぇ半田くん、いいですか?必殺技と言うのはもっとスマートでインパクトがあり、尚且つ分かりやすく、なんと言ってもカッコ良くなければいけないのですよ。

 

仕方ないのでこの目金がこの必殺技を…」

 

「あー、『ジグザグスパーク』って所だな」

 

「ちょ、ちょっと比企谷くん!?」

 

長々と語っていた目金に割り込む形で思い付いた事を言ってしまった俺……スマンな目金。

 

「けど比企谷、何で俺のあの必殺技を『ジグザグスパーク』って呼んだんだ?」

 

「惚けなくても良いぜ半田、大方アルゼンチン代表のDFが好んで使う『ジグザグフレイム』をパク……参考に作った必殺技だろ?本来ブロック技の『ジグザグフレイム』をドリブル技にアレンジするなんて中々出来ないぜ?凄いぞ半田。」

 

「あ、アル…ゼンチン?俺…アルゼンチンの試合まだ見たこと無いけど…」

 

「……マジで?」

 

と言うことは自力で開発した技が二番煎じみたいになったと言うことか?報われねぇなぁ…半田。

 

何はともあれ半田の新必殺技は『ジグザグスパーク』と言う名前に落ち着いた。

 

「うぅ…ヒドイッスよぉ、半田さぁん……」

 

そして、ぬるっと起き上がり半田の後ろから恨みがましく見つめる壁山…

 

あまりの迫力に「ご、ごめん壁山」と、引き気味に半田は言うも

 

「許さないッスーーぅ」「ギャーーー!?」と、愉快な音声と共に恐怖の鬼ごっこが始まった。

 

俺は半田に合掌した後、思い悩んでいる様子の風丸の元へ向かう。

 

「どうした?風丸」

 

「ああ、比企谷か…、実は最近ドリブルが上達して攻撃にも参加できる様になったんだが…、MFからFWの奴らは全員シュートチェインすることが出来るだろ?

 

俺も参加出来たらもっと役に経つと思うんだ。

 

だが、半田に教えて貰った『浴びせ蹴り』は俺と相性が悪いのかしっくり来ないんだ。もっと使いやすそうな必殺技を知らないか?」

 

なる程な、確かに風丸は留まるより上がっていくタイプのDFだ。守備力も壁山とはまた別のベクトルで高いし、攻撃力の観点からも、風丸のスペックなら得点に十分貢献できるはずだ。

 

それに俺としても風丸の悩みは解決した方が良いだろうと思う。

 

思うに俺達雷門のサッカーは超攻撃的変則型としか良いようの無いスタイルだと思っている。王道の攻撃力も奇襲による攻撃力も高く、決定力には事欠かない…しかし残念ながら守備力はそれほど高いとは言えないのも現状だ。その辺りは何とか出来るように俺も頑張らんとな……

 

さて、風丸の悩みだが……

 

「なあ、風丸…お前自身のスピードを生かしたシュートを生み出したらどうだ?例えば『疾風ダッシュ』を上手くアレンジすればシュートチェインに参加するだけのシュートじゃなく、お前自身が強力な決定力に成りうるシュートになる…と俺は思う。」

 

「俺のスピードを生かした……『疾風ダッシュ』をアレンジしたシュート……か、ありがとう比企谷、何か掴めた気がする。また相談に乗って貰っても良いか?」

 

 

「ああ」

 

迷いは晴れた様だな…後は風丸の頑張り次第だな……

 

 

「比企谷」

 

「…豪炎寺か」

 

いきなり話しかけるなよ心臓に悪いだろうが!いきなりボッチは話しかけられることに慣れてねぇんだよ!俺のノミの如き心臓に負荷が掛かりすぎて突然死したらどうするんだよ!

 

「お前、いつもこんな風にアドバイスとかしているのか?」

 

「ああ、まあな…」

 

あー、そうなんだよなぁ、それこそ最初の1年は皆必殺技を覚えるだけで精一杯感あったしなぁ……

 

それに必殺技を習得するのに俺が尽力しないといけないくらいには弱小サッカー部だったなぁ…

 

うん、八幡ホントに頑張った。

 

「そう言えば豪炎寺、お前『ファイアトルネード』の他に何か必殺技を使えるのか?」

 

ふと気になった事を訊く。

 

「ああ、『ヒートタックル』と言うドリブル技だ。」

 

「見せて貰って良いか?」

 

「ああ、仲間だしな、俺の手の内を知って貰っても損は無いだろう。」

 

「ありがとよ。それじゃあ俺がディフェンスするから豪炎寺はその『ヒートタックル』を使って俺を突破してくれ。」

 

 

俺が構えると、豪炎寺は渦巻く炎を身に纏い俺にタックルをする。

 

俺は豪炎寺がぶつかる瞬間に衝撃を受け流す為に後ろに飛んで衝撃を受け流し、バク転して着地した。

 

「かなり突破力のある必殺技だな。豪炎寺、所でブロック技は無いのか?」

 

「あ…あぁ、残念だがブロック技は使えない。そもそも必殺技とはそう簡単に身に付くものでも無いしな。」

 

確かにそうだろう。

例え使えたとしても練習は必要だし覚えられるかどうかもわかったものでは無い…まあ、俺みたいに必殺技を覚えるコツが分からないとそう思っても仕方がないだろう。

 

「…いや、今の『ヒートタックル』を見て思ったが、豪炎寺、お前にぴったりのブロック技がある。」

 

「何!?その必殺技は一体…」

 

「『ジグザグフレイム』…アルゼンチン代表のDFが好んで使う必殺技だ。そうだな、実際に動画で見て貰った方が早いか、スマン豪炎寺、少し待っててくれ。

 

…………おい、目金、ちょっとパソコンでアルゼンチン代表の試合の動画を出して欲しいんだが…いいか?」

 

俺は染岡達と練習している目金に話し掛ける。

 

「ん?唐突ですね。一体どうしたと言うのですか?」

 

「実は、豪炎寺にブロック技を教えたいんだが、相性が良さそうな必殺技をアルゼンチン代表の選手が使ってんだよ。『ジグザグフレイム』と言うんだが…」

 

「『ジグザグフレイム 』…確か半田君の新しい必殺技と似ていると比企谷君が言っていた…

 

フム、いいでしょう!実は比企谷君が言っていたその『ジグザグフレイム』がどの様な必殺技なのか気になっていたのですよ!」

 

目金の承諾を得た俺は、早速パソコンを持った目金と共に豪炎寺の元へと戻る。

 

「豪炎寺、待たせたな。」

 

「どうぞ豪炎寺君、これが『ジグザグフレイム』ですよ。」

 

「ああ、見させて貰おう。」

 

目金は豪炎寺に動画を見せた。丁度相手チームがアルゼンチンの守備ラインに入った所で、アルゼンチン代表のDFが足に炎を纏い、まるで地面を滑る様にジグザグに走行し、隙をつきボールを奪った。

 

「これが…『ジグザグフレイム』……か」

 

興味深そうに豪炎寺は動画を見返す。

 

「成る程…確かに比企谷君が半田君の必殺技を『ジグザグスパーク』と名付けたのが良くわかります。動作だけを見ればかなり似通っていますね。ですが、完成度は圧倒的にこちらの『ジグザグフレイム』の方が上ですね。

 

何よりあのジェットブーツで走行するような近未来的な動きはロマンを感じます!」

 

どうも目金はあの動きがお気に召したらしい。豪炎寺と一緒に食い入る様に見ていた。

 

 

あれから10分後、俺と豪炎寺は『ジグザグフレイム』の練習に移っていた。

 

先ず、俺は『ジグザグフレイム』の所感を豪炎寺に言うことにした。

 

「俺が見た限り、あの技は『ヒートタックル』と『ファイアトルネード』のノウハウが活かせる技だと思う。

 

何故なら足に炎を纏うと言う流れは『ファイアトルネード』から…相手への突進力は『ヒートタックル』から、それぞれ転用出来るだろうと言う予測ができるからだ。

 

後、注意点として大きな違いが、地面を滑るように移動すること、その過程で恐らくスピードに振り回される様になること……くらいか?

 

まあ、そこは何度も練習して調整していくしかねーな。

 

それじゃ、練習開始だ。俺から『ジグザグフレイム』でボールを取ってみろ。」

 

俺は豪炎寺に向かってそう言うと、豪炎寺は足に炎を纏い、こちらへと踏み出そうとする…も、走って動こうとした為か、バランスを崩し、後ろに重心を傾けたバランスの取り方で辛うじて滑っていた。

 

「豪炎寺!動画を思い出せ!走るんじゃなく滑るんだ!もっと体の重心を前にして思いきった方がコントロール出来る筈だ!」

 

俺のアドバイスで早速フォームを修正した豪炎寺は、直ぐにトップスピードに乗り、左右へとジグザグに滑走し、ドリブルする俺からボールを奪い去った。

 

まさか一発でここまで形に出来るとは…

 

流石木戸川清秀でエースを張っていたことだけはある。

 

 

「比企谷…お前は…

 

いや、何でもない、ありがとう比企谷、見ただけで必殺技を使うことが出来るように成るなんて思っても見なかった。済まないがもう少し練習に付き合ってくれ。」

 

その後、豪炎寺が納得できる形になるまで『ジグザグフレイム』を練習し続けた。

 

しかし、流石豪炎寺と言うべきか、使う度に技のキレが増している。

 

これは次の練習試合で豪炎寺がどこまで活躍するか楽しみになってきたな…

 

 

 

 

そして、練習漬けの毎日であっという間に時間は流れ……試合当日となった。

 

 



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こうして、雷門は成長を実感し圧倒する。

5日程前の事だ。

 

音無が新聞部の伝で入手した尾刈斗中の試合の映像を俺たちは見ていた。

 

 

 

 

あ、ありのまま今起こったことを話すぜ…

 

 

尾刈斗中の3人の選手が奇妙な動きをしていたと思ったら、相手チームが動かなくなった。

 

 

何を言っているのか分からねーだろうが、何をしたのか分からなかった…頭がどうにかなりそうだった…催眠術とかそんなチャチなもの……

 

 

 

 

 

 

 

なんだろうなー(棒)

 

 

先ずは動き……、これに意味はあるだろうが仕掛けのひとつでしか無いだろう。

 

この動きだけで止まってしまっているのだとすればこの映像を見ている俺達も動けないと言うことになる。

 

なら他にどんな仕掛けがあるのか…

 

おそらくはカットされている音声に秘密がある。

 

プレーだけを見るために余計な音声は入って無いのだろうが、音声とこの動きがセットになって初めて発動する類いの催眠術だとすれば、意外と簡単な攻略法をひとつ思い付いた。

 

それにしてもこんな奇抜な必殺タクティクスを使うチームがあるとはな……

 

意外と“日本国内”のサッカーも成長しているのかも知れないな。

 

 

 

そんな事を思いながら、思い付いたままに開発した尾刈斗中の必殺タクティクス対策の必殺タクティクス、その名も『ウォー・クライ』である。

 

 

他の練習の合間を縫っての5日間の急造とは思えないほどの性能を稲妻KFCとの練習試合で発揮したこの必殺タクティクスは、尾刈斗戦以外でも活躍することが出来るだろうと思う。

 

さて、名前からわかる通りこの必殺タクティクスは叫ぶ。もっと言うとこの必殺タクティクスは全員が一斉に気合いを入れて大声で叫ぶだけの必殺タクティクスなのだが、共鳴でも起こしたのか、あまりの音でKFCが耳を塞ぎ動けなくなると言うサッカーにおいてあまりにも大きな効果をもたらしたのだ。

 

ただ、使うタイミングを考えれば、必殺タクティクスを相手が使う時にカウンターとして繰り出す必殺タクティクスとして使う方が良いだろう。

 

相手がチーム一丸となって集中しているところを妨害するように使えば相手チームのメンタルにも大打撃間違いなしだ。

 

 

 

……

 

さて、5日前のことに思いを馳せていたが、今は目の前の試合に集中しないとな。

 

相手チームのどうにも胡散臭い感じの監督の嫌みに少し苛立ったが、それよりも相手の必殺タクティクスだ。

 

何と言う名前かまでは知らんが実際に体感出来る時が来た。

 

発動すれば体が硬直して動けなくなる必殺タクティクス……

 

果して予想通りの仕組みなのか…はたまた準備してきた必殺タクティクスが無駄になる様な仕組みなのか……

 

円堂じゃねぇが少し楽しみになってきたな。

 

因みにフォーメーションはこのようになっている。

 

FW     豪炎寺  染岡

 

MF 少林寺 宍戸 マックス 影野

 

DF 半田  比企谷  壁山  目金

GK        円堂

 

 

控え 風丸 栗松

 

の編成だ。

 

後半から目金と風丸は入れ替える予定となっている。栗松は今回は見学してもらう。

 

相変わらず角馬の実況が冴え渡っているのを確認した所で、俺は試合開始のホイッスルを聞き、臨戦体制に入る。

 

先攻は雷門なので、染岡が豪炎寺に、そして再び染岡にパスを回すワンツーでFW陣を突破した染岡は

 

「『ひとり…ワンツー!』」

 

ひとりワンツーでMF陣をそのまま突破し、DF陣へも一人で突破した。

 

何と言うか、いつものプレーに比べて今日の染岡は周りが見えなくなっている様だ。

 

まあ、大体の予想はついている。

 

試合前、相手チームの監督が雷門そのものよりも豪炎寺に興味があるから試合を組んだと言った感じの嫌みを言っていたからだ。

 

染岡はそれを意識してしまったんだろうな…

 

だからひとりで突っ込んでいく、最近の染岡らしくない

プレーをしているのだろう。

 

が、それでも尾刈斗を突破できているのは、あの帝国よりも尾刈斗の実力が数段劣っているからとしか考えられないな……

 

「雷門のストライカーが豪炎寺だけじゃねぇってことを教えてやるよ!!喰らえ!『ドラゴン…クラッシュ!』」

 

染岡は単独でゴール前まで突破し、伝家の宝刀『ドラゴンクラッシュ』を放った。

 

「『歪む空間』」

 

ホッケーマスクを被ったどこぞの猟奇的殺人鬼の様なゴールキーパーは、円を描くような独特の手の動きを事前に繰り返していた。

 

それが何を意味しているか分からなかったが、染岡の『ドラゴンクラッシュ』の威力が普段より明らかに落ちているのは、いつも練習を見ている俺には直ぐにわかった。

 

恐らくあの動きはシュートする相手の力を抜く催眠術の様なものなのだろう。

 

初見殺しには最適かも知れんが…しかし、如何せんあのジェイソンの相手は悪かったとしか言いようが無いな。

 

 

染岡の『ドラゴンクラッシュ』の威力が下がったと言えども、あの程度のキーパーであれば……

 

 

 

 

「!?」

 

当然受け止め切れずゴールごと叩き込まれた。

 

 

 

 

 

帝国と試合したあの日から、俺たちは常に成長し続けているんだ。

 

正直こんな所で足止めを喰らう暇なんて俺達には無い。

 

それにしても、染岡のシュートの威力に相手チームの他の選手の動揺しているのが手に取るように分かる。どうせ豪炎寺以外は大したことの無い奴等の集まり位にしか考えていなかったのだろう。

 

本当に、侮ってくれるって言うのはありがたいことだ。

 

 

早速一点を入れられた尾刈斗だが……

 

「いやー驚きましたよぉ、まさか豪炎寺君に匹敵するほどのストライカーがいたなんて……

 

調子にのってんじゃねぇぞ!!この糞弱小チームがぁ!テメェ等に本当の恐怖を教えてやるよ!おい!お前らぁ『ゴーストロック』だ!」

 

 

急にマジギレした尾刈斗の監督がそう言うと、尾刈斗のひとつ目目隠しと蝋燭鉢巻と幽霊ごっこが変な儀式の様な動きをすると同時に

 

「マーレマーレマレトマーレマーレマーレマレトマーレマーレマーレマレトマーレ……」

 

と、尾刈斗の監督が呪文のようなものを唱え始める。

 

そして、「『ゴーストロック』!!」とひとつ目目隠しが決めポーズと共に宣言する…と同時に「マーレマーレマレ止まれ!!」と、マジギレ監督が勢いよく呪文を終わらせる。

 

すると、チーム全員の体が硬直して動かなくなったのだ。

 

そして、これで確信を持てた。

 

これは、催眠術とかのちゃちなもんの類いだと言う確信を……

 

まあだが嵌まったときの効果は凄まじく、流石の円堂も体を動けなくさせられてはゴールを守ることは出来ずされるがままとなってしまっていた。

 

 

さて、と…

 

種も仕掛けもわかった所で反撃させて貰おう。

 

俺は拳を天に向かって掲げる。気分は世紀末の覇王の最後を彷彿とさせるが、何もカッコつけているわけでは無い。

 

これは合図だ。

 

奴等の必殺タクティクスを破るための合図をチーム全員に送った。

 

これで予定通り『ウォー・クライ』を使うことが出来そうだ。

 

「マーレマーレマレトマーレ…」

 

そして、性懲りもなく必殺タクティクス『ゴーストロック』を使おうとする尾刈斗に対して……

 

「「「「「必殺タクティクス!『ウォー・クライ』!!ウォオオオオオオオオオオ!!!!」」」」」

 

11人全員で力の限り叫んだ。

 

叫び声は共鳴し、声が声を増幅させて爆音となり、相手チームを襲い耳を塞ぐ以外の方法が無くなり隙を見せる形となった。

 

その隙に豪炎寺が尾刈斗DF陣を突破し……

 

「『ファイアトルネード』」

 

豪炎寺が追加点をあっさりと入手する。

 

尾刈斗選手はおろか、マジギレ監督からも更なる驚愕の表情を雷門イレブンは引き出した。

 

 

相手側としてはかなりキツい状況だろう。

 

サッカーにおける単純な実力はこちらが上、奇策の必殺タクティクスも崩され、後の無い状況。

 

対してこちらは2点の先制点を叩きだし、余力のある状況だ。

 

だからと言って油断はしない。

 

油断をすれば必ず隙が出来る。

 

隙が出来れば必ず敵はそこをついて突破口としてくる。

 

だからこそ、俺たちは何があっても一試合一試合を全力で戦い抜く。

 

 

 

尾刈斗のキックオフ、それと同時に攻めの姿勢を強く出した尾刈斗のFA陣がこちらに突っ込んできたが…

 

「『ジグザグフレイム!』」

 

新必殺『ジグザグフレイム』を習得し、攻防共に隙を減らした豪炎寺によって開幕早々にボールを奪われた。

 

その後、染岡と豪炎寺のツートップで攻め上がる。

 

「豪炎寺!この距離ならいつでも行けるぜ!」

 

「そうか、じゃあ…行くぞ染岡!」

 

染岡の掛け声に豪炎寺は後ろ蹴りで染岡にシュート気味のパスを渡したかと思うと染岡は既に『ドラゴンクラッシュ』の構えに入っていた。

 

『ドラゴン!』

 

染岡は、豪炎寺のパスを『ドラゴンクラッシュ』で前方に打ち返した。

 

だが、シュートは天翔る龍が如くゴールより上へと完全に反れていた……しかし、染岡がそんなミスをするとは考えにくい、だとすればこれは一体?

 

生まれたその疑問は直ぐに解決した。『ジグザグフレイム』の加速を利用して、ボールを追う豪炎寺はボールに向かって炎を纏い回転しながら飛び上がる、と同時にボールに追い付いた。

 

そして、豪炎寺は………

 

『トルネード!』

 

天翔る龍へ、『ファイアトルネード』を放った。龍は炎の竜巻を纏い、蒼から紅へと色を変えてゴールへと牙を剥けた。

 

ジェイソンは必殺技を使う暇すら与えられぬまま、龍はゴールへと突き刺さる。

 

いつの間にか完成させていた染岡と豪炎寺の完璧な連携に敵だけでなく味方である俺も完璧に度肝を抜かれていた。

 

 

その後の展開は一方的なものだった…

 

尾刈斗はFW陣を前半中に抜くことも出来ず、後半残り10分で抜けたとしても、少林に止められ、そのまま『クンフーヘッド』で得点を決めたり、リベロの半田が『ローリングキック』で得点を決めたり、宍戸が『グレネードショット』を決めたり…

 

当然の如く染岡も豪炎寺も競うように点を入れた結果……

 

 

 

35-1

 

圧勝と言う結果に終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 



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こうして、つかの間の安らぎを必殺技で遊ぶ

尾刈斗戦翌日……

 

俺達は部室にて本物の初勝利を祝っていた。

 

「やったでやんす!おいら達勝ったでやんすよ!」

 

「しかも大差でね!俺の『クンフーヘッド』も大活躍だったよ!」

 

「いやいや!俺の『グレネードショット』だって活躍したぞ!」

 

「分かってないッスねぇー、俺の『ザ・ウォール』で尾刈斗をゴールに寄せ付けなかったから勝てたんッスよ」

 

と、1年どもは調子に乗っていやがった。

 

まあ、あれだけの大差で勝てたのだ、無理も無いだろう。

 

だが、弛んでしまうとこれ以上の成長を止めてしまうので少し位なら嫌なことを言っても良いだろう。

 

「なあ、お前ら、確かにあれだけボロ勝ちしたんだ、別に調子に乗っても良いし、喜んで良い。

 

まあ、けど次に尾刈斗と試合したら負けるのは確実に俺らの方だろうな。」

 

 

「ど、どういうことでやんすか?」

 

食いついて来た栗松に俺は再び答える。

 

「ここら辺じゃそれなりに強い尾刈斗が弱小と称される俺達雷門にボロ負けしたんだ。これが帝国なんかの日本一のサッカーチームだったら諦めも着くだろうが、俺達は弱小のレッテルが貼られたチームだ。

 

俺らに出来て尾刈斗の奴等に出来ないことはないと思われても仕方ないよな?だとすれば尾刈斗の奴等は今この瞬間も死ぬ気で練習して力をつけてるだろうな。

 

それはこの前試合した帝国も例外じゃ無いだろう。

 

もうこの前試合した帝国と今の帝国とじゃ実力も雲泥の差だろうな。

 

何せノーマークの弱小に負けたんだ。奴等のプライドがそれを許さない筈だ。

 

だが、俺達はどうだ?練習もせず、先も見据えず喋っていただけだ。その間にも差を縮めるライバルが山ほど居るのにそりゃいつ負けたって可笑しくは無いだろ?むしろ負けて妥当なまである。」

 

 

と、ついつい熱が入りすぎて言い過ぎちゃったZE♪

 

ヤベェ……良い空気を台無しにしちまったぞぉ…余計なこと言わなきゃ良かったわ。

 

「比企谷先輩……ごめんなさいでやんす!オイラ達!調子に乗りすぎてたでやんす!!」

 

「「「ごめんなさい!」」」

 

 

「お、おぅ…」

 

あ、あれぇ?こういう時って大抵……『空気読んでくださいよ』とか『は?ウザいんで黙ってもらっていいですか?』とかそう言う風に言われるとばかり思っていたが…

 

こうも素直に謝られるとなんと言うか拍子抜けと言うか、意外と言うか……

 

「ま、まあアレだ、分かったんなら良いんだ。また明日から頑張ろうぜ、な?」

 

取り敢えず困惑した俺は後輩を宥める事にした。

 

「え?今からキツーイ練習するんじゃ無いんッスか?」

 

壁山……お前が俺のことをどういう目で見てるかよぉく分かった。

 

明日お前の練習量だけ倍にしとくわ。

 

「バッカお前…俺だってたまには練習休んで遊びてぇんだよ…

その口実が今日と言う目出度い日以外に見つからねぇから今日は休みってことに2年生全員で相談して決めといたんだよ。

 

 

つー訳で目金、準備は出来たか?」

 

「成る程…遂に、遂にこの日が来てしまったのですね……

良いでしょう、どちらの必殺技がよりすごいのか…勝負です!比企谷君!」

 

実は最近休日は目金と共に必殺技開発に取り組んでいた。

 

その内容としては想像や妄想を爆発させた必殺技や、漫画やアニメの作品からパク……オマージュした必殺技まで様々だが、特に成功した必殺技は休日になる度に見せあったりしていた。

 

「さて、今回僕が披露するのはシュート技ですが、比企谷君はどの必殺技を披露してくれるのですか?」

 

「ちょうど良い、俺が披露するのはキーパー技だ。」

 

「成る程…ではどちらの必殺技が優れているか…」

 

「あぁ、勝負といこうぜ。」

 

 

俺達はグラウンドへ向かう、当然俺はゴールへ、そして目金はシュートゾーンへ……そして、何故か俺達を見守るチームメイト達…いや、何でいんだよテメェ等。

 

まあ、いいか…

 

「さて、行きますよぉ!!」

 

目金は跳び上がると、ボールの端をおもいっきり踏みつけた。

踏みつけたボールは弾丸の如く横回転し宙へと跳ねる。

 

目金は右足にエネルギーを溜めると、そのエネルギーを溜めた右足の回し蹴りをタイミング良くボールへぶつける。

 

 

「『ブレイクマグナムっ!!』」

 

光の輪を纏った高速ジャイロ回転する弾丸のごときシュートが俺に迫り寄ってきた。

 

 

「…闘志よ!!今こそ燃え上がれ!!

 

俺のこの手が深紅に燃えるぅ!!勝利を掴めと雄叫び唸るぅぅ!!」

 

そう言いながら背中に六つの刺のついた輪をエネルギーで作り、それを媒介に足りないエネルギーを空気中から吸い取り、右手を深紅に染め上げ、紅いゴッドハンドを作り出す。

 

 

「『(しゃぁぁく)!熱!ゴォォッド!ハンドぉぉ!!』」

 

貫通力のある目金のシュートを炎を纏う紅いゴッドハンドで受け止めるが、勢いは衰えることなくシュートは突き進む。

 

しかし、俺はその状態でもシュートを受け止めつつ持ち上げ、

そして…

 

「「ヒィィィト!エンド!!!」」

 

と、目金と共に叫び右の拳を握りしめる、と同時に紅いゴッドハンドも拳を作るとボールと共に爆発する。そしてボールは先程までの勢いを完全に失い、俺の左手に吸い込まれるかのように収まる。

 

 

「「やっぱりスパロボって…」」

 

「最高だな!」「最高ですね!」

 

そして、俺と目金は固い握手を交わした。

 

 

「な、なんだよ!!比企谷!!今の必殺技っ!!あんなゴッドハンド見たこと無いぞ!!俺にも教えてくれよ!!」

 

直後、やけに輝いた目で俺を見つめ肩をがっちりと掴まれた。だが言わせてもらおうか!

 

「分かった、分かったから落ち着けそして肩を放せ、ぶっ壊れるだろサッカー馬鹿。」

 

「お、おぅ…悪いな比企谷ついテンション上がってさ、アハハハ」

 

マジゴリラかよこのサッカー馬鹿、しかもこのサッカー馬鹿笑って誤魔化そうとしてやがるぞ…!この野郎…マジで肩壊したら俺の絶対許さないリストの上位に入れてやる……覚えとけよ!?

 

「おっ?やってるな円堂」

 

「こんにちはー円堂君、サッカー部の皆、凄かったねさっきの」

 

そんなことを考えていた時、やって来たのは去年クラスメイトだった東と大谷だった。

 

 

 

東 京(あずま きょう)…去年一緒のクラスだった奴で、背はそこそこ高く、顔は良くも悪くも平凡、髪型はこだわっていないのか寝癖が目立つ、そんな男子生徒なのだが、なんと我らがキャプテン円堂の幼なじみなのだ。その縁もあってか一年の頃はサッカーの練習の数会わせに風丸と共に参加することが多かった。まあ、円堂に押しきられる形ではあったが…

 

因みに円堂と風丸も幼なじみらしく、当然東と風丸も幼なじみな為か結構仲が良かったりする。そんな場面に遭遇した奴らが以外そうに東と風丸を見ているのを何度か見たことがある。

 

 

大谷(おおたに) つくし…こいつとも去年一緒のクラスだった。木野と友達らしく、たまにサッカー部に来ては応援してくれたり、木野の仕事を手伝ったりしていた。

そう言えば俺のベストプレイスの近くで休んでいるとき、東と一緒にいるところを良く見かけるが……

 

つまりそう言うことなのだろう。

 

爆発しろ。

 

 

「東!大谷!だろ!!さっきの『ゴッドハンド』凄かったよなぁ!!

 

ってそうだよ比企谷!さっきのスゲェ『ゴッドハンド』おしえてくれよ!!」

 

い、言えない……

スーパーロボット大決戦…略してスパロボの新作買った勢いとテンションで作った必殺技だなんて絶対に言えない…

 

「良いけど、溜めが長いから使うタイミングは間違えるなよ?」

 

結局…、大谷や東、木野が応援し見守る中、休息日となる筈が必殺技の練習日と化してしまい、日が暮れるまで新たな必殺技を求めて全員練習するのだった……

 

 

録り貯めてたプリキュアはいつになったら見れるんですかねぇ(泣)

 



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