真・恋姫†無双 転生伝 (ノブやん)
しおりを挟む

一話

初めまして、ノブやんです。皆さんの作品を見て書きたくなりました。
初めて書くので、読みにくいかと思いますが、暖かい目で見てください。


「いってー!あれ?ここどこだ?」

 

俺、龍谷如月(りゅうたに きさらぎ)は、暗闇の空間にいた。

 

「ここは、あの世とこの世の狭間の世界じゃ。」

 

「え?」

 

なんか知らん間に、見たことのないじいさんがいた。

 

「まずは、自己紹介といこうかの。わしゃ、俗に言う神様じゃ。」

 

と、いきなり自己紹介の流れに。

 

「俺は、龍谷如月です。18歳で、趣味は料理です。」

 

「これは、ご丁寧にどうも。そして、すみませんでした!」

 

いきなり、土下座をする神様。

 

「え!なんで土下座?」

 

意味分かんないですけど。

 

「は?俺、死んだの?」

 

なんで、死んだんだろ?

 

「実は、お主のいた世界に遊びに行った時、ひったくり犯を偶然見かけて罰を与えようとしたら、間違えて近くを歩いていたお主に当たってしまったんじゃが、それがちょっと強力なものだったので、死んでしまったんじゃ。てへぺろ。」

 

たしかに近くで、「ひったくり」って声が聞こえたが、てか、

 

「てへぺろ。じゃねーよ。可愛くねーし、死ぬような威力でやるなよ!」

 

「ごめんなさい。かわりに別の世界に転生させるから、ゆるしてくれ。」

 

「え、転生?どこに?」

 

「俗に言う三国志と呼ばれる世界じゃな。特別にいろいろと能力をつけてあげよう。何か欲しい能力はあるかの?」

 

マジで!じゃあ色々もらうか。

 

「じゃあ、ドラクエの呪文・特技を使えるようにしてほしい。あと、ダイの大冒険に出てくる、竜闘気(ドラゴニックオーラ)と飛翔呪文(トベルーラ)も、武器はダイの大冒険の覇者の剣をくれ。色々とやってみたいから、オリハルコンで出来てるやつがいい。研ぐ必要が無い様にしてくれ。あと、農業知識も欲しい。」

 

「結構あるのう。まあ、こっちのミスだからしょうがないのう。大盤振る舞いじゃ。」

 

「あと、呪文とかの練習がしたいから、つきあってくれると助かるんだが。」

 

「わかった。つきあおう。」

 

・・・・・・数か月後

 

「結構ものになってきたな。まさか、イオナズンとかの最高位呪文が使えるようになるとは。」

 

マジでチートじゃねえか。農業知識も色々学んだし、やってみたいことがたくさんあるなー。

 

「じゃあ転生先に行くかのう。あ、蘇生呪文は使えないから。」

 

「え、なんで?」

 

「いや、人を生き返させることが出来るって、ダメでしょ。人が今よりも簡単に死ぬ時代じゃぞ。噂を聞きつけた奴らに利用されるのがオチじゃ。そのかわり、MP(気)を∞(無限大)にしといたからの。」

 

「え、マジで!!いいの?すごくチートになっちまって。」

 

「こっちのミスじゃからのう。遠慮するな。」

 

「ありがとう。」

 

「うむ、この扉の向こうが転生先じゃ。」

 

「わかった。せわになったな神様。」

 

「うむ、気を付けてな。」

 

こうして、龍谷如月は転生先へ旅立ったのだった。




初めて書きましたが、プロローグだとこんなものかな?
もっと、心の中の描写とか書けれるように頑張ります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二話

こんな拙い文章でも読んでくれたのも嬉しいけど、6人の方がお気に入り登録してくれたのもすげー嬉しい。
こりゃ頑張らないかんな。


扉を開けた先は、広大な荒野だった。

 

「うわー、すっげーな。見渡す限り荒野だな。とりあえず、近くに村か町がないか探すか。トベルーラ。」

 

「本当に三国志の世界に来たんだなー。てか、マジで呪文使えるよ。」

 

と、トベルーラで空を飛びながら、村か町を探す。「誰か助けてー!!」と叫び声が聞こえる。よく見ると、同い年くらいの青年が、三人組に囲まれていた。

 

 

side一刀

 

「なんじゃこりゃーーーーーー!」

 

とりあえず、状況確認をしよう。えっと今日は、朝起きて、学校に行って、いつも通り授業をうけて、帰ろうとして、そこから……。

 

「そこから記憶が無くなってるなぁ。夢でもなさそうだし。」

 

でもなんでこんな所に?

 

「なんかヒントはないかなぁ?」

 

とポケットの中を漁っても、携帯、ハンカチ、小銭に。

 

「って、携帯があるじゃんか。ナビとか出来るかな?」

 

圏外

 

「圏外かぁ。って嘘ぉ!バッテリー無くなりやがった。はぁ、携帯電話。電池がなければただの箱。」

 

って、俳句みたいに読んでしまった。物が入らない分、箱以下だな。

 

「おい、兄ちゃんちょっと待てよ。」

 

……ん?なんだ?と振り返ると。

 

「……コスプレ?」

 

「はぁ?何言ってんだ?とりあえず、珍しいもんと服着てんじゃねーか。それ全部置いてけよ。」

 

と言いながら、剣を頬に当てていた。

 

「えっ。ちょ、待って。誰か助けてー!!」

 

「うるせーよ。まぁ、しゃーねーから死ね。」

 

剣が振り上げられ、振り落とされる。死ぬのかと思ったその時、”ガキン”金属同士の当たる音が聞こえた。

 

sideout一刀

 

 

「そう簡単に、人を殺そうとするなよ。」

 

運よく間に合ったな。

 

「テメー!邪魔しやがって!テメーも殺すぞ!」

 

リーダーらしき人がこっちに剣を振るってきた。

 

「遅いよ。」

 

と覇者の剣を、右腕に向かって切りつける。

 

「ギャーーーー!!腕が!」

 

「「アニキ!」」

 

「これ以上やるか?」

 

「ひっ!クソ、逃げるぞ。」

 

「「アニキ、待ってー。」」

 

「ふぅ。」

 

覇者の剣を鞘に納める。

 

「あの、ありが『おぬし達、大丈夫か?』ん?」

 

「え?」

 

と振り返ると、セクシーな女性がいた。

 

「見たところ、怪我は無いようだな。あと、そちらの剣をさげている御仁は強いな。」

 

「星ちゃーん。待ってくださいよー。」

 

「星、いきなり走り出してどうしたんですか?」

 

「風、稟。すまん、賊に襲われている人を見つけたのだがな、そちらの御仁が追っぱらってしまった。」

 

「おー、お兄さん、お強いのですねー。」

 

「それにしても災難でしたね。このあたりは比較的少ないのですが。」

 

「そうなんですか。あのー、すみません、名前を聞いてもいいですか?」

 

「我が名は趙雲、字は子龍と申す。」

 

「程立ですー。」

 

「戯志才と名乗っております。」

 

は?趙雲ってあの趙雲?あと程立に戯志才だって?程立は程昱だろ、戯志才って誰だ?てか、趙雲と程立が女の子?どうなってんだ?ともかく、名前聞いてるんだからこっちも答えないと。

 

「俺は、龍谷如月。」

 

「俺は、北郷一刀。」

 

「あと、一つ聞きたいんだが、さっき、別の名前で呼んでなかったか?」

 

「あぁ、あれは真名ですな。」

 

「「真名?」」

 

「真名とは、真の名であり、本人が心を許した証として呼ぶことを許した名であり、本人の許可なく呼べば問答無用で切られても、文句は言えないほど失礼にあたるものですよ。」

 

「マジっすか。良かった呼ばないで。」

 

と冷や汗を流す。

 

「よし、では、我々は行くので、陳留の刺史殿に任せよう。」

 

「「陳留の刺史?」」

 

「ほら、あれに曹の旗が。」

 

戯志才の指の指す方向に砂煙が立ち上っている。

 

「では、官軍に見つかると色々うるさいので、さらば。」

 

「ばいばーい。」

 

「では、また。」

 

と言って、三人は行ってしまった。

 

ふたたび二人っきりになってしまったので、もう一度自己紹介と現状の確認を行った。その結果、ここは俺達の知っている歴史の三国志ではないことを確認。あと、一刀は歴史が大好きで、三国志の知識も結構知っていた。俺も一度死んでしまって、神様に転生させてもらったことを一刀に話した。ドラクエの呪文や特技を使えることも話した。スゲー興奮したので時間があるときに見せることを約束した。状況を整理している間に、騎馬隊が到着し、俺らを包囲していた。

 

・・・・・・・・

 

「華琳様、こやつらは……。」

 

「……どうやら違うようね。連中はもっと年かさの、中年男だと聞いたわ。」

 

「どうしましょう。連中の一味の可能性もありますし、引っ立てましょうか?」

 

「あの、君の名は?」

 

「それはこちらの台詞よ。貴方達こそ何者?名を訪ねる前に、自分の名を名乗りなさい。」

 

「俺は、龍谷如月。」

 

「俺は、北郷一刀。」

 

「龍谷に北郷ね。私の名は曹孟徳。こちらの二人は赤い服の子が夏候惇、青い服の子が夏侯淵よ。こんな場所じゃなんだし、移動しましょう。あと、連中の手掛かりもあるかもしれないわ。半数は辺り捜索。残りは一時帰還するわよ。二人もついてきなさい。」

 

マジかよ。と思いつつ、俺達二人は曹操についていった。

 

・・・・・・・・

 

「なら、もう一度聞く。名前は?」

 

「龍谷如月。」

 

「北郷一刀。」

 

「では、おぬし達の国は?」

 

「「この大陸から海を渡った所にある、日本という国だ。」」

 

「二人がこの国に来た目的は?」

 

「「分からない。」」

 

「ここまでどうやって来た?」

 

「学校からの帰りに、気付いたら、あの荒野にいた。」

 

「信じてもらえないだろうが、俺は一度死んでいる。神様って奴が間違えて俺を死なせてしまったらしいので、特別に転生させてもらった。」

 

「すまん、あとちょっと聞きたいことがあるんだが。」

と一刀。

 

「何よ。」

 

「ここって、魏なのか?」

 

「どういうことよ。」

 

「……華琳様?」

 

「魏という名前はね。私が考えていた国の名前の、候補の一つなのよ。」

 

「……は?」

 

「どういう意味ですか?」

 

「まだ春蘭にも秋蘭にも言ってないわ。近い内には言うつもりっだったのだけれど……。それを、どうして会ったばかりのあなたが知っているの!」

 

と曹操が語気を強めて聞いてくる。

 

「ちょっと落ち着いてくれ。ちゃんと説明するから。俺も、一刀も理解せざるを得なかったのだが、俺らがこの世界の未来から来た人間なんだ。」

 

「……春蘭、秋蘭、理解できた?」

 

「……ある程度は。しかし、にわかには信じがたい話ですな。」

 

「いえ、よく分かりません。」

 

「例えばだな夏候惇。目が覚めたら荒野のど真ん中にいて、項羽や劉邦に会った様なものだ。」

 

「はぁ?項羽や劉邦といえばはるか昔の人物だぞ。そんな昔の英傑に、今のわたしが会えるものか。何をそんな例えを……。」

 

「そういう馬鹿げている状態なんだよ。俺たちは。」

 

「……な、なんと。」

 

「確かに、それならば北郷が華琳様の考えていた魏という国の名を知っていたことも説明がつく。」

 

「春蘭、色々難しいことを言ったけど、この二人は天の国から来た遣いなのだそうよ。」

 

天の国の遣い?なんだそりゃ。と俺と一刀。

 

「五胡の妖術使いや、未来から来たなんて話をするより、そう説明した方が分かり易いのよ。あなた達、これからは自分のことを説明するときは、天の国から来たと説明なさい。」

 

「一刀、俺達は天の国の遣いになったぞ。」

 

「どうやら、そのようだ。」

 

はぁ。と二人でため息をつく。

 

「ならば、あなた達二人を保護します。」

 

「おう、こっちは行く当てがないから、助かるぜ。」

 

「そういえば、あなた達の真名を聞いてなかったわね。教えてくれるかしら。」

 

「いや、俺らには真名がないんだよ。真名にあたるとしたら、俺は如月、一刀は一刀ってところか。」

 

「そうなの?ならあなた達は初めから真名を名乗っていたのね。なら、こちらも真名を預けましょう。私のことは華琳と呼びなさい。春蘭も秋蘭も真名を預けなさい。」

 

「華琳様の命ならばしかたあるまい。なぁ姉者。」

 

「そうだな秋蘭。」

 

「ではあらためて、姓は曹、名は操、字は孟徳、真名は華琳。この真名あなた達に預けるわ。」

 

「姓は夏候、名は惇、字は元譲、真名は春蘭だ。」

 

「姓は夏候、名は淵、字は妙才、真名は秋蘭。よろしく。」

 

「姓は北郷、名は一刀、字と真名はないから好きな方で呼んでくれ。」

 

「姓は龍谷、名は如月、一刀と同じで字と真名は無い。如月と呼んでくれ。」

 

こうして、俺と一刀は華琳の所にやっかいになることになった。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三話

考えていることを文字にするって大変だよなー。難しいっす。
まぁ、がんばって書きましたので楽しんでいただければ幸いです。


華琳に保護されることになった翌日、俺と一刀は華琳に呼び出された。

 

「華琳、呼び出されたから来たけど、入っていいか?」

 

「ええ、入ってきてちょうだい。」

 

と中から了承をもらい、

 

「「失礼しまーす。」」

 

と言って中に入ると、華琳と秋蘭が事務作業を行っていたが、手を止めこちらを見る。

 

「何の用?」

 

「ええ、あなた達にちょっと確認したいことがあって、呼んでもらったのよ。」

 

何の確認だろう?と思っていると、

 

「あなた達この国の文字は読み書き出来る?言葉は通じているから大丈夫でしょうが、これ読める?」

 

「全然読めない。」

 

と一刀。

 

「これは、街の警備体制の見直し案?」

 

と俺。

 

「如月は読めるようね。では、一刀は如月に、読み書きを教えてもらいなさい。あと、あなた達の武の腕を知りたいから、春蘭と仕合しなさい。」

 

「「は?」」

 

一刀に読み書きを教えるのはいいが、春蘭と仕合?まぁ、どこまでやれるか自分の腕を試すか。

 

・・・・・・・・

 

「まずは一刀からやってもらおうかしら。春蘭よろしくね。」

 

「北郷覚悟しろ。」

 

といきなり一刀に切りかかる春蘭、それを全力でかわす一刀。その後も一刀は、反撃することすら出来ずに、体力が無くなって、倒れた所で華琳からストップがかかった。

 

「まぁ、こんなものね。一刀、次は春蘭に反撃できるくらいになりなさい。次は、如月ね。」

 

「うーす。一刀お疲れさん。」

 

「はぁ……はぁ……。ああ如月もがんばれ。」

 

「次は如月か。遠慮せんぞ。せやー!」

 

「よっと、あぶねーないきなり切りかかってくるなよ。ん?うぉ、地面に穴があいてる。なんて力だよ。けど、こっちも負けねーよ。そりゃ。」

 

如月の攻撃を春蘭が受け止める。

 

「うるさい、ぼんやりとしている方が悪い。(結構重い一撃だ。)」

 

たがいに、距離を取り、再度飛び込み、打ち合うこと十数合、さすがに疲れてきたのか、春蘭の剣先が鈍ってきたのを如月は感じていた。

 

「(さすがに疲れてきたか。あ、そうだ。一刀に色々見せるって約束してたなぁ。ちょっと見せてやるか。威力を落として。)」

 

如月が後ろに跳び、距離をとる。

 

「一刀、約束してたもの見せてやるよ。春蘭、これで決めてやる。」

 

「ふん、決められるものなら決めてみろ。逆に返り討ちにしてやる。」

 

「ギガデイン。」

 

大上段にかまえた剣にギガデインが落ち、剣に膨大なエネルギーを纏わせる。

 

「くっ、なんて膨大な力だ。」

 

「まさか、あれは!」

 

「そうだよ、一刀。いくぞ、春蘭。ギガブレイク!」

 

膨大なエネルギーを纏った剣を右上段の構えから春蘭に突進して叩き込む。

 

「うあーーーー。」

 

ギガブレイクを叩き込まれた春蘭は後ろへ大きく飛ばされ、壁に叩きつけられた。

 

「「春蘭!」」

 

「姉者!」

 

「やべ、やりすぎた。」

 

「ぐっ…。」

 

「動くな春蘭。すまん、力の加減がうまくいかなかった。ベホマ。」

 

手をかざし、ベホマを唱え、春蘭の傷と体力を回復させていく。それを見た華琳と秋蘭はみるみる治っていく傷を見て驚く。

 

「まさか、ギガデインにベホマまで。スゲーな。」

 

「なんなの、そのベホマというのは?」

 

「回復呪文と呼ばれる呪文の一つさ。他にも回復量が異なるものがあるんだ。」

 

と一刀。

 

「まぁ分かり易く言うと、自分の気を相手に流して治癒力を上げるって感じかな。よし、全回復だ。春蘭、調子はどうだ?」

 

「おお、傷も体力も回復している。」

 

「ねぇ、如月。呪文って他にどのようなものがあるの?」

 

「それは、俺も気になるな。」

 

「いいよ。見せてやる。まぁ、蘇生呪文以外なら全部出来るっていえば、一刀は理解すると思うが。」

 

「マジで!!」

 

「おう、マジマジ。とりあえずは、ヒャダルコ。」

 

ヒャダルコを唱え、大きな氷の塊を何個か出す。

 

「おースゲー!本物だー!」

 

と一刀は興奮している。

 

華琳、春蘭、秋蘭の三人は、すごく驚いている。

 

「こんな大きな氷を出せるなんて。」

 

「色々と見せてやるよ。まずは、メラミ。」

 

大きな火の塊を氷に投げつける。

 

「次は、ベギラマ。」

 

高エネルギーの閃光がビーム状になって、一直線に飛んでいく。

 

「バギマ。」

 

かまいたちが発生し、氷の塊を切り刻んでいく。

 

「イオラ。」

 

氷の塊の中心で爆発が起きる。

 

「とまぁ、攻撃呪文はこんなものかな。これでも中級の呪文で威力も抑えてある。これよりも上位の呪文も出来るが、威力が凄まじいからな。戦でもこっちが不利にならないと使わないようにしようと思う。」

 

「なぜ?」

 

「さっきも言ったが、威力が凄まじいからだ。この城くらいなら一発でぶち壊せることが出来るぞ。仲間を守るために使わざるを得ない時は使うが、俺は大量虐殺をしたい訳ではないからな。」

 

「分かったわ。あなたがそう決めているならしかたないわね。でも、仲間が危機にさらされたときは、その力を使って助けてちょうだい。」

 

「分かった。その時はこの力を使って仲間を助けよう。あと、もう一つ見せたいものがあるんだ。模造刀一本ある?」

 

「ええ。」

 

華琳に模造刀を渡してもらった。

 

「よく見てろよ。ふん!」

 

模造刀を左腕に叩きつける。

 

「ちょっ、気でも狂ったの?」

 

「馬鹿者、骨折でもしたらどうする。」

 

「姉者の言う通りだ。」

 

と三人が言ってきて、腕を確かめようとするが、三人は驚いた目で模造刀を見る。模造刀の方が壊れていて、如月の腕と模造刀の間に隙間が出来ていた。

 

「これはね、竜闘気(ドラゴニックオーラ)と言って、俺の全身には、この気が鎧のように覆っている。この気のおかげで、俺には傷一つ付かない。まぁこの気を貫通するほどの攻撃を受けなければだけどな。」

 

「何て言うか規格外ね。」

 

「ええ、ですが華琳様、頼もしい武官が一人増えましたね。」

 

「春蘭、この通り俺は、怪我もしないから、いつでも勝負出来るぞ。」

 

「本当か。」

 

「ああ。」

 

「そうね、如月。あなたには、春蘭の手合せの相手と、一刀に読み書き教えなさい。一刀は如月に読み書きを習いなさい。期限は二週間ね。その後、あなた達には仕事をやってもらうわ。」

 

「了解、じゃあ一刀、時間もないし今からやるぞ。」

 

「分かった。華琳、こっちで文字の練習する時の道具を貸してくれ。」

 

「侍女達に聞けば出してもらえるわ。」

 

こうして、一刀にこの世界の読み書きを教えることになった。あと、勉強の休憩中に一刀が俺を鍛えてくれと頼んできたのと、春蘭が再選を申し込んできたりしたので、午前は、一刀のトレーニングまたは春蘭との仕合い、午後は一刀の勉強会というスケジュールになった。

 

 

 

 

 




仕合部分がスゲー悩んだのですが、こんな感じになっちゃいました。全然書けてないですね。
あと、呪文の説明は調べたらこんな感じに書いてあったので参考にして書きました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四話

見る側だったのに、書く側になって、自分の小説が投稿されたのを見ると、変な気持ちですね。投稿してるみなさんも、こんな気持ちになったのかな?


「何度見ても、スゲーな。これ全部本物なんだなよなー。」

 

城壁の下を走り回るのは、完全武装した兵士たち。束ねられた槍は薪のように積み上げられ、その隣に大きな山を築いているのは弓兵隊の使う矢の束。武器に食糧、補充の矢玉。薬に防具に調理用の鍋まで、戦に使う備品はその幅広さに事欠かない。

 

「どうしたの?そんな間の抜けた顔をして。」

 

と華琳と秋蘭がやってきた。

 

「いや、俺らの国では、こんな光景見たことがなかったからな。すごいなーと思って。そういえば一刀は?」

 

「春蘭と一緒に、装備品と兵の最終確認を行っているわ。如月、暇なら糧食の最終点検の帳簿を受け取ってきてちょうだい。」

 

「分かった。ちょっくら行ってくるわ。」

 

「如月、監督官は今、馬具の確認をしているはずだ。そちらに行くといい。」

 

「ありがとう。秋蘭。」

 

・・・・・・

 

「そういえば、監督官がどんな人か聞くの忘れてたな。あ、あの子に聞くか。ちょっとそこの君。」

 

「……。」

 

「ねぇ、ちょっと。」

 

「……。」

 

「聞こえてるかー?」

 

「聞こえているわよ!なによさっきから何度も何度も何度も何度も……いったい何のつもり!?」

 

「いや、そんなに怒らんでも。」

 

「うるさい。で、そんなに呼びつけて、何がしたかったわけ?」

 

「糧食の点検帳簿を受け取りに来たんだが、監督官がどこにいるか知らないか?」

 

「なんで、アンタなんかに、教えてやらないといけないのよ。」

 

「そりゃ、華琳に頼まれたからだな。」

 

「ちょっと、なんでアンタみたいなヤツが曹操様の真名を呼んでいるのよ!」

 

「いや、華琳から呼んで良いと言われてるんだが。」

 

「信じられない。なんで、こんなヤツに。」

 

なんでこんなに嫌われているんだ?と考えていると、

 

「あんたって、このあいだ曹操様に拾われた、天の使いの片割れ?」

 

「ああ、そうだ。天の使いの片割れだ。ともかく、糧食の帳簿を監督官から受け取ってくるようにに言われたんだから、教えてくれ。」

 

「曹操様に?それを早く言いなさいよ!その辺に置いてあるから、勝手に持っていきなさい。草色の表紙が当ててあるわ。」

 

「ありがとう。」

 

時間食ったな。早く持っていこう。

 

・・・・・・

 

「ごめん、華琳遅くなった。はいこれ、最終点検の帳簿。」

 

「まったく、遅いわよ。」

 

お、春蘭と一刀も報告に来たか。

 

「……。」

 

なんか、緊張するな。俺が書いたわけでもないのに。あ、一刀も緊張してるな。

 

「…秋蘭。」

 

「はっ。」

 

「この監督官は、一体何者なのかしら?」

 

「はい。先日志願してきた新人です。仕事の手際が良かったので、今回の食糧調達を任せてみたのですが……何か問題でも?」

 

「ここに呼び出しなさい。大至急よ。」

 

・・・・・・

 

「華琳様。連れて参りました。」

 

あ、さっきの女の子だ。

 

「おまえが食糧の調達を?」

 

「はい。必要十分な量は、用意したつもりですが…何か問題でもありましたでしょうか?」

 

「必要十分って…どういうつもりかしら?指定した量の半分しか出来ていないじゃない!」

 

半分の量しかないって、そりゃ、華琳じゃなくても怒るわなぁ。

 

「このまま出撃したら、糧食不足で行き倒れになる所だったわ。そうなったら、あなたはどう責任を取るつもりなのかしら?」

 

「いえ。そうはならないはずです。」

 

「何?…どういうこと?」

 

「理由は三つあります。お聞きいただけますか?」

 

「……説明なさい。納得のいく理由なら、許してあげてもいいでしょう。」

 

「…ご納得いただけなければ、それは私の不能がいたす所。この場で我が首、刎ねていただいても結構にございます。」

 

「…二言はないぞ?」

 

「はっ。では説明させていただきます!まず一つ目。曹操様は慎重なお方ゆえ、必ずご自分の目で糧食の最終確認をなさいます。そこで問題があれば、こうして責任者を呼ぶはず。行き倒れにはなりません。」

 

「ば…っ!馬鹿にしているの!?春蘭!」

 

「はっ!」

 

「はいはい、ちょっと待て、冷静になれ。あと二つ理由があるんだから、判断はその後でも遅くはないぞ。」

 

「如月の言う通りかと。それに華琳様、先ほどのお約束は…。」

 

「…そうだったわね。で、次は何?」

 

「次に二つ目。糧食が少なければ身軽になり、輸送部隊の行軍速度も上がります。よって、討伐行全体にかかる時間は、大幅に短縮できるでしょう。」

 

「ん?なぁ、秋蘭。」

 

「どうした姉者。そんな難しい顔をして。」

 

「行軍速度が速くなっても、移動する時間が短くなるだけではないのか?討伐にかかる時間までは半分にはならない……よな。」

 

「ならないぞ。」

 

「良かった。私の頭が悪くなったと思ったぞ。」

 

「そうか。よかったな、姉者。」

 

「うむ。」

 

「まぁいいわ。最後の理由、言ってみなさい。」

 

「はっ。三つ目ですが、私の提案する作戦を採れば、戦闘時間はさらに短くなるでしょう。よって、この糧食の量で十分だと判断いたしました。」

 

作戦ねー。てことは、軍師として雇ってほしいと。

 

「曹操様!どうかこの荀彧めを、曹操様を勝利に導く軍師として、麾下にお加えくださいませ。」

 

「なぁ、一刀。荀彧って、あの荀彧か?」

 

「あぁ、王佐の才と言われた、あの荀彧だと思う。」

 

とヒソヒソと会話する俺たち。

 

「な…っ!?」

 

「何と…」

 

「…荀彧。あなたの真名は?」

 

「桂花にごさいます。」

 

「桂花。あなた…この曹操を試したわね?」

 

「はい。」

 

「な…っ!貴様ぁ…!何をいけしゃあしゃあと…華琳様!このような無礼な輩、即刻首を刎ねてしまいましょう!」

 

「あなたは黙ってなさい!私の運命を決めていいのは、曹操様だけよ。」

 

「ぐ…っ!貴様ぁ…!」

 

「ちょーっと待て待て!落ち着けって、春蘭。」

 

一刀が春蘭を止めている。

 

「桂花。軍師としての経験は?」

 

「はっ。ここに来るまでは南皮で軍師をしておりました。」

 

「…そう。」

 

「なぁ、秋蘭。南皮ってもしかして、袁紹か?」

 

「そうだ。袁紹の本拠地だ。華琳様とは昔からの腐れ縁でな。」

 

「どうせ、あれのことだから、軍師の言葉など聞きはしなかったのでしょう。」

 

「まさか。聞かぬ相手に説くことは、軍師の腕の見せ所。まして仕える主が天をとる器であるならば、そのために己が力を振るうこと、何を惜しみ、ためらいましょうや。」

 

「ならばその力、私のために振るうことは惜しまないと?」

 

「一目見た瞬間、私の全てをささげるお方と確信いたしました。もしご不要とあらば、この荀彧、生きてこの場を去る気はありませぬ。遠慮なく、この場でお切捨てくださいませ!」

 

「春蘭。」

 

「はっ。」

 

華琳は春蘭から受け取った大鎌を、ゆっくり荀彧につきつけた。

 

「桂花。私がこの世でもっとも腹立たしく思うこと。それは他人に試されるということ。分かっているかしら?」

 

「はっ。そこをあえて試させていただきました。」

 

「そう。ならば、こうすることもあなたの手のひらの上と言う事ね。」

 

そう言うなり、華琳は振り上げた刃を一気に振り落とし、寸止めした。

 

「寸止めかよ。」

 

「当然でしょう。桂花、もし本当に振り下ろしていたら、どうするつもりだった?」

 

「それが天命と、受け入れておりました。天をとる器に看取られるなら、それを誇りこそすれ、恨むことはございません。」

 

「嘘は嫌いよ。本当のことを言いなさい。」

 

「曹操様のご気性からして、試されたのなら、試し返すに違いないと思いましたので。避ける気など毛頭ありませんでした。それに私は軍師であって武官ではありませぬ。あの状態から曹操様の一撃を防ぐすべは、そもそもありません。」

 

「そう…ふふっ。あははははははっ!最高よ、桂花。私を二度も試す度胸とその智謀、気に入ったわ。あなたの才、私が天下をとるために存分に使わせてもらうことにする。いいわね?」

 

「はっ!」

 

「ならまずは、この討伐行を成功させてみなさい。糧食は半分で良いと言ったのだから、もし不足したならその失態、身をもって償ってもらうわよ?」

 

「御意!」

 

このあと、各々が自己紹介をして、出発となった。

 

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五話

馬は思ったよりもゆっくりと進んでいた。予定期間の半分の行軍だっていうから、もっとペースを上げるもんだと思っていたが、いつもの行軍より、少し早い程度らしい。

 

「「北郷(一刀)、大丈夫か?」」

 

「何とか、つかまってるくらいにはね。てか、なんで如月は普通に乗れるんだよ。」

 

「んなもん、このチート能力のおかげだ。まぁ、時間を見つけては乗馬の練習をしていたが。よし、一刀はこの討伐が終わったら、乗馬の練習だな。しごいてやるぞ。」

 

「お手柔らかにお願いします。」

 

「そういえば、秋蘭。軍師の募集はしてなかったのか?」

 

「ああ、募集していなかったな。」

 

「なんでなんだ?」

 

「経歴を偽って申告する輩も多いのでな。この武勇なら姉者あたりが揉んでやれば大体分かるのだが、文官はよほど名の通った輩でない限り、使ってみないと判断がつかん。」

 

「だから、桂花はあんなことまでして、自分を売り込んだのか。」

 

そんな風に話しながら行軍していると、春蘭がやってきた。

 

「おお、貴様ら、こんな所にいたのか。前方に何やら大人数の集団がいるらしい。華琳様がお呼びだ。すぐに来い。」

 

「「了解。」」

 

「うむ。」

 

・・・・・・

 

「…遅くなりました。」

 

「ちょうど偵察が帰ってきた所よ。報告を。」

 

「はっ!行軍中の前方集団は、数十人ほど。旗がないため所属は不明ですが、恰好がまちまちな所から、どこかの野盗か山賊だと思われます。」

 

「様子を見るべきかしら。」

 

「もう一度、偵察隊を出しましょう。夏候惇、如月、あなた達が指揮を執って。」

 

「おう。」

 

「了解。」

 

・・・・・・

 

「まったく。先行部隊の指揮など、私一人で十分だというのに。」

 

「偵察も兼ねているからな。むやみやたらと突っ込むなよ。」

 

「そんなこと言われるまでもないわ。そこまで迂闊ではないぞ。」

 

「その迂闊がありえるから、俺が付けられたんだと思うぞ。」

 

「むぅー。」

 

と話していると、

 

「夏候惇様!誰かが戦っているようです!その数……一人!それも子供のようです!」

 

「なんだと!」

 

報告を聞くが早いか、春蘭は馬に鞭を振り、一気に加速させていく。

 

「あ、ちょっと待て春蘭。お前らも遅れずについて来い。」

 

兵たちにそういって春蘭を追いかける。

 

・・・・・・

 

「でえええええいっ!」

 

ビュン!

 

「ぐはぁ!」

 

「まだまだぁっ!でやあああああああっ!」

 

ビュン!

 

「がは……っ!」

 

「ええい、テメェら、ガキ一人に何を手こずって!数でいけ、数で!」

 

「おおぉぉ!」

 

「はぁ…はぁ…はぁ…、もう、こんなにたくさん…多すぎるよぅ。」

 

ヒュン!

 

「ぐふぅっ!」

 

「…え?」

 

「だらぁぁぁぁっ!」

 

ヒュン!

 

「げふぅっ!」

 

「貴様らぁっ!子供一人によってたかって…卑怯というにも生ぬるいわ!てやああああああっ!」

 

「うわぁ…!退却!退却だー!」

 

「まて!逃がすか!全員、叩きってくれるわ!」

 

「春蘭!ちょっと待て!」

 

「なぜ止める!」

 

「むやみやたらと突っ込むなとさっき言っただろう。それに、俺達は偵察部隊だ。他にやることがあるだろ。」

 

「ん?たとえば?」

 

「逃げた敵を、こっそり追跡して、本拠地をつかむんだ。てかもう、数人偵察に出したからな。」

 

「あ、あの…」

 

「おお、怪我は無いか?少女よ。」

 

「はい。ありがとうございます!おかげで助かりました!」

 

「それは何よりだ。しかし、なぜこんなところで一人で戦っていたのだ?」

 

「はい。それは…。」

 

女の子が話そうとした時に、本体が到着し

「如月、謎の集団とやらはどうしたの?戦闘があったという報告は聞いたけれど…。」

 

「何匹か逃がして、数人に尾行してもらってるから、本拠地はすぐに見つかるよ。」

 

「あら、なかなか気が利くわね。」

 

「それも含めて、俺を出したんだろ。よく言うよ。」

 

「あのー、お姉さん、もしかして、国の軍隊?」

 

「まぁ、そうなるが…ぐっ!」

 

ビュン!

 

ガキン!

 

振り下ろされたのは、女の子の持っていた巨大な鉄球だった。

 

「き、貴様、何をっ!」

 

「国の軍隊なんか信用できるもんか!ボク達を守ってもくれないくせに、税金ばっかり持って行って!てやああああああっ!」

 

「……くぅっ!」

 

「だからキミは一人で戦っていたのか?」

 

「そうだよ!ボクが村で一番強いから、ボクがみんなを守らなきゃいけないんだっ!盗賊からも、お前たち…役人からもっ!」

 

「くっ!こ、こやつ…なかなか…っ!」

 

おお、スゲーなあの春蘭が押されてるな。

 

「なぁ、桂花。華琳って、そんなヒドイ政治をやってたのか?」

 

「あのな一刀。華琳がそんなことするわけないって。他の理由があるんだろ?桂花。」

 

「このあたりの街は、曹操様の治める土地ではないの。我々は盗賊追跡の名目で遠征して来てはいるけど…その、政策に曹操様は口出しできないの。」

 

「そういう事か。」

 

「やっぱりな。」

 

「……」

 

「華琳様」

 

「二人ともそこまでよ!」

 

「え…っ?」

 

「剣を引きなさい!そこの娘も、春蘭も!」

 

「は…はいっ!」

 

その場に歩いてくる華琳の気迫にあてられて、女の子は軽々と振り回していた鉄球を、その場に取り落とした。

 

ズシン!!

 

地面が陥没したんだが、どんだけ重いんだよ。一刀なんか冷や汗流してるし。

 

「…春蘭。この子の名は?」

 

「え、あ…」

 

「き…許緒と言います。」

 

こういう威圧感のある相手を前にするのは初めてなんだろう。許緒と名乗った少女は、完全に華琳の空気にのまれている。

 

「…そう。」

 

そして、華琳のとった行動は、

 

「許緒ごめんなさい。」

 

「えっ?」

 

許緒に頭を下げることだった。

 

「曹操、さま…?」

 

「なんと……」

 

「華琳が頭を下げてる。」

 

「お、おい、華琳。」

 

「あ、あの…っ!」

 

「名乗るのが遅れたわね。私は曹操、山向こうの陳留の街で、刺史をしている者よ。」

 

「山向こうの…?あ…それじゃっ!?…ご、ごめんなさいっ!」

 

「な…?」

 

「山向こうの街の噂は聞いてます!向こうの刺史様はすごく立派な人で、悪いことしないし、税金も安くなったし、盗賊も少なくなって!そんな人に、ボク…ボク…!」

 

「かまわないわ。今の国が腐敗しているのは、刺史の私が一番よく知っているもの。官と聞いて許緒が憤るのも、当たり前の話だわ。」

 

「で、でも…。」

 

「だから許緒。あなたの勇気と力、この曹操に貸してくれないかしら?」

 

「え…?ボクの、力を…?」

 

「私はいずれ、この大陸の王となる。けれど、今の私の力はあまりに少なすぎるわ。だから…村の皆を守るために振るったあなたの力と勇気。この私に貸して欲しい。」

 

「曹操様が、王に?曹操様が王様になったら、ボクの村も守ってくれますか?盗賊もやっつけてくれますか?」

 

「約束するわ。この大陸の皆がそうして暮らせるようにするために、この大陸の王となるの。」

 

「この大陸の…みんなが…。」

 

「華琳、偵察の兵が戻った。本拠地が見つかった。」

 

「許緒、まず、あなたの村を脅かす盗賊団を根絶やしにするわ。まずそこだけでいいから、あなたの力を貸してくれるかしら?」

 

「はい、それなら、いくらでも。」

 

「ありがとう…。春蘭、秋蘭。許緒はひとまず、あなた達の下につける。分からないことは教えてあげなさい。」

 

「はっ。」

 

「了解です。」

 

「あの…夏候惇…さま。」

 

「さっきのことなら気にせんで良い。…それよりも、その力を華琳様のためにしっかり役立ててくれよ!」

 

「は…はいっ!」

 

「では総員、行軍を再開するわ!騎乗!」

 

「総員!騎乗!騎乗!」

 

俺は、号令をかけた秋蘭に近寄る。

 

「なぁ、秋蘭、これが俺の初陣でな、俺は人を殺したことがない。俺は人を殺せるのかな?」

 

「そうなのか。如月、奴らは賊はもはや人間ではない。初めは人間だったが、略奪、殺戮を繰り返していく内に、人間の皮をかぶった獣だ。だから、その獣どもから、村の人々を、そして一緒に戦う我らを、姉者以上のおぬしの武で守ってくれ。」

 

「ありがとう。相談して良かった。その言葉を聞いて、覚悟が決まった。みんなを守るため、この力を振るおう。」

 

「ああ、辛かったらあとで吐き出せばいい。」

 

「ああ、そんときは頼むよ。」

 

大切な仲間を守るため、俺は覚悟を決め、気合を入れた。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六話

今回から、如月と一刀が話すときだけ、

如月「     」

一刀「     」

という風にしようと思います。
どっちが話しているか分からないからです。


六話

 

盗賊団の砦は、山の影に隠れるようにひっそりと建てられていた。

 

一刀「こんな所にあったんだ…。」

 

如月「こんな分かりにくい所じゃ、うまく捜さなきゃ見つからないなぁ。」

 

華琳が許緒に確認している。この辺りに盗賊団は、砦の連中しかいないらしい。数は約三千。こちらの三倍ほどだ。

 

「もっとも連中は、集まっているだけの烏合の衆。統率もなく、訓練もされておりませんゆえ…我々の敵ではありません。」

 

「けれど、策はあるのでしょう?糧食の件、忘れてはいないわよ。」

 

「無論です。兵を損なわず、より戦闘時間を短縮させるための策、すでに私の胸の中に。」

 

「説明なさい。」

 

「まず曹操様は少数を率い、砦の正面に展開してください。その間に、夏候惇・夏侯淵の両名は、残りを率いて後方の崖に待機。本隊が銅鑼を鳴らし、盛大に攻撃の準備をにおわせれば、その誘いに乗った敵は必ずや外に出てくるでしょう。その後、曹操様は兵を引き、十分に砦から引き離した所で…。」

 

「私と姉者で、敵を背後から叩くわけか。」

 

「ええ。」

 

「ちょっと待て。それは、華琳様を囮にしろと、そういうわけか!」

 

「そうなるわね。」

 

「何か問題が?」

 

「大ありだ!華琳様にそんな危険なことをさせるわけにはいかん!」

 

「なら、あなたには他に何か有効な作戦が有るとでも言うの?」

 

「烏合の衆なら、正面から叩き潰せば良かろう。」

 

一刀「…いや、春蘭。それはさすがに…。」

 

如月「春蘭、さすがにそれはないぞ。」

 

「油断した所に伏兵が現れれば、相手は大きく混乱するわ。混乱した烏合の衆はより倒しやすくなる。曹操様の貴重な時間と、もっと貴重な兵の損失を最小限にするなら、一番の良策だと思うのだけれど?」

 

「な、なら、その誘いに乗らなければ?」

 

「…ふっ。」

 

「な、なんだ!その馬鹿にしたような…っ!」

 

「曹操様。相手は志も持たず、武を役立てることもせず、盗賊に身をやつすような単純な連中です。まちがいなく、夏候惇殿よりもたやすく挑発にのってくるものかと…。」

 

「はい、どうどう。春蘭。あなたの負けよ。」

 

「か、華琳様ぁ…。」

 

「…とは言え、春蘭の心配ももっともよ。次善の策はあるのでしょうね。」

 

「この近辺で拠点になりそうな城の見取り図は、すでに揃えてあります。あの城の見取り図も確認済みですので…万が一こちらの誘いに乗らなかった場合は、城の内から攻め落とします。」

 

「分かったわ。なら、この策で行きましょう。」

 

「華琳様!」

 

「これだけ勝てる要素のそろった戦に、囮一つも出来ないようでは…この先、覇道などとても歩めないでしょうよ。」

 

「その通りです。ただ賊を討伐した程度では、誰の記憶にも残りません。ですが、最小の損失で最高の戦果を挙げたとなれば、曹孟徳の名は天下に広まりましょう。」

 

「な、ならば…せめて、華琳様の護衛として、本隊に許緒を付けさせてもらう!それもダメか!」

 

「許緒は貴重な戦力よ。伏兵の戦力が下がるのは好ましくはないのだけれど…。」

 

如月「春蘭、俺も居るが、そんなに不安か?」

 

「そんなことはないが、万全を期してだな…。」

 

「何?あんた強いの?」

 

「あぁ、姉者に大ケガさせるほどだからな。」

 

「えっ!夏候惇が大ケガって、そんなに強いのこいつ。なら、囮部隊は曹操様と私と許緒と如月。伏兵は夏候惇と夏侯淵。これでよろしいでしょうか、曹操様。」

 

一刀「あの…俺は?」

 

「私の傍にいなさい。」

 

如月「そうだぞ一刀。華琳と桂花の近くで、戦場の空気と桂花の用兵術を学べ。」

 

「北郷!如月!貴様ら、華琳様になにかあったらただではおかんからな!」

 

如月「おう!盾になってでも守り切ってやるさ。」

 

「では作戦を開始する!各員持ち場につけ!」

 

「如月。」

 

如月「あ?どうした?華琳?」

 

「あなた大丈夫?人を殺したことがないって聞いたけど。」

 

如月「ああ、秋蘭に聞いたんだな。大丈夫かどうか分からないが、秋蘭に話を聞いてもらって覚悟が出来た。」

 

「そう、なら、あなたのその武、存分に振るいなさい。私たちを守ってちょうだい。」

 

如月「了解。」

 

その後、春蘭たちは持ち場へ布陣しに行った。

 

「あ、兄ちゃん。どうしたの?」

 

如月「ん?…ああ、許緒か。」

 

「季衣でいいよ。春蘭様と秋蘭様も、真名で呼んで良いって言ってくれたから。」

 

如月「そうなのか?じゃあ、俺のことも如月って呼んでくれ。」

 

「分かった、如月兄ちゃん。」

 

如月「一緒に華琳の護衛、頑張ろうな。」

 

「うん。たいやく、なんだってさ。」

 

如月「おう、ものすごい大役だぞ。何せ、華琳を守る仕事だからな。」

 

「そっか…。たいやく、かぁ…。うぅ、なんだか緊張してきちゃった…。」

 

如月「だよなぁ。」

 

「あれ?如月兄ちゃんも緊張してるの?」

 

如月「そりゃぁな…俺、今日が初陣なんだよ。」

 

「へぇー。そうなんだぁ。でさ、さっきの春蘭様に大ケガさせたって本当?」

 

如月「ああ、本当だぞ。」

 

「そうなんだ。如月兄ちゃん、強そうに見えなかったから。」

 

如月「人を見かけで判断できないってことを学んだな。これからは気を付けるように。」

 

「うん!でも、如月兄ちゃんも曹操様も、みーんなボクが守ってあげるよ!」

 

如月「季衣が?」

 

「うん!大陸の王って良く分かんないけど…曹操様がボク達の街も、陳留みたいな平和な街にしてくれるって事なんだったら、それってきっと良いことなんだよね?」

 

如月「ああ…そうだな。俺も季衣のことも守ってやるからな。」

 

「あ…ひゃっ!」

 

如月「…ああ、ごめん。」

 

季衣の声に思わず伸ばしていた手を引っ込める。いきなり頭を撫でようとしたら、そりゃびっくりするわな。

 

「ん?平気、だよ。ちょっとびっくりしただけ。」

 

如月「そっか。季衣が良いこと言ったから、なんか勝手に身体が動いてね…。」

 

「へへ。如月兄ちゃんの手、なんかおっきいねぇ…。」

 

如月「ん、そうか?」

 

「こらー、そこの二人ー!遊んでないで早く来なさいよ。作戦が始められないでしょう!」

 

如月「おう、すぐ行く!…んじゃ行くぞ、季衣。」

 

「うんっ!」

 

ジャーン、ジャーン

 

戦いの野に、激しい銅鑼の音が響き渡る。

 

「「うぉーーーー!」」

 

「……」

 

ジャーン、ジャーン

 

響き渡る…。

 

「「うぉーーーーー!」」

 

如月・一刀「「……」」

 

ジャーン、ジャーン

 

響き…。

 

「「うぉーーーー!」」

 

「……」

 

…響き渡る銅鑼の音は、こちらの軍のもの。でも響き渡る咆哮は、城門を開けて飛び出してきた盗賊達のもの。

 

「…桂花。」

 

「はい。」

 

「これも作戦の内かしら?

 

「いえ…これはさすがに想定外でした…。」

 

「連中、今の銅鑼を出撃の合図と勘違いしているのかしら?」

 

「はぁ。どうやらそのようで…。」

 

「…そう。」

 

一刀「何?華琳、挑戦の言葉とか、考えてたの?」

 

「…一応、こういう時の礼儀ですからね。まぁ大した内容ではないから、次の賊討伐の時にでも使うことにするわ。」

 

如月「舌戦聞いてみたかったな、一刀。まぁこれから聞く機会なんかいくらでもありそうだが。」

 

「曹操様!兄ちゃん達!敵の軍勢、突っ込んできたよっ!」

 

如月「これ…全軍突っ込んできてないか?」

 

「ふむ…まぁいいわ。多少のズレはあったけど、こちらは予定通りにするまで。総員、敵の攻撃は適当にいなして、後退するわよ!」

 

 

「報告!曹操様の本隊、後退して来ました!」

 

「やけに早いな…ま、まさか華琳様の御身に何か…!?」

 

「心配しすぎだ、姉者。隊列は崩れてないし、相手が血気にはやったか、作戦が予想以上にうまくいったか…そういう所だろう。」

 

「そ、そうか…ならば総員、突撃準備!」

 

「ほら姉者。あそこに華琳様は健在だ。季衣も北郷も如月もちゃんと無事のようだぞ。」

 

「おお…。良かった…。これが、敵の盗賊団とやらか。」

 

「隊列も何もあったものじゃないな。」

 

「ただの暴徒の群れではないか。この程度の連中、作戦など必要なかったな、やはり。」

 

「そうでもないさ。作戦があるからこそ、我々はより安全に戦うことが出来るのだからな。」

 

「ふむ…そろそろ頃合いかな。」

 

「まだだ。横殴りでは混乱の度合いが薄くなる。」

 

「ま、まだか…?」

 

「まだだ。」

 

「もういいだろう!もう!」

 

「まだだと言っているのに…少し落ち着け、姉者。」

 

「だが、あれだけ無防備にされるとだな、思い切り殴りつけたくなる衝動が…。」

 

「気持ちは分かるがな…。」

 

「敵の殿だぞ!もういいな!」

 

「うむ、遠慮なくいってくれ。」

 

「たのむぞ秋蘭。」

 

「応。夏侯淵隊、打ち方用意!」

 

「よぅし!総員攻撃用意!相手の混乱に呑み込まれるな!平時の訓練を思い出せ!混乱は相手に与えるだけにせよ。」

 

「敵中央に向け、一斉射撃!撃てぃっ!」

 

「統率などない暴徒の群れなど、触れるはなから叩き潰せ!総員、突撃ぃぃぃぃっ!」

 

 

「後方の崖から、夏候惇様の旗と、矢の雨を確認!奇襲、成功です!」

 

「さすが秋蘭。上手くやってくれたわね。」

 

「春蘭様は?」

 

「敵の横っ腹あたりで突撃したくてたまらなくなっていた所を、夏侯淵に抑えられていたんじゃないの?」

 

一刀「…俺もそう思う。」

 

「別にアンタと意見があっても、嬉しくとも何ともないんだけど。」

 

一刀「いやまあ、いいけどさ…。」

 

「さて、おしゃべりはそこまでになさい。この隙をついて、一気にたたみかけるわよ。」

 

「はっ!」

 

「季衣、如月。あなたたちの武勇、期待させてもらうわね。」

 

「分っかりましたーっ♪」

 

如月「まかしとけ。」

そう言って、剣を抜く。

 

「総員反転!数を頼りの盗人どもに、本物の戦が何たるか、骨の髄まで、叩き込んでやりなさい!総員突撃っ!」

 

「おりゃっ!」

 

「ギャー!」

 

「せいっ!」

 

「うぎゃー!」

 

逃げ出すやつが多くなってきたなと思っていたら、

 

「逃げる者は逃げ道を無理にふさぐな!後方から追撃をかける。放っておけ!正面から下手に受け止めて、かみつかれるよりマシだ。」

 

と声が聞こえてきた。あらかた終わったか。

 

「華琳様ご無事でしたか。」

 

「ご苦労様、秋蘭。見事な働きだったわ。」

 

一刀「あれ?春蘭は?」

 

「どうせ追撃したいだろうから、季衣に夏候惇と追撃に行くよう、指示しておいたわ。」

 

一刀「みごとなもんだな。」

 

「桂花も見事な作戦だったわ。負傷者もほとんどいないようだし、上出来よ。」

 

「あ…ありがとうございます。」

 

「それと一刀。よく逃げなかったわね。感心したわ。」

 

一刀「如月が命がけで戦ってるのに逃げるわけにはいかないだろ。」

 

「そうね。如月よくやったわ。初陣にもかかわらず、良く戦ったわ。」

 

「ありがとう。そんなにほめ…るな…よ。」

 

と目の前が真っ暗になって倒れてしまった。

 

「ち、ちょっと如月っ!?」

 

一刀「おい、如月!大丈夫か!」

 

「やれやれ…緊張の糸が切れてしまったようですな。」

 

 

如月「…あれ?」

 

「やっと気付いたか。」

 

目が覚めたら、ゆらゆら揺れる馬の上。かけられたのは秋蘭の穏やかな声だ。

 

如月「…城は?」

 

「とっくに陥したぞ。その間、貴様はずっと眠りこけていたがな。」

 

如月「どれくらい寝てた?俺?」

 

「聞きたい?」

 

「いや、聞きたくない。あとこの縄ほどいてくれない?」

 

今、俺は馬の上に、縄でグルグル巻きにされた状態で乗っけられていた。

 

「どうせ馬に乗れる体力なんか戻ってないのでしょう?ついでだから、そのまま帰ったら?」

 

如月「そうだな、そうしとく。そういえば、季衣は、華琳の所に来るのか?」

 

「うん、それにボクの村も、曹操様が治めてくれることになったんだ。だから今度はボクが、曹操様を守るんだよ。」

 

話を聞くと、この辺りの州牧が、盗賊に恐れをなして逃げたため、華琳が州牧の任も引き継ぎ、この地を治めることになったらしい。それにともない季衣は、今回の武功もあって華琳の親衛隊を任されることになったのだ。

 

如月「そっか。よかったな、季衣。」

 

「これからもよろしくね。如月兄ちゃん。」

 

如月「おう!」

 

「さて、後は、桂花のことだけれど…。」

 

「…はい。」

 

食糧の件か。

 

「桂花。最初にした約束、覚えているわよね?」

 

「…はい。」

 

「城を目の前にして言うのも何だけれど、私…とてもお腹が空いてるの。分かる?」

 

「…はい。」

 

如月「ん?糧食足りなかったのか?」

 

「半分は如月の予想通りだ。」

 

如月「半分は?」

 

一刀「季衣がな、人の十倍以上食べたからなんだ。まあ、あれだけのパワーの源になるって考えれば、妥当な計算なんだろうが。」

 

「え?えっと…ボク、何か悪いこと、した?」

 

「いや、季衣は別に悪くない。気にするな。」

 

「どんな約束でも、反故にすることは私の信用に関わるわ。少なくとも、無かったことにする事だけは出来ないわね。」

 

「華琳様…。」

 

「…分かりました。最後の糧食の管理が出来なかったのは、私の不始末。首を刎ねるなり、思うままにしてくださいませ。」

 

「ふむ…。」

 

「ですが、せめて…最後は、この夏候惇ではなく、曹操様の手で…!」

 

「とはいえ、今回の遠征の功績を無視できないのもまた事実。…いいわ、死刑を減刑して、お仕置きだけで許してあげる。」

 

「曹操様…」

 

「それから、季衣とともに、私を華琳と呼ぶことを許しましょう。より一層奮起して仕えるように。」

 

「あ…ありがとうございます!華琳様っ!」

 

「ふふっ。なら、桂花は城に戻ったら、私の部屋に来なさい。たっぷり…可愛がってあげる。」

 

「…むぅ。」

 

「…いいなぁ。」

 

一刀「え、な、なに…?」

 

「にゃ…?」

 

如月「季衣、一刀、気にするな。」

 

「それより兄ちゃん達。ボクお腹すいたよー。何か食べに行こうよぅ。」

 

如月「そうだな。片付けが終わったら、皆で何か食べに行くか。」

 

「やったぁ!それじゃ、早く帰りましょうっ!ほら、春蘭様も早く早くー!」

 

「分かったというに。ほら、秋蘭も行くぞ。」

 

「うむ。」

 

こうして、俺達の初陣が終わった。

 




こういう風に書いてみましたが、もっと他に見やすい書き方等があれば、教えてくださると幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七話

盗賊討伐を終えた数日後。俺と一刀は華琳に呼び出された。

 

如月「華琳、呼ばれたから来たけど、何かあったか?」

 

呼ばれた先には、華琳、春蘭、秋蘭がいた。

 

「ええ、如月、一刀、これを。」

 

と華琳に一枚の書類を渡され、俺は、さらっと流し読みした後に、一刀へ渡す。

 

一刀「えっと……街の治安維持……向上……。草案ってことは、まだ完成していないって事だよな?」

 

「あら、ちゃんと勉強の成果は出ているようね。偉いわ。」

 

如月「そりゃ、教える先生が優秀だからな。」

 

一刀「たしかに。でもスパルタすぎるだろ。」

 

如月「うるせい。そうでもしなきゃ、出来ないだろ一刀は。お前は自分で思っているより、頭いいぞ。自信持て。」

 

「おしゃべりはそこまでにして頂戴。一刀、勉強の成果を見せるついでに、その草案を本案に仕上げてごらんなさい。如月を補佐につけるわ。」

 

一刀「…分かった。やってみる。」

 

如月「了解。」

 

「よろしい。なら、期限は三日とするわ。」

 

如月・一刀「「三日!?」」

 

「華琳様!」

 

「華琳様…。」

 

「どう?不満?」

 

一刀「…何とか、やってみるよ。」

 

如月「一刀、時間がない。すぐにやるぞ。」

 

「如月の言う通り。グズグズしている暇はないはずよ。二人とも。」

 

次の日、

 

「華琳様…。」

 

「なぁに?」

 

「昨日の北郷の件ですが…少々、無茶が過ぎませんか?」

 

「あら。私に意見するつもり?」

 

「そんなつもりはありませんが…。しかし、あれを三日で仕上げるのは…いくら如月が補佐についているとはいえ、荷が重いかと。」

 

「でしょうね。で、その一刀と如月はどうしているの?」

 

「侍女達に聞いたところ、ずっと部屋にこもったままのようです。」

 

「なるほど……ね。」

 

「おや、噂をすれば。」

 

一刀「華琳!」

 

如月「やっと見つけた。」

 

「どうしたの?一刀、如月。もう本案が出来たのかしら?」

 

一刀「それは…。」

 

「む…?」

 

「あら。ずいぶん早いのね。見せてくれるかしら?」

 

「これなんだが…。」

 

「……」

 

「……」

 

「一刀。」

 

一刀「はい。」

 

「ここは……実際はどうするつもり?」

 

一刀「やってみないと分からない。」

 

「なら、こちらは?」

 

一刀「そこも、やってみないと……。」

 

「…秋蘭。」

 

「は。」

 

「この無能者達に、処分を。方法は任せるわ。」

 

「華琳様…。」

 

如月「華琳、ちょっとまて。」

 

「言い訳を聞く気はないわ。こんなものを本案として提出されては、仕事を任せた私の責任が問われてしまうもの。」

 

如月「それを本案と言ったつもりはないぞ。」

 

「…何ですって?」

 

一刀「あれからずっと二人で考えてみたんだけど…俺らの頭だけじゃ、これが限界だった。」

 

如月「この仕事をちゃんと仕上げるために、お願いがあるんだ。それを頼みに来た。」

 

「言ってごらんなさい。」

 

一刀「俺達を今の警備部隊に入らせて欲しい。三日じゃ、期限を過ぎるか。一日二日でも良い。現場で少しでも経験を積めば、もっと良い案や、さっき聞かれた事も答えられるようになると思うんだ。」

 

「秋蘭。二人の意見、どう思う?」

 

「悪い案ではないと思います。……が、たった一日現場に立った所で、何かが見えるとも思いませぬ。そうですね。せめて十日…いや、基礎から始めて、ひと月は欲しいかと。」

 

一刀「秋蘭?」

 

「……秋蘭がそこまで言うのなら仕方ないわね。なら、十日にしましょう。その間に現場の問題点をしっかり洗いだして、適切な解決案と向上計画を作り上げること。いいわね。」

 

一刀「…ああ!ありがとう、華琳!秋蘭!」

 

如月「ありがとう。」

 

そして俺達は、その日から警備部隊の一員となった。

 

警備隊に入って三日たち、

 

「それで兄ちゃん達が街の警備をする事になったんだ?なるほどねぇ…。」

 

一刀「ああ。やっぱり現場のことが分からないと、改善のしようもないからな。」

 

「如月兄ちゃんは?」

 

一刀「五つ向こうの警邏中。」

 

「それにしても兄ちゃん、何かあった時にはどうするつもりなの?武器だって使えないでしょ。」

 

一刀「いや、如月に鍛えてもらってるから、ある程度は使えるぞ。如月曰く、一般兵より少し強いくらいだって。」

 

「そうなんだ。じゃあ、今度手合せしてよ。」

 

「新入り!三つ向こうでケンカだ!子供と遊んでないでさっさと来いっ!」

 

一刀「あ、はい!」

 

「ぶー。ボク、子供じゃないよぉ……。」

 

「新入りーっ!」

 

「じゃあ、また今度な。」

 

「うん。分かったよー。兄ちゃんもがんばってねー。如月兄ちゃんにも言っといてねー。」

 

一刀「それにしても、三つ向こうの通りって…随分遠いな。俺達が着く頃には、ケンカなんか終わってるんじゃないか?」

 

それからさらに三日が過ぎて。

 

「よお。秋蘭から聞いて、見に来てやったぞ。」

 

如月「春蘭か。ま、見ての通りだよ。びっくりするほど人手不足でね…。なぁ、春蘭。」

 

「何だ?」

 

如月「警備に、本隊の兵を回せないかな?」

 

「…ふむ。そこまで人手不足か。」

 

如月「うん…。なかなか、なり手が少ないみたいでね。」

 

「とはいえ、それは厳しいと思うぞ。平時の時は問題ないだろうが、調練や戦が起きた時、その兵はすべて本隊に戻さねばならん。遠征ともなれば、その間はずっと本来の人数で警備をしてもらうことになるしな。」

 

如月「…だよなぁ。」

 

「まぁ、せいぜい華琳様の期待にお応えできるよう、良い知恵を絞りだすといいさ。」

 

如月「ああ、そうするよ。」

 

 

「十日目…か。結局、来なかったわね。二人とも。」

 

「そうですね…。あれらを任せた隊長からは、それなりに働いていると聞いていたのですが。」

 

「とはいえ、二人の人となりは知れたから、明日にでも相応な罰を与えることにしましょう。」

 

「はっ。」

 

コンコン

 

如月「夜分遅くにすまん。入っていいか?」

 

「如月?一刀も居るのでしょう。入ってきなさい。」

 

如月・一刀「「失礼しまーす。」」

 

「で、何の用かしら?」

 

一刀「計画書が出来たから見てもらいに来た。……まだ十日目だよな?」

 

「そういえば、刻限は決めていなかったわね。」

 

「は。私も聞いておりませんでした。」

 

「…なら仕方ないわ。見るとしましょう。」

 

一刀「頼む。」

 

そして華琳は秋蘭を横に置いたまま、書類に目を通し始めた。

 

「一刀。ここ。一町ごとに詰め所を作って、、兵を常駐させるとあるけど…。これはどういう計算なのかしら?」

 

一刀「今は四町から五町の間に、詰め所があるだけだろ?それだといざ騒ぎが起こっても、すぐに駆けつけられないんだ。」

 

「でもそれだと、人手も経費も馬鹿にならないわ。」

 

一刀「平時は半数を本隊の兵から回してもらいたい。残りはこちらで募集をかける。」

 

「…義勇兵ということ?それなら…」

 

一刀「いや、他の所から流れてきた人達の職業斡旋という形で。ちゃんとお給料は払う。兵役や雑役を免除して待遇を良くすれば、今より人は集まるだろうし…本隊に所属したい人がいれば、そちらへの推薦状を出してもいい。」

 

「なるほど…兵役を課さない代わりに、本隊の予備隊としての性格を与えるわけね。」

 

一刀「うん。基本は同じ戦闘部隊だしね。人がそろえば、本格的に本隊の訓練部隊を兼ねてもいいと思う。」

 

「で、経費の方はどう考えているのかしら?これだけの規模だと、活動費も今と桁が違ってくるけど。」

 

一刀「治安が良くなれば、商人だって来てくれる。商人が来てくれるのは、平和な街だという証拠。平和な街には、人が集まる。人が集まればその分、税も増える。税が増えた分、警備隊の経費も増える。増えた経費で人を募集して、雇う。警備隊の人数が増えれば治安が前より良くなる。治安が前より良くなれば商人がまた来てくれるの繰り返しかな。」

 

「ふむ。ならばこの計画を認めましょう。予想よりはるかに良い案よ。それなりに詳細も詰めてある。この仕事はあなた達に任せるわ。良くやったわ一刀、如月。」

 

こうして、治安維持向上の草案は本案となった。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

八話

一刀「如月。来たぞー。」

 

如月「おう、一刀。いらっしゃい。」

 

一刀「どうしたんだ?食堂に呼び出して。」

 

如月「ちょっと味見をしてほしくて。ほい、おまち。」

 

一刀「何!これはシチューじゃないか。こんなものもこっちで出来るのか。」

 

如月「原材料はあるからな。試しに作ってみた。食べな。」

 

一刀「いただきます。うめー。」

 

如月「良かった。口に合って。」

 

一刀「でもこれ、作るの大変じゃなかったか?」

 

如月「いや、特には。しいて言えば牛乳の調達だな。牛の乳を搾るのが大変だった。ホワイトソースから作ったからな。バターが必要だったんだ。生クリームは加熱殺菌した後に、冷却すると上の方に分離して出来るからな。俺、ヒャド使えるじゃん。だから冷蔵庫も作った。」

 

一刀「は?冷蔵庫?」

 

如月「まあ、冷やすだけだがな。ほらあれだ、上に氷を入れて冷やすやつ。」

 

一刀「マジかぁ。俺にも作ってくれないか?」

 

如月「おう、いいぜ。一日一回溶けた水を捨てなきゃいけないけど。氷が無くなったら、俺に言え。」

 

一刀「サンキュー。楽しみだな。」

 

「あれー?兄ちゃん達何食べてるの?」

 

如月「季衣か。これ作ってみたんだが、食べてみるか。」

 

「え、いいの?これ、なんて料理?」

 

一刀「シチューっていうのさ。俺達の国の料理だな。」

 

「へぇ、天の国の料理なんだね。いただきまーす。」

 

如月「どうだ?」

 

「おいしー!」

 

如月「そりゃよかった。おかわりもあるぞ。」

 

「本当!おかわり!」

 

如月「はいよ。」

 

「ふぅ、おいしかった。ねぇ、如月兄ちゃん。これ、明日も食べれる?」

 

如月「明日ね。よしいいぞ作ってやる。」

 

「本当!じゃあ明日楽しみにしてるからね。」

 

如月「おう、時間は今日と同じくらいな。」

 

「わかったよ。ごちそうさまでした。また明日ねー。」

 

次の日の食堂

 

如月「あれ?みんなきたの?」

 

「ええ、季衣から天の国の料理が食べれると聞いてね。」

 

「如月兄ちゃんダメだった?」

 

如月「全然。」

 

「華琳様に変なもの食べさせたら、承知しないから。」

 

如月「桂花、さすがにそんなことはしないから。」

 

「ふむ、どんなものを食べさせてくれるか楽しみだ。」

 

「シチューとかいったか?」

 

如月「おう、うまいぞ。ただこれだけ集まるとは思わなかったから、一人一杯くらいか。」

 

「えー、せっかくお腹すかせてきたのに。」

 

如月「しょうがない。別のものも作るか。じゃあ卵をわって……」

 

卵を十個割って、割りほぐしておく。次に炒飯を作り別の皿に上げておく。卵をお玉一杯分すくい、鍋に入れ、半熟にし、炒飯を入れ包むと出来上がり。

 

如月「ほい。オムライス完成だ。」

 

一人前を四人分、三倍の量の大きいのを二人分作り、卓の上に置く。

 

「へぇ、炒飯を卵で包んだのね。」

 

如月「おう、どんどん食え。」

 

「「「「「「いただきます。」」」」」」

 

「おいしー!」

 

「うむ、うまいな。」

 

「ああ。」

 

「なかなかやるじゃない。」

 

「あら、結構おいしいじゃない。」

 

一刀「シチューに続きオムライスまで。如月は何でも作れるな。」

 

如月「材料があればある程度はな。」

 

「如月が料理するなんて。ねぇ如月、私に天の料理を教えてくれないかしら。」

 

如月「いいよ。時間がある時なら。」

 

「ああ、おいしかった♪」

 

「うむ、うまかったな。このシチューというものをもっと食べたかったが。」

 

「姉者、そういうな。こんな人数になるなんて如月も思っていなかったんだからな。」

 

「そうね。あんた、次はもっと用意しなさいよ。」

 

如月「分かった。次は多めに作るよ。あ、片付けはやっておくから、みんな仕事に行きな。」

 

「そう。ならその言葉に甘えましょう。おいしかったわよ如月。」

 

「おいしかったよ。如月兄ちゃん。」

 

「うむ、うまかったぞ如月。」

 

「姉者の言う通りだ如月。ごちそうさま。」

 

「ふん。まあまあおいしかったわ。ごちそうさま。」

 

一刀「如月、片付け手伝うよ。」

 

如月「サンキュー、一刀。」

 

大人数になってしまったが、みんなに喜んでもらってよかったな。次は何作ろう。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

九話

今日は、華琳、春蘭、秋蘭、一刀、俺の五人で街の視察に来ている。華琳が州牧に昇進してから、引き継ぎや手続きをすませて、ひと段落ついたのがつい先日。

落ち着いたのを機に、一度みんなでよりにぎやかになった街を見て回ろうって事になった。季衣がいないのは、山賊のアジトが分かったという報告があり、討伐に行っている。なので、みんなで季衣への土産を買おうと言う事になった。ちなみに桂花はお留守番をしている。

 

「はい!それでは、次の一曲、聞いていただきましょう。」

 

「姉さん、伴奏お願いね!」

 

「はーい。」

 

「ほう。旅芸人も来ているのか……。」

 

一刀「珍しいの?前から結構いた気がするけど。」

 

「芸人自体はさして珍しくはないが、あれは南方の歌だろう。南方からの旅人は今までこちらまでは来なかったからな。」

 

如月「街道が安全でなければ来れないか。俺らの働きが評価されたと。」

 

そんなに人気があるグループではなさそうだな。ヘタではないが、人だかりが出来ているわけでもないし、おひねりもほとんど入ってないな。

 

「まぁ、腕としては並という所ね。それより、私たちは旅芸人の演奏を聴きに来たワケではないのよ?狭い街ではないし、時間もあまりないわ。手分けして見ていきましょうか。」

 

「では、私は華琳様と…。」

 

「一刀と如月は私についてきなさい。」

 

「えー…。」

 

「あきらめろ、姉者。我々はじぶんの身くらい守れるだろう?」

 

「…うぅ。そういうことか…。如月、華琳様の護衛頼んだぞ。」

 

如月「まかせとけ。」

 

こうして、秋蘭は右手側、春蘭は左手側、俺らは中央を見て回ることになった。

中央部は、真ん中を走る大通りと、そこに並ぶ市場がメインだ。

しかし、今は、小さな店や住宅がひしめき合う裏通り見回っている。

 

如月「裏通りで良いのか?」

 

「えぇ、大通りは後にするわ。大きな所の意見は、黙っていても集まるのだから。」

 

如月「なるほどね。」

 

一刀「食べ物屋ばかりだな、この辺は。」

 

「えぇ、他には?」

 

一刀「他?んーと、料理屋も結構多い。」

 

「でしょうね。食材がすぐに手に入るのだから。で?」

 

一刀「……で?」

 

「他に気づくことは?なんでもいいわ。」

 

一刀「包丁……か。鍛冶屋が近くにあれば儲かりそうだな。」

 

「鍛冶屋は三つ向こうの通りに行かないと無いわ。向こうの通りには料理屋が無いの。」

 

如月「華琳、何でそんなに詳しいんだ?」

 

「そのくらいは街の地図を見れば分かるもの。」

 

一刀「じゃあ、わざわざ視察しなくても……。」

 

「人の流れは地図や報告書だけでは実感できないわ。客層や雰囲気もね。たまにはこうやって視察して実際に確かめておかないと、住民たちの意にそぐわない指示を出してしまいかねないわ。」

 

一刀「…そんなもんか。」

 

「そんなものよ。それに……ああいう光景は紙の地図だけではなかなか確かめられないもの。」

 

「はい、寄ってらっしゃい見てらっしゃーい!」

 

露天商らしき女の子が、猫の額ほどのスペースで、竹カゴをずらりと並べており、その横に木製の物体が置いてあった。

 

如月「なあなあ、あれって何の装置?」

 

「おお、お目が高い!こいつはウチが開発した、全自動カゴ編み装置や!」

 

一刀「全自動……。」

 

「カゴ編み装置…?」

 

「せや!この絡繰の底にこう、竹を細ぅ切った材料をぐるーっと一周突っ込んでやな……そこの兄さん、こっちの取っ手を持って!」

 

如月「お、おう…?」

 

「でな。こうやって、ぐるぐるーっと。」

 

如月「ぐるぐるー。」

 

「ほら、こうやって、竹カゴのまわりが簡単に編めるんよ!」

 

一刀「おお…スゲー!」

 

「……底と枠の部分はどうするの?」

 

「あ、そこは手動です。」

 

如月「全然全自動じゃないな…。」

 

「う。兄さん、ツッコミ厳しいなぁ…そこは雰囲気重視、っちゅうことでひとつ。」

 

如月「でもまぁ、ハンドルを回すだけでカゴが編めるのはすごいな。」

 

「あ、ちょ!兄さん、危ない。」

 

如月「え…?」

 

ドゴーーーーン!!

 

如月「えっ…え?爆発した?」

 

手に握っているのは、ハンドルだったもの。あとは周囲に吹き飛んで、バラバラになった木製の歯車や竹カゴの材料だったものが辺りに散らばっている。

 

「まだそれ、試作品なんよ。普通に作ると、竹のしなりに強度が追い付かんでなぁ…こうやって、爆発してしまうんよ。」

 

如月「なんで、そんな物騒なもん、持ってきてんだよ!」

 

「置いとったらこう、目立つかなぁ…と思てな。」

 

「ならここに並んでいるカゴは、この装置で作ったものではないの?」

 

「ああ、村のみんなの手作りや。」

 

「「「……」」」

 

 

「なぁ、兄さん。せっかくの絡繰を壊したんやから、一個くらい買うて行ってぇな。」

 

「…まぁ、一つくらいなら、買ってあげなさい。如月。」

 

如月「はぁ、分かったよ。」

 

視察が終わり、集合場所で待っていると、ほどなくして他の二人と合流したが、二人ともカゴを持っていた。秋蘭は、今朝、カゴの底が抜けていたため、春蘭は竹カゴ一杯に服を買っていた。

 

「帰ったら今回の視察の件、報告書にまとめて報告するように。……一刀と如月もね。」

 

如月・一刀「「……了解。」」

 

「そこの、若いの…」

 

「何だ?貴様。」

 

「占い師か…」

 

「華琳様は占いなどお信じにならん。慎め!」

 

「…春蘭、秋蘭。控えなさい。」

 

「強い相が見えるの…。希にすら見たことのない、強い強い相じゃ。」

 

「一体何が見えると?言ってごらんなさい。」

 

「力のある相じゃ。兵を従え、知を尊び…お主が持つは、この国の器を満たし、繁らせ栄えさせることの出来る強い相…。この国にとって、稀代の名臣となる相じゃ……」

 

「ほほぅ、良く分かっているではないか。」

 

「…国にそれだけの器があれば…じゃがの。……お主の力、今の弱った国の器には収まりきらぬ。その野心、留まることを知らず…あふれた野心は、国を犯し、野を侵し…いずれ、この国の歴史に名を残すほどの、たぐいまれなる奸雄となるであろう。」

 

「貴様!華琳様を愚弄する気か……っ!」

 

「秋蘭!」

 

「…し、しかし華琳様!」

 

「そう。乱世においては、奸雄となると…?」

 

「左様…それも、今までの歴史にないほどのな。」

 

「…ふふっ、面白い。気に入ったわ。…秋蘭、この占い師に謝礼を。」

 

「は…?」

 

「聞こえなかった?礼を。」

 

「し、しかし華琳様…」

 

「如月。この占い師に、いくばくかの礼を。」

 

如月「ん、了解。」

 

「乱世の奸雄大いに結構。その程度の覚悟も無いようでは、この乱れた世に、覇を唱えることなど出来はしない。そういう事でしょう?」

 

「それから、そこのお主。」

 

如月「俺か?」

 

「それから、そこのお主。使い方を間違うと身の破滅。くれぐれも、用心なされよ。」

 

如月「大丈夫だ。この力、自分の野心には使わねーよ。まぁ、野心なんか持ってねーけどな。」

 

こうして、城に帰ることになった。季衣もお土産に喜んでくれたみたいだった。

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十話

「……というわけです。」

 

「そう……。やはり、黄色い布が。」

 

その日の朝議も、暴徒たちの鎮圧から戻ってきた春蘭の報告で始まった。

 

「こちらの暴徒たちも同じ布を持っておりました。」

 

ここ最近増えてきた、謎の暴徒たち。各々黄色い布を身に着けた彼らは、何の予兆もなく現れては暴れ、春蘭たちにあっさりと鎮圧されていく。

 

「桂花。そちらはどうだった?」

 

「は。面識のある諸侯に連絡を取ってみましたが…どこも陳留と同じく、黄色い布を身に着けた暴徒の対応に手を焼いているようです。」

 

「具体的には?」

 

「ここと…ここ、それからこちらも。」

 

広げた地図の上に磨かれた丸石を置いていく。文字を書き込んだり、ピンを使わないのは、この世界では地図がものすごい貴重だからだ。

 

「それと、一団の首魁の名前は張角というらしいのですが……正体はまったくの不明だそうです。」

 

「正体不明?」

 

「捕えた賊を尋問しても、誰一人として話さなかったとか。」

 

一刀「黄巾党…」

 

「知っているのか北郷。」

 

一刀「名前だけはな。一応…。」

 

「なら、それ以上は言わなくていいわ。」

 

一刀「……ん?」

 

「天の国の技術や考えは確かに興味深いし、それを説明させるために貴方達を飼っているわけだけど…。歴史そのものは、こちらの世界で完全に再現されているわけではないのでしょう?」

 

一刀「んー、多分な。」

 

俺や一刀の知っている歴史とは、事件の見かけは同じでも、根っこや詳細が変わっている可能性は高いだろう。

 

「なら、明確な根拠のない情報は判断を鈍らせるわ。そんなもの、占い師の預言と変わらない。国の問題を占いで解決させる気はないわよ。」

 

一刀「そういうことか、分かった。」

 

「まぁ、敵を呼ぶにも名前は必要だわ。黄巾党という名前はもらっておきましょう。それで皆、他に新しい情報はないの?」

 

「はい。これ以上は何も……」

 

「こちらもありません。」

 

「ならば、まずは情報収集ね。その張角という輩の正体も確かめないと…。」

 

その時、一人の兵士が慌てて入ってきて、南西の村で黄巾党が暴れているとの報告が入った。

 

「休む暇もないわね。…さて、情報源がさっそく現れてくれたわけだけど。今度は誰が行ってくれるかしら?」

 

「はいっ!ボクが行きます!」

 

「…季衣。お前は最近、働きすぎだぞ。ここしばらくろくに休んでおらんだろ。華琳様。この件、わたしが。」

 

「どうしてですか、春蘭様っ!ボク、全然疲れてなんかないのに…。」

 

「そうね。今回の出撃、季衣は外しましょう。確かに最近季衣の出撃回数は多すぎるわ。」

 

「華琳様っ!」

 

如月「季衣。その心は立派だが、無茶をして体を壊したら、元も子もないぞ。」

 

「無茶なんかじゃないよ。如月兄ちゃん。」

 

「いいえ、無茶よ。」

 

「華琳様。…でも、みんな困ってるのに…。」

 

「そうね。その一つの無茶で、季衣の目の前にいる百の民は救えるかもしれない。けれど、その先救えるはずの何万という民を見殺しにすることにつながる事もある。…分かるかしら?」

 

「だったらその百の民は見殺しにするんですか!」

 

「するわけ無いでしょう!」

 

「……っ!」

 

「季衣。お前が休んでいる時は、私が代わりにその百の民を救ってやる。だから、今は休め。」

 

「今日の百人も助けるし、明日の万人も助けて見せるわ。そのために必要と判断すれば、無理でも何でも遠慮なく使ってあげる。…けれど今はまだ、その時ではないの。」

 

「……。」

 

けれど季衣は下を向いたまま。季衣の気持ちも分かるけど、春蘭と華琳の気持ちももっと分かるからな。

 

「では秋蘭。今回の件、あなたが行ってちょうだい。」

 

「なにっ!この流れだと、どう考えてもわたしだろう!どうして秋蘭が出てくる!」

 

「今回の出動は、戦闘よりも情報収集が大切なのよ。出来る?あなたに。」

 

「ぐ……。」

 

「決まりね。秋蘭。くれぐれも情報収集は念入りにしなさい。」

 

「は。ではすぐに兵を集め、出立いたします。」

 

「秋蘭様。あの…ボクの分まで、宜しくお願いしますっ!」

 

「うむ。お主の思い、しかと受け取った。任せておけ。」

 

「……。」

 

一刀と一緒に秋蘭たちの出発を見送ろうと城壁の上へ上がったら、すでに先客がいた。

 

一刀「ここ、いいか?」

 

「あ、兄ちゃん達…」

 

如月「いつも元気な季衣が落ち込んでるなんて、らしくないぞ。」

 

「ボクだって、落ち込むときくらいあるよぅ…。」

 

一刀「さっきのことか?」

 

「うん…。ボク、全然疲れてないのに…。そりゃ、ご飯はいつもの倍は食べてるけどさ。」

 

如月「倍食べてるのか。疲れてはなさそうだが。華琳たちが言うように、今が無理をするときじゃないのは、ホントだ。」

 

「如月兄ちゃんまでそんなこと言うー!」

 

如月「みんな季衣のことが心配なんだよ。俺も一刀もな。今は、黄巾党と張角の正体を突き止めるための、情報を集める時だ。だから、しっかり休んで力を溜めておけ。」

 

「…分かったよ!」

 

季衣は元気良く答えると、ひょいっと城壁の上に飛び乗り、歌を歌い始めた。大声で、決して上手くはないけど、季衣の元気をそのまま分けてもらってるような歌声だ。門を出ていく秋蘭隊の兵士たちが、こちらを見上げて手を振ってくれる。

 

一刀「いい歌だな。なんていう歌?」

 

「さあ?ちょっと前に、街で歌ってた旅芸人の歌なんだけど…。確か名前は張角…。」

 

如月「一刀!俺は秋蘭に、お前は華琳に報告だ。」

 

言うが早いか、トベルーラで秋蘭の所へ飛んでいく。

 

如月「秋蘭!」

 

「如月。お前、空も飛べたんだな。兵たちがビックリしているぞ。」

 

如月「んなことどうでもいい。秋蘭、多分張角は旅芸人だ。」

 

「分かった。その辺りを中心に情報収集をしてこよう。」

 

如月「頼む。」

 

 

秋蘭たちが討伐から戻ったのは、その日の晩遅くだった。すぐに主要なメンバーが集められ、すぐに報告会が始まった。

 

「…間違いないのね。」

 

「確かに今日行った街でも、三人組の女の旅芸人が立ち寄ったという情報がありました。恐らく、季衣の見た張角と同一人物でしょう。」

 

「正体が分かっただけでも前進ではあるけれど…。可能ならば、張角の目的が知りたいわね。」

 

一刀「目的ねぇ…。本人たちはただ楽しく歌ってるだけで、まわりが暴走してるだけだったりして。」

 

如月「何かの拍子に『わたし、大陸が欲しいのー!』とか言っちゃったものだから、鵜呑みにした奴らが暴れだしたってとこか。」

 

「だとしたら、余計タチが悪いわ。大陸制覇の野望でも持ってくれていた方が、遠慮なく叩き潰せるのだけれど。」

 

一刀「叩き潰すことが前提かよ。」

 

「夕方、都から軍令が届いたのよ。早急に黄巾の賊徒を平定せよ、とね。」

 

如月「遲っ!それが今の朝廷の実力か。」

 

「まぁ、これで大手を振って大規模な戦力も動かせるわけだけど…。」

 

「華琳様っ!」

 

「どうしたの、春蘭?兵の準備は終わった?」

 

「いえ、それが…今までにない規模の黄巾の連中が現れたと。」

 

「…そう。一歩遅かったと言う事か。」

 

一刀「向こうが?」

 

「こちらがよ。春蘭、兵の準備は終わっているの?」

 

「申し訳ありません。すでに兵たちに休息をとらせています。」

 

「間が悪かったわね…。恐らく連中は、いくつかの暴徒が寄り集まっているでしょう。今までのようにはいかないわよ。」

 

如月「集まるという事は、集まろうという意思か集めようとする意志が働いていると見るべきか。一つ二つの集団なら偶然だが、数十の集団が集まれば偶然ではないということか。」

 

「万全の状態で当たりたくはあるけれど、時間もないわね。さて、どうするか…。」

 

「華琳様!ボクが行きます!」

 

手を挙げたのは季衣だった。

 

如月「なら、俺も行こう。」

 

「そうね、春蘭。すぐに出せる部隊はある?」

 

「は。当直の隊と、最終確認をさせている隊はまだ残っているはずですが…。」

 

「季衣、如月。それらを率いて、先発隊としてすぐに出発なさい。それから、補佐として秋蘭を付けるわ。秋蘭にはここ数日無理をさせているから、指揮官は任せたくないの。ただし撤退の判断は秋蘭に任せるから、季衣と如月は必ず従うように。すぐに本隊も追い付くわ。」

 

「御意。」

 

「分かりました。」

 

如月「了解。本隊が来るまでに出来るだけ減らしておくよ。全滅させてもいいんだろ?」

 

「ええ、出来るのならね。本隊は私が率いるから、すぐに追いつくけどね。以上、解散。」

 

こうして俺は、秋蘭と季衣と一緒に報告のあった街へと先発隊として出発した。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十一話

先発隊として、出発した俺たち。運よく賊が街を襲う、夜明け前に到着することが出来た。

 

如月「まずは、街の代表に会って、住民の避難と、義勇軍を募っていいかの確認かな?」

 

「ああ、そうだな。あと華琳様に早馬を出しておこう。」

 

「すみません。あなた達は一体?」

 

如月「ああ、陳留の曹操軍だ。街の代表はいるか?住民の避難誘導の手伝いと義勇兵を募りたいんだが。」

 

「陳留の曹操様の!はい、街の代表はこちらです。案内いたします。」

 

体中に傷跡があり、銀髪を後ろで三つ編みにしている少女に案内してもらう。

 

「代表はこちらにおります。では、私もやることがありますので。」

 

如月「ああ、ありがとう。あなたが街の代表ですか?我々は陳留の曹操軍です。住民の避難誘導の手伝いと義勇兵を募らせていただきたいんですが。」

 

「なんと、陳留の曹操様の。ありがとうございます。ならば、住民の避難誘導を手伝っていただきたいのでお願いいたします。義勇兵たちはこちらにおります。」

 

秋蘭が兵たちに避難誘導の指示を出した後に、代表に連れられて義勇兵のもとへ案内してもらった。

 

「あ、あなた達はさっきの……。」

 

如月「よう。」

 

「ん?凪どないしたん?」

 

「凪ちゃんどうしたのー?」

 

「我らはお主たちと共に戦うために来た陳留の曹操軍だ。」

 

「うん。この街のみんなを守るために来たんだよ。」

 

如月「ああ、君らと共に戦わせてもらいたい。」

 

「え?ほんとなん?しかも、陳留の曹操様の?」

 

「大歓迎なのー!」

 

如月「一緒に戦うのに自己紹介をしてなかったな。俺は龍谷如月。如月と呼んでくれ。よろしく。」

 

「私は、夏侯淵だ。曹操様の所で将をしている。」

 

「ボクは、許緒って言うんだ。」

 

「私の名は楽進です。」

 

「ウチは李典や。」

 

「沙和は于禁なのー。」

 

各々、自己紹介を済ませすぐに軍議を始める。街の地図を見ると東西南北に門があり、そこに防壁を築き、弓矢による遠距離射撃で数を減らし、援軍到着まで乗り切ろうと言う事になり、東門に秋蘭と季衣、南門は李典と于禁、西門は楽進、北門は俺の担当になった。

 

「あの、夏侯淵様。」

 

「どうした?楽進?」

 

「如月様はお一人で大丈夫なのでしょうか?」

 

「そうですよ、秋蘭様。如月兄ちゃん一人で大丈夫なんですか?」

 

「季衣も楽進もそんなに心配するな。あやつは面白い技を持っているからな。あれがあれば、北門の賊どもは全滅するんじゃないか?」

 

「本当ですか?」

 

「ああ、見に行くことは出来んが、ものすごい音がするんじゃないか?この戦いが終わったら、見せてもらえ。ほら、しゃべってる暇があれば早く防壁の準備をしてこい。」

 

「あ……はい。分かりました。」

 

「はーい。」

 

如月「みんなー。きついだろうけど、頑張って防壁を作れー。もうすぐ、攻めてくるぞ。」

 

「はっ!」

 

「俺はちょっくら、時間稼ぎしてくるから。その間に完成させとけよ。」

 

「え?如月様、お一人で大丈夫ですか?」

 

如月「おう、気にするな。ちゃんと防壁を完成させとけ。」

 

「はっ!お気をつけて。」

 

俺は今、一人で黄巾党の前にいる。

 

「へっへっへ。馬鹿な奴だ。たった一人で来るなんて。野郎ども、こんな奴さっさと殺して、街を攻め落とすぞ。」

 

「「おおーー!!」」

 

あーあ、好き勝手言ってくれちゃって。まあ、たった一人だからな。しかたないか。

さて、ちょっくら、暴れますか。

 

如月「イオナズン!」

 

ドゴーーーーン!

 

「ギャー!」

 

「なんだ!いきなり爆発が起こったぞ。」

 

「ええい、怯むな!突撃しろ!」

 

如月「バギクロス!」

 

「うぎゃー!」

 

「た、竜巻が!」

 

「ギガデイン」

 

「うわー、雷がおちてきた。」

 

「なんだ、やつは妖術使いか?」

 

如月「もういっちょ、イオナズン!」

 

ドゴーーーーン!

 

イオナズン二発、バギクロス、ギガデイン各一発。まあ、逃げてった奴らもいるがほぼ全滅させることが出来たな。

 

如月「さて、他の門の助けに行くか。」

 

北門の兵たちのもとへ、一旦戻る。

 

如月「お前ら、とりあえず全滅させてきたが、念のためここを守ってろ。俺は他の門へ行ってくる。」

 

「如月様。すごいですね。あんなに居たのに全滅させるなんて。」

 

如月「まあな。んじゃ、行ってくるから。何かあったら、伝令を飛ばせ。」

 

「はっ!お気をつけて。ここはお任せください。」

 

と兵たちに指示を出し、トベルーラで街の中心に飛んでいく。

 

「如月様、空も飛べるんだ。」

 

「あの人が味方で良かったな。俺たち。」

 

トベルーラで飛んでいると街の中心に秋蘭たちを発見した。

 

如月「よう、秋蘭。こっちはどうだ?」

 

「うわっ!如月兄ちゃん!どこから来たの?」

 

如月「空から来た。てか季衣は一回見たことがあるだろ。で、秋蘭どうなんだ?」

 

「如月か。西側の防柵があと二つだ。南の連中が東西の門に合流したために、かなりきつい。そちらは?」

 

如月「こっちは全滅させたあと、兵たちに念のため守らせてきた。何かあれば伝令をよこせと言ってあるが、思ったよりも北門で時間食ったな。」

 

「いや、それでよかろう。北門を攻めようとしていた連中がいなくなったのだから、すごく助かった。」

 

「しかし、夏侯淵様たちがいなければ、我々だけでは、ここまで耐えることが出来ませんでした。」

 

「それは我々も同じこと。貴公ら義勇軍がいなければ、数に押されて敗走していたさ。」

 

如月「たしかに、俺らだけだったら、街、兵たちの損害がひどいことになってたな。」

 

「いえ、それも夏侯淵様の指揮と如月様が北門の賊を減らしてくれたからこそ。いざとなれば、自分が討って出て…」

 

「そんなのダメだよっ!そういう考えじゃ……ダメだよ。春蘭様達が絶対助けに来てくれるんだから。最後まで頑張って守りきらないと!」

 

「……せやせや。突っ込んで犬死しても、誰も褒めてくれんよ。」

 

「今日、百人の民を助けるために死んじゃったら、その先助けられる万人の民を見捨てることになるんだよ。わかった?」

 

「……肝に銘じておきます。」

 

「……ふふっ」

 

如月「はっはっは。」

 

「あ、何がおかしいんですか二人ともー!」

 

「いや、昨日あれだけみなに叱られていたお前が、一人前に諭しているのが…おかしくてな。」

 

「うう、ひどーい!」

 

如月「楽進。季衣の言う通り。万人の民を助けることが出来る力を持っているんだから、そんな簡単に命を粗末にするな。」

 

「はい、申し訳ありません。如月様。」

 

「夏侯淵様ー!東側の防壁がやぶられたのー!向こうの防壁はあと一つしかないの!」

 

「……あかん。東側の最後の防壁って、材料が足りひんかったから、かなりもろいで。すぐ破られてしまう!」

 

「しかたない。如月、東側を頼む。残り全員で西側を守ろう。」

 

如月「ああ、まかせろ。そっちのほうが、消耗が少なくなるだろ。それに、兵たちをこっちに回されても、巻添えになっちゃうからな。」

 

「すまん。お前ばかりに無理をさせて。」

 

如月「気にするな。ついでに、みんなの体力を回復させてやる。ベホマラー。」

 

ベホマラーを唱え、皆の体力を回復させる。

 

「すまんな、如月。」

 

「如月兄ちゃん、すごーい!」

 

「マジかいなー。体力が回復しとる。」

 

「すごいのー!」

 

「如月様、これは?」

 

「説明は後で聞いてやる。お前ら、西側を頼むぞ。」

 

「先発は、私が切ります。」

 

如月「楽進、絶対に死ぬなよ。」

 

「はっ!」

 

「皆、ここが正念場だ。力をつくし、何としても生き残るぞ。」

 

「分かったの!」

 

「おう、死んでたまるかいな!」

 

「報告です!街の外に大きな砂煙!大部隊のようです。」

 

「敵か!それとも……」

 

「お味方です。旗印は曹と夏候!曹操様と夏候惇様ですっ!」

 

その後、本隊が到着したため、黄巾の賊どもはなすすべなく全滅し、俺らは、街を守りきることが出来た。

 

「三人とも無事でなによりだわ。損害は大きかったようね。」

 

「はっ。しかし彼女らのおかげで、防壁こそ破られましたが、最小限の損害で済みました。街の住民も皆無事です。」

 

「…彼女ら?」

 

「…我らは大梁義勇軍。黄巾党の暴乱に抵抗するため、こうして兵を挙げたのですが…」

 

「「「あー!」」」

 

「…何よ、一体。」

 

一刀「前に街へ視察に行った時の、変な絡繰を作ってたカゴ屋の子!」

 

「変な絡繰ってなんやねん!すごい絡繰の言い間違いやろ!」

 

「…思い出したわ。どうしたの、こんな所で。」

 

「ウチも大梁義勇軍の一員なんよ。」

 

「姉者も知り合いなのか?」

 

「そうなのー。前に服屋でむぐぐ…」

 

春蘭が于禁の口をふさぎ、耳元で何か言っていて、于禁がコクコクとうなずいている。

 

「で、その義勇軍が?」

 

「はい。黄巾の賊がまさかあれだけの規模になっているとは思いもせず、こうして夏侯淵様に助けていただいた次第…」

 

「そう。己の実力を見誤ったことはともかく、街を守りたいというその心がけは大したものね。」

 

「面目次第もございません。」

 

「とはいえ、あなた達がいなければ、大切な将を失う所だったわ。助けてくれてありがとう。」

 

「はっ!」

 

「あの、華琳様。凪ちゃん達を…華琳様の部下にしてはもらえませんか?」

 

「義勇軍が私の指揮下に入るという事?秋蘭、彼女たちの能力は?」

 

「は。一晩共に戦っておりましたが、皆鍛えればひとかどの将になる器かと。」

 

「そう…。季衣も真名で呼んでいるようだし…いいでしょう。三人の名は?」

 

「楽進と申します。真名は凪…曹操様にこの命、お預けいたします。」

 

「李典や。真名は真桜で呼んでくれてもええで。以後よろしゅう。」

 

「于禁なのー。真名は沙和っていうの。宜しくお願いしますなのー♪」

 

「凪、真桜、沙和。そうね……一刀、如月。」

 

如月・一刀「「ん?」」

 

「さしあたり貴方達三人と義勇兵は、この男たちに面倒を見させます。別段の指示がある時をのぞいては、彼らの指示に従うように。」

 

一刀「ちょっと待てよ、華琳!」

 

「あら。何か問題でも?」

 

「大ありですっ!なんでこんなやつらに、部下をお付けになるんですか…!」

 

一刀「…あ、桂花。いたんだ。」

 

「あんたとちがって、私はちゃんと仕事をしているの。華琳様、周囲の警戒と追撃部隊の出撃、完了いたしました。支援物資の配給も、もうすぐ始められるかと。」

 

「ごくろうさま桂花。で、何の話だったかしら?」

 

北郷のことです!如月ならともかく、こんな変態に華琳様の貴重な部下を預けるなど…部下が穢されてしまいます。」

 

一刀「初対面の連中に変なこと吹き込むなよ!」

 

「「「……」」」

 

如月「うわー、一刀。性癖に関しては何も言わないけど、どんびきだわー。」

 

一刀「誤解だから。てか、如月。変にあおるなよ!」

 

如月「すまん、すまん。三人とも大丈夫。変なことする奴じゃないから。」

 

「私は関知しないから。三人とも一刀に無理に迫られたら、痛い目にあわせて構わないわ。あと、如月は一刀の補佐をするように。」

 

如月「了解。なら一刀が隊長で、俺が副長ってことか。そういうことになったから、よろしくな三人とも。」

 

「そういうことなら了解ですわ。よろしゅうな、隊長、副長。」

 

「了解しました。隊長、副長。」

 

「はーい。隊長さーん、副長さーん。」

 

一刀「隊長…ねぇ。」

 

「とくに問題ないかと。」

 

「良かったね、三人とも!」

 

「春蘭はどう?」

 

「いえ、これで北郷も少しは華琳様の部下としての自覚も出るのではないかと。」

 

「それではこの件はこれでいいわね。各自、作業に戻りなさい。」

 

こうして、一刀が部隊を持つことになった。俺は、補佐へ回ることになり、部下が三人出来た。

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十二話

軍議が始まる前にもう一度、一刀を交えて楽進、李典、于禁に自己紹介をし、三人の真名を授かり、軍議が始まった。ちなみに沙和は補給物資の配給作業のため軍議にはいない。

 

「さて。これからどうするかだけれど…。新しく参入した凪たちもいることだし、一度状況をまとめましょう。…春蘭。」

 

「はっ。我々の敵は黄巾党と呼ばれる暴徒の集団だ。細かいことは…秋蘭、任せた。」

 

「やれやれ…。」

 

「黄巾党の構成員は若者が中心で、散発的に暴力活動を行っているのだが…特に主張らしい主張はなく、現状で連中の目的は不明だ。また首領の張角も、旅芸人の女らしいという点以外は分かっていない。」

 

「わからないことだらけやなぁ~。」

 

「我々の村では、地元の盗賊団と合流して暴れていました。陳留あたりでは違うのですか?」

 

「同じようなものよ。凪たちの例もあるように、事態はより悪い段階に移りつつある。」

 

悪い段階ね。好き勝手暴れている烏合の衆から、盗賊団や同じような集団と結びつき組織としてまとまり大部隊になると軍としても厳しくなるってとこか。

 

「これからは、一筋縄では行かなくなったという事よ。こちらも味方が増えたのは幸いだったけれど…これからの案、誰かある?」

 

「定石としては、頭の張角を倒し、組織の自然解体を狙う所ですが…」

 

「張角ってどこにいるんですか?」

 

「もともと旅芸人だったこともあって正確な居所は掴めていない。むしろ、我々のように特定の拠点を持たず、各地を転々としている可能性が高い。」

 

一刀「本拠地が不明で、どこからでも湧いて出てくる敵か…。苦労するわけか。攻めようがないな。」

 

「そうよ。でもだからこそ、その相手を倒したとなれば、華琳様の名は一気に上がるわ。」

 

どこからでも湧いてくる敵か。確かにそういう相手を倒せば名を挙げることが出来るのは分かるが、なんかヒントになるもんないかな?と考えていると、恐縮した沙和が天幕に入ってきた。

 

「…すみませーん。軍議中失礼しますなのー。」

 

「どうしたの、沙和。また黄巾党が出てきた?」

 

「ううん、そうじゃなくてですねー、街の人に配ってた糧食が足りなくなっちゃったの。代わりに行軍用の糧食を配ってもいいですかー?」

 

「桂花、糧食の余裕は?」

 

「数日分はありますが…義勇軍が入った分の影響もありますし、ここで使い切ってしまうと、長期に及ぶ行動がとれなくなりますね。」

 

「とはいえ、ここで出し渋れば騒ぎになりかねないか。いいわ、まず三日分で様子を見ましょう。」

 

「三日分ですね。分かりましたなのー。」

 

「桂花、軍議が終わったら、糧食の補充を手配しておきなさい。」

 

「承知いたしました。」

 

「すみません。我々の持ってきた糧食は、先ほどの戦闘であらかた焼かれてしまいまして……。」

 

一刀「なぁ、ちょっと思ったんだけど、部隊の規模が増えると、糧食の消費も増えるんだよな?」

 

「……なるほど。」

 

「その手があったわね。」

 

如月「あれだけの大部隊なんだから、どこかに物資の集積拠点があるってことか。」

 

「桂花は周囲の地図から、物資を集積できそうな場所の候補を割り出しなさい。偵察の経路は、どこも同じくらいの時間に戻ってこれるように計算して。他の者は偵察経路が定まり次第、出発なさい。それまでに準備を済ませておくように!沙和も偵察に出すわ。一刀は沙和に作戦の詳細伝えた後、食糧の配給作業を引き継ぎなさい。」

 

如月「華琳、俺、空飛べるけど、空から探すか?」

 

「ええ、如月は空からの偵察と、集積拠点が見つかった後の各部隊への帰還の伝令役を。」

 

如月「了解。」

 

黄巾党を仕留めるために、みんな慌ただしく動き出した。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十三話

偵察経路が定まり、みんな指示された場所へ、偵察を始める。俺は、指示された方向を空から偵察中だ。

 

如月「俺の方は、ハズレっぽいな。時計回りに探すか。」

 

と、時計回りに探し始める。少し飛んだ所で古ぼけた砦を発見。見つからないように砦へ近づく。

 

如月「ビンゴだ。敵は、物資を運びだしている最中か。ここから近いのは、春蘭か。春蘭に知らせよう。」

 

方向転換し、春蘭を探しにいく。少しすると、春蘭の部隊を発見し、地上に降りる。

 

如月「春蘭。」

 

「おお、如月か。どうした?」

 

如月「ああ、向こうの山奥に砦があって、そこに黄巾党どもがいた。すまんが、兵数の確認等々を任せていいか?華琳に報告をしてくる。」

 

「分かった。こちらの偵察が終わったら、こちらも一旦本陣に戻るから、華琳様に報告してくれ。」

 

如月「了解。頼むぞ。」

 

と春蘭とやり取りをかわし、本陣に戻る。

 

如月「華琳。奴らを見つけた。地図はあるか?」

 

「あら、ご苦労様。はい、地図。」

 

如月「ここの所に、砦があった。物資を運びだしている最中だった。春蘭の部隊が近かったから、そのまま偵察を頼んできた。確認後、一旦本陣に戻るってさ。俺は、他の部隊に帰還指示を出してくる。」

 

「ええ、分かったわ。距離が離れている者は、現地集合と伝えて頂戴。」

 

如月「了解。じゃあ、行ってくる。」

 

と華琳に報告した後、他の部隊に帰還指示を出しに行くために飛んでいく。

 

他の部隊に帰還指示と現地合流の指示を出しに行き、本陣に戻ると、桂花の怒号が飛んできた。

 

「この馬鹿!」

 

一刀「……すまん。」

 

その声が聞こえた方に行くと行く途中で、華琳と春蘭と鉢合わせし、桂花の所へ行き、桂花から事情説明をしてもらう。

 

「このばか、予備の糧食を三日分どころか全部配っちゃったのよ!」

 

一刀「いや、つい張り切っちゃって。ごめんなさい。」

 

「はぁ、今回は時間もないから、特別に私の指示だったことにしてあげる。でも、次に同じことしたら…分かっているわね?」

 

一刀「はい。……ありがとうございます。」

 

一刀何やってんだよと思い、ため息が出た。それから数刻後、撤収を終えた俺達は、山奥にぽつんと立つ、古ぼけた砦にたどり着いていた。

 

「すでに廃棄された砦ね…良い場所を見つけたものだわ。」

 

「敵の本隊は近くに現れた官軍を迎撃しに、行っているようです。残る兵力は、一万くらいかと。」

 

一刀「官軍が来たせいで砦を捨てるってか?もったいない。」

 

「華琳様のご威光に恐れをなしたからに決まっているわ。」

 

「連中は捨ててあるものを使っているだけだからな。そういう感覚は薄いのだろう。あと一日遅ければ、ここはもぬけの殻だったはずだ。」

 

「厄介極まりないわね。それで秋蘭。こちらの兵は?」

 

「義勇軍を合わせて、八千と少々です。荷物の搬出で手一杯のようでこちらに気付いておりません。絶好の機会かと。」

 

「ええ。ならば、一気に攻め落としましょう。」

 

「華琳様。一つ、ご提案が。」

 

「何?」

 

「戦闘終了後、全ての隊は手持ちの軍旗を全て砦に立ててから帰らせてください。」

 

「え?どういうことですか?」

 

「この砦を落としたのが、我々だと示すためよ。」

 

「なるほど。黄巾本隊と戦っている官軍の本当の狙いはここ…。ならば、敵を一掃したこの砦に曹旗が翻っていれば……」

 

「おもしろいわね。その案、採用しましょう。軍旗を持って帰った隊は、厳罰よ。」

 

「なら、誰が一番高い所に旗を立てるか、競争やね!」

 

「こら、真桜。不謹慎だぞ。」

 

「ふん。新入りどもに負けるものか。季衣、お前も負けるんじゃないぞ。」

 

「はいっ!」

 

「姉者…大人げない。」

 

「そうね。一番高い所に旗を立てられた隊は、何か褒美を考えておきましょう。」

 

如月「(褒美か。色々やりたいことがあるから、そのお金を出してもらうか。)」

 

「ただし、作戦の趣旨はたがえないこと。敵の守備隊殲滅と、糧食をひとつ残らず焼き尽くすことよ。いいわね。」

 

「あの…華琳様?」

 

「何?沙和。」

 

「その食料って…さっきの街に持っていっちゃダメなの?」

 

「ダメよ。糧食は全て焼き尽くしなさい。」

 

「どうしてなの…?」

 

如月「沙和、糧食を奪っては、華琳の風評が下がるんだ。糧食も足りないのに戦に出て、賊から食料を強奪したと。」

 

「けど、副長。」

 

如月「奪った食料を街に持っていけば、今度はその街が黄巾党の復讐の対象となるんだ。今より、もっと。」

 

「あ…」

 

「あの街には警護の部隊と糧食を送っているから、それで復興の準備は整うはず。華琳様はちゃんと考えておられるのだから、安心なさい。」

 

「そういうこと。糧食は全て、米一粒たりとも残さず焼くことが、あの街を守るためだと知りなさい。いいわね?」

 

「分かったの。」

 

「なら、この軍議は解散とします。先方は春蘭に任せるわ。いいわね?春蘭。」

 

「はっ!おまかせください!」

 

「なら、この戦を持って、大陸の全てに曹孟徳の名を響き渡らせる。我が覇道はここより始まる!各員、奮励努力せよ!」

 

さてさて、褒美のために頑張りますかねと気合を入れていたら、

 

「隊長、副長。楽進隊布陣完了しました。」

 

如月「おう、お疲れさん。」

 

「あの、副長。聞きたいことがあるのですが。」

 

如月「ん?どうした?何が聞きたいの?」

 

「街での防衛線でもそうでしたが、なぜ空を飛べたり、皆の体力を回復させることが出来るのですか?」

 

如月「まぁ、色々できるけど、そうだな、凪は気が使えたよな?どこまで使える?」

 

「気を放出しての遠距離攻撃と、自身強化ですね。」

 

如月「なるほど、分かった。この戦が終わったら色々教えるわ。」

 

「本当ですか!私も空を飛べたりするのでしょうか?」

 

如月「それは、気の使い方しだいかな?合う、合わないもあるだろうし。」

 

一刀「それって、俺にも出来るようになる?」

 

如月「わからんけど、やってみるか?」

 

一刀「ああ、やってみたい。」

 

如月「分かった、一刀にも教えよう。」

 

「何や、何や。なに、おもしろい話しとるん?」

 

「あー。みんな何お話してるのー。ずるーい!布陣終わったんだから、私も混ぜてなのー!」

 

如月「一刀がこの戦終わったら、歓迎会開いてくれるって。」

 

一刀「え、ちょっと、如月!」

 

「ホント?やったぁ!」

 

「言うたよなぁ?凪!」

 

「……ああ。」

 

一刀「うう、凪まで。」

 

如月「いいだろ。俺も何か作るからよ。」

 

一刀「ん…それなら…」

 

そうこうしている内に春蘭の檄が響き、突撃の号が発せられ、黄巾党の物資集積拠点を強襲した。

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十四話

「でえぇぇぇぇぇぇい!」

 

「はああああああっ!」

 

如月「テメーら逃がさねーぞ。イオラ!」

 

砦内の黄巾党は曹操軍に簡単に殲滅させられた。

 

「副長!周囲の掃討、終わりました。」

 

如月「お疲れのところ悪いが、周囲の確認を頼む。黄巾党はいないと思うが念のために。」

 

「はっ!了解です。」

 

「火を放て!糧食を持ち帰ることまかりならん!全て燃やせ!」

 

中央の広場に集められた糧食が春蘭の指示で燃やされていく。

 

「目的は果たしたぞ!総員、旗を目立つところに挿して、即座に帰投せよ!」

 

如月「さて、どこに挿そうかな。あ、あそこが一番高そうだ。」

 

「あ、如月兄ちゃん。挿すところ決めた?」

 

如月「お、季衣か。あそこに挿そうと思ったんだが。」

 

「わー。一番高そうだね。ボクもあそこにする。」

 

如月「じゃあ、一緒に挿すか?」

 

「うん。あれ?でも如月兄ちゃんあそこまで登れるの?結構高いよ。」

 

如月「俺、空飛べるんだが。まあいいや。季衣一緒に連れてってやるぞ。」

 

「え、いいの?やったー!ボク、空飛んでみたかったんだ。」

 

如月「んじゃ、失礼して。」

 

右腕で季衣を抱え、左に軍旗を持ち、トベルーラを唱える。

 

「うわー!浮いてる!すごーい!」

 

如月「ついたぞ。降ろすからな。気を付けろよ。」

 

季衣を降ろし、二人で軍旗を挿し、地上に降りる。

 

如月「んじゃ、皆に合流するか。」

 

「うん。」

 

城までの帰り道に簡単な会議を開き、凪、真桜、沙和と義勇軍が警邏隊に組み込まれることが決まった。あと、帰ったら片付けに専念してすぐに休むようにだって。ありがたい。

 

「ああ、そうだ。例の旗を一番高い所に飾るという話だけれど……結局、誰が一番だったの?」

 

如月「たぶん、俺と季衣の二人じゃないか?二人で一緒に挿したから。」

 

「……どうやって挿したの?」

 

如月「季衣を抱えて、トベルーラで上までいって、挿した。」

 

「なら、その勝負は如月と季衣の勝ちね。二人とも何か欲しいものはある?」

 

「うーん……特に、何もないんですけど……」

 

「欲のない子ね。何でも良いのよ?」

 

「何かあるだろ。食べ物とか服とか……」

 

「え?どっちも、今のままで十分ですし……」

 

「領地まではさすがにあげられないけど……何か無いの?」

 

「そんなものいりませんよー。」

 

「まあいいわ。なら、季衣は一つ貸しにしておくわね。何か欲しいものが出来たら、言いなさい。」

 

「はいっ!ありがとうございます!」

 

「如月は何か欲しいものはあるの。」

 

如月「そうだな、何個か試しに作りたいものがあるから、それにかかるお金と城の一部を使わせて欲しい。」

 

「何を作るつもりなの?」

 

如月「保存食と俺らの国の調味料やお酒とか作ってみたいな。」

 

「別に、役立つものを作るのであれば、草案を出してくれればいいのに。」

 

如月「自分の趣味みたいなものだからな。作ってみて、出来そうなら出すよ。」

 

「そう。ならそれにしましょう。さあ、みんな帰るわよ。」

 

その後、陳留に戻った俺達は、片付けを終わらせた後、凪、真桜、沙和の歓迎会を開いた。そこで、コロッケを作り、振る舞った。みんなには好評だったみたいだ。

 

凪、真桜、沙和の歓迎会の翌日。

本日より、『北郷警備隊』の始動だ。もともと、俺と一刀は警備隊で働いていたのだが、義勇軍が新たに警備隊に組み込まれたことにより、警備隊の隊長と副長に昇進したのだ。

そして、新入隊員の三人に仕事の説明をすることになったのだ。

 

「隊長、何緊張しとるん?さっきから『さて』しかゆうてへんがな。」

 

一刀「いやぁ……人前に立つのって緊張するよなぁ。俺は基本的に恥ずかしがり屋の小心者だから。」

 

「あははっ、そーいうコトを自分で言っちゃうコトが隊長らしいねー。」

 

一刀「多少その台詞に引っかかるが、まぁ、そういうことだ。」

 

はっはっはーと笑う一刀に凪の厳しい一言が突き刺さる。

 

「隊長、もっと堂々としてください。あと副長も黙ってないで何か言ってください。」

 

如月「すまんな凪。一刀、気持ちは分からんでもないが、さっさと説明しろよ。日が暮れてしまう。」

 

一刀「ああ、すまん。えー、それでは、俺達が担当する仕事の説明をします。俺達五人は華琳の命により、街の警備隊の指揮を任されることになりました。その時に、俺が隊長、如月が副長に任命されました。これからはよろしく。」

 

如月「副長の龍谷如月です。これから、よろしく。」

 

「はっ!よろしくおねがいします。」

 

「よろしゅうおねがいします。」

 

「よろしくおねがいしますなのー。」

 

一刀「とりあえず今日は、街の見回り、警邏をしたいと思うから、街に行くぞ。」

 

「「「「おー!」」」」

 

で街に出てきたわけだが、のんびり屋の沙和、ツッコミ役の真桜、一人真面目な凪。

誰も彼もマイペースで、すぐにグダグダになってしまった。

 

「あーー!新しい阿蘇阿蘇が出てるー!」

 

一刀「阿蘇阿蘇?……ああ、つまりana……むぐ」

 

「「(一刀)(隊長)それは言っちゃダメ(だ)(なの)」」

 

と一刀の口をふさぐ。俺も初めて見た時は驚いたがと思っていたら、

 

「おー!見てぇ!発売中止になった超絶からくり夏候惇!」

 

次は真桜か。警邏中だぞ今は。ハァーと一刀と二人でタメ息をついていると、

 

「まてぇーいっ!」

 

「待てといわれて、止まるヤツがいるもんかっ!」

 

一刀「どうしたんですか?」

 

「盗人だよ!店の売り物、かたっぱしから盗んでいきやがったっ。」

 

それを聞いて走り出す俺と一刀。だが賊もなかなかすばしっこく、狭い路地に入り込み、ちょこまかと走り回る。見失わないようにするのが精一杯だ。

 

「ええいっ、まどろっこしい!」

 

凪の背中に、メラメラと赤い炎が浮かび上がる。気弾を撃たれて、街を破壊されるわけにもいかないので、

 

如月「一刀、お前にピオラを唱えたから、そのまま賊を追ってくれ。凪は、そこまで。」

 

自分にもピオラをかけ、凪に追いついて、足払いをかける。

 

「へっ?きゃあ!」

 

尻餅をつこうとする凪を抱きとめるとお姫様抱っこの形になる。

 

「あっ、副長。」

 

凪は自分の状況を把握すると顔を赤く染める。

 

如月「まったく。可愛い悲鳴と顔するじゃねえか。っと、それどころじゃなかった。凪降ろすぞ。」

 

「あっ、はい。」

 

凪を降ろし賊を追いかけると一刀が捕まえていた。

 

一刀「如月、縄あるか?」

 

如月「一刀すまんな。今、こいつを縛る。」

 

縛り終えた盗人を他の隊員に引き渡す。一刀は事後処理のためについていった。

 

「副長。」

 

「なんや、なんや。どないしたん?」

 

「みんな集まって、なにやってたのー?」

 

凪はとにかく、沙和と真桜の手には、阿蘇阿蘇とからくり夏候惇が握られていた。

さてと、三人へ説教を開始する。

 

如月「まず、沙和。阿蘇阿蘇を見るなとは言わないが、警邏中に必要なことか?買ったり、読んだりするのは、仕事が終わってからにしろ。真桜もだ。絶版になったものがあったのは嬉しいよな。その気持ちはすごく分かる。だが、仕事をほったらかしにするな。そういう時は、取り置きとかしておいてもらえ。凪、まどろっこしい気持ちは分かるが、こんな街中で気弾なんか撃ってみろ、皆に被害が及ぶぞ。真面目なのはいいが、少し肩の力を抜け。周りを良く見ような。」

 

「うう。ごめんなさいなの。」

 

「すんません、副長。」

 

「申し訳ありません。副長。」

 

如月「明日から頼むぞ。じゃあ、一刀を捕まえて飯に行くか。」

 

「「「え?」」」

 

如月「ん?飯食いにいかないの?」

 

「え、だってなぁ……」

 

「ああ……」

 

「副長、いいの?」

 

如月「説教は終わったし、ちゃんと反省して明日からちゃんとやってくれるんだろ?だから明日への活力のために飯を食いに行こうと誘ったんだが。あーあ、奢ってやろうと思ったのに。」

 

「行きます。」

 

「行くに決まってるやろ。」

 

「絶対に行くのー。」

 

如月「んじゃ、一刀を捕まえて飯に行くぞ。」

 

「「「おー!」」」

 

こうして、北郷警邏隊の初日は幕を閉じた。飯代は、一刀と割り勘です。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十五話

ある日、自室で設計図や、レシピを書いていると、

 

「如月、ちょっといい?」

 

と華琳が訪ねてきた。

 

如月「ん?何か用?」

 

「ええ、時間が出来たから天の料理を教えてもらおうかと思って、大丈夫かしら。」

 

如月「ああ、大丈夫だよ。」

 

「ならよかった。ていうか、あなたの部屋に初めて入ったけど、何もないわね……。あら?この箱は何?」

 

と、部屋の片隅に置いてある冷蔵庫に興味を持ったみたいだ。

 

如月「ああ、それは冷蔵庫と言ってな。下の扉を開けてみな。」

 

「下の扉を?あ、涼しい。どういう構造なの?」

 

如月「上の扉に氷を入れて、下を冷やしてるんだ。」

 

「氷を!そんなものどこで手に入れるのよ!」

 

如月「どこでって、ここで。ヒャド。」

 

ヒャドを唱え、氷の塊を出す。

 

「そういえばそうだったわね。てか、こんな便利なもの、何で早く言わなかったの?」

 

如月「色々とバタバタしてて、時間が取れなかったんだよ。あと、この前の報酬の件があったから、みんなに作ろうと思っていた。」

 

「まぁ、それはしょうがないわね。これの使い方は?」

 

如月「上の扉に氷を入れておくだけで、下の空間が冷やされる仕組みだ。あと、溶け出た水を一日一回捨てなきゃならないのと、新しく氷を入れての使用できる日数が十日くらいかな。」

 

「なるほど。如月これ作ってくれないかしら。」

 

如月「いいよ。てか、作るって言ったじゃん。数は厨房を入れて八個か。あ、一刀は持ってるから数には入れてないぞ。ちょっと日数かかるけどいいか?あと、真桜にも手伝ってもらいたいんだが。」

 

「ええ、いいわよ。真桜にも手伝ってもらってちょうだい。あ、先に厨房用を作ってちょうだい。みんなのは後で良いわ。」

 

如月「了解。あと、厨房の近くに氷室を作ろうと思うのだが、いいか?」

 

「いいわ、許可しましょう。」

 

如月「なら、さっそく真桜を捕まえて作ってみるよ。でもその前に、華琳、一緒に料理作るか?」

 

「ああ、そういえばその用事でこの部屋に来たのだったわ。じゃあ、お願いしようかしら。材料もある程度そろえてあるわ。」

 

如月「じゃあ、厨房にいくか。」

 

そんなわけで、厨房に到着し、材料を見て何を作るか考える。

 

如月「じゃあ、ハンバーグを作ろうと思う。」

 

「はんばあぐ?どういう料理なのそれ。」

 

如月「肉料理なんだけどな。俺の国でも人気の料理だ。とりあえず、材料は牛肉、豚肉、玉ねぎ、卵、パン粉、塩、こしょうだ。」

 

「作り方は?」

 

如月「まず、牛肉と豚肉を叩いて細かくします。今回は牛を五、豚を五の割合でやろう。この割合は自分の好みで変えるといい。次に玉ねぎをみじん切りにする。パン粉はおろし金でおろすと出来る。んで、細かく叩いた牛肉と豚肉とみじん切りにした玉ねぎとパン粉と卵と塩、胡椒をして、粘りが出るまで混ぜ合わせます。」

 

「このくらいでいい?」

 

如月「うん。いいよ。で、手のひらにこのくらい乗せて、形をこんな風に整えて、両手でこうやってパンパンとやって、空気を抜きます。これをやらないと破裂したり、焼きくずれが起こるのでちゃんとやること。」

 

「なるほど。」

 

如月「今回はこのフライパンという鍋を使ってやろうと思う。」

 

「へえー、浅くて幅広の鍋ね。」

 

如月「あと、フライ返しという調理器具を作ってもらった。これは、調理中の食材を裏返しにするためのものだ。」

 

「別に、こっちの鍋やお玉でもいいのでは無くて。」

 

如月「俺の国では、こっちの方が主流なんだよ。そっちの鍋やお玉じゃ、裏返しにくいんだ。」

 

「ふむ。まぁ、使いやすい物の方がいいものね。」

 

如月「そのとおり。焼く前に、食後の甘味の準備をしよう。」

 

「へぇ、甘味も教えてくれるのね。」

 

如月「簡単なものだけど。まず、材料は卵、砂糖、牛乳これだけ。」

 

「これだけで出来るの?」

 

如月「ああ、作り方は、卵と砂糖を混ぜておいて、牛乳を温めて、」

 

数分後

 

如月「このくらいの温度になったら、さっきかき混ぜておいたものにゆっくりと混ぜながら流し込んで、ざるでいったんこして、器に流し込んで、蒸すだけだ。」

 

「蒸すだけでいいの?」

 

如月「ああ、先にこっちを蒸籠に入れて、蒸しておこう。蒸している間に、ハンバーグを焼こう。」

 

「ええそうね。」

 

数分後

 

如月「はい、ハンバーグの出来上がり。プリンの方はっと。うん、ちょうど蒸しあがったな。取り出して、粗熱をとっておこう。じゃあ、ハンバーグを先に食べるか。」

 

「ええ、いただきます。」

 

如月「お口に合えばいいが。」

 

「うん、おいしいわ。」

 

如月「お口に合って良かった。」

 

ハンバーグを食べ終わり、プリンを食べる。

 

「へぇ、おいしいじゃない。これはいいわね。」

 

如月「うん、おいしいな。作り方は簡単だろ?牛乳の入手が難しいが。」

 

「そうね。牛乳が簡単に手に入るといいわね。」

 

如月「それついては、ちょっと考えている。で、どうだった?料理は?」

 

「ええ、簡単なものだったけど、すごくおいしかったわ。また、教えて頂戴。あと、片付けはやっておくわ。」

 

如月「いいのか?」

 

「ええ、今日のお礼よ。さっさと真桜を捕まえてらっしゃい。」

 

如月「ああ、予定入れられる前に、さっさと捕まえるか。すまんけど華琳、あとよろしくな。」

 

「ええ、気にしないで良いわ。」

 

如月「ありがとう。」

 

華琳に片付けを任せて、真桜を探しに行く。

 

 




今回は料理回です。色々と作りたいので、こんな感じで書きたいと思います。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十六話

お気に入りが85まで増えていて、うれしいですね。

みなさまの暇つぶしになっているのなら、ありがたいことです。

タグにハーレムをいれました。何人か落としたいので。

ちゃんと書けるか不安ですが、頑張って書きたいと思います。




如月「今日、真桜は休みだったな。部屋にいるかな?」

 

真桜の部屋を訪ねる。

 

如月「真桜いるかー?」

 

「副長?入ってきてええよー。」

 

如月「おじゃましまーす。」

 

真桜の部屋の中は工具や絡繰の部品やらで足の踏み場もないありさまだった。

 

如月「ちょっ、お前、部屋の片づけくらいしろよな。」

 

「ええー、メンドイ。」

 

如月「お前なぁ……」

 

「それで?副長何の用?」

 

如月「ああ、作って欲しいものがあるんだが、ちょっと俺の部屋まで来て欲しい。実物を見てもらいたいから。」

 

「副長の部屋に?ええで。」

 

真桜をつれて、自室に戻り、中へ招き入れる。真桜、そんな簡単に男の部屋に入るなよ。自分で誘っておいてなんだが。俺はそんな風に見られてないのかな?男しては悲しいがそっち方面は一刀にまかせよう。

 

如月「これを作って欲しいんだが。」

 

「これ何?」

 

如月「冷蔵庫といって、食材を保存するものだ。下の扉を開けてみな。あと、上の扉には氷が入ってる。」

 

「あ、涼しい。なるほど。上に氷を入れて、下を冷やすんやね。」

 

如月「ああ、これを八個作って欲しい。厨房用に大きいものも。優先順位は厨房用だな。設計図を渡すから、改良出来るならやってもらって構わない。」

 

「え?ウチにまかせてもらえるん?」

 

如月「ああ、俺よりうまく作れるだろうからな。あと、こっちも作りたいのだが。」

 

と氷室の設計図を渡す。

 

「氷室?」

 

如月「あと、少し離れた所に東屋も建てようと思う。氷を切り出す作業場所としてな。それと、これも何個か作ろうと思う。」

 

「梯子?いや違うな、両端がちょっと高くなってて、中央部に半分に割った竹がつけてある。これ何?」

 

如月「これは、レールと言ってな、案内路って意味だ。切り出した氷を東屋から氷室へ移動させるときに、この上を滑らせて運ぶ。」

 

「へえ、いいねこれ。」

 

「だろ?とりあえず、氷室を作ろう。材料はそろえてあるから、やっちまうぞ!」

 

「おおー!」

 

それから一週間かけて氷室と作業場の東屋が完成した。そして今日は、氷の初入れのため、警備隊二十人に来てもらった。氷を切り出す組、氷をレールで移動させる組、氷室の中で氷を並べる組の三組に分けて作業する。俺はヒャダルコを唱えて、氷を出す役をやっている。朝一から作業を行い、休憩をはさみ、昼過ぎには作業を終えることが出来た。

 

如月「みんな、お疲れ様。昼飯を用意したから、食べてくれ。氷を扱う作業だから、寒かっただろう。俺の国の鍋料理の水炊きというものを用意した。どんどん食え。」

 

「「ありがとうございます。副長。」」

 

作業を手伝ってくれたみんなで水炊きを食べ、最後は雑炊でシメた。みんなも満足そうだった。

 

昼からは凪との約束で、呪文を教えることになった。

 

如月「さて、千里の道も一歩から。まずは、初心者用の呪文を教えよう。」

 

「はい、宜しくお願いします。」

 

如月「凪は気弾は撃てたよな?」

 

「はい。」

 

如月「ならば、気弾を撃つときどうやって撃ってる?」

 

「えっと、体内にある気を右手に集めて、ある程度貯まったら放出するって感じです。」

 

如月「うん、そうだね。じゃあ、気を炎に変えようとか、氷に変えようとか考えたことはある?」

 

「いえ、そのようなこと考えたことなかったです。」

 

如月「なら、人差し指に気を集めて、小さい気弾をこんな風に出せるか?」

 

「はい。こんな感じですか?」

 

如月「おお、いいぞ。じゃあこの気を燃やしてみようか。こんな感じ。」

 

指先に集まっている気の温度を上げていくと、小さな火がともる。

 

「はい、やってみます。」

 

凪は集中して指先の気を燃やそうとしているが、うまくいかなかったみたいだ。

 

如月「まぁ、口での説明だと分かりづらかったな。すまん。」

 

「いえ、副長が謝ることでは……」

 

如月「なら、凪手握るぞ。」

 

と言って凪の手を握る。

 

「うっ……副長。」

 

凪の手やわらかいな、前はこんな経験なかったからなぁと思いつつ

 

如月「凪、さっきと同じように気を出してみて。」

 

「あ、はい。副長。」

 

と顔を赤くしつつ、気を出してくれる。

 

如月「俺の気を凪に送って、燃やす感覚を伝えたいと思う。」

 

といい、凪に燃やす感覚を送る。

 

「なんだか、指先が熱くなってきました。」

 

如月「お、いい感じだ。もっと温度を上げるような感覚だ。……いいぞ。」

 

そして、凪の指先に火がともる。

 

「わぁ、出来た。」

 

凪は顔を輝かせる。

 

如月「こんな感じだ。気の量を増やせば、もっと巨大な火の玉を出せるぞ。こんなものもできるぞ。」

 

右手に鳳凰の姿をした炎を出す。

 

「副長、すごいです。」

 

如月「と、少しやりすぎたな。まぁ、このようなことも出来るというわけだ。よし、じゃあもう少し気の量を込めて、さっきのをやってもらおう。」

 

「はい、副長。」

 

凪が集中している間に、薪をセッティングする。

 

「副長、出来ました。」

 

如月「よし、次はその火の玉を撃ってみよう。やり方は手に何か物を持っている時にそれを相手に投げて渡すような感覚だ。あのくべてある薪に向かってやってみろ。」

 

「はい、副長。やあっ!」

 

火の玉は薪に向かって飛んでいき、ちゃんと薪に火がついた。

 

如月「よし、いいぞ。威力的にはメラってところか。」

 

「副長、この威力で初心者向けなんですね。」

 

如月「まあな。でもな、凪のメラと俺のメラの威力は全然違うぞ。メラ。」

 

と、メラを唱える。凪と同じ大きさのメラだが、別にくべてある薪に当たると、大きな火柱を立てる。

 

「なっ!……副長、これが、同じものですか?」

 

如月「ああ、俺と凪で威力が違うのは、魔力が断然に違うからだ。こっちで言うと気力ってところか。」

 

「気力……ですか。」

 

如月「ああ、例えるなら、同じ殴るという行為は鍛錬をしている者としていない者とでは威力が全然違う。そんな感じか。」

 

「なんとなくは、分かります。」

 

如月「なんとなくでいいよ。俺も説明しにくい。でも、凪は気弾をあそこまでの威力に出来たんだから、そんな感じで鍛えれば良いよ。よし、休憩しよう。慣れないことをしたんだ疲れただろ。」

 

「はい、結構疲れました。」

 

如月「言っといてなんだが、凪が疲れたなんて、よほどだな。」

 

と苦笑する。

 

「でも、副長。このような力はどうやって身に着けたのですか?」

 

如月「この能力は、神様からもらったんだ。」

 

「は?神様ですか?」

 

如月「あれ?言ってなかったっけ?俺、一回死んでるんだよ。しかも、神様が間違えて殺しちゃったらしいんだ。だから、この力をもらって、この世界に来たんだ。この世界に来たのも、どういう世界か内緒にされていたんだ。」

 

「え、じゃあ、副長は死人なのですか?」

 

如月「いや、生きてるよ。この世界に生き返らせてくれたんだ。まあ、無理に理解しようとするな。そんなものだという認識で良い。さて、練習を再開するぞ。」

 

「はい、副長。」

 

その後、夕方まで練習は続き、凪は、メラが使えるようになった。次は、ヒャドを教えるか。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十七話

誤字・脱字のご報告ありがとうございました。

直させていただきました。




「それでは、他に何か報告すべき意見はある?」

 

「いえ、春蘭の件で最後です。」

 

官軍を助けに行ったら、敵の策にはめられて、孫策と潰し合いになりそうだったけど、孫策と共闘して黄巾党を倒しました。ついでに、孫策に借りを一つ作りました。ってとこか。

 

「黄巾党はこちらの予測以上の成長を続けているわ。官軍はあてにならないけれど……私たちの民を連中の好きにさせることは許さない。いいわね!」

 

「分かってます!全部、守るんですよね!」

 

季衣、よく分かってんじゃねえか。あとでナデナデしてやろう。

 

「そうよ。それにもうすぐ、私たちが今までに積み重ねてきたことが実を結ぶはずよ。それが、奴らの最後になるでしょう。」

 

色々してきたからな。実を結んでくれなきゃ困る。

 

「民たちの血も米も、一粒たりとて渡さないこと!以上よ!」

 

そして、その日の軍議は解散となった。

 

今、俺と一刀と凪は情報収集の真っ最中だ。

 

如月「凪、大丈夫か?昨日、南から帰ってきたばかりだろ?」

 

「大丈夫です。鍛えてますから。」

 

一刀「真桜も沙和もいるし、季衣にも言われたんだろ?あんまり無理するなよ。」

 

「自分……こういうことしか、出来ませんから。」

 

健さんですか!凪△です。

 

一刀「こういうこと、なんて言わないの。凪たちが情報収集をしてくれるから、華琳も正確な判断が出来るんだよ。」

 

「……はい!そういえば副長。」

 

如月「んー、どうした?」

 

「あのあと、鍛錬していたら、こんなことも出来るようになりました。」

 

と言って、両拳に炎を纏わせた。

 

如月「おお!両手に同時にか。しかも、その威力だとメラミだぞ。メラミは、メラの上位呪文で中級呪文だな。」

 

一刀「凪すげー!俺はまだ、気を感じる段階だからまだまだなんだ。」

 

如月「凪、両手で出来るなら、両足でも出来るぞ。出来たら、俺に向かって撃ってこい!」

 

「はい、副長。はああああ、はっ!」

 

凪が俺に向けて右足で撃ってくる。

 

一刀「ちょ、如月、危ない。避けろって!」

 

「副長!避けてください!」

 

如月「心配するな二人とも!ふん!」

 

超高速の掌撃を放ち、メラミを上に打ち上げる。

 

「副長、すごい。」

 

一刀「如月、それは、フェニックスウイング!」

 

如月「まぁ、これくらいは出来ないとな。凪、すごいじゃないか。」

 

凪の頭をなでる。ナデナデ。

 

「副長//////」

 

如月「おー、てれてる凪も可愛いなぁ。なあ、一刀?」

 

「か、かわ//////」

 

一刀「そうだな。だけど、もうそろそろ戻ってこい二人とも。」

 

如月「しょうがないか。じゃあ凪、あっちのやつらを頼む。俺はこっちをやるから。殺すなよ。」

 

「はい、副長。でぇぇいっ!」

 

如月「おらぁ!」

 

ローリングソバットで一人、正拳突きで一人倒し、

 

一刀「みんな、周囲を警戒!敵部隊がいる可能性がある。何人かはこっちに来て、連中を縛るのを手伝ってくれ。」

 

「隊長、副長。何か、手紙らしきものを持っていたのですが。」

 

如月「中を見てみるか。……ふむ、汚いけど、地図と集合場所が書いてあるな。」

 

一刀「こいつら、連絡兵か。」

 

如月「連中、こんな方法をとるようになりやがった。」

 

連絡兵は何回か捕まえたことがあるが、どれも口頭での連絡ばかりで、中には連絡事項を間違えて覚えているヤツもいたな。

 

一刀「任務完了だ。すぐに引き上げる。」

 

「「了解です。」」

 

すぐに城へ引き上げた。

 

「大手柄ね、凪。」

 

「いえ、手柄は副長だと思うのですが……」

 

如月「え、だって、手紙を見つけたの凪じゃん。なら、手柄は凪だよ。ねえ、華琳?」

 

「そうよ、凪。あなたが見つけたのだから、手柄はあなたの物よ。」

 

「……はっ。」

 

「先ほど偵察に出した隊が戻ってきました。連中の物資の輸送経路と照らし合わせて検証もしてみましたが、敵の本隊で間違いないようです。」

 

一刀「……と言う事は張角もそこにいる?」

 

「ああ。張三姉妹の三人がそろっているとの報告も入っている。」

 

「間違いないのね。」

 

「何というか……三人の歌を全員が取り囲んで聞いていて、異様な雰囲気を漂わせていたとか。」

 

「……何かの儀式?」

 

一刀「まるでライブだな。」

 

如月「確かに、ライブだな。」

 

「らいぶ?」

 

如月「大人数で歌い手の歌を聴く集会だな。俺らの世界じゃ、千人や数万人単位の集まりもあったな。」

 

「よく分からんな。そんな千や万も集まっては、号令や銅鑼ならともかく……歌声など、まともに聞こえないだろう。」

 

如月「俺らの世界には、音や声を大きくできる絡繰があったんだが、こっちじゃそんなもの無いだろうし。」

 

「で、それは何をする集まりなの?」

 

一刀「娯楽の一環だよ。今回の場合は、士気高揚も兼ねてるんだろうけどね。感想は連中に聞いてくれ。」

 

ライブの独特の雰囲気は味わってみないと分からないしな。口じゃうまく説明できん。

 

「そうすることにしましょう。ともかく、凪のおかげでこの件は一気にカタがつきそうね。千載一遇の好機と思いなさい。皆、決戦よ!」

 

華琳の一言により準備を済ませてから、黄巾党殲滅のため出撃した。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十八話

「れんほーちゃーん。おーなーかーすーいーたー。」

 

「そんなに言わなくても、分かっているわよ。」

 

「人和。わたし、もうこんな所いたくないわよ。ご飯も少ないし、お風呂だってちょくちょく入れないし……何より、ずーっと天幕の中で息がつまりそう!」

 

「それも分かってるわよ。でも仕方ないでしょ……曹操ってヤツに糧食が焼かれちゃったんだから。」

 

「仕方なくないわよ。別の所に行けばいいでしょ。今までだって、そうやって移動してたじゃない。」

 

「……私たちの活動が朝廷に目を付けられたらしくてね。黄巾党の討伐命令が大陸中に回っているのよ。」

 

「……はぁ?私たち何もしてないわよ!」

 

「まわりの連中がね……」

 

「なら、置いていけばいいじゃない。」

 

「何度か試してみたけど、その度に誰かが寄ってきて、一人来たら、百人来るんだから。」

 

「まったくもぅ。何でこんなことになったのー?」

 

「姉さんたちが『大陸のみんなに愛されたいのー!』とか『大陸をとるわよ!』なんて言ったからじゃない。……はぁ。」

 

一刀「秋蘭。本隊到着したって。」

 

「そうか……各隊の報告はまとまったか?」

 

「ちょうど終わった所やで。連中、かなりグダグダみたいやな。」

 

一刀「なあ。華琳の予想って結局なんだったんだ?」

 

如月「一刀、分かってなかったのか。あとで、説明する。真桜、報告を。」

 

「はいはい。まず、連中の総数だけど、約二十万……」

 

「うはー。ものすごい大軍隊なのー!」

 

「……なんやけど、その内戦えそうなんは……三万くらいやないかな。武器も食料も全然足りてるように見えんのよ。そのわりに、さっきもどっかの敗残兵みたいなのが合流してたから……」

 

「さっきの大兵力は、その非戦力を合わせた上での数と言う事か。」

 

「せや。あちこちで内輪もめしとったみたいやから、一枚岩ではないみたいや。指揮系統もバラバラなんちゃうかな。」

 

如月「戦闘力を奪った連中をまとめて、わざと戦えない頭数を増やして、動けなくする。太りすぎればただの的と言う事だ。」

 

「……太りすぎたら……」

 

「……イヤな例えなの。」

 

「……同感です。」

 

如月「別にお前らは、もう少し食べてもいいと思うけどな。まぁ、太りすぎたら、細くしてやるよ・・・・俺直々にな。」

 

「「「「ひっ!」」」」

 

「何をそんなに怯えているんだお前らは?」

 

「秋蘭様、ウチら副長の鍛錬につきおうたことがあるんやけど……」

 

「三日くらいまともに動けなかったの。」

 

一刀「俺も一週間くらい動けなかった。もう、二度とやりたくない。」

 

「秋蘭様も体験してみては?私も正直やりたくありません。」

 

「そ、そんなにか。凪が拒絶するほどか。とりあえず、華琳様の本隊に伝令を出せ。皆は予定通りの配置で、各個かく乱を開始しろ。攻撃の機は各々の判断に任せるが……張三姉妹だけには手を出すなよ。以上、解散!」

 

んじゃ、配置につきますかね。

 

「張角様!張宝様!張梁様!」

 

「何?どうしたの?」

 

「敵の奇襲です!各所から、火の手が!」

 

「何ですって!すぐに消火活動を!」

 

「各々でやっているようですが、火の手が多いのと誰に指示をすればよいのかわからず……」

 

「ぐ……っ。無駄に増えるから……。」

 

「「「どうしましょう、どうしましょう……」」」

 

「ともかく、敵の攻撃があるだろうから、皆に警戒するように伝えなさい!火事も手の回るものが消せばいい!」

 

「「「はいっ!」」」

 

「……まったくもぅ。もう潮時ね。応援がどうこう言っている場合ではないわ。……よっと」

 

張梁が三人分の荷物を出す。

 

「何?その荷物?」

 

「逃げる支度よ。三人分あるから、皆でもう一度、一からやり直しましょう。」

 

「……仕方ないわね。でも、二人がいるなら。」

 

「そだねー。ちーちゃんとれんほーちゃんがいれば、何度だってやり直せるよね♪」

 

「そういうこと。そうだ、これも……」

 

「太平なんとかだっけ……?」

 

「もう、そんなのいいよぅ。二人がいれば何もいらないから、早く逃げようよー!」

 

「華琳様、秋蘭達先発隊が行動を開始したようです。敵陣各所から火の手が上がりました。」

 

「秋蘭からの伝令が届きました。敵の状況は完全に予想通り、当初の作戦にて奇襲をかけると。こちらも作戦通りに動いてほしいとのことです。」

 

「了解……桂花。決めていた通りに動きなさい。」

 

「御意!」

 

「先日あれほど苦戦したというのに……何ですか、今日の容易さは?」

 

「少数の兵で春蘭程度を扱える器はいても……あれだけの規模の兵をまとめ、扱える器はいなかった。ただそれだけのことよ。」

 

「なるほど。私程度を……って華琳様!それはひどうございます。」

 

「ふふ、冗談よ。」

 

「華琳様。そろそろ、こちらも動こうと思うのですが……号令をいただけますか?」

 

「あら、もう?もう少し春蘭と遊んでいたかったのだけれど……秋蘭達、張り切りすぎではない?」

 

「向こうの混乱が輪をかけてひどいのでしょう。急がなければ、張三姉妹がこちらではなく、身内に殺されかねません。」

 

「それはそれで問題ね……分かったわ。」

 

後方の兵へ向き直り、力強い号令をかける。

 

「皆の者、聴け!汲めない霧は葉の上に集い、すでにただの雫と成り果てた!山を歩き、情報を求めて霧の中をさまよう時期はもうおしまい。今度はこちらが飲み干してやる番!ならず者どもが寄り集まっただけの烏合の衆と我との決定的な力の差……この私にしっかりと見せなさい。総員、攻撃を開始せよっ!」

 

一刀「みんな、華琳達本隊が来た。本隊と合流する。秋蘭と沙和と真桜の隊が右翼。俺達は季衣と如月と合流して左翼だ。」

 

「兄ちゃーん。」

 

如月「よっ!おまたせ!」

 

一刀「二人とも大丈夫だったか?」

 

如月「こっちが一方的過ぎて可哀そすぎだわ、ありゃ。」

 

「うん。で、華琳様も来たし、そろそろかなって如月兄ちゃんが。」

 

一刀「こっちも合流しようと思ってたんだ。ちょうど良かったよ。」

 

「隊長、指示を。」

 

一刀「いや、俺そういうの苦手だし。軍師タイプだからむかないと思う。」

 

「なら、副長お願いできますか?」

 

如月「俺か、しょうがないな。」

 

あー、あーと声出しをおこない、

 

如月「これより俺らは本隊に合流、合流後は本隊左翼として攻撃を続行する。ただし、張三姉妹は生け捕りにしろ!この戦を持って黄巾党を殲滅させる。今までの借りを返してやれ!全軍突撃!」

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

十九話

革命―蒼天の覇王を今更買ってやり始めました。

新キャラ達は皆可愛いですね。

まだ、クリアしてないですが。

柳林可愛いですね!華侖と栄華と香風は英雄譚に出てきた時から可愛いですよね。

これが書き終わったら蒼天の覇王編でも書きたいですね。

あこがれていた 日本の街に 足を踏み入れ どうぞよろしく

柳林に歌わせてみますか



「このあたりまで来れば……平気かな?」

 

「もう声もだいぶ小さくなってるしねー。……でも、みんなには悪いことしちゃったかな?」

 

「正直、ここまでの物になるとは思ってなかったし……潮時でしょうね。」

 

「けど、これで私たちも自由の身よっ!ご飯もお風呂も入り放題よねっ!」

 

「……お金ないけどね。」

 

「そんなものはまた稼げばいいんだよ。ねー?」

 

「そう……そうよ!また三人で旅をして、楽しく歌って過ごしましょうよ!」

 

「で、大陸で一番の……」

 

「今度こそ大陸の一番に……っ!」

 

如月「盛り上がっている所悪いが、君らが張三姉妹か?」

 

「な……っ!」

 

「く……っ。こんなところまで……!」

 

「どうしよう……もう護衛の人いないよー?」

 

「おとなしくついてこれば悪い様にはしないが。」

 

「……ついていかなかったら?」

 

如月「幸い俺ら二人とも、無手の心得があってな。君らを傷つけずに捕まえることが出来る。」

 

「そっちの子はその堅そうなので殴るの?」

 

「心配しなくても手加減はしてやる。」

 

「そういう問題じゃない!」

 

「張角様っ!」

 

「テメーら!俺達の張宝ちゃんに何しようとしてんだっ!」

 

如月「うるせーのが来たな。凪、頼む。」

 

「はい。はああああっ!」

 

「ぐはっ!」

 

「がはっ!」

 

凪の気弾でぶっ飛んでいく黄巾兵。

 

「何あれ!ぶっ飛んだわよ!」

 

「……あきらめましょう姉さん。……いきなり殺したりはしないのよね?」

 

如月「ああ、そう言ってた。」

 

「……ならいいわ。投降しましょう。」

 

「人和……」

 

「れんほーちゃん……」

 

「……で、あなたたちが……張三姉妹?」

 

「そうよ。悪い?」

 

「季衣、間違いない?」

 

「はい。ボクが見たのと同じ人たちだと思います。」

 

「あ、私たちの歌、聞いてくれてたんだねー。どうだったー?」

 

「すっごく上手だったよ!」

 

「ほんと!?ありがとー♪」

 

一刀「それが、どうしてこんなことしたんだ?見たところ普通の旅芸人みたいだけど?」

 

「……色々あったのよ。」

 

「色々ねぇ……?ではその色々とやらを話してみなさい。」

 

「話したら斬る気でしょう!討伐命令が下っているのは、知ってるんだから!」

 

「それは話を聞いてから決めることよ。それから一つ誤解をしている用だけれど……あなた達の正体を知っているのは、おそらく私たちだけだわ。そうよね桂花。」

 

「はい。貴方達ここ最近、私たちの領を出ていなかったでしょう。」

 

「あれだけ周りの捜索や国境の警備が厳しくなったら……出ていきたくても行けないでしょう。」

 

「ですから現状、首魁の張角の名前こそ知られていますが……他の諸侯たちは、張角の正体は不明のままです。」

 

「……どういう事?」

 

「誰を尋問しても、張三姉妹の正体を口にしなかったからよ。……大した人気じゃない。それに、この騒ぎに便乗した盗賊や山賊は、そもそも張角の正体を知らないもの。そいつらのデタラメな証言が混乱に拍車をかけてね……。確か今の張角の想像図は……一刀。」

 

一刀「……これか?」

 

一刀が持っている姿絵に描いてあるのは、身長三メートルはあろうかというヒゲモジャの大男だった。しかも、腕が八本、足が五本、おまけに角やしっぽまで。

 

「えー!お姉ちゃん、こんな怪物じゃないよー!」

 

「いや、いくら名前に角(かく)があるからって、角(つの)はないでしょ……角(つの)は!」

 

「まぁ、この程度という事よ。」

 

「何が言いたいの?」

 

「黙ってあげてもいい、と言っているのよ。あなた達の人を集める才覚はそうとうなものよ。それを私のために使うというなら、生かしてあげてもよいわ。」

 

「……目的は?」

 

「私が大陸に覇を唱えるには、今の勢力では到底足りない。だから、あなた達の力を使い、兵を集めさせてもらうわ。」

 

「そのために働けと……?」

 

「ええ、活動に必要なお金は出してあげましょう。活動地域は、私の領内なら自由に動いて構わないわ。通行証も出しましょう。」

 

「……曹操。あなた、これから自分の領土を広げていく気なのよね。そこは私たちが旅が出来る、安全な所になるの?」

 

「あたりまえでしょう。平和にならないのなら、わざわざ領土を広げる意味はないわ。」

 

「……分かったわ。その条件、飲みましょう。」

 

「ちょっと人和!なに勝手に決めて……姉さんも何か言ってやってよ!」

 

「えー。だってお姉ちゃん、難しい話って良く分からないし……」

 

「あーもう、役に立たないわねっ!」

 

「……」

 

「……どうした秋蘭。なぜ私を見る?」

 

「いや……なんでもない。」

 

如月・一刀「「(気持ちはよーく分かるぞ。秋蘭。)」」

 

俺と一刀は同時にうなずく。

 

如月「張宝、君らに選択肢はない。断ればこれだぞ。」

 

俺は親指を首に持っていきスッと横に移動させる。

 

「この人の言う通り。生かしてくれる上に、自由に活動するための資金までくれて、自由に歌っていいなんて……正直破格の条件だと、私は思う。」

 

「……だって、こいつの領地だけなんでしょう?」

 

如月「俺らが勝手に広げていくし、最終的には大陸全部が華琳のものになるから、色々行けるようになる。」

 

「如月の言う通りよ。あなた達は、私の広げた領土の中で自由に歌ってくれればいい。」

 

「用が済んだからって、殺したりしないわよね?」

 

「用済みになったら支援を打ち切るだけ。でも、そのころには大陸一の歌い手になっているのでしょう?」

 

「……面白いじゃない。それは、この張三姉妹に対する挑戦ということでいいのね?」

 

「そう取るのなら、そう取ればいいわ。」

 

「よし!なら決まりね!」

 

「……えーっと。結局私たちは助かる、って事でいいのかなぁ……?」

 

「それに、大陸中を旅して回れるのよ!今度こそあの太平何とかって本が無くても、大陸の一番をとって見せるわよ!」

 

一刀「これが黄巾党の長ねぇ。」

 

如月「俺らが知ってる歴史なんて、この世界じゃアテにならんなぁ。」

 

「……ちょっと待ちなさい。」

 

「何?」

 

「さっき、太平何とかって。」

 

「太平要術?」

 

「あなた達、それをどうしたの!」

 

「応援してくれるって人にもらったんだけど、逃げてくるときに陣地に置いてきたの。」

 

「恐らく、もう灰になっているはず。……それがどうしたの?」

 

「いえ、……そう。あの書は灰になったのね。」

 

「華琳様。探してまいりましょうか?」

 

「……不要よ。それよりあの陣にもう一度火を。誰かに拾われて悪用されては、今日のような事態になりかねないわ。」

 

「承知いたしました。」

 

一刀「その本、ずっと探してたんだろ?いいのか?」

 

「いいわ。それがあの書の天命なのでしょう。……ただあなた達は私の所にいなさい。どうせ、行く当てもないんでしょう?」

 

如月「そうしてくれると助かる。」

 

こうして、張三姉妹の処遇が決まった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二十話

張三姉妹の処遇が決まった後、凪を探しているんだが、どこにいるんだろう?

 

「……ふぅ。」

 

あ、いたいた。

 

一刀「お疲れ様、凪。」

 

如月「お疲れ、凪。大活躍だったな。」

 

「あ、隊長、副長、みんな……」

 

「そうそう。凪ちゃん、今回は大活躍だったのー。華琳様もすっごく褒めてたのー。」

 

「いや、張三姉妹を捕えたのは副長じゃないですか。」

 

如月「凪がやつらの集合場所の手紙を見つけたからこそ、黄巾党を瓦解させ、張三姉妹を捕えることが出来たんだ。だから、凪の手柄だよ。」

 

「はい、分かりました。」

 

一刀「でも、なんかあまり、嬉しくなさそうだな……」

 

「そんなことないよなー。凪、これでもめっちゃ喜んでんねんで!」

 

如月「そうなの?」

 

表情が全然変わってないけど……まぁ、付き合いの長い真桜が言うならそうなんだな。

 

「……はい、これで大陸も平和になると。」

 

一刀「そうだよな。三人とも、そのために華琳の部下になったんだもんな。……ってことは、これからは?」

 

「もちろん華琳様の覇業に力を貸すつもりです。」

 

一刀「なら良かった。いきなり故郷に帰るとか言われたら寂しくなるなーって思ってさ。」

 

如月「ああ、せっかく可愛い三人が部下になってくれたのに、すぐにサヨナラは寂しいって思っちまったぞ。」

 

「そうですか////」

 

「可愛いって、そんなの当り前なのー。ほら、凪ちゃんももっと笑顔になるのー!ほら、むにむにー。」

 

「こ、こら、沙和……やへふぇ、やめふぇっへ!」

 

「そんな、可愛いやなんてー。お、沙和!こっちもうちょっと、ひっぱった方がええんちゃうか?」

 

「ひゃへー!ひゃへろ、たいひょう、ふくひょうたひゅけへ!」

 

一刀「んー?凪はもっと笑ってた方が可愛いって。なあ、みんな?」

 

「そうなの。凪ちゃんはもっと笑った方がいいの。」

 

如月「確かにな。二人とももっとやってやりなさい。」

 

「副長からも許可が出たし、沙和、やってまえ!」

 

「おー!ほらほら、こっちもこうやってー。」

 

「やめひぇー!」

 

如月「よし、華琳から俺の分の褒賞を含めて多めにもらったから、城に帰ったら隊のみんなで宴会するぞ!華琳が軍議は次の日にするって言ってたから、荷ほどきだけすませたら、あとは明日にやっちまおう!」

 

「おおー!さすが華琳様、話が分かる!」

 

「わ、わひゃひは……!」

 

一刀「主役の凪が来ないんじゃ、意味ないだろ。真桜、沙和、今日は絶対に凪を逃がすなよ。隊長命令だ!」

 

「まかせときぃ!」

 

「沙和におまかせなのー!」

 

「ひょんなー!」

 

……と、喜んだのも束の間。俺達は広間に集合をかけられていた。みんなあきらかに不満そうな顔をしている。

 

一刀「華琳。今日は会議しないんじゃないの?」

 

「私はする気なかったわよ。あなた達は宴会をする予定だったのでしょう?」

 

「宴会……ダメなん?」

 

「馬鹿言いなさい。そのために貴方達には褒賞をあげたのよ。……私だって春蘭や秋蘭とゆっくり閨で楽しむつもりだったわよ。」

 

如月「いや、華琳さん。そういう事はもっと小さな声で言ってくれ。」

 

「すまんな。みんな疲れとるのに集めたりして。すぐ、すますから堪忍してや。」

 

「あなたが何進将軍の名代?」

 

「や、ウチやない。ウチは名代の副官の張遼や。」

 

「なんだ。将軍が直々にと言う事ではないのか。」

 

「あいつが外に出るわけないやろ。クソ十常侍どもの牽制で忙しいんやから。」

 

十常侍ね。面倒くさそうだな。魑魅魍魎どもは。

 

「呂布さまのおなーりーですぞ。」

 

なに!呂布だと!生呂布が見れるのか!あ、一刀もビックリしてる。そりゃそうか。生呂布だもんな。

 

「……」

 

「曹操殿、こちらへ。」

 

「はっ。」

 

「……」

 

何も言わねーけど大丈夫か?

 

「えーっと、呂布殿は、此度の黄巾党の討伐、大儀であった!と仰せなのです!」

 

「……は」

 

「……」

 

「して、張角の首級は?と仰せなのです!」

 

「張角は首級を奪われることを恐れ、炎の中に消えました。もはや生きてはおりますまい。」

 

「……」

 

「ぐむぅ……首級が無いとは片手落ちだな、曹操殿。と仰せなのです。」

 

「……申し訳ありません。」

 

如月「なぁ、秋蘭。何進って誰?」

 

「軍部の頂点にいるお方だ。朝廷での地位でいえば我々どころか華琳様すら足元にも及ばん。」

 

「何進はね、皇后の兄で肉屋のせがれよ。」

 

一刀「お肉屋さんね……」

 

まぁ、肉屋の息子が大将軍ねぇ。しょうがないよね、こんな時代だし。

 

「……」

 

「今日は貴公の此度の功績を称え、西園八校尉が一人に任命するという陛下のお達しを伝えに来た。と仰せなのです。」

 

「……」

 

「これからも陛下のために働くように。では、用件だけではあるが、これで失礼させてもらう。と仰せなのです!」

 

如月「てか、全然しゃべってないけど……」

 

一刀「横の女の子が代弁してただけだな。」

 

「……ねむい。」

 

如月「やっとしゃべったと思ったら眠いだけかよ。……ん?」

 

終わったと思ったら、呂布が俺の方に来る。

 

「……きみ、強い?」

 

如月「……は?」

 

「……強い?」

 

「ああ、こいつは強いぞ。はっはっは!」

 

如月「春蘭、何言ってんだよ!」

 

「……恋……」

 

如月「……は?」

 

「……真名、恋」

 

如月「ちょ!真名!?いいの?」

 

「……(コクッ)」

 

如月「あ、ありがとう。俺は龍谷如月。如月って呼んで。」

 

「ん、如月。よろしく。」

 

如月「ああ、よろしく。」

 

ナデナデと頭をなでる。

 

「……ん////」

 

うん、嬉しそうだ。

 

「ちんきゅーキーック!」

 

何か声が聞こえたと思ったら、女の子が飛び蹴りをしてきた。あの子、陳宮だったのか。まぁ、それはいいとして、俺は陳宮の足をつかみ、床へ降ろす。

 

「何で勝手に恋殿の真名を呼んでいるのですか!しかも、頭までなでて!」

 

如月「いや!許してもらったし!頭なでたのは、手が勝手に動いた。」

 

一刀「如月ってなでグセがあるよな。」

 

「うう……恋殿ー!」

 

「ねね……いきなり蹴っちゃダメ。」

 

「恋殿・・・・うっうっ」

 

「ねね何やっとんや。すまんかったな。あとは宴会でも何でも、ゆっくり楽しんだらええよ。」

 

と言って、張遼と呂布と陳宮は広間を出ていく。

 

「……」

 

あれ?なんか変な空気。しかも、みんなして俺を見てるし。

 

「如月」

 

怒気をはらんだ声で華琳に呼ばれる。何かイヤな予感がするから、スカラを重ね掛けしておこう。

 

如月「……はい」

 

華琳に近づく。

 

「ふんっ!」

 

ドゴッ!と俺の腹に拳が突き刺さる。マジかよ。

 

「春蘭、秋蘭。閨に戻るわよ!気分が悪いったらありはしない!一刀達も今日は休みなさい。作業は明日からで構わないわ。二日酔いで遅れてきても目をつぶってあげるから、思いっきり羽目を外すといいわ。」

 

一刀「あ、ああ。分かった。そうさせてもらうよ。」

 

華琳が広間を出て行ったあと、一刀たちが俺によって来る。

 

一刀「如月。大丈夫か?」

 

如月「なぁ、一刀。俺ってドラゴニックオーラ纏ってんじゃん。それに、スカラを重ね掛けしてたんだよ。それなのに、この威力は……ないだろ。」

 

バタっ!と倒れ、

 

一刀「如月、大丈夫か!如月!」

 

如月「いや……大丈夫だけど、あまり飲めないかもしれない。まぁ、みんな俺に遠慮せずに飲めよ。とりあえず、飲みに行くか……。」

 

一刀「分かった。無理するなよ。」

 

そして、みんなで飲みに行った。あんまり飲めなかったけど、その分はしゃぎまわった。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二十一話

真・恋姫の中で一番好きな話です。


一刀「こっちの区画、案外スラムになってるんだよなぁ……もう少しこう、警備の人員を増やしつつ割り振っていかないと。」

 

如月「じゃあ、こっちの人数を増やして、こっちらへんで人数を調整したらどうだ?」

 

一刀「そうだな、しばらくはそうしようか。うーん、予算も人員も足りないな。見直す必要があるな。でも、あんまり無理を言うと桂花に怒られるしなぁ……」

 

如月「いやでも、足りないものは足りないんだから、必要経費だから。無駄な雑費とか見直して、申請しよう。」

 

一刀「そうだな。一回それで出してみるか。」

 

と、一刀とあれこれなやんでいると、

 

「たいちょー、ふくちょー、まいどー!!」

 

「やっほー!今日もいいお天気なのー♪」

 

バンッ!と突然部屋の扉が勢いよく開けられた。何事かと思い二人して手を止め顔を上げる。

 

「ねねねー、二人してなにしてるのー?」

 

「失礼します。」

 

「二人して部屋にこもって、はっ!まさか!」

 

一刀「んなことしてねーよ。俺らはお仕事してるんだぞー?お・し・ご・と。」

 

「えぇー、うそぉ~。」

 

如月「嘘じゃねーよ。これ、みてみろ。」

 

机上の紙を手に取り、三人の前に広げて見せた。

 

「小さい文字ばかりで、分かりづらいのー」

 

「これは……街の地図ですか?」

 

一刀「そ。街の警備計画の見直しをしてたんだ。最近どうも、区画によって格差が出来てるからさー。」

 

「あー……西地区のことか?」

 

如月「そうそう。最近ヒドイじゃん、あそこ。」

 

「あっこは元々、ガラの悪い奴らが集まっとるからなー」

 

「うんうん~。ここにしてはめっちゃ荒んでるよねー」

 

「人だけでなく、道にはゴミがあふれ、家屋もボロボロなものが多いですからね。」

 

如月「だろ。だから一刀と一緒にこんなものを考えたんだ。見てくれ。」

 

と言いながら、見出しの部分に指をさし、三人娘に渡す。

 

「なになにぃ~……『割れ窓理論』?……なんじゃそりゃ」

 

一刀「えっと……普段なら見逃してしまうような、軽微な犯罪を取り締まることで、凶悪犯罪を含めた犯罪全体を抑止できるとする……環境犯罪学上の理論のこと。」

 

「けいび……かんきょう、はんざい……?隊長~!ますますワケが分からなくなったのー」

 

如月「簡単に言うと、ゴミのポイ捨てとかの軽微な犯罪も見逃さないでバンバン取り締まって、この地区は治安がいいですよーって名実ともに住民にしっかりと体感させていって、犯罪を起こしにくいっていう印象を作り上げるってこと。」

 

「治安がええと、悪いことしにくいもんか?何かしでかすヤツは、どこいったってやるんちゃうの?」

 

一刀「心理的なものだよ。万引きなんてザラにあるって場所よりは、そうじゃないほうがやりずらいだろ。」

 

「ふむぅー、そーいわれるとなんとなーく分かるかもなのー」

 

如月「取り締まりとともに、街区の掃除や建築物の修繕なんかもして、きれいな街にするんだ。きれいな街だと心も荒みにくいし、犯罪を起こそうってなりづらいだろ。」

 

一刀「ゴミだらけの所にポイ捨てしてもなんとも思わないけど、ゴミが無い所にポイ捨てしようとすると戸惑ってしまうとか。それと同じ。」

 

「なるほど。周りに感化されやすかったり、人と『同じ』だと安心するという、人間の心理を見事についていますね。」

 

「へえぇ~、そっかそっかー。せやなぁー!ウチ、隊長たちのことちょーと見直したわ。」

 

一刀「へっへっへー。そうだろう、そうだろう。」

 

如月「まぁ、自慢したいところだが、実はこれ俺らの世界じゃ有名でいろいろな所で使われているんだ。それを活用しただけ。」

 

「それでも、西地区の改革にこの方法を思いついたんは、素直にすごいと思うで。」

 

「沙和もめっちゃ良い計画だと思うよ。ね、凪ちゃん。」

 

「ええ。隊長、副長ぜひとも実現に向けて頑張りましょう。」

 

一刀「お、お前ら……」

 

如月「そうだな。実現に向けて頑張ろう。てか、どうしたんだ三人そろって。」

 

「ウチら、隊長たちを昼ごはんに誘いに来てんから。」

 

如月「昼飯か。もう、そんな時間だったんだな。」

 

「そうそうー!カワイイ女の子とご飯なんて嬉しいよね~」

 

「……私は止めたのですが。」

 

テンションの高い真桜と沙和とは対象的に、申し訳なさそうに頭を下げた凪。きっと、仕事の邪魔をしてしまったと気にしているんだろうな。

 

如月「いや、気にするな。俺達も昼飯食いそこなわずにすんだし。なにより、カワイイ女の子たちとご飯なんて嬉しすぎるわ。」

 

うっ///と頬を染める三人娘。照れるなら自爆するなよ沙和。

 

一刀「それに、親睦も深まって一石二鳥だしな。それで何を食いに行く?」

 

「では、麻婆で」

 

如月「即答かい!」

 

と裏拳で凪にツッコミを入れるが不思議そうに首を傾げる。

 

「……なんですか?」

 

如月「遠慮してた割に答えが早かったから。しかも麻婆だろ。ちょっと意外だなと。」

 

「ふくちょー、あんな!凪は激辛料理が大好きやねんっ!」

 

「っ!!」

 

真桜は勢いよく凪の後ろに抱き着き、首に腕を回し、指先でちょんちょんとほっぺを突っつく。

 

「……や、やめ……副長の前で……」

 

「なー♪好きやんなー、辛いもん。よう食べてるし。」

 

「そんなことはない。別に、普通……」

 

「ねーねー、凪ちゃんに質問そのいち~!麻婆茄子と茄子田楽どっちが好きー?」

 

「麻婆」

 

「そのに~!麻婆春雨と拉麺は?」

 

「麻婆」

 

「さいご~!唐辛子と茘枝はー?」

 

「……唐辛子」

 

「ってなわけや」

 

「副長たちには誤解してほしくないのですが、私は決して辛い料理だけが好きだとか、辛い料理だけを食べているとか、そういうワケではなく……」

 

如月「うんうん、わかった、わかった。それじゃあ、昼飯は辛いものにしよっか。」

 

「はいっ!」

 

うん、いい返事だ。こういう一面もあるんだな。そして、食べる店を探すために外に出る。

 

如月「そういえば、どこかオススメの店とかあるの?」

 

「そういうのはねー、凪ちゃんが詳しいのー」

 

「そうそうこう見えても凪は、ウチらの中で一番の食通だからなぁ~!どっか飲み食いしにいくっちゅう時は、いつも凪に案内してもらうねん。」

 

一刀「へぇ~、そうなんだ?」

 

「確かに食べることは好きですが、華琳様達のように上等な食事を好むというワケでもなく、値段や見た目にはこだわらず、ただおいしい料理を食べ、出来ればそれを自分の手で再現したいと思っているだけです。」

 

如月「自分で再現?ってことは凪は料理が趣味なのか?」

 

「その件に関しては重要機密のためお教えできません。」

 

如月「そっか、重要機密か。それじゃあしょうがないなぁ。じゃあ凪、オススメの店に案内してくれ。」

 

「はいっ!」

 

凪に案内してもらった店に入り、真桜が麻婆豆腐と炒飯、沙和は麻婆茄子と炒飯と餃子、俺と一刀は店主オススメの麻婆豆腐とご飯にし、俺はご飯大盛りと焼売を追加し、凪は

 

「麻婆豆腐、麻婆茄子、辣子鶏、回鍋肉、全部大盛り唐辛子ビタビタで。」

 

如月「はっ?」

 

一刀「ちょっ!?」

 

「あいよっ!いつもありがとよ」

 

如月・一刀「「いつもなの!?」」

 

一刀「いや……凪が大丈夫なら、俺は全然かまわないけど、さ。」

 

「あははははっ。誰でもビックリしちゃうよねー。沙和も最初はそんなに食べて平気?って聞いちゃったもん。」

 

それからほどなくして、テーブルの上に全員分の料理が並ぶ。ある一角から辛いにおいが漂っているが。

 

一刀「……これが『唐辛子ビタビタ』……」

 

「……おいしそう。」

 

如月「そうか、そうか。おいしそうか。」

 

「……はい」

 

如月「じゃあ、全員分そろったから……」

 

「「「「「いただきます」」」」」

 

沙和と真桜が漫才みたいなやり取りをしていると、真桜が一刀の方を見て、

 

「うわっ!?隊長何してんの!!!」

 

一刀「へっ?」

 

一刀が麻婆丼にしていた。こっちだとみんな抵抗があるみたいだ。

 

如月「じゃあ、ちょっと食べてみるか?おいしいぞ。」

 

三人分の小皿に少量の麻婆丼を作り、三人に渡す。

 

「おわわっ!!?ウマイで、これ!」

 

「うん、おいしー。なにこれビックリー!」

 

「……意外」

 

如月「だろー?あと、こういう丼物はお腹が結構ふくれるし、手軽に出来るしな。素早く食べれるのも利点だな。」

 

ふむ、もう少し丼物の種類を増やして、丼物専門店を出してみるか。と考えていたら、

 

「こ、これは……!!?」

 

ガッシャーンと食器を落としワナワナと振るえる店主の姿

 

「白米に麻婆豆腐だと……!こんな料理未だかつて見たことがない!豆腐を木綿から絹ごしに変え、餡は片栗粉の割合を減らし……こうしてはいられない。すぐに試さなくては!」

 

オッチャンは厨房の奥へ消えていき、ガチャガチャと何かを作っている音が聞こえる。

 

如月「さっそく、作ってるみたいだし、次に来たときには麻婆丼出来てんじゃねーか?また、皆で来るか。」

 

「さんせーなの。」

 

とみんなの了承を受け、食事を再開。再開後、好奇心にかられた一刀が凪の辣子鶏の鶏肉を食べ、口から火を噴いてた。あと、華琳も辛いのが苦手らしい。今度の料理教室の時、気をつけよう。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二十二話

とある日、今日は休日なので、凪にヒャドを教えようと思い声をかけたら、二つ返事でOKをもらった。

 

如月「さて、メラ系の使い方は前に教えたとおり、温度を上げるものだったが、ヒャド系は温度を下げるんだ。では、さっそくやってみよう。前と一緒で気を送るので感覚をつかんでもらいたい。」

 

「はいっ!副長!」

 

と手を出してくれる凪。

 

如月「では、気を送るぞ。感覚をつかんでくれ。手のひらを上に向けて、気を集中させてくれ。」

 

と凪に気を流す。お、どうやら成功したようだ。

 

如月「手のひらの気を地面に向けて放て!」

 

「はいっ!」

 

凪は手のひらの気を地面に向かって放つ。放った先に氷の刃が出現する。

 

如月「これがヒャド。氷の刃で敵を貫く呪文だ。」

 

「おおー。まさか自分で氷を出すことが出来るとは。」

 

如月「あと、ヒャド系の中級呪文がこれだ。ヒャダルコ。」

 

ヒャドより大きな氷の刃を広い範囲に出現させる。

 

如月「ヒャドは一人に攻撃、ヒャダルコは複数人に攻撃ができる。まぁ、とりあえずヒャドを使えるようになろっか。休憩をしてからまた練習だな。」

 

「はいっ!」

 

休憩後、夕方まで練習は続き凪はヒャドをマスターした。

 

如月「凪、晩飯どうする?時間があるなら一緒にどうだ?一刀も誘ってるんだが。」

 

「えっ。ご一緒してもよろしいのですか?」

 

如月「ああ、いいぞ。ちょっと作りたいものがあるからな。凪にも食べてもらって感想が聞きたい。」

 

「では、お言葉に甘えてご一緒させてください。」

 

一刀「きさらぎー、来たぞー。あれ?凪も呼んだんだ。」

 

如月「おう。感想が欲しかったからな。で、華琳も一緒か。」

 

「ええ、かまわないでしょう?」

 

如月「いいよ、いいよ。食べていってくれ。」

 

本日の献立は、味噌汁、肉じゃが、魚の煮付け、鶏のからあげだ。

 

一刀「からあげに味噌汁。肉じゃがに煮つけ。和食だぁ。」

 

如月「ああ、材料があったから作ってみたぜ。久しぶりに食べたかったのもあるが。」

 

「へぇー。これも天の国の料理なのね。」

 

「おいしそうです。」

 

如月「じゃあ、みんなで食べますか。」

 

「「「「いただきます。」」」」

 

一刀「肉じゃがも煮つけも味がしみてて美味いっ!」

 

「この煮物も煮つけもいい味ね。」

 

「……おいしいです。なんだか、ホッとする味ですね。」

 

如月「俺らの国での代表的な家庭料理だからな。」

 

三人にも好評だったな。

 

 

次の日、ある設計図を真桜に渡す。

 

如月「真桜。悪いが次はこれを作ってくれないか。」

 

「副長、何コレ?……五右衛門風呂?……なるほどな。釜戸を築いて釜を乗せて、桶を取り付けてお風呂にすんねんな。」

 

如月「そうそう。一人または二人しか入れないけど、ほぼ毎日好きな時には入れるからな。あと、男女用に二つ作るから工兵使って造ってくれ。あ、改善できるところはしてくれて構わない。底板も忘れないように。頼んだぞ。」

 

「了解や!まかせてや、副長!」

 

数日後、五右衛門風呂が完成したとの報告があり、みんなに入ってもらった。すごく好評だった。

 

五右衛門風呂完成から一週間がたったころに、華琳から呼び出しがあった。

 

「一刀、如月。今日から張三姉妹の仲介役をしてもらうわ。」

 

一刀「仲介役?あの三人と華琳の橋渡しをしろってこと。」

 

「そういうこと。期待してるわよ。」

 

如月「分かった。頑張ってみるよ。」

 

彼女たちを士気向上のためにうまく使うと同時に、暴走しないように注意しろって事か。そのあと彼女たちがよくいるという酒家を訪ねた。

彼女たちはご飯中だったため、華琳から世話役を頼まれたことを伝え、軽く挨拶しただけで終わった。舞台と事務所を用意しないとな。

 

 

如月「今日も今日とて、この街は平和だなぁ。」

 

一刀「そうだな。でも都で董卓が暴れてるってホントかな?って疑いたくなるほど平和だな。」

 

都の洛陽では大将軍の何進が殺され、董卓ってヤツが暴れているらしいとの報告が最近、入ってきている。

 

如月「一刀。だとしたら、あれが始まるな。」

 

一刀「そうだな。あれが始まるな。」

 

と一刀としゃべりながら警邏をしていると

 

「あのぉ……すいません。」

 

一刀「ん?何ですか?」

 

「すみません、お城……」

 

「の前に、おいしい料理を食べさせてくれるところ、おしえてくれよ!」

 

如月「えーっと。どっちに案内した方が?」

 

「なら、何かおいしいものを食べさせてくれる……」

 

「料理屋がたくさん並んでるところ、どこ?」

 

一刀「料理街ね、向こうに屋台通りがあるから……そこでいい?」

 

「おお、兄ちゃん、気がきいてるじゃんか!」

 

如月「それでは、案内するよ。」

 

「おおー!すげー!屋台がたくさんある!兄ちゃん達、どっかオススメの店、おしえてくれよ!」

 

一刀「オススメの店ねー……」

 

と二人して悩んでいると

 

「あ、兄ちゃんたちー!」

 

如月「お、季衣か。どうした?」

 

「これからお昼食べるんだけど、兄ちゃんたちは?」

 

如月「お俺らも昼飯なんだが……そうだ季衣。オススメの店を紹介してよ。」

 

「この辺ー?まかせてよー。」

 

「ん?このちびっ子、詳しいのか?」

 

一刀「ええ、彼女はこの辺の料理屋にすごく詳しいから、きっとおいしいお店も教えてくれますよ。」

 

如月「季衣、すまんが案内してくれ。」

 

「うん!いいよ!」

 

季衣のオススメの店で食べていると

 

「失礼する。」

 

一刀「あ、華琳、秋蘭も」

 

「あら、あなた達も来ていたの。……そちらは?」

 

一刀「おいしい料理屋を案内してくれって頼まれたんで案内してたんだ。」

 

「あ、いらっしゃいませ!曹操様、夏侯淵様。今日もいつものでよろしいですか。」

 

「ええ、お願いするわ。」

 

「私も同じもので。」

 

「はいっ。すぐお持ちしますねー!」

 

一刀「何?二人ともよく来るの?」

 

「まだ若いのに、大した腕の料理人よ。お抱えでほしいくらいなのだけれど、親友に呼ばれてこの街に来たのだけれど、結局合流できなかったらしいのよ。それで、手掛かりが見つかるまでここで働いているんですって。」

 

一刀「親友ねえ……人はどんどん増えてるし、名前だけじゃなかなか見つからないだろうなぁ……」

 

「あら。見つけられないと言うつもり?」

 

一刀「まさか。なかなか見つけられないだろうと言っただけ。そのなかなかをどうにかするのが、俺達の仕事だろ?」

 

「はいっ。おまたせしましたー!」

 

如月「あ、ちょい、お姉さん。」

 

「はい?ご注文ですか?」

 

如月「いや、親友を探してるって聞いたからな。探すのは俺らの仕事だから、手伝えないかなと思って。」

 

「本当ですか?」

 

「ええ、彼は警備隊の副長だから、聞いてみなさい?力になってくれるはずよ。」

 

如月「ああ。で、名前か特徴は分かる?」

 

「そうですね、名前は許緒……」

 

名前を聞いた瞬間に季衣の方を見る。

 

「……にゃ?」

 

「あーーーーーーっ!」

 

「あー。流琉♪どうしてたの?遅いよぅ。」

 

相談されて一秒で解決するとは

 

「遅いよじゃないわよーっ!あんな手紙よこして私を呼んだと思ったら、何でこんな所にいるのよーーーーっ!」

 

「ずーっと待ってたんだよ。城に来いって書いてあったでしょー!」

 

「季衣がお城に勤めてるなんて、冗談だとしか思わないわよ!季衣のばかーーーーっ!」

 

「流琉に言われたくないよぅっ!」

 

いきなりケンカを始める二人。あっけにとられていると、

 

「あー、まんぷく、まんぷく。さーて、腹ごなしにちょっと運動でもするか!斗詩、行くぞ!」

 

「あ、うん」

 

「連絡先なんて手紙くれた人に聞けば……ひゃぅっ!」

 

「そんなの先に確認できるわけ……ひゃふっ!?」

 

季衣と、季衣と互角に戦う子を、ネコの子をつまみ上げるみたいにあっさりと。さすがだなぁ。

 

「お初にお目にかかります、曹孟徳殿。私は顔良と申します。」

 

「あたいは文醜!我が主、袁本初より言伝を預かり、南皮の地よりやって参りました!」

 

「……あまり聞きたくない名を聞いたわね。まぁいいわ、城に戻りましょうか。一刀は私と一緒に城に戻りなさい。如月はその子たちの面倒を見るように。」

 

如月「了解。」

 

一刀「ああ、分かった。」

 

一刀は華琳達と一緒に城に戻り、俺は

 

如月「よし、二人とも。ここで暴れられても他の人に迷惑をかけるからな。別の場所に移動するぞ。」

 

そう言って、二人を連れ出し、近くの森まで連れて行く。その移動中に真桜と詰め所にいたやつらを数人連れて行った。

 

 

 

 

 




醤油や味噌を作ろうとしたら、原作に辛みそや酢醤油の文字が出てきたので、作れず。

恋姫の世界はなんでもアリなんですね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二十三話

季衣とその友達を近くの森に連れてきて

 

如月「よし、ここら辺ならいいだろう。二人とも思いっきりやれ。」

 

「季衣、さっきも言ったけど連絡先くらい書きなさいよーーーー!」

 

「そんなの手紙くれた人に聞けばいいじゃんかーーーー!」

 

すぐさま金属の塊がぶつかり合う

 

「副長。ウチらはどないするの?」

 

如月「街の人がこの森に近づかないようにしよう。あと、攻撃がこっちに飛んできたら避けろよ。死ぬから。」

 

みんな顔が引き締まって、「「はいっ!」」と返事をした。

 

「どりゃーーーー!!」

 

「せりゃーーーー!!」

 

「副長!言ってる傍から飛んできたで!」

 

如月「そうあわてるな。あ、みんな……」

 

「何?副長?」

 

如月「ちゃんと避けろよ。」

 

そう言うとみんな「????」となっているが、飛んできた攻撃をフェニックスウイングで真桜や警邏隊のみんなの方へ飛ばす。

 

「うわーー!」

 

「ちょっ、副長!何してんねん!」

 

「不規則な攻撃の避ける練習。」

 

「アホかーーーー!!」

 

数刻後、華琳や一刀がやってきた。一刀に頼んで警邏隊を数十人連れてくるように頼んでおいたので来てもらっていた。

 

「どう?調子は?」

 

如月「見ての通りだよ。」

 

「副長!折れた木や気絶している鹿や猪はどうなさいますか?」

 

如月「柱とかに使えそうなものは大工さんに頼んで加工してもらおう。細かい枝は風呂の燃料に、鹿や猪はすぐに血抜きして、厨房に持って行ってくれ。」

 

「了解です!」

 

一刀「やるなら徹底的にやれね……。ほんとに全力でやってたんだな、あいつら。で、こっちで死屍累々になってる真桜や先に来た警邏隊のやつらは?」

 

如月「ああ、飛んできたあいつ等の攻撃の避ける練習をやった。もちろん、俺の方に飛んできた攻撃も奴らの方へ跳ね返したが。」

 

一刀「如月って、たまにドSになるよな。真桜、みんな大丈夫か?」

 

「うう……隊長……ウチ、何回死ぬ思うたか、教えたろか?」

 

「……いや、聞きたくない。」

 

如月「で、面会はどうなったんだ?」

 

一刀「ああ。これからみんなで、都に遠征に行くことになったよ。凪と沙和には準備してもらってるよ。」

 

如月「都かぁ……」

 

そうこうしている内に、

 

「……きゅう」

 

「……うみゅう……」

 

あっちも終わったようだ。

 

「ようやく決着がついたようね。」

 

「あ、華琳様……」

 

「曹操様……」

 

「立ちなさい典韋。」

 

「はい。」

 

「もう一度誘わせてもらうわ。季衣と共に、私に力を貸してくれるかしら?料理人ではなく、一人の武人……武将として。」

 

「分かりました。季衣にも会えたし……季衣がこんなにも元気に働いている所なら、私も頑張れます。」

 

こうして、典韋が新しく仲間になった。流琉という真名もあずからせてもらった。

 

 

「きー兄様。きー兄様は空を飛ぶことが出来るって聞いたのですが……」

 

如月「……流琉。この間から気になっていたんだが、」

 

「何ですか?」

 

如月「何で、きー兄様なの?」

 

「え?だって兄様たち、二人いるし、二人とも兄様じゃ分からないじゃないですか。だから分かり易い様に一刀さんが兄様、如月さんがきー兄様です。……ダメですか?」

 

悲しそうな顔をする流琉。

 

如月「いや、まあ、好きに呼べばいいよ。」

 

「はい!きー兄様!」

 

如月「それに流琉につられたのか、季衣もきー兄ちゃんになってるし。」

 

「えっ。ダメなのきー兄ちゃん。」

 

流流と同じく悲しそうな顔をする季衣。

 

如月「はぁ、季衣も好きに呼べばいいよ。」

 

クシャクシャと頭をなでる。可愛い妹分にこんなこと言われてダメって言えるヤツなんていないよな。

 

「で、きー兄様。さっきの質問なんですけど……」

 

如月「ああ、空を飛べることが出来るかってやつね。出来るよ、季衣から聞いたの?」

 

「うん。この前、少しだけど空を飛んだ時、気持ちよかったから。ついついしゃべっちゃった。」

 

「それを聞いて、私にもしてもらえないかなって。……ダメですか?」

 

如月「いや、いいよ。行軍中だけどさっそくやろうか。それじゃ、流琉手を握ってくれ。」

 

「手ですか?はい。」

 

流流が俺の手を握ってくる。流琉の手を握り、俺の馬と流流の馬に「ちょっとの間背中が軽くなるけどいいかい?それと、そのまま上に戻ってくるからね。」と馬たちに確認をとる。馬たちは「大丈夫!心配するな!」と言っているみたいにこちらを見て、鳴く。

 

如月「じゃあ流琉。ゆっくりと浮き上がるから、しっかりと手を握っているんだぞ。」

 

「はい!きー兄様!」

 

「いいなー。きー兄ちゃん、次ボクねっ!」

 

「わかった、わかった。」

 

と季衣に約束して、流流と一緒に空の旅路へ。少し上がった所で流琉を抱き寄せ両腕でしっかりと固定させる。

 

「わぁ!空を飛ぶってこんな感じなんですね!すごく気持ちいいです。」

 

如月「まあな。おっと、もうそろそろ時間だな。降りるぞ。」

 

「えー、もう少し飛んでいたいです。」

 

如月「そう言うな。行軍中だしな。また、やってやるよ。」

 

「本当ですか!約束ですよ、きー兄様!」

 

如月「ああ、約束だ。」

 

そのあと、季衣も空へ連れて行き、地上に戻った後、集合場所へと行軍していく。

 

 

「曹操様!ようこそいらっしゃいまして。」

 

ようやく集合場所につくと、顔良が出迎えてくれた。華琳が軽く挨拶した後、すぐに軍議を開くらしく、華琳、春蘭、秋蘭、一刀は軍議へ、俺と三羽烏は顔良の指示に従って陣の構築、桂花はどこの諸侯が来ているかの調査になった。

 

如月「なあなあ、顔良さん。」

 

「はい、えっと、お名前は……」

 

如月「おっと、すまない。自己紹介がまだだったな。性は龍谷、名は如月。如月と呼んでくれ。で、俺らはどこに陣を張ればいいんだ?」

 

「はい。では如月さん、こちらです。」

 

如月「よし、あとは建てるだけだから。案内ありがとうございました。」

 

「いえいえ、では私も戻りますね。おたがい頑張りましょう。」

 

と顔良が袁紹軍へ戻っていく。

 

 

如月「さて、みんなー!さっさと建てるぞー!」

 

「その必要はないわ。すぐに出発することになったから。」

 

如月「華琳。そうなんだ。みんなー!すぐに出発することになったから立てなくていいぞー!出発の準備をしろー!」

 

「「うーっす!」」

 

荷ほどきも終えてなかったため、陣地展開せずに、すぐに都に向けて行軍を開始した。

 

如月「で、軍議では何が決まったの?」

 

一刀「汜水関は公孫賛と劉備連合が初戦で、袁紹がこの連合の総大将になっただけだ。」

 

如月「えっ、それだけ?」

 

「ええ、それだけよ。ですが、汜水関は公孫賛と劉備ですか……」

 

「ええ。連合の初戦、我々で引き受けた方が良かったかしら?」

 

「いえ、汜水関の将は華雄一人です。それほど強い相手ではありませんし、そこで無駄な力を使う事もないでしょう。戦力は虎牢関まで温存させておくべきかと……」

 

一刀「虎牢関は……呂布と張遼だっけ?」

 

「それは確定事項なのか?」

 

「さっき戻ってきた斥候の情報だから、今のところ最新情報よ。」

 

「なら、その情報、あとで公孫賛と劉備の所にも送ってやりなさい。」

 

「……よろしいので?」

 

「公孫賛は小物だけれど、麗羽と違って借りを借りと理解できる輩よ。劉備というのは良く分からないけれど……公孫賛が信用する人物のようだし、戦いぶりは汜水関で分かるでしょう。」

 

「承知いたしました。」

 

「軍議中、失礼します。華琳様、報告が……」

 

凪が軍議中に入ってきた。本隊からの伝令かな?

 

「何?また麗羽が無理難題でも言い出したの?」

 

「いえ、そうではなくて……袁術殿が先行して勝手に軍を動かしたようです。」

 

袁術っていうのは、袁紹の従姉妹でちびっ子らしい。連携を取るのかと思ってたけどグダグダだな。先鋒は孫策軍らしく、春蘭が借りを返したいと言っていたが、華琳に今回は自制して、いつか返せる時がくるから我慢しなさいと注意を受けていた。ちなみに孫策軍は敗れたらしい。袁術からの糧食の補充がされなかったらしい。

 

 

如月・一刀「「あれが汜水関かぁ……でかいなぁ」」

 

一刀と一緒にハモる俺。巨大な関だ。ダムみたい。その汜水関を攻めているのは、公孫賛と劉備の連合軍。二つの隊はお互いを助けあうような動きを取っている。

 

「……始まりましたね。でも……本当に見ているだけでいいのでしょうか?」

 

一刀「いいんだってさ。指示があるまで戦闘態勢のままで待機ってのが、華琳の命令だしな。」

 

「まあ、今の所はこっちが有利見たいやし、大丈夫やろな……」

 

「あれ?砦から兵士が出てきたの……」

 

如月「こういう時って、普通籠城なんじゃないの?」

 

「定石で言えばそうですが、先ほどこちらが何か言っていたようですし、挑発に乗ってしまったのではないでしょうか。」

 

「守備隊の将ってどんだけアホやねん。」

 

如月「まあまあ、そう言ってやるなよ。その通りだと思うが……あ、一騎打ちだ。ありゃ、誰だ?」

 

「劉備の所の将軍で、関羽というそうだ。」

 

如月「あれ?秋蘭、どうしてここに?」

 

「あまりに暇なのでな、伝令を買って出た。」

 

一刀「華琳は何て?」

 

「汜水関が破られたら、直ちに進撃をする。劉備達は様子見で引いた隙をついて、一気に突破する。追撃をかける。」

 

「敵の罠やったら?……あっ」

 

「今負けたのが、汜水関の総大将だ。このまま逃げ出す輩に、そんな器用な作戦が立てられるはずがない。」

 

如月「あらま。本当に逃げ出したよ。」

 

「こちらも移動を開始するぞ。先頭は姉者が務めるから、お前たちもうまく合流するがいい。」

 

如月「総員!移動開始!門が閉まるまでに無理やりねじ込むぞ!」

 

結果的に俺達が一番乗りを果たしたな。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二十四話

汜水関攻略後に行われた軍議で虎牢関の指揮権を引き受けてきた華琳。

 

「ここで呂布と張遼をやぶれば、華琳様の名は一気に高まるでしょう。それは華雄ごときの比ではありません。」

 

「……欲しいわね、その強さ」

 

また華琳の悪い癖が……

 

「今回ばかりはお控えください。張遼はともかく、呂布の強さは人知を超えています。」

 

一刀「人知って……そんなに強いのか?」

 

「用兵はともかく、個人の武では桁が外れていると聞いている。中央に現れた黄巾党の半分、約三万を一人で倒したそうだ。」

 

一人で三万?ゲームかなにかですか。あの、頭なでられて喜んでたあの子が?

 

「情報元は人和よ。中央で有力な武将の名で一番に出てきたのが呂布で、二番目に張遼だったわね。」

 

わお!実話でした。

 

「もしどうしてもとご所望でしたら……姉者と私、季衣、流琉あたりがいなくなると思っていただきたい。」

 

「……随分と弱気ね。」

 

「秋蘭共々、それほどの相手と認識しております。先ほど関羽でさえ、一人では数合ともたないでしょうね。」

 

「ならば、春蘭。如月ならどうにかなりそうかしら?」

 

如月「俺ぇ!?」

 

「我が軍や連合軍の中でも呂布と同じくらいの強さを持つのは如月ただ一人だけだと思いますが……それでも五分くらいかと。」

 

「なら、如月。お願いできるかしら。」

 

如月「しゃーねーなー。分かった。でもダメだと思ったら、すぐに逃げさせてもらう。それでいいなら。」

 

「それでいいわ。あなたを失うことは、大きな損失なのだから。なら、張遼の方はどうなのかしら?」

 

「張遼の強みは用兵にあります。兵を奪ったあとに捕えるとの命ならば、兵は桂花が、張遼は姉者が何とかしてくれるでしょう。」

 

「お任せ下さい!」

 

「わ、私か!?また無茶を……」

 

「あら、してくれないの?春蘭。桂花はしてくれるようだけど。」

 

「……ふふん」

 

「くぅぅ……!張遼ごとき、物の数ではありません!十人でも二十人でも、お望みの数だけ捕えて参りましょう!」

 

「なら、張遼は春蘭と桂花に任せるわ。見事捕えて見せなさい。呂布は如月、あなたに任せるわ。でも、これ以上危険と判断したらすぐに引くこと。」

 

「はっ!」

 

「お任せを。」

 

「了解。」

 

軍議終了後みんなが近寄ってきた。

 

「きー兄ちゃん。ちゃんと帰ってきてね。」

 

「きー兄様。ご武運を。」

 

「副長……お気をつけて。」

 

「せやで副長。ちゃんと帰ってきてな。」

 

「そうなのー。副長は無事生きて帰ってくることだけ考えてればいいのー。」

 

一刀「……気を付けろよ、如月。如月が生きて帰ってきたら俺、プチ宴会を開くんだ。」

 

如月「それ、フラグになるからやめて!」

 

一刀よ、アホみたいなフラグを立てるなよ。あと、みんなありがとう。

心配してくれて。

さて、ちょっくら、行ってきますかね。

 

 

と意気込んでいたけど、扉が開かないと戦えないわけで、「まあ、さすがに今回は籠城でしょ」と一刀としゃべっていたら、虎牢関の門が開き、華雄が飛び出してきた。マジですか!春蘭でもこんなことしないぞ……たぶん。

華雄が出てきて、その後を追うように呂布と張遼も出てきたため、乱戦になったが、徐々にこっち側が押し返していった。

 

如月「だいぶ落ち着いてきたみたいだから、ちょっくら呂布探しに行ってきまーす。」

 

呂布はどこにいるかなー?と探していたら門の前で戦っていた。ラッキー!ちょうどいいから突っ込むか。

 

 

「よし!ならば、三方より一斉にかかるぞ」

 

「分かったのだ!」

 

「ええ!」

 

「……遅い」

 

「くぅっ!」

 

「うひゃあっ!」

 

「ぐっ!」

 

如月「さすが天下の飛将軍。殿してるところ悪いが、俺の相手もしてくれないか?恋?」

 

「あ……如月」

 

如月「よう、久しぶり。」

 

「……(コクッ)」

 

「あなたは……?」

 

「お兄ちゃん誰なのだー?」

 

「あなた……呂布と知り合いなの?」

 

如月「俺?曹操の所で街の警備隊の副長やってるものですよ。恋とは黄巾党討伐の際にちょっとね。」

 

「真名まで呼んでるし。で、その街の警備隊の副長が何でこんな所に?死にに来たの?」

 

如月「いやぁ、曹操にちょっと頼まれごとされちゃって。恋……悪いけど、ちょっと俺に付き合ってくれないか?」

 

と竜闘気を全開にすると、恋の顔色が変わる。

 

「なっ!」

 

「すごい気なのだ」

 

「あなた……やるわね」

 

「……本気?」

 

如月「んー、ちょっと本気。こっちの都合で悪いけど、付き合ってくれよ!恋!」

 

「……恋も、本気だす。」

 

ジャンプして切りつける。

 

「……くっ!」

 

恋は方天戟で防ぎ、逆に薙ぎ払ってくる。

 

如月「うおっ!これが恋の攻撃か。さすがだな……だが、これならどうだ“剣の舞”」

 

舞うような動きで、不規則に剣戟をあびせ、

 

如月「ブラッディースクライド!」

 

剣をドリルのように高速回転させて貫くが、軌道を変えられ不発に終わり、少しの隙をついて恋は方天戟で二連撃してくる。それを全力でバックステップでかわし、

 

如月「アバンストラッシュA×4」

 

アバンストラッシュAを四発放つが、全て避けられる。マジっすか。

 

「恋!ようやった!アンタもはよ戻りっ!」

 

張遼が華雄を引きずってきた。

 

「……でも……」

 

竜闘気を通常状態まで下げ

 

如月「いや。恋もいきな。時間切れだ。」

 

「……わかった、行く。」

 

恋と張遼と華雄が虎牢関へ下がっていく。

 

如月「ふぅ……」

 

「お兄ちゃん、すごいのだー!あんな戦い初めてみたのだー!」

 

「あなた、本当に街の警邏隊の副長?すごく強いじゃない。」

 

如月「いえいえ、ただのしがない街の警邏隊の副長ですよ。おっと、自己紹介がまだでしたね。性は龍谷、名は如月です。」

 

「我が名は関羽。助太刀ありがとうございます。」

 

「鈴々は張飛なのだー」

 

「私は孫策よ。」

 

如月「では、自己紹介もすんだことですし、ここから逃げましょうか。ではまた!」

 

三人の前から逃げるように去っていく。

 

 

 

side関羽

 

「愛紗ちゃん、鈴々ちゃん。無事で良かったー」

 

「桃香様、ただいま戻りました。」

 

「お姉ちゃーん。ただいまなのだー!」

 

「おや、それで呂布は?」

 

「残念だが取り逃がしてしまった。ああ、それとな星、朱里、雛里、一人気になる御仁がいた。」

 

「ほう、愛紗の目に留まる御仁とは?」

 

「曹操軍の龍谷如月という人物だ。」

 

「龍谷如月……もしかして天の遣いと噂されている人物では?」

 

「あー、あのお兄ちゃんかー。強かったのだー」

 

「鈴々まで。どれほどなのだ?」

 

「呂布と互角に打ち合っていた。しかもまだ、全力では無い様だった。」

 

「なんと!呂布と互角!しかもまだ余力を残してとはなんて御仁だ。」

 

「はわわ!呂布さんと!」

 

「あわわ!」

 

「だから、朱里と雛里は情報を集めて欲しいのだが……」

 

「はい、分かりました。情報を集めておきます。」

 

sideout関羽

 

side孫策

 

「たっだいまー。」

 

「このバカ者が~!!」

 

「きゃー!冥林どうしたの?」

 

「どうしたもこうしたもあるか!!王が勝手に突っ込んでいくなど!しかも呂布相手に!」

 

「だって……戦ってみたかったんだもん。」

 

「だってじゃない!しかも、散々に相手にされなかったあげくに、助太刀に入られて、その助太刀に入った人物が、呂布と互角に渡り合ったとか。どこぞの王様は情けない姿をさらしたというわけか。」

 

「ぶー、そんなに言わなくてもいいじゃない。」

 

「冥林もその辺にしておけ。で、策殿その呂布と互角に渡り合ったという奴はどうじゃった?」

 

「かなりやるわね。この先、私たちの大きな壁になるかもね。」

 

「そうだな、雪蓮の勘はよく当たるからな。この戦中にも情報は集めておこう。天の御使いの龍谷如月の。」

 

sideout孫策

 

 

陣に戻るとみんなが駆け寄ってくれた。あの桂花でさえ、ホッとした顔をしてたんだぜ。すぐにそっぽ向いたけど。

 

如月「いやぁ、やっぱり恋は強かったよ華琳。それと、俺の戦っている姿を関羽、張飛、孫策に見られっちまった。」

 

「いえ、あなたが無事に帰ってきたのだからそれで良しとするわ。」

 

如月「まぁ、いつかはバレることだからな。それが早いか遅いかの問題か。」

 

「ええ、その通り。まぁ、ご苦労様。あんまり騒げないけど騒いできなさい。」

 

如月「応、そうするよ。」

 

その夜はプチ宴会をした。

 

しかし、その翌日

 

「……虎牢関が、無人?」

 

そう、袁紹が偵察を放ったところ、虎牢関には人っ子一人、ネコの子一匹いなかったらしい。

 

「何の罠かしら?」

 

「分かりません。呂布も張遼も健在な現状、虎牢関を捨てる価値はどこにもありませんし」

 

一刀「都に立てこもって、本土決戦したいとか?」

 

「虎牢関が落とされたならまだしも、今の段階でする意味が分からないわ。まだ攻略は始まったばかりなのよ?」

 

「やっぱ罠かなぁ?」

 

「そうとしか思えない……のだけれどね。」

 

如月「どっかのバカが突っ込んでくれないかなぁ……」

 

「さすがにそんなバカはいないでしょう。春蘭でもそこまでしないわよ。」

 

「だから華琳様、どうしてそこで私を引き合いに出すのですか……」

 

「華琳様ー!いま連絡があって、袁紹さんの軍が虎牢関を抜けに行ったみたいなのー」

 

「……」みんなの口が開いてふさがらない。

 

如月「うわー……バカがいたよ。」

 

一刀「まぁ、袁紹が無事に抜けられたら、罠はないってことでいいんじゃない?」

 

如月「確かに。今回はバカに感謝しよう。」

 

 

結局、虎牢関には罠が無くてそのまま素通りして都を目指した。

 

 

都に到着後、すぐに攻城戦が始まったが各諸侯が攻めても大した効果はなく一進一退が続いていた。

 

如月「はてさて、こうも膠着状態だとキツイな。どうすんだ、華琳?」

 

「そうね、一刀、如月。あなた達の世界に、こんびにと言うものがあったわよね。」

 

軍議の結果、連合を六つの隊にわけ、一つの隊が四時間ずつ攻撃し続け、二十四時間、間断なく攻め続けた。

 

一刀「なるほど。こりゃやられる方はキツイな。」

 

数日後、敵の抵抗がおとなしくなったため、決戦になるとのことで、袁紹と袁術が自分たちにあたるのは嫌だと文句を言い、袁紹の代わりを劉備が、袁術の代わりを孫策が行うことになり、華琳が劉備に兵を貸すことになった。

 

一刀「……ずいぶんと気前がいいんだな。」

 

「諸葛亮や関羽の指揮を間近で見られるいい機会だもの。その代価とみれば、高いものではないわ。桂花、兵に中に間諜を数名選んで入れておくように。人選は任せるわ。」

 

「はっ!」

 

劉備達に兵を貸し、連合全体で準備が出来た時

 

「報告!城の正門が開きました!」

 

「みな、この戦いばかりの日々を終わらせるわよ!総員、戦闘準備!」

 

「門より敵部隊出撃!突撃してきます!」

 

「さあ、誰が私たちの相手をしてくれるのかしらね……春蘭!」

 

「はっ!総員、突撃ぃっ!」

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二十五話

董卓軍が最後の決戦ということでうって出てきてくれたおかげで、連合側の勝利となりそうだが

 

「……くっ!呂布め、何という強さだ……!よくこんなのと互角に渡り合っていたな、如月は。」

 

如月「いやぁ、秋蘭に褒めてもらえるなんて光栄だな。」

 

「えっ?きー兄ちゃん!」

 

「きー兄様!」

 

「……如月」

 

「あっ、強い兄ちゃん!」

 

「あれ?あんたは料理屋を教えてくれた兄ちゃん。」

 

如月「ああ、龍谷如月。俺の名だ。文醜覚えておいてくれ。」

 

「……如月、やる?」

 

如月「いや、今日はやんねー。それより恋、迎えが来たみたいだぞ。」

 

「恋殿!恋殿はいずこに!」

 

「……ここ」

 

「おお、恋殿ー……!城は陥ち、月殿と詠殿はすでにお逃げになりました。霞殿と華雄殿は行方が知れません。あの二人のことですからきっと無事でしょう。今は二人で逃げるのです!」

 

「……逃げない。」

 

「恋殿!?」

 

「……恋は如月についていく。」

 

如月「はっ?」

 

「何と!?」

 

「如月……ついていっていい?」

 

如月「へっ!?あ、あの……秋蘭。どうしよう……」

 

「如月が決めればいいさ。それに華琳様からの命もあっただろう?」

 

如月「よし、分かった。恋、来るか?」

 

「……(コクッ)」

 

「恋殿ぉー……」

 

「……ちんきゅーも来る。」

 

「……分かったのです。」

 

如月「そっか。ありがとう、二人とも。これから宜しく。」

 

そう言って二人の頭をなでる。

 

「……///」

 

「な、なでるななのです///」

 

恋は気持ちよさそうに、陳宮は恥ずかしかったのか、口調がきつかったが嫌ではなさそうだった。

 

周りの敵は制圧完了後、文醜は華雄を追ってきた顔良と合流、張飛は自軍に戻っていった。秋蘭は春蘭を探しに、季衣と流流は華琳の護衛に、俺は一刀と合流し、城内制圧に向かう。恋とねね(真名を預かった)は家族(動物たち)を迎えに行った。

 

一刀「ここが城内か……」

 

「もうほとんど制圧も終わっとるなぁ……」

 

とりあえず宮城まで入ってみたが、他国の軍もかなり入り込んでいて、制圧は終わっているようだった。

 

如月「ちょっと、向こうの方を見てくるわ。」

 

一刀「ああ、分かった。」

 

俺一人で歩いていると、ドンッ!

 

「ひゃあ!」

 

「きゃっ!」

 

如月「あっ、すまない。大丈夫か?」

 

「あ、あんたは……」

 

「詠ちゃん……」

 

如月「もしかして、董卓殿と賈詡殿ですかな?」

 

「なっ!……どうして分かったの?」

 

如月「え、いや、カマかけたら当たった。てか、軍師ならもう少しバレないようにしようよ。」

 

「うぐっ……」

 

「詠ちゃん……」

 

「で、あんた、私たちのことどうするつもりなの?」

 

如月「そうだな……わが軍に来ないか?恋とねねもいるから。」

 

「恋とねねが……てか、わが軍ってどこよ?」

 

如月「ああ、すまない。俺は曹操軍の龍谷如月。まぁ、決めるのは曹操だからどうなるか分からないけど、命までは取られないと思うぞ。」

 

「ねぇ、詠ちゃん……私は如月さんについていってもいいと思う。」

 

「月……分かったわ。月が決めたのなら、私もついていくから。」

 

如月「二人とも、ありがとう。さすがにこんな可愛い二人をどうこうはしないと思うぞ。」

 

「へぅ……かわいい////」

 

「なっ……何言ってんのよ!あんたは////」

 

二人ともなぜか知らないが、顔を真っ赤にしていた。まぁ、ともかく一刀たちと合流するか。

 

一刀「あれ?如月……その子たちどうしたんだ?」

 

如月「いや、ちょっとワケありみたいでさ、保護したんだ。あとで、華琳にも報告するよ。」

 

一刀「そうなんだ、分かった。あと城内の制圧はほぼ完了したから、外と合流しようかと思ってたんだ。」

 

如月「そうだな。みんなと合流しよう。みんな無事だといいな。」

 

途中で恋とねねと合流。一刀たちは驚いていたが如月だしと妙に納得していたのと凪が「むー」とむくれていたが、俺なんかやったっけ?けど一刀ウチの覇王さまと最近いい感じなってきてるの知ってるからな。で、四人をつれて自陣に戻り、華琳へ報告。

 

如月「華琳。あって欲しい人がいるんだが……」

 

「あら、ついに凪と身を固めるのかしら?」

 

如月「まだしねーよ!いや、その時が来たらちゃんと報告するから。」

 

「ふ、副長///」

 

あれ?なんか天幕の外から視線を感じるんだが……気のせいかな?

 

如月「と、ともかくある四人を連れてきた。入ってもらっていいか?」

 

「ええ、入ってきなさい。」

 

四人に入ってもらう。

 

如月「まず、恋……呂布と陳宮。まぁ、約束は守ったと言う事で。それとこっちの二人は……」

 

「董卓と賈詡……ね」

 

一刀たちが驚いてる。そんな大物連れてきてたら、そりゃ驚くわな。一刀は別の理由で驚いてそうだが。俺も驚いたぞ。

 

如月「ああ、城から逃げ出そうとしてたところに、たまたま、ぶつかって、こっちに来ないか誘った。」

 

「なるほどね……で、四人はどうしたいの?」

 

「……恋は如月についていく。」

 

「ねねは恋殿についていきますぞー!」

 

「私たち二人も如月さんについていくと決めたので……」

 

「なるほど。では、あなた達四人は私の陣営に入ってもらいましょう。ただし、董卓と賈詡、あなた達には死んでもらうわ。」

 

「えっ!」

 

「ちょ、ちょっと何でよ!」

 

一刀「ちょっ、華琳!」

 

みんな、驚いてるなぁ……まぁ、こっちの陣営に入れと言っておいて、死んでもらうはないと思うが、

 

如月「華琳……それじゃ混乱する。言葉が足りないというか、それで察しろって言うのは華琳の悪い癖だと思う。董卓、賈詡安心しろ。本当に死にはしない。死ぬのは董卓と賈詡という名だ。」

 

「だから、どういうことよ。」

 

華琳と俺と桂花以外は首を傾げ頭に?を浮かべている。

 

如月「俺と一刀には無いが、君たちにはあるじゃないか……真名が。これからは真名を名乗っていけと言う事だ。」

 

「その通りよ。董卓の名は大陸全土に轟いているわ。けれど、真名まではさすがに知れ渡っていないもの。それでよければ、我が陣営に迎えいれるわ。」

 

「分かりました。従います。」

 

「月っ!?」

 

「詠ちゃん。私たちは如月さんに助けられ、ついていくと決めた。その如月さんが主の曹操さんに判断をゆだねて、その曹操さんが判断を下したんだよ。ならその判断に従うのが道理だよね。」

 

「月……分かったわ。曹操、あなたの判断に従うわ。」

 

「なら、董卓、賈詡、呂布、陳宮は真名を預けなさい。そして、今後一切董卓と賈詡の名を名乗ることを禁ずるわ。皆もそれでいいわね?」

 

『はっ!』

 

とみんな了解してくれた。

 

「では、四人とも真名を教えてちょうだい。」

 

「はい、私の真名は月です。この真名みなさんに預けます。」

 

「私の真名は詠よ。この真名みんなに預けるわ。」

 

「……恋は恋。」

 

「ねねは音々音なのです。この真名皆に預けるのです。」

 

四人の真名を受け取ったあと、みんなで自己紹介と真名を預け合った。

 

「さて、月と詠は如月の補佐を、恋とねねは如月の下に入るように。」

 

如月「えっ!四人とも俺につけるのか?」

 

「ええ、恋を捕えて来いって命を見事に果たしたのだから褒美が必要でしょ?それが褒美よ。」

 

如月「分かった。これからよろしくな!四人とも!」

 

「はいっ!」

 

「しょうがないわね。」

 

「……よろしく」

 

「よろしくしてやるのです。」

 

と月たちの処遇が決まったところに

 

「華琳様、失礼します。」

 

と秋蘭が張遼を連れて天幕に入ってきた。

 

「あら、秋蘭。そっちは張遼ね。どうしたのかしら?」

 

「はっ、姉者が張遼を一騎打ちで破ったためこちらに降ってくれましたので連れてきました。」

 

「そう。張遼、我が軍に降ってくれたこと感謝するわ。」

 

「ええって、一騎打ちで惇ちゃんに負けてしもうたからな。それに、華雄以外のみんなもこっちに居るみたいやし。」

 

「はい、霞さん。私たちも如月さんに助けていただきました。」

 

「如月?ああ!虎牢関の前で恋とやっとたヤツかい。」

 

如月「ああ、初めまして。張遼。龍谷如月だ。如月と呼んでくれ。」

 

「おう、ウチのことは霞って呼んでくれ!みんなを助けてくれてありがとな。」

 

「張遼、みなに真名を預けなさい。それで秋蘭、見事役目をはたした春蘭はどこなの?」

 

「少々、怪我をしまして……命に別状はないのですが……」

 

「っ!?」

 

秋蘭の話を最後まで聞かずに天幕を飛び出す華琳

 

「華琳様!姉者は救護所におります。」

 

「わかったわ!」

 

華琳の姿はあっという間に見えなくなってしまう。

 

「うぅ……」

 

一刀「よく我慢したな、季衣」

 

「季衣、あとでみんなでお見舞いに行こうね。」

 

「……うん、今、春蘭様に一番会いたいのは華琳様だもんね……」

 

一刀「秋蘭。本当に大丈夫なのか、春蘭は?」

 

「それは大事ない。無傷とは言わんが、あれを怪我人と言っては他の怪我人に失礼だろう。」

 

如月「秋蘭。もしかして左目がやられたのか?」

 

「!?なぜ分かった!?」

 

如月「いや、知ってはいた。あの時、秋蘭と別れる前に言っておけば良かったな。そうすれば防げたかもしれなかったのに。」

 

「如月……気にするな。姉者は流れ矢に当たったのだ。それに戦場なのだからこういう事もある。如月が気にする事でもないさ。」

 

如月「分かった。ありがとう。」

 

しばらくして、お見舞いに行くかという流れになった時、沙和が天幕に入ってきた。

 

一刀「あれ?どうした、沙和。救護所にいるんじゃなかったのか?」

 

「なんだか、お邪魔みたいだからこっちに来たの。」

 

一刀「そっか。じゃ、俺達ももうちょっと後にした方がよさそうだな。」

 

一刻たったころに華琳が春蘭を連れて天幕へ戻ってきた。

 

「春蘭様ー!」

 

一刀「春蘭、大丈夫か?」

 

「ああ、皆に心配かけた。すまなかったな。」

 

春蘭は笑顔でみんなに対応している中、俺は

 

如月「春蘭……」

 

「おう、如月どうした?」

 

如月「すまなかった!」

 

「な、何だいきなり!」

 

如月「俺は、春蘭がその状態になることを知っていた。秋蘭と別れるときに、そのことを指摘していれば防げたかもしれないのに……」

 

「如月、バカか貴様は。私たちは命のやり取りをしている戦場にいたんだ。こうなる事もある。それに華琳様が『その瞳は私への忠義の証として捧げてくれたもの。春蘭の体は春蘭のものでも、春蘭の左目と心は、ずっと私のものよ』とおっしゃって下さったのだ。だから如月、気にするな。」

 

如月「春蘭……秋蘭にも同じことを言われたよ。分かった。ありがとう。」

 

その後、俺達は洛陽の民たちへの炊き出しや主要街道の整備等の復興作業を行った後、陳留に戻った。

これにて反董卓連合の戦は終わった。これからは、群雄割拠の時代に入っていくだろう。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二十六話

 洛陽から陳留に戻った俺ら。まず、俺の補佐をすることになった月と詠の二人は俺専属の侍女になった。服は一刀が立案、作成指揮をして街の服屋さんに作ってもらったメイド服だ。さっそくメイド服を着てもらった二人を見た華琳が二人を閨に連れ込もうとしたところを全力で阻止した。その後、城中の侍女たちがメイド服を着ていた。聞いてみたら華琳の命令だって。まぁ、侍女たちも嬉しそうに着ていた。二人とも仕事を楽しそうにやっているようだ。

 次に、恋とねね。恋の部隊を俺が引き受けることになったため、部隊のみんなに挨拶をしにいった。みんな納得してくれてるのかな?俺受け入れてくれるのかな?と心配していたが、ぜひお願いしますと言われた。理由を聞いてみたら、恋と互角に打ち合っていた所を見ていたのと、恋がものすごくなついているからだと言われた。ねねは北郷軍の軍師となった。前線での経験を積ませるためらしい。まぁ、そんな二人も非番の日は動物たちと散歩したり、お昼寝したり、他の将と店を回っていたりしている。あと最近ねねが「兄上」って呼んでくるようになった。好きに呼べと言ったらそう呼ばれた。嫌われているよりは全然いいんだよね。こっちも嬉しいし。

 霞は他の将とも仲良くなるのが早かった。ウチの三羽烏となんかあっという間に仲良くなっていた。そんな霞とは何回も飲みに行っている。何回か飲みに行った時に、即席で作ったカクテルを飲んでもらった後、なつかれたらしい。あと、一刀と一緒に街の造り酒屋で日本酒をはじめ天の国のお酒を造っていると言ったら、出来たら飲ませてくれと言われたので一緒に飲む約束をした。

 董卓軍のみんなとは仲良くやっているが、華雄の行方が全然分からないらしい。まぁ、どこかでのたれ死んでるとは思わないけどね。

 

そんなある日、

 

一刀「はい、みんな集合~~!」

 

一刀の号令で城外の外に集まった俺、凪、真桜、沙和の四人。

 

「ふああぁ~~・・・・朝早いお仕事はツライのー」

 

「ホンマやで、まったく・・・・昼からにしてほしいわぁ・・・・ふああぁ~・・・・」

 

「真桜、沙和。シャキッとしないか、シャキッと」

 

如月「そうだぞ。俺なんて徹夜明けだぞ。」

 

「えっ!そうなん副長。あっ、もしかしてナニやってたん?」

 

「きゃー!副長、お盛んなのー!」

 

如月「ナニはやってねーなー。お前らの不始末を片付けてたんだよ。特に真桜と沙和。お前らのな!」

 

二人に対してニッコリと笑う。

 

「副長、すんませんでした!」

 

「以後、気を付けますなの!」

 

一刀「如月、お疲れ様。今夜付き合うよ。」

 

如月「ああ、頼む。で、何でこんな所に呼び出したんだ?」

 

一刀「ああ。新兵の訓練を北郷隊が任されたからな。それで、お前たち四人に一任したいと思ってな。」

 

「え~~~~っ」

 

「マジでーっ!?」

 

一刀「えー、じゃない!もうすぐ新兵たちがここに来るから。頼んだぞ。」

 

「隊長・・・・!このように大事なお役目をたまわり、大変光栄であります!」

 

一刀「ははっ、そんなに気をわなくてもいいよ。お前たちなら絶対大丈夫だから。よろしくな。」

 

「はっ!」

 

「へいへい」

 

「はーい」

 

如月「なぁ、一刀」

 

一刀「ん?なんだ?」

 

如月「好きなようにやっていいんだな?」

 

みんなの顔色が変わる

 

一刀「如月はやりすぎないように」

 

如月「さすがに新兵相手にそこまでやんねーよ。」

 

 

俺の前には振り分けられた新兵たち。

 

如月「君たちの上司の龍谷如月だ。さて、時間ももったいないので、さっそく始めるとしよう。まず、体を解すための体操を行う。俺の動きをマネするように。その後に、そのまま隊列を崩さずに十里(四~五km)走るぞ。」

 

「「はっ!」」

 

一刻の間、ゆっくりと体を解していく。

 

如月「では、走るぞ。隊列を崩さずに走ること。俺について来い!」

 

「「はっ!」」

 

十里走りきる。隊列は崩れてしまったが一人も欠けることなくついてきた。

 

如月「よし。次は俺の国の鍛え方で筋力トレーニングを行う。」

 

「「トレーニング?」」

 

如月「トレーニングは、練習、訓練、鍛錬って意味だ。まず、腕立て伏せを行う。やり方はこうだ。」

 

うつ伏せになり、両手、両爪先の四か所で支え、

 

如月「腕を伸ばした状態で肘を曲げていく。身体が地面につかない程度まで曲げて、また腕を伸ばす。この繰り返しだ。この際に腰を曲げずに頭から足先までつねに直線状に維持すること。」

 

「「はっ!」」

 

如月「初めてだから、まずは三十回やるぞ。」

 

「「はっ!」」

 

腕立てを三十回行った後、

 

如月「次は腹筋を行う。二人一組になって、一人が仰向けになって両膝を曲げる。もう一人は相手の両足首をおさえる。仰向けになっている方が上半身を起こす、戻す、起こす、戻すを繰り返す。両手は頭の後ろで組むほうがやりやすいぞ。でわ、これも三十回行う。」

 

「「はっ!」」

 

腹筋三十回行った後、

 

如月「次は、背筋を鍛える。これも二人一組で行う。一人がうつ伏せになり、もう一人が両足首を固定。うつ伏せになっている方が、その体勢のまま、ゆっくりと上半身をそらす、ゆっくりおろすの繰り返しだ。これも三十回行う。」

 

「「はっ!」」

 

背筋三十回行った後、

 

如月「これが筋力トレーニングだ。体の各部位を鍛える運動だ。よし、いったん休憩に入ろう。休憩後、走る組と筋トレ組の二組に分かれる。しっかりと水分を取って休憩するように。」

 

「「はっ!」」

 

休憩中に沙和の方から

 

「ぺちゃくちゃしゃべるな、このウジ虫どもー!」

 

と聞こえてきた。

 

「分かったら返事をしろー!クソったれ!!」

 

「「は・・・・はっ!」」

 

「ちっがーう!クサイ口からクソひる前後は、必ずさーというのだー!」

 

「「さ、さー!」」

 

「さーいえっさーだー!!」

 

「「さーいえっさー!」」

 

あれって、某海兵隊式訓練!?ってことは一刀がやり方を教えたのか。

あとで聞いたら、あれをやるなら英語が必要だよなって言って、一刀特製新兵訓練用すらんぐ辞書を作成中だって言ってた。

とりあえず、こっちは、休憩後、走る組と筋トレ組に分けてトレーニングを再開。途中で二組のメニューを入れ替えたりして夕方までトレーニングを行った。初日はこんなもんでしょ。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二十七話

新兵訓練もひと段落ついてきたのと、張三姉妹の舞台兼事務所が完成したとの報告を受けたため一刀と一緒に張三姉妹を案内したのだが、

 

「やーだー!こんな狭いとこで歌えないー!」

 

「ちぃも天和姉さんと同意見よ。こんなところで舞台に上がるなんて、恥かくだけよ。」

 

と上の二人が駄々をこねる。

 

如月「俺らももう少し大きくしたかったんだが・・・・」

 

と言っていると、

 

「ううん、これで十分」

 

「人和ちゃん!?」

 

「人和?ちょっと正気なの?ちぃたちの力はこの程度だって思ってたの?」

 

「違うわ。最初の一歩はこの程度の小屋で十分。あとは私たちが稼いで大きくすればいいだけ。・・・・姉さんたちは私たちにその力はないって思ってるの?」

 

「そうだよね!こんなボロ小屋、私たちが稼いで大きくすればいいんだもんね。」

 

「いやまあ、そうだけどさ・・・・」

 

すごいな、人和の一言で二人とも納得しちまったよ。

 

「それにしても・・・・こんな所にみんな来てくれるかなぁ・・・・」

 

「来てくれるじゃなくて、来させるのが天和姉さんたちの仕事でしょ。」

 

「そーそー!ちーちゃんの魅力にかかれば一発コロリでしょ♪」

 

一刀「そう言ってもらえると助かるよ。」

 

如月「宣伝の方は俺達も手伝うからさ。」

 

「・・・・じゃあこれ」

 

人和がギラリと目を光らせ、俺達に一枚の書簡を渡してきた。

 

「宣伝に使った瓦版屋の請求書。必要経費なんだから、城で払ってくれるんでしょ。」

 

一刀「まぁ、それくらいはしないとね。どれどれ・・・・なんじゃこりゃ!?」

 

如月「どうした?一刀?・・・・なんじゃこりゃー!」

 

一刀「こんなに作ったのか!?この値段だと、軍馬が百頭買えるぞ!?」

 

「とうぜんでしょう。こういうのは、最初に大きく風呂敷を広げる方が効果があるの。」

 

「そうそう。要はハッタリだよねー。」

 

「うんうん」

 

一刀「分かったよ。けど下りるかなぁ、これ」

 

如月「まぁ、なんとかするしかないな」

 

「じゃあ、さっそく取りに行って。そして配っておいてね。」

 

如月「了解。じゃあ、受け取りに行くか。さっさと配っちまおうぜ」

 

一刀「そうだな。そうするか。」

 

 

一刀「ふぅ・・・・華琳の方はなんとかなったけど、これからどうするかな。」

 

如月「二人で配っても、配りきれるかなぁ・・・・」

 

酒家の半分くらいを埋め尽くす量のチラシ。こんな量作らなくてもいいだろと思っていたら、

 

「お腹すいた―」

 

「今日は何食べようかな・・・・あれ、きー兄様たち?」

 

一刀「季衣に流流か。飯食いに来たのか?」

 

「うん、そうだよ。兄ちゃん達何か面白いことやってるねー。」

 

「何かお手伝いしましょうか?」

 

如月「そうだな。二人にも手伝ってもらうか。」

 

「良いよー♪それで、何を手伝えばいいの?」

 

如月「実はな、ここにあるチラシ・・・・広告紙をみんなに配って欲しいんだ。」

 

「へぇ、これをみんなに配って宣伝するんですか?」

 

「なんだか面白そうだね!・・・・ねぇねぇ、きー兄ちゃん。これ何て読むのー?」

 

如月「どれどれ?・・・・やくまんしまいかな?なんか言いにくいな。」

 

一刀「数え役萬しすたーずでいいんじゃないか?」

 

如月「しすたーずか・・・・なるほど!」

 

「しすたーずってなに?」

 

一刀「天界の言葉で姉妹って意味だよ。」

 

「そうなんだー」

 

如月「よし。じゃあ、これを道行く人たちに配っていこう。」

 

「おー!」

 

「がんばりましょう!」

 

なんとか二人のおかげで、大量のチラシを配り終えたが、夜までかかってしまった。

店の前でチラシ配りをやっていたのは気が引けたが、店の集客効果もあったみたいで、店の店員さんにお礼を言われてしまった。

 

如月「季衣、流流、ありがとう!すっげー助かった。」

 

「うー・・・・手伝ったのは失敗だったなー。お腹すいたー。」

 

一刀「ごめんごめん。・・・・はい、これ。お駄賃。ちょっと色つけといたから。」

 

「おー!兄ちゃん話せるねー♪」

 

「じゃあ、これで晩御飯でも行こうか。」

 

如月「じゃあな、二人とも。気を付けて帰れよ。」

 

一刀「助かったよ。気を付けて帰れよ。」

 

「はい。それじゃあ、兄様、きー兄様。」

 

「バイバーイ。兄ちゃん、きー兄ちゃん。」

 

二人を見送って

 

如月「とりあえず、小屋に向かうか。」

 

一刀「そうだな」

 

もう終わったかなと一刀としゃべりながら歩いていると、なんだか向こうの方が明るい。それに大勢の歓声が聞こえる。

 

如月「まだ、やってんのか?」

 

と歩きから駆け足へとかえ、人ごみに向かうと小屋の前に大勢の人たちが集まっていた。ちょうど、最後の曲だったのか、歌い終わった三人は手を振って舞台から下りていった。その間、観客の歓声と喝采は途切れることが無かった。

 

「あー、疲れたぁ~」

 

「ちぃもへろへろ~」

 

一刀「お疲れさん!ほいよ、冷たい水の差し入れだ。」

 

水を汲んでは三人に渡す。きっと、休憩も無しに歌い続けていたんだろう。

 

如月「すっごい盛り上がっていたな。ビックリだ。」

 

「でしょでしょ?少しは私たちのこと見直した?」

 

一刀「少しどころじゃないな。正直なめてた。」

 

如月「すんげー見直した。」

 

「ふふん、分かればいいのよ。これからはちぃ達のこと、もっと大事にするように。」

 

一刀「ははっ、了解。その分頑張ってくれよ、俺達も頑張るから。」

 

五人でワイワイしゃべっていると、ふいに、人和が立ち上がり、部屋の隅に行き、箒を出してきた。

 

如月「人和何やってんの?」

 

「掃除。」

 

一刀「そんなの俺達がやっておくよ。人和は今まで仕事してたんだから、休んでていいよ。」

 

「そうだよぉ~。一刀達にまかせて私たちは休みましょ?」

 

「ダメ。こういうことは自分たちの手でやらないと、大盛況だった実感がわかない。」

 

人和は天和の言葉を一蹴して、一人で黙々と掃除を続ける。

 

如月「なら、手伝うよ。」

 

そう言って、掃除をし始める。一刀も続いて掃除をし始める。

 

「ちーちゃん、私たちも手伝おっか。」

 

「えーちぃ疲れてるんだけど。」

 

「まあまあ、そういわないの。」

 

「ちぇ、仕方ないなぁ・・・・」

 

地和はぶつくさ言いながらも掃除をちゃんとし始めた。なんだかんだ言って、三人とも仲がいいみたいだ。

 

「やっと終わった―。さぁ、打ち上げ打ち上げー♪」

 

「お腹すいたよー。れんほー。結構売り上げ上がったでしょ。それでパーッとやっちゃおう!」

 

「今回の収益が私たちの活動の元手。・・・・無駄遣いなんて出来るわけないでしょ。」

 

「ぶーぶー、私も打ち上げしたいー。」

 

「打ち上げしたいー。」

 

「ダメです。」

 

如月「今回は俺らが飯代くらい出そうか?」

 

「財布の独立こそ、真の独立につながるのよ。余計なことしないで。」

 

如月「そこまで考えているのか。なら、初舞台成功おめでとう。と言う事でならどうだ?節目、節目に騒いでもバチは当たらないし、次への活力になるからな。」

 

「しかたないわね。じゃあ一報亭のシュウマイを五人前ならいいわ。」

 

「もう一声!」

 

「ダメ」

 

「えーっ!それだと一人一人前しか食べられないよぉー」

 

「贅沢は敵です。」

 

如月「なら、俺らがあと五人前出すよ。」

 

「そんな必要ない。・・・・さっきも言った通り、財布の独立こそが・・・・」

 

如月「真の独立につながるんだろ。それは分かってるから。これは、さっきも言った通り次への活力にしてほしいのと、感動に対するお礼かな。」

 

「感動?」

 

一刀「そうさ。如月の言う通り。三人の歌を聴いて心底感動したから、良い歌を聴かせてもらったお礼だよ。それならいいだろ?」

 

「・・・・。じゃあ、遠慮なく。」

 

「「やったー!」」

 

「じゃあ、すぐに行こ♪お店閉まっちゃうよ♪」

 

「あーっ、姉さん待ってよぉ!」

 

一刀「ちょ、二人とも待ちなさい。」

 

如月「やれやれ、現金だな。さっきまで疲れたって言ってたのに。」

 

「お腹が空いてますからね。」

 

ぐぅ~。人和のお腹が鳴く。顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしている。

 

「あ、ちょっと!」

 

如月「ほら、俺達も行くぞ。俺も腹が減ったんだから。」

 

「・・・・うん。」

 

人和の手をとって走り出す。早く一刀たちに追いつかないとな。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二十八話

とある非番の日の昼、中庭で俺と一刀は体を動かしていた。

 

一刀「はあっ!」

 

木刀で素振りを行っている一刀。元々やっていたのか、中々筋がいい。

 

如月「中々やるなぁ、一刀。」

 

一刀「まぁ、元々家でも部活でもやってたしな。」

 

そう言いつつ素振りを続ける一刀

 

「あれ?隊長と副長、どないしたん?そんなもの振り回して。」

 

と、真桜と凪と沙和の三人娘がやってきた。

 

一刀「ああなに、体を動かそうと思って、如月と一緒にやってたんだ。」

 

如月「そっ。一緒に鍛錬中。」

 

「隊長は剣術の心得がおありだったのですか?」

 

一刀「ま、軽くね。みんなほどじゃないよ。」

 

「へぇ・・・・いっがーい。」

 

「隊長。良かったら、一手お願いできませんか?」

 

一刀「へ?凪とやるの?無理無理!」

 

如月「いや、そんなに否定しなくてもいいじゃん。まぁ、凪も本気でやるわけじゃないんだから。手合せだと思ってやってみ。」

 

一刀「分かった。それじゃあ凪、お願いできる?」

 

「はい。お願いします。」

 

「どっちもガンバレー。」

 

「たいちょー。凪ちゃーん。がんばってー。」

 

如月「なら、審判は俺がしよう。双方、構え・・・・始め!」

 

「でええええぃっ!」

 

一刀「くっ!なめんなー!」

 

一刀中々やるな。凪が本気じゃないとはいえ、結構動けてるじゃん。

 

「なにをしているの?」

 

「あ、華琳様。」

 

如月「よぉ!華琳。」

 

「如月。あなた見てなくていいの?」

 

如月「ちらっと、目を離すくらいなら大丈夫だろ。」

 

「そう。けど、一刀に武術の心得があったなんて、知らなかったわ。」

 

「なるほど。だから、警備隊に入ってすぐに、それなりにでも動くことが出来たのですね。」

 

「でも、腕はたいしたことないわね。」

 

如月「双方、やめっ!」

 

一刀「いやぁ、やっぱり凪には勝てないなぁ・・・・」

 

「いえ、こちらも結構必死でしたよ。これを機に修行を積んでみては?」

 

一刀「・・・・暇があればね。」

 

如月「凪、そう言ってやるな。一刀は隊長だからな。色々とヤルことがたくさんあるんだよ。」

 

一刀「如月・・・・なんか“やる”の意味が違って聞こえるけど・・・・」

 

如月「気のせいだ。」

 

「隊長ー。かっこよかったでー。」

 

「おつかれさまー。」

 

一刀「はいはい、ありがとう。あれ?華琳達も来てたんだ。」

 

「ええ、中々面白かったわよ。」

 

「北郷。あれは、お前の国の剣術なのか?」

 

一刀「ああ、あれは・・・・」

 

と、一刀が春蘭たちに説明をし始める。説明をしている流れで、一刀と春蘭が試合をすることになった。みんな面白がってんなーと思っていたら、なんということでしょう。

中庭にいつの間にか大容量の観客席が・・・・

 

「副長、頑張ったんやで!ほめて!」

 

如月「さすが、真桜だな!」と真桜をほめる。

 

用意された席に座ると

 

如月「あれ?月に詠、恋にねね、霞まで。どうしたの?」

 

「いえ、霞さんから面白いことをやると聞いて。」

 

「それで見に来たのよ。」

 

如月「一刀の殺戮ショーを?」

 

「いやー如月。アンタがそれを言ってどうすんの?親友の心配くらいしてやりや。」

 

「兄上、さすがにそれはないですぞー。」

 

「さすがにそれは可哀そうよ。」

 

「そうだよー。一刀に応援してあげなきゃ。」

 

如月「お、天和に人和。何でいるんだ?」

 

「あれ」

 

如月「あれ?」

 

指を差した方を見ると、

 

「さぁ、始まりました世紀の一戦、我が軍最強の名高い魏武の大剣の異名をとる夏候惇将軍対、我が軍最性魏の種馬兄弟の兄、北郷一刀の時間無制限一本勝負!実況はわたくし李典と・・・・」

 

「曹魏三千万のみんなー。歌姫、数え役萬☆しすたぁずのちーほーちゃんでーーーーすっ!よろしくぅ!」

 

なるほど、地和が出るからいるのね。てか一刀、魏の種馬兄弟の兄って呼ばれてるのか。可哀そうに。あと、弟って誰だろう?などと思っていると

 

「でやああああああっ!」

 

ヒュン!

 

「どわああっ!」

 

と試合が始まっていた。いやぁ、一方的な試合だな。一刀可哀そうに。

 

「へぅ・・・・北郷さん、大丈夫かな?」

 

「まぁ・・・・避けまくってるから大丈夫なんじゃない?」

 

うーん、このままじゃ一刀に勝ち目がないし、ちょっと可哀そうすぎるな。よし、

 

如月「かりーん!このままじゃ一刀、勝ち目がないぞ。面白くないし、何か条件を付けてやってくれ。」

 

「そうね・・・・春蘭!」

 

「はっ、何でしょう華琳様。」

 

「一刀に勝てる条件を付けてあげようと思うのだけれど、いいかしら?」

 

「はぁ、どうせ負けませんし、構いませんが・・・・」

 

「なら、春蘭に一太刀でも浴びせられれば、一刀の勝ちでいいわね?」

 

「はっ。むろん、負けるつもりなどありませんが!」

 

一刀「な、ならその条件でお願いします。」

 

まぁ、そのくらいのハンデがなきゃ、面白くないよな。けど、本気になった春蘭に追い掛け回される一刀。さっきよりきつくなっちまったか?

でも、春蘭の攻撃を受け流している。一刀結構やるな。と思っていたら、

 

一刀「あ、あれは!華琳様が扇情的な格好でっ!」

 

「何っ!?」

 

一刀「えいっ!」

 

ポカリ

 

「・・・・は?」

 

「一本!勝者、北郷一刀!」

 

あーあ、春蘭やっちゃった。

 

「隊長、すごーーい!」

 

「おめでとうございます!隊長!」

 

如月「おめでと、一刀。よくやったな。」

 

一刀「ああ、ありがとう。如月。如月も頑張れよ。」

 

如月「は?頑張れよって、どういうこと?」

 

周りを見ると恋の姿が見えない。

 

「続きまして第二回戦!天下一の武をほこる飛将軍、呂奉先対、呂奉先と打ち合った男、魏の種馬弟、龍谷如月による時間無制限一本勝負・・・・」

 

如月「ちょっと待て!俺もやるのか!?しかも恋と!?だから、恋の姿が見えなかったのか!てか、種馬弟って俺のことか!」

 

「副長、あきらめやー」

 

「がんばってー、副長」

 

「副長、頑張ってください。」

 

「へぅ、あの・・・・頑張ってください如月さん。」

 

「まぁ、何かあったら骨くらいは拾うわ。」

 

「まぁ、とにかく頑張って。」

 

「・・・・如月、早く」

 

「兄上!恋殿!頑張って下されー!」

 

「きー兄ちゃん、頑張れ!」

 

「きー兄様、ご武運を」

 

いつの間にか季衣と流流も来てるし。てか、みんなの期待がすごい。恋もなんかウキウキしてるし。

 

如月「よっしゃああああっ!覚悟決まった!真桜合図を頼む。」

 

まあいいや、どうにでもなれ。

 

「それじゃあ、副長の覚悟も決まったところで・・・・始め!」

 

如月「くらえ!カイザーフェニックス!」

 

先手必勝のカイザーフェニックス。恋相手にこれもどうかと思うが、そんなこと言ってられない。

 

「な!すごいわね如月。あんなものまで出せるなんて。」

 

「うそ・・・・」

 

「むぅ、さすが如月。しかも、まだ隠してるものがあるな。」

 

「副長・・・・すごいです。自分ももっと頑張らなければ!」

 

「こんなのやられたら、死んじゃうの・・・・」

 

「ひゃー、如月こんなことも出来るんかい。」

 

「へぅ。如月さん、すごいね詠ちゃん。」

 

「てか、こんなのとやりやってたの恋のやつ。」

 

「兄上、すごすぎなのですぞー!」

 

「・・・・すごい。でも!」

 

方天戟で真っ二つにする恋。

 

うそー!とみなさん驚いてらっしゃる。俺の方がもっと驚いてるよ!

 

如月「勘弁してください。アバンストラッシュB!」

 

恋の懐に飛び込み叩き込む。直撃し、吹き飛ぶ恋。大丈夫か?いくら威力を落としてるからって結構な威力だぞ。姿を見せた恋はパンパンとほこりを払っている。大丈夫そうだ。

 

如月「これも受け止めるか。やるな。」

 

「けど、結構きた。」

 

分かりにくいが、ダメージはあるようだ。恋が反撃をしてくる。恋からの攻撃をなんとかかわす。一撃一撃が早くて重いんだよな恋の攻撃。

 

如月「恋!これで最後にするぞ!ギガデイン!」

 

ギガデインを剣に落とす。

 

如月「これで決める!ギガブレイク!」

 

「・・・・っ!」

 

恋はギガブレイクを受け止めるが、

 

如月「甘い!」

 

そのまま恋を吹き飛ばす。

 

「勝者、副長!」

 

「恋殿ー!」

 

如月「恋、大丈夫か?ベホマ。」

 

「・・・・あたたかい。」

 

「へぅ・・・・如月さんすごかったです。」

 

「あんたのそれ、すごいわね。傷が治っていく。」

 

「へぇ、初めて見た。」

 

「これは、私たちの妖術と同じもの?」

 

如月「月たちはともかく、桂花も見るのは初めてだったか。これは回復呪文と言ってな、体力回復と小さな傷くらいならすぐに治せるんだ。あと、妖術とは同じようで違うんだよ。」

 

みんなに説明していると

 

「きー兄ちゃん、すごいねー!今度、ボクともやってよ!」

 

「きー兄様、お疲れ様でした。」

 

如月「おう。季衣、流流ありがとう。季衣、今度稽古してやるよ。」

 

「如月ってこんなに強かったんやね。今度ウチともやってや。」

 

如月「了解。霞。」

 

「お疲れ様。如月。」

 

如月「華琳。俺もやるならそう言っておいてくれよ。」

 

「黙っておいた方が面白いでしょ。それに、如月が戦ってる姿を見て、惚れ直した娘もいっぱいいるようだし。」

 

『////』

 

凪、月、詠、恋、季衣、流流、霞、人和の顔が赤くなる。

 

如月「いやぁ、それはありがたいなぁ。それより華琳。」

 

「ん?なにかしら?」

 

華琳の傍へ行き、小声で、

 

如月「一刀にかっこよかったって言っとけよ。春蘭に挑む一刀、かっこよかっただろ?」

 

「っ////」

 

真っ赤になる華琳

 

「あ・・・・あなた、何を////」

 

如月「あいつ、鈍感だから。ちゃんと言わなきゃダメだぞ。よし、真桜!片付けるぞ!」

 

「りょーかい、副長。隊長、凪、沙和も手伝ってえな。」

 

一刀「はいはい、分かったよ。」

 

「しょうがないな。」

 

「むー、分かったの。」

 

片付けを始める俺達。疲れたから今日はさっさと寝ますかね。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

二十九話

ある日、中庭に巨大なオブジェが置いてあった。木製のやぐららしきそれには、基部に車輪がついていて動かせるようになっている。なんじゃこりゃ?

 

「あーっ!副長!」

 

「おー。副長やん。どしたん?」

 

如月「どうしたって、中庭に散歩しに来たら、こんなバカでかいのがあったから、気になって来た。」

 

一刀「如月もか。」

 

如月「お、一刀。凪も一緒か。」

 

「副長ー!真桜ちゃんがひどいのー!」

 

如月「ひどい?真桜、今度は何をやらかしたんだ?怒らないから言ってみな?」

 

「べ、別に何にもしてませんて!」

 

真桜は自分の無実を主張するので、一刀と凪の方を見ると、「何もやってない」というように顔をフルフルと横に振る。

 

如月「で、何がひどいんだ?沙和?」

 

「真桜ちゃん、これが何だか教えてくれないのー。」

 

如月「なるほどな。で、これ何?」

 

なんとなく予想はつくが、

 

「ふっふー。見て分からへん?どうしよっかなぁー。教えたろかなー?」

 

「ずっとこの調子なの!自分だけ知ってるなんてズルいのー!」

 

如月「一刀や凪は何なのか分かる?」

 

一刀「いやぁ、俺も何なのか分からん。」

 

「私も分かりません。」

 

「へっへっへー。知りたい?教えて欲しい?」

 

如月「いや別に。何なのか大体分かったから。」

 

一刀「え!?マジで!」

 

「えー!何なのー?」

 

「本当ですか!?副長!」

 

「えっ・・・・ちょ、マジで!?副長!?」

 

如月「まあな。真桜。これって、こーんな感じのヤツだろ?」

 

近くに落ちていた石を大きく振りかぶって、山なりに投げる。

 

「・・・・マジかいな。何で分かったん?」

 

如月「まぁ、なんとなく。」

 

他の三人は?を浮かべて首を傾げている。

 

如月「あ、けど、中庭で大きな物作ってると、華琳や桂花に叱られないか?」

 

「叱らないわよ。私の指示で作らせているのだから。華琳様にも許可を頂いているわ。」

 

如月「よっ!桂花。華琳も了承済みなんだ。ふーん・・・・」

 

「何?どうかした?」

 

「なんや?ウチの最高傑作になんか文句でもあるっちゅうん?」

 

如月「これ、もっと大きくなるだろ?もしも、あれだとすると、回転軸と本体がこれにくっつくだろ?」

 

「副長の言う通りや!この上にごっつい回転軸と本体の絡繰が備わって、もっとでっかく・・・・」

 

如月「門から出せるのか?でかくなっても。」

 

「「・・・・あっ」」

 

如月「はぁ・・・・。とりあえず、真桜。強度は落ちるかもだが、組み立て式にしたらどうだ?」

 

「うぅ・・・・。副長の言う通りにするわ。」

 

如月「そうしな。そういえば、桂花はどうしてここに?」

 

「そうだった!もうそろそろ軍議の時間だから向かおうとしてたのよ。」

 

如月「あらま、もうそんな時間か。一刀、そろそろ行こうぜ。」

 

一刀「ああ、そうだな。行くか。」

 

如月「凪。すまんけど後は頼むなー。」

 

「え、私・・・・ですか?」

 

「そうだよ、凪ちゃん!がんばって真桜ちゃんからこれが何なのか聞き出すの!」

 

如月「いや、そういう意味で言ったんじゃないんだが・・・・まぁ、いいか。それじゃあ、軍議に行ってくるわ。」

 

軍議が始まり、

 

「では、まずは秋蘭から」

 

「はっ。先日の袁紹と公孫賛の争いですが・・・・予想通り、袁紹が勝ちました。公孫賛は徐州の劉備の所に落ち延びたようです。」

 

反董卓連合での功績のあった諸侯には、漢王朝から官位なんかの褒賞があり、劉備は平原から徐州へ、華琳も領地をいくつかもらっていた。

 

「それで袁紹の動きは?」

 

「青洲や并州にも勢力を伸ばし、河北四州はほぼ袁紹の勢力下に入っています。北はこれ以上進めませんから、後は南へ下るだけかと。」

 

河北四州のすぐ南、海沿いの徐州が劉備の領地で、そこから内陸部が華琳の領地で、そのさらに南にある揚州に本拠地を構えるのが袁術だ。華琳と劉備は北を袁紹、南を袁術に挟まれていることになる。

 

一刀「なら、次は劉備か・・・・」

 

たしかに攻めるなら最小勢力の劉備だが、

 

「さぁ・・・・。どうでしょうね。」

 

一刀「どういう事?反董卓連合じゃ、勢力の弱い劉備や公孫賛が集中攻撃を食らってたじゃないか。」

 

「それは言いやすそうな相手だからよ。麗羽は派手好きでね、大きな宝箱と小さな宝箱を出されてどちらかを選ぶように言われたら、迷わず大きな宝箱を選ぶ相手よ。」

 

「領地が大きな我々が狙われると言う事ですか?」

 

如月「それとな流流。あと、華琳が治めてるってのもあると思うぞ。」

 

「なぜですか?きー兄様?」

 

如月「幼馴染で、小さい頃からこいつには負けたくないって相手。好敵手が華琳だからだと思う。」

 

「まぁ、そんな感じよ。国境の各城には、万全の警戒で当たるよう通達しておきなさい。・・・・それから河南の袁術の動きはどうなっているの?」

 

「特に大きな動きは・・・・我々や劉備の国境を偵察する兵は散見されますが、その程度です。」

 

「あれもそうとうな俗物だけど、動かないというのも気味が悪いわね。警戒を怠らないように。」

 

「はっ。そちらもすでに、指示を出しています。」

 

如月「桂花も大変だな。」

 

「華琳様から与えられた私の仕事だもの。名誉にこそ思いにすれ、大変だと思ったことはないわ。」

 

「そうね。手の空いている誰かに手伝わせたい所だけれど、秋蘭と如月には色々まかせているから無理だとして・・・・」

 

『・・・・』

 

一斉に黙るみんな

 

「使えそうなのがいませんから、いりません。」

 

「何だとぅ!」

 

如月「すまんな桂花。俺も少しは手伝えればいいんだが・・・・」

 

「いいわよ別に。あんたはあんたの仕事をちゃんとすればいいんだから。」

 

「なら、桂花には悪いけれど、もう少し情報を集めてちょうだい。他の者はいつ異変が起きてもいいように準備を怠らないように。」

 

『はっ!』

 

異変が起きてもいい様に兵たちを鍛えますかね。と思い動いていた数日後、非常招集がかけられた。

秋蘭の報告を聞く限り、旗印は袁、文、顔。敵の主力は全てそろっていて、三万らしい。対する攻められた城の人数は七百。しかも増援はいらないらしい。

華琳は増援を送らず、城の指揮官の程昱と郭嘉に袁紹が去った後に説明に来るように伝えろとのことと俺らに勝手に兵を動かさないことと命令を出したが、

 

一刀「お、おい春蘭。何やってるんだよ!」

 

如月「春らーん。華琳に兵を動かすなって言われたよなー。何やってんの?」

 

「袁紹ごときに華琳様の領土を穢されて、黙っていられるものか!」

 

「おいこら!自分ら何やっとんねん!」

 

一刀「霞!春蘭が例の城に応援に行くって・・・・止めるの手伝ってくれ!」

 

「・・・・ったく、ここもイノシシか!どあほう!」

 

「貴様も似たようなものではないか!」

 

如月「自制が効く分、霞の方がお前よりマシだよ!一刀は華琳を呼んで来い。全速力で!ここは俺と霞の二人で止めとくから。」

 

一刀「わ、分かった!」

 

如月「本隊、止まれー!止まれー!」

 

「貴様ら・・・・!どうしても止める気か!」

 

「当たり前や!どうしても行くっちゅうんなら・・・・」

 

「ふん、あの時の決着、もう一度つける気か?」

 

「ええなぁ・・・・!今度はどこからも矢なんぞ飛んで来ぃへんで?」

 

「上等だ!ならばいくぞ!」

 

「来ぃ!」

 

春蘭と霞が打ち合い始めて間もなく、一刀が華琳を連れてきた。

 

「何をしているの!」

 

「か、華琳様っ!」

 

「如月!どういうこと!説明なさい!」

 

如月「そうだな・・・・」

 

「でええええええいっ!」

 

「くぅっ!」

 

如月「終わったようだし、本人から聞いてくれ。」

 

「そうね。」

 

「今度はウチの勝ちやなぁ。春蘭。」

 

「い、今のは油断して・・・・」

 

「見苦しいわよ、春蘭。」

 

「うぅ・・・・華琳様・・・・」

 

「で、一体どういう事なの?説明なさい。」

 

「い・・・・いかに華琳様のご決断とは言え、今回の件、納得いたしかねます!袁紹ごときに華琳様の領土を穢されるなど・・・・」

 

「それで兵を勝手に動かしたわけね?」

 

「これも華琳様を思えばこそ!」

 

「はぁ。もう少し、説明しておくべきだったわ。いいわ、出撃なさい。」

 

「華琳様!」

 

「おいおいおいおい!それでええんか?」

 

「ただし、あなたの最精鋭の三百だけ動かすこと。」

 

「華琳様の信任を得た以上、出来ぬことはありませぬ!」

 

春蘭はそう言うと、三百を引き連れ出撃していった。その後、華琳が霞に残った兵たちを率いて、盗賊討伐に向かわせ、この場をおさめた。

 

その日の真夜中、春蘭が帰還したとの報告が入り、春蘭を出迎えに行き、そのまま緊急会議となった。

 

「さて。それでは、説明してもらおうかしら?どうして程昱は増援がいらないと?」

 

「・・・・ぐー」

 

「こら、風!曹操様の御前よ!ちゃんと起きなさい!」

 

「・・・・おおっ!?」

 

すげーなあの娘。華琳の前で寝るとは。てか、漫才みたいだな。と思っていると程昱は説明をし始める。

説明としては、相手は数万の袁紹軍で前線指揮官の文醜は派手好きのため、たった七百の相手はしないだろう。だけど、華琳が増援を送ったらケンカを売られたと思い、そのまま攻め込まれ全滅だったのではと。

顔良が出てきたら?の問いには、顔良は必ず補佐に回ざるをえないとのこと。

もし、総攻撃をしてきたら?の問いには、損害が砦一つと兵七百ですむし、情報はすでにこちらに送っていたから無駄死にではないし、風評操作にも使えたはずとのこと。

 

「郭嘉、あなたは程昱のその作戦、どう見たの?」

 

「・・・・」

 

と、華琳に意見を求められた郭嘉。しかし、答えないことに不思議に思った秋蘭が答えるように促すと、

 

「・・・・ぶはっ」

 

突然、鼻血を大量に出す郭嘉。

 

如月「なぜ、鼻血!?」

 

「誰か救護の者を呼べ!救護ー!」

 

突然のことで慌てる俺達をしり目に

 

「あー。やっぱり出しちゃいましたかー。ほら、稟ちゃん、とんとんしますよ、とんとーん。」

 

と程昱が慣れた手つきで、郭嘉の首の後ろをとんとんしている。

 

「・・・・う、うぅ・・・・すまん」

 

「郭嘉さんは持病でももってるんですか?」

 

「いいえ。稟ちゃんは曹操様の所で働くのが夢でしたから。きっと緊張しすぎて鼻血が出ちゃったんでしょうね~。」

 

「そ、そうか・・・・」

 

「だ、大丈夫だ・・・・すまん、風。」

 

「いいえー」

 

「大丈夫かしら?郭嘉とやら。」

 

「は、はい。お恥ずかしい所をお見せしました。」

 

「無理なようなら、後ででもかまわないわ。」

 

「そ、曹操様に心配していただいてる・・・・ぶはっ!」

 

一刀「うわっ!またかよっ!」

 

如月「だからなんで鼻血だすんだよ!」

 

「衛生兵ー!衛生兵ー!」

 

「程昱、代わりに説明を・・・・」

 

と華琳に促され説明する程昱。

郭嘉は最悪、城に火を放ってみんなで逃げようと考えていたらしい。

その後、袁紹が南皮に引き上げたとの報告があり、程昱と郭嘉の両名はこのまま城に残り軍師として働くことになった。桂花は反対していたが、華琳の説得により納得したようだ。まぁ、桂花一人でこの城の軍師の仕事を行っていたからなぁ。作業分担できるのは賛成だ。

その後、華琳に一刀と流流と一緒に二人を部屋までの案内を命じられた。

 

如月「覚えてないかもしれないが、とりあえず、お久しぶりでいいのかな?程立?戯志才?」

 

「おおー、なぜその名をー?」

 

如月「そりゃ、覚えているさ。ここに来て初めて?会った人たちだからな。ちなみに、陳留の街の外れであった者だ。」

 

「ああ、あの強いお兄さんですかー」

 

「ああ・・・・あの時の」

 

「そうですかー。華琳様の所にいる天からの遣いって、お兄さんたちのことだったんですねー」

 

「そういえばあの頃の陳留の刺史って、曹操様だったわね・・・・」

 

如月「あの後、華琳に一刀共々拾われてね・・・・あの時、真名の存在を教えてくれてありがとね。」

 

一刀「そういえば、あの時、二人はなんで旅してたの?」

 

程昱曰く、見分を広めていたそうだ。偽名を使っていたのも女の旅は何かと物騒だからだそうだ。こんな時代だからなぁ。ちなみに郭嘉は偽名だったが、程立は偽名ではなかったらしい。改名した理由を聞くと、良い夢を見たからだそうだ。

もう一人の槍使いの彼女のことを聞くと、路銀が無くなったため、公孫賛の所に士官したらしい。しかし、公孫賛は袁紹に滅ぼされてしまったため安否が気になったが、縁があればその内会えるのではないかとのことだ。

とりあえず、新しく二人が仲間になった。

程昱の風と、郭嘉の稟の二人が。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三十話

ある日の昼下がり、今俺は、二階建ての建物の二階にある部屋にいる。一階は丼専門店をやっていて俺が出資をした店だ。

まず、この店を出そうと思った理由は丼物を手軽に食べたかったからだ。この世界には丼物のメニューが無かったため、手軽に食べることが出来るように自分で店を造ってしまえと思ったのだ。

しかし、警備隊の副長である俺は、日ごろの警邏や書類作業、兵の訓練などで多忙を極めているため、えっ?仕事じゃなくて女の子とイチャついてるだけじゃねーかって?そういうのはちゃんと非番の日にやってるんですよ。嘘じゃねーよ!信じてください・・・・とまあ脱線してしまったが、こういう理由で店を開くことが出来なかったのだ。

だが、領土拡大や街の発展で人口が増えたことで流れの料理人も増えた。そこで季衣と顔見知りで料理の腕もたしかな人材を紹介してもらった。こういうものをやりたいと実際に食べてもらった所、自分にやらせてください!と逆にお願いされてしまったので任せることになった。

横領とかがあるんじゃないかって?それはない。なぜそう言い切れるかというと、まず、俺が街の警邏隊の副長であることと詠に売り上げ等の経理をやってもらっているからだ。これじゃあさすがに、横領とか出来ないわな。

話がそれたが、俺が店の二階にいる理由は

 

如月「まず、忙しい中自分の呼びかけに集まってくれてありがとうございます。」

 

「いいって、副長さん」

 

「副長さんの頼みなら、出来る限りは聞くぜ!」

 

「で、何で俺達“肉屋”の連中を集めたんだ?」

 

如月「はい。実は俺の国の料理を売ってもらいたくて、集まってもらいました。」

 

「てことは、天の国の料理かい?」

 

如月「ええ、そうです。まずはこれとこれとこれを食べてみてください。」

 

みんなの前に出したのは、コロッケ、ミンチカツ、からあげの三つだ。

 

「おお!こりゃウマい!」

 

中々好評のようだ。

 

如月「こっちが、作り方が書いてあるものです。みなさん、見てもらっていいですか?」

 

「どれどれ・・・・ふむ、材料はこんだけか。簡単だな。」

 

如月「まぁ、それは一般的な作り方なんで、自分たちで工夫してもらっても大丈夫ですよ。」

 

「でも、いいのかい。こんな美味しいものの作り方を広めちゃっても。」

 

如月「いや、ただ単に俺が食べたいだけなんで。まぁ、街のみんなは安くておいしいものが食べられて、店の人たちは儲ける。ほら、みんな幸せ。」

 

「まぁ、確かにそうだなぁ。」

 

如月「あ、でも油を使うんで、城にこの登録書を出してくださいね。」

 

登録書をみなさんに渡す。

 

如月「じゃあ、宜しくお願いしますね。」

 

こうして、街中に新しくコロッケとメンチカツとからあげが広まった。

 

 

ところかわって、ある果樹園にあるものを持ってきた。

 

如月「こんちわーっす。」

 

「おやおや、これは副長さん。」

 

如月「おやっさん。急で悪いんだけど、これ、果樹園に置かせてもらっていいかな?」

 

「なんですかい?これは?」

 

如月「蜂の巣箱なんだ。これでハチミツが採れる予定なんだ。」

 

そう、持ってきたのは養蜂箱だ。真桜をはじめ、工兵達に百個ほど作ってもらったのだ。

 

「へぇ、こんなんでハチミツが採れるんですかい?」

 

如月「うん。まぁ、ちょっと実験も兼ねてるんだけどね。」

 

「わかりやした。副長の頼みなら断れません。どうぞ、置いて行ってくだせぇ。」

 

如月「うん、ありがとう。うまくいけばハチ達が勝手に受粉してくれるから、実のなりが良くなるかもよ。」

 

「そいつはいいですね。」

 

と養蜂箱を置かせてもらえることになった。ちょくちょく様子を見に来なきゃ。

 

 

また別の日、今度は牧場にやってきた。

 

如月「こんちはー。おじさん達元気?」

 

「おお、副長さんいらっしゃい。」

 

如月「最近、乳搾りの方はどお?」

 

「そだねー、屈んでやってるから腰が痛くやっちゃってねー。」

 

如月「そうなんだー。ちょっと試してみたいことがあるんだけどいい?結構ラクになると思うよ。」

 

「それじゃあ、やってもらおうかねー」

 

牧場の搾乳場に行き、目線が牛の乳房くらいまで地面を低くする。

 

如月「で、これを作ってもらったんだけど試してみるわ。あ、アケビちゃーんこっち来てー。」

 

とアケビちゃん(メス、三歳)を呼ぶと

 

「モゥー♡」とこっちに来てくれた

 

如月「アケビちゃん、ちょっとこれを試させてねー。」

 

と声をかけ、搾乳機を乳房に取り付けて動かしてみると、乳を搾ることが出来た。

 

「へぇ、すごい絡繰だねえ。」

 

如月「うん。上手くいったみたいだね。アケビちゃんありがとね。」

 

とアケビちゃんにお礼を言うと、「別に気にしないで」とでも言っているようにモゥーと鳴く

 

如月「これさえあれば、作業効率がよくなるから使ってみてよ。あとで、改善点も教えてくれると助かるな。あ、使った後はちゃんと消毒しておいてね。これ、消毒のやり方。」

 

と消毒のやり方を書いた竹簡を渡す。

 

「副長さん、ありがとね。」

 

「これでラクになるわ。」

 

また近い内に様子を見に来なきゃね。

 

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三十一話

如月「いやぁ、珍しいな。この面子でご飯食べたのは。」

 

今日は珍しく、月、詠、恋、ねね、霞の六人で昼飯を食べたのだ。

 

「そうですね。みんな揃うのは滅多にありませんから。」

 

「(コクッ)おいしかった。」

 

「兄上ご馳走様なのですぞー」

 

ちなみに俺は今、ねねを肩車している。

 

「いやー、ウチもご馳走になって悪いな。如月。」

 

「そういえば如月。あんた、帰りに服屋に寄ってたけど、何か用だったの?」

 

如月「ああ、頼んでいたものが出来上がったから、受け取りに行ったんだ。」

 

「どのような服なんですか?」

 

如月「ああ、それは『あれ、如月じゃん。』・・・・ん?よう一刀。華琳も一緒か。」

 

一刀と華琳の二人とバッタリでくわす。

 

「あら、珍しいわね。あなたたちの組み合わせなんて。」

 

如月「ああ、珍しく休みが被ったらしくてな。みんなで、昼飯に行ってた。お二人さんは?」

 

一刀「報告したついでに散歩に行くことになってな。」

 

如月「ふむ、じゃあ、邪魔者は去ろう。」

 

と言って別れようとしたら、

 

「ちょ・・・・沙和。やめてくれ!」

 

「ふっふっふ・・・・逃がさないの凪ちゃん!」

 

と二人の大きな声が聞こえてきた。

 

如月「はぁ、一刀・・・・」

 

一刀「まぁ、しょうがないな。」

 

如月「だな。みんな悪いけど、様子見に行っていい?」

 

「ええ、別にかまわないわ。」

 

「はい。私もついていきます。」

 

「まぁ、月が行くなら。」

 

「・・・・恋も行く。」

 

「ウチも行くわ。」

 

「兄上、早く行くですぞ。」

 

沙和の部屋の前まで来て、

 

如月「沙和ー、入るぞー。」

 

と言ってドアを開けると、べしっ!と顔に何か当たった。

 

如月「痛ぅー!ん?何だこれ?靴?」

 

「「ああ、副長!それにみんな!」」

 

漸く俺達に気付く二人。よく見ると凪の服が結構ずれていて、下着まで見えてしまっていた。

 

如月「何やってんだ二人とも。」

 

「「副長、隊長、華琳様、みんな。沙和が(凪ちゃんが)」」

 

「はいはい、二人とも。ちゃんと聞くから。凪、何があったの?」

 

「沙和が・・・・沙和がいきなり服を脱がしてきて・・・・」

 

「ちがうのー!凪ちゃんにおしゃれして欲しかったんだよー!」

 

一刀「凪はおしゃれに興味無いの?」

 

「きょうみなっ・・・・い・・・・ことも、ない・・・・ですが」

 

「つまり、沙和の用意した服を凪に着てもらおうとしたけど、凪が嫌がっているということね。」

 

如月「カワイイ系か・・・・俺も凪なら似合うと思うけどなぁ。」

 

「・・・・なっ!ふ、副長まで何を言うのですかっ!」

 

「ウチも似合うと思うで。」

 

「私もそう思います。」

 

「私も凪なら似合うと思うけど。」

 

如月「よし!華琳も賛成しているし、沙和!凪を着替えさせろ。凪・・・・隊長、副長、そして覇王様命令だ。あきらめろ。」

 

「副長ーっっっ!!!?」

 

「ならば、私が指揮を執りましょう。月、詠、ねねは沙和の手伝いを、恋と霞は凪が暴れたら、取り押さえること。一刀と如月は外に出てなさい。」

 

「そんな・・・・華琳様ー!!」

 

凪の叫び声を背に受け、俺と一刀は部屋の外へ出る。

部屋の中ではドタバタとしているのがきこえていたが、すぐに落ち着き、

 

「いいわよ。入ってらっしゃい。」

 

華琳に呼ばれ部屋の中に入ると

 

「じゃじゃーん!お待たせしましたなのー!」

 

「・・・・ッ・・・・」

 

凪は頬を真っ赤に染めて、少しでも肌を隠そうと、短いスカートの裾を抑えている。

 

「へぅ・・・・凪さん、可愛いです。」

 

「うん。凪、可愛いわよ。」

 

「・・・・凪、可愛い。」

 

「似合ってますぞー。」

 

「真っ赤になって・・・・凪、かわええなぁ!」

 

「凪、良く似合っているじゃない。」

 

一刀「よく似合ってるよ、凪。」

 

「ふっふっふ~、スゴイでしょー?自信作なの!それで、副長どうなの?」

 

如月「・・・・はっ!意識が飛んでた。・・・・せ、制服?しかも、ミニスカートにピンク色のカーデガン・・・・」

 

「征服じゃないよ?」

 

一刀「その征服じゃなくて、俺らの世界の学校・・・・こっちで言う私塾みたいなものはな、制服を着て通っていたんだ。俺や如月の着ている服も制服なんだ。」

 

そう、俺が着ているのは、学生服で、一般的な黒の学生服なんだ。

 

如月「うん!凪、良く似合っているぞ!可愛い!」

 

「良かったねー、凪ちゃん!副長、似合ってるって、可愛いって言ってくれたのー♪」

 

「あ・・・・ぅ、あ・・・・その・・・・ありがとうございます。」

 

如月「沙和。いいものを見せてくれたお礼だ。これを受け取ってくれ。」

 

俺はさっき服屋で受け取った服を沙和に渡す。

 

「副長ありがとうなのー。ん?名札がついてる?月用?詠用?これ・・・月ちゃん達の服?それと、凪ちゃん用もあるの。」

 

『えっ?』

 

と月、詠、恋、ねね、霞、凪の六人が声を上げる。

 

如月「俺と一刀は外に出てるから。華琳、沙和、準備出来たら呼んでくれ。」

 

「ちょ・・・・ホンマか!?」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

 

如月「はっはっは、聞こえない、聞こえなーい。」

 

と言いながら部屋の外へ出る。

一刀とだべりながら待っていると、

 

「たいちょー、ふくちょー、入ってきていいのー。」

 

と沙和に呼ばれ部屋に入ると可愛く着飾った六人の姿が

 

一刀・如月「「・・・・」」

 

「如月・・・・あなたの考えた意匠は素晴らしいわね。」

 

と鼻血をドバドバ流しながら鼻を押さえている華琳

 

「へぅ・・・・如月さんどうですか?」

 

「どうなの?如月?」

 

「・・・・似合ってる?」

 

「おお・・・・兄上、これ可愛いですぞー。」

 

「おーおー。これあラクでええなぁ。」

 

「副長、どうですか?」

 

六人がそれぞれ感想を求めてきたり、言っていたりしている。

 

如月「いや・・・・メチャクチャ似合ってるよ。」

 

月には、白いワンピースと麦わら帽子。清楚な感じの月にはものすごく似合っている。月ちゃんマジ清楚!可愛すぎて華琳が月に抱きつている。

 

詠には夏服のセーラー服。いいね!夏セーラーいいね!ミニスカートいいね!華琳がスカートの裾を捲ろうとしているが、詠は全力で守っている。

 

恋には、シスターの服を。両膝をついて神に祈りを捧げている格好で上目遣いでこちらを見上げている。萌えー!バンバンバン!(床を叩く音)なにこの娘。持ち帰っていいですか?覇王様?えっ?ダメ?自重しろ?・・・・はい。

 

ねねには、ドラクエ11のベロ○カが装備できるネコのかぶりものと着ぐるみ。やべぇ・・・・可愛すぎる!ウチの娘はヨメには絶対にやらん!えっ?俺の娘じゃないって?それくらいの可愛さなんだよ!

 

霞には、黒のタンクトップにデニムのショートパンツタイプだ。姉御肌の霞にはピッタリだと思う。カッコいいよね!本当はカワイイ系が良かったんだけど、イメージが浮かばなかったんだよね。ファッションセンスがなくてごめんなさい。

 

凪には冬服のセーラー服だ。さっきのカーデガンも良かったけど、こっちもまたいい!自分はカーデガンよりセーラー派なんだ。

 

「兄上!兄上!これ、すごく可愛いのです。ありがとうなのです!」

 

如月「うんうん。ねね、すごく可愛いよ。月もすごく似合っているよ。」

 

「へぅ////」

 

如月「霞はかっこいいな。本当はカワイイ系の服にしたかったんだが、すまない。」

 

「いやいや。ウチ、これすごく気に入ってるから気にしんといて。それに、カワイイ系なんて似合わないやろうし。」

 

如月「いやいやいや、霞にもカワイイ系は似合うと思ってるから。そんなこと言うなよ。ぜってー、着させてやる。」

 

「お、おう。待っとくわ。」

 

如月「恋も似合ってるよ。でも、その体勢そろそろやめてもらえないかなぁ?」

 

「・・・・?」

 

首を傾げる恋。首を傾げた姿も可愛すぎる!ブハッ!やべぇ鼻血が・・・・

 

そして、詠と凪が俺の所にやってきて手紙(自分で用意した)を持って上目遣いで

 

「「あの・・・・先輩。これっ!受け取ってください!」」

 

と渡してくる。

 

如月「ガハッ!」

 

大量の血を吐く俺。

 

「ふ、副長!」

 

「ちょ、大丈夫なの!」

 

如月「我が生涯に一片の悔いなし・・・・」

 

「副長ー!」

 

「如月!しっかりしなさいよ!」

 

「如月さん!しっかりしてください!」

 

「如月!大丈夫!?」

 

「兄上ー!」

 

「ちょ、如月。気持ちは分かるけど、そりゃないで。てか、華琳もかい!」

 

一刀「衛生兵!衛生兵ー!」

 

こりゃ、一刀が女性ものの服ばかり案を出すのも分かるわ。

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三十二話

一刀「・・・・」

 

如月「うんうん。練った気を維持できてるな。」

 

一刀「ぷはっ・・・・あーっ!きっつぅー!」

 

如月「OK、OK。だいぶ出来るようになったじゃないか。」

 

一刀「いや、まだまだだな。すごく集中しなきゃ出来ないから。」

 

如月「まぁたしかに。分かってるじゃないか。これからは常に練った気を維持し続けることだな。仕事中もな。」

 

一刀「うへぇ。まぁ大変だけどやってみるよ。」

 

如月「なら、休憩するか。」

 

久しぶりに一刀と鍛錬している今日この頃。一刀もだいぶ気の開放が出来るようになってきた。もう少しで色々出来るようになるかな?

 

「おーい!兄ちゃん達ー!」

 

如月「ん?なんだ季衣と流流じゃないか。どうしたんだ?」

 

「それはこっちの台詞だよー。兄ちゃん達は何してるの?」

 

一刀「如月と一緒に鍛錬中なんだ。今は休憩中。」

 

「お疲れ様です。兄様たち。」

 

「あっ!そうだ!きー兄ちゃん!」

 

如月「ん?どうした?季衣?」

 

「この前の稽古してくれるって約束覚えてる?」

 

如月「おお、覚えてるぞ。じゃあ、今からやるか?」

 

「うん!」

 

如月「流流も一緒にどうだ?」

 

「私もですか!?」

 

「流流も一緒にやろうよー!」

 

「そうですね・・・・それではきー兄様。私もご一緒してもいいですか?」

 

如月「ああ、いいよ。じゃあ二人とも・・・・どっからでもかかってこい!」

 

「じゃあ、いっくよー!そりゃああああっ!」

 

「でりゃああああっ!」

 

二人まとめてかかってきた

 

如月「さすが季衣と流流。いい連携だ。けど・・・・ふんっ!」

 

フェニックスウイングで二人の得物を弾き返し、逆に得物を二人に当てようとするが、軌道をかえ、威力を減少させる。

 

「さすが、きー兄ちゃん。」

 

「素手で弾き飛ばすなんて、さすがです。」

 

如月「ほらほら二人とも、もっと仕掛けて来い。来ないならこっちからいくぞ!疾風斬り!」

 

「きゃあ!」

 

高速で流流に近づき斬りつける。強すぎたのか流流は吹き飛ばされる。

 

「流流!」

 

如月「季衣!よそ見なんかしてていいのか?疾風斬り!」

 

「くっ!」

 

とっさに鉄球部分で受け止めるが、俺は右側へ即座に回り込み、

 

如月「ばくれつけんっ!」

 

「うわー!」

 

季衣を殴り飛ばす。

 

「そりゃああああ!」

 

流流が伝磁葉々(でんじようよう)で遠距離から攻撃してくる。

 

如月「よっと。疾風斬り!」

 

流流の攻撃をよみ、かわし、高速で流流に近づき剣を流流の首元にかざす。

 

「ま、まいりました。」

 

「はぁ、負けちゃった。」

 

如月「二人ともお疲れ。結構やるじゃないか。」

 

「きー兄ちゃんこそ。ボクたちふたりがかりなのに一方的にやられちゃったよ。」

 

「きー兄様がここまで強かったなんて。手合せして初めて分かりました。」

 

如月「二人とも、武器をうまく扱えてないな。季衣、ちょっと貸して。」

 

季衣から岩打武反魔(いわだむはんま)を借り、

 

如月「これくらい扱えるようになるといいんだけどな。」

 

長い鞭みたいに扱う。

 

一刀「いやいやいや、それ出来るの如月だけだから。」

 

如月「別に今すぐってわけじゃねーよ。まぁ、こんなふうに自分の武器を自由自在に操れるように努力しろってことだ。」

 

「うん!分かったよ!もっと鍛錬をするよ!ねっ、流流!」

 

「うん!もっともっと強くなりたいです。」

 

如月「ああ、お前たちなら出来るようになるからな。頑張れよ。」

 

と季衣たちの頭をなでていると

 

ヒュン!

 

ガキン!

 

と後ろからの攻撃を剣で受け止める。

 

如月「いきなり後ろからの攻撃はないんじゃないか?霞?」

 

「うっそ。あれを受け止めるんかいな。さすがやな如月。」

 

如月「で、霞もやるの?」

 

「当たり前や。惇ちゃんや恋とはやっといて、ウチとはやらんちゅーことはないよな?」

 

如月「はぁ。しかたないな。よし、こい!」

 

「さすが、如月や。ほな、いくでぇ!おりゃああああっ!」

 

霞は飛龍偃月刀を上下左右袈裟斬り、逆袈裟斬りを素早く放ってくる。

 

如月「くっ!さすが霞。じゃあ今度は俺も反撃開始!剣の舞!」

 

不規則な剣戟を霞に放ちつつ、距離を取る。

 

「くはぁー!これが剣の舞か!反撃したろうと思うたのに、防ぐんで精一杯やったわ。けど、まだ終わりやないでっ!」

 

再び霞が攻撃してくるが、それを受け流しつつ

 

如月「あっ、そうだ霞。面白いもの見せてやるよ。煉獄斬り!」

 

「うわっ!あっつ!なんやそれ!そんなことも出来るんかい!?」

 

如月「おらおら!もっといくぞ!零度斬り!風神斬り!」

 

「うわっ!つめた!こっちは、なんや風が刃みたいに切り刻んでくるわ。あっぶなっ!」

 

如月「ギガデイン!」

 

ギガデインを剣に落とす

 

「ちょっ!」

 

如月「ちゃんと防御しろよ!ギガブレイク!」

 

「うわぁー!」

 

直撃し、霞は吹っ飛ばされる。

 

如月「霞!大丈夫か?スマンやりすぎた。ベホマ。」

 

霞に駆け寄りすぐさまベホマを唱える。

 

「うはー。すごい威力やな。あの技。」

 

如月「まぁな。でも、霞もなかなかだったぞ。さすがだな。」

 

「そっか。まだまだ頑張らなあかんな。またやろうな如月!」

 

如月「ははっ、了解。」

 

クシャクシャと霞の頭をなでる。

 

「はぁー。如月になでられるのって初めてやなぁ。こりゃみんなが虜になるわけや。」

 

如月「気に入ってくれたようで何よりだよ。よし、終わったぞ。」

 

一刀「お疲れさん如月。あと、もうそろそろ時間だぞ。」

 

如月「えっ!もうそんな時間!?」

 

「なになにー?何か用事?」

 

如月「ああ、ちょっと護衛と撃退の任務がね。」

 

「へぇー、そうなんですね。」

 

一刀「ああ、だから待ち合わせの時間が近いから俺達行くから。三人ともお疲れさん。」

 

如月「お疲れさん。じゃあ、仕事行ってくるわ。」

 

「兄ちゃん達バイバーイ!」

 

「お二人ともお気をつけて。」

 

「ほななー。」

 

三人と別れたあと、待ち合わせ場所に向かう俺達だった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三十三話

二人で待ち合わせ場所のカフェに行くと三人がお茶を飲んでる最中だった。

 

如月「すまん!遅くなっちまった。」

 

「もう、遅いよー。」

 

「ちぃ達を待たせるなんて何様のつもりよ。」

 

一刀「ゴメン、ゴメン。」

 

「それより、今日呼び出したのは何?何か曹操様から命令でもあるの?」

 

俺は指令内容を三人に説明し始めた。西方の邑で他勢力の工作員が暗躍して、寝返りの気配があるため、住民に知られることなく工作員を撃退しろとのこと。そこで、三人を囮にして工作員をあぶりだそうと考えているという事を伝えると天和、地和の二人は駄々をこね始めたので、二人は一刀に任せ(押し付け)俺は人和と交渉を再開。色々と質問されたが納得してくれたみたいで引き受けてくれた。

すぐに出発するため、準備を整えに三人は事務所へ戻って行った。カフェの代金は俺と一刀で割り勘にした。

凪と合流後、三人とも合流し邑へ向かった。

村に到着し、先行して準備をしてくれていた真桜と沙和とも合流。人和が現場の状況を確認したいとの事だったので一刀、凪、沙和の三人に天和と地和をまかせ、俺と真桜と人和で現場を見に行った。

 

「敷地は広いけど舞台が狭いわね。」

 

「一応、この邑で一番大きい小屋やねんけど。」

 

「これじゃロクな演目が出来ないわ。」

 

「せやけど、これ以上大きな舞台はないで。」

 

如月「・・・・ふむ。じゃあ、無ければ作ろう。」

 

「いや、そやいなこと言うても材料が無ければ出来へんで。」

 

「大丈夫。舞台部分を縄張りしておいて、周囲を一段低く掘ればいい。」

 

「そんなこと可能なの?」

 

如月「可能だよ。真桜、螺旋槍持ってきてるだろう?」

 

「持ってきてるけど・・・・えっ、ウチがやるの?」

 

如月「すまんけど、頼むよ。」

 

「・・・・はぁ、仕方ないなぁ。副長の頼みやしええよ。」

 

「本当にいいの?」

 

「副長は頼み上手やからなぁ。副長、縄頼むで。」

 

如月「りょーかい。人和、舞台はどれくらい必要だ?」

 

「そうね・・・・」

 

人和は少し考えてから距離を測り始めた。俺は人和の後ろに続いて縄を張っていった。

 

「ふむふむ、このくらいでええやな。」

 

「うん。」

 

「ほないくでぇ。・・・・地竜螺旋撃!」

 

すごい勢いで地面を削っていく真桜。あっという間に掘り終えてしまった。

 

如月「お疲れさん。」

 

「お礼しっかりとはずんでなー。」

 

如月「はいはい。人和。土砂の始末やら何やらしつつ、開場の準備を始めよっか。」

 

邑の人たちに手伝ってもらい、土砂をどけて舞台の作成に入った。三人のリハーサルも終わり、邑の人たちと同じ格好をした兵士も観客たちに紛れ込ませ終えたのを見計らって開場した。

すぐに観客席がいっぱいになった。人和が来場人数と売り上げ予想をしていた。

 

「隊長、副長・・・・」

 

一刀「ん?どうした?」

 

如月「さっそく食いついたか?」

 

コクっとうなずく真桜。

 

一刀「他の二人も気付いてると思うが、泳がせておいて。」

 

如月「仕掛けてくるのは盛り上がりが絶頂の時だろう。その時に三人の身に危害が及ばないように気を付けるように。」

 

「はいな。」

 

三人のライブが始まり、今まさに盛り上がりがピークになろうとしている時に奴らが動き出した。しかし、兵士たちが迅速に動いたため作戦が失敗したのか夜に紛れて一旦散開するつもりだろうが、

 

如月「そう簡単には逃げられないよ。ラリホーマ。・・・・よし、眠ったようだな。縄で縛っておいてくれ。」

 

「はっ!」

 

「了解。」

 

「分かったなのー。」

 

三人が男たちを縄で縛ったのを確認して

 

如月「一刀に報告してくるわ。」

 

一刀に報告している最中に凪がやってきて、工作員たちが舌を噛み切って自害したと報告してきた。さるぐつわをしとけば良かったと後悔したが、とりあえず死体は持って帰って調べることにし、凪たちには持ち場に戻って警備を続けてもらった。その後は何も起こらず、ライブは終了した。

ライブが終わり陳留に帰ることになり、俺と一刀は天和、地和、人和の三人と歩いている。凪たちは死体を持って先に帰ってもらっていた。天和と地和が一刀をはさんであれ食べたいこれ食べたいと言ってはしゃいでいるのを少し後ろで見ていたら人和が寄ってきて

 

「敵はどうなったの?」

 

如月「一応、片付いたよ。凪たちが連れて帰ってるとこ。」

 

「そうよかった。」

 

如月「心配してくれてたんだ。」

 

「舞台の裾で動いてるのが見えたから。」

 

如月「心配してくれてありがとう。あっ、そうそう、集客人数結構あったな。」

 

「うん。今回の売り上げは中々大きかったわ。舞台の設営費も安く済んだし。あと一回、売り上げをきっちり上げれば、事務所移転出来るかも・・・・」

 

如月「そっか。結構頑張ったじゃないか。」

 

人和の頭をなでる

 

「////」

 

如月「あっ、すまん。嫌だったか?」

 

「うぅん!全然イヤじゃない。」

 

顔を真っ赤にしてこちらを見上げる人和。可愛いじゃねーか!と思っていると

 

「人和ちゃーん、如月ー。一報亭に行くよー。置いてっちゃうよー。」

 

如月「おっと、人和。食いそびれっちまうぞ。行こうか。」

 

「ええ!」

 

陳留に着いた後、一報亭に向かい、ささやかな打ち上げをした。後日、真桜にお礼としてメシをおごってやった。

 

 

 




感想お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三十四話

如月「何か、おいしそうなもの売ってないかなぁー。」

 

と買い食い目的で街にやってきた俺。道を歩きながらどれを食べようかと迷っていると

 

如月「ん?あの二人は・・・・おーい、月!詠!」

 

「ん?あっ!如月さん。」

 

「如月。あんたもお昼に来たの?」

 

如月「そうなんだよー。買い食いしながら店を回ろうと思って。」

 

「じゃあ、私達とお昼ご飯、一緒に食べませんか?」

 

如月「そうだな。じゃあ、ご一緒させてもらおうかな。」

 

「なら、どこかのお店に入ろっか。何か食べたいものでもあるの?」

 

如月「いや、特には。二人に任せるよ。」

 

「なら・・・・あっ!私、ここがいいです。」

 

月が選んだのはおしゃれなカフェテリアだった。

 

如月「へぇ、おしゃれな店だな。詠もここで良いか?」

 

「ええ、良いわよ。」

 

如月「なら、入りますか。」

 

「はいっ!」

 

三人で一緒にお店に入り、注文。女性向けのお店で、量が少なかったため、俺は追加で注文をした。ご飯を食べ終え、三人で店を出て歩いていると

 

「・・・・如月」

 

「兄上っ!」

 

恋とねねに偶然遭遇。ねねが俺の胸に飛びついてきたのを受け止め、そのまま肩車。月と詠がうらやましそうな目で見てきたので、また今度なと頭をなでる。

恋は紙袋片手に肉まんをモキュモキュと食べながら近づいてきた。食べてる姿がリスみたいで可愛い!

 

如月「恋とねねは何やってたの?」

 

「・・・・お昼ご飯」

 

「恋殿とお昼を食べていたのですぞ。兄上達は?」

 

如月「俺達は食後の散歩中。」

 

「そうだったのですか。我々もご一緒してよろしいですか?」

 

如月「俺はいいけど、二人は?」

 

「はい。私も二人と一緒がいいです。」

 

「ボクも構わないわ。」

 

如月「なら、みんなで街をブラブラ散歩でもしますか。」

 

五人でウインドウショッピングを楽しんでいると

 

「よう。そこの兄ちゃん。可愛い娘を四人も侍らせて何してんの?ウチも混ぜてーな。」

 

如月「ん?あぁ、霞か。混ざりたいの?」

 

「そりゃそーやんか。ウチも仲間に入れてーな。」

 

如月「四人ともいい?」

 

みんな、はいとうなずく。

 

如月「ちょっと大人数になったな。どこかに移動でもしよっか。どこかいい場所ある?」

 

とみんなに聞くと

 

「・・・・恋、知ってる」

 

如月「他にはないみたいだし、恋、案内してもらっていいか?」

 

恋はコクッとうなずき、「こっち」と言って歩き出す。みんな恋の後をついていくと

 

如月「城の中庭?」

 

「・・・・こっち」

 

中庭にある大きな一本の木の下に着いた。影がいい具合に日よけになっていて、風も吹いて気持ちいい場所だ。ねねを肩から降ろし、木を背に長座位で座る。

 

如月「へぇ、中庭にこんな所があったんだ。知らなかったなぁ。」

 

「はい、風が心地よくていい場所ですね。」

 

「こんな場所があるなんてねー。」

 

と俺の右に月、左に詠が座り、肩に頭を乗せてくる。

 

「あっ!月!詠!ズルいのです!」

 

と言いながら、俺の太ももの上に座り、俺はねねの後ろから腕を回し抱きかかえる。

 

「みんなズルい」

 

「あー、ええなぁ。」

 

「ふっふっふ、早い者勝ちなのです。」

 

と恋と霞は太ももと膝の間のスペースに頭を乗せ寝転ぶ。

今の俺の状態は右肩に月の頭、左肩に詠の頭、伸ばした足の太ももの上にはねね、太ももと膝の間のスペースには頭を乗せて寝転んでいる恋(右)、霞(左)の図だ。

 

如月「はぁー、良い陽気だなぁ。」

 

とスースーと寝息が聞こえる。五人ともすでに寝ていた。

 

如月「ちょっ、寝るの早すぎだろ。てか俺も日が暖かいのとねねの体温で眠たくなってきたな。ちょっと昼寝でもするか。」

 

数分もしないうちに寝てしまった。

 

如月「・・・・ん、ふぁーあ。あーよく寝た。今何時だ?」

 

周りを見ると少し薄暗くなっていて、夕日が沈み始めていた。

 

如月「もう夕方か。おーい五人とも起きろー。風邪ひくぞー。」

 

みんな目をこすりながら起きる。

 

「うひゃー、もうこんな時間かい。よう寝たわ。」

 

「・・・・お腹減った」

 

「こんないい気分でお昼寝したのって久しぶりね。」

 

「はい。気持ちよくお昼寝出来ました。」

 

「うにゅ・・・・うにゅ、よく寝たのですぞ。」

 

如月「たまにはお昼寝もいいな。よし、冷えてきたし、城の中に戻るか。」

 

「今度は如月肩に頭乗っけてお昼寝したいなー。」

 

「・・・・恋も」

 

「何言ってるのよ。早い者勝ちよ。」

 

「そうですよ。でも次は膝枕でお昼寝したいです。」

 

「あー月。それはズルいのです。次はねねの番ですぞー。」

 

「それだったら、みんな、日にちをずらして交代交代で膝枕を楽しめばいいんじゃない?」

 

「おっ!それ名案やわ。さすが詠!」

 

「・・・・それいい」

 

如月「え-っと、それって俺に拒否権は・・・・」

 

「ないですぞ。っていうか兄上。こんな可愛い我々のお願いを断るとでも?」

 

如月「何言ってんだよ。そんなのこっちからお願いするわ!」

 

「ふふっ。なら如月さん。また、お願いしますね。」

 

如月「はい・・・・分かりました。」

 

とみんなと約束し、晩御飯も一緒に食べ、解散となった。

その日の深夜、昼寝のおかげで眠気がなかったため、書類整理をしていたら、緊急の用事ですぐに大広間に集まるよう集合をかけられた。

 

一刀「ふわぁ・・・・まったく、こんな時間になんだってんだ。」

 

如月「眠そうだな。」

 

一刀「これから寝ようとしてた所に呼び出しだからな。如月は眠くないのか?」

 

如月「ちょっと昼寝をしすぎてな。」

 

「ふわぁ・・・・たいちょー、ふくちょー、お疲れさん・・・・副長なんやのそれ?」

 

俺の状況に指を挿して尋ねる真桜

 

如月「ここへ来る途中で拾ったんだ。おかしいな、俺と一緒にお昼寝してたはずなんだが。」

 

「・・・・ZZZZ」

 

「むにゃ・・・・恋殿・・・・兄上・・・・」

 

俺の太ももを枕に寝ている恋とねねの二人。

 

「二人ともいいなぁー。ね、流流。」

 

「うん。うらやましいです。」

 

如月「今度二人にもしてやるから今は我慢しろ(ナデナデ)」

 

「うん!約束だよ!きー兄ちゃん!」

 

「はい!約束です!きー兄様!」

 

一刀「それにしても、さすが凪。早いな。おはよう。」

 

「・・・・」

 

一刀「・・・・凪?」

 

「・・・・ZZZ」

 

「・・・・寝とる」

 

如月「目を開けたままかよ。器用だな。」

 

沙和と風の二人は全力で寝ている。一刀が二人を起こすと「女の子の寝こみを襲うとか、さすがですねー。」とか「もうちょっと、雰囲気のいい場所なら・・・・」とかいきなりボケをかましている。

 

「・・・・隊長、不潔です。」

 

如月「うわっ・・・・一刀、いくらなんでも・・・・」

 

一刀「おいまてこら。そんなことしてないよな真桜。」

 

「そうやったかなぁ?眠たかったから、よう覚えてへん。なぁ、姐さん。」

 

「そうやなぁ、ウチも覚えてへんもんなー。そんなことより、ウチも如月の膝枕で寝たいわー。」

 

「そこ!うるさいわよ!」

 

「風、こっちに来なさい。」

 

如月「残念だな霞。時間切れだ。おい二人とも起きろー。」

 

「・・・・(ゴシゴシ)」

 

「ふわぁ・・・・おはようなのです。兄上。」

 

如月「ほら、ねねはあっちだろ。霞、恋を頼む。」

 

「しゃーないなぁ。貸一つやで。」

 

全員が定位置に着いた所で、ようやく華琳達が入ってきた。

今回呼び出された理由は、袁術と袁紹から逃げるために劉備が国境を超える許可をくださいと関羽を使いに出してきた。その返事をするために劉備の所に行くことが決まった。向かうメンバーは恋とねねを除く全員。

さすがに城に誰もいなくなるのはマズイということで、二人を残すことになった。

あっ、そうだ。ついでにあれも持っていくか。

みんな準備が整い国境へ向かい、国境ギリギリの所に陣を張っている劉備の本陣にたどりついた。華琳が直接劉備と会うと言い出したが、それを春蘭と桂花が反対。しかし華琳が二人を言いくるめて、納得させ、連れて行くメンバーを春蘭、季衣、流流、霞、一刀、俺。他のみんなは待機となった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三十五話

陣に入ってすぐに、髪の色がピンク色の娘がやってきて

 

「曹操さん!」

 

「久しいわね、劉備。連合軍の時以来かしら?」

 

へぇー、あれが劉備なんだ。てか胸がでかいなぁと思っていると

 

如月「イテッ!?」

 

急に両足に痛みが走った。

 

「「ふんっ!」」

 

なぜか季衣と流流が怒っていて、みんなが苦笑している。俺なんかやった?

と後ろでやんややんや、やっていると話が進んでいるようで

 

「・・・・それから通行料は・・・・そうね。関羽でいいわ。」

 

「・・・・え?」

 

一刀「なに・・・・?」

 

劉備と一刀がきょとんとしている。つーか、劉備はともかく一刀はいい加減慣れろや。何年、華琳と一緒にいるんだよ。

 

「何を不思議そうな顔をしているの?行商でも関所では通行料くらい払うわよ?当たり前でしょう。」

 

「え、でも、それって・・・・」

 

「あなたの全軍が生き延びられるのよ?もちろん、追撃に来た袁紹と袁術もこちらで何とかしてあげましょう。その代価をたった一人の将の身柄であがなえるのだから・・・・安いとは思わない?」

 

確かに破格すぎると思うな。俺だったら趙雲と諸葛亮か鳳統も、もらうところだけど。

 

「曹操さん、ありがとうございます。」

 

「桃香さまっ!?」

 

「お姉ちゃん!」

 

「・・・・でもごめんなさい。愛紗ちゃんは大事な私の妹です。鈴々ちゃんも朱里ちゃんも・・・・他のみんなも、誰一人かけさせないための、今回の作戦なんです。だから、愛紗ちゃんがいなくなるんじゃ、意味がないんです。こんな所まで来てもらったのに・・・・本当にごめんなさい。」

 

「そう。・・・・さすが徳を持って政事をなすという劉備だわ。・・・・残念ね。」

 

「桃香さま・・・・私なら」

 

「言ったでしょ?愛紗ちゃんがいなくなるんじゃ意味が無いって。朱里ちゃん、他の経路をもう一度調べてみて。袁紹さんか袁術さんの国境あたりで、抜けられそうな道はない?」

 

「はい、もう一度洗いだしてみます。」

 

一刀「なぁ、華琳。」

 

「劉備」

 

華琳、一刀をガン無視

 

「・・・・はい?」

 

「甘えるのもいい加減にしなさい!」

 

辺りに響き渡る華琳の怒号。みなさんビックリ。もち、俺も

 

「たった一人の将のために、全軍を犠牲にするですって?寝ぼけた物言いも大概にする事ね!」

 

「で・・・・でも、愛紗ちゃんはそれだけ大切な人なんです!」

 

「なら、そのために他の将・・・・張飛や諸葛亮、そして生き残った兵が死んでもいいというの!?」

 

「だから今、朱里ちゃんに何とかなりそうな経路の策定を・・・・」

 

「それが無いから、私の領を抜けるという暴挙を思いついたのでしょう?・・・・違うかしら?」

 

「・・・・そ、それは・・・・」

 

「諸葛亮!」

 

「はひっ!」

 

あ、あの娘が諸葛亮なんだぁ。ロリっ娘かぁ。思ってたのと全然違うなぁやっぱり。と言う事は鳳統も?

 

「そんな都合の良い道はあるの?」

 

「そ・・・・それは・・・・」

 

「稟。この規模の軍が、袁紹や袁術の追撃を振り切りつつ、安全に荊州か益州に抜けられる経路に心当たりはある?大陸中を渡り歩いたあなたなら、分かるわよね?」

 

「はい。いくつか候補はありますが・・・・追跡を完全に振り切れる経路はありませんし、危険な箇所がいくつもあります。我が国の精兵を基準としても、戦闘もしくは強行軍で半数は脱落するのではないかと・・・・」

 

魏と劉備軍の兵たちの練度は差がありすぎるから、良くて五分の一のこってりゃ良い方なんじゃないか?

もし俺がやることになったら、一番最悪な経路を想定し、その経路を越えれるような訓練を2~3年。それでも全員生き残るのは無理だな。

 

「・・・・っ。朱里ちゃん・・・・」

 

「・・・・」

 

諸葛亮は俯いてしまい、答えられない。

 

「そんな・・・・」

 

「現実を受け止めなさい、劉備。あなたが本当に兵のためを思うなら、関羽を通行料に、私の領を安全に抜けるのが一番なのよ。」

 

「桃香さま・・・・」

 

劉備が何か言おうとした所を

 

「それから、あなたが関羽の代わりになる、などという寝ぼけた提案をする気なら、この場であなたを叩き斬るわよ。」

 

と華琳に遮られ、黙りこくってしまう

 

「・・・・どうしても関羽を譲る気はないの?」

 

「・・・・」

 

「まるで駄々っ子ね。今度は沈黙?」

 

「・・・・」

 

「いいわ。あなたと話をしていても埒が明かない。・・・・勝手に通っていきなさい。・・・・益州でも荊州でもどこへでも行けばいい。・・・・ただし・・・」

 

「・・・・通行料ですか?」

 

「当たり前でしょう。・・・・先に言っておくわ。あなたが南方を統一したとき、私は必ずあなたの国を奪いに行く。利息込みでね。」

 

「・・・・」

 

「そうされたくなければ、私の隙を狙ってこちらに攻めてきなさい。そこで私を殺せれば、借金は帳消しにしてあげる。」

 

「・・・・そんなことは」

 

「ない?なら、私が滅ぼしに行ってあげるからせいぜい良い国を作って待っていなさい。あなたはとても愛らしいから・・・・私の側仕えにして、関羽と一緒に存分に可愛がってあげる。一刀も如月も嬉しいでしょう。可愛い娘が手に入るんだから。そうね、如月には諸葛亮と鳳統でもあげようかしら?小さい娘が好みなんですものね?」

 

えっ!と劉備軍のみなさんが俺を見る

 

如月「んなわけねーだろ!華琳!俺を犯罪者扱いするなよ!」

 

「でもあなた、季衣に流流、ねねに月、あと最近、風もあなたに懐いているじゃない?」

 

如月「そりゃみんな、懐いてくれてはいるけど・・・・だからと言って、俺は変態じゃない!」

 

一刀「・・・・如月、お前・・・・」

 

「如月殿・・・・」

 

「・・・・なんでや?ぺたんこか?ぺたんこがええのか?」

 

「きー兄ちゃん(キラキラ)」

 

「きー兄様(キラキラ)」

 

如月「違う!違うからなお前ら!そんな目でみるな!」

 

「稟、如月。劉備達を向こう側まで案内なさい。街道の選択は任せるわ。一兵たりとも失いたくないようだから・・・・なるべく安全で危険のない道にしてあげてね?如月は稟の護衛として行きなさい。」

 

「はっ。」

 

如月「おい無視すんな!華琳!」

 

「劉備。もし途中で村を襲ったり、米一粒でも略奪したりしたら、あなた達を皆殺しにするわよ。如月、そのときは遠慮なくやってしまいなさい。」

 

如月「はぁ、了解。そんなことするとは思えないけどな。」

 

「もしも、よ。それでは私たちは戻るわよ。」

 

華琳たちが帰って行ったのを見送って

 

如月「じゃあ、俺達も行くか、稟。」

 

「はいはい。あら?この荷物も持っていくのですか?」

 

如月「ああ、持っていく。」

 

「中身は何なのですか?」

 

如月「お土産みたいなものかな?」

 

「はぁ、あなたも甘すぎですね。」

 

如月「そうかな?まぁ、いいや。さっさと行こうぜ、稟。」

 

「そうですね。では劉備殿。付いてきて下さい。案内いたします。」

 

「すみません。よろしくお願いします。」

 

安全な街道を選び進んでいく。てかお通夜みたいにどんよりしている。まあ、華琳にあれだけ言われたからなぁと思っていたら国境ぞいに到着した。

 

「私たちが案内出来るのはここまでです。」

 

「ありがとうございました。郭嘉さん。龍谷さん。」

 

「いえ、曹操様の命令なので。」

 

如月「あ、そうだ。劉備軍のみなさんに渡すものがあったんだ。」

 

「渡すものですか?」

 

如月「ああ。これは劉備殿に。」

 

劉備には桃で造ったお酒(カクテル)と桃餡を使ったまんじゅうを

 

「あ、ありがとうございます。」

 

如月「これは、関羽殿に」

 

関羽には子犬のぬいぐるみとストラップを

 

「いいのですか!?このようなものを頂いて。」

 

如月「いいよ、気にするな。張飛にはこれを」

 

張飛には肉まんを数種類とそれの作り方を

 

「ありがとうなのだー」

 

如月「それに作り方が書いてあるから、食べたくなったら作ってもらって。で、趙雲殿にはこれを」

 

趙雲にはメンマとお酒を一瓶ずつ

 

「おお、これはこれは。」

 

如月「味の好みが分からなかったから、良いものを選んだつもりだよ。あと、諸葛亮と鳳統にはこれ。」

 

「私達にもですか!ありがとうございます・・・・はわわっ!」

 

「朱里ちゃんどうしたの?あわわっ!」

 

軍師二人には艶本を

 

如月「バレる前に隠しとけよー。あと・・・・」

 

軍師二人に近づき小声で

 

如月「人のこと調べるのはいいけど、もっとバレない様にやるんだな。バレバレだぞ。」

 

と二人に言うと、はわわ、あわわとテンパっていた。

 

「でも龍谷さん。お土産?が私たちの好きなものばかりですけど、何で分かったんですか?会ったことありませんよね?」

 

如月「まぁ、蛇の道は蛇ってことで、どっかの誰かさんたちに聞いてください。」

 

「あの如月殿。こんなことを聞くのは筋違いだと思うのですが、私達は甘いと思いますか?」

 

と関羽に聞かれ

 

如月「そうだな。俺は大甘だと思うぞ。理想だけ掲げて現実を見ていない。見ないようにしてるのかな?そんな感じがする。みんなが笑って過ごせる世界だっけ?を目指すのなら、そこに向けて一つ一つ何をやっていけばたどり着くのかをみんなで議論しあったらどうですか?みんな見ている方向がバラバラのように見えるよ。ちゃんとみんなで同じ方向を向かないとバラバラになっちゃうよ。」

 

『・・・・』

 

あらら、黙っちゃった

 

如月「ま、考えて考えて決めな。じゃあ、稟。帰ろうぜ。」

 

「はぁ・・・・それではみなさんお元気で。」

 

と二人で歩き出したが一旦止まり、

 

如月「あ、そうそう。もし、攻め込んで来たら・・・・完膚なきまでに叩き潰してやるからな覚悟しとけ。」

 

劉備軍全体に殺気を放つが、それもすぐにおさめて

 

如月「ちゅーことで、バイバーイ」

 

再び歩き始める。

 

陳留への帰り道

 

「如月殿は鬼畜ですね。」

 

如月「いやいや!俺、鬼畜じゃないよ!」

 

「贈り物を送っておいて、最後は脅す。これのどこが鬼畜じゃないと?」

 

如月「まぁ、現実を見ようとしない甘ちゃん共にものすごくムカついたからな。つい、言いたいことを言ってしまった。反省してません。」

 

「お土産は?」

 

如月「なんか調べられてたから、テメーらよりこっちの方が上なんだよってことを遠回しに言いたかったから。」

 

「分かりにくいですよ。まぁ、別にいいですけど。」

 

如月「別にいいんかい。」

 

と稟とだべりながら陳留へと帰って行った。

陳留に戻り、無事に送り届けたことを華琳に報告。華琳達も劉備を追撃しに来た袁紹、袁術達を一方的にボコボコにして追い払ったらしい。

あとなぜか、城のみなさん、兵たちに俺がちっぱい、貧乳好きであるというデマが広がっていた。恋、詠、人和、霞が俺に詰め寄ってきて説明しろと言ってきたので、それは嘘ですと説明した。

巨乳もいいが貧乳もまたよし。オッパイに貴賎なしという某魔法少年先生に出てくるキャラクターの言葉を言ったところ、みんなに引かれたが・・・・俺何か悪いことした?(泣)

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三十六話

袁紹・袁術連合に対する作戦会議をしていると、連中が官渡に兵を集結させていると情報が入った。二面作戦をとるのが普通だと思うが、そこは袁紹と袁術のコンビ。アホですね。

会議では袁術の主力に第二陣として春蘭が、その補佐を季衣と流流が入ることになった。第二陣の全権も春蘭に任されることになった。

袁紹に相対する第一陣は霞と恋が、その補佐に凪、真桜、沙和、ねねが。

そして、俺、一刀、秋蘭は本陣に詰めることとなった。

会議が終わり、準備に向かう途中

 

「如月さんっ!」

 

如月「ん?おお、月に詠じゃないか。どうした?」

 

「準備が出来次第、すぐに出撃するって聞いてね。」

 

「それで、お見送りに来ました。」

 

如月「そうなんだ。ありがとう、二人とも。」

 

二人の頭をなでるが、顔が浮かない二人。

 

如月「ん?どうしたの二人とも?」

 

「如月がケガしないか不安になっちゃたのよ。」

 

「そうですよ。これだけ大きな戦ですから。ケガせずに帰ってきてくださいね。」

 

如月「心配かけて悪いな二人とも。でも、俺、本陣待機だから心配ないと思うけど・・・・まぁ、二人に心配かけないように無事に帰ってくるから。な。」

 

二人の不安を取るように優しく頭をなでる。二人とも気持ちが落ち着いたのか顔を赤くして

 

「へぅ////ケガしないように気を付けてください。約束です。」

 

「////そうよ。約束しなさい。無事に帰ってくるように。」

 

如月「ああ!分かった!約束する。じゃあ俺、行くから。」

 

「はい。いってらっしゃい。」

 

「ちゃんと無事に帰ってきなさい。」

 

如月「おう!いってきます!」

 

その後、みんなに合流し、戦の準備に入った。二部隊分の準備しかなかったのですぐに終わり、すぐさま官渡へ向けて出撃した。

 

官渡に到着した俺達。眼前に広がるは辺りを埋め尽くす袁紹・袁術連合と巨大な櫓の列だった。

 

如月「はぁー、壮観だなぁー。」

 

「はぁ、あなたはもう見慣れているでしょう。早く準備なさい。」

 

如月「へーい。」

 

「華琳様、袁紹が出てきました。」

 

「はぁ、面倒くさい。行ってくるから、いつでも攻められるように準備しておきなさい。」

 

如月「りょーかーい。いってらー。」

 

現在、ぜっさん舌戦の真っ最中だ。あ、華琳が右手を挙げた。

 

「撃てーぃっ!」

 

真桜が指示を出し、相手の櫓めがけて岩が飛ばされていく。あ、華琳が帰ってきた。

 

如月「じゃあ、俺も戻るから。あとよろしくー。」

 

「はっ!副長もお気をつけて。」

 

如月「いやいや、気を付けるのはお前らの方だからな。まぁ、いいや。お前らも気を付けてなー。」

 

と凪たちにそう言って本陣に下がる

 

如月「ただいまーっと。」

 

一刀「お帰りー。如月。てか秘密兵器って投石器だったんだな。」

 

如月「気づくのおせーよ。せっかくヒントまで出したのに。」

 

一刀「それは面目ない。」

 

と一刀とだべっていると華琳が本陣に戻ってきた。

 

「おかえりなさいませ、華琳様。」

 

「桂花、あとで真桜に褒美をあたえるように。あの投石器は中々のものだわ。」

 

確かにな、戦が始まって少したつけど、もう袁紹・袁術連合は投石器によって被害が甚大だもんな。恋も出てるし、敵が可哀そうになってきた。

 

「如月。あなたは春蘭への伝令に行ってきなさい。」

 

如月「俺?まぁ、暇だからいいけど。で、内容は?」

 

「“全権”を任せたことを、もう一度伝えてちょうだい。」

 

如月「了解。じゃ、いってきまーす。トベルーラ。」

 

「はああっ!」

 

「くっ・・・・!さすが夏候元譲・・・・天下に響く勇名はだてではないと言う事ね!」

 

如月「春らーん!」

 

「策殿ぉ!」

 

「どうしたの?祭?」

 

「本陣の袁術から、撤退するから殿をつとめろと連絡が!」

 

「・・・・この状況で、そんな暇あるわけないでしょ!」

 

「こっちはどうした?如月?」

 

如月「伝令。華琳が『全権を任せるわ』だって。」

 

「・・・・」

 

それを聞いた春蘭は剣を納めた。それを見た孫策は

 

「・・・・え?」

 

ポカンとしている

 

「どうした?撤退するのだろう?」

 

「・・・・見逃してくれるの?」

 

「黄巾党の時の借りがある。いい加減、返しておかねばな。十数えるうちに視界から消えねば、追撃をかけるぞ。」

 

「・・・・なら、その返済、ありがたく受け取らせてもらうわ。・・・・行きましょう、祭。じゃあね、夏候元譲と御使い君。」

 

「うむ。さらばだ夏候元譲。あと龍谷如月。」

 

孫策とたぶん黄蓋さんが去って行った。

 

「・・・・ん?まだ何か用があるのか?如月?」

 

如月「いや。それより、季衣と流流の様子でも見に行こうぜ。」

 

「そうだな。」

 

「春蘭様!きー兄ちゃん!?」

 

「春蘭様はともかく、きー兄様はなぜいらっしゃるのですか?」

 

如月「春蘭に伝令と様子を見に来ただけだよ。」

 

「そうなんだ。あと、春蘭様。」

 

「なんだ?」

 

「袁術の追撃しなくていいんですかー?」

 

「せんでいい。戦闘態勢を保ったまま、指示を待て。」

 

「春蘭様。その指示ですが、本陣から追撃の催促が・・・・」

 

「それは華琳様のご命令か?」

 

「いえ。桂花さんです。」

 

「ならば捨てておけ。」

 

「いいんですか?」

 

「華琳様から第二陣の全権を預かっておるのだ。華琳様が命令せん限り、動かんと伝えておけ。」

 

「いいのかなー?」

 

如月「いいの、いいの。全権を預かっている春蘭がああ言ってるんだから。」

 

「伝令!孫策軍が袁術軍を裏切り、攻めています!」

 

如月「ほらな。あとは孫策が勝手にやってくれるさ。春蘭、俺らも戻ろうぜ。」

 

「そうだな。みな本陣に戻るぞ!」

 

本陣帰還後、凪から袁紹を取り逃がしたとの報告があった。逃げ足がすごく早かったらしい。春蘭が孫策と袁術に追撃をかけなかったことについては不問になった。華琳もこうなることを見通してらしい。

その後、華琳は袁紹の本拠地をあっという間に陥落させ、河北四州は華琳の支配下に置かれることになった。

戦が一段落したため、陳留に戻ってきた俺達。城に戻ると俺を出迎えてくれた二人がいた。

 

「如月さん、お帰りなさい。大丈夫でしたか?」

 

「お帰り、如月。あんた、ケガしてないでしょうね?」

 

如月「月に詠。ただいま。大丈夫、ケガしてないよ。二人とも出迎えありがと。(ナデナデ)」

 

「へぅ////ケガをしていないならなによりです////」

 

「////とにかく無事で良かったわ////」

 

一刀「おーい、如月。ラブってないで片付け手伝ってくれー!」

 

如月「へーい。じゃあな二人とも。片付け手伝ってくるから。」

 

月と詠と別れた後、兵たちと一緒に片付けをし、その後、兵のみんなと飲みにいった。

お会計の時、手持ちよりオーバーしていたので、残りをツケにしてもらった。そんなに大食いのヤツいたかなぁ?と見渡したら、恋もちゃっかり参加していた。参加するのはいいけど、一言欲しかったな。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三十七話

袁紹を撃破し、冀州、幽州、青洲、并州の四州に加え徐州まで新たに手に入れた我らが覇王、華琳様。

やったぜ!海沿いの国が手に入った。

 

如月「というわけで、この計画書を見て欲しいんだが。」

 

「何がというわけでなのよ。たいした計画書じゃなかったら、覚悟しておきなさいよ。」

 

「まぁまぁ、桂花。・・・・ふむ、風はどう思いますか?」

 

「ふむ・・・・いいんじゃないでしょうか。如月さん、形になりそうですか?」

 

如月「そのための実験って意味合いが強いな。うまくいけば沿岸部の村々が潤うからな。で、みんなの意見は?」

 

「私はいいと思いますよ。」

 

「風もそう思うのですよ。」

 

「私も特に問題ないわ。じゃあ、華琳様に渡しておいてちょうだい。」

 

如月「了解。」

 

軍師三人からOKをもらい、華琳の所へ向かう。

 

如月「華琳。ちょっと見てもらいたいものがあるんだが。」

 

「あら、何かしら。」

 

如月「この計画書なんだが。」

 

「ふーん、揚浜式塩田ねぇ・・・・確かにこれで塩の供給が大幅に改善されるわね。」

 

如月「まぁな。岩塩掘るより簡単だからな。」

 

「ふむ、ならばこの計画、必ず成功させなさい。いいわね。」

 

如月「了解!」

 

華琳から了解を得て、すぐに準備を開始。半月後、全ての準備が完了し、青洲の北海のある漁村へ向かった。

 

如月「はぁ、ようやく着いたな。よし、村長さんに会いに行こう。とりあえず、話は通してあるんだよな?」

 

「はい。村長の家はあちらです。」

 

如月「んじゃ、村長さんに会いに行きますか。みんなはここで待機ね。村民を怖がらせるんじゃないぞ。」

 

「そんなことしませんよー、副長。」

 

「俺達を何だと思ってるんですかー。」

 

如月「性欲に飢えた獣。」

 

『それはテメーだろ!!種馬弟!!』

 

兵のみんなからの怒号がすごい。

 

如月「弟じゃねーよ!はぁ、とりあえず行ってくるわ。」

 

兵達とアホなやり取りをした後、村長宅へ

 

如月「村長さん、初めまして。龍谷如月です。」

 

「おお、これはこれは如月様。ようこそいらっしゃいました。このような何もない漁村に何の用ですかな?」

 

如月「はい。この村でちょっとした実験を行いたくて、その許可をいただきに来ました。」

 

「はぁ、実験ですか。」

 

俺は村長に塩田の説明をし、村民にも手伝ってもらえるようにお願い。村長と村民のみんなからもOKが出たため、浜野一角を借り、兵達と一緒に塩田の整備、使う道具、釜屋の組み立て、釜屋内部の釜や胴桶等の作業効率のいい配置決め、薪の切り出し等で三週間ほどかけて準備し、本日からようやく実験開始となった。

作業工程は準備している時に、空いた時間を使い、兵と村民のみんなにレクチャーしているため問題ない。

実験開始から一週間。ようやく第一号となる塩が出来た。

 

如月「初めてにしては上出来だな。村長、もうあと、四か月ほどここでやらせてもらえないだろうか?」

 

「全然かまいませぬ。塩が出来るなんて半信半疑でしたが、これを見せられては何も言えません。むしろ、このやり方が完成すれば村は潤いましょう。」

 

如月「そのための実験だからね。あと、村長。もう二つやりたいことがあるんだけど・・・・」

 

「もう二つですか?如月殿の頼みですからな。何でも言って下され。」

 

如月「そお?それじゃあ・・・・」

 

釜屋とは別の小屋とある道具と干場と呼ばれる小石と砂利を敷き詰めた場所も作ってもらうことにした。

三週間後、小屋と道具と干場が完成し、ある魚と海藻をゲットし、あるものを作り始めた。

三か月後、塩田も軌道に乗ったため、陳留に戻ることになった。

 

「如月殿、ありがとうございました。これで村も潤いましょう。」

 

如月「こっちもありがとう。協力してくれたおかげで、他の所でもうまく出来そうだよ。」

 

「いえいえ、お礼など、こちらがすることです。もう二つ、この村の特産品が出来ましたので。」

 

如月「ああ、この鰹節と乾燥昆布ね。これも協力してくれてありがとう。」

 

あるものとは、鰹節と乾燥昆布でした。これで出汁が出来る!

 

如月「今度、ウチの文官が来て、交渉に入れると思うから。よろしくね。」

 

「はい。何から何までありがとうございました。如月殿。」

 

陳留に到着後すぐに華琳と軍師達に報告。ついでに鰹節と昆布でとった出汁を華琳と流流に試飲してもらった所、鰹節と乾燥昆布の生産と取り扱いが正式に決まった。

後日、村へ交渉へ行った文官からの報告だとどちらもwinwinの交渉となったらしい。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三十八話

青洲のとある鉱石場に来た俺。ここでは青玉(サファイヤ)が採れるらしく加工前のものを買いに来たのだ。

 

如月「すみませーん。青玉の原石ってありますかー?」

 

「青玉の原石かい?ここら辺に置いてあるのが青玉の原石だな。好きなのを選びな。」

 

如月「どれにするかな?あれくらいの大きさにするから・・・・おっ!ちょうどいい大きさのものがあるじゃん。念のため三つ買っていこう。あとは金と銀が欲しいんだがあるかな。」

 

店のオヤジに代金を払い、他の店を回る。

 

如月「おっ!金と銀売ってた。買うか。おやっさん。この金と銀、ちょうだいな。」

 

「あいよ。兄ちゃん、こんなもの買っていくなんてワケありかい?」

 

如月「ははっ、ちょっとね。腕輪でも作ろうかと思ってね。」

 

そう言いながら、小指をあげる。

 

「なるほど。頑張れよ、兄ちゃん!なら少しまけとくよ。」

 

如月「マジで!ありがとう!」

 

買い物後、すぐさま陳留へトベルーラで戻り、真桜の工房へ

 

「副長。いきなり押しかけてきてなんやねん。」

 

如月「すまんな、真桜。すぐに作業に入らねぇと、間に合わないんでね。」

 

「間に合わへんって何に?ん?青玉の原石に金と銀?こんな高いもん何に使うん?」

 

如月「贈り物。みんなには黙っとけよ。」

 

「ふーん。贈り物ねぇ(ニヤニヤ)」

 

如月「そういうこと。真桜、金と銀の割合について教えてもらいたいんだが・・・・」

 

「ええよ。何作るん?」

 

如月「腕輪」

 

「なら、この割合が一般的やね。でも、あいつに渡すんなら、丈夫な方がええもんね。」

 

如月「そうだな。あと、青玉もこんな形でこのくらいの大きさなんだが・・・・」

 

真桜と一緒にあーだこーだ言いながら作業を進めていった。

 

 

side凪

 

最近なんだか、副長と真桜の様子が何かおかしい。普段は普通に接してくれるのだが、なんかよそよそしさを感じる。はぁ、真桜も副長のこと好きになったのかな?私もあんなに積極的になればこんなにもやもやしなくてすんだのかな?

季衣と流流はきー兄ちゃん、きー兄様って呼んでるけど兄ではなくて男の人として気があるみたいだし。

人和も何回も打ち合わせを重ねている内に副長の優しさにあてられてしまったみたいだし。

月や詠も反董卓連合の際に助けられて優しい言葉でもかけられたのかな?二人とも侍女になって副長の身の回りのお世話を笑顔でおこなっているし、あんなに優しくされたら好きになっちゃうよね。

恋殿は初めて副長と会った時から懐いてたもんね。副長は優しい人だって雰囲気で分かったみたいだし、それに頭ナデナデされてたし。

霞様は最初はお酒で釣られてたみたいだけど、何回も一緒に行動している内に副長の内面を知って好きになったみたいだし。

最近は風様も副長に懐いてるみたいだ。不思議ちゃん扱いされるのを自然体で見てくれた副長に惹かれていったみたいだし。

みんな素直で可愛い娘ばかりで・・・・その点、私は無愛想だし、体中キズだらけだから好かれる所なんて・・・・

 

如月「おーい、凪っ!ちょうど良かった。」

 

えっ?副長!?

 

「え・・・・あの・・・・副長。どうされたんですか?」

 

如月「凪って三日後、休みだったよな?」

 

「えっ・・・・はい。休みです。」

 

如月「なら、俺と一緒に出掛けないか?」

 

えっ?副長と一緒にお出かけ?

 

如月「どうなんだ?凪?」

 

「え・・・・あの・・・・私で良ければ・・・・ぜひ。」

 

如月「そっか。良かった。よし、沙和、真桜頼む。」

 

「はいなのー。」

 

「おっしゃ。ほら凪。行くでー。」

 

「え・・・・ちょ・・・・どこに?」

 

「服屋さんなのー。ちゃんとカワイイの選んであげるのー。」

 

「ウチは凪が逃げんように見張りや。」

 

如月「よし、二人とも。頼んだぞ。」

 

「おまかせなのー!」

 

「まかせとき!副長!このお礼はたっぷりいただくでぇ。」

 

如月「任せとけ!」

 

えっ?服屋?えっ・・・・ちょっ・・・・なんでー!?

 

sideout凪

 

 

三日後の凪との約束の日。待ち合わせ場所のカフェ(あの後、凪に言いに行った)でお茶を飲みながらボーっとしていると

 

「副長。お待たせしてしまい、すみません。」

 

如月「いや、全然待ってな・・・・」

 

凪の方を向くと、ツーピース風の白いワンピースで、シースルーのレースからチラリと見えるお腹がオシャレの服と髪をストレートにおろし白のつば広の帽子をかぶった凪の姿があった。

 

如月「・・・・」

 

「あの・・・・副長?どうしました?」

 

如月「・・・・カワイイ」

 

「えっ?」

 

如月「凪、可愛い。すごく似合ってるよ。」

 

「えっ・・・・その・・・・ありがとうございます////」

 

沙和、いい仕事だ!褒美期待しとけよ!

 

如月「凪も何か飲む?」

 

「い、いえ・・・・周りの目が気になって・・・・」

 

如月「そっか。なら、行こうか。」

 

と言って凪の手を握る。

 

「えっ・・・・あっ・・・・ちょっ・・・・副長。」

 

凪のそんな声を無視して店を出る。代金は先払いです。

店を出た後も手を握りながら色々なお店を二人で回る。入る店、入る店で

 

「副長。楽進様と逢い引きですか?うらやましいですね。」

 

と言われ、その度に凪が顔を赤くする凪。可愛い。

そのあと露店のアクセサリーを見たり、服屋で服を見たり、ご飯を食べたり、デートを楽しんだ。

 

如月「そうだ凪。ちょっと行きたい所があるんだが、いいか?」

 

「あっ、はい。私は構いません。」

 

如月「そうか。なら少し失礼して・・・・」

 

「えっ・・・・きゃ!副長!?」

 

凪をお姫さま抱っこして

 

如月「お前ら、尾行するならもう少し気配を隠せよ。じゃあな、トベルーラ。」

 

少し上空に飛んでから地上を見ると、華琳をはじめ、春蘭、秋蘭、季衣、流流、真桜、沙和、桂花、風、稟、霞、恋、ねね、月、詠、天和、地和、人和、一刀の全員が姿を現していた。何か下でギャーギャー言ってるようだが何言ってるか聞こえない。それにしてもお前ら結構暇なんだな。

 

「あの・・・・副長。街を出て、一体どこに?」

 

腕の中の凪が聞いてくる。

 

如月「ちょっとした秘密の場所。」

 

お姫さま抱っこで凪を抱きながらトベルーラで飛ぶこと約十分。とある場所へ降りた。

 

「ここは・・・・」

 

如月「きれいな場所だろ。桜が群生している所を偶然何か所か見つけてな。開花してる所を選んだんだ。」

 

少し強めの風が吹いて、花吹雪がきれいだ。

 

「すごくきれいです。副長、ありがとうございます!」

 

如月「気に入ってもらって良かったよ。凪に見せたかったからな。」

 

凪のすごくうれしそうな笑顔に心を奪われる。

 

如月「そ、そうだ。凪にプレゼントがあるんだ。」

 

「プレゼントとは?」

 

如月「贈り物って意味だよ。凪、誕生日おめでとう。」

 

そう言って凪に自作した腕輪を渡す。

 

「ありがとうございます。さっそくはめてみてもいいですか?」

 

俺が頷くと右手首にはめてくれた。

 

如月「うん。似合ってるよ凪。それと、凪。君のことが好きだ。」

 

「はい。ありがとうござ・・・・へっ?好き?」

 

なんかピンときていない顔をしている凪にもう一度

 

如月「俺は凪のことを一人の女性として好きだと言ったんだ。」

 

「好き・・・・副長が・・・・私のことを・・・・はわわわ・・・・本当ですか?」

 

如月「ああ、本当と言ってマジと言う。」

 

「あの・・・・私・・・・体中キズだらけだし、不器用だし、みんなほど可愛くはないと思うのですが・・・・」

 

如月「あのね凪。体中の傷はみんなを守るために負った傷だから見苦しくないし、むしろ尊敬さえする。それに真面目で不器用な所も凪の魅力だし、みんなにも優しいし、他のみんなより可愛くないって言ってるけど、全然そんなことないよ。凪はすごく可愛い女の子だよ。俺はそんな凪のことが好きだ。」

 

「うっうっ・・・・副長・・・・」

 

突然泣き出す凪

 

如月「凪!どうした!?俺、なんかヒドイこと言った?」

 

「い、いえ・・・・嬉しくて・・・・副長、私もあなたをお慕いしております。」

 

如月「まったく、驚かすなよ凪。それとありがとう。でも、人を驚かすようなことをする娘はこうだ!」

 

「え・・・・っ、んぅ・・・・ちゅっ・・・・」

 

凪を引き寄せ、唇を奪う

 

「ふ・・・・副長!?」

 

如月「あっ。いきなりしちゃってゴメンな・・・・」

 

「あ・・・・いえ・・・・嫌とかではなく・・・・急にされて、驚いただけで・・・・そのむしろ・・・・」

 

如月「そっか。良かった。凪。もう一回していい?」

 

「は、はい。私もしたいです。」

 

本日二度目のキスをする俺達。その後、日も落ちたので、行きと同じくお姫さま抱っこで凪を抱えトベルーラで城へ戻り、凪を部屋まで送ったところで服の袖をつかまれ、

 

「あの・・・・今日は部屋に泊って行ってください。」

 

と言われ

 

如月「あの・・・・凪さん・・・・分かって言ってるよね?それ。」

 

顔を真っ赤にして、コクンと頷く凪。

そんなことをされたら断ることも出来ないし、自分も望んでいたことなので、凪の部屋に泊めさせてもらった。

 




腕輪のイメージはドラクエ11のいやしの腕輪です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

三十九話

如月「ん・・・・もう、朝か・・・・」

 

窓から入る朝日を浴びて目を覚ます。

 

如月「俺の部屋じゃない?」

 

自分の部屋じゃないことに?を浮かべるが脳が働きだし始めたのか、昨日のことを思い出し横を見るとスースーと寝ている凪。可愛い寝顔を見つつ頭を撫でる。髪サラサラだなぁと思っていると

 

「・・・・ん、朝?・・・・」

 

如月「おはよう、凪。」

 

目を覚ました凪に挨拶

 

「お、おはよう・・・・ございます。如月さん。」

 

布団で顔半分を隠しながら、挨拶と名前を呼んでくれる凪。その姿が可愛らしくて

 

如月「ああ、もう!凪は可愛いな!」

 

と凪を抱きよせキスをする。驚いていた凪だが、逆に凪の方からして来てくれた。そんなことを何回かした後、二人とも着替え、部屋を出ようとした時

 

如月「凪。何か動きが変だぞ。大丈夫か?」

 

「えっと・・・・その・・・・まだ中に入っている感じがして・・・・」

 

如月「そうだったのか・・・・よし、凪。今日は休め。」

 

「えっ・・・・ですが・・・・」

 

如月「その調子じゃ、いつも通り動けないだろ?だから今日は休め。副長命令。」

 

「うっ・・・・分かりました。今日は休ませていただきます。」

 

如月「よしよし。いい娘だ。じゃあ、俺は行くから。」

 

扉を開けたところで

 

「あっ、ちょっと待ってください。」

 

如月「ん?何かあった?な・・・・ちゅ」

 

振り向きざまに凪にキスされ

 

「あの・・・・その・・・・いってらっしゃい・・・・如月さん////」

 

そんなことを言われ、少しポカーンとしたあと

 

如月「行ってきます!」

 

そう言って、仕事へ向かう。やっべニヤニヤが止まらない。

 

 

 

「へっへっへ、昨日はお楽しみでしたね。」

 

「お楽しみでしたねー。」

 

詰め所へ行くと俺の姿を見つけ、駆け寄ってきた真桜と沙和がそんなことを言ってくる。

 

如月「まぁ、楽しかったのは間違いないなぁ。」

 

「そういえば凪の姿が見えへんのだけど。」

 

「そういえば、まだ来てないのー。」

 

如月「凪は今日休ませた。」

 

「そうなんや。珍しいなぁ、凪が休むなんて。」

 

如月「まぁ、体調が悪いときくらいあるよ。んじゃ、仕事始めるぞー。」

 

そう言って、仕事を開始する。いつも通りお店の人とだべり情報収集し、ケンカを止め、ひったくりを捕まえ、道案内等をしていたらいつの間にか昼になっていた。

 

「あー、お腹減ったわー。」

 

「今日はどこで食べよっかー。」

 

如月「二人とも何が食べたい?今日くらいはおごってやるよ。」

 

「えっ?おごってくれるん?」

 

「何でもいいのー?」

 

如月「ああ、なんでもいいぞ。この間のお礼だ。」

 

「ほんなら、あそこがいい!」

 

真桜が指差した建物は陳留で一番の高級な店だった。

 

如月「あそこか・・・・しゃあない、何でもおごると言ったからな。あそこにすっか。」

 

「「やったー。」」

 

お店に入り、昼食をとった。そんなに食べてなかったのに会計がすごかった。

 

 

 

 

次の日、百人集まった兵達の前にいる。

 

如月「皆に集まってもらったのは他でもない。君たちは気が使えたな。そこで、この技を習得してもらいたく集まってもらった。」

 

兵達にメラ系とヒャド系を覚えてもらおうと思い集めたのだ。メラ系とヒャド系が使えれば遠征先で火と水(特に水)に困らなくなるため、各部隊に最低でも一人は入れたいと華琳に進言した所、OKが出たため、すぐさま行うことにした。現在は俺と凪しか出来ないからな。

 

如月「では、さっそくやっていこうか。まずは・・・・」

 

兵達に説明し、実戦へ。みんな必死に感覚を掴もうと頑張ってくれている。そうこうしている内に日が沈み始めたため本日は解散となった。

二日目、三日目ともなるとみんな感覚を掴んできたのかメラを出せる者がちらほらと出てきた。

十日目には全員がメラを習得し、ヒャドを出すために頑張っている。

二十日目には全員ヒャドとメラミを習得。なかなかペースがいいな。

三十五日目には全員ヒャダルコまで習得してしまった。もう少し時間がかかると思っていたが、なかなか優秀な生徒たちだったらしい。今回成功したので、次も実施できるよう華琳に言っとくか。

 

 

 

 

あくる日の昼、自室で仕事をしていると

 

「失礼します。如月様、張梁様からの遣いで参りました。」

 

如月「人和から?緊急事態?」

 

「いえ。本日新しい事務所が完成いたしましたので如月様にお越しいただきたいとの言伝です。」

 

如月「了解。行かせてもらうわ。場所は?」

 

「はい。新しい事務所の場所は・・・・」

 

教えてもらった新事務所の場所へ行ってみると

 

如月「おおぅ・・・・でっか。すげーな。」

 

「いらっしゃい。・・・・どう?新しい事務所は?」

 

如月「ああ、すごいよ。これ、建てたの?」

 

「まさか。そこまでのお金は無いわよ。中古の家を買って、少し改築したの。」

 

如月「なるほどねぇ。うん、おめでとう。よく頑張ったな。」

 

「・・・・ありがと」

 

如月「ところで中はどうなってんの?見せてもらっていい?」

 

「中はまだ片付けが終わってないから、見せられる状態じゃないの。」

 

如月「そっか。じゃあ、、片付いたら、中を見せて欲しいな。」

 

「うん。そのときはぜひ。あと、せっかく来てくれたんだし、これから一緒にお茶に行かない?時間があればだけど・・・・」

 

如月「お茶か・・・・いいね。行こうか。」

 

人和と一緒に街に出る

 

如月「そういえば、人和と一緒に出掛けるなんてなかったな。」

 

「そんなことないと思うけど。仕事の打ち合わせとか・・・・」

 

如月「仕事以外でってこと」

 

「あっ・・・・そういわれればそうかも。」

 

如月「だろ?仕事以外ではまず会わないからな。一刀はちょくちょくそっちに行ってるみたいだけど・・・・てか一刀で思い出したけど、瓦版の記者には見つかってないか?」

 

「大丈夫よ。多分、姉さん達を追っかけてるんじゃないかな?私は姉さん達と違って地味だから。まぁ、そっちの方が煩わしくなくていいからいいんだけどね。」

 

如月「まぁ、気持ちは分かるけど、もったいねえな。こんな可愛い娘を追っかけないで。瓦版の記者も目がねーな。」

 

「そ、そうでもない////」

 

そう言ってそっぽを向いてしまった人和。顔が赤く染まっている。照れてるのかな?

 

「それよりも・・・・この前の舞台は最高だった。大成功を収めたのもあなたのおかげ。本当にありがとう。」

 

如月「いやいや。俺の力だけじゃなくて、みんなの力だって思うから。企画立案しただけだし。」

 

「謙遜しなくてもいいじゃない。その企画立案がなければ出来なかった。」

 

如月「謙遜してるつもりはないんだが・・・・」

 

「そう?でも・・・・初めよりは見直した。こんな風になるとは思ってなかった。」

 

如月「初めはどう思ってたんだ?」

 

「怖い人。」

 

如月「まぁ・・・・出会いが出会いだからなぁ。それは仕方ないな。」

 

「でも、何回も打ち合わせして、舞台を成功させたら誰よりも喜んでくれて、あなたがいなければここまで来れなかった。だから、ありがとう。・・・・ねぇ、お礼がしたいから、ついてきてほしい場所があるんだけど・・・・いい?」

 

如月「いいよ。で、どこに行くの?」

 

「ナイショ」

 

しばらく歩いて到着したのは、最初に構えた事務所前だった。

 

如月「懐かしい感じがするな。ついこの間までここが事務所だったのに。」

 

「そうね。中に入りましょ。」

 

如月「あれ?中入るの?」

 

「うん。ダメ?」

 

如月「いや、いいよ。」

 

人和に続いて小屋の中に入るといきなり人和が抱きついてきた。

 

如月「あの・・・・人和・・・・これは一体?」

 

「如月さん・・・・私はあなたのことが好きです。」

 

如月「へっ・・・・ちょっ・・・・マジで?」

 

「はい。私は如月さんのことが好きです。」

 

如月「でも、俺・・・・凪を抱いたよ?そんな男だけどいいの?」

 

「誰を抱いたかなんて関係ない!私はあなたが好きだから、好きな人に抱かれたいよ。それに凪からも了承は得てるから。」

 

如月「えっ!マジっ!そうなの!?」

 

「凪から言伝『如月さん。人和を泣かせないように』ですって。」

 

如月「そっか。うん。覚悟を決めた。人和、ありがとう。ちゃんと大事にするから。俺も人和のことが好きです。」

 

「ありがとう。如月さん。ちゅっ。」

 

人和と口づけをかわし、身体を重ねるのだった。

 

 

 

ことが終わって

 

如月「人和。大丈夫か?」

 

「うん。平気。もうそろそろ帰らないと姉さんたちが心配しちゃう。」

 

如月「なら、帰るか。送っていくよ。」

 

「ううん。平気。見つかったら勘ぐられちゃうよ。恥ずかしい。」

 

如月「そういうことなら、分かった。じゃあ、気をつけて帰れよ。」

 

「うん。分かった。あっ、如月さん。」

 

如月「ん?」

 

「大好き。ちゅっ。」

 

人和にキスされ

 

「バイバイ。」

 

如月「ああ、バイバイ。」

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四十話

河北四州と徐州を手に入れてから少したったが、日を追うごとに忙しくなった。そういう俺も昨日、徐州から帰ってきたばかりだったりする。将の皆は各地へ出ずっぱりだ。

 

如月「あ゛ー・・・・疲れた。まったく勘弁してほしいぜ。」

 

「お疲れ様です。如月さん。またすぐに出ていってしまわれるのですか?」

 

如月「いや。ちょっとここで休んでから、次は南だったかな。」

 

「なら、少しでも英気を養って、また頑張りなさい。」

 

如月「そうだな。詠の言う通りだ。休めるときに休んどかないとな。」

 

月と詠の二人と一緒に歩いていると

 

「美少女二人を侍らせて、良いご身分ね。如月。」

 

如月「うらやましいだろ?華琳。あと徐州の方は特に問題なかったよ。」

 

「そう。ならいいわ。」

 

如月「てかさ、これだけ将が一気にいなくなると、攻められたらヤバいよな。」

 

「ええ、そうね。」

 

如月「その顔じゃ、わざとか。」

 

「何のことかしら?」

 

如月「あれだろ?華琳を餌に諸侯を釣り上げるつもりだな。」

 

「華琳・・・・趣味悪すぎよ。」

 

「褒め言葉として受け取っておきましょう。詠。」

 

如月「ところで今、誰がここに残ってるの?」

 

「私とあなたと一刀と桂花と風と真桜の六人ね。」

 

如月「マジか。誰も攻めてこないことを祈ってるよ。」

 

そんな話をした数日後、国境から劉備が攻めてきたとの報告が入ってきた。

 

一刀「本営の設営、終わったぞ。」

 

如月「こっちも陣をいつでも展開出来るぞ。」

 

「ご苦労様。なら、すぐに陣を展開させましょう。向こうはすでにお待ちかねよ?」

 

一刀「・・・・大軍団だな。」

 

如月「・・・・そうだな。」

 

「そうかしら?」

 

平野に広がるのは、劉備達の大軍団。翻る旗は劉、関、張、趙、公。うへぇー、蜀の有名武将のうち四つがそろってるし公孫賛もいるのか面倒くせ。

 

一刀「けど、籠城じゃないのか?」

 

ここにいるのは俺達、将と兵だけ。住民がいない城のため一般人には影響はない。

 

「最初から守りに入るようでは、覇者の振る舞いとは言えないでしょう。そんな弱気な手を打っては、これから戦う敵全てに見くびられることになるわ。」

 

如月「覇王様は大変だ。」

 

「そうよ。この困難を乗り切るためには、一刀。あなたにもその命、かけてもらうことになるわ。」

 

一刀・如月「「・・・・」」

 

「どうしたの?二人して変な顔をして。」

 

一刀「いや。そうやって面と向かって頼むなんて言われたの、初めてだなーと思ってさ・・・・」

 

如月「そうそう。初めてだな。」

 

「そうだったかしら?」

 

「華琳様!出陣の準備、終わりました!いつでも城を出ての展開が可能です!」

 

「さすが桂花。すべきことが良く分かっているわね。」

 

「はっ。各所の指揮はどうなさいますか?」

 

「前曲は私自身が率いるわ。左右は桂花と風が分担なさい。一刀、如月、真桜は後曲で全体を見渡しておきなさい。戦場の全てを俯瞰し、何かあったらすぐに援護を回すこと。」

 

一刀・如月「「了解!」」

 

 

ただ今、両陣営の大将同士による舌戦の真っ最中。内容は全然聞こえないが、劉備が言い負かされているように見える。

あ、帰ってきた。嬉しそうな顔をしてるってことは、言い負かしたんだな。

 

「一刀!」

 

一刀「おう!」

 

「全軍を展開するわよ!弓兵を最前列に!相手の突撃を迎え撃ちなさい!」

 

一刀「了解!」

 

「その後、一刀は後曲に。第一射が終わったら、左右両翼は相手をかく乱しなさい!その混乱を突いて、本陣は敵陣を打ち崩すわよ!」

 

「御意!」

 

「聞け!勇敢なる我が将兵よ!この戦、我が曹魏の理想と誇りを賭した試練の戦となる!この壁を超えるためには、皆の命を預けてもらうことになるでしょう!私も皆と共に剣を振るおう!死力を尽くし、共に勝利を謳おうではないか!」

 

「敵陣、動き出しました!」

 

「これより修羅道に入る!全ての敵を打ち倒し、その血で勝利を祝いましょう!全軍前進!」

 

さて、生き残るために頑張りますかね。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四十一話

戦が始まって数刻

 

如月「ベホマズン!スピオキルト!ベホマズン!スピオキルト!」

 

「副長!副長!」

 

如月「何じゃい!今、回復と補助の呪文交互に唱えてて忙しいんじゃ!邪魔するな!」

 

「しゃーないやろ!こっち、かなり押されてるし、隊長も大将を連れ戻しに出ていってしもーたんやから。」

 

如月「はぁ!?マジか。しょうがない・・・・真桜は周りの兵を纏めて、下がる道の確保と籠城の準備。俺は桂花と風に撤退するようにひとっ飛びして言ってくるわ。頼んだ。」

 

「了解や!」

 

如月「桂花の方がちと遠いか。なら、先にそっちから行くか。」

 

 

 

「ちっ!結構キツイわね。兵力差がもろに出ているわ。」

 

如月「桂花!」

 

「如月!?どうしてここに!?」

 

如月「撤退の伝令役だ。桂花、先に撤退して籠城の準備を。軍師殿頼んだぞ。」

 

「誰に物を言ってんのよ。まかせなさい。なら先に撤退させてもらうわね。」

 

如月「ああ。おい!呪文使える奴は近くにいるか!」

 

『はっ!ここに!』

 

如月「なんだ桂花の護衛だったのか。なら、お前たちには殿の援護を務めてもらう。ヒャダルコで壁を作って敵を止めろ!」

 

『はっ!了解です!』

 

味方と敵の間に氷の壁を出現させ、敵を足止めさせる。

 

如月「よし、お前らも撤退しろ!撤退中も壁を作りながらだ!あと、ピオリム!これで各自、馬並みの速さで走れるから。じゃあ、俺は反対側に行ってくるから。」

 

「はっ!副長もお気をつけて。」

 

 

 

 

「おやおや、これは少しきついですねー。」

 

如月「風!」

 

「おや?これは如月さん。どうされたのですかー。」

 

如月「分かってるくせに。撤退だよ。籠城するぞ。」

 

「そうですね。これ以上は危険かと。」

 

如月「だろ?おい!呪文唱えれる奴はいるか?」

 

『はっ!ここに!』

 

如月「風の方も護衛に使ってたのか。」

 

「それはそうですよー。遠距離攻撃が出来るんですからー。」

 

如月「そりゃそうか。お前ら、ヒャダルコで壁を作りながら撤退しろ。」

 

『はっ!了解です!』

 

如月「風もさっさと撤退しろよ。おっと、ピオリム!これで馬並みの速さで撤退できるからな。俺は中央に行ってくる。」

 

「お気をつけてー。」

 

 

 

 

「くっ・・・・!」

 

「曹孟徳。その首、貰い受ける!でえええええぃ!」

 

(ダメ。保てない・・・・っ!)

 

如月「空から美少年、参上!」

 

「「えっ・・・・?」」

 

あっぶねー。もう少し遅かったら、華琳斬られてたぞ。

 

如月「華琳、撤退だ。もう、送れる兵がいねぇからな。あと桂花と風にも撤退指示出して、二人とも撤退中だから。」

 

「何を言って・・・・」

 

一刀「華琳!それに如月!?」

 

如月「一刀!さっさと華琳を連れてけ!囲まれるぞ!殿は俺が務める。ピオリム!」

 

一刀「サンキュー!如月!華琳、行くぞ!」

 

「あっ・・・・ちょっと!」

 

「行かせるわけないでしょう!追え!曹操を逃がすな!」

 

『はっ!』

 

如月「悪いけど、逃がさせてもらう。イオラ×2!」

 

横を抜けて追いかけようとした敵兵を両手から出したイオラでぶっ飛ばす。

 

『ぐわぁー!!』

 

『ぎゃあー!!』

 

「くっ・・・・やはり、如月殿。一筋縄ではいかないか。しかも、曹操たちはあんなに遠くまで行ってしまったし。ですが如月殿。ここには貴方一人しかいませんが?」

 

如月「大丈夫、大丈夫。だって俺・・・・飛べるし。」

 

そう言って空中に浮かぶ

 

『なっ・・・・!!』

 

如月「それじゃあ、生きていたら、またあとで。あっ、お土産忘れてた。」

 

「お・・・・お土産?」

 

如月「そうそう、お土産。受け取って欲しいな・・・・イオナズン!」

 

ドッゴーーン!!

 

如月「おっ、関羽は無事だったか。さすがだな。さて、城に戻って、籠城しますか。」

 

 

 

 

side関羽

 

「くっ・・・・生き残ってる者は・・・・いないか。」

 

「愛紗!大きな爆発があったが・・・・これはヒドイな・・・・」

 

「ああ・・・・如月殿にやられた。」

 

「まったく。何という人だ。こちらもあの氷の壁に足止めさせられてな。」

 

「氷の壁?・・・・何なんだあれは!?」

 

「兵の報告によると、一部の兵が出したものらしい。」

 

「はぁ!?兵にもあんなものが出せる者がいるのか!?なんという・・・・」

 

「どうする?愛紗?」

 

「どうするもこうするも、籠城したのだから、攻城戦しかあるまい。軍師達も同じ意見だろ?」

 

「ああ、そうだ。」

 

「ならば早く落とさねば。行くぞ星。」

 

「ああ、そうだな。」

 

 

sideout関羽

 

 

 

 

「華琳様!ご無事で!」

 

「ええ。一刀と如月のおかげでね。現状は?」

 

「すでに兵の収容は完了しています!城門閉鎖も終わりました!」

 

一刀「あれ?・・・・如月と真桜は?」

 

如月「俺なら、ここだぞ。」

 

一刀「えっ?・・・・うわっ!」

 

如月「かーずとくーん。驚きすぎー。ぷぷぷ!」

 

一刀「うっせ!まぁ、無事で良かったよ。」

 

如月「おう。サンキュー。」

 

一刀「で、真桜は?」

 

「真桜なら別の作戦があるから、そちらを任せているだけ。」

 

一刀「そっか。なら良かった。」

 

「よし!総員、城壁の上に待機!籠城戦で敵を迎え撃つわ!何としても、春蘭たちが帰って来るまで耐えきって見せるわよ!」

 

各城壁に真桜特製無限丸太落とし装置がつけられ、城壁を上ってくる敵兵を落としまくっているし、地下にある用水路も桂花の罠で封鎖済み。火矢も撃ち込まれ、常用の用水路も外から止められたが、ヒャダルコで出した氷を溶かし、消火用と飲料水に使用したため兵の士気は下がらなかった。

 

一刀「なあ。」

 

「何よ。」

 

一刀「なんか、敵の数が少なくないか?今までの半分くらいしかいない気がするんだが。」

 

「・・・・しまった。やられたわね。風、こちらも隊を三つに分けて、そのうち一つは休息を取らせておきましょう。常に交代で誰かを休ませて、体力を温存できるようにして。」

 

「「・・・・ぐー。」」

 

一刀「こら、寝るなって。って、如月もか。」

 

「・・・・寝かせておきなさい。風と如月にはあとで働いてもらうわ。代わりに桂花、隊の割り振りをお願い。」

 

「・・・・はっ。しかし孔明め・・・・華琳様の作戦を。」

 

一刀「華琳の作戦って・・・・」

 

「反董卓連合と時に都攻めで使ったという、あの作戦ですか?」

 

如月「コンビニだよ。コンビニ。」

 

一刀「なんだ。起きてるんじゃないか。」

 

「「誰も起こしてくれなかったから、自分で起きた(ました。)」」

 

一刀「えっ・・・・ツッコミ待ちだったの?」

 

と一刀を二人していじっていると

 

「華琳様!地平の向こうに大量の兵が!」

 

「まさか、敵の増援!?」

 

如月「いや・・・・あれは・・・・夏候、許、典、楽、于、李、郭、張、呂・・・・」

 

「みんなお味方の旗ですねー」

 

一刀「え、だって、春蘭たちは明日の朝までかかるって・・・・」

 

如月「李ってことは真桜だよな。探しに行ってたのか。」

 

「そうよ・・・・まぁ、必要なかったみたいだけどね。」

 

如月「なら、あいつらと挟撃するために行ってきますか。」

 

「待ちなさい。指揮は桂花と風に任せるから、貴方は休んでなさい。如月。」

 

如月「いいの?なら、下で炊き出しの指示くらいしてくるわ。」

 

「ええ、お願い。おいしいものを頼むわよ。」

 

如月「ムチャぶりだな。まぁ、何とかしてみるよ。」

 

そう言って下に行き、兵達と一緒に飯の準備をしていたら

 

「あーーーっ!貴様っ!北郷!華琳様のお膝で・・・・」

 

「何しているのよーーーーーーっ!」

 

という声が聞こえてきた。春蘭と桂花、空気読めよな。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四十二話

あの後、春蘭、秋蘭、季衣、流流、霞の五人が劉備軍に追撃を行ったが、長坂橋って所で張飛に足止めをくらったため、追撃をあきらめて陳留に戻ってきた。

春蘭と季衣と霞は不完全燃焼みたいな顔をしていたが。

劉備軍五万を追い返した効果なのか地方の争い事が少なくなってきたため、少し前の忙しさが嘘のようになくなったある日、

 

如月「医者?」

 

「そうなのですよー。華琳様の頭痛を治すために呼んだのですよー。」

 

如月「あー、頭痛かぁ。最近特にひどくなったって言ってたな。」

 

「ですから五斗米道の華佗って人を呼んだのですよー。」

 

如月「ふーん。ところで、いつまでこの体勢なの?」

 

「おおっ!」

 

庭の木に背を預け、あぐらの上に座っている風に尋ねる。ちなみに後ろから抱きすくめる格好をしている。

 

如月「ほらほら、降りた降りた。ヤジ馬しに行くぞ。いつもの広間?」

 

「むー。そうですよー。」

 

如月「むくれない、むくれない。ほら行くぞ。」

 

むくれている風と一緒に広間へ向かう。

 

如月「かりーん。五斗米道の医者が来てるって聞いたからヤジ馬しにきたぜ。」

 

「違う!五斗米道ではない!ゴットヴェイドォーだ!」

 

如月「あ、すみません。ゴッドヴェイドォーね。あと、俺はここで街の警邏隊の副長をやってる龍谷如月だ。よろしく。」

 

「俺の名は華佗だ。よろしく。」

 

華佗と握手をしながら、自己紹介

 

「挨拶はすんだかしら?すんだのなら早く診て欲しいのだけれど。」

 

如月「ああ、すまん。なら、華佗。頼む。」

 

「ああ、まかせろ。では早速診察を始めよう。」

 

「!ちょっとまて!診察ということは・・・・まさか、貴様!」

 

これから診察って時に春蘭が待ったをかけた。

 

「貴様、華琳様の裸体を見たあげく・・・・あろうことか、その汚い手で華琳様のお身体をさわろうとでも考えておるのではあるまいな!」

 

「なんですって!」

 

「・・・・それがどうしたんだ?」

 

「それはそうだろう、姉者。相手は医者だぞ。」

 

「華琳様の玉体にふれさせるなど、天と地、そして天に住まう神仙がゆるしてもこの夏候元譲がゆるすわけにはいかん!」

 

「私も許さないわ!」

 

「秋蘭、脱ぐのを手伝って。」

 

「承知いたしました。」

 

「如月。二人を連れて行きなさい。華佗。さっさと診てちょうだい。」

 

「まかせておけ。」

 

如月「了解。ほら、いくぞ。二人とも。」

 

「「華琳様ぁぁぁぁぁぁっ!」」

 

そう叫ぶ二人を引きずりながら広間の外へ出ていく。さすがに華琳の裸を見るわけにはいかないからな。廊下に出た後、二人が中へ入らないように見張っていると、華佗が何かと戦っているような声をあげていた。その声も少したつと、

 

「我が身、我が鍼と一つとなり!一鍼同体!全力全快っ!必察必治癒・・・・病魔覆滅!元気になれぇぇぇぇっ!」

 

という声が聞こえてきて、静寂の後扉があき、

 

「もう中に入っていいぞ。」

 

秋蘭に言われ中へ入った。

 

如月「それで華佗。華琳の頭痛は治ったのか?」

 

「ああ。病魔は倒したから、これで治ると思うが、どうだ?」

 

「ええ。すごく体が軽いわ。頭痛も治ったみたい。」

 

「おお!それはようございます。華琳様。」

 

如月「なあ、華佗。一つお願いがあるんだが・・・・」

 

「なんだ?如月?」

 

如月「華佗さえよければ、医療技術をみなに教えて欲しいのだが・・・・どうだろ?」

 

「それはありがたい話だが、断らせてもらおう。俺はもっと大陸を見て回りたいのだ。」

 

如月「そうか。分かった。あと、すまんがもう一つだけお願いがあるんだが・・・・」

 

「なんだ?」

 

如月「呉の美周朗の命を助けて欲しい。頼む。」

 

「うむ。分かった。だったら、急いだ方がいいな。すぐに向かうとしよう。」

 

如月「ああ、頼む。あと、少ないけど、治療代。」

 

華佗に治療代を渡すと、ではまた。と言って行ってしまった。

 

「如月、あなた・・・・」

 

如月「すまんな、華琳。勝手なことをして。」

 

「いえ。理由が理由なら咎めはしないわ。というか万全の状態で戦えるのでしょう?それならいいわ。」

 

如月「ありがと。」

 

 

 

 

side周瑜

 

「何?医者が訪ねてきた?」

 

「はい。龍谷如月という方に頼まれて周瑜様を診察に来たと。」

 

「その医者の名は?」

 

「華佗と申しておりました。」

 

「ふむ。あの華佗なのだろうか?とりあえず部屋に呼んでくれ。」

 

「はっ!」

 

 

 

「お前が五斗米道の華佗か?」

 

「違う!ゴッドヴェイドォーだ!」

 

「ゴ・・・・ゴットベイ・・・・」

 

「ゴッドヴェイドォーだ!」

 

「ゴ・・・・いやいや!というか診に来たのではないのか?」

 

「ああ、そうだった。さっそくだが診察を始めよう。」

 

「ああ、頼む。」

 

「む!これは!」

 

「どうした?」

 

「早く見つけられてよかった。このまま放置していたら、取り返しのつかないことになっていた。」

 

「そんなにか!」

 

「ああ。だが、早く見つけられて良かった。今の状態なら、すぐに治るだろう。治療を始める。」

 

「ああ、やってくれ。」

 

「我が身、我が鍼と一つなり!善利益・注利率・威禍消離厄!げ・ん・き・に・なれぇぇぇぇっ!」

 

「くっ!」

 

「ふぅ。治療、完了!」

 

「これで治ったのか?」

 

「しばらくは様子を見る必要があるが、病魔は打ち砕いた。一週間くらい鍼を打って体力・気力を回復させたいのだが、いいか?」

 

「ああ、頼む。」

 

一週間後

 

「ここまで回復すれば大丈夫だ。」

 

「感謝する。華佗。」

 

「なに、医者として当然のことをしたまでだ。では、俺はこれで失礼する。」

 

「ああ。華佗。ありがとう。」

 

華佗が去っていき

 

「やつに一つ貸しが出来てしまったな。さて、どう返すか考えねばな。」

 

sideout周瑜

 

 

華佗に頼みごとをしてから二週間後、華佗が俺を訪ねてきて、周瑜の病気が完治したことを伝えてくれた。報告しに戻って来るなんて律儀な奴だな。

まぁ、ともかくこれで周瑜が死ぬという未来がなくなったので良しとしよう。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四十三話

如月「♪♪♪~!」

 

厨房で鼻歌を歌いながら食材の下ごしらえをしていると

 

「きー兄ちゃん。なんだか、ご機嫌だね。」

 

「きー兄様。何の下ごしらえをしてるんですか?」

 

如月「ん?季衣と流流か。エビの殻むきをしてるんだよー。」

 

季衣と流流に返事をし、鼻歌を歌いながら作業を続ける

 

「きー兄様。何か手伝えることはありますか?」

 

如月「じゃあ、このイカの下処理をお願いしようかな。」

 

「はいっ!分かりました。」

 

「きー兄ちゃん。ボクはー?」

 

如月「今、ご飯炊いてるから見ておいてくれ。」

 

「分かったー!」

 

季衣と流流に指示を出し、三人で下処理を行う

 

如月「流流。取って来るものがあるから、ちょっとここをお願いしていいか?すぐに戻ってくるから。」

 

「はい。おまかせください。」

 

流流にここをまかせ、中庭へ行きあるものを持ってくる

 

如月「流流。ただいま。ありがとな。」

 

「いえいえ。それより、それは何ですか?見たことないですけど。」

 

如月「これか?後で説明するよ。おっ!エビの殻むきとイカの下処理終わってるじゃん。ご飯もいい具合に炊けたな。ありがと、二人とも。」

 

「へっへっへー。」

 

「いえいえ。で、こんな量のエビとイカどうするんですか?」

 

如月「ああ、それはな『如月。来たわよ。』こういう事だ。」

 

華琳と一刀が厨房にやってきた。天の国の料理を作るからって華琳に声をかけたんだよね。

 

如月「んじゃ、今から作り始めるから、椅子に座って待っててくれ。」

 

「あら。今から作るの?なら、近くで見ていてもいいかしら?」

 

如月「いいよ。」

 

「あっ、じゃあ私も。」

 

如月「あんまり見るもんなんて無いけどな。工程がすごく簡単だから。とりあえず、鍋に入れてた油を温めておいて、小麦粉、溶き卵、パン粉の順にエビにつけて衣を纏わせて、こっちの皿に並べてっと。」

 

一刀「エビフライかっ!」

 

如月「そうだぞ。みんな大好きエビフライだ。おっ、油が温まったから揚げていくか。」

 

エビフライを一本一本揚げていく

 

如月「ほら、揚げたてだからうまいぞ。食べな。」

 

「確かにおいしそうね。」

 

「良いにおいー。」

 

「おいしそうです。」

 

一刀「うまそうだな。」

 

『いただきまーす。』

 

如月「どうだ?うまいか?」

 

『おいしいっ!』

 

如月「そりゃ良かった。うん、おいしい。あっ、華琳、流流。また違うもの作るからこっち来る?」

 

華琳と流流がこっちに来たのを確認して

 

如月「これはな、小麦粉を水で溶いたものだ。エビをこれにつけて、油へ入れる・・・・揚がり具合はこんなものでいいか。ほら、塩つけて食べてみな。」

 

「あら、さっきのエビフライとはまた違う食感。」

 

「おいしいです。きー兄様。」

 

如月「これは天ぷらって言うんだ。」

 

「あー!ボクも食べたい!」

 

一刀「俺も!」

 

如月「分かった、分かった。ちょっと待ってな。すぐに揚がるから。」

 

二人に催促されてのでどんどん揚げていく。

 

「きー兄様。あのイカはどうするんですか?」

 

如月「ああ。あれもフライと天ぷらにしようと思って。あ、そうだ。ご飯があったな。二種類しかないけどあれを作るか。」

 

エビとイカを天ぷらにして、よそったご飯の上に並べて天つゆをかけて

 

如月「はい。天丼の出来上がり。」

 

一刀「おお、天丼だ。エビとイカしかないけどおいしい!」

 

「うん。これもなかなかね。」

 

「おいしー!おかわり!」

 

「おいしいです。」

 

如月「そうか、そうか。それは良かった。うん、うまい!」

 

一刀「てか、これだけのエビどうしたんだ?買ってきたのか?」

 

如月「いや。エビの養殖をやり始めてさ。うまく出来たから、送ってもらった。」

 

一刀「は?養殖?そんなこともやってたのか?」

 

如月「だって、エビ食いたいけど高いじゃん。だから、養殖した。」

 

「きー兄様。すごすぎます・・・・」

 

「如月。あなたね・・・・」

 

「へぇー。すごいね。きー兄ちゃん。」

 

なんか三人が若干引いているような声をしていたが、とりあえず

 

如月「あ、そうだ。これもあったんだ。食べる?」

 

「これ何?」

 

「肉のかたまり?」

 

「そういえば、これってなんなんですか?」

 

一刀「も、もしかしてそれはっ!」

 

如月「そう。ベーコンだ。まず、肉のかたまりに塩をもみ込んで、冷蔵庫の中に一週間くらい置く。で取り出したら水につけて塩抜きをして、水気を取って、風通しのいい所で乾燥させて、燻製にするんだ。」

 

『燻製?』

 

如月「煙を当てて風味づけをすると同時に、煙に含まれる殺菌・防腐成分を食材に浸透させるんだ。この時、水分も飛ぶから保存性が高まるんだ。中庭に箱が置いてあっただろ?」

 

「ええ。撤去させようとしたのだけれど、あなたの字で“捨てるなっ!さわるなっ!”って書いてあったから、捨てなかったけど。」

 

如月「あれが燻製器。あれで作った。このまま切っても食べれるんだが、お腹を壊す可能性があるから今日は焼こうと思うんだが・・・・食べる?」

 

『食べるっ!』

 

如月「じゃあ、一切れずつな。すぐに焼くよ。」

 

ベーコンに軽く火を通して、あーいい匂いだ

 

如月「ほら、出来た。食べてみな。」

 

『おいしい!』

 

「きー兄様。他にどのような食べ方があるのですか?」

 

如月「そうだな。前に作ったシチューとか煮込み系のものでもおいしいよ。ベーコンからうまみが出るからな。また今度、一緒に作ってみるか?」

 

「はい!おねがいします!」

 

「その時は私も呼びなさい。如月。」

 

一刀「俺も!」

 

「ボクも!」

 

如月「ははっ。了解。んじゃ、片付けますかね。」

 

「手伝います。」

 

みんなで後片付けをし、その場で解散となった。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四十四話

「ねー、流流ー。」

 

「どうしたの?季衣?」

 

「流流ってさ・・・・きー兄ちゃんのこと好きなの?」

 

「ぶーっ!」

 

「ちょっ!流流っ!大丈夫!?」

 

「ゴホッゴホッ・・・・大丈夫・・・・じゃなくて!いきなりどうしたの!?」

 

「いやー。最近の流流がきー兄ちゃんを見る目がさ、凪ちゃんと人和ちゃんに似ててさー。それでどうなのかなって思ってさ。」

 

「うっ・・・・それは・・・・きー兄様のこと素敵な人だなって思ってるよ。」

 

「そうなんだー。だったら告白しないの?」

 

「こ、告白ー!で・・・・出来ないよ!そんなの!」

 

「えー。なんでさ?」

 

「だって・・・・きー兄様。私のこと妹分だとしか思ってないよ。」

 

「あー、確かに。そういう目でボク達のこと見てるよねー。」

 

「でしょ?だから、どうしたらいいか分からなくて・・・・」

 

「うーん・・・・だったら、みんなに聞けばいいんだよ!」

 

「みんなに?」

 

「うん!みんなにどうすればきー兄ちゃんに、ボク達が女性として見てもらえるようになるかを聞けばいいんだよ!」

 

「なるほど・・・・ん?ボク“達”?」

 

「へへー。ボクもきー兄ちゃんのこと好きだからね。流流。一緒に頑張ろうよ!」

 

「季衣・・・・うん!一緒に頑張ろ!」

 

 

 

 

「っと、みんなに聞いてみたけど・・・・」

 

「うん。大体が色っぽい服を着て迫れ。だったね。」

 

「うーん・・・・やってみる?」

 

「でも、私達に似合うかな?」

 

「そうだよねぇ。」

 

「「うーーん。」」

 

「あら、どうしたの?二人とも。」

 

一刀「何悩んでるんだ?」

 

「あ、華琳様。」

 

「兄ちゃんも。」

 

「それで、二人は何を悩んでいたの?」

 

「「それが・・・・」」

 

 

 

「ふむ。如月にどうやって妹分ではなく、女性として見てもらえるようになるのか・・・・ねぇ。」

 

一刀「色っぽい服を着て迫れ・・・・か。ふむ。ギャップがあって有りかも。」

 

「兄ちゃんっ!?」

 

「兄様!?」

 

「一刀。何なのその、ぎゃっぷと言うのは?」

 

一刀「ギャップというのは、隙間や大きなズレ、食い違いって意味だ。そうだな・・・・いつもはツンツンな態度なのに、二人きりになると急にしおらしくなってデレデレと甘えてくるとキュンってするよな?」

 

「そういう経験はないけど、想像したらキュンときたわ。」

 

一刀「ツンからデレの大きなズレ。それがギャップ。ちなみにツンからデレになることをツンデレと言う。」

 

「ですが兄様。なぜ私達が色っぽい服を着て迫ることが、ギャップになるのですか?」

 

一刀「妹分だと思っていたのに、急に女性の部分を見せつけられる。これもギャップになるんだよ。」

 

「ふーん。そんなものなんだー。」

 

一刀「そうだよ季衣。そんなものなんだよ。男って。だから、頑張れ!二人とも!」

 

「そうよ。季衣、流流。倒すべきは龍谷如月ただ一人。二人の力をもってして、攻略しなさい!」

 

「「はいっ!華琳様っ!」」

 

「この作戦を成功させるために一刀。あなたは沙和と仕事を交代しなさい。沙和にもこちらに来るよう言うこと。他の者にも助力してもらい、如月をごまかし通すこと。あと、夜にこの子たちの部屋に来るように言っておきなさい。二人は私と一緒に沙和と合流し、如月を落とせるようなものを選ぶわよ。」

 

「「「了解っ!」」」

 

 

 

如月「何だか今日の一刀の様子がおかしかったな。いや、みんなか。この後季衣と流流の部屋に行けって言われてるしな。まぁ、風呂に入ってから行くか。」

 

風呂に入り、夕飯を食べた後に二人の部屋に向かう。

 

如月「おーい、二人ともー。来たよー。」

 

「えっ!?きー兄ちゃんっ!」

 

「あ、あのきー兄様。も、もう少しお待ちくださいっ!」

 

如月「あ、ああ。了解。」

 

数分後

 

「ど、どうぞ。」

 

如月「んじゃ、失礼しまーす。」

 

流流の声に促され、扉を開けて部屋に入ると

 

如月「・・・・はっ?」

 

「・・・・あの、どうでしょうか?」

 

「どお?きー兄ちゃん。似合ってる?」

 

ピンク色のベビードールを着た季衣とうすいエメラルドグリーン色のベビードールを着た流流がベットの上に座って、感想を聞いてくる。

 

如月「その恰好・・・・どうしたの?」

 

二人とも髪の色に合わせたみたいだな。てかベビードールってあるのかよ。

 

「どう・・・・でしょうか?」

 

「似合ってる?」

 

如月「あ、ああ。すごく似合ってるけど・・・・」

 

そう褒めると二人とも「良かった。」と安堵していたが、キッと覚悟を決めた目をしてこちらを見て、

 

「あ、あのっ!きー兄様っ!」

 

如月「は、はいっ!」

 

「私はきー兄様のことが好きです。妹分としてではなく、一人の女性としてきー兄様のことが好きですっ!」

 

「ボクも流流と同じで、きー兄ちゃんのことが大好きだよ!」

 

「だ・・・・だから、私達のこと・・・・」

 

「だから、ボク達のこと・・・・」

 

「「抱いてほしい(です)(んだ)!」」

 

二人の姿と告白に頭がついてこなかったが、

 

如月「なるほど。妹分としか見てなかったから、こんなセクシーな格好をして、俺を誘ったと。」

 

「「セクシー?」」

 

如月「色っぽいって意味だよ。で、告白の返事だけど・・・・これからは一人の女性として接していくから宜しくな二人とも。ありがと。」

 

そう言って二人の頭を撫でる。

 

「うっうっ・・・・きー兄様・・・・大好きです。これから宜しくお願いします。」

 

「これからもよろしくね。きー兄ちゃん。」

 

二人からの告白を受けた後、そのまま二人の部屋に泊まっていった。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四十五話

窓から入り込む朝日を浴びて目を覚ますと

 

「スー・・・・スー・・・・きー兄様・・・・スー・・・・スー・・・・」

 

「むにゃむにゃ・・・・きー兄ちゃん・・・・むにゃむにゃ・・・・」

 

如月「幸せな顔しちゃって。可愛い寝顔だなぁ・・・・」

 

二人の可愛い寝顔を交互に見つつ二人の頭を撫でていると

 

「ん・・・・うーん・・・・おはようございます。きー兄様。」

 

「ふみゅ・・・・おはよう。きー兄ちゃん。」

 

如月「おはよう。季衣。流流。」

 

「あ・・・・あの、不束者ですがよろしくお願いします。」

 

「ボクも。よろしくお願いします。」

 

如月「その使い方は少し間違ってると思うが・・・・まぁ、ともかく。こちらこそよろしく。」

 

そう言ってから、二人にキスをする

 

「はう~~////」

 

「あう~~////」

 

如月「それじゃ、俺はこのまま仕事に行くから。」

 

「はいっ!いってらっしゃい。きー兄様。」

 

「いってらっしゃーい!」

 

 

 

 

街の屋台で朝飯を食べてから詰め所へ向かい、扉を開けると

 

『副長!許緒将軍と典韋将軍を抱いたって本当ですか!?』

 

扉を閉め

 

如月「そういえば、書類が溜まってたっけ。城へ戻るか。」

 

「何逃げようとしてんねん。副長ー。」

 

「そーそー。これからお仕事なのー。」

 

一刀「今日も楽しい見回りだぞ。如月。」

 

真桜と沙和に両脇を固められ、後ろから一刀が右肩を掴み、退路を断っていた。

むちゃくちゃいい顔してんなお前ら!

 

如月「いやー・・・・提出しないといけない書類があったのすっかり忘れてて。」

 

「そのようなもの、この間片付けたばかりですよ。如月さん。」

 

如月「うおっ!凪っ!」

 

「まぁ。如月さんがモテモテなのは分かりきってたことなので、しょうがないことですが・・・・ちゃんと私たちを愛してくださいね。」

 

如月「あ、ああ。それはもちろん!」

 

「なら、何も言いません。」

 

一刀「初めて見た。あんな如月。」

 

「副長・・・・もう凪の尻に敷かれてんなぁ。」

 

「凪ちゃん・・・・すごいのー。」

 

外野がなにか言ってるけど気にしないでおこう

 

如月「てか、なんでこんなに広まってんの?」

 

一刀「昨日、二人が色んな所で聞きまくってたみたいだからなぁ。」

 

如月「なるほどねぇ・・・・それならしょうがない。」

 

そんなやり取りを一刀としながら詰め所の扉を開けると

 

『副長!許緒将軍と典韋将軍を抱いたって・・・・』

 

如月「ベタン。」

 

『うぎゃー!!』

 

詰め寄ってきた隊のやつらが強力な重力によって押しつぶされる

 

如月「寝っ転がってないで、さっさと起きろー。仕事始めんぞー。」

 

一刀「うわ・・・・ようしゃないな。お前・・・・」

 

そりゃ、二回目なんだから当たり前だろ

 

 

そんなことがあった数日後

 

如月「あれ?風、凪、沙和。三人でどっかに遠征?」

 

「はいー。西涼の馬騰さんの所へ春蘭様と一緒に交渉しに行くのですよー。」

 

如月「えっ!?春蘭なの!?秋蘭じゃなくて?」

 

「はいー。漢の将軍である馬騰さんに使者の名代を出すなら、馬騰さんにもっとも近い地位の春蘭様を出すのが礼儀なのですよー。」

 

如月「へー。そうなんだ。」

 

「おっ、如月。お前も見送りか?」

 

如月「まあ、そんなとこ。じゃあ四人とも気をつけていってきてね。」

 

「ああ。」

 

「はーい。」

 

「いってきます。如月さん。」

 

「いってきまーすなのー。」

 

挨拶を済ませ、交渉団は出発していった。道中何も起こらないよう願っておいた。

 

交渉団が出発して、しばらくたったある日。いい天気だったので俺、一刀、季衣、流流の四人は中庭にある東屋でお昼を取ろうと思い、流流に作ってもらっていた。そこへ匂いを嗅ぎつけた華琳と秋蘭も加わり、六人一緒にお昼となった。

お昼を取っていると交渉に行っていた、春蘭、風、凪、沙和の四人が帰ってきて、春蘭から華琳に軽い報告といった感じで伝えてくれた。その内容は

 

「己は天子の臣であり、魏の旗の下には決して降らん」

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四十六話

「己は最後まで漢の臣である。・・・・それが、馬騰のこちらに対する回答でした。」

 

昨日、春蘭から聞いた以上のことを風が報告していた。まぁ、予想はしていたからしょうがないな。

 

「・・・・で、馬騰はどういう人物だった?」

 

「公平にして勇敢、五胡の間にも勇名を轟かす豪傑・・・・旅の間も噂には聞いていましたけど、噂にたがわない、高潔な人物という印象を受けましたー。」

 

「だてに涼州の諸侯を束ねる人物ではない、と言う事か。やはり・・・・おしいわね。」

 

「西涼の騎馬の民を相手にしているだけあり、戦慣れした騎兵が主体です。反董卓連合の時もそうでしたが機動力に関してはあちらに一日の長があるかと。」

 

「ウチみたいな戦い方が基本になるわけか・・・・」

 

「皆も良いわね。桂花たちは騎馬に有効な戦術を準備しておきなさい。霞の戦い方が参考になるでしょうから、霞もそれに加わって。」

 

「おう。まかしとき!」

 

如月「華琳。真桜もその軍議に入れてやってくれ。」

 

「えっ!ウチも!」

 

如月「どうせ、色々と作る羽目になると思うから、その場で色々考えな。時間の短縮だ。すぐ出る羽目になるんだろ?」

 

「そうね。真桜。あなたも軍議に加わりなさい。」

 

「了解です!」

 

軍議から数日後。慌ただしい準備の後、涼州へと続く街道を進んでいた。

 

如月「いやいや・・・・遠いですなー。」

 

「そりゃそうやで。大陸の端っこやからね。」

 

んなことを霞と話しながら行軍していると

 

「敵襲ー!!」

 

如月「おおう・・・・いきなりですか・・・・」

 

「んなこと言っとらんと、迎撃するで!」

 

如月「了解!」

 

 

 

 

 

如月「とりあえず、迎撃はしたな。」

 

「ウチが先頭やなかったら、もっとグダグダになってたで。」

 

如月「確かに。霞。帰ったら一つ、言うことを聞いてやるよ。」

 

「ホンマッ!」

 

如月「ああ。でも無理なものはなしな。」

 

「くーっ!楽しみやな!なにしてもらおう。」

 

如月「あのー、霞さん。俺に出来ることにしてよー。」

 

聞こえてないなー。まぁ、しゃーないか。

そんなこんなで敵襲を迎撃したが、そのあとも昼夜問わず敵襲が続いた。

そんなある日

 

一刀「おはよー。」

 

「何や、眠そうやねぇ。隊長。」

 

如月「大丈夫か?」

 

「ああ。大丈夫。でも最近、眠りが浅くてなぁ・・・・地面に布を敷いただけで寝苦しいのに、ようやく寝られたと思ったら、襲撃があるし。」

 

「せやねぇ。昨日はめずらしゅう夜襲がなかったけど・・・・ここの所、ほとんど毎日やったもんね。」

 

一刀「真桜は元気だな。」

 

「元気なもんかい。単に、夜明け前から起きとったから眠う見えんだけや。」

 

一刀「ああ、夜の見張りだったのか。お疲れ様。如月は?」

 

如月「俺は今から。」

 

一刀「そっか。お互い頑張ろうな。」

 

「うー。眠たいのー。」

 

如月「よっ!沙和。おはよう。」

 

一刀「沙和も夜の番だったのか?」

 

「ウチもやで。」

 

如月「霞もか。おはよう。」

 

「おう。おはよう。今から寝るでー!」

 

「夜起きてるのはお肌に悪いの・・・・」

 

一刀「よく寝てちょうだい。沙和も。」

 

「うん。真桜ちゃーん。そばかす、ひどくなってないー?」

 

「大丈夫やと思うけどなぁ・・・・隊長、どない?」

 

「隊長ー。この辺とかひどくなってないのー?」

 

一刀「お、おい。ちょっと、そんなに顔を近付けるなって・・・・!」

 

「近寄らないと分からないのー。」

 

一刀「だ、大丈夫。大丈夫だから・・・・っ!」

 

「んもぅ!二人とも、適当に言ってるの!」

 

「おはようございます。」

 

「おはよ、凪。」

 

如月「おはよう。凪。」

 

一刀「凪も早いなぁ。」

 

「この時間は普通、皆起きているのでは?」

 

如月「さすがにそれはないと思うが・・・・」

 

コクコクと頷くみんな。そんな中、沙和が

 

「凪ちゃーん。私のそばかす、ひどくなってないー?見て見てー。」

 

「じー・・・・」

 

「ねえねえ、どうなのー?」

 

「・・・・すまん、沙和。こういうのは良く分からなくてな・・・・皆に聞いてくれ。」

 

「もぅ、みんな知らないのーーーー!」

 

てか、俺と霞は聞かれてないけど

 

「あーあ、行ってもうた。隊長のせいやで?」

 

如月「そうだな。あそこで沙和の腰くらいこう、ぐっと抱いて見せてだな・・・・」

 

「えっ?ちょ!如月さん!」

 

如月「沙和。お前の美しさは、そばかすくらいで損なわれるものじゃないよ。」

 

そう言って目を閉じて凪の顔に近づけていき

 

「ちょっと如月さん!あ、あの・・・・その・・・・」

 

如月「・・・・とまあ、このくらいしてもバチは当たらないと思うぞ。」

 

「・・・・へっ?」

 

一刀「いや、俺がやったら犯罪だろ。」

 

「副長。副長。」

 

「如月。如月。」

 

如月「ん?」

 

真桜と霞が小声で俺を呼び、指を指している。指された方を見ると

 

「うー・・・・」

 

恨めしそうに俺を見る凪の姿が

 

如月「ゴメン。ゴメン。凪。これで機嫌直して。」

 

もう一回、凪を抱きよせてキスをする。

 

「き、如月さんっ!」

 

如月「機嫌、直った?」

 

「うー・・・・はい。」

 

如月「それは良かった。」

 

そんな凪とのやりとりを

 

一刀「あ、あんな如月・・・・見たことない。」

 

「副長・・・・大胆やなー。」

 

「ええもん。ええもん。この戦が終わったら・・・・」

 

周りが若干引いているようだが

 

如月「とはいえ、兵達の疲れもかなり溜まってるし、こっちももたないかもな。華琳に相談してみるか。」

 

「あ。話そらした。」

 

一刀「話そらしたな。」

 

「恥ずかしくなったんちゃう?」

 

如月「うるせいっ!」

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四十七話

俺は今、華琳の天幕に来ている。その理由は

 

如月「なぁ、華琳。兵達の疲れもだいぶ溜まってきてるぞ。何か考えた方がいいんじゃないか?」

 

「ああ。その件なら今、準備をしている所よ。」

 

如月「準備?もう対策してたのか。さすがだな。」

 

「あたりまえでしょ!この私がいるのだもの!」

 

如月「そりゃそうか。桂花が何もしないわけないよな。」

 

「その通りよ。あ、如月。あなた次の街に着いたら、潜んでる工作員と接触して、情報と物資のやり取りをしてちょうだい。」

 

如月「次の街で?まだ結構離れてるけど・・・・まぁ、いいか。了解。やるよ。」

 

桂花から任務を与えられた後、街を目指して行軍を再開。

街に向かう途中も夜襲をしかけられたりしていたが、日を追うごとにだんだん減っていった。工作員達が動き始めたのかな?

数日後、工作員と接触する街に到着。街に入るメンバーは俺、一刀、稟、霞、季衣、流流の六人だ。

 

一刀「涼州にも街はあるんだな。」

 

「何だと思っていたのですか?」

 

一刀「いやー・・・・遊牧民っぽい天幕とかばっかりなのかと思ってた。」

 

「一刀・・・・そりゃ、いくらなんでもヒドイで。」

 

如月「気持ちは分かる。」

 

そういうイメージしかなかったわ

 

如月「そう言う霞は来たことあるのか?」

 

「ちょっと通りかかっただけやけどな。あんたらは・・・・来たことなさそうやな。」

 

「はい。馬がたくさんいますねぇ・・・・」

 

「何かおいしいもの、あるかなぁ・・・・?」

 

一刀「二人とも、そんなにキョロキョロしない。」

 

如月「まあまあ、いいじゃねーか。一刀。こうやって他の街を見るのも面白いし、息抜きをかねてるんだから。そういえば、稟。補給物資を渡す相手ってのは誰なんだ?」

 

「ああ、それなら・・・・あそこにいますよ。」

 

如月「なるほどね。」

 

「・・・・こちらへ」

 

合流場所から裏路地を通って着いた場所は

 

「みんなーーーっ!げんきーーーー?」

 

『げんきぃぃぃぃぃぃっ!』

 

「ちーほーたちの歌、聞きたいーーーーっ!?」

 

『聞きたぁぁぁぁぁぁいっ!』

 

数え役萬シスターズのライブ会場だった。観客たちに見つからないようにスタッフが使うルートを使って控室に入る。

 

「それでは私もこれで。補給の件はまたのちほど。」

 

「はい。頑張ってください。」

 

「あ、そうだ。如月さん。」

 

如月「ん?どうした?れん・・・・ちゅ」

 

近寄ってきた人和にキスされ

 

「頑張ってきますね////」

 

如月「ああ!頑張って!」

 

「人和さん・・・・大胆です。」

 

「人和ちゃん。すごいねー!」

 

「三姉妹の中で、一番おとなしいと思ってた人和があんな、大胆になるとはなぁ・・・・」

 

一刀「恋の力ってスゲーな。」

 

如月「まぁ・・・・全然会えてなかったからなぁ・・・・俺も驚きだ。」

 

みんなして人和の行動力に驚いていると音楽が鳴り始め、観客のボルテージがMaxになった。その熱にあてられたのか季衣と流流も舞台袖で「ほあー!」「ほああー!」と叫んでいる。

 

如月「それにしてもスゲーな。」

 

「それだけ娯楽に飢えとったっちゅうことやろ。」

 

まぁ、この時代は娯楽が無いに等しいからな。

 

一刀「これも華琳の策?」

 

「はい。」

 

如月「なるほどね。それで、夜襲が減ったのね。」

 

「はい。彼女たちの歌、あの年頃の男たちには効果絶大なようです。」

 

一刀「ウチの陣でもやってもらえば?士気上がるんじゃね?」

 

「なるほど。確かに。」

 

如月「んじゃ、後で頼んでみるか。」

 

その後、ライブが終わったばかりの三人に兵達の慰問として依頼。OKをもらったため、今は陣までついてきてもらいライブを行ってもらっている。

 

『ほわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!』

 

如月「みんな、盛り上がってんなぁ。」

 

「ええ。さすが天和たちね。」

 

如月「お、華琳。」

 

「如月。この慰問が終わったらすぐに出撃するわよ。準備しておきなさい。」

 

如月「了解。」

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四十八話

三姉妹のライブ後、すぐに出撃し、前方に敵さんの旗が見えたため、陣形を展開。展開後、華琳と馬超が舌戦を行っていた。馬超も女の子かぁ。可愛い娘だなぁと思っていたら

 

「如月さん?」

 

凪がジトーと冷たい目で見てきた。あれ?凪以外からも冷たい視線が・・・・凪を含めて霞、人和、季衣、流流、風の五人からの視線を感じた。いや!みんな!結構離れてるのによく分かりますね!

 

「如月さん。我々を侮ってもらっては困ります。」

 

如月「今後・・・・気をつけます・・・・」

 

「うぅ・・・・凪ちゃん・・・・怖いの・・・・」

 

「副ちょー。戦前に士気さげんなや!」

 

如月「ごめん・・・・」

 

とそんなコントみたいなことをやっていたら、いつの間にか舌戦が終わっていた。早っ!

 

「総員。戦闘配置につきなさい!この苛立ちだらけの涼州の戦に、さっさと終止符を打つわよ!全軍!」

 

「とっつげきぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」

 

華琳の檄の後に地和の突撃の声が聞こえた

 

一刀「・・・・地和・・・・」

 

如月「まぁ・・・・いいんじゃね・・・・気を取り直して・・・・オメ―ら!歌姫様からのじきじきの突撃命令だ!歌姫様にお前たちのカッコイイ所見せてやれ!勝って、三姉妹のライブをみんなで見に行くぞ!」

 

『おおーー!!』

 

 

 

 

戦闘が始まって数刻後、真桜率いる工兵達の手によって細工されたぬかるみに涼州の騎馬は機動力を完全に奪われ、こちらが優勢になってきた所で野戦の戦闘は決着がつき始めてきた。そんな時

 

「伝令!北郷様。如月様。曹操様から本陣に合流すように。合流後、城の制圧に向かう。とのことです!」

 

一刀「了解。」

 

如月「分かった。真桜。沙和。華琳に呼び出されたから、本陣に行ってくるわ。ここの指揮頼む。」

 

「へーい。隊長と副長も気をつけてな。」

 

「分かったなのー。」

 

如月「凪は俺達についてきな。攻城戦になるだろうから一人でも多くの将が欲しい。」

 

「了解です。」

 

俺、一刀、凪の三人が本陣に合流後、城の制圧に向かった。

 

一刀「日が暮れる前に陥落か・・・・」

 

如月「まさかここまで城の守りが手薄とはなぁ・・・・」

 

「馬超達の隊が本隊だったようね。あなた達も馬騰を探してきてちょうだい。」

 

如月・一刀「「了解」」

 

 

 

如月「さてさて。馬騰さんはどこにいるのかねぇ・・・・」

 

部屋を一つ一つしらみつぶしに探していると、ある部屋で倒れている人を発見。

 

如月「ちょっ!あんた!大丈夫か!?しっかりしろ!」

 

だが返事はなく、体がつめたくなっていた。

 

如月「くそっ!もう亡くなっている。・・・・ん?よく見ると顔が馬超に少し似ているような?・・・・っ!!」

 

部屋を出て

 

如月「誰か近くにいるか!?」

 

「はっ!ここに!」

 

如月「秋蘭を呼んできて来てくれ!」

 

「了解です!」

 

少ししたら秋蘭がやってきて

 

「如月どうした?」

 

如月「馬騰らしき人を発見した。確認してくれ。」

 

「・・・・そうか。」

 

秋蘭は部屋の中へ入り

 

「如月。華琳様に馬騰が見つかったと報告してくる。この部屋の中には誰も入れないように、ここで見張っててくれ。」

 

如月「ああ・・・・分かった。」

 

数人の兵達と部屋の扉の前で待っていたら、、秋蘭が華琳と一刀を連れてやってきた。

 

如月「毒を呷ったみたいだ。」

 

「・・・・そう。」

 

それだけつぶやいて、部屋の中へ入っていく。

 

「秋蘭。ここに人が入ることを禁じなさい。破った者は斬り捨てて。それから、女官がいれば何人か呼んできて。馬騰の亡骸はこの地の流儀で丁重に弔わせなさい。」

 

「承知いたしました。・・・・そういうわけだ、北郷。如月。」

 

一刀「・・・・ああ。凪たちの仕事を手伝ってくる。」

 

如月「女官もこっちにくるように手配しとく。」

 

「頼む。」

 

 

 

 

馬騰の埋葬を済ませた後、涼州を併合し、早々に帰路へついた。元々馬騰は体を患っていたらしい。馬超達は、春蘭と霞の追撃から逃げた後、劉備の所に身を寄せたとの噂があった。関羽、張飛、趙雲、諸葛亮、鳳統、そして馬超。黄忠はわからないが、蜀としての形が着々と揃いつつあるなぁ。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

四十九話

涼州から帰ってきてから数日後、俺は今、中庭にいた

 

如月「ひもの♪ひもの♪ひものをつくる♪ほんごうたーいのきさらぎくん♪」

 

アジ、サバ、イカ、タコなどを干しかごに入れ、風通しのいい軒下に吊るす。

 

一刀「如月・・・・その歌って・・・・あれか?」

 

如月「そう。あれ。」

 

一刀「てか何で干物作ってんの?」

 

如月「いやー、食べたくなっちゃってさ。イカは一夜干しにする予定。」

 

一刀「あ、そうなの?じゃあ、俺にも食べさせてちょうだい。」

 

如月「オッケー。っともうそろそろ時間だから仕事に行ってくるわー。」

 

一刀「おーう。いってらー。」

 

いやー、明日が楽しみだな。仕事頑張りますかね。

 

 

 

 

「・・・・というわけで、今夜しかけに行こうと思って。いいわよね?凪?」

 

「なぜ私にそんなことを言いに来るのですか?詠。」

 

詠と月がいきなり自分の部屋に来たので、一体何事かと思ったら如月さんに夜這いしに行くと報告されたのですが・・・・

 

「えっ。だって凪は如月の本妻でしょ?だから確認を取っておきたくて。」

 

「本妻って・・・・なぜそんなことに?」

 

「いや、城の中ではみんな、そのような認識でいますけど・・・・気づいてなかったんですか?」

 

「えっ!城中!?」

 

そんな風に思われていたなんて

 

「知らぬは本人ばかりか。」

 

「・・・・まぁでも、私に許可なんて取りに来なくてもいいのに。」

 

「人和さんや季衣ちゃんや流流ちゃんも許可を取ってたみたいですし・・・・一応はと思って。」

 

「如月さんがモテモテなのはしょうがないので、その辺りは気にしてませんよ。だから二人とも頑張ってください。」

 

「ありがとう。凪。」

 

「がんばります!」

 

「あっ。服装はどうしよっか?」

 

「へぅ~。どうしましょう・・・・」

 

「なら、沙和か華琳様に聞いてみては?」

 

「それもそうね。華琳はいつもの部屋でしょうし、沙和は?」

 

「今日は休日だから服屋めぐりをしているのでは?」

 

「なら、先に華琳に聞きに行きましょう。」

 

「でも、お忙しいのにいいのかなぁ?」

 

「大丈夫じゃない?こういう事に関しては嬉々として首をつっこみそうだし。ほら、月。いくわよ。」

 

「大丈夫かなぁ・・・・」

 

 

「さぁ。何をぐずぐずしているの?早く行くわよ。」

 

「ほら、みなさい。」

 

「へぅ~。大丈夫だったよ~。というか、お仕事大丈夫なのかなぁ?」

 

「大丈夫に決まっているでしょ。早く沙和を探しに行くわよ。」

 

三人は服屋へ向かった。

 

 

「あっ!かりんさまー。」

 

一刀「それに月に詠。どうしたの?」

 

「あら、一刀もいたのね。沙和。この二人の服を選びに来たのだけれど手伝ってくれないかしら?もちろん、一刀もね。」

 

「分かったなのー!」

 

一刀「俺で良ければ。」

 

「それでどんな感じの服なのー?」

 

「えっとそれは・・・・」

 

 

 

 

如月「ふぅ。今日も疲れたな。飯も食ったし、早く寝ますかね。でも、一刀たちが頑張れって言ってたけどなんだったんだろうな?」

 

そんな独り言をつぶやきながら、自分の部屋の扉を開けて中に入り、ベッドの上の毛布を捲ると

 

「お、おかえりなさい。」

 

「へ、へぅ~」

 

何という事でしょう。布団を捲るとそこには、二人のバニーさんがいるではありませんか。

 

如月「あの・・・・二人とも、何やってるの?」

 

「あんたを待ち伏せ。」

 

「如月さんに抱かれに来ました!」

 

如月「えっ!?」

 

「月っ!?」

 

「私は如月さんのことが好きです!だから、抱かれに来ました!」

 

「月・・・・ボクも如月のことが好き!だから月と一緒に抱いて。」

 

如月「ありがとう。二人とも。俺も月と詠のことが好きだよ。」

 

「如月さんっ!」

 

「如月っ!」

 

如月「あと一つ聞かせて。その服はどうしたの?」

 

「北郷が『バニーさんに迫られるのは男の夢だ!うんぬんかんぬん』って言ってたから。」

 

「それに色っぽかったのでこれにしました。」

 

如月「そうなんだ。うん、二人とも色っぽいよ。」

 

「へぅ////」

 

「あ・・・・う・・・・////」

 

俺はベッドに腰を下ろし

 

如月「ほら、二人とも。おいで。」

 

「へぅ・・・・よろしくお願いします。如月さん。」

 

「よ・・・・よろしくお願いします。」

 

如月「うん。宜しくお願いされました。」

 

 

 

 

如月「・・・・朝か。ふぁ~・・・・二人の寝顔も可愛いなぁ。よし、起きるか。」

 

隣で寝ている二人を起こさないようにベッドから起き

 

如月「一風呂浴びてくるかな。なら、書置きを残して・・・・っと」

 

机の上に書置きを残して風呂へ向かう。

 

 

如月「ふぅ。さっぱりした。やっぱり風呂は良いねぇ。ん?」

 

部屋へ戻る途中で何かを振り回してる音が聞こえたので、音のする方へ行くと

 

如月「おはよう。霞。こんな朝っぱらから鍛錬か?」

 

「ん?おお、如月やん。おはよう。そうやでー。鍛錬中や!」

 

近くの石の上に座り霞の鍛錬を見学していたら

 

「ふぅ・・・・うん。今日はこれくらいにしとくか。」

 

如月「お疲れ、霞。はい、これ。」

 

手ぬぐいと水を霞に渡す

 

「おおきに。なぁ、如月・・・・」

 

如月「ん?どうした?霞?」

 

「この前の約束、覚えとる?」

 

如月「ああ。帰ったら一ついう事を聞くってやつか?」

 

「うん、それ。今日の夜に使いたいんやけど・・・・いい?」

 

如月「今夜?ああ、いいよ。」

 

「ホンマッ!?なら今夜、部屋に行くから、待っといてな。」

 

如月「ん。了解。じゃあ、そろそろ部屋に戻るよ。」

 

「うん。また今夜なー。」

 

霞と約束をした後部屋に戻ると

 

「あ、如月さん。おはようございます。」

 

「おはよう。如月。」

 

如月「おはよう。二人とも。あ、朝食準備してくれたんだ。」

 

「はい。二人で作ったんですよ。お口に合えばいいんですが・・・・」

 

如月「じゃあ、いただきます。(モグモグ)うん、おいしいよ!ありがとう二人とも。」

 

「えへへ。どういたしまして。」

 

「ふ・・・・ふん////」

 

詠の顔が真っ赤になっていたが見なかったことにした。ツン子だからなぁ

 

如月「ふぅ。ごちそうさまでした。」

 

「はい。お粗末さまででした。」

 

如月「飯も食ったし、そろそろ仕事に行くよ。」

 

「あっはい。いってらっしゃい如月さん。」

 

「片付けはやっとくから。」

 

如月「ありがとう。二人とも。いってきます。」

 

「「いってらっしゃーい」」

 

二人に見送られ詰め所へ向かう

 

一刀「昨夜はお楽しみでしたね。」

 

如月「一刀・・・・」

 

すっと右手を差し出すと意図をさっしたのか一刀も右手を差し出してきて、二人で固い握手を交わす。

 

如月「ありがとう。これからも頼む。」

 

一刀「おう!まかせとけ!」

 

一刀との友情がまた一段と深まった日になった。

 

その日の夜

 

如月「霞が来るから、飲むんだろうな。なら、おつまみとお酒を準備しとくか。」

 

そんなこんなで準備しているとコンコンと扉をノックする音が聞こえた

 

如月「どうぞー。」

 

「おじゃましまーす。あれ?お酒が用意されとる。」

 

如月「ああ。あれ?飲むんじゃないの?」

 

「ううん!飲む!飲む!」

 

如月「じゃあ、飲もっか。あ、これ、イカの一夜干し。おいしいから食べてみて。」

 

「じゃあ、もらうわ。(モグモグ)おお!ウマイわ!」

 

如月「でしょ?こっちも食べてよ。スルメって言うんだ。固いからよく噛んでね。」

 

「うん。こっちもおいしいわ。酒によく合う」

 

如月「お口に合って良かったよ。」

 

その後二人で最近の出来事や愚痴をこぼしつつチビチビと飲んでいると

 

「なぁー如月」

 

如月「うん?なにー?」

 

「ウチなー、如月のことメッチャ好きやねん。」

 

如月「お、おう。ありがとう。」

 

「んでなー、今日はなー、ホントはなー、抱かれに来たんよー。」

 

如月「はっ?抱かれにですか?」

 

「うん。如月が他の娘とイチャイチャしてる所を見るとイヤな気持ちになるんや。みんなのこと嫌いになりそうで・・・・そんなんイヤやもん。だから、あの時の約束を使ってでも抱いてもらおうと思ってん。」

 

如月「ねぇ、霞。」

 

「ん?何?きさら・・・・ちゅ」

 

如月「そんなにも俺のことを思ってくれてありがとう。あと、そんなイヤな気持ちにさせちゃってゴメン。俺も霞のことが好きだ。だから、霞の初めてを俺にください。」

 

「えっと・・・・その・・・・はい、喜んで。」

 

そう言った霞を椅子から立たせてからお姫さま抱っこする。顔を真っ赤にした霞が「あうあう」と言っているのを可愛いなぁと思いつつ、ベッドまで移動し、ベッドの上に優しく寝かせる

 

「あ、あの・・・・如月・・・・」

 

如月「ん?どうした?」

 

「えっと・・・・その・・・・不束者ですがよろしくお願いします。」

 

如月「ああ。よろしく。優しくするから。」

 

 

 

 

チュン チュン チュン チュン

 

 

如月「ん・・・・もう、朝か・・・・んんー・・・・起きるか・・・・ん?あれ?右腕が動かない?それにムニムニと柔らかいものが当たってるな。」

 

そう思い右側を見ると俺の右腕を抱き枕にしている霞の姿が

 

如月「右腕がすっごく幸せな状況だし、髪を下ろした霞もいいなぁ。サラサラだし。」

 

霞の髪を触っていると

 

「ん・・・・もう朝?」

 

如月「おはよう。霞。」

 

「ん・・・・おはよう。如月。・・・・ってなんで如月がウチの横で寝てんねん!?・・・・あー・・・・」

 

如月「状況理解できた?」

 

「うん。理解できた。そっかー・・・・ウチ、如月とヤったんやなー」

 

如月「そういう風に言われると恥ずかしいんだが・・・・」

 

「まあまあそう言わんと。なぁ、もっとなでて。」

 

如月「いいけど、胸当たってるけどいいの?」

 

「当ててるんやでー。ほら、そんなんいいから早ようなでて。」

 

如月「はいはい」

 

霞に催促され再開させる。そんな心地いい時間を過ごした後、二人して着替え、朝食を一緒に食べに行った。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五十話

霞と一緒に朝食を食べに食堂へ行くと

 

「おはようございます。如月さん。霞さん。」

 

「おはよう。二人とも。すぐに持ってくるから適当に座ってて。」

 

如月「おはよう。月。詠。了解。お願いね。」

 

「すまんな。」

 

あいている席に座るとすぐに朝食を持ってきてくれたので早速食べ始める。うん!美味い!

 

「おはようございます。みなさん。」

 

「おっ、凪ー!おはようさん。」

 

如月「おはよう。凪。」

 

「おはよう。」

 

「おはようございます。凪さん。すぐにお持ちしますね。」

 

「ありがとうございます。月。」

 

凪も加わり食事を再開。しばらくすると手が空いた月と詠がやってきたので食事をしながら一緒に会話をし始める。食事が終わりお茶を飲みながら一服していると

 

「で、あんたらヤッたの?」

 

如月「ぶーっ!」

 

「ちょっ!いきなり何聞くねん!」

 

「そうだよ詠ちゃん。」

 

ウンウンと頷く凪

 

「そんなの見れば分かるでしょ。ダメだよ聞いちゃ。察してあげなきゃ。」

 

はっ!?マジでっ!嘘っ!凪も頷いてるし!

 

「た、確かにそうね。見れば丸わかりよね。」

 

そ、そんなにバレバレなの?あっ、霞が顔真っ赤にして俯いてる。

 

如月「え、えっと・・・・他の皆には?」

 

「気づいたのは私達だけですからお気になさらず。」

 

如月「お、おう・・・・」

 

気にするなって言われてもなぁと思いつつお茶を飲んで気持ちを落ち着かせている横で、霞が三人に根掘り葉掘り聞かれていた。珍しく顔を真っ赤にした霞を見ているとどこからか視線を感じたのでキョロキョロと辺りを見渡すと

 

「・・・・じー・・・・」

 

死角になっている所から俺を見ている恋の姿があった。てか、じーって声に出してる人初めて見たよ。

 

如月「えっと・・・・恋?どうした?そんな所で。こっちに来な。」

 

コクッと頷いて近寄ってくる恋。

 

如月「で、どうしたの?」

 

「・・・・如月。今日、お仕事?」

 

如月「いや、今日は休みだよ。」

 

「・・・・なら、遊びに行く。」

 

そういうや否や、俺の腕を抱き寄せて

 

如月「ちょっ!恋!」

 

「・・・・早く行く。」

 

ビックリした顔でその様子を見ていた四人が何かに感づいたのか

 

「恋ちゃん!頑張ってっ!」

 

「恋!ふぁいとよ!」

 

「恋!気張っていきや!」

 

「・・・・凪・・・・いいの?」

 

「恋殿。ファイト!ですよ。」

 

「・・・・(コクッ)」

 

何を頑張るんだろうか?まぁいいか

 

如月「それじゃあ、行ってくるわ。」

 

 

静かに意気上がる恋に連れられ街にやってきた。恋は今、俺の左腕に腕をからめている。

 

如月「あのー、恋さん・・・・当たっているのですが?」

 

「・・・・当ててる////」

 

顔を真っ赤にしてそんなことを言う恋。可愛すぎだろ!

 

如月「そ、そっか。ありがと。」

 

「・・・・うん////」

 

そんな恰好で二人して歩いていると

 

「おっ!今日は呂将軍と逢い引きか?モテる男はつらいねぇ副長。死ねやボケ!」

 

如月「うっせぇ!んなこと言ってっと肉まん買わねぇぞ!せっかく買おうと思ってたのに。」

 

「いやぁ!さすが天下の副長さんだ!肉まん三十個でいいですね?」

 

如月「まだ頼んでもないのに三十個!?恋は・・・・」

 

「・・・・じー・・・・」

 

如月「お願いします。」

 

「まいどっ!」

 

おっちゃんから買った肉まんを恋に渡す。受け取るや否や食べ始める恋。俺も一個もらった。

 

「・・・・如月と一緒に食べ歩き・・・・楽しい。」

 

如月「俺もだよ。恋。」

 

それからも歩いてるだけで飲食店のみんなに呼び止められては、買い食いをしてを繰り返しながら街中を歩き回った。

 

如月「おお・・・・気がついたらもう夕方だ。恋、もうそろそろ帰ろうか。」

 

「うん。・・・・でも、ゆっくり帰る。」

 

如月「そうだな。ゆっくり帰るか。」

 

恋の提案でゆっくりと城へ帰る。城に着く頃には、すっかりと日も落ちて暗くなっていた。

 

如月「城に着いたか。恋はどうする?」

 

「・・・・如月の部屋に行きたい。」

 

如月「もしかして、食堂でみんなが頑張れって言ってたのはこのこと?」

 

コクンと頷く恋

 

如月「まったく、俺でいいの?」

 

「・・・・如月が、いい。」

 

如月「うん。ありがと。んじゃ失礼して・・・・」

 

「きゃっ!」

 

恋をお姫さま抱っこして自分の部屋へ向かう。部屋の扉を恋に開けてもらい中へ入り、ベッドの上に恋を寝かせる。

 

「ねぇ・・・・如月」

 

如月「ん?」

 

「・・・・大好き」

 

如月「俺も恋のこと大好きだよ。」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五十一話

如月「ん・・・・朝、か・・・・?あれ?体が重い気がする・・・・あぁ、そういえば昨日は恋と寝たんだっけ。それかなぁ・・・・」

 

「みゅぅぅ・・・・」

 

ん?何かの鳴き声が?

 

「にゃーーーー・・・・んーーーー、すりすり・・・・にゃぁ・・・・ごろごろ・・・・」

 

その鳴き声だと猫かな?んーでも、昨日は恋と一緒だったから、拾ってきては無いはずだし・・・・あぁ、窓から入ってきたのか。ナデナデ

 

「ふにゃぁ・・・・気持ちいいのですよ~。」

 

あれ?猫ってしゃべったっけ?

 

「あぁ・・・・なでるのを止めちゃメー!なのですよ~。」

 

そう言って猫?はなでていた手を取って頭?らしき所に導く。

 

如月「って、猫に手があるかー!あれ?マジで体が動かない!?」

 

「おはようございます、ですよ♪如月さん♪恋ちゃん♪」

 

「・・・・おはよう・・・・風」

 

如月「あぁ、おはよう、風。で、君はなぜ、こんなことをしているのかな?」

 

「ぐーーーー」

 

如月「寝るな!」

 

「おぉ!如月さんの体が温かくてつい。」

 

「うん。如月・・・・温かい。気持ち・・・・分かる。」

 

如月「あ、ああ・・・・ありがと。で?」

 

「凪ちゃんを始め、人和ちゃん、季衣ちゃん、流流ちゃん、月ちゃんに詠ちゃん、霞ちゃんあげくに恋ちゃんにまではしを伸ばしては、おいしく頂いているのに、なぜ風には手を出さないのですか?」

 

如月「え・・・・マジで?」

 

「如月・・・・風を泣かせちゃダメ。」

 

如月「別に泣いてないと思うが・・・・はぁ・・・・分かった。今日の夜・・・・な?」

 

「はい~。約束なのですよ~。」

 

俺との約束を取り付けた風は顔をニコニコとさせて帰って行った。

 

如月「これでいい?恋?」

 

「(コクッ)みんな如月のことが好き。」

 

如月「はは。ありがと。」

 

「それは・・・・みんなにも言ってあげて。」

 

如月「了解。でも、ありがと。それじゃあ、さっさと着替えて朝食を食べに行くか。」

 

「うん。」

 

恋と朝食を食べ終わったあと俺は、店でお菓子を焼いていた。すると

 

如月「あれ?お二人さん。どうしたの?珍しい。てか一刀は仕事だっただろ?」

 

一刀「いや、案内を頼まれてな。」

 

「ええ。水鏡の新作を買いに来たのだけれど、あまり置いてなかったみたいでね。」

 

如月「ふーん。そうなんだ。」

 

「ていうか、あなたはまた新しいお店を出して何してるのよ。」

 

一刀「しかもこれ大判焼きじゃないか。」

 

「大判焼き?」

 

如月「俺らの国のお菓子でな。小麦粉で作った生地をこの金型に流し入れて、餡子を入れて、対になっている方にも生地を入れて、焼けたら餡子が入ってない方をかぶせて、ちょっと火を通して・・・・はい、出来上がり。」

 

興味を持った華琳に説明しながら焼く。

 

一刀「しかも、餡子だけじゃなくてカスタードもあるじゃないか!」

 

「かすたあど?」

 

如月「カスタードクリームって言ってな。卵と砂糖と小麦粉を少々混ぜて牛乳でのばしたものだ。俺はカスタード派だな。ほい。餡子とカスタード二つづつ入れといたから食べな。おごりだ。」

 

一刀「いや、悪いよ。」

 

如月「別に気にすんな。だったら、味が気に入ったらちょくちょく買いに来てくれよ。それでチャラだ。」

 

一刀「ん、了解。じゃあ、行くわ。」

 

如月「おう!またあとでな!・・・・で、あれはみんなの仕業か?」

 

「ふふー。そうなのですよー。」

 

「あたりきしゃりきやん!」

 

「はい。でも華琳様にはばれているようですが・・・・」

 

如月「ふーん。まぁ、いいんじゃね。あの二人は周りがこれくらいやらないと進展しないだろ。」

 

「副ちょーもくるー?」

 

如月「そうだな・・・・行くか。面白そうだし。あっ、ゴメンみんな。あと任せちゃうけど平気?」

 

「はい。こちらこそせっかくの休みなのに時間を取らせてしまって。」

 

如月「気にすんなって。俺がやりたいって言ったんだから。「副ちょー早く来るのー」っと、じゃあすまんけど行くわ。」

 

「はい。いってらっしゃい。」

 

みんなと合流し、一刀達の後をつける。暴走する桂花を抑えたり、いつもの妄想で鼻血を噴いて倒れる稟を介抱したりと大変だったが、華琳の乙女な姿が見れたので良しとしよう。

デートも終盤にかかった所で、一件の本屋さんへ入っていった。俺らも続いて店内へ。華琳が本を取ろうとしても手が届かなかったので、一刀が後ろから本を取る。あ、顔真っ赤にしちゃって可愛いなぁ。華琳が別の所へ本を見に行き、一刀一人になった所で目に入ったのかある本を見始め

 

一刀「・・・・古代中国、恐るべし。」

 

如月「おそるべしじゃなーーーーい!」

 

一刀「げふぅっ!って、どうしたんだよ如月!お前、店番やってたんじゃないのかよ!」

 

如月「やってたもへったくれもあるか!華琳ほっぽりだして何読んでんだよ!オメーは!」

 

一刀「な、何って・・・・げ!」

 

さっき一刀がつぶやきながら見ていたであろう性的な本があたりに散らばっている。それを見た女性陣が一刀を非難し始める。

 

「みんな!華琳様がお戻りになられたぞ!」

 

「総員退却!たいきゃーく!」

 

凪の声が聞こえ、真桜の退却指示で退却する。退却後、華琳が戻ってきたが、惨状を目の当たりにし、怒って店を出ていってしまった。

 

一刀「華琳・・・・」

 

「・・・・最低やね。隊長。」

 

一刀「また出たし・・・・しかも今度は一同勢揃いだし。」

 

「・・・・まったく、こっちの労力も考えてよねー。」

 

みんなで一刀にダメ出しをする。

 

如月「なんか疲れたな。みんなでおいしいものでも食べに行くか?」

 

「賛成です。沙和、どこかおいしい店でも知らないか?」

 

「んー。そうだなぁ。じゃあ、この間行ったあのお菓子屋さんとかどう?」

 

「お、ええな。あ、でも副長は大丈夫かいな。」

 

如月「甘いものなら大好物だぜ。そこでいいぞ。桂花も稟もそこでいい?」

 

「あ、甘くないものもありますから甘いものが苦手でも楽しめるはずです。」

 

「なら、そこでかまいません。」

 

「私もかまわないわ。」

 

「じゃ、決まり!行こー!」

 

「じゃあね、隊長ー。」

 

一刀一人を残してその場を立ち去り、お菓子屋さんへ移動し、女子会に参加させてもらった。日も暮れてきたので解散になったため、夕食を食べに飲食街へ。

夕食を食べて部屋に戻ると

 

如月「ん?お風呂場まで来てください。風より?ふむ・・・・行くか。」

 

風呂場に行くと風の姿は無く

 

如月「あれ?いねぇし。まぁ、いっか。風呂に入ろう。」

 

脱衣所で服を脱いでかごに入れ、手ぬぐいを持って浴室の扉を開けると

 

「おまちしておりましたー。」

 

如月「・・・・・・(カラカラ)」

 

扉を閉めようとすると

 

「ふむ、叫び声でも上げてみますか・・・・すぅー」

 

如月「ちょっと待ってください!それだけは勘弁してください!てか、一緒に入ってもいいの?」

 

「何のために書置きを残したと思っているのですかー?一緒に入るためなのですよー。ほら、体を洗うので座ってください。」

 

如月「あ、ああ・・・・ありがと。」

 

椅子に座った俺の後ろへ回り、石鹸を泡立てているようだ。

 

「それじゃあ、洗いますねー。」

 

如月「よろしく。」

 

「よいしょ・・・・よいしょ・・・・」

 

如月「あのー・・・・風さん?」

 

「よいしょ・・・・何ですかー?・・・・よいしょ」

 

如月「なぜ体を密着させて洗っているのですか?」

 

「こうした方が良いと北郷さんがー。」

 

如月「犯人は一刀だったか・・・・」

 

「で、如月さん。気持ちいいですか?」

 

如月「すごく気持ちいいです。」

 

「それは良かったのですよー。それでは前の方も・・・・」

 

如月「前は自分でやるから!」

 

その言葉もむなしく、素早い動きで前へ回り込み抱きついて作業を再開させる風。

 

「むふふー。このままだと入っちゃいますねー。」

 

如月「いいの?」

 

「その言葉は野暮ってものなのですよー。たくさんつまんできたのですから、風もおいしく頂いて欲しいのですよー。約束もしましたよー。」

 

如月「風・・・・分かった。おいしく頂きます。」

 

「はいー。召し上がれ、なのですよー。」

 

 

 

 

 

如月「やべー、のぼせそう。風、大丈夫か?」

 

「何とかー・・・・」

 

如月「なら早く上がろう。ここで倒れたらシャレにならん。」

 

「はいー。そうしますかー。」

 

俺と風は浴室から出て体をふき脱衣所へ。服に着替えて脱衣所を出る。

 

「如月さん。如月さん。」

 

くいくいと風に服を引っ張られ

 

如月「ん?何?」

 

「ちゅ。これからもよろしくお願いします。なのですよ♪」

 

如月「ああ。こちらこそ!」

 

 

後日

 

一刀「なんじゃ、この請求書はー!」

 

と叫ぶ一刀の声が聞こえた。ああ、そういえば、この前のみんなで食べたお菓子の請求は全て一刀名義でつけたんだっけ。確か、食べた分とみんなへのおみや代の合計だから結構な額だったな。本日は一刀さんにゴチになりますっ!

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五十二話

「如月ー♪」

 

「如月さん♪」

 

「ちょっとー、人前でそんなにイチャイチャしないでよねっ!」

 

「そうだ!そうだー!」

 

如月「ああ、すまん。天和。地和。」

 

「姉さん達、好きな人とイチャイチャ出来ないからって如月さんにあたらないでよ。」

 

「そうやでー。戻ったら一刀とイチャイチャすればええやん。」

 

「あー、もうっ!帰ったら絶対に一刀とイチャイチャするんだからー!」

 

なぜこんな状況かと言うと、俺と霞で孫呉との国境付近を偵察に行った帰り道にシスターズと偶然出会ったため、護衛として一緒にいるわけだ。

 

 

 

如月「やっと陳留に着いたなぁ。」

 

「では、私は華琳様に報告しに行ってきますね。」

 

「じゃあ、私達は街をぶらぶらしてるからー。」

 

「あっ、待ってよちーちゃーん!」

 

如月「あいつらは……」

 

「如月さんはどうします?一緒に華琳様に報告しに行きますか?」

 

如月「うーん、そうだなぁ…街の様子を見てから向うから華琳にそう言っておいてほしいな。霞は?」

 

「ウチも街の様子を見てから行くわ。」

 

「分かりました。そう伝えておきます。では。」

 

「ふふーん。如月と逢い引きや。ほな、はよ行こ!」

 

如月「はいはい。」

 

天和と地和を見失わないようにしながら、霞と一緒に街中を見て回っていると

 

一刀「おーい、天和、地和ー!」

 

「ばか!なに大きな声出してるのよ!周りに気付かれちゃうでしょ!」

 

一刀「ごめんごめん。けど、こっちに帰ってきてたんだ?」

 

「うん。さっき帰ってきたばっかりなんだよ。」

 

一刀「そうなんだ。人和はいないけど、報告?」

 

如月「ああ、人和は華琳に報告に行ったぞ。」

 

一刀「おっ!おかえり。如月。霞。」

 

如月「ああ。ただいま。一刀。季衣。」

 

「きー兄ちゃん。霞ちゃん。おかえりー。兄ちゃん、お腹減ったよー。みんなで何か食べに行こうよー。」

 

如月「その肉はダメなのか?」

 

「ダメだよー。流流と秋蘭様が帰ってきたら、これで料理大会するんだ!」

 

「はぁ?今すぐ焼いたらアカンの?」

 

一刀「時間置いたらおいしくなるんだってさ。で、二人が帰ってきた頃にはちょうど良くなってるとか何とか……」

 

如月「なあ、それ、俺らも呼んでほしいんだが。」

 

「いいよ!流流の料理はおいしいから、みんなで食べよ!」

 

如月「確かに流流の料理はおいしいよなぁ……二人はいつ帰って来るの?」

 

一刀「劉備さんとの国境の偵察に行ってるから…季衣、二人とも、どこに行ったんだっけ?」

 

「ええっと、確か定軍山……かな。」

 

一刀「らしいよ。」

 

「定軍山って、益州やないか……。あの辺ぐるっと回ってくるとなると……うぅ、結構遠いなぁ……」

 

如月「定軍山ねぇ……なんか、引っかかるなぁ……」

 

一刀「如月も?そうなんだよ、なんか引っかかるんだよな。ああそれと、黄忠や厳顔、魏延の主要な将が劉備さんに降ったらしいよ。」

 

如月「へぇ……そうなんだ。ん?黄忠?」

 

定軍山……黄忠……あれ?もしかして……

 

如月「なぁ、一刀……定軍山に行ったのは流流と秋蘭だよな?」

 

一刀「あ、あぁ。それがどうかしたか?」

 

如月「ヤバい!まずいぞ一刀!」

 

一刀「だから、どうしたんだよ。」

 

如月「秋蘭の名前は?」

 

一刀「え?秋蘭は秋蘭だろ?」

 

如月「違う!性と名と字!」

 

一刀「えっと、性は夏候、名は淵、字は妙才……まさか!」

 

如月「たぶんそのまさかだ。一刀、定軍山は確かもっと後だったろ?」

 

一刀「ああ!赤壁の後だ!それに流流もか?」

 

如月「たぶんな……二人はいつ出て行った?」

 

一刀「二日前だ。」

 

如月「くそっ!一刻も早く華琳に知らせるぞ!」

 

「どうしたの?兄ちゃん達。さっきからそんなに大声を上げて。」

 

如月「季衣、霞。事態は一刻を争う。二人とも急いで城に戻ってきてくれ!一刀を連れて先に戻ってるから!一刀掴まれ!」

 

一刀「お、おう!」

 

返事をした一刀の手を握り

 

如月「二人とも、急いで城に戻ってこいよ!トベルーラ!」

 

下で二人が大声を上げているがそれに答えてる暇はない!

 

 

 

 

如月「華琳!」

 

城を文字通り飛び回って、いつもの広間の扉を蹴破って中へ。ちょうど、華琳、春蘭、桂花、風、稟がいた。集める手間が省けた

 

「どうしたの?いきなり。そんなに急いで報告にでも来たの?」

 

如月「すぐに定軍山へ兵を出してくれ!」

 

「……何をいきなり。」

 

「そうよ!何言ってるのよ!」

 

「ハァ……ハァ……きー兄ちゃん、早すぎだよ……ハァ……ハァ……」

 

「い……いきなり……どうしたっちゅーねん……」

 

一刀「定軍山は罠だ。このままじゃ秋蘭と流流が死んじまう!」

 

「どういうこと?」

 

「どういう事だ、北郷。」

 

「どういうこと……兄ちゃん!」

 

一刀「俺達の歴史じゃ、もっと後の事件だから思いもよらなかったけど、俺達の歴史の定軍山は……」

 

如月「劉備の部下になった黄忠が、夏侯淵を討つ話だ。」

 

「なら流流は?」

 

如月「典韋は官渡の戦いの何年か前に、ある者の裏切りにあった曹操を守ろうとして討死した。という話だ。」

 

どうやら、俺と一刀がこの世界に来たことで、俺らの知っている歴史とは流れが変わったらしい

 

「秋蘭と流流が……まさか。ありえないわ。」

 

如月「俺らだって笑い話ですんでほしいさ。だが、二人が死んだら……」

 

「皆、話は聞いたわね。事態は一刻を争うわ。準備が出来た者から出撃しなさい。如月、あなたは先行して出来る限り早く秋蘭と流流を見つけだし、合流しなさい。」

 

『了解!』

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五十三話

秋蘭と流流を助けに出撃したのは、俺、春蘭、季衣、霞、華琳、風、稟の七人。桂花と一刀は陳留でお留守番だ。一刀も行きたがっていたけど陳留を開けっ放しにするわけにはいかないのでお留守番となった。

 

如月「秋蘭、流流。無事でいろよ!」

 

昼夜を問わず飛ばしに飛ばした。

 

如月「みんなはどこだ?……見つけたっ!あそこだっ!」

 

 

 

 

side秋蘭

 

劉備の兵が国境付近をうろついているという報告があったため、自分と流流の二人は部隊を率いて定軍山に偵察に行くことになった。その道中

 

「そうだ、流流。」

 

「はい?なんですか秋蘭様?」

 

「如月とはうまくいっているのか?」

 

「はうっ!きー兄様……とですか?うまくいってると思います。」

 

「そうか。良かったな。」

 

「はいっ!」

 

流流と天の国で言う、があるずとーくと言うものをしつつ定軍山へ向かう。

 

 

「……ここが定軍山か。」

 

数日後、定軍山に到着した。念のため近くの村人たちに話を聞きに行かせた所、見慣れない騎馬が数騎うろついていたくらいで、特に変わった様子もなかったようだ。

 

「連中もいつもの偵察だったのだろうな。」

 

「そうだと思います。無駄足でした……かね?」

 

「来てすぐにその情報ではな。……まぁ、数日は留まって、情報を集めてみよう。」

 

「正直、もっと時間がかかると思ってましたけど……お肉、もう少し待った方がおいしくなるかなぁ。」

 

「そうか、その件もあったな。」

 

「はい。きー兄様や霞さんも呼んでみんなで楽しみましょう。」

 

「だが、あれで足りるのか?」

 

「季衣が買い足すって言ってましたから。それに足りなくてもきー兄様がどこからか持ってきそうですしね。」

 

「はっはっは。確かにあやつならやりかねんな。なら、この任務を無事に……」

 

ヒュン! ヒュン! ヒュン!

 

『ぐわっ!』

 

『ぎゃああっ!』

 

「秋蘭様!」

 

「敵襲だ!皆、敵の攻撃に備えよっ!……これは、楽な偵察とはいかなくなったな。」

 

 

あれから一晩経過したが状況は悪くなる一方だった。

 

「何人……残ってる?」

 

「ほぼ半分かと……」

 

「いたぞっ!夏侯淵だ!」

 

「ちっ!もはや森の中を逃げ回っても埒があかんな。」

 

「なら、出ますか?」

 

「仕方あるまい!」

 

森から平原へ出た瞬間、無数の矢が雨のように降り注いできて

 

『ぐわっ!』

 

『ぎゃああっ!』

 

「っ!総員……」

 

「止まるな!駆け抜けろ!」

 

流流が止めようとしたのを遮って駆け抜けるよう指示を出すが

 

「させないよ!てりゃああああああっ!」

 

「きゃっ!」

 

「流流!ちっ!」

 

馬岱に牽制のための矢を放つが

 

「外した?いや、撃ち落とされたか!」

 

「さすが夏侯淵ね。」

 

「そうか貴様が……黄漢升」

 

「悪いけど時間稼ぎはさせないわ!」

 

「くっ!」

 

「秋蘭様っ!」

 

「流流!目の前の敵に集中しろ!」

 

「それは貴方も同じでしょう!翠ちゃん!」

 

「夏侯淵!その首もらったああああ!」

 

「しまっ!」

 

如月「空から美青年参上!」

 

ガキンッ!

 

「なっ!」

 

「な、なぜお前がここにいるんだ……如月。」

 

sideout秋蘭

 

 

「な、なぜお前がここにいるんだ……如月。」

 

如月「そりゃ、大切な仲間が危機にさらされているんだから助けに来るのは当たり前だろ?イオラ。」

 

「なっ!爆発したですって!」

 

「す、すごいっ!」

 

「なっ!ふざけるなっ!」

 

如月「おっと!」

 

馬超の薙ぎ払いを受け止め、鍔迫り合いの形に

 

「母さんの仇を討てるはずだったのに、邪魔しやがって!」

 

如月「それは悪かったが、そうかカッカするなよ。可愛い顔が台無しだぞ。」

 

「ななっ、なっ、何変なこと言ってんだよっ!」

 

「交戦中にナンパとは。さすが如月だ。」

 

「きー・に・い・さ・ま?」

 

「あらあら。」

 

「戦場で口説き落とそうとする人初めて見た。」

 

如月「えっ、いや、そんなつもりじゃなかったんだが…」

 

「秋らーん!」

 

「流流ー!」

 

如月「おっ、ほら、増援が来たぞ!」

 

「あらま。大変!翠ちゃん!たんぽぽちゃん!撤退するわよ!」

 

「あ、ああ。」

 

「うんっ!」

 

 

 

 

「無事か?秋蘭。」

 

「流流も大丈夫?」

 

「二人とも無事か?」

 

「姉者に季衣、霞まで。」

 

「私もいるわよ。」

 

「「華琳様っ!?」」

 

「華琳。ウチらで追撃に入るけど、ええか?」

 

「ええ。私たちも負傷兵を纏めて、すぐに追いかけるわ。」

 

「あの…華琳様。この事態は…一体?」

 

「如月と一刀が、貴方達の危機だって教えてくれたのよ。ちゃんと礼を言っておきなさい。」

 

「そうだったのか。ありがとう如月。」

 

「ありがとうございます。きー兄様。さっきの件は無かったことにしますね。」

 

如月「いいや、気にするな秋蘭。流流さん。寛大なご配慮を賜り感謝しております。」

 

「何があったのよ…」

 

如月「内緒で…」

 

そんなやり取りをしつつ、追撃部隊と合流。稟の報告で馬超達は近くの城にこもっているらしい。籠城するかなと思ったが、城の門が開けっ放しになっていた。

 

「様子を見てくる必要がありそうね。風、付いてらっしゃい。護衛は……季衣と流流、如月も付いてきなさい。」

 

『はいっ!』

 

『はーい』

 

城に近づいて様子を見る

 

「間違いなく、星ちゃんの策ですね。」

 

「あなたの友人は、本当に肝が据わっているわね。」

 

如月「で、攻めるの?」

 

「いいえ、攻めないわ。けど、少し用があるのよね…呼べば誰か出てくるかしら?」

 

如月「さすがに出てこないだろー。」

 

「おーい!誰かいるかー!」

 

「ここにいるぞー!」

 

如月「出てきたし…」

 

「馬岱だったかしら?馬超に取り次いでもらえる?」

 

「…姉様、あなたに会いたくないって。」

 

「なら、彼女に伝えておいて。馬騰は城の侍女に命じて西涼の流儀で葬らせてもらったと。馬騰と雌雄を決せられなくて、残念がっていたと。」

 

「それ、ホント?」

 

「こんな嘘をついても仕方ないでしょう?墓の場所を教えておくわ。すぐにわかると思うけど。」

 

「分かった。姉様に伝えておく。」

 

「ならば用は済んだわ。帰るわよ。」

 

「あれ?そっちのお兄さん。姉様、口説いていかないの?」

 

如月「いや!何言ってるの!」

 

「だって『可愛い顔が台無しだぞ』って言って口説き落とそうとしてたじゃん。」

 

「何をやっているのよ。あなたは…」

 

「きー・に・い・ちゃ・ん?」

 

「如月さん?」

 

如月「あ、いや…つい、思ってたことを口にしちゃって…」

 

「姉様って奥手だけど、お兄さんカッコいいから、大丈夫だよ!あっ、その時はたんぽぽも一緒にねっ!」

 

如月「ちょっ!馬岱ちゃん。何言ってるの!?(ガシッ)あの…季衣さん?流流さん?何で両手掴んでるの?あっ、ちょっと引きずらないで!風!助けて!えっ?おはなしがある?霞も一緒?いや!違うから!いや、違わないけど、違うから!」

 

「あれ…たんぽぽ…余計なこと言った?」

 

「いいえ。問題ないわ。それじゃ、帰るわ。」

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五十四話

side翠

 

私達は朱里(諸葛亮)の作戦で益州にある定軍山まで来ていた。国境ギリギリの所で間者を放ち、それを偵察に来た将を討ち取るという作戦だ。先の涼州での戦で死んだ母さんの弔い合戦だ!

数日後、やってきたのはなんと、夏侯淵と典韋だった。ずいぶんと大物が出てきたが、あいつを討ち取れば曹操にとって大きな痛手になるし、南蛮討伐の邪魔もしてこなくなるだろう。

そして、奴等が陣を建てようとした所を急襲し、そのまま追い立てていたが森の中に隠れられてしまい日が落ちたため、夜の森は危険だと言う紫苑(黄忠)の言葉を聞き歩兵部隊に任せることにした。

夜が明けて、森から夏侯淵達が出てきて、駆け抜けて脱出しようとした所を無数の矢の雨で足止めし、典韋にはたんぽぽが、夏侯淵には紫苑が相手をし、私は隙が出来るのを窺っていた。

すると、紫苑に押され始めた夏侯淵。それに気付いた典韋が心配そうな声をあげ、その声に反応した夏侯淵は

 

「流流!目の前の敵に集中しろ!」

 

紫苑に向いていた意識がそれた!

 

「それはあなたも同じでしょう!翠ちゃん!」

 

今が好機だ!

 

「夏侯淵!その首もらったああああ!」

 

「しまっ!」

 

よし!夏侯淵を討ち取れた。母さんの敵討ちは成功だ。と思っていたら

 

如月「空から美青年参上!」

 

その声と共に空からやってきたヤツに槍を受け止められ、夏侯淵を討つことが出来なかった。もう少しで討てる所だったのに!

 

「なっ!ふざけるなっ!」

 

槍で薙ぎ払い、倒そうとしたが受け止められ、鍔迫り合いの形に

 

「母さんの仇を討てるはずだったのに、邪魔しやがって!」

 

そうしたら目の前の男は

 

如月「それは悪かったが、そうカッカするなよ。可愛い顔が台無しだぞ。」

 

かわいい?……はぁ!?私が可愛いだって!?何言ってるんだよこの男は!てか、ここ戦場だろ!?それなのに口説くなんて

 

「ななっ、なっ、何変なこと言ってんだよっ!」

 

いきなり、変なことを言われて、混乱してしまった。その隙に援軍が来てしまったため、撤退することになった。撤退中に星と合流した私たちは近くに打ち捨てられていた城へ逃げ込んだ。

籠城でもする気かと思ったら奴等を撤退させる策があるらしい。門を開けっ放しにして無防備をさらして、攻めて来いと挑発するんだって。さすがに攻めてくるだろうと思ったが曹操の矜持がそれを許さないらしく、本当に城の手前で進軍を止めた。そして数人が城の前までやってきた。

 

「ねぇ。あれって曹操じゃない?」

 

「ん?確かにそうだな。」

 

「何か用かな?」

 

「そうね。何の用か尋ねる必要があるわね。誰か行く?」

 

「私は行かないからな!」

 

「じゃあ、たんぽぽが行ってくるよ!」

 

「気をつけてね。たんぽぽちゃん。」

 

「うん。いってきまーす!」

 

しばらくすると曹操とたんぽぽが話している声が聞こえ、少し気になったので城壁から覗くようにチラっと見るとさっき口説いてきた男の姿を見つけ、先ほど言われたことを思い出してしまい顔が赤くなってしまった。

 

「おや?龍谷殿ではないか。」

 

「あら、星ちゃん。知ってるの?」

 

「うむ。袁紹から逃げる時に顔見せ程度だがな。で、翠よ。こちらの話に聞き耳を立ててどうした?」

 

「き、聞き耳なんか立ててないよ!」

 

「星ちゃん、星ちゃん。翠ちゃんったらさっき、あの男の子に口説かれたのよ。だから、気になってるのよ。」

 

「ちょっ、紫苑!」

 

「ふむ。だからさっきからチラチラと外の様子を見ていたのだな。」

 

「だから!違うって!」

 

うぅ…すごく顔が真っ赤になってる気がする

 

「そんなに顔を真っ赤にしても説得力はないぞ。」

 

「だーかーらー!」

 

「たっだいまー……どうしたの?」

 

「いやなに。翠の奴が龍谷殿のことが気になって気になってしかたがないと言うのでな。」

 

「やっぱりそうだったんだね!あのお兄さんカッコよかったもんねー。」

 

「だから!そんなんじゃないって!もう……で、曹操はなんだって?」

 

「んとね。おばさまと雌雄を決せられなくて残念だって。あと、西涼の流儀で葬らせてくれて、お墓の場所まで教えてくれたよ。」

 

「そうだったんだ……なぁ、紫苑……」

 

「ええ。たんぽぽちゃんと一緒に行きなさい。桃香様には私から言っておいてあげましょう。」

 

「うん……ありがとう。」

 

sideout翠

 




更新が遅れてしまいすみません。

書かないといかんなぁと思いつつもゲームやリアルの方でも少し忙しくて読み専になってました。

またなんとか、書いていきますので今後ともよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五十五話

一刀「秋蘭!流流!良かった……無事だったんだな。」

 

「兄様!はい。兄様ときー兄様のおかげで助かりました。」

 

「北郷。今回は本当に助かった。そうだ二人でお礼をしたいんだが何が良い?断るのはなしだぞ。」

 

一刀「そんなの別にいいのに。でも、断るなっていわれるとそうだな……二人が作った焼売が食べたいな。それで。」

 

「ああ、分かった。」

 

「はいはい。それくらいにして頂戴。で、桂花。私の留守中に何か異変は?」

 

「劉備達が南蛮を平定したそうです。」

 

一刀「結局、南蛮王とかいうのを七回逃がして八回目に従わせたそうだ。無理矢理屈服はさせなかったんだって。」

 

如月「七縦七擒……か」

 

「武力以外の力で従わせる……か。なかなか味な真似をする娘ね…」

 

「それより流流!無事に帰ってきたんだから、ちゃんと約束守ってよね!」

 

「約束?ああ……あれかぁ……でもあれ、まだダメだから。」

 

「えーーーーっ!何で!遠征から帰ってきたら、食べごろって言ってたじゃん!」

 

「それは予定通りに進めばの話だろう。色々あったが予定の半分ほどの期間で済んでしまったからな。」

 

「じゃあ、まだ待つの?」

 

「そうだよ……ちゃんと料理長に預けてあるんだよね?」

 

「…………え?」

 

「えって……まさか!」

 

「ボクの部屋に置きっぱなし……」

 

一刀「ちょっ!それ、腐ってないか!?」

 

如月「あーあ…」

 

「きー兄ちゃんが悪いんだからね!流流と秋蘭様が危ないとか言うから、預ける暇なんかあるわけないだろー!」

 

如月「悪かった、悪かったって……とりあえず、部屋に見に行こうか。」

 

「そうですね。何かあるようなら、早めに手を打たないと…」

 

俺と流流と季衣は季衣の部屋へ移動し

 

如月「よし……開けるぞ?」

 

「うん……」

 

「はい。」

 

扉を開けると肉が腐った臭いが部屋中に充満していた

 

「うぅ……やっぱり……」

 

「とりあえず窓を開けて換気しなくちゃ。」

 

やはり肉は腐っていて、流流が臭いを逃がすために窓を開けていた

 

如月「さすがにこれは食べられないな。もったいないけど捨ててしまおう。季衣。肉屋さんに肉を注文しに行くぞ。」

 

「…うん。」

 

「あっ、私も行きます。」

 

如月「ん。それじゃ二人とも行くか。」

 

その後、お肉屋さんでお肉を注文。量が量だけに日にちが掛かるとのことでどのくらい掛かりそうか聞くと二週間後には準備出来るらしいのでそれで注文。昼飯を三人で食べた後、華琳に報告。二週間後に慰労会をすることになった。

お金?全部俺が出したよ。肉代だけだけど。

 

二週間後、肉が城に届いたため厨房へ

 

如月「自分で頼んどいてなんだけど…スゲー量だなぁ…」

 

一刀「どんだけ買ったんだよ…」

 

「きー兄様。早く下ごしらえしちゃいましょうよ。」

 

如月「そうだな。一刀の方も準備頼むな。」

 

一刀「おう!まかせとけ!」

 

一刀は会場の準備へ行き、俺らは厨房のみんなと一緒に牛、豚、鶏、野菜を切っていく。ご飯もたくさん用意した。

 

「きー兄様。これで全部ですか?」

 

如月「そうだな…よし!んじゃみんな、運ぶぞ!」

 

『おー!』

 

食材を手分けして会場へ運ぶ。ちなみに会場はいつもの広間だ。

 

如月「ふぅ…ようやく運び終えたか。」

 

「副長!」

 

如月「ん?どったの?」

 

「街の酒屋さんからお酒が届いてますがどこへ運べば…」

 

如月「あ、ごめん。ここに運んでくれると助かる。」

 

「ここですね。分かりました。」

 

あれも届いたか。あれのお披露目会にもいいな。

酒瓶も広間に届き、開始時間が近づいてくるとみんなが集まってきた。いつも給仕をしている月と詠もこの日ばかりはお休みにしてある。

 

「さて、みんなそろったようね。今回の宴は無礼講よ。たくさん食べて、飲み明かすといいわ。今回は天の国の料理で焼肉とすき焼きというものらしいわ。如月、説明を。」

 

如月「はいよ。焼肉は熱した網や鉄板で肉や野菜を焼いて、タレにつけて食べる料理な。すき焼きは食材を浅い鉄鍋で焼いたり煮たりして調理する料理で溶いた卵につけて食べるんだ。あ、生卵がダメな奴は無理してつけなくてもいいから。焼肉は立食になっちゃうけど、その方が自由に動き回れるからな。あと、先日完成したお酒が届いたからそれのお披露目会にもなるんで。そのお酒で乾杯しよっか。」

 

みんなの杯に注いでいく

 

「では、みんな。乾杯!」

 

『乾杯!』

 

「この酒、メッチャウマイやん!」

 

「へぇ…」

 

「なかなか…」

 

一刀「へぇ、結構飲みやすいな。」

 

如月「だろ?これ作るのに結構かかったんだぜ。あと酒の銘は“月詠”だ。」

 

一刀「いい銘だな。」

 

如月「ありがと。頑張って考えたかいがあったぜ。ちょっと、あっちの方も見てくるわ。」

 

一刀「いってらー。」

 

 

 

「おう!如月!見回りか?」

 

「きー兄ちゃん!これ、おいしいね!」

 

「モグモグ」

 

如月「おいしいだろ?どんどん食え!」

 

「うん!」

 

「……(コクッ)」

 

うん、二人とも良い食いっぷりだ

 

如月「俺も食っていくか。タンにハツにハラミにミノ♪」

 

いやーうまいね♪塩ダレも上手に出来て良かったな

 

しばらく焼肉コーナーで食べていたが

 

如月「あっちも食べたいからあっちに戻るわ。」

 

「じゃーねー♪」

 

 

 

一刀「き……如月……この肉……食っていいのか?」

 

如月「おう。まぁ量は少ないからたくさんは無いが食べてくれ。」

 

一刀「まさか、こんないい肉がこっちで食えるとは…」

 

一刀が感動で震えている理由は

 

如月「ああ。この肉を作るのは苦労したよ。いい霜降りだろ?」

 

一刀「ああ!」

 

そう。A5ランクの霜降り肉とまではいかなかったが、いいサシの入った肉が出来たので出したのだ。さすがに量は少ないが…

 

「このお肉……こんなに脂だらけなのにおいしいのね。」

 

「ほわー、初めて食べました…」

 

「溶けてなくなるようだな。」

 

華琳、秋蘭、流流にも好評のようだ。育てたかいがあるぜ。

 

その後も宴は続き、深夜になるころには自分の部屋に戻る者、酔いつぶれてその場で眠っている者と様々だった。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五十六話

「でえぇぇぇぇぇぇいっ!」

 

ガキンッ!

 

如月「くっ……おらよっとっ!」

 

春蘭の攻撃を受け止めて、前蹴りをくらわせる

 

「ぐはっ!」

 

春蘭が倒れ、首元に剣先を突き付け

 

如月「勝負あり……だな。」

 

「くっそー!」

 

剣を鞘に納めると

 

「きー兄ちゃん!次はボクと!」

 

「いや、次はウチや!」

 

「如月さん。私とも手合せお願いします。」

 

如月「わかった。わかったから。ちゃんとやるからちょっと休ませてくれ。」

 

木の下に行き座り込み、背を木に預けてみんなの様子を見る。何でみんなと手合せしているかと言うと、数日前……

 

 

「やっほー♪ふくちょー♪」

 

「如月さん~。ちょっと見て欲しいものがあるのですが~…」

 

如月「ん?風と沙和?これ、みればいいの?なになに?華琳様とたいちょーの逢い引き計画書?なに、これ?」

 

「華琳様とーたいちょーの逢い引き計画書だよー。ふくちょーにも協力してほしいのー。」

 

如月「ふむふむ。当日はデートコースになるであろうコースの住民や警邏隊の協力を仰いで二人の邪魔をしないようにする……と。ん?協力者一覧……本人達と春蘭と桂花以外の全員かよ。良く集めたなー。」

 

「ふっふっふー。風と沙和ちゃんの手にかかれば朝飯前なのですよー。で、如月さんはどうします?」

 

如月「手伝うよ。俺は何をすればいいんだ?」

 

「それはこれからみんなで決めるのー。」

 

如月「今から作戦会議か。りょーかい。」

 

場所が変わって

 

「みなさん。忙しい中集まっていただきありがとーなのです。」

 

今回の作戦に集まったメンバーは俺、風、稟、凪、真桜、沙和、秋蘭、季衣、流流、霞、月、詠、恋、ねねの十四名

 

「風。早く始めるのですぞー!」

 

俺の膝上に座りながら机をバンバンと叩いているねね。行儀が悪いのでやめなさい。…ん?なんか視線を感じるんだが?

 

「会議を始める前に業務連絡があります。たった今、明日から三日間、如月さんは休暇になりました。」

 

如月「はい?」

 

「凪、人和はどないするんや?」

 

「人和は今日の夕方頃にはこちらへ着くとの連絡を受けてますので。なので今夜は私、人和、霞さま。明日は月と詠。三日目は季衣と流流。四日目は風さまと恋の順番でよろしいですか?」

 

コクンと頷く八人

 

「ではその通りの順番で。如月さんもそれでよろしいですか?」

 

如月「あ、はい…」

 

「凪ちゃん。再開してもいい?」

 

「ああ。すまない。」

 

「じゃあ、説明を再開するの。まずー、手元の資料を見て欲しいのー。決行日はこの日なの。この日に華琳様とたいちょーを逢い引きさせるために三手に別れて作戦を実行するのー。まず、春蘭様を止める組には、ふくちょー、秋蘭様、凪ちゃん、季衣ちゃん、流流ちゃん、霞お姉さまの六人。桂花ちゃんを止める組には風ちゃん、稟ちゃん、月ちゃん、詠ちゃん、恋ちゃん、ねねちゃんの六人。警邏隊は私と真桜ちゃんの二人で回すの。」

 

「春蘭ちゃんは如月さんが『手合せでもしないか?』って感じで誘い出して街に出さないようにしてほしいのですー。桂花ちゃんはこちらで留めておくのでー。無理にでも出て行こうとしたら、恋ちゃんに捕まえてもらうのですー。」

 

如月「なるほど。確かに桂花だと恋からは逃れられないな。春蘭は…なぁ秋蘭…」

 

「何だ?」

 

如月「最悪、気絶させてもいいか?」

 

「華琳様のためだからな。了承しよう。」

 

如月「なら、春蘭と桂花の方はOKだから…警邏隊の方は?」

 

「最悪、軍の方から応援を呼ぶことになってるのー。でも、警邏隊のみんなだけで大丈夫だと思うのー。」

 

如月「なるほど。これで警邏隊の方もOKっと。」

 

「ふむー。確認も出来たのでこれでお開きにするとしましょー。では、みなさん。色々準備して、当日は頑張りましょー。」

 

『おーっ!』

 

 

 

というのが数日前の出来事で、今頃華琳と一刀の二人はデート中だ

 

「ふむ。みんなとこれだけやるのは久しぶりだな。華琳様にも私が頑張っている姿を見て欲しかったなぁ……いや、見てもらうために探しに行くか?」

 

如月「やめとけ春蘭。華琳だって一人で過ごしたい日もあるさ。それを邪魔しちゃダメだ。」

 

「ふむ。確かにそうだな。なら、凪!やるぞ!」

 

「はっ!胸を借りるつもりでいきます!」

 

「おう!どんと来い!」

 

今度は凪と手合せし始めた。元気だなー

 

「如月。助かった。」

 

如月「いやいや。誰でも一人になりたい時くらいあるさ。まぁ……二人はデート中だけどな。」

 

「でぇと?」

 

如月「逢い引きって意味。」

 

ふむ、なるほどとつぶやいている秋蘭。そんなことを話していると

 

如月「ん?終わったみたいだな。じゃあ季衣。やろっか?」

 

「うん!」

 

それから、季衣の後に流流、秋蘭、凪、霞の順番で行い、日が暮れ始めてきた時に

 

「いくらなんでも華琳様、遅くないか?」

 

「いや。というか姉者。華琳様とて子供ではないのだから、気にしすぎだ。」

 

「そうですよー。春蘭様ー。」

 

「いいや!遅いったら遅い!探しに行ってくる!」

 

如月「はぁ……春蘭。ちょっと待てって。」

 

「いいや。待たん!」

 

如月「とりあえず、こっち向け。」

 

「だからなんだと言うんだ。きさら……」

 

如月「ラリホーマ」

 

「……ぎ……スー…スー…」

 

「春蘭様!?」

 

「おい!姉者!って寝てる?一体どうしたんだ?」

 

如月「まぁ、眠らせる呪文ってのがあってな、それを使ったんだよ。元気なうちは効きにくいんだが、疲れてたからな。効き目はバッチリだ。」

 

「ほぅ……そんなものまであるんだな。」

 

如月「まぁな。てか、いくら華琳が好きだからって人の恋路を邪魔しちゃダメだろうが……」

 

「そういう所が姉者の可愛い所でもあるんだが。」

 

如月「気持ちも分からんではないが…そうだ、桂花の方も恋がいるから大丈夫だと思うが…凪。一応見に行ってやってくれ。」

 

「はい。もしもの時は…」

 

如月「実力行使も可…だ。」

 

「はい。ではいってきます。」

 

如月「たのむなー。で、こんな所で寝かせたまんまじゃ風邪ひくから、部屋まで運ぶか。よいしょ……っと。」

 

春蘭を背中におぶる

 

如月「よし、行くか。秋蘭もついてきてくれ。」

 

「ああ。」

 

如月「みんなお疲れ。今日はこれで解散だ。」

 

「はーい。」

 

「お疲れ様でした。秋蘭様。きー兄様。」

 

春蘭を部屋まで運びベッドに寝かしつけて自分の部屋に戻ろうとした所、デートから帰ってきた二人に遭遇

 

如月「よっ!お二人さん。楽しかったか?」

 

「ええ。」

 

一刀「ま、まあな…」

 

二人の様子が少しぎこちないな。華琳の動きも少し変だ。もしかして……華琳に近づきそっと耳打ち

 

如月「良かったな華琳。無事に結ばれて。」

 

「ッッ////」

 

真っ赤にしちゃって可愛い反応するなぁ~♪まぁ、ともかく

 

如月「一刀。もっと頑張らなくちゃな!」

 

っと一刀の肩をバンッと叩く

 

一刀「いって!急に何するんだよ!」

 

如月「べっつにー(ニヤニヤ)」

 

そう言い残して俺は部屋へと戻った。ちなみに、夜中に目を覚ました春蘭がうるさすぎたのでラリホーマを重ねがけして強制的に寝てもらった。ちゃんと次の日の朝にザメハを唱えてちゃんと起こしましたよ。

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五十七話

如月「今日は農場に行ってイチゴの様子と酒屋さんに行ってワインの作り方を教えて、あとは……」

 

今日の予定を考えながら歩いていると

 

ドンッ!

 

「きゃっ!」

 

如月「あ……すみません。考え事をしていたものですから……大丈夫ですか?」

 

考え事をしていたらぶつかってしまい、相手は尻餅をついてしまった。ぶつかった相手は褐色肌にピンク色の髪のロングヘアーの女性だった。俺と同い年くらいか?って、そんなことより!

すぐさま手を差し伸べて女性を立たせる。

 

「え……ええ。大丈夫。こちらこそすみません。初めてきた場所なので周りを見渡すのに夢中になってしまって気付かなかったので……」

 

如月「陳留は初めてですか?なら、ぶつかってしまったお詫びとしてはなんですが、案内しましょうか?」

 

「ええっ!そんなの悪いわよ。」

 

如月「いえいえ、お気になさらず。これでもこの街の警邏隊に勤めているので色々と案内出来ると思いますよ。」

 

「じゃあ、お言葉に甘えて…」

 

如月「はい。甘えちゃってください。」

 

と言うことで、世間話をしつつ女性を案内している

 

如月「へぇ…こっちの方は初めて来たんだ。」

 

「ええ……。揚州を出たことも、数えるほどしか。」

 

如月「この後はどこかに行くの?それとも揚州に戻るの?」

 

「いいえ。都に寄ってから、陸路で益州に向かうの。」

 

如月「都に寄ってから陸路で益州ってことは、漢中を通っていくんだよね?」

 

「こちらの地理はそこまで明るくないのだけれど…たぶん。それが何か?」

 

如月「いやー…今さ、漢中方面は曹操と劉備が争ってるから物騒なことになりそうなんだよね。だから、遠回りになるけど、都を出た後は南下して荊州から回って益州に行く方が安全かも。」

 

「そうなの?……っていうか詳しいわね。」

 

如月「仕事柄、商人さん達とも結構話すからねぇ。」

 

「へぇ、そうなんだ……っと、知り合いの姿が見えたからここまででいいわよ。」

 

如月「ああ。なら、案内はここまでで。」

 

「ええ。ありがとう。それじゃ、またどこかで。」

 

如月「ああ。良い旅を。」

 

彼女はぺこりと一礼すると、知り合いの女性のもとへ駆けて行った

 

 

 

蓮華side

 

私は祭を探しに宿から出て街並みを眺めながら歩いている。建業もかなり栄えている方だと思うけど、陳留はそれ以上って感じがする。そんなこと考え、周りを見渡しながら歩いていたら、

 

ドンッ!

 

「きゃっ!」

 

不注意でぶつかってしまい、私は尻餅をついてしまった。

 

如月「あ……すみません。考え事をしていたものですから……大丈夫ですか?」

 

ぶつかった人が手を差し伸べてくれたので、手を握り立たせてもらう。よく見ると私と同い年くらいだろうか。黒髪で優しそうな顔をしている。

 

「え……ええ。大丈夫。こちらこそすみません。初めてきた場所なので周りを見渡すのに夢中になってしまって気付かなかったので……」

 

如月「陳留は初めてですか?なら、ぶつかってしまったお詫びとしてはなんですが、案内しましょうか?」

 

と彼がそんなことを言う。ぶつかったのは私の方のも責任があるのにお詫びにって、そんなこちらも悪いのにと思ったので

 

「ええっ!そんなの悪いわよ。」

 

と、申し出を断ることに。でも、

 

如月「いえいえ、お気になさらず。これでもこの街の警邏隊に勤めているので色々と案内出来ると思いますよ。」

 

と言われ、またさっきみたいにぶつかってしまう恐れがあったので

 

「じゃあ、お言葉に甘えて…」

 

如月「はい。甘えちゃってください。」

 

彼の言葉に甘えることにした

 

その後は世間話をしつつ街を案内してもらっていたが、祭の姿を見つけたため彼にお礼を言い別れた。祭に近づき、

 

「祭。」

 

「おや、蓮華さま。このような所でどうなさいました?」

 

「どうもこうもないわよ、祭。貴女を探していたのよ。買い物に出ると言って、いつまでたっても帰ってこないんだから。」

 

「ははは。ですが、陳留の良い酒を手に入れましたぞ。いくつか試し呑みもしましたが、安酒ながらこれがなかなか。」

 

「はいはい。なら宿に戻りましょう。思春や明命たちも待ちくたびれてるわよ、きっと。」

 

「無論です。蓮華さまもぜひお付き合い下され。……蓮華さま?」

 

「そ……そうね。帰ったらね。」

 

「はて。先ほどの孺子の事でもお考えか?」

 

「……っ!み、見てたの!?」

 

「ははは、蓮華さまも良いお年だ。そのくらいの浮いた話があっても誰も驚きはしませぬよ。……して、どこの輩ですかな?」

 

「初めて会ったんだけど、話を聞く限り、この街の警邏隊に勤めているらしいわ。」

 

「警邏隊?と言うことは兵や将ではない……と。むぅ……それはちと難しいですなぁ……いや、さらってしまえば……」

 

「祭……いくらなんでもそんなこと、しないで頂戴ね?」

 

「ははは、そう睨まないでくだされ。分かっておりますとも。それと思春達には黙っておきますとも。あれが知るとややこしい事になりますゆえ。」

 

「まったくもぅ……あっでも、名前くらい聞いておいても良かったかしら。」

 

蓮華sideout

 

 

 

 

 

 

 

女性と別れた後歩いていると

 

「ち~~ん~~」

 

如月「ん?なんか声が?」

 

「きゅ~~う~~」

 

如月「九?」

 

「だーーいぶ!」

 

如月「ぐはっ!」

 

後ろから突然体当たりされ、前に倒れる。一体何ヤツ!

 

「兄上!これからどこへ行かれるおつもりですか?」

 

如月「ねね……飛びつくのはいいけど、今度からは前方からだけにしてくれ……」

 

「あうあう。わかりました……なのです。」

 

背中に乗ったままのねねにお願いしてから、ねねには降りてもらい、立ち上がる

 

如月「ん、今度からは気をつけてな。」

 

ねねの頭をぽんぽんしてから、肩車をする

 

如月「んで、さっきの質問だけどな。」

 

「はい。」

 

如月「農場に行って、イチゴの様子を見た後に、酒屋さんに行って新しいお酒の造り方の説明に行こうとしてたんだ。」

 

「イチゴですか?知らないものなのです。」

 

如月「たぶん、見れば分かるよ。んじゃ、行きますか。」

 

「おー!」

 

ねねを連れて農場へ。農場に着き、イチゴの様子を確認。うん、よく育ってるな。帰りに小さいながらも何個か収穫して持ち帰ることに。あれを作りたいんだよね。

酒屋さんへ行き、ワインの作り方を説明。葡萄が収穫出来たら試しに作ってみることにした。葡萄の時期が楽しみだ。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五十八話

「兄上、これでお城に戻るのですか?」

 

如月「いや、あとお茶屋さんに寄るよ。」

 

「なら、早く行きましょう!」

 

如月「ああ、そうだな。」

 

お茶屋さんにより、あるものをもらってくる

 

「いやー、副長さん。よくこんなものを知ってたな。」

 

如月「まぁね。それでどうだった?」

 

「すごくおいしかったぜ!これ、このまま売ってもいいのか?」

 

如月「いいよ。そのかわり他のお茶屋さんにも作り方を広めておいてね。」

 

「ああ、まかせな!」

 

「兄上、何をもらってきたのですか?」

 

如月「新しい製法で作った茶葉さ。」

 

「おいしいのですか?」

 

如月「ああ、おいしいぞ。城に帰ったら一緒に飲もっか。」

 

「はいっ!」

 

肩車したねねとおしゃべりしながら城へと帰る

 

「さぁ!城に着きましたぞ!早く飲みましょう!」

 

如月「まぁ、待て。ねね。今からあるものも作りたいんだ。」

 

「えー……一体何なのですかー?」

 

如月「それは“いちご大福”だ」

 

「いちご大福?」

 

ねねと一緒に厨房へ行き、材料を用意する。こしあんと白あん、餡を包む餅、そしていちご

 

如月「餅をこんな風に広げて、餡をおいて、いちごを餡の上において、こうして包んで、これで完成。ほい、食べてみな。」

 

「あーん。もぐもぐ……お、おいしいのです!」

 

如月「そうか、良かった。と言うことで、作るの手伝ってくれ。」

 

「はいなのです!」

 

その後、二人で黙々と作り続けた結果、いちご大福が二十個、普通の大福が三十個出来た。

 

如月「ちょっと作りすぎちゃったなぁ……」

 

「兄上……どうしましょう……」

 

うーんと二人で悩んでいると

 

「あれ?如月さんとねねちゃん?」

 

「二人でこんな所で何してるのよ?」

 

如月「おお!月に詠!ちょうど良かった!」

 

「ちょうど良かった?」

 

如月「ああ。二人とも、これ食べてかない?」

 

「これは?」

 

如月「こっちが大福でこっちがいちご大福ってやつだ。」

 

「すごくおいしいのですぞ!」

 

「へぇ……月、ちょっと休憩してこ。」

 

「そうだね詠ちゃん。じゃあ、お茶入れますね。」

 

如月「あ、お茶は俺が入れるよ。二人にも飲んでもらいたいものがあるんだ。」

 

「なら、たまにはアンタに入れてもらうのも悪くないわね。」

 

「そうだね。たまにはね。如月さんお願いします。」

 

如月「おう!まかせとけ!」

 

そう言って、お茶を入れる準備をしていると

 

「あら?珍しいわね。如月がお茶を入れるなんて。」

 

如月「ん?ああ、華琳……っと一刀と流流も一緒か。グッドタイミングだな。」

 

「こんにちは。きー兄様。」

 

「ぐっどたいみんぐ?どういう意味よ」

 

一刀「グッドが良いとか優秀って意味でタイミングは時期、瞬間、間って意味だ。この場合だと、良い間だなってこと。」

 

「ふーん。」

 

一刀「で、お茶請けは何なんだ?……大福?」

 

「こっちのやつはいちご大福って言うらしいわ。」

 

一刀「いちご大福だと!」

 

「何よ、いちご大福って?」

 

如月「大福ってのは餡子を餅で包んだお菓子で、いちご大福はいちごという野菜を餡子の中に果実を丸ごと入れた大福なんだ。」

 

「いちごというのはなんですか?きー兄様。」

 

如月「草むらとかに赤い実をつけてる植物があるだろ?あれを俺らの国ではいちごって言うんだ。えっと、数個ほど余ってたよな。どこに置いたっけ……あった、あった。これな。」

 

とみんなに見せる

 

「あー草莓ですね。見たことあります。」

 

如月「へー、こっちでの呼び方はツァオメイって呼ぶんだ。で、お前らも食べてく?作りすぎちゃってさ。」

 

「ええ。いただくわ。」

 

一刀「モチのロン!」

 

「はい!いただきます!」

 

如月「じゃあ、三人分追加で入れるかね。」

 

湯飲みを三人分追加してお茶を入れる。お、良い香りだ

 

如月「ほい。おまち。」

 

「良い香りね。」

 

「初めて嗅ぐ香りかも。」

 

一刀「こ…これは!」

 

「兄様は分かるんですか?」

 

一刀「紅茶だと……」

 

そう、お茶屋さんと一緒に作ったのは紅茶だったんだよね

 

「紅茶……ですか……どうやって作ったんですか?」

 

如月「簡単に言うと、収穫した茶葉をしおれるまで放置して、しおらせた後に揉み潰して茶葉が褐色になるまで放置して、褐色に変化(発酵)した所で乾燥させるって工程だな。欲しかったら街のお茶屋さんに置いてあるから今度買ってこれば?」

 

「はいっ!」

 

説明を終えた所でみんなで食べ始める

 

一刀「いちご大福も大福もウメーなー。あ、如月。牛乳ってあったっけ?」

 

如月「ほい。牛乳と砂糖。あと、リンゴの果汁が絞ってあるから、入れてアップルティーにしてもおいしいぞ。」

 

「えっ!?お茶に牛乳と砂糖なんて入れて、おいしいの!?」

 

一刀「ああ、うまいぞ。ミルクティーっていってな。俺らの国では当たり前の飲み物なんだ。」

 

如月「飲んでみるか?ほれ。少し口に含む程度で試してみな。」

 

「う…うん…(ゴクッ)」

 

如月「口に合うか?」

 

「うん!甘くておいしいわ!」

 

「へぅ…試してみようかな…」

 

「わ…わたしも…」

 

「ねねも…」

 

「私も試してみようかしら。」

 

みんな自分の飲みやすい様に調節しながら、楽しんでいた。それに、大福といちご大福も大好評だったので、全てみんなで食べてしまった。

 

場所が変わって、街にある商人組合に来ていた

 

如月「みなさんに頼みがあるんだが……」

 

「どうしたんだい?副長さん?」

 

如月「今度、羅馬……大秦方面へ商いに行った時にトマトってやつとアスパラガスってやつの苗か種を買ってきてほしいんだ。」

 

「副長さんの頼みなら断れねぁな。分かりました。仲間にも伝えておきますんで、手に入ったらすぐに知らせます。」

 

如月「ありがとう!よろしく頼む!」

 

 

 

 

 

 




紅茶はこの時代にはありませんが(作られ始めたのが1870年代の中期だとされています)製法を知っていればこの時代でも作れると思います。

いちごは現代で流通しているのはオランダイチゴ系がほぼ全てらしいです。これは北半球の温帯に広く分布してみたいなので、探せばあるだろうと思い出しました。
まぁ、いちご大福が食べたかったから出したんですが…

いちごは現代の中国語では草莓(ツァオメイ)と呼ぶそうです。この時代の呼び方が分からなかったので、現代の呼び方を出しました。(間違ってたらごめんなさい)

リンゴは中国の新疆(新疆ウイグル自治区)と黄河の西の地域は中国最古のリンゴ生産地で、中国東北部は小玉リンゴの生産地となっていたとあったので、今回出したのは小玉リンゴの果汁にしました

トマトはこの時代のローマにもありませんでしたが登場させようと思い出しました。

アスパラガスはこの時代のローマでは栽培されていたみたいです。

トマトとアスパラは涼州をとったことにより、シルクロードでローマとつながったこのタイミングで出しました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

五十九話

更新遅れてゴメンなさい

ネタが…なくって……




如月「せっかくの凪とのデートなのに出し忘れた書類があったとは……まぁ、一刀に確認してもらうだけなんだけどな……さっさと渡しに行くか……ん?」

 

「ほら、稟!さっさと鼻血止めなさいよ!他の所に探しにいけないでしょ!」

 

「ほら稟ちゃーん。とんとんしようねー。とんとんー。」

 

「ふがふが……すまない……風……」

 

如月「どしたの?三人そろって?」

 

「あっ、如月さん。やっほー!」

 

「ふがふが……」

 

「あぁ、あんたか。ねぇ、華琳様を見かけなかった?」

 

如月「華琳?いや……見てないけど……一刀の部屋にもいなかったの?」

 

「はいー。いなかったので他を探そうかと~。如月さんはどうしたのですか~?」

 

如月「ああ。一刀に確認してもらいたい書類があってな。それで部屋を訪ねようとしてたんだ。」

 

「そーなのですかー。そーいえばお兄さんは今、休憩中なのであまりお邪魔してはいけませんよー。」

 

「ふがふが……」

 

如月「そうなの?分かった。邪魔しないように気をつけるよ。」

 

「それならいいのです。私たちは華琳様を探しに行きますのでー。それではー。」

 

「早く捜しに行くわよ!」

 

如月「なんだったんだろうあいつら……特に風と稟のやつ……っと考え事してる間に着いちゃったな。(コンコン)一刀ー?入っていいかー?」

 

一刀「っ!き、如月っ!ちょっと待って!……ああ、入ってもいいよ……」

 

如月「失礼するぞ?」

 

で、一刀の部屋に入るとなんか違和感が……ああ、風が言ってたのはそう言うことか(ニヤリ)

 

一刀「ど、どうしたんだ?部屋に訪ねてきて……」

 

如月「いやなに。お前の確認が必要な書類があったから持ってきたんだ。」

 

一刀「そ、そうか……じゃあ、そこの机に置いておいてくれ。」

 

如月「りょーかい。じゃあ、俺の用事はこれだけだから。またな、一刀、華琳。ヤルなら鍵くらいかけとけよ。じゃあ、俺は凪とデートに行ってくるから。」

 

一刀「っ!!」

 

「っ!!」

 

如月「はっはっは!じゃあな。ごゆっくりー。」

 

部屋を出ると中から色々と聞こえたが、まぁ大丈夫だろう。さて、早く行かないと時間に間に合わないな。ピオラ

 

如月「はぁ……はぁ……すまん凪!待たせた……か?」

 

「いいえ。待ってないですよ如月さん。ん?どうしたんですか?」

 

オフショルダーの服にスカート姿の凪

 

如月「むちゃくちゃ可愛い凪に見とれてるとこ。」

 

「うぅ……ありがとうございます///」

 

如月「それじゃあ、行こっか。」

 

「はいっ!」

 

と言うことで街の中心部にやってきました

 

如月「この辺ブラブラ見て回るか?」

 

「はい。それでかまいません。」

 

如月「んじゃ、それで。」

 

本屋に服屋などでウインドウショッピングを楽しんだあと、休憩のために今、カフェでお茶を飲んでいる

 

如月「いやー仕事で見て回ってるけど、この街も賑やかになったなぁ。」

 

「ええ。そうですね。私たちが初めて来たときも賑わってましたが、ここまで雰囲気が明るくなかったように思います。」

 

如月「そうだな。みんなのおかげだよ。こんなにも明るくなったのは。…で、このあとどうする?日も暮れてきたし、どっかで食べてく?」

 

「いえ、あの……買い物に付き合ってもらっていいですか?」

 

如月「いいよ。ってことは凪が作ってくれるの?そりゃ楽しみだ!」

 

「うぅ……あんまり期待しないでください……」

 

恨めしそうに言う凪の頭をくしゃくしゃとなでて

 

如月「ほら、日が暮れる前に食材を買いに行こうぜ!」

 

と席を立ち

 

「あっ、ちょっと如月さん!待ってください!」

 

会計を済ませると凪が腕に抱き着いてきて

 

如月「ちょ、凪……当たってるんだが……」

 

「さっきの仕返しです♪」

 

如月「はっはっは。こういう仕返しなら大歓迎だ♪」

 

とイチャつきながら、夕食の買い物をして、城の厨房へ

 

「如月さんは座っててください。すぐ作っちゃいますから。」

 

如月「はいよー。」

 

すぐに調理を始める凪

 

「♪♪♪」

 

機嫌がいいのか鼻歌を歌いながら調理をしている。その後ろ姿を見ながら

 

如月「なんかいいなー。こういうの。」

 

「ん?なにか言いましたかー?」

 

如月「いや、なにもー。」

 

「そうですか。ああ、お皿の用意をしていただいてもいいですか?」

 

如月「了解。まかされた。」

 

用意したお皿に出来たての料理が次々と入れられていく

 

如月「麻婆豆腐、回鍋肉、青椒肉絲、棒棒鶏、どれもうまそうだ!さぁ、早く食べよう凪!」

 

「はい。さっそくいただきましょう。」

 

如月「いただきます!」

 

青椒肉絲、回鍋肉、棒棒鶏の順で間にご飯をはさみながら食べていく

 

「あの……お口に合いますでしょうか……」

 

如月「うん!おいしいおいしいよ!最後は行儀が悪いけど、麻婆丼にして……うん!むちゃくちゃウマイ!」

 

「そうですか。良かった……」

 

如月「あーおいしかった。ご馳走様でした。」

 

「はい。お粗末様です。あの如月さん……今夜どうします?」

 

如月「え?凪と一緒に寝ようかなって思ってたけど……ダメ?」

 

「いえ!ダメではありません!というかぜひ!」

 

如月「なら、ちゃっちゃと片付けて、一緒にお風呂入ろっか。」

 

「え……一緒にですか!?」

 

如月「ダメ?」

 

「あ、いえ……うぅ……分かりました……」

 

如月「よっしゃ!ソッコーで片す!」

 

スピードを上げて片付けていく俺に苦笑しながら一緒に片付けをしてくれる凪。そのあと一緒に風呂へ入った俺達はイチャイチャしまくりました。

風呂から上がったあと、二人で一緒に凪の部屋へ行き、布団の中へ

 

「如月さん……やりすぎですよ……」

 

如月「ごめんごめん。いやぁ、ついね。」

 

謝りつつも、凪の胸に顔をうずめる

 

「ちょっと!如月さん!?」

 

如月「柔らかくて、良い匂い……」

 

「どうしたんですか如月さん?甘えてくるなんて初めてですね。」

 

如月「まぁ……ちょっとね……急に甘えたくなった。」

 

「……そうですか。」

 

そう言って凪は苦しくならない程度に抱きしめてくれた

 

「いつも私達を待っていただいてありがとうございます。甘えたくなったらいつでも甘えてください。」

 

如月「うん……ありがとう……凪……」

 

凪の温かい体温を感じながら眠りについた

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六十話

如月「ん……朝……か?」

 

「おはようございます。如月さん。」

 

如月「うん、おはよう人和。……ん……人和?」

 

「はい。」

 

あれー?なんで人和が俺の布団の中に?えーっと、昨日はいつも通り警邏やった後、季衣たちと晩飯食べに行って、部屋に戻ってチビチビとやったあとにベッドに入ったよな?鍵も掛けた覚えがあるぞ?

 

如月「あー、人和?どうやって部屋に入ったんだ?鍵掛かってただろ?」

 

「ええ、この合鍵を使って……」

 

如月「……ちょっと待って人和。……合鍵?渡した覚えもないし、作った覚えもないんだけど……」

 

「ええ、なので作ってもらいました。真桜に。」

 

如月「真桜のやつー!」

 

「あ、それと、みんな持ってますよ。」

 

如月「……は?今何と?」

 

「みんな持ってますよって言ったんですよ。ああでも、持ってるのは如月さんと関係を持った娘たちだけなのでご心配なく。」

 

如月「……そうなんだ。はぁ、あのーお願いだから今度から一言くれると助かる。」

 

衝撃的なことを聞かされたが、まぁ、気にしない方向でいこう。

で、着替えようとしたんだが人和が出て行ってくれない……

 

如月「あのー、人和さん?」

 

「なんですか?」

 

如月「着替えたいんですが……」

 

「どうぞどうぞ。」

 

如月「恥ずかしいんで出てってくれませんか?」

 

「えー……」

 

如月「えーじゃなくて……」

 

なんとか説得して部屋から出て行ってもらい着替える。着替え終わったあとに廊下で待っていた人和と合流し、朝食を食べに厨房へ行き、朝食をもらう

 

如月「人和。今日時間ある?」

 

「ええ、帰ってきたばかりなので三日ほど休日にしてあるので……」

 

如月「なら、どっか遊びに行かないか?」

 

「え!?つまりこれは、デートのお誘いってやつですか!?」

 

如月「デートなんて言葉よく知ってるな。」

 

「ちぃ姉さんが買ってきた阿蘇阿蘇に載ってました。」

 

如月「えっ!?阿蘇阿蘇に載ってるの!?」

 

「はい。最新号に“みんなで覚えよう!天の国の言葉講座”って特集があって、それで知りました。」

 

如月「俺には依頼が来てなかったが、一刀にいったか……まぁ、知ってるなら話が早いな。人和、俺と一緒にデートしてくれませんか?」

 

「はい!お願いします!」

 

朝食を食べ終え、二人でそのまま街へ向かう

 

如月「街に出てきたのはいいけどちょっと早かったな。どこも開いてない……とりあえず、腹ごなしに散歩でもするか?」

 

「そうですね……あ、新しく出来たお店とかないんですか?」

 

如月「それならいくつかあるな。案内するから気になったお店に開いてから行こうか?」

 

「はい。お願いします。」

 

人和に新しく出来たお店に案内したあと少し疲れたのでカフェで休憩していた

 

如月「どっか気になったお店はあった?」

 

「そうですね……服屋と装身具屋でいくつか……」

 

如月「じゃあ休憩後にそのお店に行こうか。」

 

「はい!」

 

カフェを出た俺達はまず服屋に行き

 

「あ、この服可愛いです!」

 

如月「こっちの服も人和に似合うと思うけど、どう?」

 

「うわぁ、そっちもいいですね!」

 

色々物色して最終的に二つに絞ったみたいでどちらを買うか悩んでいたので片方を俺が出すことにしたら

 

「そんな悪いですよ……」

 

如月「俺からのプレゼント……贈り物ってことで。今度のデートの時に来た姿を見せてくれ。てか、見たい!」

 

「ふふ。ならその言葉に甘えます。」

 

服屋を出た後、アクセサリー屋へ行き

 

「うーん……こっちの髪留めもいいけど、こっちも捨てがたい……」

 

とうんうんうなっている横で俺は

 

如月「(あ、この雫型のペンダント、人和の髪の色とそっくりだ。これは似合いそうだな……よし!買ってプレゼントするか!)すみません。これください。」

 

「ありがとうございまーす!」

 

定員さんに包んでもらい代金を支払って人和を待っていると

 

「すみません、おまたせしました。」

 

如月「全然待ってないよ。色んな品を見てるのも楽しかったし。それじゃ日も暮れてきたし、帰ろっか?」

 

「もう、そんな時間ですか……」

 

如月「ねぇ人和…」

 

「はい?」

 

如月「手……つないで帰ろ?」

 

「……はい!」

 

人和と手をつないで城へと帰り、夕食を一緒に取った後に別れ、部屋に戻り

 

如月「今日は楽しかったなぁ……あれ?なんか忘れてるような……まぁ、いっか。」

 

コンコン

 

「あの如月さん……入ってもいいですか?」

 

如月「人和か。いいよ入っても。」

 

「おじゃまします……」

 

如月「どうしたの人和?何かよ……ん!?」

 

部屋に招き入れた人和にいきなり唇を奪われ

 

「夜這いしに来ました♪」

 

如月「寝てないのに夜這いとはこれいかに……」

 

「嬉しくないんですか?」

 

如月「メッチャうれしいです!」

 

「なら文句言わないでください。ほら、仰向けで寝てください。」

 

人和に言われ仰向けになった俺の上にまたがってきた人和

 

「さーて、存分に可愛がってあげますからねー♪」

 

そんなことを言う人和と身体を重ねるのだった。

 

 

 

ことが終わったあと人和と布団の中でイチャイチャしていたが、あることを思い出し

 

如月「そうだ、人和に渡すものがあったんだ。」

 

「渡すものですか?」

 

如月「はい、これ。」

 

と人和に紙袋を渡す

 

「開けてもいいですか?」

 

コクンと頷くと、紙袋を開けて中身を取り出す人和

 

「えっ……これって……」

 

アクセサリーショップで買った人和の髪の色と同じ色の石の雫型のペンダントだ

 

如月「人和に似合うと思って買ったんだ。」

 

「ありがとうございます!如月さん!さっそく着けてもいいですか?」

 

如月「ああ。」

 

さっそくペンダントを身に着ける人和

 

「どう…ですか?」

 

如月「うん!すごく似合ってるよ!」

 

その言葉がすごく嬉しかったのかいきなり抱きついてきた人和とそのまま二回戦へ

 

 

翌日……

 

一刀「よっ!如月!おはよう……ってそんなにやつれて大丈夫か!?」

 

如月「おお……おはよう一刀。ああ……なんとか大丈夫だ……」

 

一刀「そ、そうか……あんまり無理するなよ?」

 

如月「ああ……サンキュー……」

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六十一話

「え、呉を攻めるんですか?この間の軍議で劉備と孫策の所、同時に攻めるって言ってませんでした?」

 

「ウチもそう聞いてたんですけど……」

 

「そういえば季衣と真桜はあのあと、西に遠征に出ていたわね……他に分からない者はいる?」

 

みんなで一斉に春蘭の方を見る

 

「な、なんで私を見るんだっ!?」

 

如月「えー、だってなぁ?」

 

「そんなこと言うなら如月。あなたが二人に説明してあげてちょうだい。」

 

如月「マジかー……えーっとだな、この前の定軍山の一件で劉備達、蜀は必要以上に警戒するようになってさ、だったら動きが鈍くなってる今、呉を一気に攻め落としてしまおうってことになったんだ。」

 

「へー、そうなんだ。」

 

「そーいうことやったんやね。」

 

「皆が理解した所で次の議題は……」

 

一刀「はっはっは、まったく災難だったな。」

 

如月「まぁ、説明くらいはいいさ。それより……」

 

一刀「ああ。この流れだとあの天下分け目の……」

 

如月・一刀「「赤壁だな。」」

 

一刀「如月はどう思う?」

 

如月「正直……分からん。」

 

一刀「なんで?」

 

如月「俺達の知ってるものと全然違うからだ。だから分からん……一刀は?」

 

一刀「俺もどうなるか想像がつかないな。赤壁が起こらないかもだし。」

 

如月「そうだな。先のことは分からんよな。でも……」

 

一刀「でも?」

 

如月「でも少しでも勝てる確率は上げる。この知識を使って少しでも勝率を上げる努力はする。それは一刀も一緒だろ?」

 

一刀「ああそうだ。俺は戦場では出来ることは少ない。けど戦が始まる前の準備で勝率を上げる努力はしよう。その一発目が……華琳!」

 

「どうしたの?一刀?」

 

一刀「呉攻略のために薬を持っていけないか?」

 

「薬?」

 

一刀「ああ。南方って風土病が多いんだ。そこから軍が崩れたら、まともに戦えん。」

 

「確かにそうね……稟、風。貴方達、南方に居たことあったわよね?南方の風土病に効く医薬品の手配を。」

 

「はっ!」

 

「はいです~。」

 

如月「(一刀。戦場では出来ることは少ないってオメーは言ったけど、一刀が後ろで色々してくれるから俺は、好き勝手動けるんだぜ?自分で思ってるよりもスゲーやつだよお前は。)」

 

「それを本人に言ってやればよいではないか。」

 

如月「……人の心読むのやめてくれませんか?秋蘭……」

 

 

 

孫策side

 

「あーあ。ついに来ちゃったか~……」

 

魏に放っている間諜から『曹魏。南東方面へ動きあり』との報告が入ってきた

 

「本気でしょうか?今までこちらなど眼中にないようでしたが……」

 

「間違いなく本気だろう……眼中にないどころか、南部を統べるまで待っていただけだろう。」

 

「儂らが南部を統一した所で、その上前をはねるつもりじゃろ。高い買い物をしましたなぁ策殿。」

 

「確かにねぇ……官渡で夏候惇からもらったお釣りはちょっと多かったわ。」

 

「まさか姉様!」

 

「冗談に決まってるじゃない。父祖から受け継いだこの江東の地をようやく袁術から取り戻したのにあっさりとくれてやるものですか。それに、曹操を倒して冥林の王子様と蓮華の思い人を魏から奪っちゃえばいいのよ!」

 

「ぶっ!」

 

「ちょ!姉様!」

 

「えー!お姉ちゃん、そんな人がいるの!?」

 

「蓮華様のも驚きですが、冥林様にもそんな人がいたなんてぇ!」

 

「ちょっと待て穏。私にもってなんだ私にもって!」

 

「あ、あはは~……」

 

「れ、蓮華様にそのように思ってる輩がおられるなんて!」

 

「ちょっと待って思春。それはどういう意味かしら?」

 

「あ、いえ、その……」

 

「はいはい、そこまで!色恋で盛り上がるのは女の子の特権だけど、まずは曹操を倒さないことには意味ないわよ。」

 

「どの口が言っているんですか、姉様……」

 

「知っらなーい♪で、冥林。曹魏の大軍団をしりぞけ、我が呉が大陸に覇を唱えるための策はそろってる?」

 

「無論だ。今まで孫呉とこの周公瑾を放っておいたこと後悔させれる程にな。」

 

「……ふむ。机の上でただ思いつくだけなら、それこそ袁術でも万策を思いつこうて。」

 

「……何ですと?」

 

「祭……さま?」

 

「いかな権謀術数を用いようと、一万の兵で百万の大軍団は迎え撃てぬ……ということだ。軍師殿。」

 

「聞き捨てなりませんな。その百万の兵を一万の兵で迎え撃てるようにするのが我々の仕事。それに曹操軍は水辺の戦になれておらんなど隙も多い。そこを突けば多少の戦力差など……」

 

「それはあくまでも理想。何人もの軍師がおり、将も夏候惇、呂布を始め優秀な者が多い。それらが率いた百万の軍勢を目にすれば、威に圧されて膝を折るのが人の常というものだ。」

 

「祭。いいすぎよ。慎みなさい!」

 

「小蓮様の言葉でも聞けませぬ。孫呉の血が絶えたとあっては……あの世で堅殿に顔向けできんのでな。」

 

「私の策では孫家は滅びると?」

 

「ああ、そうじゃ。策殿。袁術ごときと同じように考えていると、痛い目どころではすみませんぞ?」

 

「えぇ……同じとは考えてないんだけどなぁ……なら、どうすればいいの?祭?」

 

「降伏なさいませ。」

 

「なんですってー!」

 

「祭!いくら何でも言葉が過ぎるぞ!」

 

「江東の太守を条件に出せば、曹操も嫌とは言えますまい。そうすれば、孫呉の血筋も、この地の安寧も保たれるでしょう。」

 

「ふぅ……先代から仕える宿将も、老いましたなぁ。」

 

「……何じゃと?」

 

「戦わずして王の座を渡すくらいなら、そもそも乱世に名乗り出るべきではない。」

 

「ヒヨッコが知ったようなことを言うな。」

 

「ヒヨッコねぇ……私がヒヨッコなら、貴方は老いすぎて卵も産めなくなった上に肉としても食べることが出来ない死を待つだけの鶏ですな。」

 

「ほぅ……愚弄する気か?」

 

「しているのはどっちですかな?」

 

「……祭。冥林。」

 

「はっ。」

 

「はい。」

 

「戦を挑まれた以上、私の中に戦わずして負けを認めると言う選択肢はないわ。もし私が志半ばで倒れても蓮華がいる。蓮華の後には小蓮がいる。だから、私が倒れても孫家が絶えることはないわ。」

 

「……ふむ。後見人を決めていただけるのは、儂としても重畳じゃ。儂とて、策殿に死んでほしゅうない。」

 

「……そう。分かったわ。」

 

「姉様!?」

 

「お姉ちゃん!?」

 

「そこまで祭が抗戦に反対というなら、蓮華と小蓮の警護を命じるわ。」

 

「それは、この儂を一戦より外すと?」

 

「はきちがえないで。二人を守ると言うことは呉の未来を守ると言うことよ……どう?」

 

「……承知いたしました。では……失礼する。」

 

祭が広間から出て行ったあと

 

「……行っちゃいましたねぇ。」

 

「どうしたのでしょう、あの祭さまが……」

 

「一体どうしたの?あなたらしくないわよ?」

 

「……どうもせんよ」

 

「……まぁ、いいわ。はい、今日の軍議は解散。みんな、今回の戦は今まで以上になるわ。くれぐれも準備を怠らないように。」

 

『御意!』

 

「了解でありますー。」

 

「冥林は、明日の軍議までに作戦を纏めておいて。」

 

「……ああ。」

 

 

孫策sideout

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六十二話

如月「濡須口を落とせないから皖城を落としてそこから建業ねぇ……まぁ、しょうがないね。霞の機動力は野戦で生きるんであって、籠城した相手には相性最悪だからなぁ……」

 

「そのことでな副長……」

 

如月「どうした真桜?」

 

「姐さん、出撃出来へんもんでイライラしとってな……」

 

如月「了解……何とかしとく。」

 

「副長!ホンマおおきに!」

 

 

 

 

 

如月「で、皖城に着いたわけだが……」

 

「副長、伝令です。軍議を行うとのことです。」

 

如月「了解。行ってくるから準備しといて。」

 

「はっ!」

 

 

 

 

軍議を行うとのことで、本陣に来たら

 

如月「ふーん、黄蓋と周瑜がねぇ……」

 

降伏するかどうかで揉めた後、黄蓋は軍議をしたがその後に、周瑜から公衆の面前で懲罰を受けたという情報が入ってきた。いやー、これって赤壁の前にあったやつじゃん。赤壁ほぼ確だな

 

「その割には、向こうの連中はやる気十分なようね。」

 

「恐らく、その報が届いてないのでしょう。」

 

「ふむ……呉の司令官は周瑜ね。」

 

「はい。」

 

「相当な切れ者ね。さすがだわ。孫策と言い周瑜と言い、早く戦ってみたいわね。如月もそう思うでしょ?」

 

如月「なぜ俺に振る……」

 

「さぁ?」

 

「華琳様~。敵将が出てきたようですが、どうなさいますか?」

 

「旗は?」

 

「桃地に孫。恐らく、孫家の末娘ちゃんかとー。」

 

「孫策ではないのが残念だけれど……まぁ、行ってくるわ。」

 

ふーむ、華琳と舌戦を繰り広げているのは、華琳とほぼ同じ背の女の子だ。末娘ってことは孫尚香ってことか。

お、帰ってきた……けど、なんかイライラしてるな

 

「一刀はいるっ!」

 

一刀「おう?どうしたんだ……?」

 

「……」

 

一刀「……華琳?」

 

ゲシッ!

 

一刀「痛ぁっ!」

 

うわぁー……ベンケイに不意打ちで蹴りをくらわせやがった。痛そー……

 

「……ふんっ!」

 

そのあと華琳は春蘭の胸を鷲掴みにして何かブツブツ言っていたと思ったら

 

「総員、攻撃準備!江東の連中は戦って散る気十分なようだから、遠慮なく叩き潰してやりなさい!」

 

『おおーっ!!』

 

一刀「一体なんだったんだ?」

 

如月「さぁ?とりま、隊へ戻るよ。」

 

一刀「ああ。またあとでな。」

 

 

 

 

部隊に戻ると

 

「副長。野戦ですか?」

 

と部下が

 

如月「ああ、敵さんは籠もらないらしい。と言うことで、俺ら如月隊も敵左翼への攻撃を開始する。いくぞオメーら!」

 

『おおーっ!!』

 

 

 

 

呉との戦いはすぐに決着がついた。敵は分が悪くなると、城を放棄して撤退していった

 

如月「ふむ……どうしたものかねぇ……よし、入城しよう。罠があるかもだから気をつけてくれ。」

 

とりあえず一部隊を入城させ、城門付近を調べさせたが罠らしきものはなかった

 

如月「城門付近は特になにも無し……か。よし、捜索の範囲を広げよう。罠に気をつけるように。」

 

『はっ!』

 

一通り散策した後、一刀と合流

 

一刀「お、そっちはどうだった?」

 

如月「いや、何にも無かったな。」

 

「隊長~、副長~。ひととおり見てきたけど罠らしきもんはなかったで。ただの空城や。」

 

一刀「ふーん。空城の計ってわけじゃなかったか……」

 

「真桜。罠は無かった?」

 

「はい。特にそれらしいモンは。」

 

「なら、ここは予定通り前線基地として使わせてもらいましょう。輜重隊も来るころでしょうから、打擲次第、荷を解かせるように。」

 

「なら、沙和に言うて、救護と食事の準備もさせときます。」

 

如月「真桜。食事は俺が行くから、沙和には救護に集中してもらって。」

 

「りょ~かい~。なら副長。おいしいもん作ってな~。」

 

真桜が行ってから一刀が

 

一刀「孫尚香があっさり引いた意味は何なんだろう?」

 

「そうね……一刀ならどう思う?」

 

一刀「うーん……城に入れた後、罠を発動させるとか?陳留や合肥を攻める隙を作りたいなら、ここで籠城した方が時間も稼げるだろうし……」

 

「陳留にも合肥にも十分戦力は残してあるから、後者の可能性は低いわね。そんなつもりなら、とっくに動いているでしょう。」

 

如月「顔見せついでに実力を見たかったんじゃないか?」

 

「ええ。恐らくそうでしょう。」

 

一刀「楽しそうだな、華琳。」

 

「当たり前でしょう。末娘でさえこれなのよ。この先、孫策と孫権。そして、彼女たちを支える周瑜がどんな手を打ってくるか……私、とてもドキドキしているのよ。」

 

一刀「悪いクセだよ、それは。って、ちょ!」

 

華琳が一刀の手を取って、そのまま自分の胸へ

 

如月「ヒュ~、やるぅ~!」

 

「やっぱり一刀も……」

 

一刀「……何?」

 

「……小さいよりも大きい方が……」

 

一刀「……いや、どっちもそれはそれで味わいが……」

 

「……ばか。」

 

もしかして舌戦の時にそんな話になったのかな?っと、そんなことを考えていたら一刀の手を振り払い歩き出していた

 

「そうだ。如月。」

 

如月「ん?どうした華琳?」

 

「おいしいものを頼むわね。」

 

如月「了解。何作ろっかなー。戦でやられちゃった馬たちの血抜きも完了してるし、季衣が猪とか捕まえてきてくれないかなー?」

 

一刀「さすがにそれは(苦笑)」

 

そんなことを駄弁りながら広場へ向かい、準備を進めていたらなんと季衣が大量の猪を捕まえてきてくれた。まさか話していたことが本当になるとは……

とりあえず、馬肉としし肉の合挽きハンバーグとしし鍋(味噌味)というラインナップになった

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六十三話

皖城をほぼ無傷で手に入れた俺達は長江に渡河拠点を造ろうとしているんだが、呉の連中の邪魔にあってなかなかうまくいかない状態が続いていた。

俺もさ、連中が船出来たからバギクロスを放ってやったら、こっちにも被害が出ちゃって、全然だったんだよ。

 

如月「はてさて、どうするかねー。」

 

「補給線は伸びてしまいますが、次は本隊ごと動かすしかありませんね。」

 

一刀「どう動いても孫尚香には有利なまま……か。完全に主導権を握られたな。」

 

如月「呉の連中はこれがやりたかったんだなぁー。」

 

「それも狙いなのでしょうね。……とはいえ、背に腹は替えられないか。」

 

「軍議中失礼します!」

 

如月「どうした?」

 

「はっ。石亭を出た輜重隊が孫尚香の襲撃を受けたとの報告が!」

 

「誰か出られるものは!」

 

如月「俺が行く。俺はこのまま飛んで行って場所を確認後、空にでかい火の玉を出すから、そこに来いと俺の隊に通達を。」

 

「はっ!」

 

 

 

 

如月「さてさて、ここら辺のはずだが……いた、あそこか。で、俺の隊は……あそこか。よし、空に向かって、メラゾーマ!……気付いたみたいだな。さて、下へ降りるか。」

 

 

 

 

 

「みんなー!応援はすぐに来るから、呉の連中に集中するのー!」

 

『おおー!』

 

如月「なかなかの指揮じゃないか、沙和。」

 

「え?あ!ふくちょーなの!みんなー、ふくちょーが来たのー!これで千人力なのー!」

 

『うおー!』

 

「一人増えたからって、こちらの優位は変わりありません!小蓮さま!」

 

「ええ。弓部隊、火矢を!」

 

如月「悪いけど、落とさせてもらうぜ。バギマ!」

 

「えぇ、そんな……」

 

「まさかここにも妖術使いがいたなんて!」

 

如月「総員。呉の連中を取り囲め!」

 

『はっ!』

 

「ああもう、しくじったわ!穏に応援を!」

 

ヒュン  ヒュン  ヒュン

 

『ぐわっ!』

 

『ぎゃあっ!』

 

「ひゃああああっ!?な、なんなの!?」

 

如月「俺達を狙った……」

 

「ちゅーことは……」

 

「敵増援か。」

 

 

「はああああああっ!」

 

ビュン!

 

ガキン!

 

如月「関雲長……か。」

 

「如月さんっ!」

 

如月「こっちはいい、凪!体勢を整えて、蜀の援軍に対処しろ!」

 

「……さすが如月殿。ふっ!」

 

関羽が後ろへ跳び、俺との間合いを取る。そこへ

 

「小蓮、大丈夫!?」

 

「大丈夫!それよりお姉ちゃん、どうしてここに!?」

 

「雪蓮姉様から、十分時間は稼げたという指示を伝えに来たのよ。それと……え?」

 

「如月さん!大丈夫ですか!」

 

如月「ああ、大丈夫だ……凪、こっちの状況は?」

 

「はっ。積荷の一部が燃えてしまいましたがそれ以外は無事です。兵達も幸い死者はいないようです。」

 

如月「上出来だ!輜重隊はそのまま皖城へ『あなたが……』……ん?」

 

「あなたが龍谷如月だったのね……」

 

如月「そっか……君が孫権か……」

 

「蓮華さま!これ以上は無理です!ここから引きましょう!」

 

「龍谷如月……赤壁で待つ!」

 

如月「……分かった。ああ、孫権。」

 

「……なんだ?」

 

如月「俺のことは如月でいい。」

 

「なっ!……ふんっ!」

 

返事を聞くことなく、孫権たちは撤退していった

 

「如月さん……」

 

如月「ふぅ……みんな!敵は撤退していった!追撃は無用!荷物はそのまま皖城に運ぶぞ!」

 

『はっ!』

 

「孫権とはお知り合いだったのですね。」

 

如月「まぁな……会ったのは一回だけだが……」

 

孫権たちが撤退していった方を見ながら

 

如月「赤壁かぁ……」

 

 

 

 

 

「そう……赤壁で待つ……ね。」

 

「はい。確かに孫権はそう言ってました。」

 

「凪の言う通りかと。建業から出た船団が長江を遡上しているという情報も入ってきましたし、おそらく間違いないかと。」

 

「なら、桂花。我々はどう動くべきかしら?」

 

「はっ。皖城を放棄し、合肥まで退いた後そこから北に抜けて荊州へと向かいます。」

 

「?合肥まで引き返さずに赤壁へそのまま向かえばいいのではないか。」

 

「糧食が心許ありません。呉の領土を抜けて赤壁へ向かうよりも補給に余裕のある魏側を通りたいのです。」

 

「それに、荊州の水軍と合流する必要もありますしね~。」

 

「そういうことよ春蘭。それに孫策と劉備がそろって相手をしてくれるのだから、こちらも総力を尽くすのが礼儀と言うものよ。……皆、準備を急ぎなさい。」

 

『はっ!』

 

「そういえば、如月と一刀は?」

 

「隊長と如月さんは……」

 

 

皖城から少し離れた港町のある桟橋に

 

如月「ちょうこうはひろいーなーおっきいーなー。」

 

一刀「なぜその歌?まぁ、いいけど……で、何考えてるの?」

 

如月「んー……何にも……しいて言うなら、やっぱり赤壁が起こるのかってくらいかなぁ……」

 

一刀「そうだなぁ……まぁ、俺達は勝つための努力をしていくしかないよなぁ……」

 

如月「なぁ……一刀は天下統一がなったら、やりたいこととかあるか?」

 

一刀「そうだなぁ……まだ漠然とだけど、学校を各地に作りたいなぁ……如月は?」

 

如月「そうだなぁ……おれは農林漁業と工業を発展させたいなぁ……農林水産“将”如月って名乗りたいなぁ……」

 

一刀「なにその二つ名は……」

 

一刀と一緒にやりたいことを話していると

 

「おーい!兄ちゃん達ー!」

 

如月・一刀「「ん?」」

 

「ほら一刀に如月。迎えに来たでー。」

 

一刀「あれ?」

 

如月「霞、なんでこっちに?合肥にいたんじゃないの?」

 

「建業攻めが中止になってな、こっちに合流しろって。」

 

一刀「そうなんだ。」

 

「そんなことより、本隊は荊州に向かって出立しとるから、早よう合流すで。でないと、華琳に怒られるで。」

 

如月「それは嫌だな。ならさっさと行きますか。」

 

そう言って抜け駆けするように走り出す

 

「あっ、きー兄ちゃん待ってよー!」

 

「きー兄様、おいて行かないでくださーい!」

 

「ほら一刀も行くで。来いひんとおいてくでー!」

 

一刀「あっ!ちょっ!待ってよ!みんなー!」

 

 

黄蓋side

 

「はぁ、暇じゃ、暇じゃ、暇じゃー!」

 

「黄蓋様ぁ……静かにしてくださいよ~……」

 

「しょうがないじゃろ。暇なんじゃから。」

 

「そんなこと言われましても、自業自得じゃないですか。」

 

「そりゃそーなんじゃが……うー暇じゃー!あっ!そうじゃ!ここはひとつ酒でも……」

 

「それは無理です。」

 

「そんなきっぱり言わなくても……うっ!」

 

「どうなさいました!?」

 

「先ほど打たれた傷が、少々な……すまぬが、薬を持ってきてくれんか?」

 

「はっ!おい、黄蓋様に傷に効く薬を!」

 

「はっ!」

 

「(複数いたか……まぁ、そうじゃろうなぁ……あ、そうじゃ!)なぁ……」

 

「はっ。」

 

「薬が届いたら、塗るのを手伝ってほしいのじゃが……」

 

「いえ、それは出来ません。お部屋に入るのはちょっと……」

 

「ての届かぬ背や尻の傷口に塗ってくれるだけでも良いのだが……」

 

「し、尻……しょうがないですねぇ。たしかに傷跡が残ったら大変ですもんね!」

 

「薬をお持ちしました。」

 

「黄蓋様。薬が届きましたので良ければお塗りしましょうか?」

 

「おい、周瑜様から部屋に入るなと……」

 

「尻と背中の傷口に手が届かぬそうなのだ。それを手伝ったらすぐ戻るから、お前は誰か来ないか見張っていてくれ。」

 

「し、尻!だったら交代で塗ろう!」

 

「分かった分かった。では、失礼します。」

 

「うむ。確かに。」

 

「……」

 

「……(ぬりぬり)」

 

「……」

 

「どうした?ジロジロと?」

 

「い、いえ!?」

 

「気になるのか?」

 

「「気になります!」」

 

「そ、そうか……外のやつも待てないようだから、背中を塗ってもらおうかの。」

 

「は……はいっ!」

 

「おい早く代わってくれよ?……ん?何やつ……ぐはっ!」

 

「どうした!……ぐっ!」

 

「……すまんのぉ。お主はあまり儂の好みではないのだ。」

 

そういって兵を縛り上げる

 

「そりゃないっすよ……」

 

「はっはっは。ほら、開いてるぞ?」

 

「失礼したします。黄蓋殿とお見受けいたしますが、よろしいですか?」

 

「いかにも、儂が黄蓋だが……お主らは?冥林の手の者か?」

 

「い、いえ……」

 

「ならば何者か。名を名乗れ!」

 

「ひっ!」

 

「ほら、しっかりしな。」

 

「あ……はい……私は鳳統。あなたの意志を貫くためのお手伝いをしに参った者です。」

 

「誰の差し金だ?冥林か?それとも、御大将か?」

 

「……申し訳ありません。口にするなと。」

 

「儂を前にして名乗れんと……面白い。儂も所用があるのでな。貴様らに付き合ってやろう。」

 

「はい。では、参りましょう。黄蓋様!」

 

「うむ。だがその前に……」

 

縛っている兵の前へ行き

 

「お主には少々眠ってもらおう。」

 

「えーそこまでやります?」

 

「一応な。」

 

「はぁ……黄蓋様。」

 

「ん?」

 

「ご武運を」

 

「分かっておったか。」

 

「何年あなたの部下をやってるとお思いですか?」

 

「はっはっは……では、行ってくる。」

 

「はっ……」

 

兵を気絶させ

 

「すまぬな。では、行くかの。」

 

 

黄蓋sideout

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六十四話

皖城から出た本隊に合流した俺達は合肥へ戻り、途中途中で物資を補給しながら

新野→樊城→襄陽→江陵の順に軍を進めた。江陵で水軍と合流し、赤壁へ向かうための準備をしている最中に

 

如月「侵入者ぁ?騒がしいと思ったらそれか。」

 

「はい。場所は中庭です。私は華琳様のも報告してきます。」

 

如月「頼む……はぁ、行くか。」

 

中庭に行くと

 

「放せ!放せ、北郷!」

 

一刀「放すわけないだろ秋蘭!すまん!俺は北郷一刀、曹操の所の……なんだっけ?」

 

如月「街の警備隊長でいいじゃね?」

 

「街の警備隊長がどうしてこんな所で夏侯淵を抑えておるのだ?」

 

一刀「確かにそうだけど……って如月!」

 

如月「よう。てか秋蘭も何やってんだよ……申し遅れました黄蓋殿。自分は龍谷如月と申します。」

 

「知っておる。一度、官渡で会っておるしの。」

 

如月「それでどうしました?呉の宿将である貴方様が蜀の軍師である鳳統殿をつれてこんな所まで来るなんて。」

 

「あわわ…」

 

「それなんじゃが……」

 

「如月。このような所で聞く話ではないわ。」

 

如月「ようやく来たか、華琳。」

 

凪、沙和、流流を引き連れてやってきた華琳

 

「ええ。お疲れ様。凪、沙和、流流、着いてきてもらって悪いのだけれど、広間で黄蓋殿の話を聞くための準備をしてきてちょうだい。」

 

「はっ。」

 

「はい。」

 

「はーい。」

 

「黄蓋殿もそれで構わないかしら?」

 

「無論だ。ありがたい。」

 

と言うわけで仮設の王座の間で黄蓋と鳳統の面会を行うこととなった。てか、全員集まってるとかもう、軍議じゃね?

 

 

 

如月「えっ!?ウチの軍に降るの?なんで?」

 

「我が盟友である孫堅の夢見た呉はもはや無い。ならば、儂の手で引導を渡すのが、ヤツへの弔いであろう。」

 

「周瑜との間に諍いがあったと聞いたが、原因はそれか?」

 

「そうじゃ。それに……」

 

みんなの前で胸元を広げる黄蓋さん

 

一刀「わっ!」

 

如月「ほほう……」

 

『あっ?(#゚Д゚)』

 

如月「すみません……」

 

「はっはっは。女の乳房なんぞ別に初めてでもなかろうに。それにそっちのおなご共はそいつに惚れておるのか?」

 

『///』

 

「はいはい。それくらいになさい。それで先ほどの傷が、周瑜に打たれた痕?」

 

「ああそうじゃ。はぁ……赤子のころは襁褓も替えてやったいうのに……好き勝手にかき回した挙句、この仕打ちだ。」

 

「なんだただの私怨ではないか。」

 

「まぁな。だが、もし志半ばで曹操が倒れた時、後を継いだものが……そこの優男!」

 

一刀「えっ!俺ぇ!?」

 

「そこの優男が今までの方策をかえ、曹操の志を踏みにじるマネをしでかしたとしたら一体どう感じる?」

 

「「殺す!」」

 

と春蘭と桂花

 

「そういう思いをしておるのじゃよ。今の儂は……」

 

「ふむ……黄蓋の言い分は分かった。では、鳳統。貴女は?」

 

「はい。桃香様……いえ、劉備殿の掲げていたみんなが笑って過ごせる世界に感銘を受け朱里ちゃん……いえ、諸葛亮と共に劉備軍に加えていただきましたが、最近では諸葛亮の献策ばかり用いることが多くなりました。しかし、その献策も失敗することが多くなり……いえ、失敗は誰にでもありますが、それでも責任を取らせることも取ることもせずに優遇し続けていたため、愛想が尽きてしまい、成都を出てきました。地元である襄陽に戻り、余生を過ごそうと思っておりましたが、道中に黄蓋殿と出会い、魏に降るとの事でしたので、私も私怨と分かりつつも蜀の連中を見返したいと思い、士官に来ました。」

 

「黄蓋、我が軍に降る条件は?」

 

「呉を討ち、全てが終わった後、儂を討ち果たすこと。孫呉が滅びたなら、儂に生きる意味などない。」

 

「江東をあなたが治める気は?」

 

「ない。」

 

「自ら死兵になると?」

 

「それが堅殿への忠義の示しだ。」

 

「ふむ……鳳統は?」

 

「我が策で蜀を打ち破ること。そのあとで、このまま魏に降るか、襄陽で余生を過ごすかを決めたいと思います。」

 

「……分かったわ。黄蓋、鳳統。私の真名を呼ぶことを許しましょう。」

 

「「それはことわらせて(もらおう)(いただきたい)。」」

 

「それはなぜ?」

 

「先ほども言った通り、死兵となる身。余計な馴れ合いは不要!」

 

「鳳統は?」

 

「まだどちらになるか分かりませんので、受け取るわけにはいきません。」

 

「そう……なら、貴方達二人を呉討伐に加えることを許しましょう。」

 

「華琳様!」

 

「何か不満でも?桂花?」

 

「無論です!黄蓋は呉の宿将。鳳統は表にはあまり出てきませんが蜀の軍師。これが演技だと言う可能性も!」

 

「ええ、そうでしょうね。」

 

「でしたら!」

 

「落ち着きなさい。私とて二人を信用しているわけではないわよ。けれど、黄蓋ほどの将が、鳳統ほどの軍師がここまでしているのだもの。もし計略と言うのならば、それを見届けた上で、使いこなして見せるのも、覇王の器というものでしょう。」

 

「裏切ると分かっていてなお、受け入れるか。」

 

「当然よ……でも我が魏に仇なしたと見れば、二人とも容赦なく打たせてもらうわよ。」

 

「ならば、こちらも王者に対して非礼を働いてはなるまい。華琳殿。」

 

「分かりました。華琳様。」

 

「真名は?」

 

「祭。」

 

「雛里といいます。」

 

「その名、しばし預かる。では、このまま軍議を開く。あなた達も参加し、意見を述べなさい。」

 

「御意。」

 

「御意です。」

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六十五話

「何と!それは本当か!?」

 

如月「うん本当だよ。まぁ、皖城にいた時に孫尚香たちの襲撃の援軍に関羽が来たからねぇ。もしかしてと思ってたけど、蜀と同盟を組んだみたいだね。」

 

「はぁ……結局、蜀に借りを作ったか……あのバカ者め。」

 

「現状、予測されてた呉の水軍に、蜀の水軍が加わったことで総兵力は、我々とほぼ同数となってますね。」

 

「ふむ……こちらの調練の現状は?」

 

如月「うーん……最低限はってところかなぁ……」

 

「練度に関しては我々も把握済みですから、こちらの指揮で調整します。」

 

「ふふっ。面白くなってきたわね。」

 

「面白がってもおられんだろう。蜀は兵力は少ないものの、優秀な将が多いと聞く。」

 

関羽に張飛を始め、益州を取ったってことは、魏延や厳顔もいるはずだしな

 

「水軍の教練くらいなら、儂がつけてやっても構わんが?」

 

「……そうね。どうする、一刀?」

 

一刀「如月じゃなくて俺?」

 

「その如月たちを束ねているはあなたでしょう?」

 

一刀「うーん……なら……やめとくよ。」

 

「なんじゃ?敵の知恵は借りたくないか?」

 

一刀「いや、そうじゃなくて。ようやく慣れてきたところで、急に孫呉式の訓練に切り替えたら混乱しちゃうからさ。」

 

「ふむ、一理あるな。」

 

一刀「できれば黄蓋さんは……軍師のみんなに協力して、向こうの戦術研究を手伝ってほしいな。」

 

「よかろう。心得た。」

 

こうして軍議は解散となった

 

 

 

如月「あーあ、やっと終わったわー。晩飯何作ろう。」

 

「おい、如月。失礼するぞい。」

 

「失礼します……」

 

俺の部屋にやってきたのは黄蓋さんと鳳統ちゃんだった

 

如月「ん?黄蓋さんに鳳統ちゃん。どうしたの?」

 

「ん?これじゃこれ。」

 

そういう黄蓋さんの手には甕が握られていた

 

如月「ふーん……で、鳳統ちゃんは?」

 

「あわわ、祭様に付き合えと言われまして……」

 

如月「ご……ご愁傷様……」

 

「それはどういう意味じゃまったく……最初は北郷を誘ったんじゃが、断られてしまってのお。代わりにと言うことで如月がいい酒を持ってると言っておってのお……」

 

如月「(一刀のヤロー!俺に押し付けやがったな!)まぁ、今からちょうど飯を作る所だったんで、俺の手作りでよければ。」

 

「おう、それでよい!」

 

如月「了解っす。鳳統ちゃんも食べていきなよ。」

 

「あわわ、いいんですか!?」

 

如月「ああ、食べてけ食べてけ。」

 

「よ、よろしく……お願いします。」

 

如月「何か食べたいものってありますか?」

 

「酒のつまみ。」

 

如月「はいはい。鳳統ちゃんは?」

 

「あ、あの……たくさんは食べれないので……」

 

如月「ふむ……じゃあ、好きな量を取れるものにしよっか。」

 

うーん、何作ろう……ベーコンがあったから、これ使ってつまみと炒飯とスープと干物があったなあと、デザートにパンケーキでも作るか

 

如月「はい、おまちどうさま。」

 

「ほぅ……うまそうじゃな。」

 

「はぁ~すごいです……」

 

如月「それじゃ……」

 

『いただきます。』

 

「ほぅ……この肉ウマイな。酒とよく合う。」

 

如月「ベーコンっていってね、塩を塗り込んだ肉を燻したものなんだ。」

 

「あわわ……すごい高価です。」

 

如月「別にそこまで高くないよ。塩は海水をくみ上げて作ってるからね。ほら黄蓋さん。この干物も食べてみてよ。」

 

「ほぅ、これもウマイのお。それにこの酒もウマイ!陳留で買ったものよりウマくなっておるか?」

 

如月「あの時からはおいしくなってるよ。あ、鳳統ちゃんも飲んでみる?」

 

「い、いえ……少し苦手なので……」

 

如月「じゃあ、こっちを飲んでみてよ。」

 

「あわ、良い香りです。」

 

如月「梅と蜜柑を一緒につけてみたんだ。甘くて飲みやすいと思うよ?」

 

「じゃあ一口……お、おいしいです!」

 

如月「なら良かった。」

 

食事が終わりかけてきたので

 

如月「はいこれ。食後のおやつだよ。」

 

どら焼きの皮くらいの大きさのパンケーキ二枚にアイスと梅ジャムをのせたものを黄蓋さんと鳳統ちゃんに出す

 

「あの……これは?」

 

如月「これはパンケーキって言って、小麦粉に卵と牛の乳とハチミツを混ぜ合わせた生地を焼いたもので、こっちはジャムって言って、切った果物を砂糖で煮詰めたものでちょっとの間だけ保存できるようにしたものなんだ。こっちの白いものはアイスっていって、これも牛の乳から作ったものなんだ。冷たくて甘いから食べてみなよ。」

 

「はい……いただきます。」

 

「では、いただこう。」

 

そういって食べ始める二人

 

「!!冷たくて、甘くて、おいしいです!」

 

「これは!こんなもの食べたことがないのぉ……」

 

本当ならこの時代は、砂糖やハチミツなんかは高価で庶民なんかは食べられないものだと思うのだが、ここでは桃まん、まんじゅう等の甘味が普通に売られてるんだよなぁ。まあ、さすがにアイスなんて冷たいものは無理なんだけどね。

そんなことを考えていたら

 

「あの……如月さん……」

 

如月「どうしたの?鳳統ちゃん?」

 

「このじゃむとあいすの作り方を……あわっ!」

 

如月「うおっ!?どうしたの?本当に?」

 

「えっと……あの……如月って名は私たちの真名にあたるんですよね?」

 

如月「うーん……そういう事になるのかな?そこまで神聖なものでもないんだけどね。」

 

「でも!それでも!あの……失礼にあたるので、私のことは雛里と呼んでください!」

 

如月「え、ちょっとまって!」

 

「ふむ、そうじゃな。雛里の言う通りじゃな。」

 

如月「黄蓋さんまで……」

 

「まあまあ、難しいことを考えるな如月。雛里と儂はお主のことを気に入ったからこそ、真名を預けようと思ったんじゃよ。遠慮せずに受け取れ。」

 

如月「えっと……鳳統ちゃんもいいの?」

 

「はい!」

 

如月「分かった。なら、俺から名のろう。性は龍谷、名は如月。俺の国では真名の風習が無かったので性でも名でも好きな方を呼んでくれ。」

 

「性は公、名は蓋、字は公覆、真名は祭という。儂の真名、お主に預けようぞ。」

 

「性は鳳、名は統、字は士元、真名は雛里といいましゅ!あう……かんじゃった……」

 

如月「……ねぇ祭さん。」

 

「なんじゃ?」

 

如月「なに?この可愛い生き物は?」

 

「そうじゃな……我々の心を癒してくれるものじゃろ?」

 

如月「たしかに……」

 

「あわわ……」

 

そんなこんなで、祭さんと雛里の真名を預かることになった

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六十六話

祭さんと雛里が加入して、真名を預かった日から数日後、赤壁に到着したがすでに呉と蜀が陣取っていたため、対岸の烏林に陣を構えたそんなある日の朝日が昇る前のの時間帯に

 

「なーなー副長ー。なんか近づいてきてるで。」

 

如月「ん?どれどれ……うーん、霧が濃くて見にくいなぁ……小舟っぽいなぁ。何艘かあるか?」

 

「ふくちょー、どうする?弓を準備しとく?」

 

如月「奇襲かもしれないから、一応準備しといて。」

 

「了解なのー。」

 

如月「なぁ一刀。これってあれかなぁ?」

 

一刀「かもだけど、奇襲の可能性も無いとはいえないからなぁ……」

 

一刀と小声でそんなことを話していたら小舟の群れがが近づいてきたので

 

一刀「近づいてきちゃったな。沙和は本陣の風たちに報告を。凪、弓兵の指揮を。」

 

「はっ!」

 

「分かったの!」

 

「隊長!動いたで!」

 

一刀「凪頼む!」

 

「はっ!総員、放てー!」

 

ヒュン  ヒュン  ヒュン  ヒュン

 

「やりましたかね?」

 

如月「いや、悲鳴や叫び声が聞こえてこないから届いてなかったかもな。もう一度頼む。」

 

「はっ!もう一度、放てー!」

 

ヒュン  ヒュン  ヒュン  ヒュン

 

「やったか?」

 

しかし、何事もなかったかのように小舟は微妙な距離を保ったまま、船上の兵士たちも剣や槍を掲げてこちらを威嚇していた

 

「矢ぶすまにされても、悲鳴の一つも上げないのかよ!」

 

「呉や蜀のやつらの中に不死身のやつがいるのかよ!」

 

「ひっ……マジかよ……」

 

「たいちょ~……ふくちょ~……こわいで~……」

 

如月「ほら泣くな真桜。大丈夫だから……凪、もう一度だ。」

 

「はっ!総員、第三射用意……放て!」

 

ヒュン  ヒュン  ヒュン  ヒュン

 

「さすがにこれだけ当たれば死んだだろ……」

 

「だよなぁ……ん?な……ま、まさか!」

 

「うわああああああっ!何で弓が効いてないんだよ!」

 

「バ……バケモノだっ!」

 

「うわああああっ!」

 

これだけ矢を浴びても気にするそぶりもなく、剣や槍を一定の間隔でみな同時に威嚇してくる敵兵に恐怖し、兵達は個々の判断で矢を射続けている

 

如月「ん?一定に間隔で同時?」

 

一刀「どうした?如月?」

 

如月「一刀、やっぱりこれは“十万の矢”だな。みな撃つのをやめろ!」

 

混乱して俺の指示を聞かない兵たち

 

如月「ベタン。」

 

『ギャー!!』

 

ベタンを唱え兵達を押しつぶして止める

 

如月「真桜、あいつらをよく見て、何か気付くことはあるか?」

 

「絡繰りならともかくあんなバケモノの作り方なんか知らんで……」

 

如月「いいから見る!」

 

「うぅ……ふくちょうのおに……あくまぁ……」

 

如月「鬼で結構、悪魔で結構。で、どうだ?」

 

「うぅ~……ん?あれ?動きがずいぶん規則正しいなぁ……」

 

如月「だろ?なぁ、人形を全部まとめて動かすのって難しいか?」

 

「簡単やで。後ろに棒の一つでも……って、そういうことかい!」

 

一刀「とにかく試してみよう。誰か火矢を。」

 

「私でかまわんか?」

 

「秋蘭様?」

 

「とりあえず秋蘭様が起きてたから……桂花ちゃんたちも準備を始めてるの。」

 

一刀「なら、秋蘭。少し奥のあの船をお願い。」

 

「やれやれ簡単に言ってくれる。まぁやってやる……さ!」

 

そういいながらも火矢を放つ秋蘭。一刀が指定した船の兵の胸に吸い込まれていき

 

「おー。よう燃えとる。」

 

如月「じゃあ俺も一艘やっていい?」

 

一刀「あれ?如月って弓使ったことあったっけ?」

 

如月「いや、試してみたいものがあってな。右手にメラ、左手にギラ、合体!」

 

二つの呪文を手の中で合体させ、それを弓を引くような形にして

 

如月「ビューティーセレインアロー」

 

一刀「まさかそれは!」

 

如月「マジカルシュート!」

 

一刀「なぜチャチャ?」

 

如月「言っただろ。やりたかっただけだって。」

 

矢のように飛んでいくそれは、燃えてる船の隣の船に命中し、燃え始めた。やがて、小舟の群れは燃え盛る二艘放ったまま、朝霧に隠れて去って行った

 

「しかし、なぜ連中はあのような珍妙な策を?」

 

一刀「さあ?矢でも欲しかったんじゃない?」

 

「ふむ……」

 

「あんな絡繰りをバケモノって勘違いしちゃったけどさ……」

 

「ん?どうした?」

 

「ウチの軍にはすでにバケモノっているじゃんって思って。」

 

「確かにウチには副長っていうバケモノがいたな!」

 

「そうじゃん!副長に比べたらあんなのバケモノじゃないじゃん!」

 

『はっはっはー!』

 

如月「そういうのはさあ……本人がいないところで言うものじゃないのかなぁ?君たちぃ?」

 

『ひっ!』

 

「いや、副長……これはですね……」

 

「かわいい部下たちのダジャレじゃないですかぁ……」

 

「そうですよ!こう、暗い雰囲気を和らげようと……」

 

如月「お前たちこのまま徹夜な。」

 

『おにー!』

 

兵士たちの叫び声を無視して、華琳のいる天幕へ

 

如月「華琳ー?なんか用?」

 

「ああ、お疲れ様。どうだったの?」

 

如月「船二艘沈めたら、やっこさんらは逃げってったぞ。」

 

「そう。ならいいわ。さてと……」

 

席を立って俺に近づいてきたと思ったら

 

「ふんっ!」

 

如月「ゴフッ!」

 

いきなり腹を殴られ膝をついてうずくまる

 

「新しい料理を作ったら、私と流流を呼びなさいって言ったわよね?」

 

うずくまりながら目線を上げる

 

如月「(うす緑か)つーか、こんな所でも?」

 

「ええ。材料は残ってるわよね?今夜作りなさい。」

 

如月「御意……」

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六十七話

「……なぜ祭と雛里があなたの部屋にいるのよ?」

 

「あわわ……」

 

如月「いや、祭さんが乗り込んできた時のその日の夜からずっといついちゃってな。」

 

烏林にある城の一室にいる俺、華琳、流流、祭さん、雛里

 

「きー兄様、野生動物じゃないんですから……」

 

如月「人間も広い意味で言えば野生動物だよ流流。」

 

「そんなことより早よう酒に合う肴を持ってこんか。」

 

如月「はいはい、もうちょっと待ってよ祭さん。うーん、この前作ったジャムやアイスは食後のおやつだから今日は麻婆春雨でも作るか。」

 

「きー兄様、春雨ってなんですか?」

 

 

如月「春雨っていうのは、緑豆っていう豆を水に浸して、ふやかしたものをすり鉢で滑らかになるまですりおろしたものから作られた麺だな。ほら、これがそうだよ。」

 

三人に春雨の現物を見せる

 

「へぇ、透明な麺なのね。」

 

如月「これは乾燥させてあるから水に浸して戻しておいて、先に餡になる麻婆でも作るか。」

 

先に麻婆を作り、戻しておいた春雨を麻婆と絡めて

 

如月「はい、出来上がり。つでに麻婆豆腐も作ったから食べてくれ。」

 

「ふむ、麻婆春雨おいしいわね。」

 

「へー、面白い食感ですね。」

 

「おいしいです♪」

 

「ふむ、酒にも合う……って如月お主、何じゃその食べ方は。」

 

如月「ん?麻婆丼のこと?ああ、そっか。祭さん達は初めて見たんだったね。おいしいよ。食べてみる?」

 

「ふむ、如月がそう言うのであれば食べさせてくれい。」

 

如月「じゃあ、はい、あーん。」

 

「あーん……おお!飯と麻婆豆腐がこんなにも合うものだったとはな。」

 

『じー……』

 

如月「ん?どうしたの二人とも?」

 

「い、いえ!」

 

「あわわわわ!」

 

「二人ともソレが食べたいのよ。」

 

「ああ、なんじゃそう言うことか。」

 

如月「???まぁ、食べたいならはい雛里、あーん。」

 

「あうぅぅぅぅぅぅ……あ、あーん……あ、本当においしい……」

 

如月「ほら、流流も。あーん。」

 

「あ、あーん。えへへ。」

 

「まったく、雛里までこの短時間で落とすとか、さすが種馬弟ね(ボソ)」

 

如月「ん?なんか言った、華琳?」

 

「別に。」

 

如月「???まぁ、いっか。じゃあ食後のおやつでも作るかね。」

 

「それで、どっちを先に作るの?」

 

如月「ジャムを先に。今日はリンゴジャムを作ろうかと。ああ、ジャムってのは、切った果実を砂糖で煮詰めたものなんだ。先に作って粗熱を取っておこうかと思ってね。」

 

「で、あいすと言うものは?」

 

如月「それはこっちの道具を使うんだが、ちょっと時間がかかるんだ。えっと、こっちの口に材料を入れて、反対の口に氷と塩入れて、この取っ手をくるくる回し続けるんだ。」

 

簡単に説明してくるくると回し続ける

 

「なるほど、こうすることによって中の材料が冷えて固まるのね。」

 

如月「そういうこと。」

 

くるくると回し続けること一刻~二刻

 

如月「んー、出来たっぽいな。じゃあ、パンケーキを焼こうか。」

 

「へぇー、生地は小麦粉と卵と牛乳なんですね。」

 

如月「ああ、基本的な生地だからな……っと、はい焼けた。これにこうして盛り付けて……はい、出来上がり。」

 

「では、いただきます。……へぇ、冷たくて甘くておいしいわ。」

 

「はい。このぱんけーきにも合っておいしいです!」

 

「……冷たくておいしい♪」

 

「ふむ、このりんごじゃむもおいしいのぉ。」

 

如月「で、ご機嫌は直りましたか覇王様?」

 

「別に機嫌は悪くなってないわよ。」

 

如月「あれ?そうでしたっけ?」

 

「如月。そんなことはどうでもよいから、もっと酒を出せ!」

 

如月「えー、あんまり余分があるわけじゃないから、飲みすぎないでくださいよ。祭さん。」

 

「知らん知らん。」

 

如月「まったくもう……」

 

はぁ、明日も二日酔いか……

 

 

 

 

如月「うぅ……気持ち悪い……」

 

一刀「お前は自業自得だな。」

 

如月「うぅ……一体誰のせいだと……」

 

一刀「俺知ーらない。」

 

次の日俺は、二日酔いと戦いながら、偵察と訓練を兼ねた船の上にいた。

 

「うぅ……副長。そんなんじゃ偵察にならんで……うぇぇ。」

 

「うー……どうにかならないのふくちょー……」

 

如月「どうにかと言われてもな……うぅ、頭痛い……凪は大丈夫か?さっきから黙ってるけど……」

 

「…………」

 

「……目の焦点が合っとらんな。」

 

「うー……あの漁師さん達すごいの……よくこんな揺れる船の上で漁ができるの……」

 

一刀「うーん……縄で船同士を繋いで、揺れないようにしてるみたいだなぁ。」

 

「たいちょー、私達もあれやろーなの……」

 

一刀「華琳と桂花に相談してみるよ。」

 

如月「頼む……」

 

一刀「お前も一緒に来るの。」

 

如月「えー……」

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六十八話

一刀「華琳。」

 

「あ、兄様たち。」

 

「どうしたの?こんな時間に二人して。」

 

一刀「ああ、ちょっと話があってな。」

 

「ここではダメなの?」

 

一刀「出来れば、もう少し人目に付かない所がいいな。……華琳の部屋とか。」

 

「あら、私に二人の相手をしろと?」

 

「……きー兄様?」

 

如月「ちょっと待て流流!?俺そんなこと一言も言ってないぞ!ちょっと!目から光が無くなってるよ!?怖いからやめて!?」

 

「私にそんな趣味はないし、今夜は秋蘭と遊びたいのよ」

 

一刀「そういうのじゃないよ。ほら、流流もその目、やめてあげて。」

 

「……本当ですか?」

 

一刀「ホントホント。ちょっと晩酌に付き合ってもらうだけだから。」

 

「まったく、誘い文句ならもっと上手い言葉を考えなさい。では流流。例の件頼むわね。」

 

「はい!」

 

如月「ふぅー怖かった……で、例の件って何?」

 

「たいした用ではないわ。」

 

「おお、華琳。ちと用があるんじゃが……良いか?」

 

「あら?祭に雛里。どうしたのかしら?」

 

「ああ。江陵から参入し、立場上あまり言わないようにしておったのじゃが……」

 

「言ってみなさい。」

 

「さすがに兵達の船酔いが酷すぎる。これでは戦にならん。」

 

「確かにそうね。戦は策で補うと言いたい所だけど……何か対策でもあるの?」

 

「はい。あります。」

 

「雛里、言ってみなさい。」

 

「この辺りの漁師たちは、船酔い対策のために船同士を縄で結ぶ方法をとっています。それを船団で応用したいと思います。」

 

一刀「そういえば、訓練中にも縄で繋がってる小舟をいくつか見たな。」

 

「はい。船同士を繋げば、安定性が増しますから酔いにくくなりますし、陸と同じように動けます。もちろん船の大きさが違いますから、縄ではなく丈夫な鉄の鎖を使う必要がありますが……」

 

「けれどそこまで頑丈に繋ぐと、火計には弱くなるわね。」

 

「この季節の風はこちらの岸から向こうの岸へと吹いていますので、風下の蜀呉の連合が火計を使うことはありえません。」

 

「なるほど。その鎖はすぐに準備出来るものなの?」

 

「実の所、すでに近くの鍛冶屋に話は付けておってな。許可さえ出れば、すぐにこちらへ取り寄せられる状況なのだ。」

 

「ならば、その交渉はあなた達に任せましょう。細かな指示は軍師の誰かを手配しましょう。」

 

「ふむ、ならば善は急げじゃ雛里。すぐに行くぞ。」

 

「あわっ!待ってくださいよ~祭様~。」

 

一刀「嵐の様な人だったなぁ……」

 

「……そうね。」

 

如月「……」

 

一刀「如月も黙ってないで……」

 

「しっ。部屋の前までついてきなさい。」

 

一刀「お、おう……」

 

華琳に従い少し離れた華琳の部屋の前まで移動し

 

如月「大丈夫そうだぞ。」

 

「ええ、そうね。」

 

一刀「一体どうしたんだ?華琳の部屋の前まで来て。」

 

如月「いくら祭さんが準備のために急いで行ったとしても、あそこじゃ近すぎるだろうが。」

 

一刀「あ、そっか……で、本当に鳳統ちゃんの言う通りにするのか?」

 

「ええ。でも、船酔い対策に有効でも、こちらが全滅させられては意味が無いわ。ちゃんと指示は与えるわよ。如月。」

 

如月「ああ。真桜に頼んでくるよ。祭さん達が鎖を持ってくるまでに説明しとくよ。来たらこっちに回してくれ。」

 

「ええ。お願いね。」

 

如月「そっちからの指示は一刀から来るんだろ?」

 

「ええ。」

 

如月「了解。んじゃ、行ってくるよ。」

 

そう言って真桜の所へ向かった

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

六十九話

黄蓋side

 

船酔いだらけの兵士ために揺れを少なくするための対策として、曹操に進言してみるとなんと許可が下りた

 

「まさか、許可が出るとはなぁ……まぁ良い。雛里、準備の方は?」

 

「はい。すでに完了しています。もうすぐ運んでくると思いますが……あっ!来ました。」

 

「おい!そこの馬車!」

 

「一足先に夏候惇に捉まってしまったな。」

 

「あわわ……どうしましょう……」

 

「なに、このままやつの所へ行って説明すればよい。いくぞ。」

 

「は、はいっ!」

 

 

「おお、待っておったぞ。」

 

「黄蓋に鳳統。これは何の一団だ?」

 

「少し前に華琳から頼まれたのだ。船酔い対策に使う、船を固定するための鎖を運ばせてきた。」

 

「そんな話は聞いておらんぞ。」

 

「先ほど急ぎで提案させてもらったのだ。なんなら確認してもらっても構わんぞ。」

 

「季衣、確認を。」

 

「はいっ。」

 

「その必要はないわ。」

 

「桂花。これは一体どういう事だ?」

 

「黄蓋の言った通りよ。船を鎖でつなぎ合わせて、揺れを小さくする。この辺りの風習だそうよ。」

 

「ああ。昼に見た時、繋いである船が多かったのってそういうことだったんですね。」

 

「黄蓋。あとの作業はこちらでやるわ。」

 

「ふむ。ならば、これを運び終えたら休ませてもらうことにするかの。」

 

「向こうに工兵の宿舎があるから、そこに置いてちょうだい。」

 

工兵の宿舎に向かう途中で

 

「ふぅー、助かったよ雛里。」

 

「姉様、声が大きいよー。」

 

「っと、わりぃわりぃ。」

 

「今の所、計画は順調です。そうですよね、祭様。」

 

「うむ。十日後の夜中には風向きが変わるだろうから、そこが決起の時になる。」

 

「風向きが変わる……ねぇ。本当かよ。」

 

「地の者しか知らんことだ。」

 

「ふーん……っとそれより、こちらの兵は置いて帰ります。魏の甲冑を纏わせているので軍の中に並べても気付かれないでしょう……決起の時に巧く使っていただければ。」

 

「助かる……雛里。」

 

「はい?」

 

「お主は劉備殿の所へ帰れ。このような死兵の戦場にいるべきではないのでな。馬超、連れてい行ってやってくれ。」

 

「黄蓋殿……」

 

「祭様……」

 

「あとは老兵の仕事よ。叶うなら、雪蓮殿や冥林に無礼なことを言ってすまなかったと……代わりに詫びておいてもらえんか?」

 

「……必ずや。黄蓋殿も……ご武運を。」

 

「うぅ……祭さまぁ……」

 

「お主らもな……行け!」

 

馬超達が鳳統を連れて戻ったのを見送り

 

「……行ったか。まったくお主らも物好きじゃのぉ。」

 

「我ら全員、黄蓋様のことが好きなのですよ。」

 

「……ふっ、はははは。バカじゃのお主ら。よし、バカ者達のためにいい酒でも振る舞ってやるかの。」

 

「いつも飲んでおられた陳留から取り寄せていたあの酒ですか?」

 

「いや、あれよりももっといいものじゃ。」

 

「それは楽しみです!」

 

ふふ、如月の困った顔が浮かぶの。まぁ、手向けにさせてもらおうかの

 

黄蓋sideout

 

 

 

城の外に出て、すぐ近くの工兵の宿舎へ

 

如月「おーい真桜。ちょっといいか?」

 

「あれ?副長、どないしたん?はっ……もしかして夜這い?でもウチの体は隊長のもんやで。」

 

如月「くらえ、デコピン!」

 

「いったー!冗談やないの……で、どないしたん?」

 

如月「工兵隊のみんなにやって欲しいことがあるんだが……」

 

「すまんが誰かおるか?」

 

「ん?誰やろ?はーい、いますよー。」

 

「失礼する。おや?如月、どうしたこんな所で?」

 

如月「いや、例の件の説明に来たところだったんだけどね。」

 

「例の件?」

 

如月「ああ、船の揺れを抑えるために船同士を繋いだらどうだって提案されて、華琳が許可したんだよ。」

 

「ああ、そのための鎖が思ったよりも早く届いてな。そしたら荀彧がここへ運んでくれと言ったので運んできたのじゃ。」

 

「もしかして、話って……」

 

如月「そう。徹夜でやって欲しいんだ。もちろん拒否権はない。」

 

「おにー!」

 

『あくまー!』

 

「では、儂は届けたからもう休ませてもらうぞ。」

 

如月「うん。お疲れ様、祭さん。」

 

「うむ。ああそうじゃ如月。」

 

如月「ん?」

 

「お主の酒もらっていくからの。」

 

如月「えっ?」

 

「またの。」

 

如月「ちょっと、祭さん!?……はぁ、行っちまった。」

 

「天誅や。」

 

如月「うるせーよ。で、真桜。話を戻すぞ。」

 

「え?まだ何かあるの?」

 

如月「ああ。この鎖の取り付け部分を簡単に外れないようにしつつ、簡単に外せるようにしてくれ。」

 

「え、何それ。マジで言うとるん?」

 

如月「真剣と書いてマジと読むくらいは。頼むよ、これは天才のお前が率いる天才軍団のお前たちにしか出来ないことなんだ!」

 

『天才……』

 

如月「やってくれるか?」

 

「よし、分かった!やったろうやないの!なあ、みんな!」

 

『おおーー!!』

 

『やってやるぜー!』

 

如月「(チョロッ!まぁ……)さすが天才真桜率いる天才工兵たちだ。これに関しては第一功になりえるからな華琳にも言っておく。これが成功すれば……」

 

「成功すれば?」

 

如月「予算アップ間違い無し!」

 

「よっしゃー!俄然燃えてきたでー!お前ら!予算勝ち取るためにもやったるでー!」

 

『おー!!』

 

 

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七十話

真桜と工兵達が船同士を鎖につなぎ始めて数日後

 

「船が揺れないってさいっこーなの!みんなー!気合入れて今日の訓練もがんばるのー!」

 

一刀「……元気いっぱいだなー。」

 

「そうですね。この鎖のおかげですよ。」

 

一刀「確かに。ここまでの効果があるとは思わなかったけどな。けど……」

 

相当な突貫工事で付けられたらしく、乱雑に叩きつけられた釘の痕と『さわるな!』と書かれた札がべたべたと貼られている

 

如月「お前らそれには絶対に触るなよ。」

 

一刀「あ、如月。」

 

「おはようございます如月さん。」

 

「ふくちょーおはよーなのー。」

 

如月「ああ、おはよう。……で、もし触ったりしたら……」

 

『触ったりしたら?』

 

如月「いくらお前たちでも、真桜の螺旋槍でぐちゃぐちゃにされるぞ?」

 

一刀「はっはっは、そんなまさか……」

 

「触りなやっ!」

 

寝てた真桜が起きて、突然叫び、三人はビクッ!ってなっていた。

 

如月「真桜。こんな所で寝てたら風邪ひくぞ。中で寝て来い。昼間の調練はこっちでやっとくから。」

 

「ふわぁ……うん、副長の言う通りにするわ……ああ、もしそれに触ったりしたら……」

 

一刀「触ったりしたら?」

 

「ウチの螺旋槍でグチャグチャにすんで。それがたとえ華琳様や春蘭様でもや。」

 

『ぜ、絶対に触りません!』

 

「ん……なら寝るわ……おやすみ……」

 

そう言って仮眠室へ向かう真桜

 

「こ、怖かったのー……」

 

「あ、ああ……」

 

一刀「なぁ如月。ザメハで眠気は取れるんじゃないのか?」

 

如月「眠気は取れても気力ややる気までは回復しないよ。気力ややる気がなければ効率は落ちるし、それに機械じゃないんだから。まぁ、生物の三大欲求には勝てないと言うことだ。」

 

一刀「そうだな。確かに。」

 

「隊長。如月さん。少し気になることが……」

 

如月「どうした凪?」

 

「はい。あそこの船の兵達なのですが……」

 

凪が指を指したのは俺達が乗ってる船の二つ隣の船だった

 

一刀「あそこの船の兵士たちがどうかした?」

 

「あそこの船の兵達は知らない顔ばかりです。この意見は沙和とも合いました。」

 

一刀「え、まさか全員覚えてるの?」

 

「いえ、さすがに全員は……ですが一人二人は教えた顔がいるはずです。」

 

「あ、たいちょー。あれって……」

 

沙和や凪の知らない兵士たちと親しげに話しているのは

 

如月「祭さんか……」

 

一刀「凪、華琳に報告を。黄蓋さんに気付かれないようにな。」

 

「了解です。」

 

 

 

 

「ふむ。見たことのない顔の兵士が祭と親しく談笑していた……と。」

 

「はい。なので黄蓋殿の兵ではないかと。」

 

「十中八九そうでしょうね。祭や祭の兵士たちが動いたとき、混乱してる中でもウチの兵だとすぐに分かるようにしたほうがいいわね。何か良い案でもある?」

 

「そうですねー……黄色い布でも身につけますかぁ?」

 

「黄色い布ね……いいわね。祭に気付かれないようにウチの兵にくばりなさい。風、すぐに準備を。」

 

「かしこまりましたー。」

 

「凪は祭以外の将全員に通達を。」

 

「はっ!」

 

 

 

時が経ってその夜

 

如月「さーて、晩飯何作ろう……」

 

そんなことを考えていたら

 

バタンッ!

 

「きー兄ちゃん!一緒にご飯食べよー!」

 

「おなかへったのです~。」

 

「ちょっと季衣、風さま!ダメですよ!きー兄様お騒がせしました。ほら二人ともいくよ。」

 

勢いよく部屋の扉を開け、食事を誘ってくる季衣と風。そして二人を連れ出そうとする流琉の三人がやってきた

 

如月「流琉、別にいいよ。一緒に食べようぜ。」

 

「やったー!ほら流琉!」

 

「如月さんが良いと言っているのですから、良いのですよー。」

 

「うぅ……なら失礼します。」

 

俺がOK出したもんだから、申し訳なさそうに入ってくる流琉。そんなに気にしなくてもいいのに。でもまぁ、そこが流琉のいい所か

 

如月「ちょうど今から作ろうと思ってた所だ。何か食べたいものある?」

 

「お腹いっぱい食べたい!」

 

「風は軽くつまめるものを~。」

 

如月「流琉は?」

 

「えっと……じゃあこの前の麻婆春雨がいいです。」

 

「麻婆春雨?何それおいしいの?」

 

「うん!春雨っていう麺と麻婆を合わせたやつなんだ!」

 

「へぇーおいしそうですね~。風も食べてみたいです~。」

 

如月「了解。麻婆春雨とじゃあ親子丼でも作るか。」

 

メニューを決め作り始める。ちなみに親子鍋は職人さんに作ってもらった一品ものだ!

 

四人で晩飯を食べ、雑談をしていたら

 

「ZZZ……」

 

「ぐぅ~……」

 

如月「何か静かだなと思ったら、寝ちゃってたのか。」

 

「ほら季衣、風さま起きて下さい。」

 

如月「そのまま寝かせておいて流琉。ベットに運ぶから。」

 

季衣、風の順でお姫さま抱っこしてベットへ運ぶ

 

如月「二人とも軽すぎだろ。ちゃんと飯食ってんのか?……そういえば季衣はたくさん食ってたわ。」

 

本当にあの量食べてどこに栄養がいってるんかね。あれ全部パワーにかわってるとか?そんなことを考えていたらクイクイと流琉が服を引っ張っていた

 

「きー兄様……」

 

如月「ん?どうした?」

 

「あの……その……ぎゅってしてほしいです……」

 

如月「そうだな久しぶりだもんな。ほらおいで流琉。」

 

「はいっ!」

 

胸に飛び込んできた流琉をぎゅっと抱きしめる。少しの間抱きしめていたら顔を上げうるうるとしためでこちらを見てきて

 

「ちゅー……してほしいです……」

 

如月「ん、了解……ん。」

 

「んっ……好きです……きー兄様……」

 

如月「俺も流琉のことが好きだよ。」

 

「ボクもきー兄ちゃんのこと好きだよ。」

 

「風も如月さんのこと、大好きなのですよ~。」

 

「「ふぁっ!」」

 

声がした方を見ると季衣と風が起きていた

 

如月「えっと……二人はいつから見てたのかなー?なんて……」

 

「お二人がちゅーしてる所からですー。」

 

「はうっ!」

 

流琉の顔が火を噴きだすんじゃないかってくらい真っ赤になってる

 

「きー兄ちゃんずるいよー。流琉だけじゃなくてボクにもしてよー。」

 

「風にもしてほしいのですよー。」

 

如月「ああそうだな。流琉だけじゃ不公平だもんな。ほらおいで。」

 

「うん!」

 

季衣がダイブしてきたので、しっかり抱きとめ季衣とキス。そのあとに風ともキスをしてその日は一緒に寝た。

 

三人相手はきついっす

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七十一話

そういえば、ちょっと前(調べたら2ケ月前だった)に華琳が如月に「ふんっ!」っていって制裁?を与えるシーンに需要があることが判明。
なんか華琳の遠慮なささが好きみたいです。




如月「ふぁ~……呉と蜀の連中はいつになったら攻めてくるのかねぇ……ああ、火計に乗じて攻めてくるからそれまで待ちか。まぁいっか、眠たいから寝るか。お休みー。」

 

「副長!大変です!黄蓋が裏切り、各船に火が!」

 

如月「えぇ、今日かよ……まぁ、いっか。で、みんな黄色い布は着けたか?」

 

「はい!みな着けております!」

 

如月「なら俺は黄蓋さんの所に行ってくるわ。お前らは一刀の指示に従って行動しろ。」

 

「了解です!」

 

 

 

 

 

 

 

「ぐはっ……黄蓋様……先に逝きます……」

 

「くっ、なぜ同じ鎧を着た相手を、ここまで迷いなしに攻められるんじゃ?一体どういう手を使ったと言うのだ。」

 

如月「いやーそれはさ、この黄色い布を巻いてるからなんだよね。」

 

「如月!いつの間に!どうやって来た!?」

 

如月「これでもさ天の御使いの片割れだからね。空くらい飛べるさ。まぁ、一刀は無理だけどね。ははは。」

 

「だが如月。お主一人で儂らを止められると思うておるのか?風はすでにこちらに吹いておる。火計さえ成功すれば……」

 

如月「その火計もさ、ほらあれ見て。」

 

「ん?……なっ!?」

 

真桜が作った絡繰で鎖がすぐに外れるようにしてあるため、消火が間に合ってない船はどんどん鎖を外され、真桜の螺旋槍で沈没させていた。

火の移りがそれほど酷くない船には凪が気弾を放ち、爆発させ炎を吹き飛ばしていた。そのほかにも兵達が頑張って消火活動をしている。

 

「なんと、気の爆発や破壊で火事をかき消し、鎖の連結部もいとも簡単に外せるようにしてあるとは……」

 

如月「さぁ、どうする祭さん?兵達と一緒に投降してくれたら楽なんだけどさ。」

 

「はっはっは、アホなことを言うでないわ。お主を討ち取って儂の命と引き換えにこの火計を成功させる!」

 

如月「はぁ……しょうがないか……スピオキルト。準備かんりょ…おっと!」

 

「はぁ!」

 

「でりゃ!」

 

如月「まったく、いきなり斬りかかってきやがって……うおっ!」

 

キン!キン!キン!と、飛んできた矢を打ち落とす。

 

如月「いやー、これが黄公覆殿の弓術か。」

 

「さすが如月。じゃが、これならどうじゃ!」

 

次は四本同時に飛んできた上に全部タイミングがバラバラで飛んできた。

 

如月「うお!あっぶねー……」

 

「オラァ!」

 

「死ねぇ!」

 

兵士が数人で斬り付けてきたがそれをかわし、首を刎ねていく。それでも兵達が斬りかかり、それを補助しながら矢を放ってくる祭さん。

 

「ほう……中々やるのぉ。」

 

如月「こちとら多対一の戦闘訓練ばかりやってるからね。夏候惇と夏侯淵の二人に比べればよゆーよゆー。」

 

「副長!大丈夫ですか!?」

 

如月「大丈夫だ。こっちは任せておけ!お前らは引き続き消火と蜀と呉がすぐに来るから迎撃準備を!」

 

「はっ!ご武運を!」

 

「良いのか?味方を呼ばんでもっ!」

 

ヒュン ヒュン ヒュン 

 

ガキン ガキン ガキン

 

如月「だから言ったでしょ。よゆーだって!」

 

祭さんが放つ矢を落としながら兵を斬っていく。全ての兵を斬り殺し、残るは祭さんのみとなった。

 

如月「さて、残るは祭さんだけだね。」

 

「……化け物か、お主は。」

 

如月「それ、ひどくないっ!」

 

『如月!』

 

如月「ん?ああ、華琳に春蘭に秋蘭か。来るのが遅かったな。」

 

「ええ、少しね。黄蓋よ、大人しく投降しなさい。」

 

「ぬかせ!我が身命の全てはこの江東、この孫呉、そして孫家の娘たちのためにある!」

 

「そう……秋蘭。」

 

「はっ。」

 

如月「あー、華琳、秋蘭。悪いけど俺にやらせてくれないか?」

 

「なんと……」

 

「あなた……」

 

如月「祭さんもいい?秋蘭にって言ってたけど。」

 

「そうじゃな。お主には世話になったからの。」

 

そんなやり取りをしていたら

 

「祭!」

 

「祭殿!」

 

ようやく呉の連中が来た。まぁ、火計が成って混乱してる中、祭さんを助け出そうとしてたみたいだが、こっちが速攻で対応したもんだから出遅れたみたいだな。

 

「おお、冥林に策殿!」

 

「祭殿……ご無事か……」

 

「ははは、無事なものか。お主と無い知恵を絞って考えた苦肉の策も、曹操に面白いように見向かれておったわ。」

 

「しかし……ご無事で何よりです!早くお戻りください!」

 

「……ふむ。それはちと、難しそうじゃ。お主らの船とも距離がある上に、目の前にいるのが呂布と互角に戦う男じゃぞ。逃げれる気がせんわい。」

 

『祭!』

 

「蓮華様に小蓮様……お二人の護衛の任を賜っておきながら、ろくにお守りできずに本当に申し訳ありませぬ。」

 

「祭ぃ……」

 

「小蓮様にもこの黄蓋秘伝の手練手管、ご教授したかったのじゃがな……」

 

「そんなの、これから教えてくれればいいじゃない!」

 

「あら?私には教えてくれないのかしら?」

 

「何と……ははは。蓮華様も言うようになりましたな。」

 

普段から真面目そうな孫権にそんなことを言われた祭さんは嬉しそうに笑ってる。

 

「皆、祭を助けるわよ!総員……」

 

孫策が祭さんを助けようと号令をかけようとしたが、

 

「来るなっ!」

 

それを祭さんがさえぎり

 

「聞けぃ!愛しき孫呉の若者たちよ!聞け!そしてその目にしかと焼き付けよ!我が身、我が血、我が魂魄!その全てを我が愛する孫呉の為に捧げよう!この老躯、孫呉の礎となろう!我が人生に、何の後悔があろうか!呉を背負う若者たちよ!孫文台の建てた時代の呉は儂の死で終わる!じゃがこれからはお主らの望む呉を築いていくのだ!思うがままに皆の力で!しかし決して忘れるな!お主らの足元には、呉の礎となった無数の英霊たちが眠っていることを!そしてお主らを常に見守っていることを!儂も今より、その英霊の末席をけがすことになる!如月!」

 

如月「遺言はもう大丈夫ですか?」

 

「ああ。さあ一思いにやれ!」

 

如月「分かりました……はっ!」

 

祭さんの鳩尾に拳をめり込ませ

 

「かはっ……如月……貴様……」

 

鳩尾を抑えたまま、くの字になりながらも顔をこちらに向ける祭さんに

 

如月「ゴメン、祭さん……ラリホーマ」

 

祭さんの額に人差し指をあてて、ラリホーマを唱える。

 

「お主……覚えておれよ……」

 

眠ってしまった祭さんをお姫さまだっこで担ぎ、

 

如月「はっ!」

 

トベルーラで孫策たちの船へ。

船に着地したら、孫呉のみんながこいつ何してんの?みたいな目で見てきたので祭さんを床へ降ろしたら、はっとしてみんなで駆け寄ってきた。

 

「祭!」

 

「祭殿!」

 

如月「大丈夫。寝ているだけだ。」

 

「なぜ……こんなことを……」

 

如月「んーそうだなぁ……あっ、そうだ!黄蓋さんがさ、こっちに来た時から、俺が造ったお酒ほとんど飲んじゃってさ。しかも兵達にも勝手に振る舞っちゃったから、その代金の支払いをさせなきゃでしょ。ちゃんと支払ってもらうために生かしてこっちに連れてきた。黄蓋さんに言っておいてください。飲んだ分はちゃんと払ってよね。おごりじゃないよ。って。」

 

「あ、ああ……伝え……承った……」

 

如月「んじゃ、俺は戻るんで。」

 

「このまま、はいそうですかと帰すと思ったか?」

 

呉の将の一人が戻ろうとしていた俺の背後に回り込み、首筋に刃を突き付けていた。

 

如月「はぁ……甘寧さんよ。それで優位を取ったつもりかい?……よっと!」

 

「うわっ!」

 

背後にいた甘寧の腕をつかみ、一本背負いで投げ飛ばしたあと、バックステップそのままにトベルーラで上空へ避難したと同時に

 

「黄蓋殿!」

 

「黄蓋さん!」

 

「祭さま!」

 

と蜀の連中がやってきた。その中に鳳統の姿を発見。ふむ、無事にあっちに戻ってたか。

 

如月「それじゃ、呉と蜀のみなさん。さよ~なら~。」

 

何か言ってるけど聞こえないからOK。

 

 

 

 

 

如月「ただいまー。がふっ!むぎゅっ!」

 

「さて、どういうことか説明してもらおうかしら?」

 

帰ってきた途端に鳩尾に正拳突きをくらい、うずくまった所で頭を踏まれ説明を求められた。

 

如月「その前に……足をどかして下さい……」

 

しょうがないわねとため息を吐きながら足をどかす華琳。

 

「で、訳を話しなさい。」

 

如月「えーっと祭さん……黄蓋さんはここで死ぬべきじゃないと思った。黄蓋さんを殺せば、やつらは敵討ちとばかりに突撃してきただろう。それに付き合わされる俺達も被害が甚大になる。それを避けたかった。ただそれだけだ。」

 

「ふーん。」

 

如月「……何だよ。ふーんって……」

 

「いいえ、別に。」

 

ニヤニヤした顔で俺を見る華琳。くそっ!

 

如月「あ、そうだ。」

 

「何?まだなにかあるの?」

 

如月「ピンク……桃色もいいけど、たまには白もいいんじゃないか?一刀も喜ぶと思うが?」

 

「桃色???……あ、あなた!いつ見たの!」

 

如月「踏まれてる時に目線を上げたらチラっと「ふんっ!」ありがとうございます!」

 

「華琳!敵は撤退していったで!追うか?……ってなにやっとるん?」

 

「別に何もしてないわ。」

 

そう言いながらも、俺を椅子代わりにして座ってる。

 

「で、霞。あの娘たちを追う必要はないわ。それよりも、船から降りて軍議を開くわ。みなに伝えてちょうだい。」

 

「おう。了解や!」

 

 

船から降りて軍議を開いた。建業を落とすための移動方法で陸路か水路でと議題に上がったが、

 

「陸路だっ!」

 

と春蘭の一声によって陸路となった。

まぁ、船酔いしてるやつらばかりだったからしょうがないよね。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七十二話

軍議後に一日休養日を取った後烏林から江夏へ船で行き、江夏からは途中途中で物資を補給しつつ陸路で建業を目指した。

 

如月「先行してる春蘭からこの先の芜湖(ぶこ)って所で一旦停止してるって。」

 

「そう、なら私達もそこで合流しましょう。」

 

如月「りょうかい~。」

 

で春蘭たちと合流後、

 

「よくもまあ、こんな所にいて無事だったわね。」

 

「孫策も最後の決戦を挑む気でしょうから、先遣部隊を全力で叩き潰すようなマネはしないかと。」

 

「逆になりふりかまわず……という考えもあるわよ。」

 

「お……?」

 

「はぁ……考えてなかったのね。」

 

額に手を当ててタメ息を吐く華琳。

確かに目と鼻の先に呉軍がいるんだから攻められることも考えとけっていうのは基本だよなぁ。

 

如月「ま、無事だったから良かったんじゃないの?んじゃ、俺は右翼に戻るわ。」

 

「ええ、そうね。前向きに考えましょう。それじゃあ、そっちはまかせたわよ。」

 

如月「了解!」

 

配置先の右翼へ戻る途中、

 

如月「一刀と霞の姿が見えなかったけど、どこに行ったんだ?……っと独り言を言っていたら姿を見せたな。おーい!一刀!」

 

一刀「おっ、如月か。どうしたんだ?」

 

如月「それはこっちのセリフだ。もしかして、霞を伏兵として忍ばせてたのか?」

 

一刀「その通り。まぁ、一応な。」

 

如月「その一応のおかげで春蘭と季衣が危険な目に遭わなかったからいいじゃね?」

 

一刀「そうか?なら良かったよ。」

 

如月「んじゃ、俺は右翼に戻るから中央はまかせた。」

 

一刀「おう!またあとでな。」

 

一刀と軽く話した後、一刀と別れ右翼へと戻った。

 

如月「ただいま~。」

 

「おかえりなさい。如月さん。すでに準備は整っています。」

 

如月「ありがとう、凪。さて、そろそろだと思うが……始まったみたいだな。」

 

中央の方で華琳と孫策の舌戦が始まった。

 

如月「さて、敵左翼は誰かな?」

 

「孫権と甘寧です。」

 

如月「あれま、その二人か。俺に当ててきたって感じかな?っと、舌戦が終わったみたいだな。」

 

気がつけば舌戦が終わり、両者とも陣に戻っている所だった。

 

如月「さて、俺ら右翼は敵左翼を崩した後、敵本陣を叩きに行く部隊と建業を目指す部隊とに分かれる。だがまずは目の前の敵を倒すことだけを考えろ!」

 

スピオキルトを唱えた後、本陣の華琳から突撃命令が出た。

 

如月「さて……みんな行くぞ!」

 

『おおー!!』

 

 

 

 

 

こうして始まった呉との決戦。

始まって数刻たったが中央、左翼ともに動きなし。まあ、押しているようだが。

で、俺の左翼はと言うと、

 

「甘寧隊、第一陣を突破して第二陣まで来ました!」

 

如月「スゲー突破力。これが国の存亡をかけた者の力か……。凪をここへ呼べ。俺の代わりに指揮させる。」

 

「はっ!」

 

伝令が凪の元へ走って行ったのを見て、

 

如月「ちょっとばかり舐めてたな。反省反省。」

 

「如月さん。」

 

如月「来たか。凪、少しばかり指揮を頼む。ちょっと甘寧を止めてくる。」

 

「了解です。ご武運を。」

 

 

 

「皆の者!侵略者相手に手加減なんぞするな!地獄へ送ってやれ!」

 

「はっ!……うぎゃー!」

 

「がはっ!」

 

如月「その辺にしといてもらおうか、甘寧。」

 

「貴様は龍谷如月。こんな所まで来るとはな。」

 

如月「正直、君達を甘く見ていた。兵達の武力、組織力はこちらが上だったからな。指揮するだけだと思っていた。」

 

「ふん。我ら孫呉を舐めるなよ?」

 

如月「ああ、今まで舐めていたことは謝ろう。だが……」

 

腰に差している鞘から剣を抜き構える。

 

如月「ここで君を止めよう。ここから先へは行かせん。」

 

「甘寧様……」

 

「お前たちは周りの敵を。」

 

「はっ!」

 

兵達に指示を出した甘寧も剣を構え、

 

「では、貴様の首をいただこう。」

 

如月「やれるもんならやってみなっ!」

 

二連撃を放つが二つとも受け流され、

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

逆に三連続で斬り付けてきた。

受け流されて崩れていた体勢を素早く立て直し、受け止めて鍔迫り合いの形になった瞬間にバックステップで距離をとる甘寧。

 

如月「さすが甘寧。素早いな。」

 

「そっちも私の攻撃を簡単に受け止めておいてよく言う。」

 

ついていけないほどではないが、今まで戦ってきた武将がパワータイプばかりでスピードタイプはほぼ初めてなのでちょっと慣れるまで苦戦しそうだ。

 

「はぁぁぁぁっ!」

 

と考えていたらあっちから仕掛けてきた。

 

如月「っと。危ねえ……なっ!」

 

と、こちらも反撃を開始。

そして数十合打ち合ったところで、

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

如月「どうした?疲れてきたのか?こっちはまだまだいけるぞ?」

 

なんて言ってるが打ち合ってる最中に隙を見てはベホマを唱えて体力を回復していただけだ。

 

「バカなことをぬかすなっ!まだまだいけるぞっ!」

 

と、俺に殺気をぶつけてきた所で、

 

ジャーン! ジャーン! ジャーン!

 

「撤退の鐘だと!?」

 

驚いている甘寧に

 

「思春殿。」

 

「明命?」

 

小柄でロングの黒髪で忍者みたいな恰好をした女の子が現れた。この子が周泰か。

 

「はい、思春殿。本陣、右翼とも破られ、残るはこの左翼のみとなってしまいました。」

 

「なに!?雪蓮様たちは無事なのか!?」

 

「はい、ご無事です。雪蓮様たちは蜀へと逃れられましたので、各自、蜀へ向かえとのことです。」

 

「くっ……分かった退こう……」

 

如月「目の前にいるのにそう簡単に逃がすと思うか?」

 

「逃げさせてもらいます!てい!」

 

そう言った周泰は懐から取り出した玉を地面へ投げつけた。

すると辺り一面が煙に覆われた。

 

如月「煙玉かよ!クソ!……逃がしたか……」

 

煙が晴れた後にはもう二人の姿はそこにはなかった。

 

「副長!ご無事でしたか……」

 

如月「ああ。いらん心配をかけた。」

 

「いえ。それよりも追撃はどうしましょう?」

 

如月「いや、追わなくてもいい。この辺は沼地が多いから、今から追いかけても捕まえられないだろう。本陣と合流して建業を落とすぞ!」

 

「はっ!」

 

 

その後、本陣と合流したあと建業へ向かった。

建業に着いた我々を待っていたのは建業の無血開城だった。

 

 




書きたい話があるんですが、拠点フェーズなのであと2、3話あとになるかも。

早く書きたいのですがショボくなるのも嫌なので一話一話ちゃんと書いていって、なるべく早く書きたいですね。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七十三話

建業に着き、何の抵抗もなく無血開城により建業の中へ入った俺達はすぐさま城へ向かい、呉の地の情報を精査すると共に街の代表者たちへの挨拶も行った。

その後、呉領内での反乱分子の制圧に春蘭や秋蘭達が、各街へ赴き警備体制の設立を俺と一刀が中心に行った。

そんな慌ただしい日々が半年ほど続いたある日、

 

如月「とりあえずこんなものかな?」

 

クミン、ターメリック、コリアンダー、カルダモン、唐辛子、グローブ、ナツメグ、シナモン、胡椒の九種類の香辛料と豚肉が入った紙袋を持って市場を歩いてる。

 

如月「さすが建業。呉の首都だけあって陳留じゃ手に入りづらい香辛料が簡単にしかも、安く手に入るとはな。よし、帰るか。」

 

お目当ての物が手に入った俺はすぐさま作業に入りたかったので寄り道せずに城の食堂へと向かった。

 

 

 

如月「さてスパイスの配合をしなきゃだな。」

 

城の食堂に戻った俺はさっそく薬研(やげん)で各スパイスをすりつぶし、スパイスを配合していく作業へと入った。

 

如月「甘口用、中辛用、辛口用の三つが出来たけど本当に出来てるのかな?ちょっと作ってみるか。」

 

甘口用のスパイスを一前分鍋に入れて溶かしていくこと数分……

 

如月「全部溶けたかな?どれどれ…おお!ちゃんと出来てる!他のはどうだろう?」

 

中辛用、辛口用も一人前分溶かして味見すると

 

如月「お!両方ともいい塩梅だな。さてもう一回調合…「如月。何を作っているのかしら?」…ん?」

 

声がした方を向くと華琳の姿があり、その後ろに秋蘭、流琉、一刀の姿があった。

 

如月「どったの華琳?三人を引き連れて。」

 

「良い香りが政務室まで漂ってきてな。その香りが気になって皆、書類に手が付けられなくなってしまったのだ。」

 

一刀「俺は部屋で書類を片付けてた所にその香りが漂ってきて、居ても立っても居られなくなってここまで来たら、鉢合わせしたってことだな。それより如月、それは我が国の国民食である……」

 

如月「カレーだ。」

 

一刀「ひゃっほーい!!」

 

『加齢?』

 

如月「カレーな。歳食ってどうするんだよ…呼びにくかったらカリーでもいいぞ。まだ具材が入ってないが味見するか?」

 

『する!!』

 

四人ともハモりやがった。まぁ、味見でもさせないと納得しないだろうな。

おっと、華琳には甘口を渡さないとな。

味見用の小皿にすくい入れ、四人に渡す。渡されたものを華琳、秋蘭、流琉の三人はまず香りをかぎ、口に含みテイスティングしていた。一刀?一刀は渡した瞬間に口に含んで

 

一刀「あーこれだよ……これなんだよ。」

 

と感動していたな。

 

四人に甘口、中辛、辛口を味見してもらいお墨付きをいただいたので夕食用にもう少し配合しなくちゃな。

ちなみに華琳は中辛でギブアップしてたな。まぁ、辛いものが得意じゃないからしょうがないね。

 

如月「これでよし。」

 

「このまま置いておくだけですか?」

 

如月「ああ、あとは食べる前に温めるくらいだね。ありがとう流琉助かった。流琉が手伝いを申し出てくれたおかげでずいぶん作業が楽になった。」

 

「いえ!新しい料理ですし楽しかったので!それに久しぶりにきー兄様と一緒に料理をしたかったので。」

 

如月「そっか……ありがとう流琉。俺も流琉と一緒に料理が出来て楽しかったよ。」

 

そう言って流琉の頭をなでる。

 

「えへへ。」

 

最初は突然なでられて驚いていたがくすぐったそうにはにかんでいる。

確かに最近は二人とも……いや、みんな忙しくてこんなこと出来なかったからな。本当に今日だけみんなここに居るからな。

 

 

そして夕食時になり、みんな中庭へ集まってきた。

事前にみんなで食べようって事になってたのですぐにみんな揃った。

 

「そう言えば、昼に良い香りがしていたが?」

 

「ですねー。あの匂いを嗅いだらすぐお腹減っちゃって、お昼はラーメン十杯に桃饅と肉饅合わせて四十個食べちゃいましたよーあはは。」

 

「季衣。そりゃあいくらなんでも食べ過ぎやで……」

 

「あの香りのせいで仕事が手につかなっかたわ……これであの香りの元を出さないとしょうちしないんだから!」

 

「落ち着いてください桂花。まぁ確かにあの匂いの元が出されなかったら暴動が起きると思いますが。」

 

「と言うわけなので早く持ってくるのですよー!」

 

「どんな料理なのかなー?」

 

「副長が作った料理やから、おいしいと思うで?」

 

「そう言えば如月さんが市場で香辛料をたくさん買ってる所をお見かけしたな。」

 

「てことは辛い料理なんかな?」

 

如月「辛い系の料理だな。」

 

みんながしゃべっている所にカレーが入った鍋を持って登場。後ろにはご飯を持った流琉と一刀。

 

「あ、ふくちょー。」

 

「きー兄ちゃん!遅いよ!」

 

「如月!貴様、我々をいつまで待たせる気だ!」

 

季衣と春蘭から批難の声が聞こえる。

 

如月「ゴメンゴメン。ほら、準備出来てるからもうちょっと待ってろー。」

 

秋蘭にも手伝ってもらい四人でカレーをよそっていく。

 

「ふくちょー。そっちの鍋はよそわないの?」

 

如月「ああ。こっちの二つはこれより辛いから、これを食べた後で味見してくれ。」

 

流石に初めから中辛や辛口から食べてもらうわけにはいかないからな。

 

みんなに行き渡った所で一斉に食べ始めたみんな。春蘭と季衣は待ってましたとばかりにかきこみ、他のみんなもすごい勢いで食べ進めていた。

 

 

四刻後(約一時間後)には中辛、辛口の鍋も空っぽになってしまっていた。みんな満足してくれたみたいだ。

 

 

 

そんなカレー試食会から一週間後。

詰め所で書類整理をしていた俺の元に街の代表者を始め、商工会のみんながやってきた。

何事かと思ったが話を聞くとどうやらカレーのことを聞きに来たらしい。

ウチの武将たちが自慢までも行かないにせよ、口々においしかったと言っていたのを街の人や店主さん達の耳に入ったらしく、誰が作ったのかを聞いたら俺の名前が出てきたとの事だった。

 

如月「そう言うことだったのね。ビックリした……」

 

「そう言うことなのですよ副長さん。それに……」

 

如月「それに?」

 

「副長さんに作り方を聞いて来いと街のみんなに言われましてな。」

 

如月「ふむふむ。」

 

「もし聞いてこなかったら暴動を起こすと脅されましてな……」

 

如月「は?」

 

「私達商工会の方にも聞いて来いと言われまして……」

 

如月「マジ?」

 

『はい。マジです。』

 

おぉう、そんなことになってたのか……最近書類整理ばかりだったから知らなかったぜ……

 

『副長!俺達からもお願いします!』

 

と話を聞いていた警備隊のみんなが話に加わってきた。

 

如月「お、お前達もか……」

 

「俺達もカレーなるものが食べたいっす!」

 

「楽進様を始め他のお二人からも話を聞いていて、我々も食べたかったのです!」

 

如月「それほどか。分かった、分かったから!落ち着け!」

 

なんとかみんなをなだめ落ち着かせて

 

如月「作り方教えるから。材料も含めて教えるから、代表者が集まれる日程を教えてくれ。」

 

その後、街の代表者と商工会の代表者を集めての調理・試食会が行われ、その味を認めた商人たちの仕入れルートの確保、店主たちへのレシピの伝授などが話し合われた。

そして、商人たちがカレースパイスを領内各地に広めたことにより呉がカレー王国になるのはもう少し後の話……

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七十四話

如月「真桜。頼まれてたもの持ってきたぞ。」

 

「おー副長ありがとさん。その辺に置いといてーな。」

 

如月「ういー。」

 

城の庭の隅にある工房設備。籠城になった時や技術開発用に矢の生産や武器の修理が出来るように作ったものだ。

今日は以前、真桜から頼まれていた材料が届いたので持ってきたわけだ。

 

如月「また誰かに頼まれたのか?」

 

「姐さんに頼まれたんよー。」

 

如月「霞に?この前三倍にしたんじゃなかったか?」

 

「姐さん、使い方が荒くてなー。」

 

如月「なるほど。それでもっと丈夫にしてくれって?」

 

「そうそう。」

 

まぁ、あれだけ戦場を駆けまくってたら消耗も激しいか。

 

「うーん……もうちょっと温度上げなかんなー……」

 

俺としゃべりながらも作業を続ける真桜。

邪魔しちゃ悪いと思い帰ろうとした時

 

「あ……」

 

如月「何?どうし……」

 

ドゴーン!

 

「けふっ……けふっ……」

 

如月「ゴホッ、ゴホッ……なんでいきなり炉が爆発するんだよ!」

 

炉が爆発する直前に真桜を引き寄せてかばったため、爆発の直撃は避けられたが、危ねー……

 

「いやー、そのな……」

 

真桜が理由をしゃべろうとした所で一刀、凪、春蘭、秋蘭の四人がやってきて

 

「酷い有様ですね。」

 

「何があった!劉備の襲撃か!」

 

如月「いや、いきなり炉が爆発してさ……」

 

「そうか。二人とも怪我は無かったか?」

 

如月「ああ、大丈夫だ。」

 

「ウチも大丈夫です。」

 

一刀「それで、どうして炉が爆発したんだ?」

 

「えっとな、姐さんに頼まれて偃月刀を作り直そうとしてな……」

 

一刀が俺と同じことを真桜に聞いていた。

ふむ、さすが種馬きょうだ……種馬ちゃうわ!

っと話がそれた……爆発の原因は炉の限界温度を越えたかららしい。

今爆発したのは研究用のやつで陳留にある作業用ほどではないらしい。

まぁ、陳留のやつなんか、華琳の協力もあってかなりの設備だからな。

 

一刀「じゃあ向こうの炉を取り寄せるって訳には……」

 

「そこまでするくらいなら、ウチが城に戻った方がなんぼか早いわ。」

 

そりゃそうだわな。でも蜀との決戦が控えてる中そんなこと出来るわけ

 

「なら戻ってくればいい。」

 

「ええの?」

 

如月「はい?どういうこと?」

 

「華琳様が午後から国元へお戻りになる。その護衛に着いていけばいい。」

 

如月「国でなにかあったのか?」

 

「いや何もない。ちょっとした野暮用だ。」

 

華琳が決戦前のこんな時に野暮用……自分のことを優先させるなんて珍しいな。

 

如月「なぁ、俺も帰ること出来ないかな?」

 

「大丈夫だと思うぞ。一応、華琳様に確認を取っておいてくれ。」

 

如月「了解。」

 

その後、工房の片づけを手伝った後、華琳に聞きにいくと

 

「ええ、いいわよ。」

 

あっさりとOKが出た

 

「あの娘たちとも全然会っていないのでしょう?しかたないことだけど、釣った魚にはちゃんと餌をあげなさい。」

 

月たちは何かあった時のために陳留に残ってもらっているため、全然会えていなかったのだ。

そうだ!月たちにもカレーを食べさせてあげよう。材料買ってくるか。

 

 

月たちに振る舞うカレーの材料(香辛料)を買いに行っていたため俺だけ遅れて出ることになった。

材料購入後トベルーラで華琳達と合流。

え?トベルーラでそのまま陳留に帰ればいいんじゃないかって?

……そんなの寂しいじゃん。みんなと一緒に帰りたいわけよ。行軍中でも駄弁ったりしているが、こんなにものほほんとしてないからな。

 

 

 

何事もなく数日後に陳留の城へ到着。

季衣と流琉は途中に故郷があったためそこで別れたよ。

城に到着後、真桜は工房へ、沙和は服を買いに街へ、華琳と一刀は二人でどこかへ。

デートという雰囲気ではなかった。

俺は月と詠に一旦帰ってきたことを知らせに行った後食堂へ。

ちょうど休憩中の料理長に今晩の献立を変更できないかの相談したら快くOKしてくれた。

今晩はカレーだ!

その後、詰め所へも顔を出しに行き

 

「兄上!おかえりなさいなのです!」

 

と俺の姿を発見したねねが胸に飛び込んできた。

 

如月「ただいま。ねね。」

 

と飛び込んできたねねを抱きとめ、

 

「ねね。変わったことはなかったかい?」

 

「はい!恋殿を始め警備隊のみんなの頑張りのおかげなのです!」

 

俺達が留守にしている間は恋が見回りを、ねねが事務仕事を行ってくれてたのだ。

 

「あ、如月……」

 

ちょうど警邏から戻ってきた恋が部屋に入るなりトコトコと寄ってきてギュっと抱き着いてきた。

 

如月「恋も俺達がいない間、頑張ってくれてありがとな。」

 

「(フルフル)恋、この街やこの国が大好きだから。当たり前のことをしただけ。」

 

そんな嬉しいことを言ってくれる恋の頭を優しく撫でたあと、詰め所を出てシスターズの事務所へ。

天和と地和は練習してたため人和と打ち合わせ。

みんな忘れてるかもだけど、俺マネージャーやってるからな。

 

如月「この後の予定は建業を中心に活動して、徐々に呉での活動範囲を広げていってくれ。蜀との戦が終わった後は蜀での活動になる。」

 

「分かりました。あ、護衛や雑用の手が足りないのだけれど……」

 

如月「それらの確保は人和たちに任せる。あとで報告してくれ。」

 

「了解です。」

 

如月「ふぅ~。これで決めることはもうないかな?」

 

「はい。これで終わりです。」

 

そう言ったあと椅子から立ち上がり、こちらへ回ってきた人和は俺に抱き着いてきて

 

「ん……ちゅ……」

 

キスをしてきた。

唇同士だけじゃ物足りないと言わんばかりに舌も絡ませてくる人和。

そこまで求められて答えないなんて男じゃない!とことをなそうとしたら、

 

「ふぅ、練習終わり。人和、話おわ……あー!」

 

「どうしたのちーちゃん……あー!」

 

ちっ……これからって時に戻ってきやがった……

 

「姉さん達のバカ……空気読んでよね……」

 

「な、何言ってんのよ!こんな所でやろうとしてる方がいけないんじゃない!こうなったら如月!あんたのおごりで一報亭のシュウマイ食べに行くわよ!」

 

「そうだ!そうだー!如月さんのおごりだー!」

 

如月「へいへい分かったよ。おごるから許してくれ……人和ゴメンな。」

 

「はぁ……しかたないです。こんな所でしようとしてた私たちが悪いんですもの……」

 

その後、一報亭に赴き、たくさん注文されました。

あ、おっちゃん。お代は北郷一刀に請求しといて。

 

 

人和たちと別れたあと、商人組合へ。

以前頼んでいたトマトとアスパラの苗が手に入ったとの報告を受けていたので向かうことに

 

如月「お久しぶりです。皆さん。」

 

「おお!副長さん。お久しぶりです。以前おっしゃっていたトマトとアスパラガスと言うものが手に入りました。」

 

如月「ありがとうございます!」

 

うん。両方とも状態が良い。さっそく農場へ持って行って植えよう。でもすぐに出て行かなくちゃならないから栽培方法を書かなくちゃ。(クイクイ)……ん?

 

「副長さん。あとこんなものも手に入ったんですが……」

 

おっちゃんが見せてくれたものはなんんと!

 

如月「じゃ、ジャガイモ!?」

 

は?確かこの時代には無かったはずだが……

 

「さすが副長さん。この名前を知っているとは。これもお譲りいたしますよ。」

 

如月「い、いいんすか!?」

 

「はい。いつもお世話になっていますので。」

 

よっしゃ!トマトとアスパラだけじゃなくジャガイモまで手に入るとは!

よし、すぐに農場へ行くぞ!

 

 

 

如月「これがトマトの育て方で、こっちがアスパラの育て方で、それがジャガイモの育て方ね。初めて育てるものをこんな形で押し付けちゃってスマン。」

 

「いえ、こんなにも詳しく書いてくださっているのですから如月様の顔に泥を塗るようなことはいたしません。」

 

如月「ありがとな。この戦が終わったらすぐに来るから。これらが収穫出来たら皆で収穫祭でもやるか!」

 

その言葉にみんなは「やったー!」と声を上げる。

収穫祭もあるんだから負けられない理由がまた一つ増えたな。

 

 

晩御飯に月たちを始め料理長たちにもカレーを振る舞ったが、大量に用意したはずなのにすぐに無くなってしまった。

恋がもう無いの?って顔でこっちを見ていたのですごく悪いことした気分になっちまった。

次はたくさん用意するからね。

 




感想等ありましたら是非!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

番外編 1

とある方に許可をいただき、あるキャラを出してみました。

出番があまりないですが、最後まで見てやってください。


追記:サブタイトルを番外編1へ変更しました
あのまま物語が進むのでは?と思ってしまった方々、申し訳ございませんm(_ _)m


とある休日に何か面白いもの無いかなぁ~と街を歩いていたら、

 

如月「ん?あれは華琳?」

 

華琳が服屋へ入っていく姿を見つけた。

 

如月「ふむ、一刀をからかうために入ったんだろうか?……面白そうだから俺も行ってみよう。」

 

ということで、華琳が入っていった服屋へ

 

如月「えっと、どこにいるんだ?……あ、いたいた。」

 

店に入り店内を見渡すとすぐに華琳の姿を見つけ、近くへ

 

如月「よっ、華琳。何してるのこんな所で?」

 

「あら如月。あなたこそどうしたのよこんな所で?」

 

如月「俺?俺は華琳がここへ入っていくのが見えたから、一刀に面白いことしてるんじゃないかと思ってさ。だから俺も混ぜてもらおうかなぁーと。」

 

「残念。それも面白そうだけれど今日は違うわ。秋蘭と来たの。」

 

如月「秋蘭と?新しい服でも買うのか?」

 

「私ではなく秋蘭がね。」

 

如月「ふーん。」

 

華琳と話してたら目の前の試着室のカーテンが開き、

 

「あの華琳様……本当に似合ってます……か……」

 

カーテンを開けた秋蘭が俺の姿を見て固まる。なんでお前がいるんだよという目で見てくるがそれを無視して試着した服を見てみる。

いつもの青いチャイナ服ではなく、ライトブラウンのプリーツスカートに黒のワイドスリーブニットに黒のボアジャケット姿だった。

 

如月「おおっ!秋蘭スゲー似合ってるよ!」

 

「ふふ、そうでしょう。私の目に狂いは無かったわね。」

 

「あ、ありがとうございます……てかなんで如月がいるんだ?」

 

如月「華琳がここに入っていく姿が見えたから、面白いことが起こるかなーって。で、どうして服を買いに来たの?」

 

「うっ……それは……」

 

「今度、蒼慈とでぇとみたいなのよ。」

 

如月「あー、蒼慈さんとデートなのかぁ。それで新しく服を買いに来たわけだ。」

 

「そういうこと。」

 

蒼慈さんと言うのは斥候部隊の隊長を務めていて、秋蘭の恋人だ。

俺や一刀よりも少し年上なので、俺らは兄貴の様に慕っている人だ。

 

如月「あのさ二人とも、このあと時間ある?」

 

「ああ。今日は華琳様もお休みだからな。どうした?」

 

如月「ちょっと良い事思いついた。」

 

『???』

 

その後会計を済ませ、三人で城に戻り、各自荷物を部屋に置いた後に食堂に集合した。

 

「食堂に集合ってことは何か料理でもするの?」

 

如月「ああ。俺達の世界にある遊びでポッキーゲームと言うものがあってな。」

 

『ぽっきーげーむ?』

 

如月「やり方は後で教えるとして、先に必要な物を作ろう。材料は小麦粉、砂糖、牛乳、卵で全部混ぜ合わせて生地を作り、冷蔵庫へ入れて、二刻~四刻ほど寝かせるんだが今回はさっき作っておいた物を使おう。で、この生地をこのくらいの薄さまでのばして……」

 

朝にクッキー作ろうと思って生地作っといて良かったわ。

 

如月「幅はこのくらいの幅で切って、温めていた窯の中へ入れる。」

 

数刻すると窯の中から良い香りが漂ってきた。

で、焼きあがったものを窯から出して、

 

如月「うん。いい感じに出来てる。じゃあ、こっちは塩で、こっちは砂糖をまぶして、冷めたら出来上がり。」

 

「前に作ったクッキーとは違うものなの?」

 

如月「ほぼ同じものだな。まぁ、商品名が違うって感じか?」

 

とりあえず冷めるまで二人と他の料理について話し合っていると気付いたら数刻経っていた。

 

如月「どれ、冷めたかな……おっ、美味しいじゃん。ほら、食べてみてくれ。」

 

「ほぅ……面白い食感だな。」

 

「サクサクしてて何本でも食べれちゃうわね。」

 

如月「だろ?」

 

このサクサク感がたまらないんだよなぁと何本かポリポリ食べていると

 

「あれ?如月さん。何か作ってたんですか?」

 

「おいしそうな香りがするわ。」

 

如月「月に詠。お疲れ様。これ作ったんだけど食べる?」

 

「いいんですか?では、いただきますね。」

 

「珍しい形のお菓子ね。いただきます。」

 

サクサクポリポリ

 

「食感が面白いわ。」

 

「塩味が絶妙で美味しいです。」

 

如月「それは良かった。」

 

「これは何て言うお菓子なんですか?」

 

如月「プリッツって言うんだ。」

 

「ぽっきーではないの?」

 

如月「ポッキーはこれにもう一つの材料がいるお菓子なんだけど、その材料が手に入らないものなんだ。」

 

「それなら仕方ないわね。で、そろそろぽっきーげーむとやらを教えて欲しいのだけれど?」

 

おっと、あまりにもうまく出来たのですっかり忘れてたぜ。やべーやべー。

 

如月「えっと、自分が片方咥える。反対側をもう一人が咥える。で、同時に食べ始めていき、先に口を話した方が負け。」

 

「そのまま二人が食べきった場合は?」

 

如月「そりゃ、そのまま食べきるわけだから、接吻することになるな。」

 

『なっ!///』

 

四人とも顔を赤らめてる。そりゃそう言う反応するわね。

 

如月「まぁ、そう言う恋人同士のお遊びだよ。」

 

「そ、それを蒼慈と……」

 

如月「やるかやらないかは秋蘭に任せるけど(クイクイ)ん?」

 

クイクイされた方を見ると

 

「ん!」

 

プリッツを咥えた月の姿が

 

如月「えっと……やるの?」

 

「(コクコク)」

 

「月っ!?」

 

如月「じゃあ、ポリポリ……」

 

「ポリポリ……」

 

「月ってたまに大胆なことをする時があるわよね。」

 

「え、ええ……そうですね…」

 

華琳達が何か言ってるけど気にしないで続けていくと、ちゅっと月とキス。

まぁ、外に出ててあまり会えないからな。これくらいはね……自分もしたいし……

 

「ん……えへへ。」

 

「ゆ、月っ!どうだった?」

 

「ええ。感想は?」

 

「えっとですね……すごくドキドキして、唇が触れ合った時はすごく嬉しかったです。……少し恥ずかしいですが……」

 

『キャー!キャー!』

 

うわぁ~説明されるのすごく照れるな……

 

如月「ま、まぁ…これがポッキーゲームだ。もしやるなら、蒼慈さんに先に咥えてもらって、絶対に離すなよって言っておいてからやれば成功するかも。」

 

「あ、ああ。感謝する如月。出来るかどうか分からんが……」

 

如月「無理にしなくてもいいよ。一刀に何本か持っていくわ。じゃあ秋蘭頑張ってね。」

 

「あ、ああ。」

 

「いいもの見させてもらったからここの片づけはやっておくわ。」

 

如月「サンキュー。じゃ秋蘭。ご武運を!」

 

片付けを華琳達に任せ、一刀の所へ行きプリッツを渡すと、うまいうまいと言いながらすぐに食べてしまった。

渡すもんも渡したので部屋を出て廊下を歩いていたら前方から蒼慈さんの姿を発見。

 

如月「蒼慈さん!」

 

「おや如月さん。どうなされました?」

 

如月「蒼慈さん明日お休みですよね?久しぶりに飲みに行きません?」

 

「ええ、いいですよ。では行きましょうか。」

 

如月「はい!」

 

俺の行きつけの店へ行き、乾杯してお互いの近況を肴に飲み進めている時にそう言えばと思い出し、

 

如月「そう言えば、今度秋蘭とデートでしたよね。」

 

「そうですが……何ですかその笑みは……」

 

如月「いやー何でもないですよー。当日のお楽しみです。」

 

「むむむ……如月さんが関わるとろくでもない事が起こりますからね。」

 

如月「ろくでもないってなんですかー。蒼慈さんも喜んで頂けるものですー。」

 

「いやいや。ほっぺをぷくーってしても可愛くないですからね。」

 

如月「あ、やっぱり?」

 

あはははとお互い笑いあい、それから少し飲んでからその日はお開きになった。

 

 

数日後の蒼慈さんと秋蘭のデートと日の夜。

部屋での仕事も片付き、中庭でちょっと頭を冷やしてから街へ食べに行こうと思ったら、廊下で二人と鉢合わせ。

聞くのも野暮かと思ったが、今日のデートはどうだったか聞いてみたら、細部までは話さなかった(まぁ当たり前)が、ポッキーの話になったら二人とも顔が真っ赤になったのでご馳走様ですと言って別れ街へ向かった。

二人とも喜んでくれたみたいで良かった。……砂糖吐きたいけど……

 

 

ちなみにその後、城内外でカップル同士のポッキーゲームがはやりました。

 




ぶるーさん、蒼慈君を出させていただきありがとうございました!

出番が少なかったですがうまく書けたかな?

自分なりに一生懸命書かせていただきました。


ぶるーさん、本当にありがとうございました!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七十五話

短いですが


蜀呉との最終決戦を間近に控えたある日俺達は

 

一刀「ヒーット!」

 

如月「こっちもきたー!」

 

陳留からほど近い漁村へ赴き、船を出してもらって沖釣りを楽しんでいた。

なぜ、こんなことをしているかと言うと、それは昨日までにさかのぼる。

 

昨日の昼ごろ

 

 

 

一刀「よーし。午前の見回りはこのくらいにして、昼食べに行くぞー。」

 

『うーっす!』

 

如月「一刀、一刀。」

 

一刀「どうした如月?」

 

如月「ちょっとこっちに来てくれ。」

 

昼休みに入った所を見計らい、一刀を路地裏へと連れて行く。

 

一刀「どうした?こんな所へ連れてきて……はっ!まさかっ!……ついに男に目覚めたとか?」

 

如月「アホいうな!そんなんじゃなくて、コレを見ろ。」

 

懐からあるものを取り出して一刀に見せる。

 

一刀「生で見るのは初めてだが、これってもしかして?」

 

如月「ああ。ワサビだ。」

 

一刀「この国では手に入らないと思っていたけど、よく手に入れたな。」

 

如月「ああ。本当に運が良かったと思う。この前俺、近くの山間の村に行っただろ?」

 

一刀「ああ、あの盗賊討伐のやつか。確か新兵中心だったからお前も付いていったんだったよな。」

 

先日、ある山間の村の依頼で盗賊を討伐してほしいという要望が回ってきたため、新兵の訓練も兼ねて行ってきた所だったのだ。

 

如月「そうだ。討伐が終わった後に川の近くで休んでいた時に見つけてな。今度、村の人たちに協力してもらって栽培を始めてみるつもりだ。」

 

うまくいくかどうか分からないが、戦が終わった後だな。手を付けるのは。

 

一刀「でも、わざわざこれを見せるためにここに入ったわけじゃないんだろ?」

 

如月「ああ。一刀。」

 

一刀「なに?」

 

如月「明日明後日休みだよな?明日から一泊二日の小旅行に行くぞ。もちろん行き先は近くの漁村だ。沖釣りを楽しんだ後は釣った魚で海鮮丼パーティーと洒落込もうではないか!」

 

と、こんなことがあって冒頭へと戻る。

 

 

 

 

 

一刀「いやー、これだけ釣れると嬉しいね!でもまさか、リールまであるとは。」

 

如月「この前真桜に話してみたらさ、作ってくれたんだよ。今回はその試験も兼ねてるんだ。よし、これだけ釣れれば充分だろ。戻るか。」

 

一刀「ういー。」

 

漁村へ戻り、自分らが泊まる小屋へ。

時間は大体昼ごろなのでお腹が減ってしかたないので、すぐさま米を研ぎ、竈に火を入れ、炊き始める。

炊いてる間に魚を捌きお刺身へ。

残りの魚と三枚に卸した時に出た骨を使って味噌汁を作る。

味噌汁が出来た所でご飯が炊きあがったので器に大盛りで盛り、その上に刺身を並べて海鮮丼の出来上がり♪

お醤油とワサビはお好みで。

 

如月「では……」

 

一刀・如月「「いっただきまーす!」」

 

まず、お味噌汁から……うん、良い出汁出てる。

骨を炙ったのが良かったな。具も豆腐にワカメ、切り身につみれ。

うん、美味しい♪

次は海鮮丼を。

わさび醤油を上からかけて、ご飯と具を一緒に口の中へ。

やべー……クソうまい……

こっちの世界に来てからもこういう漁村に来たときに刺身は食べてたけど、やっぱりワサビのこのツーンとした刺激が無いと食べた気にならないよね(個人的感想)

 

おうおう、一刀もがっついちゃって。気持ちは分かる。うんうん。

その後、夜に村人たちとどんちゃん騒ぎをし、翌朝、二日酔いによる頭痛に悩ませられながら陳留へと戻ったのだった。

 

 

 




感想などありましたら是非!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七十六話

今回、スマホで書いてみたので、どこかいつもと違う所があるかもです


「今回は月たち、董卓軍にも従軍してもらうわ。詠、ねね準備をしてちょうだい。あと、張三姉妹も一緒に蜀へと来てもらうわ。ああ、心配しなくても戦闘には参加させないわ。」

 

の鶴の一声により、董卓軍の従軍準備と張三姉妹のスケジュール調整に追われる忙しい日々をなんとかこなし、全て終えたところで出発。

途中で季衣と流琉が合流し、集合場所である荊州・樊城へ向かった。

荊州到着後軍議を開き、今後の予定を確認。

その後華琳が全兵にむけての大・演・説!

この大演説により将兵共に士気はMaxになり、蜀へと向かった。

 

蜀へと向かう行程の中ほどに差し掛かったら辺で

 

如月「山道へ入り始めたな。ここから奇襲に気を付けて進め。」

 

あまり早い段階から奇襲に気を付けろなんて言って皆の神経をすり減らしたくないんだが……無いとは言い切れないからなぁ……

 

「副長!奇襲です!」

 

如月「言ったそばから本当に起きるとか……フラグ立てちまった……。」

 

「は?フラグですか?」

 

如月「いや、なんでもない。迎撃は?」

 

「は。呂布様が対応しております。」

 

連中も初奇襲がよりにもよって恋の所かよ。

 

如月「恋とねねに深追いはするなと言っておいて。」

 

「はっ!」

 

とりあえず追っ払ったがその後も奇襲が続けられた。

兵達の精神的疲労が溜まりつつあったため、こりゃ不味いと疲労がピークになる前に対策をと華琳達と話し合いある一つのことが決まった。

発案者は一刀だ。

 

 

 

如月「えー皆さん。今度の奇襲から奇襲を受けた隊は不寝の番が免除になることになりました。なので今度からは深追いはせずに追い返すだけにして下さい。」

 

この指示を聞いた隊のやつらは

 

「マジで!?」

 

「不寝の番免除はデカイ!」

 

等々肯定的にとらえていた。

 

「不寝の番は大きいわね。」

 

「うん。夜は寝たい……」

 

「くっくっく。奇襲どんと来いなのです!」

 

「皆不謹慎だよー。」

 

「あら。月は夜寝たくないの?」

 

「へぅ……寝たい。」

 

流石に月も夜は寝たいようだ。

 

如月「不謹慎だろうがなんだろうが、夜は寝たいからな。オメーら!今から奇襲が来るように祈っとけよ!」

 

『オーー!』

 

 

奇襲を受けた隊は不寝の番免除が言い渡されてから数日、俺らの隊は一回も襲撃を受けていなかった。

 

 

如月「本当は襲撃を受けないのが一番なんだが……」

 

「まぁ、賭けの一環だからしかたないんだけどね……」

 

「ここまでハズレると逆に不満が溜まってくるのです。うがー!さっさとねね達の所に来るです!」

 

賭け事の意味合いが強かったとは言え、ここまでハズレを引くとなると頭では分かっていても心まではねぇ……

 

 

「副長!奇襲です!」

 

その報告を聞いたとたん、お通夜ムードから一転、みんな目をキラキラさせ

 

如月「よし!漸く来たか!これで我々の不寝の番は免除だ!オメーら気合い入れて追い返せ!」

 

『うぉぉぉぉっ!!』

 

この異様な士気の高さに面を食らったのか敵さんは一当てしただけで引いていった。

こちらの被害は軽傷の者が何人か出たが死亡者はゼロだった。

 

不寝の番をゲットした俺達はその夜、大きめなテントの中に土で浴槽を作り(浴槽は俺が火入れをして陶器のようにしたので水漏れ、泥水の心配は無し。)久々のお風呂で英気を養った。

ん?ああ。ちゃんと男女は分けたよ。……ヤロー共が血の涙を流していたが……こいつらアホすぎる

 

 

その後もちょくちょくと奇襲を受けたが不寝の番が効いたのか大きな被害もなくそのまま進み、綿竹の南方にある平原にたどり着いた。

 

 

如月「斥候からの報告は?」

 

「孫家の牙門旗に紅蓮の周旗。他の孫旗に甘や周、呂、黄があるので孫呉大集結ですねー。」

 

「ふむ……孫呉の雪辱戦と言うわけね。敵陣の更に後方はどお?劉備が控えてはいない?」

 

「後方に斥候を数人放ってみましたが、残念ながらいないようです。」

 

目の前に居るのは孫呉だけ。蜀は成都に引きこもりか。

さて、じゃあどうやって呉を退けるかだけど……正々堂々正面突破に決まった。孫策達はこちらの予想に乗っかってくれた上に今回はこたらが圧倒的に優勢だからなんだって。華琳が言うには

 

「戦には策を弄して良い戦と、弄してはならない戦があるのよ。」だって。

ついでに先鋒は春蘭で左に秋蘭と霞。右は俺と董卓軍に決まった。

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七十七話

 軍議が終わったあと自分の軍に戻り、月や詠達を集め、軍議の内容を話した後、陣形を整えた。

 

 敵軍を含め各軍とも陣形を整え終えたみたいで自軍の前に陣取っているのは

 

 

如月「目の前にいるのは孫権と甘寧。その左隣に黄蓋か。よくこの三人と戦うなぁ。」

 

 え、なに?この三人とは赤い糸で結ばれてるのかな?なーんてな。ははは。流石にそれはないかー。

まあ冗談はさておき、敵の数は前回よりも少なくなってるし、士気もこちらが高いがもう少しこちらの士気を上げときますかね。

 

 

 

如月「さて、もうそろそろしたら夏候惇隊が突撃を開始し、開戦するだろう。」

 

 この言葉を聞いた兵達の緊張感がさらに高まったのを肌に感じ、

 

 

如月「開戦前に董卓軍の皆に送りたいものがある。」

 

 「贈り物?」と言う声が色々な所から聞こえる。

そりゃ開戦直前にこんなこと言われたら困惑するわな。

 

如月「俺が開戦前に贈るモノはこれだ!」

 

 その言葉を聞いた旗手達が一斉に旗を上げる。

上がった旗を見た兵達は信じられないような顔をして呆気にとられていた。

俺の横で月と詠も呆気にとられていた。

その旗に書かれている文字は「董」。

そう、董卓軍の旗だった。

 

 

如月「今までは君達のことを隠すために俺の軍に入ってもらっていたが、天下を決めるための戦いくさも残り二戦。今までは俺達が外に出ていった時に陳留を、そして広げていった領土を外から内から守ってくれた礼として、そして一人の武人として、君達にはこの旗の元で戦ってもらいたいと言う思いで用意させてもらった。この贈り物、お気に召してくれたかな?」

 

 一瞬の静寂の後、

 

『うぉぉぉぉぉぉっ!!』

 

と地響きが起きるんじゃないかと思うような兵達の咆哮。

やっぱりこの旗の元で戦いたかったんだな。

 

如月「皆にも黙っててすまんね。驚かせたかったんだけど、どうかな?あれ?もしかして余計なことしちゃった?」

 

 皆の反応が無い。

反董卓連合以降、恋はともかく月、詠、ねねの三人は表舞台から姿を消してもらってたからこういうのは迷惑だったかな?

 

 

「如月さんありがとうございます。表舞台から姿を消し、魏では皆が武人として動いているのにここにいる皆は内を守ることに力を注いでいた。内を守るのが嫌と言う訳ではありません。むしろそこまで信頼して下さった華琳さんには感謝してもしきれません。でもやっぱり、皆は外に出て戦いたかったと思うんです。ですからそれを今回、しかも天下を決める戦いに従軍させてくれた上に旗まで用意して頂いたのに感謝こそすれ非難するなんてありません。」

 

 本当のところこの戦は魏の将兵だけでやるつもりだったのだろう。

だけど今まで自分等は外に出て董卓軍の兵達は内に籠り国を守ってくれていた。

今回の董卓軍従軍は華琳の彼らに対する礼ではないだろうか。

テンション上がって吼えまくりだった兵達が落ち着くのを待ち、

 

如月「さて、目の前にいる孫呉の連中は数が減っているとはいえ手強い相手だ。」

 

 ゴクッと兵達の唾を飲み込む音が聞こえそうだ。

 

如月「だが俺は、君達が呉軍に劣る存在ではなくむしろこの中華一の軍だと思ってる!」

 

 この発言にみな「???」という顔をしてる。

 

 

如月「だって、現中華一の軍である魏軍を鍛えなおかつ、その魏兵を抑えて国内の守備を曹操が君達に任せたのだから。」

 

 董卓軍を魏に取り込めたお陰で兵力がただ単に増えただけでなく、兵科の底上げされたのだ。

それは春蘭、秋蘭の軍も例外ではなかった。

その上、取り込んで間もなく董卓軍を国内の守備につかせたということはレベルアップした魏兵達よりも強いと言うことだ。

 

如月「だから、魏軍の中でもその圧倒的な強さを持つ君達の武を仲間に、そして敵に見せつけてやれ!」

 

『うぉぉぉぉぉぉっ!!』

 

「中央の夏候惇隊が突撃を開始しました!」

 

 春蘭の部隊が突撃を開始したとの報告を受け、

 

 

如月「作戦は単純明快。正面突破!敵がいかなる策を施してこようがその力て叩き潰してやれ!全軍突撃ー!」

 

『うぉぉぉぉぉぉっ!!』

 

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七十八話

 全軍突撃命令を出した俺。普通なら後ろで指揮を取らなきゃいけないが、

 

「あのー如月さん…」

 

如月「どうした凪?」

 

「後ろで指揮を取らずに突撃に参加して良いんですか?」

 

如月「良いの良いの。それに詠とねねの練習になるだろ?」

 

「それはそうですけど…それにしては詠とねねから戻ってこいとの伝令が…もしかして、言ってなかったのですか?」

 

如月「はっはっはー!」

 

「笑って誤魔化さないで下さい!」

 

 そう俺は、詠とねねに何も言わずに飛び出して来たのだ。

伝令には詠とねねが指揮をしろって言っといてと後ろに送り返した。

 もう少しで両軍激突と言う所で

 

「右の黄蓋軍から矢だ!全員盾で『いやする必要はない!』如月さん!?」

 

如月「俺が対処する。気にせずに突っ込め!」

 

 そう指示を出し即座にバギマを唱え全ての矢を落とす。

矢を全て落としてすぐに両軍が激突し、

 

如月「一番槍はこの龍谷如月が頂いたー!」

 

 一番槍をゲット!いやー、一回やってみたかったんだよな~

 

「如月さんに続けー!呉の奴らに我々の強さを三度(みたび)知らしめてやるのだ!」

 

『うぉぉぉぉぉぉっ!』

 

 俺が先頭の兵を倒し、一番槍を取ってすぐに敵味方入り乱れての乱戦に入った。

 

 

 

 

 

如月「でりゃゃゃゃっ!…うっし、次は誰が相手かな?…っ!?」

 

 入り乱れての乱戦になったあと、ひたすら敵兵を倒し続けていたら左の首筋がヒヤッとしたため首を剣でガードすると、チリーンと言う音と共に首めがけて一線。ガキンッ!と音が

 

如月「あっぶねー…流石は甘興覇だな。」

 

「チッ…仕留め損ねたか。だが、ここで貴様を殺せば問題ない。」

 

 そう言うや否や襲いかかってきた甘寧。周りが敵味方入り乱れているのに俺と甘寧を中心に半径三メートルくらいのスペースに誰も入ってこない。

 

 甘寧と打ち合うこと数十合。

周りの呉兵達も倒れていく者が多くなってきた頃にヒュンヒュンヒュンと矢が飛んで来た。

 

如月「っ!?ふんっ!」

 

「がっ!?」

 

 甘寧のお腹をミドルキックして甘寧を蹴り飛ばし、飛んで来た矢を払い落とす。

 

如月「まったく…祭さん、邪魔しないで下さいよ。邪魔者は馬に蹴られますよ。」

 

「やかましいわ如月。そいつを回収しに来ただけじゃ。ほら思春。撤退するぞ。」

 

「ですが!」

 

「ええ。撤退よ思春。」

 

「れ、蓮華様っ!?」

 

 祭さんと共に現れたのは孫権だった。

 おいおい…お姫様がこんな所まで来るとかスゲーお姫様だな…まあ、孫権がここまで来て撤退を伝えに来たと言うことは…

 

「伝令!突然右から騎馬隊が急襲!馬超・馬岱の両名が雪崩れ込んで来ました!」

 

 ちゅーことだわな。取り敢えず離ればなれになっている凪の隊と合流して体勢を整えた後に横槍を入れてきた馬超と馬岱に備えるように指示。

まあ、孫権達を逃がすための奇襲だからもう襲っては来ないだろうが。

 

如月「ちゅーことで俺は行くから。あ、祭さん。こっちで飲んだお酒の代金、後で貰いに行くからね。」

 

「何を言っておるんじゃ。あれは死に逝く者達への為に出したものじゃろうに。」

 

 戦場のど真ん中でそんなアホみたいなやり取りをし、その場を離れる時にふと孫権の方を向くと何か言いたそうな顔をしていたが周りに促されそのまま撤退していった。

 

 その後、凪と合流し部隊編成をし、馬超達に備えたが彼女らは現れなかった為、本陣に戻った。

 

如月「ただいまー。」

 

「ちんきゅーきーっく!」

 

如月「ぷげらっ!?」

 

 本陣に戻り自分の天幕に入った瞬間にちんきゅーきっくが炸裂。

何すんだよ!と文句を言おうと顔を上げるとそこには修羅と般若を宿した詠とねねが。

 

「「正座。」」

 

如月「あ、はい。」

 

 え?文句を言うんじゃなかったのかって?今の二人に文句を言える奴が居たなら教えてください。

もれなく俺の身代わりにしてあげるから。

 

「アンタ…何こっちの指示無視して突っ込んでんのよ?戻ってこいって伝令出してたでしょ?」

 

如月「いやぁ…後ろで構えてるのでは無く、前線にいた方が士気が上がると思いまして…嘘です!一番槍やってみたかったんです!」

 

 今までは最前線で指揮をすることはあっても、自ら飛び出してしかも一番先頭で突撃かますなんてやったこと無かったからな。

そりゃ本来しなくて良いことをしたあげく、乱戦の中で暴れまわってたら心配もするわ。俺だってする。

 

如月「もうやらないから許してくれ二人とも。あと、月にも余計な心配をかけさせたな。すまん…」

 

 三人に謝罪した後、順番に頭を撫でて許しをこうた。

三人が納得するまで撫でていたら恋も戻ってきて撫でろと頭を出してきたので恋の頭も撫でた。

 次の日からは被害確認や華琳の所に集まって軍議等に追われ、成都に向けて出立したのは一週間後だった。

 

「如月さん~。月ちゃんや詠ちゃん達の頭は撫でたのに私達を撫でてくれないのはなんでなんのですかね~。」

 

 はい…他の皆様も撫でさせて頂きます。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

七九話

皆の頭を撫で回しイチャイチャした翌日(戦場で何やってんだろうね?)、朝っぱらから両軍は激突していた。

戦況は我々魏が多少苦戦しながらも蜀・呉両軍を押し込んでいた。蜀と呉は各武将同士連携を取ろうとしていたが上手くいかずに船頭多くして船山に上る状態だった。

昼頃に本陣から伝令が来た。俺だけ本陣に戻るようにと言う内容だった為、凪と恋に現場を任せ、詠とねねにも一言言ってから本陣へ戻った。

 

「このまま正面突破であの娘の元へ行くわ。一刀、如月着いてきなさい。」

 

その言葉を聞いた時、

 

如月「こいつ何言ってんだ?遂にボケたか?ぐぼあ!?」

 

「ボケてないわよ。良いからさっさと着いてきなさい。あ、如月は先頭で露払いをよろしく。」

 

俺のレバーに左のショートアッパーをぶちこんだ挙げ句に露払いをしろとおっしゃってきた。

まあ、とにかく劉備の元へ行きたい様なので言葉に従い兵達と共に正面突破。

まあ次々と蜀と呉の兵士達が襲ってくる襲ってくる。

襲ってくる兵士達をラリホーで眠らせながら蜀呉本陣へと進んでいく。

そして遂に劉備の元へたどり着いた。

 

如月「総員展開。歯向かってきた者以外の命までは奪うな。」

 

邪魔が入らないように兵達を展開させる。

孫権と孫尚香らも手が出しにくいみたいだ。

 

 

「さあ劉備。一騎討ち(話し合い)をしましょうか。」

 

華林は絶を劉備に向けると、

 

「曹操さん…わかりました。皆は手を出さないように。」

 

華林に促されゆっくりと抜いて見せた。

 

「桃香無茶だ!せめて私かシャオに…」

 

「黙りなさい、孫権。この先は王と王の戦いよ。」

 

その言葉を聞いた孫権と孫尚香はこちらをキッと睨んできたが

 

一刀「何もしないよ。ここで水なんか差したら、華林に首をはねられちゃうよ。」

 

如月「右に同じく。兵を展開させたのも安全を確保するためさ。」

 

その言葉を本当の事だと信用したのか警戒をしつつも目線を華林と劉備の二人に戻した。

おっと、忘れるところだった。

 

如月「華林。すまんがちょこっとだけ待ってくれ。」

 

「あら良い具合に昂ってきているのに。本当に空気が読めないわね。」

 

片手ですまんすまんとジェスチャーしつつ、もう片手にイオラを発動させて、それを空へとぶっぱなすと戦場に爆発音が響いた。

 

如月「王と王の戦いの開幕を飾る素晴らしい演出だろ?」

 

「ふふふ。本当にそれだけかしらね。」

 

そんな返しをしながら笑みを浮かべる華琳。まあ、それが本当の理由ではないのがバレているようだ。

 

劉備が打ち込み華林が受け止めると言う一騎討ち(話し合い)が始まってから数十合。

戦場は静寂に包まれ魏呉蜀の主だった将がこの場に集まり華林と劉備の一騎討ち(会話)を聞いている。

その道筋は違えど天下泰平に向けて歩んだ二人の一騎討ち(会話)は、剣を取り落としふらつく足取りで華林のもとへと歩みより、倒れ込むように華林に抱きつき

 

「わたしは…曹操さんと…お友達に、なりたいです。」

 

「………本音でも甘ちゃんなのね。そういう所、嫌いではないけれど。」

 

苦笑しつつも今まで頑張ったわねと言っているかのように劉備の頭を撫でていた。

 

その後、華林が劉備と孫策に蜀を劉備に、呉を孫策に預け一緒に大陸を建て直すように要求。

それを二人は了承したことにより華林が戦の終結を宣言。

 

それにより長きに渡る戦が終わった。

 

俺が空へとぶっぱなしたイオラを合図に戦闘停止と将達を二人の一騎討ちの場に集まるようにと事前に伝令を出していた為、この場には三国の武将達が集まっていた。呉と蜀の武将達は劉備が華琳と一騎討ちしてると聞いたから。

 

華林が戦の終結宣言をした後すぐに、

 

「戦争は終わったわ。傷ついた仲間を一人でも多く助ける為にすぐに行動するわよ」

 

の一言で、魏呉蜀の全兵あげて負傷者を成都に運び込み負傷者の治療へと入った。

 

負傷者に対しての治療体制があらかた整った後、俺は同時進行で行っていた宴会準備の方へ回され魏呉蜀三国の料理人+流琉と一緒に目を回しながら料理を作っていた。

それも一段落し流琉と一緒に会場に行くとすでに出来上がってしまっている状態だった。

酔っ払った連中にその中に放り込まれ俺も流琉もすぐに出来上がってしまった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。