未来からの手紙 (スターゲイザー)
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セルゲーム編
第一話 チチの選択


『燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦』はセルゲーム前の9日間の間に起きています。そっくりそのままではなく、ベジータがいた天界にバラガスの宇宙船が下りて新惑星ベジータに行ったという展開です。


 

 

 

 

 未来から来たというトランクスからその手紙が渡されたのは悟空が心臓病の薬を飲んで落ち着いてからだった。

 薬を飲んだことで苦しそうだった息が落ち着いたものに変わっても未だ目覚めない悟空。人造人間に命を狙われていることを考えれば何時までも自宅に留まるのは危険だったので、ホイホイカプセルの飛行船で悟空を亀仙人が暮らすカメハウスに移すことになった。

 その時にチチはトランクスから手紙を渡された。

 

『これは?』

 

 古ぼけた手紙を渡されたチチは困惑してトランクスに問いかけた。

 

『末来のチチさんから預かってきました』

 

 トランクスは預かったものの渡していいかと悩んでいる様子であったがチチはそれほど深く考えることはなく手紙を受け取った。

 チチとトランクスの関係はそこまで深くはない。それ以前まで話をしたことはなく、顔を合わせたのだって初めてだ。

 未来の自分からの手紙に興味は惹かれたが、薬を飲んで安静にしている悟空の命を狙う人造人間から身を隠すために移動しなければならなかったので直ぐに読むことはせず、荷物の中に入れっ放しにしてそのまま忘れてしまっていた。

 手紙の存在を思い出したのは、金髪になって不良になった悟空と悟飯に連れられて自宅に帰り、二人がチチが作った大量の昼ご飯を食べると大きな気を感じたとかで天界に向かったことで手が空き、一人で荷物を整理していた時だった。

 

『自分に手紙を書くのも変な気分ですが』

 

 と、手紙の冒頭に綴られた言葉に読んでいるチチも同様の気分だった。

 悟空が心臓病で死ななかったことで完全に異なってしまった時間軸の自分からの手紙など誰が予想出来るものか、そしてその内容もまた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 新ナメック星から新しい神として連れて来たデンデによって復活したドラゴンボール。地球に来たばかりのデンデの為に天界に悟飯を残して、悟空はドラゴンボールを集めた。

 セルゲーム前夜、ドラゴンボールを集め終えた悟空はチチと夫婦水入らずの夕食を終えて床につこうとしていた。 

 

「オラ、腹一杯だ。やっぱチチの飯は最高だ」

 

 チチは化粧台で髪を梳かしながら、普通の人の十倍以上を食べて一杯になった腹を擦りながらベットに横になった悟空を見て自分の思いを告げるべきかどうか悩む。

 

「悟空さ、あんなに食べて体は大丈夫なんか? ブロリーとかいう強いサイヤ人と戦ったばかりなのに」

「大丈夫だって、チチ。仙豆のお蔭で傷は治ったぞ」

 

 ほら、と半身だけ起き上がって肩を回しながら笑う悟空に激戦を越えたことによる異常は見受けられない。

 

「でも、悟飯ちゃんは夜中に飛び起きてたべ」

「そんだけブロリーは強かったからな」

 

 チチが不安げに訴えると、少しだけ悟空は態度を改めて腕を組んだ。

 

「強い敵は今までも一杯いたでねぇか」

「そういうレベルの話じゃねぇんだ。ピッコロやベジータ、フリーザも強かったけど、ブロリーの強さはなんつうか次元が違うって感じだった。超サイヤ人がオラも含めて四人もいたのに一方的にやられるなんて今までじゃありえねぇぐらいだ。強すぎて、オラだって少しは手加減しろって言ったぐらいだからな。悟飯が夢に見ちまうのも無理はないさ」

「強いってセルよりもか?」

「…………どうだろうな」

 

 腕を組んでいる悟空がブロリーの強さを思い出したのか、体をブルリと震わせた。

 

「完全体のセルと直接戦ったわけじゃねぇからハッキリとしたところまでは分からねぇけど、ブロリーはみんなのパワーを分けて貰わなきゃ勝てなかっただろうな」

 

 恐怖というわけではなさそうだが、強敵との戦いを楽しむ悟空にしては珍しい仕草だった。

 

「なんかオラを執拗に狙ってきて、人の名前を連呼してくるから気持ち悪いったらありゃしねぇ」

 

 滅多に人を嫌うことのない悟空にしては本当に珍しい態度である。

 

「そんなに強いなら地球に連れて来てセルと闘わせたら良かったでぇねか」

「無理無理、絶対に無理だって」

 

 五体を投げだして枕に頭を沈めた悟空が眉を顰める。

 

「瞬間移動で連れて来る隙なんてねぇし、ブロリーは戦っている間にも気がドンドン強くなってた。あれ以上、強くなられたらみんなにパワーを分けて貰っても勝てねぇぞ」

「セルと闘わせて弱ったところに二人を一緒に倒す、とかは出来ないんか?」

「上手く戦ってくれればいいけど、下手すれば二人でオラ達を襲いかねねぇぞ」

 

 チチとしては良い案だと思ったが、悟空的にはそう都合良い展開になるとは思えないらしい。

 確かに仲間たちの協力もあってなんとか倒せた敵が、別の敵と協力して向かって来るなんて考えるだけでも恐ろしいだろう。悟空の話を聞くに、ブロリーというのは悟空を付け狙ったようなので上手くことが運ぶのは難しいかもしれない。

 

「ブロリーのことは忘れて明日のセルゲームに集中しねぇとな」

 

 ブロリーの存在は悟空の中で半ばトラウマ化しているようで、話題を変えるようにセルゲームのことを口にする。

 

「セルがブロリーより弱いなら、ブロリーを倒した悟空さならセルにも勝てるんでねぇか」

 

 チチの純粋な疑問に悟空は頭の下で腕を組みながら天井を見上げる。

 

「そう単純な話じゃねぇよ。ブロリーに勝てたって言っても、みんながパワーをくれたお蔭で一瞬だけ上回ったからだ。オラだけの力で勝ったわけじゃない」

 

 悟空が不満げなのは自分一人の力で勝ちたかったからだろう。ベジータと闘った後に悟空が言ったようにサイヤ人の悪い性のようなものである。

 

「第一、悟飯達はともかく、ベジータは絶対にパワーをくれねぇだろうな」 

 

 苦笑を浮かべる悟空に、チチもベジータとはそれほど面識があるわけではないが、態度の端々からプライドの高さが滲み出ていたのでその場面が明確に思い浮べられる。

 

「なら、セルの方が強いって分かっているのに悟空さの落ち着きはなんだべ。セルの弱点に気が付いただか?」

 

 実力で負けていると分かっているにも関わらず、悟空には焦って鍛えようとしている仕草は全くない。となれば、実力で劣っていると分かっていても勝つ自信があるということ。チチが考えられるのはセルには弱点があるのではないかと疑っていた。

 

「いやぁ、弱点なんてあんのかな、アイツ」

 

 横向きになって肘を立てて肘枕をしながら心底不思議そうに口にする悟空にチチの方が理解できない。

 チチは髪を梳かし終わったので道具を片付ける。

 

「自分よりセルの方が強いって分かってて、弱点もないならどうやって勝つだ?」

「心配すんなって。なんとかなるさ、多分」

「多分じゃ、困るだよ」

 

 道具を片付け終えたチチは移動してベットの端に腰かけて、枕元の悟空の顔を真っ直ぐに見る。

 

「やっぱりおかしいだ。何時もの悟空さなら勝てないって分かってるなら修行して強くなろうとするのに」

 

 真っ直ぐに見つめられた悟空は、目を逸らすと肘枕をしてない方の手で頬を掻く。

 

「精神と時の部屋で限界までやったんだ。一気にこれ以上、やったって意味はねぇ。あそこの中は相当、体にきつい。なにもしてなくてもだ。十分に休めてやった方が良い。ブロリーの所為で崩れちまったが、三日休んで三日特訓、そんでもってまた三日休んで武道大会に臨むつもりだったんだ」

「良く動き、よく学び、よく遊び、よく食べて、よく休む…………亀仙流のモットーだな」

 

 悟空を育てた孫悟飯は武天老師と呼ばれた亀仙人の一番弟子で、悟空自身も亀仙人に師事していた。

 現在の人格形成や武道家としての考え方は亀仙人の教えの部分が大きい。慣れているのもあるが、亀仙人への尊敬と感謝を抱いているからこそ悟空も亀仙流の胴着を身に着けて続けている。

 

「これ以上は体を無理に鍛えても、ただ辛いだけだ。そんなのは修行じゃねぇ」

「勝てないって分かっているのに?」

「勝つさ」

 

 一息で体を起こしてチチの横に座った悟空の顔は、根拠のない自信という割には開き直っているようには見えない。ただ、チチにはなんとなくその理由が分かったような気がした。

 

「…………もしかして、悟飯ちゃんを闘わせようとしてるんでねぇか」

「え、え……と」

 

 チチが悟飯を溺愛しているのは悟空は良く知っているので言葉を濁す。

 人造人間達の脅威に対抗する為に一時的に鍛えるのを認めたが、チチは本来、悟飯を戦わせるどころから勉強させたいと思っている教育ママである。悟空ですら及ばないセルと戦わせようとしていると知ったら怒るだろうと考えた為である。

 

「怒ってるわけじゃねぇだ」

 

 しかし、悟空の予想の反して言ったようにチチは怒っているわけではない。

 

「うんと強くしてやってけれって頼んだのはオラだ。その精神と時の部屋だったか? から戻って来た悟飯ちゃんが物凄く強くなっているのは分かるだよ」

 

 現段階の悟飯がどれだけの強さに至ったかは元武道家とはいえ、悟飯が生んでからは実戦から遠ざかっているチチの理解出来る範囲を遥かに超えている。

 超サイヤ人がどう見ても不良にしか見えなかったのは別として、格段に強くなったことだけはチチにもなんとなく分かった。

 

「悟空さの余裕は悟飯ちゃんに関係してるんじゃないだか?」

「ああ、そうだ……」

 

 チチに見抜かれていることに長い息を漏らした悟空は膝の上に肘を乗せて手を組む。

 

「精神と時の部屋で深く深く封じ込められ、眠っていた力が開放され始めてる。オラが修行を予定よりも早く修行を切り上げたのは、限界まで鍛え上げたってのもあるが悟飯の体のことを考えてのことでもある」

 

 悟飯はまだ子供である。精神と時の部屋は気温が五十度からマイナス四十度まで変化し、空気は地上の四分の一で、重力は十倍の真っ白な世界。そんな世界はまだ未成熟な悟飯の体には大きな負担となる。

 

「悟飯ちゃんが悟空さを越えただか」

「今はまだ戦えばオラが勝つ。セルにも勝てねぇだろう。だが、悟飯は昔から怒れば信じられない力を発揮してきた。アイツは多分、怒りで真の力が開放され、セルをも超えるほど一気に恐ろしいまでの強さを見せてくれるはずだ。セルに倒すには、悟飯のその力に期待するかしねぇ」

 

 一度言葉を止めた悟空は前を見たまま続きを口にする。

 

「オラがもう一度精神と時の部屋に入ってもセルに勝てるほど強くなれるとは思えねぇ。仮に上回れたとしても下手に追い詰め過ぎれば何をするのか分からない」

「そんなこと――」

「ないとも言えないだろ。実際、オラはナメック星でフリーザを追い詰めた時に星を消されかけた。セルがフリーザと同じように宇宙空間でも生きていられるならやりかねぇ」

 

 どれだけ善戦したとしても、中途半端に追い詰めて手段を選ばず地球を破壊されては意味がない。反撃の隙を与えず倒すためには、セルを遥かに超える力――――つまりは悟空に近い戦闘力の悟飯が怒りで更なる強さに至ることに期待するしかない。

 悟空自身の経験と現状を冷静に分析した上での結論に理屈の上ではチチも理解はした。

 

「悟空さの考えは分かっただ。でも、悟飯ちゃんはそのことを知ってるだか?」

「いや、話してねぇ。第一、怒れって言われても怒れるわけでもねぇだろ」

 

 意識して怒れる人はいるだろうが、悟飯はそういうタイプではない。超サイヤ人の覚醒条件が怒りなので、超サイヤ人に成れる以上はある程度は怒れるが、潜在能力を一気に噴出させるほどの怒りは想像だけでは中々抱けるものではないだろう。

 

「悟空さ、悟飯ちゃんは悟空さのように戦いが好きなわけではないべ。優しい悟飯ちゃんがそんな怒りを抱くような状況になるとしたら誰かが傷つけられた時…………仮にセルに勝てたとしても心に傷を負わないとどうして言えるだ」

 

 理屈は理解する。だが、チチは欠片も納得できない。

 

「悟飯ちゃんが今まで戦ってきたのは地球の危機、仲間の為であって、悟空さのように切磋琢磨するライバルもいなければ、戦う楽しさを得られる土壌もないだ。悟空さは勝手が過ぎる。悟飯ちゃんが可哀想だ。きっと怒りを覚える前に悲しくなるべ」

「チチ……」

 

 知らずにチチの目から涙が流れる。

 

「何も言わずに託しても責任感の強い子だから背負い込もうとするべ。悟飯ちゃんと、ちゃんと話し合ってけれ」

 

 泣くチチに悟空は何も言えない。言えるはずもなかった。

 

「トランクスのいる未来では心臓病で悟空さが死んで、悟飯ちゃんも家を飛び出して闘い続けて人造人間に殺されているだ。この世界ではそうならないとしても、悟飯ちゃんはまだオラと悟空さが出会った年齢にもなってねぇんだべ」

 

 未来からの自分の手紙で、悟空が心臓病で死ぬことは知らされていたが残った悟飯もまた人造人間に殺されたと記されていた。

 悟空の心臓病は治療薬によって完治しており、セルも完全体になっていてこの世界がトランクスのいた世界に至ることは決してないとしても、手紙には夫と息子を失った悲痛な気持ちが記されていた。

 地球の命運がかかった、チチが口に出せるような領域の話ではなくても、母が息子のことを案じなければ誰が心配してくれるというのか。

 

「どれだけ強くなっても、あの子はまだ子供なんだ。せめて大人になるまでは悟空さが守ってやってけれ」

 

 チチは未来からの手紙を読むべきではなかった。

 迷いに迷ってセルゲームの前夜に悟空とそんな話をしなければ、あんな結末になることもなかったのだから。

 

 

 




未来において『絶望への反抗!!残された超戦士・悟飯とトランクス』でチチの生存は牛魔王と共に確認されています。
ブルマの性格から考えて、悟飯が死んだ時にチチになんの連絡も取っていないとは考え難い。
旦那(悟空)だけでなく一人息子(悟飯)を失ったチチを慰める為に、タイムマシンで過去に行って悟空に心臓病の薬を渡すことを話すことは十分にありえると思います。

本作において過去に行く話を聞いた未来チチが過去の自分に手紙を書いてトランクスに託したことから始まっています。 

チチはその手紙を読んで悟空も悟飯もいない未来に恐怖を覚えて色々と考える次第です。
悟空の妙な余裕を悟飯やzアニメ版でやってきたクリリンから聞いたことでその理由になんとなく辿り着く、という展開です。

仲間にはその余裕の理由聞かれてもはぐらかしていた悟空も、セルゲーム前夜でチチに問い詰められればその理由を話すでしょう。

チチはその想いを悟空にぶつけた。選択をしたわけであります。
想いをぶつけられた悟空もまた選択することになる………それは次回で。

続きは一時間後に。


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第二話 悟空の選択

未来からの自分の手紙を読んだチチは自らの思いを悟空にぶつけた。その想いを受け取った悟空は自らの思い違いを悟る。

悟空がする選択は……。



 

 

 

 翌朝、セルゲーム当日。

 集合場所であった天界にやってきた悟空は息子である悟飯を連れて皆から離れ、徐に重い口を開いて問いを投げかけた。

 

「悟飯、戦うのは好きか? もしもセルと闘ったとして殺せるか?」

 

 超サイヤ人になり、十二分に戦力の一角に数えられるようになった悟飯はピッコロの服を身に纏って立っている。

 これから殺し合いの場へと赴くにも関わらずかけられた唐突の問いに目を丸くした悟飯は真剣な目を向ける父に背筋を伸ばして考える。

 

「…………ぼ、ボクは本当は戦いたくない。例え、どんなに酷い奴でも殺したくもない。お父さんみたいに闘ったりするの好きじゃないんだ」

 

 悟飯は本来、闘う事は好まない平和主義者である。 今まで闘ってきたのは必要に駆られたからに過ぎない。

 サイヤ人との戦いから始まり、フリーザ軍やフリーザその人や、人造人間達に至るまで圧倒的格上に勝つ為には、幼いながらも潜在能力がずば抜けた悟飯も戦わなければならなかった。

 叶うならば幼少期からの夢である学者になる為に勉学に励んだり、自然の中で遊ぶ日々に戻りたいと思っている。

 

「そうか」

 

 地球の命運を賭けたセルゲームを前に言うことではない。場にそぐわないと分かっていても本音で応えた悟飯を叱るでもなく、寧ろ納得したといった風に重く頷いた悟空は手を伸ばした。

 怒られると思ってビクリと身を竦ませた悟飯の頭をクシャリと撫でると、、「怒っちゃいねぇって」と柔らかく言って薄く笑った。

 

「まだこんなにも小さいんだもんな」

 

 改めて見れば悟飯の身長はまだ悟空の肩にも届いていない。

 避け得ぬ戦いばかりだったとはいえ、年齢もようやく二桁になったところ。同じ年代の頃の悟空は祖父以外の人間に会ったことすらなかったというのに、幾ら強大な戦闘力を身につけたといっても地球の命運を任せるには小さすぎる体だった。

 

「お父さん?」

 

 悟飯の眼には父が苦い表情を浮かべているように見えた。

 悟飯が問いに真意に気付く前に現実を突きつけられたような悟空の顔が浮かべていた苦い表情は一瞬で消えた。

 

「なんでもねぇ。さっさとセルを倒して、母さんのいる家に帰ろう」

 

 元の笑みに戻っても、それでも悟飯の眼には悟空が何かしらの悲壮とも取れる決意を固めているように見えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地を揺るがすような振動が連続する。

 振動の正体は地震や噴火などではなく、一人の人間から放たれた複数の気弾が着弾している衝撃によるものである。

 

「だだだだだだだだだだ…………ッ!!!!」

 

 傷ついている孫悟空より放たれる数えきれないほどの気弾。

 両手より放たれる、大きな山もたちどころに穴だらけにして余りある強力な威力はたった一人の敵に向けられていた。

 

「ぐっ……ッ!!」

 

 悟空より次々と放たれた気弾を受けざるをえない状況のセルは両手で防御をしながら只管に耐える。

 

「だだだだだだだだだだだだああああああ…………ッ!!!!」

 

 数少ない勝機にここが勝負所だと判断した悟空の気弾の放つ回転が速くなる。間断なく放たれる気弾を避けることも出来ず、受けてしまったセルに次々と着弾する気弾の雨。

 威力が増し、放たれる速度が増した気弾が次々と着弾して、その衝撃が空気を伝って地面すらも大きく揺るがす。

 

「お……お……!!」

 

 悟空の攻撃は熾烈を極める。下手に避けようとしたりして防御の手を緩めればそれだけで勝敗の天秤が傾く。

 だからこそ、セルは回避ではなく防御を固める行動に出る。

 

「ずぁ――ッ!!!!」

 

 セルが全身から気を放出する。

 無作為にではなく、指向性を持って放出された気はセルを守るように円形に展開され、一瞬にしてその大きさを増す。

 

「わっ!?」

 

 始めはセルの体を覆う程度だった球形のフィールドは、大きな紫電を撒き散らしながら十数メートル以上に拡大する。

 セルが自分で作ったリングを悟空との戦いで場外負けで終わらせるのは惜しいという理由だけでルールを変える為に破壊した為、離れた岩山に退避していたクリリン達の目前にまでフィールドが広がり、尚も放たれる気弾の雨がぶつかって爆発する。

 セルの体に届く前に気の障壁とでも呼ぶべきバリアーによって気弾は完全にシャットダウンされていた。

 バリアーに阻まれて気弾がセルにまで届いていないと見た悟空は無駄な攻撃を止める。

 

「はぁっ! はぁっ! ちぇ……」

 

 仕留めきれなかったことに軽く舌打ちをしながら、大きく上がってしまった息を少しでも整えようとする。

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ…………この私にバリヤーを張らせた貴様の攻撃は評価に値するぞ、孫悟空。思いの他、ダメージは大きかった」

 

 そう言うセルもまた悟空同様に息を乱しているが、悟空と比べれば大したことはない。

 それに数十発の気弾で確かにダメージは与えたが彼我の体力の消耗の差は歴然である以上、既に勝敗は決したと断じられてもおかしくはない状況にある。

 

「はぁっ、はぁっ、はぁっ」

「相当に体力が低下してしまったようだな」

 

 息を整えようとしても未だ悟空の息は荒いまま、対してセルは少しの乱れはあっても、まだまだ戦えるだけの体力を残している。

 

(戦闘力の差は分かっちゃいたことだが……)

 

 精神と時の部屋を出た後に瞬間移動で完全体のセルに会いに行った時に実力の差は感じ取っていた。カリン様の確証を得ても悟空が揺るがなかったのは理由があった。

 

(悟飯はオラを越えたかもしれねぇ。でも、まだ子供の悟飯に全部を背負わせるわけにはいかねぇんだ)

 

 ピッコロ大魔王やベジータと闘った時、悟空だって地球を背負って戦ったつもりはなかった。

 倒さなければならない敵として、強い奴と戦いたいなど、必ずしも勝つ為だけに戦ったわけではない。絶対に負けない為に限界を極め続けて来た。言うなれば心の赴くままに戦ったのであって地球を救ったなんだは後付けの結果でしかない。

 

「仙豆とやらを食うがいい、孫悟空。更に素晴らしい試合になるはずだぞ」

 

 笑みを浮かべ、余裕そのものの提案をしてくるセルに悪意はないだろう。

 限界ギリギリの悟空と違って、ダメージを負って体力を消耗していても余裕を残しているセルは今の状況を楽しんでいる。

 

「はあっ、はあっ、はあっ」

 

 現状、セルの言う通りにするのが勝率を上げる最も良い方法ではあると悟空は静かに認め、仙豆を持っているクリリンを横目で見た。

 幼い頃から最も良く悟空を知るクリリンだからこそ、彼は黙したまま悟空を見ている。

 

「どうした? プライドが邪魔して仙豆が食えんのか?」

 

 一対一の尋常の勝負の中で仙豆を食べて回復するのは悟空の主義に反する。ただでさえ、セルゲームは天下一武道会のルールを採用されているものだから、その気持ちは大きい。

 これがベジータが地球に来た頃やナメック星でのフリーザとの戦いのように、悟空の選択次第で一歩間違えれば多くの物が容易く失われるならば仙豆による回復も多人数での総力戦も辞さなかっただろう。

 悟飯の怒りのパワーに期待すればセルを倒せる可能性が十二分にあるだけに、選択肢がある所為で極限状態では引っ込む主義が首を擡げてしまう。

 それでもいざとなれば、悟空は自分の主義もサイヤ人としての誇りも自分の内側に押し込めることが出来る。

 

「今の私は相当に体力が減ってるんだ。貴様がフルパワーになれば、勝てる可能性がほんの僅か増すことになるんだぞ。私はもっともっと楽しみたいんだ……!」

 

 セルが悟空に合わせて戦っていることは、その余裕の様を見ていれば察しがつく。そう、セルは文字通りに楽しんでいる。自分の実力が上だと確信しているからこそ、ああやって余裕振っていられる。

 仮に悟空が仙豆を食べてフルパワーに戻っても、体力を消耗していてもまだフルパワーを見せていないセルには及ばない。

 良いところまで追い詰めることは出来るだろう。戦いに没頭して真のフルパワーを出す前に体力切れに追い込んで、悟空が敗れても悟飯やベジータ、トランクスとピッコロがいれば倒せるかもしれない。

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

 しかし、その追い詰めた時こそが危険なのだ。下手に追い詰め過ぎて地球を破壊するなんて行動に出かねない。実際、ナメック星で戦ったフリーザは超サイヤ人に覚醒した悟空によって追い詰められ、星を破壊しかけた。

 

(フリーザの細胞を使ってるなら同じことをやっても不思議じゃねぇ)

 

 セルは悟空達サイヤ人やピッコロ、そして地球にやってきたフリーザ親子の細胞を組み合わせて生み出されたと前に聞いていた。

 好戦的で強い相手との戦闘を娯楽のように好む気質は間違いなくサイヤ人から、再生能力はナメック星人のピッコロから、上に立っている時の余裕な態度はフリーザそっくりだ。

 

(だから、変なことをされる前に圧倒的な力で倒す必要があった)

 

 それが出来るのは悟空に追いつき、尚も高い潜在能力を残している悟飯に期待するのが手っ取り早かった。

 セルならば余裕を見せつつ、悟飯を追い詰めるだろうから分の悪い賭けではないはずだった。

 実際に戦ってみて、悟空がフルパワーで闘っているのに対してセルはまだかなりの余裕を残している。悟飯が怒りで真のパワーを発揮することが出来れば十分に勝てると確信はできた。

 

(オラは馬鹿だった。チチに言われるまで悟飯の気持ちを考えずに勝手に期待して、話し合おうとすらしなかった)

 

 なんて傲慢で身勝手な考えだと悟空は自身を罵倒する。

 悟飯に期待を押し付けただけで悟空は自分に出来ることをやりきろうとはしていなかった。

 

「悟飯……」

 

 ピッコロの隣に立つ悟飯を見て、悟空は力が抜けていた拳を強く握る。

 ラディッツとの戦いで死んでからの一年や、ナメック星にいる間の殆ど、その後の一年間だってヤードラット星にいて地球にはいなかった。精神と時の部屋で一年近く二人きりだったとはいえ、父親らしいことをしてやれたことの方が少ないだろう。

 

「戦わないというのならば選手交代するか? だが、ベジータやトランクスでは力を上げたとはいえ、貴様よりは劣っているはず。セルゲームで闘う者がいなくなれば、この地球の人間どもは一人残らず死ぬことになる」

 

 もう一度精神と時の部屋に入ってベジータとトランクスは飛躍的にその力を伸ばしたが、セルどころか悟空にも及んでいない。

 既にセルの中ではサイヤ人以外の者は戦力外で、悟飯も年齢的な物を見れば超サイヤ人に至ろうともベジータやトランクスレベルにもなっていないと考えている。その油断をこそ、当初の悟空は期待していた。

 しかし、安易に悟飯に頼ることはしてはいけない。足掻いて足掻いて、その果てで託すならばともかくとして、まだ悟空には選べるだけの選択肢が用意されていた。

 

「クリリン」

 

 仙豆を持っているクリリンに呼びかける。

 

「…………」

 

 クリリンは始め、信じられないとばかりに目を見開いて強い意志が込められた視線を向けて来る悟空を見た。

 

「仙豆をくれ」

「…………いいんだな?」

「ああ」

 

 悟空が即答するとクリリンはその意志を受け取って仙豆を取り出す。

 

「本気か、カカロット!?」

 

 自分の他に残った唯一のサイヤ人である悟空の選択を、信じられないとばかりに問い質すベジータ。

 クリリンが投げた仙豆を受け取った悟空は歯を食い縛りながらセルを見る。

 

「セルを倒す。それがオラのやらなくちゃならねぇことだ」

 

 サイヤ人としての誇りではなく、地球を守る為でもなく、そんな勝ち方をするぐらいならば死を選んだ方がマシな選択を選ぶことが今の悟空に出来る最善の行動だった。

 

「お父さん……」

 

 仙豆を噛み砕いて呑み込んだ悟空が回復してセルと再び戦い出したその背中が、悟飯にはとても儚い物に思えた。

 

 

 




チチの選択は悟空に悟飯を戦士ではなく、息子がまだ子供であることを思い出させた。

親として悟空は仙豆を食べて戦い続けることを選んだ。しかし、本当にその選択は正しかったのだろうか?

次回『悟飯の選択』――――一時間後を待て。



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第三話 悟飯の選択

悟空は戦い続けることを選択した。少なくともセルもまたそれを望んでいた。
悟飯に託すにしてもセルを消耗させることは決して悪い事ではない。自分に出来ることを限界まで…………それはセルを甘く見過ぎではないか?


 

 

 孫悟空は仙豆を食べてセルと闘い続けることを選んだ。

 仙豆は食べればどんな怪我も疲労もたちどころに回復する。疲労の極致にあった悟空を全開状態にまで回復させた。

 戦いをもっと楽しみたいが為にセルは一番強い悟空に仙豆を呑むように求めた。悟空が完全回復しても自身の方が上回っていると余裕があるからこそ出来た行動である。

 

「……っ!!」 

 

 その余裕を示すようにセルに殴り飛ばされた悟空が大きな岩塊の一つに背中から叩きつけられる。

 悟空が激突した衝撃で岩塊は粉々に砕け、舞い上がった粉塵の向こうに姿が隠れる。セルも気を感じ取れるので姿を隠せても大きな利点はない。仮に気を抑えて奇襲しようにも今の悟空は消耗し過ぎて攪乱することも出来ない。

 

「ハァッ、ハァッ、ハァッ…………孫悟空、貴様との戦いは実に有意義だったぞ」

 

 悟空が仙豆を呑む前よりも更に消耗したセルが言葉通り満足した笑みを浮かべている。

 セルの声を聞いて岩塊から体を起こそうとした悟空が瓦礫の一つを掴んで身を引き起こそうとするも、その瓦礫が崩れたことで為せない。

 

「ぐっ……」 

 

 自力では立ち上がることすら出来ず、超サイヤ人を維持できずに普通の状態に戻ってしまう。

 

「褒めてやろう、孫悟空。そして、あの世で誇るがいい。完全体の私をここまで追い込めたのは貴様が最初で最後だろうからな」

 

 歩いて岩塊に近づいたセルが力を失った悟空の胸元のシャツを掴んで引き上げる。物のように扱われているのに反抗することも出来ないほど悟空は消耗しきっていた。

 

「ベジータやトランクスでは力を上げたとはいえ、貴様よりも劣っているはず。貴様以上の戦いは出来んだろう。ふっ、メインディッシュを先に食べてしまっては前菜には心が躍らん。これは誤算だったな」

 

 勝てないのは分かりきっていたこと。それでも戦い続けたのはセルを消耗させることが目的。

 負けようとも少なくともその目的は達成した。

 

「へっ、へへ…………オラに勝てても、そんなに疲れ切ってて大丈夫か?」

「確かに、この状態で連戦をすれば私であっても危ういだろう。そういえば、貴様らは体力を回復させる良い物を持っていたな」

「何?」

 

 にも関わらず、余裕を見せるセルに悪寒を感じてその顔に手を伸ばそうとするが、その前に軽く放り投げる。

 既にボロボロになっていたシャツが振り回された所為で破け、同じように脆くなっていた胴着諸共に千切れ飛ぶ。上半身裸になった悟空が二度、三度跳ねて地面に転がる。

 

「戦えなくなった貴様に、もう興味はない」

 

 地面に叩きつけられた時に切れた頭部の傷から血を流しながら、うつ伏せの悟空が地に手を付いて必死になって顔を起こすとセルは悟飯達がいる方に首を向けた。

 

「む!?」

 

 その瞬間、悟飯達とは別の場所にいた何者かが背後からセルをがっつりと拘束する。

 

「16号!!」

 

 人造人間16号がその巨体を活かして背後からセルを抱え上げ、持ち上げる。

 

「あ、アイツ何時の間に」

「16号はロボットだから気配に気づかなかったんだ!!」

 

 ピッコロが驚き、クリリンが人造人間が気を持っていないが故に気配を悟られなかった理由に気付く。

 

「ぬっ、外せん!?」

「今の消耗した貴様なら俺でも倒せるぞ!!」

 

 17号を吸収した第二形態のセルにも及ばなかった16号では、18号も吸収して完全体となった今は足元にも及んでいないが悟空との連戦で消耗している今ならば拘束し続けることぐらいなら出来る。

 

「お前達まで巻き込んで犠牲にしてしまうことを許してくれ! 俺はセルと共に自爆する!!」

「な、なにっ!?」

「これが体に秘められた使ってはいけない最期の力だ! セル! 幾ら貴様でも、これだけ密着されていれば塵も残るまい!!」

 

 16号の言い様からこの辺り一帯を吹き飛ばす爆弾を接触状態で使われれば、今のセルでは確実に生きていられるとは言えない。

 

「くっ」

 

 焦ったセルが拘束している腕を外そうともがくが、決死の策を成就させようとしている16号も譲らない。

 

「まさか孫悟空を殺す為に作られた俺が助けるような行為に出るとはな。だが、目的は果たせよう―――――――――だぁっ!!」

 

 拘束を外される前に自爆した―――――――はずだった。

 

「な、何故だ?! 何故爆発しない!?」

「じゅ、16号…………カプセルコーポレーションで修理した時、博士が爆弾に気付いて物騒だったんで取り除いたんだって言ってた」

 

 爆発しないしない己に16号が呆然としていると、爆弾のことをブリーフ博士から聞いて事情を知っていたクリリンが説明する。

 

「驚かせてくれたな、16号。流石の私も些か胆が冷えたぞ!」

 

 拘束されていても動く手の向きを変えて気功波を放って16号の胴体を粉砕して撃ち抜く。

 

「屑鉄風情が」

 

 気功波によって粉砕された16号の手足が飛び散る中で、言い捨てたセルの隙にとクリリンが懐に手を入れて仙豆が入っている小袋を取り出した。

 

「悟空っ!!」

 

 未だ16号の手足が地面に落ちぬ中でクリリンが悟空に呼びかけながら小袋から仙豆を取り出している。

 セルはかなり疲労していて、悟空が仙豆を食べて回復すれば十分に倒せる。今ならばベジータやトランクスでも可能かもしれないが、やはり悟空のずば抜けた強さをこのセルゲームで目にして期待したのだ。

 クリリンの行動が意味するもの、先のセルの言葉が頭の中でリフレインする。

 

「まさか!?」

 

 笑みを浮かべたセルが何をしようとしているのかを察した悟空が止めようとするが、立ち上がろうとしたところで膝がガクリと折れて行動に移せない。

 

「駄目だ、クリリン!!」

 

 悟空の叫びは遅すぎた。

 

「わっ!?」

 

 超スピードでクリリンの目前に移動したセルが投げようとしていた腕を掴んで仙豆を奪い取る。

 

「か、かえっ!?」

 

 悟空の為に仙豆を奪い返そうと行動に移しかけたの見たセルは、返す刀で裏拳をクリリンの頬に叩き込んで弾き飛ばす。

 

「クリリンさん!」

「安心したまえ。私に仙豆を渡してくれたのだ。まだ殺しはしない」

 

 悟飯がクリリンに駆け寄って抱え上げれば、セルの言う通り痛みに呻いて気を失っているが息はしている。

 クリリンとセルの戦闘力の差を考えれば一撃で殺されてもおかしくはない。手加減までして殺さなかったのは、まだ悟空がまだはっきりと負けたわけではないからだろう。

 

「これが仙豆か」

 

 軽く跳びながらも大きな跳躍で悟空の近くに降り立ったセルが奪い取った仙豆をジロジロと見るセル。

 こんな小さな豆で完全回復することは悟空が実際にフルパワーになったのを目にしているからこそ疑いはしない。しかし、こんな物で本当に全回復するのかと一抹の不安を抱きつつも、口に放り込んで噛み呑み込む。

 

「はぁ――っ!!」

 

 仙豆が喉を通った直後に体力どころか、負った傷まで治ったセルの口から雄叫びを漏れる。

 

「成程、こいつは良い物だ」

 

 全回復した己の状態に仙豆の有用性を再認識したセルがニヤリと笑うのを見た悟空は悔しさに打ちひしがれる。

 

「ち、ちくしょう……」

「そうだ、私はその顔が見たかったのだ」

 

 これでセルを消耗させて後に戦う者達に託す作戦に意味がなくなった。

 

「とはいえ、16号には驚かされた。完全な私にも油断があったということだ」

 

 悟空の打ちひしがれた姿を見たセルが愉悦に笑い、その笑みを収める。

 

「このセルゲームこそ、私の油断の象徴だ。武舞台を消し、この地球で最も強い孫悟空を下した今、セルゲームに最早意味はない」 

「せ、セル……!」

「冥途の土産に見せてやろう、孫悟空。このセルの恐ろしい真のパワーを!」

 

 腰だめに構えた拳に力を込めたセルが隠されたヴェールを脱ぐ。

 

「かあああああああ――――――っ!!!!」

 

 セルの全身から噴火の如く噴出される気の迸りに呼応するように大地が揺れる。

 

「――――ああっ!!」

 

 ドン、と耳元で花火が爆発したかのような爆音が響き渡り、離れていた悟飯達を吹き飛ばさんばかりにセルを中心として衝撃波が襲う。

 

「はああああああぁぁぁぁ…………っ!!!!」

 

 衝撃波によって巻き上げられた悟空は、地球全体が震えるような気の昂りに飛びそうになった意識を繋ぎ止めて顔を上げる。

 

「どうだ、これが本気になった私だ」

「…………だから、なんだ。どんなに力の差があったって、それでも戦わなくちゃなんねぇんだ!!」

 

 セルが真のパワーを見せたからといって、悟空は今更怖気づいたりはしない。

 悟空は戦える状態ではない。現に超サイヤ人にはなれず、素の状態のままだ。超サイヤ人になれるほど回復していないことを示している。

 地に手を付き、足に力を込めて立ち上がる。

 ピッコロ大魔王、ピッコロ、ラディッツ、ベジータ、フリーザ、そして人造人間達。悟空よりも強い敵など幾らでもいた。自分よりも強い程度で諦めることなどあり得ない。

 

「これだけ絶望的な状況でありながらも心を折らないところは称賛しても良いが、それが何時まで持つかな」

 

 悟空の心を折ることを次の楽しみと定め、セルの目は悟飯達に向けられた。

 

「息子や仲間が次々に殺されても、貴様の心は折れないでいられるか。試してみるとしよう」

「何を……」

「安心するがいい。あんな奴ら如きに私が相手をしてやるまでもない。1、2、3…………気絶しているクリリンを除いて6人か、良し」

 

 前に立つ悟空には、胸を張って背中の昆虫染みた羽を広げたセルが普段は収縮している尻尾の入り口を広げていることに気付いていない。

 

「ふんっ!」

 

 セルの息むような声と共に尻尾から何かが出て来る。

 次いで出て来たそれらは二本足でしっかりと立ち、「ウキキ」と楽し気に笑った。

 

「これもピッコロの能力の一つだ。私の子供達…………さしずめ、セルジュニアと言ったところか」

 

 自らを子供大に小さくした現身たちをセルジュニアと名付けたセルは困惑している悟空の前で再び笑い、悟飯達を指差した。

 

「さあ、行けセルジュニア達よ。あそこにいる者達を嬲り殺せ!!」

「や、止めろ――っ!!」

 

 セルの言葉を意味するものを理解した悟飯達が瞬時に戦闘態勢を整えるのと、セルジュニアが顔を向けて飛び上がるのはほぼ同時だった。

 

「無駄だ、絶対に勝てはせん。小さくとも私の子供達だ」

 

 超サイヤ人になるベジータとトランクス、力を解放する悟飯、重りのターバンとマントを外すピッコロ、気を高める天津飯とヤムチゃ。

 それぞれに襲い掛かったセルジュニアの力は恐るべきものだった。

 

「ヤムチャと天津飯は予想通り、ピッコロでようやく戦いになるレベルか。ベジータとトランクスで互角とは期待以下だったが…………」

 

 人造人間17号と18号以下のヤムチャと天津飯がセルジュニアに手も足も出ず、17号と互角だったピッコロも想定の範囲内。第二形態以上の力を持っていたベジータとトランクスの力の伸びは、それ以前からの伸びに比べれば大したことはない。想定通り、悟空に二歩も三歩も劣る。

 概ね、想定の範囲内に収まっていた戦士達の中で異彩を放っている者が一人いた。

 

「孫悟飯のあの強さは予想外だったな。或いは単純な気の強さならば貴様よりも上なんじゃないか、孫悟空」

 

 声をかけられても悟空には何も言えない。

 固定観念は意外に覆られない。如何に超サイヤ人に目覚めようとも、悟空やベジータ達と比べれば何歩も劣るというのが皆の認識だった。当初はこの油断を利用して、悟飯の真のパワーさえ発揮できれば確実に勝利できたものの、悟飯の強さを見られてしまっては、セルの油断を誘う作戦は不可能となった。

 今はまだセルジュニア達も叩きのめすことを楽しんでいるから殺されてはいないが、一方的に殴られ蹴られているヤムチャと天津飯は何時殺されてもおかしくはない。

 

「止めさせろ! トランクスと悟飯以外はもう二度とドラゴンボールで生き返ることは出来ないんだぞ!!」

「私が貴様の言うことを聞かなければならない理由があるとでも?」

 

 死んだことがないのはトランクスと悟飯だけ。ドラゴンボールを使っても生き返れないからといって、セルが悟空の言うことを聞いてセルジュニアに攻撃を止めさせなければならない理由はどこにもない

 

「私は止めん。止めたいのならば力尽くで止めてみるがいい。出来るものならな、はっはっはっ」

「くっ、くそォオオオオオオオオオオ!!」

 

 セルジュニアを止める為に悟空は力を込めようとするが、体力が尽きており超サイヤ人にもなれない。

 

「なんとも不甲斐ない。これが天下の孫悟空か。またクリリンが目の前で殺されれば貴様の心も完全に――」

 

 言葉でも悟空を嬲るのを止めないセルが何かに気付いたように顔を動かした。

 

「はぁ――――ッっ!!」

 

 唯一、セルジュニアを相手に有利に戦っていた悟飯が、この絶望的な状況を打開する為にセルジュニアを弾き飛ばしてセルへと飛び掛かる。

 悟飯は皆を救うことが出来るのか。

 

 

 




フルパワーを見せたセル。セルジュニアによって追い詰められた仲間を救う為、悟飯が飛び出した。

悟飯もまた選んだのだ。その結末を一時間後に見届けろ。


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第四話 選択の結末

 

 

 

 セルジュニアを一時退け、セルに飛び掛かった悟飯。

 その行動を悟空が制止する間もなく、フルパワー状態で悟飯の実力を見ていたセルは拳を容易く回避する。

 

「馬鹿め」

 

 悟飯を嘲ったセルの腕が閃光の如く動く。

 斜め上から叩きつけられたセルの肘が悟飯の首を強く打ち、悟空の耳にボキッと骨が折れる鈍い音が聞こえた。

 

「ご、悟飯っ!!」

 

 飛び掛かった勢いとセルの攻撃によって首の骨を折られた悟飯が力を失って悟空の前に転がる。

 膝をついて悟飯の頭を抱えるが直ぐにその身体に力が入っていないことに気付く。

 

「貴様の息子は中々の戦闘力を持っているようだな。まさか今ので殺せなかったとは驚きだ」

 

 攻撃を放った直後のところにフルパワー状態の一撃を叩き込んだのだ。確実に殺せたと判断したセルと見立てと違って悟飯が生きているのは、それだけ悟飯の戦闘力が高かった証明でもあるがそんなことは悟空に何の慰めにもならない。

 

「悟飯! しっかりしろ、悟飯!」

「確実に首の骨を折った。この仙豆が無ければ直に死ぬだろう」

 

 悟空の呼びかけにも悟飯は僅かに体を痙攣させるだけで応えない。

 

「くそっ」

 

 例え悟空が全開状態でもフルパワーのセルから仙豆を奪うことは出来ない。何か方法ないかと考えながら仲間を見るが、セルジュニアに襲いかかられていて助けが必要な状況は向こうも変わらない。

 

「そうだ、デンデなら……」

「仙豆の他にも助ける方法があるようだが、私がさせるとでも思うか?」

 

 地球の神様になったデンデが能力で傷を癒せることを悟飯から聞いていた悟空。

 悟飯を抱えて天界に行こうとした瞬間移動しようと集中したところに、セルが目前に現れて悟空を弾き飛ばす。

 

「がっ!?」

 

 十数メートルも殴り飛ばされ、地面を転がったところで悟飯の体を軽く蹴り上げて転がしたセルが高笑いする。

 

「そのまま息子の死を見届けるがいい。それとも私が手を下してやろうか?」

 

 と、楽し気に提案してくるセルに悟空の中で何かが切れた。

 それは奇しくもフリーザによってクリリンが殺された怒りで超サイヤ人に始めて目覚めた時に似ていた。

 悟空を黄金のオーラが再び包み込む。

 

「セルゥゥゥゥゥウウウウウウウウ―――――――ッッッッ!!!!」

 

 以前よりも遥かに大きく、研ぎ澄まされたオーラを纏って超サイヤ人となった悟空が閃光の如き速さでセルに襲い掛かる。

 

「くっ!?」

 

 フルパワーのセルは咄嗟に反応して上げた腕に拳の一撃を受けて弾き飛ばされ、地面に足で二本の溝を長々と作る。

 

「貴様はどこまで……」

 

 ビリビリと痺れる腕を見たセルは尚も向かって来る悟空の姿に破顔する。

 

「私を楽しませれば気が済むのだ!!」

 

 放たれた攻撃を最小限の動きで避けてカウンターの拳を顔面に叩き込む。

 怒りで痛みすらも感じていないのか、殴打された鼻から血を噴き出しながらも悟空は前へと進む。

 

「セルゥッ!!」

「孫悟空ッ!!」

 

 喜色満面なセルと怒りで顔を歪ませた悟空が超速度で幾度もぶつかり合う。

 辺り一帯に花火を連続で鳴らしたような衝突音が響き渡る。

 今の悟空は悟飯を死の瀬戸際に追いやったセルに対してブチ切れた状態になってフルパワー時よりも力を増している。フルパワー状態よりも髪が逆立ち、オーラも激しさを増している――――――とある世界線の未来で辿り着く超サイヤ人2の前段階、言うなれば疑似超サイヤ人2に近い状態になっている。

 超サイヤ人2に至れば超サイヤ人の二倍の強さになる。疑似であれば、いいところ1.5倍。

 そして今の悟空は極限の疲労状態にある。対してセルは仙豆を食べて万全な状態。

 

「怒りで限界を超えたところで遅すぎたな」

 

 悟空の拳を手の平で受け止め、放った拳を腹に叩き込んだセルは冷笑する。

 掴んだ拳を引き寄せられ、未だパワーの差があって悟空は体勢を崩す。

 

「消えかけの蝋燭の火を燃やし尽くそうと、完璧な私には勝てんと知れ!」

 

 後ろ回し蹴りを受けて蹴り飛ばされて口の端から血を垂らしながら、セルが喜ぶだけと分かっていても悟空が諦めることはない。

 悟空の中でブチ切れても冷静な一部が勝機がないことを認めていた。今は怒りで体を無理に動かしているが、体力はほぼ枯渇状態。セルの言う通り、蝋燭の火が消える前の一瞬の輝きに過ぎない。

 

「はぁああああああああ――――――――ッ!!」

 

 もっと力を望んでも、超えた限界の反動で数秒後には動けなくなるのは目に見えている。

 パワーアップしても未だセルには及んでいない。それどころか仙豆を奪う隙すら見い出せない。

 

(何かないか!? 戦闘力が増す方法は!!)

 

 時間はない。天恵の如く恩恵が舞い降りることもないはずだった。

 

「――――っ」

 

 刹那にも及ばぬ時間の中で走馬灯の如く今までの戦いの記憶が脳裏を過り、至った答えと決断はほぼ同時に行われた。

 

「どうした、孫悟空。貴様はこの程度で」

 

 更に煽って来ようとしているセルの前で悟空の全身を血のような紅いオーラが包み込む。超サイヤ人を解除したわけではない。超サイヤ人のオーラの上に紅いオーラが浮かび上がっている。

 

「界ぃ王ぉ拳――――っ!!」

 

 どうなるかを分かった上で超サイヤ人に界王拳を重ね掛けする。

 成功率は、十に一つどころか万に一つもない。ならば、制御など端からしようとはしなかった。噴出する火山のように暴走する気に方向性だけを与える。

 

「っ!?」

 

 黄金と紅のオーラを纏った悟空の姿がセルの予想を遥かに超えた速度で掻き消える。

 疑似超サイヤ人2状態で、暴走する界王拳の恩恵で戦闘力を倍加させた悟空の力は一瞬の閃光の如き輝きを以てセルを越えた。

 ギュンと鋭角に軌道を変えて、瞬間移動染みた速度でセルの前に現れた悟空に二つの選択肢があった。

 

―――――――仙豆を奪い取るか、このままセルを斃すか

 

 選ぶ必要などない。孫悟空が孫悟空であるならば、その選択は必然だった。

 

「か」

 

 ただでさえ、体に負担のかかる超サイヤ人状態で更に界王拳を使おうとするなど、命を捨てるようなもの。それでも悟空は選んだのだ。

 

「め」 

 

 右手でかめはめ波の準備をしながら、左手でセルの手にある仙豆を奪い取る。

 

「は」

 

 かめはめ波の為に気を溜めていた右手が不自然にブレる。ブレているのは右手だけではなく、全身余すところなく震えている。

 

「め」

 

 寒さではない。暴走している気が体をあちこちを壊しているのだ。視界すらブレる中で悟空は笑った。

 先の戦いの中で、瞬間移動かめはめ波で一度は上半身を吹っ飛ばされてもセルは再生した。ならば、幾らピッコロの再生能力を持っていても再生できないほどに破壊すればいい。

 

「――――――――波ぁあああああああああっ!!」

 

 セルの全身を覆い尽くす巨大なかめはめ波が悟空の左手から放たれた。

 地を抉り、空の彼方へと駆け抜けていったかめはめ波の軌跡を見届けることすら出来ずに悟空の命の灯は消える。当然の代償だった。寧ろたった数秒でもまともに界王拳が発動したこと自体が奇跡。

 

「悟空っ!!」

 

 セルの一撃で気を失っていたクリリンが悟空の急激な気の高まりと突然の消滅に目を覚まし、空から地面に倒れ込む姿を見て叫んだ。

 軋む体を押して飛び上がって武空術を使って悟空の下へ急いで向かうその横を、セルジュニアが追い越して行ったことに焦る。しかし、セルジュニアは倒れた悟空に手を出すことはなく、かめはめ波で抉れた地面の方に向かった。

 ホッとしたのも束の間、少し遅れて悟空の下へとやってきたクリリンは傷だらけの体に触れようとしてビクリと伸ばした手を止めた。

 

「そんな、悟空から気が感じられない」

 

 目の前にいる悟空から気が全く感じられず、クリリンは膝をついて呆然と呟いた。

 クリリンは気を失っていたので悟空が超サイヤ人の上に界王拳を重ね掛けしたことを知らない。それでも意識がない状態で気を完全に消すようなことは流石に出来ない。そう、死にでもしなければ。

 

「悟空ぅ……」

 

 今までクリリンは二度死んだ。

 一度目はピッコロ大魔王の配下に殺され、二度目はナメック星でフリーザに殺された。そのどちらも悟空は物凄く怒ってくれたという。

 一番の親友。亀仙人に師事した幼き日の修行の日々は今でも思い出せる。

 悟空との日々が脳裏に流れ、止めどなく流れ落ちる涙が地面に染み込んでいく。

 

「何をやっているクリリン!」

 

 呆然自失していたクリリンを正気に戻したのはピッコロの怒声だった。

 セルジュニアとの戦いで負傷した右肩を抑えたピッコロが猛スピードで飛んできてクリリンの横に着地し、悟空がセルから奪い返した仙豆を乱暴に取ろうとして、固く握られていたこともあって袋が破ける。

 

「ちっ」

 

 ピッコロは舌打ちをしながら破れた袋から地面にバラけた仙豆を一粒取ると、すぐさま飛び立っていく。

 

「何を、って悟飯にか。アイツらしいな」

 

 乱暴な行為に一言物申そうかと思ったが行き先が微かな気しか感じられない悟飯であるならば、寧ろピッコロらしいと言えるのかもしれないと納得させる。

 

「悟飯を助ける為に無茶して、それでも敵を倒すところ辺りはお前らしいよな、悟空」

 

 少なくともクリリンが気絶させられる前はセルが有利な上に仙豆も奪われた。その状況をひっくり返す為に余程の無茶をしたのだろうと、今までの経験から思いつつ落ちている仙豆を拾い集める。

 ベジータとトランクスはともかく、天津飯やヤムチャは仙豆を呑ませなければかなり危険な状態だ。

 

「なっ、なんだ!?」

 

 クリリンが仙豆を拾い集め、ベジータとトランクスに投げて渡して天津飯とヤムチャの下へ向かおうとした時、突如として砂を大きく巻き上げる突風が吹く。

 

「こ、こ、この気は……」

 

 悟空の死を受け止めきれないベジータが戦慄した声を上げる。

 視線の先には、悟空がかめはめ波を放ったクレーターのような巨大な溝から吹き上げる砂煙を発する主。

 覚えのある気にベジータだけでなく、トランクスと天津飯とヤムチャの下へ行こうと飛び上がろうとしていたクリリンも硬直する。

 

「っ?!」

 

 砂煙を貫いて光線が奔った。

 あまりにも速過ぎるその光線は硬直していたトランクスの胸を貫通して遥か彼方へと飛んで行く。

 

「が、がはっ!?」

 

 自分の身に何が起こったのかと衝撃で跳ね飛ばされたトランクスが口から血を吐きながら地面へと背中から倒れ込む。

 

「くっくっくっ、当たったのはトランクスか」

 

 声の主が軽く腕を振ると砂煙は吹き飛ばされ、その向こうから傷一つなく薄く笑みを浮かべたセルがその全身から遥かに強力になったオーラを立ち昇らせてスパークさせながら立っていた。

 その後ろには二体のセルジュニアが嫌な笑みを浮かべて付き従っている。

 

「な、なんで……」

「ピッコロのように再生できるといっても、核を破壊されれば死は免れん。流石の私も死んだと思ったよ」

 

 クリリンの驚愕を仕方のない事だと受け止め、その上で笑って応えるセル。

 

「超サイヤ人に界王拳の重ね掛けは予想もしなかった。あの一瞬だけとはいえ、確かに私を上回った孫悟空は見事だと言えよう」

 

 同時に愚かでもあった、と続ける。

 

「仙豆よりもかめはめ波を放つことを優先すべきだった。でなければ、私には核を移動する時間もなかったがな。とはいえ、核も無事だったとは言えん。後少しでもセルジュニアの体を乗っ取り、その栄養を奪うのが遅れていれば死んでいただろう」

 

 悟空が仙豆を奪うことに優先した為、ほんの僅かな時間をセルに与えてしまった。それでも核が傷ついたがセルジュニアの体を奪うことで生き永らえた。

 

「正直言って計算したわけではない。死に物狂いの行動だった。運が良かったのだ」

 

 もしも、先にかめはめ波を撃っていたら、セルジュニアの体を奪うのが遅れていればセルは死んでいた。その全てが最早仮定の話となった。

 

「更に嬉しいことに、遥かにパワーアップして再生した。これは恐らく生死の狭間から救われた時、大きく力を上げるというサイヤ人の細胞がそうさせたのだろう」

 

 疑似超サイヤ人2+界王拳の悟空よりも遥かに強くなったセルの気によって地球が怯えるように震える。

 

「孫悟空は私を倒すどころか色々プレゼントしてしまったようだ」

 

 誰も何も抗弁できない。ただでさえ、強敵だったセルが更なるパワーアップをして戻って来たことに恐れるように口を閉じる。

 

「ト、トランクス………………くっそぉおおおお――――っ!!」

 

 悟空と同じく、もう息をしていないトランクスを呆然自失とした目で見ていたベジータが超サイヤ人となって地面を蹴った。

 

「はぁあ――――っ!!」

「弱いな、ベジータ」

 

 全力で放ったベジータの気功波に自分から向かって突破し、その眼前へと躍り出たセルが裏拳を振るう。

 

「ぐっ、ぁ……」

 

 バキッと頬を殴られたベジータが吹っ飛び、何百メートルも地面に溝を作って止まる。意識を失ったのか、超サイヤ人も解除された。

 

「いかんな、ベジータでこの様とは。一撃で終わってしまうようでは、手加減してもセルゲームの意味がない」

 

 一撃でベジータを沈めたセルは、自分でも驚くほどの想像以上のパワーアップに苦笑していた。

 

「とはいえ、窮鼠猫を噛むとも言う。現に孫悟空に二度もあわやというところまで追い詰められた。お遊びはここまでにするとしよう。疾く、死ぬがいい」

「させない」

 

 クリリンがもうここまでかと諦めかけたその時、まだ声変わりのしていない声が響き渡った。

 

「ほう、まだ諦めていない者がいたか。まだ子供の貴様とは少し予想外だったぞ、孫悟飯」

 

 声の主は孫悟飯。

 ピッコロに仙豆を呑ませてもらって完全回復した悟飯は立ち上がり、怯えなど欠片もない真っ直ぐな目でセルを見ている。

 

「お父さんが助けてくれた」

 

 超サイヤ人となり、両腕を腰だめに構えて力を籠める。

 

「っ、はぁああああああああああ―――――――っ!!」

 

 悟飯を中心として更なる気が爆発し、増大したオーラがスパークする。それは奇しくも今のセルと同じ状態だった。

 

「どうやら孫悟空は無駄死にではなかったようだな。まさか奴を越える戦士が現れるとは」

 

 幾ら悟飯が悟空を越えようとも更なるパワーアップを果たした自分には追いついていないと、冷静に判断したセルの笑みは崩れない。

 

「そして、お前を決して許すなと言ってた!!」

「ぬっ!?」

 

 しかし、更なる気勢と共に爆発したように上昇する悟飯の気の高まりによって、地球全体が揺れているのを感じ取ったセルの笑みが固まる。

 

「…………行け、セルジュニア達よ」

 

 悟飯の力は時を置くごとに高まり続けている。愚策だと分かっていても、自分では向かわずにセルジュニアをけしかける。

 

「ひゃあ!」

 

 一体のセルジュニアが命令に従って悟飯に躍りかかる。

 悟飯は向かって来るセルジュニアを見ることなく姿を消した。

 

「!?」

 

 超スピードで間合いに入った悟飯が腕を振るうとセルジュニアの頭部は簡単に弾け飛び、再生能力はないのか地面に倒れ込んで動かなくなった。

 

「な、に……っ!?」

 

 攻撃の瞬間が見えなかったセルが驚愕している間に悟飯が真っ直ぐこちらへと向かって来ていた。

 悟飯の底知れない強さを感じ取ってセルジュニアが臆して動こうとしないのを見たセルがその腕を掴み、向かって来る悟飯に向かって投げつける。

 

「ひぃっ」

 

 その悲鳴がセルジュニアの末期の言葉であった。

 悟飯を狙って隠れ蓑になるように後ろから放たれたセルの気功波によって粉砕され、セルジュニアは死んだ。しかも、悟飯には簡単に気功波を避けられた。

 

「どれほど強くなろうとも完璧な私には勝てん!!」

 

 更に気功波を放ち続けるセル。だが、悟飯はその全てを軽々と弾き飛ばす。

 

「ぬうっ」

「はぁっ!!」

 

 当たりさえすればと考えたセルの視界からまたもや悟飯が消え、次の瞬間には強烈なボディブローが襲って来た。

 

「う、うぷっ」

 

 背中にまで及んだのではないかと思うほどに体に食い込み、セルの中から何かが込み上げる。

 

「おごあっ!!」

 

 悟飯のたった一撃の攻撃で18号を吐き出したセル。更なるパワーアップを果たしていたから完全体で無くなることはなかったが、パワーアップした力が無くなった。

 

「お、おのれ……っ!!」

 

 セルの心中は荒れていた。

 完全な自分が更にパワーアップを遂げたにも関わらず、それすらも凌駕する者が存在することに。

 

「認めよう、貴様は私よりも強い。だが!!」

 

 強さが勝敗に決着するわけではないと、大きく跳び上がって何百メールもの上空から悟飯を見下ろしてセルは内心で叫ぶ。

 

「か、め、」

 

 地球が無くなってもフリーザと同じようにセルは生きていられる。だが、サイヤ人はそうではない。

 

「は、め」

 

 勝つのは自分だと、地球を守る為に戦っている悟飯ではセルの全力のかめはめ波を受けざるをえない状況に追い込む。

 かめはめ波の体勢で輝きを放つセルを見上げる悟飯の目に焦りはない。

 

「波っ――!!」

「お父さんは、僕に後は任せたと言った!!」

 

 放たれたかめはめ波を見上げ、父の言葉を胸に悟飯もまたかめはめ波を放つべく気を溜める。

 

「消えろ、セル――――――――かめはめ波ぁっ!!!!」

 

 セルのそれよりも何倍も大きく、力の強いかめはめ波が悟飯より放たれた。

 

「そ、そんな……」

 

 二つのかめはめ波は一瞬の拮抗すらも果たせず、悟飯のかめはめ波がセルのを呑み込んで直進する。

 

「ぎええええええええええええ…………………………!!!!!!!!!」

 

 今度こそ核を残すようなことも出来ず、セルの断末魔と共に悟飯のかめはめ波が宇宙の彼方へと消えていく。

 地上でセルの最期を見届けた悟飯が超サイヤ人2を解く。

 

『悟飯、よくやったぞ』

「はい」

 

 あの世から声を掛けてきた悟空の声に答えて、悟飯は父が死んだ事実に静かに涙を一粒流した。

 

 




完結。


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魔導師バビディ編
第五話 波紋の未来


ネタが浮かんだので魔導師バビディ編、始まります。


 

 セルゲームから数年後、16歳になって高校に通うようになった孫悟飯は窮地に追いやられていた。

 地球人よりも遥かに高いポテンシャルを持つサイヤ人の父譲りの超絶的な戦闘力を持つ悟飯をして冷や汗を掻かせる人物が隣に座っている。

 

「なんでわざわざ、そんなおかしな恰好したのよ」

「い、いえ……その……仲間のみんなが普通に暮らしたいなら強いってことがバレちゃいけないって」

 

 冷や汗を掻かせている同級生のビーデルの問いにしどろもどろに答える。

 

「ふうん……」

 

 納得しているのかしていないのか、同年代との交流が極端に少なかった悟飯ではビーデルの反応から読み取れない。

 

「その仲間の人は悟飯くんよりも強いわけ?」

「ええ、強い人もいます」

 

 アドバイスしてくれたのは強さで言えば戦士ではないブルマなのだが、ここで敢えて言う必要はないだろう。

 高校まで学校に通わず、同年代との交流も少なく、人里離れたパオズ山で暮らしていた悟飯は普通というのがよく分からない。一番一般人の感性を持っているブルマに相談することが多い。

 

「ねえ、やっぱり金色の戦士もあなたなんじゃないの」

「い、いえ!! あ、あれは違いますよ!」

 

 悟飯がサタンシティに来てから悪人退治をしていた時に変装目的で超サイヤ人になっていたら金色の戦士と呼ばれるようになっていた。

 目立ちたくない悟飯は正体がバレないようにブルマに相談して変身アイテムを作ってもらい、グレートサイヤマンを名乗るようになったのに自白しては意味がないので必死に否定する。

 

「ほんとかしら」

「ほっ、ほんとですよ。嘘つくわけないじゃないですか、アハハハ」

 

 尚も疑われているようだが、普通の人は黒髪から金髪になったり戻ったりすることは出来ないはず。

 未だに世間の普通がよく分からないので、もしかしたらあるかもしれないが認めなければ大丈夫なはずだと内心で焦りを隠す。

 

(セルゲームの後は大変だったもんなぁ。特にベジータさんの時はヤバかったらしいし)

 

 セルゲームはテレビ中継されていたから身元が一部にバレて大変な思いをしたので、悟飯は当時を思い出して少し遠い目をする。

 

(お金の力って凄い)

 

 西の都で暮らしていたベジータの存在は早い段階で特定されたと後になって聞かされた。

 無遠慮にマスコミが押しかけでもすれば気が長い方ではないベジータがどんなことをするか分かったものではなく、ブルマがカプセルコーポレーションの力で押し留めなければ大変なことになっていただろう。

 

「1ヶ月後の天下一武道会、あなたも出るんでしょ?」

「え?」

 

 悟飯が現実逃避をしている間にビーデルは話題を変えたらしく、唐突に聞かれて目が点になる。

 

「天下一武道会、ですか?」

「そう。あなたが優勝したギョーサン・マネー主催の天下一大武道大会じゃなくて、歴史のある方の大会」

「それは分かるんですけど……」

 

 母からの惚気話や父が語ってくれた思い出話にも良く出て来た大会だけに知らないわけではないのだが、どうにも話が結びつかなくて困惑する。

 

「私が前回大会の子供の部の優勝者で、悟飯くんは天下一大武道大会の優勝者。これじゃ私の方が弱いみたいじゃない」

 

 肩書の上では子供の部の優勝者と大人ばかりだった天下一大武道大会の優勝者では確かに後者の方が上だろう。

 

「みんな弱そうで張り合いのある相手がいないし、悟飯くんは強そうだから白黒つけたいのよ」

「い、いや、僕はあまりそういうの興味ないし」

「じゃあ、なんで天下一大武道大会には出たのよ」

「お母さんに偶には体を動かした方がいいって言われて」

「そんな理由で出たの!?」

 

 何故か驚かれたが悟飯が天下一大武道大会に出たのはそんな理由である。

 

「そ、それだけじゃありませんよ。仲間がみんな出るって言って、それにお父さんも一日だけ帰って来るっていうから……」

 

 そこまで言って少し言い過ぎたことに気付き、慌てて口を閉じる。

 

「そう言えば本選出場者に、天下一武道会のパパの前のチャンピオンの孫悟空って名前の人がいたわよね。あなたと同じ苗字よね、孫悟飯くん」

 

 しかし、悟飯の行動に意味はなかった。ビーデルにバッチリ見透かされている。

 

「今時、苗字と名前が分かれているのは珍しいわ。その孫悟空って人があなたのパパなんじゃないの」

「い!? そ、その」

「やっぱりね」

 

 悟飯が嘘をついても分かり易いのもあるのだろうが完全にビーデルにバレている。

 

「はい、そうです。孫悟空は僕のお父さんです……」

 

 こうなれば認めるしかない。

 天下一大武道大会の優勝者であることは高校でバラされているので仕方ない。何よりも悟飯は孫悟空の息子であることを誇りに思っているから下手に誤魔化するよりも認めてしまう方が楽だった。

 

「前チャンピオンの子供とその前のチャンピオンの子供が闘うことになったら絶対に面白いと思うわ。出るわよね、天下一武道会。出なきゃ、みんなに悟飯くんがグレートサイヤマンだってバラすからね」

「ええっ!? そっ、そんなの……」

 

 どんどん逃げ道が塞がれていく感覚を悟飯は味わっていた。

 今まで女の人(といっても母やブルマ、18号ぐらいしかいない)に口で勝てた試しはないが、口が立つ方ではない悟飯では打開策を都合よく思いつけない。

 

「いいじゃないの、グレートサイヤマンで出場すれば分かんないんだし」

「だ、だけど」

「バラされたいの?」

 

 結局のところ、選択権は悟飯にはないようだ。

 ビーデルの機嫌次第で今後の生活が決まるとなれば、ほぼ命令に近い提案に頷く以外に悟飯に出来ることはない。

 

「わ、分かりました…………天下一武道会に出場しますよ」

「やったぁっ!」

 

 出場を許諾すると満面の笑みを浮かべたビーデルを見て、まあいいかと思った悟飯は大分昔にヤムチャに言われた言葉を思い出した。

 

(女の笑顔に男は頷くしかない、か。ヤムチャさんの言った通りだな、トホホ)

 

 とはいえ、母にどう言い訳したものかと考えていると、上機嫌のビーデルが楽し気に口を開く。

 

「私のパパも出場するけど、悟飯くんのところのパパは出るの?」

 

 その問いに悟飯は少し考えて。

 

「お父さんは―――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ビーデルに天下一武道会の出場を強制された悟飯は高校の授業を終えた後、寄り道をすることなく真っ直ぐ家路についた。

 ジェットフライヤーで五時間はかかる距離であっても悟飯ならば20分程度で家に着いてしまう。

 母を説得する良案が浮かばないまま家に着いてしまい、宿題をすると言って自分の部屋に引き籠ったが夕飯が出来て呼ばれても未だ解決策を見出せていなかった。

 

「あ、あのお母さん」

 

 隣に座る父にそっくりの弟の悟天がサイヤ人特有の大食漢振りを存分に発揮しているのを横目に見ながら、地球人の平均程度の摂取量の母チチに恐る恐る話しかけた。

 

「ん? どうしただ、悟飯ちゃん」

 

 高校生の息子がいるとは信じられない若い見た目のチチは口の中の食べ物を呑み込んで答える。

 チチの前の席の悟天は、夕食の場は悟飯がその日に学校での出来事を話すことが多いので特に気にした様子もなく食事を続けている。

 

「じ、実は今日、学校で」

「学校で?」

 

 悟飯が学校の話をするのをチチは殊の外、喜んでいた。

 戦いばかりだった幼年期と少年期を過ごした悟飯が同年代と楽しく過ごすのが嬉しいのだろう。

 

「グレートサイヤマンが僕だってことがクラスメイトにバレちゃった」

「あれまあ」

「悪い奴を捕まえた時に声とかで」

 

 正体がバレたことに目を丸くしながらも大して気にしていない風のチチに何も喉を通る気がしない。

 

「しっかりしているようでも悟空さの子供だな」

 

ニコニコと微笑んでいるチチを怒らせないかと戦々恐々としながら続きを話そうと口を開く。

 

「それで正体をバラされたくなかったら一緒に天下一武道会に出ろって……」

「いいんでねぇか、出れば」

 

 あっさりと認められてポロッと箸で掴んでいた唐揚げを落としてしまった。

 

「おっと」

 

 床に落ちる前に悟天が箸でキャッチして自分の口に運ぶ。

 

「いいの?」

「金銭を要求されるとかじゃなくて、天下一武道会に出るってだけならオラが口やかましく言うことじゃないべ」

 

 どんな話をされるのかと思って少し焦っただ、と続けて言ったチチに慌てて謝る。

 

「ご、ごめんさない…………それであの、僕もどうせ出るなら優勝したいから学校休んでみっちり修行したいなと」

 

 悟飯の発言にチチが目をパチパチとした。

 

「悟飯ちゃんが負けるとしたらベジータぐらいだべ? あの人がルールに縛られた武道会に出るとは思えねぇし、悟飯ちゃんならぶっちぎりで優勝するだよ」

 

 チチの中ではクリリンやヤムチャ、天津飯が仮に出場したとしても今の悟飯の敵ではないと考えている。流石に修行を続けていると聞いているベジータは厳しいかもしれないが、天下一大武道大会で悟空との戦いを優先して二人でどこかへ行ってしまった前歴があるだけにルールに縛られた天下一武道会にわざわざ出るとは思えない。

 

「多分、クラスの人達も来るだろうから超サイヤ人は目立つから使えないし、それにどんな強敵が現れるか」

「あのな、悟飯ちゃん」

 

 今まで強い相手とばかり闘ってきた所為でどうにも感覚がおかしい悟飯の言葉をチチが優し気に遮る。

 

「今までがおかしいだけで頻繁に悟飯ちゃんクラスの強さの人が早々出てくるわけないべ。しかも一般人が多くいる天下一武道会に」

「お父さんは自分が出てた時には一杯強い人がいたって」

「それは悟空さが今の悟飯ちゃんよりも幼い時だべ。今の悟飯ちゃんと比べたら駄目だ」

 

 ジャッキー・チェン、天津飯、ピッコロ大魔王、ピッコロ、ラディッツ、ベジータ、フリーザ、人造人間達、セル、と悟空の話をよくよく思い返してみると強敵が次々と出てきているが、普通はそんなことはありえないはずであるとチチは自分に言い聞かせる。

 

「ちゃんと学校には行くだよ。鍛えるなら学校が終わって帰って来てからでも出来るだ…………ところで」

 

 この話題を続けていると碌なことにならないと判断し、学校を休んでまで修行をする必要はないと告げたところで話を変える。

 

「悟空さが優勝した大会では賞金は50万ゼニーだたが、今回も同じなんけ?」

「えっと、聞いた話だと」

 

 却下された悟飯は肩を落としながらビーデルとの会話を思い出す。

 

「優勝すると1000万ゼニーで、2位が500万……」

「1000万ゼニー!?」

 

 5位まで賞金が出るので全部を言おうとしていた悟飯の言葉を、優勝賞金が悟空が優勝した時と比べて20倍になっていることに驚いたチチが遮る。

 

「ほ、ほんとうだか?」

「そう聞いたけど……」

 

 物欲に乏しく金勘定もしない悟飯は金額の大きさに驚きはしたものの、チチのように目を見開くほどの驚愕を覚えなかったので再度の確認に少し引き気味になりながら頷く。

 するとチチは居住まいを正すと真っ直ぐに悟飯を見る。

 

「よし、悟飯ちゃん。学校を休んでみっちり修行して優勝してくるだよ」

「え、でもさっきは」

「悟飯ちゃんなら後でも十分に取り戻せるべ」

 

 手の平返しに悟飯が困惑していると、チチは影を作って笑う。

 

「実はお父の財産も残り少なくなってきて、悟天ちゃんの大学資金はどうしようと思ってたところだよ。天の恵みは活かさねぇとな」

 

 世の中、お金お金で世知辛いと悟飯は一つ学んだ。

 しかし、悟天の大学資金までは大丈夫という祖父・牛魔王の財産は凄いのだなと内心で思ったりもする。

 

「にいちゃんが出るなら僕もてんかいちぶどうかいに出る!」

 

 さっきまでガツガツと一人だけ食べていた悟天が話が終わったと見て、食べかすを口から飛ばしながら宣言する。

 

「悟天ちゃんが出るなら賞金が増えるな」

「15歳以下の子供の部になるから賞金貰えないんじゃないかな」

「…………そうだか」

 

 捕らぬ狸の皮算用となったチチは残念そうに野菜を口に運ぶ。

 

「え~、僕もてんかいちぶどうかいに出たいよ」

「悟天も子供の部なら出られるよ」

「にいちゃんと一緒がいいのに……」

「一緒に修行するからさ。兄ちゃんが優勝出来るように応援してくれないか」

「ぶぅ、分かった」

 

 不満げな弟の頭を撫でていると、もう一つ懸案があったことを思い出す。

 

「あ、そういえばもう一つ」

 

 どう言えばいいかと考えていると、三人が付いている食卓の直ぐ横に前触れもなく誰かが現れた。

 

「たっだいま。悪いな、遅れちまった」

「悟空さ」

 

 瞬間移動で現れた孫悟空は頭を掻きつつ笑う。その姿を見たチチが立ち上がる。

 

「オラ達は先にご飯食べてるだ。悟空さはどうする? 風呂は沸かしてあるから」

「いや、汗は界王様のところで流して来たから先に飯食うぞ。ああ、準備はいいからチチは座ってていいって。遅れたのはオラの責任なんだから」

「夫の世話をするのは妻の役目だべ」

 

 なんだかんだ言いながら二人で悟空専用の食器を用意して、悟空が悟飯の前の席に座る。

 両親が並び、悟空が悟飯の対面に、チチが悟天の対面の席になる。

 

「いっただきます!」

 

 席に着いた悟空は手を合わせて食事の挨拶をすると一気に食べ始めた。

 父の食いっぷりを見ていると話ばかりで食事が進んでいなかった悟飯も手と口を動かす。

 暫く食事の時間が続き、満腹になった悟空が遅れた詫びと言って皿を洗い出すと、追い出された格好のチチがテーブルを拭く悟飯に目を留めた。

 

「そういえば悟空さが現れる前に何か言いかけてなかったか?」

 

 言われて何の話かと首を捻った悟飯だったが、直ぐに思い出した。

 

「僕に天下一武道会に出ろって言った子がお父さんも出ないのかって聞かれて」

「悟空さが?」

 

 なんでその子が悟空が出場するのかと聞くのか理解できなかった様子のチチに説明不足を自覚した悟飯が補足する。

 

「その子はセルゲーム前に行われた天下一武道会のチャンピオンの子供で、その前のチャンピオンはお父さんでしょ。だからその子供である僕にも出ないかって話で」

「セルゲーム前のチャンピオンって、確かミスターサタンじゃなかっただか?」

「そうです」

「そうか、あのミスターサタンの……」

「なんだ、なんの話してんだ?」

 

 洗い物を終えた悟空が机の近くで立ったまま話をしてる二人が気になったらしく、悟天を肩車しながら聞く。

 

「実は……」

 

 話をしていた時にはいなかった悟空に、グレートサイヤマンの正体バレから天下一武道会への出場の強要に至るまでの経緯を説明する。

 

「天下一武道会か、懐かしいな」

 

 ソファに座って悟天と遊びながら悟空は仲間達と切磋琢磨した日々を思い出して懐かしむ。

 

「お父さんも出るの?」

「オラは畑があるからなあ」

 

 膝の上の悟天の問いに苦笑を浮かべる悟空にチチが「何言ってるだ」と言って隣に座る。

 

「悟空さも出るだよ。悟飯ちゃんと二人で賞金合わせて1500万ゼニーも貰えるんだべ。行って帰って来る数日ぐらいなら畑を放っておいても問題ないだ」

「ウチの畑の野菜を贔屓してくれるお得意さんもいるのに、そういうわけにもいかねぇだろ」

 

 数年前からカプセルコーポレーション協力の下で始めた農園に対しては悟空なりにも拘りがあって、大会に出たい思いがあっても何日も家を空けたくはないようだ。

 

「お父さんには瞬間移動があるんだから大丈夫じゃないですか」

「試合の時は以外は戻ればいいし、悟空さも出るだよ」

「お父さん」

 

 悟飯、チチに言われ、悟天の熱視線に悟空はやがて根負けすることになる。

 

 




原作との差異

1.映画『銀河ギリギリ!!ぶっちぎりの凄い奴』で開催された天下一大武道大会に占いババの力で一日だけ現世に戻って来た悟空が参加。悟空の参加をしてベジータも参加し、大会本選で当たって二人でどこかに行って戦った(優勝者は悟飯、そのことは高校でもバレている)

2.悟飯がブルマの下に寄らずに真っ直ぐ帰宅

3.悟空がナメック星のドラゴンボールでセルゲーム後、一年前後で生き返っている

4.悟空が超でやっているように農業者となっている

5.セルゲームの一件で悟空は原作とは少し考え方が変わっている



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第六話 第25回天下一武道会

「へぇ、前の天下一武道会よりも凄ぇ人だな」

 

 肩車している悟天が頭の上でゴソゴソと動いているのを感じながら孫悟空は懐かしい少年時代を思い出す。

 

「んだ。前も多かっただが昔の比じゃねえだ」

「そうなんですか? 天下一大武道大会もこんなんだったと思うんですけど」

「そう考えると最近はこっちの方が普通なのかもしれねぇな」

 

 人混みで逸れない様に一家で一塊になりながら進んでいく。

 

「凄い人だね、お父さん。僕、こんなに人みたの始めてだよ」

 

 人里離れたパオズ山で生まれ育っている悟天は見慣れない人混みの中にあっても興味津々で臆することなく、肩車してもらっている父の頭をペシペシと興奮気味に叩く。

 

「オラもだぞ。どこにこんなに人がいたんだろうな」

 

 悟空は悟天のように興奮することはないが少し人混みに辟易しているようもである。

 

「あ、お父さん。あっちに人が一杯集まってるよ。なにかあるのかな」

「ん?」

 

 肩車してもらって高い位置から周りを見れる悟天は人の流れが一点に集まっているのを見て悟空の髪の毛を引っ張って指差す。

 そちらを見た悟空の耳が歓声のような声を聞きとる。

 

「ミスター・サタンが着いたらしいぞ!!」

 

 どうしたのかと思っていると、悟空の横を興奮気味に叫んだ男が通り過ぎていく。

 

「ビーデルさんのお父さんは凄い人気みたいだな」

 

 人の流れが逆流していく中で揺るがない悟空の傍に寄ったチチが呆れ半分、感心半分の感想を漏らす。

 

「おっ、ビーデルもいるみたいだぞ。悟飯、行かなくていいのか?」

「え? いや……」

 

 マスコミから取材を受けているミスター・サタンの横に、ここ暫く舞空術を術を習う為に孫家に通って来ていたビーデルの姿を見て取った悟空が隣にいる悟飯を肘でつつく。

 

「からかうのは止めたげれ、悟空さ」

 

 息子をからかおうとしている父親を止めてくれた母親に悟飯が感謝しようとしたところでチチがニヤリを笑う。

 

「嫁になる子なんだから親のオラ達が挨拶に行くのが筋だべ」

「お母さん!?」

「はは、冗談だべ」

 

 悟飯の反応が面白くて悟空と悟天が笑っていると、後ろから見知った気配を感じ取って振り返る。

 

「げっ、悟空じゃないか」

 

 いるはずのない人を見たクリリンが嫌そうな顔をしながら18号とマーロンと一緒にこちらに向かって来る。

 

「クリリンじゃないか。ここにいるってことはクリリンも天下武道会に出るんか?」

「ああ、そうだよ。ってことは悟空も出るわけね」

「悟飯もな」

 

 マジかよ、とゲンナリとした顔をしたクリリンが否定してほしいと感情が籠った視線を向けて来るが、出るしかない悟飯は苦笑を返すのみ。

 

「誰も出ないと思ったのにな。折角の賞金がパァだ」

 

 トホホと肩を落とすクリリンと正反対に18号とチチが和やかに会話し、何にも臆さない悟天がマーロンに話しかけている。

 

「クリリンさんも大会に出るんですよね」

 

 歩き出しながら肩を落としたままのクリリンに悟飯が話しかけた。

 

「ああ、18号さんと一緒にな」

 

 何時までも肩を落としたままも情けないのでクリリンが顔を上げると、女性陣は楽し気に世間話をしていた。その輪に入る気もなれず、悟空達に経緯を説明することにする。

 

「今の時代、大した相手もいないはずだから最低でも優勝賞金1000万ゼニーが楽に手に入ると思ったんだけどな。折角、有給使って来たのに」

「有給? ってなんだそれ、食いものか?」

 

 聞き慣れない言葉に悟天とマーロンが迷子にならないように気を配りながら聞く悟空。

 

「有給休暇の略ですよ、お父さん。言いませんでしたっけ、クリリンさんは警察官になったんですよ」

「へぇ、そうなんか」

 

 驚きに目を丸くした悟空に少し得意気なクリリンは鼻高々になっていた。

 

「自分一人だけならともかく18号さんと結婚してマーロンも生まれただろ。家族を食わしていく為には稼がないといけないし、鍛えた力を使った仕事をしたかったんだよ」

 

 どうせなら娘が自慢が出来る仕事にしたかったから頑張った、と家族の為に働く父の顔で語るクリリン。

 

「サタンシティに始めて訪れた時に悪党を倒した時にクリリンさんがやって来た時は僕も驚きましたよ」

「本当に驚いたぞ、オラ」

 

 驚きように満足しているクリリンに「水臭いぞ、クリリン」と悟空が言った。

 

「もっと早く教えてくれれば良いのに」

「悟空以外はみんな知ってるよ。お前はこっちから会いに行かないと顔も見せないじゃないか」

 

 少しの不満を覚えた悟空が文句を言うも、クリリンの言うことは最もだった。

 農園の世話と修行の為、この七年間の間に仲間を顔を合わせたのは数えるほどしかない。自分から会いに行ったことは殆どないので目を逸らす悟空。

 

「マーロンが生まれた時に会っただろ」

「三年も前じゃないか」

 

 始めての妊娠・出産でナーバスになっていた18号の相談相手として経験者であるチチやブルマが良く会いに行っていたが、悟空は出産の際に駆けつける足(瞬間移動)としてチチと病院に向かった時がクリリンと会った最後である。

 

「お前は昔からこっちから動かないと連絡の一つも寄越さないことが」

「そういえば、クリリンって髪の毛あったんだな!」

「…………昔、剃ってるって言ったことがあるだろ」

「じゃあ、なんで伸ばし出したんだ?」

 

 旗色悪しと見て必死に話題変換を図る父に苦笑する悟飯の姿を横目に捉えながら、これでこいつも少しは懲りただろうとその話題に乗ることにする。

 

「武道家は引退したから、もう剃る理由が無くなっただけだよ」

「なんだよ、それ」

「俺としては限界まで鍛えたからさ。警察官になる時に武道家を引退することにしたんだ」

 

 三年前から伸ばし始めた髪の毛を撫でながら語るクリリンには未練の欠片も見えない。

 

「何言ってんだ、鍛える余地はまだまだあるだろ」

「いいんだよ、もう。お前達サイヤ人にはついていけないし、地球を守るのは任せたからな」

 

 本気で惜しいと言ってくれる悟空に冗談めかして言うナメック星での苦難を共にした良き兄貴分に悟飯も少し寂しげだった。

 

「あ、ヤムチャさんだ」

 

 手を繋いで歩いていた悟天が少し前を歩く知っている背中を見て言った。

 

「げっ」

 

 名前を呼ばれて振り返ったヤムチャがクリリンと同じリアクションをする。

 

「久しぶりだな、ヤムチャ」

 

 足を止めたヤムチャに片手を上げた悟空が声をかける。

 ヤムチャはギギギと油の足りないロボットのように首を動かして悟空を一行を見て、苦笑しているクリリンに目を止める。

 

「…………もしかしてお前達も?」

「お察しの通りです」

「マジかぁ……」

 

 主題を省いても伝わる意味にクリリンが肯定を返すと、これまた同じように露骨に肩を落とすヤムチャ。

 

「ヤムチャもクリリンも人の顔を見て失礼だぞ」

「まあまあ、お父さん」

 

 全く同じ失礼なリアクションを二度連続で取られた悟空を宥める悟飯をヤムチャが指差し、『こいつもか』という意味を察してクリリンは重く頷く。

 

「まさか他の奴らも出ないだろうな」

「さあ、でもないとも言えないですよ」

 

 何年も会ってない面子がこうして顔を合わせているのだからヤムチャも疑心暗鬼になっていた。安易に否定できないクリリンは天津飯やピッコロ、ベジータが現れても不思議ではないと考えていた。

 

「そう言えば二人とも亀仙流の胴着は持って来てるんか?」

 

 相変わらずの亀仙流の胴着を着ている悟空が昔のように胴着を着て試合に出るのかと同じ門弟のヤムチャとクリリンに問いかける。

 

「もう年だからあんな派手な奴は着れないって。第一、そんなに動くのが必要なほど強い奴がいるとも思えなかったし」

「俺は武道家引退したから普通の格好だな」

 

 楽勝ムードで胴着すら持って来ていないヤムチャと、武道家を引退したので胴着ではないクリリンに悟空は残念そうだった。

 

「どうせなら昔みたいにしたかったんだけどな」

「それを言うならここに武天老師様やウーロン、後はブルマを呼んだ方が良いんじゃないか? その方が昔の雰囲気が」

「呼んだ?」

「うわっ、ブルマ!?」

 

 昔みたいにというなら昔馴染みの三人もヤムチャが話しに出すと、その内の一人であるブルマが横から顔を出してきて驚いて飛び上がる。

 

「脅かすなよ」

「そっちが勝手に驚いてるんじゃない」

「あ、トランクス君だ!」

「よっ、悟天」

 

 驚かすつもりはなかったブルマが反論している隣にいたトランクスに駆け寄る悟天。

 次男の背中を見送った悟空がブルマに顔を向ける。

 

「二人だけか? ベジータは来てないんか?」

「本気で戦えない大会に興味ないんですって」

「そっか、ベジータは出ないのか。よしよし」

「まあ、アイツらしいけどさ」

 

 ベジータが出場する可能性は限りなく無くなったと分かってガッツポーズをしているヤムチャを不審な人を見るような目で見たブルマに、悟空が続けて「じゃあ、何で来たんだ?」と無遠慮に聞く。

 

「アンタ達が天下一武道会に出るって聞いて懐かしくなってね。トランクスも出たいって言って聞かないし」

 

 ブルマまで集まって本当に昔に戻ったみたいな気分の悟空とは違って、ヤムチャが悟飯に「もしかしてピッコロは出ないだろうな」と話しかけていた。

 

「僕も誘ったんですけど出ないみたいですよ。天界から見てるって」

「前々大会でやらかしたからな。覚えている奴もいるかもしれないし、無難じゃないか」

 

 悟空が優勝した回の天下一武道会の会場の末路を思い出したクリリンが深く頷く。

 

「僕みたいに変装すれば大丈夫だと思うんですけど」

「ピッコロのターバンとサングラス付けてるだけで変装っていうのか、それ」

「だろ。ダサいから止めろって言ってるのに聞かねぇんだよ」

「格好いいじゃないですか、これ。お父さん達には分からないんですか?」

 

 ピッコロも出ないと分かって一人皮算用するヤムチャ。

 

「天津飯さんと餃子さんも誘おうと思ったんですけど、どこにいるのか分からなくて」

「アイツらなら山奥で道場開いてるぞ」

「え、そうなんですか?」

 

 皮算用をし終えたヤムチャが悟飯の疑問に答える為に数年前に会った天津飯のことを思い出す。

 

「山村近くで修行している時にその評判を聞いた奴らが武術の教えを乞いたいって集まり出したらしくてな。断り切れずに成り行きで武術を教えるようになって天津堂ってという道場を開いて繁盛してるらしい」

「良く知ってますね、ヤムチャさん」

「一時期手伝ってたこともあるからな」

「相変わらず定職にもついてないのね」

「五月蠅いぞ、そこ!」

 

 物知りにクリリンが感心しているが、一時期手伝っていたということから相変わらずブラブラしているのだと見抜いたブルマのチクリとくる一言に、ついムキになって言い返してしまうヤムチャ。

 

「ベジータは来ない。天津飯と餃子も出ない。出るのは俺とクリリンと、悟飯と悟空だけか」

「18号さんも出るみたいですよ」

「マジかよ、悟飯…………組み合わせ次第で賞金が出るところまでは行けるか」

 

 18号まで出場するとは思わなかったので入賞できる確率は減るが、ここまで来れば一人増えるのも大して変わらない。

 先を歩くチチや18号と話していたブルマが振り向いた。

 

「あ、テレビ放送もあるから超サイヤ人は禁止ね。ただでさえセルとの戦いでテレビに映ってて、どこかで見た顔だなって思われるかもしんないのよ。ベジータの時の二の舞はゴメンだわ。特に孫君」

「なんでオラなんだ? 大丈夫だって悟飯もやたら気にしてるから使わねぇって」

「なんでだ?」

「実は僕が金色の戦士じゃないかって友達に疑われてて」

「そういう理由か」

 

 ブルマの申し出に悟空がやけに素直に受け入れたので何かあるのではとヤムチャは逆に勘ぐってしまうが悟飯が頭の後ろを掻きながらに説明に強く納得した。

 その話を聞いたクリリンが顎に手を当てて何かを考える。

 

「どうせなら気功波の類や舞空術も使わない方がいいかも。警官やってる時にトリックだ何だって言われたこともあるからさ」

「え? 僕、友達に舞空術を教えちゃいましたけど」

「悟飯の友達ならセルゲームと繋げる奴はいないだろうから別にいいんじゃないか」

 

 強力な戦士でありながら警官として一般人との関わり合いが多いクリリンは彼らの感性を理解しており、その提案を拒否する理由は悟空達にはない。

 

「面倒だね」

「まあまあ、18号さん。条件はみんな一緒だから」

「いいんじゃねぇか、超サイヤ人、気功波、舞空術なしで。その方が純粋に武術の腕を競えるだろうし、オラとしては言うことなしだぞ」

「僕としては目立たなくなるならそれに越したことはないです」

「じゃあ、決まりだな」

 

 最後はヤムチャが締める。

 気功波もなしならば技が多彩なクリリンにも勝てる可能性が高くなった。ヤムチャとしては願ったり叶ったりの展開である。

 浮かれていたヤムチャは、今までの自身のくじ運の無さと一回戦敗退振りをしっかりと忘れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パンチマシンによる予選を難なく突破して本選への出場を果たした悟空達。

 子供の部決勝であるトランクスと悟天の試合を観戦した後、審判との懐かしい再会を終えてクジ引きを終えて判明した対戦表にヤムチャの顎がカクンと落ちた。

 

『 第一試合、悟空vsヤムチャ

  第二試合、猛虎vsオコスキー

  第三試合、クリリンvsブンター

  第四試合、キーラvsヤムー

  第五試合、マイティマスクvsスポポビッチ

  第六試合、ジュエールvsグレートサイヤマン(悟飯)

  第七試合、ノックvsビーデル

  第八試合、18号vsサタン   』

 

 一回戦で悟空との試合である。ヤムチャならずとも顎も落ちよう。

 

「神よ、俺が何をしたというんだ……」

「デンデがどうかしたんですか?」

 

 悟飯に突っ込まれたヤムチャは灰となって空の彼方へと飛んで行った。

 

 




原作との差異

1.クリリンが復活のF同様に警察官になっている

2.ヤムチャが天下一武道会に出場

3.ベジータは出場しない

4.天津飯が超アニメ版同様に道場を開いている

5.界王神とキビトが出場していない

6.本選組み合わせが微妙に変化している

7.ヤムチャの安定の不運


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第七話 不穏な影




大会は丸々カットでお送りします。





 

 

 

 

 

 

 夕方までかかった天下一武道会後に一泊してから地元に帰る者が多い。リゾート地であるパパイヤ島の主産業は観光だとしても、数年に一度しか開催されない天下一武道会を観に来ようと集まった人々でホテルは満員御礼、むしろ人が入りきらないほどと言っていい。

 日中の熱気を残すように蒸し暑い夜のホテルは盛況であった。

 ホテルに泊まれずに野宿を強いられる者の中には遊び倒して一晩を過ごそうとする剛の者もおり、今日のパパイヤ島は夜も眠らない。

 幸運ではなく例外としてホテルに泊まれる者達もいる。祭りと呼ぶべき規模の天下一武道会の本選出場者とその家族である。本選出場者には専用の高級ホテルが宛がわれ、特に入賞者は最高級のホテルが与えられた。

 しかし、まさか入賞者が一般ランクのホテルに泊まるとは誰も予想しておらず、食堂ホールには忙しく人が出入りしていた。

 

「おっかわり!」

 

 唇の周りをソースや食べかすをベッタリと付けた悟空が空き皿を片付けようとしていたウェイトレスに頼む。

 

「ラーメン、カレー、ステーキ…………面倒だな。全メニュー十人前ずつ持って来てくれ」

「は、はいぃいいいいいいい?!」

 

 一つ一つ頼むのが面倒になって纏めると一瞬唖然としたウェイトレスは悲鳴を上げながらフラフラと皿の山を持って去っていった。

 悟空はその姿を見送ることなく大テーブルに残っている食事の片付けに入る。周りには何皿も積み上げられており、それは悟飯の周りもそうだった。

 明らかに少年時代を超えているペースと量に眉を顰める程度で済んでいるのは旦那がサイヤ人であり、息子がハーフであるブルマである。

 

「チチさん、本当に食べ放題なんて言っちゃって良いの?」

「構わないだ」

 

 ニコニコと旦那と息子が食事に勤しむのを眺めているチチに、流石にないと思うが賞金分食い潰されないか本気で心配になったブルマが聞いた。

 

「二人で1500万ゼニーも稼いでくれたからな。100万ゼニーぐらいなら平気だべ」

 

 100万ゼニーに収めるなら幾らでも食べて良いと御触れを出したチチに大喜びで食べている悟空と悟飯。

 

「俺達も食べたいよぉ」

「お母さん……」

「悟天ちゃんは暫くお預けだ」

「トランクスもよ」

 

 食べ続ける悟空と悟飯を涎を垂らしながら見ていたトランクスと悟天は、それぞれの母親に冷たく拒否されて肩を落とす。

 

「仕方ないぞ、悟天、トランクス」

 

 肩を落とす少年二人を見てクリリンが酒を片手に笑みを浮かべる。

 

「流石に入れ替わって本選に出たのはまずいぞ。擁護できない」

「クリリンさぁん」

「そんな声出しても駄目。悟飯が上手くやってくれたから良かったようなものの、下手をすれば悟空と悟飯まで失格になってたところだぞ」

 

 クリリンに怒るのではなく諭すように言われては父と兄にまで迷惑をかけるところだったことを自覚した悟天も猫なで声を止めて反省する。

 

「いいじゃないか、変装ぐらい」

「ヤムチャさん」

 

 内心、自分でも良いことを言ったと鼻高々だったクリリンに横から酒臭い吐息が放たれる。

 

「クリリンは良いよな。俺なんか、よりにもよって悟空なんかと対戦だぞ。勝てるわけないじゃないか。くそ、また一回戦負け野郎って言われる」

 

 クリリンと同じようにビールを飲んでいたヤムチャの席の周りには、食べ終わった皿を積み上げる悟空達とは反対に飲み終えた大ジョッキの山が並べられていた。

 

「飲み過ぎですよ」

「うるせぇ、これが飲まずにいられるか!」

 

 食事を取らずに酒ばかりを飲むヤムチャにクリリンが注意するが、当の本人はやるせなさでやけ酒中の真っ最中である。つまりは人の話など聞かない。

 

「自分はちゃっかり三位取っといてよ」

「俺の場合はただくじ運が良かっただけですよ」

「どうせ俺はくじ運ないですようだ」

「警察官のクリリン君と無職のヤムチャなんだし、日頃の行いの違いじゃないの」

「ぐっ!?」

 

 こういう時に運の良さを発揮するのが日頃の行いなのだとすれば、定職にも付かずにブラブラとしているヤムチャよりも警察官として人の為に働いているクリリンとは比べるにも値しないだろう。

 拗ねかけていたヤムチャは、ブルマの全く以て反論の余地のない的確な突っ込みに胸を抑えて悶える。

 

「そうだべ。18号がミスター・サタンを脅してお金を取ろうとしたのを止めたクリリンの方がずっと上だべ」

「おい、止めてくれ。その話は」

「あら、自分の眼の届く範囲で悪を許さないってのは中々出来ることじゃないわよ」

「んだ。18号は良い旦那を持っただ」

 

 ブルマに続いてチチの口撃に被弾したのはマーロンの世話をしていた18号の方だった。

 幾ら人間ベースの人造人間とはいえ、妊娠・出産は例がなく不安を感じていた時に相談に乗ってくれたブルマとチチには頭が上がらない18号は顔を赤くして顔を逸らす。

 

「ママ、顔真っ赤」

 

 間近のマーロンには丸見えで、ブルマとチチは旦那に惚れ直した様子の18号をにこやかに見るのみである。

 

「そ、それよりも悟飯はいいのかい? 決勝で変装が解けてクラスメイト達に正体がバレちまったんだろ」

 

 18号は話の矛先を変えようと悟飯に嘴を向ける。

 話題の当人である悟飯は目をパチクリとさせて口の中の物を呑み込むと、一端抱えていた大皿をテーブルに置く。

 

「知られてしまったのは仕方ないですよ。元から武道をやっていたのは知られてますし、グレートサイヤマンは名前だけを借りたってことにします」

「私も口裏を合わせますから大丈夫だと思います」

 

 一周回って開き直ることにした悟飯の隣で、見たことはあるがサイヤ人達の遠慮のない食べっぷりに引き攣っていたビーデルが援護を出す。

 

「それよりも私は皆さんの強さに驚きました。悟飯君もそうですけど、クリリンさんも凄い達人で私なんか足下にも及ばなくて」

 

 準決勝で悟飯には手加減されて拳圧だけで舞空術を使う暇もなく場外に押し出され、三位決定戦ではクリリンに稽古を付けられたようなもので、ビーデルは自分が井の中の蛙であったことを強く自覚した。

 

「これでも君の倍は武道家として生きてるから、あれぐらいは出来ないとな」

 

 褒められて悪い気はしないクリリンが年長者としての風格を出そうと肩肘を張りながら語る。

 

(私だってパパに勝ったのに、悟飯君には手も足も出なくて、クリリンさんにも稽古を付けてもらって接戦の末に運悪く敗れたように見せられるほどの力の差があって、二人に勝った悟空さんはもっと強いっていうし)

 

 実際、ビーデルを相手にした時の力は万分の一にも満たないクリリンの余裕を感じ取ってゴクリと唾を呑んだ。

 決勝戦の悟空と悟飯の目にも映らぬ常識の遥か外側の戦いを見て、改めて見識を広がった世界を見たビーデルの背筋が粟立つ。

 

「地球人最強はクリリンだしな」

 

 不貞腐れたヤムチャがテーブルに顎を乗せてぽつりと言った。

 

「ヤムチャさん、俺よりも修行を続けている天津飯さんの方が強いですよ」

「アイツは三つ目人っていう宇宙人の末裔らしいから純粋な地球人ならクリリンになるだろ。ちなみに天津飯ってのは俺達の仲間で悟空の前のチャンピオンな」

「え、天津飯さんって宇宙人の末裔だったんですか!?」

「俺も聞いた時はびっくりしたよ」

 

 天津飯、というまたビーデルが知らない名前が出てきたが、少なくとも二人の見解ではクリリンよりもその天津飯の方が強いらしい。悟飯も天津飯が宇宙人の末裔であったことは知らなかったらしく驚いている。

 そこで一つビーデルに疑問が湧いた。

 

「悟飯君や悟空さんは地球人じゃないんですか?」

 

 天津飯という人がどのような見た目かは分からないが少なくとも悟空や悟飯は地球人にしか見えないのに、先程の話では準決勝でクリリンに、決勝で悟飯に勝った一番強く見える悟空が地球人ではないようだ。

 

「悟空は戦闘民族サイヤ人っていう宇宙人で、悟飯は地球人のチチさんとの間に生まれたハーフなんだよ」

「ちょっとヤムチャさん」

「戦闘民族……」

 

 クリリンが止めるよりも早く酒で軽くなったヤムチャの口は軽く、あっさりとその事実を暴露してしまった。

 しかし、寧ろ二人の強さに納得がいったビーデルは得心していた。

 

「ブルマの旦那、ここにはいないがベジータって奴もサイヤ人でな。悟空並に強いんだ。サイヤ人とそのハーフは俺達地球人じゃとてもとても」

 

 ビーデルは今日一日、自分が父を越えていたこと、悟飯の強さや、その仲間達の圧倒的な強さに何度も驚かされたものだが、もう空いた口が塞がらない。

 

(道理であの子達も強いわけだわ)

 

 色々と思うところはあるが、そうすれば少年部で見せた悟天とトランクスの常識外れの力にも納得がいってしまい、ビーデルは呆けるしかなかった。

 

「だ、大丈夫ですか、ビーデルさん」

 

 頭痛がしてそうな表情をしているビーデルを心配してくれる悟飯の気持ちは嬉しいが、原因の半分以上は悟飯にあった。

 

「今日一日で何度も常識が壊れたわよ……」

「ようこそ、非常識な世界に。悟飯君と付き合いたいんなら今までの常識が壊れた方が楽よ」

「そうだな。サイヤ人の嫁は強くなくちゃいけないだよ」

「お、お母さん達?! 何を言っているんですか!?」

 

 壊れたように笑うビーデルに仲間になったことを歓迎するブルマとチチの揶揄い言葉に反応した悟飯に皆が笑う。

 息子をフォローする為ではないが皿から顔を上げた悟空がビーデルを見る。

 

「嫁だとか付き合うとかはともかく、ビーデルも筋は良いんだから頑張って鍛えればそこそこ強くなれるぞ」

「え、本当ですか?」

「本当、本当」

「じゃあ、私を鍛えてくれますか?」

 

 安請け合いしそうになった悟空は隣に座るチチに脇腹を肘で突かれて少し考える。

 

「オラは人に教えるとかは苦手でな。悟飯に舞空術を教えてもらったんだから悟飯が鍛えてやったらどうだ?」

「僕ですか?」

「それがいいべ。ここは若い二人に任せるだよ」

 

 オホホ、と変な笑いを見せるチチに顔を見合わせた悟飯とビーデルは顔を赤らめて俯く。

 青春真っ盛りな二人の姿は一人身のヤムチャの目には毒である。

 

「ヤムチャ、どうしたんだ?」

「トイレ」

 

 席を立つと父親の目で悟飯とビーデルを見ていた悟空が問いかけてきたので率直に返す。

 居た堪れないのもあるが、酒の飲み過ぎて催してしまったのも本当なので嘘ではない。

 

「…………そういえば、選手の中に変なのがいたよな」

 

 世間一般では晩婚だったクリリンはヤムチャの気持ちも少しは分かる。苦笑しながら見送って次なる話題を口にする。

 その話題にトランクスも乗っかる。

 

「俺達がマイティマスクとして闘ったスポポビッチって人でしょ。大したことのない威力だったけど気功波も使ってたから変だなとは思ったんだ」

「うんうん、普通の人にしては我慢強かったよね」

「後は俺が闘ったヤムーって奴もな」

 

 涎が床にまで垂れていたトランクスと悟天もクリリンの話題に乗っかる。

 

「悟天とトランクスの基準だと当てにならないけど、確かに僕も少し異様に感じましたね」

「最初は力が入り過ぎてるんじゃないかとは思ったあの目付きの悪い奴らか」

 

 悟飯と悟空も直接二人と戦ったわけではないが異様なものを感じ取っており、強く印象に残っていたので食事の手を止めて話に加わる。

 

「俺の聞いた話じゃ、スポポビッチって奴は前の大会にも出てて知ってる奴がいたんだが随分と人が変わったらしい」

「あ、私もあの人のことは覚えてます。前見た時とは別人みたいでした」

「だろ? ちょっと気になってな」

 

 警察官としての職業病とでもいうのか、クリリンは人に聞いて調べていたらしい。ビーデルもスポポビッチのことは覚えていたらしく、疑問に覚えていたようだ。

 

「舞空術と気功波は気さえ使えればそこまで難しいものじゃねぇが、確かに妙だ」

「七年もあったので習得したとも考えられますけど」

「強さと技術が噛み合ってねぇんだよな」

 

 悟飯の意見も必ずしも否定する根拠はないが、にしては実力が比例していないのが気になる所である。

 

「実力はビーデルよりも下だけど、クリリンと悟天・トランクスの手加減したとはいえ攻撃に耐えられたことがおかしい」

「普通の奴なら十分に意識を刈り取る一撃を入れても平気な顔をしてたしな。倒した時は殺しちゃったかもって思っちゃったよ」

 

 冷静に見ていた悟空はどうしてもあの二人のちぐはぐさが拭えない。クリリンが一般人の戦闘力を見抜けないはずがないと信頼しており、ますます分からないと首を捻る。

 

「私達もアレって思ったぐらいだし、後で天界にいるピッコロに聞いてみたら?」

 

 一般人と戦士を知るブルマですら疑問を感じたのならば明らかに普通ではなかったのだろう。こういう時は困った時のピッコロ頼みである。

 

「明日の朝にちっと聞きに行ってみっか」

「僕が行きますよ。デンデと話もしたいし」

「じゃあ、たの」

 

 む、と悟空が言いかけて、突如としてトイレに行っているはずのヤムチャの大きな乱れ、減っていく。

 

「お前らはここを動くな!」

 

 立ち上がった悟空が叫び、同じくヤムチャの気の乱れを感じ取った悟飯とクリリンと共に食堂ホールを出て行く。

 大人達に付いて行こうとしたトランクスと悟天をそれぞれの母親が体を張って捕まえる。二人なら力尽くで振り解けるが、そんなことすれば怪我をさせると分かっているので大人しくするしかない。

 その間にも気が減っていくヤムチャの下へ悟空達は辿り着いた。

 

「ヤムチャ!」

 

 男性トイレのドアを蹴飛ばした悟空が電気が着いていない室内の床で二人の男に拘束されているヤムチャの名を叫ぶ。

 

「ちっ」

 

 二人の内、小さい方の男が悟空達の登場に舌打ちをする。

 

「お前、ヤムーって奴じゃねぇか。ヤムチャに何してる!」

 

 ヤムチャを羽交い絞めにして床に押し倒している大男のスポポビッチと、ヤムチャに何かを突き刺しているヤムーの姿を見て悟空が超サイヤ人になる。一瞬遅れて悟飯も超サイヤ人になる。

 トイレ内を一瞬で明るくし、素人でも分かる威圧感を発する悟空と悟飯にスポポビッチとヤムーも怯んだ。

 

「ヤムチャをは」

 

 なせ、とトイレ内に踏み込んで一気に二人を倒そうとした悟空と悟飯の体が外的要因によって硬直した。

 

「逃げるぞ!」

「お、応!」

 

 停止した二人に隙を見て取ったスポポビッチとヤムーは即座に壁を気功波で破壊して、ヤムチャを放り出して舞空術で逃げ出す。

 

「はぁっ!」

「ふぅっ!」

 

 悟空と悟飯が動きを止められた金縛りのようなものを気合で弾き飛ばした時には、気功波の余波が襲って来ていた。

 

「行ったか…………ヤムチャはどうだ?」

 

 壊された壁際に寄り、去って行った二人の姿が見えなくなった悟空は、先にヤムチャに駆け寄っている悟飯とクリリンに聞く。

 

「なんだこりゃ、気が抜き取られたみたいな感じだ」

「大丈夫ですか、ヤムチャさん?」

「ち、力が入らない……」

 

 ヤムチャの変わった状態に眉を顰めながらも、少なくとも悟飯の問いに返答を返せる以上は大事はないだろうと悟空は判断する。

 

「仙豆…………を取りに行くよりは天界にヤムチャを連れてってデンデに治療してもらった方が速そうだな」

「お待ち下さい」

 

 悟空がヤムチャを連れて瞬間移動しようとした瞬間、第三者の声がトイレに響き渡った。

 声が聞こえるほどの近距離に接近されながらも気が付かなかったことに内心で驚愕しながら、焦りを押し殺して壊された壁から見える外に体ごと向き直る。

 そこには丸い耳飾りを両耳に付けた変わった服装の二人が宙に浮かんでいる。

 

「私は界王神です。孫悟空さん、あなたにお願いしたいことがあります」

 

 小柄の人影――――界王神がそう言って悟空を見た。

 

 

 




原作との差異

1.悟空が優勝、悟飯が2位、クリリンが3位、ビーデルが4位、サタンが5位

2.マイティマスクの正体が早くにバレ

3.サタンに対する18号の脅しはクリリンによって阻止

4.初戦の相手が悟空だったヤムチャは安定の一回戦敗退

5.スポポビッチとヤムーが一人になったヤムチャを襲う(金縛りで動きを封じたのは界王神)

6.界王神の遅れた登場



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第八話 油断しない悟空

少しの咳と鼻詰まりが酷い作者です。病院に行ったら喉が真っ赤ですねと言われました。温かくなったり寒くなったりしているので皆様も風邪には気をつけてください。



おおよそ、タイトル通りの展開です。




 

 

 

第25回天下一武道会が開催されたパパイヤ島のホテルにあるトイレにて、壊された壁の向こうから月光に照らされた孫悟空は突如として現れた二人組を注視する。

 

「界王様から聞いたことがあるぞ。界王神、いやアンタが界王神様だって?」

 

 悟空は自らを界王神と名乗った少年の方に意識の6割を振り分け、観察する。

 界王とは、各宇宙の銀河を見守る神。1つの宇宙は東西南北の4つの銀河に分けられており、それぞれを4人の界王が見守っている。4人の界王を統べる存在として大界王がいて、悟空の師の一人である北の界王から大界王の上に界王神がいることは聞いたことがあった。

 

「今回、地球に来る前に北の界王から孫悟空さん、あなたのお話は伺っています」

 

 界王の性格からして自分の上に立つような人物に悟空の話をするとは考え難いのだが、界王神の目的に強さが必要であるならば話をしていても無理ではない。

 

「ええ、私達は強い人を探していました」

「…………オラの心を読んだのか」

「不躾ではありますが、今は時間がないのです。私の力を破ったお二人なら頼ることが出来る」

 

 空の彼方へと消えていくスポポビッチとヤムーの姿を追った界王神の顔を見て、悟空は話の真偽はともかくとして時間がないのは事実だろうと判断する。

 

「そこの方はキビトが治します。これからあの二人に気付かれないように、こっそり後を付けます。もしよろしければ私と一緒にあなた達も来て下さい。その時に事情の全てをお話しします」

 

 悟空としても逃げた二人がヤムチャを襲った目的が気になる所であったから、界王神が宙を飛んで行くのを見て少し考える。

 

「どうしますか、お父さん?」

「付いていくさ」

 

 残った厳格な雰囲気の大柄なキビトと呼ばれた男がヤムチャの傍らに膝をついて手を背中に当てている姿からは害する気配は感じ取れず、悟飯の問いに迷いなく答える。

 

「クリリンはどうする?」

「俺は…………残るよ。こっちが安全とも限らないからな。悟飯は?」

「お父さんと一緒に行きます。理由は分かりませんけど、僕も必要とされているみたいですから」

 

 残る決断をしたクリリンとは反対に界王神の言い様から自らも赴くことを期待されていたことを察していた悟飯は迷いを見せながらも言い切った。

 

「これで良い」

「凄ぇ、仙豆を食べたみたいだ」

 

 残る者、行く者が別れた中でキビトが手をどかすとヤムチャが体を起こす。

 

「悟空さ」

 

 そこへ皆と共に悟天とトランクスが前に立ちながらチチがトイレの入り口から顔を覗かせる。

 

「チチ、動くなって言っただろ」

「すまねぇだ。ただ、悟天ちゃん達が悟空さ達が戦ってる気配じゃねぇって言ってたから」

 

 悟天とトランクスが前にいる以上は生半可な奇襲も意味を為さないが不用心すぎる。

 実際、戦闘を行う前に下手人は逃げたわけだがヤムチャが襲われた理由は謎のままである。キビトもヤムチャが立ち上がると界王神の後を追ってしまい、この場で事情を知ることは不可能となった。ならば、襲われた当の本人に聞けばいい。

 

「ヤムチャ、何があった?」

 

 チチらへの注意は後で言うとして今は現状の把握である。

 立ち上がって体の調子を確かめるヤムチャに確認する。

 

「用が足し終えて戻ろうとしたところで、いきなり丸坊主のあの変な二人が襲い掛かって来てな」

「待って下さい。二対一でもヤムチャさんが手古摺るような相手じゃないでしょ」

 

 ヤムーと対戦したクリリンは例え数的に不利であろうがヤムチャが抑え込まれるような実力ではないと知っているので、状況の不自然さに思わず口にする。

 

「酔っぱらってたってそこまで気を抜いちゃいないさ。ただ、振り向いたところで急に体が金縛りに合ったみたいに動かなくなった。そのまま抑え込まれて何かを刺されたと思ったら、どんどん力が抜けていったんだ」

「その金縛りみたいなのは僕達もトイレに入った瞬間に合いました。超サイヤ人になって直ぐに破りましたけど」

「状況的にあの界王神様とキビトって奴のどっちかの力じゃないか?」

「問題はどうしてそんなことをしたかだな」

 

 ヤムチャの話に聞いてトイレに入った瞬間に体を襲った変化に思い当たる節があった悟飯が納得を示し、二人掛かりでヤムチャを抑え込んで何かをしていたスポポビッチとヤムーではなく界王神達の力によるものではないかと推測する悟空。

 その推測が正しいのだとしたら界王神達の目的も不明で、どうして同行を求めたのかも不明なままだ。

 

「やっぱ行くしかねぇか」

 

 不明なままにしておくことは出来ない。悟空はすぐさま決断する。

 

「俺は止めておくよ。お前達と一緒に行っても何も出来そうにない」

 

 クリリンではないがヤムチャも随分と前からサイヤ人と強さには付いていけていない。

 純然たる結果として、界王神と名乗った者が悪であってもその力を破れなかったヤムチャは付いて行かない方が悟空達の為になる。

 

「そう自分を卑下するなよ、ヤムチャ」

「俺は金縛りを破れなくて、お前らは特に苦もしなかっただろう。慰めはいいよ」

 

 ヤムチャが前言撤回しないと分かると、時間もないのでこの話はまた後ですることに決める。

 

「行けるか、悟飯」

「はい」

「俺も行くよ!」

「僕も!」

 

 ここで議論を交わして時間を浪費しては界王神達に追いつくことが出来なくなるので悟飯に最後の確認をすると、トランクスと悟天まで参加を表明した。

 何か未知の事態が起きていると察して目を輝かせている子供二人の前に歩み寄る悟空。

 

「いいか、二人とも。これは遊びじゃねぇんだ」

「それぐらいは分かってるよ。でも、俺達の強さは叔父さん達も分かるよね」

「うんうん、絶対にお父さん達の邪魔にはならないよ」

 

 二人は決してふざけているわけではなく、純然たる事実として戦力は多い方がいいだろうと目を輝かせる。興味本位の面がないわけではないが自分の力に絶対の自信を持っているが故の立候補だった。

 

「駄目だ」

 

 悟空は子供の浅慮をきっぱりと切り捨てる。

 

「確かにオメェ達は強い。だけど、戦いってのはオメェ達が考えているよりもずっと怖いもんなんだ。今はクリリンやヤムチャと一緒に母さん達を守ってくれ」

「「でも……」」

「みんなを守るのも大事な役目だよ。二人は僕と父さんが信じられないかい?」

 

 片膝をついて二人の肩に手を乗せて真摯に向き合う悟空と、少しの茶目っ気を覗かせながらも言う悟飯の顔を見た悟天とトランクスは、それぞれの母親に宥めるように頭を撫でられて不承不承に頷く。

 

「さっさと戻って来ないと俺達も行っちゃうからね」

「ああ、直ぐに戻って来る」

 

 不満を抱きながらも強さに関して悟空と悟飯には自分の実力以上に信頼があるからこそ、トランクスは減らず口を叩ける。

 悟空はチチとブルマに目だけで自分の意志を伝えると、子供達の肩をポンと叩いて立ち上がった。

 

「気を付けてけれ、悟空さ」

「何かあったら直ぐに連絡してね。ベジータを寄越すから」

 

 母親達に子供達を任せて頷いた悟空は、最後に18号を見る。

 

「念を押さなくたって分かってるよ。心配せずにさっさと行きな」

 

 マーロンを抱き抱えながら言う18号に悟空は苦笑しつつ、クリリンとヤムチャにハイタッチしてから宙を飛んで猛スピードで界王神達の後を追う。

 

「悟飯君」

 

 悟空の後を追おうとした悟飯をビーデルが呼び止める。

 振り向いた悟飯に、ようやく常識の枠外に適応し始めていたビーデルは事態の変遷に戸惑いつつも言うべきことを探した。

 

「気をつけてね」

 

 結局、そんなありきたりの言葉しか伝えられなかったが、悟飯は力強い笑みを浮かべて親指を立てて飛んで行った。

 

「死なないでね、悟飯君。無事に帰って来られたらデートとかしたいから」

 

 と、夜空の向こうに瞬く間に消えていった悟飯を見送ったビーデルは自分の発言を近くで聞いてニヨニヨとした笑みを浮かべる女性陣に気付くまで後数秒。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜の海や山を越えて界王神とキビトに合流した悟空と悟飯は彼らの目的を聞いていた。

 魔導師ビビディが作り出した魔人ブウの恐ろしさと、ビビディの息子のバビディが地球に封印されたブウの復活を目論んでおり、スポポビッチとヤムーは魔術で操られてその尖兵にさせられていること。魔人ブウを蘇らせる為に必要なエネルギーを得る為に天下一武道会を狙うと予測し、下手にスポポビッチとヤムーを倒してしまうとバビディの居場所を知ることが出来なくなるので会場に潜り込んで泳がしていた。

 界王神達にはヤムチャに危害を加える意図はなく、悟空と悟飯の乱入もあって一時エネルギーを得た二人がバビディの下へ向かったのではないかと聞いた悟空達は一定の納得をした。

 

「降り始めましたよ」

 

 気を抑えて先行するスポポビッチとヤムーを追っていると付けられているとは考えもしていないのか、二人が高度を落としていく。

 

「おかしい。この辺りも一応調べたはずだが」

 

 同じように高度を下げながら、丁度良い位置にあった近くの小高い岩山に着地する悟空達。

 

「お二人も気配を殺して…………言う必要はありませんでしたね」

 

 界王神が言う前から悟空と悟飯は最大限に気を殺しており、寧ろ界王神とキビトの方が気配を放ち過ぎている。状況を良く理解している二人に苦笑した界王神は気配を殺して眼下へと視線を移す。

 

「あの二人とは別に誰かいるぞ。あいつがバビディって奴か?」

 

 月光のみの灯りでは見えづらい。ようやく人影が見える程度だが何かのドアが開いてそこから灯りが照らされ、スポポビッチとヤムー以外の人影を映し出す。

 

「いえ、違います。恐らくバビディが操っている戦士だと思われます」

 

 魔術で人を操るのならば、他にも操られている者がいても不思議ではない。ただ地球人には見えないのでバビディが他の星から連れて来たのだろうと悟空は一人で結論を出す。

 

「…………暗闇でハッキリとは見えませんがあの辺り一帯だけ地面が変な感じがします」

「そうか! バビディの奴、船を地中に隠したのだな。それで探しても気が付かなかったのだ」

「宇宙船は目立ちます。地中に埋めて隠蔽工作を図るということは私達がこの地球にやってきていることをバビディは知っているのかもしれませんね」

 

 月明りだけでは見え難いが三人が立っている地面に普通とは違う感じを受け取った悟飯の疑問に、キビトと界王神は一度調べたにも関わらずバビディの居場所が知れなかった原因に至る。

 同じように地面を追っていた悟空の目には、宇宙船が埋まっているという場所から少し離れたところに民家を見つけた。

 

「おかしい。近くには家があるのに灯りがついてないし、気配も感じられねぇ」

 

 かなり近い位置に民家が立っているが夕飯時を過ぎているにしても灯りがついておらず、仮にもう寝ているとしても気配が全く感じられないことはありえない。

 

「お父さん、あそこ」

「あれは……」

「恐らくバビディか、その手の者に殺害されたのでしょう。親のビビディ同様に残忍な性格をしているとすればやりかねません」

 

 悟飯に言われて家から僅かに離れた場所に、夜の帳の中では見難いが家の主と見られる家族が事切れて野晒しにされていた。既に出てしまった犠牲者に顔を歪めた界王神の顔を見た悟空は視線を改めて三人に向ける。

 

「宇宙船の場所が分かったのなら、ヤムチャさんから奪ったエネルギーで魔人ブウが復活する前に攻撃を仕掛けた方がいいのでは?」

「魔人ブウの復活は宇宙船を壊さないように外で行うはずです。もう少し様子を見てその時を狙いましょう」

 

 本当に待つべきなのか、と悟飯の問いに答える界王神に悟空は疑問を抱いた。

 

(恐るべき強さを持っているとしても、それは完全な時の話。居場所が知れた以上は宇宙船諸共破壊してしまった方がリスクは低いはずだ)

 

 勿論、破壊出来ずに中途半端な状態で魔人ブウが蘇ってしまうリスクはあるわけだが、この場には悟空と悟飯がいて界王神とキビトともいる。西の都にはベジータもいるわけだから、ここは多少のリスクを承知の上で先制攻撃を仕掛けた方がメリットは大きいと悟空は考える。とはいえ、魔人を復活をさせないことに越したことはなく、界王神が慎重を期したい気持ちも分かる。

 

「誰か出て来るぞ!」

 

 キビトの声に思考を中断した悟空が視線を眼下に戻すと、宇宙船から二人の人物が出て来た。

 

「ダーブラ!? バビディの奴、魔界の王まで手の内にい、入れてしまったのか!?」

「むぅ……まさかダーブラとは」

 

 現れた人影を見て慄いているキビトと界王神とは裏腹に悟空と悟飯は冷静に相手を見る。

 

「ダーブラってのはデカイ方か?」

「ええ、暗黒魔界の王ダーブラ。この世界でのナンバーワンはあなた達かもしれませんが、もう一つの魔の世界でのトップは完全にダーブラなのです」

「ということは、あのちっちゃい方が魔導師バビディってことですか」

「そうです。非力ですが恐ろしい魔術を使いますので決して侮ってはいけません、まさかあのダーブラですら操るとは…………大誤算でした」

 

 魔界の王であるダーブラがバビディの手下になっていることに、かなり深刻そうな界王神とキビトの二人を横目に見ながら悟空は悟飯を見る。

 

「あのダーブラって奴、どう見る悟飯」

「強い、でしょうけど感じられる力はセルと同じぐらいですね。まだ力を隠しているかもしれませんけど」

 

 悟飯と同じ見立てを立てた悟空は暫し考える。

 強敵ではあるが今の二人にとっては界王神達のように勝算が無くなったと恐れるほどではない。

 この時点で自分達と界王神達との間に大きな認識の違いがあることを自覚した悟空が眼下に視線を戻すと、バビディによってスポポビッチが破裂させられているところだった。

 

「あ!?」

 

 操っているとはいえ、こうも容易く手下を葬った姿を見て悟空はバビディを倒すべき敵と結論付ける。

 悟空が決意を固めている間にも、仲間を殺されたヤムーがバビディに恐れを為して逃げ出したが、名前が出されていない戦士の気弾によって消滅した。

 

「悟飯、オラを守れ」

 

 その瞬間、悟空は情けを捨てた。悟飯に言ってかめはめ波の体勢を取る。

 

「か」

「孫悟空さん、何を!? それでは敵に」

「め」

 

 真っ暗な夜の中でかめはめ波の溜めの最中は光って目立つ。

 界王神が止めようとするが既に遅い。これだけ目立てばバビディ達にも居場所がバレているはずで、予想通りダーブラが超スピードで襲い掛かって来た。界王神も迫って来るダーブラに気を取られて悟空の行動を止めることが出来ない。

 

「は」

「だらぁっ!」

「ぐっ!?」

「め」

 

 悟空の言葉から意図を読み取っていた悟飯が超サイヤ人2に一瞬で成って気功波を放つ体勢になっているダーブラを蹴り飛ばす。

 まさか自身を上回る速さで迎撃されるとは思っていなかったのか、まともに腹に悟飯の蹴りを受けたダーブラがピンボールのように跳ね戻って行く。

 

「波っ――!!」

 

 悟飯に全幅の信頼を寄せていた悟空の目は宇宙船の前にいるバビディにだけ向けられており、最初から邪魔などなかったように民家の直上に瞬間移動して(・・・・・・・・・・・・)かめはめ波を放つ。

 

「バビディ様!?」

 

 名前も明かされなかったプイプイが主の名を呼ぶが、もう遅い。

 放たれたかめはめ波は、スポポビッチとヤムーが引き連れて来た界王神とその仲間を餌程度にしか考えておらず、この二重の奇襲(・・・・・)を予想すらしていなかったバビディ達を襲う。

 先程までいた場所から遥かにずれた場所からのかめはめ波が直後に着弾、爆発が起こり、大きなキノコ雲が夜空に広がる。悟空は自らが放ったかめはめ波の衝撃から遺体を守る。

 

「気は、感じませんね」

 

 悟空の隣に着地して超サイヤ人を解いた悟飯が辺りを見渡し、自身が蹴り飛ばしたダーブラや宇宙船の傍にいたバビディ達の姿は見えず、また気も全く感じられないことを確認する。

 

「む、無茶をしますね……」

 

 発生した局所的な地震から離れる為に空を飛んだ界王神が頬を引き攣らせ、悟空の近くに下りて来る。

 

「悪い、界王神様。勝手なことしちまって」

「いえ、ダーブラのあの反応の速さからして、どうやら私達は誘い出されたようです。結果的にはこれで良かったのかもしれません」

「しかし、界王神様……」

「認めましょう、キビト。私達はダーブラに反応すら出来なかったのですから」

 

 油断なくかめはめ波が着弾した地を見つめていた悟空が界王神に謝るも、突発的な悟空の行動に最適ともいえたダーブラの反応に自分達が誘き出された事実を悟って顔を歪ませる界王神。

 同行したキビトがあまりの力技と独断専行を認めてよいものではないと物申そうとして、界王神の言うように立っていることしか出来なかった自分達には何も言う資格はないと告げる。

 どのように表情を作ったら良いのか、分からないといった風情の界王神が宇宙船があった荒野に深々と出来たクレーターの端から覗き込む。

 

「すまねぇ、界王神様。勝手なことしちまって」

「いえ、少々力技の嫌いはありますが避けられるタイミングではなかったですし、流石にバビディとダーブラも死んだでしょう。魔人ブウ復活の兆候も見受けられません。お二人のお蔭です。礼を言います」

 

 隣に立ってクレーターを覗き込みながら独断専行を謝る悟空に界王神が頭を下げる。

 少し経っても魔人ブウが復活する様子はないので今のかめはめ波で吹き飛んだか、封印が破られなかったのか。どちらにせよ、復活していない以上は二人のお蔭でバビディ達を倒せたのだから頭を下げることに躊躇いはない。

 

「犠牲者たちの埋葬しないといけませんし、詳しい調査はこちらで行いますので、お二人はご家族の下へ帰られては如何ですか? また後日にお礼に伺わせてもらいますので」

「礼なんてそんな」

「勝手に付いてきたのはオラ達なんだ。礼なんていいさ。ただまあ、チチ達も心配してるだろうし、本当に任せてもいいんか?」

「寧ろこれ以上、お願いすると心苦しいです」

 

 恐縮している界王神とその後ろで仏頂面をしているキビトを見るに長居する方が為にならないと判断した悟空が悟飯を呼ぶ。

 界王神がキビトに彼らを送って行ってもらおうとしたところで、悟空と悟飯が瞬間移動でいなくなった。

 

「彼らは瞬間移動も使えるのですね」

「下界の人間にしては確かにやるようですな」

 

 その利便性に比例するように習得自体がかなり難しいので悟空が瞬間移動をしたことに素直に驚きを示す界王神と、少し認め難いが功績と行いは評価すべきであるとキビトも頷く。

 

「孫悟空さんは北の界王が言っていたように面白い人でした」

 

 苦笑交じりに述懐した界王神は表情を改めてクレータの底に身を躍らせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 界王神とキビトがいる荒野から遠く離れた山野にそれらは突然に現れた。

 

「アイタッ!?」

 

 ドテッとバランスを崩して転んだその人物は直ぐ近くにあった球体に頭をぶつける。

 

「いてて、いきなり一発かまして来るなんて予想外だったね。それに危機が迫った時に発動する緊急避難転移魔術がこんなに乱暴だったなんて思いもしなかったよ」

 

 その人物は打った頭を擦りながら今の状況を理解しようと辺りを見渡した。

 

「命とコレがあっての物種だけど、まさか界王神があんな手に出て来るとは予想していなかったよ。それにダーブラを倒す奴が地球にいるなんて聞いてない」

 

 ブツブツと言いながら一通りの悪態をついて不満を吐き出し満足したことで顔を上げる。

 

「宇宙船も無くなって、ダーブラも死んじゃった。強い奴が何人もいるみたいだから今までのやり方じゃ拙い。まずは使える手下を揃えて、邪魔してきた奴らからブウ復活に必要なエネルギーを得ないとね」

 

 残ったのは自分の体とブウ復活の玉のみ。それだけあれば十分とばかりに玉を浮かせて安全な場所に向かって運びながら笑う。

 

「このバビディ様に喧嘩を売ったんだ。ただで済むと思わない方がいいよ」

 

 バビディは空で輝く月を睨み付け、暗い執心を全く隠すことなく山の奥へと消えていった。

 まだ何も終わってなどいない。全てはこれから始まるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バビディの魔人ブウ復活未遂の数日後、孫家に遊びに来たビーデルは目を丸くした。

 

「ビーデルの姉ちゃん、俺達と一緒にドラゴンボールを集めようぜ!」

「ようぜ!」

 

 丁度、遊びに来ていたトランクスと調子を合わせた悟天に言われたのだった。

 

 

 

 

 

 

 




舐めプなし、油断なんてしない。速攻でケリをつけようとすると、必ずしっぺ返しがやってくるものです。



次回、『第九話 逆襲のブロリー』


 


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破壊王ブロリー編
第九話 逆襲のブロリー



ドラゴンボール超一時間SP見ました。身勝手な極意がカッコよかったですね。俄然楽しくなってきましたよ。


今話は、映画『危険なふたり!超戦士はねむれない』を見ていなければ理解できないかもしれません。
後、時系列が変わっています。
本来ならば悟空が生き返っていない以上、映画『危険なふたり!超戦士はねむれない』は天下一武道会前なんですが、本作では天下一武道会後になっています。

あしからず。


 どうしてこうなったのか、と孫悟飯は空に浮かぶ男を睨み付けながら思った。

 トランクスがドラゴンボールに興味を持って飛び出した悟天と付き添ったビーデルの三人を連れ戻すだけの簡単な仕事であったはずだった。

 

「………………」

 

 悟飯の周りはスプーンで掬い取ったかのように彼が立つ場所を中心として大きく地が抉り取られている。それを為した空に浮かぶ男の気弾によって三人は遠くに弾き飛ばされた。

 気が動いていないことから意識を失っているのだろう。

 

「ククク、ハハハハハハハハ!」

 

 悟飯ではなく未だ幼い弟とその親友、そして彼ら基準では弱いビーデルを狙った男は自らの為した結果を喜ぶように地に降り立って哂う。

 お前は守れなかったのだと、その顔が見物だと、悟飯を嘲笑っている。

 

「ブロリー……」

 

 笑うブロリーを見上げた悟飯の直ぐ近くで、割れた地面からマグマが噴き出す。

 

「よくも三人を…………許さないぞ!!」

 

 わざと三人を狙い、その結果を明らかに嘲笑っているブロリーを見る悟飯の中で灼熱が迸った。

 怒りを導火線として、悟飯の全身をマグマに負けず劣らずのオーラが迸り、スパークが全身に走る。

 

「ハハハ…………ヌゥウウハァアアアアアアアアアアアッ!!」

 

 悟飯の超サイヤ人2に笑いを収めたブロリーがその真価を発揮する。

 気合を込めるとブロリーの気が爆発しとしか思えないほどの衝撃波が周辺に放たれ、その全身の筋肉が肥大して体積が二倍に膨れ上がる。形態としてはトランクスが成った超サイヤ人の第3段階に似ている。その形態はパワーに重きを置き過ぎてスピードを低下させてしまう欠点をセルが指摘している。

 だが、ブロリーは七年前の戦いでは外見に見合ったタフネスを持ちながらスピードの低下や急激なエネルギー消費などの負担が一切ないただ一人の例外。

 その恐ろしさを骨の髄まで良く知っている悟飯はゴクリと生唾を呑み込み、足場を崩しながらブロリーに向かって行く。

 

「だりゃあっ!」

「ふんっ!」

 

 ブロリーも足場を壊して向かって来るが想定の範囲内。先手は譲らないと悟飯の拳がブロリーの顔面を直撃する。が、ブロリーは全く気にした風もなく顔に拳を受けながらやり返す。

 

「がっ」

 

 結果としてお互いに一撃ずつ入れながらも弾き飛ばされたのは悟飯だけだった。

 弾き飛ばされた悟飯を追ったブロリーが顔面を掴んで、手近にあった岩に叩きつける。

 

「……っ!?」

 

 更には顔を掴まれたまま岩を削り取るように動かされるが、口元も塞がれているので苦鳴の声さえ漏れない。

 蹴りを放って顔面の拘束を離させるが距離を取ることも出来ずに再度の攻撃も簡単に受けられ、腕を後ろ向きに掴まれた。反対の腕も掴まれて背中に膝を押し付けられ、胸が避けそうな痛みを覚える。

 

「ぐ、がっ……」

「ほら、どうした。この程度か?」

 

 膝を押し込まれて腕が千切れそうな、胸が避けそうな痛みに悶えているとブロリーが嗜虐満載に聞いてくる。

 悟飯だって七年前のセル戦後から劇的なパワーアップはしていないにしても、超サイヤ人2になっている以上はブロリーとの差は詰められているはずなのに手も足も出ない。

 

「お前に用はない。さっさとカカロットを出せ」

「お、前なんか、ぼ、僕だけでじゅ、十分だ……!」

「腕が千切れてもそんな戯言を言えるか、楽しみだ」

 

 悟飯の虚栄も見抜かれている。とはいえ、抗ってくれた方が面白いと考えているのか、力の差は明白なのにブロリーは直ぐに行動に移そうとしない。

 

(お父さんは界王様の所に修行に行っていて、何時戻るか分からない。それまでは僕が)

 

 だが、現実として勝機はない。挫けそうな悟飯の目に地から噴き出したマグマが映った。

 

「ぉおおっ!」

 

 一瞬に全ての力を爆発させて拘束を緩め、サッカーでいうオーバーヘッドのように足を振り上げてブロリーの顔面を蹴って腕の拘束から抜け出す。

 そして一目散に地割れに身を躍らせる。

 

「逃げる気か」

 

 悟空が来るまでの時間潰しと考えていた悟飯が逃げるので、戯れに相手をしていたブロリーも後を追って地割れに入る。

 ブロリーが後を追って来るのを確認した悟飯は、逃げるように低空でマグマ上を飛ぶ。

 後ろでブロリーが同一線上に並んだのを確認した悟飯が前方に手を向ける。

 

「はっ」

 

 やや下を向いた手から放たれた大した威力もない気弾がマグマを割り、そこへ悟飯は飛び込んでいく。

 追って来るブロリーを振り返ることも出来ぬまま、生まれた狭間を通ってタイミングを見て自分だけ離脱する。

 

「ぬ」

 

 戻る狭間に間一髪間に合わなかったブロリーがマグマに沈んでいくのを見た悟飯は安心したのか、体から力が抜けてしまう。

 

「や、やった……」

 

 緊張の糸が切れて直ぐ近くの岩場に降り立った悟飯の意識はブレーカーが落ちたように途切れた。

 マグマは徐々に地上に向かって吹き出し続け、悟飯がいた岩場も呑み込まんとしている。

 ゆっくりと足下にまで迫っているマグマ。ブロリーとの戦いで負ったダメージが大きすぎて悟飯の意識はまだ戻らない。

 

「ちっ」

 

 そこへ舌打ちをした誰かが上空より現れて悟飯を抱えると、また上への方へと戻って行く。

 

「お、お父さん……」

「誰がお前の父だ」

 

 抱えられた温かさに悟空を想起した悟飯はそう呼びかけたが呼ばれた当人はそれがお気に召さず、地面に放り投げられた。

 

「痛っ! ってベジータさん?!」

 

 ただでさえあちこち痛むのに地面に放り投げられた悟飯は一言文句を言おうとしたが、自分を助けてくれたのがまさかの人物であったので打った頭の痛みも一瞬だけ忘れた。

 

「ふん、ブルマにトランクスを探して来いと追い出されて、死んだはずのブロリーの気がするから急いで来てみれば、何を勝手に一人で死にかけているんだ」

 

 悟飯を放り投げたベジータは腕を組んで尊大に見下ろす。

 

「そのブロリーと闘ったんですよ」

「何?」

「どうやってあの星の爆発から生き残ったのかは分かりませんけど、悟天とトランクスと戦ってたので僕がなんとかなんとかあのマグマに落としたところです」

 

 ブロリーがいることか、ブロリーと戦ったことか、どちらに対しての疑問であっても答えられるように言うと、また鼻を鳴らされた。

 

「ブロリーか。アイツには借りがあるんだ。勝手に倒してるんじゃない」

「無茶なこと言わないで下さいよ。こっちは死ぬ思いをしたのに」

 

 トランクスの気がする方を見ながら文句たらたらのベジータに、死に物狂いでマグマに落とした悟飯としては堪ったものではない。

 ベジータらしいと言えばらしい言い方ではあるので内心で苦笑していると、直ぐ近くの地割れから一際大きなマグマが吹き上がった。

 

「え」

 

 マグマが吹き上がる程度で今更驚きはしない。悟飯が絶句したのは、吹き上がるマグマが重力に負けて落ちていく中で光るオーラを見たからである。

 

「あのマグマの海に沈んで生きているなんて……」

 

 マグマが全部滴り落ちたバリアーを解いたブロリーに負傷の後は見受けられない。気のバリアーだけで耐えきったのだと悟飯は震撼する。

 

「ベジータか。はっ、また雑魚が現れたか」

 

 悟飯必勝の策を事も無げに切り抜けたブロリーが宙に浮かびながら、地にいる二人の中で特にベジータを見て言った。

 

「ブロリー」

 

 その姿を見上げるベジータの手が僅かに震えているのを見て、実際に戦った悟飯もその気持ちが良く分かった。

 

「俺は怯えてなどいない。俺は、サイヤ人の王子だっ!!」

 

 嘗て自らを襲った感情を一蹴し、超サイヤ人2になったベジータが空に浮かぶブロリーに向かって突貫する。

 

「お前に用はない」

 

 七年前の自分を乗り越えようとしているベジータに一欠けらの興味もないブロリーは、簡単に拳を避けてすれ違いざまに無防備な腹に気弾を叩き込む。

 

「ぐはっ」

「ベジータさん」

 

 腹で爆発する気弾によって振り子のように舞い戻るベジータの名を呼んだ悟飯がせめて受け止めようとして、溜まっていたダメージで果たせずに膝をつく。

 

「おっと」

 

 そこへ瞬間移動してきた悟空が弾き飛ばされたベジータを偶々受け止める。

 

「くっ、カカロット……」

 

 奇しくも受け止められた格好のベジータが手出し無用と文句を言いかけて、当の悟空の目は別の人物に向けられていた。

 

「げっ、ブロリーじゃねぇか」

 

 界王様の星にまで届いたブロリーの気を感じ取り、界王様に状況を確認してもらって慌てて瞬間移動でやってきた悟空は、本当にいたブロリーに顔を引き攣らせていたのだからベジータは文句を言うよりも勝手に自分で降りる。

 

「カカロット、悟飯、貴様らは手出し無用。奴はこの俺が倒す」

「…………オラとしてはちょっとその方が良いかなって気がしてきた」

「お父さん!」

 

 今、やられた分をやり返さなければ気がすまないベジータ。

 七年前の対峙だけで胸いっぱいの悟空はベジータに全部任せてしまおうかとらしくもなく逃避しているが、ブロリーと闘った悟飯は一人で戦っては勝ち目はないと分かっているので一言口に出さずにはいられない。

 

「僕達がパワーアップしているように、ブロリーも格段に強くなっています。ベジータさん一人じゃ勝てませんよ」

「おい、俺は一人で」

「ベジータさんもさっきのでブロリーの力はよく分かったでしょ。サイヤ人のプライドに拘って負けたら意味がないってことを分かって下さい!」

 

 ベジータを正論で封じ込めると、次は悟空を見る。

 

「ビーデルさんやトランクス、悟天もアイツに酷くやられたんです。ここで斃すしかないですよ」

「ああ、そうだな」

 

 一瞬の現実逃避なので悟飯に説得される前に超サイヤ人2になった悟空。

 悟飯を中心にして左にベジータが、右に悟空が立って三人の超サイヤ人2が並び立つ。

 

「カカロット……」

 

 その三人の超サイヤ人2をなんら脅威に思うことなく、ブロリーが見ていたのは悟空ただ一人。

 悟空が現れた時からブロリーを襲うフラッシュバック。

 ブロリーの耳を、ただ保育器で隣り合っていただけの悟空の泣き声が想起する。生まれたばかりで他を圧倒する戦闘力を有し、今に至るまで苦戦らしい苦戦すらしていなかったブロリーを脅かしたただ一人の男。

 

「カカロット」

 

 七年も氷河に閉じ込められていたブロリーを目覚めさせたのも似た泣き声だった。

 根幹に刻み込まれたトラウマが悟空を間に当たりにしたことで感情を爆発させる。

 

「カカロット!!」

 

 感情の爆発によってブロリーの気が更なる増大を見せる。

 ただでさえ、尋常ではなかった気が天井知らずに高まり、迸るオーラがその勢いを増してスパークする。

 

「す、超サイヤ人2だと……!?」

「やっぱ帰ろうかな、オラ」

「ぼ、僕もそうしようかなと考えていたところです」

 

 純粋に驚きを露わにするベジータと違って、現実逃避を始めた悟空と先程の言葉を翻そうとする悟飯。そこにブロリーが襲い掛かる。

 

「うわっ」

 

 慌てたのは悟飯だけで、悟空とベジータは素早く避ける。

 悟飯も辛うじて軌道上から退くが、最初からブロリーの標的は別の人物である。

 

「カカロット!」

「やっぱオラを狙ってくんのか!」

 

 切り返したブロリーの俊敏な動きに半ば予測していても避けれなかった悟空が弾き飛ばされる。

 

「はぁっ!」

「せいやっ!」

「温いっ!」

 

 悟空を弾き飛ばした隙に悟飯とベジータが揃って多方向から攻撃を放つが、躱し受け止めたブロリーが気合を込めるだけで吹っ飛ばされる。

 

「かめはめ波っ!」

 

 そこへ弾き飛ばされた悟空が着地と同時に全力のかめはめ波を放つ。

 二人を吹っ飛ばすために気合を込めていたブロリーは避けることも出来ず、巨大なかめはめ波に呑み込まれる。

 

「どうだ!」

「…………なにか、したか?」

 

 かめはめ波を放った態勢のまま悟空の視線の先で全く効いた様子のないブロリーが立っていた。

 

「相変わらずの化け物め」

 

 今のかめはめ波を受ければ自分は勿論、悟飯であってもただではすまないはずなのに効いた様子の無いブロリーに七年前をまざまざと思い出したベジータが吐き出す。

 

「違うな、俺は悪魔だ」

 

 そう言って哂うブロリーの姿は悪魔的である。

 

「今のままじゃ、勝てねぇか」

 

 固まっていた悟空はそう言って跳び上がり、ブロリーから更に距離を取ると悟飯とベジータを見る。

 

「頼む。オラにブロリーを近寄らせねぇでくれ」

 

 そう言った悟空の言葉に勝ち目があるのかと尋ねるよりも賭けるしかなかった二人がブロリーを注視するが、当のブロリーは悟空の行動を待つようで腕を組んだまま動かない。

 希望を全て折った上で叩き潰すと決めているのだ。

 

「ぐ……ぐ……、ぐががががが!」

 

 ブロリーが動かないのならば好都合。悟空を腕を腰だめに構えて気合を込める。

 

「あああああああ……………………!!!!」

 

 地球全体が揺れているような錯覚を覚えるほどに高まる気は、思わず悟飯とベジータが振り返るほどだった。

 

「はぁあ――――ッ!!」

 

 カッと閃光が辺り一帯を照らし出し、その光が徐々に減じていく。

 光の中心に超サイヤ人2以上のスパークとオーラの持ち主が悠然と立っている。

 

「お、お父さん……?」

「カカロット、なのか?」

 

 髪が背中にまで伸び、眉毛が無くなった悟空に思わずそう呼びかける二人。

 人相のみならず、以前とは別物の気の総量に驚愕を禁じ得ない。

 

「これが超サイヤ人3だ。まだ未完成なんで見せたくなかったんだが、今までのオラとは別物だぞ」

「試してやろう。早々に壊れてくれるなよ!」

 

 次元違いの二人の戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 花火が連続で爆発しているような、ずっと大地震が続いているような振動に孫悟天は目を覚ました。

 

「う……」

 

 体を起こそうとすると、手に七つのドラゴンボールが入っていたバックの紐が絡まっていた、底に穴が開いて地面に転がっていた。

 

「ドラゴンボール。そうだ、ブロリー」

 

 自分がこうやって地面に倒れていた原因である男を思い出し、痛みに嫌な汗を浮かべながら立ち上がる。

 

「お父さん」

 

 悟天には及びようもない領域で戦っている父の気を感じ取り、気が急いた所為で特に痛む右腕を動かしてしまい、斜面の立っていた足を滑らせて転倒してしまう。倒れ込んだ眼前に四星球が転がっていた。

 

「神龍、なんでも願いが叶えてくれるならお父さんを助けて」

 

 父の昔話やトランクスから聞いた話で神龍が願いさえを叶えてくれればと言ったところで、四星球が光って悟天の視界を真っ白に染める。

 

「願いは叶えてやった」

 

 荘厳な声が悟天の耳に届く。しかし、何故か悟天の体は不自然に動かない。

 

「言いこと聞いちゃった」

 

 また悟天の知らない声で誰かが楽し気に言ったのが聞こえた直後、悟天の意識が急速に希薄化していく。それに抗おうとしても果たせず、悟天の記憶はそこで途切れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今の悟飯には及びもつかない領域で戦う悟空とブロリーの戦い。

 

「カカロットの野郎、また俺の一歩先を行きやがって」

 

 隣に立つベジータが悔し気に言う気持ちも分からないでもない。あれだけの力があるならば最初から使って欲しかった。そうすればブロリーにあれほど苦しめられることもなかったのだから。

 

「だが、妙だな。カカロットめ、何を焦ってやがる」

 

 え、と悟飯が思わずベジータを見ると、ただ感心するばかりの悟飯と違ってベジータは冷静な戦士の目で悟空の焦りを見抜く。

 

「どういうことですか、ベジータさん?」

「分からないか」

 

 と逆に聞かれて改めて悟飯は二人の戦いを見る。

 すると、直ぐに気が付いた。

 

「これは推測だが、カカロットの気の消費が早過ぎる。未完成と言っていたのはそこに理由がある」

 

 全力で戦っているのは間違いないだろうが、それにしたって悟空の気の減りの早さは尋常ではない。

 そう、そのことは実際に戦っている悟空が一番よく分かっていた。

 

「どうした、カカロット! この程度か!」

「くっ、ブロリー!」

 

 ブロリーの挑発を拳で返しながらも、悟空は未だ未完成の超サイヤ人3の弊害をむざむざと知る。

 予想以上のブロリーを相手にして、超サイヤ人3でなくなれば敗北しかないというのに頭の中で制限時間が見えてしまったから。

 

「これで決めてやる! 受けてみやがれ!!」

 

 蹴りを一発ブロリーの胸に放って大きく距離を取りながら、超サイヤ人3を維持出来ている間に倒すべく、挑発してかめはめ波で気功波による勝負に持ち込もうとして腕を腰だめに構える。

 

「かめはめ――」

 

 大きく後ろに飛んで悟空の挑発に敢えて乗ったブロリーの手に集められた小さな気の塊が収束する。

 

「――――波っ!!」

 

 悟空が特大のかめはめ波を放ったの同時に、ブロリーはアンダースローのように収束した気の塊を放った。

 両者は中間地点で接触し、最初は小さかったブロリーの気弾が大きく膨張して数百メートルにわたって膨張する。まるで直進する光の塊を押し留めるようにかめはめ波が放たれているように見える。

 

「ぐっ」

 

 ブロリーが同様の気弾を継続して打ち込むと勢いを増し、拮抗していたバランスが崩れる。

 地球が増えるほどの衝撃の中で押し込まれていた悟空の両脇にベジータと悟飯が降り立つ。

 

「ギャリック砲!!」

「かめはめ波!!」

 

 ベジータのギャリック砲、悟飯のかめはめ波が悟空の両脇から放たれ、ようやく拮抗を取り戻す。

 

「無駄な足掻きを」

 

 二人の協力もあって侵攻を押し留めたかに見えたが、無情にもブロリーは更に気弾を撃ち込んで来る。

 

「ぐががががが!」

「がぁああああ!」

「おおおおおぉ!」

 

 負けじと踏ん張る三人だがジリ貧である。

 

「やべぇ、気が」

 

 悟空は急速に枯渇していく気に、このままでは直ぐに超サイヤ人3を維持できなくなると直感した。

 

「カカロット、気を振り絞れ!」

「耐えて下さい、お父さん!」

 

 とはいえ、根性論で気が増えるわけではない分かっている二人にもどうにも出来ない。

 

「フハハハハ、このままでは死ぬぞ! もっともっと無様に抗って見せろ!!」

 

 悟空の気の枯渇は目に見えており、そうなればこの拮抗もなくなる。自分が勝ったと確信して高笑いするブロリーに三人は何も出来ない。

 では、三人以外ならば。

 

「くそっ、俺達の力が通じない奴がいるなんて」

 

 トランクスは自分の全ての力を右手の気弾に込めつつ、父や友達の父親と兄が放っている気功波を一人で押し返しているブロリーを睨み付ける。

 

「うわぁあああああああああああ!!」

 

 溜め終わった気弾をブロリーに向かって投げつける。

 

「夢なら、覚めてよ」

 

 フラフラと頼りなく進む気弾の結末を見届けることなく、トランクスの意識が暗転してその場で倒れ込む。

 

「も、も……もうだめ―――――戻った!!」

 

 諦めかけたその瞬間に何故か全快した悟空はブロリーの気弾の侵攻が弱まったのも感じ取った。

 

「今だ! 体の(りき)、全部振り絞れ!!」

 

 悟空が全快した理由、ブロリーの気弾の侵攻が弱まった理由、それらが分からなくても悟飯とベジータにも今が残されたたった一つの勝機であると感じ取り、残っている全てのパワーを注ぎ込む。

 

「「「はぁっ――!!」」」

 

 勝機はこの一瞬にしかないと判断した三人は限界を超えたパワーを発揮して巨大な気弾をぶち抜く。

 向かって来たトランクスの気弾を弾いて油断していたブロリーは何かをする術もなくそのまま呑み込まれた。二つのかめはめ波とギャリック砲の合わせ技はそのまま宇宙の彼方へと消えていく。

 

「やったぁ……」

 

 全ての力を一瞬に込めた三人はそのまま意識を失って倒れ込む。

 凪いだ風が全てを払い落した数十秒後、意識を取り戻して駆けつけたビーデルは心底から困った顔をする。

 

「え、セルを倒した金髪の戦士が悟飯君達なのは分かったけど、私にこの状況をどうしろっていうの?」

 

 倒れ込んだまま意識を失っている三人の間近で状況が理解できず途方に暮れるビーデルだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悟空達が意識を失っている場所からそれほど遠くない地でバビディは楽し気にある人物を見下ろしていた。

 

「ヒッヒッヒッ、邪魔をしてくれた敵の監視をしてたら思ってもみなかった拾い物をしちゃったよ」

 

 バビディの手元には石となっている七つの球と、三種の気功波に呑まれて宇宙の彼方に飛ばされそうになっていた傷だらけのブロリーである。

 

「助けられるかどうかは微妙だったけど、ダーブラ以上の力を手下に出来るなんてボクったらついてるね。とはいえ、こいつは強すぎるし、絶対に裏切らないように今の内に徹底的に洗脳しちゃおう」

 

 バリアーも破られて成す術もなかったブロリーを間一髪で転移魔術で助けたバビディは一人ほくそ笑む。

 

「あの子供の記憶を呼んだ限りだと、このボール七つでなんでも願いが叶うのか。さてと、何を願おうかな?」

 

 最もドラゴンボールを手にしてはいけない悪が密やかに蠢動する。

 

 

 




ブロリーが超サイヤ人2になるのも、超3悟空と超2ブロリーは互角となっているのも本作設定ですのであしからず。

ブロリー敗北、そして手下化(でも従順だとは言ってない)
そしてバビディ、ドラゴンボールをゲットだぜ。
ちなみに悟天はバビディの記憶を消されただけです。ドラゴンボールも願いは悟空を全開状態にして神龍は消えました。
バビディは願いを決めていなかったので少し考えることにして、魔術で散ろうとしていたボールを回収。でも、石になった理由は分からず仕舞い。

ブロリーとドラゴンボールを手に入れたバビディは次になにをするのか。

次回「第十話 復活のF&C」

次回更新予定は活動報告にて



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第十話 復活のC&F

お待たせしました。


 

 光陰矢の如く、時間は瞬く間に流れていく。

 

「魔人ブウの復活エネルギーを得るのに十年以上はかかってるけど、この四ヶ月は特に長かった気がするよ」

 

 長かった日々を思い返すバビディはこの四ヶ月のことを思い返す。

 

「ドラゴンボールが石になってたから詳しい奴を探して聞き出す必要があるのに僕達の生存がバレちゃ意味がない。隠れながら調べるのは苦労したね」

 

 折角、死を偽装できたのだから利用しない手はない。また前のように邪魔をされない為には生きていることを悟られるわけにはいかないのだから行動も慎重になる。

 しかし、ブロリーを念入りに洗脳して手下にし、ドラゴンボールという万能の願い球を手にしたバビディだが初っ端から躓いていた。有能な部下が出来たのは良かったのだが、有効活用しようとしていたドラゴンボールは完全に石になっていてうんともすんとも言わない。

 

「幸いにもドラゴンボールの近くにいた子供の記憶に物知りな奴がいたから助かったけど、あのベジータって奴が近くにいた所為で中々手を出せなかった」

「ベジータ……」

「確か君達サイヤ人とかいうのの王子じゃなかったけ、ブロリー」

「はい」

 

 良く分からない物を良く分からないまま使うよりかは知っていそうな人物を当たることにする。幸いにも記憶を呼んだ悟天の関係者の中に該当する人物がいた。

 そして目的の人物がいるカプセルコーポレーションを探すのは容易い事だった。

 ブロリーと闘った三人の内の一人、ベジータの力を探ればいいのだから。自らの力を高める為に隠蔽など考えていないベジータの居場所を探るのは簡単だった。

 

「とはいえ、下手に近づきすぎれば感づかれかねなかったところで運良く離れてくれたお蔭で助かったね」

 

 魔術で隠匿しても完璧に消えられるわけではない。バビディは如何なる人物であろうとも気取らせない自信はあるが、孫悟空のように神に近い力を幾つか有していると気づかれる恐れがある。念には念を入れて確実を期そうとしていたら、ベジータが勝手にカプセルコーポレーションから離れてくれたお蔭で助かった。

 あまりにもタイミングが良すぎるので罠かと考えて暫く待機していたが戻ってくる気配はなかった。

 

「罠かとも思ったけど僕達が生きているのはバレていないようだから関係なかったみたいだし」

 

 バビディとブロリーが生きていることをベジータ達が知るはずもないので罠の可能性は低い。下手に時間をかけすぎれば界王神辺りがバビディが死んでいないことに気付く可能性もある。

 ブロリーに警戒を任せ、魔術で姿を消したバビディがカプセルコーポレーションに潜り込んでブルマの記憶を読むことに成功した。

 

「ただ、一つでも願いを叶えてしまうとインタバールが必要なのは少し誤算かな」

 

 ドラゴンボールで叶えられる願いは三つ。内一つでも叶えてしまうと次にドラゴンボールが使用できるまで四ヶ月必要になる。

 

「能力の限界も考えないといけないのは面倒臭いよね。作った神様の力以上のことは出来ないなんて無能も良いところだよ。これだと魔人ブウの復活は無理だろうな。僕に出来ないことを界王神とかが出来るはずがないし」

 

 ドラゴンボールを七つ集めると出て来る神龍が叶える願いは造った神様を越える力以上のことは出来ないという。

 死んだ者を蘇らせることが出来るなら十分かもしれないが、界王神を知っているので魔人復活をストレートに願っても叶えられる可能性は限りなく少ないだろう。

 

「復活の為のエネルギーも多分駄目かな。やっぱり誰か生き返らせて手下にするぐらいになっちゃう」

 

 そうなると以外に叶えてもらうことが少なくなる。

 

「今更、ダーブラを生き帰らせても頼りにはならないだろうし、どう思うブロリー?」

「分かりません……」

「さて、誰を生き返らせようか」

 

 ご機嫌のバビディは生返事のブロリーが相手でも気にせずにしゃべり続けて人里から遠く離れた地に移動して待っていた夜になった。

 

「始めようか、ブロリー。ドラゴンボールを」

「はい」

 

 額に「M」字が書かれた細い体のブロリーが従順に答え、持っていた袋から七つの球を地面に転がせる。

 

「ええと、ゴホン…………出でよ、神龍。そして我が願いを叶え給え!!」

 

 咳払いをしたバビディが合言葉を叫ぶと、七つのドラゴンボールが閃光を発して神の龍が出現する。

 

「これが神龍……」

 

 夜の空を神々しく照らし出し、光の中心に浮かぶ龍の姿は神の名に相応しい威厳を持っている。その技術に驚きながらもバビディの中に僅かな嫉妬が浮かび上がる。

 

『さあ、願いを言え。どんな願いでも3つまで叶えてやろう』

 

 神龍が厳かに、そして傲慢にも聞こえる口調で告げる。

 

「これは願いではないのだけれど」

 

 と、まずは前置きを置いて確認する。

 

「孫悟空を知っているかい?」

『知っている』

「じゃ、じゃあ、孫悟空とその仲間に殺された悪人の中で、このブロリーに近い強さの持ち主か、潜在能力を有している者を生き返らせることは可能かい?」

 

 孫悟空を知っているのならば話は早いので、この四ヶ月の間に考えた願いは叶えられるかを聞く。

 

『…………』

 

 考えているのか、調べているのか、神龍は十数秒沈黙したまま言葉を発しない。バビディも敢えて問い質すことなく、神龍の返答を待つ。

 

『孫悟空とその仲間に殺された者の中で、そのブロリーという者の力の半分も持つ者はいない』

「いないのか。じゃあ、潜在能力の方は?」

『…………該当する者が二人いる』

 

 おお、と返って来た返答にバビディは感嘆する。

 

『だが、その者達はどちらも死後一年以上経っており、例え生き返っても肉体までの蘇生は出来ない。そのまま魂だけ戻っても意味はあるまい』

「え、そうなの?」

 

 そう上手くことが運ぶわけではないらしい。少し予想外の神龍の言葉にバビディは考えた。

 

「じゃあ、どうすれば肉体も含めた蘇生が可能になるのかな?」

『その問いに返すには願う必要がある』

「気が利かないね」

 

 ブロリーに近い潜在能力を持っている者が二人いることを教えてくれただけでも十分に気が利いているのだが、自己中心的なバビディが気が付くことはない。

 

『願いがないのならば消えるが?』

「あ、あるに決まってるだろう! 勝手に消えられたら困る」

 

 バビディの嫌味はしっかりと聞こえているが勝手に消えることも出来ない。

 

「一つ目の願いだよ。ブロリーに近い潜在能力を持っている者を肉体も含めて蘇らせる方法を教えろ」

『随分、偉そうだな』

「うっ、蘇らせる方法を教えてください」

『しょうがない、分かった』

 

 願いをかなえてもらう立場のバビディは下手に出るしかない。

 言い方を変えると、仕方なさげに神龍の赤い目が光る。

 

『二人の魂はあの世にあり、まずその魂をこの場に連れて来ることを第二の願いとする』

 

 神龍は呼び出されれば願いを叶える。呼び出した善悪に関わらず。

 

『そして第三の願いで肉体の蘇生を願うことで、蘇生は果たされる。どちらか片方では意味がない。両方を叶えなくては二人が完全に蘇ることはない』

「つまりは三つの願い事を全て使い切らないと駄目なわけだね」

 

 バビディは少し考えて後ろのブロリーを振り返って、こいつに近い強さの持ち主か、潜在能力を持っているならば十分だと判断する。

 

「分かった。その二つを願いを叶えてほしい」

『良かろう』

 

 再び、神龍の赤い目が光ってバビディとブロリーから少し離れた場所に二つの光が生まれる。

 

「ここは……」

「私は地獄に……」

 

 現世に蘇った二人は今の現状を直ぐには認識できずにいるようだった

 

『願いは叶えてやった。では、さらばだ』

 

 その直後、3つの願いを叶えた神龍の姿が消えて、地にあったドラゴンボールが天高くに浮かび上がり、やがて四方に散った。

 七つのドラゴンボールの行方を追うことなく、バビディはにこやかに「やあ、始めまして」と蘇ったばかりの二人に声をかけた。

 

「あなたは?」

「君達を蘇らせた魔導師バビディだよ」

 

 小さい方の者が話しかけたバビディに不審の目を向ける。

 

「さっきのはドラゴンボールか。どうやら本当に生き返ったようだな」

 

 大きい方の者は空の彼方へと消えていったドラゴンボールを目で追いかけていて、バビディの言葉と合致する今の状況から己がどうなったかを認識する

 

「ドラゴンボール? あのナメック星の」

「ここは地球という星だよ。孫悟空とその仲間に殺された君達を僕がドラゴンボールを使って蘇らせたんだ」

 

 聞き覚えのある物の名を聞いた小さい方の疑問にバビディは少しの訂正を加える。

 

「説明は面倒だからね。やっちゃって、ブロリー」 

「はい……!」

 

 蘇らえた二人の邪心をビンビンに感じていたバビディはこれ以上は危険と判断して、後ろにいたブロリーをけしかける。

 気を入れてその身体の筋肉を肥大化させて超サイヤ人2になると、なんらかの動きを取ろうとしていた二人が波濤となって襲い掛かってきたブロリーに身構える。

 

「おぉっ!!」

 

 二人は互いに相手をけしかけてその場から逃げようとするが、ブロリーの動きの方が速い。

 

「ぐぉっ?!」

 

 ブロリーの拳が防御した大きい者の手を簡単に弾き飛ばしてその腹に深々と抉る。

 

「ちいっ」

「遅い」

 

 小さい者が地を蹴って大きい方よりも早く動き出して距離を開けようとするが現状の戦闘力の差はどうしようもない。

 瞬く間に追いつかれ、頭を掴まれて地面に叩きつけられる。

 一撃ずつを受けて二人はピクリとも動かなくなった。

 

「もうやっつけちゃったのかい。意外に持たなかったね、この二人」

 

 一撃でブロリーにノされて気を失ってしまっている二人に落胆するべきか、ブロリーが強すぎることを喜ぶべきなのか。

 ブロリーによって揃って頭を掴まれて吊るされている二人を見てバビディは感情表現に悩んだ。

 

「ほほう、邪心の塊みたいな奴らだね。ふむふむ、潜在能力も凄まじい物を持っているみたいだ。特にこの小さい方はブロリー以上になるかもね」

 

 ブロリーが意識のない二人をバビディの前に並べて、伏している二人の頭に手を当てたバビディが記憶や心を精査して想像以上の潜在能力に哂う。

 

「僕の手下に成ってもらうよ。はぁああああああああっ!!」

 

 手っ取り早くする為に二人を纏めて洗脳する。

 

「うおおおおおおおっ?!」

「ぐあああああああっ?!」

 

 意識がないまま苦しみ出す二人にバビディは更に力を籠める。

 

「秘めてるパワーを引き出してあげるよ。喜ぶといい、僕のお蔭で孫悟空とその仲間に復讐できるんだから」

 

 このまま洗脳に屈して協力するならば自分達を殺した者に復讐する機会を得ることが出来るのだと甘い悪魔の囁きをする。

 

「く、くおぉおおおおおおおお!!」

「うがぁあああああああああ!!」

 

 潜在能力を限界を超えて引き出すと、叫ぶ二人から尋常ではないパワーが辺りに向かって放出される。

 

「良く逆らうね。でも、君達はもう僕の術中にある」

 

 バビディですら魔術を使わなければその場に留まっていられないパワーの上昇に、このまま洗脳できれば良い手駒になると想像させて力を籠める。

 

「この私を……ぐっ!?」

 

 それでも尚、逆らおうとする小さい方をブロリーが腹を踏みつけてダメージを与える。その瞬間に生じた意識の隙間に洗脳の力を滑り込ませて浸透させる。

 

「ぐぐぐぐぐぐぐ……!」

「う、うう」

 

 こうしている間にも二人の脳裏には自分が殺された時のことがフラッシュバックしていることだろう。そうやって憎しみを煽ることで洗脳する。

 

「孫、悟飯――っ!!」

「ぉおおおおおおおおおおお!!」

 

 より大きな力の波濤が辺り一帯に広まり、爆発が起きたように地面が吹き飛ぶ。

 

「そう言えばまだ二人の名前を聞いてなかったね。君達の名前はなんて言うんだい」

 

 洗脳に手応えを感じたバビディは出来たばかりのクレーターの底でブロリーが張ったバリアーに護られながら、目の前で立ち上がる二人の額に浮かび上がったMの字を確認して聞く。

 

「セル」

「フリーザ」

 

 大きい者――――セルと、小さい者――――フリーザが自らの名を答える。

 

「くっくっくっ、これで奴らに一泡吹かせて魔人ブウの復活を果たすことが出来るよ」

 

 セルとフリーザを完全に従えたと思ったバビディは高笑いしていたが、その姿を後ろから見ていたブロリーの笑みが僅かに変化していたことに気付かなかった。

 

 

 




復活したのは御覧の通り、セル(C)とフリーザ(F)でした。

「C」はセルの名前の由来である「細胞」を意味する英単語「cell」の頭文字から。
フリーザは言わずもがな。その潜在能力も映画「復活のF」でのゴールデンフリーザを考えれば現時点でのブロリー以上が見込める。

本作において、超2のブロリーで超3悟空と同格。超3が超2の四倍ということで、超2悟空は超2ブロリーの四分の一。
悟空の超2の強さは原作とほぼ変わらないとして、セルはダーブラ以下で大した相手ではないらしい。とはいえ、フリーザや悟空達サイヤ人の細胞を使っているのでその潜在能力はまだあると仮定。

と言った経緯でセルとフリーザが蘇りました。
バビディに操られ(?)、潜在能力を引き出されれば悟飯達とも戦えるはず。

尚、ドラゴンボールは一年間使えない様子。

次回、『第十一話 バビディの招待』




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第十一話 バビディの招待



敵の強化は必須である




 

 クレーターの底で悟空は辺りを見渡し、気を探る。

 

「気を探っても誰もいねぇ。けど、何かはあったはずだ。あれは確かにセルとフリーザの気だった」

 

 夜中に突如として出現したセルとフリーザの気に、一人で瞬間移動を使って現地に飛んだ悟空は思案気に腕を組む。

 

「二人はトランクスと悟飯に殺された。確かに死んだはずだ。なのに、気はあの二人の物だった。錯覚なわけがねぇ」

 

 セルとフリーザの死を悟空はその眼で確かめたわけではない。

 フリーザはヤードラットから地球に帰る際に先回りされたが、未来からやってきたトランクスによって殺された。

 セルは悟空が死んだ後に怒りによって超サイヤ人2に覚醒した悟飯によって殺されている。

 確かめたわけではないが、二人が死んでいるのは確実である。

 

「やっぱ誰かがドラゴンボールを使って生き返らせたのか? でも、誰が何の目的で?」

 

 悟空が知る限り、二人に共通する人物はおらず、そもそも生き返らせる理由が分からない。フリーザだけならば軍を率いていたはずなので残党が生き返らせようとしても不思議ではないが、セルまで生き返らせた理由が分からない。

 

「ピッコロに聞いてみるか」

 

 困った時の知恵袋であるピッコロに相談することにして瞬間移動で天界に移動する。

 天界に移動すると、真夜中にも関わらず神殿の前には複数の人影があった。

 

「お、界王神様じゃねぇか」

 

 この神殿に住んでいるピッコロや神様のデンデ、ポポがいるのは当然として、何故か界王神とキビトも共にいた。

 

「孫悟空さん、良いところに」

 

 五人で集まって何かを話していたところに悟空が現れ、界王神が振り返って安堵したように息をつく。

 

「何かあったんか?」

「それはこちらの台詞だ。こんな時間に呼びもせずに来たということは、お前もフリーザとセルの気を感じたか」

「ああ、気を感じた場所に行ってみたんだけど誰もいなかった。ピッコロなら何か知らないかと思ってさ」

 

 取りあえず身近にいたピッコロに聞こうとしたが、ここに来た理由その物を当てられたので率直に聞く。

 

「そのことなんだが、非常にまずいことになった」

 

 問われたピッコロは眉間に皺を寄せて重苦しい気配を隠しもしない。

 

「まずは界王神様から事情を聞いてほしい。俺の話はその後だ」

 

 ピッコロがそこまで言うとはよほどのことなのだと、悟空はゴクリと唾を呑み込んで界王神を見る。

 

「実は悟空さん達と別れた私達はあの場に残って調べたのですが、完全に破壊されていたのでバビディの死を疑っていませんでした。しかし、つい先程、閻魔大王から北の界王を通してフリーザが天国からいなくなったと連絡を受けたのです」

「つうことは、やっぱり誰かがフリーザを生き返らせたんか」

 

 何故フリーザが天国にいるのか分からないが、悟空も知っているこの世とあの世の法則を司って死者の魂には絶対の権力とあの世を司る力を持つ閻魔大王ならば、あれほどの悪人はそうはいないはずだからいなくなったことは分かるだろう。

 

「それでですね、北の銀河で死んだのならば閻魔大王の裁きを必ず受けざるをえない。バビディが死んだかどうかを確認してみたんです。すると恐ろしいことが分かったのです」

「もしかしてバビディは死んでなかったってことか?」

「そうだ。そのバビディがドラゴンボールを使ってセルとフリーザを蘇らせたようだ」

 

 悟空がかめはめ波でダーブラ諸共に消し飛ばしたはずのバビディが生きていて、しかもドラゴンボールを使って二人を生き返らせたとならば悟空も流石に目を見開いて驚く。

 

「本当にあの二人を?」

「セルとフリーザの力を感じた時点から、この天界から見ていたので間違いない。そしてもう一つ」

 

 未だ信じられない様子の悟空にピッコロはまだあると重い口を開く。

 

「その場には…………ブロリーがいた」

「!?」

 

 絶句するという言葉を端的に表現する悟空にピッコロもかける言葉はない。

 

「お前達が四ヶ月前に倒したはずなのは俺も見ていた。だが、なんらかの方法でバビディはブロリーを救いだし、己の手下としたようだ。バビディの命令で動いているように見えた。蘇ったセルとフリーザも恐らく手下とされたのだろう」

「バビディには邪心のある者を操る魔術があります。潜在能力を引き出す術も使えると聞いたこともあるので、恐らくそれも使われていると考えた方が良いと思います」

 

 界王神に嫌な保証をされてしまい、悟空が顔を顰める。

 ピッコロだって自分が目にした物が信じたくはなかった。

 あの時のブロリーの力は七年前よりも強くなって超サイヤ人3に至った悟空と互角だった。今となってはサイヤ人達に随分と開けられたピッコロでは逆立ちしたって相手にもならないだろう。そしてセルも同様だ。

 フリーザ相手ならば神と融合したピッコロの相手ではないが、何らかの強化が施されていると考えた方が良い。

 

「勝てるか、孫」

「…………分かんねぇ。オラもあの時と違って超サイヤ人3を完成させたけど、ブロリーがまた強くなってるかもしれねぇし」

 

 右手で頭をガシガシと掻いた悟空にピッコロはそれ以上、かける言葉を持たなかった。

 

『僕の声が聞こえるかい、孫悟空達』

 

 そこに第三者の、生の声ではなく頭の中に直接語り掛けるような声がかけられた。

 

「この声は、バビディ!?」

『おや、界王神までいるようだね』

 

 聞き覚えのある声に界王神が怒気を露わにし、少し驚いた様子のバビディが笑う。

 

『おっと、探しても見つからないよ。僕は魔術で孫悟空、孫悟飯、ベジータの三人にだけ心に直接話しかけてるんだからさ。まあ、界王神達には聞かれちゃうかもしれないけど、別にいいや』

 

 気配を探り、目で姿を探しても少なくとも見える範囲、感じ取れる範囲にバビディの姿と気配はない。

 

『さて、孫悟空。良くも僕を殺そうとしてくれたね。でも、君のお蔭でもっと強い手下を手に入れることが出来たから感謝もしてるよ』

 

 バビディはよくも自分を殺そうとしたと悟空を詰りながら、子供のように気分を変えて感謝までする。

 

「ブロリーやセルとフリーザのことか!」

『彼らの力はダーブラとは比べ物にならない。洗脳するのには苦労したけど、その甲斐はあったよ』

「何が目的だ!」

 

 ピッコロが叫ぶと、声の向こうでバビディは『誰? まあ、いいけど』と言いながら笑みを滲ませる。

 

『君達に隠れて魔人ブウを復活させることは簡単だけど、虚仮にしてくれた分を百倍にして返さないと僕の気が済まない。分かるかい、これは宣戦布告だよ』

 

 自らの勝利を微塵も疑っていない自信を声に乗せて、悟空達に向かって宣戦布告する。

 

『これから少し後に君達の前の地面に魔法陣が浮かび上がる。そこに入れ』

 

 と、悟空の前の床に五芒星の魔法陣が突如として浮かび上がり、光を発する。

 

『入ったら僕の魔術で、とある場所に送られる。そこには僕が用意した三人の戦士が待っているから存分に戦うと良い。彼らを倒すことが出来たなら僕が直々に相手をしてあげるよ。そんなことはあり得ないと思うけどね』

 

 バビディの言葉を思い返せば、魔法陣が浮かび上がっているのは悟空と悟飯、そしてベジータの三人だと言う。その三人に合わせて用意された戦士とは恐らくブロリー、セル、フリーザの三人だろう。

 

『魔法陣は一分後には消える。来なければ戦士達に地球を破壊させるからね。嘘じゃないよ、じゃあね』

 

 と、バビディが魔術を止めたのだろう。繋がっていた何かが切れる音と共に声は全く聞こえなくなった。

 

「これは罠です!」

 

 開口一番に界王神が言った。

 

「敵の作戦に引っ掛かってはいけません。バビディは魔人ブウ復活のエネルギーを得る為にあなた達を利用しようしています!」

「だとしてもさ」

 

 罠だとしても時には自ら飛び込んでいかなければならない時もある。今がその時である。

 

「アイツラが地球に拘る必要なんてねぇんだろ。俺達に選択権はねぇ」

 

 悟空だって明らかに罠だというのは分かっている。

 あの時に生死が分かり難くなるかめはめ波ではなく、確実にこの手でバビディを殺すべきだったと後悔しても後の祭り。ここまで舞台を整えられた以上、今は相手の思惑に乗るしかない。

 

「孫、仙豆を持って行け。五粒だけだが助けになろう」

「サンキュー、ピッコロ」

 

 ピッコロが投げた仙豆が入った袋を受け取った悟空は破顔する。

 そして表情を引き締めて魔法陣に足を踏み入れた。

 すると景色が変わり、どこかの岩だらけの荒野に出る。

 

「待っていたぞ、カカロット」

 

 と、腕を組んだブロリーが少し離れたところに立っていた。

 

「ブロリー、生きてたんか」

「ああ、バビディに助けられた」

 

 端的に答えたブロリーが笑みを浮かべる。清々しいものではなく、悪魔かと身構える邪笑を。

 

「バビディの手下に成り下がったお前からダメージを受けて魔人ブウのエネルギーにはしたくねぇ。一気に片をつけるぞ!」

 

 一気に超サイヤ人3になってブロリーを威嚇する。

 バビディの手下に成り下がったことを揶揄してもいたが、ブロリーは表情一つ動かすことはない。

 

「あんな奴の手下に甘んじていたのは貴様に復讐する為。奴の魔術で俺は更なる高みへと至る」

 

 ブロリーの言葉に嫌な予感を覚えた悟空の背中を冷や汗が流れていく。

 

「見るがいい、俺の新たな力を!」

 

 気合を込めたブロリーが腰溜めに構えた腕に力を入れると、額に描かれていたMの字が消えて髪が一気に背中側に伸びた。

 ブロリーは自らの破壊衝動でバビディの魔術を呑み込んで自らを更なる高みへと押し上げ、超サイヤ人3へと至る。

 

「な、に……っ!?」

 

 波濤のように溢れ出るブロリーの気の圧力に腕で庇おうとも光が透過してくるようだった。その力の圧は明らかに悟空の数倍に達している。

 

「殺してやるぞ、カカロット!!」

 

 悟空は、或いはフリーザとの戦い以上の嘗てない勝機のない戦いに挑むことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悟空とブロリーが戦い始めた、ほぼ同時刻。

 

「僕の相手はどこだ?」

 

 どこかの草原で悟空と同じように招待された孫悟飯は現れない敵を警戒していた。

 

「ほう、随分と大きくなったじゃないか、孫悟飯」

 

 殺気立っている悟飯に独特の足音を立てて現れたセルが笑みを浮かべながら足下の花を手折る。

 

「せ、セル!?」

 

 悟空と違ってセルやフリーザが生き返っていることを知らない悟飯は現れた嘗ての強敵に驚愕する。

 

「驚くのも無理はない。私はバビディという魔術師に蘇らせられたのだよ」

 

 自身の登場に驚愕する悟飯にセルがバビディによって蘇らせられたことを教える。

 セルの額には、スポポビッチとヤムーと同じM字が書かれていることからバビディに洗脳されていることに悟飯は気付いた。

 

「セルともあろうものが魔導師になんて操られて恥ずかしくないのか?」

「なんであれ、こうやって生き返らしてもらったのだから構わんさ。孫悟飯、貴様に復讐できればそれでいい」

 

 皮肉を受け流したセルは洗脳されているとしても悟飯に復讐できればなんでもいいと考えていた。

 

「あれから七年も経って僕も強くなった。あの世に送り返してやるよ!」

 

 超サイヤ人2になった悟飯は、七年前よりも弛まぬ鍛錬によってその実力を増している。セルなど相手ではないと自らを発奮してセルを挑発する。

 

「あの小さな子供が更に強くなったようだが」

 

 悟飯から放散される気をまともに受けながら、焦ることなくセルは笑みを浮かべる。

 

「私を嘗ての私と同じだとは思わんことだ! はぁああああああああっっ!!」

 

 同じように気を入れたセルは悟飯同様にオーラがスパークし、その規模は七年前の比ではない。明らかに今の悟飯を上回っていた。

 

「これは……」

 

 悟飯も超サイヤ人2になったが今のセルが自分を越えた力を有していることは認めるしかなく、冷や汗を流しながら対峙する。

 

「あの時とは逆の立場だな。そうだ、私の方が強い」

 

 セルは自分の方が強いことを確信しながらも、悟飯が怒れば更に強くなることを知っているので全く油断しようとしない。

 

「万が一など起こさせん。最高の力で早く終わらせてやろう」

 

 そう言って襲い掛かるセルを前にして悟飯は待ち受けるのみだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悟空と悟飯が戦い始めるより少し前、戦いを挑まれたのならば迎え撃つベジータは魔法陣が現れたとの同時にそこに乗って転移した。

 

「ふん、瓦礫の山ばかりか」

 

 魔術によって見知らぬ廃墟の街に転移させられたベジータは、足元に転がっていた瓦礫を蹴飛ばして近くにあった壁を壊す。

 建物が崩れ落ちて粉塵が舞うことが余計にベジータの苛立ちを増させる。

 

「相変わらずガサツですね、ベジータさん」

 

 ガラガラと崩れる建物によって起きた粉塵の中で舌打ちしたベジータは即座に戦闘態勢を取ったが、響き渡ったその何者かの声が聞き覚えがあったので眉を顰めた。

 

「そこか!」

 

 ベジータは聞こえるはずのない声に驚きながらも、粉塵の中の気配に気弾を放つ。

 

「狙いは正確ですが、威力が足りません」

 

 気弾が着弾して爆発を起こしたベジータは笑みを浮かべるが、一言言って現れた何者かが粉塵を振り払う。

 

「ふ、フリーザ!?」

「お久しぶりですね。お元気でしたか?」

 

 姿を見せたフリーザに流石に驚きを露わにしたベジータだったが、直ぐに用意された戦士が嘗て自分を殺した奴だと辿り着く。

 

「今更、なんの用だ。貴様など、今の俺の敵ではない。さっさと消えろ」

 

 最終形態になっているが、フリーザでは今のベジータの敵ではない。

 

「ふん、あのバビディとかいう奴もとんだ雑魚を蘇らせたもんだ」

「私を雑魚と? はっ、その雑魚に殺された男が良くも吠えるものですね」

 

 互いに挑発し合うが、実力で遥か上に立っていると思っているベジータの余裕は崩れない。寧ろ、良い機会だと笑う。

 

「貴様は知らぬようだから教えてやる。今の俺も成っているんだよ、超サイヤ人に。そしてそれすらも超えた遥かな強さの超サイヤ人2にな!!」

 

 今のベジータがいる境地は、ナメック星でフリーザを倒した悟空の実力を遥かに超えた場所にいる。それこそがベジータの余裕の理由だった。

 

「ええ、確かに驚きましたよ。まさか虫けら程度に過ぎなかったあのベジータさんが私が地獄にいる間に此処まで強くなるとはね」

 

 と、言いながらもフリーザには臆した様子は全くない。

 その余裕振りに不審を覚えつつも、実力差は如何ともし難いのだから焦りと予測して笑うベジータ。

 

「喜べ、また地獄に戻してやろう」

「一つだけ、忠告しましょう。アナタは幾つも間違いを冒しています」

 

 超サイヤ人2になろうとしたベジータの致命的な間違いを優しく指摘したフリーザが手を広げる。

 

「バビディがドラゴンボールに願ったことを教えてあげましょう」

 

 力を籠めることなく、分からずやに優しく諭すように穏やかに。

 

「『孫悟空とその仲間に殺された悪人の中で、ブロリーに近い強さの持ち主か、潜在能力を有している者を生き返らせることは可能か』とね。前者に該当する人物はいなかったようですね。確かにあのブロリーとかいうサイヤ人は君達すらも遥かに超えた場所に立っている。だがまあ、問題はそこにはありません」

 

 フリーザが何を言いたいのかが分からず、眉を顰めているベジータ。

 

「叶えられたのは後者。つまりは、ブロリーに近い潜在能力を有している者。そしてバビディの魔術にはその潜在能力を引き出す術がある」

「貴様が潜在能力を引き出されて俺様を越えたとでも? はっ、笑い話もそこまでにしておけ。貴様如きがたかが潜在能力を解放された段階で」

 

 言いかけているところで、フリーザが腕を腰だめに構えて気を発する。その気の総量は超サイヤ人2のベジータと遜色ない。

 

「私も実に驚いていますよ。生まれながらの天才ですから今まで鍛えたことなんてありませんでしたけど、する必要もありませんでした。潜在能力の末端を呼び起こしただけで、こんな力があるなんてね」

 

 ベジータもようやく理解する。今のフリーザがバビディの魔術によって潜在能力を引き起こされた状態だと、その力はベジータと遜色ない領域にある。

 

「孫悟空の相手は今の私でも手を出せないブロリーが相手ですから譲って差し上げましょう。私を殺してくれたもう一人のサイヤ人は未来人だという話ではありませんか。未来人では復讐できませんから父親のあなたで妥協するとしましょう」

「何故、貴様がそのことを」

「わざわざ教える必要はありませんね。聞きたければ私を倒すことです。私を地獄に送り返すというなら簡単なことでしょ?」

 

 情報源が分からないベジータは更に眉を顰めるが、フリーザはいないトランクスの代わりに復讐の牙を向けて笑う。

 

「昔のように直ぐに終わっては面白くありません。少しは抵抗して下さいよ」

「やってみせろ」

 

 挑発したベジータは直ぐに超サイヤ人2になって嘗て殺された恨みを晴らすべくフリーザに向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここに悟空VSブロリー、セルVS悟飯、ベジータVSフリーザの天下分け目の決戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「気付いたか、悟天」

「うん、お父さん達と兄ちゃんが誰かと戦ってる」

 

 寝静まった家族の隙を突いて家を抜け出した孫悟天とトランクスは、とある空の上で落ち合った。

 

「行くよね、トランクス君」

「行く行く! 父さん達だけで楽しそうなことをやっているのに放っとかれて堪るもんか!」

 

 そして遠方から感じた父親達の戦闘時の気に悟天とトランクスが向かうのだった。

 

 

 




余裕見せちゃったバビディ。でも、この面子で負けを想像できる方がおかしい。とか、考えてたらブロリーが洗脳の魔術を取り込んで更なる強化。超3に覚醒。しかも洗脳はとっくの昔に解かれていた様子。

そしてセルも強化。相手は悟飯で、どうやら七年前より強くなっている悟飯よりも力は上らしい。

最後にフリーザ。相手は妥協されてベジータ。悟空の相手はブロリーで、未来トランクスはいないから妥協された様子。でも、舐めてたらかなり強くなってたらしい。ベジータ危うし。

指令:魔人ブウの復活エネルギーを与えないように三人を倒せ

次回、『第十二話 魔人、再誕』

もう一度、言おう。敵の強化は必須である。


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第十二話 魔人、再誕



バビディの手下になった三人にも差はある




 

 

「あれだけ強い奴らを手下にしたんだから前みたいにチマチマやってられないよ」

 

 魔人ブウが封印された玉の前で3つの戦いを観戦していたバビディは物凄い速さでメーターが動くのを見て笑みを零す。

 

「ふふん、早い早い。やっぱり僕は天才だね」

 

 どれだけ魔人ブウ復活のエネルギーが溜まったかを確認して、そのあまりにも早いメーターに驚愕しながらも自分のやり方が間違っていなかったことに喜ぶ。

 

「バビディ!!」

 

 そこに現れたのはキビトを伴った界王神。

 

「へぇ、界王神。もう来たのかい」

「ここまでです。魔人ブウの復活などさせませんよ!」

 

 ゆっくりと振り返ると十分に戦闘態勢の界王神とキビトの姿にバビディは少し焦る。

 ブロリーやセル、フリーザは魔人ブウ復活のエネルギーを得る為に戦いに振り向けているので直衛の護衛は一人もいない。界王神との一対一ならば確実に勝てる自信があるが、流石にキビトも含めた二対一は厳しい。

 

「随分と来るのが早い。良くここが分かったね」

 

 なので、冷や汗を掻いていることがバレないように会話で時間稼ぎをする。

 

「魔人ブウ復活のエネルギーを得る為には悟空さん達が戦う場所から極端に離れた地に拠点は造れない。転移された三人の居場所の中心を探してみれば大当たり。策に溺れましたね」

「むぅ……」

 

 界王神の言う通り、エネルギーを得る為には遠すぎてはいけない。戦いの余波で封印されている玉を壊されても叶わない。三ヵ所の中心という分かり易い位置に拠点を置いたのは慢心と言う他ない。

 強い戦士を得たことで慢心し、油断していたことは否めないので何も言い返せない。

 

「え?」

 

 ふと、背後からビービービーと警報のような音が連続して響いてバビディは界王神から目を離して振り向いた。

 

「ま、まさか」

 

 地球に来てから殆どエネルギーを集められていない。その音が聞こえるのはあまりにも早過ぎる。

 敵から目を離すことがどんなに危険かも分かっていながら、メーターの方へとフラフラと近づいていく。

 

「まさか、こんなに早くは」

 

 無防備に背中を見せるというあまりにも大きな隙が逆に罠だと想像させて界王神の行動を遅らせた。その間にバビディはメーターを見る。

 

「あ!?」

「ふ、ふ、ふふ、フハハハハハハハ、フルパワーになったぁ――っ!!」

 

 界王神も遅まきながらその音が何を意味するのかと理解した時、バビディはメーターがMaxになっているのを確認して哄笑を上げる。

 

「遂に魔人ブウの復活だ!! ハハハハハハハ、やっぱり僕は天才だ!!」

 

 両腕を上げて喝采するバビディの背中を見る界王神の全身が震える。

 

「な、何故こうも一気にダメージパワーが……!? あまりにも早すぎる!?」

「アイツらの力を知らないなんて馬鹿だね。僕ら以上の超パワーの僕の手下と孫悟空達の力がぶつかり合えば、そのダメージも凄まじい」

 

 界王神が思わず固まっている姿を見て、にんやりと嗤ったバビディが解説する。

 

「こうまで早いとは予想外だったけど、パパとは頭の出来が違うんだよ!」

 

 自分が作った手下と悟空達のぶつかり合いがエネルギーを作り出したと自画自賛するバビディの背後で、玉を固定していた台座から多量の蒸気が噴き出す。

 

「も、もう駄目です界王神様! 逃げましょう!」

 

 ブウの恐ろしさは界王神が身を持って知っている。キビトの言う通り逃げる方に気持ちが傾く。

 

「どうせ復活してしまうのなら」

 

 本来ならば戦う由縁のない悟空達をバビディの魔の手に巻き込んでしまった悔恨が界王神に思い切った行動を取らせる。

 

「うぉおおおおおおおお!!」

 

 最大限に気を高めて両腕に集める。次など考えない、この一撃に全てを賭けて。

 

「いけぇええええええええええええっ――――!!」

 

 今自分が放てる最大限の一撃を以て、せめてもの一矢報いるべく界王神の気功波が放たれた。

 

「げげっ!?」

 

 界王神の無様さを嘲笑っていたところに破れかぶれの行動を予想していなかったバビディは慌てて避ける。

 遮る物の無い気功波は玉を直撃し、固定していた台からも弾き飛ばす。

 弾き飛ばされた玉が地面に落ちてゴロゴロと転がり、バカっと真っ二つに割れた。

 

「出るぞ、魔人ブウ!」

 

 少しでもダメージを与えていればと界王神とキビトが身構えるが、割れた玉の中には何もない。

 

「か、空っぽ?」

「違う! そ、そんな、なんで、なんでなの!?」

「残念でしたね、バビディ。どうやら魔人ブウは私の気功波で消滅してしまっ」

 

 キビトが呆然と呟き、バビディが困惑している中で奇蹟に喜んでいた界王神は喋っている途中で上空に蒸気の煙が集まっているのを見てしまった。

 

「ブウ――ッ!!」

 

 煙は人型を為して、魔人ブウは封印からその姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ」

 

 ダメージの大きさに孫悟飯は膝をついた。

 直ぐに立ち上がろうとするも息も切れてしまって力が入らない。膝に手を付いて戦っている敵を見上げる形になる。

 

「ふふ、どうやらあの時とは逆の立場になってしまったな」

 

 悟飯と違って大きな疲労や重いダメージを負っていないセルは、隙だらけのように見えて油断一つない立ち姿で見下ろしている。

 

「死んで蘇ったばかりの私にとってはつい先程のことだが、貴様にとっては七年も前との戦いが思い起こされるようだ」

 

 超パワーを警戒して一定の距離より近づかないその姿に悟飯が付け入れる隙は欠片も見いだせない。

 

「あの時は届き得なかったパワーを超えた。バビディ様のお蔭だ」

 

 油断はしていないが自分でも知らなかった潜在能力に恍惚とした笑みを浮かべ、拳を握ったり開いたりする。

 

「バビディなんかの手下になって力を得て満足か?」

「ああ、満足だとも」

 

 回復する時間稼ぎの挑発に敢えて乗ったセルが腕を広げる。

 

「貴様らには決して分からぬだろうが、バビディ様の手下に成れたことを私はとても喜んでいるのだよ」

 

 嘗てのセルならば決して言うはずもない言葉に悟飯は洗脳の力の恐ろしさを痛感する。

 

「ぬ!?」

「え!?」

 

 その時、魔人ブウの気を感じ取った二人が同時に動きを硬直させる。

 

「これが魔人ブウの気か。どんなに凄い奴かと思えば、こんな程度の戦闘力数か」

 

 魔人ブウの気を感じ取ったセルが自分よりも下だと断定して嘲笑う。

 

「やはりバビディ様の手下は私だけで十分だということだ。孫悟飯、貴様にもその場面を見せてやろう!」

「っ?!」

 

 瞬間、セルは超スピードで悟飯に近寄ると腹に気功波を放って大きく弾き飛ばした。

 吹き飛ばされた悟飯はその進行方向に魔人ブウの気があることを感じ取っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔人ブウがその姿を現した時、ベジータとフリーザは拳と脚をぶつけ合っていた。

 

「どうやら、ここまでのようですね」

「ぐっ!?」

 

 ブウから感じられる不思議な気に体が硬直したベジータを尻尾で殴り飛ばしたフリーザが大きく一歩後退する。

 

「ちっ、どういうつもりだ?」

 

 頬を強かに打ち据えられ、少し距離が空いたベジータが忌々し気に血を吐く。

 

「ベジータさん、あなたとの戦いはもう終わりだということです」

 

 ベジータを殴った尻尾で地面を一度叩いたフリーザの関心は既に眼前にはない。

 

「勝負の途中で逃げる気か」

「逃げる?」

 

 挑発してくるベジータは悠然と唇を吊り上げたフリーザが決して笑っているわけではないと気づく。

 

「今回、私がバビディとかいう痴れ者に手を貸したのは今のあなた達の強さを知る為です。最初から洗脳などされていませんから、命を賭けてまで尽くす義理はありません」

 

 フリーザがゆっくりと額を撫でるとMの字が消えてなくなる。

 

「なんと言葉を変えようと逃げることに変わらんだろう」

 

 自分よりも強い者がいることを認めたフリーザの内心が荒れ狂っていることに遅まきながら察したベジータがゴクリと唾を呑む。だからといって臆してしまってはベジータらしくない。挑発を繰り返す。

 

「ええ、逃げますよ。当然でしょう。私と同格なのは精々がベジータさんぐらい。あのセルとかいう奴や特にブロリーというサイヤ人は私の遥か上にいます。その上、魔人ブウともなれば碌な結果にはならない。折角生き返ったのですから命は大事にしないといけませんからね」

 

 プライドの塊であるフリーザが自分が弱いことを認め、逃げることしか出来ないと受け入れることがどれだけ苦痛であるか。

 

「ただし、この一度だけです。私は孫悟空よりも、あのブロリーよりも、そして魔人ブウよりも遥かに強くなって戻ってきます」

 

 目だけを炯々をギラつかせて全てを睥睨するその姿は悪の帝王の名を欲しいままにしていた嘗ての姿そのまま。

 

「あんな奴らに負けないで下さいね」

 

 不吉な宣言だけを残してどこかへ飛び立っていくフリーザ。

 

「くそったれが」

 

 今、ここでフリーザを倒しておかなければ嘗てのように手の負えない敵となって戻ってくると分かっていても、底知れない魔人ブウの気を放っておくことは出来ずベジータは逆方向へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大地が鳴動する。空気が震える。

 

「がはっ!?」

 

 何度目かも分からなくなるほど打ち据えられた悟空が地に体で轍を作り上げる。

 

「はぁはぁ、仙豆……」

 

 死神が迫るが如くゆっくりと近づいて来るブロリー。回復するまで待つかのようなその姿を悔し気に見ながら、三粒目の仙豆を口に入れて呑み込む。

 

「思えば」

 

 回復した悟空が飛び上がって放った気弾を防御することなくその身体で受けてもダメージを全く受けていないブロリーが呟く。

 

「貴様と闘うのもこれで三度目か、カカロット。いい加減に見飽きてきたぞ」

「ブロリー!」

 

 気弾では効果が薄い。肉弾戦で決着を着けるべく、超スピードで近づいて背後から拳を放つ。

 

「軽い」

 

 見ることなく軽く掲げられた掌であっさりと受け止められると、悟空の全力の一撃をそう評するブロリー。

 

「攻撃とは、こうやるものだ」

 

 振り返って軽く放たれた拳が悟空の目にも映らぬ速さで腹を抉る。

 更に固めた両腕を浮き上がった背中に打ち込まれて地面に叩き落とされる。

 

「がっ!?」

 

 地面にバウンドした体を思いっ切り蹴り飛ばされた。

 近くにあった岩山に背中からぶつかってあまりの威力に体が埋もれる。

 

「げほっ、がはっ」

 

 咳き込みながら体を起こすも、口からは血が溢れている。

 途切れそうになる意識を必死に繋ぎ止めている。その最中、ブロリーは大気の色が変化するほどの気を掌に球状に凝縮させ、悟空に向かって投げつける。

 小さい気弾に気付いて避けようとするが遅い。

 

「があっ!?」

 

 極大の悪寒に従って身を捻るも背にしていた岩山に着弾して大爆発が発生し、悟空はその只中に晒される。

 小さくとも破壊力は絶大。

 全身が焼け爛れような痛みの中で地を転がる悟空は、やはり恐怖を染み込ませるように歩いて向かって来るブロリーを見る。

 

「…………オラだって超サイヤ人3なのに」

 

 超サイヤ人2の時点で超サイヤ人3が互角だったのだから、同じ位階になれば不利になるのは目に見えていたが、これほどの差があるとは。

 たった数撃を受けただけなのに、仙豆を食べて回復したばかりの体がもう悲鳴を上げている。

 圧倒的な力の差に流石の悟空ですらも挫けそうになっていた。

 

「む? ほぅ……」

 

 ブロリーが彼方を見て、悟空もその理由を察する。

 

「魔人、ブウ」

 

 突如として異様な気の持ち主として考えられるのはたった一つ。ブロリーの主であったバビディの目的である魔人ブウが復活したとしか考えられない。

 直後、ブウの近くで一つの気が消失し、もう一つがこちらへと向かって来る。

 

「界王神様!」

 

 飛んでくるというより何かに弾き飛ばされたような様子でやってきた界王神は上手く着地は出来ず、何度も転がって止まった。

 

「あ、あぅぅ……」

 

 苦痛で顔面を歪めた界王神が血塗れで起き上がろうとするがダメージが大きすぎて果たせずに崩れ落ちる。

 

「か、界王神様」

 

 幸いにも彼我の距離はそこまで遠くはなかったので悟空は足を引きずるようにして界王神の下にまで移動する。

 

「悟空さん、に、逃げて」

「おや、まだ生きてたのかい。ブロリーにやられちゃってると思ったのに」

 

 そこへピンク色の巨体を従えたバビディがフワフワと宙より舞い降り、気味の悪い笑みを向けて来る。

 

「孫悟空、お前にも見せてやるよ。こいつが魔人ブウだよ」

「ブウ~♪」

 

 傷だらけの悟空の姿に更に機嫌を良くしたバビディに紹介されたブウが奇妙な踊りを舞っていた。

 馬鹿の振りをしているが恐るべき戦闘力をブウが有していることは、先程一瞬上がった気が証明している。悟空は仙豆の袋を触って残りが二粒であることを確認して計算する。

 その直後、界王神と同じように空を飛んできた悟飯が二本の足で地面に轍を作りながら着地する。

 

「悟飯!」

「と、父さん……」

 

 今の悟空とどっこいどっこいの様子の悟飯が振り向いたのと同時に、大した怪我も負っていないセルも到着する。

 

「バビディ様」

「おお、セル。お前も良くやってくれたね。お蔭でブウが復活できたよ」

 

 悟飯をこの地に飛ばした張本人であるセルは主の前で直立不動になって頭を下げ、忠誠を向けられたバビディもご機嫌で応える。

 

「それが魔人ブウですか……」

 

 バビディの後ろで「ホッホッホッホホ」と言いながら踊っているブウを見て見下した視線を向け、何の前兆もなく超スピードで近づいてその腹を右腕で貫く。

 

「な!?」

「やはりこの程度か」

 

 ブウの体の力が抜けて動かなくなったのを見たセルはバビディが何を驚いているのかすら分からない。

 

「バビディ様、あなたの僕に相応しいのはこの人造人間セルです。このような出来損ないの魔人では」

「おい、ちょっと痛いぞ」

 

 ない、と言おうとしたところでブウの顔が上がる。

 セルが腕を抜こうとするが接着されたかのように動かない。

 

「お前なんか嫌いだ!」

 

 セルの右腕の下から突き刺さるボディブロー。

 比喩ではなく、抉られた右脇腹部分から臓物と血を撒き散らし、殴られたあまりの衝撃にも右腕は抜けずに千切れる。

 

「ブウ!」

 

 それを為したブウはヨロヨロと後ずさって千切れた右腕と右脇腹を再生しようとしていたセルに向かって気功波を放ち、大爆発を見届けながら軽い様子で自らの穴の開いた腹部を復元する。

 

「あ、上がった。魔人ブウの気がば、爆発的に上がった……!?」

 

 セルがいた場所を粉微塵に吹き飛ばすような気功波の衝撃を腕で庇いながら、攻撃の瞬間に爆発したかのように上昇した気は確かに界王神が恐れるほどであると悟飯も悟る。少なくとも今の悟飯では叶う相手ではない。

 そう、今の悟飯では。

 

「ブウ、そいつはいいから先に界王神達を殺しちゃってよ」

 

 死刑宣告に等しいバビディからブウへの命令を聞いた中で悟飯が動けたのは、まだ比較的にダメージが少なかったから。

 

「くっ」

 

 界王神と悟空の下に飛んで二人の腕を掴んで今出せる全力でその場から離脱しようと考えた悟飯の前にブウが先回りしていた。

 

「消えちゃえ」

 

 ブウから極大の気功波が放たれる。

 人間の体など容易く覆い隠すほどの気功波が悟飯を呑み込んで遥か遠くに向かって飛んで行く。

 

「波――っ!!」

 

 なけなしの力を振り絞った悟空がなんとか気功波を放って撃ち落とすが、爆発に紛れて落ちた悟飯の姿は見えない。

 

「界王神様、これを食ってくれ」

 

 セルの気もまだ完全には消えていない。ブロリーは腕を組んで不気味な沈黙を守り、ブウの力は今の傷だらけの悟空では叶うものではないだろう。

 悟空は覚悟を決めた。

 残っている仙豆を界王神の口に持って行き、食べさせて回復させた後は起き上がった彼に仙豆の袋を渡す。

 

「悟飯はまだ生きてる。最後の一粒を食べさせてやってくれ」

「悟空さん、あなたは」

「頼む。後は任せた」

 

 悟空の意を汲み取った界王神が悟飯の下へ向かって飛んで行く。

 背中を見せて飛んで行く界王神を見据えたブウがバビディを見る。

 

「あいつも殺すのか?」

「界王神は後でもいいよ。まずは僕を殺そうとしてくれた孫悟空を先に始末することにしよう。さあ、やっちゃって、ブウ」

 

 ブウが蘇った以上、逃げた界王神はこの場だけは見逃して構わないと判断したバビディ。

 それよりも一度は殺されそうになったのと、十分な危険要素である悟空を先に始末するようにブウに命令する。だが、その命令を受け入れられない者がいた。

 

「待て、カカロットを殺すのは俺だ」

 

 ブロリーが悟空を殺すのは自分だと立ち塞がった。

 

「ブロリー、邪魔をするんじゃないよ」

「言ったはずだ。カカロットを殺すのは俺だと」

「う~ん、僕の命令を聞かないなんて。洗脳が甘かったかな」

 

 頑なにどこうとしないブロリーに眉を顰めたバビディが手を向けて魔術を使おうとして、ブロリーの額を見て目を見開いた。

 

「お、お前まさか僕の魔術を」

「食った。礼を言っておこう、バビディ。お前のお蔭で俺は更なる高みへと至った」

 

 超サイヤ人3である長髪を揺らしながらニヤリと笑ったブロリーはバビディに向けて口を開く。

 

「一度は命を救ってくれたことと、俺に更なる力をくれたこととを考えて去るというのならば命だけは見逃してやろう。しかし、邪魔をするならばお前達も死ね」

 

 抱いた覚悟を前にして妙な展開に目を白黒とする悟空の視線の先で、ブウがピューと頭の穴達から大量の蒸気を噴き出す。

 

「お前、生意気」

「そうだね。調教はやり直さないといけないようだ。やっちゃって、ブウ」

「ブウ!」

 

 自分を毛ほども気にしていないブロリーに怒りを見せたブウをけしかけたバビディは直ぐに後悔することになる。

 ブウはとんでもない速度でブロリーに接近すると、セルの右脇腹を容易く抉った拳を叩きつけた。

 

「それで本気か?」

「ブウ!?」

 

 顔面に拳を受けたブロリーは失望を全身で表しながら、攻撃してきた腕を掴んで逆に殴り飛ばす。その際、セルと同じように右腕が千切れる。

 

「ふん、再生か。ならば、消滅させるだけのこと」

 

 ブウは瞬く間に右腕を生やすが、その口から垂れた血は消せない。

 再生能力など極大の力の前には無意味だと知らしめるように、溢れる力を身に纏ったブロリーの猛攻が始まった。

 

「ぶ、ブウ……!?」

 

 再生を上回るほどのパワー、圧倒的なパワー、超人的なパワーがブウを追い詰める。

 殴られ、蹴られ、投げ飛ばされ、気功波が体を吹き飛ばす。

 何度体を吹き飛ばされても再生すればいいが、ブロリーの攻撃はあまりにも重すぎてブウの体に少しずつダメージが蓄積していく。

 

「どうしたんだよ、ブウ!」

「困った。ちょっと勝てない……」

 

 バビディが焦っているように、単純にして明快な理由としてブロリーが強すぎてブウは自らに勝機が薄いことを悟る。 

 攻撃を仕掛けても簡単に避けるか防御されて、ダメージを受けるのはこちらばかり。しかもまだまだブロリーは余力を残しており、持久戦になっても勝ち目が見えない。

 

「ヤバいかも」

 

 今も頭部を気功波で吹っ飛ばされ、直ぐに再生しても何も出来ずにダメージが蓄積していく現状に流石にブウも焦る。

 

「あ」

 

 その時、近くで再生中のセルを見つけたブウは少しでも足しになればと、悪魔の考えを思いつく。

 

「き、貴様……」

「いただき」

 

 ようやく頭部が再生していたところのセルが自分に覆い被さるブウに気付いても何も出来ない。

 セルは嘗て17号や18号をそうしたように自らも他者に吸収される末路に至る。

 

「ォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオ――――――――ッ!!!!」

 

 セルを吸収したブウに変化が起こる。

 頭の複数の穴から蒸気を噴き出し、その身体を覆い隠す。

 

「――――――やれやれ、乱暴な吸収の仕方だ」

 

 やがて蒸気が晴れた時、そこに嘗てのふとっちょのブウの姿はない。

 長身かつ筋肉質な体型で先程の体形よりもよほど戦闘向きな体格になり、衣装部分も上半身は剥き出しになったブウがそこにいた。

 

「さて、第二ラウンドといこうか」

 

 蘇った魔人が人造人間セルを吸収して新たな姿として再誕した。その姿を見てもブロリーの余裕の笑みは揺るがない。

 

 

 




 セルは完全に洗脳され、フリーザはそもそも洗脳されていない。ブロリーは洗脳を取り込んだ。
 セルとフリーザの差は、悪としてのカリスマと経験である。ブロリーには破壊衝動を甘く見過ぎた。

 フリーザが従ったのは自分よりも強いセル・ブロリーがいたのと、悟空達の今の力を知る為。
 誇り高いフリーザが一度でも他者の前に膝を屈したのだから、次またやってくるときは更なる力を得ているだろう―――――復活のF、ゴールデンフリーザのフラグが立ちました。
 超サイヤ人ブルー、もしくは超サイヤ人4にならなければならなくなりました。

 安定と安心のブロリーの反逆。バビディの失敗は悟空を殺そうとした事だった? 流石は悟空専門のストーカー。やることが違う。

 そしてブロリーに勝てないと悟ったブウがセルを吸収。魔人ブウ:セル吸収体となりました。人格面ではセルの影響が多いようです。

 後、現段階での強さランクは以下のようになっております。

SS :超3ブロリ―>>アルティメット悟飯≧ブウ:セル吸収
S  :超3ゴテンクス>超3悟空=超2ブロリー≧ブウ
AAA:復活セル>超2悟空=超2ベジータ=超2悟飯=復活フリーザ
AA :ピッコロ
A  :トランクス≧悟天

誰かポタラを持って来るか、老界王神連れて来て悟飯をアルティメット化してくれ


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第十三話 悪夢を超えた先


お気に入り件数が伸びなくなってきたので登校時間を12時に変えてみました。




 

 異様に感じた魔人ブウらしき気の下にベジータがやって来た時、場は混沌としていた。

 

「なんだ、これは?」

 

 ぶつかり合う二者が起こす衝撃によって、空に上にいるベジータの下にまで振動が響いて来る。

 

「ははははははははは!!」

「うぉおおおおおおおお!!」

 

 前者は笑いながら、後者は雄叫びを上げて戦っている。

 笑っているのはベジータも見覚えのあるブロリーである。雄叫びを上げている筋肉質な趣味の悪いピンク色の男はブウなのかと一人で結論付ける。

 

「ブロリーの野郎もフリーザと同じように生き返ったのか」

 

 まさかバビディによって救われていたとは知らないベジータはフリーザの前例を鑑みて生き返ったと思い込み、戦っている二人から離れた場所にいた悟空を見つけてそちらへと向かう。

 

「カカロット」

「ベジータ……」

 

 近くに下りて呼びかけると悟空が冴えない顔をして名を呼んでくる。

 

「あれが魔人ブウか。しかし、何故ブロリーと。一体どうなってやがる」

 

 しけた顔をしていると突っ込みはせず、今は状況を理解することに努める。

 

「分かんねぇ。魔人ブウも最初はあんなんじゃなくて太っちょのデブだったんだ」

 

 悟空もまた真に状況を理解しているとは言い難いが、見ていたことの説明ならば出来る。

 

「悟飯が何も出来ずにやられちまった。界王神様に仙豆を渡して助けに行ってもらったが……」

 

 悟飯を気にする悟空だったが、今は目の前の敵を優先することにして意識を闘っている二人に戻す。

 

「バビディの魔術を呑み込んだブロリーと戦って力の差を感じ取ったブウがセルを吸収してあの姿になりやがった」

「セルの野郎も生き返ってやがったのか」

 

 フリーザといい、嘗て戦った敵のバーゲンセルとでも言うのか。

 

「ブウもあの様じゃセルを吸収したって大した意味はなかったようだな」

 

 ブウの行動は嘗てベジータに追い詰められて完全体になることに固執したセルの焼き増しである。

 折角生き返ったにも関わらず、因果応報な結末を迎えたセルに同情してやるほど甘い性格ではないベジータは皮肉に唇の端を上げるに留める。

 

「オラも生き返ったセルを見たがパワーアップしてても悟飯よりも少し上ってぐらいだった。ブロリー相手じゃ焼け石に水しかなんねぇだろ」

「それが実際に戦った貴様の意見か」

 

 ベジータとて馬鹿ではない。超サイヤ人3となってベジータとは隔絶した領域にいる悟空が立っていることすら出来ないほど消耗する相手など、今もブウを嬲っているブロリー以外に考えられなかった。

 

「単刀直入に聞くぞ、カカロット。貴様ならあの二人に勝てるか?」

 

 脅威にしかならない二者を倒すには、圧倒的にベジータに力が足りなかった。

 七年前よりも遥かに強くなっても、あの二人と比べれば雑魚としか呼べない自らにベジータは震えた。

 勝てるとすれば、超サイヤ人2を更に超えた超サイヤ人3に到達した悟空しかいない。

 

「…………無理だ。前のブウならともかく、セルを吸収した今のブウには多分届かねぇ。ブロリーには超サイヤ人3でも手も足も出ねぇ。仙豆を使ってどうにか生き延びたようなもんだ」

「どっちが勝っても俺達には最悪なだけってことか」

 

 ブウもブロリーも、悟空とベジータでは届き得ない領域で戦っている。

 

「気が高まる! 更に溢れて来るぞ! もっと俺を楽しませろ!!」

「ぐっ、ぬぅおぉっ!?」

 

 しかも、ブロリーの力は戦っている間にも高まっており、順調に行けばブロリーが勝利して更に手に負えない存在となるだろう。

 

「このままだと仮にブロリーがブウを倒したとしても疲れてくれるようには見えんな。どうする、カカロット」

 

 どうすると聞かれても悟空には全てが丸く収まる名案はない。

 ここで二人とも倒さなければ本当に手に負えなくなると分かっていても、倒せるだけの力が今の悟空にはない。なければ、搾り尽くすしかないとしか思いつかない。

 

「パパ!」

「お父さん!」

 

 そこへ空から孫悟天とトランクスが降りて来て駆け寄って来る。

 

「お前達、どうして」

「へっへっへっ、こんな夜中にあんなに気を高めたら気づくに決まってるじゃん」

「僕達を除け者にして、みんなだけ楽しそうなことしようしてるんでしょ。家を抜け出して探したんだよ」

 

 子供達は父親を見つけた自分達の行動を全く疑っていない。

 二人は知らないのだ。世の中には生死を賭けた戦いがあることを。

 この七年の間にあった大きな戦いといえばブロリーとの戦いぐらいだが、二人が命がかかった戦いだと認識出来ていたかは怪しいものがある。

 当然である。何しろ、二人はまだ年齢が二桁にもなっていないのだから。

 

「悟天、これは遊びなんかじゃねぇ」

「お父さん?」

 

 何を言えば良いのだろうか。

 何と言えば良いのだろうか。

 

「ここは危険だ。お前達だけでも逃げろ」

 

 悟天の頭を撫でながらも安心させることが出来ない悟空は自分が親失格であると痛感する。

 

「家に帰って母さんを連れて天界に行くんだ。ブルマなら地球から逃げる宇宙船の一つぐらいあるだろう」

「ど、どういうこと、お父さん?」

「アイツらは強い。オラ達じゃ勝てねぇかもしんねぇってことだ」

 

 立ち上がると体がミシミシと軋む音がした。

 

「い、嫌だ。僕も、僕も戦うよ!」

 

 遅まきながらも悟空の体に走る傷跡の数々を目にした悟天は自分がやってきた場所が死地であると理解しながらも、湧き出して来た思いがそう叫ばせていた。

 

「僕とトランクス君、おじさんとお父さんならどんな相手だって負けやしないよ!」

「勝てねぇんだ。悟飯もやられちまった」

 

 サイヤ人という種がどれだけ常識外れに強いかを情操教育と一緒に叩き込まれて来た悟天は、だからこそ兄である悟飯が倒されたという言葉に根拠のない自信を吹き飛ばされて顔を真っ青にする。

 

「界王神様さえ間に合えば生きてはいるだろうが、父さんも勝てなかった。お前達がいても足手纏いだ」

 

 そう遠くない内に趨勢が決するブウとブロリーの戦いを見ながら悟空は捨て身ばちの作戦を考えていた。

 その時、ガッと近くで何かを叩く音が響いた。

 

「うぐっ!?」

「ベジータ、何を!?」

 

 次いでズッという音と共に腹にベジータの拳を食らった悟天が呻き声を漏らして崩れ落ちる。

 意識を失って崩れ落ちる身体を抱き留めてベジータを見る。

 

「カカロット、貴様は甘い」

 

 同じように意識を失っているトランクスを片手に抱えたベジータと悟空の視線が合う。

 その眼の奥に灯った覚悟は悟空と同質の物だった。

 

「ガキ共を連れて行け」

 

 トランクスを悟空に向かって放り投げて受け止められるのを見届けることすらせず、ベジータはボウッと超サイヤ人2のオーラを強める。

 

「ベジータ!」

「貴様のそんな有様では奴らを殺しきれん。どちらがガキ共を連れて行くとなれば選ぶ必要もないだろう」

 

 それは悟空がやろうとしていたことだった。

 ブウとブロリーをこの場で倒さなければ、もっと脅威になる。しかし、今の悟空では力が足りない。ならば、この身にある全てを破壊に注ぎ込んで自爆する。それならば倒せる可能性はある。

 だが、それを為す為には悟空の体は傷つき過ぎていた。全力以上の力を放てるだけの状態ではない。

 フリーザとの戦いで疲労していても、今のベジータの方が悟空よりも大きな力を発揮できるだろう。

 

「俺ともあろう者が貴様達の影響を受けて穏やかになっていって、家族を持って悪くない気分になるなど想像すら出来なかった」

 

 穏やかに語り掛ける口調は、嘗てのベジータからは決して想像できない。

 

「居心地の良い地球も好きになってきてしまっていた」

 

 過去は決して消えない。仮にベジータが過去を悔いたとしても、為してしまった罪業は変わることはないのだから。

 何度も地球を救った悟空。超サイヤ人3に至った悟空。

 幾つもの星を滅ぼして来たベジータ。超サイヤ人3に至れていないベジータ。

 生きるべきなのがどちらかは一目瞭然。

 

「カカロット、サイヤ人の王としての最初にして最後の命令だ」

 

 最早、そんな区分に意味はないと分かっていても、嘗て抱いた矜持を思い出すように告げた。

 

「地球を、ブルマとトランクスを頼んだぞ」

「…………ああ、分かったベジータ!」

 

 最も近い感性を持った相手だからこそ、理解してしまった悟空はトランクスと悟天を抱えて瞬間移動で消える。

 

「あばよ、カカロット」

 

 悟空がいなくなった場所を見ながらベジータは寂し気に呟き、超サイヤ人2のオーラを強めて自分には及びもつかない領域で戦っている二人向かって力を高めながら歩き出す。

 

「もう二度と会うこともあるまい」

 

 この七年の間のふとした時に悟空に死後の世界のことを聞いて、ベジータは確信したことがあった。

 

「俺は貴様のように肉体が与えられることは決してない。嘗て仲間を殺したことがある俺を生き返らせてくれるとも思えん」

 

 ベジータは罪もない人々を殺し過ぎた。死ねば肉体は無となり、悟空とは違う世界に送られる。そこで魂は洗われ、記憶も失くして新しい世界に変えられる。

 始めて地球に来た時に、ナッパがやったとはいえ悟空の仲間を殺したこともあるベジータを、何度でも生き返らせることが出来るナメック星のドラゴンボールを使ってまで蘇らせてくれるとは考えらなかった。

 

「さらばだ、ブルマ、トランクス」

 

 ベジータが一歩ずつブウとブロリーが戦っている場所へと歩いていく。

 思い返せば、戦いばかりの人生だった。

 サイヤ人の王子として力を求め、惑星ベジータが破壊されてもフリーザの下で働いた日々。

 ドラゴンボールを求めて地球にやってきた悟空と闘い、ナメック星での悟飯やクリリンとの共闘、惑星ベジータ崩壊の真実とフリーザに手も足も出ずに殺されたことは昨日のように思い出せる。

 帰って来た悟空と未来のトランクスの超サイヤ人に奮起し、ブルマと体を重ねてトランクスが生まれた時の気持ち。超サイヤ人に目覚めた時のことは決して忘れることはないだろう。

 人造人間達、そして精神と時の部屋でのこと、セルを完全体にしてしまい、結果的に悟空を死なせる遠因になったこと、心の奥に残り続ける。

 天下一大武道大会での悟空との戦い、そしてブロリーとの戦いで見せつけられた悟空の超サイヤ人3.。

 何時まで経っても悟空に追いつけず、現れた自分よりも強い者達。

 地球を、未来を、家族を守る為にベジータはその命を散らす。

 

「後は任せたぞ」

 

 死出の道を歩みながら、ブルマの甘い香りと、始めて抱いてやったトランクスの温かさをもう一度感じたかった。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお―――――――っっっっ!!!!」

 

 戦っていたブウとブロリーが高まるベジータの力に手を止めるが既に遅い。

 ベジータを中心に閃光が爆発し、全てを呑み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 閃光が全てを支配した瞬間、遠く離れた西の都の地にていなくなったベジータと飛び出して行ったトランクスの帰りを待っていたブルマを胸騒ぎが襲った。

 

「ベジータ……?」

 

 持っていたカップを落として割ったことにも気づかないブルマの頬を一筋の涙が流れていき、登り始めた朝日に照らされてキラリと輝いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベジータによって全てが吹き飛ばされた中で、戦いに巻き込まれないように距離を取っていたバビディですらバリアーを破られていた。

 

「ぐっくぅ、ベジータめ。やってくれたね」

 

 バビディが生き残れたのは戦いに巻き込まれないように距離を取っていたからに過ぎない。それが分かっていたからこそ、バビディもそれ以上の文句は言わずに自分の体を魔術で治す。

 

「しかし、これは……」

 

 朝日がベジータがいた自爆をした場所を中心として直径一㎞近い範囲に出来た広大なクレーターを映し出す。

 バビディがいたのはこの直径一㎞の端っこであったのに、バリアーを破られるほどの破壊力があった。当然、中心部の方が威力が強かったはずなのだから一体どれだけの力を込めたのかと呆れる。

 

「あ、そうだ。ブウ!」

 

 ブロリーの存在がバビディの中でブウを無敵の存在から格下げさせていた。

 セルを勝手に吸収したことを非難する間もなく、ブロリーは更に強い力を以て圧しにかかっていた。そんな最中で中心部にいたブウは爆発に巻き込まれたはずである。その安否を確認せずにはいられない。

 

「いた!」

 

 爆心地から少し離れた場所にかなりを焼き尽くされたブウを発見した。

 急いで向かうと、その惨状に絶句する。

 

「うぐっ、ぁ」

 

 ブロリーとの戦闘のダメージもあったのだろうが、右半身が消滅して残る左半身にしても焼き尽くされている。頭の触手は半ばから存在しないにも関わらず、不死身ともいうべき再生力を誇るブウの体が遅々とした速度でしか回復していない。

 

「今、治すよ」

「治す?」

 

 魔術で治癒を早めようとしたバビディを巨大な影が覆う。

 

「はっ、あの程度の破壊にすら耐え切れんか」

 

 恐怖に固まったバビディは振り返ることすら出来ない。それでも何かに促されたかのように、人形のようにギクシャクとした動きで振り仰ぎ、絶句した。

 

「あ、悪魔……」

 

 ブロリーもまた傷だらけの有り様だが、二本足でしっかりと立っている。

 血化粧に染められたその狂笑は悪魔としか言いようがなく、一時は魔界の王であるダーブラを従えたバビディですら怖気が走るのを抑えられなかった。

 

「死ね」

 

 笑みを浮かべたブロリーから放たれる、簡潔にして単純な言葉。

 トドメを放つべくブウに向けてブロリーが手の平を向ける。気功波の輝きが視界を覆い、恐怖に心身まで侵されたバビディは動けない。

 

「――――馬鹿め」

 

 彼我の力の差を認識していたブウがベジータの自爆に巻き込まれてどうなるかを予測出来ないはずがない。隙を晒したのはブロリーの方であった。

 頭の触手は焼き尽くされたのではない。自分で切り離して、ゆっくりと背後に忍び寄らせていた。

 

「ぬぅっ!?」

 

 揺るぎようのない勝利を確信して完全に油断していたブロリーは気功波を放つ一瞬前に、広がった頭の触手が覆い被さって来るのに気づいても反応が致命的に遅れた、

 

「この俺を舐めるな!」

 

 それでも気合を込めて纏わりつく触手を上半身だけとはいえ、弾き飛ばした伝説の超サイヤ人の面目躍如か。

 

「貴様こそ、俺を舐めるな」

 

 弾き飛ばされる可能性をブウが考えていなかったはずがない。彼我の力の差を十分に理解していたブウは奥の手――――文字通りの体を割いて顔以外の全てをブロリーに差し向ける。

 

「ぐむっ……っ、ぁ……?!」

 

 ブウの決死の行動に、またしてもブロリーの対処が遅れる。或いは全身を覆われてもブロリーの高まり続ける力ならば弾き飛ばすことも出来たかもしれない。しかし、奇しくもベジータの自爆によってダメージを受けたことによってその動きを鈍くしていた。

 ブウが獲得したセル譲りの計算高さと狡猾さの前に、ブロリーの反抗が徐々に減って行く。

 

「はぁ――っ!!」

 

 このチャンスを逃しはしないと、未だ抵抗を続ける触手内にいるブロリーごとを呼び寄せて吸収する。

 ベチャッと触手が体に張り付いた後、ブウの体積が急速に増加する。

 

「ご……! グゴゴゴゴゴ――!!」

 

 最初は人型にすら成らず、拳や足のようなものがあちこちから飛び出したが、やがてそれも収まる。

 最初の太っちょのデブ姿からセルを吸収して筋肉質なマッチョに、そしてブロリーを取り込んだことで大きく筋肉が肥大した姿に変貌していく。

 

「ぶ、ブウ……?」

 

 この急展開にバビディもついていけず、恐る恐る名前を呼ぶ。

 

「――――俺に名はない」

 

 人型を為したブウはそう言ってゆっくりと立ち上がり、体の調子を確かめるように手を握ったり開いたりを繰り返す。

 

「ただ破壊する者、俺は全てを壊す」

 

 魔人でもなく、ブウでもなく、セルでもなく、ブロリーでもない。その全てを内包する破壊の化身が誕生した瞬間だった。

 悪夢を超えた先には更に大きな悪夢が待っていた。

 

 

 




 ベジータ自爆して死亡。トランクスとの下りは原作と同じなのでカット。
 悟空が生きていたこの七年間の間に原作以上に家族思いになったベジータさんでした。

 ブウはセルを吸収したことで戦闘力よりももっと大きな物を得ました。それは計算高さと狡猾さです。
 ブロリーに勝つのは無理と分かると罠を張る隙を伺っていたブウ:セル吸収体。ベジータの自爆を上手く利用しようと考え、結果的にブロリーの吸収に成功。
 その戦闘力はアルティメット悟飯を吸収したブウを上回る。ベジットがその実力を発揮できなければ厳しいかも?

 作中での悟空達の行動が悉く裏目に出てしまう……。但し、悟空が前話で界王神に仙豆を渡さず、自分で食べて自爆していたらブウもブロリー、バビディも殺せた模様。ただ、悟飯と悟空と界王神の死亡は確定する。

 次回、『第十四話 探せ、希望』

 そして今話で魔導師バビディ編は終了し、次話より魔人ブウ編が始まります。


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魔人ブウ編
第十四話 探せ、希望




感想が多いと捗る捗る。




 

 

 

 

 ベジータの自爆の衝撃を、意識のない悟飯の下に辿り着いた界王神も感じ取っていた。

 

「くっ、すみません…………せめて、悟飯さんだけでも」

 

 来た方向を炯々と照らす光を見た界王神は唇を噛み、足元にいる悟飯だけでも助けなければならないと急いで跪く。

 

「良かった! まだ生きてる」

 

 傍らの地面に膝を付き、悟飯の胸に手を当てると心臓は鼓動を続けていることに安堵する。希望はまだ消えてなどいない。

 

「魔人ブウの復活は恐れていた最悪の事態ですが、私の想像を遥かに超えたあなた達サイヤ人の力だけが希望なのです。悟飯さん、あなたならきっとあの剣を抜くことが出来る」

 

 万が一にも追撃がないとも限らない。悟飯の胸に手を置いたまま瞬間移動で界王神界に移動する。

 

「さあ、これを食べて下さい」

 

 無事に界王神界に瞬間移動出来たことに安堵した界王神は、悟空から預かった袋に入っている豆のような物を取り出して悟飯の口を開けて奥の方へと放り込む。

 

「はっ!?」

 

 仙豆を呑み込んで全回復した悟飯が飛び起きる。

 一瞬で超サイヤ人2へと成り、警戒するように辺りを見渡して直ぐに変化に気付いた。

 

「え? あれ、あの界王神様、ここは?」

 

 見覚えのない景色といない敵に超サイヤ人を解いて普通の状態に戻った悟飯は、取り合えず状況把握する為に近くにいた界王神に訊ねる。

 

「界王神界、つまりは私の世界です」

「か、界王神様の!? …………ということは、僕は死んだんですね」

 

 嘗て悟空から死んだ後に北の界王に会ったのだと聞かされた悟飯は、界王神の世界だというなら自分はあのままブウに殺されたのだろうと思い、飛び起きたのとは逆に膝からガクリと崩れ落ちる。

 

「いえ、危ないところでしたが悟空さんが仙豆という物を渡して下さったので大丈夫です。生きてますよ」

「あ、そうですか……」

 

 尻餅をついたまま界王神を見上げた悟飯は、そういえば自分には肉体があるのに頭の上に天使の輪っかがついていないことに気付き、勘違いに頭を掻いて直ぐに大切なことを思い出す。

 

「そうだお父さんとベジータさんは!?」

 

 自分が死んでないことを安堵している場合ではない。戦いの場に残っているであろう悟空とベジータのことを案じて界王神に掴みかかる。

 

「悟飯さんを見つけた直後に、私が知らない気が爆発して消滅するのを感じました。恐らくそのベジータという方のものでしょう。悟空さんの気は、その前に遠く離れた地に移動していますから恐らく無事でしょう」

「そんな、ベジータさん……」

 

 あの誰よりも誇り高く強かったベジータが死んだなどと、とても受け入れられることではない。

 

「トランクスやブルマさんになんて言えば」

 

 学校に行く為にブルマに相談することも多く、カプセルコーポレーションを訪れた際にベジータに請われて軽く手合せをすることも多かったから悟飯のショックも大きかった。

 

「…………なんで僕だけをここに?」 

 

 それでも悟飯は気持ちを無理矢理にでも切り替える。

 敵は強い。ベジータの死を悲しんでいる暇があるのならば対策を考えるべきだと、悟飯は考えた。でなければ、ベジータを生き返らせることも出来ず、生き返らせても何をやっていたのかと怒られることは想像に難くない。

 

「悟飯さんは今でも十分に強いですが、魔人ブウは更に上回っています」

 

 悟飯が無理をしていることは容易に察することが出来たが、界王神も今は差し迫った危機を解決することを優先して話を続ける。

 

「そうですけど、多分お父さんなら勝てる力でした。ただ、そういう意味ではブロリーの方が脅威です」

 

 実際に倒された身としては些か情けない推測だが、悟空の修行に付き合った悟飯は超サイヤ人3の力ならば魔人ブウに勝てると考える。しかし、その悟空ですらブロリーに勝てていない様子だったので、脅威度としてはブロリーの方が高いと判断する。

 

「ですので、悟飯さんにパワーアップしてもらう必要があるのです」

 

 界王神が自信を滲ませるが、そう簡単に強くなれるなら誰だって苦労はしない。

 

「出来るんですか?」

「出来ます。この界王神界にはゼットソードと呼ばれる剣がありまして、抜くことさえ出来れば凄まじいパワーを得ると伝えられています」

 

 昔話に出てくるようなチープな御伽噺のような話に悟飯は眉を顰めた。

 悟飯の疑わしい目に界王神は胸を張る。

 

「間違いありません。ただ、何人もの界王神でも抜けなかった伝説の剣ですので真偽のほどは分かりかねますが」

 

 どっちだよ、と悟飯は思いつつも、今は藁にも縋る思いで顔を上げた。

 

「分かりました。で、そのゼットソードというのはどこにあるんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悟飯が界王神の案内でゼットソードの下へ移動している頃、瞬間移動で悟天とトランクスと一緒に天界に現れた悟空をデンデが治療していた。

 意識のない悟天とトランクスはポポによって宮殿内で寝かされている。

 

「孫、まずいことになった」

 

 戦場は超サイヤ人2ですら弱卒扱いされる場であったから駆けつけることなく天界にいたピッコロ。悟空達がいなくなった後の下界を見ていた彼が厳しい表情で治療を終えた悟空の下へとやってきて言った。

 

「まずベジータが死んだ」

「そうか……」

 

 ベジータの気が全く感じられず、何をするのか分かっていたので悟空に驚きもない。あるのはただ無力感だけである。

 

「で、これ以上、何をどうやったらまずいことになるんだ?」

 

 少しつっけんどんな言い方になってしまったのは、ベジータに死を強いてしまったのではないかという強い自責とあれ以上のまずい状況を想像できなかったからである。

 

「ブウがブロリーを吸収した」

「は?」

 

 最初、悟空はピッコロが何を言っているのか分からなかった。いや、分かりたくなかったのかもしれない。

 

「ベジータの自爆でブウもブロリーもダメージを負っていたが死ぬほどではなかった。ブウは罠を張り、ブロリーの隙を突いて吸収した。今は恐らく消耗した力を回復する為に眠っているのだろう。動く様子はない」

 

 今直ぐに動く兆候がないのは良い情報ではあるが、ただでさえ悟空の遥か上を行っていたブロリーを吸収したブウの力は想像すら出来ない領域に至っているだろう。

 

「後、ブウは眠る前にバビディを殺している」

「呆気なかったな」

「数少ない朗報だ。悟飯は界王神様にどこかに連れて行かれて行方が分からん以上は我々だけでどうにかしなければならん。くそっ、ベジータも余計なことを」

 

 バビディの所為でややこしい事態になっていたこともあって、あっさりとブウに殺されたことに悟空は少しの肩透かしを覚えながらも対策を考えなればならず頭を抱えたくなった。

 

「ベジータを責めることは出来ねぇ。本当ならオラがやんなきゃなんねぇことだったけど、仮にオラがやったところで倒し切れてた保証もない。今はベジータのお蔭で時間的猶予が得られたことを喜ぶべきだ」

「そうか、すまん」

 

 所詮は可能性論に過ぎずとも、ベジータが稼いでくれたこの時間を活かさなければならない。

 制限時間はブウが目覚めるまで。今直ぐに目覚めてもおかしくはなく、今残っているのは悟空だけでベジータも悟飯もいない。

 

「しかし、どうする? 情けない話だが俺の及ぶ領域ではないし、何も思いつかん」

 

 サイヤ人に水を開けられた形のピッコロが手を出せるレベルの戦いではなかった。

 今のブウは超サイヤ人3の悟空ですら及びもしない前人未到の領域に至っている。ピッコロもまた何も出来ず、何も良案を思いつかない自分を罵っていた。

 

「…………オラ一人じゃ絶対に勝ち目はねぇ。たった一つだけ可能性があった(・・)方法も今では使えない」

「その方法とはなんだ?」

 

 微妙におかしい言い方をした悟空にピッコロは問い質すことなく先を促した。

 

「フュージョンを使うんだ」

「フュージョン…………融合だと?」

 

 意味が分からなかったピッコロとは違ってデンデが何かに気付いた。

 

「聞いたことがあります。メタモル星人の得意な術ですね」

「知ってんのか、デンデ」

 

 まさかデンデが知っているとは思わなかった悟空は目をパチパチと数度瞬きする。

 

「最長老様から聞いたことがあります。ある二人の力と体の大きさがかなり近い場合だけに出来る合体技なのだと」

「ああ、そうだ。あの世で会ったメタモル星人から教えてもらった術さ」

 

 悟空はセル戦後、一年ほどいたあの世で出会って仲良くなったメタモル星人から聞いた話を思い出す。

 

「二人が一つに融合することで、それぞれではとても出来ねぇような凄い力を持つ新しい一人の人間になれるんだ。あの世で出会ったメタモル星人はてんで弱っちくて大人しい二人だったんだがよ、フュージョンを使ったら相当の戦士に変身したんだぜ。あの世にはオラと同じぐらいの奴がいなかったから試したことはねぇんだけど」

「な、成程…………そうか、だから『可能性があった』と言ったのだな」

 

 悟飯は行方知れず、ベジータの死は確定している。

 ピッコロではどう考えても悟空とは釣り合いが取れず、これではフュージョンする相手がいない。

 

「ああ、どちらかが無事ならフュージョン出来たのに」

 

 と言いつつも、ブロリーを吸収したブウの力は未知数で、例えフュージョン出来たとしてもどれだけ強くなれるかは分からないので博打の要素が大きくなることは否めなかったことは言わなかった。

 他に策はないかと皆が考え込んでいると、悟天とトランクスの気が近づいて来る。

 

「「()達がやるよ!」」

「悟天、トランクス……」

 

 静まり返った場を切り裂くように現れたトランクスと悟天がそう言って宣言する。

 

「おじさん、俺と悟天なら体の大きさも気の大きさも大差ないよ。俺達ならそのフュージョンってやつ出来るよね!」

「駄目だ。お前達を危ない目には」

「待て、孫」

 

 ベジータの仇を取るんだと目で訴えかけるトランクスを止めようとした悟空を何故かピッコロが制止した。

 

「二人は条件に合致している。戦力は少しでもあった方が良い」

「しかし……」

 

 ピッコロの言いたいことは悟空も良く分かる。

 超サイヤ人に成れる二人の力は仲間内でもトップクラスで、例え幼くともその手に力がある以上は戦力に数えるべきなのだ。しかし、悟空の親心がそれを直ぐには受け入れられない。

 

「フュージョンを試したことはないのだろう。メタモル星人以外が使った例を聞いているか?」

「いや、ないな」

「二人に戦えと言う気は無い。術に危険性がないのなら、こいつらで試すことも一つの手だ。本番の前に実験しておいた方が良い」

 

 ピッコロは何がしかの確信を持って、悟天とトランクスに前例を作らせようとしている。

 その理由が分からない悟空にピッコロは少し呆れているようだった。

 

「自分が嘗てしたことを忘れたか」

 

 そんなことを言われても、悟空には思い当たることがない。

 

「悟飯の行方は分からない。これはどうしようもないが、ベジータは分かっているだろう」

「…………そうか、占いババか!」

 

 ようやくピッコロの言いたいことが分かった悟空は喜色を露わにする。

 

「地獄行きであろうとも直ぐに魂が現れるわけではない。時間的猶予はまだあるはずだ」

「そうだ、オラと同じように占いババの力で一日でだけ現世に戻って来れる! この方法を使えばベジータとフュージョンが出来るじゃねぇか!」

 

 セル戦後に死者でありながら天下一大武道大会に参加する為に一日だけ現世に戻って来たことを思い出す。

 占いババは死後の世界に精通していて、死者を一日だけこの世に呼び戻すことができる。その力を使えばベジータを現世に呼び戻して悟空とフュージョンすることが可能になる。

 

「パパが戻って来る?」

「良かったね、トランクス君!」

 

 なんであれ、ベジータともう一度会えるかもしれないと分かったトランクスの背を叩いた悟天。

 

「デンデ、あの世に行って閻魔大王に話しを付けて来てくれ。孫、お前は俺達にフュージョンを教えた後は直ぐに占いババの下へ向かえ」

 

 今はまだ絶望の暗闇に閉ざされた中であっても、その中で遠くで輝くたった一つ見つけた希望だった。

 

「急げ、時間との勝負だぞ」

 

 希望をその手に掴む為に皆が動き出した。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「如何ですか、悟飯さん。伝説のゼットソードは?」

 

 その頃、事前に超サイヤ人2になって無事にゼットソードを抜いた悟飯は界王神に聞かれても訝しげだった。

 

「別にパワーアップした感じはしませんね」 

 

 やたらとゼットソードは重いだけで特段パワーが湧いてくるような感じはしない。

 

「実は触れただけでどんな物も切り裂く凄い切れ味とかなんでしょうか」

「では、とっておきの堅い物で試してみましょう」

 

 勧めた界王神としては何もないでは笑い話にもならない。せめて悟飯の言うように物凄い切れ味でもないと土下座をしなければならなくなる。

 仮にも宇宙で一番偉い界王神がそんなことをするわけにいかないので、手を上げて鉱物を呼び出す。

 

「これはこの宇宙で一番堅いと言われている金属であるカッチン鋼です。ゼットソードなら豆腐のようにスパスパと斬れるはずです。行きますよ!」

「何時でも来てください!」

 

 悟飯としても貴重な時間を割いてでも抜いたのに何の意味もない剣だったとは思いたくないので、野球のフォームでゼットソードを構えながら界王神に向かって叫ぶ。

 

「それっ!」

 

 念動力かなんかで投げられたカッチン鋼に向かって一歩踏み込んだ悟飯がゼットソードをフルスイングする。

 

「てぇやあああああああああっ…………ぁあああああああああああああ??!!」

 

 わざわざ超サイヤ人2になって全力のフルスイングを放った悟飯の口が、気合から驚愕に変化していった。

 カッチン鋼に押し負けて目の前で期待のゼットソードが真っ二つになったのを見た悟飯だけでなく、無傷で突き進んでいくカッチン鋼を投げた界王神も予想もしていなかった光景に顎がカクンと落ちた。

 

「う、うそ、折れちゃった……」

 

 物の見事に真っ二つに折れたゼットソードを見下ろした悟飯の口から我知らずに言葉が漏れる。

 

「…………………………………………………………」

 

 手にした者は世界一の力を持つことが出来るという聖域の伝説の剣の末路に開いた口が塞がらない界王神は言葉も出ない。

 

「ちょっと大袈裟な伝説だったみたいですね」

「す、すみません」

 

 真っ二つになってしまっては伝説の剣にも意味もないので地面に落とした悟飯の言葉に、界王神は頭を下げて恐縮することしか出来ない。

 

「これ、界王神ともあろう者が人間に頭を下げてどうする」

「!?」

 

 いるはずのない第三者の声に二人が慌ててそちらを見ると、界王神と同じ服を着た老人が立っていた。

 

 

 




界王神によって界王神界に連れて来られた悟飯はゼットソードを抜き、折った。そして出て来た老人は?

あの世でしっかりとフュージョンを学んでいた悟空。死んだばかりのベジータを占いババの力で一日現世に戻せばフュージョンが出来るぞ!
でも、勝てるかは分からない様子。

希望は見えて来た!! ような気がする。



原作でブウを相手にしていた時のベジットは超2だったのだろうか? 最初はスパーク走っていたがその後はないし。


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第十五話 悟空+ベジータ=?



皆様、感想ありがとうございます。
お陰様で、本世界線ではナメック星を襲わなかったメタルクウラが超3ゴジ―タの波動を感じ取って地球に向かうことにしたようです。
ではでは、どうぞ。



大体、敵の方が想定を超えるものである






 

 

 

 クレーターの底で地面に座って眠るブウが薄目を開ける。しかし、また直ぐに瞼を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゼットソードに封印されていたという老界王神に潜在能力を引き出してもらっている悟飯は苛立たしく感じていた。

 

「まだなんですか?」

 

 老界王神は自らの超能力でどんなに凄い達人でも隠された力を限界以上に引き出すことが出来る。

 割と良くある類いの能力ではあるが、今はどんな藁にも縋りたい悟飯は煽て上げて儀式をしてもらっていた。

 最初は変な踊り、次は座り込んでただ手を向けているだけにしか思えず、悟飯でなくても問い質したくなる。

 

「まだまだじゃな。お前さん、かなりの潜在能力を残しておるようで、もう少し時間がかかりそうじゃ」

 

 悟飯の問いに答えながら眉間に皺を寄せる老界王神。

 

「魔人ブウの脅威は儂も分かっておるから巻きでやっておるんじゃろうが。口を開かんと自分の内にある力を感じろい」

 

 そう言われては儀式を行ってやってもらっている悟飯は素直に従うしかない。

 本来ならば儀式に五時間、パワーアップに二十時間かかる代物を一時間で終わらせようとしているのだから老界王神の負担はきっと大きいものだろう。

 悟飯はそれ以上の不満を呑み込んで目を閉じる。

 

(力、僕の中にそんな潜在能力があるのか?)

 

 昔から潜在能力が高いとは言われていた。

 今では悟空とベジータも成れる超サイヤ人2に最初になったのも悟飯ではある。怒れば全世界の誰にも負けないとは以前に悟空に言われたことがあっても自身にそんな潜在能力があると思ったことは一度もない。

 

(物は試し、か) 

 

 超サイヤ人になることはせず、少し気合を込めてみる。

 途端に予想もしていなかったパワーが瞬間的に体外に溢れ出して烈風を生み出す。

 

「ぬあっ!?」

 

 烈風は一歩踏み込んで手を伸ばせば触れる距離にいる老界王神を容易く吹き飛ばす。

 

「あ!? ご、ごめんなさい老界王神様!? まさかちょっと気合を入れただけでこんなことになるとは思いも知らず……」

「いや、まあ、力を感じろと言ったのは儂じゃからな」

 

 スッテンコロリンと何度も転がった老界王神は激発しかけたが、何度も頭を下げて謝る悟飯に溜飲を下ろして鷹揚に頷く。

 

「本当に凄い。こんなに湧き上がるようなパワーを感じたのは始めてです」

 

 手を握ったり開いたりしながら、一瞬だけとはいえ悟空の超サイヤ人3にも匹敵するパワーを発したことを感じた悟飯は改めて老界王神に尊敬の眼差しを向ける。

 

「時間がないんじゃろう。終わるまでは向き合うに留めい」

「はい」

 

 敬われて悪い気はしない老界王神は少し鼻高々になりながら元に位置に戻って儀式を続ける。

 今のやり取りで休息が取れたので仕上げに移る。

 再び集中を始めた老界王神はともかく、自分の内にある力の流れを感じ取った悟飯は少し暇になった。

 

「界王神様、お父さん達は?」

 

 少し離れた場所で地面に置いた水晶で地球の様子を見ている界王神に聞く。

 

「どうやら悟空さんは死んだベジータさんを現世に呼び戻してメタモル星人のフュージョンを試すようですね」

「フュージョン?」

「所謂、二人を一人にして強くする合体技じゃな」

 

 フュージョンのことを知らなかった悟飯は頭を捻るが、頬を汗が流れていった老界王神が簡潔に説明する。

 

「少ししか見ていない儂の私見じゃが、その悟空というものとベジータというものがフュージョンをした強さは恐らく潜在能力を解放したお前さん以上じゃろう」

 

 儀式の前に悟飯了承の上で記憶を見た老界王神の意見に悟飯は驚きを露わにする。

 ならば、別に自分は潜在能力を解放しなくても良いのではないかと考えが浮かび上がる。

 

「じゃが、楽観はせん方がええじゃろう。今のブウからは底知れない物を感じる。勝てるかどうかは未知数かもしれん」

 

 これだけ急いでいるにも関わらず、未だ終わらない悟飯の潜在能力に驚きを感じつつも、記憶を見た限りではフュージョンをした悟空とベジータが合体した戦士には劣ると見た老界王神。

 潜在能力を解放した悟飯よりも合体した戦士の方が強いかもしれなくても、今のブウの底は見えない以上は打てる策は打つべきだと集中している意識の端で考えた老界王神は別の思考に耽る。

 

(本当なら破壊神であるビルス様に出てもらうのが一番なんじゃが)

 

 かなり気分屋の上にワガママな破壊神を思い浮べたが、機嫌を損ねて7500万年もゼットソードに封印されていたので出来るなら最後の手段にしたい。

 

「じゃあ、フュージョンしたお父さん達と僕がそのフュージョンをすれば……」

「フュージョンは同じぐらいの強さでなければ合体できませんから、恐らく悟飯さんでは」

 

 悟飯が良いことを思いついたと顔を上げるが、界王神の推測も混じる言葉に却下された。

 

「ですので、悟飯さんが悟空さん、ベジータさんのどちらかとフュージョンすることも無理でしょう」

 

 超サイヤ人3を超える力を身に付けたら力の差が開いてフュージョンが出来る条件から外れてしまう。

 

「老界王神様、他に何か強くなる方法はありませんか」

 

 潜在能力を解放させた悟飯の力もまだ分かっていないので、取らぬ狸の皮算用に成りかねない。儀式の最中ではあるが、他にも方法はないかと聞く。

 

「…………ある」

 

 老界王神は少し考えた上で、そう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再びブウがゆっくりと目を開けて、今度は立ち上がった。そして遥か彼方の空を見上げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピッコロの指揮の下、悟空達は動き出した。

 フュージョンの動作があまりにも格好悪すぎて不評が上がったりもしたが、そこは目の前の危機を乗り越えなくてはならないので我慢する。

 悟天とトランクスの指導をピッコロに任せ、悟空は瞬間移動で占いババの下へ向かってベジータを現世に呼び戻してもらうように頼み込み、チチやブルマ、仲間を回収して天界へ連れて行くことを繰り返す。

 

「悟天ちゃんは?」

「トランクスと一緒に精神と時の部屋に入っている。今は一分一秒でも欲しいからな」

 

 ピッコロの姿を認めたチチが開口一番に末の息子のことを聞いたのは当然の流れだろう。

 指導が無くても形になった二人を精神と時の部屋に入れてフュージョンの習熟をさせる。外界では一時間程度でも精神と時の部屋の中では十五日が経過する。可能ならば二人の実力アップを望んだピッコロの提案だった。

 

「もう出て来る頃だろう」

「お母さん!」

 

 噂をすればなんとやら。

 丁度、精神と時の部屋から出て来た悟天がチチの姿を見て声を上げる。

 

「トランクス!」

 

 遅れてトランクスも出て来て、チチの横に立っていたブルマが駆け寄った。

 

「ママ、そのパパは」

「分かってるから、大丈夫よ」

 

 抱き締められたトランクスは泣きはらした後のブルマの顔を見上げて言い難そうに口を開いたが、悟空からベジータの死を告げられていたので安心させるように頭を撫でる。

 二週間以上を精神と時の部屋で過ごして父の死を受け止めたと思っていてもまだ子供。トランクスは母の腕の中で少しだけ泣いた。

 

「オメェは大丈夫か、悟天」

「うん、僕は平気」

 

 答えた悟天は平気と言いつつも悟空のリストバンドとチチの服の裾を握っている。間近で肉親を亡くした悲哀を感じていただけに両親に触れていたいのだろう。

 

「お父さん、僕達フュージョンして超サイヤ人3に成れたよ」

「え、本当か?」

 

 息子の気持ちが分かる悟空が悟天の頭を撫でてやると、とんでもないことを言ったのでうっかり聞き逃しかけた。

 

「うん、五分ぐらいしか成ってられないんだ。お父さん達ならもっと長いと思うけど、僕達は五分経ったら合体も直ぐに解けちゃった」

 

 嘘だろ、と自身が超サイヤ人3に成るのに物凄く苦労した経験があるだけに容易に信じられなかったが、悟天が嘘を言う理由もない。しかも超サイヤ人3の特徴である燃費の悪さを教えたことがないはずなのに知っている。

 

「超サイヤ人3は燃費が悪いからな。フュージョンしている時に成っちまうと合体出来るエネルギーみたいな物が直ぐに無くなっちまうのかもしれねぇ」

 

 良く考えてみれば納得の出来る話ではあった。

 実際、フュージョンするとどうして二人が一つに成るのか原理は悟空も良く分かっていないので、燃費の悪い超サイヤ人3ではフュージョンの合体時間が短くなるのかもしれない。

 

「良く教えてくれた。助かったぞ、悟天」

 

 ピッコロの言っていたように実際に試してみなければ分からないこともある。分からないまま行っていれば致命的な失敗に繋がっていた。

 戦闘の中で訳も分からないまま合体が解除されていたら混乱して大きな隙に繋がっていたことだろう。

 

「来たか、ベジータ」

 

 褒めながら悟天の頭を強く撫でていた悟空は唐突に現れた気の持ち主のことを思い浮べて笑みを浮かべる。

 

「パパ!」

 

 遅れてベジータの気を感じ取ったトランクスが母の腕の中から抜け出して宮殿の外へと駆け出していく。

 悟空達も後を追って外に出ると、占いババに横に立つ天使の輪っかが頭の上にあるベジータがトランクスに泣きながら抱き付かれて困った顔をしていた。

 

「ベジータ、アンタはもう」

 

 死んでいるのに無事というのも変な話だが常と変わらないベジータの姿に感極まったようにブルマはそれ以上、何も言えない様子だった。

 その背中を苦笑したヤムチャが押してやると、ブルマはベジータに駆け寄るとトランクスと一緒に抱き付いて泣く。

 

「ははっ、あんなベジータの困った顔は始めて見たな」

 

 一つの家族の姿に思うところがあったクリリンはそう言いながらもマーロンを挟んで18号と目を合わせる。

 

「写真でも撮っときたいな」

「ベジータが気付いたらキレるぞ」

 

 悟天を肩車しながらチチの肩を抱いて笑う悟空の怖い物なさに少し呆れたクリリン。

 その近くで手カメラのポーズをしたヤムチャが一人で感慨深げに頷いている。

 

「カカロット、時間がないのだろう。無駄死にして敵を強くしただけの阿呆の俺をあの世からわざわざ呼び戻したんだ。策の一つや二つはあるのだろうな」

 

 トランクスとブルマから逃げるように振り払って来たベジータが早口に捲し立てる。

 

「無駄死にって…………自分を卑下し過ぎだぞ」

「ふん、ブウがブロリーを吸収したことは聞いている。最早、ブウは手の付けようのない化け物にしてしまった。慰めなど何の意味もない」

「だとしても、オラ達は逆の立場になっていたかもしんねぇんだ。前向きに考えようぜ」

 

 同じ選択をしようとしていた悟空は、自身の自爆後の顛末を知ったベジータの気持ちも分からなくもない。

 下手な慰めは誇り高いベジータに意味はないので、これからの話をしようと提案する。

 

「…………いいだろう。あの野郎は倒さなくちゃ気がすまん。貴様の提案に乗るのは業腹だが今は従ってやる」

 

 ベジータでは勝ち筋すら見い出せない相手だ。

 死人すら使うことで勝ち筋を見い出せるというならやって見せろと言わんばかりのベジータの態度である。

 

「フュージョンって奴をオラ達でするんだ。悟天とトランクスにやってもらうから」

 

 死んでも変わらないベジータの傲慢とも取れる態度に、後ろにいるブルマとトランクスが抱き付きたそうにウズウズしているのを見ながら苦笑した悟空が続きを口にしようとした瞬間、あってはいけない事態が起こった。

 

「っ!?」

 

 異常すぎる速さで移動する巨大過ぎる気。

 あの地で休眠しているはずのブウが突如として動き出し、この天界に向かって近づいてきている。

 

「全員、逃げろ!!」

 

 悟空が叫ぶが遅い。

 その直後にブウは天界へと上がって来た。

 

「ここにいたか、カカロット」

 

 天界に降り立ったブウの姿は以前とは全く別物だった。

 ピンク色の肌は変わらないがブロリーの体格とセルの知性を感じさせる眼差し。何よりもその身体から無意識に放散される力だけでも超サイヤ人3の悟空を上回る。

 

「ぉおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!」

「――――はぁああああああああああああああっっ!!」

 

 真っ先に飛び出したのはピッコロ。そして一瞬遅れてヤムチャ。

 彼らは自分がブウに手も足も出ないと分かりながら時間を稼ぐ為に自ら捨て石となった。

 

「行け!」

 

 マーロンを18号に押し付けたクリリンもブウに向かって行く。

 一瞬迷った18号は腕の中のマーロンを見て、ベジータが投げたブルマを抱えて天界を飛び出そうとした。遅れて同じように悟空に投げられたチチを受け止めたビーデル、亀仙人と牛魔王は自ら飛び降りようとする。鳥に変化したウーロンとプーアルが飛ぶ。

 

「悟天、トランクス! ! フュージョンを!」

 

 悟空がそう言っている間にピッコロとヤムチャが軽く振るわれたブウの腕によって殺された。

 悟天とトランクスも即座に気を合わせてフュージョンを始めた。その時にはクリリンも死んだ。

 二人のフュージョンが完成する直前、敢えて(・・・)悟空達ではなく天界から逃げようとしている者達にブウが手を向けていることに悟空だけが気づいた。

 

「止めろ!」

 

 ベジータはフュージョンを覚える為に見なければならず、見る必要がない悟空はブウが何をしようとしているのかを察して気功波を放つが、簡単に弾かれた。

 

「死ね」

 

 悟空が放った気功波を簡単に弾いたブウは嗜虐の笑みを浮かべて、一度溜めた気弾を握り潰して投げ放った。

 フュージョンが完成した光が一瞬だけ悟空とベジータの視界を染め上げる。その瞬間にブウの気弾は目的を達成していた。

 

「チチ! 牛魔王のおっちゃん! 亀仙人のじっちゃん!ブルマ! ビーデル!」

 

 ブウが放った気弾は数えることすら出来ないほどに無数に分裂し、逃げようとしていた者達を呆気なく殺しただけではなく、地上にも飛んで行って地球にいる全ての生きとし生ける者達を殺した。例外はない。

 

「「よくも母さん達を!!」」

 

 悟天とトランクスが合体したゴテンクスも気弾が直撃した母達が塵も残さずに死んだ姿を見てブチギレた。

 一気に超サイヤ人3になって悟空が止める暇もなくブウに向かって行く。

 

「ベジータ!」

「分かっている、始めるぞ!」

 

 悟空との融合と、あんなポーズを取るぐらいなら死んだ方がマシだという思いがあるが今のベジータは死んでいる身。何よりもブルマを殺されて大人しくしているほどベジータは人間が出来ていない。

 

「連続死ね死ねミサイル!」

 

 ゴテンクスが地上よりも丈夫な天界の一部を削り取るほどの連続の気弾を放つが、ブウはその只中を散歩するかのように歩いていく。

 スーパーゴーストカミカゼアタック他、ゴテンクスの全ての技で足止めを行うがブウは無人の野を進むが如く距離を詰める。

 

「雑魚が」

「「ぐわぁっ!?」」

 

 そして最後の一歩で触れるほどの距離に接近すると、ブウにとっては軽く小突く程度の裏拳を頬に叩き込まれて吹っ飛ばされた。

 たった一撃で超サイヤ人3が解除され、通常の状態になったゴテンクスが地面を抉りながら動かなくなった。

 その瞬間、再びの閃光がブウから離れた場所から迸った。

 

「「よくもやってくれたな、ブウ」」

 

 先程まで悟空とベジータがいた場所にゴテンクスと同じようにメタモル星人の衣装を纏った一人の男が立っていた。

 

「また雑魚がやられに来たか」

 

 超サイヤ人のオーラが柱のように天に昇って行く。

 一気に超サイヤ人3になったころで、大瀑布の如きオーラが天界を覆い尽くす。

 明らかに悟空とベジータとは一線を画す戦闘力を有する男を前にしてもブウに臆した様子は見られない。

 

「「俺は悟空でもベジータでもない。俺は貴様を倒す者だ!」」

 

 悟空とベジータが合体した戦士ゴジータは超サイヤ人3に成った感じから制限時間は十分と推定して、その間にブウを倒すと心に決める。

 

「他の奴よりは破壊し甲斐がありそうだ。少しは俺を楽しませろ」

 

 先程までとは次元違いの増大した気の波動を浴びてブウは少しは楽しめそうだと笑い、二人の超戦士の戦いの火蓋が切って落とされた。

 

 

 




悟飯の記憶と水晶でセルとブロリーを吸収したブウを見た老界王神、かなり焦って潜在能力を解放させる為に無理をする。
後、ビルス様が存在することが確認されました。

現世に戻って来たベジータ一家の触れ合いに思うところありのクリリン一家と孫一家。
そこへまさかのブウ強襲。
ピッコロ、ヤムチャ、クリリン死亡。
逃げようとした者達もろとも地球にいる生物を殺したブウにブチ切れたゴテンクスは瞬殺される。死んではないが気絶。

誇りだ恥ずかしいだと言っている暇もないベジータもフュージョンを了承。ゴジ―タとなる。
超3となるが、元の二人のエネルギーコントロールを鑑みてゴテンクスよりは合体時間は長くなると算定(ドラゴンボールGTの超4ゴジ―タの合体時間が10分なので)

次回、『第十六話 嗚呼、合体戦士達』

果たして超3ゴジ―タはブウを倒せるのだろうか? 尚、制限時間は10分間のみ。


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第十六話 嗚呼、合体戦士達



宇宙に響き渡った超3ゴジ―タの力の波動を感じ取った勇者タピオンが地球に行くべきか迷っています。





外道はどこまで行っても外道なのである。









 

 

 

 天界から離れた空の上で二人の桁外れの怪物が戦っていた。

 

「「はぁああああああああああああ!!」」

「うぉおおおおおおおおおおおお!!」

 

 激突する拳と拳。

 ギリギリと拳を押し付け合うゴジ―タとブウが額を擦り合わせるほどの超至近距離で鬩ぎ合う。

 

「おおおァあああッ!!」

「「はああああああァ!!」」

 

 両雄の拳。正しくは拳に纏われた力が激突した瞬間、超新星の出現かと見紛う眩しい紫電が周囲数十㎞に至るまでに走り、もしも見る者がいれば区別なく網膜を焼いたことだろう。

 ゴジ―タは背中まで伸びる髪を逆巻かせ、気合の声を絞る。応えるようにブウが笑みを浮かべる。

 拳と拳の狭間で燻る力の波動を押し合う二人だったが、やがて空間が耐えきれなくなったように破滅的な音を残して飛び退いた。

 

「「ブウ!」」

「ハハハハハハハ、存分に挑んで来るがいい!!」

 

 極大の力同士のぶつかり合いは弾かれ、衝突を繰り返しながら雲を突破して螺旋を描きながら上昇していく。

 

「「でやっ!」」

 

 刹那、目にも止まらない超スピードで移動したゴジ―タがブウの懐に潜り込んで拳を放つ。

 

「その程度で」

 

 やられるほどブウは愚かではない。最善の動きで拳を迎え撃つ。

 互いに拳をぶつけて生じた火花を散らしながら行われる頂点を極めし者同士の戦いは熾烈を極めた。

 五分と五分の息詰まる攻防戦は身体に幾つものの傷をつけていく。まさに、魂を削るかのような乱舞だった。

 打ち込む攻撃の一つ一つが、両者を死へと近づける。

 拳撃に次ぐ拳撃。繰り出された拳撃の速度は高速を超え音速へ、音速を超えて神速へと変わっていく。

 刹那で十撃を超え、瞬きで百撃を超え、一秒で千撃を超え、一息で万撃を超え、一拍で億撃を超えていく。

 やがて火花は閃光に、閃光は爆発に、爆発は崩壊に、崩壊は無へと変わっていた。ヒトの限界を遥かに超えた攻防は世界をも砕きかねない。

 

「「うぉぉあああああああっつ………………!」」

「ぬぅうううあああああぁぁ…………………!」

 

 ゴジ―タの連撃速度が更に上がれば、合わせるようにブウの攻撃速度も上がる。

 両者の攻撃速度の増加によって連続した音が崩れる。

 崩れたというのは少し語弊があった。あまりにも素早すぎて音は数をなくした塊となり、数千数万の爆音が短い間隔で次々に炸裂したため、総体として一つの音のように聞こえて空間そのものを踏み潰すような轟音へと変わったのだ。

 

「「ふんっ!」」

 

 アッパーカットのような真下から潜り込んで来る拳を回転するようにして紙一重で避けたゴジ―タの膝がブウの後頭部を連続で蹴りつける。

 流れを途絶えさせずに踵落としを決め、ブウの体が急速に落ちていく。

 

「「ビックバン――」」

 

 その更に下へと超スピードで先回りしたゴジ―タは両手を前に掲げて気を溜めていた。

 

「「――――かめはめ波!!」」

 

 ゴジ―タの最強の技であるビックバンかめはめ波が避けようもないタイミングで放たれた。

 背中から迫るビックバンかめはめ波に辛うじて振り向いたブウは、しかし焦ることなく笑みを浮かべていた。

 

「「手応え有り、だが……」」

 

 成層圏を抜けて宇宙の彼方へと消えていくビックバンかめはめ波を見送ったゴジ―タはそう独り言ちて、背後を振り返る。

 

「……ぐ、ぐぬ……」

 

 左半身を焼き尽くされたブウがそこに浮いており、苦悶の表情を浮かべて残った右手で失った部分を抑えている。

 

「こ、こんなことが…………ま、まさかこの俺が……ち、ちくしょう!?」

「「下手な演技は止めろ」」

 

 痛がって悔しがるポーズを見せているが、嘗てのセルと全く同じ台詞に最初から演技だと気づいていたゴジ―タは吐き捨てた。

 

「バレたか」

 

 悪戯を見咎められたかのようにピタリと苦悶の表情を止めたブウは失った部分を抑えていた右手を下ろす。すると、焼け爛れた内側から新たな左半身が生えて来た。

 

「「ふざけやがって」」

「ふざけてなどいないさ。貴様は強い。今の俺よりはな」

 

 生やした腕の感触を確かめるように拳を握ったり開いたりを繰り返すブウ。

 

「「未来のお前の方が俺よりも強いと言いたげだな」」

 

 僅かに上がった息を整える為の小休止にと腕を組んで話に乗ることにしたゴジ―タは気に入らなげに言った。

 

「何分、完全に回復する前に目覚めた所為で本調子とは言えんのでな」

「「ならば、もう一度寝とけ」」

 

 ブウの言うことは間違いなく真実であるとゴジ―タは感じながら瞬間移動で背後を取る。

 

「「今度は二度と目覚めないようにな!」」

 

 ブウの背後から手の平に虹色の光を帯びた小さな気の塊を発生させて背中に叩きつける。

 

「ぐはっ!?」

 

 体の内側から爆散したブウだったが、飛散した手足が独立した動きでゴジ―タを攻撃する。

 

「「手品師を気取るつもりか」」

「まさか」

 

 確実に塵も残さずに消し去っていると、少し離れた場所に首だけになったブウが浮かんでいる。

 

「完全な状態ならばともかく、今の状態では消滅されかねない。かといって、回復を待つのも貴様の時間切れを待つのも面白くない」

「「時間切れ? なんの話だ」」

「しらばっくれても無駄だぞ。大抵、そういう合体技には制限時間があるものだ」

 

 ブウの自前の知識なのか、ブロリーやセルが持っていた知識かは分からないが完全にフュージョンの弱点を見切られている。

 

「「なら、どうする? このままノラリクラリと逃げ続けるか?」」

 

 残り時間はまだ半分以上、残っている。それでも弱点を知られた以上は多少のリスクを負ってでも仕留めるべきだろう。

 会話をしながらも気を高めるゴジ―タにブウは笑みで以て答える。

 

「時間切れを待っても面白くないと言っただろう。仕方ないから手っ取り早く回復するとしよう」

 

 徐々に回復しつつあるブウの気を感じながら、完全に消す為に気を高めていたゴジ―タは嫌な予感を覚えた。

 

「俺が何の為にあのガキを殺さなかったと思う? このことを予想していたからだ」

「「まさか!?」」

 

 ブウが言ったことを呑み込み考えれば何を目的としているのか、直ぐに読めた。

 今、この地球で死んでいないのはゴテンクスだけ。

 超サイヤ人3に至ったゴテンクスの力は超サイヤ人3の悟空を超えている。だからこそ、ブウの一撃にも殺されずに済んだと、目の前の戦いに夢中になっていた所為で思い込んでいた。

 チチがブルマがクリリンがビーデルが、みんなを目の前で殺されたことで冷静さを欠き、合体が解ける十分以内にブウを倒さなければならないことがゴジ―タの余裕を幾分か失わせていた。

 

「「させんっ!」」

 

 天界の方向から丁度、ゴテンクスの体の大きさぐらいのピンク色のゴムのような物が向かって来るのを見てゴジ―タは迎撃を試みる。

 ゴテンクスも吸収されてしまったらブウは本当に手に負えなくなってしまう。その前に止めるべく、手を向けた。

 

「ばあっ!」

 

 しかし、そこへ顔だけのブウが口から気弾を放って来るがゴジ―タの予想通り。

 

「「その程度で――」」

「ああ、だから、そっちは囮だ」

 

 もう片方の手でより強力な気弾を放ってブウの首を消し去るが、それは分離した一部分から造り上げた偽物である。

 つまり、今、ゴジ―タが消し飛ばした喋って気弾まで撃った首は偽物。

 セルを吸収した時に気を消したりする能力を得ていたことで、言われなければ気づかなかった。

 

「「だとしても、こっちさえ止めれば」」

 

 包まれているブウの触手さえ剥がしてしまえばゴテンクスを助けることが出来る。

 

「もう一つ言い忘れていたが、そっちも囮だ」

 

 触手を掴んで広げるが中には何も誰もいない。

 ハッと上空に大きな気が出現したのを感じて顔を上げれば、正に触手を吸収しているブウの姿があった。

 

「「て、テメェ……っ!?」」

「すまんな、言葉が随分と足りなかったようだ。おっと、卑怯と言ってくれるなよ。合体はそっちも使っていることだろう」

 

 手元の触手を消滅させながら、自分の方こそ何人も吸収しておきながら言っていい台詞ではないブウがゴテンクスを吸収していくのをただ見ていることしか出来ない。

 

「ゴクリ、ふぅ……こういう時はこう言えば良いかな」

 

 まるで食べたかのようなリアクションをわざと取るブウにゴジ―タは何も出来ない。

 

「お前達の息子は上手かったぞ…………クッハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

 見た目の変化はほぼないが、力の総量が先程までとは段違いに増したブウが高笑いをする。

 

「「く、くそったれめ……っ!!」」

 

 自身ですら及ぶか分からない領域に踏み込んだブウを見上げ、残り時間が半分を切ったゴジ―タにはもう打つ手はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間を少し巻き戻して、ゴジ―タが超サイヤ人3に成った直後。

 解放されつつある内なる力と向き合う為に精神を集中させていた悟飯は突如として間近で気の波濤を浴びたような錯覚を覚えた。

 

「こ、この気はまさかお父さん? いや、ベジータさんの気のようにも感じる……」

 

 悟空のようでもありベジータでもある不思議な気に悟飯は生唾を呑み込んでブルリと身を震わせる。

 

「お二人がフュージョンをしました。この聖域まで届くなんて物凄いエナジーです」

 

 同じ気を感じ取った界王神は水晶から立ち上がる程で、地球のある方向を見て呆然としていた。

 

「…………急がねばならんの」

 

 儀式を続けなければ同様にゴジ―タの気を感じ取っていた老界王神は予想が当たってしまったことに歯噛みする。

 

「どうしてです? これほどの気を発せるならブウぐらい簡単に」

「お前さんは若すぎる。表向きの気に振り回されている内は界王神失格じゃぞ」

 

 そう言われても界王神が納得できるはずがない。

 納得していない様子の界王神の雰囲気を感じ取った老界王神は重く息を吐く。

 

「忘れたか? フュージョンには時間制限がある」

「あっ!?」

「どれだけ強力であろうとも合体は必ず解けて元の二人に戻ってしまう」

 

 フュージョンの欠点を告げられて界王神の顔から血の気が抜け落ちる。

 

「で、でも、これだけの気ならブウにだって」

 

 明らかに封印から出てきたばかりのブウを圧倒して余りあるほどの力の波動である。例え何人も吸収したブウが相手でも、時間制限があったとしても倒すことは出来るはずだと界王神は主張した。

 

「戦いの天秤は常に予想外に傾くもの。楽観論に頼っていてはいざという時に何も出来んよ。この宇宙の頂点に立つならば既に最悪を想定せんか」

 

 水晶は二人の戦いを遠くから映し出している。

 ゴジ―タのエネルギーは界王神界にまで届いているのに、対するブウのエネルギーはちっとも感じられないことをおかしいと思うべきなのだ。

 二人のやり取りを黙って聞いていた悟飯は大きく息を吸った。

 

「では、老界王神様には最悪の状況に対して何か対策があるんですか?」

 

 落ち着いて気を探った悟飯はゴジ―タと戦っているブウが未だ本気を出していないと思い始めた。ゴジ―タは全力を出しているにも関わらずだ。

 ゴジ―タの強さはどう考えても現在潜在能力を解放してもらっている悟飯よりも遥か上を行くだろう。そのゴジ―タを上回りかねないブウを前にすれば、ゴジ―タ以下の悟飯が何の助けになるのか。

 焦らずに思考を巡らせた悟飯は、確信を持っての問いに老界王神は重苦しく頷いた。

 

「ある。一つだけじゃがな」

 

 そう言って老界王神は両耳に付けられている耳飾りを揺らす。

 

「この耳飾りは単なる飾りではない。ポタラと言って、昔からの界王神のとっておきの宝なんじゃよ」

 

 儀式中なので自分のは外せないので、界王神に外して悟飯に渡すように言う老界王神。

 言われた界王神は訝し気な顔をしつつも、大人しく自分の両耳に付けられているポタラを外して悟飯に手渡す。

 

「片方を左耳につけるんじゃ」

 

 界王神に手渡された片方を言われたように左耳に付ける。

 

「これを付けると強くなれるんですか?」

 

 言われた通りにポタラを左耳に着けても強くなった実感はない。

 

「ならんよ。これは強化アイテムではないからの」

「では、何故?」

「話は最後まで聞け…………しかし、その様子だとお前さんは知らんようじゃな」

 

 分かっていない様子の界王神に正直不安になった老界王神に若いだけではなく無知なのかと少し呆れる。

 

「は、はぁ、すみません」

「後で要勉強じゃな。とはいえ、教えるべき先代や他の界王神がブウに殺されていては仕方あるまいか」

 

 恐縮する界王神の環境故の無知に理解を示しつつ、ポタラの説明をする。

 

「ポタラを簡潔に言うならばフュージョンをあのポーズなしに行うことが出来る合体アイテムじゃな」

「えっ、本当ですか!?」

「その効果はフュージョン以上、気を合わせる必要も体格を気にする必要もない。そして何よりも合体の制限時間がない」

 

 それが本当ならばブウに勝てるかもしれないと考えた悟飯だったが、直ぐに制限時間がないことの意味に気付いた。

 

「制限時間がないってことは」

「合体してしまえば、二度と元に戻ることは出来ん。これがポタラの長所でもあり短所でもある点じゃな」

 

 飄々として語る老界王神は自身が老女の魔法使いと合体した所為でこんな見た目になったこと、潜在能力を限界以上に引き出すなどの不思議な術も使えるようになったと合わせて告げる。

 

「これを使ってお父さんとベジータさんのどちらかと」

 

 ブウに勝てるのならば迷うことなくポタラを使用すべきだが、まだ多感な年頃の少年である悟飯は心の端っこで躊躇を覚えた。

 

「いや、それでも勝てんじゃろう」

 

 しかし、悟飯の迷いの元をあっさりと老界王神が切り捨てた。

 

「少なくともどちらかとお前さんが合体したところで、ライバル同士である二人以上に強くなることはないじゃろう。よしんば強くなったとしても二人が合体した戦士を大きく上回ることもない」

 

 それは悟飯も薄らと感じていたことだった。

 似て非なるライバルである悟空とベジータだからこそ界王神界にまで気の波動を轟かせたのであって、悟飯が合体しても同じことになるとはどうしても思えない。

 

「じゃあ、どうしてこれを僕に…………まさか!?」

 

 単純に悟空とベジータに渡す為にというのであれば、急いでまで悟飯の潜在能力を解放する理由もポタラを先に付けておく必要はない。

 もしも、両者にきちんとした理由があるとするならば辿り着く答えはただ一つ。

 

「もう直ぐ儀式も終わる。その時にまで覚悟を決めておくことじゃ」

 

 左耳に揺れるポタラと、もう片方を手に持ちながら悟飯は覚悟を決めなければならなかった。

 

 

 




さてさて、実は万全ではなかったブウ。その状態では超3ゴジ―タの方が上のようです。

このままでは10分以内に負けると思ったブウは予備策として殺さずにいたゴテンクスを吸収しました。更にパワーアップ。
眼の前でチチ達を殺されて少し冷静さを欠いていたこと、制限時間があったことで余裕が無かったゴジ―タを上回るブウの作戦でした。この作戦はゴテンクスを目撃した時から考えていたようです。

ゴテンクスを吸収したブウには、遂に超3ゴジ―タでもベジットでも勝てなくなってしまいました。

そんな中、老界王神の意図を読み取った悟飯は覚悟を決めないといけないようです。

さあ、どうやったらこのブウに勝てるのか。

次回、『第十七話 最強の戦士』



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第十七話 怒りの戦士

予告タイトルから少し変更しました。

あまりの力の激突に地球が悲鳴を上げ、そして……。




 

 ブウがゴテンクスを吸収してその本領を発揮した時のパワーは、ゴジ―タが超サイヤ人3になった時以上の波動となって界王神界を揺さぶった。

 

「これは……っ!?」

「動くな! もう少し、もう少しなんじゃ」

 

 遠く離れた地にある聖域にいてすらも間近で感じたような身震いするような圧倒的な気に、思わず立ち上がりかけた悟飯を老界王神が制止する。

 明らかにゴジ―タをも超えたブウの気にいてもたってもいられなくなった悟飯だったが、かなりの無理をして脂汗を掻いている老界王神を見て冷静さを取り戻して腰を下ろす。

 

「…………本当に僕達は勝てるんでしょうか?」

 

 手に握るポタラを見下ろして、勝利を掴めるのかと不安になった悟飯が胸を内を明かす。

 

「分からんよ。こればかりは実際に合体してみんことにはな」

「まるで博打みたいですね」

「言い得て妙じゃが、好き好んで世界を賭けた博打などしたいわけではない」

「僕もです。こんなのは物語の中で十分ですよ」

 

 負けたら地球を破壊され、宇宙もどうなるか分かったものではない。

 サイヤ人との戦いから始まり、フリーザ、人造人間、セル、そして今のブウに至るまで何度も脅かされてきたが、これはもう悟空でなくても呪われていると思わないでもない。

 

「すまんが、儂にも何の保証も出来ん」

 

 時間を置けば回復して気を高め続けるブウと、制限時間を迎えれば合体が解除されてしまうゴジ―タ。

 敵が脅威になる前に排除しようと早く目覚めたから万全とは言い難い状態で、制限時間のあるゴジ―タで勝機が見えるという状況だった。

 老界王神にとってもゴテンクスが吸収されるのは完全に想定の範囲を超えている。

 

「いいえ、これだけしてもらいました。後は僕達がやるだけです」

 

 悟飯にとって今まで闘ってきた相手は自分よりも遥かに強い相手ばかりだった。今更、焦ったりはしない。

 

「そう言ってもらえると助かる…………うし、完成じゃい!」

 

 言われて直ぐに立ち上がったが、湧き上がる力を感じるものの特段に強くなった感じはしない。

 

「あ、あの、あまり強くなった感じがしないんですけど」

「スーパー何とかに変身する要領で気合を込めればええ」

 

 拳を握ったり開いたりしてもパワーの解放の方法をイマイチ分からなかったので聞くと、悟飯にしてみれば馴染み深い方法を教えてもらったので実際に試してみる。

 

「はぁっ!!」

 

 超サイヤ人になる要領で内側の気を解放すると、外見的な劇的な変化はないが迸る気の奔流は間近にいた老界王神を軽々と吹き飛ばす。

 

「馬鹿垂れが! 近くに儂がいるのを忘れおって」

「す、凄い……」

 

 軽く気を解放しただけで浅いクレーターを作り出した気の奔流に吹っ飛ばされた老界王神が打った後頭部を擦る横で、封印解放時のブウを遥かに上回る今の悟飯に感嘆する界王神。

 

「なんでもかんでも変身すれば良いというものではない。儂からすればスーパー何とかなんぞ邪道じゃよ」

 

 転がった際に着いた土埃をパッパッと払う老界王神に改めて尊敬の眼差しを向ける悟飯。

 

「あ、どうやって地球に戻ればいいんでしょう?」

 

 潜在能力の解放が終わったのならば今も激戦を続けているゴジ―タの下に向かうべきである。しかし、どうやって界王神界に来たかも知らなかった悟飯に地球に戻る術がない。

 

「私が瞬間移動で地球にお送りしましょう」

「助かります」

「いえ、私が出来るのはこれぐらいですから」

 

 実際、界王神が出来たことは殆どない。

 初戦では悟空が奇襲をかけたし、四ヶ月後のバビディの宣戦布告から本拠地を割り出して襲撃したが魔人ブウの復活を防ぐことは出来なかった。

 復活したブウには手も足も出ず、キビトも失って悟空に仙豆を貰わなければ死んでいたことだろう。界王神がやったことといえば、悟飯に仙豆を食べさせてゼットソードを引き抜かせたことぐらい。

 

「儂は疲れたから一休みするが若い方のよ、絶対にブウと闘おうするではないぞ」

「え? まあ、私が戦える領域ではありませんし」

 

 これは分かっていないのだなと察した老界王神は念を押す意味でも顔を近づける。

 

「そういうことではない。お主が死ねば本当の意味で、この宇宙は終わりじゃ。いいか、こ奴らを見捨てることになっても、お前さんだけは生き残らなければならん」

 

 ブウがどれだけ強くなろうとも、まだまだ破壊神の域には遠く及ばない。

 この調子で吸収していくとまずいかもしれないが、そうなる前に天使のウィスが確実に気付くだろうから宇宙の安全という一点において心配はしていなかった。

 ただ、界王神と破壊神は表裏一体。片方が命を落とせば、もう片方も死ぬことになる関係がある。

 この界王神は若さから来るのか無鉄砲さが見られるので、そこだけは心配していた。

 

「は、はぁ……」

「坊主を地球に送り届けたら直ぐに戻って来い。まだお前さんには教えなければならんことが山ほどあるからの」

 

 界王神と破壊神の関係や、界王神のことについても老界王神の寿命が切れるまでに教えなければならないことは山ほどあるのだから。

 

「お前さんも気を付けろい」

「はい」

 

 そして老界王神に見送られ、悟飯と界王神は地球へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうした? 前の威勢の良さはどこにいった?」

 

 その声がかけられるまでゴジ―タは意識を失っていたようだった。

 体を動かすと、ガラリと崩れ落ちる瓦礫に埋まりながら顔を上げると、腕を組んだブウが上空に浮かんで不敵に笑っている。

 

「「く、くそがっ……」」

 

 今いるのは人里から遠く離れた平原で、そのど真ん中に遥か上空から叩き落とされて地面に埋まっていた。

 ゴジ―タは体の上に乗っている瓦礫を押し退けて立ち上がろうとする。

 

「「はぁっ!!」」

 

 抜け出すよりも気を放出して周りを吹き飛ばした方が速かった。

 

「「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」」

 

 息が乱れる。吹き飛ばしたことで生まれたクレータの底でゴジ―タは震えていた、怒りに。

 

「息子が取り込まれてしまっては貴様も思うように戦えんようだな」

 

 ゆっくりと地上に降りて来たブウが上に立つ余裕を隠しもせずにゴジ―タを身長差もあって見下ろす。

 

「「節操もなく取り込んでおいてよく言うぜ」」

「言っただろう。負けるよりかは良いと」

 

 こうしていう間にもゴジ―タの制限時間が迫り、反対にブウはそのパワーをどんどん増していく。

 今しか勝機は見えないというのに、倒し切るだけのパワーがゴジ―タにはない。

 

「息子達を返してほしいというのならば、合体が解けた後でなら返してやってもいいぞ。一人一人では大した力にもなりそうにないからな」

 

 ゴテンクスの合体が解除されるのは十分以上の先の話だ。その時にはゴジ―タでもなくなっていて、敵ではないと分かっているからそのような提案が出来る。

 両者から発せられる力は目の前の存在を許さぬばかりに苛烈に荒れ狂っている。放散される殺気は心臓の弱い者なら止まりかねないほど。空間が軋みかねない威圧の余波か、ゴジ―タが立っている地面がピシピシと亀裂が入る

 

「休憩はもういいのか?」

 

 分かっていたのか、と静かに乱れていた息を整えていたゴジ―タは問わずに舐められていると憤る。

 

「「ぶっ潰す」」

「出来るのか、その程度の力で」

 

 臨界は近い。ゴジ―タの体力も十全とまではいかなくても戦闘可能なまでには回復しており、再度の戦いの気運は高まり続けている。

 

「「せいっ!」」

 

 馬鹿にされると分かっているから、超スピードでブウに迫ってその腹に拳を叩き込む。防御されたがそのまま弾き飛ばす。

 再び戦場を上空に移し、どこまでも駆け上がる二つの光。

 数秒の間に地上は遥か遠く、激突は際限なく高度を増していく。

 一瞬の内に幾度となく衝突する。その様を見れるものがいればピンボールを連想しただろう。尤も、ぶつかり合う両者は肉眼で捉えられるものではない。

 達人の目では遥か遠くならば辛うじて衝突が判る程度の、人の身では不可視な化け物達が織りなす遊戯。縦横無尽、上下左右から闘う両者に重力の縛りはない。瞬間移動するように最大推力をもって、互いに向かって一直線に突進する。

 

「「うおおおっっっっっ!」」

「はあああっっっっっ!」

 

 傍から見れば彗星と彗星が正面からぶつかりあうような光景であった。

 互いに道を譲らずに激突した二つの彗星は、一度離れあったものの、旋回し、螺旋を描き、縺れ合うようにして移動していく。飛燕の如き動きで距離を縮めながら中距離攻撃を放ち合い、螺旋軌道でそれを回避する。二条の光跡が交差する度、己の生命エネルギーを燃焼するような閃光が散った。

 やがて二つの彗星は、回転しながら一つの恒星となり、凄まじい量の光を放散する。

 戦意を力へと変え、その中心で二人の力が激突しているかのように。

 

「「おおおっ!」」

 

 進行方向に先回りして、自らを奮い立たせるように吠えてゴジ―タは両手を頭上で組むと、ブウの後頭部を目掛け腕を振り下ろした。しかしその一撃は空しく空を切り、逆に閃光のような速さで下顎を掌で跳ね上げられてしまった。

 一瞬、意識が弾けた。ゴジ―タの身体が寸瞬の間、呆然と宙に浮く。

 続けて剛腕から放たれた拳が真正面からゴジ―タに襲い掛かった。

 避けることは出来ず、辛うじて両腕を交差させて守りの姿勢を取ったが、爆風のような衝撃に体ごと吹っ飛ばされてしまった。

 垂直に跳んでいたゴジ―タの軌跡が直角に変化する。

 

「貴様との戦いにも、もう飽きた」

 

 上空へと上がったブウの手に集められた気が周囲の風景を捻じ曲げる。

 

「「ま、待て……っ!?」」

「この星と共に消え去れ」

 

 ゴジ―タが見上げる先で地球を破壊して余りある気弾が収束し、地面に向かって放たれた。

 

「「――波ぁっ!」」

 

 溜めをする暇もなかったので、威力が不十分と分かっていてもかめはめ波で迎撃するしかない。

 突き進んだかめはめ波と小さな気弾がぶつかった瞬間、地球が激震する。もしも人がいれば立っていられないほどの衝撃だったが、直ぐに収まる。

 

「馬鹿め」

 

 威力を弱めた気弾をわざと迎撃させたブウは嗜虐の笑みを浮かべて第二、第三の、そして数えることすら出来ないほどの数の気弾を次々に放つ。

 ブウにとっては弱かろうが、十分に地球を破壊しかねない気弾の嵐。

 先程のとそう変わらない気が感じられ、ゴジ―タではその全てを迎撃することは叶わない。

 

「「うぉおおおおおおおおおおおおっ!!」」

 

 かめはめ波を止めずに全ての気弾を迎撃していたが、ブウは最後にゴジ―タの身長を遥かに超える大きな気弾を作り上げていた。

 

「死ね、カカロット」

 

 ブウはそう言って巨大な気弾を落としてくる。

 かめはめ波を巨大な気弾に向けるが足止めにもならない。ゴジ―タにも分かっていた。もう無理だと。

 

「フッハハハハハハハハハハハハハハハハ――――――――ッッ!!」

「「くそったれがぁっ!!」」

 

 勝利を確信して高笑いするブウが放った巨大な気弾は止められないと分かっていても、最後まで決して諦めぬとかめはめ波を撃ち続けるゴジ―タ。

 

「お父さん!」

 

 何もないかのように堕ちて来る巨大な気弾を押し留めることすら出来ず、後少しで接触というところで瞬間移動で背後に現れた悟飯がゴジ―タの背に触れる。

 

「え!? あ」

 

 眼の前に破滅的な力が迫るこの突発的事態に老界王神に直ぐに戻るように厳命されていた界王神は瞬間移動を発動させた。

 手を繋いだままの悟飯と、悟飯が背中に触れていたゴジ―タを連れて。

 

「!?」

 

 状況を認識できないゴジ―タが界王神界に瞬間移動させられても体勢を崩さなかった。

 

「「こ、ここは?」」

 

 今、行われたのが瞬間移動だというのは悟空も使えるので理解していたゴジ―タは警戒を解かずに膝を付いていた悟飯に問いかける。

 

「界王様の世界、界王神界です。僕はさっきまでここにいたんです」

「「そうか……」」

 

 悟飯からの返答の後に盛大に転倒している界王神の姿を認め、超サイヤ人3を解いて通常の状態に戻る。

 

「「くそっ、地球を、何も誰も守れなかったっ……!!」」

「うひゃぁっ!?」

 

 ゴジ―タが怒りのままに地面を叩くと、頑丈なはずの界王神界の地面が割れて隆起して立ち上がろうとしていた界王神がまた転倒する。

 

「お父さん……」

 

 取りあえずゴジ―タを父と呼ぶことにした悟飯は悔しがるその背にそれ以上の声をかけられなかった。

 

「お母さん、ビーデルさん、みんな……」

 

 儀式中だった悟飯には母や恋人未満だったビーデルの死の実感はなかったが、顔を上げないゴジ―タの姿とあの気弾が落ちれば地球など持たないという認識が遅まきながら実感を与えて来る。

 

「あのお二人とも、ブウがどうなかったかを見て見ましょう」

 

 地球が無くなったことに心に穴が開いた気持ちを感じている二人の気持ちを慮りながらも、ブウの生死を確認しなければならない立場の界王神が水晶を指差す。

 ゴジ―タと悟飯が水晶を見ると、今正に再生を続けているブウの姿が映った。

 

「孫悟飯、あれを」

「はい、老界王神様。お父さん、これを」

 

 界王神と同じ服装をした老人に指示された悟飯が、ゴジ―タに界王神が付けているのと同じ耳飾りの片方を差し出してくる。

 

「「なんだ、それは?」」

「これがあればブウにも勝てるらし」

「あ!?」

 

 いです、と既に覚悟を決めていた悟飯がポタラの説明をしようとしていたところで、水晶を見ていた界王神が声を上げた。

 その声に悟飯が説明を止め、ゴジ―タが突如として背後に感じた気配に振り返った。

 

「ぶ、ブウ……!?」

 

 振り返った先には何故かブウが立っている。

 

「「あれだけで瞬間移動を覚えたってのか?!」」

 

 セルの時に二度見て、セルを吸収したブウが一度感じ、そして界王神の瞬間移動を見た。

 技を覚えるのにそれだけあればブウには十分。

 

「カカロット」

 

 決して逃がさぬと、ブウが気弾を手に込めて間近のゴジ―タに叩きつけようとした。

 

「いけません!」

 

 界王神が動けたのは奇跡だった。

 最後の希望であるゴジ―タを殺させはしないと、瞬間移動で手に込めた気弾をゴジ―タに叩きつけようとしている間に割り込む。

 

「馬鹿者!!」

 

 自分の命が自分だけの物ではないことを知らない界王神の行動を非難しながらも老体では動けず、老界王神に出来たことは能力で自身と位置を入れ替えることだけ。

 

「逃げ――」

 

 たった二文字を残して、界王神と位置を入れ替えた老界王神はブウの気弾に焼かれて塵一つ残さず消え去る。

 

「老界王神様!?」

「行って下さい、界王神様! 父さんこれを右耳に!!」

 

 自らの行動によって消滅した老界王神にショックを受けている界王神にこの場から離れるように言い、超サイヤ人3になってブウに一撃を入れようとしてやり返されて距離が開いたゴジ―タに向かってポタラを投げる。

 

「「ち、ちくしょう、右耳だな」」

 

 今はブウを倒せるならなんだって利用する。その心づもりで着地しながらポタラを受け取るゴジ―タ。

 

「かめはめ波っ!!」

 

 変なことをされないようにを先に界王神を始末しようとしていたブウに向かって、範囲を絞った全力のかめはめ波を放つ悟飯。射程外にいて界王神はその隙に瞬間移動で界王神界からいなくなる。

 

「また雑魚が」

 

 悟飯の力が増していようがブウにとっては羽虫が増えた程度の認識でしかない。

 ブウ基準では大した威力もないかめはめ波の中を逆走していると、何故か途中でかめはめ波が途絶えた。

 

「逃げた、がっ!?」

 

 いきなり強い力で頬を殴られてブウの体が吹っ飛んだ。

 

「ぬ、ぐっ」

 

 今のブウですら踏鞴を踏むほどの威力。

 口の端から垂れた血を拭ったブウが顔を上げると、先程までブウがいた場所に一人の男が立っていた。

 

「…………何者だ、貴様?」

 

 ブウは知らないがゴジ―タと同じメタモル星人の衣装に紺色のインナーシャツを着た男は静かに語る。

 

「名前に意味などない。これからお前は死ぬのだから」

 

 周りには悟飯とゴジ―タの姿がない。

 悠然と立つ姿に一切の隙は見当たらず、ただその厳しい視線がブウを捉えていた。

 

「はっ、この俺を殺すだと? 冗談も甚だしい。屑が幾ら群れようが」

「屑、だと?」

 

 少し離れた場所にいた男が一瞬でブウの懐に入り、その首を掴む。

 

「く」

 

 直ぐに振り解き拳を放つが、その手首を簡単に掴まれる。

 

「チチをブルマを殺し、地球を破壊しやがって。貴様こそが屑野郎だろうが」

 

 ギリギリと掴まれている手首に力が込められて、ブウが振り解こうとするも果たせない。

 

「き、貴様……何故、貴様にそんな力が」

 

 遂に手首を握り潰されてポトリと地面に落としながらブウは急いで距離を取る。

 

「―――――――俺は怒ったぞ、ブウッッ!!!!」

 

 ゴハンとベジータがカカロットが合体した怒りの戦士ゴジットが、今のブウを遥かに上回る桁違いの極大のオーラを発して咆哮を上げた。

 

 

 




 感想で当てられてしまいましたが、セル・ブロリー・ゴテンクス吸収のブウに勝てるのではないかと老界王神が期待した戦士がゴジット(「ゴ」ハン+ベ「ジ」ータ+カカロ「ット」)です。

 フュージョンで悟空とベジータが合体してゴジ―タ、潜在能力を解放した悟飯。
 フュージョンが出来るのは同じ気の量が必要なので潜在能力を解放した悟飯では悟空とベジータとは釣り合わない。
 ポタラにはそのような制限はない。
 ならば、悟空とベジータとフュージョンさせて悟飯をポタラで合体させれば、原作勢優遇にならずとも強い戦士が誕生すると考えた次第です。

 ゴジ―タと悟飯が合体して、なんで名前がゴジットかと思われるかもしれませんが、ゴジハンとか、ゴハータとか、変な名前になってしまいますのでご容赦ください。

 さて、ベジータの冷静な戦闘理論と悟空の純粋な格闘センス、そしてそこに悟飯の爆発力が加わったゴジットの活躍は次回にて。

次回、『最強のゴジット』


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第十八話 最強のゴジット

戦闘力表を考えていたら遅くなりました。尚、全て本作設定ですのであしからず。


戦闘力表、悟空(10)を基準とする
超2では悟空と同格なのでベジータ、悟飯も10とする

悟空 10 超サイヤ人50倍 10*50=500 超サイヤ人2は2倍 500*2=1000 超サイヤ人3は4倍 1000*4=4000

ブウは悟空の超3と同格 4000
セルは超2より少し上  1500
ブロリーは悟空の超3で超2が互角、つまりは悟空の超3の4倍 4000*4=16000

ブウ:セル吸収 4000+1500=5500
ブウ:セル・ブロリー吸収 5500+16000=21500 吸収直後は20000までダウン。

フュージョンの効率はポタラ以下(基本に1.5を割る)

ゴジ―タ 10×10/1.5=66*50=3300*2=6600 超サイヤ人3はベジータ未収得の為、1.25割る 6600*4/1.25=21120

尚、ベジットの場合 10*10=100*50=5000*2=10000*4/1.25=32000 

ゴテンクス 5*5/1.5=16*50*2*4/1.5=4266(フュージョンで練習しているが基本の二人の実力が低い為、超3時は1.5割る)

ブウ:セル・ブロリー・ゴテンクス吸収 20000+4266=24266 更にパワーも回復して25766

全て本作設定ですのであしからず。



 ゴジットが咆哮した直後、真っ直ぐに向かって来てもブウは反応すら出来なかった。

 速いことは早かったが全く見えていなかったわけではない。何故、反応出来なかったかと言えば、ゴジットが無造作に放つ巨大な気に呑まれていたのかもしれない。

 

「!?」

 

 だからこそ、超速度で迫ったゴジットの右拳によって頬を殴り飛ばされた時に、あまりの威力に首が捥げそうになって始めて攻撃を受けたことを自覚した。

 左斜め後ろに殴り飛ばされたブウを追ったゴジットは組んだ拳で無防備な背中を打ち、鋭角に地面に叩きつける。

 成す術もないブウが何十メートルも大きな溝を作っていると先回りされて蹴り上げられた。

 空中を物凄い勢いで蹴り上げられたブウの体が飛んで行く。

 

「ギャリック魔閃光っ!!」

 

 為すがままだったブウは流転する意識をかき集めて瞬間移動を発動させる。

 が、少しだけ間に合わずに下半身が消滅してしまった。

 ギャリック魔閃光が通過した場所からゴジットを挟んで反対に出現したブウは直ぐに下半身を生やす。 

 

「どうした、随分とやられているじゃないか。さっきまでの余裕振りはどうした?」

「だ、黙れ」

「はっ、自分が上の時はペラペラと喋っておいて下になったら喋れないってか」

 

 ブウはゴジットを観察する。

 力はもしかしたら自分を超えているのかもしれない。恐らくその鍵は両耳に付いている耳飾りにあると見た。

 ならば、その耳飾りを奪えば弱体化するはずである。

 

「余裕を見せ過ぎだ」

「そうかな」

 

 耳飾りの奪取、また破壊の為に瞬間移動で背後を取ったつもりが更に背後を取られていた。

 耳飾りを千切ってやろうとしたら背中を蹴りつけられて顔面から地面に突っ込んでいる。手を付くことすら間に合わず、顔で倒立するように足が地面に着いたことで体を起こしたブウは、ハッとして急いで距離を取ろうと瞬間移動をする。

 

「良いことを教えてやる」

 

 にも関わらず、また背後を取られていた。

 また瞬間移動で距離を取った直後に顔面に気弾が飛んできて後頭部を地面に強かに打ちつける。

 

「瞬間移動には独特の癖がある。同じ遣い手の前では、あまり多様しない方が良いぞ」

「くっ、くそ」

 

 余裕を見せるゴジットにブウは頭に着いた土を払うこともせず、向かって行く。

 

「お前はもう謝っても許してやらない」

「!?」

 

 後少しで拳が当たるというところでブウの方が顔を弾かれた。

 

「これはチチの」

 

 見えないほど早い拳がブウの腹を抉る。

 

「ブルマの」

 

 首が千切れると思うほど強い拳が当たり。

 

「ビーデルの」

 

 横っ腹に最初から最後まで見えない蹴りが叩き込まれた。

 

「地球を破壊した分だ!!」

 

 一瞬で十を超える連打が胴体に次々と着弾する。

 あまりの衝撃と痛みにブウは意識が途切れそうになるのを必死に繋ぎ止めなければならなかった。

 

「ばぁっ!!」

 

 今は少しでも時間が欲しい。溜めも一切なしで目の前にいるゴジットに向けて気功波を放つ。

 

「蚊でも飛んだか?」

「……っ?!」

 

 ブウが放った気功波の中を真っ向から向かって行って力技で引き裂き、その腹に膝を叩き込んだゴジ―タは言いつつも、肘を首裏に叩き込む。

 

「くっ、ぎぃ!」

 

 相手の攻撃を利用して一回転して踵をゴジットの頭に落としたが簡単に受け止められる。

 ブウの攻撃は二段構え。もう片方の足で踵落としを仕掛ける。

 

「温い」

 

 ズバッ、とゴジットの手から出た気の剣がブウの足をあっさりと切り落とす。

 

「カアッ!!」

 

 もうブウは少しぐらいやられようが気にしない。手に空間が歪むだけの気を溜めてゴジットに直撃叩きつける。

 

「何時までもそんな技が通用すると思ってるのか」

 

 足を切り落とした気の剣を開いた手の平に収束・圧縮したことで虹色の光を帯びる気弾でブウの気弾を押し潰して手を破壊する。

 

「死ね――――ファイナルかめはめ波っ!!」

 

 片手・片足を失ったブウの胴体にファイナルフラッシュの構えから放たれたかめはめ波の特大の気功波を放つ。

 

「――――」

 

 ブウはなんの抵抗も出来ずにファイナルかめはめ波に呑み込まれた。

 

「ちっ、仕留めきれなかったか」

 

 ゴジットが舌打ちをしながら振り返ると、微かに残っていた体の残滓から再構成したブウが息を大きく乱しながら膝をついている。

 

「き、貴様…………俺の中には貴様の息子達もいるのだぞ」

 

 殺意100%で完全に消滅させる気だった攻撃はブウの中にいる悟天とトランクスを全く考慮しているようには感じられない。

 

「だから、どうした」

「本当に良いのか? お前の息子達は俺の中で生きている。俺を殺せば助ける機会は無くなるぞ」

「貴様のような輩の中で生き続けるぐらいなら、この俺が欠片も残さずに消し飛ばす」

 

 この男はやると言えば確実にやると、ブウにも強烈に感じさせた。

 

「もう地球がない以上、ドラゴンボールも存在しない。それでも息子達諸共に俺を殺すというのか!」

 

 神様であるデンデを殺してドラゴンボールを使えなくした張本人が図々しく叫ぶ。

 

(どうやらナメック星のドラゴンボールのことは知らないようだな)

 

 と、ゴジットは考えるが全く表に出さない。

 

「言ったはずだ、死ねと」

 

 貴様はここで何を犠牲にしようとも必ず殺す、と一切の虚飾もなく息子達を助ける気は無いとブウに思わせる殺気を放つゴジット。 

 

「先に教えておくが、ポタラによる合体はフュージョンのような時間制限はない。俺のこの合体が解けるとは思わない方が良い」

 

 つまりは時間を稼いでいれば助かるなどという楽観論を挟む余地もない。

 

「そして界王神界を破壊しようとするのも無駄な努力だ。そんな隙を晒せば、その瞬間に貴様を殺す」

「ぬっ、ぐぅ……」

 

 力の差は明白である。

 惑星を破壊するほどの力を放つにはどうしても溜めが必要になる。ブウがゴジットが至った次元ではその溜めの時間こそがとんでもなく大きな隙となる。

 

「で、では、俺を見逃せば二人を返そう」

「ほぅ……」

 

 ゴジットがその提案に僅かに目を細めたので、ここが正念場だと考えたブウの口が滑らかに回る。

 

「宇宙は広大だ。望んで会おうとしなければ永遠に出会うことはない。お前がいる北の銀河には二度と近づかないと約束――」

 

 しよう、と言いかけたところでビリビリと肌を震わせる圧力に口を閉ざされた。

 

「お前は本当に」

 

 クツクツ、と喉の奥で笑って右手で額を抑えて顔を隠したゴジットは人がある一定の感情を超えると途端に笑えて来ることを実感した。

 

「俺をどこまで怒らせれば気が済むんだ!!」

 

 怒りがゴジットを滾らせる。

 

「この俺が、チチをブルマをビーデルを皆を殺した貴様をみすみす見逃すと本気で思ってるのか!!」

 

 心の奥から怒りをトリガーとして発せられた力の波動が、頑丈なはずの界王神界の大地に亀裂を作り出すほどの黄金に輝く極大のオーラを天空に向けて迸らせる。

 

「ぬっ、おぉぉ……!?」

 

 ただ怒りを放散させるだけで街を一夜で壊滅させる嵐を遥かに超える強風に晒されたブウの体が我知らずに震える。

 倍近くあったゴジットの気が更に膨れ上がる。そこでブウはある致命的な事実に気付いてしまった。

 

「ま、まさか貴様…………まだ本気ではなかったというのか!?」

 

 倍以上に膨れ上がった気を放つゴジットの黄金のオーラにスパークがない。つまりそれは、超サイヤ人を超えた超サイヤ人――――超サイヤ人2ではないということ。

 

「貴様相手に本気を出すまでもない。ああ、俺の思い上がりだった。完膚なきまでの圧倒的な力を思い知らせてやろう」

 

 ゴジットは静かに語って黄金のオーラを収めて通常状態へと戻る。

 超サイヤ人でなくなって大きく減った気は絶好のチャンスであったはずなのに、恐れを抱いていたブウは何をするのかと怖気づいて動けない。

 

「普通の状態から超サイヤ人への強化率はおおよそ50倍と言ったところか」

 

 ブォン、と音が聞こえそうなほどに再び超サイヤ人に戻ったゴジットの気がまたブウを遥かに超える。

 

「これが超サイヤ人を超えた超サイヤ人…………さしずめ、超サイヤ人2とでも呼ぶ状態になれば戦闘力は超サイヤ人の2倍となる」

 

 黄金のオーラにスパークが混じり、目を開けていられないほどの轟風がブウを襲う。

 既にブウの倍近い気が大きく膨れ上がり、どう足掻いても手も足も出ない領域へと突入している。にも関わらず、気はまだまだ天井知らずに膨れ上がる。

 

「そして最後、超サイヤ人2を更に超えた超サイヤ人が超サイヤ人3だ!」

 

 怒りをその内に押し込め、更なる起爆剤として力が膨れ上がる。

 膨れ上がる気に耐え切れぬとばかりに激震する界王神界。

 例えるなら小高い丘程度の気しか持たないブウに比べれば雲にまで届く山レベルに増大した気を放つゴジットの髪が伸びて背中へと流れていった。

 

「――――超サイヤ人3の強化率は超サイヤ人2の実に4倍に及ぶ。万に一つの勝機も与えることなく貴様を殺す」

 

 既に倍近く広がっていた通常の超サイヤ人から計算すると、ブウとゴジットの気の差は実に20倍近い。

 

「か、勝てるわけがない……」

 

 超サイヤ人3のゴジットから感じ取れる気があまりにも巨大過ぎてブウには勝機が欠片も見えない。

 これでゴジットに油断や慢心があれば勝機はあるが、絶対にブウを殺すと殺意が高すぎて油断や慢心は全くない。

 順当な結果としてブウはここでゴジットに殺される。

 

「5」

 

 わなわなと震える体をなんとか押さえつけていたブウに向けてゴジットはいきなり広げた手を向けて来た。

 

「4」

 

 親指を折り、その意味がカウントダウンと察したブウに出来ることは何もない。

 

「3」

 

 ありえるとすれば瞬間移動で逃げることだけだが、そのような素振りを一瞬でも見せれば殺すとゴジットの目が物語っていた。

 

「2」

 

 自分に残された時間を減って行くのを目の当たりにしても、せめてもの一矢を報いることすら考えに浮かぶことはない。

 絶望的な力の差がブウの心を折っていた。

 

「1」

「うっ!?」 

 

 残る小指が折られようとした正にその時、ドクンとブウの中で変化が起こった。

 

「0、タイムリミットだ」

「う、ォおおおお…………あぅっ!? な、何が……!?」

 

 ニヤリと笑ったゴジットとは対照的にブウは急激に減ったパワーに困惑する。

 

「分からないのか? フュージョンしたゴテンクスの合体が解けたんだ。貴様自身の回復したパワーは落ちないだろうが、ゴテンクスの超サイヤ人3のパワーに比べれば、チビ達のパワーは貴様にとって大したものではないようだな」

 

 先程からゴジットがしていたカウントダウンはゴテンクスのフュージョンの制限時間を数えていたものであり、怒りを抱きながらも思考は支配されていない証明でもある。

 

「これで、ただでさえ開いていた力の差が更に大きくなったわけだ」

 

 ゴテンクスの超サイヤ人3相当のパワーが無くなり、フュージョンが解けた悟天とトランクスのパワーを合わせてもセル一人にも及ばないだろう。更に広がった力の差にブウは拳を握ることも出来ない。

 

「俺を殺せば貴様らの子供は――!」

「くどい」

 

 既に突っぱねた懐柔策が通用するはずもなく、超サイヤ人3の巨大な気がブウに向けられた手の平に向けて収束する。

 恐らくゴジットからすれば小指の先で突く程度の力しか込められていないだろうが、たったそれだけの力だけで十分にブウを消滅させるだけの破壊力を有している。

 ブウを殺す為に気がドンドン集まり、塵一つ残さないとばかりに破壊力が高まって行く。

 

(に、逃げることは出来そうもない。倒すのはもっと無理だ。後は……)

 

 増していく気を前にして、後少しで訪れる破滅の光を見ていることしか出来ないブウは嘗てないほどに思考を働かせる。

 

(一か八かとなるが、奴を吸収するしかない。だがどうやって……はっ!?)

 

 そこでブウはゴジットによって握り潰された手と切り落とされた足が近くに転がっているのを見て、力の差がどうしようもないのならば相手を吸収するしかないと考えた。

 恐怖が思考を即決させ、行動に移す。

 

「はぁっ!!」

 

 握り潰された手で気功波を放とうとしている手を掴んで上に上げさせ、切り落とされた足を飛ばして足払いを仕掛ける。

 

「なにっ!?」

 

 手首によって気功波は目標から大きく外れて天空へと放たれ、足払いをかけられたことで仰向けに倒れ込んだゴジットに向かって跳んだブウ。

 一か八かの作戦は上手くいき、バランスを崩したゴジット目掛け、逃げるのではなく全身で圧しかかって吸収を仕掛けるブウ。

 圧倒的な力の差を見せつけられて恐怖を植え付けられたブウに、この隙に瞬間移動で逃げるという選択肢は全く思いつかかない。この場で吸収できなければ殺されると思い込んだブウの決死の行動だった。

 

「し、しまっ!?」

 

 ブウ本体による決死の吸収策までは予想していなかったのか、触手に変わって覆い被さされたゴジットの声が途切れた。

 暫く手や足らしきものが伸びたが、やがてその抵抗も無くなって行く。

 

「――――――はぁ! はぁ! はぁ! はぁ!」

 

 数分の後、人型を取り戻したブウが荒い息を吐く。

 

「やった、やったぞ! 馬鹿め、俺の作戦勝ちだ!!」

 

 死神の鎌そのものだったゴジットをその内に取り込んだブウが九死に一生を得た反動で高笑いをする。

 その身体の内側に潜り込んだ存在のことも知らず。

 

「―――――――と、ブウは考えているのだろうな」

 

 バリアーを張って吸収されずにブウの体内に潜り込んだゴジットは笑った。

 

「悟天とトランクスを返してもらうぞ」

 

 ブウに気づかれる前に足早に移動を始めたゴジットのポタラに、ピシリと罅が入ったことに誰も気づいていなかった。

 

 

 




ゴジットの戦闘力はアルティメット悟飯の補正で全てに1.05倍されます。

((10*10/1.5)*10*1.05)*(50*1.05)*(2*1.05)*(4*1.05)=324135

ブウはパワーが増してもゴテンクスのパワーが減って、最終的には22000。ゴジットが30万以上なので10倍以上の力の差、これで勝つのは無理。

といことで、一か八かの決死の吸収策が成功したかと思えば、実は全てゴジットの手の平の上だったというお話でした。
しかし、ブウの体内に入ったゴジットのポタラに罅が入っており……。

次回、『第十八話 想定外』


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第十九話 想定外

残すところ、今話と合わせて残り2話です。



地球を離れていたフリーザ様がゴジットの気を感じて、こいつを超えなければならないと決意を新たにしたようです。




 気のバリヤーで体を覆うことでブウに吸収されずに体内に入り込んだゴジット。

 

『もう誰一人として俺の邪魔をする存在はいない! 思う存分に殺戮と破壊を楽しんでやるぞ!!』

「五月蠅い奴だ。あの野郎の中にいるから声が響いて仕方がない」

 

 全ては作戦通りに事が運んだが、この大声だけは予想外に響いていたので両耳を塞がなければならなかった。

 

「予想通り、逃げることも戦うことも考えられないように追い込んで吸収させることには成功した」

 

 怒り様は演技ではなかったが悟天とトランクスをゴジットが見捨てるはずがない。

 

「ここで魔人ブウを見逃せば、吸収を続けられたら勝てる保証が無くなる。嘘であっても殺すと言ったことには二人で後で詫びなければならん」

 

 魔人ブウの本当の恐ろしさは表面上の強さではなく、人間を吸収するごとにそのパワーを得ていくことにある。

 今はゴジットが遥かに上回っているが、もしも二人と引き換えに見逃しても多くの人を吸収して自分の方が上になったら、また襲い掛かって来ることは想像に難くない。

 少しでもゴジットが二人を気にする素振りを見せれば、ブウは確実に取引材料として利用したことだろう。確実に上回っている今しか、例え悟天とトランクスを自らの手で殺すことになったとしても、ブウを倒すことをゴジットに決意させた。

 

「さて、上手く潜り込めたが悟天とトランクスはどこにいるのか」 

 

 怒りすらも利用しきる戦士ゴジットは当初の目論見通り、バリアーを張ってブウの体内に潜り込んで悟天とトランクスを探し始める。

 

「気は探れんか」

 

 方向も定まらないまま歩きながら気を探るが、流石に体内ではブウの気が大きすぎて二人の気はゴジットでも感じられない。

 

「となれば、足で探すしかない」

 

 気が感じられなければ瞬間移動も使えないことを意味しており、吸収した時に合わせて小さくなった体で広大なブウの体内を自らの足だけで探すことを意味している。

 

「手や足に吸収した二人がいるとも思えん。あるとすれば、頭か胴体のどこか可能性が高い」

 

 推測になってしまうが、それほど外れてもいないだろうと考えて歩きながら、もう良いだろうとバリアーを解いた直後に罅が入っていたポタラが音を立てて割れた。

 途端にポタラによる合体が解けて、フュージョンによる合体も合わせて解けて三人に別れる。

 

「「「なっ!?」」」

 

 三人は驚愕しながらも無様に尻餅を付くような愚は犯さず、危なげなく足から着地して互いの顔を見渡す。

 

「な、なんで合体が……? しかもポタラも壊れて」

 

 ポタラのことを老界王神から直接聞いた悟飯が耳に付いているポタラを触ろうとして、既に粉屑と化して手は空を切る。

 

「一度合体したら二度と戻んねぇんじゃねぇのか?」

「僕はそう聞いたんですけど……」

 

 悟空に聞かれても悟飯にだって分からないものは分からない。

 

「ふん、俺としてはこうなってラッキーだぜ。貴様らと一心同体になって一生に過ごすなんて寒気がする」

「つっても、ベジータ。オメェは死んでんだぜ。合体してなかったらあの世に戻るしかないんだぞ」

「覚悟の上で死んだんだ。そんなことは貴様に言われるまでもない」

 

 生き返れないと分かった上で自爆をしたベジータにとって、悟空の言うことは今更でしかない。

 

「でも、本当になんで合体が解けちゃったんでしょう。ポタラまで無くなっちゃったし」

 

 こうしている間にもブウに気付かれる危険があるが、このことが分からない事には先に進めない。

 

「…………これは推測だが」

 

 天使の輪っかを頭の上に浮かべながら悟飯の疑問に一応の答えを自分なりに考えたベジータが口を開く。

 

「まず第一に、あのポタラって奴の想定外の使い方をしたからかもしれん」

「想定外って?」

「あ、フュージョンのことかもしれません。でも、老界王神様は何も言ってませんでしたけど」

「だから、推測だって言っているだろう」

 

 ゴジットになるには、フュージョンをした悟空とベジータが合体してゴジ―タとなり、そこにポタラを使って悟飯と合体する必要がある。

 普通ならば一対一の合体のはずが、片方の一人がフュージョンをした二人というのは確かに適切な使い方とは呼べない可能性はある。

 

「第二に、このブウの体内の嫌な空気だ。仮に界王神が魔人ブウと対極の存在だとすれば、そのポタラって奴は相性が悪いのかもしれない」

「界王神様と少し話をしましたけど、界王神様は惑星を作成し管理する創造神としての役割を持つって言ってました。ブウは気の資質が邪悪ですし、相性が悪いと言うのは合ってると思います」

 

 腕を組んだ悟飯がゼットソードを抜きに行く際の少しの時間の間に話した内容と合致するベジータの推測の頷く。

 

「最後に、これは単純にあのポタラが俺達が合体したパワーに耐え切れなかったことだ」

 

 これには悟空も悟飯も少し考え込んだ。

 

「ああ、オラもまさかあそこまでパワーアップするなんて思わなかったもんな」

 

 ブウを追い詰める為とはいえ、超サイヤ人3になった時のパワーは今の悟空では逆立ちすらしたって及びもしない領域にある。

 悟空の知っている界王神が界王神の中でも普通のレベルにあるとすれば、あまりのパワーにポタラの耐久力が持たなかったという推測は考えさせられるものがある。

 

「とはいえ、ポタラが壊れてしまった以上はここで話していても答えが分かっても意味はありません。悟天とトランクスを探しましょう」

「だな。二人を助けて、セルやブロリーをやっつけちまえば今の悟飯なら楽に倒せるだろう」

「忌々しい話だがな」

 

 全く以てベジータにとっては、悟空の超サイヤ人3も潜在能力を解放した悟飯の力はいけ好かないものであっても頼もしいことに変わりはない。

 

「で、どう探すんだ? 手分けして探すか?」

 

 急ぐ必要はあるが二人がどこにいるかも分からないので、一番手っ取り早いのは分かれて別々に探すことである。

 

「ブウの体内ですから下手に別れるのは得策ではないと思います」

 

 取りあえず、真っ直ぐ進みながら悟飯が答える。

 

「そうだな。気づかれて各個撃破されてしまうのが一番怖い」

 

 この中で一番弱いのはベジータである。別れて行動していて一番殺される確率が高いのはベジータだ。

 

「一緒に行動していれば一人二人が足止めしている間に悟天とトランクスを助けられるもんな」

 

 足止めに徹しなければならないのは戦闘力が一番高い悟飯が次点で超サイヤ人3になる悟空となる。

 その場合、悟飯は必ず逃がすと心に決めた悟空は微かに気を感じて顔を上げた。

 

「悟天の気だ!」

「…………こっちだ!」

 

 一番最初に悟空が気づき、遅れてベジータが微かに感じたトランクスの気の方向を割り出して走り出す。

 そう時間もかからずに目的の場所へと到達する。

 

「悟天、トランクス!」

 

 見つかることなどお構いなしに全力で走った三人の中で最初に辿り着いたのはやはり一番戦闘力の高い悟飯だった。

 遅れて悟空とベジータも到着し、悟天とトランクスが上下から伸びた繭のような物に囚われた状態ではあるが無事な姿を発見して胸を撫で下ろす。

 

「良かったぁ……」

 

 はぁぁぁぁぁ、と長い安堵の息をついた悟空は座り込まんばかりであったが流石にブウの体内で尻をつける気にはなれなかった。

 隣で厳しいしかめっ面を珍しく和らげてトランクスを見たベジータは、近くで二人と同じように繭に囚われたセルを見つけた。

 

「セルもいるのか」

「どうやら、ここが吸収された人を安置する場所なのかもしれませんね」

 

 悟天とトランクスだけでなくセルの姿も直ぐ近くにあったといことは、悟飯の言うようにこの場所は吸収された人はこの場所にやって来るのかもしれない。

 

「おかしいぞ。ブロリーの姿がない」

 

 二人を切り取って助けるのは簡単だがブウに気付かれる可能性も高いので、先に吸収されたセルとブロリーを排除しておく必要がある。

 

「もしかしたらブロリーだけ別の場所にいるのかも」

「アイツの強さを考えたら特別扱いもするか……」

 

 ブウ自身よりも強いのだから特別扱いもおかしいことではない。

 

「おい、こいつは一体どういうことだ?」

 

 困惑したベジータの声に、二人を切り取ってから別の場所を探すか、それとも先に探すかを思案していた悟空と悟飯が声の聞こえた少し離れた場所に向かう。

 すると、そこには意外な物があった。

 

「ま、魔人ブウ!?」

「こいつは封印から出て来た方の太っちょの方だな」

 

 悟飯が界王神界にいた理由である初期ブウの姿に驚きを露わにしていると、比較的冷静な悟空がベジータと同じ疑問を抱く。

 

「ブロリーにやられかけてセルを吸収して、それでも敵わなくてベジータの自爆を活かしてブロリーを吸収、更にゴテンクスを吸収したけど、なんだってこいつがここに? 自分で自分を吸収したってのか?」

「そんな馬鹿な」

 

 ブウがブウを吸収するなど、ベジータが鼻を鳴らすほど理屈に合わない話である。

 

「やはり吸収されていなかったか」

「「「っ!?」」」

 

 そこへ唐突に体内表面からブウが現れて悟空達はその場から飛び退いた。

 

「何時まで経っても変化がないからおかしいと思って確認しに来てみれば、どうやったか知らないが吸収から逃れたようだな」

 

 自分の体の中に現れたブウは、しかし言葉とは裏腹にそれほど悔しげではない。

 

「三人に別れていて耳飾りもしていないということは、もうあの厄介な合体は出来ないと見た」

「くっ!?」 

 

 的確に見抜かれた悟空とベジータが超サイヤ人2になり、悟飯は潜在能力を解放するが魔人ブウに比べれば焼け石に水。

 好材料といえるのはブウがいる場所は初期ブウを挟んでいることで、悟空達の背後に悟天とトランクスがいた場所に繋がっている。

 

「はぁっ!!」

 

 アイコンタクトを一瞬で交わした三人は、悟空がブウの体内に全力の気功波を放つのを合図にして動き出した。

 

「体が縮めば破壊力も減る。そんなことも分からんのか」

 

 しかし、気功波は傷は付けたものの貫通することは出来ず、予想外の事態にベジータと悟飯も動けなかった。

 

「オメェを倒して出口を探すしかねぇってことか」

「出来るのか、その程度の力で?」

 

 悟天とトランクスを助けて、セルを排除し、ブロリーを探して更に排除する。それを目の前のブウから逃げながらとなれば、三人が別々に逃げても難易度が高すぎる。

 

「殺される前に一つだけ聞きたい。吸収された悟天・トランクスとセルはいるのに、なんでブロリーだけがいない?」

 

 少しでもマシな方法はないものかと悟空が会話で時間を稼ぐ。

 

「アイツだけは例外中の例外だ。俺にも押さえつけられないから完全に同化するしかなかった」

「同化?」

「そいつらを見て分かるように吸収しても俺の糧となるならば肉体を残すことが出来る。だが、ブロリーの場合は下手に体を残しておけば内側から破られかねなかった。だからこそ、急いで同化する必要があった」

 

 つまりはブロリーが暴れ馬過ぎて飼い慣らすことが出来なかったので消化して同一化するしかなかったということか。

 同一化してしまったのなら、道理でブロリーの姿だけがないわけである。

 

「ってことは太っちょのブウまで悟天達と同じ扱いなのは」

「セルを吸収した時に知性を得て、ブロリーと同化したことで新たな人格が誕生したことで不要になったからだ。厳密に言えば、俺はもう魔人ブウの皮を被った別人ということになる」

 

 悟空の疑問に次々に答えていくのはブウの余裕の表れと同時に ゴジットの圧倒的なパワーと恐怖から解放された反動で饒舌になってしまっていた。

 

「最も完全に不要というわけではない。ブロリーの破壊衝動が強すぎて、今の人格を保つにはセルの知性と元の魔人ブウの理性が無くては安定しない」

 

 ジリジリと悟空と悟飯の姿に隠れて囚われた二人の下へと蟻の速さで移動していたベジータの動きが止まった。

 

「良いことを聞いたぞ、ギャリック砲!!」

 

 どうせ殺されるなら一矢報いてやるの精神で、悟空と悟飯にすら何も教えず最後尾から太っちょのブウに向かって全力のギャリック砲を放ったのである。

 

「ば、馬鹿野郎が!?」

 

 悟空と悟飯は慌てて飛び退き、太っちょのブウの前に出現したブロリーと同化したブウが必死にギャリック砲を止める。

 

「悟飯!」

「合わせます!」

「「――――波っ!!」」

 

 なんであれ弱体化するならば好都合と、悟飯と示し合わせた悟空がかめはめ波を放って追撃する。

 

「な――」

 

 このダブルかめはめ波にはブウも対処が出来ず、体外までの穴は開けられなくても同サイズの太っちょのブウを消し飛ばすぐらいの威力はある。

 ブウが振り返った時には芥子粒すら残っておらず、そしてその結果を見届けることなく悟空達は一目散に退却していた。

 

「ベジータ、オメェな」

「文句は後だ!」

 

 気を隠す意味も無くなったので全力で飛んでトランクスの下へとやってきて繭を切り落とすベジータに、同じように悟天の繭を切り落としていた悟空が文句を言おうとしたが確かに今はそんな場合ではない。

 

「ついでにセルも、魔閃光!!」

 

 手が空いていた悟飯は数時間前にボコボコにしてくれたセルへの恨みもあって、ブウの戦力ダウンの必要もあったので魔閃光で消し飛ばしておく。

 

「ぉ、ォおお……ぁああ、ぐぁあああああああ!!」

 

 悟空とベジータが我が子を助け出して悟飯も出口を探して飛び上がると、表の魔人ブウの苦しむ声が聞こえたのと同時に辺り中がグニョグニョと不気味に変化し始めた。

 

「あった、出口だ!」

 

 出口を見つけて外に出るよりも変化しきるのと同時に押し潰されるのが先かというところで、悟空が外から漏れる光に気が付いた。

 真っ先に気付いた悟空が光の見える方向に向かい、行き過ぎていたベジータが引き返して続く。最後に殿を自主的に努めている悟飯が背後を気にしながら進む。

 

「追って来ない? それにこの声と言い、一体何なんだ?」

 

 セルと元のブウを消滅させただけにしては苦しみ方が異様過ぎる。

 外の光から入って来る穴が見えて向かいながら悟飯は自分達の行動は浅慮ではなかったかと思い始めていた。

 

「出た! 戻った!」

 

 収縮を繰り返していた穴が開いたタイミングで外に出るとなんらかの法則でも働いていたのか、悟空達と囚われていた悟天とトランクスの体が元のサイズへと戻った。

 

「ガァアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 そこへ背を向けていたこともあってブウの気が混じった咆哮をまともに浴びて全員が吹っ飛ばされる。

 クルクルと回りながらも遠く離れた場所に着地した悟空達が振り返ると、巨大なブウの体が膨張していた。

 

「お、おい、これ以上の変なことは勘弁してくれよ」

 

 悟天を抱え直した悟空は背筋に走る嫌な予感に全身を震わせていた。

 

「気は減ってますけど……」

「取りあえずガキ達をどこかに隠すぞ」

 

 セルと初期ブウの消滅と共に気の総量はグッと下がってはいる。

 だとしてもまだ危険なことには変わりないのでベジータが子供達を避難させようとしたところで、カッと開いたブウの理性を失った瞳が悟空を捉えた。

 

「―――――――カカロット!!」

 

 知性(セル)理性(初期ブウ)を失って、ブウが元から持っていた純粋悪とブロリーの破壊衝動に悟空への執着が結びついた。

 

「ぃいっ?! またオラか!?」

 

 巨体の割に無駄に素早いブウが殴り掛かったきたが、悟天を抱えているので悟空は避けれない。

 

「お父さん!」

 

 手ぶらの悟飯が横からブウを蹴飛ばした。すると、今度は悟飯に向かって襲い掛かって来る。

 

「見境ないぞ、コイツ!」

 

 ブウが自分だけトランクスを遠く離れた場所に避難させてきたベジータの姿を認めると、身体能力任せで向かって来るので避けるのに苦慮していた悟飯から標的を変えた。

 

「ウギャギャ、カカロット!!」

 

 理性と知性も一緒に言語能力も失ったようだが、視界に悟空が入るとそちらに標的を変えて向かう。

 悟空に向かう時だけは隙が大きくなるが、基本戦闘能力がブロリーの物を継承しているようで無駄に頑丈な上に防御だけはしっかりしているので攻撃が効いている様子はない。

 

「くっ」

 

 瞬間移動でトランクスの傍に悟天を置いてきた悟空。

 ブウの相手をする悟飯が限界を迎えると態と視界に入って悟空が気を引いてベジータが横から蹴飛ばし、一息ついたところで悟飯がまた相手をするというサイクルを繰り返すも先に倒れるのは自分達だと悟る。

 

「カカロット、フュージョンは!」

「無理だ。オラ達がフュージョンするには後一時間近くねぇと」

 

 悟空とベジータのコンビではフュージョンすることは出来ない。

 残るは悟飯だが、今のブウに押されながらも相手が出来るのは他にいない。

 ベジータではフュージョンを覚えているか怪しいものがあり、そもそも悟飯にフュージョンを教える時間もない。

  

「どうする?」

 

 悟空は自問する。

 今のブウは理性と知性を失ってはいるがブロリーと変わらない戦闘力を持っている。悟飯が辛うじて食い下がれているのも理性と知性が失われているから。

 悟空とベジータでは絶対的に戦闘力が足りず、フュージョンも出来ない。

 今のブウが以前と同じく化け物染みた回復力を持っているとすれば、一瞬で消し飛ばすしか倒す方法はない。

 

「一つだけ手がある」

 

 嘗て自身を追い詰めた、たった1つだけ残されたブウを倒す方法を先に思いついたベジータが苦い顔をして、悟空にその方法を告げた。

 

 

 




またお前の所為か、ブロリー!! 映画キャラの癖にどこまで出っ張るんだ!!


尚、ポタラが壊れた原因としての推測は三つ

1.ポタラの使用外の使い方をしたから
 フュージョンと合わせるのは界王神専用アイテムでは無理だったんじゃないかな。

2.ブウの体内の空気
 邪悪なブウの体内の空気は創造神の界王神のアイテムと致命的に相性が悪い

3.ポタラの耐久限界を超えたパワーを発揮した
 これに関しては一番可能性は薄い模様。

まさかのブロリーが暴れ馬過ぎて完全同化されてしまった様子。
初期ブウとセルがいなくなり、理性と知性を失ったブウは邪悪な本性とブロリーの破壊衝動、悟空への執着が結びついてしまった模様。

ブウは弱体化し、15000程度まで戦闘力低下。しかし、アルティメット悟飯で5000、超3
悟空で4000と本作設定でなっています。
理性と知性を失ったブウは割と猛獣。悟飯でもギリ戦えるレベル。

ベジータが明かす決死の策とは?

次回、『第十九話 さらば、そして何時か』

続編のネタを下さい、なんて。




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第二十話 さらば、そして何時か

やり切ったよ、兄貴……。




 

 

 

「元気玉だ」

 

 と、煙からでも復活する厄介な再生能力を持つブウを完全消滅させる為の策としてベジータが告げたのが元気玉だった。

 

「…………無理だ」

 

 ベジータの策を聞いた悟空は苦い顔をして否定する。

 

「多分、界王神界や近くの星の気を集めてもブウを消滅させるだけの威力は出せねぇ」

 

 嘗てナメック星で絶望的な力の差を見せつけられたフリーザを相手に使用したが、死を認識させるほどの威力だったが倒すことは出来なかった。

 この頑丈な界王神界ならば星へのダメージを気にすることなく全力で放たれる分、ナメック星で放った時よりも比べ物にならない威力にはなるだろうが、当時のフリーザと今のブウには天と地ほどの力の差がある上に完全に消滅させなければ再生してしまう。

 

「何を言っている。これは全宇宙規模での問題だぞ」

 

 ベジータだってその程度のことは分かっていた。だが、今の魔人ブウの様子を見れば、ここで斃し切ることが出来なければ全宇宙の危機になる。

 ことは既に地球とその周辺だけの問題ではないのだ。

 

「全宇宙から元気を集めるんだ」

「で、でもよ。宇宙中になんてオラの声は届かねぇぞ」

『そいつは儂に任せろ。得意技じゃ』

 

 元気を貰う為には術者である悟空の声を宇宙中に届ける必要があるが、悟空の意が届くのは頑張っても今いる星から少し離れた星程度まで。どんなに頑張っても宇宙中には届かせることは出来ないが、そこは二人の頭に響いてきた第三者が請け負った。

 

「この声は、界王様か!」

『当たりじゃ』

 

 悟空が第三者の声に笑みを浮かべると、界王が少し鼻高々となっている雰囲気が伝わって来る。

 

『魔人ブウとの戦いは儂もずっと見ておったぞ。ベジータよ、決め技に儂の元気玉を選んだのはナイスなチョイスじゃ』

 

 別にベジータは界王の為に元気玉を決め技に選んだのではなく、必要だったから選んだのだが言わぬが花だろうと口を噤む。

 

『悟空の声を声を宇宙中に届けて見せよう。さあ、儂の元気玉で界王神様でも倒せなかった魔人ブウを倒すんじゃ!』

 

 界王は実は界王神に対抗心でも持っているのだろうか。

 少しばかり界王の闇に触れたような気がした悟空だったが、努めて触れないようにしようと決めて元気玉を作る決心を固める。

 

「これで準備は整った。後はカカロット、貴様次第だ」

「ああ、やってやるさ」

 

 悟空に執着しているブロリーの気質を受け継いだブウに標的にされないように、距離を空ける為に瞬間移動で離れようとして少しだけ動きを止める。

 

「ベジータ」

 

 一人でブウの相手をしていて限界の様子の悟飯の援護をしようと超サイヤ人2のオーラを強めたベジータを悟空が呼び止めた。

 

「いいか、オメェは今死んでいる状態なんだ。そんな奴がもう一度死んだら、どうなんのか知ってるか?」

「ああ、この世からもあの世からも消えちまうんだろ。閻魔大王から聞いている」

 

 顔だけを振り返らせたベジータがらしくもなく穏やかに笑ったことに驚きながらも悟空は口を開く。

 

「死ぬなよ、ベジータ。オラもライバルがいなくなっちゃ、張り合いがねぇからな。ブウを倒したらナメック星で地球もみんなも蘇らせるんだ。勿論、オメェも生き返る」

 

 変わった自分とベジータの姿に戦いの最中でありながら同じように笑みを浮かべた悟空。

 

「ふん、大きなお世話をする前に貴様は自分の心配をしろ。俺が生き返るかどうかは貴様にかかっているんだぞ」

 

 恐らくは二度と言うことはないだろう悟空の言葉に、彼らしくもない信頼の言葉を返しながらベジータは鼻を鳴らしてブウを睨み付ける。

 

「よし、行くか!」

 

 そう言ってブウの下へ向かったベジータの後ろ姿を見送り、邪気が混じるので超サイヤ人を解いた悟空が両手を天に向ける。

 

「――――――――――全宇宙の星よ、生きている全てのみんなよ、この声が聞こえていたら魔人ブウを倒す為にオラに元気を分けてくれ! 頼む!!」

 

 界王の力によって増幅された声が全宇宙に本当に聞こえているのかどうか分からないが、悟空には信じるしかなかったが効果は直ぐに現れた。

 

「うおほっ!? き、来たぞっ!!」

 

 術者である悟空が思わず目を剥くほどの元気が一気に集まり、見上げれば上空に巨大な元気玉が浮かび上がっている。

 

「いきなり、でかい…………でも、まだまだブウを消滅させるだけのパワーには遠く及ばねぇ」

 

 ダメージを与えることは出来ても消滅させるだけのパワーは現時点ではなくとも、こうしている間にも悟空の所感では全宇宙中から元気が続々と集まってきている。

 

「来い来い、もっと元気をくれ!」

 

 このペースならばそう遠くない内にブウを消滅させるパワーに辿り着くだろうが、その前にそのパワーを悟空が制御できるかの心配もあった。

 

「ぐはっ!?」

「がぐっ!?」

 

 しかし、その心配の前にブウの足止めをしている悟飯とベジータがもう限界だった。

 

「はぁ、はぁ、お、お父さん……!?」

「カカロット、まだか!? 早くしろ、こ、殺される……!?」

 

 三人が相手でも徐々に削り取られていくような状況だったので、一番気を引けることで隙だらけにすることが出来た悟空が抜けたことでバランスが崩壊。特に一人でブウの相手をしていた悟飯の消耗は激しく、援護に入ったベジータに負担が圧し掛かっていた。

 

「く、くそっ、堪えてくれ、二人とも!!」 

 

 元気を集める速度を上げることは出来ないし、まだ予定の半分のパワーにも届いていない。

 

「まだだ。まだ、これぐらいじゃブウは消せねぇ!」

 

 二人の様子から魔人ブウを消滅させるだけのパワーが集まるまでに持ちそうにないのに、先に元気玉を放ったところで意味はない。

 

「う、がっ……ご、おごっ!?」

「べ、ベジータさん!?」

 

 ブウに背後から首に腕を回されて絞められているベジータを見ても悟空は何も出来ないし、最早限界を遥かに超越している悟飯の援護も出来ない。

 

「止めろ! パパに何するんだ!!」

「やぁっ!!」

 

 突如として横合いから現れた一人がブウの顔面を蹴り、更に追い打ちをかけるようにもう一人がドロップキックを横腹に叩き込む。

 

「トランクス! 悟天!」

 

 完全な不意打ちに吹っ飛んで行くブウではなく、ベジータを助け出した二人に目を向けた悟空。

 それは確かに一度はブウに吸収され、助け出した後は離れた場所に意識もないまま寝かされていたトランクスと悟天だった。

 

「ば、馬鹿野郎。なんで出て来やがった!」

 

 九死に一生を得たベジータ。助けられたのは事実ではあるが息子達の登場は父としては望ましい事態ではない。

 

「僕達だってサイヤ人なんだ。戦えるよ!」

 

 正確には地球人とのハーフではあるが、その戦闘力は今は存在しない地球ではトップクラスである。

 その事実を良く理解していた悟天が意気込む。

 

「そうだよ、いざとなったらフュージョンも使えば」

「だから、お前達は馬鹿なんだ! まだ一時間も経っていないのにフュージョンが使えるものか!」

 

 トランクスが良いことを思いついたとばかりに言うも、フュージョンは一度合体すると一時間のインタバールが必要なことを知っていたベジータは子供達の考え知らずに怒るも、状況を考えれば助けは有難いことを認めざるをえない。

 

「だが、援護だけならば話は別だ。決してブウに近寄ろうとはしないで気功波で牽制してくれれば俺達も大分助かる。それでも戦う気はあるか?」

 

 怒鳴られて委縮する二人に、今は猫の手も借りたい状況に最低限の条件として提示する。

 

「や、やるよ。今以上に近づかないって約束する」

「気功波だけ気功波だけ…………うん、守れるよ!」

 

 約束した二人の頭を力加減も出来ずに撫で、厳しい面持ちでブウを睨んで飛んだベジータの背を見た悟空は元気を集めることに集中する。

 

「まだか、まだ溜まらねぇんか……!」

 

 もうかなりの元気が集まってきているが目標としているラインには程遠い。

 界王神界を中心として比較的近い星々からはともかく、遠方の星の元気が届くにはどうしても時間がかかってしまう。

 

「ゴフッ、あぅぅ……」

「兄ちゃん!?」

「ちっ!」

 

 遂に恐れていた事態が起こってしまった。悟飯に限界が来てしまったのだ。

 こちらの最大戦力であった悟飯が度重なるダメージと蓄積した疲労によって地に伏せたまま動けなくなったことで、遂に戦況のバランスが崩れた。

 

「ウギャギャ!!」

「ぐがぁっ!?」

「パパっ!?」

 

 悟飯に変わって矢面に立たざるを得なくなったベジータだが力の差が大きすぎて一撃の下に叩き伏せられた。

 

「カカロット、ギャギャ!!」

「うわっ、僕はそんな名前じゃないよ!?」

「逃げるぞ、悟天!」

 

 動けない悟飯とベジータを放っておいて、遠い場所で元気玉を作っている悟空と比べれば近くにいた悟天を見たブウが誤認して襲い掛かる。

 間違えて襲い掛かって来るブウから逃げる為に悟天の腕を掴んで逃げ出したトランクス。その後を追いかけるブウ。

 

「二人とも!!」

 

 強さの格が違うので二人が超サイヤ人になって逃げだそうとも直ぐに追いつかれた。

 二人ではブウに一撃の下に殺される。その未来予想図を認められなかった悟空は未だ目標のパワーに到達していなくても元気玉を放たざるをえなかった。

 

「ギャッ!?」

 

 元気玉の速度は決して早くない。今にも悟天とトランクスに襲い掛かろうとしていたブウは、迫って来る自分を害するパワーを持つ元気玉を認め、瞬間移動で射線から退避する。

 

「「えっ!?」」

 

 そして残された悟天とトランクスに向かって突き進む元気玉は、嘗て地球に来たばかりのベジータに放った時、悟飯がやったように悪の気がないからといって跳ね返せる規模ではない。

 

「ちっくしょう!」

 

 悟空に出来たことはブウと同じように瞬間移動を使って二人の前に立ち塞がることだった。

 眼前に迫った元気玉を前にして、二人を連れて逃げるだけの時間はない。 

 二人を助ける為に全力で放ったので元気玉の制御権も、もうない。出来るとしたら自力で跳ね返すしかない。

 

「うぉおおおおっ!!」

 

 一気に超サイヤ人3になった瞬間に元気玉を受け止めたが、体が雲散霧消してしまうのではないかという衝撃が悟空を襲った。

 それはそのはずで、元は悟空を圧倒的に超えるブウを完全に消滅させる為に集めた元気玉のパワーは抑えきれるものではない。

 

「ぐぁあああああああああああっっ―――――!?!?!?!?!?!?!」

 

 それでも耐えなければ、息子達が、未来が失われてしまう。

 

「ぼ、僕の気を使って下さい!」

「カカロット!!」

「お父さん!」

「おじさん!」

 

 パワーが足りないならば他から持って来る。

 ダメージで体は動かなくとも残っている気を悟空に向けて分け与える悟飯とベジータ。直接、背に触れて気を渡す悟天とトランクス。しかし、それでも元気玉のパワーは悟空を上回っている。

 何よりも仮に元気玉を押し返せても、悟空の体力はすっからかんになって戦うことは出来なくなるだろう。そうなればブウに殺されるだけ。

 

「はぁあああああああああああああああああああああああああっっっ!!」

 

 制御権を手放そうが元気玉は悟空が作った物だ。

 拒絶するのではなく受容する。自らに取り込めないはずがないと、悟空は信じた。

 

「うわぁあああああああああっっっっ!!!!」

 

 本来なら受け入れられるはずもない。仮にこの元気玉のパワーが悟空の体に入って来ても、直ぐに許容量を超えてパンクする。

 ただ、この時、悟飯とベジータ、悟天とトランクスという正しい心を持ったサイヤ人とそのハーフが悟空一人にエネルギーを注ぎ込んでいた。そして元気玉にも四人の気が入っていたことで、別人のサイヤ人の気としてカウントされたことである特定の条件が揃った。

 

「お父さんの気が感じられない…………まさかっ!?」

 

 元気玉に呑み込まれた悟空の姿は光に遮られて悟飯には見えない。感じ取れる気だけを頼りにしていたのに、その気が感じ取れなくなったことで父が死んだと勘違いした悟飯が絶望の声を上げる。

 

「いや、違う。これは」

 

 ベジータが見据える先で元気玉が徐々にその規模を小さくしていく。

 パワーが無くなって消滅していく感じではなく、何かにそのパワーを吸い取られているようで。

 

「お父さん……!?」

「はぁあああああっ!!」

 

 悟天とトランクスの前に浮かぶ悟空が元気玉のエネルギーを吸収していき、そのオーラが黄金から赤い輝きへと変化して染まって行く。

 超サイヤ人3の長髪が普段の髪に戻ったが、超サイヤ人独特の逆立った感じではない。

 

「なんだ、あの変化は?」

 

 赤く染まった髪の毛と炎のようなオーラを纏う悟空に困惑するベジータだが、不思議な安堵と共に勝利を確信していた。

 

「カカロット、グギャギャ!!」

 

 少し離れた場所にいたブウは悟空の変化に疑問を抱くような知性は既に無く、残った破壊衝動と悟空への執着に従って襲い掛かる。

 

「グギャ!?」

 

 なのに、次の瞬間に逆再生するように吹っ飛んでいたのはブウの方だった。

 

「今、お父さんは何を?」

「この俺にも見えなかっただと? ふざけた野郎だ」

 

 強くなったはずの悟飯ですら何故ブウが吹っ飛ばされたのかが見えなかった。ベジータは更なる領域に辿り着いた悟空に嫉妬を抱きながらも自分も必ず辿り着くと決意を新たにする。

 

「グ、グギャ……」

「怯えてんのか、ブウ」

 

 赤いオーラを纏った悟空に怯えるように、殴られた頬によるダメージで口からダラダラと血を垂らしながらブウが後ずさりする。

 

「どうしてこんな力が湧いて来るのか、オラにも分かんねぇんだ。決着を急がせてもらうぞ」

 

 変化の理由が分からずとも今が勝利を掴む時だと判断した悟空の赤い目がブウを見据える。

 

「オメェの顔はもう見たくねぇ」

 

 瞬間移動ではなく、超速度でブウの背後を取った悟空が両手を腰に引いて気を溜めていた。

 

「じゃあな」

 

 放たれたかめはめ波は振り返りかけていたブウをあっさりと呑み込み、末期の言葉さえも許さず問答無用に塵も残さずに消滅させた。

 直後、悟空の全身を覆っていた紅いオーラは蝋燭の火が消えるように輝きを弱めて、やがて完全に消えて髪の毛も元の黒髪へと戻った。

 

「…………ふぅ、終わったぁ」

「お父さん!」

 

 暫く残心してブウが復活しないのを確認して全身から力を抜いた悟空に悟天が飛び掛かる。

 悟天を受け止める力すらも残っていなかった悟空はそのまま地面に落ちるが、その直ぐ近くにベジータと悟飯もいてトランクスも降りて来た。

 

「やったね、俺達!」

「魔人ブウを倒したんだよ!」

「「イエェーイ!!」」

 

 無邪気に喜ぶトランクスと悟天と違って、もう一杯一杯だった三人は起き上がることも出来ない。

 

「後はナメック星に行って破壊された地球と殺された人達を蘇らせないとな」

 

 しかし、その前に一休みしなければ本当に死んでしまう。

 悟空とベジータと悟飯は、目を合わせて軽く拳を合わせて勝利の余韻と共に眠るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地球から遥か彼方にある、どこかの星で破壊を冠する神の鼻提灯がパチンと割れた。

 

「むにゃ、ゴッド……」

「おや、ビルス様がもうお目覚めになるとは」

 

 偶々、近くで作業をしていた天使が主の目覚めに驚いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 また遥かに離れた宇宙の海を泳ぐ機械惑星ビック・ゲテスターが新ナメック星へと迫る。

 

「孫悟空、貴様はこのクウラ様が必ず殺してやる」

 

 悟空達の戦いはまだ終わっていない。

 

 

 




 地球やあの世、ナメック星や界王神界とその他の星から元気を集めるよりも、界王様の力で全宇宙に声を届けて元気玉作るよ! でした。
 悟飯、ベジータ、悟天、トランクス、もしかしたらどこかにいるベジータの弟だというターブルのエネルギーが元気玉に混じったことで超サイヤ人ゴッドの未完成状態、疑似超サイヤ人ゴッドみたいなものになりました。
 なんとかブウは倒せましたが、ゴッドの力を感じたビルス様が目覚めてしまったようです。
 また、本世界線では新ナメック星を襲っていなかったメタルクウラ様が………。

 でも、もう完結でも良いような?
 続くとしても、サイヤ人五人が地球を復活させる為に新ナメック星に訪れることから始まります。
 その後は作中時間で一年後にまだビルス様が訪れていないのに始まるゴクウブラック編や、その後の復活のF以上に強くなった復讐のフリーザ編で本当の完結までの構想は出来ていますが。
 感想が今週中に100件を超えたら続きます。



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メタルクウラ編
第二十一話 メタルクウラ


感想が多かったので、やる気マックスになって執筆。
目標としていた感想も100件を越えたので続きます。
そしてメタルクウラ編が始まりました。




「ぅ……」

 

 孫悟空は不自然な体勢での目覚めに苦し気な声を上げた。

 それもそのはず、悟空は布団に寝ているどころか立ったまま縛り付けられていたのだから。

 

(そうだ、オラは界王神界でブウを倒して)

 

 記憶が混濁している。

 まだ全然足りない睡眠欲を満たそうと襲って来る眠さに瞼を開けられないまま、こうなってしまった状況を必死に思い出す。

 

(界王神様にドラゴンボールのことを話して新しいナメック星に来たんだ)

 

 ブウとの戦いで精魂を使い果たして一眠りし、空腹で目覚めたところに戻って来た界王神に作ってもらったあまり美味しくない食事を食べて英気を養った悟空達。

 

(ナメック星に着いたら変なロボットみたいな奴らとナメック星人が戦っていて――――っ!?)

 

 下界と星々の間なら自由に瞬間移動で移動できるという界王神に、ナメック星のドラゴンボールの話をして連れて来てもらったところまで思い出して激しい頭痛を覚える。

 

(変なロボットを倒したらアイツが現れたんだ、アイツが!)

 

 変なロボット自体は大した強さではなかった。悟天やトランクスでは超サイヤ人になっても苦戦していたが、悟空・悟飯・ベジータならば通常状態でも倒せない相手ではなかった。

 問題は、粗方のロボットを倒した後に現れた者にこそあった。

 

「ようやく、お目覚めか。随分と遅かったな、孫悟空」

 

 そいつの声が聞こえた瞬間、悟空の眠気は一瞬で覚めた。

 

「っ!? く、クウラ!!」

 

 悟空を含む悟飯、ベジータ、悟天、トランクスすら斃した敵の名を悔し気に呼ぶ。

 

「良いぞ、恐怖に震える心地良い声だ。この俺を破った男を今こうして見下ろすのも実に気分が良い」

 

 目を開けた悟空の目に映るのは、新ナメック星の緑溢れた大地ではなく良く分からない機械だらけの広大な空間だった。

 

「悟天! 悟飯! ベジータ! トランクス!」

 

 近くには右隣に悟天、左隣に悟飯、その隣にベジータ・トランクスと続いている。先程までの悟空と同じく意識はない。

 

「どこだ、クウラ!」

「お前達の目の前にいるのが私だ」

 

 全身傷だらけの状況で、せめて敵の顔ぐらいは拝んでやろうと叫ぶと以外にも簡単に答えが返って来た。

 言う通りに前を見ると、ほんのりと光っている球体をつぶさに見てみれば、巨大なクウラの顔があった。

 

「嘗て俺は貴様に敗れ、太陽に放り込まれた」

 

 フリーザとの激戦の一年後、地球に戻って来てトランクスより伝えられた三年後に現れる人造人間と闘うための修行を始めた直後にクウラ達は現れた。

 弟であるというフリーザを超える戦闘力を持って何度か追い詰められたが、最終的には悟空のかめはめ波によって太陽にまで吹っ飛ばされて死んだはずだった。

 少なくとも悟空はそう思っていた。

 

「流石の俺もこのまま太陽に焼き尽くされるかとも思ったが偶然にも脳の一部だけが宇宙に放りだされ、運良くこのビック・ゲテスターのメインコンピューターと合一し、コアとなって掌握した。そして高度な科学力によって、失っていた体をメタルクウラとして作り上げたのだ。以前よりも遥かにパワーアップしてな」

 

 メタルクウラの強さは実際に戦った悟空も実感したことだった。

 煙からも再生できるブウには純粋な再生能力は及ばないものの、ダメージを受けてもビック・ゲデスターによって直ぐに修復して補強・改修して更に強化されるのは厄介でしかなかった。

 最初は超サイヤ人2のベジータと同等だったのに、何度かダメージを受けては修復・補強されて強化されたメタルクウラの力は超サイヤ人3の悟空ですら気の抜けない領域になるまで強くなった。

 

「いずれは貴様らサイヤ人の猿を滅ぼす為に地球に向かうつもりだったが、都合良く来てくれたのは僥倖であった」

 

 更に各々が使う技を瞬く間に解析・習得して、悟空の瞬間移動すらも我が物とまでする有り様。

 最後はフュージョンしたゴテンクスも合わせ、更に強くなる前に力尽くで四人がかりで修復できないまでに完膚なきまでに倒した。

 しかし、本当の恐怖はここからだった。

 

「貴様もあの頃から相当に腕を上げたようだが、その程度の力ではメタルクウラの軍団に及ばん」

 

 ようやくメタルクウラを倒して一安心していた所に、丘の上に三桁を遥かに超えるメタルクウラが数え切れぬほどにいたのである。

 ゴテンクスのフュージョンも解け、四桁、五桁を超えて地面を埋め尽くすばかりのメタルクウラの姿は最早、絶望以外の何物でもなかった。

 

「クウラ機甲戦隊の代わりというつもりはないが、我がメタルクウラの軍団の前に敵はいない。ふふっ、これは少し自画自賛が過ぎるか」

 

 最後の足掻きとばかりに悟飯が突撃し、悟空とベジータもフュージョンしてゴジ―タとなり、死に物狂いで戦った末にこうやって捕まった。

 

「…………なんで、オラ達を殺さねぇ」

 

 せめて悟天とトランクスは逃がしてやりたかったが界王神はドラゴンボールを探していて近くにはいなかった。

 悟空の最後の記憶は合体が解けて仰向けに倒れ込んだにも関わらず、空を覆い尽くすメタルクウラの太陽で光る薄気味悪いテカる体だけだったから。

 

「戦闘民族サイヤ人、俺は貴様らを正当に評価している」

 

 サイヤ人の母星ベジータを破壊したフリーザの兄の癖にして、クウラは真面目腐った声でそんなことを言い出した。

 

「宇宙一と思っていた俺達一族を遥かに上回る超サイヤ人を、こうも多く輩出した貴様らの強さは本物だ」

 

 悟空達がナメック星を訪れた時は数千から良くても数十万という戦闘力の中で、フリーザの最終戦闘力は一億を超える。

 当時の悟空もフリーザの強さには、十倍の界王拳ですらマックスパワーの半分しか使ってないと言われ、無理して二十倍にまで引き上げる前にはったりであってくれと願ったほどだった。

 最終的にはクリリンが殺されたことで悟空が怒りで超サイヤ人に覚醒しなければ勝つことは叶わなかっただろう。

 人造人間は悟空を倒す為に開発された物でセルも同じだ。

 ブウは封印されていたのだから、悟空達超サイヤ人が現れるまではフリーザ達の一族が宇宙一であったことは事実である。

 

「それを超えた自分の方が凄いってか」

「俺はこうして機械になることで強くなったが、貴様らは純粋な鍛錬と実戦を潜り抜けてその力を手にしたのだろう。純粋に褒めているのだ」

 

 喉の奥に溜まっていた血の塊を吐き出した悟空に、素晴らしいとクウラは称賛した。

 

「俺と戦った時より、貴様は更に強くなった。数倍、数十倍、或いは数百倍か。このナメック星の奴らにしようとしたように、エネルギーを吸い取って自己を作り変えねば強くなることは出来ない俺とは違う」

 

 人造人間と戦いを繰り広げ、更なる強敵であるセルを倒し、最後には魔人ブウまで倒した悟空の力は嘗てフリーザやクウラと戦った時とは比べ物にならない。

 多くの星からエネルギーを吸い取って自己改造を繰り返してきたクウラと違って、多くの実戦と修練を繰り返してきた証拠である。

 

「だから、俺は俺の流儀に従って、敗者を尊重しようとしよう」

「オラ達をどうするつもりだっ!」

「その桁外れの超サイヤ人の生命エネルギーを全て貰う。敗者は全てを喪い、勝者は全て得る。単純な理論であろう」

「何っ!?」

 

 悟空がその言葉の意味に気付いた時には、体が勝手に超サイヤ人に成って拘束されているコードからパワーが勝手に引き出されて吸われていく。

 

「う、うわぁああああああああああああ!!」

 

 意識のある悟空の勝手にパワーを引き出されていく叫びが広い空間に響き渡る。

 意識のないベジータ達は苦痛の呻きすら発すことが出来ないほどで、最もパワーを吸われている悟飯は白目を向いていた。

 

「これからはメタル超サイヤ人の軍団を量産し、宇宙に覇を唱えるとしよう!」

 

 悟空の苦しみに染まった叫びが天上の調のように聞こえているクウラは己が野望を声高に告げ、更に超サイヤ人のエネルギーを吸い取る速さと量を増やす。

 

「いいぞ、もっと吸い取れ! やがては破壊神を超え、この俺が宇宙全ての頂点に立つのだ!!」

 

 元より負傷して疲労していた悟空達のエネルギーを吸い取るのにそう長い時間はかからない。

 一切の手加減なく吸い取っていたクウラの意を受けて、やがてコードはその動きを止めた。

 

「吸い切ったようだな」

 

 意識のあった悟空も虚空に向けられた焦点の結ばない目を開けたまま、意識を失ったのか命が消えたのか、ピクリとも動くことは無くなった。

 悟飯は白目を剥いたまま戻らず、ベジータは開かれた口から涎を垂らし、悟天とトランクスは首を折って全身から力が抜けている。

 

「超サイヤ人のパワーがこれほどだったとはな。これ以上、吸い続ける危ないところだった」

 

 予想よりも遥かに多いエネルギーに改めてサイヤ人の恐ろしさを再認識したクウラが五人を、このままビック・ゲテスターが新ナメック星の地殻に向けて掘り進んでいる中で沸き立ったマグマに突き落とそうかと考えていると異変が起こった。

 

「なんだ、どうした?」

 

 突如として壁の一部が爆発して、一度は止まったはずのエネルギーの吸い取りが悟空・ベジータ・悟飯のみ再開された。

 

「まだ残っているというのか、これほどのパワーをどこまで……!?」

 

 ビック・ゲテスターのコアと完全に融合しているクウラはサイヤ人の底知れないパワーに考察をしている暇などなかった。

 

「や、止めろ! 回路は閉じたはずだ。何故、流れて来る!?」

 

 もうビック・ゲテスターが受け入れられる許容量を超えている。一度止まった時点で限界が見えていたので、これ以上は流れ込まないように回路を遮断したはずなのに、パワーがまるでルートを手繰るようにして進んで来る。

 

「止めろ! オーバーヒートする。限界だ!」

 

 この時点でクウラにもこの異常事態の原因がビック・ゲテスターではなく、悟空達に寄るものだと遅まきながらも看過して物理的に回路を遮断しようと三人からコードを外すが、意識がないはずの三人は反応してコードを掴んでパワーを無理矢理にでも流し込んで来る。

 

「止めろ――っ!!」

 

 直後、限界を超えたビック・ゲテスターの中で溜め込まれたパワーが溢れ出して爆発した。

 

「――――――おのれ、サイヤ人め」

 

 このままでは半壊したビック・ゲテスターが新ナメック星に沈むと考えたクウラは機械惑星を浮上させながら、爆発によってつい一分前とは違ってズタボロになった空間で一人ごちる。

 

「くっ、メタルクウラの大半が流れたエネルギーで自壊してしまったか」

 

 元よりメタルクウラの大軍で悟空達を仕留めるに留めるべきだったところを、欲を出してそのエネルギーを摂取しようとしてしまったことがいけなかった。

 

「まあ、いい。あれだけのエネルギーを放出すれば孫悟空達も生きてはいまい。残ったエネルギーで」

「勝手にオラ達を殺すんじゃねぇ」

「な、なにっ!?」

 

 あれだけエネルギーを放出して、あの爆発に巻き込まれて確実に死んだはずの悟空の声が聞こえてクウラは驚愕した。

 

「オラ達のパワーを甘く見たのが間違いだったな」

 

 辛うじて意識を取り戻したらしい悟飯とベジータが悟天とトランクスを抱え、浮かんでいた悟空と共にクウラの本体の近くに着地したが、たったそれだけの動作ですら立つことすら出来ずに倒れ込んだ。

 

「クッハハハハハハハハハ! 立つことすら出来ないそんな様で良くもほざく」

「そうかな? 一度目論見が外れておいて、次も上手くいく保証なんてないぞ」

 

 なんとか立ち上がり、顔だけしかないクウラを見据えた悟空は挑発するように笑う。

 

「ふん、ビック・ゲテスターは後程、ゆっくり直せばいい。今の俺でも貴様らを倒すぐらいは造作もない!!」

 

 既に悟空は死に体。他の四人は立つことすら出来ない中で圧倒的優位を確信したクウラは敢えて挑発に乗った。

 

「二度と悪さ出来ねぇように、地獄に送ってやる!!」

「何時までもムカつく野郎だ!!」

 

 辛うじて超サイヤ人になった悟空に向かってコードで全身を作り出したクウラが信じられない速さで疾走し、右手で殴りつける。

 

「ぐわっ!?」

 

 悟空を遥かに上回る十メートルを超える巨体のパワーは凄まじく、上から拳を叩きつけられてバウンドした体は極端に跳ね上がることはせず、殴った拳が解けてコードで縛りつけてきたからだ。

 地面にも伸びた無数のコードが悟空の体を締め付け、搾られた果実の如く全身から血が吹き出す。

 

「ぐわぁああああああああああああああ!?!?!?!?!」

 

 全身を締め付けられる苦しさに悟空が悶絶する。

 

「ここで滅びろ、サイヤ人!!」

「滅びるものかァっ?!」

 

 更に締め付けが苦しくなり、悟空の言葉が途中から更なる絶叫に変わる。

 

「そうだ、サイヤ人は不滅だ!!」

 

 そこへ意識を取り戻して体を起こしたベジータが放った気功波が悟空を拘束しているコードを切り裂く。

 

「滅びるのはお前達の一族の方だ、クウラ!」

 

 残っていた気すら使い果たして口から大量の血を吐いて倒れるベジータの後押しを受けて、悟天とトランクスから気を分けて貰った悟飯が突撃する。

 

「猿共が!!」

「やぁっ!!」

 

 二人から分けて貰った気と自分に残された力の全てを使ってクウラが放った左手の攻撃を躱して、口から放たれたコードの雨を避けて明らかにそこだけ異色の顔面ではなく首のコードに向かって全力の一撃を放った。

 

「お父さん!」

「おじさん!」

 

 決死の一撃によって宙を舞うクウラの首。

 悟飯の攻撃の目的を一瞬で看破した悟空は悟天とトランクスの声援を受けて、かめはめ波の態勢を取る。

 

「――――くたばれ、クウラ!!」

 

 狙いは単純、威力は十分。

 悟空の残った力の全てを込めて放たれたかめはめ波は狙い過たず、クウラの顔を呑み込んだ。

 

「オラ達のパワーが勝ったぞ!!」

 

 コアと融合していたクウラの消滅を証明するように爆発して崩壊していくビック・ゲテスターの中で悟空は高らかに勝利の凱歌を揚げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その先の結果を語る必要はない。

 ビック・ゲテスターの消滅後、地球が復活したことを知れば結果など自ずと分かるものだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悟空達が新ナメック星にてクウラと激闘を行っている正にその頃、とある世界線の未来でも運命を決する戦いが幕を下ろそうとしていた。

 

「消えて無くなれ、ダーブラ! バビディ!」

 

 スパークするオーラを身に纏った戦士が極大の気功波を待てと叫んだダーブラに向かって放った。

 界王神の必死の金縛りによって身動きすら出来ないダーブラと、その前にトランクスの攻撃によって弾き飛ばされたダーブラに押し潰されて大きなダメージを負って動けないバビディを、トランクスが放った気功波が呑み込んで消し飛ばした。

 

「ハァハァ……」

 

 暫く残心して爆心地に二人の姿はなく、確実に死んだことを確信したトランクスは超サイヤ人2を解いて通常の状態に戻る。

 

「よ、良かった」

 

 魔人ブウの復活を未然に防いだことで地球だけでなく多くの星を救った英雄であるトランクスの姿を目に焼き付け、界王神は安堵したように力を抜く。

 

「これで世界が平和に……」

 

 バビディとダーブラによって与えられたダメージによって界王神死す。

 

「界王神様!?」

 

 バビディ出現に備えて自分を鍛えてくれた界王神の気が全く感じ取れなくなったことに気付いてトランクスが駆けつけるが、もう息はない。

 過去の世界と違って仙豆は未来にはもうなく、デンデのような回復パワーを持つ者もキビトがいたがダーブラに殺されてしまった以上は使えない。

 

「界王神様……」

 

 トランクスには魔人ブウ復活を阻止するという目的を果たせて安らかに眠る界王神に出来ることは何もない。ただ、その冥福を祈るのみである。

 

「くくく、これは素晴らしい」

 

 しかし、界王神の死は次の絶望への始まりでしかなかったことをトランクスは知らない。

 

「界王神が死ねば破壊神も死ぬ。これで一番厄介な破壊神がいなくなり、次の神が誕生するまでは天使も機能を停止する。こんな世界があったとはな、やはり運命は俺に正義を執行せよと求めている! ククク、ハハハハハハハハハハハッ!!」

 

 小さな丸い球体が吊るされた耳飾りを片耳だけした、とある人物――――孫悟空と全く変わらない面相の男は、悟空が決して浮かべることはないニタリとした醜悪な笑みで哂った。

 

 




 始まって一話で終わるメタルクウラ編。
 序盤から中盤の戦闘シーンは丸々カット。
 作者では『激突!!100億パワーの戦士たち』でのメタルクウラとの戦い以上のが思い浮かばなかったよ……。

 流石に超3悟空、アルティメット悟飯、ゴテンクス、超2ベジータ、超3ゴジ―タになっても、十万を超えて桁がもう二つぐらい増えた軍団には敵わなかったよ。
 メタルクウラの軍団で一度は完全に勝利したクウラ。
 最終的なメタルクウラ一体の強さは、超3悟空並になっているかも。
 捕まえた時点で満足して悟空達を殺していれば勝てたのに、いらぬ欲を出してクウラ様も舐めプなんてするから。

 後、クウラ様がバビディのドラゴンボールの願いで、潜在能力があるに該当していたのに呼ばれなかったのは生きていたから。
 もしも新ナメック星を襲うのがもっと先になっていたら蘇って、もしかしたら悟空達はブウに負けていたかも。
 地味にナイスだクウラ様。

 ちなみに「――――くたばれ、クウラ!!」は対フリーザ戦の27巻での悟空の台詞「くたばれ、フリーザ!!」のオマージュであり、
 最後の「オラ達のパワーが勝ったぞ!!」は映画『燃えつきろ!!熱戦・烈戦・超激戦』でのブロリーにみんなのパワーを貰って倒した後に叫んだ台詞です。
 何時かは言わせたかったんだよ、悟空に。

 しかし、何故悟空だけが先に目覚め、エネルギーを吸い取られても最後まで動けたのか?



 そして相変わらずの未来トランクスの不幸属性。
 魔人ブウ編で老界王神が言っていた「界王神が死ねばどうなるか」をキャプチャーしています。
 もしも次回も続くならば今話から一年後、未だビルス様がやってきていない中でゴクウブラック編が始まります。
 作中でもブロリー、ブウ、メタルクウラとの戦いを経て、今話後の一年の間にハッチヒャック、ジャネンバ、ヒルデガーンという強敵を打倒した悟空の前に突如として現れたタイムマシン。
 それが新たなる戦いの始まりだった―――。
 あ、ちなみに開始時点での仲間内で一番強いのは悟空の超サイヤ人3で(強敵との戦い、修行でアルティメット悟飯は超えた模様)。

 さあ、続きが読みたければ感想をくべるのだ!!



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ゴクウブラック編
第二十二話 新たなる序章




ゴクウブラック編、始まります。




 

 

「やっぱ筋斗雲と一緒に飛ぶのは気持ちがいいな」

 

 全身で風を切りながら空を駆ける筋斗雲に孫悟空が話しかける。

 

「すまねぇな。最近は悟飯やチチに貸してたからオメェに乗る機会も殆どなくて」

 

 自分で飛翔する楽しさはあるが、やはり筋斗雲と共に飛ぶ楽しさは別格である。

 なにせ、亀仙人に譲ってもらってから多くの旅を共にしてきた。戦いの中で救われたこともある。

 

「毎日ってわけにはいかねぇけど、これからもオラを乗せてくれるか?」

 

 舞空術や瞬間移動を使えるようになってから共に飛ぶ機会が激変した筋斗雲は主である悟空の言葉に歓喜するように身を震わせて速度を上げた。

 

「うおっ、はは、サンキュー、筋斗雲」

 

 速度を上げても振り落とすような不作法はしない筋斗雲の喜びと気遣いを感じとり、悟空も笑みを浮かべて前を見る。

 

「おっ、西の都が見えて来た」

 

 目的地である西の都が見えて来て、直ぐにその直上へと辿り着く。

 

「また帰りに送ってくれるか?」

 

 地面に降り立って問いかけると、寄り添って来た筋斗雲の了承に頷いて去って行くのを見送る。

 

「うしっ、行くか」

 

 空の彼方へと消えて行った筋斗雲を見送り、風で少しヨレたスーツの襟をパシッと伸ばして気合を入れる。

 この為に買ったビジネスバックを持って西の都の中心にある目的地に向かって歩き出す。

 

「うぅ、緊張するな」

 

 目的地であるカプセルコーポレーションに到着した悟空は直接ブルマの家には向かわず、会社の受付がある方の入り口に回る。

 今までにはないタイプの緊張感を感じて手の平に汗を滲ませながら、バクバクと高鳴り始めた心臓の鼓動を抑えるのに苦慮する。

 

「あら、孫君じゃない」

 

 悟空がネクタイが歪んでいないかと直したりして会社入り口の前で緊張を沈めていると、近くを通りがかったブルマが声をかけた。

 

「ぶ、ブルマ」

「なにやってのよ、人の会社の前で。しかもスーツなんて着て珍しい」

 

 馴染みのある気が近づいても気づかないほど緊張していた悟空は驚いた表情で振り返り、場所と服装と態度を合わせて三重の意味で珍しい様子にブルマは少し笑う。

 

「スポンサーに会うんだからちゃんとした格好をしようと思ったんだよ」

「孫君と私の仲なんだから別に気にしなくてもいいのに」

 

 らしくもないことをしている実感はあったが緊張していたこともあってぶっきらぼうに返すと、長い付き合いなのに今更鯱張られてもブルマの方が困る。

 

「しかし、孫君ってスーツが似合わないわよね。ベジータもそうだったけど」

 

 実用的な分しかないが筋肉でスーツが盛り上がっており、普段から着慣れていないこともあって違和感が物凄い。

 カプセルコーポレーションほどの規模の会社になれば、他社のパーティーに呼ばれて旦那であるベジータにスーツを着せて連れて行ったこともあるが、悟空同様に違和感が強かった。

 サイヤ人にスーツは合わないな、と悟空を見ていて思ったブルマである。

 

「チチにも同じことを言われたぞ。悟天には笑われるし」

「何時も着ている胴着のイメージが強いからじゃないの。スーツを無理して着て来なくても、前みたいに悟飯君に任せたら?」

「これはオラの仕事だから、悟飯に任せるのもな」

 

 父の意地か、息子に頼むのは気が引けたということだろう。

 

「孫君がそう言うなら別にいいけどね。ま、立ち話もなんだし、家に行きましょう」

 

 あの戦闘馬鹿が変われば変わるものであると感慨を抱きながら悟空を連れて歩く。

 途中で会ったブルマの母もスーツを見て、アラアラウフフと上品ではあるが笑われたこともあって悟空はカプセルで持って来ていた胴着に着替えることにした。ブルマとしても違和感が半端なかったので、悟空が客室で着替えている間に母が2Fテラスに用意してくれた紅茶を飲む。

 

「悪い、待たせちまったな」

「良いわよ、別に…………うん、やっぱり孫君はそっちよね」

 

 スーツはカプセルに直したが書類が入ったビジネスバックはそうはいかなかったので手に持ったままなので、胴着にビジネスバックという組み合わせに余計に違和感が強くなってしまったがブルマも気にしないことにした。

 

「ママが紅茶とお菓子を用意してくれたのよ。摘まみながら話しましょう」

 

 促されて座ったテーブルの上の大皿には、悟空と同じサイヤ人であるベジータを基準としたてんこ盛りのお菓子が乗せられている。

 

「甘いもんだけをそんなに食えねぇぞ」

「私も食べるから大丈夫よ。余ったら持って帰って悟飯君や悟天君に上げてくれたらいいわ」

「すまねぇな」

 

 大食漢であってもお菓子だけでは胸焼けがしてしまう。

 元から二人だけではなく悟飯と悟天へのお土産も込みなので、そこまで考えが及んでいなかった悟空は子供達のことも考えてもらったことに少し恐縮する。

 

「で、さっきの話からすると用件は渡したカプセルのことで良いのよね」

「ああ、いや、そうです」

「普段通りで良いわよ」

 

 スポンサーとそれを受ける者という立場からタメ口から敬語に言い直す悟空とブルマは苦笑と共に何時も通りで良いと告げる。

 

「でも、ただで譲ってもらったんだからそれぐらいは」

「その為に評価レポートを出してもらってるんでしょう。持ちつ持たれつよ」

 

 見るから出してと催促すると、悟空はこれで良いのだろうかという顔のままでビジネスバックから十数枚に渡る紙束を取り出して机に置く。

 

「ふむふむ、ちゃんと動いてるみたいね」

 

 紙束を手に取ったブルマは本当に読んでいるのかと思うほどのスラスラと一読する。

 

「しかし、本当に良かったのか。ただで使わせてもらって」

「良いの良いの。渡してるのは私が趣味で作った物だし、物になりそうなら商品化するから寧ろこっちがお礼をしたいぐらいよ」

 

 ここ数年、ブルマが作った農耕道具や農耕機械、畑を荒らす害虫や害獣を寄せ付けない道具などを悟空に貸与していた。

 悟空が農業を始めると聞いてから発明した数々を実際に使ってもらって、良さそうな物をカプセルコーポレーションから発売しているので、寧ろお金がかからずに実地試験が出来ている分、助かっているぐらいだ。

 

「あら、今回は孫君がレポートを書いたの?」

 

 何時もは悟飯がレポートを書いているのに明らかに文章が違う。

 チチや当然ながら悟天にレポートが書けるはずがないので消去法的に残るは悟空ということになる。

 

「悟飯に教えてもらいながら書いたんだけど、やっぱりどっか変か?」

「正直に言えば気になる点は幾つかあるけど、本当に孫君が書いたのね」

 

 不安そうな悟空に気になる点を言って、このようにすれば良いというのをアドバイスしていく。

 悟空はメモ帳を取り出してアドバイスを書き留めながら、分からないことを質問する。

 

「――――大体、こんな感じね」

 

 紅茶が冷め切る前にレポートの話を終えたブルマはクッキーを口に含む。

 

「まさか、あの孫君がこんなに真面目に仕事するようになるとは思いもしなかったわ。昔から考えたら想像も出来ない姿よ」

「悪かったな」

「いやね、褒めてるのよこれでも」

 

 素直な感想を告げると、昔から考えるとらしくない今の姿がそう思われるのは仕方ないと思いつつも臍を曲げそうな悟空に笑みを向けるブルマ。

 

「ウチの旦那を見てよ。修行修行で稼ぐどころか碌に家族サービスも言わないとしようとしないのよ」

「ベジータと比べられてもな」

 

 ベジータの場合は世界最大の企業であるカプセルコーポレーションの令嬢であり、自身も優れた発明家でもあるブルマの旦那なので稼ぐ必要もない。

 人造人間との戦いの際にブルマと生まれたばかりのトランクスを見捨てかけたこともあるベジータが言われれば家族サービスするようになったのだから大きな進歩だろう。

 

「そう言えばヤムチャから何か連絡はあったんか? もう宇宙に行って結構経つだろ」

 

 新ナメック星のドラゴンボールで地球が復活して暫くした後、カプセルコーポレーションの宇宙船でヤムチャが宇宙に旅立ったことを思い出した悟空が訊ねる。

 

「定期連絡は滞りなく来てるわ。宇宙で海賊やら盗賊を退治して元気にやっているみたいよ」

「そっか、でもなんでヤムチャは宇宙に行くなんて言い出したんだ?」

「最初は警察でクリリン君の手伝いをしてたらしいけど性に合わないってまた言い出したから、じゃあ宇宙で悪人退治でもして来なさいって適当に言ったら本気にしちゃったのね。一匹狼だから組織に属するなんて柄じゃない分、楽しくやってるみたい」

 

 今の地球は悟空達がいれば安泰といえるし、強盗とかぐらいでヤムチャが出張る必要もない。

 そういう意味ではフリーザ軍のように常人には手を出せないが、ヤムチャならば倒せるレベルの悪党が五万といる。

 

「ドラゴンボールで蘇ったフリーザのことも気になるし、最近地球外から強い敵も来るから情報収集は必要だと思ってたからヤムチャが言い出してくれたから助かった面もあるのよね」

 

 バビディによって蘇らせられてベジータと闘った後、去って行ったというフリーザの行方は悟空も気になる所である。

 

「地球は呪われてるから宇宙に逃げるぜ、とも言ってたけどね」

 

 地球が復活してからも宇宙からやってきたハッチヒャックやヒルデガーンのことを考えると、ブルマの言うように情報収集は確かに必要なのかもしれないし、ヤムチャが言うように短期間に壊滅の危機に陥る地球は呪われているのかもしれない。

 

「ヤムチャの言うことも分からなくもねぇなぁ。最初は昔にブルマが言ってたようにオラが悪い奴を惹きつけてるんじゃねぇかとも思ったけど、どう考えても限度を超えてるだろ」

「何、昔の話を持ち出してるのよ…………確かに訂正するわ。惹きつけてるのは地球の方よ」

 

 あの世とこの世の境が曖昧になった原因であるジャネンバのことも思い出し、この一年間だけでも三度はあった地球崩壊の危機に二人揃って遠い目をする。

 

「サイヤ人やフリーザ軍だって孫君がいなくても何時かは地球に侵略に来たかもしれないし、ドクター・ゲロはあの様子ならレッドリボン軍が存在しようとしなかろうと人造人間は造っていたはず。魔人ブウだって地球に封印されていたんだから、誰かの責任ってレベルじゃないわよ」

 

 他愛のない話の中で冗談で言ったことを覚えていた悟空が実は気にしていたのではないかと察したブルマは釈明に走ったところで、実際はこれらの事態が立て続けに起きたからこそ悟空達が強くなることで辛うじて事態を収めることが出来ているので更に遠い目をする。

 

「ま、まあ、気にしない方が良いわよね、精神衛生的に」

 

 つまりは今後も敵が現れ続けるのだろうと容易く予想が出来てしまったが、今も修行を続けている悟空やベジータ達戦士に任せることにしてブルマは思考を放棄した。

 

「でも別に悪い事ばかりじゃなかっただろ。ほら、タピオンのこととか」

 

 ヒルデガーン関係で一時ブルマの家に滞在した勇者タピオン。

 

「まあね。あれからトランクスも少しは成長したみたいだしって、話をすれば」

 

 タイミング良くタピオンから譲られた剣を持ったトランクスが庭の向こうから家に向かって歩いて来る。

 

「おぉい、トランクス!」

「あ、おじさん」

 

 テラスから悟空が顔を出して声をかけると、気を感じ取っていたトランクスは驚くこともなく見上げ、飛び上がってテラスに上がって来る。

 見覚えのある剣を持つトランクスの姿は、未来トランクスの姿を悟空に幻視させる。

 

「大きくなったな、トランクス」

「一ヶ月前に会ったところなのにそんなに変わらないよ」

 

 とはいえ、タピオンとの出会いと別れの後からヤンチャだった子供の殻から抜け出しつつあるトランクスの笑みは以前とは少し変わった。

 

「実際、背も伸びただろ。うちの悟天は全然伸びねぇって嘆いてたぞ」

「そこは孫君譲りなのかもね。出会った時も十二歳だったのにもちんちくりんだったし」

「悟飯はそうでもなかったんだけどな」

 

 一年前は少ししか変わらなかったトランクスと身長差が広がっていることに悟天は凄く気にしていた。

 悟飯は年相応の身長の伸びだったが、悟天は悟空と同じく成長が遅い傾向にあるようだ。

 

「おじさんは今日は何で?」

「仕事よ仕事。トランクスもこういうところはベジータじゃなくて孫君を見習いなさいよ」

「はいはい、もう直ぐ家庭教師が来るからシャワー浴びて来る」

 

 悟空ではなくブルマが質問に答え、母から父への愚痴を聞き慣れている様子のトランクスは汗で濡れた胴着を引っ張って、しっかりとお菓子を摘まんでから家の中に入って行く。

 

「あの剣を持ってるのもあるんだろうけど、ますます未来のトランクスに似てきたな」

「私としてはもう少し母の言うことを聞いてくれる礼儀正しい青年に育ってほしいけどね」

 

 適当に聞き流されたことにムッとした様子のブルマに大人げないと思ったが苦笑するに留めた。

 悟空の苦笑に表情を緩めたブルマはトランクスが去ったことで二人きりであることを強く意識した。

 

「孫君と二人だけでこんなに話すなんて、最初に出会った頃以来じゃないかしら」

「ああ、ブルマがドラゴンボール探してパオズ山に来た時のことか」

 

 祖父・孫悟飯以外の人間に出会ったことのない悟空が始めて見た別の人間がブルマである。

 ブルマに付いてパオズ山を下りて様々な人と出会ってきたが、始まりはブルマの言葉に乗ったからであった。

 

「途中からウーロンが加わって、ヤムチャと戦って、亀仙人のジッチャンに会ったのも、最初はブルマに唆されて山を下りたからだもんな」

「唆されたってなによ」

「願い事が済んだら四星球は返すとか、世界にはもっと強い武道家がたくさんいるとか言ってたけど、願い事の後にボールが散り散りに飛ばされることを知っていたのに教えなかっただろ?」

「ま、まあ、そうだけど、実際に強い武道家には出会えたじゃない」

 

 昔の嘘を引き合いに出されて旗色悪しと見たブルマはすぐさま方向転換に図る。

 

「ああ、だからブルマには感謝してる。ブルマに出会わなかったら、オラは今も一人でパオズ山から出ようとはしなかっただろうからな。ありがとう、ブルマ」

「孫君……」

 

 気恥ずかしいのか、顔を逸らして感謝する悟空にブルマも多くの言葉は言えなかった。

 

「私もさ、昔の自分がどんだけ嫌な奴だったのかってのはよく分かってるつもりだし、それでも見捨てずに助けてくれた孫君には本当に感謝してる」

 

 喜怒哀楽が激しく自信過剰な上に向こう見ずな行動でいらぬ危険を引き起こしてしまって悟空や仲間達に助けられたことは数知れない。勿論、逆の場合も多くあったが、こうやって面と向かって礼を言ったことはないので、この機会に告げておいた。

 

「オメェだって世間知らずなオラに色々と教えてくれたじゃないか。それに危険に首を突っ込むオラに文句を言いつつも一緒に来てくれた」

「じゃあ、お互い様ね」

 

 お互いに笑みを浮かべて、互いに所帯を持ったが変わらない関係性に安堵する。

 

「まさかあの野生児が何度も地球を救ってくれるようになるなんて当時の私じゃ思いもしないだろうな」

 

 昔話なんてしているから、殊更にそう思うブルマ。

 

「こうやってお互いの子供の話をするなんて、あの頃には想像も出来ないわよ」

「お互いに子供だったってことだろ。それを言ったら、真っ先に結婚すると思ってたオメェとヤムチャが別れて、まさかベジータと一緒になって子供を作るなんて誰も思わなかったぞ」

「あら、フリーザを倒して地球に戻ってきた後に元気な子供を産めよって言ったじゃない」

「あれは、未来のトランクスがオメェの母ちゃんだって聞いて」

 

 二人だけでゆっくりと話す機会など、もう十年以上無かったことなので話すネタが尽きることはない。

 出会った頃から互いの結婚してからのエピソードなど、相手の嫁・旦那から子供のことまで良く知っているので家族内だけのエピソードや、友人達のこともあって話続けようと思ったら幾らでも喋っていられる。

 

「もう直ぐ私の誕生日パーティーだからサプライズを用意してあるのよ」

「ん?」

 

 来る前の緊張も忘れてリラックスしてブルマの話を聞いていた悟空は、何かに気付いたように空を見上げた。

 

「どうかした?」

「いや……」

 

 何かを感じ取りながらも正体が分からずに言葉に出来ない悟空は空を見上げ続ける。

 

「!?」

 

 途端、悟空が見上げていた空の一部が歪んで大きな物体が突如として現れた。

 

 

 





 感謝感謝の悟空。
 ブルマも感化されて感謝感謝。
 昔の話で楽しんでて未来トランクスの話題が出たら、やってきちゃったよタイムマシン。

 地味に宇宙へと進出しているヤムチャ。

 時系列はGTを除いてOVAと劇場版の大体の事件が終了後。
 映画「神と神」が魔人ブウ戦から4年後らしいですが、本作では一年後、しかもビルス様登場以前にゴクウブラック編が始まります。

 ゴッドになれない、そもそもゴッドの存在を知らない悟空が如何に勝つのか。お楽しみ下さい。

次回、『第二十三話 未来より来る者』



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第二十三話 未来より来る者


なんとか隔日投稿は出来ている。このまま続くか?
しかし、お気に入りが伸び無くなって来たなぁ……。



出番を前にビルス様が準備運動をしています。




 

 

 

 空に突如として現れた物体に、悟空にもブルマにも見覚えがあった。

 

「あれは……」

「トランクスのタイムマシンだっ!」

 

 見間違いなどではなく、未来のトランクスがこの時代に来るために使っていたタイムマシンである。

 ゆっくりと庭に下りていくタイムマシンを目にした悟空は走り出した。

 

「トランクスだ」

 

 悟空はテラスから飛び降りてタイムマシンの窓から中を覗き込むと、予想通りブルーの髪をした青年がいたが操作盤に突っ伏してしている。

 

「おい、しっかりしろ、トランクス!」

 

 未来のトランクスに意識はない様子で、下手に壊すわけにもいかないので手加減して窓をガンガンと叩く。

 しかし、トランクスに目が覚める様子はない。

 

「どいて、孫君。そこを空けるわ!」

 

 これは埒が明かないと窓を壊そうと悟空が拳を振り上げたところで、走って来て息を切らしたブルマがタイムマシンの下部に取り付いてボタンを押した。

 ウィーン、と音を立てて開く。

 

「トランクスは大丈夫なの?」

「怪我はしているようだけど大きなものじゃねぇ。気を失ってるだけだ」

 

 窓が完全に開け切るのを待つことなく中に入ってトランクスの体に取り着いた悟空だったが、気は安定しているのでそこは心配していない。

 見る限りでは死に至るまでの大きな怪我をしている様子もなく、ただ気を失っているだけだろう。

 

「ブルマはベジータを呼んできてくれ。オラはトランクスを家の中に運ぶから」

「案内ナビを呼んだから医務室に運んで。医者を行かせるわ」

 

 二度と来ることはないと言っていたトランクスが傷だらけでこの時代に来たということは何かがあった可能性が高い。

 ベジータも既にトランクスの気を感じ取っているかもしれないが、重力室での修行中では気づいていない可能性もある。言付けを頼むと、ブルマはズボンのポケットに手を入れて何かの機械を操作している。

 恐らくそれが案内ナビを呼ぶコントローラのような物だろうと推測しながらも、悟空は医者よりも手っ取り早く治せる方法を知っている。

 

「いや、医務室に運んだらカリン様に仙豆を貰って来る」

 

 天界と下界を結ぶ聖地に建つカリン塔の頂上に住む仙猫であるカリンが栽培している仙豆は食せばどんな傷もたちどころに治ってしまう。

 悟空が瞬間移動を使えば一分以内に行って帰って来られるが、全く懸念がないわけではない。

 

「仙豆ってこの一年で一杯使ったけどまだあるの?」

「分かんねけぇど、一つぐらいはあるだろ。くそっ、こんな時にデンデが里帰りしてるなんて」

「タイミング悪いわよね」

 

 この一年の間だけでも何度も危機に陥ったので、その度に仙豆が使われて来たから悟空にもまだ残っているという保証は出来かねる。最悪、一つだけでもあればトランクスの治癒が出来るので良しと考えた。

 仙豆のような回復アイテムなしで傷を癒せる能力がある神であるデンデは新ナメック星に里帰りしている。

 家族との絆を重んじている悟空の勧めで数日間だけピッコロが神様代理として残り、界王に手助けしてもらって瞬間移動で向かった。

 悟空単独では新ナメック星に行くのは遠すぎるし、折角の里帰りを邪魔するのは気が引ける。

 

「仙豆が無かったら諦めるしかねぇ。取りあえず、医務室に運ぼう」

 

 仙豆があるにしても無いにしても、このまま制御盤に凭れかかった姿勢なのを放っておくのは傷を負っている体に良くない。

 悟空が抱えようと体を起こしたところでトランクスが「ぅ……」と呻いた。

 

「目が覚めたのか? しっかりしろ、トランクス!」

 

 傷に障らないように程度に揺すって意識を呼び戻そうとする。しかし、それがこの場においては悪手であると悟空は気付かない。

 

『アナタはみんなの希望なんだから』

『愚かな人間には死こそが恵み』

 

 悟空の呼びかけに薄らと瞼を開けたトランクスの意識は茫洋としていた。

 

「おい、トランクス?」

『これで終わりか。誇り高き戦闘民族サイヤ人の最期としては無様だな。お前も母の後を追うがいい』

 

 目を開けたトランクスは、まだハッキリとしない意識の中で映った悟空の姿と共に記憶のフラッシュバックが遅い、心を怒りに支配された。

 

「――――ブラックっ!!」

 

 今いる場所がどこかも把握していないトランクスは、目の前にいる人物が憎き敵であると錯覚したまま激情に任せて拳を叩き込んだ。

 

「うぐっ!?」

 

 まさか目覚めたトランクスに殴り掛かられるとは予想もしていなかった悟空は顔にまともに頬を殴られ、タイムマシンから弾き飛ばされる。

 

「貴様だけは俺がっ!」

 

 弾き飛ばされた悟空が少し離れた場所に立っていた木に足から着地した所に、超サイヤ人になったトランクスが追撃を仕掛けてきた。

 避けると、さっきまで足場にしていた木が蹴りによって真っ二つに切り裂かれる。

 

「おい、トランクス!」

 

 恐るべき速さで迫って来るトランクスを前にして悟空はそれ以上の言葉を言う間も持てない。

 超サイヤ人にならなければ殺されていただろう。そう思わせるだけの殺気を放ち、襲い掛かって来るトランクスに悟空が焦りを覚えているとピカッと閃光が奔った。

 

「超サイヤ人2か!?」

 

 明らかにセルを倒した時の悟飯を超えている超サイヤ人2となったトランクスが空中にいる悟空を追って来る。

 悟空が同じく超サイヤ人2になったところでトランクスが怒涛の攻撃を繰り出してくる。

 

「だぁっ!!」

「ぐっ、くぅ……!?」

 

 演技でも何でもなく、トランクスの猛攻の前にして反撃の隙すら見当たらない。

 

「都の真ん中で本気で闘うなんて何を考えてるのよ、あの子は……」

 

 超サイヤ人2が発する気のオーラとトランクスの攻撃による衝撃によって、局所型の台風が都のど真ん中に突然現れたような物である。

 ブルマが幾ら叫んでも攻撃音が大きすぎてトランクスの耳に届いている様子はない。街中で全力戦闘を仕掛けているトランクスに言いたいことが山ほどあるが、今は周りに広がる被害を抑えなければならないので案内ナビを呼び出したコントローラーを取り出して操作する。

 

「これで収まってくれたらいいけど」

 

 バリアー発生装置を作動させて、バリアーが戦っている二人を覆い尽くす。

 とはいえ、バリアーが受け切れるのはあくまで余波に過ぎない衝撃波に過ぎず、直接攻撃を受ければ呆気なく破壊されることだろう。

 

「ぐぁっ!?」

 

 悟空が再び殴り飛ばされてバリアーに背中から叩きつけられた。たったそれだけバリアーに罅が入ってしまう。

 バリアーは電気で作られているので補強されるが、背中の剣を抜き放って一閃したトランクスの攻撃によって縦に真っ二つにされてしまった。

 

「ああっ!?」

 

 今度はバリアーも形を保てずに消滅してしまったがブルマが声を上げたのはそれが理由ではない。

 辛くもバリアーを切り裂いたトランクスの一閃を避けた悟空だったが、無理が祟って一般人であるブルマから見ても追撃を避けられるようには見えなかった。

 

「瞬間移動か――――もう見飽きたぞ!」

 

 一閃を間一髪で瞬間移動で躱し、離れた場所に現れた悟空を睨んだ眦の厳しいトランクスの姿が消える。

 

「トラ――」

 

 再度、止めようと呼びかけかけ悟空が名前を呼ぶ暇もない速度で猛追してくる。

 嘗てトランクスと始めて会った時にしたように超サイヤ人2のオーラを人差し指に集めて剣を受け止める。

 

「聞けったら、おい!」

「貴様と話すことなどあるものか!!」

 

 形成は悟空の圧倒的に不利である。

 トランクスを傷つける気は無いが嘗てのように余裕を持って捌くことが難しい。

 オーラを人差し指に集めることで固さを増しているが、その分だけ他の部分の防御力が落ちる。このままではいずれ木やバリアーのように悟空が真っ二つにされるのも時間の問題だった。

 

「すまねぇ、トランクス!」

 

 背に腹は代えられない。

 指で剣を弾いた直後に、怒りで我を忘れて攻撃している分だけ防御に隙も見い出してトランクスの腹に蹴りを叩き込んで距離を置く。

 

「いい加減、正気に戻れ馬鹿野郎!!」

 

 この距離を活かして一度叩きのめさなければ正気に戻らないと判断した悟空は一気に超サイヤ人3になる。

 出来れば地球を揺るがすほどの超サイヤ人3の力の波動を浴びれば正気を取り戻してくれると期待した悟空だったが、当のトランクスは剣を逆手に持ち替えて大きく息を吸っている。

 

「はっ!!」

「な、に……っ!?」

 

 中腰になって気合の声を発したトランクスの気が爆発したように増大した。

 瞠目している悟空の見ている中で、変身もせずに超サイヤ人3をも超えるパワーアップを果たしたトランクスの姿が掻き消える。

 

「死ねぇぇぇっ!!」

 

 悟空ですら捉えられないほどの超スピードで背後に回り込んだトランクスが大上段に剣を振りかぶっている。

 避ける、なんて出来るタイミングではない。

 逃げる、なんて瞬間移動を使わなければ不可能だが、それだけの集中をこの刹那に行うのは不可能だ。

 受ける、なんて超サイヤ人3の全オーラを指に集めても両断されるだけ。

 

「―――――――何をしている、トランクスっ!!」

 

 どの選択も選ばなかった悟空が後少しで両断されるというところで、トランクスの剣がその声を聞いた瞬間にピタリと止まるか止まらないかの刹那。

 

「がはっ!?」

 

 トランクスの視界の大部分を占めていた黄金から赤へと光が一瞬だけ変わり、それを認識するよりも早く腹部に走った強烈な衝撃に剣を握る手から力が抜ける。

 

「あ、やべ」

 

 腹に拳を叩き込んだ張本人である悟空の声と共にトランクスの意識は徐々に薄れていく。

 力を失った体が無防備に地面に叩きつけられるかというところで誰かが受け止めた。

 

「父、さん……」

 

 トランクスは理由も無く受け止めてくれたのが先程の声の主であるベジータであると確信して、ガクリと首を折って意識が完全に落ちた。

 

「と、トランクスは大丈夫か?」

「カカロット、貴様には聞きたいこと、言いたいことがあるが今はいい」

 

 空から落ちて来たトランクスを横抱きで抱えているベジータは静かに言い、未来からやって来た傷だらけの息子を一度見下ろして悟空に厳しい目を向けた。

 

「さっさと仙豆を取りに行って来い!!」

 

 ベジータの叫びに悟空が即座に瞬間移動を使ったのは決して逃げる為ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再び気絶したトランクスをベジータが医務室に運ぶ前に最速で戻って来た悟空。

 一粒しかなかった仙豆を食べて傷が全快し、意識が回復したトランクスが再び悟空を襲うことはなかった。

 

「父さん、母さんもいるということは俺は過去に来れたんだ」

 

 悟空を視界に収めるよりも早く傍にいたベジータとブルマの姿を認識したことで、過去の時代に無事に来れたことを認識できたのだが、当然ながら先程まで悟空を襲ったことを忘れたわけではない。

 

「す、すみませんでした、悟空さん。突然、襲い掛かったりして」

「気にすんなって」

 

 理由も無く襲い掛かったわけではないが、人違いであることを認識したトランクスに出来たことは土下座せんばかりに平謝りするだけである。

 後一歩間違えれば殺されていたが、元よりトランクスが理由も無くそのようなことをする男ではないと知っている悟空は肩に手を置いて許す。

 

「しかし驚いたぞ、トランクス。いや、本当に色んな意味で」

 

 突然の来訪はともかくとして、襲い掛かって来たことと、悟空の超サイヤ人3を超えるまでに成長したことに驚いていた。

 未来にはトランクス一人しか戦士は残っていないのに、そこまで良く鍛えたという思いが一歩間違えれば殺されていたことを許すほどの尊敬を抱かせていた。

 

「そうよ。急にやって来るわ、孫君に襲い掛かるわで、一体どうしちゃったのよ」

「…………母さん」

 

 色々と聞きたいことがあるブルマが腰に手を当てながら言うと、その姿を見たトランクスが感極まったように強く目を瞑り、そして重く呟いた。

 

「え? え?え? え?え? え?」

 

 悟空と未来トランクスの戦いの気配を感じ取って駆け付けたのはベジータだけではない。

 この時代のまだ幼いトランクスは状況把握が出来ておらず、見知らない大人に悟空が自分の名前で呼んだり、挙句の果て男はブルマを母と呼んだのだ。

 大人達を見上げて右往左往する現代トランクスはパニックっている。

 

「良かった。来れたんだ、過去に……」

「何があったのか説明しろ、トランクス。もしや、お前の時代でも魔人ブウが現れたのか?」

 

 現代の息子の混乱を知っても大して気にしないベジータは腕を組んで未来トランクスに問う。

 

「ああ、あの……」

 

 悟空としては良い思い出が何一つない魔人ブウとの戦い。

 しかし、よくよく思い返してみれば、ブロリーさえいなければ悟空の超サイヤ人3を超えているトランクスならば苦戦はしても倒せるはずであると思い至る。

 

「いえ、界王神様のお蔭でダーブラとバビディという奴らを倒し、ブウの復活は未然に阻止しました」

「流石は俺の息子だ」

 

 トランクスを褒めながらも鼻を高々としているのはベジータの自画自賛な面も見え隠れするが、悟空としても界王神の手助けがあったにしても良くやったことには変わりないと突っ込みはしなかった。

 

「え? え?え? え?え? えぇぇぇぇ!?」

 

 ベジータが『俺の息子』と明確に言ったことで現代トランクスの混乱はマックスに達していた。

 今にも目を回して倒れそうな我が子を見たベジータも流石に気の毒に思ったのか、今にも熱を出しそうなトランクスの頭に手をポンと置く。

 

「落ち着け、トランクス。こいつは未来のお前だ」

「へ?」

「厳密には、もう別人だがな」

「え、どっちなの? あの人は未来の俺だけど別人ってどういうことなの?」

「孫君が心臓病で死んだかどうかで分岐した時間軸での話よ。未来のトランクスは死んだ方の軸、そしてアナタは死ななかった方の時間軸。同一人物であることは間違いないけど、経験したことが全然違うから全く同じ人間になることはないってことよ」

 

 と、現代トランクスには詳細を省きすぎな説明では分からないと言わずとも顔に書いてあったのか、ブルマが補足する。

 

「…………良く分かんない」

「また今度詳しく教えてあげるから、年上のお兄ちゃんとでも思っておきなさい」

 

 DNAは同一でも経験してきた事柄が違うから精神性は絶対に違うということは、まだ子供の現代トランクスでは実感が湧かないのだろう。

 ブルマの言い様に分からなくとも納得することにした現代トランクスの姿に眩しい物を見るように目を窄めていた未来トランクスにベジータが目を向ける。

 

「その有り様から見るに、また未来から逃げてきたか」

「おい、ベジータ。そんな言い方はないだろ」

「いえ、いいんです悟空さん。事実ですから……」

 

 今度こそ未来を守り続けると大言壮語して帰ってたのに、また懲りずに舞い戻って来たのを揶揄するベジータを悟空が注意するが、現実に逃げて来たトランクスは悄然として肯定する。

 

「しかし、解せん。ブウでないとしたら未来で何があった? ブロリー、ハッチヒャック、ジャネンバ、はたまたヒルデガーンでも出たか?」

 

 ブウ戦をややこしくした元凶であるブロリーと、この一年の間に何故か集中して宇宙からやってきた強敵達の名前を出すベジータ。

 現代にいる多くの戦士が力を合わせてようやく倒せてきた強敵達である。如何にトランクスが超サイヤ人3の悟空を超えていても一人では難しいので、先の未来から逃げて来た発言は厳しくとも幾分かの同情的な思いもあった。

 

「いえ、そのどれとも違います」

 

 素直になれないサイヤ人王子の気持ちは、精神と時の部屋で一年間を共に過ごしたことで良く理解していた未来トランクスはゆっくりを首を横に振って重い口を開く。

 

「そいつは――」

 

 トランクスが未来を襲った敵のことを口にしようとした瞬間、タイムマシンが現れた空の上の空間が歪んで穴が開いた。

 

「あ」 

 

 全員が異変に気付いて見上げた先で、空間に出来た穴から一人の人物が現れた。

 

「なんだ、ここは?」

「お、オメェは……っ!?」

 

 その姿を見たトランクスを除いた誰もが仰天した。そして最も驚いている悟空との間で視線を行き来させる。

 

「ブラック!」

 

 未来を襲った敵がこの場に現れたことにトランクスが歯を剥き出しにして敵意を露わにする。

 

「そのような安っぽい名称で呼ぶなと言っただろう、トランクス。私の名は――」

 

 その場にいる全員の顔を見渡したブラックと呼ばれた黒衣の男は、殊更に悟空を見てニヤリと笑って片耳だけ付けた耳飾りを揺らす。

 

「――――孫悟空だ」

 

 孫悟空そのものの顔で、決して悟空が浮かべることのない嘲る笑みと共に自らの名を名乗った男の右手の人差し指に嵌められた指輪がキラリと光った。

 

 




 超の漫画版において、トランクスはゴッドの力を取り込んでいる悟空の超3以上です。
 ですが、本作では数年前倒しになっているので本作での強化版超3悟空よりも上程度に留まっているので、ブラックの力も超の時のレベルには至っていないのかも。
 しかし、トランクスを倒した時に悟空のオーラが黄金から赤に変わった光とは一体?(すっとぼけ)
 ヒント:前話の後書きにて『ゴッドになれない、そもそもゴッドの存在を知らない悟空』と書きましたが、枕言葉に「完全な」と付いたりするかも(ほぼ答え)

 今まで助けてくれた仙豆もないんだよ!
 そしてちょっと父親っぽいベジータにホッコリ。

 トランクスから話を聞く前に現れたゴクウブラック。
 全く予想もしていないその顔に一同驚愕。

 タイトルの未来より来る者とはゴクウブラックも兼ねていたのだ!

 さあ、ビルス様が助走を始めました。
 現在の破壊案件:時間を遡った重罪でトランクスとゴクウブラックが標的。

 逃げて、超逃げてトランクス。悟空達と知り合いになってないから慈悲なんてないから。


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第二十四話 ゴクウブラック


皆様、感想何時もありがとうございます。今日もまたお蔭で投稿できた次第です。

では、どうぞ。





 

 

 

 地球から何億光年も離れた宇宙の別空間を進んでいた破壊神ビルスは、突如として向かう方向に現れた異質な邪気に目を細めた。

 

「気づいたか、ウイス」

「ええ、どうやら向かっている地球から感じ取れるようです」

 

 付き人であり、同時に師でもある天使のウイスも同じ物を感じ取っていた。

 

「一瞬だけ放たれた神の気。それとはまた違いながらもどこか似た気。両者は別人のようですが、はてさてどうなっているのか」

 

 用事があって地球に向かっていたら、この空間にまで届いてきた気にウイスは考察を重ねる。

 

「時空の歪みもあるね。誰かが時間を弄ったのかな」

「かもしれませんね」

「じゃあ、見つけたら破壊しないとね」

 

 時間は一定の方向にしか流れないものである。

 過去で花を一輪抓むだけでも後々の未来で宇宙から一つの星が消える理由にもなりえるのだから、時間に干渉した者は宇宙の調和を保つべき立場にいる破壊神が破壊する案件である。

 

「例え神であろうとも。あ、もしも界王神だったらウイスに対処を任せるよ」

「はいはい、面倒なことは私がやりますよ」

 

 時間の安易な移動は神々でさえ厳しく禁じられている。

 一番あり得るのは時間移動を可能とする時の指輪を持つ界王神なのだが、破壊神とは対の存在であるので破壊してしまったらビルスまで死んでしまう。界王神が時間を弄った場合はウイスに任せてしまうのが一番手っ取り早い。

 

「しかし、この気はどこかで」

 

 後の方の邪気にどこか覚えがあるような感じがするのだが長生きし過ぎて出会った人物と神が多すぎるから直ぐに該当者が思い出せない。

 

「思い出せないな。実際に見れば分かるはずだが…………ウイス、映像に出せるか?」

「やってみましょう」

 

 惑星間の超速移動をしながら他のことをするのはウイスでも厳しいのだが、到着してから正体を調べても手遅れなこともある。

 移動と映像の投影を並行して行うウイスの額に汗が浮かぶ。

 

「…………知らない奴だね。っていうか、こいつら双子か?」

 

 映された映像は本来出来ないことを無理に行っている影響でブレとノイズが走っているが見えないほどではない。

 

「対立している様子ですので、そのようなことはなさそうですが…………ビルス様、黒い胴着を着ている方の右手を見て下さい」

 

 ウイスの意図を反映して、時空の歪みを背にして浮かぶ黒い胴着を着た男の右手がズームされる。

 

「あの指輪は、時の指輪じゃないか」

 

 黒い胴着を着た男の人差し指に嵌められているのが既知の指輪であると一目で看破したビルスの表情に厳しさが増す。

 

「の、ようですね。彼は界王神ではないようですが」

「だよね。僕も見たことのない顔だ」

 

 時の指輪を使う資格があるのは界王神だけ。

 しかし、ビルスとウイスの記憶の中には、このような男が界王神になっているとは聞いたことも見たこともない。

 

「それに耳に付けているのは片方だけとはいえ、界王神が身に着けるポタラだね。時の指輪も付けているということは何かしらの界王神との関係がありそうだ」

 

 界王神の縁のあるアイテムを片方だけでなく両方持っているとなれば、なんらかの関わりがあるのは確実と言える。

 正式に譲渡されたか、殺して奪い去ったのかの違いはあれど、黒い胴着の男には問い質さなければならないことが幾つもある。

 

「ウイス、スピードを上げろ」

「これ以上は無理ですよ」

「映像を消していいから」

「最高速度を維持しながら投影していたので、映像を消しても私の不安が減るだけですのでスピードは上がりません」

「じゃあ、しょうがないな。このまま見てるとしよう」

 

 ウイスが自らの失敗を悟ったが時は既に遅し。

 このまま地球に到着するまでは、移動と投影を両立する無茶を並行する羽目になってしまった。

 

「見た目は同じ人物だが敵対している感じだし、片方は界王神と関わりのある者、予言魚が言っていた超サイヤ人ゴッドを見に来ただけだったけど面白いことになりそうだ」

 

 如何な考察を重ねようとも実物を見た方がハッキリする。

 ビルスはウイスの肩の上に置いた手に力を籠めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、時を超えたのか。しかし、数奇なこともあるものだ。時を超えた先で孫悟空と出会うとは」

 

 自らを孫悟空と名乗った男は、悟空が決してすることのない気取った物言いで皆を見下ろす。

 

「貴様、どうやってこの時代に来た!」

「お前が通った時空を私も通り抜けてきたようだ、トランクス。お前が私を呼んだのかな、私に殺して欲しいと」

「うぉぉぉ、オラの顔でそんな喋り方をすんのは止めてくれ!?」

 

 ブラックの発言に激昂したトランクスが剣を抜き放とうとして両腕を擦る悟空の気の抜ける発言にガクリと肩が落ちる。

 トランクスに気を抜けさせた張本人である悟空は、ブラックが自分の顔で全く違った喋り方をするので全身に鳥肌が立っていた。

 

「何を言う、宇宙で最も美しい私におかしいところなど何一つとしてない」

 

 前髪を掻き上げて言うブラックに更に悟空が悶えているが、言った本人は何もおかしいことを言ったつよりはないようだ

 

「ふん、カカロットと同じ面をしておいて中身は随分なナルシスト野郎だな」

 

  鉄火場の匂いを感じ取った現代トランクスがブルマを避難させるのを横目に見ながら、ベジータが外側は同一人物なほどに似ているというのに明らかな中身の違いに鼻を鳴らす。

 

「ナルシストなどという低俗なレッテルは止めてもらおうか、ベジータ。私は事実を言っているに過ぎないのだから」

 

 ゾゾゾ、とベジータもまさか悟空の顔でそんなことを言われたものだから、あまりの気持ち悪さに背筋に鳥肌が立った。

 ベジータが黙ったのを認めたと勘違いしたのか、地上へと下りて来たブラックが改めて悟空を見る。

 

「改めて挨拶しておこう、孫悟空。ごきげんよう」

 

 ごきげんよう、だなんて悟空が何度人生を繰り返しても言いそうにない挨拶である。

 

「オラ、絶対にオメェとだけは仲良く出来そうにねぇ」

 

 悟空がハッキリと拒絶の意を表明するがブラックも皮肉気に唇を吊り上げていた。

 

「ええ、構いませんよ。私も仲良くする気はありません。ただ」

 

 腰を落として構えを取ったブラックから放たれた威圧が、悟空の気を引き締めさせて反射的に構えを取らせる。

 

「貴方とは一度でいいから、この体で戦ってみたいと思っていたのですよ」

「この体だと? まるで貴様本人とは違う体のように聞こえるぞ」

 

 折角だから悟空の顔したブラックと戦いたかったベジータだったが、相手のご指名とちょっと気持ち悪いと思ったので傍観の態勢になっていた。先程のトランクスを倒した一瞬の攻防で見せた悟空の何かの正体を見極める良い機会でもあった。

 そこで聞いていた会話の中にあった奇妙な言い回しに気付いて、ブラックの正体を知る為に突っ込んだ質問をする。

 

「さあ、どうでしょうかね」

「まさかフリーザとかと同じように生き返ったターレスか?」

 

 ベジータの質問をはぐらかそうとするブラックに、悟空は自分に似た風貌をしていた十年以上前に地球にやってきたサイヤ人の生き残りであるターレスがフリーザやセルと同じように何らかの方法で蘇ったのではないかと問う。

 

「ターレス? いいえ、私の体は紛れもなく孫悟空その人ですよ」

  

 体は、ということは中身は孫悟空ではないと言っているようなものである。

 

「ごちゃごちゃと五月蠅いですよ。知りたければ私を倒して吐かせてみてはどうですか?」

 

 得心した様子の悟空にいらないことを喋り過ぎたと自覚したブラックの目に剣呑な光が宿った。

 これ以上、会話から情報を知るのは難しいと判断した悟空だったが、恐らく自分を超えているであろうというトランクスが過去であるこの世界に逃げてくるほどの敵である。無策で闘うのは危険である。

 

(フュージョンを使えれば……)

 

 勝率を上げる為にはベジータと合体するのが一番ではある。

 だが、悟空と闘うことを望んでいるブラックがフュージョンを許してくれるとは思えず、沸点も低い様子から隙の多いフュージョンをするのは危険であった。

 

「はぁっ!!」

 

 ならば、今出来る最高を。

 超サイヤ人3になって瞬間移動で背後を取り、全力の一撃を放つ。

 慢心はない。油断はない。しかし、先の戦いでトランクスが瞬間移動を見飽きたと言ったこととブラックを結び付けて考えることが出来ていなかった。

 

「っ!?」

 

 放った拳が空を切り、それが同じ瞬間移動による回避だと気づいた時には黄金のオーラと奔ったスパークが右から左へと流れていく。

 

「うぐっ、ゲホッ……」

「この程度ですか、孫悟空」

 

 悟空を軽く殴り飛ばしただけで戦闘不能に近い状態に追い込んだブラック。

 スパークが全身に奔り、超サイヤ人特有のエメラルドグリーンの瞳を向けながら失望を禁じ得ないと言葉と表情が物語っていた。

 

「弱い、弱過ぎる。これがあの孫悟空だと? まさか貴方こそ偽物ではないのですか」

「お、オラは……本物、の…………孫、悟空、だ……!」

 

 攻撃を受けた脇腹を抑えながら、痛みで悶えそうになりながら言い返す悟空。

 

「そうです。孫悟空がこの程度のはずがない。油断していた、ということでしょう」

 

 悟空は紛れもなく本気の本気だった。切り札と言えるものまでは使わなかったが、今の一撃が全力であったというのに何故かブラックの方は悟空を過大評価していて、勝手に油断していたことにされてしまった。

 

「いいでしょう。では、一撃だけ無防備に受けてあげます。貴方の本気を私に刻み込んでみなさい」

 

 こいつ気持ち悪いと、ようやく痛みが引いてきたので脇腹から手を離した悟空はそんな場合ではないのにげんなりとしてしまった。

 

「本当に良いんだな?」

 

 とはいえ、超サイヤ人は解いていないが言葉通りに無防備に攻撃を受ける為に構えを解いたブラックに改めて聞く。

 

「私は嘘など言いません。さあ、来なさい」

 

 確かに嘘を言っているような感じはしない。

 一瞬の攻防で超サイヤ人3の悟空が超サイヤ人2であるブラックに劣っていることは認めざるをえない。

 あのブロリーですら超サイヤ人2の時点で超サイヤ人3の悟空と互角だったのに、あの頃より悟空も格段に強くなっていることを考えれば、もしもブラックが超サイヤ人3になれるとしたらその強さはブロリー以上かもしれない。

 勝機をこの一撃に託すしか、悟空に勝つ方法はなかった。

 

「じゃあ、遠慮なく行くぞ!」

 

 フュージョンはやはり出来ない。

 ならば、切り札が知られようともこの一撃に全てを託す。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおっっ!!」

 

 一歩踏み込んだ悟空がトップスピードに乗る。

 そして後、刹那というところで悟空の黄金のオーラが赤いものへと変化した。

 

「うぐっ!?」

 

 赤いオーラのままブラックの腹に渾身の一撃を叩き込んだ直後、悟空のオーラが黄金に戻る。

 言った通り無防備に悟空の攻撃を腹に受けたブラックは吹っ飛び、しかし十メートルほどで地に足で二本の轍を作って止まる。

 

「…………素晴らしい。この痛みがまた私を強くする」

「やっぱり気持ち悪いぞ、オメエ」

 

 だが、悟空が本当の本当に全力を込めて放った一撃を受けても倒れないブラックにタラリと冷や汗を垂らす悟空。

 ベジータですら組んでいた腕を解いて唖然とした目を向ける中でブラックは胸に手を当てた。

 

「いけない! ブラックは回復する気です!」

「はっ!」

 

 何をするのかと警戒していた悟空が見守る中で、トランクスが気づいて気功波を放つ。

 気功波が着弾する前にブラックの気がごっそりと減った。同時に痛みに歪んでいたブラックの表情が元に戻り、トランクスが放った気功波を受け止めて握り潰す。

 

「なにっ!?」

 

 仙豆を食べた後のように明らかにブラックのダメージが回復しているように見えた。代償としてごっそりと気が減ったが、折角与えたダメージがなかったことになって悟空が目を剥く。

 

「俺の時と同じだ。アイツは俺と戦う度にああやって回復していたんです。そして」

「――――サイヤ人は瀕死の状態から回復すると、劇的にパワーアップする」

 

 サイヤ人特有の現象が、中身が違えど孫悟空の体である以上はブラックにも同じことが起きる。

 

「馬鹿な! 俺達は極限にまで鍛え上げている! カカロットの体を使っている貴様が回復したところでパワーアップなど」

「私を貴様ら低俗な人間共と一緒にするな」

 

 そう言ってベジータを怒りの籠った目で睨み付け、大きな力の波動で強制的に黙らせたブラックが再び悟空を見る。

 

「やはり孫悟空から与えられたダメージはこの体に実に良く響く」

 

 ブラックの目にあるのは執着であり、同じ体を持つ悟空ですらも計り知れない何かだった。

 

「喜べ、劣等共。回復した私は遥かにパワーアップし、遂に人間である貴様らには立ち入ることの出来ない世界に到達した」

「何を……」

 

 オーラとスパークを収めたブラックが力を溜めるように膝を僅かに曲げた。

 

「はぁあああああああっっ!!」

 

 ブラックが気合の声を発した瞬間、世界の色が塗り潰された。

 一度色が無くなり、直後にブラックから放散された薄紅色が染め上げる。

 

「――――俺の強さは更に完璧なものとなった」

 

 薄紅色に染まったオーラを纏ったブラックからは全く気が感じ取れないにも関わらず、セル・ブロリー・ゴテンクスを吸収したブウが蟻と思えるほどの圧倒的なプレッシャーが悟空達を襲う。

 

(ベジータとフュージョンして悟飯とポタラを合体しても勝てねぇ)

 

 気が感じ取れない理屈は分からなくとも、これほどまでの圧倒的なまでの威圧感の持ち主が相手ではゴジットでも相手にはならないと悟空は悟った。

 

「神が超サイヤ人ゴッドを超えると薄紅色になるのか。お前らのセンスに合わせて、この姿を超サイヤ人ロゼと呼ぶことにしよう」

 

 ゴジットでも勝てないということは、つまりは何があっても悟空達では勝てないことを意味している。折れかける心を辛うじて支えている中で薄紅色に染まったブラックが機嫌良く話してくる。

 

「さあ、今度こそ本気で、ブルーとなって俺と闘おうではないか」

「ブルー? 超サイヤ人ゴッド? なんのことだ」

「なに?」

 

 互いに既知と思っていたことを分かっていない様子の悟空に、そこでブラックは自分の勘違いに気付いた。

 

「成程、妙に俺の知る孫悟空にしては弱いと思ったが、ここは未だブルーになっていない世界線なのか」

 

 分からない。悟空にはブラックが何を言っているのかが全く分からない。

 

「所詮は人間。ゴッドを我が物としたあの世界線の孫悟空が特別だったということかもしれんな」

 

 徐に超サイヤ人ロゼを解いたブラックがクルリと悟空に背中を向けた。

 

「ブルーに成れない弱い孫悟空になど興味はない」

 

 そして完全に悟空に興味を失くしたブラックは、トランクスが乗って来たタイムマシンに向かって気弾を放って完全に破壊してから自ら空間の歪みに飛び込み、この世界から消えた。

 

「見逃された、いや」

 

 ブラックにとって悟空は殺す価値すらもないと、放っておいても害はないと見限られたのだ。

 

「ちくしょう……」

 

 弱過ぎて敵としてすら見られなかったという事実に、悟空は今までにない屈辱を覚えて血が出るほど拳を握った。

 

「一足遅かったようだね」

「だ、誰……っ!?」

 

 その最中、悟空は真後ろから聞こえて来た声に驚き、目を剥いて飛び退いた。

 幾らブラックがいなくなってそこまで気を張っていなかったとはいえ、背後に立たれて気づかぬほど悟空が耄碌していたはずがない。

 

「き、気が感じられねぇ……っ!?」

 

 即座に気を感じ取って相手の戦闘力を計ろうとして出来なかった悟空の驚きを黙殺した紫肌の猫男は、その場にいる全員を見渡す。

 

「僕は破壊神ビルス。君達を破壊しに来たよ」

 

 後ろに青肌に逆立った白髪が特徴の気が感じ取れない男を従えた破壊神ビルスは、未来トランクスを見据えて獰猛な笑みを浮かべるのだった。

 

 

 




 ゴクウブラックの正体に大分近づいた回でした。
 体は孫悟空の物でありターレスではない。つまりは悟空の体の中身が違うという結論はあっさりと出ました。

 アニメ・漫画版の超ほどには強くないゴクウブラック。しかし、本作悟空は未だにビルス様に出会っておらず、完全なゴッドを知らないのでゴクウブラックを更に下回るの回でした。
 なのに、不完全ゴッドの一撃を受けてゴクウブラックはロゼに覚醒。着実に強くなっています。

 本作においては、悟空の体でもキビトと同じ復活パワーを使えるとします。ただし、無理に使っているので気をゴッソリと消費する。

 悟空の完全敗北!

 この未来トランクスは本作世界線の来たことのあるトランクスですが、ゴクウブラックの中身はブルーに成れる悟空を見たことがある世界線出身の所為で勘違いをしていました。
 勘違いに気付いたらブルーに成れない悟空は殺す価値すらも無いとゴクウブラックは見限りました(これも一種の舐めプなのだろうか)。
 そのことに悟空は超ショック!! しかし、超サイヤ人ゴッドの存在とブルーのことを知りました。

 遂に現れたビルス様。
 破壊案件である未来トランクスはいるし、悟空と親しくも無いので慈悲はない。

次回、『第二十五話 頑張れ、神龍』

 このタイトルから漂って来るビルスによる神龍への無茶振りが目に浮かぶようだ(敬礼)。


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第二十五話 頑張れ、神龍


現在、悟空の超サイヤ人3の力を感じ取った悟飯と悟天が西の都へ向かっています。




 

「――――問答無用に破壊と言いたいところなんだけど、君達には幾つか聞きたいことがある」

 

 強いのか弱いのかも分からないビルスと名乗った破壊神は未来トランクスから視線を外す。

 

「おや、君は……」

 

 改めてその場にいる面々を見て、その中に嘗て見たことのある人物の相似形に気付いて笑みを浮かべた。

 

「ベジータ王子か、父親そっくりだね。すっかり大人になったじゃないか」

「び、ビルス……っ!?」

 

 視線を向けられたベジータは、今まで奥底に押し込まれていて忘れていた誰にも決して頭を下げない父であるベジータ王を足蹴にしていたビルスを見た記憶を想起する。

 

「前に会ったまだ小さな子供の時と比べて、随分と失礼になったね。僕を呼び捨てに出来るほど偉くなったんだ」

「っ!? 失礼しました!ビルス、様……」

 

 気は感じられないのに圧倒的なプレッシャーを向けられたベジータは恐怖で震え、言い方を直すとビルスは二度目はないと目で語りながら尊大に許した。

 

「ビルス様」

「分かってるよ、ウイス」

 

 ウイスと呼ばれた男は珍しくビルスが職務に忠実になっていることに内心で驚きながらも表面に出さない。

 

「順番に用件を片付けていくとしよう」

 

 そう言って右手を前に出したビルスは一つ目の指を折る。

 

「第一に先程までいた、そうそこのツンツン頭のサイヤ人…………えっと、フリーザを倒したとかいう孫悟空だっけ、に似た男について知っていることを全て話しなさい」

「ゴクウブラックについて、ですか?」

 

 あのベジータが恐縮して敬語まで付けた相手に失礼な態度を取ることは、普段から礼儀正しいトランクスは絶対にないのだがゴクウブラックのことに関してだけは別であったので思わず問い返していた。

 

「そんな名前なの?」

「いえ、一年前に俺の時代に現れたアイツは孫悟空と名乗っていましたが、紛らわしいので僕の母がそう命名したんです」

「僕の時代、ね。ああ、いいよ。続けて」

 

 ゴクウブラックのことに関しては一番関わって来たトランクスが自然とビルスの話の相手を務めることになったが、言った言葉の中に引っ掛かる物がある様子が気になったが先を促された。

 

「突然現れたブラックは正義の為に人間を絶滅させると言っていました。既に幾つかの星やそこの人間を滅ぼして来たとも。俺も一年戦ってきましたが、もう殆ど地球に人間は残っていません。母も殺されて俺は逃げるようにこの時代に。そしてブラックは、俺が通った時空を通り抜けてきてこの世界にやってきました」

 

 言っている内に込み上げる感情を抑えるように拳を強く握ることで紛らわせたトランクスを冷ややかに見るビルスとウイス。

 

「悟空さんと父さんとの会話で、ブラックの体は確かに悟空さんの物でも中身は違うようでした」

「中身が違う?」

「低俗な人間共と一緒にするな、劣等共、人間である貴様らには立ち入ることの出来ない世界に到達した、と言った言葉から元は人間ではないような印象を受けました」

 

 この時代に来てから分かったことも合わせて伝えると、ビルスは思案気に顎を撫でる。

 

「時の指輪に、片方だけのポタラ、そして人間ではないという印象か。そのブラックって奴は、そこの孫悟空にはない力を使ったりはしていないかな?」

 

 言われてトランクスは悟空の全てを知っているわけではないので、当の本人に顔を向けた。

 

「ブラックはどうやったか分かんねぇんだけど、自分で自分を回復させた。オラにはあんな真似は出来ねぇ」

 

 それともう一つと言いながら、今も脳裏にクッキリと刻み込まれている超サイヤ人ロゼが思い出される。

 

「超サイヤ人ロゼってやつになった時に、神が超サイヤ人ゴッドを超えるとかなんとか言ってたけど」

「自分で回復、神が超サイヤ人ゴッドを超えるとか…………ウイス」

「界王神に従事する者には体力や傷を回復させる能力を身に着けることが出来ます。恐らくビルス様の考えている通りだと」

 

 二人の間に何かしらの結論が出たようだが、悟空達は気になって仕方がない。

 

「あのビルス……様。どういうことでしょうか?」

 

 悟空は見知らぬ人に敬称を付けることに一瞬躊躇したが、ベジータが畏まるほどの相手なので敬語で話すことに決めて結論を聞いてみた。

 

「う~ん、まあ、これぐらいなら教えてもいいかな」

 

 話しかけて来た悟空からチラリとトランクスを見て考えたビルスは軽く頷いた。

 

「ここに来るまで君達が戦っているのを見てたんだけど、ブラックが身に着けていたこことここのやつ。知っているかどうかは知らないけど界王神由来ものでね。そして界王神に従事する者は体力や傷を回復させる能力がある。そして君達が聞いた孫悟空の体を使ってはいるが中身は別人だという話。ここまで言えば後は分かるね?」

「ブラックの中身は界王神と関わりのある者……」

 

 左手で右手の人差し指と左耳を指し示したビルスの言葉に悟空達もブラックが身に着けていた指輪と耳飾りを想起し、同じ結論に至るのはそう難しい事ではなかった。

 

「恐らく間違いないだろうね。界王神は十二ある宇宙に無数いるわけだけど、大分搾れたわけだ。とはいえ、他の宇宙に干渉するのはあまりよくないんだよね」

 

 十二の宇宙にいる人間の中から無限とも思える容疑者を一気に目に見える範囲に絞り込めたことはビルスにとっても喜ばしい事だが、第七宇宙の破壊神といえども他の宇宙にも破壊神がいるので越権問題になりかねない。

 時間干渉の問題は全宇宙に関わることなので強権を発動することも出来るが、そのような面倒なことをビルスは嫌う。

 

「取りあえず、今は同じように時間を弄った身近な人物から破壊するとしよう」

 

 面倒臭がったビルスは頭をガシガシと掻いてゴクウブラックの問題をひとまず横に置いておいて、この場にいる人物――――トランクスを破壊すると宣言とした。

 

「な、何を――っ!?」

 

 破壊神が破壊すると宣言したその意味を正確には理解していなくても、ベジータがトランクスを庇うようにビルスとの間に入った。

 その姿を見たウイスがビルスの横に立つ。

 

「過去や未来に行ったり、時間に干渉するのは重い罪になると知っていましたか?」

「い、いえ」

「時間は一定の方向にしか流れないものです。過去で花を一輪抓むだけでも後々の未来で宇宙から一つの星が消える理由にもなりえますから、時間の安易な移動は神々でさえ重く禁じられています。ビルス様に破壊されても文句は言えませんよ」

 

 優しく諭すように言うウイスに、トランクスは自分が未来から来たことによる影響は確かにあったことを覚えていた。

 

(そうだ。悟空さんが心臓病を発病した時期や人造人間の数や中身まで、色んなことが違った)

 

 全てが全てトランクスが時間移動をしたことによる影響というには不確定の要素が多いが、その影響は確かに善負の両面に大きい。

 

「待った待った! トランクスが未来から来て薬を渡してくれたお蔭でオラは死なずに済んだんだ。破壊なんて止めてくれよ」

「つまり、時間移動をしたのは今回が始めてじゃないってわけだね」

 

 ベジータに遅れてトランクスの擁護をした悟空の話を聞いて余計にビルスの破壊意欲が湧いてしまった。

 

「ちょっと待ちなさいよ」

 

 そこへ一応の危機が去ったと見て戻って来たブルマがビルスに物申した。

 

「へぇ、なんだい?」

 

 恐れるでもなく畏まるでもなく、真っ直ぐに見て来るブルマに興味を持ったビルスは問いを許した。

 

「トランクスが未来から来たのは止むに止まれない事情があってのことよ。事情も聞かずに破壊しようなんて神様のやることなの」

「どんな事情があっても許されないことってあるだろ」

「じゃあ、神様が正義の為に人間を滅ぼすってのは許されることってわけ? その神様に追いやられてこの世界に来たトランクスを破壊だなんて、随分と神様って偉いのね」

 

 如何なる理由があろうとも時間移動をした罪を理由としたビルスに対して、ブルマは先のブラックの一件を持ち出して反論する。

 ビルスもウイスもブルマが論点を摩り替えようとしていることには気づいているが、ブラックが神の関係者であると言ってしまった手前もあるので反論しにくい。

 

「時間移動が出来ることが問題なんですよ。全く驚きです。人間が作るなんて不可能だと思っていました」

「タイムマシンを作ったのは未来の私だけど今の私じゃないんだから責任を求めないでよ」

「そこまではしませんが、作れる可能性がある以上は自重してほしいところです」

「分かったわ。私はタイムマシンを作らないって約束する。信用できないなら誓約書でも作りましょうか?」

「いいえ、結構です。但し、次はありませんよ」

 

 そう言ってウイスはビルスの後ろに下がった。

 

「おい、ウイス」

「どうやらタイムマシンは破壊されたようですから、こちらとしても早急に彼を破壊しなければならない理由はないじゃないですか」

 

 論破するどころか丸め込まれた様にも見える付き人に顔だけ振り返ったビルス。

 ウイスとしては色んな容疑がかかっているブラックの破壊をこそ優先すべきと考えているので、今この場でトランクスを破壊することに拘っていなかった。

 

「このことが全王様に知られたら全員一蓮托生ですからね、私以外は」

 

 天使であるウイスは全宇宙のトップである全王によって一つの宇宙が消滅させられたとしても、全王の宮殿に戻って新たな神が誕生するまで眠るだけでビルスほど重く捉えてはいなかった。

 タイムマシンがブラックに破壊されて使えない事、作る気は無いと明言したこと、トランクスが時間移動をした理由がブラック(神、もしくは関係者)なので情状酌量の余地を与えたというのが正しい。

 

「お前が良くても僕は認めないぞ。こいつはここで破壊する」

 

 バレたらウイスと違って全王に消滅させられる立場のビルスはそんなことになる前にトランクスを破壊するべきだと考える。

 

「じゃあ、取引しましょうよ」

「取引ぃ?」

 

 ビルスとウイスの間で意見が対立しているのを見たブルマが取引を持ち掛ける。

 

「ブラックの正体を私達が突き止めたらトランクスの破壊を止めてくれないかしら」

 

 ブルマの提案にビルスとウイスは予想をしていなかったのだろう。目を丸くして少しばかり唖然としているようであった。

 

「突き止められてなかったら直ぐに破壊しちゃうよ」

「ええ、構わないわ」

「躊躇がない。面白いね、君。いいよ、もしブラックの正体を突き止めることが出来たら破壊は後回しにしてあげる」

「破壊は止めてくれないの?」

「こればっかりはね。一人の命で第七宇宙の全てが守れるんだ。比べるまでもないだろう」

 

 ビルスが言っているのは間違いではない。

 ブルマだって余計なリスクを取りたくないのはカプセルコーポレーションにいる者として良く理解できる話であったし、取りあえずはブラックの正体さえ突き止められれば後は何とでもなるので頷きを返した。

 

「トランクス…………ああ、ちっさい方のトランクスの方ね。前に集めてくれたアレを持って来て」

「お、おい、ブルマ。トランクスに何を取りに行かせる気だ」

 

 後ろにいた現代トランクスに何事かを頼むブルマに、もしもブラックの正体を突き止められなければ破壊されることを心配したベジータが問い質す。

 

「本当は私の誕生日パーティーまでは秘密にしておきたかったんだけどね」

 

 走って頼まれた物を取りに向かった現代トランクスを見送ったブルマは、我に秘策有りとベジータを見てニヤリと笑った。

 

「ドラゴンボールで神龍を呼び出して聞くのよ。ゴクウブラックの中身は誰なのかって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 西の都は夕方を迎えていたのだが、何故か一気に空が真っ暗になって夜になった。

 大多数の人が違和感を覚えながらも、その直後に閃光が奔って大きな龍が立ち昇ったのだが、誰もがカプセルコーポレーションの新しい開発によるものだろうと勝手に納得してしまったことで大きな騒ぎにはならなかった。

 

『どんな願いも叶えてやろう。さあ、言うがいい』

 

 ドラゴンボールを七つ集めると呼び出せる神龍が姿を現し、カプセルコーポレーションの上空から悟空達を見下ろす。

 神龍は何時ものように呼び出したのが悟空達と知るや、また誰かが死んだか何かを壊したのかと思いながら一人一人の顔を見ていったところで馴染みのない顔が二人いることに気が付いた。

 

『び、ビルス様!?』

 

 破壊神ビルスと天使ウイスを視認した神龍の厳かな声が途端に裏返る。

 

『こ、これはビルス様、初めまして……』

「挨拶はいいよ」

 

 長年に渡ってドラゴンボールを使って来た悟空達ですら見たことのないぐらいの神龍の驚き様と低姿勢振りである。

 ようやくブルマもマズイ相手に啖呵を切ったことを後悔し始めていた。

 

「説明すると長いから簡潔に聞くよ」

 

 一言一句聞き逃しはしないとばかりにビルスの動向に目を光らせていた神龍は嫌な予感に身を震わせた。

 

「さっきまでここにいたゴクウブラックの正体を教えなさい」

 

 既に願いどころか命令形になっていることに気付いた神龍は全能力を使って、そのゴクウブラックの正体を突き止めなければ自分が破壊されると直感したのだった。

 実際はビルスにそんなつもりはないのだが破壊神という名と今までやってきた所業を知っているので、思い込みとは真に恐ろしい物である。

 

 

 




今回はちょっと短め、タイトル詐欺な回でした。

現時点で明かされたゴクウブラックの情報を整理し、その正体に迫る。

未来トランクス、破壊不可避な状況にブルマが神龍頼みを提案。
神龍、とんだとばっちりをくらってしまう。

次回、『第二十六話 行け、未来へ』

君は神龍の冷や汗を見る……。


追記:本作においてのゴッドとブルー、ロゼの強化率について活動報告に上げました


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第二十六話 行くぞ、未来へ


前回の後書きに追記として記した、『ゴッド、ブルーの強化倍率について』が活動報告に上げてありますので一度お読み下さい。

今話の後書きに戦闘力表もあります。

尚、両方とも本作設定ですのであしからず。







 

 

『ゴクウブラックの正体、ですか?』

 

 カプセルコーポレーションの上空で神龍が物凄く困惑している様子が地上にいる悟空達にも伝わって来る。

 

「うん。まあ、頼むよ」

 

 ビルスは笑いもせずに軽く頷いた。

 彼にとっては駄目で元々で、当たったら運が良かったねと僅かに驚く程度にしか神龍に期待していない。

 

『やらせていただきます!!』

 

 仮にも破壊神に頼みごとをされて出来ないとなれば、万が一でも破壊されかねない。

 どんな願いも叶えると豪語しているのだから、これぐらいは出来るだろうとビルスの感情を他者に悟らせない瞳が言っているようで神龍はその能力全てを駆使することを決心する。

 

「こんな神龍は初めてだわ……」

 

 力を溜めるように大きく息を吸っているように見える今までにない神龍の態度に、呆れとこうまでさせるビルスの恐ろしさを遅すぎながらも自覚したブルマが心持ち後ずさった。

 

「馬鹿者」

 

 相手が破壊神とも知らずに啖呵を切ったブルマの態度に少しの尊敬を抱いたベジータだったが、当の本人が既に後悔し始めている姿を見たベジータは溜息を吐いた。

 後悔するならば始めから無謀なことをするなとは、ビルスの前で言えないベジータであった。

 

『ハァアアアアアアアアアアアアアアアッッ――――!!』

 

 神龍が赤い目をガンガンに光らせながらブルマ達には良く分からないが力を行使させているらしく物凄く気合の声を張っている。

 今までのように簡単に願いを叶えることは出来ないらしく、かなりの時間もかかっている。

 

「ねぇ、まだ?」

「頑張っておられるようですから、もう少し待ってあげてもよろしいのでは?」

「待たされるのって退屈。しかも眩しいし」

 

 ビルスが待ちくたびれていて、力を発揮する為にどうしても光ってしまう神龍の目が眩しい様子。

 

『ホワァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――――――ッッ!!』

 

 傍若無人の気があるベジータですらちょっと哀れに思える神龍は急ぎつつも光を発する目を閉じるという状況に追いやられ、かなりの負担を負っているのか気合の声が奇声にしか聞こえない。

 

「これが神龍……」

「いや、普段はもう少し普通なんだぞ」

 

 一度しか神龍を見たことが無い上に半分の間は死んでいたトランクスは今が通常状態だと思ってしまったようで、それはあまりにも哀れだと悟空が即座に訂正を入れる。

 

『グッ……ハァッ! ハァッ! ハァッ! ハァッ! ハァ……………………ゴクウブラックの正体が、分かりました』

 

 ゴクウブラックの正体を見事に突き止めたらしい神龍は大きく息を乱しながら、ようやく光が収まった目を開く。

 

「ん」

 

 分かったのならば早く言えと、待ちくたびれていたビルスは態度で先を促す。

 

『ゴクウブラックの正体は、第10宇宙のザマスです』

「ザマス、聞いたことがあるね。誰だったか……」

「卓越した戦闘能力を見込まれ、界王神見習いとして界王神ゴワス様の元で修行を積んでいる方ですよ」

「ああ、将来有望だとかで界王から抜擢された奴か」

 

 ビルスが覚えのある名前に記憶に首を捻っているとウイスの捕捉でようやく該当する人物に思い当たる。

 

「しかし、界王や界王神見習いに他者を体を入れ替える能力にあったかな?」

 

 そんな能力を持つ者は広い宇宙の中で多少なりともいるが、少なくともビルスの知る限りでは界王や界王神見習いにそのような能力はない。

 

『ザマスは、龍神ザラマによって造り出された超ドラゴンボールとも呼べる願い球によって孫悟空と体を入れ替えた』

「願い球を使って体を入れ替えたのなら理屈は通るが」

 

 理屈は通っても仮にも界王神見習いにまで抜擢された者が一人間と体を入れ替える理由が分からないビルスにとっては腑に落ちない。

 

「界王神見習いにまでなった者が、どうしてこの程度の男と体を入れ替える必要があったのかだけど」

 

 少なくともビルスの目から見て孫悟空という男の強さは鍛える余地はまだまだあっても、現在の力を見るにそこまでする必要性があるとは思えなかった。

 

『こことは違う世界において、ここの孫悟空よりも遥かに強くなった孫悟空に敗れたザマスはその力に興味を持ち、賢者ズノーの知恵を借りて行動に移しています』

「何らかの理由で分岐した平行世界の一つで馬鹿なことを仕出かした奴もいたもんだね」

 

 この世界ではともかく、ブラックの中身であるザマスの世界では悟空が強くなり過ぎたことが事の発端とでもいうのか。

 負けたからといって人間に興味を持って体を奪うなどという悪趣味な行為に手を染めたザマスに呆れるビルス。

 

「時の指輪やポタラを持っていたということは、師であるゴワスを殺したのかな?」

『はい。そしてその後、未来へと渡って全ての宇宙の界王神を殺しています』

「ああ、だからその坊主の世界では僕が現れなかったわけだ」

 

 ビルスの対である界王神は魔人ブウ復活を目論むバビディやダーブラに殺されているのでザマスが殺したわけではないのだが、口を挟む雰囲気ではなかったのでトランクスは何も言わなかった。

 

「ウイス、第10宇宙の界王神界に行くぞ。この世界でもブラックになるかどうかはともかく見極める必要がありそうだ」

「破壊してしまいますと、時の指輪が生まれて新しい世界が出来てしまう可能性がありますが?」

 

 世界が分岐していく毎に時の指輪が生み出される。

 既に悟空の体を奪ってゴクウブラックとなったザマスがいる以上、この世界線のザマスを破壊すれば新たな分岐が生まれてしまうので、破壊神とはいえ神が世界を分岐させるのは決して褒められた行為ではない。

 

「違う宇宙のことだが身内の恥だ。自分の尻ぐらい拭けなくてどうする」

 

 見習いとはいえザマスは界王『神』である。破壊『神』であるビルスには同じ区分にいる以上、始末をつける義務が生じると彼は考えた。

 

「本音は?」

「よくも僕を殺してくれやがったなあん畜生め目に物を見せてやる!!」

 

 ウイスの問いに思わず本音をぶちまけてしまったビルスは周りから向けられる白い目に気付いて口を押えてそっぽを向く。

 

「さっさと行くぞ。逃げられた厄介だ」

「おや、彼のことは良いのですか?」

「後回しだ」

 

 そう言ってトランクスからブルマに視線を移したビルスはウイスの肩に手を置いて消え去った。

 

「助かったんでしょうか?」

 

 嵐のように場を掻きまわして去って行ったビルスに、後回しにされたトランクスは実感が湧いていないようだった。

 

「仮にも神様なんだから約束は守ってくれるってことじゃないの?」

「おい、ブルマ。お前はさっきから」

『あ、あの、もういいか?』

 

 ビルスに対するブルマの態度にハラハラしていたベジータが緊張から解き放たれて物申そうとしていたところに、疲労で弱った様子の神龍が力なく言った。

 

「え? まだ一つしか願いを叶えてないじゃない」

『ゴクウブラックの力は神を超えている。その正体を突き止めるのに疲れて疲れて』

 

 後二つは願いを叶えられるはずだというブルマに、神龍は己の力以上に頑張った所為でもう半ばから透け始めている。

 

「なあ、神龍。後一つだけ願いを叶えてもらってもいいか?」

 

 ブルマも流石に神龍が哀れに思えてこのまま消えさせるのがいいかなと思っていたのだが、ビルスが現れてからずっと何かを考えていた様子の悟空が訊ねた。

 

『あまり力を使わないものなら叶えよう。消える前に手早く頼む』

 

 真剣な様子の悟空に透け始めた体をなんとか引き止めながら神龍は威厳を持ちつつ、実は情けないことを言いながら請け負った。

 

「分かった。えと、だな、超サイヤ人ゴッドってやつと、ブルーってやつの成り方を教えてくれ」

 

 少し迷いつつ、悟空は願いを口にする。

 

「おい、カカロット。それは」

「ブラックが言っていたやつですよね」

 

 ベジータが目を剥き、トランクスも悟空の願いに強い興味を示した。

 

『容易い事だ』

 

 悟空の願いに露骨にホッとした様子の神龍が安堵の息をつく。

 

『…………超サイヤ人ゴッドとは、その昔に悪逆の限りを尽くしたサイヤ人に疑問を感じて反乱を起こした一握りの正しいサイヤ人達が偶然作り出したサイヤ人の神だ』

 

 知っている知識だったようで神龍は悠然と話し始めた。

 

『超サイヤ人ゴッドは凄まじい力で悪のサイヤ人を蹴散らしたが後少しというところで戻ってしまい力尽きたようだ』

「時間制限付きか。超サイヤ人3みたいに燃費が悪いんかな」

「ブラックの言葉からして少なくともパワーに関しては隔絶しているのは間違いないだろう」

 

 神龍の話を聞いて超サイヤ人ゴッドについての推測を立てる悟空とベジータ。

 

『ゴッドの作り方は、正しい心を持ったサイヤ人が6人集まり、そのうち5人が自らのエネルギーを1人のサイヤ人に注ぎ込む事でその1人のサイヤ人が覚醒可能となる。ブルーとは、ゴッドの力を取り込んだサイヤ人が超サイヤ人になった際のオーラが水色に変化したことでそう名付けられた』

 

 ゴクウブラックの正体を突き止める過程で、悟空が超サイヤ人ゴッドになったことや超サイヤ人ゴッド超サイヤ人(超サイヤ人ブルー)に至ったことを知れたので神龍の負担は少ない。

 

『願いは叶えてやった。では、さらばだ…………ああ、疲れた』

 

 最後に大きく溜息を吐いて消えた神龍の姿には中間管理職の悲哀を物凄く感じさせ、その場にいる面々に複雑な心境を抱かせてドラゴンボールが散って行く。

 

「正しいサイヤ人か」

 

 ドラゴンボールが散って夕闇に戻った空を見上げながら悟空は考える。

 

「丁度、人数は揃ってるから良かったじゃない。孫君とベジータ、トランクスに私の息子のトランクス、悟飯君に悟天君。ほら、六人ピッタリ」

「俺が正しいサイヤ人だと言うつもりか、ブルマ」

「ナメック星のドラゴンボールで悪人認定されてないんだから大丈夫よ」

 

 ブルマが指折り数えた中に自分も入っていることにベジータが今までの悪行を思い起こしていたが、ブウによって破壊された地球を蘇らせる際に悪人認定を受けずに生き返ることを引き合いに出されて黙った。

 良い人扱いされると複雑な心境のベジータなのであった。

 

「お父さん!」

 

 そこへタイミング良く悟飯と悟天もやってきた。

 気のオーラを解いて地上に降りて来た悟飯と悟天は、特に悟空が戦闘モードになっているわけでもないので首を捻ったが、悟飯は見覚えのある人物に目を丸くした。

 

「お久しぶりです、悟飯さん」

「トランクスさんじゃないですか!? もしかしてまた未来で何かあったんですか?」

「ええ、まあ」

 

 セル戦後に一度来たきりで二度と会うことはないと思っていて驚いた悟飯に理由を言い当てられた未来トランクスの顔は渋い。

 

「悟飯、悟天も協力してくれ」

「メインは俺だぞ、カカロット。でなければ協力せん」

 

 手短にゴクウブラックのことを説明し、先程の神龍の言ったように試してみようと提案した悟空に、まずゴッドに成るのは自分だと譲らないベジータ。

 

「分かったって。みんな超サイヤ人になってベジータに気を送るんだ」

「手を繋いだ方がいいんですかね」

「僕、まだ良く分かってないんですけど」

「俺も」

「僕も何がなんだか」

 

 始めてする試みなので悟空達にもやり方が良く分からない。

 一人に気を送り込むとなれば手を繋いだ方がやりやすいだろうと提案した未来トランクスと違って、事情を把握しきれていない悟飯達は困惑している。

 

「早くしろ!」

 

 今まで新しい境地には悟空や悟飯ばかりが先に至っている中で、遂に自分がという思いが先に立ったベジータが苛立たし気に叫ぶとパッと動き出す。

 

「――――――」

 

 変身途中で周りに被害が及ぶ可能性もあるので上空でゴッド化する為に浮かんだ悟空達。

 ブルマが見上げる中で、超サイヤ人になった6人が手を繋いで円になっているという実に奇妙な光景に変化が訪れた。

 

「……なんだ?」

 

 最初に悟空から沸き起こった超サイヤ人の黄金のオーラとは違う紅いオーラが両隣にいた悟飯と悟天に伝播して両トランクスにも波及して、最後はメインであるベジータに集まって行く。

 

「パパ」

「しっ、待つんだ」

 

 ベジータと手を繋いでいた両トランクスの手が外れ、心配した現代トランクスを未来トランクスが制止している中で変化は如実に表れた。

 赤い光に包まれたベジータは地上に降りて、やがて光は雪が解けるように消えて行った。

 

「あれが超サイヤ人ゴッド……」

「こんなに近くにいるのにベジータさんの気が感じられない。戦闘力が分からないなんて」

 

 赤髪になり、少し細身になったベジータの姿に、地上に降りて来た全員が驚きながらも悟空だけは得心が言ったような表情を浮かべている。

 

「流石はサイヤ人の神ということだけはある。体の奥底から無限に力が湧いてくるようだ」

 

 ゴッドになった力を最も感じているベジータは明らかに次元違いの変身に酔いながら笑みを浮かべていた。

 

「俺は貴様を超えたぞ、カカ」

 

 ロット、と悟空のサイヤ人の名前を言いかけたベジータが顔がある方向を見てピシリと固まった。

 途中からベジータを見ていた悟飯達も悟空に目を移しており、同じように目を見開いたり口を開けたり、程度の差はあれど驚ていることには変わりない。

 

「どうしてお父さんが超サイヤ人ゴッドになってるんですか?」

 

 悟飯が見つめる先、ベジータが顔を向けた所にいる悟空が赤い気を纏って立っており、ゴッドになっているのだから驚かない方がおかしい。

 

「――――ふぅ、短時間だけどな」

 

 十数秒の間、ゴッドの状態を維持した悟空から赤いオーラが消えて通常の状態に戻る。

 

「わぁっ、お父さんは自分でゴッドになれるんだ」

 

 五人の協力でゴッドになったベジータと比べれば、独力で辿り着いた悟空の方が凄いのだと悟天が尊敬の眼差しを向ける。

 

「オラだって自分だけで成れたわけじゃねぇさ。ブウとの戦いの時に元気玉を作っただろ。その時に今と似た条件で短時間だけ不完全なゴッドに成れたんだ」

 

 見上げて来る悟天の頭の撫でながら悟空は最初にゴッドの境地に辿り着いたブウとの戦いを思い出す。

 

「練習して最近になってようやく一瞬だけまた成れるようになってたけど、時間が伸びたのは本物のゴッドを見れたお蔭だな」

 

 不完全な状態しか知らない中で超サイヤ人ゴッドの完成形を見れば、自らのゴッドの完成度を高めることが出来る。意識の変化だけで持続時間を伸ばせたのならば、しっかりと修行すれば遠くない内に完成させることもできるだろう。

 便宜上、超サイヤ人3の先である超サイヤ人4と内心で命名していたのは悟空だけの秘密である。

 

「二人がゴッドになれたのは喜ばしい事ですけど、タイムマシンが無ければ未来には」

 

 ゴクウブラックによってトランクスが乗って来たタイムマシンは完全に破壊されてしまっている。

 例え悟空とベジータがゴッドに成れたとしても、未来にいるゴクウブラックの下へ向かう術がない。

 

「ふふん、何時かはこのセリフを言ってみたかったのよね。そう、こんなこともあろうかと!!」

 

 消沈する未来トランクスに、どこかの博士のように笑ったブルマが胸を張る。

 

「タイムマシンは、もう一台あるんだもんね、ブイ」

「え? どうして……」

「あ、あぁっ!? セルが乗ってきたタイムマシン!!」

 

 人造人間の事件の時、別の世界線の未来から来たセルが乗って来たタイムマシンが発見されている。

 トランクスは直ぐに思い至らなかったが、あの時に同じ場にいた悟飯が答えに辿り着いた。

 

「トランクスが未来に帰る日に預かってたのよ。解析作業に入っても全然仕組みも分からなくてお手上げだったけど、最近になってまた再開してたところなわけ」

 

 これで未来に行く方法は見つかったわけだが問題がないわけではない。

 

「でも、タイムマシンは作らないってビルス様に約束したんじゃ」

「作らないわよ。修理するだけだもの」

 

 言葉遊びにも聞こえるがブルマは何も嘘は言っていないので、本当に大丈夫かなと思うトランクスだった。

 

「修理するだけと言うが、ビルス様がブラックの元であるザマスを破壊して戻ってくる前に終わるのか?」

「うっ!? それはちょっと無理があるかな、なんて」

「おい」

「だってしょうがないじゃない! 未来の私って天才過ぎるのよ。まだ時間の仕組みだって分からないのに直ぐには出来ないわ」

 

 もう一つの問題に気づいたベジータにブルマが逆ギレする。

 正体が分かっているのだからビルスがザマスを破壊するまでにそう時間はかからないだろう。

 これからタイムマシンの解析を行って修理するとなれば年単位の時間がかかる。どう考えたって間に合うはずがない。

 

「あ、それなら未来の母さんから預かったノートがあります」

「え、そんなのがあるの?」

「元々、この時代に来る分しかエネルギーを集められなかったので、俺が帰る為にはこの時代でエネルギーを集める必要がありましたから、この時代の母さんの協力が必要になるだろうと用意してくれていたんです」

 

 そう言ってトランクスはジャケットの胸ポケットから小さなノートを取り出してブルマに差し出す。

 

「私の字だわ。流石は未来の私、抜け目ないわね」

 

 時間を超える為の理論や数式が書かれているノートを受け取ったブルマはパラパラとページを捲ると、自画自賛になりそうなことを言いながらも感心している。

 

「うん、エネルギーはうちで開発中のものね。パパと協力しながら修理してとなると、丸一日はかかるわ」

「ということは、一日の間にどれだけゴッドを自分の力に出来るかが大事になる」

 

 今のゴッドも時間制限があるわけだが、消えるまでの間に如何に自分の力として取り込めるかが重要になってくるとベジータは反芻する。

 

「じゃあ、みんなでゴッドになってブラックって奴を倒しに行こうよ」

「そう上手くは行かないわ。一日だとエネルギーは行って帰って来る分が精一杯。タイムマシンに乗れるのも大人三人が限度よ」

「トランクスさんは外せないとして、残るは二人になりますね」

 

 悟天の提案にブルマは首を横に振った。

 未来に行くのにトランクスは当然として、定員が残り二人となれば後は簡単な帰結である。

 

「オラとベジータ、トランクスの三人で決まりってことだな」

 

 未来に留まるトランクス、そして残り二人となればゴッドに成っているベジータと不完全ゴッドの悟空に決まっている。

 

「俺もゴッドにして下さい。あの時代は俺の世界なんです。自分の手で平和を取り戻したい」

「ふん、足を引っ張るんじゃないぞ。ゴッドになったら重力室で性根を叩き直してやる」

「はいっ!」

 

 現代トランクスがベジータに訓練を付けてもらえる未来トランクスに少し嫉妬眼差しを向けている。

 大人に成ったようでまだまだ子供な現代トランクスに微笑ましさを悟空が覚えていると、悟飯が「お父さんはどうするんですか」と聞いてきた。

 

「オラか?」

「ええ、修行するなら微力ながら僕もお手伝いしますけど」

「僕も!」

 

 悟空がすべきことはゴッドの完成とその先のブルーへと至ることである。

 ベジータではないが虚仮にされた借りを返さなければ悟空も腹の虫が収まらない。

 

「有難ぇがオラは一人で大丈夫だ」

 

 修行するならば誰かがいた方がいいと練習相手を申し出てくれる悟飯と悟天の申し出が有難いと思いながら断り、空の彼方を見上げた。

 

「もう一度、入らなきゃなんねぇみてぇだな――――精神と時の部屋に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴクウブラック、破壊神ビルスと付き人ウイスの襲来から丸一日後、カプセルコーポレーションから一台のタイムマシンが消え去った。

 

 

 




 神龍、必死の努力の既にゴクウブラックの正体を細かいところまで突き止めるの回。
 ビルス様はブルマとの約束を守り、トランクスよりもゴクウブラックの正体の方を先に破壊しに行きました。

 そして悟空が疲れている神龍にゴッド化とブルー化の成り方を聞く。
 このゴッド化の為に未来よりやって来たと言っても過言ではない未来トランクス。その煽りをくらって見切られる悟空。どっちがシナリオの犠牲になっているのか。

 今度こそは自分がというベジータがメインになってゴッドになるが、完成形を見た悟空も完全ゴッド一歩手前になってて唖然。

 やはり使われたセルのタイムマシン。説明書は事前にトランクスが持っていた(理由はタイムマシンが修復不可能になってもトランクスさえ無事なら、もう一つのタイムマシンがあると聞いていたから。予備をブラックに壊されたタイムマシンにも置いていた)

 タイムマシンの修理とエネルギーの補充に一日。ビルスが帰って来ないことに希望を持ちつつ、トランクスもゴッド化してベジータは重力室でシゴく模様。
 そして悟空は精神と時の部屋に入る。
 ブウ戦で精神と時の部屋の空間から超パワーがあれば脱出できることを知らないので、まだ一日使える悟空が占有。

 尚、未来へ行く直前の戦闘力は以下の通り。
ゴクウブラック編開始時点
悟空(18)
ベジータ(12)
トランクス(20)

 悟空 18*50=900*2=1800*4=7200 不完全ゴッド 7200*1.5=10800 一年間の修行+ブルー 50*3800=190000(19万)
 ベジータ 12*50=600 600*2=1200 ゴッド 25*3600=90000
 トランクス 20*50=1000*2=2000 超2フルパワー4倍 2000*4=8000 ゴッド 25*3200=90000
 ブラック 100*50=10000 5000*2=10000 復活パワー行使後のロゼ  125*4000=500000(50万)

ちなみに

 ビルス 200万
 ウイス 300万

フュージョンする際は、低い方に合わせますのでベジータ、もしくはトランクスの25が基準になります。




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ザマス編
第二十七話 未来決戦・序


ちょっと遅れました。


ブルマの声優さんのご冥福をお祈りします。





 

 修理したセルのタイムマシンで悟空達は未来にやってきた。

 タイムマシンで時間を超えても場所を移動するわけではない。とはいえ、時代が変われば建物も変わる。最悪、空間が重なった場所に建っていた建物と同化してしまうのというのもありえる。トランクスが何時もタイムマシンを上空に浮かばせてから時間移動を行うのは、同化を回避する為もでもある。

 

「ここは……?」

 

 カプセルコーポレーションの上空で時間を移動しても、場所自体は変わらない。にも拘らず、悟空が地上に降りたタイムマシンから下りた時、そこが同じカプセルコーポレーションがあった場所とは思えない荒廃振りだった。

 

「嘗て西の都と呼ばれた場所、です。今はもう殆ど人はいません」

 

 タイムマシンをカプセルに戻したトランクスの横で辺りを見渡したベジータの視界に映るのは、見渡す限りの瓦礫と建物の残骸ばかり。

 こうなって一日二日という様子ではないのは、嘗てフリーザの部下としてあちこちの星を地上げする為に破壊していたベジータだからこそ良く分かった。

 

「誰もこんな瓦礫だらけの場所に住もうとはせんだろう」

 

 更地にするのではなく、中途半端に残すことで生きている人間の心を挫く。

 四大都市の一つである西の都はあまりにも広大である。その全てが瓦礫の山となっているのであれば、撤去するのには一年や二年では終わらないだろう。

 世界中が似たようなことになっているのなら、仮にゴクウブラックがいなくなったとしても西の都が復興するには十年、二十年かかっても終わるかどうか。

 

「…………これから、どうしますか? 一応、気は消していますけど」

 

 目の前の脅威であるゴクウブラックを倒さない事には何も始まらない。

 ビルスが戻ってくる前に出発することを優先した為、対ブラックの作戦は何も決まっていないに等しい。

 今更ながらの確認をするトランクスにベジータが鼻を鳴らした。

 

「気を隠す必要などない。ブラックだかザマスだか知らんが、カカロットと同じ顔なら俺が倒す」

 

 用心している悟空とトランクスはタイムマシンに乗る前から気を消して備えていたが、ゴッドの底知れぬ力を体感したベジータはそんな必要はないと平常モードである。

 

「おい、ベジータ。呼び寄せるにしてもどこに人がいるかも分からない場所じゃなくて、荒野とかにした方がいいんじゃないか」

「こんな所に誰もいるはずがないだろ。どうせ見つかり難い山とかに隠れているに決まっている」

「こういう街の中の方が無傷の缶詰とかもある可能性がありますから、絶対にいないなんて保証はないですよ」

 

 悟空の提案にベジータは自らの経験を下にしながらも、些か適当する考えにも思えてトランクスが眉尻を上げた。

 

「俺がブラックを倒すのだ。いる方が悪い」

「ん? ベジータ、もしかしてフュージョンをしない気か」

 

 傍若無人でベジータらしい意見だが、その言葉から一人で闘おうとしているのを察した悟空が流石に看過できぬと目付きも鋭く問いかける。

 

「必要ない。ゴッドの力を以てすればブラックなど恐れるに足らん」

 

 悟空を睨み返したベジータは自信満々に腕を組んで、更にはゴッドに成って威嚇してくる。

 

「悟空さん」

 

 トランクスに声をかけられて、ベジータに釣られてヒートアップしそうだった悟空は頭を冷やそうと一つ息を吐いた。

 

「ベジータ、ブラックを舐めるな。最後のロゼを見ただろ。ゴッドになったって勝てる保証なんてねぇ。確実に倒す為にフュージョンをすべきだ」

「…………貴様と合体するぐらいなら死んだ方がマシだ。あれは死んでいたあの時限りだということを知れ。ブラック程度の相手など俺一人で十分!」

 

 努めて冷静に説得しようした悟空に殺気交じりの目で睨み付けたベジータは比較的原型を留めていたビルの天井へと飛び上がって行った。

 

「ベジータのプライドを傷つけちまったかな」

 

 ブウ戦でベジータがフュージョンを了承したのは、自分の自爆で計らずともブウがブロリーを吸収して更に強くなったこと、死んだ後に占いババの力で一日だけ現世に戻って来た状態だったこと、ブルマとトランクスと再会した直後で自分では絶対に勝てないブウが現れた切迫した事態であったこと。

 様々な複合的な要素が絡み合ったことでベジータがプライド云々を持ち出す暇もなかったことが大きい。

 一日の時間があったこと、悟空が独力でゴッドに辿り着いたこと、悟空の顔をしたブラックが自分よりも遥かに強いこと等々、これまた複合的な要素が絡み合ってベジータを追い込んでいたのだ。

 

「悪いな、トランクス」

「いいえ、父さんがああいう人だというのは良く分かってますから。こちらこそ父がすみません」

 

 ベジータの誇り高さが悪い方向に進んだ場合のことをセルとの戦いで良く見知っているトランクスだからこそ、言葉で止められるような人ではないので悟空を責めるようなことはしなかった。

 

「俺達は気を消していますから、父さんの気を察知してやってきたブラックを狙う作戦で行きましょう。三人でかかれば戦いの場所を変えるのも難しくはないはずです」

 

 トランクスは何時も自分には背中を向けて立つゴッドになったベジータを見上げる。

 

「大人に成ったな」

「俺も直に三十になるんです。何時までも子供ではいられませんよ」

「そうか」

 

 頼もしいやら、子供に追い抜かれて寂しいような複雑な心境の悟空である。

 

「悟空さんはゴッドでブラックのロゼに勝てると思いますか?」

「…………難しいだろうな。ゴッドに成った状態で闘ったわけじゃねぇからハッキリとしたことは言えねぇけど、多分勝てない」

 

 不完全とはいえゴッドに成れた悟空の一撃では倒しきれなかったのは判断材料にはならない。

 今までの経験から考えて、ゴッドの先に至った悟空でさえ厳しいものがあるだろう。ベジータが節を曲げてフュージョンしてくれれば十分に勝てると思うのだが、あの様子では難しい。

 

「ところで、さっきから言っていたフュージョンというのは?」

 

 悟空とベジータは知っている前提で話していたが、トランクスはフュージョンなるものが何なのか全く聞いていない。

 

「ベジータの奴、教えてなかったのか…………フュージョンっていうのは、セルとの戦いで死んだオラがあの世でメタモル星人と仲良くなって教えてもらった技で」

 

 気を探って辺りの警戒を続けながら話をしていた悟空の第六感とでも呼ぶべきものに引っ掛かるものがあった。

 

「これは瞬間移動の――――ベジータ!!」

 

 瞬間移動の遣い手だけが感じ取れる微妙な感覚。

 違和感は離れた場所から感じられて、ベジータの直ぐ背後からだと気づいて叫ぶが時既に遅し。

 

「ぐっ!?」

 

 瞬間移動を感じ取れなかったベジータだが戦士としての勘か、悟空の声が放たれる前に防御にエネルギーを全振りしたのは流石と言えるが踏ん張りまでは利かなかった。

 

「父さん!?」

 

 ビルの屋上から蹴り飛ばされて何かの建物の残骸に突っ込んだ。

 

「馬鹿め、あれだけ気を発しておいて狙われないと思ったか」

 

 瞬間移動で現れた超サイヤ人ロゼになっているゴクウブラックが蹴り飛ばしたベジータを嘲笑う。

 

「まさか正面から現れて馬鹿正直に決闘を行うとでも考えているのならスポーツでもやるんだな」

 

 戦いの場において奇襲は立派な戦術、勝てば官軍なのである。

 まさか瞬間移動で奇襲を仕掛けて来るとは悟空達も予想していていなかったが、命のかかった戦いで卑怯だと批難したところで意味などない。

 

「くそったれがっ!!」

 

 自分で作り出した瓦礫の塊を盛大に吹っ飛ばしたベジータが苛立ち気にゴクウブラックを睨み付ける。

 

「時の指輪を使ったようには見えん。タイムマシンをもう一台用意していたか。抜け目のない奴め」

 

 ベジータに毛先程の興味も抱いていないゴクウブラックは、敵の出現に寧ろ喜んでいる様子で屋上の端に右足を乗せて悟空を見下ろして笑う。

 

「超ドラゴンボールで人の体を勝手に奪ったやつに言われたくないぞ」

「そうだ、ザマス! 界王神見習いにまでなった奴がなんでこんなことをするんだ!」

「…………ほう、どうやったか知らぬが俺の正体にまで辿り着いたか。褒めてやる」

 

 真名の言い当てられても焦った素振り一つ見せず、鷹揚に頷いたゴクウブラックは決して悟空が浮かべない歪んだ笑みを浮かべた。

 

「では、俺の目的を今更語る必要はあるまい。我が人間0計画の為に死ねよ、サイヤ人」

「ブラック、どこを見て話しをしていやがる! 貴様の相手はこの俺、ベジータゴッドだ!」

 

 悟空達は神龍に正体を聞いても目的を知らないままだったが、知る気も無かったベジータは自分を見ようともしないゴクウブラックに激発する。

 

「はっ、先の一撃を防ぐのに大半のエネルギーを使って良くほざく。分からんのか、ベジータ。お前の出番はもう終わったのだ。引き際を弁えるんだな、前座」

「貴様っ!!」

 

 気炎を吐いたベジータは先よりも明らかに衰えたゴッドのオーラを指摘され、怒りを抱くが二の口を告げなかった。

 

「ゴッドに至ったようだがそれまでと見える。いいぞ、三人でかかって来るがいい。俺の糧となれ」

「ブラックっ!!」

 

 三人がかりで丁度良いと言っているようなブラックに舐められていると感じたベジータだが行動に移すことはなかった。

 

「どうした掛かって来ないのか、ベジータ?」

 

 挑発に乗らなかったベジータを揶揄するゴクウブラック。

 ベジータにも分かっているのだ。こうしてその姿を間近で見たゴクウブラックの超サイヤ人ロゼは明らかにベジータの超サイヤ人ゴッドを上回っている。しかも先の奇襲でダメージを受けてしまって力の差は更に広がっている。

 

(勝てん、か)

 

 悟空と一緒に格上ばかりと闘ってきたベジータは、図らずとも見上げる形となった超サイヤ人ロゼのゴクウブラックから感じられる力を前にして口惜しさに身を震わせた。

 嘗てフリーザに挑んだ時ほどの実力差はないかもしれない。しかし、ゴクウブラックの厄介なところは自己回復も出来るところだ。仮に追い詰めることが出来たとしても、回復してパワーアップされては何の意味もないどころか勝率を下げる行為でしかない。

 

「トランクス」

 

 ベジータにとっては死にも勝る屈辱の選択である。それでもあの悟空の体を使っているゴクウブラックは必ず倒さなければならない。

 ゴッドの力を馴染ませる為に重力室での修業でトランクスより聞かされたこの世界のブルマの死とその願い。無為に帰しては過去の自分達に希望を託して死んだこの世界のブルマが浮かばれない。

 

「時間を稼げ!」

「……はい!」

 

 この一度だけ、この戦いの間だけ、この男を倒す為にベジータは再びプライドを捨てることに決めた。

 何をするのかを察したトランクスがゴッドになってゴクウブラックに襲い掛かる。

 

「またお前か、トランクス」

 

 興ざめだとばかりに露骨に溜息を吐いたゴクウブラックはトランクスの拳を容易く受け止める。

 

「ブラック!」

「ゴッドになったところで力の差は変わらん」

 

 ゴッドの炎のようなオーラを迸らせたトランクスの気迫を柳に風と受け流し、掴んだ拳を引いて横っ腹を蹴り飛ばす。

 辛うじて防御したようだが先程のベジータのように吹っ飛んで行く姿を見ることも無く、目的である悟空を見ようとした。

 

「「はっ!」」

 

 取るに足らないトランクスが超サイヤ人ゴッドになったことで試したいという気持ちがゴクウブラックにはあった。復活パワーを使ってのパワーアップとロゼへの覚醒が二重の意味でゴクウブラックに油断を招き、悟空とベジータにフュージョンする時間を与えたのである。

 

「「――――――――一つだけ教えてやろう。貴様を葬るのは、このゴジ―タ・ゴッドだ」」

 

 太陽のプロミネンスのような莫大なオーラが天へと昇って行く。その発生源であるゴジ―タがゴッドの赤髪を靡かせて宣言する。

 

「凄い!? これが父さんと悟空さんが合体した力なのか……」

 

 同じゴッドの位階のはずなのに桁違いパワーに畏敬を抱いたトランクスは勝利を確信した。

 

「メタモル星人のフュージョンか」

 

 ゴジ―タが悟空とベジータのフュージョンした姿だと即座に看破したゴクウブラックに焦りはない。

 

「不遜だぞ、戦闘民族。神の名を冠するなど、百度死んでも償えぬ罪と知れ」

 

 ゴクウブラックは鼻を鳴らして見下し、全身から淡紅色のオーラを更に迸らせる。

 

「ゴッドに成ったところで下等生物に神は超えられんということを教えてやる!」

「「はぁっ!!」」

 

 両者が同時に飛び立ち、ビルの屋上から飛んだゴクウブラックと地上から飛んだゴジ―タが激突する。

 

「ぐっ」

 

 中間地点で激突した内、力負けして弾き飛ばされたのはゴクウブラックの方だった。

 

「「まだまだ!」」

 

 足場にしたビルへと逆戻りするゴクウブラックを追ってゴジ―タが飛翔する。

 

「くっ」

「「瞬間移動に頼ったところで」」

「がっ!?」

「「こっちも使えることを忘れたか」」

 

 ビルを突き抜けて彼我の姿が一瞬とはいえ、見えなくなったことを利用して瞬間移動で退避しようしたゴクウブラックの背後に現れたゴジ―タの回し蹴りが背中を直撃する。

 瞬間移動をする為の集中を乱されたゴクウブラックは、まるでピンボールのように同じルートを逆走する。

 

「「はっ! しぃっ! せいっ!!」」

「ぐふっ!? がっ!? ごぐぅ!?」

 

 ベジータの負傷によって、恐らくは全開時の半分程度の力に留まろうともゴクウブラックを上回っている。ゴッドを安定して使える悟空とベジータの合体だからこそ、超サイヤ人3の時のような合体時間が短くなるようなこともない。それでもゴジ―タに油断はなく慢心もない。

 

「こ、こんなことが……」

「「これで最後だ!」」

 

 瞬間移動をする暇を与えない連撃に瞬く間にズタボロになったゴクウブラックは信じられぬという思いで一杯だったが、ゴジ―タがそのような感傷に浸らせる時間など与えない。

 

「「ビックバン――」」

 

 左手でゴクウブラックを上空へと殴り飛ばしている間に右手は気を溜めており、左手を添えて腰だめに構えた。

 

「「――――かめはめ波!!」」

 

 戦闘不能と呼べるほどのダメージを負っていたゴクウブラックに、ゴジ―タの最強技であるビックバンかめはめ波を受け切ることは出来ず、瞬間移動で逃げる集中力もない。

 迫るビックバンかめはめ波。

 動かない体。

 

「――ふっ」

 

 にも拘らず、ゴクウブラックは笑った。

 

「待たせたな、私」

「遅いぞ、私」

 

 直後、ビックバンかめはめ波は消えた標的を捉えられないまま直進して、成層圏を抜けて宇宙の彼方へと消えて行く。

 

「「誰だ?」」

 

 ゴジ―タは見た。後少しでビックバンかめはめ波がゴクウブラックを呑み込まんとした時、突如として現れた何者かが助け出したところを。

 瞬間移動でビックバンかめはめ波から助け、ゴジ―タから離れたビルの屋上に移動した謎の人物がゴクウブラックの胸の上に手を添える。

 

「危ない所だったな。今治すぞ、はっ!」

「…………助かったぞ。流石に今のは危なかった。しかし、これでまた一歩、究極体に近づくことが出来た」

 

 直後、ゴジ―タから受けたダメージがあるにも関わらず何事もなかったように立ち上がるゴクウブラック。

 

「改めて自己紹介しよう」

 

 ゴクウブラックの横に立つ謎の人物をゴジ―タは勿論、トランクスも知らない。

 

「「我が名はザマス」」

 

 ゴクウブラックと、この世界のザマスが自らの名を告げたのだった。

 

 

 




 安定と安心のベジータの慢心。
 当初は基礎戦闘力25のゴッドの3600倍をかけて90000の戦闘力があったが、ゴクウブラックの奇襲を受けて基礎戦闘力が18にまでダウン。
 フュージョンするには気を合わせなけなければならないので、悟空も18に合わせて合体。
 結果、ゴジ―タ・ゴッドの戦闘力が万全ならば
 25×25/1.5*3600=1500000(150万)が、
 18×18/1.5*3600=777600(77万6千)と、およそ半分にまでダウン。
 それでもゴクウブラックはロゼになると125*4000=500000(50万)なので戦闘は有利に運べていた。

 後少しで倒せたが、この世界のザマスが助け出して復活パワーによって回復。更にパワーアップ。
 基礎戦闘力が125→150にアップし、ゴクウブラック・ロゼの戦闘力は150*4000=60万に到達する。

 パワーアップしてもゴジ―タ・ゴッドの77万6千には勝てないが、ゴクウブラックとザマスがフュージョンのことを知っていたら当然、制限時間のことも知っているはずで……。

次回、『第二十八話 未来決戦・破』

未来のチチは既に死亡しています。しかし、何故死んだのか……


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第二十八話 未来決戦・破



ちょっと感想が減ってきたかなっていう気がする(チラリ)





 

「ザマス?」

 

 ゴクウブラックに並び立つもう一人の人物もまたザマスと名乗ったことに、トランクスは当初困惑したが直ぐにその意味を悟った。

 

「そういうことか! この世界にいたザマスか」

「そうだ、トランクス」

 

 トランクスの言葉を肯定したのはゴクウブラックだった。

 

「俺の正義を成し遂げるには最高の理解者が必要だった。同じ正義を持ち、同じように人間の愚かしさに苦しみ、同じように理想の世界を胸に抱くもの」

「即ち、私だ」

 

 例え肉体が別人の物であろうとも、過去と未来の違いはあれど思想はほぼ同じだった。故に共鳴するのは必然の流れだった。

 

「俺は時の指輪を使ってこの世界にやってきた。お前達が未来と呼ぶこの世界で人間の愚かしさを嘆く日々であった私を仲間とし、人間0計画を始動した」

 

 師である界王神ゴワスを殺したゴクウブラックの計画に賛同したザマスが言葉を引き継ぐ。

 

「手始めに超ドラゴンボールで私を不老不死にし、願いを覆されることのないように超ドラゴンボールを全て破壊した」

「そして俺がこの強靭な肉体を持って全宇宙の全ての神を殺した」

 

 当初は超サイヤ人すら成れなかったゴクウブラックであったから破壊神を相手にはせず、界王神を狙った。

 

「界王神はこの肉体の良いウォーミングアップになったぞ」

 

 界王神と破壊神は運命共同体。界王神が死ねば破壊神も死ぬ。

 

「よって、この世界で絶対的な力を持つのは私達だけだ」

「これは全て我が願い、人間0計画を成し遂げる為」

「人間という害虫が駆逐され、美しく輝く星の未来が私には見える」

「理想郷の完成まで後僅か」

 

 別人であるのに同一人物が続けて話しているような奇妙な感覚に、トランクスは目が眩む思いだったがザマスの身勝手さに怒る。

 

「ふざけるな! お前のエゴの為にどれだけの人が死んだと思ってるんだ! お前達の勝手な価値観で人間を侮辱するな!」

「所詮は人間風情。俺が奏でる言葉の気高さを理解できるはずもないが。俺の志も美しさも、そう、俺という存在の全てが、ただひたすらに孤高……」

「「やはり気持ち悪いな、お前」」

 

 微妙に話が噛み合っていないゴクウブラックの返答に、自分の体でそのような言葉を吐かれたゴジ―タの元の半分である悟空の気持ちがそう言わせていた。

 

「神の言葉を人が理解できないのは当然のこと」

「神はそれほどに美しく、人の理解を超越した存在」

 

 しかし、とゴクウブラックとザマスは炎のようなオーラを纏うゴジ―タの力は認めていた。

 

「人間の中において、神に拳を振るう品性の欠片も無いサイヤ人は我が世界に特に不要の存在」

「だが、その力は未だにパワーを増した俺を上回っている」

「フュージョン、メタモル星人の技であったか。厄介ではあるが攻略は単純」

「「決着は合体が解けてからにするとしよう」」

 

 ゴクウブラックとザマスが何をするのかを察したゴジ―タが行動を起こすよりも早く、二人は手に溜めた気をビルに叩きつけた。

 既に半ばから瓦解しかけていたビルは二人の気弾によって呆気なく崩壊して、周りの建物を巻き込んだ倒壊によって周囲一帯を覆い隠すほどの粉塵が舞う。

 ゴクウブラックとザマスがビルの倒壊に巻き込まれた所為で死ぬはずもなく、そもそも舞空術を使えるゴジ―タがこの倒壊に巻き込まれるはずもない。

 

「「やられたっ!」」

 

 二人の目的を正確に察したゴジ―タは即座に粉塵を気合で吹き飛ばすも、予想通り同じように飛び上がって倒壊に巻き込まれるのを避けたトランクスの姿しか見当たらない。

 

「「トランクス! 奴らを探せ!」」

「え? あ、はい」

 

 ゴジ―タが何故そこまで焦っているのか分からないトランクスは言われた通りに探すが、ゴクウブラックとザマスは地球の戦士と同じく気を消す術を身に着けているのか気が感じられない。

 

「「くそっ、どこに行った!」」

 

 地上で気を感じ取ることに集中したトランクスと違って、高く跳び上がって辺りを見渡すゴジ―タは焦っているように見えた。

 

「あの、えっと、悟空さん父さん? 何をそんなに焦って」

「「馬鹿野郎! この合体には制限時間があるんだぞ!」」

「ええっ!?」

 

 更にパワーを上げたゴクウブラックを倒すには今の状態である必要がある。

 このままパワーを上げ続けられたらゴジ―タですら危ういというのに、フュージョンが解けてしまったら勝ち目が無くなる。

 

「まさかブラック達は父さん達の合体が解けるのを待つために隠れた?」

 

 フュージョンのことを知っていた二人がこうやって姿を消したのがその証明である。

 確実に勝つ為にゴクウブラックとザマスはビルを倒壊させて巻き起こった粉塵を利用して隠れたのだ。

 

「「隠れている街ごと破壊するしか…………無理だ」」

 

 ベジータならばともかく、悟空の性根では誰がいるかも分からない街ごと破壊することは出来ない。

 

「「俺達も隠れるぞ、トランクス」」

 

 ゴクウブラックとザマスの目的はフュージョンの解除。それまでは絶対に出てこないし、姿も見せないだろう。

 気を消してトランクスを連れて物陰に隠れたゴジ―タは自ら合体を解除した。

 

「奴ら考えやがったな」

「くそっ、どうする? 制限時間前に解除したからインターバルは短くなってっけど、それでも三十分は合体出来ねぇ」

 

 悟空達は単体では勝機はなく、ゴジ―タ・ゴッドに出来たのは自分も制限時間前に隠れて少しでもインターバルを縮めることしか方法がなかった。

 

「あれはザマス……」

 

 暫く経ってからどこかの建物に入り込んで壁に背を凭れて座り込むベジータと歩き回って策を考えている悟空と違って、穴の開いた壁から外を見たトランクスが宙に浮かぶザマスに気付いた。

 

「聞こえるか、無知蒙昧なサイヤ人共。私はここにいるぞ」

 

 如何なる方法を使っているのか、西の都跡地全体に響き渡るほどのザマスの声がトランクスの耳に入って来る。

 

「あの野郎……!」

「よせ、ベジータ。アイツは俺達を誘き出そうとしている。ザマスが不老不死になっているなら戦っても無駄だ」

 

 姿を見せた理由は簡単に予想がつく。ああやって囮になることで悟空達を誘き出そうとしているのだ。

 本当に超ドラゴンボールで不老不死になっているのなら囮に適任だろう。誘いに乗って出て行けばゴクウブラックが出てくるという寸法であることは容易く推測できる。

 

「…………出て来ないか。ということは、既に自分から合体を解いたか」

 

 悟空に言われるまでも無く挑発と分かっていたベジータも逸る自分を抑えたことで、ザマスは挑発しても誰も出て来ないことに笑みを浮かべた。

 

「貴様ら人間の考えは良く分かるぞ。私達が隠れれば次に合体するまでの時間を短縮する為に早めに合体を解除する。効率を優先する、実に人間らしい思考パターンだ」

「故に人は学ばない。故に人は進化しない。猿から何も変わってなどいないのだ」

 

 瞬間移動でゴクウブラックがザマスの背後に現れる。

 

「どうする、私?」

「決まっているぞ、私。この街ごと破壊して炙り出せばいい」

 

 問うてきたザマスに、ゴクウブラックの振り上げた右手に街を破壊して更地にして余りある気が溜められる。

 

「いや、それでは面白みがないか」

 

 と、悟空とベジータが避けた選択を容易く行おうとしたゴクウブラックは、面白みがないという理由だけで街の破壊を思い留まった。

 

「私よ、この星に残された人間は後どれぐらいだった?」

「数万程度だろう。それがどうしたのだ?」

「奴らを炙り出す方法を見つけた」

 

 そう言ってゴクウブラックは醜悪な笑みを浮かべて街のどこかで身を潜めているであろう悟空達を見下ろした。

 

「聞こえるか、孫悟空達」

 

 ザマスと同じく如何なる方法によってか、街全体に響き渡るゴクウブラックの声。

 その声が聞こえているはずなのに悟空達の動きはない。

 

「出て来なければ、今から十数えるごとにこの星の人間を順に殺して行こう」

「なにっ!?」

「待て、トランクス。奴の脅しだ!」

「でも、父さん!」

 

 ゴクウブラックの脅しに飛び出しかけたトランクスをベジータが羽交い絞めにして止める。

 

「――――七、八、九、十…………出て来ないか。まずは一割死んでもらうとしよう」

 

 直後、十まで数を数えたゴクウブラックが上空に掲げた右手から放たれた気弾が雲の上で数え切れぬほどの数に分裂して地上へと振り降りる。

 

「なっ!?」

 

 この西の都跡地を意識的に外したと思われる無数の気弾が地上の各地に下りて、その気弾をトレースした悟空達は自分達に比べれば小さな気の持ち主が次々と消えて行くのを感じてしまった。

 

「よ、よくも……っ!」

 

 全てを把握出来たわけではないが、恐らくゴクウブラックが言ったように生き残っていた人間の一割が今の攻撃で命を落とした。そのことを誰よりも重く受け止めたトランクスが激怒し、ゴッドに成った。

 

「ま、待て!」

「止めないで下さい!!」

 

 炙り出すことがゴクウブラックの目的であるが、気を探れるならばゴッドの力を感じ取れているはずで悟空達のいる場所を見ながらも手を出さないのは挑発しているのだ、侮辱しているのだ。

 

「人造人間の脅威から逃れて生き延びた人達を…………ようやく復興を始めた街を破壊しただけに留まらず、アイツは虫を踏み潰すみたい簡単に殺したんだ!! 許せるはずがないでしょう!!」

 

 抑える為にゴッドに成ったベジータと協力する悟空の拘束を力尽くで振り解こうとするトランクスの慟哭が響く。

 

「人間を守るのではないか? ほら、次だ。一、二――――」

「堪えろ、堪えてくれ、トランクス……っ!」

 

 今度こそ虐殺を止めようと暴れるトランクスの気持ちはよく分かるが、怒りに任せて突撃したところで勝ち目はないから悟空にはそう言うことしか出来ない。

 

「――九、十…………さあ、これで貴様らが出て来ないから残った人間の二割が死んだぞ、クククク、ハッハハハハハハハハハハ!!」

「あ、あぁぁぁあああああっっ?!?!」

 

 また地球人類を滅ぼす魔の光が放たれ、その気弾をトレースしてしまったトランクスの口から迸った絶望の叫びが木霊する。

 

「あの下衆野郎……っ!!」

 

 トランクスのみならず、ベジータも悟空も怒り心頭だがフュージョンが使えなければ勝てないのは分かりきっているので必死で自分を抑える。

 

「…………出て来ないな」

 

 ゴクウブラックの狂笑に少し引き気味のザマスがぽつりと呟く。

 

「このまま人間を滅ぼすのも良いが、簡単に終わらしてしまってはつまらんな。少し趣向を変えてみるか」

 

 ザマスの様子に気付いた様子も無いゴクウブラックの歪んだ笑みは変わらない。

 

「今度こそ街を破壊して炙り出すのか?」

「いいや、もっと良い方法がある」

 

 そう言って嗤ったゴクウブラックは過去を想起する。

 

「孫悟空、お前は心臓病で死ぬはずだった。トランクスが過去と未来を行き来せずに歴史通り死んでいれば、俺はこの肉体を求めることはなかった」

 

 全ての始まり、運命の始点、もしくは分岐点。

 

「分かるか、孫悟空、トランクス。お前達によって正しい歴史は狂わされ、歪んでしまった」

 

 孫悟空が死んでいれば、ザマスがその身体を求めることはなかったという事実。

 

「この世界を作ったのはお前達だ。タイムマシンを作って時間を弄るという神に唾を吐いたことが俺の正義に火を点け人間0計画へと走らせた。よって地球人を殺したのはお前達も同然」

 

 トランクスが自分達に降りかかった人造人間という災厄を振り払う為にブルマが作ったタイムマシンに乗り込み、過去で特効薬を呑んだ悟空は心臓病に罹っても死ぬことはなかった。だからこそ、ザマスと出会い、その強さに興味を持たれて体を奪われた。

 

「勝手なことを……っ!」

 

 自らの悪行を棚に上げて人に責任を擦り付けるゴクウブラックに、トランクスを抑えていたベジータも怒りを抑えきれなかった。

 

「違う世界線で孫悟空に敗れた俺は、師であるゴワスをこの手にかけて界王神の座についた。そして超ドラゴンボールを使って孫悟空、お前の体を奪った。だが、考えなかったのか、お前の体を奪った俺がまず何をしたのか」

 

 そこで少し溜めを入れたゴクウブラックの言葉に悟空は考えてしまった。

 悟空に対してブロリーとはまた別種の執着を見せて来るゴクウブラックである。超ドラゴンボールで悟空の体を奪って何をするのかと考えれば答えは一つ。

 

「オラを殺した……?」

 

 悟空はゴクウブラックの怒りを知らない。否、元よりこの悟空に向けるのは見当外れの怒りを理解できるはずがない。

 

「俺もそうだったが、他人の体は扱いなれなければ碌に動くこともままならない。お前の息の根を止めるのは実に簡単だったぞ。だが、それだけで終わるほど、孫悟空に抱いた俺の怒りは生易しいものではない」

 

 ナメック星でギニューに体を取り換えられた経験を持つ悟空だったから良く知っている。体を入れ替えられたと理解していなければ混乱して成す術もなかっただろう。

 

「さて、体を奪われたお前の家族がどうなったか知りたくはないか?」

「家族、だと?」

「もう察しているだろう。俺はお前の妻と子を殺した」

「おい……」

「お前を殺した時に傍にいた似た子供は孫悟空の息子だったのかな。最後までお父さんお父さんと俺に向けて言っていたな」

 

 トランクスの拘束も忘れてゴクウブラックの話を聞いてしまう悟空。

 悟天ならば悟空の体を持つ者に襲われても最後まで言う姿が容易に想像できてしまい、湧き上がってくる猛烈な怒りに耐える。

 

「次はお前を悟空さと呼ぶ女だ。孫悟空に似た息子の首を持っていたら現れ、実に耳に心地よい声で叫んでくれたものだ。あれはお前の妻だろう?」

 

 クツクツ、と喉の奥で嗤うゴクウブラックに悟空はその光景を想像してしまった。

 

「目の前で息子の顔を踏み潰してやったら何故どうしてと五月蠅く泣き喚くものだから、その胸をこの腕で貫いてやった時のあの絶望に満ちた表情といったら、嘗て違う世界線の孫悟空に敗れた借りを返すことが出来てついイッてしまったぞ。不便だな、人間の体という物は。わざわざ着替えなければならなかった」

 

 悟空と同じ姿をしたゴクウブラックが悟天の首を持って現れ、その顔を踏み潰した時のチチの感情。そしてチチすらもその手にかけたゴクウブラック。

 チチにとっては悟空が息子を殺し、自らを殺したのだと思ったのだろうか。

 悟空は信じられないと思いながらも、ゴクウブラックならやるだろうと思ってしまった。

 

「そして時の指輪を使ってこの世界に来た時、人間0計画を始める前に俺がしたのはなんだと思う」

「っ!? 止めろ! 言うな!!」

 

 その先を知っているトランクスが叫ぶが遠く離れたゴクウブラックは話すを止める気は無い。

 

「この世界の孫悟空の妻を殺した」

「――――」

 

 バチバチと溢れ出る感情によって周囲の空間を捻じ曲げながらも抑えてくるトランクスとベジータのことすら認識できず、半ばから断絶しかけていた悟空の意識がそれを聞いて塗り潰される。

 

「人造人間の破壊を生き延びた孫悟空の妻の前に現れたら、バカなほどに喜んでいたよ」

 

 悟空のゴッドの赤いオーラが青く染まる。

 そして止まらない。必死で拘束しているベジータとトランクスのパワーを大きく上回り、尚も力の上昇は続いている。

 

「しかし、泣きながら近づいてきたが途中で俺が孫悟空でないことに気付いたらしくてな。逃げようとするものだから背中からこれを突き刺してやった」

 

 想像する。連想する。考えてしまう。

 未来の世界で悟空は心臓病で死んでいる。それから二十年以上の月日が流れ、人造人間の脅威もトランクスが打ち払った。

 まだゴクウブラックが破壊をする前に現れたのなら、この世界のチチは何を思ったのか。悟空の体を持つ者に気の剣を背後から突き刺されて何を思ったのか。

 

「死の直前、俺に向けて何者だと聞かれたからこう答えてやったぞ、『孫悟空』だとな。それを聞いたお前の妻は絶望の表情を浮かべて事切れたぞ」

 

 チチが絶望の表情を浮かべて事切れたことを悪魔の笑みで楽し気に話す。

 悟空の感情が飽和する。爆発する一瞬手前で踏み止まって、今にも飛び出しそうな悟空を必死で抑えるベジータとトランクス。だが、それも限界だ。

 

「そしてトランクス、お前が現れた」

 

 ゴクウブラックが未来のチチを殺した直後にトランクスが現れ、両者は初めて邂逅したのだと話を締める。

 

「全ては孫悟空が不遜にも本来ならば死ぬ定めだった運命を時間を弄って覆し、神である俺を超えたことに対する罰だ。お前は死ぬべきだった。存在してはならなかった。孫悟空と関わりのある者は全てに死を与えることが()が定めた運命である」

 

 孫悟空に関わる全てが世界に対する冒涜であると、最後に妄言を吐き捨てた。

 

「ここに至るまでの全て、これから起こる全てはお前がいるからこそ起こった神罰だ」

「許さねぇ……っ!!」

 

 全てはそちらに責任があると言うゴクウブラックに悟空は完全にブチ切れた。

 

「ブラックゥゥゥゥゥウウウウウウウウ―――――――ッッッッ!!!!」

 

 自制をかなぐり捨て、ただゴクウブラックへの憎しみに染まった悟空がオーラを青く染めて隠れていた建物を粉砕して飛び出した。

 

「ほう、ブルーに成ったのか」

 

 ゴッドと違って青く染まっているオーラを纏う悟空が怒りの表情を向かって来ているのを見てもゴクウブラックに焦りはない。

 

「今、俺は人間風情が辿り着けない境地にいる」

「ぐがっ!?」

 

 殺すことしか考えていない殺意塗れの攻撃を避けることなど容易い。

 髪の毛程度の間で避けたゴクウブラックの拳が真っ向から悟空の顔を殴りつけ、飛び掛かった勢いもあって意識が刈り取られそうになった。

 

「ァアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 その瞬間、悟空の脳裏を過ったのは家族の顔だった。

 悟天、悟飯、そしてチチの顔を想起した悟空は、ゴクウブラックによって無惨にも殺される家族の姿まで連想してしまった。

 

「――――界ぃ王ぉ拳っ!!」

 

 無茶無謀すらも通り越すほどに殺意に塗り潰された悟空は、嘗てセルとの戦いで使用して死んだ時と同じように超サイヤ人ブルーに界王拳を重ね掛けする。

 

「かかってくるがいい、孫悟空!!」

「ガァアアアアアアアアアアア――――ッッ!!」

 

 狂戦士と化した超サイヤ人ブルー・界王拳の悟空と、ゴクウブラックの超サイヤ人ロゼが激突した。

 

 

 




 ゴジ―タ・ゴッドに勝てないから隠れて合体制限時間まで隠れることにした二人。
 ザマスが姿を見せても現れないから合体を解除したと予測して見事的中。

 ゴクウブラック、悟空達を炙り出す為に地球人類を殺し始める(やり方は原作ブウが地球人類にやったのと同じ)
 一気にやらずに徐々に殺していく辺り、ゴクウブラックの性格が滲み出ている。

 悟空と体を入れ替えた直後に悟天とチチを殺しているのはアニメ版と変わらないが、奪って直ぐに悟空を殺したので悟天達は体を入れ替えられたことを知らない。えげつなさ増し増し。
 しかも未来チチも殺している(感想であったので入れてみました)

 これで悟空ブチ切れ。でも、ゴクウブラックには遠く及ばないから無謀にも界王拳使用。万に一つぐらいの成功率だが憎しみに染まってしまった様子。

 超サイヤ人ブルー・界王拳の悟空vs超サイヤ人ロゼのゴクウブラック+不死身のザマス。

 でも、なにコイツとゴクウブラックに引いているザマス。

次回、『第二十八話 未来決戦・急』

 


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第二十九話 未来決戦・急


ブルーに界王拳を重ね掛けした悟空、果たしてブラックを倒せるのか?



そこへ悟飯からピッコロ、ピッコロから界王、界王から界王神に連絡が入り、ザマスを破壊された直後のゴワスの下を界王神が訪れて事情説明。ビルスは直前にトランクスを破壊する為に地球に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの野郎、また界王拳を使いやがった――っ!?」

 

 悟空が暴れた為に倒壊したビルから抜け出しながら、急激に高まった力を感じ取ったベジータが顔を上げる。

 

「界王拳ってセルを追い詰めた、あの?」

 

 隣で圧し掛かってきている瓦礫を除けたトランクスも父の驚愕の叫びを耳にして、セルと闘った時のことを思い出した。

 

「じゃあ、早く止めないと! また死んでしまう!!」

「いや、今のアイツは超サイヤ人よりも気のコントロールが上の超サイヤ人ゴッド以上になっている。下手をしなければ死ぬことはあるまい」

 

 ただでさえ体に負担の大きい超サイヤ人に、倍率によってはそれ以上に体に負担を強いる界王拳を併用するなど自殺行為でしかない。

 セルと闘った時に悟空は超サイヤ人の上に界王拳を重ね掛けして、その無茶の果てに死んだ。

 

「だが、カカロットめ。幾らゴッドが超サイヤ人よりも気の制御が出来るからって無謀が過ぎるぞ」

 

 押さえつけていた時の悟空が放っていたオーラはゴッドの赤ではなく青。

 ゴクウブラックや神龍が言っていたゴッドの力を完全に取り込んだ超サイヤ人に至っていると考えた方が自然。

 見上げる先でも、超サイヤ人ゴッド超サイヤ人(超サイヤ人ブルー)になった悟空が青いオーラの上にガスバーナーのように界王拳の紅いオーラを放ちながらゴクウブラックに襲い掛かっていた。

 

「凄い。今の悟空さんならブラックにも勝てるかも」

 

 それほどに今の悟空の力は上昇している。

 最早、目にも止まらない速さで動く悟空ならばゴクウブラックにも勝てるのではないかとトランクスは希望を持った。

 

「馬鹿者。界王拳を使って勝てるなら最初からフュージョンになど頼らずにカカロットは一人で闘っている」

「え?」

 

 界王拳の恐ろしさは、嘗て悟空と始めて戦った時にベジータの身に散々教え込まされた、同時にそのリスクも。

 超サイヤ人ゴッド超サイヤ人との併用で死にはしなくても、体に圧し掛かる負担はかなりのものだろう。

 倍率を上げて勝つ自信があるのならば最初から使っているはず。勝てるという自信が悟空にはなかったからフュージョンを選んだのだ。

 

「あっ!?」

「また倍率を上げやがったか」

 

 悟空の気が更に跳ね上がった。とならば、界王拳の倍率を三倍に上げたことを意味しており、それでも戦闘が止む気配はない。

 

「ブラックの奴、どこまで強くなってやがるんだ」

 

 青と紅が重なったオーラが残光を残して猟犬の如く動き回るのに対して、超サイヤ人ロゼの薄紅色のオーラは泰然自若として揺るがずに迎え撃っている。

 三倍にまで引き上げてすら止む気配のない戦闘は、つまりはそれだけ倍率を上げてもゴクウブラックには及んでいないことを意味している。

 

「フュージョンをするぞ、トランクス!」

 

 恐らく悟空はそう長くは持たない。

 止む無しと判断したベジータはトランクスにフュージョンを強いた。拒否権など与える気などなかったのだから。

 

「あの、フュージョンってどうやるんですか?」

 

 否はないのだがトランクスはフュージョンのやり方を知らない。

 

「お、俺があのポーズを教えなければならんのか……っ!?」

 

 誰が見ても変と思うポーズの数々を細かく教えなければフュージョンは成功しない。そして教えられるのはベジータ以外にいないのだから思わず唖然としてしまった。

 

「――――」

 

 教えている姿を想像しただけで意識が時の果てへと至りかけたが、そんなベジータに何者かが声をかけてきた。

 

「誰だっ!?」

 

 声をかけられるまで接近に気付かなかったことに驚愕しながらも即座に振り返ってベジータはありえない人物に目を剥いた。

 

「お、お前が何故ここに――っ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブラックゥゥゥゥゥウウウウウウウウ――――ッッ!!」

 

 別世界線のチチと悟天を殺され、未来のチチすらもその手にかけたと聞いた悟空の理性は既に存在しない。

 

「どうした、孫悟空!」

 

 界王拳を使用した悟空すらも容易くあしらうゴクウブラックが向けられる憎しみに笑う。

 

「まだまだそんな程度ではなかろう!」

 

 前蹴りが腹に叩き込まれた。感情が一線を超えて痛みを感じない悟空であっても衝撃は消せない。

 蹴り飛ばされて鋭角に軌道を変えた悟空を追うゴクウブラックにはまだまだ余裕がある。

 

「三倍だ!!」

 

 足りないのならばもっと力を。界王拳の倍率を上げるまでである。

 二倍から三倍へ。二倍ですら体がギシギシと軋んでいたのに、三倍に引き上げたことでバラバラになりそうな負担が襲い掛かって来る。

 

「それがどうした!」

 

 あの野郎をぶち殺せるならばなんでもいい、と悟空は体が爆散するような負担を無視するように叫びを上げた。

 

「がっ!? はっ」

 

 それでもまた頭突きで跳ね飛ばされて、体勢を崩したところに追い打ちを仕掛けられる。

 

「馬鹿め、後ろだ!」

 

 空中で制動をかけてゴクウブラックの姿を見ようとすれば、その一瞬で背後に回られて蹴り飛ばされる。

 

「――波っ!」

 

 先にあったビルを壊しながら突き抜けながらゴクウブラックに向かって気功波を放つが当たった感じはしない。

 

「体、持ってくれよ!」

 

 三倍でも足りない。ならば、その先へ。

 もう悟空は躊躇いはしなかった。

 

「四倍界王拳だっ!!」

 

 四倍に増した倍率は遂にゴクウブラックに追いつく。

 追いかけて来たゴクウブラックに対して、消えたと錯覚するほどの速度で切り返した悟空の拳が顔面に叩き込まれると滝のような鼻血が噴き出した。

 

「そうだ、俺を超えて見せろ! それでこそ、孫悟空だ!」

 

 ダメージを受けたにも関わらず、ゴクウブラックは喜色を満面に浮かべて笑う。

 しかし、四倍に至った悟空の戦闘力はゴクウブラックを完全に上回っていた。

 

「はぁっ!!」

 

 殴り飛ばしたゴクウブラックの進路上に先回りして、両足を揃えて上空へと蹴り飛ばす。

 

「くっ」

 

 空中で急制動をかけて止まったゴクウブラックが後を追ってくる悟空目掛けて気弾を放つ体勢を取るが、その瞬間には鋭角に軌道を変えて背後に回り込んでいる。

 

「っ!?」

 

 ゴクウブラックも反応して背後に向けて気弾を放つが、更に速度を上げた悟空は気弾を躱して顔面を蹴りつける。

 

「孫悟空っ!!」

 

 尚も追撃を仕掛ける悟空の進路にザマスが割り込む。

 

「邪魔を、するなぁっ!!」

 

 悟空の目に映るのはゴクウブラックのみ。

 ザマスをゼロ距離からの気弾で腹に大穴を開けると、悟空はゴクウブラックに向かって行く。

 

(私とあの者、一体なにが違うのだ?)

 

 不老不死の肉体故にザマスは腹に大穴が開こうとも直ぐに再生する。

 それでも悟空のあの姿を見ると、あれほど嫌っていたはずの憎悪と憤怒を撒き散らす人間の感情が間違っているという根拠が揺らいで来た。

 

「ええい!」

 

 既に賽は投げられる。迷いなどザマスに抱く資格はない。

 だとしても、迷いの茨がザマスの奥深くに突き刺さったまま抜けることはない。

 

「ブラッーーがっ!?」

 

 数秒の間にゴクウブラックは既にボロボロ。界王拳の倍率を四倍に引き上げた悟空の強さは完全にゴクウブラックを超えている。

 しかし、ゴクウブラックだけを付け狙う悟空の背中は隙だらけだった。実力で大きく劣るザマスですら隙を突けるほどに。

 

「邪魔を――」

「無駄だ。如何なる攻撃も私には何の意味もない」

 

 不老不死で傷が一瞬で治るザマスは、時にはその身を盾にしてゴクウブラックを守る。

 

「流石は私だ!」

「ぐぁっ!?」

 

 時にはザマスの体ごと悟空に向かって攻撃してくるなど予想できるはずもない。

 同じ精神の持ち主だから連携は抜群で、瞬く間に悟空が追い込まれていく。

 

「死ねぇッ!!」

 

 幾度もの攻防の果てに、ボロボロのゴクウブラックの攻撃が悟空にクリーンヒットする。

 既に倒壊していたビルの瓦礫の中に叩き落とされる悟空。

 

「ぁ……う、ぅ……」

 

 同時に限界を超えていた体から界王拳が解けてしまい、気力で抑え込んでいたダメージも一気に襲い掛かって来る。

 

「――やる」

 

 指一本動かすだけでも死にたいと思うほどの激痛が悟空に襲い掛かって来る。

 

「――――してやる」

 

 なのに、悟空は痛みなど大した問題ではないとばかりに、目をたった一つの感情に染め上げて動こうとしている。

 

「――――――殺してやる」

 

 体の上に乗っている瓦礫を除ける力すらないというのに、憎悪に染まった悟空の眼はゴクウブラックを睨み付けている。

 

「やはりお前は野蛮で残忍なサイヤ人だ、孫悟空」

 

 中立であるべき神とは違う真逆の尖った精神性を発露する悟空の姿に、自分を振り返ることが出来ないゴクウブラックは空中から下りて来ながら嘲った。

 

「憎悪に突き動かされ、勝ち目のない相手に向かって来る。実に人間らしく知性の欠片もない醜い行動だ」

 

 全宇宙の界王神を殺すことで破壊神も殺したゴクウブラックの肩にザマスが手を置いた。

 

「見るがいい。俺はまた強くなったぞ」

 

 ザマスの復活パワーによって更なるパワーアップを果たしたゴクウブラックが纏う超サイヤ人ロゼのオーラが力強さを増す。

 

「素晴らしい。サイヤ人の肉体こそ、神の恵みの究極。打たれれば打たれるほど力が高まる。はっ!」

 

 恍惚した笑みを浮かべながら気の剣を空いている手の平に刺す。

 

「怒りをパワーに変える。単純にして人間にしか思いつかないおぞましい方法故、つい見逃していた。そうか、怒りか」

 

 バチバチと気の剣が刺さったゴクウブラックの手の平の近くで気がスパークする。

 

「宇宙を穢す人間への怒り、黙認する神々への怒り、人間風情に敗北した無力な自分への怒り!」

 

 剣が柄から抜かれるように気の剣が引き抜かれていく。

 

「無知蒙昧なる人間よ、神の怒りを思い知れ!」

 

 抜き放たれた気の剣は溢れ出る力の高まりによって鎌へと形を変えていた。

 

「怒りをパワーに変えたことで、俺はまた新たな力を手に入れた」

 

 軽く気の鎌を振るうと、空間が切り裂かれた。

 ポッカリと空いた空間の狭間は、この世ならざる異様な空間を覗かせていた。

 

「怒りが力の源と成り得るのならば、誰よりも強い怒りを抱えたこの俺こそが最強だ」

 

 気の鎌を肩に引っ掛けたゴクウブラックは嫌らしい笑みを浮かべて動くことの出来ない悟空を見下す。

 

「孫悟空、お前の怒りは俺を強くしてくれた。感謝するぞ」

「ブラック……っ!!」

 

 ゴクウブラックは憎しみで殺せると言わんばかりに殺気を向けて来る悟空に恍惚の笑みを浮かべる。その姿を横で見ざるをえないザマスは思うところがあるようだが何も言わなかった。

 一度は失望しても更なる力を持って現れた悟空の感情の爆発に十分に満足したゴクウブラックは最後の楽しみを味わおうとする。

 

「神に抗う罪人よ。その魂の欠片も残さずに消え失せるがいい」

 

 即ち、悟空を殺すこと。

 確実に悟空を殺すべく向けた手の平に極大の気を溜めながら宣言する。

 指一本動かすだけでも魂が砕けんばかりの痛みに悶絶してもおかしくない悟空は、向けられた気弾を睨み付けることしか出来ない。

 

「「――させん!」」

 

 悟空をこの世から抹殺する気弾が放たれるその直前、声が二重に聞こえる者が割り込んだ。

 

「なっ!?」

 

 悟空にだけ意識を向けていたゴクウブラックは咄嗟に反応したものの、攻撃を受けたことで気弾が彼方へと飛んで行って大爆発を起こす。

 

「ベジータ? トランクスでもない。フュージョンか」

 

 揺れる片耳の耳飾りを付けた戦士が遮二無二に向かって来るのを、先程までならば苦戦しただろうがパワーアップしたことで楽々と捌くゴクウブラック。

 

「遅すぎたな」

 

 戦士の正体を看破したゴクウブラックの攻撃がベジータとトランクスが合体したベジークスを弾き飛ばす。

 

「そう、遅すぎたのだ何もかもが。私も、お前も」

 

 地上に降りたザマスは悟空の近くで、闘う二人を見上げながら一人ごちた。

 

「終わらせよう」

 

 ベジークスはゴクウブラックと戦っているが、単純な実力差とフュージョンの制限時間を考えればそう遠くない内に決着はつく。

 もう惑わされたくないザマスは終わらせるべく悟空に向かって手を振り上げた。

 

「止めるのだ、ザマス」

 

 振り上げた手が聞こえた声にピタリと止まった。

 ありえない人物の声が、ありえないタイミングで聞こえたことにザマスの時間が停止する。

 

「お、お前は…ゴワス!?」

 

 後ろにザマスの知らない界王神らしき少年もいて、ザマスの明晰な頭脳が推測を立てる。

 

「成程、そちらの世界のゴワスか。時の指輪で来たのだな」

「そうだ、こちらの界王神様から全て聞いたぞ」

 

 ザマスとゴワスの会話に頭が付いていかない悟空に少年の界王神――――悟空達の第七宇宙の界王神が傍へとやってくる。

 

「大丈夫ですか、悟空さん」

「界王神様、なんで……」

「北の界王を通して悟飯さんから話を聞いて、いてもたってもいられなくなりました」

 

 僅かに動くことすら出来ない悟空を痛ましげに見つめた界王神の背後からもう一人の人物が現れる。

 

「――――」

「お、オメェはヤジロベー!?」

 

 その人物の登場に悟空は目を剥いた。

 

「よう、孫」

 

 髭がモシャモシャのヤジロベーはそう言って、ニヤリと笑ったのだった。

 

 

 




悟空 ゴッド後ブルー 190000 
   ブルー・界王拳 2倍 380000 3倍 570000 4倍 7600000(76万)
ブラック・ロゼ (50万)ゴジ―タにやられ回復後 60万 ブルー・界王拳回復後 (80万)
ベジークス・ゴッド 77万6千

 悟空はブルー・界王拳で四倍で76万の戦闘力に至るものの、ブラックと不死身のザマスの連携に敗北。
 ゴクウブラックは更にパワーアップ。
 ベジータとトランクスがフュージョンしてベジークスとなって戦うが、ベジークス・ゴッドが77万6千に対してブラック・ロゼは80万になっているので勝てず。

 ここでゴワスと界王神の登場。
 現代で、悟飯からビッコロ、ビッコロから界王、界王から界王神に連絡が入り、
 ビルスによってザマスを破壊された直後のゴワスの下を界王神が訪れて事情説明。共に悟空がいる未来の世界に向かう。
 ビルスはザマス破壊後にトランクスを破壊する為に地球に向かっているところ。

 ヤジロベーが齎すものとは一体?




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第三十話 未来決戦・結

 

「情けないぞ、ザマス。どうしてこんな恐ろしいことをしたのだ」

 

 耳飾りを付けていないゴワスが手を伸ばせば届く距離にいるザマスに向かって真摯に問いかける。

 

「何が恐ろしいと? 人間は駆逐せねば世界は美しくならん。神も同罪だ。何もしない神など害悪でしかない」

「害悪? 害悪と言ったか。では、あのブラックという者がやったことはどうなのだ? あれが本当に正しい事だと、お前はそう言うのか」

「それは……」

 

 ゴワスとザマスが何やら問答を行っているが、悟空にとって片方は怨敵でもう片方は知らないので話に興味はなかった。

 

「どうしてヤジロベーがここに、いや死んだはずじゃ……」

 

 大分前にトランクスから未来では戦える戦士は自分だけであると聞いていたのでヤジロベーも死んでいるものと思っていた。

 

「勝手に殺すな。まあ、一度殺されかけてからは怖気づいて人造人間が倒されても人前には殆ど出て来なかったけど」

 

 つまりはトランクスが大きくなる前に人造人間に殺されかけてからずっと隠れていたということか。

 

「時として神も間違う。お前を正しく導けなかったのは私の罪だ」

 

 一歩、ゴワスがザマスへと近づく。

 

「より悪へと傾いたあのブラックのように成りたいのか、ザマス」

 

 正義も独善が過ぎれば悪となる。

 ゴクウブラックのあまりに下衆なやり方に嫌悪感を覚えて揺らいでいたザマスに向かってゴワスは手を差し伸べた。

 

「過ちを認め、全王様に謝りに行こう。そして一緒に第10宇宙に帰るのだ」

「…………今更、何を言い出すのです」

 

 一度は揺らいだザマスは応えそうになった手をもう片方の手で押さえつける。

 

「人間0計画は佳境を迎えている。私自身、多くの神を殺したのだ。もう後戻りなど出来るはずがない」

 

 過ちを認めたところで為した結果は、流した血が消えるわけではない。

 罪を認めてしまえば、罪に塗れた自身をザマスは許すことが出来ない。

 

「いいや、誰にでも悔い改める道はある。戻って来い」

「ゴワス様……」

「さあ、手を取ってくれ」

 

 ザマスは差し出されたゴワスの手を見る。

 この手を取れば、この懊悩から救われるのかと考えたザマスの手が動く。

 

「やはり頼れるのは自分だけか」

 

 その姿をベジークスと戦いながら見ていたゴクウブラックは落胆した。

 

「俺であっても俺ではない。ゴワスに説得されるようでは正義への覚悟が甘すぎたようだ」

 

 自分であっても経験したこと、感じて来たことが違うのだから、やはり同じようでいて違うということなのだろう。

 

「その体、その意志、私が受け継ごうぞ、ザマス」

 

 彼はどこまでいっても独善的だった。

 ベジークスを蹴り飛ばしたゴクウブラックは左耳に付けているポタラを右耳に付け直す。

 

「なっ!?」

 

 ポタラの合体条件が整ったことを知らないザマスの体が無形の力で引っ張られる。

 

「ザマスっ!?」

 

 ゴワスの呼びかけも届きかけた手は触れることすら許されず、ザマスの体はゴクウブラックへと引き寄せられていく。

 神であるザマスの力でも抗うことは出来ず、ポタラによってゴクウブラックと融合してしまう。

 

「我が姿は正義、我が姿は世界」

 

 ゴクウブラックとザマスが合体した後、そこには一人の人物が空に浮かんでいた。

 

「崇めよ、称えよ、この気高くも美しい、不死にして最強の神を」

 

 合体ザマスの背後に浮かぶ光輪が世界を照らし出す。

 

「見よ、無限に力を高めていく肉体と不死身の体を」

 

 地が震える。天が荒れる。

 

「何故だ! ザマスは改心しかけていたというのに!!」

 

 ゴワスは後少しで握られるはずであった手を掴み、一人となってしまったザマスに向けて叫ぶ。

 

「ザマスとは唯一神。他に理解されず、他を理解せず、故に孤高、尊いのだ。界王神如きが我を惑わせると思うな」

 

 切なるゴワスの叫びにも合体ザマスには届かない。

 

「心地良い、我が身に満ちるこの力。正にこれこそが正義。さあ、大地を貫き、全てを洗い流そう。神の世の到来を祝う宴の始まりだ」

「させねぇ」

 

 ベジークスですら指一本で倒せる力に膨れ上がった合体ザマスの強さを前にしても、ヤジロベーの手を借りてでしか立つことが出来ない悟空は揺らがなかった。

 

「またお前か、孫悟空」

 

 宇宙を震わせるほどの圧倒的な力である。

 悟空に興味を失った合体ザマスの眼光ですら、それだけで人を殺すに十分な力を有していてヤジロベーが怯むほどだった。

 

「そんな体で何が出来る」

「こんな体じゃ何も出来ねぇだろうな。でもよ、オメェは負けるんだ」

 

 そう言って悟空が肩を貸してくれるヤジロベーに目を向けると、彼は懐から小さな小袋を出した。

 

「俺は人造人間とは戦わなかった」

 

 ヤジロベーにとっては恐怖の象徴であったベジータ。

 そのベジータですら歯も立たなかった人造人間にヤジロベーは完全に怖気づいた。

 逃げた。殺されかけてもしぶとく逃げ延びた。

 だからこそ、たった一つだけ残った物がある。

 

「それは仙豆!?」

 

 ヤジロベーが小袋から出したの物を嘗て見たことがある界王神が叫ぶ。

 

「恥を晒すような人生だった。それでも俺は」

 

 戦う力があったのに逃げて、逃げて、逃げて…………だからこそ、繋げた希望もあるのだ。

 

「今更、我の足下にすら及ばない有象無象のサイヤ人が回復したところで無意味」

 

 悟空が仙豆を食べて完全回復する。しかし、ゴクウブラックであった時よりも大幅にパワーアップした合体ザマスの前には羽虫同然。

 それが分かっているはずの悟空に焦りはない。

 

「本当にそうか?」

 

 ゴクウブラックは、合体ザマスは、人と神を見誤った。

 

「合体はオメェだけの専売特許じゃないんだぜ」 

「なに?」

 

 確かに悟空達もフュージョン(合体)をしていたが、ゴジ―タやベジークス以上の戦士が生まれたところで合体ザマスの脅威ではない。

 本当にそうか、と合体ザマスは孫悟空の言葉だけは無視できずに考えて気づいてしまった。

 

「――ポタラか!?」

 

 界王神であるゴワスがポタラを付けていない理由にどうして思い至らなかったのか。

 ベジークスであっても絶対に勝てない敵だったが悟空は絶望していない理由は何なのか。

 ハッ、と合体ザマスが確認する為にゴワスを見たことが隙だった。

 

「オラ達が勝つ」

 

 その間に先にポタラを身につけていたベジークスと、界王神に渡されていた悟空が身に着けて合体する。

 

「―――――――決着を着けようぜ、ザマス」

 

 光が晴れる。

 光が生まれる。

 光が差し込む。

 

「き、貴様……」

 

 ベジークスと悟空が合体したゴジークスの力によって、合体ザマスの力で震えていた宇宙が振動を止めた。

 それはゴジークスの力が完全に合体ザマスを上回っている証明でもある。

 

「こんなことがあってたまるものか!!」

「これが現実さ」

 

 膨大な力を纏って突進してきた合体ザマスの四肢が何時の間にか切り払われていた。

 目にも映らない、止まらない。あまりにも早過ぎる攻撃に合体ザマスは突進した勢いのまま地面に倒れ込んで始めて自分の四肢がないことに気付いた。

 

「我は不死身、どんな攻撃も意味はない」

 

 舞空術で体を浮かして気の剣をダラリと下げているゴジークスから距離を取り、四肢を再生させていく。

 

「どれだけ力で勝ろうとも不死には勝てない。やがては貴様も疲れ果てるだろう」

「…………遅いな」

 

 何が遅い、と揺るがない勝ち目を誇って言い返そうとした合体ザマスも自身の異変に気付いた。

 

「再生が、遅い……?」

「やはりお前の体には残ってしまったようだな、孫悟空という人間が」

 

 指先まで完全に再生するのに、ザマスの時ならば一瞬で再生された回復力が明らかに落ちている。

 

「合体の影響で再生能力が遅れようとも不死には変わらない。貴様に負けるはずが」

「では、試してみるとしよう」

 

 直後、青色のオーラを纏うゴジークスが合体ザマスの背後に予兆も無く現れる。

 瞬間移動ではなく、単純にあまりの早さに合体ザマスの目にすら止まらなかった。

 四肢を切り落とされたのに気が付いたのが地面に倒れたからだったように、上空に向かって蹴り飛ばされたのに気づいたのも雲を超えてからだった。

 

「ファイナルかめはめ波!」

「ぐぁああああああああああああああ――――――っっ?!?!?!?!」

 

 だからこそ、ゴジークスが放ったファイナルかめはめ波を避けることも出来ず、そのまま地球外にまで飛ばされる。

 

「ぐぅ、ぬっ……この程度で我がやられるものか!!」

 

 ファイナルかめはめ波によって破壊と再生を繰り返しながらも合体ザマスの心は折れない。

 

「今は負けようとも、何年かかろうが必ず我は地球に戻って」

 

 このペースならば合体ザマスが消滅することはない。無限にファイナルかめはめ波が放たれるはずがないのだから、宇宙の果てまで飛ばされようとも必ず地球に戻って復讐してやると誓っているところで背後が明るいことに気が付いた。

 

「た、太陽だと――――ギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 

 迫る太陽を目にした合体ザマスだったがファイナルかめはめ波の勢いが更に増して抜け出すことは出来ない。

 そのまま太陽の中心に落ち、その身を焼かれ続ける。

 

(再生が!?)

 

 しかし、再生する。それも中途半端に。

 焼かれて、再生して、焼かれて、再生して、焼かれて、再生して、焼かれて、再生して、焼かれて、再生して、焼かれて、再生して――――――。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■?!?!?!?!」

 

 焦熱地獄が無限ループする。

 体の大部分を失った状態で太陽に放り込まれた合体ザマスは、焦熱と再生を繰り返して思考すらもままならない。

 

「お前の顔はもう見たくない。永遠にそこにいろ」

 

 ファイナルかめはめ波で破壊されている分の方が多く、かめはめ波が消えても太陽に焼かれる分と再生される分が完全に拮抗して、死ぬことも抜け出すことも出来ない永遠の地獄を味わうことになる。

 

「太陽に焼かれ続ける地獄で、己が行いを永遠に悔い続けるがいい」

 

 目論見通り、合体ザマスを適度なダメージを与えて太陽に放り込んだゴジークスが言った直後、ポタラが壊れて合体が解ける。

 戦いは終わった。合体ザマスは犯した罪に相応しい地獄を味わい続ける。

 

「終わったな、トランクス」

「はい、父さん」

 

 そう言って喪った者達を悼むトランクスを慰めるように、ゴジークスがファイナルかめはめ波で開けた雲間から太陽の光が差し込んで包み込む。

 

「仇は打ったぞ、チチ、悟天」

 

 静かに涙を流すトランクスと悟空の姿を見たベジータは鼻を鳴らして腕を組んでいるが二人に何か言うことなく、未来のブルマを哀悼するように目を閉じた。

 

「ザマス……」

 

 太陽にいるザマスを見上げるゴワスは複雑な表情を隠せず、後少しでも手を伸ばすのが早ければと後悔を抱える。

 界王神は全てを見届けて、ブラックによって殺された全ての人達が救われますようにと願う。

 

「やっと終わったがや」

 

 その彼らの後ろで、やっと穏やかな世界になるだろうと安心出来たヤジロベーが腰を下ろして大きな息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと戻って来たね」

 

 悟空とベジータがタイムマシンで現代に戻ってくると、待ちくたびれたとばかりに破壊神ビルスと天使ウイスが待ち構えていた。

 

「あれだけ警告したのに時間を弄るなんて君達は馬鹿なのかな」

 

 ビルスの後ろには心配そうな悟飯と悟天、トランクス、そしてブルマが立っている。

 少なくとも彼らには何の手も出されていない様子なので悟空とベジータは安心してタイムマシンから下りる。

 

「さあ、とっとと破壊してしまおうか」

「お待ちください、ビルス様」

 

 最早、何も聞く気は無いと悟空達を破壊しようとしたビルスを止めたのは時の指輪でやってきたゴワス。

 

「彼らは我が弟子の過ちを正してくれたのです。罰ならば私に」

 

 そう言うゴワスから視線を外して悟空達を見れば、随分とズタボロな様子。

 

「ザマスが行ったことは本来ならば同じ神である私達が止めなければならないことなのに、それを彼らが止めてくれたのです。此度の彼らの時間移動は、元を正せば弟子を正しい道に導けなかった師である私に責任があります。破壊するならどうか私に」

「しかし、君を破壊するとラムーシまで死ぬじゃないか」

「神であろうと罪は罪。人であるから裁き、神であるから裁かないなど許されることではありません」

 

 ゴワスの言うことは最もであるとビルスも考えてしまったが、破壊神と命を共有する界王神を他の宇宙の界王神が勝手に破壊など許されることではない。

 

「なんでそこまで」

「あの合体したザマスの再生力が弱まったのは、私の弟子であるザマスの意志であると信じたい。私が信念を貫き通せなくてどうするというのです」

 

 重い込みなのかもしれない。想像の産物なのかもしれない。

 それでもザマスを導こうとしたゴワスが命欲しさに自らの信念を曲げることが許されるはずがない。それもザマスを止めてくれた悟空達を見殺しにすることなど。

 

「む、むぅ……」

 

 意気込んでくるゴワスに引き気味のビルス。

 

「そうです、ビルス様。悟空さん達の為したことは本来は破壊神が対処すべき事案だったのです。感謝こそすれ、恩を仇で返すなど神のすることではありません」

 

 援護射撃をする界王神。

 

「界王神、弱っちいくせに僕に意見する気か」

 

 この忠言に機嫌を損ねたビルスが界王神にメンチを切るように凄む。

 

「ぅ……本来、破壊神と界王神は同格。破壊ありきで物事を考えるビルス様に生命を司る界王神である私が物を申せなくてどうするというのです!」

「お前――っ!」

 

 まさか完全に見下していた界王神が言い返して来るとは考えてもいなかったビルスが意地になって手を上げた。

 

「ビルス様」

 

 激昂しそうになったビルスの肩をウイスが掴む。

 従者であり、破壊神がその本質を外れた時に止める役割を持っているウイスの行動にビルスはたちまちに冷静さを取り戻す。

 

「…………すまない、感情的になってしまった」

 

 大きく深呼吸をして破壊神としての一面を取り戻したビルスは一言謝る。

 

「だが、警告したにも関わらず、再び時間を弄ったそいつらの罪が消えたわけではない」

 

 話を見守っていたブルマ達も一度は安堵したが、続くビルスの言葉に体を強張らせる。

 

「ですから、それは」

「いいから聞け」

 

 悟空達が時間移動をした理由を言おうとした界王神を遮るビルス。

 

「僕もブラックとかいう奴がしたこと、ザマスの目的を知っている。間接的に聞いている話だけでも件の界王神見習いが起こした凶行は決して許せる行為ではなく、破壊神に代わって止めたことは評価しよう」

 

 そして界王神二人の意見もあるので今回だけは見逃す、と付け加えた。

 

「何度も時間移動を行っていた小僧がいないことも大きいがな」

 

 破壊神には時間移動をする術はないのだから、未来トランクスが自分の時代に残ったことも破壊をしない理由の一つである締め括ったビルスの横でウイスが口を開く。

 

「タイムマシンについても現存する物は部品に至るまで完全に破壊し、二度と製造・操作しないことです。言葉遊びで見逃すのは一度だけですからね」

 

 ブルマを見て言ったウイスは何らかの方法でタイムマシンを塵としてしまった。

 破れば自分はタイムマシンのように塵にされると実感したブルマも何回も頷く。

 

「僕をこんなに虚仮にしてくれたのは君達が始めてだ。もう顔も見たくないね」

 

 そう言って背を向けたビルスはウイスの肩に手を乗せた。

 

「ありがとう、ビルス様。破壊しないでくれて」

「ふん、一度は破壊しようとした相手に礼を言うなんて変な人間だね」

 

 奇特な人間だと鼻を鳴らしたビルスは、悟空に君は不思議な男だねと言ってウイスと共に去って行く。

 

「皆様、本当にありがとうございました。また改めてお礼に伺わせて頂きます」

 

 界王神は最後に深々と礼をしたゴワスと共に去る。

 

「ねぇ、孫君達。もう遅いし、疲れたでしょうかうち(カプセルコーポレーション)に泊って行ったら?」

 

 戦いの空気が消えたことにホッと安心したブルマが悟空達にカプセルコーポレーションに泊って行くかと聞く。

 

「僕、トランクス君と遊びたい!」

「悟天もこう言ってますし、どうしますかお父さん」

 

 トランクスと遊びたい悟天は悟空にまとわりつきつつも賛成の意を表明し、悟空の体を心配した悟飯も賛成しながら聞く。

 

「…………いや、家に帰ろう。二人とも、母さんが待ってる」

 

 だが、チチの顔が見たく、家族で過ごしたい悟空は礼を言いつつも家に帰ると言う。

 

「えぇ、そんな」

「構わんだろ、トランクス。好きにさせてやれ」

 

 残念がるトランクスの頭に手を置き、悟空を擁護したベジータ。

 

「ありがとうな、ベジータ」

「ふん、目障りだ。さっさと消えろ」

 

 ベジータに礼を言って、悟空達は瞬間移動をする為に寄り添った消えた。

 

「腹が減ったな。さっさと飯にするぞ、ブルマ」

「はいはい」

 

 消えた三人に見送り、盛大に腹を鳴らしたベジータに笑ったブルマが料理を用意する為に家に戻ろうとする。

 

「そうだ、トランクス。今日は一緒に寝るか?」

「ぶぅ、悟天と遊びたかったのに…………え、パパ、今なんて?」

「嫌ならいい」

「どうしちゃったのよ、ベジータ」

 

 歩き出しながら隣にいるトランクスに今日は三人で寝るかと聞き、トランクスは戸惑う。珍しいベジータの提案に振り返ったブルマが物凄く驚いた顔をしながら問いかける。

 

「俺にだって偶にはそうしたい時もある」

 

 しつこく絡んで来るブルマとトランクスの相手をしながら、ベジータは見上げた夜空を悟空も見上げているだろうなと理由も無く思った。

 

 

 




以上、ゴクウブラック編からビルス編、これにて完結です。


ゴジークス・ブルー
((25×25/1.5)50*)*3670(二人がゴッドの為、倍率が下がる)=76854333(7685万4333)
 ベジータが負傷しているので本来は
    ((18×18/1.5)50*)*3670(二人がゴッドの為、倍率が下がる)=39636000(3936万60000)
 に収まります。

合体ザマス 200*85000=17000000(1700万)

悟空とベジータはフュージョン+ポタラの合体では、ポタラが壊れることを知っているので即殺。
不死身だろうが太陽に焼かれ続ければ地獄だよって話。




次回予告

「他の宇宙にここまでの奴がいるとはな」
「ほっほっほっ、あなたほどの人は第6宇宙の暗殺者以来です。中々、楽しい戦いでしたよ」
「ジレンがやられた!?」


「ふ、フリーザ!?」
「さあ、私と闘いなさい孫悟空」

「界王拳20倍だ!!」
「――――まるでデジャブですね。あの時とここまで同じになるとは。しかし、ここから先は全く違う」
「凄ぇ、本当に凄ぇよ、フリーザ」
「さらばです、孫悟空」

孫悟空死す

「フリーザの力は破壊神をも大きく超えた領域にある。お主も神を超えるしかあるまい」
「超サイヤ人ブルー・界王拳20倍はオラの限界だ。多少のパワーアップしてもフリーザは超えられねぇ」
「言ったはずだ、神を超えろと。神の力を備えた己が化身と向かい合うのだ」
「戦いばかりの人生だったけど、アイツラを幸せにしてやりてぇ、一緒にいてぇって思ったんだ」
「お、お前は孫悟空!? フリーザに殺されたはずじゃ」
「今のオラは超サイヤ人ゴッドの力をサイヤ人を完全にコントロールしている。さしずめ、そうだな超サイヤ人4ってやつかな」
「互角―――いえ、このまま戦えば先に地球が壊れる。そうなれば、アナタはまた怒り、限界を超えて来る。ここは引いた方が無難ですね」
「オラももっと強くなって見せるさ」
「私はそれを更に超えて見せましょう」


ゴールデンフリーザ編、始まり――――せん。
作者のモチベーションが低下してしまった為、もしかしたら何時かは続きを書くかもしれませんが未来からの手紙はここで完結です。

未来チチから始まって、未来チチにて終わる。切りも良いかなと。

短い間ですが多くの方に読んで頂き、感想などありがとうございました。








殺伐とした話となってしまったので、次回作は金田一少年の事件簿で癒されるとしますかね。

ではでは。




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ベビー編
第三十一話 静かなる胎動




一度完結させておいてなんですが、ネタが降って来たのでベビー編が始まりました。





 魔人ブウとの戦いでゴジットのパワーを感じとったのはクウラだけではない。

 第7宇宙にある地球から遥か遠くの銀河を漂っていた宇宙船にいた存在もまたサイヤ人の気を感じ取り、長い眠りから目覚めた。

 

「サイヤ人……」

 

 まるで機械の赤ん坊の如き存在は、培養液に満たされた中で静かに怨念を吐き出す。

 

「おお、ベビー」

 

 その赤ん坊が浮かぶカプセルの前で、長過ぎる眠りから目覚めた復讐の化身の名を呼びながら老人――――ドクター・ミューが歓喜の声をあげた。

 

「エネルギーは既に溜まっておる。今、培養液から出してやろう」

 

 ドクター・ミューはカプセルを制御している制御盤を操作してベビーに繋がっているチューブを外していく。

 全てのチューブが外れて直ぐにカプセル内を満たしていた培養液が抜かれていく。

 

「今こそ憎きサイヤ人に復讐を。そして母なる故郷であったツフル星を取り戻すのだ」

「…………まだだ」

 

 シュー、と音を立てて開いたカプセルから一歩出て来たベビーがドクター・ミューの言葉を遮る

 

「さっきの力。今のままでは勝てない」

 

 遥か離れた南の銀河まで震わせたほどの力には今のベビーでは絶対に勝てない。

 

「何を言っている。お前は私が作り出した最高傑作なのだぞ!」

「愚か者め」

 

 喚くドクター・ミューの顔面を瞬間移動したかのような速度で移動して掴むベビー。

 

「貴様はあの凄まじいまでの力を感じなかったのか?」

 

 空中に浮かぶベビーに顔面を掴まれて持ち上げられているミュ-は何とか降りほどこうともがくがビクともしない。

 

「力、だと?」

「その様子では感じ取れなかったようだな。やはり貴様は失敗作だったようだ」

「べ、ベビー! 生みの親に向かってなんたる口の聞き方を……!!」

 

 顔を手で覆われているのでドクター・ミューは自分の言葉を聞いたベビーがどんな表情になっているかに気付けない。

 

「そう、ベビー。貴様が名付けたその名からしてありえない」

 

 ドクター・ミューには万力の如く思えるベビーの手に更なる力が込められる。

 

「赤ん坊だと? ふざけるな! よりにもよって最も無力な存在の定義を俺に付けるなどあり得ぬ!」

「ぉ、おぉぉぁっ!!?」

 

 軋む。軋んでいく。

 ミシミシと音を立ててベビーの手がミュ―の顔にめり込んでいく。

 

「貴様は俺が作ったマシンミュータントに過ぎない。被造物が創造主を定義するなど百万年早いのだ!」

 

 グシャリと剛力の如き力で握り潰されるドクター・ミュー。

 

「今は勝てない。だが、何年掛かろうとも必ず殺してやる。待っているがいい、サイヤ人共」

 

 手の中にあるドクター・ミューを構成していた機械の部品達がバラバラと落ちていくのを見下ろしたベビーは、屑鉄となった元の存在など最初から無かったかのように頭を失った体を投げ捨てて、遥かな銀河の先にいる敵を見据える。

 

「貴様らを根絶やしにし、全宇宙ツフル化計画を遂行するのだ」

 

 最早、誰も覚えていないほどの遠い過去の遺物が動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ゴクウブラックとの戦いから三年が経った。

 パオズ山から少し離れた人の来ない荒れ地に二人の人物がせわしなく動いている。

 

「また強く成ったな、悟飯」

「お父さんにはまだまだ及びませんよ」

 

 同じ胴着を着た悟空と悟飯が向かい合って構えを取り、ニヤリと笑い合った直後に常人の目ではとても見えない速度で動き出した。

 

「はっ!」

「ふっ!」

 

 攻撃と防御が入れ替わり、脆すぎる足場の事など考慮の外にある二人の体が真っ直ぐに相手に向かって飛ぶ。

 それこそ十メートル以上を助走もなく跳び、重力を力技で捻じ伏せた二人の体が中間地点で容赦なく激突する。

 

「うおおおおっ!」

「おああああっ!」

 

 牽制の、あるいは距離を測るようなジャブのような攻撃は無い。互いに必殺の意を込めた拳が、衝撃波すら発しながら交差する。

 

「くっ」

「ぬっ」

 

 悟空が咄嗟に傾けた頭部を、悟飯の脇を、両者の拳が掠めて鉄槌のごとき拳が突き抜ける。拳の端から迸る力が、地面と空中をそれぞれ抉った。

 突進の勢いのまま、二人の体が激突する。数トンにも達する衝撃を、揺るがず二本の脚で受け止める父と息子。しかし、地面は二人のように受け止めらずに、中心にボコッと一メートルは陥没した。これを見れば激突の衝撃が如何ほどのものか見ている者にも理解できるだろう。

 激突の衝撃波が無尽蔵に撒き散らされる。至近距離で睨み合う。前進に使ったエネルギーは初撃で完全に失った。

 

「そらっ!」

 

 悟空のアッパー気味の拳が悟飯の鳩尾を狙って放たれるが手の平で受け止められる。

 ドシン、と悟飯を中心として低く大きな音を広がり、悟飯の足が威力に押される様に僅かに後ろへと動く。

 

「ちっ」

 

 攻撃を受け止められたことを見て取った悟空は舌を鳴らすと、腕を戻す勢いのまま体を捻り左足の回し蹴りを放つ。

 が、悟飯の腕によって防がれた。

 左足を戻す間も惜しんで、上体を後ろに倒して両手を地面に着け後転。同時に振り上げた右足の爪先で悟飯の顎を狙ったが、軽く顔を逸らすことで躱された。巻き起こった風で悟飯の髪が舞い上がる。

 

「はぁぁっ!」

 

 風に自ら踏み込んだ悟飯の重い拳が着地したばかりの悟空の腹を貫き――――。

 

「オラの勝ちだ」

「…………僕の負けですね」

 

 悟飯の拳は残像を突き抜け、横合いに出現した悟空の拳が頬に触れる寸前で止まっている。

 

「初歩的な技に引っ掛かったな」

 

 悟飯が負けを認めると、悟空はニヤリと笑って拳を引く。

 

「まさか残像拳を使うなんて予想してませんでした。妙に呆気ないなとは思ったんですよ。いや、その前からお父さんにしては攻撃が生温かった。もしかして全て作戦だったんですか?」

「全部が全部ってわけじゃねぇぞ」

 

 そこまで言って一度間を置く。

 

「悟飯の反応スピードなら最後に飛び込んで来れるって考えた。後はそこに罠を仕込んでおけば一発だ。ここまで上手くいくとは思わなかったけどな」

 

 最終的な仕留め方とある程度の想定通りに進んだが、それも悟飯の強さを見込んでこそ。

 

「叶いませんね、お父さんには」

「いいや、悟飯も中々のものだったぞ。全然、体も鈍ってねぇし、ヒヤリってすることも多かった」

「ビーデルと組手は続けてましたから。ただ、やっぱり勘は鈍っているかもしれません」

 

 今も鍛錬と実戦を繰り返している悟空に比べれば、体はともかくとして実戦の勘が鈍っていることは先の罠を見抜けなかったことも明らかなので、悟飯は少し困ったように頭を掻く。

 

「普通の生活の中じゃ、それも仕方ねぇさ」

 

 悟空のように実戦の機会を求めて界王に戦う場はないかと聞きに行けるような方法もないのだ。

 第一、決して戦いが好きなわけではない悟飯の性格的に方法があったとしても選ばないだろう。

 

「もう陽も暮れて来る。うちでメシは食ってくのか?」

 

 悟空は地平線に消えて行く太陽を見上げて悟飯に聞く。

 

「いえ、ビーデルが待っているので一度そっちに寄ってから家に帰ります」

 

 悟飯はハイスクールをトップの成績で卒業し、ビーデルと結婚した。

 家は歩いて直ぐのところにあるので離れた感じはしないのだが、やはりこういう時に実感する。

 

「大学はどうだ?」

「大変ですけど、なんとか。多少、ストレスも溜まりますけどお父さんがこうやって相手をしてくれるので助かってます」

「オラとしては本当に助かってるけど」

 

 そう言ってくれるなら悟空としても気を使わなくて済む。

 

「僕としては実戦の勘を取り戻したいです。また何時どんな敵がやってくるか分かりませんから」

「物騒な奴らの相手はオラやベジータに任せておけって。悟飯は自分の家族のことを大事にしとけ」

「大事にはしてますよ。だけど、お父さんは僕達に気を使い過ぎなんですよ」

「そんなつもりはねぇんだけどな……」

 

 悟飯としては、未来から帰って来た悟空が家族のことを常に気にし過ぎで、どこか負い目を感じているように思えて、悩みがあるのならば話してほしいと思っている。悟天やチチも気づいている。

 悟空は気を使われていることを理解しながらもゴクウブラックの所業が自分の所為だという思いがあって言えるはずもない。

 

『悟空! 聞こえるか!!』

 

 互いに気を使って気まずい雰囲気になりかけたところで、二人の頭に直接声が響いて来る。

 

「界王様か? ちょっと声が大きいぞ」

『一大事なんじゃぞ! 少しは慌てんか!!』

 

 現実の声ではなく、テレパシーのように直接二人の頭に声を届けた界王は悟空の注文に唾でも飛ばしてそうな剣幕である。

 

「何に慌てればいいんだよ」

 

 用件も言わない内から理不尽な要求をしてくる界王に辟易とした様子の悟空に悟飯が苦笑する。

 

『ボージャックが復活したんじゃ』

「…………誰?」

『嘗て銀河を荒らし回っていたヘラー一族の生き残りじゃ。4人の界王によって封印されていたが何者かによって南の界王が殺されたらしく、復活したようなのだ』

 

 へぇ、と特に興味もなさそうな悟空は生返事を返す。

 

「封印ってことは、ブウよりも強いんかソイツ」

『蘇ったセル以下じゃろうな。あれ? なんで儂、こんなに焦ってたんじゃろうか』

 

 当時は必死扱いて他の銀河の界王を協力してボージャック一味を封印したが、頼めば大体なんとかしてくれる悟空の強さは魔人ブウを遥かに超えた神の域にある。

 今更、ボージャックが蘇ったところで焦る必要も無かった。

 

「用件ってのは、そのボージャックってのを倒せばいいんか?」

 

 話の流れ的にそうとしか考えられないが一応聞いておく。

 

『ああ、南の界王が殺された調査はこちらでするから退治だけ頼めるか?』

「いいけどよ、こういう時の破壊神なんだろ。ビルス様がいるじゃねぇか」

『お、お前、あの方を動かすなどとんでもないことだぞ!』

「オラならいいのか?」

『散々、儂の星を修行場所として貸してやっとるだろうが。しかもタダ飯まで食っといて、儂の頼みは聞けんというのか』

「そんなこと言ってねぇって。界王様には感謝してるよ」

 

 都合良く使われるのは気分が良くないのでビルスの名前を出してみたが藪蛇だったらしい。

 

『昔ならともかく、今の神の域に達した悟空なら大して苦戦もせんだろう。今までの貸しを返すと思って行ってくれ』

 

 そう言われるとゴクウブラックの一件で神に対して思うところのある悟空には複雑なところ。

 

「で、そのボージャック某さんはどこにいるんだ?」

『南の銀河の…………って、言っても分からんだろ。こっちに来い。直接気配の場所を教える』

「分かった」

 

 切れた念話に悟空は悟飯を見る。

 

「お母さんには僕から言っておきます」

 

 悟飯は幾ら実力差があったとしても時間がかかる可能性もあるのでチチに伝えておくと請け負った。

 

「悪いな。晩飯までには戻るつもりだけど、戻れなかったら先に食べて寝といてくれって伝えてくれ」

「分かりました。お父さんも無理はしないで」

 

 心配する悟飯に悟空は親指を立てて瞬間移動でいなくなった。

 

「あ、流れ星」

 

 悟空を見送った悟飯が家に帰ろうとすると、空を一筋の流れ星が流れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日前に西の都近くに墜落したという宇宙船がカプセルコーポレーションの研究施設の一つに運ばれた。

 

「無人で落ちてきたのに地上と船体に被害が少ないのは自動運転の機能でもあるのかしら」

 

 大きさが大きさなので、西の都の外れにある研究施設に運ばれた宇宙船を見に来たブルマは、現状分かっている範囲を羅列しているだけの解析データが書かれた紙をペラペラと捲る。

 

「地球のよりかは上だけど、ナメック星やサイヤ人達が使っていたものに比べれば数段落ちる感じか」

 

 各所で作業員が取りついている船体を見上げたブルマはデータから総評を下し、近くにいた主任研究員を呼ぶ。

 

「本当に誰も乗ってなかったの?」

「嘗ていた形跡は見られますが、食料や衣類など地球人であれば必要と思われる物資がどこにもありません。宇宙人がそれらを必要としないのであれば別ですが」

 

 殆ど地球人と変わらないサイヤ人を例外として、例えばナメック星人は水さえあれば生きていけるピッコロに聞いたことがあったブルマは少し考えた。

 

「乗員は何らかの理由で宇宙船を下りたけど、自動運転で進んでいたら地球まで来ちゃったって感じ?」

「恐らく」

「どこの星から来たかとかは分かる?」

 

 先代の神が地球にやってきた宇宙船を改装してナメック星に向かった際、着陸は音声認識で指示しただけで後は自動で宇宙船が行ってくれている。

 乗員が何らかの理由でいなくなって、進んでいたら地球があって勝手に着陸してしまったと考えるのが自然だった。

 

「現在調査中です。何分、言語体系が違いますので解析には時間がかかるかと」

「ナメック星のとは違うの?」

「また別の言語でしたので参考にはならないかと」

 

 ナメック星の言葉は従者であるポポがある程度知っていたから解析に苦労しなかったが、どうやら今度はそうはいかないようである。

 

(ベジータなら知ってるかしら?)

 

 地球人からすれば宇宙人の部類に入るサイヤ人のベジータは今では地球に居ついているが、嘗ては宇宙の広範囲を移動していたと聞いている。

 もしかしたら見たことがあるかもしれない可能性もあるので、一度見てもらうのもいいかもしれない。

 

「まあ、最終手段だけどね」

「は?」

「こっちの話」

 

 毎回毎回困ったからといって頼っていては技術が向上しない。

 別に時間が無いわけでもないので、解析技術を向上させる為にもベジータに頼るのは最後の手段とするべきである。

 

「汚染物質とかはないみたいだし、中に入ってもいい?」

 

 真っ先に検査された中に疫病の類の元となるウイルスや汚染物質の類は検出されていない。

 

「構いませんが、警備員を呼びますので少しお待ちを」

 

 カプセルコーポレーションの社長であるブルマを、まだ未知が多い宇宙船に一人で入らせるにはいかない。

 研究者である自分達では護衛にはならないので、主任研究員はブルマの傍を離れて警備員を呼びに行った。

 

「平気平気。なんかあったら呼ぶから」

 

 一度徹底的に検査されているのに危険も何もないだろうと、警備員を待つ気もないブルマはさっさと白衣を揺らして宇宙船の扉を開けて中に入る。

 

「操縦席はあっちかな」

 

 人がいない家は直ぐに傷むという。宇宙船にもその理論が当て嵌まるのかは分からないが、なんとなく無人であったことは疑わしいと思いつつ当たりをつけて進む。

 

「あんまり傷んでいる感じもしないし、本当に人はいなかったのかしら」

 

 壁を触っても傷んでいる感じはあまりしない。

 

『勘が良い』

「誰っ!?」

 

 と、ブルマは何かの気配を感じて振り返るが誰もいない。

 

「気にし過ぎかし……っ!?」

 

 ら、と続けようとして再び振り返った時には口が何かに覆われ、体に何かが入ってくる異物感にブルマの意識は一気に闇に落ちていく。

 

「その体、使わせてもらうぞ」

 

 悪意は静かにその鼓動を強めていく。 

 

 

 




実はメタルクウラ編は本来はベビー編になる予定だったのですが、その後のゴクウブラックやザマスと絡めるのが無理だったので予定変更。
ですので、その名残が序盤に残っています。

前章より3年経過し、ブウ編より4年が経過していることになります。

とっくの昔にビルス様は起きて行動しているので神と神はないですが、さてどうなることやら。

南の界王が何者かに殺され? ボージャック一味が復活。い、一体誰がそんなことを……!!


次回 『第三十二話 忍び寄る牙』



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第三十二話 忍び寄る影


ボージャック復活にも意味があったお話。



 

 

 

 南の銀河でゴジットのパワーを感じ取ってベビーは、その時のパワーを超えなければならないとドクター・ミューの部下であったリルド将軍らにエネルギーを集めさせていた。

 リルド将軍の強さは魔人ブウにも匹敵する。

 世が世ならば伝説にも成れたであろうマシンミュータントの命運は、たった一人の手によってあっさりと尽きた。

 

「破壊」

 

 魔人ブウと同等の強さを持ったリルド将軍は、破壊神ビルスの破壊の力によってこの世から呆気なく消滅する。

 

「ん? どうやらあの星が本体だったようだね」

 

 リルド将軍の本体である惑星M2も直後に消滅していくのを宇宙で見届けたビルスは意外そうな表情を浮かべる。

 

「マシンミュータントと呼ばれる機械生命体の一種のようです。出来れば、破壊する前にエネルギーを集めていたその目的を知りたかったのですがね」

 

 ビルスの隣で惑星の消滅を見届けたウイスとしてはマシンミュータントの目的にこそ興味があったのだが、破壊してしまっては問い質すことも出来ない。

 

「界王神の奴が言っていたクウラとかいう奴と一緒だろ」

「サイヤ人の復讐、ですか? しかし、あれとは別口のようですが」

「破壊した奴のことなんてどうでもいいだろ。ウイスは気にし過ぎなんだよ」

 

 本来ならば後数年は寝ているはずだったところを起こされ、寝起きの機嫌の悪さを引きずっているビルスは細かいことを考えたくはないようだ。

 他の宇宙と比べたら寝てばかりの破壊神のお守りをしなければならない天使のウイスは、やれやれとこれ以上はこの話題を蒸し返しても機嫌が悪くなるだけだと判断して諦めた。

 

「超サイヤ人ゴッドがいるという地球に行くぞ」

「はいはい」

 

 起きた理由は超サイヤ人ゴッドと戦うこと。

 地球に着く直前に時空振を感じ取って破壊神としての仕事を行わなければならなくなったが、この時の問題はビルスとウイスがいなくなった後に現れた者にこそあった。

 

「…………あれが神。それも破壊を冠する破壊神か」

 

 リルド将軍から採集したエネルギーを貰う為に近くにいたベビーは運良くビルス達に気付かれないままその力を目の当たりにした。

 

「俺の感知外から遥かに離れた場所でも、僅かでも近づけば気づかれていたかもしれん。あれが神の領域か」

 

 ツフルの知識から破壊神のことは知っていたが、誇大した伝説に過ぎないと思っていた。

 現実は伝説をも超える力を有していたことを辛くも証明してしまった。

 

「リルド将軍から送られて来たデータはないに等しい」

 

 末期の際に送られて来たデータから破壊神の存在と、データでは計れない神の領域を知る。

 

「全宇宙ツフル人化計画の前には、破壊神はサイヤ人以上の脅威と見るべきだろう」

 

 サイヤ人への復讐と同時に全宇宙の生物に卵を産みつけ洗脳して部下とする「全宇宙ツフル人化計画」の為には、いずれビルスも倒さなければならない。

 

「神の力は感じ取れない。ならば、感じ取れる者の力を我が物とすればいい」

 

 機械は慌てない。コンピューターは動揺しない。

 機械生命体であるベビーに焦りはなく、足りないのならば余所から採取すればいい。エネルギーだってそうしているのだから今更気にするはずもない。

 

「可能ならば神そのものをこの身に取り込むことが最善。マシンミュータント達よ、エネルギー採集を続けながら神に類する者達を捜索せよ」

 

 観測出来ない神の力。手っ取り早く神の力をその身に取り込むことが出来れば観測できるようになるだろうと、南の銀河中にマシンミュータントを放ってエネルギーを集めながら探索を開始する。

 メタルクウラとの激闘を終え、ナメック星のドラゴンボールで地球が復活したばかりの話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 既に夜が深まった時間。

 気の早いものならば床についてもおかしくはない時間帯であったがベジータは風呂に入った後、自室のベットで枕元につけた電球のみで本を読んでいた。

 

「つまらん」

 

 大して面白くない週刊誌を読み終えたベジータはパタンと本を閉じると、端的に所感が口から零れ落ちる。

 つまらなさ過ぎて週刊誌をゴミ箱に投げ捨てたところで部屋の扉が開いた。

 

「あら、起きてたのベジータ」

 

 ベジータがいる部屋は正確にはベジータだけの部屋ではない。つまりはブルマとの共用の夫婦の寝室である。

 ブルマは研究者として時には昼夜関係なく行動しているのでベジータが先に寝てしまうことも多い。

 

「偶々だ。それよりも宇宙船はどうだった?」

 

 ブルマを待っていたのだが素直に言うベジータはベジータではない。

 

「昔、ベジータ達が使ってたのと比べれば数段劣るけど、一科学者として解析のし甲斐があるわ」

「そうか」

 

 そう言って白衣を脱いでソファーにかけて笑うブルマにベジータは頷きを返す。

 

「それよりも、ね」

 

 ベットに上がったブルマがベジータにしな垂れかかってくる。

 

「今日、いい?」

「ちっ、仕方ない」

 

 舌打ちをしながらも割と前向きなベジータは本を横に置いて顔を上げたところでブルマの違和感に気付いた。

 

『気づいたか。流石はサイヤ人の王子といったところか』

「ブルマっ!? ぐっ……ぁあっ!!」

 

 触れようとした手が止まったが、ブルマの手がベジータの首を絞めつける。

 一般的な地球人の女と変わらない筋力のブルマの手を振り解こうとするが、万力のように締まって来て果たせない。

 

「何ッ!?」

 

 ベジータはこのままではまずいと超サイヤ人ブルーになって拘束から抜け出そうとするが、ブルマの全身から気のオーラが迸っているのを見て驚愕する。

 

「気のオーラだと!? き、貴様…………ブルマじゃないな!!」

『頭の悪い猿だ。我が星を奪った貴様の親父もそうだった』

 

 明らかにブルマのものとは違う声と力。

 

「まさかツフル人!? 」

 

 生まれ故郷であるサダラを飛び立ったサイヤ人がツフル星に降り立ち、その星にいたツフル人を壊滅させて奪って名前を惑星ベジータとした。ベジータが生まれる前の出来事である。

 ベジータ王が奪った星はただ一つ、ツフル星だけだからベジータにも直ぐに分かった。

 

『そうだ。貴様ら憎きサイヤ人に復讐する為にやってきたのだ』

「ブルマの体に乗り移ったってわけか……! 寄生虫のような野郎が」

『なんとでも言うがいい。まずは、お前のパワーを頂くぞ!』

 

 接触状態のブルマの手からベビーの種子が皮膚を伝ってベジータの中へと入ってくる。

 

「ぬっ!? がっ、ぐぁああああああああああああああ?!?!?!?!」

 

 抵抗も虚しく体の中に入ってくる異物感にベジータが絶叫する。

 

「貴様如きが俺を支配できるなどと思うなぁぁ―――――っ!!」

 

 しかし、そこは神の域にまで至ったベジータ。

 超サイヤ人ブルーのオーラを極限にまで高めてブルマごとベビーを弾き飛ばす。

 

「きゃあっ!?」

 

 弾き飛ばされたブルマは壁に叩きつけられ、そのまま床に倒れ込んだまま動かない。

 

「神の気を宿そうとも所詮は猿だということだ」

 

 ブルマが離れたというのにベビーの声が聞こえてくる。

 

「どこだ!」

「俺は君に寄生するだけでなく支配するのだ。つまり、君になるわけだよ。ツフル人にな」

 

 ベジータの頬にベビーの顔が浮かび上がり、ニタニタとした気持ち悪い笑い声を響かせる。

 

「支配するだと、このベジータ様を」

「もう手遅れだ。どうだね。思い通りに体が動かんだろう」

 

 頬にベビーがいると分かって殴ろうとした手はベジータの意志に反してピクリとも動かない。

 

「悔しいか。これが我々ツフル人の貴様達への復讐だ。サイヤ人は俺の奴隷となる」

「この虫けら目。俺様の気で吹き飛ばしてやる」

「無駄だ、ベジータ」

 

 気合を入れようとしたベジータは、やがてその意識すらも遠のき始めていたがベビーに支配されるぐらいなら死を選ぶ。

 

「いいのか? その気功波は妻を向いているぞ」

 

 未だ体の自由が効かないベジータは気功波を作ったが、その手は知らずに床に倒れたままのブルマに向けられてしまう。

 

「下手な抵抗はしないことだ。腕を動かすよりも気功波を撃つ方が容易いのだからな」

「貴様ぁ――っ!!」

 

 それが心の隙となった。

 

「この俺の内側で眠るがいい。貴様の体は有効に活用してやる」

 

 ベジータの反抗も虚しく、ブルマが人質に取られては成す術もない。

 

「貴様の望み通り、孫悟空は倒してやる。この俺がな」

 

 その言葉を向けてやると、ベジータの意識はベビーによって奥底へと封じられた。

 

「ふぅ、腐ってもサイヤ人の王子、後少し力が強ければ弾かれていた。ブルマの体を利用できたことも含めて運が良かったな」

 

 ベジータを完全に意識の奥底へと封じたことを確信したベビーは一つ息をついた。

 ベジータの意識を読めばブルマでなければここまで容易に触れることは出来なかったことが分かり、余裕は見せていたが完全に乗っ取れたのは僅かにベビーのパワーが上回ったからに過ぎない。

 

「南の界王を吸収して神の力を手に入れていなければ危なかったな」

 

 地球に向かう段取りを付ける前に運良く南の界王の存在を知り、その力を取り込めたことも大きい。

 神は神を知るというが、南の界王を吸収したことで神の力をその身に取り込んでいなければ、あそこまで容易にベジータを支配することは出来なかっただろう。

 

「安心するがいい、ベジータ。貴様に向けた言葉は嘘ではない」

 

 己の奥底へと封じ込めたベジータへと向け、手向けの言葉を送る。

 ベビーが操る体はこのベジータ一つで十分。ならば、ベジータとブルマの記憶を読んでもう一人のサイヤ人を知ったベビーは良いことを思いついた

 

「カカロット、地球の名では孫悟空とかいったか。最強のサイヤ人。一人ぐらいはこの手で殺しておかなければな」

 

 サイヤ人の体で全宇宙ツフル化計画を行うことが最大の復讐となる。それがツフル人を滅ぼしたベジータ王の息子の体ならば尚更。

 しかも、サイヤ人の体でサイヤ人を殺すなど、こんな面白い見世物があるだろうか。

 

「――――父さん!」

 

 ゴッドにも成れないトランクスだが、家の中にも関わらずベジータの気がブルーに成って感じ取れなくなったことに何か異変があったのかと急いで部屋にやってきた。

 

「どうしたんですか!」

 

 扉を開いての第一声は荒れ果てた部屋を見てのものだった。

 唯一の光源だった枕元の電球も壊れ、室内はトランクスが開けたドアから入る廊下の灯りのみ。

 暗闇で見えづらいが家具が一切合体飛び散らかっている。何かの異変があったのは間違いない。だからこそ、部屋の中央に立つベジータの顔にまで意識が向かなかった。

 外見はベジータとほぼ同じだが、髪の色が銀髪に変化し、額と顎、眼球に胎児形態の時に似たラインが入っていることに気付かなかった。

 

「何を勝手に入ってきている、トランクス」

 

 冷ややかなベジータの声に、室内に足を一歩踏み入れようとしたトランクスの身を竦ませた。

 トランクスにとって不運だったのは廊下の灯りが壁際に倒れているブルマを照らさなかったことと、ベジータの変容に気付けなかったことにあった。

 

「十二にもなって親の部屋に勝手にはいるとは何事だ!」

 

 やべっ、と怒鳴られたトランクスは思いつつ肩を竦める。

 ベジータが近づいていき、そして――・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 手合せした翌日、実家にやってきた悟飯は昼食を取りに戻って来ていた悟空の姿を見て安堵の息をついた。

 

「よかった、お父さん。なんともなかったんですね」

「ボージャックのことか? そうでもなかったぞ」

 

 大きな唐揚げを口に含んでいた悟空は向かいの席に座った悟飯に大きく首を横に振った。

 

「超能力みたいなのを使う奴がいたりとかして一回逃げられるしよ」

「本当ですか?」

「そいつは割と直ぐにやっつけたんだけどよ、ボージャックの奴は自分の味方ごと攻撃したり周りを巻き込もうとして面倒臭かったんだ」

 

 要は実力では悟空に敵わないと早々に悟って、なんとか逃げようと様々な策謀を張り巡らせたらしい。

 

「強さ自体はセルよりも大分下だけど、悪知恵みたいなもんは上だったんじゃねぇか」

 

 会話を続けられる程度の食事スピードながらも、げんなりとした様子の悟空を見るに相当方法を選ばなかったのだろうということが悟飯にも分かった。

 

「探して捕まえて、悪さ出来ないようにしてから界王様に引き渡して帰って来た時には真夜中で、晩飯には全然間に合わなかったんだ」

「それは……」

 

 悟空が界王の星に向かったのが夕飯前で、帰って来たのが真夜中なのだとすればかなりの時間を取られたことになる。

 界王のお蔭で居場所は直ぐに知れたはずなのだから、それだけ捕まえるのに時間がかかったことを示していた。

 

「チチに伝言伝えておいてくれてサンキューな。まあ、その甲斐はあんまなかったんだけど」

「え、なんでですか?」

「オラが帰ってくるの待ってたんだよ、チチは」

 

 チチに伝言を伝えた時の反応から多分、そんなことになるだろうなとは思ったけど想像通りの展開になってしまったようだ。

 

「お母さんらしいというか…………ところで、南の界王様が殺された件については何か分かったんですか?」

 

 昔からの二人を良く知る悟飯だからこそ苦笑するに留め、昨日から気になっていた南の界王が殺された件について聞いてみる。

 

「それが今日になってから聞いてみても芳しくないらしい」

 

 漬物を食べた悟空も気になっていたみたいで渋い顔をする。

 

「ただ、南の銀河ではここ数年マシンミュータントっていう機械生命体ってのが暴れてたらしいから、そいつらが犯人なんじゃないかって話らしい」

「機械生命体というと、誰かに作られたんでしょうか」

 

 暴虐を働いたというマシンミューンタントには機械と名が付くのだから誰かが作った物ではないかと悟飯は考えた。

 

「宇宙には多種多様の生物がいるらしいから、一概に誰かが作ったのかどうかも界王様も分かんねぇってさ」

 

 サイヤ人を除けばフリーザ軍ぐらいしか宇宙人を知らないので悟飯の狭い知識だけでは宇宙は計れない。

 

「界王様には手に負えねぇ奴がいれば呼んでくれていい言ってあるから、また何かあったら連絡が来るはずだ」

「その時は僕もお手伝いしますよ。偶には実戦に出ないと勘が鈍って鈍って」

「はは、そん時はまた頼むわ」

 

 笑って受け流されたが、恐らく悟空は悟飯を呼ばないのだろうなと分かってしまって、やはり気を使っていることが分かっているだけに哀しかった。

 

 

 

 

 

 その間にもベビーの魔の手はカプセルコーポレーションを中心にして全世界へと広がって行く。

 静かに、誰にも知られることなく。

 

 

 




ベビー、神の力を知る。
ベビー、南の界王を取り込む。
ボージャック、復活。
悟空、ボージャック退治に向かう。
ベビー、ブルマに憑りつく。
ベビー、ブルマからベジータに取りつく。更にトランクスにも。

もしも南の界王を取り込んでいなかったらベジータに追い出されていた。
もしも悟空がボージャック退治に行っていなかったら、ベジータの気を感じ取って瞬間移動でやってきていた。

ベビー、大勝利!!

次回 『第三十三話 復讐の牙』


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第三十三話 復讐の牙

お気に入り件数が増えない今日この頃。


 

 

 朝、起きた瞬間から孫悟空は空気がおかしいと感じていた。物理的に息苦しいとか、何か変な匂いがするわけではない。

 

「悟空さ、胴着なんて着てどうしただ?」

 

 昼夜関係なく健啖家の域を遥かに超えた量を食べる悟空と悟天の為に大量の朝食の用意をしていたチチは、本来ならば洗濯して綺麗にしてある作業服に着替えて食卓につくのだが、この日は胴着を席についた悟空に目を丸くする。

 

「どうしたの、父さん?」

 

小さい頃の悟空同様に成長の遅い悟天が欠伸を掻きながら起きて来て、チチと同じく悟空の胴着姿を見て目を丸くする。

 

「ん、なんとなくな」

 

 朝ご飯を食卓に運ぶチチにももう一度聞かれたが、悟空も明確に説明できるわけではない。

 

「今日はオラが畑に行こうか?」

「大丈夫だって。ちょっと近くを回って何もなければ畑に行くさ」

 

 普段と違う悟空の様子からチチは今日は自分が畑に行こうかと提案するが、悟空も明確な何かがあって胴着を着ているわけではない。

 

「チチには家のこともやってもらってるし、畑のことはオラに任せておけ」

 

 この違和感の正体は恐らく気の所為であろうと考え、食後に近くを回って何も異変がなければ畑に向かうつもりだったので自分を納得させられれば大丈夫と悟空は自分に言い聞かせた。

 

「無理してねぇだか? 偶には悟空さも羽目を外して遊んで来るといいだよ」

「全然、無理なんかしてねぇって。チチの方こそ、修行しているオラと違って自分の時間がないだろ。遊んできたらいいって」

「じゃあ、二人でどこかに行って来たら?」

 

 お互いに譲り合っていると、眠気と食欲が戦っている悟天が能天気な顔で譲歩案を出した。

 

「僕は学校があるけど、畑のことなら帰って来てからでも手伝うし、家のことは二人でやったら直ぐに終わるでしょ? 僕のことはいいし、二人でピクニックでも行ってきたらいいよ」

「悟天……」

 

 何時までも子供だと思っていたら親のことを考えて物を言うようになった次男に、悟空もチチも目頭が熱くなった。

 

「んだ、ピクニックに行くなら悟天ちゃんも学校を休んで一緒だぞ」

「いいよ、僕は」

「何言ってんだ。言い出しっぺが行かなくてどうすんだ」

 

 感動した両親が勝手に話を纏めているが、悟飯とは違って最近少し反抗期気味の悟天としては親と一緒にピクニックなど恥ずかしい年齢に突入しているのだ。

 げんなりした気分で悟天は食事も進まない気もしながら十人前は食べつつ、もう一度両親を説得しようとしたところで家のドアが外からノックされた。

 

「誰だ?」

「この気はトランクス君だよ。どうしたんだろ」

 

 パオズ山にある孫家には滅多に来客はないが、感じた気からトランクスのものであると悟天には分かる。

 

「すみません、トランクスです」

「はいは~い、今開けますよ~」

 

 あれで良家の子女であるトランクスは人の家を勝手に開けるような真似はしない。

 なので、感じた気の通りに名乗ったトランクスの為にドアに近かった悟天が開けに行く。

 

「やあ、悟天」

「…………久しぶり、トランクス君」

 

 開かれたドアの向こうで年の中でも背の高い方のトランクスと、年の中でもかなり低めの悟天。

 一歳差とはいえ、頭二つ分の差が開いているので悟天はトランクスの近くに立ちたがらない。

 

「今日はどうした、トランクス」

 

 成長が遅いのは遺伝的なものなのか、気にしている様子の悟天に申し訳ない悟空が声をかけようとして、トランクスに微かな違和感を覚えた。

 見た目、気、何にもおかしいところはない。

 

「悟天、トランクスから離れろ!」

「え?」

 

 が、悟空の戦士としての勘が立ち上がらせて悟天にトランクスから離れろと叫ばせていた。

 

『俺に気付くか、サイヤ人。だが、遅い』

 

 悟天がどうしたのかと振り返ったのが大きな隙だった。

 

「がっ、ぐぁあああああああああああああああああ…………っ?!!!!!」

 

 普通のトランクスが浮かべることのない邪悪な笑みを浮かべて悟天に抱き付き、完全に油断していたこともあってあっさりと種子を植え付けられる。

 悟天が抗おうとして超サイヤ人になるが、同じく超サイヤ人になったトランクスによって拘束されているので振り解けない。

 

「悟天!?」

「下がってろ、チチ! なにをやってるんだ、トランクス!」

 

 叫ぶ悟天に向かってチチが飛び掛かろうとするが、明らかな異変に咄嗟に手を出すことが出来ずにいた悟空が抑えて異様な気を発するトランクスに向かって飛び掛かった。

 

「させません!」

「なっ!?」

 

 一発殴るぐらいは勘弁してくれと念じながら拳を固めたところで、家の壁が壊されてトランクスに躍りかかろうとしていた悟空に誰かが突撃してくる。

 

「悟飯っ!?」

 

 真横からの奇襲に間一髪で防御が間に合ったが、その相手が悟飯だったことに動揺して悟天に種子が根付く時間を与えてしまう。

 

「なんで――」

「サイヤ人は須らくベビー様の下僕となるのです」

「悟飯はそんなこと言わねぇし、別人の気も混じってる。オメェは何もんだ!?」

 

 防御はしたが反対側の家の壁を壊しながら外に出てしまった悟空は、先程のトランクス同様に悟飯が決して浮かべるはずの無い邪笑と言葉に気のオーラを纏って弾き飛ばす。

 

「人のことを気にしている余裕があるんですか」

 

 悟飯を弾き飛ばして空中で距離を取ったところでそう言われ、ハッとして地上の家を見ると悟天の気が濁って行く。

 

「チチだけでも――」

「瞬間移動はさせませんよ!」

 

 瞬間移動のルーティンである額に指を当てた瞬間、悟飯が突撃してくる。

 

「ご、悟天…………な、何をするだ!?」

 

 明らかに全力で殺しに来ている悟飯の拳を辛うじて避け、地上からも上がって来たトランクスの奇襲を受けたところでチチの悲鳴が聞こえた。

 

「逃げろ、チチ!!」

 

 気のオーラを高めた悟飯と、超サイヤ人のトランクスの猛攻を捌くので精一杯。二人は絶妙なコンビネーションで悟空が家に向かうのを阻止してきて、チチに向かって叫ぶことしか出来ない。

 

「悟空さぁあああああああああああ――――――――?!?!?!?!」

 

 やがてチチの気も濁って行き、声も聞こえなくなった。

 もう手遅れだと自覚した悟空は悟飯とトランクスを弾き飛ばし、一気に超サイヤ人ブルーへとなる。

 

「オメェらは誰だ?」

 

 神のオーラに臆した様子の悟飯とトランクス、そして遅れてやってきた悟天を厳しい目で見据えた悟空は、その内側にいるであろう何者かの正体を見破ろうとした。

 

「どこからどう見ても孫悟飯でしょ」

「まさか分かんないのかい、お父さん。僕達はあの方のお蔭で生まれ変わったんだよ」

「ふざけるんじゃねぇ!」

 

 姿形、気に至るまで悟空の息子である孫悟飯と孫悟天であるが、悟空の目は誤魔化されない。

 

「三人の内側にいる奴、本性を見せやがれ!」

 

 神の威圧を前にしても三人はニヤニヤとした笑みを収めることはない。

 

「本性だなんて、俺は昨日までのトランクスじゃない。サイヤ人としてあることを恥として、栄光あるツフル人としてベビー様の下僕になったんだ」

「みんなベビー様の忠実な下僕なんだよ」

「ベビー? ツフル人?」

 

 悟空には、トランクスと悟天が何を行っているのかさっぱり分からない。

 ただ、ベビーというツフル人が三人に何かをしたのは間違いなかった。

 

「様をつけろよ、サイヤ人」

 

 背後から聞こえて来たその声と気に、悟空は間違いであってくれと願いながら振り返る。

 

「べ、ベジータ、オメェまで……」

 

 しかし、悟空の願いは届かない。

 振り返った先にはいたのは、髪の色が銀髪に変化し、額と顎、眼球に異様なラインが入ってはいるが見知ったベジータであることは疑いようが無かった。

 

「お初にお目にかかる、孫悟空。我が名はベビー、貴様らサイヤ人に滅ばされた最後のツフル人だ。そして、今となってはサイヤ人は貴様で最後」

 

 自らの優位性を疑いもしない余裕さを見せつけつつ、孤立無援の悟空を見据える。

 

「オメェ、一体何するつもりなんだ? 人の体を節操なく乗っ取って」

「破壊神を殺し、全王を超えて全ての宇宙をツフル人化してその頂点に立つ、ツフル人としてな。その為に貴様らサイヤ人を手中に収めた。だが、それでは復讐は完全には果たされない」

 

 そこまで言ってベジータの姿をしたベビーはニヤリを笑った。

 

「最強のサイヤ人、孫悟空。貴様らサイヤ人に滅ぼされたツフル人の報いを受けるがいい」

「なに?」

「既に地球の過半数を我が支配下に置いている。今こうしている間にも地球人に卵を植え付け続けている。嘗て貴様らサイヤ人によって滅ぼされたツフル星のように、この星は新ツフル星となるのだ」

「させねぇぞ!」

 

 悟空にはサイヤ人としての記憶はない。だからこそ、ベビーがどうしてそこまでサイヤ人を恨むのかが分からなかった。

 

「大元のオメェを倒して卵を叩きだせばいいんだろうが」

「自分の息子達を傷つけることが出来るか?」

 

 ベビーの言葉にハッとして周りを見れば、悟飯に悟天とトランクスが悟空の周りに浮かんで同じ笑みを浮かべている。

 

「みんながオラの敵になるなんて」

「息子としての好だ。僕達の手で葬っておげるよ!」

 

 敵となった悟飯が真っ先に動き、一瞬遅れて悟天とトランクスも悟空に襲い掛かる。

 

「はぁっ!!」

 

 悟空には敵として息子達とトランクスと戦えるはずがない。両腕を顔の前で交差させて、溜め込んだ気を一気に解放することで突撃した三人を吹き飛ばす。

 

「ベビー!!」

 

 高みの見物を決め込んでいたベビーは組んでいた腕を解き、向かって来る悟空を見て体に力を入れた。

 

「はぁっ!!」

「あ、紅いオーラだって!?」

 

 恐らくベジータの体を使える以上は、悟空と同じ超サイヤ人ブルーになろうとしたのだろう。しかし、その身を青いオーラが覆うことはなく、ゴッドのような太陽な温かな光でもない。

 血のような、毒々しいまでの紅のオーラがベビーの全身を包み込み、思わず悟空は足を止めた。

 

「子供に殺させるなど俺も望んではない。貴様が望むなら我が手下としてやるがどうか?」

 

 紅のオーラを纏ったベビーが悟空を見下す。

 

「断る! オメェの手下に成るぐらいなら死んだ方がマシだ」

「ならば全身全霊をかけて挑んで来るがいい。貴様だけはこの手で葬ってやろう!」

 

 一度は止まった悟空は再び突撃を開始し、ニヤリと笑ったベビーもまた悟空に向かって降りてくる。

 

「「――っ!?」」

 

 二人は丁度彼我の中間点で激突し、お互いの頬を殴る。しかし、そのダメージは圧倒的に悟空の方が大きかった。

 

「ぐはっ!?」

 

 その場に留まったベビーとは違って耐え切れなかった悟空は地面へと叩き落とされた。

 

「素晴らしい、流石は神の域に到達したサイヤ人の肉体だ。今までのどの体とも違う」

 

 ダメージは受けているが大して効いていないベビーは歓喜に体を震わせた。

 

「お前達は下がっていろ。もう少しこの体を試したい。さて、これはどうかな? ビックバン――――アタック!」

 

 地面にクレーターを作った悟空に向かって追撃を仕掛けようとしている下僕たちに言い捨て、片手を標的に向けて掲げて球状の光弾を放つベジータの必殺技を何の躊躇いも無く撃った。

 それを地上から見ていた悟空は瞬間移動で遥か上空へと逃げる。

 

「流石にベジータの体を使ってるだけはあるか」

「いいや、凄いのは俺だ」

「がっ!?」

 

 地面に着弾して大爆発を起こしたビックバンアタックを撃った後に、悟空が瞬間移動で逃げていたのを分かっていたベビーは超速度で上昇して頭突きをかます。

 更に拳を悟空の腹部に向けて突き出した。 

 

「だぁっ!」

 

 悟空は鼻に受けた衝撃に片目を閉じながらもベビーの拳を外に弾き飛ばして、その動作を利用して体を回転させて肘を側頭部に叩き込もうとする。

 ベビーは急速に体を後退させ、この攻撃を逃れた。

 

「はっはっは!」

 

 そのまま笑いながら爆発的に光量を噴射させて弾丸のように悟空の下へと舞い上がる。

 

「ベビー!」

 

 力勝負では負けてしまうことを既に知っていた悟空は逃げるように飛び立ち、二人で螺旋を描くように上空を旋回する。

 空中を疾走する二人の光は、まるで青と紅の尾を引いた二つの流星が縺れ合いながらダンスを踊っているかのようだった。

 

「逃げる気か!」

「誰が!」

 

 二つの流線が交差する度に、激しい轟音が響き、派手な閃光が散る。それが二度、三度、繰り返された時、流星が正面から激突しあった。

 これまでにない轟音によって世界が揺れるように空気が激震する。

 数瞬、二つの流星は力が拮抗したかのように空中で静止したが、互いに腕を動かした直後、爆発の煽りを食らったかのように左右に吹っ飛んだ。その左右に別れた二つの流星が互いにそうすることを分かっていたかのように旋回させ、再び正面から突進しあう。激突は必至だった。

 

「はあああああああああっっ!」

「うおおおおおおおおおっっ!」

 

 そして、二つの拳がぶつかり合った。拳の間から衝突したエネルギーに耐え切れぬかのように周辺にスパークが四散する。ギリギリと押し合いながら相手を睨みつけるかのように顔をにじり寄せた。

 拳が、肘が、脚が、膝が、頭突きが、気弾が、気功波が、ありとあらゆる攻撃を交し合いながら時に掠め、時に弾き合う。

 

「ぐ、があっ……?!」

 

 やはり戦闘力ではベビーが悟空を一枚上回る。

 このまま戦っていては勝てないと悟空は早々に切り札を切る。

 

「界王拳!」

 

 悟空の青いオーラを界王拳の赤いオーラが包み込み、戦闘力が倍加する。

 

「何ッ!?」

 

 予測を超えた速度で接近した悟空の肘撃ちがベビーの頬を打ち抜く。

 ベビーは弾き飛ばされながらクルクルと回転して体勢を整えた背後に超速度で移動した悟空が現れる。

 

「ぐっ」

 

 辛うじて前に傾けた頭の上を悟空の蹴り足が通過する。

 

「波――っ!」

 

 蹴りを放った悟空は不自然な体勢のまま背中を向けているベビーに向かって気功波を放つが、これは避けられてしまう。

 

「しゃあっ!!」

 

 気功波を放った直後の悟空の背後を取ったベビーが手刀を振るう。

 手刀をしっかりと認識している悟空は界王拳発動中の超速度で回避して、その動作を活かして蹴りを放ってベビーを蹴り飛ばす。

 

「くっ、急にパワーもスピードも上がって」

「これでおしまいだ!」

 

 体の芯に残るダメージに苦悶するベビーに追撃を仕掛ける悟空。

 

「ベビー様をやらせません!」 

「トランクス!?」

 

 後少しで無防備なベビーを殴ろうとした拳の前にトランクスが急に割り込んだ。

 

「死ねぇっ!」

「そらぁっ!」

「悟飯!? 悟天も!?」

 

 トランクスを傷つけることは出来ず、無理やりに止まった悟空の両脇から悟天と悟飯が攻撃を加えて来た。

 

「や、止めるんだ三人とも!?」

 

 操られていると分かっていても、ベジータの体を乗っ取ったベビーの相手をするには悟空も全力ブルーにならざるをえない。しかも界王拳を併用している状態で格段に劣る悟飯達に攻撃を当ててしまったら殺してしまう。

 

「フハハハハハハハッ! 同じサイヤ人に足を引っ張られるとは貴様らには相応しいではないか」

 

 先の一撃から回復したベビーは、三人の猛攻を躱しながらも下手に攻撃を放つことも出来ずに抑え込まれている悟空を嘲笑して手に気弾を作り出す。

 

「ベビー!」

「ほらほら、避けるとお仲間に当たるぞ」

 

 三人がいてもおかまいなしに連続で気弾を次々に放った。

 

「ちくしょうっ」

「「「波っ!!」」」

「があっ!?」

 

 悟空が避けようとしても三人はベビーの意を受けているので、わざと動かない。仕方なく三人の前に出て弾いたその瞬間、背後から三人の気功波が悟空の背中を打ち据える。

 

「おまけだ! 超ギャリック砲!!」

 

 悟空に同時気功波を放った後にしっかりと避けた三人を見届けたベビーの超ギャリック砲が悟空を呑み込む。

 前後からの二段気功波に翻弄された悟空の体が近くの岩山を押し潰しながら落ちた。

 

「……ぁ」

 

 ズタボロになった悟空は崩れ落ちた岩山から起き上がることも出来ない。 

 

「我が先祖の苦しみが癒されていく」

 

 最早、戦えない体の悟空を見下ろしたベビーは天上の喜びであるかのように高笑いする。

 

「だが、この程度では収まりがつかん。下僕達よ貴様らのパワーを寄越せ」

「「「はっ、ベビー様のご命令とあれば」」」

 

 悟飯、悟天、トランクスの三人はベビーを中心として三角形を形成して、中心に浮かぶベビーに向かって手を伸ばして気を送る。

 

「ウォオオオオオオオオオオオオッ!! 馴染む、馴染むぞっ!!」

 

 三人から気を送られたベジータの肉体が変容していく。

 体格は大柄になり、肌は浅黒く、髪型もリーゼントに変化した。眉毛を失い眼窩上隆起して、服装も独自の手袋とブーツが追加され、ボディースーツも黒に変色して、最早ベジータの面影は完全に消え失せる。

 

「トドメだ、孫悟空。復活出来ないように原子の一欠けらも残さん」

 

 そう言ってスーパーベビーは悟空が元気玉を作る時のように両腕を天高く上げる。

 

「地球上に満ちている我が下僕達よ。ツフル人となった地球人達よ。お前達のサイヤ人に対する恨みの気をこの俺に送るのだ!!」

 

 直後、スーパーベビーが掲げた手の上に黒い気の塊が出現した。

 

「元気玉に似たようなやつか……」

 

 指一本も動かすことの出来ないダメージの悟空にはただ見ていることしか出来ない。

 

「くらえ、ツフル人の恨み! リベンジデスボール!!」

 

 恨みの気を集めた技であるリベンジデスボールが天の裁きの如く悟空に向かって落ちて来る。

 

「ち、ちくしょう」

 

 その言葉だけを残して悟空の姿はリベンジデスボールに呑み込まれて消えてなくなった。

 着弾した爆発による衝撃は地球全体を揺らすほどで、やがて爆炎と爆煙が晴れた後には文字通り何も残っていない。

 

「気は感じられん。逃げられるタイミングでも無かった。ふん、くたばったか」

 

 あの傷だらけの悟空に瞬間移動が出来たとも思えないし、抉れた地面から吹き上がるマグマを見ながらベビーは一人ごちる。

 

「流石はベビー様の最強形態。これで父さんは間違いなく死んだでしょう」

「ふっ、遂に遂にツフル人積年の恨み、憎きサイヤ人を滅ぼした!」

 

 操っているとはいえ生死の判断能力はある悟飯からも保証されて、ようやく実感の湧いてきたベビーは笑った。

 

「これで復讐は終わったのだ、いよいよ俺の野望を達成する時が来た!!!!」

 

 復讐の牙は遂に獲物を食い殺したのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 不思議と痛みも何もない体に悟空の意識はゆっくりと浮かび上がって行く。

 

「悟空さん! 悟空さん!」

 

 聞き覚えのある声に呼びかけられた悟空はゆっくりと瞼を開いた。

 

「…………界王神様?」

 

 超戦士の命運はまだ尽きてはいない。

 

 

 




本作恒例の強さ表です。

悟空、基本戦闘能力 75(三年前が50)
   ブルー 75×3800=285000(28万5千) ブルー・界王拳 57万 
ベジータ 50(三年前が25)
    ブルー 50×3800=19万
ベビー 32万
ベジータ・ベビーブルー 51万 スーパーベビー 300万

前章のゴクウブラックが未来では50万、ゴジ―タにやられ回復後は60万、ブルー界王拳回復後は80万。
ですので、ちゃんと前章ボスの戦闘力を超えたスーパーベビーでした。

唯一同レベルに近いベジータがベビーに操られているので、今まで散々助けられ、何度もしてきた合体はなしで倒さなければなりません。
尚、今話最後時点で地球には味方一切なしで。



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第三十四話 次なる一手


今年最後の投稿となります。皆さま、よいお年を。




 

 

 

 死んだと思ったら誰かに呼びかけられ、目を開けた悟空の目の前には界王神がいた。

 

「なんで、界王神様が? オラは死んだはずじゃ……」

「死んではいませんよ」

 

 頭を抑えながら体を起こした悟空に界王神は断言する。

 

「あの瞬間、私が瞬間移動で悟空さんを界王神界にお連れしたんです。間一髪でした」

 

 そう言った界王神はブルリと身を震わせた。

 よほどのタイミングで悟空は助けられたようだ。

 

「ただ、死んでもおかしくない傷を負っていたのでキビトの復活パワーを使って貰いましたが、どこか体に痛むところはありませんか?」

「全然ない。助かったよ、本当に」

 

 心配そうな界王神とは裏腹に厳し気な面持ちを崩さないキビトに苦笑しつつ、本当に痛みなどないから悟空は立ち上がった。

 

「あれ、デンデ!?」

 

 そこでキビトの影に隠れるように立っていたデンデに気付いた。

 

「ポポさんに逃がしてもらったんです」

 

 そう言って我慢していたのか、デンデは流れた一滴の涙を拭う。

 

「悟飯さんが天界にやってきて有無を言わさずにピッコロさんに襲い掛かって、ポポさんが僕だけでも安全な場所にとあの世に避難していたところを界王神様とお会いしたんです」

「ってことはピッコロもやられちまったんか。オメェだけでも無事でよかった。流石、ミスターポポだな。これで希望は残った」

 

 恐らくピッコロもベビーの魔の手に落ちてしまったのだろう。

 しかし、デンデさえ無事ならばドラゴンボールを使える可能性が残っている。数少ない安心材料であった。

 

「でも、どうして界王神様があの世に?」

 

 界王神が普段どういう生活をしているのか、悟空には全く分からないがそう頻繁にあの世とこの世を行き来はしないだろうと思って訊ねる。

 

「実は閻魔大王に聞きたいことがあったので訪れていたのです」

「閻魔大王のおっちゃんを?」

「ええ、ドクター・ミューという者が死んでいるかどうかを」

 

 名前を出されても悟空には聞き覚えの無い名前なのでサッパリである。

 

「南の銀河を荒らしまわったマシンミュータントの親玉と目されている人物で」

「その話なら界王様から聞いてるぞ」

 

 悟空が言うと界王神は話が早いと続きを口にする。

 

「四年前から消息が不明なので、もしかしたら死んでいるのではないかと一度聞きに行ったら、四年前の時点で死んで地獄に落ちていました。運良くまだ意識が残っていたので話をすることが出来ましたが」

 

 表情を暗くする界王神に悟空はとてつもなく嫌な予感を覚えた。

 

「大分、意識が混濁していたので詳細は不明ですが、自分はベビーに殺されたと」

「ベビーってまさか」

「今、地球を襲っているベビーと同一と考えるのが自然でしょう」

 

 話が繋がってしまって二人で顔を合わせた悟空は顔で手を覆って空を仰ぎ、力を失くしたように座り込んだ。

 

「こういう時に先代の界王神様がいてくれれば知恵を出してくれるのですが」

「いねぇんか?」

「ええ、三年ほど前からフラッといなくなることが増えて、もう数ヶ月は帰ってきていないんです」

 

 魔人ブウとの戦いでは、唯一倒す方法を見い出していた老界王神の不在に悟空は辺りを見渡し、気も感じ取れないことに今更ながらに気付いた。

 

「界王神様はベビーが言っていたツフル人のことは知ってっか?」

「少しだけですが、ツフル人のことも元は先代様がお調べになっていたことなんですよ」

 

 力なく問いかける悟空に界王神も重い口を開く。

 

「ツフル人とは、元は地球の10倍の重力がある惑星プラントに住んでいた者達です。身長は平均的なサイヤ人や地球人の約半分程度。恐らくベビーの本体もそのぐらいでしょう」

「今はベジータの体を乗っ取って三倍ぐらいに膨れちまってるけどな」

 

 茶々を入れてしまった悟空は罰が悪げに口を閉じる。

 

「高度な文明を持っていましたが、他の星から漂着したサイヤ人達を受け入れて共に暮らすようになりました」

 

 家族に襲われた悟空の心情を慮った界王神は話を続ける。

 

「数百年の間は何事もなく暮らしていましたが、ベジータさんの父であるベジータ王の時代に戦争状態となり、対抗し続けたツフル人はやがて絶滅させられました。ツフル人は滅亡直前にベビーの雛型を完成させ、それをカプセルに乗せて宇宙へと射出したようです」

「そして今に至る、か」

 

 それならばあそこまでサイヤ人に復讐の念を燃やすのかも分かる。

 大きな溜息を吐いた悟空に界王神は聞かなければならなかった。

 

「悟空さん、ベビーに勝てますか?」

「オラ一人じゃ無理だ。アイツは強い。しかも悟飯達まで操られてるとなっちゃ、下手に戦ってもこっちがやられるだけだ」

 

 だが、あの時点でならば悟飯達に邪魔されなければベビーに勝つことは難しい事ではなかった。

 

「悟飯達さえ正気に戻ってくれれば勝てるはずだ」

「そうですか……」

 

 その正気に戻す方法が分からないからこそ、悟空と界王神は頭を悩ませる。

 

「もしかしたら超神水なら」

 

 そこで何かを思い出したデンデが呟いた固有名詞に覚えがあった悟空が顔を上げた。

 

「超神水ってカリン様が持っているアレか?」

 

 嘗てピッコロ大魔王が蘇った時に悟空は一度敗れている。

 体の中に隠れ持っている潜在能力を引き出すことができる水ということで、悟空は強く成る為に無理を押し通して飲んだ。

 一晩近く苦しみ抜いた末に効力を得ることができたが、ベビーが植え付けたという卵を取り除く効果があるとは思えなかった。

 

「いえ、神殿の方に置いてある超神水はまた別物です。古今東西あらゆる世界にある毒物を浄化できる効果があるので、洗脳も解けるかもしれません」

 

 それを聞いた悟空の目に希望の光が宿る。

 

「よし、直ぐに取ってくる! 神殿のどこにあんだ?」

「言葉では説明し難いので僕も一緒に行きます」

「危険ですぞ!」

「地球の危機にジッと待っていることなんて出来ません!!」

 

 止めようとするキビトと睨みつけるデンデ。

 その迫力に界王神の従者であるキビトの方が気圧されていた。

 

「まあまあ、キビト。では、こうしましょう」

 

 強い剣幕なのはデンデの方だが、与しやすいキビトの方を抑える界王神が自分の案を出す。

 

「神殿に誰がいるかは分かりません。戦闘力を考えたら悟空さんが防御に回り、デンデさんが超神水を見つける。そして私とキビトが囮になるのが一番作戦の成功率が高いと思うのですが」

「界王神様はここでお待ちください。あなたのお命に万が一でもあれば破壊神様まで死んでしまいます」

 

 ナチュラルに自分を作戦に組み込んで自身の命を危険に晒す界王神に頭を抑えるキビト。

 

「ですが、囮は多い方が」

「囮は孫悟空と私だけで十分です」

「いや、オラだけで十分なんだけど」

「…………私がデンデ殿に同行して超神水を確保次第、瞬間移動を使えば悟空殿も後を追えましょう」

 

 食い下がる界王神を押し留めていたら自身まで悟空に却下されたらキビトは、現状では最善と思える配置を提案する。

 これにはデンデも悟空も異存はないので力強く頷いた。

 

「しかし、超神水もそこまで多くはありません。地球人類全員にまでは到りませんよ」

「…………最低でも悟飯達が正気に戻りさえすれば、後はドラゴンボールでみんなを元に戻してもらうか、超神水を増やしてもらえばいい。ベビーさえ倒してしまえば後はどうとでもなる」

「ああっ!?」

 

 と、超神水が大き目の瓶に入る程度の量しかないことを知っているデンデに悟空が自信を持って拳を握っていると、神殿に誰がいるか確かめていた界王神が大きな声を上げた。

 そちらを見れば、地面に置いた水晶で地球を見ている界王神とキビトの姿があった。

 

「ベビーがドラゴンボールを集めています!」

「なにっ!?」

 

 慌てて悟空とデンデが駆け寄って見ると、水晶には四星球を持つベビーの姿が映し出されていた。 

 ベビーの傍に部下のように立つブルマの手にはドラゴンレーダーがあり、ベビーが何らかの理由でドラゴンボールを集めさせているのだろう。

 

「こうしちゃいられねぇ。ベビーがドラゴンボールを全部集めちまう前に超神水を呑ませねぇと」

「そうです。逆にこれは好機でもあります」

 

 焦った悟空が直ぐにでも瞬間移動しようとして界王神の言葉に動きを止めた。

 

「見る限りでは悟飯さん達が手分けして集めているようです。これなら、悟空さんなら一人ずつ捕まえて超神水を呑ませることも出来るんじゃないですか?」

「そうか……!」

 

 分散してくれているならこちらも手が出しやすい。

 スピード勝負になるが決して分の悪くない勝負に悟空は目の前が開けて来た気分だった。

 

「私はナメック星に行って、万が一を考えてドラゴンボールを集めてもらっておきます」

 

 希望が見えてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ボージャック一味を悟空が捕まえたことでやることのない北の界王は優雅にシエスタを決め込んでいた。

 

「起きろ、北の界王」

「んなっ!?」

 

 誰かにチェアベッドを蹴られて地面に叩き落とされた界王は文句を言おうとして下手人を見て固まった。

 

「び、ビルス様ぁっ!?」

 

 まさかの人物というか神物にビックリ仰天した界王はアワアワと慌てながら身を正す。

 

「本日はお日柄も良く――」

「何言ってんの、君?」

 

 殆ど会ったことのない破壊神に何を喋ったら良いのか分からなくて定型の挨拶をしようとしたら、物凄い馬鹿を見るような目を向けられて口を閉じる。

 機嫌の悪そうな破壊神の隣で穏やかな天使が苦笑する。

 

「落ち着いて下さい。今日はあなたに聞きたいことが会って来たのです」

「なんでしょうか?」

 

 相変わらず対照的な二人の神と天使が自分に聞きたいこととは何ぞやと首を捻る界王。

 

「少し前まで南の銀河を中心として起こっていた様々な星が襲われていたことはご存知ですか?」

 

 そのことは界王も見知っている。

 

「管轄外ではありますが、マシンミュータントと思われる生命体が星に住む生命を襲っているとは聞いております」

「なら、話は早い」

 

 どう話が早いのかは分からないが、どうやらその問題がわざわざ破壊神と天使ほどの人達が来た理由であるようだ。

 

「しかし、最近は沈静化していると聞いていますが」

「馬鹿たれ。南の界王が何者かに殺されたことを忘れたか」

 

 ビルスに指摘されたが、マシンミュータントのものと思われる生命搾取は沈静化しており、安易に繋げて考えて良い物かは断定できない。

 

「時期が合いませんが」

「だから、関係がないか調査に来たんだ」

 

 関係がなければそれでいいが、なんらかの繋がりがあるのならばより詳しい調査が必要になる。

 

「君の手の者が捕まえたというヘラー一族はどこだい? どうせ何も知らないと思うけど、奴らは南の界王が殺されたからこそ封印から出てきたのなら何か知っている可能性があるから聴取したいんだ」

 

 南の界王が殺された犯人について殆ど何も分かっていないから駄目元で聞きに来たということか。

 

「大界王様の下におります」

「アイツのところか」

 

 ビルスが苦い表情になったが、大界王と破壊神に如何なる関係性があるのか界王ならずとも気になる所である。

 

「しかし、よく君の手の者程度でヘラー一族が捕まえられたね」

「孫悟空に頼みましたので、特に苦労は」

「…………ああ、あのサイヤ人なら楽勝だったね」

 

 何故かビルスの視線の温度が下がった気がする。

 

「ビルス様、北の界王様に当たるのはお止めください」

「別に当たってなんかないよ」

「そういうならば不機嫌オーラを収めるべきですよ」

 

 我知らずにジリジリと足が下がっていた界王の為に天使であるウイスが不機嫌なビルスを注意する。

 その注意を受けてビルスも不当な八つ当たりであると自覚してオーラを収める。

 

「しかし、本当にマシンミュータント程度に仮にも界王が殺されるのでしょうか?」

 

 オーラは収めても視線の温度は上がらなかったので話題の転換を図ることにした。

 

「そうでもないよ。四年前の起き抜けにマシンミュータントを破壊したけど、フリーザよりも遥かに強かったしね」

 

 嘗てビルスが破壊したザマスのように、鍛えれば破壊神に至れるような強さを持った界王などほぼ皆無である。

 北の界王も戦闘力で言えば、北の銀河だけでも大した域にはいない。

 

「調査ではマシンミュータントの大元と思われる人物はドクター・ミューという者らしいのですが、不思議なことに四年前から人前に姿を見せていないのです」

「僕が破壊した奴はまた別人だよ」

 

 一瞬、界王はビルスが破壊したのがドクター・ミューかと思ったが本人から否定されてしまった。

 

「南の銀河を中心に広まっていたマシンミュータントの大半は、四年もかけて僕が大体破壊した」

 

 やりたくもない仕事をやらされて機嫌の悪いビルス。

 

「だけど、大元と思われるマシンミュータントはまだ見つけれていないんだ。そこに来て南の界王が殺されたという話。どうやらマシンミュータントの中には他人に憑りつく能力を持っている者もいるようだから、もしかしたら僕の存在に危機感を覚えて南の界王に憑りついたんじゃないかと思ってね」

 

 推測に推測を重ねた証拠もない暴論であると話したビルスの話をウイスが継ぐ。

 

「駄目元ではありますが、北の銀河で何か異変の起こっている星などはないかとも聞きに来ました。西と東の界王にも聞きに行く予定です。界王神の奴には閻魔大王に死んだか確認に行かせたのに帰って来ないし」

 

 それぞれの銀河を収める界王は自分の支配権ならば、どの星であっても好きに見ることが出来る。

 

「異変、でありますか」

 

 その時点で今まで地球が様々な敵に狙われて来たことを知っている界王は嫌な予感を覚えた。

 実際にその予感は当たっていたのである。

 

 

 




上げて落とす。

勝利条件:ビルスが地球にやってきて破壊してしまう前にベビーを倒すこと

敗北条件;悟空が敗ける、ビルスが地球にやってくる

余裕だね(白目)


しかし、老界王神はどこにいるんだろうね。


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第三十五話 盤上返し

皆様、あけましておめでとうございます。
本作も残り短いですがどうぞよろしくお願いいたします。



 

 

 

「遅い」

 

 キングキャッスルの王城の玉座でふんぞり返っていたベビーは頬杖をついたまま呟いた。

 

「奴らは何をやっている? 特に悟飯ならばそう時間のかかる距離ではなかろう」

 

 イライラとした様子で、その頭の良さから側近として引き立てて傍に控えるブルマに訊ねる。

 

「分かりません。確かにもう戻って来ても良い時間なのですが」

「お前はそればかりだな」

「事実ですから」

 

 悟天が行方知れずになり、トランクスが戻って来ず、そして最後に悟飯に行かせた時もブルマは同じことを言っていた。

 ベビーの卵を植え付けた影響で臣下として忠実ではあるが、何故か時間を追うごとに愚鈍になっていっているような気がする。

 それでも並の者よりも遥かに有能ではあるだけに扱いに困る。

 

「あの三人の力を考えれば、阻める者がいない以上はよほど難しい場所にあるのかもしれません。ですので、他の者を派遣しても無駄にしかなりません」

「それはそうだが……」

 

 一々その通りなのだから反論の余地はない。

 

「――――――ええい、遅い!!」

 

 それでも十五分も待たずに立ち上がったベビーは近くにあった物を苛立ち紛れに蹴飛ばす。

 この短時間を我慢できないのだから、単純にベビーが我慢が効く性格ではないからだろう。

 

「もう待てん! 俺自身で最後のドラゴンボールを取りに行くぞ!」

「お待ちください、ベビー様!」

「うるさい!」

 

 そのまま飛び出して行ってしまいそうなベビーをブルマが落ち着かせようとするが、単純な力の差を理解しているから力尽くで止めようとはせずに言葉をかけ続ける。

 

「場所は分かっているのだ。俺が取りに行った方が早い!」

「で、ですが」

「くどいぞ、ブルマ!」

 

 邪魔な壁を気功波でぶち抜いて外までの道を作ると、ブルマに言い捨てて紅の気のオーラを発して外へと飛び立った。

 

「がっ!?」

 

 外に出たその瞬間、真横から誰かの拳がベビーの頬に叩き込まれた。

 ベビーであってもほんの一瞬意識が飛んでしまいそうになるほどのダメージの直後、何かが組み付いて来てそのまま体が押される。

 

「き、貴様は……!」

 

 ダメージも残っていたので組み付かれて思うように動かない体で、急速に流れていく景色の中でいないはずの男の姿にベビーは目を見開いた。

 

「孫、悟空っ!!」

 

 ブルー界王拳で組み付く悟空の姿に、死んだはずと思う暇もないまま西へ西へと共に飛んで行く。

 

「な・め・る・なっ!」

 

 死んだはずの人間が目の前にいることへの狼狽と先の一撃のダメージを無視してベビーは悟空を弾き飛ばした。

 そこはキングキャッスルから遠く離れ、人の住んでいない岩の荒野だった。二人は岩を積み上げたような小高い岩山が乱立する内のそれぞれに降り立つ。

 

「生きていたか、孫悟空」

「地獄から舞い戻ってやったぞ、ベビー」

 

 軽口を叩く悟空に二ッとベビーは笑った。

 

「悟飯達が帰って来なかったのもお前の仕業だな」

「だとしたらどうする?」

「なに、納得がいったというだけだ。あの三人ではお前には勝てない」

 

 戻って来なかった悟飯達も無能なのではなく、悟空が強かっただけ。

 どうして悟空が生きているのかなど、ベビーにはどうでも良かった。

 

「神の力を我が物とし、ベジータの体すらも完全に掌握したのに試すことが出来ていなかったからな。お前が生きていてくれたお蔭で破壊神と戦う前に慣らせる」

「どうかな? お前は死ぬ。これからここでオラに殺されるんだ。また誰かに助けてもらうか、赤ん坊のように」

 

 悟空はベビーを挑発する。

 ここで逃げられたり、誰かを人質にされたら折角整えた舞台が破綻する。

 

「ほざけ。今度はこの俺の手だけで殺してやるぞ」

 

 挑発したお陰でベビーは戦う気になってくれた。

 左半身を前にして両足を大きく開いき、右腕を後ろに伸ばして顔の前に上げた左手は薬指と小指だけを握った独特の構え。

 

(昔のようだな、ベジータ)

 

 この岩だらけの荒れ野は、悟空がベジータと始めて戦った場所に良く似ている。

 そしてベビーの構えはあの時のベジータにそっくりだった。

 

「やってみなくちゃ分かんねぇぜ」

 

 既視感を覚えていた悟空の体が自然とあの時と同じく、右半身を前にして前傾姿勢になる。

 

「「――――」」

 

 睨み合う二人の間を風が流れていく。

 

「しっ!」

 

 初手はベビーが取った。

 恐るべき速度だが、まだ先の奇襲の一撃が尾を引いているのか、五倍に留めた界王拳でもギリギリで避けることが出来た。

 

「せらっ!」

 

 ここで一気に八倍にまで倍率を高め、反撃の拳を放つが軽々と受け止められる。

 

「軽いな!」

 

 腕を引き寄せられ、頬に強烈な一撃を食らって殴り飛ばされた悟空は数メートル後方に着地すると、更に跳ねて小高い岩山に着地した所で背後に先回りされているのを感じ取った。

 

「十倍!」

 

 界王拳の倍率を八倍から十倍に引き上げ、頭を下げて手刀を躱す。

 躱しざまに回し蹴りを放つも、これは避けられた。

 

「ベビー!」

「孫悟空!」

 

 刹那の内に、十数撃攻防を繰り返すがベビーの方がまだ余裕がある。

 

「やるではないか! 想像以上だぞ!」

 

 食らいついて来る悟空を褒めるベビー。

 安定して引き出せる全力である超サイヤ人ブルー・界王拳十倍でもベビーの方が一枚も二枚も上手であった。

 

「今こそ俺は確信した! 俺の強さは破壊神を超えたのだと!」

 

 組んだ両腕で頭を殴打されて地面に叩き落とされ、クレーターを作りながら着地した悟空は口元の血を拭う。

 

「…………やっぱり十倍でも勝てねぇか」

 

 十倍でもまだベビーに及ばない。これは予想していたことだった。

 

「くっくっくっ、絶望し、恐怖し、無様に這い蹲って命乞いすれば下僕として重用してやっても良いぞ」

 

 見上げる悟空にベビーが高らかに笑う。それは自分がまだ上に立っているからこその余裕であった。

 

「ほざけ。十倍で足りないなら体がぶっ壊れても上げていくだけだ」

 

 悟空の今の限界はこの十倍である。だが、ベジータやフリーザの時の戦いの経験で無理をすれば多少は倍率を上げることが出来る。ただし、その代償として戦えなくなる可能性もあった。

 体がどこまで持つか、それまでにベビーを倒すことが出来るか。

 どうであれ、ここで限界を超えるしかない。

 

(あの時の戦いでも同じことを考えたな)

 

 と、再びの既視感を覚えて悟空は苦笑した。

 

「昔もこうしたな」

 

 ベビーではなくその内にいるベジータに向けて、自分達が始めて戦った時のようだと語り掛ける。

 

「なんのことだ?」

「サイヤ人にしか分からないことがあるんだよ」

 

 訝しるベビーに、悟空は煙に巻く。

 

「操られぱっなしなんて、オメェらしくねぇぞベジータ」

「アイツは俺の中の奥深くで眠っている。何を言おうが無駄だ」

「そうかな。ベジータならきっと聞いていると思うぞ」

 

 内側にいるベジータに向けて語りかけた悟空は両の拳を強く握る。

 

「体もってくれよ、二十倍界王拳だ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『カカロットの野郎、無茶しやがる』

 

 ベビーの内側で彼の思惑とは別に、ベジータの意識は完全に眠っていたわけではなかった。

 夢を見ているような感覚で、悟空とベビーの戦いの全てを見ていた。

 

『そうだ、あの時の戦いもこんな感じだった。なのに、何故戦っているのが俺じゃない……!』

 

 悟空と同じく既視感を覚えつつも、どうして戦っているのが自分ではないのかと奮起する。

 

「おっのれぇぇぇぇぇ――――――――っっ!!」

 

 あの時の自分と同じように界王拳の倍率を上げた悟空にズタボロにやられているベビーを見て、こんな奴に体を乗っ取られた自分を不甲斐なく思う。

 

「ゆ、許さん……っ!」

 

 見下した存在に上回られて平常心を失ったベビーは、このまま負けるぐらいなら盤面をひっくり返さんと両腕を天高く掲げた。

 

「この星諸共、粉々に砕いてくれる! リベンジデスボール――――っ!!」

 

 悪の元気玉とでもいうべきリベンジデスボールは、ベビーの力だけでなく地球人の恨みの気が込められていて、二十倍の界王拳を使っている悟空の力を完全に上回っていた。

 地球諸共破壊しようとリベンジデスボールの態勢になったベビーの意識が自分から僅かに反れたことを察知したベジータは全力で体を奪いにかかる。

 

「か! め! は! め!」

 

 悲鳴を上げている体の痛みを無視して、悟空の構えた両掌の間に空間を歪めんばかりの光が収束する。

 

「死ねぇぇぇぇぇっ!!」

「――――波っ!!」

 

 放たれたリベンジデスボールと悟空のかめはめ波が激突したところで、ベジータは体の制御を一瞬だけ取り返した。

 

『俺は、誇り高きサイヤ人の王子ベジータだ!!』

 

 一瞬、こちらへと押し込んできているリベンジデスボールの威力が弱まったのを悟空は見逃さなかった。

 

「三十倍だぁっ!!」

 

 勝機はここにしかないと、一瞬で限界を超えていた二十倍から三十倍にまで倍率を上げ、文字通り全ての力を込める。

 

「なっ、押され――」

 

 拮抗すら許さずにリベンジデスボールを突破したかめはめ波が、ベジータから体の制御を取り返したベビーを呑み込む。

 

「ぐわぁあアアアアアアアアアアアアアア――――――――ッッッッ?!?!?!?!?!」

 

 かめはめ波に押されたベビーは瞬く間に雲を突破して成層圏に至る。

 

「くっ!?」 

 

 このままでは宇宙の果てまで飛ばされてもおかしくはない。ベビーは必死に体を捻ってかめはめ波から離脱することが出来たが体はボロボロだった。

 

「お、おのれ、ベジータめ、余計なことを……!」

 

 無理をしてかめはめ波から離脱した影響は大きく、二十倍になった悟空の猛攻を受けたダメージも合わせればボロボロだった。

 

「ぐっ!? 完全に意識を取り戻しやがったか。暴れるな、諸共に死にたいのか!」

 

 ベビーには何が切っ掛けか分からないが、ベジータの意識は完全に目覚めてしまっている。

 なんとか主導権を取られないように抑え込んでいるが、ダメージの大きさもあって意識の鬩ぎ合いが行われていた。

 その瞬間、ベビーの意識は内側に向けられ、無茶を押し通して満足に動けないながらも瞬間移動でこの場に現れた悟空に気づくのが遅れた。

 

「――――ベビーっ!」

「なっ、孫悟……がっ!?」

「起きろ、ベジータ!」

 

 悟空がベビーの口に超神水が入った小瓶を突っ込み、最後っ屁の力で顎を殴り上げて無理矢理に飲ませる。

 

「ぐがっ?!」

 

 小瓶の破片ごと超神水を呑み込んだベビーは苦しみ出した。

 悟空にはもう尻を掻く力も残っておらず、漂うことしか出来ない無重力の中で祈るようにベジータの意識が勝る方に賭けた。

 決着は直ぐに着いた。

 元より拮抗していた意識の鬩ぎ合いは、僅かなれど呑み込んだ超神水の効果で天秤はベジータへと傾いた。

 

「――――俺の体から出て行け!!」

「くっ、くそったれめっ!!」

 

 清浄なる青い気を発するベジータの体から強制的に追い出されたベビーは、指一本動かすことも出来ずに流れていく悟空が幾度も限界を超えて向かって来ることに恐れを為して地球に逃げる。

 スーパーベビー時ほどの力はないが追い出される際にベジータ力の大半の奪ったので、サイヤ人の底知れない意志に恐れを抱いて無様に逃げる。

 

「ベビー様!」

 

 少しでも二人から遠く離れた場所へと逃げるベビーに飛行船に乗ったブルマが近づく。

 

「このマイナスエネルギーは……」

 

 飛行船からリベンジデスボールを作るのに必要な恨みの気、つまりはマイナスエネルギーを感じ取ったベビーは意識を研ぎ澄ませた。

 

「最後のドラゴンボールを見つけました。これで神龍を呼び出して地球をツフル星に――」

「それを寄越せっ!!」

 

 元の計画ではドラゴンボールを集めて神龍を呼び出し、地球をツフル星へと作り変えるはずだった。だが、今はそれよりもしなければならないことがある。

 そう、地球を覆い隠して余りあるほどのマイナスエネルギーを我が物とすれば、悟空達を今度こそ殺すことが出来ると考えて、ドラゴンボールが詰まれている後部デッキに無理矢理に侵入する。

 

「きゃあっ!?」

 

 当然、そんなことをすれば飛行船が飛んでいられるはずがない。

 カプセルコーポレーション製の飛行船は辛うじて爆発は免れたが、飛んでいられず墜落して行く。

 

「そうだ、俺は最強のツフル人。サイヤ人になど負けないのだ」

 

 忠実なる下僕であったブルマの危機など気にもしていないベビーは、ドラゴンボールが入ったカバンのチャックを開ける。

 

「このマイナスエネルギーを取り込みさえすれば」

 

 一星球を取り出したベビーは大きな口を開けて呑み込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 超神水によって正気を取り戻して界王神界で事のあらましを見ていた悟飯達の要請で、キビトが瞬間移動で成層圏を漂う悟空とベジータを回収して地上にやってきた。

 三十倍界王拳を使ってガタガタな体を押して瞬間移動をしてベジータに超神水を呑ませた悟空は、キビトの復活パワーを受けても全快しなかった。単純に悟空の力が大きすぎてキビトの力が足りないのだ。

 ベビーが受けるはずだったダメージを押し付けられたベジータも力の大半を失っていて碌に動くことも出来ない。

 

「助かったぞ」

「ああ、今回ばかりは駄目かと思った。礼を言う」

 

 ようやく座りこめる程度には回復した悟空とベジータ。

 特に今回、殆ど良い所がなかったベジータは珍しく殊勝な態度でキビトに僅かに頭を下げた。

 

「大丈夫ですか? すみません、僕達が不甲斐ない所為で」

「ごめんよ、父さん」

 

 キビトの復活パワーだけでは回復しきれなかったので、界王神が連れてきたデンデと共にやってきた悟飯と悟天が悟空に駆け寄る。

 

「悪いのはベビーだ。オメェらは何も悪くないさ」

 

 項垂れる悟飯の頭をポンポンと軽く叩いた悟空は、キビトの復活パワーを受けて少しは回復している自分よりも状態が悪いベジータを優先させる。

 

「カカロット、この借りは必ず返す」

「父さん……」

 

 デンデに癒されてスッと立ち上がった父親の変わりなさに逆に安心したトランクス。

 

「いいさ。二人にも行ったけど、悪いのは全部ベビーの奴だ」

「黙れ、貴様の言うことは聞かん」

 

 らしいと言えばらしいベジータに苦笑した悟空は次の瞬間、凍り付いた。

 

「この気は――っ!?」

 

 悟空が一番に、数瞬遅れてベジータが、僅かに遅れて悟飯が、そして悟天とトランクスの後に界王神とキビトが空を見る。

 全員が同じ方向を見てデンデもそちらを向き、背中に氷を入れられたようにピシリと固まった。

 

「先程ぶりだな、サイヤ人共」

 

 地球を覆い隠して余りあるほどの邪気が空の上から声となって降ってくる。

 

「べ、ベビー……」

「見るがいい、これが俺の新しい姿だ」

 

 ベジータの体を乗っ取っていた時に似た姿のベビーがそこにいた。

 白色の身体に全身に黒く太い角のような突起物を生やし、胸部に真っ赤に染まったドラゴンボールが一星球を中心として残りの六つの球が浮かび上がっていた。

 

「ま、まさかドラゴンボールを呑み込んだってのか?」

「その通りだ。存外にマイナスエネルギーが溜め込まれていたのでな、ベジータの体を使っていた時よりも遥かにパワーアップしているぞ」

 

 盤面は再びひっくり返された。

 明らかにドラゴンボールを取り込んだベビーの力は、ベジータの体から抜け出る時に力の大半を奪っていたこともあって以前よりも増している。

 悟空は立ち上がろうして膝がガクリと折れた。

 

「どうやら回復させる順番を間違えたようだな」

 

 膝をついた悟空の姿を見下ろしながらも、底知れない力を発揮するサイヤ人をここで確実に殺すと目が言っていた。

 

「俺が時間を稼ぐ。デンデ、キビトとやら、カカロットを治せ」

「よせ、ベジータ! 死ぬ気か!」

「そんな気は無い。貴様から貸しを作ったままなど、我慢出来んだけだ」

 

 ベビーには聞かれないように小声で言ったベジータが超サイヤ人ブルーになる。

 しかし、ベジータも完全回復したわけではない。今にも消えそうなブルーのオーラで一歩前に出る。

 

「父さんだけを戦わせはしません」

「デンデ、お願い。奴を倒せるのはお父さんだけだ」

「操られていいとこなしだもんね。少しぐらい時間を稼いで見せるさ」

 

 真っ先にトランクスが超サイヤ人になり、悟飯は静かに気のオーラを発し、長い息を吐いて覚悟を決めた悟天も超サイヤ人になる。

 

「駄目だ! 界王神様、キビトのおっちゃん、オラが戦うからみんなを逃がすんだ!」、

「誰も逃がすものか。全員此処で死ね! ファイナル――」

 

 誰よりも速くベジータの技であるファイナルフラッシュを撃つ体勢になったベビーを止められる者はいない。

 避ければ地球が破壊され、弾き飛ばしたり受けるのは悟空にだって不可能だ。

 

「フラーー」

「邪魔ですよ」

 

 後少し地球を簡単に破壊できる気功波が放たれんとしたその時、ベビーの背後に現れた者がその首を刎ねた。

 頭部を失って地面へと落ちていく体。

 その末路を見ることとなく、いともあっさりとベビーの首を落とした者の姿を見た悟空は驚愕を禁じ得なかった。

 

「ふ、フリーザ……っ!?」

 

 ナメック星で見た最終形態のフリーザは悟空の声にニヤリと笑ったのだった。

 

 




今話はサイヤ人編でのベジータと悟空の戦いをモチーフとしております。

ドラゴンボールを呑み込むことで邪悪龍の力も手にしたベビーでしたが、颯爽と登場したフリーザ様の手によってあっさりと首を刎ねられてしまいました。

では、恒例の戦闘力表です。

悟空 「ブルー 28万5千」「ブルー・界王拳 57万」「10倍 285万」「20倍 570万」「30倍 855万」
スーパーベビー 300万 邪悪龍ベビー 1000万

幾ら油断していたとはいえ、1000万にまでなった邪悪龍ベビーの首を跳ねたフリーザ様の力や如何に。

ちなみに「第二十六話 行くぞ、未来へ」の後書きでも書いていましたが、
 ビルス 200万 破壊の能力があるので戦闘力以上
 ウイス 300万 色んな術が使えるので戦闘力以上
うん、やり過ぎたって反省してる(トボケ)

ではでは、次より最終章『ゴールデンフリーザ編』が始まります。







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ゴールデンフリーザ編
第三十六話 悪の帝王


 

 

 人が長年住んでいないゴーストタウンが今にも崩れ落ちそうな振動と衝撃に揺るがされていた。

 

「ぬぐおっ!?」

 

 一人の人間の苦痛の呻きが使われなくなって久しい建物を幾つも破砕した音に紛れて途絶える。

 

「…………俺も驕ったか」

 

 体に走る激痛に顔を顰めながら、男は圧し掛かる瓦礫を軽くどけて立ち上がる。

 

「いいえ、あなたは強いですよ。今の私と戦いになるなんて全宇宙を探してもそう多くはありません」

 

 独特の足音を立てながら現れたその人物を見て唇の端から垂れる血を拭う。

 

「他の宇宙にここまでの奴がいるとはな」

 

 自分が全宇宙最強だと思っていたわけではなかったが、こうも簡単にあしらわれるとも想像だにしていなかった。

 世の中には上には上がいると、まざまざと見せつけられた思いだった。

 

「ほっほっほっ、あなたほどの人は第6宇宙の暗殺者以来です。中々、楽しい戦いでしたよ」

「突然、戦いを仕掛けてきた者の台詞とは思えん」

「これでも認めた相手には寛容な姿勢を見せることもあります」

 

 そう言って笑ったそいつは、顎に手を当てて良いことを思いついたとばかりに目を細めた。

 

「それだけの強さで正義の味方ごっこをやっているなんてもったいないではありませんか。どうです、私の部下になるつもりはありませんか?」

「断る」

「それは残念」

 

 折角の誘いを断れたからといって機嫌を害することなく、邪魔な噴煙を尻尾で振り払う。

 

「ジャスティスパンチ!」

 

 噴煙に紛れて接近していた赤い服を着て白い髭を蓄えた筋骨隆々な戦士が襲い掛かる。

 

「大仰な名前を付けたところで、ただのパンチではないですか」

 

 何ら防御することなく、その身一つで受け切る。

 ダメージなど欠片もない。あるのは蝿に触れられたかのようなむず痒さだけ。

 不動の大樹が如く手応えに殴りかかった方が余りにも隔絶した力の差に動きを止めてしまった。

 

「逃げろ、トッポ!」

「邪魔ですよ」

 

 第11宇宙でも図抜けた戦士であり、次期破壊神候補であるトッポを蠅を追い払うように尻尾で薙ぎ払う。

 

「彼も良い線を行っているのですが、人の話を聞こうとしないのが難点ですね。ジレンさん、でしたか。あなたと二人合わせて新生フリーザ軍の幹部にして差し上げたのに」

 

 仲間であるトッポを軽々と薙ぎ払ったフリーザにジレンは厳しい眼差しを向け続ける。

 

「彼は落第ですがね」

 

 軽く手を振るったフリーザの指先から気功波が放たれ、超速の戦士との異名を持つディスポを明確に撃ち抜く。

 一足で詰められる距離まで隠れ、正に踏み込んで高速の世界に入ったディスポを悲鳴を上げることも出来ず、離れた場所に受け身も取れずに倒れ込む。

 

「些か難しいですね、手加減というものは。うっかり殺してしまわないようにすると手加減が過ぎてしまう」

 

 トッポやディスポだけでなく、プライド・トルーパーズ全員と戦って圧倒的すら生温いと感じるほど、次元違いの力を見せながら不思議と誰一人として殺していない。

 わざと殺さないでいることにジレンは疑問を持った。

 今までプライド・トルーパーズとして数多の悪人と戦って来たからこそ、このフリーザが今更人殺しを忌避するような戦士としては思えなかった。

 

「それだけの力がありながら尚も何を望むというのだ?」

 

 破壊神ベルモッドから自らを超えた領域に至ったと認められたジレンを子ども扱いするほどの力を持つフリーザ。

 ジレンからすれば、これほどの領域に至った戦士が何を望むかなど皆目見当もつかなかった。

 

「あなたには関係のないことです」

 

 フリーザは自らの目的を語るつもりはないということか。

 

「人を誘っておきながらそれはないだろう」

 

 部下になる気など欠片もないが、これほどの領域に至っているフリーザが何を望んでいるのか興味が湧いた。

 

「個人的な感傷のようなものです。誰にだって話したくないことの一つや二つあるでしょう。ですが、そうですね」

 

 顎に手を当てたフリーザは明確に語るつもりはなくとも、さわりぐらいならば問題ないと考えて口を開く。

 

「言葉では色々と言えますが、嘗て挫かれた矜持を取り戻す為、殺されたことに対する復讐・・・安っぽい理由ですが、私にとっては大事なことなのす」

 

 一言に集約させた言葉ではともかく、その眼だけは何よりもギラつかせる。

 

「では、さらばです。あなたとの戦いで私はまた一つ強くなれました」

 

 ジレンの視界はフリーザから放たれた閃光に染め上げられた。

 

「ぅ、ぐぅ……」

 

 その直後、フリーザの尻尾で薙ぎ払われて気絶していたトッポが目を覚ました。

 

「はっ!? ジレンは……」

 

 痛む体を押して立ち上がり、トッポが気絶する前はフリーザと単身で闘っていたジレンの身を案じて足を引きずりながら歩き出したところで閃光が空を染め上げる。

 

「じ、ジレンがやられた!?」

 

 ジレンの物ではない気の閃光にトッポがそう思い込んだのは無理はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれほど脅威と思われたベビーの首を刎ねた人物を見た誰もが目を疑った。

 

「ふ、フリーザ!?」

 

 正確にはフリーザと面識のない悟天とトランクスはピンと来ていないようだが、あの恐ろしいまでのベビーをあっさりと殺したのを見れば警戒を解くことなど出来るはずがない。

 

「お久しぶりですね、皆さん」

 

 その場にいる面々の中で特にトランクスを何故かジッと見たフリーザ。

 完全な初対面のはずなのに凝視されたトランクスとしては堪ったものではなく、嫌な汗が全身を流れていく。

 心持ち、ベジータの影に隠れるようにジリジリと動く。

 フリーザの視線がトランクスから外れたのは、ベジータの影に隠れたからではなく、第三者の介入があったからだった。

 

「――――きっ、さまっ!!」

 

 その声が聞こえるよりも早く、気を捉えていたフリーザはトランクスから視線を切っていた。 

 

「その体を寄越せ!」

 

 撥ねられた頭部と、別れた胴体が別々にフリーザに襲い掛かる。

 フリーザに動く予兆は全く見られないままベビーは組み付いた。なのに、ベビーはフリーザに憑りつくことが出来ない。

 

「と、憑りつけないっ!?」

 

 気のバリアーとでもいうのか。嘗て悟空とベジータが合体したゴジ―タと更に合体した悟飯によるゴジットのバリアーと比べても次元違いの密度に、如何なベビーといえど隙間が無ければ相手に憑りつくことは出来ない。

 

「人に乗り移ることしか能がない寄生虫如きが私に触れないで下さい」

「なっ!?」

 

 首を刎ねられたといってもその気の大きさには全く変わらなかった。にも関わらず、フリーザの睨みに込められた気合だけでベビーが雲散霧消する。

 

「あのベビーが一瞬で……」

 

 その存在の一欠けらも残さず消え去ったベビーを悼むわけではないが、一瞬だけ発せられたフリーザの恐るべきまでの力に悟空達は震撼を隠せない。

 

「さあ、私と闘いなさい孫悟空」

 

 消滅させたベビーなど邪魔者とすら思っていないであろうフリーザは大した感慨も見せずに悟空を見て言った。

 

「ですが、その状態では満足なものにはなりませんね。そこのお二人に治してもらいなさい」

「な、なにを」

 

 悟空の体が万全でないことを見て取り、デンデとキビトを指差した後は腕を組んだまま一行を見下ろす。

 

「満足に立てない相手を倒したところで復讐を果たしたとは言えません。私の気は短いのですから早くして下さい」

「なんでデンデとキビトさんが傷を治せることを知ってるんだよ!」

 

 会話をする気はない様子のフリーザを、悟飯の後ろに隠れた悟天が問い質した。

 

「後ろのはともかくとして、あなたはあの時の子供ですか。随分と大きくなりましたね」

 

 フリーザは悟空そっくりの悟天を見て悟空の子供と察し、その様子から悟飯があの時の子供であることに気付き、僅かに驚く表情をする。

 

「そちらは私を殺したサイヤ人に似ていますが、幼いところを見ると彼とは別時間軸の人間といったところでしょうか」

 

 トランクスも見てあの時には青年に近かったが、今はそれよりも小さいことに気付いて正確な分析をする。

 

「少年の疑問に答えるならば、ナメック星人は嘗て散々邪魔をしてくれましたので殺したことがありますし、そちらの方の服は界王神の従者が着る物。あなた達サイヤ人を超える為に武者修行に他の宇宙に行った際に同じ立場の者が傷を治すのを見たことがあるというだけ」

 

 熱もなく理由を語ったフリーザは悟空を見る。

 

「この時が来るのを随分と長い間、待ちましたからね。十五分だけ待ってあげましょう。私を倒す算段を立てても構いませんよ。出来るものならね」

 

 一日千秋の思いで待ったのだから十五分ぐらいは見逃してやろうと上から目線で言って、返事を聞くことも無く高度を上げる。

 

「何様のつもりだ、アイツは」

 

 声は聞こえないが姿は見える高度に上がったフリーザの余裕に苦々しい声を漏らすベジータ。

 

「それだけ自信があるということなんでしょう。以前とは比べ物にならないパワーを感じます」

 

 ナメック星での戦いの時とは次元違いの力を着けた自信があった悟飯ですら足元にも及ばないと断言できるほどの力をフリーザは身に着けている。

 

「本当にあのフリーザなのですね……」

「に、偽物ではないのですか?」

 

 キビトが信じられないと思うのも無理はない。

 悟空だってフリーザがあれだけの力を擁するなんて想像だにしていない。

 

「大体、フリーザは末来のトランクスに殺されたはずだろ。なんで生き返ってるんだ?」

「む、それはだな……」

「何か知ってるの、父さん?」

 

 バビディによってセルと共に蘇っていたことを知らない悟空達と違って、魔人ブウとの戦いで頭が一杯になってうっかりフリーザのことを言い忘れていたベジータは言葉に窮し、トランクスの目から僅かに顔を逸らす。

 

「アイツもセルと一緒に蘇っていた。言うのを忘れててスマン」

「父さん、なんでそんな大事なことを・・・母さんに言いつけるから」

 

 これにはトランクスも父への制裁不可避である。

 自分ではない自分が殺したと聞いては、恨まれているかもしれないと思うと気が気ではないのだ。

 

「…………四年前、バビディによってドラゴンボールで蘇った奴と戦ったが、超サイヤ人2で互角だった」

 

 ブルマにお仕置きを受けるにしても、それはフリーザを撃退しなければ叶わない。

 

「では、たった四年であそこまで強く成ったと? 僕もあの頃よりも次元違いに強く成ったはずなのに、ナメック星で闘った時以上の力の差を感じます」

 

 ありえない、と言いながらも悟飯は悟空を見て本心から思えなくなった。

 悟空も四年前、そしてナメック星の時と比べて段違いに強く成っている。似たような例がある以上は安易な否定は出来ない。

 

「ドラゴンボールを取り込んだベビーの力は、悔しいが俺の体を使っていた時よりも更に強かった。それを不意打ちだったとはいえ、あっさりと首を刎ねたところから見て最低でも俺の体を使っていた時以上と見るべきだろう」

 

 ベジータは自分では戦いにもならないと認めなければならないことに悔しさを覚え、血が滲むほどに拳を強く握る。

 

「俺達サイヤ人以外にあんな奴らいるなんて」

「勝てるの、お父さん?」

 

 ベジータですら及びもしない強敵である。どれだけ強いのか見当もつかないフリーザ相手に勝機を見い出せるとしたら、一度はベビーを倒した悟空以外に考えられない。

 

「ああ、任せろ。デンデ、キビトのおっちゃん、頼む」

 

 デンデとキビトの力を受けて全快して立ち上がった悟空にベジータが肩を小突く。

 

「それだけでは足りんだろう。少ないだろうが俺達のパワーも持って行け」

 

 拳からベジータの気が悟空へと伝わる。

 

「僕のも」

 

 次いで反対の肩に手を置いた悟飯が。

 互いに頷き合った悟天とトランクスが無言のまま悟飯とベジータを通して己がパワーを送る。

 

「我々も微力ながら」

 

 界王神、キビト、デンデも同じように悟空にパワーを渡す。

 彼らにも分かっていたのだ。ここでフリーザという巨悪を倒すことが出来なければ何が起こるのかを薄々と察していたからこそ、博打とも言える方法を取った。

 

「任せろ」

 

 湧き上がるパワーに身を震わせた悟空にだってフリーザに勝てる保証なんてない。だが、一番強いのは悟空で、勝てる可能性があるとすれば悟空だけなのだから否はない。

 

「時間です」 

 

 フリーザが言いながら組んでいた腕を解きながら降りてくる。皆から一歩前に出た悟空を見下ろす。

 

「待たせたな」

「あの地獄のような天国に比べれば、この十五分など待った内にも入りませんよ」

 

 やがてフリーザの高さにまで舞空術で上がってきた悟空は改めて嘗て対峙した強敵と視線を合わせる。

 

「では、リベンジマッチといかせてもらいましょうか」

 

 この時を待っていた、と歓喜に全身を震わせたフリーザが拳を固めた。

 

「うぉおおおおっ!!」

 

 フリーザが力を開放する。

 嘗てない敵を前にして、悟空のこめかみを冷や汗が流れて行った。

 

 

 






次回、『第三十七話 神を超えた者』



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第三十七話 孫悟空、死す



前話の予告タイトルを変更しています。





 

 

 フリーザとジレンの戦いを別次元から見ている者がいた。

 

「このままではいかん」

 

 決して見つからないように魔術で別次元に潜みながら二人の戦いを覗き見ていた老界王神は一人で呟いた。

 

「三年前から見ておるがあ奴の力は既にビルス様のみならず、大神官様すらも及ぶかどうか……」

 

 世界と世界の狭間に空間に身を置きながら考察を続ける。

 

「第六宇宙最強のヒット、そして第十一宇宙の破壊神を超えているジレンですら赤ん坊のようにあしらうようになるとは」

 

 老界王神ですら見ていなければ信じられないレベルで強く成っている。

 

「このまま成長を続ければ、やがて全王様の力さえ効かなくなる可能性もある」

 

 魔人ブウ戦後、ナメック星のドラゴンボールで蘇ってから数ヶ月してから、宇宙の中で異常なほどに高まって行く力を感じ取り、その力の持ち主を観察し続けて数年。

 その成長速度を考えれば、懸念すら懸念でならなくなる危険性がある。

 

「底知れぬ潜在能力じゃ。そしてその属性は完全なる悪」

 

 戦った相手を一人も殺していないが、逆に一人も殺さずにいられる方が異常である。

 殺さずとしている如何なる制約かは不明だが、それだけの自信と自負がなければ出来ないことであった。

 

「奴を倒せる者を探さなければならなん」

 

 しかも、悪ではなく善である者。条件の時点でかなり厳しいものがあった。

 更に老界王神の求めに応じてくれるかも未知数。

 

「…………ブウを倒したあ奴らに期待すべきか」

 

 フリーザに比べると現段階での強さはかなり劣ったとしても、悟飯の潜在能力を開放させたことを思い出して希望を見い出す。

 彼らにならば貸しがあるので頼めば手を借りることは出来るだろう。

 

「しかも奴らとフリーザには強い因縁もある。適任とも言えよう」

 

 別名、責任を取らせるとも言う。

 

「底知れぬ可能性を見せるサイヤ人。まずはその始まりから見ねばならんか」

 

 そうして、トッポが気絶しているジレンを見つけて死んでいないことに気付き、感涙に咽び泣いているのを見ながら魔術で過去の世界を覗き見る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 フリーザが力を発揮した時、目の前にいた悟空は吹き荒れる風に目を細めながら全身を圧迫してくる威圧感に身震いしていた。

 

「あっ…………お、オメェ、一体どんな修行をしてきたんだ」

 

 ベビーを一顧だにせずに消滅させた時点で強いというのは分かっていたはずなのに、高まり続ける力に震撼を隠せない。

 

「自らを鍛えるなど始めての経験でしたよ。そして同時に屈辱に塗れた日々でもありました」

 

 ゆっくりと拳を解くフリーザは猛る戦意を押さえつけるように凄絶に笑う。

 

「いつ何時でもあなたに敗れ、殺された時のことを思い出す」

 

 悟空はこれほどただの笑みが怖いと思ったことはない。

 

「どれほど体を痛めつけ、どれほど自分を追い詰めても足りない。そう、あなたを殺すまでは、この渇きは言えることが無い」

「そこまで想って貰えて光栄だって、言った方が良いか」

 

 それでも悟空は戦わないわけにはいかない。

 

「減らず口を。相変わらず私を怒らせることに関しては宇宙一です」

「そりゃどうも」

 

 体の震えを抑えきれない悟空の強がりを見抜き、笑って流したフリーザは指を一本立てた。

 

「本気を出しなさい。直ぐに終わってはつまりません。私を楽しませてください」

 

 更に高まって行く気に気圧された悟空は背中に流れる冷や汗に気付きながらも慄然と顔を上げる。

 タイミング良く誰かが現れて都合良く助けてくれることも、悟空がこの土壇場で新たな力に目覚めるなんてご都合主義なことが起こるなんてことはない。ならば、自分自身の力で道を切り開くしかない。

 

「吠え面描くんじゃねぇぞ……っ!!」

 

 畏れを裡に封じ込めて今出来る最大の力でフリーザを迎え撃たんと、超サイヤ人ブルーになって界王拳を使用し、一気に十倍にまで引き上げる。

 ベジータ達にパワーを分けて貰っているから、ベビーと戦っている時よりもその気は大きい。

 

「素晴らしい。今の貴方ならば破壊神ビルスを超えてるやもしれませんね」

 

 わざとらしく褒めそやして感嘆の息を吐いたフリーザはその眼に失望を露わにする。

 

「ですが、期待外れです」

「があっ!?」

 

 構えすらも取らず、一瞬で悟空の懐に入り込んだフリーザの拳が腹を抉る。

 

「本気がその程度であれば直ぐに死にますよ」

 

 胴体が裂けんばかりの衝撃に下がった悟空の顎を突き上げる。

 

「ま、まだまだ……っ!」

「遅い」

「っ!?」

 

 更に追撃してくるフリーザを超速度で回避しようとする悟空。先回りされて叩き落とされる。

 

「ふ、フリーザ!」

 

 なんとか四肢をついて着地したが、既に悟空のダメージは甚大。

 

「ここまで差が開いてしまいましたか」

 

 自らで作ったクレーターの底で見上げて来る悟空に失望した眼差しを向けるフリーザ。

 

「本気を全く出していないというのに戦いにもならない。どうやら私は強く成り過ぎてしまったようですね」

 

 クレーターの端に下りて来たフリーザが顎に手を当てて何かを考える仕草をする。

 明らかな隙に悟空はフリーザの足下目掛けて気弾を放った。

 一瞬でもフリーザを怯ませるか、最低でもその視界を覆い隠す目的で放たれた気弾はその役割を果たした。

 

「がっ!?」

 

 超速度で背後に回って攻撃をしようとした悟空の腹にフリーザの肘が食い込んでいた。

 

「チンケな手ですね」

 

 追加で尻尾で顔を叩いて悟空を数メートル先にまで吹っ飛ばしたフリーザはつまらなさげに振り返る。

 

「以前の戦いで気の重要性は見せつけられましたからね。コントロールし、感知出来れば随分と違った世界が見えるものです。その点については感謝しておきますよ」

 

 前回の戦いでのことを反省し、学習したフリーザに死角はないということか。

 

「しかし、これでは些か面白みにかける」

 

 膝をついて息を切らす悟空を見下ろしたフリーザは余裕を滲ませて笑った。

 

「大サービスです。両手を使わないでいてあげます」

「それは、オメェ……」

「分かりますか? あの時と同じハンデを上げると言っているのです」

 

 ナメック星での戦いの時、未だ全力を見せていなかったフリーザは悟空相手に興が乗ったと言い出し、結果として腕を使わされた。

 フリーザは、その時のことを再現しようと言っているのだ。

 そこにあるのは圧倒的なまでの自負と自信。例え両手を使わなくても負けないの確信があるからこそ、あの時のハンデを自ら言ったのだ。

 

「随分な自信だな。またあの時みたいに手を使わされる羽目になるんじゃないか」

「こうでもしなければ、あなたは本気を出さないようですからね」

 

 そう言われて悟空は口を閉じた。

 

「本気を出せと言っているのに、あなたは未だに力を残している。こうでもすれば力を出しやすいでしょ?」

 

 確かにベビーとの戦いでも界王拳を二十倍、三十倍に引き上げた。

 現段階の十倍からすれば格段の戦闘力を持つに至るだろうが、悟空の文字通りの奥の手である。

 二十倍はともかくとして、三十倍に至ってはなるのが一瞬程度なのでいざという時に取っておきたかったが、こうまで圧倒されてしまっては使わないわけにはいかないだろう。

 

「ありがてぇな。このままじゃ戦いにもなんねぇとこだった」

 

 本音を吐露しつつも、明らかに本気ではないフリーザが油断しているこのチャンスをモノにして倒すしか悟空には道が無い。

 

「まさか、こうまで言ってナメック星の時とのように手を使ったりしねぇだろうな」

「しませんよ。サービス期間が終わったなどという言い訳もしないと誓いましょう」

 

 そうですね、と腕を組んだフリーザは視線を僅かにずらした。

 

「もしも手を使ってしまったら、その時点で私は負けを認めて大人しく引き下がると約束します」

 

 フリーザが約束を守る保証などないが破格の条件である。

 

「本当だろうな?」

「嘘はつきませんよ…………もう一つあの時と同じ言葉を送りましょう。今の状態の50パーセントの力であなたを宇宙の塵にすることが出来ますから」

「何……?」

 

 また既視感が刺激される。

 ナメック星での戦いで、二十倍に引き上げても倒しきれなかった既視感を振り払うように覚悟を決める。

 

(頼む! ハッタリであってくれ!!)

 

 あの時の絶望感が再び襲って来た悟空は拳を強く握って立ち上がる。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおっっ!!」

 

 界王拳を二十倍に引き上げると、それだけで体がミシミシと軋むが限界まで気を高め続ける。

 

「ハンデを上げているのですから、今度はもう少し持って下さいね」

 

 見下されていると分かっていても悟空は全く油断することなくフリーザを見据え、自分から仕掛けた。

 

「ほう、さっきよりも早い早い」

 

 最短距離を真っ直ぐ突き進んでの拳は簡単に避けられ、止まることなく界王拳特有の鋭角な軌道修正をして向かって行く。

 

「蹴り行きますよ」

 

 行動を先読みされて、界王拳二十倍でもギリギリの速度で頭を傾けて蹴りを避ける。

 言われなければ避けられなかったタイミングで、悟空は崩れた体勢を直すことを放棄して、地面に手を叩きつけた反動で無理矢理にフリーザに向かって行く。

 

「その必死さ、いいですね」

 

 悟空を遥かに上回る速度で背後に忽然と現れ、首に何かが巻かれたと思ったら視界が急に回った。

 

「がっ!?」

 

 尻尾を首に巻き付けられ、そのまま空中に投げ飛ばされたと分かった時には頬にフリーザの膝が叩き込まれていた。

 

「抗って見せない」

「ぐっ」

 

 視界がバチバチと明滅している中で追撃の蹴りを辛うじて躱し、二十倍ですら足元にも及んでいない現実から目を逸らしながら三十倍まで引き上げる。

 

「フリーザァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 起死回生どころか決死の行動に出た悟空は目の前にあったフリーザの尻尾を掴み、何かされる前に遥か上空へと投げ飛ばしてかめはめ波の体勢に移行する。

 

「界王拳三十倍のかめはめ波だ!!」

 

 悟空の界王拳を三十倍にまで引き上げたかめはめ波は避けようも無くフリーザに着弾し、かなり上空で爆発したはずなのに地球が壊れるのではないかと思うほどの振動が悟飯達を襲う。

 やがて振動と爆煙が消えた後には、足で防ぎ切ったフリーザの姿があった。

 

「く、くそったれめ……っ!?」

 

 フリーザは腕を組んだまま全身から気のオーラを迸らせながらも、その足には悟空の今放てる全力である超サイヤ人ブルー・界王拳三十倍のかめはめ波を受けていて傷一つ付いている様子は見受けられない。

 

「ま、全く効いちゃいねぇ……オラの限界を超えたかめはめ波を受けてもダメージを負ってないなんて」

 

 大して効いていないどころか、見る限りでは無傷。しかも腕を使わないというハンデを守ったままで、悟空の限界を遥かに超えた三十倍界王拳のかめはめ波を受け切っている。

 

「全力の全力、気が急激に落ちた様子から見て限界すらも超えてこの程度ですか」

 

 限界の更に上の限界を超えた界王拳三十倍のかめはめ波を受けても堪えた様子の全くないフリーザは、寧ろ悟空がこの程度の力しか発揮できなかったことに失望していた。

 

「どうやら私は強く成り過ぎたようです」

 

 三十倍界王拳を使った反動で浮かんでいることも出来ずに地上に降りた悟空の力尽きた姿を見ながら降りて来たフリーザ。

 

「分かっているのでしょう? 私が半分の力も出していないことは」

「ああ……」

 

 分かってしまう。

 この戦いでフリーザは何一つ嘘をついておらず、そして悟空の三十倍の界王拳を受けた時ですら半分の力も引き出せていないのだと。

 仮に更なる形態に目覚めたとしても、まだまだ力を隠しているフリーザの前に敗れることだろう。その未来がありありと想像できる。

 

「――――まるでデジャブですね。あの時とここまで似るとは。しかし、ここから先は全く違う」

 

 あの時はクリリンを殺されたことで悟空が超サイヤ人に覚醒したことで実力差が引っ繰り返ったが、今度はそんな都合の良いことが起こる余地はない。

 

「良いことを教えてあげましょう。私は修行によってこの形態よりももう一段階上があるのですよ」

「また変身するだと……?」

 

 嘗てのナメック星で自分がいなかった時の戦いを悟飯から聞いていた悟空は、フリーザの言葉が何を意味するかを理解した。

 フリーザは変身するごとにその戦闘力を段違いに増していった。最終段階と目されていた今よりも更に一段変身すれば、ただでさえ手に負えないフリーザの力がどこまで上がるのか悟空の想像を超えている。

 

「この変身を見るのは、あなたで三人目です」

 

 実力の面で言えば、今の状態でも圧倒しており悟空に見せる必要はない。

 ただ、嘗て上回られた意趣返しと、倒すと誓った男を完膚なきまでに超えたことを証明する為にフリーザは変身すると決めたのだ。

 

「はぁあああああああああああああああああああああっっ!!」

 

 変身するだけだというのに、耐えられぬとばかりに天地が轟く。

 増していくパワーに地球が耐えられないとばかりに地面が揺れて割れ、空が鳴くかのように風雨と雷鳴が鳴り響く。

 そして、閃光が辺りを染め上げて――――。

 

「ぁ……ぁ、ああ……」

 

 変身した姿を見るよりも先に、あまりにも巨大に膨れ上がり過ぎた気は悟空の認知野を超えて感じ取れなくなっていた。

 

「ふぅ、すみませんね。まだこの変身に慣れていないもので」

 

 地面を大きく抉り取りながら変身を終えたフリーザが舞い上がる噴煙を尻尾で軽く薙ぎ払う。

 

「分かりやすく金色にしてみましたが単純すぎましたかね」

 

 全身を染め上げる金色の肌。見た目で言えば色が変わった程度に過ぎないが、その内面の力は以前とは比べ物にならない。

 

「凄ぇ、本当に凄ぇよ、フリーザ」

 

 フリーザの力は悟空の想像を遥かに超えたところにあった。

 もう闘うとか、そういう次元の領域ではない。

 その力の上限が分からないという今まで闘った誰よりも遥かに隔絶し、畏れを抱くよりも純粋にここまでの力を持つ者に目標とされたことに喜びすら感じていた。

 

「安っぽいネーミングですが、ゴールデンフリーザとでも言っておきましょうか。でも、色が変わっただけではないのは分かっていますね?」

「力が読み取れねぇ。もうオラがどうこう出来る次元にはいねぇな」

 

 悟空に恐れも不安もなかった。

 嫉妬するとか、もうそういうレベルの相手ではない。これほどの領域に至った戦士に、一度でも目標にしてもらったことが嬉しかった。

 

「残念だ。そこまで至れなかったことが」

 

 それが孫悟空の唯一の悔いでもあった。

 

「さらばです、孫悟空」

 

 そして悟空の体は我知らずに傾いていく。

 胸に空いた心臓を的確に撃ち抜いた一筋の穴。

 何をされたのかも分からないまま、悟空の意識は急速に闇に食い潰される。

 

「あなたを殺すのは、星を壊すよりも大変でしたよ」

 

 孫悟空、死す。

 

 

 




実は生きているということはなく、悟空は死んでいた。


次回、『第三十八話 神を超えろ』


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第三十八話 神を超えろ

 

 倒れ込んだ悟空の下に駆け寄る悟飯と悟天。

 

「父さん――っ!」

 

 泣く悟天は胸に穴の開いた悟空の遺体に縋りつき、悟飯が愕然としながら見下ろす。

 

「貴方達の父は確かに強い男でしたよ」

 

 父親を目の前で殺された悟飯達を目の前にして、殺したフリーザがその指先から心臓を貫いた気弾を放ったゆっくりと右腕を下ろす。

 

「お前が!」

「止めろ、悟天」

 

 涙を流し続けながら悟天がフリーザに襲い掛かろうとしたがベジータに止められる。

 

「お前では奴に掠り傷一つことも出来ん」

「でも!」

「無駄死にしかならんぞ。カカロットのことを思うならば堪えろ」

 

 ベジータは誰よりもフリーザとの力の差を理解しているからこそ、言い募る悟天が暴走しないように言葉で押さえつける。

 

「ベジータさん、あなたはかかって来ないのですか?」

 

 自分の部下だった頃の冷酷非情だった姿を知るフリーザは、悟天を止める今のベジータに姿に目を見張りながらも尋ねた。

 

「あの時のカカロットの力は俺達を遥かに超えていた。そのカカロットを足元にも寄せ付けなかった貴様に向かって行ったところで勝ち目は億に一つもない」

 

 あの最後のかめはめ波はベジータの数十倍から数百倍の力だったからこそ、傷一つ付くことも無かったフリーザに挑んでも無駄死にしかならないと諦観から悟ってしまう。

 

「賢明なことです」

 

 と、フリーザは言いながらも嘲笑する。

 

「随分と軟弱になったものです。力の差を理解しながらも向かって来たナメック星の頃とは大違いですよ」

「貴様にそう思われても別に構わん」

 

 挑発をしてくるフリーザにベジータは予想外の返答を返す。

 

「俺は今の自分をそんなに嫌いではないからな」

 

 言って、悟空の遺体に縋りつく悟天と呆然と見下ろす悟飯、悔し気に唇を噛むトランクスを順に見て、覇気も露わにフリーザを睨んだ。

 

「だが、こいつらを、この星を壊すというなら命を賭けて阻止する!」

 

 裂帛の気合と共に叫ぶベジータの威圧を柳に風と受け流しながらフリーザは肩を竦めた。

 

「サイヤ人のあなたがこんな辺境の星にそこまで思い入れをするとは、昔からは想像も出来ませんね」

「今の俺はサイヤの誇りを持った地球人だ。なんとでも言うがいい」

「…………興覚めです。あなた達、サイヤ人には心底から失望しました」

 

 殺す気も失せたとベジータ達に背を向けて地球から去ろうとしたフリーザの動きが止まった。

 何かに気付いたかのようにベジータ達からは少し離れた場所に向けて手を上げて気功波を撃つ体勢になったが、直ぐに下ろした。

 

「は、破壊神ビルス!?」

 

 直後、フリーザが気功波を撃とうとしていた場所に現れた者の姿を見てベジータが驚きの声を上げた。

 ビルスは呼び捨てにしたベジータをジロリと見たが、今はこちらが優先とばかりにフリーザを見る。

 

「これはこれは破壊神ビルス様ではありませんか」

「…………フリーザ」

 

 鷹揚に言ったフリーザを何故か苦い表情で見るビルス。

 ビルスには見ただけで分かってしまったのだ。フリーザが自分を遥かに超え、それこそ全王の力の領域に踏み込まんとしていることが。

 

「暫く会わない間に随分と強く成ったようじゃないか」

「ええ、アナタ以上にね」

「ぐっ」

 

 正確に力の差を理解してしまった為に、フリーザに反論できずに言いづまったビルスは喉の奥で唸る。

 力を開放していないにも関わらず、悟空と同じくビルスでもフリーザの力はその底どころか天井すらも判断がつかない。

 

「分かるか、ウイス」

 

 己の背後に控える従者に望みを託して聞く。

 

「井の中の蛙が大海の広さを体感できぬような状態ですね」

「つまりは?」

「戦いにすらならないでしょうね。そもそも私は戦うことは出来ませんが」

 

 中立の立場である天使が他者への指導や指南以外に行なう戦闘行為は固く禁じられている。

 仮にその制約がなかったとしても、今のフリーザの力はビルスの師であるウイスをしても敵う相手ではない。

 

「最低でも大神官クラス。最悪な場合ですと、全王様の力も及ばないかもしれません」

「それほどか……」

 

 ウイスの評定にビルスは意義を唱えなかった。

 嘘をつくような男ではないし、ビルスもフリーザの力はそれほどまでに高まっていると感じたから。

 

「良いことを思いつきました」

 

 ビルスとウイスの登場に僅かに気怠さを振り払ったフリーザは二人からベジータへと視線を移す。

 

「嘗て私が惑星ベジータを破壊したことを覚えていますか?

「ああ」

 

 と、何故今更そんな話題を蒸し返すのかと訝し気に答えたベジータに、フリーザは哂う。

 

「惑星ベジータを破壊したのは、力を着け始めたサイヤ人の中から伝説だった超サイヤ人が現れるのを危惧したのも理由の一つではありますが」

 

 話が浸透するように一度間を空ける。

 

「もう一つ、そこの破壊神ビルスがサイヤ人を滅ぼせと命令したからでもあるんですよ」

 

 楽し気に告げたフリーザにベジータは目を見開いた。

 

「なにっ!?」

 

 驚きながらも強い口調でビルスを見るが、ビルスに堪えた様子はない。

 

「サイヤ人の残虐さは君も知っているだろう。僕が面倒臭がってフリーザに頼んじゃったけど、遅かれ早かれ誰かにやられていたさ」

 

 嘗ての自分の行いを顧みたベジータに反論の余地はない。

 ナメック星の悟空の言葉ではないが、サイヤ人は罪のない者を殺し過ぎたからこそ滅びたとも言える。

 

「まあ、そうですね。例えビルスの命令がなかったとしても、私はいずれサイヤ人を殺していたでしょうし」

 

 自分で不和の種を撒きながら回収したフリーザは、ベジータが激発しなったことにつまらなげに鼻を鳴らす。

 

「で、今更現れて何の御用で?」

 

 折角、目の前で面白いショーが見られると思ったのに肝心のベジータが納得してしまった所為で意味がなくなったので、この場に現れた理由を聞く。

 

「本当ならマシンミュータントを破壊しに来たんだけど、どうやら君が代わりにやってくれたようだね」

「マシンミュータント? ああ、あの寄生虫のことですか、あんな程度の相手に出張らなければならないとは破壊神の名も安くなったものです」

 

 最初は何のことか分からなかったフリーザも思い出したが特に興味も無く、今度は標的をビルスに変えて挑発し始めた。

 ピクリと反応したビルスだが反論はしなかった。

 

「挑発のつもりかい?」

 

 正しく挑発を受け止めたビルスの目の奥に怒りの光が灯る。

 

「少々、不完全燃焼でしてね。折角、現れてくれたのですから昔の意趣返しに殺して差し上げようと思ったまでです」

「また随分とデカくでたね」

 

 言葉はともかくとして、態度ではハッキリと下と見ているフリーザにビルスは拳を強く握った。

 ビルスがやる気になってくれたことにフリーザは笑みを浮かべながら、その後ろに立つウイスに視線を向ける。

 

「天使も一緒にどうぞ。それぐらいでなければ張り合いがありませんから」

「残念ながら、我ら天使は全王様より戦闘をすることは禁じられておりますので」

「援護ぐらいならば構わないでしょう。直ぐに終わってしまっては私も興ざめですから、少しぐらい持たせてあげて下さいな」

 

 ウイスの反論を聞くことも無く、ビルスを見るフリーザ。

 

「他の宇宙の破壊神は多少は持ってくれましたから、あなたも少しぐらいは戦いになるように頑張ってください」

「言ってくれる!」

 

 ベジータ達を置き去りにして、フリーザと破壊神ビルス・天使ウイスの戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは?」

 

 どことも知れない場所で目覚めた悟空は立ち上がった。

 立ち上がれるということは地面があるということ。確かに足の下には地面がある。だが、見渡す限り白の世界で他には何もない。

 

「まるで精神と時の部屋みたいだけど、オラは死んだんか?」

 

 呟いてみて頭の上に手を上げて見れば、そこには天使の輪っかがあるので死んだことには違いないらしい。

 しかし、死んだらまずは閻魔大王の下に行くはずで、実際今まで二度死んだ時はそうだった。

 

「三度も死んだら閻魔大王のおっちゃんの所には行かずに、こんな世界に行くことになるなんて聞いたことが無いぞ」

 

 悟空のように三度も死んだ人間はいないと思うので本当の所は分からないが。

 精神と時の部屋と違って背後に神殿との入り口もない真っ白な世界。どうしたものかと途方に暮れるしかない。

 

「何度死んでも閻魔の所へ行くのは変わらんよ」

「誰だ?」

 

 死んだ後まで神経を尖らせる必要はない。

 背後からかけられた声にのんびりと悟空が振り返ると、そこには十五代前の界王神が立っていた。

 

「界王神のじっちゃん、なんでここに?」

「そりゃあの世に行くはずだったお前さんを儂が引っ張り込んだからだて」

「へぇ」

 

 驚く気概も死んだ時に体に取り残して来てしまったのか、特に感慨も抱くことも無く悟空は老界王神を見る。

 

「オラを? なんで?」

 

 悟空は本気で分からず、首を捻った。

 

「お主がさっきまで闘っていたフリーザ。あ奴をこのまま放っておくわけにはいかんからじゃ」

 

 理由を言われても悟空にはピンと来るものが無い。

 

「フリーザとオラをここに引き込んだことと、どう関係すんだ?」

「お前さんを強くする」

 

 喋ることすら気だるげであった悟空は老界王神のその言葉に僅かに反応する。

 

「死んだ後に強く成ったって意味がねぇぞ」

 

 フリーザという頂点を見てしまった悟空には、死んでしまったこともあって強く成ろうとする気概を持てない。

 

「意味ならあるとも。見てみるがいい」

 

 そう言った老界王神の掲げた両手の間に水晶が突然現れ、スゥと悟空の前へと浮かんだままやってくる。

 

「意味ったって……」

 

 見ろと言われたので仕方なく水晶に目を向けた悟空の全身が固まった。

 

「なっ!? ち、地球が……っ!!」

 

 水晶にはどう見ても地球としか思えない星が粉微塵になって爆発する瞬間が映し出されていた。

 

「お前さんが死んだ後、地球にやってきたビルス様とフリーザが戦い始め、間もなく地球は壊れおった。あの二人は宇宙空間でも問題なく生きていられる。脆い星に気を配るほど優しい性格ではあるまい」

 

 今まで覇気のなかった悟空は、この老界王神の言葉は事実であると認めながらも地球が破壊されたことに怒ってキッと睨み付ける。

 

「これはこのまま二人が戦えば訪れる未来じゃ」

「どういうことだよ?」

「正確にはビルス様は地球には到着しておらんから、まだ二人は出会っておらん。水晶が映し出したのは少し先の未来じゃ」

 

 過去視の逆で未来視とでもいうのか。

 

「でも、オラじゃフリーザには勝てねぇ」

 

 逆立ちしたって勝てる気がしない。

 

「お前さんの知識を借りて言えば、この世界は精神と時の部屋と同じ効果がある」

「死んでいる間は年を取らねぇから、フリーザよりも強く成るまで修行しろってか?」

「いいや、この世界ではその前に発狂してしまうじゃろう」

 

 この何もない世界ではそうなってしまうだろうと、嘗て精神と時の部屋の始めて使って二ヶ月しか持たなかった悟空は思った。

 修行を続けてフリーザよりも手っ取り早く強く成れるなら誰も苦労はしない。

 

「フリーザの力は破壊神をも大きく超えた領域にある。お主も神を超えるしかあるまい」

 

 つまりは、老界王神は超サイヤ人ブルーを超えろというのか。

 

「超サイヤ人ブルー・界王拳の三十倍がオラの限界だ。多少のパワーアップしてもフリーザは超えられねぇ」

 

 例え五十倍に引き上げられたとしても、あのゴールデンフリーザの足下にも及ばないと確信しているからこそ悟空は断言出来た。

 

「言ったはずじゃ、神を超えろと。神の力を備えた己が化身と向かい合うのだ」

「己が化身?」

 

 悟空には老界王神が何を言っているのか意味が分からない。

 

「サイヤ人には超サイヤ人やゴッドとは別の形態があろう。いや、本来はこちらが正しい姿でもある」

 

 本気で分からない悟空に老界王神は溜息を吐いた。

 

「大猿じゃよ。ここまで言えば分かろう」

「分かるけど……」

 

 ある意味で悟空のトラウマの元でもある大猿のことは忘れていたわけではない。

 悟空は意識して大猿になったことはないし、大猿になっている間のことは全く覚えていない。

 ベジータとの戦いで、ベジータが大猿になるのを見たからこそ祖父・孫悟飯を自分が踏みつぶした事、天下一武道会の会場を壊したことを理解した。

 祖父には二度目に死んだ後に謝って許してもらったが、悟空には大猿に関して良い思い出は殆どないから努めて思い出さないようにしていたのだ。

 

「でもさ、大猿になるには尻尾と月がないと駄目なんじゃ……」

 

 先代の神に不要だろうと尻尾が切られてから悟空は一度も大猿になっていない。

 尻尾を有した状態で、満月またはそれを模したパワーボールを目を通して見ることで、1700万ゼノ超のブルーツ波を吸収しなければ大猿にはなれないらしいことをベジータが昔に言っていた。

 

「尻尾は所詮、アンテナのような物に過ぎん。地球が破壊されるまで外の時間で十五分程度。この世界では九十時間が限度じゃ。再び尻尾を生やす時間もない。儂が強制的に大猿にさせる」

 

 老界王神はこの世界を維持しながらブルーツ波を作り出さなければならない。流石に尻尾を生やすまでの余力はない。

 

「…………本当にフリーザに勝てるんか?」

「分からん」

 

 即答した老界王神に悟空はコけた。

 

「サイヤ人の過去を見たが、ゴッドの力を持って大猿を制御しようとした者は一人もおらんのだから、想像以上に強く成るかもしれんし、想像を遥かに下回るかもしれん」

 

 超サイヤ人ゴッド自体が偶然の産物で生まれたようなもので、たった一回しか行われていないのだから試した者は一人もいない。

 

「しかも、理性を取り戻せなければ永遠に大猿のまま戻れんようになるだろう。その際にはこの世界ごと、お前さんを葬り去るつもりじゃ」

 

 全てを明かした上で老界王神は聞く。

 

「このままあの世へと行くか、ここでリスクを背負って大猿となるか」

「考えるまでもないぞ」

 

 老界王神は嘘は言わない。ならば、地球は破壊されるだろう。

 十五分で破壊されるとしたらベジータ達は界王神達の瞬間移動で逃げれたとしても、チチやブルマ達は死ぬことになるだろう。そんなことは受け入れることは出来ない。

 

「やってくれ。オラは必ずやり遂げて見せる」

 

 頷いた老界王神の手に光が生まれ、上空高くへと打ち上げられた。

 

「心に強く描くのじゃ。お主の在り方、望む物、自身を構成する全てを。忘れるな、お前さんは決して一人ではない」

 

 姿を薄れさせていく老界王神の言葉を強く刻み込んだ悟空は一つだけ疑問があった。

 

「オラ、死んでるんだから現世に関われないんじゃ」

「ふっ」

 

 聞くと老界王神は笑って自身の頭の上を指し示した。

 

「儂の命を与えた。お前さんはもう生き返っておるよ」

 

 見れば老界王神の頭の上には天使の輪っかがあった。

 

「己の化身を見事飼い慣らして見せよ、孫悟空」

「ああ」

 

 この上ない感謝を老界王神を向けていた悟空の視界をブルーツ波の光が染め上げる。

 決意も虚しく、悟空の意識は己の裡から激烈に湧き上がった破壊衝動に瞬く間に飲み込まれた。

 

「――――――――グゥオオオオオオオオオオオオオオオオッッッッ!!!!!!!!」

 

 紅蓮の大猿が咆哮が白い世界に響き渡る。

 

 

 




何故か本作では疫病神みたいなビルス様、悪意はないのよ?

皆様の予想通り、悟空は超サイヤ人ゴッドの力を持った超サイヤ人4となるために紅蓮の大猿と変化しました。

尻尾無しで大猿化したので、理性完全消去。

ゴッド状態の赤い大猿ですので、紅蓮の大猿としています。


それでは次回が本当の本当に最終回となります。


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最終話 サイヤ人よ、永遠に


これにて最終回です。




 

 暗がりの中でただ一人、悟空は顔を伏せて座っていた。

 

『どれだけ強くなっても、あの子はまだ子供なんだ。せめて大人になるまでは悟空さが守ってやってけれ』

 

 岩の上に座り、見るともなしに地面を眺めていた。だが目は虚ろで、そこには何も映ってはない。

 

『…………ぼ、ボクは本当は戦いたくない。例え、どんなに酷い奴でも殺したくもない。お父さんみたいに闘ったりするの好きじゃないんだ』

 

 魂でも抜け落ちたかのように、心は驚くほどに空虚だ。

 

『なんとも不甲斐ない。これが天下の孫悟空か。またクリリンが目の前で殺されれば貴様の心も完全に――』

 

 悟空は何も考えられなくなっていた。

 

『お父さんは、僕に後は任せたと言った!!』

 

 遥か頭上で、一際強い閃光を放つ流星が空を引き裂いていく。次いで大地が鳴動した。

 

『ああ、18号さんと一緒にな』

『神よ、俺が何をしたというんだ……』

 

 揺れは立っているのが困難なほどの激しさで、岩に座っている悟空も揺り動かした。それでもなお、悟空の心には波一つ立っていない。

 

『自分はちゃっかり三位取っといてよ』

『俺の場合は、ただくじ運が良かっただけですよ』

『どうせ俺はくじ運ないですようだ』

『警察官のクリリン君と無職のヤムチャなんだし、日頃の行いの違いじゃないの』

 

 赤黒く染まる空を見つめるように顔を上げて、夢見るような表情を浮かべるだけだ。

 

「みんな………」

 

 悟空の口から、抑揚のない淡々とした声が零れ落ちた。彼の瞳は中空を彷徨う。

 

『悟飯君や悟空さんは地球人じゃないんですか?』

 

 戦闘民族サイヤ人。血塗られた闘争を追い求める性が悟空にもある。

 

『私は界王神です。孫悟空さん、あなたにお願いしたいことがあります』

 

 分かっている。立ち上がって行動するべきだ。

 

『試してやろう。早々に壊れてくれるなよ!』

 

 老界王神に与えられた命があるのだから、まだ何も終わったわけではない。だけど、立ち上がれない。

 

『さて、孫悟空。良くも僕を殺そうとしてくれたね。でも、君のお蔭でもっと強い手下を手に入れることが出来たから感謝もしてるよ』

 

 何時もそうだ。

 悟空が敵を倒しても、また新たな強い敵が出て来る。

 

『殺してやるぞ、カカロット!!』

 

 勝ち目の薄い戦いなど何時ものことだった。その度に強く成り、敵を倒して来た。

 

『地球を、ブルマとトランクスを頼んだぞ』

 

 でも、何時までそんなことを繰り返せばいいのか。どこで終わるのか。

 

『他の奴よりは破壊し甲斐がありそうだ。少しは俺を楽しませろ』

 

 何も出来ないのか、また失ってしまうのか。怖い、嫌だ、耐えられない。自責と鼓舞が、今だけ自分の心を打撃する。急かされ、焦らされ、それは自己嫌悪につながって吐き気までする。

 

『その桁外れの超サイヤ人の生命エネルギーを全て貰う。敗者は全てを喪い、勝者は全て得る。単純な理論であろう』

 

 いま顔を上げたら、光の眩しさで目がつぶれる。馬鹿馬鹿しくて、情けなくて自分が日陰を這いずってようやく生を繋ぐ虫けら以下だと思い知らされた気分だ。

 

『サイヤ人やフリーザ軍だって孫君がいなくても何時かは地球に侵略に来たかもしれないし、ドクター・ゲロはあの様子ならレッドリボン軍が存在しようとしなかろうと人造人間は造っていたはず。魔人ブウだって地球に封印されていたんだから、誰かの責任ってレベルじゃないわよ』

 

 それでも悟空が起点となって生まれた戦いもある。

 歴史にIFはなくとも、想像上では幾らでも思い描くことが出来てしまう。

 

『僕は破壊神ビルス。君達を破壊しに来たよ』

 

 その間にも大地は裂け、空は粉塵と火花で塗り潰されていく。吹き荒ぶ風は熱を孕み、草木が焼ける臭いが鼻をついた。

 

『分かるか、孫悟空、トランクス。お前達によって正しい歴史は狂わされ、歪んでしまった』

 

 気がつけば辺りは火の海だ。野焼きでもしているかのように、四方から迫る炎で退路は断たれ、じわじわと範囲は狭まっている。行動を起こさなければ、やがて火は悟空にまで到達して全身を焼き尽くすであろう。

 

(もう終わりにしよう…………)

 

 そんな覚悟と共に、悟空はそっと目を伏せた。後は最期の時を静かに待つだけだ。

 

『目の前で息子の顔を踏み潰してやったら何故どうしてと五月蠅く泣き喚くものだから、その胸をこの腕で貫いてやった時のあの絶望に満ちた表情といったら、嘗て違う世界線の孫悟空に敗れた借りを返すことが出来てついイッてしまったぞ。不便だな、人間の体という物は。わざわざ着替えなければならなかった』

 

 唸り声にも似た業火の音が徐々に迫ってくる。

 

『人造人間の破壊を生き延びた孫悟空の妻の前に現れたら、バカなほどに喜んでいたよ』

 

 悟空と同じ声で、しかし全く違う内面を持った男の声が何時までも耳から離れない。

 

『しかし、泣きながら近づいてきたが途中で俺が孫悟空でないことに気付いたらしくてな。逃げようとするものだから背中からこれを突き刺してやった』

 

 想像する。連想する。考えてしまう。

 未来の世界のチチは悟空の体を持つ者に気の剣を背後から突き刺されて何を思ったのか。

 

『死の直前、俺に向けて何者だと聞かれたからこう答えてやったぞ、『孫悟空』だとな。それを聞いたお前の妻は絶望の表情を浮かべて事切れたぞ』

 

 神、界王神、破壊神…………。

 神とはなんだ。人とはなんだ。その答えすらも悟空は見失っていた。

 

『ここに至るまでの全て、これから起こる全てはお前がいるからこそ起こった神罰だ』

 

 ゴクウブラックには然るべき罰が与えられただろう。だが、悟空にはどうなのだ。

 

「こんな所でなにやってるだよ、悟空さ」

 

 不意に闇の底にいた悟空に聞き覚えのある声がかけられた。

 

「らしくねぇだよ。オラの知る悟空さならどんな敵にだって負けねぇだ」

 

 だけど、悟空は顔を上げられない。

 この声の主は悟空ではない悟空の行動の果てに死んだから。

 

「…………チチ」

「この時代の悟空さの嫁の方じゃなくて、未来の世界の悟空さの嫁だけどな」

 

 ゴクウブラックに殺されたチチの顔を見ることは出来ない。

 

「すまねぇ」

 

 悟空には謝ることしか出来ない。

 

「ブラックの元のザマスと関わったのは別の悟空さだろ。それに悟空さが謝ることじゃねぇだ。悪いのはあのブラックちゅう奴だべ」

 

 チチが苦笑したのを感じていると、伏せた頬に指先が触れる。

 

「ちゃんと仇は取ってくれたんだ。感謝こそすれ、謝られる理由はないだよ」

 

 都合の良い言葉に幻かとも思う。

 

「例え負けたって、こんな所で蹲っているなんて悟空さらしくないだ。次は勝ってやるって修行するもんだべ」

 

 悟空のチチと何も変わらない温もりがもう随分と昔に感じられるほど懐かしい。

 温かなその感触が夢ではないと実感させる。けれど、立ち上がる力を失くして無力感に支配された悟空は、そんな幸せを直視できない。疑ってしまう。目を開くのが怖い。ここで目を開けて、都合の良い夢だったら悟空は壊れてしまう。

 

「オラ、疲れちまった。チチもオラのことを憎んでるんだろ?」

 

 はぁ、とチチが溜息を吐くのが聞こえた。

 

「憎みなんてしないだ」

「嘘だ」

 

 悟空であって悟空ではない別次元の自分と関わったザマスが引き起こした凶行の所為で死んでしまったというのに、柔らかくて軽快な口調で声も変わらない。

 悟空と結婚しなければ死ぬことも無かったはずだと恨んでいるはずだ。何で死ななければいけないのだと憎んでいるはずだ。

 

「嘘なんてつかねぇだよ」

 

 なのに、声は変わらず優しい。

 

「あの世界では悟飯も死んじまって、本当に大切な時にいてやれなかった」

 

 チチの優しさを信じれなくて首を横に振った。悟空が目を開けない限り、この全ては幻なのだから。

 

「オラじゃないオラだったとしても、オラの体がチチを殺したんだ。恨んでいるに決まっている」

 

 ずっと当たり前だったから、どれだけ愛おしくて大切だったかに気付かなかった。

 

「こんなに強く成っても何も守れない」

 

 馬鹿みたいだ。なんて弱い愚かな生き物。力を手に入れて強くなったはずなのに、傷を自分で穿り返して当り散らす馬鹿な男。

 心を強くする方法を知りたかった。痛みも苦しみも何もかも捨て去って、強い生き物になりたかった。けれど、自分は弱いまま。守れるように強くなると誓ったのに、心はずっとあの時から進むことを止めていた。

 

「悟空さは十分に強いだよ」

 

 チチは、ぽつりと独白した。 

 

「もしかしたら、ずっとここにいるのが悟空さにとって良いことなのかもしれねぇけど」

 

 ここには何もない。強者も弱者も、勝者も敗者もいない、悟空にとって優しい世界。現実は苦しくて残酷で地獄のような世界だ。

 

「悟空さには行かなきゃいけない場所があるだろ。待っていてくれる人達が、家族がいるでぇねか。何時までもこんな所で蹲っているわけにはいかねぇだ」

 

 言いたいことは分かる。だが、悟空は立ち上がれない。

 戦うのが怖いのではない。力を持つこと自体が恐ろしいのだ。

 

「そうやって何時までも戦い続ければいい?」

 

 戦って、戦って、戦って、立ち上がろうとも同じことになると、悟空は確信を込めた言葉を吐いた。

 

「必要なら」

 

 でも、チチはそうすることが必要ならばと答える。

 

「戦うこと、好きだろ?」

 

 チチの断定する言葉には痛いほどの力が籠っていた。

 戦いを忌避しながらも惹きつけられてしまう。悟空に戦闘民族サイヤ人としての血が脈々と流れている以上、否応はない。

 

「勝つ為に戦うんじゃない」

 

 それは迷っていた悟空の心を大きく動かす力だった。

 

「どんなに絶望的な相手であっても、護る為に戦うのが悟空さだろ」

 

 その声には、悟空に対する信頼が籠っている。悟空の中で何が大きく揺すぶられ、動き始めていた。

 言葉が一つ一つ染み込んできて癒されていく。

 

「絶対に負けない為に限界を極め続けて戦う。だから、相手の命を絶つことに拘りはしない」

 

 悟空の気持ちを引き上げるように、チチは心からの笑みを浮かべる。

 

「闘いが大好きで、優しいサイヤ人。それがオラの知っている孫悟空という男だ」

 

 不思議とその言葉は、悟空の心の隅々まで染み渡った。

 真っ直ぐな言葉というのは、スッと胸を突く。理屈はなくても、理由はなくても、心の底に染み渡る。

 

「チチはオラを恨んでいるんじゃねぇのか?」

 

 聞かなければならなかった。聞かなければ、悟空はどこへもいけない。

 

「オラの大好きな旦那様を恨んだりしねぇだ。ちゃんとあの世で仲良くしてるだよ」

 

 悟空は、今は素直に相手の言葉に耳を傾けていた。チチは優しい笑みを浮かべて言う。

 

「あの年寄りの界王神様から悟空さを元気づけてやってくれて頼まれて、わざわざ来ただ。いい加減、オラをオラの悟空さと悟飯の下に帰らしてけれ」

「なんだ、それ」

 

 最後はふざけ気味に言ったチチに悟空は苦笑する。

 悟空は悔やんだ。悔やんだが、生きていると思えば、まだやれる気がした。まだ心は完全には折れていなかった。

 

「立つだ、悟空さ」

 

 不思議だった。悟空は自分でも不思議なほど落ち着き払っていた。何を思い悩む必要があろう。すべきことは一つではないか。

 一つ一つ確かめていこう。一つ一つ迎え入れよう。弱くて馬鹿な自分をこれまで支えてくれた、みんなの気持ちを。

 大切なものを見失いそうになっていた。随分と遠回りをしてしまった。

 もう怖がらない。前へ進む。

 

「ありがとう、チチ」

 

 止まるわけにはいかない。時には振り返っても、足を止めて蹲っていては何も変わらない。ただそれだけの想いで立ち上がる。

 

「それでいいだ」

 

 無様でいい。誰にも褒められなくても、馬鹿なことをしていると罵られても行動する。蹲って目を逸らせば傷つかないかもしれないけど、何も変わらないのだから。

 進み続けることが出来るのは生者の特権。既に死した者に出来ることは、その背を押すことだけだとチチは悲し気に理解していた。

 

「あ……」

 

 立ち上がった悟空の世界は一変していた。

 周りはどこまでも続く草原が広がり、空の果てに光がある。無限にも近い世界の果てに、針穴ほどの小さな光がポツンと浮かんでいた。光にしては儚く、しかしながらそれは確実に存在している。

 その光に暖かさはない。しかしその光には切なくなるほどの眩しさで無数の命の灯が確認できる。

 求めて止まなかった一筋の煌めきの道に向かって歩みだすと、世界が光のベールに包まれ始める。幾筋もの光の帯が悟空の体に絡みつき、その中心へと誘っていく。

 

「辛いことが一杯あるとしても、悟空さならきっと乗り越えられるだよ」

 

 光を見つめる悟空が顔を上げると、チチは目だけで微笑んでいた。

 この道を進んで行けば、ありとあらゆる艱難辛苦が悟空を襲うだろう。それでも悟空は敢然と顔を上げた。恐怖を感じぬ者は戦士ではない。恐怖を感じて、それを克服する者が戦士足りうる。

 

「戦いばかりの人生だったけど、アイツラを幸せにしてやりてぇ、一緒にいてぇって思ったんだ。その為ならどんなことがあっても乗り越えて見せる」

 

 悟空の心の在り様の変化に従い、闇に包まれた世界が音を立てて崩れてゆく。

 

「最後に言っておきたいことがあるだ」

 

 地は深緑の草原、空は紺碧の海。清々しい風が頬を撫でた。夜空を照らす星の光が逆光になってチチの姿が判別できない。

 

「愛してるだよ、悟空さ」

 

 それでもきっとチチが微笑んで送り出してくれていることだけは間違えようもなかった。 

 

「オラも愛してるぞ、チチ」

 

 身体を突き抜けていく穏やかな光に身を委ねる。世界は白一色に染まり始め、やがて悟空は白き世界に身を溶かしていった。

 死者は止まり、生者は進む。ただその理に従って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベジータ達を置き去りにして、フリーザと破壊神ビルス・天使ウイスの戦いは始まらなかった。

 

「あ、あれ? え? はれ?」

 

 誰もが襲い掛かった衝撃で動けない中で、驚きで目を丸くした悟天が自分の手元とフリーザ・ビルスの間に何度も視線を行き来させる。

 

「お、お前は孫悟空!? フリーザに殺されたはずじゃ」

 

 二人の間で拳を受け止めても平然と立つ悟空にビルスが目を剥いた。

 

「孫、悟空……っ!」

 

 目の前の立つ男が手を抜いたとはいえ、最終形態よりも遥かに上の自分の拳を受け止めている事実にゴールデンフリーザは歯を剥いて笑いながら距離を取る。

 

「これはこれは、どうやったか知りませんが生き返ったようですね。しかも強く成って来たようで」

「ああ、ちょっくらあの世で鍛え直して来たぜ」

 

 超サイヤ人にならずに破壊神とそれを遥かに超えた戦士の攻撃を受け切った悟空は生えた尻尾を揺らし、確かな自信と共にフリーザに向き直る。

 

「そう、それでこそです」

 

 力を開放せずとも全身から奔る悟空の威圧に恐れるどころか、寧ろ歓喜が全面に出て来るフリーザは確信と共に呟いた。

 

「たった、あの程度で終わってしまっては何のために強く成ったか分からない!」

 

 戦う気になっている二人に対して、すっかり除け者にされたビルスも黙ってはいない。 

 

「おい、僕のことを忘れてるんじゃ」

「お帰り下さい、破壊神。この場において、あなたは邪魔者でしかありません」

「なんだとっ!?」

「すまねぇが、聞き分けてくんねぇかなビルス様。アンタがいると邪魔なんだ」

 

 ハッキリと二人から邪魔者扱いされたビルスは破壊の力を手の平の先に出しながら歯を剥き出しにして吠える。

 

「良い度胸だ貴様ら! 破壊神の恐ろしさを魂の髄にまで刻み込んで」

「ビルス様、ここは彼らの言うことを聞いた方が良さそうですよ」

 

 この第七宇宙の頂点であるべき破壊神をないがしろにする二人を誅せんとしたビルスだったが、ウイスに言われて一抹の冷静さを取り戻す。

 

「ぬぐぅ……」

 

 納得していない様子のビルスの肩にウイスが手を乗せる。

 

「では、皆さまお元気で」

 

 この場から消えた二人を見送ることなく、悟空とフリーザは再び対峙する。

 

「見せてみなさい、新しい力を」

「行くぜ」

 

 悟空は腰だめに構えた両腕の拳を強く握る。

 

「はぁあああああああああああ――――――――っ!!」

 

 悟空から爆発的な、いや、それすらも生ぬるい光の本流が迸り、空を覆う。

 放たれる光が世界全てを染め、視界が光に染まっていく。圧縮と膨張を繰り返しながら、今や今やと破裂しかねない空間の絶叫。空間が捻じ曲がり、それはまるで世界の終わりに歌う引き金の祝詞。

 破滅的な力の渦に、空間が戦慄き、大気が咆吼する。

 

「ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっっ!!」

 

 光が凝縮する。

 直後、野放図に垂れ流されるのではなく光が爆裂した。

 

『――――!!』

 

 この世のものとは思えない澄んだ音が響いた。

 太陽が生まれた。そうとしか思えぬ巨大な閃光によって世界が光に埋め尽くされ、全ての人の目を焼いたのだ。

 ごおっと烈風が巻いた。

 

「一瞬垣間見えたイメージは赤い大猿。成程、そちらに進んだわけですか」

 

 悟空の進化を正確に見抜いたフリーザは恐怖ではなく歓喜で身震いした。

 

「今のオラは超サイヤ人ゴッドの力を持った大猿の力を完璧にコントロールしている。さしずめ、そうだな超サイヤ人4ってやつかな」

 

 光が晴れた時、そこにいた悟空は悟空であって悟空ではなかった。

 超サイヤ人3ほどではないが長い黒髪、全身は超サイヤ人ゴッドのオーラと同じ色の赤い体毛、赤い隈取、そして赤い尻尾。

 

「大分、私に近づいたようですね。それでこそ、です」

 

 悟空の変化は、超サイヤ人ゴッドともブルーとも、超サイヤ人3とも違う。

 どちらとも違う系統の変化をした今の悟空を称するならば、超サイヤ人4としか考えられない。

 

「さあ、戦うとしましょう。今度は素晴らしい戦いとなるでしょう」

「かもな」

 

 ニヤリと笑った二人は次の瞬間に、ベジータの目にも映らない超速度でぶつかった。

 

「「――っ!!」」

 

 二人の拳がぶつかりあった接点で、現実の物理法則が砕けて悲鳴を上げる。

 撓んだ空間の歪みが二人の間から広がり、地球を超えて第七宇宙全体に広がり、そして十二ある全ての宇宙を揺るがした。

 

「何?」

 

 遠く離れた全王の宮殿にまで影響を及ぼし、玉座に座っていた全王すらも何が起こったのかと目を見開いた。

 

『――――――』

 

 刹那を万に切り刻み、億に切り刻み、意識だけが引き延ばされるのを二人は感じた。

 瞬きさえ許されない、走馬灯にも等しいコンマの時間に力が膨れ上がり続ける。

 

「ここまで、ですね」

 

 高まり続ける力を無理に押し留め、フリーザが引いたのに合わせて悟空も距離を取る。

 

「いいのか? 今ならオラを殺せるかもしれねぇぞ」

 

 今の衝突で彼我の力量差を正確に読み取った悟空は、まだ強さの面ではフリーザが一枚上回っていることを自覚して言った。

 

「続ければ勝つのは私ですが、このまま戦えば先に地球が壊れる」

 

 もう二人の力に対して地球は脆過ぎた。

 

「そうなれば、アナタはまた怒り、限界を超えて来る」

 

 力の差と言っても、仲間を家族を地球を守れなかった悟空は限界を超えて強く成なれば、敗れるのはフリーザの方であると悟った。

 

「ここは引いた方が無難ですね」

 

 フリーザは勝つ為に戦うのだ。負けると分かっている戦いをする理由はない。

 

「壮健でありなさい。怠けていたら、また殺しますよ」

「オラも、もっと強くなって見せるさ」

「私はそれを更に超えて見せましょう。では、ごきげんよう」

 

 ニヤリと相変わらず邪悪に笑ったフリーザが浮かび上がり、瞬く間に空の果てへと消えて行く。

 

「終わったか」

 

 フリーザが宇宙へと飛んで行ったのを見届けた悟空は超サイヤ人4の変身を解く。

 

「お父さぁん!!」

 

 向かって来る悟天と悟飯、その後ろでそっぽを向いているベジータの服を引っ張っているトランクスを見ながら悟空は笑った。

 

「へへっ、もっともっと強く成るぞ」

 

 結末は誰にも見えない新たな未来の始まり。この先、どれほどの困難が待ち受けていようとも悟空は決して足を止めることはない。

 

 

 




皆様、拙作をお読み頂き誠にありがとうございました。

一度は完結しておきながら、また続き、当初の予定であったゴールデンフリーザ編も更新出来、これにて『未来からの手紙』は終了です。

では、恒例のゴールデンフリーザ編の戦闘力を。

フリーザ 最終形態 2500万
ゴールデンフリーザ 1億5千万

悟空 基礎戦闘力 75、ブルーは基礎戦闘力に3800倍
 ブルー 75×3800=285000(28万5千) 
 ブルー・界王拳 57万、10倍 285万、20倍 570万、30倍 855万
皆からパワーを受けた後(基礎戦闘力が100に上昇)
 ブルー 100×3800=38万
 界王拳10倍 380万、20倍 760万、30倍 1140万

ベジータ達のパワーを受け取って力にし、基礎戦闘力が80に上昇
ゴッドの力を持った大猿(紅蓮の大猿)はゴッドの掛け率3600倍を採用。
大猿時、80*3600=28万8千に10倍で288万、そこで更に超サイヤ人の50倍で最終戦闘力『1億4千400万』

悟空『1億4千400万』 フリーザ『一億5千万』
戦闘力数値分だけ見ればフリーザが上ですが、地球が破壊されたら悟空が強化されて勝つ。その未来を見たフリーザは撤退ということになります。

ドラゴンボール超も続いていますし、新作映画も出るらしいので、もっともっと二次創作が増えることを祈って本作は終了です。

ご愛顧、ありがとうございました。

次回作については、放置中の『幸せなネギ』を続けるか、新しくネギまで『ポップ系主人公』を始めるか。

活動報告にて悩み中。


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