こんな僕に彼女は必要なのだろうか? (ミズヤ)
しおりを挟む

1年生編 一学期
第1話 僕に彼女は要らない


 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 息抜きに違う作品を書いてみようとこの作品を書きました!

 主に『無意識の恋』を書いて、残りの2つは息抜きになるので更新ペースが遅くなります。

 それでは、オリジナル作品を書いてみました!

 それでは本編行きましょう!

 では!

 第1話スタート


 カリカリカリカリ

 

 えんぴつ・シャーペンを走らせる音が聞こえる。

 

 今は受験の真っ最中

 

 俺はこの日のためにありとあらゆる娯楽を無視して、学校行事と受験勉強だけに尽くしてきた。

 

 すべてはこの日のために…

 

 来る日も来る日も、友人など作らず、『恋愛』なんて『れ』の字も無い。

 

「終了!」

 

 そしてすべてのテストが終わった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

そして後日

 

 合格発表は校舎の外にある掲示板に貼ってあるそうだ。

 

 えーっと俺の名前は…

 

「あった!」

 

 俺の名前、絆成(きずなり) 優也(ゆうや)の名前がそこにはあった。

 

 順位は1位、主席だ。

 

 今までの努力が今報われた。

 

 そんな瞬間だった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 主席で入ったと言う事は入学式にスピーチをしなくてはならない。

 

 俺はあまり人前に立って話すのは得意じゃない。

 

 今は入学式、そろそろ

 

「絆成 優也君!」

 

 ついに出番だ。

 

 そして俺はステージに上がって

 

優也「俺は1年A組の絆成 優也です」

 

 そして、スピーチを開始した。

 

優也「これで終わります」

 

 そして俺はステージから下りる。

 

 今日はそれで終わり、下校した。

 

 この伊真舞(いままい)高校は、町一番の進学校と言われているだけあって、勉強の内容もすごく難しいと言われている。

 

 そのため今の学力を維持するためには今まで以上に勉強をしなくてはならない。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 そして俺は家に帰ってからも部屋に篭って勉強をしていた。

 

 コンコン

 

 ノックの音が聞こえた。

 

「父さんだ。入るぞ」

 

 それだけ言って父さんは静かに俺の部屋に入ってきた。

 

父「頑張ってるな」

 

優也「成績を維持したいからな」

 

父「そう言えばどうしてあの学校を志望したんだ?」

 

 そう、俺には理由がある。

 

 ただ単に制服が好きだとか、先輩が可愛いからとか言う理由じゃない明確な理由が。

 その理由とは、

 

優也「俺はあの学校にしか無いと言う医療研究会に入ろうと思っている。だから志望した」

 

 なぜその部に入りたいかと言うのにも理由がある。

 

父「もしかして、まだ七海(ななみ)の事を気にしてるのか?あれはお前のせいじゃないと」

 

優也「いや、俺がしくじったからこんなことになったんだ」

 

 俺には4歳年下の妹が居る。

 

 名前は七海…絆成 七海だ。

 

 しかし数年前、俺がしくじったことによって、七海は寝たきりになってしまった。

 

 命に支障は無いらしいが、このまま一生目を覚まさないかもしれない。

 

 現代の医療では、それを治すことは出来ないらしい。

 

 なら、俺が作り出す!その治療法をあみだす!だからあの高校を志望した。

 

父「まぁ、お前が七海の為に自分の時間を削って色々行動をしてくれているのは嬉しく思う…だけどな、父さんはお前にも幸せになってほしいんだ。それが父さんの最大の幸せなんだ」

 

優也「俺の幸せは七海が目を覚ますことだよ。だから俺は七海が目を覚ますまで最大限の力を尽くすんだ」

 

 そう、俺の幸せは七海が目を覚ますこと。

 

 それ以外の幸せなど要らない。

 

 七海が目を覚ますなら死んでも良いとすら思っている。

 

 俺はあの頃の楽しかった日々を取り戻したい。

 

 あの、楽しかった日々を…

 

父「だけどな、父さんは本音を言うとな、お前に折角の青春時代を謳歌してほしい。だからな、優也」

 

 父さんは一息ついてからこう言った。

 

父「お前は頑張っている。だからこそ恋愛の1つや2つしてほしい」

 

 は?俺が恋愛?

 

優也「あはは、父さんも面白いジョーク言うんだね!昔から俺には『恋愛』の『れ』の字すら無かったこと知ってるでしょ?」

 

 しかも今は恋愛どころじゃない!俺にはそんな時間も無い。

 

 俺には彼女など必要は無い。

 

父「まぁ考えとく事だな」

 

 それだけ言い残したら、父さんは立ち上がって、部屋から出ていった。

 

優也「恋愛…ね…」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

次の日

 

 今日は学校で自己紹介がある日。

 

 そして部活動を決める大事な日。

 

 残念なことに医療研究会は定員が決まっており、くじ引きで決めるらしい。

 

 俺は運はあまり良くないから不安がつどる。

 

 この高校に入る人のほとんどが医療研究会目的だ。

 

 研究会と名前はなっているが、これは正式な部活だ。

 

 この部活で発見した医療技術で世界に出回っている物は沢山ある。

 

 最初に言った通り、定員が決まっていて更にはほとんどの生徒が医療研究会目当て、そうなるとこの学校の生徒全員が敵だ。

 

 考え方が片寄ってるなどどうとでも言うが良い。

 

「俺は、本田(ほんだ) 龍輝(りゅうき)です」

 

 今は自己紹介の最中。

 

 昨日の父さんの言葉を思い返していた。

 

優也「恋人…か」

 

 実は昨日言った事は建前だったりする。

 

 本音を言うと、また大切な人を失うのが怖いと言った所だ。

 

先生「えーっと次は絆成!」

 

 しかし俺の耳には届かず、まだ恋愛の事について考えていた。

 

先生「絆成!」

 

 少しイラついた声で呼んできた。

 

優也「は、はい!」

 

 やっと俺の耳に届き俺は自己紹介を始める。

 

優也「俺は絆成 優也。好きなものは他人の幸せ、特技は無し」

 

 そう言って俺は自己紹介を終えた。

 

 好きなものでクラス中がざわついた。まぁ他人の幸せだからな。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

先生「では、部活を決めます!自分のネームプレートを黒板に貼ってください!」

 

 そして俺は迷わず医療研究会に立候補した。

 

 案の定、クラスの8割が医療研究会に立候補した。

 

先生「では、医療研究会は昼休みに視聴覚室でくじ引きがあるので忘れずに行ってください!」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

昼休み

 

 俺は今、視聴覚室に来ていた。

 

 これは一種の戦闘だ。

 

 ドキドキ

 

 そして俺は当たりとハズレが書いてある割り箸を引いた。

 

 この学校の全校生徒は300人強

 立候補者は250人強

 枠は10人

 つまり、240人入れないことになる。

 

 俺はその10人になってやる!

 

 そして俺は割り箸を見た。

 

 それにはこう書いていた。

 

『ハズレでした~残念~m9(^д^)プギャー』

 

 ムカつく

 

 バキッ

 

 俺は思いっきりその割り箸を折った。

 

先生「当たりだった人はこちらへ来てください!」

 

 しかし、俺は当たりを引くことが出来なかった。

 

 その事で今までの努力はなんだったんだ…という気持ちになる。

 

優也「あはは…ほんっとついてねー…」

 

 俺はいざというときに勝負弱い。

 

 そして午後の授業に戻ったが、いまいち内容が入って来なかった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

帰宅

 

 カリカリカリカリ

 

 俺は今自棄になって勉強をしていた。

 

 俺が今まで頑張ったのは一瞬で否定された気分だ。

 

 俺は七海の為にあの学校に入ったんだ。

 

 そう言えば俺は昔、何になりたかったんだろうか?

 

父「優也、息抜きにコーヒーでも飲みな」

 

優也「置いといて」

 

父「優也!いつまでも引きずってないで、先の事を考えろ!」

 

 先の事…か

 

父「父さんはな、お前の本当の幸せを願ってるんだ!」

 

 それだけ言ったら父さんは部屋から出ていった。

 

優也「余計な…お世話だ」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 俺は目を覚まして時計を見た。

 

優也「って、ヤバイ!」

 

 どう考えても遅刻の時間だった。

 

 俺は急いで準備して家から飛び出した。

 

 そして十字路を走って行こうとしたとき、脇道から走ってきた女の子とぶつかった。

 

「いてて…」

 

優也「いっ!大丈夫か?」

 

「は、はい!大丈夫です!」

 

 中々元気な女の子だ。

 

 中学生位だろうか?かなりの童顔だ。

 

「あ、遅刻する!」

 

優也「ほんとだ!」

 

 そして俺は学校に向かって走り出した。




 はい!第1話終了!

 こちらも不定期になりますが見てくれると幸いです!

 それでは!

 次回もよろしくお願いします!

 ではでは

 さようなら!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話 幸せって何だっけ?

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 あまり、『無意識の恋』のネタが思い付かないので、今回もこちらの小説を投稿しました!

 それでは!

 本編行きましょう!

 では!

 第2話スタート


 やっと着いた。

 

 こんな早々に遅刻という快挙を成し遂げるとこになるとは思わなかった…

 

 俺は今、学校に来ていた。

 

 畜生!今朝(けさ)のあの事があったせいで、遅刻した!まぁあれが無くとも遅刻していた可能性は捨てきれないが…

 

 俺は死ぬほど苦しい努力を積み重ねて、今の地位を獲得した訳なんだが、他人から見ると、天才と名高い俺が遅刻というミスをしたと言うことで騒ぎになりかけた。

 

 昨夜(ゆうべ)は、幸せって何だろうか?と考えていたら眠れなかった。

 

 どうしてこんなことを考えたかというと父さんの台詞のせいだ。

 

 俺は父さんにこんなことを言われた。

 

父「父さんはな、お前の本当の幸せを願ってるんだ」

 

 俺の本当の幸せ…か

 

 いつからだろうか?俺自身の幸せを願わなくなったのは…

 

 そして、俺は七海が目を覚ますことが幸せだと思うようになった。

 

 そう言えば俺より先に走っていったあの女の子は大丈夫だろうか?

 

先生「えーじゃあこの問題を…優也!答えなさい!」

 

 どうして俺はあの女の子の事を気にしてるのだろうか?

 

先生「優也」

 

 普段はたいして気にも止めない筈なのに…医療研究会に入れなくて、心に余裕が出来たからだろうか?

 いや、それだと余計にダメだ。七海を救うことが…俺自信の手で助けることが出来なくなってしまう。

 

先生「ゆ、優也?」

 

 だいたい、いつもそうだ!大事なときほど運が下がる。

 

先生「優也?体調が優れないなら保健室に」

 

優也「あ、お構い無く」

 

先生「あ、ああ、分かった…ってそうはいかない!優也!この問題の答えは?」

 

優也「あ、すみません!聞いてませんでした」

 

先生「んな!」

 

 キーンコーンカーンコーン

 

先生「今日の学校はここまで!」

 

『さようなら!』

 

 そもそも本当の幸せって何だっけ?

 

 俺は幸せの基準が分からない。

 

 人によっては、大抵の人が不快に思う…そうだな…例を挙げるならば、(むち)で叩かれて喜ぶ変態も居るらしい。その人にとってはこれが幸せという奴なのだろう…

 この事から、人によっては感じる幸せも違う…そう分かる。

 

 どこからどこまでが幸せで、範囲から外れると幸せじゃないと言うような基準が無いので幸せと言うのは難しい。

 

 俺はそんなことを考えながら帰路についていると、自然と公園の前を通っていた。

 この公園は昔よく七海と遊んでいた公園だ。もうあの頃は帰ってこないかもしれない…そう思うと悲しくなってくる。

 

 七海に目を覚ましてほしい…それだけが俺の切実な願いだ。

 

 そしてふと公園に視線を向けると、そこには今朝の女の子が居た。

 

 長い髪が風に(なび)き、朱色の空がまた彼女の寂しそうな表情に花を添えて美しさをかもちだす。

 

 そう、これはまさに!

 芸術作品(アート)

 

 そして少しの間眺めていると向こうもこちらに気がついたみたいでこちらに駆け寄ってきた。

 

「あ、今朝の人!こんなところで何してたんですか?」

 

優也「それはこっちの台詞だ!所で自己紹介をしてなかったな…俺は、絆成 優也!伊真舞高校の1年生だ!」

 

 そう言ったら彼女は驚いたような表情になった。

 

「わ、私と同じ学年!」

 

 は?こいつ中学生じゃねーの?

 

「私は、柴野(しばの) 結羽(ゆう)!伊真舞高校の1年生です!」

 

 は?伊真舞高校?こいつが?

 

 俺はこいつが同い年と言うことに驚いたが更に驚くべき真実を告げた。

 

 こいつは俺をショック死させたいのだろうか?こいつと話してると心臓に悪い。

 

 俺は思わず目を見開いてしまう。

 

 童顔過ぎて、こいつの体内時間は中学校で止まってるんじゃないか?とさえ思えてくる。

 

 俺の表情を見て不審に思ったのか、俺の顔を下から覗き込んできた。

 

結羽「大丈夫ですか?」

 

優也「あ、ああ!大丈夫だ。少しボーッとしていただけだ」

 

結羽「で、話を戻しますが、何でこんなところに?」

 

優也「たまたま通りかかってな。柴野さんは?」

 

結羽「ふふふ、結羽で良いですよ!私は…少し色々あって…」

 

 少しなのか色々なのかはっきりしろ!とツッコミたかったがそう言う空気じゃなかったため、その言葉は胸の中にしまっておく。

 

優也「そうか…言いたくないなら言わなくても良いぞ」

 

結羽「購買の好きなパンが買えなくて…」

 

優也「おい!俺の心配はいったいなんだったんだ!」

 

 心配して損した…これからもう心配してやんねー

 

 さっきまでの重々しい空気が一瞬にして砕け散った瞬間である。

 

優也「それよりそろそろ帰らなくて良いの?親御さん心配するぞ!」

 

結羽「分かった!じゃーね!」

 

 いつの間にか、結羽の口調が砕けた口調になっていた。

 

 彼女ね…まぁこんなガリ勉野郎のことが好きになる女子なんて居るわけ無いよな…

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

結羽「ただいまー」

 

父「お帰り優也!ご飯出来てるから、食べなさい」

 

 高校生になると、恋やら恋愛やら彼女やら彼氏やらと言った、浮わついたトークで盛り上がるらしいが、俺にはそんな兆候が一切見られない…

 

 こんな俺を好きになる人が居たら世界中が大騒ぎするレベルの話だ。

 

 元々、『恋愛』の『れ』の字すら無い俺にはそんな人が出来る筈が無い。

 

 俺は、ご飯をモグモグ食べながらそう考える。

 

優也「ごちそうさま」

 

 俺はそれだけ言って二階に上がっていった。

 

 そしていつも通りに猛勉強。

 

 そう言えば俺はもうあの学校に居る意味すら無いんだったな…

 

 俺はあの学校の医療研究会に入るためだけに受験をしたのだから。

 

 今の俺の幸せは七海の目が覚めることだった筈なのに…

 

 今の俺の幸せは何なのかが時々分からなくなる。

 

優也「とりあえず今の生活を満喫するか」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

翌日

 

学校

 

結羽「優也さーん!」

 

 俺はそそくさと立ち去る。

 

結羽「待ってください!」

 

 結羽は、俺を学校内で見つけると馴れ馴れしく呼ぶようになりました。




 はい!第2話終了!

 今回は主人公の幸せの事に関してでした!

 それでは今回はここまで!

 次回もよろしくお願いします!

 ではでは!

 さようなら!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話 いつのまにか友達で

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 こちらの話はもう少し進めたいという願望があったので書きました!

 それでは!

 本編行きましょう!

 では!

 第3話スタート


学校

 

結羽「なぜに無視するんですか!」

 

優也「俺はあんまり他人とつるむ気は無い!それだけだ!」

 

 俺に友人なんか要らない!もう親しい人があんな目に合うところなんか見たくない。

 

結羽「なんか今、悲しそうな表情になりました!なりましたよね!どうしてですか!私の顔を見てどうして悲しくなるんですか!」

 

 正直鬱陶(うっとう)しい…しかもほとんど初対面の人に話す義理(ぎり)は無いだろう。

 

優也「別に、何でもねーよ!」

 

結羽「それなら良いのですが…どうして他人とつるまないのですか?どうして

 

 俺は彼女が言い終わる前に壁ドンをしていた。

 

優也「関係ないだろ!俺とお前はほとんどお互いの事を知らない赤の他人だ!どうしてそこまで俺に付きまとって俺の事情に踏み込んで来るんだ!どうして…」

 

 俺は気づいたら目から涙が出てきていた。

 

 俺はなぜだかこいつを見ると七海を思い出して悲しくなる…

 

 そうして俺は彼女から離れた。

 

 その瞬間、彼女は走ってどこかに行った。

 

 あーやっちまった…

 ついつい感情的になって色々と言ってしまった…自分でも今のはさすがに…って思うところがある。

 

優也「…」

 

 そうして俺は(うつむ)きながら無言で自分の教室に帰った。

 

 そして俺は授業中も彼女の事が気になって授業に集中出来なかった。

 自分でもどうしてここまで彼女の事を気にかけるのか?正直分からない…ただ1つ分かっていることは

優也「俺が結羽を傷つけた…」

ただその事実だけが俺の背中に重くのし掛かる。

 

 しかし、何で俺はこんなにも彼女の事を気にかけているのだろうか?

 それは分からない…だが心配だ…

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

帰路

 

 俺は今、自宅への帰路を歩いていた。

 

 歩いていても彼女の事が気になって仕方が無い

 

 その時

 

 キキィィン

 

 すぐ横を見るとトラックが迫ってきていた。

 

 次の瞬間、誰かに抱きつかれた感覚が襲って前方に力強く押された俺は前の方に倒れて、歩道までたどり着けた。

 

 ガタン

 

 トラックが止まる音が聞こえた。

 

運転手「あぶねーな!死にてーのか!」

 

 運転手はそう文句を言ってまた走り出した。

 

 俺が後方を見るとそこには抱きついた結羽が居た。

 

 普段は分からないけど、抱きつかれて初めて分かる女の子特有の柔らかさと胸の感触にドキドキした。

 

 暫くして結羽が避けてくれたため俺も起き上がった。

 

 その瞬間

 

 バチン

 

 俺の頬を結羽は力一杯ひっぱたいてきた。

 

結羽「危ないでしょ!何でちゃんと信号を見ないの!どうして!私はあなたの事を友達だと思ってるから!あなたにとっては赤の他人かも知れないけど!私にとっては友達だから居なくなられたら困るの!悲しいの!」

 

 結羽は泣いている。

 なぜ泣いてるのかは俺には分からない。

 

 俺は高校1年生のロリっ子に助けられ、高校1年生のロリっ子に説教されて…情けないな俺は…

 

 でも…

 

優也「良かった…」

 

結羽「何が良かったのよ!全然良くないよ!」

 

優也「俺はお前に嫌われちゃったかと思ったから…」

 

 自分から突き放しといて人の(ぬく)もりを(ほっ)してるってわがままだよな…

 

結羽「ほんっとバカみたい…自分から赤の他人呼ばわりしといて、赤の他人なら嫌われても関係ないんじゃない?」

 

 彼女は少し笑顔になってそう言ってきた。

 

優也「ああ、あの頃の俺がバカみたいだ!俺達は赤の他人じゃない!俺達は友達だな!」

 

結羽「最初っからそうやって素直になってれば良いんです!」

 

 俺達は向き合ったまま無言になってしまった。

 

 気まずい

 

優也「そう言えば、結羽は俺の事を知りたがってたよな?」

 

結羽「うん、まぁ…」

 

優也「ならさ!友達なら俺の昔の事を教えてやるよ!俺にはな年が4つ離れた妹が居るんだ」

 

結羽「妹さんですか?」

 

優也「元気な子でさ!元々インドア派の俺とは真反対の性格の女の子だ」

 

 結羽は、うんうんと頷きながら俺の話を聞いている。

 

優也「名前は、絆成 七海。いつも俺を連れ回そうとするはた迷惑な妹だ!」

 

 そんなある日だった…

 

優也「いつも通りに俺は連れ回されて家に帰る途中の出来事だった」

 

 それは一瞬だった。

 

優也「居眠りしていた車が手を繋いでいた俺のすぐ横を通りすぎたんだ」

 

 通りすぎたなら、ぎりぎりで危なかったけど良かったとなるはずだ!しかし注目すべき所は手を繋いでいたという所だ!

 そう…俺は七海と手を繋いでいたのだ!

 

優也「俺は衝撃で少し後ろに飛ばされた」

 

 そして隣を見ると七海は居なかったんだ。

 

 そしてもっと遠くを見てみるとそこには血だらけになって倒れている七海が居た。

 

優也「これは俺が中学1年生の時の話だから…3年前の話だ」

 

 そして俺と父さんは病院を当たったがこのまま一生植物人間になる可能性がある…ってよ。

 

優也「そんで、自分で治療法を研究するために医療研究会に入部したかったんだが…落ちちゃってな…ダメだった…」

 

結羽「そう…だったんだ…」

 

 結羽はすごく悲しそうな声でそう言った。

 

優也「まぁこんな暗い話は終わりにして帰ろう!」

 

 そして俺と結羽は立ち上がって歩き出した。

 

 そしてなぜか、結羽が俺の手を握ってきた。

 

 そうして俺に、結羽という友達が出来ました。

 

 なぜ手を握って来たかは結羽にしか分からない。

 

結羽「ほんっと、そう言う鈍感な所…ラブコメ主人公にそっくり…私、頑張るから」




 はい!第3話終了!

 今回はかなりのラブコメ要素が強い回でした!

 二人を見ているとニヤニヤが止まらない

 それでは今回はここまで!

 次回もよろしくお願いします!

 ではでは!

 さようなら!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話 過去の話

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 前回結羽さんが友達になりましたね!

 あの頑なな優也さんが友達を作るとは!

 それでは本編行きましょう!

 では!

 第4話スタート


優也「友達…か」

 

 我ながら全然似合わない言葉だと思う。

 

 結羽が友達になったからには七海と同じ思いはさせたくない。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

3年前

 

七海「お兄ちゃん!こっち!」

 

優也「おいおい!待てよ!そんなにはしゃぐと転ぶぞ!」

 

七海「大丈夫だもーん!あ!」

 

 そう言った瞬間、七海は転んだ。

 

 こいつは芸人でもやってるのか?なんちゅうタイミングだ!

 

七海「いったーい!…えへへ」

 

 七海はテヘッと頭に自分の拳を乗せた。

 

 俺の妹の七海は小学4年生。顔立ちは平均以上でかなり整ってる。可愛い自慢の妹だ。

 

 少し元気すぎるのがたまに傷だな…インドア派の俺を容赦なく連れ回す。

 

 まぁ、七海が喜ぶならば甘んじて受け入れるとしよう!

 

 そこ!シスコンって言うな!

 

優也「そんなに服を汚したら母さんにまた叱られるぞ!(俺が)」

 

 なぜが俺が怒られる。

 

 何で見てなかったの!とか、何でこんなになるまで泥の近くで遊んだの!とか…

 

 知るか!何で俺が怒られるんだよ!

 

 その点父さんは、

 

父「元気なのは良いことだぞ!母さんはああ言ってるけど気にしなくて良いからな」

 

 と、父さん~キラキラ(目が輝いている)

 

父「ほんと、優也に似なくて本当に良かったよ!七海が居なかったら普段優也は、『俺がこの部屋から出たら世界が崩れる!』とか、わけわかんないことを言って外に出ようとしないからな…」

 

 グサッ

 

 父さんは俺には結構トゲがあった。

 

父「まぁ父さんは二人の幸せを心から願ってるからな!」

 

 落として上げるの落とすの部分があれば素直に嬉しいんだがな…

 

 部屋から出ないと言ってもちゃんと学校には行ってるからな!

 

 俺は中学1年生。知能は平均より少し上、学力は平均よりずっと悪い。

 

 顔立ちは…分からない…鏡を見ない主義なもんでな。鏡を見てがっかりするのが嫌だからな…

 

七海「ねぇ、お兄ちゃんは好きな人居る?」

 

優也「そうだな…お兄ちゃんの好きな人は七海だ」

 

七海「そうじゃなくて、恋愛対象の事だよ!」

 

 恋愛か…考えたことも無かった。…まぁまだ考えることは無いだろ。もう少し後からで。

 

優也「お兄ちゃんには居ないな」

 

七海「そうなんだ!」

 

 そしたら急に俺の手を引っ張って行った。

 

七海「お兄ちゃんってインドア派なのに運動神経良いよね」

 

 おい!インドア派って言葉どこで覚えたか詳しく!

 

優也「一応部屋で筋トレをしてるからな」

 

七海「そうなの?腹筋とか割れてるの?そんな風には見えないけど」

 

優也「うんにゃ、割れてない」

 

 そんな他愛もない話をしてるうちに近所のスーパーに着いた。

 

優也「えっと頼まれてたのは…豚バラ肉、玉ねぎ、人参、じゃがいも、カレールーか」

 

 今日の晩御飯はカレーらしい。

 

 俺、辛いのは苦手なんだよな…

 

 それと相反するように七海は辛いものが好き

 

優也「じゃあ、七海はカレールー頼むわ!せめて中辛で頼む」

 

七海「了解であります!」

 

 そして七海は走っていった。

 

 そして俺は他の物を取りに行った。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

優也「人参、玉ねぎ、じゃがいも、肉…これでよしっと!七海を待つか」

 

七海「お兄ちゃん!」

 

 そうして七海は満面の笑みで、カレールーをもって走ってきた。

 

 あ、転んだ…

 

七海「持ってきたよ!」

 

優也「転んだみたいだけど大丈夫か?」

 

七海「大丈夫だよ!」

 

 よし!これで揃ったな!

 

 そしてレジまで向かった。

 

 そしてお会計を済ませてスーパーを出て少し歩いた所で事件が起こった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 俺達は手をつなぎながら歩いていた。

 何度も言うがシスコンでもロリコンでも無い。

 

 その時

 

優也「ん?暴走車両か?」

 

 あっちこっちにぶつかりながら走っている車が視界に映った。

 

優也「いや!居眠り運転だ!」

 

 その次の瞬間

 

 俺のすれすれのすぐ横を通りすぎていった。

 

 そしてその場所は七海が元居た場所である。

 

 俺は衝撃で少し飛ばされた。

 

 そして俺はおそるおそる後ろを見た…そこに見えたのは、七海が血だらけになって倒れている姿だった。

 

優也「な、七海?嘘だろ?おい!返事しろよ!」

 

 そして近くに居た人が通報してくれ、病院に運ばれた。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

医者「命には別状はありません」

 

 その言葉に俺達は安堵(あんど)した…のもつかの間…医者は次にこんなことを告げた。

 

医者「しかし、もう目を覚ます可能性は絶望的と言っていいでしょう」

 

 絶望的…その言葉はありとあらゆる人に絶望を与える言葉

 

 両親は泣いていた。

 

 俺の…せい…だ…

 

 俺があのときもっと注意を払っていれば。

 

 こんなことには…

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 両親が喧嘩している。

 

母「もう付き合って居られないわ!」

 

 そう言って母は出ていった。

 

優也「俺の…俺のせいだ…」

 

父「優也のせいではない。自分を恨むな」

 

 そう言っている父さんの目からは涙が出てきた。

 

 父さんも悲しい筈だ…なのに俺の心配をしてる。

 

 現段階の医学では無理…だったよな…なら俺が作り出す。

 

 それから俺は猛勉強をした。

 

 唯一医療研究会という部活があると言う伊真舞高校に入学するために…

 

 俺には友達も要らない…恋人も要らない…ただ七海に目を覚ましてほしいだけだ。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 そして俺は伊真舞高校に入学し、結羽に出会った。

 

 医療研究会に入れなかったときは絶望したが、今はそんな絶望感も薄れつつある。

 

 これが俺の過去だ。

 

 自分で大切だと思った人は死なせない。

 

結羽「昼休みだよ!購買行かないの?」

 

優也「やっべ!戦争に出遅れた!」

 

 俺達の日々はまだまだ続く




 はい!第4話終了!

 優也さんは今が楽しいみたいで良かったですね!

 購買戦争は勝てるのでしょうか!

 それでは今回はここまで!

 次回もよろしくお願いします!

 ではでは!

 さようなら!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話 体育祭準備

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回は体育祭の準備の話です!

 そして、一学期の最後の方と、なっています。

 無理矢理感が漂いますが、そこはご了承下さい!

 それでは本編行きましょう!

 では!

 第5話スタート


 畜生!購買戦争に負けてしまった!

 

結羽「えっとそんなに落ち込まないで!次があるよ!」

 

優也「はぁ…出遅れた…」

 

 俺も弁当があれば良いんだけど…家は父さんだけなもので朝早くに仕事に行ってしまうから弁当を作る暇は無いらしい。

 俺は作るのがめんどい

 

結羽「わ、私のパン分けて上げるよ!」ニコッ

 

 笑顔がまぶしい!

 

 そんな笑顔を見せられたら断ろうにも断れない。

 

優也「じゃあ…ありがとう」

 

 そうして結羽はパンを半分にちぎって俺に半分渡してきた。

 

結羽「はい!これは私が自信を持っておすすめするパンだよ」

 

 そう言って渡してきたパンは、中にイチゴジャムとカスタードクリームが入ったパンだった。

 

優也「じゃあいただくな」

 

 そして俺はパンにかぶりついた。

 

優也「美味しい」

 

結羽「でしょ!」

 

 結羽はまるで自分が褒められたかのように喜んでいる。

 それほどこのパンの事が好きなのだろう。

 

 そして俺達は昼食を終えた。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 俺達は今、午後の授業を受けていた。

 

「はーい!それでは、体育祭の出る競技を決めます!」

 

優也「体育祭?」

 

 今、話をしていたのが俺のクラスの担任の今野(いまの) 春海(はるみ)先生

 

 結構頼りになる?先生なのだが、不器用で結構ミスをする。

 

春海「はい!そろそろ体育祭なので出る競技を決めようかと!」

 

 なるほど確かにそろそろ体育祭の時期だ。完全に忘れてた。

 

 絶対に出なきゃいけない競技は一番最後の全員リレー

 

 その他に自分が出る競技を1つ選ばなきゃいけない。

 

 400m走、走り幅跳び、障害物競争の中から1つ選ぶのだ。

 

 勿論俺は走りたくないから走り幅跳びを…

 

優也「走り幅跳びに立候補を

「俺も走り幅跳び!」

 

 ジャンケンポン

 

俺➡パー

相手➡チョキ

 

 うおー!ここに来て俺の運の悪さが!

 

 仕方ない…400mを

 

俺➡グー

他の人➡パー

 

 うおー!また!負けた!俺はどんだけ運が悪いんだ!

 

 しかも一人負けって普段よりも恥ずかしい!

 

 俺はジャンケンで一度も勝ったことが無いのだ…シクシク

 

 これで俺は強制で障害物競争か…

 

春海「これで全員決まりましたね!」

 

 そして授業も終わり丁度最後の授業だったため身支度を済ませて帰路につく。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

帰路

 

優也「はぁー…」

 

 俺は自分の運の悪さに呆れてため息をつく。

 

 俺は運で勝つと言う事が出来ないのだ。

 

 中学ではいつも席は一番前。ジャンケンでは連戦連敗。ババ抜きなんて人間のやる遊びじゃねー!って位運が悪い。

 

結羽「何ため息ついてるの?」

 

優也「ああ、それはな、俺の運の悪さにっていつからそこに居た結羽!」

 

 危なかった…こいつ、最初から居ましたよ感を完全にかもちだして俺に話しかけてきた。

 

 こいつは、少人数のグループの中に忍び込んでもバレないんじゃないか?

 

結羽「うーん…今追い付いたところ」

 

優也「そ、そうか…所で体育祭、何に出ることになった?」

 

 俺と結羽はべつのクラスのため結羽に直接聞く他無いのだ。

 

結羽「うーん私は400mかな、優也さんは?」

 

優也「さんつけされるとなんか調子狂うから優也で良いよ」

 

結羽「じゃあ優也は?」

 

優也「俺は…障害物競争だ…今だかつてこんなに自分の運の悪さを恨んだことは無い」

 

 障害物競争とかマジでだるい…

 

 ハードル走だって出たくないのに…

 

結羽「障害物競争ですか。ちょっとこの学校の障害物競争ってハードってよく聞くので気を付けて下さい」

 

 は、ハードなのか…俺、普段激しい運動をしたことが無いからな…不安しか無い。

 

 そのうえ、俺は普段からインドア派だ。勝てる気がしない。

 

優也「はぁ何とかやってみるわ」

 

結羽「うん!頑張ってね!」

 

 頑張って…か、父さん以外から言われたのは初めてか。

 

 その時

 

「お!優也じゃね!」

 

 俺の後方から声が聞こえた。

 

 声からして俺を知ってるみたいだが

 

「久しぶり!優也もこの学校に入ったのか!」

 

優也「どちら様で?」

 

「俺だよ俺!」

 

優也「えーっと、俺だよ俺さん?」

 

「ちげーよ!坂戸(さかと) 悠真(ゆうしん)!」

 

 あー確かに昔そんな友人も居たような気がする。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

悠真「俺…転校することになっちまった!」

 

優也「おう!じゃあな!」

 

悠真「か、軽い!そこはもう少し別れを惜しんだりしろよ!」

 

優也「いや、勝手にそっちが友情を押し売って来てたんだから、正直どうでも良い」

 

悠真「悲しいぞ!俺は…シクシク」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 確かに昔、こんな会話をして転校していった記憶がある。

 

悠真「いやーしかし、久しぶりにあったらこんな可愛いかの…

 

 そして悠真はそこでしゃべるのを止めておもむろに携帯を取り出した。

 

 ピッポッパ

 

 プルルルル プルルルル

 

優也「どこに電話をかけようとしてるかは分かるがどこにかけようとしている!」

 

悠真「ん?けい」

 

 そして俺は携帯を奪って電話を切った。

 

悠真「何をする!」

 

 危なかった…危うく社会から消される所だった…

 

 こいつが何を考えて電話をかけようとしたのかは分かる。

 

悠真「お前がそんな奴だとは思わなかったぞ!お前!小さい女の子をなんだと思って!」

 

優也「悠真!こいつはな!こう見えて高校1年生!それと俺達付き合ってない!」

 

結羽「誰が小さい女の子だ!そうだ言ってやれ優也!…ってあれ?今さらっとバカにされたような…」

 

 今後、勘違いされることも多そうだから注意しなくては、また社会から消されそうになるかも知れない。

 

 ※こいつはロリ顔ですが、れっきとした高校1年生です。つまり、俺が付き合っていたとしても通報される事ではありませんので勘違いしないでください。

 

結羽「って!こう見えてって酷くないですかね!優也」

 

悠真「しかし、あの成績が悪かった優也がね…」

 

 俺が勉強にうちこみ始めたきっかけになった事件はこいつが転校してから起きた事件なため、こいつは前の俺しか知らない。そのため俺に気さくに話しかけてくる。

 

悠真「しかし、そこの女の子は?」

 

結羽「私は、柴野 結羽!決して中学生じゃないですから!」

 

悠真「俺は、坂戸 悠真!よろしく」

 

 そしたら、俺にこう耳打ちしてきた。

 

悠真『柴野さんって可愛いよな!かなりドスト』

 

 ピッポッパ

 

悠真「ごめんなさい!」

 

優也「ようやくお前を社会から追放する事が出来そうだ」

 

悠真「優也さん、マジで洒落になってません…」

 

優也「まぁ冗談なんだけどな」

 

悠真「だ、だよな!俺の友人がそんなことを思うわけ」

 

優也「半分くらい」

 

悠真「半分思ってる!」

 

 こいつはいじり甲斐がありそうだ。

 

 地味に友人が居る生活も良いなと思っている自分が居る。

 

 俺は、医療研究会に入れなかった時点で絶望していたけど、今は楽しいと思えるかな?

 

 結羽と悠真、皆クラスは違えど俺の友達だ。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

次の日

 

春海「今日から体育祭の練習開始です!本番は2週間後それまでに体力を作りましょう!」

 

 体力作りって面倒だな…

 

「位置について!よーい!どん!」

 

結羽「あれ?優也は出ないの?」

 

優也「正直…面倒…」

 

 俺がそう言うと結羽は苦笑いを浮かべた。

 

結羽「でも、体育祭、再来週だよ!練習しなくちゃ!」

 

 いやいや、練習しても変わらないと思いますよ!元々インドア派だし、そんな奴が勝てるほど甘くねーって。

 

優也「俺はいい、結羽は行かないのか?」

 

結羽「私は…優也が行かないなら私も行かない!」

 

優也「なにその俺が悪いみたいな言いぐさは!」

 

 仕方ない…本気を出すのは本番だけでいい。

 

優也「行くぞ!」

 

結羽「うん!」

 

「位置について!よーい!どん!」

 

 そうして、俺にとって魔の2週間が始まった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

結羽「優也って練習を見てたけど以外と体力あるよね!」

 

悠真「昔からそうだよ!こいつはいつも部屋に籠ってるくせに体力だけは人一倍あるからな」

 

優也「俺は筋トレだけはやってるからな」

 

 そして2週間後、ついに体育祭が始まる。




 はい!第5話終了!

 今回は体育祭の前準備ですね。

 次回は体育祭本番です!

 それでは今回はここまで!

 次回もよろしくお願いします!

 ではでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話 体育祭

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回は体育祭です!

 それでは本編行きましょう!

 では!

 第6話スタート


体育祭当日

 

優也「賑わってるな」

 

結羽「ボーッと突っ立ってないで行こうよ!」

 

優也「ま、まてよー!」

 

悠真「やれやれ」

 

 俺は結羽に手を引かれて連れていかれる。

 

優也「じゃあ俺はここだからまたあとでなー!」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

《それでは校長の挨拶です》

 

 校長の話って長いと感じるのは俺だけではないはず。

 

 と言うか開会式…暇だ…

 

 なにもすることが無いからな…

 

 暇だったからボーッとしながら聞いていた。

 

《これで開会式を終わります!次はプログラム一番400m走です》

 

 400m走か…ってことは結羽が出場するんだな!確か悠真は走り幅跳びとか言っていたな。運…

 

 その時

 

「位置について!よーい!どん!」

 

 パン!と音がなった瞬間、1グループ目が走り出した。

 

 1グループ6人で構成されていて、順番に1年生2年生3年生の順番。

 

 どの学年も15グループずつある。

 

 結羽は2グループ目

 

 だから次だ

 

 っと、1グループ目が走り終えたようだ。

 

 そして2グループ目が定位置につく。

 

 当然その中には結羽も居た。

 

「位置について!よーい!どん!」

 

 パン!と音がなった。

 

 その瞬間走り出す。

 

 結羽は現在1位

 

 そんなに最初から飛ばして大丈夫か?と思うけど…

 

 200m走なら良いけどこれ400mもあるんだぜ?途中でバテないか心配だ。

 

 やはり、俺の想像通り半分行った所で減速した。

 

 そしてどんどん抜かされていき

 

 ゴール

 

 結果は?

 

 1位 佐藤さん

 2位 渡部さん

 3位 齋藤さん

 4位 芝田さん

 5位 柴野さん

 6位 奈乃さん

 

 ギリギリ最下位では無かったようだ。

 

結羽「はぁ…はぁ…」

 

 結羽が息切れしながら戻ってきた。

 

 そしてこちらに気がついたようだ。

 

結羽「優也!やってしまいました!中学の時からそうなんですよ!何も学習しなくて…最初から全力だと疲れるの分かってるのに!」

 

 ああ!こいつ…あれだ

 

 見た目だけじゃなく、学習能力まで中学で止まってる感じだ。

 

 その癖

 

 運動能力だけは一人前…なんだこのバランスの悪いステータスは!

 

 RPGでいうと攻撃にステータスをガン積みしてるのに、防御がめっちゃ弱くて、素早さも遅いので、初ターンで、ワンパンされるみたいな感じだ。

 

 その運動のステータスをもう少し均等に振り分けては頂けませんかね?

 

優也「お、おう…次、頑張れよ!次は全員リレーもあるし、()()()()()もあるんだ!元気出せよ!」

 

結羽「そうですね!分かりました!」

 

 なんとか元気を出してくれたようで良かった!

 

結羽「それでは!またあとで!」

 

 結羽はそう言って小走りで自分の席に帰って行った。

 

《全グループが走り終えたので次のプログラムに行きます!》

 

 そうしたら全員事前に配られたプログラムに目を移す。

 

《次のプログラムは、走り幅跳び!》

 

 これ終わったら午前の部終了だな。

 

 障害物競争は午後の部に入っているからゆっくりしていられるな。

 

 障害物競争が終わったらすぐに全員リレーか!

 

 たいして疲れが取れねーよ!

 

 ただでさえ!障害物競争はハードだって話を聞いていたんだから!

 

 走り幅跳びは一学年(ひとがくねん)4人程参加する競技である。

 

 残りの人数は、障害物競争となる。

 

 悠真は3番目

 

 そして、1番目…2番目…ときて、ついに

 

 悠真の出番が来た。

 

 そして悠真は走り出す。

 

 そして跳ぶ!

 

 そして着地

 

 さて、記録は?

 

 悠真がこちらにやって来た。

 

悠真「お!優也!」

 

優也「悠真、記録は?」

 

悠真「7mだった」

 

 すごい!

 

 かなりとんでんじゃねーか!

 

 確かに悠真は中学の頃から運動神経抜群で、細い川くらいなら簡単に飛び越えることが出来るけど…

 

 …凄まじい運動能力だ。

 

悠真「かなり抑えたんだよな…」

 

優也「うん!知ってる!」

 

 そして全員跳び終えたようだ。

 

《これで午前の部終了です!これからお昼休憩を取りたいと思います!午後の部開始は1時半からです!しっかりと休憩を取って午後に備えましょう!》

 

 休憩時、弁当は他のクラスの人と食べても良いらしい。

 

 そのためこちらへ来る二つの影が。

 

悠真「来たぜ!」

 

結羽「一緒に食べよ!」

 

 やはり来たか…まぁ良いんだけどな。

 

悠真「しかし…優也もやるな!女の子に自分から来させるなんて!」

 

優也「呼んだ訳じゃ無い!」

 

結羽「へー!今日は弁当があるんだ!」

 

 まぁここにも購買があるなら良いけど無いから仕方なくな。

 

優也「結羽だって弁当があるだろ」

 

結羽「まぁね」

 

 そして一斉に全員弁当を開いた。

 

 中身はと言うと、

 

 悠真はガッツリ

 

 結羽は軽め

 

 俺は適当

 

結羽「おー!優也の弁当美味しそう!」

 

優也「結羽のも美味しそうだな!」

 

 そう言ったらなぜか結羽は顔を赤くしてうつむいた。

 

 何で?

 

結羽「いえいえ…優也の…方が…美味しそうだよ…」

 

 ん?何?俺たちってどちらの弁当の方が美味しいかって事で争ってたっけ?

 

優也「そうか…じゃあ!」

 

 俺は箸で玉子焼きをつかんで、結羽の口に入れた。

 

結羽「!///」

 

 結羽は驚いて目が渦巻きになって頭から湯気が出ている。

 

優也「どうだ?」

 

結羽「あわわわ!」

 

悠真「ほほーぅ」

 

 そして悠真の方を見ると悪い顔をしていた。

 

悠真「なに?この2週間でお前らもうそんな関係に?」

 

優也「そんな関係ってどんなだよ!」

 

 そして俺も弁当を食べる。

 

結羽「あ!」

 

悠真「おま!」

 

 二人とも何を驚いて…

 

 そしてまた一口食べる。

 

悠真「それ…間接キスじゃ!」

 

結羽「///」ボッ

 

 あ!結羽がショートした。

 

 って、ほんとだ!これ、間接キスだ!

 

 そう考えると急に恥ずかしさが…

 

悠真「お!優也が照れてる!レアだな!レア優也が現れた!レア優也は結羽に強いんだな!」

 

 何、勝手な考察をしてるんだ!

 

 ふと横を見ると俺の肩にもたれ掛かって気を失っている結羽が居た。

 

悠真「お二人のじゃまだと思うのでここら辺でおいとまさせてもらうぜ!」

 

 そしたらものすごい勢いで自分のクラスに戻って行った。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

数分後

 

結羽「う、うーん」

 

優也「あ!目が覚めたか!」

 

 俺が結羽に声をかけるとまた赤くなった。

 

結羽「え!ええー!ゆ、優也!」

 

 その時

 

《午後の部がそろそろ始まります!障害物競争に出場する人は中央にお集まり下さい!》

 

優也「俺、呼ばれたから行くな!」

 

結羽「あ!優也…」(良いところだったのに…)

 

《それでは全員集まったので障害物競争を開始したいと思います!》

 

 いつの間にか障害物競争のセットがセッティングされていた。

 

 この障害物競争は学年全員で一斉にやる競技

 

 1年生は一番最初

 

 そのためすぐに出番が来た。

 

《次のプログラムは障害物競争!それでは始まります!》

 

「位置について!よーい!どん!」

 

 そして一斉に走り出す。

 

 俺は少し遅れて走り出す。

 

 なんか、嫌な予感がしたから。

 

 その瞬間

 

 ドサッと言う音が聞こえた瞬間先頭集団が消えた。

 

《1つ目は落とし穴!この穴に落ちた人は強制失格です!》

 

優也「ま、じ、か!」

 

 っつー事はこれは…

 

 有利が不利…不利が有利になる障害物競争…

 

 つまり、先頭に居たら強制失格になる危険性がある…

 

 ががー

 

 そのような機械音がした瞬間、コースにハードルが現れた。

 

 先頭集団は反応出来ずに躓く。

 

《倒したハードルはちゃんと立ててから走り出して下さい!》

 

 これまた地味に嫌な障害物だな!

 

結羽「優也…かなり後ろですね」

 

悠真「いや、あれは逆に良い位置取りだ!これは常識外れの障害物競争!優位に立っていた方が逆に不利になる!前の方が強制失格になる可能性が高い」

 

 ドカン!

 

 コースに急に壁が現れて多くの人が壁にぶつかる。

 

《3つ目は壁です!この壁にぶつかった人は強制失格です!》

 

 またかよ!

 

優也「ふう…次のはまともそうだ…」

 

《次は平均台です!落ちたら強制失格です!》

 

優也「おいこら!強制失格好きか!そんなに好きなのか!」

 

《いえいえ、私たちも強制失格にするのが心苦しい…》グスン

 

 この放送は生徒会がやっているらしい。

 

 わざとらしい泣き方しやがって!

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

悠真「楽しそうだ!」

 

結羽「なんか、この数ヵ月でだいぶ元気になったんだよね」

 

悠真「いや、中学の時と同じだと思うけど」

 

結羽(そうなんだ…)

 

悠真「なにニヤニヤしてるんだ?」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 くっそー!

 

 こっちがいつ罠にはまるか分からなくてハラハラしてるのに、あっちはあんなに楽しそうに話なんかしやがって!ムカつく…悠真はあとでいじり倒そう。

 

 なんとか渡りきれた。

 

 次は何だ?

 

 ドサッ

 

《落とし穴(ツー)

 

 ツーって何だ!ツーって!

 

 シリーズ物か!ネタ切れか!

 

 もっとあるだろ!普通のが!

 

《そう言う事を言う人も居ると思って、こんなものを用意しました!》

 

 デデーン

 

《サッカーボール!》

 

 なるほど!ドリブルか!

 

《頭にのせて落とさないように所定の位置まで運んでください!》

 

 そっちかー

 

《落としたら強制失格です!》

 

 おい!

 

 強制失格多すぎだろ!少しは自重しろよ!

 

 そう言いながらも頭にボールをのせて慎重に()を進めた。

 

 非常に間抜けな絵面である。

 

 そして終わって周りを見てみたら俺を含め数人しか残ってなかった。

 

《さぁ!ラストスパートです!ここからは落とし穴に気を付けて行って下さい!》

 

 その放送が終わった瞬間、俺の前の人達が全員落ちた。

 

優也「???」

 

《一人以外全員落ちたのでその一人も失格にならなかったら1位です!》

 

 なぜか、こう言うときに落ちないのが俺であるからして

 

優也「ご、ゴール?」

 

 っつーか!

 

 こんなんでゴールして喜べるわけねーだろ!

 

 なんだよ!あの障害物!ふざけてんのか!

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

悠真「あ!終わったみたいだぜ!」

 

結羽「本当だ!」

 

悠真「優也お疲れ!」

 

優也「お、おう…って言うか、生徒会ふざけすぎだろ!」

 

 生徒会は強制失格やら、落とし穴が好きか!そんなに好きなら一生落とし穴と戯れていろ!

 

悠真「そう言えば!3年の生徒会長の真依(まい)先輩って良いよな!」

 

優也「真依先輩?」

 

悠真「え!知らないのか!」

 

 そんな信じられないって目で見られても…確かに生徒会長って肩書きがあって有名なのかも知れないけど…

 

悠真「あんな可愛くて最高な子を知らないなんて!」

 

優也「そう言うこと!」

 

悠真「可愛くてボインで、最高じゃないか!」

 

 引いてる!結羽さんが引いていますから!あんなに素晴らしい笑顔がひきつってますから!

 

結羽「やっぱり男は胸ですか!そうですか!」

 

優也「いや、俺はべつ」

悠真「あったり前だろ!」

優也「あんたはちょっと黙ってろ!」

 

 怒っていらっしゃる!

 

《最後のプログラムは、全員リレーです!生徒の皆さんは中央に集まって下さい!》

 

結羽「うぅ~…ふん!」

 

 結羽は頬を膨らませたまま後ろを振り返って中央に向かって行った。

 

優也「悠真!今度生徒会と一緒に絞めるから覚悟しとけよ!」

 

 俺はそう捨て台詞をはいて中央に向かった。

 

《それでは!最後のプログラムは全員リレーです!》

 

「位置について!よーい!どん!」

 

 そして第1走者目が走り出した。

 

 しかし、うちのクラスは文系の人ばかりなもので、どんどん突き放されていく。

 

 そしてついに俺の番になった。

 

 前の走者からバトンを受け取って次の走者のもとに向かって走り出す。

 

 一人辺り200m走る。

 

 150…100…50…

 

 そしてバトンをパスする。

 

「お疲れ!」

 

優也「あ、ああ!」

 

 結果は6クラス中、5位だった。

 

 地味に最下位じゃない!

 

結羽「お疲れ!」

 

悠真「次は期末テストだな!」

 

優也「ああ…はぁ…」

 

 期末テスト…一学期のラスボス!

 

 そして、体育祭も終わり、一学期も終わりに着実と近づいて行っている。




 はい!第6話終了!

 次回から期末テストです!

 一学期もあと少しです!

 今回の話はいつもからみたらかなり長くなりました。

 それでは今回はここまで!

 次回もよろしくお願いします!

 ではでは!

 さようなら!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7話 にぶい優也と申し訳程度のテスト

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回はラブコメ要素がすごく多いです!

 注意して読んで行って下さい!

 それでは本編行きましょう!

 では!

 第7話スタート


一週間後

 

 俺はこの一週間…ひたすら机に張り付き猛勉強をしていた。

 

 なぜならそれは

 

 一週間後に期末テストがあるから

 

 ちょくちょくあいつらは、

 

悠真「おーい!サッカーしようぜ!」

 

 とか

 

結羽「い、一緒に近くの公園で遊ばない?///」

 

 おい!口ごもるな!なに照れてんだ!照れんならやるなよ!

 

 と言った感じで来るが毎回追い返している。

 

 俺は最近ろくに勉強をしていなかったため、今ここで取り戻さなければならない。遊んでいる暇はないのだ。

 

 しかも俺達が入学した高校、伊真舞高校の中間・期末テストには魔物が潜んでいる(・・・・・・・・)と言われている。

 

 その訳は、直前まで楽勝だぜ!と言っていた生徒がテスト後にはぐったりとしてて「もうだめだ」と呟いていて惨敗していることが多々あると言う話だ。

 

 この摩訶不思議な出来事を生徒の皆はこう呼んでいる。

 

 

 学校七不思議の1つ【テストに潜む魔物(・・・・・・・・)

 

 

 こう呼ばれ恐れられている。

 

 テストに潜む魔物か…それを()つ!

 

 そのためにも猛勉強だ!

 

 RPGも強い敵と戦うときはレベルを上げて挑むだろう?今はそのレベル上げだ。

 

 修行を積んで必ず討つ!

 

 カリカリカリ

 

 シャーペンの音が部屋に響く。

 

 部屋を静寂が支配するなかその音だけが響き渡る。

 

 その時

 

 ピンポーン

 

 何だ?

 

優也「はーい!ってお前らか!」

 

悠真「来たぜ!」

 

結羽「一緒に勉強をって思って…分からないところは教えてもらいたくて」

 

 まぁそれくらいなら良いんじゃないかな?

 

優也「はいれ」

 

悠真「じゃまするぜ!」

 

結羽「おじゃまします」

 

 見た目だと結羽の方が(・・・・・・・・・・)幼く見える(・・・・・)のに礼儀正し(・・・・)さだと結羽の方が大人(・・・・・・・・・・)に見える(・・・・)

 

優也「砂糖どれくらいが良い?」

 

悠真「話の流れがつかめません!」

 

 唐突過ぎたか!

 

 じゃあ、主語を持ってきて

 

優也「コーヒーの砂糖どれくらいが良い?」

 

悠真「そう言うことか!一個で!」

 

結羽「私は二個!」

 

 結羽は甘い方が好きなのかな?

 

優也「お待たせ!」

 

悠真「お前の家、コーヒーメーカー置いてるのか!スゲーな!」

 

 まぁ俺が豆から作ったコーヒーが好きだからな。

 

結羽「あれ?優也は砂糖入れないの?」

 

優也「俺はブラックが好きなんだ」

 

 そう言いながらコーヒーを飲む。

 

悠真「大人だな」

 

結羽「ねー」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

数分後

 

悠真「優也!」

 

 はいはい

 

結羽「優也!」

 

 はいはい

 

「「優也!優也!優也!優也!」」

 

優也「ってお前ら!どんだけ分からねーんだよ!」

 

悠・結「強いて言うなら全部!」

 

 息ぴったり過ぎんだろー!

 

 こうなったら自棄だ!

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

優也「つ、疲れた…」

 

 なんとか教えたぜ!

 

結羽「優也!」

 

優也「はいはい」

 

 そして結羽に近づく。

 

優也「どこが分からないんだ?」

 

結羽「ち、近いよ」

 

優也「ん?」←疲れて頭が回ってない

 

結羽「う、うぅ~///」

 

 なんか悠真がニヤニヤしてるような。

 

 そしてなんか結羽がこっちを向いて目を瞑っている…気にしないようにしようか。

 

優也「これはな…って何で結羽さんは怒っているのでしょうか?」

 

 結羽は頬を膨らませて怒っていた。

 

結羽「にぶちん!」

 

 マジでわけわからん!

 

結羽「ラノベ主人公そっくり!」

 

 まてまて!

 

優也「俺はそこまで耳は遠くない!」

 

悠真「確かに」

 

 お前は分かってくれるか!

 

悠真「ラノベ主人公だな!」

 

 お前もか!

 

悠真「純粋な女の子の気持ちは考えたことあるのか!」

 

優也「わけわからないよ!」

 

悠真「これだからラノベ主人公は!」

 

優也「お前はもうラノベ主人公って言いたいだけだろ!」

 

 マジで体力を使い果たしそう…

 

悠真「でも、にぶくない優也なんて気持ち悪いけどな!」

 

 なに勝手に想像して気持ち悪いとか言ってんだ!

 

結羽「確かに!」

 

 お前ら!俺のHP削り切る気か!

 

 そんなこんなでこのような一週間が続いた。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「なに優也、魔物と戦う前に瀕死なんだよ!」

 

優也「俺にとっての魔物は友だったわ…」

 

「ご愁傷さま…」

 

先生「それではテストを開始します!」

 

 1時間目…数学

 2時間目…社会

 ・

 ・

 ・

春海「すべてのテストが終わりました!なので明日テストを返却します!」

 

 終わった…やっと…

 

 周りを見ると殆どの人が魔物にやられたようだ。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

そして今、廊下を歩いていた。

 

「やあやあ!君!お疲れのようだね!」

 

 なぜか俺に気さくに話しかけてくる女性が一人

 

優也「そうなんです!なので俺を厄介事に巻き込もうとしないで下さい!」

 

 俺は早々に立ち去ろうとした…しかし、神はそれをさせてくれなかった。

 

悠真「優也!こんなところに居たのか!」

 

結羽「おーい!」

 

 悠真と結羽が駆け寄ってきた。

 

「あの二人は君の友達?」

 

優也「魔物です」

 

「「ひどい!」」

 

 こう言うときだけ息ぴったりなんだからな…

 

悠真「あ、あなたは!」

 

優也「なに?この人を知ってるの?」

 

悠真「知ってるもなにもその人は生徒会長の真依先輩じゃ無いですか!」

 

 マジで!この人が!

 

結羽「デカイ」ボソッ

 

 なんか結羽が生徒会長に嫉妬の視線を向けているんだけど!

 

優也「で、生徒会長さんはこんなところで何を?」

 

真依「生徒会長じゃなくて、白波(しらなみ) 真依のどちらかで呼んで」

 

優也「じゃあ白波さんはこんなところで何を?」

 

真依「私はね、君に会うために来たんだよ~」

 

優也「真面目に答えて下さい!」

 

 そしたら白波さんは仕方ないな…って顔をしたあとこう言った。

 

真依「ねえ!君は恋愛の事についてどう考えてるの?」

 

優也「俺は…恋愛は要らないと思います」

 

真依「だってさ!残念だったね」

 

 白波さんは結羽の方に向かってそう言った。

 

結羽「な、何の事ですか?」

 

真依「そう言えば、皆の名前、聞いてなったんだけど!」

 

 そうか!そう言えば自己紹介をしていなかった!

 

優也「俺は絆成 優也です」

 

悠真「俺は坂戸 悠真!」

 

結羽「私は柴野 結羽です」

 

 そしたら結羽がペコリと頭を下げた。

 

 不覚にも可愛いと思ってしまった。

 

真依「はい、よろしく!にしても、優也君!よく先日の体育祭のゴール出来たね!」

 

 何で驚く!え?まさか!ゴールさせないつもりだったの?怖いよこの人!

 

優也「にしても、あなたは何ですか!とびきりのドS何ですか?」

 

真依「そうだよ!私はね、相手が嫌だ!とか思うことを考えたり実行するのが好きなんだよ!」

 

 ひ、開き直った!

 

 もうやだ!この人!自分がドS宣言したよ!

 

真依「特に、優也君の様な可愛い子には余計にいじめたくなるんだよね」

 

 白波さんがそう言った瞬間、前に結羽が飛び出してきた。

 

結羽「だめ!優也をいじめるのは私が許さない!」

 

 そう言っている結羽の後ろ姿は凛々しかった。

 

 そして、ほんのり耳が赤くなってる気がした。

 

真依「分かってる!奪ったりしないから安心して?」

 

結羽「!」

 

 二人は何の話をしてるんだ?

 

真依「じゃあ私はここらで仕事もあるからおいとまさせてもらうよ~!」

 

 そして白波さんはすごい速さでこの場を去った。

 

優也「はぁ…なんかどっと疲れたからすぐ帰りてー」

 

結羽「同じく」

 

悠真(真依先輩と仲良くなれるかな?)

 

優也「約一名、なんか俺達と違うことを考えてるやつが居るんだが…」

 

 そうして歩き出した。

 

悠真「ア、ソウダ、オレヨウジガアルカラサキカエルネ」

 

 ものすごい棒読みで帰る宣言をしたあとものすごい速さで帰っていった。

 

優也「なんだったんだ?あいつ」

 

結羽(ゆ、優也と二人きり…///)

 

 なんか、結羽が今にも爆発しそうな勢いで赤くなっている。

 

優也「じゃあ帰るか!」

 

結羽「ひゃい!」

 

優也「噛んだw」(ひゃいって可愛い!)

 

結羽「わ、笑わないで下さいよ///」

 

 結羽は照れながら俺の胸をポカポカと叩いてくる。

 

優也「良いから帰るぞ!」

 

 そして俺は結羽の手を引いていく。

 

 結羽を見るとさっきより顔が赤くなっていた。

 

結羽「あと少しで一学期も終わりですね」

 

優也「そうだな!あっという間に過ぎていったな」

 

 入学して、早々に俺が不幸を発揮して医療研究会に入れず、落ち込んでいたときに結羽と出会って友達になった。

 あのときの俺は意固地になっていたから、友達が出来るんだよ!って言っても全然信じないと思う。

 そして、悠真との再開と体育祭。

 よく俺、落とし穴にはまらなかったな!

 

 うん!色々あった!

 

 そこそこ濃かったんじゃないかな?

 

結羽「これからもよろしくお願いします(・・・・・・・・・・)!」

 

 よろしく…か

 

 俺には結羽がどのような気持ちを込めて言った言葉かは分からない。

 だけど回答は自然に出ていた。

 

優也「こちらこそよろしく!」

 

結羽「絶対通じてない…」ボソッ

 

優也「何だって?」

 

結羽「何でもない!ラノベ主人公!」

 

 結羽はそう叫んで足早に帰っていった。

 

優也「あいつ、何怒ってたんだ?」

 

 本当に意味が分からない。




 はい!第7話終了

 さすがラノベ主人公、絆成 優也!

 さすが重要な所が聞こえてませんね!

 それでは今回はここまで!

 次回もよろしくお願いします!

 ではでは!

 さようなら!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第8話 終業式

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回で1学期が終わります!

 それでは本編行きましょう!

 では!

 第8話スタート


優也「ただいま!」

 

 俺は結羽が帰ったあと小走りで帰ってきていた。

 

父「お帰り」

 

 やはり家が落ち着く。我が家に帰ってきた!って感じがするよな。

 

 帰ってきてすぐに俺は自室に戻ってきていた。

 

優也「生徒会長…ね」

 

 生徒会長の白波 真依さんはとても明るい性格で人をからかうのが好きな人だ。

 

 明るい性格ってのは見習いたい物だな。

 

 ズズッとコーヒーをすすって手元に目を移す。

 

 俺は今、勉強をしていた。たいして勉強をしなくても良いときでも俺は癖が抜けなくて勉強をしてないと落ち着かなくなってしまっている様だ。

 

優也「んんー!」

 

 っと背伸びをしてから時計を見る。

 

 気がつくともう6時を回っていた。

 

父「ここに飯、置いとくからな」

 

 扉の外から俺に父が呼び掛けてきた。

 

 どうやら飯を置いていってくれたようだ。

 

 そして俺は外に置いてあった飯を取り、食べてからまた勉強をする。

 

優也「今日はここまでにして早めに寝るか」

 

 そしてベットに入って眠りについた。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

次の日

 

悠真「で、どうだった?あのあと」

 

優也「急になんだよ!」

 

 突然こいつは昨日どうだった?って聞いてきた。意味分からないよ!

 

悠真「だってよ!男女二人きり(・・・・・・)だぞ!」

 

優也「それがどうしたんだよ!」

 

悠真「まさか!何もしていないのか!男女二人きり(・・・・・・)で!」

 

優也「そこ強調するな!結羽と一緒に帰ることはお前と再開する前もあったし、二人きりと言う状況もあった!今更でしょ!」

 

 え?こいつって俺と結羽のカップリングを望んでるの?そうなの?

 

 しかも余計に二人きりと言う所を強調してくるし。

 

悠真「まさか!女として見ていなかったのか!意識したこと無かったのか!」

 

優也「無いと言えば嘘になるけど…でも!そう言う事は考えたことねーよ!」

 

悠真「これだからラノベ主人公は…」

 

 やれやれと言った仕草をしている。

 

優也「ラノベ主人公言うなー!」

 

 何かあれば一々ラノベ主人公!ラノベ主人公!って!

 

 その時

 

結羽「何の話をしているの?」

 

 一番来てほしくない人が来た。

 

優也「っつーか!二人とも教室戻れ!」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

春海「今日はテストを返します!」

 

 今日はテスト返却日

 

 先日行ったテストが帰ってくるドキドキの瞬間

 

春海「絆成さん!」

 

 ついに俺の出番になった。

 

優也「はい」

 

 そして俺はドキドキしながらテストの点数を見る。

 

 100点

 

優也「良かった…」

 

 何とか大丈夫だった。

 

 そして他のテストも返され順位は1位だった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

結羽「優也~!」

 

 俺が廊下に出るとすぐさま泣きついてきた。

 

 これだけですぐ何が合ったか察せたので野暮な事は聞かない。

 

優也「一緒に購買行こうぜ!奢るから」

 

結羽「悪いよ!」

 

 しかし俺は有無を言わさずに結羽の手を引いて購買まで行く。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

優也「結羽は何が食いたい?」

 

結羽「わ、私は別に!」

 

 結羽は遠慮して中々選んでくれない。

 

 そう言えばいまだに手を繋いだまま(・・・・・・・)だったのに気がついた。

 

 そして俺は急いで手を離す。

 

 そしたら結羽が寂しそうな表情で「あっ」って言ってきた。

 

優也「どうした?」

 

結羽「な、何でもない!」

 

 俺がそう聞くと、結羽はあわてて返す。何を慌てる必要があるのだろうか?

 

優也「一緒ので良いか?」

 

 そう言って俺は結羽に前、分けてもらったパンを手にとって2つ買い、1つを結羽に渡す。

 

 そうすると結羽は「えっ!?」と言う顔になって俺からパンを受け取っていた。

 

結羽「あ、ありがとう」ボソッ

 

優也「? どういたしまして」

 

結羽「これって前一緒に食べたパン」

 

優也「ああ、結羽そのパン好きだったろ?」

 

結羽「覚えててくれたんだ」ボソッ

 

優也「何だって?」

 

結羽「何でもなーい」

 

 このパンは結羽が好きだって言ってたなってのを思い返しながら選んだしな。

 

 その時、背後から視線を感じた。

 

優也「少し待っててくれ」

 

結羽「? 分かった」

 

 そして俺は視線のする方向へと向かった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

優也「なにやってるんだ?」

 

悠真「み、見つかった!」

 

真依「やほー!優也君!元気そうだね!」

 

優也「あなたも元気そうですね白波さん」

 

 悠真だけかと思ったら白波さんまでいたのか…

 

 正直、見てくれは良くて男子から好かれる存在だけど俺からしたら疲れる。

 

悠真「しかし、お暑いね~いつの間にそんな関係になったんだ?」

 

優也「そんな関係ってどんな関係だよ!」

 

真依「彼氏彼女の事だよ~」

 

 は?彼氏彼女の関係?

 

 あの見た目が15にも満たないような女の子と、この彼女を必要ないと見なしている俺が?

 

優也「無いな」

 

悠真「おい!何で否定するんだよ!可愛そうだろ!」

 

優也「でもよ!こんな勉強バカで、インドア派で、恋人と言う関係を否定している俺を好きになるやつなんて居るわけが…ってなんだ!その目は!あり得ないものを見る目はやめてくれ!」

 

 何で二人とも俺を『なんでこいつこんなに卑屈になってんの?なんで気づかないの?』って目で見るんだよ。

 

悠真「いやさ、惚れる理由は幾らでもあるよ!」

 

優也「例えば?」

 

悠真「大人っぽい雰囲気を出しているけど話しかけてみたら以外と話しやすかったり、イケメンだったり等などだ」

 

真依「あと、いじめると楽しい」

優也「それはあなた特有です!」

 

 そうガヤガヤ話してると後ろから声をかけられた。

 

結羽「遅い!少しって言ってたよね?」

 

 そうだった結羽のことを忘れていた。

 

優也「ごめんごめん!ってことでまたな!」

 

 俺は一刻も早く話を終わらせたかったから結羽が割って入ってくれて良かった。

 

 そのお陰で抜け出せたんだけど結羽には悪いことをしたな…

 

優也「本当にごめんな!」

 

結羽「じゃあ、1つお願いを聞いてくれる?」

 

優也「なんだ?」

 

結羽「手を繋いでくれる?」

 

優也「良い…けど」

 

 少し恥ずかしいけど今回は俺が悪かった訳だし、すんなりと願いを受け入れた。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

午後

 

「それでは終業式を終了します」

 

 1学期の終業式が終了した。

 

悠真「明日から夏休みだな!」

 

優也「ああ」

 

 明日から夏休みなので夏祭りやら海やら種々なイベントがあるけど今年の夏もたぶんほとんど勉強して過ごすんだろうな。

 

悠真「じゃあ!今日も俺は急いで帰るから!じゃあな!」

 

 そして悠真は急いで帰っていった。

 

優也「じゃあ、俺達も帰るか」

 

結羽「はい!」

 

 俺達の夏休みはどうなるのやら




 はい!第8話終了

 1学期はそこそこ濃い感じになりましたかね?

 それではこれにて1学期終了!

 それでは今回はここまで!

 次回からは夏休み編に入ります!

 ではでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

1年生編 夏休み
第9話 天然過ぎる優也


 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回から夏休み編が始まります!

 夏休みのイベントと言えばカップル向けのイベントが盛りだくさん。

 まぁ優也さんは鈍いのでそんなことにはならないと思いますけど。

 それでは本編行きましょう!

 では!

 第9話スタート


 俺は夏休みに入ってからと言うものたいしてやることが無いので勉強していた。

 

父「優也は外に遊びに行かないのか?」

 

優也「父さん。俺はインドア派だよ?その俺が自分から出歩くわけ無いってこと知ってるでしょ?」

 

 俺は出来ることなら家でまったりと過ごしたい。

 

 そう、俺はまったりと生きたいんだ!

 

 だけど最近は…新しい出会いが合ったり、体育祭で生徒会の策略が合ったり、悠真との再開やら、ラノベ主人公と罵られたり、全然まったり出来ていない…

 

 結羽はまだ良い…だが悠真と白波さんはクレイジーの根元みたいな所があるからな…出来ることなら関わりたくない…

 

 その時

 

 ピンポーン

 

 家のチャイムがなった。

 

 まぁ大体の人物の見当はついているけど…

 

優也「なんのようだ!」

 

悠真「いきなり辛辣だなぁ~」

 

 気持ち悪い!なにが『なぁ~』だ!

 

結羽「優也、いつもながらいきなり押し掛けてごめんね」

 

 常識人来たこれ!

 

 たぶん結羽は良い子だから優しくしてしまうんだろうな…

 

結羽「何か今、子ども扱いしませんでしたか?」

 

優也「してない!」

 

「やぁ!優也君!相変わらず結羽ちゃんにだけは優しいねぇ~」

 

 その時、優也の後ろから嫌な声が聞こえた。

 

 この口調…間違いない

 

優也「白波さん!?なんでここに!」

 

真依「ついた来たからに決まってるでしょ!」

 

悠真「気がついたら真依先輩に尾行されてました!」

 

 白波さんまで居るなんて予想外だ…嫌な予感がする…俺の第6感がそう叫んでいる!

 

 普段は結羽と悠真の二人だけで来るけど、白波さんが居ると何か面倒事に巻き込まれそう…

 

真依「今回来たのはそう!『海に行こう!』と言うお誘いでーす!」

 

優也「な、なんだってー!」

 

 真夏の海って言ったらあれだろ?カップルが水を掛け合ってイチャイチャする場所だろ!完全に俺達が行くのは場違いな気が…

 

結羽「行こうよ!優也」

 

優也「お、俺は別に」

悠真『おい!ちゃんと女の子の気持ちを考えてやれよ!』

真依『そうよ!結羽ちゃんは他でもないあなた(・・・)と行きたいのよ!』

 

 本当かな?俺と行きたいと思う物好きなんて本当に居るのかな?

 

真依『あなたはすごく自己評価が低いのね…』

 

悠真『今、俺と行きたいと思う物好きなんて本当に居るのかな?なんて考えただろ!これだからラノベ主人公は!』

 

優也「ラノベ主人公って言うな!」

 

 まぁ確かに夏休みが始まって一週間が経過したけど何もしていなかったからな…

 

 まぁたまには皆と楽しむのもありだな。

 

優也「分かった!行くよ!」

 

 そう言ったら結羽の顔がパァッと明るくなった。

 

 本当に俺と行きたかったのか?何故なんだろうか?

 

優也「で、いつ行くんだ?」

 

悠真「ん?今からだけど」

 

 ・

 

 ・

 

 ・

 

優也「はぁ!?」

 

優也「なんで今からなんだよ!俺は何の準備も出来てねーって!ってなんで皆、あり得ないこい(・・・・・・・)()まだ準備してなかったの(・・・・・・・・・・)?って目で見るんだよ!俺は今初めて聞いたんだ!準備が出来てなくて当然だろ!」

 

 はぁ…なんなんだこいつらは…

 

優也「じゃあ俺は最低限水着と財布と携帯持ってくるから待ってろ」

 

 俺はそう言って自室に戻った。

 

 海行くなら最低限それだけは必要だろう。

 

 しかし、いきなりなんだよ…少し早めに教えてくれれば俺だって十分な支度が出来たものを…

 

優也「終わったぞ!で、どこの海行くんだ?」

 

真依「私の別荘のプライベートビーチよ」

 

 プライベートビーチ?もしかしてもしかしなくても

 

優也「白波さんって良いとこのお嬢さん?」

 

真依「そこそこね…」

 

悠真「真依先輩!さすがっす!」

 

 いやいや、白波さんがすごいんじゃなくて両親がすごいんだと思うけど。

 

結羽「優也と海…えへへ」

 

 約一名自分の世界に入っている。

 

 なぜだか知らないけど結羽が嬉しそうだと俺まで嬉しくなる。

 

優也「で、どうやって行くの?」

 

真依「電車で二駅進んで乗り換えて三駅進んでバスに乗って行く感じかな」

 

 結構遠いな…

 

真依「今日はそこで泊まるつもりだけど男子は私たちに手を出さないでね!」

 

優也「出しません!」

 

結羽「て、手を…///で、でも…優也なら良いかなって…///」ボソッ

 

 結羽が何かを唱え始めた!まずいよ!その話題で精神に異常をきたしている人が居るんですが!

 

優也「大丈夫か?顔赤いけど」

 

結羽「だ!大丈夫!」(じゃないかも…)

 

真依「じゃあ出発するよ!」

 

 そして、歩いて駅まで行き、電車に乗った。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

席配置

 

  窓

悠   結

真   優

 通路

 

結羽「おー!見渡す限り地平線が広がってる!スゴい!景色良いね!」

 

 結羽は電車から見る景色に大興奮のご様子。

 

 はしゃいでる姿は見た目通りの姿。

 

優也「まぁここら辺は田舎だしな…」

 

 俺はそう言いながらさっき電車に乗る前に買ったコーヒーを飲む。

 

悠真「そう言えば田舎の空気って綺麗って良く聞くよな!心なしか空気も美味しいし」

 

優也「田舎には空気を汚すものがあまり無いからだと思うぞ」

 

真依「そうだね!じゃあそろそろお昼だしご飯食べましょうか」

 

 気がつけばもうそんな時間だった。

 

 悠真と白波さんは弁当を広げてるけど俺は次の駅で駅弁買おうかな?

 

結羽「ゆ、優也…その…作りすぎたから」

 

 そう言って一緒に食べようと誘ってきた。え?なにこの超絶展開…理解が追い付きません!

 

 おまけに悠真と白波さんはニヤニヤこちらを見ているし…

 

結羽「いや…かな?」

 

優也「いや、そんなこと無いよ!ありがたくいただくな」

 

 そして箸を受け取る…訳では無かった…

 

結羽「あ、あーん///」

 

 唐揚げを箸でつまんで差し出してきた。

 

 まるで体育祭の時の俺と結羽が入れ替わったみたいだ。

 

優也「あーん」

 

 そして俺は唐揚げを頬張る。

 

 うん!美味しい!

 

 サクサクとした衣を噛んだ瞬間、肉汁が出てきて、その肉汁もしつこくない程よい甘み、ジューシーでいて衣はサクサク!最高だ!

 

 俺はこんなに美味しい唐揚げは食べたことが無いと自信を持って言えるレベルの美味しさだ。

 

結羽「ど、どう?///」

 

優也「うん!うまい!こんなうまい唐揚げ初めて食べたよ!」

 

結羽「本当に!」

 

 すごく結羽は嬉しそうだ。

 

 なんで結羽が喜んで居るのだろうか?

 

優也「それより、はい!あーん」

 

 俺はお返しのあーんをしようと結羽から箸を取って唐揚げをつまんで差し出した。

 

結羽「ふぇっ!ふぇー!///」

 

悠真『それ食べたら関節キスだね』

 

結羽「はわわ///」

 

真依『ラブラブね』

 

結羽「ラブっ!///」

 

 3人で何を話してるんだろうか?

 

 結羽が最後大声で言った言葉も気になるな…

 

優也「結羽」

 

 そして俺は結羽の方をポンポンと叩いた。

 

結羽「え?ムグッ!」

 

 俺は結羽がこっちを向いた瞬間不意打ちで唐揚げを口の中に入れた。

 

結羽「な、何するの!…あ!///」

 

優也「あ、本当に赤いけど大丈夫?」

 

 そして俺は結羽の額に自分の額をくっつけた。

 

結羽「えっ!ええっ!」

 

優也「熱は無さそうかな」

 

 そしたら、プシューと言う音と共に結羽が倒れた。

 

真依「そろそろ乗り換えだから結羽を連れて乗り換えしてね」

 

優也「分かりました」

 

 そしたら、丁度乗り換える駅に着いて電車が止まった。

 

優也「しょうがねーな」

 

 そして俺は結羽をお姫様だっこして電車を降りた。




 はい!第9話終了

 今回は一本目の電車まででしたが、次回は海に着く予定です(必ずとは言っていない)

 優也さんが天然過ぎて結羽さんのライフが尽きたみたいですね。

 それでは今回はここまで!

 次回もよろしくお願いします!

 ではでは!

 さようなら!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第10話 別荘とプライベートビーチ

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回で海に到着します!

 にぶい優也さんと乙女になる結羽さんに注目です!

 それでは本編行きましょう!

 では!

 第10話スタート


 俺達は今、乗り換えをして二台目の電車に乗っていた。

 

席配置

 

  窓

真   優

悠   結

 通路

 

 相変わらず俺の隣で気を失って居る結羽が俺の肩にもたれ掛かっていた。

 

 しかし、なぜ急に倒れたのだろう?謎である。

 

 結羽は一緒に弁当を食べている時に急に顔を赤くして倒れたのだ。

 

優也「しかし、本当にのどかな景色だな」

 

真依「まぁ伊真舞市から比べたらかなり田舎だからね」

 

悠真「優也、隣に気を失って肩にもたれ掛かっている子が居るんだぞ?言いたいこと、分かるよな!」

 

 なにいってるの?わかんねーよ!

 

悠真「はぁ…これだからにぶちんは」

 

優也「俺はにぶちんとかラノベ主人公ってのにつっこみ飽きたんで放棄します」

 

真依「でも、ラブラブだよね?あーんをしあったり隣に座ったり」

 

優也「それは、お前らが仕向けたからだろ!あーんの所は何も言えないです」

 

 くそ!こいつら楽しんでいやがる!

 

 俺達がこんな会話をしていても結羽は全く目を覚ます気配が無い。

 

 元はと言うとこいつらが仕向けたせいでこのような状況になっているのである。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

回想

 

悠真「やっと電車来たな!」

 

真依「乗るわよ!」

 

 ダダダダ

 

優也「走ったら転びますよ!」

 

結羽「落ち着いて行きましょうよ」

 

 そんな俺達の忠告を無視して悠真と白波さんは急いで電車に乗っていった。

 

 そして、俺達が着いたらもうすでに

 

  窓

悠   〇

真   〇

 通路

 

 の、順番に座って居た。

 

優也「俺達は強制で隣かよ!」

 

結羽「優也!私窓側が良いな!」

 

 結羽がそう言ってきたので俺は結羽に窓側の席を譲って通路側に座った。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 と言うのが真相だ。

 

 つまり、はめられたと言う事だ。

 

悠真「しかし、まだ起きないな…」

 

《まもなく広井瀬(ひろいせ)…広井瀬…》

 

 もうすぐ降りてバスに乗り換えか

 

 その時

 

結羽「う、うーん」

 

 結羽が目を覚ました。

 

結羽「え、ええ!」

 

 ものすごく驚いた声を出して急いで俺の肩から頭を避ける。

 

 そして結羽を見るとものすごく真っ赤になっている。

 

結羽「ごめんなさい!私…私…」

 

優也「良いよ!気にしなくて」

 

悠・真(ほとんど優也のせいなんだけどね)

 

優也「それよりもほら!もうすぐバスに乗り換えるから」

 

結羽「分かりました」

 

 そして駅に着いて電車が止まった。

 

優也「ほら!降りるぞ!」

 

結羽「はい!」

 

 その時、俺は心なしか出発前よりも結羽が元気(・・)になっているような気がした。

 

 満面の笑みで嬉しさを最大限アピール(・・・・)しているような感じだ。

 

 結羽の回りだけキラキラ(・・・・)輝いているように見えた。

 

 その笑みに思わずドキッとする。

 

悠真「早く優也降りろよ!後ろがつっかえてるんだ」

 

優也「あ、ああ…ごめん」

 

 俺は悠真の言葉でハッとなり正気に戻って電車から降りる。

 

真依「もしかして結羽ちゃんの満面の笑顔に見いってた?」

 

結羽「え?本当?」

 

 なんか結羽がめちゃくちゃ嬉しそうにこちらに聞いてきた。

 

優也「そ、そそそ、そんなことねーし!少しボーッとしてただけだし!」

 

結羽「そうなんだ…」

 

 そしたら結羽はあからさまに元気を失った。

 

 え?何?俺、ここでどう答えるのが正解だったの?

 

真依「じゃあ次はバスに乗って別荘の最寄(もよ)りのバス停まで行ってそこから歩きね」

 

 そして俺達はバスに乗った。

 

真依「本当にすぐのバス停だからすぐ着くわよ」

 

《次は五十嵐…五十嵐…お降りの肩はボタンを押してください》

 

優也「五十嵐?」

 

真依「五十嵐町よ」

 

 って本当にすぐだったな!会話する隙すら無かったよ。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

真依「じゃあここからは歩きよ」

 

 俺達はバスを降りてから森を歩いていた。

 

真依「もうすぐよ」

 

優也「もうすぐって言ってからどれだけ歩いたと思ってるんですか!」

 

 この生徒会長は登山家が頂上がもうすぐだって言うのと同じようにこの生徒会長のもうすぐも宛にならないらしい。

 

 でも確かに(かす)かな塩の香りがする。

 

 あと少しと言うのは本当らしい。

 

結羽「あ!見えてきた!」

 

悠真「海だ!綺麗な水平線が見える!」

 

優也「海なんて来たのは久しぶりだ!」

 

真依「じゃあ皆!着替えて海で遊ぶわよ!」

 

[おー!]

 

 俺と悠真は先に着替え終わって二人を待っていた。

 

真依「優也君!」

 

優也「何ですか!」

 

真依「結羽ちゃん、将来性はあるわよ!良かったわね?」

 

優也「何が『良かったわね?』ですか?何が!」

 

 そう俺が少しキツい口調でそう言ってると暗い表情の結羽がやって来た。

 

結羽「(けが)された…私…(よご)されちゃったよ…どうしよう…私…もうお嫁に行けない」

 

優也「何が合ったんだ!?」

 

真依「ひ み つ(・ ・ ・)

 

 いや、本当に何が合ったんだよ…結羽があそこまで人生のどん底みたいな顔をしてるのは初めて見たぞ!

 

 ってか、何があったかに気が向いてたけど、結羽の水着姿可愛い…これはヤバイ。

 

 露出が多い!

 

悠真「お、おーい!優也さーん!生きてますか?ダメだこりゃ…」

 

真依「完全に意識が結羽に向いてるわね」

 

結羽「あ、あまりじろじろ見られると恥ずかしいんですけど…」

 

優也「あ、ごめん!」

 

 俺は我に帰って直ぐ様結羽から目をそらす。

 

真依「じゃあ遊ぶわよ」

 

 そしてみんなで一斉に海へ飛び込む…訳では無かった…

 

優也「結羽?こっち来ないのか?」

 

結羽「あの…私…泳げないので」

 

 そう来たか…泳げないのか。

 

優也「じゃあ泳ぎ方教えてやるからこっち来てくれ!」

 

結羽「はい!」

 

 声色(こわいろ)から嬉しいと言う感情が染々と伝わってくる。

 

悠真「なんだかんだ言ってラブラブじゃねーか」

 

優也「ばた足はこうだ!つかんでてやるからやってみてくれ」

 

真依「そうね、かなり微笑(ほほえ)ましい感じになってるわね」

 

結羽「難しいですね」

 

悠真(俺達もあいつらみたいに…)

 

 俺達が泳ぎの練習をしている間にあちらは良い雰囲気になってる。

 

 彼女かぁ…

 

 『恋愛の一つや二つ経験してみてほしい』『父さんは、優也の本当の幸せを願ってるからな』

 

優也「恋愛…幸せ…か」

 

 以前の俺ならばそんなものは二の次だ!って言ってすぐに切り捨ててたんだが…どうしたもんかね?これが性格が丸くなったって奴か?

 

 簡単に切り捨てれなくなっていやがる。

 

結羽「どうしたの?」

 

優也「結羽、もしも俺がお前に告白(・・)したらどうする?」

 

結羽「な、ななな、にゃにいきなり!」

 

 今、盛大に噛んだな。

 

結羽「そ、それは嬉しいけど心の準備が…でももし告白されたら断れないかも」ボソッ

 

 なんだか、赤くなり、ぶつぶつと呟き始めた。

 

優也「ん?何だって?」

 

結羽「~~~~ッ!」

 

 そうして、結羽は今までで一番大きい声でこう叫んだ。

 

結羽「バカ~~~~!」

 

 そして、別荘に帰って行った。

 

優也「耳が!耳がつぶれる!」

 

悠真「あの二人は相変わらずですね」苦笑い

 

真依「そうだね…中々進展しないね」苦笑い

 

優也「なんなんだ?一体?」

 

悠真「安心しろ!お前には到底理解できないことだ」

 

 なにそれ!すっごく気になるんだけど!

 

 そんなこんなで別荘に帰った。




 はい!第10話終了

 なんだかんだで3話もこの話続きます。

 次回で、たぶん終わると思います!

 それでは今回はここまで!

 次回もよろしくお願いします!

 ではでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第11話 運っていったい…

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回で海編終了です!

 さて!あのあとどうなったのか?

 それでは本編行きましょう!

 では!

 第11話スタート


 俺達は今、白波さんの別荘に帰ってきていた。

 

 結羽はあのあと事前に決めた結羽の部屋から出てこない。

 

 本当にどうしたんだろうか?

 

悠真「お前…結羽に何かしたか?」

 

優也「してないッ! と、思う…」

 

 俺は特に嫌がられることをしたつもりは無いんだがな…

 

真依「じゃあ何か話した?」

 

優也「あッ、それなら、『俺がお前に告白したらどうする?』って聞きましたけど」

 

 すると二人は急になるほどって言う顔になった。

 

 すべてが繋がったらしい。

 

悠真『しかし、あれだけの反応を見せといて気付かないとは…これは手強(てごわ)いですな』

 

真依『そうね…ここまでだとは予想外だわ…』

 

 なぜか二人で耳打ちし始めた。

 

 何の相談をしているんだろうか?

 

悠真「よしわかったぞ!今回のは完全にお前が悪い!」

 

優也「何で!」

 

真依「そうね…あなたが悪いのだから、あなたが解決するのが(すじ)ってものじゃ無いかしら?」

 

 確かに…俺には思い当たる(ふし)が無いけど二人が言うならそうだ。

 

 もしも俺が起こした問題ならば、かなりド正論(・・・)だ。

 

 あと、これじゃあ折角の夏休みのイベントが楽しめないしな。

 

 これは結羽の為(・・・・)にやるんじゃなくて俺自信(・・・)の為にやるんだ。

 

優也「わーったよ!ちょっくら行ってくる!」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 結羽の部屋の前に着いた。

 

 ドキドキする。

 

優也「だがここで踏み留まってはダメだ!男優也尋常に参る!」

 

 ガチャッ

 

 そして扉があ~~~~かない。

 

優也「なん…だと」

 

 これがRPGとかだと『扉は固く閉ざされている』と言う状態か!

 

 ドアノブが一切ピクリともしない。

 

 これじゃあ俺の決意やらドキドキやらが全て意味が無かったじゃねーか!

 

真依「ちょっとごめんね優也君!この扉はこのボタンを押しながらじゃなきゃ開かないよ」

 

 と、白波さんが助言をしていった。

 

 って、何でこんなところに都合良く白波さんが居るんだ?

 

 まぁ結果的には助かったから良いけどなんか…嫌な予感(・・・・)がする。

 

 まぁ良いか…、今は結羽の問題を解決するのが先だ。

 

優也「入るぞ…」

 

結羽「え?ちょっ!」

 

 しかし問答無用で中に入る。

 

優也「どうしたんだ?急に走って戻ってきて…」

 

結羽「ぅ~~~~ッ! それは…」

 

 かぁぁ~~~~っとあかくなってるのが暗くても良くわかる。

 

 元々結羽の肌が白いため赤くなると分かりやすい。

 

結羽「優也が重要な話を聞いていないから!」

 

優也「重要な話を聞いていなかったのは悪かったけど、それは結羽の声が小さいから!」

 

結羽「小さいのは分かったけど…」

 

 そして、結羽はうつむきながら目をそらしてこう言った。

 

結羽「恥ずかしいから…~~~~ッ!」

 

 小さくても頑張って声を出したんだと分かる声だった。

 

 その言葉を言い終わったら更に結羽が顔を赤くした。

 

 まるで熱でもあるんじゃいかって位、顔が耳まで赤くなって、恥ずかしいのか人差し指を合わせてモジモジしている。

 

 その時

 

「はーい!ちゅうもーく!」

 

 後ろからそんな声がかけられて俺と結羽は一斉にそちらを向く。

 

優也「白波さん!なぜそこに!」

 

真依「こーれなんだ?」

 

 そして白波さんは手に持っている物を見せてきた。

 

優也「それは鍵じゃないですか!」

 

 嫌な予感がする。

 

真依「これはこの部屋の鍵なの!そして中からでは開けられない扉になってるの!」

 

 その瞬間俺の嫌な予感は確信へと変わった。

 

優也「まてッ!」

 

真依「食事の時には開けるから!」

 

 バンッ!カチャッ

 

 嫌な音が聞こえた。

 

 顔が青ざめていく。

 

 そして俺は扉に近づいてドアノブを捻る。

 

 カチャッ、カチャカチャカチャ

 

 しかし、どんなに頑張っても開かない。

 

優也「鍵かけられた…」

 

結羽「ええ~ッ! どうするんですか!」

 

優也「まぁ飯の時間には開けてくれるらしいしそれまで辛抱だな」

 

結羽「そ、そんなぁ~…」

 

 明らかにしょんぼりした声を結羽は出した。

 

 そんなに俺と二人きりが嫌なのかなぁ? 

 

結羽(ゆ、優也と二人きり!う、嬉しいけど、き、緊張する!)

 

優也「そんなに俺と二人きりが嫌なのか?」

 

結羽「ち、ちがっ!」

 

優也「じゃあ、二人きりが嬉しいのか?」

 

結羽「そ、それは…、ぅぅ~~~~ッ!」

 

 更に結羽はかぁぁ~~~~っと赤くなって今にも爆発しそうだ。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

一方その頃

 

真依「ここまで計画通りに行くとは!」

 

悠真「ナイスです!真依先輩!」

 

 二人は真依の立てた計画に基づき、優也と結羽を二人きりにしたのだ。

 

 しかし、ひとつだけ予想外の事が合った!それは

 

真依「優也君がまさか扉の開け方を知らないとは…」

 

悠真「予想外ですね…」

 

真依「でもうまく言ったからもしかしたら…」

 

 暗い部屋…その中に男女二人…幾らにぶい優也と言えども

 

真依「なにもないはずがない!」

 

悠真「もしかしたら今頃、うっふんな展開になってるかも!」

 

 ※彼らはまだ15歳です。

 

真依「そろそろご飯にするから様子を見に行きましょうか」

 

悠真「はい!」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

結羽の部屋の前

 

真依「着いたわ!少し声を聞いてみましょう」

 

「~~~~ッ!」「あ!ちょっと!」「はぁはぁ」

 

悠・真「………! これはもう確定的だ!」

 

 この扉の向こうからヤバイ感じが漂ってきている。

 

 二人はワクワクしながら

 

 ガチャッ

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

真依「ふ、二人とも!なにやってるの~まだ早いわよ!」

 

悠真「ずるいぞ!一人で大人の階段上りやがって!」

 

 主犯の二人が扉を開けて入ってきた。

 

 大人の階段?

 

優也「悠真…お前なになってんだ?ってやめろ!結羽!暴れんな!」

 

結羽「だってぇ~」

 

 うるうるした瞳でこちらを見つめてくる。

 

 はっきり言って…可愛い。

 

悠真「? つまりこうか? 優也が結羽に質問を投げ掛けている内に結羽が羞恥(しうち)に耐えきれなくなり、暴走して暴れていたと…そう言う事か?」

 

優也「まぁそうだな」

 

 なぜか嬉しそうな声色(こわいろ)で入ってきたと思ったらなぜか急にしょんぼりしだした…こいつら一体なんなんだ。

 

悠真「でも優也!それって男としてどうなんだ!」

 

 なにがだよ!

 

悠真「男女、暗いところで二人きり(・・・・)だぞ!」

 

優也「だから強調するな!」

 

 全く…俺にはそんな気は一切無いんだ…無意味な事をしやがって…

 

 ったく…

 

結羽「~~~~ッ…私は良いよ?」

 

優也「何が良いんだ!あと、モジモジするな!」

 

 何結羽までこの話にのってんだ!

 

 結羽までボケに回ったら俺が死ぬ!

 

 ってかこいつ天然な所あるからな

 ※優也も人の事、言えないくらいの天然です。

 

結羽「もういい!諦めたから!」

 

 何を諦めるんだ?

 

優也「簡単に諦めない方が良いぞ!」

 

結羽「優也…私、好きな人…居るんだよね」

 

 そっか…

 

優也「良かったな!」

 

 誰だって恋はする…だから良いはずなんだが…

 

 何だろうか?この感情は…心が締め付けられるように痛い。

 

優也「じゃあ頑張れよ!じゃあ飯行くか!」

 

結羽「ッ!」

 

 ドンドンドン

 

 結羽が床を足で蹴っている。

 

 何をそこまで怒っているのだろうか?

 

 意味不明である。

 

 俺には一生理解出来ないな。

 

優也「ほらっ!行くぞ!」

 

結羽「あ!ちょっ…えへへ」

 

 なんか急に嬉しそうな声を出す結羽

 

 すごく感情の凹凸が激しいです。

 

 こいつのキレるラインと嬉しくなるラインが分からない…

 

 俺は大抵相手が何をしたら嬉しいか怒るか、言動で分かるんだが…結羽だけは分からない…

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 今回はBBQ(バーベキュー)をするらしい…

 

 それにしても…

 

優也「なんだ?この肉の塊は」

 

悠真「え?焼くんだよ?」

 

結羽「このままだとうまく火が通らないから切るよ」

 

 やはり、ここは料理上手の結羽が率先して指揮をするらしい。

 

 じゃあ俺も久しぶりに…

 

優也「俺も手伝うよ」

 

 そして俺も台所に立って、肉を手に取る。

 

真依「それにしても、優也君まで料理出来たとはね…」

 

悠真「あいつの料理は死ぬほど旨いですよ!普段はめんどくさがって作らないですけど」

 

 そう言えば二人で台所に立ってるんだ!

 

 なんか、夫婦みたいだ。

 

 それは結羽も思ってるらしく顔を真っ赤にさせている。

 

 でも、結羽には好きな人が居るんだよな。

 

結羽「優也、手際良いね!まさか料理が出来るとは!」

 

優也「普段はめんどくさいからやんないけどね」

 

 料理はめんどい…正直、カップ麺とかで良いと思っている。

 

 しかし、俺と結羽以外料理が出来ないとは…

 

 白波さんも出来ないとは思わなかったよ。

 

結羽「優也は妹が居たんだったよね?」

 

優也「そうだな」

 

結羽「目を覚ましてほしい?」

 

優也「当然だ」

 

 俺は今までそれだけを目標にして勉強に尽くしてきた。

 

 他の人には散々シスコンと言われたが俺はそれでもめげなかった。

 

優也「はぁ…俺って運が悪いよな…」

 

 じゃんけんで勝てない特殊能力でもあるんじゃないかって言うくらい勝てないし、運ゲーなんて、1つしか無い外れにしか行かないし…嫌になる。

 

結羽「そ、そんなに気を落とさないで!運なんて無くても生きていけるから!」

 

 まぁ結羽がそう言うならもう少しポジティブに生きようかな?

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

悠真「ふぅ…食ったし、あれを!」

 

真依「ジャーン!花火!」

 

 白波さんは花火を取り出した。

 

結羽「花火ですか?やりたいです!」

 

優也「まぁ良いかもな」

 

 そして全員で閃光花火を取り出して火を着ける。

 

 カチッ

 

 ライターで火を着ける。

 

 ポト

 

優也「…」

 

優也以外「…」

 

優也「死にたい…」

 

 もうやだ!この人生!開始ゼロ秒で落ちるとは!落ちる速さ選手権で優勝出来んじゃねーのか?

 

 ついに閃光花火を一瞬にして終わらせる能力でも身に付いたか!

 

 なんだよその能力!要らねー!

 

結羽「優也…き、気を落とさないで!もう一度やってみな?」

 

 カチッ

 

 ライターで火を着ける。

 

 ポト

 

 やはり落ちる。

 

優也「うわー!」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 俺の運の悪さが証明された旅行ももうすぐ終わり。

 

悠真「き、聞いてくれよ!優也と俺は同じ部屋なんだが、夜間ずっとブツブツ呟いていて寝れなかったんだけど!」

 

結羽「あれは優也にとってトラウマになったんだろうね…」

 

優也「俺の運…あれ?運ってなんだっけ?そもそも運って」

 

真依「なるほど!これは重症ね」

 

悠真「ずっとあの調子なんだよ!」

 

 もうすでに俺以外は集まっていたようだ。

 

 今回の旅は俺にトラウマが増えました…

 

 そして帰ったんだが。

 

 残りの3人に同情の視線を向けられました。




 はい!第11話終了

 さすがに優也さんが可愛そう…

 次回も夏休みですのでそれにちなんだ話を書きます!

 それと今回はいつもの倍の文字数です。

 それでは今回はここまで!

 次回もよろしくお願いします!

 ではでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第12話 夏祭り

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回は夏祭りです!

 それでは本編行きましょう!

 では!

 第12話スタート


 俺はあのトラウマ旅行のあとはやはり部屋に籠って勉強していた。

 

 運試し…う、頭が…

 

優也「そろそろ祭りの時期だな…」

 

 そう、祭りの時期、夏と言えば夏祭りだ!

 

 夏祭り…カップル…う、頭が…

 

優也「そう言えば結羽のやつ…『私…好きな人が居るんです』って言ってたよな…誰なのだろうか?気になる」

 

 あいつの事は何とも思っていないはずなのに…なぜか気になってしまう。

 

 胸が締め付けられるように痛いし

 

優也「風邪かな?」

 

 もしかしたらずっと夜風に当たっていたせいで風邪でもひいたのかもしれない。

 

 まぁ俺の記憶は結羽に好きな人が居たこととトラウマの事で頭が支配されている。

 

 その時

 

 ピンポーン

 

 俺の家のチャイムがなった。

 

 そして、俺は扉を開けてこう言った。

 

優也「帰れ!」

 

結羽「ッ!分かりました…失礼しました…」

 

 そして結羽は扉を閉めようとした。

 

 そこを強引に扉をつかんで止める。

 

優也「まてまて!すまん!で、何の用だ?」

 

 思わず悠真達かと思って『帰れ!』と言ってしまった…

 

 でも、仕方ないと思うんだよ!

 

 だって普段から良い思いが無いやつらだぜ?

 

結羽「あの…私たちだけ(・・・・・)でお祭り行きませんか?」

 

 妙に『私たちだけ』と言う部分を強調した喋り方で誘ってきた。

 

 もちろん結羽ならば大歓迎な訳で

 

優也「分かった!いつなんだ?」

 

結羽「えっと…今週末の日曜日です!夜5時位で」

 

 日曜日か

 

優也「分かった!」

 

結羽「私が向かえに行きますね!」

 

優也「ああ、よろしく」

 

結羽「はい!よろしくお願いします!」

 

 すっごくキラキラとした表情で嬉しそうに行ってくるもんだからこっちまで嬉しくなると同時にドキッとする。

 

 俺だって~?男の子だし~?可愛い子の笑顔を見たらドキッとしたりはしますよ~?

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

日曜日

 

 あれ?浴衣とか準備した方がよかったのかな?

 

 そう言うの全然(うと)くて分からないんだけど…ついこないだまで友達一人も居なかった俺が女の子と祭りに行くことになろうとは!

 

 その時

 

 ピンポーン

 

 どうやら結羽が来たようだ。

 

優也「はーい」

 

 そして扉を開けた先に写ったのは…

 

 浴衣に身を包んで髪を珍しくまとめている天使だった。

 

 これを可愛いと思わない男子はどうかしている!

 

結羽「こ、こんばんは!優也」

 

優也「か、可愛い…」

 

結羽「? いま何て言いましたか?もう一度お願いします!」

 

 危ない…言葉に出ていたみたいだ…

 

 声が小さくて良かった!

 

 絶対聞こえてたら変な目で見られる所だった。

 

優也「いや、何でもない!じゃあ行くか!」

 

 そして物を取りに戻ろうとしたら

 

結羽「待って」

 

 と、言われた。

 

結羽「ど、どう?」

 

優也「どう?って?」

 

 何にたいしての問いなのだろうか?

 

結羽「だ、だからぁ~~~~ッ!」

 

 結羽の顔が一瞬にして真っ赤になった。

 

優也「あ!もしかして、浴衣の事か?それならすごく似合ってるぞ!」

 

結羽「本当?」

 

 今度はものすごく嬉しそうだ。

 

優也「ああ!じゃあそろそろ行こうぜ!」

 

結羽「うん!」

 

 すごく可愛い…やっぱり女の子は笑顔が一番だよな!

 

 そして財布と携帯を持って結羽とお祭り会場に向かった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

結羽「おー!賑わってますね!」

 

優也「早速回ろうぜ!」

 

 そうして歩こうとした瞬間、後ろから服を引っ張られた。

 

優也「どうしたんだ?」

 

 ってか、ラブコメのヒロインしかやらないと思っていた仕草を実際やられてみたらドキッとするもんだな。

 

結羽「あそこに、浴衣のレンタルがある」

 

 そう言って1つのお店を指差す。

 

 確かにお店には高々と『浴衣レンタル』と書いてある。

 

結羽「見てみたい」

 

 少し、結羽は顔を赤くしてうるうると期待した表情を向けてくる。

 

 時間が経てば経つほど結羽は顔を紅潮(こうちょう)させたままジリジリとよってくる。

 

 まぁ俺には断る理由もないので、

 

優也「良いぞ」

 

 承諾した。

 

結羽「やったー!」

 

 俺が俺が承諾した瞬間、結羽は表情をパァ~ッ!と明るくさせて喜びだした。

 

 無邪気にはしゃぐ姿は子供の見た目そのままなんだけどな…

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

優也「来てきたぞー!」

 

 俺は浴衣を来てきたので今度こそ見て回ろうと結羽を探す。

 

結羽「あ!優也!」

 

 その時以外と近くから結羽の声が聞こえた。

 

 そして隣を見るとそこに結羽が居た。

 

優也「ここに居たのか!…じゃあそろそろ見て回るか」

 

 そしたら、結羽が浴衣の袖をクイクイと引っ張ってきた。

 

 そして俺が結羽の方を見るとなぜか結羽が耳元によってきて、

 

結羽『似合ってます…』

 

 と、(ささや)いてきた。

 

 俺は思わずドキッと心臓が高鳴り、心拍数がドクドクドクと上がる。

 

 心臓の音がうるさい。

 

 もしかしたら結羽に聞こえてしまうかもしれない。

 

 なんぼ彼女は要らないとは言っても、可愛い女の子には可愛いと思うし、ドキッともする。

 

 女の子にたいして何の反応もしないと言う事は無い。

 

結羽「じゃあ行きましょう?優也!」

 

 そして俺の手を引いていく。

 

 俺たちの事を周りはどう見えてるのだろうか?

 

 仲の良い兄弟?いや…それ以上に見られている可能性があるな…

 

結羽「それにしても妹さんのためにこんな楽しいイベントを全部すっぽかすなんて…も、もしかして!シスコン?」

 

優也「俺はシスコンじゃなーい!」

 

 俺は咄嗟に叫んでしまった。

 

 叫んでしまったあとに気がつく…周りに人が沢山いらっしゃることを

 

 こんなところで何て事を叫んでんだ!俺は!

 

 ザワザワ

 

 周りが騒がしくなる。

 

結羽「先、行きましょう?」

 

優也「そう…だな」

 

 そして俺達は逃げるようにその場を後にした。

 

 あのままだと羞恥心で死にそうだった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

悠真「うーん、うまいな」

 

 今、悠真達はお祭り会場に来ていてたこ焼きを食べていた。

 

真依「そうね…それにしても、優也君と結羽ちゃんを誘わなくて良かったの?」

 

 真依はお祭り会場に来てからもその二人を誘わなかったことだけが気掛かりだった。

 

悠真「今回、優也を誘っても追い返されると思いました」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

数日前

 

優也「帰れ!」

 

結羽「ッ!分かりました…失礼しました…」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 確かに追い返す気満々だった様だ。

 

真依「でも結羽ちゃんは?」

 

 結羽はどんなことでも快く(こころよ)承諾してれるため断るとは考えにくいのだ。

 

悠真「結羽なら、この会場に来てます!」

 

真依「え?でも呼んでいないんだよね?」

 

 そう、結羽は呼んでいないのだ。それなのに来ている物なのか?

 

悠真「あと、優也もね」

 

 優也も来ていると豪語(ごうご)する悠真の自信は何処から来るのだろうか?

 

悠真「お!居た!あそこです!」

 

真依「本当だ!」

 

悠真「尾行ですね」

 

真依「お主も悪どいことを考えますなぁ」

 

 そして尾行しだした。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

結羽「これやりたい!」

 

 俺は今、結羽と射的の店に居た。

 

優也「じゃあ、ほら!」

 

 俺は代金を出した。

 

結羽「良いのに!」

 

優也「こういうのは男が率先して払う物だ」

 

 そう言うとじゃあありがとうございますと言って銃を構える。

 

 パンッ!

 

 と言う音がなってコルクが発射される。

 

 しかしそのコルクは当たらなかった。

 

結羽「むぅ~~~~」

 

 あまりにも可愛そうな表情をしていたもんだから俺は

 

優也「おっちゃん!俺も1回!」

 

 そしてコルク銃を構えて

 

優也「結羽、ほしいやつはなんだ?」

 

結羽「あのネックレスがほしいなって」

 

 そしてその要望を聞いて構え直す。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

真依「彼、射的の腕はどうなの?」

 

 かっこつけて優也は取ってやるつもりみたいだがその腕が真依の気掛かりだった。

 

悠真「まぁ見てて下さい!」

 

 そして悠真は少し含みのある言い方をした。

 

真依「あら、気になるわね!お手並み拝見と行きましょうか」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 パンッ!

 

 俺が射つと丁度ネックレスがかかってある箱に当たって落ちた。

 

優也「はい!結羽、プレゼントだ!」

 

 そして俺はおっちゃんから受け取ったネックレスを渡す。

 

結羽「…さい」

 

優也「ん?なんだって?」

 

 小さすぎて聞き取れなかった。

 

結羽「~~~~ッ! つけて……ください」

 

 なるほど!今、こう言ったのか!

 

 まぁそれくらいなら…

 

優也「分かった!」

 

 そして後ろに回って前から回してネックレスを着ける。

 

 って、なんか、良い匂いがする。

 

 これが女の子特有の匂いってやつか?

 

 そう考えるとドキドキする。

 

優也「は、はい!出来たぞ!」

 

結羽「ありがとう!」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

悠真「優也イケメンだし、大抵の女の子は今ので惚れそうだな」

 

真依「そうね、男の子から女の子にプレゼントなんて良いじゃないの!ロマンチックよ!」

 

 二人は今のプレゼント現場を見て凄く興奮してる。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

優也「そろそろ飯にしようぜ!」

 

結羽「うん!」

 

 そして、俺は焼きそばを結羽はたこ焼きを買った。

 

「「いただきます!」」

 

 パクッ

 

 うーん…

 

 俺、個人の意見かも知れないが、お祭りの出店の料理ってイマイチの様な気がする。

 

 でもまぁ結羽が幸せそうに食べてるから俺は良いけどな。

 

優也「結羽!ほっぺたにソースついてるぞ!」

 

 そして俺はティッシュを取り出して結羽の口元を拭く。

 

結羽「ありがとう!」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

悠真「惜しい!あれが米粒ならば!」

 

真依「ならば?」

 

悠真「ついてるよ!パクッができたと言うのに!」

 

真依「確かに!」

 

 こちらは相変わらずである。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

優也「色々遊んだし、帰るか!」

 

 そして帰ろうとして振り返ったとき

 

悠・真「うわー!」

 

 バランスを崩した二人が物陰から倒れてきた。

 

優也「二人とも~?ずっと尾行をしていたのかな?」

 

悠真「ご、ごめんなさい!」

 

真依「すみませんでした!」

 

 ったく、二人はすぐ尾行をするからな…

 

優也「まぁ今日は機嫌が良いからここまでにしてやる!」

 

 そんな言葉にたいして二人は唖然としていた。

 

優也「帰るぞ、結羽!」

 

 そして俺は二人が色々言っているのを無視して帰った。




 はい!第12話終了!

 これで夏休み編終了です!

 次回から二学期です!

 それでは今回はここまで!

 次回もよろしくお願いします!

 ではでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

1年生編 二学期
第13話 修羅場


 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回から二学期です!

 それでは本編行きましょう!

 では!

 第13話スタート


 あれから数日が過ぎてついに今日、二学期が始まろうとしている。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 今、俺は登校している訳なんだが、ここを歩くと色々思い出すな…

 

 結羽と出会ってから色々と変わったんだよな…

 

結羽「あ!優也!」

 

 っと噂をすればなんとやら、結羽がやって来た。

 

結羽「優也は生徒会入るの?」

 

優也「入りたくないな…」

 

 そんなことを話ながら登校していた。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

春海「では、夏休み明けテストを開始します!」

 

 そして、テストが始まった。

 

 一時間目、二時間目と続いていき、ついに、四時間目が終わって昼休みに入った。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

昼休み

 

真依「やあ!」

 

優也「なんですか!いきなり!」

 

 突然現れる生徒会長には何度驚かされたことやら…

 

 しかし、俺に何の用だろうか?

 

真依「優也君!生徒会に

優也「お断りします」

 

真依「即答!?」

 

 あったり前だ!俺は元々入る気は無いんだ。

 

真依「まぁいいや!午後のテストもじゃあ頑張ってね!」

 

 それだけ言って白波さんは立ち去る。

 

 その時

 

 背後からゾワゾワとした視線を感じた。

 

 何やら睨まれているようで思わず肩をすぼめてしまう。

 

 ジーーーッ

 

 俺はロボットの様にカクカクしながら後ろを向く。

 

 そこには…

 

結羽「ジーーーッ」

 

 結羽がこちらをキラリと光ったような目でこちらを睨んできた。

 

優也「ゆ、結羽さん? そこで何をしていらっしゃっているんですか?」

 

 俺はそんな物陰でこちらを睨んできている理由が知りたかった。

 

 俺はそんな結羽に睨まれるような事は何一つしていないと思うんだが…

 

結羽「別に~? 優也がどこに行くのかな?ってついていったら浮気現場に直面しただけだし~」

 

 妙に間延びした言い方でそんなことを言ってきた。

 

優也「って、浮気ってなんだ!俺は誰とも付き合ったりなんかしてないぞ!」

 

 そう、俺は誰とも付き合ったりなんかしていないのにそんなことを言ってきた。

 

 あと、尾行している時点でツッコミ所しか無い。

 

 なんでわざわざ尾行なんかしちゃったの?普通に話しかけて来れば良いのに!

 

結羽「……ふーん」

 

 なぜか結羽がじと目でこちらを見てきている。

 

優也「なんだその目は?俺はお前にじと目で見られるような言動をした覚えはないぞ」

 

結羽「……」

 

 するとなぜか無言でこちらを見てきている。

 

結羽「まぁ、別に?優也が誰とも付き合ったりなんかしないって言うなら良いけど~?」

 

 なんか含みのある言葉だな。

 

 結羽は俺の奥さんかよ!

 

 俺は結羽と付き合ったりした記憶も一切無いぞ?

 

優也「まぁ、絶対に誰とも付き合わないって言う確証は無いな」

 

 俺がそう言うと笑顔になった。

 

 ちょっと怖い笑顔だけど…

 

結羽「誰と?……もしかして、私を恋愛対象として

優也「それはない」

 

 俺は即答した。

 

 そしたら

 

 バチン!

 

 なぜか頬を叩かれた。

 

結羽「バカ~~~~ッ!」

 

 そう言って結羽は走って去っていった。

 

 ()つつ…

 

 何もビンタすることは無いだろうに…

 

 しかし、なんでここまで怒るんだよ!

 

優也「あ!もうこんな時間だ!」

 

 そして俺は教室に戻っていった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

次の日

 

 結局あのあとも結羽と一言も話すことが無くて少し怒っているようだった。

 

 いつもの結羽の元気も無かった。

 

春海「今日はまずテストを返却します!」

 

 そして全てのテストが返された。

 

 そしたら1問だけ間違えていた。

 

優也「くだらない凡ミスか…」

 

 そして順位は?

 

 今回もたぶん1…

 

優也「2位ーーーっ!」

 

 そんなバカな!この俺が1問間違えただけで2位に落ちるなんて!

 

 この学校はベスト10までは公表される。

 

 その1位の人の名前を見てみた。

 

 そこにはこう書いていた。

 

 星野 光と書いてあった。

 

 恐らくこれは、星野(ほしの) (ひかり)と読むのだろう。

 

 しかし、今までこんな名前は見たことが無い。

 

 今学期から転校してきたのだろうか?

 

 点数は、やはり満点。

 

優也「これは…まずいな…」

 

 突然のライバルの出現に衝撃を受ける。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

昼休み

 

 廊下に人だかりが出来ていた。

 

 転校生でも居るのだろうか?

 

 そして、その輪の中を見ると、廊下で本を立ち読みしている女の子が居た。

 

 その姿は文学少女さながらの姿だった。

 

 顔立ちはとても整っていて、それでいて清楚(せいそ)さをかもちだしている。

 

 はっきり言って、ドストライクだ。

 

 うちの仲の良い女子には元気でいて色んな表情を見せる奴とか、ドSしか居なかったから麻痺していて余計に良く見えてしまっているのだろう。

 

悠真「おう!優也」

 

 すると、輪の中から悠真が出てきて俺に声をかけてきた。

 

優也「なんだ?」

 

悠真「この子に目を着けるとはお目が高い! この子は今日転校してきたものの既にかなりの有名人になって、今回お前を出し抜いて1位になった星野 光さんだ!っておいおい!何急に掴んできてるんだ!酔う!酔うから!」

 

 俺は悠真の悲鳴でハッとなる。

 

 俺は気付かぬうちに悠真の肩を掴んで前後に揺すっていたようだ。

 

 それも仕方ないと思う。

 

 だってなぜならこいつは

 

 あの女の子の事を星野 光だと言ったのだから。

 

優也「おい!本当にあの子が星野 光なのか!」

 

 俺は更に揺すりながら聞いた。

 

悠真「酔う~~! そ、そうだよ~ッ…うぇ~」

 

 だいぶ酔わせちゃったようだ。

 

 俺は手を離して、もう1回星野さんを見る。

 

優也「凄いな…、この学校に来て一日でこんなに有名になるなんて…」

 

 そして俺はライバルの存在を再確認した。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 俺は今、久しぶりに一人で下校していた。

 

 久しぶりに落ち着いた下校のため普段は見えないような所もちゃんと見える。

 

 朱色の空…公園近くの帰路…

 

 そして、公園のベンチに座る(・・・・・・・・・)文学少女(・・・・)…文学少女?

 

 そして、もう1回見返す。

 

 やはりそこには…

 

 星野 光が居た。

 

優也「あ、あなたは…星野 光さんでしたっけ?」

 

光「……」

 

 しかし、何も帰ってこない。

 

 一瞬、寝てるんじゃないかと勘違いするほど静かに読書をしていた。

 

優也「あ、あの…」

 

光「私とあなたはどんな関係?」

 

優也「え?」

 

 唐突すぎて状況が把握出来ない。

 

 どんなって言われても…そりゃあ…

 

優也「面識はだな」

 

光「なら何?私にナンパ?」

 

 なんでそうなる…

 

 確かに回りから見ればナンパにも見えなくは無い光景だが…

 

 だが、俺は会ってすぐにナンパするような男じゃない。

 

 ましてや、この俺だ。

 

 確かに見てくれはドストライクなんだが…

 

 ちょっと口調はきついよな…

 

優也「いや~少し学年1位が気になったもので…」

 

 これは本当の事だ。

 

 今回話しかけたのも好奇心(こうきしん)から来ているものだ。

 

光「そう…」

 

 かなり()()ないな…

 

 その時

 

「ゆ・う・や…」

 

 後ろから声をかけられた。

 

 かなり嫌な予感がした。

 

 後ろを振り替えるとそこには結羽が居た。

 

結羽「…この女は?」

 

 ものすごくお怒りな表情で冷めた声で言ってきた。

 

優也「今回のテストの1位の星野 光さんです!はい!」

 

 くっそー!なんでこんな俺が浮気が妻にバレた夫みたいな感じになってるんだ!

 

結羽「ふーん…」

 

 って言うか、別に仲良かった訳じゃねーだろ!

 

 なんでそこまでなるんだ!?

 

 結羽の様子もおかしいし、

 

結羽「で、何の話を?」

 

優也「そ、それはこんな話を!」

 

 俺は今までの経緯を説明した。

 

結羽「ごめんなさい!誤解してました!」

 

 俺の言ったことをすぐに信じてくれるのがこいつの良いところだ。

 

 また、怖いなとも思ったりする長所であり短所だ。

 

 って言うか、こいつ、夏休みの頃から段々性格がおかしくなってきてねーか?

 

光「騒がしいんだけど…集中して本を読ませてもくれないの?」

 

 なら、集中したいなら家帰って読めよ…とツッコミたい。

 

 彼女はしゃべってみてやはりと言うか物静かな感じだ…ちょっと口調が強いけど。

 

結羽「分かった!じゃあ帰るね」

 

 純粋だ!

 

 結羽、純粋過ぎんだろ!

 

 たぶん結羽は純粋に捉えて彼女の読書を邪魔しないようにと思ったんだろう。

 

 そこは家帰って読めよって思えよ!

 

結羽「じゃあ帰ろう!」

 

 そして、俺も結羽と同じように家に帰った。




 はい!第13話終了

 今回はだいぶ結羽さんのキャラ崩壊が激しかったですね。

 それでは今回はここまで!

 次回もよろしくお願いします!

 ではでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第14話 忘れられない誕生日~前編~

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回はある人の誕生日です!

 それが誰の誕生日なのかは読んでみて下さい!

 それでは本編行きましょう!

 では!

 第14話スタート


 今、俺と結羽は並んで歩いている。

 

 やはり隣に並んで改めて思ったことがある。

 

優也「やっぱり結羽は夕日に映えるな…」

 

結羽「え?」

 

 まずい!声に出てしまっていた様だ。

 

 今のが聞かれていたら結構まずい!

 

 何がまずいかって?

 

 だってさ!それ聞かれるとじろじろ見ていたと思われるし結羽ならなおさらだ!

 

結羽「何か言いましたか?」

 

 良かった!何とか聞こえていなかったようだ。

 

結羽「そうだ!優也!」

 

優也「ん?なんだ?」

 

 突如として結羽が俺の名前を呼んできた。

 

結羽「こ、これからは女の子と話すときは私を通して話すこと!」

 

 なんで?

 

 なんでこいつに認めてもらわなくちゃ行けないんだ!

 

 会話くらいは自由にさせてくれよ!

 

優也「なんで認めてもらわなくちゃ行けないんだ!」

 

 俺は少し強い口調で言った。

 

結羽「~~~~ッ! 知りません!バカッ!」

 

 なんで罵られるんだ!

 

 いつもいつもバカバカって!

 

優也「結羽…最近おかしいぞ?……何か変なものでも食べたのか?」

 

結羽「はぁ…」

 

 俺が聞くとそうため息をついてきた。

 

 本当におかしい…なぜか最近は顔を赤らめてバカって言ってくることが多くなってきた。

 

 キャラも変わってきているし…以前の優しい系で礼儀正しいキャラはどこに行ったのやら…

 

 なんか最近は前からそうだったようにも見える。

 

 俺も俺でときより俺自身のキャラを忘れてしまう事がある。

 

優也「結羽はさ、なんで最初、俺が無視していたのに何度も声をかけてきたんだ?」

 

 そう、それは俺がじみに気になっていた事である。

 

 あのときは結羽と関わらないように無視していた。 

 

 しかし結羽は何度も声をかけてきたのである。

 

結羽「そ、それは…その……わ、私ね!ゆ、優也の事が…s

悠真「よっす!優也!結羽!まだこんなところに居たのか?って結羽さん?なんでこんなに怒って!痛って!」

 

 結羽はすごく怒って悠真をビンタした。

 

 しかし、なんて言おうとしていたのだろうか?

 

 気になる…

 

優也「結羽?今なんて言おうと?」

 

結羽「知りません!」

 

 おいおい!自分で言おうとしたのに知らないってどういう事だ!

 

 しかし、なんでビンタしたんだ?

 

 しかも結羽は笑顔だけどものすごく怖い…ものすごいプレッシャーをかけてくる。

 

悠真「く、俺としたことがタイミングが悪かったか!」

 

 なんで叩かれてこんなことを言ってんの?

 

 ってか、なんでこいつ、こんな時間まで学校に居たんだろうか?

 

悠真「少し、仕事があってな!」

 

 勝手に人の心を読むな!

 

優也「じゃあ帰ろうか…」

 

 俺は結羽の殺伐(さつばつ)とした空気に耐えかねて逃げるように帰った。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

次の日

 

優也「憂鬱(ゆううつ)だ…」

 

 今だかつてこんなに憂鬱(ゆううつ)になったことはない。

 

 昨日の怖かった結羽の事を思い返す。

 

 まだ怒ってっかな?

 

結羽「あ!優也!おはよう!」

 

 っと、結羽は俺を見つけてすぐにかけよって俺にいつものように挨拶をする。

 

 俺としては昨日の一件があったせいで何か裏があるんじゃないかと(うたぐ)ってしまう。

 

優也「お、おう!おはよう!」

 

結羽「うん!おはよう!一緒に行こう?」

 

 そして、一緒に登校した。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

優也「って事があったんだ!絶対何か裏があると思うんだが!」

 

悠真「お、落ち着け!どうしてそこまで疑ってんだよ!お前は(うたぐ)りすぎだ!ってか、俺に自主的に話しかけてくるなんて珍しいと思ったらそう言うことかよ」

 

 そう、俺は普段は絶対に自主的に話に行かない悠真に相談を持ちかけていた。

 

悠真「今日は誕生日(・・・)だから機嫌が良いんじゃないのか?」

 

優也「え?結羽って今日、誕生日なのか?」

 

 今日が結羽の誕生日だと悠真は言う。

 

 それで機嫌が良いならすべて合点(がってん)がいく。

 

 確かに少し機嫌が良くて前までのキャラが戻ってきている。

 

悠真「ああ、そうだぞ?あ!もしかして彼女にプレゼントか?」

 

優也「は?彼女?誰が誰の?」

 

 どうしてここに来て彼女の話題が出てきたのだろうか?不明である。

 

 俺には彼女が居ないし、誰の話なんだろうか?

 

悠真「はぁ…これは先が長そうだ…」

 

 悠真が俺をやれやれ…と言った顔で見てくる。

 

 何にたいして"先が長そう"と言っているのかは分からないが俺はやれやれ…と(あき)れられるような事をした記憶が無いぞ!

 

 ここはしっかりと指摘せねば。

 

優也「おい!なぜ呆れている!理由を説明してもらおう!」

 

 そしたら悠真がこれだから優也は…って顔になって真剣な目付きでこちらを見てくる。

 

悠真「これに関してはいずれ分かる。そしてこの事は俺の口からじゃなくて本人から言わせた方が良い!と言うことでノーコメントだ!」

 

 いずれっていつのことだよ…と、ツッコミを入れようと思ったが悠真の目が今までに無いくらい真剣だったため、その言葉は飲み込んだ。

 

 俺は悠真に聞きたかったんだけどな……って本人って誰だ?

 

 まぁ今の"覚醒(かくせい)悠真"がいずれ(・・・)分かるって言ってるからたぶんいずれ明かされるのだろう。

 

優也「そう言えばさ、話を戻すけど、結羽ってどんなものが好きだと思う?」

 

 その瞬間、悠真の真剣な表情が崩れて覚醒悠真から通常の悠真へと戻った。

 

 そして、目がキラキラとしてこう言ってきた。

 

悠真「やっぱり、プレゼントか?」

 

 まぁ実際、俺はプレゼントをしようと考えているからここには一切のツッコミを入れない。

 

悠真「あれ?つっこまないのか?いつものお前だったらプレゼントじゃない!って言うはずなんだが…」

 

優也「まぁプレゼントをする気だし、そこは間違っちゃいないからわざわざつっこまないぞ!」

 

 そう言うと、悠真は物足りなさそうな顔をした。

 

 え?こいつってツッコミ待ちなの?そんなにつっこんでほしいの?

 

 いくら俺だって四六時中(しろくじちゅう)ずっとつっこんでる訳じゃねーのに!

 

悠真「ってところで、どんな種類の物をプレゼントしようと考えてるんだ?」

 

 種類か…そう言えば考えていなかったからな…この前お祭りでネックレスをプレゼントしたしな…因みにプライベートでは毎日つけてくれてる見たいです。喜んでもらえて良かった!

 

 じゃなくて、種類は…

 

悠真「なら、お菓子はどうだ?」

 

優也「うーん…それも良いんだけど…俺的には初めて誕生日を祝ってやるわけだし、何か形に残るものが良いんじゃないかと」

 

 女の子は(みな)甘いものが好きだと聞くし、甘いお菓子でも良いんだが、折角だしね、少しは奮発して高いものでも良いかな?って考えてるしね。

 

悠真「じゃあ…ハンカチはどうよ?」

 

優也「あ、良いかもしれないな…」

 

 ハンカチはいい線行ってるかも。

 

 ハンカチはもちろん形に残るし、更には日常的に使うことが出来る。良いかもしれないな。

 

悠真「今回も無難にアクセサリーとか」

 

 アクセサリーか、ネックレスをプレゼントしたから今度は手首につけるやつとかか?

 

悠真「時計とか」

 

優也「なるほど!」

 

 時計も良いかもしれない!

 

 この学校は一応バイトが可能でしようと思ったら出来るんだが、俺はバイトをしていないため、コスパ的にはあまりよろしくないが、形には残るし、時間が分かる便利アイテムだ!

 

悠真「それか、心を込めて手作り?」

 

 手作り…ねぇ……少し時間は少ないがやろうと思ったら出来なくも無い。

 

 俺の父さんは物を自作するのが趣味で大抵の道具類は揃ってるから出来ないことは無い。

 

 でもまぁここは

 

優也「ハンカチにするよ!」

 

悠真「ほうほう…ハンカチを手作りすると」

 

 そんなことは一言(ひとこと)も言っていないんだが…

 

 まぁそっちの線で行っても良いような気がする。

 

悠真「じゃあ、午後5時半に結羽宅集合!」

 

 結羽には事前に許可は取ってあるのだろうか?

 

悠真「俺達には抜かりありませんから心配なく!」

 

 少し誇らしげに悠真はそう言った。

 

 恐らくもう許可は取ってあるのだろう。

 

 あの生徒会長と悠真はたぶん結羽宅に行ったことあるだろうが、俺は一度も行ったことが無い。

 

 どんな家なんだろうか?

 

 少しわくわくする。

 

優也「分かった!午後5時半に結羽宅だな?」

 

 そして、俺達の会話は終わった。




 はい!第14話終了

 今回は書いてる途中でとても長くなってきて7000、8000文字行きそうな勢いでしたので急遽分けることにしました!

 それでは今回はここまで!

 次回もよろしくお願いします!

 ではでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第15話 忘れられない誕生日~後編~

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 前回はあのままだと6000以上行くところだったため急遽分けることにしたところだったんで、今回はその後編です。

 それでは本編行きましょう!

 では!

 第15話スタート


 

 もう学校は終わり、予定の時刻も迫ってきているため、俺は今支度をしていた。

 

優也「よし!あとはこれだな」

 

 俺は自作のハンカチを見ながらそう言う。

 

 我ながら中々の出来映えだ。

 

 これを綺麗にラッピングしていく。

 

 これはすごく大事な事なのだ。

 

 プレゼントがむき出しで渡されるよりも、ラッピングして渡された方が数倍嬉しく感じるだろ?

 

 要は気持ちの問題って事だ。

 

 飯の(たぐ)いは白波さんが用意してくれるらしい。

 

 やはりあの人スゲーな!…って悠真は何をするんだ?

 

 プレゼントか?

 

 まぁいいか、なにもしてなかったら追い出すだけだからな。

 

優也「よし!終わった。父さん!俺、今日外で食べてくるから俺の分はいいよ!」

 

 そしたら奥の方からはーいと聞こえたような気がした。

 

 そして俺は出発した。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 数分後、俺は地図を見ながら結羽宅に来るともうすでに俺以外のメンバーは来ていた。

 

 え?まだ5時25分だよ?二人とも早くね?

 

悠真「お!来たか!優也!遅いぞ!」

 

 悠真は遅いって言ってきたけど、まだ時間前だからな!

 

 遅いんじゃなくてまだ早いんだからな!

 

真依「じゃあ揃ったし、行くわよ!」

 

優也「まだ早いですし少し待ちましょう?」

 

 俺がそう言うも時すでに遅し、

 

真依「押しちゃった…テヘッ」

 

 何がテヘッだ!

 

 ちっとも可愛くねーぞ!この時間ならまだ最後の仕上げとかやってんじゃねーのか?

 

 そしたら数秒後、インターホンから声が聞こえてきた。

 

結羽『はーい!どちら様ですか?』

 

 さすがにまだ来るとは思っていなかったのか何者か聞いてきた。

 

悠真「俺俺!俺達だよ!」

 

結羽『あ、間に合ってまーす』

 

 悠真が俺と言うと、結羽が間に合ってる!と返した。

 

 お、その返し良いかも、今度使わせてもらおっと

 

優也「あ、ゴホッ!」

 

 俺は咳払いをしてからこう続けた。

 

優也「俺だ!絆成 優也!悠真と白波さんも居るぞ!」

 

結羽『………』

 

 俺がそう言うと数秒間沈黙が続いた。

 

 そしてその沈黙を破ったのは結羽だった。

 

結羽『えぇーーーっ!』

 

 すごい大きな叫び声がインターホンを通してだけではなく、扉の内側にいる結羽の声も聞こえてきた。

 

 すごく大きな声で耳が痛い…

 

優也「バカッ!お前、俺達の鼓膜、潰す気か!」

 

 俺はそう言うが、そんなことはもう聞いていないようで中で慌てているような声がインターホンを通じて聞こえてきた。

 

結羽『嘘っ!もう来ちゃった!どうしよう!あわわわ』

 

 なんか申し訳ない…

 

 ったくこいつらはもう少し人の事を考えてやれよ。

 

真依「あ、そうだ!優也君!結局プレゼント何にしたの?」

優也「おい!なぜ俺がプレゼントをするってことを知ってんだ!」

 

 悠真か?

 

 悠真なのか??

 

 いや、こいつ以外に考えられない。

 

 ってか、俺がここで大声で叫んだ方がヤバイな。

 

 下手したら結羽にも聞こえてしまう。

 

 ってか聞こえない方がおかしいな…なんてったってインターホンがまだ切れていないからな。

 

優也「聞こえた…か?」

 

 そしたらまだインターホンの前で慌てているらしき結羽の声が聞こえていた。

 

 良かった!聞き逃したようだ。プレゼントはサプライズで渡したいからな。

 

 上手くできたかは分からんが…

 

結羽『と、取り合えず…あわわわ!何から手をつければ!』

 

 なんか可哀想になってきた。

 

優也「俺達は近くのいつもの公園に居るから、準備が出来たら電話をくれ!番号は〇〇〇-△△△△-☆☆☆☆だ!それじゃあな!」

 

 そう言って生徒会長と悠真を連れて公園に向かった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

悠真「ところで優也!お前って気がきくよな!」

 

 お前は全然気が回らないよな…回ったとしても空回りをするよな…

 

真依「だって、二人は…」

 

悠真「なんと!」

 

 おい!今白波さんはなんつったんだよ!

 

 白波さんは悠真に向かって耳打ちしたらなんか悠真がすごく驚いた。

 

 この二人に良い思いをした覚えが無い。

 

 その時

 

 プルルル プルルル

 

優也「あ、電話だ」

 

 そして、俺は電話を取る。

 

優也「はい、優也ですけど」

 

結羽『っ、はぁはぁ…結羽です…はぁ…何とか終わりました…』

 

 電話からはものすごく息切れをした結羽の声が聞こえてきた。

 

 たぶん息切れをするくらい急いで準備をしたのだろう。

 

 慌てなくて良かったんだがな…

 

優也「分かった。じゃあ向かうからな」

 

結羽『はい!待ってます!』

 

 そして通話が切れた。

 

優也「じゃあ行くぞ!」

 

 そして結羽の家に戻っていった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 そして結羽の家についてインターホンを押した。

 

結羽『はーい!今開けます!』

 

 そして結羽の声が聞こえたあと扉が開いた。

 

 そこには

 

「じーっ」

 

 そこには、結羽を巨大化したような女性が居た。

 

優也「あ、あの…

結羽「お母さんっ!ちょっと!」

 

 そしたらいつもの聞きなれている声が聞こえた。

 

 お母さん?めっちゃ瓜二つじゃねーか!

 

 え?

 

 少し、結羽よりも背が高くて…その…発育がい

 

優也「ガフッ」

 

 いってー!

 

 結羽のやつ俺を叩いてきやがった!

 

結羽「い、今、いやらしいことを考えた!そして、失礼なことを考えた!お母さんの方が発育が良いとか思ったもん!」

 

 ほんっとうにすみませんでしたー!

 

 俺が考えていたことを言い当てられて申し訳ない気持ちになる。

 

優也「ごめんごめん!っえーっと結羽のお母さんでしたっけ?俺は友達の絆成 優也です!それとこの二人は…

 

 

 

ドSとバカです!」

 

 俺がそう自己紹介をすると後ろの二人がつかみかかってきた。

 

悠真「誰がバカだ!誰が!」

 

真依「本当のことでも初対面では言ってはならないってことを分からないの!?」

 

 悠真が怒っているのは分かる。

 

 だが白波さんはもはや否定せずに肯定しているよ!

 

優也「はいはい、この二人は生徒会長と坂戸 悠真です!」

 

 そうしたら、悠真は納得したけど白波さんの胸ぐらを掴む力が強くなった。

 

真依「私、名前じゃない!」

 

優也「名前…なんでしたっけ?」

 

真依「んな!?」

 

 俺はここで日頃の鬱憤(うっぷん)を晴らした。

 

優也「この生徒会長は白波 真依と言います!」

真依「知ってるじゃないの…」

 

 そしたら後ろから突き刺さる視線を感じた。

 

 こ、この視線は…

結羽「仲、良さそうだね?」

 

 すごくひきつった顔をしている結羽が居た。

 怖いです!

 

 ってか、これが仲良くしているように見えるか?

 

「はい!よろしくね、私は結羽の母の柴野 美樹です」

 

 って美樹さんもそう自己紹介をしてきた。

 

 そしたら家の奥の方から更なる声が聞こえてきた。

 

「姉ちゃん!なんか玄関がさわが…しいんだけど……姉ちゃんが男を連れ込んでる」

結羽「ちがーう!この人たちは友達!」

 

 家の奥の方から来た男の子は結羽の事を姉ちゃんと呼んだ。

 

 ってか

 

優也「結羽、弟が居たんだ」

 

結羽「違うよ?この子は私の従弟(いとこ)!隣に住んでるんだよ!」

 

 なるほど!通りで横も柴野って表札でどちらか迷った訳だ…じゃあ何で姉ちゃんなんて呼んでんだ?

 

結羽「なぜか姉ちゃんって呼ぶんだよね…なんでだろう?」

 

 らしい、結羽にも分からない事情って奴か…

 

 しっかし可愛い顔をしてんな…青いパーカーを着てポケットに手を入れている。

 

 そして、すごく髪の毛の癖がすごいです。

 

 あちこち髪の毛がたっていて、ワックスでもつけてんじゃねーか?って位だ。

 

「俺はこれが普通だ!生まれつき髪の毛が固くて、寝癖があっても中々直らないから面倒くさくて放置していたらこうなってた」

 

 なるほど、この子も結構苦労してるんだな…だけど結構かっこよさげに見えるな。

 

結羽「ほら!とうま!自己紹介!」

 

「ヘイヘイ、俺は柴野 冬馬(とうま)だ!中学一年だ!」

 

 そして、冬馬は結羽の隣に並んだ。

 

 こうして見てみると冬馬の方が背が高い。

 

 冬馬が背が高いのかはたまた結羽がちっこいのか…それは分からない。

 

結羽「じゃあ上がって!」

 

 そして、俺達は結羽に許可をいただいたので中にお邪魔させてもらった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「「「お邪魔しまーす」」」

 

 中はとても綺麗な感じだった。

 

 清潔感が溢れていた。

 

美樹「いつも結羽がうるさいのよね…」

 

 あ、結羽が片付けてんのね、納得したわ!

 

結羽「私の部屋に行きましょう」

 

 そして、結羽の部屋に向かった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 結羽の部屋についた。

 

 中には本当に必要最低限しか置いていないような感じだ。

 

 これが、女の子の部屋か…

 

結羽「私は手伝いをしてくるので待っててください」

 

 そう言って結羽は部屋を出ていった。

 

 その時、入れ違いで冬馬が入ってきた。

 

冬馬「…お前は姉ちゃんのなんなんだ?」

 

 そしたら俺に急にそんなことを言ってきた。

 

 何ってなんもないので俺はこう答えた。

 

優也「良いや、ただの友達だぞ?」

 

 俺がそう答えるとなぜか皆、俺をじと目で見てきた。

 

 何で俺をそんな目で見るんだ?

 

 冬馬はともかく、白波さんと悠真は知ってるだろ!俺達が友達だって…

 

悠真「はぁ…こんな感じなのだよ…冬馬君」

 

冬馬「ふーん、まぁ良いや」

 

 それだけ言って冬馬は部屋を出ていった

 

 あいつは結局何がしたかったんだ?

 

真依「優也君はいつも通りね」

 

 いつも通りじゃない俺ってどんな俺だよ!

 

 俺は確かにキャラが変わってきてるかも知れないけど、いつも通りじゃないと言われる筋合いは無い。

 

悠真「こいつは今も昔も鈍感なままだよ」

 

 鈍感ってなんだ!そんな鈍くなーい!

 

 俺は確かにラノベ主人公特有の聞こえない(・・・・・)が発生することがあるけど、それは結羽の声が小さいだけで、俺はそんなに耳が遠い訳じゃ無いだろ!

 

 俺達がそんな話をしていると

 

結羽「ほんとですよ!本当に鈍い!」

 

 俺を鈍いって良いながら結羽が入ってきた。

 

 結羽はエプロンをつけており、そのエプロンがとても似合っている。

 

 桃色が少し入った可愛らしいエプロンだ。

 

優也「お疲れ結羽」

 

 このときこの場に居たものたちはこう思った。

 

 『同じ事を言われてるのに、結羽にだけ優しい』と

 

結羽「うんっ!もう出来るから集まってだって」

 

 俺達にはその事を伝えに来たらしい

 

 そう言えば、結羽ってすごく料理がうまかったよな。

 

 BBQ(バーベキュー)の時も結羽が居てくれて良かった。

 

優也「わかった、じゃあ向かうからな」

 

 そう言って結羽の部屋を後にしてリビングに向かった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

悠真「おお!豪華だな」

 

 そりゃそうだ、だって今日は結羽の誕生日なのだから。

 

美樹「助かったわ…食材の類いをそこの真依さんが用意してくださって」

 

 少し忘れかけていたが食材は白波さんが用意してくれていたんだった。

 

美樹「じゃあ始めましょうか!」

 

 美樹さんがせーのっと言う。

 

 そして俺達は

 

『誕生日おめでとう!』

 

 そしたら結羽は

 

結羽「ありがとう!」

 

 いつになく嬉しそう&楽しそうだ。

 

 ニパァと笑顔を浮かべている。

 

 しかし、結羽は誕生日にも関わらず手伝いとは…感心だなぁ。

 

 結羽は楽しそうに美樹さんや冬馬と話をしている。

 

 この笑顔を見れただけでも来た甲斐はあった。

 

悠真「これプレゼントな」

 

 そうして悠真は1つの箱を手渡した。

 

 それを結羽は笑顔を受けとる。

 

 ってか、悠真はプレゼント用意していたんだ。

 

 そりゃそうだよな、用意していないわけ無いよな。

 

結羽「開けて良い?」

 

悠真「おう!」

 

 そして、結羽は箱を明け始める。

 

 そして箱が開いて結羽が中のものを見ると急に赤面(せきめん)した。

 

 まて!なに渡した!

 

 結羽が赤面するものっていったい?…気になる…

 

結羽「な、ななな、なに考えてるの!」

 

悠真「良いじゃねーか!可愛いと思うぞ?」

 

 すごく結羽が可愛くなるものに興味津々です。

 

 となると、アクセサリーの類い?アクセサリーで、そんな赤面するものっていったい?

 

悠真「それに…」

 

 何かを耳打ちしているようだ。

 

結羽「わ!分かりました…」

 

 そして、結羽はその中のものを取り出して、自分につける。

 

優也「ぶふっ!」

 

 飲んでいたお茶を盛大に吹き出してしまう。

 

真依「これは…」

 

冬馬「おおー!」

 

美樹「ふふっ」

 

悠真「予想通り」

 

 すごく結羽の顔が赤くなっていく。

 

 今にも爆発しそうな勢いで

 

結羽「~~~~ッ!恥ずかしいですのでもう取って良いですよね?ね?」

 

 すごく赤くなった状態で俺達に取っても良いかと聞いてくる。

 

 この状況で恥じらいを持たない人なんて居るのだろうか?

 

 この状況を知ったら結羽が恥じらうのも納得出来るはず…

 

 なぜなら今、結羽は猫耳をつけているのだから。

 

結羽「あぅ~~っ」

 

 はっきり言おう、可愛い…

 

 現実で猫耳をつけている美少女を拝めることになるとは思っていなかったが、ものすごく可愛い。

 

 そしてその状況で見つめられるとドキッとする。

 

悠真「今、優也、可愛いと思ったろ?」

優也「思ってない!」

 

 ちょっと可愛くて料理も出来るこいつをお嫁にもらう人って幸せだなって思っただけだ。

 

結羽「ほ、本当に可愛くなるのかな?……ニャ~ッ」

 

 !?

 

 そこでのニャーは反則並みに破壊力が高い。

 

 大抵の男子なら落ちるだろう一言だ。

 

 しかも結羽だ…

 

 その瞬間俺の顔が熱くなっていくのを感じた。

 

悠真「あ、優也が照れた!」

 

結羽「ふふふっ」

 

 なんか結羽は猫耳に慣れたみたいだけど俺としては依然として即死しそう。

 

 そう言えば、俺のプレゼントがまだだった。

 

 果たして俺は意識を保てるのだろうか?

 

優也「次は俺からのプレゼントだ」

 

 そしてラッピングされたハンカチを手渡した。

 

 そしたら悠真の時以上に屈託無い笑顔を見せてきた。

 

 やはり結羽の笑顔は攻撃力が高い。

 

結羽「ありがとう!」

 

 そして開けて良い?と聞いてきたから良いよとかえした。

 

 そして結羽は中のハンカチを手に取る。

 

結羽「可愛いハンカチ!」

 

 一応喜んでもらえたみたいで良かった。

 

 これで、可愛くないからいらないとか言われた日にはもう一生立ち直れないだろう。

 

 まぁ結羽がすごく嬉しそうだから良かった。

 

悠真「お前のだからなのかもよ」

 

優也「そうだと良いよな」

 

 そして、パーティーも終わった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

玄関

 

結羽「今日は本当にありがとうございました!」

 

 そう言って結羽は頭をペコリと下げてきた。

 

優也「こちらこそ!楽しかったからな」

 

悠真「ああ」

 

真依「だね」

 

 俺達がそう言うと結羽はまたもや笑顔になって

 

結羽「それでは!明日また学校で会いましょう!さようなら!」

 

『さようなら!』

 

 こうして結羽の、忘れられない誕生日が終わりを告げた。




 はい!第15話終了

 前回につづき誕生日でした。

 以外と長くなってビックリしました!

 それでは今回はここまで!

 次回もよろしくお願いします!

 ではでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第16話 学校祭準備

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回は学校祭の準備の話です。

 それでは本編行きましょう!

 では!

 第16話スタート


春海「はい!ちゅうもーく!これから学校祭の出し物を決めます!」

 

 現在、春海先生が黒板の前に立って学校祭の出し物について話し合いを始めようとしていた。

 

 高校の学校祭はクラスで何か出し物をするらしい。

 

 それ以外にもバンドを行ったり、ダンスを披露したりと色々あるらしい。

 

「はーい!うちはメイド喫茶がいいと思います!」

 

 その瞬間その提案をした男子は女子から大ブーイングされていた。

 

 正直、目をそらしたくなるような光景だ。

 

 全方位からのブーイングのため、その中間地点に座っている俺としては俺がブーイングされている気分になる。

 

春海「ま、まぁ候補として入れておきますね」

 

 若干、あの笑顔が絶えない春海先生も苦笑いを浮かべている。

 

 それも知らずに提案した男子はメイド喫茶について熱く語っている。

 

 正直、男が見てもドン引きするほどだ。

 

優也「それなら喫茶店で良いじゃねーか」

 

 そしたら全男子から睨まれた。『こいつ、本当に空気読めねー奴だな。良いところだったのに』ってな事を言いたげな目だ。

 

 良いところも何も絶対通らないってその案

 

 え?なに?あなた達にはあと少しで押しきれそうだとか思っていたわけ?

 

 そしたら、女子からは歓声が上がった。

 

 俺がメイド喫茶をやると言う流れをぶち壊したからだろうか?よくわからない。

 

春海「では、喫茶店で良いですか?」

 

女子「異議なーし!」

 

 そうして女子は賛同したが。

 

男子「ちょっと待った!」

 

 男子の方から待ったがかかった。

 

 まだ何かあるのだろうか?

 

男子「おい!空気を潰したのは優也!お前なんだからお前が女子とじゃんけんしてこい!お前が勝ったらメイド喫茶だ」

 

 あ、この時点でメイド喫茶の案は完全に潰れましたわ。

 

優也「わーったよ!」

 

『最初はグーじゃんけんポン』

 

優也→パー

女子→チョキ

 

 ふっ、どんなもんだ俺の運の悪さは!

 

 今日も絶好調だぜ!

 

 グスン

 

 少し自分でそんなことを思ってて悲しくなってきた。

 

春海「では、喫茶店と言う事で良いですね?」

 

 そして、喫茶店になった。

 

 俺は負けたときかなり睨まれた。怖いです。肩身が狭いです。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

放課後

 

優也「と言う事があったんだよ…」

 

結羽「そ、それは災難だったね…」

 

 全くだ、人の気も知らずに、少しは女子の気持ちも考えてやれよ。

 

優也「そっちは何に決まったんだ?」

 

結羽「私のクラスはお化け屋敷」

 

 おおー!お化け屋敷か

 

 定番だけど盛り上がるよな。

 

 やっぱり学校祭の醍醐味(だいごみ)ったら色々なクラスの出し物を見て(まわ)る事だろ!

 

結羽「あ、あの…学校祭は一緒に

悠真「よう!優也!学校祭は一緒に廻ろうぜ!」

 

優也「ことわーる!」

 

 悠真は結羽が言いかけた言葉を遮ってそんなことを言ってきた。

 

 悠真はいつもタイミングが悪い。

 

 そして、なんて言おうとしたのかを聞けずじまいで終わると言うのがパターン化されている。

 

結羽「うぅぅ~~~~ッ」

 

 そして結羽は顔を真っ赤にして頬を膨らます。

 

 そして大きく息を吸って

 

結羽「バカ~~ッゴホッゴホッ」

 

 キーン

 

 耳にしばらく残るような耳鳴りがする。

 

 女の子の大声って耳に悪いと思う。

 

 結羽はあまりにも大きな声を出したためむせてしまったらしい。

 

優也「どうしたんだよ!」

 

 ここ最近バカと言われてないと思ったらここで来たか…

 

悠真「すまん!今、お取り込み中でしたか!」

 

 そして悠真は走って去っていった。

 

 何がお取り込み中だ!俺達はそんな関係じゃない! 

 

 って言うかまた二人きりになったな。

 

結羽「え、えと…その…好き(・・)です!」

 

 結羽が急にそんなことを言ってきた。

 

 ああ、たぶん友達だとかlikeだとかそんなんだろ。

 

優也「おう!俺も好きだぞ?」

 

 とりあえずそう返しておいた。

 

 ここで無愛想な事とか嫌いだとか言ったらめんどくさくなるのまちがい無しだからな。

 

 まぁ俺自身も結羽の事は友達(・・)として好きだからな。

 

結羽「絶対意味を履き違えてる…」

 

優也「ん?何だって?」

 

 こいつの声はちょくちょく小さくて聞こえないことがある。

 

 俺としてはもう少し大きな声で話してほしいものだ。

 

結羽「何でもない!」

 

 と、ここまでがいつもの流れだ。

 

 俺としては気になるんだけどな…

 

 結羽が言いたくないのなら仕方がない。

 

優也「そうだ!結羽!学校祭は一緒に廻ろうぜ!」

 

 俺は突然とそんなことを思い付いて提案してみた。

 

 結羽と一緒に居るのは楽しいし俺が回りたいと言うのもあるんだけどな。

 

 俺がそう提案したら結羽は急に顔をパァーッと明るくした。

 

 本当こいつは感情が顔に現れやすい。

 

結羽「喜んで!」

 

 そして、俺達は学校祭は一緒に廻ることになった。

 

 すごく結羽が嬉しそうだ。

 

結羽「優也と廻れる…優也と廻れる…ふふふっ!」

 

 何かぶつぶつと呟いて笑っている。

 

 だが楽しみと言う事だけは伝わってくる。

 

優也「じゃあそろそろ分岐点だな。って父さん今日、仕事で帰って来ないんだ…弁当でも買うかな」

 

 俺がそんなことを呟いていると結羽が

 

結羽「それじゃ栄養バランス悪いよ!私が作ってあげるからそれ食べなさい!」

 

 少し強い口調だが俺のためを思って言っていると言う事は分かる。

 

優也「じゃあそうさせてもらうかな」

 

 そしたら、結羽は『よろしい』とでも言いたげな顔をしていた。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

結羽「以外と食材はある…」

 

 結羽は現在俺ん()の冷蔵庫の前でぶつぶつと呟いて、これとこれと…とか言いながら食材を取り出していた。

 

 以外と俺ん家は食材が結構ある。

 

 父さんが割引とかに目が無くて、いつも二人暮らしだから悪くなるの分かっているのにいつも大量に買ってくる。

 

 注意してるんだけど直らないんだよな…

 

優也「結羽って普段から料理するのか?」

 

結羽「うん、よくするよ。仕事でお母さんが遅くなる事が多くて、よくとうまが食べに来るからね」

 

 そうか…

 

 毎日料理をするのって大変だろうな…

 

 しかも親が遅くなる事が多いって、それでいて隣に住んでいる従弟がよく来るって…

 

 俺にも毎日来る従弟が居たらよく飯を作っていたんだろうか?

 

結羽「出来たよ!」

 

 結羽が作ってくれたのはチャーハンだった。

 

 しかもパラッパラ(・・・・・)で、まるでプロが作ったかのようなチャーハンだ。

 

 たぶん文字で書いたらパラパラ(・・・・)になるんだろうけど、俺が書くとしたらパラとパラの間に『ッ』を入れたくなる出来映えだ。

 

優也「結羽、お前すごいな!」

 

 結羽の料理の腕前は知っていたが、改めて結羽の料理の上手(うま)さを感じる。

 

 そしたらすごく嬉しそうにしている。

 

結羽「ありがとう!さぁ!冷めない内に食べて」

 

優也「じゃあ、いただきます」

 

結羽「どうぞ!」

 

 そして俺はチャーハンをスプーンですくって口に入れる。

 

 美味しい

 

 その感想しか出てこない。

 

 俺にもう少しメシテロの実力があれば気の()いた感想が言えるんだろうけど…

 

優也「うん!美味(うま)い!」

 

結羽「ありがとう!」

 

 結羽の声にも嬉しさの感情が混じってるように感じた。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

優也「ご馳走さま!」

 

結羽「お粗末様でした!」

 

 俺は食べ終わった。

 

 結羽の料理が美味しくて許されるのなら毎日食べたいくらいだった。

 

優也「こんなに美味い料理を作れるなんて、結羽はいいお嫁さんになれるな」

 

 俺は率直な気持ちを言ってみた。

 

結羽「~~~~ッ!」

 

 そしたら、カァ~ッと耳まで赤くして(うつむ)いてしまった。

 

 何か気にさわるような事を言ってしまったのだろうか?それなら謝らなくてはならない。

 

優也「えーっとその…ごめんな」

 

 そしたら結羽がえ?と言った顔でこっちを見てきた。

 

結羽「な、なんで謝るの?」

 

優也「何か気にさわるような事を言ったかな?って」

 

 そしたら結羽はすごく困惑した表情をしていた。

 

優也「だってうつむいたから」

 

 俺がそう言うと肩をひくひくさせて怒っていた。

 

結羽「バカ~~~~ッ!」

 

 毎度ながら耳が痛い。

 

 って言うか近所迷惑だろ。

 

結羽「鈍い優也は知らない!」

 

 そう言って結羽は家を飛び出していった。

 

 どうしたんだろうか?

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

次の日

 

 俺は昼休みに購買に来ていた。

 

 しかし、俺は昨日食べた結羽の料理が忘れられない。

 

 もう一回、あの味が食べたいと思うくらい。

 

 そして、俺はいつものパンを買って廊下を歩いていた。

 

 そしたら一人の女の子が購買に歩いていくのが見えた。

 

 しかし、俺ですべて売り切れてしまったのだ。

 

優也「購買、売り切れたぞ!」

 

 俺がそう言うと女の子は振り返った。

 

 その子は、星野 光だった。

 

光「なら、あなたの持っているパンを賭けて勝負しましょう」

 

 どうしてそうなった。

 

光「私が勝ったら私がそのパンを買う。あなたが勝ったらあなたのもの。良いわね?」

 

優也「ちなみにどんな勝負を?」

 

光「それは…」

 

 ゴクリ

 

 と、喉を鳴らす。

 

光「じゃんけんよ」

 

 じゃんけんよ……じゃんけんよ…じゃんけんよ

 

 その言葉が脳内で木霊(こだま)する。

 

 俺はじゃんけんでいい思いをした覚えが何一つない。

 

 正直断りたい。

 

優也「こ、このパンやるから、勝負はお預けで良いか?」

 

 俺はそう、やんわりと断った。

 

 しかし星野さんは

 

光「それじゃ公平じゃないからじゃんけんしましょう」

 

 こいつ、変な事を気にする奴だな。

 

 仕方ない……なるようになれ!だ。

 

光「それじゃあ行くわよ!じゃんけん、ポン」

 

 ポンと星野さんが言ったのと同時に俺はチョキを繰り出した。

 

 どうせ星野さんの出してくるのはグーだろうと諦め半分、結果を見た。

 

 結果は…

 

優也→チョキ

光→パー

 

優也「………」

 

光「………」

 

 ファッ!

 

優也「か、かぁったぁ」

 

 少し力の抜けた感じで言った。

 

 だってよ!俺が勝つとは思って居なかったから…

 

光「ま、負けた…」

 

 俺に負けた星野さんに同情する。

 

優也「ほら!星野さん!」

 

 そして、俺はパンを半分にちぎって渡す。

 

 かつて結羽にやってもらったように

 

光「お情けは要らないわ!」

 

優也「お情けじゃなくて、俺は俺自身がこのままだと気持ち悪いから半分やるだけだ。決してお情けなんかじゃない」

 

 俺はそう断言した。

 

 星野さんは結構な強がりらしい。

 

 お腹が空いているはずなのに

 

光「わかったわ。じゃあいただこうかしら」

 

 そして、星野さんは俺からパンを受けとりこう言った。

 

光「ありがとう…」

 

 その時

 

 普段クールで表情一つ変えない女の子なのに、その時だけ頬をほんのり赤く染めて、照れながら言ってきた。

 

優也「お!他の表情出来んじゃん!ならもう少し色んな表情をしていった方が友達出来ると思うぞ」

 

光「~~~~ッ!何なんなのよ!いったい!いきなりそんなことを言ってきて」

 

 おっしゃる通りです…

 

 俺はいきなりそんなことを言ったからビックリされてもおかしくない。

 

優也「んじゃーな!」

 

 そして、俺は教室に戻っていった。

 

光「美味しい…」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

教室

 

春海「では、これからメニューを決めます!」

 

 午後の授業

 

 学校祭の準備のため色々な事を話し合わなくてはならない。

 

 そして、今は喫茶店に出すメニューを決めようとしているところだ。

 

春海「では、何か案はありますか?」

 

 そうだな…まぁ俺としては絶対に譲れないのが

 

優也「コーヒー」

 

 俺は冷たいテンションでそう言った。

 

 反対したもの全員にコーヒーの素晴らしさを延々と語るつもりでもある。

 

春海「で、では、コーヒーを決定しても良いですか?」

 

 そしたら特に反対意見も出なかったので

 

春海「では、コーヒーは決定します!」

 

 そして決定した。

 

 心の中でガッツポーズを決める。

 

 コーヒーは俺の好物なのだ。

 

春海「他にはありませんか?」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

数十分後

 

春海「では、メニューは以上でよろしいですか?」

 

 そしてすべてのメニューが決まった。

 

 俺はなぜかクラスの者共(ものども)に料理が出来ると知られているので、俺は厨房に回ることになった。

 

 そして休憩時間に結羽と見て廻る感じだ。

 

 楽しみだ。




 はい!第16話終了

 次回は学校祭当日です。

 それでは今回はここまで!

 次回もよろしくお願いします!

 ではでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第17話 学校祭

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回は学校祭の当日です。

 それでは本編行きましょう!

 では!

 第17話スタート


学校祭当日

 

 俺はいつものように登校していた。

 

 そしたらいつものように俺と違う道から結羽がやってくる。

 

 これはもう、見慣れた光景だ。

 

結羽「あ、おはようございます!」

 

 っと結羽は元気に挨拶をしてくる。

 

 元気に挨拶をしてもらえるとこっちも元気になる気がする。

 

優也「おう、おはよう。今日は朝から元気だな」

 

 俺がそう言ったら結羽は急にうつ向いて指をもじもじとさせながらこう言ってきた。

 

結羽「一緒に廻るの…楽しみだったから…」

 

 結羽は言い終わったあとこっちを見て満面の笑みになった。

 

 そんなに楽しみだったのか?

 

 まぁ…うちのクラスは料理できる人があまりいないから客が一段落するまで逃がしてはくれないだろうけど。

 

 そんなことを話していると校門が見えてきた。

 

 校門の門も学校祭風に飾り付けてある。

 

 そして校門の先には、色々な出店が準備をしていた。

 

 うちの学校は、校舎の入り口まで校門から距離がある。

 

 そして校門から入り口までは真っ直ぐな道が延びていて、ど真ん中には噴水がある。少し豪華な作りだ。

 

 その道を挟んで両方に出店が並んでいる。

 

 そんな準備中の出店を横目に校舎の中に入っていく。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 やはりと言うか、校舎の中も装飾が(ほどこ)されていた。

 

 至るところに輪っかの飾りがあり、天井の蛍光灯には色々な色のシートがつけられており、かなり言い雰囲気になっていた。壁にも蛍光灯の光があたって綺麗な色になっていた。

 

結羽「校内の装飾を見るだけでも楽しいね」

 

 確かにこの光景は何度見ても見飽きる事は無いであろう。

 

 そして俺は「だな」と返しておく。

 

結羽「私このクラスだから!またあとでね」

 

 そうして俺達は一旦分かれた。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「こっち、ワッフルとコーヒー」

 

「こっちは、ミルクティーね!」

 

 かなり忙しい。

 

 なぜかここだけ人気で行列ができているレベルだ。

 

 もしかしたら、結羽には悪いが一緒に廻れ無くなってしまうかも知れない…もっと回転率上げなければ。

 

 お菓子などを作ったりもしているが注文数は基本的にお茶かコーヒーの類いが多い。

 

 更にお茶一杯で友達と話し込んで居座る人も居るわけで、中々回転率が上がらない。

 

優也「まだまだ休憩はお預けになりそうか?」

 

「まぁ、そうだな…ってまさかお前!彼女と約束でもしてるのか?」

 

優也「していない…」

 

 と、思うが、それに近いことはしたと思う。

 

 結羽との約束があるからな。

 

「なら、上がって良いぜ!後は俺達に任せて彼女さんと行きな!」

 

 なにそのカッコいいけど、フラグになりかねない台詞は!

 

優也「ありがとう!モブA(・・・)

 

「モブA言うな!俺にはれっきとした〇〇(ピー)って名前があるんだぞ!って規制音やめろ!俺の名前はそんなに卑猥じゃない!」

 

 その瞬間

 

 店内に結羽が入ってきた。

 

 ってか、あいつ並んでいたのか!それと、お化け屋敷どうした!?

 

優也「俺、あの客の相手をしたら上がるわ」

 

 そして、前を向きながら手を降って結羽の元に向かう。

 

 まぁ、俺、厨房なんだが、少し話をしたかったから勝手に出てきた。

 

 ちゃんとエプロンも脱いだよ。

 

 そして、結羽は俺を見つけると笑顔になった。

 

結羽「あ、ゆ、優也!」

 

優也「何でここに居るんだ?」

 

 俺は頭をコツンと軽く叩く

 

結羽「うぅ…だって、会いたくなって…」

 

優也「何?」

 

 あ、もう流れが読めた。

 

 どうせ結羽がここで大声でさけ…

 

結羽「バカ…」

 

 ばない!?

 

 小声ーっ!

 

 俺はてっきり「バカ~~~~ッ!」っと叫ばれて周りに注目されるパターンかと思いきや小声で来ましたか。

 

 もしかして、ついに結羽も場所をわきまえると言うことを覚えたか!

 

 結羽がまた一つ新しく覚えたのは嬉しいぞ!

 

優也「何にするんだ?」

 

結羽「コーヒー(砂糖×2)で!」

 

 そして俺は結羽の注文をメモして厨房に戻った。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 俺はコーヒーを()れて戻ってきた。

 

 俺が戻ってくると、結羽は周りを見回していた。

 

 この人混みで一人と言うのはやはり心細いのだろうか?

 

 確かに中は混んでいて、とてもじゃないが俺一人では入る勇気が無い。

 それを考えれば一人で入ってきた結羽ってスゲー。

 

優也「お待たせしました。コーヒー(砂糖×2)です」

 

 そうして結羽の前にコーヒーを置く。

 

 そしたら周りに気を取られていて気づかなかったのかコーヒーが置かれるカチャンという音で一瞬ビクッてなってから俺の方を見てきた。

 

結羽「あ、ありがとう」

 

 そして結羽はコーヒーを一口すする。

 

結羽「それにしても、人気だね」

 

 確かに、なぜかここはすごく混んでいる。

 

 外の出店に行ってる人は少しだけだろう。

 

 よっぽど外の出店の方が美味しい料理を食べられるだろうに…

 

優也「ああ…そうだな」

 

 (あや)うく見て廻れないところだった…

 

 まぁ…このあとは(おも)存分(ぞんぶん)見て廻れるんだけどな。

 

優也「それ飲んだら行くぞ」

 

 「うん!」と嬉しそうな声で結羽が相槌(あいづち)をうつ。

 

 そして結羽はコーヒーを飲み干して立ち上がった。

 

結羽「うん! はいこれお代」

 

 そして結羽から受け取ってカウンターに立っている人に渡す。

 

優也「じゃあ行くぞ」

 

 そして店を出た。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 出たのは良いが、最初はどこに行くか……悩む所である。

 

 クラスの出し物一覧は、

 

◇◇◇◇◇

 

一年生エリア

 

1-A……喫茶店      in 優也

1-B……お化け屋敷    in 結羽

1-C……リアル脱出ゲーム in 光

1-D……迷路       in 悠真

 

二年生エリア

 

2-B……クレープ屋

2-C……型抜き

 

三年生エリア

 

3-B……美術展

3-C……喫茶店

3-D……お化け屋敷

 

特別エリア

 

2-A……演劇

2-D……演劇

 

3-A……アニメアフレコ

 

任意……バンド

任意……マジック

任意……コント

 

生徒会企画……クイズ  in真依

 

◇◇◇◇◇

 

 とりあえずこんな感じだ。

 

 演劇とかはまだやらないらしいし、一番遊べるとしたらここ、一年生エリアだよな。俺のクラス以外遊べるし。それによって客が集まってるのかもしれないが。

 

優也「とりあえず出店行って飯食わね?!俺、ずっと食ってないから腹へったし…」

 

結羽「ふふふっ、そうだね。私もコーヒー以外口にしていないからお腹がへったよ」

 

 そうして意見が合致して出店で、まず飯を食べることになった。

 

 出店は、たこ焼き、お好み焼き、焼きそば等々(などなど)ある。

 

 ほとんどお祭りに似たメニューだな。

 

 そして、俺はたこ焼きを買って、結羽は焼きそばを買い、近くのテーブルで食べることにした。

 

 席につくとすぐに焼きそばを食べ始めた。

 

 結羽って料理を美味しそうに食べるんだよな…

 

優也「中々うまいな」

 

 今回の出店の料理は当たりだったらしい。

 

 やっぱりたこ焼きは、焼きたてのアツアツの時がうまい。

 

 これはたこ焼きに限ったことでは無い。

 

 世の中の料理のほとんどに言えることであろう。

 

結羽「うん」

 

 その時、横から声をかけられた。

 

「はーい!君たち少し時間良い?」

 

 なんだろうか?

 

 まぁ今は飯を食べていただけだから時間はあるんだけど…

 

優也「良いですよ」

 

 俺がそう言うと「ありがとうございます」と言ってカメラを取り出した。

 

「一枚良いですか?生徒会で使いたいので」

 

 と、言ってきた。

 

 ってかこの人も生徒会なのかよ。

 

優也「そうなんですか。俺は良いですよ」

 

 結羽はと言うと、なぜかキッと睨み付けていた。

 

「ありがとうございます!」

 

 カシャッ

 

 どうだろうか?綺麗に撮れたのだろうか?

 

「ありがとうございます!名前をうかがっても良いですか?」

 

 かなり礼儀正しい言葉使いだな。

 

 良かった…生徒会にああいう人ばかりだと、生徒会の未来が心配でならないからね。

 

優也「俺は絆成 優也」

 

結羽「柴野 結羽」

 

 結羽はまだムスッとしている。本当にどうしたのだろうか?

 

「あー!あなた達が!」

 

 ん?なんか知ってるような口振りになったぞ?

 

「いつも会長があなた達の事を話しているから名前は知ってたんです!へー!あなた達が!」

 

 そんなに俺達の事を話していたのか?

 

 なんか恥ずかしいな。

 

「私、神乃(しんの) 夕華(ゆうか)です!副会長でして、勝手に会長が私を次期会長にする気みたいです」

 

 あの会長…そんなことをしていたのか…

 

 その時

 

真依「やあやあ!君たち、今、私の(うわさ)をしていなかったかい?」

 

 横から白波さんがわいて出てきた。

 

 いつもながら陽気(ようき)な話し方である。

 

夕華「あ!会長もここに居たんですか」

 

優也「白波さんは神出鬼没(しんしゅつきぼつ)ですね」

 

 本当にこの会長はどこにでも現れる。

 

 しかも、忘れかけた頃に急に現れるから心臓に悪い。

 

結羽「で、何で来たの?」

 

 いつもより低いテンションでそう言う結羽。

 

 確かになぜここに来たかは気になるが、怖いです!結羽さんの表情が暗くて怖いです!

 

 絵で書くとしたら顔の上半分がサーッてうす黒い色で塗られている感じの顔です!

 

 そして、無理に笑顔を作っている感じもヤバイです!やんでるんですか?とでも疑いたくなる表情

 

 今、下手なことを言ったら洒落(しゃれ)にならなそうだ。

 

真依「いやねー、二人を見かけたから来たって神野ちゃんが居たんだよね」

 

 うん、これぞ無難(ぶなん)な解答って感じだな。

 

 これなら結羽を怒らせずに済みそうだ。

 

結羽「ふーん…私たち、次廻らなくちゃ行けないから行くね?」

 

 そうして俺は黒い表情を浮かべた結羽に連行(・・)されていった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 二人が見えなくなったところで(ようや)く元の表情に戻った結羽と今は演劇部の会場に居た。

 

 演劇部の演劇は少し前に終わってしまい、次は2-Aの演劇が始まるようだ。

 

 演劇部の会場はステージのように観客席が階段状になっていて後ろの席からでも見やすいようになっている。

 

 なぜ、来ているのかというと結羽が

 

 演劇を見たい!

 

 と、言ってきたためここに来ることにしたのだ。

 

 あと(いち)()分で始まるらしい。

 

 そして俺達は席についた。

 

結羽「楽しみ」

 

 結羽はすごく嬉しそうにそんなことを言ってくる。

 

 その笑顔は男に向けてはいけないと思います。

 

優也「だな」

 

 と、俺は結羽に返す。

 

 隣同士で座って左右には誰も居ない。

 

『では、2-Aの演劇、始まりまーす』

 

 そしてついに電気が消えた。

 

 ガーーー

 

 機械音のような音がしたあとカーテンが開き、うっすらとステージの上に人影が見える。

 

 そして、その人影にスポットライトが向けられる。

 

「今日は皆様お集まりいただきありがとうございます。それでは2-Aの演劇、お楽しみください」

 

 そして、手を腹に当ててお辞儀をしてはける。

 

 そして、演劇が始まった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

結羽「おもしろかった!」

 

 結羽は嬉しそうにしていて、足取りも軽いようでスキップしている。

 

 おもしろかったなら良かった。

 

優也「次はどこにする?」

 

結羽「なんか、()(さん)年生のエリアはいきずらいから一年生エリアにしない?」

 

 確かに、俺達一年生にとっては上級生のエリアに行くと言うのはハードルが高い。

 

 一年生エリアには知り合いも何人かいるし行きやすさが全然違う。

 

 へたれで豆腐メンタルな俺達にとっては一年生エリアが一番行きやすいのだ。

 

優也「なら、1-Dに行こうぜ。悠真も居るだろうし」

 

 確か、1-Dは迷路だったか?どんな迷路だか気になるし、行ったら面白そうだしな。

 

結羽「うん、じゃあそこいこう」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

1-D

 

悠真「ふゎーあ」

 

 あいつ!やる気あんのか!

 

 俺達がついてから一番最初に見かけたのは欠伸(あくび)をしている悠真だった。

 

 受付をやっているようだが、一切のやる気を感じない。

 

 俺達が目の前にやって来ると

 

悠真「あーい、二名様ですねーこちらへ」

優也「やる気あんのか!」

 

 俺が悠真にそう言うと驚いた様子でロボットのように俺達の顔を交互に見る。

 

悠真「いや!これはその!デート客という事でおまけしておくから頼む!これは内密にしていてくれ!」

 

優也「違う!そんな気づかい、いらねーよ!」

 

 俺がそうつっこむが結羽は赤くなってうつむいてしまった。

 

 そして、結羽はデートと言う単語を否定しようとはしない。

 

優也「結羽さん?」

 

結羽「ひゃい!」

 

 すごく大きな声で返事した。

 

 しかし、今のところで驚く要素はどこにあったのだろうか?

 

 結羽が声を裏返して噛む時は大抵驚いた時だ。

 

悠真「じゃあ、頑張ってきてね」

 

 今の頑張ってにはどのような意味が込められていたのかは今の俺には知るよしは無かったが、結羽は分かったのだろうか?

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

数分後

 

結羽「難しかった…優也がこんなに迷路得意だったとは!」

 

 結羽は途中から右も左も分からなくなってたからな。

 

 俺はこの教室の出入り口の配置から計算して進んだだけなんだけどな。

 

優也「今日は楽しかったか?」

 

結羽「はい!」

 

 それなら良かった。

 

 俺も楽しかったし、クラスメイトには感謝だな。

 

優也「お疲れ」

 

結羽「うん、優也も…ね」

 

 そして、俺はお疲れと言う意味も込めて頭を()でた。

 

結羽「ひゃう…うぅ~~」

 

 結羽は一瞬変な声を出したとものすごく真っ赤になってしまった。

 

 少しの間撫でてると結羽か『えへへ~』って言っていて正直可愛いと思ってしまった俺がいた。

 

 なんだこの可愛い小動物は!?

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

優也「じゃあな!」

 

結羽「うん!」

 

 そして、いつもの曲がり角で別れて家に帰る。

 

 だんだん漸く、『幸せ』の意味が分かってきた気がする。

 

 これが、この日々が幸せなんだ。

 

 俺の『幸せ』はこう言う事を指すんだな。

 

 こうして俺の『幸せ』な日が終わりをつげた。




 はい!第17話終了

 今回はかなり長くなってしまいました…

 せめても6000文字行けば分けたんですけどね…

 今回はここまで!

 次回もよろしくお願いします!

 ではでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第18話 中間テスト

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回は中間テストです!

 それでは本編行きましょう!

 では!

 第18話スタート


 学校祭も終わって本格的に秋の気候になってきた。

 

 まだ本当に寒いわけでは無いけど少し肌寒い。

 

 そして、俺はブレずに勉強を

 

 まぁ、あと1週間で中間テストだから仕方がない。

 

 本来ならば2週間前からテスト勉強をしたかったのだが…

 

 学校祭が終わったあと毎日毎日、交互に悠真と白波さんが冷やかしに来たもんで全く勉強がはかどらなかった…

 

 さすがに1週間前と言う事で来なくなって(ようや)く落ち着いて勉強が出来るもんですよ!

 

 今回は前回とは違って俺に教えてくれと頼み込んで来るやつは居な…

 

 ピンポーン

 

 居たわ…

 

 そして、俺は自室から出てインターホンの所に向かう。

 

優也「はい!どちら様ですか?」

 

『結羽です!今回も勉強教えてもらおうかな?と』

 

 こいつだけは変わっていないようだ。

 

優也「ああ、良いぞ」

 

 そう言って俺は玄関を開ける。

 

優也「上がってくれ」

 

 俺は結羽に入るように(うなが)す。

 

結羽「お邪魔しまーす」

 

 そう言って結羽は俺の家に上がった。

 

結羽「そういえば、何でいつも優也のお父さん居ないんですか?お父さんは居るんですよね?」

 

優也「それは父さんが朝早くから夜まで仕事をしているからだ。たまたま最近は仕事量も多くで俺が寝た後に帰ってくることも珍しくない」

 

 俺がそう説明すると結羽は『そうなんだぁ』と、相槌を打ってくる。

 

 俺にはそんな適当っぽい返事でも返事をしてくれる話し相手が居ることは幸せな事だと思う。

 

 今までの俺はクラスでボッチで浮いた存在だった。

 

 いつも一人で居るからだな。

 

 それで、近寄るやつも居なかった。だけど

 

 今、俺には話し相手が居る。これってかなりの進歩じゃないか?

 

結羽「寂しくないの?」

 

優也「大丈夫だ」

 

 俺は留守番慣れてるからな。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

自室

 

 俺達は俺の部屋で勉強をしていた。

 

優也「えーっとここがこうで、これがこう。これはこうなってこうなるからこうなるんだ」

 

 俺は適当な紙に問題の解き方を書きながら説明しているので、自然と『こう』と言う言葉を連発していた。

 

 我ながら教え下手だ…

 

 教えるのがうまい人ならばもう少しうまく説明出来るんだろうけど…

 

結羽「優也って勉強すごい出来るよね!」

 

 結羽がそう言ってきたから俺は『ああ』と返す。

 

 そしたら結羽がしんみりした顔でこう言ってきた。

 

結羽「それも七海ちゃんのために築きあげてきたんだよね」

 

 何で結羽がしんみりする必要があるんだ?それは俺の問題なのに。

 

優也「ああ、だが何で結羽がしんみりする必要があるんだ?」

 

結羽「だって、わ…し…わ…らな…くを…し…なんて」

 

 結羽が細々と呟いたので声は途切れ途切れでしか聞こえなかった。

 

結羽「ひゃうっ」

 

 俺は今にも泣き出しそうな結羽を反射的に撫でていた。

 

優也「大丈夫だ!今の俺にはお前らが居る!それだけでも心の支えになるんだ。俺は大丈夫だから泣くなよ」

 

 俺がそう言うと結羽は小さく頷き『うん』と言った。

 

優也「じゃあこの話しはおしまいにして勉強を再開しようぜ」

 

結羽「うん」

________________

 

次の日

 

春海「それではテストを開始します」

 

 そして、次々と俺達の机に問題用紙、回答用紙が配られる。

 

春海「始め!」

 

 その合図と共に一斉に問題を解き始める。

 

 今回はテスト勉強の時間が少なかったから不安である。

 

 そして、前回のテストの時に彗星(すいせい)(ごと)く現れた星野 光。今回こそは勝ちたいんだがな。

 

 (あいつ)は前回のテストで俺から一位を奪い去っていった。学力は俺と同等(どうとう)だろう。

 

春海「そこまで!」

 

 今回の範囲はどれも難しい範囲だったらしい。魔物の事もあるだろうが難しい事も(あい)まって、かなり落ち込んでいる人が多い。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 そして、すべてのテストが終わり、下校していた。

 

 現在、俺は一人で下校中

 

 悠真は用事があるとか言ってたな。

 

 結羽は今日、母が仕事で帰りが遅くなるらしいから毎日のように晩御飯を食べに来る冬馬の飯を作らなくてはならないらしい。

 

 その時

 

 公園のベンチで座り本を読んでいる女の子が目に入った。

 

 目を()らすとその女の子は星野さんだった。

 

 星野さんっていつも一人で本を読んでいる。まるで他の人との関わりを避けているみたいに。話しかけたら返してはくれるけどあまり仲良くなりたくないと言う感じだ。

 

 その姿はまるで昔の俺みたいだ。

 

 昔の俺は人を寄せ付けようとせず切りはなそうとしていた。

 

 結羽が居たから今の俺が居るんだよな。

 

 しかし、人を寄せ付けようとしないところ、昔の俺を見ているみたいで放っとけない。

 

 そして、俺は星野さんに近づいて行った。

 

光「何の用?」

 

優也「いつも一人で本を読んでいるけどどうしてなんだ?」

 

光「あなたには関係ない」

 

 似たような事をいってるよ。

 

優也「す、少し気になってな」

 

光「赤の他人に話す義理は無い」

 

 あのときの俺も

 

 

 俺はあまり他人とつるむ気は無い!

 

 俺とお前はほとんどお互いの事を知らない赤の他人だ!

 

 

 今となっちゃ何であのときこんなことを言ったのか馬鹿馬鹿しくなる。

 

 あのとき結羽に助けてもらった俺だからこそ分かる気持ちってのがある。

 

光「わかったら早く帰ったら?」

 

優也「いいや、俺は帰らないね!俺って以外と頑固な所があるから気になった事は聞かずにはいられないんだ」

 

光「迷惑な性格ね…」

 

 そしたらいきなり星野さんはベンチから立ち上がった。

 

 そして、こちらに向き直った。

 

光「何でそこまで私の事情を知りたがるのかしら?」

 

優也「星野さんを見てると昔の自分を見ている気分になるんだ」

 

光「そう、だけど私はあなたとは違うわ。私はあなたのように輝いて無いもの…

 

優也「え?なに?」

 

光「何でもないわ」

 

 後半部分の声が小さすぎてよく聞こえなかった。

 

 星野さんは何をもって違うと言ったのだろうか?

 

優也「まぁ、確かに違うな」

 

光「でしょ?なら

優也「心が」

 

光「…… え?」

 

 星野さんは意表をつかれたみたいな顔になって硬直してしまった。

 

優也「俺には分かる。星野さんはとっても他人思いのやさしい子だと。昔の俺の好きなことは他人の幸せだった。だがそれは俺の妹に向けて放った言葉なんだ。星野さんと話してて分かったよ。星野さんは昔の俺みたいに他人を無理に遠ざける事はしなくて、むしろ楽しんでるように見えた。」

 

光「何よそれ…それにしても、ふふっ、他人の幸せってナルシスト?しかも妹に向けて放ったって相当なシスコンね」

 

優也「俺はシスコンじゃない!」

 

 星野さんの言葉は落ち着いていて感情を表そうとはしないが、その表情は楽しそうだ。

 

 だけど、俺ってそんなにシスコンっぽいか?

 

光「でも、そうね…少しはあなたの口車に乗ってあげましょうか?それでは、さようなら」

 

 星野さんは勢いよく振り返り帰っていく。

 

 勢いよく振り返ったので髪の毛が綺麗なウェーブを描いた。

 

 そして心なしか振り向き様に微笑(ほほえ)んだように思った。

 

優也「あ、ああ、さようなら」

 

 本当は結構明るい子なのかもしれない。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

テスト返却日

 

 今回もベスト10まで公表される。

 

 先程すべてのテストが返されたので順位が貼ってある掲示板の所に来ていた。

 

優也「ふぅ…」

 

 何とか一位だった…

 

 星野さんは二位、少しミスをしたら抜かされてしまいそうだ。

 

 って言うことは星野さん、何かミスったのか?

 

 あの学力なら同一になってもおかしくないと思うんだが。

 

 俺が掲示板を見ているとそこに悠真がやって来た。

 

悠真「お!お前、(一位)の座を取り戻したな!」

 

優也「まぁ、今回はかなり不安ではあったが満点だ」

 

 この学校にはずば抜けて点数が高い2名が居る。その2名が俺と星野さんだ。

 

 (ちなみ)に三位との差は、今回の場合『15点』だ。まぁ、今回のは難しかったから仕方ないよね。

 

 星野さんは掲示板を見に来ていないが、彼女曰く『そんなものに興味が無い』だそうだ。相変わらず落ち着いた突き放し声である。

 

 でも、人間関係は改善しようと頑張ってるらしい。この前クラスの人に話しかけようとしてあわあわして、たぶんこれがアニメなら目をぐるぐる回していたのが可笑しくて思わず吹き出しそうになってしまった。

 

 まぁ、あいつ、言葉はきついけども、ちゃんと他人の話を聞いて取り入れたり、実行したりはするみたいだ。

 

 言い回しがいつも遠回しなんだよな。しかも、かなり素直じゃない。

 

 俺と悠真が雑談をしているとそこにどす黒いオーラを放った人物がやって来た。

 

 その人物は結羽だった。

 

優也「どうしたんだよ!結羽」

 

結羽「う、うぅ~、テスト…ヤバイ…」

 

 ほんとこいついつもヤバイヤバイ言ってるけど、よくこの学校、受かったよな。

 

悠真「よくこの学校受かったな」

 

 言った~!包み隠さず言った~!今それ言うか!瀕死の相手にとどめの一撃を放ちやがった!

 

 悠真、少しは状況を考えろよ!

 

結羽「う、うぅ…ユ゙ヴヤ゙ぁ~」

 

 とどめ一撃を刺され、結羽は涙目になってこちらを見ている。

 

 少し、同情してしまう。

 

 さすがに可哀想だと思ってしまったから。

 

 何かフォローしてやらねば!だが、何を言ってやれば元気つけることが出来る?

 

優也「え、えっと……そうだ!結羽には勉強が出来なくとも結羽にはちゃんと結羽の長所があるから安心しろ!」

 

結羽「たとえばどんな?」

 

 ギクッて肩を震わせる。

 

 俺は何も思い付かなかったため適当に並べた言葉なのでそこを考えていなかった。

 

優也「えーと……」

 

 その時、俺の脳裏に俺と結羽が友達になっ(・・・・・・・・・・)た時(・・)の事(・・)が浮かぶ。

 

優也「人を救うことが出来る」

 

結羽「? どう言うこと?」

 

優也「つまりだ。持ち前の優しさで他人とすぐに仲良くなれる。友達付き合いが得意って感じかな?」

 

結羽「そう……そんな風に思われてるんだ…

 

 結羽は頬を赤く染め、ゆらゆらと左右に揺れている。

 

優也「まぁ、そろそろ、次の授業が始まるから教室に戻ろうぜ」

 

 そして、そこで解散して、自分の教室に戻った。




 はい!第18話終了


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第19話 ハロウィン

 はい!どうもみなさん!時季を気にしない系ミズヤです。

 僕のラブコメでは時季を気にしたら完結が何年か先になってしまいます。

 なので今回は時季外れのハロウィンです。

 それでは!どうぞ!


 だいぶ寒くなってきた今日この頃

 

 吐く息も白い

 

 寒いと目が覚めね?え?覚めない?

 

 まぁ、良い、とにかくだ。

 

 とにかくだ。

 

 なぜこんなことを言い出したのかと言うと。

 

優也「寒いなかご苦労様です」

 

 俺ん家のストーブの前で三人震えていた。

 

 一人目は結羽だ。そして、二人目が悠真。最後に白波さんだ。

 

 なぜそこまでして俺ん家に来たのかと言うと

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 プルルルプルルル

 

 突如として自室で勉強をしていたら固定電話機がなった。

 

 今は父さんも仕事に行っているので仕方なく電話を取りに行き

 

優也「はい、どちら様ですか?」

 

『あ、俺、俺俺!』

 

優也「あ、間に合ってます」

 

 ガチャ

 

 ふぅ…こんなに早く結羽の家で学んだテクを使うことになるとは思わなかった。

 

 まさか、俺の家におれおれ詐欺を仕掛けようとする(やから)が現れるとは…

 

 そしたら、

 

 プルルルプルルル

 

 今度はなんだよ…

 

優也「あい、どちら様ですか?」

 

 少し適当な言葉で電話に出た。

 

『あ、私、私私!』

 

優也「あ、間に合ってます」

 

 まさか同じ日に似たような電話が来るとは…

 

 今のはなんだ?

 

 わたしわたし詐欺とでも言うべきか?

 

 語録(ごろ)悪いな。

 

 そしたら

 

 プルルルプルルル

 

 なんだよ同じような時間帯に三回も

 

優也「間に合ってます」

 

『え?ちょ!えええ?待って!どう言うこと?』

 

 めちゃくちゃ慌てた声を放ってきた。

 

 この声は恐らく

 

優也「あ、結羽か…ビックリした」

 

『ビックリしたのはこっちだよ!急に訳の分からないことを言って切ろうとするんだもん』

 

 ほんっとうにすみませんでしたー!

 

 俺は電話の前で綺麗な土下座を決める。

 

 相手には見えていないけどね。

 

優也「で、なんのようだ?」

 

『そうそう、今日ハロウィンでしょ?だからパーティーしようって誘ったんだけど悠真と白波さんは急に切られたって私に泣きついてきたんだよ?』

 

 あ、もしかして

 

優也「おれおれ詐欺をしてきた奴とわたしわたし詐欺をしてきたやつらか」

 

『何そのわたしわたし詐欺って語録悪いよ!』

 

優也「気にしないでくれ」

 

 (まぎ)らわしいあいつらが悪い。

 

優也「で、どこでやるんだ?」

 

『優也ん家』

 

優也「……」

 

『優也ん家』

 

優也「二度まで言わなくとも聞こえてるわ!何で毎回俺ん家なんだ!」

 

『優也ん家の方が何かと都合が良いんだよ』

 

 何で俺ん家だと都合が良いのだろう。悠真とか白波さんの家って言う手は無かったのだろうか?

 

『取り合えず今から向かうね』

 

優也「え?ちょ!」

 

 ガチャ

 

 き、切られた…あいつら、本気で来るつもりらしい。

 

 学校行ってきて、帰ってきてすぐに勉強を初めて、電話来て……って学校で言えば良かったじゃねーか!

 

 そしたら

 

 ピンポーン

 

 電話を切られたすぐあとにインターホンがなった。

 

 もしかしてあいつら俺の家の前で待ち構えていたんじゃないだろうな!

 

優也「はーい」

 

『悠真です!』

 

『真依です!』

 

 あ、結羽は来てなさそうだな。

 

 ってことは結羽が電話している間に結羽を置いてきたのか!

 

優也「結羽を連れてこい」

 

 そうしてインターホンを切った。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 そして、結羽を連れて戻ってきた三人は俺の家に入るや否や即行でストーブの前に行き占領した。

 

優也「どうするんだ?パーティー…家なんも無いぞ」

 

真依「だ、だだだ、大丈夫よ!ここにあるわ」

 

 おおー!それはありがたい!これで1食分浮く。

 

悠真「とにかく寒い。俺達、お前に閉め出されてからもうダッシュで結羽を迎えに行ったんだからな!」

 

 そんな逆ギレされても……今回は完全にお前らが悪い。

 

 俺は目を半開きにして悠真を見る。

 

結羽「そ、そんなに怒らないで下さい。なれてますので」

 

 なれてるって…悲しい…

 

 俺は同情の意味を込めて結羽の肩をとんとんと叩く。

 

結羽「え?何でそんな同情の視線を送って来るの?」

 

優也「だって…なぁ?」

 

 可哀想に…

 

優也「で、これから準備を始める訳だけれども、人数少なくね?」

 

結羽「しょうがないよ……だって……私たち知り合い少ないもん……」

 

 悲しい事実である…

 

優也「そうだ!結羽、冬馬を連れてこいよ!人数は多い方が楽しいだろ?」

 

悠真「お、お前がそんなことを言うなんて……明日は槍が降るのかな?

 

 なんだよこいつ!俺が珍しく乗り気になってやってんのに!

 

優也「とにかくだ。連れてきたらどうだ?」

 

結羽「うん!わかった!連れてくる!」

 

 そしたらストーブから離れて玄関から出ていった。

 

優也「よしっ!俺も行きますか!」

 

悠真「ん?優也はどこいくんだ?」

 

優也「ちょっとな」

 

 そして、俺も結羽のあとを追うように玄関に向かった。

 

優也「……お前、何やってんだ?」

 

結羽「ざふいぃぃ」

 

 結羽が声を震わせながら言ってきた。

 

 なるほど、寒くて戻ってきたのか…ってこいつらどうやって来たんだ?

 

優也「ほらよ、これ貸してやる」

 

 俺は着ていたコートを脱いで結羽に羽織らせた。

 

結羽「え?良いの?」

 

優也「ああ、じゃあ行くぞ」

 

 そして、俺は結羽と共に外に出た。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

結羽「そう言えば優也はどこか行くんですか?」

 

 相変わらずこいつは敬語タメ定まらないやつだ。

 

優也「ちょっとな、俺はこっちに用事があるからまたあとでな」

 

 そう言って結羽と別れる。

 

 俺が向かっている先…そこは…

 

 いつもの公園だ。

 

優也「俺の読み通りなら…あ!居た」

 

 そう、俺が探していた人は

 

優也「星野さん!やっぱりここに居た!」

 

 星野さんだ。

 

光「何よ」

 

 相変わらず口調が冷たい。

 

光「あ、あなたは、ナルシストでシスコンでロリコンの優也」

 

 いつの間に星野さんの中でそんな長い二つ名がついていたのだろう?

 

 取り合えず

 

優也「俺はナルシストでもシスコンでもロリコンでも無い!」

 

 俺はそういうのには全く興味が無い。

 

光「まぁ、良いわ。で、何のよう?」

 

優也「そうだった!完全に忘れるところだった」

 

 そして、俺は一回息を吐いてから吸い直して

 

優也「星野さん、パーティー来る気は無い?」

 

 そう、俺がなぜここに来たかと言うと星野さんをパーティーに誘うためだ。

 

光「何の?」

 

優也「ハロウィン」

 

光「………」

 

 そして、暫しの間があった。

 

 何この状況…とても気まずい…

 

 その沈黙を破ったのは星野さんだった。

 

光「行かないわ」

 

 と、星野さんが言った。

 

 断られた。

 

優也「何でだ?」

 

光「だって、私、興味ないもの」

 

 星野さんは相変わらずである…

 

 なんと言うか…星野さんらしいと言うか…何一つ変わってないようなって言うか…

 

優也「そうか…俺さ、星野さんと仲良くなるチャンスだと思ったんだがな」

 

光「あら、何いってるのかしら?私に偉そうにあれこれ言った癖に」

 

 『あ゙ぁ~~~~~~』と俺は心の中で発狂する。

 

 恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい

 

 なんなんだよ!あのときの俺は!

 

 今思い返してみると死ぬほど恥ずかしい。

 

光「それに、お互い無視出来ないような関係になってるんだし、これ以上仲良くなる必要は無いんじゃないの?」

 

優也「それでも、星野さんに友達と呼んでもらえる関係になりたい」

 

光「なら良いわよ。『友達』」

 

 え?

 

 い、今、俺のことを友達って!

 

光「友達、何してるのよ友達、用が済んだならさっさと帰ったらどうなの?友達」

 

 あ、あれ?

 

光「友達、あなたのパーティーには行く気は無いから帰ったら?」

 

優也「って、ちがーう!」

 

光「何がよ。ちゃんとあなたの事を『友達』と呼んであげたわよ?」

 

優也「違う!俺は友達って思って欲しかっただけで別に友達って名前じゃないから!友達って呼ばなくて良い!」

 

光「分かってるわよ優也」

 

 じゃあ、最初からそうしろよ…

 

優也「しっかし困ったな~~ このまま手ぶらで帰るのもな~~ なんて言えば良いんだろうか~~」

 

 俺は超絶棒読みで星野さんに向けて言った。

 

光「わ、分かったわよ!行くわよ!」

 

 よっしゃ!

 

 と、心の中でガッツポーズをした。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

優也「ただいま」

 

結羽「あ!優也!」

 

 俺が帰ると結羽と冬馬も居て既に支度を始めていた。

 

 俺が入った瞬間、結羽がキッチンから飛び出して来た。

 

 料理をほうって置いて良いのだろうか?

 

悠真「そう言えば少し用事があるとかなんとか行って出ていったが何してきたんだ?」

 

優也「ああ、それは」

 

光「お、お邪魔します」

 

 そう言って光が部屋に入ってきた。

 

 そして、結羽と目が合う。

 

結羽「これはこれは、学園の秀才の星野 光さんでは無いですか?秀才がこんなところに居て良いんですか?」

 

光「お気を使わずに、あなたとは違って(・・・・・・・・)私は天才(・・)ですのでこんなこと位では学力は下がりませんわ。そんなことよりあなたの方がヤバイのでは?すぐに家に帰って勉強してくれば少しは学力もましになると思いますけど?」

 

 怖い…この二人怖いです。

 

 笑顔なのに黒い…作り笑顔感が半端ないです。

 

 しかもお互いの間にバチバチと火花が散っています。

 

 どうしてお互いの事をそんなにけなし合うのかが意味不明です。

 

冬馬「待って!落ちついて!姉ちゃん!」

 

優也「そうだ!まずは落ち着け!」

 

結・光「「優也はちょっと黙ってて!」」

 

 思い切り怒鳴られた…だと!

 

 この二人はなぜか仲が悪いな。

 

真依「あらま…」

 

悠真「とうの本人が理由に気がつかないとは」

 

 あの二人は黙って見てるし…

 

 その(かん)もずっと争い続ける二人

 

 そしたら急にこちらを向き

 

結・光「どっちの方が好きなの!」

 

 どういう意味だこれは!

 

 取り合えず、途中から話の論点がずれていたことは理解した。

 

 取り合えずここは無難に

 

優也「どっちも好きだぞ?」

 

 その瞬間ピキッと言う音がしたような錯覚を覚えた。そして時間が止まったような…

 

 あれ?俺これ、何かとてつもないことをやらかしたんじゃ!

 

 そして、時は動き出す。

 

 結羽と光以外の人は皆、あちゃー…って頭を押さえている。

 

結羽「そう…優也がそんな人だとは思わなかった」

 

 表情に感情が見えなく、声も冷めている。

 

光「ふーん」

 

 星野さんにいたってはそれ以上なにもしゃべらない…星野さんの無言の圧力は何よりも怖いです。

 

悠真「優也、お前それ、最悪の回答だぞ」

 

 え?マジで?

 

 最悪の回答…なにされるか分からない恐怖…

 

 今まで悪感情(あくかんじょう)の中の1つ【悲しみ】の最高値は経験したことあるけど…これは悪感情の中の1つ【恐怖】の最高値だぞ。

 

 そして、俺が後ずさりしているとタイミングを合わせたかの用なタイミングで

 

結・光「バカ~~~ッ

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

優也「痛ててて…」

 

悠真「我慢しろ…自業自得(じごうじとく)だ」

 

 結局、二人は飯を食ってる時も仲が悪いままだった。

 

 悠真はなぜこうなったか知っているようだったが教えてはくれなかった。

 

 俺はあの後、数発叩かれて頭が痛いし耳なりが(いま)だにする。

 

 そして皆が帰った後、俺は部屋で考えても見たが全然理由が思い付かなかった。

 

優也「あれはいったいなんだったんだ?」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

光「はぁ…優也ってかなり鈍感ね」

 

結羽「あれが優也の欠点だね」

 

 二人は別の道を歩きながらも同じ話題でため息をつく。

 

結羽「次こそは!」

 

光「私が」

 

「「勝つ!」」




 はい!第19話終了!

 時期外れのハロウィン話いかがでしたでしょうか?

 さて、どちらが勝つのか!

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第20話 鈍感な俺は乙女心も全く分からない

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 前回のハロウィン、どうでしたか?

 今日は、普通の日常?です。

 それではどうぞ!


授業中

 

 さて、どうしたものか…

 

 あのハロウィンの後、なんとか結羽と星野さんの仲を取り持つ方法は無いかと思案(しあん)していた。

 

 しかし、

 

優也「なんも思い付かねー!」

 

 そして、クラスの全員が俺に注目する。

 

優也「あ、すみません…」

 

 しまった…口に出ていたらしい。

 

 ってか、まず、ああなった原因が分からない。

 

 そんな風に考えているうちにいつの間にか授業が終わり昼食を取ろうと準備をする人、購買にかけていく人がちらほら見えた。

 

 取り合えず、俺も腹が減ったので購買に行くことにした。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

購買部

 

 俺は取り合えず購買戦争をあきらめた状態で購買部に来ていた。

 

 そして購買部を見ると列が出来ている。

 

 やはりか…これは予想していたからたいして驚かない。

 

 そして列に向かおうとしたその時、後ろから声をかけられた。

 

悠真「お!優也!」

 

優也「なんだ…悠真か…」

 

 こいつと居ていい思いしたことがあまり無いため、あんまり一緒に居たくない人物である。

 

 だが、丁度良いかも知れない。

 

優也「悠真さ、星野さんと結羽がなぜ怒っていたか心当たり無い?」

 

悠真「あはは…」←心当たりありすぎて反応に困っている人

 

 なぜか悠真はなんとも言えない顔になって笑っている。

 

 なんなんだその反応は!どっちなんだよ!

 

優也「で、どうなんだ?」

 

 俺がそう聞くと、悠真が俺の肩に手を置いて耳元でこう言ってきた。

 

悠真「もう少し、あいつらの事を見てやれよ。お前、鈍いんだからどうせ、一人じゃなにもわかんないかも知れないけどな?」

 

 こいつ……アドバイスに見せかけて、実は俺のことをバカにしてるな。

 

 しかも、若干(じゃっかん)楽しんでいるようにも見える。

 

優也「ほっとけ」

 

 俺はそう言って悠真の手を振りほどき購買の列に並んだ。

 

悠真「やれやれ…先は長そうだ…」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 あの後、俺はパンを買って食べ、午後の授業も終わり、後は帰るだけだ。

 

 そして、俺は今玄関目指して歩いていた。

 

 その時

 

真依「おおー!優也君じゃないか」

 

 そこに白波さんがやって来た。

 

 そう言えば学校の廊下で会うのは久しぶりのような気がする。

 

優也「で、なんのようですか?」

 

真依「いやぁ、あの後大丈夫だったかな?って仲悪くなったりとか」

 

 あの後と言うとハロウィンの時の事か?

 

 って言うか白波さんがなんでそんなことを気にする必要があるんだ?

 

真依「あ、そんなことよりも私、急いでるから、行かなくちゃ!」

 

 やはり生徒会長ともなるとかなり忙しいんだなぁ

 

 その時

 

「かぁ~い~ちょ~」

 

 少し遠くの方から半ギレの声が聞こえてきた。

 

真依「ま、まずい!」

 

優也「ちょっとちょっと、何やったんですか?」

 

 そうしている間にも半ギレのおぞましい雰囲気が近づいてきて、ついには薄暗い霧まで現れた。

 

 これは本能的に危険を感知しているのだろう。

 

「かぁ~い~ちょ~?見つけましたよぉ?」

 

 その半ギレの人物とは神野さんだった。

 

夕香「会長!何抜け出してきてんですか!こっちは忙しいと言うのに!会長だって分かってるじゃないですか!」

 

 あー…分かってしまった…分かりたくないけど分かってしまった。

 

 うん、これあれだ。

 

優也「今回のは白波さんが悪い。いや、いつも悪いか」

 

真依「ちょっとひどくない?」

 

優也「神野さん、こう言うことですよね?」

 

 この時期は生徒会が忙しくなりほとんど毎日ギリギリまで学校に缶詰め状態に

 

 白波さんはいやになり抜け出して俺と遭遇

 

 神野さんは白波さんが居なくなったことに気がつき追ってきて今に至ると

 

夕香「まぁ、だいたいそんなものですね」

 

優也「どうしてこの時期は忙しいんですか?」

 

夕香「それはね…生徒達の仲違いよ…」

 

 ん?待てよ?

 

優也「なんでそれで生徒会が?」

 

真依「以前の会長がお人好しでね…悩みを聞いたり生徒達の問題を解決したりしていたのよ…で、それが今も続いていてね…こっちはいい迷惑よ…」

 

 なるほど…

 

 きっと以前の生徒会長は優しくて人望があつい人だったんだろうな…

 

 でも、それらすべてが生徒会の所に来るって大変だな…

 

夕香「全く…会長は会長としての自覚を持ってください!」

 

 全くだ。白波さんは一切自覚がない。

 

真依「だ、だってぇ~」

 

優也「あ、それよりも、さっきの続き話しましょうか」

 

夕香「ん?続き?」

 

真依「あ、そうよ!先日の奴だけれども、二人の事をどう思ってるのよ!」

 

 どうって、そりゃ

 

優也「友達?」

 

真依「そう言うことじゃなくて、異性として好きかどうか?という事よ!」

 

 異性としてか……

 

優也「どうなんだろうな? 正直、そう言うのあんまりわかんない」

 

夕香「? ? どう言うこと?」

 

 あ、この話を知らない神野さんは頭に(はてな)マークを浮かべている。

 

真依「神野ちゃん…実はかくかくしかじかでね」

 

夕香「そうなんですか?この男、サイテー過ぎますね」

 

 えぇ!なんでそうなるんだ!白波さんに何を吹き込まれたんだ?

 

夕香「とにかく、この問題は長引きそうなので柴野さんと星野さん?に謝ってきて下さい」

 

 くっそー!何が悪かったんだよ!

 

 どこが悪かったのかが分からないのは困る。反省して次に繋げようが無い。

 

優也「わ、わかりました…謝ってきます…」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

優也「結羽、ごめん!」

 

結羽「ふーん…わかってないでしょ?何が悪かったか。それなのに謝らないで!」

 

 

 

優也「と言う感じで追い返されました」

 

夕香「とにかく全部悪いので一つ一つあげてたらきりがありません」

 

 そ、そんなにか!

 

 俺、そんなにほとんど関わった事の無い人に言われるほど悪いか?

 

優也「どうすりゃいいんだ!」

 

夕香「とにかく、あなたは乙女心を学んできてください!あなたの欠点はそこだと思います」

 

 うーん…一理ある

 

 だが、しょうがないと思うんだ!あいつらの態度がわかりずらすぎるんだ!

 

 俺に何をしてほしいんだよ…

 

 これは俺に限らず、この世の男性ならば一度は乙女心について悩んだ事があるはず。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 

 今日、父さんは仕事が早く終わり、今父さんと飯を食べていた。

 

 折角だし、大人の意見でも聞こうかな?

 

優也「なぁ、父さん、乙女心ってなんだと思う?」

 

父「おお!お前もついにそういうのを気にするようになったか!良い徴候(ちょうこう)だ!」

 

 そう言って父さんはニヤニヤしている。

 

 そうやって父さんはいつも俺をちゃかすから相談するのが嫌なんだよな…

 

父「そうだなぁ…俺も乙女心について考えた時期もあったな。お前にとっては辛い話かも知れないが、今でこそ母さんはあんなだが、昔の母さんは優しくておしとやかでいい人だったんだ。そして、あの…結羽ちゃん?だっけ?あの子みたいに気が難しかったんだ」

 

 急に父さんは昔の母さんの話をしだした。

 

 昔の母さんも結羽みたいだったらしい。

 

父「俺はどうにか頑張って成功したが、優也は今のままが良い。結羽ちゃんも今の優也が好きなんだと思うぞ?結羽ちゃんだけじゃない。優也の周りにいる人皆、今の優也が好きなんだと思う」

 

 そうなのか?

 

 結羽にはしょっちゅうバカって言われるし、悠真と白波さんには呆れられるし、星野さんの反応はよく分からないし、神野さんに至ってはあってすぐに俺の全部が悪いと言われる始末

 

 これで()かれてると思うか?

 

 まぁ、確かにあれだけなっていて、俺から離れていかないのが不思議であり。たまにうざいと思うことはあるな。

 

 やはり、乙女心はわかりずらい。悠真も教えてくれれば良いのに…

 

優也「…そうなのかな?…わかった。ありがとう」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

優也「ほんっとうにごめん!」

 

結羽「だから、何もわかってないのに謝らないで!」

 

優也「ああ、分からない(・・・・・)。乙女心と言うのは一切これっぽっちもな!」

 

 だが

 

優也「出来る範囲での配慮はする。わかる範囲でだが、俺は確かに前、結羽に言われた通り俺はアホでバカで鈍感だ(・・・・・・・・・)

 

 今まで俺が言われ否定していた事をすべて肯定(こうてい)する。

 

優也「ラノベ主人公(・・・・・・)でも何でも好きに言うと良い」

 

 それでも

 

優也「それでも、お前らが満足出来なければ、俺から離れていくと良い」

 

「やっぱり、優也は優也だな」

 

 そう、後ろから声が聞こえた。

 

 俺が振り返るとそこに居たのは

 

優也「お前ら、聞いていたのか?」

 

 悠真、星野さん、白波さん、神野さんが居た。

 

結羽「うん!それでこそ優也だよね」

 

光「はぁ…なんと言うか…本当、バカよね?」

 

優也「言っとけ」

 

真依「かっこよかったよー」

 

夕香「今の台詞、かっこ良かったので生徒会新聞に乗せて良いですか?」

 

優也「どんな風にですか?」

 

夕香「見出しはこれです」

 

 

 

 

 一年生生徒

『廊下で愛のプロポーズ!?』

 

 

 

 

優也「ダメだ。そもそも、これを記事にさせる気は無い」

 

夕香「なんでですか!」

 

優也「そもそも、俺はプロポーズをしていたわけじゃ無い!」

 

夕香「えーっ!でも、今の言葉、どう聞いてもプロポーズでしたよ?」

 

優也「まず、付き合ってすらいねーよ!」

 

結羽「ぷ、ぷろ」

 

 結羽は顔を林檎(りんご)のように真っ赤にさせて顔を手で(おお)っている。

 

 結羽も本気にするんじゃねー!

 

 皆、俺達のやり取りを聞いて笑っている。

 

 この笑顔を見て、俺は1つ確信した。

 

 皆が俺から離れていくのは少なくとも1年や2年じゃないかなり先の話になりそうだ。




 はい!第20話終了

 今回、少し優也さんにかっこいい台詞を入れたかったんですよ。

 まぁ、そのあとの台詞で台無しですが

 それでは!

 さようなら!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第21話 いつも通りじゃない日常

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回は期末テストと+αです。

 それではどうぞ!


 時は11月中旬

 

 今まさに、秋から冬に変わろうとしている時期。

 

 そして、11月と言えば、『期末テスト』ついにこの時が来てしまったか…

 

 そして、例のごとく家で勉強。そして、こちらも例のごとく結羽も居る。

 

 今回もテスト、ヤバイらしい。

 

 毎回思うけど、なんでこいつ、この学校入ったし…

 

結羽「優也、ここどうやって解くの?」

 

優也「それは、ここをこうして、これを解けば解けるよ」

 

 俺は一学期までだったら、少し凡ミスをしても順位は一位だったけど、二学期では星野さんも居ることだし、俺が一位を取るためにはかなり頑張らなくてはならない。

 

 そして、今は結羽を利用して、自分の復習の最終チェックをしている。

 

 結羽に完璧に説明出来た時点で、その場所は完璧だと言う事だ。

 

結羽「優也はすごいね。勉強こんなに出来て」

 

優也「俺だって最初からこんなに出来た訳じゃない」

 

 中学から死ぬほど勉強したからな。

 

 まぁ、それが今役に立ってるって事だな。

 

結羽「わ~か~ら~な~い。数学?理科?なにそれ美味しいの?」

 

優也「数学なら悠真に聞いてこい。あいつ、唯一数学では俺についてこれるからな」

 

 中学時代、悠真に勉強を教えてもらってたのが懐かしいぜ。

 

 結羽は頭を手で抱え込んでうずくまってしまった。

 

優也「数学と理科が苦手なのはわかったけど、逆に何が一番得意なんだ?」

 

結羽「ん?英語だよ」

 

 こりゃまた驚いた。

 

 漢字とかダメダメの癖に英語は得意なんだ。

 

結羽「じゃあ、昔の勉強が出来なかった?時の優也の一番得意だった教科は?」

 

 昔の得意だった教科か…

 

 確か…

 

優也「理科だな」

 

結羽「へぇ…そうなんだ!意外!」

 

優也「なぁ?ブーメランって知ってるか?」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

結羽「今日はありがとう!」

 

優也「少しは自分で考えろよ…」

 

結羽「優也の教えかたが良くてすごく分かりやすいから、どうしても頼っちゃうんだよね」

 

 っ!こいつ…

 

 こんなことを言われたら悪い気がしないじゃねーか。

 

 ひそかにこいつになら毎回来られても良いかな?って思ってしまっている。

 

結羽「じゃあね」

 

優也「ああ、じゃあな」

 

 そして結羽は自分の家へ帰った。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

テスト当日

 

 今回もいつも通りの定期テスト

 

 しかし、今回の範囲は少し量が多かったな。少し勉強した程度じゃ全然好点数なんて取れない。

 

 そして、テスト監督の先生から始めのの合図を告げられる。

 

 その瞬間、いつも通り、テスト時静かなので鉛筆シャープペンの音がよく響く。

 

 そして俺もペンと言う武器を持って魔物に攻撃する。

 

先生「終了!」

 

 そしてテストが終わる。

 

 少し難しかったが、解けない程ではなかった。

 

 そして、すべてのテストが終了した。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

廊下

 

 俺は帰るために廊下を歩いていた。

 

 myライバル星野さんはいつも通り「点数に興味ないわ」って言うんだろうな。

 

 そして、結羽はいつも通り「優也ぁーーーっ!」って泣きついてくんのかな?

 

 その時

 

結羽「優也!」

 

 やっぱり

 

 そしてこのまま泣きついてくんのかな?

 

結羽「やったよ!いつもより出来た!」

 

優也「明日は地球最後の日か…この人生、最悪な事もあったけど楽しかった…あr」

 

結羽「なに最後の遺言を言ってるの!?しかもそれって酷くない?私の事をなんだと思ってるの?酷いよ!優也!」

 

 いや、ごめん。まさか結羽がテストの点数が良くなるとは…

 

 まぁ、今回は結羽も頑張ってたからな。毎日俺の家に押し入って勉強していたからな。おかげて俺はへとへとだ…まぁ、バカと変なやつが居なかったらまだましだが。

 

 結羽は頬を膨らませて怒っている。

 

優也「わるいわるい。だからそんな怒んなって」

 

結羽「優也はいつもそうだよ…いつも私の事をバカにして!」

 

優也「ごめんごめん…その代わり何でも一つ、言うことを聞くから…な?」

 

 と、俺は結羽の頭を撫でる。

 

 すると、結羽はうつむいてしまった。

 

結羽「むぅ…な、何でも?」

 

優也「おうっ!」

 

結羽「じゃ、じゃあ」

 

 と、結羽は両手の人差し指を合わせてもじもじしながら

 

結羽「じゃあ、今度の休日、デートして!」

 

 と、上目使いで行ってきた。

 

 でーと?でー…と?デート!

 

 うーん。まあ、いいか。

 

優也「良いぞ」

 

結羽「やったー!」

 

 と、本気で喜ぶ結羽。

 

 そんなに俺とデート出来ることが嬉しいのだろうか?

 

優也「じゃあ今度の休日な。じゃあ帰るぞ」

 

結羽「うん!」

 

 そして結羽は俺の後ろについてきた。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

休日

 

 俺は少し早くに家を出て待ち合わせ場所に来ていた。

 

 両者共にお互いの家を知ってるから向かえに行けば良いかな?と、思ったけど、結羽に「こう言うのは雰囲気が大事だから」と言われ、初めてまともに会話したあの公園で待ち合わせることにした。

 

 少し早く出すぎたかな?

 

 家に居ても勉強くらいしかやること無いし、ゲーム機も一応あるが、数年間触ってないので埃を被ってる上に、暫くゲームなんて買ってないから旧型のゲーム機しかない。

 

 =暇なのである。

 

 少しスマホでニュースでも見てるか。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

数分後

 

結羽「ごめん!待った?」

 

優也「あ、いや、そんなに待ってないぞ?それに、まだ集合時刻30分以上前だからな」

 

 うん。けっして遅くない。むしろ早くつきすぎた。

 

結羽「ちょっと髪のセットに時間がかかっちゃって」

 

 まぁ、しょうがないよね?女の子だからな。

 

 と、結羽を真っ直ぐ見る。

 

優也「…」

 

 俺は絶句した。

 

結羽「ど、どうしたの?も、もしかして服にどこかおかしなところが?」

 

優也「か、」

 

結羽「か?」

 

優也「可愛い…」

 

結羽「本当!」

 

 本当だ。マジで可愛い。

 

 何回か結羽の私服を見たことがあるが、それよりも格段に可愛い。天使だ!

 

 結羽って本気でおしゃれするとここまで可愛くなれるんだな!

 

優也「すごく可愛いぞ」

 

結羽「えへへ…なんか面と向かって言われると照れるね」

 

 確かに…言ってるこっちは照れると言うより恥ずかしいと言う感じだ。

 

結羽「じゃあ行こう!」

 

優也「ああ」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

ショッピングセンター

 

 俺達は早速この街最大のショッピングセンターに来ていた。

 

 と言うか大型の店っていっていったらここ以外無い。

 

 後は小さい電気屋、コンビニ等がある。

 

 ここは田舎と言う程でもないが都会でもない。どちらかと言えば田舎よりの街だ。

 

優也「何か買うのか?」

 

結羽「新しい服でも買おうかな?って」

 

 なるほど…で、俺居る意味ある?

 

優也「買ってきな?俺待ってるから」

 

結羽「分かってない!」

 

 俺が待ってるといった瞬間、大きい声で言われてしまった。

 

結羽「それじゃデートの意味無い!デートの定番知ってる?」

 

 いや、知らないんだが、そんな顔を近くして言わなくとも全然分かるから。

 

 今、俺と結羽の距離は俺が少し前に動いたら唇がふれ合いそうな距離だ。

 

結羽「デートの定番、一つ目!遊園地!」

 

 うん。まぁ、これは分かる。

 

結羽「二つ目は手を握る!」

 

 うーん…分かるような…分からないような?

 

 俺はさ、手を繋ご?と言われたらよほどの他人じゃなきゃ断らない。

 

 出会って10秒で手を繋ご?と言われたら流石に引かざる終えないけど。

 

結羽「そして三つ目!ショッピング♪」

 

 ノリノリだなぁ…

 

 だが、恋人同士でショッピングって俺にはちょっと他の人とでも出来るから他の事をした方が良いように思えてくる。

 

結羽「分かってないよ!彼氏が彼女の服選びを手伝う!これが醍醐味なんでしょ!」

 

優也「うーん…そんなもんか?」

 

結羽「そうだよ!」

 

優也「まぁ、結羽がそこまで言うなら行くが」

 

 まぁ、俺もデートをokしたわけだし、最後まで付き合ってやるか。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

結羽「これとこれ、どっちが似合う?」

 

 うーん…どっちも可愛いんだよな…結羽ってなに着ても可愛くなると思うんだよ。

 

優也「どっちもってのはダメ?」

 

 そうすると、結羽が試着室から出てきた。

 

結羽「んもう!優也はさっきからそればっか!」

 

 いや、だってよ…選べないんだよ…

 

結羽「逆に優也の好みな服って何?」

 

 うーん…そうだ!

 

優也「清楚なのが好きなんだよ」

 

結羽「それは知ってる。だから清楚なので攻めてみたのに中々どっち付かずなんじゃん!」

 

優也「んなこと言われてもよ…うん。結羽がなに着ても似合うのが悪い」

 

結羽「はぅぅ…」

 

 結羽は急に顔を真っ赤にしてうつ向いてしまった。

 

 気を悪くさせただろうか?

 

結羽「もういい!知らない!これで良い」

 

 そしたら選択肢の中の一つを適当に選んでいってしまった。

 

 でもさ?何でも似合う女の子ってさ?なんか、良いよね?

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 俺達は服屋からでて違うコーナーに行こうかな?と移動していた。

 

 その時

 

 結羽が急に立ち止まってしまった。

 

 なんだろう?と思ってたら、俺を引っ張ってT字路の角の壁に隠れた。

 

優也「なんだよ?」

 

 そして結羽はなにも言わず指を指す。

 

 そこには悠真と白波さんが居た。

 

 二人で何をしているんだろう?

 

 そしたら結羽はいきなり

 

結羽「少し買い物してくるから待ってて」

 

優也「じゃあ着いていくよ」

 

 まぁ、さっき定番リストに載ってたからな。

 

結羽「い、いや…その…これから買いに行くのは…だから」

 

 結羽はすごく真っ赤になりながらそう言ったがはっきり聞こえなかった。

 

優也「?」

 

結羽「だ、だからこれからか下着を買いに行くの!」

 

 なんと!

 

 でもまぁ

 

優也「俺は気にしないぞ?」

 

結羽「私が気にするの!」

 

 ああ、そう言うことか…

 

優也「ならまってるよ」

 

 そして結羽はタタタと行ってしまった。

 

 俺の記憶が正しかったらレディースの下着コーナーはあっちじゃ無いはずだけど。

 

 それより、あの絶壁に下着なんて要るのか?

 

 そんなことを考えていると結羽はもう見えなくなった。




 はい!第21話終了

 次回は結羽の視点から始まります。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第22話 クリスマスが誕生日

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回も前回の続きです。

 そして結羽視点から始まります。

 それではどうぞ!


side結羽

 

 私と優也でデート…優也からしたら(もど)きなんだろうけど…をしていたとき

 

 なんと珍しいプライベートの悠真と白波さんコンビが居た。

 

 そのため少し気になってしまったのだ。

 

 だから優也には悪いけど…し、下着を…買いにいくと言って悠真達の方へ向かった。

 

 そして追っていると二人はお土産コーナーに入っていった。

 

 何でお土産?

 

悠真「…には…が…な?」

 

真依「い…ん…ない?…も…と…お…よ?」

 

 二人から遠いいため、二人の会話がよく聞こえないけど二人はどうやら品定めをしているようだ。

 

 いっそのこと堂々と話しかけるか?

 

 まぁ、私は怪しいことをしているわけじゃ無いから良いんだけどね。

 

 よし、出よう。

 

 そして私は二人に近づいて声をかける。

 

結羽「二人とも何してるの?」

 

 私がそう問いかけるとすぐに返事が帰ってきた。

 

悠真「ああ、結羽も来てたのか。…なら結羽も手伝ってくれるか?」

 

 手伝う?何をだろう?

 

真依「悠真君によればね?12月25日が優也君の誕生日なんだって!クリスマスが誕生日ってなんか良いよね?あ、だけど私だったら嫌だな…」

 

 へぇ~!丁度クリスマス生まれなんだ!

 

 これでまたひとつ優也の事を知れた…ふふふ…

 

 まぁ、凶器染みた思考はこれくらいにして私は率直な問いを投げ掛ける。

 

結羽「何で嫌なんですか?」

 

真依「だって、クリスマスプレゼントと誕生日プレゼントを一緒にされそうじゃない?」

 

 あー、確かにそうかも。

 

 子供にとってはそれは深刻な問題だよね?

 

悠真「まぁ、結羽に知らせなかったのには理由があるんだがな…バレたらしょうがない」

 

 ん?理由?

 

悠真「すぐに表情とかに出るから優也にバレそう。バレたらあいつ、ことごとく祝われるのを嫌がるからその時点でパーティー計画が水の泡だ」

 

 あ、なんか…すみません…分かりやすくて…すみません…

 

真依「まぁ、と言う事なのよ。まぁ、結羽ちゃんにも直前に教えるつもりだったんだけどね」

 

 よ、よかった…

 

 ハブられてたらどうしようかと思った…

 

結羽「で、誰を計画してるんですか?」

 

悠真「俺が知ってる範囲での最近優也が仲良くしてる面子だな。ここの3人は勿論。星野さんもかな?」

 

 うげっ!

 

 星野 光まで…うぅ…

 

 まぁ、しょうがない!だけど、星野さんには最終的に勝って見せる!

 

 あとは…あ!そうだ!

 

結羽「その日、とうまも誘って良い?お母さんがクリスマスだと言うのに遅くなるらしいから」

 

 私がそう言うと、悠真はすぐにOKしてくれた。

 

 じゃあ、そうと決まれば、プレゼントをどうするかだよね。

 

 私はいつももらってばかりだからたまには返さないと

 

 お祭りの時にもらったネックレスと誕生日にもらった優也手作りのハンカチは私の宝物になってます。

 

悠真「うーん…そうだ!結羽もさ手作りをしてみたらどうだ?手作りの方が喜んでもらえると思うぞ?」

 

 な、なるほど…

 

結羽「お菓子とかを作って血を少量混ぜるんだね?」

 

悠真「おい!そのヤンデレ的な発想やめろ!」

 

結羽「や、やだな~冗談ですよ」

 

 と、笑いながら返す。

 

悠真「いや、マジで最近の結羽を見てると冗談に思えないんだが?」

 

 え?

 

 周りからはそんな風に見えてるの?

 

 そこまで病んでた?そんな行動をした覚えが無いんだけど…

 

 た、確かに優也の事は好きだけどそこまで病むほどでは無いと言うか…丁度いい位と言いますか…まぁ、優也が、鈍すぎるから一回なってやろうか?と、思ったことはあったけど私にはそんな度胸は無かったと言いますか…

 

 うーん…でも、私が手作りして喜んでもらえるかな?

 

悠真「とりあえず、考えておくと良いと思うよ?まだ11月だから」

 

結羽「うん。そうするよ」

 

 そう言って私は悠真達と別れて優也の所に戻った。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

side優也

 

 暇だな…

 

 世の女性の彼氏の気持ちがよく分かったような気がするよ。

 

 女性の買い物って長いよな?

 

 と言うか、結羽の奴、どこ行ったんだ?さっき…

 

 なんか、下着買いにいく!とか言って逆方向向かったし。

 

 最近のあいつの言動がおかしいのと何か関係あるのだろうか?

 

 やっぱり、女心はよくわからん…

 

 そういや中学の頃も一回だけ悠真に「お前は女心を全くもって理解していない」と言われたっけか?

 

 あれ?言われたのってどのタイミングだっけ?いつだっけ?

 

 俺がそんなことを考えていると結羽が手を振りながら駆け寄ってきた。

 

 そんな彼氏彼女的な乗りやめろ!

 

 ただでさえ結羽の見た目が幼いため、周りからの視線が冷ややかになってて落ち着かないんだから。

 

 もう少し見た目なんとかならんのか?

 

 どんな服を着ても幼さが消えない結羽に言ってもしょうがないか。

 

結羽「むぅ…今、なんか失礼なことを考えなかった?」

 

 だ、か、ら、何でいつもこいつは俺の心を読んでくるんですかね?

 

優也「そ、それより、他に行きたい場所とか無いのか?」

 

 俺はとっさに話をずらした。

 

 我ながらひどいごまかし方だ。

 

結羽「そうだね…じゃあ優也は何も買ってないけどどうするの?」

 

 そういえば何も買ってないな。

 

 よしっ!

 

優也「じゃあ父さんが遅いときのためのカップ麺でも買い足して「優也?」…すみません」

 

 俺がカップ麺でも買おうかな?と言ったら結羽のトーンの低い声に圧倒され、とっさに謝った。

 

結羽「優也のお父さんが遅いときは私が料理を作る!優也に拒否権は無い!」

 

優也「いや、まぁ、断る話でも無いんだがな。結羽の作った飯を食べられるんだから俺にとっては良いことしか無いわけで…」

 

 俺がそこまで言うと結羽の顔が耳まで赤くなってうつ向いているのに気がついた。

 

結羽「い、いつもそうやって…純粋に言ってくるところ…ずるい…」

 

 何やら小声で結羽は何かを言ったようで俺には聞こえなかった。

 

優也「ん?何か言ったか?」

 

結羽「し、知らないもん!そんなラノベ主人公補正(・・・・・・・・)がガッツリかかっている優也なんて知らないもん!」

 

 もんって…なにげに結羽が使うと可愛いな…幼さが際立(きわだ)つ。

 

 ってかラノベ主人公補正ってなんだよ!

 

 ったく…いつもわけわからん事を言いやがって…

 

結羽「と、とにかく…次、どこにいく?」

 

 特に行きたいところってのが思い付かないが…

 

 その時

 

 きゅぅ~

 

 と、可愛らしい音が聞こえてきた。

 

 結羽を見ると顔を真っ赤にしてお腹を押さえている。

 

 なるほど…

 

優也「飯でも食いに行くか?」

 

 俺がそう言うと結羽は小さく頷いた。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 俺達は適当に近くにあったカフェに来ていた。

 

 ふーん…色々な物があるな。

 

 コーヒーと、パスタにするかな?

 

 あ、あわなそう…なんちゅうアンマッチングだ。

 

優也「結羽は決まったか?」

 

結羽「み、魅力的なメニューばかりで目移りする!」

 

 ふーん…まぁ、嬉しそうで何よりだ。

 

結羽「じゃあメロンソーダとホットケーキで…あとパフェも!」

 

 甘いものばかりだな。

 

優也「結羽。甘いものばかり食べてると太るぞ?」

 

結羽「優也…そういう話は女の子にするものじゃないよ?デリカシーが無いよ?」

 

 あ、それはすまん…

 

 俺はもう少し女の子の心を理解してやりたいな…

 

 今までは女の子に関わることなんて無かったから気にしなかったけど…

 

 そんな話をしていると注文した物が届いた。

 

結羽「美味しい~」

 

 本当に美味しいものを食べたら人間って表情が緩むもんなんだな…はじめて知った。

 

 そして俺もパスタとコーヒーを食べる。

 

 うん。

 

 分かりきってたけど合わない。

 

 だけど俺はコーヒーが好きだから関係ないのだ。

 

 まぁ、元々は父さんが好きでコーヒーメーカーを買って俺も飲んでるうちに好きになったって感じなんだけどな。

 

結羽「優也ってさ。いつもコーヒーを飲んでるイメージがある」

 

 まぁ、おおかたそのイメージで合っている。

 

 いつも俺はコーヒーを飲むくらい好きなのだ。

 

 そして食べ終わった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 俺がレジに向かうと

 

結羽「いつも私が奢ってもらってるから今日は私が!」

 

 と、言ってきた。

 

 だが、こう言うときは男として引き下がってはいけないような気がする。

 

優也「良いから。こう言うときは男が奢るもんだから。幸い、小遣いはあまり使わないから結構あるし」

 

 まぁ、最近は今までに無いレベルの早さで無くなって来てるんだがな。

 

結羽「で、でも」

 

優也「素直に奢られろ」

 

 そう言って俺が奢ってやった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

結羽「今日は私のわがままに付き合ってくれてありがとう」

 

 と、お礼を言ってきた。

 

 べつに礼を言われたくて付き合ったわけじゃないんだけどな。

 

優也「良いって。これくらいならいつでも付き合ってやるよ」

 

 そして「じゃーな」と言って家に帰った。




 はい!第22話終了

 次回辺り優也の誕生日にしようかな?と考えています。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第23話 誕生日って…こんなに疲れるものだっけ?

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回で二学期終了ですが、終業式?知らない子ですね。

 それではどうぞ!


side優也

 

 はぁ…今日で二学期も終わりか…

 

 なんか二学期は色々と濃かったと思う。

 

 結羽の誕生日があったり学校祭があったり

 

 そしてこの時期がやって参りましたよ?

 

 明日は俺の誕生日なんだが、悠真がお節介を焼く気しかしない。

 

 今日は12月24日。クリスマスイブだ。

 

 そして終業式があり、やっと冬休みに入るのだが…

 

 明日は俺の誕生日

 

 毎年この時期になると

 

 ピンポーン

 

悠真「happybirthday 優也!」

 

 …

 

真「お引き取り願おう」

 

 と言った感じのやり取りがあった。

 

 悠真が転校してからは来年からはしつこくされずに済む!って思ってたんだけどな…

 

 今年は悠真だけじゃなく白波さんまでもが居る。

 

 絶対白波さんなら悠真から話を聞いた瞬間、面白がって悠真と来るだろう。

 

 結羽も例外では無い。

 

 他の二人とは違う考えで来るだろうが、祝われるのが大の苦手だ。

 

 はぁ…今日来たら今日は父さんも休みだし五月蝿くなる…

 

 具体的にどのように五月蝿いのかと言うと、「本命はどの子なんだ?」って感じに面白がって俺に聞いてくる。

 

 はぁ…憂鬱だ…

 

 明日(あす)が誕生日だと言うのにこの憂鬱感…そうそう無いと思うよ?

 

 俺はひっそりと身内だけに祝われていたらそれで幸せだから。

 

 わざわざ騒がしくする必要は無いと思う。

 

 明日は…ね?

 

 うん…来ないでほしい…

 

 まぁ、単純に年を取りたくない…まぁ、この年で言うなって話だけどさぁ…悠真が以前暴れ回ったんすよ。あれは七海もさすがに引いていたな…

 

 元々、騒がしくしたいタイプじゃないし…

 

 とりあえず、今日の復習でもして寝るか…

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

side結羽

 

 うーん…どうしようかな?

 

 明日へと迫った優也の誕生日

 

 プレゼントがいっこうに思い付きません!

 

 だって…いつもの優也を、見てて全然欲が分からないんだもん…

 

 優也って本当に欲が少ないよね?

 

 いや、あるね…シスコン…

 

 それ以外思い当たらないよぉ…

 

 妹…いっそ、優也に「お兄ちゃん♡」って言ってみる?

 

結羽「ああああああああああっっっっ!」

 

 自分で想像しながらも恥ずかしくなり自分が今横になっているベットを叩く。

 

 うぅ…こ、これはかなりの強敵…

 

 本当に優也は欲を出さない…だからこう言うときに困る…

 

 はぁ…

 

「ねえちゃーん!お腹すいた~!」

 

 私が考え事をしているとリビングの方からとうまの声がした。

 

 どうやらお腹がすいたようだ。

 

 うーんそうだね。何か作ってみよう。お守りとか?

 

 そう考えながら私はご飯を作りに向かった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

次の日

 

悠真「ぐへへへ…ターゲット確認…これより家の主に気が付かれないように行動し、奴が府防備にドアを開けた瞬間突入するぞ!」

 

真依「おー!」

 

結羽「二人とも?不審者みたいだよ?だから優也に閉め出されるんだぞ?」

 

 そう…私達は一回、優也の家に行ったのだ。

 

~~~~~~~~

 

回想

 

 ピンポーン

 

 私達がインターホンを押すと中から優也が出てきた。

 

優也「へーい…お引き取り願おう」

 

 ガチャ

 

 そして優也は閉めようとする。

 

悠真「ぐ、ぐへへ…まぁまぁ、良いじゃないですか!」

 

真依「そうそう!減るものじゃありませんし!ぐへへ」

 

 二人がぐへへと言う声を出しながら優也の閉めようとするドアを押さえている。

 

結羽「ね、ねぇ?それはもう、不審者だよ?」

 

 さすがにこの光景には悠真の扱いになれている優也でも引いている。

 

優也「き、きもちわりぃ…俺やだおまえら…」

 

 うん。私も嫌だこの人たち

 

 出来ることならこの人たちとは無関係でありたくなってきた…

 

優也「は、離せ!」

 

 一人対二人の力比べ…

 

 あれ?少しずつ閉まってきてない?

 

悠真「ゆ、結羽も手伝え!」

 

 と、私にも願ってきた。

 

結羽「優也さん?この人たち誰でしょうね?存じ上げないです」

 

 と、私が優也に向けて言うと

 

優也「お、俺も知りません!なので!お ひ き と り を!」

 

 そして完全にドアが閉まった。

 

回想終了

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 そんなコントチックな事があったのだ。

 

悠真「ど、どこがいけなかったんだ!」

 

 うーん。

 

 あえて言うなら…全て?

 

真依「とりあえず浸入しなくては!」

 

 …ねぇ…私このメンバー嫌だ…よく優也はいつもつっこんで居られるよね?

 

 やっと優也のつっこみの辛さが分かったよ。

 

結羽「まず、二人が居たらもう入れてくれないだろうね?」

 

 私は率直に思ったことを言った。

 

悠真「よし!まず結羽だけで行って開けさせる。そこに突入でどうだ!」

 

 もうやだぁ…この人全然話を聞いてくれない…

 

真依「それよ!それなら行けるわ!」

 

 今、私は純粋に優也が過労死しないのがすごいと思ってしまった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 と言うわけでやることになりました!

 

 はぁ…協力してる自分が嫌になってくる。

 

 私は覚悟を決めてインターホンを押した。

 

 ピンポーン

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

side優也

 

 なんだったんだよ…さっきのは…

 

 あれは予想してなかったぞ…

 

 まさかぐへへって言いながら来るとは…変態じゃん!

 

 取り合えずコーヒーでも飲むか…

 

 しかし気の毒な事をしちゃったな…

 

 少し結羽もおかしいところあるけどあの中だったら確実に常識人だからな。

 

 結羽だけでもあげてやるべきだったのではないか?

 

 結羽…大丈夫かな?

 

 その時

 

 ピンポーン

 

 ん?またあいつらか?まぁ、良い。結羽だけでも入れてやるか。

 

 そしてドアを開けるとそこには結羽しか居なかった。

 

優也「あれ?結羽?他のみんなは?」

 

 俺がそう聞くと

 

結羽「え、えーと…ゆ、優也が入れてくれないから帰るって!」

 

 なるほどそれなら安心だな!

 

 だけど油断するな俺!

 

 さっと結羽を入れてさっと閉じるんだ!

 

 行くぞ!

 

 そして俺は結羽の手を掴んで引っ張る。

 

結羽「ちょ!ゆ、優也ぁ…そ、そんないきなり…」

 

 その時

 

「「今だぁっ!」」

 

 だだだだ!

 

 と、音と煙をあげてこちらに走ってくる二つの人影が見えた。

 

 俺はその光景に唖然とする。

 

 そしてその二つの人影に突き飛ばされてリビングへ続く扉を閉め忘れたためリビングまで飛んだ。

 

 そして俺は結羽の手を繋いだままだったためもちろん結羽も飛ばされた。

 

 そして俺は結羽を抱き抱えるようにしてかばってから着地した。

 

 フローリングの摩擦が痛いです。

 

 だけどこれくらいで結羽が怪我をしないなら別に良い。

 

結羽「ゆゆゆ、優也!」

 

 と、結羽は今のこの状況を見て慌てている。

 

 抱き抱えているだけなんだが…慌てるような所…あったか?

 

 まぁ、良いか…

 

 取り合えず今はすることがある。

 

 俺は抱き締めていた結羽をそっと横に置いて立ち上がった。

 

 手を話したときに結羽が「あ…」と寂しげな声を出したのは気のせいだろうか?

 

 取り合えず、俺だけじゃなく結羽まで突き飛ばしたあいつらには制裁を加えてやらないとな。

 

悠真「なぁ…何でそんなに怖い顔をしているんですかね?」

 

 と、俺は真顔で悠真と白波さんに近づく

 

 俺は真顔で近づいているだけなんだけどねぇ?不思議だねぇ?

 

優也「まぁ、いい。仕方ないから入れ」

 

 そして俺は二人を許し、中に入れる。

 

悠真「おー!優也優しいな!」

 

 うるさい!

 

結羽「うん!優也は何だかんだ言って優しいよね?」

 

 んな訳無いだろ…

 

結羽「え?本当に優しいよ?」

 

 俺が優しい?ははっ…笑っちゃうぜ

 

結羽「んもう…優也は自分を過小評価しすぎ!」

 

優也「おいまて!先から俺の心と会話するのをそろそろやめようか?」

 

 俺達がそんな会話をしているとキッチンから父さんが現れた。

 

父「あれ?今日は随分お客さんが多いな」

 

 と、父さんは嬉しそうに言った。

 

 たぶん自分の子供が友達を連れてきて嬉しいんだろう…だがしかし!それは間違っている!

 

 正しく言うなら…そう!

 

 押し掛けてきた

 

 が、正しい。

 

 はは、俺が自分で連れてくるわけが無いだろう?

 

父「所で優也、お前はどっちの子が本命なんだ?」

 

 やっぱり聞いてきた。

 

 しかし俺が答えるわけが無いだろう?

 

 そもそもとして本命が居ない。

 

 その時

 

 ピンポーン

 

 あれ?なんかまたチャイムが

 

 誰だろう?

 

優也「はーい!」

 

 そしてドアを開けるとそこには異様なコンビが居た。

 

冬馬「久しぶり…優也」

 

光「まともに話すのは久しぶりね」

 

 なぜか冬馬と星野さんが居た。

 

 え?あのメンバーだけじゃないの?

 

 え?え?

 

 俺が目で困惑しているのを語っていると、結羽が説明してくれた。

 

結羽「私達は先に準備をするために来たの。だからとうまには先に行ってくるって先に来たの。そこの読書バカは単に遅れてきただけだから気にしないで」

 

 あ、なるほど…って!読書バカ?ちょっと口が悪くなってませんか?

 

光「あーら。ごきげんよう?勉強もロクに出来なくていつも下の順位を取っているあなたよりはこの読書バカの方が上だと思うけど?」

 

 なんか結羽と星野さんの間で火花が!火花が散っている!

 

 こ、こわい…

 

 まずなぜあの結羽が毒舌なのかわからないけどとにかく怖い。

 

 そこで

 

父「おおー!増えたな!じゃあ改めてどの子が本命なんだ?」

 

 …えーと…地雷を投下しましたかね?

 

 一瞬世界が止まったような気がしました。

 

 その直後、俺に結羽と星野さんは集まってきてこう言ってきた。

 

結羽「もちろん私よね?」

 

光「いいえ、私よね?」

 

 ねぇ?

 

 これ…俺の人生、詰んだって奴?これ

 

 まず想像してみよう

 

 

想像 結羽

 

優也「まぁ、結羽かな?」

 

結羽「ゆ、優也ぁ…」

 

星野さん「そう…その小娘がそんなに好きなら一緒に地獄に落としてやるわ!」

 

 batend

 

 

 ダメだぁっ!

 

 結羽を選んだ時点でここで結羽もろとも星野さんに消し炭にされる!

 

 じゃあ…今度は…

 

 

想像 星野さん

 

優也「まぁ、星野さんかな?」

 

星野さん「ふふっ、ありがとう。優也」

 

結羽「ふーん………なら、私しか見られないように し て あ げ る」

 

優也「う、うわぁぁぁぁっ!」

 

 batend

 

 

 正直星野さんendが一番怖い…

 

 今、俺の想像の中の結羽がヤンデレになったぞ!

 

 うぐぐ…あ!そうだ!あと一人女性が居るじゃ無いか!

 

 

想像 白波さん

 

優也「まぁ、白波さんかな?」

 

白波さん「え?そこで私選ぶの?」

 

優也「もちろんさぁ!」

 

星野さん「ねぇ?優也。覚悟は良い?」

 

結羽「私しか見られないように し て あ げ る。ふふふ。アハハハハ」

 

優也「う、うわぁぁぁぁっ!」

 

 batend

 

 

 や、やべえよ!

 

 何がヤバイって…そりゃ…やべえよ!(語彙力0)

 

 怖いのが二人に増えるだけじゃねーか!

 

 ここはいっそのこと…

 

 

想像

 

優也「俺…実は…悠真の事が」

 

悠真「お、お前…そんな性癖が…さすがの俺でも引くぞ…」

 

白波さん「うん…今、優也君から距離を置こうかなって思ってるからね」

 

結羽「へー…」

 

星野さん「ふーん…」

 

「「なら」」

 

「「女の子を恋愛対象として見られるように教育してあげないとね」」

 

 batend

 

 

 し、死んでしまう…って言うか、これ、がちの詰みゲーじゃねーか!

 

 誰選んでもダメ。男が好きみたいな演技をしても引かれて友達を無くし、更に二人には…これ以上想像してはいけない。

 

 ん?待てよ!俺ってそもそも本命なんて居ないよな?

 

 まぁ、消去法で見られるとしたら…

 

 白波さん…無いな…結羽…無いな…

 

 となると星野さんだけなんだが…まぁ、そこまででは無いな。

 

 じゃあ、これだ!

 

 誰か一人を選んでもダメなら選ばなきゃいい!

 

優也「いや、居ないぞ?」

 

 俺はそう言い切った。

 

結羽「ぐぬぬ…」

 

光「ぐぬぬ」

 

 ふう…なんとか一難去った…

 

 そこで辺りの緊迫した空気が消えた。

 

 見ると父さんはすでに料理に戻っていた。

 

父「出来たぞ!優也。手伝ってくれ」

 

 いや、もうね?

 

 主人公じゃないんだから…こんなイベントはもうやめてほしい…まるでハーレム見たいじゃないか…俺、勘違いしちゃうよ?モテてるって

 

 …自虐です…悲しいかな…

 

 そして俺はキッチンに料理を取りに向かった。

 

悠・真「懸命な判断だ」

 

 二人はそう呟いた。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

皆「happybirthday Yuya!」

 

 なぜか英語口調で最後まで言い切った皆

 

 やはり、ノリについていけません…

 

悠真「んじゃ、これ俺からのプレゼントな」

 

 と、一つの箱を悠真に渡された。

 

 そうして俺は少々怪しみながらも箱を開けてみる。

 

 その中に入っていたのは

 

優也「あのさぁ…いくら温厚な俺でも怒るよ?」

 

悠真「温厚?誰が?ごふっ!」

 

 俺は悠真に膝けりをお見舞いしてやった。

 

悠真「良いから着けろって!」

 

 嫌だ!俺は絶対につけない!

 

優也「大体なぁ…結羽が猫耳だったから、今度は優也に犬耳♪って言う発想がおかしいんだよ!あれは結羽だから似合ったんだ!」

 

結羽「に、似合う…」

 

 俺がそう言うと結羽は顔を耳まで真っ赤にした。

 

 そして白波さんがにやにやしながら近づいてきた。

 

優也「な、何をするつもりでございましょうか?ま、まさか犬耳を俺に着けようって魂胆じゃ!や、やめろー!」

 

 そして俺は成されるがままに犬耳をつけられた。悠真、マジ許さん。

 

 そして結羽は顔を真っ赤にしてうつむいてしまった。

 

 星野さんは「こ、これは萌える」とか呟いている。

 

 俺はすぐに犬耳を外した。

 

真依「じゃあ私からも」

 

 …嫌な予感がするのは俺だけかな?

 

 そして貰った箱を開けるとそこには

 

優也「犬耳じゃねーか!」

 

 そして俺は箱に入っていた犬耳を投げる。

 

真依「あぁー!私の買った犬耳がぁー!」

 

 合計プレゼント 犬耳×2になりました。

 

冬馬「じゃあこれ俺な」

 

 年下にもらうのは少し気が引けるけど貰っておこう。

 

 そして俺は貰った箱を開ける。

 

 …

 

優也「犬耳じゃねーか!(2回目)」

 

悠真「なんでぇー!」

 

 俺はなんか一つくらいはと思い、キープしていた悠真から貰った犬耳を投げた。

 

 なぜかって?

 

 だって年下から貰ったものですから。

 

 今のところ犬耳×3しかもらってないぞ。

 

冬馬「いやいや、こっちが本命ね」

 

 と、別の箱を渡してきた。

 

 うんうん。ちゃんとまともなのを用意するなんてわか…

 

優也「うさ耳じゃねーか!種類が違ければ良いって訳じゃねーんだぞ!こら!」

 

 と、言いながらちゃっかりキープする。

 

 年下から貰ったからね。

 

光「じゃあ私ね」

 

 なんか嫌な予感がするが、箱を開けてみた。

 

 そこには本が入っていた。

 

 裏表紙が上になっていたため本をひっくり返してタイトルを見る。

 

優也「えーと、獣耳大百科?なんだこれは」

 

光「ふふふ、それは優也にも獣耳の良さをわかってもらおうと、あー!私の獣耳大百科が!」

 

 俺は星野さんが言い終わる前に俺は獣耳大百科を投げる。

 

優也「おい!何でそんなにさっきから獣耳推しなんだよ!」

 

父「父さんは良いと思うぞ?」

 

優也「俺がよくないの!何?裏で口裏合わせてきてんの?さっきから獣耳獣耳って!はぁ…はぁ…」

 

 俺が突っ込み疲れて息を切らすと結羽が背中を撫でてくれた。

 

 マジで優しい結羽さんを君たち見習ったらどうだ?

 

結羽「じゃあ、私が最後ね」

 

 そして袋を渡してきた。

 

優也「獣耳関連じゃ無いよな?」

 

結羽「違うよ!」

 

 そして俺はその言葉を信じて袋を開けるとそこにはお守りが入っていた。

 

 そして真ん中には子犬がかかれている。

 

結羽「て、手作りしてみたんだ…」

 

 そしてうつむいた結羽の頭を撫でる。

 

 すると結羽の肩がびくっと跳ねた。

 

優也「ありがとう」

 

 微笑みながらそう言うと満面の笑みで

 

結羽「どういたしまして!」

 

 その時、優也と結羽の周りには薔薇色のオーラが見えたそうな、

 

光「く、手強い…」

 

 その時

 

悠真「あれ?これ、獣耳じゃないか?」

 

 と、悠真は子犬の耳を指しながら言った。

 

結羽「あっ!」

 

優也「はぁ…お前らとは違って純粋な気持ちで作ったんだ。そんなのに怒るほど俺は鬼じゃない。むしろお前らのが続いたから人生で一番嬉しく感じたわ!」

 

 すると、結羽はまたもや顔を赤くさせた。

 

悠真「よし!プレゼント贈呈会も終わったし、遠慮せずに食うぞ!」

 

優也「お前は少しは遠慮しろ!」

 

 そして俺の誕生日は終わりを告げた。




 はい!第23話終了

 はい!今回は二学期最終話兼冬休み一日目優也の誕生日でしたー!

 冬休み…冬休みと言ったら何個かイベントがあるので夏休みよりはネタを考えやすそうです。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

1年生編 冬休み
第24話 初詣


 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回はアンケの最終結果発表!パチパチ!

 では開票します!

Twitter

名前無し1

名前あり0

そんなことどうでも良いからさっさと続き書け0

そんなことよりおうどん食べたい3←おいっ!

活動報告

名前無し0

名前あり1

そんなことどうでも良いからさっさと続き書け0

そんなことよりおうどん食べたい0

結果は

名前無し1

名前あり1

そんなことどうでも良いからさっさと続き書け0

そんなことよりおうどん食べたい3

 おおっと!割れてしまいました…では事前投票で多かった名前無しでやっていきたいと思います。

 で、今回は初詣です。冬休みの最大イベントを二学期の最後に使ったからしょうがない。

 でも最低二話はやるつもりですのでご安心を

 それではどうぞ!


side優也

 

 俺は前日の誕生日の疲れを癒すために…なんと!なななんと!

 

 勉強をしていました。

 

 あのね?長年の習慣ってなかなか変えられないよね?

 

 俺くらいになるともう勉強が一種の娯楽みたいに感じる。

 

 その時

 

 キンコン♪

 

 と、LINEの通知音がなった。

 

 俺は悠真か結羽、白波さんと星野さん位しか交換してないからたぶんその誰かなのだろう。

 

 そして携帯の画面を見ると案の定結羽からだった。

 

 えっと?

 

『今日?の初詣、皆で神社に行きませんか?』

 

 ほうほう…夜に神社に行こうとな?

 

 まぁ、いっか…

 

 一年の始めに疲れた原因が居るのは少し気に食わんがしょうがないだろう…うん、しょうがない。

 

 と言うわけでこう返した。

 

『しょうがない』

 

『え?』

 

 間違えたー!

 

 直前まで心のなかでしょうがないと連呼していたから間違えてしょうがないって返しちゃった。

 

 そのままだといやいや行く見たいじゃないか!いや、実際そうなんだけど、じゃなくてだな!

 

『いや、違うんだ。間違えた』

 

 と、慌てて返した。

 

 一瞬、心配させちゃったかな?

 

『ああ、いいよ。俺も行く』

 

『あ、はい。分かりました。では、0時に居真舞神社で待ち合わせましょう』

 

『了解』

 

 そして携帯を閉じた。

 

 所でさ…

 

 前日貰ったこの大量の獣耳、捨てずに居るんだがどうしたら良い?

 

 と、たくさんの獣耳を見つめながら言った。

 

 なんだかなぁ…

 

 あいつら…絶対裏で何かやってただろ。

 

 と、俺は獣耳から目を外しベットに横になる。

 

 冬休みに入ったことから心のそこから休む事が出来る。

 

 頭のおかしいのに会わなくて済むのだ。まぁ、あとで会うことになるんだけどな。

 

「これは俺じゃなく結羽がやった方が絵になるだろうに」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

side結羽

 

 お、送っちゃった…

 

 ほ、他の人に頼まれたからって、じ、自分で誘っちゃった…どうしよう…恥ずかしくて穴があったら入りたい…

 

 どうしてだろう…普通に話すことは出来るのに…メールを送っただけでこんなにドキドキするなんて…

 

 あ、あのときも結構ドキドキしてて覚えていないし…

 

「もしもの時のためにLINE交換しよう?」

 

「ふぇっ!う、うん…」(ゆ、優也のLINE ID…えへへ)

 

 あのときもかなりドキドキしててあまり記憶が…へ、変なこと口走ってないよね?

 

 そ、それにしても優也の誕生日の犬耳優也…か、可愛かった…

 

 あ、後で初詣に行くときに会える…そう思うだけで胸が高まる。

 

 優也…あの事、覚えてるかな?…まぁ、あの調子だと忘れている可能性の方が大きいんだけど。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

side優也

 

「ふわぁぁ…」

 

 俺は大きなあくびをした。

 

 理由は単純明快。眠いのだ…

 

 俺は夜に弱いため、ずっと起きてるって事が出来ない。

 

 中学の時に勉強に熱心に取り組み始めた時だって朝早くに起きて勉強して、12時には寝るって言う生活をしていたから今はものすごく眠いです…

 

 それなのに皆より早く居真舞神社に来て待っている俺ってすごーい

 

 と、その時

 

「おーい…起きてますか~?ゆ う や さ ん?」

 

 と言う聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

 この声は…

 

「悠真か…」

 

「あったり~!見ないでよくわかったな!それとあけおめ」

 

 まぁな。お前の声をどれだけ聞いてきたと思ってるんだ?

 声は声がそこそこ高い俺の声を少し低くしたような声

 

 この俺が悠真の声を聞き間違える訳が無い。

 

 中学からの付き合いだからな。

 

「ああ、あけおめ。そう言えば結羽の他にあとは誰が居るんだ?」

 

 と、俺が聞くと悠真は首を横に降った。

 

「今回は気軽にしようと言うことで俺達と冬馬くんの4人のみでの初詣となっております!」

 

 …え?

 

 いや、俺はてっきりドSな生徒会長とか、清楚系の文学少女らも来ると思ってたんだが。

 

 でもまぁ、冬馬は結羽の弟だからな。そこは絶対に来ると思ってた。

 

 しかしまぁ、カップルとかで初詣に来ている人は着物を着たりしているのに俺達はいつも通りの服装。普段着なのである。

 

 俺達だけ浮いてるなぁ…

 

 と、見回しながら屋台の方にも目をやる。

 

 くじ引き…お守り…等々、初詣らしいラインナップ。

 

 俺は今までくじ引きでいい思いをしたことが無い。と言うか運で勝てたのは星野さんだけだからな。

 

 お守り…お守りかぁ…

 

 と、俺は悠真の方を見る。

 

「厄払いのためにもお守りを買っておくか」

 

「おい!俺を見ながら言うのは止めてもらおうか」

 

 俺がそう言うとすぐに悠真からツッコミが入った。

 

 まぁ、冗談だよ。3割位

 

 まぁ、冗談はさておき何を願おうかまだ決めていないのだ。

 

 強いて言うなら?

 

 うーん…七海の怪我が治り

「シスコン」

 

 俺が心のなかでそんなことを考えていると横から冷めた声で「シスコン」と言う言葉が聞こえてきた。

 

 んな!俺はシスコンじゃない!

 

 俺はそう思いながら声のした方をキッと睨むとそこには結羽ととても眠そうな冬馬が居た。

 

 結羽はとても冷たい目でこちらを見ており、冬馬はいかにも眠そうで目をこすって半分落ちかけている。

 

 冬馬…お前とは気が合いそうだ。

 

 しかし、なぜここまでこのバカ二人は元気なんだろうか?

 

「俺はシスコンだけど?」

 

 と、寝ぼけた状態の冬馬が結羽の「シスコン」と言う言葉に反応した。

 

「冬馬はシスコンじゃないでしょ…姉ちゃんが怖いっていつも逃げ込んで来てたじゃない。私が姉ちゃんだったらっていつも言ってたくらい」

 

 と、そんな結羽の言葉に反応したのか冬馬の意識が覚醒したようだ。

 

 と言うかここまでポワポワしていた冬馬は見たことなかったな。

 

 って、冬馬には本当のお姉ちゃんが居るのか。

 

 はじめて知った…

 

「こ、怖い…」

 

 冬馬が本気で怯えてる!

 

「まぁ、とうまのお姉ちゃんは相当厳しかったからね」

 

 厳しい姉ちゃんは俺も嫌だな。

 

「よっしゃ!もう皆集まったことだしお参りに行こうぜ」

 

 そして神社に向かって歩き出す。

 

 しかしまぁ、この時期によくもまぁ着物を着れるよな。寒いだろう

 

 俺はそう思い、コートとマフラーを結羽と冬馬に手渡しした。

 

「え?でもそれじゃ優也が」

 

 と、結羽が言うので俺はこう答えた。

 

「お前らが寒がってる方が俺は辛いんだ」

 

 と、俺は結羽の言葉を遮るようにして言った。

 

 すると冬馬にコートを渡した。

 

 冬馬はそのコートを受けとり羽織る。

 

 そして結羽は俺と渡した少し長めのマフラーを広げながら言った。

 

「これだけ長さがあったら一緒に巻けるんじゃない?」

 

 さすがの俺でもかなりこの言葉は驚いた。

 

 だってよ。相合い傘でもヤバイのにマフラーを一緒にって…思わず俺達は恋人かっ!ってツッコミそうになった。

 

 とりあえずここはお断りをしておこう…

 

「いや…やっぱりさ、人目とかあるしさ」

 

「やっぱり…私の事なんて…」

 

 なぁ、なぜ俺の誕生日の時の妄想の中の結羽がヤンデレになっているか教えよう。

 

 その日のスープが真っ赤でした…あれは本当に恐怖すら感じた。

 恐る恐る聞いてみると彼女は「血だよ?」と言い張るのです。

 

 しかし数秒後、やっとトマトだと認めてくれました。やっとひと安心。

 

 しかし俺は思った。あのときの結羽の顔、本気になったらヤンデレになりそうだと…怖い

 

「い、いや。そんなこと無いから。よーし!二人で使おうか!」

 

 そして結局俺が折れることになった。

 

 まぁ、結羽には結構料理を作ってもらって感謝してる。しかも元々旨かった料理が更に上手くなってきている。

 

 そして俺は結羽の首と俺の首の回りをぐるっと一周させる感じに巻いた。

 

 俺と結羽の間が真っ赤なマフラーによって繋がっている。

 

 そのためお互いの体の密着度が高くなるのだが、結羽の体がすごく温かい。

 

 見ると結羽の顔は真っ赤になっていた。

 

 そして俺達は顔を背けながら歩いた。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 俺達は賽銭箱の前に立って5円を入れる。

 

 なぜ5円かって?ご縁がありますようにと言う意味が籠っているからだ。

 

 そして目を瞑り

 

 パンパン

 

 2回手を叩いて礼をする。

 

 この時に何かを願うのだが。俺が普通に考えると七海が元気になりますようにだ。

 

 だけどな…

 

 そうだ!

 

 皆の願いが叶いますように。

 

 これで決定だ。

 

「おい。何を願ったんだよ」

 

 と、悠真は俺に聞いてきた。

 

 知らないのか?他人に願い事を教えると叶わなくなるんだぞ?

 

 まぁ、ここは適当に

 

「悠真の願いだけは絶対に叶いませんようにだ」

 

 と、俺が言うと

 

「ひどい!」

 

 と、のけぞった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 俺達はお守りのコーナーに来ていた。

 

 おみくじを引いてもいいんだがな。どうせ大凶だろ。

 

 と言うことで俺はお守りを買いに来ていた。もちろん結羽も

 

 俺はもちろん運気上昇のお守り

 

 で、結羽はと言うと

 

「恋愛成就…好きな人でも居るのか?」

 

「そそそ、そんなこと無いよ?」

 

 と、あからさまに動揺する結羽

 

 あれ?本当にいるパターンか?

 

 まぁ、前もそんなことを言っていたからな。

 

 と、俺はさりげなく二人分の金額を支払う。

 

「いつも優也が払ってばっかり!たまには私に任せてよ!」

 

 と、なんとも他人を思った文句?を言ってきた。

 

 俺としては気遣いは嬉しいんだが男としてそれはどうなんだ?女の子に払ってもらうって。俺にだって男としてのプライドがある。

 

 だからここは譲れないポイントではある。だから俺は勢いよく結羽の方を向いて

 

「あのなぁ…!」

 

 そう、今俺と結羽は一つのマフラーを一緒に巻いている状態だ。そのため結羽の方向を勢いよく向いたらどうなるか分かるだろう。

 

 そう、近い…近いのだ。ん?お約束はどうしたかって?そんなもん現実で起こるわけ無いじゃないですか。

 

 でも少しでも近づいたら唇が触れ合いそうな距離だ。

 

 結羽も顔を赤くして俺と目を合わせられないでいる。

 

「あーと…ごめん!」

 

 そう言って俺は前を見る。

 

 すると横から「あっ…」と寂しげな声が聞こえたような気がした。

 

「な、何で謝るのよ…バカ…

 

「ん?なんか言ったか?」

 

 何か聞こえた気がしたから俺は結羽に聞いてみた。

 

「知りません。そんなラノベ主人公なんて」

 

 と、結羽は少し不機嫌な感じで言った。

 

 と言うかお前らそのラノベ主人公って言葉好きだよな。まぁ、もう今さらだから突っ込まないけど

 

「んじゃ、おっちゃん。これで頼む」

 

 そして俺は結羽が気づかないうちに支払っておく。

 

 結羽はと言うとぷんぷんと可愛らしく怒っている。

 

 いや、全然結羽が怒っても怖くないよね?ちょっと病まれたら危険だけどそれ以外はなんと言うか可愛らしいよね。うん。

 その可愛らしい姿を見るためだけに怒らせたい位だ。

 

「そうやって結局優也が払っちゃう…嬉しいけど今はその気遣いは余計かも…」

 

 と、何やら俺には聞き取れない声で呟いた結羽

 

 え?なに?結羽の声はモスキート音なの?俺の聴覚は高齢者並みなの?ちょっとそれはヤバイな!

 

 他の人は普通に聞こえてるの?この声、そうだとしたら耳がかなり遠いじゃないか!

 

 と、俺は少々疑問を持ちつつお守りの屋台を離れ、おみくじを引きに向かう。

 

 まぁ、俺が運でいい思いをしたこと無いから期待はしないでおくわ。

 

 と思い、若干諦めつつおみくじを引く。

 

 そして結羽も俺に続いておみくじを引く。

 

 そして開くとそこにはなんと

 

『大吉。あなたの頑張り次第で恋が成就するかも?』

 

 余計なお世話だ!

 

 だいたい俺が誰に恋をするってんだよ!はぁ…バカバカしい…

 

 はじめて出た大吉に心を弾ませたさ。だけどな。内容が余計なお世話だ!

 

 すると隣で結羽もおみくじを開いて確認している。

 

 すると途端に結羽の顔が真っ赤になってゆで上がってしまった。

 い、いったいどんな無いようなんだ!結羽がそんなに恥ずかしがるなんて

 

 そして俺は少し覗いてみた。

 

『大吉 今年は思い人とよりいっそう近づけるかも。もしかしたら付き合えたり!!』

 

 ほう。内容はほとんど俺のと同じだな。

 だけどどこに恥ずかしがる要素があるんだ?

 

 すると俺の視線に気がついたのか。「ひっ!」と言う可愛らしい声をあげて結羽はおみくじを隠す。

 

 いや、もう隠しても無駄だけどね。うん

 

「うぅ~…」

 

 結羽はバックにおみくじを入れてから顔を両手でおおって首を振っている。

 

 なんか恥ずかしいからこのマフラーやめたいんですが…他の人の目もあるし。

 

 と、その時、悠真と冬馬がこちらによってきた。

 

「おい、優也。結羽。初日の出を一緒に見に行こうぜ」

 

「うん。いい感じのスポットを見つけてきたんだ」

 

 と、悠真と冬馬が言ってきた。

 

 ほう…初日の出とな?良いね。そう言うの。これで父さんが言ってた青春ってのをクリアにしてくれないですかね?やっぱり恋人を作らなきゃダメ?

 

 厳しいな…この俺に恋人を作れってのがまず酷だ。

 

 俺にだって中学一年の頃。好きな女子位いたさ。

 

「好きです。付き合ってください!」

 

 と、俺

 

「無理です。なんとなく嫌です」

 

 と、相手の女の子。

 

 俺はその時のショックを未だに覚えている。まぁ、結構七海が事故にあう日の近くだったと思う。

 

 と言うか、なんとなくって何だよ!なんとなくって!もっとましな理由なら分かるけどなんとなくって…何か?生理的に無理ってか?ふざけんじゃねーぞ!

 

 と言う感じで、俺はもう「告白なんて二度とするものかっ!」と言う感じで拗ねてしまったのだ。我ながら子供っぽいな…

 

「行こう?優也!」

 

 と、手を急に繋いで引っ張るように走り出した。

 

 と、結羽はやはりバランスを崩して倒れそうになった。

 

 そして俺は慌てて結羽の腕を引く。

 

 そしてなんとか転ばずに済んだ。

 

「気を付けろよ」

 

 と言う感じのやり取りをしていると悠真がニヤニヤしながらこちらを見ている。

 

 なに見てんだ。見るな!この野郎っ!

 

 そして冬馬に目をやると冬馬の口元が動いていることに気がついた。

 

「冬馬、なに食ってんだ?」

 

 と、俺が聞くとポケットの中に入っていたものを差し出しながら言ってきた。

 

「はめはま。ひふ?」訳『あめ玉。要る?』

 

「要らないよ。ってか、この時間に食べて大丈夫か?虫歯とかになんないのか?」

 

「ああ、俺はそう言うのにはならないから」

 

 うん、確信した。これはなるパターンだ。

 

 こう言うことを言うやつに限って虫歯になるんだよな…これが

 

 そう言うやり取りをしているとついによく景色が見える丘にたどり着いた。

 

 だいぶ空も白くなってきた。もうそろそろ太陽が上がって来るのだろう。

 

 そして四人で見ているとついに太陽がうっすらと見えてきた。

 

 率直な感想としてはキレイだと言うことだ。

 

 太陽の光に照らされて空が輝いて見える。

 

 朝焼けと言う奴だろうか?オレンジ色の光がとてもキレイだ。

 

「キレイ…」

 

 と、結羽は呟いた。

 

「そうだな」

 

 と、俺も同意する。

 

 その時、悠真が耳元でこう言ってきた。

 

「こう言うときはこの景色より君のほうがキレイだと言うんだ」

 

 …は?

 

 ちょっと待て!それはおかしい!

 

 第一に好きでもない人にそんなこと言われたら気持ち悪いだろ!なに?俺に言わせて嘲笑おうとしてるのか?ふざけんなよ!

 

「言わない」

 

「言え!」

 

「だから言わねーっての!」

 

 と、俺達がこんな話をしていると冬馬が鞄からカメラを取り出した。

 

「一緒に撮らない?」

 

 と、冬馬が提案してきた。

 

 これは言わなくてすむパターンだ!

 

 そして一瞬で俺は承諾。結羽も承諾し、悠真は渋々承諾した。

 

「セット完了。はい。チーズ」

 

 カシャッと言う音と共に目映い光が俺達を包む。

 

 そして皆で確認しにいくと、キレイに写っていた。

 

「じゃあ、帰るか…俺は寝るから連絡を寄越すなよ」

 

 と、忠告し帰った。

 

 なぜか最近は俺の家の方向から結羽が帰るため最後まで帰りが一緒だった。

 

 三学期はどうなることやら…




 はい!第24話終了

 これからは名前無しで書いていきます。

 意義あり!って方はTwitterか、今回の活動報告に明確な理由をセットで述べて下さい。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第25話 ツッコミ放棄宣言!?

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 最近投稿ペースが落ちてきてますね…何とかせねば

 リアルが忙しいんですよ!ゲームの誘惑に耐えきれなかったり、本当に忙がしい時もあるんです!

 まぁ、モチベも低下してきてヤバイなとは思ってますよ。書く意欲が下がってきて…でもこれや新作の方は打ち切りたく無いので無理にでも書いて見せます!
 次回はもう少し早ければ良いね。ボソッ

 それでは!

 どうぞ!


side優也

 

「あのなぁ…暇さえあれば俺んちに集合するのやめね?俺んちはハ〇公じゃねーんだよ」

 

 今日は冬休み最終日。今日くらいはのんびり過ごすぞ~!と、意気込んでたのも束の間。結羽を初めとし、悠真や白波さんが押し掛けてきたのだ。

 

 くっそう…いつも俺の家を某有名な集合場所と勘違いしてるんじゃないか?

 

「まぁ、それよりもさぁ!雪合戦しようぜ?」

 

 と、悠真は親指を立てながら言ってきた。

 

「なんだ?そのサッカーしようぜ?的なノリは」

 

 お前は某超次元サッカーアニメの主人公か!!

 

 と、俺は心のなかで突っ込んだ。

 

 なに?皆、俺の突っ込み待ちなの?ねぇ?突っ込んで欲しいの?

 

「雪合戦しよう!優也くん」

 

「もう疲れたんでそれで良いです…」

 

 と、俺は白波さんの言葉に適当に返す。

 

 なんか悠真と白波さんが俺の左右に居るんだが、左右で俺の方向に身を乗り出してきている。それを見て結羽は苦笑い。

 

 結羽…お前だけだ分かってくれるのは…グスン…

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 と言うわけで雪合戦をすることになったのだが

 

「おい!なんだこの悪意を感じるチーム分けは!」

 

 そう。とてつもなく悪意を感じるのだ。

 

 このチーム分けを見れば誰だって悪意を感じるだろう。

 

 なぜなら俺が一人で他3人が相手、3対1なのだ。

 

 ねぇ?なにこれ、俺っていじめられてたんだっけ?

 

 てっきりさぁ悠真の事だから面白がって結羽と俺を一緒にすると思ったんだけど?

 

 ねぇ、ふたを開けてみたらあら不思議。合戦と言うよりリンチですね?分かります。わかりたくないけど分かります。

 

 悠真、てんめぇぇぇっ!おぼえてろよー!

 

「じゃあ、よーい!スタート」

 

 そして開始された。

 

 予想通り俺に雪玉が集中的に飛んでくる。

 

 当然ながら俺には避けて雪玉を投げるなんて高等テクニックなど無いので逃げ回る事しか出来ない。

 

 なんか結羽だけ何もしていないがそれが唯一の救いだろう。

 

 責めて戦力が分散してくれれば良いんだけどな。

 

 そして俺は逃げることしか出来ないのだ。結羽…ただ苦笑いしてるくらいなら俺に加勢してくれると嬉しいのだが…

 

 そんな感じで俺らの雪合戦は幕を閉じた。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「はぁ…ひどい目にあった…」

 

 俺はあのあと流石に普段筋トレをしていると言ってもそこまで外に出ないと言う行動のせいで体力の無さが浮き彫りになり、捕まった俺は雪玉をぶつけられたのだ。

 

 そして俺は今、近くのベンチにて結羽と一緒に座っている。

 

 悠真と白波さんはどうしたかって?あの二人…元気だよね。あれだけ走り回ったのに…俺が体力が無いだけなのだけれども…

 

 俺は徒競走的なのは瞬発力が高いってだけですぐに体力が切れてしまう。

 

 走り込むべきなのだろうか?いやいや…昔からこんな怠惰だった訳じゃないよ?うん。ちゃんと運動をやってましたとも。ジュニアサッカーチームだっけ?メインでは無かったけど補欠として頑張ってました!

 

 キック力だけは高かったんだぞ?

 

 悠真(あいつ)はまだやってんのかな?俺は勉強に本格的に力を入れ始めたときに同時に辞めてしまった。

 

 まぁ、そんな訳で、あの元気いっぱいの二人は今、雪だるまを作って遊んでんのかな?

 

 結羽は隣で自分のバックから出したお茶を飲みながら二人の様子を見ている。

 

 と言うか俺の隣にずっと居るけど、結羽は遊ばなくて良いのかな?せっかくだし遊んだ方が良いと俺は思うんだけど。

 

 と、そんな感じで俺が結羽を見ていると俺の視線に気が付いたのか、俺の方を向いて優しく微笑む。

 

 その笑顔を見ているとこのままで良いかな…と思ってしまう。

 

 と、ふと向こうの二人を見るとなんか二人でこそこそと話し合っている。

 

 そして先程二人が作っていた雪だるまを見ると、大小二つの雪玉があった。

 

 大きい方は体の3分の2もある。でけー

 

 ってか乗せてないみたいだけど、そんなにでかいの乗っけられるか?小さい方だって半分あるんだから…

 

 持ち上がんないだろ…

 

 と、そう思ってると悠真が持ち上げ始めた。おいおい、嘘だろ?

 

 と、思ってると雪玉を投げた!

 

 そして上手いこと乗っかった。

 

 悠真は「ふぃ~っ」と額の汗を袖で拭く動作をする。

 

 俺はあまりの光景に立ち上がり、開いた口が閉まらなかった。

 

 い、いつものことだよな?こいつらがちょっと常識を踏み越えてるのはいつものことだよな?

 

 うん。そう言うことにしておこう。

 

「ゆ、優也…き、気持ちは分かるけど気にしないでおこう?…ね?」

 

 と言うか結羽の優しい言葉で俺は我に帰る。

 

 そして俺は結羽を見る。すると、やはりと言うかなんと言うか、結羽の笑顔もひきつっていた。

 

 もう知らねーぞ?俺達は気にしないことにした。いちいちツッコんでるとこっちの体力が持たないんだよ!

 

 と、俺は心の中でツッコミ放棄宣言をする。

 

 結羽も気にしないことにして、何も無かったかのように本を読み始める。

 

 なんかさ、可愛い女の子ってなにやっても絵になるよね。うん。

 

 でもヤンデレはやめてほしい。あれが演技だとしたらすごいよ?

 

 その後数分間遊んでいた二人だが、流石に疲れてきたらしくこちらに寄ってきた。

 

 俺は二人に事前に買っておいたスポドリを投げ渡す。

 

 そして二人は上手いこと胸の前でキャッチし蓋を開けて飲み始める。

 

「そろそろ帰らね?もう夕方だし」

 

 俺は提案する。

 

「そうだな」

 

 と、悠真

 

「そうね」

 

「そうだね」

 

 白波さんと結羽も同意する。

 

「そう言えば今日も優也のお父さんは遅いんだよね?ご飯作るよ!」

 

 と、言ってくる結羽。ありがたい。だが、毎回作っててもらっては申し訳なくなる。

 

 なんかお礼をしたいな。こう見えて俺は借りは返すタイプの人間だからな。

 

「おい!優也!今日もって言ったか?今日もって!いつも作ってもらってんのか?完全なるフラグ立ってんじゃん!」

 

「たまにだけど。ってかフラグってなんだ?何のフラグだよ!」

 

 マジで意味わからん…ってか料理を作ってもらって立つフラグってなんだよ!

 

 と、俺が返すと皆がやれやれ…と言った表情でこちらを見てる来る。なんだ?その目線は!どんな意味が混もってんだよ!

 

「今に始まったことじゃないから別に気にしてないよーだ」

 

 と、いかにも怒った口調で言う結羽

 

「そうだ!今から結羽の家にお邪魔しても良いか?」

 

 と、俺が言うと、頭に?を浮かべた様子で一瞬間があった。

 

 そして結羽は「良いけど」とうなずく。

 

「じゃあ普段作ってもらってばかりだから今日は俺が作るよ」

 

 と言うと結羽は顔を赤くして顔をそらしてしまった。

 

 他の二人はにやにやと期待が混ざったような視線でこちらを見てくる。

 

 そして結羽は顔を赤くしながら何かを呟いている。何?何か俺、おかしなこと言ったか?

 

 最近は俺、料理してないし、忘れられがちかも知れないけど一応人並みには料理出来るんだぜ?なのにこの反応っておかしくないですか?

 

 結羽は理由を聞いてきた。

 

 すると、二人が結羽に近づいて何かを耳打ちする。

 

 そしたら結羽の顔が更に赤くなっていく。

 

 何か変なこと吹き込んでないよな?

 

 そしたら結羽はこちらを向いて小さくうなずいた。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 あのあと二人と別れ、俺は結羽と一緒に結羽の家に来ていた。

 

 今日は偶然結羽の母親も遅いらしい。そのため結羽と冬馬と俺しか今、この家に居ない。

 

 ってか料理は久々だな。結羽と出会う前はほとんどコンビニ弁当だったし、気が向いて作っても簡単な朝食みたいな夕食になっていた。

 

 そして俺は今、炒飯を作っている。

 

 ジューと言うご飯を炒める音が食欲をそそる。

 

 しかしまぁ、結羽ほどの料理のバリエーションは無い。

 

 あれはすごいわ。

 

 今、俺が作っているような炒飯に、チンジャオロース、プルコギ、餃子(手作り)、ハンバーグ(手作り)、オムレツ、オムライス等々、挙げたらキリがないほどのバリエーションの料理を作っていたんだ。結羽ってすごいよね。手間を惜しまない結羽には感心するよ。

 

 そして俺はフライパンを振る。

 

 すると、炒飯が宙を舞い再びフライパンの中へ

 

 そして出来た炒飯を三枚の皿に盛り付ける。

 

 その皿を結羽と冬馬が待つテーブルに置く。

 

 そして置き終わって俺も席につく。

 

 そして頂きますを合掌して食べ始める。

 

 結構好評だった。よかった。まずいとか言われたらどうしようかと思った。

 

 なぜか途中で結羽があーんをしようとしてきたが俺は華麗にスルーした。

 

 すると、結羽は頬を膨らまして俺の腕をぽかぽかと叩き始めた。

 

 冬馬はと言うと気にしないで黙々と食べていた。

 

 食べ終わって別れの挨拶をして自分の家に帰った俺は疲労がピークに達していたためベットに飛び込むや否やの〇太並の早さで眠りについた。




 はい!第25話終了

 今回で冬休み終了です。

 次回からは三学期に突入です!

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

1年生編 三学期
第26話 近づく真依の卒業


 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回から三学期スタートです!

 それではどうぞ!


side優也

 

 ついに今日から三学期、長いようで長かった一年生もいよいよ終わりを告げる時期だ。

 

 そして俺達の二学年上である白波さんは卒業をする。

 

 白波さんが今後進学をするのか卒業をするのかは知らないが今学期でお別れと言うことになる。

 

 まぁ、あの人の事だからたまにフラ~っと遊びに来たりするかもしれないが、まぁ、それでも名目上はお別れになる。

 

「ねぇ、優也」

 

 と、隣で登校路を歩いている結羽が突然話しかけてきた。

 

「なんだ?」

 

「白波さん、卒業だね。なんか知り合いが卒業ってなると考え深いよね」

 

「だな」

 

 と、俺は簡素な返事を返す。

 

 とりあえず眠いから適当に済ませたかったのだ。

 

「ふわぁぁ…」

 

「ずいぶん眠たそうだね?どうかしたの?いつもの優也らしくないよ」

 

 それもそのはずだ。悠真、あいつまじで許さん。

 

 夜遅い時間に急にあいつ(悠真)が俺にLINEを送ってきやがったんだ。

 

 そんで少しは返したりもしてたんだが、眠きなってきてスルーしようと思ったんだ。

 

 あいつのことだし次の日問い詰められるだけだと思って寝ようとしたんだ。

 

 そしたら急に

 

 キンコン

 

 キンコン

 

 キンコンキンコンキンコン

 

 と、うるさく間髪入れずに送ってくるようになったんだ。

 

 俺は眠い目を擦りなから携帯に目を向けLINEを確認したところ、つい数分前まで途切れることなく送りあっていた俺の返信がなにかがあったかのように途切れたことニより不審に思った悠真が心配して「おいっ!?大丈夫か!?優也~!」と何個も送られてきたんだ。

 

 無茶ぶりだとは分かっちゃいるが、察しろ。(自称)親友なんだろ?

 

 とまぁ、うるさいので付き合ってやったら思いの外長くなりまして、それで睡眠時間が削られ眠いって言う事だ。

 

「やぁ、お二人さん。今日も仲良く登校かい?」

 

 と、急に後ろから声が聞こえてきた。

 

 俺たちは後ろを振り向くとそこにいたのは悠真だった。

 

 こいつは夜型なんだが、その生活習慣と言うのが遅寝、早起きなのだ。とても変則的な生活習慣である。

 

 そのお陰か、こいつは眠くなさそうだ。こっちの気も知らすに。

 

 と言うかこいつ、また面白がって仲良くとか言ったな…俺は平気なんだがそう言うことをいうと結羽が大変なことになる。

 

「ち、違うんだよー!こ、これはいつもの事で仲良くとか言うのは関係なくて!」

 

 ほら、言わんこっちゃない。

 

 結羽が悠真の言葉に反応し慌てて弁解を試みている。

 

 俺からしたらどこに慌てる要素があるのかが全く理解できない。

 

 全く女心というのは難しいものだ。

 

「悠真、なぜあんな時間にLINEを送ってきたんだ?お陰でこっちは寝不足だ…」

 

 と、俺は眠い目を擦りながら問いかけた。

 

「いやぁ、急にLINEしたくなっちゃってな。だけど誰かを巻き込むのは申し訳ないから優也にLINEしたんだ」

 

 なるほど…そんな理由で俺の睡眠時間が犠牲に…って!

 

「今、の言い方だと俺になら迷惑をかけていいかのように聞こえるんだが!?」

 

「しっかし今日はいい天気ダナー」

 

「ねぇっ!?急に露骨に話をそらそうとしないで!?」

 

 俺が問いかけると誤魔化すように悠真は話をそらそうとしてきた。

 

 否定してくれないってことはそう言うことなの!?え?俺って悠真の中ではそう言うキャラだったの!?

 

 う、くそぅ…こいつには今度痛い目を見させなければいけないようだな。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 そして歩いていると学校に着いた。

 

 そしていつも通り結羽と悠真と別れて自分の教室へと向かう。

 

 1年生の教室は3階、3年生の教室は2階にあるので途中で三年生の様子がうかがえる。

 

 皆受験モードになり、SHRが始まる前の時間を活用して勉強をする人、面接の練習をする人、様々な人がいる。まぁ、就職をするのか何もしていない人も居るには居るが…

 

 そしてそれらを流し見していると白波さんを見かけた。

 

 彼女は自分の教室にて勉強をしていた。とても静かに集中して勉強しているため、賑やかに面接練習をしている声もまるで入ってきていない様だった。

 

 もしかして俺等の前だと気を許せているのかな?他の人の前ではこんなに真面目な生徒会長なのかな?

 

 いやいや、なに考えてんだ!自意識過剰にも程がある。

 

 とりあえず自分の教室に入らないといけないな。

 

 そして俺はそのまま階段を上り3階にある教室に向かった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 1年のフロアは3年のフロアと違って賑やかで楽しそうに友達と話したりしている姿がうかがえる。

 

 なぁ、何で俺の友達って女子が過半数を越えてるんだ?

 

 しかも学校の皆は当然、中学の冬馬の事を知っている人は少ないため、最近結羽や白波さん、星野さんと話をしていると周りの視線が痛い。

 

 学校の皆からしたら男友達は悠真だけで他は女子に見えているのだろう。

 

 言っとくがリア充とかじゃないぞ?ちょっとあいつ等が異常に絡んでくるだけで

 

 あいつ等に恋愛感情を抱いたことが一度もないからな。それだけは勘違いしてはいけない。

 

 ってか何で俺、こんな説明口調になってんだ?

 

 そしてそんなこんなしていると先生がやって来てSHRが終わり、始業式が始まる。

 

 始業式では国歌を歌ったり校歌を歌う。そしてなんといっても校長先生のあの長い話だろう。

 

 寝ている人がちらほら見えたが気にしないことにした。

 

 なぜなら遠くの方に視界の端で居眠りを見つかって怒られている悠真が見えたからだ。だから俺は考えることをやめた。

 

 そして教室に帰ってきた俺たちは今、LHRを受けていた。

 

「無事に誰一人欠けることなく三学期を迎えられたことを先生は嬉しく思います!」

 

 と、述べる春海先生。

 

 まぁ、先生なら皆そう言うよな。

 

 俺の席は一番後ろで端だ。そんな席はボッチにとって最高の場所。わざわざ話しかけるやつなんて俺の目の前のやつ位だ。名前は覚えていないが、

 

  ってか俺等は小学生かよ!?俺等の年齢で病院送りになるような事故を起こすやつなんて居るのか?

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 そんなこんなでLHRも終わり、あとは帰るだけになった。

 

 俺は自分から絡みたくないが、向こうが待てと言うから仕方なく待っているのだ。

 

「お!優也、待ってくれてたのか!」

 

「お前が待てと言ったんだろ?」

 

 と、俺は悠真に簡単なツッコミを入れる。

 

 すると後ろから結羽と白波さんが着いてきた。

 

「優也くん。こう言うのはキッチリ守るよね。フムフム。関心だ」

 

 と、頷く白波さん。

 

 ってかフムフムって実際に口に出す人初めて見た…

 

「じゃあ揃ったんだし、帰ろ!」

 

 と、催促する結羽。

 

 ツッコミを放棄したい俺だが反射的にツッコんでしまう。

 

 そして結羽の声と同時に俺等は歩き出した。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 今日は午前授業だったため早い時間に帰ることが出来る素晴らしい日だ。

 

 こいつらが居なければ、だが

 

 こいつらが居るせいで俺はモテているように周りから見られてるんじゃないか?

 

 悠真?あいつは自分は関係無さそうに俺達とは距離を置いて歩いている。

 

 結羽は純粋に俺の隣を歩いているっぽいから良いとして、白波さんは完全に状況を理解しつつ面白がっている様子だ。

 

「悠真!こっちこい!」

 

 と、俺は後方で距離を置いている悠真を連れ戻そうとする。

 

 すると「しょうがないなぁ…」と、言ったご様子でこっちに来た。

 

 うざい…なんなんだよ…

 

「優也も嫉妬せれて大変だねぇ」

 

「完全に原因、あなたですよね?こんな状況で俺を一人にしないでください。視線と言う凶器で刺されてしまいます」

 

 普通に視線って心への殺傷能力があると思うんだ。

 

 そんな中一人にされたら更に俺に対しての妬み嫉みの視線が集中してしまうじゃ無いですか…

 

「んじゃここで解散だな。俺こっちだから」

 

 そして悠真は俺達とは別の道に入っていく。

 

「じゃーね。優也くん」

 

 そして白波さんも別の道に入っていく。

 

 あの二人、俺をからかって何が楽しいのか分からないな…

 

 そして現在、俺と結羽の二人きりとなった。

 

 最近はギリギリまで着いてくんだよな。何がしたいのかが分からん。

 

 そして暫く歩くうちにいつも別れているところに着く。

 

「んじゃ。また明日な~!」

 

 と言って俺は手を左右に振る。

 

 そしたら結羽も「また明日!」と言って小走りで走って帰っていく。

 

「いつもの事だが、疲れた…」

 

 そして一日が終わりを告げた。




 はい!第26話終了

 ついに始まった一年生最後の学期、そして白波さんの卒業が間近ですね。

 さて、一年生編最後の章、優也は悔いを残さず進級出来るのか!?

 それでは!

 さようなら

 


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第27話 優也の日常

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回は出てくるのは優也と悠真だけです。

 それではどうぞ!


side優也

 

 今日は祝日

 

 当然俺はゆっくり…出来るわけも無いんだな

 

「なぁ、優也。俺、お前のことがすk」

「お引き取り願います」

 

 俺は悠真に少し食いぎみにそう言いはなった。

 

「ったく、ジョーダンだよ。ジョーダン。ちょっとしたジョークさ」

 

 こいつ…いきなりなんなんだよ。

 

 唐突にこいつは俺の家に押し掛けてきて何をするでもなく、ただ俺のベットに寝転がって本を読んでいる。

 

 正直こいつが何を思って俺の家に来たのかが分からない。

 

 それとこいつしか来なかったことに驚きだ。

 

 結羽だけでも来ると思ったんだが

 

「よし、俺が今日来た理由を発表しようと思います!」

 

「ずいぶん唐突だな!」

 

 そして悠真は俺の突っ込みをスルーして話し出した。

 

 多分適当に来たかっただけとかそんなんだろ。

 

「もうすぐで3年生の中でも親しい舞先輩が卒業じゃん?」

 

「親しいって所が気に食わないがそうだな」

 

 じゃんって…

 

「で、卒業したら会える頻度が下がって寂しいじゃん?」

 

「あ、いや、別n」

 

「じゃん?」

 

「あ、はい」

 

 こいつ威圧してきたぞ?

 

 こいつ白波さんの事好きすぎだろ!

 

「で、何か最後に思い出に残るようなことをしたいじゃん?」

 

「・・・」

 

「で、卒業祝を計画しますじゃん!」

 

「なんだその語尾はーっ!!」

 

 これはさすがに突っ込ませろ!

 

 今までの自然な流れではまだ許そう。だが、

 

 おかしいじゃねーか!なんだよ″しますじゃん″って!

 

「はぁ、要するになにもしないまま白波さんとお別れってのは寂しいから卒業祝を開こうと言うことだな?」

 

「イエース!」

 

 こいつのテンションおかしくね?

 

 何このハイテンション。

 

 話し出すときは真面目だったのに何で急にハイテンションになってんだ?こいつ情緒不安定か?

 

 でもさ、これだけが理由だと結羽が来ていない理由にはならないよな。

 

「一応結羽ちゃんも誘ったんだけどね。用事があるとか言って断られた」

 

 と、説明する悠真

 

 へー。珍しいこともあるもんだな。

 

「用事ってなんだろな」

 

「そこまではおれも知らん…って、優也。お前、結羽ちゃんの事気になるのか?」

 

 なんかにやけている悠真

 

 殴りたい。この笑顔

 

 何を考えているかは知らんが、ロクでもない事なのだろうから無視をすることにした。

 

「ところで発案者様は大体の事は決めてきたのだろうな?」

 

「ああ、ちょっとな」

 

 と、テーブルの上に大きな紙を広げる悠真

 

 俺は一体なんだろうか?と、思って紙を除き込んだ。

 

 そこにはこう書いていた。

 

『ねえねえ、何か書いていると思った?残念。構想など一切書いていません』

 

 俺はこれを見た瞬間、無言になって立ち上がり、悠真の方向を向いた。

 

「こ、怖いです優也さん。無言で近づきながら手をポキポキ鳴らすのをやめてください」

 

 そう言うが俺は歩みを止めない。

 

 そして

 

「や、やめろー!うわぁぁぁぁっ!」

 

 この時、悠真の悲鳴が響き渡ったと言う。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「大体こんな感じで良いかな?」

 

 と、悠真はペンを走らせるのをやめる。

 

 俺達は先程の紙の裏面を利用し、卒業祝いの計画を練っていた。

 

「って、いつも通り俺ん家なのな。それで俺と結羽が料理…あれ?悠真は何をするんだ?」

 

「白波さんの話し相手を…」

 

「ちょっとはこっちに貢献しろよ!」

 

 そんな一人だけ楽はさせねーぞ!

 

 そして俺は無理矢理にでも悠真に仕事を与えるため、高速でペンを走らせる。

 

 そして書き終わってペンを奥と、悠真が紙を覗き込んだ。

 

「な!」

 

「お前の仕事は俺達の雑用だ。俺等から比べたら楽な方だろ?お前に無理に仕事を与えてもさb」

「そんなことをしてお前の良心が痛まないのか!」

 

「えぇぇぇっ!」

 

 こいつ、食いぎみに言ってきやがった。

 

 なんてやつだ。一人だけ楽しようだなんて。

 

 大体、だいぶ考慮したってのに、何文句あんだよ!

 

 これくらいで良心は痛まねーよ。寧ろスーっとしてるくらいだ。

 

「文句言わずに働け」

 

 俺がそう言うと悠真は立ち上がって紙を持ってドアに向かう。

 

「あ、そう言えば俺、用事があるんだった。と言うことでさらばだ」

 

 そう言って部屋から出ようとする悠真

 

 しかし、俺は悠真の手首をガッと掴んで阻止した。

 

 いやいやいや、今のはバカでも分かるくらい嘘だってわかるぞ!だいたい、棒読みな時点でなぜ俺を騙せると思ったし。

 

「優也。離してくれないか?」

 

「ことわーる!」

 

 即答だった。

 

 話したら超高速で逃げるに決まってる。

 

 だから俺はこいつの手首を話さない。

 

「お、お前、以外と握力強いな。インドアの癖に。痛いぞ?」

 

「まぁ、筋トレだけはしてるからなって、インドアは余計だ」

 

 そう言って俺は更につかむ手に力を込める。

 

「痛い痛い!ギブギブ!やりますから!丁重に雑用を受けることを承諾させて頂きますから!この手を離してください!」

 

 そして懇願してくる悠真を尻目に部屋の中に引きずり込み、部屋の中にあったロープで手足を縛り上げる。

 

「な、何でお前の家にロープなんて」

 

「白波さんが「必要になったら使ってね」って言う感じで置いていったんだが、こんな感じで使うことになろうとはな」

 

 ロープを持ち歩いている白波さんに驚きでした。

 

「じゃあ、帰るからほどいてくれないか?」

 

「良いけど紙は置いていけよ。書き直されたら困るし」

 

「へーい」

 

 そんな感じで渋々悠真は帰っていった。

 

「余計な労力を使った気がする」




 はい!第27話終了

 今回はいつもより短かったですね…すみません

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第28話 ついにおかしくなる悠真

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 しばらく間が空いてしまってすみません!

 最近なにかと忙しくて書けませんでした!

 ちゃんと魂愛想も書いていきます!

 それではどうぞ!


side優也

 

「よ!優也」

 

「なんだ。悠真か…」

 

「なにその残念そうな反応は!」

 

 そうな(・・・)ではなく実際に残念(・・)なんだよ!

 

 って言うかいきなりなんだよ。廊下でばったり会うなり話しかけやがって、

 

「そろそろ宿泊研修だろ?優也どこ行くのかな?って」

 

 あ、そう言えばそろそろそんな時期だっけ?

 

 ってか何でこの時期に?

 

「こっちではまだその話は上がってないな」

 

「そうか。あ、ちなみに作者が宿泊研修の事を忘れてて無理矢理冬季にしたわけじゃ無いからな?」

 

「メタイ!」

 

 と、俺は悠真に突っ込む。

 

 しかし宿泊研修か…どこ行くんだっけ?

 

「確か季谷魔市だったはず」

 

 季谷魔?ああ、あそこか

 

 季谷魔市

 

 人口10000人弱と言う小さな町で

 

 田舎なため、空気も澄んでいて、食べ物美味しい良い町だ。

 

「楽しみだよな」

 

「まぁ、そうだな」

 

 こっちではその話題は一切まだ上がっていない。

 

 正直、俺も楽しみなところはある。

 

「それはそうと、俺らってさ、皆別のクラスだよな?」

 

 そうだな。綺麗にバラバラだな。

 

「同じ班にはなれないし、同じ部屋にもなれないわけだ」

 

「まぁ、そうだな」

 

「何て言うことだ!なぜ俺達は皆バラバラなんだ!?」

 

 俺はなぜバラバラの俺達が仲良く?なれたのかが不思議で仕方ない。だって、クラス違ったら接点無いだろ?

 

 結羽と知り合ったのだって偶然だし、星野さんに知り合ったのだって偶然

 

 悠真は…会いたくなかった

 

「ちょっと、会いたくなかったについて詳しく聞こうじゃないか!」

 

「さも当然のように俺の心を読むな!」

 

 と、普通に大声で話しているので俺達はいつの間にか注目を集めていた。

 

 それを感じ、俺は咄嗟に声を小さくする。

 

「んで、お前のクラスはどうだったんだ?その口ぶりからすると決まったんだろ?」

 

 と、なにやら悠真は視線のことに気がついてなくて、いきなり俺が声を潜めた事を不思議がり一瞬考えた。

 

 すると、悠真も視線に気がついたようだ。

 

 すると悠真は大きく息を吸い込む。

 

「俺はだな!れk」

 

「声がデケーよ!」

 

 と、ついつい勢いで大声でツッコミを入れてしまった。

 

 こいつ、人目を集めてるって知りながらわざとやったな!

 

 俺は人目を集めるのが好きじゃないってのに…ただでさえ、いつも美少女を連れて歩いて人目を集めに集めまくってもうお腹一杯だと言うのに…

 

 と、思いながら周囲に「すいません」と頭を下げて謝罪する。

 

「すまんすまん。俺は歴史館に行くんだ。季谷魔の歴史館ってここらで有名だから一度行ってみたくてな」

 

 ほう…それは面白そうだな。

 

 いや、歴史館なんて楽しいもんでも無いだろうけど悠真がお勧めするなら信頼できる。

 

 こいつはふざけたり、ふざけたり、ふざけたりするけどこいつのお勧めにハズレがあったためしがない。つまり信用できるってことだ。

 

 俺の班が誰とになるかはわからないけど出来るなら俺も行ってみようかな?歴史館

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 と、なんともなタイミングで予鈴が鳴る。

 

「んじゃ、またな」

 

 と、手をヒラヒラと降って走っていく悠真

 

 さてと、次は科学だっけか?物理実験室に移動だったかな?んじゃ、行きますか。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

放課後

 

 現在、俺は一人で下校している。

 

 なぜ一人で下校してるかって?

 

 確かにな、いつもは結羽か悠真は必ずと言って良いほど付いている。

 

 なのになぜその二人が居ないかと言うと、俺にもわからないのです。

 

 いやさ、ワケわからんのだよ。

 

 俺が下校しようと玄関に着いたとき、LINEにこう送られてきた。

 

「私、今日は一緒に帰れないかも」

 

 まぁ、わかる。結羽のはまともな文章だ。しかし悠真はと言うと

 

「俺は今、絶対的境地に立っている。お前と帰ることなど出来ない」

 

 ・・・中二病かな?

 

 ちょっと頭のネジが数本飛んでしまったようだ。

 

 さすがの俺でも解読出来なかったよ。うん

 

 一緒に帰れないと言う意思表示は分かる。だけど、なんでその結果がこの文章に成るんだ!おかしいだろ!

 

 となると、へんな文章になってるが、用事があると考えるのが一番自然だ。

 

 絶対的境地、例えその絶対的境地がヤバイことだとして、その状況下で携帯なんていじれるのか?いや、握ることも不可能に近いだろう。

 

 よってこの言葉はふざけて送ったと推測する。

 

 と、その時ふと空を見上げる。

 

 空は雲に覆われて雲行きが怪しい、いつ降りだしてもおかしくない空だ。

 

 そう思ってると、案の定雨が降ってきた。

 

 折り畳み傘持ってて良かったぜ…

 

 そして少し歩くと、なんと星野さんが居た。

 

 屋根の下で雨宿りしてる感じだ。

 

 恐らく傘が無いのだろう。だから少し雨が収まるまで待ってる感じか。

 

 生憎、これは良くなりそうもない雨だな。

 

「そう思って星野さんに近づく」

 

 すると

 

「何かしら?天然タラシさん?」

 

「タラシじゃないわ!」

 

 失礼な!俺は別にそんなことしてないぞ!天然ってのが気になるが、それは絶対にしていないと言い切れる。だって事実、してないからな。

 

「とりあえず、傘無いなら送っていく」

 

 すると、星野さんの顔が赤くなったような気がしたが、暇潰しに読んでいた本で顔を隠したため、顔はあまり見えなかった。

 

「そう言うところが天然タラシなのよね」

 

「なんか言ったか?」

 

「なにも言ってないわ。ラノベ主人公さん」

 

「久々にその言葉聞いたな」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

after

 

「私は相合い傘をしてもらって、家にまで送ってもらったのよ。あなたはそんなことしてもらったことないでしょ?」

 

「うぐっそ、それは…」

 

「つまり私の勝ちってことよ」

 

 こいつらは何を争っているんだ?




 はい!第28話終了

 暫く遅れてしまいすみません!

 では次回くらいから宿泊研修編スタート!

 と言っても班決めからですけどね

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第29話 班決めは戦争とイコール

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 本格的に宿泊研修の話しに入っていきます。

 それではどうぞ!


side優也

 

 授業中

 

「はーい!皆さん!」

 

 と、春海先生

 

 今日は時間割にLHRが入っていた。

 

 俺にとっては何をするのかもう分かりきっていた。

 

 そう、何をするかと言うと

 

「皆さんお待ちかね。宿泊研修の班決めです!」

 

 すると、ワーギャーと盛り上がる教室。

 

 そう、体育祭、文化祭に続いてのビックイベント。それが宿泊研修or修学旅行だ。

 

 そして、そのビックイベントのすべてを左右するとも言えるイベント。それが班決めだ。

 

 班決めはとても重要なイベントだ。

 

 俺にとっちゃどうでもいいが、班は好きなやつと組める。そう、それはまさしく戦争と言っても過言では無い。

 

 と言ってもほとんど男側が盛り上がってるだけだが…

 

 それを見ながら女性陣はちょっと引きぎみだ。

 

 そう、ほとんどこの祭り(戦争)は男側の女性の取り合いだ。

 

 そして、その一番人気は端で教室を見回しながら事の顛末(てんまつ)を見守る少女咲峰(さきみね) 菜乃華(なのか)だ。

 

 あ、目があった。

 

 実は俺は女性陣の取り合いには参加せず、自席に座り本を読んでいた。

 

 そのため本が一段落し、顔を上げた拍子に目が合ってしまったのだ。

 

 すると、咲峰さんは一瞬考えるような素振りをしてからテーブルに手を着く。

 

 すると、咲峰さん取り合いじゃんけんは終了し、そこら辺一帯は阿鼻叫喚していた。

 

 俺でもちょっと引くくらいにやべえな。

 

 俺は残ったやつらと組めばそれで済むから良い。

 

 しかし、そんな俺の考えを否定するように俺の目の前に咲峰さんが来る。

 

「何のようですかね?クラス一番人気の女性さん」

 

 と、嫌みも込めて言ってやった。

 

「この状況、気分が良いと思う?」

 

 と、聞いてきたので

 

「ぜーんぜん」

 

 と、両手を顔の横に上げ手のひらを上に向けて顔を降りながら言いはなった。

 

「そう」

 

 と、短く返す咲峰さん

 

「あなた、私と組んでくれない?」

 

 その瞬間、このクラスの時間が止まったような気がした。

 

 この人、今なんつった…

 

「「「「えぇぇぇぇぇっっっっっ!」」」」

 

 と、またまた阿鼻叫喚する男陣。お前ら感情の動き忙しいやつらだな!

 

 ってか、困ったな。つーか、なぜ俺?

 

「それはちょっとこの場では…」

 

 なぜもじもじする?

 

 その言葉でその仕草はやめろ!なんか誤解される。

 

 そんな俺の心配した通りに

 

「おい絆成!お前咲峰さんとどういう関係なんだ!」

 

「く、悔しい!勉強の偏差値は高くとも顔面偏差値は平均の絆成がなぜ!」

 

「絆成爆発しろ!」

 

 なんだってんだよ!

 

 取り合いずここは

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 と、タイミング良くチャイムがなった。

 

「逃げるぞ!」

 

 と、俺は咲峰さんの手を引いて走り出した。

 

 なるべく教室に居たくない空気だったのだ。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 俺は咲峰さんを連れて屋上に来ていた。

 

「さて、私をこんなところに連れ出してなにするつもり?もしかして、二人だからって」

 

「しねぇよ」

 

 と、低いトーンでツッコミを入れた。

 

「ってか、なんで教室であんなことした」

 

「面白そうだったから?」

 

 こいつ…おかげで俺が教室に居づらくなったじゃないか!

 

「じゃあ、そろそろ本題に入ってちょうだい」

 

 と、やっと本題に入れそうなので本題に入ることにした。

 

「じゃあ聞くけど、何で俺と班を組もうと思った?」

 

「それはあなたが不思議だったから。あなたがあの男子の輪の中に入っていかなかったから、あなたとなら安心じゃないかな?って思ったから」

 

 から多いな。

 

「ってか、それだけで安心って思うのはどうかと思うぞ。俺は咲峰さんを騙して何かしようとしてるのかも知れないぞ」

 

 俺がそう言うと咲峰さんは微笑してからこう言った。

 

「そんなこといってる人が本当にそんなことするのかしらねぇ?」

 

 と、言ってきたから俺は「俺の敗けだ」と言わんばかりに笑ってからこう言った。

 

「違いねえ」

 

 そして俺のパーティーに咲峰 菜乃華が加わった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「しかし、組むのは良いが人数あと2人足りないぞ?」

 

「まぁ、そこら辺は適当に決めちゃって良いわよ」

 

 適当にって…なんだよ

 

 人任せにしやがって…それだけじゃなく、俺の平穏まで脅かしやがって

 

 クラス一番人気の方が誘ってきたせいで俺の居場所が危ういんですが。

 

「適当に…ねぇ」

 

 俺が仲良くしてる男女ね…

 

 まだ仲良くしてる方なのは堂明寺と白井さん位だな。

 

 堂明寺…本名堂明寺(どうみょうじ) あつし。

 

 寺の一人息子で時折俺に絡んでくる変わり者

 

 白井さん…本名白井(しらい) つみき。

 

 結構消極的な女の子で、元気っぽさがある結羽とは対極的な性格の()だ。

 

 取り合えずこの二人を誘ってみるか

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「え?俺を?良いが、お前彼女はどうした?浮気か?」

 

「してねーし居ねーよ!」

 

 こいつ、いったいどんな勘違いを…

 

「あはは。まぁ、冗談だけどな。さすがにあんなことになったのはお前も咲峰さんも同情するわ」

 

 わかってくれりゃ良いんだ。

 

─※─※─※─※─※─※─※─

 

「わ、わわわ、私?え、えと…その…」

 

 俺と白井さんが知り合ったきっかけは堂明寺何だよな。堂明寺に紹介されて一緒に話す間柄になった。

 

「ああ、頼む。白井さんだけが最後の希望なんだ!」

 

 ここまで頼み込んだら断れる人なんてごく少数のはず。まともな精神では断れないはず(ゲス)

 

「わ、分かりました、えと、えと、よろしくお願い、します」

 

 と言う感じで二人確保したのだった。




 はい!第29話終了

 次回は本番にしたいと思ってます。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第30話 黒歴史

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 いよいよ宿泊研修編です!

 それではどうぞ!


side優也

 

当日

 

「皆さん!盛り上がっていますか~?」

 

 と、春海先生

 

 まぁ、大部分のひとは盛り上がっている。

 

 だが、俺と咲峰さんはだいぶ冷めていた。

 

 もともとボッチの俺とクールな咲峰さんではこのテンションに着いていけません。

 

 盛り上がってる…盛り上がっているが、俺に(殺意)が刺さっているような気がする。

 

 まぁ、良い。俺には関係無い。恨まれたって関係ねぇ。

 

「では、そろそろバスに乗ります!」

 

 ドスブスグサァっ!

 

「ぐっ!」

 

 きっちり急所に当ててくるんですが…それに俺は注目を浴びるのが一番嫌いなんだよ!

 

 と、そんな青い顔をしている俺を見つけて咲峰さん、堂明寺は必死に笑いをこらえていた。

 

 いったいどうしてこうなった。

 

 今起こった事を嘘偽り無く話すぜ。俺は普通にバスの席に座ろうと思ったんだが

 

「あの…俺のとなりって堂明寺だったはず何ですが」

 

「そうね」

 

「それがどうして咲峰さんが隣に座ったのでしょう?」

 

「変えたのよ」

 

 え?変えた?

 

 変わったじゃなく、変えた?そういや不自然に実行委員を申し出たことがあったような…

 

 そう思い、俺が疑いの眼差しを咲峰さんに送ると、不自然に目を逸らした。

 

「職権乱用かぁっ!」

 

 と頬をつねる俺

 

「痛い痛い!」

 

「どうしてこんなことをしたんだ!」

 

「私が信用しているのはあなただけよ。それにあなた、そんなことしてて良いの?」

 

 どういうことだ?

 

 と、思うと、咲峰さんはその答えを教えるように指を指す。

 

 するとそこには憎悪の塊が居た。

 

「咲峰さんのほっぺたを触るなんて羨ましい!」

 

「死ね!優也!」

 

「この浮気やろう!」

 

 俺はどういうイメージなんだよ…

 

 と言うか恨みがすごい。

 

 と言うか浮気って…なんか決まり文句の様で突っ込む気も失せた。

 

 そして俺が咲峰さんから手を離すも、憎悪の念は途絶えることは無かった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 それから暫くして

 

「それではレクを開始します」

 

 と、実行委員の一人が立ち上がる。

 

「内容は単純明解。隣の人とじゃんけんをして、負けた方が勝った人に黒歴史暴露」

 

 うわぁ…最上級に嫌な命令だ。

 

 俺は黒歴史こそ少ないが、何個かしかない黒歴史がめちゃくちゃ恥ずかしいのだ。

 

 負けるわけにゃいかねぇ

 

「それでは行きます」

 

 しかし、俺は忘れていた。俺の特性を

 

「最初はグーじゃんけんポン」

 

 俺はポンの掛け声と共にグーを出した。

 

 そして咲峰さんを見ると咲峰さんはパーを出してた。

 

「ふっ」

 

 すると、咲峰さんの顔が悪い顔になった。

 

「悪いね~」

 

「その言葉は自分の顔を見てから言った方が良いと思うぞ」

 

 畜生!忘れていた。俺の運のステータスは最低値だったんだ。

 

「さてさて?君のkurorekisiを教えてくれるかな?」

 

 バカにしやがって

 

 そして仕方ないから話し出す。

 

「あれは中学の何年生だったかな?まぁ、そこは良いんだけどよ。不良に襲われている女の子を助けたことがあんだよ。ヒーローぶって。それが今になってみれば恥ずかしいのなんのって」

 

 あの頃はヒーローになりたいと本気で思っていた。そんな自分が恥ずかしい

 

「武器は?どうせ年上だったんでしょ?それとも君は武器を使わず追い払うことが出来る超人だったの?」

 

 こいつ、その時見てたんじゃないか?って位的確なこと言ってきやがる。

 

「サッカーボールだ」

 

「え?」

 

「脚力だけは自信が有ったからな。丁度サッカー帰りだったから蹴ってぶつけたら気絶した」

 

 めっちゃはずい…

 

「ふーん。君、以外とイケメンなことするじゃん」

 

「さあさあ、この話しはおしまい!」

 

 と、慌てて話しを変える。

 

 あの子、あの後大丈夫だったかな…あの後一度も会ったことがないからその後を知らない。

 

 無事、その後を平和に暮らしているなら俺の黒歴史も無駄じゃなかったってことだ。

 

「さて、そろそろ見えてきました。観光の名所。季谷魔市です!」

 

 今は冬で雪に覆われているにも関わらず、活気のある町

 

 同じ田舎の居真舞とは大違いだ。

 

「まず、今回止まる宿にチェックインしてから自主研修に向かいます」

 

 そうしてバスから降りる。

 

 寒いが肌に刺すような寒さではなく、優しく気持ちいい寒さ

 

 そのお陰でそこまで嫌な寒さだとは思わない。

 

「では、屋度にチェックインしに行きます」

 

 そうしてチェックインを済ませ、自主研修に向かった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「まず、どこ行くんだ?」

 

 と、俺のしおりを覗き込みながら聞く堂明寺

 

「そうね。そろそろお昼だし何か食べましょうか」

 

「そうだな。じゃあ行くか」

 

 そして俺達は食事しに向かう。

 

 俺達の選んだ食事所は八反亭(はったんてい)、由来は知らん。

 

 ここでは米が上手いと評判なため、ここの店のおすすめ料理は丼ものだ。

 

 ここは水がすごく評判なので、その水で作った野菜を食いながら育った牛や豚などの家畜はとても油が乗っててジューシーに仕上がるらしい。

 

 だから肉も評判だ。

 

 その時、横目で見てしまった。

 

 路地裏でかつあげされている男の子を

 

「助けなくて良いの?」

 

「ふっ、サッカーボールも無いし、俺に助ける道理が無い。つまり、お前の思惑は失敗に終わったんだ!」

 

 すると、バックからサッカーボールを取り出す咲峰さん。

 

 さっきまであまり入ってないバックのように萎んでましたよね?何でそんな中から何でボールが出てくるんですかね?

 

「さぁ」

 

 と言ってサッカーボールを渡してくる咲峰さん

 

 はぁ…

 

「もう、どうにでもなれ!」

 

 パシューーーンと獲物めがけて飛んでいくサッカーボール

 

 すると、ガツンと不良に当たり気絶した。

 

 暫くサッカーをしてなかったが、脚力は健在だったようだ。

 

「大丈夫か?今度は捕まんなよ」

 

 そう言って手をヒラヒラと降って去ろうとする。しかし、

 

「あの、あなたの名前は」

 

「絆成 優也だ」

 

「ありがとうございます!俺、河野(こうの) 健人(たけと)と言います!本当にありがとうございました」

 

 そして手をヒラヒラと降って去る。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「やっぱ優也だな。仕向けられたとしてもちゃんと助けるところが変わってない。なぁ、結羽」

 

「何でそこで私に振るの!?」

 

「あの気がつかない鈍感男はどう思う?」

 

「優しすぎます。だから勘違いする。だからああいう態度はダメだと思う。だけどああいうところがすきになったのかも」

 

 変わってないね。優也




 はい!第30話終了

 最後の結羽と悠真の意味深な会話

 果たしてどうなるのでしょうか?

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第31話 八反亭

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 僕のもう一つの作品である東方魂愛想の方でも言ったのですが、前書きに前回のあらすじを書いていきます。



 それでは前回のあらすじ

 ついに始まった宿泊研修

 優也はいきなり不運な事に咲峰さんにkurorekisiをバレてしまう。

 そして町を歩いているとかつあげされている子を発見し、優也は咲峰さんの持ってきたサッカーボールでかつあげされてる子を助けることに成功した。



 それではどうぞ!


side優也

 

 またやってしまった。

 

 そそのかされたからってまた助けてしまった。

 

 しかも咲峰さんの前で…死にたい。

 

 これ、ずっとバカにされるやつじゃねーか。

 

「ふーん」

 

 咲峰さんは俺が恥ずかしがってるのを知っての事か、にやにやしてきている。

 

 やめて!絆成さんのライフはもう零よ!

 

 くっそ…どうしてこうなった。

 

「お二人さーん!早く来ないと置いてくぞ!」

 

 と、俺たちがそんなやり取りをしてる間にだいぶ進んで遠くから童明寺が叫んできた。

 

「行きます、よ」

 

 と、静かに言葉を発する白井さん

 

 そして俺と咲峰さんは急いで二人のもとに向かった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

八反亭

 

 俺達は八反亭に来ていた。

 

 外装は木で造られて、ビックリド○キーを連想するような造り。

 

 内装は畳などがあって、和風を思わせる。

 

 中に入ったとたん良い匂いが俺の鼻腔をくすぐった。

 

 炭が焼ける香ばしい匂い。

 

 それだけで俺の食欲はどんどん増していった。

 

「旨そうだな」

 

 と、童明寺が呟いた。

 

 俺もたった今思ってたところだ。

 

 と、見回してみると

 

 なんかこっちに手を振っている見慣れた顔が見えた。

 

 俺は関わりたくないので気がつかないふりをした。

 

「さて、どこに座ろうかな」

 

 と、俺が知らないふりをしていると、見慣れたそいつはこっちに来て頭をハリセンで叩いた。

 

「おい!無視するな!」

 

 めんどくせぇ…

 

「この体は現在使われておりません」

 

「怖いわ!お前は電話か!と言うかお前がボケてどうする!ボケは俺の十八番だろ!」

 

 知らねーよ。俺がツッコミみたいな言い方すんなよ。

 

 俺だって好きでお前に突っ込んでんじゃねーんだぞ。

 

「悠真もこの店だったのか…」

 

 俺はあからさまにがっかりする。

 

「よし、うちの班と食わないか?」

 

「断る!」

 

 即答だった。

 

 絶対に俺の唯一心が休まる昼食タイムが失われてしまうじゃないか!

 

 それだけはダメだ!

 

「そうか…んじゃーな」

 

 やけに素直だ。

 

 何か裏があるんじゃないかと勘ぐってしまう。

 

「なんか気持ち悪いなお前」

 

 と、俺はちょっと悠真のことを心配した面持ちでそう言った。

 

「なんか変なものでも食べたか?」

 

「失礼な!」

 

 と、切れの良いツッコミを見せてくれる悠真

 

 もうさ、悠真ツッコミで良いよ。もう疲れたよパト○ッシュ

 

「ま、まぁ、取り合えず腹が減ったし適当な席についてなんか頼もうぜ」

 

 と、当初の目的を再確認させてくれる童明寺

 

 そうだよ!俺達は飯を食いに来たんだよ!こんなところでコントをやってる場合じゃねーよ。

 

 そしてじゃーな。と、言って手を降ってから悠真達と違う席に座る。

 

「腹が空きすぎてメニュー表見ただけで全部美味しそうに見える」

 

 と童明寺がそんな感想を述べた。

 

「はい。どれも美味しそう、です」

 

 とゆっくりと言葉を並べる白井さん

 

 何となくこの旅行中の癒しになりそうな雰囲気を漂わせてるよ。

 

 だってあれだよ?俺の班はクラス一の人気者のくせして俺に近寄ってきて俺をおもちゃとして扱うやつと、男だぜ?

 

「何となく理不尽な事を言われた気がする」

 

「私は何となく不快なことを言われた気がする」

 

 ねぇ…そこのお二人さん。平然と人の心を読まないで頂きたい。

 

 ってかなんで俺って心を読まれることが多いんだ?

 

 そしてメニューを決めた。

 

 俺と童明寺はガッツリ丼もの。咲峰さんは定食。白井さんはあっさりとサラダにした。

 

 意外だった。

 

 咲峰さんはあの体型からは想像がつかないような量を食べていた。

 

 意外と食うんだな。

 

 それに対して白井さんは

 

「大丈夫なのか?白井さん。少なくないか?サラダだけって」

 

「いいんです。私はサラダが好き、なので。これだけで充分、です」

 

 まぁ、白井さんが良いんなら俺は別に良いんだけどな。

 

 と言うか旨いなこれ。

 

 肉がジューシーで噛んだ瞬間に肉汁が溢れ出してくる。

 

 そして、上にかかってるタレも絶妙だ。

 

 ここの店で良かったと思える至福の時間だ。

 

「うめぇな。これ」

 

「あら本当」

 

「美味しい、です」

 

 3人とも口調がまるっきし違うから実際に見てなくても誰が喋ったか分かるな。

 

 三人でキャッキャしているなか、俺は静かに黙々と食べる。

 

「そう言えば優也」

 

 突然声をかけられた俺は『ん?』と童明寺の方を向く。

 

「お前さ、よく女子と一緒に居ること多いけどさ…気になってる子って居るのか?」

 

 え?

 

 うーん…それっていつものメンバーのなかでってこと?

 

 結羽は…最近急に怖くなったんだよな…まるで何かに影響されたみたいに

 

 と言うわけで結羽は怖いから無しで

 

 星野さんは気難しい所もあるけどたまにデレるんだよな。あれが俗に言うツンデレって感じか?

 

 一番まともで俺としては別に付き合っても言いような人なんだがなんだろう。いざ付き合うと考えると胸が苦しくなるような。これじゃないような感覚が襲う。

 

 取り合えず保留かな?

 

 ってことは

 

「居ないな」

 

 白波さん?知らない子ですね。論外です。

 

「ってかさ、女子も居る前で聞き出すのはどうかと思うんだが」

 

 ってかなんでこんな時に聞いてきたんだ?

 

「ふーん。まぁ、お前がそう思うなら良いんじゃないか?好きにすれば…だけど、お前がいつまでそういう態度を取ってられるかな彼女たちに」

 

 そう言ってニヤニヤと笑う童明寺

 

 なんだよ。言いたいことがあるならはっきり言えよ。

 

「でもちょっとお気の毒、ですよね。この鈍感」

 

「な!?」

 

 白井さんが俺へちょっと怒っただと?

 

 あののほほんとした白井さんが!?

 

「お前もそう言うこと言えたんだな。良いぞもっと言ってやれ」

 

 と、もっと言えと促す童明寺

 

 おいまて、俺への文句大会じゃねーぞ!?

 

「え、えーと…バカ、アホ…えとえと…鈍感男」

 

 なんかかわいい

 

 童明寺に頭を撫でられてて幸せそうにしている。

 

 もしかして白井さんって

 

「さて、三人とも、じゃれあってないで行くわよ」

 

 そして俺達は八反亭を後にした。




 はい!第31話終了

 次回はもっと町の観光をします。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第32話 童明寺と白井さん

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 咲峰さんに黒歴史の再現のようなものを見られてしまった優也。一生の不覚

 そして八反亭につくと悠真が

 そしてのほほんとした白井さんがついに優也を罵るようになりました。



 それではどうぞ!


side優也

 

「次は歴史館?」

 

 次は噂の歴史館である。

 

 悠真に教えてもらっていたので提案したらそのまま通ったと言うことだ。

 

 ちなみに悠真との時間はずらしておいた。

 

 どうして悠真の時間がわかったのかって?

 

 (つて)があるんですよ。伝が

 

 俺に友達が居るのかって?何いってるんですか…友達は結羽達を含めて五人(結羽、悠真、星野さん、童明寺、白井さん)だけにに決まってるじゃないですか?

 

 え?白波さんと咲峰さん?

 

 咲峰さんは輝きすぎて俺では釣り合わないと言いますか…白波さん?知らない人ですね。

 

 悠真のグループメンバーだと名乗る人物に接触して教えてもらったんですよ。

 

 友達じゃない人に教えてくれるなんてやっさしーっ!

 

 はぁ…辛い

 

 って言うか綺麗に俺達四人はクラスが別れてるんだな。

 

 クラスが違うもの同士仲良くなるのってすごくね?部活とかもやってないんだぜ?

 

 そして歩いていると歴史館に着いた。

 

 予想通りのよくある歴史館って感じがするな。

 

 と言うかホテルにめっちゃ近いな。徒歩5分だ。

 

 ホテルに集合だが、ちょっとは寄り道しても問題無さそうだな。何か近くで土産でも買っていくか。

 

 そうおもいながら俺達は歴史館に入っていった。

 

 結果から言うと悠真との接触は避けれたが、何とそこには結羽が居た。

 

「ゆゆゆ、優也!ひ、久しぶり」

 

「久しぶりって、今朝学校で会ったばかりだろ」

 

 これが久しぶりと言うならばどんだけ久しぶりの範囲狭いんだよ。

 

「そ、そんなことはどうでも良いのっ!」

 

 何でこいつこんなにも動揺してるんだ?

 

 だけど前のめりになって腕を真っ直ぐしたに下ろしてこっちに抗議してきている姿は可愛いかもしれん。

 

「夫婦漫才?」

 

 と、ニヤニヤしながら咲峰さんは言ってきた。

 

「え、え?」

 

 と、おどおどし始める結羽。

 

 それじゃ肯定してるみたいじゃないか。

 

「ふ、ふうふぅ」

 

 と、目を回す結羽

 

 反応は可愛いけどここはちゃんと否定してくれ

 

 それじゃないと俺が困る。

 

 でも結羽に期待は出来ないか…

 

 なら

 

「違うわ!」

 

 と、俺が否定した。

 

 すると、結羽は『え?』と言った。

 

「は?」

 

「あ、い、いや。違うの!うん!私達は何でも無いから!」

 

 と、意味深な反応をしながら言った。

 

 何その反応。

 

「結羽行くよ」

 

「あ、うん。わかった」

 

 そして結羽は結羽の友人と思わしき人物に呼ばれてたたたと少し走ってからこっちに振り替えって立ち止まった。

 

「じゃーね」

 

 そう言って微笑んでから友達の方に向かった。

 

 すると、童明寺が口を開いた。

 

「何であれで付き合わないかね…」

 

 と、やれやれと言った様子で言った。

 

「いや、結羽には好きな人が居るらしいし」

 

 すると、皆がやれやれと俺から目をそらした。

 

 なに!?これって俺が悪いのか?

 

「まぁ、そんな鈍感男は置いておいて行くか」

 

 と、童明寺は進行方向に体を向ける。

 

「って、お前も鈍感だろ」

 

 俺も童明寺に言い返す。

 

 実は白井さんは童明寺の事が好きらしいのだが、童明寺は全く気がついた様子を見せない。

 

 ちょっと白井さんが可愛そうだと思ったり

 

「違うよ」

 

 と童明寺は静かに言った。

 

「俺はお前とは違って鈍感じゃない。そう!お前とは違って…な」

 

 うざい!言い方がうざい!

 

 ってか鈍感じゃないってどういう意味だ?

 

「俺は今のこの関係が好きなんだな」

 

 ああ、なるほど…好意には気がついてはいるがこの関係を保っていたいってことね…

 

 って白井さん!あなた遠回しにフラれてますよ!

 

 俺は見ていられなくなって白井さんの事を一瞬見てから目をそらした。

 

「何で今、一瞬見たん、ですか!」

 

 これまでに聞いたことの無いような白井さんの大声だった。

 

「さて、この話はこれくらいにして中を見ていくぞ!」

 

 そして童明寺の後を着いていく。

 

 やはり中は小難しい内容ばかりで人によっては退屈に感じる内容だっただろう。

 

 でも大変勉強になった。

 

 途中白井さんがうとうとして倒れかけたところを童明寺が受け止めて、それに気がついた白井さんが真っ赤になりながら謝ってたのはちょっと面白かったかな。

 

「ふぃ~。見応えあったな」

 

 童明寺は歴史系の物が好きらしい。

 

 それもあって一番得意な強化は世界史や日本史らしい。

 

 満足げにうなずく童明寺

 

 さて、色々中を見て回ったけど時間はたっぷり余ってるな。

 

 どうしようか…

 

 ってか今更だけど寒いな。

 

 ホットコーヒーでも飲みたい。

 

 と、手頃なところにホットコーヒー有りの自販機見つけた。

 

 だから、俺が買いに行こうとすると

 

「あ、優也。俺らも宜しく」

 

 と、頼まれてしまった。

 

 しょうがねーな。

 

 と、ホットコーヒーを四人分買った。

 

 そして皆の所に戻って皆にホットコーヒーを渡す。

 

「サンキュー…って何だその手は」

 

 渡したあと童明寺に手を差し出す。

 

 その手に童明寺は手を重ねる。

 

「ちげーよ!何重ねてんだよ!」

 

「え!?そういう流れじゃなかった?」

 

 何いってんだ…

 

「代金200円になります」

 

「おい!あそこにちゃんと140円って書いてあるだろうが!60円どうしたんだ!ぼったくりか!?」

 

 って何でこいつちょっと離れた位置から代金見えてんだよ。目良すぎかよ。

 

「バイト代」

 

 と、俺は淡々と言った。

 

「何のバイトだよ」

 

「パシリ代」

 

「パシリ代って何だよ!」

 

 うん。一回ボケってやってみたかったんだよね。俺がボケてもちゃんと童明寺がつっこんでくれるから安心?だな。

 

 と、渋々俺に200円渡す童明寺

 

「はい。お釣60円になります」

 

「返すんかい!ってかただの両替だよな?」

 

 そこに気がつくとは貴様…天才か!

 

 いやー。ちょっと100円玉の枚数が心持たなくなってきててな。

 

 そして俺は買ってきた缶タイプのホットコーヒーを開けて飲む。

 

 うん。やっぱり冬はホットコーヒーだよな。暖まる。

 

「んじゃ。何かお土産でも選ぶか」

 

 と、俺達はコンビニに入ってお土産を選ぶ。

 

 俺はクッキーにした。

 

 そして俺達はコンビニを後にして少し早いがホテルの集合場所に向かった。




 はい!第32話終了

 次回。ホテルにて

 ご飯が美味しい町なのでホテルの夕食もきっと美味しい筈です。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第33話 自由時間

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 長きにわたる激戦?の末、ついに歴史館にたどり着いた優也御一行

 そこで結羽と再開する。

 そして童明寺に鈍感男と言われた優也は言い返したが、何と童明寺は鈍感男じゃなかった。

 少し悔しいと思う優也であった。



 それではどうぞ!


side優也

 

「よし、良いくらいの時間だな」

 

 と、俺は腕時計を見ながら誰に話しかけるのではなくそう言った。

 

 ホテル前に集合。

 

 現時刻は集合時間の10分前

 

 まぁ、良いくらいじゃないですかね?

 

「そう言えば気になってたんだけどよ」

 

 急に話しかけてくる童明寺

 

「なんだ?」

 

「そう言えばお前と咲峰さんってグル組むくらい仲良かったっけ?」

 

 本当今更な疑問だな。

 

 まぁ、中が良かったわけでもなし。それどころか今まで話したこともなかった。あの時突然こっちに来たんだ。

 

「まぁ、利害の一致だ。理由はそれ以上でもそれ以下でも無い」

 

 と、冷静に言った。

 

 そして童明寺は「ふーん」と言ってからスマホを取り出してゲームを始めた。

 

 何のゲームしてんだ?と思って少し画面を覗き込む。

 

「これなんてゲームだ?」

 

「え!?優也お前、このゲームの事知らないのか!?最近流行してるのに」

 

「ってもな…俺ゲームやんねぇし」

 

 と、頭をかく。

 

「お前!スマホは何をするためにあると思ってんだよ!」

 

「少なくともゲームをするためにあるんじゃねーよ」

 

 と、俺はあきれ気味に言った。

 

 ったく…ゲームはサブで本命は電話等だろ。

 

 まぁ、ゲームをすることの方が多すぎてゲーム機のイメージはあるかもしれないけど携帯は携帯電話だからな。

 

 そして白井さんがこっちに来て俺と反対側に立って童明寺のスマホ画面を覗き込む。

 

 さぁーって。お邪魔虫は退散しましょうかね?

 

 と、俺は離れていく。

 

 すると、誰かにぶつかった。

 

「あ、すまん」

 

「あ!お前はクラスのマドンナをさらった絆成 優也!」

 

 こちとら好きで組んでんじゃねーよ。

 

「ああ、本田 龍輝じゃないか。1話で登場したっきり作者に忘れられていた」

 

「まぁ、メタいのは置いておこう…だが、名前も出てるちゃんとしたキャラなんだぞ!俺は!」

 

「いや、お前はMOBだからな」

 

「え、」

 

 そして龍輝は砂となって飛んでいった。

 

 あともう少しで集合時刻だ。

 

 その時

 

「セーフ!」

 

 と、悠真が来た。

 

 何着いたとたん決めポーズしてんだよ。

 

 他の3人がひいてんじゃねーか。

 

 特に女子。他人のフリをしている。

 

 そしてそれに続いて結羽の班や星野さんの班がやって来た。

 

「じゃ、皆集まったみたいだね」

 

 春海先生はそう言って他の担任の方へ向かう。

 

 そして話し合って

 

「んじゃ、集まったみたいなのでこれからホテルで暫しの間自由時間を取りたいと思います。ですが一旦自室に荷物を置いてからにしてください。それとくれぐれも異性の階に行かないようにしてください。見つかれば指導部の先生がありがたーいお話を聞かせてくれますよ」

 

 そう言われたので指導部の先生を見る。

 

 するとニコニコしているものの、その笑顔の奥に恐ろしいものを感じた。

 

 きっと見つかればお話(説教)されるだろう。

 

 よし、絶対に女子の階には行かないようにしよう。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「はい、リーチだ」

 

「うわぁぁぁっ!優也!絶対に次は童明寺に揃うカード引かせんなよ」

 

「そんな無茶な」

 

「まぁ、無理だよな。男子に目もくれず女友達ばかり作ってるタラシ(・・・)には」

 

「いや、今それ関係ないだろ」

 

「あ、タラシは否定しないんだな」

 

「あ、それと俺はタラシじゃない」

 

 なんか言われすぎて平然とスルーしてしまった。

 

 今現在、俺と童明寺が悠真の部屋に来てババ抜きをしていた。

 

 それで俺は悠真と童明寺にいじられ続けていると言うわけだ。

 

 悲しいな…癒しが欲しい癒しが

 

「つーかさ。お前。ちょっと突き放しすぎなんじゃねーの?」

 

 と、突然言う悠真

 

 何の事だよ。

 

「結羽達が可哀想だ」

 

 うーんどういう意味かは知らんが

 

「そんな突き放してるつもりはねーんだけどな」

 

 そう言う。

 

「まぁ、良いじゃねーか」

 

 そう言いながら俺から引いた一枚と自分の持ってた一枚をあわせてカードの山の上に投げ捨てた。

 

「あ、上がりねー」

 

 と、童明寺は得意気にそう言った。

 

「優也!」

 

「いや!無茶ぶりにもほどがあんだろ!」

 

「んじゃ、そろそろ飯だし行くか」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 晩飯は少しの付け合わせと刺身。そしてしゃぶしゃぶだ。

 

 めっちゃうまいな。

 

「おい、お前の肉寄越せ!」

 

 と、龍輝が俺の皿から一枚肉を取っていく。

 

「んじゃ、俺もお前からもらうな」

 

 そして俺も龍輝の皿から一枚肉を取る。

 

「何をする!」

 

「いや、お前から始めたんだろ」

 

 そして俺達は肉がなくなるまで続けた。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 食べた後、俺達は自室へ戻ってきた。

 

「そろそろ入浴タイムだな。俺は入るがお前はどうする?」

 

「お前…そう言う趣味が?」

 

「どうしてそう言う思考に至るんだ!」

 

 俺はただ単に友達を温泉に誘っただけだ。何もおかしなところはない。

 

 それなのにこいつと来たら…

 

「俺は行くからな」

 

 と、無視して浴場に向かう。

 

 すると、後からドタドタとあわてて着いてきた音が聞こえてため息を着いたのはまた別の話し。




 はい!第33話終了

 後何話かで宿泊研修も終わりますよ。と言うか長い

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第34話 失う悲しみ

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 ホテルへ集合した優也達

 そこで自由時間にババ抜きをしたり晩飯を食べたりする。

 果たして今日は何が待っているのだろうか?



 それではどうぞ!


side優也

 

 あー。気持ち良かった。

 

 風呂に入って疲れも汗と一緒に流れたような気がする。

 

 それにしても温泉なんて久々過ぎてその広さに驚いてしまった。

 

 童明寺と悠真はさっきまでサウナ耐久勝負をしててグロッキー状況だ。

 

 まだ自由時間はあるな。

 

 何するかね。

 

「な、あ。ゆう、や」

 

 と、かなりのピンチの悠真が話しかけてきた。

 

 やれやれ

 

 と、思って悠真を持ち上げて肩を貸す。

 

「女子部屋行こうぜ」

 

 と、どや顔をしながら言ってきた。

 

 俺はあきれて言葉も出なかったためそれを表現するため俺は肩に関節技をかけた。

 

「ぐわぁぁぁっ!いててて!や、やめてー!」

 

 グキッ

 

「ごふっ」

 

 あ、やり過ぎちまった。

 

 まぁ良い。戻すか

 

 グキッ

 

「がぁっ!」

 

 床の上を転がりながら悶え苦しむ悠真

 

 そんなに元気なら大丈夫だな。

 

「で、何でそんなことを言い出したんだ?」

 

「良く俺のこの状態を見て話を続けようと思ったな」

 

 と、腕をグルグルと回しながら言ってくる。

 

 よし、サウナでのダメージが消えたようで良かった。

 

 最初からこれを狙っていたのだよ。

 

「女子の部屋って男のロマ…優也さん。その…いつでも外せるようにスタンバイするのやめてください。まぁ、お前からは考え付かないような丁寧な仕事ではめてくださったから良いですけど」

 

 まぁ、将来の志望が医師なんだからそれくらいの知識は持っとかないとな。

 

 整形外科か!?

 

「取り合えず言いたいことは分かった。だが、行かないぞ。お話(説教)なんて聞かされなくないからな」

 

 そして腕を離す。

 

「お願いだ!万が一見つかったときに俺一人だけでお話(説教)を聞かされたくないからな」

 

 道連れじゃねーか。

 

 そんなことのために行きたくねーよ。

 

 そんなわけで俺は無視をして椅子に座ろうとする。

 

 しかし、悠真が俺の片腕をガシッと掴んできた。

 

「離せ。俺は行かないと言ったはず」

 

「そうかそうか着いてきてくれるか」

 

 ダメだ。こいつに日本語通じてない。

 

 そして俺の襟を掴んで引っ張っていく。

 

 やめろ。離せ。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 そして俺はなし崩し的に(童明寺も巻き込んで)連れてこられてしまった。

 

 今現在女子フロアの入り口。

 

 やはりと言うかなんと言うか先生が徘徊しているな。

 

 そうだ。

 

 この二人がタイミングを伺うのに夢中になってるうちに逃げてしまえば…

 

 そしてゆっくりと後ずさる。

 

 その瞬間

 

 後ろからガシッと捕まれた。

 

 恐る恐る後ろを見てみるとそこにはどす黒い笑みを浮かべて俺を押さえてる龍輝が居た。

 

 こいつっ!最近やっと本格的に出番を貰えるようになったからって調子にのってんじゃねーぞ!

 

 そして逃げられなくなりました。

 

 いや、こいつはちょっと痛め付けても良いだろう。

 

 そして俺は龍輝の腕を掴んで背負い投げした。

 

 そしたら龍輝は女子フロアまで飛んで行った。

 

 そして先生がやって来て龍輝が女子フロアに居るのを見られてしまい連行されていった。

 

 それを見た二人は青ざめた。

 

「優也…お前のお陰で目が覚めたよ」

 

 と、俺に握手を求めてくる悠真

 

 それを俺は華麗にスルーする。

 

「はいはい。んじゃ部屋に戻るぞ」

 

 龍輝…お前の犠牲は無駄にしない。

 

 そして俺達は回れ右をして部屋に帰る。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 部屋割りは任意で二人部屋だ。

 

 その為、俺は童明寺と一緒になったから四六時中こいつと一緒に居ることになる。

 

 そして「男子二人きり。何もないはずはなく」

 

「勝手に俺の思考を捏造するな」

 

 勝手に思考に入ってこられたが、気にせずに説明を続ける。

 

 部屋は和室だ。

 

 畳の部屋ってなんと言うか日本人の心にマッチしているのか落ち着く。

 

 そして部屋で俺は本を読み始める。

 

 一方童明寺は窓から外を眺めている。

 

 大人しくしてればあいつもイケメンでもっとモテるんだけどな。

 

 まあ、実際にこいつはモテている。白井さんが良い例だ。

 

 だが、告白される度にこいつは断っているらしい。

 

 童明寺曰く「俺は孤高の一匹狼。彼女なんて要らないのさ」らしい。

 

 だけど俺は何かを隠している気がする。

 

 だってその言葉を言うときは決まって一瞬悲しそうな表情になる。

 

 まぁ、俺にとっちゃこいつが付き合おうが付き合うまいがどうだって良い。

 

 だけど今のままだと絶対に白井さんからの告白も断ると思う。

 

 どうにかなんないかね。

 

「なぁ、優也」

 

 と、突然童明寺は話しかけてきた。

 

「なんだ?」

 

 と、問う。

 

 しかし

 

「いや、何でもない。俺もう疲れたから寝るわ。もう少しで消灯時間だし」

 

 と、布団に入る。

 

 ちょっと何言いかけたのか分からないけど、俺も疲れたから寝ようかな。

 

 そして電気を消す。

 

「今日は月光が明るいな」

 

 晴れていたため良く月が出ている。

 

 今日は満月では無いがかなりの明るさだ。

 

 そして俺はふと窓から身を乗り出して空を見上げる。

 

「うわぁ」

 

 と、俺は思わず声をあげてしまった。

 

 そう。俺の視界に映ったものが原因だ。

 

 それは満天の星空だった。

 

 一つ一つがギラギラと強い輝きを持っている。

 

 これは絶対に居真舞では見ることの出来ない景色。

 

 俺は思わず写真を撮ってしまった。

 

「七海がもし目が覚めたらこの景色を見せてやろう。きっとあいつなら喜ぶぞ」

 

 そう言いながら俺は七海が喜んでいる姿を想像する。

 

 すると、自然に涙が溢れてきた。

 

「何で…何で涙が…」

 

 と、袖で涙を拭きながら呟く。

 

「七海…今も必死に戦ってんだよな」

 

 だったら俺がこんな所で泣いている場合じゃない。

 

「七海の分まで今を全力で楽しんで土産話を作るから。絶対に死なないでくれ」

 

 そして俺はもう一度涙を拭いて布団に入る。

 

(優也…もう…俺はもう失いたくないんだよ。妹さんを失ったお前になら分かるだろ。この気持ち)

 

 そして俺は眠りについた。




 はい!第34話終了

 最後のあつしの意味深な言葉。さて、これからどう繋がるのか。

 自分でこの話を書きながら悲しくなってくると言う状況に

 そして次回辺りで宿泊研修は終了です。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第35話 思い出の記念撮影

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ。

 ついに宿泊研修も大詰め。

 女子フロアに行こうとしている悠真と童明寺から逃げるため龍輝を利用して、龍輝が犠牲になったものの、女子フロア行きを回避することに成功した優也。

 そして夜

 満天の星空を見ながら七海の喜んだ表情を思い浮かべる優也。

 しかし思い出していくほどに悲しくなる。



 それではどうぞ!


side優也

 

「朝…か」

 

 宿泊研修最終日

 

 俺は早くに目が覚めた。

 

 と言うか童明寺の(いびき)が五月蝿い。

 

 良く自分の家じゃないのにこんなに熟睡できるよな。俺では考えられない事だ。

 

 俺は自宅以外ではあまり寝られないのだ。

 

 まだ外は暗いがこれは冬だからであって現時刻は朝4時。

 

 夏なら完全に明るくなっている時間なので朝と言っても問題はないだろう。

 

 今日のスケジュールは朝6時。朝食を昨日の晩飯の場所で食べる。

 

 朝9時。2日目の自主研修

 

 13時。観光名所巡り(景色の良い場所で記念撮影)

 

 14時。帰りのバスに乗車

 

 16時30分。学校に到着

 

 と言う流れだ。

 

 と言うか大部早く目覚めたから暇だな。

 

 顔洗ってくるか。

 

 俺は基本冷水で顔を洗う。

 

 しかし、この時期。まだ冷水で洗うのは少し寒いな。

 

「ふわぁぁっ」

 

 と、欠伸をする。

 

 しっかし、寝起きだからってひどい顔だな。

 

 寝癖が酷いな。結羽ん所の冬馬見たいになってんな。

 

 まぁ、冬馬みたいには髪は固くないからすぐに直るけどな。

 

 そして俺は戻ろうとドアをあける。

 

「ぐわっ!」

 

 と、悲鳴がすぐそこで聞こえた。

 

 そして見てみるとドアの開く方向に童明寺が倒れていた。

 

 恐らくドアを開けようとしたところ、俺が開けたせいでドアに体を強打したって所だろう。

 

 ってか起きたのか。

 

「いてーな。優也。起きてたんか」

 

 俺が布団に居ないことから予測しろよ。

 

 あ、今はまだ暗いから良く見えなかったのか。

 

「そういや自主研どこ行くんだ?」

 

 と、忘れていたため童明寺に聞いた。

 

「まず科学館行って時間潰して、そして適当にマ◯ク行って食うって流れだ」

 

 それで集合場所に行くってことか。

 

 まぁ、こんな風に喋ってたらかなり時間が経ってて、そろそろ朝飯の時間だった。

 

「そろそろ行くか」

 

 そう言って俺達は朝飯を食べに行く。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 やっぱり旨かった。

 

 朝飯はバイキングだった。

 

 どれも旨かったな。

 

 まぁ、朝だしあまり食えなかったんだけどな。

 

「ここね」

 

 と言って立ち止まる咲峰さん。

 

 ここか。

 

 そして俺達は科学館を見て回った。

 

 文学と言うよりは理系な俺にとっては歴史館よりもこっちの方が楽しめた。

 

 童明寺は俺と真逆だから分からないが

 

 うちの班で理系なのは俺と白井さん。気が合うじゃないか。

 

 咲峰さんと童明寺は完全なる文系だ。

 

 と言っても童明寺は文系に片寄りすぎているが、咲峰さんは理数でもそこそこの点は取ってるらしい。

 

「んじゃ、飯食いに行くか」

 

 時刻を見ると既に時刻は11時50分を回っていた。

 

 なのでもう食いに行くことにした。

 

 昼はハンバーガーだ。

 

 そして歩くこと約10分。

 

 ついにマ◯クに着いたがなんと、ここらに飯屋が少ないので混みに混みまくっていた。

 

 これ、時間までに間に合うのか?

 

「混んでるわね…」

 

 すると、走って童明寺が寄ってきた。

 

 そう言えば少し前からどっか行ってたな。

 

「はいよ」

 

 と、飲み物を渡してくる童明寺

 

 恐らく近くの自販機で買ってきたのだろう。

 

「サンキュ」

 

 そう言って受けとる。

 

 たまには役に立つじゃねーか。

 

 すると童明寺は手を差し出してきた。

 

「なに?」

 

「210円」

 

 金を払えって?

 

「優也君。君は少し勘違いをしているよ」

 

 勘違い?

 

「俺は君にこのジュースを奢るとは一言も言ってない」

 

「悪徳業者か!?」

 

 手口がそのまま悪徳業者だ。

 

 因みに書類に印鑑を押してくれと言われたとき、書類の内容をさらっとで良いから読んでおかないと後で酷いことになる場合もあるから注意。

 

「と言うかそっちの二人はどうなんだ?」

 

 何故か童明寺は俺にしか請求してきてないのだ。

 

「つみきは俺の幼馴染みだし、可愛いから良い」

 

 そう言うと白井さんは顔を真っ赤にした。

 

 童明寺は白井さんが童明寺の事が好きだって知ってる的なニュアンスの言葉を言っていたし、絶対面白がってるな。可哀想だろ!

 

「咲峰さんはクラスのアイドル的存在だから何となく」

 

 思ったよりさらっとした理由に少しいらっとした。

 

 そしてついに俺達の番が来て照り焼きハンバーガーを食べた。

 

 俺はハンバーガーでは照り焼きが一番好きだ。

 

 食べ終わった後は直ぐに集合地点に向かった。

 

 そこで集まったクラスから記念写真を撮って、自由な人と写真を撮れる。もとい自由時間だ。

 

 俺達のクラスは一番最初に集まったので最初に記念撮影。

 

 俺は背の高さはあまり高い方ではない。

 

 中の下位だから。男子と女子で

 

 …女男…

 …女男…

 …女男…

 

 と並ぶとして俺は真ん中の列の女子側。つまりは真ん中ら辺。

 

 あまり目立つのが嫌いな俺は集合写真とかが嫌いだ。理由としては目立つと言うのが大きい。

 

 そして俺達は写真を撮り終わって俺が景色を見ていると悠真と結羽の撮影も終わったようでこっちに寄ってくる。

 

「一緒に撮ろうぜ!」

 

 と、言ってくる悠真

 

 その場から離れようとしたが悠真にガシッと手首を捕まれてしまって連れていかれる。

 

「じゃあ撮ろう」

 

 そう言って横一列に並んでスマホのカメラを内カメラにしてカメラを持ち上げる。

 

 悠真が自撮りの体制になっている。

 

「って何で俺が真ん中なんだよ」

 

 ってか結羽が近い。

 

 悠真が居るのに結羽が近いせいでドキドキしてしまう。

 

 結羽には好きな人が居るんだ結羽には好きな人が居るんだ。

 

 そう言い聞かせて心を落ち着かせる。

 

 そして肩を組んでくる悠真。

 

 だが悠真よ組み返してはやらねーぞ。それに

 

「なに組んで来てんだよ」

 

 迷惑そうに抗議するが悠真はまるで人の話を聞かない。

 

 そして

 

「はい。チーズ」

 

 そしてパシャっと写真が取られる。

 

 見ると俺が迷惑そうにジト目で悠真を見ているのがハッキリと写っていた。

 

 なんか恥ずかしい。

 

 そしてじゃーなと、俺達から離れていく悠真

 

「さて、俺も行きますかね」

 

 そして俺も歩き出したとき、不意に後ろから袖を引っ張られた。

 

 見てみると袖を引っ張ってきていたのは結羽だった。

 

「どうした?」

 

「あの…私と一緒に写真を撮ってくれないですか?」

 

 と、昔のようによそよそしい敬語で話しかけてくる結羽

 

 可愛い。可愛いんだが。

 

「写真なら悠真に送ってもらえば良いじゃないか」

 

 そう言うと袖を掴む力が強くなった。

 

「二人で撮りたいんです。……ダメ…ですか?」

 

 これはもう俺の本能が断ってはいけないと言っている。

 

 それ以前に俺の男の血がこんなの断れるわけないだろ!と叫んでいる…ような気がする。

 

「ああ、良いぞ」

 

 そう言って持ち場に着く。

 

 そして結羽は携帯を取り出して内カメラにして持ち上げる。

 

 しかし、どうやら結羽の身長が足りないせいで上手く撮れないようだ。

 

 仕方ない。

 

「ほら、貸せ」

 

 そう言って結羽から携帯を受けって自撮りの体制に入る。

 

 ちょっと距離が遠いせいで見切れるな…

 

 そして俺は結羽に寄っていく。

 

 うーんもうちょっと。

 

 そんなことを考えていると肩がぶつかってしまう。

 

「あ、すまん」

 

 と、謝る。

 

「うん良いよ」

 

 すぐに許してくれた。

 

 そして良い感じに収まりそうだったのでシャッターを切った。

 

 パシャ

 

 そして写真を表示させて結羽に手渡す。

 

 その写真を見ながらえへへと笑って。一瞬難しい顔になったと思ったらまた顔が緩む。

 

 端から見たら少しホラーだぞ。

 

 そして俺達は帰りのバスに乗った。

 

 帰りはほとんどの人が寝てて、咲峰さんも窓に寄りかかって寝ていた。

 

 白井さんは童明寺に寄りかかって寝ていて、そんな童明寺も寝ているのは少し微笑ましいと思った。

 

 そんなこんなで俺達の一泊二日の宿泊研修が幕を閉じた。




 はい!第35話終了

 自宅以外だとあまり眠れない。まぁ、極端に疲れていれば違いますが、あれは僕の実談なんですよね。

 たまに出掛けて宿に泊まったりするんですが、まぁ、なかなか寝付けないわ。寝れても一時間二時間。酷いと一時間もしないで目覚めるときもあるんですよね。

 以上ミズヤの愚痴?でした。

 では今回で宿泊研修は終了となります。

 そして定期考査の話のテンプレ化してきてるので三学期の定期考査勉強がメインの話しはあまり書かないかも知れません。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第36話 一年の振り返りとバレンタインデー前日

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 祝日ですよ。山の日ですよ。

 ですがこの話が投稿されていると言うことは土曜日なので学生さんは…夏休みですね。暦通りの仕事の休みの人にとっては少し残念かも知れないですね。



 それでは前回のあらすじ

 ついに宿泊研修最終日。自主研修(ネタ切れ&科学館の内容を忘れてしまった)を行った。

 これについて作者は『ずいぶん前に科学館に行ったが、暫く行ってないから何あったか忘れてしまった』と、詳述しており、それなら何故書いたんだと言う読者の声が聞こえてくる様。因みに科学館の描写は無し

 そして記念撮影。悠真と結羽と共に三人で記念写真を撮ったあとに、結羽とツーショットで撮って優也達の宿泊研修は幕を閉じた。



 それではどうぞ!


side優也

 

 さて、描写は無かったが中間テストも終わり(メタイ)残す所、一年生はあと期末テストと三年生を送る会。そして卒業式のみで終了。

 

 短かったようで長かったな。それとどっかの誰かさんのせいで長く感じたな。

 

 俺の高校生活は結羽と知り合うところから始まったんだったな。

 

 それから劇的に変化した気がする。

 

 悠真と知り合ったり、ドS生徒会長の障害物(落とし穴強制失格)競争をやったりと

 

 そして二学期には星野さんと知り合ったり、最近出てないが副生徒会長、神乃さんと知り合ったり。

 

 色々大変だったけど…結果的に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この一年。良かったなと思える気がする。

 

「ゆ、優也がデレただと!?」

 

 いい雰囲気ぶち壊しだ!

 

「なぁ、今回で最終回だっけ?」

 

「いいや、まだ、続くぞ」

 

 俺は今現在、一年間を振り返りながら悠真と童明寺と話していた。

 

 ちなみに会話は上から順に悠真、童明寺だ。

 

 因みに今日は日曜。世の学生さんは日曜が一番憂鬱なのでは無いでしょうか?

 

「と言うか何でそんな最終回みたいな閉め方をしたんだよ」

 

「そもそも何でこんな会話になったんだ?」

 

 数分前の事なのに忘れているこのバカ二人のために解説しよう。

 

 あれは昼前の事だった。

 

 いつもの如く親父は朝早くから出勤。結羽は土日は自分から来ない。来てくれても良いのにな。あの美味い飯が食えるなら。←飯目的

 

 そのため、近くのコンビニで何か昼飯を買ってこようとしていると

 

─※─※─※─回想─※─※─※─

 

 ピンポーン

 

 突然呼び鈴が鳴った。

 

 ん?新聞か?

 

 そう思い、ドアを開けながらこう言う。

 

「間に合ってます」

 

「「なにが!!??」」

 

 二人ドアの先に居たのだが、二人とも同じ表情をしている。お前ら仲良いな。

 

 玄関に居た二人ってのが悠真と童明寺だ。

 

 何でもやることなく暇してたところ、二人がばったりと出くわして二人とも暇だったため俺の家に来ることにしたらしい。

 

 何故か宿泊研修以来、この二人は馬が合い仲良くなったらしい。

 

 って俺の家はあみゅーずめんとぱーくじゃねーって何回も言ってるのに。←言ってないです。

 

 そんなこんなで(家に)突撃された訳なんだが俺の部屋で話しているとこんな話に成った。

 

「俺等は人生で初めての高1だった訳なんだが」

 

「初めてじゃなかったらヤバイから」

 

 留年とか絶対にしたくない。

 

 もう一回同じ学年とかダルすぎる。

 

「どうだった?」

 

 唐突な質問だった。

 

「残念だった」

 

「同じく」

 

 悠真がそう呟くと童明寺もそれに同調して頷く。

 

 何で残念なんだよ。

 

 と言うか短いな。もっとこう。何か色々と思ったこと無いのかよ。

 

「この言葉には色々と意味がふくまれてんだよ」

 

「同じく」

 

「悠真の言っている意味がわからなくてだいぶ困っているんだが、と言うかナチュラルに心読むな。それと童明寺は同じくしか言えないのか」

 

「それよりも」「早く」「「優也はどうだったんだ?」」

 

「やっぱり仲良いな!」

 

─※─※─※─回想 終─※─※─※─

 

 そんな経緯があって冒頭戻る。

 

「ああ、そうだったな。俺が唐突に聞いたんだった」

 

 と、童明寺が今思い出したかのように手を叩く。

 

「そんなことより」

 

 と、悠真

 

 なにがそんなことよりだよ。

 

「明日バレンタインだぜ」

 

 と、カレンダーを見る。

 

 確かに明日は2月14日。バレンタインデーだった。

 

 まぁ、関係ないけどな。

 

 そう思いながらコーヒーを啜る。

 

 ホットコーヒーは暖まるし美味いし良いな。

 

「確かにバレンタインだがそれが?」

 

 と、童明寺も冷たくあしらう。

 

「おい!それでも男か!明日は男にとっても女にとっても一世一大の大イベント!女が男にチョコを渡す。そしてなし崩し的に告白して恋人になる二人。

そんなロマンがあるもんじゃろ!!」

 

「いや、そんなに暑く語られても。俺等興味ないし」

 

 勿論俺が興味ないのは当たり前なんだが、童明寺もこう言うの興味無かったんだな。

 

 と言うか悠真の暴走が激しすぎて論点が明後日の方向に飛んでいってしまってるぞ。

 

「取り合えずそんな話をするために話変えたのか?」

 

 若干童明寺もあきれぎみである。

 

「モテているお前らにはモテない俺の気持ちなど分からねーよ」

 

 モテないやつの嫉妬じゃねーか。そんなの俺等にぶつけられても。

 

 ってか俺ってモテてたのか?そんなこと無いと思うけどな。

 

 多分悠真の妄想だろう。

 

 童明寺はモテてるからチョコの数は凄まじい事になりそうだな。

 

「と言うか俺は孤高の一匹狼(・・・・・・・・)彼女など必要ない(・・・・・・・・)のだ」

 

 ほらまた。悲しげな表情になった。

 

 その表情になんの意味が込められてるか分からないが、何かがあるんだろう。

 

「んじゃそろそろ昼だし飯でも恵んでくれね?」

 

 なんて奴だ。

 

 勝手に上がり込んで飯をつくれだ?

 

「ああ、俺にも頼む。」

 

 童明寺まで。

 

 くそ!このままこいつらの言うことを正直に聞くのは少し癪だな。

 

 よし。良いことを思い付いた。

 

「わーったよ。作ってきてやるから待ってろって」

 

 そして台所に向かう。

 

 そして俺はチャーハンを作った。

 

 ただ、ただのチャーハンじゃない。

 

 俺特製。唐辛子をふんだんに()えた激辛チャーハンだ。

 

 あいつ等もきっと(ある意味)泣いて喜んでくれるぞ!

 

 そしてこのチャーハンを二人に出す。

 

「何かこのチャーハン赤くないか?」

 

「気のせいだ」

 

「いや、でも」「気のせいだ」

 

 俺は二人を制圧した。

 

「こうなったら自棄だ!」

 

 と、勇者童明寺がチャーハンを()き込む。

 

「かっれぇぇぇっ!」

 

 と慌てて水を口に含む童明寺

 

「あれ?激辛なのには変わらないけどちゃんと美味い。イケるぞ!これ」

 

 と、美味そうに食う童明寺。

 

 作った側としては嬉しいところはある。

 

「よし、食うぞ」

 

 そして悠真も口に含む。

 

「からっ!どんだけ辛いもの入れたんだよ!あ、だけど後から美味さが来るな」

 

 と、こちらもどんどん食べていく。

 

 まぁ、この二人なら大丈夫だと思った。

 

 もともと辛いのに少し免疫がある二人だからな。

 

 と言うか俺は飯を無駄にするのが嫌いだ。

 

 だから俺は食えないものなど作らないし、どうせ作るなら美味くなるように作る。

 

 どうしてこんなに料理が出来るのかって?

 

 昔はよく違う町に居る祖父の家に行ってたんだが、祖父は居酒屋を経営していてよく厨房にも立ってたとか。

 

 だから祖父に料理を教えてもらったんだ。

 

 だから祖父には感謝してる。

 

 ありがとう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 因みに祖父はまだ生きています。




 それでは!第36話終了

 次回はバレンタインデーです。

 本当に季節外れですね。

 夏に書くバレンタインデー

 そしてあと少しで一年生編が終わりますね。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第37話 困惑する優也と手慣れてるあつし

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 優也は悠真と童明寺と共に一年間を振り替える。

 そして唐突に悠真にバレンタインの話を振られるが、二人は非リアの嫉妬だと言い軽くあしらう。

 そして飯をよこせと図々しい二人に激辛チャーハンを作るも意外と美味いと好評

 優しさが抜けきれない優也であった。優だけに



 それではどうぞ!


side優也

 

 翌朝

 

 今日は2月14日月曜日。バレンタインだ。

 

 まぁ、なぜか今日は結羽に出会うことなく一人で来た。

 

 でまぁ、登校一発目で俺は頭を抱えてしまった。

 

 俺は俺の靴箱の前で頭を抱えている。

 

 そして俺の近くでもう一人。俺と同じく頭を抱えている人が

 

「ああ…」

 

 何を隠そうその人物は童明寺だ。

 

 恐らく俺と童明寺は同じことを考えているだろう。

 

「「この大量のチョコレートの山。どうしようか」」

 

 俺と童明寺はハモった。

 

 そう。

 

 開口一番に俺の視界に写り込んできたのは俺の靴箱を開けた瞬間、靴箱から大量に滝のように溢れだしてくるチョコレートだった。

 

 その直後、童明寺も同じように靴箱をあけると俺と同じような状況になって居るのを見て思わず吹き出しそうになったのは伏せておく。

 

 いやー。しかしこれだけの量。どうすっかな。

 

 自分で食べるのにはちょっと堪えるぞ。

 

 俺は甘いものは好きな方である。

 

 ビターも甘いのも好きだが、普通のチョコってそんなに食べれないんだよな。

 

 結羽に分けるか?

 

 しっかし。ホワイトデーに返すの大変だな。

 

 すると横で手慣れた手つきで袋にチョコ達を入れてその中の一つをかじり始める童明寺

 

 その場で食べるのはどうなんだろうか?

 

「今食べるのか?」

 

 と、俺が聞くと

 

「ああ。腹減ってたからな。お前も食うか?」

 

 と、チョコを半分に割って渡してくる。

 

 そしてそれをかじる。

 

 うん。美味い。

 

 俺のあまり得意じゃない甘ったるさはあまりなく、簡単に食べられるような味わいだ。

 

 こんなの誰が作ったんだ?

 

 と、俺の考えていることが分かったのかその答えを教えてきた。

 

「つみきだ」

 

 なるほど。白井さんか。

 

 確かにこの味わいはなんと言うか愛を感じるよね。

 

「毎年俺の好みを覚えてきてだんだん美味くなってってんだ」

 

 そう言いながらも一口かじる。

 

 だけどどうして白井さんのだって分かったんだ?

 

「あいつにはラッピングの癖があるんだ」

 

 ラッピングの癖?

 

「例えばここ」

 

 と、ラッピングシートを見せる童明寺。

 

「一旦跡を着けて折りやすくしてんだ。折り紙の要領だな。それ故、こうして跡がくっきりと残ってんだ」

 

 リボンにも癖があるらしい。

 

「通常リボン結びは上に輪が二つ合って下に紐があるんだ。だがつみきの場合はあいつ、料理出来んのに細かい作業が苦手なんだな。左は普通なのに右だけ上下逆さなんだ」

 

 すごいな。白井さんのことならすべてお見通しって貫禄だな。

 

「そして決めてはこれ。このシールだ」

 

 と、見せてくる童明寺

 

 なんと言うか可愛らしいと言うか愛情が溢れまくってるってか。良い子だ。白井さん

 

「飾り付けにこのシールを使うんだ。一体何枚持ってんだ?」

 

 いや、めっちゃ見てるな!

 

 どんだけ見てんだよ。

 

「まぁ、他にもエトセトラエトセトラって感じで数えきれないくらい癖はあるが…ってどうした?優也。そんなに驚いて」

 

「いや、まぁ。ストーカー暦何年だ?」

 

「んー。まぁ、そうだな約10年かな」

 

 マジか。こいつ、幼稚園・小学校の頃から白井さんをストーカーしてたのか。

 

 と、少し引いた目で見ていると童明寺が焦りだした。

 

「いや、違うから!本当に!だから引かないで!ストーカーなんてしたことないから!」

 

 でもこれだけ白井さんの事を知ってるって怪しいな。

 

「もしかして白井さんの事が好きなのか?」

 

 俺が問うと急に童明寺がむせ出した。

 

 飲み物なんて飲んでないのに…まさか!チョコでむせたのか。

 

 そうして俺は近くの自販機でお茶をかって手渡す。

 

 それを勢い良く飲んでいく童明寺

 

「ぷはー。なに言い出すんだよ優也」

 

 と、抗議の目を向けられる。

 

「ってかそっちだって柴野さんの事が好きなんじゃないのか?」

 

 と、聞かれた。

 

 なので思ってることを一語一句正確に伝えてみた。

 

「あのさ。常日頃から思ってたんだけど。恋ってどんな感情なんだ?」と

 

 すると童明寺はポカーンとしてこっちを見てきた。

 

 なんだその目は。摩訶不思議な存在を見たような顔をして

 

「あのさ。あなたは勉強魔神さんでしたよね?」

 

 そのあだ名は気に食わんがニュアンス的にはそうだ。

 

「勉強で他の事そっちのけだったから恋がどんな感情かを忘れてしまったと?」

 

「まぁ、そうだな」

 

 すると童明寺は「これは手強いな」や「どうすれば」等と呟き出した。

 

「はぁ、そう言うことか。勉強も出来て家事料理も出来るパーフェクト男の癖に女心が全く分からなかったのはそのせいか。つまりはお前は恋心を代償に学力をしょうかーん!したと言うことか」

 

 いや、いってる意味が全くわからん。

 

 なんだよしょうかーん!ってテンションおかしすぎだろ。

 

 つまりは分かりやすく言うと、恋や交流をそっちのけで勉学に励んでいたせいで恋心を忘れてしまったと言うことだ。

 

 今の俺じゃ恋をしててもそれに気がつくことが出来ない。

 

「とりあえず時間も時間だし教室行くか」

 

 あ、そのまま食べながら直行するんですね。分かります。

 

 なんで童明寺に今食うのか聞くと、最近ベタつきすぎてる白井さんを幻滅させて離れさせるのが目的らしい。

 

 なぜそこまで徹底する。

 

 そしてそれをどう思ってるのか聞くと

 

「いつもの事だからなれました。それより美味しく食べてくれてる。と考えると嬉しいな…」

 

 完全に無意味である。

 

「あ、はいこれ。絆成君に」

 

 と、言ってバレンタインチョコをくれた。ちょっとそこは配慮してほしかったな。どうせ義理なんだから。

 

 まぁ、童明寺は童明寺で本命と気がついてるか怪しいけどな。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

放課後

 

 帰るか。

 

 そう思って支度をする。

 

 そして玄関にいくと結羽が待っていた。

 

「優也。一緒に帰ろ?」

 

 少しいつもと違う気がした。

 

 緊張の声色が入ってたような。

 

「あ、あの。優也。これ」

 

 帰り道で突然とチョコを渡してきた。

 

 義理だと分かっちゃいるがありがたく受けとる。

 

「ありがとう」

 

 そうお礼を言って受け取って袋に入れる。

 

 あ、そうだ。忘れるところだった。

 

「結羽。あのさ俺さすごいチョコをもらったんだよ。俺一人じゃ食べきれる自信なくてさ」

 

 そう言って袋を見せる。

 

 すると一瞬結羽の目がジト目になった気がした。

 

「だからさ今から一緒に食べにk 「あ、私用事があるから急ぐね」

 

 そう言って走り去ってしまった。

 

 俺は引き留めようとしたが結羽は止まらなかった。

 

 地味に瞬発力はたけーのな。

 

 結局こうなるのか。

 

「優也のバカ…」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

自室

 

 俺は自室で今日もらったチョコの確認をしていた。

 

 手紙付きの物も何個かあったのでその人たちにはお返しできるけど他は出来なさそうだな。

 

 とりあえず結羽のを食べてみる。

 

 そして噛むと、その瞬間甘さとほんのりと俺の好きなビターな味わいも感じる。

 

 結構甘いが、そこまでしつこくない。

 

 俺の事をどんだけ知ってんだ?まぁ、俺の為に料理を作ってりゃ、嫌でも好みは覚えるわな。

 

 まぁ、とりあえず何が言いたいかって言うと。

 

「美味い」

 

 そしてこのチョコだけ特別甘く感じた。




 はい!第37話終了

 今回はバレンタインの話でした!

 優也とあつしメインでした。

 ほとんど同じ境遇の二人ですが少し違う点もありましたね。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第38話 社会経験を積もう

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 ついにバレンタインを迎えた優也達の前に現れたのはチョコの滝。流れ出す。靴箱から。

 そして優也が恋を知らないことが発覚。



 それではどうぞ!


side優也

 

 恋って何だろうな…

 

 俺はそれを考えていた。

 

 結構哲学染みた事を言ってるが、俺は本気でそう思っている。

 

 童明寺に呆れられたあの日の次の日、放課後に色々と恋愛について調べたり、小説等を読んでみたりした。

 

 だけど分からないんだ。恋と言う感情が

 

「なにやってんだ?優也そんなところでうろうろして」

 

「ああ、父さん。何でもないよ」

 

 と、父さんの問いに対して返す。

 

 今日はまたまた祝日なのだが、珍しく父さんが会社休みだ。

 

 ちなみに祖父は居酒屋をやっているのだが、継ぐのが嫌だからこっちに来たとか。

 

 それで良いのか父さん!?

 

「そう言えば彼女は出来たのか?」

 

 と、突然聞かれて転びそうになった。

 

 あまりにも俺の今の思考にピンポイントな発言だったためだ。

 

「父さん。恋の感情ってなんだ?」

 

 すると父さんは訝しげな目でみつめてきた。

 

 なんだ?その目は

 

「これは重症だな」

 

 すると父さんは俺の肩を掴んできた。

 

「そんなお前には社会経験が必要だと思うんだ。だからバイト。始めよう」

 

 は?

 

 なんでいきなり。

 

 まぁ、最近出費が激しいからバイトするのは良いんだが

 

 俺、絆成 優也はバイト始めるってよ。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

コンビニ

 

「えー。ここにバイトしに来た理由は?」

 

 と、フランクに聞いてくるコンビニ店長

 

 こう言う雰囲気の店長の方が良いと思う。話しやすくて

 

「社会経験を積むためです」

 

 そう言うと店長はうなずき始めた。

 

「良いねぇ。僕は向上心のある子は好きだよ」

 

 そう言ってなにかをスラスラーっと書いていく店長

 

「はい。採用ね」

 

 はやっ!

 

 え?これだけ?

 

 もっとこうなんかあるんじゃ無いのか?

 

 色々と

 

 これで良いのか?店長!?お気楽にも程がある。

 

「制服を用意しておくからね。また明日来てね」

 

 あれ?面接って何だっけ?

 

 合格の判定が甘すぎねーか?

 

 でもまぁ、店長がこう言ってるんだし良いのだろう。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

次の日

 

 裏口から入ってこいと言われたので裏口からコンビニに入る。

 

 もちろん放課後だ。

 

 俺が学生だと言うことを話したら放課後で良いと言ってくれた。

 

 改めて入るとなると緊張するな。

 

 そう思いながら入った。

 

 入ると直ぐに店長に会った。

 

「やぁやぁ。絆成くん。来たね。じゃあ店長室に行こうか」

 

 そして店長室に案内される。

 

 店長室に着くとタンスの中から一式の制服を取り出して渡してきた。

 

 志願書の項目に身長の項目があったからそれを参考に作ったんだろう。

 

「それが君の制服ね。それと」

 

 そして店長机からあるものを取って渡してきた。

 

 安全ピン付きのクリアなペラペラなやつ、それに絆成 優也と書かれた手のひらサイズの画用紙。ちょうどクリアなペラペラのやつの一回り小さい物だ。

 

「それがネームプレートね。その名前をこれに入れて」

 

 なるほど

 

 そして俺は言われた通りに入れる。

 

 これがネームプレート。

 

 そして店長室の天井の電気に照らして見てみる。

 

「それじゃ更衣室はあっちだよ。早速着替えてきな」

 

 と、言われて俺は更衣室に向かう。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「ここか」

 

 確かにドアに更衣室って書いてある。

 

 ドアノブは取っ手タイプの奴で回せば空く。

 

 そして俺は勢い良く開けた。

 

 その瞬間俺の視界には驚くべき光景が映ってきた。

 

「…」

 

「…」

 

「「…」」

 

 暫し無言になってみつめあう。

 

 そして俺の脳がフル稼働する。

 

「失礼しました~っ!」

 

 そして思いっきりドアを閉める。

 

 俺は使用中の表記を見た。

 

 しかし使用中になってなかった。

 

「きゃーぁ?」

 

 と、無気力な声が中から聞こえてくる。

 

 そう。

 

 俺が入ったら下着姿で着替え中と思われる女性がそこに居たのだ。

 

 使用中になってないことから考えて急いでて変え忘れたのだろうか?

 

 にしても

 

「ヤバい…殺される」

 

 逃げるべきだろうか?ここから

 

 いや、ここから逃げただけじゃ心許ない。別の市、県。いや、海外に!

 

「あわわわわ!」

 

 そんなことを考えていると後ろからガチャっと音がなった。

 

 錆び付いたロボットのようにそちらを見ると不思議なものを見る目で首を傾げてこちらを見てきていた。

 

「なにやってるんですか?」

 

 と、おっとりとした口調で話す彼女

 

 すると遅いと思ったのか店長が迎えに来た。

 

「あ、絆成くん。そんなところで頭抱えてうずくまってどうしたんだい?」

 

 そう言った後、俺の後ろの人に気がついたようで

 

「如月…またか?またなのか?遅刻」

 

「いやいやー。わたしから遅刻を取ったら何が残ると言うんですか」

 

 最低な奴だな。

 

「それよりてんちょー。この人誰ですか?」

 

「ああ、この人は今日来たばかりのバイト。絆成 優也くんだよ」

 

 そう言うと思い出したと言わんばかりに手をポンっと叩いた。

 

「君が新しいバイトさんかー。わたしは同じくバイトの如月(きさらぎ) 咲桜(さくら)ー。高一。よろしくー」

 

 同い年だったんだ。

 

「それでねー。てんちょー。ゆーや君がわたしの着替えを覗いたんです!」

 

 こいつばらしやがった!

 

「まーた如月。ここの表記変え忘れたろ。君自信が気にしないとはいえ、女の子だと言う自覚を持った方が良いぞ」

 

「はーい。てんちょー」

 

 あ、あれ?それだけ?

 

 俺はてっきり『如月の着替えを見ただと?このラッキースケベ野郎。俺だってラッキースケベにあったとこ無いのにぶっ殺してやる!』って感じで地の果てまで追いかけられるかと思ったのに

 

「それじゃ、ちょうど良く如月も来たことだし。今は北村さんがレジやってくれてるから如月が絆成くんに仕事を教えてあげて。それじゃ」

 

「はーい。じゃあゆーや君。この咲桜ちゃんが手取り足取り色々と教えてあげるよー」

 

「不穏な言い回しやめろ」

 

 そうして俺のバイトライフが始まったとさ




 はい!第37話終了

 今回は新キャラ。店長と咲桜が登場しましたね。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第39話 初バイト

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 恋を知らない優也。その優也を変えるには社会経験が必要だと優也父(名前未定)はそう考え、優也にコンビニバイトをさせる。

 そこの店長はかなり適当だと呆れたり、他のバイトの人が個性的だったりした。

 そんなわけで、バイト後編スタート!



 それではどうぞ!


side優也

 

 そう言えばさっき北村さんとか言ってたけどこの時間に他にシフトの入ってる人なのかな?

 

 そんなことを着替えながら考えていた。

 

 なんか如月さんは遅刻が多いみたいなこと言ってたし、大丈夫なのだろうか?

 

「ゆーや君!終わった?」

 

「まだだ」

 

 と、さっきから(くだん)の人物は急かしてくる。

 

 もう少し静かに待てないのだろうか?

 

 と言うかなんでそこでじっと待ってる。

 

 まぁ、あまり待たせてもあれだしな…急ぐか

 

「おおー。制服着ると一気に心が引き締まるな」

 

 そうして俺は更衣室から出ると

 

「なにやってんだ?」

 

「う、うぅ…だって。わたしの事をほったらかして窓からどこかに行っちゃったんじゃないかって」

 

「いや、どこの世界線だよ」

 

 俺が出ると如月さんがもじもじしながらうずくまっていた。

 

 なんでその考えに至った。

 

 その前に更衣室の窓、かなり高めに設定されてて俺が背伸びして腕伸ばしても頭一つ分位届かないよ。

 

 そんなとこからわざわざ脱出しようなんて、怪我したいドMのやることだ。

 

「はいはい。それじゃ俺に仕事を教えてください。如月先輩」

 

 すると余程先輩と言う響きを気に入ったのか目をキラキラ輝かせた。

 

 そ、そんなに嬉しかったのか?俺にはわからない感覚だな。

 

「ではついてきたまえ!後輩くーん」

 

 調子に乗った。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「ここがレジだよ!」

 

「いや、見れば分かるんだけど」

 

 すると横に女性店員が立っていることに気がついた。

 

 そして向こうも俺の視線に気がついたようでこちらを見る。

 

「あ、どうも…」

 

  と、ペコリとお辞儀してくるので俺もお辞儀した。

 

「あ、どうもしほさーん」

 

 と、敬礼する如月さん。

 

 何故に敬礼?

 

 悠真達(あいつ等)と別種の変人の臭いがする。

 

「あなたが新しいバイト?」

 

「はい。そうです」

 

「そう。あたしは北村(きたむら) 志穂(しほ)

 

 と、自己紹介してきた。

 

「あ、どうも。俺は絆成 優也です」

 

「志穂さんは高校二年生なんだよ!私の高校の先輩!」

 

 そう言ってレジから出ていく如月さん

 

 そして俺も如月さんについていく。

 

「ここが飲料棚の裏側!」

 

 そこは段ボールに入ってる飲み物だったり棚においてある飲み物だったりあって、棚に追加できるようになっている所だった。

 

 そして何より、飲料を置いてあるだけあって少し寒い。大きな冷蔵庫って感じだ。

 

 コーラやサイダーその他諸々、有名なのからマイナーなものまで。そしてビールやらのお酒もある。

 

「じゃ、次はフライヤーの使い方かな?」

 

 そう言ってレジの奥の部屋に連れていかれる。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「これがフライヤー」

 

 と、手を向ける如月さん

 

「これでコロッケとかをあげるんだよ。ほら、ここのボタンを押せば放っておくだけで勝手に上がってくるから」

 

 なるほど便利だ。

 

「あとはレジ打ちだね」

 

 この後も色々と教えてもらったけど、教え方が丁寧で非常に分かりやすかった。

 

「教えてくれてありがとうな」

 

 そう言うとニコッと笑って如月さんは「いえいえ~」と言う。

 

「これも私の仕事ですから~」

 

 そしてそれだけで今日のバイトは終わりの時間を迎えた。

 

 北村さんは俺が来て如月さんが俺に付くだろうから、人手が足りなくなるから昼間でって条件で来てたみたいで昼で上がった。

 

 そして俺等は引き継ぎをしていた。

 

「よし。こんなかな」

 

 そう言ってタイムカードを押しにいく。

 

「これでよし。着替えるか」

 

 そして更衣室前で立ち止まる。

 

 注意深く表記を見る。

 

 使用中じゃ無いらしいな。

 

 そして恐る恐る扉に近づいて耳を扉に当てる。

 

 音が聞こえない。

 

 よし、居ない可能性が高いな。

 

「なにやってるの」

 

 と、後ろから声が聞こえる。

 

 後ろを見ると如月さんが居た。

 

「いや、その」

 

「そんなにわたしの着替えを見たかったのかな~」

 

 と、ニヤニヤしてくる。

 

 こいつ…ムカつくな…

 

「如月さん…俺はそんな変態じゃないぞ」

 

「えー。その仕草で良く言えるね。それとさんは要らないよ」

 

 じゃあ遠慮なく

 

「如月。これについては言い訳のしようがないが、ちゃんと中に誰も居ないかを確かめようとしてただけで」

 

 そう言うと「ふーん」と言ってどこかに行った。

 

 その隙に俺は着替える。

 

 そして俺と入れ替わりに入っていく如月

 

「お先失礼します」

 

 そう言って裏口から出ようとすると

 

「まってー!」

 

 と、中から如月が大慌てでこちらに来た。

 

 そして俺の前で立ち止まる。

 

「送ってくよ」

 

 キリッとキメ顔をする如月

 

「それは男の台詞だと思うんだが」

 

 そう言うと目を輝かせ出した。

 

 嫌な予感が

 

「それじゃ送ってくれるの!?」

 

 やっぱりか

 

 まぁ、

 

「それくらいなら良いけど」

 

 そして渋々送っていくことになりました。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「送ってもらって悪いね」

 

 嬉しそうな顔しやがって

 

「だいぶ暗いな。まだ春と冬の中間だからかな」

 

 と、呟く。

 

 そう言うと体を抱いて俺から離れる如月

 

「もしかしてこの暗闇に紛れて私にあんなことやこんなことを」

 

 そう言ってきた。

 

 俺は黙り込む。

 

「あ、家ここだからありがとう」

 

 そう言ってドアに向かう如月

 

「おい。如月」

 

 そう言って如月に近づく。

 

「ん?どうした…の?」

 

 俺が無言で近づいてきてるのを見て少しずつ後退る。

 

 そしてドアにぶつかって後ろには行けなくなった。

 

 それを見て俺は壁ドンをする。

 

「ひっ」

 

 と、声を出す如月

 

「ちょ、ちょっと怖いな~。なんて」

 

 そして如月の耳元で

 

「本当に襲ってやろうか?」

 

 と囁いた。

 

 その瞬間、如月の肩がビクッとはねた。

 

 そして如月から離れる。

 

 如月の顔は赤くなってた。

 

「冗談だ。じゃーな」

 

 そう言ってヒラヒラと手を振って歩き出す。

 

 俺は思い出したように立ち止まる。

 

 そして如月の方に顔だけ向ける。

 

「俺以外にああいう事言うのやめた方が良いぞ。どうなっても知らん」

 

 そう言ったら、ペタンと力が抜けたように尻餅を付く如月

 

 そして俺はまた歩き出した。

 

「なんか悔しい…」

 

 そして如月は家に入った。




 はい!第39話終了

 今回も新キャラ、志穂が出てきました。

 コンビニは主に咲桜と志穂。珠に店長との絡みになります。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第40話 犬みたいな童明寺

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 バイト一日目。

 優也は咲桜に教えてもらいながらも仕事をこなしていく。

 そして咲桜を家に送っていくことに

 優也は渋々家に送っていくのだった。



 それではどうぞ!


side優也

 

学校

 

 俺はいつも通り、購買で買ったパンを一人寂しく廊下で食べていた。

 

 今日は雨降ってるな。生憎の天気だ。

 

 ちなみに童明寺は雨の方が好きみたいだ。

 

 お前は犬か!

 

 やっぱサンドイッチってうまいな~。

 

 ゆっくりと食べながら遠くを見る。

 

「あれって悠真だよな~」

 

 そう言えばあいつって部活とか入ってんのかな?

 

 よく用事が…とか言ってるし、なんかの係りとか入ってんのかな?

 

 すると突然悠真が胸ぐらを捕まれた。

 

 悠真は両手を胸の前に付き出してヘラヘラと笑いながらなにかを言っている。

 

 ったく…

 

「おい、悠真。なにやってる」

 

 と、俺は悠真に近づいて話しかける。

 

「んー?知らん」

 

「しらんってなんだゴルァ」

 

「ちょーど良い。てめぇも金だせやぁ」

 

 なるほどね。

 

 カツアゲに会ってたのか。

 

 んー。しゃしゃり出てきたのは良いものの、俺一人の力じゃどうしようもないな。

 

「で、悠真はそこでなにしてんだ?」

 

 と、最初に戻るわけである。

 

「いや、取り合えずこいつ引き剥がしてくんない?」

 

 その状況でよくそんな冷静で居られるよな。肝が座ってる。

 

 さーってと

 

「俺にそんなこと言われても困るんだけど。その前にこの人数程度、お前一人で十分だろ」

 

 そう言うと悠真は頭をポリポリと掻き始めた。

 

「俺はもうそう言うことから身を引いたんだよ。ケンカで誰かを助けるのは優也。お前しか居ない」

 

 いや、俺はまともなケンカで勝った試しが無いぞ。

 

「は?いま、なんつった。俺ら程度?じゃあ証明してみろよ!」

 

 そして悠真を殴る不良。

 

 何故こんな人たちがここに合格出来たのかが不思議でならない。

 

 悠真はやられるがままだ。

 

 俺じゃ勝てないしな~。

 

 例えボールがあっても校内で暴力事件を起こすのもな~

 

 その時、タイミングを見計らったかのようなタイミングでそいつは現れた。

 

「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!」

 

「呼んでないし、その前に何で濡れてんだ。びしょびしょじゃないか童明寺」

 

「いやー。校庭走り回ってたらいつの間にかびしょびしょになってた」

 

 だからお前は犬か!

 

 こいつは前世が犬だったんじゃねーのか?

 

「まぁ、取り合えず俺が何とかしてやる!」

 

「お前になにが出きるってんだ!」

 

 すると童明寺は軽く殴りかかる。

 

「びしょびしょで気持ち悪いよ拳!」

 

「地味に嫌なやつだ!」

 

「うわっつめた!」

 

「あ、あの変人。気持ち悪いぞ」

 

「逃げましょうよ」

 

 そして逃げていく不良達

 

「winner」

 

 と、ピースをする童明寺

 

 まぁ、今回は助かった訳だが

 

「童明寺。風邪引くぞ」

 

「いやいや、優也。あつしには白井さんが居るから。風邪引いたら看病してもらえるさ」

 

 一瞬なるほどと思ったけど、それって普通無いよな。

 

 ちなみに童明寺と白井さん家って隣らしい。なんと言う運命

 

「それよりも、悠真は何であんなやつらに絡まれたんだ?」

 

「んー。知らん」

 

 それしか言えないのか?

 

「まぁ、良いや。ジャージに着替えてこよっと」

 

 そう言って童明寺は更衣室に向かう。

 

 お気楽な奴だな。

 

「そう言えば最近放課後どこかに行ってるらしいじゃないか?どこいってんだ?」

 

 何故悠真がそれを!

 

 ああ、結羽か

 

 最近結羽と下校してないからな。寂しがってんのかな?

 

 と言っても今日もシフト入ってんだよな。

 

 午後は俺と如月だけだっけか。

 

 でもバイト中に面白がられて来られるのは嫌だしな

 

「ちょっとな」

 

 と、適当にはぐらかすことにした。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「いらっしゃーませー」

 

 相変わらず適当だな。

 

 俺は今、如月とレジに立っていた。

 

「いらっしゃいませ!」

 

 と、俺も言う。

 

 なんつーか。今日は客入りが少なくて暇だな。

 

 ってかもう一個のレジ放ったらかしてこっちに寄ってくんな。

 

「あの。お願いします」

 

「はい。わかりました」

 

 そしてレジに置かれた商品をバーコードリーダーで会計していく。

 

「会計615円で…す…」

 

 俺は顔を見て驚いた。

 

 なぜなら

 

「ゆ、結羽!?」

 

「ゆ、優也!?」

 

 すると俺と結羽の驚いた声を聞いて一度離れていった如月が戻ってきた。

 

「え?何々?あ、常連さーん」

 

 何で覚えてんだよ

 

「いや、言わないでぇっ!」

 

 と、必死に訴えかける結羽

 

 意外だな。結羽がコンビニの常連だなんて…

 

 それも弁当をなんて

 

「え、えっとぉ…とうまが…」

 

 パシリが!

 

 従姉なんだろ!それなのに年下の従弟にパシリにされて良いのか!?

 

 ん?

 

「あいつ、二つも弁当を食べるのか?」

 

 と、ニヤニヤしながら言った。

 

 すると

 

「そう!」

 

「いや、無理があるだろ」

 

 二つもなんて、高校生の俺だってキツいぞ。

 

「うぅ…優也がいじめるぅ…」

 

 と言うか話し込んじゃってるな。

 

 まぁ、他に客は居ないから良いんだけどな。

 

「所でお二人って…付き合ってたり?」

 

「いや、別に」

 

「そ、そそそ、そうだよ!わわわ私と優也がなんてぇ!」

 

「落ち着け!」

 

 何で毎回こうなるの?動揺しなきゃ死んじゃうの?

 

「そうなんだ~」

 

 するとニヤニヤしだす如月

 

 嫌な予感がする。

 

「私はこの前、ゆーや君に送ってもらったときに、壁ドンされておs」

 

「それ以上はダメだ!」

 

 と、必死に如月の口を押さえる。

 

「壁…ドン」

 

 すう呟いた。

 

「ふ、ふん。だ。優也が誰と恋をしようと私には関係ないもんね」

 

「なんだ?嫉妬してるのか?」

 

「何でこんなときだけ鋭いのよぉっ!」

 

 まぁ、なぜ嫉妬してんのかはさっぱりだけどな。

 

「そうだ。結羽。俺、もう終わりだから一緒に帰らないか?」

 

 と、取り合えず機嫌を取ってみる。

 

 こんなんで機嫌とれるかは分からないけどな。

 

「ゆ、優也が一緒が良いってどうしても言うなら…」

 

 なにチラチラこっち見てんだよ。

 

 地味に可愛いじゃねーか。

 

「ああ、どうしてもだ」

 

 そう言うと頬を赤らめた。

 

「そ、それじゃ待ってるから」

 

 そう言って出ていってしまった。

 

 中で待ってれば良いのに

 

 結羽もかなりの厚着をしてたけどそれでも少し寒いだろうに

 

 そして急いでバイト上がって結羽と帰りました。

 

 そして何故か絶対今日も『優也のご飯作るのぉっ!』

 

 って言ってその好意に甘えて食べさせてもらった。




 はい!第40話終了

 結羽にバイトの事がバレました。

 さて、もう何話かで一年生編は終わりたいと思います。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第41話 なんだこの展開by優也

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 廊下でパンを食べていた優也は悠真がカツアゲにあっているのを見かける。

 優也はどうしようかと悩んでると、雨の日だと言うのに外で全力疾走していた童明寺が現れて追い払うことに成功。

 バイトをしていることを結羽にバレ、咲桜に壁ドンしたこともバレた。

 壁ドンに対し、嫉妬した結羽の機嫌を取り戻すためにどうしても一緒に帰りたいと言う。

 そしてご飯も作ってもらいました。



 それではどうぞ!


side優也

 

 休日。特にやることが無い俺は買い物に来ていた。

 

 まぁ買うものってのが本なんだが、俺の好きな作家さんの新作が出たと言うことでかなり楽しみである。

 

 ちなみに俺の趣味は勉学だけじゃなく読書もある。

 

 色々なジャンルを読んでいるが、最近は恋愛ものとかも結構読んでるが難しいな。

 

 読んでれば恋について勉強出来るかと思ったが、これがさっぱりなんだわ。

 

 そして俺はいつも来てる本屋に着いた。

 

 さーってと、あの作家さんの新作はどこに置いてあっかな。

 

 と、新作コーナーに向かう。

 

 良いよな。こう言う本屋の雰囲気って

 

 本に囲まれた空間って地味に好きなんだよな。

 

「っと、有った有った」

 

 探し始めて数分でお目当ての本を見つけることが出来た。

 

 そして手を伸ばす。

 

 すると誰かの手とぶつかる。

 

「え?」

 

 と、横を見るとそこには北村さんが居た。

 

「あ、北村さん」

 

「ん?絆成さん」

 

 何でここに?と一瞬思ったがその疑問もすぐに消え、理由がわかった。

 

「北村さんもこの本を?」

 

「もってことはあなたもなのね?」

 

 ん?そう言えば恋愛小説に『本を取ろうとしたら手がぶつかり合って』ってのが有ったような気がするな。

 

 でも俺はドキドキ何てしてないけどな。

 

 それは北村さんも同じようで、冷静に書籍を一冊手に取る。

 

「あたしはこの作家さんが好きなんで楽しみだったんですよ」

 

「あ!俺も!俺もこの作家さんが好きで買いに来たんですよ!」

 

 と、少し興奮ぎみに喋る。

 

 いや、今の俺のキャラに見会わないとわかっちゃいるよ?

 

 だけど、俺は好きなものを話すとき少し興奮気味になるんだよな。

 

「あ、あなたもだったのね!案外あたし達って似た者同士なのかも知れないわね」

 

 と、俺たちは意気投合した。

 

 まさか俺と同じ感性の人が間近に居たとは

 

「あ、そうだ。この後お茶していかない?」

 

 と、誘われた。

 

 まぁ、断る理由も無いし…と言うのは建前で、バイト仲間の如月とは良く喋ったりしてるけど、同じバイト仲間の北村さんとはゆっくり話したことは無かったからな。話してみたいってのが本音だな。

 

「ああ、良いですよ」

 

 そう言って俺も書籍を一冊手に取って会計を済ませる。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

喫茶店

 

 俺達は近くの喫茶店に来ていた。

 

 ゆっくりとした昼も良いなと思う。

 

 因みに如月は今日シフトが入っている。

 

 俺と北村さんが休みな分、如月が入ってるのは必然だ。

 

「あたしはコーヒーかな。絆成さんは?」

 

「俺もコーヒーだな」

 

 と言うか、バイト始めて数日経つけど、未だに北村さんの絆成さんって呼び名慣れないな。

 

 店長も絆成君って読んでくるけど、君だからまだ大丈夫だけど、さんって慣れないな。

 

 そして注文したコーヒーが届く。

 

「そう言えば絆成さんって高校どこ通ってるの?」

 

「ああ、伊真舞高校だ」

 

「え!?あの伊真高(いまこう)!?」

 

 と驚く北村さん

 

 まぁ、町一番の高校だからな。

 

 昔の俺だったら考えらんなかったな。

 

 必ず一教科は赤点で、順位は下から数えた方が早い。

 

 そんな俺だったからな。

 

「そう言う北村さんは?確か如月と同じ学校何でしたよね?」

 

「そうね。あたしは春風(はるかぜ)高校。女子高」

 

 ああ、あそこか。

 

 珠に春風の制服の女子を帰路で見かける事がある。

 

 まぁ、結構近いからな。

 

 伊真高から歩いて10分だ。

 

 結構ってかめっちゃ近いな。

 

「ってか春高(はるこう)も結構偏差値高くなかったっけ?あいつそんなに頭良かったっけ?」

 

「咲桜はああ見えて結構頭は良いんだよね。一年生ではトップ5には入るレベル」

 

 マジでか!?

 

 いや、ごめんね?普段があんなだから授業中もふざけてるのかと思ってた。

 

 さすがにそれは無いか。

 

「ほんとはあの子、伊真高に行けたんだけどね。あたしと同じ高校に行くって言って聞かなくて」

 

 北村さんにとって如月は自分に着いてくる可愛い後輩って感じらしい。

 

 優しい目をしてる。

 

 そう言う関係って良いなと思う。

 

 俺の良く会話する先輩は…

 

 ダメだ!白波さんが思い浮かんだ。

 

 と言うかそもそも白波さん以外居なかった。

 

「あっれ~?ゆーや君としほさんじゃ無いですか~」

 

 と、聞き覚えのある声がした。

 

 そして声がした方を見るとそこには件の如月が立っていた。

 

「どうしたの?」

 

「と言うか何でここに?」

 

「いやー。お二人がここでお茶してるのが見えたからねー」

 

 ああ、そうか。

 

 ここは窓側の席だから見えるのか。

 

 今はバイト帰りか。

 

「なに?デートですか~?幾らしほさんでもゆーや君は渡せませんよー」

 

 いや、何の話だよ。

 

 ってかデートじゃないし

 

「なに咲桜。絆成さんと付き合ったりしてるの?」

 

「んー。してない?」

 

 良かった。そこふざけなくて

 

「じゃあついに好きにでもなった?」

 

 いやいや、そんなことあるわけ無いだ

 

「そうだね~。好きだよ?」

 

「え!?」

 

 ちょっと待って!どういう

 

「バイト仲間として」

 

「ああ、うん。知ってたよ。知ってたけど驚いてみた」

 

 するとニヤニヤしながら俺の隣に座ってグイっと近づいてきた。

 

 なんですか?その顔は

 

「もしかして~。あっちの方の好きを期待してた~?」

 

「いや、別に」

 

「そう言う割には顔が赤いよー」

 

 ニヤニヤしやがって…ムカつくな

 

 この間の仕返しか?

 

「それはお前の顔が近いからであって」

 

「いやいや、わかるよー。男の子だもんねー」

 

 口調がうざいな…

 

 俺の周りには性格が特殊な人しか集まらないのか!?

 

「そんなに反応してくれるのは嬉しいな~。これはそのお礼」

 

 と、言うと俺の頬に柔らかい感触がした。

 

 俺は思わず一瞬、思考停止してしまう。

 

 そして思考が戻ったら俺は思わずすごい勢いで後ろに下がる。対して下がれないけど

 

「ななな、お前!?」

 

「あ、あんたねぇ…」

 

 と言う反応を浮かべる俺と北村さん。

 

「どう?やっぱり可愛い反応を見せてくれるね」

 

 だが、当の本人は何も気にしてないご様子。

 

 そのふてぶてしい態度が少し(しゃく)だな。

 

 何か仕返して赤面させてやらないと気がすまない。

 

 でも目の前に北村さんが居るからちょっと抵抗あるな。

 

 いや、しかし。ここでやり返さなければ行けないと言う衝動に

 

 ちょうど隣に如月が居るし

 

「如月」

 

「ん?どうした?ってキャッ!」

 

 俺は如月を押し倒す。

 

 するとやはり赤面しだす如月。

 

「どうだ?これで懲りたらむやみやたらに男を煽らないことだ」

 

 そうして離れようとすると

 

「うわっ!」

 

 服の袖を引っ張られた。

 

「良いよ?」

 

 何が良いんですかねぇ?

 

「ふふっ。冗談じょうだーん!前に似たような事やられたからその仕返し~」

 

 これはしてやられたな。

 

 俺の仕返し大作戦は無意に終わったのです。

 

「あなた達…公衆の面前でなにやってるの?」

 

 と、お怒りモードの北村さんが言ってきた。

 

 普段おちゃらけている如月の肩が震えていた。

 

 本気で怯えていらっしゃる。

 

「所でいつまでそうやってるかしら?」

 

「すみません!」

 

 そう言って飛び退く。

 

「ゆーや君。今のはセクハラだよね?」

 

 如月にも説教されるとはショックなんだが

 

「あなたも何でこんなところでその…ききき、キスなんかしたの」

 

 キスって言うのを恥ずかしがってるな。

 

「んー。ん?何となく?」

 

「あんたにとってのききき、キスってその程度だったのね」

 

 と、呆れている北村さん

 

「まぁ、良いじゃ無いですか~」

 

 と、言ってちゃっかり俺のコーヒーを飲む如月

 

 あーもう。何でも良いや…

 

「あんた達…ほんとに付き合ってないのよね?」

 

 そんな感じでこの後ずっと問い詰められた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小話

 

 期末テストも無事終わりを告げた。

 

 今回もいつも通りの点数だった。

 

「優也ぁ…」

 

 結羽もいつも通りのようだ。

 

 これでも留年しないくらいの点数は取ってるらしい。

 

 今回も俺に泣きついてきて教えてあげた。

 

 俺の順位は、やはりと言うか星野さんと同率一位だ。

 

「優也。いつも私に勉強教えてくれてありがとう」

 

「急にどうした!?」

 

「いや、何でもないよ!」

 

 と言って走ってく。

 

「あ、おい!待てよ!」

 

 俺はこの何でもない日常が好きだ。




 はい!第41話終了

 メインヒロインって誰だっけ?と迷走中

 今回は志穂と咲桜、優也のやり取りがメインでした。

 そして今回は小話を入れてみました。

 本当の約150文字程度しかない小話ですね。

 さすがに中間期末両方無いのはどうかと思ったので、期末の後の話を入れてみました。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第42話 みんなに嫌われたいが好かれてる童明寺

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 近くの本屋に本を買いに行った優也

 そこでバイト先の先輩、志穂に会う。

 そしてお茶をすることになるが、そこに咲桜が乱入!

 だいぶややこしい展開になってしまった。

 そして小話を追加。

 期末テスト後の結羽と優也のやり取り。



 それではどうぞ!


side優也

 

 今日はホワイトデー

 

 まだ給料日前のこの時期。

 

 正直この量を買うのは厳しかった。

 

 お陰で給料日まで10日以上残したこの状況で、俺の貯金にまで手が延びてしまうとは…

 

 実は中学の頃はたいしてお金を使ってなかったから、お小遣いを貰ってたけど使ってなかったからたんまり貯金されてるんだよ。

 

 それなのに結構使ってしまった。

 

「ん?優也。なんだ?その大きな袋は」

 

 と、隣に来た童明寺が聞いてきた。

 

 そう言う童明寺は学生鞄以外はなにも持っておらず、手ぶらだったのだ。

 

「今日はホワイトデーだぞ?」

 

 そう言うと

 

「あー。そうだっけ?まぁ、どうでも良いけど」

 

 こいつ、返さない気だな。

 

 普段からこう言うやつだが、これはどうかと思うんだが…

 

「俺にチョコレートなど渡してきたやつなど居ないんだよ」

 

「…」

 

 俺は童明寺の肩を掴む。

 

「じゃあお前あれはなんだ!?わざわざ宅急便で俺宛に送ってきたあの箱の中身は何だったんだぁぁっ?」

 

 と、俺は童明寺の肩を揺らしながら言った。

 

「あの後、俺は結羽と悠真と共に哀れみの目を向けられながら一緒に食べたんだんだからな!」

 

 そう言うと、童明寺がドンマイ。と、肩を叩いてきた。

 

「いや、お前のせいだから」

 

 と、手を離す。

 

 これもみんなに嫌われる作戦か…

 

 こんなんでもモテてるから不思議でならない。

 

 ほんと、何でだろうね。

 

「あ、そろそろいかなくちゃならないな」

 

 腑に落ちないがまぁ、良いだろう。

 

 そして童明寺を手放して教室に向かった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 俺は昼休み放課後を利用して色々な人にスーパーで買ったクッキーを渡し廻っていた。

 

 さすがに送り主が分からないと無理だが、

 

「はい。白井さん」

 

 と、俺は他の人にやったように白井さんにもクッキーを渡す。

 

 すると白井さんは両手で丁寧に受け取って「ありがとう」と言う。

 

 良い子なんだけどな。

 

 何で童明寺は突き放した態度を取るんだろうか?

 

 後二個

 

 あれ?

 

 後は結羽に渡して終わりのはずなんだが…あ!数ミスった。

 

 どうしようか後の一個

 

 すると童明寺が視界に入る。

 

 まぁ、適当に余ったのは童明寺に渡しとくか。

 

「ホラよ童明寺」

 

 と、クッキーを渡す。

 

「なんだ?これは」

 

「やるよ。余ったし」

 

 そしてその場から立ち去る。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

sideつみき

 

 私は絆成君からホワイトデーのクッキーをもらった後、直ぐに帰ろうと準備していた。

 

 やっぱりと言うかなんと言うか童明寺君は今年もお返し無し。

 

 なれたからもう良いけど

 

 すると絆成君が童明寺君にクッキーを渡しているのが見えた。

 

 そしてそのクッキーを持って立ち上がったと思ったらしばらくの間、固まってしまった。

 

 そして硬直が溶けた後、私のもとに近づいてきた。

 

「つみき」

 

 と、呼んでくる。

 

「これ、貰いもんなんだが要るか?」

 

 と、クッキーを手渡してくる。

 

 童明寺君が誰かに物をあげようとするのを始めてみたから驚いている。

 

 でもそれは絆成君から童明寺君にあげたものであって…

 

「じゃあ一緒に食べない?」

 

「まぁ、お前がどうしてもって言うなら」

 

「うん!どうしても!」

 

 そして一緒に帰った。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

side優也

 

「優也!」

 

 と、声をかけてくる結羽

 

 俺は結羽の方を見る。

 

「あれ、童明寺君がつみきちゃんにあげないことを予期して一個多く買ったでしょ」

 

 と、確信を突いた質問を繰り出してきた。

 

 よく心を読まれるから心まで嘘をついたのに…

 

 でもなんか悔しかったため、俺はこう言った。

 

「さあな」

 

「さあなって…でも優しいんだね」

 

 そう言って途中まで一緒に帰る。

 

「んじゃ、俺バイトだからこのまま行くからな」

 

 と言って別れようとした時にあることを思い出した。

 

「っと、忘れるところだった。結羽。はい」

 

 と、クッキーを渡す。

 

「ありがとう優也」

 

 そうして俺と結羽は別れた。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「あれれ~?今日は随分お疲れモードだねぇ~どうしたの?」

 

「そうだ。俺は疲れてるんだ。仕事に集中させてくれ…」

 

 俺がぐったりしていると如月が声をかけてきた。

 

「ねぇゆーや君。もしかして好きな人に告ったの?よしよし。だいじょーぶだからね。ゆーや君には私が」

 

「おい、なぜその流れで話を進めようとする。と言うか反応が俺がフラれる前提な事について話し合おうじゃないか」

 

 これが俺の職場だ。

 

 退屈することもないが、かなり疲れると言うのが本音だ。

 

 如月は嬉々として俺をからかってくる。

 

 正直やめてほしい。

 

 すると一人の女性がコンビニに入ってきた。

 

 そして女性はこっちを見るなり飛んできた。

 

「やぁやぁ、久しぶりだね。絆成君?だっけ?」

 

 と、気さくに話しかけてくる人物は

 

「ああ、白波さんにいつも振り回されてる神野さんじゃないですか」

 

 神乃 夕華。生徒会副会長。いつも会長である白波さんに振り回されており、いつも白波さんを強制連行しているのを見かける。

 

「あれ?そっちの子は?」

 

 と、神乃さんの後ろに隠れてる女の子を見る。

 

 すると慌てて死角に逃げ込んで時折チラチラとこちらを見てきている。

 

「ああ、あの子は私の妹。露木(つゆき)って言うんだけどね。極度の人見知りのせいで家族以外には口を開いたりしない子なのよ。気にしないであげて?」

 

 露木ちゃんか…

 

「分かりました」

 

「ありがとねー」

 

 そう言って神乃さん達は手短に買い物を済ませて帰っていった。

 

 そして俺も上がる時間となり、夜遅いのでいつものごとく、如月を家まで送ってやった。




 はい!第42話終了

 今回はホワイトデーでした。

 童明寺のためにクッキーを多めに買うなんて優也にも優しいところもありますね。優だけに

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第43話 優也と結羽

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 ホワイトデー。優也はチョコのお返しにクッキーを配って廻っていた。

 しかし、あつしは配る気はさらさら無いようだった。

 見かねた優也はこんなこともあろうかと多目に買っていたクッキーをせめてつみきの分だけでもとあつしに渡す。

 そしてバイト中のコンビニに夕華とその妹の露木が入店してきた。

 さて、真依の卒業も目前だ。



 それではどうぞ!


side優也

 

 卒業式までもう一週間も無い。

 

 つい先日、また俺の家(・・・)で会議を開いた。

 

 議題は前回と同じく卒業祝いだ。

 

 今回はちゃんと結羽も来れた。

 

 それで今は何やってるのかと言うと、企画書の作成である。

 

 何で俺がこんなことをしなきゃいけねーんだよ。

 

 参加者は俺、悠真、結羽、星野さん、白波さん、そして冬馬

 

 そして今回はカラオケに行くらしいんだが、無理矢理演奏を入れられた。

 

 カラオケボックスについてしばらく歌ったら演奏開始、当初は悠真一人の演奏だったはずなんだが、冬馬がピアノが出来ると知って、ちょうど折り畳みのキーボードがあったので冬馬も参加することになった。

 

 ちなみに悠真がギター、冬馬がキーボードで、何故か結羽まで飛び火して歌う事となっていた。

 

 まぁ、とりまこんな感じだ。

 

 後は俺の家に集合でバレないように連れてくる必要がある。

 

 俺と結羽は色々支度があるから出来ない。

 

 そうなると悠真か冬馬になるんだが、冬馬曰く「何で部外者の俺がそんなことしなくちゃいけないんだよ…第一、俺がキーボードをやらなくちゃいけなくちゃならないんだよ。俺は部外者だ!」と、嘆いていたから恐らくそこは悠真がやることになるだろう。

 

 あいつ嘘苦手だけど大丈夫か?

 

「あー!もうやってらんね…」

 

 今日は休日、部屋で企画書を書いていた俺は企画書を投げて部屋中にばらまかれた企画書を無視して机に突っ伏す。

 

 そのまま瞼を閉じる。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

side結羽

 

 ピンポーン

 

 あれ?反応がないな…

 

 もう思ってもう一回呼び鈴を鳴らす。だけど反応が無い。

 

 いつもなら直ぐに出てくるのに…

 

 うーん。留守なのかな?

 

 そう思ってドアを引いてみると、これがなんと開いてしまった。

 

「ふむ。これは事件の臭い」

 

 なんか思考が白波さんに侵食されてきてる気がする。

 

 悪影響だ。

 

 でも優也のお父さんが仕事だとしても優也はバイト無いって言ってたから休日に出歩かないインドア派の優也は居るはずなんだけどな。

 

 ふむ。これは本格的に事件の臭いが…ってちがーう!

 

 ヤバイなぁ…これは本格的に白波さん病にかかってしまっているかもしれない。

 

 でもどうしたんだろう?

 

 そう思って中に入って優也の部屋に直行する。

 

 すると優也の部屋のなかは大量の紙が散らかっていた。

 

 それを一枚拾って見てみると企画書のようだった。

 

 なんだかんだ押し付けられた仕事もやるところは優しいな。と思いながら紙を回収していく。

 

 回収していく内に優也が机に突っ伏していることに気がついた。

 

 耳を澄ますとスースーと寝息が聞こえてきた。

 

 か、可愛い…

 

 そして私はちょうど優也が横を向いたタイミングでスマホのシャッターをきった。

 

 それを見てニヤニヤと顔が緩んでしまう。

 

 ダメダメ…こんなところ優也に見られたら絶対変なやつだと思われてしまう。

 

 そして企画書を回収して机の上に置いた。

 

「ん?うーん…」

 

 その瞬間、優也が起きた。

 

「あ、ごめんね。起こしちゃった?」

 

「いや、別に。…ところで何でゆーがここに?」

 

 まだ寝ぼけているのか結羽のうの発音が上手く出来てない。

 

 可愛い。

 

 ダメダメ。こんなこと考えてちゃ

 

「ああ、そうそう。企画書の事で話し合おうと思って来たらインターホン押しても出てこないし、ドアは開いてるしで心配したんだから」

 

「ああ、それはすまんな」

 

 と言って頭を掻く優也

 

 でも企画書の話し合いは口実に過ぎないんだけどね。

 

 どうしたものかな…この唐変木。

 

「でも部屋が荒れてたけどどうしたの?」

 

「ああ、なかなか思い付かなくてな。カラオケの後、何するか…晩飯とかも食べるらしいから店のリサーチとかもな」

 

 なんか優也が一番張り切ってるような気がするのは私だけかな?

 

 ってリサーチ!?そんなこともしてたの!?

 

 時間をかけて最高の企画を考えていてくれたんだね。

 

 なんだかんだ言ってそう言う優しいところも好きなんだけどね。

 

「じゃあ気晴らししようよ。気晴らしをしたら頭の回転がよくなるかもよ!」

 

 そう提案すると優也は「そうだな」と言って伸びをした。

 

「で、何するんだ?」

 

「こんなこともあろうかと思ってケーキ作ってきたんだ」

 

 そう言って私が持ってきた箱を見せた。

 

「ケーキか…ん?今作ったって?」

 

「そうだよ。結構お菓子作りとか好きなんだよね」

 

「これが女子力と言うやつなのか」

 

 と、まじまじと私を見てくる。

 

 そんなに見られると照れちゃうよ。

 

 かと思ったら急に優也の顔が青ざめた。

 

「まさか結羽さん。チョコじゃ無いですよね?」

 

「違うよ?イチゴのショートケーキ。勿論生クリームだよ」

 

 そう言うと心底安心したような顔になる優也

 

「良かったぁ…童明寺が送ってきた大量のチョコを食べてからしばらくチョコは食べたくなかったんだよ」

 

 あー。分かるかも

 

 あれだけチョコ食べたら具合悪くなっちゃうよね。

 

「童明寺のチョコ嫌いはどうにかなんないかねぇ…」

 

「え?童明寺君ってチョコ嫌いだったの!?」

 

 衝撃の事実!?

 

「ああ、あいつは白井さんの作ったチョコしか食べない。何故か白井さんのチョコは食べれるらしいが」

 

 つみきちゃんのチョコすごい!?

 

 そして私と優也はケーキを食べた。

 

「なんかやる気が出てきたような気がするよ。ありがとな」

 

 そう言って再び机に向かう優也

 

 頑張って。心の中でそう呟いて優也を見守るのだった。




 はい!第43話終了

 次回辺り卒業式にしたいと思います。

 一年生編、次回最終回?

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第44話 一年生編 終

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 卒業祝いの企画書を作っていた優也はいつの間にか眠っていた。

 そして眠っている間に来た結羽は優也の寝顔を見て思わず笑みがこぼれてしまう。

 その後、起きた優也と共に結羽の作ったケーキを食べた後、優也は企画書作成に戻ったのであった。



 それではどうぞ! 


side優也

 

 卒業式。それは最上級生と在校生の別れを意味し、同時に最上級生の新たな一歩を踏み出す重要な式となっている。

 

 まぁ、俺はそんな重くは捉えてないけどな。

 

 まぁ、なぜそんな事を言い出したのかと言うと、今が絶賛卒業式の真っ最中だからだ。

 

 とは言っても校長先生の長い長い話を聞いて、国歌を歌って校歌を歌って互いに歌を歌い会うくらいなもんだ。

 

 特に校長先生の話を聞いてるときは眠くなってくる。

 

 まぁ、イニシャルDとイニシャルSは完全に寝てたからな。

 

 でも歌うときには起きてて何それすげぇって思った。

 

 どうなってんだろうな。こいつらの危機管理能力

 

 そして卒業式は終わった。

 

 そして俺は今現在、廊下を歩いていた。

 

 するとある人影を見かけた。

 

 あれは白井さんと神乃さんか?

 

 ふたり仲良さそうに歩いていた。

 

「あ、絆成君」

 

 と、声をかけられた。

 

 この声は神野さんだな。

 

「何ですか?」

 

 そう言えば、ここで白波さんと会っちゃったけど、俺が誘うべきなのだろうか?

 

 でも神野さんも居るし、

 

 そんな事を考えてると神野さんが一瞬考えるような仕草をした後ウィンクして白波さんに向き直った。

 

「このあと実は絆成君と遊ぶ約束をしていたんです。会長もどうですか?」

 

 と、白波さんに提案した。

 

 え?そんな約束した覚えは無いんだが

 

 でも何か考えがあるのかも知れない。

 

 ここは乗り掛かった船だ。乗ってやろうじゃないか。

 

「そうなんですよ。どうです?」

 

「あれ?君たちっていつからそんなに仲良くなってたっけ?」

 

 ぐ、痛いとこ突いてきやがった。

 

 確かに俺と神野さんなんて全然付き合いもない。

 

 だからどうしても不自然になる。

 

 そして俺がどうしようかと悩んでると神野さんがまた口を開いた。

 

「いやー。ここらで彼等と仲良くなってみようかな~って。ほら、会長のお気に入りなんでしょ?」

 

 そう言うと白波さんは府に落ちたようだ。

 

 助かった。とアイコンタクトするとまたウィンクする神野さん

 

 まるで『どういたしまして』と言ってるようだった。

 

「そうね。じゃあ優也君の家にお邪魔しようかしら?」

 

 あれ?白波さんってこんなに大人しかったっけ?

 

 まぁ、さすがの白波さんでもこう言うこともあるよな。

 

 そして俺達は俺の家へと向かった。

 

 歩いている途中、みんなにLINEを送った。

 

『白波さんにたまたま会ったから連れていく』

 

『わかった』

 

『了解した』

 

『へーい』

 

 と言う感じのやり取りがあった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 そんなこんなで俺の家に着いた。

 

 一応結羽は信頼してるから後で返してもらうと言う条件付きで鍵を渡しておいたから。飾り付けはしているだろう。

 

 後は悠真だが、結羽従姉弟と共にふざけずにやってれば良いんだけど

 

 そして俺は一度深く深呼吸してから自宅の扉を開けた。

 

 こんなに自宅の扉を開けるのに緊張したことは恐らく一度もないだろう。

 

 そして俺が扉を開け、リビングの扉を開けると

 

 パンっ!

 

 と、綺麗に破裂音が鳴った。

 

 その音の招待を探ると周りに皆が居て、各々クラッカーを持っていた。

 

『白波さん(真依先輩)!卒業おめでとうございます!』

 

 そして冬馬を見ると複雑そうな表情をしていた。

 

(俺は何でここにいなきゃいけないんだ。部外者だろ)

 

 と言う心の声が聞こえてくるようだ。

 

「皆~ありがとう~」

 

 と、結羽と星野さんに抱きつく白波さん

 

 神野さんはやけに落ち着いている。

 

 まるで最初から知ってたかのように

 

 ん?知ってた?

 

 まさか

 

「悠真、」

 

 そう言うと「ギクッ」と言った。

 

 口で言うやつ始めて見た。

 

 でもこれで確信した。

 

 俺はジト目で悠真を見つめる。

 

「神野さん。謎が解けましたよ」

 

「ん?何?謎って」

 

「ずっと不思議だったんですよ。なぜここまで事がスムーズに進むのか」

 

「しかし、悠真の態度で分かりました。あなたは最初から知っていたんです。これから何をするか、ある人物に聞いて。そしてあなたはスムーズに進むように誘導した」

 

「そ、その人物って?」

 

 そして俺は親指と人差し指だけ伸ばして顎に添えて真ん中に行く。

 

「神野さんにばらした犯人。それはお前だ板戸 悠真」

 

 そして悠真を指差す。

 

「お、俺!?ってか名字間違えてんぞ。板戸じゃなくて坂戸だからな」

 

「悠真。お前は自分で連れてくるのが面倒くさかった。だが、連れてくるのをすっぽかすわけにもいかない。そこで神野さんに偶然会ったお前はある作戦を思い付いた」

 

 そして俺はテーブルをドンッと叩いてからこう言いはなった。

 

「副会長の神野さんに連れてきて貰おう!って。そりゃそうだ。副会長が会長を制御してるってのは学校全体で知られていることだからな。神野さんの誘いを断るわけがない。そう思ったんだろ?」

 

「ぐ、すべては優也。お前の言う通りだ。俺は神野さんに連れてきてもらおうと思って神野さんに伝えたのだ」

 

 勝った。そう思って俺はガッツポーズをする。

 

 別に咎めようと思ってなど無い。ちょっとした遊び心だ。

 

 すると、冬馬がボソッと呟いた。

 

「なんだこれ」

 

「じゃあ気を取り直して遊びにいきましょう真依先輩」

 

 と、悠真が流れを修正する。

 

「え、えぇ。そうね」

 

 と、戸惑いながら同意する白波さん

 

 そして俺達は俺が事前に決めたカラオケ屋に向かった。

 

 カラオケ屋に入るや否や早速歌い出す悠真。

 

 有名なアニメの曲だ。

 

 悠真は結構上手い部類だ。

 

 そして歌い終わると、それに続いて白波さんが歌い出した。

 

 星野さんは携帯を弄っていて、俺は皆をボーッと見ていた。

 

 結羽は俺の横に座って俺の横顔を覗き込んできている。そんなことして何が楽しいのだろうか?

 

「じゃあ、そろそろやろうか!」

 

 そう言って悠真はバッグの中からギターを取り出した。

 

 それに連れてため息を付きながらもキーボードを取り出す冬馬。

 

 そして結羽はおどおどしながらもマイクを手に取る。

 

「これから俺達で演奏します!」

 

 そう言うとパチパチと拍手が起こった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ジャラーン

 

 演奏が終わった。

 

 凄いな。こんなに完成させてきたのか。

 

 有名な曲ばかりだったけど凄く出来てた。

 

「凄かったよー!」

 

「うん。結羽ちゃんは歌上手いし他の二人も楽器上手いね」

 

「うん」

 

 俺は二人に同意するように頷く。

 

「クール気取ってないで何か言ったらどうだ~?」

 

 と、肩を組んで頬をつついてくる。

 

 イラっ

 

 正直凄いと思った俺の気持ちを返してほしい。

 

「じゃあ、引き続き歌おうか」

 

「次はまだ一度も歌ってない優也君が良いと思いまーす!」

 

 と、白波さんが言ってきた。

 

「ちょ!それは」

 

 と、焦り出す悠真

 

「うん!私も優也が良いと思う!」

 

 と、結羽まで

 

「考え直せ!皆!」

 

 そう言われてイラっとした。

 

「やってやるよ。歌ってやるよ」

 

「はぁ…」

 

 と、耳を塞ぐ悠真

 

 スゥーッ

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 歌いきった。

 

 そして周りを見てみると苦笑いしている皆が

 

 なんだその笑顔は

 

「ま、まぁ、誰にだって得意不得意があるわよね」

 

「う、うん」

 

「そ、そうね」

 

「は、はは」

 

 上から白波さん、結羽、星野さん、冬馬。

 

「良い歌声だったじゃん!」

 

『えぇっ!』

 

 と、神野さんが言ったことによって驚く皆

 

「私、絆成君の歌声好きだな~」

 

「ま、まぁ、人それぞれ感性が違うからな」

 

 と、頷く悠真

 

 おい、それはどう言うことだ。

 

「じゃあ、気を取り直して歌おうぜ」

 

 前も悠真とカラオケ来たときにこう言う反応されたな。

 

 そんな感じでカラオケを時間一杯満喫してレストランに向かった。

 

 レストランは事前に俺がリサーチ済みだ。

 

 ん?ツンデレ?誰がですかねぇ?俺はただ仕事(しごと)をしたまでですよ?

 

「改めまして、卒業おめでとうございます」

 

 と、結羽。

 

「結局最後の最後まで私は会長に振り回されてたんですけどね」

 

 と、ストローでジュースをチビチビ飲みながら言う神乃さん

 

 よく見たら普段から苦労してるもんね。この人も

 

「仕事はほっぽり出すし、絆成君には迷惑をかけるし」

 

 でもと続ける。

 

「私は会長に感謝してるんですよ。すぐに仕事をほっぽり出すけどなんだかんだ言って期日までに終わらせますし、司会の事も人一倍頑張ってくれてるのが伝わりますし、何より会長が居ると場が盛り上がるんです」

 

 と、途中から照れくさそうにしながら言う神乃さん

 

「みんな会長。いえ、白波さんの事が大好きなんですよ!じゃないとこの場に居ません。勿論私も。会長が居なくなって寂しくなりますね」

 

 静かにはなるだろうn

 

 いっ!

 

 と、俺は声にならない悲鳴をあげる。

 

 隣に座っている結羽が足を踏みつけてきた。

 

 雰囲気を壊すようなことは考えないでとでも言いたげだ。

 

「夕香!」

 

 そう言って白波さんは神乃さんを抱きしめる。

 

「ありがとう。私もみんなのこと大好きだよ。みんなに祝ってもらえて私は幸せ者だなぁ」

 

 じゃあ、と言って悠真は立ち上がる。

 

「もう一度、白波さんの卒業を祝って」

 

『カンパーイ!』

 

 ちなみにレストランなので声は小さめです。

 

 そして俺達の一年は終了した。




 はい!第44話終了

 ついに一年生編終了しましたね。

 次回から二年生編が始まります。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第45話 お見舞い

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 前回、次回から二年生編と言ったんですが、正格にはこの次の話からです。



 それでは前回のあらすじ

 ついに卒業式を終えた優也等

 真依の卒業祝にカラオケに行ったりレストランに行ったりした。

 歌が苦手と言う優也の新しい一面も。



 それではどうぞ!


side優也

 

 春休み。

 

 長期休暇の中で一番短い休みだ。

 

 つい先日、終業式も終わり、俺達も春休みになった。

 

 春休みだからと言ってやることがある訳じゃない。

 

 勉強することしか出来ない。

 

 二年生ではクラス替えがあるから何組になるんだろうか。

 

 二年生と言えば最初に学力テストがあるから、その勉強をしておかないとな。

 

 そして春休みもバイトがある。

 

 そして今日もバイトである。

 

 ちなみに今日は北村さんと二人でレジをやっている。

 

「ありがしたー」

 

「ちょっと(たる)んできてるんじゃないかしら?」

 

 適当に挨拶する俺とそんな俺をジト眼で見てくる北村さん

 

 休みの日にバイトするのはめんどくさいよね~

 

 その上如月は「友達とショッピング行ってくる~」って言ってたから羨ましいぜこん畜生!

 

 まぁ、こんなこと言ってても仕方ないか。

 

「なぁ、北村さんが感じた如月の第一印象ってどんなでしたか?」

 

「適当。だけど物事はきちっとやりこなす子だと思ったわ。根は真面目なのかもしれないわね。どうしてあんなお茶袈てるのかは分からないけど」

 

「そうだったんですか。俺はうざいと思いましたよ」

 

 そう言うと北村さんは笑いながら「それもあるわね」と言った。

 

「それにしても根は真面目か…」

 

 思い返してみればそうだ。

 

 いつも態度は気だるげでやる気のなさをアピールしてくるが仕事は丁寧だ。

 

 そこのギャップが凄い。

 

 やる気になったら如月は多分すごい優秀なんだろう。

 

「そう言えばさっき休憩室で読んでた本はなんですか?」

 

「例の先生の最新作よ」

 

「あー!俺もそれ読みました!今回も面白かったですね。ついつい読み込んでしまいました」

 

 そう言うと同調してくれる北村さん。

 

 北村さんと俺は本の趣味が合うからその話題で盛り上がることもある。

 

 俺と北村さんの好きな作家がおなじなので同じ本を持っていたり、たまたま持ってなかったら貸し借りすることもある。

 

 一番馬が合うのは北村さんかもしれない。

 

 まぁ、先輩だし学校も違うけどな。

 

「そう言えば絆成さんって春休みどこかに行くの?」

 

「いんや。ほとんどバイトだ」

 

「悲しいわね」

 

 んなこといわれたって…

 

「そうだな。最近は行けてなかったし七海の見舞いでも行くか。遠い病院だからそうそう行けないけど」

 

 近くにも病院はあるが、長期に渡る延命設備が整ってるのがそこしか無かったってだけだ。

 

 一回見舞いに行くだけでも途中で一泊することになる距離だ。

 

「絆成さんって妹が居たんですか」

 

「ああ、今は遠い病院に入院している」

 

「そうなんですか」

 

「ああ」

 

 そうして今日のバイトは終わった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 久しぶりだな…

 

 俺は今、親父の車に乗っている。

 

 車に揺られながら七海を思い出す。

 

 もうかれこれ約一年は来てなかったな。

 

「しかし驚いたな。優也から行きたいと言い出すなんて」

 

「別に良いだろそんなの」

 

 今までは親父が言い出して着いていくって感じだったんだが、今回は俺から言い出した。

 

 今回も当然泊まりで来ている。

 

 そしてだんだんと七海が入院している病院が見えてきた。

 

「久しぶりだなここも」

 

 病院に着いたら俺達は七海の病室へ向かう。

 

 そして病室に着いたらノックしてから入る。

 

 今もなお安らかな顔で眠っている。

 

 そして俺は持ってきた花を花瓶に飾る。

 

翡翠蘭(ヒスイラン)だ。好きだったよなお前、」

 

─※─※─※─回想─※─※─※─

 

「あ!お兄ちゃん。見てみて」

 

「ん?なんだ?」

 

 そして俺は七海が指を指している方を見る。

 

 そこには翡翠蘭があった。

 

 そうか。ここは花屋の前だったのか。

 

「ねーねー。ヒスイランの花言葉って知ってる?」

 

「んー。なんだ?」

 

「『上品な美しさ』と『華やかな恋』、『個人的』ってのがあるんだって~」

 

「ふーん。華やかな恋か…そう言うのに興味あるのか?」

 

「へ!?あ、いや違うのお兄ちゃん!無いと言えば嘘になるけど…」

 

 と、語尾が弱くなっていく。

 

「上品な美しさとか良いよね。後、個人的って個性を大事にって意味だと思うんだよね。個性は大事だからね。私はヒスイランが花の中では一番好き」

 

─※─※─※─回想 終─※─※─※─

 

「そう言えば俺は良い仲間に出会ったんだ。結羽、童明寺、白井さん、星野さん」

 

「目が覚めたら紹介するよ」

 

 俺は静寂のなか一人話続ける。

 

 親父はホテルのチェックインに向かった。

 

「七海。死なないでくれ」

 

 そう言うと七海の目から涙が出てきた気がした。

 

「優也そろそろ面会時間終了だ」

 

 そして俺達は病院を後にした。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「さぁ、後もう少しで二年生が始まるからいっぱい食って力つけろよー」

 

「余計なお世話だ」

 

 と、俺は冷静に突っ込む。

 

 今は夕飯を食べている。

 

 先ほど風呂には入ってきた。

 

 後は飯を食って寝るだけだ。

 

「美味いな」

 

「ああ」

 

 俺は物綺羅棒に返す。

 

 明日また同じ道を通って帰ることとなる。

 

 そして飯を食べてから眠りについた。

 

 二年生か…

 

 二年生には先生もクラスも変わる。

 

 先生は誰になるんだろう。

 

 春海先生は一年生担当の先生だから絶対に担任になることはない。

 

 クラスメイトはどうなるか…だな。

 

 そして俺は深い眠りについた。

 

 次の日、俺達は朝イチで帰った。




 はい!第45話終了

 次回から二年生編スタートです。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二年生編 一学期
第46話 新たなクラス


 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 春休みも同様、バイトがある優也

 突如として志穂と話しているときに七海のお見舞いに行くことを決意する優也。

 そして泊まりで見舞いにいく。

 過去の事を胸に今、二年生になる。



 それではどうぞ!


 俺の名前は絆成 優也。年は16。居間舞高校の新二年生だ。

 

 昨年は色々あった。

 

 新しい出会いに特殊な友達。時には友の陰謀にはめられた時もあったが幸せと言う言葉が一番似合う年になったんじゃないかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side優也

 

 まずっ!遅れる。

 

 新学期そうそう遅刻なんて嫌だぞ。

 

 と、走る。

 

 デジャブである。

 

 そして交差点を突き抜ける。俺は、そう!風だ。

 

「優也。おは…って!無視しないで~!」

 

 と、文句を垂れながら結羽が着いてくる。

 

 ってかいつも思ってたんだが、なんで俺がここに来ると必ず結羽に遭遇すんだ?待ち伏せされてね?

 

 そして駆け抜けていく。

 

 結果から言うとだいぶ急いだだけあって、だいぶ時間が余るくらいには着いた。

 

 クラスは…またAか。

 

 メンバーは…ん?

 

 あれれ?童明寺…白井…柴野…。げっ本田も居る。

 

 坂戸と星野は無いな。

 

 担任の名前は…今倉 信壱?

 

 ああ、俺達が来る前から居た先生だな。

 

「やったー!優也と同じクラス」

 

「ああ、そうだな」

 

 波乱が待っていそうだな。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 教室に来ると既に何人か居た。

 

 その中には童明寺と白井さんも

 

「うーっす」

 

 と、入ってきた男。

 

 やる気無さそうなトーンの声だ。

 

 すると席の人数揃った。

 

 ガラララ

 

 と、もう一回扉が開いた。

 

 そっちを見るとそこには先生と思わしき人物が居た。

 

「おーい。お前ら席に出席番号貼ってあるから座れ~!」

 

 そう言われて俺達は席に座る。

 

「今日は始業式終わった後、自己紹介と係決めするぞ」

 

 そして先生に促されて廊下に出席番号順に並ぶ。

 

 これから始業式だ。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「何で初日から注意しなくちゃならない」

 

 なんと童明寺が堂々と寝ていたのだ。

 

 これには他の先生方もあきれていた。

 

「じゃあ早速自己紹介をするぞ。僕は今倉(いまくら) 真壱(しんいち)です。よろしくお願いします」

 

 と、礼儀正しく挨拶する今倉先生。

 

「次は出席番号順に自己紹介だ。まず藍馬から」

 

藍馬(あいま) 勇人(ゆうと)です。よろしくお願いします」

 

 そんな感じで自己紹介が始まった。

 

「絆成 優也です。よろしくお願いします」

 

 取り合えず礼儀正しく言う。

 

 第一印象が大切だ。

 

胡桃沢(くるみざわ) 玲香(れいか)。よろしく」

 

 と、突き放すような口調で言った。

 

 俺の後ろの子だ。

 

 そして何人か進んで

 

「柴野 結羽です。よろしくお願いします」

 

 まぁ、後で知ることになるしあまり聞いてなくても良いか。

 

「し、白井 ちゅみきです。よろしくお願いします」

 

 あ、噛んだ。

 

「童明寺 あつしだ」

 

 相変わらず突き放すような口調だな。

 

「本田 龍輝です。よろしくお願いします!」

 

 そんな感じで最後まで自己紹介が終わった。

 

 何で知り合い四人も居るんだよ。

 

「やったね優也。隣!」

 

 結羽と隣になりました。

 

 どんな偶然?

 

「じゃあ次は係決めだ」

 

 係は適当なので良い。

 

 出来ることなら簡単な担当。

 

 教科連絡が良い。だが、HR委員長はダメだ。面倒だし

 

 なので俺は数学の教科連絡に立候補した。

 

 他には結羽と龍輝か…

 

 これは満二人

 

 誰かが負けなければならない。

 

「じゃあその三人、前に出てきてじゃんけん」

 

 と先生は言った。

 

 ちょっと、これは…

 

 俺の負けが確定したところでじゃんけんが始まる。

 

「残念だったなこの係は俺と結羽ちゃんで満喫させてもらうぜ」

 

 何か悔しい。

 

 こいつ、何かの手違いで負けねぇかな?

 

『最初はグーじゃんけん』

 

 ポンの合図と共に俺達は手を出す。

 

俺→グー

結羽→パー

龍輝→グー

 

 うぉっ!

 

 龍輝負けた!

 

 そして龍輝を見ると苦虫を噛み潰したような表情になってた。

 

 結羽は喜んで席に戻っていった。

 

 さぁ、第2回戦だ。

 

 どうせ負けるだろう。

 

 そして結羽を見てみる。

 

 ああ、結羽からの威圧感がすごい。俺が運ゲー苦手だっての分かってるだろうに…

 

 だけどな…あんな顔で見られたら俺が負けるとちょっと可哀想な気がするな。

 

 んじゃ、なれないことだけどやってみっか。

 

「龍輝。俺はグーを出す」

 

 そう、俺が運で勝てないなら心理戦をすれば良いのだ。

 

─※─※─※─龍輝の思考─※─※─※─

 

 な、なんだって~っ!

 

 どういうつもりだ優也。宣言だなんて…

 

 まさか!罠か!ふふ。お前の考えはまるわかりだぜぇっ!

 

 恐らくグーを宣言したことにより俺が信じ込んでパーを出したところをチョキで潰す気だったんだろうがそうはいかねぇぜ。

 

 相手がチョキを出してくるならグーで対抗すれば

 

─※─※─※─龍輝の思考 終─※─※─※─

 

「じゃーいくぞー」

 

 と、俺はぶっきらぼうにそう言った。

 

『じゃんけん』

 

 ポンの合図と共に俺と龍輝はグーチョキパーのどれかの形で手を出す。

 

俺→グー

龍輝→グー

 

 やっぱりな思った通りだ。

 

「なぁ、お前。俺今グー出すって言ったよな?」

 

 まぁ、仕向けたのは俺だがわざとらしく煽ってみる。

 

 すると、「おおーっ」と歓声が上がった。

 

 そんなに俺が負けないのが珍しいか?

 

 その通りです。

 

「ぐ、ぐぬぬ」

 

「次こそは生かせよ。次もグーだしてやっから」

 

─※─※─※─龍輝の思考─※─※─※─

 

 え?まじで

 

 優也のやつ。俺をはめやがったな。

 

 だが、甘いなこの俺にもう一度チャンスを与えてしまったのは大きなミスだぜ。

 

 こうなったらばか正直なお前に免じてこの俺の神の手。パーでお前を負かしてやろう。

 

 さぁ、今こそお前に引導を渡してやる。

 

─※─※─※─龍輝の思考 終─※─※─※─

 

「じゃー」

 

『あいこでしょ』

 

 の合図と共に俺と龍輝はグーチョキパーのどれかの形で手を出す。

 

俺→チョキ

龍輝→パー

 

「うぉぉぉ~っ!」

 

 とまた歓声が上がる。

 

 何とか勝てたな。よし、これで結羽に怒られずに済む。

 

「だ、騙したな!」

 

 と、俺に声をかけてくる。

 

 そして俺は大きく息を吐いてからこう言う。

 

「あのなぁ、俺が二度もばか正直にグーを出すと思ったか?騙される方が悪いんだよバ~カ」

 

 そう言って俺は自分の席に戻った。

 

 初めてやってみたが意外とうまく行ったな。

 

「じゃあ数学の教科連絡は柴野と絆成だな」

 

 龍輝。可哀想だが、お前は俺の犠牲になったのだ。

 

 そんな感じで俺達の新たな一年が始まった。




 はい!第46話終了

 遂に二年生始まりました!

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第47話 変人の巣窟

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 遂に始まった二年生

 優也は結羽、あつし、つみき、龍輝と同じクラスになった。

 そして心理戦で龍輝をじゃんけんで負かすことに成功。

 果たしてこれからどうなるのだろうか?



 それではどうぞ!


side優也

 

 昼休み。

 

 なんで始業式だと言うのにフルで授業があるんだよ。

 

 と、心の中で文句を言いながら購買に向かっていた。

 

 その時

 

 きゃぁぁっ!

 

 と、数人の女子の声が聞こえてきた。

 

 悲鳴?いや、これはちょっと違うような気がする。

 

 そして俺は気になって声の聞こえた方に向かった。

 

 そこに居たのは数人の女子に囲まれているただのイケメンだった。

 

 なんだ…ただのイケメンか。

 

 そして素通りをして行こうとする。

 

「あ、優也!」

 

 また厄介なのに捕まったな。

 

「なんだ結羽。お前も俺なんかよりあのイケメンの輪に混ざってきたらどうだ?」

 

「ううん…私は良いの。それに…」

 

「それに?」

 

「~~っ!なんでもない」

 

 そして顔を赤くしてどこかに行ってしまった。

 

 不思議なやつだな。

 

 すると後ろから視線を感じた。

 

 後ろを見てみるとイケメンがこっちを睨んできていた。

 

「僕よりも平凡な人を選ぶと言うのか」

 

 なんかやばくね?

 

 するとイケメンは近寄ってきた。

 

「僕の名前は新藤(しんどう) 京哉(きょうや)。今日転校してきたんだ。君は?」

 

 と、突然聞いてもいないのに自己紹介を始め、俺に自己紹介を求めてきた。

 

「絆成 優也」

 

「優也か。我がライバルとしてその名を胸に刻んでおこう」

 

 いや、勝手にライバル認定しないで欲しいのですが

 

 何故か俺の周りがどんどん変人の巣窟になっていく。

 

 そしてビシッと俺を指さす。

 

 新藤…中身が残念だ。

 

 クリスマスプレゼントにゲームだと思ってプレゼントの包装を開けたらお菓子だった時のようなガッカリ具合だ。

 

 見た目(包装)が良くても中身が残念(お菓子)だと台無しだよな。

 

「刻まなくて良いので関わらないで下さい」

 

 すると遠くの方に道明寺の姿が見えた。

 

 そしていい案を思いついた。

 

「あっちに俺よりあんたのライバルに似合う奴が居ますよ~」

 

 と、指さす。

 

 童明寺に擦り付ける。

 

「そうか。じゃあ行ってくる」

 

 と、新藤とか言うイケメンは童明寺の方に向かった。

 

 ふぅ、一難去ったな…

 

 遠くで困った様子の童明寺がこちらを見て助けを求めている。

 

 助けに行きますか?

 

 

はい

 

いいえ ←

 

 

 即答だった。

 

 この間、僅か0,1秒

 

 そして気が付かなかったフリをしてその場を後にする。

 

 少し歩くと購買に着いた。

 

 そこで俺はいつものサンドイッチを買って適当に食べる場所を探す。

 

 すると白井さんが見えた。

 

「あ!絆成君!」

 

 と、声を掛けてくる。

 

「童明寺君が何処に居るか知りませんか?」

 

「ああ、あいつなら今頃幸せの国へ旅立ってると思うぜ」

 

 そして俺は童明寺が花畑でどじょうすくいしながら腹踊りしている姿を想像しながら合掌した。

 

 そして吹き出しそうになる。

 

「ふえぇ~。た、旅立つって私達を置いてですかぁっ!?」

 

 と、目をうるうるさせる白井さん。

 

「という訳で楽しんでるんだから邪魔しないでやれ」

 

 と、肩をとんと叩く。

 

「じゃあ、絆成君でいいです。私とお昼どうですか?」

 

 そう来たか…

 

 でも悠真と昼飯の約束をしてしまってるんだよな…どうしようか?

 

 

悠真との約束は大事だ

 

白井さんの約束に乗ろう ←

 

 

 またしても即決だった。

 

 この間、僅か0,01秒

 

「んじゃ白井さんが迷惑じゃ無ければご一緒しようかな?」

 

「うん!じゃあ行こう」

 

 と、俺の手を引く白井さん。

 

 偶に童明寺と白井さんと飯を食べたりしてるが、白井さんと2人ってのは初めてだ。

 

 そして屋上に向かう。

 

 二人と食べる時は屋上で食べている。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「ここら辺で食べましょうか」

 

 そして白井さんはブルーシートを広げる。

 

 昼飯時になったらいつも持っているバッグの中にブルーシートが入っている。

 

 その上に座る。

 

 そして俺はサンドイッチを取り出し、白井さんは弁当を取り出した。

 

「おー。今日も美味そうだな」

 

 と、感嘆(かんたん)の声をあげる。

 

 白井さんの弁当は全て白井さんの手作りだ。

 

「絆成君はちゃんとしたご飯を食べないと偏りますよ?」

 

 と、皿を取り出して何個か取り分けてくれる白井さん

 

「これあげます」

 

「白井さんって面倒見が良いよな」

 

「そうですか?」

 

 と、首を傾げる白井さん

 

「これなら童明寺もイチコロだな」

 

 と、親指を立てると顔を一気に真っ赤にした。

 

 そして白井さんの取り分けてくれたおかずを白井さんに貰った箸で食べる。

 

 美味い。

 

 白井さんと食べる時はいつもくれる。

 

 ちなみに童明寺も弁当だが、その弁当は白井さんが作ってるらしい。もうお前ら付き合っちまえよ。

 

 そしてサンドイッチも食べる。

 

 道明寺の事を少し考えてみる。

 

 あいつはモテるのにそれを嫌い、みんなを突き放し、告白されたら必ず断る。

 

 断ったら必ず悲しい顔になる。

 

 最近なんかは俺と良くつるんでるせいで俺の事が好きなんじゃないかと言う噂まで立ってきてる始末。迷惑な。

 

 悲しい顔をするくらいなら断らなければ良いのに

 

 昔に何があったかは俺は知らない。

 

 だが、このままズルズルと行くのも良くない気がする。

 

 その時

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 チャイムが鳴った。

 

 やべっ!急いで食わないと

 

「絆成君は童明寺君と真逆ですよね」

 

「え?」

 

「だって私を突き放そうとしないから」

 

 そして白井さんは立ち上がってブルーシートを片付ける。

 

「また一緒に食べましょう」

 

 そう言って屋上を後にする白井さん。

 

 そして俺は時計を見る。

 

「急ぐか」




 はい!第47話終了

 次回も1日目です。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第48話 昔を思う

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 優也の周りに新たな変人、新藤 京哉が現れる。

 イケメンをライバル扱いする変人だ。

 


side優也

 

「終わり!」

 やっと数学のテストが終わった。

 

 この点数でクラス分けをするらしい。

 

 そしてその点数は次の数学で発表される。

 

 平均点の上か下かだ。

 

 そしてテストが回収されたあと結羽の方を見てみるとダラーンと机に倒れ込んでいる。

 

 可哀想になってくるな。

 

 ちなみに道明寺もそこそこ点数は取れる。真ん中くらいだ。白井さんが教えてるからだ。

 

「それじゃHR始めるぞー」

 

 うちの担任、今倉先生は数学の担任だ。

 

 その為、今の時間は数学だったからそのままHRに移れる。

 

 そしてHRが終わる。

 

 そして教室を出ようとすると結羽に声をかけられた。

「優也。一緒に帰ろう?」

 

「ああ、分かった」

 

 そして一緒に廊下を歩いて校門を出る。

 

 校門の前には以前見たことがあるような気がする女の子が居た。

 

 誰だっけ?

 

 と、考える。

 

「でね。…って聞いてる?優也」

 

「ああ、聞いてる聞いてる。確か、お前の父ちゃんは超能力者として各国を渡り歩いているって言う話だったよな?」

 

「どういう世界観!?なんでそうなったの!?やっぱり聞いてなかったんじゃん…」

 

 確かに結羽の言う通りだ。

 

 俺はぼんやりして聞いていなかった。だからちょっとしたボケをしたんだが、なんともまぁ適切なツッコミをありがとう。

 

「で、どんな話だったっけ?」

 

「もう!今週末、何か予定ある?」

 

「ああ、忙しいね。勉強しなきゃいけないんだからな」

 

「じゃあ暇なんだね。買い物に付き合って欲しいけど良い?」

 

 こちとら忙しいって言ってるのに…勝手に決めつけやがって

 

「良いも何も忙しいって」

 

「じゃあ今週末の土曜日に公園前集合ね」

 

 勝手に物事が進んでいってるような気がするよ?俺はいいとも何も言ってないぞ?

 

 まぁ、別に断る理由も無いんだけどな。バイトも無いし

 

 最近は如月の奴とシフトが上手く合わさらないから北村さんに如月が寂しがってるとか言われたな。関係ないけどな。

 

 さーって。今日は始業式だったんだが、キリ悪く金曜日なのだ。だから明日が土曜日。

 

 なんでこんな回りくどい言い回しをするのだろうか?普通に明日って言えば良いのに

 

 しかし、主張を全無視されるのも辛い所があるな。

 

 まぁ、久しぶりに付き合ってやるか…

 

「分かった」

 そう言って一緒に帰った。

 

 どうしても俺の通学路上にあるT字路で分かれることになるんだけどな。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

次の日

 

 今日はいつもより早く目が覚めてしまって暇だったからまだ時間には早いけど来てしまった。

 

 今日は何を買いに行くのかはまだ聞かされていない。

 

 俺達は良くこの公演を待ち合わせ場所にしている。理由は単純明快。みんなこの公園が好きだからだ。

 

 そして暇なのでスマホで調べ物をしていた。

 

 検索スペースにはこう書かれている。

 

『出かけるのに最適な場所』

「って何調べてんだか…」

 

 一人では出かけることも無いくせに…

 

 "バカバカしい"そう思って電源ボタンを押そうとすると

「なーに見てるの?」

 と、真横から声がした。

 

「うわぁぁっ!!」

 

 驚いて転びそうになりながらも直ぐに電源を切ってポケットに入れる。

 

「な、なんだ…結羽か…」

 

「なんだじゃないよ!何回呼んでも返事が無いんだもん!」

 大層お怒りのご様子である。

 

「凄い熱中してスマホを見ていたよね?何見てたの?」

 

「えーっとそれは…」

 

 言えない…完全に今調べていたことは俺の柄にも合わないことだ。言ったら笑われるのは確実

 

 そして俺が口ごもっていると結羽がまた口を開いた。

 

「何か面白いゲームを見つけたの?」

 

 それこそ俺の柄に合わない。俺以外の人なら有り得るかもしれないが

 

「それとも…彼女とのLINE?」

 何言ってるんだこいつ?

 

「ないない。俺に彼女なんて居ると思うか?そもそもとして俺を好きになる物好きなんか居ねーよ」

 

ここに居るんだけどな…

 

「ん?何か言ったか?」

 

「ううん。なんでもない」

 たまに結羽の声は小さくて聞こえないことがある。

 

「それより良かったー」

 

「良かったとは?」

 

「もし優也に彼女が居たら…」

 

「居たら?」

 

 その瞬間表情が暗くなった。

 

 正直その先を聞くのは怖い。だが人間の心は不思議なもので心霊番組も怖くて見たくないのに何故か見てしまう。それと同じで俺はいつの間にか聞いていた。

 

「………………なんでも…ないよ!」

 凄いその先が気になるんだけど!?

 

 だけどホッとしている自分が居る。やっぱり怖いことは聞くもんじゃないね。

 

「それより行こう!」

 そう言って俺の手首を掴んで走っていく結羽

 そしてそれについて行くように走る。

 

 少し走るとスーパーに着いた。

 

「そう言えば何を買いに来たんだ?」

 そう聞くと結羽の足がピタッと止まった。

 

(優也と出かけたかったから買い物って言っちゃったけど何も考えてなかった…どうしよう…そ、そうだ!あれがあった)

 

「ん?どうした?」

 

「ううん。なんでもない。今日はCDを買いに来たの」

 

 そう言えば結羽の部屋には小さいCDレコーダーがあったな。よく音楽を聞くのかな?

 

「へぇー。どんな曲だ?」

 

「LIFEって言う高校生バンドの曲」

 

「ライフ…ねぇ…」

 

「ん?どうしたの?」

 

「いや、なんでもない」

 

 気のせい…だよな?

 

「どんなバンドなんだ?」

 

「四人組なんだけど四つの楽器だけで出してるとは思えないほどの色んな音を奏でるロックバンドなんだ」

 

 偶然…だよな?

 

 俺が立ちつくしていると不思議そうな眼差しを向けられる。

 

 それによって我に帰った俺は結羽について行った。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 CDショップなんて久々に来たな。

 

 CDショップに着くやいなや奥の方に走って言ってしまった。

 

 そして結羽を追って俺も奥の方に行くと試聴をしている結羽が居た。

 

「ん?あ、優也。優也も聞いてみる?」

 と、付けていたヘッドホンを外して差し出してくる。

 

 それを受け取って俺も付けてみた。

 

 その瞬間、衝撃が走った。

 

 入ってる曲は恐らくLIFEの物だろう。

 

 確かに結羽の言う通り色々な音が聞こえる。

 

 でも邪魔をしていない。いい曲だ。

 

 これだけで四人の仲の良さが伝わってくる。

 

 そしてヘッドホンを外した。

「いい曲だな」

 

「でしょ?このバンド好きなんだよね」

 

 だけどこれで確信を持った。

 

『バンド組もうぜ!』

『良いなそれ!』

『俺もやりたい!』

『悪いが俺はパスだ』

『右に同じくだ』

『えー良いじゃんかよ。なぁ~』

『やりたいなら"四人で"やれば良いじゃねーかよ!』

 

 元気にしてるかな?太陽、神大、優来、凌太

 

 俺はある四人の友達の事を思い出していた。

 

「ん?優也。どうしたの」

 

「いや、なんでもない」

 

「じゃあこれ買ってくる」

 そう言って走ってレジに向かっていく。

 

 さて、明後日入学式だな。どんな奴が入ってくるのだろうか?

 

 常識人ならお近づきになりたい。

 

「まぁ、まずは明後日になってからだな」

 そして結羽が戻ってきて一緒に帰った。




 はい!第48話終了

 今回は主にネタ回でした。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第49話 新入生

 はい!第49話終了



 それでは前回のあらすじ

 数学のテストも終わった優也は次の日に結羽とCDショップに行った。

 そこで優也は昔を思う。ある四人の存在を

 そして優也は普通の人が入学してくるのを願うのだった。



 それではどうぞ!


side優也

 

月曜日

 

 今日は入学式。

 

 そんな日でも俺らにとっちゃ普通の日だ。

 

 入学式には在校生は参加しない。そして通常授業だ。

 

 なんてめんどくさい。どうせなら在校生も入学式に出席して2時間位潰れてくれれば良いのに

 

 まぁ、そんなことを言っていても仕方が無い。

 

 とりあえず普通の人だ。普通の人が欲しい。

 

 俺の周りはバカ(悠真)バカ(白波さん)と気難しい女の子二人に、傍から見ればカップルの幼馴染に、掴みどころのない奴。そして普通の人がオンリーワン。あれ?普通の人は俺の周りには少なすぎね?

 

 そして昼休みになったんだが、入学生は校内を見て廻っていい事になっている。そのため何人かは先程から見かけている。

 だが、こんな偶然あっていいものなのだろうか?

 

「やぁやぁ。我がライバル絆成 優也君」

 京哉だった。

 

「あ、フルで覚えてくれてどうも」

「ここで君と出会えて嬉しいよ。やはり僕と君はライバルとして互いに」

 以下略だ。3分もよく噛まずにペラペラと喋り続けられるもんだな。と感心してしまうほどだったため略した。

 

「あ、そうですか。それではこれで」

 と適当に流して去ろうとすると後ろから掴まれた。

 

「どうせなんだ。これから人気者同士語り合おうじゃないか」

 まだなんかあるのかこいつは…

 

 と言うか人気者は自分のことを人気者って言うか?

 

 とりあえず俺にとっちゃ面倒くさいことこの上ないのでどうにかして切り抜けたい。

 

 そして少し考えると脳裏にある一つの作戦が浮かんだ。

 

「あっちにお前のことが好きすぎてお前と今すぐにでも話さないと死んでしまいそうだと言っている女の子が居たぞ?俺を見て嫉妬で変なオーラが出てしまっている。俺の為にも話してやってくれ。でないと俺はあの女の子に殺されてしまうかもしれない」

 

「それは大変だ!自分が殺されてしまうかもしれない時に他人の心配をするなんて!それでこそ我がライバル絆成 優也君!」

「興奮しなくていいんでさっさと行ってくれないですかね?」

「感動した!我がライバルに不足なし!」

 話聞いてくれない…

「待っててくれ。子猫ちゃん!今、あなたの王子、新藤 京哉が今行くぞ!」

 と言ってものすごいスピードで走って行ってしまった。

 だがこれらは全て嘘八百。全て俺が作った話だ。

 

 あっちには女の子なんて居ないし、そもそも話さなかったら死ぬなんて無いしそのため嫉妬に狂った女の子に俺が殺される心配もない。

 

 計画通り。

 

 恐らく今の俺の顔は非常にゲス顔になっているだろう。だがそんなのはどうでもいい。今のうちにここから離れよう。

 

 そしてイケてる面をしているだけの性格が残念な男。略してイケメンが帰ってくる前に急ぎ足でその場を去った。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 そして飯を買おうと購買に向かっているとふらふらと挙動不審気味に歩いている女の子が居た。

 おどおどしていて気が弱そうだ。

 

 そして他の人にぶつかるとおやまり倒してぶつかられた人も困ってしまっている。

 

 やがてついに俺の近くまでやってきた。

 

 すると彼女の顔がはっきり見えて驚いた。

 

 あの子は…神乃さんの妹

 

「き、君!」

 と、思わず声を掛けてしまった。

 

 するとビクゥっ!と肩を震わせて固まってしまった。

 

 そして俺の事を見るやいなや自分の肩を抱いて俺から離れていく。

 

「わ、私の事を食べても美味しくないですよ」

 は?何言ってるんだ?こいつ

 

「わ、私はまだ小さいですし幼いですし」

 

「ちょっと待て!なんで俺が君を食べるんだよ!」

 

「う、うぅ…もうちょっと清い体で居たかったです。あの…もうちょっとしたら多分もっと美味しくなると思うので待ってくれませんか?」

 

「話聞いてくれ」

 と言うか今サラッと凄いこと言わなかったか?

 

「とりあえずなんで俺が君を食べると思ってるんだよ」

 

「だ、だって…男の人はみんなケダモノだってお姉ちゃんのお友達が」

 凄い偏見だな。

 

「とりあえず俺は見境なくそういうことはしねーから」

 

「本当に?本当ですか?」

 何度も尋ねてきた。

 

「ああ、本当だ」

 

 そんな話をしていると遠くからおーい!と言う声が聞こえてきた。

 

「良かった。ここに居た…ん?あ!絆成君」

 

 すると向こうが俺に気がついて声を掛けてきた。

 

「そういうあなたは神乃さんじゃ無いですか!」

 

 神乃さんだった。

 

「ありがとう。この子を捕まえててくれて。この子危なっかしいから…」

 そう言って妹さんの頭を撫でる神乃さん。

 

 微笑ましい姉妹だな。

 

「ん。お姉ちゃん…私はもう子どもじゃないんだからぁ」

 そう言いながらも嬉しそうな妹さん

 

「でもよく逃げなかったね。この子は人見知りだからすぐ逃げるのに」

 

「その代わり凄い勘違いをされそうになったけどな」

 そう言うと神乃さんは頭にハテナを浮かべた。

 

「それより」

 俺が何勘違いされそうになったのかは気にならないのか。

 

「一緒にご飯食べない?」

 それよりの内容はご飯のお誘いだった。

 

「「なんでですか?」」

 ハモった。

 

 それを見て神乃さんはくすりと笑いながらこう言った。

「だってついこないだ会った時はあんなにおびえてたのに今は隠れもしないじゃない」

 そう言われて二人で顔を見合わせる。

 

「「あ、」」

 そうハモった後、すぐさま妹さんは神乃さんの後ろに隠れた。

 

「怖いです」

 

「…なぁ、なんか嫌われるようなことしましたかねぇ?」

 

「強〇される!」

 そう妹さんが言うと神乃さんはジト目で見ながら妹さんの事を腕の中に隠した。

 

「しねーよ」

 

「じゃあレ〇プされる!」

 

「一緒だよ!」

 

 そう言うと神乃さんは笑った。

 

「ここまで他人と話してる露木ちゃん初めて見たよ」

 そうか。それは良かったですね。俺は賛同出来ないです。

 

「それよりもえーと…神乃さん妹」

 

「露木でいいです」

 

「じゃあ露木ちゃん。さっきの言ってた話は本当か?」

 

「はい。お姉ちゃんのお友達が確かに言ってました」

 

「そうか」

 今度あったら説教だな。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「くしゅん」

 

「ん?どうした?白波くん、風邪か?」

 

「いえ、多分誰かが噂をしたのでしょう。それよりも震えが止まりません」

 

「ほ、本当に大丈夫か?」

 

「はい」

 

「お大事にな」

 

「ありがとうございます」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「それよりもお昼、どうするんですか?」

 

「あ、じゃあそちらがご迷惑じゃないなら」

 

「じゃあ決まりだね!」

 

 そうして俺達は歩き出した。

 

 あれ?何か忘れているような。




 はい!第49話終了

 次回はこの続きからです。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第50話 露木と夕華

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回は初めて自分で書いた絵を乗せてあります。

 下手です。更に走り書きしたので余計に下手になりました。
 ですが少しはそのシーンが分かりやすくなったのではないかと思います。



 それでは前回のあらすじ

 入学式の昼休み、優也はいきなり京哉に絡まれるも上手く回避する。

 そして神乃さんの妹、露木に変態のレッテルを貼られそうになるなど散々なことがあったが、神乃さんに昼食に誘われた優也は一緒に昼食をとる事にした。

 そして一緒に食べるとこを探すのだが…あれ?何か忘れているような。



 それではどうぞ!


side優也

 

 俺は神乃さんに着いて行ってどこで食べるのかを決めていた。

 と言っても俺はついて行ってるだけで特に何もしていない。

 

 変わった事といえば、露木ちゃんの態度が初めてあった時に戻ってしまったということくらいだ。

 どうしたら心を開いてくれるかね。

 

「どこで食べようか?」

 と神乃さんは問いかけてくる。

 

「とりあえず強〇魔を撒きましょう。じゃないと私達の貞操が危ないです」

 

「まだそれ言うか」

 

 露木ちゃん曰く、もう既に男イコール強〇魔として公式が成り立ってしまってるらしい。

 

「絆成くんはいい人だよ。ちょっと女タラシでいつも5、6人位の女の子を連れて歩いてるだけだよ」

「ひっ!?」

 

「神乃さーん。不安を煽るような嘘はやめてください。連れて歩いてるのはいつも1人2人です」

 

 ったく…この人は…白波さんが憑依してきてるんじゃ?

 

 その可能性は充分に考えられる。

 

「あ、いい場所発見」

 

 そこは校庭の裏校舎の近くで、人目には付きにくいものの桜が満開でとてもいい場所だった。

 それにこの季節だ。春の心地よい風が吹いている。

 

「んじゃ、ここで食べましょうか」

 そう言って座ろうとすると俺はある失態に気がついた。

 

 何故なら今の俺は手ぶらなのだ。

 普段なら弁当も持ってきていない俺は購買に行ってサンドイッチでも買っている頃であろう。

 

 だが今日はこの人たちに捕まってしまった為、俺は買う暇もなくこっちに来てしまった。

 

 サーっと顔が青ざめていくのが分かる。

 

 今から買いに行ってここに戻ってくる時間など無い。だがしかし俺の昼飯は無い。

 

 となれば必然的に飯抜きだ。

 

 そんなことを考えていると神乃さんは俺の異変に気がついたのかニヤニヤしながらこんなことを言ってきた。

 

「んー。ん?あれー?絆成くーん。お昼ご飯はどうしたのー?もしかしてー。忘れたのかなー?」

 そんなことを言われて恥ずかしくなり、顔が一気に赤くなるのが分かる。

 

 普段だったら「うざい」で済ますのだが、今の俺にはそんな余裕は無かったため、黙り込んで閉まった。

 

「絆成君。こんな言葉を知っているかい?沈黙は肯定なりってね」

 図星であった為、何も言い返すことも出来なかった。

 

 だが、このままじゃもっと弄られるだけだ。こうなったらいっそ「ああ、そうだよ!俺は昼飯を買い忘れました!」開き直った。

 この方が清々しいだろう。

 

「清々しいまでの開き直りっぷりだね~。私、そういうの嫌いじゃないよー」

 あなたの好き嫌いは聞いてないんですが…

 

「そんな君に免じて私のお弁当を分けてしんぜよう」

 そう言って自分の弁当を開く。

 

 中には白米、卵焼き、ウインナー、唐揚げ、ほうれん草のおひたし等など色々と入っていた。

 そして見たところ冷凍食品はなさそうで、全て手作り感があってどれも美味そうだった。

 

「露木ちゃんの作った料理は美味しいんだからー」

 

 ん?露木ちゃんの作った料理?って事はもしかして

 

「これ全部露木ちゃんが作ったのか?」

 

「そうだよー。凄いでしょ」

 

「ちょ!お姉ちゃん!」

 

 勝手に暴露した姉に向かって抗議する妹。

 

「いいじゃーん。減るもんじゃないし」

 

「で、でもー!」

 

「でもこれだけ作るってスゲーな。朝の少ない時間にここまで色々作るなんて」

 と褒めると露木ちゃんは神乃さんの後ろに隠れて後ろを向いてしまった。

 あれ?もしかして怒ってる?何か怒られるようなことしたかな?

 

「あ!露木ちゃん、照れてる!普段男の人に褒められなれてないもんね」

 そして振り向いて露木ちゃんの頭を撫でる神乃さん。

 

「あー。照れてたんですね。てっきり俺は気分を害してしまったかと」

 

「それは無いよー。ね、露木ちゃん」

 

「さ、最悪ですよ。強〇魔に褒められるなんて一生の不覚です」

 

「と、仰ってますが?」

 そして俺は神乃さんを何事も無かったかのような表情で見る。

 言われすぎて慣れてしまったのである。

 

「んー。露木ちゃんもここまで毛嫌いするってことは無いはずなんだけど…何かした?」

 

「逆に何もしなさすぎるくらいですよ」

 露木ちゃんが勝手にレッテルを貼ってきてるだけだからな。

 

「露木ちゃん。絆成君は悪い人じゃないんだよ?」

 

「それは知ってます。ただたのし…ゴホン、反応が面白かったのでつい」

 

「反応が面白いってなんだよ」

 

「という訳なのでこれからも続けてよろしいですか?」

 

「宜しくないです」

 

 そんな会話をしていると「ふふっ」と聞こえた後に「あははは」と笑う声が聞こえてきた。

 

 俺と露木ちゃんは声の主の方を見ると目尻に涙を浮かべて笑っていた。

 

「ご、ごめんね。露木ちゃん。絆成君。でも他の人とこんなに楽しそうに話している露木ちゃんを見ると嬉しくなってしまって」

 

「楽しそうでは無いです」

 

「楽しそうだよー。だってこんなにも笑顔なんだよ」

 とスマホの写真フォルダを見せてくる神乃さん。

 

 そこにはニコニコと笑いながら俺と言い争っている露木ちゃんの姿が写っていた。

 

「い、いつ撮ったんですかぁっ!消してください!今すぐ消してください。さぁすぐに!」

 

「嫌だよー」

 

 その後、何とか神乃さんのフォルダ"からは"消すことに成功した露木ちゃんは顔を赤く染めながらも近くのベンチに三人で一緒に座って食べた。

 

 取りあえず神乃さんから貰ったあと何故か「えっと、その量じゃ食べ盛りの男子高校生には足りないだろうし…」と、頬を染めながら自信作だというほうれん草のおひたしと卵焼きをくれた。

 なんだかんだ良い奴だ。

 

 その後、午後の授業の合間の休憩時間。俺はスマホを見ていた。

 

 いつの間にか追加されていたLINE、名前は夕。十中八九神乃さんだろう。

 恐らくLINE Name、ホワイトウェーブ。まぁ、白波さんの事だがこの人の仕業だろうと考えている。

 

 まぁ、その夕とのLINEを見ながらこう呟いた。

「はぁ…露木ちゃんも苦労してるんだな…」

 と言いながら送られてきた写真をちゃっかりと保存した。

 

 

【挿絵表示】

 




 はい!第50話終了

 今回は露木ちゃん回でした。

 露木ちゃんが徐々に優也に打ち解けていってますね。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第51話 LIFEpart1

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回も挿絵を描きました。あれ?あれって絵って言わないような…まぁ、本編を読めば分かると思います。



 それでは前回のあらすじ

 神乃姉妹と共に昼食を取る事になった優也

 露木に毛嫌いされているような感じがした優也だったが、なんとか打ち解けることに成功した?

 そして夕華はそれに喜ぶ。

 果たしてこれから先、どうなるやら



 それではどうぞ!


side優也

 

 さて、今日も今日とて学校だ。

 

 そしていつもの様に俺の隣には結羽が居た。

 

 だがいつもと違うのは結羽は片耳にイヤホンを挿して音楽を聞いていることだ。

 

「何聞いてんだ?」

 

「LIFEの『変わらない為に』だよ。この間買った曲なんだ」

 そう言えば何曲か買ってたな。

 

 どんな曲なんだろう。ちょっと気になってきたな。よしっ!

 

「ちょっとこっち借りるぞ」

 

「あ!優也」

 

 そして結羽のイヤホンの片方を耳に付ける。

 

 やはりLIFEの特徴の様々な音を出しつつ、ヴォーカルの声も負けちゃいない。

 よくもここまで激しい声でずっと歌い続けられるものだ。一般人の俺だったらすぐ声潰れるぞ。

 

 そして隣を見てみると顔を耳まで赤くした結羽が居た。

 

「どうした?結羽。熱でもあるんじゃ?」

 

「ない」

 

「いやでも…」

 

「ない!」

 

「わ、分かった」

 

 そして歩いていると

 

「わわわー!寝坊したー!」

 寝坊してこの時間か…すごい人も居るもんだ。

 まだ8時10分だぞ?

 

 すると真横を物凄いスピードで走り去っていく人が

 

「リア充が居る!?」

 と叫びながら。

 

 すると豆くらいに小さくなったところでピタッと止まった。

 果たしてあいつは何がしたいのだろうか?

 

「あああぁぁっ!?」

 今度はなんだよ。

 しかし、少しばかり嫌な予感がするのは気の所為だと願いたい。

 

 すると今度はドダダダとこっちに走ってきた。

 

 そしてそのまま通り過ぎる。

 

 するとその顔を見た結羽はピタッと止まって固まってしまった。

 あれっ?この止まるのって流行ってるのか?

 

 そして俺は結羽の前で手をチラつかせる。だが、反応はない。

 こりゃ完全に思考が停止してますな。

 

「行き過ぎたー!」

 今度はまたこっちに来るようです。

 

 そして今度は俺達の目の前で止まった男。

 

 おい、何故そこで止まる。

 

「久しぶりだな!(ゆう)の字。元気してたか?」

 

 は?こいつ何を言ってるんだ?俺の事を優の字なんて呼ぶのは俺の知り合いに一人しか居ないぞ。

 

「あのー。どちら様で…」

 

「はぁっ!?忘れたのか?俺の事を笹沼(ささぬま) 神大(じんだい)

 

「はぁっ!?お前神大なのか!?」

 

 そんな話をしていると横で結羽が我に帰った。

 

「あ、あのー。お二人はどういう関係で?」

 

「しんゆ「ただの知り合いだ」」

 神大に重ねて言った。

 

「全く~つれないなー」

 

「肩を組むな肩を」

 と抵抗するも神大の馬鹿力によって外れない。

 何だこの力は

 

「えぇっー!」

 急に大声を出す結羽に驚く俺と神大。

 

「し、知り合いだったの?」

 

「ん?なんだ。君、俺の事を知ってるのか?」

 とまだ状況を飲み込めてないようだったので説明をする事にした。

 

「こいつ、お前のバンドのLIFEのファンなんだ」

 

 するとキラキラと目を輝かせる神大。

 

「優の字。それは本当か!?」

 そして神大はギターを持っているかの様なポーズを取ってから名乗り始めた。

 

「俺は男子高校生バンド、LIFEのギター兼ボーカル担当の笹沼 神大。よろしくな」

 

 すると結羽は自分のバッグを漁りだした。

 

 そして一枚の色紙を取り出した。

 なんであるんだよ。

 

「あ、あの。サインください」

 

「ん?ああ、良いぞ」

 と言ってサインをスラスラと書いていく神大。

 

「ほらよ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 これが神大のサインか…

 

 これは筆記体でjindaiと書かれている。

 

「ありがとうございます!」

 と何度も頭を下げる結羽。

 

「いやいや、良いって。それよりも君達、いつまで見せつける気かな?」

 

 ん?見せつける?どういう事だ?

 

 すると結羽から湯気が出始めた。

 

「こここ、これは違うんです!曲を聞いていただけで…。そもそも付き合ってませんし」

 

 結羽がそう言うと神大が耳打ちしてきた。

 

「まだ七海を助けるんだ!って血眼になってるのか?」

 

「いや、今はそれほど執着してねーよ。確かにまだ助けたいという気持ちはあるけど、今はあいつの分まで今を楽しんで土産話しを血眼になって作ってるって感じだな」

 

「相変わらずのシスコンっぷりで結構」

 

「だからシスコンじゃねーっての」

 

 そこまで話すと神大が離れていった。

 

「とまぁ優の字、感動の再会を果たした訳だが、今はあまり時間が無い。放課後どうだ?」

 

「あ、俺勉強をしなくちゃー」

 と通り過ぎようとすると襟をガシッと掴まれて、元の位置に戻される。

 

「どうだ?(威圧)」

 とうとう威圧してきたよこの人怖い。

 

 でもまぁ行ってもいいかな?どうせ用事もないし。

 

「はぁ…分かりましたよ。で、どこに行くんだ?」

 

「そうだな…んじゃ勇名高近くの喫茶店で待ち合わせはどうだ?」

 

「分かった」

 

「それと()の字、(らい)の字、()の字には俺が言っとくから」

 

 あいつらも来るのか。LIFE全員集合だな。

 

「分かった。悠真には俺が…」

 

「え!?(はる)の字の連絡、出来るのか!?」

 

「ああ、まぁな」

 

「よし、じゃあそんなもんで…」

 

 そこまで言ったところで結羽の方を見た。

 

「所で君も来るか?」

 

「え!?良いんですか?」

 

「優の字と仲良さそうだからな」

 

 するとキラキラと目を輝かせる結羽

 

「喜んで行かせていただきます」

 

「分かった。んじゃまた後でな」

 

 そして走っていってしまった。

 

 はぁ…どうしてこうなった。

 

 まぁ面倒臭いけど(にな)った仕事はちゃんとやらないとな。

 

 ちゃんと伝えておくか。

 

 その後、イヤホンを外し忘れたまま、下駄箱も近かったので外れずに一緒に歩いて行ったら一つのイヤホンを付けている俺と結羽を見た奴らに弄られたのはまた別のお話。




 はい!第51話終了

 今回はLIFEのギターとボーカル担当の神大が出ましたね。

 あのサインは酷すぎる。

 我ながら書いてて下手くそやなこいつって思ってました。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第52話 LIFEpart2

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 なんと投稿しようと通学路を結羽と歩いていると、優也の友達である神大とたまたま再開する。

 結羽は神大の属しているバンドLIFEのファンの為、大興奮。

 そして放課後、LIFEの皆と会うことになった。


side優也

 

 あれから数時間後学校も終わり、放課後になった。

 

「なんだよ優也。普段俺に素っ気ないくせに引きずり回して」

 そう、俺は今悠真の制服の襟を引っ張って歩いている。

 

「と言うか結羽がこっちを気にせずにずっとワクワクオーラを放ってるのが気になるんだが?」

 

 そう悠真の言う通り、いつもなら結羽はこちらを見て苦笑いをしているんだが、今はいつに無く笑顔だ。

 

 どんだけ好きなんだよ。LIFE

 

 ちなみに駅を一つ跨いだ先にライブハウスなるものがあるらしいが、俺は一度もLIFEのライブに行ったことが無い。

 

 それは悠真も同様だ。

 

 なぜなら悠真はLIFEが結成された1ヶ月後位に転校して行ってしまったからだ。

 

 俺の理由は…まぁ、LIVE当日に七海と買い物行く予定が入ってたからだ。

 おいそこシスコン言うな。

 

「と言うかこっち来るのも久々だな…」

 

「ああ、そうだな。じゃあお前はもっと驚く光景が広がってるだろうよ」

 そう言って悠真を喫茶店に向けて投げる。

 

「うわっと!」

 と少しバランスを崩しそうになりながらも立ち止まった。

 

「ここか?」

 

「ああ、もうすぐ来るらしい」

 

「来る?誰が?」

 

 そう言うと遠くからだだだと言う効果音の聞こえそうな音が聞こえてきた。

 

 そしてその方向を見ると一人の人物が走ってきた。

 赤髪でヘッドバンドを付けている。

 

 そしてその人物は俺達の前で立ち止まった。

 

「燃えて燃えて燃えまくれ!全てを照らし尽くすサン!燃杉(もえすぎ) 太陽(たいよう)

 とびしぃっとポーズをキメる太陽。

 

「相変わらず熱いな。お前のそのノリは」

 

「こんにちは絆成君。久しぶりに河川敷を一緒に夕日を背に走ろうではないか」

 相変わらず熱いやつである。

 

 ちなみに久しぶりとあるが、俺は一緒に走っていた記憶はない。いつもこいつが一人で100週くらいしてたくらいだ。

 

 すると数分してからもう一人来た。

 

「はぁ…はぁ…」

 疲れ果てたような様子の男が来た。

 

「大丈夫か?優来。水飲むか?」

 

「シャドースカイ君!もっと熱くなれよ!」

 だから熱いって

 

「そ、その呼び方はもうやめてくれ黒歴史だ…」

 声がカスカスで死にかけじゃないか。

 きっと太陽に付き合わされたんだな。

 

 お前の事は1時間位忘れない。

 

「ふぅ…やっと息が整ってきた」

 生きてたか

 

「改めて…コホン…ドラム担当の」

 そう言ってバックからスティックを取り出して振り回す。

黒天(こくてん) 優来(ゆうらい)だ」

 

「え?あの自己紹介はやめたんですか?」

 

「あの自己紹介?」

 

「あれですよあれ。黒より黒き」

「ヤァァメェェロォォッ!」

 本当に黒歴史って怖いよな。

 

『優也、もしかしてこいつら』

『ああ、あの太陽と優来だ』

 

 すると目を急に嬉しそうに目を輝かせる。

 

「よ、久しぶり。坂戸 悠真だ。って無視!?」

 悠真の話を尻目に俺のとこに来た。

 

「久しぶり。優也。元気してたか?」

 

「……我が名はシャドースカイ。黒より黒き空に」

「だからヤメロー!」

 ちなみに今言おうとしたのはこいつの昔の自己紹介だ。

 

 そう。皆気づいてるかと思うが、こいつは昔は厨二病だったのだ。

 

「皆にはスカイって呼ばれてたよな?」

「だからやめろよ!と言うか俺はそう呼ばれたことなど一度もない」

 今のは俺の作り話だ。誰もこいつをスカイ等と呼んだことは無い。

 いつも黒天と読んでいた。

 

「とりま久しぶり。太陽、優来」

 

「お、俺は?」

 そろそろ可哀想だな。ちょっと構ってやるか。

 

「そうだ。ゆうs」

「お!皆早いな!」

「…」

 惨めだ…

 

「優の字と、それに…えーと」

 

「柴野 結羽です」

 何気に苗字は久々に聞いた気がする。

 

「漢字はどう書くんだ?」

 

「苗字は柴犬の柴に野原の野。名前は結ぶに羽です」

 

「結ぶか…じゃあ(ゆい)の字だな」

 おい、いきなり馴れ馴れしいな。

 

 でも結羽も嬉しそうだし良いか。

 

「キーボードの淵田(ふちだ) 凌太(りょうた)だ」

 そう小さく涼太は呟いた。

 

 こいつはクールな奴だ。そして笑ったところを俺は一度も見た事が無い。

 

 いつも無駄なことをしない主義で、そしてマフラーを首から口にかけて覆うような形で巻いている。

 曰く『このマフラーを巻いていると安心するから』らしい。

 

 暑くないのかな?

 

 んで太陽。こいつはいつもどんなことにも全力を尽くす。

 それはそれで良いんだが、他人を巻き込むのはやめて欲しい。

 

 先程も言ったがこいつは赤髪で、額にはヘッドバンドを付けている。

 

 そんでもって優来。こいつは昔は厨二病で、自己紹介の時の衝撃を俺は未だに忘れていない。

 『我が名は黒天。黒より黒き漆黒の空。まさにこの俺に相応(ふさわ)しいではないか』

 この時、教室内は『あ、察し』的な雰囲気が漂い、皆が苦笑いをしていた。

 

 今ではかなりの好青年となり、腕に巻いていた包帯は無くなっていた。

 

 そして神大。こいつは優男だ。つまりイケメソだ。

 構内での告白される率トップ。だが、1回も受けたことが無いという伝説を作った奴だ。

 

 性格は慌ただしい奴って言うか、なんと言うか性格を知れば知るほど残念な奴だ。

 

「よし、優也。悠の字は何処(いずこ)へ?」

 

「ここに居るぞ」

 と首だけで位置を合図する。

 

「おぉーっ!悠の字。久しぶりだな!」

 

「まぁ…うん…」

 やはりこうなった。

 

 無視されすぎて落ち込むこいつなんてレアだぞ。

 

「悠真君っ!久しぶりっ。帰ってきていたんだなっ!再会を盛大に祝おうじゃないか」

 

「お、おう…」

 ちなみに悠真は太陽の事を唯一苦手にしている。

 

 分かる。分かるぞその気持ち

 

「取りあえず中に入らないか。外で長話はあまり良くない」

 と凌太。

 相変わらず抑揚(よくよう)のない声だ。

 

「そうだな入ろう」

 と俺達を仕切(しき)る神大。

 

 ちなみにLIFEのリーダーはこいつではなく凌太だ。

 凌太曰く『お前らを野放しにしておくと何しでかすか分からないから俺がリーダーをする』らしい。

 ちなみに何故バンドに賛成したかと言うと、これまた同じ理由らしい。

 

『ふふっ。賑やかだね』

 と結羽が俺に耳打ちしてきた。

 

「賑やかすぎて困るくらいだ」

 

 そんな話をしながら俺達は喫茶店に入っていった。




 はい!第52話終了

 次回は喫茶店からの話です。

 そしてもう何話かで物語が急展開を迎えるはずです。(その何話がいつになるかは分かりませんが)

 一部間違いを発見したので訂正しました。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第53話 LIFEpart3

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 LIFE全員集合

 ただそれだけの話です。



 それではどうぞ!


side優也

 

 俺達は喫茶店に入った。

 

 そして中から出てきた店員に案内してもらって席に着く。

 

 7人だけど座れる場所があって良かった。

 

「んじゃ俺カレー」

「ねーよ」

 

「俺はラーメンね」

「ねーよ」

 

「そんじゃ俺はカルボナーラな」

「ねーよ!」

 

「俺はブラックコーヒー」

「だからねえっ…あるな」

 

 上から太陽、優来、神大、凌太の順だが、そのままの勢いで凌太のも否定しそうになった。

 

「そんじゃ、俺はうどんな」

 悠真が言うと一斉にジト目を向けた。

 

「優也と凌太なら分かるけど太陽、優来、神大。お前らにだけはそんな目をされたくない」

 と、なんとも言えない表情をしていた。

 

「そんじゃ改めて。俺はコーラフロート」

 

『え!?』

 結羽と悠真以外が皆驚いた。

 

「何を頼むイメージを持ってるんだよ」

 

「いやぁー。悠の字の事だからいなごの佃煮(つくだに)って言うかと思ってた」

 

「頼まねーよ!俺は昆虫食べる趣味なんてねーよ!」

 まぁ、無いのだから頼めるはずも無いのである。

 

「んじゃ俺はブラックコーヒーとたまごサンドイッチで」

 

 実は少し小腹が空いてきたのである。

 

「わ、私は…こ、コーヒー!ブラックで!」

 と結羽は足をガクガク震わせながら言った。

 

「大人っぽく振る舞わなくても良いんだぞ?いつも俺ん家でも砂糖をもがが」

 俺が言い切る前に口を押さえられた。

 

 そこまで自分を犠牲にしてよく見せたいか!?

 

 そんなことを話している間に悠真達は注文を終えたようだ。

 

 結羽の顔色が悪い。今やっと後悔し始めたのだろう。

 

 砂糖一杯でも苦いと言うのに、ブラックなんて

 

「お待たせしました。ココア二つとメロンソーダ。コーラフロートとコーヒー三つですね。ごゆっくり」

 と店員が運んできた。

 

 ちなみにココアが太陽と神大、メロンソーダが優来だ。

 

 そして満を持して結羽は震える手を抑えながら一口含んで飲み込んだ。

 

「ケホッケホッ」

 やはり結羽には厳しかったらしい。むせてしまった。

 

「お、おいひいでしゅ」

 滑舌が回ってないと説得力が無いぞ。

 

「はぁ…だから言ったのに…」

 そう言って俺は結羽からカップを奪った。

 

「ちょ!優也!?」

「結羽。飲めるのか?」

 

 そう言うと結羽は小さく首を横に振った。

 

「んじゃ持ったないないから俺が貰うぞ」

 そして俺はカップに口をつける。

 

 すると一斉に視線を感じた。

 

「なんだ。お前ら」

 

「いやぁー。白昼堂々ね…このカップルったら嫌ねぇ。凌太さん」

 

「気持ちは分かるけど気持ち悪いからやめろ。今度やったらお前のシャーペンの芯がテスト中に全部なくなることになるぞ」

 うわぁー。地味にって言うかかなり嫌な嫌がらせだ。

 

 昔からこいつの脅し文句はかなり嫌な嫌がらせだった。

 

 帰る時間に下履きが無くなるや、授業の時間になってもその教科の教科書が見つからなくなる等。地味だったりかなり嫌な嫌がらせをしてこようとするのだ。

 ちなみに俺の場合はマッキーのキャップが見つからなくなるって言う脅しをされた。

 

 冷静な口調で言う分、余計に怖く感じてしまうのだ。

 

「って言うかカップルなんてどこに居るんだ?」

 俺だけが飲み込めてなかったようだ。

 

「そうだったな。優の字はそう言うの気にしないんだった」

 そう言うのってなんだよ。

 

 少し考えてみる。

 

 するとある結論にたどり着く。

「そう言うのってなんだよ」

 やっぱり分からなかった。

 

「間接キスだ。間接キス」

 と凌太は気だるげそうに言った。

 

「間接キスくらい別にどうってこと無くないか?」

 それが俺の考えだった。

 

「じゃあお前は誰彼構わずマウストゥーマウスでキスするのか?」

 

「それとこれとは話が違うだろ」

 俺は普通のキスなら躊躇うが、間接キス位で慌てることは無いと言うのが俺の考え。

 

「んじゃあ、そのカップは結羽が口を付けたカップだ。それに口をつけるということは結羽とキスをしたと道理だ」

 それを聞いて俺は自身の顔が赤くなるのを感じた。

 

「全然違うと思う」

 弱くなってしまった。

 

「あれ?顔赤いけど…もしかして今更恥ずかしがってるのか?」

 

「ちげーよ。次この事でからかってきたら凌太が動くぞ」

 

「俺に振らないでくれ」

 俺が1番仲がよかったのは凌太だったので助けをもとめてみる。

 

「まぁ、これ以上この話をつついて絆成を困らせるようなら俺にも考えがあるがな」

 まぁ、なんだかんだ言って俺を庇ってくれるのが凌太だ。

 

 しかも表情と声色で感情を読み取れないから余計に怖い。

 

「ほら結羽。砂糖入りだ」

 と俺のコーヒーを結羽に渡した。

 

 俺は結羽の為に一口も飲まないで砂糖を2杯位入れて置いた。

 

「どうして?」

 そう聞かれて俺は理由を考えてみるが何も思い浮かばなかった。

 

「なんでだろうな…気がついたら体が勝手に動いていた」

 

 そう言って俺はまた一口コーヒーを飲む。

 

 何でだろうか…今までだったらあんなこと言われても対して気にしなかったのに、何故か意識してしまう。

 

「んじゃあ。まず何をする?」

 

「取りあえずはここは待ち合わせに使っただけだからどこか遊べるところに行くってのも手だよな」

 とLIFE+悠真が話していた。

 

「結羽はこの後どうしたい?」

 

「うーん。皆と一緒ならどこでもいいかな?」

 

「そっか」

 

 すると太陽が急に立ち上がった。

 

「ゲーセン行こうぜ!」

 

 げーせん?ゲーセン…マジで?

 

 ゲーセンは最後いつ行ったかも分からないくらい昔に行った。

 しばらく行ってないから内装変わってるかな?変わってても昔のを忘れてて気が付かないと思うけどな。

 

「そんじゃ飲み食い終わったらゲーセン行くぞ!」

 

『おー!』

 俺と凌太以外の声だった。




 はい!第53話終了

 次回はゲーセンです。

 ゲーセンと言えば、学生時代の定番ものであり、その中にはデートの定番物もありますよね?

 逆になんで一年生の時には来なかったんだって言う。

 完全に忘れてました。すみません

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第54話 LIFEpart4

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 ふざけるLIFEのメンバーとそれを取りまとめる凌太。

 そして優也は間接キスを気にしないようです。

 そしてゲーセンに行くことになりました。



 それではどうぞ!


side優也

 

 俺達はゲーセンに来た。

 

 久々だな…

 

 なんと言うか色々ギラギラしていて目に悪い空間がそこには広がっていた。

 

「よし凌太。あれで勝負しようぜ」

 

「……分かった。じゃあ負けた方が今後……皆のサイフな」

 何その今後の人生をも左右する罰ゲーム!?

 俺は心中でそう突っ込む。

 

 ふと見ると凌太を誘った神大も青ざめて冷や汗をかいていた。

 

「冗談だ」

 冗談に思えない冗談はやめて頂きたい。

 

「良かった…じゃあ罰ゲームは」

「あれな」

 と凌太が食い気味に言い放って指を指したその先にはありえないほど鋭利な足つぼマッサージがあった。

 

 ちなみに針も1箇所にいっぱいあったら刺さらないと言う法則があるから刺さらないのは分かっているが、それでも想像したら痛くて痛くて…やばい…聞いてるだけなのに震えてきた。

 

「じょ、冗談ですよね?」

 と神大は期待、それと恐怖を込めた声で恐る恐る聞いた。

 

「……いや、これは本当だ」

 

「いよっしゃー!負けらんねぇっ!」

 完全に空元気だ。

 

 そして神大と凌太はあるアーケードゲームの席に座った。

 

「んじゃ俺達は平和な遊びでもしようか」

 

「だな」

 

「よし、遊ぶぞ!」

 

 取り残されてしまった…

 

 俺と結羽のみがここに残ってしまった。

 

 向こうでは「ア゛ァァァァ。やべぇっ!」と神大が騒いでいる。

 向かいの台では「静かに出来ないのかお前は」と淡々と凌太が呟いていた。

 

「何するかねぇ…」

 生憎と俺は久々にここに来るからどうしようかと言うのは瞬時に考えつかない。

 

 そんな時、急に袖をクイクイと引っ張られた。

 引っ張られた方向を見るとそのには俺の袖を掴んでいる結羽が居た。

 

「わ、私と一緒に遊びましょう」

 

「なんで敬語なんだよ。最近敬語使ってないだろ」

 いつの間にか結羽は敬語が外れていた。

 

「と、とにかく一緒に廻らない?」

 

「んだな。一人で廻ってもいいが、二人で廻った方が楽しいもんな」

 

「そう!そういう事!」

 と声を荒らげて肯定する結羽。

 

 急にどうしたんだ?

 

「んじゃまぁ、何からします?」

 

「じゃあまずあれ」

 と結羽が指をさした先にはプリクラ機があった。

 

「ん?あれ撮るのか?」

 

「うん!」

 

「で、でもなぁ…俺自身同年代の女の子と撮ったことないからハードルが…」

 そう言うと結羽は首を傾げながらこう聞いてきた。

 

「撮ったことはあるの?」

 

「あるよ」

 俺は淡々と答えた。

 

「へ、へぇ…ち、ちなみに誰と?もしかして彼女さんと?」

 

「居ないし、今同年代の女の子と撮ったことないって言ったろ」

 

「で、でも、綺麗なお姉さんとか幼い子供とかと付き合ったりして」

「無いよ!そもそもお姉さんならまだしも幼い子供は軽く問題だよ!?」

 俺は食い気味に突っ込んだ。

 

 いきなり何を言い出すんだこいつは

 

「じゃあ誰と?」

 

「七海だよ。妹の」

 そう。俺は今まで1回だけ七海に連れ回されて撮ったことがある。

 因みにその時撮ったやつは今は俺の引き出しの奥にある。

 

「なるほど」

 

 そこまで言うと自然と俺の手を握って引っ張っていく。

 

「じゃあ実質家族以外と撮ったことは無いんだよね?」

 

「ああ、無いな」

 

「じゃあ私が初めて貰っちゃうね」

「ゴホッケホッ」

 生唾を飲み込むと唾が気管支の方に行ってしまった。

 

 いきなりの発言によりむせてしまったのだ。

 その発言危ないですよ!?

 

 しかし当の本人は気がついてないようだった。

 

「じゃあ撮るからポーズ取って」

 

「ポーズって何をすればいい」

 

「例えば」

 そう言って結羽は片手でハートの半分を作った。

 

「それじゃカップルじゃないか」

 この時だけは凌太が乗り移ったんじゃないかと思うくらいの冷静な言葉を投げかけた。

 

「かかか、カップル!?」

 すると結羽の顔がどんどん赤くなって行く。

 

「と、取りあえず適当にやって」

 適当って言ってもなぁ。

 

 すると撮影開始ボタンを押す結羽。

 

 まだポーズ決めてないのに。

 

 そしてシャッターが鳴る少し前に「えいっ!」と腕に抱きつかれて変な顔になった。

 

 その瞬間、パシャと写真が載って撮れた。

 

 しくったな。変な顔で写ってしまった。

 

「じゃあ、落書きするよ」

 しかし俺にはそんな知識ないので傍観する事にした。

 

 写真をのぞき込んだが我ながらひどい写り方だった。

 

 そして結羽は手慣れた手つきでプリクラ機を操作していく。時折顔を綻ばせながら。

 

「出来たよ!」

 そして出来たプリクラを印刷して二つ出来たうちの1つを俺に渡してきた。

 

「サンキュっ」

 

 もう一度見てみるとやはりひどい顔だったがそんなことはどうでも良くなるほどの物があった。

 

「なぁ、これ…なんかカップル見たいじゃないか?」

 と写真を見せてある部分を指さす。

 

 写真には楽しい(・・・)って書いてあるだけだったが、もっと気になる部分があった。

 それは、俺達の周りが大きなハートで囲まれていたことだった。

 

「い、良いじゃん。だってこういう時の定番でしょ?」

 言われてみればそうなのかもしれないがなんか恥ずかしいな。

 

「そうやってるとさ」

 

「ん?」

 と急に俺と結羽以外の声がした。

 

「初々しいカップルみたいだよな」

 悠真だった。

 

 見てみると神大以外がそこに居た。

 

「あれ?神大は?」

 そう聞くと凌太は無言で親指で後ろを指した。

 

「アァァァッ!」

 ご愁傷さま。

 

 意外とこいつは残虐な所があるからな。あまり逆らわない方が良い。

 

「さてとこれからどうするんだ?」

 

「絆成君。一緒にあれをやろうじゃないか」

 と太陽が指をさした先にはエアホッケーがあった。

 

「いいぞ。負けたらあれをやる」

 そう言って神大がいる方を指す。

 

「よっし!燃えてきたぞ絆成君!これまで99勝99敗100分け。今回で決着と行こうでは」

「いやいやそんなにやってないから」

 何が楽しくて298戦もしなくちゃいけないんだよ。

 

「まぁ、取りあえずやるか」

 

 結果は俺の勝ちだった。

 

 暫くやってなかったが、昔七海がエアホッケーにハマってた時期があってそれによって相手をさせられてた俺は鍛えられていたから体が覚えていたんだろう。

 

 それにより太陽も神大の隣で叫ぶことになった。

 

 よし、見なかったことにしよう。

 

 その後も色々なゲームをした。

 

 終わった頃には太陽と神大の目から光が消えていた。

 しかし太陽の弱った姿は新鮮だったな。

 

「今日は楽しかったな」

 

「ああ、久しぶりの全員集合だったな」

 と話す悠真とLIFEの面々

 

「優也はあの輪に加わらないの?」

 

「苦手なんだよああいうワイワイしたの」

 俺には輝いて見えて触れてはならないものに見えてしまう。

 

 それどころかLIFEの奴等は今や有名になってしまって…

 

「結羽はどうだった?」

 

「楽しかったよ」

 

「そうか…なら良かった」

 

「んじゃ俺達こっちだから」

 と言って俺と結羽の二人にされた。

 

 いや、俺と結羽以外そっちだったのかよ。

 

 結羽はもう一本先だ。

 

「じゃあ優也。また明日」

 

「ああ、じゃあな」

 そう言って結羽と別れて家に向かう。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「ただいま」

 

「おかえり優也」

 

 珍しく俺より先に父さんが居た。

 

「珍しいな。優也が夜帰りだなんて」

 

「別に良いだろ?」

 

 そう素っ気ない態度をとる。

 

「優也、飯を作っておいたからな」

 

「分かった」

 

 そう言ってサランラップに包まれた料理を食べる。

 

 久々だな父さんの料理は…最近は結羽に作ってもらうことが多かったし

 

「ご馳走様」

 そして特にこれと言った会話もせず、素っ気ない態度で自室に戻った。




 はい!第54話終了

 これにてLIFE編終了ですよ。

 次また別の話に入ります。

 恐らく次の話はシリアス多めかと

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二年生編一学期 消失編(序章)
第55話 体育祭の時期らしいです


 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 LIFE編終わりました。



 今回から消失編の序章が始まるわけなんですが、何が消失するんでしょうかね?
 まぁ、この消失編ではシリアス多めだと思います。

 それではどうぞ!


 消失・・・それは無くなること。持っていたもの、当たり前だったものが無くなると人は悲しむ。

 

 それは大事にしていたぬいぐるみであったり、物…もしくは…身近な大切な人であったり。

 

 当たり前だった物など直ぐに崩れ去る。

 

 そう。俺、絆成 優也も過去に当たり前だったものを失いかけたことがある。

 妹の七海だ。

 

 事故なんてのはいつ起きてもおかしくない。大切なものなどいつ崩れてもおかしくない。

 友情や愛情などはちょっとした出来事だけで無と()すのだ。

 

 それは誰の身にも起きうる出来事。

 

 そしてそれは誰もが乗り越えなくてはならない壁。

 

 果たして俺、絆成 優也は乗り越えれたと言えるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side優也

 

 目が覚めるとそこには七海が居た。

 

「なんで七海がここに?」

 

「お兄ちゃん。何言ってるの?ずっと一緒に居たじゃん」

 

「七海…」

 

 そうか…今までのは全て夢だったんだ。

 

 そう思って俺は七海に近づく。

 

 すると急に猛スピードでトラックがやってきた。

 

 そしてドガッと音がした後、嫌な光景が広がった。

 

「七海…七海…七海ぃぃっ!」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

「七海ぃぃっ!」

 と俺は起き上がった。

 

「ここは俺の部屋か…」

 そして部屋を見渡すが七海は当然どこにもいない。

 

「夢オチか…」

 久しぶりに見たこの夢。

 中学の頃はよく見ていた夢だ。

 

「はは、ひっでぇ顔」

 洗面台の鏡に映った俺の顔を見て苦笑をこぼす。

 

 そしてパチンと両手で頬を叩いて気を引き締める。

「よし、」

 っと俺は意気込んで支度を始める。

 

 父さんはいつも通り俺より早く仕事に出てしまっている。

 こんなことはざらだ。

 

 最近は労働基準法がなんだかんだと言って残業せずに帰ってくることも増えたらしい。父さんがさり気なくそんなことを言っていた。逆に残んないでくれと言われるのは凄いなと感心してしまう。

 

 そして食パンを用意してその上にハンバーガーに挟まってるようなチーズを乗せて小さくカットしたベーコンを何個か乗せ、その上からケチャップをかける。

 そしてその出来上がった物をオーブンにていい具合に焼く。

 これがなかなか美味いのだ。

 

 そしてその出来上がったパンを食べながらコーヒーを啜る。これがなかなか乙な物だ。

 

 俺はこの朝の時間が好きだ。

 

 一人きりのリビングにて一人きりのモーニングコーヒータイム。

 そしてテレビを付けて朝のニュースを見る。

 

「はぁ…いい」

 今日もこの家から出て登校すると結羽が合流して色々な人に絡まれて…

 その為の鋭気を養っているのだ。

 

「ふぅ…そろそろ行くか」

 

 そしていつもの学ランを着て玄関のドアを開ける。

 

 開けると眩い光が俺を襲う。

 

 さっきまでカーテンも開けない電気も付けない薄暗い部屋にいた直後のこの明るさは目に悪い。

 

 そしていつもの様に登下校路を歩いていると「優也ー!」と結羽が横道から来た。

 

「おはよう」

 これがいつもの日常だ。

 

 ちなみに待ち合わせている訳でもない。

 

「おはよう」

 と俺も挨拶を返しておく。

 

 そして色々な話をしながら学校に向かう。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

学校

 

「じゃあそろそろ体育祭の時期だから今日のLHR(ロングホームルーム)種目決めをしたいと思います」

 今教卓の前で話しているのは俺達の教師、今倉先生。丁寧語とタメ語がごっちゃになっていて定まっていない。

 結構生徒に対しても丁寧語を使う先生だ。

 

 今年こそ走り幅跳びを

 そう思って立候補する。

 

 枠は1つ

 立候補者は俺と本田

 

 そしてじゃんけんすることになったんだが、指をポキポキと鳴らしていかにも戦闘モードの本田が目の前に来た。

「この前、雪辱、晴らす」

 ぶつ切りで言わないで!接続語をちゃんと言って?

 

 そしてジャンケンをした。

 

 結果は

俺→パー

本田→チョキ

 

「きょ、去年と同じ…」

 そう言って肩をガクッと落として落胆する。

 

 去年もパーチョキで負けたのだ。

 

 そしてやはり俺の運は最低クラスで結局去年と同じ障害物競争になってしまった。

 まぁ、今年は神乃さんが生徒会長だから問題は無いだろう。

 

 そんな感じで今日が過ぎていくと…そう思ってた。思いたかった。…だが現実は非情なり、だ。

 

「絆成!絆成は居るか!?」

 と焦った様子の先生が急に入ってきた。

 

「あ、はい。俺が絆成です」

 

「そうか…ちょっと来てくれないか?」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 俺は先生の後を着いて行って別室に来た。

 

 そして俺を椅子に座るように指示し、先生は俺とテーブルを挟んだ向かいの椅子に座って頭を抱えながら()き出した。

 

 そして何やら困ったような表情をしていて暗かった。

 

 表情からしていい話ではないのは確かだろう。そして言うのを躊躇っているのが何よりの証拠だ。

 

 そして待っていると先生は顔を上げて俺の目を見てきた。

 

 そしてやはり言うのを躊躇っているようだ。

 

 ここまで言うのを躊躇う先生は見たことが無かった為不安になってしまった。

 

「その様子からしていい報告じゃなさそうですね」

 そう言うと覚悟が決まったのか、先生は「そうだ」と言った。

 

「実は君の父さんが」

 そこで嫌な予感が頭を過ぎった。

 考えたくなかった。だが考えざるを得なかった。

 

「仕事中に事故に会ってしまったようだ。大きな機会に挟まれて」

 その瞬間、俺の思考が停止した。

 

「あ、あ、」

 俺は声にならない声を出すしか出来なかった。

 

「でも安心してくれまだ亡くなっては無いようだ」

 と励ましのつもりだろうが俺の耳には一切届かない。

 

 まただ…また…大事な人を失うのか。

 

 そんなことを考えながら俺は机に倒れて意識を失った。




 はい!第55話終了

 はい今回が消失編の序章、第1話でした!

 途中出てきたトーストは僕の好きなトーストです。

 終始僕じゃないような文章構成の説明口調でしたが、不穏な雰囲気を漂わせるための演出と捉えてください。

 果たして優也はどうなってしまうのか?

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第56話 おやすみ

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 いつも通りの日常を送る優也だったが、なんと優也の父が仕事中に事故にあってしまった。

 果たしてどうなってしまうのか?



 それでは!

 さようなら


side優也

 

 目が覚めるとそこは保健室だった。

 どうやら俺はショックで気を失ってしまっていたらしい。

 恐らく運んでくれたのは俺に例のあの事を伝えてくれた先生だろう。

 

 事故……そんなのはいつ起こってもおかしくないんだ。なのに…だってのに俺は考えが甘かった。

 もう…あんな事は起こらないと勝手に心の中で思っていた。

 

 いや、思っていたかったんだ。事故はいつ起こってもおかしくないって考えないようにしていたんだ。

 

 愚かだった。本当に俺は愚かだった。

 

 俺の身寄りは誰も居ない。事故にあったが、亡くなっていないって言っていた先生の顔は曇っていた。それはつまり父さんが危険な状況だと言うことが推測できる判断材料だった。

 

 そして動こうとするが体はピクリとも動かない。まるで金縛りにあっているみたいだった。

 動け……動け……動け……

 何度も心の中でそう叫んだ。だけど俺の体はピクリとも動く気配がない。

 

 金縛りってのは科学的に言うと精神が不安定な時に起こりやすい心理現象だ。

 俺の精神が不安定になった原因ってのはやっぱあれだよな。

 

 俺自身では何も出来ない悔しさを胸にここに横たわって事の顛末(てんまつ)を見守るしか出来ないのか?

 

 するとガラガラと言う扉が開かれる音が聞こえてきた。

 それと共に誰かが入ってきたのが分かった。

 

 そして俺のベットを仕切るカーテンが不意に開かれる。

 

「絆成。大丈夫か?倒れたって聞いたが」

 今倉先生だった。

 

「だ、だいしょうぶです」

 呂律(ろぜつ)も上手く回らない。

 

「まぁ、絆成。今日は帰って病院に行ってきたらどうだ?」

 そう優しい口調で俺にそう言った。

 

「柴野さん。ありがとう」

 とカーテンで隠れて見えない位置に結羽が居るのだろうか?

 結羽から俺のカバンを受け取ったようだが

 

「立てるか?」

 と手を差し出してくる今倉先生。

 

 その手を何とか掴んで起き上がる。

 

「はい。もう大丈夫です」

 俺はそういうものの精神状態はとても不安定だった。

 

 なんであんな素っ気ない態度しか取れなかったんだと後悔しても遅いが後悔した。

 

「今日は早退します。さようなら」

 そう言って俯きながら歩いてカーテンから出る。

 

 途中、結羽とすれ違ったものの顔も見ずにその場を去った。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 父さんの入院している病院は近くの伊真舞市立病院。伊真舞高校から徒歩で行ける距離にある病院だ。

 

 そして俺は入口のカウンターで受付を済ませて病室に向かう。

 

 父さんの病室は305号室。

 

 因みにお見舞いに花を買ってきた。その時に店員さんにこんな時間に学生服の男が歩いているもんだから(いぶか)しげに見られてしまった。

 ほとんどの学校はまだ授業中だからね。

 

 こんこんとノックをして病室に入る。

 入るとそこには父さんは確かに居た。居たが、随分と痛ましい姿だった。

 腕は固定され、頭や胴体、足には包帯をグルグルと巻かれていた。

 そして目を瞑っている。

 まるで死んでいるかのように…そんな縁起の悪いことを考えてしまう。

 

「父さん。いつもありがとう。この間の父さんの手料理。不器用で味が濃くて…とても繊細だとは言えなかった。ザ、男の手料理って感じの味だった…だけど…だけど…」

 言ってる間に涙が出てきた。

 そして次にこんな言葉を紡いだ。

「それでも、俺の事を一生懸命に考えてくれてるって感じがして美味かった。俺の…いや、"僕"の好みを完全に(とら)えた完璧な味付けだった」

 

 "僕"の好み。濃いめの味付け…それが"僕"の好みだった。

 

「今はじっくりと休んでくれ」

 

 そして父さんを見ていると看護師さんが入ってきた。

 

「君が絆成 優也君?」

 

「あ、はい」

 聞かれたので肯定した。

 

「若いのに大変ね。お父さんが事故にあった時は不安でしょうがなかったでしょ?」

 図星であった。(むし)ろ不安を通り越して精神が不安定になりました。

 

「そろそろ帰りま」

 そして父さんの顔を見ると表情が歪んで来ていた。

 

 その様子を見て看護師さんは直ぐにナースコール作動させた。

 すると直ぐに何人もの医者が入ってきた。

 

「容態が急変しました!」

 と慌ただしく動いて直ぐにストレッチャーに父さんを乗せて押し始めた。

 

「これは緊急手術も致し方あるまい」

 と一人の医者が言った瞬間場の空気が引き締まる。

 

 一人の看護師さんは「絆成さんしっかりしてください。大丈夫ですから」と聞こえるはずもない励ましを続けていた。

 

「優也君はそこに座って待っててください」

 そして手術室に入っていって扉がしまった瞬間、手術中のランプが点灯した。

 

 そして俺は近くのベンチに座って頭を抱え込む。

 

 父さんがもし居なくなったら俺はどうすれば良いんだ。

 どうやら父さんは俺の中で大きな存在だったらしい。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 数時間後

 

 ついに手術中のランプが消えた。それにつれて医者が出てきた。

 

「どうでしたか?」

 そう聞いた時医者の表情は曇っていた。

 そして次に首を振った。

 

「大型の機械に潰された時胸の骨が砕けてしまったんでしょう。心臓に刺さってしまっていました。寧ろここまでの時間耐えたのが奇跡みたいなものです」

 と暗い声で呟いた先生。

 

 その瞬間、俺は崩れ落ちた。

 

「あ、ああ、ああああああっ!」

 みっともなく子供みたいに泣きじゃくった。

 

 この時、一生分の涙を使い果たしたかもしれない。そう思うほどの涙が目から溢れ出してきた。

 

 暫くして俺は泣きやみ、父さんの元へ向かった。

 

 父さんは安らかな顔をしていた。

 あの時はあんなに歪めてた顔も今では安らかになっていた。

 

 そして父さんに歩み寄って手を握る。

 

「ありがとう父さん。こんな息子でもここまで育ててくれて。ありがとう父さん。男手ひとつで大変だったでしょ?」

 そして微笑んだ。

 精一杯の微笑みだった。この時の微笑みは下手だったかもしれない。

 

「疲れたよね。もう」

 もう父さんの前では涙を見せないと誓ったのに涙が出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おやすみ。父さん。そしてさようなら」

 この日、俺は父親を失った。




 はい!第56話終了

 はい。ダークストーリー気味ですが頑張って書いていきますよ!

 さて、次はどうなるのか?

 次回もまだ序章です。

 今年最後の投稿がこれで良いのか?

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二年生編一学期 消失編
第57話 パーカー


 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 無意識の恋や東方魂愛想でも言ってますが、あけましておめでとうございます!

 新年一発目のこのシリーズの話はやはり黒いです。

 それでは行きましょう!



 それでは前回のあらすじ

 父親が事故により病院に運ばれた。その事実を知った優也は倒れてしまう。

 そしてついにはその父親が息を引き取ってしまった。

 果たして優也はこれからどうなってしまうのか?



 それではどうぞ!


side優也

 

 父親の死から数日が経った。

 

 俺は全てがもうどうでも良くなっていた。

 

 これじゃ七海が事故にあって直後の頃と何も変わってないじゃないか。

 

 何もかもがどうでも良くなって、勉強もロクにしなくなって…

 

 あの頃は父さんが居たからなんとか前向きになれた。

 

 辛い時もいつも励ましてくれて、俺の…いや、僕の好きな料理を作って、不器用な味で…だけどそれがめちゃくちゃ美味しく感じて…

 

 今は誰も居ない。この家にただ一人俺が居るだけだ。

 

 先日、葬儀(そうぎ)にも行った。

 そこで全て改めて理解してしまった。

 

 俺の心はすっかり(すさ)んじゃってるな。

 

 そう思いながらズズズとカップ麺を啜る。

 

 葬儀から帰ってきてからみんなとは一度も話していない。LINEが送られてきても気が付かないふりをしている。

 

 完全に最低なやつだな。

 

 学校にはちゃんと行ってはいる。

 

 そして明日は体育祭当日だ。

 

 正直面倒だから休もうか悩んでいる。

 

 だが毎日来るあいつらが鬱陶(うっとう)しい。これじゃ行かざる終えないじゃないか。

 

「ふーん。あの芸能人、結婚するんだ」

 俺はテレビでニュースをかけていた。

 

 部屋の中には高く積まれたカップ麺の空。そしてゴミ袋が散乱していた。

 

 俺に残ったのは父さんの労働災害による保険金と遺留品のみだ。

 父さんの遺産によって俺の手元には金はある。

 

 何もかもに関心がわかなくなって最近は真剣にアルバイトもしていない。

 偶に如月が話しかけてくるが適当に返している。

 

『ここのお店はカレーが美味しい事で有名です』

 テレビで紹介されている店があった。

 

 この店なら近くにもあるな。

「暫くぶりにカレーってのも良いかもな」

 そう言いながら食べ終わったカップ麺の空をまた積み上げる。

 

 そして立ち上がって台所に向かう。

 

 台所に来る度に思い出す。

 

 俺のじいちゃんは飲食店を経営していたから俺はじいちゃんに料理を教えて貰った。

 あの頃は良かったなと

 

 そしてコーヒーを淹れて飲む。

 


 

 そして晩飯時になって俺は例の店に来ていた。

 

 その店に入った瞬間だった。

 俺はすぐ様ドアを閉めた。

 

 嫌なものを見た気がする。

 

 そして恐る恐る中を覗くとやはり居た。

 あ、目が合った。

 

 そしてまたドアを閉める。

 

「なーにやってるの」

 ばっとドアが開いて見つかってしまった。

 

「何もやってねーよ」

 

「悩みがあるみたいだね」

 何この人唐突に

 

「この神乃お姉ちゃんが聞いてしんぜよう」

 

「今の俺は神乃さんを一撃で粉砕できるほどの闇を抱えていますよ」

 

「闇を抱えているのなら誰かにぶちまけるのが良いんだよ」

 言葉が不穏なんですが…

 

「これは俺の問題だから良いですよ」

 

 そうして店を後にする。

 

 結局食わず終いだな。

 

 とりあえず今日もカップ麺と適当に弁当でもと思ってコンビニに入ると

「んー?」

 あ、そうだった。

 

「おーゆーや君いらっしゃい。どうしたのかなー?わざわざ私のシフトに合わせて来るなんて…は!?まさか私が恋しくなった?それならそうと最初から言ってくれれば」

 

「何1人で()うて自分で解決してんだ。それと別にこの時間に俺が来たのは偶然だ」

 そう言って俺はパーカーのポケットに手を入れながら歩いていく。

 

「それにしても珍しい格好してるね。パーカーなんて」

 そう。俺は普段パーカーなんて着ないのだ。だが今俺は着ている。

 

 俺は過去一度だけ俺はこの格好で外を出歩いた事がある。

 それは七海が事故にあった直後だ。

 

 俺は意識してこの格好をしている訳では無い。無意識だ。

 どうやら俺は心が落ち込んでいると無意識にこの格好をしてしまうようだ。

 

「まぁとりあえずこれ」

 と俺はカップ麺を4個レジに置く。

 

「はい1160円でーす」

 そして俺は1200円を取り出して渡す。

 

「はい。1200円のお預かりです。40円のお返しです」

 そして受け取った40円を財布にしまう。

 

 そしてレシートはどうするかと聞かれたから俺は断る。

 最近コンビニによく来てるからレシートがたまるから俺は貰わないようにしている。

 

 そして帰ろうとしたその時

「今日は時間も遅くなっちゃったしコンビニで済ませようか?」

 

「うん。わかった。あ!お父さん!あの鮭おにぎり食べたい!」

 聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

 この声は確実にあいつらだな。

 

 俺は反射的に棚に隠れた。

 

 そして商品を選び終えたのか如月とあいつらの声が聞こえてくる。

 

「ありざした〜」

 なんか気の抜けた「ありがとうございました」だな…

 

「どうしたの?急に隠れたりして…あの人達と関係あるの?」

 あの人たちは今、俺が一番会いたくない家族だよ。

 

「まぁ、あの子の父がな俺の親父の兄さんなんだよ」

 

「へーって事は」

 如月も分かったみたいだな。

 

「そう。つまりあの子は俺の…所謂(いわゆる)従妹(いとこ)だ」

 

「可愛い従妹さんじゃ無いですかー…でもなんで隠れることにそれが繋がるんですか?」

 そう聞かれて回答に困った。でも俺は口を何とか開いてこう言った。

 

「なんか…さ、色々とこっちにも話しづらい状況ってのがあるんだよ」

 そう言って俺はカップ麺の詰まった袋を持って立ち上がる。

 

 実は父方の家族とは仲はそこそこ良い方なんだ。

 

 母さんと別れた後も何度か会ってるしな。

 

 そして従妹は俺の事を本当の兄のように(した)ってくれている。きっと本当の兄が居ないからだろう。

 

 でも、だからこそ俺は会いにくくなってしまっているのだ。

 暫く会ってないから積もる話もあったり久々に従妹とまったりと話したい気持ちはあるが今はダメなんだよ。

 

「んじゃ、気をつけて帰ろよ」

 そう言って手を振ると

 

「え?送ってくれるんじゃないの?」

 

 そう来ると思ったよ。

 

 正直、如月の家の方面とあいつらの家の方面って被ってるから正直行きたくないんだけど…

 ばったり会うかもしれないし。

 

「なんか今日のゆーや君の声に覇気が無いけど…何かあった?話ぐらいなら聞くよ」

 

「そうか…そんでもって話聞いてどうするつもりだ」

 

「悲しい話しなら私の胸ぐらいなら貸すよ」

 いや、彼女でもない女の子の胸に飛び込んで泣くなんてそんなの出来ねーよ。

 

「まぁ良いや。あんまり他人にする話でもねーけどお前なら大丈夫だ。それに話したら気が紛れるかもしれないしな」

 そして俺は久々に如月を送っていくことになりました。




 はい!第57話終了

 どうでしたか?今回は

 優也が落ち込んでいるのは一目見れば分かるくらいです。
 そして夕香と咲桜が励まそうとしてましたね!

 そして従妹の存在が明らかに!?

 これからどうなって行くのか?

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第58話 従兄妹

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 色々あって如月を送っていくことになった。



 それではどうぞ!


side優也

 

 俺は携帯を見ながら如月が出てくるのを待っていた。

 

 多分今俺は他人から見たらパーカーでフードを被ってる変質者だろう。

 

 だが俺は如月を待っているだけだから別に気にしない。

 

「お待たせー」

 やっと如月が出てきた。

 

 着替えに何分かけてんだよ。

 

「待ったー?」

 

「ああ、待った」

 

「そこは待ってないって言うところだよ?」

 

 え?何今の俺が悪いの?

 と言うか如月とはそんな関係じゃないし

 

「何彼女みたいな事言ってんだ?俺はお前に告ったり告られたりした記憶はねーぞ」

 呆れながら言う。

 

「え!?私とは遊びの関係だったの?ショック~…シクシク」

 シクシクって言う人初めて見た。

 

 と言うか遊びの関係ってなんだよ。俺はお前とそういう事をした記憶はないぞ。

 

「じゃあ歩きながらでいいから何があったか教えてくれる?」

 

「ああ」

 

 俺は話し始めた。

 

 そして父さんが事故で亡くなった事も伝えた。

 

「そうかー。ゆーや君は辛かったんだね。よしよし」

 と頭を撫でてくる。

 

 なんかこいつに頭を撫でられんのは屈辱的なんだが!?

 

「それでゆーや君はどうしたいの?」

 

「どうって」

 

「このままじゃ…ダメだって分かってるんじゃー無いかな?」

 ああ、分かっている。

 このまま自分の殻に引きこもっていたらダメだって

 

 でも、怖いんだ。また他の誰かが事故で死ぬのは

 

「なぁ、俺は弱虫だ」

 

「知ってる」

 

「俺は世話してくれる人が居ないと自堕落な生活を送るロクでなしだ」

 

「知ってる」

 

「そんな俺でも未来を見て歩んでも良いのかな?」

 

「良いんじゃないかな〜?」

 いつもの調子でニカっと笑う如月

 

 こいつのお陰で元気が着いてきたかもな。

 

「ありがとな如gグボワッ」

 急な後ろからの衝撃により俺の体は地面に沈んで顔面を強打する。

 

「痛い…」

 そして漸く俺は抱きつかれていることに気がついた。

 

 何?通り抱きつき魔?

 

「お兄ちゃんだ!」

 うん。間違いない。俺が最も危惧(きぐ)している状況になったわけだ。

 

 その時前方からパシャっとシャッター音が聞こえてきた。

 

「何取ってるんだ如月」

 

「ん〜?幼い女の子にお兄ちゃんと呼ばせて興奮してる性犯罪者の姿を収めておこうかと思って」

 

「何言ってんだよ。さっき会った子だろうが」

 

 そんな簡単に性犯罪者に仕立てあげられてちゃたまったもんではない。

 

「よく見てみれば…そうか従妹さんか〜」

 よろしくねと握手を求める如月だったが拒否されたのか、ガーンと言う効果音が似合いそうな顔になっていた。

 

「お兄ちゃんはボクだけのお兄ちゃんです。誰にも渡しません。お兄ちゃんと結婚するのもボクです」

 可愛いやつなんだが、独占欲が強すぎんのが偶に傷だよな。

 そのせいでよく七海と喧嘩してたっけ?

 

「と言うか萌未、そろそろ離れてくれ。重い」

 

「ボクの重みは全部お兄ちゃんへの思いなんです」

 

「どっちでもいいから早く離れろ」

 そう言うと渋々背中の人物は俺の上から離れてくれた。

 

「お兄ちゃんお久しぶりです!」

 と俺の前で見事な敬礼を見せてくれる。

 

 しかし当たりが真っ暗であるからしてよく見えないのが事実である。

 

「如月。紹介するよ。こいつが俺の従妹、萌未(めぐみ)だ。俗に言うボクっ娘って奴だ」

 

「ボクはお兄ちゃん以外に女として、性的対象者として見られないようにボクって言ってるんです」

 

「その言い方だとゆーや君には性的対象者として見られても良いように聞こえるんだけど?」

 

 すると堂々と胸を貼ってこう言い放ちやがった。

 

「ボクの体は全てお兄ちゃんに捧げる覚悟です!つまりはそういう事です。さぁお兄ちゃん。今すぐボクの部屋に行って人前では言えないことを!アウっ」

 俺は萌未の頭をチョップして言葉を言い切る前に止めさせた。

 

 こいつしばらく見ない間に変態度がアップしてる気がする。

 

 それで俺が本当にケダモノになったらどうするつもりなんだか…こいつの事だから喜びそうだから言わないが

 

「お兄ちゃんは冷たいです!もっと妹には優しくしてもいいと思うんです!」

 

「誰が妹だ。お前は従妹だ」

 

 そしてまたチョップするとまた「アウっ」と言った。

 

「そんで萌未。こいつが俺のば」

「お兄ちゃんの彼女さんですか」

 食い気味に言ってきやがった。

 

 ちょっと萌未さん?なんでそんなゴミを見るような表情でこちらを見てきてるんですかね?

 

「違う!この人はば」

「そうなんだよ萌未ちゃん。私とゆーや君は付き合ってるのだよ。よく気がついたね」

 

「はい。すぐ分かります。それにしてもお兄ちゃんは酷いです。ボクと言う女が居ながら」

 ダメだこいつら…ツッコミが追いつかない。

 

 このままじゃ父さんに逢いに行く事になってしまう。

 

「とりあえず、酒田さんはどうした?今日は一緒じゃないのか?」

 

否定はしないんですね。ボクが走ってきただけなのでお父さんはもうすぐで来ると思いますよ」

 

 そうか…とりあえずあと数分耐えればこの地獄から逃れられるのか。

 

「もうすぐで来るのか…そうかそうか」

 

「やけに嬉しそうですねお兄ちゃん。もしかしてボクと一緒に居たくないんですか?」

 全くその通りと言いたかったが言ったらまた面倒くさいことになるのは目に見えているため答えに困っていた。

 

 如月の奴…面白がってやがるな。

 

「お兄ちゃん!答えてください!」

 声を張り上げてきた。

 

 その姿はまるで浮気を問い詰める奥さんみたいだった。

 

「そんなわけないじゃないか。俺は萌未の事が…従妹として好きだぞ?」

 あのままただただ好きだと言ったら面倒くさくなるような気がして直前で踏みとどまって従妹としてを付け加えた。

 

「そうですか!それなら今から式場探しに行きましょう!晴れて私達は相思相愛になれたのですから!」

 

「いや、相思相愛ではなく従兄妹愛なんだが?」

 

「…図りましたねお兄ちゃん!今日こそボクは怒りましたよ!「あ、ボクに戻った」お兄ちゃんをお持ち帰りする事に決めました!」

 と言うかなんでこんなに俺にこいつは固執してしてるんだ?

 

「止めなさい」

 と俺の手を握ろうとした萌未の手が第三者によって離される。

 

「すまない。いつもうちの萌未が…」

 その人物は酒田さんだった。

 

 酒田さんのフルネームは絆成 酒田(さかた)。この萌未の父であり、父さんの兄である。

 

「いえいえ」

 

「今度うちに来てくれ。お詫びを兼ねて今度何かご馳走するよ」

 

「ははは、考えておきます」

 俺の考えておきますは大抵NOの返事になる。

 

 まぁ行けたら行くみたいな感じだ。

 

 何故断るかと言うと萌未にまた絡まれるからである。

 

「それじゃあね。優也君」

 

「さようなら!お兄ちゃん」

 そして嵐の様な家族は帰って行った。

 

「ありがとねゆーや君。私もここで良いよ」

 

「ああ、わかった。じゃーな」

 そして返事を聞かずに俺は帰った。




 はい!第58話終了

 今回は萌未とその父、酒田が出てきました。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第59話 体育祭

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 従妹に会った。終わり



 それではどうぞ!


side優也

 

 ついに体育祭本番。

 

 俺は憂鬱になりながら選手席に座っている。

 

 既に開会式は終わっていて、もう何グループか走っている。

 

 ちなみに俺はまたもや障害物競走だ。

 

 くだらん…

 

 ちなみにこの障害物での強制失格システムは恒例らしく今年もあるんだとか。

 

 露木ちゃんは100mになったのか。

 

 とりあえず寝よう…眠い…

 俺の出番が来るまで寝てても問題は無いだろう。

 

 その時

「ゆーや君」

 なんか聞き覚えのある間延びした呼び方で呼ばれた。

 

「なんでお前が居るんだ如月?学校はどうした」

 と目を閉じたまま問いかけた。

 

 実はこの体育祭は平日に開催されているのだ。

 

「ふふーん。実はこっちは開校記念日で休みなのだよー」

 

 なるほどそういう事か…

 

 因みにこの体育祭は自由に見学できるため、如月は来たのだろう。

 

「しっかしゆーや君は緩み切ってるね〜」

 緩んでるんではない。体力の補充だ。

 

「お前は俺に構ってていいのか?」

 

「うん。私はゆーや君を見に来ただけだからねー」

 

 そうかそうか。それはご苦労だったな。

 

「んじゃ俺は寝る」

 

 そして完全に寝る体勢に入る。

「ゆーちゃん膝枕してあげたら?」

 

「ふぇっ!?」

 とちょうど帰ってきた結羽に如月が結羽に話をふる。

 

 ちょっと戸惑いの声色だったぞ。

 

『走り幅跳び、本田君失格』

 あいつ踏切を失敗したのか。

 

「よ!優也…って優也の周りの女が増えた!?」

 あつしが来た。

 人聞きの悪いことを言うな。

 

「私は如月 咲桜。よろしく〜」

 

「俺は童明寺 あつしだ」

 

「じゃああっくんだね」

 

 いきなりあだ名かよ。最近の女子高生マジパネェ。

 

 そしてついに休憩時間になった。

 

 ちなみに俺の飯はここに来る前に買っといた照り焼きバーガーのみだ。

 照り焼きバーガーって美味いよな?異論は認めん。

 

「え?優也それだけ?」

 結羽は驚いた様子で言ってきた。

 

 確かに物足りない感じはするが足りないってわけじゃない。

 

「ああ、そうだが」

 

「そうなんだ…じゃあ弁当作りすぎたんだけど要る?」

 そうか…まぁ貰えるもんは貰っとけとじいちゃんの遺言が…あ、じいちゃん死んでねーわ。

 

 実はこの間の葬儀の時に会ったばかりだ。

 

 実の息子が死んだというのに涙ひとつ見せなかった強い人だ。

 ばあちゃんは…なんと言うか…うん。見てもらえれば俺が言いたいことは全て伝わる。

 

「じゃあ貰おうかな」

 

「わかった!」

 そう言うと自分の弁当の蓋に幾つかおかずを取り分ける。

 

「はい。結羽」

 

「ああ、ありがとな」

 そう言って結羽から受け取る。

 

「あのさ〜。あの二人の関係って普通の友達って感じじゃないよね〜?」

 如月が茶化すような声色で言ってきた。

 

「まぁ、友達ってよりはなんか…恋人だよな」

 俺と結羽は恋人じゃないぞあつし

 

「友達以上恋人未満…かな?」

 そしていつの間にか合流していた白井さんも会話に参加してくる。

 

「みんなしてなんでそんなに俺と結羽の関係に疑いを掛けてくんだ?」

「普段の行いのせいだ」

 俺が問うとこれまたいつの間にか合流していた悠真に即答される。

 

 そんなに疑いを持たれるような行動をしたかな?

 

「とりま応援するよ」

 

「おい。何について応援するのか詳しく聞こうじゃないか」

 俺と結羽はそんなんじゃないってのに

 

 そして結羽から貰ったおかずを食べる。めちゃくちゃうめぇ。

 

 久々の手作り料理だ。これが美味すぎる。

 

 家庭で作った料理は最近の食べてなかったから感動だ。

 

「なんで泣いてるの?」

 如月は若干引いているようだ。

 

「まともな食事は久々で」

 

「思ったより重い答えだった!」

 如月は驚きすぎて仰け反ってしまった。

 

「またカップ麺ばかり食べてたの?」

 ちょっと強い口調で結羽が問いただしてきた。

 

「はい」

 

「全くもう…全くもう」

 

 そして昼飯を食べ終えた。

 

『そろそろ障害物競走を始めます。選手の皆さんはお集まりください』

 

 ちなみに去年ので分かったが生徒会の技術力は高い。その技術を他のものに使って欲しいと思うのは俺だけでは無いはずだ…そう思いたい。

 

「んじゃ行ってくるわ」

 

 みんなに送り出されながら行った。

 


 

『それでは障害物競走第二学年始めます』

 第一学年でゴールしたものは居なかった。

 

『よーいドン!』

 の合図で他の人達は(・・・・・)一斉に走り出した。

 

『おおっと絆成君微動だにしない!一体どうしたというのか!?』

 そう。俺は動かない。

 

 すると俺以外の奴らが一斉に落ちた。

 

『絆成君以外失格!』

 それを見てから俺はゆっくりと歩き出した。

 

 全ての障害物を避けて。

 

 落とし穴はジャンプ、平均台は一切バランスを崩さない。壁が出てきたら直前で立ち止まり、ボールは安定感抜群。

 

『ゴール!なんと絆成君は全ての障害物をいとも容易く突破してしまいました』

 

 もうパターンは分かっている。無駄だ。

 

「お、おい優也。お前スゲーな」

 

「最初動き出さなかった時はどうしたのか思ったけど。ああなることが分かってたの?」

 

 そう。生徒会はそういうやつだと分かっていたからこそあんな奇行に走ったのだ。

 

 最初の落とし穴は横一列に並んでたからな。

 

 この後リレーをやったものの順位は真ん中という反応しにくい順位だった。

 

 そんなこんなで俺達の体育祭は終わった。




 はい!第59話終了

 今回はかなりクオリティの低い体育祭でした。以前の方がまだ良かった。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第60話 尾行

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 体育祭。

 そこで色々な種目をやる優也達。

 障害物競走にて一斉に脱落する中、優也はトラップの位置を全て把握してるかのような動きで障害物競走を完走した。



 それではどうぞ!


side優也

 

 体育祭から数週間後、期末テストが行われた。

 

 いつも通りに点数を取っていつも通りの順位かと思ったら。

 

 国語57点、数学85点、社会62点、理科60点、英語50点と言う散々な結果だった。

 

 多分精神面が色々あって俺は気持ちが落ち込んでいたのだろう。

 

「ちっ」

 俺は舌打ちをしてテスト用紙をクシャッと握りしめた。

 

 久々だ。

 

 順位は真ん中くらい。屈辱的である。

 

「優也!」

 結羽が駆け寄ってきた。

 

「今回は良かったよ」

 とテストを見せてきた。

 

 数学以外は俺は数点とはいえ上回っていた。

 

「そうか。良かったな」

 俺はそう端的に言った。

 

 こんなんじゃ無いだろ。俺は俺の理想は

 

 医研に入って七海の治療法を探して…

 

 そして俺はテストを破りゴミ箱に捨てた。

 


 

side結羽

 

 やっぱり元気がない。

 

 優也は何も言ってくれないし先生も勿論何も教えてくれない。

 

 どうしたんだろう。

 

「何があったか知りたい」

「そうだよね」

「うわぁっ!」

 真横から急に声がした。

 

 そこには神乃さんと女の子が居た。

 

「露木ちゃんも気になるよね」

 

「し、知りません。あんな強○魔なんて」

 優也。この子に何したの?優也はそんな人ではないと信じたいんだけど!?

 

「露木ちゃん。なんだかんだ言って心配してたもんね」

 神乃さんがそう言うと露木ちゃんと呼ばれている女の子の肩がビクゥっと跳ねた。

 

「お姉ちゃん!」

 

「絆成君とは目を見て話せるもんね」

 

「ち、違うんですよ!あれは……その……そうです!人として見てないから話せるんですよ!」

 いや本当に優也何したの!?

 

「それはさておき」

 

「置かないでください!」

 

「とりあえず尾行しよう!」

 はぁ……白波さん第二号現るだよぉ。

 

「全くもう……お姉ちゃんは全くもう……」

 と文句を言いながらも着いてくる露木ちゃんは可愛いなと思う今日この頃なのです。

 


 

 とりあえず優也に着いてきてしばらく経った。

 

 何故か優也は直線で帰らずに遠回りして歩いている。

 

 すると横道から飛び出してきた女の子に抱きつかれて押し倒された。

 押し倒された!?

 

「あの子とどういう関係!?」

 

「きっとあーんな関係よ」

 私たち二人で小声で話していると隣で「あ、あんな……」と言いながら顔を真っ赤に染めている露木ちゃんが居た。

 

 すると遠くでよく聞こえないが言い争っているようで、優也が女の子を引き離そうとしている。

なんなんだこの馬鹿力は!?

お兄ちゃんへの愛ゆえにです!

なんだその謎の設定!?聞いた事ねぇぞ!?

 なんか遠すぎてよく聞こえないけど、優也が女の子に対してツッコミを入れているのは何となくわかる。

 

 そして諦めたのか女の子に抱きつかれながら歩きにくそうに優也は歩き出した。

 

「どういう関係なんだろう」

 

「これは事件の臭いがします。やっぱりああいう人だったんですね。人目見て私は気がついてました。これはやる人だと」

 なんでそう思ったの?

 優也は別に遊んでるようには見えないけど。態度は素っ気ないし、ノってくれるのはつっこむ時だけだし……

 

「これは探る必要があるわね」

 

 そして暫く歩くと急にピタリと足を止めてしまった。

 

 何をやってるんだろう?と思ってると急に女の子をお姫様抱っこで抱えて走り出した。

「は、走り出した!?」

 

「もしもし?警察ですか?近くに性犯罪者が……」

「そんなことやってる場合じゃないよ」

 と神乃さんも露木ちゃんの首根っこを掴んで走り出した。

 

「待ってー!」

 私も走り出す。

 

 そして至る所をジグザグに走り抜けて行って、いつの間にか優也に撒かれていた。

 

「撒かれちゃったな〜」

 

「きっと今頃お楽しみなんですよ」

 なんでこの子、こんなに優也に対して毒舌なの!?

 

「多分照れ隠しね」

「私の心の声に反応した!?」

「勝手に決めつけないで下さい!」

 

 すると後ろから急に肩を叩かれた。

 

 そして私が後ろを見ると誰かの人差し指が頬に当たった。

 なんかこう言うの見たことがある。

 

 そして顔を見ると

「お前ら、何やってんだ?」

 優也だった。

 

 いつの間に後に!?

 

「と言うかずっと着いてきてただろ……はぁ……」

 とため息をつく優也。

 

 未だに腕に女の子が抱きついてる。

 

「なんですか。お兄ちゃんは遊び人だったのですか?ボクとの関係はその程度のものだったんですか」

 

「こいつの言う事は気にしないでやってくれ。こいつはただの変態なんだ」

 今優也お兄ちゃんって呼ばれてなかった?無視できないよその部分は

 

 お兄ちゃんって何?

 

「年下にお兄ちゃんって呼ばせて興奮するなんてとんだ変態さんですね。それは私も予想外でした。そして手を出してるなんて、予想内でしたがそんな人であって欲しくなかったです」

「いや、俺そこまでクズじゃないからね!?」

 そ、そうだよね?び、ビックリした〜良かったよ。そんな人じゃなくて。

 

「と言うか俺のバイト仲間と同じ反応すんな」

 如月さんも同じ反応をしたんだ。

 

「こいつは萌未。俺の従妹だ。こいつが勝手にお兄ちゃんと呼んできてその癖俺への好意をストレートに伝えてくる変態ボクっ娘だ」

 

「だからボクはお兄ちゃん以外に女性として、性的対象者として見られないようにですねぇ」

 

「おい!」

 

「それって絆成君にならそういう風に見られてもいいってこと?」

 

「そうです!さあお兄ちゃん!早速ボクの家に帰って熱い夜をアウッ!」

 あ、萌未ちゃんにチョップした。

 

「なーに馬鹿な事を言ってんだ」

 

 優也も大変だなぁ。

 

「じゃあちょうどお兄ちゃんの家の前なので上がって行っていいですか?」

 

「良いがお前と二人きりだと色々な意味で身の危険を感じるからお前らも来るか?」

 

「ねぇっ!それってどういう事!?」

 優也の腕を掴んで揺らす萌未ちゃん

 

「お前、二人きりだと襲ってくるだろ」

 

「ぎくっ……そ、そんな事しないよ」

 

「現にあったから信用出来ねぇ……何年か前に泊まった時お前、俺の部屋に侵入してきて下着姿で俺に覆い」

「わー!わー!わー!それ以上言ったら私が変態だと勘違いされてしまいます!」

 もう手遅れというか勘違いじゃなくて確実にそうなんだよね。

 隠す気無いでしょ。

 

「とりあえず俺を守って欲しい」

 

「私達が襲うとは考えないの?」

『おそ!?』

 私と露木ちゃんの驚いた声が被った。

 

 そして顔が赤くなっていくのを感じる。露木ちゃんもほんのりと顔が赤くなっている。

 

「少なくとも俺を嫌ってる露木ちゃんはそんな事しないだろ」

 

「あ、当たり前です」

 慌てて声を出したせいか一瞬声が裏返ったような気がした。

 

「それなら頼むわ」

 

「まぁ、変態強○魔の言うことを聞くのは癪に触りますが、この変態に皆さんが襲われないかが心配なので私もついて行きます」

 

 そして私達は久しぶりに優也の家に上がり込むことになった。




 はい!第60話終了

 かなり今回も露木が暴走してましたね。そして萌未も別の意味で暴走してましたね。なんてこった。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第61話 隠し通さなきゃいけないものがそこにある

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 テストの点数がいつもより悪かった優也。それを周りに隠しとおそうとしたものの結羽はその様子を見て心配する。

 そこに夕香と露木が来て優也を尾行する事になる。

 しばらく尾行すると優也に抱きつく萌未を見てしまう。

 そして優也に尾行してる三人は見つかってしまうが、萌未のせいで話がややこしくなってしまう。

 そして優也が萌未に襲われないように結羽達も同行することになったのだった。



 それではどうぞ!


side優也

 

 久々に人を家に上げるな……

 

 そして扉を開けた瞬間、俺だけ入って鍵を閉めた。

 

「開けてー!」

 と言う声が外から聞こえるが、こんなの見られたら結羽に説教されてしまう。

 

 あれだけカップ麺ばかり食べるなと言われていたのにテーブルの上には片付け忘れた大量に積み重なったカップ麺の空がある。

 

 参ったな……と頬を掻きむしる。

 

 こんなにどうやって隠すかどうか……

 

 とりあえずこれだけは何とかしないと

 

─※─※─※─想像─※─※─※─

 

「ゆーうーやー?」

 

「や、止めて!?ニコニコしながら近づいてこないで?」

 

 物凄い笑顔なのだ。だがその笑顔がとてつもなく怖い。

 

「正座!」

 

「はい!」

 俺は音速を超えたスピードで正座する。

 

「これ……何?」

 テーブルの上に積み重なったカップ麺の空を指さす結羽。

 おっそろしく低いトーンだ。

 

「はい。私めが食したカップ麺達でございます」

 俺は物凄く丁寧な口調で説明する。

 

「これ、全部?」

 

「はい」

 

「優也……私、約束守れない人……嫌いなんだよね」

 そう言って玄関を出ていく結羽。

 

「さすがに私も約束を守らないのはどうかと思うな……」

 そして神乃さんまで

 

「変態でクズのせ、ん、ぱ、い?さようなら」

 露木ちゃんも神乃さんの後を追って出ていってしまった。

 

「お兄ちゃん。それはちょっとボクでも許容できないかな?」

 そしてあの萌未ですら俺から離れて行ってしまった。

 

 最終的に4人とは絶交……もう二度と話すことも無くなった。

 

─※─※─※─想像 終─※─※─※─

 

 ってな事になるに違いない!

 

 そんな事になったらもう二度と立ち直れなくなる自信がある。

 

「お兄ちゃん!ボクはエッチな本があっても気にしないから」

 

「無いから!」

 大声で慌てて否定する。

 

 そんな疑惑をかけられちゃたまったもんじゃない。

 

 その直後

「しょうがないなぁ」

 と言う声が聞こえてガチャと言う嫌な音が聞こえた。

 

「お兄ちゃん!お邪魔します!」

 入ってきたァ!

 

 どうやったかは知らんが鍵が開いてしまった。

 

「い、良いのかなぁ?」

 

 そして俺は早い方が良いと思い、玄関までものすごい速度で走っていってジャンピングDOGEZAをした。

「すいませんでした!」

 

「え!?どうしたの」

 皆に当然の如く驚かれる。

 

「本当にすみませんでした」

 「頭を上げて」や「なんで謝るの?」とか言われたが謝罪するのを止めない。

 

「ふーん。絆成君は私達に見られてはいけないものを隠し忘れてたんだね?」

 本当にその通りです。

 

「か、隠さなきゃいけないもの……」

 なんで露木ちゃんは頬を染めてるんですか?そういう物じゃないですよ?

 

「ほ、本当なの?優也」

 

「い、いえ……決してそのような事は……」

 そう言うが全然良くないです。

 

「なら良いよね?」

 良くないです!

 

「そして俺をスルーして皆はリビングへ行ってしまった」

 終わった……そう思った。

 

 しかし

「優也。いつまでも何してるの?」

 放たれたのは説教の言葉ではなく疑問だった。

 

 恐る恐る俺もリビングへ向かう。

 

 すると何と言うことでしょう。テーブルの上にあったはずのカップ麺の空が綺麗さっぱり無くなっているではないですか。

 

 どういう事なんだ?と驚いていると携帯がなった。メールだ。

 

『件名 愛しのお兄ちゃんへ』

 萌未か。

 

『この借りは明日のデートで良いですよ。ps,その後、私をお持ち帰りしてもいいんですよ♡』

 俺は文面を読んでそっと携帯をしまった。

 

 面倒なやつに借りを作っちまった。

 

 多分カップ麺の空を俺が土下座して時間を稼いでる間に萌未は侵入して片付けたんだろう。

 

「まぁ俺ん家に来たのは良いけど……萌未は何しに来たんだよ」

 

「明日休みなので泊まらせてください!」

 

「お帰り願います」

 さすがにそんな時間まで皆にはボディーガードは頼めないし、悠真なら泊めてもいいんだけど恐らくだが「クールな男は空気を読んで丁重にお断りすることにするぜ」とかなんとか言って来てくれない気がする。

 

 かと言ってボディーガードが居ないと確実に襲われる。

 

 でも年頃の女の子を何人も泊めた暁には社会的に死ぬような気がする。

 

「ダメだ」

 

「お兄ちゃん。良いでしょ?カップ麺……

 囁いてきた。

 こいつ、ここまでして泊まりたいか!?

 

 しょうがない……目には目を脅しには脅しを

今日泊まるか明日デートするか選べ

 そう言うと

「どっちも惜しい!」

 どっちかって言ってるだろ。

 

「とりあえずコーヒーを入れてくる。萌未は緑茶で良かったよな」

 

「あ、はい」

 その返事を聞いてキッチンに向かう。

 


 

side結羽

 

「萌未ちゃん、コーヒー飲めないの?」

 私がそう聞くと萌未ちゃんは首を縦に降った。

 

「はい……昔からあの味がどうしても苦手で……」

 そうだったんだ。

 

「露木ちゃんもお茶にしてもらわなくても良かったの?」

 とニヤニヤしながら神乃さんは露木ちゃんに聞いた。

 

「大丈夫です!私は大人ですから」

 と胸を張る露木ちゃん。

 

 そして自分の胸を見る。

 

 ま、負けた……年下に負けた……

 

 そして私が落ち込んでると神乃さんが何かを思い出したかのように「あっ!」と言ってからこんな事を言ってきた。

 

「露木ちゃんと結羽ちゃん。自己紹介したっけ?」

 その言葉に同時に首を横に振る。

 

「じゃあ自己紹介したら?」

 

「そうですね。私は柴野 結羽。よろしくね」

 と微笑みかける。

 

「あ、あの……私は……その……」

 

「ごめんね。この子人見知りで……知らない人と話すのは苦手なんだよね。ほら露木ちゃん。深呼吸」

 そうだったんだ。でも優也とはなんか普通に話せてたね。

 

「ひっひっふーひっひっふー」

 なんでラマーズ法?

 

「わ、私は……神乃 露木……です。あの……よろしくお願いします……

 徐々に声が小さくなっていってる。

 

 最後の方はほとんど聞こえなかった。

 

 でも可愛いから許す!

 

「露木ちゃん。よろしくね」

 

「ひっ!」

 ガーン……手を差し出したら逃げられた。ショック

 

「何やってんだ結羽」

 床に手をついて落ち込んでいたら不思議なものを見るような目で優也に見られた。

 

「まぁ出来たぞ。砂糖はお好みでどうぞ」

 

 そんな感じで久しぶりに優也の家に上がったのでした。

 

 あれ?なんか棚の上に不自然に置いてあるダンボールが落ちそうなんだけど……

 

 すると予想通り落ちてきて中身がばらまかれた。

 

 それを見て萌未ちゃんは目を逸らした。

 

 優也はそれを見てコーヒーを吹き出してしまった。

 

「優也。これ……どうい」

 私が言い終わる前に優也は土下座した。

 

 その中身は大量のカップ麺の空だった。




 はい!第61話終了

 今回も優也視点と結羽視点両方ありましたね。

 さてこの後どうなるのでしょうか!?

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第62話 大ピンチ

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 結羽達を家に招いた優也はテーブルの上に積み重なったカップ麺の空を発見し焦る。

 そして優也がDOGEZAをしている間に萌未がカップ麺の空を片付けた。

 それで一件落着かと思ったが……

「優也。これ……どうい」
 カップ麺の空が見つかってしまった。

 果たしてどうなってしまうのか?


side優也

 

 俺は現在結羽に土下座をしていた。

 

「これ……あまりこういうのばかり食べてちゃダメだって言ったでしょ?」

 

「すみません。すみません。すみませーん!」

 何度も謝る。床に必死に頭を擦り付ける。

 

 必死だった。

 

「え、あ、その……」

 予想外だったのが俺の必死の謝罪に対して結羽が驚いているということ。

 

「いつもツッコミ担当で人に強い態度を取って決して人に頭を下げないあの絆成君があの伝家の宝刀DOGEZAをなさっている!」

 本当ならここで人聞きの悪いことを言うな!とツッコミたい所なんだが、俺の謝罪は本気だ。ここでつっこんだら負けだと必死に堪える。

 

「あ、あの絆成君がつっこんでこない!?」

 神乃さん。少し静かにしていてもらっていいですかね?もうそろそろ我慢の限界だ。

 

「つ、露木ちゃん。絆成君が病気みたいだよ!」

 

「そうですね。明日空から槍でも降ってくるんですかね?」

「さすがに失礼すぎだろ……」

 そんな言葉がぼそっと零れてしまった。

 

「お?ツッコミましたね。本業をやっと思い出しましたかな?絆成殿」

 その言葉を聞いて起き上がる。

 

「あーもう開き直って言っちまうけどよ!なんだよ人聞きの悪いことばかり言いやがって!なんだよ伝家の宝刀DOGEZAって!俺そんな変なもの伝家の宝刀にした覚えは無いんだけど!?それとなんだよ俺がつっこまないのはやばいみたいな雰囲気出しやがって!俺だってな必要な時は頭下げるし、場合によってはツッコミを我慢すんだよ!それとツッコミを職業にしてる訳じゃないからな!お前らが欲しがってきてるんじゃねーかよ!特に神乃さん。何度も何度もあんたはボケなきゃ死ぬのか!?あんたはマグロか!?」

 言い切ってツッコミ疲れしてしまう。

 

 でもこれで謝る雰囲気じゃなくなってしまった。

 

「優也。私は怒ってます」

 でも結羽に睨まれると萎縮してしまう。

 

 蛇に睨まれた蛙みたいだな。

 

「なぜ怒ってるでしょうか」

 

「……えーと……偏った食生活をしているから?」

 

「正解」

 

「で、でもでも!朝はパンとか食ってる……し!」

 物凄い笑顔でこっちを見てきた。

 

「昼は?夜は?」

 だがその笑顔が逆に俺の恐怖心を駆り立てる。

 

「すみません」

 

「やっぱり……」

 そう言ってむーと頬を膨らませた。

 

 少し可愛いなどという完全に場違いなことを考えていた。

 

「それよりボクが泊まるか泊まらないか問題はどうしたんですか!?」

 なんかあっさりバレたわけだし借りが崩れた。

 

 てなわけでデートの話ではぐらかす事はもう出来ないよな。

 

 でもまぁそれは置いておいて

「これからお前のあだ名はKYだ」

 俺の従妹のあだ名はKYに決定しました!パチパチ

 

「嫌だ!すごく嫌だ!」

 飲みかけていた緑茶を吹き出して掴みかかってきた。

 

「もういい。怒る雰囲気じゃなくなったし」

 そう言って出ていく結羽。

 

 も、もしかしてこれって……「私……約束守れない人って……嫌いなんだよね」って出て行ったんじゃ?

 

 わざとじゃ無かったんだ!

 

 俺がガックリと崩れ落ちると

 

「あ、私は帰るけど露木ちゃんは泊まっていく?」

 

「さすがに泊まったら身の危険を感じるので遠慮します」

 そうして二人も結羽同様出て行った。

 

 これもまた絶交ってやつなんじゃないかと最悪のシナリオを考えてしまう。

 

「さぁお兄ちゃん!やっと二人きりになれましたね」

 

「ああ、そうだなKY」

 

「その呼び方やめて!?」

 とまたもや掴みかかってくる。

 

 しかし直ぐにそれを突き放さないのが失敗だった。

 

 俺に超接近した萌未は俺の事を押し倒してきた。

 

「さぁ、始めましょう?人には言えないような事を」

 

「や、やめろぉぉっ!」

 その瞬間玄関が開いた。

 

 そしてそっちを見ると大きいスーツケースを持った結羽がそこには居た。

 

 え?絶交したんじゃ無かったの?

 

「し、仕方ないですから私がボディーガードとして泊まってあげても……って何してるの!?」

 た、助かったァ……

 

 それにより渋々萌未は俺の上から降りた。

 

 と言うか今泊まるとか言わなかった?

 

 すると萌未は俺の左腕に抱きついてきた。

「結羽さん。ボクのお兄ちゃんを奪う気ですか!?」

 

「いやちげーよ」

 

 そして結羽までもが俺の右腕に抱きついてきた。

「じゃあ私の」

 

「いやお前のでもねーよ」

 お前はせめてまともであってくれ。

 

 抱きついてくるのやめろ。

 

 左右に抱きつかれて何も出来ないんだが……邪魔だ。

 

「い、いい加減離れてくれませんか?」

 しかし二人は一切動こうとしない。

 

「よーし。萌未はあれ片すの手伝ってくれ。結羽は……そうだな。最近カップ麺ばかりだったから久々に結羽の手作りの料理食いたい」

 適当に離れてくれそうな事をお願いする。

 

「「任せて(ください)!」」

 二人はそう言って結羽は台所へ、萌未はカップ麺の空が散らばった所へかけて行った。

 

 とりあえずこれで離してくれたから俺も萌未の所に行ってカップ麺の空を片付けようかな。

 

 そう思って立ち上がる。

 

 はぁ……先が思いやられる。

 

「んー。何作ろうかな……保存の効く食材しか無いね……この分だと買ってくる必要がありそう……優也!」

 急に俺の名前を呼んできた。

 

「なんだ?」

 

「あまり食材が無いみたいだから買い出し行ってくるね」

 そうか。ココ最近、買うものと言えばパンとカップ麺ばかりだったから食材が無いのか。

 それに料理してないから食材もダメになってきて徐々に捨ててからな。

 あるのは保存の効くインスタント麺と缶詰位なもんだもんな。

 

「ああ、そうか。んじゃ俺も着いていくよ。外も薄暗いしな。なんかあったら大変だろ」

 そう言って立ち上がる。

 

「と言うわけで萌未。留守番頼む」

 そう言うと萌未は大層驚いたような顔をした。

 

「ボクは!?ボクはどうでもいいの?」

 

「お前は誰かが侵入してきたとしても返り討ちに出来るだろ?」

 

「失礼な!?ボクだって女の子ですよ!」

 実際問題、萌未の方が俺より強い。確かこいつ、空手を習っていたはずだ。

 

「それにお前は俺以外の男になびかないってのは徹底してるから心配ねーよ」

 そう手をひらひらと振って出ていこうとする。

 

「留守番は甘んじて受け入れます。その代わり帰ってきたらボクを抱いてください」

 

「一年中発情期共の所に縄で縛った状態で放り込まれる覚悟があるなら聞いてやらんことも無い」

 

「すみませんでした」

 萌未は俺以外の男に性的対象として見られることを心底嫌っている。そこを着けば簡単に萌未を制する事が出来る。

 

「んじゃ行ってくるな」

 

「行ってきます」

 そして俺と結羽は朱色に染まる町へと繰り出した。

 


 

 買い物も終わり既に町は真っ暗になっていて街頭と家から出てる光が町を照らしていた。

 

「色々買ったが俺一人だと食いきれねーぞ?多分」

 そう言うと結羽は頭にハテナを浮かべてこちらを見てきた。

 

「え?一人?お父さんは?」

 やべっ!今の一言で結羽に勘づかれてしまった。

 

 どう言い訳したものか……

 

「ああ、父さんは出張で今は居ないんだ」

 

「目を逸らした!今絶対に目を逸らした。嘘だよね!?嘘を着いたよね!?」

 直ぐにバレてしまいました。俺って分かりやすいかな?

 

「ああ、嘘だ」

 

「なんでそんな嘘を着いたの?」

 

「それは……」

 まぁ他人に言うことでもないが、結羽を一概に赤の他人とは言えないしな。

 

「先日。父さんが死んだんだ」

 

「えっ」

 

「そんでさ……つい最近まで俺は落ち込んでたんだよな。あそこまでなるとは思えなかった……」

 そう言うと結羽が悲しそうな顔をした。

 

「んな顔するな。んじゃ、萌未待たせてるし帰るか。所で何作るんだ?」

 暗い雰囲気を変えるために話題を変える。

 

「あ、うん。今日はひき肉と卵が安かったから目玉焼きハンバーグでも作ろうと思ってるよ。付け合せにちょこっと野菜炒めを作るつもり」

 へー。確かにさっきひき肉と卵に値引きシールが貼ってあったな。

 

「それは美味そうだな。よし!こんな話をしてたら腹減ってきた。急ぐぞ!」

 と走り出す俺。

 

「あ、待ってって速い!ねぇ!なんかもんの凄く速くない?そのスピードおかしいよ!ねぇっ!」

 と抗議の声を上げながら俺の後を必死に結羽は走ってきた。

 


 

「はぁ……はぁ……」

 家に帰ったら結羽はもう既に肩で息をしていた。

 

「よし。萌未!帰ったぞ」

「なん……で、優也はあんなスピードで走ってたのに……息が上がってないの……はぁ……」

 とツッコミを入れてくるが俺の体に説明つかないことが起きているため無視する。

 

「おーい萌未ー」

 とリビングの扉を開くと

 

「お帰りあなた。ご飯にする?お風呂にする?それとも……わ・た」

 俺は言い切る前に扉を閉める。

 

「見てはいけないものを見てしまった。もしかしたら疲れているのか?」

 そして再度確認の為、扉をまた開く。

 

「お帰りあなた。ご飯にする?お風呂にする?それとも……わ」

「お前、何してんだ?」

 言わせねーよ最後のは

 

 でも夢でも幻でも無かったようだ。

 

「それより服着ろ服を」

 そう。萌未は今エプロンをしているのだが、その左右からは真っ白な肌が覗いている。

 

「ふ、ふーん。甘いよ。プレーンヨーグルトよりもあまーい!」

「そもそもあれは甘くないだろ……」

 俺は冷静にツッコミを入れる。

 

「って事はあれか?水着でも着てんのか?」

 

「ピンポーン!名ずけて……」

 そして横を向いて水着を見せつけるように立つ。

 

「デン!水着エプロン!」

 そのままじゃねーか。と言うか効果音自分で言うのかよ。

 

「と言うか水着の上からエプロン着るのがおかしい」

 

「え!?って事はお兄ちゃんは裸の方が良いと……待っていてください。今脱ぎますので」

「おい。そうじゃないそうじゃないから脱ぐなー。何でもいいから服着ろ服を」

 服着ろって言ったの二回目のような気がする。

 

「え!?まさか服を着たまま!?なんてだいたってお姫様抱っこ!?その方向はまさかお兄ちゃんの部屋ですか!?やっと認めてくれるんですかっ!?」

 俺はベットに萌未を放り投げて部屋のドアを外から鍵をかける。

 

 俺の部屋の鍵は内外両方鍵で開け閉めするタイプだから開けれないのだ。

 

「開けて!お兄ちゃん開けて!」

 その声を無視してその場を離れようとするとガチャと音がした。嫌な予感がする。

 

「開けてって言ってるじゃないですか!?」

 と叫びながら飛びかかってきた。

 

「危ない!落ちる落ちる!落ちるから!」

 俺の家は二階建てで、その二階に俺の部屋がある。そしてその階段を登ってすぐの所に部屋がある。

 

 だからそんな所で飛びつかれたら当然そうなるよね。

 

 俺は萌未と共に階段を転がり落ちる。

 

「いてて……」

 そう階段の下で呟いて仰向けの状態から起き上がろうとする。

 するとその上に萌未が乗っかってる事が分かった。そして目を回しているようだ。

 

 それなら好都合。萌未を下ろして退散すれば良いだけだ。

 

 そして何とかそれを実行して先程していたカップ麺の空の片付けを再開する。

 

 あまり気が付かなかったが結構量があったようだ。

 

「優也……もうすぐ出来るよ」

 

「ああ、ありがとな」

 

「二人がイチャついてる(・・・・・・・)間に作ってましたので運ぶのを手伝ってください。イチャついてる(・・・・・・・)間に作ったのでね」

 なんか会話の一部分が強調されてるように感じる。

 

「イチャついては無い。ウザイだけだ」

 

「でも素直に好意を伝えるって勇気があるよね」

 それは分かるが他の人にはああなっては欲しくないな。

 

「いつからなの?ああなったの」

 そう言えばいつからだっただろうか?

 

 そして思い出してみる。

 

「あ、そんな話をしてたらハンバーグ冷めちゃう。まずは食べよう?」

 そうしてまずは萌未を起こしてハンバーグを食べることにした。

 


 

「うん。美味い」

 

「ほんとですねお兄ちゃん。悔しいですが料理部門では結羽さんに勝ちを譲ります」

 とガツガツ目玉焼きハンバーグを食べる俺達。

 

「それなら良かった」

 とスローペースで微笑みながらハンバーグを口に運ぶ結羽。

 

「そう言えばさっきの話の続きだけどいつから萌未ちゃんは優也に好意を持つようになったの?」

 さっき気になったことを聞いてみることにした。

 

「そうだね。ボク達は前世から結ばれて」

「適当なこと言うな〜」

 萌未に任せると変なことを言い始めそうだから俺が説明する。

 

「そうだな……最初から変態だったわけじゃないけど、急にスキンシップが多くなった時期があったな」

 

 最初は軽いスキンシップ程度だったんだ。泊まったら普通の兄妹みたく一緒に風呂入ろうとか言ってきて、そこに七海が乱入してきて……ってな感じだったんだが……

 

 いつの間にかパンツが減っている時があったんだ。そんでもって萌未の部屋で遊ぶことになって部屋に行くと棚に何かが挟まって締まり切ってなかったんだ。

 そんで好奇心で見てみて思考が固まったね。

 

 そこにはぎゅうぎゅうに詰まった俺のパンツが詰まっていた。それを見た瞬間俺は危機感を覚えてしまったね。

 

 それから暫くして俺が泊まりに行くと毎夜寝込みを遅いに来たのだ。

 

「まぁ、こんな感じだな」

 気がつけば皿には何も無くなっていた。

 

 喋りながら食べていたからだ。あ、口の中に含みながら喋っては無いよ?マナーだからね。

 

「そんな事があったんだ……それは確かに怖いかも」

 結羽は若干と言うかドン引きのようだ。

 

 すると萌未は顔が赤くなっていた。

「あれ。見たんですか?」

 こいつが居たのを忘れてた。

 

 なんか地雷踏んだような気が……

「あ、ああ」

 

「夜は楽しみにしていてくださいね」

 そう言ってニヤッと不気味な笑みを浮かべる萌未

 

 それを見て恐怖した俺は「俺は自室に居るから隣の七海の部屋使ってくれ。くれぐれも萌未。俺の部屋の鍵開けて来るなよ」と伝えて自室に逃げ込んだ。

 


 

 あの後直ぐに眠ってしまった。疲れたのだろう。

 

 すると体に急に重みが加わった。

 

 目を開けてみるとそこには

 

「あ、お兄ちゃん。起きちゃった?」

 下着姿の萌未が居た。

 

「何してる」

 

「夜這い」

 最悪の回答が帰ってきましたよ!

 

 するとバタン!と扉が開いた。

 

「やっぱり居た!優也!今助けるね」

 結羽だった。

 

 よっしゃ!これで助か

「混ざっても良いよ?」

 へ?

 

「ふ、ふぇぇっ!」

 変な声を出しながらペタンと座り込んだ。

 

「どうするんですか?結羽さん」

 

「分かった」

 分からないで!お願いします!一生のお願いですから!

 

 すると結羽も近づいてきた。

 俺、一生のお願いを使っちゃったんだけど!?

 

 それを見た俺は萌未を上から下ろして脱兎のごとく逃げ出した。

 

 そして夜の町を駆け抜ける。

 

「助けてくれ」

 

「なんだ。こんな夜中に……久々に話す第一声がそれかよ」

 冷静につっこむ悠真

 

「で、お前は殺人犯にでも追われてるのか?」

 

「似たようなもんだ」

 

「え!?マジかよ!大丈夫か!?」

 

「危うく萌未と結羽に襲われるところだった」

 そう言うとゆっくり扉を閉めながら悠真は「帰れリア充」と言ってきた。

 

 そして扉の隙間に手を入れ込む。

 

「一生のお願いですから!一晩だけでいいんです!一晩だけで良いから泊めて貰えませんか!?」

 そして頭を下げ続けた結果、何とか許可が貰えた。

 

 これで俺も安眠できるってもんだ。

 

 今日は二人のことはもう忘れよう。明日またパンツが減ってるかもな……




 はい!第62話終了

 今日はいつもの3倍ものの長さがありました。

 そろそろ話数節約しないととんでもない長さになるような気がしまして。

 ピッタリ6000文字です。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第63話 精神的外傷(トラウマ)

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 カップ麺の空を見つかってしまった優也。

 それを全力で謝罪する。

 そして萌未によってお泊まり会をする事に……

 しかし萌未と結羽に襲われそうになって悠真の元へ逃げ込む優也なのでした。



 それではどうぞ!


side優也

 

 俺はあの時のトラウマを思い出していた。

 

「ねぇ。お兄ちゃん!起きて下さい!」

 その声の主に叩き起されて俺は眠い目を擦りながら体を起こす。

 

 その声の主を見てみるとそこには七海が居た。

 

「ん?なんだ。まだ9時じゃないか。もう少しお兄ちゃんを寝かせてくれ……すぅ……」

 そしてまた目を閉じて夢の世界へ

 

「こうなったら……」

 その言葉が聞こえた瞬間、嫌な予感がした。

 

「おにーちゃん!」

 

「ぐぼわっ!」

 急に七海が飛びかかってきた。

 

 それにより変な声を出して白目をむく。

 

「な、七海……少しは兄ちゃんを労わってくれ……」

 

「お兄ちゃんか早く起きないのがいけないんでーすよ。それに9時は"まだ"では無くて"もう"だと思うのは私だけですか?」

 的確なツッコミを入れてくる七海。

 

「所で七海。夏休みって物を知ってるか?夏休みってのはな」

「知ってるよ」

「そうか。お兄ちゃんはな今、夏休み期間中でだな」

「それも知ってる」

 二回も即答された。

 

 ならば言うことは一つしかない。

 

「お兄ちゃんの安眠を邪魔しないでくれ。安眠妨害反対……安眠妨害反対……

 そしてまた目を閉じると七海は出て行った。

 

 ふぅ……これで安心して眠れる。

 

 するとものの数分でまた戻ってきた。

 

「お兄ちゃん。口開けて〜」

 まぁそれくらいならと思って寝ぼけた状態で口を開けると何かが口に入ってきた。

 

「ん?んー。ん!?」

 何やら口の中に柔らかくてネチョネチョして水気があって味が薄いものが……

 

「んって……あー!」

 そして俺は部屋を飛び出してトイレに駆け込んだ。

 

 そこで全てリバースした。

 

「うう……気持ち悪い……」

 何を入れられたのかは見てないが大体わかる。

 

「目が覚めた?」

 

「覚めるを通り越してあのくそ(じじい)よりも先に曾祖父(ひいじい)さんの所に逝く所だった……」

 とぐったりしながら言うと七海が若干笑いを堪えてるかのように震え始めた。

 

「ったく……湯豆腐はやめろ湯豆腐は……思い出したらまた気持ち悪く……うっ」

 いかんいかん……思い出したらまた胃酸が逆流しそうだから違うこと考えよう。

 

「お兄ちゃん。昔から豆腐苦手だよね」

 

「七海。お前は間違えている」

 とちょっと中二っぽいポーズを取りながらこう言い放った。

 

「豆腐じゃなくて味が薄いもの全般だ!」

 キメ顔でそう言った。

 

「そこ威張れるところでもないですよー」

 と言いながら色々詰まったスーツケースを俺に手渡してきた。

 

「着替えと……それと歯磨き粉。バスタオルもこの中に入ってますからね」

 と説明してきた。

 

「ちょっと待て!なんだそのお泊まりセットみたいな中身は」

 

「え?お兄ちゃん忘れたの?」

 とキョトンと首を傾げる七海。率直に可愛い。

 

「今日は萌未さんの家でお泊まり会って約束だったでしょ?」

 確かにそんな約束をした覚えはあるが、今日なはずが……そう考えながら携帯の日付を見ると一気に青ざめた。

 

「今日でした……」

 すっかり日付を忘れていた。

 

「ほらお兄ちゃん。早く支度してください」

 と着替えを顔に投げつけられた。

 

 とまぁここまでで分かる通り俺はダメ男で妹は完璧な少女なのだ。更には俺へのツッコミをも卒無くこなす。眩しい!

 更に言うとこの頃の俺は絶賛中一にして若干中二を拗らせている。そのため七海は毎日頭を抱えて胃薬を常備している。

 


 

 そして絆成家(従妹)に到着した。

 

 今日は父さんが仕事で帰ってこないみたいだから酒田さんに遊びに来ないか?と誘われたのだ。そして折角だから泊まっていけとも言われた。ちなみに母さんは今日もまた遊び歩いている。2、3日帰ってこないだろう。そんなダメ親だ。だから俺はあの人のことが嫌い。

 

 だからご好意に甘える事にして今に至るわけだ。

 

 ちなみに我が従妹、萌未と我が妹、七海は仲が悪いわけじゃないけど時折争ったりする訳わかんねぇ関係だ。

 

 そしてチャイムを鳴らして数秒程待つとインターホンから男性の声が聞こえてきた。

 多分酒田さんだろう。

 

「酒田さん。来ました」

 そう言うと数秒でドアが開いた。

 

「いらっしゃい優也君。七海ちゃん。今日は来てくれてありがとう。萌未も喜ぶよ」

 そう言って爽やかスマイルをする酒田さん。

 

 酒田さんは落ち着いた声色で何よりイケメンだ。確かに父さんの兄だから少しはお年を召している感はあるけどなんて言うのかな?カッコイイ。俺も将来あんな人になりたい。

 

「いえいえ。こちらこそ呼んでいただき誠にありがとうございます」

 そう挨拶すると

「お兄ちゃん。気持ち悪いよ?」

「なんでぇっ!」

 急に罵られてしまった。何故だ!?

 

「お兄ちゃん。いつも『ふっ。我を召喚せし物よ。答えよ!我の力をほ』」

「やぁぁめぇぇてぇぇ!」

 七海が左手を左目に(かざ)しながらそんな中二っぽい台詞を言ってきた。

 ここまでで気がついたと思うが七海が今発した言葉全て"俺の"言葉である。

 

「僕はそんな事言いません!」

「でもお兄ちゃん。前、坂戸さんのお宅に遊びに行った時」

「わーわー!聞こえません!」

 そして両耳を塞ぐ。

 

「何はともあれ、ここで立ち話もなんだ。上がるといい」

 そして酒田さんに案内されて上がり込む。

 


 

「「お邪魔します」」

 

「はい。お飲み物どうするかい?」

 

「あ、私オレンジジュース!お兄ちゃんは?」

 

「ふっ。そうだな。永久(とこしえ)の闇に包まれし種で作った液体を漆黒(しっこく)の状態で頂くとしよう」

 俺がそう言うと酒田さんは頭の上にハテナを浮かべた。

 

「あ、お兄ちゃんはコーヒーみたいです。いつもの」

 

「あ、了解。萌未!優也君達来てるよ!」

 酒田さんがそう呼びかけると携帯にメールが受信された。

 

 開いてみると中にはこの様な文章が書かれていた。

 

『来て』

 その二文字の言葉だが今ではもうなんにも思わなくなってしまった。

 

「んじゃまぁ酒田さん!僕、萌未ちゃんの所に行って来ますので僕の分はやっぱりキャンセルで」

 俺がそう言うと少し遠くの方から「はーい」と聞こえた。

 


 

 萌未の部屋に来た俺は扉をノックする。

 

 すると扉が少し開いて出てきた手に引っ張られて引きずり込まれる。

 

 そして中に入ったら何かに急に抱きつかれる。

 

「お兄ちゃん。こんにちは」

 とポーカーフェイスでこちらを見つめてくる萌未が抱きついてきたようだ。

 この頃は人前では「お兄ちゃん。しっかりしてください」「お兄ちゃん。ちょっと気持ち悪いので10m位離れていただけると光栄です」的なことを言ってくるが、二人だけの時はこんなんだ。

 

 そして優しく頭を撫でてやると擽ったそうに目を細めて「や、やめてください……」と言う萌未が可愛すぎて辞められない。

 

 この時はそうなんだよ。まだ普通の兄弟よりスキンシップが多いかな?位で済んでいたんだ。

 

「あ、お兄ちゃん。ちょっとお飲み物取ってくるね。お兄ちゃんはいつものだよね?」

 

「ああ、頼む我が従順なるえーと……まぁ取りあえず頼んだぞ」

 とポーズを決めながら言うと「うん!わかった!」と普段声色が変わらない萌未の声色が浮いた。

 

 そして何をして待とうかなと考えていると俺は不思議な物を見てしまう。

 

「あれは?パンパンに詰まってるな」

 パンパンに詰まった棚があった。

 

 そして見に行ってしまったのだ。

 それが失敗だった。

 

「は!?」

 絶句してしまった。

 

 その中にはパンパンに詰まった男物のパンツが入っていた。

 でも十中八九

「僕のだよな……」

 本気で恐怖を覚えてしまった。

 

 そして下の方を見ると写真が敷き詰められていた。その写真は

「僕の?しかも魔王モードの」

 カッコよくポーズを決めている写真が……しかも撮られた覚えのないものまで……

 

 すると近づいてくる足音が聞こえてきた。咄嗟に棚を閉めて元の位置に戻る。

 

 その後萌未が今みたいな変態になるのだが、七海が事故に会ってから少し後の事だ。

 

「悠真。ってなことがあったんだよ。昔に」

 

「爆ぜろ。リア充」

 

「なんで!?俺の話を聞いてどうしてそう思うの!?」

 

「結羽ちゃんに星野さん。萌未ちゃんも、お前にご執心だもんな」

 

「いや、前の2人が含まれた理由が分からん」

 そんな話をしながら眠りについたのだった。




 はい!第63話終了

 今回は前回の続きです。

 優也が悠真に寝る前に語ってるって言う設定です。なのでナレーションは現在の優也です。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第64話 恐怖の軽音部

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 むかーしむかしある所に、少年とその妹とその従妹が居ました。

 少年は中二を拗らせて妹は毎日頭を抱えていました。

 そんなある日、少年は従妹の家に遊びに行く事になりました。

 そこで少年は恐ろしいものを見てしまったのです。

「お兄ちゃん……見ましたね〜?」
 そして従妹は恐ろしい笑みを浮かべながら少年に近づいていき……

「ねぇ!こんなホラーじゃ無かったよね?」
 そんなこんなで今日も平和な一日が過ぎていくのか?
「不安になるんだが……」



 それではどうぞ!


side優也

 

 遂に今日、終業式が行われて遂に夏休みに入ろうとしていた。

 

 そして俺は今廊下を歩いている。

 

「今日も疲れたな……」

 そう呟きながら歩く。

 

 帰ったら早く寝たい。

 最近はあまり寝れてないからな……

 

 寝たらみんなが俺の前から消えてなくなるような夢を見るようになってしまった。

 だから寝るのが怖い。

 

「ははっ。トラウマ第二号だな」

 

 そして歩く。

 

「すみませーん……」

 なんか物凄く小さい声が聞こえるな。遠くで誰かが話してるのか?

 

「今日は誰にも捕まらないうちに帰るぞ〜」

 と意気込んで周りを見て誰も居ない場所を通っていく。

 

「すみませーん……」

 またもや聞こえてきた。

 

 疲れてるんだな……この夏休み。久々にばあちゃんの所に行って休もうかな……ダメだ!あのくそ爺が居たんじゃ休めるもんも休めねぇ。

 

「しょうがない……あれをやるしか……」

 

 そして歩いていると突然

「すみませーーん!」

「うわぁっ!」

 目の前に急に現れた。

 

 驚いて尻もち着きそうになったが何とか堪える。

 

 そして容姿を見ると男子の制服を来ているのに女の子用のヘアピンとヘアゴムを短い髪に付けている人だ。

 それにしても気を抜いたら見失いそうな位存在感が薄いな。

 

「え、えっと君は誰だ?」

 

「あ、僕は(ひいらぎ) (あおい)です。1年生です」

 女子みたいな声を出すやつだな。顔も中性的な顔立ちだし、女装してもバレない系男子だ。

 

 それにしても一年生か……

 

「俺は絆成 優也だ。で君は一体何の用だ?」

 そう言うと恥ずかしそうに笑ってからこう言った。

 

「ちょっと……音楽室の場所を忘れてしまいまして……案内して貰えたらと……」

 こいつ、入学してから何ヶ月も経ってるのにまだ覚えていかったのか……

 

 取りあえず面倒くさそうな案件だな。

 

「それにしてもどうして今?何か用でもあるのか?」

 そう言うと「はい!」と元気な返事をしてからこう言った。

 

「僕、軽音部なんですよ。パートはドラムです」

 そう言ってドラムのスティックをカバンから出してくる葵。

 

 こいつが軽音部な事もビックリだが、ドラムをやってる事もビックリだ。

 人は見かけによらないってことだな。

 

「そうか……お前、部員なら音楽室の道のりを覚えておけよ」

 

「すみません。僕は如何せん方向音痴なもんで」

 方向音痴にも程がある。そう思うぞ?俺は

 

 なんにせよ余計に面倒くさそうな雰囲気。

 

 俺は寝たいんだ!

「悪いが他を当たってくれないか?」

 そう言うと物凄い勢いで地面に頭を付けて懇願(こんがん)してきた。

 

「ヘアピンとヘアゴムだけで気づいてくれたのはあなただけなんです!」

 ん?どういう意味だ?

 

「お前に普通は気がつくことが出来ないってことか?」

 そう聞くと小さく頷いた。

 

 どうしてだ?そう思ってると俺の心の中の問に答えてくれた。

「実は生まれつき存在感が無くてですね……僕が生まれた時も皆さん、僕が生まれた事に気が付かなかったそうです」

 なんて気の毒なやつなんだ!

 

 それでさっき見失いそうになったのか……

「それでですね、女装したら存在感が上がるらしいです」

 何その変な体質!?

 

「何やらポイント制みたいで、女装を完璧にしていけば行くほど気がついて貰えるみたいです」

 あー。話の流れが見えてきた。

 

 つまりあれだ……

「もっと女装したら気が着いて貰えるけどあまりこれ以上はしたくないと」

「あまりじゃなくて絶対にです!」

 厄介なことになったな……俺以外気づけない奴か……

 

「それにしてもなんで気がつけたんでしょうか?」

 ああ、それが。実は俺も原理はあまり分かってないんだが

「ある時を境に俺は運動神経や力、更には気配察知能力が上がったんだ。理由は知らん」

 理由は多分あれだろうな……

『お前は何を望む』

 あれは夢だと思ってたが実際に色々と起きてしまってるからな……

 

「そうなんですか!?これは運命としか言い様がありません!どうか!お願いします!」

 しょうがない。ちょっと行って帰ってくれば良いか。

 

「わかった。こっちだ」

 そう言って歩き出す。

 

 しかしまぁ、俺の察知能力で声しか聞こえないやつが居るとは思わなかった。

 

 まぁそんな訳で流されて俺は面倒臭い役を受けてしまった。

 正直、ここまで気が乗らないのは初めてだ。

 

 何故なら

 


 

「ここだ」

 

「ありがとうございます!」

 着いて直ぐに俺はドアの位置を指さす。

 

 そして葵はドアノブを回して引っ張るも開かない。傍から見るとアホっぽさが半端ない。

 

 因みにあそこは今現在鍵は開いている。

 

 それにしても影が薄いとドアノブガチャガチャしてても気が付かれないんだな。

 

 何故開いていると気がついたかと言うと中からギターやベースの音が聞こえてくるからである。

 

「つ、遂にはドアからも認知されなくなったか……」

 と手を地面に付けて落ち込むも俺の中では「馬鹿か?こいつ」と言う思考で埋められていた。

 

 そして葵の奴が落ち込んでる間にドアに近づいて開けた。

 

「あ、あなたは神ですか!?」

 と両手を両手で包むようにして握ってキラキラとした目で見てくる。

 

「いやお前。この扉」

 そして一泊置いてから言い放ってやった。

 

「スライド式だから」

 そう。この扉はドアノブが着いているスライド式の扉なのだ。

 

 すると徐々に葵の顔が赤くなっていく

「お前、この数ヶ月間この学校通ってんのに知らなかったのか?」

 それが更なる追い討ちになってしまい、顔を真っ赤に染めたまま「うわぁぁっ!」と叫びながら部室に入っていった。

 

 そしてこの場を去ろうと歩くと一瞬にして目の前に男が現れた。お前、完全に人の動きを超越してんぞ。人間辞めたのか?最も、俺がそれを言えた立場では無いが……

 

「軽音部。入りませんか?」

 先程の超人的なスピードで走る男とは想像もつかないほどのギャップの話し方で勧誘してきた。

 

「絆成さん。どうっすか?ねぇ!どうっすか!?」

 

「何度も言ってますが入る気は」

「それなら体験入部してみては如何ですか?今なら特別に我が学年のマドンナ。咲峰さんのストラップが着いてくるぞ?」

 勧誘の仕方が完全に悪徳商法じゃねーか。と言うか肖像権はどうした肖像権は!?ダメだ……こいつら部員集めに必死すぎんだろ。

 

「何度言われても……」

「良いですから!ね?」

 そして手を掴まれる。

 それを離そうとするもこいつ握力強すぎだろ。既に腕がぶっ壊れそうなんだが?

 

 こいつなら誰にも負けない気がしてならない。

 

「さ、行きましょう?」

 しかし連れていかれたらおしまいだ。

 悪徳セールスマンの法則。入れたら負けの連れていかれるバージョンだ。

 

 そう。何故俺がここまで軽音部に行くことに乗り気じゃなかったのかと言うとこいつだ。元副部長で現部長のこの男の名前は五十嵐(いがらし) 灯夜(とうや)と言う。

 俺が一年生の時、ちょっとこの前を通っただけでこの男が(物理的に)吹っ飛んで来たのでトラウマにもなっている。

 急にドアをぶち破って飛んでくるのは反則だ。……あんなことしていたら逆に来なくなる気がする。

 その時にぶち壊したおかげで立て替えた時に間違えてドアノブの着いたスライド扉となった。どう間違えてそうなったかは知らんが……

 

「先輩!本当に無理です!無理ですから!」

「いやいやそんな事ない。君なら出来る」

 しょうがない。あれをやるしか

 

 そして俺は何とか柔道の投げ技っぽい体制を作り上げて投げる。

 そして五十嵐先輩は打ちどころが悪かったらしく気を失ってしまって白目をむいた。

 

 これなら逃げれると思ったら何と気を失った状態でも握力が健在であった。

 

「なんでだよ!必死すぎだろ!」

 もうやだ軽音部。

 

 因みにこの人はどんなに攻撃しても離れることは無かったのでこの人のギターに蹴りをお見舞いしようとしたところ急に起き上がって「蹴らないでください」と土下座して懇願してきたのでその隙に逃げることにした。

 因みにベースの人とキーボードの人には哀れみの目を向けられてしまった。

 

 もう二度とここには近づくもんか!と心に深く誓ったのであった。

 

 その後家帰って寝ると夢にあの人の吹っ飛んできた時の顔が出てきて総睡眠時間が30分にも満たなかったのは悪い思い出。




 はい!第64話終了

 はい!また新しく濃いキャラが出てきましたね。

 因みに五十嵐君は出る回数は少ないけど多分設定が効いてくる場面で登場すると思います。

 葵の設定は面白いと思うので弄られ要因として度々出ると思います。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二年生編夏休み 消失編
第65話 お話(お説教)


 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 終業式を終えた優也は速攻で帰ろうとするも、女装をしないと存在感が少なくなるという特殊体質の男の娘、柊 葵に捕まってしまう。

 そして葵により軽音部に送る事になったのだが、その軽音部室前にて壮絶な戦いが行われた。
 そしてお互いボロボロになってこう言った。
「俺達は友達になれたんだな」「いや、俺達はもう既に友達の域を脱している」「先輩……」
 そして二人は少しづつ近づいていき……
「待てこら!後半全部ちげーよ!お互いじゃなくて先輩がボロボロになっただけだからな。そしてなんで最後そんなBLみたいな話に捏造されてんの!?」
 そんな訳で今日もこんな僕に彼女は必要なのだろうか?始まりますよ!
「話聞けー!」



 それではどうぞ!


side優也

 

 ついに始まった夏休み。特にやることも無いのでだらだらしていると携帯に着信が入った。

 

「はいはい。どちら様で?」

 

『わしじゃ。わしわし』

 そして一瞬思考が止まったものの冷静に通話終了ボタンを押した。

 

 それにしてもわしわし詐欺なんて珍しいな。なんでじいさんに寄せたんだろう……声もくそ爺そのものだ……し……

 そこまで考えたところで顔が青ざめていくのが分かる。

 

 そして冷や汗がドバァっと吹き出してきた。

 

 もしかして本当に?

 

 するとまた電話がかかってきた。

 恐る恐る見ると同じ番号だった。

 

「も、もしもし」

 

『悟朗』

 その名前を冷え切った声で聞くと震えが止まりません。

 

「あ、あ……ほ、本当にくそ爺だったァァっ!」

『だぁれがくそ爺じゃって?』

 心の声が出てしまっていて聞こえていた。

 

「いえ、なんでもないです」

『そうか。取りあえず次会う時を楽しみにするといい』

 恐らく近々俺はこの世を去ることになるのだろう。父さん。かなり早いがそっち行くよ。

 

『で、要件は分かっておろうな?』

 もちろん分かっている。じいさんが電話してくる時はあれしかないのだから。

 

 つまり俺は

「店の手伝いですか?」

『そうじゃ』

 ドナドナされるのである。

 

「いつ行けば……」

『逆に聞くがいつ来るんじゃ?』

「今でしょ!って古いわぁッ!……はっ!」

 そこで気がついてしまった。俺の突っ込む性格を利用されたことに

 

『ふむ。なら今すぐ来るんじゃ』

 そう言って電話を切られてしまった。

 

「こ、(体力的に)殺される……」

 あのくそ爺はスパルタなのである。

 

 よって俺は死ぬ!

 

「取りあえず土産にばあちゃんの好きな羊羹買ってくか。じいちゃんへの土産?そんなもん知るか……」

 そう言いながら俺は最低限の荷物を持ってコンビニに向かった。

 

 因みに今日は如月のシフトは入ってない。因みに俺も入ってないからのんびりしていたのだ。

 最近北村さんとばかりシフトが合うからバイトが楽でいいな……

 

「そしてなんだこれは」

 悠真がゴミ箱から生えていた。それを結羽が軽蔑の眼差しで見つめていた。

 

 きっと凌太のマフラーを取ろうとしたのだろう。

 

 俺も凌太のマフラーを取ろうとして凌太必殺、ゴミはゴミ箱へアッパーを食らったことがある。

 このアッパーを食らったら必ずその後、ゴミ箱に頭から突っ込むことになる。

 

 その事からこんなヘンテコな名前が着いてしまった。因みに本人の前でこの名前を言ったじん何とかが居てその時は強めにゴミ箱に叩き入れられたらしい。

 

「で、結羽。お前はこの状況を見てどう思う」

 

「ふぁ○きゅー」

 そこまでなのか!?いや、ファンの結羽からしたら凌太のマフラーを取るのは大罪なのかもしれない。

 

「それより優也何しに来たの?」

 

「羊羹を買いに来た。祖父母家に行くのに持ってく土産だ」

 そう言うとものすごい速さで悠真が飛び起きてきた。

 

「マジで!?俺、久しぶりにお前のじいさんが焼いた焼き鳥食いてぇっ!」

 いや、肩つかみかかってくんな。それとお前臭いぞ。ゴミの臭いが移ってんぞ!

 

「まぁ良いけど、泊まりだぞ?」

 

「問題ない」

 まぁ、それならいいか。

 

 取り敢えず今度凌太の機嫌を取っておくか。この取っておきのピル○ルで!

 因みに凌太は乳製品ならなんでも好きだが、特にピル○ルが好きなようだ。

 ピ○クル美味しいよね〜。

 取りあえずピ○クル渡しとけばその日一日は何してもあいつは怒らないはずだ。

 マフラー取ろうとしても普通のアッパーで済む筈だ。

 因みに一週間飲まないと逆に不機嫌になって近寄るもの全てにゴミはゴミ箱へアッパーをするようになってしまう。

 俺も1回その理不尽アッパーを食らったことがある。

 

「取りあえず羊羹買ってくぞ」

 そしてコンビニに入ろうとする。

 

「あ、優也」

 すると結羽が呼び止めてきた。

 

「なんだ?」

 

「あ、あの……優也。私もついて行っていい?」

 そんな事を言ってきた。

 

 俺としては全く問題ないが……。まぁ、客人ウェルカム夫婦だから大丈夫だべ。

 

「ああ、良いぞ」

 そう言ってコンビニで羊羹を買って、電車に乗って祖父母家の最寄り駅にて降りて歩いて数分。

 


 

 遂に到着しました。絆成(祖父母)家です。

 

 隣には悠真と結羽がいます。悠真は戦場にでも行くような表情です。結羽はそわそわしているみたいです。

 

「じゃあ行くぞ」

 そして扉を開けて中に入る。

 

 そこには既に二人の人物が居た。

 

「優也。久しぶりだな」

 

「あ、ああ……」

 なんて圧だ。押しつぶされそうだ。

 

「おっす。久しぶりっす」

 と片手を上げて挨拶する悠真。

 

「あら悠真君。お久しぶり。いらっしゃい」

 と悠真とうちの祖父母はこんな軽口を言える関係なのだ。

 

「お邪魔します」

 と後ろで言ってから入ってくる結羽。

 

「あら?初めての子ね」

 

「はい!私は柴野 結羽です。よろしくお願いします」

 とお辞儀をする結羽。めちゃくちゃ礼儀正しい。これが普通である。

 

「あら。可愛い子ね?もしかしてゆうちゃんのガールフレンド?」

 そのゆうちゃんって呼び方やめろ。ややこしくなる。

 

 それとこっちはこっちで大変だ。

「ががが、ガールフレンド!?」

 そして顔を真っ赤に染めてしまった。

 

「えーと……優也ってもう1人妹さん居たっけ?」

 その瞬間。俺は凍りつきそうになった。

 

「あらー」

 何を呑気なことを……

 

 今ばあちゃん(・・・・・)。俺より年下に見られたぞ。

 

「あの。結羽さん?」

「なに?」

 このままだと誰も訂正しなさそうなので俺が説明することにした。

 

「あの人は見た目こそ確かにロリだ。だがな。だがな。あれでも64なんだ」

 そう言うと結羽は口を押さえて驚いた。

 

 絆成 真由美(まゆみ)。見た目年齢15才。だが、実年齢はと言うと64才。

 因みに性格は見た目年齢に依存している。

 

 と言うか真由美ばあちゃんに恋をしたじいちゃんってろりこ

 

「だーれーがーロ○コンだ!?」

 その瞬間、頭をでかい手に掴まれて引っ張られこめかみを中指の骨でグリグリされる。

「痛い痛い!」

 

「よし。優也。まずはあっちの部屋で今朝の件と今の件についてお話(説教)しようじゃないか」

 そして隣の部屋に引きづられていく俺。

 

 その光景を生暖かい目で見守る三人。

 

 いきなり不安になってきました。

 ※自業自得です




 はい!第65話終了

 今回は新しい人物、優也のじいさんとばあさんが出てきました。

 そしていきなりじいさんにお説教される優也。珍しいかもしれませんね。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第66話 柴野結羽の憂鬱

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 優也が祖父にお話(お説教)されました。
「あらすじにもうちょっとやる気だせ!」
 そうですね。では

 (本当に)前回のあらすじ

 夏休みのある日、突然優也の元に1本の電話がかかってきた。
 それは祖父からで、店の手伝いをして欲しいというものだった。

 途中優也が口を滑らせて祖父に対して"くそ爺"や"ロ○コン"、"犯罪者"等と言ってしまう。
「ねぇっ!最後のは言ってないよね!?」

 そんなこんなで祖父宅に着いた優也は祖父にお話(お説教)をされることとなった。
「最近、ここのあらすじふざけすぎじゃないか?」
 それはただの思いつきで前書きでコントみたいにしたら面白いんじゃないかと
「いや、これはもうコント以下のくそだ」

 ……ぐすん……それでは始まります。



 それではどうぞ!


side結羽

 

 優也が連れていかれて数分が経過した。

 

 私達は現在、和室に案内されて優也のおばあちゃん?にもてなされていた。

 

 テーブルの上にはせんべいが入ったカゴがど真ん中に堂々と置かれている。

 私しかほとんど手を付けてないけど……

 

 お煎餅って美味しいよね。

 

「ありがとうね。この遠いなか。来てくれて」

 と何度目かわからないその言葉をおばあちゃん?は言ってきた。

 

「いえいえ、俺はじいさんの焼き鳥が食いたかっただけなので」

 そう言えば優也のおじいさんって居酒屋を経営しているらしい。その手伝いなんだね。

 

「優也大丈夫かな?」

 

「大丈夫だ。いつも通り」

 あれでいつも通りなの!?

 

 でも悠真が大丈夫って言うなら大丈夫なんだろう。

 

 襖の奥から「うわぁぁっ!」って言う叫び声が聞こえるけど大丈夫なんだろう。

 ……大丈夫……なんだよね?

 

「そう言えば、柴野さんって政博(まさひろ)君の娘さん?」

 急にそう聞いてきた。

 政博君?よく分からないけど取りあえず

「柴野 政博は私の父です」

 

「おおー。確かに面影あるわね」

 とマジマジとこっちを見てくる優也のおばあちゃん。

 

 お父さんの事を知ってるのかな?

 

「お父さんの事を知ってるんですか?」

 

「知ってるも何も昔はこの辺りに住んでいて瞬君とは仲良くしてもらってたからね」

 へー。この辺りに住んでいたんだ。と言うか瞬君?

 

「瞬君って?」

 

「瞬君はゆうちゃんのお父さん絆成 瞬介(しゅんすけ)。ほらこの人」

 と言って私たちの前に分厚いアルバムを出してきてページを開いて見せてくる。

 

 うわぁー。カッコイイ。落ち着いた雰囲気が乙女心を擽るっていうか。

 今の優也のお父さんの雰囲気じゃないけど確かに面影がある。目とかが特にそっくり。

 

「カッコイイですね」

 

「でしょー?そしてイチオシはこの写真」

 そう言って指を指したのはサッカーのユニフォームを着てシュートを打つ瞬間の写真だった。

 

「昔はエースストライカーだったのよ」

 おばあちゃんは昔に戻ったみたいにはしゃいでいる。いや、精神年齢は見た目相応なのかもしれない。

 

 すると和室の入口の扉が開いた。

「ばあさんや。優也連れて店行ってくるから」

 そう言って優也を引きずって連れていくおじいさん

 

 優也。頑張って……

「やぁーめぇーてぇー!」

「早く歩け」

 

 確かに移動にかなり時間かかったし、そろそろ居酒屋も開店する時間だね。

 

 もしかして優也って無理やりおじいさんに料理の特訓されたの?

 だから料理上手いんだね。

 面倒くさがりなのに料理の練習をしていた事が驚きだったからね

 

「後で食いに行こうぜ」

 とお茶を啜りながらそう呟く悠真。

 

 このお茶、美味しい。そう思いながら優也、大丈夫かな?と考えるのであった。

 


 

「到着!」

 悠真は指を指して大声で言う。やめて恥ずかしい。

 

「じゃあ入ろうか」

 そう言っておばあちゃんが率先して入って行った。それに続いて悠真が入って行く。

 あまり居酒屋というものに入った事が無かったから物珍しさもあってキョロキョロしてしまう。

 今の私、若干挙動不審気味かも。

 

「いらっしゃいませー」

 私達を出迎えたのは制服姿の優也だった。

 

「三名様でよろしいですかどうぞー」

 まるで私達を知らない様な態度で接客してきて、三人でいいとも何も言ってないのに間髪入れずに案内してきた。

 

「ここですご注文はそこのタブレットでお願いしますそれではごゆっくり」

 と全ての文章を繋げて息継ぎしないで言い切った優也は個室の扉を閉めて接客に戻って行った。

 

 その直後店内に「いててて!すみません!痛いです!」と言う叫び声が聞こえてきた。

 多分愛想悪くしたのをバレたのであろう。

 

 そして卵焼きと焼き鳥、悠真はホッケ開き、おばあちゃんは冷麺、私は海鮮サラダを頼んだ。

 

 そしてしばらくすると料理を届けに来たのか店員が来た。

 よく見てみると優也だった。

 そして頭にたんこぶが3つ横に並んでいた。

 

「卵焼き、冷麺、海鮮サラダです。残りの品はもう少しお待ちください。ごゆっくり〜。後、これサービスな」

 とパフェを出してきた。

 

「結羽、こういうの好きだったよな?気にしなくていいから。あと、じいさんには内緒な」

 そう言ってまた優也は戻って行った。

 

 サービスって……多分おじいさんに内緒で作ったんだろう。だって何故かバレたみたいで奥の方からまた叫び声が聞こえてきてるもん。

 

 でも優也の好意に甘えて頂こうかな。

「なんか俺だけ無いんだけど」

 

「日頃の行いだよ」

「なんか結羽さんが辛辣(しんらつ)!?」

 と仰け反って驚く悠真さん。

 

 その後、数分してまた優也が料理を持ってきた。

 

 たんこぶの上にたんこぶがあるんだけど?

「こちら、ホッケ開きと焼き鳥になります。ごゆっくり〜」

 なんか行ったり来たりする度にたんこぶが増えてるな〜

 

 どれだけおじいさんを怒らせるんだろう?

 

「あのくそ爺。料理の腕だけは良いから何も文句言えねぇんだよ。何か弱み握れねぇかな?」

 そうしてまた裏の方に戻って行った。

 

 予言するね。この後優也の叫び声が響き渡る。

「やめて!痛い痛い!」

 ほらね?やっぱり聞こえてきた。

 


 

「美味しかった」

 

「だな。優也のじいさんは料理の鉄人だからな」

 確かになんでも美味しかった。

 

 でも1番美味しいと感じたのはあのパフェだね。すごく美味しくて思い出に残る一品だった。

 

「はぁ……お前ら、こっちにお仕掛けてきやがって」

 先から優也がぶつくさと文句を言っている。

 

「んじゃ。俺は寝るから。明日は早く帰るからな」

 そう言って寝室に向かって行ってしまった。

 

 じゃあ私も寝ようかな?

 

 そんなこんなで今日一日が過ぎていくのだった。




 はい!第66話

 次回は帰るところからです。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第67話 帰還

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 前回は全て結羽視点でした。

 そして何度も叱られる優也。それを見て結羽はざまぁみろ。日頃の行いのせいだと思う。
「結羽……そんな事を思っていたのか……」
「思っていません!何変なデマを言ってるんですか!?」

 そして遂に帰る日が来た。



 それではどうぞ!


side優也

 

 次の日。俺は朝四時から料理の訓練に駆り出されていた。

 眠いでござる。

 

 このスパルタ爺め。どうしてくれよう。

「変なことを考えている時間があったら手を動かしたらどうだ」

 そしてなんでこうも直ぐに俺って心を読まれるんだろうか……

 

 俺が今、指導を受けているのは焼き鳥だ。

 

 じいさん直伝の焼き鳥。さっきから焼きすぎやら甘いやら薄いやら濃いやらうるさいわ!

 何ちょっと変えただけなのにそんなに変わるかっての!

 

 因みに横で悠真がヨダレ垂らしながら気持ちよさそうに寝てて、優也のアホー。と呟いていたからムカついて(うっかり)顔を踏んずけてグリグリしてしまったら更に深い眠りについてしまったみたいだった。

 白目むいていた様な気がするけどそれは俺の気の所為だ。

 

「こんなもんだろう。だが、まだまだわしの味には程遠いい」

「うるさいな〜。俺はここ継がないんだから」

 言ってしまった。

 

 絶対怒声がこの後飛んでくる。そう思ったのだが、

「分かっておる。お前が面倒くさがりで料理をしたくないという気持ち」

 そんな今まで言ったことの無いような事を言ってきた。

「お前の人生だ。わしは縛るつもりは無い」

「じいちゃん……」

 人生で初めてじいさんにそんな事を言われたから涙が目に溜まってきた。

「まぁ、それでもなんだかんだ言って努力家じゃよな。でもお前の努力じゃまだまだ大切な人は守れんぞ」

「余計なお世話だ!」

 最後の一文で一気に涙が引いたわ。完全に涙が枯れたわ。砂漠になったわ。

 

「電車の時間までビシバシいくぞ」

 

「お手柔らかにお願いします」

 


 

side結羽

 

 ピピピピ

 

 その音が鬱陶しいと思いながらも手を伸ばしてアラームを止める。

 そしてまだ眠い体に鞭を打って起き上がる。

 

 時刻は5時半。いつもこの位の時間に起きてる。

 

 そしてお花を積みに行こうとすると優也と悠真の寝室の扉が開いているのを見つけた。

 興味本位で覗いてみると恐ろしい光景が広がっていた。

 

「し、死んでる」

 白目になって壁に突き刺さってる悠真が居た。

 

 誰にやられたんだろう。

 

 まさか、この部屋に今いない優也!?

 ※正解

 

 そんなわけないか。※現実逃避

 

 見なかったことにしよう。

 

 そうしてキッチンの前を通ると今度は優也とおじいさんが居た。

 何やら料理の練習をしているみたい。

 あれだけの腕でまだまだって言うなんておじいさんは凄いな。

 

 そんな光景を流しながらお花摘みに行った。

 

 戻ってくると食卓にものすごい量の焼き鳥が並んでいた。

 

 それよりも

「悠真。まだ生きてたか……しぶといヤツめ」

「大丈夫?」

 優也。その言い方完全に犯人だよね?

 

「この頭の包帯を見て大丈夫だと思えるのか?」

 と包帯を指さす。

 

 確かに痛々しい。しかも自分で巻いたのか下手くそだ。

 

「それよりこれを俺たちに処理しろと?」

 

「そういう事だ。つべこべ言わず食え」

 そう言って一本を一瞬で食べる優也。

 

 一口でかい!?1本まるまるいっぺんに食べたよ!

 

「しょれよりもさ。お前、あれだけ店継ぐのは嫌がってたのに手伝いはするんだな」

 そういう話しながらも既に悠真の皿には10本程の串が置いてあった。

 

 なんて言うペース!?

 

 私も食べないと無くなっちゃう。そう思って急いで一本取って一口食べる。

「美味しい」

 昨日食べた居酒屋の焼き鳥も美味しかったけどこの焼き鳥の方が美味しく感じる。

 

「ありがとさん」

 と言ってまた一本口に含む優也。

 

「そうか。これは優也の失敗作か……俺らから見たらどっちの方が美味いとか分からんけどな。同じタレを使ってんだし」

 優也のなんだ……。でも私はこれが失敗作とは思えないな。だってこんなに美味しいんだから。

 

「結羽。何ニヤニヤしてるんだ?」

 と言われてやっと気がついた。

 

 口元に触れてみて自分の口角が上がっているのが分かった。

 そして慌てて元に戻す。

 

「な、なんでもないよ」

 慌てて繕う。

 

 そんな感じで朝は過ぎていった。

 


 

side優也

 

「「「さようなら!」」」

 俺達はばあちゃんとじいさんにそう挨拶してから駅の方に走り始めた。

 

「俺達はなんでこんなに走ってるんだっけ?」

 そう言い出した悠真の頭を強めに殴る。

 

「お前が支度早くすれば走る必要もなかったんだがな」

 

 そう。悠真が支度をゆっくりとしていたせいでこんなに走る羽目になったのだ。

 このマイペースめが……。アホはどっちなんだか……。

 

「取りあえず後五分だ。かなりギリギリだぞ」

 そう言って無我夢中に走る。

 

「速い速い!何でそんなに速いんだ!?」

「つべこべ言わず走れ!」

 でも流石に結羽にこの持久走させるのは酷だよな。

 

 そして俺は少しスピードを落として結羽の隣に行く。

 

「ちょっとだけ我慢しろよー」

「え?な、なに!?」

 そして膝の裏に腕をまわしてお姫様抱っこの形で持ち上げる。

 うん軽い。ちゃんと食べてんのか心配になるレベルだ。

 

「ゆ、優也!?」

 

「悠真は走って来いよ!」

 そう言って俺は結羽を連れて駅の方へ走る。

 

「鬼畜!これからお前のことをキチナリって呼んでやる!」

 後ろでそんな事を叫んでいるが知るか。自業自得だ。

 

 その後、俺のスピードで余裕でたどり着いた俺と結羽、そしてギリギリに悠真が息を切らして肩で息をしながら来た。

 

 そして何とか電車に乗って帰れましたとさ。めでたしめでたし。

 


 

数日前

 

「あいつの事を徹底的に調べあげろ」

 

「ついでにあいつの周辺にいる奴等も調べあげますか」

 

「そうだな。あいつの事は許せねぇ」

 

「ああ、俺達をこけにした罪。やっと償わせる準備が整った。あとはあいつにとって最も残酷な方法で償わせる。それだけだ」

 そして男は一枚の写真にナイフを突き刺した。

 

「絆成……優也」




 はい!第67話終了

 今回で祖父母編は終わりました。

 次回はまた話が急展開するはずです。

 そして最期の男とは一体?

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第68話 誘拐

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 帰宅する優也達。そして鈍感な優也。
「誰が鈍感だ誰が!」

 そして最後にでてきた男達はなんだ!?
「知らねーよ」
 優也さんが素っ気ないですが



 それではどうぞ!


「遂に。遂に機は熟した」

 

「さぁ、俺達の復習劇の始まりだ」

 

 遂に男達が動き出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side結羽

 

 うん。こんな所かな?

 

「露木ちゃんは買えた?」

 

「はい。しかし、色々あるので迷いますね」

 

「そうだね。これとかも可愛いから迷っちゃう」

 

 私は今、服を買いに来ている。

 そしてたまたま露木ちゃんとあったから一緒に廻ってる。

 

「あ!こういう服とか露木ちゃんに合うんじゃない?」

 そう言って一着の服を手渡す。

 

「で、でも……私にはちょっと派手すぎる気が……」

 そう言ってモジモジとしている露木ちゃん。

 

 恥ずかしがり屋さんな露木ちゃん可愛い!なんか守ってあげたくなる女の子って感じの女の子だよね。

 どう考えても神乃さんの妹だと思えないんだよね。

 

「あ、あの……結羽さんにはこれが似合うと思います」

 そう言って露木ちゃんの渡してきたのはフリフリの可愛い服だった。

 

「わぁー。可愛い!ちょっと試着してこようかな?」

 

 そうして試着室に入った。

 

 そして数分して着終わって試着室から出てくると誰も居なかった。

 ちょっと不思議に思ったけど取りあえず気に入ったから会計済ませて着ていくことにした。

 

 そしてちょっと店内で露木ちゃんを探すことにした。

 

「露木ちゃん!どこに居るの!?」

 すると急に口元にハンカチを当てられた。

 

 すると急に眠くなってきて……

「ちょうど客が少なくて助かったぜ。お陰で……」

 そこで私の意識は途切れた。

 


 

sideつみき

 

「久しぶりね」

 

「そ、そうですね」

 

 今、私が散歩していると咲峰さんに会いました。久しぶりですね。

 

「咲峰さんは何してたんですか?」

 

「そうね……適当に散歩かしら」

 

「あ!私もです」

 まさか咲峰さんも散歩だったなんて。偶然だね!

 

「それじゃ。私も散歩してたんで少し話しませんか?」

 私は勇気を振り絞って提案した。

 

「そうね。いいわ」

 そうして咲峰さんと話しながら歩くことにした。

 

 咲峰さんは学校のマドンナって言われるくらい美人だから良いよね。私も……なんか想像したら悲しくなってきた。

 

「それじゃ、単刀直入に聞くわ」

 そう言われたので私は身構える。

 

 するとこんな事を聞いてきた。

「童明寺君とはどうなの?」

 と私が最も恥ずかしがる話題を

 

「ふぇぇっ」

「やっぱりあなたはからかったら可愛いわね」

 からかわないでよ!咲峰さん。

 

 そしてしばらく話した。

 

「だいぶ話したわね」

 

「そうですね。ここまで他人と話したのは久しぶりです」

 そして咲峰さんの方に振り返って

「今日はありがとうございました」

 そう言ったが、その位置には咲峰さんは居なかった。

 

「あれ?ふぐっ!」

 急に口元をハンカチで押さえられた。

 

 すると眠くなってくる。

「これでこっちは終わりっすね。これで奴が助けに来るんすかね?」

「友達思いのあの絆成 優也だ。必ず来るさ。情報を手に入れてな」

 

 そんな会話を聞いてしまった。

 

 絆成君……気を……つけて……

 

 そこで私の意識は途切れた。

 


 

side優也

 

 二組が大変な目にあっている頃、優也は優雅なコーヒータイムを味わっていた。

 

「しかし、今日のコーヒーは不味いな。なんでだ?嫌な予感がするな……」

 すると急にインターホンが鳴った。

 

 見てみるとそこには悠真が居た。

 そして悠真の第一声が

「大変だ!手を貸してくれ!」

 という切羽詰まったものであった。

 

 こいつがここまで切羽詰まってるところを見たことが無かったのですぐ様向かった。

「詳しく聞かせてくれ」

 俺もそれ相応の対応をした。

 

「実は俺はさっきまで散歩してたんだが、つみきちゃんと咲峰さんが散歩してるのを見かけたから声をかけようとしたんだ。そしたら急に路地裏から手が伸びてきて二人が連れ去られてしまった」

 そんな事を聞かされて、こいつの冗談だと思いたかった。だけどこれが本当なら俺の嫌な予感と繋がるんだ。

 

「もしかしたら他にもさらわれてる人が居るかも」

 なんで俺の周りだけ……動機はなんだ?金か?いや、状況から考えてそれは多分ない。じゃあ拉致して何する気なんだ?

 

 もしかしたら俺に関係が……

 

「もしかして……」

 俺がそう呟くと悠真は険しい表情のまま「どうした」と聞いてきた。

 

「中一の頃、あったろ?俺がサッカーボールを蹴って不良を撃退したの」

 

「ああ、あれか。サッカー帰りの」

 

「そう。その時のやつらが俺に恨みを持ってなら辻褄(つじつま)が合うんじゃないか?」

 そう言うと悠真は確かに辻褄が合うな……と呟いた。

 

「でもあいつらはここらで有名な不良。今治(いまばり) 京助(きょうすけ)が仕切るグループだぞ」

 

「まぁ、その今治には既に喧嘩を売っちゃってんだけどな」

 そう言うと悠真はえ!?とでも言いたげな表情をした。

 

「だってよ。あの時ボールを当てた奴が今治だぜ?」

 俺は流石にあの時、命の危険を感じた。だが、今治が気を失ってくれたおかげで何とか撃退できた感じなんだ。

 

「マジかよ……まぁ、拉致られたとしたら十中八九あの倉庫だろうな」

 

「ああ、そうだな」

 町外れに使われていない倉庫がある。そこに奴らのアジトがあるんだ。

 つまり敵陣に突っ込む必要があるんだ。

 

「取りあえず俺とお前だけじゃきついから仲間集めてくるからな」

 そう言って外に出る。

 

 取りあえずあそこの公園で黄昏てるやつからかな?

 

「よ!童明寺」

 

「なんだ。優也」

 何か悲壮感漂う雰囲気だった。

 

「どうしたんだ?」

 

「見たんだ……つみきが拐われるの」

 お前もかよ!

 

「また大切な人を……」

 

「なら助けようぜ!」

 とガッツポーズを繰り出して元気づける。

 

「無理だ。あいつらは十中八九今治グループだ。勝てるわけがない」

 そう弱気の童明寺に俺は腹が立った。

 

「お前、白井さんが好きなんだろ?」

 憶測だが。

 

「……好きだよ」

 

「なら簡単に諦めんじゃねーよ!」

 

「お前には関係ないだろ!そりゃ俺はつみきが好きだ。好きになっちまったんだよ!可愛くて健気で…彼女にしたら最高の女の子だ。さらったのがあのグループだって分かってもまだ諦めきれねぇよ……」

 

「なら!」

 だけど童明寺は暗い表情のまま続けた。

 

「ダメなんだよ。俺はあいつの事が忘れられない。好きって気持ちだけじゃあいつを恋人にする資格なんて無いんだ。また、俺は力不足だから何も助けられないんだ」

 少し前の俺を見ている気分だった。

 

 気持ちは痛いほどよく分かる。

 

 こいつは怖いんだ。目の前で大切な人が居なくなるのが……

 

 こいつに以前、何があったのかは知らねーよ。

 

 だがな

「おい童明寺」

 そう言ってフラフラと近づいて1発殴った。

 

 それで諦めんのは間違ってる事くらい俺にだって分かる。

 

「おい!何すr」

 

「それで頭冷やせ。この腰抜け野郎ぉぉっ!!!」




 はい!第68話終了

 今回は結羽と露木、つみきと菜乃華が今治グループに拐われてしまいました。

 そして喧嘩が始まる優也とあつし。果たしてどうなるのか?

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第69話 喧嘩、そして親友へ

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 何者かに拐われる結羽等。その拐った奴らは今治グループだと優也は予測する。

 そして公園で黄昏てるあつしを見つけた優也はあつしを勧誘するのだった。



 それではどうぞ!


side優也

 

「この腰抜け野郎ぉぉっ!!!」

 俺は童明寺に対してそう言い放った。

 

 すると童明寺はこちらを睨んできた。

 

「おい。俺だってな……考えたさ。考えて考えて考えたけどあいつらに勝てる方法がねぇんだよ」

 俺はため息をついた。

 

「それを行動に移さない所が腰抜け野郎だって言ってるんだ」

 

「喧嘩売ってんの?」

 そう言いながら童明寺は座っていたベンチから立ち上がって胸ぐらを掴んできた。

 

 普通なら多少なりとも心が乱れる状況だ。しかし、俺の心は嫌に落ち着いていた。

 

「大切な人なら、自分の命に変えても守って見せろって言ってんだよ!この腰抜け野郎!」

 その瞬間、俺の頬に鈍い痛みが走った。

 

 それが殴られた痛みだと気がつくのにはあまり時間がかからなかった。

 それが分かったら俺は童明寺の腕を掴んで投げる。

 

 そして体勢が崩れたのを見て押し倒して掴みかかった。

 

「おい!お前は……お前ってやつは!ほんとしょうもない」

 そう言って殴ろうとすると童明寺に寝返りで上に来られてしまった。

 

 そして降ってくる拳を掌で受け止めた。

 

「ぐ」

 

「俺が腰抜け野郎だと?ならお前もそうじゃねぇか。自分のことを棚に上げて俺に説教してんじゃねぇ!」

 

「俺は戦う!勝てないと分かっていても俺は戦う!お前とは違うんだよ!」

 

 そして横向きになって蹴り飛ばして距離をとる。

 

 いつの間にか雨が降ってきていた。そう言えば昼から雨が降るって言ってたな。

 

「はぁ……はぁ……そうか……勇気と無謀を履き違えんじゃねぇぞ。ボケ……無謀はな……犠牲者を増やすだけなんだよ!!」

 そして俺の懐に入ってタックルしてきた。

 

「ぐはっ」

 

「諦める時は潔く諦めたらどうなんだよ!」

 そして押さえ込んできている童明寺の腕を掴んで持ち上げる。

 

「潔いいのは必ずしもいい結果を産むとは限らねぇんだよ!足掻いて……足掻いて……足掻きまくって初めて得られるものってのもあるんだ!」

 そして横の方に倒してその時に殴る。

 

「なんだよ。それは」

 分からない。自分でも何を言っているのか……。

 

 確かに今まで足掻いて手に入れてきたものがあったはず。

 

 その時に結羽の顔が浮かんだ。

 

 俺が感じているそれと童明寺が感じているそれが同じものだとしたら……

 

「大切なものを……救える。努力は人を裏切らないってよく言うだろ?」

 

 そして俺は童明寺に手を差し伸べる。

 

 そして

「一緒に足掻こうぜ。この身が朽ち果てるまで……。足掻いて足掻いて足掻きまくったその先にある未来をつかみ取ろうぜ。童明寺 あつしっ!!」

 そう言うと童明寺は俺の手を取った。

 

「童明寺。一緒に……つかみ……取ろう……ぜ……」

 とその場に倒れてしまう。

 

 見れば童明寺も倒れた。

 

「ははっ。しまんねぇな」

 と小さく笑いを零す童明寺。

 

「どうだ?頭冷えたか?」

 

「ある意味な。雨天最悪だ」

 と笑い合う。

 

「でもお前の言いたいことがよく伝わった」

 

「そうか…それなら良かった」

 

「優也。俺、最初で最期の本気の足掻きを見せてやる」

 

「ああ、それでいい。一世一代の大勝負だな。一緒に救い出すぞあつし」

 

「お前、今まで苗字呼びだったのに。急にどうした?」

 

「殴りあったら親友になるらしい。親友は親しい呼び方するらしい」

 

「言葉が箇条書きだな。って言うか極端な考えだな」

 するとうーんと唸るあつし

「じゃあ俺はゆうかな?」

 

「それだと結羽と区別つかないからお前は優也で良いよ」

 そして喧嘩した後で痛い体に鞭を打って立ち上がる。

 

「「ぶふっ……あはははは!」」

 また二人で笑った。

 

「びしょびしょじゃねぇか」

 

「お前もな」

 もう。心配は要らないだろう。

 

 こいつには頼もしい奴が着いているからな。

 

「んじゃ、俺は次の奴勧誘してくるから」

「おう!頑張れよ!」

 そして俺はあつしに見送られて次は学校に向かった。

 


 

「居るかな?」

 俺はそう思いながらある部屋の前に来た。

 

 勿論尋ねてきたのは例の部室。

 

「すみませーん!」

 とドアの前で叫ぶと急にドアを突き破って大男が飛び出してきて俺にタックルを食らわしてくる。そう、五十嵐先輩である。

 

「入部しないか!?」

 

「次の学校祭。出ても良いですのでお願いします。助けてください」

 そう言うと葵も心配そうな目をしてこっちに来た。

 

 そして二人に簡単に俺は説明した。

 

「そうか……大変だったな……」

 

「そうだったんですか……」

 

「そうです。なので出来たら助けて欲しいんですが……」

 そう言うと五十嵐先輩は俺の両手を握ってきた。痛い!

 

「もちろんだ!なあ、柊君」

 

「いえ。僕は力が無いので無理ですが。代わりにこれを差し上げます」

 そう言って葵が渡してきたのはバナナの皮。

 

 なんでバナナの皮?

 

「使い方はあなたにお任せします。ですが役に立つと思いますので使ってください」

 でもどこからどう見てもバナナの皮……だよな?

 

 まぁ良いか。

「サンキューな葵」

 そう言って学校を後にする。

 

 この位か。戦えそうなのは。

 

 メンバーは俺、悠真、あつし、五十嵐先輩。この四名だ。

 

 多分向こうはもっと多いだろう。

 

「それじゃ作戦を伝える」

 

 まずは俺一人と五十嵐先輩だけで突っ込む。そして……

 

「こんな感じだ。それじゃ行くぞ!」

 

『おー!』

 遂にチーム絆成と今治グループの戦いが始まる。




 はい!第69話終了

 遂にメンバーが揃いました。

 そして優也とあつしは親友になりましたね。良かった良かった。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第70話 策士優也の救出大作戦

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 遂に70話目なんですね。では70話目。やって行きましょうか。



 それでは前回のあらすじ

 優也とあつしの喧嘩から始まった。

 そして殴りあった二人は親友へ。

 そして灯夜も仲間になりました。

 そして遂にチーム絆成と今治グループの戦いが始まる。



 それではどうぞ!


side結羽

 

 目が覚めたら知らない倉庫に居た。

 

 隣に露木ちゃん、つみきちゃん、咲峰さんがロープで縛られていた。

 そういう私もロープで縛られている。

 

「お目覚めかい?お嬢ちゃん」

 

「出来るだけ暴れないで貰えると助かるかなぁ?」

 と折りたたみナイフを取り出してキラリと見せつけてきた。

 

 なんで私達がこんなのに巻き込まれないと行けないんだろう。

 

 助けて……誰か……。そう言いたかったものの、口もガムテープで塞がられてて喋れない。

 

 ずっとこんな所にいたら狂いそう……

 

 その時、バン!と誰かが扉を蹴り破ってくる。

 

 あの扉重厚そうなんだけど?

 

 すると扉の外の光で徐々にその二人が見えてくる。

 優也と軽音部の人!?その2人だった。

 

 この2人が来てくれたおかげてだいぶ気が楽になった。

 

 でもこっちには沢山の人が……

 

「ちっ。面倒だな」

 優也がそう呟く。

 

「そこのヤツら。返してもらうぞ」

 そして歩み寄ってくる。

 

 その時、上を見て目を見開いて驚いた。

 そこには……

 

 来ないで優也!罠だよ!と叫びたかったが言えない。

 

 すると一人の男がにやっと笑った。

 

「それはお前が生きてたらな!」

 そしてリモコンらしきものを取り出してスイッチを押す。

 

 その瞬間、優也の頭上から瓦礫が降ってきた。

 

「つくづく卑怯なやつだな」

 そう言うと瓦礫をオーバーヘッドキックで男に向かって蹴る。

 

 すると慌てて避ける男

 

「俺だってな…だてに半端な気持ちで助けに来てる訳じゃないんだよ」

 

 正直驚いた。あの瓦礫を蹴り飛ばすなんて

 

「お、おい。適当に二人くらい連れて逃げろ」

 一人の男が二人に命令してつみきちゃんと咲峰さんを連れて行ってしまった。

 

 そしてここに残されたのは私と露木ちゃんだけになった。

「お前が助けるって計画は完全に崩れたな」

 そして高笑いする男。

 

 すると優也が「ふふっ」と不敵に笑ってこう言った。

「ここまで計画通りに事が進むとそりゃ笑いが零れてきちまうよな」

 と普通なら優也達が追い詰められている場面なのに笑っているどういうことなんだろう。

 

「もう時期片付くさ」

 そう言った。何も知らない私達は頭にハテナを浮かべるしかなかった。

 


 

side悠真

 

「来たな」

 すれ違った車を見て俺はそう呟いた。

 

 そして走ってついて行く。

 

 普通なら追いつけない。が、

「すまん優也。ちょっとだけ約束破るぞ」

 そう言って走ると、なんと少しづつ追いつき始めた。

 

 優也も人間離れしているが、実は俺も人間離れしているのだ。

 

 そしてやがて真横を併走する。

 

「な、なぁ、男が走って併走してるんだが?」

 

「そんなわけないだろ。俺達は時速120キロで走ってるんだぞ?」

 

 そして俺は車に飛び乗ってフロントガラスから中を覗いた。

 

 主犯の二人は勿論のこと、後ろにいる2人も驚いていた。

 

「いやー。こんなスピードで走るとあまり長くは続かないけど追いかけるくらいなら余裕」

 そして息を吸い込んで

「後ろの二人を返してくれるかな?」

 すると車は急ブレーキを踏んだせいで悠真は慣性の法則で吹っ飛んでしまう。

 

 まぁ、下ろすまでが俺の仕事だしな

 


 

sideあつし

 

 車から降りてきて優也の予想通り、こっちに逃げてきた。

 

 あとは俺の仕事だ。

 

「ここまで来ればあの化け物小僧も」

 しかし彼らの願いは儚く散る。

 

「やあ。ご苦労さん。そこの二人を返して貰えるかな?」

 と男達の死角から出ていく。

 

 奴等も予想外の連続で驚きっぱなしだろうな。

 

 流石優也だ。こんな作戦を思いつくなんて。

 

『まずは俺と五十嵐先輩だけで突っ込む。そして多分俺と五十嵐先輩で威圧したら人質を連れて逃げるだろう。そうなったらあつしと悠真の出番だ。悠真が全力疾走で奴らに恐怖を与えて車から下ろす。下ろしたあとは童明寺お得意の格闘で奴等から救出しろ』

 

 完璧すぎて鳥肌が立つレベルだ。しかもスタンバイポジションの指定まで……すげー策士だよ。あんたは

 

「この野郎!どけー!」

 とナイフを持って突っ込んできた。

 

 そして俺はそのナイフを持った腕を掴んで衝撃を与えてナイフを落とさせた後、鳩尾に膝蹴りを食らわすと男は膝から崩れ落ちた。

 

「こ、こいつ」

 

「お前も来るか?」

 そう言うとメリケンサックらしき物を手につけた。

 

 ンなもんどこで手に入れたんだ?

 

 そして俺に殴りかかってきた。

「面倒だな」

 そして殴りかかってきた右手を抑えて、右脇腹に回し蹴りを入れる。

 

 そしてもう一人も退治完了した。

 

「もう一度やるんなら相手になるぜって聞こえてねぇと思うが」

 二人とも既に気を失っていた。

 

「大丈夫か?」

 

「え、ええ……」

 

「ありがとう……童明寺君」

 つみきに礼を言われて少々照れくさくなる。

 

 後は頑張れよ。優也

 


 

side優也

 

「んじゃそこの二人を返してもらおうか」

 そう言って1歩踏み出すと

 

「ふふっ。こいつがどうなってもいいのか」

 と男はナイフを取り出した。

 

 ちっ。あれじゃ下手に手を出せねぇな。

 

「ご苦労」

 と奥から今治 京助が出てきた。

 

「久しぶりだな」

 そして挨拶がわりに殴ってきた。

 

 そしてやり返そうとすると

「やり返すとあそこの二人、殺すよ?」

 と蹴り飛ばされた。

 

「がはっ」

 多分近づいたら刺される。俺が抵抗しても刺される。なら反応できない速度だ!

 

「五十嵐先輩!思いっきりタックルやってください!」

 

「こっち来たらその瞬間、デスだ」

 

「そして絆成。お前には二つの運命しかない。デスオアダイだ」

 死or死じゃねぇかふざけんな。

 

 そして五十嵐先輩を見てみるとタックル全然早くなかったです。

 

「く、来るな!刺すぞ!」

 

 こうなったら一か八か……葵。これの使い道はこうだったんだな。

 

「いっけぇぇっ!」

 とバナナの皮をタックルしている五十嵐先輩の足元目掛けて投げた。

 

 そしたら五十嵐先輩はバナナの皮を踏んだ瞬間、音速を超える速さで飛んで行った。

 

 そしてナイフを突きつけてる男が反応するまもなくタックルされ、壁には叩きつけられたせいで気を失った。

 

 そっちは任せた。

 

「さぁて。形勢逆転だな」

 手加減して貰えると思うなよ。

 

 そして殴りかかってきた腕を掴んで投げて踏みつける。

 

「ぐわぁっ!」

 

「これよりもっとアイツらが受けた心の傷の方が深いぞ!もう二度と俺達と関わるな」

 そこまで言うと今治は気を失った。

 

 リーダーを失ったことによって他の奴らは散り散りに逃げていった。

 

「結羽。露木ちゃん。大丈夫だったか?」

 そして奴の仲間から奪ったナイフで二人のロープを切って解放する。

 

「ありがとう優也!」

 と結羽は俺に抱きついてきた。

 

「わ、私も……ありがとうございます

 と露木ちゃんが俺の腕に抱きついてきた。

 

「モテモテだな……」

 そう言って五十嵐先輩は一人で倉庫を出ていってしまった。

 

「はぁ……疲れた……」

 とその場に座り込む。

 

 いってぇっ!

 

 あの時はカッコつけてオーバーヘッドキックなんてしたけど瓦礫を蹴ったせいで滅茶苦茶いてぇ。

 

 さっきまではアドレナリンやらなんやらで大丈夫だったんだけどな。

 

 すると携帯が鳴った。

 

「あつしか……」

 そして通話ボタンを押す。

 

「へーい」

 

『さっき五十嵐先輩が終わったってこっちに来たぞ』

 

「ああ、分かった。今から行くわ」

 そう言って通話を終了する。

 


 

「よ!皆。来たぞって悠真。ボロボロだな」

 

「そういうお前こそ」

 お互いに笑い合う。

 

「優也。やったぞ」

 

「あつし。ご苦労さん」

 そしてぱちぃんとハイタッチした。

 

「白井さん!」

 

「なんですか?」

 とこっちを見た。

 

「あつしが言いたいことがあるみたいだ」

 そして俺は静かに親指を立てた。

 

 しかしあつしには親指を下に向けて立てられた。

 

「何場を温めましたみたいなことを……」

 告白するには絶好のチャンスだと思うし、何より俺らがからかえる!

 

「はぁ……その……つみき」

 

「ひゃい!」

 改まって呼ばれたからびっくりしたのだろう。声が裏返った。

 

「俺はつみきの事が好きだ。健気でお菓子作りもできて女子力が高い。昔から俺の傍に居てくれてありがとう。これからも俺の傍に居てくれないか」

 一世一代の告白。

 

「えと……その……私も……好き……」

 そう言った。ハッキリと

 

「それって」

 

「みんなの前だから恥ずかしいけど……その……童明寺君の……あつし君の彼女にしてください」

 

「ああ、もちろんだ」

 あつしがそう言った瞬間、つみきがあつしに抱きついた。

 

 この日、一組のカップルが誕生した。

 

 そして俺が人を好きになるという気持ちを理解した日でもあった。




 はい!第70話終了

 結羽達を救えて良かったですね。優也が策士になって色々と考えましたがピンポイント過ぎて引くレベルです。

 そして人間離れした動きをする人がこの街には三人も……

 そしてあつしとつみきのカップルが誕生!

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第71話 尋問

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 攫われた結羽達。

 そこに優也と灯夜が駆けつける。

 二人ほど逃げられてしまったがそこは優也の作戦により悠真とあつしで捕らえることに成功。

 そして結羽達は全員救い出すことに成功し、つみきとあつしは付き合うことになりました。



 それではどうぞ!


side優也

 

 俺達は今治グループのメンバー等を警察に突き出した。

 

 聞けば色々な悪事を平気で行うグループだったんだとか……。俺も変な奴らに目をつけられちゃったな……。

 

 んでもって綺麗にしまったと思ったんだがな……

「聞いてる?優也」

 

「ん?ああ。聞いてる」

 因みに少しぼーっとしていたので聞いていなかった。つまり嘘である。

 

「絶対聞いていない……」

 はい。バレてましたね。そりゃバレるよな。

 

「もう1回言うからちゃんと聞いてて」

 そう言ってまた同じことを言い出した。

「私達皆、優也の事大切なんだからね?もう入院する怪我をしないでよ?」

 

「それは無理な相談だな。人は怪我する時は怪我するもんだ」

 そういうと無言の圧力をかけてきた。だから俺はうなづくしか無かった。

 

「ならよし。りんご持ってきたんだけど食べる?」

 

「なら貰おうかな」

 

「分かった!少し待ってて」

 そう言ってタタタと台の所まで小走りで行ってりんごを剥き始めた。

 

 さて、何故俺がこんな事になっているのかと言うと……まぁ、俺が間抜けなのが悪いんだが……

 

 瓦礫が落ちてきた時にオーバーヘッドキックをしたのがまずかった。

 

 帰る時に俺が痛い足を引きずりながら歩いていると皆が心配して俺は「大丈夫だ」と言ったんだが、病院に強制連行された。

 そこで調べると案の定、足の骨にヒビが入っていて即刻入院する羽目になった。本当にかっこ悪いと自分でも分かっているからみなまで言うな。

 

 そんでもって俺は間抜けな事にここに寝そべっている訳だが、退屈はしていない。

 悠真やあつし、白井さんに露木ちゃんや咲峰さん。五十嵐先輩とガッツリ女装した柊君。正直この柊君を見た時笑いを堪えるのに必死だったのは内緒。

 そして今来てくれている結羽。

 

 あれから数日経ったけどあれから毎日欠かさず来て俺の話し相手になってくれている。

 

 以前好きな人が居るって言ってたから、告白したら絶対に成功するくらい性格と容姿は良いんだけどなぁ……。なんでこうも俺に構うんだか分からん。

 

 とりあえず結羽がそれで良いってんならその好意に甘えておくとしよう。

 

「剥けたよ」

 とりんごを皿に入れて俺のベッドの真横にある椅子に座って爪楊枝で一つ刺して差し出してきた。

 

「はい。あーん」

 

「いや、骨折してるのは足で手は普通に動くんですが?」

 

「あーん」

 圧力掛けてきたよこの人。

 

 普通に自分で食べれるってのに……

 仕方ないので口を開ける。

「あ、あーん」

 そして口を開けるとその中にりんごの一切れを入れられる。

 

 うん。みずみずしくて上手い。

「うん。上手い。ありがとうな」

 そう言うと結羽はめちゃくちゃ笑顔になった。

 

「これくらいならいつでもするよ」

 いや、今回だけでいいんだが……。恥ずかしいし……。

 すると視線を急に感じた。ドアの向こうからめちゃくちゃ視線を感じる。

 

「誰だ?」

 俺が扉の向こうに問いかけるとチラッと中を覗いてきた。

「お兄ちゃんが女の人とイチャイチャしてる。僕とは遊びの関係だったんですか……」

 萌未だった。

 と言うかイチャイチャってなんだよ。……よく考えたらあれか?あれのこと言ってるのか?

「あれはこいつが心配してくれて」

 

「そ、そうだよ!わ、私と優也がなんて……」

 そんなに顔を赤くして怒ることでもないと思うんだが、確かにこれはきっちり言っておかないと後々めんどくさいことになるからな。

 

「つまりお兄ちゃんは僕だけのお兄ちゃんって事ですね?」

 どうしてこうも極端なのだろうか?

 

 と言うかどうしていつまで経ってもこっち来ないんだろうか……。

「そう言えばお兄ちゃん!お聞きしたいことがあります」

 と俺の方に近づいてきて結羽の隣に椅子を持ってきて座る。

 

「なんだ?」

 

「先輩がお兄ちゃんに壁ドンされたり押し倒されたって聞きましたが……」

 ここで完全に目のハイライトが消えた。

 本能が危険だと言っている。

 目のハイライトがなくて少し笑いながら首を傾げている。あれ?俺今日が命日なのか?

 

「本当ですか?」

 

「いやいやいや!なんで俺が知らない人にそんな事しなくちゃ行けないんだよ!」

 

「では、誰にも何もしていないと?」

 

「ああ!誰……に……も……」

 

「どうしたんですか?」

 今、俺の頭の中を最悪のシナリオが過ぎったんだが。

 

 いやいや……そんなことは無いはずだ……そんな偶然あってたまるか!

 でも一応。ね?

「その先輩の名前って如月 咲桜とか言わないか?」

 俺はある返答を期待してそう聞いたのだが……。

「そうです。咲桜先輩です」

 はい。OUT!来世の絆成さんに期待しましょう!

 

「ところでお兄ちゃん?」

 物凄く笑顔だ。ただその笑顔が今はハイライトオフも相まって怖すぎてシャレになんねぇ。

「どうして咲桜先輩だと思ったんですか??」

 今すぐにでも逃げ出したい。でも骨折のせいで……。

 

 こいつは今年で高校生だ。

 こいつの事だから俺の事を追っかけてこっち来るかと思ったら春高行ったのか。

 

「ねぇお兄ちゃん。僕、嘘は嫌いです」

 

「はい」

 俺はベッドの上で正座した。

 別に膝を骨折したわけじゃないから動くのだ。

「もう一度チャンスをあげます。ここで嘘をついて後に発覚した場合……」

 そして萌未は瓦の束をカバンから取り出した。

 いやいや。え?持ち歩いてるの?重くないの?それ

 

 そしてその瓦をチョップで真っ二つに割る。

「お兄ちゃんの頭もこうなりますよ?」

 

「すみません!」

 俺は土下座した。

 

「つまりは咲桜先輩を壁ドンして、押し倒して」

 俺が悪いんだけど一つ言い訳させてくれ!悔しかったんだ!

 

(あまつさえ)、咲桜先輩を襲ったと」

 なんか最後の脚色されてない?そんなことしてないんだけど?

 これはハッキリ否定しておかないと!

「最後のはしていない!」

 

「言えますか?私の目を見て咲桜先輩を○してないと!」

 

「言えるよ!こればっかりは言ってやるよ!」

 俺は自信たっぷりにそう言った。だって事実、そんなことはしていないからな。

 

「……ならその事は良いです。初壁ドンと初押し倒しは取られましたが初めてが取られてないのならそれで。ではあなたは出て行ってください僕とお兄ちゃんはしなくてはならない事が……」

 

「もう今日は帰ってくれぇっ!」

 そしてその後、俺は無事退院を果たすのだが退院出来たのは新学期が始まる一週間前だった。




 はい!第71話終了

 今回は入院会です!

 萌未はいつも通りのテンション。さすがです!

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第72話 選択

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 優也が入院してしまい、そこに見舞いに来た結羽。

 そこに更に萌未が来て厄介な事に

 そして萌未は咲桜の後輩だと判明。

 優也大ピンチ!



 それではどうぞ!


side優也

 

 やっと俺は退院出来て自宅に居た。

 

 久しぶりの我が家なのだが、相変わらずこの家には俺以外誰も居ない。

 

 いや、違うな。仏壇には父さんが居る。

 

 そしていつも通り俺はコーヒーを飲みながらニュースを見る。

 

『佐藤有山容疑者は「ついかっとしてやってしまった」等と意味不明な供述をしており、容疑を否認しています』

「いや認めてるよね!意味不明でもないし、否認してないよね!」

 思わず俺はテレビに対してツッコミを入れる。

 

『以上。ボケ専門ニュースチャンネルでした』

 あ。ボケ専門だったのね。……いやいやいや!そんなの無いから!

 

 今日はツッコまなくて済むかと思ってたら案の定ツッコんでしまった。

「いきなり疲れたな……今日はもう何も起こらなければ良いけど」

 その時、インターホンが鳴った。

 

 いつもの通りあいつらだろうと思ってインターホンを見てみると俺は驚いて目を見開いた。

 そしてそっとインターホンの前から音を立てずに後ずさる。

 

 な、なんであの人がここに居るんだよ。

 

 ガチャと鍵を開ける音が聞こえた。

 嫌な冷や汗が額を伝って顎まで垂れてきて落ちる。

「相変わらずの玄関。あの人の事を思い出して吐き気がするわ」

 俺の家の玄関を貶しながら女性は中に入ってきた。

 

「久しぶり優也」

 俺はこの人を知っている。そしてこの人も俺を知っている。

 何故ならこの人は……俺の

「か、母さん……」

 俺の母さんだからだ。

 

 そう。この人は俺の母さん。絆成 辛華。現在は再婚したと言う話も聞いていた。確か……木崎だっけか?

「何の用だ」

 俺が睨みながら言うと母さんは部屋を見渡し始めた。

 

「相変わらずの部屋。数年経ったのに相変わらずの内装ね」

 そして仏壇の父さんの写真を見て母さんはフッと笑った。

「やっとね。あの人が居なくなって清々したわ」

 ともうこの世に居ない男に対して毒づく母さん。

 

 やめてくれ

 

「はぁ…あの人が居たことにより私がどれだけ苦労したか」

 

 やめてくれ

 

「さぁ、嫌なあの人も居なくなったわけだし、優也も保護者が居ないと大変でしょ?母さんね。再婚したの。だから今からそっちに」

 

「やめろ!」

 と俺は反射的に叫んだ。

 

「母さん…いや、辛華さんが親父の事をどう思おうとそれは辛華さんの勝手だ。だけどな」

 そして俺は一泊おいてこう言った。

「あの人は俺が辛いときでも側に居て励ましてくれ、見捨てずに世話をしてくれた人だ。だから俺にとっては大切なただ一人(・・・・)の親父だ。そんな人を目の前で毒づかれて気分良いわけないだろ」

 と良い放った。

 

 正直、俺は怒りでどうにかなりそうだった。

 

 素っ気ない態度を取ってはいたけども、たった一人のずっと一緒にいた家族だ。大切じゃないわけが無いだろう。

 そしてそんな大切な人を馬鹿にされて気分がいい人なんて誰も居ないだろう。

 俺はそんな大切な人と過ごした町だからだから俺はこの家……この町を出て辛華さんの元へ行くなんてごめんだ。

 だから

「そのお誘いは断らせてもらう。第一、今更来てなんだ!一度は見捨てたのはお前じゃないか」

 俺は力強く。俺は意志を込めて言った。

「親に向かって何その口の聞き方!」

 いままで俺たちに対して母親らしい事を何もしてくれなかったくせに……だから余計にイラついた。

「今更母親面かよ。おせーんだよ。あんたはもう俺の母親でも何でもない」

 パシーンと破裂音がなって俺の頬に痛みが走る。

 

 都合が悪くなったらすぐ叩く。俺はこの人が嫌いだ。

 元々、俺達兄妹もこの人の事が好きじゃないんだ。

「この家ももう売ったから直ぐに出ていかないといけない。さっきは聞いたけど優也。アンタには選択権なんて無い」

 そんな最悪な事を言ってきた。

 

 この家は父さんが買ったはずなんだが……。なんで母さんが──だが、そんなことを考えている暇はない。

 このままだと本当に連れていかれちまう。

 

 その時、外から車の音が聞こえた。

 そしてちょうど俺の家の前で止まって扉が開く音が──。

「さぁ、選びなさい。私に着いてくるか、喜んで私に着いてくるか……」

「それか……」

 辛華さんが玄関扉前に立って言っているさらに奥、つまり外から声が聞こえてきた。

 

 そしてその声がした方を見てみるとそこにはスーツの上にコートを羽織ってハットを被っている男が居た。

「それが……俺と一緒に来るか……」

 そう言った。

 一緒に?なんで知らない奴と共に行かなきゃいけないんだよ。

 

「貴方は誰ですか」

 辛華さんが冷たい口調でそう言った。

 

 するとハットに手を添えて口を開いた。

「俺は政博(まさひろ)。そこにある写真立ての中に居る奴の親友だった人間だ」

 と指でクイッとハットを上げると顔が見える。

 

 すると誰かに似ているなと思う様な顔付きだった。

「ですがそれでは一緒について行くという理由にはなりませんよね?」

 そう言うと「そうだな」と笑う政博さん

「だがこれはあいつ自身の意思でもあるんだ。「俺が死んだら俺の子供をお前が面倒を見てくれるか?」って。俺は断ったんだけどな……。結果的に押し切られちまった」

 語る政博さん。

 父さんがこの人に俺の事を……。

 

「大きくなったな優也君。前にあった時は赤ん坊の時だから覚えていないだろうけどな……」

 と微笑む政博さん。

「だからと言ってあなたに託す義理はありません」

 

 おどけているような表情の政博さんの表情が真剣な表情へと変化した。

「じゃあ優也君に聞いてみようか」

 そう言って俺の方に視線を向ける政博さん。

 目でこう言っていた「どっちにする?」と。しかしそんな答えは既に決まっている。

「俺は政博さんの所に行きますよ」

 

 そう言うと辛華さんは睨んできた。

「好きにしなさい!」

 怒りながら出ていってどこかに行く辛華さん。

 

 でもそのお陰でいままで張り詰めていた空気が元に戻る。

「それじゃぁ優也君。改めて自己紹介をさせてもらうよ。俺の名前は柴野(・・) 政博だ」




 はい!第72話終了

 今回は新キャラが二人出ました!

 一人は優也の元母親の木崎 辛華。そしてもう一人は柴野 政博です。

 政博と言う男は一体どんな人物なのか?

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第73話 柴野

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 突如として現れた優也の母、辛華。

 辛華は優也を連れていこうとすると突如として一人の男が現れた。

 その男は優也の父の親友、政博だと言う。

 政博は優也を引き取りに来たらしくどちらに着くかを優也に聞くと優也は政博について行くと言った。

「俺の名前は柴野 政博だ


side優也

 

「しば……の」

 俺はこの苗字を知っている。知っていると言うよりも深い関係だ。

 何せ俺の友達にも"しばの"が居るからである。

 

「どうかしたか?」

 もし俺の予想が正しかったなら、俺は結構やばい決断を下してしまったのではないか?そう思って俺は冷や汗を流す。

 

 とりあえず聞いてみるか。そう思って違っていることを期待しながら、苗字が同じなだけの赤の他人である事を期待しながら俺は聞いてみた。

「あの……。政博さんには娘さんって居ますか?」

 

「ああ、居るぞ?なんで知ってるんだ?優也君には見せた事無かったのに」

 嫌な予感しかしない!!

 

 こんなたまたまこの街に柴野さんなんて言う苗字の人が揃うとは考えられない。

 

 あっちの柴野さんのお宅のご主人は単身赴任中だったような気がする。だけど……もしかすると……。

 

「俺の娘は結羽(・・)って言うんだ」

 アウトォッ!

 柴野結羽なんて言う同姓同名のやつがそう簡単に居る訳が無い!

 

「じゃあ行こうか。優也君」

 

「うーん……。結羽にはなんて言ったらいいんだろうか?急に押し掛けて怒られたらどうしようか……」

 俺はブツブツ呟きながら政博さんの車に乗り込んだ。

 

 なんで俺の家に来たのかと聞いたらたまたま今日、自宅に戻れる日になったから今帰ってる途中だったのだが、途中でドアを開けっ放しで言い争っていた俺達が見えて入ってきたという。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 久しぶりの結羽の家だ。

 

 入院中、毎日会っていたからちょっと合わなかっただけで久しぶりのような気がする。

 

 そして政博さんは鍵で扉を開けて入っていく。

「結羽、かぁさん帰ったぞー!」

 そう大声で呼びかけると結羽と美樹さんが奥から出てきた。

 

「おかえりなさぁいあなた〜」

 相当仲のいい夫婦のようだ。微笑ましい。

 

「え!?」

 結羽と目が合った。それに気がついて俺は目を逸らした。

「や、やぁ」

 

「な、なんで優也が!?」

 すると美樹さんも俺に気がついたようだ。

 

「あらァ。優也君。お久しぶりね」

 すると政博さんが驚いてこっちを見る。その反応、分かりますよ。自分がいない間にいつの間にか知り合いになっていたらそら驚く。

 

「優也君。君は俺の娘のなんなんだ」

 何って聞かれても……。

「友達ですね」

 でも気まずいぞこれ。友達、しかも女の子と一緒に住むってのは……。

 

「そうか。もう知り合っていたんだな。それなら安心だ」

 何が安心なんですか!?俺は安心できませんよ!

 心の中でつっこんだけど現実は変わらない。

 

「優也君がうちで住むことになったぞ」

 政博さんがそう言うとポカンとする結羽。

「あらァ。よろしくね」

 いやいや!あなたはもうちょっと驚いて!?

 

 結羽は目を点にして瞬きを繰り返してるのを見てやばい選択だったんだと分かる。

 でも俺がこの町で暮らすにはこれしか方法が無かったんだ。

 すまん。結羽。

 

 すると結羽は数秒間フリーズした後、漸く現実世界(こっち)に戻ってこれて、顔を真っ赤に染め上げる。

「ゆ、優也がうちに」

 なんかボソボソと呟いているような……。やっぱりそんなに嫌なんだな……。

 

「よし!それじゃ、今日は優也君の歓迎パーティーでも開こう!母さん、頼んだぞ!」

 そう言うと美樹さんは袖を巻くって「任せて」と言った。頼もしい限りである。

「お、お母さん!私も手伝うよ!」

 すると結羽もとてとてと小走りで美樹さんの方へと着いて行った。

 

「それじゃあ、優也君。上がってくれたまえ」

 と変な口調で上がるように言われたため、俺は少し申し訳ない気持ちになりながらも政博さんの後を追って俺も家の中に上がり込む。

 

 そして適当に座るように言われたからテーブルについて座ることにした。

 


 

 しばらく待っていると、台所から美味しそうな臭いがしてきた。

 しかし、久しぶりにこの家に来た経緯がこれって如何なものだろうか?

 そう思いながら携帯でニュースを見る。

 

「ん?何を見ているんだい?」

 と政博が携帯を覗き込んできた。

「ニュースです。今朝は見損ねたので」

 なんだよあのボケまくるニュース。あんなの見た事ねーわ。テレビに対して突っ込んだのは初めてだぞ。

「へぇ〜。優也君。見ない間に大人になったね」

 と政博さんは感心したような声色でそう呟いた。

 

 当たり前だ。俺だっていつまで経っても子供なわけないだろ。

「しかし、懐かしいな。昔はよくおじちゃん!って甘えてくれたのになぁ〜」

 え?マジで?覚えてないんだけど!?その話を詳しく聞きたい!

「七海ちゃんが産まれた頃には単身赴任をするようになって、会えなくなっちゃったからなぁ……。君のお父さんとは連絡を取っていたんだけどな」

 俺の父さんの名前を聞いて、俺はある事が気になってしまった。

 

 まぁ、一度は子供なら思った事がある疑問だと俺は思う。

「父さんはどんな子供だったんですか?」

 そう言うと政博さんは目を見開いて驚き、悠真を彷彿とさせる様なニヤニヤした笑みを浮かべる。

「なんだい。優也君。気になるのか?」

 だが、そのニヤニヤの中に結羽みたいな子供の様な笑顔が含まれている気がする。

 

 だから俺はこう言った。

「教えてください」

 そして政博さんは目を静かに閉じて俺の前に座り、胡座をかいて腕を組んだ。

 軈てゆっくりと目を開いて政博さんは口を開いた。

「俺達が出会ったのは中学生の頃の話だ」




 はい!第73話終了

 次回は政博視点の過去編です。

 優也の父と政博の過去が明らかに!?

 それでは!

 さようなら!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第74話 柴野政博と優也の父

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 突如優也の前に現れた柴野政博と名乗った男。

 その男はなんと、結羽の父だった!?

 成り行きで政博さんと暮らすと言って結羽の家に来たが、本当に大丈夫なのか?

 そして、今明かされる。優也の父の過去。



 それではどうぞ!


side政博

 

 これは俺が中学に入って間もない頃の話だ。

 

 俺のクラスには変な奴がいた。

 

「どもども〜。瞬介(しゅんすけ)が登校しましたよー!」

 と手を振りながら教室に入ってくる男が一人。しかし、皆はいつもの事だと思って誰も気にしない。

「いぇいいぇい!ドンドンパフパフ!」

 やっぱりこいつの頭はおかしい。

 

 俺は今年、こっちに越してきたばかりだが、こいつとは金輪際、一切関わらないようにしようと一瞬で思った。

 

 授業中もおかしい。

「先生。今日も可愛いですね。この後、どうですか?」

 先生を口説き落とそうとしたり、もう訳わかんねぇんだ。

 

 そんなある日、突然の出来事だった。

「今日は席替えをします!」

 その言葉が聞こえて、クラス全員がどす黒いオーラを出した。絆成 瞬介本人とその隣の人を除いて。

 全員、瞬介とか言うやつの隣になるのが嫌なんだ。だから俺自身も隣になるのが嫌なのだ。

 

 そして、席替えくじ引きの結果がどうなったかと言うと……。

「隣、よろしくな」

 瞬介とか言う奴の隣になってしまった。

 

 その時、初めて俺は運ゲーを恨んだかもしれない。

 

「でさでさ〜」

 この男は休み時間中、休みなくずっと喋り続けている。こいつは疲れというものを知らないのだろうか?

 しかも、俺に対して俺の興味の無い話を永遠と続けている。何こいつ。

 正直言うと物凄くウザイ。よく前の隣の席だった奴は耐えることが出来たよなと神様かのようにその人を拝む。

 

 こんな男だったんだ。やることなすこと、全て常人の考えじゃ想像つかないことばかりだ。勿論悪い意味だ。

「その時な、俺はこう言ってやったんだ。お前は飴玉か!?ってな」

 どんな事を言われたらそんなツッコミすることになるんだよ!

 さっきまでの話を聞いていなかったからどんな経緯でそんなツッコミをする事になったか聞いていなかった。

 

 はぁ……疲れる。こいつといると疲れる。しかし、そんな俺の気も知らずにこいつは話し続ける。

 それと、何となく聞いていたらこの人には兄がいる事がわかった。兄もこんな性格をしているのだろうか?

 


 

side優也

 

「こんな男だったんだよ。君には申し訳ないけどね」

 

 俺は驚いていた。

 俺にとって父さんは物静かなイメージしか無かった為だ。

 無駄口は言わず、偶に発言する位だ。

「いやー。あの時は流石の俺も君の母親じゃないけど、早く居なくなってくれないかな?って思っちゃった位だ」

 まぁ、今の話を聞いていたらそう思うのも無理はないと思えてしまう。

 

「だけどね。それは間違いだったんだよ」

「間違い?」

 俺は聞き返した。

 

 政博さんは静かに頷いた。

「今からそれを話すよ。彼は本当はどのような男だったのか。どうしてここから俺と絆成 瞬介と言う男が仲良くなったのかという経緯をね」

 


 

side政博

 

 俺はその日も瞬介によって聞きたくもない話を永遠と聞かされていた。

 だが、俺はそれも全てスルーして次の時間の準備を進める。

 

 そして放課後、その疲れ切った体を無理に動かして帰路を歩く。

 俺は一人で歩くこの時間が大好きだ。誰にも邪魔されずに淡々と黙々と一人で歩き、夕日を眺める。

 

「疲れたなぁ……。今日は帰ったら直ぐに寝るか」

 と決め込んでいると、路地裏の方から声が聞こえてきた。

 誰の声かと見ると女の子だった。

 

 女の子が男に取り押さえられて泣いていた。あれを見て友達なんだなとか思うようなハッピーな頭はしてはいない。だから瞬時にどう言う状況なのか把握する事が出来た。出来た上であえてスルーする。

 俺なんかがでしゃばった所で被害者が増えるだけだろう。

 

 そしてその路地裏の前を通り過ぎようとした瞬間、俺の顔スレスレをボールが飛んできて路地裏の方に入って行った。

 そのボールを目で追うと、先程女の子を取り押さえていた男の顔面のど真ん中に命中。

 余程威力が高かったのか、歯が数本折れて鼻から血が出ていた。

「いってぇぇぇっ!」

 大声を上げながら蹲って顔を抑える男。

 

 そしてボールが飛んできた方を見て俺は目を見開いて驚いた。

 そこに居たのは──

「あ、ごっめーん。間違ってボールがそっちに飛んで行っちゃったわ」

 ケラケラと笑う男。瞬介だ。

 

「てめぇっ!何しやがる!」

 俺は男の怒りで支配された目を見てしまった。直感的に恐怖を感じてしまった。

 まるで蛇に睨まれた蛙のような気分だった。

 

 しかし、あいつは

「ん?どうしたんだ?そんなに怒っちゃって」

 こいつは怖いもの知らずの大馬鹿者なんだろうか?完全に挑発している。

 あれはもう病院送りじゃ済まない。

 

「大人をナメるんじゃ無い」

 そう言うと男は懐から折りたたみナイフを取り出した。

 

 さすがにヤバい。そう思った俺は瞬介のもとに駆け出した。

「お?マーサヒロくん。君も居たのか。またまた語り合いたい所だが、今はそれどころじゃ無いんでな」

 その時、初めて俺は真面目な顔の瞬介を見た。

 

 ナイフを持っている大人を前にして瞬介は一切怯えずに真っ直ぐ見据えていた。

 だが、奴も周りに人が居ないから強気に出ていた。

「こんのガキがァァっ!」

 と男が走ってきた瞬間、瞬介はボールを蹴り飛ばした。何個持ってんだよ。

 

 今度は男の鳩尾に当たり、その場で腹を押さえて蹲ってしまった。

 その場所ってのが……。

 キキィィッ!

 道路だった。

 その為、やって来た車にはね飛ばされてしまった。

「やべっ」

 流石の瞬介も青ざめていた。

 

「とりあえず救急車でも呼んどいてやるかな」

 これを見て恐怖によって動けななかった俺とは違って実際に助けることに成功した瞬介はあんまり悪い奴じゃないような気がしてきた。ちょっと頭が弱いけど。

 

 次の日、またまた俺に永遠と話しかけてくる瞬介。だが、それに対して相槌を打つようになった俺を周りの人が見て変なものを見る目で見られてしまった。

 


 

side優也

 

「こんな経緯で仲良くなった」

 その言葉を聞いた瞬間、俺は思考がフリーズした。

 

 サッカーボールを蹴るって癖。俺だけだと思ってたけど父さんもやっていたというのか!?

「だからさ。君のお父さんから優也がサッカーボールで人を助けたってのを聞いて思わず笑いそうになっちまったよ」

 いや、なんで父さんが知ってんだよ……。まさか、七海が父さんに言ったのか?

 確かにあの時は厨二病を拗らせていて、七海に色々と語ってたりしたけど。

 

「いやぁ。君もあんな事件さえなかったら瞬介の様な性格になっていたのかもね」

 とそこまで会話した所で、

「ご飯出来ましたよー」

 と美樹さんが料理を持ってきたようだ。

「手伝いますよ」

 と立ち上がろうとすると

「良いよ。今日は歓迎会とお父さんが帰ってきたパーティ兼ねてるから、今日は二人が主役なんだからね?」

 と料理を持ってきた結羽に止められた。

 

 だから俺は仕方なく待つことにした。なんか落ち着かねぇー。




 はい!第74話終了

 次回で歓迎会終了。

 歓迎会が終わったら優也の話の拠点が柴野家になります。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第75話 歓迎

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 優也の父と結羽の父の過去物語。

 以上!



 それではどうぞ!


side優也

 

 ついに食卓に料理達が並んだ。

 

 様々な料理があって豪勢だ。思わず俺は気圧されてしまう。

「凄いですね」

 俺が無意識に呟くと美樹さんが

「優也君が居るから結羽も張り切っちゃったのかもね〜」

 ふふふと笑いながらそう言うと結羽は

「も、もう!お母さん!」

 と顔を真っ赤にして美樹さんに抗議し始めた。

 

 容姿が幼いからちょっと可愛らしいって思ってしまったと言うのは胸の内に秘めておく事にする。

 

「そう言えば、今日は冬馬君は居ないのか?」

 と政博さんがご飯を自分の皿によそいながら聞いた。

 

 確かに。いつも食べに来た時は冬馬も居るのに今日は居なかった。どう言う事だ?

 

「あー。冬馬君ならお姉さんに連れられて外食しに行ったみたいよ」

 俺と政博さんの疑問について美樹さんが答えてくれた。

 

 なるほどね。だから居なかったのか。

 

「さあ、食べましょう?」

 美樹さんのその声で俺達は個人個人で小さく「頂きます」と言って食べ始める。

 

 やはり美味い。

 この料理達は美樹さんと結羽の二人で作った物だろう。前々から思ってたが、結羽と美樹さんの料理の味って似ているんだ。繊細な味だ。まぁ、多分美樹さんが結羽に教えたんだろうから似るのは当たり前か。

 俺も前、爺の料理を食べた事のある人(父さん)に料理を食べさせてみたら、癪なことに爺の料理に似ていると言われた。本当に癪だがな。

 

「そう言えば、さっき二人で何か話してた様だけど何話してたの?」

 結羽がそう聞いてきた。

「いや、ちょっと優也君のお父さんの話をしていただけだ」

「そうだったんですか。私もちょっと気になりますね」

 いや、意外と俺の父さんは他人には言い難いような奇行をしているからあまり言いたくないんだけど?

 完全にギャグ漫画とかに出てきそうな設定の人なんだけど?

 

「そう言えば、昔から瞬介さんの話を良くしてましたよね」

 いや、やめて!?この話を広めんのやめて!?

「親子揃ってボールで人を助けるって言うのは遺伝を感じるよな〜」

 俺はその言葉を聞いた瞬間、何も口に含んでいないのに吹き出した。

 そして向かいを見てみると結羽も何も口に含んでいないのに吹き出していた。いや、なんでお前まで吹き出すんだよ。

 

「その話で思い出したんだけど、結羽も昔ムグムグ」

 美樹さんが何かを言おうとした所で結羽が美樹さんの口を押さえて言葉を遮った。何を言おうとしたんだろうか?

 話の文脈からしてボールの件だろうが、最後に言った言葉が気になるな。

「結羽も昔」と言う言葉。"も"と言う同じと言う意味が含まれている言葉がある。と言う事はまさか。

 

「もしかして結羽もボール蹴って人を助けたことあんのか?」

 そう言うと美樹さんはあちゃーと言う感じに「そうなったか……」と呟いた。

「何でそういう考えになるんですか!?」

「えぇっ!違うのか?」

「そんなこと出来ませんよ!」

 間違えてしまったようだ。一体何が正解なんだよ。

 


 

 そんなこんなで料理を美味しく頂いた後、政博さんに家を案内されていた。

「ここが優也君の部屋だ。使ってなかったから自由に使っていいぞ」

 そう言われて俺は扉を開けてみる。

 

 すると中にはベッドと机が置いてあった。

 おいなんで既にあるんだよ。

「実は最初から君を誘うつもりで君の家に行ったんだ。君の父さんに頼まれたからな」

 そうだったな。父さんが死ぬ前に頼んでたんだな。

 

「だから俺も俺が死んだら娘を頼むって言ってやった。あの時は冗談のつもりだったんだけど、本当に死んじまうなんてな」

 政博さんはケラケラと笑う。

 だが、政博さんも辛いはずだ。だって親友を失ったんだから。

 自分の感情を押し殺して、子供に弱い所を見せたくないんだ。

 

「そんじゃ、今日はゆっくりお休み。疲れたろ?」

 俺の体の気遣いも見せてくれる。良い父さんじゃないか。

「はい。今日はそうさせてもらいます。何だか色々あって疲れちゃいました」

 俺はいつまでも落ち込んでいるのは辞めにした。政博さんも辛いけど我慢しているんだから、俺だって我慢しなきゃいけないと思ったからだ。

 だから俺は笑った。政博さんに辛気臭い顔を見せまいと笑った。

 

「これからよろしくな優也君」

 握手を求めてくる政博さん。俺はその手を両手で包み込む様にして握り、

「こちらこそよろしくお願いします」

 と言った。

 

 これから何が起こるのかも分からない。だが、俺は父さんと七海の分まで精一杯生きることにした。

 


 

 次の日、俺は早めに起きた。なぜ早めに起きたかと言うと、今日はバイトがあるからだ。

 

「今日はいつもより頑張んないとな」

 如月にも迷惑かけちまったからな。

 北村さんによると、俺が落ち込んでバイトに集中出来てない間、何も聞かずに俺のフォローをずっとやってくれていたらしい。

 

 あいつには借りを返すつもりでいかないとな。

 

 そう思って俺は皆よりも少しだけ早く起きてバイト先のコンビニに向かう。

 

 そして制服に着替えてレジに向かうと、予想外の光景が広がっていた。

「あ、おはよう……ござ……います」

 向こうも驚いている様だった。

 

「なぜここに?いや、制服を来ているからバイトだってのは分かる。バイト、ここにしたのか露木ちゃん」

 そう。神乃 露木がレジに立っていたのだ。

「はい。先輩もここでバイトしていたんですね」

 先輩……。良い響きだ。今まで変態とか強〇魔とかしか呼ばれてなかったからな。

 

「よーし。何かわからない事があったら遠慮無く俺に聞くといい」

「まさかあっちの事も……とか言いませんよね?」

「言いませんよ!露木ちゃん。俺は強〇魔じゃないからね!?」

「じ、女子の前で強〇とか言うのはどうなんですかね?」

 あなたが言い始めたことじゃないですか。

 

 そして携帯をマナーモードにしてポケットにしまおうとすると、LINEが来ているのがわかった。

 まぁ、後で確認するか……。そう思ってポケットに仕舞ってバイトモードになった。

 


 

side結羽

 

「うゅ〜」

 私は目を擦りながら体を起こした。

 

 まだ少し眠いような気がするけど、二度寝すると頭痛とかする体質だから我慢して起きる事にする。

 

 いつも学校がある日に起きる時間よりも少し早い位だった。休みの日はもっとゆっくり寝ていたいんだけどね。

 

 そして携帯を確認するとメールが届いている事に気がついた。

 そのLINEを開いて内容を確認してみると、こんな文面が書いてあった。

 

『お久しぶり。結羽ちゃん。元気にしてる?

 私はね、超絶元気!

 それで、本題に移るんだけど、明後日、明

 明後日って予定空いてる?

 ちょうど私も休みが取れたから久しぶりに

 皆で遊びたいなって思ったんだけど、どう

 かな?

 もし空いてるなら連絡ちょうだい。

 あ、そうだ。新しく友達になった人とか居

 たら一緒に連れてきて紹介して欲しいな〜

 なんてね。

 じゃあ返事待ってるからね〜』

 

 長い!!

 

 だけど遊びのお誘いかぁ……。

 

 そして名前の欄を見てみるとそこにはホワイトウェーブって書いてあった。

 と言う事は、白波さんからのお誘いかぁ。

 

 久しぶりだな。優也、行けるかな?

 

 そう言えば、優也は「有給消化の為に明日から三日間休みを取った」って言ってたような気がする。なら大丈夫だね。

 

 皆で遊ぶのは久しぶりだなぁ。楽しみ♪




 はい!第75話終了

 次回は白波さん再開編の序章、若しくは本編の方に入るかもしれません。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第76話 遊びのお誘い

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 歓迎会。以上!

「雑すぎね?」



 それではどうぞ!


side優也

 

 バイトも終わり、今は着替えをしていた。

 

 露木ちゃんもし行けるならあんな風に毒舌だが、俺の言うことは素直に聞いてくれて助かった。

 

 そして今は今朝送られたLINEを見ていたのだが、

「白波さん……。俺は勉強する用事があるんだ」

 そう送ると、直ぐに返事が帰ってきた。

『なら用事は無いって事だね』

 何故そうなる!俺は用事があるって言ってるだろ。

 

 だがしょうがない。白波さんは進学せずに就職したんだ。だから社会人となった白波さんに会えるタイミングってのは限られている。

 ここは仕方ないから行くか。

 

 しかし、新しい友達か……。

 

 そして扉を見る。

 扉の向こうには露木ちゃんが立っている。

 

 何故かと言うと、露木ちゃんと俺は同じシフトタイムになっていたから同じタイミングで帰ることになった。

 だから送って行くことにした。

 

 俺が送って行くと言った時に

「身の危険を感じます」

 って言われたけど、最終的には送って行くことになった。

 

 そして今は俺達と入れ替わりに如月と北村さんがレジに入っている。

 

 それで話は戻るが、新しい友達。誰々居たかな?

 

 気軽に誘えそうな人が良いんだが、まず間違いなく結羽と悠真は誘っているだろう。そして結羽が来るなら冬馬も来るだろう。

 そんでもって、俺は星野さんの連絡先は知らないし、柊君や五十嵐先輩も知らない。

 そして、如月と北村さんは如月が「今週は殆どバイトだぁ」って既に有給を使い果たしてしまったようで嘆いていたから如月は無理だ。更に言うと北村さんも確かシフト入ってたはずだ。

 

 となると、俺が誘える人と言えば……。

 

 そして着替えを済ませて外に出る。

 

「やっと来ましたか。じゃあ帰りましょう」

 そう言って俺と露木ちゃんは隣に並んで歩き始める。

 

「そう言えば、明後日と明明後日って空いてるか?」

「なんですか?デートのお誘いですか?」

 何勘違いしてるんだよ。

 

「違う違う。友達にさ、遊びに誘われたんだけど、そいつが俺らの新しい友達とも遊んでみたいと言っていたからな」

「友達……ですか?」

 そう言うと少しだけ露木ちゃんは考え始めた。

 

「まぁ、私とシフトが空いてるので良いですよ」

 俺は心の中でガッツポーズをした。

 

 そしてついでに神乃さんも誘っておいてもらおう。一石二鳥だ。

「ついでに神乃さんを誘っておいて貰えるかな?」

「まぁ、それくらいなら良いですけど……。お姉ちゃんを誘っておけば良いんですね?分かりました」

 よし、俺のターン終了だ。

 

 そう思ったら目の前を嫌な奴らが通った。

 

 俺には気がついていないだろう。そう思って素通りしようとすると、

「おっにいっちゃん!」

「ぐわっ」

 俺が油断した隙に飛びついてきやがった。

 

 そして俺は身構えていなかった為、衝撃に耐えきれずに前の方に倒れてしまう。

 

 すると、露木ちゃんは俺の前に来てスカートを押さえながらしゃがんで微笑を浮かべながらこう言った。

「だぁーいじょーぶですかぁ?」

 馬鹿にしている言い方だった。

 

「そ、それより萌未。俺から離れてくれ」

「嫌です!離れたら僕から逃げる気でしょ!この彼女さんと逃げる気でしょ!」

 は?彼女?

 

 なんのことだろうか?俺は今、露木ちゃんと帰ってただけだ。

 

「この人が彼氏……」

 すると、露木ちゃんは顔を真っ赤にしてぼーっとし始めた。

 

 そして暫くぼーっとすると、急にハッとして意識がこっちに帰ってきたようだ。

 そして顔が赤いまま

「なんでこんな人と付き合わなくちゃいけないんですか」

 と冷たい目で言い放ってきた。先輩、悲しい!

 

「そうなんですか?付き合ってないんですか?」

「ああ、今はバイト帰りで送っていただけだ」

 そう言うと萌未はニコッとした。

「なら、僕のお兄ちゃんって事ですね!」

「いや、お前は従妹だぞ?」

 昔から気になっていたんだが、何故こいつは俺の事をお兄ちゃんって呼ぶんだろうか?

 

「とりあえず離れてくれ」

「嫌ですぅ!」

 と一切離れる気がない自称妹。

 しょうが無いので俺は懐から俺はある物を取り出した。

 

「そ、それは!?」

「ああ、ガムだ。お前の好きなイチゴ味だぞー。欲しいだろ?」

「へっへっへっ」

 萌未は犬のように息を荒くしている。既に人間としてのプライドは捨て去ってしまったようだ。

「これやるから離れてくれ」

「は〜い!」

 すると素直に俺から離れる萌未。

 

「ほらよ」

 と渡すと両手でガムを受け取って食べ始める萌未。

 

「んじゃ、萌未。俺らは帰るな〜」

 そう言っていつの間にか目の前から消えてた露木ちゃんを探すと、

「何やってんだ?」

 壁に隠れてこちらを伺っていた。

 そういや極度の人見知りだったな。俺と初めて会った時もこうだったっけ?

 

「帰るぞー」

 そう言って露木ちゃんの元に向かう。

「は、はい。……怖い」

 どうにかならないかな?この人見知り。

「この調子で遊びに行くの大丈夫なのか?」

「は、はい。頑張ります」

 あれ?いつもなら「あなたの様な人に心配される謂れはありません」って言ってくるのに妙に塩らしいじゃないか。

 

「お兄ちゃん。遊びに行くんですか?」

 と後ろから声がした。

「おい!まだ居たのか!?」

「私も連れて行ってください!」

 そうなったか……。

 

「わかった。分かったから、酒田さん待たせてんだろ?だから帰れ」

 そう言うと「はーい」と言って今度こそ帰って行った。

 

「それじゃ帰るか。待ち合わせ場所は後でLINEするから」

「はい」

 そして俺達は帰った。




 はい!第76話終了

 次回から遊びに行きます!

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第77話 白波真依

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 白波さんに誘われ、一緒に行く仲間を集める優也。

 そして誘える人は神乃姉妹と萌未しか居なかったとさ。



 それではどうぞ!


side優也

 

 ついに遊びに行く日。

 

 あの日、帰ってくると、結羽にも同じLINEが届いていた様だ。だから結羽は冬馬を連れていくらしい。これは予想通り。

 問題は悠真が誰を連れていくかだが、

「何?お前ら知り合いだったの?」

「まぁな。宿泊研修以降、意気投合しちゃってな」

 俺が今会話しているのは悠真。その隣にあつし。そして白井さんが居る。

 

 そして俺の隣には俺に抱きついて満面の笑顔を浮かべる妹(自称)さまとジト目を向ける後輩とジト目を向ける友達。目でリンチされている。しかもその後輩は俺にベッタリとくっついて隠れている。おいお前、俺の事が嫌いなんじゃなかったのかよ。

 

「いやー。そんなに仲良くなるなんてねぇ〜」

 しかもこの後輩様は、いつもは自分の姉に隠れるのに何故か俺のところにいるのだ。何故だ!

 まさか!

『あんたは私の下僕なんだから、ちゃんと私の壁になりなさいよ』

 と表現しているのか!?可愛い顔をしてなんて恐ろしい事を!

 

「それじゃ、みんな集まった事だし、軽く自己紹介をしようか。まずは私からね。私は白波 真衣。伊真舞高校のOBよ。よろしくね」

 この中には白波さんを知らない人もいるからな。

 

 あつしや白井さんは知っているだろうが、萌未と露木ちゃん、冬馬は知らないからな。

「んで、今日はどこに行くんだ?」

 俺がそう聞くと一枚のプリントを渡してきた。

 

「なになに?『私の別荘へごしょうたーい!』。別荘って。あそこ、こんな人数入れるような広さじゃないと思うんだが」

 そう言うと白波さんは誇らしげにふんと鼻を鳴らした。

「そこら辺に抜け目は無いわ。もっと大きい別荘があるもの」

 あれでも結構大きい方だと思うんだけど?普通の一般家庭くらいはあったぞ。あれより大きいってどんな建物が待ち構えているんだ?

 

 そしてざっと自己紹介をした後、デカい高級車がやってきた。

 まぁ、別荘がある時点で知ってたけど、やっぱり金持ちなんだな。

 だけど白波さんは自分で入りたい会社を見つけて入ったらしい。立派だ。

 

 車に乗ると、そこは天国だった。

 椅子はフカフカで座り心地が良く、一つ一つの椅子にテーブルと飲み物置きがあり、更に一人一人が広々と過ごせる様な空間が広がっていた。

 高級ジェット機のVIPルームに居る様な気分だ。

「と言うか、去年はどうして電車で」

 そう言うと白波さんは

「まぁ、本当は私は電車旅の方が好きなんだけどね。これから行く所は電車もバスも通ってないから仕方が無く、ね」

 そういう事か。確かに4人での電車旅は楽しかった。が、あの旅行は俺に対してデカい地雷を置いていった。

 

 トラウマだ。

 

 線香花火。怖い。

「俺の運……あれ?運ってなんだっけ?そもそも運って」

 無意識に俺はそう呟く。

「あ、あの、先輩が哲学的な事を呟いているんですが」

 俺にベッタリとくっついていた露木ちゃんには聞こえていたようだ。

「気にしないであげて?露木ちゃんだっけ?優也君はトラウマを抱えているのよ……」

 すると、「は、はぁ……」と困惑した声を出す露木ちゃん。

 

「まぁ、ゆっくりしてて。飲み物ならあるからね」

 と言いながらリクエストを聞いて飲み物を渡していく白波さん。

 

 そしてやっと意識を取り戻す。

 今の今までの記憶が全く無い。気がつけば車の外の景色も見慣れない景色へと変わっていた。

 そして萌未が俺の頭を撫でていた。……少し息を荒らげながら。

「萌未。ありがとな。その心遣いは有難いが、少し怖いぞ?」

 目がギラギラと輝いていてなんと言うか、撫でて来ている手付きが怪しいんだ。

 俺は本能的に分かった。分かってしまった。……この場に俺と萌未以外には誰も居なかったら襲われていた。

 

「んで、白波さん」

 俺はちょっと離れた座席に居る白波さんに話しかけた。

「何?」

「こんな遠くまで来て、日帰りで帰れるのか?」

「え?皆でお泊まり会の予定だったけど」

 さも当たり前かのようなトーンで言ってきた。

 まさかこの元ドS会長はその為に明日の予定まで聞いてきやがったのか。なんて計画的犯行!?

 

「お兄ちゃんとのお泊まり」

 ポっと頬を染めてモジモジし出す萌未だが、皆で泊まるんだからお前が想像してる事なんて起きないぞ。

 

「絆成先輩とお泊まりですか……。身の危険を感じます」

「なんでだよ」

 答えはわかりきっていたが聞いてみた。

 すると、案の定。

「強〇魔と一つ屋根の下で一晩明かしたらいつの間にか子供が出来てしまっているかも知れません」

「いや、俺そんなクズじゃねーよ!」

 と言うかしません!

 

 だが、俺はしないと言っていても周りの女子の視線が鋭くなって行く。

「優也君。君、露木ちゃんに何したの?」

「何もしてませんよ!」

 俺は間髪入れずに否定をする。

「お兄ちゃんが僕のお兄ちゃんが……お兄ちゃんがお兄ちゃんがお兄ちゃんがお兄ちゃんがお兄ちゃんがお兄ちゃんが」

「おいそこ落ち着け」

 虚ろな目でブツブツと同じ言葉を呟き続ける萌未は恐怖でしか無かった。

 

「お兄ちゃん成分が足りませんそうです僕を本当の妹の様に可愛がってください今だけは許します」

「いや、なんでそんなことを」

「お兄ちゃんが悪いんですよ?」

 え?なんでだ?

 そう思ってると答えを萌未が言った。

「浮気……ですよ?」

「いやいや!俺はお前と恋人になった事ねーだろ」

「今はそうかもしれませんがいずれそうなりますなので浮気です」

 そんなの暴論だ。

「僕を妹だと見れればシスコンのお兄ちゃんなら直ぐに僕を恋人にしたくなるでしょう。あそれよりも良い方法を思いつきました手始めにお兄ちゃんを監禁して僕しか見れないようにちょうきょ……教えないと行けませんねその体に」

 何する気だ!?

「ふふっ。ふふふふふ」

 怖い。笑っているのに目が笑っていないからだろうか?恐怖である。

「なるほど……これがヤンデレ」

 結羽が少し離れた席で俺達のこのやり取りをメモしている。おいそこ何メモってんだよ。

 

「……まぁ、冗談ですが」

「はえ?」

 ビックリして俺は素っ頓狂な声を出した。

「まぁ、僕はお兄ちゃんの恋心を尊重しますよ。でもどうしても僕がいいって言うなら僕は喜んで恋人になりましょう」

 そういう事か……助かった。

「でもその場合、浮気したら……。ふふ、ふふふふふ」

 あ、やっぱり狂気だわ。

 

「みんなー!着いたよ!」

 白波さんが車内で皆に聞こえるように大声で呼びかける。

 そして俺達は皆で車を降りると、俺は思わず息を呑んでしまった。

 

 なぜなら、

「お屋敷?」

 結羽が小さく呟いた。

 そう。去年行った別荘とは違い、お屋敷みたいな広さだった。

 廊下も長く、恐らく部屋はこの人数でも余るくらいにはあるだろう。

 そして、バルコニーがある。

 あのバルコニーの位置的に、反対側にある海が見えそうだな。

「それじゃ、旅行編スタート!」

 ノリノリで屋敷の中に入っていく白波さん。浮かれてるな〜。そう思いながら俺達も屋敷に入って行った。




 はい!第77話終了

 最後に旅行編と言っていましたが、そんな括りはありません。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第78話 想いを繋ぐ景色パート1

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 ついに皆で集まり、真衣の別荘へと車で向かった。

 途中、トラウマを思い出したり、優也があらぬ事で疑いをかけられたりしたものの、なんとか無事に到着。

 そしてその別荘を見た時、皆が息を呑んだ。

 なぜなら『お屋敷』だったからだ。



 それではどうぞ!


side優也

 

「外観も凄いが中も凄いな。シャンデリアなんて初めて見た」

 

 俺達は白波さんに続いて別荘の中に入ると、そこには物凄い大きな玄関が待ち構えていた。

 俺の中で玄関というのはこじんまりとした印象があった。

 

 だが、ここの玄関はホテルのロビーの様な広さだ。いや、それ以上かもしれない。天井もものすごく高い。エントランスと言うべきか?まぁ、エントランスは玄関の英語だからどちらも玄関という意味なんだが、エントランスの方が広い気がする。

 

 天井からはシャンデリアがぶら下がっていて、入って正面に大きい階段が堂々と構えていた。俺の中でのお屋敷のイメージ図そのものだ。

 

 隣に居る萌未も「ふぁ〜」と感嘆の声を漏らしている。

 

「今回は一人一部屋当たるようになってるよ」

 そう言って白波さんは一人一人に設計図を渡してきた。

「好きな部屋選んでね〜。あ、一緒になりたいなら同じ部屋を選んでもいいよ。変な声が聞こえてきても開けないからね」

 そういう気遣いは要らない。と言うか、そんなことを言うと、

「さぁ!お兄ちゃん!どこにしますか?私はどこでもいいですよ?」

「俺はお前と一緒にする予定なんてないんだけど」

「いーいーじゃなーいーでーすーかー!」

 良くない。ぜんっぜん良くないよ。

 

 こいつと寝た場合襲われる未来しか見えん。それだけは避けなければ。

 

「俺は1人が良いなーっ!よしっ!1人で寝よう!絶対に来るなよ!特に萌未!お前は1人で来るなよ!」

 釘を指して適当な部屋に向かって行く。

 


 

「で、なんでお前らは俺の部屋に来てるんだ?」

「いやー。絆成さんは寂しがり屋かな?って思ってな」

 寂しがり屋じゃないし、釘を刺したんだから来るなよ。

 

「で、なんで2人もきた?」

「童明寺君の付き添い……です」

 まず、あつしを止めてくれよ白井さん!俺は釘を刺したはずだぞ?来るなって

 

 俺が今会話しているのはあつしと白井さん。

 2人とも、俺が釘を刺したにもかかわらず、俺が部屋に入った直後に押し掛けてきた。

 こいつらって俺の言葉だけが聞こえなくなるような物があるのか?

 

「なぁ、ちょっとこの屋敷を探検してみようぜ!俺、屋敷に来たのは初めてだからワクワクしてんだよ」

「わかる」

 その気持ちはわかる。

 外から見ただけでも俺のワクワク感は最高潮に達していた。

 見てみたい。色々な所を。

 キッチンや食卓、更にバルコニーからの眺めとか。めっちゃ気になる。

 

 そんな状況だから俺には断るという選択肢は、

「よし行こう」

 既に無かった。

 


 

 俺達はまず、設計図を見ながら中庭にやってきた。

 

 俺の母校の小学校には中庭ってあったが、それ以外で見たのは初めてだから興味が湧いたのだ。

 

 そして来てみるとあら不思議。一般家庭の面積二個分位の面積があって、中心には噴水がある。

 見事な光景に圧倒されて、俺は唖然としてしまった。

 

「これは凄い」

 流石のあつしも驚いていらっしゃる。

 

「凄い……ね」

 

 俺はテレビや雑誌等で豪邸の中庭ってのを見た事があるが、こんなにデカい中庭ってのは初めて見た。しかも実物をだ。

 

「凄いでしょー」

 俺達が驚いて立ち尽くしていると、背後から白波さんが声をかけてきた。

 

「そうですね。こんな豪邸初めて見ました」

 

「でしょー。この建物はね。本来はここが実家でいつも住んでるのが別荘になる予定で立てたからこんなに大きいんだよ」

「そうだったんですか?」

「そうだよ〜。だけどね。見ての通り、ここには海と山しかない。だから伊真舞の別荘に住むことにしたんだー」

 って事は住んでるのよりも大きいって事か?

 

 と言うか、ここまで何件も別荘を建てれる白波さんの家庭ってどんな富豪だ。

「今日は目一杯楽しもー!」

 白波さんが一番楽しんでいるような気がする。

 

「だけど、一般人の俺らがこんな豪邸に居るって未だに信じられないな」

「あつし。その気持ちは分からないでもないが、お前はお前で一般の家庭じゃないからな?お前の自宅、寺だからな?」

 偶にその事を忘れてるんじゃないか?って思う時がある。

 まぁ一応、生活スペースとして自宅ってのが別にあるらしいが、ほとんど寺で寝泊まりしてるから同じようなもんだろう。

 

「はは、分かってるって」

 と強めに肩を叩いてくるあつし。本当に分かってんのかなぁ?

 


 

 次に俺達はバルコニーに来た。理由は

「今の時間だったらバルコニーに行くと良いものが見られるよ」

 との事だ。

 

 だが、おおよその検討は着いている。

 

 車に揺られて数時間。だいぶ時間がかかったからそれなりの時間だ。空が朱色に染まっていた。

 だから今は夏だからそれなりの時間の訳で、腹が減っている。

 まぁ、さっき結羽が料理出来る人を集めていたから今から作るんだろう。

 

 一応この屋敷には使用人が居るらしいが、今は口出ししないように白波さんがうるさく言っておいてるらしいから今は自分たちで料理は作らなきゃいけない。

 俺も飯が作れるし手伝おうと思ったが、あつしのやつに引っ張られて今に至るわけだ。

 

 だけど、俺が知っているだけで結羽と白井さん、そして露木ちゃん。三人も居る。

 確かここ数年で萌未も料理を始めたんだっけ?確か……。

『お兄ちゃんに食べて欲しいんです!絶対胃袋を掴んでみせます!』

 って包丁を向けながら言ってきたから青ざめたのを覚えている。

 あれは絶対胃袋を掴む(物理)だった。宣戦布告だった。こ、殺されるっ!

 

 まぁ、そんな感じで四人は居るから問題ないだろう。逆に男の俺が入って行ったら邪魔になるような気がする。

 

「うわー」

 先にバルコニーに着いていたあつしの感嘆の声が聞こえてくる。

 

 俺もバルコニーに着くと、その光景に目を疑った。

「うわー」

 声が勝手に漏れた。そう感じた。

 

 小説で勝手に声が漏れると言う表現があるが、あれはフィクションだろうと思ってた。が、本当にあったんだな。

 

 海がキラキラと輝いていて、空が反射して沈みかかった太陽が海の中にもあるような感じだ。

「んー。良いねぇ。ここら辺は工場とかも無いし、空気が澄んでるのもあるんだろうね。空気が澄んでないとここまでの絶景はお目にかかれないさ」

 と伸びをしながらあつしは呟いた。

 

 ここら辺が何も無いド田舎だから見れる光景だ

 

 その時、LINEに通知が来た。

『ご飯出来たよー』

 俺は結羽のその元気そうな文面にクスッと笑ってから童明寺と共に食堂に向かった。




 はい!第78話終了

 はい!ついに別荘の中に入りました。

 今まではそんなに真依がお金持ちと言う描写を書けなかったので、これでもかってくらいに突っ込みました。

 その結果がこれなんです。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第79話 想いを繋ぐ景色パート2

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回あらすじ

 中身も想像以上にお屋敷でした。



 それではどうぞ!


side優也

 

 俺達は食堂に来たんだが、

 

「バイキング形式で〜す」

 マイクを通した結羽のでっかい声が聞こえてきた。あいつら、俺達が約10人しか居ないこと分かってんのか?食べきれないぞ?

 

 食堂に着くと、俺たちを出迎えたのは大量の飯だった。

 

 スクランブルエッグにローストビーフ、チンジャオロースに野菜炒め等etc etcだ。

 

 確かにみんなで食事会って言うと張り切る気持ちは分からないでもない。俺も料理作れるからな。

 だけど、これはさすがに多すぎる。

 

 確かに美味そうで見てるだけだと幾らでも入りそうな気がしてくる。

 だが、そこは所詮人間だ。食べ切れるわけがない。

 

 しっかし恐らく4人でこの量を作ったのだろう。女子力恐るべし。

 

 しかもこのレパートリーの多さは恐らく結羽考案の料理達なんだろう。結羽のレパートリー恐るべし。

 結構結羽に料理を作って貰ってるけど、被ったことが無い。しかも全てが俺好みの味付けだ。

 

 俺にだって嫌いな食べ物くらい有る。

 あっさりとしているなら良いけど薄い味は好きじゃない。濃い方が好きだ。

 

 昔からそうだが、豆腐なんかが苦手だ。よく七海に起こされる時に素直に起きなかったら熱々の湯豆腐を口に突っ込まれたものだ。何も入ってない胃の中の何かがふつふつと登ってくるのが分かる。

 

 今はそんな事は無いが、極力食べたくないのは確かだ。

 

 それが、一回も薄味の物が出て来た事が無いんだ。好みを教えてないのに。

 

 まぁそんな事は良いとして、ラインナップを見てみるとなんと全て俺の好きな濃い味のものだと言う事が分かった。

 これだけ濃い味の物があったら胸焼けしそうだが、不思議か事に一品くらい薄味の物があっても良いはずなのに全て俺の好みの物だ。

 

 まぁ、萌未も調理場から出てきたから萌未の意見もあるんだろう。

 しかし、全て俺の好みってのはどういう事だ?

 

 まぁ、食事は人生の楽しみの一つって言うくらいだから美味いのは俺にとっては嬉しい。

 

「あれは胸焼けしそうだけど、食わないともたないからな。よし!食うぞ!」

 と横に居たあつしが走り出してプレートを持って食べたい物を取っていく。

 

 ちなみに俺は白飯をそのまま食べるのも嫌だ。

 そしてそこはさすが俺好みの食事なだけある。ちゃんとチャーハンと言う形で白飯を回避している。

 

 どうしてこうなったかは分からんが、俺にとってこれは好都合。

 

「よし!食うか!」

 そして俺は美味い料理をたらふく食って大満足なのでした。

 


 

 飯を食った後、俺らは風呂に入ってその後、外に出てきた。

 

 何故かって?ははは。トラウマだ。

 

 皆並んで線香花火大会をやっている。

 

 俺だけは入口の階段に座ってその光景を眺めていた。

 

「優也〜。こっち来て一緒にやらないか?」

 とあつしが線香花火を持った状態でこっちに走って来るが、

「来るな〜!俺にその悪魔を近づけるなぁッ!」

 演技だとしたら迫真である。

 

「これは重症ね。去年のが響いてるみたいね」

 

 そう。俺は去年、線香花火をやると一秒にも足らない時間で終了した。そのトラウマがある。

 

 俺の運は非常に悪い。

 

 ジャンケンでは星野さんに一回勝った時だけしか勝ったことが無い。

 線香花火は一秒ももたず、運ゲーをやると必ず負ける。運ゲーで勝てないこの人生って本当に楽しいのだろうか?

 

 因みに、最初はくじ引きで当たった人しか入れない医療研究会って部活に入ろうと思ってたが、見事に外した。

 

「じゃあ僕がお兄ちゃんを慰めてあげます」

 そう言って萌未は皆の輪から外れて俺のもとへやって来た。

「俺はどんな事を言われ、されても絶対に混ざらんからな!」

 そう言った瞬間、頭に手を置かれ、撫でられる。

「お兄ちゃん。運が無くても僕には最高のお兄ちゃんです」

 最高の笑顔だ。だが、魂胆は見え見えだ。

 

「人を慰めるならまずその花畑オーラを隠すことから始めようか」

 俺を撫でている間、幸せオーラ全開だった。萌未の事だ。何か良からぬ事を企んでいるに違いない。

 

「なら、露木ちゃん。あなたが行ってきたら?」

 とずっと影だった神乃さんが露木ちゃんに提案した。

 

「えぇっ!」

 顔を真っ赤にして驚く露木ちゃん。可愛い。

 

「それはいい……いや、ダメです。でも……」

 即答はせず自分の中で何故か葛藤する露木ちゃん。

 

 すると何故か俺の方に歩み寄って来た。

 

 そして俺の頭に手を乗せて俺の目の前で俺の座高に合わせて屈む。

 そして──

「せ、先輩。お、落ち込まないでください。私達が居ますから」

「ぐはぁっ!」

 俺は断末魔の声をあげてその場に倒れ込む。それは神乃さんも同じようだった。

 

 俺が急に倒れた為、露木ちゃんは驚いておどおどし始めた。

「わ、私。なにかいけないことをしたんでしょうか?」

 

「つ、露木ちゃん。あなた、破壊力がありすぎ。可愛すぎる」

 それに関しては同感だ。可愛すぎて一瞬死にかけた。

 

 それにしても露木ちゃん。馴染めてるなぁ。まぁ、皆悪いやつじゃないしな。

 

 そんなことを考えていると視界の端で頬を膨らませて何故か不機嫌な結羽が見えた。

 しかし、俺が幾ら考えても分からない事は目に見えてるから俺は考えるのをやめた。

 

 そんなこんなで時は過ぎていき、消灯。

 

 俺ら全員個室だ。その為、夜に出歩いても他の人を起こす心配は無い。

 

 そして俺は今何をしているかと言うと、バルコニーにて夜の海を眺めていた。

 

 最高だ。この一言に尽きる。

 

 眠れないからとバルコニーに来たが、それは正解だったようだ。

 空には満点の星空。海を見ると、星空を写し出していて視界いっぱいの星空を演出している。

 

 まるで天然のプラネタリウムだ。

 

 すると近づいてくる足音が聞こえた。

 

 間違いなくここに向かってきている。

 

 すると、急にピタリと足音が止んだ。その代わり、

「ゆ、優也!?」

 結羽の声が聞こえてきた。

 

「どうしたんだ。眠れないのか?」

 おちゃらけて言うと「うん……」としおらしい返事が帰ってきた。

 

「こっち来いよ。綺麗だぞ」

 俺がそう促すと結羽もこっちに来た。

「わー。綺麗」

 結羽も同じ感想のようだ。逆にこれを見て綺麗だと思わないやつなんて居るんだろうか?

 

 それから暫く二人で夜の海を眺めていた。

 

 すると急に結羽が話しかけてきた。

「今日のご飯。美味しかった?」

「ああ、最高だった。全て俺の好きな味だ」

「ふふっ。良かったぁ」

 安堵の表情を浮かべる結羽。

 

「あれ、私が考えたメニューなんだよ」

 うん。だと思った。

 あれ程のレパートリーはそうそうあるもんじゃない。

 

「萌未ちゃんがね。優也の好みを教えてくれたんだよ」

 やっぱりあいつか。まぁ、良いけどな。

 

「萌未ちゃん。凄い優也の事が好きだよね。さっきも『全てお兄ちゃんの好みの料理にしてくれませんか?』って言ってたし。ふふっ。妬けちゃうなぁ〜」

 やっぱり元凶はあいつか。

 

 と言うか、妬ける?どうして?

 

「露木ちゃんも賛成しちゃって」

 露木ちゃんが!?

 露木ちゃんは俺の事を喜ばせるのを一番嫌がりそうだけどな。

 

「ふふ。後輩からも好かれているんだねぇ〜。さすが女たらしの優也と言う異名は伊達じゃないね」

「別に好かれてなって!おい!その異名は誰が作ったか詳しく!」

 

「ねぇ、優也」

 無視ですか!無視なんですか!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私ね。優也が好き」

 結羽はそう優しく呟いた。




 はい!第79話終了

 ついにこの話が書ける!一番描きたかったやつですよ。

 それでは来週の話をお楽しみに!

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第80話 想いを繋ぐ景色パート3

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 優也達の目の前に大量の料理が!

 しかも全て優也の好み!

 その後、花火を堪能した優也達だった。

 そして優也が眠れなくてバルコニーに行くとそこには絶景が。

 そこに結羽が現れ……

「私ね。優也が好き」



 それではどうぞ!


side優也

 

「私ね。優也が好き」

 結羽はそう優しく呟いた。

 

 さすがにこの至近距離だ。偶に耳が遠いと言われる俺でも分かった。

 

「まぁ、俺も好きだぞ」

 友達としてな。

 

「やっぱり分かってないよね」

 何を分かってないって言うんだろうか?そう考えた瞬間の出来事だった。

 

 一瞬だった。一瞬だが、頬に柔らかい感触がした。

 

 それを理解するのにはたいして時間はかからなかった。

 

 一瞬、頭の中が真っ白になってなにも考えられなくなった。

 

「ふふっ。分かった?」

 分からない。そう胸を張って言いたかった。いや、胸を張るような事じゃ無いと思うけど。

 

 だけど、今の行動で分かってしまった。

 

 結羽の俺に向ける好きと言う気持ちは友達としてのLikeでは無くて、異性としてのLoveだと言う事を。

 

「じゃーね」

 そう言ってその場を去ろうとする結羽。

 

 だが、ここで帰してしまってはいけない気がした。

 しかし、なんと言うべきだ。今結羽にかける言葉が見つからない。

 

 だけど俺は

「待て結羽!」

 言葉も見つからないのにその場しのぎに引き止めてしまった。

 

「なに?」

 一度振り返った結羽は再び俺の方を見た。

 

 言葉が出てこない。だが、無理矢理にでも喉の奥から声を絞り出す。

「あの……だな。結羽」

 俺が言葉に詰まっていると結羽は後ろを振り返った。

 

 今度こそ行ってしまう。そう思ったが、結羽は一歩も動き出そうとしない。

 すると突然声をかけてきた。

「優也。昔話をしようか」

 そんな唐突も無いことを言っていた。

 

「むかーしむかし。ある所に、サッカー好きの少年が6人居ました」

 サッカーね。俺も昔はサッカーが好きだったから共感出来そうだ。

 だけどそんな昔話ってあったっけ?

 

「その少年達はその日もサッカーをして帰る所でした」

 なんか引っかかるな、サッカーと言う単語が出てきたからか?

 

「そんな少年達は不良に絡まれてる地味で目立たない可愛くない女の子を見つけました」

 妙に既視感のある話だ。この話って……。初めて聞く話だけど俺は知っているようなきがした。

 

「皆が満場一致でスルーしようとしました。ただ一人を除いて」

 嫌な予感がする。

 

「そして少年は女の子に絡んでいる不良に対してサッカーボールを蹴りました。そしてサッカーボールをもろにくらった不良はその場に倒れて、少年は女の子を救う事に成功しました。めでたしめでたし〜」

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 分かった。その全貌が全て分かってしまい、俺は叫ぶ。

 

「なんでお前が俺の黒歴史を知っている!」

 俺はその事まで教えた覚えはないぞ!どう言う事だ!

 

「ふふっ。なんでだろうね〜。自分で考えてみてよ。それが、優也への課題。優也、課題得意でしょ?」

 学校の課題とは違う気がするが……。

 

「じゃーね」

 そう言って今度こそ結羽は自室に帰って行った。

 

 すると不意に視線を感じた。

 

 背後。バルコニーの入口からだ。

「誰だ」

 その場所を見ながら聞くと出てきた。

 

 その人物とは──露木ちゃんだった。

 

「あの……えと、覗き見するつもりじゃなかったんです」

 初めて会った時のようでは無いが、おどおどしている。

 

「ちなみにいつから?」

「えと、先輩が『眠れないのか?』って言った辺りからです」

 最初からじゃん。

 

「そうか。見られてたか……」

 あのシーンを見られていたのはかなり恥ずかしい。

 

「結羽先輩に告白されたんですね」

 やっぱりそうだよなぁ……。

 

「ちなみに返事はどうするんですか?」

 

「まださっぱりだ」

「そうですか……」

 

 すると少しずつ露木ちゃんはこっちに向かって歩き出した。

「なら私にもチャンスがあるって事ですね」

 どういう事と聞く前に露木ちゃんは答えを言った。

 

「私は先輩の事が好きです」

 そんな衝撃的な事を。

 

 さっき、あれだけ盛大な告白をされたんだ。意味は分かった。

 

 だが、この子は俺の事が嫌いだったはずだ。なのにどうして?

 

「私が素っ気ない態度を取ってもちゃんと私と向き合ってくれるところ。皆が楽しそうにしてる時の優しい顔。そして、ピンチになったら助けてくれる所はヒーローみたいです。私にとってはあなたはヒーローなんです」

 そしていつの間にかゼロ距離まで迫ってきていた露木ちゃんは背伸びをして俺の耳元で、

「そんなあなたが好きです」

 と囁いた。

 

 正直ドキッとした。

 

 この短時間で二度も告白をされた。その衝撃が俺の脳の回転を遅くする。

 

「な、なんでなんだ?」

 俺の絞り出した言葉がこれだ。とりあえず気になったんだ。

 

「最初は嫌いでした」

 おい。

「ですが、助けられてからはカッコイイって思うようになってしまって」

 えへへと笑う露木ちゃん。

 いつものギャップと相まって、他の子がやるより破壊力が高いと思う。

 

 だけど、

「お前さぁ……」

「ん?」

「チョロくね?」

 一回助けられただけで好きになるってチョロくね?簡単に騙されそうな性格だな。

 

「女の子は皆私みたいに助けられたらトキメクものなんです!」

 そんなもんなのか?

 

「じっくり考えてください」

 それだけ言い残して露木ちゃんは帰って行った。

 

 どうしようかな。この状況。

 


 

次の日

 

 あの後、結局一睡も出来なかった。

 

 満足気に寝ているあの二人のせいだな。

 

 最終日。朝に昨日の残りを食べ、今は車で帰ってる途中だ。

 

 海もあったから入りたいと言っている人が多かったが、今から海水浴をしていると確実にもう一泊する事になるから断念することにした。

 

 すると一人で座ってる隣に冬馬が座ってきた。

「よぉ冬馬。この旅行では影が薄かったもんな。なにか残しに来たのか?」

「影が薄い?何言ってるんだ?深夜以外、ずっと優也さんの近くに居たじゃないか」

 え?本当に!?気が付かなかった。

 

「それじゃ俺はここで寝るから優也さん肩を貸してください」

 そして俺の返事を待たずして寝始めた。こいつ!

 

 まぁ良いか。俺も眠いし寝ることにした。

 

 その数時間後、俺らは帰宅して俺と結羽は同じ家に帰ったんだが、顔を合わせることが出来なかった。




 はい!第80話終了

 ついに夏休み編終了!

 夏祭りは優也が入院している間に終わったって事で。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二年生編 二学期
第81話 ハーレムとは、経験しないとわからない苦労がある


 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回は久々の語り系タイトルです!



 それでは前回のあらすじ

 結羽に告白された優也。

 返事を考えるも、次は露木に告白される。

 それによって悩まされる優也。果たして優也はどうするのか?



 それではどうぞ!


side優也

 

『私ね。優也の事が好き』

『あなたの事が好きです』

 

 あの日からまともに結羽と顔を合わせることが出来なくなった。

 

 まさか結羽に告白されるなんて思ってもなかったからだ。

 

 だが結羽は何事も無かったかのように──

「優也〜朝だよー」

「ん?ああ」

 

 あの日からなかなか寝れなくなって寝不足だ。その為、寝坊気味になってきている。

 そんな時はいつも結羽が起こしてくれるんだが、目を合わせる事が出来ない。

 

「朝食も出来てるよー」

 あれは夢だったんじゃないかと思う程の自然な接し方だ。

 

 だが夜、バルコニーにて結羽と露木ちゃんに告白されたのは事実な訳で……。

 と言うか、以外だったのは露木ちゃんだ。露木ちゃんは俺の事を嫌ってるって思ってたのに実際はその逆だった。

 

 ──告白された。

 

 それだけで身悶える事が出来る。

 

「先に行ってるね〜」

 と言うか、お玉と包丁を持ったまま部屋に入って来ないで欲しい。怖いから。天然サイコなのか?

 

 まぁ、布団にいつまでも入ってる訳にもいかないから仕方が無くリビングに向かう。

 


 

 そのまま俺達は飯を食った後、二人で家を出た。理由は今日から学校が始まるってのがある……のだが。

 

「ゆーうやっ♪」

 ギュッと俺の腕に抱きついて来る少女が一人。そして、

「せ、先輩」

 控えめに袖をつまんで上目遣いで見つめてくる後輩が一人。

 それをニコニコしながら見守る会長が一人。

 

 そう言えば、俺達がいつも登校している道をこの二人は知っているんだったな。

 

 しかし、やばい。何だこの状況。

 

 美少女二人に挟まれて、しかもその二人とも俺に好意を向けてきている。

 露木ちゃんも俺に思いを告げたからか、前の様な冷たい態度じゃ無くなってる。と言うか、俺としては調子が狂ってしまうので正直言うと前の様に罵って貰った方がありがたい。こんなに誰かに罵って欲しいと思った事は無いぞ……。このままじゃドMに目覚めてしまいそうだ……。

 

「はぁぁぁ…………」

 俺は無意識の内にため息をついてしまう。

「絆成君、女の子二人に囲まれているって言うのにため息を着くなんて失礼なんじゃないの?」

「いやぁ、二人だからこそ困っているって言うか……」

 この日本では二人と同時に付き合うなんて出来ないからいっぺんに告白されて困っているのだ。

 

 まぁ、俺は女心も分からなければ男なのに男心も分からないからよく分かんないが、普通ならば美少女二人に囲まれると男は嬉しいと思うんだと思う。だが、俺は完全に気が滅入りそうになってきている。

 

 どうしてこうなった……。

 

「優也はぁ〜どっちが良いんですかぁ〜?」

 と結羽が耳元でとろけるような声で囁いてくる。すると露木ちゃんも張り合うように、

「私ですよね?」

 と囁いてきた。

 

「モテモテね」

他人事(ひとごと)みたいに……。片方はあなたの妹でしょうが……」

「いやいや、そんな事はね、良いのよ。私は露木ちゃんがこんなに幸せそうにしてるから良いのよ。だけど露木ちゃんを泣かせるような事があったら生徒会として全力で潰すわよ……」

 最後の方は完全にドスの効いた声だった。神乃さん……怖い。

「と言うかそれは職権乱用何じゃないですか……?」

 俺が呆れた声で言うと神乃さんは「ふふふ〜〜」と笑って誤魔化した。

 

 俺はこれのせいで寝れなくなりそうだ……。

 


 

 昼休み。

 俺は結羽達に捕まる前に教室から出た。

 

 人生の数少ない楽しみである食事の時間だけはあいつらに邪魔されたくなかったのだ。絶対ややこしい事になるし……。

 

「あら、優也じゃない」

 俺が俯きながら歩いていると前から声が聞こえてきた。

 この声はしばらくぶりの、

「あ、星野さん」

 星野さんだった。

 

 本当にしばらくぶりだ。多分二年生になってから一度も会ってないんじゃないかな?

 

「それにしても、珍しいわね」

「ん?なにが?」

「あなたいつも女の子を連れてお昼ご飯を食べていると言うのに、今日は一人なの?」

「人聞きの悪い事言うなよ。俺だって一人になりたいこともある」

 いつもでは無い。

 と言うか、いつもあいつらが誘ってくるから一緒に食べてるだけで、自分から誘ったことはそんなに無い。

 

「それはそうとあなた、二股してるの?」

「ブフゥッ!」

 俺は星野さんの言葉を聞いて飲んでいたお茶を吹き出した。

「俺はそんなクズ野郎じゃない!」

「なら今朝、あなたの腕に抱きついてた二人の女の子は何かしら?」

 その言葉を聞いて俺は冷や汗が出始めた。

 

 あれを見られてたのか。

 

 素直に二人が好意を持っているからって言うのはダメだろう。ならなんて言えばいいのか?

 

「まぁ、あの子の表情からしてあなたに告白したけどあなたは保留にした感じかしらね?」

 か、完全に言い当てられた。

 ここまで完全に言い当てられるとは思ってなかった。

 

「ハーレムね。良かったじゃない?」

「そりゃ昔は本を呼んだりしてハーレムに憧れていたこともあったよ。だけど実際に経験してみて、これは精神的にクる物だと分かった」

 ハーレムなんて全然良くない。だって修羅場だからな。

 

 日本でハーレム婚は出来ないからハーレムは修羅場ってことになる。はぁ……本当にどうしてこうなった……。

 

「じゃああなたをもっと困らせましょうか?」

 そう言うと星野さんは珍しく作ってきた弁当の中からおかずを一つ箸でつまんで俺の口の中に入れてきた。

 

「ふふふ。どうかしら?」

「ん?美味いけど」

 正直、急に食べさせられてびっくりした。

 

「これ、私が作ってきたのよ」

「へぇ〜美味いじゃん」

「ふふっ。私と付き合ったら毎日作ってあげるわよ?」

 へ?今こいつなんつった?

 

 思考が停止してしまった。

 

「ど、どういう」

 俺がそう聞くとニヤリと笑いながら、

「私、あなたの事が好きなのよ。出来ればあなたと添い遂げたいと思っているわ」

 と言った。

 

「あ、あ」

 俺は声が出なくなってしまった。

 

 ある人は言った。『人生にモテ期は三度ある』と

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 俺は脱兎のごとく逃げ出した。




 はい!第81話終了

 三人目の告白。ハーレムですね羨ましい。

 ですが、実際にハーレムになると面倒臭くなりそうなので僕は遠慮したいですね。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第82話 人生最大のモテ期がやってきたようです(望んでない)

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 優也は二人の女の子に抱きつかれ、両手に花。

 昼食中には光に告白され、三人に告白されたハーレムライフまっしぐら。
 尚、本人は望んでないもよう。



 それではどうぞ!


side優也

 

 俺はやっと地獄の学校が終わってバイトの時間となった。

 

 今日は珍しく俺、如月、北村さんの三人が同シフトとなった。

 俺と如月がレジ、北村さんが裏で商品を置いたりしている。

 

 しかし、いつもながら暇なのである。

 

 いつもは退屈していてこの時間はあまり好きじゃないんだが、今は落ち着く。

 ここ最近、色々ありすぎてこの空間が天国だ。

 

「ゆーや君。なんかおかしいよ?」

 最もおかしいと言われたくない奴におかしいと言われた。

 だが、最近ほんと人の愛という物がオーバーになってきているからこうやって罵って貰えることによって俺は落ち着きを取り戻す。

 

「ひゃあっ!」

 隣で普段からは考えられない可愛い悲鳴を発する如月。

 

「し、しほさーん!ゆーや君が壊れたぁー!」

 その言葉を聞いて北村さんは裏から出てきて一番に驚いた顔になった。

 何そんなに驚くことがあるんだろうか?

 

「絆成さん。あなた、ニヤニヤしてどうしたの?キャラ崩壊してるわよ!?」

 え?今俺、ニヤニヤしてるの?

 

「しほさーん。なんかゆーや君におかしいと言ったっけ急にニヤニヤしだしたんですぅ〜」

「き、絆成さん!?」

 すると俺の肩を掴んで前後に揺らしてくる北村さん。酔う!酔うから!

 

「お、お気を確かに!」

 あなたが落ち着いてください!俺は普通ですから!

 

「それにしてもどうしたの?ゆーや君」

 如月が不思議そうに聞いてくる。

 しかし、俺は今は頭の中がお花畑になっているので

「いやぁ〜罵られたい気分だったんだよ」

 と正直に言ってしまった。

 

 これには流石の北村さんも「え?」と言って俺から少し距離を置いた。

「ゆ、ゆーや君がMに……」

 ガクガクと肩を態とらしく震わせる如月。

 

「そんなになるまで何があったのよ。勉強のし過ぎでネジが外れちゃったの?」

 いつもなら棘を感じる様なこんな北村さんのセリフだが、今の俺には心地いい言葉に聞こえて更に表情が崩れる。

「重症ね」

 北村さんはしみじみと呟いた。

 

「もしかして女の子に愛され過ぎて少し罵りが欲しくなっちゃったとか?」

 如月がからかうように言ってきた。が、俺はそれを否定しなかった。

「え?ゆーや君が否定しない!?まさか本当なの!?」

 やってしまったと思ったが、時既に遅し。

 

「だ、誰に愛されてるの!?教えてよ〜!」

 今度は如月が俺の肩を掴んで揺らしてきた。だから酔うって。

 

「くっ……これは……」

 すると如月が悔しそうな表情を浮かべる。

 

「ゆーや君!誰と付き合ってるの?」

 その言葉で我に返った。

 

「いや、誰とも付き合っては無いが?」

 俺がそう言うと如月はホッとしたと言うような表情を浮かべた。

 なんか嫌な予感がするのは俺だけではないはず。

 

「流れに乗るしかない!!」

 急にどうしたんだろうと思っていると、

「ゆーや君」

 と俺の肩を掴み直してきた。一体なんだってんだよ。

 

「私、如月 咲桜は絆成 優也君の事が好きです」

 柄にも無いような口調で真面目なトーンで言ってくるもんだから俺は驚いてしまった。

 そして如月の片手は俺の後頭部へ。

 

 そして目を閉じてゆっくりと近づいてくる如月。

 

「はぁっ!?」

 俺は思わず驚いて大きな声を出す。

 

 後頭部を押さえられてるから逃げれない。

 

「き、如月!ここ職場だぞ!」

「関係ない」

 関係あってくれよ!と言うか、職場じゃなくてもやばいから!北村さんが見てるから。

 

 そして助けを求めようと北村さんの方を見るともう持ち場に戻ろうとしていた。

 

「き、北村さん!」

 あの人が居なくなったら完全にゲームオーバーだ。

「なんですか」

 嫌々だが、戻ってきてくれたようだ。

 

 俺は如月の肩を押し返しながら助けを求める。

「北村さん!お願いですから助けてください」

「えー?あたしにメリットありますか?」

 そう聞かれたので俺は思考を巡らせる。そして一つの可能性にたどり着く。

「今度北村さんが読みたがってたあれ貸しますから!」

「しょ、しょうがないですね」

 チョロい。

 

「咲桜。絆成さん嫌がってるでしょ?」

 そう言って北村さんは強引に如月を俺から引き剥がす。

 

 俺の力と合わさって意外にも簡単に離れた。

「むー。じゃあしほさんが私の相手してください」

「へ?」

 そう言うとその場で如月は北村さんを押し倒してイチャイチャし始めた。百合百合しい。

 この時間はお客さんはそんなに来ないから良いものを……。

 

 それにしても……如月が俺に告白してきた?

 

 俺はとりあえず北村さんから如月を引き剥がして、

「なんで俺が好きになったんだ?」

 そう聞いた。

 

「んー?一目惚れかな?」

「は?」

 なんだそれ。

 

「初めて会ったあの時から私はゆーや君に惚れていたのだぁっ!」

 えっ?

 

「って事は」

「そうだよー。ゆーや君が更衣室に入って来た時にタイプだーって思ってさ〜。襲ってもらってもいいってのは本心だよぉ?」

 マジかよ!

 改めて本心を知ってしまって俺は頭を抱え込んでしまった。

 

「どうしたの?ゆーや君」

「いやさ、うん……。神は俺をどれだけ困らせれば気が済むんだってさ」

「いや、本当にどうしたの優也君!?」

 ここまで困る事になるとは思わなかった。

 

 この一週間以内に四人に告白されるとは思わなかった……。

「ちなみに北村さんは俺に告白したりしないですよね?」

 諦め半分で聞いてみると、

「あなたは読書友達って思ってて異性としては見てないわね」

 良かった。友達って言ってくれる人がいて本当に良かった!

 

 そして俺は更なる混沌(カオス)へと巻き込まれたのだった。




 はい!第82話終了

 四人に告白された優也。果たしてどうなるのか?

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第83話 同時に告白されるだけで罪らしい

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回の告白
「あらすじじゃねーのかよ!」

 如月 咲桜が優也に告白した。



 それではどうぞ!


side優也

 

 ズズズ

 俺は目の前に置かれたコップの中のコーラをストローですする。丁度その一すすりで中身が空になったようだ。

 

「珍しいな。お前がコーラを飲むなんて」

「うっせ。そういう気分じゃなかったんだよ」

 そう言ってからコーラをもう一杯注文する。

 

「んで?珍しいじゃないか。お前から俺を呼び出すなんてよ」

「俺がお前を呼び出しちゃあかんのか」

「いーや。全然」

 首を横に振る目の前にいる男。

 

 会話の流れで分かると思うが、こいつは俺が呼び出した。

 んで、その呼び出した場所は近くの喫茶店だ。その一郭で俺とそいつは飲み物をちびちびと飲みながら話しをしていた。

 

「あつし、単刀直入に聞く。白井さんとはどうだ?」

 俺が聞くと俺の顔に口に含んだメロンソーダを全てリバースしてきた。

 それを俺は無言でハンカチを取り出して顔を拭く。

「おい、本当に単刀直入だな」

 

 俺が呼んだのは童明寺 あつしだ。

 ちょっと相談したいことがあったから呼び出した。

 

 いつもはあまり動揺しないあつしだが、今日は動揺して苦笑を浮かべている。

「良いから教えてくれ」

「どうも何も何もねーよ。元々幼馴染って関係がムズいんだ。そこからどうやって関係を変えていくかが問題だ」

 適当に答えるあつし。

 だが、本当に聞きたいことはこれじゃないんだ。

 

「じゃあ次だ」

「あ?」

 俺は深呼吸して、一拍置いてからこう言った。

「お前は同時に4人から告白されたら……どうする」

 俺はいつになく真面目な表情で聞いた。真剣な悩みだからだ。

 

 俺は数日間の間に4人に告白された事で俺は悩みに悩んでいた。夜も眠れなくなって寝不足気味でもある。

 同じ家に俺に告白してきた人が居ると考えると眠れなくなってしまう。

 まぁ、結羽だけならいい。だが、4人に告白されたなら話は別だ。

 全員を振るという選択肢も確かに存在する。だが、誰かの告白を受けてしまうと他3人はその一人を受けたから振る。と言うのもなんだか切ないよな。

 だからと言って全員受けるという選択肢は絶対にありえない。そんなことをしたら最低のクズ野郎になってしまう。

 

 だから俺は親友の意見を聞きたくて呼び出した。

「そうだな〜4人に告白され……」

 そこで我が親友の動きが止まった。メロンソーダを右手に持ったまま固まってしまった。

 

 そして数秒の硬直後、自分を落ち着かせるためにメロンソーダを飲んだあつしは俺に飛びかかってきた。

「4人ってどういう事だよてめぇっ!」

 胸ぐらを掴んでくるあつし。

「えぇっ!お前女の子に興味ないから別にいいじゃないか」

「それとそれは別だ。クズか!?クズ野郎なのか!?」

「受けてないんだけど!?」

 さすがにそれだけでクズ認定は理不尽すぎる。まさかこいつは告白されるだけで罪とか言い出すんじゃないだろうなぁ?

「一度に多数の異性から告白される時点で罪だ!」

 言ったァっ!一語一句間違えずに言ったァっ!

「いやいやそれだけで罪はちょっと!」

「優也しねぇっ!」

「理不尽だァァァっ!」

 


 

「………………落ち着いたか?」

「…………ああ」

 あれから数分後、俺はなんとかあつしを治める事に成功した。

 そしてあつしは今、俺奢りのパンケーキを食っている。なんで奢らされないと……理不尽だ。

 

「んで?お前は4人の異性に同時に告白されたと……」

 ん?ちょっと待て!

「どうしてそうなる!?」

 俺はされたなんて言ってないぞ?!

 

「だってよ、お前。さっき『受けてない』って言ったよな?これって認めてるよな?」

 拳を作って俺の視界に入るようにしながら睨みつけてくる。

 怖い。

「まぁ、実際にされたんだけどさ」

「よし優也。ちょっと頭貸せ、殴る」

「そんな動機で貸す訳あるかっ!?」

 これが最近の俺達の関係だ。

 昔よりも少しだけ砕けた関係になっていて、今ではこんな軽口も叩けるようになった。

 ついでにあつしが俺を殴るようになった。親友を殴る人は凌太だけで充分だ。

 

「まぁ、そうだな。俺もちょっと前まで付き合わないって決めてたからな。ちょっと悩ましい問題ではある」

 そこで俺は気になってしまった。

「なぁ、お前が断り続けていた理由ってなんだ?」

 そう聞くと悲しそうな表情に変わった。

 そこでどういう話かは想像がついてしまった。

 

「いや、言いたくないなら言わなくても──」

「いや、お前なら特別に言ってやる。本当に特別だからな?」

 そこまで特別にして言わなくても……。

 そう思ったがあつしは語りだした。

 

「俺、昔は好きな人がいたんだよ」

 その言葉に俺は思考が停止してしまった。

 

 そして復活するまで数秒かかった。

「え!?お前好きな人居たの!?は?え?はぁっ?!」

 俺は動揺しすぎて普通の言葉すら話せなくなったと思う。

「反応遅いし動揺しすぎだろ。俺が一番最初からこうだと思ってたのか?」

 その言葉に首だけ降って肯定の意志を示す。

 

「俺がこうなったのは小四の頃だ。そして俺はその小四のころのことを全くと言っていいほど覚えてない。ある一つの事件を除いてな」

 事件?

「他のこと忘れんならこれも忘れて欲しかったわ〜」

 手のひらの指を絡め、そこに頭を置いて後ろにもたれ掛かるあつし。

 

 そしてあつしは過去の話を始めた。




 はい!第83話終了

 今日は久々のコント回です!

 そして次回は遂にあつしの過去が明らかに!?

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第84話 小学生の恋

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 優也とあつしは喫茶店で話し合う。

 そして結論として「同時に多数の女の子に告白されるだけで罪」となった。



 それではどうぞ!


sideあつし

 

 これは俺が小学生の頃の話。

 

 まだつみきと出会って間もない頃の話だ。

 

「ねぇ君。いつも一人だけど友達いるの?」

 俺が本を読みふけっていると前方から声をかけられた。

 聞き覚えの無いこの声はつみきのやつとは違う誰かのようだ。

 

 今ほどでは無かったが昔もかなり無愛想だったからちょっと不機嫌な感じで睨むように前方を見る。

 そこにはまだ小学生で幼さはあるが、整った顔立ち。将来は確実に美人になるであろうと予想されるような美少女がいた。

 それに俺はこいつのことを知っている。

進野真(すすのま) 彼方(かなた)

 俺がそう呟くと目の前の少女はパァーっと笑顔になった。

 俺はこの時「しまった……」と思った。

 

「覚えてくれてたんだぁっ!嬉しいな〜えへへ〜」

 何がえへへだ。

「そう言う君は確か……どうりょうじ あつし君だっけ?」

 舌足らずで上手く俺の名前が呼べてない所がなんかおかしくてプフっと笑ってしまった。

「あ〜笑った〜っ!もぅ……」

 その瞬間、真横からドサッと物が落ちる音がした。

 そっちを見るとつみきが居た。居たんだが、何故かこの世の終わりみたいな顔をしている。

 

「どうしたんだつみき」

「わ、私でも童明寺君に笑ってもらうのに時間がかかったのに、初めて会った人と笑ってる……!?」

 俺を見ながら硬直してつみきは「これは事件だよ……」と呟いている。失礼な、俺だって笑うさ。笑うことが少ないだけでさ。

 

「んで、つみき。お前どこ行ってたんだよ」

「ん?ああ、ちょっと職員室に行ってたんだ」

 また勉強を教えて貰いにか。本当につみきは勉強熱心だ。そう言う所は見習いたい所ではある。

 

「んで、お前はいつまでそこに突っ立ってんだ?」

 俺が睨みながら言うも、彼方は全く動じずにニコニコと笑みを浮かべている。

「もう暫く」

 その返答に俺は深くため息をついた。

 


 

side優也

 

「へー。あつしにはもう一人幼馴染が居たのか」

「幼馴染っつーか。一方的な感じだな」

 俺はあつしにその話を聞いてびっくりしていた。あつしに幼馴染が白井さん以外にも居たなんて。

 

 そこで俺は疑問を持った。

「んじゃその子は今、どうしてるの?」

 その質問をした途端、あつしの表情が曇った。

 それを見て俺は自分が地雷を踏み抜いてしまったことに気がついた。

 

「いや、ごめん」

「いや、良いんだ。どうせ言うつもりだったからな」

 そしてあつしは手元にある飲み物を一口飲んで喉を潤す。

 

 そしてあつしは意を決したかのような表情でこう告げた。

「進野真 彼方ならもう居ねーよ。この世にはな」

 その言葉を聞いて急に俺は腑に落ちた。今までの行動。態度。その全てを説明するのにこれ程分かりやすい説明ってあるだろうか?

 

 恐らく、あつしにとっての進野真さんは俺にとっての七海だったんだろう。もう、失いたくないから新たに仲良い人を作ることをしなかった。

 

「ん?だけどお前さ初めて話した時、お前の方から話しかけてきたよな?」

 そこだけが疑問だった。友を作りたくないなら話しかけなければいいのに。

 

「俺はあの時は取りあえず突出して目立つわけでもなく、かと言って存在感がゼロにならないようにお前の中に俺と言う人物を作っただけだったんだ」

 つまりは良いように利用されたってわけか。

 だが、結果的にこいつの行動や態度、性格などがこいつを有名人にしてしまったんだがな。

 

 こいつがこんな態度を取ってるにも関わらず、女生徒らは「クールな感じ、かっこいいよね〜」だ。

 呑気か!?

 とまぁ、こんな感じで余計に注目を集めていた事はあつしはまだ知らないから余計な事は言わないでおこう。

 

 なんで無愛想・冷たい・チョコのお返しをしない。こんなやつを好きになるのか未だに理解できないところではある。

 

「まぁ、取りあえず続きを話すぞ。えっと……どこまで話した?」

「進野真さんって言う方が話しかけてきたってとこまで」

 そう言うとあつしは「そうだそうだ」と手を叩きながら言って語ることを再開した。

 

「まぁ、彼方と出会ってし四・五ヶ月後の話だ。相変わらず彼方は一方的に話しかけてきていたが、俺はその頃には彼女への苦手意識も薄れ、逆に別の感情が湧き始めていたんだ」

 


 

sideあつし

 

「でねでねあつし君…………聞いてる?」

「ああ、聞いてるよ」

 実際にはボーッとしていて聞いていなかったんだが、素直にそれを言うと後々面倒くさくなりそうだったため、嘘をつく。

 

「もう……。なら、なんて言ってたか言ってみて」

「…………童明寺 あつし様。どうかこの私めを罵って叩いてくださいはぁ……はぁ……か?」

「はぁ……はぁ……か?じゃないよ!それじゃ私、変態じゃない!?」

 変態じゃないのか。

 こんなに友達や人気に固執するやつは変態しかいないと思っていたが、変態じゃないのか。

 ※個人の意見です。

 

 それにしても、こいつはよく飽きないよな。こんなに無愛想で暗い奴と友達になりたいってそれこそ変態の極みだ。物好きにも程がある。

 物好きと言えばこいつ以外にもいたな。

 俺の真横の席を占領し、ギラギラとこっちを獲物を見る目で見てきてるやつだ。

 あいつ、こんなキャラだっけ?

 

「もう、やっぱり聞いてなかったんじゃない……。もう一回言うから聞いててね」

 そして進野真の奴は深呼吸してからまた同じ事を言い出した。

「今週末、一緒に遊びに行こうよ!」

 その瞬間、つみきの奴が何も飲んでいないと言うのに吹き出して俺の横顔にぶっかけてきた。

 きったねーな。

 そして俺は顔を拭きながら「どこに遊びに行くんだよ」と問いかけた。

 

 俺達はまだ10歳だ。そんな子供がどこに遊びに行くってんだよ。

「公園に」

「子供か」

「子供だよ!」

 俺はツッコんだ気になっていたが、逆にツッコミ返されてしまった。

 

 結局俺は押し切られてしまい、遊びに行く事に。

 そして何故か必死になってつみきが「私も行く!」って主張してきたからつみきも合わせて三人で遊ぶことになった。

 

 そして三人で遊んだその夜。テレビを付けると驚くべきニュースが。

 そのニュースとは、

『今日、夕方頃。伊真舞市で10歳の女の子が襲われ、命が奪われる事件が発生しました。容疑者は九治(きゅうじ) (たかし)容疑者。被害者は──』

 

 進野真彼方(・・・・・)ちゃん

 

 その名前を聞いた瞬間、俺はテーブルを強く叩いて立ち上がって目を見開き、その場から一時間ほど動けなくなった。

 

 おい、その名前は……。おい、嘘だろ?何かの間違いなんだろ?なぁ……そう言ってくれよ。(たち)の悪い嘘なんだろ?

 

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、が、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 その日は泣きじゃくった。これまでにない程に泣きじゃくった。

 なんでだ。なんで……なんで最後の最後まで……くっ!

『ああ、聞いてる』

 聞いてねーじゃねーか。

『子供か』

 素っ気なく。冷たい。なんで最後の最後までこんな会話しか出来なかったんだ。

 

 

 

 後日うちに警察がやって来て、俺に一通の手紙を渡してきた。

 送り主は進野真 彼方。

 その名前を見た瞬間、俺の目じりが熱くなった。

 

 俺は慌てて便箋を破り開け、中の手紙を取り出して広げる。

 

 中にはこんな内容が書かれていた。

 

──あつし君へ

──たんとうちょくにゅうにいいます。好きです。

──いきなりこんな事を言われても困っちゃいますよねw

──でも、私の気持ちにいつわりはありません。

──私はあなたの事が好きです。

 

 どんどん涙が溢れてくる。もう涙で視界が遮られて満足に手紙を読める精神状態じゃなかった。

 

 そして俺は全てを読み終わった時、俺はガックリと膝から崩れ落ちた。

 

 最後の一文、『放課後、屋上に来てください』

 

 俺は二日連続で崩れ落ち、泣きじゃくった。

 

 この時の手紙はまだ取ってあるが、俺の涙でふやけて字が滲んでしまってあまり読めなくなってしまった。

 文章はハッキリ全てを覚えている訳では無い。

 だが、これだけは言える。俺は進野真 彼方。彼女の事が恐らく、無意識のうちに好きになってしまっていたと。

 


 

side優也

 

「という感じだ。お前も気持ちわかるだろ?七海ちゃんも酷い目にあってるんだし」

「まぁ、そうだが……って!お前なぜその事を!」

 俺はその事は言ってねーぞ!?

 

「ああ、たまたま聞こえちゃってな」

 ちっ、聞かれてたのか。

 まぁ、聞かれたのならしょうがない。

 

「んじゃ守ってやれよ。今度こそ」

「当たり前だ」

 そして俺とあつしは拳を合わせる。

 

「お前もな?」

 あつしはそう置きセリフを言って喫茶店から出ていった。

 

「ってあの野郎!会計しないでいきやがったな!」

 あいつ、今度覚えてろよ。

 

 俺は童明寺 あつしを恨みながら会計をして俺も帰ることにした。




 はい!第84話終了

 遂にあつしの過去が明らかになりましたね!

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第85話 課題が増殖中

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 あつしの過去



 それではどうぞ!


side優也

 

 休日。俺は部屋にこもって勉強をしていた。

 理由は今、結羽に会ってしまうと意識してしまうからである。

 

「はぁ……」

 ため息をつく。

 正直、あつしの話を聞けたのは良かったが、あいつに相談しても何も起こらなかったんだから相談したのは失敗だったんじゃと思ってきている。

 

 その時、扉が何者かによってノックされた。

 

「はい。どうぞー」

 そう言うと、扉の向こう側にいる人物は遠慮なくって感じで俺の部屋に入ってきた。

 その人物とは、

「ゆゆゆ、結羽っ!?」

 恐らく、今の俺は声が裏返っていただろう。

 

 今、一番俺を悩ませている人物が俺の部屋に入ってきた。

 会いたくなかった。

 だが同じ家に居る以上、接触は避けられない。それが今だったってことだろう。

 

 まぁ仕方がない。

 あまり動揺を悟られないように自然に接する。それだけだ。

「ゴホン。それで?何の用だ?」

「あ、それなんですが実は部屋を掃除してたら卒業アルバムを見つけたので一緒に見たいなと。まぁ、同じ学校じゃなかったんですが、何となく一緒に見たいなと」

 あー。確かに卒アルとか他の人と見ると楽しいもんな。なぜ別の学校の俺と一緒に見たいのか分からんが、そういう事なら俺も提供するのが常識ってやつだろう。

 

 そして俺はこっちに来る時に持ってきた荷物の中から小学生と中学生の卒アルを取り出す。

「しかし、ここで見るには少々窮屈じゃないか?そこらに物が転がってて」

 色々荷物を取り出した結果この惨状に。

 

「そうですね。……じゃあ、私の部屋で見ましょう!」

 今の俺にとってはかなりやばい事を提案された。

 

 今扉から机までの距離で話してるだけでかなり意識してやばいのに結羽の部屋に行ったら……。

 


 

 結局押し切られて来てしまった。

 

 現在俺は座って結羽の事を待っていた。

 結羽は俺を不用心に自分の部屋に置いて飲み物を注ぎに行った。

 

 そして俺は座って待ってるんだが、俺の視界に一冊の本が映っている。

 しかもベッドの下に思春期男子がお宝本を隠す時みたいにそこにある。

 

 見てはいけない。だが気になってきまう。

 

 男子の部屋でお宝本を捜索する人ってこういう気持ちなんだろうな。

 

 そして俺は──

 

 

 数分後

 

「お待たせしましたっ!?」

 結羽は帰ってきた直後、声が裏返るほど驚いた。

 まぁ、その驚いた原因は俺自身も把握している。恐らく机の上にある本の事だろう。

 

 題名は『男子が好きな属性〜ヤンデレ編〜』

 

 それによって全てのパズルピースが噛み合ったような気がした。

 急にヤンデレになったことがあったが、こういう事だったのか。

 

 それにしてもヤンデレ……ねぇ。

「結羽。お前は間違えている」

「な、何が!?」

「俺はヤンデレはそんなに好きじゃないぞ?」

 まぁ、昔は病的なまでに愛されるのも良いかなぁ?と思ったが、ある時から萌未さんが……その……、ヤンデレになってしまいまして……。

 パンツを見つけた時から俺はヤンデレは恐怖の対象でしかなくなった。

 

 因みに萌未は独占とかはあまりしないけど、最終的に俺と添い遂げようって考え方なんだ。

 だから俺が誰かと付き合ってもその相手に被害が及ぶことは無いが、愛人にしてくださいっ!とか言ってきそうで怖い。そんな事したら俺の世間体が……っ!

 

「ち、違うんですぅっ!」

 俺が説くような口調で言うと真っ先に何かを否定した。

「え?違うって何が?」

「これ、貰ったものなんです」

 貰った?誰から?こんな特殊なもんを結羽にあげる人なんて……一人しか思いついちまったよ!

 あの元生徒会長。今度あったらどうしてくれよう。

 

「はぁ……そうか。事情は分かった。だが、ヤンデレは従妹(いもうと)だけで充分だ」

「う、うん。なんかごめんね?」

「いやお前が謝ることじゃないから気にするな」

 まぁ、勝手に漁った俺が悪いんだしな。

 でもこれで結羽がヤンデレすることも無くなったか。

 

 それにしてもなにあのクオリティ。女優目指した方が良いんじゃねーの?

 

「んまぁ、気を取り直して本題に移ろう」

 そう提案すると結羽は「うんっ!」と言って、何故かテーブルを挟んで向こうに座ればいいのに真横に、しかも完全に密着する位置に座ってきた。

 腕同士が完全にくっついている。

 

「じゃあ見よう?」

 そう言って俺の前と自分の前に飲み物を置き、自分の卒業アルバムを開いた。

「あれ?中学校から?」

「小学校の頃の奴、どこに行ったか忘れてしまって」

 えへへと笑いながら「そんなことはどうでもいいんですよ」と言いながら結羽は自分のクラスの集合写真が載っているページを開く。

 

「これが私です」

 結羽は自分を指さして教えてくれる。

 髪が短くてメガネを掛けていて、なんと言うか地味って言うか……。まぁ、本人に言ったら失礼だから言わないけどな。

 でも、なんと言うか……見たことあるような……ないような?

 何せ地味だからな。

 

「俺とお前は昔会ったことあるか?」

 無意識に聞いてしまった。

 気持ち悪いと思われてしまっただろうか?まぁ、そうだよな。急に前あったことあったか?って聞いたら──ってめっちゃキラキラした目で見てきてる!?

「どうでしょうか?それは記憶を辿ってください。それも宿題です」

 

 宿題が増えてしまった。

 なぜ俺の黒歴史を知っているのか。そして結羽と俺は昔会ったことのある可能性。

 

 そこで俺はひとつの可能性が浮かんだ。だが、これは相当低い確率だ。

 天文学的な数字の並びになるだろう。

「そういやこの頃、結羽は髪も短くてメガネをかけてるんだな。今はコンタクトなのか?」

「あ、そうだね。今はコンタクト。まぁ、そこまで悪いって訳じゃないけどね。視界がぼやけると吐き気がするから」

 なぜコンタクトにしたのかは分からんが、コンタクトをしている理由は分かった。

「ロングにしたのもコンタクトに変えたのも、ある一人の男の子に言われたからなんだよね」

 急に結羽は語り始めた。

 懐かしんで、そして嬉しさと寂しさが入り混じったような。そんな表情だ。

 

「その子にね。「君は多分、メガネは無い方が可愛いと思うよ。うん!それと僕はロングの方が好きだな」って勝手に好みを私にぶちまけてきてその時は困惑しちゃった」

「へぇ〜っ。今はその子は何処にいるんだ?」

「んー。本人が覚えてないかもしれないけど、意外と近くに居る。探してみてよ。これも宿題」

 結羽に質問する度に宿題が増えるな。

 

 まぁ結局気になるし、探してみるか。




 はい!第85話終了

 次々と増えていく課題。

 優也はクリア出来るのか?

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第86話 発覚

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 課題が増えました。
「……雑すぎる……」



 それではどうぞ!


side優也

 

 休日二日目。

 

 俺は凌太と共に喫茶店に来ていた。最近よく喫茶店に来るようになったよな。

 

 そして俺は凌太とテーブルを挟んで座り、コーヒーフロートをすする。

 何しに来たのかと言うと、まぁ凌太に相談しに来たわけなんだが──

「腹減ってたのか?」

 凌太は俺の目の前でトマトソースパスタ(大盛り)、オムライス(大盛り)。極めつけにはバタートーストをこれでもかとカッくらっていた。

 あの胃袋は異次元にでも繋がってんじゃないのか? そう思えてくるような食いっぷりだ。

 

 今思えば、今の「腹減ってたのか?」って問いも適切では無いような気がする。

 仮に腹減ってたとしてもこの量を食うのはおかしいからな。

 

「さっき飯食ってきた」

 その言葉に俺は言葉を失った。

 

 飯を食ってきたと言うのに更にそこから物凄い量を食っているだと!?

 余計に(たち)が悪い。

 俺が食ってるわけじゃないけど、目の前で見るだけで腹一杯になり、気持ち悪くなる。俺は大食いな方では無いからな。

 逆に結羽の方が食べるくらいだ。

 まぁ、それは前から知っていたけどな。

 たまにコンビニにお忍びで行っては夜食を買っている。本人はバレてないと思ってるらしいが、俺は隣の部屋だから結羽が出て行ったのは直ぐに分かる。

 

「あの馬鹿どもを制御すると腹が減るからな。エネルギー補充も重要だ」

 そういや昔から大食いなわけじゃなかったな。

 そうか……。バンドを始めてからあいつらが今までより暴れるようになったと……こいつも大変だな。

 俺は哀れみの目を向けた。

 

 応援してる。手伝わないけどな。

 

「はぐはぐ。むぐむぐ。んぐっ。っはぁ……んで、話ってなんだよ」

 うわぁー。すげー。もう食い終わった。ここに来て十分と経ってないぞ。

 

 とまぁとりあえず話だったよな。

「お前さぁ、LIFE1の情報屋とか言われてたよな」

「……欲しくも無い称号だ。普通に生活してたら手に入る情報だ」

 普通に生活してて裏組織の情報なんて手に入らないと思うけどな。

 

 こいつ、やばい組織なんかの情報を掴んで警察に垂れ込むのを趣味にしている。んなやばい事を趣味にしているやつなんて世界の何処を探しても無いだろう。

「まぁ、その情報屋のお前に頼みがある」

「なんだよ。俺は情報屋の称号を貰ってイライラしてるんだけど……。もしくだらない事だったら……っ!」

 怖い事を言ってくれる凌太さんだが、俺は怖気づかずに要件を語る。

 

「お前は何故結羽が俺の黒歴史を知っているか調べて欲しい」

「結羽っつったらこの前会った女の子か? んで、お前の黒歴史ってったらあれだよな。サッカーボールの」

「ああそうだ」

 そう言うと凌太はジト目を浮かべていた。

 

「帰る」

 急に帰ると言い出す凌太に俺は焦った。

 どう引き止めたものかと考えてる内に歩き出す凌太。

「止まってくれ! そ、そうだ! ここ奢るから!」

 しかし凌太の足は止まんない。こうなったら!

「ピ○クル奢るから!」

 そう言うとぴたっと足が止まった。

「……二本な」

 そう言うと元の場所に座る凌太。計画通り。

 

「俺、記憶力が良いんだ」

 座ると急にそんなことを言ってきた。

「……だな」

「似顔絵とか得意」

「そうだったな」

 そのやり取りをした後、凌太は(おもむろ)にスケッチブックを取り出して、二つ絵を描き始めた。

 

 そしてその描き終わった絵を俺に見せる。

「上手いっ!」

 結羽の絵が死ぬほど似ている。

 

 それに……こっちの絵は……。

「あの時の女の子か?」

 ん? でも……最近どこかで見たような絵だな。

「んじゃ」

 そう言うと立ち上がる凌太。

 

「ちょっと! 教えてください! これになんの意味が!?」

「考えろこのクソリア充」

 俺にそう言い放って店を去って行った。

 

 結局俺が払う事になったけど……これだけじゃわかんねーよ。

 どうしろってんだよ。

 

 その時、急にひとつの写真が頭の中に浮かんだ。

 

『そういやこの頃、結羽は髪も短くてメガネをかけてるんだな。今はコンタクトなのか?』

『あ、そうだね。今はコンタクト。まぁ、そこまで悪いって訳じゃないけどね。視界がぼやけると吐き気がするから』

 確かこんな会話をしたような。

 

 そして俺は凌太の置いていった似顔絵と記憶の中の会話を照らし合わせる。

 髪が短くて……メガネをかけてる。

「一緒だ……っ!!」

 全く同じ容姿だった。

 

 凌太の絵は肩の辺りまで書かれているが、その為、髪の長さが全て書かれているショートの髪。メガネをかけていて、結羽には悪いが暗そうに見える表情。

 

 間違いない。これは──結羽っ!

 

 そうか……そういう事だったのか……。全てが繋がった。

 

 俺の黒歴史を知っている理由も、昔の結羽にどこかであった気がした理由も、そして結羽にいきなり好みの容姿をぶちまけた人物も……。

 

 俺達はあそこで出会ってたんだ。

 あの路地裏で。

 

 俺の黒歴史を知っている理由は実際に体験した当事者だったから。昔の結羽にあった気がした理由もそうだ。

 そして結羽に『君は多分、メガネは無い方が可愛いと思うよ。うん! それと僕はロングの方が好きだな』とか言ったのは──

「この俺だったのか……っ!?」

 

 漸く気がついた。

 恐らく結羽はずっと知っていたんだろう。

 高校生になってから初めて出会い、今の今まで、結羽にとってはその男の子だと言う認識だったのか?

 だとしたら一目見て気が付かなかったのは申し訳ないよな。

 考えてみれば、顔も変わっていない。それなのに俺は……気がつかなかった。

 

 でも俺は今、気がついた。

 

 ならば俺は伝えるべきだろう。

 

「っしゃ! 気合い入れていくか」

 俺の友達……。いや、一目惚れした女の子の元へ




 はい!第86話終了

 遂に謎が明らかになりましたね。

 遂にこの話が書けましたよ!

 いやー。僕自身もここら辺の話は書いてて楽しいです!

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第87話 俺の強がり

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 そうか……お前だったのか。

 俺が助けた女の子は……結羽。

「んじゃ! 気合い入れていくか」

 俺の友達……いや、一目惚れした女の子の元へ。



 それではどうぞ!


side優也

 

 俺は走って家に帰ってきた。

 

 家に帰ってくると結羽がテレビを見ながらアイスキャンディを齧っていた。

「む? 早かったね」

「ああ、色々あってな」

 そう言って俺は結羽の向かいに座る。

 

「良いな〜。LIFEのメンバーとアポ無しで会えるんでしょ? 私も幼馴染だったらな〜」

 羨ましそうに言う結羽。

「別に……お前も昔会ったことあるだろ」

 俺は冷静な口調で結羽が見ていた恋愛ドラマの方に視線を向けながら言った。

 

 面と向かって言うと照れくさくて無理だ。

 

 すると数秒間だけ静寂に包まれた。

 結羽をチラッと見ると物凄く驚いた表情で石と化してしまっていた。もちろん比喩だが。

 すると結羽は手に持っていたアイスキャンディを落としてしまった。

「結羽。落とした」

 そう伝えると漸く自分がアイスキャンディを落とした事に気がついて「はわわわ」と言いながら片付け始めた。

 

 重症だ。

 まさか俺が当てるとは思わなかったんだろうな。まぁ、今までの行動を考えたら当然なんだが。

「ゆ、ゆゆゆ、優也!? 熱でもあるの!? 今日は寝てて! 看病は私がっ!」

「ちげーよ。なんでそう思った」

「だって、珍しく優也が鋭い事を言ってきたから……。もしかして全部思い出した?」

 俺は静かに頷いた。

 

 そして俺は凌太の絵を取り出した。

「まぁ、凌太にこの絵を見せられるまでは気が付かなかったんだけどな」

「……上手い」

 結羽もこの絵の上手さに目を点にして驚いている。

 

 この絵の上手さはもはやこの紙に本人が居ると言っても過言ではない。

 色が無いが、生きているかのような感覚がある。

 

「まぁ、そんな訳だ」

「ま、まぁ、優也にしては良くやったと褒めてやろう」

 結羽は気づいてもらえて嬉しいのか、いつもは使わない口調でノリノリになっている。

 

「それにしても……えへっえへへへへ」

 両頬に手を当ててえへえへと笑う結羽。今までに見せたどの笑顔よりも嬉しそうな顔だ。

 多分結羽はずっと俺が思い出すのを待っていたんだろう。

 

「それにしても……すまん!」

 俺は膝に手をついて頭を下げた。

 すると結羽は驚いて笑うのを辞めて、驚いた表情でこちらを見てきた。

「な、なんで謝るの?」

「まぁ、そりゃ……ずっと俺が気がつくのを待ってくれてたんだろ?」

 不思議そうな声色で聞いてくる結羽に理由を説明する。

 

「まぁ、そうだけど謝る事は」

「いや、最低だ。絶対に許されない事をした」

 俺は何度も何度も謝る。辞めてと言われても俺は謝る事を辞めない。

 なぜなら俺の気が済まないからだ。

 ここで結羽の言うことを聞いて辞めても俺の気が収まらないだろう。

 

「な、なんでそんなに謝るの?」

 今度は俺が謝ってる理由を聞いてきた。

「まぁ、それは俺が最低だからだ」

「忘れていた事がですか? それなら1回会っただけだし、あの頃は自分でも地味な子だったって分かってますから」

 そういう事じゃないんだ。

 俺だってそれだけだったらそこまで気に病まないさ。許してもらったらもういいとでも考えたさ。

 

 だけど、ダメなんだ。俺は最低だ。

 だから俺は謝り続けなければならない。

「う、うぅ……。絆成 優也っ!」

 急に結羽は俺のことをフルネームで呼んできた。

 その声に合わせて下げていた頭を上げる。

 

「私はもう怒ってません」

「はい」

「もういいんだよ? 謝らなくたって」

「だが」

 だが、まだ俺は謝り足りなかった。

 

 俺にも俺なりの考えというものがある。

 例え、結羽がもう怒ってないとしても、俺は最低なことをしたんだ。

 このまま罵られ、結羽に嫌われてもおかしくない事を……。

 

 だって……俺は──

「一目惚れした女の子の容姿を忘れてしまっていたんだからなぁ」

 俺は小さく。だけど、結羽に聞こえるような声で言った。

 

 すると結羽は顔を真っ赤に染めてまたもや固まってしまった。

 数秒固まるとプルプルと震えだし、何とか声を絞り出す。

「そ、それって……っ!」

 結羽は俺とは違って鈍いわけじゃない。俺だったら気が付かなかっただろうが、結羽はすぐに気がついたのだろう。

「そうだ。結羽。俺はお前に一目惚れしたんだ」

 俺はその事実を伝えた。

 

 だから俺は最低な男なんだ。

 一目惚れした女の子なのに忘れるなんて……。

「最低だよな。勝手に一目惚れしておいて忘れるなんて」

 

 ぼんやりと一目惚れしたことは覚えていた。だが、俺は誰に一目惚れしたのかを忘れてしまっていたんだ。

 最低だよな。

 だから俺はずっと自分を責め続けていた。

 

 だが、結羽は自分を責めている俺と目線を合わせて、それから俺の頭を撫で始めた。

「全然最低じゃないよ? むしろ思い出してくれてありがとう。そして、あの時助けてくれてありがとうね? ずっとこれが言いたかった。やっと言えたよ」

 すると結羽は涙を流し始めた。

 だが、結羽の表情を見ると直ぐにそれは怒りや悲しみによるものでは無いと分かった。

 

 嬉しそうだ。

「ねぇ、優也。私から気持ちは伝えたよ? 返事が欲しいな」

 返事と言うのは恐らくあれの事だろう。

 だが、結羽の潤んだ目や期待した表情が俺の悪戯心に火をつけた。

 

「返事ってなんのだ? ちゃんと言ってくれないと分からないな」

 多分今の俺はニヤニヤしていることだろう。

「そもそも、返事が必要な質問は一回もされていないしな」

「うぅ……。優也の意地悪……」

 確かに意地悪だったな。

 だが、結羽の表情が俺にそうさせたんだ。なんだよあの小動物を彷彿とさせる可愛い顔は。

 

「じ、じゃあ言うね?」

 結羽は意を決したのか、泳がせていた目を俺に合わせて言った。

「私は、優也。絆成 優也の事が大好きです。私と付き合ってください」

 そう言われて俺も気が引き締まる。

 

 次の一言はもう既に考えている。

 だが、言うのは緊張する。心臓がバクバク鳴り、その音が煩く、鬱陶しいと感じる。

 そして俺が言った言葉は──

 

「俺も……好きだ。俺からも言う。俺と付き合ってくれ」

 

 そう言った瞬間、元々涙を流していた結羽の涙腺は更に緩くなったようで更に大粒の涙を流し始めた。

「おいおい。どうしてそんなに泣くんだよ」

「だって、だってぇ……っ! 夢だったから……! 私、優也とこうなるのは夢だったからっ!」

 とても嬉しいことを言ってくれて俺は思わず結羽の事を抱きしめた。

 

 俺は彼女なんて要らないと言った。必要無いと言った。俺の幸せは七海の幸せだと言った。

 だが、あれらは全て俺の強がり(・・・)だったのかもしれない。

 

 ──俺は誰よりも人からの愛を欲していたんだ。

 

 今分かったよ。何が一番必要で、何が一番大切なのか。

 

 それは──

「結羽。お前だったんだな。俺の心を埋めてくれるかもしれない人は」

 そして俺は結羽の事をぎゅっと抱きしめた。

 

 抱きしめると、少し力を入れたら折れてしまいそうなほど華奢な体と感じた。

「結羽……」

「は、はい」

「もう二度と離したりしないからな」

「うんっ!」

 

 そして俺達は何時間も抱きしめ合った。




 はい!第87話終了

 遂に結羽と優也が結ばれました!

 ここまで87話もかかったんですね。長い!

 ですが漸くですよ漸く。

 次回からは二人は恋人です!

 あれ?そしたらあとの三人は?

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第88話 始まりのあの日

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

「返事が必要な質問は一回もされていないな」
「私は優也。絆成 優也の事が大好きです。私と付き合ってください」
「俺も結羽の事が好きだ」



 それではどうぞ!


side優也

 

 えー絆成 優也です。

 えー、つい先程結羽と付き合う事になりました。なったのですが……。

 どういう状況なのでしょう。

 

 ついさっきまで抱きしめ合ってたんだが、急に恥ずかしくなり、互いに離れたのだが、互いに向き合って正座をしながらお茶を飲むと言うシュールな絵面になっております。

 まぁ、頬を真っ赤にさせながら両手でコッブを持ってお茶を飲む姿は可愛いから良いんだけどな。

 

 このまま俺的には結羽を眺め続けてても良いんだが、話題がないと気まずい。

 だから俺は俺は必死に思考を回転させて話題をさがす。

 

 そういや俺は結羽に過去を伝えたけどあの事件以降の結羽の話って聞いたこと無かったよな。

「そういや結羽はあの後どうしたんだ?」

「あ、あの後って?」

「あの俺達が初めてあったあの時の事」

 そう言うと結羽は頬を更に真っ赤にさせ始めた。

 

「え、えと……今ではロングヘアだけどあの頃はショートだったでしょ? そして今はコンタクトレンズに変えてるし」

「ん? そうだな」

 するとモジモジと人差し指同士を擦り合わせ始めた。

 彼氏のひいき目だからだろうか? いつも可愛いが今は特別に可愛いような気がする。

「ゆ、優也がその方が良いって言ったからだよ?」

「ん? あ〜たしかに言ったな」

 

─※─※─※─回想─※─※─※─

 

side結羽

 

「や、やめてください」

「嬢ちゃん。一人で遊ぶよりももっと楽しいこと教えてやるからよ」

「一緒に来いよ」

 グイッと私の腕を掴んで引っ張ろうとする私より一回りも二回りも大きい複数の男性に囲まれて私は怖くて怖くて泣いてしまいました。

 

 その時の出来事だった。

 

 リーダーと思われる男性に急に飛んできたボールが当たってその男性は気を失ってしまいました。

 残りの男性はリーダーがやられた事で、急に私から手を離して覚えてろよ〜と言う悪役らしい台詞を吐いて逃げていきました。

 

 ボールが飛んできた方を見るとそこには複数の男の子が居ましたが、一人以外は通り過ぎようとしてたように見えました。

 

 そのボールを蹴ったと思われる男の子が近寄ってきました。

「大丈夫か?」

 そう言って男の子は私の前で少し屈んで私の顔色を伺ってきました。

 今思えば彼の方が少し背が高いので当然です。

 ですが、その頃は少し子供扱いされたみたいでムッとしました。

 

「なんで怒ってるんだ」

 私は無口だったので喋りませんでした。

「そうか……でも女の子は怒ってるより笑ってた方が可愛いと思うぞ」

 そしたら私の頭をポンポンと軽く撫でてきました。なんか女の子に慣れた感じです。

 

「あと、君は髪が長い方が絶対可愛い!」

 親指を立ててきましたが、何がグッドなのか分かりません。急に訳の分からないことを言い出して……。

 

 でもさっきまで恐怖を感じていたからでしょうか? 鼓動がなり止みません。

 それに彼の事を考えると心が暖かい気持ちになって思わず頬が緩みそうになります。

 

 服装はイマイチですが、かなり整った顔。これで服装もキチッとキメたらイケメンフェイスに加えて最高のコーディネート。あれ? ちょっと良いかも。

 ※結羽のひいき目も入ってます。

 

「んじゃーな。気ぃつけて帰ろよ」

 そう言って私の前から去っていく男の子。

 なんか友人に文句を言われているようですが、ここからでは良く聞き取れませんでした。

 


 

 数日後、私がリビングでぼーっとしながら考え事をしているとお母さんととーまが何やら話し合ってるようでした。

 

「ねぇ、結羽?」

 話し合いが終わったかと思うとこっちに話しを振ってきました。

「何?」

「最近ずっと考え込んでるなと思ったら急にニヤけて変よ結羽?」

 ギクッ

 わざとらしく反応してバレてしまいます。

 

「結羽どうしたの?」

「いや、あのね? なんか最近変なんだよね。ある一人の男の子の事を考えてると胸がポカポカしてきて暖かい気持ちになって、自然とニヤけちゃうの……。これって何かの病気かな?」

 そう聞くとお母さんは少しだけ考え込んだ後、一言言い放った。

 

「病気ね」

 

 私はそれを聞いた瞬間怖くなってきた。

「でもね。それはお医者さんでも治せないの」

 それを聞いて更に恐ろしくなった。

 もしかして私、死んじゃうのかな?

「だけどそれは悪い病気じゃないの。安心して?」

 それを聞いて私は安心しました。

 

 ──でも、どんな病気なんだろう?

 

 その時はまだ恋というものがどういうものか知らない私は恋に気が付きませんでした。

 

─※─※─※─回想 終─※─※─※─

 

side優也

 

「こんな感じかな?」

 

 結羽は顔を赤く染めながら語ってくれたが、聞いてるこっちまで恥ずかしくなってくるようなエピソードだった。

 そんなに前から俺の事を思ってくれたんだと思うと嬉しさと恥ずかしさが両方襲ってきた。

 

「そうか。んじゃあこの学校に入ってきたのは俺を追ってなのか?」

 そう聞くと結羽は首を横に振った。

「それは完全に偶然。元々は違う学校に入ろうと思ってたの」

「へぇ〜。それじゃなんでこの学校に入ることにしたんだ?」

「それはね……えっと……冬馬に馬鹿にされて……」

 何その可愛い理由は。そんな事だけで落ちるかもしれない伊真高を受験したのか。

 

「そう言えば試験の時、優也に会ってそこでも助けられたんだよね」

「え? 全然記憶に無いんだが……」

「優也ってもしかしなくても記憶力ってあんまりないよね」

 バレたんだけど。

 付き合ってすぐに彼女に記憶力がない事がバレたんだけど。

 

「それじゃあ教えてあげるね。優也がどれだけカッコいい行動をしでかしたか」

 

─※─※─※─回想─※─※─※─

 

side結羽

 

 試験当日

 

 ここを落ちたら……考えたくもない。たぶんとーまにバカにされる……。そんなことを考えて私はナイーブになってしまっていた。

 そんなわけで必ず受からなくてはならない。

 御守りに祈っておこう。そう思ってポケットを探るけど見つからない。

「御守り……御守り……あれ? 御守りがない!」

 ポケットに居れておいた筈なのに!

 どこかに落とした? 探してたら時間が無くなるし……。

 

 最悪だった。

 寄りにもよって試験当日にお守りを落とすなんて……。

 

 その時の出来事でした。

「あの……これ、あなたのですか?」

 後ろから声をかけられ後ろを振り向いたら、私の御守りを差し出して、聞いてきている男性が居た。

 雰囲気は変わってました。だけど間違いない。この人は昔助けてくれたあの男の子。

 凄い背が伸びてて、頭一個分くらいの差が出来てしまっていた。

 

 っと、見蕩れてしまっていた。

 御守りを拾ってくれたんだからお礼を言わないと。

「あ、ありがとうございます」

「今度は落とすなよ?」

 


 

 受験が終了して、私は玄関から出た。

 

「うぅ……自信ない……あんなに啖呵切ったんだから合格しなかったら冬馬にバカにされる」

 その時、

「あれ? 中学生?」

 前から声をかけられ、そちらをみると、この高校の生徒と思わしき男達が居た。

 なんで今日は受験日なのに在校生がここに居るの?

 って、確かに中学生だけど絶対私の年齢より幼いと思ってる。

「ちょっと一緒にゲーセン行かない?」

「ちょっと忙しいので」

「ちょっとだからさぁ」

 

 肩を掴まれそうになったその時、後ろからサッカーボールが飛んできて男の顔面に──直撃した。

「ぐは!」

「てめぇ! 何者だ!」

 そのボールを蹴った人物とは、

「俺か? 俺は……そうだなぁ……ただ自己満に(ひた)りたいただのしがない一般人ですが?」

 やっぱりあの人だ!

 

「ああ? 自己満だ?」

「なんだ? かっこつけてんのか? 俺達は今、この子にようがあんだよ!」

「そうですか……ですが嫌がっているようですよ?」

 え? これって助けようとしてくれてる? 私から見たらあの人は背が高いけど、この高校生の人達はそのあの人よりも大きいし、怖くないはずがない。

 

「嫌がってるわけねーだろ?」

「嫌がってないんですか?」

 あの人が聞くと、

「ああ、そうだ!」

 何故か私の隣に居た一人が答えた。

「ああ、それは失礼しました」

 そして、彼は振り返り、帰ろうとした。

 

 そう。それが懸命な判断。私なんて見捨てて帰った方が身のためになる。

 だから私なんて見捨てて帰って。

「と、見せかけて」

 そして、あの人はなぜか持っていたサッカーボールを蹴り見事私の周りに居た一人の顔面に直撃した。

 何やってるのよバカァァァァァっ!

 

「兄貴!」

 顔面にボールが当たった人はその場に倒れてしまった。

 

 そして他の高校生達が倒れた人の近くに行った隙を狙って──

「逃げるぞ! めんどいからな」

 私はあの人に手を握られてドキッとした。

 そして、私はそのまま手を引かれて一緒に走って逃げた。

 

 暫く走り、そこで止まった。

「ここまで来れば大丈夫だ。じゃあな! お互い、受かれば良いな」

「うん!」

 そして、彼は走って行ってしまう。

 すごくドキドキした。

 

 そして私の胸は暫くドキドキしっぱなしだった。

 それは走ったことによるものなのかはたまた……それはどっちなのか分からなかった。

 

─※─※─※─回想 終─※─※─※─

 

side優也

 

 マジかよ!

「え? 俺は黒歴史を重ねる馬鹿だったのか!? と言うかなんでそれを忘れてた?」

 俺が頭を抱えて悶えてると結羽は俺の耳元に近寄って来てこう囁いた。

「でも、私はそんな優也が好きになったんだけどね」

 その言葉にドキッとさせられた。

 

 耳が溶けてしまいそうなほど甘い声。その声によって俺は悶えることを忘れてた驚いて顔を上げる。

 すると、もう数センチ近づけば唇が当たる場所に結羽が居たため、驚いて後ずさりする。

 

「ふふっ。優也も可愛い反応するんだね。いつも萌未ちゃんに迫られても素っ気ない態度を取るからそう言うのに興味が無いんじゃないかと思ってた」

 何を言ってるんだ。俺だって人並みの性欲位ある。

 だけど萌未の場合、昔からずっと妹の様に接してきたから今更そういう目で見れないってだけで。

 

「でもその反応を見れて安心したよ。次はもっとドキドキさせてあげるね」

 結羽はそう言った後、自分の部屋に戻って行った。




 はい!第88話終了

 今回は結羽の過去の話でした。

 結羽視点でお送りしましたが、所々甘い雰囲気があったんじゃないでしょうか?

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第89話 相談

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 結羽視点の過去が明かされた。



 それではどうぞ!


side優也

 

「結羽。欲しい物とかあるか?」

「ん? どうしたの?」

「簡単なアンケートです」

 実はもうそろそろ結羽の誕生日だ。去年も結羽の家でパーティをした。今年もやることになるだろう。

 その際にプレゼントするものなんだが……。

「欲しい物か……特にないかな? 欲しい物はもう手に入れたし」

 えへへと笑いながらそんな可愛いことを言ってくれる。いや、可愛いんだけど困る……非常に困る。あれだよあれ、人に「何食べたい?」って聞いたら「何でもいい」って言われた時くらい俺は困っているぞ。

 

「ねぇ、なんで急にそんな事を聞いて来たの?」

 しまった。勘づかれたかっ! 俺は昔からこういう隠し事をするのが苦手だ。すぐバレてしまう。

 ここは何としても誤魔化そう。

「まぁ、七海の誕生日がもうすぐだからお見舞いに持っていこうと思ってな」

 嘘だ。本当は1月8日だからまだまだ誕生日では無いんだが、結羽に言ったことは無いからバレる事は無いだろう。

 

「そうなの? うーん……女の子が喜ぶものと言えばぬいぐるみかな? うん。それがいいと思うよ」

「そうか。ありがとうな」

「ぬいぐるみはどの女の子でも好きだと思うよ」

 どの女の子でもか……。確かに結羽の部屋には結構ぬいぐるみがあった記憶がある。結羽も好きなんだろう。

 だが、俺はイマイチそこら辺のセンスがないんだよな……。

 


 

「で、私ですか?」

「ああ。もう露木ちゃんしか頼める人は居ないんだ! 頼む!」

 俺は今、結羽の言葉を頼りにしながら露木ちゃんにぬいぐるみ選びを手伝ってもらおうと相談していた。

 

「そうですかそうですか。告白されたのにそれを振り、違う人と付き合ったのにも関わらず振った相手を頼るなんて……馬鹿ですか?」

「ば、馬鹿!? っておい! 俺は露木ちゃんに俺らが付き合ってるって言ったことは無いんだけど!?」

 俺が今露木ちゃんに言ったことは結羽がもうすぐ誕生日の事、プレゼントはぬいぐるみにしようと考えてる事。そしてそれを手伝って欲しいという旨。これしか言っていない。

 もちろん過去にも露木ちゃんには結羽と付き合った事など言ったことは無いのだ。

 

「寧ろ隠す気あるんですか? 馬鹿ですか? そこまで結羽先輩への思いを語っておきながら付き合ってないとほざき出したら強○魔に襲われたと大声で言うところでしたよ」

「やめて!? 俺はそんなことやってないからデマを流して俺の好感度下げようとするのやめて!?」

 あと、結羽の耳に入ったら確実に殺される。付き合ってから数日しか経ってないのにそんな噂が広がったら確実にゴミのような目を向けられる。いや、いつであろうともゴミのような目を向けられることには変わらないけど。

 

「で、先輩は私の失恋の傷口を抉る気ですか? 悪趣味ですねお姉ちゃんに言っていいですか?」

「色々とヤバそうな気がするのでやめてください」

 神乃さんに俺がそんなことをする鬼畜だと思われてしまったら確実に色々とヤバい。生徒会長の運命とやらで面白がって俺の愉快な仲間たちに言いふらしてしまったら俺は確実にあいつらからやばい目で見られる。結羽に至っては何するか分からない。

 

「まぁ、私だから大丈夫ですけど彼女さんがいるのに他の女の子とは二人きりで会わない方が良いですよ? ましてや昔、好意を抱かれていた相手なら押し倒されてもおかしくありません。力技で奪う人も少なくありませんから」

 そうなのか。普通に俺にとっては可愛い後輩って考えだからあんまり気にしてなかったが、露木ちゃんにも告白されたもんな。それに女の子だもんな。

「わかった。今度から気をつけるわ」

「それで宜しいです」

 うんうんと頷く露木ちゃん。

 

「それでは行きましょうか」

「行くってどこに?」

「ん? プレゼント選びですが」

「え? 手伝ってくれるのか?」

 純粋に驚いた。あれだけ言ってたから付き合ってくれないかと思っていたんだが。

「私は一度も断った記憶はありません」

 確かに断られてはいないけどさ。あれだけ言ってたからな。勘違いなら良かった。

 

「んじゃ、御教授お願いします」

 そう言って俺らのプレゼント選びが始まった。

 


 

side結羽

 

「もうすぐ誕生日かぁ……」

 私は去年の事を思い出す。

「去年は優也、ハンカチをくれたっけ」

 そのハンカチは机の引き出しに大事に保管している。汚したくないからだ。

 

 そして今年もその時期だ。

 

 今年は色々あったし優也は私の誕生日の事を忘れてるかもしれないなぁ。

 そう考えながら私は貯金を取り出す。

 

 私はアルバイトとかしていないからあんまりお金は無いけどコツコツ貯金していたんだよね〜。そしてこれは自分へのお祝い。ずっと前から欲しいと思っていた服をやっと今日、買いに行くことが出来る。

 

「ふふっ」

 考えただけでも笑みが零れる。

 その服を着て優也の前に出たらなんて言うかな? そんなことを考えてわくわくする。今から服屋に行くのが楽しみすぎる。

 

 そして私はお金を財布に入れて家を出た。

 今の時間は何故か優也も居なかったため、お父さんはお仕事、お母さんもお仕事で誰も居ないからちゃんと施錠する。

 

 そして数分間歩くと服屋が見えてきた。

 

 ここら辺は確か優也の行きつけの喫茶店があったな……。最近は休みの日の昼間はよく昼間は喫茶店に行って「落ちた学力を取り戻してくる」とか言ってたな。

 今日も知るかもしれない。と少し喫茶店の中を窓ガラス越しに見るとやはり優也が居た。だけじゃ無い。何故か露木ちゃんまで居る。しかも楽しそうに話して。

 

 私はショックだった。

 

 そして私の頭の中に一つの単語が浮かんだ。それは浮気(・・)という単語だった。

 私は悲しくてその場を思わず走り去ってしまった。




 はい!第89話終了

 いやー。大変なことになりました。

 結羽に誤解された優也。果たしてどうなるのか?

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第90話 ぬいぐるみ

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 もうすぐ結羽の誕生日ということで露木にプレゼントのアドバイスをしてもらおうと相談していたところ、たまたま服を買いに来た結羽がその現場を目撃。そして浮気と勘違いしてしまう。
 しかしそれに気がついていない優也。果たしてどうなってしまうのか?



 それではどうぞ!


 結羽に見られたことを全く知らない優也は露木と共にショッピングモールに来ていた。

 

side優也

 

「やっぱりここが一番品揃え良いですね」

「だな」

 俺もよく活用する所だ。主に飯を食いに来てるんだけどな。

 しかし、色んなコーナーに別れていて分かりわすい。

 

 その中からぬいぐるみが置いてあるコーナーを目指す。そこから現役JKの露木さんを頼ろうじゃないかと。

 俺が選んだら大変なことになりそうだしな。

 

 そんで、着いたんだが本当に色んなのがあるので俺のセンスに任せなくて良かったと俺は安堵する。

 露木ちゃんも最初はあまり乗り気じゃなかったみたいだが今はそんなんでもないようだ。

 

(な、なんか先輩の彼氏さんと一緒に買い物って……なんだかイケないことをしているような気分)

 露木ちゃんはなんか一瞬こっちを見てきたけど何を思ってこっちを見てきたんだろう。

 

 取りあえず俺がでしゃばったらややこしくなりそうだから俺は隣で大人しく見学してるとしますかね。

 

 そういやこういうぬいぐるみ七海の部屋にもあったな、懐かしい。七海に呼ばれて行くといつもベッドいっぱいに置かれたぬいぐるみが出迎えてくれてたっけ。

 

 そういえば実は露木ちゃんに頼む前に如月の奴にも頼んだんだが、「私をフっておいて頼み事って図々しくないですか?」と言われて断られた。実にその通りでございます。

 実は結羽と付き合うことになってからみんなに断りに行ったのだ。

 学校では星野さんと露木ちゃんを交互に呼び出し、如月にはバイトの時に誰もいないのを確認して断った。

 

 あの時は正直言って心が痛かったけど、露木ちゃんだけは「そうなる気がしてました。なのでこれからは友達でどうでしょうか?」と言われ、だいぶ気持ちが楽になった。

 だから露木ちゃんには結構頼みやすかった。如月に1回頼んだのは同じシフトだったからだ。まぁ、断られたけど。

 

「可愛い……。プレゼントとは別に買おうかな」

 俺はちょっと離れた位置でぬいぐるみを物色しているから露木ちゃんがハッキリと何言ってるかは分からないがぬいぐるみを物色しながらブツブツと呟いているのは分かる。

 と言うか露木ちゃんは何を見てるんだ? そう思ってそっちに視線を向けると犬のぬいぐるみの前でぶつぶつと呟いていた。かなり真剣に考えてくれてるようで嬉しい。俺は良い後輩を持ったな。

 

「さて、俺も見てみるか」

 そうして見てみると七海と一緒に買い物に行っていた頃を思い出した。

 七海も可愛いものとかぬいぐるみが好きだったからよくこういう所に買いに来ていた。

 

 ちょうどこんな感じに俺が少し離れたところでぬいぐるみを見ながら七海を待つって感じだ。

「先輩」

 そして俺がぬいぐるみを物色していると急に背後から露木ちゃんに声をかけられた

「どうした?」

「えーっと、こんなのはどうですか?」

 そして露木ちゃんは一体のぬいぐるみを渡してきた。そのぬいぐるみは両手いっぱいで抱きしめられる程の大きさのハリネズミだった。

 

 確かに可愛い。そう思って結羽がこのぬいぐるみを抱きしめている姿を想像する。

『ありがとう優也』とそう言いながら笑顔でハリネズミを抱きしめる結羽。可愛すぎる。彼氏の贔屓目なしに元から可愛い結羽がそんな仕草したら可愛すぎる。

「良いな」

 色んな意味で良い。

 

「なら決まりですね」

「所でもう片方の手に持ってるのは?」

 ハリネズミのぬいぐるみを持ってきた時から露木ちゃんはもう片方の手には犬のぬいぐるみを持っていたのでずっと気になっていたのだ。しかも大事そうに。

 

「……へ?」

 すると今気がついたのか露木ちゃんは驚く。無意識か。

「あ、いや! 違うんです! 全くもって可愛いからキープしてた訳ではありません! 私はぬいぐるみには興味ありませんからっ!」

 露木ちゃんは色々と口走ったような気がする。別に「それ買うのか?」とか聞いてないしぬいぐるみが好きかなんて質問をした覚えがない。

「と言うかぬいぐるみは女の子なら誰でも好きなんじゃないのか?」

「ど、どこで聞いたか分かりませんがその情報は完全に間違いですね! だってこの私は好きじゃありませんからっ!」

 物凄い勢いで俺に長ゼリフをぶつけてきた。完全に動揺しているのが丸わかりだ。やっぱり露木ちゃんもぬいぐるみが好きなんだな。

 と言うか色々わかってしまった訳だが、俺は悪くないよな。露木ちゃんが勝手に自爆しただけだよな。

 

「まぁ、分かった。分かった。露木ちゃんはそのぬいぐるみが気に入ったんだな」

「だから、違うんですってば!」

 露木ちゃんは抗議の声を上げてくるが、俺は無視して露木ちゃんからぬいぐるみを受け取って会計を済ませる。

 一緒に犬のぬいぐるみも買って渡してあげると「ま、まぁくれるなら貰っておきます。ですが絶対に私が好きなわけじゃありませんから!」と言っていて素直になれないで可愛いなと俺は思った。

 

 そして俺は露木ちゃんと別れて家に帰ると、

「どういう状況だ」

 部屋の隅で丸まって泣いている結羽が居た。




 はい!第90話終了

 果たして優也と結羽の仲はどうなってしまうのか?

 それでは!

 さようなら 


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第91話 怒る結羽

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 露木ちゃんとぬいぐるみを選びにショッピングモールへ。

 すると露木ちゃんは素直になれなくて可愛い子だとわかりました。



 それではどうぞ!


side優也

 

 俺が帰ると結羽が部屋の隅で蹲って泣いていた。これ、どう言う状況?

 とりあえずヤバそうな雰囲気は伝わってくる。

「どうしたんだ結羽?」

 どうしたのか分からない俺は結羽に尋ねてみることにした。

 しかし返事が帰ってこない。ずっと泣いている。

 

「本当にどうし──」

「放っといてよ!」

 久しぶりに聞いた結羽の強めの口調に驚き、固まってしまう。少しだけ怒気を含んでいたような気がする。どうしてそんなに怒ってるんだ。そう聞く前に結羽は次の言葉を発した。

「私なんて放っといて露木ちゃんの所に行けばいいじゃない!」

 露木ちゃん? なんでそこで露木ちゃんが出て来るんだ?

「ねぇ、優也。確かに私は勉強も出来ないし、優也を困らせてばかりで出来ることといえば料理くらいだし、あんまり役に立ててないけど、私は優也の事が好きだったんだよ!」

 なんか俺への愛を語っているのは分かるんだが、なんか話が不穏な方向へ行きそうな気がするのは俺だけでは無いはずだ。

「ねぇ優也。私のどこがそんなに嫌だった? 言ってくれたら直すから言ってよ!」

 そして泣きながら俺の抱きついて俺に投げるように話す。

「わ、私、優也に捨てられたくないよ」

 ん、捨てる?

「ちょっと待て! 結羽、なにか勘違いしてないか?」

 俺が慌ててそう言うと結羽は「ふぇ?」と涙を流しながら顔をこっちに向けてきた。

「何を勘違いしてるか知らないけど、捨てるってなんの事だ? 俺は一度も結羽を捨てようと思ったこと無いんだが……」

「え?」

 俺がそう言うと結羽は驚きの声を出した。

 

「だって優也は露木ちゃんの方が好きなんでしょ?」

「なんでそうなるんだよ。露木ちゃんは可愛い後輩なだけで」

「ほら可愛いって! やっぱりそうなんじゃない!」

「可愛いの意味違う!」

 露木ちゃんはただ後輩として好きなだけであって恋愛感情は無い!

「俺は結羽がこの世で一番好きだと断言する」

 俺が堂々と言い放つと結羽は驚いた表情をした後、頬を染めて目を泳がせる。

「じ、じゃああれは何?」

「……あれって?」

「今日の昼間、露木ちゃんと喫茶店でデートしてたでしょ。……羨ましい

 あれ、見られていたのか……困ったな。

 でも後半部分は聞き取れなかったが、これだけはハッキリと否定しておかなければならない!

「あれはデートじゃないから!」

 あれはデートじゃない。決してやましい気持ちがあった訳でもないし、俺は真剣だったんだ。まぁ、結羽と付き合うようになってから初めての誕生日だし、失敗したくなかったからな。

「じゃあなんであんなに楽しそうにしてたの?」

「え? 楽しそうに見えたのか?」

「うん」

 そうか……真剣なつもりだったが、他人から見るとそんな感じに見えていたのか。

「で、優也。デートじゃないなら何しに行ってたのさ」

 参ったな……。これは誕生日当日に言いたかったんだけどな。結羽に辛い思いはさせたくないし、背に腹はかえられない。

 そう思って俺は手に持っていた紙袋を結羽に差し出す。

「え、何?」

「まぁ、受け取ってくれ」

 そう言って結羽の手に掴ませると結羽は紙袋の中身を覗き始めた。

「買収なんて効かないよ」

「買収じゃないから! 良いから中身を見てみろって」

 俺がそう言うと結羽は中から露木ちゃんと選んだぬいぐるみを取り出した。

「ハリネズミのぬいぐるみ?」

「今回の一番の目的の品だ」

 

 結羽は何故かぬいぐるみを見つめて固まってしまった。どうしたんだろうか?

可愛い……って違います! やっぱり買収じゃない! こんな可愛い……じゃなくてこんなぬいぐるみを貰っても全然嬉しい……嬉しくないです!」

 なんか所々本音が漏れているのは突っ込まない方が良いのだろう。

「結羽、そろそろ誕生日だろ?」

「そうですね」

「だから、それ」

「それって?」

 あー。最後まで言わなきゃ伝わんないかな……。

「誕生日プレゼントだ。本当は当日に渡したかったんだがな」

 そう言うと結羽はびっくりしたようにこっちを見てきた。

「それを買いに行ってたんだ」

「で、でもじゃあなんで露木ちゃんも一緒に居たの?」

「あー。プレゼントのセンスが心配で露木ちゃんを頼った。それだけだ」

「そうだったんだ」

 ギュッとぬいぐるみを抱きしめる結羽。体の小ささも相まって子供がぬいぐるみを抱きしめているように見えるのは内緒だ。

 

「ごめんね? なんか勘違いしちゃって」

「ああ。んじゃ誤解も解けたことだし、俺は部屋に戻ろうかな」

 そう言ってその場を去ろうとすると結羽に腕を掴まれた。

「そのまま他の女の所に行ったりしないよね? まさか、あそこまで私を好きだと言って他の女の所に行ったりしたら」

「行かないから! 俺の部屋は二階だから行けないし! あとそれ怖いからやめて!」

 完全に目からハイライトが無くなっていた。そして俺の腕を掴む力がいつもより強い。

 そして他の女って言ってる所も怖すぎる。

「まぁ、冗談だけどね」

 はぁ……良かった。結羽が思ってる様なことをするつもりは無いけどいつも通りに戻ってくれて良かっ──

「まぁ、本当に浮気したら私、どうなるか分からないけどね」

 あ、やっぱり戻ってなかったわ。




 はい!第91話終了

 次回結羽の誕生日編

 実は優也が結羽の家に住んでる事を他の人達は知りません。はてさて、どうなるのやら。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第92話 誕生日準備

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 結羽の愛が少しだけ重くなった。



 それではどうぞ!


side優也

 

 今日は遂に結羽の誕生日だ。その為、誕生日会の準備をしているのだが、

「結羽、お前は手伝わなくて良いんだぞ?」

 そう言っても結羽は首を横に振り、「私が手伝いたいだけ」と言う。頑固な奴だ。

 そしてそんな様子を見て政博さんは俺に「昔からこうだから好きにやらせてやりな」と言う。扱い慣れてるな。流石父といったところか。

 

 準備している間に家電が鳴った。それを結羽が取りに行くとどうやら悠真も来るそうだ。ついでに萌未も。それを聞いて俺はガクッと膝をついて倒れ込んでしまった。

「暫くアイツらと会ってなくて平和だと思っていたのによ……」

 そう。最近アイツらとはクラスが違ってエンカウントをしていない。

 学校で会って話す奴は結羽、あつし、そして白井さんくらいなもんだ。まぁ、入学時の自己紹介をまともに聞いていなかった奴に友達なんて増えるはずがないんだよ。

 

「結羽、そう言えば最近あつしと白井さんともよく話してるよな。仲良くなったのか?」

「まぁ、少し雑談をするくらいだけどね。つみきちゃんとはよく話すよ?」

 ふむ、仲良いのか。なら呼んだ方が良いのか? とりあえず相手の用事とか聞いてからだな。あいつらなら大歓迎だ。

 あと、プレゼント選びを手伝ってもらったし露木ちゃんも呼んだ方がいいだろうな。その場合セットで神乃さんも着いてくるだろうが気にしないでおこう。

 

 そして冷蔵庫に足りない食材やその他諸々が無いか確認しようとしたところ、

「飲み物が無い」

 そう、パーティするならジュースやお茶があった方がいいだろう。だが無かった。

「ちょっと近くのコンビニに買いに行ってくるわ」

 俺はそう言って家を飛び出した。

 


 

 コンビニに来ると奴がいた。

「いらっさいやせー……ってなんだゆーや君か」

「なんだってなんだ。人を残念扱いしやがって」

 そうだった。今日は如月、シフト入ってたんだったな。面倒なことになったな。

 とりあえず適当に受け答えして早く買って帰ろう。

 如月の奴、俺に告白してからいっそう俺への絡みが凄くなり、バイト中関係無しにボケて来るので俺は常に疲労困憊だ。

 

「とりあえずこれ」

 そう言って俺は適当に選んだ飲み物をカウンターに置く。

「はいはーい。えーっと……計10万円です」

 俺は静かに如月にチョップした。

「痛いよぉ……何もチョップすることは無いでしょ?」

「ツッコミだ」

 そう、俺はただツッコミをしただけだ。ツッコミをするのが面倒くさくてチョップをした訳じゃない。

 

「んもう。私の扱いが酷いよ。えーと592円です」

「はい」

 そして俺は600円で支払う。

「お釣りは要りませんよね?」

「要るわ!」

 たったの8円だが、されど8円だ。それと、お釣りだぞ? 要るだろ普通に。

 とまぁ、鉢合わせてしまったら暫くこんな感じでボケ続けられるのだ。

 だが流石に如月もTPOはわきまえてくれると信じている。他の客が居たら多分やらなかったんだよな? 今は客がいないけど。

 


 

「帰りました」

 俺はそう言ってコンビニで買った飲み物が大量に入った袋を手にぶら下げながら帰宅する。

 すると結羽が一目散に寄ってきて「おかえり」と言って笑顔を見せてからまた持ち場に着く。これは結羽と付き合いだしてから日常と化した光景だ。

 結羽は何をしていようと俺が帰るとゲームやら好きなドラマのリアルタイム視聴なんかも放り出して俺の所に走ってきて「おかえり」と言ってから笑顔を見せる。これが非常に癒されるのだ。

 つまり何が言いたいのかと言うと、俺の彼女可愛すぎだろ。

 

「優也君、なんか今のやり取り気になったんだけど結羽とはどういう」

「ああっと! 準備しないといけませんね。早くしないとみんな来てしまいます」

 そう言って慌ててその場を離れ、電話をかける。

『はい。先輩何ですか?』

「あー。その事だけどさ、この前誕生日プレゼントを選んでくれたお礼に誕生日会に招待しようと思って──」

 プツッ。電話を切られた。どうしてだ? その後何度かけても電話が繋がることは無かった。

『あーと、優也どうした』

「よ、久しぶりだな」

『ああ、んでどうした?』

「そうだな。んじゃ単刀直入に言う、結羽の誕生日会に来ないか?」

『誕生日会か……まぁ別に良いが、つみきも連れて行っても良いか?』

「ん、大丈夫だ」

『オーケーだ。んじゃいつなんだ?』

「今日」

『ちょ、お前よォ、そう言うことは早く言えって!』

「んじゃ頼んだわ」

『ったくよぉ』

 そして俺は電話を切る。これで俺の仕事は終わったわけだ。

 俺はつい先日プレゼントを渡してしまっているからプレゼントは無いが、悠真とかはあるだろうな。あつしと白井さんを除いて。

 

 そして俺も俺で準備を進めようとするとある事に気がついた。

「あれ? 俺、結羽の家に住んでる事を言っていないから俺を迎えに行こうとするんじゃないのか?」

 もしそうだとしたらまずい。悠真達に俺が結羽の家に住んでいることをバレてしまう。

 バレると色々面倒くさい事になるのでそれだけは避けたい。どうにか先に出発していた体で何とか乗り切れば。

 そう思って俺は再び家から出た。




 はい!第92話終了

 今回は誕生日回だと言ったな。あれは嘘だ。

 という訳で次回こそ本当に誕生日回です!

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第93話 結羽の誕生日

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 結羽の誕生日当日、優也達は誕生日会の準備を進める。

 そして優也は露木とあつし、つみきに誘いの電話をかけるも、露木には切られてしまう。

 そして遂に誕生日会が始まる。



 それではどうぞ!


side優也

 

 俺は悠真等にバレないように昔住んでいた家から結羽の家への道を歩いていた。

 バレたら確実に面倒なことになるのは目に見えている。

 

 そして俺は結羽の家に向かって歩いていたのだが、後ろから声をかけられた。

「よ、優也」

「あ、ああ、悠真」

 そこに居たのは悠真だった、あとあつしや白井さんも。久しぶりの面々だ。

 最近はこの面々だったらあつしとしか喋ってなかったから久しぶりに話す。

「そうか、みんな揃って今から結羽の家に行くところだったんだな?」

 俺はあんまりボロを出さぬように先を急ぐ。

「なら早く行くとするか」

 そう言って歩き出した瞬間、悠真に腕を掴まれた。

 

「おい待て。俺達はお前に聞きたい事があるんだ」

 冷や汗が頬をタラりと伝った。

「なんだ?」

 俺は一つ嫌な予感が頭をよぎったけども動揺を見せないために俺はいつもの口調で返す。

「さっき、俺たち三人はお前の家に行った」

「そうか」

 その瞬間、俺の嫌な予感は確信へと変わった。

 その嫌な予感とは──

「なんでお前の家、売家の看板が置いてあったんだ?」

 そう、俺の昔住んでいた家は今や売家だ。そんな看板が置いてあるのをみたら誰だって不思議に思うだろう。

 そしてその看板があるのに引っ越したのではなく今も尚ここに居るという矛盾。

 

 俺は焦る。

 

 結羽の家に住んでいるということがバレたら絶対にめんどいことになってしまうのは明確だ。それだけは阻止しなくてはならない。

「どういう事だ優也。なぜお前はこっちから向かって行った」

 隠蔽工作です。なんて言えるわけないだろ。

 そもそもそんな事を言ったら最終的に俺が結羽の家に住んでいるというのがバレてしまう。

 

「えーっとだな、ちょうど散歩してたんだよ」

「本当か? 本当は誰かの家に住んでて、それを俺達にバレないようにする隠蔽工作だったんじゃないのか?」

 クソッ! なんでこいつ、こういう時だけ鋭いんだよ!

 しかし俺はここで素直にはいそうですと言えるわけがない。

「そんな物語の世界じゃあるまいし、そんな事が現実に起こると思うか? 起こったとしてもかなり低確率の世界だ。運の悪い俺がそのくじを引くと思うか?」

「だが、普通にありえない話ではない。最近のお前の周りでは色々と現実離れした事象が起こっている」

 確かに悠真の言う通り、俺の周りでは現実離れしたことが起こっている。

 これらの流れで誰かの家に住むことになっていたとしてもおかしくないと言う訳か。

 

「まぁ、お前がどうしても言いたくねぇってんならこれ以上聞きはしないけどな」

 そう言って悠真は結羽の家に歩いていく。

「まぁ、馬鹿な俺じゃ何の話か分からないんだが、柴野家はどうだ?」

「居心地は悪く──はっ!?」

「んじゃ、行くか」

 童明寺 あつし。あいつは警戒しておかないとダメだな。

 


 

 家に着くとインターホンを押す。

「そしたらすぐにドアが開いた」

「みんないらっしゃい。おかえりゆ──」

 最後まで言い切る前に俺は結羽の口を押さえて家の中に飛び込んだ。

 

「むぐむぐ」

「結羽、俺がこの家で暮らしていることは内緒で頼む」

 するとものすごい勢いでブンブンと頷く結羽。

 

「……おかえり?」

 悠真を見てみると不思議そうにしているだけだった。それに対してあつしは「あちゃー」と言っている。

 まだ悠真には気づかれていないだけでもマシとしよう。

 

「お兄ちゃーん」

 突然真横からタックルを食らう。が、それを耐える。

「むー。なんで押し倒されてくれないんですか」

「逆に聞くが、なんで押し倒されてやると思った」

 横からタックルをかましてきたのはみんなご存知萌未さんだ。

 どうやら俺が出て行っている間に来たらしい。

 

「最近のお兄ちゃんは冷たいです。昔みたいに私といいことしましょうよォ〜っ!」

「昔も今も、お前とそんなことをしたことは無い」

 そして俺は暴れる萌未を無理やり引き剥がす。

 ったく……こいつは本当に変わらんな。

 

「とりあえず会の支度をするか」

 あつしがそう切り出した。

 って言ってもほとんど終わってるんだからする事は特には無いんだけどな。

 だけどあと少しやることが残ってるのも確かだ。俺も手伝おうと歩こうとしたその時、腕を誰かに引っ張られる感覚が。

「って結羽!?」

 結羽だった。

 結羽が俺の腕をがっしりと抱いて「ムー」と言う声を出して何やら怒っている雰囲気。

「ど、どうしたんだ?」

「……優也は私のだもん。誰にも渡さないもん」

 あ、結羽さんジェラシーでしたか。

 多分萌未が俺に抱きついていたのに反応したのだろう。

 だから俺は結羽の頭にそっと空いてる方の手を置き、優しく撫でる。

「大丈夫だ。俺はどこにも行かないから」

「……うん」

 

 そして俺が結羽を撫でている間に全ての準備が終わったようだ。

『誕生日おめでとう!』

 全員で声を合わせて言った。

「ありがとう!」

 さっきまでのジェラシーモードとは違い、ニコニコ嬉しそうだ。

 

「これ、俺からな」

「……また恥ずかしいものじゃないよね?」

 恥ずかしいもの……。猫耳が似合ってたし、何つけても似合いそうだよな。

 そんな事を考えてると結羽にポカポカと叩かれた。

「ば、バカじゃないの。なに想像してるのよ! 私は恥ずかしかったのに〜」

「わ、悪かったから」

 なんで結羽にはよく心を読まれるんだ? そんなに俺ってわかりやすいかな?

 そして結羽が悠真に貰ったプレゼントの箱を開けてみると、

「あ、これって」

「ああ、まぁ、結羽は料理好きだって言ってたしな。料理の便利道具セットだ」

 俺も隣に座っているので覗き見てみると便利な調理道具が沢山入っていた。

 たとえば、ゆで卵を簡単に切れるやつだったり、大根おろし機、刺身などの下に敷かれているつまを簡単に作れる機械などが入っていた。

 なんかやけにでかい箱だと思ってたらこんなにいっぱい入ってたのか。

 

「どうした悠真。頭でも打ったか?」

「おうおう優也。喧嘩売ってんなら買うぜ?」

 でも本当にどうした悠真。

 いつもの悠真だったら、猫耳〜とか言いそうなところをマジの便利グッズを渡してきただろう。

 

「あと優也。お前にこれを託す」

 そう言って悠真が渡してきたのは猫耳だった。

「……なんだこれは?」

「いやぁー俺が渡すとまたまた怒られる気しかしないから優也さんに誕生日プレゼントとして渡してもらおうかと」

「残念ながら俺はもう渡してるんだ」

「え?」

「だからこれは返却させてもらうぜ」

 そして俺は猫耳を掴んだ手で悠真の腹を殴る。

「ぐはぁ」

 

「……よし続けよう」

「優也、賢明な判断だ」

「私もそう思います」

「えーっと私は状況が読み込めてないんだけど、多分これで良かったんじゃないかな?」

「み、みんな判断がおかしい……ような気がするよ?」

 いや、これで良かったんだ。悠真はのびているがそれで良かったのだ。これで結羽の安全は保証された。

 

 気を取り直してプレゼント贈呈会

「わりぃ。俺達は今日聞いたんで大したもんを用意出来なかったんだが、これ美味かったから食ってみるといい」

「私たち二人からのプレゼント」

 そう言って渡してきたのはお菓子。それも五個ある。

「一人一個当たるだろ?」

 そう言えばあつしとはよく話すから会話の流れで冬馬のことと政博さんのことも話してたっけ。

 

 ん? ちょっと待てよ?

「私、冬馬、お母さん、お父さん……あれ? 一個多いよ?」

「そうか、じゃあ適当にこの家に住み着いてる第三者にでも与えといてくれ」

 そう言いながら俺のことを見てくるあつし。

 あー。今違和感の理由がわかったわ。こいつ、初めから何もかも分かった状態で接していやがった。

「ったく……いつからだ?」

「随分前からだな。お前が結羽と共にこの家に入っていくのを見かけた。んで怪しいなと思って次の朝見張ってたらお前と結羽が共にこの家から出てきたんだ」

 はぁ……。じゃあこいつには隠す意味は無かったのか。

 

「まぁ、お察しの通りだと思うぞ?」

 そして俺はもう渡してしまっているので俺らからのプレゼントはおしまいだ。

「私達からはこれ」

 と美樹さんが取り出したのは

「旅行券!?」

「そう、しかもペアチケット。これで好きな人と遊びに行ってもいいわよ」

 なんか今回は一部変なところがあったけど特に何も無くて良かった。




 はい!第93話終了

 次回は旅行編です。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第94話 優也を旅行に誘いたい!

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 結羽の誕生日。その誕生日で両親が結羽にプレゼントしたのは──



 それではどうぞ!


side結羽

 

 土曜日

 

 突然ですが、

「もっと優也とイチャイチャしたい」

 私は自室のベッドに寝転がりながらそんな事を考えていた。

 だって優也、付き合い始めたというのに反応が淡白だし、優也の方からは一切何もしてこないし、休みの日といえば一日中バイトしているか喫茶店。全くイチャイチャする時間が無い。

 しかも優也の周りにはいつも可愛い女の子がいっぱいいる。不安になっちゃうよね。

 

 だから私は勝負を仕掛けようと思います。

 そして私はお父さんとお母さんに貰った旅行券を握りしめる。

 この旅行で一気に優也との距離を詰めてイチャイチャ、あわよくばキキキ、キス……そしてさらに先へ。

 そこまで考えると顔に熱が帯びてくるのを感じた。

「でも、ちょっと心配だなぁ。優也ってあまりにも欲が無さすぎると思う」

 多分色々な手を尽くしても私が気を使ってると思われるのが関の山だ。

 だったら強引に……。でも私にはそんな勇気はないし、出来るなら優也から来て欲しいな〜なんて。

 

 でも優也はかなりの鈍感男。多分してきてはくれないだろうなぁ……。

 

 でも行動に移さなきゃ何も始まらない! 私はそう思って優也の部屋に向かう。

 


 

 部屋の扉をノックするとすぐに優也が出てきた。

「ゆ、優也。今何してたの?」

「ん? まぁ、普通に漫画読んでたが」

「まんがぁぁぁっ!?」

 私は驚きすぎて後ろに下がってしまった。

 

「なんだよ。おかしいか?」

「あ、あの勉強馬鹿でいつも私が見ても理解不能な小説を読んでいたあの優也が!?」

「んだよ、俺だって漫画くらい……って今さりげなく俺の小説読んだのを暴露したよな? 俺貸した覚えはないんだけど……勝手に読んだのか」

「え、えと」

 や、ヤバイ。墓穴を掘った。

 そう。前に一度私は優也に話題を合わせたくて優也が居ない時間帯に部屋に忍び込み、小説を拝借した事があった。

 結果は──『全くわからない』。小難しいにも程がある様な内容だった。

 難読漢字のオンパレード、小難しい政治の話、色んなキャラにそれぞれの感情や性格が細かに書かれているところはすごく良かったけどそれよりも難しすぎて私にはよく分からなかった。

 そもそも、普段漫画しか読まない私に小説なんて無理だったんだ。

 

「まぁ、怒っている訳じゃないが、貸してほしい時は言ってくれると助かる」

「はい気をつけます」

 ってこんな話をしに来たわけじゃないのに!

「漫画読んでるんだったら時間あるよね?」

「いや、時間があるかないかで聞かれたらあるにゃあるけど今は漫画が非常に気になるシーンなんだ。盛り上がってきた所なんだ」

「へぇ〜どんな?」

 興味本位で聞いてみた。さすがに漫画で理解不能なシーンは無いだろう。

「確か、動物と人間が心を通じ合わせて一緒に平和な世界を作ろうと言う話なんだが、」

 おー。結構ほのぼのとした話なのかな? 優也が読むのは意外だけどこれなら私でも分かりそう。

「突如として現れた巨大ロボットにどんどんと街を破壊されていって」

「あー。なんか可哀想な話」

「だけどそれは正義の行為で、人間と動物が手を取り合うと世界が滅びるって伝承があって」

「うんうん……ん?」

「それを共にどうやって乗り越えるかと言う所だったんだ」

「どういう世界観!?」

 なんで最初ほのぼのとした話なのに段々と殺伐とした話になって行ってるの?

 やっぱりなんか優也の物語の好みがよく理解できない。

 人間と動物が手を取り合うと世界が滅びるって、どうしたらそんなことになるの!?

 

「でもしょうがないか……ごめんね優也。邪魔しちゃったみたいで。それじゃあ」

 そう言って振り返り、自室に戻ろうとすると背後から腕を掴まれた。

 背後にいる人物なんて一人しか居ない。

「優也?」

「あー。なんだその。何か用事があったから来たんじゃないのか?」

「……」

 やっぱり優也には敵わないや。

 

「突然だけど今日これ、一緒に行きたいなって思って。日付が今日までだから」

 そう言って私は恐る恐る手の中に握りしめていた旅行券を見せる。

「これはこの前結羽に美樹さんと政博さんがプレゼントした」

「うん。で、ダメ……かな?」

「いや、ダメじゃないんだが……俺で良いのか?」

「うん! 優也が良い! 寧ろ優也じゃなきゃ嫌!」

 そう言うと優也は私の気迫に押されたのか驚いた顔をしている。

 

「そうか。そこまで言われて行かなかったら彼氏失格だわな」

 優也の言った彼氏と言う言葉に反応して少し恥ずかしくなる。

 多分今の私は顔を真っ赤に染めていることだろう。

「よし、結羽。少し待ってろ、今行くから」

 突然のお誘いだとはわかっている。だけどそれを承諾してくれたのは優也が優しいということの証明だ。

 やっぱり優也を好きになって良かったよ。

 

 私はサッカーボールで助けられた後、また会えたらいいなと言う淡い願望を胸に日々を送っていた。

 探した。もしかしたらまた会えるかもって。

 学校も知らなかった。あの時、あの人が制服を着ていたら調べる手はあった。

 だけどもその時は私服だった。だから探せなかった。

 

 私はそのまま落ち込んだ気持ちで入学式に望んだ。入学式の内容も頭に入ってこなかった。

 もう二度と会えないかもと、そんな事を考えていたナイーブになりながら登校していた。

 

 だけどその時、また会えた。あの運命の十字路で──




 はい!第94話終了

 旅行編だって言ったな? あれは嘘だ。

 次の次くらいには旅行編に入ります。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第95話 メモリー ~エピソードオブ結羽~

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 優也の読む書籍が難しすぎる。



 それではどうぞ!


side結羽

 

 受験中、私はずっと気にかかっていた。

 つい先程、お守りを落としてしまって探していると"あの人"にまた会えた。

 その人の服装はよく見てなかったから分からないけど、多分年齢的に近いし、今日受験だっておかしくない。

 だけどこの部屋であの人を見つける事は出来なかった。

 

 鬱だ。

 冬馬に馬鹿にされてここに受験をしたのは良いけどもやっぱり不安だな。

 この学校で今後上手くやって行けるか。

 

 だって私の学力は酷いし、ここに受かったのだって奇跡だし、だからと言ってあの人が居るとは限らない。いや、可能性は限りなく低いだろう。

 でもこればっかりは仕方がない。運命なんだから。

 

 多分受験の時のあれは神様の気まぐれ的なそんな感じのやつなんだろう。

 

「姉ちゃん! 腹が減った!」

 いつもの様にとーまが家にやって来て私に料理を頼んでくる。いつも通りの光景。

「はいはーい。待っててね」

 料理中も考えていた。四六時中あの人の事が頭から離れなかった。

 受験日に会ってしまったことによって余計に頭から離れなくなってしまった。

 ここだけの話、お恥ずかしながら注意が散漫になっていて指を少しだけ切ってしまいました。

 

 そして次の日、寝坊してしまった。

 たるんでるなぁ~そう感じながら慌てて登校する。

 でも"あの人"が悪いんです。私の心の中にいつまでも留まって……。

 そして"あの人"の事を思い出すと笑みが零れる。

 危ない危ない。他の人に見られたら大変なことになるところだった。

 

 そしてそのまま慌てて走っていると丁度十字路で横から走ってきた人と思いっきりぶつかってしまった。

 私とその人は一緒に尻もちをつく。

 何この少女漫画的展開。

 そう思いながらそのぶつかった人の顔を見る。

「いっ……大丈夫か?」

「は、はい! 大丈夫です!」

 と言うかたった今大丈夫になりました。

 

 ちょっと痛かったけどその痛みが完全に吹き飛ぶくらいの衝撃。

 なんとぶつかったその人は、私の追い求めていた"あの人"だった。

 なんと言う偶然。思わず運命を感じずには居られなかった。

(ゆっくりお話したい)

「この前はありがとうございます」とか「私の事覚えてますか?」とか色々話したいことはある。

 だけど、私が家を出たのはかなり遅い時間。そんなにゆっくりしてる時間もないだろう。

 

 残念だなぁ。そう思いながら私達は一緒に走り出した。

 

 私は足は速い方だと思うけどスタミナが無いから途中でスタミナ切れを起こして途中でダウンした。

 そんな私に気が付かずに"あの人"は走って行ってしまった。

 

 そんなこんなで結局名前すら聞くことすら出来ずじまい。そんな状況にため息が出る。

 折角のチャンスを逃した。私は後悔の念に苛まれた。

 あの時時間なくても強引でもいいから名前くらいは聞いておくべきだったかな?

 そんなことを考えながら私が一人で公園にて黄昏てると、そこに一人の人物がやってきた。

(誰だろう?)

 そう思ってそちらに視線を向けると、私は人生で一番驚いた。

 まさか今朝に続いてまた"あの人"に会えるとは思わなかった。

 

 何かこっちを凝視してる。何かあるのかな?

 でもこれはチャンスだ。ここを逃したらもう次はない!

 

 私は"あの人"に駆け寄る。

 でも駆け寄ったは言いものの何を話そう。……まずは雑談からにしようかな?

「あ、今朝の人! こんなところで何してたんですか?」

 純粋な疑問を投げかけてみる事にした。

「それはこっちの台詞だ」

 おっしゃる通りで……。普通に突っ込まれてしまった。

「所で自己紹介をしてなかったな……俺は絆成 優也。伊真舞高校の1年生だ」

 するとなんと好都合な事にあの人から名乗ってくれました!

 絆成……優也かぁ~いい名前だなぁ~。

 ……って! えぇっ!

 伊真舞高校。私と一緒。更には、

「わ、私と同じ学年!」

 私も今年入学したばかりの一年生。同い年だった事に私は驚いた。

 

「私は柴野 結羽! 伊真舞高校の1年生です!」

 今度はこっちから名乗った。

 優也さんと同じ学年、学校だと知って私のテンションは今までで一番! さっきまでの暗い気持ちは一瞬にして吹き飛んだ。

 

 でも私が名乗ると優也さんは急に頭を抱え始めました。どうしてでしょう?

「大丈夫ですか?」

「あ、ああ! 大丈夫だ。少しボーッとしていただけだ」

 それなら良いけど。

 

「で、話を戻しますが何でこんなところに?」

「たまたま通りかかってな。柴野さんは?」

「ふふふ、結羽で良いですよ。私は……少し色々あって……」

 私は下の名前を読んで欲しさに随分と大胆なことをしてしまった。

 そして聞かれたことについて口篭ってしまった。

 だって本人を前にして「あなたに会えないかもしれなくて黄昏てました」なんて言えないじゃない恥ずかしい!

 

「そうか……言いたくないなら言わなくても良いぞ」

 なんか気を使わせてしまって罪悪感が……。

 でも本当の理由は言えないし……それじゃあここで雰囲気を変えるような事を!

「購買の好きなパンが買えなくて……」

 必殺、シリアスブレイカー。

「おい! 俺の心配はいったいなんだったんだ!」

 怒られてしまいました。

 だけどその怒られている時間も幸せで……えへへ。

 

「それはそうと、そろそろ家に帰らなくてもいいのか? 親御さんが心配するぞ」

「分かった! じゃーね」

 私は最後に砕けた口調でそう言った。

 

 連絡先はゲット出来なかったけど名前を知れただけでも収穫だよね。

「明日も朝にあの十字路で会えるといいな」

 私はそんなことを一人呟きながら帰った。




 はい!第95話終了

 今回は完全に第1話と第2話の結羽視点でした!

 1回これがやりたかったんですよ。

 さて、これで思い残すことはなく旅行編に入れます!

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第96話 可愛いは正義

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 第一話と第二話の結羽視点。



 それではどうぞ!


side優也

 

 俺は旅行に行く準備を淡々と進めていた。

 と言っても簡単なテキストと携帯、財布位の軽いものだ。

 そもそもとしてそんなにジャラジャラと持って行かなきゃならないものは持ってないしな。

 

 俺は自室を見渡す。

 しかしどこを見渡しても生活感はあまりねぇなと思うような内装だ。

 あるのは柴野家の皆さんが用意してくれた勉強机と中央にある四角いテーブル、ベッド位なもので、後は本棚に使えそうだなと思った場所に本を詰め込んでる。ただそれだけの味気のない部屋だ。

「もっと色々あった方がいいのか?」

 以前にもっと欲を出せと言われたことがある。それってこういう事なんだろうな。

 

 これが欲を出さなかった結果である。

 金もバイトをしているが、本代と学費位にしか使わないので給料がどんどん溜まっていくばかりだ。

 

「これは問題かもしれない」

 いっその事、今回の旅行でパーッと使っちゃうか?

 旅行に行ったら色々とめぼしいものがあるかもしれないからそれもありだな。

 

 よし、

「準備出来たぞー」

 言いながらドアを開けると──

「痛っ!」

 可愛らしい悲鳴が聞こえてきた。

 今この家には俺と結羽しかいない。つまりこの悲鳴の出処は、

「結羽、何やってるんだ?」

 ドアの影で額を押えながら蹲る結羽だった。

 そして涙目になっている。

「どうしたんだ?」

「ドアに頭をぶつけました」

「なんで!?」

 結羽さんよ、どうしてそうなった! 普通ドアから離れておくでしょ。

 しかもこのドア外開きなんだし退けないと当たるだろ。

「……痛い」

 上目遣いで頭を擦りながら呟いてくる。

 グッ! 反則すぎるだろそれは!

 

「これでいいか?」

 俺は頭を撫でてやる。

 するとその瞬間、元気がいつもより数倍増しの結羽さんが現れた。

「えへへっ、じゃあ行こうか!」

 元気を取り戻した結羽さんは俺の手をグイグイと引っ張って家を出る。

 ちゃんと戸締りは完璧だったはずなので後は玄関の鍵を閉めて電車に乗るため駅に向かう。

 


 

「休日なのに意外と空いてたね」

「俺は人に酔うから満員電車は勘弁だし良かったわ」

 そう言えば何気に二人で出かけるのは初めてのような気がする。

 いつも俺達の他には白波さんが居たり悠真も居たな。

「えへへ。二人きり、だね」

 照れくさそうに言う結羽。

 顔をほんのりと赤く染めて嬉しそうにはにかむ。その仕草を見て俺まで顔が熱くなってきた。

 可愛すぎる。その仕草一つ一つが小動物みたいで可愛い。

 結羽は彼氏の贔屓目なしでも可愛いから余計にそう思ってしまうのかもしれない。

 

「優也はこっちの方は来たことある?」

「ん? ああ、父さんに連れられて一回は、でも随分前の事だからあんましよく覚えてないな」

「そうなんだ」

 口ぶりから察するに多分結羽は来たことがないのだろう。ワクワクという感情が手に取るように分かる。

 俺も楽しみだ。

 なんたって今回は俺と結羽、二人きりなんだからな。

 

 二人で向かい合って目的地につくまで景色を眺める。

 しかし結構遠くなのだ。つくまでまだまだ時間がかかる。

「そうだ、もうお昼時だし、お弁当食べちゃお?」

「弁当?」

「うん! じゃーん」

 そして結羽が出してきたのは駅で売っていた駅弁と言うやつだろう。

「私、駅弁って食べてみたかったんだよね」

 そして二つある駅弁の片方を俺に手渡してくる。

「ちょっと待ってろ、何円だっ──」

「ここは奢られておいてよ。いつものお礼なんだから」

「お礼?」

「結構私に良くしてくれるじゃない? そのお礼」

 いや、別に彼氏として当然のことをしているまでだが、確かに買ってくれた相手の気持ちを考えずに金を払おうとするのは良くなかったかもしれない。

「まぁ、そう言うことならありがたく頂くな」

「はい! 頂いちゃって下さい!」

 そして結羽と共に「いただきます」と言ってから割り箸を割り、まずゴマ塩ご飯を一口。

 うん。美味いな。やはりご飯に一番合うふりかけは俺はごま塩だと思う。あくまで個人の意見だ。

 そして唐揚げも一口。

 美味い、さすがだ。冷めても美味いってのは買った弁当の良いところだよな。

 

 だが俺の一番好きな唐揚げは結羽の唐揚げだ。

 結羽の唐揚げはサクッと中ジューシー、普通に金を取れるレベルだった。

 更に弁当にしてもその美味さが衰えることは決してない最強の唐揚げ。

 俺も偶に唐揚げを作るが、そこまで完璧な唐揚げなんて一生無理だろう。

「美味しいね」

「ああ、美味い」

 

 結羽は美味しそうに食べる。

 頬に米が着いているのがやはり子供っぽいなぁとそう思う。

「結羽」

「ん~?」

「頬、米ついてるぞ」

「ええっ!」

 そして結羽は自分の顔を触って確かめるが、避けて触ってるんじゃないかってくらい見つけれていない。

「ほらここ」

 そして俺は人差し指で結羽の頬から米粒を取り、そのまま食べる。

 すると結羽の顔は真っ赤に染まり、湯気が出始めた。沸騰している。

「も、もう! 優也ったらぁ~」

 頬を真っ赤に染めて膨らましながら怒ってる姿が可笑しくて可愛らしくて全然怖くない。

「ごめんってな? これやるから」

 そして卵焼きを一つつかんで差し出す。

「う、うん。あーん」

「あーん」

 口の中に卵焼きを入れてやる。

 嬉しそうに食べる結羽。やっぱり可愛いなぁとそう思うのだった。




 はい!第96話終了

 今回は優也視点の惚気回でしたね。

 優也視点だと結構素っ気なかったりするので惚気は珍しいのでは?

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第97話 古風の町

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 ついに旅行編スタート。

 珍しく優也と結羽の二人旅。

 果たしてこの旅はどんな事が待ち受けているのか。

 とりあえず結羽可愛い(優也視点)



 それではどうぞ!


side優也

 

「着いたぁ!」

 結羽は目的地に着き、電車から降りると伸びをしながら言った。

 俺も長い間座っていたので体の凝りが酷く、少し俺も体を伸ばす。

 移動疲れをしてしまった。ここまで長い間電車に乗るのは久しぶりかもしれない。

 

 ここは昔ながらの景色が残る町、江居谷(えいや)

 江戸時代の時代劇の中に入ったかのような町並み。

 雰囲気も良く、時代劇好きならば必ず一回は来てみた方が良いと……まぁ、評価に書いてあった。

 俺もこの町の事は名前は聞いていたが、実際着いて見てここまで時代を感じるとは思わなかった。

 しかもこれはそれ用にセットされた舞台とかではなく、本物の住宅街なのだ。

 この町の服は着物が主流で、まさに江戸時代だ。

 だが、一つ残念な点を上げるとするならば、なんでこんな近未来な駅を作ったんだ……という事くらいだろう。

 

「優也優也!」

 呼ばれたのでそっちを見てみると結羽は既に着物を着ていた。

 着替えるの早すぎ問題はとりあえず置いておいて、俺は結羽の着物姿を見る。

 結羽は小さいから少しブカブカ気味なのだが、袖が手を半分以上隠している。萌え袖だ。

 そして何より、似合う!! 可愛すぎる。

 赤色で花柄の着物を来ているのだが、それが結羽にベストマッチし、普段から可愛いと言うのに更にそれを引き立てている。

 そんな事を考えていると俺が黙ったことを不審に感じたのか首を傾げた。そんな動作も可愛すぎる。

 

 とりあえず言えることは俺の彼女、可愛すぎだろ。

「と言うかその着物、どこから調達してきた」

「あそこにレンタルがあったから借りてきちゃった。ほら、せっかくこういう雰囲気何だから雰囲気を楽しまないとね〜」

 ニコニコしてとても楽しそうな結羽。

 その顔を見た事で俺も思わず笑みが零れてしまう。

「ねえねえ優也も着てみない?」

「うーん。それもやぶさかではないが、俺は着てて似合うか? 俺はそんなタイプじゃないと思うんだが?」

「そうだね。だけどだからこそ気になる! 行くよ優也!」

「おい、ちょっと待て!」

 そんな俺の抗議も結羽は無視し、どんどん着物レンタル店に俺を押していく。

 本気でやめろと言うと目をうるうるさせて悲しそうな表情になる為強く断ることが出来ず、俺は着させられてしまった。

 

「はぁ……俺がこんなの着て似合うか?」

「似合う! 可愛い!」

「彼女にはカッコイイと言われたいんだけどな……はぁ……」

 俺は着物を着させられ、もう何度目かわからないほどのため息をついた。

 わかってる。俺には着物なり浴衣なりそういう服が一切似合わないってのはわかっている。

 昔七海に「お兄ちゃんは普段の服装の方が良いね」と言われたほどだ。

 直接似合ってないとな言われなかったが、七海がこういうことを言う時は似合っていないという時だ。

 

「むぅ……私という者が居ながら優也、他の女のことを考えてる」

「考えてないって」

 確かに女の子の事は考えていたが、妹だからセーフだよな?

「そんなに妹が好き?」

 なぜバレた。

 だけど俺はこれくらいでは取り乱さない。

「ん? まぁ家族だしな」

「お兄ちゃんって呼んだ方がいい?」

「え?」

 結羽が急に突拍子も無い事を言ってきたので俺は驚き変な声を出す。

 お兄ちゃん……だと? そんなので喜ぶのは漫画とか小説とかのキャラくらいなもんだろう。

 それに彼女にお兄ちゃんと呼ばせるのはなんか気が引ける。

「お兄ちゃん、どうしましたか?」

「グハッ」

 俺が脳をフル回転させていると急に結羽が顔をグイッと寄せてきてお兄ちゃんと呼んできた。

 未だに結羽のお兄ちゃんという言葉が木霊している。

 彼女にお兄ちゃんと呼ばせる背徳感と結羽のお兄ちゃんと呼んだ時の可愛さで震えが止まりません。

 

「変なお兄ちゃん」

「ゆ、結羽……っ! そのお兄ちゃんってのやめてくれ」

「フフっ。優也の弱点はっけーん」

「あっ!? お前!」

 すると一目散に結羽は笑いながら逃げて行った。

 しかし少し走ったところで着物を気慣れてないせいか躓いてころんでしまった。

 ドジだ。俺の彼女はドジっ子属性でも持っているのか?

「はぁ……それより疲れたな。早く宿のチェックインを済ませよう」

「はい。そうですね。このチケットによると古風の宿という旅館だそうです」

 古風か。って言うことはその宿の中も昔ながらの見た目になっているんだろうな。

 俺は地味に時代劇とか好きだから表には出さないものの、少しテンションが上がっていた。

 楽しみだ。

 


 

「ここが古風の宿ですね」

「へぇ〜確かに古風だな」

 俺達は地図を頼りに古風の宿まで来た。

 入口の上には大きく宿の風古と書いている。

 これは昔ながらの表記で読む時は古風の宿と逆から読む。

 だからここで間違いないだろう。

 

 入口に大きい窓があるため、中の様子が伺えるが、かなり雰囲気良さげだ。ますます楽しみになる。

「ワクワクが止まらないね!」

 結羽は俺とは違ってオープンで楽しんでいる。

 俺もこれくらいオープンでさらけ出せれたら楽なんだろうな。

 だけどそれは俺の性格が邪魔をしてしまっている。

 

「んじゃ早速チェックインして荷物置いてからでも観光しに行くか」

「あれ? 優也、さっきからぶっきらぼうだけど」

「実は楽しんでたり?」

「まぁな」

「み、認めた!?」

 そんな会話をしながら俺らは受付まで向かった。




 はい!第97話終了

 遂に到着、旅行編の舞台である江居谷です。

 昔ながらの街並みに二人は大興奮です。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第98話 婚約指輪

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 優也と結羽が来たのは古風の街、江居谷。

 そこは時代劇好きにはたまらない場所だった。



 それではどうぞ!


side優也

 

「凄かったね〜」

「まぁあれはかなり凄かったな」

 俺達は宿のチェックインを済ませて再び観光に戻った。

 宿の中はとても感動すら覚える内装だった。

 昔風で囲炉裏があり、部屋には昔ながらの掛け軸とかもめちゃくちゃ掛けてあった。

 しかし一つ問題がある。

 このペアチケット、二枚で一部屋と言う換算なので俺と結羽は同じ部屋になったという事だ。

 まぁ付き合ってるんだし別にいいのかもしれないが、初めて結羽と同じ部屋で寝るという事から既に緊張してきている。

 

 しかし結羽はと言うとそんな俺の気持ちなんて知るかとばかりに興奮気味で町を見ている。

 俺達も着物を着ている為、俺たちまで時代劇の世界に入り込んだみたいだ。

 この町だけ時代が過去だもんな。

「ほのおはんじゅうおいひい」

「口に物入れながら喋んな」

 結羽は既にエンジョイしており、屋台とか見つけたら速攻で買いに行って買い食いを繰り返していた。

 よくそんなに食えるなと感心していると結羽曰く「デザートは別腹」らしい。

 明らかにデザート以外も含まれていたような。

「ん〜。最高の町だね」

「ああ」

 饅頭を食い終わった結羽は次は焼き鳥を取り出してベンチに腰掛け食べ始める。

 いったいどんだけ食うつもりだよ。

 この町の名物は飯だけじゃないんだがさっきから飯ばかりしか廻ってないような気がする。

 色々なゲームもあるってのにそれら全部無視して食べ物屋廻ってんだから驚きだ。

 しかも俺は一切手を貸していない。全て結羽が平らげているのだ。

「そんなに食って腹壊すなよ」

 そう言ってから俺は近くの店に行く。

「おっちゃん。これ一回」

 俺が来たのは射的だ。

 祭りの定番だが、たまにはこういうのもありだろう。

 そして俺は射的の代金を払ってコルク銃を受け取る。

 

 何を撃とうか?

 とりあえず適当に入ってきたはいいものの、特にどれ狙うとかは決めていないのだ。

 ラインナップを見てみる。

 どれもこれも俺が持っていても仕方が無いようなものばかりだ。

「んじゃあ結羽にでもやるかな?」

 片目を閉じて慎重に照準を定めて行く。

 こういうのは焦らないのが一番だ。

 心を穏やかにして落ち着いて慎重に合わせる。

「ここだ!」

 俺はコルク銃を撃った。

 するとコルクは飛び出し、真っ直ぐに飛んでいく。

 その真っ直ぐ飛んで行ったコルクはある景品にクリーンヒット。

 綺麗に落ちた。

「いよっしゃ」

「これ、景品の『指輪』です」

 そう言って店員さんは俺に指輪を箱に入れて手渡してきた。

 この指輪はとても綺麗で女の子なら喜んでくれるかもしれない。

 結羽には何度かプレゼントしている為どういうものなら喜ぶか分かっているが、キラキラしたものを渡すと喜ぶ。

 俺の彼女はカラスかなにかかな?

 

「兄ちゃん凄いねぇ。これを一発で落とすなんて」

「はは、どうも」

 俺はそれだけ言って結羽の元へ戻る。

 結羽は俺が射的をやっている間に焼き鳥を食べ終え、アイスを食っていた。

 この時期にアイスって少し寒くないのかな? とそう思うが本人が楽しそうなのでいいことにする。

「結羽、プレゼントだ」

 俺はそう言って指輪を入れ物ごと手渡す。

 すると結羽は不思議そうにしながらも箱を受け取る。

「これは?」

「まぁ開けてみろ」

 結羽は俺に許可を貰ってから恐る恐る箱を開けた。

 そしてその中身である指輪を見た瞬間、目がキラキラと輝き出した。

 射的で手に入れたとしても指輪は指輪だ。

 指輪を手にして嬉しそうに微笑む。

「ありがとう優也。もしかして婚約指輪?」

 ニヤニヤと俺をからかう気満々の様な結羽。

 そこら辺はちゃんと考えていなかったな。

 というか少しはニヤつきは抑えたらどうなんだ? 直ぐにからかいだってバレてしまうぞ?

 だがそこが結羽の可愛いところである。

 隠し事は苦手だが、可愛いからOKだ。

 

 だが、ここで恥ずかしがってやるのも癪に障るな。

 ならやってやろうか。堂々と言ってやろう。

「ああ、婚約指輪だ。結羽は俺のもんだからな。その印だ。絶対に無くすなよ」

 その瞬間、結羽の顔が火が出そうな位に真っ赤になって俯いてしまった。

 カウンター成功だ。

 俺だからまだポーカーフェイスが出来てるだけで、結羽が婚約指輪とか行ってきたから多分俺も少しは顔が赤くなっているだろう。

「も、もう……優也はいつも恥ずかしい事を言って……」

「安心しろ。結婚指輪はもっと立派なのをムグムグ」

 俺はあとすこしで言い終わるところで口を塞がれてしまった。

 多分更に顔から湯気が出ているところを見ると結婚指輪に反応して恥ずかしくなってしまったのだろう。

「結婚だなんてまだ早いよぉ」

 真っ赤にしてはずかしそうにしながらもえへえへと嬉しそうに笑いを零していた。

 でもまぁ、喜んで貰えるならとった甲斐があった。

 

 さて、そろそろ結羽も食べ終わるし俺たちは移動を始めるか。

 そう思って俺は飲み物を一口飲み、立ち上がった。

 結羽も食べきってからゴミは自分で持ってきた袋に詰めて移動の準備をしだした。

 そして準備も終わり今から移動する、その時だった。

「やっほー久しぶりだね二人とも」

 背後から声をかけられ、肩を叩かれた。




 はい!第98話終了

 結羽の食欲は留まることを知らない。

 そして久しぶりのあの人です!

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第99話 愛し合う二人〜すれ違う思考〜

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 江居谷に来た優也と結羽は観光を楽しむことにした。

 屋台を回ったり屋台を回ったり屋台を回ったり。

 ほとんど屋台巡りしかしていないが、たまたま寄った射的で優也は結羽に指輪をプレゼント。

 そこに一人の影が……。

「やっほー。久しぶりだね」



 それではどうぞ!


side優也

 

 背後からの声に驚き、弾かれるように振り返った。

 そして振り返った俺達は振り返った先を見て驚きを隠せなかった。

 なぜならそこにはご無沙汰の人物が居たからだ。

「し、白波さん!?」

「やっほー元気?」

 そこに居たのは着物を来て扇子を持っている白波 真依本人だったのだ。

 白波さんはあれだけお金持ちで生徒会長をやってたと言う実績もあり、随分と勝ち組生活を送っていたはずだが、今では一般企業の一般社員をやってるから忙しいと思っていたのでまさかこんな所で会うことになるとは思いもしなかった。

 

 しかし似合う。

 白波さんはなんと言うか和が似合う人で、扇子が妙に溶け込んでいる。

 和服もとてもとても白波さんの為に作られたかのように一体感を(かも)し出している。

「し、白波さん……おっきい

 隣に居る結羽が自分の胸を触りながら落ち込んでいるのが横目で見える。

 そういやその体型を気にしてたっけか。

しかしまずい展開だよね。白波さんが出てくることによってあのモンスターバディと私の体が比較されてしまう。そうなると私の小さい体では満足いかず、白波さんの体を求めてしまう可能性がある。まさか白波さんも優也の事を? つまり私から優也を奪いに来たって言うことだよね? 私から奪うために自身のモンスターバディを使って『し、白波さん。あ、当たってます……』『ふふっ、当ててるのよ? どう、直接触ってみたくない?』的な展開も有り得るわけで……あれ? 私大ピンチ!? あれ? あれれ? どう考えても勝ち目が見つからない。そりゃ優也も男の子だもんね誘惑されたらコロッと──

「おい、おーい。結羽さん?」

 結羽が急にぼーっとした瞳でぶつぶつと何かを呟き始めたもので心配になって目の前で手をヒラヒラと動かすものの、全く反応がない。

 俺、結羽に嫌われるようなことしたかな?

 もしそうだとしたら俺、この場で泣き崩れる自信がある。

 結羽に嫌われたら俺はもうどうしたらいいんだよ。

 そんなことを考えると涙が出そうになった。俺、信じているからな。

「じー」

 いつの間にか結羽は俺のことをじっと見ていた。

「なんだ?」

「いえ、私信じてますから」

 何をぉぉぉぉっ!?

 急に信じているとだけ告げられ俺は驚く。

 何をだよ何を信じてるんだよ。あれか? 『わかってますよね。私の言うことを聞いてくれなきゃ別れ話も浮かんで来ますよ』とかそういう感じか? 喜んでパシらせて頂きます! じゃなくてだな。

 これは本当にピンチかもしれない。ここでの俺の一言次第で今後の俺達の付き合いが変わってしまうかもしれない。

「いつまでもついて行きますお嬢様」

 これで俺が結羽から離れることは絶対に無いっていう事は伝えることが出来ただろう。

(な、なんだってぇぇっ!? お嬢様って言った? つまりお嬢様気質である白波さんの事が好きだから従者的口調になっちゃったってこと!? これは本格的に私大ピンチだよ! 優也が……優也が白波さんの所に行っちゃう! それだけは阻止しなくちゃならない。白波さんとは違って私の方が優也を幸せに出来るとアピールしなくちゃ)

「白波さん」

「な、何? 顔が怖いよ結羽ちゃん。リラックスリラックス」

「私、負けませんから」

 何!? なんで今怖い顔をしながら結羽は白波さんに宣戦布告をした!?

 しかも若干ガルルと唸ってて可愛い──じゃなくてこれはどういう事だ?

 まさか、『優也は私の奴隷なんです……わかってますよね? 私の所有物に手を出したら』とかそんな感じか!? って俺は彼氏から奴隷になってるんだが!?

 つまり『この世には優也より良い男なんて山ほど居るんだからあんたは奴隷で十分』という事なのかァァァっ!?

 もしそうだとしたら恋人だと思っていたのは俺だけだったのか!? あの時あんなに喜んでくれたじゃないか!

 

 もう本格的に涙が出そう。

 こうなったら奴隷から恋人の座まで戻る為にもアピールしなくてはならない。

 この旅行で確実に好感度を爆上げして恋人に戻ってみせる。

「結羽、俺頑張るからな」

「何をぉぉぉっ!?」

(ま、まさか『結羽、俺さ白波さんの事が好きだから頑張るよ』っ言う意味なの!? 私と言う恋人が居ながら優也は白波さんに乗り換える気!? これは本当にやばいよ。優也の好感度をこの旅行で上げなければ白波さんとゴールインしてしまうかもしれない! それだけは確実に阻止しなくてはならない! せっかく優也と付き合えてデートの真っ最中だと言うのにこんなピンチが襲ってくるなんて思いもしなかった。白波さん、私と違って胸も大きくてスタイル良いからかなりの強敵。だけど頑張らないと優也を引き止めないと優也が白波さんに取られ──はっ!? まさか白波さんがこの町に来た目的ってそれだったり!? 『結羽、優也は私が頂いていくわ』。怪盗S〜あなたの恋人を頂きます〜ってやかましい!)

 

 とりあえず俺が結羽の恋人でありたいと言う意思は伝わっただろう。

 さっきから顔を赤くして慌てふためいている。そんな姿も可愛い。

 こんな姿をずっと見ていくためにも頑張らなくてはな。

「うーん……この二人の頭の中の内容が食い違ってる気が」

 ボソリと呟いた白波さんだったが俺達二人の耳には入って来なかった。




 はい!第99話終了

 いやぁ〜二人の思考がかなりすれ違ってますね。
 とりあえず二人とも愛し合っていて幸せそうで良いですね。

 そして次回で第100話目です! ついにここまで来たんですね。

 まぁ100話だからって特別な事はありませんが。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第100話 馴れ初め語り

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 優也視点では結羽に優也が奴隷扱いされ、結羽視点では優也が真依に取られると考えた。



 それではどうぞ!


side優也

 

 とりあえず何とか俺は結羽の事を本気で愛しているってことを証明しなければならない。

 

 このまま結羽に一生奴隷扱いされて、さらに捨てられた日にはもう立ち直れなくなってしまうだろう。

 その為にもここで頑張らなくては。

 

「そ、それよりも!」

 俺と結羽が心理戦を繰り広げていると、白波さんはこの空気を感じ取ったみたいで、空気を変える為に話題転換をする。

「お二人はデート?」

「はい!」

 白波さんの質問に結羽は秒で答える。

 

 その光景を見て俺はホッとする。デートだと言ってくれるってことは、まだ捨てられないかもしれない。

 と言うか今ナチュラルに答えたが白波さんに限らないけど、露木ちゃんとあつし以外、俺達の交際を知らないんじゃなかったっけ?

 そんな事を思いながら白波さんを見ると、

「…………」

 絶句していた。持っていた扇子を地面に落として白目を剥いていた。

 ってあれ気絶してね?

 

 あまりの衝撃的事実に白波さんは気を失ってしまった。

「はぁ、結羽。あんまり年上の人を驚かせるなよ。ショック死したらどうするんだ」

 言い終わった直後、俺にハリセンが落ちてきた。

 若干痛い。

「あたしゃ年寄りかい!」

 久しぶりに白波さんが突っ込んだな。

 でも今の白波さんは本当にショック死しかねないくらいに驚いていたぞ。

 

「それにしても驚いたよ〜。まさか二人が知らないうちに付き合っていたなんて」

「はい。まさか私も本当に優也と付き合えるなんて夢にも思いませんでした。今でも夢のようで……えへへ……え、へへ」

 最初はえへへと嬉しそうに笑うも、だんだんと元気が無くなっていく結羽。

 数秒前まで嬉しそうだったのに急に落ち込むなんて心配になるくらいの速度だ。

 今、結羽の心の中で何があったんだろうか?

 

白波さんと仲良さげです。やっぱり優也は胸の大きい人が良いんですか。そうですか。やっぱりそっちに気持ちが傾いちゃうんですね。そうなんですね。でも私、信じていますから。優也が私のような体型に目覚めることを

 なんか結羽からとても圧を感じる。

 何やら負のオーラを纏っている。そしてなんか見える。結羽の後ろに黒いモヤモヤが浮かび上がってるのが見えるよ!

 結羽さん怖い。俺、なんかした? 睨まれるようなこと何かした?

 

「うぅ、眩しいわ。これがカップルの輝きなのね!?」

 いや、一切の光もありませんからね!? 俺に見えるのは一寸先も見えない闇一色ですから。

 しかし以前にも結羽が負のオーラを出すことはあったけど、ここまでの威圧感は初めてかもしれない。

 お、押しつぶされそうだ。

 

 俺が結羽の圧に押し潰されそうになっている横で白波さんはケラケラと……。能天気でありたい人生だった。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 俺達はとりあえず適当に町をぶらぶらして観光することになった。

 まぁ、デートになって欲しかったものの、隣に白波さんが居るのでこれはデートとは呼べないだろう。

 そして今横並びに歩いてるんだが、左に結羽、右に白波さんと言うポジションな為、結羽からのもう少し離れろやとでも言いたげな視線がとても刺さる。

 やめろ、その試験は俺に効く。

 

「それにしてもあの二人がねぇ。どっちから告白したの?」

「はい。結羽からですかね。以前、白波さんの別荘に大人数で泊まりに行ったじゃないですか。その終わりがけに」

 すると本日二回目の絶句モードに入る白波さん。

 そりゃ驚きだろうな。まさかあの時だなんて思ってもみなかっただろうな。

 

「どんな言葉で彼をオトしたのかしら?」

「えーっと……普通に優也が好きって……でも酷いんですよ!? 優也ってばまたlikeで捉えたんですよ!」

 ごめんね!? 鈍くてごめんね!?

 でもでもさ? 急に好きって言われても直ぐに脳の処理が追いつくわけないでしょう。

 ならlikeで捉えても仕方が――

「ギルティ!」

 俺に白波裁判長から有罪が言い渡された。

 それを聞いて結羽も「私もそう思うよ」と言いたげに何回も首を縦に振る。

 

「でもさ、それならどうやって気づかせたの?」

「え、えーっと……そのぉ」

 モジモジとして言い淀む結羽。

 その姿を見て白波さんは「あらまぁ」とニヤニヤして楽しんでいるご様子

 今でも結羽が告白してくれた時のことは鮮明に覚えている。

 バルコニーで告白されて、俺を気づかせるために、

「確かキスしてきたよな。頬に軽く」

 俺が言うと結羽の顔は耳まで真っ赤になり、顔を手で覆って隠してしまった。

「へぇ、結羽ちゃんだいたーん。その後……したの?」

「何をですか……。何もしてませんよ。第一、その時すぐには答え出せませんでしたから」

 俺がそう答えるとバチィィンッ。さっきよりも強めにハリセンで頭を叩かれてしまった。

 

「あなたって人は……」

 本気で呆れている様子。

 だけどこういうことって軽々しく決めていいものでは無いと思う。

 しっかりと考えを纏めてからだなぁ。

「でもその後、露木ちゃんに告白されて嬉しそうだったよね」

「嬉しそうになんてしてないわ! ってなんでお前がその事を知ってる!」

「ギクッ」

 確かあの時、結羽と入れ替わりに露木ちゃんが来たはずだから知らないはずだ。

 なのに知っていたということは……。

 

「お前、見てた……って逃げんな!」

 俺は逃げるように走り去った結羽を追いかけた。

 その光景は傍から見たら、

 

「リア充爆発しろ」

 普段温厚な白波さんのブラックな部分が出た珍しい瞬間だった。




 はい!第100話終了

 今回は無理やり書きなぐった感半端ないですね。記念すべき100話なのに。

 ですが、これからも頑張っていきますよ!

 それから、僕の他の小説も読んでいただけると幸いです。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第101話 思いを繋ぐ景色〜結羽〜

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 結羽が告白してきた流れを説明した。



 それではどうぞ!


 優也は逃げる結羽を捕まえて結羽が優也に告白した後何をしていたのかを聞いた。

 


 

side結羽

 

 告白しちゃった告白しちゃった告白しちゃったっ!!

 

 わ、私ちゃんと喋れてたよね!? テンパったりしてないよね!?

 考えれば考えるほど不安になっていくが、胸は不安とは違い妙な満足感で満たれていた。

 

 今まで告白出来なかったが、やっと告白出来たからだろう。まだ返事も貰ってないのにこんなにもドキドキしているのに満足さていた。

「優也にOKを貰った訳でも無いのにこんな気持ち、おかしいよね?」

 手鏡を取り出す。

 そこに映し出されていたのは顔を上気させてニコニコしている私の顔だった。

 

「告白しただけなのに……もしかしたら振られるかもしれないのに」

 心が充実してしまっている。

 優也の驚いた表情、可愛かったな〜。いきなりキスしちゃったけど引かれてないかな?

 でもキス、ほっぺただけどキスしちゃったんだよね? えへへ。

 

「後は優也が私の事をどう思っているかだけど……」

 多分普段の優也を見て、悪い風には思われてはいないと思うんだけど……。

 ちょっと心配。優也の周りには星野さん、如月さん、露木ちゃん等と可愛い女の子がいっぱい。

 星野さんは清楚系で優也の好みに合いそうだし、如月さんはバイト仲間ってだけだけど妙に仲良いし、露木ちゃんは後輩なのにしっかりしてるって言うか、私より大人っぽいし、可愛いし……。

 

 あれ? これって結構競争率高いよね?

「心配だなぁ」

 少し考えてみて不安になってしまった。やっぱりあの場で答えを聞いておくべきだったと今更になって後悔してくる。

 

 その時、視界の端で露木ちゃんが優也の居るバルコニーに入っていくのが見えた。

 それが見えると私は物凄い焦燥感に駆られた。もしかしたら露木ちゃんが優也に告白するかもしれない。

 露木ちゃんは可愛いし、優也の最近のお気に入りの子。告白されたら断らないかもしれない。

 

 そう思った時には既に隠れて露木ちゃんと優也が話しているのを見ていた。

 

「結羽先輩に告白されたんですね」

 見られていた!?

 もしかして私がした行動全部見られていたんじゃ!? とても恥ずかしすぎて思わず顔を手で隠してしまう。

「ちなみに返事はどうするんですか?」

 ドキッとした。こんな会話を聞いてしまっている事に罪悪感を覚えているものの、聞きたくてドキドキが止まらない。

 

 ゴクリと生唾を飲む。

 優也の答えをこうやって盗み聞いて、自分だけが満足しようとして、卑怯者だよね。

 やっぱり振られるのが怖いよ……。特に面と向かって言われるのは……。

 だけど優也の回答は、

「まださっぱりだ」

 どっち着かずの回答だった。

 

 でも正直安心してしまっている私が居る。

 ここで「断ろうかなって」とか言われたら泣き崩れる自信があった。だけど回答は実に優也らしいもので、何も回答が無い方が安心出来た。

 でもそれくらいの会話なら良いかなと思って自室に帰ろうとしたその時だった。

「なら私にもチャンスがあるって事ですね」

 その言葉は鮮明に私の耳まで届いてきた。

 そして私の自室に向いていた足が止まる。今、とてつもなく嫌な予感がした。

 その為、私は元のポジションへと戻った。そこで聞こえてきたのは、

 

「私が素っ気ない態度を取ってもちゃんと私と向き合ってくれるところ。皆が楽しそうにしてる時の優しい顔。そして、ピンチになったら助けてくれる所はヒーローみたいです。私にとってはあなたはヒーローなんです。そんなあなたが好きです」

 

 告白だった。

 嫌な予感がした事が現実の物となった。

 

 優也はどうにも露木ちゃんが可愛い後輩で可愛くて仕方が無いみたいだけど告白されたらそれが恋愛感情へと変化しないとも限らない。

 私の目には自然と涙が溜まって来ていた。

「私は先輩の事が好きです」

 繰り返した。露木ちゃんの熱心な告白。

 優也は結構押しに弱い所がある。だからあれ程熱心にされたら幾ら唐変木(とうへんぼく)な優也でもコロッといっちゃうかも……。

 

「な、なんでなんだ?」

 優也は理由を聞いた。だけど私にはその理由が大体想像出来てしまっていた。

 だって私もそれでもっと好きになっちゃったんだから。

「最初は嫌いでした。ですが、助けられてからはカッコイイって思うようになってしまって」

 えへへと笑う露木ちゃん。

 やっぱり同じだった。露木ちゃんも女の子だった。あんなにカッコイイ所を見せられて惚れるなって言う方が無理がある。

 

 そこで優也は口を開いた。

「お前さぁ……」

「ん?」

「チョロくね?」

 あ、優也のいつもの悪い癖だ。

 ただチョロいんじゃなくて女の子を(たぶら)かす優也が悪いんだもん。私達は別に間違っていないもん!

 

「女の子は皆私みたいに助けられたらトキメクものなんです!」

 そうだそうだ! と心の中で同調する。

 と言うかトキメかない女の子なんて認めないよ! うん!

 

「じっくり考えてください」

 そう言って露木ちゃんも私と同じく返事を貰わないで去って行った。

 一日に二人も告白してくるなんて優也はモテモテだなぁ。

 ってなんか露木ちゃんに告白された時だけなんか嬉しそうに頬を緩めていた気が……。

 これは油断出来ない。全力アピールしないと。

 


 

「とまぁ、こんな感じ?」

「……死にたい。俺、もう死んでいいかな?」

「死ぬ時は一緒だよ?」

「こんな時にそんな怖いこと言わんでいい!」




 はい!第101話終了

 今回は思いを繋ぐ景色パート3の結羽視点バージョンです。

 次回からは旅行を進めていきますので安心してください。

 それとそろそろ最終回にしようかなと思い始めてきているので一ヶ月二ヶ月程度では終わりませんが来年には恐らく最終回を迎えるかと思います。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第102話 距離感

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 優也が、露木に告白されていたのがバレた。



 それではどうぞ!


side優也

 

「んー。おいひっ」

 俺達はあの夜の事を聞いた後、更に歩いて観光を進めていた。

 と言っても殆どは食べてばっかりなのだが、結羽はずっと食べている為、そんなに食って腹壊さないか心配で堪らない。

 現在進行形で結羽が食べているのはかき氷。

 今の季節は秋。昼間とはいえ、少し風がスースーする季節なのでそんな物を食ってて寒くないのかなと少し心配になる。

 

「しかし、結羽ちゃんはよく食べるねぇ。どうしたの?」

「何がですか?」

「だって結羽ちゃんやけ食いじゃないの?」

 

 ビクッ。一瞬だけピタっと食べるのが止まり、その後一気にバクバクとかき氷を食べてしまった。

 かき氷をかき込んだ事がある人は分かるだろうけど、かき氷をそんなに一気に食べたら当然頭が痛くなる。実際にかき込んだ後、頭を抑えてる人が目の前に居る。

 

 仕方ねぇなと、俺は手に持ったキンキンに冷えた缶ジュースを結羽の額に軽く当てた。

 すると、結羽は直ぐに頭の痛みが治った様でこっちを見てきた。一瞬で治った事が不思議だったんだろう。まぁ、これは豆知識なんだが、

 

「かき氷等の冷たい物を食べて頭痛がしてくるのは脳が冷たさを痛みと誤認しているからなんだよ。そこで額に冷たい物を当てることでその誤認を正しく認識させる事が出来る。だから治るんだ」

 

 これは本当に一気に楽になるから頭が冷たさで痛くなった時はやってみる事をオススメする。

 

 それから俺は手に持った缶ジュースを結羽に手渡した。

 少し喉乾いからジュースでも買ってこようかなと一時離れ、最寄りの自販機から帰ってきたら結羽は既にかき氷を食べていた。

 シロップが赤色なのを見るとあれはストロベリーと言った所だろう。近くにかき氷屋があったのが見えた。多分あそこで買ったんだな。

 

「優也君ってそう言う豆知識多いよね」

「あ、私も思ってました」

 

 以前、テレビで見ただけなんだが役に立って良かった。

 ちなみに俺の知識は昔見たテレビから来てる事が多い。最近はニュースばかり見てるからそう言うのは入って来ないが、バライティー番組なんかでよくそう言うのをやってるから、そう言う知識を得たいならバライティーを見ることをオススメする。

 本とか読んでもそう言うのは得られる。だから雑学本とか普段はあんまり好まない人でも読んでみると意外と面白かったりするかもしれない。

 

「でもありがとう。お陰で痛みが一瞬で無くなったよ!」

「ん? ああ」

「まぁ、優也君の豆知識はそこまでで、結羽ちゃん。何か悩みがあるの? 優也君が求めてくれないとか?」

 

 その瞬間、辺りが凍りついたような気がした。心做しか寒さまで感じる。

 

「ありゃ、図星?」

「ち、ちちち、違うんです! 優也はいつも私に良くしてくれますし、この前は優也がテレビを見てる時にさり気なく優也の膝に座ったら、何も言わずに優しく撫でてくれました!」

「それだけ?」

「あぅぅ〜」

 

 どうやら結羽は弁明をしようとしているらしいが、すればするほどドツボにはまって行く。

 と言うか求めるってなんだ? 俺自身そう言うのに疎いから俺なりに結羽を愛でてみたんだが、ダメだったかな?

 

「えっとですね? 優也にそういう事をして貰えるのは嬉しいです。嬉しいんですがもう物足りないって言うか……」

「もしかして……キス?」

「……〜〜っ!」

 

 顔を真っ赤にして俯く結羽。白波さんはそれを皇帝と受け取ったのか俺の方に向き直ってビシッと指を指してきた。

 

「キスくらいちゃんとしてあげないとダメでしょ!」

「え、でも俺一人の意見だけだと……無理矢理するのは違うと思うし」

「なぁに女々しいこと言ってるのよ。女の子って無理矢理される事に興奮したりするのよ」

 

 え? そうなの!?

 でも初めての恋人だし、傷つけたくないと思って撫でるくらいしかしてこなかったんだが……もうちょっと攻めた方がいいのか?

 でもなぁ……。

 そんな感じで悩んでいると白波さんはしびれを切らした見たいで、耳もとでこんなことを言ってきた。

 

「今日の夜、押し倒して強引に奪っちゃいましょう?」

 

 ドキッとした。

 結羽を押し倒してキス? それを考えると顔が上気していくのが分かった。顔が熱い。

 そんな俺の姿を見てか、白波さんはニヤニヤし始めた。なので顔を見られるのが恥ずかしくなった俺は缶ジュースを開けて飲むふりをして顔を隠す。

 

「優也君が恥ずかしがるのって珍しいよねぇ〜」

 

 俺とした事が少し取り乱してしまった。だけど俺達は俺達のペースでいいんだよ。

 結羽がまだ心の準備が出来てないって言うなら何もしないし、したいなら俺もしたいけどさ。

 

 あと、付き合い始める前からあーんとか普通にやっていたから距離感を掴むのが難しいってのもあるな。

 俺と結羽は昔一度あっただけで昔からの幼馴染って訳じゃないけど幼馴染同士で付き合った人達の気持ちが少し分かったような気がする。

 

 って言うか付き合うって言ったってどうイチャイチャするのが正解なのかが分からない。

 だからとりあえず事ある事に撫でてみたんだが、ダメだったか。

 

「私は優也に撫でられると幸せな気分になれるので今ので満足……して、ます」

 

 どんどん声が小さくなっていく結羽。

 

「優也君!!」

「どうしたらいいんだ!?」




 はい!第102話終了

 優也の苦悩。

 男子側って怖いんですよね。強引に迫ると傷つけてしまわないかと。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第103話 羞恥よりも独占欲が勝ってしまうようです

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 優也は結羽とイチャイチャする方法に悩んでいた。



 それではどうぞ!


side優也

 

 結局あの後、何事も無く夕方になったので俺達は解散。俺と結羽は旅館に戻る。

 

 旅館に戻ると結羽は部屋の中央に置かれているテーブルの上の煎餅を食べながらテレビを見始めた。

 何やら結羽は気にしていない様子だが俺はさっきの事をまだ引き摺っていた。

 俺は恋愛初心者。だから距離感を掴むのも難しいし、だいぶ結羽のしたい事を察せるようになったがそれでもまだ分からないことは多々ある。

 

「はぁ……どうしたもんかねぇ」

 

 困ったらとりあえず頭を撫でるんだが、それだけじゃ最近は物足りなさそうだ。

 かと言ってキスするのはな……。結羽がまだしたくないって思ってた時のことを考えると少し臆病になってしまう。

 

 その時だった。

 

 プルルルプルルル。携帯の着信音が鳴り響いた。番号を見ると直ぐに誰か分かったので少しため息をついてから着信ボタンを押す。

 

「あー。ただいまこの電話番号は――」

『お兄ちゃんっ!!!!』

 

 キーン。耳がぶっ壊れるのではないかと思うほどの大きな声が携帯から聞こえてきた。少し耳鳴りがして耳が痛いがだるいなぁと思いながら電話の方へ意識を向ける。

 まぁ、お兄ちゃんって呼んできたところから察せると思うが相手は萌未だ。何やら焦ったご様子で話しかけて来ている。

 

「どうしたんだよ……」

『お、お兄ちゃんの家が……家が……っ! 売家になってます!』

 

 情報伝達が遅いなぁ。今の世の中って情報化社会じゃなかったっけ? 萌未が乗り遅れてんぞ。

 ってか今頃なのか? 俺の家が売家になったのは結構前だ。

 

『まさかお兄ちゃん……転校を?』

 

 萌未の涙ぐんだ声。受話器越しでも分かる萌未の悲しそうな声。恐らく本当に泣いているのだろう。

 あいつ、受験勉強で縛られている間もかなりの頻度で俺に会いたいと泣いていたらしい。だが、俺にあってしまうと歯止めが効かなくなってしまうのでそれは酒田さんが止めてくれたらしい。ナイス酒田さん。

 

 だが、このままにしておく訳にもいかないだろう。どういう経緯で今頃知ったのかは知らないがあいつの事だ。自分も転校するとか言い出しかねない。

 

「あー。まぁ、別の家に移り住んだってだけで市内からは出てねぇよ」

『ホント!? 本当に居るの!?』

「ああ、居る。居るからそんなに声を荒らげて確認せんでいい」

 

 耳が痛いから。その声、凄い耳に響くからちょっと落ち着いてくれると助かるな!?

 すると電話越しに安堵したようなため息が聞こえて来たので落ち着いたんだなと俺も鼓膜が破裂せずに済むと思って安心する。

 

「んで? それだけか?」

『はい! 心配になってしまって……ダメですか?』

「いや、別にダメってことは無いが」

『ならいいですよね!』

 

 何がいいのか知らんが萌未が安心してくれたようでよかった。

 いつも結構雑に扱っているが俺にとっては大切な従妹だ。出来るだけ不安は無くしてあげたいし、相談事や困ったことがあったらどんどんと聞いてあげたいと思っている。

 だからそういう不安を抱いての電話は実は大歓迎だったりする。

 

『お兄ちゃんは何だかんだ言って優しいですよね。その優しさに免じて私が彼女居ないお兄ちゃんの彼女になってあげてもいいですよ?』

「…………」

 

 そういえば萌未には俺と結羽が付き合った事を言ってなかったっけ。って事は萌未の中では今でも俺は年齢=彼女居ない歴ってことになっている訳か。だからそんな俺の為に彼女になるって言ったのか。なんて優しいんだ。だが、俺には既に彼女が居るからな。

 隠すか隠さないか……どうしたもんかねぇ。そう思いながら上を向くとそこには顔があった。紛れもない俺の彼女の顔だ。

 若干頬を膨らませて不機嫌なご様子だ。しかもまさか上から覗き込んでくるとは思わなかった。

 

「……優也。代わって」

「え?」

「代わって」

 

 どんどんと低いトーンになって行く結羽に俺は恐怖し、光の速さで手に持っていた携帯を渡した。偶に怖いんだよな……。多分あの様子だと相手が誰だか分かっているようだが、結羽は萌未と話して何する気なんだ?

 携帯を受け取ると結羽は耳に当てながら俺に話し声が聞こえない所まで歩いて行った。もしかして俺に聞かれたくない話でもあんのかな? なら仕方が無い。適当に本でも出して話終わるまで待ってようかな。

 


 

side結羽

 

「どうも。今代わらせて頂いた優也の彼女(・・)の柴野 結羽です」

『あ、結羽さんですか……って彼女!?』

 

 私は優也から携帯を受け取るとまず牽制の一言を放った。萌未ちゃんが優也の事を兄や従兄として見てるんじゃなくて一人の男(・・・・)として見ている事は一目見れば分かる。ここは彼女アピールをしておかないといつ私の優也が盗まれるか分かったものじゃない。

 

「そうだよー。私は優也の彼女。そう、彼女。女の人って意味じゃなく恋人的な意味の彼女だよ?」

 

 私は彼女と言う言葉を強調する為にあえて何度も繰り返し彼女と言う言葉を発する。

 普段は恥ずかしいはずなのに今はスラスラと言葉が出てくる。多分羞恥より独占欲の方が勝ってるんだろう。

 私、萌未ちゃんと優也が会話をしているって事が話の流れから分かって嫉妬しちゃってたな。それから盗み聞きしてたら何気に萌未ちゃん、優也に迫ってたし。これはもう許せないよね。

 

「んで、そんな私の彼氏(・・・・)に何か用?」

『い、いえ……』

「そうなの? それじゃ私の優也(・・・・)に代わるからね」

 

 満足した。これだけ釘を刺せば何も言えないでしょう。それといつも恥ずかしくて言えなかった分を言えたからモヤモヤしてたのがだいぶ晴らせた。

 

 そんな感じで私はウキウキ気分で優也に携帯を返した。

 


 

side優也

 

「あー。代わったぞ」

『お兄ちゃん。お幸せにね?』

 

 若干涙ぐんで震えた声で祝ってくる萌未。多分結羽が何か言ったんだろう。その声は若干恐怖に染まっている様な気がする。本当に何言ったんだよ。

 

「まぁ、結羽に何言われたか知らんがあんまり思い詰めんようにな」

『思い詰めもしますよ……だって大好きなお兄ちゃんと結羽さんが……』

「え? なんだって?」

『何でもありません!』

 

 なんなんだ? 本当に。

 しかもそのまま切りやがったし。本当に何がしたかったんだ?




 はい!第103話終了

 今回は結羽が嫉妬すると言う回でした。

 結羽の牽制(威圧)は萌未にかなりの恐怖を植え付けたことでしょう。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第104話 諦められない

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 結羽が嫉妬をした。




 それではどうぞ!


side優也

 

 萌未からの電話の後、暫くゆっくりしていると夕食が届けられた。

 夕食は各部屋に届けられる形式らしい。

 

 結構良い旅館なので結構美味しそうだ。ここは結構海に近い方なので海鮮ものが多いイメージ。

 中でもホタテの刺身がプリプリしていて美味そうだ。俺はホタテが好きだからな。ホタテのバター醤油焼きとか凄く好きだ。最近はあまり食べれてないけどな。

 

 あとは蒸し蟹の足だったり、ホタテだけではなく色んな種類の刺身。他にも様々な料理が並んであるが、どれもこれも美味しそうだった。

 

「当たりの旅館だね」

「ああ、そうだな」

 

 俺と結羽は同時に頂きますと手を合わせてから箸を手に取り、まず最初に味噌汁の汁を啜る。

 俺は驚いた。美味い、すごく美味いのだ。疲れた体を労わるように濃い目の味付けなのだが、凄く海鮮の出汁等が効いてて凄く美味い。

 

 次に醤油皿に付属していた醤油を出し、その端に同じく付属していたわさびを出す。

 そして箸で少しわさびを刺身に乗せると醤油を少し付けて口に運んだ。

 うん、やっぱり美味い。近くに海があるだけあって新鮮だ。こんなに美味い刺身は少し海から離れてる伊真舞ではここまで美味い刺身はそうそう食べられないだろう。

 

「美味しい〜」

 

 結羽は俺とテーブルを挟んだ席に座っており、そこで俺と同じ飯を食って頬を緩ませていた。

 美味しいものを食べている時は本当に幸せそうに食べるから見てるだけでも癒されるんだよな。

 

「ん? どうかしたの?」

「いや、何でもない」

 

 じっと見ていると見ていることがバレたので俺は慌てて目を逸らして照れ隠しに飯を食べる。

 まさか馬鹿正直に飯を食べている結羽に見蕩れていたって言う訳にもいかない。

 

 それから数十分後、飯を食い終わって少しゆっくりしていると急に結羽が話をふってきた。

 

「そういえば優也ってさ、最近急に定期テストのランキングから消えたよね。その代わり他の能力がかなり上がってるみたいだけど」

「……」

 

 まぁ、そりゃあここまでガッツリと変わっていたら気が付かれるよな。

 実は俺にもこれの原因は分かっちゃいない。だけど俺が考えるにこれは心理的な問題なのだろう。

 愛する者をもう二度と失いたくない。その心が俺に勇気を与え、運動能力を向上させているんだろう。

 それと引き換えに何故か勉学のレベルが中学時代に戻ってしまっている。

 何とか勉強はしているが、最近はボーッとして全然授業内容が頭に入ってきていない。

 

「これじゃあダメだよな」

「ん?」

「結羽、お前は俺の前から居なくなんないでくれよ」

 

 その俺の一言で部屋は暗い雰囲気に包まれてしまう。

 多分普通のカップル同士で「ずっと一緒に居ようね」的な言い方だったらバカップル的な雰囲気になるんだろうけども、俺の言葉だから重みが増したのだろう。

 過去に二回も大切な人を失った。一人は植物人間、もう一人はこの世から旅立った。

 

「はは、悪ぃ。忘れてくれ」

 

 重苦しい雰囲気が苦手なので俺はすぐに笑って直前の言葉を撤回する。

 だけどその雰囲気は少し残ってしまっているようで結羽の表情は沈んでいる。

 

「ねぇ優也」

「なんだ?」

「私は優也と離れたくない。だから私はあなたから離れないよ。……優也は?」

 

 俺はすぐに返答出来なかった。

 なぜなら俺は人間って物は(もろ)い存在だって事を身をもって知っていたからだ。だからそんなに軽々しく言えなかったのだ。

 だけど、俺の気持ちを言えば

 

「俺も離れたくねぇ。だから俺は結羽から離れねぇ」

「うん。それならいい」

 

 結羽はその俺の答えに満足したようで満面の笑みを浮かべた。

 絶対とは言い切れない。だが、この言葉を絶対にするかしないかは俺の行動次第だ。

 

「……でも本当はそれはしたくないんじゃないかな?」

「どういう事だよ」

「だって、あなたの心には常に七海ちゃんが居る」

 

 結羽は単調にそう言うと真っ直ぐと俺の目を見てきた。

 俺が結羽から離れたいと思ってる? いったいどういうことだよ。俺は本気で離れたくないと思ってるってのによ。

 しかもそれと七海、何が関係あるんだ。

 

「優也。本当は都会に出て医学を学びたいんでしょ?」

「違う! 俺は結羽から離れるくらいだったら、んな所行かなくても良い!」

「違わないよ。優也にとって一番大事な人は妹の七海ちゃんだもんね」

 

 そう言われて俺は何も言い返せなかった。

 正直、どちらか選べって言われたら決められないくらいの感覚だ。しかし、七海は妹で家族な分、贔屓(ひいき)してしまうのだろう。

 だから俺は本心ではこの街を離れて都会に出て医学を学びたかった。

 

「図星でしょ。私、何でも優也の事なら分かるんだよ」

「……結羽には適わねぇな」

 

 結羽は俺の事なら何でもお見通しらしい。

 なら嘘を話しても仕方がねぇよな。

 

「確かに俺は今でも七海の事は諦められねぇし、治してやりたいと思ってる。だけどダメなんだ。俺は怖いんだよ、結羽から離れてその間に結羽の身に何かがあったらと思うと……」

 

 俺は嗚咽混じりに言った。

 そんな俺に対して結羽は優しく微笑みかけて隣に来ると俺を抱きしめた。

 俺は驚いた。結羽の顔は分からないから何考えてるのかは分からはいけど、これは俺を思っての行動だって事が分かる。

 

「大丈夫だよ優也。私はあなたがどんな決断を下そうともそれを受け入れる。都会に行くって言うならば私は待ってるよ。約束する、優也が帰ってくるまでずっと……ずっと待ってるから」

「結羽……」

 

 俺は結羽の優しい言葉で遂に堪えきれなくなって涙を流す。そんな俺の背中を優しく(さす)ってくれた。

 絶対に結羽のもとを離れたくない。だけど七海も大切な人なんだ。諦めきれるわけが無い。

 

「結羽……俺、俺さ、すごく頑張る。すごく勉強を頑張って都会の医療学校に進学する。進学して、立派な医者になって戻ってくるからさ。その時まで待っててくれるか?」

「うん。何年でも私は待ち続けるよ。だって私は優也の彼女なんだから」

「そうか……んで、帰ってきたら……結婚しよう」

「……ふぇっ?」

 

 結羽の顔は熱に浮かされたように真っ赤になると、可愛い声を出して驚いた。

 正直、まだ結婚なんて考えるのは早いだろう。なんせまだ高二の秋だからだ。だけど俺は自然と結羽と生涯を共に過したいとそう思ったのだ。

 

「優也……。本当に私でいいの?」

「んだよ今更。俺は、結羽が良いんだよ(・・・・・・・・)! 結羽じゃ無き(・・・・・・)ゃダメなんだよ(・・・・・・・)!」

 

 結羽がとても大切だからこそ俺は結婚と言うワードを口にした。

 こんなことを口にしたら大人には小童(こわっぱ)が何言ってんだと笑われるかもしれないが、俺はこの時点で覚悟していた。人生を共にするって。

 

「それじゃあ、その証明を……頂戴?」

「証明……か」

 

 俺は一つしか思い浮かばなかった。

 だから俺なりの証明をする為に俺は結羽の肩を掴んで真っ直ぐ結羽の顔を見据えて徐々に顔を近づけていく。

 それによって結羽は察したのか目を閉じた。

 

「結羽……」

「優也……」

 

 そして俺達の影は一つに繋がった。




 はい!第104話終了

 今回はだいぶ大きな話題が上がりましたね。

 あと、漸く二人はキスをしました。結構遅かったのではと思います。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第105話 悶える結羽と百合

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 結羽と優也が本当の意味で心が一つになった。



 それではどうぞ!


side結羽

 

 あの旅行から帰って来て数日がたった。

 旅行から帰ってきた後、優也はいつもなら漫画を読んでいる時間帯だけど脇目も振らず必死になって勉強をしていた。本人曰く、今までの分を取り返さなければならないかららしい。

 少し構って貰えないのは寂しいけど、私だって優也の事は応援したい。だって……未来の旦那様なんだから。

 適当な時間になると私はコーヒーを淹れて優也の部屋に持って行く。

 

 扉をノックする。だけど余程集中しているのか返事が帰ってくる方が稀なので私は静かに「失礼します」と言ってコーヒーを持って優也の部屋に入る。

 部屋に入るとそこにはデスクの上で真剣な眼差しで勉強している優也の姿が。

 その姿はとっても凛々しくて、かっこよくてキュンキュンしてしまう。だけどそう言うのは表には出さずに静かに優也の近くにコーヒーを置いて退散することにする。

 そして私がコーヒーを置くと優也はこういうのだ。

 

「ありがとうな」

 

 静かな。耳を澄まさなければ聞こえない様な声かもしれない。だけど、私はいつもその声を聞いてキュンキュンしちゃう。優也は私をキュン死させるつもりなのかな?

 私は足早に部屋を出ると扉の前に座り込んでしまう。

 

「はぁ……やっぱりダメだなぁ」

 

 優也が悪いよ。あんな、あんなことを言うせいで余計に意識しちゃうし、どんどんと好きって気持ちが溢れてきちゃう。

 もう! 優也のバカバカバカ!

 

 こうやって私は毎日悶えることになるのだ。

 でも本当なら甘えたいし、頭撫でられたいし、デートにも行きたいし……。でも、私の感情を押し付けるのは良くないよね。

 


 

「はぁ……優也がかっこよ過ぎるよぉ」

「なんですか? 自慢ですか? 嫌味ですか? 私の心を抉りたいんですか?」

「ち、違うんだよ。別にそんなんじゃ」

「柴野先輩は私が先輩の事が好きだって知ってるんですよね? なんですか? 幸せアピールでそんなに私を精神的に殺したいですか!?」

 

 私は今、とある喫茶店に来ています。それも一人でではありません。学校では休み時間中の優也と居る時間が一番長いであろうと思われる露木ちゃんと共に来ています。

 で、今は優也がかっこよすぎる問題について話し合っていました。別に心を抉るためではありません。別に露木ちゃんが優也にデレデレとあんなにお昼ご飯を食べる時近づいて、更には露木ちゃんは優也に手作り弁当を「あ〜ん♪」していた事に嫉妬(ジェラシー)を感じていたから嫌がらせをしている訳では無いです。それと別に嫉妬(ジェラシー)もしていません。

 

「で、なんですか? そんな惚気の為に私を呼び出したんですか?」

「いや、本題は別にあるんだよ」

「だったらそっち先に言ってください」

 

 ……ご最もです。すみません。

 

「じゃあ単刀直入に言うね。私とデートして!!」

「へ? デートですか? デート……デート!?」

「うん!」

 

 私が単刀直入に言うと露木ちゃんは顔を上気させて、仰け反りながら驚いた。

 少しオドオドと恥ずかしそうにしながら一旦逸らした目を意を決した用にこちらへ向けると聞き返してきた。

 

「デートって……あのデートのことですか?」

「どのデートかは分からないけど多分合ってるよ」

 

 私が露木ちゃんの問に答えた瞬間、更に顔を真っ赤に染めた。まるで百面相だ。

 

「で、でも女の子同士だし」

「関係ないよ!」

 

 そう、関係ない。

 実は優也とは遠出してのデートは良くするけどショッピングデートとかはあまりしないのだ。だからその予習をしたいと思ったし、更にあんまり優也の近くに居すぎても集中したいだろうし、迷惑になるかなと思って行動に出たのだ。

 

「か、関係ない……。で、でも場所を考えましょうよ。ここ、喫茶店です」

「そうだね。確かに気が回らなかったかも」

 

(し、柴野先輩がかなり積極的だ!? 女の子同士なのにデートに誘ってきたし、何かがおかしい! それとももしかして、男には飽きちゃって次は女の子に乗り換えたとか!? だ、だとしたら私、私!?)

 

「え、えっと……どうして私をデートに? それなら先輩を誘えば」

「……邪魔だったから」

 

 私がね。

 

(じ、邪魔!? つ、つまり柴野先輩は百合に目覚めてしまって先輩の事が邪魔に!? 私で性欲を満たそうとしている!?)

 

「か、考え直してみては?」

「考えてみたよ。でも、露木ちゃんにしか頼めなかったんだ!」

「私に……しか!?」

 

 こんなデートの練習なんて事情を知っている露木ちゃんにしか頼めるわけが無い。

 しかも、平日は二人一緒に居る事が多いし、何かと優也の好みを知っているかもしれない。

 ちょっと露木ちゃんには申し訳無いけど手伝ってもらうしかない。

 

「で、でもなんで私なんですか?」

「えっと……いつも近くにいたから」

 

 優也のね。

 

(え!? これって完全に黒だよね!? だって結羽先輩、私の事を見ながら恋する乙女のような表情を浮かべていたんだもん! でもどうしよう。こうなったからには受けるしかないのかな? うん。これは柴野先輩を先輩から引き離せばチャンス……いえ、百合からノーマルに戻してあげないと)

 

「分かりました! 受けます!」

「え、本当!? ありがとう!」

 

 こうして私と露木ちゃんはデートをすることになりました。




 はい!第105話終了

 すれ違い第二弾。結羽と露木です。

 優也とのデートの為と考えている結羽と結羽が百合に目覚めてしまったと思っている露木。どうなるのでしょうか?

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第106話 ジャストタイミングとデート開始

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 結羽が露木に百合だと勘違いされた。



 それではどうぞ!


side結羽

 

 露木ちゃんとデートの約束も出来たし、優也のテスト勉強が終わったらお祝いに最高のデートが出来るように予習しなくちゃね。

 服装なんかはだいぶ優也の好みが分かってきた。優也は私が好みの服を着ていると少し目をそらすのだ。

 それで分かったんだけど、優也は清楚系が好きみたい。でもこんなにかわいい服は私には似合ってないんじゃないかって思う。着るなら私よりずっと大人っぽい人じゃないと……。

 

「うーん……うーん……」

「なぁ、さっきから俺の隣でなに唸ってんだ?」

「ひゃあっ!」

 

 そう言えばさっきコーヒーを持ってきてそのままぼーっと考え事を始めちゃってたんだった。長居するのは良くないってわかってるのに!

 

「ご、ごめんね」

「いや、良いさ。ちょうど勉強も詰まってきた所だし……おいで」

 

 優也はそう言うと膝をポンポンと叩いて私を誘ってきた。

 す、座れって事かな? キスもした関係なのに座るのは少し照れくさくなってしまう。

 

 でも、勇気をだして……えい!

 

「おっと、」

 

 勢いよく座ると優也は後ろから抱きしめてきた。もう……優也は私を萌えさせる天才だよね。

 顔がかぁっと熱くなってくるのが分かった。

 すると優也は私の耳元に近づいて囁いてきた。

 

「いつもありがとな」

 

 ズッキューン。そんな囁き声でお礼なんて言われたら……私、私っ!

 多分私今、だらしない顔をしてると思う。だけど嬉しすぎて嬉しすぎてもう何も考えられないよぉ。

 

「コーヒー、いつもありがとう。すげぇ美味いよ。料理も出来て気遣いも出来る。こんな彼女が居て俺は幸せ者だ」

 

 もう、今日が私の命日なのかな? 幸せすぎて死んじゃうよぉ。このまま優也の膝の上で死ねるなら本望だね。

 でもそしたらもう優也に会えなくなるからやっぱりいや! ずっとこのまま居たい。

 私は優也に体を預ける。するとまるで小さい子をあやす様に私の頭を撫でて来た。今までは子供扱いはされたく無かったのでこういう風に撫でられると……ちょっと嬉しかったけど少し嫌だったの。だって女の子として見られたいから。だけど今は恋人として撫でられているから嬉しさが爆発しそうだよ。

 

「優也。今、私幸せ」

「ああ。俺もだ」

 

 そして私達の顔は徐々に近づいて行き――

 

 ピンポーン

 

「「……」」

 

 いい所でインターホンが誰かが来た事を告げた。

 私達はあと数センチの所でお互いの顔を見て固まった。優也の顔が珍しく赤くなっている。多分私も同じ。優也よりも真っ赤になっている可能性もある。

 

 ピンポーン

 

 再度インターホンが鳴った。催促だろう。

 しょうが無いよね。……はぁ。

 


 

 遂に露木ちゃんとの約束の日。私が待ち合わせ場所に着くと既に露木ちゃんがそこに居た。

 

「ごめんね。待たせちゃったかな?」

「いえ、私は今来たばかりなので」

 

(ここで完全にあっち側に落とせば先輩と上手くいかなくなり、私とゴールインする可能性が高くなります。しかしその上で一番の懸念点は私の貞操のピンチです。もしかしたら柴野先輩に襲われる可能性が……っ! 自分の貞操は自分で守るものです! 守ってみせます!)

 

 何やら露木ちゃんが私を決意に満ちた目で見てくる。何を考えてるんだろう。

 何か嫌な予感がするけどまぁいいや。今日付き合ってくれただけでも感謝しよう。だって自分の好きな人とのデートの事を相談されたら私だったら三日三晩枕を濡らしながら寝込むレベル。だけど露木ちゃんはとっても強い目をしている。私と違って大人だなぁ。

 

(先輩略奪大作戦です)

 

 私達は少し歩き、この街で一番大きなスーパーに来た。

 ここなら色々とあるし、デートの視察にピッタリだろう。と言う事でまずはファッションコーナーに来た。

 デートはやはりオシャレが大切。特に自分の好きな人には気に入られたいから好きそうな服装でデートに臨みたい!

 

「露木ちゃん。この中で私に似合いそうな清楚系の服ってあるかな?」

「え? なんで私に?」

「露木ちゃんってオシャレじゃん。だから参考にしたいなって」

 

(なるほど、つまり柴野先輩はカップルが良くやる服を選ぶをやりたいという事ですね。これは別にやっても私には害はないでしょう)

 

「分かりました……ではこれとこれ、どっちが好きですか?」

 

 露木ちゃんが手に取ったのは水色と薄桃色のワンピースだった。

 

「はやっ! もう候補あげたの?」

 

 やっぱり露木ちゃんはファッションの天才かもしれない。私が選んだらこんなに可愛い服はなかなか見つけられないもんね。

 優也には結構「オシャレだね」って言われるんだけど、私って実は疎い方なんだよね。だから優也が家に居る今、オシャレを少しでも頑張ろうって事で。

 

「じゃあ、着てみようかな」

 

(こ、これは伝説の、カップルに良く起こるイベント。『この服似合ってる?』ですね。ここはきっちり良いのを選んで百合に落とします)

 

 まずは一着目、水色のワンピース。このワンピースは私が着て見た感想だと、可愛くてとても清楚。だけど私が着ると何かが違う。

 そして試着室のカーテンを開けて露木ちゃんにも見てもらうと――

 

「まぁ、結構良いですが随分マニアックになってますね」

「と言うと?」

「子供なのに大人ぶってる感が満載で逆にエロいです」

「何その感想!?」

 

 エロいって! 私達女の子同士なんだからそういう目で見てはいけません!

 

(百合な柴野先輩なら女の子にエロいと言われて嫌な気はしなかったでしょう。この調子で行きます)

 

 次は薄桃色のワンピース。こちらは結構デザインも可愛くてそして清楚感はあるけど大人ぶってる感は出ない。私は結構好きかな?

 そして試着室のカーテンを開けて露木ちゃんにも見てもらうと――

 

「面白くないです」

「何が!?」

「いや、普通に似合ってて可愛いので」

「そ、そうなんだ……ハハ」

 

 露木ちゃんにまともな感想を期待した私が馬鹿だったよ!




 はい!第106話終了

 次回はこの続きからです。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第107話 小さな見栄

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 露木は結羽を絶対に百合に落とすと張り切った。



 それではどうぞ!


side結羽

 

 結局ファッションコーナーでは何も買わず、次に来たのは喫茶店。優也は喫茶店やカフェなんかが好きだから喜んでくれるはず。

 だけど、そうなると私が誘ったと言うのに優也の方が詳しくて結局はいつもと同じように私がリードされてしまう羽目になる。それを避けるためにリサーチをするのだ。

 

 それにしても色々美味しそう。特にパフェ、女の子だったら結構すぐに目に止まるんじゃないかな?

 優也は大抵こういう店に来たらコーヒーを注文するんだけど、私は苦いのが苦手で飲めないんだよね。砂糖をいっぱい入れたら飲めるけども。だけど優也と同じものを飲めるようになりたい!

 

(確か先輩はこういう店に来たら必ずと言っていい程コーヒーを飲んだはずです。この前、私に相談してきた時もそうでした。そこまでは良いです。しかし問題なのは私が苦いコーヒーを飲めないことです。これではお揃いの飲み物を飲むことが出来ません)

 

 正面の席に座った露木ちゃんを見てみると何やら露木ちゃんも考え込んでいるご様子。何を考えているんだろう。たまに露木ちゃんって小難しいことを言うことがあるから私じゃ想像つかないような事とか考えてるのかな?

 

(どうすれば先輩を落とせるんだろう。やっぱり趣味を共有とか? となるとやっぱり)

 

 苦いのは嫌だ。だけど少しでも大人の女になる為にも、避けられない道だよね。

 そう考えて私は苦手なブラックコーヒーを選んだ。すると露木ちゃんも何にするか決まったようでメニューを閉じた。

 

 私はそれを確認するとテーブル脇にあった呼び出しベルを押す。すると店員さんがすぐにやって来てくれて、私と露木ちゃんは注文を伝えようとして声が被った。

 

「「コーヒー、ブラックで!」」

 

 え、露木ちゃんもブラックコーヒー!? もしかして露木ちゃんってコーヒー飲める人!? ま、まさか成長だけじゃなく味覚まで抜かされていたなんて思いもしなかった。って成長が抜かされていると言っても僅差、僅差だから!

 

「え、柴野先輩ってコーヒー飲めるようになったんですか?」

 

 その瞬間、私の時間は全て停止したかのような衝撃を受けた。そういえば私が苦いコーヒーが飲めないことは優也の周りにいる人達にとっては有名な話だった。

 それはもちろん露木ちゃんも例外ではない。だから、ここでコーヒーを飲むことは見えを張っているとバレてしまう。優也にバレるのは良いけど、他の人にバレると少し恥ずかしい。

 羞恥で顔が熱くなるのがわかった。絶対図星だってバレたよ……。

 

(え!? なんでこのタイミングで柴野先輩は頬を染めたんですか!? そうか! 私が見つめてるから百合な柴野先輩は恥ずかしくなってしまったと。この調子、この調子で行けば確実に落とせますね)

 

 何やら露木ちゃんの表情が変だ。まるで勝ち誇ったような表情をしている。何を考えているのか頭を開いて見てみたくなるような顔をしている。

 そういえば露木ちゃんの事って優也と普段良く居るって事しか知らないな。ご飯とかも一緒に食べてることが多いし、その点では妬けちゃうな。でも優也は本当に可愛い後輩としか思っていないらしく、可愛がっているようだ。

 その点、私は彼女と言うアドバンテージがある。この分があるから少し安心。しかも私は優也にすごく大事にされてるなって感じる。

 よく優也は私を抱きしめるんだけど、その時の優也がすごく優しい。そう言う瞬間に私は優也が好きになって良かったなと思うのだ。

 

「も、もちろん飲めるよ」

 

 取り敢えず返答を返しておく事にした。

 だけどごめんなさい! 嘘です。実は全く、これっぽっちも飲めません!

 

(え、柴野先輩がコーヒーを飲めるように!? これは事件です。このままでは私が柴野先輩に勝てる可能性が低くなってしまいます。そしてコーヒーが飲めることで更に仲が深まってしまうでは無いですか)

 

 急に露木ちゃんがガタガタ震え始めた。もしかして私が嘘を着いたことに気がついて怒ってるのかな? でもこれくらいの見栄、張らせてくれたっていいでしょ!? 人間は皆見栄を張って生きてる物なんだから!

 

 少し待っているとコーヒーがすぐに運ばれてきた。

 私はこの香りが好き。飲めないけどこの香りは好きなのだ。飲めないけど。

 そして恐る恐る一口。ここは悟られないように注意しなくてはならない。

 その瞬間だった。コーヒーが舌に触れた瞬間、ものすごく強烈な苦味が私を襲った。

 苦い苦い苦すぎる。やっぱり私にとってコーヒーはかなり危険な飲み物。だけど露木ちゃんの手前、絶対に苦しみを外に漏らせない。何とか耐えないと。

 

(あ、あの柴野先輩が飲んだ!? 本当に飲めるの? でも飲まないと柴野先輩に遅れを取ってしまう。私、やるよ!)

 

 すると露木ちゃんはマグカップの中のコーヒーを一気飲みしてしまった。

 あの苦いのをあんなに一気飲みできるなんて!? これは本物だ。

 負けた、また負けた。優也は私の方が好きとか言ってるけどいつかは露木ちゃんほ方に言ってしまうんじゃないかな? と心配になる。

 

 何か露木ちゃんに勝てる点を探さないと。




 はい!第107話終了

 二人は仲がいいんだか悪いんだか。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第108話 本屋戦争

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 結羽と露木の戦いがここに!



 それではどうぞ!


side結羽

 

 次にやって来たのはゲームセンター。なのだが、私達は二人とも気が乗らなかった。

 確かに来たことがあるし、一般的な男子高校生だったら好きな人も多いだろう。

 しかし、優也は一般的な男子高校生ではない。ゲームも全くせず、やる娯楽としたら読書くらいな物だ。

 そんな優也がゲームセンターを楽しむとは思えない。

 

 だけど一般的な理論では結構好きな人も多いからあわよくば的な感じで来てしまったが失敗だったかもしれないと引き返そうとしたその時、

 

「ん? あ、結羽と露木ちゃんじゃん」

「結羽と、優也といつも飯食ってる後輩ちゃんか」

 

 そこに居たのは悠真と童明寺君だった。この二人はこのゲームセンターに入ろうとしている所で鉢合わせたのでここに遊びに来たのだろう。

 そうだ、折角だから二人に案を聞いてみても良いんじゃないかな。

 

「あの、聞きたいんだけど」

「なんだ?」

「優也ってどんな施設が好きなのかな?」

 

 悠真なら中学からの付き合いだし、童明寺君とは妙に仲が良くて一緒に遊びに行ったりとかがあるから良い情報が得られるかも。

 そんな訳で聞いたのだが、二人とも少し考え込み始めた。

 どうやら中学の頃から優也はあんまり遊びに行かない人だったらしく、どう言う所で遊ぶのが好きなのかはっきりとは分からないと言う。

 

「でもまぁ、優也の奴が好きそうな所と言えば喫茶店だよな」

 

 それは知ってるんだよ……。だって優也、休日は朝バイトで、昼で終わるんだけど終わったら喫茶店で勉強してから帰って来るんだよ。

 これで好きじゃなかったら逆になんなんだよって話だよ……。

 すると童明寺君も思いついたみたい。

 

「優也は最近、読書に嵌っているらしいんだが、喫茶店に寄ったあと本屋に寄ってから帰るのが習慣になってるんだとよ」

 

 喫茶店だけじゃなくて本屋にも行ってたんだ。通りで休日はすごい荷物と共に帰宅する訳だ。

 あんまり何を買ったの? とか問い詰めるのは好きじゃないから聞いた事がなかったため、知らなかったけど多分ねあれは大量の漫画や小説なんだろうな。

 ちなみに本は沢山あったけどその全てが健全な内容だったのが彼女としては安心ポイント。もしエッチなやつとかあったら……燃やす。

 エッチなものはわ、私が居るんだから要らないよね。……全然そんな素振りは見せてくれないけど。

 

「本屋かぁ」

 

 今はどんな本があるんだろう。

 優也は意外とSFとかの小説、漫画をよく買っているからそれ系の物が好きなんだろう。話を合わせられるように私も何か買ってみようかな。でも優也の持っているのはレベルが高すぎて分からなかったけど。

 

「そういや最近何か優也の奴、周りをキョロキョロしながら本屋に入って行くのを見たな」

 

 周りをキョロキョロ? あ、怪しすぎる。もしかしてエッチな本とか? いや、でも昨日もエッチな本チェックしたのにそんなもの無かったし……。でも普通の本を買うならそんなに挙動不審に周りを確認する必要がない。

 これは帰ったら問い詰める必要があるね。

 

「じゃあ本屋に行ってみましょう」

「うん。そうだね」

 

 何故か物凄くやる気の露木ちゃん。そんなに協力的にしてもらって嬉しいな。

 

(百合に目覚めつつある柴野先輩が何故先輩の事を聞いたのかは分かりませんが、これはチャンスです。ここで先輩の好きそうな本をプレゼントすればきっと先輩の心も揺らぐはずです)

 

 そんな訳で私達は本屋に行く事にした。

 


 

 本屋に着くと私は直ぐにSFコーナーへ向かった。勿論優也の趣味を理解するためだ。

 中でも私が理解しやすそうなSFを見てみる。

 私の後ろでは露木ちゃんもSF小説を見ている。もしかして露木ちゃんもSFが好きなのかな?

 

(普通に好きなのを見るのも良いけど何か先輩の好きそうなものとか見に行こうかな? あ、これ出てる。買おうかな)

 

 あ、露木ちゃんが本を手に取ってる。面白いのかな? 結構続きが出ているものみたい。確かこの小説は優也の部屋の本棚にあったはず。

 見る限り私でも理解出来そうな内容だし、これ買ってみようかな。

 

 そして私はその本を手に取ってレジへ向かった。

 露木ちゃんはと言うと今度は難しそうな政治の本の方へ行った。

 私も一瞬、優也と話を合わせようと思ってそれ系の物を見てみようかなって思ったけど前にボソッと純粋な政治の話とかはあんまり好きではないって言っていたから私は別にいいかな。

 買ってから私は露木ちゃんの後を追っていく。

 露木ちゃんはこういう物も好きなのかな? なんか露木ちゃんの事がすっごく大人に見えてきた。

 

(先輩の心を掴みたいけど、全く理解が出来ない。そもそも私、社会が苦手なのを忘れてた。中学の社会すらうろ覚えになっててあんまりついて行けない)

 

 なんか露木ちゃん、難しそうな顔をしてる。何かあったのかな?

 

「これでいいかな」

 

 そう呟いて手に持ってた本を露木ちゃんは買って来た。

 そこでもう既にかなりの時間になっていた。

 

 冬なので既に空は茜色に染まっていて、そろそろ帰らないと危ない時間。だからデート練習はここで終わりにすることにした。

 

「ありがとうね。露木ちゃん」

「いえいえ、私もなんだかんだ言って楽しかったですから」

 

 それなら良かった。勝手に連れ回して悪かったなと思っていたから。

 そして別れの挨拶をして別れた。

 

 家に帰ると優也が料理をしていた。

 

「何作ってるの?」

「ポテトチップス」

「ポテチって作るものなの!?」

 

 しかし、私の事は気にせずどんどんとじゃがいもを薄く包丁でスライスして揚げるを繰り返していた。

 出来上がった物を食べさせてもらったら塩味の加減が良くてまだ暖かくて美味しかった。

 料理出来過ぎる彼氏を持つと将来、何もする事が無くなりそうで怖いです。




 はい!第108話終了

 デート練習編終了

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第109話 恋は盲目

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 だいぶ話が長くなってきたのでそろそろ終わらせようと今回の話は一気に飛んで終業式兼優也の誕生日にします。



 それでは前回のあらすじ

 結羽と露木のデートが終わった。



 それではどうぞ!


side優也

 

 今日は二学期終業式。学校が終わり、冬休みに入る。

 そして今日は12月25日。俺の誕生日だ。今までは誕生日になると憂鬱に思っていた。あの馬鹿が変な事をするからだ。プレゼント然り行動然りだ。

 しかし今日はそんなに憂鬱に感じていない。今までは俺の家だった為、すぐに来られてしまっていたが、今俺は柴野家に住んでいる。誕生日パーティをするにしても柴野家で行う事になるだろう。

 俺が柴野家に住んでいる事はあつしと白井さんしか知らない。これは完璧だろう。俺は今年こそ静かな一日を……。

 

「ゆ、優也。優也〜」

 

 終業式中、俺は寝てしまっていた。

 男女で並んで座っているので必然的に教室と同じく結羽と隣になっているのだが、その結羽が俺を起こそうと必死になっているみたいだ。

 

「先生が見てるよ」

 

 そんな声は俺には届かない。

 俺は昨日、夜中中ずっと勉強していた為、ものすごく眠いのだ。

 しかし最近の勉強のお陰で期末テストはなかなかの出来だった。

 その疲れが出てしまったのかもしれない。

 

「ど、どうしよう……」

 

 そこで俺の元へ今倉先生がやって来た。

 俺を揺すり起こそうとしてくる。しかし起きない。

 

「優也。起きろ〜」

 

 後であつしから聞いた話によると結羽はずっと起こそうとしてくれていたらしい。それは悪い事をしたな。

 


 

「もう……そんなになる前に休んでよぉー」

 

 家に帰り、結羽に眠っていた事を謝ると結羽は俺の体の事を心配してくれていたようでお説教混じりに言ってきた。

 

「いや、そういう訳にもいかな――」

「私にとっては優也の体が大切なの!」

 

 結羽が俺に抱き着いてくる。

 その抱擁がなんだか暖かくて安心する。それだけで「あぁ〜俺はやっぱり結羽の事が好きなんだな」と実感する。そして好きな人に心配して貰えるのは嬉しい。これからは少し休憩を摂りつつ頑張ろうと決意する。

 

「ありがとな結羽。俺は目が覚めたよ」

「ま、まぁ、私は優也の彼女なんだから心配するのは当たり前なんだから!」

 

 その彼女と言う言葉を恥ずかしがっている結羽が可愛すぎて思わず強く抱きしめてしまった。

 俺の腕の中に居る結羽が「ゆうやぁ〜」と蕩けきった声を出して更に俺の胸に顔を埋めてきた。

 

 その時、

 

「あ、」

 

 玄関から声が聞こえてきた。

 ゆっくりとそちらを見るとそこには冬馬が居た。随分と久しぶりだな。

 それにしてもタイミングが悪い。従姉のこんな蕩けきった表情を見せてしまった。

 

「えっと……お兄様?」

「なに? 君の家庭ってそんなに厳格なお家なの?」

「いやいや、なに久々に来てみたら姉ちゃんと兄ちゃんがイチャイチャしてるんだよ! あれか? 俺はもうおじさんになるのか!?」

「ならねぇよ」

 

 何言ってんだよいきなり。冬馬がおじさんになるって事は俺と結羽の間に子供が出来るってことだぞ。そんなのはまだ早いって、結婚すらしてないのに。

 と言うか今までどうしてたんだ? なんか家には居たっぽいけど……監禁されてたの?

 

「あれ? とうま?」

 

 遅い! 今気がついたのか? だから冬馬が居るってのに俺の胸に頬擦りしてきてたのか!?

 物凄く恥ずかしいんだが。だけど、冬馬に気がついた今でも俺から離れようとはせずしっかりと俺に抱きついている。なんとまぁ大胆な。

 

「ねぇ優也。今日って誕生日だったよね」

「ああ、そうだな」

「えへへ。いっぱいお祝いしてあげるね」

「待って待って! 俺の事を無視しないで!?」

 

 一回気がついた物の、すぐにデレデレモードに戻ってしまった。何が原因なんだろうか? 最近はデレモードになると長い様な気がする。しかも冬馬位じゃ正気には戻らないと……。

 それにしてもさすがに冬馬が可哀想すぎる。

 

「なぁ、少し冬馬の方を見てあげたら――」

「はい、優也。あーん」

 

 今度は近くにあったチョコの袋を持ってきてあーんしてきた。まぁ、俺も嬉しいが冬馬の事も……って言っても無駄か。

 

「お母さんは優也の誕生日パーティの買い出しに行ってるから二人きりだね」

「なんだか美樹さんにばかり悪いような……二人きりじゃ無いけどな」

 

 準備を任せっばまなしってのは少し罪悪感が湧いてくる。俺も少し料理の手伝いをしようかな。

 そんな事を考えていると結羽は急にムスッとした表情になった。

 

「優也。私達は優也をお祝いしたいの。だから私達だけでやらせて」

 

 そうか。俺も覚えがある。結羽の誕生日は俺らで準備がしたい。なるほど、そういう事か……。

 ってか口に出してないのに心を読んできたな。俺の周囲の人間はやはりエスパーらしい。

 冬馬はもうすっかり空気になっているので一人でテーブルに着いてチョコを静かに食べ始めた。

 ごめんな。俺も君から結羽を奪いたい訳じゃないんだ……。

 

「良いんだ……。姉ちゃんが幸せならそれで」

 

 ごめん。本当にごめん! なんだかすごい罪悪感が湧いてきたよ。

 

「結羽、そろそろ」

「ゆうやぁ。優也はこうしてるの嫌? もしそうなら離れるけど」

「そういう訳じゃ」

「なら良いよね!」

 

 俺の意思が弱いせいでごめんね。

 

 俺はこの後ずっと冬馬に謝り続けた。




 はい!第109話終了

 次回誕生日本番です。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第110話 結羽の暴走

 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 結羽が冬馬も居るのに凄い甘えてくる。



 それではどうぞ!


side優也

 

「ふんふんふーん」

 

 今は美樹さんが買ってきた食材を使って結羽が鼻歌を歌いながら料理をしている。

 いつもクリスマスと言えば七面鳥を買ってパーティをしているらしいのだが、今年は結羽が自分で作りたいと言い出した事によって結羽が作ることになった。

 そしてその食材を買ってきた美樹さんはと言うと、

 

「これが親離れってやつね……グスン」

 

 俺の隣でしくしくと泣いていた。

 実は美樹さんも張り切って腕を振るうつもりだったらしいが、結羽にキッチンから追い出されたのだ。なんでも、「私が作るの!」と言って聞かなかったらしい。だが、これは親離れと言うよりもわがままだと思うんだけど……?

 だが、今はそっとして置くのが優しさだろう。大丈夫ですよ、今日が終われば彼女はきっとあなたの元へ帰ってきますよ。

 

 しかし気になるのは結羽の張り切り様だ。張り切りすぎて変な失敗を起こさなければいいが……。

 まぁ、結羽の事なら心配無いだろう。結羽の料理の腕はよく知っている。

 

「姉ちゃん、すげーな。キッチンの上が料理で埋まって来てる」

 

 うん、あれはこの人数のパーティで食べる量じゃねぇ。

 キッチンの上じゃ足りなくて、簡易テーブルを取り出してきてその上にも並べ始めた。

 作り始めて15分だが、かなりの手際で既にもう10品以上ある。美樹さんの買ってきた食材だけであれだけのバリエーションを出せるなんて流石結羽だと言うしかない。

 俺なんかじゃあんなに量は作ることは出来ないだろう。

 しかもまだまだ食材が残っている。結羽の奴、まだまだ作るつもりだ。流石にそろそろ止めないと食べ切れない。

 

「ゆ、結羽。ちょっと待て」

「止めないで優也。私は今、幸せなの」

 

 そっか。幸せなのか、なら仕方が……って流されるところだった。

 

「待て結羽。それ以上作ったら食べ切れなくなる!」

「え? 優也、まさかとは思うけど、聞くよ?」

「ん? おう」

「まさか、まさかだよ? まさか、私のご飯、食べれないわけ……ナイヨネ?」

「狂気禁止!」

 

 俺は結羽にチョップした。

 今の台詞、かなりの狂気を感じた。

 

 俺のためだとはわかっている。だが、あんまりにも暴走し始めたら止めなければいけない。その役目は俺の役目だと思う。だからここで止めなくては!

 

「ゆ〜やぁ、酷いよぉ」

「言ったよね? 狂気禁止って」

「狂気じゃないもん! 優也が好きって気持ちが溢れてるだけだもん! お母さんの手料理と言えども私以外の女の料理を食べてる優也を見るとムカムカするだけだもん! 優也は私以外の料理を食べちゃダメなんだよ! あ、私以外を食べてもダメだよ……って恥ずかしいこと言っちゃった〜」

 

 ダメだこりゃ、言っても聞く気がしない。

 これを狂気と言わずしてなんなんだよ。しかも美樹さんにまで嫉妬してたのかよ、君の母親だぞ? 旦那が居るんだぞ?

 

「大丈夫だ、安心しろ。俺は結羽一筋だから、いい子だから料理はここまでにしようね〜」

「え、なんで?」

「なんでもだ!」

 

 こうして何とか結羽をキッチンから引き剥がすことに成功した。あと少しで俺の腹が裂ける所だった。

 

「「誕生日おめでとう!」」

「おめでとう優也!!」

 

 三人が俺の誕生日を祝ってくれている。なんか約一名だけテンションがまるで違うんだけど。

 と言うか美樹さんと冬馬が居るのにまた抱きついて来ている。すみません美樹さん、娘さんがこんなになってしまって。

 

「仲が良いわねぇ」

 

 仲が良いで済ませていい事なのかな? ただ仲が良いんじゃなくて恋人だから甘えてきてるんだと思う。

 

「はい、優也プレゼント!」

 

 突然プレゼントを渡してきた結羽。

 受け取って開けてみていいかの了承を得てから俺は開けてみた。すると中に入っていたのは、

 

「……ネックレス?」

「うん! 貯金を貯めて買ったんだ〜」

 

 そうか、俺にアクセサリーなんて似合うのか? 俺なんかよりもチャラ男とかがしているイメージなんだけど。

 だが、結羽が買ってくれたものだから大切にするか。

 にしてもこのプレゼントの意味が気になる。ちょっと聞いてみるか。

 

「ちなみにネックレスって永遠に繋がっていたいって意味があるらしいんだが、知ってたか?」

「勿論、だって優也は卒業したらこの街を出て行っちゃうんでしょ? だからその間も繋がっていたいなって」

 

 可愛すぎる。やっぱり俺の彼女は世界一の可愛さだ。

 少しだけここに居たいって気持ちが出てくるが、俺は必ず都会で医者になって帰ってくるって約束したからな。

 

「ああ、俺もだ」

「俺らも居るのになぁ」

「仲がいいわねぇ」

 

 冬馬に呆れられてしまった。美樹さんは平常運転のようです。

 

「ありがとうな。大切にする」

「うん!」

 

 結羽の笑顔が花開いた。それを見るだけで俺は今よりも何倍何十倍と頑張れそうだ。

 俺は改めて決意した。結羽の期待に答える為にも絶対に医者になって戻ってくる。

 

 こうして俺らは結羽の作った大量の料理を食べて俺の誕生日兼クリスマスは終わった。

 

 その日の夜、突然俺の部屋がノックされた。

 

「ん? どうした結羽」

「ちょっと寂しくなって……。あと一年しか一緒にいれないと思うと」

 

 そうだ。一年後、俺はこの街には居ないだろう。多分何年かしたら帰って来れるだろうが、そうは上手くはいかないかもしれない。そしたらもっと長くなるかもしれない。

 

「結羽、おいで」

「うん」

 

 そして俺らは一緒のベッドで寝た。

 一緒に寝ると驚く程安心して寝る事が出来た。俺らは心の奥底で繋がっている、そう思う事が出来る。

 おやすみ、結羽。




 はい!第110話終了

 えー、急で申し訳ありませんが、急に飛ぶことになるのですが次回で最終回とさせていただきます。
 別に三年生のネタが浮かばなかった訳では……すみません。
 という訳で次回最終回でその次にエピローグで終わりとさせていただきます。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第最終話 いつかまた、帰ってくる日まで

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回で最終回です。次回はエピローグとし、今後は気が向き次第、アナザーストーリーを投稿して行きたいと思います。
 ただ、アナザーストーリーは本当にいつ投稿するかは分からないので気がついたら読んで頂く感じでお願いします。



 それでは前回のあらすじ

 優也の誕生日。



 それではどうぞ!


side優也

 

 時間は流れ三年生、卒業式。

 俺はあれから猛勉強をした。学力が落ちた時の事をカバーする様に中学の頃みたいに全ての娯楽を無視して勉強をした。

 まぁ、流石に結羽達の事は無視することは出来ない為、息抜きに雑談なんかはしたが、殆ど部屋に篭もりきって勉強をしていた。

 結羽には寂しい思いをさせているかもしれないと思ったが、結羽が「気にしないで」と言ってくれたのでだいぶ安心した。本当に好きになったのが結羽で良かった。

 

 そして俺はその勉強の甲斐もあってか都内でもハイレベルと言われている医師学校に受かる事が出来た。

 運に関してはダメダメなので運ゲーでは無く確実に受かる様に猛勉強をした甲斐があった。何せ教科書を洗いざらい全て復習したのだから、かなり疲れたものの、受かった時の嬉しさって言ったら物凄いものだった。

 そして受かった事を結羽に伝えると物凄い祝福してくれて、何故か俺よりも喜びパーティを初めてしまった。そんな結羽の姿を見れて余計に嬉しくなってくる。

 

 俺は卒業したらすぐに飛び立つ。俺がみんなと居れる時間もあと少しだ。

 

 因みに悠真は近所の専門学校。星野さんは近所の大学。結羽も星野さんと同じ近所の大学に行く事となった。

 俺らの学校は結構レベルが高かった為、結羽がダメに見えたが、結羽も本来はそこそこ学力はあったようで今回はまだ易しい大学を受験した為、合格はそう難しくは無かったようだ。

 

 そしてついに来た卒業式。俺らは最後となる伊真高の制服に身を包んで体育館の自席で自分の名前が呼ばれる事を待つ。

 出席番号順、更に俺らのクラスはAなので俺が呼ばれるのはすぐだ。

 俺らのクラスは担任の今倉先生が名前を読み上げて行く。

 

「絆成 優也」

「はい!」

 

 大きく返事をして俺は壇上に登り、校長先生の前で礼をする。

 すると校長先生は一枚の卒業証書を手に取り、読み上げ始める。

 

「卒業証書、絆成 優也」

 

 以下同文だ。内容的には良くある全ての過程を終了しました的な事を書いてある。

 俺は壇上で卒業証書を受け取りながら色々な事を思い出していた。

 

 医療研究会と言うくじ引きの部活に入れ無かったこと。入学早々に寝坊して遅刻しそうになった所、同じく遅れそうになって走っている結羽と十字路で出会った。

 そして初めて公園で話をして友達となった。

 悠真と再会、生徒会長の白波さんとの出会い。そして副会長の神乃さんとも出会った。

 バイトを初めて如月と北村さんに出会った。

 

 二年生では神乃さんの妹さん、露木ちゃんと出会った。最初こそ辛辣だったものの、段々と打ち解けてきた感じがして少し嬉しかった。

 萌未と久しぶりに会うと悪化していた。昔からだが、更に悪化していた。何がとは言わないけどな。

 

 その他にも沢山色々なことがあった。俺の人生の中で一番濃い学校生活だったと思う。

 

 俺が壇上から降りると次の人の名前が呼ばれる。

 

「柴野 結羽」

「はい!」

 

 ついに結羽の番だ。

 結羽はあの壇上で何を考えるのだろうか? だが、誰でもあの上に立ったら今までの事を思い出すのでは無いだろうか。それは良い思い出も悪い思い出もあるだろう。だが、それら全てが高校での思い出なのだ。青春の1ページなのだ。

 

「白井 つみき」

「はい!」

 

 白井さんは最初こそ引っ込み思案であつしとしか話せなかったが、いつの間にか俺とも話せるようになっていて今では結羽とは仲良しだ。

 よく結羽とは遊んでいるのを見るため、仲良くなった二人を見て安心する。

 

「童明寺 あつし」

「はい!」

 

 あつしは学校ではクールキャラで通ってて、イケメンなので隠れファンクラブなるものも存在する。まぁ、白井さんが彼女権限で近づかせないだろうけども。

 いつもは弱気の白井さんもあつしの事となったら異常な行動力を発揮する。

 

 そして俺らのクラスは終わり、次のクラスへ移る。

 

「坂戸 悠真」

「はい!」

 

 悠真は俺の中学時代からの知り合いだ。途中であいつが転校して行ったが、進学を期に戻ってきた。騒がしい部隊の一人だ。

 奴に俺はいつも振り回されていたなぁ。

 

「星野 光」

「はい!」

 

 星野さんは文学少女的風貌で、人と絡むのを好まない。だが、そんな彼女が俺の事が好きだと知った時はびっくりした。

 星野さんもかなりの学力なので俺と一位二位争いをしていた。良い思い出だ。

 

 そして全員に卒業証書を手渡され、卒業式が終了した。

 

「おつかれ〜」

「ん? ああ、お疲れ様」

 

 卒業式が終わり、玄関に出ると隣を歩いていた結羽が突然声をかけてきた。

 確かに疲れた。卒業証書を受け取るだけだが、普段ああ言うところに登らない俺はかなりの緊張で疲れてしまった。

 

「で、でさ優也。あの、第二ボタンって貰えるかな?」

「ああ、いいぞ」

「あーあ……やっぱり勝てませんでした」

「露木ちゃん!? いつの間に」

 

 俺が結羽にボタンを手渡しているといつの間にか露木ちゃんが真横に居たため、驚いてしまう。

 

「先輩はこれから空港ですか?」

「だね。向こうで色々とやっておきたいことがあるから早めの方が都合がいいんだ」

 

 皆とはここでお別れだ。結羽は最後まで見送りをしてくれるらしい。本当にありがたい、良い彼女を持ったなとしみじみと思う。

 

「そう言えば神乃さんも結羽と同じ大学なんだっけか……露木ちゃんはどうするんだ?」

「先輩が娶ってくださるのなら専業主婦って言いたいところですが……残念です」

 

 当然露木ちゃんは娶らない。娶るとしたら結羽だ。俺の恋愛として好きな人は結羽だけだ。

 普段の結羽の事を見ていたら結羽以上に良い女性が居る気がしなくて浮気する気にもならない。まぁ、もとより浮気なんてする気は無いがそれだけ結羽は良い彼女って事だ。

 

「優也、寂しくなるね」

「だが、全く連絡をしてはいけないわけでない。こまめに連絡はするさ」

「うん、期待して待ってるね」

 

 そして俺と結羽は空港へと向かった。

 じいさんとばあちゃんにも途中で挨拶して行った。ばあちゃんは年相応の感情表現で涙をポロポロ流して別れを惜しんでくれ、じいさんは「早く行け、バカ孫が」と口は悪いが表情からじいさんも寂しいと思ってくれているようで少し嬉しくなった。

 

「それじゃあ優也、ここでお別れだね」

「そうだな。じゃあ、何年後になるかは分からないがまたここで再会しよう」

「うん!」

 

 俺は最後に結羽と唇を重ねた。ほんの一瞬くっつけるだけだったが、幸せな気分になれた。

 ポンポンと頭を撫でてから俺は飛行機に乗り込んだ。

 飛行機の窓から最後のこの街の景色を眺める。

 

「しばらくの間、さようならだ。伊真舞市」

 

 こうして俺は都会へと飛び立った。これからもっと辛いことが待っているだろうが必ず七海を治してみせる。

 

「七海、兄ちゃんは頑張るからな」

 

 最後にみんなで校門前で写真を撮った。その写真を見ながら俺は飛行機に乗ること数時間後、俺は都会にたどり着いた。

 ここから俺の新生活が始まる。




 はい!第最終話終了!

 なんか話的区切りは前回の誕生日で区切りが良さそうだったのでここまで飛ばしてしまいました。
 まぁ、気が向けばアナザーストーリーとしてこの期間の話を少し書くかもしれません。
 次回はエピローグとなっております。

 それにしても僕の小説史上最も雑な終わり方ですね。ですが、このまま卒業までダラダラと繋げても面白く出来る自信がなかった為にこういう形になりました。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

epilogue

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回で遂に本当に終わりを迎えます。

 色々言いたい事はあるので後書きの方に載せておきますので読みたい方はそちらを読んでください。

 長い事続いたこのシリーズですが、そろそろ最後の話へ参りましょう。

 それではどうぞ!


 とある空港。そこに一人の男がいた。

 その男は真っ黒なスーツに身を包み、大きな鞄を持っていた。その中には白衣が入っており、その他にも大切な物が色々入っている。

 

 空港で飛行機を待つ間、男はもう五年も前に撮った写真を見ながら微笑んだ。

 その写真は男にとって友達のみんなが集まって撮った集合写真。その写真を見ながら男は五年前の事を思い出していた。

 もう五年も経つと言うのに物凄く大切に保管されていたせいか、色褪せること無くその時の状態で残っていた。

 

『次は龍川空港行き。ご登場は7番ゲートです』

 

 そのアナウンスを聞いて男は写真を鞄に仕舞うと飛行機に乗る為に歩き出した。

 

「あそこに行くのは久しぶりだな。伊真舞市」

 


 

 伊真舞市のとある店前で人集りが出来ていた。

 それも全員が同じ学校の友人。つまりは同窓会に出席しに来たメンバー達だ。

 既に全員20歳を越えているため、居酒屋で飲み会をする事にしたのだ。

 だが全員が来れた訳でもないのだ。約一名ほど同窓会に来れていない人物が居た。

 その人物にもちゃんと招待状は送ったのだが、全く返事が無い。その為、メンバーは少し不安になってしまっていた。

 

「ったく、あいつはどこほっつき歩いてんだ」

「あ、あつし君。そう言う言い方はあんまり良くないと……思うよ。多分忙しいんだよ」

「そうは言うけどよ、つみき。お前も全員で集まりたかったのは同じだったんじゃないのか?」

「た、確かにそうだけど……」

 

 そう会話する二人の左手の薬指にはお揃いの指輪がハメられて居た。

 この二人の結婚は別に意外でも無かった。ここに居た全員が既に予想は出来ていたのだ。

 二人は高校生の時から既に付き合っており、高校を卒業したら直ぐに結婚するのかと思われたが、二人はなんと20歳の時にあつしから告白し、結婚。予想外の遅さに祝福とブーイングの嵐だった。

 だがその時のつみきの嬉しそうな顔を見ると直ぐにブーイングの雨は止んだ。

 

 そんなつみきのお腹はポコっと膨らんでいた。

 

「結婚は今結婚している人の中で遅い方なのに赤ちゃんは一番速かったね」

「うん」

「赤ちゃんを身ごもった感じってどんな感じなの?」

「なんかね、ちょっと体が重く感じて今まで以上に疲れるんだけど、全身で幸せを感じてるみたいでなんだかその疲れも嬉しいっていうか……えへへ」

 

 つみきは嬉しそうにお腹を撫でながらえへえへと笑う。

 

「結羽も早く絆成君が帰ってくるといいね」

「うん……でも私は急かすつもりは無いんだ。優也には自分のペースで生きて欲しいから」

 

 結羽は遠い目をした。

 羨ましかったのだ。確かに自身にも恋人が居たが、彼氏は都会の方へ出て行ってしまったから事実上の遠距離恋愛となってしまった。

 それから会っていないし、電話をしたりメールをするだけだ。だけど結羽は全く彼氏への愛は尽きていない。寧ろ期間が長引く度に会いたい会いたいと強く思うようになって更に愛が強くなって行くのを感じていた。

 

「そういう事を言ってると帰ってきた瞬間に寝取ってやりますよ柴野セ・ン・パ・イ」

「む? 露木ちゃん。それはどういう事かなぁ〜」

「痛い痛い! ごめんなさい! 許してください!」

 

 露木も結羽の彼氏の事が好きだった人物の一人。偶にこう言うネタを口走るが好きだった事を知っている結羽は気が気じゃなく、思わず過剰反応をしてしまう。

 露木はもう諦めており、現在は隣の県で一人暮らしをしながら会社で働いていた。

 

「露木ちゃんが悪いよ〜」

「真依先輩!? どうしてここに!?」

「居ちゃ悪いかしら? 私も一応『友達』の括りだと思うのだけど」

 

 現在、露木と真依は同じ会社で働いていた。そして真依は露木の上司に当たる人物なのだ。

 

「それにしても来るのか? 全く……同じ遠方からはるばる来た神乃さんも来てるってのに」

「多分優也は来ると思う」

「へぇー。まぁ、確かにあいつは何も言わずにすっぽかすようなタマじゃねぇもんな」

 

 悠真と光の坂戸夫婦。みんなにとって一番意外だったのはこのカップルだ。

 悠真と光が付き合いだしたのは卒業後。卒業後、二人は偶然再会したことにより一緒に遊ぶようになった結果、悠真から告白し、今に至る。

 光はあつしとつみきよりは遅いものの、身ごもっている。

 

「うぅ、親しかった人同士が次々と結婚を! しかも結羽ちゃんまでそっちに行くのね! およおよおよ」

「会長。そんな泣き真似は辞めてください。恥ずかしいです」

「そ、そうです! それに私も結婚してませんから!」

「でも婚約者が居るのでしょ? そんなの、結婚しているのと同じじゃない!」

 

 結羽はそんな元生徒会長の様子を見ながら引き笑いをしていた。

 

「でもまぁ、あいつも来るかは分からないしもう入っちゃうか? 来るなら招待状に店の名前も書いてあるから来るだろうし」

 

 そして全員が待つことを諦めて今居るメンバーで始めようとしたその時だった。

 店の目の前に1台のタクシーが止まったのである。

 そのタクシーからは真っ黒なスーツを来てサラリーマン的な風貌のおとこが降りてきた。

 サングラスをかけており、顔がはっきりとは分からないが、みんなは一瞬でその人物が誰なのかを見抜いた。

 

「ありがとうございます」

 

 男はタクシードライバーに礼を言うと、振り返って店を眺める。そして間違いない事を確認してから店に入ろうとしたその時だった。

 

「遅れちゃったし、みんなもう始めてるか……な…………っ!?」

 

 男は驚いた表情をした。その表情を見て全員確信を持った。そして決定打は驚いた表情をした後に男がサングラスを外した事だった。

 

『優也っ!?』

「おわっと、みんな!」

 

 優也はいきなり取り囲まれた事にビックリしたものの、直ぐに元の雰囲気に戻った。

 

「遅せぇよ。今まで何やってたんだよ」

「そうだ! 珠には連絡よこせ馬鹿野郎」

「悠真……あつし……」

 

 口調は強いが、心配してくれていた様子の二人に感謝する。

 

「そう言えば悠真と星野さん、結婚したんだってな。おめでとう。これ、結婚式に出席出来なかった詫びだ」

「うわぁ、高そうなお菓子だな。大事に食べさせてもらうよ」

「ありがとう」

 

 事前に優也は手紙で結婚した4人の事は伝えられていた為、結婚祝いを買って来たのだ。流石に悠真と光が結婚した事には優也も驚いていたが。

 

「あつしと白井さんも。おめでとう」

「サンキュー」

「ありがとうね」

 

 同じようにあつしとつみきにも結婚祝いを手渡した。

 

 そして他の面々の方も見る。

 

「手紙を読んだんですが、白波さんと露木ちゃんって今、一緒に働いてるんですよね?」

「ええ、そうね。彼女は本当によくやってくれているわ」

「そうでしょう。俺の自慢の後輩ですからね」

「なんで先輩が誇らしげなんですか……」

 

 優也的には露木は一番可愛がっていた後輩だった為、少し心配だったのだが、手紙で真依と一緒に働いてると聞き、少し安心したのだ。

 

「神乃さんもお疲れ様です。長旅で疲れましたよね」

「絆成君程じゃ無いわよ」

 

 そして一通り挨拶が終わった所で優也は最後に結羽の方へと向いた。

 

「結羽」

「優也、おかえり」

「ああ、ただいま結羽」

 

 久しぶりに会えた感動からか優也は人目もはばからずに結羽を抱きしめた。それによって結羽の顔はリンゴみたいに真っ赤に染る。

 

「まぁ積もる話もあるだろうし、立ち話もなんだからとりあえず中に入ろうか」

 

 それから席に着くと各々今まであったことを話し出した。

 その中でもみんなに会える確率が低い優也と夕香のの事が一番話題に上がった。

 

「俺は何とか医師免許を獲得出来た。んで、こっちの病院に配属される事が決まってこっちに来ようとしている時に招待状が届いたからタイミングが良かったんだ」

「そうなんだ。どちらにせよまたあえて良かったよ」

「俺もだ結羽」

 

 二人とも、随分と会えなかった反動で愛おしさが限界突破している。今にもこのままキスを始めてしまいそうな雰囲気だ。

 

「良かったわね。彼氏が帰って来て」

 

 真依は不貞腐れてチューチューと飲み物を飲む。それに同調して露木も不貞腐れてチューチューと飲み物を飲んだ。

 

「そう言えば結羽、プレゼントがあるんだ」

「え、何?」

 

 そう言って優也が取り出したのは小さな小箱だった。

 

「開けてみてくれ」

 

 結羽は手渡されたので言葉通りに直ぐに開けるとその中身を見て先程優也が抱きしめた時よりも顔が真っ赤に染まり、頭から湯気を出している。

 みんなはどうしたのだろうと結羽の方を向き、全員の視線を集めた。

 

「ゆ、優也! こ、これって……そう言う意味だよね?」

「ああ、そうだな」

 

 その中に入っていたのは――指輪だった。

 

「結羽。俺、約束通りに医者になって帰ってきたぞ。だから俺と、結婚してくれ」

「……うん……私も、優也と結婚したい」

「結羽、ありがとう。待っててくれて」

「ううん。こっちこそ約束守ってくれてありがとう」

 

 こうしてまた一組のカップルが誕生した。

 

「よし! 今日は同窓会兼絆成夫婦の誕生を祝して、飲むぞ!」

『おーっ!』

 

 悠真の司会により会が再開した。

 これからどうなるのかは誰も予想は出来ない。だけど優也と結羽はどんな困難もくぐり抜ける事が出来るような謎の自信があった。

 

 そして数ヶ月後、優也と結羽はみんなに見守られながら結婚式をあげた。

 

 

 Fin




 はい!これにて『こんな僕に彼女は必要なのだろうか?』完結です!

 ここまでどうでしたかね? かなりグダグダしたシーンもありましたが、僕的には結構楽しくかけました。
 それにしてもやはり長い事書いてた物が終わるってのは考え深いですね。
 この話は僕が書いた作品、二作品目です。
 完結は三作品目ですが、僕の書いてきた中で最長……いや、なろうで書いてる物の方が長いですが、まぁ週投稿では最長です。

 そして皆さん。ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました!

 恐らく今後は気が向いたらこの作品のアナザーストーリー。もしもの話。そして、この本編の番外編、まぁ今回の話から更に数年後の話を投稿すると思います。

 そしてこのアカウントではもうこの作品以外のオリジナルは投稿せず、二次創作専用にしようかと考えています。

 オリジナル作品は小説家になろうの方で現在は『転生者は気まぐれ勇者〜勇者にはなりたくないけど大切な人は守り抜いてみせます〜』を掲載中です。

 ちなみにここでも現在は無意識の恋の第二期、『無意識の恋 Second stage』と『東方現代物語 〜最強の相談屋が華麗(物理)に事件を解決します〜』を掲載中です。

 こちらで書かせて頂いてる二作品は毎週投稿となっており、小説家になろう様で書かせて頂いてる転生者は気まぐれ勇者の方は現在は毎日投稿をしています。

 この作品が面白かったと思っていただけた方はそちらの三作品もよろしくお願い致します。

 最後になりますがこれまで読んで頂き、ありがとうございました。
 また別の作品でお会いしましょう。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

After

 はい!どうもみなさん!ミズヤです

 今回はこん彼のアフターです。前回のエピローグから数年後の話となっております。

 ここで毎週投稿は終わりとさせていただきます。また描きたくなったらこの続きやifとかを書くかもしれません。

 それではどうぞ!


「お兄ちゃん! 起きてお兄ちゃん!」

「あと3960時間……」

「そんなに寝てたら一年終わっちゃうよ!!」

 

 寝ている兄を妹が起こそうとしている。

 休日なのだが、兄は結構な寝坊助で、妹が起こさなければ永遠に寝てしまう可能性があるので毎朝起こすようにしている。

 兄の名前は優翔(ゆうと)。妹の名前は柚結(ゆゆ)。とても仲良しな兄弟だ。

 

 そしてその隣の部屋でも似たような光景が繰り広げられていた。

 

「あなた、起きて。あなた」

「お兄ちゃん……そんなに寝坊ばかりすると結羽(・・)さんに愛想つかされちゃうよ」

「それだけは嫌だ!」

 

 愛する妻に愛想を尽かされる。

 あんまり恐れたりするタイプじゃないものの、それだけはどうしても怖いのだ。

 結羽はエプロンをして如何にもさっきまで料理をしていた格好だ。

 ほんのりとリビングから良い匂いが漂ってきている。

 

 男は観念して起き上がると伸びをする。

 

「おはよう。結羽」

「おはよう。優也」

 

 絆成 優也は数年前、医師になりこの地へと戻ってきた。その時に柴野 結羽と結婚し、式も挙げ、籍も入れて今は絆成 結羽となっている。

 結羽はその名前を貰えたことが嬉しくて嬉しくてしょうが無く、絆成 結羽と書く度に頬が緩んでしまうほどの甘々っぷりだ。

 

「しかしお兄ちゃんがこんな素敵な人と結婚するとは思っても無かったよ」

「まぁ、あの頃はな……」

 

 優也をお兄ちゃんと呼ぶ元気な女の子。名を絆成 七海と言う。

 七海は少し前までは昏睡状態だった。しかし、なんと優也はそれを治してしまったのだ。有言実行をし、その時はないて喜び、目を覚まして退院した日にはパーティも執り行った。

 

「お兄ちゃん。そろそろ朝ごはんを食べないと時間がまずいんじゃない?」

「うわ、もうこんな時間か。早く飯食わねぇと」

「あ、ちゃんと噛んで食べてね」

 

 リビングへとダッシュしていく背中に結羽は言った。

 そんな優也の様子を見て結羽はクスッと笑った。何だか慌ててる優也を見るとあの再会の瞬間を思い出すからだ。

 数年思い続けた相手に再会出来た時の嬉しさは計り知れないものがあったのだ。

 

「さて、私も学校に行く準備をしますかね」

 

 七海はもう二十歳だ。しかし、つい最近まで昏睡状態だったため、勉学に取り組めていないって言うことで定時制の学校に通うこととなった。

 定時制だから夜からなのでまだ準備はしなくていいのに七海はだいたいこの時間から準備を始める。

 

「そう言えば優翔君と柚結ちゃん。見ていると昔を思い出すな」

 

 優也も七海に叩き起されていた。ただ一つ違うのは優しさだ。

 柚結は優しい。揺らしたりと優しい起こし方をする。

 対する七海は起きない時はボディープレスをするのだ。それか豆腐を食べさせる。優也は豆腐が嫌いな食べ物なのだ。

 

「いやぁ、まさかお兄ちゃんが医者にね……それに結羽さんって言う奥さんと優翔君と柚結ちゃんも居る。お兄ちゃん、良かったね」

 

 ☆☆☆☆☆

 

 他の皆も結婚した人は子供が生まれて育児をしている。

 そんな中、今も昔も関係が変わっていないのは、

 

 ピンポーン

 

「はーい」

 

 結羽がドアを開けるとそこにはつみきが居た。二人とも親になってから良く絆成家に集まって遊ぶようになったのだ。

 

「こんにちは結羽」

「待ってたよつみき。いらっしゃいすずちゃん」

 

 つみきの後ろに隠れている女の子、名前はすず。つみきとあつしの間に生まれた子供だ。

 すずは人見知りで何度も来たことはあるが、一向に結羽には慣れない。

 

「ん? お、すず」

 

 そこへ優翔がやっと目を覚ましてやってきた。

 優翔を見るとすずは優翔へと走って行く。そしてそのまま抱きついた。

 なぜだか知らないが、すずは優翔にベッタリなのだ。連れてきた時はずっと一緒に遊んでいる。

 最初こそ優翔にも警戒の意思を示していたが、今となってはデレデレである。

 

「お兄ちゃんは冷たいもんね。だから優翔君の優しさに惹かれたのかな」

 

 すずにも兄が居る。ここに来る時も誘ったのだが、誘いを断わってゲームをしていた。

 兄は少しすずに対して冷たい。つみきは照れ隠しだと分かっているが、冷たいので優翔が優しくしたら簡単に惹かれる様な性格になったのだろう。

 ただ、結果的には優翔に惹かれて正解だったのだろう。優翔はそこそこルックスも良いし、何よりも優しい。

 この優しさは優也と結羽の優しさのDNAを両方引継いでいるから物凄く優しく、困っている人を見たら見過ごせない性格になっていた。

 

 その性格に結羽は昔の優也を見た。

 あのサッカーボールで結羽を助けた時の優也を。優翔も将来、サッカーボールで人を助けるようになるんじゃないかなと思ってクスッと笑った。

 

「じゃあお茶を淹れるね」

「うん。お願い」

 

 すずが優翔に抱き着いているのを見て柚結は頬を膨らませる。柚結にとってすずは大好きなお兄ちゃんを奪おうとする敵なのだ。

 なので柚結も無言で近づいて優翔に抱きついた。

 

「ちょ、柚結!?」

「ふふ、モテモテだねぇ」

「これはモテモテって言うのか?」

 

 優翔は満更でも無さそうだった。

 優翔は誰かさんに似てシスコン、そしてすずはに少しだけ好意を持っているので抱きつかれて反応に困っている。

 

「それじゃあお茶会、始めよう」

「そうだね」

 

 今日もいつも通りの毎日が過ぎていく。




 はい!今回はアフターでしたが少しグダグダしてしまいました。少し反省です。

 次回は未定です。しばらくは残り三作品を重点的に書いていきますので新作はまだ無いですね。
 次書くとしたらオリジナルなのでなろうの方で書くと思います。

 それでは!

 さようなら


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。