異世界オルガ (T oga)
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異世界オルガ1

「というわけで、お前さんは死んでしまった」

そう謝罪する爺さんの背後に広がっているのは輝く雲海。どこまでも雲の絨毯が広がり、果てが見えない。
しかし、俺たちが座ってるのは畳の上。ちゃぶ台に茶箪笥、黒電話など古くさい家具が並んでいる。

そして、目の前にいるのは自らを神と自称する爺さん。

その爺さん曰く、

「ちょっとした手違いで神雷を下界に落としてしまった。本当に申し訳ない」

という事らしい。

神雷というのはすなわち『ダインスレイブ』
俺たち鉄華団を苦しめたあの禁止兵器だ。

この爺さんは俺が死ぬ300年前、厄祭戦時代に元々神界の武器だったダインスレイブの技術を誤って下界に落としてしまった。そのダインスレイブのせいで俺たち鉄華団の未来は大きく変化した。

つまり、この爺さんのせいで鉄華団は壊滅した。

「この落とし前……あんた、どうつけるつもりだ?」

俺がそう聞くと、この爺さんは即答した。

「すぐに生き返らせる」
「わかった」

生き返れるなら申し分ない。これで俺は鉄華団をやり直せるし、うまくやれば火星の王にだってなれる。
……そう思っていた。しかし。

「ただのう……元の世界に生き返らせることは出来んのじゃよ。そういうルールでな。別の世界で生き返ってもらいたい」

何!?元の世界でやり直せるってことじゃねぇのか?

俺は内心焦ったが、冷静を装って、爺さんにこう聞くと、またもこの爺さんは即答する。

「……そういう不利益はどうする?」
「そうじゃ、罪滅ぼしに何かさせてくれんかの?」
「……あんた、正気か?」
「うん。君の望みを聞きたい」

俺の望みはただ一つ。鉄華団の再興だ。
この望みは元の世界に戻らなければ、達成することは出来ない……。


気がつくと後ろにミカが立っていた。

《おぉ、ミカ。お前も来たのか?》
《気がついたら、ここにいた》
《そうか》

俺はミカと心の中で会話した後、目の前にいる爺さんを睨みつけた。

「俺は落とし前をつけにきた。最初にそう言ったよな?」

俺がそう言うのを合図にミカが左ポケットから無造作に拳銃を取り出した。

「待っ!!」

パンパンパンパン

自称神は死んだ。

「さてと、帰るか」










目覚めると、空が見えた。左右の壁の間から見える青空に雲がゆっくりと流れている。
背中にはコンクリートの冷たい感触が伝わる。

ここはどこだ?

確か、俺は神を自称する爺さんに落とし前をつけて、ミカと一緒に神界の出口を探していたはずだった。

それがなんでこんなとこに?

ミカもいつの間にかいなくなっちまってるし……。

……とりあえず、この路地裏を道なりに進んでみるか。


路地裏を進んでいくと、突き当たりで四人の男女が言い争っていた。

「約束が違うわ!水晶鹿の角、金貨一枚だったはずよ!」
「見ろ!ここに傷があるだろ?だから銀貨なのさ」

チャリン、と一枚の銀貨が二人の少女の足元に転がる。

「たったの一枚!?そんなの傷の内に入らないわよ!」
「お姉ちゃん……」
「……もういい。お金は要らない!その角を返してもらうわ!」
「おっと、そうはいかねぇ。もうこれはこっちのもんだ!」
「邪魔するぜ~」

突然声をかけた俺に全員の視線が集まる。
二人の少女はキョトンとしているが、男たちの方はすぐに険悪な態度をこちらに向けてきた。

「なんだ、てめぇ!?」
「なんの用だ~!?」

俺は険悪な態度を向けてきた男たちに睨みを効かせる。
すると男の一人が怒ったのか、懐からナイフを取り出し、俺を襲ってきた。

「野郎っ!!」

ミカはここにはいないが問題ない。
こんなチンピラなんかに負けるかよ。

「う"う"っ!」

気がつくと、俺の左胸にナイフが突き刺さっていた。
避けようとしたが失敗したようだ。
二人の少女はまだキョトンとしている。

「分かってる」

一度死んだ経験のある俺には分かる。
これはもう死ぬ。

だが、助かる方法も何となくだが浮かんでくる。

……アレをやればいいんだろ。


その時、希望の花が咲いた。

「【俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」





そして、再び目覚めると、そこは神界だった。

「というわけで、お前さんは死んでしまった」

神の爺さんは銃弾対策に仮面を被っていた……。





読んでいただいてありがとうございます!

ウィンターさんに許可をいただきましたので、第1話を小説化しました!

PCを使わずにスマホでサクサクっと書いてしまいましたので、読みにくい等あればご指摘下さい。

駄文ではありますが、全12話 お付き合い下さると嬉しいです。

感想等も募集しています。次回もお楽しみに!


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異世界オルガ2

※冬夜うぜぇ


神様の手違いで死んでしまった僕ーーーー望月冬夜は違う世界で新しい人生を送ることになった。
そこは魔法や魔物が存在するファンタジーな世界。

でも大丈夫。僕には神様がくれた能力とこのスマホがあるから。





宿を探して、町中を散策していた時、道端から争う声が聞こえてきた。野次馬が集まり、何やら騒ぎが起きているようだ。

「何だ?」

興味を引かれた僕は人混みをかき分け、騒ぎの中心に辿り着く。そこには数人の男たちに取り囲まれた一人の少女がいた。


「ん?何だありゃ」
「あの子……変わった格好をしてますね……」

僕の隣に居合わせた、大きな一房の前髪を携えた銀髪の青年と同じく銀髪の双子の少女たちは騒ぎの中心にいた少女の姿を見て、そのような感想を述べる。

「侍だ……」

僕は騒ぎの中心にいた少女を見て、そう呟いた。


十数人の男たちは剣やナイフをその侍の少女へ向けて、取り囲んでいた。

「姉ちゃん、俺らの仲間を可愛がってくれたそうじゃねぇか」
「……あぁ、この前警備兵に突き出した奴らの仲間でござるか。あれはお主たちが悪い。酒に酔い、乱暴狼藉を働くからでござる」
「やかましい!やっちまえー!」

男たちが一斉に襲いかかる。侍の少女はそれをひらりひらりと避けながら、男の一人の腕を取って、軽く投げた。地面に叩きつけられた男は悶絶して、動かなくなる。

「あんな技、見たことないわ!」
「合気道?いや柔術か!」

侍の少女はその後も何人か投げ飛ばしていったが、なぜか不意に体がよろめき、動きが鈍る。

「……お、お腹が減って力が……」
「あの子、急に動きが!」
「何なんだアイツ、急に動きが……」
「構わねぇ!今のうちだ!」

動きが鈍った隙を突いて、背後から剣を構えた男が斬りかかった。

「危ない!後ろ!」

双子の妹であろう少女が叫ぶ。
僕は魔法を使おうとしたが、その前に動いた人がいた。銀髪の双子の少女と一緒にいた大きな一房の前髪を携えた青年だ。

その青年が身を呈して、侍の少女を守ったとき、希望の花が咲いた。

「う"う"っ!……こんくらいなんてこたぁねぇ!」
「何であんたはそんなに平然としているのよ!」

双子の姉とおぼしき少女の言う通りだ。胸に剣が突き刺さっているのに、何で平然としてるんだ?

その答えは後に分かった。彼ーーーーオルガ・イツカは僕と同じく転生者で神様から何度死んでもよみがえる力をもらったらしい。


「ああもう、やっかいごとに首を突っ込んで!」

そう文句を言いながら、戦いの輪に飛び込み、パンチやキックを男たちに喰らわせていく双子の姉とおぼしき少女。

まぁ首を突っ込んだんじゃなくて、胸を突き刺されたんだけどね。

よし、僕も参戦しよう!

「【砂よ来たれ、盲目の砂塵、ブラインドサンド】!」

僕は土属性の砂による目潰しの呪文を唱えて、男たちの動きを封じた。


数分後、警備兵が騒ぎを聞きつけてやって来た。

「警備兵だ~!」
「お姉ちゃん、ここは離れよう!」
「分かったわ、そこのあんたも一緒に来なさい!」
「えっ!?僕?」
「そうよ!あんたも首を突っ込んだじゃない!」

確かに、このままここに残ると僕らも事情聴取を受ける。
双子の少女たちの言う通りここはめんどくさいことになる前に逃げた方が懸命か。

「わかった!君も!早く!」

僕は侍の少女の手を引いて、双子の少女たちの後を走る。

あれ?誰か一人忘れてるような……。まぁ、いっか。


「【俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】(……忘れるんじゃねぇぞ)」



現場から離れた人通りの少ない路地裏へやって来た僕らは自己紹介をし合う。
銀髪の双子の姉がエルゼ・シルエスカ、妹がリンゼ・シルエスカというそうだ。そして……。

「ご助勢かたじけなく。拙者、九重八重と申す「俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカd…」あっ、ヤエが名前で、ココノエが家名でござる」

八重の自己紹介の途中で現場から戻ってきたオルガが自己紹介をしたが、華麗にスルーされた。

どうやらオルガはこういう扱いらしい。じゃあ僕もスルーしとこう。

「僕は望月冬夜。冬夜が名前で望月が家名ね」





数日後、僕らは冒険者ギルドに登録して、パーティを組んで依頼を受けることにした。

「これはどうですか?」
「王都への手紙配送。交通費支給。銀貨8枚か。いいんじゃない。丁度四人で割れるし」
「俺は無視か!」
「冗談だって(笑) レディーファーストってことで、余りの3枚は女性陣に渡すよ!」
「……まぁ、それが妥当か」
「そう?じゃあ、ありがたく頂くわ!」

ということで王都へ向かうことになった。


王都への道を走る馬車に乗りながら、僕は最近新しく覚えた無属性魔法を試していた。
感覚拡張魔法【ロングセンス】だ。

【ロングセンス】は最大で一キロ先の様子を見たり、音を聞く事が出来る。
調査に使えると思い、習得したのだが、女性陣には絶対に覗きに使うなと釘を刺された。あのな……。

この【ロングセンス】はもちろん嗅覚も拡張出来る。おや……。

「この匂い……鉄?」
「鉄華団……決して散ることのない鉄の華」
「いや、血の匂いだ!」
「鉄血のオルフェンズ!じゃねぇか……フヘッ」

長い静寂が訪れる。オルガがスリップした。

「まぁ、これっぽっちも面白くなかったがなぁ……」

落ち込むなよ。オルガ。

「この先だ!人が魔物に襲われてる!」
「……っ!承知!」


血の匂いがした方向へ馬車を走らせると、視界の先に高級そうな馬車と鎧を着た数人の兵士を取り囲むリザードマンの群れが見えた。

「【炎よ来たれ、渦巻く螺旋、ファイヤーストーム】」

荷台でリンゼが炎の魔法を放つ。それを合図にエルゼと八重が馬車から飛び降り、自分の武器を構えてリザードマンの群れに向かっていく。僕もそれに続く。
馬車の守りはオルガに任せた。

僕らはリザードマンを一匹ずつ確実に仕留めていき、リンゼが魔法で僕らの援護をする。

その戦いの最中、八重が路傍の石に躓いて転倒した。その隙を突いて、一匹のリザードマンが転んでいる八重に剣を振り下ろした。危ない!

「【ミカァ!】」

そんな時、馬車の御者台に座っていたオルガがそう叫んだ。その瞬間、地面から巨大なロボットが出てきて、リザードマンを一掃した。

「あれは!?」
「オルガさんの召喚魔法です!」

僕の疑問にリンゼが答える。

あれがオルガが神様に与えられたもう一つの力。
異世界のモビルスーツ『ガンダム・バルバトス』の召喚である。

《ねぇ、次はどうすればいい。オルガ》
《決まってんだろ……行くんだよ》
《どこに?》
《ここじゃないどこか……俺たちの本当の居場所に!》
《うん。行こう!俺たち……みんなで!》

いや、行くのは『王都』ですけど……。





オルトリンデ公爵家の馬車を助けて、公爵家の娘 スゥシィ・エルネア・オルトリンデと共に王都へやって来て、公爵様にお礼の賃金をもらった後、ギルドの依頼であった手紙を届けた。

その帰り道、八重が僕らへ向かってこう言った。

「皆の人となり、この数日間で見せていただいた。強大な力がありながら、決して驕らず、常に人を救う道を選ぶ。その姿勢、感服致した!……だから拙者、修行のため、冬夜殿たちと行動を共にしたい!」
「えっと……どうする?」

僕はエルゼやリンゼ、オルガに確認を取る。

「いいんじゃない。私たちとおいでよ」
「せっかく仲良くなりましたし、これでお別れは寂しいです」
「俺たちに辿り着く場所はいらねぇ!止まらねぇかぎり、道は続く!」

どうやらみんな、僕と一緒の意見のようだ。

「よし、じゃあ一緒に行こう!」
「改めてよろしくね。八重」
「よろしくでござる」

僕の力で人が笑顔になるのっていいもんだなぁ。



そんな彼らを木の影から覗いている一人の男がいた。

その男の名は榊遊矢。悪魔ズァークであるという自覚がなく、自分をエンタメデュエリストだと思い込んでいる精神異常者である。





スマホ太郎うぜぇ


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異世界オルガ3

「【トランスファー】」

冬夜の無属性魔法【トランスファー】によって、冬夜の魔力が俺に流れ込んでくる。

「これくらい魔力が増えればいい?」
「あぁ、多分大丈夫だろ」

俺は自分の魔力量が多くなったことを確認する。
……よし、これならいけるだろ!

「【ミカァ!】」

俺は召喚魔法でミカを呼び出す。魔方陣から『ガンダム・バルバトス』のパイロット、三日月・オーガスが現れる。

「よう、ミカ」
「オルガ。どうしたの?」
「いや、お前をずっとこっちに居れるようにしようと思ってよ。冬夜に頼んで俺の魔力量を高めてもらったんだ」
「へぇ~、そっか、ありがとう」

通常、術士が魔物を召喚し、存在を保つときはその術士の魔力が必要になる。
そのため、召喚した魔物がずっとこちらの世界に存在し続けると、術士は魔力切れを起こしてしまう。

しかし、俺はミカをずっとこっちに居られるようにしたかった。
だから魔力量が無限にある冬夜の魔力を【トランスファー】で分けてもらって、その魔力を使い、ミカをずっとこっちに居られるようにしたのだ。

俺の顔を見て、ミカがこう聞く。

「どうしたの?オルガ」

俺は小さく笑っていたようだ。

「これで生まれ変わってもミカと一緒だな」
「うん。俺も嬉しいよ。それに……」

ミカは魔方陣を出てきて、歩き出す。

「体も元通りに動くようになったし」
「そうか。そりゃあ、よかった」





ミカもこちらに来れたところで、俺たちは王都の街を散策することにした。
体が元通りに動くようになったミカのリハビリも兼ねて、だ。

「どうしたんだろ?あの子」

エルゼがそう言って、指差した方向を見てみると、そこにはキョロキョロと辺りを見渡す小さな狐の獣人の女の子がいた。女の子は今にも泣きそうな目をしていた。

……迷子か。

冬夜が狐の獣人の女の子に声をかけにいった。

「あの、どうかしました?」
「じ、実は連れの者とはぐれてしまって……待ち合わせの場所は決めておいたんですけど」

やっぱり迷子か。めんどくせぇな!

「ああ、分かったよ!連れてってやるよ!!」
「ここがどこかもわからなくて……」
「連れてきゃいいんだろ!」
「えっ?」
「途中にどんな地獄が待っていようと、お前を……お前らを……俺が連れてってやるよ!」
「……何キレてんの?オルガ」


冬夜の無属性魔法【サーチ】で女の子が決めていた待ち合わせ場所の位置を調べて、そこまで案内する。

スマホの地図を頼りに歩くと、待ち合わせ場所が見えてくる。
その場所にいた獣人の女性を見ると、女の子はその女性目掛けて走り出した。

「お姉ちゃん!」
「アルマ!心配したのよ!」
「ごめんなさい」

俺は隣にいたミカと拳を合わせる。

「終わったな」
「うん」


「会えて良かったです。それじゃ」

冬夜が獣人の姉妹に別れを告げ、俺たちは王都のギルドへとやって来た。

「ここが王都のギルドでござるか~」
「依頼の数も多いです」
「この依頼はどう?」

冬夜がそう言って、俺たちに依頼書を見せてくる。えっと……。

デュラハン一体討伐。報酬は銀貨10枚か。悪くねぇな。


「八重、そっちに行ったぞ!」
「承知!」

崩れかかった城壁を盾にしながら、デュラハンが八重に近づいていく。
デュラハンがその手に持つ禍々しい大剣を振りかざし、それを八重が刀で捌く。

俺は八重と切り結んでいるデュラハンを捉えた。今だ!

「【ミカァ!】」

『ガンダム・バルバトス』をLv4(第4形態)で召喚する。

ミカの操る『ガンダム・バルバトス』Lv4は刀をデュラハンに突き刺して、その命を奪う。

「終わりましたね」
「疲れたでござる~」

リンゼが安堵の呟きを洩らし、八重が地面に座り込む。

「昔の王都って言っても何にもないな……」

冬夜がそう呟く。
元々、この廃墟は千年以上前の王都だったそうだ。
だが、辺りを見渡しても、あるのは穴だらけの城壁と町の形をかろうじて残す石畳と建物、そして完全に崩壊した王城らしき瓦礫のみであった。

なんだよ……。隠し財宝とかねぇのかよ……。

俺がそう思ったとき、エルゼが全く同じことを言い、それに冬夜が弁便した。

「王の隠し財宝とかあったら面白いのにね」
「確かに、一理ある。【サーチ:歴史的遺物】」

冬夜が【サーチ】で財宝を探す。

「引っかかった……」
「どっ、どっちでござるか?」
「……あっちの方から感じる」

どうやら反応があったようで、その反応のある方向を冬夜が指差す。
俺とミカもそちらを見ると、そこには瓦礫の山があった。

「何あれ?」

ミカが瓦礫の間からほんの少し見える何かを指差して、そう呟く。

「何だありゃ」

俺は手で持てる瓦礫をひとつひとつ剥いでいく。

すると、そいつの全貌がほんの少しだが見えてきた。こいつは…………!

「モビルアーマーじゃねぇか!!」

モビルアーマーとは俺たちの世界で厄祭戦の引き金となった殺戮兵器。
人工密集地を優先的に狙うようプログラミングされており、俺たち鉄華団がクリュセで見つけた『ハシュマル』もイオクとかいう馬鹿が誤って目覚めさせてしまい、農業プラントを一瞬で焦土に変えた危険な兵器だ。

「なんで今まで発見されなかったんだ?」

それになんでモビルアーマーがこの世界に?

「大きいな、何だこれ?」
「モビルアーマーっつってんだろ!」
「「「大きい!」」」
「無視すんなよ!」

冬夜たちがモビルアーマーに近づいていく。

「でも、この瓦礫どうしたら?」
「待ってろよ!」
「任せて、下さい!!」
「待てって言ってるだろ!!!」
「【炎よ爆ぜよ、紅蓮の爆発、エクスプロージョン】!!」

リンゼが爆裂魔法で瓦礫を吹き飛ばす。…………その衝撃でモビルアーマーが起動した。

「勘弁してくれよ……」


起動したモビルアーマーが暴れまわる。

「まずい!逃げるぞ!【ゲート】」

冬夜が【ゲート】を開いて、そこにエルゼ、八重、リンゼ、ミカそして冬夜が飛び込んでいく。

「待ってくれ!」

俺も慌てて【ゲート】まで走る。
しかし、俺が飛び込む前に【ゲート】が閉じた。

「勘弁してくれよ……」

俺は逃げ遅れた……。





【ゲート】で安全な場所へ避難した僕たちはそこから、一キロくらい先にいるモビルアーマーを狙う。

「【エンチャント:ロングセンス、ブースト】」

僕はリンゼに【ロングセンス】を与え、一キロ先のモビルアーマーを確認出来るようし、また魔法の威力を【ブースト】で底上げした。

「リンゼ!」
「分かりました!」

リンゼは魔法の詠唱を始める。

「【炎よ爆ぜよ、我が真紅の咆哮を望みたもう。覚醒の刻来たれり、無久の境界に落ちし理。無形の歪みと成りて現出せよ】!」

魔法は詠唱呪文が長いほど、その威力が増していく。
リンゼはエクスプロージョンの長詠唱を唱え、確実にモビルアーマーを破壊するつもりなのだ(オルガ含めて)。





……逃げ遅れた俺はモビルアーマーから逃げながら、呪文の詠唱をしていた。

おそらく、冬夜は安全な場所へ避難してから、【ロングセンス】かスマホでモビルアーマーの位置を確認しながら、長距離高威力魔法を喰らわそうという魂胆なのだろう。

ということは俺はその長距離高威力魔法に巻き込まれて、死ぬ。

魔法がこちらに届く前に俺はよみがえるための呪文を唱えなければいけない。


「【俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!】」

「【紅蓮の爆発、エクスプロージョン】!!」

「【……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」





三連休は時間があるからよ、お前らが読み続けるかぎり、俺は書き続けるッ!
……だからよ、(読むのを)止めるんじゃねぇぞ……。



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異世界オルガ4

※イセスマパート多め
前半は冬夜目線、後半はオルガ目線です。


僕とオルガ、そしてミカさんは先日倒したモビルアーマーのことを話すため、オルトリンデ公爵の屋敷へと向かっていた。

屋敷の前にやって来たとき、正門が開いて、中から馬車が出てきた。
あれ?お出かけかな?タイミングが悪かったか。

「冬夜殿にオルガ殿か!ちょうど良かった!君たちも馬車に乗ってくれ!」
「え?ちょ……、えっ!?なんですか!?」

馬車の扉を開けて、出てきた公爵に腕を引っ張られ、馬車の中に引きずり込まれた。

「このタイミングで冬夜殿とオルガ殿が訪ねてくるとは……!おそらく神が君たちを遣わせてくれたのだろう!感謝せねばな」

確かに、この世界に僕とオルガを送りこんだのは神様ですけど……。

「なにかあったのか?」

オルガが公爵にそう聞く。すると公爵は切羽詰まったような声で口を開いた。

「兄上が毒を盛られた。幸い対処が早かったので、まだ持ちこたえてはいるが……」
「国王の暗殺未遂か……」
「ああ」

オルガの言うように、国王陛下の暗殺未遂があったらしい。

「それで僕は何を?」
「急ぎ、兄上の毒を消してほしい。エレンにかけたあの魔法【リカバリー】で」

万能回復魔法【リカバリー】。以前、公爵の妻であるエレンさんの失明を治したこともある。
確かに、その【リカバリー】を使えば、国王陛下の毒を取り除けるかも知れない。

「分かりました」

僕らは国王陛下のいる王城へ向かった。


慌ただしげに公爵に連れられて、王城へ入り、吹き抜けのホールの正面にある階段を掛け上がる。
そして長い回廊を抜けた先にあった大きな扉を開ける。

「兄上!」

公爵が部屋の中に飛び込む。
部屋の中にある豪華な天蓋付きのベットの周りには多くの人が集まっていた。
あのベットに横たわる人物が王様なのだろう。

「冬夜殿!頼む!」
「【リカバリー】」

柔らかな光が僕の手のひらから王様に流れていく。やがて、それが収まると王様の呼吸が穏やかなものに変わっていき、顔色も良くなった。

王様は勢いよく起き上がる。

「なんともない……。先ほどの苦しみが嘘のようだ。アルフレッド、その者たちは?」
「エレンの目を治した望月冬夜殿とその仲間たちです。彼なら兄上を救ってくれると思い、お連れしました」
「俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだ!」
「三日月・オーガス。『ガンダム・バルバトス』のパイロット」
「そうか。助かったぞ、礼を言う!」
「……あー。どうも」

王様から礼を言われ、どう返したらいいか分からず、間の抜けた返事をしてしまった。
オルガやミカさんはすごいな。王様の前でも全く緊張してない。


そんな僕にお姫様(確か、ユミナ姫と言ったか)が王様に続けて礼を言う。

「お父様を助けていただき、ありがとうございました」
「いえ、気にしないでください。元気になられて良かったです」

お姫様に礼を言われるのもなんか気恥ずかしいので、誤魔化すように僕は笑顔を浮かべた。
しかし、お姫様はじっ……と僕の方を見つめ続ける。

「な、なんでしょうか?」
「年下はお嫌いですか?」
「……はい?」

質問の意図が分からず、困惑しているとき、ふと王様と公爵の会話が聞こえてきた。


「ミスミドが私を殺して何の得がある?私を邪魔に思う者の犯行だ」
「私もそう思いますが、証拠があっては……」
「証拠だと?」
「はい。陛下が大使から贈られたワインを飲んだ直後に倒れられた現場を多くの者が見ております」

ワインを飲んで倒れた……?なるほど。

「ちょっといいですか?」

僕はそういって会話に割り込む。

「なんだ?」
「王様が倒れた現場はその時のままですか?」
「ああ、誰も触らぬようにしてある」
「ではそこに連れて行ってもらえますか?」


王様が倒れたという大食堂まで案内された僕は部屋の真ん中に立ち、毒物を【サーチ】する。

「だいたい分かりました。関係者をみんなここに集めてください」


大食堂で待っていると、王様に王妃様、ユミナ王女と公爵、将軍、伯爵、宮廷魔術師、そして最後に狐の獣人の女性が入室してきた。あれ?あの人って……。

「オリガ・ストランド、参りましてございます」
「アルマのお姉さん?」
「あなた方は!?」

やっぱり。アルマのお姉さんだ。オリガさんって言うのか。オルガと名前が似てるな。

「ほう。君たちは大使の知り合いなのか」
「迷子になっていた大使の妹さんを助けたことがありまして…………そんなことより」


たっぷりと間を空けてから、僕はこう宣言する。

「犯人はこの中にいます!」

決まった~!このセリフ一度言ってみたかったんだよな~!

「では、一から事件を検証してみたいと思います」

僕はミカさんから一本のワインを受けとる。

「ここに毒の入ってないワインを用意しました」

僕はそのワインを大食堂に置いてあった新品のグラスに入れ、一気に飲む。未成年だけどいいよね、異世界だし!

「うん、うまい!」

未成年だから、正直味は分からなかったんだけどね。

「毒が入っていないことを確認していただいたところで、このワインを国王のグラスに注ぎます。国王陛下はまだ体調が優れないようなので……代役はオルガにやってもらおうかな」
「俺が王の代わりか!」

なんか、嬉しそう。

オルガはグラスを手に取るとそのワインを一気に飲みほした。その時、希望の花が咲いた。


「どういうことだ」
「つまり毒はオリガさんの送ったワインにではなく、国王陛下のグラスの中に塗られていたんです」
「グラスに!?」
「卑劣な!」
「他の国王陛下のグラスにも同じ毒が塗られているんで、それの指紋とかを調べれば、犯人も分かると思いますよ」
「くそっ!」

僕がトリックを見破った途端に、伯爵が逃げ出した。
馬鹿なのか?あれじゃ、自分が犯人だと自白したようなもんじゃんか。

「【スリップ】」

逃げ出した伯爵を【スリップ】で転ばせる。
転んだ伯爵はそのまま兵士に捕らえられた。


無事解決して良かった。呆気なかったな。
そう思っていた僕にミカさんが話しかけてきた。

「ねぇ、冬夜」
「何です?ミカさん」
「オルガが生き返らないんだけど」
「えっ!?」

倒れたオルガの脈を図る……。本当に死んでる……。
……そっか!毒の入ったワインを一気に飲んだから、即死で呪文の詠唱が出来なかったんだ!しまったな……。

まぁ、いっか。【リカバリー】で生き返らせれるし。

「【リカバリー】」

僕が【リカバリー】をかけると、オルガは目覚めた。

「おお、ミカ」
「あっ、オルガ生き返った」

良かった。これで一件落着か。





「……どうしてこうなった……!?」

帰りに冬夜がそう呟く。それはこっちのセリフだ!

冬夜がちょっと考えれば子供でも分かるようなクソみたいなトリック(俺は分かんなかったなんて言えねぇ……)をドヤ顔で解明した後、なぜか冬夜はユミナ王女に逆プロポーズされた。

そして、何とか結婚は先伸ばしにしたものの花嫁修行ということで、ユミナ王女が俺たちに着いてきたのだ。

意味分かんねぇ……。


「ユミナ・エルネア・ベルファストです!今日からこちらでお世話になります!」

宿屋に帰ってきた俺たちはユミナ王女のことをエルゼやリンゼ、八重に説明するために皆を集めた。

「冬夜殿が結婚でござるか」
「……びっくり、ですね……」
「ったく、なにやってんのよ……」

皆、同じような反応をする。いや、リンゼは違うな。なんか顔が怖え。

「世間知らずではありますが、足手まといにならないように頑張ります!まずはギルドに登録して依頼をこなせるようになりたいと思います」
「「「「えっ!?」」」」

ギルドに登録だぁ。王女様にそれは無理なんじゃねぇか?

俺はそう思ったが、どうやらユミナ王女は魔法と弓を少々使えるらしい。


「っていうか、ユミナが冬夜と結婚したら次の王様って冬夜になるの?」

エルゼがふと思ったことを口にした。待ってくれ!

「王になる。地位も名誉も全部手に入れられるんだ。こいつはこれ以上ないアガリじゃねぇのか」
「僕が王様?ないないないない。そんな、ありえないよ」
「ないよ」

もったいねぇな……。なら俺と代わってくれよ……。
ってか、ちゃっかりミカまで否定してやがる……。


「とりあえず、ユミナの実力を図るために一つ依頼を受けてこようか」

話がまとまったところで冬夜はそう言い、席を立った。

「オルガとミカさんも行くよね」
「いや、俺たちは行かねぇ」
「えっ?なんで」
「俺たちが行ったらバルバトスが全部片付けちまって、ユミナ王女の実力を図れねぇだろ」
「あっ、そっか」

今までの魔物討伐もほとんどがバルバトス1機で倒してしまっている。
俺たちが行くとユミナ王女の実力は分からない。だから俺は冬夜の誘いを断った。


「じゃあ、今日は男一人に女の子四人か……」
「何か問題なの?」

冬夜の呟きにエルゼが疑問を問う。

「三人とも気づいてないと思うけど、ギルドで目立つんだよ君たち」
「なんででござる?」
「そりゃ、やっかみも受けるよ。エルゼにリンゼ、八重も特に可愛いんだからさ」
「「「えっ?」」」

冬夜がさも当然のようにそう口走った。
その瞬間、三人とも体が固まって、顔が赤くなった。

「何言ってんだぁぁぁ!」
「な、何言ってんのよ冬夜。……可愛いとか……冗談ばっかり」

ったく、イチャつきやがって……早く冬夜を追い出すか。

「いいから早く行けよっ!」
「分かったけど……なんでオルガは怒ってんの?」

分かんねぇのか?冬夜の鈍感クソ野郎が!


冬夜を宿屋から追い出した後、今まで黙って火星ヤシの実を食っていたミカがこう口を開いた。

「なんで怒ってたの?オルガ。別に普通じゃん」
「は?」

俺はミカから前世での話を聞いた。

♪オ~ルフェ~ンズ ナミダ~♪
《な、なっ……何!?……何っ!?》
《可愛いと思ったから》

《クーデリアさんも一緒に作りましょう!三日月の赤ちゃん!》
《はい?》
《クーデリアも欲しいの?》
《えっ!?》

「何やってんだ、ミカァァァ!!」





♪オ~ルフェ~ンズナミダ~♪ とは、接吻、キスなどの同義語。愛情表現や友愛表現の一つ。
愛情や友愛を示すときや、遺伝子採取の際に自分の唇と相手の唇を接触させる行為。


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異世界オルガ5

その城は王都から少し離れた丘の上にあった。

俺たちはギルドの依頼でその城に棲む魔物の調査をしに行くため、馬車を走らせていた。

しかし、女性陣はあまりやる気ではないようだ。
なぜなら、今から調査に行く魔物というのが、服を溶かしてくるスライムだからだ。

「せっかく琥珀も入って、みんなでやる最初の依頼なのに……」
「楽しみです!」

冬夜は喋る白い虎のぬいぐるみを胸に抱きながらやる気のない女性陣に対してそう言った。
んっ?なんだこの白い虎。

「誰なんだよ。そいつは」
「冬夜さん。琥珀ちゃんのこと、オルガさんには話してなかったんですか?」
「あっ、忘れてた」
「忘れるんじゃねぇぞ……」

冬夜とユミナは数日前にその白い虎(西の聖域を守護する神獣『白帝』)を召喚した時のことを話した。

《白い虎……白帝……!》
《少女よ、もう私は白帝ではない。琥珀と読んでくれんか》
《これが『琥』で虎、これが『珀』で白。それで横にあるのが王という意味》

王の横に立つ白い虎ってことか。
つまりこいつの横に立てば火星の王に……。

「オルガさん、よからぬことを考えてはいませんか?」
「勘弁してくれよ……」

ちょっと心の中で言ってみただけじゃねぇか……。


スライム城へとやって来た俺たちは玄関ホールの大きな両開きの扉を静かに開けた。

女性陣は怖がって中へと入ってこないので、俺とミカ、そして冬夜が先に城の中へと足を踏み入れ、城内の様子を探る。

「ちょっと薄気味悪いけど、大丈夫だ。みんなも入ってきなよ」

冬夜がそう言った瞬間、俺の頭の上に『金たらい』が落ちてきた。

「う"う"っ!……こんくらいなんてこたぁねぇ!」
「全然、大丈夫じゃないじゃない!」

まぁ、『金たらい』で頭を打っただけだ……。こんくらいなんてこたぁねぇ……。いや、なんか意識が朦朧としてきた。こりゃ、やべぇな……。このままじゃ死ぬぞ……。

その時、希望の花が咲いた。

「【俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」


「冬夜さん!たらいが……!」

ユミナが俺を殺した金たらいを見て、驚きの声を上げる。
俺を殺した金たらいは灰色のスライムへとその姿を変えた。

「スライム?」
「でも、見たことも聞いたこともないスライムです」
「新しく作り出したのでござろうか?」
「なんの役に立つんだ?」

俺を殺すのに役立ったじゃねぇか……。


その後、俺たちは調査のため、城の奥の方へと進んでいった。

「と、冬夜さん……」

進んでいる途中、リンゼが怯えた声で冬夜の名を呼んだ。

リンゼがゆっくりと指を差した方向にいたのは、緑色のスライムの群れだった。

「うわっ!?なんだこれ」
「ひぇっ……」
「グリーンスライム……」

女性陣が皆、怯えて後ずさる。

「琥珀!」
「お任せを!」

冬夜が琥珀の名を呼ぶと、小さな虎のぬいぐるみが大きな白虎へと姿を変え、口から衝撃波を放つ。
グリーンスライムはその衝撃波で吹き飛んで、壁に打ちつけられたが、ダメージは与えられていないようで、すぐにこちらを追ってきた。

「二階だ!二階に避難しよう」

冬夜は近くにあった階段を指差して、そう叫ぶ。

ミカが最初に逃げ、次にエルゼ、八重、リンゼ、ユミナ、そして冬夜が階段の方へ走っていく。

「待ってくれ!」

俺も慌てて、冬夜の後を追うが、後ろからグリーンスライムがものすごい勢いで迫って来る。

ヴァアアアアアア!!パン!パン!パン!

銃での応戦も虚しく、俺はグリーンスライムの餌食となった。





「助かった……」

階段を登り、二階に逃げた僕は安堵の息を吐く。

「いえ、しかし……」

そんな僕に琥珀は1階にいるグリーンスライムの餌食となったオルガを見るよう促した。

「うげっ!」

僕はその惨状を見て、吐き気を催すほどの感覚に襲われた。


そこにはグリーンスライムによって服を溶かされ、あられもない姿になっているオルガがいた。

溶けかかっている赤いスーツの破けた大きな穴から、スライムが分泌する体液でヌルヌルに輝くその鍛え上げられた体の艶かしい肌が露出している。


「……【ゲート】……みんなも行こ……」
「賛成っ!!早く、こんなとこ出ましょうよ!」

流石に見ていられなくなった僕は【ゲート】を開いて、みんなと一緒にスライム城を出る。

……今回のギルドの依頼は失敗だな。


「【炎よ爆ぜよ、紅蓮の爆発、エクスプロージョン】!!」

スライム城を出たとき、リンゼが城へ向かって【エクスプロージョン】を放った。

えっ!?そこまでするの!

「浄化よ」
「浄化……です」
「浄化でござる」
「浄化ですね」

女性陣はみんな、浄化だと言い張っている。

あの……中にオルガがまだ残ってるんだけど……。

「オルガはもう居なくなった……」

ミカさん……。ちょっとオルガに辛辣過ぎやしませんか。

まぁ、オルガは生き返れるからいいか。

「なんか、散々だったね」





気がついたら、俺の周りにいたスライムは居なくなり、辺りが燃え盛っていた。

どうやら、俺がスライムに襲われている間に冬夜たちは【ゲート】で逃げて、リンゼが【エクスプロージョン】で俺とスライムもまとめて城を燃やしたらしい。

……またも俺は逃げ遅れた訳だ……。


このまま、スライムと運命を共にする訳にはいかない。

俺は城の出口へと歩きながら、もし焼死したときのためによみがえるための呪文を口ずさんでいた。


「【ミカ、やっと分かったんだ……。俺たちには辿り着く場所なんていらねぇ!ただ進み続けるだけでいい……。止まんねぇかぎり、道は続くッ!】」

その時、希望の花が咲いた。

「【俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」





私もイセスマのエンディングは好きです。


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異世界オルガ6

冬夜が家をもらった。

先日の国王の暗殺未遂事件の謝礼として受けとるはずだった爵位を冬夜が辞退したことで、その代わりとして家をもらったのだそうだ。

もったいねぇな……。
俺だったら喜んで、爵位を貰うぞ……。


俺たちは今、その冬夜がもらった家に来ていた。

白塗りの壁に青い屋根の三階建ての屋敷。
その屋敷には昨晩、徹夜で俺が書いておいた『あるモノ』があった。

「これが鉄華団のマークだ!なかなかいいだろ!」
「ないないないない!【モデリング】!」

俺が親切心で書いてやった鉄華団のマークを冬夜は【モデリング】で一瞬にして消し去りやがった!

「何やってんだぁぁぁ!!」
「あたりまえじゃん」

……ミカにまで否定された……。



冬夜がもらった屋敷で過ごし始めてから、数週間がたったある日、屋敷にオルトリンデ公爵が訪ねてきた。

「この度、我が国はミスミド王国と同盟を結ぶことが決定した。ついては国王同士の対談の席を設ける必要があるのだが……」

俺たちが住んでいるベルファスト王国は三つの国に囲まれている。
三つの国とは西のリーフリース皇国、東のレグルス帝国、そして南のミスミド王国である。
西のリーフリース皇国とは長年、友好的な関係を築けているが、東のレグルス帝国はいつ攻め込まれてもおかしくない状況にあるらしい。

対帝国の勢力増強のため、ミスミド王国との同盟が結ばれることになったとのことだ。

「会談するには、どちらかの王都へ行くのが一番なのだが……それは必ず危険がつきまとう。そこで……だ」

その同盟のための国王同士の対談をミスミドで行うため、俺たちにミスミドまでの道中の護衛をしろ。ってことだろ!分かったよ!

「ああ、分かったよ!連れてってやるよ!!連れてきゃいいんだろ!!」
「まぁ、待ちなさい」
「冬夜さんの【ゲート】ですね」
「流石ユミナ、話が早い」

……そういうことか。俺たちだけでミスミドまで先行して、冬夜の【ゲート】でベルファスト王国の王都とミスミド王国の王都を繋げちまえば、両国の王都を安全に行き来できる。

「あの魔法は一度行った場所にしか移動出来ませんよ?まさか……」

冬夜が分かりきったことを公爵に尋ねる。

「そう。君たちにミスミドへ行ってもらいたい」
「やっぱりか」


数日後、ミスミドへの先遣部隊が組織された。
ミスミド側からはミスミド大使のオリガとその妹のアルマ、そしてガルンという男の率いるミスミド兵士隊。
ベルファスト側からは、ベルファスト王国第一騎士団…………!!??

その騎士団を率いる男を見て、俺は驚きを隠せなかった。
その金髪の男は、生前俺たち鉄華団を破滅の道へと誘った男ーーーー『マクギリス・ファリド』と瓜二つであった。

「あんた、まさか……」

俺はポケットの中に手を突っ込み、そこに入っている銃を握りしめる。

「ベルファスト王国第一騎士団所属 リオン・ブリッツです」
「なんだよ……」

どうやら、他人の空似というやつだったらしい。
……結構似てんじゃねぇか……。

俺はポケットの中で握りしめていた銃を手放した。


「今日はここまでにしましょうか」

マクギリスに似た金髪の男がそう言うと、暗くなってきた森を進んでいた三台の馬車が動きを止めた。

止まった馬車から人が降りていき、火を焚いたり、夕飯の準備を始めたりして、皆が一斉に働き出す。

俺も馬車を降りて、一度大きく伸びをした後、森の奥へと歩き出した。

「オルガ、どこ行くのさ?」

俺に気づいた冬夜がそう声をかけてくる。

「便所だよ!」
「そう、わかった。あんま離れすぎないでよ」
「分かってるっつーの」

俺はそう言って、再度歩き出した。





「何者かが複数、近づいています」

オルガが用を足しに行ってから数分後、ミスミドの兵士の一人が立ち上がり、そう言った。

「おそらく、街道の盗賊でしょう」

ミスミドの兵士隊長ガルンさんがそう予想する。
僕もスマホで盗賊を【サーチ】してみる。

すると、スマホの地図上にいくつかのピンが表示された。しかし、妙なことが一つあった。

「……あれ?僕の隣にも盗賊が一人いる」
「それ多分、俺だ」

僕が疑問に思ったことを口にすると、僕の隣にいたミカさんがそう発言する。
スマホの地図上のピンは確かにミカさんを示していた。
ミカさん曰く、「鉄華団も盗賊みたいなもんだから」とのこと。じゃあ……。

「【エンチャント:マルチプル】……【パラライズ】!」

僕は連続詠唱省略魔法【マルチプル】をスマホに【エンチャント】させて、マルチターゲットの機能をスマホに追加。そして【サーチ】で表示されているミカさん以外の盗賊を選択して、【パラライズ】で麻痺させた。

すると、周りの森からは盗賊であろう者たちの悲鳴が聞こえてきた。

「うぐっ!」
「ぬあっ!」
「ぎゃっ!」
「うわっ!」

その悲鳴を聞きながら、僕はある事を失念していることに気がついた。
ミカさんが盗賊として認識されたのだから、当然 森の奥へ用を足しに行ったオルガも盗賊の一人として認識されているはずだ。
しかし、僕はミカさん以外の全ターゲットに【パラライズ】をしてしまった。

ということは…………。

「ヴァアアアアアア!!」

やっぱり、オルガも【パラライズ】に巻き込まれていた。





その時、希望の花が咲いた。

「【俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」





それから数日間は何事もなく、平和な旅路が続いた。

しかし、国境を越えてミスミド王国へ差し掛かった頃、急に森の動物たちが騒ぎ出した。

「何か、大きなものが来ます!」

ミスミドの兵士の一人がそう言って、空を見上げる。

「あれは何だ?ドラゴンか?」
「まさか!?ドラゴンがこんなところにいるはずが……」

俺たちも皆と同じように空を見上げる。
空を飛ぶそいつを見て、冬夜も俺も驚きの声を上げた。

「あいつは、あの時の!」
「モビルアーマーじゃねぇか!!」

俺たちの真上にいたのは以前、旧王都で倒したはずのモビルアーマーだった。

前回、リンゼの【エクスプロージョン】を喰らった後、壊れた部品が妙に少ないと思っていたのだが、やはり仕留め損ねていたようだ。


「あいつ、エルドの村に真っ直ぐ向かってるぞ!」

冬夜がスマホで地図を確認しながら、そう叫んだ。

モビルアーマーは人工密集地を優先的に狙うようにプログラミングされている。
この辺りで一番人が密集しているエルドの村をターゲットに選んだのだろう。

このままじゃエルドの村が崩壊するぞ!


「ユミナと、騎士団の皆さんはここで待ってて下さい!」
「モビルアーマーと戦った経験があるのは俺たちだけだ。だから俺たちだけで様子を見てくる!」

冬夜の言葉に続けて、俺も両国の騎士団へ命令する。

無駄に人を引き連れて行って、被害が増えるのは勘弁だからな。

「よし、エルドに向かおう!」


エルドの村に辿り着くと、村はすでに炎に包まれていた。

「村人の避難を優先させろ!」

俺たちに着いてきた一部の騎士団員が村人の避難誘導を始める。


「どうする、オルガ?」
「まずはモビルアーマーを村から離さなくちゃなんねぇ!なんとかしてあいつを引きつけるぞ!」
「わかった!【光よ穿て、輝く聖槍、シャイニングジャベリン】!!」

冬夜は俺の指示を聞いた後、モビルアーマーへ魔法を放ち、やつの注意を引く。

「琥珀!!」

次に琥珀を大虎サイズで呼び出し、モビルアーマーを引き付けながら、逃げる。

モビルアーマーが砲撃。その方角には……リンゼがいた!危ねぇ!

「リンゼ!」
「は、はい!」

冬夜がリンゼの手を引いて、琥珀の背に乗せ、再び逃げる。

「いいぞ……ついて来い!」


村から充分に離れたところまで、モビルアーマーを誘導出来た。
よし!ここなら、ミカを暴れさせられる!

「【ミカァ!】」

自らの魔力のほとんどを使って、『ガンダム・バルバトス』をLv7で召喚する。
『ガンダム・バルバトス』はLv7で、機体名称が変化する。
俺が限界の魔力で召喚したこいつの名は『ガンダム・バルバトスルプス』。
こいつならモビルアーマーと渡り合える!


召喚した瞬間、モビルアーマーに出鼻をくじかれたが、ミカのバルバトスルプスはすぐに持ち直し、反撃に打って出た。

バルバトスルプスはその手に持つソードメイスでモビルアーマーを叩いては離れ、叩いては離れとヒット&アウェイを繰り返す。あまり決定打は与えられていないようだが……。一応、今はバルバトスルプスが優勢だ!

しかし、そのバルバトスルプスの猛攻も長くは続かない。
バルバトスルプスが離れたタイミングを狙い、モビルアーマーが砲撃を放つ挙動を見せた。

「【水よ来たれ、清洌なる刀刃、アクアカッター】」

モビルアーマーが砲撃を放ったのと同時にリンゼも魔法を放つ。リンゼの【アクアカッター】がモビルアーマーのビームの軌道を変化させた。

モビルアーマーはその後、何度も砲撃を放つが、攻撃を捨て、回避に専念したバルバトスルプスにモビルアーマーの攻撃が当たることは無かった。

だが、反撃に打ってでなければ、勝機はない……。


そんな時、冬夜が何か閃いたようなので、俺は冬夜に賭けてみることにした。

「エルゼ、八重!時間を稼いでくれ!」
「わかったわ!」
「了解でござる!」

「リンゼは大きな氷の防御壁を僕の方に!琥珀はリンゼを守れ!」
「はい!」
「御意!」


モビルアーマーの砲撃を避け続けるバルバトスルプスだったが、モビルアーマーの尻尾が伸びてきて、バルバトスルプスを突き穿つ。

「あっぶねぇ……なあ!!」

モビルアーマーの尻尾がバルバトスルプスのコクピットに突き刺さるが、ミカとバルバトスルプスは止まることを知らない。

モビルアーマーを左腕で殴り付けた後、バルバトスルプスは後退するが、モビルアーマーの尻尾がバルバトスルプスを追尾して来る。

「九重真鳴流奥義・龍牙烈斬!」

その時、ものすごい勢いで飛び出してきた八重が刀でモビルアーマーの尻尾を一刀両断した。

「必ッ殺ッ!キャノンナックル!!」

続けて、エルゼが右手のガントレットをロケットパンチの要領で飛ばし、モビルアーマーを攪乱する。

「二人共やるじゃん」
「行くわよ!三日月!」
「冬夜殿に言われた通り、時間を稼ぐでござるよ!」


「【氷よ来たれ、永遠の氷壁、アイスウォール】」

リンゼが魔法で分厚い氷の壁を作り上げる。

「【モデリング】、【エンチャント:グラビティ、プロテクション】!!」

冬夜はその氷の壁の形状を【モデリング】で変化させて、巨大な両刃の剣を作り、【グラビティ】を【エンチャント】することで重さを、【プロテクション】を【エンチャント】することで耐久度を底上げする。

「ミカさん!」
「借りるよ!」

冬夜が作った巨大な両刃の剣『バスターソード』を受け取ったミカは、モビルアーマーの砲撃を避けながら、全速力で近づいていく。
そして、目にも止まらぬ勢いでモビルアーマーを何度も叩き伏せる。

「あんな技、見たことないわ!」
「あれは……!?」

あれは、試し斬りだ。今、ミカは冬夜の作ったバスターソードの使い勝手を確認しているんだ!

「ちょうどいい、これなら……殺しきれる!!」

ミカのバルバトスルプスがバスターソードを水平に構え、そのままモビルアーマーへと突き刺した。

そして……モビルアーマーは、完全に機能を停止した……。




読んでいただいてありがとうございます!

皆さんのおかげで日間ランキング入りしました。本当にありがとうございます!
ウィンターさんにランキング入りを報告したところ「めでてぇ」とコメントを頂きました。
残り6話もこの調子で頑張っていこうと思います!

……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……。


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異世界オルガ7

モビルアーマーを倒した後、バルバトスルプスのコクピットからミカが降りてきた。

ミカは地面へ着地しようとしたが、失敗して転倒する。
……ん?何か、ミカの様子がおかしい……!?

「どうした!ミカ!」
「何か、足が動かなくなった……」
「なっ!?」

生前もバルバトスの性能を限界まで解放した時に同じような事が起きた。
生前は右半身を失ったのだが、今回は下半身が動かなくなったようだ。

だが、そうなる事は予想済みだ!対策案も考えてある!そう、この異世界には魔法がある!

「冬夜!」
「任せて!【リカバリー】!」

冬夜が【リカバリー】をかけると、ゆっくりとミカが立ち上がった。

「おお……!ミカ……!」
「やっぱり、あんたなら出来ると思ったわ!」
「無属性魔法、全部使えますもんね!」
「さすがは冬夜殿でござる!」

エルゼやリンゼ、八重も俺と同じようにミカの回復を喜んだ。



モビルアーマー撃破から三日後、ついにミスミド王国の王都へと到着した。

馬車から降りて、真っ白な宮殿へと入っていく。
大理石で出来た長い廊下を進んでいくと、奥には大きな扉があった。

「どうぞ、お入り下さい」

ミスミドの兵士がそう言って、大きな扉を開ける。
そして、俺たちは謁見の間へと足を踏み入れた。


謁見の間の奥の少し高くなった玉座にこの国の王ーーーー獣王が座っていた。

俺たちは全員、獣王の前に片膝をつき、頭を垂れる。

「オリガ・ストランド、ただいまベルファストより帰還致しました」
「うむ、大義であった。……それで、そなたたちがベルファストの使いのものか。なんでも旅の途中、エルドの村の襲った竜を討ったとか」
「竜じゃなくて、モビルアーマーだ」

俺は獣王の言葉を訂正する。
俺の獣王への態度に対し、冬夜は頭を抱え、エルゼたちは唖然としている。そしてミスミドの宰相たちは怒りを露にした。

「獣王陛下になんと言う口の聞き方だ!」
「良い。……そうか、そなたが竜を討った勇者か!ハッハッハッハ!久しぶりに血が滾るのう!どうだ、ひとつ儂と立ち会わんか?」

どうやら、この国の王は血気盛んな性格のようだ。
……あと、竜じゃねぇって言っただろうが……。まぁ、それはどうでもいいか。

「……わかった」

俺は獣王による決闘の申し込みを受けることにした。


そして、俺と獣王は王宮の裏手にある闘技場へとやって来た。

俺は審判役から木剣と盾を渡されたため、とりあえず、受け取っておいた。
……まぁ、使うつもりはねぇけどな……。

「勝負はどちらかが真剣ならば致命傷になるであろう打撃を受けるか、あるいは自ら負けを認めるまで。魔法の使用も可。ただし、本体への直接的な攻撃魔法の使用は禁止。双方よろしいか?」

……魔法の使用も可。本体への直接的な攻撃魔法の使用は禁止。……つまり、召喚魔法は使用可能だな!

「ハッハッハ、手加減は無用!」
「あんた、正気か?」
「実戦と思ってあらゆる手を使い、儂に勝ってみせるがいい!」

……なら、お望み通り手加減なしで行くか!

「ミカァ!やってくれるか?」
「いいよ」


「では、始めっ!」
「【ミカァ!】」

俺は審判の合図と同時に『ガンダム・バルバトス』をLv1で召喚する。
急に地面から出てきたバルバトスに獣王は驚き、慌てふためき、そして……待ったをかけた。

「ちょっと待った!なんだ今のは!」
「『ガンダム・バルバトス』……こいつの名前だって」
「いやいやいやいや!もう一回だ!次はその魔法なしで!」

……全く、注文の多い獣王様だな……。


Take2

「あの魔法は禁止だからな!」

獣王が念を押す。……わかってるっつーの。

「始めっ!」
パンパンパン

ミカは審判の合図と同時に、銃を構え、銃弾を獣王に叩き込む。

……おいおい。あれは死んじまったんじゃねぇか……。

「【リカバリー】」
「……なんだ今のは!」

冬夜が【リカバリー】をかけて、獣王が生き返った。

「よかった……。殺さないようにって難しいな……」





僕たちは、獣王陛下の計らいで、ミスミドに何日間か滞在することになった。

その滞在期間中、僕は自分用に新しい武器を作っていた。

スライム城でオルガが、獣王陛下との決闘でミカさんが使った銃を僕も欲しいと思ったからだ。

僕は生前にも、じいちゃんや組長さんに銃を見せてもらったことがある。小さい頃はその銃を分解して遊んでいたため、銃の構造もわかっている。

わからないところもちょっとあったので、そこはスマホで調べて、銃の部品を一つ一つ【モデリング】で作っていき、組み上げた。

「よし、完成!」

僕は完成した銃の試し撃ちをする。
パン!

「う"う"っ!」

僕が木に向けて放った銃弾は木には当たらず、木の向こうを歩いていたオルガに当たった。


その時、希望の花が咲いた。

「【俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」


また、オルガが死んでる(笑)
まぁ、それはどうでもいいんだけど……なんで外したんだ?

僕は自分が作った銃の銃口を覗いてみて、あるモノが無いことに気付いた。

「あっ、ライフリングがない……」
「何やってんだぁぁぁ!!」

ライフリングとは銃口の内側にある螺旋状の溝のことだ。それがないと、銃弾に回転がかからず、真っ直ぐ飛んでいかないのだ。

僕は【モデリング】でライフリングをつけ加えて、再び銃の試し撃ちをした。今度は大丈夫だ。


「何を作ったんですか?冬夜さん」

先ほどの発砲音とオルガの叫びを聞いて、買い物から帰ってきていたユミナとリンゼが様子を見にきた。

ちなみにエルゼと八重は、ベルファスト王国第一騎士団とミスミド兵士隊の合同訓練に参加しているため、ここにはいない。

「これは銃って言ってね。遠距離攻撃の武器なんだ」
「オルガさんや三日月さんも使っていましたね」
「それで、この銃の名前はなんと?」

僕が銃の説明を二人にすると、僕が生前見ていたアニメ『けものフレンズ』のサーバルちゃんのような顔をしたリンゼが僕にそう聞く。

一応『レミントン・ニューモデルアーミー』という銃をモデルに作ってはいるが、連射性が欲しかったためシングルアクションをダブルアクションに変えたり、接近戦も行えるよう、【ブレードモード】、【ガンモード】の詠唱で銃に取り付けたナイフが伸縮するように【プログラム】したから、本来の『レミントン・ニューモデルアーミー』とは別物なんだよな……。

「う~ん。『ブリュンヒルド』とかにしとこうかな」
「は?」

オルガ曰く、僕のネーミングセンスは悪いらしい。





生前のスマホ太郎について知りたい方はイセスマ原作『#447 過去、そして番外編。』をなろうで是非ともご一読ください。


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異世界オルガ8

元動画のアバン(スマホ太郎が風呂に行こうとして、榊遊矢に会うところ)がどうしても小説で補完・再現出来ませんでした。すいません。



ミスミドから帰ってきて数日が経った。

自分の部屋からリビングに出てきて、ふと庭を見るとまた何かを作ってる冬夜がいた。いつの間にか来ていた公爵もそれを見ている。

「よぉ、公爵。あんた仕事はいいのか」
「おお、オルガ殿か。お邪魔してるよ。ミスミドの件の礼に来たのだ」
「そうか。で、冬夜は何作ってるんだ」
「自転車だよ」
「……じてんしゃ?」

どうやら冬夜はなにか乗り物を作ってるらしい。


30分くらい経った後、その乗り物は完成した。
乗り手がペダルを回すことで、車輪の方も回転して進むことが出来る乗り物のようだ。

その自転車に興味を示した公爵は冬夜から乗り方を教わっている。


その時、俺は全く別の事を考えていた。
それは俺自身についての事だ。

俺はこの異世界に来てから、死ぬ確率が非常に多い。
普通なら怪我程度で済むような場合でも、意識が朦朧としてきて、死にそうになり、復活の呪文を唱えている。

最初に疑問を感じたのはスライム城でたらいが落ちてきた時だ。たらいが頭に当たった程度で死んでしまうなどあり得ない。
その後も、冬夜の【パラライズ】やブリュンヒルドのゴム弾を食らった時も、普通なら麻痺や怪我で済むはずなのに、俺は死にそうになった。

……この自転車は、実験にちょうどいいかも知れないな……。

俺は公爵が練習している自転車にぶつかりにいった。

「お、おぉっ!おぉ、おぉぉおおぉ!あぁ~!」
「う"う"っ!」

その時、希望の花が咲いた。

「【俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」

やはり、俺は死んだ。


「叔父様!?」
「なにそれ?」
「……乗り物……?」
「なんと、奇妙な……」

リビングから出てきた四人は自転車の練習をする公爵を最初は奇妙な目で見たが、その後、すぐに自分たちも乗ってみたいと言い出した。


「真っ直ぐ前向いて」
「は、はい……きゃっ!」
「おっと、セーフ!」

……冬夜がリンゼに甘いな……。

エルゼは公爵同様、一人で何度も転びながら、練習している。八重は部品が足りず、もう一台の自転車が作れなかったため順番待ち。

ユミナは……。

「ど~ですか~冬夜さ~ん!もう庭を回ることも出来ますよ~!」

もう乗れてんじゃねぇか……。

「ユミナは呑み込みが早いな」
「えへへ……」
「……冬夜さん!私も、こんなに!」

冬夜に褒められているユミナに嫉妬したからか、リンゼが急に自転車に乗れるようになった。
それに対抗するようにエルゼもリンゼと並走する。

「お姉ちゃん!?」
「い、意外と簡単に乗れるわね~これ!」
「……私だって!」

あいつら、前を見てるようで見てないな。
……完全に冬夜に褒められたいっていう欲望に任せて、乗ってやがる。
一応、よみがえるための呪文を唱えながら、注意喚起してみるか……。
(この時の俺にはなぜか、避けるという選択肢が頭になかった)

「【俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!】」

エルゼとリンゼが乗る自転車の進む先に居た俺とぶつかって、二人は転倒し、俺は……。

「きゃっ!」
「うわっ!」
「う"う"っ!」

やはり、希望の花が咲いた。

「【……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」


実験結果……俺は死を引き寄せる運命にあるらしい。





「すいません、ミカさん。買い物に付き合ってもらっちゃって」
「別にいいよ。冬夜は俺の足を治してくれたし」

僕とミカさんは、足りなくなった自転車の部品を買いに町へ出ていた。

「……それに、オルガもなんか考え事してたから……こういう時は、俺はオルガの近くにいない方がいいんだ。俺がいるとオルガは止まれない」
「そうなんですね……」

確かに、今日のオルガは変だった。
自転車の練習をしてるところに、急にぶつかりにいって、一人で死んでた。
オルガが死ぬのはいつものことだけど、今日はいつも以上に様子がおかしかった。

そんなことを考えながら歩いていたら、ドン、と人にぶつかってしまった。ボーイッシュな子供の女の子だ。

「っと、ゴメンよ。前を見てなかった」
「ボケっとしてんなよ、兄ちゃん。気をつけな」

女の子がこういう言葉使いなのは、どうなんだろう。
そう思いながら、女の子の後ろ姿を見ていると、ミカさんが僕の袖を引っ張った。

「どうしました。ミカさん」
「あいつ、スリ」
「えっ!?」

僕がポケットの中に、手を入れてみると、そこにあるはずの財布とスマホがない。
スリの女の子は、僕らが気づいたのを見て、慌てて逃げ出した。

「あっ!?待て!」


スリの少女が逃げた路地裏を進んでいくと、ガラの悪い男の声が聞こえてきた。

「また俺たちの縄張りで仕事しやがったな、このクソガキ! テメエのおかげで警邏が厳しくなっちまったじゃねえか!」
「好き勝手にやられるとこっちが迷惑なんだよ。覚悟はできてるだろうな」

どうやら、二人のガラの悪い男がスリの少女を寄ってたかって痛めつけてるようだ。
一人がナイフを取り出し、少女の腕を押さえる。それを見て少女の顔が恐怖に染まった。

「やめて!勝手にスリしたのは謝るから!」

少女は涙を流し懇願するが、二人の男はせせら笑うだけで、押さえる手をどかそうとはしない。

「もうおせぇんだよ」
「いや……いやあぁぁ!!」
「そこまで!」

チンピラ二人は声をかけた僕の方を睨んでくる。
少女は涙を流しながら、目を見開いていた。

「なんだ、てめぇ!」
「邪魔すんじゃねぇよ!」
「子供を寄ってたかって痛めつけてたら、止めるに決まってるだろ!会話から察するにあんたたちもスリのようだね」
「だったらどうだってんだ!」
「いや、別に。撃つのに躊躇いが無くなるな~って思っただけ」

僕はそう言って、腰から『ブリュンヒルド』を抜こうとしたが、その前にミカさんが発砲した。

パンパン!パンパン!

「こいつは死んでいいやつだから」


ちなみに、助けたスリの少女レネはうちでメイドとして雇うことにした。





「ここがミスミドか!賑やかじゃのう!」

冬夜が自転車を作ってから、数日後。
公爵の娘スゥシィがミスミドに行きたいと駄々をこねたため、冬夜の【ゲート】を使って、スゥシィをミスミドへと連れてきた。

大勢で行動すると目立つため、ついてきたのは俺とミカに冬夜、スゥシィとユミナ、そしてミスミドの案内役としてオリガの妹アルマの六人だ。

「珍しいものが売っておるのう!父上と母上になにかお土産を買っていくのじゃ!……そうじゃ!あの仮面などよいじゃろう!行くぞ冬夜!」
「はいはい」

スゥシィが冬夜の手を引いて、走っていく。
ああいうのを見てると、鉄華団の年少組を思い出すな……。いやでも、10才っつーと、クッキーやクラッカの一つ年下か……。そういや、あいつら元気かな……。


「冬夜さん!あそこにいるの、オリガさんとリオンさんじゃないですか?」
「えっ!?お姉ちゃん!」

ユミナがそう言って指差した先には、ミスミド大使のオリガとマクギリス似のベルファスト騎士リオンがいた。

「ホントだ」
「デート、ですかね?」
「たぶんね」
「追いかけないと!」

アルマはそう言って二人の後を追う。

「えっ!?尾行するの?」
「妹として、姉の恋路は知っておくべきです!」
「面白そうじゃ!わらわも!」

スゥシィも面白がってアルマの後を追う。

「ちょっとスゥ!」
「ったく、仕方ねぇな」

俺たちもアルマとスゥシィの後を追った。


デート中の二人を見失わないように足を早めたアルマが、曲がり角で体格の大きいフードの男性とぶつかってしまった。

「おっと、すまんな。怪我はないか?」
「あ、はい。すいません。急いでいたもので……」

アルマの手を引いて、立ち上がらせるフードの男を見て、俺と冬夜は驚いた。

「獣王陛下!?」
「獣王じゃねぇか!」
「なっ!?冬夜殿にオルガ殿!?それにユミナ王女まで!ベルファストに帰ったのではなかったのか?」


どうやら獣王は、城下へ気晴らしに来たらしい。

「それで、お前さんたちは何をしとるんだ?」
「あれだよ」

獣王の質問に対し、俺はデート中の二人を指差して、返答する。

「あれは……オリガとベルファストの騎士か……なるほど。そういうことか」
「そういうことです」


広場のベンチに座ったリオンがオリガの肩に手を回そうとして、引っ込めるという挙動不審な行為を繰り返してる。

「すいません、リオンさん。……ちょっとお花を摘みに」
「は、はい」

オリガがベンチを離れる。リオンは自身の不甲斐なさにへこたれている様子だった。

「情けねぇなぁ、儂が若い頃はもっと男がグイグイと……」

獣王が自分語りを始めたとき、何やら騒ぎが起こった。

騒ぎのした方を見ると、ガラの悪い男たちが屋台を壊し、店主に暴行を加えていた。

「やめろっ!」
「なんだ、てめぇは」
「その人を離せ!一人に対し、寄ってたかって恥ずかしくはないのか!」

その騒ぎを見たリオンはチンピラたちを止めに入る。
ユミナ、スゥシィ、アルマもそんなリオンの姿を見て、「お~カッコいい」と騒いでいる。
俺たちがつけてんのがバレるぞ。もっと静かに見守ってろよ。

しかし、チンピラ十数人に対し、リオンは一人。
数で勝ってるチンピラが素直に従うわけがねぇ。

「この野郎!やっちまえ!」

ナイフを構えたチンピラがリオンに襲いかかろうとした。……その時、リオンがこう呟いた……。

「バエルを持つ私の言葉に背くとは……」
「は?」

リオンはモンタークの仮面を被って、召喚魔法で『ガンダム・バエル』を呼び出し、バエルの力でチンピラをねじ伏せる。冬夜と獣王もスゥシィがお土産用に買った仮面を借りて、参戦した。

「見せてやろう!純粋な力のみが成立させる。真実の世界を!」


そして、チンピラは一人残らず、地面に伏した。

「ちょっとやり過ぎましたかね?」
「いや、構わんだろ」
「バエルを手に入れた私は、そのような些末事で断罪される身ではない」

リオン・ブリッツはついに正体を現した。

「マクギリスじゃねぇか……」
「リオン・ブリッツです」

ヴァアアアアアア!!パン!パン!パン!





次回の序盤……オリ展開多めになるかもです



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異世界オルガ9

いつもより長めです(約6500文字)


「マクギリスじゃねぇか……」

ヴァアアアアアア!!パン!パン!パン!

俺はリオン・ブリッツを名乗るマクギリスに向けて銃を発砲するが、その銃弾はどこからか飛んできたカードによって防がれる。

「君の相手は私ではない」
「は?」

マクギリスがそう言うと、カードが飛んできた木の陰から隠れていた男がその姿を現す。

レディース エーン ジェントルメーン!
「俺の名前は榊遊矢!」

榊遊矢と名乗った赤と緑のまるでトマトのような色をした奇抜な髪型の少年は、カードを媒体にして、ドラゴンを召喚する。

「【吹き荒ぶ次元に垣間見る新たな力!今再び超越せよ!『覇王烈竜 オッドアイズ・レイジングドラゴン』!】」

「何っ!?」
「あれは……?」

冬夜もこんな魔物は始めて見るといった様子で驚愕している。そんな中アルマは……。

「カッコいいー!」

と叫んでいた。「カッコいいー!」じゃねぇよ……。


とにかく、このパッと出の意味わからん奴に手間取る訳にはいかねぇ……。

俺はユミナにこう声をかける。

「ユミナ!たしかお前は召喚魔物が使えたよな!」
「……はい。私の契約している魔物はシルバーウルフですけど」
「そいつを一匹、貸してくれ!」
「いいですけど……何に使うんです?」
「とりあえず、召喚してくれや」
「わかりました。【闇よ来たれ、我が求むは誇り高き銀狼 シルバーウルフ】!」

ユミナがシルバーウルフを一匹召喚し、そのシルバーウルフがオッドアイズ・レイジングドラゴンと対峙する。
……よし、準備完了だ!

「俺は、場のシルバーウルフと手札のミカを融合!【自在に形を変える神秘の渦よ、闇に蠢く亡霊を包み込み、今ひとつとなりて、新たな王を生み出さん!融合召喚!生誕する!『Lv8 ガンダム・バルバトスルプスレクス』!】」

「銀狼を融合し、狼の王を生み出したか」

マクギリスの言う通り、俺は自身の限界の魔力とユミナの銀狼を触媒にして、『Lv7 ガンダム・バルバトスルプス』を『Lv8 ガンダム・バルバトスルプスレクス』へと昇華させたのだ。

「どうすればいい、オルガ」
「……潰せ」
「うわぁ~~~~!!」

榊遊矢はバルバトスルプスレクスに吹き飛ばされ、地面に頭を打ちつけた後、まるでゴムのように、ポン、とバウンドした。


「さて、腹割っていこうじゃねぇか!大将!」
「……久し振りだね。オルガ・イツカ、そして三日月・オーガス君」
「チョコの人ひさしぶり」

邪魔者(榊遊矢)を倒し、改めてマクギリスと対峙する。

「なんで、てめぇがここにいる」
「君やそこの望月冬夜君と同じだよ。私もこの異世界に転生した一人さ。さっき倒された榊遊矢もね。私と君たちの違う点は、転生時に記憶を失ってしまったことくらいか……」


マクギリスの話によると、マクギリスはガエリオ・ボードウィンによって殺された後、気がつくと記憶を失ってベルファストの王都に倒れていたらしい。

そして、同じく隣で倒れていた榊遊矢と共にベルファスト王国の将軍 レオン・ブリッツに拾われ、マクギリスはブリッツ家の養子として迎え入れられた。
その時に与えられた名前がリオン・ブリッツだ。

その後、リオン(マクギリス)は闇属性の適性があることが分かり、召喚魔法を試したところ、召喚されたのは『ガンダム・バエル』だった。
『ガンダム・バエル』を見た瞬間、前世の記憶がよみがえり、それ以降はレオン・ブリッツの息子リオン・ブリッツとしてベルファスト王国第一騎士団に入団し、力が支配する真実の世界を作ろうと尽力しているらしい。

騎士の座につきながらも力で物事を解決する……。
その時、正体を隠すためにモンタークの仮面をつけるのだそうだ。不祥事がバレるとやっかいらしい。


「じゃあ、オリガとはどういう関係なんだ?」
「オリガ殿はどことなくカルタに似ているんだ……」
「あぁ~、確かに声が似てるかもな」
「そして、オリガ殿の妹君のアルマ殿はアルミリアに似ている」
「最初の二文字だけな」
「カルタとアルミリア……。彼女たちは生前の私が傷つけた女性だ。この異世界では幸せにしなければ、と思ってね」


……どうやらマクギリスはこの異世界で自分のすべきことが見つかったらしい。

だが、俺たちはどうなんだ?
本当にこの世界が俺たちの居場所なのか?


マクギリスと別れて、スゥシィやアルマを家へ返した後、ベルファストの屋敷へと帰ってくると屋敷の前に一人の少女が立っていた。
その少女を見て、冬夜が少女の名を呼ぶ。

「あれ?リーン?」
「遅かったじゃない、冬夜」
「誰なんだよ。そいつは」
「彼女はリーン。ミスミドの妖精族の主だよ」
「火星の王か!」
「ちがうよ」
「……なんだよ」


リーンとかいう妖精の王は、俺たちにとある依頼をしに来たらしい。

「それで、僕らに依頼ってなんなのさ?」

ユミナたち四人を呼び、皆がリビングに集まったところで冬夜がリーンにそう聞いた。
するとリーンは冬夜にこう質問を投げかける。

「貴方【ゲート】は使えるのよね?」
「使えるよ。一度行ったところにしか跳べないのが難点だけどね」
「無属性魔法【リコール】って知ってる?他人の記憶を読み取る魔法なんだけど、この【リコール】と【ゲート】を併用すれば、読み取った他人の記憶からその場所へ跳べるはずよ」

そんな魔法があったのかよ……。
もっと早く知ってれば、ミスミドへもその【リコール】で行けたじゃねぇか……。

「その【リコール】と【ゲート】を使って貴方に連れていってほしい場所があるのよ。その場所にある古代遺跡に興味があってね」
「その場所というのはどこなんですか?」
「遥か東方の島国、イーシェン。そこの……八重、だったかしら?その子がイーシェンの生まれでしょう」

……そういうことか。八重の記憶を【リコール】で読み取ってイーシェンへの【ゲート】を開き、その国にある古代遺跡まで連れていってほしいというのがリーンの依頼らしい。


話している間に日も落ちて夜になってきたので、リーンは屋敷の空いてる部屋に泊まり、イーシェンへは明日の朝に向かうことになった。


そして朝、イーシェンへの【ゲート】を開くためリビングに集まったとき、俺の顔を見て、冬夜がこう言った。

「どうしたの、オルガ。ちょっと顔色悪いよ」
「……なんでもねぇよ」
「こいつ、昨日の夜に酒飲み過ぎたのよ」

エルゼの言う通り、昨日の夜はリーンに誘われて俺とミカ、リーン、エルゼの四人で飲みに行った。
その時に少し酒に飲まれてしまい、今の体調は万全の状態ではない。

……だが、問題ねぇ。鉄華団でも酒飲んですぐにイサリビを動かすことなんてざらに有った。

……こんくらいなんてこたぁねぇ……。

「まぁ、オルガが大丈夫って言うならいいけどさ。呪文の詠唱だけは出来るようにしといてよ」
「分かってるっつーの」

そして冬夜は【リコール】で八重からイーシェンの記憶を読み取り、【ゲート】を開いた。


【ゲート】を抜けると、そこは森の中だった。
冬夜が八重に確認を取る。

「【リコール】で思い浮かべた通りの場所だけど、ここがイーシェンなの?」
「間違いござらん!ここが拙者の生まれ故郷イーシェンでござる!実家のある徳川領の外れ、鎮守の森の中でござるよ」

どうやら、無事イーシェンに辿り着いたようだ。
ここがイーシェンだと確認出来た冬夜は次はリーンにこう聞いた。

「それで、リーンの行きたい古代遺跡って? 」
「場所は分からないの。ただ『ニルヤの遺跡』としか……」
「『ニルヤ』……。うーん、父上なら知っているやもしれませぬ」
「俺たちに辿り着く場所なんていらねぇ。ただ進み続けるだけでいい。止まんねぇかぎり、道は続く……」
「置いてくわよ!酔っ払い!」

エルゼが俺にそう言った。待ってくれ!


リーンの行きたい古代遺跡『ニルヤの遺跡』の手がかりを探すため、俺たちは八重の実家にやって来た。
しかし、八重の実家には父と兄が居なかった。
八重の母に話を聞くと、どうやら今は徳川軍と武田軍の戦の最中で八重の父と兄は戦に出陣しているらしい。

「真玄公がなぜ侵略を……?」
「噂では真玄公は病で無くなっており、今は山本完助なるものが武田を裏で操っているとか……」
「なるほど、それで戦況はどうなってるんですか?」
「……我が徳川の砦が落ちるのも……時間の問題だと聞き及んでおります」
「……っ!冬夜殿!また【リコール】とやらで!」
「うん!行こう!」

【リコール】と【ゲート】をもう一度使い、俺たちは戦場へとやって来た。

戦場では赤い鬼の仮面を被った武田兵と蒼い鎧の徳川兵がぶつかり合っていた。
赤い鬼の仮面を被った武田兵をよく見てみると、あれは人ではなくゾンビであった。

冬夜と八重たちは八重の父と兄のいる徳川軍の砦へ【ゲート】で向かい、俺とミカは戦場に残って、徳川の増援として武田兵のゾンビを倒しに向かう。

「酔い醒ましにはちょうどいい!行くぞ【ミカァ!】」

俺はポケットから銃を取り出しながら『ガンダム・バルバトス』をLv1で召喚し、戦場のど真ん中に飛び込んでいった。





僕らが【ゲート】を抜けると、左頬に刀傷のある青年が僕に剣を向ける。

「……っ!何者だ!?武田の手の者か!?」
「違うでござるよ、兄上!」
「……八重!?」

八重のお兄さんである九重重太郎さんは自分の妹を見て、ゆっくりと剣を納めた。

「八重……本当に、八重なのか?」
「はい!」

兄妹の感動の再会を見た後、僕は重太郎さんに気になっていたことを聞いてみる。

「ところで、あの鬼の仮面の被った奴らはなんなんです?」
「分からない。あやつらはすでに死んでいるはずなのに……。面を壊せば動きも止まるらしいのだが……」

あの鬼の仮面については重太郎さんも知らないらしい。するとリーンがこう言った。

「アーディファクト、かしらね?」
「アーディファクト?」
「古代文明の遺産、強大な魔法の道具のことよ。あなたのそれもアーディファクトなんじゃないの?」

手に持っていたスマホを指され、僕は思わず誤魔化し、苦笑いを浮かべた。


「まぁ、なんにしろ仮面の奴らは厄介だ。一気に殲滅した方が良さそうだな」
「そんなことが出来るのか?」

不思議そうに重太郎さんが僕を見ているのをよそにスマホで仮面の武田兵を【サーチ】すると、スマホの地図上にピンがストトトトッ、と落ちた。

「でも、結構数いるなぁ~。まぁいいや【マルチプル】っと」
「冬夜殿、まさか……」
「【光よ穿て、輝く聖槍、シャイニングジャベリン】!」





「なんだありゃ?」

俺とミカが武田のゾンビ兵と戦っていると、空に無数の魔方陣が展開された。
そして、その魔方陣に混ざっている、とある兵器を発見する。あれは……。

「……ダインスレイブじゃねぇか……」

俺がそう呟いた瞬間、ミカが急にバルバトスを後退させる。その後、空から【シャイニングジャベリン】とダインスレイブが落ちてきて、希望の花が咲いた。

ヴァアアアアアア!!

「【俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」


「此度の助太刀、心より御礼申し上げる」

砦の天守閣に案内された俺たちは、徳川の領主 徳川家泰にそう礼を述べられた。
その礼に対し、冬夜が答えた。

「いえ、どうかお気になさらずに。ですが武田軍があれで引き下がると思いますか?」
「また、態勢を整え攻めてくるやもしれぬ。しかし、此度の鬼面兵と突然の侵略……。噂は本当なのだろうか……」
「噂って、真玄公はもう死んでいて山本完助が裏で糸を引いてるとかいう……」
「そうだ」
「じゃあ、その山本完助を捕らえてしまえば、丸く収まりますかね」

冬夜はさも簡単そうにそう発言した。
だが、そういう男はあまり人前に姿を現さないんだよな……。ラスタル・エリオンもそうだった。
徳川家泰は俺が思っていた通りの返答を冬夜に返した。

「しかし、完助は本陣の館に籠ったきり、姿を見せぬのだ」
「ではその案内、私が務めましょう!」

その時、どこからか声が聞こえた。
そして、天守閣の屋根裏から黒装束の女が現れた。


その女の名は椿。武田軍のくノ一で武田四天王の一人高坂政信からの親書を届けに来たらしい。
その親書によると、山本完助は『不死の宝玉』というアーディファクトを使い、死んだ武田真玄と武田兵たちを操っているのだそうだ。
高坂政信も含めた武田四天王は現在、地下牢へ放り込まれており、徳川に助けを求めて親書を送ったのだという。

俺たちは夜になるのを待ってから、椿の案内で敵の本陣へと侵入することにした。


「リーン、透明化の魔法を頼む」
「透明化じゃなくて、視覚の……。まぁいいわ。【光よ歪め、屈曲の先導、インビジブル】」
「お前……消えろよ!」
「消えた!」

夜になり、冬夜の【リコール】と【ゲート】を使って、山本完助のいる敵の本陣までやって来た俺たちはリーンの相手の視覚を歪ませる魔法で姿を消して、敵の根城へ侵入する。

そして、地下牢に閉じ込められていた武田四天王を助け、山本完助のいる天守閣へと向かった。


「誰かと思ったら、武田四天王の皆さんじゃありませんかぁ。どうやって地下牢から脱出を?」
「テメェに教える義理はねぇよ、さっさとくたばりな!」

山本完助のいる天守閣へとやって来ると、すぐに武田四天王の一人 山県政景が完助に斬りかかる。


しかしその刀は赤い鎧武者に止められた。

「御屋形様……」

武田四天王の一人 馬場信晴がそう呟く。
じゃあ、あいつが武田真玄か……。
同じく武田四天王の一人 内藤正豊も弱気な声を上げた。

「これじゃどうすることも出来ない……」
「御屋形様に刃を向けられないのは分かってるんですよぉ」

完助がそう言った瞬間、冬夜が武田真玄に向けて『ブリュンヒルド』を発砲するが、その銃弾は真玄に避けられ、真っ直ぐ俺に向かってくる。

「う"う"っ!」

その時、希望の花が咲いた。

「【俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」


Take2

「御屋形様に刃を向けられないのは分かってるんですよぉ」

完助がそう言った瞬間、ミカが武田真玄に向けて発砲する。
武田真玄は銃弾を喰らい、その場に崩れ落ちた。

「なっ!?……なかなかやるじゃないですかぁ。だが、私にはまだこれがある!」

完助はそういって、懐からカードを取り出す。
あのカードは榊遊矢が『覇王烈竜 オッドアイズ・レイジングドラゴン』を召喚したときに使ったアーディファクト『モンスターカード』だ。

「【出でよ!『ブルーアイズホワイトドラゴン』!】」

だが、こちらにも『モンスターカード』はある!
ミカの『ガンダム・バルバトスルプスレクス』が榊遊矢を倒した後、奴が落としたカードを俺は拾っていたのだ!

「【混沌たるこの世の行く末を見極める王よ。未来に流れる血を吸い、竜をも倒す勇者となれ!融合召喚!『DDD剋竜王ベオウルフ』!】」
「粉砕してくれるぅ~!」

『ブルーアイズホワイトドラゴン』と『DDD剋竜王ベオウルフ』のデュエルは相討ちに終わった。


Take3

「私にはまだこれがある!この『不死の宝玉』があるかぎり、私が死ぬことはない!」

完助は目に埋め込まれたアーディファクトを見せつけながらこう続ける。

「絶大な魔力と死の力を与えてくれる素晴らしきアーディファ……」
「【アポーツ】」

完助が台詞を言い終わる前に、その『不死の宝玉』が冬夜の手の中に吸い込まれる。

「えっ!?……貴様いつの間に……!?」

あの宝玉が無けりゃ、あいつもただの人だ。
完助へ向けてミカが銃を構え、発砲した。

「待っ!?」

パンパンパンパン

そして、武田軍を操っていた闇の軍師 山本完助はこの世を去った。


「アーディファクトは貴重な物だけど、これは破壊した方がいいわね」

リーンはそう言って、『不死の宝玉』を空へと投げ捨て、それを冬夜が『ブリュンヒルド』で撃つ。
しかし、その銃弾は『不死の宝玉』に当たらず、ロフテッド軌道(高高度に達してから、落下する軌道)を描いて、俺に着弾した。

その時、希望の花が咲いた。

「【俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」





冬夜がダインスレイブを使ったシーンの理由付けをしようとすると、イセスマ原作のネタバレになってしまうという驚愕の事実。

もしイセスマ2期が決まって、ウィンターさんがイセオルの続編を作ったら、その時に伏線を回収出来るかも知れません(多分ないです)


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異世界オルガ10

八重の父 九重重兵衛から『ニルヤの遺跡』の場所を聞き、俺たちは遺跡の近くの孤島へとやって来た。

どこまでも広がる青い海と白い砂浜、そして海で波乗りするバルバトス……。は!?

「何やってんだ、ミカァァァ!!」
「ミカさんがはしゃいでる……」
「……俺が、楽しんでる?まぁいっか」
「うーん、でも遺跡の調査が目的だし……」
「私はちゃんと調査もしてくれるなら別に構わないわよ」
「そう?じゃあせっかくだし、楽しんじゃいますか!」

ということで、俺たちは遺跡の調査の前に海で遊ぶことになった。





僕らは【ゲート】で水着を買いに行くついでに王様や公爵たちにも声をかけた。
するとみんな暇なのか二つ返事でついてきた。

僕も水着に着替えて準備体操をしていると、後ろから声をかけられた。

「冬夜さん!どうでしょうか?」

そこにいたのは水着に着替えたユミナたち四人だった。

「うん、みんな似合ってるよ!」
「ありがとうございます!」


その後、少しみんなと話していたが、「時間がもったいないから早く遊びましょ」とエルゼが言って、みんな海の方へ走っていった。


「冬夜!」
「冬夜兄ちゃん!」

次にスゥとレネが水着に着替えてやって来た。

「どうじゃ?わらわたちの水着は」
「うん、可愛いよ!」
「ねぇ、冬夜兄ちゃん!海ってすごいんだね!こんなにおっきいんだ~!」
「レネは海を見るのは始めてなのか?」
「うん!たくさん砂を持って帰って忘れないようにする!」

砂って甲子園じゃないんだからさ。
僕は荷物の中に入れてあったスマホを取り出して、カメラアプリを立ち上げながらレネにこう言う。

「こっちの方がすぐに思い出せるよ」

パシャ!

そうして撮った写真には…………以前ミカさんとオルガが倒した榊遊矢の霊が写っていた……。


ヴァアアアアアア!!パン!パン!

スゥとレネがユミナたちと海で遊んでいるのを眺めていると、オルガの声と銃声が聞こえた。
なんだ?またオルガが死んだのか?

僕は声と銃声がした方へ様子を見に行くと、そこではベルファスト国王陛下とオルトリンデ公爵、レオン将軍そしてオルガが競泳をしていた。
先程の銃声はスタートピストルの音だったようだ。

「兄上にはなんとしても負けませぬぞ!」
「ベルファスト国王としての意地、ここで見せる時!」
「はーっはっはー!話になりませぬな!」
「その先に俺はいるぞ!」

あの人らいっつも元気だな……。





冬夜が遺跡を【サーチ】で調べたところ、スマホの地図上でピンが示したのは俺たちのいる砂浜から100メートルほど先の海の中だった。
それを見たリーンがこう呟く。

「遺跡は完全に海の底ってわけね……。さて、どうしましょうかね」
「前にオルガが言ってた」

ミカはそう言って、イーシェンに旅立つ前日の酒の席の話を持ち出してきた。

《遺跡だかなんだか知らねぇが、俺が連れてってやるよ!》
《何言ってんのよ……》

「連れてってくれるんだろ?オルガが」
「あれは酔っ払った勢いでだな……」
「ダメだよオルガ。俺はまだ止まれない」
「勘弁してくれよミカ……」

俺がそう言うと、ミカは俺の胸ぐらを掴んだ。

ピギュ

「ねえ、連れてってくれるんだろ」
「放しやがれ!!」

俺はミカを払いのけて、自暴自棄になってこう叫んだ。

「ああ、分かったよ!連れてってやるよ!連れてきゃいいんだろ!!お前を、お前らを俺が連れてってやるよ!!」

ヴァアアアアアア!!

俺は叫びながら、海へと潜っていく。
そして、海底遺跡が見えてきたところで息が続かなくなり……希望の花が咲いた。

「【俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」


俺が意識を取り戻すと、冬夜とリーンが海底遺跡にどうやって行くかを話し合っていた。
他の皆は遊んでいる。

「ねぇリーン、海の中で活動出来る魔法ってないの?」
「聞いたことはあるけど、興味なかったから覚えてないわ」
「そこは覚えといてくれよ……」
「主!」

冬夜とリーンの会話に琥珀が割って入る。

「水中で活動したいのですか?」
「何かいい方法ある?」
「あらゆる水を操り、主たちの悩みを解決出来る者に一つ心当たりが」
「誰なんだよ。そいつは」

俺がそう聞くと、琥珀は自信満々にこう答えた。

「この白帝と同格の存在、玄帝です!」


ということで、俺たちは何があるかも分からない海底遺跡を調べるためだけに北を守護する神獣『玄帝』を召喚することにした。

「【冬と水、北方と高山を司る者よ、我が声に応えよ。我が求めに応じ、その姿をここに現せ!】」

冬夜が玄帝の召喚詠唱を唱えると魔方陣から黒い大蛇に巻きつかれた巨大な亀がその姿を現した。

「あっらぁ? やっぱり白帝じゃないのよぅ。久しぶりぃ、元気してた?」
「久しぶりだな、玄帝」
「ん、もう、「玄ちゃん」でいいって言ってるのにぃ、い・け・ず」

軽いな……。なんだこの蛇。喋り方が元のグシオンのパイロットに少し似てる。誰だっけなあいつ……。……そうだ!ブルワーズのクダル・カデルだ!
……そういえば、俺の召喚魔法って昭弘と『ガンダム・グシオンリベイク』も召喚出来るのか?

「それでそちらのお兄さんはぁ?」
「我が主、望月冬夜様だ」
「主じゃと?」

ギョロッと亀の方が冬夜を見た。まるで値踏みするような視線を向けている。その容貌から厳ついおっさんか爺さんの声を想像していたが、聞こえてきたのは女性的な声だった。若干キツめの印象ではあったが。

「このような人間が主とは……落ちたものだな、白帝よ」
「なんとでも言うがいい。じき、お前たちの主にもなられるお方だ」
「……よかろう、冬夜とやら。お前が我らと契約するに値するか、試させてもらう」
「いいけど、何すんのさ?」
「我らと戦え。日没までお前が五体満足で立っていられたのなら、力を認め契約をしようではないか」
「わかった。じゃあやろうか」

冬夜はそう言って、『ブリュンヒルド』を構える。
そして【スリップ】の効果が切れるのをスイッチにして別の【スリップ】が発動する自己保持回路を【プログラム】して、銃弾に【エンチャント】し、発砲した。

その時、俺は悟った。冬夜との付き合いも長くなってきて、あいつが何を考えているのかがなんとなく分かるようになってきた。……分かりたくはねぇがな……。

あいつが今、しようとしているのは『神獣虐待』だ!
俺は気がつくと、玄帝を庇って銃弾を受けていた。

「う"う"っ!」

ヴァアアアアアア!!

「俺は止まれねぇからよ、お前が止めねぇかぎり、俺は回り続けるッ!……だからよ、止めて……くれよ……」

俺は無限【スリップ】を受けながら、冬夜に止めるように頼むが冬夜は……。

「なwにwやwっwてwんwのwwwオルガwww」

と笑い続けている。うぜぇ……。


そんな俺の姿を見た玄帝は冬夜に畏れを抱き、冬夜との契約を認めた。

そして、冬夜は俺を無視して、玄帝と共に海に潜って行った。

「……止めて……くれよ……」


その後、俺は無限【スリップ】を抜け出すために……自ら銃を俺に向けて撃ち、希望の花を咲かせた。

「【俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」





11話が遅くなりそうなので、10話を早めに投稿しました。


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異世界オルガ11

「海に潜ってから、大分経つけど……冬夜さん、大丈夫……かな?」

冬夜が海底遺跡の調査に向かってから数時間が経ち、空が赤みががってきた頃、リンゼがそう呟いた。
国王や公爵たちは皆、冬夜が【ゲート】を【エンチャント】した姿見からベルファスト王都へ帰った。
今、海に残っているのは、俺とミカ、リーンとユミナたち四人の全七人だけだ。
リンゼの呟きに対し、リーンがこう答える。

「上がってこないところを見ると、上手くいってるんじゃない?」

リーンの言う通り、冬夜なら大丈夫だとは思うがな。

そんなことよりも俺はずっと空を眺めているミカの方が気になる。

「どうした。ミカ?」

俺がミカにそう聞くと、ミカは空を指差してこう言った。

「何あれ?」
「ん?」

ミカが指差した方向を見ると、空に巨大な岩が浮かんでいた。

「何だありゃ?」
「古代文明パルテノの遺産、といったところかしら?」

リーンが空に浮かぶ巨大な岩を見てそう言った。
それを聞いた八重はリーンの背中の羽を見て、こう聞く。

「リーン殿の背中の羽で飛んでいけないでござるか?」
「無理よ、退化してしまっているから。ちょっと浮く程度しか出来ないわ」
「そうでござるか……」

冬夜が調査に行った海底遺跡も気になるが、あの空に浮かぶパルテノの遺産も気になるな。

どうしたものか……と考えていたらミカが無邪気な声で俺にこう言った。

「オルガ!連れていって!」
「……勘弁してくれよ。ミカ」
「任せて下さい!」

リンゼが妙案を思いついたという顔でそう言い、嬉々とした顔で【エクスプロージョン】を放つ。
もしかして……。

「待ってくれ!」
「【炎よ爆ぜよ、紅蓮の爆発、エクスプロージョン】!」

ヴァアアアアアア!!

俺は【エクスプロージョン】の爆風で勢いよく空へと打ち上げられ、そして、希望の花が咲いた。

「【俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」


ヴァアアアアアア!!

俺は空に打ち上げられながら、よみがえるための詠唱呪文を唱え、空に浮かぶパルテノの遺産を見下ろせる高度まで上昇したタイミングで『ガンダム・バルバトスルプス』を召喚する。

「【ミカァ!】」
「慣性制御システム、スラスター全開」

バルバトスルプスはパルテノの遺産に落下しながら、腕部200mm砲を収納状態のまま真下に発砲する。

パルテノの遺産は下から見ると、ただの巨大な岩であったが、上から見ると、まるで農業用のビニールハウスのように見える。

そのビニールハウスの天井を破壊して、バルバトスルプスはパルテノの遺産に突入する。
俺もバルバトスルプスの肩に掴まり、ミカと共にその空中庭園へと降り立った。





僕は海底遺跡にあった魔方陣に魔力を込めた後、気がつくと、ここに来ていた。

この場所の管理人を名乗る謎のアンドロイド『フランシェスカ』によると、ここはレジーナ・バビロンなる者が造った『バビロンの空中庭園』らしい。

「アンドロイドってことはシェスカは機械なのか?」
「全てが機械ではありませンが。魔法で造られた生体部品や、魔力炉なども使われてイルので、魔法生命体と機械の融合体……とでも申しましょウか」

そのようにシェスカが話しているとき、シェスカの後ろのガラス張りの壁の向こうに広がる雲海を飛ぶオルガが見えた……。
いやいや、オルガが空を飛ぶ訳ないし、多分見間違いだろ……。
そう判断して、シェスカとの会話に戻ろうとした時、大きな発砲音が聞こえ、『バビロンの空中庭園』の天井を覆うガラスのドームの一部が割れた。
しかし、シェスカは気にせず会話を続ける。

「そういえバ、貴方のお名前は?」
「あ、え……えっと、冬夜。望月冬夜だよ」
「望月冬夜様。あなたは適合者としテ相応しいと認められまシた。末永ク、よろしくお願いいタします。マスター」
「えっ?適合……者?」
「あの魔法陣は普通の人では起動出来ませン。多人数での魔力を受け付けるコトが出来ないよウになっているのでス。つまりあの魔法陣を起動しテ、ここに転移出来る者は、全属性を持つ者だけ……。博士と同じ特性を持つ者だけなのでス」

そう言いながら、シェスカが魔法陣を指差した瞬間、その魔法陣が『ガンダム・バルバトスルプス』のソードメイスで叩きつけられた。
そして、『ガンダム・バルバトスルプス』の肩に掴まっていたオルガが降りてくる。

「オルガ!?」
「なんで冬夜がここにいるんだ?海に潜ったはずだろ」
「海底遺跡がこの空中庭園に繋がってたんだよ」
「お知り合いでスか、マスター?」
「ああ、うん」
「でハ、改めて自己紹介ヲ」

そう言って、シェスカはオルガにも僕にしたのと同じ自己紹介をした。

「私はフランシェスカ。この「庭園」の管理端末として博士に造られましタ。今から5092年前のことでス」
「俺は……鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ!」
「そンなことより、マスター。もう一度申しまスが、あなたは適合者としテ相応しいと認められまシた」
「だから、なんの適合者だよ!?わけわからん!」
「火星の王じゃねえか!」
「違いまスよ」
「なんだよ……」

がっくり、と項垂れるオルガを余所にシェスカはこう宣言した。

「これヨり機体ナンバー23、個体名『フランシェスカ』は、あなたに譲渡されまス」
「いらねえ」

うん。僕もいらない。





フランシェスカとかいうアンドロイドのマスターになった冬夜は【ゲート】でリーンやユミナたちをこの空中庭園へ連れてきた。

その後、冬夜とリーンの二人はこの空中庭園の話をフランシェスカから詳しく聞くため東屋に座ったが、特に興味の無い俺たちやユミナたちは思い思いに庭園を見て回っていた。


俺とミカが庭園を散歩していると、ユミナの声が聞こえてきた。

「皆さんで冬夜さんのお嫁さんになりませんか?」
「「「えっ!?」」」

ユミナの突然の提案にエルゼ、リンゼ、八重の三人は顔を赤くしたまま固まった。
そして数秒後、最初に元に戻ったエルゼがユミナにこう確認した。

「っていうか、ユミナと冬夜が結婚して私も冬夜と結婚したら、私も王女ってことになるの?」
「待ってくれ!」

俺は『王』という単語に思わず反応してしまい、ユミナたちの話に割って入った。
ユミナと冬夜が結婚して俺も冬夜と結婚したら、俺も王になれるんじゃねぇか?

「王になる。地位も名誉も全部手に入れられるんだ。こいつはこれ以上ないアガリじゃねぇのか」
「よからぬことを考えてはいませんか?」
「すいませんでした」


そして俺とミカ、ユミナたちは一緒に冬夜とリーン、フランシェスカの元へと戻った。

空中庭園についての話は終わり、あとはこのフランシェスカをこれからどうするかという話に移る。

「それで、この子これからどうするの?」
「どうするって言ってもな……。シェスカはどうしたい?」

冬夜がそう聞くと、フランシェスカは即答した。

「私はマスターと共にいたいと思いまス。おはよウからおやすみまデ、お風呂からベットの中まデ」
「お風呂から……ベットの中まで……」
「いや、勝手に言ってるだけだから」

フランシェスカのその回答に冬夜は頭を抱え、リンゼは嫉妬する。
俺もフランシェスカのその発言に思わずこう呟いてしまった。

「……ここに置いてっちまえばいいんじゃねぇか」
「それだ!」

俺のその呟きを聞き、冬夜はフランシェスカにこう言った。

「シェスカがここから離れるのはマズいんじゃないのか?管理人不在じゃ何かあったら困るだろ?」

しかし、フランシェスカは問題はないといった様子でキッパリとこう答えた。

「ご心配なク。『空中庭園』に何かあったラすぐに分かりますシ、私にはここへの転移能力もありまス。管理はオートで充分ですカラ、何も問題はありませン」
「あぁ、そうなの……。……もう引き取るしかないのか……」

泣くなよ、冬夜。


「つきまシては庭園へのマスター登録を済ませテいただきタク。私はすでにマスターの物でスが、庭園もきちんとマスターの物とシなければなりませン」
「登録? どうするのさ?」
「ちょっと失礼しまスね」

そう言ってシェスカは椅子に座る冬夜の前へと回り込む。そして冬夜の頬に両手を添えて、なんでもないことのようにそのまま唇を合わせた。

♪オ~ルフェ~ンズ ナミダ~♪

「ふむッ!!???」
「「「「ああぁああーーーーーーーッ!!!!」」」」

ユミナたちの四重奏の叫び声が庭園に響き渡る。俺も嫉妬と憎悪が入れ混じった、今までで一番大きな叫び声をあげた。

「何やってんだぁぁぁ!!」


「登録完了。マスターの遺伝子を記憶しまシた。これより『空中庭園』の所有者は私のマスターである望月冬夜様に移譲されまス」
「ちょっとなにしてるんですかぁ!!いきなり、きっ、きっ、キスするとか!私だってまだなのに!私だってまだなのに!!」

真っ赤な顔でユミナがシェスカに迫り寄る。小さい腕を振り上げて、ガーッと全身で怒りを表していた。
そして、リンゼも険しい顔で腰に手を当て、冬夜の目の前に立った。

「……冬夜さん!」
「……っハイ!」
「…………私は、冬夜さんが好き……です」
「は?」

俺は怒るだろうと思っていたのだが、リンゼは俺の予想を裏切り、冬夜に告白をした。
そしてリンゼは何かを決意したかのように目をつぶり、勢いのままに冬夜の唇に自らの唇を押し付けた。

♪オ~ルフェ~ンズ ナミダ~♪

「っむぐっ!?」
「「「ああぁああぁあーーーーーーーッ!!!!」」」
「何やってんだぁぁぁ!!」

先程よりも一人足りない三重奏の叫び声と俺の人生最大の叫び声が庭園にこだまする。


叫ぶ俺とユミナ、エルゼ、八重の中。俺だけがなぜかミカに胸ぐらを掴まれる。

ピギュ

そしてミカはきわめて冷静にこう発言した。

「別に、普通でしょ」
「え"っ!?」
「普通でしょ!」
「……放しやがれ!!」





きっちり最後まで読んでいただいた方、お疲れさまでした。

次回の異世界オルガ12は冬夜目線の『Episode of Smartphone』とオルガ目線の『Episode of Orphans』に分けます。

あと今回の話を作ってる途中に気分転換でYoutubeの方に『異世界オルガ コンプリートアルバム』という再生リストを作りました(笑)

それでは、次回もお楽しみに!


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異世界オルガ12 Episode of Smartphone

序盤、オルガもミカもいないただのイセスマになってしまった件について



リンゼの告白の後、よくわからないまま僕らはシェスカを連れて、屋敷へと帰ってきた。

頭がパニックになっていた僕は、執事のライムさんにシェスカのことを頼んでそそくさと部屋に戻り、頭を抱えてベッドへ倒れこんでしまった。


《私は、冬夜さんが好き……です》

リンゼは確かに可愛い。お淑やかだし、物静かで他人を思いやれる子だ。ちょっと人見知りがあるけど、努力家だし、彼女にするなら文句なしの女の子だろう。

だけど、一応、僕はユミナの婚約者という立場だ。
ユミナはユミナで可愛いし、まだ12歳だというのに歳に似合わず落ち着いていて、頼りがいがある。そのユミナがたまに見せる年相応の仕草や態度に最近ドキッとすることもある。

どうしたらいいんだろ……。
枕に顔を埋め、ため息をついていると、コンコン、と部屋のドアをノックする音が聞こえてきた。

「冬夜さん、ユミナですけど……」
「え!?」

ドアを開くと普段着に着替えたユミナが立っていた。なんとなく気まずい。

「中に入ってもいいですか」
「ど、どうぞ」
「…………」

ユミナは無言のまま部屋に入ると中央に置かれたソファに腰掛けた。
何気なく僕もユミナの正面に腰掛けるが、なぜか視線を泳がせてしまうのは、後ろめたい気持ちが僕にあるからだろうか。

「冬夜さん」
「は、はい」
「私、怒ってますよ?」

それはそうだろう。仮にも婚約者という立場のユミナからしたら、僕が他の女の子に告白されて面白いわけがない。
しかし、ユミナが続けて発した言葉は僕の予想の斜め上をいっていた。

「私だってまだキスしてもらってないのに、先に二人にも奪われるなんて!」
「えっ!?そっち!?」
「当然です!」
「その……リンゼの告白のことを怒ってるんじゃなくて?」
「リンゼさんが冬夜さんを好きなのなんて見てればわかるじゃないですか!」

すいません、見ててもわかりませんでした……。

「この際だから言っておきますけど、私は冬夜さんがお妾さんを十人作ろうが二十人作ろうが、文句はありません!それも男の甲斐性だと思ってます」

この世界では一夫多妻制も珍しくないらしいが、その考え方はどうなんだろうか?

「ですが! でーすーが! 正妻である私がまだしてないのに、キスされるなんて油断しすぎです! 隙だらけです! そこは防御してくださいよー! 完全防御!!」
「いや、でもさ……」
「言い訳禁止!」
「はい……」
「……抱きしめてキスしてくれたら許してあげます!」

ちょ! それは難易度高くないですか、ユミナさん!

しかしこの場からの撤退は許されない雰囲気だ。
おずおずと肩に手を伸ばして、小さな身体を引き寄せ、僕の顎の下に彼女の頭がくるような形で、しっかりと抱きしめた。柔らかい身体と漂う髪の香りに僕の心臓の高鳴りは止まらない。

ユミナは僕の腕の中から少し身を起こすと、顔を上に向け、静かに目を閉じた。

僕も覚悟を決めて、ユミナの小さな唇にキスをする。軽く触れ合うだけの、ささやかなキスだ。
唇を離すと、目を開けた彼女がにこやかに微笑み、もう一度強く抱きついてきた。

「えへへ。してもらいました! 冬夜さんからしたのは私が初めてですよね!?」
「え? あー……そうか、そうなるのか……」

確かにされたのは二回だけど、自分からしたのは初めてか……。

僕がそんなことを考えていると、ユミナは嬉しそうな表情を真剣な表情に変えてこう聞いてきた。

「それで冬夜さんはリンゼさんのことどう思ってるんですか?」
「どうって……。可愛いと思うし、告白されて正直嬉しかったよ。でも、ユミナのこともまだ決められないのに、リンゼまでとなると……」
「好きか嫌いかで言ったら?」
「それはもちろん好きだよ。大切に思ってる」

僕がそう言った途端、腕の中のユミナがニンマリと笑い、部屋の隅に向けて声をかける。

「だ、そうですよ、リンゼさん」
「え!?」

ユミナが声をかけた場所からぼんやりと顔を真っ赤にしてうつむいているリンゼの姿が浮かび上がった。

どうやらリンゼはリーンに頼んで透明化の魔法【インビジブル】をかけてもらい、今までの一部始終を全て聞いていたらしい。

「冬夜さんが悪いんですよ? なにも返事してあげないで部屋に閉じこもってしまうんですもの。嫌われた、ってリンゼさん、ずっと泣き続けてたんですから」
「それは……ごめん」
「あ、あの、あのときはすみませんでした。シェスカさんのキスを見たら、負けられないって、思ってしまって……気がついたら、あんなこと……冬夜さんの気持ちも考えずに、ごめん、なさい……」

そう言ってスカートを握りしめながら、ぽろぽろと涙を流すリンゼに僕は近寄り、そっと手を取った。

「いや、その……さっきも言ったけど、僕はリンゼを嫌ってなんかいない。可愛いと思うし、好きなんだと思う。どうしたらいいのかわからないけど、大事にしたいって思ってるよ」
「冬夜さん……」

リンゼが少し笑ってくれた。うん、やっぱりこの子は笑っているときの方が断然似合う。それを泣かせてしまった僕は、エルゼに殴られても文句は言えないな。

「お互いの気持ちがわかったところで、どうでしょう。リンゼさんもお嫁さんに貰うというのは?」
「え!?」

ユミナがさらりととんでもないことを言い出した。
お嫁さんって……リンゼをですか?
リンゼの方を見るとまた真っ赤な顔をしてもじもじとうつむいている。

「王族や貴族、大商人とかなら第二、第三夫人とか普通ですし。リンゼさんは問題ありませんよね?」
「わっ、私も、冬夜さんのお嫁さんに、なりたい、です」
「急にそんなこと言われても……」
「……ダメ、ですか?」

リンゼが今にも泣き出しそうな顔になる。泣かせちゃいけないと思った僕は慌ててリンゼにこう聞いた。

「でも第二夫人とか、リンゼはいいの?それで?」
「……私はユミナと仲良くやっていけると、思ってます。同じ人を好きになって、一緒に幸せになれるなら、こんなに嬉しいことはありません」
「……わかった。ユミナとリンゼがそれでいいって言うのなら」

僕はそう言って話を一度終わらせ、二人をそれぞれの部屋へと帰したが、正直言うとまだ迷いがある。
……本当にこれでいいんだろうか?


僕は気分転換するため、ベランダへとやって来た。

すると、庭で『ガンダム・バルバトス』の整備をしているミカさんを見つけた。

そうだ。ミカさんに相談してみよう。
ミカさんは前の世界でクーデリアさんとアトラさんという二人の女の人に好意を向けられ、それに答えたという話を聞いたことがある。
ミカさんなら、いい答えを出してくれるんじゃないか?

「あの、ミカさん」
「ん?あ、冬夜か。何?」
「ちょっと、相談したいことがあるんですけど……」
「…………リビングで待ってて」

ミカさんに言われた通り、誰もいない夜のリビングで数分待っていると、『ガンダム・バルバトス』の整備を終えたミカさんが帰ってきた。

「おやっさんがいないと、自分でバルバトスの整備をしなきゃいけないからな……。オルガがおやっさんも召喚してくれればいいのに……」
「はい?」
「いや、こっちの話。それで、相談って何?」
「えっとですね……」

僕はミカさんに、ユミナとリンゼのことを話した。
先程、僕の部屋でユミナから言われたこと、リンゼとも話したこと、僕がユミナとリンゼのことをどう思っているのか。そして僕は……これからどうすればいいのか。

僕が話し終えたあと、ずっと黙って僕の話を聞いていたミカさんがゆっくりと口を開いた。

「これは……あんたが決めることだよ。……これはあんたの……これからの全部を決めるような決断だ。……だからこれはあんたが、自分で決めなきゃいけないんだ」

そのミカさんの言葉が僕の胸に深く刺さった。
……そうだよな。結局、決めるのは僕なんだ。

後悔のない決断をしようと心に誓い、僕は寝床についた。


そして、朝。僕はドアを叩き破るような音で目を覚ました。

寝ぼけた目で周りを見渡すと、ベットの横に腕を組みながら僕を見下ろしているエルゼがいた。

「ちょっと話があるんだけど」
「えっ?」


エルゼに連れて来られたのは屋敷の庭だった。
庭では、八重とオルガが僕とエルゼを待っていた。

エルゼは八重とオルガのいる場所に並んで立ち、僕と向かい合う。そして、こう話し始めた。

「……リンゼをお嫁さんにするんだってね?」
「あー、ハイ。そういうことになりました」
「あんた、リンゼのことどう思ってるの?本当に好きなの?」
「その……愛してるとまではいかなくとも大切にしたいと思ってるのは本当だよ」
「それをあの子は受け入れたの?」
「ああ」

僕がそう言うと、エルゼと八重は小さな声で何かを呟く。
その後、エルゼはガントレットを装着し、八重は刀を抜き、オルガは銃をポケットから取り出した。
……えっ!?どういうこと?

「冬夜。あんたにはこれから私たちと戦ってもらうわ!」
「は?」

意味がわからない。なんで僕がエルゼたちと戦わなきゃいけないんだ?

「あんたが勝ったらもう何も口を出さない。でも私たちが勝ったら言うことを一つ聞いてもらうわ」

エルゼがそう言う。僕がリンゼに相応しい男かどうかを姉であるエルゼが確かめるってこと?
でもなんで八重とオルガも?やっぱり意味がわからない。

「この刀の刃は落としてあるでござるが、骨ぐらいは折れるから気をつけてくだされよ」
「あんたの『ブリュンヒルド』も【モデリング】で刃を無くしておいてよね。あと攻撃魔法も禁止」

向こうはとっくに臨戦態勢だ。こうなったら仕方ない。始まったと同時に【スリップ】で転ばせて早く終わらせてしまおう。

「じゃあ覚悟はいいわね」
「ああ」

僕が小さく頷いた瞬間、エルゼが右から、八重が左から僕を攻め、オルガが真っ直ぐ銃口を向ける。

「【マルチプル】、【スリップ】!」

僕は【マルチプル】と【スリップ】を使い、まとめて三人を転ばせた。

「【アポーツ】」

そして、【アポーツ】でエルゼのガントレット、八重の刀、オルガの銃を奪い取る。

「これで僕の勝ちだ」

そう言って、エルゼに『ブリュンヒルド』の銃口を向ける。
すると、エルゼはこう口を開いた。

「甘いわね」
「やっちまえ!【ミカァ!】」

エルゼの言葉を合図にオルガが『ガンダム・バルバトスルプス』を召喚した。

「うげっ!?」

ミカさんのバルバトスは反則でしょ!
僕は召喚術士との戦いの定石通り、魔物を無視して、術士を狙い撃つ。

「う"う"っ!」

その時、希望の花が咲いた。

「【俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」

オルガはこれで終わり。
しかし、ミカさんの動きは止まらなかった。

……そうだった。ミカさんは【トランスファー】で僕の魔力をオルガに分けることで現界させている。
つまり、オルガの魔力と僕の魔力の両方を用いて現界させているのだ。
オルガの魔力供給を断っても、僕の魔力をミカさんが吸って無理矢理現界することは可能だ。

僕はミカさんへの魔力供給を断とうと試みるが、やはり僕には魔力の細かい調整は出来そうにない。
魔力調整は諦めてバルバトスに発砲したが難なく避けられ、ソードメイスの餌食となった。

ソードメイスの乱撃から逃れられずに僕は息絶えた。
朦朧とする意識の中、ミカさんの声が聞こえる。

「殺さないようにって、難しいな」


「というわけで、お前さんは死んでしまった。……まさか、また君たちを迎えることになるとはのう」

気がつくと、僕とオルガは神界へ来ていた。
……なんでオルガも?よみがえりの呪文で生き返ったんじゃないのか?

そんな疑問を余所に、オルガと神様の交渉(?)が進められ、僕とオルガはユミナたちのいる世界によみがえることになった。


「私たちも、ユミナやリンゼと同じ立場に置きなさい!」
「は?」

意識が回復して、負けた約束に何を言われるのかと構えていたら、そんなことを言われた。
ちなみにオルガはもういなくなっていた。どうやら屋敷に戻ったようだ。

「だからでござるな、その、拙者たちも……やっぱり、こういうのはエルゼ殿から!」
「うえっ!?いや、私は……!……と、とにかく、私も冬夜が好きだってこと!」
「拙者も同じで、ござるよ!」

顔を真っ赤にして二人とも俯いてしまった。……なんだこれ?
いきなり決闘されたと思ったら、今度は告白された。しかも二人同時に。

「ユミナやリンゼと同じ立場にって……それってつまり……」
「拙者たちも、その、冬夜殿のお嫁さんにしてほしい……でござる……」
「っていうか、しなさい! あんた負けたんだから!」

それを伝えるためにこの決闘を?オルガはそれを知っていて手伝ったってだけ?

「こうでもしないとダメだと思いましたので」

その時、屋敷の方からユミナとリンゼがこちらへ向かってきた。
どうやらこの決闘はユミナが二人に入れ知恵したことだったらしい。

《これは……あんたが決めることだよ》

僕はミカさんに言われたアドバイスを思い出す。そしてみんなに向けてこう言った。

「ごめんみんな!ちょっとだけ時間をくれないか?ちゃんと考えを整理したいんだ」


僕は『バビロンの空中庭園』にある噴水に腰掛けて、昼食のサンドイッチを食べながら、みんなのことをどうするか考えていた。
すると、そこにオルガとシェスカがやって来た。

「こちらにいまシたか」
「ほらな。俺の予想通りだったじゃねぇか」
「オルガにシェスカ?どうしたのさ?」
「こいつがお前のことを探してたぞ」
「え?」

どうやらシェスカが僕を探して屋敷を歩き回っていたところをオルガが拾ってここまで連れてきたらしい。

「昨日いい忘れていたコトがありまシた」
「いい忘れていたこと?」
「マスターにメッセージがありまス」
「誰からなんだよ。そのメッセージっつーのは」

オルガがシェスカにそう聞くと、シェスカはその名を口にした。

「レジーナ・バビロン博士でス」
「博士?」


シェスカの腕から伸びたケーブルをスマホに繋ぐと、一人の女性が写った。

その人は白衣を着た二十代くらいの女性で、眼鏡を掛けて、煙草のようなものを咥えていた。髪は長くボサボサで、せっかくのブロンドも台無しといった感じがする。白衣の中の上着とスカートもだらしなく着込んでいて、その無頓着さに拍車をかけている。彼女がこの『バビロンの空中庭園』や『フランシェスカ』を造ったレジーナ・バビロン博士らしい。

《やあやあ、初めまして。ボクはレジーナ・バビロン。まずは『空中庭園』及び、『フランシェスカ』を引き取ってくれた礼を述べよう。ありがとう、望月冬夜君》
「……え?」

スマホに写る映像の中で博士はそうしゃべり始めた。
どういうこと?なんで古代文明時代の博士が、僕の名前を知っているんだ!?
よくよく考えてみると、なぜこのコネクタは僕のスマホと同じタイプなんだ?まるで最初から知っていたかのような……。

《わかるよ。君の疑問はもっともだ。それを知りたくなるのも当然だよね。まず、なぜボクが君のことを知っているのか?それはボクが未来を覗くことができる道具を持っているからだ》

未来を覗く道具?アーティファクトか?そんなものまで造ってしまうほどの天才なのか……この博士は……。

《時空魔法と光魔法を組み合わせて、そこに無属性魔法の……まあ、細かいことは省くが、とにかくそれを使って君のことを見つけた。興味本位で君と君の仲間の冒険を楽しく眺めていたのさ》
「えっ!?全部見てたってことですか?」
「まぁ、これっぽっちも面白くなかったがな」
《一時見えない時があった。未来が不確定になってしまってね》
「不確定に?」
《ああ、突如……まさに突如現れた『フレイズ』が原因さ。君と君の仲間達は『モビルアーマー』と呼んでいたかな。予想できない出現だった。ボクも色々手は尽くしたんだけどね……。結局、パルテノ文明は崩壊してしまったよ》

モビルアーマーがオルガたちの世界からこの異世界へやってきたことで、古代文明は崩壊してしまったってことなのか?でもなんでモビルアーマーがこの異世界にやって来たんだ?どうやって?
そんな僕の疑問を余所に博士は話を続けた。

《ボクの遺産『バビロン』はその『フレイズ』に対抗するために造ったものだった。しかし、ある時を境に『フレイズ』達が世界から消えてしまったんだ。理由は分からないがね。まぁ、そのおかげでまた未来を見ることが出来たわけだ。『フレイズ』がいなくなった今、この『バビロン』は必要なくなったのだが、壊すのももったいないのでね。未来を覗かせてもらったお礼ということで君に託すことにしたんだよ》

色々と疑問の残る話ではあったが、博士はこういって話を切り上げる。

《では話はこれで終わりだ。またいつか会おう。望月冬夜君》
「は?」

「またいつか会おう」という言葉に疑問を覚えた僕であったが、それの説明もないままメッセージは終了した。


博士の言っていたことも気になるが、今の僕にはそんなことを考えている余裕はない。
ユミナやエルゼたちのことの方を考えるのに手一杯だ。

「う~ん。ミカさんには自分で考えろって言われたけど、やっぱり誰かに相談してみようかな」
「じゃあ、あの爺さんに相談してみりゃいいんじゃねぇか?」

僕の隣で博士のメッセージを聞いていたオルガが、僕にそう言う。
そっか!神様ならいい答えを出してくれるかも知れない。
僕は【ゲート】を開いて、オルガと一緒に神界へ向かった。オルガも改めて神様に聞いてみたいことがあるらしい。


神界へ来た僕はオルガの話が終わった後、神様にユミナたちのことを相談する。自分自身どうすればいいのか、そもそも自分はこれから彼女たちととどう接していけばいいのか。そこらへんを交えて詳しく。

「そう深く考えんでもいいんじゃないかのう。好きと言ってくれてるんじゃから、素直に喜べばいいと思うが。それにこれは君が自分で答えを出さなきゃいかんのじゃないか」
「同じようなことを別の人にも言われましたけど、やっぱり色々考えてしまって……」
「ふむ、そういった話なら専門家に聞いてみるか」
「えっ?」

神様は傍らに置いてあった黒電話に手を伸ばし、ダイヤルを回してどこかにかけ始めた。
しばらくすると雲海の中から一人の女性が浮かび上がる。年は20代前半くらい、ふわふわの桃色の髪に、これまたふわふわの薄衣を白い衣装の上に纏って、宙を漂いながらこちらへやって来る。
神様曰く、彼女は恋愛神らしい。

「恋愛神って恋愛の神様ってことですよね?」
「そうなのよー!でも、人の気持ちを操ったりはしてないのよ?ちょっと雰囲気を盛り上げたり、お約束をしたりするくらいなのよ」
「お約束?」
「そうなのよ。「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ!」とか言う奴は結婚できなくするのよ」

そう恋愛神が言った瞬間、オルガと勝手に召喚されたミカさんが怒りを露にし、オルガの新しい召喚魔法によって恋愛神は殺された。(まぁ、その後すぐに生き返って僕の相談には乗ってもらったけど)
前の世界でなにかあったのかな?


その後、オルガたちは神殺しの罪で別の世界へと旅立つことになった。
あの異世界の住民はオルガやミカさんの記憶を失うらしいが、僕は大丈夫とのことだった。

「なんか急な話になっちゃったけど……」
「そうだな。だがよ……。博士のメッセージのときはああ言ったが、ホントはお前らといるのも別に悪くはなかったぜ」
「冬夜も元気でね」
「はい。ミカさん!オルガもまた会えたら会おう!」
「ああ、帰ってこれたらまた顔を見せるわ。じゃあな」

そう言ってオルガとミカさんは旅立っていった。
僕はあの二人のことを決して忘れない。たとえユミナたちの記憶からオルガやミカさんと過ごした日々が消えてなくなったとしても、僕だけは覚えている。僕のスマートフォンには彼らとともに撮った写真も残っているし、絶対に忘れることはないだろう。

オルガたちの旅は止まることはない。










そして、夕方。告白してくれた四人にリビングへ集まってもらった。
正面のソファには四人が並んで座り、僕の言葉をじっと待っている。
みんな僕にはもったいないくらいの素敵な女の子だ。だからこそ嘘はつきたくないし、自分の気持ちを知ってもらいたいと思う。

「えっと……。まず、今の僕には結婚するつもりはない。あっ、でも近い将来、みんなが嫌じゃなければ四人ともお嫁さんにもらう。その約束は必ず守る。……でも今じゃない。このまま流されたままでみんなと結婚するわけにはいかないと思って……。僕はまだ他人の人生を背負えるほど大人じゃないし、深い考えもない。だからもう少し待ってほしい」
「……ずいぶんと勝手な言葉よね。でも言いたいことはわかったわ」
「もちろん、その間に見限ったなら僕を見捨てても構わない」
「それ出来ないってわかってて言ってない?」
「先に惚れた方が負け、とはよく言ったものでござるなあ……」
「お姉ちゃんが冬夜さんを見捨てても、私はいつまでも待ちます。冬夜さんが、お嫁さんにしてくれるのを」
「ちょ、別に見捨てるなんて言ってないでしょ!?」
「ふふふ」
「私もそれで構いません。みんな気持ちを確かめ合ったんですから、あとは高めていくだけです。私たちのことを、好きで好きでたまらなくなるまで」
「僕ももっと好きになってもらえるよう頑張るよ」


そして、僕と彼女たちの物語も続いていく。スマートフォンとともに。





次回、真の最終回
『異世界オルガ12 Episode of Orphans』

俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に連れてってやるよ! ……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……。



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異世界オルガ12 Episode of Orphans

『バビロンの空中庭園』から帰ってきた俺は、エルゼと八重に呼び出され、エルゼの部屋に来ていた。

「で、なんだよ話って」
「その、えっと……何をどう話せばいいのかわからんでござる……」
「たっ、単刀直入に言うわね。…………あんたも冬夜と戦いなさい!」
「は?」

エルゼはその後、ゆっくりと事情を説明していった。


……つまり、今ユミナとリンゼは冬夜の部屋で先程のリンゼのキスの件について話し合っていて、その冬夜の返答次第ではあるが、エルゼと八重も冬夜の嫁に立候補したい。

しかし、二人共ユミナやリンゼのような積極性は無く、告白するにしても何かのきっかけが必要。
そのきっかけとして、冬夜との決闘という形を取ることにした。
ちなみにこの決闘はユミナの入れ知恵らしい。

だが、冬夜は全属性の魔法の使い手で、全ての無属性魔法も操ることも出来る。
正面から堂々と戦っても勝てるかどうかわからないため、俺の手も借りたいと……。

「でも、それでいいのか?バルバトスを使って冬夜に勝っても意味無いだろ?お前らが自分の力で勝たねぇと…… 」
「うるさいわね。とにかく勝てばいいのよ!!」
「確かに武士の心得からは外れてしまうやも知れませぬが、拙者は武士であると同時に女でもあるのでござる!」

こりゃ、何言っても無駄だな……。

「……はぁ、明日の朝、庭に行きゃいいんだな」
「ええ、私が冬夜を呼びに行くから。あんたは八重と庭で待ってて」
「ああ、わかった」


そして、次の日。エルゼは俺と八重が待つ庭へと冬夜を連れてきた。
エルゼは俺と八重と並んで立ち、冬夜にこう話し始めた。

「……リンゼをお嫁さんにするんだってね?」
「あー、ハイ。そういうことになりました」
「あんた、リンゼのことどう思ってるの?本当に好きなの?」
「その……愛してるとまではいかなくとも大切にしたいと思ってるのは本当だよ」

愛してるとまではいかないのか……。それでいいのかよ?冬夜も、リンゼも。

「それをあの子は受け入れたの?」
「ああ」

そんな冬夜の返答を聞いた二人はこう呟きを漏らす。

「昔っからあの子、そういうところあったのよね……。普段はビクビクと怯えてるくせに、ここぞというときには大胆でさ。私と全く逆なのよね……」
「拙者も似たようなものでござる。なにかきっかけがないと踏ん切りがつかない性格でござってな……」

その呟きとため息の後、エルゼはガントレットを装着し、八重は刀を抜く。
俺もそれに続くようにポケットの中から銃を取り出した。

「冬夜。あんたにはこれから私たちと戦ってもらうわ!」
「は?」
「あんたが勝ったらもう何も口を出さない。でも私たちが勝ったら言うことを一つ聞いてもらうわ」
「この刀の刃は落としてあるでござるが、骨ぐらいは折れるから気をつけてくだされよ」
「あんたの『ブリュンヒルド』も【モデリング】で刃を無くしておいてよね。あと攻撃魔法も禁止。……じゃあ覚悟はいいわね」
「ああ」

冬夜が小さく頷いた。あいつも覚悟を決めたみたいだ。
戦いが始まると同時にエルゼが右から、八重が左から冬夜を攻める。俺も真っ直ぐ冬夜へと銃口を向けた。
しかし、銃の引き金を弾こうとした瞬間、足下が急に滑り、転倒した。……冬夜の【スリップ】だ。

「【アポーツ】」

次に冬夜は【アポーツ】で俺たちの武器を奪い、無力化させた。
だが、俺にはまだ召喚魔法がある!

「やっちまえ!【ミカァ!】」
「うげっ!?」

俺は『ガンダム・バルバトスルプス』を召喚し、冬夜へ向けて突貫させる。
冬夜は驚きの声を上げながらも『ブリュンヒルド』を構え、俺に向けて発砲した。

「う"う"っ!」

その時、希望の花が咲いた。

「【俺は止まんねぇからよ、お前らが止まんねぇかぎり、その先に俺はいるぞ!……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……】」


意識を取り戻すと、戦いは終わっていた。ってか冬夜が死んでいた。
庭に倒れる冬夜の死体とその目の前に立つミカの『ガンダム・バルバトスルプス』。そして、その状況に慌てふためくエルゼと八重。

「エルゼ殿!オルガ殿がよみがえったでござるよ!!」
「ちょ、ちょっとオルガ!冬夜が、冬夜が……」
「落ち着け」

死んだ後、俺たちがどこにいくのかは分かってる。あの爺さんのところだ。
おそらく冬夜も今頃、神界についている頃だろう。

「……ちょっと呼んでくるわ」
「は?」

エルゼが「何言ってんのこいつ」とでも言いたげな顔をしたが、それを無視して俺は自らの頭を銃で撃ち抜き、自殺した。


「というわけで、お前さんは死んでしまった。……まさか、また君たちを迎えることになるとはのう」

予想通り、俺は再び神界へとやって来た。
雲海に浮く畳の上でちゃぶ台を囲んでいるのは俺と神の爺さん、そして冬夜だ。
冬夜はうまく状況を飲み込めていないらしい。俺は冬夜を無視して神の爺さんにこう言った。

「おい、爺さん。ちょっと今、そこの冬夜が立て込んでてな、さっそく生き返らせてくれや」
「前にも言ったがのう、元の世界に生き返らせることは出来んのじゃよ。そういうルールでな」
「は?」

俺はそんなことをぬかす神の爺さんに睨みを利かせる。
そして、ミカを召喚し、初めてこの神界に来た時と同じ状況を作り上げた。

ミカは無言で銃を構える。すると、神の爺さんは脅えながら前言を撤回した。

「す、す、すぐに生き返らせる!」
「わかった」

俺と冬夜の体になにやら力が流れ込んできて、気がつくと元の場所に帰って来ていた。


生き返った俺を見て、エルゼと八重はキョトン、とした顔でこちらを見る。

「もうそろそろ、冬夜も生き返るだろうから待ってろ」
「「えっ?」」

俺はそう二人に告げて、屋敷の中へと帰った。


「終わりましたか?オルガさん」

屋敷に入ると、玄関ホールでユミナにそう話しかけられた。

「ああ、冬夜の負けだ」
「ありがとうございます」
「おう」

俺に礼を告げたユミナはリンゼを連れて庭の方へと向かっていった。


自室に戻って少し寝て、その後、食堂で昼食を摂った。
そして、食堂から自室へ戻る廊下で俺はメイド姿のフランシェスカとすれ違った。

俺はあまり関わりたくなかったため無視したのだが、そんな俺の意図を知ってか知らずか、奴はこう話しかけてきた。

「あ、オルガさん。マスターを見ませンでしたか?朝から姿を見ないのでスが」

俺は小さく舌打ちをしてから、歩みを止めること無くフランシェスカにこう返した。

「ちっ、ああ……冬夜な……。冬夜はてめぇのせいでめんどくせぇことになっちまってるんだよ。今日は顔を見せない方がいいと思うぞ」
「そういう訳には参りませン。火急の要件があるのでス」

そう言いながら、フランシェスカは俺の後をついてくる。
俺が歩くスピードを早めても無駄のようだ。
……はぁ、仕方ねぇな……。

「冬夜なら、自分の部屋にいるだろ!」
「行きまシたが、いませンでしタ」
「……じゃあ、外に出てるんじゃねぇのか?」
「どこに行っているのか、わかりませンか?」
「『空中庭園』は探したのか!」

俺がそう言い放つと、フランシェスカは「あっ」と呟いた後、こう言った。

「探していませンでした……」

この、ポンコツアンドロイドが……。


俺はフランシェスカの転移能力で『バビロンの空中庭園』へとやって来た。
庭園を見渡すと、噴水に腰掛けてサンドイッチを食べている冬夜を見つけた。

「こちらにいまシたか」
「ほらな。俺の予想通りだったじゃねぇか」
「オルガにシェスカ?どうしたのさ?」
「こいつがお前のことを探してたぞ」
「え?」

俺がフランシェスカを指差して冬夜にそう言うと、フランシェスカはその要件とやらを冬夜に話した。

「昨日いい忘れていたコトがありまシた」
「いい忘れていたこと?」
「マスターにメッセージがありまス」
「誰からなんだよ。そのメッセージっつーのは」

俺がフランシェスカにそう聞くと、フランシェスカはその名を口にした。

「レジーナ・バビロン博士でス」
「博士?」


フランシェスカの腕から伸びたケーブルを冬夜のスマホに繋ぐと、一人の女性が写った。

この女が『バビロンの空中庭園』や『フランシェスカ』を造ったレジーナ・バビロン博士のようだ。

《やあやあ、初めまして。ボクはレジーナ・バビロン。まずは『空中庭園』及び、『フランシェスカ』を引き取ってくれた礼を述べよう。ありがとう、望月冬夜君》
「は?」

スマホに写る映像の中で博士はそう話し始めた。
俺は博士が冬夜の名を呼んだことに疑問を覚える。それは冬夜も同じのようだった。
そして、博士は俺や冬夜の疑問に対する答えを告げる。

《わかるよ。君の疑問はもっともだ。それを知りたくなるのも当然だよね。まず、なぜボクが君のことを知っているのか?それはボクが未来を覗くことができる道具を持っているからだ。時空魔法と光魔法を組み合わせて、そこに無属性魔法の……まあ、細かいことは省くが、とにかくそれを使って君のことを見つけた。興味本位で君と君の仲間の冒険を楽しく眺めていたのさ》
「えっ!?全部見てたってことですか?」

博士の「興味本位で君と君の仲間の冒険を楽しく眺めていた」という言葉に対して、俺は反射的にこう呟いていた。

「まぁ、これっぽっちも面白くなかったがな」

俺の言葉など聞こえていないのだろう。博士はそのまま話し続ける。

《一時見えない時があった。未来が不確定になってしまってね》
「不確定に?」
《ああ、突如……まさに突如現れた『フレイズ』が原因さ。君と君の仲間達は『モビルアーマー』と呼んでいたかな。予想できない出現だった。ボクも色々手は尽くしたんだけどね……。結局、パルテノ文明は崩壊してしまったよ。ボクの遺産『バビロン』はその『フレイズ』に対抗するために造ったものだった》

俺たちの世界ではモビルアーマーに対抗するためモビルスーツが造られたが、この世界では対抗手段として、この庭園が造られたらしい。この庭園でどうやって戦うのかは分からないが……。

《しかし、ある時を境に『フレイズ』達が世界から消えてしまったんだ。理由は分からないがね。まぁ、そのおかげでまた未来を見ることが出来たわけだ。『フレイズ』がいなくなった今、この『バビロン』は必要なくなったのだが、壊すのももったいないのでね。未来を覗かせてもらったお礼ということで君に託すことにしたんだよ》

パルテノ文明があったのは5000年前だというのをリーンから聞いたことがある。俺たちの世界で厄祭戦があったのは300年前の話だから、元々この世界に居たモビルアーマーが何かの拍子で世界を超えて俺たちの世界に来た。ということなのだろう。どうやってこの世界から俺たちの世界へやってきたのかは分からないが、まぁ、それももう終わった話だ。

《では話はこれで終わりだ》

こう言って、博士のメッセージは終了した。


「う~ん。ミカさんには自分で考えろって言われたけど、やっぱり誰かに相談してみようかな」

博士のメッセージを聞き終えた冬夜が数分の静寂の後にそう呟く。
どうやらこいつは博士の話より自分の今置かれている状況のが重要らしい。まぁそりゃそうか。
俺は冬夜にこうアドバイスした。

「じゃあ、あの爺さんに相談してみりゃいいんじゃねぇか?」
「そっか!神様ならいい答えを出してくれるかも知れない!」

俺のアドバイスを聞いた冬夜はそう言って【ゲート】を開く。
俺も神様に聞きたいことがあったので丁度いい。


【ゲート】をくぐり抜けると、輝く雲海と古びたちゃぶ台が視界に飛び込んできた。

「邪魔するぜ~」
「おー。君たちか。来るなら来ると連絡してくれ」
「さっき振りです、神様」
「それでどうしたのかね?」
「相談があるんだよ。俺も冬夜も」
「ふむ? まあ、話してみなさい」
「オルガからでいいよ」
「そうか、じゃあ」

俺は神の爺さんに相談する。
俺の相談というのは、異世界に来てから死にやすくなっていることについてだ。
以前行った自転車の実験でも分かったが、俺は死を引き寄せる運命にあるらしい。

なぜ俺の体が死を引き寄せるのか、この爺さんなら分かるかも知れないと思い、そのことについて相談してみた。
すると、神の爺さんは当たり前のようにこう言った。

「ああ、その話か。それは神殺しの呪いじゃよ」
「神殺しの呪い?」
「うむ。お前さんが始めてこの神界に来たとき、ワシを殺したじゃろ。その時の呪いでお前さんは死にやすい身体になっておるんじゃよ。まぁ、何度死んでもよみがえる能力を与えてやったから問題はないと思うがのう」
「まぁ、確かに何とかなってはいるが、……何度も殺されるこっちの身にもなってくれよ……」
「その言葉、そのままお前さんに返すぞ」
「はぁ……」

どうやら、俺が死にやすいのは神殺しの呪いで、治すことは出来ないらしい。
俺はこれからも死に続け、よみがえり続ける。ということになりそうだ。


俺の話が終わった後、冬夜は神の爺さんにユミナたちのことを相談した。
すると、神の爺さんはこう言った。

「そう深く考えんでもいいんじゃないかのう。好きと言ってくれてるんじゃから、素直に喜べばいいと思うが。それにこれは君が自分で答えを出さなきゃいかんのじゃないか」
「同じようなことを別の人にも言われましたけど、やっぱり色々考えてしまって……」
「ふむ、そういった話なら専門家に聞いてみるか」
「えっ?」

神の爺さんは傍らに置いてあった黒電話に手を伸ばし、ダイヤルを回してどこかにかけ始めた。
しばらくすると雲海の中から一人の女が浮かび上がってきた。
神の爺さん曰く、彼女は恋愛神らしい。

「恋愛神って恋愛の神様ってことですよね?」
「そうなのよー!でも、人の気持ちを操ったりはしてないのよ?ちょっと雰囲気を盛り上げたり、お約束をしたりするくらいなのよ」
「お約束?」
「そうなのよ。「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ!」とか言う奴は結婚できなくするのよ」
「は?」

恋愛神がそういった時、俺は思い出した。……ラフタが殺された時のことを……。
いつのまにか召喚され、俺の隣にいたミカは怒りを露にする。

「お前が……!」

俺は昭弘と『ガンダム・グシオンリベイクフルシティ』を召喚し、彼に復讐をさせる。

「やっちまえ!【昭弘っ!】」
「お前かぁぁぁぁーーーーーー!!!!」

昭弘の『ガンダム・グシオンリベイクフルシティ』はグシオンペンチで恋愛神の上半身と下半身を真っ二つに斬り裂いた。


そして、恋愛(を弄ぶ邪)神は死んだ。





恋愛神を殺した俺たちは、また神殺しの罪を背負うことになった。
次の神殺しの罪は、何度も何度も異世界を巡る旅に出る。というものだった。

この異世界での旅はこれで終わり、今から次の異世界へと旅立つことになった。
神殺しの罪を言い渡された俺たちに冬夜はこう言った。

「なんか急な話になっちゃったけど……」
「そうだな。だがよ……。博士のメッセージのときはああ言ったが、ホントはお前らといるのも別に悪くはなかったぜ」
「冬夜も元気でね」
「はい。ミカさん!オルガもまた会えたら会おう!」
「ああ、帰ってこれたらまた顔を見せるわ。じゃあな」

何度も何度も異世界を巡っている内に以前いた世界に帰ってこれることもあるらしい。
俺は冬夜にそう別れを告げ、別の世界へと旅立った。










「オルガ、次は俺どうすればいい?」
「……勘弁してくれよ。ミカ。……俺は……」
「ダメだよ、オルガ。俺はまだ止まれない」
「……待ってろよ」
「教えてくれ、オルガ」
「待てって言ってんだろ!」
「ここが俺たちの場所なの?そこに着くまで、俺は止まらない。……止まれない」
「ああ、……分かってる。……ミカ。やっと分かったんだ。俺たちには辿り着く場所なんていらねぇ。ただ進み続けるだけでいい」
「ここが俺たちの場所なの?」
「ああ、ここもその一つだ。止まんねぇかぎり、道は続くッ!」
「そっか……」
「俺は止まんねぇからよ……」
「連れていってくれるんだろ?」
「ああ……! お前らが止まんねぇかぎり、その先に連れてってやるよ!!!


「終わったな。……なぁ、ミカ。次は何をすればいい?」
「そんなの決まってるでしょ?」


……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……





読んでいただいてありがとうございました!

『異世界オルガ』ついに完結です!

1ヶ月間お付き合い下さった読者の皆様、本当にありがとうございました!!

これからもオルガ作品が増え続けていくことを期待しております。


……だからよ、止まるんじゃねぇぞ……。



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