プリズマ☆カズマ 雪下の誓い (こしあんA)
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1話 始まり

私の投稿している『もしもカズマがプリヤの世界に行ったら』を執筆している時に思いついた物です。決して『もしもカズマがプリヤの世界に行ったら'』とはそこまで関係ありません。なんとなく思いついたから、やろう!と思っただけです。数話程度で終わると思います。


 7つ数えるまでは神のうち

 数えて7歳までを迎えるまでの稚児は人ではなく神や霊に近い存在である。

 そんな伝承がかつてこの国にはあった。

 乳幼児の死亡率が極めて高かった時代子供は人と神の境目に立つ両義存在と見なされていた。

 今では失われた民族伝承だがこの地(冬木)には伝承の生き残りがいた。

 

 

 

 俺は衛宮和真。本当の苗字は違うけどもう覚えていない。ある火災の時、俺は衛宮切嗣という男に助けられた。その時俺は切嗣に憧れた。俺はその日から衛宮切嗣の養子として生きて来た。切嗣は魔術師で世界中を旅している。世界は終わりを迎えている。切嗣はそれを防ぐ為科学、魔術、宗教などいろんなものを試し、世界中を旅した。俺は旅の道中魔術の初歩だけ教えてもらった。強化魔術、解析魔術、変化魔術、治癒魔術など。

 

 そしてある情報を手に入れ冬木の地にたどり着いた。

 

 冬木にたどり着くと突然黒いもやの様なものが町の中心から溢れ出て、町を飲み込んでいた。

「な、なんだ…これ」

「カズマ、車に乗れ!引き返すぞ!」

「わ、分かった。」

 今の俺達いや、人類ではどうすることもできない。俺達はそう悟った。

 

 その時、何か神々しく純粋な何かがもやを消し去った。

 俺達は街に向かったがさっきの黒いモヤから避難する人達で溢れ渋滞になっている。

「俺先行くわ」

「まて、カズマ!」

 俺はさっき光った場所へ憶測で向かった。そこは竹林で一つ古びた家がぽつんと立っていた。正面から見た家の姿は何ともなかったが回り込んでみると家は崩壊寸前でそのすぐ近くにはクレーターが出来ていた。

 その崩壊寸前の家には幼い女の子がいた。

「君は……」

 人の家に勝手に入って家の人に誰と尋ねるのもおかしいと思うが俺はそう尋ねた。

 家が限界に至ったのか柱がみしみしと音が鳴り崩れそうになった。

 俺は強化魔術で足を強化し、走り出した。

 

 頼むまだ崩れないでくれ(・・・・・・・・・・・)俺はそう願った。すると瓦礫は一瞬止まった様に見えた。俺は女の子を抱き上げ家から脱出した。俺は間一髪脱出できた。

「あっぶねえぇ!危うく死ぬところだった。」

 脱出できたのは瓦礫が一瞬止まってくれたからだ。まさかこの子がそんな事をしたのか。

「くる…しい…」

 俺は自然と強く抱きしめていた。

「おっと、ごめん」

「かあさま以外にだっこされたのはじめて」

 

 

 

 

 その後切嗣も来てその家が代々書いてきた書物を読んでいた。

 どうやらこの子には人の願いを無差別に叶えてしまう力があるらしい。切嗣はこの子を使って世界を救うと決意した。そして俺達の旅は終わった。

そしてここ冬木の地で人類を救う。

 

そして3人の生活が始まった。

切嗣は全てを救える願望器(美遊)の使い方を調べた。だが使い方がちっともわからなかった。

切嗣は切り詰めていた。そのせいで重い病にかかってしまった。

俺は切嗣に後を託された。けど俺は本当にそれで良いのか迷っていた。美遊を犠牲にして人類全てを救う。それで良いのか。大体美遊を犠牲にしたら人類全てじゃ無い。それに切嗣も死んだ。俺の大好きな義理の父(父さん)も居ない。俺が欲しかったのはただ美遊と切嗣と一緒に暮らす事だけだった。

 

そうして俺はどうすることもできないまま高2になった。俺は弓道部に入っている。と言っても部員は俺を合わせて2人だけ。数年前のあの災害のせいで冬木の人口が激減している。

 

 

俺はいま昼飯を生徒会室で食べている。ジュリアンと一緒に。

「何故お前はいつもここで飯を食うんだ」

「まず第1は茶が入れられること。第2は1人で飯を食うのが寂しいからお前と一緒に食っているだけだ。」

「ッチ、迷惑な事を。折角1人で落ち着ける快適な場所だったのに」

「…お前俺以外に友達いないだろ」

「は?誰がお前なんぞと友達になった!」

「まじか友達じゃ無いのか。友達じゃ無い他人にそんなに馴れ馴れしく接してきてるのかぁ。全くどんな教育を受けてるのやら」

俺が挑発する様に言うと

「はぁ?上等だ、やんのかごら!」

「おお、友達じゃ無い見ず知らずの人を殴っちまうのかなあぁ!」

「チッ、お前といると調子が狂いそうだ」

「病院連れてくか?」

「やかましぃ!」

俺はそんな馬鹿騒ぎをジュリアンとして昼休みが終わった。

 

 

午後の授業も終わり部活の時間となった。部活に行く最中ジュリアンと会った。

「よぉジュリアン。帰りか?」

「ああそうだ、じゃあな」

「おう」

「そうだ、そういえばお前はあの災害見たか?」

「ああ、見た。」

「晴れた瞬間は?」

「…悪りぃ逃げるのに必死で空なんて見てねぇよ。怖くてずっと地面見てた。じゃ無いと気が狂いそうだった。」

本当は見たが切嗣に美遊の事はバレてはいけないと言われ言うに言えない状況だった。

「そうか、悪いこと聞いたな。」

「驚いたな…お前から”悪い”なんて言葉聞くとは思わなかった。」

「どう言う意味だぁ!」

「じゃ、じゃあ俺部活あるからそろそろ行くわ」

俺は急いで武道場へと向かった。決してジュリアンが怖かった訳では無い。そう怖くなんか無い。

「待てやごらぁぁ!」

嘘つきましたごめんなさい。めっちゃ怖いです。

俺は全力で逃げた。武道場に追い詰められれば逃げ場はない。だから俺は校舎を縦横無尽に駆け巡った。そして、俺は教室の教卓の下に隠れた。

「あの野郎どこ行きやがった。見つけたらタダじゃおかねぇ」

俺はジュリアンが去ったのを確認して急いで武道場へと向かった。

「はぁはぁ、疲れた。」

「大丈夫ですか先輩?そういえば何をしてたんですか?あっ、それとさっきジュリアンさんがここに来ましたよ。」

本当にあいつは執念深い。

「そ、そっか。じゃ、じゃあ部活始めようぜ。」

「はい、先輩。」

俺達は部活を始めた。部員は俺と後輩の間桐桜のみ。部活で女子と二人っきり…しかもめちゃくちゃ美人!

男としては嬉しい限りだ。だがそんなことを考えていると『先輩顔が気持ち悪いですよ?』と言われかねない。

 

 

俺はさっきまでの考えを消し、弓を構え意識を集中させ放つ。狙いは必中、的のど真ん中に矢が刺さる。

「一射一射ブレなく無駄なく殆どいえ、全部が真ん中に必中。まるで先輩自身が弓の様です。」

「はは、照れるなぁ。別にもっと褒めてくれてもいいんだよ。」

「それはさえ言わなければ満点なんですけどね。」

「だな。」

2人で笑い合った。俺はこんな日々が幸せだ。こんな幸せが長く続けばいいのに。

 

部活が終わり二人で下校している。そう二人っきりで!とてま嬉しい。だがそれで勘違いしてはいけない。もしここで『もしかして俺のこと好き?』と言えば『ごめんなさい!』と帰ってくるに決まっている。そう、期待してはいけない。ソースはアニメ。

 

「…先輩何か悩みがあるんですか?」

何エスパー?桜さんエスパーですか?

「いきなりどうしたんだ?誰だって悩みの一つや二つあるだろ。」

「そお……ですよね…私分かるんですその悩みを私に言ってくれないことを。」

「…まぁ恥ずかしい悩みもあるからな」

本当は嘘だ。本当に悩んでいるのは美遊の事だ。まあ確かに恥ずかしい悩みもあるけどな。

「そう…ですよね。いつかその悩みを聞かせてもらえたらな……なんて」

そう儚げに桜は言う。

「そうだな、その恥ずかしい悩みを言える覚悟が出来たらな。」

俺はそう誤魔化す。

 

 

そうして家に着いた。

「お帰りなさい。カズマさん。」

「ただいま美遊。」

美遊は今日肉じゃがを作ってくれた。

美遊はもう10歳になる。随分と人間らしくなった。いや、なってしまった(・・・・・・・)

俺には切嗣の様に道具として扱うことが出来なかった。かと言って完全に人の子として育てる事も出来なかった。と言うか俺の年でどう育ててやればいいかもわからない。だってまだ16歳だしその前は11か10くらいだったし。

与えてやれるのは当たり障りのない情報だけ。屋敷から一歩も出させる事も出来ぬまま経験を伴わない知識だけを得ていく。

その虚ろな目は中途半端な俺を映したかのように。

俺はどうしたかったのだろう。

いやもう答えは得ている。だがそこには切嗣は居ない。切嗣が居なくなってから俺の心の半分が空っぽになった。

切嗣がしようとした人類救済という願いを叶え続けるため美遊は魂ごと永遠に世界に縛り付けられてしまう。

俺にそんな事はできない。

ならもうとっくに答えは出ているはずだ。なのにどこかでそれを認めようとしない俺が居る。

今日も俺は鍛錬をしている。俺には初歩の魔術だけには誰にも負けないような才能を持って居たらしい。と言ったても初歩の初歩だ。それより上になるとちっとも出来なかった。投影魔術も出来るが何の役にも立たないし、イメージが難しい。部活で使っている弓や料理でいつも俺が愛用している包丁なら何とか投影はできるが直ぐぶっ壊れてる。

だから俺はそれ以外の強化魔術、解析魔術、変化魔術、治癒魔術の鍛錬をしている。

物差しを強化し、鉄パイプをまるで野菜を切るかのように物差しで切り刻む。その切り刻んだ鉄パイプを変化魔術で直す。そしてミスが無いか解析魔術で確認する。そして強化魔術で強化した物差しで指を少し切る。それを治癒魔術で治す。

こうしておれの日課の鍛錬は終わった。

「カズマさん鍛錬お疲れ様。」

「まだ起きてたのか。」

「うん。星座を探していた。」

「星座?美遊に似合わずロマンチックな事だな。」

そう俺が言うと天体の運行に物理以外の意味など無い云々言い出した。

やはりもっと絵本読ませるべきだった。

そう、俺の持ってた本は全て漫画本。流石に家に引きこもって漫画を読み続けるのはいろんな意味でまずいと思い悩んでいると俺の学校の本を読んで俺より詳しくなってしまった。特に理科に関しては驚異的だった。この物理理論がもっと知りたいとか言い出して俺が図書館で借りてきて、いつの間にかここまで来てしまった。絵本を読ませる隙間なくこれ借りて来て、あれ借りて来てと言われてしまった。無理矢理にでも絵本を読ませるべきだった。

 

俺は美遊の隣に座った。

「親父もここで星を見てたなあ。」

そう、虚ろげな顔をして毎日毎日飽きずに星を見ていた。俺はその姿を見るのも好きだった。

「切嗣さんが?どうして?」

「星に願い事をしていたのかもな。」

多分切嗣も悩んでいたのだろう。心を殺して美遊を道具のように扱おうと。でも心を殺しきれずきっと苦しみながらあそこまで進んでいったんだろう。

「星の並びに何らかの魔術的作用が⁉︎」

やはり美遊はブレない。

「いや、そういうんじゃなくて、おまじないみたいなもんかな。内に秘めたささやかな思いなんかを星に願うんだ。」

「月じゃなくて?」

「月じゃなくて。まぁどっちでもいいと思うけどな。なんなら月と星両方に願っちまうか。」

人の願いも自分の願いを勝手に叶えてしまう美遊の力はもう何年も見ていない。」

もしかしたらあの時俺が願った願いが最後叶えることの出来る願いだったのかもしれない。

ああ、いっそいっそのことそうであったなら。そんな事を星に願ってしまう俺は。

「……星に願い事……もし、一つだけ叶うのなら…カズマさんと本当の兄妹になりたい。」

美遊は願った。自分にでは無く。星に願い事をした。

「なんて駄目…だよね。」

「駄目なわけないだろ。」

 

傲慢な俺は最後に月にも願い事をした。

もし叶うのならこのまま美遊と一緒に暮らしていたい。この生活が永遠に続いて欲しい。

 

 

俺は図書館から一般的な生活のマナーについての本などを借りて来た。

「さぁ美遊、勉強を始めよう!」

「……いきなりどうしたの?」

俺は美遊に困った顔をされてしまった。

「一般的は教育ってやつだ。美遊の読んだ本はだいぶ偏ってるからな。」

「そうなの?でもどうして急に?」

「…近い内に一緒に外に行こうと思う。」

「外って?……だったら私海が見たい!」

俺は美遊の食い付き具合にびっくりした。

「OK、了解だ!」

 

俺は美遊に本を渡した後学校に向かった。

途中今は廃校になった小学校を見つけた。この学校が今もあったら美遊に通わせられたのに。その時校舎から金髪の子が見えた。

「何してるんですか先輩?」

いきなり桜に声を掛けられてびっくりした。

「小学校がどうかしたんですか?」

「いいや、別に。そうだ!桜はこの小学校にかよっていたのか?」

桜は昔の頃のことを考えて暗い顔をした。俺は桜の地雷を踏んでしまったのか。

「昔のことはあまり思い出したくありません。」

「悪い。」

「なーんてうっそでーす。」

なんだろうこの笑顔。殴りたい。

まあ手を出すほどクズじゃないけどな。

「私は今が一番幸せです。優しい先輩がいて…人は少ないけど普通に学校に通えて。そんな何気無い日々の繰り返しが私は幸せです。」

それは俺が昨日、月に願った事と殆ど同じ願い事。

そうだ、俺は美遊を道具として使い人類救済はしない。これからは美遊を、この日常を。

 

俺は切嗣との誓いを破り自分の道を進むことに決めた。

 

「ニヤケてるな。気色悪い。何かいいことがあったのか?」

「いや、まぁあったっちゃあったけどな。そういえば今日小学校で金髪の縦ロールでポニーテルだったな。妹にも…って大丈夫かジュリアン!」

ジュリアンは熱々のお茶をこぼした。

「全然熱くねー!」

「強がってんじゃねーよ!」

 

こうして幸せな日々は過ぎていった。

 

「さて行きますか。」

「うんお兄ちゃん。そうだ、前からずっといってみたかった。”行ってきます”」

俺達は街をいろいろ回って海へと向かったが、海に行く前にしなくてはいけない事がある。

 

「お兄ちゃんここどこ?」

「美遊の本当の家族の墓だ。覚えてるかな?ここは初めて俺と美遊が出会った場所。そして、美遊の生まれた家だ。」

「家?母さま……たちのお墓?」

俺は話した。俺と切嗣で助けられなかった美遊以外を埋葬したことを。

「そっかここであの時私はひとりぼっちになっていた私を切嗣さんとお兄ちゃんが助けてくれたんだね。」

違うそれは違う。俺と切嗣は美遊を利用しようとした。それを伝えてそしてここからもう一度始めるんだ。一から。今度は兄妹として。

「聞いてくれ美遊……俺と切嗣はお前を助けたかったんじゃない。」

「え、そんな。嘘だよね?」

「聞いてくれ美遊。でもな……」

「くだらねぇー」

それは聞き覚えのある声だった。そこに現れたのは

「くだらねぇ…心底くだらねぇ筋書きだなクソが!てめぇだったんだな、衛宮和真!」

 

 

ジュリアンだった。




投影魔術はカズマは決して使いませんよ。無駄ですから。あと治癒魔術はこのすばのヒールの劣化版です。
変化魔術の使い方ってあんな感じでいいんですかね?間違ってたらそれはそれというわけで。
誤字脱字が酷いかもしれませんが寛容な精神で許してください。
寛容って漢字合ってますか?




1回目2017年11月25日修正完了。


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2話 喪失

どうしましょうかね。どこで終わりにしましょうか。ドライの登場もしたいんですよね。まぁそうなるかはわかりませんけど。と言うか戦闘が起こるまで漫画の展開と同じなんですのね。早く戦闘したい。


「ジュリアン…どうしてここに…?」

 ジュリアンは今までに見た事の無いような恐ろしい顔で俺達を睨んだ。

 美遊はその威圧感に押されている。

「大丈夫だ。美遊。」

「あれで間違いないか?エリカ。」

 ジュリアンは誰と話しているのだろう。電話らしき物は持っていない。

 するとジュリアンの後ろからはこの前小学校に居た子が出てきた。

「性質は多分なくなってるけどまだ、器は残ってる。」

 性質?まさか美遊のあの力のことを見る事が出来るのか。けど器とはどういう意味だ。その性質が無くなっているのならもう美遊は普通の女の子の筈だ。

「ずっとここを監視していた。人が消えたこの町でわざわざここに立ち入る人間が居るとしたら町から出て行った朔月家の親族か、あるいは盗人だけだ。町を飲み込んだ浸食。それを祓った光の柱はここから登っていた。ずっと探していた。この世の奇跡とそれを奪った盗人を!」

 俺は選択を間違えたのかもしれない。いや、きっと間違えた。切嗣が言ったように、外に出さず人目に触れさせてはいけなかった。俺は守らなくてはいけない。美遊を。

 俺はメジャーを取り出し、強化した。

「逃げるぞ美遊。」

「逃げるってどこへ?」

 そうか、だよな。俺達も結局のところ美遊を捕らえていた。それを美遊に告げた。そんな俺の家も逃げ場では無い。だから今の美遊には逃げる場所なんて無い。

 でも、俺はジュリアンを殺す覚悟も無い。

「くだらねぇ。これで俺を殺すのか?」

 俺にはそんなことできる筈無かった。俺はまた選択をミスった。あの時だったらまだ逃げれたかもしれない。

「や、やめろ。ジュリアン。血が…」

「何でお前なんかが…堕ちろ。」

 すると俺の足元から変な物が現れた。気づくと俺は空中にいた。俺は受け身もロクに取れず、背中から落っこちた。

 グシャッ

 という音が鳴った。痛い。物凄く痛い。さっきので骨が何本か逝った。

「ずっと探していた。朔月美遊、今日をもってお前は俺の所有物(モノ)だ。」

「や、やめろジュリアン。」

「五年前の侵食事故を止めてくれたのがそのお姉ちゃんなんだね。本当に良かった!お姉ちゃんが居てくれればまた事故がおきても大丈夫!」

 何を言っている。美遊は事故を防ぐ為だけに使われるのか。そんな事は駄目だ。

「まさかお前が町を、人々を、美遊の家族を消し去ったあの、あの闇を引き起こしたのか⁉︎」

 頼む。違うと言ってくれ。

「そうだ、私がやった。」

「ジュリアン!」

 俺は腕を強化しジュリアンへと殴りかかった。

 その時、空から俺に剣が刺さった。俺は気を失ってしまった。この怪我ではもはや助からないだろう。

 

 夢を見た。これが走馬灯というやつか。俺は切嗣に助けられた時の事を。

「親父」

「気が付いたか。残念ながら私は君の父親ではない。」

「ここは?」

 俺は起き上がろうとしたが、体に激痛が走った。

「あまり動かない方がいい。治癒は久しぶりでな。効果は保証できん。」

 そう聖書を持ったラーメン屋の服装をした謎の男が言ってくる。

「あんた誰?俺の事助けてくれたのか?」

「そうだ私だ。溺れる者に藁を差し出すくらいの事はしよう。これでも聖職者の末席を汚す身だ。」

 と、そう言ってくる。ラーメン屋の服装をした男が。

「どう見てもラーメン屋の亭主だろ。」

「そう言われては仕方がない。私も装いを正すとしよう。」

 そう男が言い、下に降りて着替えに行っている間に俺は自身に解析を掛け、怪我の酷い部分に治癒を掛けた。あいつが応急処置してくれたお陰でそこまで酷い怪我にはなってなかった。

 俺はあいつの居る下に降りた。

 

「ようこそ冬木協会へ。私は言峰綺礼。この世の終焉を見守る神父として迷える子羊の来訪を歓迎する。」

 謎の男は言峰綺礼と名乗り、厨二病みたいな事を言った。

「そうか、本当に神父だっんだな。じゃあ急いでいるから。」

「どこに行こうというのかね?」

 言峰がムスカのような事を言った。

「朔月美遊が連れ去られた先も分からぬだろうに。」

「じゃあお前が知ってるのかよ。」

「ああ、知っているとも。」

 なぜそんな事を神父なんぞが知っているのだろう。

「情報を収集し、展望を熟考し、覚悟を胸に選択せよ!」

 また厨二病発言をして来た。そんな難しそうな言葉使わずわかりやすく言えよ。神父という仕事柄上そういう言葉を使う事はしょうがないと思うかもしれないけど。

「そうしなければ君はまた間違えるだろう。」

「どう…いう事だ⁉︎」

 こいつはなぜそんな事を知っている。俺はこいつから色々教えてもらった。

 こいつは切嗣のことも知っていた。

 そして俺は美遊を連れ去った者の目的と正体を教えてもらった。

 

 エインズワース

 千年続く魔術師の名門にして、基礎魔術の「置換魔術」にしか特性を持たぬ出来損ないらしい。

 だが彼らは自身の工房がある限り原作を遥かに超えた置換魔術を行使するらしい。

 そして彼らの悲願は「人類史の継続」それは切嗣が夢見たものと全く同じであった。

 切嗣が目指した正義の味方と同じ事をするジュリアン。切嗣の夢を継ぐのは俺ではなくジュリアンだ。けど俺は美遊を取り戻すと決めた。

 そして聖杯戦争というものを教えてもらった。

 五年前に起こった災害は聖杯戦争の影響らしい。でその器が美遊というわけだ。つまり美遊は死ぬこともできず、ずっと何もする事を出来ず世界に縛られる。

「選択せよ衛宮和真。傍観か、敵対か。」

「そんなの決まってるだろ。敵対だ。」

「ほう、少しは迷うと思ったのだがな。」

 質問しておいてそんな事を言うか。

 

 俺はこの男からジュリアンの居場所を聞きここに来た。ここは闇のせいでできたクレーター。俺はそこを歩き探すが見つからない。

 どうやら結界を張り、侵入を防いでいるようだ。

 結局俺はどうする事を出来なかった。

 次の日ジュリアンは学校に来なかった。

 父親も妹も友達も失った。俺はどんどん失っていく。

 俺はあの神父から概念は概念でしか打ち破れないと聞き、黒鍵を二本買い取った。

 俺は黒鍵で結界を攻撃するが何の意味もなく黒鍵は壊れた。やはりあの程度の概念礼装(オモチャ)では駄目か。俺は何も出来ないまま一ヶ月がたった。美遊は今頃何をしているのだろう。

 

「先輩?」

 声をかけた人物は桜だった

「桜。どうしてここに?」

「買い出しの帰りでして。偶然ですね。もしかしてこのお屋敷が先輩のお家なんですか?」

 桜はキョロキョロとしながら尋ねる。

「上がっていくか?」

「いいんですか?」

 俺は桜を家に上げ、料理を作った。

 そしてご飯も食べ終わり、桜は身支度をした。

「桜さえ良かったらまた家に来てくれても構わないぞ。」

「嬉しいですけどこれが最後です。」

 桜は悲しげに言って来た。

「学校に行って、部活をして、一緒に帰って、「また明日」って……それだけのことが私にとって宝物でした。でもそれも終わり。聖杯戦争が始まりました。」

 桜は泣いていた。俺は桜の泣いた顔を初めて見た。俺は桜の事をちっとも知らなかった。いつも笑顔でいた。俺は桜の笑顔しか知らなかった。

「聖杯戦争。カードを使って自信を英霊と化し殺しあう……御三家と呼ばれる魔術師の家系が作り上げた儀式です。間桐もその内の1人なんです。」

 騙していたのか!と言いたくなったが、俺にはそんな事を言う資格は無い。俺だって桜に言っていないことがあった。それに、桜の瞳がその問いを拒んでいた。

「……」

 静寂がこの時を包み込む。

「残念です。もっと取り乱してくれると思ってました。」

「多分俺は失う事に慣れちまったのかもな。」

 桜は涙を堪え、

「嬉しいです。失ったって思ってくれるんですね。」

 桜の声は震えていた。俺は桜の傘を拾い、桜に傘をさし、聞く。

「それで俺を殺しに来たのか…」

「先輩は意地悪ですね……このカードを渡します。このカードの英霊は英雄王ギルガメッシュ。間違いなく最強の一枚でしょう。」

 どうしてそんな事をするのだろう。そんな事をしても桜には何の意味もないのに。

「美遊ちゃんを助けだしたいのなら聖杯戦争の勝者になってください。可能性は限りなく低くてもこのカードなら不可能ではないかもしれません。…けどもう一つ許されるのなら、逃げてください。魔術のことも美遊ちゃんの事も忘れてどこか遠くへ。先輩がそれを選んでくれるのなら、私も全部捨てて一緒に!」

 逃げる…か。そんな事思いもしなかった。けど俺は美遊を助けると決めたんだ。

「桜!悪い。俺は…」

 その時桜に何かが刺さる。それはロープが付けられているナイフだった。




いやぁ漫画見て被らないように少しずつ台詞などを変えるの大変ですね。とりあえず4話までは一応作り終えています。あとは誤字脱字。表現不足の確認。サブタイトルを考える事なんですよね。

まあ誤字脱字なんて山ほどあるからなあ。見直ししてるだけでも"ん?"って思うことありますからね。


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3話 敵対

ようやく戦闘シーンが書ける。ここからようやくカズマっぽくなってくる。


 桜は飛んで来た何かに刺され倒れた。

「軽いなァ」

 家中に張り巡らせた敵性探知警報が鳴る。

「お前は誰だ!」

 桜を刺したナイフはその男の手へと戻っていく。

「本当にお前は尻の軽い妹だよ。さくらぁ…お兄ちゃんがキョ…キョ…強制?共生?…矯正してやらないとなぁ!」

「お前は桜の兄なのか⁉︎ならどうして⁉︎」

 するとこの男は爽やかな顔をし、

「そうだよ僕こそが間桐家の正式な後継者名前は間桐…マトウ…………なんだっけ?」

 明らかに様子がおかしい。 その歳で認知症の訳ないだろうし。

「まあいいか、こいつら殺せば何か思い出すさ。」

 あの男はナイフを投擲してきた。

 俺は傘を強化し、それを弾く。

「はあ?なんだよそれ。おかしいだろ。どうして防ぐんだよ。インストール。」

 あの男はインストールと叫ぶと顔には骨のマスクが付いており、腰には黒い布を着けていた。さらに腕からはロープが生え5本ほどナイフが付いていた。

 俺は桜を連れて家に逃げ込んだ。

「はぁはぁ。なんなんだよあいつ。」

 お俺達はひと休憩していた。すると、桜の後ろから気配もなくあの男がいきなり現れた。

「桜!」

 俺は桜を庇い、窓を破り外へ出た。そのとき俺はあいつの攻撃を受けてしまった。

「先輩血が!」

「逃げろ桜。今の俺達じゃ勝てない。だから…お前だけでも逃げて幸せになれ!」

 桜は覚悟を決めた。桜はカードをかざした。

「インストール!」

 しかし何も起こらなかった。

「え?」

「ハハハハハッ‼︎お前が裏切る可能性なんて想定済みなんだよ!お前なんかにギルガメッシュのカードを渡す訳ないじゃん!それは正真正銘屑カードなんだから!」

「そんな、先輩……」

 桜はこっちに振り返って何かを言おうとした。

亡奏心音(ザバーニーヤ)

「ごめんなさ…」

 桜は消えていなくなってしまった。俺はまた失ってしまった。

 どうしてこんなに失ってしまったのだろう。

 それはきっと失った人だけを見て残った人を見なかったからなのだろう。だから俺は全て失った。

 俺が握ることができたのはただのカードだけ。

 俺はあの男に蹴り飛ばされ土蔵に飛ばされた。

 俺は体と衣服を強化した。

 俺はあの男の斬撃で切り刻まれている。痛い。とてつもなく痛い。俺に鋭く浅い痛みが続けてやってくる。その痛みは俺の体に蓄積され痛みがドッと襲ってくることもある。もう意識もだんだん薄れてきた。

「まだ生きてるよな。アサシンの使い方も分かったし、もう殺すね。」

 そいつは笑顔で言ってきた。俺はこんな奴にやられるのか。俺はせめて一矢報いたいと思った。けど何もできない自分を呪った。

「なあ…聞かせてくれよ。「あぁ?」妹を…殺すってどんな気分だ!」

「射精の百倍気持ち良かったぜ⁉︎お前もやってみろよォ‼︎」

 (奇跡)は無く(希望も無く)()も閉ざされた。それでもまだ俺が残っている。

 だからこれは祈りでは無く。傲慢でどうしようもなく無価値な俺への誓いだ。

 

 俺はなんの英霊とも繋がっていないカードをインストールする。何故そんな事をしたのかは自分でも理解できない。でも体が先に動いていた。俺は光に包まれ英霊化することが出来た。何故だかは分からない。けど出来た。今はそれが分かればいい。

 俺は腕を強化し、俺へと飛ばされるナイフ5本を日本刀で全て斬る。

「は?」

 俺は革製の胸当てと金属製の籠手、同じく金属製のすねあてと日本刀と弓矢を装備していた。

「な、なんなんだよお前⁉︎なんなんだよその目は!」

 俺の目には何も残っていない。光も闇も。今認識できること今目の前の敵を殺すということ。

「なんなんだよぉぉ!」

 男は後ろに移動しながら牽制にナイフを飛ばしてくる。

 だがたかがナイフの数本ではどうということはない。

 回避スキルが発動しナイフを避ける。

 俺は走り距離を近づけ刀で襲いかかる。

「ひひっ、甘いんだよ。僕の腕は千切れても働き者さ!」

 さっき切ったロープ状のものは俺の刀に絡まった。確かにこれでは刀での攻撃は出来ない。ただそれだけのこと。

 あいつは足に付けた剣で襲いかかってくる。

 俺は刀を捨て腕を強化し、顔を殴る。

「聞いてないぞこんなの!桜が待ってたのは間違いなく屑カードだったはず。おかしいだろインストールなんて出来るはず無いんだ。なんなんだよ。誰なんだよ!その英霊は!」

「別に、それら辺にうようよいる英霊擬きだよ。」

 この英霊は未来の俺、もしくはどこか違う世界の俺のなる姿だ。何らかの理由で異世界に飛ばされ魔王を倒した英雄。ただそれだけ。体力だってそこまでない。下手したら今の俺の体力以下だ。体力が自分以下の英雄に力を借りるとはな。

「さては…繋げやがったな!隠し持っていたんだな!何かの英霊に由来する遺物を。そいつで屑カードを英霊の座に繋げたんだな。ずるいじゃないか。ずるいずるいズルイ…卑怯者め…いつもそうだ。みんないつも僕を。」

 俺はそいつの言葉を無視し、彼女のマフラーを拾った。

 それはもうとっくに冷たくなっていた。

「おいおいなんで、お前俺のこと無視するんだよ。まさか、まさかまさかマサカ僕より強くなった気でいるのか!」

「お前さ、暗殺者(アサシン)向いてないよ。」

 俺はそう冷たく言い放った。そう、まだ俺の方がアサシンは出来る。

「オマエモボクヲォバカにするのかぁぁ」

 そういうとあいつのロープ状のものは伸び、体全身を覆いアサシンというよりは怪物だった。

 そこから伸びる無数のナイフは確実に俺の急所へと向かってくる。だがそんなもの脅威でもなんでもない。さっきの方が余程驚異的だった。

 俺は弓を構え距離を置き連続で放った。

「”狙撃”」

 俺は大体の位置を狙い、放つ。放たれた矢は一つのズレもなくナイフに当たり相殺する。

 そして二本の矢が怪物に当たる。

「フユカイナンダヨォ!僕が、ジュリアン様から授かったこのカードを使う僕こそが最強なんだよ!」

「そんなものが最強なわけないだろ。笑わせるんじゃねーよ。」

 俺は何本も矢を放つ。

「”狙撃”」

 皮肉だな全く。皮肉なことばかり考える俺にはふさわしいのかもしれないが、心も体も空っぽになったから俺は今技能と武器をつかむことができた。

「グギャアーー」

 まだ吠えるか、ならこの一撃で終わらせる。俺は矢を変化魔術と強化魔術でより硬く、強化し、鋭い形に変化させる。

 俺はあの化け物に狙いを定める。

 その時彼女のマフラーが目の前に飛んできた。

 

『まるで先輩自身が弓のよう。』

 

 

 俺は血が上った頭を冷やし心を落ち着かせる。

 そして俺は敵感知スキルを発動させる。すると後ろに微妙に分かりづらいが微かに反応があった。

 やっぱり。

「桜、ありがとう。」

 俺は変化させた矢であいつを刺した。

「なんで……どう……し…て気が…つい…た?」

 俺は矢を抜きそいつに教えた。

「自分で言ってただろ。”僕の腕は千切れても働き者さ”ってだから言ったろ。相手に自分の存在をばらし、情報をもばらす。だからアサシンが向いてないんだよ。」

 さっきまで威勢の良かった表情はなく、今は地を這いつくばっている。

「い、嫌だ。死にたくない。死にたくない。死にたくない。」

 俺は頭にきた。

「桜だって同じ気持ちだった。」

「そんな事はわかってんだよ。そんなのは世界中誰だってそうだ!だからジュリアン様は!…あ」

 そいつはようやく何かを思い出したかのような顔をした。

「ようやく思い出した。…くそっ!何がジュリアン様だ!なんだよ僕はとっくに終わってたんじゃないか。僕もお爺様も誰もかれも!…疲れた。もう十分だ。殺してくれ衛宮。」

 俺はさっきの矢で背中から心臓めがけて深々と刺した。

「…先に地獄で待っててやる。」

 地獄…か俺は地獄にも行けず消えて無くなるかもな。

 さっきの男は人形に変化した。いや人形に戻ったと言った方がいい。つまりエインズワースは人形に人の魂を入れ人形を人の形にしていたという事だ。そんな事許せるわけない。

 俺はそばに落ちていたカードを回収した。

 それからエインズワースの手先が毎日続々と襲ってきた。

 

 敵は空を飛び、魔術の弾をマシンガンの如く飛ばしてくる。

 俺は足を強化し、走る。

 俺は走りながら矢を放つ。

「”狙撃”」

 矢は魔術の弾と弾の間をすれすれに通り敵めがけて飛ぶ。しかし敵の一歩手前で魔術障壁で軌道をそらされる。

 俺は強化された足で高いところへと飛び移る。俺は魔術の弾丸雨飛の最中俺は敵めがけて前進し続ける。魔術の弾丸が俺の肢体を撃ち抜こうと飛ばされる。俺は体を逸らし魔術の弾丸をギリギリで躱し、さらに足を強化する。

 俺は敵の近くまで近付くとジャンプし敵の体を刀で貫く。だがやはり英霊と言うべきだろう。そいつは心臓に当たってはいないといえど致命傷になってもまだ抵抗する。

 俺は刀の刀身を掴み詠唱し呪文を唱える。

「”ライトニング”」

 電流は刀を通り敵の体全身に電流が走る。そいつは心臓麻痺で死亡。

 

 次の日。

 金髪の男は赤い槍を持ち体には水銀が付いている。

「”スカルプ”」

 水銀が俺めがけて襲ってくる。

「”ライトニング”」

 電流が水銀を通りその男へと流れる。

「ガハッ」

 だが浅い。金属は電流を流すが流しすぎだ。いろんな場所に分散されあいつの食らった威力はそこまでない。だが攻撃がやんだ。これなら。

 俺は腕を強化し、刀を抜き襲いかかる。だがそいつもすぐ気を取り直し槍で応戦してくる。

 突きの攻撃を俺は刀で軌道を逸らし、斬りかかるがそれを槍で受け流される。

「終わりだ!”ゲイボルグ”」

 飛ばされた槍は俺の心臓めがけて飛んでくる。

 

 ゲイボルグ

 それはケルト神話に出てくる英雄の持つ武器。ゲームにでもよく出てくる強そうな武器。それは対象者の心臓めがけて飛んでくる槍。狙いは必中。

 ゲイボルグは雷の如く飛んでくる。そのせいで軌道が全く読めない。

「”クリエイトウォーター””フリーズ”」

 俺は氷の壁を作りその槍を防ぐ。だが槍は衰える事を知らずその威力が上がってきている。

 俺はさらに水を出し凍らせ壁を補強する。だが結局突破された。

「”回避”」

 俺の回避スキルが発動する。俺はギリギリ避けることができた。

「ほぉ、この槍を凌ぐか…いいだろう。次の一撃で仕留めてやる。」

「”クリエイトアース”」

 俺は手のひらに砂を生成する。

「”ウィンドブレス“」

 手のひらの砂を風で飛ばし敵の目に当たる

「…ゲス…め!」

 俺は刀で心臓を突き刺す。

 

 次の日

「■■■■ーッ!」

 今日の敵はちょっと違う。前まで戦ってきた奴らはまだ喋ることができた。だが今日の敵はその機能すら無くなっていた。

 そいつはもう突進しかしてこなかった。

 俺は刀を強化し体を真っ二つにした。

「これで終わりか。呆気ないな。」

 俺は帰ろうとした。だが

「■■■ーッ」

 そいつは起き上がった。体も真っ二つにしたはずなのに再生していた。

 またそいつは突撃してきた。

「突撃の一点張りか。バカめ。」

 バカは俺だった。俺はまたそいつを真っ二つに切ろうとしたが刃がちっとも通らなかった。

 日本刀とは遠心力などを利用する事により凄まじい切れ味で生身の人間だったら真っ二つに出来る。それがどんな筋肉の持ち主であっても。

 それなのに今度は体の表面で弾かれていた。と言うよりも打ち消されたと表現する方が相応しい。

 敵はものすごい速さで殴ってくる。俺は刀で受けるが威力が高すぎて吹き飛ばされる。

「がはッ」

 俺は背中を壁に打ち付ける。体が軋み悲鳴を上げる。痛がっている間にも敵は接近してくる。

 

 きっと一定以上の威力以下の攻撃は通用しないのだろう。

 だったら

「”クリエイトアース””ウィンドブレス”」

「■■■■■ーーッ⁉︎」

 砂は敵の目に入り苦しんでいる。どうやら砂は一定以上の威力らしい。もしかしたら、威力は一定以上でないと食らわず、食らうのも一度限りなのかもしれない。その威力に達すると言う事はやはり自然()の力は偉大だ。

 俺は敵が苦しんでいる間に詠唱を始めた。

「”インフェルノ”」

 地獄の業火とも言うべきほどの炎は敵の体を燃やし尽くし炭にした。それでも復活する。どこまで復活しようが関係ない。こちらの技能とそちらの命どっちが先に尽きるかの勝負だ。

 復活するには時間があるのはさっき刀で殺した時に分かっている。

 ならその間に詠唱をするだけ。

「”カースドライトニング”」

 黒い稲妻はバーサーカーめがけて飛翔する。敵は黒い稲妻を喰らい黒焦げになっていた。

 また詠唱を始める。

「”フリーズバインド”」

 敵を一瞬で下半身を氷漬けにした。

 抵抗できない敵にドレインタッチを使い衰弱死させる。俺は再び詠唱を始める。

「”カースドクリスタルプリズン”」

 今度は全身を氷漬けにし、さらに氷は半径七メートルはある。氷漬けにされた敵はどうすることもできずに窒息死した。

 俺は復活した敵を見る。まだ氷は壊しきれていない。

 そしてついに氷りから出てくるがまたそこで生き絶える。合計で二回絶命した。俺は今のうちに詠唱する。もし詠唱が間に合わなかったら俺の負け。だがあと何回殺せばいい。もう8回は殺したはずだ。流石に無限に復活するはずはない。どこかで限界がくるはず。あと五回は殺す覚悟をしなければならない。できればその五回のうちに死んで欲しい。

「”トルネード”」

 その竜巻はまるで刃のように敵の体を切りつける。竜巻が消えると敵の体はズタズタに引き裂かれていた。

 まだ敵は再生する。

 俺は再び詠唱を始める。

「”ライトオブセイバー”」

 俺は手に稲妻の剣を宿し敵を切り裂いた。だがもう俺にさっきと同じほどの威力のある一撃はない。いや、でも待てよ。何故一回と思っていたんだ。その疑問は氷漬けにした時にふと浮かんだ。あの時は数回命を奪えた。つまり一回しか殺せなかったのは刀…いや俺の技量不足。だったら少しでも技量を上げるのみ。技能ならある。それなら俺がすることは技量を高める。

 考えろ。もう氷漬けは通用しない。ならあと何回命を奪えばいいかわからない敵に最も命を奪える技はなんだ。考えろ。インフェルノはダメージは与えられても死にはしない。トルネードも多分あと一回。それならまだそれは残しておきたい。なら残されているのはライトオブセイバーかカースドライトニング。カースドライトニングは表面からの攻撃には期待できない。内側からやれば確実に殺せる。ライトニングの上位互換なのだから。でも電流が入り俺が狙えるまでの傷を俺がつけられるはずがない。残るはライトオブセイバー。

 集中しろ。集中してその技を見切れ。どう技量を高める。理解しろ。この英霊なら出来るはず。なんせこの英霊は他人の技を真似する事だけをしてきたのだから。

「習得完了」

 俺は形だけのスキルを心の底から理解する。いや無理矢理理解させられる。記憶の中に俺には無いこの技を愛用する黒髪、灼眼の女の子。胸は桜ぐらいあるだろう。

装填完了(レベルアップ)

 俺の中の何か(スキルポイント)何か(スキル)失う(消費)される。

「全行程完了。」

 俺の知らない事が次々と頭の中に入ってくる。

「真・稲妻の剣(ライトオブセイバー)

 俺は魔力を右手に凝縮させ稲妻の剣を生成する。今度は密度を高めるためより短くする。それは剣という長さよりダガーだった。

 俺は敵の懐に入り込みライトオブセイバーで細切れにし、二度と復活できないようにする。

 どうやら流石に蘇生はもう出来ないらしい。

 俺はカードを拾い家に帰った。




バーサーカー強過ぎんよ。一発でも食らったら死ぬから描写難しいんだよ。


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4話 光と稲妻

題名てきとうです。ハイ
もうね全部書き終わりましたよ。あとは見直しをするだけ。え?なにそんなのはいいから早く投稿しろだって?
多分無理。


 俺は家へと帰るとバタッと倒れた。敵の体力を吸ってたとしても流石に疲れた。俺はご飯を食べすぐに寝た。

 

 夢を見た。それは違う世界の俺が散るところだった。その俺は魔王を爆裂魔法とやらを使い洞窟ごとぶっ壊し、落石により魔王共々死ぬところだった。

 

 俺は目が覚めた。目覚めは最悪。頭もまだガンガンする。二日酔いになった気分だ。酒飲んだ事ないけど。

 多分あのライトオブセイバーを使ったのが原因だろう。と言うよりもあんな大技を使ったのになんで俺はピンピンしているのだろう。普通ならあんなに連発できるはず無く、出来たとしても相当寝込むはず。

 まあ今わそんな事を考えている暇はない。7人で殺しあう。あと残るクラスはライダー、セイバー、アーチャー。アーチャーは俺が使っているから残り2人。どうせその2人も俺を狙ってくるのだろう。

 俺は朝食を摂り外に出た。

 

 今相手している敵はおそらくライダー。今までの敵で一番速い。だがそれだけ。前の復活してくる奴を見た後ではハエ同然。あんな奴の攻撃を直に一発でも食らったら俺は死んでいた。と言うかあの時攻撃を受けたせいで今日の朝ずっとジンジンして痛かった。

 

 ハエ同然といっても英霊は英霊。そんな事を考えて高を括っていたら死んでしまう。今は目の前の敵を倒すだけ。

 

 敵は縦横無尽に駆け巡り俺の懐へと入ってくる。俺は刀で防ぐ。すると敵は距離を置く。ヒットアンドアウェイはかなり厄介だ。しかも障害物があるせいで敵がその俊敏性を使って奇襲してくる。ライダーなのにアサシンみたいなことしてるとか。全く"お前ライダー向いてないよ"って言ってやりたい。

 俺は意識を集中させ矢を強化し、敵感知スキルを使う。もしこの一撃が外れれば俺は死ぬし、当たれば俺の勝ち。

 敵感知に反応があった。それは上だった。俺は矢をつがえ放つ。

「”狙撃”」

 放たれた矢は真っ直ぐ進む。敵はそれに気づき体制をずらす。だがもう遅い。矢は敵のこめかみに刺さり頭を貫いた。

 

 俺はカードを回収した。

 残るは1人セイバー。

 

 次の日

 墓地で2人の英霊擬きが戦っている。正規の英霊と不正規の英霊の戦い。

 セイバーの持つ剣は不可視の剣だった。

 セイバーの剣技に俺の剣技が勝てるはずもなく俺は剣の軌道を逸らす事で精一杯だった。

「それだったら。」

 俺は変化魔術で刀を矢のように真っ直ぐに長くした。俺は矢をつがえ放つ。矢は腕の防具と防具の間に刺さり貫いた。柄のお陰でそれは突き通らず腕に深々と刺さっている。

 これでまだやれる。

「ハンデはまだまだうけてもらうぞ!”バインド”」

 俺はセイバーを拘束し、ドレインタッチと不死王の手を発動させる。

 だがすぐ拘束は解かれてしまった。だが弱体化は出来た。それだけでいい。

「”ティンダー”」

 俺はダイナマイト数本を着火させセイバーへと投げる。セイバーの鎧はボロボロになった。だがそれだけ、それは表面上だけで内側はあまり被害を受けていない様子。

 敵は片腕で剣を空高くへと掲げた。

 絶対何かくる。そう思っていると剣から不可視の何かが消え本当の姿を現わす。それはその英雄がいた地だけで無く日本でさへ伝わり世界で知らない人の方が少ないとされる剣。どちらかと言うと英雄より武器の方が有名になったやつだ。

 俺は急いで詠唱をした。

約束された勝利の剣(エクスカリバー)

「ライトオブセイバー」

 光の剣と稲妻の剣の対決。

 だが相手の剣は片手だけで使える代物ではない。俺は姿勢を低くしセイバーの懐へと入り斬りつける。

 これで勝利した。

 するとヘルメットが割れ、その男の顔が見えた。

「ジュリ……アンを…たの…む」

「な、なんだよそれ」

 どこからは拍手の音が聞こえる。

「おめでとう衛宮和真6人の敵を倒し7枚のカードが揃った。此度の聖杯戦争は君が勝利者だ。しかし墓地をここまで荒らすとはな。」

 確かに。仏様に悪いことしちまった。バチが当たるかもな。いや絶対当たる。

「悪かったな。」

「いいや、目的の為とはいえその他の犠牲は構わない。なかなか似てきたではないか。」

「何とだよ。」

「いいやそれは言わない。自分で考えろ。」

 うざ

「人形とはいえど親友の父親すら手にかけたとはな。」

「う、うそだろ。」

 俺はジュリアンの父親を。

「ザガリーエインズワース。この哀れな魂に安らぎあれ。……さて衛宮和真7枚のカードを持って妹を迎えに行くが良い。」

 もうおれは迷わない。俺はそう決めたのだから。

「美遊はどこにいる⁉︎」

 俺は言峰から情報を聞いた。

 美遊のいる場所はかつて龍が棲まうとされた円蔵山。そのはらわたに広がる地下大空洞にあるらしい。俺はそこへ向かった。

「よお、随分と久しぶりな気がするな。元気にしてたかよジュリアン。」

 言いたい事はたくさんあった。けど今言うべき事はひとつだけ。そう。たったひとつ。

「美遊を返してもらうぞ!」

「それが人類全てに対する裏切りだとしてもか?この星に満ちた悲劇から…約束された滅びから、人類を全て救える可能性があるのにか?個人の、たかがお前1人のくだらない感情で全てを無にすると言うのか?笑えねぇ、笑えねぇんだよそんなの最低の悪なんだよ!」

 その台詞はどこか切嗣に似ていた。1人で背負って、頑張って、失敗してそれを無くそうと努力した俺の知る中で一番の努力家。切嗣に似ていた。

「驚いたな。お前も独りで戦い続けてきたんだな。」

「知ったような口聞くんじゃねぇ!」

「知ってるんだよ。1を殺して全を救う。俺は知っている。」

 切嗣は今天国で見ていてくれているだろうか。悪いな切嗣。俺は間違っていたとしても俺は切嗣とは違うこの道(一を救う)を行くよ。

「だがなジュリアン。お前は知らないだろ。美遊の家族の事を。初代から美遊の代まで連綿と記録が綴られていたんだよ。あらゆる願いを叶えてしまう神稚児。その力を独占してきた美遊の先祖達が何を願ってきたのかを。」

「………」

 ジュリアンは沈黙してただただ俺の話を聞く。

「彼らはただ子の健やかな成長を願った。富も繁栄も思いのままだったのにさ。四百年もの間ひとつの例外もなく!それを悪だのなんだのと言うのなら、俺は悪でもグズでもなんでもいい!」

 そう、悪になるのは俺だけでいい。クズは俺1人で十分だ。美遊の家族まで汚される必要は無い。そんな事俺が許さない。

 




ライダーの扱いはやはり酷い。ちゃんと考えたんですけどベルレ使われると難しいですからね。短期決戦なのはしょうがないね。それよりこれでイリヤ達のところにカズマのカード行ったら結構やばいんじゃないの?バセッド相性悪すぎですね。でもイリヤがカズマのカード使うってことですよね?クロも。……見てみたいかもですね。そこだけ書くっていうだけならやろうかな?


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5話 異界の英雄VS人類最古の英雄王

そういえば後書きで書き忘れてましたがカズマがライトオブセイバーを使った時の事一応説明しておきます。
無理矢理力を引き出したからなんの代償も無いはずありません。ですのであの時カズマの中にあったスキルポイントが全部負担してくれていました。そのせいでスキルポイントゼロです。
士郎みたいになんの対価も無しにカズマのやった事をしたらまず壊れます。
まぁ大丈夫なのはカズマの運がいいからですよ。


 俺は洞窟の奥へと進んだ。

 俺はようやくたどり着いた。ようやく美遊に会うことができた。

「お…にい……ちゃん?」

 美遊の目はあの時よりも虚ろだった。

「どうして…来たの?あの人達から聞いた。お兄ちゃんと切嗣さんが私を拾ったのは私を使う為だって。私は道具で使い方を見つけられなかった切嗣さんの代わりにエインズワースが私を使って世界を救うんだって。……なのに今更…どうして…来たの⁉︎」

 美遊はこんなにも苦しんでいた。なのに俺は何もしてやることもできなかったなんて。

 それにまだあの続きだって話せていない。

「そんなの考えるまでもない。お兄ちゃんなんだから妹を守るのは当然だろ?それにまだ言えていないこともあるしな。」

「え?」

「美遊が拐われた時言いかけていた言葉。それにはまだ続きがある。美遊を道具としようとした。だけど俺にはどうしてもそんな事はできない。だからその事を美遊に伝えて許してもらおうとは思わない。だけどそこから新しく『兄妹』として行こうとしたんだ。自分でも勝ってな奴だとは思うよ……けど…この願いだけは……本当だから。」

 俺はあの日言えなかった事を全部言った。

「美遊、こんな傲慢なお兄ちゃんの願いを聞いてくれますか?」

「もちろん!」

 美遊の目からは光が戻り涙を流していた。

 俺は七つのカードを掲げた。

「我聖杯に願う。美遊がもう苦しまなくていい世界になりますように。

 優しい人達に出会って、笑いあえる友達を作って、あたたかでささやかな……幸せをつかめますように。」

「おにい…ちゃん」

 これが俺の聞く美遊の最後の言葉になるだろう。

 さて、残った俺のする事は敵の足止めだけだ。

「悪いな、妹が頑張ってるんだよ。もう少しだけ待ってくれないか?」

「ならぬ、貴様の望みは叶わない。聖杯戦争に紛れ込んだ偽物が聖杯を手にする事などあってはならぬ!」

「それが本物のアーチャーのカード、ギルガメッシュか。」

 

 

 ある男は夢見た。この世全ての救いを。

 ある男は選んだ。種の継続を。

 俺は願った。たった1人の願いを。

 

 

 敵の宝具が雨のように降ってくる。俺は衣服と体をを強化し、耐える。

「カードを持たすただの人間が生身で英雄王の前に立ち塞がるなど愚昧極まる。そのまま地に臥して許しを乞うがいい。…だがもし立ち上がると言うのなら次は命を撃ち落としてやる。」

 そう奴は言い放つとまた黄金の波紋の中心から武器が出てくる。その波紋は無数に点在する。

「そうか、思い出した。お前はあの時の奴か。」

 6人の敵と戦いその武具を見て来たから俺でもわかる。無造作に飛ばされて来た剣が全て紛れも無い一級品の宝具。

「古今を問わず、東西を問わず、人類が成した財の全てがこの英霊の力だ。」

 それじゃ未来のやつもあるんですかね?空気砲とか、あの某猫型ロボットの持っているやつとかね。おっとふざけてる場合じゃないな。

「なるほどな桜が『最強のカード』って言ったわけだ。」

 俺はフラフラとしながら立ち上がる。

「人類ねぇ。お前らがめっちゃでっかい事を背負ってるのは分かるけどな…俺も背負ってるんだよ。」

「個人の感情か、あるいは感傷か。いずれにせよこの世で最も下らぬものだ!」

 そいつが怒った顔はどこかジュリアンに似ていた。

 

 ーーーー

 円蔵山に行く前。

 しっかしなぁ、どうするかな。今から行っても絶対邪魔入るだろうな。7枚のカードを使ったら俺は武器無くなるからな。

「しっかしこれどうするんだ。」

 俺はセイバー戦で形を変えた日本刀を見ていた。それは剣としては使えるが本来の用途とは違う用途になる。日本刀はもはやレイピアになっていた。

「まぁどうにかなるか。それにこのカードともお別れだもんな。」

 俺は弓道で使う弓具を持って円蔵山へと向かった。

 ーーーー

 エインズワースにとって誤算だったのは俺が屑カードを英霊に繋げたこと。その英霊が自分自身だという事。そして知る由もなかったろうな。自分のカードを使い続けた者がどうなるかなど。自分が至るかも知れない未来。そいつを憑依させ、戦闘を続けて来た俺はその技能を先取りし、俺は戦うごとに英霊カズマに置換(侵食)されていった。

 

 敵は無数に剣が俺へと飛翔してくる。

 俺は3本の矢をつがえ放つ。

「"狙撃"」

 3本の矢は剣へと当たる。当たった矢は軌道が逸れ他の剣にも当たる。当たった剣も軌道が逸れ、他の剣に当たり相殺される。そして全ての剣は俺に当たる事は無かった。

「バカな!その芸当。あり得ない。その戦い方は!」

「俺をただの人間と言ったな、認識が甘いぞ英雄王!お前が挑むのは正真正銘英霊の成り損ないだ!」

「貴様、エインズワースの目の前で偽物を称するか。その罪、命でしか償えないと知れ!」

 敵は飛ばしてくる武器を増やした。流石にこれを弓で捌ききる事は不可能だ。

 剣も持ってない。…ん?持ってない?なら作ればいいだけの事!

「"クリエイトウォーター""フリーズ"」

 俺は両手にショートソードの形をした氷を作り出した。俺へと飛んでくる武器だけを防ぎ、一歩ずつ着実に進む。

 すると俺の足元から黄金の波紋が出現した。そして大剣が俺を突き刺そうとして来た。

「"回避"」

 俺の回避スキルが偶然発動し避ける事が出来た。そして俺はまた前進する。

 それまであいつの宝具はどれほど斬り伏せたかは分からない。

 今度は上と下から黄金の波紋が現れた。

「"ウインドカーテン"」

 俺は風の障壁を展開した。だがこんなのは気休めにしかならない。ちょっと軌道がずれるだけ。

 そして武器が一つ俺へと向かってくる。

「"ウィンドブレス"」

 普段より魔力を込め放たれた風はその武器を吹き飛ばす。

「とうに死に体のはずだ、だと言うのに貴様の技能は高まるばかりだ、だがなどんなでたらめを弄してもその先にあるのは明確なる破滅のはず。」

 全くどいつもこいつも戦闘中にペラペラとお喋りをよくするなぁ。

「戦闘中に話しかけるとか馬鹿かよ。」

「何?」

 俺にはそんな余裕はなかったのにな。あーあこれだからチート持ちはよ。

「俺にはそんな余裕なかった。そうでなきゃ俺は生き残れなかった。」

 そう、あんな連中に勝てたのは奇跡に近い。俺が出来るのは精々相打ちが限界だからな。きっとこいつが俺の魔王(ラスボス)なのだろう。

「偽・固有結界」

 

 ここは宇宙果てのどこかの星にあるダンジョンの最も深い場所。そこは違う世界の俺の散った所でもある。

「さぁラウンド2だぜ英雄王(ラスボス)。悪いが付き合ってもらう俺の(スキル)が尽きるまで。」

 俺はそう吐き捨てると即潜伏スキルを使い隠れた。

「フェイカー風情が、どこに行った。」

 俺は千里眼スキルと敵感知スキルがあるからあいつの居場所が手に取るようにわかる。

「"狙撃"」

 俺は矢を飛ばす。

「そこか!」

 矢は当たったがそれで方角がバレ武器を広範囲に飛ばしてくる。

「"クリエイトウォーター""フリーズ"」

 俺は氷の壁を生成する。範囲が広いため集中して放たれる事がないので防ぎきれる。

「ええい、めんどくさい!」

 黄金の波紋から光るなにかを取り出し辺りにばら撒いた。そのせいで普通の明るさになってしまった。

「そこにいたか。次こそは逃さん。」

 こうなっては弓の出番などもう無い。それにもう一本しか残っていない。俺は弓を捨てた。

「"クリエイトウォーター""フリーズ"」

 俺は一本の剣を生成する。

 もう俺に出来る事は接近して斬る、スキルを叩き込む。それだけ。

 俺は前進する。飛んでくる武器は殆どが風の障壁により軌道を逸らされる。

「ち、これならどうだ!」

 今度は発射速度も上がっていた。俺は氷の剣を投げた。

「"スティール"」

 俺は飛ばされる剣を奪っては捨て、奪っては捨て、を繰り返した。それでも全部は奪えない。だから一つは捨てずに残し、それで武器を撃ち落とす。

「貴様ごときが王の財を手にしてもいいと思っているのか!」

 敵の攻撃は更に激しくなる。それでも俺は進みあと一歩へとなった。

「チッ」

 あいつは無数の盾を置いた。

「"クリエイトアース"クリエイトアースゴーレム"」

 砂のゴーレムを創り出し、盾をどかせる。

「"ブレードオブウィンド"」

 風の刃は敵を斬りつけた。だがそれは当たらなかった。

「舐めるなよ、エインズワースを!」

 それは空間置換だった。そして気が付いたら俺は空中に居た。

「貴様の時間稼ぎき付き合う義理はない。児戯は終わりだ。来い!イガリマ、シュルシャガナ!」

 そこに現れたのは物凄く大きな剣と灼熱の剣だった。

 

 

「"ライトオブセイバー""カースドプリズン""バインド"」

 俺は魔力を使い詠唱を省略して無理やり発動させた。

 ライトオブセイバーは大きな剣を切り裂きカースドプリズンは灼熱の剣を凍らせた。そしてバインドで剣にロープを縛り付けさせ俺は登り下敷きになるのを防ぐ。

「まさか神造兵器を壊すとはな。いいだろうこの一撃、貴様が相応しい。」

 その剣と言えるか分からないものからはおぞましい何かを感じた。

 あれなら俺の中にあるスキルで最も通用するのはあれしかない。それは悪魔だろうが魔王だろうが神さまだろうがどんな存在にでもダメージを与えられる爆裂魔法。俺はゴーレムに出来るだけ持ちこたえるように命令した。

「黒より黒く、闇より暗き漆黒に我が真紅の混交を望み給う。」

 俺の脳裏には知らない黒髪の女の子が浮かぶ。そして俺の中から大事な何かが消えてゆく気がする。思い出そうとしても思い出せないきり…つぐの顔。ん?切嗣?だれ…だっけ?俺は思い出そうとしてももう思い出せなかった。義父の、妹の、親友の、後輩の顔も名前も。全て忘れ去っていった。それを埋めるかのように知らない記憶が入ってくる。

「覚醒の時来たれり無謬の境界に堕ちし理、むぎょうの歪みと成りて現出せよ!」

「原初に還れ!」

 そうして2人は同時に発動させるのであった。

「エヌマエリシュ!」

「エクスプロージョン!」

 

 そしてついにやってきた。〇〇との別れが、

 俺の中から大事な何かが消えた。大事な繋がりが、それがなんだったかはもう覚えてはいない。でも"俺の中の何かが"、その思いだせない者のために戦えと言っている。

 

 俺は威力を上げる為に生命力を使った。

「はあぁぁ!」

「何ッ!」

 爆裂魔法は敵の攻撃を上回り押している。

「バカ…な…エアが…負けた……だと」

 勝ったぜ、名前も顔も思い出せないけどな。

その後俺は爆裂魔法を制御できなくなり体の内側から爆発してしまった。

固有結界は崩れ崩壊した。

 

 やはりラスボスとの戦いは必ず相打ちになるのだろう。

 そう、きっとそれが俺の運命(fate)なのだろう。

 

 

 

 ーーーー

「……とう……」

 なにを言っているのだろう。よく聞こえない。

「佐藤和真さん」

 佐藤?ああ、俺の名前か。確か俺は妹の為に…妹?俺に妹なんていたっけ?ああ、違う。そうかゲームを買った帰りに女の子を助ける為に突き飛ばして俺は死んだのか。

 親友は…ん?親友?ニートの俺にそんな奴いたっけ?あっ!ネット友達か。

「ねぇ聞いてる?」

「うっせえななんだよ!」

「たっくムカつくわね。まあいいわ寛大なアクアさまは許してあげる。それよりあなたは先程死にました。」

「そうですね。それより突き飛ばした女の子は?」

「ああ、それね。」

 アクアとかいう女は散らかった書類を漁った。

「あら?なんであんたの書類が二つあるのかしら?普通1人一つなんだけど。まぁ印刷ミスとかよね。」

 おい、天界ってのは随分現実的だな。

 

 

 

 アクアが捨てた書類は衛宮和真の本当の死因だったのだ。

 こうして衛宮和真としての記憶は失い、佐藤和真として魔王を倒すのであった。

 

「さあ!選びなさい。誰にも負けない力を!」

どれにするか、これはゲーマーの勘だがどれもチート能力に違いない。

「ねぇ早くして。ニートなんかに期待してないからさ」

俺の中の何かがキレた。

「じゃああんた。」

「へ?」

 和真とアクアは異世界の地へと旅立ったのだ。

 

 

 カズマが美遊の事を思い出すことは二度と無かった。




本当にこの結末でいいんでしょうか。これ結構辛いですよね。もう兄妹の再会は無いんですから。
この結末を思いついたからこれをやったんですけどね。マジで心が辛かった。
もうちょっとカズマと美遊が幸せになってもいいと思う。
でも士郎みたいにエア食らったら死にますけどね。


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6話日本へレッツゴー

コメントのアイデアを参考に続編を書くことにしました。いやぁ1時間程度で終わらせたからね。誤字脱字酷いんだろうな。


月日は流れ今は魔王と最終決戦となった。

「ふん、人間の、それもたかが冒険者風情がよくここまで俺を追い詰めた。こんなに追い詰められるのは初めてだ。褒めてやる。もう貴様に用はない。早く逃げるがよい。」

俺は魔王に追い詰められ魔王はテレポートで逃げて良いと言ってきた。だが俺にそんなつもりはあまり無い。本当は逃げたいけど。

「分かったよ。」

俺はテレポートの詠唱のフリをして違う詠唱をした。

「じゃあな魔王"ライトオブセイバー"」

俺は魔王を不意打ちした。その後アクア達と再会し、魔王を倒した褒美に願いを叶えてくれると言った。俺の願いなんて決まっている。

 

そう、その願いのきっかけとは

俺は王都にいた時に飲まされた記憶消失のポーションを飲まされ、その後アクアがヒールを使って戻してくれた。その時に全て思い出した。俺が妹の為に戦って死んだ事を。義父の、後輩の、親友の名前も顔も全て思い出した。

だから願いは美遊のいる世界へ飛ばしてもらう事だ。俺はそれをお願いした。するとアクアもめぐみんもダクネスも来てくれるという。

俺らはアクセルに帰り装備を整えた。俺は弓を購入し刀を持ち、余ったマナタイト5個を持ち俺達は地球へと向かった。その前にバニルにこれを持っけと魔道具を無理やり買わされた。

それはなんでも俺と同じ地球からきた人が某アニメに憧れて50メートルの壁を出現させるものを作ったらしい。それは特に何の意味もなく壁を作り出すだけの代物で誰も買わなかったがそのガラクタをウィズが買ってきてしまったので俺に押し付けてきた。

 

俺は地球へと飛ばされた。

「戻ってきたのか。」

ここは前よりも雪がひどくなっている。やはり地球は終わりを迎えようとしているのか。

「カズマここは?」

「俺の元の世界だ。」

「うそ⁉︎地球は確かに魔力ももう少ないけどこんな悲惨な状況にはなってなかったわよ。核戦争でもしなければ。」

それはどこぞの世紀末の世界だろ。一緒にすんな。

「待ってカズマ!穢れた存在を感じるわ!あのクレーターらしき所から!」

そこはエインズワースの拠点だった。そこを見るといきなり岩山が出てきた。しかも千里眼スキルを使ってよく見ると美遊がいた。

「行くぞお前ら!早くしないと俺の妹が!」

「「「妹?」」」

「いいから!」

俺達はそのクレーターへと向かった。

ーーーー

謎の黒い四角の物体からは泥が溢れでて泥の英霊が湧き出てくる。一万にも等しい英霊は美遊達へと襲いかかる。

その英霊は一体一体が雑魚ではなく本物の英霊。いやもはや聖杯を求める亡者。

「「「せい…はい」」」

ーーー

俺達はクレーターへと向かっている最中黒い四角物体が現れた。

「なあアクアあれ何か分かるか?」

「よくわ分からないけど、人類を絶望へと導く何かとだけは分かるわ。」

日本担当のアクアですらそこまでしか分からないとなるとエインズワースはどうやって神の目を欺いてきたのだろう。

俺達はひたすらクレーターへと走り続けた。

 

 

ーーーー

無数の泥の英霊は矢を放ちその一万にも等しい矢は凛とルヴィアとバゼットへと飛んでくる。その三人は防ぐ手段を持っていない。もうダメかと思うと声が聞こえた。

「"クリエイトウォーター""フリーズ"」

ーーーー

 

 

 

俺達はなんとかクレーターまでたどり着いた。

するとそこは泥が溢れていて泥の人形が大勢いた。

「アクアあれ浄化できるか?」

「多分できるわよ。でも無限に湧いてくるからきりが無いわ。」

「それでもいい。」

「めぐみんは近くまで行き爆裂魔法の準備。ダクネスは盾役を頼む」

「「了解」」

俺はアクアに支援魔法をしてもらい全速力で走った。

無数の泥の人形は矢を放ち雨のように落ちてくる。流石に矢では相殺できないし恐らくあれは鉄製の矢。つまりウィンドブレスでは防げない。なら

 

「"クリエイトウォーター""フリーズ"」

 

氷の壁は矢を防ぎきった。

俺はマナタイトを使い上級魔法を唱える

 

「ライトオブ……セイバー」

稲妻の剣は泥の人形を、いや英霊を切り刻んだ。

「よお久しぶりだなジュリアン。お前が善のため(美遊)を殺すというのなら俺は何度死んでも地獄から戻り悪行を成そう。覚悟はいいか正義の味方!」

「衛宮…和真!貴様死んだはず。」

残念だったなトリックだよ。

 

俺はバニルから渡された魔道具(ガラクタ)を使い、50メートルの壁を登るための坂とした。

 

「お兄ちゃん!」

 

俺は坂を登り美遊のところへと向かった。

 

「悪いな美遊。守ってやらなくて、一緒に居られなくて、今度こそ終わらせてやるよ」

 

俺は優しく美遊の頭を撫でた。

俺は坂を登るが、あいつが出てきた。俺と戦い爆裂魔法で一緒に吹き飛んだ奴が。

 

「貴様だけは通さん!」

 

「お前まだ生きてたのかよ。しぶといな。ゴキブリかよ。」

 

「黙れ!フェイカー」

 

「お互い様だろカウンターフェイター!…"ウィンドカーテン"」

 

飛ばされてくる武器は風の障壁によって軌道が外側へと逸れる。

「分かっているだろ、その程度では防ぎきれんと。」

 

俺はちっとも使っていなかった刀で剣を弾き進む。

 

やつは更に飛ばしてくる武器を増やしてくる。

俺はカードを使わずにスキルポイントをウィンドブレスの威力上昇と魔力消費軽減にふる。

「習得完了、強化完了。全行程完了。『ウィンドブレス』!」

威力が上がったウィンドブレスを空いている片手で使い、剣の軌道を逸らし進む。

だがウィンドブレスも消え剣で弾くしかなくなった俺はひたすら剣を弾き回避スキルなどを駆使して避ける。

これではあれを使うしか無い。

「"クリエイトウォーター""フリーズ"」

俺は氷の壁を生成し呪文を唱える。

 

「黒より黒く、闇より暗き漆黒に我が真紅の混交を望み給う。」

武器は氷の壁に傷をつけヒビが入りだす。

「覚醒の時来たれり、無謬のの境界に堕ちし理。」

更に氷にヒビが入る。俺の体は更に英霊カズマに侵食されてゆく。入ってくるのは違う人生を歩む自分。

「むぎょうの歪みと成りて現出せよ!」

 

氷の壁は遂に壊れ、剣が体を貫いていく。致命傷とは程遠いが、集中が途切れた俺は身体中に完成途中の破壊のエネルギーが走り回る。

それをなんとか抑えることはできた。

だがもう目の前には無数の剣が俺を待っていた。また俺は死んじまうのか。美遊を守れずに、そんなとき一人の女の子がその剣を弾いてくれた。

 

その女の子は俺の装備と同じ様な…お腹を出しているのは気になるが俺と同じ刀も持っていた。

 

「お前は?」

「美遊の事とか、そのスキルの事とか聞きたいことは山ほど、でも手を貸すわ、お兄さん。」

 

 

 

 

「ターンアンデット!」

アクアの浄化魔法はその魔法ひとつだけで100人ほど浄化した。だがまた出てくる。

「うそまた出てくる。しかも私だけ狙ってくるし!かじゅまさーん助けて!浄化してもきりがないの!」

アクアはカズマの様子を見た。

「う…そ」

 

それは毎日めんどくせぇとか言って働かないいつものカズマとはちがった。カズマは一人であの武器を飛ばしてくる敵に一人で立ち向かっている。しかも魔王と戦いその傷が癒えていない状態で。アクアは治すと言ったがそんな時間があるなら早く行こうと言い治癒をまともに受けなかった。

 

そんな状態でカズマは戦っている。めぐみんもダクネスもその姿を見て驚いていた。

そして三人はカズマにばかり任せてはいられないと。ダクネスはカズマが出した坂の下で泥の英霊の猛攻に耐えている。

「うそ…なんなのあいつら。」

イリヤはセイバーのカードをインストールしダクネスの所へと向かった。

「手伝います。」

「いや、いい!」

「え?」

「この欲に深い黒い男どもに嬲られて最後は抵抗できずにやられて辱めを受けるなんて…考えただけで武者ぶるえが」

どうやらこの人はダメな人そうです。でも戦わないと。

 

「エクスカリバー!」

 

 

 

 

後ろを見ると美遊は仲間と一緒に戦っていた。どうやら美遊はもう一人じゃないらしい。俺はそれを見ると安心した。というか美遊の方が俺より強くない?空飛んでるし。

 

「参ったなこれじゃ兄貴の威厳が地中奥深くに沈んじまいそうだな。まあまずは「ええ先ずは」この雑魚を蹴散らさないとな。」

 

魔王を倒した俺なら、いやこいつらとなら勝てる。

 

「おぞましいな、フェイカーが二人吐き気を催す光景だ。」

「なに…あれ?」

「見た感じやばいやつとだけ言えるな。そして迎撃は不可能。」

 

上下に繋げられた置換魔術によって加速された武器はとても速かった。回避スキルが発動しても掠ったのだ。

「「"クリエイトウォーター""フリーズ"」」

俺達は氷の壁を分厚く生成する。氷の壁が壊れる瞬間俺達は前に進む。刀は捨て氷の剣を2つ作り出す。

そして剣を氷で弾き一歩でも多く進む。

「「"狙撃"」」

氷の剣を投擲し、また剣を作り出しそれを投げる。

そして氷の剣を変化魔術で形を変形させる。

サメの歯の様にギザギザになった剣で俺はあいつを斬る。

だが奴はまたあの時同様置換魔術でそれを防ぐ。

「無駄だ…死ね」

剣を取り出し俺の首を切断しようと剣を振りかざす。やっぱりそうきたか。

やつがある異変に気付く。

「ようやく気付いたか間抜け。」

果たして俺は今どんな顔をしているのだろう。

女の子はあいつの背後にテレポートし、潜伏スキルで気配を消し置換魔術を消すまで待つ。そして俺に気を取られ置換魔術を消した瞬間斬りつける。

 

「武器を飛ばすだけのお前の宝具は見飽きたな。道を譲れ、英雄王!」

 

俺は走りジュリアンの所へとたどり着く。

だが俺は武器を奪われ自分の武器で斬られた。

「ダメですよ…先輩。」

それは桜だった。なんで、なんで桜が。だって桜はあの時。

 

「お前は…

俺はフラフラしながら立ち上がった。

「いい加減目障りだ衛宮和真…叩き出せ!」

「はぁーいジュリアン様!」

赤髪ツインテールの腕にハンマーを付けた女が襲いかかる。

 

「回避」

 

危なかった。今の完全に死ぬ。とりあえず脱出しなければいけない。俺は急いで降りようとしたが坂は壊されていた。周りを見渡すと美遊がここに来ていた。しかも桜が美遊を殺そうとしていた。

俺は強化魔術で足を強化し走る。

「シャドウハンドオブコール」

俺は美遊を掴んだ。だが黒い泥が俺達を襲いかかってきた。逃げられない。

 

「回避」

 

また俺は回避スキルに助けられた。ここにいては危険だ。俺はそう判断し美遊をお姫様抱っこし、飛び降りた。そいえば着地の方法考えてなかった。

 

俺はマナタイトを使い最大出力をだした。

「"ウィンドブレス"」

俺は魔力を全て使い風を起こし着地の衝撃を和らげた。そして強化した足で着地する。

その時足からグキッという不吉な音が鳴る。今ので理解した。

足首をくじきましたぁぁ!

「かじゅまさーん。助けて何回やってもこいつら湧いてくるの。どうすればいいの!」

どうやら泥の英霊は神に救いを求めアクアに集まるのだろう。

 

「おっと!手が滑ったぁー!」

 

泥の英霊から聞き覚えのある声が聞こえた。それはデュラハンの声だった。確かウィズの下に頭を転がしてパンツ見たり風呂場に頭置き忘れるとかやってたんだよな。わざと。

そしてその頭は金髪のメイド服を着た女性の下に転がりはぁはぁしている。そしてその女性が蹴とばそうする前に逃げてきた。

「か、カズマさんなんか聞き覚えのある声が聞こえたんですけど。」

「ああ、俺も。取り敢えず声のしたところに浄化魔法使ってみ。」

「わ、分かった。ターンアンデット!」

「ヒヤーー!あー目が、目が!」

 

やはりデュラハンでした。

そいつは剣を持っていなかった。多分せっかく蘇ったから消えるまで欲望のままに過ごそうとしたのだろう。

エインズワースなんて恐ろしいものを。

 

そしてそいつはまた懲りずに頭を転がしてくる。しかもこっちに。それは美遊に狙いを定めたかのようだった。

 

「ピッチャー振りかぶってぇー投げたぁー」

「「「「「「「……」」」」」」」

 

俺達だけでなくエインズワースの連中も引いている。

頭はあり得ないほど速く転がりこちらに来る。こいつはどんだけ変態なのだろう。ダクネスが言ったことは強ち間違いではないのかも知れない。

 

俺は美遊を後ろに隠し、豪速球で転がって来る。俺はそれを足で踏み止める。デュラハンは俺の顔を見て何か思い出した顔をしていた。

「へっへっへっ。」

「あのおぅ、そのぉ、すいません」

「集合」

俺はみんなを集めた。

「この中でアサシンのカードを持っている人挙手」

おれは銀髪の子からアサシンのカードを貰った。

「クラスカードアサシンインストール」

俺はアサシンのカードをインストールし分身した。

「「サッカーしようぜ!」」

俺はしばらく分身とサッカーをしていた。そしてカードを解除した。

「さぁーてデュラハンさんよぉ!美遊のスカートの下覗こうとした罪をさばく時だぜ。「ちょ、ちゃまって」知るか!"クリエイトウォーター"」

俺はひたすら水責めをした。

そうしていると空から炎の剣が飛んできた。その剣の周りは泥が消え去った。

さっきの銀髪の子がその剣を使い泥の源、謎の黒い四角を切り裂いた。そして泥の英霊が消えた。

「それはこの世界の理。贋作を贋作を、私達を断罪する火の矢。」

「エリカ…ちゃん」

「そうか遂に見つかってしまったのか。」

ジュリアンは黒い四角を圧縮し手のひらサイズにまでした。どうやったかは俺には分からなかった。

「ベアトリス帯雷2つまで許可する。」

「はあい愛してるはジュリアン様」

あれは明らかにやばいやつだ。

俺はマナタイトを使った。

「めぐみん!爆裂魔法の準備を、出来るか?」

「愚問です。私は爆裂魔法に関してはどんな状況であれ放つのです。」

「そうか、一緒に撃つぞ!」

「はい!ふっふっふ、まさかカズマと一緒に爆裂魔法を放つ時が来るとは、」

俺は次は失敗しない様に精神を集中させた。

「「黒より黒く、闇より暗き漆黒に我が真紅の混交を望み給う、覚醒の時来たれり、無謬の境界に堕ちし理、むぎょうの歪みと成りて現出せよ!」」

「吹き狂え、元素の彼方まで」

美遊とその隣にいる銀髪の女の子は逃げているがあともう少しで追いつかれてしまうだろう。早くなんとかしなくては。

「ミョルニル!」

「「エクスプロージョン!」」

せめぎ合う2つの光その両者は美遊達にあたる寸前に消滅した。

 

その後俺らはクレーター内を去った。その最中剣が腕になって今に至るのであった。

「いやぁぁー!」

銀髪のイリヤという子は腕に襲われていた。

「ぶ、ぶぁっはぁっはぁっはー、なにあの光景面白すぎんだろ!」

俺は腹を抱えて笑っていた。

「ちょ、ちょっとカズマ…ぷぷっ、わらっ…ちゃダメよ…や、やっぱ無理プークスクス。面白すぎるんですけどぉ!」

俺とアクアはひたすら笑った。

 

「さてと、笑い終わったけどここからどうする?とりあえず俺達の家に来るか?それにしても寒いな、美遊裸足だけどって霜焼けしてるじゃん!なんで放っておいたの⁉︎」

「え、別にどうって言うことないから………!」

俺は美遊をお姫様抱っこした。

「お、お兄ちゃん!は、恥ずかしい。」

美遊は顔が真っ赤になっていた。それはそれはとても可愛らしい顔だった。

俺達はとりあえず俺と美遊の家に着いた。

「お帰り、美遊」

俺は笑顔で腕の中にいる美遊に言った。

「ただいまお兄ちゃん」

美遊は笑顔で涙を流した。

「「「「「ん〜w」」」」」

「「な、何?(んだよお前ら!)」」

「「「「「べっつにぃー」」」」」

その後俺は風呂を沸かし風呂に入った。もちろん男の俺は最後だ。




ふぅ、全く美遊は最高だぜ!カズマが戦闘しない部分は大幅カットです。だってめんどいしあと1話書いたら続き書けないし。
ひろやまひろしさん頑張って!


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ifルート
1話 妹と再会し、異世界転生を!


これ書き終わったあとにコメントがきてアイデアをくれました。正直言ってそっちの方がいいと思いました。けどもう書いちゃったものはしょうがないよね?


俺は爆裂魔法を放ち自滅した。美遊は無事だろうか。

 

「本当に聖杯戦争なんてあったんだ。知らなかった。それより早く行きたい場所言ってよね。こっちだって暇じゃ無いんだからとっとと選んで行っちゃってね。ほら死人が来たわよ。」

いくら死んだからってその扱いはないだろ。妹を守ったんだから。

俺は来てしまったのか。地獄で会おうと約束したのに、俺だけのうのうと天国に。

俺は天国の使者?らしき人のところへ行った。そのひとは背中から翼が生え、いかにも天使という感じだった。目の前には椅子が置いてあり、足が見える。

俺はその人の顔を見た。

「み、美遊。」

「お兄ちゃん!」

まさかの再会。思っても見なかった。

「驚いた。兄妹一緒に死んだの?まあそこまで珍しくもないか。」

人が死んだのになんてこというんだこいつ。

でもまあ神や天使にとっては人なんてそこらにいる動物と認識が変わらないのか。

「で、俺はどこに連れていかれるんだ?地獄か?」

出来れば地獄であって欲しい。

「地獄なんて天界に存在しませんよ。地獄とは忌々しい悪魔の巣窟です。貴方達人間の解釈とはちょっと違うんです。」

いきなり敬語になりやがった。

「じゃあ赤子からやり直すのか?」

「まぁそれも一つの選択のうちです。とりあえず説明します。今貴方には三つの選択肢があります。天国でずっと何も出来ないまま暮らすか、赤子からやり直す。そして、もう一つ特別にあるのです!」

「それで?」

「で、異世界に飛びます。もちろん肉体と記憶はそのまま。ついでに貴方達は兄妹ですよね?だったらおまけで一緒に行くことを許しましょう。」

なるほどだったら選択肢は一つしかないな。

「異世界でお願いします。」

「了解いたしました。では特典として特別な力を与えましょう。」

特別な力か、普通だったら欲しがるがもう力なんて懲り懲りだ。もうそんな事で苦しみたくないし、美遊を苦しませたくない。

「いりません。その代わりその異世界の一般知識と暮らしていけるお金を下さい。」

そう、もう普通に暮らしたい。美遊と二人で。

「かしこまりました。では…」

俺達は一般知識を教えてもらった。

だがそれはからかっているようにしか思えなかった。まず野菜が空を飛んだり跳ねたりする。

さっきから美遊があり得ないと連呼している。

そして秋刀魚だけは畑から取れる。モンスターがいて魔王がいるらしい。モンスターは別にいい。だが秋刀魚が空を飛ぶってどういう事だよ。

あとお金の単価を教えてもらった。

そこではエリスというお金を使い、一エリス一円だそうな。

「異世界に米はありますか?あと言語は大丈夫なんでしょうか?

「ありますよ。言語は私の力で覚えさせます。だからあとはお金だけです。どのくらい欲しいですか?」

一生分!と言いたいがそれだと盗賊とかに狙われそうだからとりあえず一ヶ月暮らしていける分を貰った。

「では行ってらっしゃい。」

俺達は異世界に飛ばされた。

その後に思い出した。俺の憑依させた英霊魔王倒した奴や。って事は俺も倒すの?

俺は考えるのをやめた。

 

 

見渡すと中世のヨーロッパのようなレンガ造りに石で舗装された道。周りにはゲームで見るような戦士や魔法使い。エルフやドワーフがいた。

手持ちを確認すると20万入っていた。

「美遊まずどこ行く?」

「んー、とりあえずぐるっと見渡そう。」

俺達は歩いていたが美遊はそういえば裸足だった。そして黒いドレス。俺は緑のジャージ。完全に目立っている。とりあえず俺は服屋を探すことに決めた。

「なあ美遊ちょっといいか?」

「何?」

「いやその裸足だと辛いだろ?だからおんぶしてやるよ。」

「いいの?」

美遊の目は輝いていた。そういえば俺は美遊をおんぶしたことなんて一度もなかった。

俺は歩いていたおばちゃんに服屋の場所を尋ねた。おばちゃんはとても親切に教えてくれた。

俺達は服を買い身だしなみを整えまた散歩を始めようとした。その時ふとある事を思った。そういえば寝床どうしよう。それに仕事だって探さないといけない。俺は店の人に仕事を探せる場所を聞いた。するとギルドで頼めばいいと言われた。

ギルドってハローワークみたいなものなのか?普通冒険者とかが集まる場所だと思ったのだが、俺は店の人にお礼をし、ギルドへと向かった。

 

俺はギルドのドアを開けた。

「いらっしゃいませ、お食事なら奥の席へお仕事案内なら隣のカウンターへ。」

まさしくゲーム聞いたことのあるセリフだった。俺達は言われた通りカウンターへ向かった。

「はい、今日はどうなさいました。」

「えっと、仕事を探しに来たんですけどオススメのはありますか?」

「冒険者なんていかがでしょう。危険はありますがクエストに成功すればお金を多く稼げて、スリルも味わえます。そして、仲間との絆も深める事も出来ます。」

なるほど。働くと考えていたがそれだと、働いている間は美遊を一人にしてしまう。それでは兄妹との思い出が作れない。それなら危険はあっても一生忘れない思い出もできるし、美遊が友達を作れるかもしれない。

俺が働いている間お留守番では友達なんて出来っこない。別に働きたくないというわけではない…ほんとだよ。

 

「では冒険者で。」

「はいかしこまりました。では登録手数料が千エリスかかりますが」

「では二人分で二千エリスで」

「そちらのお子様もですか?」

「いいか美遊?」

「うんお兄ちゃんと一緒に居られるなら。」

美遊の笑顔がとても眩しい。この笑顔の為なら魔王だって相手してやる…多分

「ではこの水晶に手をかざしてください。」

俺は言われた通りに水晶に手をかざした。

やっぱりこういうのはワクワクする。ゲーム好きなら一回は憧れる事だ。どんな職業に就こうかな。やっぱり魔法使いか。いや弓道部やってたからアーチャーとか。

「はい、えーとどれも普通ですね…おや知力が高いのと魔力が平均より微妙に高いですね。あと器用性も高いですね。それに幸運も非常に高いですよ。まあ幸運なんてあんまり必要ない数値なんですけどね。」

期待していたのとなんか違う。

「知力的にはアークウィザードにギリギリなれるんですが魔力が足りませんね。これでしたら冒険者しかなれませんね。これでしたら商人になった方が、あれ?こんな職業なんて今まであったけ?」

お?ここで隠された力が。それより俺は弓道部だったのにアーチャーになれないことにショックを受けた。

 

「どうしたんですか?いえ、ひとつだけなれる職業がありました。でも前例がありません。もしかしたら外れ職かも。誰も選ばないほど人気が無いからみんなに忘れ去られた職業かと。」

隠された力とかじゃ無いの?まじか。

「で、どんな職業ですか?」

「スキルマスターです。」

それ名前的に絶対当たり職だろ。

「それにします。」

 

次は美遊の番だ。

美遊は水晶に手をかざした。

「はあ?知力と魔力が紅魔族ほどもしくはそれ以上にあるなんて信じられません。」

妹に完全に抜かされ、兄の威厳が消え去った瞬間であった。

「これならアークウィザードになる事をお勧めします。他はアークプリーストなんてどうでしょう。」

「違いを教えて。」

「かしこまりました。」

さっきよりテンションが上がっていた。もう妹になにもかも抜かされた。妹に甘えようかな。

美遊はアークプリーストを選んだらしい。

そうして冒険者登録が終わりどこか安い宿がないか尋ねた。一ヶ月八万円の宿があるらしい。そこは設備は普通でどこにまあるようなところに見えるが布団が最高でその設備の割には安いらしい。

 

俺は宿で一ヶ月分の家賃を払い荷物を置き買い物に行った。

まずは食料と冒険に必要な装備を整えた。

俺は一番安い弓矢と革の胸当て、金属製のすね当てを買い、美遊は杖を買った。

今日は取り敢えず宿でゆっくりすることにした。

 

ご飯も食べ終わりあとは寝るだけとなった。

「美遊お休み。」

「お兄ちゃん。一緒に寝よ。」

妹の上目遣いはとても攻撃力があり俺は抗うことはできなかった。

「しょうがねーな。」

俺はみゆと一緒のベッドで寝た。

「なあ美遊。」

「なぁに、お兄ちゃん。」

「怖かったか?」

俺は美遊がどんな事をされたかを聞いた。俺は自分が本当に情けなく思えた。いや実際情けない。俺は美遊を助けようとしたのに俺は美遊に支えられていた。なのにそれに気付くことが死ぬ寸前まで分からなかった。それに俺のミスで美遊をまた孤独にしてしまった。

「ごめんな。大事な所で守ってやらなくて。でも今度は守りきるから。そしてこの異界の地で友達を作ろう。」

「うん」

そうして俺達は眠りに就いた。

 

俺達は朝食を摂り着替えてギルドに向かった。

「あのすいません。どんなクエストを受ければいいんでしょうか?やっぱり最初はゴブリンとかでしょうか?」

俺は昨日の受付の人に聞いた。

「ゴブリンなんてとんでもございません!あれには初心者殺しという恐ろしい獣が付いています。」

その獣はゴブリンなどの初心者にとって美味しい弱いモンスターの近くに隠れ、ゴブリンに夢中になった初心者を殺して食べるらしい。

「ですからこの時期だとジャイアントトードなんてどうでしょう。」

俺達はそれを受けることにした。




なんでアクアを出さなかったかというと出したら確実にカズマは連れて行きます。しかしそれは美遊とイチャコラ出来ないので却下です。なので出てきた天使はアクアよりはマシだけど生意気な感じです。決してあれはアクアではありません。
アクアはきっと何かのミスでクビにされましたね。


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2話 二人の魔法使い

文字数は七千字前後と多めです。一応自分でも読んでみましたが多分誤字脱字があると思いますが、まあ生温かい目で見守ってください。
いつか直します。
あと目指せ週一投稿を心掛けています。まあ1日に何話か投稿しちゃった時もありましたけどね。
もっとゆっくり投稿すればよかった。そうすればUAもっと稼げたかな?………そんな訳ないか。




 俺達はジャイアントトードを倒すべく平原へと来ていた。

 平原はそよ風が気持ち良く、ここでお昼寝をしてもいいくらいだ。

 

 平原を見渡すと辺りに二人の女の子がいた。服装的にどちらも魔法使いだ。明らかにバランスが悪い。そんな事を考えているとその女の子の内の一人からとんでもない魔力が漂う。

「お兄ちゃん。」

 美遊はその禍々しい魔力に怯えて俺の裾を掴む。

「大丈夫だ美遊、怖くない。」

 その女の子が放った魔法は恐らく爆裂魔法だろう。あの時、脳裏に流れたあの黒髪、灼眼の女の子は、よくよく見るとあの黒髪、灼眼の女の子にそっくりだった。

 隣の子もライトオブセイバーを使った時に脳裏に流れた女の子に似ている。

 そんな事を考えていると爆裂魔法を放った女の子は倒れ込んだ。もしかしたら俺の時のように制御しきれなかったのかもしれない。爆発四散するくらい危険な魔法なのだ。意識くらい失ってもおかしくはない。

 

 

「行ってみるか?」

「うん。」

 俺達はその女の子達へと近寄った。

「大丈夫ですか?」

「ふ、我の一撃に見惚れてここまで来たか。」

 どうやら魔法で頭が逝かれたようだ。

「いやあの心配しているんですけど。」

「爆裂魔法は威力が高い。それ故消費魔力もまた絶大。それ故に立つこともままならぬ。」

 

 ああ、分かったこいつ厨二病だ。俺はめんどくさい奴に話しかけてしまった。

「ねえ、お兄ちゃん?この人口調変。」

「言わないでおいてやれ。」

「おい、なにか文句があるなら聞こうじゃないか。」

「ええとそっちの名は?」

「我が名めぐみん!アークウィザードにして爆裂魔法を操りし者!」

「てめぇじゃねぇよ。」

 やはりこいつはどこかおかしい。隣の子はまともであって欲しい。

「わ、我が名は…ゆ、ゆんゆん。アークウィザードにしていずれ紅魔族の長となる者。」

 こっちもダメな系でした。けど顔を赤くしている辺りこれが恥ずかしい事だと認識しているようだ。まだ大丈夫かもしれない。

 

 

「なあ紅魔族ってなんだ?そしてその挨拶は紅魔族の決まりなのか?」

 俺は紅魔族について聞いた。そういえば受付の人も紅魔族がどうたらとか言ってたな。

 

 

 どうやら紅魔族は魔力と知力が非常に高いらしい。そして挨拶は決まりらしい。ゆんゆんは無理にやっていて恥ずかしがって村では変わり者と言われぼっちだったらしい。

 ゆんゆんが可哀想過ぎる。

 

 めぐみんはとある人に会う為に、ゆんゆんは村の長となる為外に出て経験を積む事が目的らしい。紅魔の里はかなり遠くにあるらしくまず駆け出しとしてアクセルの街に行こうとしたらしいが、アクセル行きのテレポートが無く一度アルカンレティアとやらにテレポートした。

 そこでしばらく過ごしたらしい。その最中上位の悪魔に襲われたらしい。理由は聞けてないが。

 

 そこから馬車経由でアクセルに行こうとしたらしいがアクセルから観光に来た親切な魔法使い職の人に帰るついでに連れて行ってもらい、今に至るらしい。そしてどうやら今日この街に来たらしい。

 

 

 そんな雑談をしていると二、三メートルあるカエルが3匹近寄ってきた。あれがクエストのやつらしい。

 俺は矢を3つ構え、放つ。

「"狙撃"」

 矢は全てカエルの脳天に命中し、倒す。カエルはまだ息があり脚がピクピクと痙攣している。

「す、凄い。」

 やっとゲームとかの主人公みたいな展開になってきた。

「なあお前らはどうする?なんなら俺達のクエスト手伝って欲しいんだけど。もちろん報酬は山分けで。なんならパーティも組まないか?」

 一度パーティーを組むことを俺は憧れていた。いや、男なら憧れるはずだ。

「い、いいんですか?」

「ああ是非。」

「良かった、これで一人寂しくご飯食べたりトランプタワー作ったり一人チェスしたりしなくて済むんだ。」

 前言撤回こいつもダメな系だ。というか誰だよここまで放っておいたやつ。

「お前ら年は?」

「「13です」」

「え!嘘だろロリっ子どう見ても美遊と同い年だろ。それにゆんゆんは俺と同い年か年上にみえるんだが。」

「おいロリっ子というのはやめてもらおう。所で貴様の名は?」

「おい年上に貴様はないだろ、衛宮和真だ。」

「いいセンスだ!」

 頭のおかしな紅魔の子はどこぞの伝説の傭兵のような台詞を言った。それより紅魔族に名前を褒められると悲しくなってきた。

 そんなこんなで俺らはジャイアントトードを討伐した。ジャイアントトードの肉はギルドの人に回収してもらった。

 

 

 

 

 

 

「では報酬の十二万五千エリスを。それにしても凄いですね初めてのクエストでこうもあっさり終わるなんて。そういえばあの職業はどういったものでしたか?」

 最弱職の冒険者はどんな職業のスキルでも覚える事ができる。だがジョブチェンジをするとそのチェンジした職業以外のスキルは消える。だが未来の俺の冒険者のスキルを持ったままだった。そして狙撃スキルに補正が少しばかりかかっている感じがした。つまり。

「恐らく冒険者の上位互換だと思います。それと俺ほとんどのスキルを覚えていますし。」

「ハア⁉︎ ほとんどのスキルを習得?ちょ、ちょっと見せてもらっていいですか?」

 俺は冒険者カードを見せた。

「どうやら本当のようですね。しかも上級魔法や爆裂魔法まで。でも魔力値的にどうかと…」

「いやなんの問題も無く使えますよ。」

 そう、美遊と再会してまたパスが繋がっていた。

 報酬十二万五千エリスを貰い俺と美遊、めぐみんとゆんゆんで報酬を分けた。

 今日得たのは六万二千五百。美遊はお兄ちゃんが持っててと言い受けとらない。

「なあお前らせっかくだし俺達の宿で飯食うか?」

「いいんですか?あわわわ、パーティメンバーで一緒にご飯。いつも家族とさえ別で一人でご飯食べて来た私がパーティと…ご飯。」

 何故だろう。目から水が出てくる。

 

 

 俺は昨日買った物で昼食を作った。

 メニューはミートスパゲッティと野菜スープを作った。

「お待ちどうさま。」

「わぁ凄い。男の人なのにこんなに料理出来るんですね。」

「妹の美遊も出来るぞ。もしかしたら俺以上かもな。」

 いや、俺の方が上だが、もしかしたら負ける日が来るかもしれない。

 

「美遊ちゃんは何歳なんですか?」

「10歳。あともう少しで11歳になる。」

 この二人と美遊が友達になれればな、まあ問題ある二人だがゆんゆんはちょっと孤独体質なだけだし。

 めぐみんはスパゲッティを食べるのに夢中になっている。

 ゆんゆんもみんなで食べるご飯にそわそわしている。まあパーティーは個性的な方が面白いか。

 その後みんなでどんなスキルを覚えているのかなどを話し合った。

「じゃまずは私から、私はアークウィザードで中級魔法ならほとんど覚えています。上級魔法はまだですが。」

 そしてステータスを見せてもらった。なんとまあ魔力量の多いこと。そして魔法攻撃力も非常に高かった。

「ふ、我が真の力を見せる時…」

「そういうのいいから」

「……はい」

 俺はめぐみんの言いたかったであろうセリフを言わせなかった。

「爆裂魔法です。」

「「はい?」」

 この子は何を言っているのだろう。

「だから爆裂魔法しか覚えていません。」

 まじか、でもまあ強い敵が来た時に使ってもらおう。それ以外は我慢してもらおう。

「私はアークプリーストです。まだ回復魔法と浄化魔法しか覚えていません。」

 といい美遊はカードを見せた。

「この魔力値!もしかしてあの時受付の人が言ってた人!こんなに知力が高ければアークウィザードにもなれるはず。なぜならなかったのですか!これだけの魔力があれば1日に何回も爆裂魔法を放てるのに!」

 どうやらこいつの頭には爆裂魔法しか入っていないらしい。

 

「そうかじゃあ次は俺だな。ほい」

 俺はカードを机の真ん中に置いた。

「よく冒険者カードをそんな簡単に人に渡せますね。勝手にスキル習得されても知りませんよ?」

「安心しろよスキルポイントなんて無いから。」

 俺は英霊カズマのスキルポイントも授かったはずなのだが1ポイントも残って無かった。

「確かに本当だ…って!なんなんですかこれ!ほとんどのスキルを覚えているじゃないですか!しかも爆裂魔法まで。それにスキルマスターってなんですか?聞いたことありませんよ。」

 本当に誰も聞いたことないんだな。よほどマイナーな職業なのかそれともある一定の条件をクリアし無いとダメなのか。

「あれだ冒険者の上位互換的な何かだ。」

「えっ、ちょっと見せて…本当だほとんどのスキルを習得してる。しかもアンデットのスキルまで。どうやって?しかも習得するためのスキルポイントなんてレベル的に不可能。どうしてこんなに!これじゃ完全に私達の上位互換じゃないですか!」

 俺は異世界からやってきたということは伏せて、美遊の事も聖杯戦争とは言わずある儀式の生贄と誤魔化して伝えた。

「そんな事が…」

「ああ、そして俺は美遊を助ける為に襲いかかってくる敵を殺し続けた。7人との連戦だった。敵は誰も彼も強かった。俺は未来の自分の技を先取りして戦う事で俺は未来の自分へと侵食されていった。」

 事実は避けている。けどいつかはめぐみんとゆんゆんに伝えたい。いつか言える日が来てくれればいいと願った。

「……か、カッコいいです。妹の為に全てのスキルを使い悪党を懲らしめる。実にいいですよ。」

 実にいい….か

「本当に…そうか……友達を失ってもか?人を殺してもか?大事な人を失って、妹も失いかけてもか?」

「それは、」

 めぐみんの顔が暗くなる。

「あんなの戦いじゃない。俺はずっと失い続けてきた。それでも進むしかなかった。あともう少しで俺自身や妹まで失いかけた。だから美遊と一緒にここから兄妹として新たにやり直そうと決意した。だから……出来れば美遊を、妹も失いかけた弱い俺を支えて欲しい。」

 二人は顔を合わせて息を合わせて言った。

「「もちろん!パーティなんですから。」」

 俺はその言葉を聞き安心した。二人はまた明日と言い帰っていった。

 

 

 

 

「お兄ちゃん涙。」

「えっ?」

 俺の瞳からは涙がポロポロと流れ落ちていた。あの時の事を思い出して知らず知らずの内に涙を流していた。昨日は抑えられていたのに。俺の心はいつのまにか折れていた。いや、美遊を失った日から俺の心は折れていた。けど心が壊れないように感情を殺した。だが美遊を助けた事への安心感とめぐみん達の言葉で今まで抑えていた感情が一気に流れた。

 

「私の為にここまで苦しんでたんだね。私の為にそこまで…本当にありがとう。」

 美遊の『ありがとう』という言葉だけで俺は幸せに包まれる。

「だから、今日くらいは私に甘えても良いんだよ。それに昨日のお礼もあるし。」

「昨日のは俺にとってもご褒美だけどな。」

 美遊は俺の頭を膝に乗せ、膝枕をし、頭を優しく撫でてくれた。それはとても包容感があり、その甘える相手が妹なんて忘れてしまいそうなほどに…俺は美遊の膝で涙を流した。

 

 

 

 

 

 俺は弱い人間だ。だから完全に心を殺すことも出来ないし、妹を慰めることも出来ず妹に慰められている。けどこの感じは悪くはない。

 その後俺は美遊の膝で眠りに就いた。

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく俺らは平原で狩りをしていた。美遊はアークプリーストなので攻撃手段が少ないため、たまに墓地に行きアンデットを浄化してレベル上げをしている。何故か不思議なことにアンデットは美遊へとすがるかのように集まってきた。しまいには我先にとアンデット同士でどっちが先に浄化されるかで争った事や浄化される為にアンデットが順番を守って列を成した時もあった。あの時はアンデットがとても可愛く見えた。

 

 しばらくすると平原にモンスターが現れなくなっていた。事情を聞くとどうやら上位の悪魔が森に住み着きモンスターが怯えて現れなくなっていたらしい。そして王都から騎士や凄腕冒険者などが来て討伐を手伝ってくれるらしい。もしよかったらカズマさんのパーティーも討伐隊に入りませんか? と言われた。

 

 …いや待ってくれ、俺は上位の悪魔の事について最近聞いた事がある。確かめぐみん達の話で…

 OK理解した。つまりその上位の悪魔はめぐみん達を狙ってここまで来たのか。

 

「なあお前ら最近森に上位の悪魔が住み着いているらしいんだけどさもしかしたらお前達を狙ってたやつかもしれない。もしこのままだと森から出てきて街を襲うかもしれない。だから襲われる前に討伐する為に討伐隊に入らないか?」

「私は良いよ。最近破魔の魔法も覚えたし。」

 そう美遊はレベルが1つ上がり破魔の魔法を習得していた。

「私も良いですよ。ああ早くその悪魔を爆裂魔法で倒してやりたいですよ。」

 確かに爆裂魔法なら上位の悪魔だろうが倒せるだろうな。だが森の生態系が変わり冒険者が稼げなくなる。

「わ、私も。」

 みんな賛成したので俺は受付の人に参加する事を伝えた。

「はい、分かりました。それに紅魔族の人も参加してくれるなら敵なしですね。それに妹さんも破魔の魔法を習得してたなんて。そういえばカズマさんは習得してるんですか?」

 俺は冒険者カードを見たがそれっぽいものは存在しなかった。

「ありませんね。浄化魔法ならあるんですがそれは効き目ありますか?」

「アンデットほどでは無いですが一応効きますよ。と言っても火傷くらいでしょうが。」

 つまり俺は特に何も出来ないのか。いやでも上級魔法があるし大丈夫だろう。

 

 

 

 俺達は王都から騎士が来るまでのんびりすることにした。

「カズマ、暇です。」

「人の家勝手に来て図々しいな。」

 そうめぐみんは王都から人が来るまですることが無いと俺の家に毎日くる。

「ごめんなさいごめんなさいカズマさん達の家に勝手に来てすいません。生まれて来てすいません。」

 なぜこの子はそんな卑屈なのだろうか。果たしてこの子に昔何があったのだろうか。

「ゆんゆんはそこまで言わなくて良いよ。」

「おい、私とゆんゆんで扱いが違うことを聞こうじゃないか!胸か?胸が大きいから、カズマは巨乳好きだからゆんゆんを贔屓するんですか!」

「おにい…ちゃん?」

 美遊の顔は笑っていても目が笑っていなかった。

「ご、誤解だ美遊!それにめぐみんは人の家にきてそんな態度取ってるからだよ!少しはゆんゆんを見習え!………胸もな」

 その後怒っためぐみんと目が笑っていない美遊にボコボコにされた。あの時の美遊の顔はめちゃくちゃ怖かった。

「痛い。死ぬからな俺!どんなにスキルがあっても中身は一般人なんだからな。」

「自業自得です。」

「お兄ちゃん次変なこと言ったらもっとすごいことするからね。」

「…はい。」

 完全に妹に負けました。もう妹に逆らう事が出来なくなりました。あれですね。ヤンデレな妹に愛されすぎてなんちゃらってやつですね。

 いや美遊が怒ったのは自分も胸のことを不満に思って…いやでもまだ10歳だし、それでも13歳で巨乳なゆんゆんを見ると焦る気持ちもあるのか。デリカシーのない事を俺は言ってしまったのだろう。

 

 それよりもっと凄いことにとはどんな事だろう。少しばかり気になる。

 もしかしてもっと凄いこと(意味深)ではないのだろうか。…違うか。

 

 

 数日後

 王都からは騎士を派遣出来ないらしい。なんでも魔王の幹部の動きが活発化してきたらしい。そのせいで今騎士達を動かす訳にはいかないらしい。

 そして冒険者達はとうとう痺れを切らし悪魔討伐隊を結成した。騎士がいない代わりに名前の変わったすごく強い魔剣の勇者も参戦するらしい。

 いや待ってくれ。それ俺たち以外の日本人じゃね?というか話を聞く限りそいつが強いんじゃなくて剣が強いという事だろう。可哀想だな。

 きっと魔王をそいつが倒してもそいつの名前より剣が有名になる奴だろ。アーサー王みたいに。

 

 今はそのパーティー編成をしている。俺達のパーティーは後衛と中衛を担うことになった。

 だが俺は今レベル1。どう考えても上級悪魔を倒そうとするレベルじゃない。悪魔が俺のレベルを聞いたら絶対腹を抱えて笑うか、舐めんな!とか言って怒るだろ。

「おいおい、こんな装備の乏しいルーキーまで討伐隊にいるのかよ。」

 と剣士風の冒険者がからかってきた。

「申し訳ございません。この人は殆どのスキルを覚えている為その軽いフットワークを生かして足りない部分を補強するという大事な仕事があるのです。どうかご理解お願いします。」

 受付の人が俺をカバーしてくれる。

「殆どのスキル?つまりこいつは最弱職の冒険者かよ。道理で装備が貧相な訳だ。」

 剣士風の冒険者が腹を抱えて笑う。それにつられてあたりの冒険者もゲラゲラと笑い「カエルでも狩ってな」とか「最弱職とか終わってんだろ」などと言ってくる者もいる。

 

 めぐみんとゆんゆんはあんな奴らの言葉を気にしなくてもいいと言う。

 だがとうとう切れた俺は

「"クリエイトアース""ウィンドブレス"」

 その罵声を浴びせた三人へ砂を飛ばす。

「「「目がぁぁ!」」」

「"スティール"」

 俺は剣士風の男の剣を奪い刃を首に向ける。

「次冒険者の事を最弱職と馬鹿にしてみろ。次は命を奪うからな。」

 俺は自分に言った言葉より俺美遊を助ける力をくれた並行世界の俺の職業を馬鹿にされた事に切れた。

 

「因みに俺の職業はスキルマスターとかいう冒険者の上位互換だ。」

 そう言い俺は剣をそいつの鞘に戻した。

 さっきまで剣を向けられ怯えていた奴は俺がその場から去ると膝をガクッと下げた。

 

「みんな悪いな空気を悪くして。」

 その言葉を聞きさっきまで緊張していた空気も一転。またギルド内は騒がしくなった。

 

 

 今俺たちは上級悪魔の居る森へときて居る。この森には初心者殺しやスライム、一角うさぎなどという危険なモンスターがいるらしい。

 初心者殺しは防御力の無い魔法使いを優先して倒すという狡猾なモンスター。

 

 

 

 スライムはゲームではかなり弱いが異世界ではそうはいかない。どうやら体の核を壊さない限り再生するらしい。更に防具の中に入り込み消化液で溶かしてくるなどと恐ろしい攻撃をしてくる。

 

 

 

 一角うさぎは可愛らしい外見をし、それに誘き出された人を襲い食べ、更にその角は一撃で安物の防具は貫通するらしい。だが別に知っていたら脅威では無い。

 だから道中気をつけるべきはスライムと初心者殺しだけ。

 

 




そういえば本当に今更ですが15日にヘブンズフィールを見てきました。いや二部楽しみですね。
映画を見たあと無性に麻婆豆腐が食いたくなりましたねw
あとFGOでハサンの攻撃モーションが変わりかっこよくなりましたね。動画で見ました。
あと映画でハサンがめちゃくちゃかっこよかったのでFGOでも使いたいですね。
まあ強化用の素材が無いんですがね。

あとコメントでゆんゆんとめぐみんは出さないんですよね?と来たんですよね。その時ちょうどこの話書いてたんですよね。しかもめぐみん達の登場シーンを。その時この人エスパーかよwとか思ってましたね。そしてこれはスピンオフからのスタートですね。あーあ、これから先長いな。
あとウェブ版と小説版がかなり混ざります。何故ならウェブ版はあまり覚えてないから小説版で補強しようかと。


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3話 魔剣の勇者vs上位悪魔ホースト

ミツルギのキャラ崩壊が入ります。ミツルギが好きな人はいないと思いますがもし居たら見るのはやめておいたほうがいいですよ。


「モンスターが現れたぞ!!!」

 

 

 今更ながら気付くがもしかしたら先頭のグループ達の方へ行った方が安全なのではないか。それにチート持ちも居るし。

 

 初心者殺しは警戒心が強く高レベルの冒険者達には襲わず弱い者を狙う。

 スライムもきっと凄い技とかでスライムそのものを蒸発させるだろうし、もし上位の悪魔が後ろから現れたら俺達から先に死ぬし。

 しかし今先頭グループへと向かうわけにはいかない。

 

 どこからともなく数多くのモンスターが俺達後続のグループと先頭グループが分裂されてしまった。

「おいおい嘘だろ!」

「なんでこんなにモンスターが多く出て来るんだよ。」

「まずいぞ!こっちにはかなり肥大化したスライムが出てきやがった!これじゃあ近接武器は無理だ!最低でも中級魔法を使える奴を五人は呼んでこい!」

 

 突然の事にベテランらしき冒険者も動揺する。

 そこには直径3メートルを優に超えるグリーンスライムが居た。

「"狙撃"」

 俺は矢をひたすらスライムに向けて放った。

 20本は入っていた矢筒の中には5本の矢しか残っていなかった。全てを放ち終わるまでに10秒ほどしかかからなかった。

 スライムは核が破壊されたのか形を保てなくなっていた。どうやら15本中の一本が核を壊したのだろう。

「おい、あいつが射る所見えたか!」

「ああ、すげえ俺もあいつと同じアーチャーだがあんな的確にしかも15本も放つ奴なんて見た事ねえ。」

「ああ、弓矢でこんなでかいスライム倒すのなんてあいつくらいだぞ。しかもあれ武器屋で売ってる一番安いやつだぞ!」

「「まじか」」

 

 残念ながら俺はアーチャーではありません。だって適性無かったから。

 

 本当に悲しい事である。弓道部をやって来て更にあんな強敵と7人と弓を使って戦ってきたのにアーチャーにすらなれないなんてな。

 

「美遊、めぐみん、ゆんゆん先急ぐぞ!」

「「「は、はい。」」」

 

 

 俺達は先頭グループと会うべく森を四人で走っている。

『キシャャ!』

「"狙撃"」

 先程から小型のモンスター茂みから襲ってくる。ここまでで10体は出てきた。5体は俺が弓で頭を撃ち抜き、5体はゆんゆんが魔法で倒してくれている。

「カズマさんなんで私達だけで森の中を進んでいるんですか?危険ですよ。」

 二人もゆんゆんの質問に頷く。

「考えてもみろ。もし後続で上位悪魔が出現してみろ。低レベルの俺らは死ぬからな。」

 その言葉に3人は少し青ざめる。

「それに先頭のグループと別れて間もない。すぐ出会えるだろ。」

『キシャャ!』

「お兄ちゃん!」

 会話をしていて索敵を怠っていた。俺の背後からは小型のモンスターが俺へ襲ってくる。矢はもうない。初級魔法は最低でも二種類は組み合わせなければ効果は薄い。だが二種類も発動させる時間はない。

「"ブレードオブウィンド"」

 風がかまいたちのようにモンスターを斬りつける。

「危なかった。早く進もうぜ!」

 俺達は全力疾走した。

 先頭グループの姿が見えるまでに出てきたモンスターはほとんどゆんゆんが倒してくれた。

 

「はぁ…はぁ…やっと着きました。」

「だな。」

「うん、疲れた。」

「一番疲れたの私だからね!走りながら詠唱しなきゃいけないし魔法の制御もしなくちゃいけないし。」

 確かに一番疲れたのはゆんゆんだろう。しかし

「「「うん、おつかれ」」」

「もっと心を込めて言ってよ!」

 

 先頭グループに会えた事に安心するが、まるでタイミングでも計ったかのように初心者殺しが現れた。

 初心者殺しは一番幼く非力そうな美遊を襲いかかった。

「"バインド"」

 会話中に襲いかけられてからずっと敵感知を発動していたことが功を奏し、いち早く的な存在に気づけた俺は近くの木に絡みついていたツルを引きちぎりバインドを発動させる。

 ツルはまるで生きているかのように初心者殺し目掛けて進み初心者殺しに複雑に絡みついた。

「大丈夫か美遊?」

「うん、お兄ちゃんが守ってくれたから平気。」

 それはそれは満遍の笑みを浮かべ美遊は言ってきた。

「…守りたいこの笑顔。」

「え、何?」

「いや、何でもない。」

 どうやら本音が出てしまったようだ。

 

 

 

 

 

 敵感知に反応があった。それは上だった。

「テメェら!ウォルバク様に何しやがるんだ!」

 光沢を放つ漆黒の巨体な体軀。二枚あるコウモリの羽。禍々しさを感じさせる印象的な角と牙。

 こいつが目的の上位悪魔。

 上位悪魔はそのでかい体軀に似合わず素早い動きで周りの冒険者を次々と薙ぎ倒した。

 残ったのはチート持ちのパーティーと俺達駆け出しのパーティーの計7人。

「なんだ。ウォルバク様と思ったらただの初心者殺しかよ。おかしいな。確かにウォルバク様の臭いがしたんだよな…特にその紅魔の娘から。」

 と上位悪魔はめぐみんを指差す。

「おい、最近から悪魔達で寄ってたかって私の使い魔のちょむすけをウォルバク、ウォルバクとダサい名前で呼ぶのをやめてもらおう。」

「最近?ハーネスの事か。いや、まて!ちょむすけって何だ!……まあいい。所でハーネスにあって生きてるって事はまさかお前がやったのか?」

 上位悪魔の声のトーンが徐々に低くなり殺意のこもった声に変わる。

 しかし、ちょむすけなどと変な名前をつけるのは、やはり紅魔族の特徴なのだろう。

「いいえ、違いますよ。へんた……アクシズ教徒のアークプリーストに体を舐めまわさ……コホン。浄化魔法を使われて逃げて行きましたよ。その後は私達にも分かりません。」

 おかしい。表情が読み取れないはずの悪魔の顔から動揺の様子が見て取れるのは何故だろう。

 それよりその人は本当に聖職者なのだろうか。いや、前の世界でも言峰みたいな奴がいたのだから聖職者なんてどいつもこいつもそんな輩なのだろう。

「そ、想像したくないが、大体想像できるな。まあいい。そのウォ…ちょむすけとやらを連れてこい。いいかこれは『契約』だ。」

『契約』という言葉を発してから更に威圧感が漂う。俺達はその威圧感に一歩下がる。

 だが、下がらずに前に出た者がいた。それはゆんゆんだった。

「ダメよめぐみん悪魔なんかと契約なんてしたら!」

「おいおい。悪魔は契約にはうるさいんだよ。契約は絶対だ。それくらい紅魔族なら分かるだろ?」

 どうやら日本人の常識で知られている悪魔は嘘つきと言うわけではないらしい。

「わ、分かってるわよ。でも…」

「分かりました。いいでしょう。」

 ゆんゆんの声を遮りめぐみんが了解する。

「ふっ、物分かりのいいガキだな。俺は聞き分けのいいガキは好きだぜ。それじゃ3日後だ。もし3日後連れてこない場合はあの街を火の海にするからな。

 きっとこの悪魔ならそんなこと容易にやってのけるだろう。

「そうだ。一応名乗っておくぜ。俺はホースト。邪神ウォルバク様の片腕。上位悪魔ホーストだ。じゃあな」

 

 そういいホーストは飛び去っていく。

 が、その時ホーストの翼を一筋の閃光が斬り裂いた。

「悪いがお前を野放しにしておく訳にはいかない。今ここで倒させてもらう!」

 チート武器であろう大剣をきらつかせ、おおよその攻撃なら防げるであろう防具。ホーストの翼を斬り裂いた者の正体はチート持ちだった。

「ちっ、せっかく今日だけは見逃してやろうと思ったのによ…あーあ残念だな。魔剣持ちには痛い目に遭ってもらう。」

 ホーストは息を整え、

「いいかお前ら!これは見せしめだ!もし俺に歯向かったらどうなるか思い知らせてやる。」

「いくぞ!」

 二人は一斉に駆け出した。男は武器を、悪魔は拳を握って。

 

 

 

 

 

 

 

「オラァァ!」

 右から繰り出される強烈なストレート。

「うぐぅぅ!」

 それを剣脊で受け止める。が、ホーストのパンチの威力が強く5メートルほど飛ばされる。

「ハァァッ!」

 チート持ちは反撃のカウンターを食らわせようとするがあっさり躱されてしまう。

「甘いんだよ!」

 今度は左ストレートをホーストの巨大な体軀から繰り出される。

「ガハッ…」

 チート持ちが反撃をした事により、剣は体から離れその隙を突かれホーストの強烈な一撃を食らってしまった。

「「キョウヤ!」」

 どうやらこの男はキョウヤと言うらしい。

「ま…まだだ!」

 さっきのはどう考えても一発KOだった。だが立ち上がった。

「ほう、さっきのを食らってまだ生きてるのか。魔力はあまり使いたく無いんだ。早く、くたばっちまえよ。」

「まだ…僕は……倒れる訳には…いか…ない。お前を倒すまでは…絶対に!」

 立ち上がったがもう死に体だ。視界もはっきり定まっていないだろう。

「そうかよ…死ね!」

 

 

 

 あれからどれほどたっただろうか。あれからキョウヤは戦い続けているが防戦一方だ。やられるのは時間の問題である。

「オラッどうしたよあんちゃんさっきまでの威勢はどこいったぁ!」

 キョウヤは殴られ、倒れる。だがまだたちあがる。

 その光景に皆何も出来なかった。魔法を使おうにもホーストとキョウヤの距離が近すぎるため使う事は出来ない。援護射撃をしたくても矢はもう無い。

 

 ライトオブセイバーなら…いや詠唱中に襲いかかれたらひとたまりもない。結局どうすることもできない。氷で足元を凍らせてもあの怪力なら意味がない。目潰しも微妙だ。悪魔に実態などあるのか?まずそこからが問題だった。

 それにいま出ていったら俺達まで標的にされてしまう。

「く…このままでは…」

 

 やはり限界が来たらしい。逆に良くここまで持ちこたえたものである。俺だったらひたすら避けて避けて避けまくるしかない。それでも体力的にここまでは続かないであろう。

 

「俺に刃向かうからこうなるんだよ!」

 キョウヤへと巨大な拳が降りかかる。

「それなら!」

 キョウヤの速度が上がる。

「ちっ、強化系スキルか。」

 キョウヤはホーストの背後へと素早く回り渾身の一撃を与えるが為、剣をホースト目掛けて振り下ろす。

「甘いんだよ!」

 が、それは虚しく失敗に終わった。キョウヤの腹にホーストが渾身の一撃を与えた。

 防具は凹みキョウヤの口からは鮮血が流れる。この時圧倒的な力の差を思い知らされる。キョウヤはチート武器を振り回し楽にモンスターを倒しレベルが上がっているはず。それも一級品の防具を身に付けるほどに。それなのにホーストは素手で倒した。

 きっとホーストは上位魔法も使えるのだろう。火の海という事はインフェルノ辺りなどを。だがそれを一切使わずキョウヤを倒してしまった。

 

「これで分かったろ。俺には勝てない。だから歯向かおうなんて愚かな考えを持つなら今捨てろ。じゃあな。3日後楽しみにしているぜ。」

 そういいホーストは去っていった。

 

 

「ねえめぐみん本当にあの悪魔にちょむすけを渡しちゃうの!私反対だからね!」

「何を言っているのです。渡すわけないでしょう。紅魔族は売られた喧嘩は必ず買う。こうなったら徹底抗戦です!」

「そうよね!」

「なのでカズマ。作戦よろしく!」

「ふざけんなぁ!お前も考えろ!」

 話し合い方向性が決まった。まずそのためにはチート持ちを仲間にしなくてはいけない。

 

 

 その後、俺達は負傷した者を馬車に乗せアクセルへと向かっていた。

 馬車は10台ありその中に負傷者は5人から10人ほどおり、プリーストが治癒を行なっている。

 俺も回復魔法が使えるので治癒をおこなっている。だが俺が治せるのは軽傷者だけ。重傷者のキョウヤの治癒は美遊が行なっている。

「い、いてぇ。」

「どうすんだよあれ。」

「くそ!足がいかれちまった。」

 馬車内は絶望に浸っている。それもそのはず。唯一の頼みである魔剣の勇者がやられたのだから。

 

 軽傷者の治癒が終わり美遊の方を見たがそっちも終わっていたようだ。

「キョウヤしっかりして!」

「そうよキョウヤ!」

 盗賊風の女の子と槍を持った女の子が声を掛けてもまだ目が覚めない。

 俺はその二人に声をかける。

「なあ」

「何よ!またわからない?いま忙しいの!」

「そうよそうよ!」

 このアマ!

 ここは我慢である。

「よかったらこいつの凹んだ防具治そうか?」

「「出来るのなら是非。」」

 おう、さっきまでとは打って変わって表情が変わったな。俺はさっきのこの二人の言葉にまだイライラする。

 だが我慢。早く防具を治してこいつには戦線復帰してもらわないと困る。

 さっきめぐみんと話し合ったがめぐみんは売られた喧嘩は買うといいホーストと敵対し、ちょむすけとやらを渡さないと決意したらしい。俺達はその意見に賛成した。取り敢えず装備を整える必要がある。それにキョウヤが戦わない限り俺達に勝ち目は無いだろう。

 

 

 防具の修理もあともう少しとなった。あとはヤスリで擦るだけである。

「ん、ここは?」

 どうやら目が覚めたみたいだ。

「「キョウヤ!」」

「よう、キョウヤさんで合ってるんだろ?」

「あ、ああ」

「俺は衛宮和真だ。防具は治したい。さあ装備を整えて3日後の決戦に…」

「断る」

「今…何て言った。」

 おかしい。こういう勇者気取りはなんかそれっぽいこと言ってれば戦ってくれると思ったんだがな。

「断ると言ったんだ!君も僕と同じ日本人だろ?だったら分かるだろ?いくらチート武器があってもあいつは倒せない。それなら王都に沢山僕達と同じチート持ちの連中が居る。だからそいつらの到着を待って…」

「残念ながら王都からは増援は来ない。なんでも魔王軍の動きが活発になったらしい。だから王都からは来ない。他の街も拒否している。つまり今の現状でなんとかするしかないんだな。」

 俺はハハハと笑う。

 本当めぐみんが敵対さえ選ばなければ…いやもうそれはしょうがない。俺だって妹のために全てを捨てて戦ったのだからめぐみんの意見を反対するわけにはいかない。そう、それがたった1匹の猫だとしてもだ。

 

「どうしてそんなに笑っていられるんだい?」

「いやもう開き直ったら笑いがこみ上げてきてな。まあ正直言ってお前が戦わないと街の人が死んじゃうんだなこれが。」

 これでどうだ!正義感の強いこいつなら街の人が〜とかありがちな台詞でも言っとけばなんとかなるだろう。

「いいのかそれで?あの悪魔に一方的にやられたんだぞ!」

「大丈夫だ。作戦はあるにはある。けどそれにはタンク役が必要なんだよ。それに今度は当たらなければいいだろ?どこぞの赤い流星の人が言ってたろ?」

「馬鹿なのか君は!防具があったら重くてうごけないだろ!」

「着なきゃいいだろそんなの。」

 

 ーーーーーー

 ミツルギ視点

 狂っているのかこいつは。第1策はあるのだろうか。

「策はあるのか?」

「あるにはある。お前がタンク役として時間を稼ぎめぐみんの爆裂魔法で…あ!そしたらお前も死ぬか。じゃあこれなんかどうだ?あいつの狙いのちょむすけを人質…いや猫質にして脅すとか。」

 こいつは悪魔の生まれ変わりかなんかでは無いだろうか。こんな奴に命を預けていいのだろうか。

「君日本人なんだろ?だったら何かしらのチート武器か能力を持ってるん…」

「ないです。」

「はい?」

 無いと聞こえたが聞き違いだろう。

「だから無いです。代わりにお金と一般常識を教えてもらったけどな。」

「ねぇキョウヤ。何の話?」

「あとで説明するよ。それとカズマ?でいいのか。何故チートも無いのにあんなのと戦おうと思うんだ?僕は君より先に来てレベルも装備もステータスも違う。そんな僕ですら負けた相手に勝とうというのか?」

 そんなの無理だ出来るはずがない。そんなの日本人には出来るわけ…

「何?お前自分が強いと思ってたの?ただ魔剣の力に依存して来たお前が?スキルもロクに使いこなせてないお前が?お前何回死と直面した?無いだろ?だって魔剣の力に頼って来たんだから。」

「ちょっとあなたキョウヤに失礼でしょ!」

「そうよそうよ!」

 確かにこれまであれほど追い込まれたことなんて無かった。確かに僕はスキルなんて頼らず魔剣だけでほとんど倒して来た。

「じゃあ君はこれまで何回死と直面したんだい?」

「7回」

「つまりそれってまともにモンスターと渡り合えず雑魚モンスターに死にかけたってことでしょあなたなんかとキョウヤを比べないで!」

「そうよ!」

 いや、そんな事じゃあんな目にはならない。だがこいつは見るからに駆け出し。ではどうして。

「それはどこで」

「日本だよ。」

 つまりこいつは、いじめられて7回は死にかけたのだろう。それなら納得だ。だって僕…いや俺は不良だった。それでよく弱そうで金を持っているやつから暴力で巻き上げて来た。そして見てきた。そいつらの顔を。そして俺は復讐され殺された。

 だが女神様がこの俺を助けてくれた。だから俺は改心しようと思った。口調を変え誰にでも優しくして。その間俺は自惚れていたのだろう。

 でももう面倒だ。俺をコケにしたこいつは絶対痛い目に合わせてやる。

「所で君のレベルは?」

「因みに僕は30だよ。」

 あいつは自分のレベルを見て溜息をつく。

「5だな。」

 勝った。

「じゃ勝負しよう。もし君が勝ったら僕は君の言うことを聞こう。だがもし僕が勝ったら。そうだな…」

 俺は辺りを見渡した。きっとこの女の子はこいつの妹だろう。どういう経緯でそうなったかは分からないが。

「じゃ君のパーティメンバーをもらおうか。君のパーティは実にいい女性が集まってるじゃないか。」

 俺はこいつの耳元で囁いた。

 

 

 ーーー

 カズマ視点

 自分のレベルを見て愕然とした。おかし……くないわ。そういえばこれまで俺が倒したモンスターはカエル三頭とスライム1匹。それと小型モンスター五体。

 それ以外は殆どめぐみんとゆんゆんが倒していた。

 美遊はレベルは7だがそれまでにアンデットを100体以上は浄化してきた。

 そう考えてばまだ俺は上がりやすいのか?でもあのスライムは絶対メタル枠だろ!

 

「僕が勝ったら君のパーティを貰おう。君のパーティは実にいい女性が集まってるじゃないか。」

 こいつ。絶対殺す。いや殺しちゃダメか。死なない程度に懲らしめるか。

「たかがレベル5の君が僕に勝てるわけないだろ。因みに君には拒否権はないよ。死に直面したと言ってもどうせいじめかなんかだろ。そんなゴミに負けるわけないだろ。」

 チート持ちはそう俺の耳元で囁く。

「上等だ。お前こそ逃げんなよ。」

「ああ、いいとも。」

 俺達はアクセルの街に着いた。




文字数も多く急いで書いたので誤字脱字が多いことでしょう。あとミツルギは金髪の癖に平凡な高校生とか言ってていやお前絶対不良だろwとか思ってました。
まあいつか改心させますから。


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4話 君には改心する権利がある

題名おもいつかねぇ。
なんかいも見直しはした。間違ってはいないと思う。

週一で日曜日に投稿すると言ったな。あれは嘘だ。
まあ出来るだけ守りますけど。


 街に着いた俺は武器屋へと通い、矢を補充し、新たにちょっと値は張ったがショートソードを買った。なんでもこの街では良い方らしい。そのせいで五万エリスが消えたが。だがあいつを倒すのにはしょうがないだろう。

 俺はギルドの裏の修練場へと向かった。

 

ーーー

ミツルギ視点

「おっと着いたみたいだね。ギルドの裏には修練場がある。僕はそこで待ってるからね。」

 俺はカズマの耳元で

「レベル5のゴミが僕に勝てるわけないだろ。勝ちは俺が貰う。まあせいぜい頑張りたまえ。まあ俺の勝ちに変わりないけどな。君のパーティメンバーを貰って更なるハーレムでも作ってやるよ。君は指でも咥えて見てるがいいさ。」

「そうか、死ね。」

 日本で虐められてただけのあいつに何が出来る。その程度で7回も死にかけて結局死んで。ほんと情けないよな。

 

 

 

 

 

 修練場へと着きしばらくしてあいつがやってきた。装備がまず舐めている。

「おいおいそんな安い武器で僕に勝とうっていうのか?」

「いやいやこれ五万エリスしたからな。日本円で考えてみろよ。スマホより高いぞ。つまりこれはスマホより有能ってことだろ。つまり異世界にスマホ持って行くよりこの剣を持って行った方が使えるってことだろ?五万エリスの力を見くびるなよ。」

 それはどこぞの小説であるから、しかもアニメ化しているから色々とまずい気がする。

 

 

 

 

 

ーーーー

カズマ視点

 スマホより剣は有能。こいつは何も分かっちゃいない。それに街の中では上級魔法は使用禁止なので仕方なく買うしかなかったのだ。まあこんなクズなんか弓と矢数本で十分すぎるからな。

 そもそも一応…いや、ギリギリ英霊に成れる俺がこんなクズに負ける道理などある訳がない。…多分。

 

「それじゃあ、始めるぞ。ヨーイスタート!」

 キョウヤはすぐ強化系スキルを発動させ襲いかかってきた。おそらくスピードを上げたのだろう。だがその程度どうということはない。

 

 俺はキョウヤが繰り出してくる攻撃を寸の所で避け続ける。

「どうした。どうした。その程度じゃ俺どころかカエルすら倒せないんじゃないのか?」

 野次馬の人も笑う。

「うるさいわね!あんた逃げてるだけでしょこの卑怯者!」

「そうよこの卑怯者!」

「レベル30がレベル5と戦う方が卑怯だろ。そんなのも分かんないのかよ。お前らの知力何だよ?知力たったの5かカスめw」

 俺はキョウヤの攻撃を回避しながら会話をする。もちろん俺の知力は53万…な訳ない。

 

「お前不器用過ぎないか?だからあの悪魔に全然攻撃が当たんないんだろw」

 切れたキョウヤは全力の一撃を振るうがそれも避ける。当たった地面には信じられないクレーターが出来ている。

「お前弱すぎ。レベルは飾りとはよく言ったもんだな。」

 

「おい笑ってたけどあいつやばくないか?レベル5なんだろ?なんであんなに回避してるんだ。俺てっきりレベル50の猛者がやっと30になったばかりのやついじめてるだけかと思ったのに。」

「あ、ああ信じらんねぇ。あいつ強いというか狂ってないか?普通出来ても寸の所で避けるか普通?しかもあいつはあのミツルギだろ。正気じゃねぇことは確かだろうな。」

 

 野次馬は俺の事をバーサーカーか何かと間違えてるだろ。俺はアーチャーだ?いやスキルマスターか?

「いい加減剣を抜いて戦ったらどうだ!ただ避けてるだけだろ?腰にある剣は飾りかい?」

 そうしないと俺勝てないし。ただし正々堂々とやった場合だけだがな。俺は卑怯な手を使わずこいつを正々堂々と倒しこいつのプライドを完膚なきまでに潰すのが目的なのだから。だからスキルは使わない。

 とりあえず俺は剣を抜くと見せかけて弓を構える。

「おいおい。安物の弓で僕を倒すつもりかい?本当舐められたものだな。」

「舐めてるのはお前だよ。」

 俺は狙撃スキルを使わずそのまま自分自身の技能で放つ。矢はミツルギの頬を掠め通りすぎて行く。

「えっ⁉︎」

「気づかなかったろ。もし今のが本当にお前の頭を狙ってたらどうなったんだろうな。」

 やはりこいつはこの程度なのだろう。まずこいつは油断しすぎである。

 例えるならなんか強いはずなのにストーリ場の問題により倒されてしまうキャラのようである。きっとこいつの最期は自爆モンスターにやられて"ヤムチャしやがって"になるのだろう。それを考えると真剣勝負のはずなのに笑いがこみ上げてくる。

 

「卑怯者!弓なんて使って恥ずかしくないの!剣があるなら正々堂々と剣で戦いなさいよ!」

 それソードマスターの人に有利ですよね。

 けど剣だけに頼ってきたこのバカにはいいハンデだろう。ギリギリ俺も英霊だ(アーチャーの)剣術で負けるはずが無い。

「やっと正々堂々戦う気になったか。」

「うるせぇ。」

 二人は剣を持ち駆け出す。

 

 甲高い金属がぶつかる音。

 チート武器とまともにやりあったら剣が壊れてしまう。だから俺は剣を剣で受けず避けその隙に突きの攻撃をするが防具で弾かれてしまう。しかし防具を治したのは間違いだった。

「オラァ」

 俺は蹴りを使い距離を離す。

 仕切り直し再び接近する。剣は余裕で避けられる。だが進んだ先に待っていたのは足蹴りだった。

「さっきのお返しだ。どうだい僕の蹴りのお味は。」

「ハァハァ…あ、甘いな。」

 そんな訳ない。今ので骨が何本か折れた。

 キョウヤは何をトチ狂ったのか剣を捨て防具を外した。

「何…やってんだ。」

「いや別に……ただあの頃に戻るだけだ。」

 

 

 

ーーーーーー

ミツルギ視点

 やはり道具を使うのは苦手だ。やはり男の戦いは殴り合いであろう。

 そう俺は不良としてこいつと戦う。もう自分に慢心などない。

「かかってこいよ。」

 きっとこいつはいじめられて死にかけたのではなくなにか強大なものに挑んで死にかけたのかもしれない。もし、いじめられていたとしても最後まで抵抗し続けたのだろう。

 

 

ーーーー

カズマ視点

 明らかに空気が変わった。

「お前ソードマスターの癖に剣捨てるとかお前ソードマスター向いてないんじゃないの?」

「クラスと趣味は別物だ!」

 俺へと降りかかる拳は先ほどの生ぬるい攻撃とは違う。防具を捨てたせいか動きも速い。やはり俺には舐めプは似合わないか。

 俺は剣脊で受けるが吹っ飛ばされる。

「がはっ」

「まだまだ。」

まさか拳だけでこんな力があるなんて。流石レベル30超えなほどはある。

 

 

ーーーーーー

観戦視点

「お兄ちゃん!」

カズマはキョウヤの一撃で吹き飛ばされた。さっきまでカズマの方が優勢だった筈なのに一気に形勢が逆転してしまった。

「大丈夫です。カズマは美遊を助ける為に必死に戦って来たのでしょう。美遊にとっての英雄なのでしょう。なら見届けましょう。必死に戦い続けたカズマが負ける筈ないのです。」

「そうよか、カズマさんが負けるわけないわよ。」

 

 

ーーーーーーー

カズマ視点

 

 本当にやばい。意識が飛びそう。慢心しなければ勝っていたはずの戦い。なぜこうなった。いや俺が間抜けだったからだ。なら次の攻撃に俺の全てを賭ける。

「どうした。」

 さっきから連打のパンチを食らっている。

 本当にやばい。俺は吹き飛ばされる。それをただサンドバックを殴る作業のようなキョウヤ。キョウヤにはもう慢心はなく反撃の一手があるだろうと警戒し、ゆっくり近づいてくる。

 だが、俺はその間にバレないように詠唱する。最後の最後でスキルを使わないといけないなんてな。

「どうやら何もないみたいだね。さよならだ。カズ…」

「ライトニング!」

 強大な魔力を込めて放った電撃はキョウヤの至近距離で命中し、キョウヤはピクピクと痙攣する。

「お返しだぁ!」

 俺はまだ意識がはっきりとしないキョウヤの顔面を押さえ膝蹴りをくらわせた。

「勝った…」

 その後俺は倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー

ミツルギ視点。

 負けた。

 一対一の殴り合いでは負けな事のなかった俺が初めて負けた。最後の最後で油断してしまったのだろう。でもあいつは強かった。レベルの概念を超えて俺を倒した。

 最後まで諦めなかったカズマに俺は良いなと思った。カズマにはひどいことを言ってしまった。

 やはり俺は…いや僕は改心しよう。カズマはきっと僕を改心させる為に神が送ってくれた人なのかもしれない。そうなのだ。これもきっと神のおかげ。

 カズマには謝らないとな。

 

 

 

 

 

ーーーーー

カズマ視点

 目覚めると美遊の顔があった。

「お兄ちゃん……良かった。」

「ごめんな美遊。油断してあともうちょっとで負けちまうところだった。」

情け無い。俺はあの時はいつでも本気だった。それでギリギリ勝ってきた。死ぬかもしれなかった。それなのに俺はそんな事も忘れていた。本当に情け無い。

「良いんだよお兄ちゃん。お兄ちゃんが居てくれれば私はそれで。だから死なないで…お願い。」

「ああ。」

そういえば結局剣ちっとも使ってなかった。それに決闘のせいで剣士職の冒険者にスキルを教わる予定が狂ってしまった。

「カズマ。」

「どうしためぐみん?」

「…か」

「か?」

「かっこいいです!敵の攻撃を寸で避け、弓でトドメを刺せたのにそれをせず、わざわざ相手の土俵に立ち互角に渡り合い、追い詰められても最後の最後で逆転して、しかもスキルを一つしか使わないなんて!」

めぐみんの目はより赤く染まり、よくもまあ長ったらしい台詞を噛まずにいえるな。きっと厨二病族には何か心くすぐるものがあったのだろう。俺は辛かったけど。

しかし、ちょっと照れるな。

「わ、私も。弱そうなのにあんな凄い人に勝つなんて。」

「OKゆんゆんが俺の事どう思ってるかはっきりわかった。」

「え、あっ、ち、違います。別に貶してなんていません。これはその…言葉のあやです。」

 

その後俺はゆんゆんに肩を借り家へと帰還した。

美遊の治癒のお陰で殆ど骨は治っていた。まだ痛いけど。

 

 

 

 

次の日

俺達はギルドに呼び出された。

「カズマさんにはあの巨大スライムを倒した討伐報酬があります。」

20万エリスほど貰った。まさかあのスライムにこんな懸賞金がかけられているとは思わなかった。

「ありがとうございます。それではこれにて…」

「待ってください。あの…こんな事駆け出しのカズマさんには申しにくいのですが、今から出来るだけレベルを上げてあの悪魔討伐を依頼したいのですが…それに爆裂魔法も使えますし…」

「無理です…仮にも上位職ですよ。レベル上げは無理です。爆裂魔法もまだ制御は出来ません。けど、めぐみんならなんとかなるでしょうが…」

それにはタンク役が必要でキョウヤを負かしたから解決と思ったが、考えてみるとあんな口約束守るかどうかも怪しい。それなら少しでも足止めの手段を考えなければならない。

「が?」

「それまで時間を稼がないといけません。バインド用のロープを買おうにも高くて手を出せないし、それに悪魔に実態ってあるんですか?」

「無いです。」

終わった。

「しかし貧乏亭…コホン。」

おい。

「心優しい店の人が売れ残りだからと幽霊などの実態のない敵も拘束できる物を半額で寄付してくれたのです。ぜひ使ってください。もちろんタダで。」

と言いギルドの人からバインド用のロープを借りた。

 

 

 

 

「魔道具を買いに行きましょう。」

「は?」

「魔道具です魔道具!」

「「ナニソレ?」」

どうやら魔道具とは字の通り魔法を込めた道具らしい。ホースト戦のためにも装備は整えようという事になったらしい。

「でも俺と美遊はそんなの全く分からないぞ。」

「だからこそみんなで行くのですよ。」

面倒い。

 

 

お前達だけで行け!と言おうとしたがゆんゆんが「仲間と一緒に買い物…はぁわわわわ」と目を明るくしていたので言うに言えなかった。本当に誰だよあそこまで悪化させたの。

 

 

「なあどれにするんだ。早よ決めろよ。」

「うるさいですね。こういうのも楽しみの一つなのですよ。」

でもホースト戦はどうしてもやらないといけないんですよね。

 

「これなんてどう?マナタイト。これさえあれば魔力については考えなくていいし。あっ!透明化のスクロールだ。これも買おう。」

ゆんゆんがこれまでになくテンションが上がっている。本当に人と買い物に行くのは初めてなのだろう。

「カズマさんはどれが良いと思いますか?あと美遊ちゃんも。」

「「分かんない」」

「そう、よね…どうせ私なんて。」

地雷を踏んでしまった。本当に面倒くさい。

「ち、ちがう!分からないからゆんゆんに頼ろうかななんて。」

「う、うん!」

「そうよね!ようよね!」

ぱぁあっと顔を明るくする。

ふっ、チョロい。

「これくらいで良いわよね。」

「ですね。」

「だな。」

「うん。」

スライムの討伐報酬が一瞬にして消えてしまったぜ畜生。

 

 

 

夕食

今日はめぐみんとゆんゆんが来る予定だ。

「お邪魔します。」

「あれ?ゆんゆんは?」

「おかしいですね。先に来ていたと思ったのですが。」

「じゃあそれまで待つか。」

「ええー。」

「お前またゆんゆんの鬱になった顔を見たいのか?」

「いえ、遠慮しておきます。」

ですよね。あの顔を見ると本当こっちが泣きたくなって来る。

 

しばらくしてゆんゆんがやって来た。

「ごめんなさい。ちょっと用事があって。」

「ふーん。それより早く食べようぜ。」

「もしかして私の為に待ってくれてたんですか。」

ゆんゆんはより一層顔が明るくなる。

「ほら。早よ食べよ。」

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

ミツルギ視点

数時間前

「「キョウヤ大丈夫」」

「あ、ああ。」

なんで寝てるんだっけ?

ああ、そうかカズマに負けたんだっけ?

「それにしてもあいつ最低よね。人をおちょくって挙げ句の果てにキョウヤの顔面に膝蹴りをするなんて。」

「本当そうよね。」

違う、違うんだ。最低なのは僕だ。言わなくては、せめて二人には言わなくてはいけない。

「違うんだ聞いてくれ、僕は……」

「あのすいません。」

カズマの所の女の子がやってきた。

「協力してください。お願いします。」

「「「?」」」

この子はゆんゆんと言うらしい。僕達はゆんゆんの話を聞いた。

「私達明日あのホーストと戦います。けど私の友達のめぐみんやカズマさん美遊ちゃんには怪我をして欲しくないんです。勝手なのは分かってますが…どうか私に協力してくださいませんか……もちろん断ってもらっても構いません。私は一人で戦います。」

仲間に傷ついて欲しくない…か。

これはチャンスかも知れない。これから真に改心できるチャンス。カズマには謝らないといけない。別に罪滅ぼし出来るとは思ってはいないが。

「もちろん構わない。でも勝算はあるのかい?」

「あ、あります!魔道具をありったけ買い占めました。」

ゆんゆんが持っている魔道具はマナタイトに魔法を強化する為のもの。しかも殆ど一級品。

「途中からは私だけで買いました。」

「これならいけるかも知れない。君は魔力を貯めて最大火力であいつに喰らわせてくれ。それまでは僕達が時間を稼ぐ。」

「あ、ありがとうございます…それと最後に辛いお願いをしてもよろしいですか?」

「いいとも。」

僕が改心できるならなんだってやってみせよう。

 

 

 

 

 

 




戦闘描写難しい。
自分の稚拙な文章力が酷過ぎて泣きたくなってくる。
本編進めたくてもやる気が出ない。本当は5話で終わらせる予定だったけど。まあやっちゃったものはしょうがない。

それでは是非コメントやお気に入り登録、評価お願いします!


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5話 死闘の果てに得た物

応援メッセージが届きました。超嬉しいです。

途中三人称になったり一人称になったりしたますが私のミスです。やらかしました。

すみません投稿遅れました。ちょつと事情があったんですよ。
あと僕受験生です。
おい!って思った人いるでしょう。大丈夫です。余った時間に書いてるだけですから。長く勉強しても頭の中に入りませんし。それに書いてると頭が回転してテストの点数も上がりました。


暗がりの街の裏路地に二人の会話が響く。

 

「了解だ。」

 

「ごめんなさい。あんな頼みごとをしてしまって。」

 

「いいんだよ。」

 

そう、僕には相応しい役割だ。

 

 

 

 

 

 

 

飯も食い終わりめぐみんとゆんゆんは帰っていった。

俺と美遊は食器を洗っているとトントンとノックの音が鳴る。

 

「はーい。今出ます。」

 

ドアを開けるとキョウヤがいた。

 

「どうしたんだ?」

 

「カズマ。昨日はすまなかった。当然許してもらえるはずなんてない。それでもこの気持は本当だ。」

 

キョウヤは玄関前で土下座をしだした。

 

「キョウヤ…変なもんでも食ったか?」

 

「……食べてない」

 

おかしい2日前は完全に悪役だったのに。誰かに洗脳されたか?

 

「僕は日本では不良だった…」

 

「だろうな。金髪に染めてるし。」

 

「……で死んで異世界に来てからは改心できると思った。でも結局出来なかった。」

 

「おう、何が言いたいんだ?」

 

「でも、これから、カズマに負けてから気が変わった。」

 

ん? 話の意図が掴めん。俺がしたことといえば顔面に膝蹴りしたくらいだぞ。まさかMに目覚めたか?

 

「僕は…いいやカズマを改心するための言い訳にするのはやめよう。はっきり言って異世界に来てまで改心出来なかった僕はさらに改心するための口実を求めてたんだろう。でもこれだけは言わせてくれ。すまなかったカズマ。」

 

ん?まだ分からん。

 

「よく分からんがまあいいや。明日来てくれるってことだろ?」

 

「あ、ああ。けど。」

 

「ん?…ぐっ、」

 

腹部に鈍い痛みが走る。腹部を見るとキョウヤの裏拳が綺麗に入っていた。

 

「君達を明日連れて行くわけには……行かない」

 

「て、てめぇ……」

 

やはり信用ならなかった。

 

「これでいいかい?」

 

「はい。」

 

暗がりの路地から歩いてくるもう1人の影は家の明かりに照らされ姿を見せる。

 

その正体はゆんゆんだった。

 

なんで?なんでゆんゆんがこいつと?

 

「ごめんなさいカズマさん。やっぱりカズマさん達兄妹を連れて行きたくありません……だってもうあの話を思い出したら……もう。カズマさん達にはひどい目には遭って欲しくありません。」

 

ゆんゆんの声は少し裏返っており、涙ぐんでいた。それは何処か■に似ていた。■の顔ははっきりと覚えてはいないがなんとなくそう感じた。

 

あの時あんな話をしなければよかった。

その後俺は意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

ごめんよカズマ。

 

「ごめんね美遊ちゃん。"スリープ"」

 

 

その光景を見てあることを思った。カズマを殴った意味なくね?と。

突っ込んではいけない。

 

 

「本当にありがとうございました。」

 

 

「…いいや。これから僕はギルドで呼びかけてみるから。」

 

「はい。」

 

 

 

 

 

 

「ずま!…… か…ま!」

 

うるさい。

 

「起きてくださいカズマ!」

 

「ん……めぐみん?」

 

確か俺は昨日キョウヤに無言の腹パンを食らって、

 

「ああああアァッ!」

 

「ど、どうしましたか?」

 

「あんのクソ野郎!今すぐボコボコにしてやる!」

 

「それどころではありません!ゆんゆんと魔剣の男はもうホーストと戦いに行ってるんですよ!いい加減に装備を整えて向かいますよ!二人とも。」

 

 

 

美遊はもう装備を整えていた。

俺は装備を整えゆんゆん達のところへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間前

 

街の門で待っているとキョウヤさんはパーティの二人と共に来た。その目には静かながらも燃える闘志が宿っていた。

 

「すまない遅れたか?」

 

「い、いいえ。」

 

私は作戦を伝えた。

 

「じゃあ私はバインドで拘束。その間ゆんゆんさんが攻撃。悪魔の攻撃はキョウヤが受けるでいいのね?」

 

と盗賊風の女の子が言う

 

「はい。それでは向かいましょう。」

 

 

 

 

 

 

 

普段は元気に飛び回っているカエルの姿は無く平原には相応しくない上位の悪魔が居座っている。

 

 

「よ、来たかお前ら…他の3人はどうした? まあいいや、それで肝心の猫は連れて来たんだろうな?」

 

 

「そんな訳ないでしょ!あんたなんかにちょむすけは渡さないわ!」

「あーあ、契約違反…か。これだから人間は…」

 

 

ホーストはため息をつく。

 

「まあいい、悪魔との契約を破ったらどうなるかその身に思い知らせてやる。」

 

 

ホーストは無機物な目を不気味に光らせ笑みを浮かべる。

 

 

「"インフェルノ"」

 

 

手を掲げそこから禍々しいほどの魔力を込めた地獄の業火とも言うべき物をゆんゆんに向けて放つ。

 

しかしゆんゆんにあたることは無かった。

 

 

「お前、前衛の癖に防御力がやけに低いと思ったら魔法耐性を上げやがっていたのか。」

 

「さあ……どうだろね?」

 

何故ならキョウヤが剣を盾がわりにして受けていたからだ。流石チート武器というべきであろう。普通の武器ならドロドロに溶けていたであろう。

 

だがキョウヤは剣を盾にしたと言っても熱は直に受けてしまう。キョウヤはカズマとの戦いでの反省として魔法耐性をスキルポイントで振っていたのだ。そのおかげでスキルポイントがあと少ししかない。

 

だが本当なら死んでいる。しかし被害は甚大。直に浴びたキョウヤの体は、今は立つのがやっとである

 

「"ライトニング"」

 

ゆんゆんはその隙に、全力で雷撃の魔法を放つ。そしてゆんゆんの懐にある、魔力を肩代わりしたマナタイトは砕け散った。

 

あと残り2つ。

 

飛翔する稲妻は、カズマの使うライトニングとは比べ物にならないほどの威力と速度であった。

これが本職との差とでもいうべきであろう。他にも、紅魔族でしかも魔法攻撃力が馬鹿みたいに高いという点もあるが。

 

「いってぇな、クソが!」

 

お返しとばかりに呪文を唱え魔法を放つ。

 

「"インフェルノ"」

 

狙いはゆんゆんと思われたが予想は外れ前衛職であるキョウヤへと放った。

ホーストは前衛を先に片付けた方が楽と考えたのであろう。

 

いくらキョウヤが魔法耐性をあげたと言ってもあれほどの魔法を二度も食らえば最悪命が危うい。例え運良く死ななかったとしても戦闘続行不可。

今前衛を失うと大きな痛手になってしまう。

キョウヤは動こうとするがまだ動けない。キョウヤは先の魔法攻撃の痛みがまだ残っている。

 

「"マジックキャンセラー"」

 

ゆんゆんは念のため手に握っていたマジックスクロールを慌てて発動させる。マジックスクロールを掲げ、スクロールに封印された魔法が発動しホーストの魔法を打ち消した。

 

「アアアアァッ!何なんだよさっきからちょこまかと!いい加減くたばりやがれ!」

 

ホーストは目の前にいるキョウヤを無視し、ゆんゆんへと接近する。普通ならキョウヤが守るはずなのだが、やはりというべきか先のインフェルノがだいぶ堪えたらしく動けなかった。

 

「"バインド"」

 

体全身に草を付け地面と同化していた盗賊風の女の子がここぞとばかりに拘束スキルを発動した。

ロープは生き物かの様に動きホーストを拘束する。

 

「「「やった!」」」

 

ゆんゆんとキョウヤのパーティーの女の子は片手でガッツポーズを取る。

「残念でした。」

 

決まった!と思ったらどうやったのかホーストはロープの拘束を免れていた。

 

「俺たち悪魔はな霊体化ってのが出来てそれをすれば簡単にすり抜けられるんだよ!ヴァカ!せめて聖水に一晩漬けるか霊体すら拘束可能なロープでももってこい!」

 

バインド作戦は失敗してしまった。現状は前衛負傷。盗賊出番終了。残りは私と槍兵の女の子だけ。

 

ホーストは刻一刻と迫って来ている。私は魔法の詠唱がまだ終わっていないため私はただのお荷物。どうするかどうするか考えていると、槍兵の女の子が前へと出た。しかしその女の子は足が震えていた。

 

それもそのはずなんたって自分のリーダーが前に手も足も出ないでやられた相手だ。そして今も一発だけであの有様。

 

「どけ。」

 

「いや!」

 

「あーあ。でしゃばらなければ死なずに済んだのにな。」

 

ホーストは槍兵の女の子へと拳を振り下ろす。

 

「ヒィっ⁉︎」

 

ビビりながらも後ろへと後ずさりする。その時石につまづき尻もちをつき転んでしまう。しかしそのおかげでなんとかホーストの攻撃を避ける。だが次の攻撃は避けられるはずがない。

 

「い、いや。死にたくない。だ、誰か…キョ」

 

泣きながら『キョウヤ』と助けを求める。がその声より先にある男が立っていた。

 

そう、彼女らにとっての勇者(ヒーロー)が。

 

「悪いね僕が動けなくなってる間怖い思いをさせて。」

 

キョウヤは優しくこれをかける。

 

「これで終わらせるから。ゆんゆんさん次に最大火力をお願いします。」

 

「はい。」

 

「お前…本当にソードマスターなんだよな⁉︎」

 

ホーストはあまりのことに動揺する。なんたってキョウヤは武器も防具も全て捨てていたのだから。

 

「ああ、ソードマスターだよ……元不良の…ね。」

 

「ほんとこの街クソだよな。昨日は盗賊とクルセイダーの女が『悪魔しばくべし!』とか『ぶっ殺してやる!』とかいって特攻仕掛けて来てよ。しかも盗賊の女は一晩どころか1ヶ月聖水に浸したバインド用ロープ使って来やがってよ。もうなどとこんな街来るか!」

 

ホーストに何があったかはよく分からないが八つ当たりするかの様に僕へと右ストレートが僕へと飛んで来る。

 

分かる。3日前のとは比較にならない威力だと言うことを。だが僕だって。

 

今僕を殺す為飛んで来る巨大な拳を拳で打ち向かう。骨がミシミシと軋み悲鳴を上げる。

 

「お前本当にソードマスターか?武闘家の間違いだろ⁉︎」

 

ホーストが驚くのも無理はない。と言うよりも驚かない人の方がいないであろう。

 

キョウヤがホーストに対等に渡り合えているのは当然何かしらのズルがある。それはキョウヤは今習得している強化系スキルを全て使っているのである。

 

だがそんなチート行為は当然長引くはずがない。スキルの合計消費魔力とキョウヤの魔力量を考えて5分待つかどうかである。さらに、当たり前だが激しく動くため体力の消耗も激しい。つまり実質もって3分程度である。

 

 

さっきどこからか『ウルト○マンかよ』とか言う声が聞こえた気がする。

 

「ははん。さてはお前習得している強化系スキル全て発動しやがったな。そんな事しても死が近づくだけだぞ。」

 

「それはどうかな?」

 

僕はそのまま前進する。

 

「はっ、素直に前進か。バカが…」

 

「とでも思ってるのかい?」

 

僕はホーストのその巨体を逆に利用し、ホーストの人ひとり楽々潜れる股をスライディングで抜け、一発ぶちかます。

 

「ぐはっ、て、てめぇ…よくも…ぐほっ」

 

僕の初撃で怯んだホーストを何度も何度も殴る。が、ホーストも黙ってはいない。

 

「ハアアァッ!」

 

「オラ、オラ、オラ!」

 

 

 

時は少し遡る。

門を出てすぐの平原。

 

あの野郎後でライトオブセイバー食らわせてやる。美遊の話じゃ美遊はスリープの魔法で無力化したのに俺は腹パンとか酷すぎんだろ。せめて俺にもスリープ使ってくれよ。

 

俺はそんな気持ちを胸に草原を駆けた。

 

「そろそろあの場所が見えて来ますよ。」

 

果たしてこのまま向かっていいのだろうか。そんな考えが俺の脳裏をよぎる。

 

「まて。どうせなら潜伏で行こう。その方が安全だ。」

 

「あ、貴方って人は…」

 

おかしいな。めぐみんがゴミを見るかのような目をしているんですが。

 

「認めませんよ。あのような強敵との戦いでは正々堂々と戦ったりみんなで力を合わせてやっとの思いで倒したり、この場合だとピンチになったゆんゆん達を私がカッコいい決め台詞を言って倒すのが定石でしょう⁉︎」

 

お前が倒すこと前提かよ。

 

「じゃあこうしよう。潜伏でゆんゆん達へ接近し、ピンチになったところを見計らってギリギリ間に合ったかのような演出をしてお前が倒す。それでどうだ?」

 

「そんなクズいことを思いつくのもどうかと思いますがいいでしょう。私が、この私が!華麗に爆裂魔法で倒して上げましょう。そうと決まれば早く行きますよ。ああ、決め台詞は何にしましょう。」

 

どうやら俺の案にはなってくれたようだ。これで勝つる。

 

しばらくすると雷のような音が聞こえて来た。そこにはゆんゆん達とホーストの姿があった。

今はホースト達との距離やく50メートル。

 

どうやらキョウヤは動けず残るところ3人となった。

キョウヤ使えねぇ。

 

盗賊の子がバインドを使うがすり抜けられてしまう。槍兵の子も加勢するがすぐ尻餅をついてしまった。

 

確かにあの距離でのホーストの存在感はやばいもんな。と言うかこれやばくね?

爆裂魔法は間に合わないだろう。どうすればいい。

 

そんなことを考えているとキョウヤが槍兵の子を庇うかのように出てきた。キョウヤまじ有能。

 

だがおかしい点があった。防具も武器も全て捨てていた。

 

「あいつバカだろ。」

 

「単なる自殺行為。」

 

「ここまでダメだとは。」

 

いやでもあいつ素手でかなり強かったような。いやでもあいつ膝蹴りで伸びたし。ほんと強いか弱いか分かんねぇな。

 

「ハアアアァッ!」

 

「オラ、オラ、オラ!」

 

凄まじい連打の嵐。うん、間違いないジョ○ョだ。

お一人様オラオラとか言ってたけど承○郎?三部ですかね。

そんなことを考えている間にも戦いはヒートアップして行く。

 

「ハアッ!」

「オラ!」

両者の拳は同じく腹部へと深く入り込みキョウヤは倒れホーストは膝を地面に着く。

 

「"ライトニング"」

果たしてどれほど溜めて製錬したものだろうか。先程聞こえた雷より遥か上回る音を鳴り響かせているゆんゆんのライトニングは俺のライトニングとは比べることすらおこがましい例えることを許されるのなら天と地、月とスッポンほどの差があった。

 

「グオオォッ…ガハッ…ハァ…ハァ…クソが!だが残念俺は生きてるぜ。上級魔法なら殺せただろうに。」

 

「嘘、効いてないの⁉︎」

 

ゆんゆんは驚愕し一歩後退りする。

キョウヤはもう戦う力はなく地面にひれ伏せている。もう二人はガタガタと震えている。

 

「本当に使わなきゃいけないなんて。キョウヤさんお願いですどうか最後の力を振り絞ってあの魔剣でトドメをさしてください。もうキョウヤさんしかいないんです!」

 

その言葉に心身共に空となり立つ力すらないはずのキョウヤは死に体の自分に鞭を打ち付けフラフラと立ち上がり自分の武器の場所へとノロノロ向かう。

 

「はっ、お前のとっておきの一撃さえ耐えた俺に何ができる?やれるもんならやってみろよ。」

 

ホーストはあからさまに挑発してみせる。

 

ゆんゆんは懐の護符のようなものを取り出した。

「"パラライズ"」

 

「バカが、詠唱なしで魔法を使うなど血迷ったか?それに俺実態がないからパライズは効かないんだよ。さて始末するか……⁉︎」

 

ホーストは動こうとするが動かなかった。いや動かなかったのだ。

 

「バカな、動かねぇだど!」

 

D○O様じゃん。

 

「めぐみんあの護符みたいなの何?」

 

「あれは身に付けるとその護符が特定の魔法を強化、もしくは性質そのものを変えてしまいます。パライズなどの異常状態は基本悪魔には効きません。ですがゆんゆんのパライズは効きました。つまりあの護符は性質そのものを変えてしまうものなのです。あと使用者の技量によっては魔力消費を抑えつつ詠唱なしで撃てるなどというおまけ付きです。

まあゆんゆんほどの紅魔族であればあれくらいはできます。わたしもできますよ。」

 

「覚える気がないくせによく言うわ。」

 

つまり俺がやったら…考えるのはやめよう。

 

 

「キョウヤさん今です。早く剣を!」

「動けません。申しにくいのですがゆんゆんさんがとどめを…」

「…わたしも動けません。」

「「私も」」

 

全滅かよ。

 

「すごいな魔道具って敵に効果を与えるという性質を味方にも与えるという性質に変えるなんて。いやー本当すごいな〜」

 

「申し訳ございません。」

突如めぐみんが謝罪をしてきた。

「おいおい、どうしたんだよ〜あはは。」

「あの魔道具を作ったのは私の父です。」

「紅魔族って本当はバカだらけ?」

ぐうの音も出ないと言うような表情をしていた。

 

「よし、めぐみん。撃て。」

 

「えっ?」

 

「撃て。もちろん加減してな。出来ないんなら俺が代わりにやってやってもいいんだぞ。制御できなくて内側から破裂するかもだけな。」

 

ハッタリが通用するかどうか。通用しなかったら…美遊に任せるか。

 

「させません、させませんよ!撃つからには全力です!」

 

「"ドレインタッチ"」

俺はめぐみんから魔力を強奪した。

 

「ごめんなさい加減します。しますから魔力返してください。」

 

「ほらよ"ドレインタッチ"」

 

魔力が戻ると上機嫌になり息を大きく吸い詠唱を唱える。

 

「黒より黒く、闇より暗き漆黒に我が真紅の混交を望み給う。」

 

そこら一体がピリピリと静電気が起きる。

あれ?俺が使った時こんなことなったっけ?それに制御の難しい爆裂魔法をこんな遠くから撃つなんて当たるのか?

 

確か俺が使った時10メートルくらいしかなかったような。いやでもあれはあれでかなりの威力だったはず。それより高いとしたらゆんゆん達生き残るのか?

そんな疑問が脳裏をよぎる。

 

「おいおいなんだこれ!」

 

流石の上位悪魔も驚いている。当然といえば当然だろう。

 

「覚醒の時来たれり。無謬の境界に堕ちし理むぎょうの歪みと成りて現出せよ。"エクスプロージョン"」

 

めぐみんの放った実態を持たないはずの爆裂魔法はその膨大な質量によりホーストを持ち上げ空高くへと上がり爆発した。

 

「あーあ、紅魔のガキと魔剣持ちに食らったダメージが少なければ耐えれたのにな…このままだとウォルバク様との契約が切れて本当にあのガキンチョに使役されちまうかもな。……よし決めた金輪際こんな街とは二度と関わらねえ!」

 

それは独り言なのか俺たちへの愚痴なのかそれを言い放った後ホーストは灰になって消えていった。




いやっはー終わった。いやー頭ガンガンするなかやったからどうなってるかわ知らん。

あともう1つの作品で評価1をつけられてその人のを見たら投稿してたわけですよ。このすばの。
そんでねよし俺も評価1つけてやる!とおもって読んで見たんですよ。めっさおもろい。そして評価7付けました。お気に入り登録もして、コメントもしました。

いやーあのひと俺の代わりにこれ書いてくれないかな。そうすれば俺もストーリー考えないで『投稿まだかな?』って楽しみにできるのに。

まあ仕方ありませんよね。

死闘の果てに頭のそれはホーストの経験値です。それは全てめぐみんへ。


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一難去ってまた一難

スキル発動のとき""ではなく『』に変えました。


 ホーストを打ち倒しためぐみんは魔力切れとなり、その場に倒れこんだ。

 俺はめぐみんをおんぶして美遊と一緒にゆんゆん達のところへと向かった。

 

「ゆんゆん無事か?それにしてもなんでこんなことを、あとキョウヤ、テメェは一発殴らせろ。」

 

「待ってくださいカズマさん。キョウヤさんは悪くありません。私が頼んだんです。殴るなら私を。」

 

「ごめんなさい。やっぱいいです。」

 

 仲間を、しかも女の子を殴るというの人としてどうかと思う。

 

 

 ゆんゆん達はまだ痺れて動けないらしい。それにキョウヤはほぼ瀕死状態に近いのになぜあんな状態で戦えたのかは不思議である。俺との戦いの時は手加減されたか?いやそんな訳もない。本当に何があったのか聞きたい。

 

 美遊がキョウヤを手当てしているとこちらに向かってくる足音が聞こえてくる。

 

「まさかホーストがやられるとはね。びっくりしたわ。」

 

「嘘でしょ!なんでこんな時に。」

 

「タイミングが悪すぎますよ。」

 

 その声の主は豊満な胸に男性を誘惑するかのような肌を露出した服装をしていた。

しかし人間にはないはずの角とホーストの羽根を縮小した様な羽根が付いていた。

 

 間違いない、悪魔だ。

 

 二人の驚きようからしてホーストより前に二人を襲った悪魔アーネスだろう。

 

 

「それにしても魔法を使えないと思っていたガキがまさか爆裂魔法を使えるとは驚いたね。でもまあもう使えないだろ?それにもう一人の方は自滅、さらに魔剣の勇者のおまけ付きとまで来たもんだ。私は実についてるね。」

 

 最悪だ。最悪過ぎる。

 

「さあ死にたくなかったらウォルバク様を渡しな。」

 

 もういっそこいつにあの猫渡した方がいいのではないか。

 

「させる訳ないでしょ!」

 

「そうです。それにこの猫はちょむすけです。先生やちゃってください!」

 

 ですよね。知ってた、知ってたとも。でもたかが猫ごときのためにここまでやってたのかと考えるとなんとも馬鹿馬鹿しく思えてくる。

 

だがその猫の為にホーストすらも倒してもうここまで来てしまったのだ。やるしかないだろう。

 

 現状ゆんゆん、めぐみん、キョウヤ、その取り巻きは戦闘不能。美遊は瀕死のキョウヤを治癒しなくてはならない。つまり戦えるのは俺だけ。まじ帰りたい、美遊を連れて。

 

 弓矢はあっても邪魔なだけだろう動きにくいし。俺は弓を置き剣を抜きアーネスへと駆ける。

 

「ふーん。戦うんだ。いかにもヒョロそうなあんたが私と。」

 

 ああ、確かにヒョロいさ、だが俺は7人の英霊と戦ったそんじょそこらのヒョロ男とは違う。

 

 十分アーネスへと近づきあと数歩で剣先がアーネスに触れる距離になる。だがアーネスは動かない。きっとこれが『お前が私に攻撃出来る最後のチャンスだ』とでも思っているのだろう。

 

 俺は剣を強化魔術で強化し、剣を掲げ上段から下段への振り下ろしを体全身を駆使して行う。振り下ろされた剣は自らの重みにより加速していく。

 

 しかし剣はアーネスに片手だけで掴まれ、その一撃は防がれてしまった。

 

「なんだい、これが全力かい?せっかくあんたにあげた最初で最後のチャンス…」

「だったのに、か?」

「⁉︎」

 

 この結果は当然予想していたに決まっている。本命はここからである。

 

 魔力を注ぎ込み詠唱を省略し、発動する。

 

「『ブレード・オブ・ウィンド』」

 

 普段は手に纏わせている魔法は今回は手ではなく剣に纏わせ、風の刃は剣を包み込みアーネスの手を切り裂いた。

 

「どうやら思ったよりやる様だね。さっきのは驚いたわよ。」

 

 しかし俺の攻撃は奴の表面の皮膚を裂いただけであった。

 

「でもこれで終わりね。『カースド・ライトニング』」

 

 漆黒の稲妻は俺を目標に捉え飛翔する。

 

「『狙撃』」

 

 俺は咄嗟に奴の攻撃にワンテンポ遅れて、剣を投擲した。

 

 俺へと飛翔していた漆黒の稲妻は接近する金属に引き寄せられ俺は事なきを得た。しかし剣は跡形も無くなっていた。

 

 五万エリスが俺を守ってくれたのだ……五万エリス

 

「ふーん今のも防ぐんだ。でももうあんたにはなにも無いでしょ。弓もなく魔法も私に効かない。あんたに勝ち目は無い。」

 

 アーネスは俺へとゆっくり歩み寄ってくる。

 

 座標固定。

 

「じゃあね『ライトニ』⁉︎」

 

 アーネスは目を見開く。それもそのはずなんたって今殺そうとした獲物が突然消えたのだから。

 

 俺は瞬時にテレポート先をアーネスに登録し、魔力を大量に注ぎ込み詠唱をカットしアーネスの背後にテレポートする。目測であるため狙った場所とは多少誤差はあるが背後を取れたことには変わりない。

 

 身体を強化しアーネスの首を絞めドレインタッチと不死王の手を発動する。

 

「ぐっ、こ、この……」

 

「『ティンダ』『フリーズ』」

 

 抵抗するので一旦発動を止め、首を燃やし、冷やす。それを同時に行う。抵抗が弱まったのでドレインタッチと不死王の手を発動した。

 

「いい、加減に……しろ!」

 

 アーネスの肘打ちが溝にヒットし、吹き飛ぶ。ちゃんとした姿勢からの攻撃では無かったため威力は低めと言っても肘打ちをしたのは上位悪魔アーネスだ。つまりめちゃくちゃ痛い。

 

「はぁ、はぁ、よくもやってくれたな。それよりなんで人間のあんたがアンデットのスキルを使えるんだい⁉︎」

 

「けほっ、けほっ、痛てぇな『ヒール』 美遊ちょっとばかし魔力持っていくからな。」

 

「うん、いいよ。」

 

 美遊はまだキョウヤの治療が終わっていない。それにしてもキョウヤ生きてるのか?そんな疑問が浮かぶ。だがそんなことは後だ。美遊からよ了承も得たことだ。上級魔法を連発するか。

 

 意識を集中させ詠唱を始める。アーネスはやばいと思ったのだろう俺へと接近し、口を動かしていた。恐らく接近してゼロ距離で魔法を放ち殺す気なのだろう。

 

 だが好都合だ。アーネスがなにを詠唱しているのかは分からない。だが、

 

「『ライト・オブ・セイバー』」

 

 高電圧の刃は手先から伸び短剣ほどの大きさでバチバチとはじけるような音を鳴らす。

 

「⁉︎」

 

 短剣はアーネスを軌道に捉えたがあとほんの一寸というところでアーネスが消えた。

 

 やられた。まさか詠唱していたのがテレポートだとは思わなかった。

俺はすぐ気を取り直し敵感知を発動する。4つの集まった点は美遊達。あともう1つの点は、上空にあった。と言っても1、2メートルほどだが。

 

 アーネスは『さっきのお返しだ!』というような顔をし、俺を蹴り飛ばす。

 

 

「んぐッ!」

 

 

 両腕を強化させ顔面へと迫り来る横払いを右腕を先にして受ける。しかし、足の踏ん張りが利かず、数メートル吹き飛ばされ地面へと落ちた時勢いを殺せず無様に転がる。

 

 それにしても右腕が痛い左は直に受けなかったので何ともなかったのだが、右腕めちゃくちゃ痛い。折れたんじゃねえかと解析魔術で調べるが骨は何ともなかった。ただそれでも右腕は感覚が無く上手く力が入らない。

 

 左はというと正座した後の足みたいにジンジンと痺れる。

 骨折してないのに痛いのに、アニメキャラなら骨折しても戦ってるけどあれおかしいだろ。

 

 これが終わったらカルシウム大量摂取しようと心に決めた。

 

 

 

 

 アーネスの黄色の瞳は獲物を捕らえた肉食獣のように瞳を光らせ、舌で唇を舐め俺へとゆっくり歩み寄って

 上手く立ち上がれない俺は氷の壁を生成し奴を妨害している間に起き上がり逃げる。

「『ファイヤーボール』」

 氷は炎で溶かされ高密度の魔力が込められているのか衝撃波が発生する。それによって起き上がったばかりの俺はまた転がる。受け身を取ろうと左手を地面につけた時左手から鳴ってはいけない音がなった。そう、受け身を失敗して首をおかしくしたのである。

 俺の手脆すぎだろ。

 

 

 策を練るがこれといって決定打となるスキルも無い。おかしくした左手の痛みを誤魔化し後退を続ける。その時腰にかけていたものがぶつかった。それはどんな存在も拘束できるロープだった。

 

「ふひ、ふひひひぃ。あっははは。おいアーネス今降伏するなら命だけは助けてやるぞ。」

 

「はぁ?なにいってんのあんた?とうとう頭までダメになった?」

 

「これなーんだ?」

 

 俺は腰にあったロープを見せびらかす。

 

「正解はどんな存在も拘束できるロープでした。なあ知ってるか?世の中にはな、悪魔の女が好きな奴がいるんだよ。捕らえたサキュバスとかは確か高値で取引されてるらしいな。上級悪魔のお前を捕らえて売り払ったらいくらするかな?」

 

 今俺はどんな顔をしているのだろう。俺の予想ではきっととでも正義感溢れた勇者のような顔をしているのだろう。

「ちょ、ちょっと待ちなさい。は、話し合いましょう。そうよ話せばわかるは……」

 

「『バインド』」

 

 俺がバインドと言ったと同時にアーネスは空高くか飛んで行った。

 

 

「いややあ!助けて、こないで!『ライトニング』『ファイヤーボール』『フリーズガスト』『ライトニング』」

 

 かれこれ3分間はバインドが掛けられたロープから逃げている。

 

 こんな状況にした張本人が言うのも何だがな悪魔が空を飛びそれをロープが追いかけるというのはなかなかシュールな光景だと思う。もしこの異世界にツイッターがあったら投稿したい。

 

「いい加減消えろ『インフェルノ』」

 

 これまでアーネスの攻撃をことごとく耐えてきたロープは耐久の限界に達し壊れてしまった。

 

「はぁ、ぜぇ、はぁ、決めたお前だけは絶対に何が何でも殺す。」

 

 アーネスさんはそれはそれはお怒りだった。

 

 

 どすればいい決定打と成り得るのは上級魔法だけ。それでも相性は間に合わない。例え魔力をカサ増しして詠唱をカットしようものなら逆に威力が足りない。中級魔法は決定打と成り得ない。他のスキルはそこまで役には立たないし、自分ですら全てのスキルを把握しきれていない。

 

 

 何かないかと考えているとあるものが目に入った。それは神が創り、キョウヤが特典として貰ったもの。それが訳あってか地面に突き刺さっていた。

 

「何? まだ私に勝つつもり? そりゃ上級魔法が使えるなんて驚いたけど所詮は使えるだけ」

 

「だろうな、俺なんてそんなもんだ。でも『スティール』」

 

 俺は後方へと手を伸ばし窃盗スキルでキョウヤの魔剣を手に入れる。

 

「重過ぎだろ。」

 

 予想はしていた。していたとも。今冷静に考えてみれば俺が大剣を、しかも両手負傷の状態でろくに扱えるはずもない。

 

 だがそんなのキョウヤよりはマシだ。

 

 そう自分に言い聞かせ強化魔術で大剣を扱うのに必要な筋力を補強し駆け出す。

 

「ハアアアッ!」

 

「死ね『カースド・ライトニング』」

 

 やはりそう来るか。

 俺は地面に魔剣を突き刺し、盾とし前進。

 

「食らいやがれ。」

 

 大剣を横にスウィング。しかし大振りのためアーネスは難なく躱してしまう。

 

「『ライトニング』」

 

 今度ばかりは避けることができない。大剣を再び盾にするには大剣と自分の距離が離れ過ぎ、態勢も十分ではない。自分の所へと戻す前に電撃を食らい俺は死ぬ。

 

 死ぬ?

 美遊を残してまたあの世へ?嫌だ。美遊と離れたくない。しかし自分には何も出来ない。

 

 思い返してみれば、この世界に来てから美遊との思い出を全く作れていない。それなのに死ぬなんて嫌だ。

 

 だがそんなのは無理だと言うかのように電撃は刻一刻と俺に接近する。だが遅い。これならと動こうと思うが体が動かない。眼球すらもだ。きっとこれが走馬灯というやつなのだろう。

 

 最後にみるのが電気なんてな。せめて最後は美遊を見たかったな。

 

「『リフレクト』」

 

「ぐっ、やってくれるね。」

 

 突如前方に光の壁が現れ、アーネスへと電撃を跳ね返した。

 

 これはプリースト、アークプリースト、冒険者職だけがつかえるスキル。つまりこれを使ったのは美遊しか居ない。

 

「お兄ちゃんから離れろ!」

 

「チッ、こんなガキがプリーストなんて、しかもかなり手強い。」

 

 あれ?俺より危険視されてる?

 

「『エクソシズム』」

 

 美遊は破魔魔法を放つも避けられてしまう。やはり俊敏なアーネスの行動を塞がない限り俺達に勝機は訪れない。なら俺は足止めをするしかない。

 

「『クリエイトウォーター』、『フリーズ』」

 

 俺はキョウヤの魔剣を捨て、氷の剣を一本生成する。

 

「『フリーズ・バインド』」

 

「『ファイヤーボール』」

 

 アーネスの足元に氷を生成するが火球によりドロドロに溶ける。だがそんなのは関係ない。

 

 

 脚を強化し、アーネスへと接近する。

 氷の剣を片手で添え突きの攻撃をする。

 

「グッ、調子に乗るなよ。」

 

 心臓目掛けて突いた剣をアーネスは手で防がれてしまい、アーネスは掴んだ氷の剣を怒りに任せて折ってしまった。

 

 氷の剣を手から離しすぐ距離を離す。

 

「逃がすか!『ライトニング』」

 

「『クリエイトウォーター』」

 

 二度同じ手は食らうかよ。

 俺は水を生成し電撃を防ぐ。

 

 某ボールに入れるモンスターのゲームでは水属性は電気属性に弱いが現実は違う。

純粋な水(H2O)は電気を通しにくい。逆に不純物の入っている水。例えば海水などは電気を通しやすい。

これは中学一年もしくは二年で習う内容である。

 

 つまり何が言いたいかと言うとクリエイトウォーターで生成した水は不純物を含まない。だからあいつの電撃は通さない。

 

「『クリエイトウォーター』、『フリーズ』」

 

 今度は突きに適した槍を氷で生成し、瞬時に強化し、今度こそ腹部へと突きの攻撃をする。アーネスは瞬時に手を出す。

 

「グッ、このッ!」

 

 しかし、手で防せごうとするが長物の槍は手を貫通し腹部を突き刺す。

 

 やはり物理だけの攻撃より魔術を使用した方が効きやすい。

 

「まだだ、『ライトニング』」

 

 腹部、手の甲を突き刺した氷の槍が電気を通し、アーネスの体内へと直接ダメージを与える。純粋な水は電気を通しにくいが、氷は別だ。即席のため氷の中には外の気体。

つまり不純物がかなり入っているはず。

 

 

 その後詠唱を無視し、ライトニングを連発しアーネスの意識を刈り取る。とまではいかなくとも怯ませることはできた。

 

「今だ。美遊!」

 

「『エクソシズム!』」

 

 俺とアーネスが戦っている間魔力を凝縮させ、1つ1つの工程をしっかりと踏んだ破魔魔法はアーネスを消し炭にした。

 

「終わったんだよな?」

 

 

 ゆんゆん達の痺れが無くなった後皆が見て居ない間にキョウヤを蹴飛ばしてからギルドに向かった。

 

 

 俺達はギルドへとたどり着きドアを開け

 

「ホーストを倒して来たぞ‼︎ついでにアーネスも!」

 

「「「「「おおおおっ!……ん?」」」」」

 

 ギルド内が歓喜に溢れた。

 

 一人は『やっとこれでクエストが出来る。』や『アーネスってなんだ?』という声。他にも『こいつらマジでやりやがった。』など疑問や俺達を褒め称える声が轟いた。

 

 

「まさか他の上位悪魔まで現れて倒すとは思いませんでした。」

 

 おい、つまり死ぬとでも思ってたのか。

 

「ではエミヤカズマさんのパーティーとミ……キョウヤさんのパーティーに上位悪魔ホーストの討伐報酬1000万エリス、上位悪魔アーネスの討伐報酬700万エリス。計1700万エリスを2つのパーティーにその功績を称え、贈呈します!」

 

 

「「「「「「「1700万⁉︎」」」」」」」

 

 まじ?もう当分働かなくていいじゃん。あれ?でもホーストに関しては俺と美遊は何もしてないが、逆にアーネスに関しては俺と美遊以外は何もして居ない。どうなんのこれ?

 

「集合」

 

 俺はその件について話すとめんどくさいから普通にみんなで山分けという形になった。割り切れない分はギルドのみんなとの宴会に使うことにした。

 

「カズマ君も飲むかい?」

 

「いや、それ酒だろ。俺未成年だし、というかお前も未成年なのに酒飲むとか…不良なのは知ってたがとうとうそこまで堕ちたとはな。」

 

「なっ、失礼な!この世界では何歳からでも飲んでいいんだ!」

 

 法律しっかりしろよ。

 

「俺はオレンジジュースでいいや。」

 

「そうかい?」

 

(だめだ今ここで笑ったら殺される。それにしてもオレンジジュースって)

 

「おら、カズマ。今日はお前らがメインなんだからもっとたのしめ。」

 

 

 

 馬鹿でかい声がギルド内を響き渡る。

 

 

 

 ゆんゆんはというと、隅っこで一人寂しく座っていた。

俺も敵感知使わなかったら気がつかなかったぞ。

 

「おい、ゆんゆん一人で何やってんだよ。」

 

「えっ、いやでも、私なんかが行ったら「えっ?この人誰?」みたいな感じになってせっかくの宴会が台無しになって…」

 

 本当に誰だここまで放置したやつ。いつかヤンデレになるぞこいつ。

 

「私なんか、じゃないだろ。お前はもう俺達の仲間なんだ。それにゆんゆん。お前は俺と美遊が危ない目に遭わないようにしてくれたんだろ?ありがとな。もし人だかりが苦手なら、俺…とは嫌か。美遊とめぐみんと話してろ。ほらいつまでもしけた顔してないでいくぞ。」

 

 俺はゆんゆんへと手を差し出し、ゆんゆんは俺の手をゆっくりながらも俺の手を掴んだ。

 

 その感触は今はもう思い出せない■と似ていた。

 

「さあ、いくぞ。」

 

「はい。」

 

 ゆんゆんは美遊達の所へと向かい楽しく話しをしていた。

 

「ゆんゆん、何か楽しいことでもあったんですか?

 

「顔がにやけてる」

 

「べーつに、なんでも無い」

 

 

 ゆんゆんは今まで生きていた中で恐らく最も笑顔だった。

 




ゆんゆん可愛いですね。(小並感)


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7話 美遊依存症

こっちを投稿するのは何ヶ月ぶりでしょうか。

そういえば私は『戦う弟子』様に謝罪しなくてはなりません。
本編をオリジナルでやろうとストーリーを考えたんですがなかなか決まらず断念してしまいました。
本当に申し訳ありません。


題名の美遊依存症いいですよね。
自分も美遊みたいな可愛い子に依存したい。


 上位悪魔二体の討伐が終わり早数日が経過した。

 ちょっと前に俺が悪魔にぶっ壊された高級ロープの賠償金100万を支払う羽目になってしまった。

 

 そして今

 

「冒険に行きましょう!」

 

 室内にめぐみんの声が響き渡る。

 

「いやです」

 

 100万エリスを払ったとは言え俺達は800万もの大金を持っている。しばらくクエストに行く必要性がない。

 そのため今は俺達は英気を養っている。

 

 他にも理由はある。

 ゲームの後半に出てくるような強キャラが二体も出てそれを撃破してしまったのだ。

 俺はRPGゲームの序盤。雑魚を狩りまくり、金を集めレベルを上げ、そこからボスに挑むのが大好きなのだ。

 俺の考えていた異世界とは違うと思い萎えてしまった。

 

 俺はここでふと疑問に思っていたことがようやく理解できた。

 

 俺が送られる前にも、キョウヤ以外に多くの日本人がそれこそ世界を揺るがしかねないチートアイテムを持ってここに来たかもしれない。

 

 それなのに何故、未だ魔王はおろか魔王軍幹部の一人も倒せていないのか?

 それは魔王軍を相手にしなくともクエストを受ければ一生楽して生きていけるからだ。

 わざわざ我が身を張って魔王軍と戦って、勝利した対価が自分の願いを一つしか叶えられない。

 

 もしくは魔王軍が強過ぎるかのどちらかだ。

 そもそも世界を揺るがしかねない物を神が人間風情に渡すわけが無い。どうせ魔剣グラムといえど劣化品。模造品であろう。

 それにただ斬れ味が凄いだけ。

 

 だからきっと魔王を倒すのはチーターどもではなく、最初は何の力も無い者が必死に努力し、力をつけ、知恵を振り絞り、自身の全てのスキルを駆使し、死力の限りを尽くした者が魔王を倒すのだ。

 

 俺や転生者みたいに貰い物の力を振るう者では魔王は倒せないのだ。

 

 それに俺はもう美遊が幸せでいてくれれば俺も幸せなのだ。

 魔王なんてどうでもいい。それにこんな辺境じゃ関係ない。王都の奴らの仕事だ。

 

 おそらく転生者の中で真剣に魔王討伐を考えているのはキョウヤくらいだと思う。

 

「ゆんゆんも黙ってないで何とか言ってください!」

 

「え〜、私はこのままでいいよ〜。今凄く幸せだし。あっ、ソードマスターでアーチャーに攻撃。」

 

 今まで誰とも遊んだことのないボッチは美遊と遊べることに感動し、頬が緩みきっており、なんともだらしない顔をしていた。

 

 今美遊達が遊んでいるボードゲームは異世界版チェスだ。アークウィザードが居る場合は爆裂魔法が使えゲーム自体をなかったことにできるとか言う馬鹿みたいなルールがあるが、どうも面白そうだ。

 

 しかも少し将棋のルールが混ざっていた。

 

 アークプリーストがある場合倒した敵駒を自軍に呼べるらしい。

 

「甘い、冒険者でソードマスターを攻撃」

 

「ああっ! そんなところに冒険者がいたなんて、存在感が薄すぎて気が付かなかった」

 

 お前が言うか

 

 それにしてもゆんゆんは劣勢だというのにとても楽しそうに無邪気に笑っている。

 余程遊び相手が居なかったのだろう。

 

「盗賊でソードマスターの武器を強奪。これで美遊ちゃんのソードマスターは使えないわ!」

 

 しかし美遊は動じない。

 淡々と駒を進める。そう、それはいつのまにかゆんゆん陣地へと進行していた冒険者である。

 

「敵陣地の最奥に到着したことによりアーチャーにジョブチェンジ。そしてアーチャースキルの狙撃で王を攻撃」

 

 冒険者はチェスで言うポーンだ。

 ポーンは敵陣地の最奥に到着すると好きな駒に成れる。

 美遊は先程からやけに冒険者とアーチャーを使っている気がする。

 

「あーあ、負けちゃった。でも仲間と一緒に遊べるなんて……仲間、仲間……フフフッ」

 

 だめだ、ゆんゆんを直視すると目から水が溢れてくる。

 俺は手で目を覆い、ソッポを向く。

 

「このままではだめ人間になってしまいますよカズマ」

 

「どこがだ! 失礼なやつだな。第一だめ人間はこの街を救えない。だが俺は違う。この街を救った。だから俺はダメ人間ではない。Q.E.D.証明完了」

 

 ふっ、勝った。これでしばらくは外に出ない!

 

「いいんですか、そんなこと言ってゴロゴロしていて」

 

 めぐみんはそう耳元で囁いてくる。

 

「は?」

 

「このまま食っちゃ寝生活を送り続ければ、体重が増えます。

 そして、腹、腕、脚と体の隅から隅までがブクブクに膨れ上がり、丸まっていくでしょう」

 

 俺はゴクリと固唾を飲む。

 顔からは妙な汗が吹き出てきた。

 

「そんな兄の姿を妹が見たらどうなってしまうのでしょうか」

 

 めぐみんは勝ち誇った顔でこちらを見る。

 

 俺の脳裏には、

『お兄ちゃん最低』という言葉と共にこちらを見下す美遊の顔が浮かぶ。

 嫌だ、美遊に嫌われたら生きていけない。

 俺から遠ざかって行く美遊の姿が、いとも容易く思い浮かべることができる。

 

「よし、行こう。今すぐ行こう!」

 

 寝間着の俺は別部屋へと移り着替え、玄関の扉を開ける。

 もうすぐ南中する太陽の陽射しが部屋に篭り、光に敏感になった俺の瞳を刺激する。

 眩しすぎて瞼を開けない。まるで玉ねぎの汁を直に目にかけられたようだ。

 

 思いっきり体を伸ばし、準備体操を始める。しばらく運動してない俺の筋肉は強張っており準備体操だけで息が上がる。頭には血が上り、ふらつく。

 

「で、めぐみん。何をする?」

 

「では私の爆裂魔法の特訓に付き合ってもらいましょうか」

 

「……それ本当に必要か?」

 

 一回使い、失敗した未熟者の俺ですらあの威力なのだからめぐみんは何を特訓するのだろう。

 制御出来ないならまだしも、しっかり制御出来ている。

 

「真の使い手は常日頃の鍛錬は怠らないのです」

 

「……ただ撃ちたいだけだろ?」

 

「はい」

 

 言い切りやがった。

 

「じゃあ護身用として安物の剣買ってくるわ」

 

「……全然護身できないじゃありませんか」

 

 門の外に出る前に武器屋へと向かった。

 

「おっちゃんやってるか?」

「ああ、カズマか。で、何にする?」

「俺みたいな素人でも扱える片手剣をくれ」

「あいよ、盾は要るか?」

「筋力的に使えないからやめておく」

「へいへい。これなんかどうだ?」

 

 ザ・西洋剣の量産型の無骨なものだが、それでいて暖かみがかんじられる。

 

 刃渡りは40センチほど。

 剣を剣たらしめるのに必要なものは全て揃っている。

 柄には布が何重にも巻かれ、手にすんなりフィットし、手離しにくい。

 

「これにするよ」

 

「毎度あり。また来てくれよな」

 

「今度矢を足しに来るからな」

 

「ああ、安物の木の矢じゃなく試しに鉄の矢も買ってくれよ。エンチャントされた矢は扱ってないけどな」

 

「ああ」

 

 剣は鞘を付けて、3万エリス。

 

「では行きましょうか」

 

「その前にギルドへ行こう。何もないところに撃つより敵を殲滅した方が楽しいだろ?」

 

「確かにそうですね」

 

 めぐみんの了承を得て、ギルドへと向かった。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 ギルド内には昼間だというのに酒を飲んだくれている者。

 新規登録の申請をする者。

 パーティー募集の張り紙を出す者。

 今日分の食い扶持の繋ぐためクエストを探す者。

 このギルド内には多くの人種が存在する。

 

 そういえば異世界だというのに俺はまだファンタジー系の代名詞とも言えるエルフやドワーフ、獣人族を見たことがない。

 

 俺には異世界転生したというよりも中世のヨーロッパにタイムスリップしたようにしか感じられない。

 

 まあ異世界なんてこんなこんなもんだと割り切りジャイアントトード10体の討伐を受けた。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

「なあ? めぐみん」

 

「なんですか?」

 

「カエル多くない?」

 

「もう春も中盤ですからね。活発にでもなるでしょう」

 

 それだけなら良いんだ。

 ただ、以前俺が弓で倒したカエルよりも一回り大きいような……

 

 俺が考えている間にもめぐみんは詠唱を終えていた。

 

「『エクスプロージョン』」

 

 カエルの群れに一筋の閃光が空高くから落とされた。

 カエルの群れは光に吸い込まれるようにして消えた。

 その直後、空気を震わせる轟音と共に揺れる。

 

 先程までは確かに存在したカエル共は綺麗さっぱり消え去り、代わりに黒い燃えカスが残っていた。

 辺りは肉の焼けた香ばしい匂いが漂っていた。

 

「やりました。今ので10匹やりました……すごく気持ち良かったです……ふぁ」

 

 最後の気力を振り絞って言ったのか、その後、力無く倒れた。

 

 納得はいかないがクエスト完了。

 

 とは行かず、さっきの衝撃と轟音で目を覚ましたのか、土の中からカエルが一匹出現した。

 

「なんでだよ!」

 

 そう叫んだ後、詠唱を開始する。

 

「『ライト・オブ・セイバー』」

 

 スカ、

 何も出ない。

 

 何故?

 美遊からの魔力供給が断絶されている。考えられるとしたら、離れ過ぎて魔力が俺まで届かない。

 

 嘘だろ!

 もしそうだったら、俺は完全に美遊に依存していることになる。

 でも、よくよく考えてみれば、美遊に依存して、甘やかされると考えれば天国か!

 美遊に束縛されて離れられない? もっと縛ってくれよ。目隠し追加でな!

 

 やばい、妄想しただけで鼻血が……

 どこかに今の妄想を夢に見させてくれる店とかやってないかな。

 

 そんなアホみたいなことを考えているうちに10メートルまで近付かれていた。

 

「近くからカエルが沸き出すなんて予想外です。私をおぶって帰りましょう」

 

「いや、折角だし戦う!」

 

 購入したばかりの新品の片手剣を鞘から引き抜き、カエルへと向かい駆け走る。

 

「うおおおおッ!」

 

 雄叫びを上げ、自身を奮い立たせる。

 

「へっ?」

 

 カエルは口を開き、舌を伸ばしてきた。

 舌は俺の胴体と腕を絡み付ける。

 まさかカエルの舌がここまで長いとは思っていなかった。

 

 カエルは舌をムチのようにしならせ、俺は宙に上げられる。

 カエルは舌を戻し、俺を捕食しようと口を大きく開き、俺が落ちてくるのを待っている。

 

 抵抗したくてもぬめった舌の拘束は解けない。

 

 俺はカエルにパクっとやられてしまった。

 

 カエルの体内はヌメヌメとし、粘液が身体中にへばり付く。

 中は生臭く、酸素も薄く意識が飛びそうになる。

 きっと俺の体に着いた粘液は消化液だろう。

 

 俺は手に持つ剣で天上を突き刺す。肉はプリンのように柔らかく剣はすんなりと入っていく。

 

 何度も何度も、剣を刺しているうちに、カエルは絶命したのか、口がぱかっと開いた。

 

 俺はカエルの中を這いつくばり、脱出した。

 

 俺はこの日、弓だけは手放さないと心に誓った。

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 魔力不足で、動けなくなっためぐみんにドレインタッチで魔力をやろうと思ったら、『触らないでください』と拒絶されたので、めぐみんを草原に置き、大浴場へと向かう。

 

 

「お、おい。見ろよあれ……粘液まみれだぜ、きっと。あんなんにはなりたくねぇな」

 

「あいつ確か、あの上位悪魔を倒したやつだろ? いったいどんな奴と戦ったんだよ⁉︎」

 

「てことは竜か?」

 

「カエル……な訳ねぇもんな」

 

 すいません、カエルです。

 

「竜に食われて尚脱出するとは……」

「恐れ入ったな」

 

 大浴場へと向かう道中、敬意の眼差しで見てくる冒険者の目が辛い。

 俺はそれに耐え抜き、大浴場で身体中に着いた粘液を洗い落とした。

 

 まさか昼間から風呂に入るとは思わなかった。

 

 湯船に浸かり、くつろいでいた。

 その時ふと疑問が浮かぶ。

 

「着替えどうしよう」

 

 結局俺はヌメヌメの衣服を着ることになった。

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

「……ただいま」

 

「おかえりなさ……お兄ちゃんどうしたのそれ!」

 

「……れた」

 

「えっ?」

 

「カエルに捕食された」

 

「ええっ! カズマさん食べられちゃったんですか⁉︎」

 吹っ飛ぶようにゆんゆんまでもが出てきた。

 机にはまだチェス盤が置かれていた。どうやらまだチェスをやっていたらしい。

 

 その後美遊に着替えを出してもらい、別部屋で着替えた。

 部屋に戻ってくると美遊は着替え、血相を変え玄関へと向かった。

 

 

「お、おい。どこに行くんだ!」

 

「お兄ちゃんを虐めるカエルなんて生かしておかない。駆逐する。一匹残らず!」

 

 どこかの主人公のような台詞を吐いて、吹っ飛ぶようにして出て行った。

 その数分後、入れ替わるようにしてめぐみんが帰宅した。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「……お、お兄ちゃん」

 

 美遊が出てから何時間経ったであろうか。

 美遊がようやく帰ってきてくれた。

 

 美遊の声は触れてしまえば、枯れてしまう花のように弱々しいものだった。

 

 玄関にはベトベトになったみゆの姿があった。

 

「しばらくはカエルには近づかない。いいな?」

 

「うん」

 

 俺は自分自身を戒めるように美遊に言いつける。

 

 カエルに辱められ。半泣きになった美遊を、新品の服が汚れることも関係なく。

 しっかりとその身を抱きしめた。

 

「着替えを持って大浴場に行こうな」

 

「うん」

 

 今日はまさか二回も風呂に入るとは思わなかった。

 

 

 

 翌日

 クエストを受け、達成してしまったせいで、(ギルド)に赴かなくてはならない。

 こんなことならクエストを受けず、適当に撃たせとけば良かったと今になって後悔する。

 後悔先に立たずとはよく言ったものだ。

 

 

 

「はい、では報酬の20万5千エリス……と言いたいところですが、お仲間さんの作ったクレーターの修繕費を引き抜いて、十万五千エリスになります」

 

 10万エリスがポンッと吹き飛んだ。

 この調子でめぐみんにポンポン撃たせては81回で財産が吹き飛ぶ。

 

「今度からは人通りのないところでやってくださいね」

 

「はい」

 

 あそこは商人が交易に使う道のため、クレーターを作れば作るほど罰金の額をあげますよと言われた。

 ただ、人畜無害なところならいいですよとも言っていた。

 

 くそッ!

 俺がやった訳じゃないのに!

 

「見つけたぞ! エミヤカズマ!」

 

 室内に馬鹿でかい声が轟いた。

 

「何? カツカギキョウヤ?」

 

「ミツルギだ!」

 

「で、何の用だよ?」

 

「それはだな……」

 

 

 

 

 もう一度勝負したいとのこと。

 

「あのときの戦いで僕ははっきりとわかった。僕は魔剣グラムに頼り切って、剣技など全く無い。剣を振り下ろすだけで敵は簡単に死んで行くんだ。それじゃ僕は魔王軍幹部クラスの手練れと相手にした時手も足も出ずにやられると思う。だから戦闘経験を積みたいんだ」

 

 要約すると相手をしてくれとのこと。

 

「いいけど俺は冒険者の上位互換スキルマスターだ。使えるスキルはなんだって使うぞ」

 

「ああ、そうでなきゃ意味がない」

 

 ギルドの裏の修練場へと向かった。

 

 武器を持ってないため、武器をレンタルしようとしたら。

 ギルドの人が『良いけど、壊さないでください。前の件のように』と言われてしまった。

 

 俺は片手剣と弓矢を。

 キョウヤはロングソードをレンタルした。

 

 そういえばキョウヤはグラムを持ってないな。

 家にでも置いてきたのか。

 

 

 

 互いに各々の武具を構える。

 彼我の距離は20メートル。

 

「『狙撃』」

 

 俺は速攻剣を投擲した。

 

「あぶッ!」

 

 初っ端から剣を投げてくることに驚いたのかキョウヤは大げさに横に避けた。

 

 剣は修練場の木製の壁に突き刺さる。

 

 キョウヤは素早く、もうこちらに接近しており、ロングソードの射程圏内に俺は入っていた。

 

 剣は俺目掛け振り下ろされる。

 

「『スティール』」

 

 キョウヤの手からロングソードは消え、キョウヤの攻撃は素振りに終わった。

 

 刃を縦にし、振り下ろす。

 

「グヘッ……」

 

 驚くことにキョウヤの頭は割れていなかった。

 ただ断末魔はとても情けない。

 

「じゃ、終わりな」

 

「まっ、待って。もう一回!」

 

「さっき一度って言ったよな?」

 

「頼む! お願い、お願いします!」

 

 その後幾度となく戦闘が繰り返された。

 

 ある時はクリエイトウォーターで口に水を押し込み、溺死寸前に。

 またある時は矢を額に集中して撃ち続けた。もし、キョウヤの額がダーツの的の100点なら俺は千点を得た事になる。

 

「まっ、まだだ!」

 

 額からは血が滲み出ており、口からは肺に溜まった水を吐き出しながらに言ってくる。

 

「ああ! もうしぶといな」

 

 美遊からの魔力供給が望めない今、上級魔法でズタボロにさせる事ができない。

 

「諦めないのが、僕の魔……」

 

「それ以上はアカン!!!(いろんな意味で)」

 

 地に伏したキョウヤの頭を踏み付け、黙らせる。

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

「ほら、落ち着いたか?」

 

 流石の俺も罪悪感を感じ、濡らしたタオルをキョウヤに渡す。

 

「ああ、そういえばカズマ。僕の魔剣を使ったようだけど……」

 

「悪かったな……」

 

「いや、そうじゃないんだ。あの魔剣は僕しか使えないんだ。他の人が使っても重いし、そこらへんの剣よりは多少切れるだけなんだ」

 

「……えっ⁉︎」

 

 つまりあの時重いからと捨てず、そのままたたかっていたら……

 考えただけで背中に悪寒が走り、顔からへんな汗がにじみ出る。

 

「そこで君にお願いしたいんだ。しばらくの間グラムを預かっていてくれ。もし持っていたら僕はまたあれに頼ってしまう。

 だから、君に勝てる時が来るまで預かっていてほしい。いや、ぶきだけじゃない。防具もだ。

 武器と防具は一番安い物からはじめるよ。文字通り一からだな」

 

 そうやって爽やかな笑顔で話しかけてくる。

 それを取り巻きの女どもに見せてやれよ。

 

 

 キョウヤの止まっている宿にて

 

「それじゃしばらく預かっていてくれ」

 

 よし、じゃあさっそく売りに……

 

「売るなよ」

 

「……えっ?」

 

「売るなよ」

 

「はい」

 

 こいつエスパーかよ

 

 気を取り直し、俺は真面目な顔をする。

 

「で、本当に()()()やり直すんだな?」

 

「ああ」

 

「本当だな?」

 

「ああ、そうだ」

 

「そうか」

 

 俺は肩にポンと手を乗せる。

 

「……ッ!! なんだこれ、体が……」

 

「ステータス見てごらん」

 

「レベルが1になってる。しかもステータス全て初期化された! あれ? でも……」

 

 その後取り巻きの二人もキョウヤが最初からやるなら私もと言うため望み通りレベル一にしてやった。

 

「ありがとうカズマ! こんなスキルまであるなんて!」

 

 スキル名の『不死王の手』を教えると大問題になりかねないので言わないでおく。

 

 

 

 

 

 俺はキョウヤから預かった武具を売り払いたい気持ちをグッと堪え、物置部屋へと放り込んだ。




はい、今回はこんな感じです。
カズマがカエルに食べられるのって他のこのすばのssにはあまりないと思うんですよね。
自分は見たことありません。

美遊に見下されるなんて最高じゃないか!
て人は居るはず。



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8話 キャベツハンターカズマ

高校生活ってなかなか落ち着きませんね。
落ち着くまで投稿頻度はかなり下がると思います。
久しぶりなのでリハビリ回ですかね。

一応ノートに下書きした内容のストックはかなりあります。なので14ページのストックがあります。


 街全体に警報が鳴り響いた。

 

『緊急クエスト! 緊急クエスト! 街の中に居る冒険者の各員は至急街の外に集まってください!』

 

 アナウンスは二回繰り返された。

 

「なんだ! モンスターでも攻めて来たのか!」

 

 俺は慌てて装備を整えながらにそう尋ねた。

 

「いいえ、多分キャベツの収穫でしょう。もうそろそろ収穫の時期なので」

 

 確かに野菜が動くのは知っている。だから既に絶命したものをいつも使っていた。

 だが、冒険者が集められるほど獰猛だとは聞いていない。

 

「もう寝てていいかな?」

 

「一個一万エリスですよ」

 

「よし行こう、今すぐだ!」

 

 

 

 

 この世界のキャベツは味が濃縮され、収穫時期に近づくと食べられまいと平原を越え、荒野を駆け、人知らぬ秘境の地にて朽ち果てて行くのだとか。

 

 

 

 空に浮かぶキャベツは編隊を組み、それが一つの大きな個体と見間違える。

 それはまるで渡り鳥の様だった。

 

 しかし、こんな空を飛び回っているものが果たして美味いのだろうか。酸化していて不味そうに思える。

 

「『スティール』」

 

 試しにあの集団の中から一つを手に取り寄せ、騙されたと思って齧り付く。

 シャキッと新鮮なキャベツを噛んだ時の特有の音が鳴る。

 

「ッ!! ……うますぎる!!」

 

 気が付けば、俺はキャベツ一玉丸々食べていた。

 

 キャベツは水々しく、まるで果実のように甘かった。

 日本のキャベツとは比べ物にならない!

 

 もっと食べたかったが、胃が拒絶したため、襲い来るキャベツを全てスティールで収穫し、籠に収めた。

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 今日は珍しくギルドで夕食をとることにした。

 今出されている野菜炒めは今日収穫されたキャベツだ。

 街中ではあちこちで収穫されたキャベツがセリに出され、八百屋、飲食店が購入し、街中でキャベツ料理が振舞われる。

それを今食べているところなのだが。

 

 しかし、何故炒めただけのキャベツがこんなにも美味いのだろうか。

 

「そういえばめぐみん。お前爆裂魔法撃ったろ? あれは討伐じゃなく、捕獲だからな」

 

「べふにひひじゃなひでふか(別にいいじゃないですか)」

 

「美遊はどうだった?」

 

「んく……あまり捕まえられなかった。でも楽しかったよ。お兄ちゃんは?」

 

 話すために食べ物を飲み込む仕草は小動物のようで、とても可愛らしい。

 

「俺? 本当に上手いのかどうか確かめるため、一玉食べた。もっと食べたかったが、胃袋が拒絶したから仕方なく俺目掛けて突撃して来るやつだけ捕まえた。ゆんゆんは?」

 

「えっ、私ですか? 風魔法を上から発生させて落ちて来たキャベツを捕まえましたよ」

 

 こんな何気ない会話の時間が今はとても幸せだ。

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 レベルが8に上がった。

 以前が5だったことに対し、かなりの成長だと思う。

 まさかキャベツを捕まえて、食べるだけでレベルが上がるとは思わなかった。

 

 皆にレベルを聞いたところ、

 ゆんゆんは7

 めぐみんは6

 美遊は4

 とのこと。

 

「つまり、この中で俺が一番強いってことだな」

 

 フンっと鼻息を立て、冒険者カードを見せびらかす。

 

「いえ、成長が早い人ほど弱く、しかも上級職でそこまで上がりやすいとなると、余程弱……」

 

 俺はこの世界の辛い現実を突きつけられ、しばらく立ち直れなかった。

 

「そういえば美遊はあの悪魔を倒したのに大してレベル変わってないな」

 

「弱ったところにとどめを刺しただけだからあまりレベルが上がらなかったんだと思う」

 

 ホッ、良かった。

 もし美遊が上位悪魔を倒してもあまりレベルが上がらないほど強かったら立ち直れないところだった。

 

 

 

 ☆

 

 

 美遊はパーティー内で一番低いことが嫌なのかレベル上げをしたいと言い出した。

『どうして?』

 と聞いたら

『早くお兄ちゃんに追いつきたいから』

 

 健気過ぎて涙をほろりと流してしまった。

 

 

 ギルドの人にプリーストがレベル上げに効率の良いクエストはないかと尋ねたところ『ゾンビメーカー』の討伐を勧められた。

 

 

 街はずれの共同墓地。

 以前美遊のレベル上げをした場所。

 そういえばしばらく来ていなかったな。

 

 当然の事ながらアンデットは夜にしか現れないため、深夜に共同墓地に居る。

 昔、深夜お墓に行くと『呪われる』とか『ナニか出る』とよく言っていたのが懐かしい。

 なにせ、この世界では本当に出るのだから。

 

「もう春も終盤なのに、やけに寒くないか?」

 

「うん、ゾンビメーカーなんて比にならないくらいの大物が出そう」

 

「……美遊、怖いからそれ以上はやめて」

 

 俺は暗い場所は嫌いだ。

 まだ他の人が居るなら全く怖くない。

 だが深夜、一人になると物音一つでがくつく。

 もしも一人暮らしをしたら一週間で孤独死すると自負できる。

 

「怖かったら私に抱きついてもいいんだよ?」

 

 ニヤニヤとしながら魅力的な提案をこちらに出してくる。

 恐るべし、魔性の妹。

 

「兄妹愛もそこまで行くと流石にヤバイと思いますよ」

 

 と、その時。

 敵感知に反応があった。

 

「待て、敵感知に反応があった。反応は十体。これは誤差の範囲に入るのか?」

 

 ゾンビメーカーの取り巻きは1から3体。

 はっきり言って誤差の範囲に納まらない。

 

「見て、あれ」

 

 ゆんゆんの指が指す方角を向くとそこには。

 妖しく、それでいて幻想的な青白い光が溢れてくる。

 

 その光の正体は大きな円形の魔法陣。

 魔術素人でもそれなりに大規模なものだと分かる。

 

「う、うそ。なんでこんなところにリッチーが……」

 

 明らかに初心者の街に居ていいはずのない大物の名が挙がる。

 だがあいつは俺達の存在に気が付いていない。

 

 俺は小声で話し出す。

 

「めぐみんはこの場で爆裂魔法の準備。ゆんゆんと美遊は途中までついて来てくれ。二人は自身の中で最も強力な魔法、浄化魔法を頼む」

 

 二人の手を握り、二人にも潜伏スキルを発動させる。

 

 5メートルまで近づいたところで、二人に待機命令を出し、俺は最接近する。

 

「今すぐその怪しい行動を止めろ。その魔法陣で何をする気だ? まさか死者の魂を弄ぶ気か?」

 

 リッチーは不死王とも呼ばれる存在。

 死者を配下にするなど造作も無いだろう。

 

「ち、違います! この魔法陣は未だ成仏できない迷える魂達を天に還してあげるためのものです。ほら、たくさんの魂が空に昇って行くでしょう!」

 

 確かに魂みたいなものが空に浮いている。

 

 あれ?

 

「えっと、リッチーのあなたがなんでそんなプリーストみたいなことをしているんですか?」

 

 どうしようアンデットが聖者に見える。

 

「あ、あれ? ウ、ウィズさん⁉︎」

 

「ゆんゆんさんじゃないですか!」

 

 どうやらこの人は街で魔道具店をしており、以前ホースト対策にウィズさんの店で購入したらしい。

 それがあのパラライズを強化する代わりに強力すぎて自分までもが痺れる魔道具。

 そして、どうしてこんなことをしているかと言うと、一応はアンデットの王だから困っているアンデットを見捨てておけず、除霊をしているのだとか。

 そんなのプリーストに任せておけばいいじゃないかと聞くと。

 

『ちょっと前まではあるプリーストがここで除霊をしてくれていたんですが、最近は見かけず……この街のプリーストは拝金主義者で、ここのお金のない人達の除霊は後回しにするんです』

 

 以前エリス教徒から話を聞いたがアンデットは浄化してやる!

 との教えがあるのだそうだが、完全に無視してるじゃん。

 無宗教のアークプリーストの妹が居るが。

 

 前に宗教の勧誘があった時は日本でよく使った必殺『仏教です』を使った。やはり異世界だろうが『仏教です』は最強だった。

 

 中世のヨーロッパは聖職者の汚職行為が有名だが、この世界も文明レベルが中世なので、聖職者の汚職は普通なのだろうか。

 

 

 その場の空気に流され、俺達はウィズの代わりに除霊をしなくてはいけなくなった。

 もし、俺達以外にもバレたら私生活が大変であろう。出来ればこんな良い人は平穏な生活を送ってほしい。

 

 

 

 ゾンビメーカーが原因と思われ、出されたクエストはゾンビメーカー自体存在していなかったため、失敗に終わった。

 

 このファンタジー世界と地球での伝承の怪物とは違うため、めぐみんとゆんゆんにリッチーがどれだけ凄いのかを聞いた。

 

 リッチーは高い魔法防御力と魔法攻撃力を持ち、魔法の掛かった武器以外の武器での攻撃は無効。

 触れられるだけであらゆる異常状態を引き起こし、相手の魔力、生命力を奪い取る。

 

 想像しただけで全身が震える。

 あの人が優しい人で良かった。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「なあ、知ってるか? なんでも魔王軍の幹部の一人がこの街からちょっと離れた古い城を乗っ取ったらしいぜ」

 

 ギルド内でそんな噂が広まっていた。

 いったいなぜこんなところに来るのかが理解出来ない。

 暇なのだろうか。

 早く王都に攻めてチーターどもにやられろよ。

 

 そんな俺はというと

 

「だああああ、しゃあああっ!!!」

 

 野菜スティックに手を伸ばし、取ろうとした時。

 野菜は生意気にもヒョイっと避けやがった。

 

「『スティール』!」

 

 野菜ごときにスキルを使い、捕まえた。

 捕まえられても尚、抵抗を続ける野菜スティックを先からポリポリと噛み砕いていく。

 

 この世界の野菜は新鮮だと動く。

 そして美味い。

 そのため、日本に魚の活き造りがあるようにこの世界には野菜の活き造りが存在する。

 

 例のキャベツ狩りから早二週間。

 あの時収穫されたキャベツが全て売り出され、冒険者に報酬が払われた。

 

 パーティー内での稼いだ順位は

 

 一位 俺 300万

 二位 ゆんゆん 150万

 三位 美遊 10万

 四位 めぐみん ゼロ

 

 

 その合計を四で割り、一人115万エリスを得た。

 

 キャベツ狩りを三回行うだけでアーネス討伐時の報酬を超えるのだが。

 

 美遊はお金はいらないからお兄ちゃんが持っててと言うため、自己管理能力を養わせるため、お金を持たせた。

 財布と貯金箱を買わせ、自分で持ち歩く分と貯めておく分を自分で決めさせた。

 これでゆんゆんとかと一緒に、自由に買い物でもして欲しい。

 

 

 

 ☆

 

 

 

「……ハア……ハア……。堪りません! 魔力溢れるマナタイト製の杖のこの色艶! ……ハア……ハア……」

 

 めぐみんは新調した杖を抱きかかえ、股で杖を挟み、スリスリし、頬ずりをしていた。

 

 マナタイトは魔力を肩代わりしてくれるだけでなく、杖に混ぜると魔法の威力を上げられるらしい。

 ちなみに今回の報酬を全額支払ったもよう。

 

「美遊、自己管理能力が無いとああなるからな。ちゃんと自己管理能力を養おう」

 

「うん、お兄ちゃんの言っていた意味が分かった。」

 

 ちなみに俺は

 

「ハア……ハア……人を魅了する魔力が秘められた特注の弓の色艶と来たら、堪らん! ハア……ハア……」

 

「……本当、お兄ちゃんが言っていた意味が深くわかるよ……」

 

 それにはマリアナ海溝よりもとても深い理由があるのだ。

 

 鍛冶屋のおっちゃんが良いものを手に入れたから来い!

 と呼ばれた。

 巨大な蜘蛛のから取れる、鋼のような強度を持つ糸を使って弓を作るらしい。

 今回は最高傑作になるだろうと言っていた為、予約しておいた。

 

 出来上がった弓はこの街ではまず出回ってない魔法の込められた武器。

 放つ矢の威力を上昇させる魔法が掛かっている。

 

 それは弓道部員の琴線に触れるのには十分過ぎる出来だった。

 折角なので前に買え、買え言われた金属製の矢も購入した。

 ついでに新品のゆがけもこうにゅうした。

 

 ゆがけとは指を弦から守るもの。

 弓道で使うものとは形が違うが。

 一応持ってはいるのだが、何故か買ってしまった。

 

 

 ということがあったのだ。

 

 それを説明したらゆんゆんに水溜りより浅いですよと言われた。

 これだから魔法使いは。

 遠距離攻撃が出来るのがどれだけ有難いかしらないのか。あの弦を絞る時の音、放った時の空を裂く音。

 矢が的のど真ん中に当たった時の快感。

 これを味わったらそうそう弓矢を手放せない。

 

「な、なあ。クエストに行かないか? それも雑魚がたくさんいるやつを」

 

「おやおやカズマ、前まではあれ程クエストに行きたがらなかったのにどんな風の吹き回しでしょうか?」

 

 めぐみんは俺が弓矢の試し撃ちをしたいのを見抜き、煽ってくる。

 

「じゃあやめに……」

 

「いえ、行きましょう」

 

 

 

「おいおい、なんだよこれ。全部高難易度のクエストじゃねぇか!」

 

 これでは雑魚相手に俺TUEEEが出来ないじゃないか。

 

「カズマカズマ、これにしましょう。森に棲みついたブラックファングの群れの討伐」

 

 どうやら本当に魔王軍幹部が付近に滞在しているらしく、レベルの低いモンスターは軒並み隠れてしまった。

 仕方なくレベル1のキョウヤを壁役に連れて行こうとしたが姿が見当たらない。

 ギルドの人から聞くと。

 

『レベル15になったので、隣街に行ってきます。って言って出て行ったんですけど、確かあの人レベル30はあったはず……』とのこと。

 

 レベル上げるの早!

 と思ったがあいつのレベルを下げてから数週間は経ったんだよな。

 

 しかも最初こそはジャイアントトードを狩ってはいたものの、ゴブリン、コボルドと難易度を少しずつ上げていき、初心者殺しを貧相なロングソードで倒したそうだ。その後は、魔王軍幹部の影響で残った高難易度のクエストを受け続け、日に日に傷を負いながらもその全てをクリアしたらしい。

 

 中でもフィルススパイダーとか言う森の奥に棲みついた巨大蜘蛛討伐の時はいつもより重症だったとか。

 その手に入った糸をギルドに売って、どこかの鍛冶屋が購入したらしい。

 

 

 そんなことはどうでもいいが、俺達は新調した武器の試し撃ちのため仕方なく二人でクエストを受けることにした。

 さすがに俺たちの都合にボードゲームに熱中している美遊とゆんゆんを連れて行くわけには行かない。

 

 

 森の奥地

 生い茂った木々は巨木と言えるほどにまで成長しており、光は木々に遮られ、森の中は薄気味悪い。

 森の中は起伏が激しく、遮蔽物が多い。

 

「見つかりませんね」

 

「だな」

 

「やはり森を一面焦土にした方が……」

 

「森の生態系を変えて、ギルドから多額の賠償金が請求されるんだぞ!」

 

 不意打ち防止のため、敵感知を発動し続けているが全く反応がない。

 

「なあ、めぐみん。一旦帰ろう。群れを成す動物は大抵狡猾だ。きっと帰ったフリをすれば、背後から襲い掛かって来るはずだ」

 

「成る程、一理ありますね」

 

 

 数分後

 森の出口付近にて。

 

「ハァ……ハァ……急げ! 走れ走れ!」

 

 予想どうり出て来た所までは良かった。良かったのだが、20頭以上も出て来るなんて聞いてない。

 地球の狼では比べ物にならない。

 獣共は伸びきるほどにまで舌を出し、涎をダバダバと垂らす。

 余程腹が減っていたのだろう。

 そういえば、弱き者。つまり捕食対象が全て魔法軍幹部のせいで隠れてしまったため、食べ物にありつけなかったのだろう。

 

 

 森の中、牽制に弓を放ったが、木々が遮蔽物となっており、1、2本しか命中しなかった。

 しかも、ケチって安物の木の矢を使った為、硬い皮に阻まれ、深くは刺さらなかった。

 クエストの説明にも、矢は全くと言っていいほど刺さらない。弾かれることをあった。と記載されていた。

 弓を新調した為、歯応えがあって良いだろうと思ったが、あまり弦を絞らなかったせいだろう。刺さらない。

 

「いいか、めぐみん。俺らは今追い詰められている。そう思い込ませるんだ。そうすれば易々と平原に誘導できる!」

 

 街からかなり離れているせいか、まだ街の姿は見えない。

 獣共はさらに速度を上げた。

 

「ま、まだですか……」

「まだだ、50メートル走を思い出せ!7、8秒もすれば終わる!」

 

 8秒経過

 森からは大分離れ、平原が広がる。

 距離にして10メートル。

 まだだ、まだ反撃の時ではない。

 

 5メートル

 俺達の肉を貪ろうと獣共は飛び掛かってくる。

 俺は後ろに手を出し、唱える。

 

「『パラライズ』」

 

 それは相手を一時的に麻痺させる魔法。

 範囲はそれなりに広く、制圧力に優れている。いるのだが、俺は魔法職の放つそれよりも、範囲は狭く射程距離も短い。

 前線にいた10頭は範囲内に入って、痺れたが、残りの10頭は未だ健在。

 しかし、危機を察した10頭は仲間を置き、我先にと森へと走っていく。だが、森まではかなり離れている。

 

 

 俺は180度回り、弓矢を構え、引いた弦から指を離す。

 

「『狙撃』」

 

 金属製の矢は、ビュンと唸り声を上げた。

 矢はブラックファングの硬い皮膚を易々と貫き、中を喰らい、あろうことか貫通した。

 

 矢は依然と運動エネルギーを保持し、真っ直ぐとさらに前方のブラックファングを突き刺す。

 

 二頭の獣は犬のような悲鳴を上げ、絶命した。

 再度矢を番え、矢を放ち続け、ブラックファングの群れ全ては平原に倒れていた。

 

 痺れ、動けなくなったブラックファングの首元を強化した剣の先で突き刺す。だが、刃先はブラックファングの硬い皮膚によって阻まれた。

 このとき、新調した弓の威力を改めて思い知らされた。

 仕方なく、全てのブラックファングの頭部に矢を撃ち、絶命させた。

 

 もちろん、矢は全て回収した。

 

 俺は新調した弓矢の火力を試せたのでホクホクとし、街へと向かっていた。

「むぅーーー、結局私だけ何も出来なかったじゃないですか。一人だけスッキリするのはどうかと思います」

 

 その言い方はやめろ。

 

「フンッ、いいです。もうあの森に撃ちます」

 

「ままま、まて! もう少し何もないところにしよう。生態系を変えるのはまずい」

 

「むぅーーー」

 

 

 

 ☆

 

 

 

「ではあれにしましょう」

 

 それは丘にポツンと捨てられたように佇む朽ちた古い城。

 

「ちょっと薄気味悪くないか? なにかに呪われそうだぞ」

 

「いいえ、限界です。撃ちます」

 

 俺の言葉を無視し、徐に詠唱し始めた。

 

「『エクスプロージョン』」

 

「『テレポート』」

 

 

 俺は何かに呪われる事を恐れ、そそくさと逃げた。

 

 




どうでしたか?
よろしければ感想、評価等気軽にしてくれれば幸いです。


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9話 魔王軍幹部、襲来⁉︎

皆さんお久しぶりのこしあんです。今日で私はめでたくハーメルン一周年を迎えました。ドンドンパフパフ

しかし、久しぶりすぎて文章力が死んでるんですよね。
あと私美術っブに入りました。

あっ!今「どうせ下手なんだろ?」って鼻で笑ったやつちょっと出てこい。
今すぐ上達してエッロい絵描いてギャフンと言わせてやるからな!
覚えとけよ!

今、時雨ちゃんやゆんゆんを描いている。チハたんや零戦、スツーカも

因みに私は利き手の右手を骨折しましたけどね。

とりあえず皆様にまた見てもらえれば幸いです。


あの城爆撃事件以降、めぐみんはただ平原で撃つだけでは最早欲望を満たす事は出来なくなっていた。

 

「『エクスプロージョン』!!!」

 

今日もまた轟々と爆音が響き渡る。

 

そう、爆裂魔法をあの廃城に撃ち込む事が、何もする事のない俺たちの日課となっていた。

俺は半強制的に。

 

俺はこの世界のチェスを無性にやりたかった。

俺の心はいつのまにかゲームの虜となっていた。俺は地球に居た時、ゲームなどした記憶が全く無い……それどころではなかったはずなのに。

 

これも英霊となった何処かの世界の俺の影響なのか。

これまでこの英霊について知った事はステータスが幸運以外あまりよろしく無い。

そして、認めたくは無いが、クラスはこの世界で最弱と呼ばれる『冒険者』。

無類のゲーム好き。

そこから導き出される答えは!

 

……ヒキニート、もしくはゲーマー。

最悪、その両方。

 

まあ、それは置いといて。

めぐみんは、

『なら、勝負をしましょう。チェスで私が勝ったら爆裂魔法の特訓に手伝って貰います。勝ったら、どうぞご勝手にチェスでもなんでもやってて下さい!』

 

俺に何ら得が無いのだが、俺の中で燃えたぎる何かの魂があった。

それは俺へと、『ひゃっはー! ゲームだ!』と叫んでくる。

俺はその勝負に乗ってしまった。

そして、負けたのだ。

 

だが、爆裂魔法を間近で見るのはかなり面白味があった。

 

あの高らかと鳴り響く爆音が、ズンッとこちらまで伝わってくる衝撃波が、あの肌を焦がすような熱風が俺を魅了する。

 

爆音は敵に絶望を与え、衝撃波はあたり一帯の硝子を破壊し、熱風は人々の皮膚をドロドロに溶かす。

そして本命の爆発はあたり一面を焼き野原にし、家屋一つ残らない。

俺の自爆スキル(爆裂魔法擬き)とは比べ物にならない。

 

……筈なのだが、かれこれ20回は爆撃しているのだが、あの廃城は最初に見た時と全く変わっていない気がするのだが……

 

 

 

 

 

「「ばっくれつ、ばっくれつ、ランランラン」」

 

いつのまにか爆裂魔法の特訓は爆裂散歩へと変わっていた。

そして、俺たちは鼻歌混じりにスキップであの廃城へと向かう。

 

それは早朝の散歩のついでに。

それは陽射しの差し込む昼下がりに。

それは満開の星空の下で。

 

昼夜を問わずめぐみんは毎日あの廃城に爆裂魔法を撃ち込み、めぐみんの傍で見続ける俺はその日の爆裂魔法の出来が多少は分かるようになっていた。

 

「『テレポート』」

 

そして爆裂魔法を放った直後モンスターが襲ってくる可能性が無いと言い切れない為、俺は毎日テレポートを使い、1日分の魔力どころか生命力すら持っていかれた。

 

そして家に着いた俺は脱力感に襲われ、死んだように眠りに就き三時間は起きない。

 

眼が覚めると俺は空腹感と焼き焦げたような喉の痛み襲われ、肉を貪り、水を腹に詰め込む。

 

こんなことを繰り返しているうちに死ぬのでは? とたまに考えてしまう。

 

その後はゆんゆん達とチェスを打つ。

最初は年季の違いに蹂躙された。だが、ルールが身についた今はかなり相手を追い詰めることは出来るようになった。

しかし、どこまで追い詰めようと駒の一つのアークウィザードの固有スキル『爆裂魔法』でなかった事にされる。

 

だが、そんな苦悶の日々にとうとう終止符を打った。

 

「アーチャーのスキル 『狙撃』 を発動。射程距離が二倍になったアーチャーでアークウィザードを攻撃」

 

このチェスはその駒のクラスを象徴するスキルをゲーム中に1回のみ使用できる。

アーチャーなら攻撃マスを二倍に。

盗賊なら相手の武器を奪い無力化。

 

と様々だ。

 

そして、運命の時がやって来る。

 

緊張の一戦。

互いに思考し、盤面を凝視する。

その張り詰めた緊張感は観戦するものにも伝わるほどだった。

 

クソッ! どうすれば、どうすればこの状況で最善の手が打てるんだ!

 

その時、カズマに衝撃走る。

 

閃く!

今この状況を乗り越えられる最善の一手を!

 

「アークウィザードの『テレポート』を使用し、ソードマスターを転移。チェックだ。」

 

チェックはただ追い詰められただけで、決して負けが決まる訳ではない。

次の一手で逆転される事もある。

気を抜いてはいけない。

 

だが、逃げる!

ゆんゆんはただ逃げの一手を選ぶのみだった!

 

「はっはっはっ、引っかかったな大馬鹿者め! 騎兵で攻撃」

 

騎兵は将棋の桂馬とほぼ同じ。敵陣に侵入する事で、竜騎兵にジョブチェンジ出来る。

そして桂馬は飛車に進化する。

はっきり言ってめっちゃ強い。

 

そして騎兵が王将を討ち取ったのだった。

 

これで一勝、二十敗、五十引き分け。

 

このゲームはいかに敵の魔法使い職を倒すかに掛かっているのだ。

 

 

 

今日は珍しく爆裂散歩を後にしチェスを打っていた。

そしていつものようにめぐみんと爆裂散歩に行こうとしたその時。

 

『緊急! 緊急! 全冒険者の皆様は直ちに武装し、戦闘態勢で街の北の門に集まってください!』

 

キャベツの次はほうれん草でも飛んで来るのだろうか。

一応弓だけを担ぎ、皆で北の門へと向かった。

 

門に近づくと俺たちより先に来た冒険者たちが集まっていた。

 

俺は冒険者集団の隙間をすり抜け前へと抜け出た。

 

 

すると前方から全身の毛穴という毛穴が逆立つような殺気のこもった氷のように冷たい魔力に晒された。

まるで体が石化されたみたいに動けない。

 

周りにいる冒険者もそれに晒され、硬直しているようだった。

 

 

その魔力の持ち主は、デュラハン

それは人々に死の宣告を行い、人々を絶望の淵に陥れ、それを愉快愉快と血のような赤いワインを飲みながら楽しむ首なし騎士。

 

中世ではよくある不当な処刑により首を斬られ、怨念が残りアンデットと成り下がる。

元々騎士であったため高い剣術を保持し、生前の全盛期を遥かに凌駕する肉体と様々なアンデットの特殊スキルを手に入れた元人間。

 

そこらのアンデットのように無理矢理アンデットになった訳でなく、自ら望んでアンデットとなったためか、知性すら持つ。

 

彼の鎧は自分の怨念どころか他人の怨念すらも染み付いたように騎士の純白とは真逆の暗黒に染まっていた。

彼の歩いた地面に生い茂った草が枯れていた。

 

そしてデュラハンからの第一声が響いた。

 

「……俺は先日、この街近郊の城に引っ越して来た魔王軍幹部の者だが……」

 

あっさりと重大な事を言ったデュラハンの声はだんだん震え始めた。

 

「まままま、毎日、毎日、毎日、毎日っっ! おお、俺の城に毎日欠かさず爆裂魔法を撃ち込む大馬鹿者は、誰だぁぁぁあっっ!」

 

その親近感すら持てる怒りに俺を含め、硬直していた冒険者がハッとなった。

 

「爆裂魔法?」

「爆裂魔法って言ったら」

 

と皆の視線は冒険者集団の最後尾にいるめぐみんへと集められた。

 

めぐみんはその視線に耐えられなかったのかこちらへと顔を向け、それに釣られた冒険者達はこちらへと視線を向けられ、

 

「ほう……貴様か……」

 

俺が濡れ衣を着せられる形となった。

そして俺だけ、ピンポイントに殺意を向けられた。

怒気を孕んだ声に身を震えさせ一歩どころか何歩も後退りした自分が無性に情けない。

 

「ち、違げぇますだよ。オラはただの冒険者でぇ、使おうものなら爆発四散してしまいあす。爆裂魔法が使えるとしたらぁ、そこに居る紅魔の魔法使いくらいですだよ」

 

恐怖のあまり、言葉遣いが変になってしまった。

だがこれで視線の対象はめぐみんへと再び移り変わった。

 

「ちょ、ちょっと! あなた私のパーティーメンバーじゃないですか! 貴方はパーティーメンバーを、年下のか弱い女の子を庇おうという気概はないのですか!?」

 

「うるせぇ! 俺だってあんな奴怖いんだよ! 」

 

「……お、お前が、お前が毎日、毎日俺の城にポンポンポンポン爆裂魔法を撃ち込んでくる大馬鹿ものか! 俺が魔王軍幹部と知っての狼藉かッ! なら、堂々と城に攻め入って来るがいい! その気がないなら街で震えてるが良い!」

 

ごめんなさい。

 

「……ねぇなんでそんないやがらせするの? 」

 

ごめんなさい。

 

「どうせ雑魚しか居ない街だと放置しておれば、調子に乗って撃ち込んでくるし、我慢の限界で殺しに出向いたらテレポートで逃げるし」

 

ごめんなさい。

 

「アッタマおかしいんじゃないのか貴様ァァッ!」

 

本当に申し訳ございません。

 

 

デュラハンが今まで溜めてきたストレスと同時に嫌な魔力がさらに一層放出された。

 

若干怯みながらも、めぐみんはマントを翻し、勇気を出して口を開く。

 

「我が名はめぐみん! アークウィザードにして爆裂魔法を操りし者!」

 

「……めぐみんってなんだ、バカにしてんのか!」

 

その勇気は不発に終わったようだ。

 

「ち、ちがわい! 我は紅魔族にしてこの街随一の魔法使い。我が爆裂魔法を放ち続けていたのは魔王軍幹部のあなたを誘き出すための作戦。こうしてまんまとこの街に一人で来たのが運の尽きです」

 

冒険者全員が「おおっ」と賞賛の声が上がるが、あれはけっして作戦などではなく口から出まかせだ。

しかもこの街随一の魔法使いとか言ってるし。

 

「ほう、紅魔の者か……なるほど、なるほど。どうやらそのイカれた名は別に俺をバカにしては訳ではなかったのだな」

 

一旦頭を馬の上に乗せ、腕を組み合点がいったという仕草をした。

 

「まあ良い。俺はお前ら雑魚などに用はない。ある調査のため、あの城に暫く滞在する。これからは爆裂魔法を撃つな。良いな⁉︎」

 

「無理です。紅魔族は日に一度爆裂魔法を撃たないと死んでしまいます」

 

「お、おい。そんなこと聞いたこともないぞ。デタラメなことを言うな!」

 

面白そうなので、めぐみんとあの元人間のやり取りを見守っていたいところだがこれ以上奴の逆鱗に触れると大変なことになると俺のセンサーが言っている。

 

 

デュラハンは大きくため息をつき何か諦めたような態度をし.

 

「……ならば仕方がない。ここはひとつ紅魔の娘に苦しんでもらおう」

 

下がりきった右手を上げ、めぐみんを指差す。

 

「汝に死の宣告を! 貴様は一週間後に死ぬであろう」

 

デュラハンの指先から、収縮されたドス黒い何かが放たれた。

 

マズイ

と思うが、恐怖で体が動かなかった。

最前列で奴の魔力を浴びすぎた。

俺の体は気づけば震えていた。

 

と、その時。美優がめぐみんを突き飛ばし、めぐみんの居た場所に立っていた。

 

呪いが最愛の妹へ降りかかろうとする最中、俺は未だに動かないでいた。

 

美優は逃げ切れないと悟り目を瞑った。

 

 

駄目だ美優。逃げろ

 

その考えがスイッチとなり以前の光景が浮かんだ。

 

逃げろと命令し、守れず、助け、今度こそ守ろうと決めた筈だった。

 

動けよ。

そう何度も体に命じても体は動かない。

 

しかし、美優に呪いが降り注ぐ事は無かった。

 

「なん……で?」

 

今度はゆんゆんが美優を突き飛ばし、それと同時にゆんゆんに呪いが降りかかった。

 

仲間を助けようと体がやっと動き出したのはゆんゆんが呪いを受けてからであった。

 

その瞬間。

はっきりと見えているはずの視界が全て灰色に見えた。

頭は何故かクリーンになっている。

それと同時に怒りと自分の不甲斐なさが湧いてくる。

 

無意識的に足に魔力を集め、強化した足で地面を蹴り、デュラハンへと向かう。

 

「『ライト・オブ・セイバー』」

 

美優からの魔力を頼りに詠唱を無視した雷が掌に宿り刃渡り15センチの刃が完成した。

 

屈強な熟練の重戦士が両手で扱う大剣を片手で易々と構える。

 

次の瞬間、雷と鋼鉄の刃の間で火花が咲いては散る。

 

爆裂魔法を除く俺のスキルの中で最高火力のそれを片手で扱った大剣でいとも容易く受け止めた。

 

刹那の時間も経たずに形状を維持できなくなったライト・オブ・セイバーは無に散り、その後すぐさま海老のように後ろへと退避した。

 

今ので痛いほど痛感する。

俺は明らかに鈍った。

まるで日に日に劣化していく生鮮食品のようだ。

 

あの時の死闘を思い出せ。

俺はどうやって勝てた?

 

精神が研ぎ澄まされていた。必死だった。思考し、可能性を探った。

敵の懐に忍び込みゼロ距離で最高火力を撃ち込んだ。

そうでなくては倒せない。

 

「魔法で白兵戦を挑み、一瞬とはいえ俺とヤイバを交え互角とは、いやはや恐れ入ったよ」

 

奴はまだ馬に悠々と佇んでいる。

 

背中に背負った弓を構えて腕を強化させ、弦を引き絞る。

 

「『狙撃』ッッ!!」

 

ビュンっと空気を裂き、前へと突き進む。

 

矢は鎧へと命中した後に跳弾し明後日の方向へと飛んでいった。

鎧は僅かに凹みが出来ていた。

 

「……貴様、もしや冒険者か?」

 

「『クリエイトウォーター』、『フリーズ』」

俺は奴への返答には答えず、馬の足元に張った水を凍らせ、移動を封じた。

 

奴に向かって猪突猛進に駆け出し、地面を蹴って飛び、膝蹴りの構えをする。

 

そして、

 

「『テレポート』」

 

デュラハンの裏へと回りこんだ。

 

「『ライト・オブ・セイバー』ッッ!」

 

雷の剣を突き出す。

が、

 

 

「あ……がっ、」

 

剣を手離し、俺の腕を掴んでいた。

腕を持ち上げられ、おれは吊るされる形となった。

 

「返答はそれか? フハハ、アッハハ。 気に入った。気に入ったぞ。最弱の冒険者風情がここまでやるとはな。まあ俺もここには忠告しに来ただけだ。貴様の気概に免じ、今は見逃してやろう。」

 

デュラハンの握る力がさらに増していく。

 

「ガアアアア……ウッ、アアアッ」

 

叫ばないと痛みで気が狂いそうだ。

耳に何かを詰められたように聞こえなくなり、自分が呼吸を出来ているのかも分からない。

目の前のデュラハンすら遠くにいるように見えてきた。

 

気が遠くなるとはこの事なのだろう。

 

俺はいつのまにか投げ捨てられ、デュラハンに指を差されていた。

 

 

「呪いを解いて欲しくば我が城に来るがいい。だが数多の罠と我が精鋭部隊のアンデットナイトどもが巡回しているがな」

 

そう言い残し、俺に背を向けた。

もっとも、俺は全く聞こえなかった。

 

「……『ライト……ニン、グ』」

 

最後の抵抗にと放った一撃も虚しく、黒い靄がデュラハンを包み込み、姿を消した。

 




私は苦悶している。
はたしてこの高校でよかったのだろうか?
近いからという理由であんな学校を選んでよかったのだろうか?
近いからとFラン学校に来てしまった。
工業系を選んだらちょっとやばそうな人が居た。
もちろん真面目な人や普通な人もいる。だが、やばそうな人達がほとんどリーダー格になってしまった。
一部授業中で騒ぎ散らし、妨害し、赤点を取れば先生が難しいのを作ったのが悪いと勉強すらせず喚き散らかす。

俺に未来はあるのか?
ちょっとこのまま終わるのは嫌だから大学行きたい。



私の苦悶は未だ続く。


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