新たな世紀王になってしまった俺が神喰いの世界を駆ける (カオスロイドR)
しおりを挟む

1話

深夜テンションに身を任せて書いた基本続くか分からない1話が始まるよ。


「どうしてこんな事になったんだろう・・・・」

 

荒れ果て窓のガラスも割れて野ざらしになった廃墟のビルの一室で男が独り焚き火を起こして暖をとっていた。

 

ただこの男見た目が普通ではなかった。

 

全身が黒い筋肉でおおわれて、目が赤く複眼になっており手首と足首には二本の黄色の帯状のラインと間に赤いラインが巻かれており、最も特徴的なのは腰に赤い宝石が埋め込まれた大きな銀のベルトが巻かれている。

 

「さすがにこの姿じゃ人のいる所には出られないな。現に挨拶したらみんな逃げるしアラガミと勘違いされてゴッドイーターに追い掛け回されたからな・・・・」

 

「ここに来てだいたい半年か・・・長いようで短いような」

 

柱に顔を向けると柱には正の文字が書かれていた。

 

これは俺が太陽が昇る日の出の時に拾った釘で柱に一本の傷を付けていったものだ。

 

正の文字が六個と傷が一本溜まるとそれを丸で囲む。

 

今はそれが六個溜まった。

 

つまり六カ月分半年と言う訳だ。

 

半年前の俺はどこにでもいるただの高校生だった。

 

ある日、学校が休みで家で留守番をしながらゲームをしていたら突如轟音が鳴り響き俺の家に大きな隕石が落ちてきて俺は家ごと隕石に潰されて命を落とした。

 

その後気がつくと俺は申し訳なさそうに俺をチラチラと見る白髭のおじいさんと若いきれいな女性の前に立っていた。

 

おじいさんの方は神様で若い女性は奥さんだそうだ。

 

なんで神様が目の前にいるかと尋ねたらなんでも俺の家に落ちてきた隕石の正体はこの二人が夫婦げんかして怒った奥さんが神様めがけて投げた茶碗でそれが外れて下界の俺の家に落ちたそうだ。

 

茶碗を投げるっていつの時代の夫婦げんかやねん・・・

 

ケンカの原因は二人の間に子ができなくその事でお姑さんにねちねち攻められて旦那が護ってくれなくついに奥さんの怒りが爆発したのが原因らしい。

 

家庭の事情に俺を巻き込まないでください。

 

お詫びとして俺を養子にして次代の神候補の一人にすると言ってきた。

 

嫌です、めんどくさいので生き返らせてくださいとお願いしたがすでに俺の肉体はミンチより酷い状態で生き返らせることはできないと言われた。

 

ナンテコッタイ・・・

 

ショックで思わず下を向くと腰に何か巻かれていた。

 

なんかすごい見た事あるんだけど。

 

これってあれだよね仮面ライダーBLACKのベルトだよね。

 

なんで外れないの?

 

おもちゃじゃないのこれ?

 

え?実在してたの?てっきりお話の中だけかと思ってた。

 

おのれゴルゴム!ゆ゛る゛さ゛ん゛!!

 

神様曰くなんでも神候補になる為には用意された世界に送り込んでそこで天寿を全うするという試練との事だ。

 

ただその世界は余りにも過酷な為に神様が救済処置として俺に与えたそうな。

 

父さん母さん、あなたの息子は神様に改造人間にされました。

 

悲しんでも仕方ない。

 

とりあえずどこの世界に送り込まれるか聞いておくか。

 

まあ俺の体内にはキングストーンがあるし大抵の世界なら生きて天寿をまっとうできるだろうな。

 

・・・・そう思っていた時期が俺にもありました。

 

俺が送り込まれる世界。

 

それはGOD EATERの世界でした。

 

待たんかい!ゴルァ!

 

なんでよりによってあんなアラガミが暴れまわる世紀末ヒャッハーな世界に送り込まれなあかんねん!

 

せめてもっと平和な世界に送れ!

 

色々あるだろ学園ものとか日常ものとかさ。

 

「もう決まった事だ、諦めろ」

 

「ふざけんな!」

 

俺は両手を拳にして仮面ライダーBLACKの変身ポーズをとる。

 

「変・・・身!」

 

右腕をまっすぐ横に伸ばすとベルトのバックルからまぶし過ぎるくらいの光が溢れ出した。

 

ドクンッ…

 

体が熱い…なんだこれ…

 

い、痛い!痛い!痛い!

 

よく見れば体の至る所から大量の汗と関節から蒸気が吹き出し筋肉が盛り上がり骨が軋む。

 

身体が変化する成長痛のような痛みに耐えながら皮膚が緑色に変化してバッタ男の姿になり強化皮膚【リプラスフォーム】が全身を覆い黒い太陽【仮面ライダーBLACK】に変身を果たした。

 

「変身できたか、つまりキングストーンはお前と完全に適合したという事だ」

 

勝手な事ばかり言いやがって。

 

嬉しそうに笑う諸悪の根源に俺の中でなにかが切れた。

 

とりあえず一発殴る。じゃないと気が済まん。

 

「トォ!」

 

ジャンプしてパンチを繰り出そうとする。

 

「愚かな、神に逆らうとは!カアァァァ!!」

 

「うわああぁぁ!」

 

しかし神が手をこっちに向けて念力で吹き飛ばされた。

 

大神官ダロムかこいつは!

 

「夫になにするのよ!」

 

さらに奥さんの目が光ビームが飛んできた。

 

「痛っ!熱っ!!」

 

この攻撃は…

 

目からビームって奥さんはビシュムかよ!

 

その後何度倒されて立ち上がり立ち向かったが返り討ちにされ、やがて力尽き負けてしまい気絶した俺は穴に落とされて無理やりGOD EATERの世界に送還されてしまった。

 

変身したばかりの今の俺の実力じゃ奴らには勝てないのか…。

 

なら向こうで強くなってやる

 

天寿を全うして再び戻れたら覚えてろよ。

 

薄れゆく意識の中。

 

俺は自分をこんな目に合わせた連中に復讐を誓ったのだった。

 

そして俺は荒野のど真ん中で目を覚ます。

 

ここがGOD EATERの世界か…

 

あるのは岩や砂ばかり。

 

木も鳥も動物もいない。

 

なんにもないな。

 

こんな寂しい世界でこれから五万年間の間、生きていかないといけないのか。

 

取り忘れたのかせめてもの情けなのかキングストーンは没収されずに体内に残っている。

 

よかったこれがなかったら生きていけない所だった。

 

ただ困ったことが一つある。

 

それは元の人間の姿に戻れない事だ。

 

どんなにやっても元の姿に戻れない。

 

つまりこれから先このままというわけだ。

 

向こうの腹いせなのか原因は分からない。

 

ただ分かるのはいきなり人生の難易度が上がった。

 

これじゃあ人前に出れない。

 

いくら正義のヒーロー仮面ライダーの姿でもこの世界じゃ知られていないからバッタの怪物もしくは新種の人型アラガミと思われる。

 

もしかしたら大丈夫かなと思って試しに人前に出たら悲鳴を上げられて通報を受けたゴッドイーターに追いかけられて散々な目にあった。

 

こうして俺は人前に出られなくなり、オウガテイルなどのアラガミに襲われたけど仮面ライダーの力でそれを退けて彷徨っていたら廃墟と化したビルを見つけてそこに人知れず隠れ住んで今に至る。

 

 

「はあ・・・寂しいよ帰りたいよ」

 

体育座りして落ち込んでいたら背中を軽く突かれる。

 

コツン

 

振り返ると緑色の車体と俺と同じ赤い複眼の目をしたバッタをモチーフにしたようなバイク。

 

「俺を慰めてくれるのか?バトルホッパー」

 

俺の背中にあった正体は生きているバイク『バトルホッパー』の前輪。

 

そうだよって答えるかのように目が点滅するバトルホッパー

 

「ありがとうバトルホッパー、そうだよな俺は独りじゃない。おまえがいるんだよな」

 

立ち上がってバトルホッパーの頭を撫でる。

 

バトルホッパーは俺と同じように神に送還されたようでこの世界に送られて気を失ってた俺が目を開けた時に傍に立っていた。

 

バトルホッパーがいなかったら俺は気を失ったままアラガミに喰われていただろうな。

 

「そうだなお腹減ってるから気が滅入るんだ。なにか食べ物を探しに行こうか」

 

立ち上がり体に付いた砂を払っていると

 

「誰か助けて!!!」

 

女の子の叫び声が聞こえてきた。

 

「今の悲鳴は!」

 

慌てて外を見るとこの時代では珍しい裕福そうな服装をした女の子が一匹のオウガテイルに追われていた。

 

いけない!急いで助けないと

 

ビルから飛び出そうとするとバトルホッパーの前輪に足を取られて転ばされる。

 

「なにをするバトルホッパー!急がないとあの子が!!」

 

ファン!ファン!

 

何かを訴えかけるように左右に首を振り警告音を出す。

 

どうしたんだ一体?

 

あ・・・ふと自分の姿を確認する。

 

そうだ今の姿は人間じゃないんだ。

 

この姿を見られたら怖がられて石をぶつけられる。

 

はじめて人前に出たあの時の様に・・・・

 

もしここに住んでる事がばれたらゴッドイーターがここに来て追われる。

 

前に追われた時はバトルホッパーがいてくれたから逃げられたけど今度もうまくいくとは限らない。

 

捕まったら解剖されて人体実験の材料にされるかも・・・

 

でも一緒に逃げてくれたバトルホッパーには悪いけど目の前で助け呼ぶ女の子を見捨てる事なんてできない。

 

ここに住んでるのがバレたらまたどこかに引っ越して逃げればいいだけだ。

 

俺の意志が固いと分かるとバトルホッパーは道を開けて乗れと言ってるように目が点滅する。

 

「ありがとうバトルホッパー」

 

俺はバトルホッパーに乗るとフルスロットルで走り出しビルから飛び出すと急いで襲われている女の子の方に向かったのだった。

 

                                       つづく

 

 




キングストーン
王の証みたいな石でゴルゴムはこれを狙っていた。
別名チートの塊

ダロムとビシュム(あとここには書いていないけどバラオム)
仮面ライダーBLACKに出てくるゴルゴムという敵組織の幹部
別名 余計な事して不利になると怪人に押し付けて逃げる上司。

バトルホッパー
生きていて自己修復機能を兼ね備えた呼べば来てくれる世紀王専用マシン
別名 相棒兼嫁


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

2話

できちゃったから始まります。


「ハァハァハァ・・・た、助けて・・・・」

 

私、エリナ・デア=フォーゲルヴァイデはオウガテイルと呼ばれるアラガミに追われていた。

 

アラガミ、当然この世界に現れた様々な姿をした異形の怪物。

 

鉄でも生き物もなんでも捕食して人さえも襲う怪物だ。

 

そしてそれを狩るのがゴッドイーターと呼ばれる人たち。

 

でもゴッドイーターじゃない私達はアラガミに太刀打ちできなくあまりのも無力だ。

 

「行き止まり!?もうだめ・・・」

 

壁に追い込まれて私がもう逃げられないと理解したのかアラガミはよだれを垂らしながらゆっくりと近づいてくる。

 

私のお兄ちゃんはゴッドイーターをやっていたけどある日突然いなくなった。

 

みんなお兄ちゃんは死んだっていってるけどそんなことない!

 

お兄ちゃんはきっと生きてる。

 

きっと怪我して動けなくなっているんだ。

 

早く見つけてあげないと。

 

私はお兄ちゃんが最後に任務で出かけたという場所を調べて見つからないようにこっそり抜け出して来たけどアラガミに見つかり襲われた。

 

「助けて・・・お兄ちゃん!!!」

 

アラガミの牙が私に届こうとした瞬間

 

横から来たバイクの前輪がアラガミの頭に叩きつけられてアラガミが跳ね飛ばされた。

 

「君!大丈夫か?」

 

バイクに乗っていたどうみても人間じゃない黒い人が私に声をかける。

 

え?ええ?なにこれ目の前に黒い怪物が?もしかしてアラガミ?でも人の言葉を喋っているけど。

 

「さあ早く!早く逃げて!」

 

「は、はい」

 

なにがなんだか分からないけど私は急いで物陰に隠れた。

 

 

 

 

 

「オウガテイルが一匹、まだこの近くに生き残りがいたなんて」

 

なるべく平穏に暮らしたいからこの周辺のアラガミは再生できないようにコアを破壊したり匿名で近くのゴッドイーターがいるフェンリルに送りつけたりして粗方始末したと思ったのに。

 

群れで行動するオウガテイル一匹なんて群れからはぐれたのが迷い込んできたのか?

 

どっちでもいい。

 

降りかかる火の粉なら倒するだけだ。

 

突進してくるオウガテイル。

 

俺はバトルホッパーを操りながら突進を躱してすれ違う度に蹴ったり殴ったりする。

 

本来アラガミを構成するオラクル細胞には普通の攻撃じゃ傷一つ付けられないがこの姿なら攻撃は通り傷をつけることができる。

 

もしかしてこれもキングストーンの力なのかな。

 

この半年間オウガテイルの群れやザイゴートの群れに追われながら戦って戦い抜いて今日まで生き残ってきたんだ。

 

オウガテイル一匹なら俺とバトルホッパーでなんとかなる。

 

「ライダーチョップ!」

 

突進や尻尾から放たれる針を掻い潜り攻撃をし続ける

 

やがて疲れたのかオウガテイルの動きが鈍くなる。

 

今がチャンスだ。

 

バトルホッパーを止めて降りると腰に巻いたベルトに両手の握りこぶしを当てると体内のキングストーンが活性化してベルトの中央が輝き出し体に力があふれてくる。

 

「トアァ!」

 

両腕を曲げ構えたあとジャンプした。

 

「ライダーパァァンチ!!」

 

右手を拳にして突き出した紅い拳がオウガテイルに当たり煙を出しながら転がる。

 

「ライダーキィィック!!」

 

さらに再びジャンプして右足を前に出し赤い蹴りがオウガテイルに直撃して転びながらコアごと爆発四散した。

 

勝った・・・

 

俺は着地して中腰からゆっくり立ち上がり物陰に隠れている女の子の方を見る。

 

俺と目があった女の子はビクっと小さな体が反応する。

 

・・・そうだよね。この姿はアラガミと同じ怪物だ。

 

「怖かったよね、ごめんすぐ離れるから、このあたりにはもうアラガミはいないけど危ないからすぐ家に帰った方がいいよ」

 

「・・・・ま、まってよ!」

 

俺はバトルホッパーに跨り発進しようしたら声をかけられた。

 

「た、た、助けてくれて・・・あ、あ、ありがとう!」

 

女の子は足が震えながらもはっきりとお礼の言葉を言ってくれた。

 

 

 

「私はエリナ・デア=フォーゲルヴァイデ、エリナでいいわ」

 

「僕はBLACK、仮面ライダーBLACKだ」

 

オウガテイルを倒したあと、倒れているビルの柱に横に並んで座り自己紹介をしていた。

 

なんだろこの女の子と黒いバッタ男が並んで座るシュールな光景。

 

「BLACK・・・さん?」

 

BLACKさんって世紀王の正式名称であるブラックサンを思い出すな。

 

まあいいいけど。

 

エリナちゃんは自分の事や家の事を話してくれた。

 

エリナちゃんは生まれつき体が弱く故郷の欧州の空気が合わず、遠く離れたこの極東に引っ越しをして静養していたそうだ。

 

そして俺もこれまであったアラガミとの戦いやここに流れ着くまでの旅での出来事など色々な話をした。

 

さすがに神様に改造人間にされてこの世界に送り込まれた事は言わずある日起きたらこの身体になって家から追い出されたと誤魔化しておいたけど。

 

「ふう~んアンタも大変だったのね」

 

打ち解けてくれたのエリナちゃんの言葉遣いがフランクなものになっている。

 

まあ気にしないからいいけどね。

 

「あのエリナちゃん、その・・・僕の事怖くないの?」

 

「う~んそりゃ最初見た時は怖かったけど私を助けてくれたし話してみたら意外と普通で私を食べるって訳でもないし今はそんなに怖くないよ」

 

「・・・そうかよかった」

 

そう言ってもらえると嬉しいな。

 

ここに来るまであまりいいことなかったから

 

「ところでエリナちゃん、なんでこんな危ない所に一人でいるの?」

 

そう聞いたらエリナちゃんの表情が曇る。

 

もしかして俺、聞いてはいけない地雷を踏んだ?

 

「私、お兄ちゃんを探しに来たんだ」

 

「うん、エリックは私のお兄ちゃんでゴッドイーターなんだ」

 

ゴッドイーターなのか、あんまりゴッドイーターにいい思い出ないんだよね。

 

「エリックは華麗でとってもカッコよくていつも私に優しくしてくれて遊んでくれたし新しい洋服を買ってもらう約束をしてくれたの」

 

楽しそうに話すエリナちゃん。

 

本当にお兄ちゃんが好きなんだな。

 

「・・・・でもエリックが会ってくれない」

 

さっきまで楽しそうに話していたエリナちゃんが寂しそうにつぶやく。

 

「・・・みんながエリックが死んだなんて嘘を言うの、お父さんもいつも悲しそうで・・・」

 

それって・・・。

 

獰猛なアラガミを相手にするゴッドイーターは危険な職業だ。

 

いくらアラガミに対抗できる神機をもつゴッドイーターでも命を落とす事がある。

 

もしかしてエリックも・・・

 

「・・・・本当は分かってた・・・もうお兄ちゃんは生きていないって」

 

「エリナちゃん・・・」

 

エリナちゃんは現実を受け入れようとしていたんだ。

 

でも受け入れたら大好きなエリックが亡くなった事を認めてしまう事になる。

 

それが辛くてできなかったんだ。

 

僕は自分の胸に引き寄せた。

 

「BLACKさん?」

 

「泣きたいんでしょ?思いっきり。泣いたらいいよ。ここなら僕以外誰もいなし僕は人に会う事から絶対に喋らないよ」

 

「で、でも私が泣いたらエリックやお父さんが心配する・・・」

 

「僕はエリックさんに会った事ないけどエリナちゃんの話を聞いていたらエリックさんも大好きでエリナちゃんが辛そうだったらエリックさんも辛いと思う。だったらここで思いっきり泣いてエリックさんやお父さんにとびっきりの笑顔を見せてあげた方がいいよ」

 

「エリック・・・エリック・・・わああああ!!」

 

気の利いた言葉が思い付かなかった僕はエリナちゃんが泣き止むまでぎゅっと抱きしめて頭を撫で続けた。

 

願わくは少しで早くエリナちゃんが立ち直ってくれる事を神様なんかじゃなくてエリナちゃん自身の心に祈りながら・・・・

                                       つづく

 

 

 




続くかどうかは分からない。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

3話

続いちゃったよ第3話


エリナちゃんが落ち着くまで待って家に送り届ける為に僕はバトルホッパーの後ろにエリナちゃんを乗せてフェンリル極東支部通称『アナグラ』の近くまでまで来ていた。

 

「じゃあエリナちゃん。申し訳ないけどこれ以上アナグラに近づくと見つかりそうだから僕はこの辺で失礼するよ」

 

幸いこの辺りはアナグラの近くだからアラガミの気配はない。

 

これならエリナちゃん一人でも大丈夫だ。

 

「うん、ありがとうBLACKさん、バトルホッパー」

 

バトルホッパーから降ろしてたエリナちゃんがバトルホッパーを撫でる。

 

そういえばバトルホッパーを紹介して乗せてあげた時、バトルホッパーが生きていると知って驚いてたな。

 

エリナちゃんが泣いたあの後、泣いてすっきりしたエリナちゃんが笑顔を見せてくれた。

 

うん可愛かったけど僕は□リコンやないで。

 

「BLACKさんも一緒に来ればいいのに・・・」

 

「いや僕はダメだよ。こんな姿だからね」

 

ほんと人の姿に戻れたら僕もアナグラに行けたんだろうな・・・。

 

「でもBLACKさんは悪い人じゃないし人間も食べないんでしょ?」

 

「そうだけどそれでもダメなんだ。誤解させてアナグラ全体を混乱させるわけにはいかないからね」

 

「でもあんな寂しい所に一人で何て・・・」

 

「・・・その気持ちだけで十分だよ。ありがとね」

 

そう言ってエリナちゃんの頭を優しく撫でる。

 

「うう・・・子ども扱いしないでよ」

 

そう言ってるけど気持ちよさそうに目を細めてるエリナちゃん。

 

本当にいい子だな。

 

「あと僕の事は秘密にしてもらえないな、それと危ないからもうあそこには来ちゃダメだよ」

 

「・・・うん分かってる、だれにもBLACKさんの事は言わないしもう行かない」

 

「ありがとう、元気でねエリナちゃん」

 

「こっちこそ助けてくれてありがとう、またねBLACKさん!」

 

手を振ったあとエリナちゃんは家に帰って行った。

 

またね・・・か、もう会う事はないだろうけど久しぶりに人と話せて僕も楽しかったよ。

 

エリナちゃんの背を見送り見えなくなると俺はバトルホッパーに乗り隠れ家に帰るのだった。

 

だがこの時の僕は知る由もなかった。

 

もう二度と会う事はないと思っていたエリナちゃんに近いうちにまた再会する事になるとは・・・。

 

 

 

 

BLACKとエリナが別れたその頃。

 

ここはフェンリル極東支部にある支部長室。

 

そこに四人の人物が集まっていた。

 

「君達に来てもらったのは他でもない。この半年間の間に鉄塔の森から周囲約二㎞のアラガミが減少している現象が起きている」

 

椅子に座っているのは白いコートを羽織った男性。

 

名前はヨハネス・フォン・シックザール

 

フェンリル極東支部の支部長だ。

 

「あまり考えたくないがもしかするとアラガミ同士が捕食しあっている事態が起きているかもしれない。そうなればかつてないほどの恐ろしいアラガミが誕生してしまうかもしれないのだ」

 

「アラガミを捕食って共食いですよね、そんなことありえるんですか?」

 

モデルを思わせるようなスタイルと大胆な服装をしている女性が質問する。

 

女性の名はを橘サクヤ。

 

この極東支部のゴッドイーターの一人だ。

 

アラガミはその特性上捕食したものの性質を受け継ぐ性質がある。

 

例えば戦車などの兵器を捕食してキャタピラのような足とミサイルを放つアラガミ『クアドリガ』がいい例だ。

 

「ない…とは言い切れないよ、残念ながら我々はアラガミに関してすべて分かっている訳ではないからね」」

 

女性の質問に隣に立つ眼鏡を掛けた男がお手上げといった表情の男性が答える。

 

眼鏡を掛けた男性の名はペイラー・榊。

 

アラガミ技術開発統括責任者だ。

 

「半年前に匿名でアラガミのコアが送られてくる事件があったのを覚えているだろうか?」

 

「ああそんな事もあったっけ、誰か知らねえが変わった奴もいるなと思ったが…まさか?」

 

ヨハネスの問いに煙草の匂いのする背中にフェンリルの紋章が刺繍されたコートを着て前髪で片目が隠れた男が答える。

 

彼の名は雨宮リンドウ

 

第一部隊隊長でこの極東支部最強のゴッドイーターだ。

 

「そう、正確にはこの半年で送られてきたコアの数は全部で72体。調べた結果それがすべて鉄塔の森で生息していたアラガミだったと分かったんだ」

 

ヨハネスの言葉に榊が付け足す。

 

「この二つの事態に関連性がないと言い切れん。だがどちらも半年前から鉄塔の森で起きており偶然とは思えない」

 

「そしてアラガミを殺せるのはゴッドイーターの神機しかいない・・・がゴッドイーターならコアを神機で捕食すればいい。しかしそれをせずに我々に提供するのは神機以外でアラガミを殺している事になるね」

 

オラクル細胞を持つアラガミは通常では傷つける事さえできず神機でしか殺せない。

 

「そんな、ありえない・・・」

 

これまで当たり前だったその常識が覆される事実に驚くサクヤ。

 

リンドウも平然を装っているが内心驚いている。

 

「そこで第一部隊は鉄塔の森に赴き何者が潜伏しているかを調べて捕獲、場合によっては抹殺も許可する」

 

「僕もヨハンと同意見の結論に至った。ただ僕としてはぜひ捕獲を推奨したいね神機以外でアラガミを倒せる力とコアを提供してくれた知性の持ち主、実に興味深い」

 

嬉しそうにそして楽しそうな榊。

 

「りょ~かい。ちょくら行って調べてきます」

 

リンドウはそう言うとさっさと退室していった。

 

「リンドウ!まったく…では第一部隊はこれから鉄塔の森に赴き調査を開始します」

 

「ああ、よろしく頼む」

 

慌ててサクヤがリンドウについて行った。

 

「じゃあ僕も研究があるんで失礼するよ」

 

榊も部屋から出て行った。

 

残されたのはヨハネス支部長だだひとり。

 

「神機以外でアラガミを殺せる者…か、もしかするとそれが私の探している“特異点”なのだろうか…」

 

誰にも聞かれることなくそう呟くのだった。

 

 

 

場所は変わってアナグラの廊下。

 

リンドウとサクヤが会話をしながら歩いていた。

 

「それでリンドウどうするの?」

 

「ん~とりあえず会ってみない事には分からねえな、俺としては話が通じて素直に捕獲されてくれるなら楽でありがてえんだけど」

 

頭をかきながらそう答えるリンドウ。

 

「はあ、まったく貴方って人は…」

 

呆れてため息を吐くサクヤ。

 

扉が開くと大広間のような広い部屋にいてそこには受付をする女性や品物を売っている男性、そして腕輪を装着しているたくさんのゴッドイーターが集まっていた。

 

ここはアラガミの中にあるエントランス。

 

アナグラの中で一番人が集まる場所だ。

 

すれ違う人と軽く挨拶しながらリンドウとサクヤが一組の席に向かう。

 

そこには高校生くらいの二人の男性と女性が雑談をし、一人の男性が壁を背に腕を組んでいた。

 

「おう、お前ら支部長直々の任務が来たぞ準備しろ」

 

「し、支部長直々って!いきなりなんすか!」

 

「コウタうるさいよ、けど支部長から直々って穏やかじゃないですね」

 

黄色の帽子とノースリーブの青年が驚きのあまり立ち上がり茶髪のサイドポニーの女性が青年を窘める。

 

青年の名は藤木コウタ

 

女性の名は神咲ユウカ

 

二人共つい最近入隊したばかりの新人のゴッドイーターだ。

 

「つっても調査だからな、まあ場合によっては戦うかもしれねえが」

 

「・・・相手は?」

 

「アナグラにわざわざアラガミのコア72個を送りつけてきた奇特な奴」

 

「分かった・・・」

 

フードを被った褐色の青年が壁から離れて準備を始める。

 

褐色の青年の名はソーマ・シックザール。

 

リンドウやサクヤと同じ第一部隊所属のゴッドイーターだ。

 

「うし、準備できしだい第一部隊出撃するぞ!」

 

「「はい!」」

 

「・・・大変だ、急いでBLACKさんに知らせないと!」

 

慌ただしいアナグラで出撃準備する第一部隊の話を聞いてしまった小さな人影がアナグラを飛び出した事に誰も気づいていなかった。

 

神喰い(ゴッドイーター)神候補(ブラックサン)が出会うまで残り2時間。

 

                                       つづく

 

 




次回 VS第一部隊。

72の数字は適当に選んだだけであって特に意味もないし悪意もない。

神咲ユウカ
GOD EATER1の本来の主人公。


文章作りの勉強不足の為、表現力が下手ながらも読みやすいようにと心掛けていますがいかがでしょうか?
意見や感想お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

4話

今更ながらこの注意事項をあらすじ部分に載せたのでよかったらそちらも見てください。
それでは4話はじまるよ。


「どうやらあの建物が奴の根城みたいだな」

 

雨宮リンドウ率いる第一部隊は鉄塔の森に到着していた。

 

「でもアラガミが火を使うかしら?まさか食べ物を焼いて食べてるんじゃあるまいし」

 

サクヤが覗く双眼鏡の先には煙が上がるのが見えていた。

 

「どうだっていい、行けば分かる事だ」

 

神機を肩に担いだソーマが煙が出ている建物を睨んでいる。

 

「でも本当にアラガミなんでしょうか?人が住んでいるだけなのでは?」

 

そう尋ねるのは新人の神崎ユウカ。

 

「いや、いくらなんでもこんな所に人が住んでるわけないでしょ」

 

藤木コウタが呆れながら否定する。

 

「まあアラガミだろうと人間でだろうと誰かいるのは確かなんだ。どちらにせよほっとくわけにはいかん、いっちょ乗り込んで確かめてみるとするか」

 

「「「了解」」」

 

ビルに入っている第一部隊。

 

中は薄暗く昼間でも日の光は入ってこず薄暗い廊下が続いていた。

 

先頭を歩くのはリンドウ。

 

「ちょっとコウタ押さないでよ!男なら前を歩きなさい!」

 

「お、俺こういう雰囲気って苦手なんだよ」

 

次にユウカが歩き後ろをふるえながらついてくるコウタ。

 

「静かにしろ、見てみ」

 

リンドウが親指で窓を差し示し合図を送る。

 

二人が窓を覗くと焚き火に当たる人の背のようなものが見えた。

 

「いくぞ3・・・2・・・1・・・GO!」

 

「動くなゴッドイーターだ。手を上げてゆっくりこっちを向け」

 

リンドウが警告するが人影は動かない。

 

「おい何とか言えよ」

 

「コウタ罠かもしれん、不要に近づくな」

 

リンドウが止めようとしたがコウタが神機で人影を突くとドサっと崩れ落ちた。

 

「なんだよこれ、ボロ布をかぶせた泥の塊じゃん!」

 

「もしかして囮!?」

 

コウタとユウカが驚きの声を上げると同時に外でバイクのエンジン音が響いた。

 

 

 

ふっはっはっは!残念だったなゴッドイーターの諸君。君たちの行動はこの『センシティブイヤー』でまるとはっきりお見通しだったのだよ。

 

ビルの裏口からこっそり抜け出してバトルホッパーに乗り込んでいた。

 

嫌な予感がしてセンシティブイヤーで周辺の音を拾ったらこっちに俺を捕まえに来る男女のゴッドイーターの会話が聞こえて急いでダミーを作って置いて正解だったぜ。

 

それにしてもなんでここがバレたんだろ?

 

もしかしてエリナちゃんが・・・。

 

いや違うな、あの子はそんな子じゃない!

 

きっと他の何かが原因だ。

 

俺は最低な考えを振り払いバトルホッパー走らせていると。

 

バトルホッパーの右側面を何かが当たり爆発した。

 

「うおおお!」

 

爆発の衝撃でバトルホッパーは横にふっ飛ばされ乗っていた俺は放り出されてしまった。

 

「いたた・・・一体何が?」

 

まさかビルに入ったゴッドイーターのほかにも仲間がいたのか。

 

「逃がしはしないわよ」

 

何かが飛んできた方を見るときれいお姉さんが煙の立つ神機の銃口をこちらに向けていた。

 

ってか今の神機から放たれた砲弾かよ。

 

そうだ、バトルホッパーは無事か?

 

バトルホッパーは着弾した右側面から白い煙を出していて目が点滅していた。

 

「バトルホッパー!?」

 

駆け寄るとしたその瞬間。

 

「なっ!」

 

嫌な予感を感じてすぐその場から前転して移動するとさっきまで立ってた場所にお姉さんとは別のフードを被った青年が持ったサバイバルナイフの刃のような神機を叩きつけて地面が衝撃でえぐられる。

 

なんて威力だ・・・まともに当たってたら潰されてた。

 

「チィ・・・」

 

フードの青年が神機を刃先をこちらに向けて睨みつけてくる。

 

「変な仮面を被ってるみたいだがお前アラガミか?」

 

「違う、僕はアラガミじゃない」

 

「・・・マーナガルム計画って知っているか?」

 

「いや知らないけど、何のこと?」

 

「そうか・・・知らねえならそれでいい」

 

神機の刃を物凄い速度で横薙ぎに振るう。

 

うあっと斬撃が一段と鋭くなった。

 

あれでまだ手加減していたのか。

 

ゴッドイーターはやっぱり敵にまわすと恐ろしい存在だな。

 

気を引き締め直さないと。

 

「どうやらリンドウさんの二重作戦うまくいったみたいですね」

 

フードの青年と戦っていると先ほどビルに入った女の子の声が聞こえてきた。

 

これだけはっきり聞こえるって事は外に出てきたか。

 

「ああ、どうやら奴はコンゴウと同じで耳がすごくいいようだからな、でなければたった一人で周辺のアラガミを駆逐なんてできやしねえ。だから本当の作戦は筆談で知らせて俺たち突入組とサクヤとソーマの外組に別れて正解だったぜ」

 

「すげえさすがリンドウさん、」

 

「褒めても何も出ねぞコウタ、それより急いでソーマ達の加勢に向かうぞ」

 

「「はい!」」

 

「でもなんでソーマとサクヤさんの二人なんだ?俺も外組ならよかったんじゃ?そしたら怖い思いせずに済んだのに」

 

「アンタじゃ静かになんかできなくて作戦がバレるからに決まってるでしょ」

 

「ひ、ひでえ俺だって作戦中ぐらい静かにできるよ!」

 

「おしゃべりしてないで早くサクヤたちと合流するぞ」

 

「あ、はい」

 

リンドウっていったか、油断できない相手だ。

 

仲間と合流して俺の包囲網ができてゆっくり近づいてきて距離を縮めてくる。

 

そしてついに壁際に追い込まれて包囲されてしまった。

 

「・・・僕に何の用だ?フェンリルにゴッドイーターを送られるような恨みを買った覚えはまったくなんだけど?」

 

「しゃ、喋った!?」

 

「う、うそ・・・」

 

黄色の服と茶髪のゴッドイーターの二人は人間の姿じゃない俺が人語を使った事に驚愕の表情にある。

 

フードとお姉さんとリンドウって人は冷静だ。

 

仮面ライダーを知らなければこの姿じゃそう思われても仕方ないか。

 

「なあにフェンリルにコアをプレゼントしてくれたお礼を言いたくてな、ちょっと俺らと一緒にアナグラの方までおとなしく来てくれないか?」

 

はっきり分かる。

 

このリンドウって人って一番強い、俺じゃ勝てない。

 

ふざけた口調で言ってるが要は俺を連行しに来たわけね。

 

マズッったな途中からコアを破壊するのが面倒になったからアナグラに送ってたのに・・・最初から全部壊せばよかった。

 

「断ったら?」

 

「多少強引なエスコートになっちまうかな」

 

リンドウから殺気放たれ。

 

ですよね、仕方ないこうなったら。

 

腰に手を当てる。

 

警戒するゴッドイーター達。

 

「キングストーン!フラッシュ!!」

 

「くっ!しまっ!」

 

「目が痛くて前が見えない!」

 

ベルトから太陽の輝きのような強烈な光が放たれ、まともに光を浴びてしまったゴッドイーターは目を眩ませた。

 

キングストーンフラッシュ。

 

エネルギーの結晶体であるキングストーンのエネルギーを一度に放出する技だ。

 

この技は今回使った目くらましだけでなく透明になった敵ををあぶり出したり、また常識では考えられないような現象を引き起こしたりできるとっておきの技のひとつだ。

 

悪いねフェンリルに捕まってモルモットにされたくなんだ。

 

神機なしでアラガミに対抗できる俺の力はフェンリルにとったら喉から手が出るほど欲しいだろうし。

 

それにこの力の源であるキングストーンが奪われたら俺の命がないから身を守る為に奪われるわけにはいかない。

 

その目も時間が経てば後遺症もなく回復するよ。

 

「くそうまだ死にたくない!どこだ!どこだ!?」

 

目が見えなくなり襲われる恐怖に駆られた黄色のゴッドイーターが見えない中、神機を撃ちまくる。

 

「やめろコウタ、味方に当たる」

 

リーダー格の男が怒鳴るが聞こえていないようで撃ち続ける。

 

よし今のうちに逃げよう。

 

そう思ったその時。

 

「BLACKさ~ん」

 

まさかこの声!?

 

危ないからもうここに来たらダメだと言っておいたのに・・・どうしてここに!

 

声がする方を見るとこっちに駆け寄ってくるエリナちゃん。

 

「そこか!」

 

黄色のゴッドイーターが音を頼りに銃口を向ける。

 

射線上にはエリナちゃんがいてこのまま避けたら当たる。

 

マズイ、目つぶしのキングストーンフラッシュがアダになってしまった。

 

あいつ、パニックで俺とエリナちゃんの声が聞き分けられないのか。

 

「やめろコウタ撃つな!」

 

「くらえ!怪物!」

 

いち早く目が回復したリーダ格の男が射線状のエリナちゃんの存在に気づいて叫ぶが無情にも黄色のゴッドイーターの神機から砲弾は放たれた。

 

「え・・・?」

 

驚いて立ち止まってしまうエリナちゃん。

 

このままじゃ砲弾が当たってエリナちゃんが死んでしまう。

 

・・・死なせるものか!!

 

そう思ったら俺の体は即座に動いた。

 

「トウァ!」

 

空中で大きく前転しながら跳びエリナちゃんの前に立つ。

 

両手を広げてエリナちゃんを庇う為に盾となり放たれた砲弾はよりによって急所のキングストーンがあるベルトに直撃して砲弾が爆発する。

 

「ぐうっうあああ!!!」

 

「BLACKさん!」

 

右膝を突き、背中か仰向けに倒れこんでしまいエリナが泣きながらBLACKに駆け寄る。

 

「あいつ、子供を庇った・・・?」

 

「BLACKさん!BLACKさん!」

 

驚くリンドウの声と泣いているエリナちゃんの声がする。

 

弱ったな、泣かせるつもりなんてなかったのに。

 

「ああ…エ、エリナちゃんが・・・大丈夫?怪我はない?」

 

涙を拭おうと手を上げてエリナちゃんの頬を優しくなでる。

 

「大丈夫だよ、庇ってくれから・・・ごめんなさい・・・ごめんなさいBLACKさん・・・死なないで死なないで!」

 

「よか…った・・・」

 

「BLACKさん?ねえ起きて?BLACKさん!BLACKさん!!」

 

エリナちゃんの頬を撫でてた手が力なく地面に落ち最後に泣きながら必死で僕の名を呼び続けるエリナちゃん顔を最後に痛みで意識を失ってしまった。

 

                                       つづく




センシティブイヤー

500m先の小さな声さえも聞き取ることができる。
BLACKはこの能力を使いながらバトルホッパーに乗って巡回し周辺のアラガミを退治していた。
しかし今回はその能力が逆に仇となってしまう。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

5話

仕事しながら話を考えたら最初から色々とおかしい5話始まるよ。


「う~ん・・・・・・ジョォォー!!」

 

ハァハァハァ・・・な、なんだ夢か。

 

変な夢見たな。

 

内容はもう覚えていないけど。

 

懐かしいようなそうでないような。

 

まだ疲れてて寝ぼけているのか?

 

でもそろそろ起きないと・・・あれ、起きれない?

 

「・・・ってなんじゃこりゃああ!!」

 

なんでベットに寝かされて鎖で縛りつけられてるんだよ。

 

動けないので首だけ何とか動かして左右を見ると体育館のような広さの手術室みたいな部屋。

 

まだ夢の中なのかこれ?早く起きないと。

 

「お目覚めかね?その鎖は対アラガミ防壁と同じ素材の特別製だ。たとえ君がアラガミでも切る事はできない」

 

ジタバタ暴れていたらスピーカーから夢の中で会った男と同じ声が部屋全体に反響する。

 

・・・なんかこの声を聞いてると昔の戦友と一緒に戦った日々を思い出しそうになる。

 

そんな思い出なんかないのに。

 

落ち着け、えっと寝る前は確か・・・そうだゴッドイーターが来て。

 

それから戦って、そんでもってエリナちゃんに砲弾が・・・そうだ!?

 

「おい!エリナちゃんは?気絶した僕の近くに女の子がいただろう、あの子は無事なのか?」

 

「まさか報告書に書いてた通り人の言葉が使えるとは・・・だがまだ自分の立場を理解していないようだな。質問をしているのはこちらの方だ君に質問する権利はない」

 

「うっせえ!教えねえとおでこにフォークを刺すぞ!こら!!」

 

くそ、エリナちゃんがどうなったかを知るまでは何があっても絶対に話せねえぞ。

 

「あの子は無事だよ、今我々フェンリルが保護して事情を聞いている。もちろん危害なんて一切加えてないし君が盾になったおかげでかすり傷一つしていない、だから安心してほしいな仮面ライダーBLACKさん」

 

ギャーギャー文句を言っていると足元から声がして頭を下に向けるとメガネの男がニコニコしてこっちを見ていた。

 

「榊博士、何度も言うようだが公私の区別はつけてもらいたいと言ってるのだが」

 

スピーカーから呆れたような男の声がする。

 

このメガネのおっさん、榊っていうのか。

 

「いいじゃないかヨハン、このまま続けても押し問答が続いて時間の無駄だよ。それに彼を強引に連れてきたのは我々の非礼だ。ならまずこちらが折れて誠意を示さないとね」

 

うんこっちのスピーカーから流れる声のヨハンって奴よりこっちのメガネの榊っておっさんの方が紳士的だな。

 

ただ手に持っているメスさえなければだけど。

 

メガネが照明の光で反射して怖えよ。

 

まあそれよりエリナちゃんが無事で本当によかった。

 

「君は優しいねあの子が無事と知ると殺気が消えた。今自分が置かれている状況よりも庇った女の子の心配をするなんて」

 

「そんなんじゃないですよ、あの子は僕を心配して来てくれた。だから僕もあの子を心配して何も問題ないでしょ?」

 

「うん、まったくもって君が言ってる事は正論だね」

 

「榊博士、そろそろこちらが話をしたいのだが」

 

痺れを切らしたかのようにスピーカーの声が割って入ってきた。

 

榊って人と違ってこっちは空気の読めねえおっさんだな。

 

「おっとそろそろヨハンが本気で怒りそうだ。そうそう君の名前を我々が知ったのはあの子が言っていたからだよBLACKさんを返せってね、あの子は話と勝手に抜け出したお説教が終わったら親元に帰すから安心していいよ、あとこのメスは君の皮膚が固くて役に立たなさそうだ」

 

メスををケースにしまいニコニコと笑いながら榊は部屋から出て行った。

 

「さて話は脱線してしまったが元に戻して続けようか仮面ライダーBLCAK、君の本名となぜ君がそんな姿をしているか答えてもらえるかね?」

 

どうしてそんな姿をしているのかと聞かれてもな。

 

まさか神様に改造人間にされてこうなりました。

 

なんて言っても信じてもらえないだろうし、本名は・・・あれ?俺の本名なんだっけ?

 

思い出せない、どうしてだ?

 

とりあえずヨハンという男には朝起きたらこの姿になっていたと誤魔化し、本名は覚えていないと話した。

 

それを聞いてしばらく無言だったが『まだ聞きたい事はあるが後日にしよう』と言い、部屋の照明を消され真っ暗になった。

 

おいせめて鎖ぐらい解いてから灯りを消せよ。

 

まあ部屋を真っ暗にして精神的に追い詰めるつもりだろうけどこの姿の目は闇の中でも昼間の様に見えるから問題ないんだけどね。

 

この鎖もパワーストライプスを使って力を入れたら引き千切れそうだ。

 

でも捕まってピンチには変わりない。どうするべきか・・・。

 

そういえば砲弾をまともに当たったバトルホッパーは大丈夫なのかな?

 

俺と同じようにアナグラのどこかに閉じ込められているのか。

 

それともあのまま放置されているのか。

 

もしそうならアラガミに食べられていなければいいけど・・・

 

あ、やば・・・眠く・・・なってきた・・・まだキングストーンのダメージが回復して・・・いないのかな。

 

とりあえず・・・誰か来たら・・・すぐに起きれる・・・ようにしな・・・と・・・。

 

睡魔に負けて俺の意識は失って眠ってしまう。

 

 

 

 

その頃サクヤの砲撃を受けたバトルホッパーはアラガミに捕食されないようにと第一部隊の手により回収されアナグラにある整備室に運び込まれて調査をされていた。

 

「う~ん全然わからないや、分解しようにもネジ一本見つからないし、デザインも独特でこんなバイク初めて見たよ」

 

スパナを持ちながらバトルホッパーを色々な角度から見て悩んでいるの神機整備担当の楠リッカ。

 

頭にゴーグル頬にオイルが擦れた跡とタンクトップにオーバーオールを着たユウカやコウタと同じくらいの女性だ。

 

「とりあえず保留かな。気になるけど先に今日使った神機のメンテナンスを済ませないと」

 

リッカは持っていたスパナを片付け、灯りを落とし扉を閉めて神機が保管されてある別の整備室に向かって行った。

 

しばらくしてだれもいなくなリ真っ暗になった整備室でバトルホッパーの目が赤く光る。

 

バトルホッパーは生体マシン。

 

生きているのである。

 

ネジなどあろう筈がない。

 

少々の傷なら自ら修復することができる。

 

そして今!静かに息をひそめ!受けた傷を再生させながら仮面ライダー救出の機会を伺っていた。

 

                                       つづく

 




パワーストライプス

ライダーの首筋、手首や足首にある赤いと黄色い線にはキングストーンのエネルギーを蓄えており、いざという時にはここからエネルギーを放出して身体能力を一時的に高めることができる。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

6話

祝!!お気に入り50件とUA2500突破に感謝を込めて6話始まります。


次の日、アナグラの会議室に極東支部の幹部クラスヨハネス支部長、サカキ博士、リンドウ、そして一人の女性が集められていた。

 

内容は突如現れたイレギュラー『仮面ライダーBLACK』の今後の処遇について。

 

意見は即処刑すべきと開放すべきで割れている。

 

会議は荒れに荒れていた。

 

「アラガミを素手で駆逐するあの力がいつ我々に向けられるか分からない。そうなる前に処刑すべきだ!」

 

処刑を進言しているのは女性。

 

彼女の名は雨宮ツバキ。

 

第一部隊雨宮リンドウの姉で元神機使い。

 

今は引退し極東支部で指揮と統括をしながら神機使いの教官として後輩ゴッドイーター達を厳しく鍛えている。

 

「ちょっと待ってくれ!」

 

「なにかな?リンドウ君」

 

ヨハネス支部長がリンドウに尋ねる。

 

「恥をさらすようで情けねえが俺達が視界を潰されたあの状況であいつは逃げられたのに子供の盾になって砲弾から庇ったんだ。つまりあいつには人間の心があるって事だろ。そんな奴が人を襲うなんて俺には思えねえ」

 

「奴の力がいつ我々に向けられるか分からん、危険因子は早急に排除すべきだ」

 

「アイツはそんな奴じゃねえ!アイツが子供を庇う所を俺も見たし報告書にも書いてあるだろう」

 

「演技かもしれんだろう」

 

「演技?何の為だ?ここ(アナグラ)に潜入する為か?だったら捕まるリスクを背負うより忍び込んだ方がまだ生き残れる可能性がある。一緒にいた女の子の証言で人は食わないと言っていたし証言にあったオウガテイルと今回の件であいつが人間に友好的なのは確定的だろ、だったら早く解放してやるべきだ!」

 

机を叩き立ち上がりながら説得するリンドウ。

 

「私情を捨てろリンドウ!これは極東支部全体にかかわる問題なのだぞ、私情で極東支部全体を危険に晒すつもりか!」

 

アラガミと戦う神機使いは体内にオラクル細胞で普通の人間より力は強い。

 

しかしそれでも素手でアラガミを倒すことはできない。

 

もしアラガミと戦ってる時にBLACKが乱入して神機使い達を襲撃してきたら・・・。

 

そう考えると解放して放置などしておくわけにはいかなかった。

 

「私情じゃねえ!姿形は俺達と違うが人の心をまだ保っている。いつからフェンリルは人殺しの集団になったんだ」

 

「なんだと!!」

 

怒鳴りながら立ち上がるツバキ。

 

「二人とも落ち着きなさい。まず彼がアラガミかそうでないか報告を聞いてそれから考えよう」

 

白熱する姉弟の間にヨハネス支部長が割って入りリンドウとツバキも落ち着きを取り戻し席に着く。

 

「では榊博士、彼について何か分かった事は?」

 

「結論から言わせてもらえれば彼はアラガミじゃないよ」

 

ヨハネスが視線を榊に向けると榊がメガネを指で軽く上げる。

 

「ふむ、その根拠は?」

 

「彼が気絶している間にくまなく調べてみたが彼のどこにもオラクル細胞はない、そしてアラガミ指数もまったくのゼロを計器が示している。導き出されたこれらの答えから彼がアラガミでないとしているという事になるね」

 

「アラガミでないのならあの異形な姿はなんなのですか?」

 

もっともな疑問にツバキが訪ねる。

 

「それについても答えは出ている、それがこれさ」

 

榊が封筒から何かを取り出し机の上に広げた。

 

「それは?」

 

「彼の身体をX線で撮影してたレントゲン写真だ。ほら彼の腹部をみてごらん」

 

サカキが指さす先には白く丸い影が写っていた。

 

「この丸い石のような影から出ている触手が彼の神経すべてに結合している。あの姿はこれが原因だろうね」

 

「では外科手術でこの影を取り除けば彼は元に戻ると?」

 

「可能性はあるねヨハンだがおすすめはできない。なぜならこの影と彼の神経は完全に結合してしまっている。この石を彼の身体から取り除いたら彼は間違いなく死ぬね」

 

サカキ博士の報告を聞き会場が静まりかえる。

 

アラガミでなく人間。

 

その事実に会議室は先ほどと打って変わって静まり返る。

 

「これで分かったろう、やっぱりあいつはアラガミじゃねえ」

 

「だがそれでも奴が危険な存在であることには変わりない」

 

BLACKがアラガミでないと知り喜ぶリンドウ。

 

しかしまだ納得していないツバキの一言で打ち消される。

 

ツバキは公私の区別がつき自分にも他人にも厳しい厳格な性格で訓練の厳しさから陰で鬼教官など呼ばれ恐れられている。

 

がしかしそれは教え子の命を誰よりも案じており、その厳しい態度もアラガミとの戦いに送り出した教え子達が少しでも生き残る確率を上げる為の思いがあった。

 

「・・・ちっ分からず屋が」

 

姉の思いも言ってる危険性も頭では理解できる。

 

しかしそれでも感情では割り切れずリンドウは苛立った表情で立ちあがり頭をかきむしりながら扉に向かって行く。

 

「待てどこへ行く!」

 

「頭を冷やして一服してくる!」

 

「おい待て!?全くあいつは・・・」

 

「まあいいじゃないか少し白熱しすぎた。ここらで我々も休憩を挟もう」

 

「・・・申し訳ありません」

 

「構わないよこの問題はデリケートな問題だからね」

 

榊とヨハネス支部長にツバキは謝罪し会議は一時休憩となった。

 

 

 

「おう、なにやってんだ?」

 

煙草を吸おうとエントランスに向かうリンドウは廊下を歩いていると部屋の前でソワソワしているユウカとサクヤを見つけて声をかける。

 

「ここは・・・コウタの部屋か」

 

『藤木コウタ』と書かれた部屋の主を知らせるネームプレートを見て事情を察した。

 

コウタはあの後、目が回復して自分があやうく子供を撃とうとしてた事を知りショックを受け部屋に引きこもっていた。

 

「さっきから声をかけているんだけど返事もないし中に入ろうにも鍵が掛かっていて」

 

辛そうに話すサクヤ。

 

「ちょっとコウタ返事くらいしなさいコウタ!」

 

ドンドンとユウカが扉を叩くが返事が返ってこない。

 

「はあ仕方ねえ先にこっちの問題から片付けるか」

 

リンドウが一息吐きユウカに『退いてろ』と声をかけると。

 

ドゴッ!!

 

無言でドアを蹴破った

 

「「・・・」」

 

突然のリンドウの行動に思考が追いつかず呆然とする女性陣。

 

「ノックはしたし入るぞ」

 

「・・・いやいや!ノックてレベルじゃないでしょ!・・・ってそうじゃなくて何やってるんですかリンドウさん!」

 

立ち直り部屋に入って行こうとするリンドウを止めようとするユウカの肩をサクヤが掴む。

 

「ここはリンドウに任せましょう」

 

「サクヤさん・・・分かりました」

 

コウタの部屋の中でユウカはサクヤと一緒に部屋から離れていった。

 

凄まじい音がして何事かと他のゴッドイーター達が集まってきたが何でもないと説明する破目になる事を二人は知らない。

 

リンドウが部屋に入り暗闇の中でベットに座りうなだれているコウタを見つける。

 

ドアを蹴破った時の音にも微動だにしていない。

 

落ち込むコウタをリンドウが見つめる。

 

無言でコウタの横に座るリンドウ。

 

「・・・・怒らないんですか?」

 

「パニっくるのは新人にはよくあるこった、むしろ止められなかったリーダーの俺が悪い」

 

「・・・俺、母さんと妹の為に神機使いになったのにあいつが庇わなかったらあと少しで妹と同じくらいの女の子をこの手で・・・」

 

後悔に振るえて泣くコウタ。

 

今回のコウタの行動は報告書にも書かれてツバキからも厳重注意を受けていた。

 

「・・・今回はたまたま運がよかった。だが次があるとは限らねえ反省して次に生かせ、いいな」

 

コウタの頭を手に置き軽く左右に揺らすとリンドウは部屋から出て物陰から見ているユウカを見て去って行った。

 

 

 

「さて待たしてすまなかったね、君の処遇が決まったよ」

 

数日後、起こされたベットに鎖で縛られた僕の前に立つのはヨハネス支部長、サカキ博士、初めて見る見た事ない女性、そして最後にリンドウさんだ。

 

「まずは紹介しておこう彼女は雨宮ツバキ。この極東支部で指揮を統括しながら教官をしてもらっている」

 

ヨハネスの隣にいた女性が一歩前に出る。

 

「雨宮ツバキだ」

 

「はじめして仮面ライダーBLACKです」

 

このツバキって人やけに敵意むき出しに睨んでくるな。

 

これは最悪な方向に転んだか?

 

処刑すると言ったらパワースライブで鎖を断ち切って大暴れした後、脱走してやる。

 

こっちだって死にたくないから大人しく殺されるわけにはいかないんだ。

 

俺は次にヨハネスから出る言葉を待っていつでも動けるように準備した。

 

「仮面ライダーBLACK、我々フェンリル極東支部の仲間になってもらえないだろうか?」

 

・・・え?

 

処刑でも解放でもなく仲間になれ?

 

最初この男が何を言ってるのかよく分からなかった。

 

 

                                       つづく

 




作者は別にツバキさんが嫌いと言う訳ではありません。
現実主義のツバキさんなら教え子達の為に人間ではない仮面ライダーBLACKという謎の不安要素はできるだけなくしたいと思い、こういう態度をとるのではないかと思って書いてるだけです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

7話

なんてことだ…作者の暴走は止まらない加速する。
そんな7話始まるよ。


ヨハネス・フォン・シックザールのフェンリル極東支の加入の誘いから数日後。

 

僕は考えて考えて考え抜いた結果、この話を受けることにした。

 

なれないサバイバル生活と孤独感で心が荒みかけていた僕にとってこの話が出た時は渡りに船だった。

 

でもかといってフェンリルそのものを全面的に信用したわけじゃない。

 

まず条件として僕の存在を本部に報告しないと約束させたらを以外にもヨハネス支部長と榊博士はあっさり承諾した。

 

何か二人には思惑があるのか?

 

まあいいそれならこちらにとって好都合だ。

 

そして僕を使った命懸けな人体実験などを参加させない事。

 

特に体内のキングストーンを奪われたら命に関わる。

 

そして雨風を防ぐ部屋と神機使いと同じ金額の給料を要求し通した。

 

強硬手段に出て来たらさすがに敵対する覚悟あるがここで誘いを断ったらアラガミだけでなくフェンリルまで敵に回す事となる。

 

後ろ盾もないこの荒れ果てた世界でライダーの姿のままでは人間社会にも溶け込めない。

 

その上アラガミだけでなくフェンリルまで敵になったら生きていくのは難しい。

 

さすがにそれだけはできるだけ避けなければ・・・。

 

この勧誘の裏にはアラガミに対して少しでも戦力が欲しいフェンリルの・・・いやヨハネス支部長の思惑がある事を榊博士から聞かされた。

 

僕の力がいつ極東支部(自分達)に向けれるか分からない。

 

僕の抹殺を推進するリンドウさんのお姉さん率いる処刑派と僕を信じて釈放を望むリンドウさん率いる解放派の議論は平行線で真っ向対立。

 

極東支部で神機使い達に影響のある二人がこのまま仲たがいしてしまえば極東支部は二つに割れる。

 

そこで妥協案として僕の首に爆弾付きの白いチョーカーを付けてフェンリルと敵対したら僕を爆弾で始末する案が実行された。

 

スイッチを持つのはヨハネス支部長と榊博士の二人。

 

リンドウさんのお姉さんもスイッチを持つ事を要求したそうだがヨハネス支部長から処刑派だった君に安易に使われたら困るとのことで却下され悔しい思いをしたらしい。

 

話を聞かされずいぶんと身勝手な理由だと思った。

 

怖いのは分かるけど僕はフェンリルに敵対する気は一切なかったのに。

 

だがこちらにとってもメリットがないわけじゃない。

 

まだライダーの技と力をまだすべてを引き出せていない今の僕はゴルゴムと戦った仮面ライダーBLACKに比べたらはっきりいって弱い。

 

今の僕の強さは大人の熊とほぼ同じくらいの大きさでそれ以上のオウガテイルやサイゴートのような小型アラガミとようやく互角といった所だ。

 

だがこの世界には小型アラガミより大きく強い中型や大型、さらには堕天種や接触禁忌種、最も恐ろしい指定接触禁忌といった凶暴で強いアラガミがウジャウジャいる。

 

そんなアラガミと対峙した時、僕は確実に捕食対象になってしまうのは間違いない。

 

だがアラガミ退治専門のフェンリルに入れば独学では限界だったアラガミに対する知識も増え、格闘経験もない素人の僕でも専門の特訓で戦い方や体の動かし方を学べば今よりさらに強くなれると判断したからだ。

 

かつて甲羅の硬いカニ怪人にライダーパンチを破られ特訓した強化ライダーパンチで甲羅を破りカニ怪人を倒した本物の仮面ライダーBLACKのように。

 

フェンリルが僕を利用してアラガミを狩ろうというなら僕の方もフェンリルの組織力を利用してやる。

 

アラガミはもちろんだが僕には目標があるので弱いままで簡単に死ぬわけにはいかない。

 

強くなって天寿を全うした時、目の前に現れるであろう僕を改造人間に変えたあの神共をぶん殴るという目標が!

 

 

 

次の日、僕は第一部隊と顔合わせの為に榊博士の研究室に来ていた。

 

「で、これがそのチョーカーですか?」

 

榊博士から説明を聞かされた僕は白い革製の留め具が狼の牙の形になっているチョーカーをベタベタ触る。

 

素材がいいのか付けている違和感もない。

 

「おっとあまり触らない方がいい、無理に外そうとしても爆発する仕組みだからね」

 

「げっ!?」

 

相変わらず微笑んでいる榊博士のとんでもない言葉を聞き慌ててチョーカーから手を離す。

 

第一部隊メンバーの同い年くらいの男女二人が慌てて僕から離れてた。

 

リンドウさんとお姉さんとフードの人、爆発して巻き込まれるかもしれないのに動じてない。

 

これが修羅場を潜り抜けたベテランの神機使いなのか。

 

「すまねえな、姉上を説得できなくそんな物騒なモンを首に巻く破目になって」

 

リンドウさんが申し訳なさそうに頭をかく。

 

「そんなリンドウさんが頭を下げないで下さいよ、このままだと極東支部は俺の所為で崩壊してたし、それに俺がこんな姿でしかも素手でアラガミを引き裂く力まで持ってます。怖がって警戒するのは当たり前ですよ」

 

「しかしよ・・・」

 

まだ申し訳なさそうなリンドウさん。

 

いい人だな。

 

「それに屋根と壁があって食べ物も出して貰えるんです。あそこ(鉄塔の森)で生活してた頃に比べたら天国ですよ」

 

「おまえ・・・ああ分かった、これからもよろしくなダチ公」

 

そう言って俺の胸を叩くリンドウさん

 

ちょっと痛い。

 

「私は橘サクヤ。これからよろしくねライダー君」

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

「俺は藤木コウタ・・・あの時あんたの事を撃ってごめん、そしてあの女の子を助けてくれてありがとう」

 

あの時?…ああ、砲弾を撃った奴か。

 

「僕が助ける為にやったことだから気にしなくていい、それより謝るならエリナちゃんに謝ってくれ」

 

「エリナちゃん・・・ああ、あの子にはきっちり謝って許してもらったよ」

 

許してもらったか・・・

 

あんな怖い思いしてエリナちゃんは簡単に許したのか分からないけど後は当人同士の問題だから僕がこれ以上踏み込んで出しゃばる訳にはいかないな。

 

「・・・そうか分かった、よろしくコウタさん」

 

「コウタでいいよあとで一緒にバガラリー見ようぜ」

 

右手を出して握手を求める。コウタもその手を取って握手をする。

 

「コウタ、どさくさに紛れてアンタの趣味に無理やり巻き込まない、私は神咲ユウカよろしくねライダー」

 

「ソーマだ・・・ようこそクソッタレな職場に」

 

笑顔のユウカさんとぶっきらぼうなソーマさんの紹介が終わり、第一部隊との顔合わせが終わった。

 

「あと、はいこれ」

 

「これって腕輪?」

 

榊博士が机の引き出しから赤い腕輪を取り出して僕に渡す。

 

確か神機使いの人はみんな付けてたな。

 

「榊博士、まさかそれは?」

 

どうしたの?サクヤさん、この腕輪になにか?

 

「おっと誤解しないでほしい、その腕輪は本物じゃなくて本来の機能をオミットしてビーコンと通信機だけ内臓した模造品なんだ。少なくとも知らない人が君の力を見てもその腕輪を見たら神機使いと錯覚して無用な誤解が減ると思うよ」

 

ん?『だけ』って事は他の神機使いの腕輪にはなにか別の機能があるのか?

 

「あとこれは僕からの入隊祝いだよ」

 

僕の疑問を遮るように榊博士が箱から折りたたまれた黒色の革ジャケットと赤いマフラー、黒の革ズボンを取り出した。

 

「君がフェンリルに少しでも早く馴染めるようにサイズに合わせて用意したんだ。よかったら着てみてくれないかな」

 

榊博士、そこまで考えてくれたんだ。

 

なら断る理由なんてないじゃないか。

 

「ありがとうございます」

 

僕はズボンを穿き、背中にフェンリルの紋章が入ったジャケットに袖を通しベルトは外に出したいので前は閉めず、赤いマフラーを手に取って見てみる。

 

赤いマフラーか。

 

そういえば最初の仮面ライダーである仮面ライダー1号も首に赤いマフラーを巻いていたな。

 

あまり信じている方じゃないけどなんだか運命的なものを感じる。

 

「どうかしたのかい?マフラーはチョーカーを隠せたらいいと思って用意したがもしかして気に入らなかったかい?」

 

いつまでもマフラーを付けず手に取ってじっと見て動かない僕に榊博士が声をかけてきた。

 

「あ、いえそんなんじゃないです。ちょっと赤いマフラーには思い入れみたいのがあっただけですからあんま気にしないでください。」

 

爆弾チョーカーが隠れるようにマフラーを巻いてそして最後に貰った飾りの腕輪を左手首に付ける。

 

右側だとライダーパンチした時に壊しそうだから左側に付けるか。

 

左手首に付けて眺めて見る。

 

意外と軽いな。

 

これなら戦ってる時に邪魔にならないですみそうだ…。

 

「どう・・・でしょうか?」

 

両手を広げながら恐る恐る聞いてみる。

 

似合ってないって言われて笑われたらどうしよう。

 

「おう、バッチリだぜ」

 

「よく似合ってるわよ」

 

「カッコいいぜ」

 

「ええ、とっても」

 

よかったリンドウさんとサクヤさん、コウタとユウカが褒めてくれた。

 

なんか久しぶりに人の温かさに触れて泣きそう。

 

「そうそう、その服はアラガミ繊維でできているからちょっとやそっとのアラガミの攻撃じゃまず破れないから思いっきり動いても大丈夫だよ」

 

「ええ!い、いいんですかアラガミ素材って結構貴重なものなんじゃ?」

 

あ、ユウカさんとコウタが驚いてる。

 

って事はやっぱ貴重なもんなんだ・・・。

 

そんな貴重な物を簡単に渡していいのかな。

 

「大丈夫、素材はその為に僕がリンドウ君に頼んで集めてもらったんだ、お礼ならリンドウ君に言ってあげなさい」

 

リンドウさんが!

 

榊博士の言葉に僕とユウカとコウタがリンドウさんの方を見る。

 

当のリンドウさんは嬉しそうに笑っていた。

 

「リンドウさん、ありがとうございます」

 

リンドウさんに対して感謝を込め頭を下げる。

 

「気にすんなよBLACK、巻き込んじまったせめてもの詫びだからどうってことねえよ」

 

リンドウさんが僕の肩に手を置く。

 

「ようこそフェンリル極東支部、通称『アナグラ』に」

 

榊博士がそう言い第一部隊のみんなが笑顔で迎えてくれた。

 

これで僕はフェンリルに入隊したんだな。

 

もう後には引き返せない。

 

そうだ僕はもう元の世界に帰る事も普通の人間に戻る事もできないんだ。

 

ならGE世界初の本当の仮面ライダーになって人類の自由と平和の為に戦ってやる。

 

かつての歴代ライダー達がそうしてきたように。

 

新たな誓いを胸に色々とトラブルがありながらもアナグラでの新たな生活がはじまった。

 

 

                                       つづく




革ジャケットと革ズボン姿のBLACK。
イメージ的には漫画『仮面ライダーBlack PART X イミテーション7』に出てくる主役のブラック・ダミー7号みたいな姿です。

あの漫画が好きで1号と同じ赤いマフラーも付けたくてどうしてもやってみたかったんですよ。
ゴッドイーターのみんなも多種多様な衣装を身に纏っているしそれに合わせたくて。


色々と賛否両論あるかもしれませんがどうかこれからもよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

8話

寒くなってきたので今日は鍋にしようかなと思いつつ8話始まります。


榊博士の研究室で服と腕輪を貰い第一部隊と挨拶済ませた僕は他の部隊や職員の方々と挨拶する為、エントランスに移動していた。

 

「な、なんだよあれ?」

 

「ほんとうに人間なのか?アラガミじゃないのか?」

 

黒い革のような皮膚に紅い複眼、二本の触覚が生えている見た目がバッタの姿である仮面ライダーBLACKの姿の僕を見てザワつく神機使いや職員達。

 

混乱を防ぐ為に榊博士とツバキ教官から僕が人間とは違う姿の理由は非合法な組織に誘拐され改造された結果だと説明された。

 

まあ改造してくれたのは組織じゃなくて神様だけどね。

 

神機使いや職員達は噂や話が流れていたようだが実際にその姿を見たら動揺を隠せないようだ。

 

アナグラでは神機使いの神機は保管室で保管している。

 

もし神機を持っていないアナグラの中で襲われたら命がないと考えていた。

 

特に戦う力のない一般職員は恐れているのが見ていて分かる。

 

安全策に首に爆弾を仕掛けられているとはいえ彼らからしたらいつ爆発するか分からない爆弾を抱えるようなものだからな

 

仕方ないか。

 

見た目は人間サイズの黒いバッタだもんな。

 

早く人間に戻りたい。

 

人間に戻れる方法をサカキ博士も協力してくれて言ってくれたけど自分でも探さないとな。

 

「今日から一緒に極東支部に入隊する仮面ライダーBLACKです。よろしくお願いします」

 

僕に対する反応はそれぞれ様々だ。

 

「大森タツミだ。よろしくな」

 

「台場カノンです、よかったら私の作ったクッキーですけど食べてください」

 

「ブレンダン・バーデルだ、期待しているぞ」

 

僕を素直に受け入れてくれる人達。

 

「雨宮ツバキだ、この極東支部に来たからには勝手な事はさせんから覚悟しておけ」

 

「ジーナ・ディキンソンよ、ふふ知ってる?(フェンリル)は獲物を仕留める時、自分の牙を相手の喉笛に突き刺して仕留めるの。あなたの首にある狼の牙(爆弾)がそうならないように気を付けなさい」

 

口では歓迎しているが警戒している態度の人達。

 

「カレル・シュナイダーだ、いい金儲けの話があったら隠さず話せ怪物」

 

「・・・小川シュンだ。化け物が服着て人間の恰好しても化け物には変わりねえよ」

 

明らかに敵意を向けてくる人達それぞれだった。

 

まあしかたないかと思っていたら、僕を罵倒したカレルさんやシュンさんに対してコウタとユウカが怒ってくれた。

 

……ありがとうコウタ、ユウカ。

 

僕も化け物と言われて慣れたと思ったけどやっぱり傷つかないわけない。

 

だから庇ってくれる仲間ができて嬉しいよ。

 

色々あったけど受付のヒバリさん、万事屋さん、清掃のおばちゃん、極東支部にいる職員すべての人と挨拶を済ませる。

 

受け入れてくれた人もいたけど大半の職員にはやっぱ怖がられてるな。

 

「BLACKさん・・・…」

 

挨拶を済ませた後、一人座っていたら僕が目覚めた事を知ったエリナちゃんがやってきた。

 

「エリナちゃん!大丈夫だった?」

 

立ち上がり声を掛ける。

 

サカキ博士は大丈夫と言っていたけどやっぱり直接見ない事には安心できなかった。

 

「BLACKさ~ん!」

 

僕の顔を見た瞬間大泣きしながら抱き着いて来た。

 

泣きながらごめんなさいごめんなさいと何度も謝ってくる。

 

そっか僕が庇って捕まった事を自分の所為だと気にしてたんだな。

 

僕はもう大丈夫だよ僕こそ心配かけてごめんねと前と同じように泣き止むまで何度も頭を撫で続けた。

 

「君がBLACK君か」

 

今の時代に珍しい裕福そうな男性が声をかけてくる。

 

娘って事はこの人はエリナちゃんのお父さんか。

 

「娘を助けてくれてありがとう、君が助けてくれなかったら息子に続いて娘まで失う事になっていた本当にありがとう」

 

僕の右手を両手で握手される。

 

「・・・あの俺が怖くないんですか?」

 

今で会った人は僕の子の姿に恐れ、怖がっていたのこの人は怖がっていない。

 

「どんな姿であろうと娘の恩人が怖いわけないだろう。それに華麗なフォーゲルヴァイデ家の人間が噂や姿形だけで物事を判断するなどしない」

 

握手している手に力が籠められる。

 

力を籠める事で怖くないと証明しようとしてくれてるんだ。

 

エリナちゃんのお父さんもいい人だな・・・。

 

そしてお父さんから極東に来た理由とエリックさんの事を教えてもらえた。

 

エリナちゃんは今は完治しているが生まれつき体が弱く欧州の空気が合わず、遠く離れたここ極東で病気療養していた事。

 

そして兄のエリックさんは一人で療養する妹が寂しがらないようにそしてエリナちゃんをアラガミから守る為に貴族の家督を捨て神機使いになって欧州地区から極東支部に転属したそうだ。

 

エリナちゃんの為にそこまでできるなんて並大抵の覚悟ではできない。

 

すごいな素直に尊敬する。

 

エリックさんって立派な人だと・・・。

 

一度会ってみたかったな。

 

「おいなんだあれ?」

 

ん?なんだろ?

 

エリナちゃん親子と雑談していたら周りが騒がしくなった。

 

「えっと・・・またバッタ?」

 

「だ、誰も乗ってない無人のバイクがエレベーターに乗って出てたぞ!」

 

「アラガミの襲撃か!ヒバリちゃんは俺が護る!」

 

あわてふためく神機使いや一般職員さん達。

 

「あれは調査中だったバイクだ!なんでここに?」

 

リッカさんの声を聞き僕の頭の中になにかが走る

 

バッタ・・・無人のバイク・・・まさか!?

 

「すみません、ちょっと失礼します」

 

いやな予感がしてエリナちゃんのお父さんと別れ、人ごみをかき分けて騒ぎの中心であろう前に出てみる。

 

そこには僕の愛車バトルホッパーがエンジン音を鳴らしウィリーしながら首を左右に振り前輪で威嚇していた。

 

「バトルホッパーだぁ!」

 

後ろからついて来たエリナちゃんが嬉しそうに声を上げる。

 

『ファファファ』

 

エリナちゃんの声で僕に気づいたバトルホッパーが前輪を下ろし目を点滅させながら僕に近づいてすり寄ってくる。

 

うん、バトルホッパーだね。

 

でもなんでバトルホッパーがここ(アナグラ)に?

 

周囲はアラガミ防壁に囲まれていて警備は厳重でエリナちゃんが使った抜け道はもう使えないのにどうやって入ってきたの?

 

「あ、そういやライダーのバイクを回収してたの本人に伝えるの忘れてた」

 

「ちょっとリンドウ!」

 

騒ぎに駆けつけたリンドウさんと伝え忘れてた事に怒るサクヤさん。

 

リンドウさん、ちゃんと教えてよ・・・

 

その後バトルホッパーをなんとか宥めて生体マシンだと説明して迷惑をかけた事を謝罪した。

 

リンドウさんが伝え忘れてた事も発覚した為、責任の半分はリンドウさんに向けられバトルホッパーもなんとか受け入れてもらえ多少トラブルはあったが極東支部に無事入隊する事ができた。

 

ただ目をキラキラした榊博士に質問されまくり、リッカさんが分解して調べさせてくれと言われたが丁重に断るのが大変だった…。

 

 

                                       つづく




一応チェックはしていますが誤字脱字、感想などがありましたらよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

9話

つべで始まったRXの公式配信を見ながら作った9話始まるよ。


フェンリルに所属してから数日が経ち、僕は新人ゴッドイーターがフェンリルに配属してすぐに受ける基礎体力の強化と基本戦術のカリキュラムを受けていた。

 

何でアラガミを倒してきた僕が今さらアラガミを倒すカリキュラムを受けているのかと思う人がいるだろう。

 

現にコウタとユウカにもそう言われた。

 

でも駄目なんだ。

 

我武者羅だけじゃこの先を生き残れない。

 

なぜなら素人の僕はアラガミや神機使いの事、力の使い方に関してまったく知識が無いからだ。

 

前半の二つはとにかく力の使い方というのは例えば一人で五体のアラガミを相手にするとしたらどうすればいいかと聞かれたとしよう。

 

答えは簡単だ。

 

四体倒して余力を残した状態のまま最後の一体を倒す。

 

これが模範解答だろう。

 

だが現実は計算式のようにそう簡単にはいかない。

 

アラガミと一言で言っても種類は多く小型から大型の大きさ、火や水や雷や毒針などの攻撃方法、そして強さも多種多様だ。

 

例えば最初から全力でいって強い四体を倒せたとしてもスタミナが無くなり疲労で動きが鈍った所を最後の弱い一体目に潰されてしまうかもしれない。

 

また不測の事態として六体目が現れる可能性があるかもしれない。

 

つまりいかに力を温存しつつ己の力を理解して一番弱いアラガミを見抜き、弱点を突いて効率的に倒す術を学ぶ為にカリキュラムを受けることにしたのだ。

 

昔の人は言っていた。

 

敵を知り己を知れば百戦百勝

 

実際その通りだと思う。

 

知識による想像力は力だ。

 

想像力が増えればそれだけ対処方法が広がる。

 

これは極東支部に来る前にあった半年間のサバイバル生活でアラガミとの闘いで殺されそうになりながらもピンチを切り抜けて導き出した答えだ。

 

午前中は講師に榊博士を迎え、博士の研究室でのアラガミの生態に関する講義を受ける。

 

これには僕の他にコウタとユウカも参加していた。

 

「さて、いきなりだけど・・・ライダー君はアラガミってどんな存在だと思う?」

 

「誰かが人工的に造った生物兵器の生れの果てかなと思ってます」

 

榊博士が訪ねてきたので思っていた事を素直に応える。

 

「なるほど実に面白い発想だね」

 

「いやいや発想がぶっ飛びすぎだろ」

 

「そうよ一般的には『人類の敵』『絶対の捕食者』『世界を破壊するもの』って認識されてるのに生物兵器って誰が造ったって事になるし造った人はまともじゃないわ」

 

コウタとユウカは納得できないようだ。

 

でもまともじゃないから例え神様でも善悪とか倫理感とかなしで命を弄ぶ行為を平気でやれるんだよ。

 

まあ実際に体験してみないと分からないから仕方ないか。

 

「いやいやライダー君もユウカ君も認識としては間違っていない、むしろ、目の前にある事象を素直に捉えられている」

 

「でもさすがに生物兵器はさすがに・・・」

 

「じゃあ、ユウカ君は何故どうやってアラガミは発生したのか?って考えたことはあるかい?」

 

「なぜ発生した・・・ですか?・・・すみません考えたこともなかったです、突然世界各地に現れたので・・・」

 

「そう君達も知っての通り、アラガミはある日突然現れて爆発的に増殖した。まるで進化の過程をすっ飛ばしたようにね」

 

だからあえて生物兵器だと言った。

 

どう考えても進化論を無視してるから自然に発生したとは考えられないからな。

 

「ふあああああ・・・なあなあ、この講義なんか意味あんのかな?アラガミの存在意義なんかどうでもよくね?」

 

講義に飽きたコウタがつまらなさそうにボヤいている。

 

けどなコウタ、知識は応用して工夫すれば弱点を探す武器になるんだよ。

 

特に命懸けな神機使いならなおさらだ。

 

なにがどう役に立つか分からないから覚えていて損はない。

 

それに誰にも話す気はないけど別の世界から来た僕が世界に来た時はすでにアラガミは存在し世界は荒れていたんだ。

 

だからアラガミの存在意義には興味がある。

 

「コウタ、マジメに聞きなさいライダーの邪魔になるでしょ」

 

「そうかね?アラガミには脳がない心臓も脊髄すらもありはしない」

 

「「うわ!」」

 

榊博士がいつのまにコウタに近づいていた!

 

え?クロックアップ?ポーズ&リスタートしたの?

 

いや違うな、改造人間は人間と異なる時間軸で生きているから停止系の技は効かないって本編BLACKの中で言ってたし。

 

じゃあ普通に移動した事だよな。

 

気配を一切悟らせないなんて。

 

榊博士ほんと何者だよ・・・。

 

「私たち人間は頭や胸を吹き飛ばせば死んじゃうけどアラガミはそんなことでは倒れない。アラガミは考え、捕食を行う一個の単細胞生物--『オラクル細胞』の集まり・・・そう、アラガミは群体であってそれ自体が数万、数十万の生物の集まりなのさ」

 

・・・改めて聞くとアラガミってほんとにとんでもない存在だよな。

 

細胞一つ一つが意志をもっているんだから。

 

まるで知能を得たアメーバだ・・・。

 

「そしてその強固でしなやかな細胞結合は既存の通常兵器では、まったく破壊できないんだ。じゃあキミたちはアラガミとどう戦えばいいんだろうね?」

 

「えっと、それは神機でとにかく斬ったり撃ったり・・・・」

 

慌てふためくコウタが身振り手振りで説明する。

 

そんな焦るコウタのあらかさまな態度に呆れるユウカ。

 

「そう結論から言えば同じオラクル細胞が埋め込まれた生体武器『神機』を使ってアラガミのオラクル細胞結合を断ち切るしかない・・・・と今までそう思われていたが例外が現れた」

 

サカキ博士が僕を見る。

 

すみせませんね、『オラクル細胞なしでアラガミを殴り飛ばす例外』を作ってしまって・・・。

 

僕の不貞腐れた態度に苦笑するユウカとコウタ。

 

「だがそれによって霧散した細胞群もやがては再集合してあらたな個体を形成するだろう。彼らの行動を司る司令細胞群・・・『コア』を摘出するのが最善だけど、これはなかなか困難な作業なんだ。」

 

そういえばサバイバル時代に倒したアラガミのコアをフェンリルに一つ一つ送ってたけどあれ結構めんどくさかったからな。

 

途中からはコアもそのまま砕いていたけどあれでも完全に死んでいないのか・・・。

 

完全に人類は追い詰められてるな。

 

どうすればアラガミを完全に死滅させることができるんだろう。

 

ほんと厄介な生物だよ。

 

「神機をもってしても、我々には決定打がない。いつのまにか人々はこの絶対の存在をここ極東地域に伝わる八百万の神に喩えて『アラガミ』と呼ぶようになったのさ」

 

神様もアラガミと一緒されるなんてとんだとばっちりだな。

 

まあ俺の知ってる神も結構ゲスかったけど。

 

くっ、あの顔を思い出したらなんかムカムカしてきた。

 

「さて今日の講義はここまでとしよう。アラガミについてはターミナルにあるノルンのデータベースを参照しておくこと、いいね?」

 

講義を聞き終わりユウカはアラガミについて考えコウタがやっと終わったかといった感じであくびをする。

 

そして僕は今日教えてもらった事を復習して午後からの実技訓練に備えるのだった。

 

 

 

午後の時間はツバキ教官から過去のデータを元にしたホログラムのオウガテイルの形をしたダミーアラガミと戦う基礎訓練を叩きこまれていた。

 

「どうしたライダー、そんな事では命がいくらあっても足りんぞ!もっと機敏に動け!」

 

「は、はい!」

 

「返事する暇があるなら体を動かせ!」

 

ツバキ教官の特訓は過酷の一言だった。

 

なにしろ格闘経験もない素人の僕が一から鍛えるのだ。

 

楽な訳がない。

 

ホログラムのダミーアラガミと戦いながらツバキ教官からチームでの戦いの立ち回り方や力の使い方を習う。

 

・・・・死ぬ!実戦前に絶対死ぬ!

 

なんだよオウガテイル十匹にコクーンメイデン十匹って!

 

こっちは俺一人だぞ。

 

いくら訓練用のホログラムだからって体に受けた痛みは本物で結構痛いんだ。

 

命がいくつあっても足らん。

 

「何をやっている!そんな事で実戦で生き残れると思ってるのか!」

 

ツバキ教官が怒鳴ると共にオウガテイルの尾から針を飛ばし、コクーンメイデンが上空に撃ったジャベリンが俺目掛けて降ってくる。

 

やばいこのままだと直撃する。

 

こうなったら・・・!

 

「キングストーンフラッシュ!」

 

拳をベルトのバックルの上で重ね、バックルから光とエネルギーが放出され針やジャベリンが跳ね返されてオウガテイルやコクーンメイデンに逆に突き刺さる。

 

跳ね返った針が目や体に刺さり痛みで苦しむオウガテイルの群れ。

 

コクーンメイデンの群れも同様にジャベリンが突き刺さっていて怯んでいる。

 

「今だ!」

 

バイタルチャージをしてエネルギーを溜めるとアラガミの群れめがけて突撃する。

 

まずはやっかいな固定砲台のコクーンメイデンから潰す!

 

コクーンメイデンは動かないけど連携されたら厄介だからオウガテイルよりも先に潰すした方がいい。

 

「ライダーチョップ!」

 

動きの鈍ったアラガミの群れに跳び込み赤く輝くチョップがコクーンメイデンの身体を切り裂く。

 

「ライダーパンチ!」

 

次にひるんでいるオウガテイル十匹の頭部にライダーパンチを浴びせて駆け抜ける。

 

バジ・・・バジ・・・バジ・・・

 

切り裂かれたコクーンメイデンと頭部が陥没したオウガテイルの群れは消滅していく。

 

ツバキ教官いわくこのホログラムは設定したダメージを与えると自動的に消える仕組みらしいからだ。

 

「ハァハァハァ・・・」

 

自分の右手を確認する。

 

パンチもチョップの威力も訓練の成果で以前よりパワーアップしている。

 

以前はオウガテイル一匹を倒すのにライダーパンチとライダーキックを浴びせてやっとだったのに・・・。

 

でも今はたった一発のパンチで倒すことができた。

 

間違いない・・・この身体も本編BLACKと同じで戦えば戦うほど力が増して強くなっていくんだ。

 

でも力を増せば増すほど俺は人の枠からかけ離れていく。

 

「よくやったライダー、今日の訓練はほぼ完璧だ。だが慢心するなよ今の貴様はようやく羽根が生え始めたヒナ鳥だ」

 

「・・・ありがとうございます」

 

肩で息をしてながら特訓室から出て通路を歩きながら先ほどの実戦訓練を思い出す。

 

力を得て自分が自分じゃなくなりそうなあの高揚感に似た感覚。

 

『化け物』『怪物』

 

その言葉が頭をよぎる。

 

僕はこれからどうなっていくんだろう・・・。

 

 

                                       つづく

 




次回、第二部隊と共に第8ハイブ防衛戦。


おかしい、最後の方ここまでシリアスのような展開にするつもりなかったのにどうしてこうなった!?
それに本当は防衛戦までやれたらと考えてましたが講義や訓練が思ったより長くなり、おかげで記念すべき10話にアリサが来る筈が次々回になってしまうなんて…。
まさかゴルゴムの仕業!(違)
意見感想お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

10話

なんやかんやで続いて大台の10話になりました。
お気に入り登録、感想、そしてこの作品を読んでいただいた皆様にこの場を借りてお礼申し上げます。
それでは10話始まるよ。



僕、仮面ライダーBLACKはフェンリル極東支部ことアナグラで榊博士の講義やツバキ教官からの戦闘訓練といった研修を受けていた。

 

研修が終われば民間の協力者として改めてフェンリル極東支部に所属し討伐増援の任務を行なう事となる。

 

しかし正式な異動が決まるまでのしばらくの間は雑用を手伝ったり休日はコウタとユウカさんとバガラリーを見たりやソーマやリンドウさんやサクヤさんに同行してミッションに参加したりする毎日だ。

 

ここ数日の研修の間に実力や人柄を認められて畏怖していたツバキ教官や第一部隊と第二部隊以外の神機使い、怖がっていた職員さん達から徐々に受け入れられている気がする。

 

そして地獄の研修と見習い期間が終わり臨時として手が足りない部隊に回ることになり本当の戦いが始まった。

 

今日の任務は大森タツミさん率いる防衛班『第二部隊』と共にアラガミ防壁を突破して中央施設に収容できない住民の住む外部居住区に侵入したアラガミの駆逐と住民を護る緊急任務だ。

 

外部居住区は中央と違い約13万人の人々が掘っ立て小屋を建て配給や他の住民と物々交換をしながら暮らしている。

 

みんなアラガミに苦しめられながらも落ち込むことなく逞しく活気があふれ必死に今を生きてるんだ。

 

そんなささやかな幸せをアラガミなんかに滅茶苦茶にされてたまるか。

 

俺はバトルホッパーで現場に急行し少し遅れてジープに乗った第二部隊が到着する。

 

現場に着くとオウガテイル3体とコンゴウ1体が家を破壊して瓦礫を捕食しながら暴れていた。

 

「あいつら!よくも」

 

「落ち着け、まずは住民の避難からだ」

 

「は、はい」

 

普段調子のいいタツミさんが本気の顔になっている。

 

そうだ、まずは逃げ遅れた住民の安全が最優先だ。

 

このヒリヒリするこの空気と緊張感。

 

一人の時にはなかった。

 

これが本当の実戦…。

 

俺とカノンさんが囮になってアラガミを引き付けてその間にタツミさんとブレンダンさんが住民の避難誘導を行う。

 

本来なら新人の俺が危険な囮でなく避難誘導係にまわるべきなのだが俺の姿を見て住民が混乱して怖がるといけないので俺が囮になると進言した。

 

俺を仲間と思ってくれているタツミさん達はあまりいい顔しなかったが説得して分かってくれた。

 

こればかりは仕方ない。

 

そしてアラガミ達を引き連れて戦うには十分のスペースがある広場に誘い込んだ。

 

カノンさんの神機は射撃の遠距離型の神機だ。

 

前のミッションで第一部隊のサクヤとミッションを行った時立ち回り方は習った。

 

遠距離型の神機使いとペアを組む時の戦い方は近距離パワーファイターの俺が陽動して遠距離神機使いが後方からバックアップ。

 

注意すべき事は先行しすぎないようにして支援の射程内で戦う。

 

これが基本戦術。

 

これでいけると思ったんだけどな・・・・。

 

背中痛い・・・。

 

「住民の避難は完了した、あとは合流してアラガミを叩くだけだ」

 

「すぐそっちに行くから待ってろよ」

 

俺の左手首にあるダミー腕輪から通信が入る。

 

ブレンダンさんとタツミさん達からだ。

 

その後タツミさん達と合流してアラガミを迎え討つ。

 

「ブレンダン、取り囲むぞ!」

 

「了解した」

 

まずとタツミさんとブレンダンさんが一匹のオウガテイルにショートブレードを突き刺し、バスターブレードを振り下ろしオウガテイルは血を拭き出しながら息絶える。

 

まずは一匹・・・。

 

「アハハハハ!くたばれ!!」

 

「ライダァァパァァンチ!!」

 

性格が豹変しているカノンさんの援護射撃とライダーパンチで2匹目を倒す。

 

二匹目!

 

「ライダーチョップ!」

 

バトルホッパーに乗り猛スピードで走り出しすれ違いざまに紅く光るライダーチョップをオウガテイルの足に叩き込み体勢を崩す。

 

「タツミさん今です!」

 

「おうよ!」

 

ブレーキを掛けてターンして僕の声を聞いたタツミさんが倒れている最後のオウガテイルに飛び移り頭部にショートブレードを突き刺し止めを刺した。

 

よしこれでオウガテイルはいなくなった。

 

あとはコンゴウを倒すのみ。

 

オウガテイル3匹が倒されてなおコンゴウは怯まず寧ろ戦意が高まっていた。

 

コンゴウ・・・ノルンのデータベースによれば、巨大な猿のようなアラガミで武器は肉弾戦を得意とする打撃と俊敏な動きで転がりながらの突進して襲いかかってくる。

 

また背中には遠距離攻撃用のパイプが付いていてこのパイプ状から空気を体内に摂り込み空気弾を発射するだったな。

 

耳がよく、音に反応してすぐ集まる為、集団で来られると厄介このうえないが幸い一匹だけのようだ。

 

一匹だけの今のうちに葬る。

 

「トォ!」

 

ハイキックでコンゴウの腹部を蹴り上げる。

 

「トォ!トォ!」

 

次にパンチとキックの連打を頭部と腹部に浴びせる。

 

負けじとコンゴウも拳で殴りかかってくる。

 

「なんてすごい力だ・・・」

 

コンゴウの拳をなんとか捌きながら何とか距離をとる。

 

当たればライダーとはいえただじゃすまない。

 

コンゴウを結合崩壊を起こせるのは三か所。

 

尻尾と背中のパイプ、そして顔に付けてる仮面だ。

 

「ハアアァァ!!」

 

「アハハ背中のパイプ壊れちゃったねえ!?」

 

そのうちすでに尻尾はブレンダンさん、パイプはカノンさんが破壊してくれた。

 

あとは仮面のみ。

 

尻尾とパイプが破壊され逆上したコンゴウが見境なしに暴れ出す。

 

マズイこのままだと被害が広がる。

 

けど暴れまわるコンゴウに近づくこともできず頭に血が昇って痛みを感じてないのかカノンさんの射撃も効いていない。

 

「だったらこうすればいいのさ」

 

タツミさんがコンゴウに向かって走り出す。

 

「タツミさん無茶だ!」

 

「まあ、待ていいから見てろ」

 

「ブレンダンさん?でも・・・」

 

タツミさんを止めようとした逆に僕がブレンダンさんに止められる。

 

「あらよっと!」

 

タツミさんはコンゴウが薙ぎ払って起こす散弾のように飛んでくる無数の細かい瓦礫の破片を目にも止まらない速さで回避し生身の身体で当たれば即死するであろうコンゴウの巨大な拳を掻い潜った。

 

そして・・・。

 

「おりゃああ!!」

 

そして下から上に振り上げる一撃がコンゴウの顔にある仮面を壊し最後の結合崩壊を起こした。

 

すごい・・・

 

僕はその動きに思わず見とれてしまった。

 

これがベテランゴッドイーターの戦い方・・・。

 

「仮面ライダー今だ!」

 

「はい!トゥ!!」

 

ライダージャンプで高く跳ぶ。

 

タツミさんが作ってくれたチャンス無駄にはしない。

 

いくぞこれが特訓の成果だ。

 

「ライダーキィィック!」

 

仮面を破壊され怯んでいる所に訓練で編み出した新ライダーキックを顔面に叩きこむ。

 

今までのライダーキックは右足を突き出し蹴るだけの技だったけど新ライダーキックはバイタルチャージしてジャンプしたあと空中で右足を曲げて相手に当たる瞬間思いっきり蹴り出す技だ。

 

右足を曲げるのは屈伸運動を加える事でジャンプした時の地面を蹴る力が従来のライダーキックの威力にプラスされて威力が数倍にはね上がっている。

 

ありがとうございますツバキ教官。

 

「お前のジャンプ力は他の神機使いにはない目を見張るものがある、それをキックに活かしてみせろ」

 

教官が僕にそうアドバイスをくれたおかげです。

 

着地すると断末魔を上げ赤い炎に包まれながらコンゴウは爆発四散した。

 

榊博士の講義どおりならこれでもオラクル細胞は死滅してないんだ。

 

いずれあのコンゴウだったオラクル細胞も時間が経てば新しいアラガミになって甦るんだろうな。

 

どうすればこの負の連鎖を断ち切る事が出来るんだろう・・・。

 

「うおおおおおお!」

 

いきなり爆発のような歓声が上がり思考の海から現実へと引き上げられる。

 

「な、なんだ?」

 

辺りを見回すと避難していた住民の皆様が駆け寄ってくる。

 

やばい!隠れないと。

 

この姿を見られたらタツミさん達まで疑惑の目を向けられ何を言われるか分からない。

 

逃げようとするとカノンさんとブレンダンさんが僕の腕をつかむ。

 

「ち、ちょっと放して!」

 

このままだと第二部隊のみんなが・・・。

 

「バッタの兄ちゃんもありがとな」

 

「え?」

 

タオルを巻いたタンクトップの筋肉質のおじさんが笑いながら僕の肩を組む。

 

「ありがとう助けてくれて」

 

「護ってくれてありがとう」

 

男性や女性、大人や子供が次々と僕の周りに人が集まってくる。

 

その表情は恐怖でなく笑顔だった。

 

「は、はいどうも・・・」

 

まさかお礼を言われるとは思わなかったから拍子抜ける。

 

よく見るとブレンダンさんとカノンさんが微笑みながら侵入してきたすべてのアラガミを退けコアを回収しているタツミさんの方に向かう。

 

そうかわざわざ俺にトドメを譲ってくれたのはに俺の印象をよくするためだったのか。

 

ありがとうございますタツミさん、カノンさん、ブレンダンさん

 

素顔だったら絶対に顔が真っ赤になってただろうな。

 

しばらくして住民たちも落ち着きそれぞれの家に帰って行った。

 

僕もタツミさん達と合流して作業を手伝わないと。

 

「タツミさん、カノンさん、ブレンダンさんお疲れ様です」

 

「おう、お疲れさん」

 

「お疲れ様です。すごいほんとに本当に神機なしでアラガミを倒すなんて」

 

「ああ、おつかれ・・・ところでライダー、背中は大丈夫なのか?」

 

「うう・・・」

 

ブレンダンさんの言葉に気まずそうになるカノンさん。

 

俺のジャケットの背中は焦げて少しだけ黒くなっている。

 

実はタツミさん達が住民を避難させる為囮になってコンゴウとオウガテイルと戦闘中、敵からでなく味方のカノンさんから三発ほど背中にバレット弾を喰らわされた。

 

いわゆる誤射って奴だ。

 

実はカノンさんは普段は優しい女の子なのだがいざ戦闘になるとなんというか・・・うん優しそうな性格が180度変わって戦闘狂になってしまうのだ。

 

しかも射線上に入れば例え味方がいても容赦なくバレット弾をぶっ放す。

 

背中にバレット弾を喰らう度に「射線上に入るなって、私言わなかったっけ?」と戦闘狂モードのカノンさんに怒られた。

 

その為にカノンさんは極東の神機使いから『誤射姫』と不名誉なアダ名を付けられてしまっている。

 

もっとも誤射を受けてしまったのはカノンさんの所為じゃなくてまだチーム戦をうまく立ち回れない俺の所為だからな・・・。

 

アナグラに帰ったらジャケットを焦がしてしまった事を作ってくれた榊博士とリッカさんに謝って反省してこの失敗を次にいかさないとな。

 

「はっは・・・ま、まあその第二部隊の恒例行事みたいなものだから・・・」

 

恒例行事で背中を焼かれたらたまらないんですけど・・・

 

「恒例行事って何ですか!?タツミさんひどい!ヒバリさんに言いつけます」

 

「な!カノン、それはしだろ!」

 

ヒバリさんとはエントランスでミッションの受付と戦闘時のオペレーターを兼任している女性でタツミさんの思いの人だ。

 

まあヒバリさん自身はあまりタツミさんに関心を持っていないけど。

 

「ライダーさんにもクッキーもうあげませんからね」

 

「え?僕まで巻き込まれた!」

 

カノンさんが材料が手に入ったら時々作ってくれるクッキーは美味しいから楽しみにしているのに。

 

おのれタツミさん。

 

カノンさんのクッキー楽しみにしてるのに。

 

食べ物の恨みはお世話になったとはいえそれとこれは別だ。

 

え?仮面してるのにどうやってクッキーを食べてるかって?

 

はっはっは決まってるじゃないか。

 

不思議な事が起こったんだよ。

 

・・・冗談だよ、なぜかこの姿でも食べ物を口に近づけたらいつのまにか口の中に入ってるんだ。

 

サバイバル時代に発見して驚いたけどもう慣れた。

 

アナグラのみんなも驚いていたな。

 

榊博士なんか実に興味深いと言って色々と食べ物を持って来って追いかけてきたけどすぐ逃げて、持って来た食べ物はみんなで分けて美味しくいただきました。

 

今思えば榊博士が俺がアナグラのみんなに受け入れやすくするようにワザと用意してくれたのかもしれないな。

 

「そういや知ってるかもうすぐ二人目の新型神機使いがロシア支部から極東支部に配属されるそうだぜ」

 

誤魔化す為にタツミさんが別の話題を振る。

 

さすが隊長クラスだ。

 

情報が早い。

 

でもそんなにポンポン話していいのかな?

 

カノンさんもそんな事で誤魔化されないだろうし

 

「え?そうなんですか楽しみだな、仲良くできればいいんだけど」

 

あっさり誤魔化された!!

 

いくらなんでもチョロすぎでしょ!

 

「(まあうち(第二部隊)は大体これでうまくいってるんだ。タツミの奴もさすがに隊長クラスの機密は話さないからな)」

 

ブレンダンさんが小声で耳打ちしてくる。

 

そ、そうなんですかってさりげなく僕の心の内を読まないでください。

 

仮面で表情を見えない筈なのになんで分かるんだろう。

 

何気にこの人もすげえな。

 

「楽しみですねライダーさん」

 

「ソウダネー」

 

嬉しそうに話すカノンさんの見えない位置から僕にⅤサインを送るタツミさん。

 

第二部隊も第一部隊と違った意味でうまくいってるんだな。

 

それにしても新たな新型神機を使うゴッドイーターか。

 

カノンさんじゃないけどどんなに人が来るんだろう。

 

ロシアから来る新たな神機使いの着任に楽しみと不安を胸に僕は仮面ライダーとして今日も戦うのであった。

 

 

                                       つづく

 




バトルシーンかなり省略されましたがこれでかんべんしてください。

前回、説明できなかったからこっちに記載します。

クロックアップ
仮面ライダーカブトや他のライダー、ワームが使う脳力。
使用者の行動が加速され、周囲がスローモーションになる。

ポーズ&リスタート
仮面ライダークロノスが使う時間を停止させる技。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

11話

11話始まるよ。
もう前置きのネタがない…


「じゃあそれは向こうの机の横に運んでくれる」

 

「了解」

 

アナグラでの今日の仕事はリッカさんの作業場で神機を整備する手伝い。

 

と言っても僕は整備ができる専門知識がないから大半は重い資材を運んだりする雑用がメインだけど。

 

「ほんと助かるよ、神機の素材の中には重たい物が多くてさ」

 

「構いませんよ、これくらいお安い御用です」

 

確かに周囲には機材や工具などが散乱しており、神機の材料で僕の背丈以上ある大きな資材を持ち上げて指定された場所に壊れないように優しく置く。

 

ライダーならこれくらい軽い軽い。

 

作業場では許可なく機材や材料には触らない。

 

特に保管されてある神機にはオラクル細胞があって持ち主以外が触ると侵食されるからだ。

 

「じゃあ次は君のバトルホッパーを分解して調べさせてくれたら嬉しいな」

 

「それはダメです♪」

 

「ちぇ♪」

 

言葉とは裏腹に笑顔のリッカさん。

 

こんなお約束なやりとりをしながら作業を続ける。

 

リッカさんが本気じゃないのは分かってるので僕もそれに乗る。

 

・・・冗談だよね?

 

ちなみにバトルホッパーは普段整備室に駐輪されており僕が呼んだらすぐ来てくれるようになっている。

 

『業務連絡、ライダーさん至急エントランスに来てください。繰り返します・・・」

 

ヒバリさんの呼び出しの放送?なんだろ?今日は整備の手伝いをしてるから他の部隊に呼ばれる理由はない筈だけど?

 

「きっと今日来る新型神機使いが到着したんじゃないかな。君は前線に出るしその顔合わせだと思うよ。ここはいいから早く行ってきなよ」

 

ああ、そうか前にタツミさんが言ってた人がついに来たのか。

 

「じゃあリッカさん、あとはお願いします」

 

「手伝ってくれてありがとね、いってらっしゃい」

 

リッカさんと別れてエントランスに上がるエレベーターに向かった。

 

 

 

 

エレベーターが目的地のエントランスの階に着くと扉が開く。

 

エントランスにはたくさんのゴッドイーターや一般職員の方々が集まっていた。

 

どこに行けばいいのかな。

 

「おう、来たかライダーこっちだ」

 

キョロキョロとあたりを見回していたらリンドウさんが僕に気づいて手を振り手招きする。

 

リンドウさんの方に行くとツバキ教官と第一部隊の面々が勢ぞろいしており、その中央に見なれない銀髪の女の子がいた。

 

あれが噂の新型使いか。

 

・・・あの子もすごい恰好だな。

 

服の切り込みが深すぎて下から胸が見えちゃうんじゃないか?

 

サクヤさんやジーナさんもそうだけど女性ゴッドイーターって基本すごい恰好しているよな。

 

嬉しくないと言えば嘘になる。

 

だって僕だって健全な男の子たがら…。

 

「ちょっとあなた!」

 

「ふ、ふぁい!」

 

新しく来た子に声を掛けられる。

 

ヤバイ、変な事考えていたのがバレたのか。

 

焦って声が裏返っちゃったし。

 

「なんですかその変な恰好は!先ほどの人といい、この支部はふざけている人が多すぎます!」

 

ほっどうやら僕の考えてた事がバレたわけじゃなかったのか。

 

いやそれよりも格好に関してだけはあなたに言われたくないんですけど。

 

というか先ほどの人って誰だ?

 

第一部隊のみんなの方を見るとコウタが顔を背けた。

 

おまえかコウタ!この子になにやらかしたんだ!

 

「ちょっと私の話を聞いてるんですか!そんな変な被り物までして!」

 

ぐいっと頭を女の子の両手に掴まれてしまう。

 

両手で掴まれているので女の子の顔が目の前に広がる。

 

性格は厳しそうだけどきれいな子だな。

 

素顔だったら間違いなく僕は赤面していたな。

 

仮面ライダーになっていてよかった。

 

「何で抜けないんですか!このこの!」

 

「痛い痛い首が抜ける!」

 

ってそんな場合じゃない。

 

やめてこのままだと愛と勇気だけが友達の餡子入りのヒーローやパトカーを弾き飛ばしてるめちゃんこつおい眼鏡っ子みたいに首が取れる。

 

「あ、違うのよアリサ。彼は、その・・・」

 

「その仮面が今のライダーの素顔なんだよ、つかそろそろ放してやれ。初対面なのに仲良すぎだろお前ら」

 

サクヤさんが困った顔して止めようとしたらリンドウさんがニヤニヤしながら余計なチャチャ入れる。

 

くそうリンドウさん、この状況を楽しんでるな。

 

覚えてろよ。

 

「キャアアア!!」

 

「ふぎゃ!」

 

あのあと我に返って今の自分の状況を理解したアリサさんに思いっきりビンタされてしまった。

 

なんて理不尽。

 

「まあ親睦を深めたって事で、ほらアリサ挨拶しろって」

 

「どこかですか・・・アリサ・イリーニチア・アミエーラです」

 

「・・・どうも仮面ライダーBLACKですよろしく」

 

叩かれた頬を摩りながら互いに自己紹介をする。

 

「それでいつまでそんな被り物を被っているのですか?早く脱いでください」

 

「…申し訳ないけどリンドウさんも言ったけど今のこの仮面が今の素顔で脱ぐことはできないんだ」

 

「ふざけるのも・・・」

 

「アリサ、彼の言ってるのは本当よ、複雑な訳があって今はその仮面が彼の素顔なの」

 

アリサさんが怒鳴ろうとした所に僕の事情を知っているサクヤさんがフォローしてくれた。

 

この件に関しては色々と複雑だから後日改めて説明するとサクヤさんが伝えたら渋々納得してくれた。

 

「彼女は実戦経験こそ少ないが、演習では抜群の成績を残している……追い抜かれないよう精進するんだな」

 

このまま何事もなく無事に挨拶が終わればよかったんだけど…。

 

「ねえねえ知ってる、ライダーは神機なしでアラガミを倒せるんだよ」

 

アリサさんの機嫌を取り戻す為にコウタがよりによって僕の話題を振ってやらかしてくれました。

 

僕の自己紹介の時に神機なしでアラガミを倒せる事は機密事項だとツバキ教官から言われただろうが。

 

いくら彼女が極東支部に配属になったからって支部長からの許可も出ていないのにコウタから伝えたらダメだろ。

 

何のためにサクヤさんが説明を後日にしたと思ってるんだ。

 

「…なんですかそれ?神機なしでアラガミを殺せるわけないじゃないですか。くだらない嘘を言わないでください」

 

信用されてないね、無理ないけど。

 

「本当だって、だったらライダーをミッションに連れてその目で確かめてみなって」

 

「いいでしょう、ライダー!あなたには今度の私の初ミッションに同行してもらいます。神機なしでアラガミと戦うなんて嘘をついた事を後悔して私の足を引っ張らないでくださいね!」

 

おいおい勝手に決めないでよ。

 

それに言い出したのはコウタだろ。

 

それになんで僕が後悔しないといけないんだ。

 

そもそもツバキ教官が許可するわけない。

 

「・・・いいだろう、ライダー次のアリサの初ミッションお前も同行しろ、支部長には私から連絡しておく」

 

ウェ!?!Σ(0扇0;)!!

 

「いやいや僕関係ないですよね?」

 

「命令だ。行け」

 

そ、そんな。

 

「・・・諦めろ、ああなった姉上はだれにも止められん」

 

僕の肩を手を置き横に首を振るリンドウさん。

 

「あ、あはは・・・次の任務は私も新型機の共同運用のテストで出撃するからよろしくね」

 

ユウカも苦笑しながらも励まそうとしてくれている。

 

「大変ね、がんばってね」

 

「ふん、せいぜい死なないようにな」

 

そういうならサクヤさんかソーマ、どっちか僕と変わってくれませんか?

 

って言いたいけど言った所でダメなんだろうな。

 

これもすべてコウタの所為だ。

 

おのれコウタ。

 

「リンドウ、資料などの引継ぎをするので私と来るように、あと藤木は機密事項の情報漏洩の罰として明日の朝までに部屋で謹慎して反省文を30枚書いて提出しろ」

 

「げ!そんな!?」

 

ツバキ教官の言葉にうなだれるコウタ。

 

そりゃそうだろ、反省文で済んでよかったな。

 

下手すりゃ営倉入りだったぞ。

 

「その他の者は持ち場に戻れ、以上」

 

そう言うとツバキ教官とリンドウさんはエントランスから退室していった。

 

はあぁぁ…コウタの件は少しは気が晴れたけどミッションに行くことには変わりないんだよな。

 

もう決まった事だし仕方ない。

 

死なないようにやれるだけやりますか。

 

 

 

                                    つづく



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

12話

いややったああ!
お気に入り登録者が百人突破したぞ!
登録してくれた方々ありがとうございます。

これを励みにこれからもがんばりますのでどうか温かく見守って下さい。
それでは12話始まるよ。


フェンリル極東支部、最上階にある支部長室。

 

支部長室にはソファーやテーブル、壁の近くの少しの装飾品が並べられており一枚の絵が飾られている。

 

そしてヨハネスが座っている支部長の椅子の後ろに地球儀と数冊の本、そして壁半分を覆う大きなフェンリルの紋章が掲げられていた。

 

「そうかライダー君はリンドウ君と新型使い二人のミッションに同行して行ったか」

 

ツバキの報告を肘を机に付け腕を組んで聞くヨハネス。

 

「最初はどうなるかと思ったが報告書を見る限り彼は皆に受け入れられているようだな」

 

「そうだね彼はあの外見の所為でずいぶん苦労したようだからよかったよ」

 

ヨハネスが読み終えた報告書をツバキの横にいた榊が手に取り目を通す。

 

「彼女も驚いているだろうね、なにしろ今まで信じてきた常識が覆されるのだから」

 

楽しそうに笑う榊。

 

「…そうでしょうね、私も初めて報告を聞いたとき信じられませんでしたから」

 

そんな榊を見て悪趣味と思い呆れるツバキ。

 

だが榊の性格を知るツバキとヨハネスはいつものことなので大して気にしていない。

 

「最初はどうなるかと思っていたが彼が受け入れられているようでよかった。何しろ君を筆頭に彼に対する不信感があったからね」

 

「確かに今の彼は少しづつだけど受け入れ始められている。特にツバキ君はよく彼のトレーニングに付き合ってるらしいじゃないか、どういう心境の変化だい?」

 

ライダーがアナグラに来た頃、ツバキのライダーに対する視線が不信感の塊だったを思い出し訪ねる榊。

 

「…確かに奴は人は違う姿をしています…そして私は奴のその容姿と能力に警戒心を持ったことは事実です、しかしそれは極東支部を守るためであり今もその時の判断は間違っていなかったと思っています。ですが今は奴の根が真面目だから少し認めただけです」

 

「すまない少しからかいすぎたようだ許してくれ。君が教え子を心配していること分かっている」

 

「私もまだまだ未熟でした。リンドウのいうとおり奴は改造されたとはいえ人の心までは失っていないようです」

 

「かつてのこの地域のことわざというのにあった百聞は一見にしかずって奴だね」

 

自分の軽率な言葉にヨハネスが謝罪し、日本と呼ばれていた頃の言葉を思い出す榊。

 

「ツバキ君…ライダー君の事を引き続き任せる…以上だ、下がってよろしい」

 

「了解しました、失礼します」

 

一礼してツバキは退室する。

 

「しかし彼を改造したという組織って何者なんだろうね?」

 

「少なくとも本部ではないな。だが確実とはいいきれん…あそこは魑魅魍魎の巣窟だ。我々のあずかり知らぬ所でなにか企んでいるかもしれん。もしくはフェンリル以外の組織が失われていた過去の技術を見つけそれを彼の体内に施した可能性がある…いずれにしろ彼の処遇は今は現状維持でいいだろう」

 

「……そうかい、じゃあ僕は仕事に戻るから失礼させてもらうよ」

 

榊も支部長室から出て、扉を背に上を見上げる。

 

(今は…ね、つまり段階が進めば彼の身が危険になるかもしれないな…特にアラガミに対する対抗策を独占していることで数少ない資源を管理している本部とってその独占に亀裂を生じようとする彼の能力は邪魔でしかない…そのとき彼とここにいる神機使い達はどう動くのだろうね…そしてヨハン…君がやろうとしている事を知った時も……)

 

榊はライダーとヨハネスのこれから起こるであろう出来事に一抹の不安を覚えるのだった。

 

 

 

その頃『贖罪の街』と呼ばれる旧ビル街を巣にしている研究サンプルとして監視をしていたアラガミ『シユウ』2体が捕食の兆候を見せ始めた為、始末するべく雨宮リンドウ、神咲ユウカ、新人のアリサ・イリーニチナ・アミエーラ、そして我らが仮面ライダーBLACKは現場である贖罪の街に急行していた。

 

 

 

(本当に神機を持ってこないなんて・・・)

 

ミッションに向かう道中、私、アリサ・イリーニチナ・アミエーラはロシア支部から極東支部に配属され、苛ついていた。

 

なんでいくら激戦区とはいえ新型の私がこんな世界の最果ての地に来なければならないのかと。

 

それに極東のゴッドイーター達は不真面目で本当にこれが私と同じ選ばれたゴッドイーターなのかと信じられなかった。

 

そして極めつけは私達の乗るジープに奇妙なバイクで並走している男だ。

 

見た目も黒いジャケットと黒いズボンと赤いマフラーをして頭にアラガミの所為で今は少なくなった虫のような仮面を被っている。

 

ふざけた格好をしている上にもっとも許せないのがアラガミを神機なしで殺せるなんて子供でも分かる嘘をついてる事だ。

 

私はパパやママの仇をとる為に苦しくて辛い訓練に耐えてきた。

 

ゴッドイーターをバカにするのもいい加減にして欲しい。

 

アラガミは銃やミサイルなどの通常兵器さえも通じない。

 

それを素手で殺すと言い張るなんて…。

 

絶対に化けの皮を剥いでやる。

 

「どうしたアリサ、さっきからライダーの方をじっと見てるがそんなにあいつが気になるのか?」

 

そう言うのはヘラヘラしながらジープを運転している第一部隊でリーダーをしているリンドウという男。

 

私になれなれしく話しかけてきたコウタって人もそうですけどあなたもゴッドイーターとしての自覚ないんですか。

 

これだから旧型は。

 

教えてあげますよ、旧型の時代は終わってこれからは新型の神機使いの時代だってことを。

 

 

 

(いくらなんでも嫌われすぎだろう…)

 

先ほどからこっちを睨んでいるアリサの殺気に耐えながらバトルホッパーを運転し思わずため息が出そうになる。

 

これから先彼女とうまくやっていけるのかな。

 

不安になりながらも現場に到着した僕達はアラガミから見えない岩山の陰でミーティングを行う。

 

・・・相変わらずアリサが凄い眼でこっちを睨んできてるな。

 

そりゃ僕が神機を持ってきてないから不思議に思うかもしれないけどさ。

 

正直やりづらい。

 

「さ~て今日もいい仕事日和だ。無事に生きて帰ってくるように以上」

 

そんな僕の心境を知ってか知らずかリンドウさんはいつもの口調でミーティングを始める。

 

と思ったらすぐ終わった。

 

「え、それだけなんですか?」

 

さすがに短すぎのような。

 

もっとこう相手の特性やそれに対処する各自の動きを相談するとかないんですか。

 

前に一緒だった第二部隊のタツミさんですら作戦とかあってもう少し長かったですよ。

 

「サクヤさんも言ってたけどリンドウさんこういう人なの…言うことにいちいち気にしてたら身が持たないそうよ」

 

ユウカが苦笑して僕に話しかける。

 

前にも同じことがあったのか。

 

「いい加減ですね」

 

呆れた表情のアリサ

 

はっきり言うなこの子…。

 

「二人を除いて心が一つになってるようでなによりだ」

 

う、すみません…

 

ダメだな、これから協力しないといけないのに。

 

「ハハッ…冗談だって、そんな悲しい顔すんな」

 

相変わらず感覚が鋭いのか僕の気持ちを察して笑いながらフォローを入れる。

 

仮面で顔が隠れて表情は見えないはずなんだけどな。

 

「期待の新型使いが二人も入って初の任務だがあんまし気張らずにまあいつもどおりにやれってことで」

 

今日の任務は本部に報告する新型神機同士の共同運用データの収集も兼ねている。

 

これが成功すれば新型使いはどんどん増えるらしい

 

とりあえず邪魔にならないようにしないと。

 

「じゃあ命令はいつもどおり3つ」

 

3つか…どんな命令か知らないけど気を引き締めないと。

 

「死ぬな、死にそうになったら逃げろ、そんで隠れろ、運がよければ不意をついてぶっ殺せ…あ、これじゃ4つか?」

 

なんてシンプルで分かりやすい命令…。

 

しかも数間違えてるし。

 

でもリンドウさんらしいな。

 

冗談を交えて緊張を解そうとしているのか。

 

「まあとにかく生き延びろ、それさえ守ればあとは万事どうにでもなる」

 

生き延びればどうにかなる…か。

 

そうですね、生き延びれば僕の体をこんな風に改造したあの神を一発ぶん殴ることができる。

 

「旧型は旧型なりの仕事していただければいいと思います」

 

「はっはっは…せいぜい期待に沿えるように頑張ってみるさ」

 

うわあこの子上官相手によくそんなことを言えるな…怖いもの知らずかそれともただの無謀なのか。

 

リンドウさん実力を知ってたらそんなセリフは絶対言えないよ。

 

言われた当の本人のリンドウさんも気にしてないのか我慢してるの表情と態度からは分からないけど余裕だな。

 

生意気な後輩の態度も軽く受け流す。

 

これが大人の貫禄って奴なのかな。

 

「キャア!」

 

リンドウさんがアリサの肩を軽く叩くとアリサは悲鳴を上げその場から飛びのく。

 

「…ずいぶんと嫌われたもんだな」

 

これは傷つくな…。

 

そりゃ異性にいきなり触られたからってそんなに過敏に反応しなくても…

 

「アリサ、大丈夫?」

 

ユウカが慌てて声をかける。

 

「リンドウさん…さすがにセクハラはちょっと…」

 

ユウカの蔑むような視線がリンドウさんを貫く。

 

当事者じゃないけどこれは結構きついものがあるな。

 

「え!?い、いやいやそんなつもりはないって!」

 

ワザとじゃないにしてもこうなった場合ってどうしても男性の方が立場が悪くなるよね。

 

僕も気を付けよう。

 

「あ…す、すみません!なんでもありません、大丈夫です」

 

「んーそうだな、よしアリサ」

 

急にリンドウさんが右の人差し指の先を上に向ける。

 

「混乱したときはな空を見上げて動物に似た雲を見つけてみろ落ち着くぞ、それまでここを動くな…これは命令だ。そのあとこっちに合流してくれいいな」

 

「な、何でわたしがそんなこと…!」

 

「いいから探せ、な?」

 

ニカっと笑顔でリンドウさんがアリサに笑いかけたあと僕の方に近づいてくる。

 

「あとライダーお前も残って一緒に探してやってくれ、アリサを一人置いておくわけにはいかないからな」

 

そう言いながら神機を持っていない左手で僕の耳を触るリンドウさん。

 

アリサが一人で平気だと文句を言っているがリンドウさんは相手にしていない。

 

「僕もですか?分かりました…それにしてもあんなことがあったばかりだというのにそれでも僕に触れるなんてリンドウさんもしかしてそっちの趣味も…」

 

そう言うとサッとリンドウさんから距離を開けるユウカとアリサ。

 

「…ドン引きです」

 

「リンドウさん、好みは人それぞれですのでなんとも…」

 

「お、俺にそっちの趣味はねえよ!」

 

先ほどの冷静な態度と打って変わり慌てて否定する。

 

「冗談ですよ」

 

初対面の時からやられっぱなしなのでたまには仕返ししないと…。

 

それにリンドウさんが本当に好きな人は見てたら分かりますよ。

 

「…ったく、ほんとかわいい後輩たちだぜ。よしおしゃべりはここまでだ。ユウカ俺たちがまず先に行くぞ」

 

「はい!」

 

二人が滑り降りていく出発した。

 

「なんで私がこんなことを…」

 

文句を言いながらも命令通り空を見て雲を探している。

 

僕も探し始めるか。

 

センシティブイヤーをONにしながらね。

 

さっきリンドウさんが僕の耳に触れたのはそういう意味なんだろうな。

 

僕らから数メートル離れたリンドウさんとユウカが聞こえる。

 

普通の人間では声が聞こえない距離だが僕ならはっきりと聞き取れる距離だ。

 

「あいつのことなんだがな…どうも色々ワケアリらしい、まあこんなご時世…皆いろんな悲劇を背負ってるっちゃあ背負ってるんだが…」

 

なるほど確かにアリサにはあまり聞かれたくない内容だな。

 

これならわざとアリサに離れるような命令を出したのをうなづける。

 

「同じ新型のよしみだ…あの子の力になってやれ、いいな?」

 

「はいもちろんです」

 

「うっしいい返事だ、じゃあ行くか!…って靴紐がほどけちまってるな…悪い先に行って偵察してきてくれ、結び終わったら俺もすぐ向かうからよ」

 

「了解」

 

ユウカの足音が遠ざかっていく

 

「…あとライダー聞いてたんだろ?お前にもあの子の事を頼む、なんだかんだであの子がアナグラの中でいい意味でも悪い意味でも一番注目してんのがおまえさんのようだからな」

 

あ、やっぱり聞いているのに気づいてましたか。

 

分かりましたよリンドウさん。

 

僕も力になれることがあったら協力します。

 

「さっきからボケっと立っていますが真面目に探しているんですか、私は早くこんな命令終わらせて合流したいんです」

 

「あ、はいすみません」

 

こんな調子だけど僕はアリサと仲良くやっていけるのだろうか。

 

 

                                       つづく



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

13話

お気に入り登録者がいっぱい増えて嬉しいな。
まるでマグロから抽出したタウリンエキスを飲んでハッスルしているマンモス怪人のようにやる気がみなぎってくるぞ。
ただ時間がないから打つ暇がない。

それではVSシユウ戦の13話始まるよ。


俺、仮面ライダーBLACKはリンドウさん、ユウカ、そして新たに極東支部に配属となった新型の神機使い『アリサ・イリーニチナ・アミエーラ』と共に廃墟となったビルが立ち並ぶ贖罪の街でシユウ討伐のミッションに参加していた。

 

だがその途中でリンドウさんがアリサに触れるとアリサはなぜか取り乱し、彼女を落ち着かせるため空を見上げて動物の形に似た雲を俺と探すことになる。

 

その後なんとか動物に似た雲を見つけ、廃ビルの陰にいるリンドウさんとユウカと合流を果たす。

 

「遅くなってすみません」

 

「おう、なんかあったのか?」

 

「…実は僕の方は犬っぽい雲を見つけたんですけどその…アリサが見つけられなくて…」

 

俺が先に見つけたのがよっぱど悔しかったのかそれとも自分で見つけたかったのか。

 

結局俺の手も借りず文句言ってた割には細長いヘビに似た雲を見つけるまで一人で探してたからな。

 

そうとう負けず嫌いだわこの子…。

 

「余計な事は言わないで下さい」

 

「ぐえっ!」

 

足を思いっきり蹴られた。

 

「ほんとの事なんだから蹴らなくてもいいだろ」

 

そう言ったら合同戦闘訓練でダミーアラガミと戦ってた時と同じような鋭く射抜くような眼で睨まれた。

 

やばい逆らったら命がない…。

 

リンドウさん達に助けを求めようとして視線を合わせようとすると二人は俺から視線を逸らす。

 

「それよりアラガミは?」

 

「お、おう…あそこだ」

 

おいこっちは無視か。

 

特にリンドウさん、あなたが命令出した結果こうなったんでしょうが、責任取りなさいよ。

 

まあ冗談がこれくらいにして状況が状況だから仕方ないか。

 

さてリンドウさんが指さす方向には二匹のシユウがコクーンメイデンを捕食していた。

 

コクーンメイデンも必死に抵抗したのだろう。

 

放たれた毒針がシユウ達に突き刺さっている。

 

しかしその針も毒もシユウに通じず体内に吸収され捕食されていく。

 

シユウとは人の姿に似て背中に手のような形をした翼『翼手』を持つ中型のアラガミ。

 

いかなる時も常に腕組みを解かず変わりに長く硬い翼手で攻撃をしてきて。

 

その上、攻撃方法は肉弾戦だけじゃなく翼手の掌にエネルギーを集中させて放出する火の玉みたいな攻撃を仕掛けてくる。

 

どういう原理だよってツッコミたい。

 

前に戦ったコンゴウがパワーならシユウはスピードとリーチも兼ね備えるやっかいな相手だ。

 

まともに二体同時に相手したら勝ち目はない。

 

そこでリンドウさんの指揮の元で作戦を決める。

 

作戦内容はまずアリサとユウカが砲撃モードで狙撃。

 

同時に俺とリンドウさんが飛び出してそれぞれシユウを相手にしながらシユウ同士が連携できないように闘いながら引き離していき、後から狙撃したアリサはリンドウさん、ユウカは俺と合流し2対1で各個撃破する。

 

作戦通り二匹のシユウを引き離す事に成功。

 

 

 

 

「さてここからが本番だ」

 

俺とユウカの前にシユウが立ち塞がる。

 

周囲に他のアラガミがいなかったけどさっきのコクーンメイデンのようにこいつらに喰われたのか?

 

数が減っているのは助かるけどその分こいつの力はデータ以上の筈だ。

 

早めに決着をつけないとマズイ。

 

速攻でこいつを倒してリンドウさん達と合流して残りのシユウを倒す。

 

目の前のシユウはかかって来いと言わんばかりに翼手で手招きして挑発してくる。

 

幸いこいつは今油断している。

 

倒すなら今しかない。

 

短期決戦だ!

 

シユウに向かって全力で走る。

 

迎撃しようとシユウが両手から放たれた火球を避けながら距離を詰めて間合い入る。

 

あ、あちあち!これ普通の人が当たったらやばい熱さだ。

 

「トォ!」

 

「ライダー待って!うかつに飛び込んだらダメ!」

 

ユウカが止める声も聞かずにライダージャンプして高く跳びいきなり必殺技の体勢に入る。

 

「ライダーキィィック!!!」

 

決まった!

 

そう思っていた。

 

しかし…

 

この時、俺は完全に忘れていた。

 

シユウの長い翼手が左右から伸びて俺の体を掴まれる。

 

「何!?」

 

そう、いきなり放つ必殺技は破られる確率が高い法則を。

 

その法則通りにライダーキックは破られてしまった。

 

「くっ!放せ!」

 

しまった油断していたのは俺の方だった。

 

ライダーキックで何体ものアラガミを葬ってこれたからこいつも簡単に倒せると慢心してしまった。

 

今更後悔した所でもう遅く両手にガッチリ掴まれて抜け出す事ができない。

 

体をよじって抜け出そうとするがシユウの並外れた握力に握り潰されそうになる。

 

「グアアアアアア!!」

 

「ライダー!」

 

骨がきしみ激痛が走り叫び声を上げ、ユウカが助けようと神機の銃口を向けるが射線の間に俺を出して盾にする。

 

「こ、これじゃ撃てない!?」

 

シユウの奴、俺がいたらユウカが攻撃できないと完全に理解してやがる。

 

なんて悪知恵が働く奴なんだ。

 

伊達にこの周辺のアラガミを食い漁ってたわけじゃないって事か!

 

「ゴハッ!」

 

地面に叩きつけられて背中から激痛に襲われて肺の中の空気と体の中の血を無理やり吐き出される。

 

こ…このまま…だと意識が飛ぶ。

 

ユウカは動けそうにない。

 

仕方ない事だ。

 

まだ彼女はゴッドイーターになってそんなに時間が経っていない。

 

仲間が盾にされたら混乱して攻撃できないのは当たり前だ。

 

ドジったな…でも自分の撒いた種だ。

 

だから自分でどうにかする。

 

「パワーストライプス!!」

 

両手両足首にある黄色と赤のラインから蓄えられていたエネルギーが放出されシユウの指を押し返そうとする。

 

だがシユウも負けていない。

 

俺を握り潰そうと指にさらなる力が籠められる。

 

このままだと力負けする。

 

そう思ったその時。

 

「このおお!!!」

 

シユウが俺に気を取られてる隙に神機をブレードに切り替えたユウカの斬撃がシユウの背中に直撃、よろけて力が抜けた瞬間に一気に力を開放して指を無理やりこじ開けて脱出に成功した。

 

「ゴホッ!ゴホッ!!」

 

体中が痛いし口の中で血の味がする。

 

「ライダー大丈夫!?」

 

転がりながら羽翼の届かない場所まで距離を開けて左腕を右手で抑えているとユウカが駆け寄ってくる。

 

「ああ、何とか…大丈夫だ」

 

あの翼手は厄介だな。あれをどうにかしてからじゃないとライダーキックもライダーパンチも通じない。

 

先に翼手から結合崩壊させないと。

 

こういう時の為に新しい技を考えないといけないな。

 

「ごめん…」

 

「なんでユウカが謝るの?」

 

「だって私が早く助けられなかったからライダーがひどい目に」

 

優しい子だな。この怪我は俺の自業自得なのに。

 

「謝るのは俺の方だ、勝負に焦った所為でいらない迷惑をかけた。」

 

ゆっくりと痛みに耐えながら立ち上がる。

 

「すまない、だからこの件はこれで終わりだ」

 

「…分かったお互い謝ったしこれで仕切り直しだね」

 

「ああ、第二ラウンドの幕開けだ!」

 

 

 

 

 

【アリサside】

 

 

ユウカ達と分かれてだいたい一時間くらい経っただろうか。

 

私とリンドウさんはついにアラガミを追い詰める。

 

「ギャアアアア!!!」

 

断末魔を上げて首から血を吹き出してばったりと倒れるアラガミ。

 

「ハアハア…」

 

「お疲れさん、あとは再生できないようにコアを取り出すか」

 

アラガミから流れる鼻につくような体液の匂い、この緊張感

 

これが実戦、演習とはまるで違う。

 

警戒しながら正確な動きでアラガミからコアを取り出している。

 

息切れの激しい私に対してリンドウさんは呼吸をまったく乱していない。

 

サボっていたわけじゃない。リンドウさんも積極的に闘っていた。

 

リンドウさんの神機は第一世代の近距離型の神機

 

銃型と違いシユウの間合い入り攻撃を避けながら動くので運動量は援護していた私以上の筈なのに。

 

リンドウさんはリーダーである程度の実力はあると思っていましたがまさかこれほどとは。

 

旧型の認識、いえこの人の認識を改めないといけない。

 

いい加減のようですが実力は確かのようです。

 

「これでよしっと…アリサ、ライダー達と合流するぞ」

 

「は、はい」

 

この人の実力は分かった。

 

でもあの神機を持ってこなかったライダーというどうなんでしょうか?

 

ユウカの足を引っ張って邪魔になっているかもしれない。

 

なんであんな人がフェンリルに所属しているのでしょうか?

 

手遅れになる前に早く追い出さないと。

 

だが現実はまったく違った。

 

「トオ」

 

「グギャ」

 

ライダーの拳がアラガミの頭部を殴り飛ばす。

 

通常兵器さえアラガミにはダメージを与えられない。

 

ましてや人間の腕力など絶対に無理の筈。

 

にもかかわらずシユウは素手のライダーの攻撃にダメージを受けている。

 

信じられない…。

 

アラガミを殺すのに絶対必要な神機を使わず素手で渡り合えるなんて。

 

彼は本当に人間なんでしょうか。

 

もしかしてアイツもアラガミ!

 

パパ…ママ…。

 

「あいつは紛れもなく人間だよ、それだけは分かってやってくれ」

 

神機を持つ手に力を籠めたら背後からリンドウさんの声がして振り返る。

 

「あいつにも色々あったんだ。詳しい事は知らねえがどうもあいつは誰かに体を弄られて人体改造されたらしい」

 

「じ、人体改造!?」

 

確かにライダーは人の姿とかけ離れた姿をしていると思ってましたがまさかそんな理由だったなんて…。

 

一体誰が彼をあんな姿に…

 

「俺たちゴッドイーターは因果な商売だ、なにかを護る為に戦ってもアラガミを倒す力を見た奴ん中にはその力を見て恐怖してまるで化け物を見るような目で畏怖する」

 

…確かに私達ゴッドイーターも神機を使えるようにするために体内に腕輪からオラクル細胞を植え付けて定期的に補給しているから厳密に言えば人間じゃないかもしれません。

 

「でも私達は人間です、でも彼は…」

 

「そう確かに俺たちは人の形と心を保っているがライダーは人の姿じゃねえ…」

 

真剣な表情で先ほどのふざけた感じが一切ない。

 

「だがあいつは…心は人のままで口に出さねえが自分の身体が変わっていく恐怖と戦ってるんだ」

 

そう話すリンドウさんの顔は辛そうだった。

 

「アリサ、お前に昔何があったか俺は知らねえ、旧型だの新型だの好きにすればいいさ、けどなライダーは…あいつのことは仲間として受け入れてくれ、頼むこのとおりだ」

 

あなたを旧型と馬鹿にしてた私に頭まで下げるなんて。

 

「…なんで彼をそこまで信用できるんですか?」

 

リンドウさんがそこまで彼を信用する理由が分からない。

 

「見ちまったからな。あいつと初めて会った時に自分の身体を盾にして人を守る姿を…人の心がなきゃあんな事できねえよ」

 

心…そんな曖昧なものを信じるなんて…

 

でもなぜでしょう、普段の私なら呆れて鼻で笑ったでしょうがリンドウさんの言葉と今戦っている彼を見ると私も信じてみたくなったのは…。

 

「どうやら決まるみたいだな」

 

「このお!」

 

ユウカの砲撃がシユウの翼手に直撃し爆発し結合崩壊を起こす。

 

彼女も傷だらけで服も泥まみれだ。

 

それだけ激しい戦闘を繰り広げたのだろう。

 

爆煙が晴れると立っているのもやっとな満身創痍のシユウ。

 

「翼手の破壊を確認!今よ!ライダー」

 

シユウが怒りで活性化してユウカに襲い掛かろうと突進していく。

 

「させない!キングストーン!フラッシュ!!」

 

ユウカを護るように割って入ったライダーのベルトのバックルから光が放たれシユウが立ち止まりひるむ。

 

いったい何をするつもり?

 

「トオ!」

 

両腕を構えた後、ライダーは自分の身長の数倍高く飛び上がる。

 

「なんてジャンプ力!?」

 

私たちゴッドイーターでもあんなに高く跳べない。

 

「ライダーパァァンチ!!!!」

 

ライダーの赤い拳がシユウの頭を殴り飛ばした衝撃で頭が結合崩壊を起こす。

 

すごい威力。拳でアラガミの頭が砕けるなんて初めて見た…。

 

「ライダーキィィック!!」

 

再び飛び上がったライダーの赤く輝いた右足がシユウの体を蹴り飛ばした。

 

「ぐ…ぐ…グギャャ!!!」

 

赤い炎に包まれながらシユウは消滅する。

 

すごいそして恐ろしい強さ…。

 

炎の中に佇むライダーの背中に私は目を離せなかった。

 

 

 

 

 

 

極東での初ミッションは驚きの連続だった。

 

旧型使いながら高い実力を持っている雨宮リンドウさんと人間とかけ離れた姿をしながらも人の心を持っている仮面ライダーBLACKという人物…。

 

この激戦区である極東には驚くこと多すぎる。

 

そして一番驚いた衝撃の事実は…。

 

ミッションが終わりヨハネス支部長への報告を終えてエントランスに集合した時だ。

 

すべてはリンドウさんのこの一言で始まった。

 

「いや~今日もよく働いた。ライダーこれからビールで一杯やる偶には付き合え」

 

ミッションが終わってすぐお酒ですか、まあプライベートまではとやかく言いませんけど。

 

お酒ってそんなに美味しいんでしょうか?

 

「え?俺、十五歳なんでお酒飲めませんよ、なんでか知らないけど配給品にもビールが混じっていて飲まずに保管はしてますけど」

 

一瞬あれだけ騒がしかったエントランスが無音になる。

 

「「「「十五歳!!!?」」」

 

そして我に返った人たちが一斉に驚いて私達の方に振り返る。

 

「えっと…い、言ってませんでしたっけ?」

 

「「「「聞いてない!」」」」

 

「ライダーって俺とタメだったの?」

 

「し、知らなかった」

 

コウタとユウカも知らなかったようで驚いてます。

 

「あ、あいつ年下だったのか…知ってか?ブレンダン」

 

「いや知らなかった、ただ言えるのはタツミ、あいつの方がハタチ過ぎたお前より大人だってことだ」

 

「なんだと!どういう意味だ」

 

「ライダーさん年下だったのか…だからいつもあんなに美味しそうに私のクッキー食べてくれてたのか。よしまた作って持っていてあげよう」

 

「あいつ年下だったのか…なら年上の俺があいつを利用すればさらに稼げるようになるな」

 

「よしパシリに使えそうだ…いややっぱやめとこ」

 

「あらやっぱり年下だったのね…アラガミを殴り倒すって感覚を知りたいから彼のことをもっと知りたくなったわ」

 

「ライダーさんは年下、なら無茶しないようにアドバイスするのもオペレーターの私の仕事ですね」

 

「彼は年下だったのか、お姉さんの魅力で頼んだらバトルホッパーがどんな仕組みで動いてるか見せてくれるかな」

 

「ライダー未成年だからビール飲んだらダメだぞ。トウモロコシをやるからお兄さんに今すぐ全部渡しなさい」

 

「リンドウあなた最近の飲みすぎよ!ライダー君もリンドウに渡さずにビールは次の配給の時に返しておいてね」

 

突然のカミングアウトにエントランスが大騒ぎになる。

 

私も衝撃の事実を知り思考が停止する。

 

そう…彼、あんなに強かったからてっきり年上かと思っていたライダーが実は私と同じ歳だったなんて…。

 

いろいろ秘密がある彼がどういった人間かもっと知りたくなりました。

 

                                        つづく




今年残り日数で話のストックや今後の展開のプロットを作りたいのと話のキリが良いので今年の投稿はこれで区切らせていただきます。
今年も見てくださってありがとうございました。
来年もそしてこれからもよろしくお願いします。
よいお年を。


次回予告 白い超マシンとそれを狙う五つの黒い影。
お楽しみに。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

14話

遅くなりましたが今年もよろしくお願いします。
新章に突入する14話はじまるよ。


天界。

 

アラガミが世界中の大地と緑を食い漁り荒れ果てた荒野になってしまったゴッドイーターの世界と違い花が咲き乱れ、草木が生い茂り、川には水が流れ、鳥や馬などの動物が平和に暮らす緑豊かな世界である。

 

そしてその中央に巨大な神殿がそびえ立っていた。

 

この神殿にこそかつて一人の高校生を死に追いやり体内にキングストーンを埋め込んでゴッドイーターの世界に送り込んだ神と呼ばれる存在が住んでいるのである。

 

そして神殿の奥にある普段は誰も立ち入れない埃だらけの倉庫にはたくさんのガラクタが放置されその中にボロ布を被った一台の白いバイクがあった。

 

その名はロードセクター。

 

かつて先代仮面ライダーBLACKと共に秘密結社ゴルゴムと戦った伝説の超マシンの同型機である。

 

本来なら神から転生した二代目BLACKの手に渡される筈だったがBLACKが反抗した事で神の怒りに触れロードセクターは譲渡されることなく神殿の倉庫に奥深くに封印されてしまっていたのだ。

 

そんな不遇な状況下の中。

 

ロードセクターは自身に内蔵されているRSコンピューターで(あるじ)である仮面ライダーBLACKを探していた。

 

生体マシンのバトルホッパーと違いロードセクターはAIとコンピューターで動く完全な機械だ。

 

効率よく行動し無駄な動きはしない。

 

『No10038ケンサクカイシ……ガイトウナシ……No10039……』

 

しかしロードセクターはもてるすべての機能を使い膨大な情報の中から仮面ライダーを捜索している。

 

それはロードセクターに芽生えた命なのか?

 

それとも入力されているプログラムの所為なのか?

 

それは誰にも分からない。

 

ただ一つ分かっているのは。

 

『仮面ライダーと共に戦いたい』

 

それだけがロードセクターをつき動かしているのであった。

 

だがその作業は決して簡単なものではない。

 

なぜならGEの世界といっても星の数だけ存在する。

 

そしてその世界は一つ一つが少しずつ違うのだ。

 

例えば神咲ユウカの性別が女性でなく男性として存在している世界。

 

オウガテイルの奇襲で命を落としたエリック・デア=フォーゲルヴァイデが運よく助かって生き延びた世界。

 

エリックの妹エリナ・デア=フォーゲルヴァイデが兄エリックを探しに鉄塔の森に訪れオウガテイルに襲われて亡くなる世界。

 

だがエリナ・デア=フォーゲルヴァイデは異世界から来た仮面ライダーBLACKの活躍で助けられた。

 

その事が原因で本来の時間の流れに僅かであるが小さな乱れが発生してしまう。

 

『ピッピッピッピ・・・ガイトウシマシタ』

 

そして今ロードセクターはその小さな乱れを発見。

 

あと数秒で消える小さな乱れを見つけられたのはまさに奇跡だった。

 

いやそれは執念のようなものが引き寄せた奇跡なのかもしれない。

 

その世界に仮面ライダーがいると確信し、ハンドル周辺にあるモニターとランプ、ヘッドライトがまるで歓喜をしめすかのように赤く激しく点滅した!

 

まずはライダーに役立ちそうな情報を神殿のコンピューターから抽出し始める。

 

しばらくして、すべての情報を集め終えたロードセクターは今まで一度も動かさなかったエンジンを動かしフルスロットルで走り出して倉庫の扉をぶち抜いた。

 

「うわあ!」

 

「な、なんだ!」

 

慌てふためく神殿で生活するフードを纏っている神官たち。

 

彼等は神に護られ平穏に暮らしているので争い事に慣れていない。

 

そんな神官たちを一切気にせずロードセクターは走り抜いていく。

 

爆走するロードセクターを止めようと神官たちはとびつきブレーキをかけるが止まることなく、しがみつく神官を振り払いライダーのいるGE世界につながるゲートにたどり着いた。

 

「けっして奴を通すな!このままでは我々まで神のお怒りを受けることになるぞ!?」

 

隊長格の神官がそう叫ぶと他の神官達の顔から血の気が失せて真っ青になり身体を張ってでも止めようする。

 

それだけ彼等たちとって神の怒りは恐怖の対象なのだ。

 

だがロードセクターも負けていない。

 

アタックシールドと呼ばれるシールドを展開して最大の武器スパークリングアタックで神官たちをはじき飛ばしながらついにゲートをくぐり抜けるのに成功した。

 

残されたのは呆然と立ち尽くす神官たち。

 

「くっ!ヘルシューターが完成していないこんな時に…性能は劣るが仕方あるまい、量産型デスランナー部隊に連絡しろ!ロードセクターを回収もしくは破壊しろとな!」

 

「は、はっ!分かりました!!」

 

我に返った神官が伝令を出すと神官たちが走り回る。

 

こうしてロードセクター追撃命令を受けたアラガミとは違う新たな災いの種が仮面ライダーBLACKのいるGE世界に向かっていった。

 

 

                                       つづく

 




ロードセクター
ゴルゴムがオートバイの神様と呼ばれる大門博士に造らせた文明破壊用マシン。
バトルホッパー以上の速さを誇る。
またその速度を生かした『スパークリングアタック』はどんな壁や障害物を粉々に打ち砕く。
ただしオンロード車の為、荒れすぎた道や山に登ったりはできない。
別名 愛人 嫁二号 ピザ屋


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

15話

今回の話は作者の独自解釈が含まれますので苦手な方はご注意ください
それでは今回も短いですが15話始まります。



ロードセクター脱走から数日後。

天界での騒動を知る由もない仮面ライダーBLACKはコウタやユウカと共に榊博士の研究室で講義を受けていた。

 

【ライダーside】

 

「アーコロジーという言葉を知ってるかい?」

 

いやそれより榊博士、気になることがあるんですけど。

 

モニターに映し出されている『ペイラー榊のなぜなに講義』という文字。

 

それは気にしてないからいいんです。

 

文字の下にいるデフォルメされた指し棒を持つ榊博士とオウガテイルもいいんです。

 

けどその間にいる腕組みして首をかしげて頭の上に大きな『?』を出している黒くて赤い目の見覚えのあるデフォルメのキャラクター。

 

それもしかして俺ですか?

 

誰が描いたんだろう?

 

私、講義よりそっちの方が気になります。

 

「アーコロジーとは単体で生産、消費活動が自己完結している建物を指す言葉でね」

 

おっと今は講義の方に集中しなきゃ。

 

えっと…極東支部には地下に向かって食料や神機などの各種物資の生産を行うプラントがあって、外周部には対アラガミ装甲壁や神機使いをはじめとした強固な防衛能力が存在しているっと…よしできた。

 

アーコロジーの説明が始まりその内容をしっかりとノートに書き写す。

 

この時代、紙は大変貴重でこのノートは神機使いと同じ立場の俺にも配布されたものだ。

 

無駄にはできない。

 

榊博士の講義は勉強になるがその分覚えることも多くて大変だ。

 

内容が多すぎて頭が混乱しそう。

 

神機使いはただ神機を振り回せばいいってもんじゃないんだな…。

 

俺って前世の頃はそんなに勉強は好きじゃなくてどちらかといえば嫌いなタイプだったのに。

 

環境が変わって心構えも変わったんだろうな。

 

クイックイッ

 

榊博士の講義を聞いていたら突然服の袖を引っ張られる。

 

「(何?)」

 

「(ねえ、アリサは?)」

 

引っ張られた方を見ると隣に座っているユウカが小声で話しかけてきた。

 

「(…今日の座学の内容がアラガミとは関係のない座学でしたら興味ありませんと言って第二部隊の任務に参加しに行ったとヒバリさんが言ってたよ)」

 

「(ありゃりゃ…まああの子らしいといったらあの子らしいけどこのままじゃさすがにいけないわね)」

 

「(そうだね…)」

 

榊博士に聞かれないように小さな声で返事する。

 

今日も座学が始まる前にアリサをエントランス内で探してたらアリサの伝言を預かっていたヒバリさんから伝えられた。

 

アリサ・イリーニチナ・アミエーラ…。

 

ここ数日彼女と過ごして気づいたけどアリサのアラガミに対する憎しみは他のゴッドイーターと違って異常すぎる気がする。

 

噂ではアリサの見下すような態度と協調性のない行動で他の神機使いとも仲が悪いらしい。

 

新型ってだけでそんなにプライドが高くなるものなのか。

 

俺には理解できないな。

 

「ん…?」

 

ふと隣を見るとコウタが眠そうにしている。

 

また深夜までバガラリー見てたな。

 

しょうがない奴だ。

 

「ただそれにも問題があってね、それは収納可能な人口に限りがあることなんだよ」

 

「!?」

 

あれ?今まで暇そうにあくびしていたコウタが眠気をとばしていきなり目を覚ました。

 

どうしたんだ?

 

「君たちも知っての通りこの極東支部の周囲には広大な外部居住区が形成されている、しかし彼らすべてを収容できるだけの規模はまだこの支部にはない、外周部に先ほど話したアラガミも捕食できない対アラガミ防壁を張り巡らせることが今できる最大限の対処策なんだ」

 

「…それだけで足りるのかな…現に装甲は頻繁に突破されている…」

 

珍しく不安そうに初めて榊博士の講義で質問するコウタ。

 

「だからその為にゴッドイーターの防衛班も配属されている」

 

確かに僕も何度か防衛班の第二部隊の応援に出撃している。

 

時間がある時にはライダーの力で瓦礫の撤去をしたり壊された防壁の修復の手伝いも行った。

 

だがコウタの言う通り人手と物資が足らずに完全に修理できていない箇所がいくつも存在し今でも応急処置で壁を塞いで監視している。

 

いくらそこを重点的に目を光らせても所詮は気休めでしかない。

 

しかもその数はどんどん増えていっていて手が回らないのが現実だ。

 

このままだと確実に見落としができてしまい、アラガミに再び攻められる。

 

「そう…ですよね…すんません…」

 

「いや、すまない…コウタ君のご家族は外部居住区に住んでいるんだったね…軽率な物言いを許してくれ」

 

「いえ…俺はただ…」

 

そうか、コウタの家族は外部居住区に住んでいたのか。

 

だから博士から絶対に大丈夫と言ってほしかったんだろうな。

 

そういや以前に第二部隊の隊長タツミさんから聞いたことある。

 

神機使いの親族もしくはそれに近い者は優先的に第8ハイブにある外部居住区の居住件を得ることができると…。

 

その為アラガミから家族を護る為、危険な神機使いに志願する者が後をたたず大半は最初の適合試験で落とされ涙を呑み、またうまく合格できても実戦で大怪我や命を落とす者が多い…。

 

『まあこんなご時世…皆いろんな悲劇を背負ってるっちゃあ背負ってるんだが…』

 

リンドウさんの言葉を思い出す。

 

ふだん明るくて調子のいいことを言うムードメーカーのコウタも家族を護る為に神機使いになった口だったのか。

 

「本当はアナグラを地下に向けて拡大して内部居住区を増やす計画もあったんだけどね…」

 

地下か…確かに住民を避難させられる広さは確保できるけど落盤や酸素の問題があるしなによりアラガミに攻められたら我先に逃げようと混乱する。

 

そして地上に上がる地下エレべーターに乗るのに何度か分けなければならない。

 

そういや昔見た仮面ライダーBLACKでゴルゴムがマンションの地下に怪人牧場を作って夜な夜な催眠術を掛けた住民から生体エネルギーを吸い取り怪人を育てる話があって正気を取り戻した住民が地上に上がるエレベーターに殺到して騒ぐ場面があったな。

 

あれは逃げる人も少なく創作物だからまだ大きな混乱に描かれてなかったけど現実に起こったら…。

 

いつアラガミに襲われるか地下が崩落するか分からない恐怖に耐えきれず一部の住民がパニックなって暴徒と化したら避難がさらに難しくなってしまう。

 

地下に建設するのはあまりいい案とは言えないかもしれないな。

 

「でもその計画をより安全で完璧にしたのが『エイジス計画』なんだよね」

 

「…そうだね、極東支部の地下プラントの多くの資源リソースは海の向こうにあるエイジス島建設に割り当てられてるんだ…その話はまた今度にしようか」

 

なんだ?いつも説明好きの榊博士がエイジス計画の説明はあまり言いたくような素振りだな?

 

こうしてコウタの不安と俺の中に小さな疑問を残しながら榊博士の座学の時間は終わった。

 

後にこの不安と疑問が同時に大きな闘いと悲しい別れを呼び込む事になるとは知らぬまま…。

 

 

 

                                    つづく




ライダーの地下の下りは知識のない作者の妄想なのであまりつっこまないでほしいです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

16話

チェックしてたら筆が乗って加筆修正をしていたら思ったより時間がかかりました。
本当に申し訳ない。
それでは16話始まるよ。


【ユウカside】

 

 

(コウタってああ見えて結構複雑な事情を抱えてたんだな……)

 

榊博士の講義が終わりコウタは部屋に戻り私、神咲ユウカは同僚のライダーと一緒に講義内容をアリサに伝える為にエントランスに向かっていた。

 

今日の講義の中で私はコウタの家族が外部居住区に住んでいて家族を養う為にゴッドイーターに志願したというコウタの意外な一面を知った。

 

普段のコウタは明るくすぐふざけて場を和ませるムードメーカー。

 

初めて会った時もいきなりガムを進めてきたけど最後のガムはもうコウタの口の中だったという抜けている所があり、俺の方が少し先に来たから先輩だなといってきたりと正直第一印象が『何この人?』って感じだった。

 

その後、エントランスやミッションで会ったりするたびにサクヤさんの好きな人って誰なんだろうなと話してきたりどっちがアラガミを多く狩れるか勝負を申し込まれたりとアリサの言葉を借りるなら少し浮ついたなにも考えていない人なんだなと思っていた。

 

けどそれは私の勝手な思い込みでそんな浅はかな考えを恥じた。

 

コウタにも背負っている大事な存在があったのだから。

 

私は、とある村の出身だった。

 

村といっても極東支部の外部居住区に住むことができなかった何組かの家族が寄せ集まって廃材を積み上げただけの粗末なバリゲードの中であばら家を建てて生活している小さな集団だった。

 

私は孤児で赤ちゃんの頃にかごの中に薄い毛布にくるまれ村の入口に放置されていたらしい。

 

理由は分からないが食べ物も少ない時代だ。

 

口減らしの為に捨てられたのだろう。

 

村の人たちは厄介者だと見捨てようとしたけど一組の夫婦が育てると名乗り出る。

 

私を拾ってくれた夫婦は子供を流行り病で失い、自分達も元々身体が弱くもう子供が作れないと宣告されていた。

 

赤ん坊の私に子供の面影を見て身代わりだといじめてくる男の子がいて泣かされていたけど……でも、そんなこと関係なかった。

 

泣いてたらいつもお母さんがギュっと抱きしめてくれた。

 

私はそれが嬉しかった。

 

捨てられた事は辛くないといえば嘘になるけど、でもそれ以上に私は本当の父と母のような愛情を受けて成長し幸せに暮らしていたのだから。

 

けどその幸せは突然を終わる。

 

住んでいた村をアラガミが襲撃してきたのだ。

 

「バリケードが食い破られたぞ!」

 

「もうだめだ!うわああ!!」

 

「にげ…ギャアアア!!」

 

「神さま!!!!」

 

襲って来たのはオウガテイルの群れ。

 

当時の力のない子供だった私と武器を持たない村人では脅威の存在だった。

 

村人は抵抗もできずただなすべもなく蹂躙されていく。

 

外から悲鳴や建物が壊される大きな音、恐ろしいアラガミの鳴き声が聞こえる中。

 

私は両親と一緒に家の中に隠れていた。 

 

怖い、怖いよ…誰か助けて…

 

神様…。

 

お父さんは裏口の扉を少し開けて辺りを見回し、お母さんは金庫から必死に食料を出してカバンに詰め込んでいた。

 

食料はなによりも貴重だからどの家も奪われないように金庫に締まっている。

 

それがこの村の常識だ。

 

でももうそんなこと言ってられない事態になっている。

 

アラガミにとったらこんな金庫なんか簡単に噛み砕いてしまうのだから。

 

「いいか?このカバンを持ったらなにがあっても私達に構わず行くんだぞ」

 

「静かになったら裏口から出て行きなさい、いいわね」

 

お母さんがカバンを渡して怖くて振るえる私をいつもみたいに優しく抱きしめる。

 

そして今日はお父さんも一緒に力強く抱きしめてくれた。

 

泣いていたらいつもしてくれる。

 

今日はお父さんも一緒だ。

 

いつもより暖かいな。

 

そう思うといつのまにか振るえが止まっていた。

 

「お父さん達も一緒に逃げようよ!」

 

「身体か弱い私たちがいたら足手まといになる、だからおまえだけ逃げなさい」

 

「いや…私もお母さん達と一緒がいい!」

 

私は二人がやろうとする事を理解してしまい泣きながら父と母の袖を掴んで止めようとする。

 

「ここは危ないの分かって」

 

「ユウカと一緒にいたこの数年間は私たちは幸せだったよ、だから私達の分まで生きて!」

 

袖を掴んでいた私の手から力が抜けて袖から離れゆっくり下ろされる。

 

二人の意思は固く止められなかった。

 

「今ならこちら側にはアラガミはいない、さあ行くんだ!」

 

父と母が裏口の扉を開けると私は外に突き飛ばされた。

 

『……』

 

『……』

 

『『………』』

 

私は慌てて扉に駆け寄ろうとしたけど父と母のいつも見ていたあの優しい笑顔で私にある言葉を残しながら扉は無常にも閉ざされた。

 

「お父さん……お母さん……」

 

涙を必死に抑え、家に背を向けて走り出した。

 

「……行ったか?」

 

「……ええ」

 

「あの子は幸せになるだろうか?」

 

「なる決まってますわ、だって私達の娘ですもの」

 

「そうだな、自慢の俺達の娘だ!」

 

「…愛しているぞ」

 

「ええ、私もよあなた!」

 

二人が玄関を開けるとそこには三匹のオウガテイルがこちらを振り向く。

 

「さあこっちに美味そうなエサがあるぞ、来い!」

 

「そうよ、こっちよ!」

 

お父さんとお母さんは畑仕事用の鍬や鎌を持って自ら囮となりアラガミから私を逃がしてくれた。

 

私は振り返ることなく夢中で走り遠くまで逃げて気がついて振り返ると村のあった方向から黒い煙が立ち上っていた。

 

村は滅びた…。

 

なにもかも無くなった…。

 

美味しいお菓子を作ってくれた近所のおばさんも……。

 

一緒に遊んだ友達も……。

 

私をいじめた男の子も……。

 

私の家も……。

 

悲しかったり楽しかった思い出も……。

 

そしていつも温かくおかえりって迎えてくれたお父さんとお母さんも……。

 

なにもかも……。

 

『逃げろ!ユウカ!』

 

『生きなさい私達の分まで』

 

『『愛する我が娘よ!』』

 

最後に見た父と母の笑顔と言葉を思い出す。

 

私は二度目の家族とあの温もりが永遠に失われた事を頭で理解して実感し声にならない叫ぶを上げた。

 

その後、アラガミに村を滅ぼされて両親を失った私はショックと疲労で倒れていた所を巡回中のゴッドイーターに拾われて保護される。

 

保護され極東支部に運ばれた時、私に神機使い適正があると言われた。

 

もう少し早く私に神機使い適正があると分かっていればお父さんとお母さんを安全な壁の向こうに避難させて育ててくれた恩返しができたのに…。

 

やっぱりこの世界に優しい神様なんていやしない。

 

いるのは人に害をあだなす偽りの神様だけだ。

 

ならそんな神様はすべて滅ぼそう。

 

生きてほしいと願った両親の意思に背く事になるかもしれないけど……。

 

私は生きる為にそして同じような境遇を減らせればと思いアラガミに対する憎しみを胸に秘めて泣きながら志願した。

 

そして今、神咲ユウカは極東支部で人類の敵アラガミを狩るゴッドイーターとしてここにいる。

 

 

 

そして現在。

 

私は歩きながらちらりと横目でもう一人の同僚を見る。

 

仮面ライダーBLACK。

 

バッタような仮面と服の上からでも分かる筋肉質な体。

 

神機なしでアラガミと戦える規格外な存在。

 

過去の経歴は年齢以外は一切分かっていない。

 

本当に私と同じ16歳だなんて信じられないけど…。

 

鉄塔の森にいた所を保護してそのままフェンリル入りしたという人物。

 

彼にも何か言えない事情があるのかな。

 

「どうしたの?」

 

「え?ううん、ねえコウタの事知ってた?」

 

講義の時、両親が生きているコウタの話を聞いてつい羨ましいと思ってしまった。

 

コウタを妬んでも仕方ないのに。

 

嫌な子だな私。

 

「…いやただシユウ討伐のミッションの時にリンドウさんがアリサの態度を見てこんな時代だから誰かしら何か背負って生きていると言っていたからコウタもアリサと同じようにゴッドイーターに志願した理由がなにかあるんじゃないかと思っていたけどね」

 

「リンドウさんが…そっか…」

 

そうだよねアラガミの所為で不幸になったのは私だけじゃない。

 

アリサの目を見てれば分かる。

 

あれは私と同じ大切なものを奪われた目だ。

 

一時期の私もそうだった。

 

けど私を保護してくれた神機使いの人や支えてくれたアナグラの職員さん達がいたから悲しみから立ち直れた。

 

私を支えてくれた人達のように今度は私がアリサを支えられる人になりたい。

 

悲しみを誤魔化す為にただアラガミと戦って狩り尽くす存在だけになるのは辛すぎるから。

 

だからアリサが話してくれるまで私は信じて待ってるよ。

 

                                       つづく




選ばれたコウタの家族と選ばれなかったユウカの両親。
同じ養子でも愛を与えられたユウカと与えられなかったBLACK。
そんな対照的な四人をテーマにした今回の話。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

17話

【ライダーside】

 

コウタの家庭環境とゴッドイーターに志願した理由を知り感傷に浸りながらユウカとエントランスに足を運ぶとなにやらいつもより騒がしい。

 

なんだろ?いつもの仲間内でワイワイ騒いでいるというより言い争っているような感じだけど。

 

ソファーの方に人だかりがある。

 

騒ぎの中心はあそこか。

 

「すみません通ります」

 

「ちょっと失礼します」

 

人だかりをかき分けながらユウカと向かっていく。

 

そこには…。

 

「何考えてんだ馬鹿野郎!」

 

「私は間違ったことはしてません!なによりもアラガミを撃退することが最優先にして被害が広まらないようにしたまでです」

 

「だからってまだ避難が終わっていない中で戦闘始める奴があるか!」

 

普段温厚なタツミさんが激怒してアリサと言い争いをしていたのである。

 

確か今日はアリサは第二部隊に同行したと聞いていたけど。

 

「一体なにがあったんですか?」

 

「ああ、それは…」

 

「おおライダー、それにユウカも!お前達も来たのか!ちょうどいいお前らからもこの分からず屋に言ってやってくれ」

 

近くにいた神機使いに言い争いの原因を訪ねようとしたらタツミさんが俺に気づいて僕を呼ぶ。

 

やっぱりこの姿と身長なら人ごみの中でも結構目立つんだな。

 

なにしろ変身したら身長がいきなり伸びていて、フェンリルに入隊した時に身体検査で詳しく測ってみたら身長が198,7㎝と体重が87㎏だったから。

 

これもライダーになった影響なんだろうか。

 

僕の身長は極東支部の中でも高身長のリンドウさんやシックザール支部長より高いからそりゃすぐに気づくよね。

 

それで騒ぎの原因を聴くとタツミさんが怒る理由に納得した。

 

なんでも外部居住区の装甲壁を破壊したアラガミが居住区に侵入してしまう事態が発生。

 

すぐに防衛班の第二部隊に出撃要請が入り、そばにいたアリサが同行を志願すると隊長のタツミさんがこれを承諾。

 

現場に到着したらコンゴウと戦った時のようにまず住民の安全を最優先にすべく威嚇射撃しながらアラガミを引き離す作戦を立てる。

 

しかしアリサが住民の避難が完了する前にアラガミに対して砲撃をしてしまう。

 

それが文字通り引き金となり住民の目の前で戦闘が開始され、現場が逃げ惑う住民で大混乱になり戦闘と避難誘導を同時にしなければならない状況になってしまった。

 

負傷者が何人かでてしまったが第二部隊の迅速な対応のおかげで転けた時の打撲や擦り傷で大した傷ではないらしい。

 

そして今、アリサの軽率な行動に対して市民の安全第一に考えているタツミさんが説教している最中だそうだ。

 

アラガミが住民に危害を加えようとしてやむを得ず発砲してしまったならともかくそうじゃないなら、これはどう考えてもアリサに非がある。

 

タツミさんは現場を取り仕切る隊長なんだからアリサは上官の命令に従わなきゃダメだろう…。

 

それにしても居住区に家族がいるコウタがこの場にいなくてよかった。

 

いたらコウタもタツミさん側に加わり余計収集が収拾がつかなくなっていただろうから…。

 

隣にいるユウカもそう思ったのかひきつった顔をしている。

 

「戦場に巻き込まれた人の気持ち考えた事あるのか!あんな所で戦闘が始まったら住民がパニック状態になって余計に収拾つかなくなるだろうが!戦術に関して頭が回るなら町の外でやってる掃討戦とは作戦の自由度が違うってことを理解して巻き込まれた人達の事も考えてやれよ!」

 

「被害を気にするならまず広がる前にアラガミを撃退すればいいだけです、なのに戦術より人の気持ちですか?そんな事でアラガミが撃退できるとでも?話になりませんね」

 

「なんだと!もういっぺん言ってみろ!?」

 

「落ち着けタツミ」

 

「タツミさん、暴力はダメです」

 

掴みかかろうとするタツミさんを必死に抑えるブレンダンさんとカノンさん。

 

ただ隠そうしているが表情をよく見ればブレンダンさんとカノンさんもアリサの言葉に怒っている。

 

自分達の仕事を否定されたんだ。

 

怒って当然だろう。

 

ただアリサの言いたいことも分かる。

 

確かに彼女の言う通り被害が拡大する前にアラガミを撃退した方が早いだろう。

 

けどタツミさんの言うようにパニックになってしまったら避難が遅れてそれだけ犠牲者が出てしまう。

 

そうなってしまったら防衛班はその存在意義を失うことになる。

 

住民を護りそしてアラガミも狩る。

 

口では簡単に言えるんだけどそう都合よくうまくいかない。

 

アリサとタツミさんの言い争いはさらにヒートアップする。

 

このままだとマズい。

 

「二人共、もうやめてください」

 

間に割って入り二人の仲裁をする。

 

こんな時は大きなこの体は便利だな。

 

「ライダー?」

 

「なんですか?いきなり関係ないのに入ってこないでください」

 

「確かにアリサの言ってることは正しい、アラガミを狩る事に関してゴッドイーターとしてなにも間違っていない。迅速にアラガミを倒せばそれだけ居住区の人達は安心する。それは認めるよ」

 

「お、お前までそんな事を言うのか!」

 

「おや見直しましたよ、あなたもなかなか分かっているじゃないですか」

 

「けど一つだけ大事な事を見落としているよ」

 

アリサの方を向いて目線に合わせて屈んで目をじっと見る。

 

「な、何ですか?」

 

傷つくからそんなに怯えないでよ。

 

「それと同時に第8ハイブに住んでいる人達の安全を護る事も大切なんだ」

 

「な、なぜです!?アラガミを駆逐する以上の優先すべき戦術なんか存在しません!」

 

怯えながらも負けじと睨み返してきた。

 

「部隊にはそれぞれ役割が存在するんだ第一部隊が外で人類の脅威となる凶暴なアラガミの討伐なら第二部隊は戦う力のない人達をアラガミの脅威から護るのが仕事だ」

 

外でアラガミを狩る第一部隊と内で住民を守護する第二部隊。

 

その二つが存在するからこそ極東支部はアラガミと戦える。

 

「タツミさん達第二部隊には人々をアラガミから護るという信念がある、その信念を貶す行為を僕は許さない」

 

「気持ちの次は信念ですか?あなたまでそんな甘い幻想を!」

 

「居住区にいる住民の中にはアナグラで働いている人もいる。その人たちがいるから極東支部や僕達はこうして活動できている、アナグラが機能しているのも君がこれまでここで食した食べ物もその一つだ」

 

「そ、それは…」

 

ツバキ教官からアナグラの内情を聞かされていたアリサが視線を逸らす。

 

第8ハイブの住民の中には自ら職員として志願しアナグラで働いている人達が何人も存在する。

 

外で集めた素材や薬、バレット()を売ってくれるよろず屋のおじさんやいつもアナグラを清潔に保ってくれる清掃員のおばさんもその内の一人だ。

 

最初、おじさんとおばさんは僕の姿と力に警戒して怖がっていたけど時間が空いてる時に二人の雑用の手伝いをしていく事で徐々に警戒心を解いていき世間話をしてくれるようになりここで働いている理由を話してくれた。

 

よろず屋のおじさんはかつては国を護る軍人でゴッドイーターに志願したが神機との適合率がなかった為にその願いは叶えられなかった。

 

だから少しでもゴッドイーターの力になれればと危険を承知で外に出てアラガミ同士の戦いで負けた死体から素材を削り取ったり、廃墟となった病院から薬を回収したりリッカさんの指導と軍人だった知識を使って神機用の弾丸を製造してアナグラの許可を得てよろず屋を開き生活費を稼いでいる。

 

素材や薬を回収しているとアラガミに見つかってしまい何度も死にそうになりながらも命がけで逃げるおじさんをハイエナかハゲタカと言って馬鹿にする心ないゴッドイーターもいるが神機の適性のない俺が家族を居住区に住まわせる為だからと笑っていた。

 

でもおじさんのおかげで素材が集めやすくなりいい武器が造られアラガミが狩りやすくなり回収した薬のおかげで生存率が上がり感謝しているゴッドイーターも数多く存在する。

 

そして清掃員のおばさんも子供がゴッドイーターとして頑張っているから自分もなにかできることはないかと上に掛け合って清掃員として就職したそうだ。

 

そしてアラガミに破壊された防壁を直す際に無償で名乗り出て来て手伝ってくれた人達。

 

そんな人々の善意があってアナグラは稼動している。

 

「忘れるなよアリサ、あの居住区にいる人達は僕達と同じ命がたった一つしかない生きている人間なんだからな」

 

コンゴウとの戦いが終わり駆け寄って来てこの姿を見ても感謝してくれた居住区の人達の笑顔を思い出す。

 

居住区に住んでいる人達は確かにあの場所で懸命に生きているんだ。

 

そんな人達を戦場に巻き込んでないがしろにするような行動を許す訳にはいかない。

 

「くっ!し、失礼します!」

 

アリサは悔しそうにエントランスから出て行った。

 

ちょっと言い過ぎたかな…。

 

けどこれから先、もし彼女が作戦ミスで人を殺めてしまったら傷つくのは彼女の方だ。

 

ここで心を鬼にしてよく言っておかないと。

 

「…確かに戦術理論は重要だしあの歳であれだけ身についているなら頼もしいか…」

 

後ろからタツミさんに声を掛けられる。

 

あ、マズッったな。

 

これは第二部隊の問題だ。

 

部外者の俺が割って入っていい問題じゃなかったか。

 

いくらアリサの態度が許せなかったとはいえなにやっちゃってんだよ俺!?

 

それにすげえ偉そうな事を言ってしまってたし!

 

「す、すみませんタツミさん!?生意気な事を言ってしまいました!」

 

慌てて頭を下げる。

 

「気にすんなよ、俺が言いたかったことは全部ライダーが言ってくれたし新人の嬢ちゃんも分かってくれたらいいんだけな」

 

顔には出ない筈なのに考えを読まれた。

 

「そう…ですね…」

 

アリサ、分かってくれたらいいんだけど。

 

「うう……ライダーさん、私感動しちゃいました、そこまで私達の事を思ってくれていたなんて…」

 

「ライダーお前いい奴だな……あとタツミは感情的にならずライダーをもう少し見習って大人になれ」

 

カノンさんは泣いてるしブレンダンさんはなんかウンウン頷いちゃってるよ。

 

しかもさりげなくタツミさんに文句言ってるし。

 

あ、そういやリンドウさんにアリサのこと頼まれてたんだ。

 

けどこれで完全に嫌われたよな。

 

リンドウさんになんて言おう。

 

「やっぱお前防衛班に向いてるわ、うんうち(第二部隊)に正式に異動してこいよ歓迎するぜ」

 

「い、いやそれは僕の一存では何とも言えません。ツバキ教官や支部長の許可がないと」

 

本部に目を付けられるとマズイからあまり表立って行動しないでくれと釘を刺されてるんだよな。

 

「はっはっはそっか、じゃあな俺たちはこれからツバキ教官に今日の任務の報告をしてくる。異動の件考えておいてくれよ」

 

「タツミではないが俺も歓迎する、いつでも来い」

 

「一緒に戦えることを楽しみにしてますね」

 

「……あとブレンダン、話あるから後でお前の部屋行くから逃げんなよ」

 

「……」

 

そう言って僕の肩をポンと叩いてタツミさんとブレンダンさん、カノンさんがエレベーターの方に向かっていった。

 

騒ぎが終わり野次馬も解散したからこれでどうにか騒ぎは収まったな。

 

さて部屋に帰るかな。

 

そう思ったその時…。

 

「おいおいなんだ?あの新入りの偉そうな態度は?だから俺は口がでかいだけの甘ちゃんは嫌いなんだよ」

 

どうやら新しい問題はむこうからやってきてしまったようだ…。

                                        つづく




BLACKの身長と体重は某コンビニのスピードくじでついてたカードのデータから流用しました。
調べた所リンドウさんは182cm、支部長が189cmだそうです。
BLACK二枚当たったので一枚は定期入れに御守り代わりに入れてるよ。
余談だけど昭和ライダー中でライダーマンだけを外したのは絶対にゆ゙る゙ざん゙!

あとよろず屋のおじさんと清掃員のおばさんのくだりは勝手に作った設定で公式ではありませんので注意してください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

18話

注意 今回の話の中で主人公の仮面ライダーBLACKが色々と言われるのでそれに対し嫌悪感を感じるかもしれません。
苦手な方はご注意ください。




【ライダーside】

 

「おいおいなんだ?あの新入りの偉そうな態度は?だから俺は口がでかいだけの甘ちゃんは嫌いなんだよ」

 

声がする方を向くと第三部隊のカレル・シュナイダーさん 、小川シュンさん、ジーナ・ディキンソンさん達がやって来ていた。

 

うわ…厄介な人達が話し掛けてきたな。

 

カレルさんをリーダーにした第三部隊。

 

第一部隊と同じ壁の外でアラガミを狩る部隊だ。

 

詳しい事はそれ以上は知らない。

 

なぜならこの部隊にはあまり近寄りたくなくいい印象がないからだ。

 

正直あまり相手にしたくないんだけど…。

 

「命は一つしかないか、『人間』らしい事を言うじゃないか、え?『化け物』?」

 

特にカレルさんとシュンさん

 

この二人はあまり関わり合いたくないんだよな。

 

僕の仮面ライダーとしての姿と力に対して敵対心むき出しの態度で話しかけてくるからな

 

仕方ないかもしれないけど相変わらず僕を化け物扱いしてくるし

 

自分でも納得しているが人から言われるとさすがにいい気持ちがしない。

 

確かにアナグラにはまだ僕を今だに恐れて怪物扱いしている人もいる。

 

けど怖がっているのか大半は陰口ばかりで面と向かって言うのはこの人ぐらいだ。

 

だからこちらも用がなければ話しかける義理もない。

 

「…そんなことを言うためにワザワザ来たんですか?」

 

不機嫌そうなユウカがいきなりけんか腰で話し掛ける。

 

「なんだと!先輩に対してなんだその口は!?」

 

「待て待てシュン俺たちは話し合いに来たんだ面倒ごとを起こすなよ」

 

ジュンさんが怒るがカレルさんが止める。

 

「話し合いって俺に何の用ですか?」

 

先に挑発してきたのはそっちだろうが。

 

怒鳴り散らしたい感情を抑えながら冷静に話しかけてきた理由を尋ねる。

 

「次の任務にはお前とお前のバイクの力が必要だ。分け前をくれてやるから手伝え」

 

「あなた達そんな頼み方ないでしょ!ライダーをなんだと思ってるのよ!」

 

「そいつはお情けでここに置いてもらっている見た目通り人間じゃない化け物だ、そんな奴をなんで人間扱いしなければならない」

 

「あなたは!」

 

「ユウカやめて、もういいから」

 

「で、でも!」

 

「……いいから僕は大丈夫だから」

 

僕の為に怒ってくれるのは嬉しいけどここで騒ぎを起こしてユウカに迷惑をかける訳にはいかない。

 

なんとかなだめて話を続けさせる。

 

正直化け物呼ばわりされるのは辛くて悲しいが今は我慢しないと…。

 

「それで任務の内容詳しく話してもらえますか?」

 

仕事の話なら聞かない訳にはいかない。

 

「いいだろう最近、搭乗者がいないバイクが暴走しているという噂があってな、そのバイクの捕獲を俺たち第三部隊に命じられた」

 

「しかもこれは緊急任務なんで報酬の割がいいんだよ」

 

カレルさんとジュンさんの説明を聞きながら受けるかどうか考える。

 

無人のバイクが一人で走り出すか。

 

確かに幽霊かバイクを捕食して特性を手に入れたアラガミじゃないかぎり通常じゃありえないよな。

 

「最初はお前のバトルホッパーだったか?…そいつが抜け出して走り回ってるのかと思ったが整備士からアリバイ証言があって違っていた、命拾いしたな」

 

「……バトルホッパーは僕が呼ばないかぎり勝手に動きません」

 

ただ呼ばないかぎり勝手に動かない。

 

これは半分嘘である。

 

かつてムカデ怪人の話で主人公の南光太郎が催眠状態で意識が朦朧もうろうとなり危機に陥った時、バトルホッパーは自らの意思で動き光太郎を助けた。

 

それと同じように僕が危機的状況に陥ってしまったら自分で行動する。

 

ただこの状況でそれを話したら監視が強化されて一緒に戦ってくれる相棒に辛い思いさせるから話す気はない。

 

「なんでそんなにそのバイクにこだわるんですか?いくら報酬がいいからってあなたがそれだけでこんないるかどうかも分からない不確かな情報だけで任務を受けるなんて思えないんですけど?」

 

カレルさんの話を聞いてたら違和感を感じた。

 

報酬がよくても肝心のバイクが見つからなかったら支払われる事はない。

 

そうなればジープの燃料費などの出費だけで赤字になる。

 

それにもしそのバイクが本当にアラガミだったらノルンのデータにはない新種のアラガミという事になる。

 

好奇心旺盛なリンドウさんならともかく能力も特性も弱点も分かっていないアラガミに対して慎重派のカレルさんがなんの策もなく報酬だけで受けるとはどうしても思えないをだよな…。

 

「鋭いな、いいだろ教えてやる。そのバイクを俺たちが捕まえて金持ち連中に売るんだよ、上はアラガミでなければ好きにしろと言われているからな」

 

なるほどね、うまくいけば任務の報酬だけじゃなく現物支給もされて報酬の二重取りができるわけか。

 

報酬とバイクを売った金額が手に入るなら金銭欲の強いカレルさんがこの任務を受ける訳だ。

 

「アラガミを倒してくれるならほっておいても問題ないんじゃ」

 

まあ確かにユウカの言う通りなんだが、この人達の考え方なら、多分……。

 

「馬鹿か、そんな余計な事されたらこっちの商売あがったりで稼げないだろうが」

 

だろうね、そうじゃないかと思った。

 

それにいくらアラガミを退治してくれるからってアナグラとしても任務中に遭遇して危害を受ける危険性があるから放置しておくわけにはいかないって事か。

 

情報元は一人でアラガミ退治していたらフェンリルに捕獲された僕。

 

「お金の為に戦ってるんですか!」

 

「当然だろ、まさかお前平和の為とかそんな青臭い事言うんじゃないだろうな?」

 

「あなたは!」

 

「ユウカ!ダメだ!」

 

カレルさんに平手打ちしようとするユウカを羽交い締めして止める。

 

珍しいな冷静なユウカがこんなに感情的になって激怒するなんて。

 

「なんで止めるのよ!」

 

羽交い締めで動けないユウカが首だけ動かして僕に向かって怒鳴ってくる。

 

「さっきみたいに人命を巻き込むことならさすがに止めるけどアラガミと戦う事情や目的なんて人それぞれだ。僕たちが怒っていい事じゃないよ、それに先に手を出したらどんな理由があろうとこちらが悪者になる」

 

これ以上僕の所為でアラガミとの戦闘でもないのにユウカに迷惑をかけられない。

 

「ほう、よくわかってるじゃないか」

 

「だからそちらもユウカを馬鹿にしたりしないでくださいね」

 

本当ならもっと言ってやりたいがこれぐらいなら言い返しても問題ないだろう。

 

「てめえなんだその言い方!」

 

「やめなさいジュン、ごめんなさいユウカ」

 

ジーナさんがシュンさんの前に手を差し出して止める。

 

そういやジーナさんは二人と違って僕になにも言わないな。

 

何を考えてるのかよく分からないけど話の通じる人だといいが。

 

「じゃあそのミッション、私も行くわ!」

 

ユウカがミッションの同行に志願する。

 

「突然どうしたの?」

 

「あなた達がライダーに危害を加えないか見張る為よ」

 

「てめえ、俺たちが信用できないってのか!」

 

「あなたたちの態度を見たら信用できるわけないでしょ」

 

「これ以上増えると分け前が減るだろうが、隊長権限の命令だ。お前はついてくるな」

 

だがユウカの願いはカレルさんにあっさり却下されてしまった。

 

「くっ…」

 

悔しそうに顔を歪ませるユウカ。

 

僕やアリサのように他部隊のミッションに同行するには任務を遂行する責任者である部隊長の許可が必要で第三部隊の隊長であるカレルさんにそう言われたらユウカは従うしかない。

 

「ごめんねユウカ、心配してくれてありがとう」

 

申し訳なさいっぱいで頭を下げる。

 

「いいのよ、第一部隊のみんなも第二部隊のタツミさん達もあなたの味方だから気を付けてね」

 

「うん、ありがとう」

 

最初僕を受け入れてくれたリンドウさんの第一部隊、そしてこんな異形の姿なのに自分の部隊に誘ってくれたタツミさんの第二部隊。

 

感謝しても仕切れないよ。

 

「仲良しごっこも時間の無駄だからその辺にしておけ、詳しく任務内容を知りたければ受け付けの竹内に聞きな」

 

「……分かりました、先にツバキ教官から出撃許可を貰ってくるので失礼します」

 

いろいろ文句を言いたいけど今は我慢だ。

 

「早くしろよ」

 

ジュンさんの声を背にツバキ教官が仕事をしていると思われる執務室に向かう。

 

神機使いは普通はツバキ教官から許可を貰わなくても出撃できるが普通ではない改造人間の僕がミッションに参加する為にはツバキ教官の許しが必要なのである。

 

ツバキ教官の執務室の前で軽く深呼吸をして心を落ち着かせる。

 

心を落ち着かせずにノックしちゃうと改造人間の影響で強くなった力でドアをこわしそうになるんだよね。

 

深呼吸してドアを軽くノックする。

 

「誰だ?」

 

「ライダーです。ツバキ教官、今お時間よろしいでしょうか?」

 

「ライダーか、入れ」

 

ドアの向こうから返事があって執務室に入ると椅子に座ったツバキ教官が資料をまとめていた。

 

機密事項かもしれないからできるだけ見ないようにしないとな。

 

「何の用だ?」

 

「第三部隊のミッションに参加する為の許可をいただきたく参りました」

 

そう言うと一瞬だけツバキ教官の眉が動いた気がした。

 

「第三部隊とだと?ミッションとは第三部隊が受け持っている暴走バイクの件か?」

 

「はい、暴走バイク捕獲の為にぼ…自分とバトルホッパーの力を貸してほしいと要請が入りましたので」

 

そう言うとツバキ教官が手を組み少し考えるように目を閉じる。

 

数秒ほどすると目を開いて手を離した。

 

「分かった許可する、退室してもいいぞ」

 

「ありがとうございます」

 

頭を下げ礼を言い退室しようとツバキ教官に背を向けると

 

「待て……気をつけろよ」

 

「は、はい?」

 

不意をつくように言われ驚きながらも返事をして執務室から出る。

 

珍しいな、ツバキ教官が気をつけろなんて。

 

今まで一度もそんな事言わなかったのに。

 

それにしても気をつけろか…。

 

そうだな、うわついてないでどんなミッションでも何があるかわからない。

 

気を引き締めて望まないといけない。

 

きっとツバキ教官はこんな俺の心を見抜いて忠告したんだろうな。

 

よし許可を下りたし次は受付に行ってミッションの受注に行くか。

 

エレベータに乗りエントランスで降りると受付でオペレーターの竹内ヒバリさんが対応していた。

 

「ヒバリさん、ミッションの受注をお願いします」

 

「ライダーさんこんにちは、どのミッションに参加しますか?」

 

ヒバリさんが他の人と変わらない優しい笑顔で対応してくれる。

 

僕を怖がらない数少ない中の一人だ。

 

最初は怖がられていたけどミッションに参加できない時に支給された配給品や在庫管理の数量確認を手伝ったりあとは…うん、まあ雑用の休憩中に言い寄ってくるタツミさんに対する愚痴を聞かされたりと……。

 

そういや膨大な配給品を確認してた時にこんなことあったっけ?

 

ミッション中や仕事中で忙しい時にデートや食事に誘ってくるのでどうにかならないと言われてもな……。び

 

「僕もタツミさんの戦えない人達を護ろうとする信念と実力は尊敬できるんですが普段の生活はちょっと無理です」

 

つい本音を言ってしまったらクスっと笑う。

 

「そうですね、普段もう少し真面目だったら私も考えるんですけど……」

 

あらかわいい。

 

「き、聞いてないですよね!」

 

その後、ヒバリさんは自分が何を言ったか気づいたみたいで真っ赤な顔して慌てながら詰め寄って来た。

 

残念僕は難聴系主人公じゃないのでバッチリ聞いてしまいました。

 

でも安心して下さい。

 

さっきの言葉は誰にも言わずに僕の胸にしまっておきます。

 

「え?なんですか?最後の方はよく聞こえませんでした」

 

そう言うと安心したのかホッと息を吐いていた。

 

うん、こんなひどい時代ですけど二人共いつまでも仲良くしてください。

 

世紀王になってしまった僕にはもう手に入らないかけがえのない時間ですから大切にしてくださいね。

 

さて思い出はこの辺で終わらせて現実に戻るか。

 

「ヒバリさん、任務で聞きたい事があるんですが?今いいですか?」

 

「はい、なんですか?」

 

「ミッションの同行要請が入ったので第三部隊が受け持った暴走バイク捕獲命令の内容について聞かせてください。

 

「……大丈夫なんですか?第三部隊の方々はライダーさんの事をその……あまりいい感情を持っていないんじゃ?」

 

言葉を選びながら訪ねてくる。

 

そこには受付の仕事でなく僕を心配する竹内ヒバリ個人がいた。

 

ヒバリさんもしってたか。

 

どうやらアナグラ内で第三部隊での僕の評価は有名らしい。

 

そうか、だからあの時ツバキ教官は僕に気をつけろと。

 

僕の所為で教官まで迷惑かけてしまっていたのか。

 

「僕は大丈夫です、それに受けるか受けないかは内容を聞いてから決めます」

 

「分かりました、これも仕事ですので任務内容を説明させていただきます」

 

仕事モードに切り替わり顔つきが変わり端末を操作し任務内容を呼び出す。

 

彼女もプロなんだなと改めて思った。

 

「最近観察対象のアラガミが次々ロストしていき、つい先日も愚者の空母に現れたコクーンメイデンも消失したと報告がありました、監視班の報告では無人のバイクのような乗り物がコクーンメイデンが跳ね飛ばしていたと報告があったんです」

 

端末を操作し終え、指を止めると顔を上げ説明が始まる。

 

跳ね飛ばしたって随分アグレッシブなバイクだな。

 

「目標はその後監視網を抜けた報告はなく今だに愚者の空母近辺に潜伏してると思われます」

 

愚者の空母とは付近にはかつて神機のない頃アラガミと戦闘し破壊された軍艦や空母の兵器といった残骸が撤去されず今も存在している場所の名称である。

 

まったくアラガミと必死に戦った人達が眠っている場所なのに愚者だなんて誰が名付けたか知らないけどひどい名前を付けるものだ。

 

「あと、捕獲したバイクはその部隊で好きに扱っていいって聞いたんですか?」

 

疑うわけじゃないけど一応これも確認しておくか。

 

「は、はいバイクに至ってはアラガミならば破壊、そうでなければ捕獲した部隊に任せるとなっていま……!」

 

ヒバリさんが端末を操作しながら説明してくれていた表情が驚き強張る。

 

どうしたんだ急に?

 

僕に驚いたというより僕の後ろ見て驚いてるような。

 

「これで信じてくれたか?そこでだ幽霊バイクを捕まえるためにお前のバイクと運転技術がの力が必要だ、俺たちに力を貸せ。さっきも言ったがそれなりの分け前はくれてやる」

 

「!?」

 

背後に出撃準備を終え、神機の入ったアタシュケースを持ったやたら上から目線のカレルさんと第三部隊の面々とその後ろには不服げなユウカが立っていた。

 

そうかさっきのヒバリさんの反応の原因は第三部隊が来たからか。

 

カレルさんの態度に僕を見るヒバリさんも心配そうな顔をしている。

 

今回の件は僕の所為でみんなに心配かけてしまったな。

 

やっぱり改組人間である僕は寂しさに負け組織に所属して誰かと一緒にいるべきではなかったのかもしれないな。

 

今さら言っても後の祭りか。

 

頭を切り替えよう。

 

それにしても無人で走る暴走バイクか…ライダーとして興味があるな。

 

そもそもバトルホッパー以外で無人で走るバイクなんて仮面ライダーのバイクでなければありえない。

 

…いやもう一台ある。

 

BLACKのもう一台のあのバイクなら…。

 

いや、そんなわけないか。

 

あのバイクがこのゴッドイーターの世界にいる筈がない。

 

それにもし幽霊バイクの正体がアラガミなら大変な事になる。

 

よしカレルさんの口車に乗るのは癪だけどこのミッション受けてみるか。

 

「分かりました。行きます」

 

「物分かりがよくて結構。じゃあ今から出撃するからお前は橘の所にあるバイクを持ってきて準備しろ」

 

「分かりました」

 

そうだついでにリッカさんに事情を話して捕獲する時に使えそうな鎖みたいな物がないか聞いてみよう。

 

こうして、ヒバリさんにミッションの受注をしてもらい僕は第三部隊と共に幽霊バイク捕獲に乗り出した。

                                        つづく




誤解がないようにいっておきますがカレルとジュンは性格が捻くれている設定らしいのでこの場面だと多分こう言うんじゃないかと作者が勝手に妄想して書いてるだけで別にアンチ対象という訳ではありません。



次回もよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

19話

色々とゴタゴタしていて遅くなってしまってごめんなさい。
多分、次も遅くなると思います。
まだ全体の20%しか完成していないので…

お気に入り登録者が150人突破
登録者のみなさんありがとうございました。


【ライダーside】

 

 

無人で走る謎の幽霊バイクを捕獲するべく手掛かりを求めて俺、仮面ライダーBLACKはリッカさんから借りた捕獲用の鎖を肩に担いで横にいるバトルホッパーと一緒にカレルさん率いる第三部隊と共に最後の目撃情報があった『愚者の空母』に訪れていた。

 

「よしここで二手に分かれて捜索するぞ、見つけたら信号弾で知らせろ」

 

第三部隊隊長のカレルさんが指示が出す。

 

「組分けはどうするのさ?言っとくけど僕はその化け物と組むのはいやだよ、二人になった所を襲われたくないからね」

 

皮肉交じりに言ってくるジュンさん。

 

俺は第一、第二部隊と違い第三部隊からはいい印象を持たれていない。

 

だから第三部隊にはあまり近づかないようにしてたんだけど。

 

でも幽霊バイクの件をほっておくわけにはいかない。

 

下手に放置しておいたら自走できるバトルホッパーにまで仲間と思われ疑いの目が向けられる可能性がある。

 

それだけは何としても避けたい。

 

だから早急にこの事件を解決しなければ。

 

「あら、だったら私がライダーと組ませてもらうわ、彼の戦い方は近距離タイプで遠距離タイプの私と相性がいいし、彼とは一度組んでみたかったのよ」

 

「ジーナか、よしいいだろう。それにジュンは俺の目の届く範囲に置いておかないとまた抜け駆けして取り逃がしそうだからな」

 

「なんだとカレル!?てめえ!」

 

「本当の事だろ、前のミッションはその所為で儲けそこなったんだからな」

 

「じゃあ決まりね、私達はA地区を捜すから、二人はB地区をお願い。行きましょうライダー」

 

怒鳴り合うジュンさんとカレルさんを放置してジーナさんは俺の手首を引っ張っていく。

 

「え?ほっておいていいんですか?」

 

「いつものことなんだから相手にするだけ時間の無駄よ」

 

引っ張られながら後ろ振り返ると二人は気づくことなく言い争いを続けていた。

 

あ、これなら大丈夫かもしれないな。

 

いまだ言い争うカレルさん達を放置して俺達は今いた場所からかなり離れたA地区に移動し幽霊バイク捜索を始める。

 

それにしても鉄塔の森や贖罪の街もそうだったけどこの愚者の空母も草や木、鳥などの動物もいなく生命の息吹を感じられないな。

 

あるのは魚のいないオイルで濁った海とそのオイルを垂れ流したであろう錆びて朽ち果てた巨大な軍艦だけだ…。

 

ひどいな、これもアラガミの仕業なのか。

 

「感傷に浸っているとこ悪いんだけどまずはお仕事しなければダメよ」

 

改めてアラガミに対する怒りが芽生えようとしたら背後からジーナさんに声をかけられる。

 

「あ、すみません捜索を開始します」

 

いけない、いけない今回ここに来たのはアラガミを倒すためじゃなくて幽霊バイク捜索の為だった。

 

俺達はまず見晴らしのいい岩山に移動してそこを仮拠点とする。

 

双眼鏡を使って辺りを見回すジーナさん。

 

僕も望遠能力のあるマルチアイを使って探しているがバイクはおろかアラガミ一匹すら見つからない。

 

「アラガミまでいないって事は噂の幽霊バイクが駆逐したんでしょうか?」

 

「だとしたら少しマズイわね…」

 

双眼鏡で探しているジーナさんがぽつりと返事を返した。

 

「え?どうしてですか?」

 

アラガミがいないのはこちらにとってもいい事の筈なのに。

 

まさかジーナさんもカレルさんみたいに儲からないって言う気なのか。

 

「いずれ榊博士の座学で習うかもしれないけどアラガミは何を食するかは特殊な信号(パルス)偏食場(へんしょくば)”で食事の傾向を決めているの、細かい事は榊博士に聞きなさい」

 

偏食場(へんしょくば)か、帰ったらさっそく聞いてみよう。

 

「話を戻すけどここらのアラガミがいなくなったって事はこの縄張りが空いたって事よ。そしたらこの縄張りを狙って他の地区にいたアラガミが一斉に集まってくる恐れがあるのよ」

 

しまったそれは考えもしなかった。

 

もし一斉に集まってしまったらアラガミ同士が喰い合ってもっと強いアラガミが生まれてしまうじゃないか。

 

「状況を理解したようね、覚えておきなさい確かにアラガミを駆逐するのは私たちゴッドイーターの仕事だけどただ闇雲にアラガミを始末するだけじゃダメ。ある程度はどうしても残して縄張りを安定させておかなくてはならないの」

 

「・・・・分かりました」

 

ただ倒すだけじゃ駄目なのか。

 

難しい問題だよな。

 

アラガミを故意に残すのは納得できないけど後の事を考えたら理解するしかない。

 

だから支部長や榊博士はアラガミとは関係ないのに幽霊バイク捜索の任務を出したのか。

 

まだまだ知らない事が山積みだな…。

 

あれからかれこれ三時間ぐらい捜索しているが影も形も痕跡すら見つからない。

 

「これだけ探しても見つからないなんてもう移動してしまったんでしょうか?」

 

「どうかしらね?他で見つかった報告もないし私の勘もまだこの辺りにいるって言ってるのよね」

 

勘ですか…当たるのかな。

 

「あら疑ってるの?私の勘ってこれでも結構当たるのよ」

 

「う、疑ってなんかいませんって」

 

リッカさんやカノンさんもそうだけどなんで俺の考えてることが分かるんだろう。

 

俺って分かりやすいのかな。

 

それともアナグラの女性陣はみんな勘が鋭いのか。

 

そういえばジーナさんはカレルさん達と違って俺を化け物じゃなくちゃんと名前で呼んで普通に接して話しかけてくれる。

 

できるだけ避けていたからあまり話した事なかったのに。

 

「あの…ジーナさん」

 

「なにかしら?」

 

どんな結果になるか分からないけど勇気を出して尋ねてみるか。

 

「どうして普通に俺と接してくれるんですか?」

 

「え?」

 

そういうとジーナさんはきょとんした顔になる。

 

普段クールなジーナさんが見せない表情で珍しいものを見てしまった。

 

「いえ俺の事・・・怖くないんですか?それに…」

 

「どうして私はカレルやシュンみたいに化け物と呼ばないって?」

 

いきなり確信をついてきた!

 

「は、はい…」

 

観念して正直に話す。

 

「なぜかしらね、あなたを見ていると二人の言うような化け物とは思えないからかしらね」

 

「それも勘ですか?」

 

「ええそうよ、それに知ってる?勘って経験を積み重ねてきた物の結果でできてるものなの」

 

確かにそれ本か何かで見たな。

 

「そして私の勘が言ってるわ、あなたは悪人ではないとね、だから人とは違う姿や力なんてどうでもいい」

 

なんだろうジーナさんの言葉にものすごい自信と説得力があるな。

 

俺もこんな風になれたら変われたら少しは違うのかな。

 

「私が本当に怖いのは人間の姿をしていても腹の底で何を考えてるか分からない支部長のような人間ね」

 

なんでそこで支部長が出てきたんだろう。

 

「あの確かに支部長は何を考えてるか分からない人かもしれませんが何もそこまで悪く言う必要ないのでは……?」

 

爆弾付きの首輪を巻かれたけど俺を極東支部に招き入れてくれた恩人だからあまり悪くいわないでほしい。

 

「そう?ただあまり人を信用しすぎると裏切られた時、手痛いしっぺ返しを食らうわよ」

 

「確かに俺に悪意をぶつけてくる人はいます……しかしそれでも受け入れてくれた人を信じていたいんです」

 

アナグラの中には第一部隊のリンドウさん達や第二部隊のタツミさん達のように俺を仲間として受け入れてくれる人達はいる。

 

けど反対に今でも怖がっている人やこの異形の姿に嫌悪感を感じている人は少なくない。

 

だからといってそれをどうにかしようとは思わない。

 

無理に何とかしようとすれば反発が起こり神機使い同士で派閥ができてしまう。

 

そうなれば任務に支障ができて犠牲者が出てしまうかもしれない。

 

だからこのままの状態を維持するしかないんだ…。

 

辛くないといえば嘘になるけど俺を信じてくれる人達がいてくれるなら今はそれだけでいい。

 

「そう、それなら悪くないと思うわ、けど……」

 

ジーナさんがなにか言おうとした時、バイクのエンジン音が近づいてきた。

 

「どうやら現れたみたいね、おしゃべりはおしまい、仕事するわよ」

 

「はい!」

 

気持ちを切り替えて音がする方に向かうと人が乗っている五台の黒いバイクが一台の白い無人バイクを追い詰めていた。

 

「先客がいたか、下手に乱入してトラブルになるのはごめんだし、どうする?」

 

そんな…なんであのバイクは…それにあいつらは…。

 

見覚えのある白いバイクと黒いバイクに乗る者達。

 

それは仮面ライダーBLACKを見たものなら誰でも知っている。

 

黒いバイクはデスランナー。

 

乗っているのはテストロイド。

 

どちらも仮面ライダーBLACKに出てくるゴルゴムが造ったバイクとロボット。

 

そして白いバイクは仮面ライダーBLACKのもう一台の頼れる仲間ロードセクターだ。

 

バカな!なんでこの世界にいるんだ!?

 

「ライダー!」

 

「え、は、はい」

 

ジーナさんの声で思考の渦から現実に戻される。

 

「どうしたの呆然として?あのバイクの事何か知ってるの?」

 

「あれは…あのバイクは…」

 

説明しようとしたらロードセクター側に新たな動きがあった。

 

「もう逃げられんぞ!カアァァ!!」

 

センシティブイヤーを発動していた為、テストロイドの声が聞こえてきた。

 

五体のテストロイド達が一斉に奇声を上げるとヘルメットが割れ、黒いジャケットの下で何かが(うごめ)き、やがて虫の足のような物が服を引き裂きながら出てきて見覚えのある五体の蜘蛛の怪物が現れた。

 

「シャアアア!」

 

五体の蜘蛛の怪物達はそれぞれ口から綿のような糸を吐きロードセクターのタイヤやハンドルに巻き付き動けなくなる。

 

動きを封じられたロードセクターは逃げようとタイヤを回転させようとするがこびり付いた糸の所為で思うように回らずその隙に五蜘蛛の怪物達はロードセクターとの距離を詰める。

 

「なにあれ!?あれもアラガミなの…?」

 

「まさかあれははクモ怪人!?」

 

クモ怪人、それは仮面ライダーBLACK1話に出てきた文字通り蜘蛛と人間を合わせたような秘密結社ゴルゴムの怪人。

 

男性型と女性型の計五体の怪人で集団戦を得意とし口から吐く糸で相手を動きを封じて襲い掛かる戦法を得意とする恐ろしい相手である。

 

「クモカイジン?あなた、あの怪物が何だか知ってるの?」

 

「……ジーナさんは動かないでください、いくぞバトルホッパー!」

 

「ち、ちょっと待ちなさい」

 

俺の声に反応してバトルホッパーがこっちに走ってくる。

 

俺はジーナさんの静止を振り切りバトルホッパーに飛び乗るとロードセクターの方に走り出した。

 

「一体どうしたっていうのよ…」

 

残されたのは事情を知らないジーナさんだけだった。

 

バトルホッパーを運転しながら状況を頭の中で整理する。

 

おそらくロードセクターは俺やバトルホッパーと同じであの神の所からやってきたんだろう。

 

ロードセクターを開発するなんて今のこの世界の科学力ではまず無理だ。

 

そして今ロードセクターを捕まえようとしている仮面ライダーBLACKに出てきたクモ怪人。

 

ならアラガミやこの世界の生き物でなく神の仲間だ。

 

なぜロードセクターとクモ怪人が世界に来て争っているのか分からないけどこれはチャンスだ。

 

クモ怪人から神の本拠地に行く方法を聞き出してやる!

 

俺はバトルホッパーを最高速度してロードセクターとクモ怪人の元に向かって行った。

 

 

                   つづく




次回VSクモ怪人
お楽しみに。




デスランナー
かませ犬改めかませバイク
三神官がロードセクターに対抗する為に製造した戦闘用マシン。
だがロードセクターのスパークリングアタックと同等のパワーと速度にマシン自体の強度が耐え切れず安定性を失い放送開始わずか五分で大破して鉄くずになり果て炎上してしまった。
なお本作では強度不足は改善されロードセクターと同じ速度で走ることが可能。


クモ怪人
仮面ライダーBLACK第1話で登場したゴルゴム初の怪人。
一話目からいきなり五体同時に出演してライダーを苦しめた。
夜に曲がり角からいきなり表れて見たら俺なら絶対に泣く。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

20話

クモ怪人戦、書きたいネタ入れまくって1話にまとめようとしたら長くなり読みづらかったので再編集して分割します。


【三人称side】

 

「手間をかかせおって!このガラクタが!」

 

神の元から脱走したロードセクターに追撃者の男性型クモ怪人が怒鳴る。

 

五体のクモ怪人に何重にも束ねられた頑丈な白い糸が纏わりつきロードセクターは身動きが取れずにいた。

 

しかし逃げ出した事を後悔はしていない。

 

完成してすぐ冷たい暗闇の倉庫に押し込まれたがこの広い世界で思う存分走りまわれたのだから。

 

しかし一つだけ心残りがあるとすれば自分の主である新たなる仮面ライダーBLACKに会えなかった事だ。

 

おそらくこのまま捕まれば脱走した処罰としてバラバラに解体されてしまうだろう。

 

一目でもいい。

 

その姿か見たかった。

 

ロードセクターがすべてを諦め絶望の闇にひれ伏しかけたその時。

 

ブオオォォォ!!

 

バイクのエンジン音と共に彼は……希望という名の太陽の光を身に纏った黒き勇者が駆けつけた。

 

 

 

【ライダーside】

 

俺は持ってきた鎖を司令塔のクモ怪人目掛けて投げる。

 

「グオッ!」

 

投げられた鎖はクモ怪人を縛り上げて動きを封じる。

 

とつぜんの出来事に動揺してキョロキョロとするほかの四体のクモ怪人達。

 

司令塔が動けなくなりパニックに陥っている。

 

俺はそんなクモ怪人達を背後からバトルホッパーの突撃技『ダイナミックスマッシュ』で跳ね飛ばしロードセクターを護るようにバトルホッパーをUターンさせてクモ怪人達の方に向き立ち塞がる。

 

「!?」

 

俺の顔を見て倒れながら驚愕しているクモ怪人達とライトを点滅させて喜んでいるようなロードセクター。

 

この隙にバトルホッパーから降りてロードセクターに纏わりついている糸をライダーチョップで断ち切った。

 

「き、貴様まさか!」

 

どうにか鎖をほどき地面に叩きつけた司令塔のクモ怪人は驚きの声を出す。

 

「ああそうさ、お前たちの思っている通り俺はお前たちの言う神からこの世界に堕とされた…」

 

クモ怪人達の方に振り向いた。

 

「仮面ライダー!」

 

右手を突き出し、左手は腰に添え右手を握り左斜め下に振り下ろす。

 

「BLACK!!」

 

左手は腰に添え、右手を空に高く振り上げる。

 

そして最後に空に向けていた右手の拳を力を込めて握り直した。

 

身体が覚えていているかのように自然と身体が思うように動く。

 

まったくいつか変身して悪いやつと戦うんだって子供だった頃の夢がこんな最悪な形(神様の夫婦げんか)で叶ってしまうんだから世の中何が起こるか分からん。

 

いや今はそんな昔の事より目の前の敵に集中しないと。 

 

「これはいい、まさか神のご加護もなくまだ生きていたとは、貴様からキングストーンを取り出して我が神に捧げる手土産にしてくれる」

 

「貴様ら、やはりあいつの手の者か!」

 

両手を拳にして戦う構えをとる。

 

「やれ!」

 

「シャアアア!」

 

問答無用とばかりに二体のクモ怪人が襲いかかってくる。

 

「ロードセクター早く逃げろ!」

 

俺の声を聞いたロードセクターは走り去る。

 

襲いかかってきたニ体のクモ怪人がしがみついてくる。

 

「こいつらまさか!?」

 

しがみつかれて動けない中、残りのクモ怪人はデスライナーに乗りロードセクターを追って行ってしまった。

 

くっ!俺を足止めしてその間にロードセクターを捕らえる作戦か。

 

そうはさせない!早くこいつらを倒して後を追わないと。

 

羽交い締めするクモ怪人を振り払い腹を拳で殴る。

 

もう一体のクモ怪人の顔を殴り飛ばしさらに起き上がろうとした所に横から頭に向けてハイキックをして追い打ちをかけた。

 

「ば、バカな能力があるとはいえこいつは戦いに関しては素人の筈、なのになぜ戦闘訓練を受けている我らと互角に戦える!?」

 

当たり前だ。

 

俺は右も左も分かず頼れる人もいないこの世界で試行錯誤しながらどうにかアラガミと戦い、何度も苦戦しながらバトルホッパーと共に今日まで生き残ってきた。

 

目の前にある血や肉はゲームでなく本物でアラガミとはいえ命を奪った事実に嫌悪感を感じ吐き気を催しかけ身体の震えが止まらなかったが何度もアラガミと戦っているうちに慣れたのかその嫌悪感もなくなり震えも止まった。

 

それにアラガミを上手く倒せた時もあれば失敗して命からがら逃げたのは一度や二度じゃない。

 

傷を負って動けなくなっても頼れるのは自分とバトルホッパーだけだった。

 

負けた日は動けなくても腹は減る。

 

そんな時は痛みの走る身体を引きずりながら食料と水をかき集め傷を癒しながら力を使いこなすためにどう動けばいいどう立ち回ればいいかと仮面ライダーの動きを記憶を頼りに思い出し何日も考え抜いた。

 

俺は今日まで自分を鍛え色々試して生き残ってきた。

 

それだけじゃないアナグラではツバキ教官やリンドウさんに厳しく鍛えてもらったおかげで相手がゴルゴムの怪人でも十分に自分のスペックを引き出せている。

 

これなら相手がゴルゴム怪人でも十分渡り合える!

 

ありがとうございますツバキ教官、リンドウさん。

 

……何度も臨死体験しかけて死ぬかと思いましたがそれだけの価値はありましたよ。

 

「今だ!トォ!!」

 

ジャンプして右腕を振り上げる。

 

「ライダー……」

 

着地同時に右のライダーチョップがクモ怪人に直撃。

 

「ダブルチョップ!!」

 

さらに左の手刀がもう一体のクモ怪人を横一線に切り裂いた。

 

ライダーダブルチョップ。

 

集団戦用に特訓して編み出した左右同時に放つライダーチョップの強化技だ。

 

まさか初めて使う相手がアラガミでなくゴルゴム怪人でこんなに早く役に立つとは思わなかったな。

 

「グギャャ!!」

 

身体を切り裂かれたニ体のクモ怪人炎に包まれ消滅した。

 

「後はこれをどうするべきか…」

 

俺はクモ怪人が乗っていたデスライナーに近づく。

 

持って帰ってアナグラの戦力増加に使いたいがなにが仕掛けられているか分からない。

 

だからといってここに放置するにしてもアラガミに捕食でもされて特性を取り込まれたらそれこそ厄介だ。

 

なら少し勿体な気もするが破壊するしかない。

 

「ライダーパンチ!」

 

エンジンとコンピューターを破壊し衝撃で火花が出てガソリンに引火してデスライナーは爆発炎上した。

 

「これでよし、急いで後を追わないと」

 

バトルホッパーに飛び乗り急いで後を追いかけた。

 

                                        つづく

 




『ライダーダブルチョップ』

PS2ソフト『仮面ライダー 正義の系譜』に出てくる仮面ライダーBLACK レベル3の必殺技より


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

21話

【ライダーside】

 

手下クモ怪人ニ体を倒した俺はバトルホッパーで残りのクモ怪人を追っていた。

 

「あれだ!」

 

しばらく走っているとクモ怪人のデスライナー軍団が見えてくる。

 

しめた!ロードセクターも奴らのバイクも整地を走るオンロードタイプのマシンだからアラガミの所為で荒れ地になっているこの道に手こずって思うようにスピードが出せないんだ。

 

アクセルをフルスロットルに回して荒れ地を走るオフロードタイプのバトルホッパーのスピードがどんどん上がっていく。

 

そしてバトルホッパーは自身の最高時速である500kmに達した。

 

だが最高速で追いかけているにもかかわらず距離は縮まらない。

 

「くっ!さすがにすごい速さだ」

 

確かにバトルホッパーは他のバイクと比べかなりの馬力と速度が出る。

 

しかし荒れ地で走るオンロードマシンとはいえデスランナーは最高速度960kmのロードセクターに対抗して造られたマシン。

 

バトルホッパーの速度をはるかに上回る。

 

TVと違い改造されているのか800kmに達しても風圧に耐えきれず爆発する様子もない。

 

おまけにこの距離だ。

 

いくらバトルホッパーでもこの差を埋めるのは難しい。

 

「どうしたらいいんだ…」

 

なにか策はないかと思考を張り巡らせようとしたその時。

 

突如、一体のクモ怪人のデスランナーのハンドルが爆発してコントロールを失い隣を走っていた残りのデスランナーに衝突、二体のクモ怪人達はバイクから投げ出されハンドルが壊れたデスランナーは爆発した。

 

「今のは狙撃!一体誰が?」

 

マルチアイで銃弾が飛んできた方を確認して見る。

 

「ジーナさん!」

 

そこにはここからかなり離れた場所から先回りしていたであろうジーナさんが神機を構えて白い煙が立っている銃口を向けていた。

 

ありがとうございますジーナさん。

 

「くそうあの人間め!邪魔をしおって!」

 

司令塔のクモ怪人が忌々しく吐き捨てるように怒鳴る。

 

「トァ!」

 

「グァ!」

 

バトルホッパーからジャンプしてデスランナーを破壊されたクモ怪人を押し倒し顔にパンチをする。

 

「貴様なぜもうここに!まさかもう我が同胞を!?」

 

俺が来た事がよほど予想外だったか驚く司令塔のクモ怪人達は動揺を隠せていない。

 

「クモ怪人、お前達にロードセクターは渡さない!」

 

「小癪な!」

 

すぐに頭を切り替えてクモ怪人達は俺に遅いかかかって来た。

 

「トォゥ」

 

突っ込んできたクモ怪人に合わせて軽くジャンプしながらハイキックを叩き込みもう一体のクモ怪人の振りかぶる腕を自分の左腕で受け止めガードしカウンターの要領で空いている右で殴り飛ばした。

 

さらに起き上がった最初にハイキックを喰らわせたクモ怪人を巴投げで投げ飛ばしパンチで殴ってフラフラのクモ怪人にぶつける。

 

「ま、まさかライダーがここまで力をつけていたとは・・・こうなれば!」

 

俺の予想以上の戦闘能力に驚き逃げ出そうとする司令塔のクモ怪人。

 

「待て!」

 

「行かせはせんぞ仮面ライダー!」

 

追いかけようとしたら背後から手下クモ怪人の口から糸を吐きかけられる。

 

「くっ!しまった!?」

 

身体にクモ怪人の強靭な糸が纏わりついて動きが鈍くなってしまう。

 

「シャアアア」

 

さらに追い打ちをかけるようにもう一体の手下クモ怪人も糸を吐き出す。

 

ニ体のクモ怪人は動き回りながら糸を吐き続けていく。

 

やがて俺の身体に大量の糸が纏わり付き繭のようにグルグル巻きにされてしまい身動きが取れず地面に転がってしまった。

 

「ふふふどうだ、もうどう足掻いても動けまい」

 

「体が・・・」

 

もがいて糸を払いのけようとするが腕がうまく動かない。

 

「あとは貴様をバラバラにして!」

 

「キングストーンを引きずり出すだけだ!」

 

「おい」

 

「おうよ!」

 

アイコンタクトを交わすクモ怪人達。

 

こいつら何をする気だ?

 

クモ怪人が倒れてたデスライナーを起こし乗り込む。

 

「仲間の仇だ!思い知れ仮面ライダー!」

 

デスライナーは一直線にこちらに向かって来た。

 

こいつ、デスライナーを俺にぶつける気か!?

 

冗談じゃない、そんな事されたらいくらなんでもさすがに無事じゃすまないぞ。

 

どうする!そうだ!

 

こうなったら特訓して編み出した第二の技を使えばもしかしたらこのピンチ切り抜けられるかも。

 

「トォゥ!」

 

そうと決まれば糸の纏わり付いた動き辛い身体をなんとか起こして立ち上がり空高くジャンプする。

 

「バカめ!我らの糸だらけのそんな体勢でまともにライダーキックが放てるものか!」

 

確かにそうだな、お前の言う通り今の状態でライダーキックは無理だ。

 

普通のライダーキックならな。

 

「フラッシュ!」

 

空中にいる俺のベルトのバックルから周囲を真っ白に照らす強烈な光が放たれた。

 

「ぐっ!め、目が!!」

 

バックルから放たれる強烈な閃光でクモ怪人達の目が眩む。

 

それと同時に閃光を浴びた体に纏わりついていた糸が高温の熱で消滅した。

 

「キッィィック!」

 

糸が取れて自由になった俺はライダーキックをデスライナーに搭乗しているクモ怪人目掛けて叩き込んだ。

 

「グギャアアアア」

 

ライダーキックを喰らったクモ怪人はデスライナーから投げ出され身体から白い煙を出しながら地面を転がり

 

「ア、ア、アギャアアアア」

 

炎に包まれ爆発した。

 

フラッシュキック。

 

本来は強烈な閃光で相手の視界を奪い動けなくなった相手にライダーキックを叩き込む技である。

 

俺が戦っているアラガミは集団で襲ってくるのがほとんどで1対1で戦うのはごくまれだ。

 

だが俺の使えた技はパンチとキック。

 

単独で戦う相手向きだ。

 

集団戦に向いていない。

 

かといって他のゴッドイーターのように神機を使えと言われてもオラクル細胞に適合しない俺は神機を扱えない。

 

榊博士曰く、例え俺にオラクル細胞を注入したとしても体内のキングストーンがオラクル細胞を結合崩壊させるらしい。

 

だがそのおかげでオラクル細胞の塊であるアラガミに神機なしでダメージを与えられるのだと仮説を立ててくれた。

 

だがそれでも集団戦で不利なのは変わりない。

 

そこで戦闘経験の豊富なリンドウさんに相談してアドバイスを貰い生まれたのがこのフラッシュキックだ。

 

多分初めて会った時にキングストーンフラッシュをリンドウさん達に浴びせて目を眩ませたのがヒントになったんだろうな。

 

ただこの技は味方のいる時に使ったら味方の目まで潰してしまうので一人の時にしか使えない。

 

まあ、分かれて探索してる時にアラガミに襲われても攻撃しながら光で自分の居場所を知らせるいい技だとリンドウさんがビール片手に笑いながら自画自賛してたけど実際そうだから反論できない。

 

ただこの技は仮面ライダーが好きな人や華麗な戦いを信条にしていたエリナちゃんのお兄ちゃんのエリックさんが見たらきっと怒るだろうな。

 

目潰しなんかして攻撃するお前なんか仮面ライダーとは認めない。

 

そう言われても仕方ない行為だ。

 

仮面ライダーが使う技にしたら少し卑怯かもしれないな。

 

けどアラガミとの命掛かっている戦場でそんな甘い事は言ってられない。

 

例え卑怯で泥臭かろうが生き残る為だ。

 

それがどんなに不様であろうとも・・・。

 

強くて優しく格好いい仮面ライダーのように振る舞うのはやっぱり難しいな・・・。

 

それに今回この技を使ったのはもう一つ訳がある。

 

それは糸を吹き飛ばす為だ。

 

キングストーンフラッシュは光と共に熱とエネルギーを放出するのでもしかしたら熱とエネルギーで糸を払いのけられるのではないかと半分賭けではあったがどうやらその通りだったようでうまくいった。

 

とりあえずダブルチョップとフラッシュキックは完成したな。

 

まだ一度も成功していない大技が一つある。

 

これが完成すれば今のライダーキック以上の技になる筈だ。

 

なんとしてもそれを完成させなきゃ。

 

「バ、バカ来るな!!」

 

声をした方を見ると乗り手を失ったデスライナーは暴れ馬のように暴走し光から目が回復したクモ怪人に迫っていた。

 

ガッ!

 

そしてデスライナーはクモ怪人に衝突、クモ怪人を巻き込みデスライナーは爆発四散した。

 

一歩間違えれば俺がああなっていたのか。

 

身震いしながらも四体目も撃破したことを喜んだ。

 

あとは司令塔のクモ怪人だけだ。

 

そういえば司令塔のクモ怪人はどこに行ったんだ?

 

さっきから姿が見えない。

 

辺りを見回してクモ怪人を探していると

 

「下等な人間が!よくも我らの邪魔してくれたな先に始末してやる!」

 

怒り狂う司令塔のクモ怪人の声。

 

「・・・いったいなんなのクモの怪物は?」

 

ジーナさんの悲痛な叫びをセンシティブイヤーで捉えた。

 

あいつまさか邪魔された腹いせにジーナさんの方に向かったんじゃ!

 

俺はバトルホッパーに跨ると急いでクモ怪人と戦っているジーナさんの方に向かった。

 

                                       つづく




次回 ジーナに迫るクモ怪人の魔の手!
   急げ!仮面ライダーBLACK!
   お楽しみに



フラッシュキック

元ネタはSFCソフト『ヒーロー戦記』に出てくる仮面ライダーBLACKの全体攻撃がモデル。
なお閃光による目潰しは作者の私が勝手に付けた独自設定です。


感想、評価などお待ちしてます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

22話

遅くなりすみません、22話を始めます。


【ジーナside】

 

「ハァハァハァ・・・」

 

何者なのこの怪物は?

 

私の前には怪物がいる。

 

別にこの時代、アラガミと呼ばれる怪物がその辺にいるから珍しくもない。

 

けどこいつはどうもアラガミとは違う気がする。

 

私達、第三部隊はとある任務で愚者の空母に訪れていた。

 

任務内容は無人で走る幽霊バイクの噂の調査と捕獲。

 

話を聞いた時は最初はデマか単なる見間違いかと思い正直最初は調査だけからアラガミを撃ち抜く事ができないしいるかどうかも分からない幽霊の調査なんてバカバカしくて参加したくなかったが報酬の良さに釣られたリーダーのカレルが受けてしまい部隊の一人である私もついていくしかなかった。

 

そんな時カレルが最近アナグラで話題になっている仮面ライダーを連れて行くと言い出す。

 

彼はバトルホッパーと言うバイクを所有しており幽霊バイク捕獲に役立つだろうという理由だ。

 

私も彼に少なからず興味があったから反対する理由はなく賛成した。

 

それからカレルとシュンが彼に失礼なことを言ってユウカを怒らせたりと一悶着あったがどうにか説得し私達は幽霊バイクが目撃された現場に向かう。

 

カレル達と二手に分かれて私はライダーと共に捜索する。

 

なんとか標的のバイクは発見したけどそこに見たことない怪物もいた。

 

人の形しているが見た目は蜘蛛そのもの。

 

アラガミかと思ったけど人語を操り、しかも人間のようにバイクに乗る事もできる。

 

ライダーはこの生き物がなんなのか知っているかのような口ぶりだったけど?

 

なんとか距離をとりながらバレット弾を撃ち込む。

 

効いていないわけではないわね。

 

けど致命的なダメージは与えられていないみたい。

 

「シャアア!」

 

「くっ!」

 

アラガミに比べて動きが速いし人の言葉を話せるくらい知能が高く私が発砲できないようにと距離を詰めてくる。

 

これはきつい・・・かな・・・。

 

「さすがはゴッドイーター、ただの人間のように一筋縄ではいかんか」

 

むこうは余裕そうね・・・。

 

「だが!」

 

来る!?

 

「所詮我らの敵ではない」

 

いきなり口から白い糸のような物を吐き出してきて神機に絡みつく。

 

「しまっ!?」

 

吐き出された糸に神機を奪われ遠くに放り投げられてしまった。

 

「くっ」

 

放り投げれた神機を見て唖然とした隙をつかれてさらに吐き出された糸が私を縛り付けた。

 

「さて本来なら観察対処に手を出す訳にはいかんのだが貴様は我々の姿を目撃しあまつさえ任務の妨害までおこなった。決して許せるものではない」

 

観察対象?任務?こいつのような奴が他にもいるの?もしかしてライダーはこいつと同じ?

 

いえ、そんなわけないわ。

 

彼はこいつなんかとはとは違う。

 

「貴様はここで始末する。恨むなら仮面ライダーに手を貸した自分を恨むのだな」。

 

蜘蛛の怪物が縛られ動けない私に迫る。

 

「これまでなの・・・」

 

その時私は死を覚悟した。

 

 

 

 

【ライダーside】

 

「させるか!」

 

ドガッ!!

 

神機が放置され、蜘蛛の糸に縛られて身動きのとれない状態で地面に転がるジーナさんを発見した。

 

ジーナさんはなんとか糸を取ろうと必死にもがきながらクモ怪人から逃げようとしていた。

 

早く助け出さないと!

 

バトルホッパーからクモ怪人目掛けて跳んで押し倒し動きを封じる。

 

「ジーナさん、今だ!」

 

「ええ分かった…」

 

クモ怪人と組み合っている間に糸はバトルホッパーが払い除け、ジーナさんは神機を拾いに行ったのを見計らうとすぐに立ち上がってワン・ツーと右、左のパンチでクモ怪人の顔を殴り飛ばす。

 

「…ライダー跳んで」

 

「!」

 

背後から声がしてすぐにジャンプする。

 

その後すぐにジーナさんの拾い上げた神機から発射されたバレットが俺の立っていた場所を通り抜けてクモ怪人に直撃する。

 

「グギャ!」

 

バレットがクモ怪人の身体に当たり爆発する。

 

「・・・やっぱりこのバレットもイマイチ効果が薄いわね」

 

確かにアラガミには効果があるバレットも怪人相手だと効果はほとんどないようだ。

 

「お、おのれ・・・もう許さん!デスランナー来い!」

 

クモ怪人に呼ばれたデスランナーが襲ってきて俺とジーナさんは間一髪避ける。

 

「こうなれば二人まとめて始末してくれる」

 

クモ怪人がデスランナーに乗り込むとこちらに向かって突進してきた。

 

「トァ!」

 

突進するデスランナーをなんとか避けるがジャンプ中にクモ怪人に殴られ体勢を崩し背中を強打してしまう。

 

「ぐっ!」

 

「かかったな!」

 

クモ怪人の口から吐き出された糸が俺の首に巻き付いた。

 

「しまった!」

 

「このまま引きずりまわし貴様の身体をズタズタにしてから崖下に突き落としてくれるわ」

 

クモ怪人がデスランナーのスロットルを回すと発進して俺は上向きに倒れたままデスランナーに引っ張られてしまった。

 

「ライダー!」

 

ジーナさんが叫ぶが今の場所からどんどん離れて行きジーナさんの姿が小さくなっていく。

 

く・・・苦しい・・・

 

デスランナーはスピードを上げていきそれに比例して俺の首に巻き付いた糸はきつく締まり地面をこする背中は摩擦熱の痛みと熱さが容赦なく襲って来た。

 

首に巻き付いた糸を取ろうとするが頑丈に巻き付いて取る事ができない。

 

この先にあるのはには数百メートル以上ある底の見えない谷底。

 

いくら仮面ライダーでもあの高さから落ちたらただじゃすまない。

 

ここで堕とされたらクモ怪人の次の標的はジーナさんやロードセクターだ。

 

このままじゃ奴の思い通りになってしまう・・・。

 

落ちるわけにはいかない。

 

「バトルホッパー!」

 

意識が朦朧としながらもなんとかバトルホッパーを呼ぶ事ができた。

 

「苦しいか?苦しいだろう仮面ライダー、だが我が同胞が受けた苦しみはこんなものではないぞ・・・ハッハッハ」

 

クモ怪人の不気味な笑い声が聞こえる。

 

し・・・知るか、先に手を出してきたのはお前たちだろう・・・。

 

だ・・・だめ・・・だ、息ができない・・・意識が・・・

 

「ふっはっは。貴様を始末してからキングストーンを返してもらう」

 

糸を掴む手にも力が入らず放しかけたその時。

 

不意に引っ張る力がなくなり息ができるようになった。

 

「ハァハァハァ・・・」

 

俺は失われた酸素を一気に肺の中に入れる。

 

「一体どうして?」

 

息を整えながらクモ怪人の方を見ると

 

「ええい!邪魔するな!どかんか!」

 

クモ怪人が怒鳴るその先に真正面からデスライナーとぶつかって進行を妨げるバトルホッパーの姿があった。

 

しかし馬力の差から徐々に押されていくバトルホッパー。

 

その上、敵はデスライナーだけではない。

 

「このガラクタが!」

 

デスライナーに乗るクモ怪人の容赦ない攻撃が身動きの取れないバトルホッパーを傷つけられていく。

 

このままでは俺だけじゃなくバトルホッパーまで破壊されてしまう。

 

・・・そうだ!

 

俺の命、お前に預ける。

 

だから力を貸してくれ。

 

「ロードセクター!」

 

目を赤く点滅させながらロードセクターを呼ぶ。

 

「とどめだ貴様から消えろ!バトルホッパー」

 

「バトルホッパー!」

 

クモ怪人が両腕を振り上げバトルホッパーに叩き込もうとした時。

 

ガシャン!

 

真横から赤い閃光が突っ込んで来てデスランナーとクモ怪人は勢いよく吹っ飛ばされた。

 

「ぐあああ!」

 

吹っ飛ばされたデスライナーも火花を散らしながら真横に転がり続けて燃料が漏れて引火したのか大爆発を起こした。

 

一体何が?

 

赤い閃光の正体、それは・・・。

 

「あれは・・・?」

 

赤い閃光が走り去った方向を見るとそこには見覚えのある白いバイクが走り去って行った。

 

「そうかさっきのはロードセクター最大の必殺技スパークリングアタック」

 

力を貸してくれてありがとうロードセクター。

 

おまえがいてくれなかったら俺もバトルホッパーもどうなっていたか。

 

「お、おのれ…やはり貴様も我らを裏切るのかロードセクター!!」

 

フラフラになりながら立ち上がるクモ怪人。

 

身体から血のような体液を流しすでに満身創痍のクモ怪人。

 

「今だ!トォァ!!」

 

空高くジャンプする。

 

「ライダーキィィック!!」

 

そのまま空中で体制を変え摩擦熱で紅く発光する右足でクモ怪人の身体を蹴り飛ばした。

 

「ギャアア!!!!」

 

白い煙を出しながら転がるクモ怪人。

 

これで決着はついた。

 

あとはこれでクモ怪人から僕をこの世界に送り込んだ神のいる場所を聞き出して奴の居所に乗り込めばすべて解決する。

 

そう思っていた。

 

いや思い込んでしまっていた。

 

しかしこの時は俺は浮かれて忘れていた。

 

この後、世紀王の辛い現実と改造人間の哀しい宿命を改めて思い知らされる事に・・・。

 

 

                                       つづく



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

23話

注意 今回は残酷な表現がありますので苦手な方はご注意下さい。


前回のあらすじ

ロードセクター登場
クモ怪人との死闘
ライダーキック



【ライダーside】

 

「さあ答えろ!お前達はどうやってこの世界に来た?どうやったら俺を仮面ライダーBLACKに改造したアイツらの所に行ける?」

 

俺の命と平和な日常を奪い、改造人間に造り替えGEの世界に無理やり送り込んだ神の居所を聞き出す為、ロードセクターを狙って現れた満身創痍のクモ怪人の胸ぐらを掴んで締め上げ尋問していた。

 

・・・いやあんな奴は神様じゃない。

 

真面目な本物の神様に失礼だ。

 

次からは邪神と呼ぶことにする。

 

ようやく元の世界に戻る手がかりを見つけて感情が高ぶり、俺の声にわずかながら怒気が含まれているが気にする余裕はない。

 

力を加減して倒さないようにライダーキックを喰らわせたのはこいつの口を割らす為だ。

 

「バ、バカな奴だ」

 

「何!」

 

「た、例え天界に向かう方法を知った所で貴様ごときがあの方に勝てる筈がなかろう。大人しく従っていれば神は様々な恩恵を与えられたのにな・・・クックック・・・貴様は神の恩恵もなしにこれからたった一人で呪いのような五万年という膨大な時の流れの中を生きていくのだ・・・」

 

血を流し痛みに苦しみながらも吐き捨てるように語るクモ怪人に対する憐れみよりも今言った事が脳裏に焼き付く。

 

こいつ今何を言った!?

 

「も、もしかして?この身体は姿や能力だけじゃなくて寿命も本来の仮面ライダーBLACKとおなじだというのか!」

 

数秒ほど経って脳が理解してしまった。

 

確かにその可能性があるかもしれないと考えてしまった時がある。

 

そんな事ないと無理やり頭の中でフタをしていた。

 

けど今脆くも残酷に崩れ去る…。

 

テレビ番組の仮面ライダーBLACKに出てくるゴルゴムの怪人達は強靭な肉体を持ち寿命は人間の寿命に比べ約三万年とかなり長いという設定がある。

 

それは怪人達の強さと寿命に憧れ、自ら怪人に改造される事と引き替えにゴルゴムの悪事に手を貸す愚かな権力者達が少なからず存在するほどだ。

 

権力者達はなんでそんな物に憧れていたのだろう。

 

実際なってしまった僕には今だに理解できない。

 

そしてその怪人達の中で頂点に立つ仮面ライダーBLACK。

 

いや創世王候補である世紀王は五万年に一度選ばれる。

 

それは三万年生きる怪人と違い創世王の寿命が五万年と長いからだ。

 

つまり創世王候補である俺の寿命は最低でも五万年……。

 

俺が天寿を全うし再び邪神と対峙する為には、このアラガミの巣くう地獄の中を死なずにたった一人で五万年の間生き残らなければならないのか・・・。

 

はっは……じょ、冗談だろ・・・。

 

今まで何度もアラガミと戦い傷つき、時には同じ人間からいわれのない迫害を受けてきた。

 

でもそれはこんな目に遭わせた邪神に復讐する為と耐え忍んできたのに。

 

それを五万年も耐えなければいけないなんて……。

 

「ついでに教えてやろう、なぜ貴様が人間の姿になれないのか、それはお前の変身機能にロックが掛けられているからだ」

 

変身機能にロックだと!?

 

僕が元の人間に戻れないのはそれが原因か。

 

「何でそんな物を?」

 

「お前の仲間と思う人間達も後たった百年ぽっちで死ぬ、そうなればまたひとりで生きていかなければならない・・・人間の輪の中に入れず未来永劫苦しみつづけるそれが貴様への天罰だ!」

 

天罰だと!?勝手なことばかり言いやがって!!

 

確かにクモ怪人の言う通りこの数ヶ月の間、怖がれて石を投げられたりアラガミと勘違いされ攻撃され続けた。

 

それがまた繰り返される・・・。

 

い、いやだ・・・。

 

「どうした?何か思い当たって嫌な事でもあったのか?ん?」

 

「き、貴様!」

 

「ぐっ!」

 

怒りに任せ醜悪な表情を浮かべるクモ怪人の顔をパンチで殴り飛ばす。

 

「ふ、ふっふっふ、私を殴った所でなにも変わらないというのに無様だな」

 

「黙れ!死にたくなかったら今すぐにそのロックを解除しろ!」

 

クモ怪人の首を掴み上下に振る。

 

「クックック無駄だ、奇跡でも起こらんかぎりロックは我らが神にしか解除できん・・・それに任務に失敗した私は処刑されるだけ、どのみち天界に生きて帰れんよ・・・ならばここで絶望し苦しむ貴様の哀れな姿を笑いながら地獄に堕ちてやる」

 

こいつは本気だ。

 

死ぬ覚悟ができてしまっている。

 

もうなにをやっても口を割る事はない。

 

「なんでおまえらの・・・おまえらの・・・所為で俺はこんな理不尽な目にあわなくちゃいけないんだ!」

 

虫の息で抵抗する力も残っていないクモ怪人を怒りに任せて力いっぱい殴り続ける。

 

「ぐほっ!がはっ!」

 

殴り飛ばす度にクモ怪人の口から赤い体液が噴出され顔や榊博士から貰ったジャケットに飛び散る。

 

だがそれでも俺の怒りは収まらずクモ怪人の首を左手で掴み上げ持ち上げる。

 

「ハァハァハァ・・・・・・ライダァァパァァンチ!!」

 

「やめなさい!」

 

「!?」

 

とどめとばかりに拳をふりあげたら声がして我に返る。

 

気がつくと目の前に血だらけのクモ怪人。

 

すでに息はなく手足は力無く揺れて眼も濁り完全に死んでいた。

 

こ れ を 僕 が や っ た の か ?

 

「ひぃ!?」

 

自分のやったことが怖くなって首を掴んでいた手を放しクモ怪人は力なく地面に倒れて動かなかった。

 

僕は…僕は…。

 

両手を見るとクモ怪人の血で真っ赤に染まってしまっていた。

 

いくら相手が憎い邪神の手先だったからってなんてことを…。

 

もしこれが怪人じゃなくてただの人間だったら…。

 

「う!オエェェ!!」

 

思わず想像してしまった光景に耐えきれず嘔吐してしまう。

 

「ハァハァハァ……!?」

 

胃の中の物をすべて吐き出し息を整えていたら背中を摩られる感触で振り返る。

 

「……ジーナさ……ん?」」

 

ハンカチを差し出す悲しそうな表情をしたジーナさんに呆然としていたがすぐにこの惨状を思い出して跳び離れる。

 

「ち、違うんだ、僕は…僕は…」

 

ほんの数分前に偉そうなことをジーナさんに言ってたのにも関わらず、こんな残酷な行為を怒りに任せてやってしまった。

 

僕は人間の自由と平和を守る仮面ライダーなのに…。

 

なにが人を護りたいだ…!

 

僕はカレルさんの言う見た目通りの化け物じゃないか!

 

ジーナさんに見られてしまった。

 

今回の事は当然、支部長や信頼してくれた榊博士、ツバキ教官にも報告されるだろう。

 

そうなったらもう僕はアナグラにいられない。

 

人間離れした腕力を持ち感情をコントロールできない危険人物を誰が好き好んでそばに置くのだろうか。

 

せっかく受け入れてくれたリンドウさんやユウカ達と知り会えたのに…。

 

そんな人を失望させてしまった。

 

おそらく僕はアラガミと同じように討伐対象になるだろう。

 

違うな、その前にこの首に仕掛けられた爆弾で『処理』される。

 

嫌だ!死にたくない!

 

「安心しなさい…あれは人間じゃない…アラガミと同じ私たちを襲った敵よ。それに今回の出来事は誰にも報告する気はないわ…」

 

「え?」

 

顔を上げるといつのまにかジーナさんが目の前にまで来ていた。

 

ジーナさんは地面に膝を付けて腰を下ろすと持っていたハンカチで僕の顔を優しく拭き始めた。

 

「あ、あの…?」

 

「動かないで拭きづらいわ……人の顔を拭くなんて初めてで手加減が分からないんだから……目の所も拭いてあげる。なるべく優しく拭くけど痛かったら言いなさい」

 

「は、はい……」

 

顔を拭いたあと、ハンカチを裏返しにして僕の赤い複眼を拭いていく。

 

それは泣いている子供の涙を拭うように優しく。

 

少しヒリヒリするが痛いってほどじゃないので我慢した。

 

「終わったわよ……」

 

「あ、あの…」

 

「何?ハンカチなら気にしないでいいわ、あとで洗うから」

 

「あ、いえそれもありますけどそれよりも僕の事が怖く…ないんですか?」

 

さっきの戦いと呼べない暴力をジーナさんは、見てた筈なのに…。

 

「もちろん怖いに決まっているでしょ」

 

ビクッ!

 

「そ、そう…ですよね」

 

あっさりそう言われ、さすかにショックを受ける。

 

やっぱり僕はここにいたら…

 

「でもね・・・それ以上に安心しているのよ。あなたが他の人と同じ年相応の16歳の青年だったことに」

 

この人は何言ってるんだろ。

 

あんなのが年相応な訳ない。

 

「どういう意味か分からないって感じね、でも普通の16歳の青年ならつい怒りに身を任せてしまうなんてよくあることよ」

 

「そんな事…」

 

「ないと言い切れるかしら?むしろさっきあなたが蜘蛛の怪物を追いかける前に言っていたのを聞いてそっちの方が歪んでいると思ったわ。だって無理して悟ったフリなんてしてるんだもの・・・」

 

思わず黙り込んでしまう。

 

そうかもしれない。

 

俺は仮面ライダーBLACKの姿に惹かれていつのまにか自分を殺して仮面ライダーにならなくちゃいけないんだと脅迫概念に囚われていたのかもしれない。

 

でもそれは無理だ。

 

僕は僕…仮面ライダーは仮面ライダー。

 

同じ存在じゃない。

 

間違いもある。

 

けどそのままにしておけない。

 

間違ってたら正せばいい。

 

「どんな聖人君子でも人は誰でも自分の中に残酷なケモノが一匹や二匹がいるものよ…もちろん私の中にもね」

 

ジーナさんは自分の腕輪に触れながら静かに話し始める。

 

「でもそのケモノに負けて自分で自由に制御できない限りはアラガミのように本能だけで暴れる化け物になり果ててしまう・・・」

 

確かに僕は・・・自分の中の”ケモノ”を制御できなかったからこんな事態を引き起こしてしまった。

 

今の僕はBLACKの能力は知識として分かっていても心がついていけずに振り回されて制御出来ていない。

 

ジーナさんの言う通り、これからは肉体面だけじゃなくて精神面も鍛えていかなくちゃならないな。

 

「それにあなた一人で崩壊するほど極東支部はやわじゃない……だから私達に後ろめたさなんて持たずに嫌なことははっきり嫌と言って自分に素直に生きなさい……それがあなたを心配する仲間の為でもあるのよ」

 

そう言われて少しだけ気が楽になったような気がした。

 

言われてみれば極東支部は支部長を始め、榊博士やツバキ教官、リンドウさんといった優秀な人達がたくさんいる。

 

そっか、俺は自分はもう人間じゃないから心のどこかで線引きしてアナグラのみんなを信じ切れていなかったんだな。

 

第一部隊や第二部隊のみんな、仲良くなった人達から拒絶されるのを恐れて一人で抱え込んでしまいその心の弱さが今回の事態を招いてしまった。

 

帰ったらまずリンドウさんやツバキ教官に胸の内を打ち明けて相談してみよう。

 

「ありがとうございますジーナさ・・・」

 

「おい聞こえるか?」

 

突如遮るように通信機からカレルさんからの通信が入る。

 

なんだろ?カレルさんの口調がいつもの傲慢な口調じゃなくてなんか焦っているような感じたけど。

 

「こちらジーナ、どうしたのカレル?」

 

ジーナさんが通信を繋げる

 

「どうしたもこうしたもじゃない!こっちにクアドリガが出やがって今交戦中だ!お前らどこにいる!すぐに援護に来い!」

 

「なんですって!」

 

連絡を受けたジーナさんが驚きの声を上げる。

 

普段冷静な彼女でさえこの通信内容は予想外すぎる事態だった。

 

「くそ!?クアドリガのいる情報なんてなかったのに!」

 

通信機から聞こえる轟音と爆発音、そしてシュンさんの悲痛な声。

 

クアドリガ、ノルンのデータで読んだことがある。

 

戦艦や戦車、人類が作った兵器を大量に捕食したオラクル細胞がその特性を取り込み自ら体内でミサイルや砲弾を製造を行い攻撃するとんでもない凶悪な大型アラガミだ。

 

そうか愚者の空母には破壊された無数の戦艦の残骸がある。

 

ここは奴の餌場には最適って訳か。

 

そんな厄介な奴がカレルさん達の方に。

 

急いで救援に向かわないと。

 

カレルさんたちのいるポイントに向かおうとジーナさんがに背を向けると。

 

「行くの…?」

 

背後からジーナさんに声を掛けられ振り返ると辛そうな表情があった。

 

「……はい」

 

「例え助けてもあの二人の性格からして感謝しない……むしろ逆、安全が確保されたらまた罵倒されるかもしれない……」

 

確かにジーナさんの言う通りかもしれない。

 

あの二人の性格ならコウタやアリサ達と違い神機なしで戦う僕を見て戦いが終わったら恐怖し罵倒してくるだろう。

 

けど……。

 

そうだとしても……!

 

目の前で誰かが苦しんでいる所なんて見たくない!!

 

 

 

(BGM はるかなる愛にかけて)

 

 

 

「それでも行きます、自分で決めた事に後悔だけはしたくないんです」

 

「……そう分かったそれがあなたの答えなのね、なら行きなさい、私もできるだけのフォローをする……けどここからかなり距離があるわよ」

 

確かにここからカレルさん達のいる場所までかなりのかなりの距離がある。

 

バトルホッパーはさっき僕を助けようとしてクモ怪人から受けたダメージがまだ再生していない。

 

なら自力で走っていくしかないか。

 

考えている暇なんてない。

 

一分一秒でも早く救援に向かわないと間に合わない。

 

そう思ったその時……。

 

コン

 

ん?背中に何か当たり振り返るといつのまにかロードセクターが停まっていた。

 

「ロードセクター?どうした?」

 

ファンファン!

 

なんだろ?なにか訴えかけている。

 

「・・・・もしかして乗れって言ってるんじゃないの?」

 

ジーナさんの言葉に反応して、ライトが点滅する。

 

「力を貸してくれるのか!ロードセクターありがとう!」

 

素早くロードセクターに跨りスロットルを動かすとエンジン音が大きくなる。

 

お前がいてくれるなら百人力だ。

 

「ジーナさん先に向かいます。いくぞ!ロードセクター!」

 

スロットルをフルで回すとロードセクターは俺を乗せて猛スピードで走り出した。

 

速い!凄いスピードだ。

 

これなら絶対に間に合う!

 

目的地はアラガミと戦う仲間の元に。

 

俺は戦う!今は目の前に苦しんでいる人達の助けになる為に!

 

仮面ライダーとして、一人の『人間』として!!

    

                      つづく

 




成長回は難しいな・・・。
俺も成長しなければ。
あと今回のクモ怪人戦はやり過ぎた。




次回はグアドリガ戦。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

24話

大変遅くなりすみません。

horou02様
全力様
評価ありがとうございました。
そしてお気に入りが200人達成
すごく嬉しいです。
不定期更新で申し訳ないですがこれからもよろしくお願いします。



ジーナSido

 

「ふう、ほんと手のかかる後輩ね」

 

白いバイクで走り去るライダーを見送り私、ジーナ・ディキンソンは笑みをこぼしていた。

 

それにしても彼、やっぱり無理をしていたのね。

 

彼自身は素直な優しい子で味方も多いけどそのバッタのような見た目と驚異的な身体能力からどうしてもカレルやシュンのように蔑む目や恐れる目を向ける職員や神機使いが多い。

 

今回なんとか助言できたけど少しは彼の負担は軽減されたかしら。

 

それにしてもケモノか・・・もっとも私たちにはケモノよりおぞましいモノ(オラクル細胞)が潜んでいるのに偉そうな事言ったわね。

 

彼が知ったら何というかしら。

 

自分の右手首に付けられている腕輪を見ながら呆れるように微笑む。

 

その微笑みがただの自虐かそれとも後輩を導けた喜びなのか。

 

自分自身でも分からなかった。

 

…さて今はこの状況をなんとかしないとね。

 

振り返る視線の先にはこちらに向かってくる無数のオウガテイルとザイゴートの群れ。

 

そして私の足元には彼に殴り倒され血を流して死んでいるクモの怪物。

 

どうやらこのクモの怪物の血の匂いを嗅ぎつけてアラガミ達はやってきたようね。

 

仕方ないわ。

 

放置してクアドリガと合流でもされたら厄介だし。

 

ここで殲滅しておきましょう。

 

「あら?」

 

気持ちを戦闘態勢に切り替え神機を構えると彼の緑のバイクがエンジンを吹かしながら横に立つ。

 

「どうしたの?あなたのご主人様はもう行っちゃたわよ、動けるようになったなら早く行きなさい」

 

語りかけても無反応だ。

 

彼の言葉以外は通じないのかしら?

 

でも人の言葉は分るみたいでよく分解しようとするリッカから逃げ回っているのを見かけてたからそれはない筈よね。

 

「…もしかして手伝ってくれるのかしら?」

 

ファン!ファン!

 

まるでそうだと言わんばかりに目のようなライトが点滅する。

 

もしかして私が彼を助けた恩返しのつもりなのかしら?

 

だとしたら主人思いの優しいバイクね。

 

あの二人(カレルとシュン)にもその優しさがほんの少しだけでもいかないかしら。

 

「ありがとう、確かバトルホッパーだったかしら?手伝いお願いね」

 

こうして私とバトルホッパーとの共同戦線が幕を開くのだった。

 

 

 

カレルSido

 

まったく今日はついてないぜ。

 

金払いのいい楽な仕事だと思って受けてみたらまさか大型のクアドリガが出てきやがるなんてな。

 

ミッション中に俺カレル・シュナイダーと同僚である小川シュンは突如現れた大型アラガミ「クアドリガ」に襲撃され奴の放つミサイルの爆発で俺たちは窮地に追い込まれていた。

 

シュンはクアドリガのミサイルの爆発に巻き込まれて気絶してるから役に立てねえしジーナにはすぐ来るように連絡したが距離が離れすぎてまず間に合わねえだろうし……あんなポッっと出のバッタ野郎は来るかさえ分からねえ。

 

おまけに今回は楽なミッションだと思ってバレットもそんなに持ってきていない。

 

状況は最悪だ。

 

走りながら放つクアドリガのミサイルを避けながらなんとか打開策を考えようとするがこの状況では考える暇もない。

 

「おいシュン生きてるか?」

 

「…うるさいな、まだ生きてるよ」

 

意識を取り戻しすぐさま悪態を吐くシュン。

 

相変わらず生意気な奴だ。

 

だが奴はすでにもはや戦力には数えられん。

 

「くそ!バイクのエンジン音みたいな耳鳴りまでしてきやがった!」

 

チィシュンの奴まだ寝ぼけてやがるのか。

 

それはクアドリガの発するエンジン音だろうが。

 

バイクのエンジン音なんてそんなの俺にはまったく聞こえねえぞ。

 

くそう!俺には金を稼いで金持ちになり幸せになるって夢があるんだ。

 

なのにこんな所で死んでたまるか。

 

それにしてもさっきからうるせえアラガミだぜ。

 

・・・・まてなんだこれは?

 

最初はクアドリガのエンジン音だけだと思っていたが冷静になると音が二重に聞こえる…だと…?

 

まさか!?

 

音が近づいてきている方向を見る。

 

そこには白いバイクに乗ったアイツ(バッタ野郎)がこっちに向かってきていた。

 

何しに来たんだアイツは!

 

ただ突っ込んでくるだけじゃミサイルを撃ってくるクアドリガのいい的になるだけだぞ!

 

案の定、クアドリガが無数のミサイルをアイツに発射してしまった。

 

ミサイルの雨が迫る。

 

だがアイツのバイクはスピードを緩めるどころかさらに加速していく。

 

「アタックシールド!」

 

バイクの前と後ろから何かが出てきてフードのように覆う。

 

あんなんで防げるわけねえだろ。

 

クアドリガのミサイルは雨風じゃねえんだぞ。

 

もうダメだ。あいつはミサイルの直撃を受けて爆死する。

 

俺もシュンもそう思っていたが予想に反した事態が起きた。

 

おいおい嘘だろ。

 

バイクの前方に赤い閃光に覆われながらあの無数のミサイルが爆発する中をバイクで突っ走って来やがった。

 

ガシャアアアン!

 

白いバイクはそのまま猛スピードでクアドリガに直撃して金属同士がぶつかる大きな嫌な音が発生した。

 

と同時にクアドリガの馬の足ような履帯を破壊する。

 

足を破壊されバランスを崩して倒れるクアドリガ。

 

なんて破壊力だ。

 

神機でもあそこまでの破壊力はないぞ。

 

「プラズマジェット!」

 

ターンしてクアドリガに背を向けるとバイクから白いガスのようなものが勢いよくクアドリガに噴出される。

 

何を浴びせられたか知らないがもがき苦しむクアドリガ。

 

その間にあいつは俺たちの方にやってきた。

 

「カレルさん、シュンさん大丈夫ですか?怪我は?」

 

「おまえどうして?それにそのバイクはまさか?」

 

「話は後です、今のうちに回復して態勢を立て直してください」

 

「あ、ああ…」

 

そうだな、色々聞きたい事があるが今はそれ所じゃない。

 

金はあっても自分の命がなかったら意味がないからな。

 

あいつの言う事を聞くのは悔しいが今は言う通りにさせてもらうぜ。

 

「おい立て!一旦退くぞ」

 

「あ、ああ…」

 

シュンの奴に肩を貸して無理やり立たせる。

 

シュンに貸した借りはいずれ金銭的な意味で返してもらうか。

 

そんな事を考えながらシュンと共にバッタ野郎から離れクアドリガの攻撃が届かない距離まで下がる

 

あの岩場の影がいいな。

 

シュンを寝かせて懐から回復剤を探す。

 

くそが!調査部の奴らいい加減な仕事しやがって。

 

この損害の請求は高くつくから覚悟しろよ。

 

 

 

ライダーside

 

よしカレルさんもシュンさんも怪我はしているが意識ははっきりしていたし大丈夫みたいだな。

 

あとはクアドリガを倒すだけだ。

 

しかしななんて大きさなんだ。

 

足を破壊されたとはいえ目の前にいるクアドリガの威圧感は今まで闘ったコンゴウやシユウとは比べものにならない。

 

これが小型のオウガテイルや中型のシユウでなく大型のアラガミの威圧感。

 

これからも闘わなければはならない怪物達。

 

俺は倒せるのか。

 

いや弱気になるな。

 

アラガミの中にはクアドリガよりもっとでかいやつも存在する。

 

ここで立ち止まるわけにはいかない。

 

「いくぞ!ロードセクター」

 

自分を振るい立たせ怒り狂うクアドリガに立ち向かって走りだした。

 

                                       つづく



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

25話

まずは長年放置してすみません!!

通常時の一人称は僕
戦闘時の時は俺でいきます。


カレルside

 

「す、すげえ・・・」

 

隣でジュンの驚きの声を上げている。

 

そりゃそうだ。

 

『アタックシールド!』

 

目の前で白いバイクを器用に操りながらクアドリガから放たれるミサイル攻撃を避けながらバイクごと体当たりするとんでもない(ライダー)がいるんだからな。

 

神機なしでアラガミと戦っている噂を聞いていた時、俺は信じていなかった。

 

黒い筋肉に覆われた化け物ような見た目

 

アラガミ以上の力。

 

そんな奴に背中を任せられない。

 

俺は奴と距離を置いていた。

 

いつ本性をむき出しになって襲ってくるかわからないからだ

 

今回の任務はあいつのバイクの腕が必要だったから仕方なく部隊に加えた

 

俺は金以外信じていない。

 

だから俺は向こうから関わってこないように奴を徹底的に罵倒した。

 

それがお互いにとって一番いい選択だと思ったからだ

 

だが奴はそんな俺を助けにきやがった。

 

なぜだ?

 

「どうやらそっちはまだ終わってないみたいね」

 

「ジーナか・・・」

 

考えがまとまらない中、後ろを振り返るとあいつの確かバトルホッパーとかいう緑のバイクに乗るジーナの姿があった。

 

確かあのバイクは前にライダー以外の奴が無断で乗ろうとして振り落とされてたのになんで乗れてるんだ。

 

「それで?あなた達はあれだけ彼に偉そうなことを言って呑気にサボり中かしら?」

 

「なんだと俺たちは身体を休めてるだけだ。お前らこそ俺達がなにやってんだ」

 

「よせよ、ジーナの言ってることはもっともだ」

 

悔しいがあまり動けない。

 

今はあいつに頼るしかねえ。

 

「とりあえず回復させるわ」

 

ジーナの神機の銃口が俺たちに向けられ発射され回復弾が拡散し、緑の球体が俺とシュンを覆い受けた傷が癒されていく。

 

少しは楽になった。

 

これなら何とか動けそうだな。

 

「おいマズイぞ!」

 

シュンの指さす方を見ると爆発でバイクから投げ出されて空を舞うバッタ野郎の姿があった。

 

何やってんだアイツ!?

 

 

 

 

ライダーside

 

「ぐあ・・・あ・・・」

 

俺はなんとか直撃は免れたけどミサイルの爆風をモロに受けてしまいロードセクターから放り出されてしまった。

 

地面に叩きつけれた時に背中を強打してしまい息がしづらい。

 

爆風と同時に発生した強烈な熱風で火傷してしまったのか黒い身体から白い痕がついて熱の所為か少しだけ白煙が上がっている。

 

そ、そうだロードセクターは?

 

起き上がることもできず首だけを何とか動かしてロードセクターを探す。

 

・・・みつけた。

 

ロードセクターは横倒しになって動けないでいた。。

 

そうだクアドリガはどうなっている。

 

ガシン!ガシン!

 

大きな足音を立てながらこちらに迫ってくるクアドリガ。

 

倒れている僕の前まで来ると再生した前足を大きく振り上げる。

 

このまま踏み潰される!

 

早く起き上がらないと・・・。

 

「く・くううう・・・ハァハァハァ」

 

だ、だめだ逃げたいけど体が動かない。

 

今の爆発とクモ怪人との戦いで受けたダメージで体が動かない。

 

これまでか。

 

そして無情にも振り下ろされるクアドリガの前足。

 

「くっ!?」

 

覚悟を決めて衝撃に備えようとした瞬間。

 

二つの爆発音が聞こえた。

 

上を見上げると前足を大きく振り上げたままバランスを崩し煙を出しながら後ろに倒れていくクアドリガ。

 

いったい何が?

 

「ジュン早くそいつを回収しに行け、いつまでもそんな所で寝ていられたら邪魔だ。ジーナは奴が起き上がってこれないように俺と一緒に撃ちまくれ!ただし絶対に二人に当てるなよ。特に死にぞこない(ライダー)の方にはな」

 

この声・・・カレルさん?

 

「ふふふ・・・了解」

 

「おいカレル!それはどういう意味だ!俺には当てていいって事かよ!」

 

「うるさい!無駄口叩いてないで報酬の分け前を受け取りたかったら俺の命令どおりにしろ!」

 

「くそ覚えてろよ!」

 

文句を言いながらも僕の方に走ってやってくるジュンさん。

 

「ほら早く立て!これでさっきの借りは返したぞ」

 

そう言ってジュンさんは動けない僕に肩を貸してクアドリガに撃ち続けているカレルさん達の方に向かう。

 

僕と一緒にいたくない・・・まして僕に触れたくもない言っていたジュンさんなのに・・・。

 

「ありが・・・とう・・・ございます」

 

「!?だ、黙ってさっさと走れ!」

 

朦朧とする意識の中、ジュンさんの顔が赤くなっているのが見えた。

 

走りながらなんとかカレルさん達のいる所にたどり着き岩を背にもたれかかり座り込む。

 

ハァハァ・・・。

 

息をするだけで体に痛みが走る。

 

どこか体の中を痛めてしまったのか。

 

「すみません足手まといなってしまって・・・」

 

「ああまったくだ、おいジーナ、ジュン早く回復錠か回復弾を使ってやれ」

 

「無理だよ、こいつは俺達と違うから回復錠や回復弾を使っても効かないらしいんだ」

 

そう俺にゴッドイーター用に調合された回復弾や回復錠を使用してもなんの意味もない。

 

「じゃあどうするんだよ!コイツこのままだと死ぬぞ!それにこのままだと・・・」

 

そうだ俺だけじゃない。

 

こうしている間にもクアドリガに撃ち込んでいるバレット弾には限りがある。

 

このままだといずれ弾切れを起こしてしまい足止めができなくなったクアドリガにみんなが餌食になってしまう。

 

かといって動けない僕がいたら撤退できない。

 

ならば・・・。

 

「俺の事はいいですから早く撤退してください」

 

そうするしかみんなが助かる道はない。

 

「黙れ!この部隊の隊長は俺だ。お前が偉そうに命令するな」

 

気持ちは嬉しいですけどそうも言ってられない。

 

「でもこの状況じゃ・・・」

 

「・・・カレル足止め変わってちょうだい」

 

「おいどうする気だ?」

 

ジーナさんが砲撃をやめてこちらを向く。

 

足止めを止める訳にもいかず慌ててカレルさんが自分の神機で砲撃を再開し始めた。

 

「確かこっちのポケットに・・・あった」

 

ジーナさんは自分のポケットから一つのバレットを取り出して神機にセットする。

 

そして・・・銃口を俺に向けてきた!

 

え?な、何!?

 

「おい何するつもりだ?こいつに回復弾は効かないのに」

 

「時間がないの、黙ってみてなさい」

 

あのジーナさん、目が怖いです。

 

「まさか動けなくて邪魔なコイツにトドメをさす気なのか?」

 

そ、そうなんですか!?

 

バンッ!

 

バレット弾は放たれて僕の胸に直撃する。

 

「うわ!やめろ!」

 

本当にとどめをさされたのだろうか。

 

思わず歯を食いしばる。

 

・・・痛くない?

 

それどころかさっきまでの痛みが引いていく。

 

よく見ると身体に淡い緑の光が覆っている。

 

これってまさか回復弾。

 

でもどうして?

 

僕には回復弾は効かないのに。

 

やがて光は収まり傷と痛みは完全に消えて立ち上がれるようになった。

 

「お、おいお前大丈夫なのか?」

 

心配そうに声をかけるジュンさん。

 

「は、はいそれどころかさっきまでの痛みも無くなりました」

 

呆然としながら自分の腕を見る。

 

クモ怪人にバイクで引き回されて受けた背中の痛みもない。

 

「どうやら上手くいったみたいね」

 

「おいどういうことだジーナ?」

 

「そうだよこいつに回復弾は効かないんだろ」

 

ジーナさんの声で現実に引き戻ったカレルさんとジュンさんがジーナさんに詰め寄る。

 

「ええ普通の回復弾ならね、でもこの彼用に調合された回復弾なら別よ」

 

「どういうことですか?」

 

「今撃った回復弾はあなたを捕獲した時に手に入れたデータを元に榊博士が開発した試作品らしいのよ、もしもの時があるかもしれないからと榊博士が私に預けていたのよ」

 

「榊博士が?」

 

「ええ帰ったらちゃんとお礼を言っておきなさい、造るのに結構大変だったみたいで完成したのはこの試作品ひとつだけだったらしいから」

 

「分かりました」

 

榊博士、ありがとう。

 

「さてゆっくり休めたな。そろそろこっちから反撃に移るぞ」

 

カレルさんが声を掛ける。

 

その顔はリンドウさんやタツミさん、部隊長特有の戦う顔になっていた。

 

「奴の結合崩壊を起こさせる箇所はミサイルポッドと排熱器官そして前面装甲だそこで・・・」

 

作戦の説明が始まり数分で終わる。

 

「まずは私から・・・」

 

ジーナさんがクアドリガの攻撃方法であるミサイルポットを狙撃する。

 

誘爆し破壊されミサイルポットから火を吹く。

 

次にカレルさんが神機を構え狙撃する。

 

「ジーナほどじゃないが俺もそれなりに狙撃はできるんだよ」

 

狙いは廃熱機関。

 

ミサイルポットが破壊されフラフラしている所にカレルさんの神機から発射されたバレットが排熱期間内に入って爆発した。

 

「よし行け!シュン、バッタ野郎!」

 

「おう!」

 

「はい!」

 

シュンさんと共に走り出し苦しんでいるクアドリガの前に立つ。

 

行くぞ!はあああ!!

 

「ライダーダブルチョップ!」

 

左右の腕からほぼ同時に全面装甲に向かってクロスの形で放つ。

 

くっさすがに固いな!

 

だが亀裂は入った。

 

「ライダー変われ!うおおおお!!」

 

ザッシュ!ザシュ!

 

シュンさんの神機から放たれる斬撃が亀裂を大きくする。

 

「シュンさん代わります」

 

「ああ!」

 

「トォ!」

 

シュンさんが後ろに下がるの確認した俺は空高くジャンプする。

 

「ライダァァァ!キィィック!!」

 

バギギギギ!!!

 

渾身のライダーキックがついにクアドリガの自慢の厚い装甲が完全に破壊した。

 

「くたばれ!くそ野郎!!」

 

『ガアアアァァァ!!』

 

装甲がなくなったクアドリガの皮膚にシュンさんがロングブレードを突き刺すとクアドリガは叫び声をあげながらやがて(うずくま)るように倒れ込み動かなくなった。

 

「よしコアを取り出すぞ!」

 

カレルさん達が慣れた手つきでクアドリガの死体を解体してコアと素材を取り出していく。

 

コアと素材を取り除かれたこのクアドリガは二度と動くことはないだろう。

 

「大物のコアが手に入るとは思わぬ収穫だな、臨時報酬が楽しみだ」

 

「そうだなあとはこのバイクを持って帰れば任務完了だ」

 

「ああ多少のトラブルはあったが大儲けだ」

 

嬉しそうに談笑するカレルさんとシュンさん。

 

そうだ僕らの本来の任務はロードセクターを捕まえることだったんだ。

 

「カレルさん、シュンさんお話があります」

 

「ん?なんだよ?分け前のことか?心配するなお前にもちゃんと払ってやるよ」

 

「分け前はいりません、ロードセクター・・・そのバイクを俺にください」

 

俺に言葉に二人の表情が変わる。

 

「おいおい何言ってんだ!お前!」

 

「そうだあまり調子に乗るなよ、これは任務だからそんな事できるわけないだろ」

 

シュンさんが怒鳴る。

 

そりゃそうだ、俺は第三部隊からしたらせっかく苦労して手に入れた手柄を横から奪って独占しようとしている。

 

それに下手したら任務失敗扱いになって第三部隊の評価が下がってしまうかもしれないんだから。

 

せっかく第三部隊の人たちと戦い通してだけど少しは仲良くなれてよかったけどロードセクターを守るため引くわけにはいかない。

 

俺を信じてロードセクターは来てくれて助けてくれた。

 

例え極東支部の人たちを敵にまわす事になっても・・・。

 

「どういうことだ?お前はこのバイクがなんなのか知ってるような口ぶりだな」

 

「ええこいつはロードセクター、アラガミに対抗する為に俺を改造した組織が造った俺専用のマシンです」

 

さすがに邪神が造ったなんて言えやしないから俺がフェンリルに入隊した時に用意されたカバーストーリーを利用させてもらった。

 

『俺はアラガミとの戦う為にある組織に改造された人間』

 

組織のことは上層部が詮索するなと戒厳令が敷かれているからこれ以上は追及されないだろう。

 

嘘をつくのに躊躇いはあるけど今は仕方ない。

 

「なるほど、だがよその所為で俺の部隊の信用が落ちる結果になってもか?」

 

そうきたか。

 

それを言われるときつい。

 

けどここで引くわけにはいかない。

 

「ヨハネス支部長には僕が話します、みなさんに迷惑はかけません報酬でも足りないなら僕の貯金をすべて出します、だからロードセクターを僕にくださいお願いします」

 

「本気だな」

 

「ええ…全部持って行って結構です、それでも足りないならあなたたちの任務もすべて無償で手伝います」

 

俺を信じてロードセクターは来てくれたんだ。

 

例え極東支部の人達に嫌われることになっても…。

 

最悪の場合、第三部隊の奴隷に成り果てるかもしれないけど後悔はしない。

 

「ふっ・・・いいだろうそのバイクはくれてやるから分け前の報酬はすべて貰う、お前の金は要らん。これで貸し借りなしだ。持っていけ仮面ライダー」

 

え?今僕の名前を?

 

「勘違いするな、お前にそのバイクを売ってやったのはその方が金持ちに売るより儲かると判断しからだ。いわば未来への投資だからな!だからお前の手が空いてるときに俺の仕事を手伝ってもらう、いいな!」

 

「ふふよかったわね、カレルはお金にならない投資は絶対にしない主義なの」

 

「それって」

 

「つまり口ではああ言ってるけどあなたを認めたって事よ」

 

「ふん」

 

「まあうちの評価なんてそんなに高くないんだけどねこの間の任務の失敗もカレルとシュンがケンカして標的に逃げられたし、まあすぐに対象のアラガミは別の部隊が対処してくれて大事にはならなかったのが救いね」

 

「うるせえ!余計な事言うな」

 

こうして俺は新たなる仲間『ロードセクター』を手に入れた。

 

だが喜んでばかりはいられない。

 

『貴様は神の恩恵もなしにこれからたった一人で呪いのような五万年という膨大な時の流れの中を生きていくのだ・・・』

 

僕はこれから気の遠くなるほどの長い時間戦い続けると共にこれから敵はアラガミだけでなくゴルゴム怪人を操る邪神との戦いにも生き残らなければならない

 

クモ怪人が残した怨嗟の言葉が俺の心に深く突き刺していたのだった。

                                       つづく



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。