アイドルマスターPLUS銀河の妖精 (ヴェルミナティー)
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プロローグ

本作のシェリルは「銀河の一つや二つ、私の歌で救ってあげるわ!」な感じです。
原作での本当は繊細で、好きな人の前ではツンデレな感じはかなり薄いです


胸が高鳴る

 

何度この瞬間を迎えても

 

いいえ、この瞬間を迎えるたびに

 

ステージに立つたびに、私の胸は高鳴る

 

 

 

もう、二年か

 

みんなと出会って、みんなと輝いて

 

いつの間にか。大好きになっていた

 

いつの間にか。大切になっていた

 

いつの間にか。ここが、私の居場所になっていた

 

 

 

 

「開幕準備!完了です!!」

 

プロデューサーが声を掛けてくれる

 

私も、準備完了のサインを送る

 

 

 

 

ステージの幕が上がる

 

それと同時に鳴り響く観客(ファン)の歓声

 

みんな、私に釘付けね

 

当然よ

 

だって、私は...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたしの歌をきけぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二年前のあの日

 

それは、私が故郷のイングランドから、ホームステイで日本を訪れてから3週間程経った頃

 

「アイドルに興味はありませんか?」

 

「ハイ?」

 

街を歩いていたら、突然三白眼の大男にスカウトされた

 

「アイドルに、興味はありませんか?」

 

言葉が通じて無いとでもおもったのかしら?

 

今度はゆっくりと尋ねてくる

 

「大丈夫よ。言葉は通じてるわ」

 

ホッとした様子の彼

 

「失礼。私はこういうものです」

 

差し出された名刺には、346プロ、アイドル事業部、武内プロデューサーとある

 

346プロか、ここってたしかに()()()()...

 

「あの、どうでしょうか?」

 

もう一度彼の目を見る

 

正直、私は自分の容姿に自信を持ってる

ストロベリーブロンドの髪にも

プロポーションにもね

 

前々からスカウトだって何度もされてる

下心丸出しのね

 

でも、見た所彼からはそんなの感じはしない

上手く隠してるのかしら?

 

それなら

 

「ねぇ」

 

私は胸を寄せる様に腕を組み、彼の目をジッと見て問いかける

 

「どうして私をスカウトしたの?私の何処に魅力を感じたのかしら?」

 

「笑顔です」

 

「ハ?」

 

目線を合わせたまま、間髪入れずに答えてきた

 

一応断っておくけど、彼に一度として笑顔を見せてない

適当なことを言っているのかと、私は彼の目を睨みつける

 

でも

 

「笑顔です」

 

ふーん

 

彼は目を逸らさない。真っ直ぐこっちを見る

並みの男なら慌てて目を逸らしたり

踵を返すところだけど

 

面白いじゃない

 

「いいわ。その話、受けてあげる」

 

私がそう言うと彼が驚いた顔を見せる

 

「本当ですか!」

 

「えぇ、私に二言はないわ」

 

彼は相変わらず固い表情のまま、でも嬉しそうに色々な説明をする

オーディションは受けなきゃダメか

 

「あっ」

 

ん?何かしら?

 

「申し訳ございません、お名前を伺ってなかったですね」

 

あぁ、成る程

 

「そうね、忘れてたわ」

 

 

 

そして私は、彼に名乗る

私の名前は

 

 

 

 

 

「私はシェリル、シェリル・ノームよ!!!」

 

 

 

 

 

それが、私の新しい日々の始まりだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




小説の書き方を手探りな中
思いついたのでやってみようと書いてみました


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シェリルと奈緒

シェリルのホームステイ先は?


ハァイみんな!

シェリル・ノームよ!

 

アイドルにスカウトされて、それを受けた後

とりあえず後日連絡をくれるって言うから今日は帰ることにしたわ

 

で、ここが私のホームステイ先

インターフォンを鳴らすと

 

『はーい』

「ただいま、帰ったわ」

『おう。今開ける』

 

それから直ぐに扉を開けてくれたのは

 

「おっす、シェリル。おかえりー」

「ただいま。奈緒」

 

私の友達【神谷 奈緒】よ

 

奈緒のパパと私のダッドはアニメ好きと言うことで知り合ったらしいわ

なんでもダッドがまだ若いときに日本で偶々知り合って、アニメの話で盛り上がってそのまま親友になったとか

ジャパニメーション恐るべしね

 

「シェリル、どうした?考え事か?」

 

因みに、奈緒にもバッチリ遺伝してて

 

「いいえ、大丈夫よ奈緒。ちょっと始めて会ったときの事をね」

 

 

 

「シェリル・ノームです。よろしくお願いします」

 

3週間前、私が神谷家のお世話になる日

えっ?私が敬語使ってる?

私だってお家に住まわせて貰うんだもの。それくらいするわ

 

「まぁ、綺麗な子ねぇ」

 

「シェリルさん、どうか自分の家だと思ってくつろいでくださいね」

 

奈緒のママもパパもそう声を掛けてくれたわ

本当に優しいご両親よ

でっ、肝心の奈緒は

 

「...」ガチガチ

 

ガチガチに緊張してた

 

私が目を向けると...

 

「びくっ!」ビクッ

 

ビクッとした、と言うか自分で言ったわね

 

「シェリル・ノームよ、シェリルでいいわ。よろしくね」

 

「なっ、あっ、えぇーと。奈緒、神谷 奈緒、だ。じゃない、です」

 

ふふっなんだか可愛い

 

「奈緒ね。敬語なんていらないわ」

 

「あっ、ああ」

 

その日の奈緒はずーっと緊張しっぱなしだった

 

 

 

「なっ、なんだよ!何思い出してんだよぉ!」

 

うん、相変わらず可愛いわ

 

「別にいいでしょ?あれから直ぐに仲良くなれたんだから」

 

「それは...そうだけど」

 

 

 

「奈緒、ママが呼んでるわよ。ご飯できたって」

 

あれから3日後

 

奈緒のママから頼まれて奈緒を呼びに来た

ノックしても返事が無いからドアを開けたんだけど

 

「〜♫」

 

ベッドの上で、奈緒がイヤホンをつけて音楽を聴いてる

目を閉じて、気持ち良さげに歌詞を口ずさんで

 

「奈緒」

 

奈緒のほっぺたをツンとついてみる

直後目を見開き、全力で後退する奈緒

 

「な、な、な、なんだよー!」

 

慌てふためく奈緒

 

「ママが呼んでるわよ。ところで奈緒、何を聴いていたの?」

 

尋ねる私に顔を赤くし何でもいいだろ、と呟く奈緒

ふーん

 

「ちょっと貸して」

 

「なぁっ!やめろー!」

 

イヤホンをヒョイっと奈緒の手から取って彼女の聴いてた曲を聴く

これは、確か

 

「【Scarlet Ballet】?」

 

あたふたしてた奈緒が驚いた顔を見せる

 

「ふぇ?知ってるの...か...?」

 

「えぇ、聴いたことあるわ」

 

丁度サビに差し掛かるところでわたしは

 

「〜♫」

 

軽く歌ってみる

うん、結構好きな曲よ

ダッドが前に歌ってて知ってたの

 

「ほぁ...」

 

奈緒の方を向いてみたら真っ赤な顔のまま惚けていた

 

「どうしたの?」

 

「どっ、どうしたじゃねーよ!」

 

私に問いかけられてそう言いだす奈緒

本当どうしたのかしら?

 

「なっ、なに歌ってんだよ!はずかしくねぇーのかよ!」

 

「?別にはずかしくなんて無いわ。いい歌じゃない」

 

私が聴いてて覚えてたくらいだからね

 

「やっ、でもそれ、アニソンだし」

 

だから?

 

「はっ、恥ずかしいだろ!オタクっぽくて...」

 

ふーん

 

「馬鹿ね」

 

私はビシッと言ってやった

 

「なっ!」

 

驚いた顔の奈緒に畳み掛ける

 

「あなた、この歌が好きなんでしょ?だから夢中で聴いてたんじゃないの?」

 

「それは...」

 

「好きでなにが悪いの?誰かに迷惑をかけてるわけでもないでしょ。自分の好きを否定するなんて、この私が、シェリル・ノームが許さないわ」

 

全力で宣言する

 

「お前ってやつは...」

 

小さく呟く奈緒

 

「それに、ダッドたちがアニメ好きだったおかげで、私達は知り合えたのよ」

 

ほんとのことよ。二人が知りあわなければ、こうして私達も知り合うことなんてなかったもの

 

「お前ってやつは」

 

もう一度同じ事を言う奈緒。でもその顔は少し笑ってる

 

「シェリルちゃーん、なおー。ご飯よー」

 

いけない!呼びに来てた事忘れてた

 

「はーい!行こうぜ、()()()()!」

 

えっ?

 

「ふふっ。行きましょう、奈緒!」

 

 

 

「なぁぁぁぁ!回想終わり!」

 

あら、せっかく良いところだったのに

 

「もう!何だよもう!」

 

随分照れてるわね

 

「私と奈緒の大切な思い出よ?」

 

「うわっ、臆面なくそんな事言って!からかうなよ!」

 

「ほんとのことよ」

 

嘘じゃないわ。日本に来て最初の友達との思い出なんだもの

 

そりゃ、あたしにとっても大切な思い出だけど...

 

「ん?」

 

「だぁー!ほらっ、手洗いうがいしてこい!夕飯はエビフライだぞ!」

 

「ふふっ、はーい」

 

ちゃーんと聞こえてたけどね

 

 

 

 

そのまま洗面所に行こうとしたところで

 

「あっ。そうだ奈緒」

 

思い出して口を開く

 

「なんだよ?」

 

「私()、アイドルになることにしたわ」

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんで【Scarlet Ballet】なのかは、歌ってる中の人繋がりだからです


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シェリルとマム そしてオーディション

前回、第2話とか書いてすみません
最初のやつはプロローグなんだから第2話じゃないので話数は消してみました

今回はシェリルの弱点?


シェリルはすげーよ

 

すげー自信満々で、物怖じしない態度で、本当にカッコいい

でも、笑った顔は滅茶苦茶可愛くて

 

てか、なんだよあの綺麗な金髪!なんだよあのナイスバディ!

アニメから飛び出して来たかと思ったわ!

 

そんなシェリルが...

 

なんだよ...

 

なんなんだよ...

 

「アイドルって!なんだよぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 

 

 

 

「アイドルって!なんだよぉぉぉぉぉぉ!!」

 

うわっ、ビックリした

 

ハーイみんな。シェリル・ノームよ

 

今、お夕飯を食べているのだけど、急に奈緒が叫びだしたわ

 

「奈緒、お行儀悪いわよ?」

 

「あっごめん...じゃない!」

 

違わないと思うけど?

 

「アイドルって何だよ!?」

 

あぁ。その話?

 

「アイドルはアイドルよ?と言うより。奈緒もアイドルでしょ?」

 

そう。彼女も実はアイドルなの

私が日本に来る前にスカウトされたんだって

それも私と同じ346プロにね

 

「あぅ。それは...」

 

「よろしくね、奈緒先輩♫」

 

グハァと仰け反る奈緒

どうしたのかしら?

 

「おまっ、やめろよそーゆーの!」

 

そう言いながら結構嬉しそうだけど?

 

「それに、あたしだって、まだ全然一人前なんかじゃないし」

 

「シングル曲にユニット曲まであるのに?私はまだオーディションを受けなきゃいけないのよ?」

 

いきなりデビューは、虫が良すぎるものね

 

「なんだ、オーディション受けるのか。合格前からそんな事...」

 

「私が落ちると思う?」

 

「...思わないです」

 

当然よね!

 

しばらく頭を抱えたり、唸ったり

奈緒って見てて飽きないわ

 

「シェリル!」

 

奈緒が私を呼ぶ

 

「負けねぇからな!!」

 

 

高らかと宣言する奈緒

 

奈緒...あなたは...本当に...

 

「ふふっ」

 

「なっ、なんだよ!」

 

本当に...あなたは

 

「ふふっ、ごめんなさい。奈緒のそうゆうところ。好きよ」

 

「なぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

本当にこの子は私の最高の友達よ

 

 

あっ、因みにこんなに騒いでたんだけど

奈緒のご両親は...

 

「シェリルちゃんがアイドルだなんて、お赤飯を炊けばよかったかしら」

 

「こんな展開を我が家で観れるなんて、感動!」

 

うん、本当に素敵な家族ね

 

 

 

 

それからしばらくして

 

「あ、そーだシェリル」

 

「なにかしら?」

 

奈緒の部屋で二人してくつろいでたんだけど

 

「お前、ちゃんとお母さんにアイドルになるって伝えたか?」

 

...

 

「oh...」

 

しまった...

 

 

 

勿論マムの事は大好きよ。優しくて、綺麗で、強くて、料理上手で。

でもね...

 

 

自室に戻り、愛用の携帯の前でかれこれ30分。わかってるわ、必要な事だってゆうのは。こうなったら...

 

「短期決戦ね」

 

ホームステイ先でアイドルデビュー!

マムはどう思うかしら?

いいえ、考えてるだけじゃダメよシェリル

覚悟を決めたわ。やってやる、やってやるんだから!

 

トゥルルル トゥルルル

 

呼び出し音が鳴るなか、私の鼓動は早まり続ける

大丈夫よ、落ち着きなさい私。私なら出来るわ。

だって私は...

 

トゥルル...ピー

 

『ハロー、シェリル』

 

きた!

 

「ハーイ!マム!実は私!日本でアイドルになることにしたの!

それじゃあね!」

 

いける!

 

しかし

 

『シェリル』

 

...

 

『お話し、しましょう?』

 

「YES、マム」

 

マムは、怒ると本当に怖いの...

 

 

『なるほどね...』

 

マムに今日の出来事をちゃんと話したわ

暫く無言のマム

この沈黙が怖い...すると

 

『シェリル』

 

マムが再び私の名を呼ぶ

そして

 

『覚悟は、ある?』

 

っ!!

 

マムが続けてくる

 

『私にはアイドルがどんなものかよくわからないわ。でもね、お仕事だって事はわかる。プロになるのがどういう事か理解はできてるの?』

 

...マムの言う事はもっともよ。

アイドルが楽な仕事じゃないなんて、奈緒を、()()()()を見てたらわかるわ。

 

でも、だからこそ私は

 

「当然よ!」

 

そう返した

 

「マム、私を忘れたわけじゃないでしょ?私はシェリル。私が自分で決めた事に妥協なんて許すと思って?」

 

そう、私がやりたいと言ったのだ

この私が半端な覚悟で物事を決めるわけないわ

やるならば徹底的よ!!

 

また沈黙が流れる

それを先に破ったのは...

 

『ふぅ...』

 

マムだった

 

『わかったわ、シェリル。どうやら本気みたいね。』

 

「マム!」

 

思わず声をあげちゃった

 

『あなたが自分でやりたい事を見つけたのなら、私が文句を言うことなんてないわ』

 

「ありがとう、マム」

 

『当然よ、私はあなたのお母さんなんですもの。娘の応援をしない母親なんていないわ」

 

マム...

 

『辛いことがあったら相談なさい。私はどんなに離れてても、あなたを応援するわ』

 

「うん、本当にありがとう」

 

マムは本当に最高のマムね

 

『パパには私から伝えるわね。安心して

反対したら締めるから』

 

ホント最高に怖いわマム

でも

 

「ありがとう。愛してるわ、マム」

 

『私も愛してるわ、シェリル。おやすみなさい』

 

「うん、おやすみなさい」

 

 

 

 

「ふぅ」

 

シェリルからの電話を切ってから、私は再び息を漏らす

 

全く、あの子は誰に似たんだか

あの行動力、やると決めたら絶対曲げない根性

フフッ、間違いなく私の娘ね

 

娘はいずれ親離れをすると、覚悟してたけど

やっぱり寂しいものね

私でこれじゃあ、パパなんてどうなることやら

 

()()()()ー。今の電話、もしかしてシェリルからかー?」

噂をすれば

「ハーイ、今行きます」

 

さて、これから忙しくなるわよ!

まず、パパを説得(締める)ところからね

 

 

 

 

 

数日後

 

「いよいよね...」

 

私は今、346プロの前に来ている。

先日、やっとプロデューサーから連絡があった

 

この私をこんなに待たせるなんてね

まぁいいわ

 

「よし!」

 

気合を入れて進み出す

 

受付で入館証を貰い、エレベーターで目的の階へ

 

えぇーと、目的の部屋は

 

「シェリル・ノームさん?」

 

と、一人の女性が声を掛けてくれた

黄緑色のスーツを着た優しそうな人

事務員の人かしら?

 

「はい」

 

「お待ちしてました。こちらへどうぞ」

 

笑顔で対応してくれる事務員さん

その案内でオーディション会場の会議室に

 

「こちらです。頑張ってくださいね」

 

「ありがとうございます」

 

事務員さんに笑顔で会釈して別れる

自分でも少し緊張してるのがわかる

でも、

 

「すー、はー。よし!」

 

深呼吸と共に気合を入れ直し

 

トントントントン

 

「失礼します!」

 

会議室の扉をノックする

 

「お入りください」

 

中から声が聞こえる。あの声は彼ね

 

お手本通りの動作で入室する

練習は奈緒()()に付き合ってもらった

 

イスの横に立ち、審査員たちを見やる

武内プロデューサーと、冴えないおじさんの二人

 

「自己紹介と、志望動機をお願いします」

 

プロデューサーの声に私は答える

 

「はい...」

 

高らかにね

 

「シェリル・ノームよ!トップアイドルになりに来たわ!!」

 

 




違うんです。あの人しか思い浮かばなかったんです。
だってあの人絶対シェリル大好きだもん!



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シェリルと凛と加蓮

奈緒といったらやっぱりこの二人ですよね

キャラ崩壊、お覚悟を


「武内君。彼女は、凄まじい逸材だね」

 

今西部長が窓の外を眺めながら、私にそう告げる

 

「はい。ですが、私の予想を遥かに超えていました」

 

彼女...【シェリル・ノーム】さんには、目にした瞬間から、只者では無いものを感じていた。しかし

 

「彼女は波乱を呼ぶよ」

 

再び口を開く部長

そして私の方を向いて

 

「武内君。彼女の事は、君に一任するよ」

 

「よろしいのですか?」

 

願っても無い事を...彼女の素質なら、上も放っておかないだろうに

 

「いや、寧ろ恐れ多くてみんな君に丸投げするだろうね。

責任取れ、と」

 

「ハァ...」

 

思わず納得してしまった...

 

 

 

ハァイみんな!

シェリルよ!

 

え?オーディションの結果?わざわざ言わなくてもわかるでしょ!

もちろん、ゴ・ウ・カ・クよ!

当然よね!だって私は...

 

「ノーム!今のステップ、遅れてるぞ!」

 

いけない!

 

「はい!」

 

今、私はダンスレッスンの最中。ダメね、ちゃんと集中しないと。ひとつひとつの積み重ねが力になるんですもの

トップアイドルになるなら、手を抜くなんて許されないわ!

 

「さっきのところからだ、いくぞ!」

 

トレーナーさんの声が響く

 

「お願いします!」

 

さぁ、いくわよ!

 

 

 

 

「よし、今日はここまでだ」

 

「ありがとうございます」

 

本日のレッスン終了を告げるトレーナーさん

以前一回、体力がある限りやりたいとお願いしたら怒られたの

「無理を繰り返すより、継続的を繰り返せ」ってね

何よりまだ本格デビュー前。そう、デビュー前なのよね...

 

「ふぅ...」

 

シャワールームで汗を流し、外に出たところでつい息を漏らす

ダメね、こんな事考えてたら。

自分に自信が無いわけじゃないわ。でもこれはみんなが歩む道のり

なさけない事なんて言えないわ

 

「よし!」

 

気合を入れて歩き出そうとしたところで

 

「あっ。おっすシェリル」

 

「あら、奈緒」

 

私に声を掛けてきたのは親友の奈緒と...

 

「やっほー、シェリルおつかれー」

「お疲れ、シェリル」

 

「ハァイ、加蓮、凛。お疲れ様」

 

奈緒と同じユニット【トライアドプリムス】のメンバー。

【北条 加蓮】と【渋谷 凛】の二人よ

 

この二人とは実はアイドルにスカウトされる前から知り合ってるの

二人が奈緒の家に遊びに来た時に、ね

 

「うわっ...」

「おおー、綺麗な子」カシャ

 

これが二人の初対面の反応、凛は素直に驚いてくれて、加蓮はいきなり写真をパシャリ。どうも趣味みたい

その後二人とはすぐに仲良くなれたわ。主に奈緒関連の話題でね

それからは、一緒に遊んだり、前のオーディションの練習にも付き合ってくれたりして。

今では大切な友達よ

 

 

 

「シェリルってすごいよねー」

 

加蓮がそんな事を言ってきた

ここは近くのファーストフード店。あれから三人に誘われてやって来たの

日本に来た当初は、余りこういうお店は健康に良くないなんて思ってたけど

ここのハンバーガーって美味しいのよね。モグモグ

 

って加蓮はどうしたのかしら?

 

「私の何が凄いの?」

 

私が聞き返すと

 

「いやー、例えばさ。体力オーバーブーストの茜ちゃんより早くに基礎トレーニング課題をクリアするとか」

 

茜ちゃんって云うのは、【日野 茜】ちゃんのこと。

元気いっぱいのかわいい子よ

 

「ボイストレーニングも凄かったらしいね。美嘉が燃えてたよ?負けられないって」

 

続けて凛もそんな事を言う。美嘉は【城ヶ崎 美嘉】の事。初めて会った時から親切な気の良い先輩よ

 

「ふぅん、そうなんだ。まぁ私にかかれば...」

 

「ふふん、だろだろ?シェリルはすごいんだぞ」

 

先ほどまで子供向けセットのおまけフィギュアを眺めてた奈緒がそんな事を言う、ってあら?

 

「どうして奈緒が自慢げなのよ〜」

ナマイキ

こうしてあげるわ!

奈緒の頬っぺたを軽く引っ張ってみる。うわっモチモチ

 

「ふひゃあ、やめぉー!ひっはぅなぁー!」

 

「あはは!奈緒のレアショットも〜らい!」カシャ

 

「やめぉー、とるふぁー!」

 

「私も...」カシャ

 

「!?」

 

奈緒のいじられキャラ具合は私も勝てないわ

流石ね、奈緒

 

「ううー、なんか嬉しく無い事考えてないか?」

 

「気のせいよ」

 

「だけど...」

 

うん?凛?

 

「負けられない、ね」

 

「ふふん。どうかーん」

 

凛、加蓮...

ふっ

 

「全力で、かかって来なさい!」

 

私、凛、加蓮の後ろでカミナリが鳴った気がする(あくまでイメージ)

 

「って、そのセリフお前じゃねーだろ!」

 

奈緒のツッコミが決まってみんなで笑い出す

 

ふふふ、仲のいい友達が増えて良かった

 

 

 

それから暫くして

 

「ごめーん。ちょっとお手洗い。奈緒も行こ?」

 

お店を出て歩いていたら、加蓮がそう言いだした

 

「え?あたしは別に...」

 

「いいからいいから」

 

加蓮が強引に奈緒を連れて行く

あら?加蓮が今、ごめんねって顔をしたような...?

 

この場に残ったのは私と凛の二人

...加蓮ったら、何を?

すると

 

「あのさ...シェリル...」

 

凛が口を開く、いつもクールな子だけど、妙に歯切れが悪いわね

 

「なにかしら?凛」

 

私が聞き返しても、何かを言いたそうな、言いづらそうな

でも、意を決したように

 

「シェリルは、その、プロデューサーにスカウトされたんだよね」

 

プロデューサー?あぁ武内プロデューサーの事かな?

 

「えぇ、そうよ?それが?」

 

いや、もしかしてこれは

 

「その、あいつのこと、どう思ってるかなって...」

 

なるほど、そう言う事か

そういえば、凛をスカウトしたのも彼なのよね

さて、なんて答えるべきかしら

 

「うーん、確かに感謝してはいるわ。彼にスカウトされたおかげで、こうしてアイドルになった訳だから」

 

「そっ、そうなんだ」

 

ふふっ、凛ったら

 

「彼っていつも堅いのよね、もう少し気楽でもいいと思うけど」

 

「そうだね、それは思う」

 

同意してくる凛

 

「だけど、それだけ真面目って事なのよね。アイドルの事をよく考えて、自分に出来る精一杯で頑張ってくれている。

ほんと、感謝しても仕切れないわ。」

 

「私もそう思う。あいつ、不器用なのに頑張ってくれて、私に道を照らしてくれて。多分、プロデューサーが居なかったら、私なににもなれなかったかもしれない」

 

へぇ〜。でもそれだけじゃないはずよね?

 

「彼って、結構カッコいいわよね」

 

「へっ?」

 

私がそう言うと、あからさまに動揺する凛

 

「さっきも言ったけど、不器用なりに真面目で、一人一人を理解しようとしてくれて。狙ってる子とかいるのかしら?もし誰もいないなら...」

 

「ダメ!」

 

聞いたことのない大声で叫ぶ凛。周りに人が少なくて良かった

 

「ダメだよ、そんなの...」

 

顔を紅くして、そう呟く凛

全くこの子は

 

「ごめんなさい。でもね凛、わかってるわ。彼の事、好きなんでしょ?」

 

「なっ!?」

 

そんなあからさまな態度で隠してるつもり?

 

「やっ、そんな事、ないよ...」

 

「凛」

 

彼女に顔を近づけ、その目を見つめる

 

「本当は?」

 

「...っ!」

 

間髪入れず目を逸らし、小さく頷く凛

ふふん。私に隠し事なんて、2059年早いわ!

 

「ふぅん、そっか」

 

「...」(頬っぺた真っ赤)

 

可愛いわね、ホント

 

「加蓮も協力者?」

 

小さく頷く凛

だと思った

 

「最近、プロデューサー。シェリルの事で忙しそうで...。わかってる、シェリルは凄いし、そのデビューに力を入れて当然なのは。だけど...」

 

なるほど

 

「ヤキモチ妬いちゃった?」

 

「うん...」

 

彼の所為じゃないわね

それどころか、私の...

 

「ごめん、シェリル。シェリルは悪くないのに...」

 

っ!

ホント、クールに見えて、優しい子なんだから

 

好きな人、か...

 

「凛。彼に好きって伝えないの?」

 

再び顔を紅くして驚いた顔を浮かべる凛

 

「できないよ。私はアイドルで、あいつはプロデューサーで」

 

確かに、普通はね。だけど

 

「素直になれなくて、本当の気持ちを伝えられなかったら。チャンスはいくらでもあるはずなのに、それが出来なかったら。きっと後悔するわ。もしかしたら、突然そのチャンスが無くなるかもしれない。どんなに手を伸ばしても、伝えられなくなるかもしれない...」

 

不思議ね、自然とそんな事を言ってたわ

 

「シェリル...?」

 

「ふふっ。だからね凛。せめて、後悔だけは無いようにしなさい。アイドルだからって、あなたの人生は一度だけ。その人生を決めれるのは、誰でも無い、凛だけなんだから」

 

一度も恋をした事無いはずなのに、随分偉そうな事言ってるわね、私

だけど、これは私の本心

 

「うん、ありがとう。シェリル」

 

少し考え込むようにしてから、そう言ってくれる凛

そして

 

「頑張ってみる」

 

私に笑顔を向けてくれて

もう、ホント、もう...

 

「凛!」

 

この子はもう!

 

「カワイイんだから!」

 

全力で凛に抱きつく

 

「ちょ、なにし、シェリル...やめっ!きゃっ、どこさわって」

 

「おーい、お待たせー。いやー、加蓮が急にあのアクセ可愛いって...お前らなにしてんだー!?」

「おうっ、これはよそー外」

 

あっ奈緒達が帰ってきたわ

 

「おかえり」(凛は抱き締めたまま)

 

「ちょ、お前らなにしてんの!?あたしらがいない間にどんな物語が進行したよ!?」

 

「照れてるしぶわんことデレデレシェリル、これは激レアですな〜」カシャ

 

「撮ってる場合じゃねーだろ!」

 

奈緒のツッコミ、冴え渡ってるわね

加蓮も相変わらずだし

 

「シェリ...ル、くる...し...」

 

「うわぁぁぁ!シェリル!凛を離せ!」

 

「シェリル〜、凛の抱き心地はどう?」

 

加蓮ったら、そんなの...

 

「パーフェクトよ!」

 

当然!

 

「なんの話だよー!もう!あたししかツッコミはいないのかぁぁぁぁ!?」

 

 

 

 

あれから凛、加蓮と別れて奈緒と一緒に帰宅の途中

 

「ねぇ、奈緒?」

 

「ん?なんだよ?」

 

私はつい奈緒に尋ねてしまった

 

「恋って、なんなのかしら?」

 

「ぶっ!な、なに聞いてくんだよ!?」

 

凛と話していてつい気になってしまったの

恋ってなんなのかしらって

 

「な、なんだよ。お前、その、恋...してるのか?」

 

「なんでそうなるの?」

 

恋について気になっただけなのに、どうして私が恋してるって思ったのかしら?

 

「なんだ、びっくりした」

 

奈緒が安心したように呟く、そして

 

「恋なんて、人それぞれだろ。どーゆーものかなんて、してみたらいつかわかるよ」

 

なるほど

 

「確かにね、奈緒ってそうゆう所はクールね」

 

「ん?褒められてないよな?」

 

おっと、気づかれちゃった?

 

「ふふっ、お先にー!」

 

私は奈緒を置いて駆け出した

 

「なぁー!まてシェリルー!!」

 

 

 

恋なんて、よくわからないわ。でも、もし恋をするなら。

やっぱり、銀河で一番の恋がしたいわね!

 

 

 

 

 

 

それから数日後の事よ

プロデューサーがレッスン中の私の元にやってきたのは

 

「ノームさん。デビューシングル、並びにファーストライブが決まりました。」

 

 




武凛。こんなことしてよかったかなぁ?
次回ファーストライブ


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シェリルとファーストライブ その1

ファーストライブです。
今回は二回に分けて投稿します。


ハァイ、みんな

シェリルよ

 

プロデューサーからファーストライブの告知を受けてからニヶ月

遂にその日が来たわ。

会場はショッピングモールの小ステージで、今は楽屋代わりに用意してもらった会議室でスタンバイ中よ。

緊張?この私がする訳無いじゃ()()()

 

「...」

 

する訳ないじゃない...

 

トントン

 

ビクッ!

 

だ、誰かしら?落ち着きなさいシェリル。

 

「ハ、ハイ。どうぞ」

 

微妙にぎこちなく答えちゃった。

でも入ってきてくれたのは。

 

「よっ。シェリル」

「プロデューサーがここに居るって」

「お〜、ステージ衣装かわいい〜」カシャ

 

ふふふ

 

「ハァイ、奈緒、凛、加蓮。来てくれてありがとう」

 

私の大切な親友たちだった。

 

 

「どうよ、緊張してるか?」

 

奈緒がそう尋ねてくる。少しいたずらっぽく、でも心配してくれてるのがわかるわ。

 

「えぇ。ほんの少しね」

 

みんなの顔を見てたら本当のことを言ってしまった。私らしくないかしらね。

 

 

「おー、シェリルのレアな本音だー」

 

加蓮がそんなことを言い出す。正直否定できないわね。

だけど...

 

「ほんの少しって言ったわよ?それに今は大丈夫。あなた達が来てくれたんだから」

 

これも本音。3人の顔を見た途端に心から安心出来た。

 

「へへっ。なら安心だな」

 

奈緒が笑いながら呟く。凛と加蓮も笑顔を見せてくれた。

つられてみんな笑い出す。

 

 

 

 

「なんだか懐かしいな。こういうステージ」

 

暫くして、3人と一緒に舞台袖まで来た時、不意に凛がそう言った。

 

「懐かしいって?」

 

私がそう問いかけると

 

「うん。私のデビューライブの舞台もこんな感じの小さいところだったから」

 

凛が言うデビューライブとはトライアドプリムスのことではなく【ニュージェネレーション】のことね。

明るく賑やかな【本田 未央】と優しく笑顔の可愛らしい【島村 卯月】ちゃん。

二人は今はそれぞれ別のユニットだけど凛と今でも普通に仲の良い子達よ。

 

それはそうと、私達はライブの会場に目を向ける。そこは凛の言う通りとても大きいとは言えない会場ね

 

「でもー。なんでこの前のライブでデビューじゃなかったのかな?私たちの時みたいにさー」

 

加蓮がそんなことを言う

この前のライブとは一ヶ月前の【オールスターライトライブ】って言う346プロのアイドル総出演のライブだったんだけど...

 

「まぁ、デビュー曲の準備もいろいろあった訳だから仕方ないんじゃないか?」

 

奈緒の言う通り、そもそもまだ持ち歌があるわけでもなくって、それどころかステージに立ったこともないのだからプロデューサーが気を遣ったのかもしれないわね。

 

「まぁ、シェリルって図太いからビビったりしなさそうだけどな」

 

「あら?どーゆーことかしら?」

 

余計なことを言う奈緒にデコピンを放っておく。

「あぅぅ...」と唸る奈緒は放っておいて、私は改めてステージに目をやる。ここが私のスタートライン。

 

「ふふっ」

 

思わず笑みがこぼれる

 

「どんな場所でも関係ないわ。ステージがあって、お客さんがいる。ならば全力で魅せるだけよ!」

 

マムとも約束したんだもの。

私は全力でアイドルをするってね

 

「やっぱりすごいね。シェリル」

 

微笑みながらそう呟く凛に私は

 

「当然よ。私はシェリル。シェリル・ノームよ!」

 

そう言い切った

 

 

 

あとで聞いた話だけど。凛たちニュージェネレーションはファーストライブの時いろいろトラブルがあったらしいわ。

でもそんなの過去のことよね。だって、凛も未央も卯月ちゃんも今でも素敵なアイドルなんだから。

 

 

 

3人と別れプロデューサーやスタッフさん達と最終チェックをする

曲を流すタイミングなんかは私の我が儘を聞いてもらう事になったけど、何人かのスタッフさんが私のサインを求めてそれで引き受けて貰えたわ

 

ところでなんだかプロデューサーの様子がおかしいけど?

 

「プロデューサー。どうかしたの?」

 

プロデューサーに声を掛けてみる

 

「あっ。いえ、その...」

 

どこかバツの悪そうなプロデューサー。

 

「何かあったのかしら?」

 

私がそう聞くといつもの癖、首の後ろに手を当てながら

そして意を決したように

 

「申し訳ありません」

 

「ハ?」

 

そんな事を言って来た

 

 

プロデューサー曰く、私のデビューは本来、()()()()の大規模ライブで行う予定だったそうだけど。

 

「反対された?」

 

「...はい」

 

他のアイドルの部署が待ったをかけたらしいわ

私によってお客さん(ファン)がどんな反応をするか。もしも自分たちのアイドルより人気が出たら...

なるほど、私だからか。誇るべきなのかしらね。

だけど...

 

「バカね」

 

ついそんな事を言ってしまった。プロデューサーもギョッとしてるわね

私は畳み掛ける

 

「私は奈緒たちからよく言われるけど、自分に自信を持っているわ。でもね、それはみんな(アイドル達)だって同じ。レッスンを頑張ってきて、何度もライブを行って...

その人達は自分たちのアイドルを信頼出来てないだけよ」

 

奈緒、凛、加蓮の3人も、美嘉も茜ちゃんも普段はあわあわしてる【小日向 美穂】ちゃんも私のファーストライブを応援してくれて、でも自分たちに自信を持っていた。

彼女達が積み上げて来たものはそう簡単に揺るがないと感じたわ。

心から尊敬している。

 

「それとね、プロデューサー」

 

「はい」

 

彼の目をしっかり見て言葉を続ける。

 

「あなたには感謝してるわ。こうして私をアイドルデビューさせてくれたんだもの。場所なんて関係ないわ。だって私はシェリル、どんなところでも全力で輝いて魅せるわ。」

 

「ノームさん...」

 

ちらっとステージの外に目を見やる。確かにお客さんの数はあのライブよりはるかに少ないわね。まぁ、くらべることがおかしいのだけど。

 

だけど

 

「少しでも人がいる。いいえ、たとえゼロでも私は歌うわ。私自身の力でファンの心を掴んでみせる!」

 

私の宣言に気圧されるプロデューサー

彼に向かって

 

「だからもう一度言うわ。ありがとう、プロデューサー」

 

私の言葉に驚いたような顔を浮かべるプロデューサーは

 

「はいっ!」

 

笑顔でそう答えた

 

「...あなた、笑えたのね?」

 

「えっ?」

 

 

 

 

 

彼女には驚かされる。

舞台袖でのノームさんとの会話の中で私はふとそんなことを思っていた。

とても今回がファーストライブだとは思えないあの自信。

アイドルに対する意識の高さ。

私の方が圧倒されっぱなしだ。

 

「ノームさん。そろそろ時間です」

 

「えぇ。わかったわ」

 

ライブ開始まであと少し。

私の心は昂ぶっている。

彼女がどんなステージを見せてくれるのか。

 

開始時刻となりノームさんに静かに合図を出す。

いよいよ始まるファーストライブ。

ノームさんはゆっくり舞台に歩いていく。

 

そう言えばノームさんはスタッフに何かお願いをしていたような?

そんなことを考えた矢先...

 

『あたしの歌をきけぇぇぇぇぇえ!』

 

とんでもない叫びが響き渡った。

 

 

 

 

 

 

『あたしの歌をきけぇぇぇぇぇえ!』

 

「なぁぁぁぁぁ!」

 

シェリルの奴がいきなりブチかました。

あたしも隣の凛も加蓮もマジでびっくりしてる。

あたり前だけどお客さん達もだ。

 

シェリルの叫びとともに始まる音楽。

何が起こるのかと期待させてくれるハイテンションなサウンド。

あいつの練習で何度か聴いてるはずのあたしでさえワクワクするんだ。

聴いたことない人達はグイグイ惹きつけられるに決まってる。

 

そして始まるシェリルのデビュー曲

【射手座★午後九時★Don't be late】

 

「!!」

 

上手い...

繰り返すけど、あたし達は何度かあいつの練習でその歌を聴いてたはずなのに、なのに...

 

「すごい...」

 

凛がそう呟く。

 

そう表現するしかない。それぐらいすごいんだ。

響き渡る声が、その踊りが、何よりシェリル自身がすごくって!

 

「あっ!」

 

サビに入る頃にはいつの間にか多くのお客さんが増えていた。

多分あの叫びが気になった人達だろうけど、みんなが引き込まれていた。

 

そして

 

『〜♫』

 

曲が終わると同時に

 

「「ワァァァァァァァ!!!」」

 

割れんばかりの大歓声が鳴り響いた。

 

 

 




次回投稿また時間がかかると思いますが、よろしくお願いします。


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シェリルとファーストライブ その2

ファーストライブ、その2です。
ちょっと無理やり感があるかなぁ。


『ハァイ、みんな!シェリル・ノームよ!』

 

シェリルのMCが始まった。

 

堂々としてるその姿に観客はみんな集中している。

もちろんあたし達もだ。

 

『今日は私のファーストライブに来てくれてありがとう!

私のデビューソング【射手座★午後九時Don't be late】どうだったかしら?」

 

サイコー!

よかったよー!

 

そんな声が観客達から返される。

そこには最初のインパクトだけじゃない。

あいつの歌声の魅力に魅せられた素直な想いを感じざるを得なかった。

 

『ありがとう、みんな!』

 

シェリルがとびっきりの笑顔を見せる。

あの笑顔にはあたしもやられたな。

 

するとシェリルがちらりと舞台袖を見る、何かの合図を送ったみたいだけど?

 

『みんな、もう一曲、付き合ってくれるかしら?』

 

ざわめく会場、隣の凛も加蓮も、もちろんあたしも二曲目があるなんて事は知らされてない。

驚いた顔を浮かべてたあたしをシェリルがちらりと見てドヤ顔をする。

あいつぅ。

 

観客達の目は期待に満ちている。

満足げに頷くシェリル。

 

「ありがとう。それじゃあ、聞いてちょうだい。

 

【ダイアモンドクレバス】」

 

 

 

 

 

スピーカーから流れてくるのは静かな、優しい音色。

先程とは真逆の曲調にみんな驚きを隠せない、だけど...

 

『−−−−♪』

 

「!!」

 

会場に響きわたるシェリルの歌声。

それはあたしの心をいきなり掴んだ。

 

それは、あまりにも綺麗な、儚げな、優しい歌声。

観客達も一気に引き込まれた。

 

なんだよこれ、なんなんだよ。

 

胸が締め付けられるような、そんな気さえする。

 

普段のあいつを知るあたしでさえ、

いや、あたしだからかな?

 

ふと、隣の加蓮の顔を見る。

 

「・・・・・・」

 

加蓮の目からは涙が流れてた。

おいおい、なんだよそれ。

 

曲が、進むにつれて、あたしの目も潤んでくる。

 

そして、

サビに入ったその瞬間、

 

『−−−−−−−♫』

 

優しい音色が響く中奏でられる、力強く厳かな、もはや神聖ささえ感じる歌声。

 

あぁ、シェリルはやっぱりすげぇよ。

認めざるを得ない、あいつの凄さを。

 

ステージの上で歌うその姿は、まるで...まるで...

 

 

 

 

 

「・・・・妖精」

 

 

 

 

 

 

 

 

ファーストライブは大成功、なのかしらね?

 

全ての曲を歌い終え、みんなの大歓声を受けてライブは終了した。

何人かの人は、泣いてたわね。

正直、嬉しかった。

私の歌が、みんなに届いて。

 

 

今私はスタッフさんたちと一緒に片付けを終えて、誰もいないステージの上に立っている。

あと少しで降りなきゃいけないんだけど、だけど。

 

二曲目についてはもしもの時にと、こっそり練習しておいてよかったわ。

奈緒の驚いた顔も見れたしね。

 

プロデューサーにも、感謝しないとね。こんな素敵な舞台を用意してくれて。

 

奈緒達にも、お礼しないと、しないとね...

 

「シェリル」

 

私を呼ぶ声に振り向く。

そこに居たのは...

 

「ハァイ、奈緒。みんな!」

 

奈緒、凛、加蓮。

お馴染みの3人だ。

 

「あれあれ?シェリル、泣いてるの?」

 

加蓮が意地悪そうに聞いてくる、って。

 

「なっ、泣いてなんかないわ!」

 

慌てて目元を拭う。

 

「泣いてるじゃん」

 

凛にまで指摘される、うぅ...

 

「そっ、そんなこと言ったら、3人とも目が赤いわよ!」

 

うっ、という顔をする3人。

 

「なっ、泣いて悪いかよ!!」

 

奈緒が逆ギレした!

 

「ぷっ、」

 

奈緒のいつも通りの感じに私は、

 

「「ふふっ」」

 

凛と加蓮も、

 

「「「あはははは!!」」」

 

思いっきり笑いだしちゃった。

 

「なっ、なんだよ、笑うなよ!笑うなよぉぉぉぉ!!」

 

 

 

 

 

 

「なにはともあれ、お疲れ様。シェリル」

 

「ありがとう」

 

奈緒をいじっていつもの感じに戻った私達。ほんと奈緒には感謝ね。

 

「お前、失礼なこと考えてないか?」

 

「気のせいよ」

みんなして私のライブのことを褒めてくれた。すごかった、綺麗だったよってね。

そうしたら、奈緒が。

 

「正直に言うと、マジですごく良かった。本当、どうすりゃいいだよって。こんなの勝てねぇよってくらいさ。」

 

「奈緒・・・」

 

いつもの奈緒らしくない、弱々しい言葉。

あぁ、プロデューサーが話してくれた、上に反対されたって言うのはこう言うことなのかなって思っちゃった。

 

だけど...

 

「だからこそさ。あたし達も、頑張らねぇとなってさ。」

 

・・・え?

 

「そうだよね。あんな凄いの魅せられちゃったらさ。」

 

加蓮・・・

 

「私たちも、もっと、頑張れるって。」

 

凛・・・

 

「だからさ、シェリル!」

 

奈緒・・・

 

「ありがとな!サイコーのライブだったぜ!!」

 

・・・・・・

 

私は3人を思いっきり抱きしめる。

 

「わっ」「なっ」「おうっ」

 

「ありがとう。大好きよ!!」

 

 

 

 

 

こうして、私のファーストライブは大成功に終わった。

私はこの日のことを決して忘れない。

 

アイドルとしてのスタートラインたるこの日を、

親友達との絆を確認できたこの日のことを...

 

 

 

 

 

 

 




シェリルの曲はどれも好きです。
だけど、文章で表現する力が僕には余りにも足りない。
悔しいなぁ、悔しいなぁ。


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シェリルと加蓮

今年も一年お疲れ様でした。

ごめんなさい。前回の投稿からだいぶ空きましたが、どうにかこれだけは投稿させていただきます。

今回は絡みの少なかった加蓮とシェリルの話です。


ハァイみんな、シェリルよ!

 

ファーストライブからしばらく経ったわ。

あのライブの成功をキッカケに私、結構注目されてるみたい。

当然!・・・なんて言うわけにはいかないわよね。

あくまでスタートを切っただけ。もっともっと、頑張らないとね!

 

 

 

「奈々ちゃん、ご馳走さま。また来るわね。」

 

ここは【346カフェ】

事務所の施設内にあるカフェなんだけど、レッスン終わりにここに来るのが最近の私のマイブームなの。

 

「ありがとうございました、シェリルちゃん!キャハ!」

 

彼女は【安倍 奈々】ちゃん。

アイドルなんだけど余裕がある時はここの仕事を手伝ってるんですって。

なんでもお客さんの笑顔がアイドルとしての自分の力になるからだとか。

私と同い年の17歳なのに、すごく立派だわ。

私も見習わないとね!

 

 

 

さてさて、今日の予定はもう無いし奈緒は仕事だし。先に帰ろうかし・・・あら?

 

「…」じー

 

私の足下に黒い子猫が寄って来たわ。こっちをじーっと見てきてる。首輪があるから誰かの飼い猫かしらね。

それにしても・・・

 

「かわいい…」

 

そんな言葉が思わず漏れた。

しょうがないじゃ無い、可愛いんだから!

 

「よーしよし。どうしたのかにゃー?」

 

しゃがみ込み子猫に呼びかける、恐るおそると言った感じに近づいて来る子猫。

その仕草がいちいち。可愛い。

 

もう少しで撫でられる。

と、その時だった

 

カシャッとシャッター音が聞こえたのは。

 

「へっ?」

 

らしく無い間抜けな声が漏れる。

音のした方を向くとそこには...

 

「あっ、バレちゃった?」

 

加蓮がいた。いちゃった。いてしまった...

 

「ッッッッツ!!」

 

顔が熱くなるのがわかる。おそらく真っ赤になってるわよね。

いいえ、落ち着きなさいシェリル。

まだ、希望は...

 

「ふふっ、シェリルったら。かわいいにゃー」

 

・・・

 

「北条...加蓮...」

 

「あっ、その、怒った?」

 

見られた。見られたかぁ。見られたなら...

 

「北条......加蓮ゥゥゥゥゥ!!!」

 

「きゃぁぁぁぁぁシェリルが切れたぁぁぁぁぁ!!」

 

叫びながら全力疾走で逃げようとする加蓮。

ふふっ、甘いわねぇ...私を誰だと思ってるの?

そう、私は...シェリル。

 

「待ちなさぁぁぁぁい!!」

 

絶対逃がさない!!

 

 

 

三十秒後

 

「ぜぇ...はぁ...シェリル...はぁ...速すぎ...」

 

「当然...はぁ...私は...ぜぇ...シェリルなんだから...」

 

案外、あっさり捕まえたわ。

加蓮って意外とスタミナ無いのね。今も息切れ激しいし。まぁ私もだけど。

さて、こうしちゃいられないわね。

 

「加蓮...写真のデータを...消しなさい...」

 

やや凄みながら加蓮に告げる。

流石に恥ずかしいわ。あんなデレデレした姿。いやたしかに、あの子猫は可愛いかったし。だけど私にもプライドがあるし。

そういえばあの子、置いてきちゃったけど誰の猫だったのかしら?

 

「えぇ...はぁ...いいでしょ?可愛いかったよ、シェリル」

 

「そういう問題じゃないわよ...」

 

あっけらかんとしながら答える加蓮。

だけど、私のイメージの問題というか、なんというか...

 

「大体...いっつも奈緒とかに抱きついてるでしょ?」

 

うっ、それを言われるとなんとも...

 

「それにみんなにも需要があるし...」

 

「ちょっと?」

 

加蓮の漏らした言葉に私は凄む。

 

「あはは、冗談だよ。冗談。」

 

笑顔で軽く流す加蓮。

この子は本当に...

 

「ふぁ〜ちょっと休憩〜」

 

私の目線を受け流すようにベンチの方に向かう加蓮。

本当、掴み所がないというか。

私も彼女の後を追う。

 

「あー、疲れた〜」

 

「いや、自業自得でしょ?」

 

ぐいー、と背伸びをする加蓮。

楽しそうな笑顔を浮かべてるけどそもそも追いかけられるようなことしたのは加蓮だし。で、

 

「データを消すつもりは?」

 

「無いよ!」

 

・・・ハァ

 

「他の人には見せないでね...」

 

「りょーかい」

 

笑顔で敬礼っぽいポーズをとりながら答える加蓮。

まぁ悪用する様な事は無いだろうからこれ以上は追求しないでおくわ。

 

ところで...

 

「ねぇ、加蓮。」

 

「ん?どうしたの?」

 

私はこの機会に気になっていた事を聞いてみることにした。

 

「どうして毎回毎回、写真を撮ってるの?加蓮ってそんなに写真が好きだったかしら?」

 

割といつも写真を撮っている加蓮に聞いてみたかった質問。

この子のプロフィールには趣味が写真とはなかったはずだけど?

 

と私が聞いた途端、加蓮の顔色が変わった。

悲しそうな表情を浮かべる加蓮。

ちょ、どうしたのかしら?

 

「あー、うん。その...ね?」

 

加蓮?

 

「シェリルには話してなかったよね。あの事は...」

 

あの事?

 

「私ね、小さい頃は体が弱くてね。ずっと入院生活だったんだ。同世代の子たちと遊ぶこともできずに。病室で過ごしていたの。でね?今は治療のかいあって元気なんだけどさ...その...副作用っていうかね?私...

 

時々、記憶が無くなるの...」

 

「!?」

 

「だからね。こうやって写真を撮ってるの。大切な事を忘れてしまわない様に。失いたく無いからね...」

 

そんな...そんな事...

 

「う、嘘...よね...加蓮...そんな事って...」

 

「うん」

 

・・・ハァ?

 

「えへへ。嘘だよシェリルなら一発で気付くかなぁって思ってたんだけどなぁ。奈緒が好きなアニメのキャラの設定がベースだよ。」

 

あぁ、なるほど。いたわね、うん。

そう...

 

「加蓮...」

 

「うん?どうし...いひゃゃゃゃは!しぇりりゅー!ひっひゃらにゃいでぇ〜(シェリルー引っ張らないで〜)

 

私は思いっきり加蓮の頬っぺたをひっぱった。

 

 

 

「うぅ、痛いー。」

 

「自業自得よ。」

 

頬っぺたをむにむにとなでる加蓮。

同情はしないわ。

 

「全く。あんな嘘つくからよ。」

 

「あははー。ゴメンね?」

 

小首を傾げながら謝ってくる加蓮。

仕方ないわねぇ。

 

「だけどね。」

 

何かしら?

 

「体が弱かったのは、本当なんだよ。」

 

「えっ?」

 

薄い笑みを浮かべながら呟く加蓮。

彼女はそのまま話を続ける。

 

「体が弱かったのも、入院生活が長かったのも本当。一番酷い時で、命の危機があった時もあったくらいね。」

 

「そんな...」

 

「えへへ、嘘みたいだけど、これは本当。あっ、でもでも。今は大丈夫だからね。そりゃあー、体力はシェリルはおろか凛と奈緒以下だよ。まぁそれでもアイドルとしては問題ないのは知ってるでしょ?」

 

「それは、そうね。」

 

実際、加蓮がトライアドプリムスのメンバーに劣っている点なんて感じた事は無い。でもそう言えば...さっきも息切れが激しかったわよね...

 

「あっ、変なこと気にしてる?大丈夫だよ。むしろさっきのは楽しかったし。」

 

私の考えを見透かして笑顔を向けてくる加蓮。

 

「まぁそれでね。写真の事だよね。あれは日課かな?」

 

「日課?」

 

「そう、私が死にかけた後、お母さんたちがね。思い出を残すために写真を撮りだしたの。当時はカメラでね。私も借りて目に付いた景色をパシャりとね。

もちろん見ての通り。心配しすぎだったわけで。私はこうして大きくなったし。もう全然大丈夫なんだけど。」

 

笑顔で語る加蓮。

だけど、その笑顔は...

 

「私、今がすっごく楽しいんだよね。アイドルとして過ごしている日々がね。凛がいて、奈緒がいて。もちろんシェリルがいて。いっぱい友達や仲間ができてさ。」

 

薄く、儚げな。

 

「だから。忘れないように。消えてしまわないように、こうして写真を撮り続けてるんだよ。」

 

・・・

 

「・・・」

 

「あれっ?シェリル、どうしたの?」

 

「悲しい事、言わないで...」

 

「へ?」

 

加蓮にその気がなくても、私の思い過ごしでも、

 

「悲しいこと言わないで!」

 

私は立ち上がりながら大声を出していた。

 

「シェリル...?」

 

驚いた表情の加蓮の事を見据えて私は感情のままに言葉を紡ぐ。

 

「今だけじゃ無いわよ、明日も明後日も、これからも、ずっと。楽しい日々は続くわ。消えたりなんて、忘れさせたりなんて。私が、シェリル・ノームがさせないわ。だから、だから...」

 

勝手なこと言ってるわね。だけど...

 

「ありがとう」

 

加蓮は優しい笑顔を浮かべる。

 

「ごめんね、変な言い方して。大丈夫だよ、シェリル。私は頼まれたって消えたりしないよ?だって、こんな楽しい日々が、こんな素敵な友達がいっぱいできたんだもん。」

 

「加蓮…」

 

優しく言い聞かすような加蓮。

 

「そ・れ・に!」

 

 

「私は加蓮、アイドル【北条 加蓮】なんだよ!ファンを置いていなくなる訳にはいかないよ!」

 

ちょっ、

 

「それっ!私のセリフじゃない!」

 

「あはは!一回言ってみたかったんだ!」

 

先ほどとは違う、天真爛漫な笑顔を見せる加蓮。

 

そんな可憐な笑顔に、私も釣られて笑い出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




それでは皆様。

良いお年を!



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