オベリスクは必要ない! (蓮太郎)
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謎のデュエリスト(転生者)

「……………………」

 

 深夜の人気のない廃工場に赤い帽子をかぶった男が入って行くのを誰も気付かなかった。否、中にいる人外だけが気づいていた。

 

 男は人外が待っているであろう廃工場に堂々と入る。無論、男もこの廃工場に人外がいる事を分かっている。

 

「クキャキャ、わざわざそっちから来てくれるとはご苦労さん!」

 

 人外、ここで言うならはぐれ悪魔は餌が自ら来た事を喜んでいた。

 

 上半身は人の女性に似ているが、下半身は鰐のような姿をしているはぐれ悪魔はここに来る前にも人を喰っていた。

 

 そして、次の食事がノコノコとやって来て襲いかかろうとした時だった。

 

 

「おい、決闘(デュエル)しろよ」

 

 

 男は短い言葉を口にし、はぐれ悪魔は首をかしげるも直ぐに男の正体に気づき戦慄した。

 

「ま、まさか貴様、い、いや、奴は存在しないはず!」

 

 その男の目撃情報はかなり少ない。それでも『噂』としてほぼ全ての界隈に広まっている。

 

 ある噂では『血も涙もない決闘(デュエル)マシン』、ある噂では『人を守る決闘者(デュエリスト)』と真実を掴めないものとなっている。

 

 この場合、はぐれ悪魔にとっては血も涙もない決闘(デュエル)マシンに該当するだろう。

 

「デュエル!」

 

 腕に板のような物を付けた男は宣言し、カードデッキから5枚のカードを取る。

 

 この瞬間のはぐれ悪魔の行動は先手必勝、即座に胃酸を吐く攻撃を仕掛けたのだが…………

 

「自分フィールドにモンスターが存在しないため時械神ラツィオンをリリースなしで召喚」

 

 放たれた胃酸は召喚された何かによって妨げられた。

 

 はぐれ悪魔の瞳には妨げた物体、いやモンスターは無機質な鎧の胸部にある鏡面に顔が映った天使に見えた。

 

「な、何だそいつ!何なんだそいつはぁっ!?」

 

「時械神ラツィオンの効果発動、1ターンに1度、相手が喋っ(ドローし)た時に発動。相手に1000のライフダメージを与える」

 

 男を護るように降臨している時械神ラツィオンと呼ばれたモンスターははぐれ悪魔に向けて炎を放つ。

 

「あっ、あぎぃぃっ!?ぎゃああっ!」

 

 回避しようとしたはぐれ悪魔だが、炎ははぐれ悪魔を追尾してその身を焼く。

 

 悲痛な叫び声を上げてのたうち回るが炎は消えなかった。

 

「…………ライフポイントはたったの1000か」

 

 そう呟き男は腕につけていた板、デュエルディスクを消し廃工場から去った。男が立ち去った後そこに残ったのは地面に着いた燃え後のみだった。

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

「……………………」

 

 はぐれ悪魔を軽く狩った男は転生者である。なんか神を名乗るよく分からないやつが死んだとか言い渡されて何かの力が欲しいかと言われたので生前に使ってたデッキが欲しいと言った。

 

 変に力を手に入れたら後が怖いので普通に生きていくためにあえてお守りとして、と口八丁で無難なのを選んだのだ。

 

 この世界に転生してから両親が行方不明で独り身でありながら幼少期を過ごさなければならないという過酷を極めたような生活をしていたが、慣れてかなりの無口ながらもカードゲームを楽しむ毎日を送っていた。

 

 ただ、不測の事態が起こることは予想していなかった。

 

 先ほどの戦いに使用したデュエルディスクがある日突然現れたのだ。デッキはあったもののデュエルディスクまでは必要なかった。

 

 さらに知ってしまったことに頭をかかえる羽目になる。神のカードである『オベリスクの巨神兵』がいつの間にかデッキに混じっていたのだ。

 

 実は先ほどの初手にもオベリスクが入ってるという事態になっていて、事あるごとに出番を要求するオベリスクに悩まされているのである。

 

 なぜ神のカードがあることが悩みの種になるか?デュエルディスクがモンスターを具現化しなければ悩むことはなかったのだ。

 

 それに加えて悪魔やら何やらが襲ってきたことが余計に戦う道を進まなくならざるを得なくなってしまった。

 

 おかげで住んでた場所にはロクに帰られないわ金も外食で飛ぶわの苦労の連続、いくらなんでも堪ったもんじゃない。

 

 現状は神のカード使わなくても勝てるが、人外たちの噂をこっそり聞いたら機械仕掛けの神を操るとかなんとか。間違ってはいないが、そこまで神性を持ってるわけではない。

 

 それに彼が使うデッキは『時械神』をテーマにしたいやらしいデッキで、ちょくちょく改造して今の形になったものを使用している。

 

 『時械神』をテーマにしたデッキは展開力が他のデッキに比べて低いためペンデュラムとある儀式カードを採用している。

 

 『祝福の教会ーリチューアル・チャーチ』と『魔神火炎砲(エグゾードフレイム)』の効果を使用して時械巫女を墓地からリクルート、そして覇王門を使用してのペンデュラム採用型デッキなのである。

 

 一応、オベリスクも出そうと思えば出せるのだが、こんな世界で原作でZ-oneが造り出した機械仕掛けの神ではなくファラオの僕の三幻神を出したら世界の人外共が飛びつくだろう。

 

 普通にデュエルしたかっただけなのにどうしてこうなったか考え溜息を吐く。彼は人間の味方ポジションに立っているつもりだが、快く思っていないのは多いだろう。

 

 毎日こうと思っている、オベリスクくれるよりもっと平穏な場所に転生させとけよ神様よ、と。

 

 彼は闇夜に姿を消した。翌日のことは考えておらず、夜遅くまで起きていたため昼に起きて学校にはいかなかった。




特殊ルール1・ライフについて、個体によってライフポイントの上限が変動する。
例・下級○○(○○には天使や悪魔が入る)〜1000
  中級○○ 〜2000
  上級○○ 〜4000
  最上級○○ 〜6000
  それ以上(超越者など)〜8000

特殊ルール2・ターンについて、コナミ君(仮)は3分に1ターンと数える。ただし、3分以内にターンを放棄すると相手ターンに移り3分後にコナミ君(仮)のターンに移る。

特殊ルール3・ドローについて、コナミ君(仮)の決闘者(デュエリスト)は自分のターンの初めにドローする。決闘者(デュエリスト)ではない相手は相手ターン中に初めて言葉を発した時にドロー扱いとする。3分以内に声を発しなかった場合、ドローは行われずスキップされた判定となりターンを相手に渡す。自分ターン中に相手が喋ってもドロー扱いにはならず、相手を強制的にドローさせる効果を発動した場合のみドロー判定とする。


不備があれば逐一修正します。


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デュエリストは街を歩く

 完全に学校をサボる日々が続き、たまに呼び出しを受けるものの成績だけは優秀なため黙認されているコナミ君(仮)。

 

 この日も珍しく家に帰ったため昼起きという不養生をしてしまったために学校には行かず街を歩いていた。

 

 こんな日は珍しく無い。いつもの赤い帽子を被ってカードショップを転々と移動しているだけである。欲しいカードが高くて手が出せないのはいつものこと。

 

 当然ながら、そのカードゲームのデッキも持ち歩いており何かイベントがあれば参加する、日中はほとんどそう過ごしていた。

 

 気づけばもう夕方、食事をとろうと彼は居座っていたカードショップから出て行く。なお、あるカードゲームの対戦を挑まれて6戦5勝1敗だったりする。

 

「はい、これ宜しくお願いします」

 

 なんか一枚の紙を渡された。ティッシュ配りみたいな感覚でとったように見えるが実際はほぼ無理矢理渡されたようなものだった。

 

 コナミ君(仮)はそもそも(多分女性だと思うが)配ってる人にすら入れていない。

 

 その紙を見てみると魔法陣のようなのが書かれていて、『あなたの願いを叶えます』と上に書かれてあった。

 

 帰る前に捨てよう、彼は心に決めた。

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 日が暮れて辺りは薄暗くなってきている時に某ハンバーガーチェーン店での食事を終え、再び街に出歩いた。魔法陣の書かれた紙はその店で捨てた。

 

「……………………」

 

 昼間の賑わいとは違い、早めの会社帰りのサラリーマンや少し遅くまで外にいる学生の姿がある。

 

 中にはデートしている者も…………

 

 当然ながら彼は誰かのデートなんかに興味が無い。この時間帯からもしもに備えて公園に向かう。狙われていたとしたら今の時間帯は公園が1番人気が少ないからだ。

 

 公園に着いたものの、何か違和感を覚える。まさか中でよろしくないことが…………?

 

 嫌な予感がして早足に中に入って行く。この程度の違和感で押し出されるコナミ君(仮)ではない。

 

 ズカズカと進んで見つけた、否、見つけてしまった。

 

 血の海に沈む少年と少女の姿をしているが背中から黒い羽が生えてる人外を。

 

 ーーサーチアンドデストロイーーそれが頭に浮かんだ。

 

「あら、人避けしておいた筈なのに…………不幸な人ね、見たからには殺さないと」

 

「……………………」

 

「あら、怖くて声も出ない?まあそうね、それじゃあ死んで」

 

 一般人に向けての死刑宣告をし、光の槍をコナミ君(仮)に向けて放った。だが、その死刑宣告は覆る。

 

 紙一重だがコナミ君(仮)は光の槍を避けた。そもそも彼にとって光の槍は何百回も見たことがあり、軌道も甘かったということもあって紙一重で避けた。

 

 第一、デュエル中ならモンスターが守ってくれるのだが緊急時だと自力で避けるしか無いので回避する力だけは一級品になっていたのは余談である。

 

「なっ!まぐれで避けるんじゃないわよ!」

 

 叫ぶ人外に対してコナミ君(仮)はチラリと血の海に沈んでいる少年を見る。

 

 レッドポーションなどの回復カードがあればいいのだが、生憎デッキには入っていない。

 

 唯一回復(正確には回復ではないが)できるのは『時械神サディオン』のみだが、コナミ君(仮)のライフが神からのオマケその2みたいに8000と馬鹿みたいな耐久力になっている上に他人の回復はできないので出番が全くない。

 

 少年はもう助からないと決めつけ、デュエルディスクを出し改めて人外の方を向く。

 

「何よその板…………まさか神器使い!?」

 

「…………おい、デュエルしろよ」

 

 驚愕する人外をよそにコナミ君(仮)は言いデッキからカードを5枚ドローしようとした時だった。

 

「この魔法陣と魔力、まさかグレモリー!もう、最悪よ!」

 

「……………………!」

 

 少年のポケットが光り何かの魔法陣が地面に映し出された。コナミ君(仮)はその魔法陣に見覚えがあり、人外は魔法陣と魔力に覚えがあった。

 

 誰かが出てきそうと分かった瞬間に人外は空を羽ばたいて逃げ出した。逃げられたらデュエル開始することは出来ないし、何よりコナミ君(仮)は飛べない。

 

 多分、堕天使の人外は逃げたが彼は警戒を解かない。魔法陣というだけで何かしら悪い予感がするのだ。

 

「もうこんな状況になってるのね、あら、貴方どこかで…………」

 

 少年を一瞥した後にコナミ君(仮)を見る赤髪の女性はコナミ君(仮)に見覚えがあるらしいが、本人は全く覚えがない。

 

 それもそのはず、魔法陣が書かれたビラ配りの人がこの女性だったことはコナミ君(仮)は知らないのだから。

 

「貴方何者?ここにいるってことはこちら側の人間でいいのかしら?」

 

「……………………」

 

「黙りね…………赤い帽子に赤い服…………まさか、貴方が決闘者(デュエリスト)?」

 

 どうやら彼の噂はかなり浸透しているらしい。見ず知らずに帽子と服だけでバレるとは困ったものだ、とコナミ君(仮)は思った。

 

 デュエルディスクを構えたままだが、彼女に戦う気がないのは分かった。

 

 それに、ここで立ち去ったら遺体処理をしてくれるんじゃないかと邪な考えをしていた。だってコナミ君(仮)は人間だから簡単に遺体処理は出来ない。

 

 なぜ遺体と言い切れるか?デュエルディスクには相手のライフポイントを測る機能があり、少年のライフが0になっているからだ。

 

「……………………」

 

「あ、貴方、ちょっと待ちなさいよ!」

 

 待つもんか、と彼は思いつつ振り返って立ち去った。よくよく考えたら悪魔って地域を管理している立場にあると聞く。

 

 なんで簡単にはぐれ悪魔とか堕天使とか縄張りに入ってきてるの?そう言いたくなったが空気が悪くなりそうなので黙っておく。

 

 この後は何も考えずに家に帰り眠ることにしたコナミ君(仮)。翌日は久々に学校に行こうと決めたのであった。




特殊ルール4・フィールドについて、この作品ではマスタールール4を適応しています。元々時械神デッキはそこまでEXゾーンからモンスターを出さないので主人公は気にしていません。

特殊ルール5・降参(サレンダー)について、普通の決闘ならライフが0になるか降参するかで勝敗が決まり、降参した場合は例外がない限り少ない傷で生き残る。ただし、デュエル中に逃走することは謎の結界が張られているため不可能(本人すら原理は知らない)。今回の場合はデュエルが始まる前に人外(レイナーレ)が逃げたためシステムが成立しなかった。


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デュエリスト≠英雄

 もし、自分が偉人の子孫だと名乗る人がいたらどう思うか?普通は頭おかしいんじゃないかとなるか無言の腹パンを受けることになるだろう。腹パン派は少ないだろうが。

 

 この世界のあるテロリストに英雄達の子孫と名乗るチームがいる。

 

 ある者はギリシャの大英雄の子孫、ある者は聖女の子孫…………などなど国や性別は問わない。

 

 そんな存在が学校帰りのコナミ君(仮)の前に現れた。

 

「……………………」

 

「そこまで警戒する必要はないだろう。勧誘はともかく今は話だけするつもりだ」

 

 今はということは後に何かあるんですね分かりたくないです、というコナミ君(仮)の心の声はともかく夜中に話し合いたいなど正気の沙汰ではない。

 

 なお、相手が本気だからタチが悪いのはコナミ君(仮)と分かっている。

 

決闘者(デュエリスト)、君はなんのために戦う?」

 

「……………………」

 

「俺たちは英雄になるために人ならざる者たちと戦っている。人間がどこまでやれるか試すためさ」

 

「…………(なんでこの人は意気揚々とベンチで座ってる人の隣に座って話してるんだ、という顔をしている)」

 

 どこぞの電脳世界みたいな感じで心の中で言ってみるも彼が聞こえるわけがない。

 

 コナミ君(仮)はベンチから立ち上がって立ち去ろうとする。自称曹操だなんてあんまり信じられないし、怪しい組織に所属してるということだけは理解した。

 

「待ってくれ、話は終わってない」

 

「……………………」

 

 もちろん話を聞かずに夜道に消えていく。止めても無駄だろうと曹操は追うことはしなかった。

 

「やはり、気難しい奴という噂は本当だったか。ゲオルク、どう思う?」

 

「幾ら何でもあれだけで判断しろとは厳しいだろう。力の鱗片すら感じることはできなかった。奴は本当に神器使いかと疑うレベルだ」

 

 曹操が独り言を言ったように見えるが、当然発生した霧からゆっくりとゲオルクと呼ばれた青年が現れる。

 

「魔物を操ると聞いていたが、魔物の反応はない。何かがキッカケになってるはずだろうが…………」

 

「実際に力の行使を見るしかないということか。面白い」

 

 なにが面白いんだこの戦闘狂め、とコナミ君(仮)が居たらそう思うだろう。面倒だから思うだけにとどめるだけだが。

 

 この二人は謎の人物である決闘者(デュエリスト)の詳細を調べるためにやってきたのだ。

 

 活動量は日本が多いものの、海外でも数件ほど活動していたとされる痕跡が見つかっていたのだ。

 

 なお、その時は海外旅行でたまたま害を為す人外に会ったために起きた戦闘の跡だとはコナミ君(仮)しか知らない。

 

 この二人のとった行動はコナミ君(仮)の後をつけることだった。謎の人物の観察こそ本来の目的であり話すことは曹操の独断だったのである。

 

 話し合いは全くの成果を為さなかったが。

 

「適当に散策しているように見えるな」

 

「この辺りは何もないはずだが…………」

 

 コナミ君(仮)が歩いていたのはなんの変哲もない町だ。コナミ君(仮)が住んでいる家から少し離れているくらいで、これといった特徴もない。

 

 強いて言うならグレモリーが管理している地区というだけだ。アッサリと不審人物を侵入させてるんじゃない by コナミ君(仮)

 

 この日はこのまま歩くだけで終わった。コナミ君(仮)の予定はそうなっていた。

 

「…………!」

 

 彼は何かを感じた途端に走り出した。それと同時に曹操とゲオルクも違和感を感じ取った。

 

「はぐれ悪魔がこの町に来たか」

 

「ここ数ヶ月で何件か入っているはずなんだが、対策を取らないのはどうかと思う…………」

 

 リアス・グレモリーの事はあらかた調べているが直接会ったことのない管理者に向けて呆れを示すゲオルク。実際何もしていないので直接言われても文句は言えないだろう。

 

 コナミ君(仮)の足は速い。曹操とゲオルクの足はそれよりも速い。あらかじめゲオルクの神器『絶霧(ディメンション・ロスト)』を使用して街をやや霧がかった状況にし、怪しまれない程度に身を隠せるという無駄使いをしていたりするためコナミ君(仮)からは気づかれない。

 

 コナミ君(仮)が走って行った先にはまたもやかませ…………ではなくはぐれ悪魔。見ず知らずの青年も一緒というオプション付きだ。

 

「ぎゃああっ!や、やめて、た、助けてくれぇ!」

 

「んぁ〜?嬲れそ〜ないい獲物が釣れた〜」

 

 変な間延びをした顔が蝿で体が蟹の殻を人間にまとわせたようなはぐれ悪魔だが、青年が傷だらけで叫んでいるにも関わらず周りの住宅からは何も反応がないという点で何かしらの仕掛けをしているのはコナミ君(仮)でも分かった。

 

 おそらく中級以上だと曹操は決めつけたがコナミ君(仮)は悪魔の階級なんかどうでもいい。

 

 そのはぐれ悪魔からも曹操達を認識出来ていないが、構わずコナミ君(仮)はデュエルディスクを取り出す。

 

「おい、デュエルしろよ」

 

 そう宣言したコナミ君(仮)は即座にカードを5枚ドローして、やや苦そうな顔をした。

 

「お〜?神器かな〜?神器使いって美味しいよね〜」

 

 どうやら歴戦だったようだ。それでも構わずコナミ君(仮)はスタンバイフェイズに入る。

 

「手札から覇王眷竜(はおうけんりゅう)ダークヴルムをP(ペンデュラム)ゾーンにセット、1ターンに1度、自分フィールドにモンスターが存在しない場合に発動、デッキから「覇王門」Pモンスター1体を選び、自分のPゾーンに置く」

 

 かなりの早口で効果を読み上げて左にドラゴン、右に∞を縦にしたようなモンスターが現れる。

 

「ゲオルク、あの生物を知っているか?」

 

「いや、全く。我々でも未知の魔物だ」

 

 なお、この効果を発動したターンは闇属性しかP召喚できないため通常召喚を行う。

 

「手札から時械神ザフィオンを通常召喚。ターンエンド」

 

 コナミ君(仮)の前に現れる女性の顔を胸の鏡部に映し出したモンスターが現れる。

 

「なんだ〜?そいつ脆そう!」

 

 はぐれ悪魔は硬い体を利用して時械神ザフィオンに突撃する…………のだが。

 

「グキャアッ!?俺様より硬い!?」

 

「…………時械神ザフィオンの効果。このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時に発動、相手フィールドの魔法・罠カードを全てデッキに戻す」

 

 コナミ君(仮)の宣言により時械神ザフィオンの手からはぐれ悪魔に向けて強い勢いで放水される。

 

 叫び声をあげて水を食らったはぐれ悪魔、ザフィオンが放水をやめた後の姿は…………

 

「くっ、この、え、あ、いやんっ!」

 

 蟹の殻みたいな装甲が剥がれてツルツルの肌が露わになっていた。あと野太い声で『いやんっ』という声はやめてほしいとコナミ君(仮)は心の底から思った。

 

「な、なんだこの変態!俺様の裸を見て楽しいのか〜!?」

 

「…………ドロー。スタンバイフェイズ、時械神ザフィオンはデッキに戻る」

 

 淡々と時械神ザフィオンをデッキに戻して事を進めるコナミ君(仮)。その様子を淡々と見ている曹操達もなんとも言えない顔をしていた。

 

 この後は簡単に省くが、覇王眷竜(はおうけんりゅう)ダークヴルムを出した意味もなくはぐれ悪魔は時械神ラツィオンの効果により1ターンであっさりと炎に散っていった。

 

 これといった活躍がなかった覇王眷竜(はおうけんりゅう)ダークヴルムは抗議の目をコナミ君(仮)に向けたが彼はそっと目をそらしてカード達をデッキに戻した。

 

「…………大丈夫か?」

 

「あぇ…………ぁ、ありがとうございます…………」

 

「すまないが俺は治療はできない。通り魔に襲われたとか適当に言って済ませてくれ」

 

「あ、ちょっと!?」

 

 コナミ君(仮)は被害者の青年にそれだけ言って走り去った。当然ながら曹操とゲオルクも後を追う。

 

「……………………」

 

 かなり離れたところまで走ったところでコナミ君(仮)が立ち止まる。

 

「…………なぜ助けなかった?」

 

 その一言でストーキングしていたことを最初から気づかれていたと知った二人は姿をあらわす。

 

 コナミ君(仮)は彼らから背を向けたままで向く気配もない。

 

「助けたら君の実力を把握できないじゃないか」

 

「……………………」

 

 後ろを向いたままデュエルデスクを展開、そして一枚だけカードを引いてデュエルデスクのモンスターゾーンに置く。

 

 召喚されたのはさっきのデュエルに出た時械神ザフィオンだった。

 

「英雄を目指していると言っていたが、お前達は英雄になれない」

 

「…………なんだと?」

 

 完全に初対面の人間にそう言われ眉をひそめたが時械神ザフィオンは構わず攻撃態勢に移る。

 

「本当に英雄を目指してるなら、あの人をすぐに助けたはずだ。時械神ザフィオンで攻撃」

 

 放水と同時にゲオルクが『絶霧(ディメンション・ロスト)』を発動させて放水を防ぐが、既にコナミ君(仮)の姿は無かった。

 

「追うぞ」

 

「ああ…………っ待て曹操!追うのは危険だ!」

 

 即座に手のひらを返したゲオルクの顔は焦りを見せていた。

 

「一体どうしたんだ?あの程度で焦る必要は…………」

 

「神器が使えない…………っ!あの放水はそのためのものだったらしい」

 

「なんだと…………?」

 

 実際、水を浴びたくらいで彼は騒がない。そして嘘を言う必要もこの場にはない。故に、曹操はそれを信じるしかなかった。

 

「時械神…………本当に機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)なのか?」

 

 それは本物を疑うのではなく、偽物が本物ではないかという疑い。時間が過ぎたあとにまた使えるようになったとはいえ、一時的に上位神滅具を封じ込めたと言う事だけでも脅威である。

 

 この件は禍の団(カオス・ブリゲード)だけでなく全世界にたった一人の脅威として決闘者(デュエリスト)の脅威は知れ渡った。

 

 本人にとってそれは最悪な出来事であり、今回の被害者にとって後から来たグレモリーによって記憶を消されたのでどうでもいい事になった。




特殊ルール6・魔法罠について、攻撃魔法はバトルフェイズ中の扱いになり攻撃とみなす。神器は装備魔法と扱いとする。時械神ザフィオンの効果によりデッキに戻した扱いを行った場合、誤差を生じるが一定の間は神器を使用できなくなる。この回のはぐれ悪魔は殻を鎧のように着けていたために剥がされた。

特殊ルール7・P(ペンデュラム)ゾーンについて、Pゾーンに置かれたモンスターは薄っすらとだが実体化する。相手の攻撃を受けないが、盾となれないのをダークヴルム君は少し悔しがってるとか。余談だがコナミ君(仮)のデッキの中で1番感情が多彩なのはダークヴルム君。

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デュエリストとDホイール

 リアス・グレモリーは駒王町の管理を任されている上級悪魔である。

 

 何度も町にはぐれ悪魔が侵入して後手に回ることが多く、たいていのはぐれ悪魔を駆除しているコナミ君(仮)からの信頼はない。

 

 今の悩みの種はフェニックス家の三男坊との婚約もあるが、町に謎の人物が居座っていることも入っている。

 

「部長、決闘者(デュエリスト)について何か情報はあったんですか?」

 

「向こうに連絡して聞いたのだけれど噂話ばかりで正確な情報はなかったわ。でも、おそらくはこの町に住んでることだけははっきりしているわ」

 

 謎の人物が勝手に領地を荒らしまわっている、そんな認識をしているが実際は尻拭いをしているだけだ。

 

 悪魔なのに妙な正義感があるせいで甘いところもあるため人気はある…………経営者としてはイマイチだが。

 

「でも、決闘者(デュエリスト)をどうやって見つけるつもりなんです?相手は天使を使うと言ってたし…………」

 

「問題はそこよ。どんな形であれ『神』を称するのを操るなんて放置しておけないわ。まだ外には漏れてないでしょうが、もし知られたらどれだけの陣営がここに乗り込んでくるか分からないわ」

 

 決闘者(デュエリスト)に助けられた男の話を聞くと『じかい神』と呼んでいた謎の機械(?)を召喚してはぐれ悪魔を倒したと聞いた。もちろんその男はアーシアによる治療と記憶操作をして家に帰した。

 

 それでもはぐれ悪魔をたった2回の攻撃で焼き払った『じかい神』は侮れない。

 

 なお、『時械神』の『じかい』の部分が平仮名なのは口頭だけで聞いた話なので漢字に変換できていないだけである。

 

「次にいつ現れるか分からないわ。いつでも出れるように備えておきましょう」

 

「「「「はいっ」」」」

 

 その翌日に突然の来訪者によって結婚をかけた戦いがあったのはコナミ君(仮)が知ることでなかった。

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 一方場所は変わってコナミ君(仮)はと言うと。

 

「待てぇ!それを返せ!」

 

「……………………」

 

 バイクに乗って冥界を爆走していた。

 

 簡単に説明すると、罠に嵌められて冥界に強制的に連れて行かれた挙句、なんか不良っぽい悪魔に眷属にされそうになったが返討ち、ついでになんか近くにあったバイクを盗んだという訳である。

 

 あの悪魔に上手く言い訳されると不法侵入かつ窃盗として指名手配されるのだが、魔法に関してさっぱりなため帰る道すら分からない。

 

 よって、ただ爆走しながら逃げている。あと、このバイクはアンチノミーのD・ホイールそっくりじゃないかと心の中で思っていたりする。

 

 爆走していたらいつの間にか街に出てしまった。道路を走っているとはいえ奇妙なバイクに乗った赤帽子の姿を目撃されてしまった。

 

「……………………」

 

「どこまで逃げるつもりだぁ!」

 

 しかも追ってくる悪魔が魔法をバンバン撃ってくるため道路がボロボロになっていく。後始末は大丈夫なのかとコナミ君(仮)は敵地にも関わらず心配になってきた。

 

 だが、流石にコナミ君(仮)とあの悪魔は暴れすぎた。警備隊っほいのが集まってきた。

 

 流石にまずいと思いスピードを上げ…………彼はふと思いついた。

 

 スピードを上げまくったら次元突破して人間界に帰れるんじゃないか(まるで意味がわからんぞ!)

 

 そうと思えばすぐさまスピードを上げる。障害物は避けつつ出来る限りまっすぐな道を探していく。

 

「貴様止まれ!なぜあんなに暴走してるんだ!?」

 

 制止の声を聞かずにどんどんスピードを上げていくコナミ君(仮)。バイクから何か変な電気が走ったのは気のせいではない。

 

 何だか次元を飛び越えられそうだ。あと、バイク、いやDホイールに乗ってこんな事するならあの台詞を言うべきだろう。

 

「シンクロフライトコントロール!リミッター解放!ブースター注入120%!」

 

 そう口にした瞬間、前方に輪っかが五つ現れDホイールがその中に突入した。

 

「行くぞ!クリアマインド!」

 

 Dホイールと共にコナミ君(仮)は冥界から姿を消した。名状しがたい光の線がつなぐ道を爆走し、気づけば最初に罠に嵌められた位置に着いていた。

 

「(マジで出来たという驚きの表情をしている)」

 

 ここで一つ言わせてもらう、彼のデッキにはシンクロモンスターは何一つ入っていない…………

 

 だが、成功したのは他者からの干渉があったからに過ぎない。

 

 空気が変わる。何かおかしいと思いDホイールに乗ったまま辺りを見渡す。

 

「やあ、久しぶりと言うべきか」

 

 コナミ君(仮)を転生させた存在がいた。確か、この世界の神という存在ではなく別世界の存在の神だったはず。

 

 そして、世界が壊れない程度に人を転生させて様々な世界に降ろしてるとかなんとか。

 

「君の活躍もこっそり聞いている。まあ、当然と言えば当然と言うべきか、絡まれる事多いもんね」

 

「……………………」

 

「ああ、イタズラ感覚で神のカードを君のデッキに混ぜたのは謝るよ。神のカードはもう返品できないよ?僕の手にも負えなくなるなんて思いもしなかった…………」

 

「……………………」

 

「…………うん、全面的に僕が悪いね。もし、君がオベリスクの巨神兵を使ったらさらに君が狙われやすくなるだろう」

 

「……………………」

 

「まあこの話は置いておこう。実はね、君とは別の転生者がこの世界にいるんだ」

 

「……………………?」

 

「うん、君の想像通りだよ。君と同じ決闘者(デュエリスト)だ。デッキも僕が与えたよ」

 

「……………………」

 

「…………そりゃあデッキ内容が気になるよね。先に謝ろう、本当に申し訳ない」

 

「……………………?」

 

「……………………SPYRAL待った一瞬で方向転換してエンジン蒸すのやめて!本当に悪いと思ってるから!」

 

 コナミ君(仮)は激怒した。この悪逆極まりない神を打ち倒さんとDホイールの車体の先を神に向けた。

 

「実は僕もデッキカードの効果とかよく知らずに渡しちゃったんだよ!改めて調べてみたけどあの盤面なに!?全体除去魔法を二回使わなきゃダメってキツイよ!それに渡しちゃったからには今更無しっていうのも威厳が…………」

 

「……………………」

 

「き、君も一応対策はしてると思うけど本当に運次第なんだね。僕もちょっと遊んでみたけどSPYRALは本当にダメだ。神のカード以上にダメだよあれ」

 

 事の重大さに気づき本気で謝罪している神を許す気はないが轢く事はやめた。

 

「こんな事を任せちゃって悪いんだけど、君には抑止力になってほしい。あれが暴走するのは目に見えるんだ…………」

 

「……………………」

 

「しかも主人公サイドにいるから本当に君しか止められないんだ。それに運命力もかなり強い…………と、いう事でさっき話してるうちに1デュエル中に五回までディスティニードローをできるようにしておいたよ!」

 

「……………………デュエル」

 

「ちょっと待とうか、一回落ち着こう、ね?デュエルディスクをしまわないと話が、待って待って待って初手ドローにディスティニードロー全部使っちゃう?」

 

「手札から覇王眷竜ダークヴルム、覇王門無限(インフィニティ)をペンデュラムゾーンにセット。ペンデュラム召喚、時械神メタイオン、ザフィオン、ラツィオンを召喚」

 

「淡々と進めないでくれるかなぁ!?今帰るから許して!」

 

「ターンエン」

 

「ごめんね帰る!」

 

 デュエルを中断して神は逃げていった。まあ、ここで下手を打ったらこの世界の神が勘づくかもしれないので見逃した。

 

 しかし、やってくれたと彼は思った。全ての敵であるSPYRALが敵に回る可能性が高いとはどのデッキでも最悪の相手だと思った。

 

「……………………」

 

 起きた事は仕方ないと思いつつ、その時はその時で何とかしようと考え、このDホイールをどうしようか困ったコナミ君(仮)だけが月に照らされていた。




特殊ルール8・中断について、コナミ君(仮)のやる気がない&相手もやる気がない場合にデュエルを任意で中断できる。今回はコナミ君(仮)が悪ふざけ的な要素もあったため中断が出来た。

特殊ルール9・ディスティニードローについて、神から別の転生者に対しての抑止力として与えられた能力。5回の回数制限を持つがそのターンのドローフェイズで1番欲しいカードを引く。元々、天性の引き運があったのだがこれにて確固たるものとなった。D-HERO関連のカードじゃないよ。

不備があれば逐一修正します。


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デュエリストと神父とジャンク

 コナミ君(仮)は困っている。夜に一人歩いてたら知らない神父が話しかけてきたのはいいもののイタリア語でしゃべっているため分からないのだ。

 

 なお、英語ならある程度は話せる。英語で話したら神父も言語を合わせてくれた。

 

「最近不審な事とか起きてますからね。少年が一人で夜で歩いたらダメですよ」

 

「……………………」

 

 『何か』を探しているのは分かったが、まさか説教を受けるとは思ってなかったコナミ君(仮)。

 

 むしろ説教で時間がたっていくのだがそこら辺をこの神父は分かっているのだろうか?

 

 説教を受けている間、神父の後ろから僅かな殺気を感じた。最近はゴタゴタに首をつっこむ為、殺気に敏感になってきている。

 

 神父の胸倉を掴んで引き、デュエルディスクを殺気のする方へ出す。

 

 ガキン、と金属同士がぶつかり合う音と衝撃が辺りに響いた。

 

「あんれまー、まさか知らぬ存ぜぬ人に防がれるとは俺ちゃん失敗!範囲攻撃でもろとも吹き飛ばせばよかったかねぇ?」

 

「まさかフリード・セルゼン!貴様ごときがエクスカリバーを使うなど!」

 

「ハイハイ、俺ちゃんったら因子貰って選ばれちゃったんで使えるんですー。で、あんた誰?」

 

 それはこっちの台詞だ、とコナミ君(仮)は言いたそうだがそんなこと察してもらえない。

 

 だが、この神父は悪い神父だと考えていた。人相悪いしいきなり斬りかかってきたし口調がウザいし。

 

 明らかに悪人である神父、フリード・セルゼンに鍔迫り合い(?)をしつつ言った。

 

「デュエルだ」

 

「あぁ?決闘(デュエル)?あらまあまさか噂の決闘者(デュエリスト)様じゃないですかやだー!」

 

決闘(デュエル)…………まさか、君が!」

 

 即座にデッキからカードを5枚ドローして構えるが…………

 

「俺様より危ないとか言われてたけど神器封じるんでしたっけね?下手にそれやられたらエクスカリバーちゃん危ないから逃げるわ!次は不意打ちでぶっ殺すから!」

 

 アッサリ逃げられてしまった。元から速度上昇系の武器だったらしくコナミ君(仮)の目で追いきれるかどうかの速さな上に悪魔からパクった…………頂戴したDホイールでないと追いつけない。

 

 はぁ、と一つため息をした。辻斬りを許すとか本当この土地の管理どうなってるんだ、と本当に思っている。

 

 逃げられたし追跡もできないだろう。だが、次に会う可能性が高いため明日はぶっ倒すという決意を抱き帰ろうとするコナミ君(仮)。

 

「ま、待ちたまえ!君が決闘者(デュエリスト)なのか!?」

 

「……………………」

 

 喋ることなく彼は立ち去った。残るは夕日が沈み月に照らされる神父のみ。

 

 少しの間ポカンとしていたが、我に返った神父は即座に携帯電話を使用し報告を行った。

 

 敵にフリード・セルゼンがいること、そして噂になっていた決闘者(デュエリスト)がこの駒王町にいる事を信じられないように報告した。

 

 この事をきっかけに教会は派遣する人材を強化した。

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

「なるほどね、私の土地で好き勝手やられてるのは気にくわないけど妙に教会勢力が多いのはそのためなのね」

 

「ええ、決闘者(デュエリスト)のお陰で上は事態は深刻になったと判断したの。それでも勝率は五分五分なんだけどね」

 

 後日の駒王学園にある旧校舎内でのオカルト部と教会から派遣された紫藤イリナとゼノヴィアがグレモリー勢力に干渉しないよう交渉、というより脅しをかけた時の話になる。

 

 本来なら数人の神父と彼女たち二人のチームでエクスカリバーの奪還の任務に就くはずだったが、元教会所属の異端者であるフリード・セルゼンがエクスカリバーを所持していることが判明し、人数を増やされたのだ。

 

 その際、グレモリー眷属が大公の依頼で倒すはずのはぐれ悪魔を偶然先に倒された事で一触即発の危機に陥っていたりする。

 

 じゃあコナミ君(仮)はどうなんだというツッコミは無しだ。

 

「危うく可愛い眷属が消滅させられそうになった事情は分かったわ。納得はしてないけど」

 

「それは間が悪かっただけだろう。私達は信者であり神の子に害を与える悪魔(・・・・・・・・・・・)を見逃す事はできないからな」

 

「ふぅん…………」

 

「ところで、これだけは聞かせてもらうわよ」

 

 紫藤イリナが目を険しくしてリアス・グレモリーの後ろに立つ男を睨む。

 

そいつ(・・・)は誰?」

 

「え、俺?いや、幼馴染忘れるとかないだろ」

 

「惚けないで。少なくとも私はあなたを知らないわ」

 

「…………私の『兵士(ポーン)』よ。そして赤龍帝であり元からライザーすら倒せる特殊なカードを扱うの」

 

「そこはどうでもいいの、私はあなたが誰なのかを聞いてるのよ」

 

 イリナがイラつきを感じているのは明白だった。渋々とグレモリーの兵士に当たる男は自分の名前を言った。

 

「俺は兵藤一樹(いつき)だって、そういや家で会った時も変な反応ーー」

 

「私はあなたを知らないわ!」

 

 ダン、と机を叩き激昂しながら立ち上がる。が、すぐに冷静になる。

 

「ごめんなさい、こんな場でみっともない姿を見せて」

 

「…………イリナ、行くぞ」

 

「待ちなさい、話は終わってないわ!」

 

 リアス・グレモリーの制止を聞かず、木場佑斗からの憎悪の視線を無視しつつ、兵藤一樹の言葉も聞かずに出ていった。

 

「ここ最近変だぞ。あの赤龍帝に何かしらの因縁があるように見えたが」

 

「…………分からないの、でも全くの他人のはずのあいつがあの家に居るだけで吐き気がするの」

 

「全くの他人?あいつは兵藤家の住人じゃ」

 

「それは違うわ、あいつじゃないの…………違うのに思い出せないの…………」

 

 頭を押さえ呻くように言う。フラついた為慌てて肩を持って支えるがこめた力が強いせいで少し痛んだ。

 

 だが、その痛みより何かを思い出そうとして痛む頭の方が彼女にとって辛かった。

 

 

ーーー一方その頃ーーーー

 

 

「大丈夫か」

 

「……………………」

 

「腹が減ってるのか」

 

「ぐ…………うっせぇ、ほっとけ…………」

 

「…………名前は?」

 

「…………俺の名前は皆から忘れられたんだ」

 

「忘れられた?」

 

「全部、あいつに…………」

 

「…………名前は今から覚えよう。もう一度聞く、名前は?」

 

「俺は、俺の名前は…………兵藤、いっせ……い……」

 

 その日、コナミ君(仮)は空腹に倒れた男を拾った。





今回は主な特殊ルールは無し。

一体いつ誰がいつぞやに倒れた男が原作主人公だと言った?


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デュエリストとジャンクマン

 今回は赤龍帝の小手を失った一誠の救済措置回。


「うめぇ…………味の無い粥だけどうめぇ…………」

 

「……………………」

 

 何日も食べてなかったという男に粥を出したら一口食べただけで泣き始めたので困っているコナミ君(仮)である。

 

 あの日、すぐに気絶した訳がありそうな彼を担いで家に帰ったのはいいものの、いつ目覚めるか分からなかったので寝かせて放置していたら起きてすぐに腹減ったと言ったので粥を出したところだ。

 

 何日も食べてないということで胃を出来る限り刺激しないよう味の薄い粥をチョイスしたのだ。泣かれるとは思いもしなかったが。

 

 ガツガツとあった分は食べきりふぅ、と彼は幸せそうな吐息を吐く。

 

「飯食えるだけでこんなに幸せになれるもんなんだな…………」

 

「……………………」

 

 本当に彼に何があったのか?人外が跋扈している世界だが、こう簡単に特定一人を忘れ去られるなんて…………いや、あるとコナミ君(仮)は思った。

 

 少なくとも彼はこの街の住人だろう。学生っぽいという印象もあるが、初めから持ち物がほぼない状態でここまで腹が減ってるのに遠くから来たと言われても信じられない。

 

 落ち着いてから事情を聴く予定だったが、粥を食べ終わった瞬間にすぐ机に突っ伏して(お椀はコナミ君(仮)が即座に回収した)眠ってしまった。

 

 相当疲れていたのだな、と思い毛布をかけてあげた。

 

 改めて事態を考えよう。最近、人外の侵入が多いこの街に知り合い全員に忘れられた少年を拾った。話を聞く前に寝てしまったが彼は忘れられた日から酷い目にあったのだろう。

 

 目のクマもあり安心して寝られる状況すらなかったようだ。

 

 明らかに酷い仕打ちだ。一体彼が何をしたんだと言いたいほどだ。

 

 すやすやと眠る彼を横目に見つつ、どこかで見たことがあるような気がするコナミ君(仮)だった。だが、起きるまで待つしかなかった。

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

「そ、その、朝まで寝ちゃってすんません…………」

 

「……………………」

 

 気にすることないと言うように微笑みながら首を横に振るコナミ君(仮)。結果、彼は朝まで眠っていた。

 

 流石にコナミ君(仮)も机に突っ伏したまま寝させるのはどうかと思いソファーに移動させて寝かした。

 

 そんなことで謝ることないのに、とコナミ君(仮)は思いつつ朝飯のコーンフレークを出して話を聞く。

 

「あ、朝飯まで、何から何まですんません」

 

「……………………」

 

 構わないという風にボウルにコーンフレークと牛乳を入れる。もちろん二人分だ。

 

 ゆっくり食べながら話を聞かせて欲しい、とコナミ君(仮)はボウルを差し出しつつ言う。

 

「…………俺、いつの間にか弟が出来てたんです。1年違いだっていうのにいつからいたのかさっぱり分からないんですよ」

 

「……………………」

 

「一樹って言うんすけど、いくら俺が声かけても無関心どころか罵られることすらあって、何が憎かったんだろうな…………」

 

「……………………?」

 

「…………多分、だけど、一樹の所為だろうな。あいつ、俺が忘れられた日に家に帰ったら母さん達が俺を不審者扱いしてきたんだ。その時に見えたんだ、あいつが笑っているところを」

 

「……………………!」

 

 その一樹という男がどういう人物なのかははっきりも知らない。だが、確実に悪意を持って彼を家から追い出したのは間違いないという事は分かった。

 

 だが、何故そのようなことを?もしかしたら彼の両親を利用するために人外が仕掛けた罠なのか?それなら彼、一誠を消すべきだと思った。

 

 まるで入れ替わり、スパイみたいな展開だと思った時、コナミ君(仮)はあることに気づいた。

 

「え、これに見覚えあるかって?あ、ああ、一樹がそんなカード持ってたな」

 

「……………………!」

 

 遊戯王のカードの裏を見せたら大当たりだった。

 

 この世界に遊戯王のカードは存在しない。前に神が言っていたコナミ君(仮)以外の転生者、SPYRAL使いだと確信した。

 

 故に彼は激怒した。カードゲームは楽しむもの、規制なしのぶっ壊れ性能とはいえ悪意を持って使うものではない。

 

 害を加える悪党にコナミ君(仮)は力を利用するが、家を乗っ取るためにその力を使うのはお門違いだ。

 

「カードゲームの事はあんまり知らないんですけど、実は俺もそのカード持ってるんですよ」

 

「……………………!?」

 

 改めて言うがこの世界に遊戯王は存在しない。なのに彼が持っているというのはどういうことなのか?

 

「忘れられてから偶然落ちてたから拾ったんだけど、買い取ってくれるところは流石になかった…………」

 

 彼、一誠の唯一の手持ちらしきズボンのポケットの膨らみから取り出したのはカードの束。間違いなく遊戯王のカードだった。

 

「……………………」

 

「あ、いいですよ」

 

「……………………!」

 

 コナミ君(仮)はデッキを見て驚愕した。『ジャンク・シンクロン』に『ボルト・ヘッジホッグ』などモンスター、魔法、罠を数えて丁度40枚、さらにはシンクロカードである『ジャンク・ウォリアー』、『ジャンク・デストロイヤー』などシンクロンモンスターを使用してシンクロ召喚するまちカードまで彼は保有していた。

 

 不動遊星かお前は、と言いたいが相手がSPYRALだと完全に殺されてしまう。

 

「あ、あはは、使えないですよね…………」

 

「……………………」

 

 そんな事はないとデッキを返して首を振る。SPYRALは例外として、このデッキなら上級悪魔は倒せるくらいの力を持っている。だが、デュエルディスクという肝心なものがない。

 

 Dホイールを改造したらワンチャンいけるか、と思っていたが杞憂になることが分かった。

 

「後、なんかこれ浮くんですよね」

 

「……………………!?」

 

 一誠がデッキを宙に置くようにするとデッキが浮かび初手に当たるカードが5枚引かれた。そして、どうしてこんなことが起きたのかすぐに理解できた。

 

 一誠の手に赤き龍の頭の刺青が光っていた。チートかこいつは。

 

「へ、変ですよねハハ…………」

 

 苦笑いしているが、今後に大きな事を起こす彼を放っては置けなかった。コナミ君(仮)は一誠の事は知らない、だが心優しい事は確かだという確信を持っていた。

 

 もし、悪意を持つ者ならこの力を利用しかねない。赤き龍の力を知っているのはコナミ君(仮)とSPYRAL使いだけだろう。

 

 SPYRAL使いは悪意を持つ、下手に見つかったら一誠を消そうとするかもしれない。

 

「…………一つ、いいですか?」

 

「……………………?」

 

「このカードがあれば俺は日常を取り戻せる、のか?」

 

 一誠の目は絶望に落ちそうだった。絶望から生まれた時械神使いのコナミ君(仮)が思うのもなんだが、彼に絶望は似合わない。

 

 言ってすぐに無理だと思ったのか、フレークがなくなったボウルに視線を落とす一誠の肩を持ち視線を合わせる。

 

 君ならやれる、前に進み敵を倒すことができる、俺も手伝うから頑張ろうとコナミ君(仮)は訴えた。

 

「っ!あ、ありがとう、本当にありがとう…………っ!」

 

 悪意に晒され誰もから忘れられた少年は仲間を得た。これからもずっと肩を並べるだろう赤帽子の彼にこの時は泣きながら感謝を伝えることしかできなかった。

 

 ボウルの中に残った牛乳の味は、ほんの少しだけしょっぱかった。




 今回も特殊ルールは無し。

 このままだと兵藤一誠の力ないじゃんどうしよう→『兵藤一誠+赤龍帝』≒『不動遊星+赤き龍』=無限に成長するチート→これだ!

 なお、一誠の変態具合はかなり抑えられてます。エッチなことよりまず希望と未来を掴み取ろう!


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デュエリストと新人の初戦

一誠のデビュー回(またの名をコカビエル戦)


「何このバイクだせえ!?」

 

「……………………!?」

 

 コナミ君(仮)が所有、もといパクったDホイールを見て一誠のあまりの一言にショックを受けた。

 

「え、マジでこれに乗るの?馬鹿な俺でもわかるほど明らかに物理法則無視してるよなこれ!?」

 

「……………………」

 

「…………お、おっし!やってやる!」

 

 ライダースーツに着替えた一誠はヘルメットを被りDホイールに乗る。コナミ君(仮)は自力で現場に向かうと言ってるが、本当は初めて命のかかったデュエルを行うので一緒に行きたいと思っていたりする。

 

 まず、なぜこうなったかの経緯を説明しよう。コナミ君(仮)が独自に調べた情報にエクスカリバーという聖剣が盗まれ、この町に持ち込まれているとある。

 

 エクスカリバーは強大な力を持ち、7本に分かれてしまったがそれぞれ特殊な力を持っている。盗んだ堕天使はそれらを統合して戦争をするという計画を立てている。

 

 聖剣が完成した余波で街が吹き飛びかねないという理由でコナミ君(仮)は動くつもりだったが、一誠に話したら首謀者であるコカビエルに激昂した。

 

 これをいい機会だと思ったのか、今回は一誠に任せることにしてみたのだ。

 

 堕天使の中でも最上位に至っている相手だが、コナミ君(仮)は舐めた真似をしたつもりもない。一誠が勝てるということを信じているのだ。

 

 あと、決闘者(デュエリスト)勢力の力を悪魔や堕天使、そして転生者に見せつけるためでもある。お前が追い出した奴は這い上がってくるぞ、と。

 

「よし、それじゃあ行ってくるぜ!」

 

「……………………」

 

 幸運を祈る、というコナミ君(仮)の頷きを確認して一誠はDホイールを発進させた。

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

「ぐうぅ…………ど、ドロぎゃあっ!」

 

「遅い、遅すぎる」

 

「一樹!」

 

 一誠から主人公の座を奪ったSPYRAL使いの転生者こと一樹はコカビエルに苦戦していた。いや、もはやライフが3桁にまでなっていた。

 

 彼は転生する特典として主人公の座と遊戯王のやばいテーマであるSPYRALデッキを要求したのである。

 

 兵藤一誠の弟として産まれ、時が来た瞬間に立場を入れ替えた。まさかみんなから一誠の記憶が消えるとは思ってなかったが愉快でたまらなかった。

 

 その後は順調に事が進んでいった。一度自分を殺した堕天使を倒し、ナメプしていたフェニックスの三男坊をSPYRALと赤龍帝の力でねじ伏せたのだ。

 

 だが、ここで彼は幸運に恵まれていたことに気づくべきだった。

 

「ま、まだ何もしてないのに攻撃するとか卑怯、だぼっ!」

 

「何を言ってるんだ。戦いに待ったなどあるわけないでないか。貴様の力は発揮されるまでに時間がかかりすぎる」

 

「っ、そんな言い分!」

 

 彼の仲間である悪魔が何か言っているがコカビエルは気にしない。むしろ戦いを馬鹿にされていると憤っているくらいだ。

 

 コカビエルから見ればいちいち手下が揃うまで待つ必要もない。一刻も早く闘争を楽しみたいのだ。

 

 実は一樹がフェニックスの三男坊を倒した時の映像を入手して見たのだが、あれは酷いとしか言えなかった。

 

「これが今の赤龍帝か。自ら戦わず傷つく覚悟すらないとはガッカリだ」

 

「なんですって!私の眷属を舐めないで」

 

 ちょうだい、と最後まで言う前に結界が破られる音が響いた。そう簡単に破られるとは思っていなかった結界に入ってきた乱入者に、この場にいる全員が注目した。

 

 そのバイクの車体は奇妙と言うしかなかった。しかし、冥界から来たある知らせを聞いていたリアス・グレモリーと元から知っていた一樹はそのバイクに心当たりがあった。

 

 バイクに乗っている男はヘルメットとサングラスみたいなのを着けていて顔は分からない。だが、視線はコカビエルに向けていた。

 

「コカビエル、お前はこの街で何をしようとしている!」

 

「ほう、俺の名を呼ぶのか人間。戦争だ、退屈な世界に戦争をもたらすのだ!アザゼルも日和って、あの戦争を中途半端のまま終わらせるのは癪に触る!」

 

「そんな事で街を…………許さん!」

 

 謎の男がカードデッキを宙に置くように浮かせカードを5枚ドローする。

 

「…………あれは、一樹先輩と一緒の」

 

「行くぞ、デュエルだ!」

 

「ふん、貴様も決闘(デュエル)か。まあ、いいだろう。そこの雑魚よりは楽しませろ」

 

 コカビエルは光の槍を展開して放つ。だが、一樹とは違いDホイールを運転してギリギリだが避けていく。

 

「俺のターン、ドロー!よし、行くぞ!手札から『調律』を発動!」

 

 即座にデッキから『ジャンク・シンクロン』を手札に加えデッキの上から1枚墓地に送る。墓地に送られたのは『ボルト・ヘッジホッグ』だった。

 

「よし、手札から『ジャンク・シンクロン』を召喚!効果で墓地の『ボルト・ヘッジホッグ』を特殊召喚!」

 

 小柄な帽子の精霊(?)を召喚してすぐに背中にボルトがいくつか刺さったネズミが現れる。

 

「なっ、効果を詳しく読み上げないなんてルール違反だぞ!」

 

 なお、これを叫んだのは一樹である。こういう場面でいちいち効果を読み上げることはタイムロスに等しく、格好の的となる。

 

「そして墓地からモンスターが蘇ったことにより手札から『ドッペル・ウォリアー』を特殊召喚!」

 

 今度は全身黒色のゴーグル男が現れる。これで帽子の小人にボルトが刺さったネズミ、黒ずくめの男がDホイーラーの後ろに並んだ。

 

「行くぞ!俺は『ジャンク・シンクロン』と『ドッペル・ウォリアー』でチューニング!集いし星が新たなる力を呼び起こす、光さす道となれ!シンクロ召喚!現れよ、『ジャンク・ウォリアー』!」

 

 小人が光の輪となりその中心に黒ずくめが入った瞬間、混ざり合い『ジャンク・ウォリアー』と呼ばれる小人が大きく成長したような姿になった。

 

「ほう、お前はそういう使い方をするのか。なら試してやろう!」

 

 構わず光の矢を放つコカビエルだが、『ドッペル・ウォリアー』がシンクロ召喚されたことにより二体のドッペルゲンガーのようモンスターが現れる。

 

「『ジャンク・ウォリアー』はシンクロ召喚成功時、カードの攻撃力は、自分フィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力の合計分アップする!『ボルト・ヘッジホッグ』と新たに召喚されたドッペル・トークン二体の攻撃力分アップ!」

 

 『ジャンク・ウォリアー』の攻撃力2300+800+400+400=3900

 

 『ボルト・ヘッジホッグ』と二体のドッペル・トークンの攻撃力が加算されオーラをまとい、光の槍をものともせずに突撃していく。

 

「行け、『ジャンク・ウォリアー』!スクラップフィスト!」

 

 拳がコカビエルに炸裂し爆発を起こす。『ジャンク・ウォリアー』は即座に離脱したがコカビエルは煙の中から地に落ちた。

 

「ぐあぁ…………なるほど、なかなかいい拳だった」

 

 血を吐きながらニヤリとコカビエルは笑っているがDホイーラー、一誠の心は叫んでいた。

 

「(今の一撃で仕留めたかったちくしょう!ヘッジホッグとトークンを突撃させても返り討ちになるし)カードを一枚セットしてターンエンド」

 

「くっ、くっくっ、今度は俺の番だったな!」

 

 Dホイーラーとターン交代と分かり再び空を飛び光の槍を放つ。『ジャンク・ウォリアー』は槍を弾くが他のモンスターは槍に撃たれて消滅した。

 

「ふん、やはりそいつらは雑魚だったか。だが、そいつと殴り合うだけでもいい!」

 

 コカビエルが何を思ったのか『ジャンク・ウォリアー』とのインファイト戦に持ち込んだのだ。

 

 もしもの事があったら困るためトラップを発動させる。

 

「リバースカードオープン、罠カード『くず鉄の案山子』を発動!」

 

 1ターンに1度、相手の攻撃を防ぐ案山子が二人の間に出現してコカビエルの攻撃を防ぐ。

 

「こんな屑に止められてたまるか!」

 

 案山子を破壊することに夢中になり殴りまくるも、案山子は壊れない。その間にDホイーラーにターンが回ってくる。

 

「俺のターン…………っ!」

 

 だが、ドロー宣言をする前に上を向いた。

 

「ほう、面白いことになってるじゃないか」

 

『Divide』

 

 突如現れた白き鎧をまとった乱入者による謎の音声により、デュエルは中断されてしまった。




 今回も特殊ルールは無し。

 SPYRALはOCGでは強いが、最初に弱いモンスター並べるし転生者はろくに鍛えてないから決闘(デュエル)ではなく実戦ではかなり弱い。少しでも避けることさえ出来たら状況は変わっていただろう、という独自解釈です。


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デュエリストと二律背反

彼は主人公である、しかし彼はモブである、故に二律背反


「『時械神メタイオン』で攻撃。バトルフェイズ終了時、相手の数×300のダメージを与える。20人以上いるなら終わりだ」

 

 コナミ君(仮)は後攻で『時械神メタイオン』を召喚し攻撃、そして効果で堕天使に命を刈り取るほどの突風が襲いかかった。

 

 先に一誠に行かせた事件の中心部に一人で向かう途中、彼の登場を警戒していたらしく堕天使の配下を多数配置して待ち伏せしていたのだ。

 

 その数はざっと20人以上はいたが、モンスターの数が多ければ多いほど効果を発揮する『時械神メタイオン』の攻撃により一掃された。(この効果は特殊ルールに記載)

 

 だが、部隊別に分かれていたらしく、一デュエル終わったらまた新たに堕天使が現れたのだ。戦争馬鹿とはいえそれなりのカリスマはあったようだ。

 

 だが、いくら光の槍を放てど必ず立ちはだかる時械神の前には無意味、偶然横を通り過ぎてもデュエルディスクで粉砕するというマッスルな事までする。

 

 堕天使にとって事実上の詰みである。攻撃が通らない上に手札から時械神がどんどん入れ替わりで出てきてそれぞれの効果を発揮するため何をしても倒せないのだ。

 

 吹き飛ばされてさらに吹き飛ばされる堕天使など気にせず進んでいくコナミ君(仮)。

 

 だが、パーティには間に合わなかったようだ。

 

「あなたは…………決闘者(デュエリスト)!」

 

「ふむ、貴様が決闘者(デュエリスト)か。噂通り赤帽子に腕につけた神器らしい板だな。ここまで堕天使達が居たはずだが?」

 

「……………………」

 

「ここまで来ているということは答える必要もないか」

 

 倒れ伏せているコカビエルらしき堕天使の近くに居た白い鎧の人物がここまでくる経緯を大体察したようだ。

 

 だが、少なくともコナミ君(仮)の味方ではないだろう。向こう側にDホイールに乗った一誠、そこから横に離れた場所にあの時会った赤髪の悪魔におそらくその眷属達がいた。

 

 その中に一誠によく似た悪魔が一人混じっていた。

 

「……………………」

 

「なん、だよあいつ、コナミ君じゃねえか…………」

 

「喋らないでくださいイツキさん!まだ傷は深いんですよ!」

 

 情けないことにコカビエルにやられていたらしく、金髪のシスター服を着た悪魔少女に叱られながら光を当てられて治療していたが、そう呟いているのは分かった。

 

 SPYRAL使いなのに筋肉がなかったせいで敗北したとか決闘者(デュエリスト)の風上にも置けないとコナミ君(仮)は眉をひそめる。

 

決闘者(デュエリスト)…………まあ、今更だよな、うん」

 

 本当に今更だが一誠がコナミ君(仮)の異名を知り苦笑いした。

 

「ふむ、どうやら役者は揃ったみたいだな。初めましてだな決闘者(デュエリスト)、俺はアザゼルにこいつの回収を頼まれた白龍皇のヴァーリだ」

 

「……………………」

 

「はは、やはり噂通り必要なこと以外は喋らないか。自己紹介をスルーするとは徹底している。まあいい、彼もそうだがそっちのお仲間は?」

 

「あ、俺?」

 

 まさか話を振られるとは思っていなかった一誠。サングラスで外から視線は見えないがコナミ君(仮)を見て…………コナミ君(仮)は首を縦に振った。

 

「俺は…………俺の名はアンチノミー!失ったものを取り戻すため、大切な者を守るために戦う者だ!」

 

 内心恥ずかしかったが開き直って堂々と宣言をした。なお、偽名と口上を考えたのはコナミ君(仮)である。

 

「アンチノミーって、おま…………うっ」

 

二律背反(アンチノミー)か、なかなか面白い名前をしているな」

 

「アンチノミー…………決闘者(デュエリスト)に続く正体不明の人間、失ったのに大切な者を守る?訳が分からないわ」

 

 姫島朱乃が言うが、この場にいるほとんどがこの名前をつけた意味を知らなかった。

 

 なお、コナミ君(仮)はライダースーツとか用意して着せたらアンチノミーに似ているからそう名乗るべきだと言っただけだったりする。

 

 気を失った一樹に白龍皇は失望を、一誠は怒りを、コナミ君(仮)は蔑みの視線を向ける。

 

「……………………」

 

「あんな奴が…………」

 

「お前に赤龍帝とどんな関わりがあるのか知らないが、一部始終を見させてもらった。ガッカリだよ、なんだあの戦いは?あのような無様を晒すならそこの聖魔剣使いかデュランダル使いがコカビエルと戦った方がよっぽど戦いと言えるぞ」

 

「一樹を馬鹿にしないでちょうだい!この子はまだ成長するわよ!」

 

「そいつに鍛える意思があるのならな。さて、決闘者(デュエリスト)とアンチノミー、出来ることなら俺はコカビエルを連れて帰るが、人外を嫌うお前のことだ。ここで俺、いや俺たちと戦うのか?」

 

「……………………」

 

 確かに今まで相手にしたのは人に害を与える悪魔や堕天使などの人外だったが、リアス達は上から目線とはいえ街を守る行為を一応したのだ、今のところは放置していても構わないだろう。

 

 一誠も金髪のシスター服を着た少女に治療されている一樹を恨めしそうな目で見たが…………誰も知る由はない。

 

 コナミ君(仮)は振り返り立ち去り、一誠はDホイールに乗ってコナミ君(仮)を追い越して帰っていった。

 

 今回も割と暴れまわった方だがコカビエルではない堕天使勢力が立ち去った二人の行方を捜索したが見つからずじまいだった。

 

 そして、立ち去った直後にやけくそになったコカビエルが聖書の神が死んでいたことを叫び、なんとも言えない幕切れとなった。

 

 白龍皇は何故止めなかったか、どうせ魔王の妹でもあるし後から知るだろうと適当に喋らせた後に気絶させて持ち帰るつもりだった。

 

 なお、この事は堕天使総督アザゼルの予定には入っておらず叱られたがどこ吹く風だったそうな。

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

「あーっ、あの野郎本当に弱い癖に甘やかされやがって!」

 

「……………………」

 

「あいつが治療されてる時、金髪シスターのおっぱい当たってたんだぞ!ちくしょういい思いしやがって…………」

 

「……………………」

 

「え、何で呆れた顔してるんだ?おっぱいは男の夢だろ、男のロマンだろ!?」

 

「……………………」

 

「いやいやいや、興味ないわけはないだろ。大きけりゃ大きいほどいいし、そういやリアス先輩と姫島先輩も一緒にいたな…………」

 

「……………………?」

 

「あ、俺あそこの学校通って…………て、同じとこに通ってる!?現在進行形で!?」

 

「……………………」

 

「マジか、全く知らなかった。それじゃあ気をつけたほうがいいな、人気の人らが悪魔だったしな」

 

「……………………」

 

「ところで、学校の中で誰が1番気になってるとかあったりするか?」

 

「……………………」

 

「えー、本当はいるんじゃないか?ムッツリすけべっぽいとこありそうだし」

 

「……………………!」

 

「イテッ!ちょ、デュエルディスクの角で突くなって!」

 

 緊張が抜けたせいか素の調子になった一誠はコナミ君(仮)に暴力を受けた後、先ほどの戦いの中から筋肉の必要性を説いてトレーニングの増強をおこなったとか。

 

 なお、コカビエルの光の槍しか見てない一誠はコナミ君(仮)が光の槍をデュエルディスクで弾いたと聞いて「筋肉って偉大なんだな…………」と呟いたそうな。




特殊ルール10・モンスター破壊について、レーティングゲームのように配下がいればその相手にダメージを与える。モンスター効果で破壊ならそのモンスターの攻撃力から相手の防御力を差し引いたのダメージを与え、魔法罠カードならそれ相応のダメージを与える。ライフは種族や階級によって変わるが、防御力は階級は関係なく鍛えたり種族特性で変化する。

特殊ルール11・デュエルマッスルについて、ライフと耐久力に関する項目で鍛えたら鍛えるほどライフと耐久力が上がる。デュエリストだけで言うなら転生者が下級悪魔のため1000、一誠がそれなりに鍛えさせられたため4000、コナミ君(仮)が8000となる。転生者はもっと鍛えろ(鍛えるとは言ってない)。

不備があれば逐一修正します。


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コナミ君(仮)≒???

 ?に入るのは救うために立ちはだかったラスボスの名


 コナミ君(仮)家の朝は早い。今日は学校に行くため早めに起きて筋トレをするのだ。もちろん一誠も叩き起こす。

 

「ふわあぁ…………よくこんな時間に起きられるな」

 

「……………………」

 

 朝食はおにぎりで軽く済ませジャージを着る。ここから1時間弱のランニングを行うのだ。

 

 ただし、一定距離を1時間で走るというものである。

 

「そろそろ慣れてきただろうし同じルートを?いやいや、俺はまだこれの2/3の距離が限界…………」

 

「……………………」

 

「それでも走れって?ええー…………」

 

 持ち物は水の入ったペットボトルとタオル。ペースを崩さない限り時間通りに終わる。

 

 ちなみに一誠の服装はコナミ君(仮)から借りたジャージ姿である。朝早くから転生者は活動しないだろうと思い変装はしていない。

 

 コナミ君(仮)は何故か私服のままだが。

 

 この後はただ走るだけなので割愛させていただく。ちなみにコナミ君(仮)と一誠は同じコースを走って一誠が大幅に遅れた。

 

「ぜー、はー、キッツ…………」

 

「……………………」

 

「あ、もう学校行くのか。大丈夫だとは思うけどあいつらに注意しろよ」

 

「……………………」

 

 一誠が帰ってきた頃にはコナミ君(仮)は学校に行く準備を済ませて出ようとした時だった。

 

コナミ君(仮)が学校に行ってる間、一誠は居候として家事を行っている。できることなら彼女とか作って、あわよくばハーレムを作りたいが今の状況だと無理なので家事に勤しんでしばらくは忘れることにしていた。

 

「…………あいつ、元気にしてっかな」

 

 ふと思い出したのは馬鹿3人組の仲間であったメガネの元浜と丸刈りの松田の事だった。忘れられた日に電話したが、やはり親友であった彼らにも忘れられていた。

 

 全てを奪った元凶に怒りが湧く、だが憎しみは抱いてはいけないと自分の中で戒める。

 

 憎んだことで変わることはない。倒す時期を待って、その時に叩く。その機会は彼が自然と持ってくるだろうと思い着替えてから家事をし始めた。

 

 余談だが、料理にハマり一人暮らしのコナミ君(仮)より料理の腕が上達したとか。

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 時は流れ、コナミ君(仮)達にこれといった襲撃も無く適当に害をなす人外共をコナミ君(仮)は可能な限り近場で、一誠はDホイールでやや遠くで狩っていく生活が続くある日のことだった。

 

「え、天使と堕天使と悪魔が会合行うって?」

 

「……………………」

 

「そしたら間違いなく俺たちのこと上がるよな。それにあのクソ野郎が全部喋るかもしれねえ」

 

 コナミ君(仮)がどこから情報を仕入れたのか知らないが、敵が確実に出る情報を教えてくれるので嘘は言ってないだろう。ちなみに敵は全員人間を食い物にすることしか考えてないので正当な行為だと一誠は思っている。

 

 そのコナミ君(仮)がこの事を張り詰めた顔で言うが、別にどうしたことでもない。恐らく様々な業界で指名手配されているくらいで実際見たやつはどうなのか?というくらいだろうと思っていた。

 

 だが、デッキ内容がバレると対策を練られるのが世の常。もし一誠がSPYRALデッキの事を知らなかったらジャンクデッキを持っていっても即座に負けていただろう。

 

 だが、ここには大体のデッキを知るコナミ君(仮)がいる。一誠にとって最高のタッグだ。

 

 たまに一誠が大量のカードを拾ってきてデッキを作る時のアドバイスもしてくれている。試しにコナミ君(仮)と戦って10戦2勝8敗という戦績を残している。

 

「乗り込もうって?俺らが人のために戦ってる事を伝えるために」

 

「……………………」

 

「えー、でもあいつらが聞く耳を持つか分からねえ。人外共からしたら俺らはテロリストだぞ?」

 

「……………………」

 

「ま、あんたの決定なら従うよ。それにそろそろ…………」

 

「……………………」

 

 会合の日程も判明している。コナミ君(仮)が言うには何故がうちの学校でやるのか。それに授業参観の時に明らかに魔王クラス、というより魔王が来ていたらしい。

 

 直接は見ていないが魔王少女ってなんなんだ、と二人は疑問に思った。魔法少女を真似ているのか?

 

 それはさておき二人は身体とデッキを調整しつつその日を待った。

 

 さて、コナミ君(仮)はほぼ喋っていない。だが彼の心はかなり荒ぶっている。

 

 これはその一部だが紹介しよう。

 

「(なんでスキドレ拾ってくんの!?しかも3枚って!いや、それもそうだけど何も書かれてないカード拾ってくるって確実にフラグじゃん!カード作るじゃん!あと試しにデュエルしたら一誠は気づいてなかったけど地味に赤き龍が介入してたし!じゃなかったら初っ端から神の宣告引けねえよ…………というかさらっと神シリーズ持ってる一誠って…………一誠がこんな調子だったら確実にインフレが進んでるんじゃないか?これは本格的にオベリスクを使うこと視野に入れないといけないか…………)」

 

 今後のことで本格的に悩んでいた。

 

 少しやりすぎた感じはあったが思った以上に話が進んでいた。そもそも遊戯王だと世界チャンプ狙ってたら世界救うことになったなんてよくあることである。

 

 ああ、だからコナミ君(仮)は許容できない、見逃すことはできない。戦う力を得て国外に出たのはたった数度、それなのに酷いものを見てきた。

 

 天使の非信者に対する残酷な行為を見た。堕天使の自身らのためにかつての父である聖書の神がばら撒いた神器を持たされた一般人をほぼ無差別に殺すところを見た。悪魔が人間を拉致して強制的に人をやめさせ奴隷にするところを見た。

 

 これ以上進めば人が滅ぶ、異形が跋扈し一時悪魔を従えたソロモンより前の時代が再来する。それも才能ある人外が残り人の抵抗を許さぬ世界が。

 

 これは偽善だ、これは独善だ、これは独りよがりだ。分かっている、この行動は無駄になる可能性の方が高い。それでも未来のために彼は戦う。

 

 もう少し気楽に生きたかった、とため息を吐くが戦うことはもう止められない。もう遊びのデュエルは

 

 これはコナミ君(仮)と同じ転生者の犠牲になり、この戦いに巻き込んでしまった彼の平穏を取り戻すという贖罪である。今を犠牲にして未来を取る戦いである。

 

 さあ、奴らに人の力を見せよう。人の可能性の塊を見せつけよう。

 

 たとえ管理しているつもりの貴様らがいなくても、人の営みは回るのだ。




 特殊ルールはなし。

 激おこコナミ君(仮)はどこからとは言えないがあらゆる方面の情報を仕入れている。そして導き出された人間の未来は破滅だった。何故奴らは人より寿命が長いはずなのに短期間で爆発的な繁栄を求めるか、何故奴らは人を滅ぼす毒をばら撒いていることを自覚していないのか。

 次回、「デュエリストと未来を滅ぼす(導く)時械神(デウス・エクス・マキナ)

 彼らは神の不在を知らない、デュエルスタンバイ


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デュエリストと未来を滅ぼす(導く)時械神(デウス・エクス・マキナ)

 そこまで滅ぼしてないbyコナミ君(仮)


「ま、和平は俺にとっちゃついでだ。元々、争うつもりなんてないしな。俺が今1番聞きてぇことは全く別のことだ」

 

 天使、堕天使、悪魔のトップであるミカエル、アザゼル、サーゼクスとその部下たち、コカビエル襲撃時に居合わせたグレモリー眷属とシトリー眷属、そして白龍皇がその会合に参加していた。

 

 元から本人達は争うつもりはなく下が勝手にやってることだと言い、こうして同盟という形で拘束力を持とうとしているのだ。

 

 その事はあっさりと決定した。しかし、ここで起こっている問題は一つある。

 

「兵藤一樹、お前が使うその力はなんだ?神器らしい反応もない上に赤龍帝の小手と共存している。長いこと生きてきたがその力は見たことがねえ」

 

「噂によれば、その力を使うのはまだ二人、いやそれ以上いるかもしれないと」

 

 注目の的になった一樹はアザゼル、ミカエルに言われてビクッと体を震わす。いつか言われることだったが、ここで聞かれるとは思ってなかったらしい。いや、なぜ思わなかった。

 

「その力について、扱ってる彼本人もよく分からないようです」

 

「分からない?そりゃ嘘だな。まだ悪魔に、神器使いに目覚めてから数ヶ月も経ってない奴がフェニックス倒せると思うか?俺たちの知らない何かを知ってるだろ」

 

「そ、それは言いがかりです!だって使い方はなんとなくでしか分からないし」

 

「三男坊のレーティングゲームの映像を見させてもらったが、なんとなくしか分からない奴がああもカードゲームを回せないだろ。時間があったとはいえあれはやり方を分かっている」

 

 リアスからのフォロー、一樹の事をしらばっくれてるだけどバッサリ切り捨てたアザゼルの目は真剣だった。ああしてフェニックスを完封できるわけがない。

 

 実はアザゼルは人間がするカードゲームもやっていた。地元の少年に教えてもらったが、どのカードゲームも戦略性も富んでいて本当に頭を使う。パワーカードを並べても一瞬の隙で逆転されたシーンも多々あったのだ。

 

 一樹のカードゲームもまさにそれだ、とアザゼルは睨んでいた。炎を吹き飛ばした二体のドラゴン、力を一時的に0にした玉のような生物、再生能力を止めた魔法使い、機械に乗って二連続で三男坊を破壊した大男…………間違いなくあれは完封状態であり、揃えばチートと言われるレベルだった。

 

 弱点は本人自身が弱く、カードを並べてる間に攻撃されたらアッサリ止まってしまうことである。

 

 弱点はさておき、これらを踏まえてきちんと過程と能力を理解せずに出来ることじゃない。この事についてほとんどが一樹に疑いの目を向けていた。

 

「それに決闘者(デュエリスト)とアンチノミーと名乗る男も同様だ。ヴァーリは見ただけだが、特にお前だけに敵意を向けてたらしいじゃねえか」

 

「俺はあいつらを知らない!気のせいだろ!」

 

「一樹君、取り乱しちゃいけないけど白龍皇が嘘をつくとは思えない」

 

「お兄様まで!」

 

「リアス、彼らも一樹君と同じ力を使うんだ。この時点で無関係とは思えない。一樹、君はーーー」

 

 一体何者なんだい?最後まで言葉は出なかった。時が止まった、どうでもいい、結界をすり抜け多数の魔術師の気配が現われた、それもどうでもいい。

 

 では、結界をぶち破ってきた者は誰だ?

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

「しっかり捕まれ!突入するぞぉっ!」

 

「……………………!」

 

 コナミ君(仮)とアンチノミーに扮した一誠が駒王学園の前で爆走していた。

 

 こうなった経緯を言うと、会合中に結界破って突入しよう→なんだこの結界思ったより硬え→クリアマインドで突入しよう→突撃ー!という事だ。まるで意味がわからんぞとか言わない。

 

 一応、冥界製のDホイールなので傷つきもしなかった。何故あの悪魔がこれを保有していたのか分からない。

 

 ともかく、結界を突破したのだ。だが、突入した光景は異様とも言えた。少なくとも天使や悪魔のような人外ではないローブの集団がいたのだ。

 

「何者!」

 

「我らの邪魔はさせぬ!」

 

「……………………」

 

 まずコナミ君(仮)を警戒する者、すでに殺意を剥き出しにしている者、どうでもいいような、諦めた目を向ける者…………反応は様々だった。

 

 それでもこれだけは言える、こいつらは敵だ。

 

「……………………」

 

「…………ここを任せていいのか?」

 

「……………………」

 

「よし、分かった!あいつをぶっ飛ばしてくるぜ!」

 

 コナミ君(仮)はDホイールから降り、それを確認した一誠は即座にDホイールを発進させる。

 

「ここから先は進めさせん!」

 

「邪魔だ!…………あっ」

 

 一誠に立ちはだかったローブは突如現れた中型のドラゴンが横を高速で通った風圧で軽く吹き飛んだ。

 

 下手人は分かっている、『覇王眷龍ダークヴルム』を通常召喚したコナミ君(仮)だ。

 

「サンキュー!」

 

「……………………」

 

 ダークヴルムが道を切り開いてくれたため一誠はDホイールを走らせローブの集団を突破した。

 

 だが、コナミ君(仮)は取り残された。

 

「貴様…………決闘者(デュエリスト)だな?」

 

「………………………………」

 

「貴様の存在は我々の邪魔になる。境に破滅と混沌を!」

 

「……………………!」

 

 デュエルディスクを構えて来る攻撃に備える。ダークヴルムは既にコナミ君(仮)のところに戻っており魔術師共を威嚇していた。

 

「…………デュエル!」

 

 改めてデュエルの宣言を行う。魔術師共は中型のドラゴンを従えてるとはいえたかが魔術も知らなさそうな人間に負けるつもりはなかった。中型のドラゴンを倒すまでは彼らは調子に乗っていた。

 

 時械神(デウス・エクス・マキナ)に焼き払われるまでは。

 

 水を放たれて魔法が使えなくなった、大地を返されて重傷を負った、暴風に吹き飛ばされてまた重傷を…………

 

 隙を見て攻撃しようとも時械神(デウス・エクス・マキナ)が立ちはだかり傷の一つさえ与えられない。

 

 絶望、敵になってしまった魔術師の頭にその二文字が思い浮かべられた。時械神(デウス・エクス・マキナ)を呼び出す男の姿はどこか神々しく、よく分からない涙まで出てくる者までいた。

 

 こうして、時械神(デウス・エクス・マキナ)に殺された者以外で辛うじて残った魔術師はローブを脱ぎ全てを投げ捨て投降した。

 

 コナミ君(仮)はこう思った。泣きながら降伏されても困る、と。

 

 こいつらは放置して一誠が向かった方へ顔を向ける。既にデュエルは始まっていた。

 

 一誠と転生者、この戦いどちらが勝つかと聞かれたら先行を取った方が勝つと言う。

 

 SPYRALが酷いのは一誠に教えた、先行を取られたら余程の事がない限り負けるだろうと教えた、だからメタカードを教えた、というよりいつの間にか該当するカードを拾ってきていた。一体どこから拾ってきたんだ。

 

 土下座までし始めた魔術師から目を逸らして一誠の様子を見に…………

 

「また会ったな決闘者(デュエリスト)

 

 行けなかった。

 

 はあ、とため息をついて目の前にいる人物、いや白龍皇に意識を向ける。

 

 コナミ君(仮)の戦いはまだ始まったばかりだ。




 今回も特殊ルールはなし。

 遂に彼の全てを奪った転生者と対峙した一誠。転生者は一強と言われるSPYRALデッキ使いだった。拾ったカードと何も書かれていないカードで一誠はどう挑むのか。今、赤き龍同士の戦いが始まる。

 次回、『一誠vs転生者+α』

 彼らは人外を敵に回す、デュエルスタンバイ。


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一誠vs転生者+α

 説明文は遊戯王wikiから抜き取りました。


「うおおおっ!」

 

 一誠はDホイールで一直線に爆走し、彼が狙っている男に突撃していた。あわよくば轢き殺せないか考えたが、当たる前に止まるようブレーキをかけた。

 

「お前、アンチノミー!」

 

「久しぶりとでも言っておこう。コカビエルの時以来だな兵藤一樹」

 

 全てを奪った憎き敵が、一誠を憎むような目で睨んでいた。まるで前の手柄を持って行かれたような嫉妬も含めて。

 

「どうやら全く成長していないらしいな。またコカビエルの時と同様に無様な姿を見せるつもりか」

 

「ふざけるな!もうあんな様にならない!」

 

「そうよ、前は利害が一致していたけど貴方が一樹を害するなら私は容赦しないわ」

 

 一樹と共に立ちはだかるのはリアス・グレモリー含むその眷属たち、一部眷属は時を止める神器をもつハーフヴァンパイアの救出に向かって居ない。

 

 だが一誠はそんな事情なぞ気にしない。ライフ1000くらいしかない一樹を見て成長はしておらず、厄介なのはその周りと判断した。

 

「俺たちがやることは一つ、デュエルだ兵藤一樹!」

 

「お前を倒してハーレム生活安定させてやる!」

 

「「デュエル!」」

 

 そう宣言した瞬間、一誠はDホイールを走らせリアスと一樹含むこの場にいた彼女の眷属達が悪魔の翼を広げて並走する。

 

 この時、一樹はアザゼルに禁手(バランスブレイカー)のデメリットを緩和する腕輪を持っていた為、無理矢理禁手(バランスブレイカー)となり龍のような赤い鎧を纏って飛んでいた。

 

 だが、ここで先行を取ったのが先に走った一誠だった。

 

「俺のターン!手札から『調律』を発動!」

 

「チッ、またか!」

 

 調律・通常魔法

 (1):デッキから「シンクロン」チューナー1体を手札に加えてデッキをシャッフルする。

 その後、自分のデッキの一番上のカードを墓地へ送る。

 

 一誠が手札に加えたのは『ジャンク・シンクロン』、そしてデッキの上から墓地に送られたカードは『エフェクト・ヴェーラー』だった。

 

「モンスターを1枚セット!カードを2枚伏せターンエンド!」

 

「よっしゃ、俺のターン!ドロー!」

 

 ドローしたカードを見て一樹はニヤリと笑う。

 

「手札から『SPYRAL-ジーニアス』を通常召喚!召喚成功時、効果発動」

 

「それにチェーンしてリバースカードオープン、『連鎖除外』!」

 

 

 連鎖除外・通常罠

 攻撃力1000以下のモンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時に発動できる。その攻撃力1000以下のモンスターをゲームから除外し、さらに除外したカードと同名カードを相手の手札・デッキから全て除外する。

 

 

 召喚に成功したため、『SPYRALージーニアス』の召喚時成功効果である『デッキから「SPYRAL GEAR」カード1枚を手札に加える』効果のため『SPYRALージーニアス』は急いでパソコンを操作して発動するものの、攻撃力が500のため消滅するギリギリのタイミングでカードを一枚出し、フィールドから1枚、デッキから二枚除外される。

 

「罠だって!確か一樹が言ってた重要カードを一気に除外!?」

 

「くそっ、対策カード持ってやがったか!」

 

 この時、一樹の手札には『機械複製術』を一枚握っており、『SPYRAL GEARードローン』を手札に加えるも通常召喚召喚権を使ったため展開ができなくなった。

 

「なら、手札にある『SPYRALーダンディ』の効果発動!お前のデッキトップはモンスターだ!」

 

 一誠のデッキの1番上のカードが強制的にめくられる。めくられたカードはモンスターカードである『クイック・シンクロン』だった。

 

「残念だったな!手札から『SPYRALーダンディ』を特殊召喚だぜ!」

 

 

 SPYRALーダンディ・効果モンスター

 星4/地属性/戦士族/攻1900/守1200

 このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが手札に存在する場合、カードの種類(モンスター・魔法・罠)を宣言して発動できる。相手のデッキの一番上のカードをお互いに確認し、宣言した種類のカードだった場合、このカードを手札から特殊召喚する。

(2):このカードが「SPYRAL」カードの効果で特殊召喚に成功した場合、相手フィールドの魔法・罠カード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊する。

 

 

「自身の効果でお前のその伏せカードを破壊ー」

 

「特殊召喚にチェーンして『連鎖破壊』を発動!」

 

「する…………えっ?」

 

 

 連鎖破壊・通常罠

(1):攻撃力2000以下のモンスターが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、その表側表示モンスター1体を対象として発動できる。その表側表示モンスターのコントローラーの手札・デッキから対象のモンスターの同名カードを全て破壊する。

 

 

 もちろん、SPYRALデッキのキーカードであるダンディな男だが伏せカードを破壊する前にデッキから『SPYRALーダンディ』が二枚墓地に送られた。

 

「なっ、て、テメェ!どうやってそれ仕込んだ!」

 

「仕込みなんぞしていない」

 

「クソがぁっ!」

 

 憎々しげに睨んできても、一誠は気にもしない。

 

「もう手札に使えるカードがねぇ…………バトルフェイズ!行け、ダンディ!伏せカードに攻撃だ!」

 

 金髪で黒スーツの『SPYRALーダンディ』が伏せカードに向けて拳銃を放つ、しかし…………

 

「甘いな、俺が伏せていたのは『マッシブ・ウォリアー』!」

 

 マッシブ・ウォリアー・効果モンスター

星2/地属性/戦士族/攻 600/守1200

このカードの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になる。

このカードは1ターンに1度だけ、戦闘では破壊されない。

 

 弾丸は現れた岩石の巨人(?)が持つ岩によって防がれた。

 

「戦闘破壊耐性!?どこまでメタってやがる!」

 

「これが最善策だから…………なにっ!?」

 

 防ぎきったはずの『マッシブ・ウォリアー』が別方向から放たれた雷に撃たれてもろく崩れてしまった。

 

 雷が飛んできた方向を見るとにこやかな笑みを浮かべた姫島朱乃が並走していた。

 

「隙だらけだったので、ついつい攻撃してしまいましたわ。思った以上に脆いんですね」

 

「くっ、外野からの攻撃…………っ!」

 

「なるほどね、みんな攻撃するなら今よ!」

 

 デュエル中は野外からの攻撃はしない、なんてルールはこの世界にはない。この事に気付いたリアスや朱乃がDホイールに向けて攻撃する。

 

 だが、コナミ君(仮)にテクニックも鍛えろと散々言われたため今放たれてる攻撃を紙一重で避けるくらいならできるほど上達していた。

 

 どこで走っていたか場所は伏せる。

 

「伏せるカードもないしターンエンド!みんな、攻撃の手を止めちゃダメだ!」

 

「もちろんですわ」

 

「相手が隙を見せてるうちに攻撃するのよ!」

 

 その図はどう見てもフルボッコにされてる図で一誠も避けることに精一杯になってしまう。

 

 手札に魔法罠の方ではなくドローンが加えられたということはSPYRALデッキのコンボのうちの一つである『機械複製術』を手札に握ってることを予測した。

 

 なら、できる限りこのターンに仕留めたい。

 

「くっ、俺のターン!うおおぉっ、危ねえ!ドロー!」

 

 デッキからカードをドローし、すぐさまハンドル操作で悪魔達の攻撃を回避する。

 

 幸いにも魔王クラスの悪魔や堕天使は別のことにかかりっきりでこちらには来ない。校庭を何周もしてデュエルをしているが、それはそれで間抜けな姿に見えるかもしれない。

 

 奴のデッキは強い、奴自身が弱点という点を除けば。

 

「手札から『クイック・シンクロン』の効果発動!」

 

 

 クイック・シンクロン・チューナー・効果モンスター

 星5/風属性/機械族/攻 700/守1400

 このカードは「シンクロン」チューナーの代わりとしてS素材にできる。

 このカードをS素材とする場合、「シンクロン」チューナーを素材とするSモンスターのS召喚にしか使用できない。

(1):このカードは手札のモンスター1体を墓地へ送り、手札から特殊召喚できる。

 

 

 手札から墓地に送ったカードは『ダンディライオン』というモンスターであり、墓地に送られたら星1で攻守0の綿毛トークンを2体特殊召喚するのだ。

 

 一誠の場にガンマン風の小人と顔のついた綿毛が2体現れた。

 

 そしてすぐさま『クイック・シンクロン』が5つの輪になり綿毛トークンがその輪の中に入る。

 

「レベル5の『クイック・シンクロン』とレベル1のトークンをチューニング!集いし力が、大地を貫く槍となる!光差す道となれ!シンクロ召喚!砕け!『ドリル・ウォリアー』!」

 

 現れたのは右手にドリルを構えた戦士、その大きさは『SPYRALーダンディ』を超えていた。

 

 

 ドリル・ウォリアー・

 シンクロ・効果モンスター

 星6/地属性/戦士族/攻2400/守2000

 「ドリル・シンクロン」+チューナー以外のモンスター1体以上

 1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。このカードの攻撃力を半分にし、このターンこのカードは相手プレイヤーに直接攻撃できる。

 また、1ターンに1度、自分のメインフェイズ時に発動できる。手札を1枚捨ててこのカードをゲームから除外する。次の自分のスタンバイフェイズ時、この効果で除外したこのカードを自分フィールド上に特殊召喚する。その後、自分の墓地のモンスター1体を選んで手札に加える。

 

 

「行くぞ、バトルフェイズ!『ドリル・ウォリアー』の効果により攻撃力を半分にしてダイレクトアタック!ドリルシュート!」

 

 手にあるドリルを地中に向けて撃った時はどうしたかと他の奴らは思ったが、一樹の下から飛び出して鎧の胴体部分に命中した。

 

「うぐっ!あがががっ!?」

 

「一樹!よくも私の眷属を!消し飛びなさい!」

 

 リアスがご自慢の滅びの魔力を放つも『ドリル・ウォリアー』はすぐさま地中に潜り回避した。そのまま飛んでいった滅びの魔力は一誠の上を通り過ぎ地面を抉って消滅した。

 

「(今のマジヤベェ!破壊どころか下手すりゃ除外レベルじゃねえか!しかも兄がいるって事だからもっとヤバイの放たれる…………?)」

 

 この時、一誠はかなり焦っていた。リアスの滅びの力を見せつけられた事もあるが、何よりデュエルが終わっていない(・・・・・・)

 

「ぐあぁ…………き、効いたぞ今のはぁ!ぜってえに許さねぇからな!」

 

 兵藤一樹LP1500→300

 

 そう、まだくたばっていなかったのだ。一誠からしたら『一/樹』になって欲しかったが鎧が強固で初期ライフが想定より僅かに上回っていたのだ。

 

 今、一誠のフィールドにいるのは綿毛トークンのみ。通常召喚権は残っているものの、相手の手札にドローンと機械複製術が入っている事は分かりきっているため展開されるのは明白であった。

 

 同時にプレイミスにも気づいてしまった。パッと出た『SPYRALーダンディ』より次のターンに出てくる『SPYRAL GERAードローン』に『連鎖破壊』を使えばよかった、と。

 

 さらに言うには手札に加えた『ジャンク・シンクロン』を召喚して『ドリル・ウォリアー』で

 

「くっ、手札から『ジャンク・シンクロン』を召喚!効果で墓地の『マッシブ・ウォリアー』を特殊召喚!」

 

 別の小人がまた現れ、先ほど破壊された岩石で出来た巨人(?)が復活する。

 

「レベル3チューナー『ジャンク・シンクロン』とレベル2の『マッシブ・ウォリアー』、そしてレベル1の綿毛トークンをチューニング!疾風の使者に鋼の願いが集う時、その願いは鉄壁の盾となる!光差す道となれ!『ジャンク・ガードナー』!」

 

 

 ジャンク・ガードナー・シンクロ・効果モンスター

 星6/地属性/戦士族/攻1400/守2600

 「ジャンク・シンクロン」+チューナー以外のモンスター1体以上

 1ターンに1度、相手フィールド上に存在するモンスター1体を選択し、表示形式を変更する事ができる。この効果は相手ターンでも発動する事ができる。

 このカードがフィールド上から墓地へ送られた場合、フィールド上に存在するモンスター1体を選択し、表示形式を変更する事ができる。

 

 

 今度は両腕に緑の盾を備えた戦士が現れ、盾を構えて立ちはだかる。

 

「くっ…………ターンエンド」

 

 だが、これ以上やれる事がないためターンエンド宣言をするしかなかった。

 

 この時から『ジャンク・ガードナー』に向けてリアス達は攻撃しているが、防ぐ流すでダメージを与えられていない。

 

 だが、一誠の危機には変わりなかった。

 

「へへっ、仕返しの時だ!俺のターン!ドロー!」

 

 腹に穴が空きそうになったのにもかかわらず、獰猛に笑いカードを引く。

 

 激闘を繰り広げる彼らを暗い影が覆っていた。




 これといった特殊ルールが見当たらない(無能)。転生者のライフは頑張って鍛えて500上がりました。


 自らのミスにより危機に陥ってしまった一誠、そこに転生者が時間ある限り全てを叩き込もうとする。その時コナミ君(仮)は超弩級砲塔列車に乗って白龍皇と戦っていた。半減する砲弾の威力に困り、思った以上に大きい車体は校庭を横切る。

 次回、『デュエリストと決別』

 事故って怖いよね、デュエルスタンバイ。


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デュエリストと決別

 

 

「へへっ、仕返しの時だ!俺のターン!ドロー!」

 

 バギャァッ!

 

「……………………?」

 

 『超弩級砲塔列車グスタフ・マックス』を召喚してヴァーリと戦っていたコナミ君(仮)はほんの少しだが走らせてる途中で何かを轢いたような音が聞こえたが、一誠は普通にDホイールを走らせているので気にしなかった。

 

「機械の神を2体出したと思ったら列車になったか!やはり貴様は面白い!」

 

「……………………」

 

 コナミ君(仮)としては面白くはない。白龍皇の神器の効果が半減であり、1ターンに1度、どれでも半減にするとかいうやばい効果で時械神ではろくにダメージを与えられなかったのだ。

 

 そろそろ決着をつけたいのだが、たとえ半減された砲撃一発当てたところで倒れてくれないのだ。もう学校の被害を考えずに砲身振り下ろしてハンマーにしようかと考えていた。

 

「ちょ、ちょっと聞いてくれ!」

 

「……………………?」

 

「その、今、君が轢いたの…………」

 

「…………………………………………!」

 

 そしてようやく気付いた。一誠の相手であった兵藤一樹、グレモリーにその眷属らを轢いたことを。

 

 

 LP300→−1200(『超弩級砲塔列車グスタフ・マックス』の攻撃力を半減されていたためこのダメージ)

 

 

 彼の不注意で一誠が倒すべき相手を倒してしまったのだ。多分、死んだと思われる。

 

「一樹さん!皆さん、お願いです、生きてください!」

 

 金髪シスターが治療すると傷が治っていることから辛うじて生きているようだ。

 

 まるでゴキブリみたいにしぶといなと感想を述べるが、すぐにヴァーリに視線を戻す。

 

「やはり期待外れだったか。コカビエルの時とまるで変わってない。主人を率いた状況で、不完全とはいえ禁手の状態で敗れるとは」

 

「……………………」

 

「バイクの彼を侮辱はしてないぞ?むしろ逸材だと思えるな。」

 

「……………………」

 

「もっと楽しみたかったぞ決闘者(デュエリスト)。カテレアもやられたようだし、俺にも迎えが来たようだ」

 

「……………………?」

 

 首を傾げていると空間が歪み新たな人物が現れた。ヴァーリが迎えといったあたり、少なくとも味方ではなさそうだ。

 

「おーう、ヴァーリめなんか面白いのと戦ってるじゃねぇか!俺っちも参戦したかったぜぃ!」

 

「美猴、お前にはお前の役目があるだろう。それで、奴らは何と言っていた?」

 

「おう、北のアース神族と一戦交えるから早く帰って来いってよ」

 

「なるほど、決闘者(デュエリスト)、しばらく勝負はお預けだ」

 

「……………………」

 

 正直もう戦いたくないです、とコナミ君(仮)は言ってる気がする。ただ、そういう気がするのは一誠だけで他はただ黙ってるだけにしか見えていない。

 

 白龍皇はそのまま美猴とやらと共にあっさりと帰って行った。

 

「くそっ、ヴァーリの奴こんな時に禍の団に寝返るか!いや、こんな時だからこそか…………」

 

 堕天使の総督が片手で頭を抱えてる姿が見えた。片腕は戦ってる間に無くしたらしい。

 

 禍の団も掃討し終わったようで、残るは和平を組んだ三陣営と一誠とコナミ君(仮)だけだった。

 

「では、そろそろ俺たちの目的も果たそうか」

 

「……………………」

 

 その言葉に三陣営に所属する者達は構えるが一誠もコナミ君(仮)も構えていない。コナミ君(仮)は『超弩級砲塔列車グスタフ・マックス』に乗ったままだが。

 

「禍の団の団員を始末してくれたことには感謝する。だが、君たちの目的がわからない。人外が嫌いなら勝手に潰し合うのを眺めるだけで手を出す必要がなかったはずだ」

 

「……………………」

 

「俺たちが来たのは警告だ」

 

 サーゼクスが問いかけ一誠が答える。なぜ彼は必要な時に喋らないのか、と聞かれても一誠が先に喋ってしまったからとしか言えないコナミ君(仮)。

 

「もうこれ以上人間の世界に干渉するな。俺たちはそれを言いに来た」

 

「干渉、ですか。我々は人に害を与える事はしてないはずですが」

 

「しらばっくれるな。和平締結後に悪魔の駒をモデルにし転生天使を作る計画を聞いている。ただでさえ悪魔の駒で人生が狂った人間が多々いるのに何故そのようなことをする」

 

「…………我々も苦肉の策なのだよ、アンチノミー君。先の大戦で我々の種族は減ったんだ。それを繁栄させようと…………」

 

「繁栄?無理矢理誘拐して眷属という奴隷を増やすことが繁栄か、子孫を残さず他種族を減らして自分の種族を増やすのが得意なんだな」

 

 一誠は明らかな嫌悪感を出して皮肉を言い放つ。コナミ君(仮)はウンウンと頷いている。

 

 そもそも、コナミ君(仮)が一度冥界に連れて行かれなければ一誠も嫌悪感はそこまでなかった。彼が連れて行かれた先に酷いものを見たことを聞いて嫌悪感が湧いたのだ。

 

「そんなに増やしてどうする?繁栄という名を掲げて人間への侵略に等しいじゃないか」

 

「私たちはそんな事のために悪魔の駒を使ってるのではないよ」

 

「そうよ!私の子達だって良い子だしみんな自分から望んで眷属になったもん☆」

 

「それはお前達だけの話だろう。さっき言ったはずだ、無理矢理誘拐して眷属という名の奴隷を増やして繁栄している、お前達だけが綺麗事を言ってるだけでコソコソとやってるやつは人間を食い物にしてるだろう」

 

 もはや怒りどころか呆れてしまった。トップが綺麗事しか言わないから裏で動く害悪共が自由にしている、それすら分かってないと理解してしまった。

 

 何故かアザゼルだけが苦い顔をしている。まだ何も言ってないのにその顔をするという事は心当たりはあるのだろう。直せるかどうかは別として。

 

「そして、悪魔の駒のシステムを利用した新たな転生を考えているんだろう、大天使ミカエル」

 

「っ、何故それを…………ええ、もう既に交渉する旨は伝えましたがそれが何か?転生天使を増やし人々を救うのが我々の…………」

 

「人間同士の殺し合いを推奨してる奴が何を言ってるんだ?その天使とやらが魔女狩りや宗教戦争を勃発させたんだろうが」

 

 何度も言うが、大体の事はコナミ君(仮)から聞いた話であり、一誠は直接見ていない。それでもコナミ君(仮)の熱意が真実を物語っていた事は分かった。

 

 コナミ君(仮)も本当に偶然だが海外旅行に行ったら魔女狩りの場面を見てしまった、しかも宗教的な話も含まれていた。

 

 この時、ただそいつらと別の宗教だったから異端、そいつらと違う術式を使ったから異端などもはや当てつけのような罵倒にコナミ君(仮)は耐えきれず戦ってしまったのだ。

 

 その時の凄惨さもコナミ君(仮)には忘れられない思い出になったが、これはまた別の話。

 

「……………………」

 

「……………………」

 

「……………………(帰るぞと一誠に言ってる気がする)」

 

「いや待てよ、この流れは俺に何か話くるんじゃないのか!?いや、絶対に心に刺さるやつだろうけど」

 

「え?とりあえず部下の制御と神器保有者の強制連行くらいしか思い付かない。神器保有者に関しては保護と制御を教えてるし、部下の制御さえどうにかしたら別に良いんじゃないかと」

 

「こんなこと自分で言うのもなんだが、一番悪とされる堕天使がなんで妙に評価高いんだ…………?」

 

 実際、部下の暴走さえなければ少しマッドサイエンティストは入ってても人間に対して神器の扱いを教えてそのまま何かされないように軟禁、と言ってもほぼ保護されているような状態だったから特に言う事はない、とコナミ君(仮)は言う。

 

 聖書では悪とされるが人間に憧れて堕ちた事もあって同情的な部分もあるのをコナミ君(仮)は知っている。ただ、愛が変な方向に向いて上司のための殺人や戦争を起こそうとするだけで、かなり致命傷である。

 

 妙に評価が高いのは堕天使デッキがいい感じに強いからという理由も含まれていたりする。コナミ君(仮)の偏見である。

 

 何故か堕天使以外の人外がアザゼルに向ける視線を鋭くしているが二人は気にしない。

 

 ようやく『超弩級砲塔列車グスタフ・マックス』から降りてDホイールに二人乗りした状態でコナミ君(仮)達は現場から離れていった。

 

 警告はしたものの、直すつもりはないと確信めいたものを持っているが、今日来たことは無駄ではないと思いつつ走る。

 

「…………なんか拍子抜けだった。ライフが増えていたとはいえあそこまで弱いものなのか?」

 

「……………………」

 

「まあ、そりゃあ妨害系張れば簡単に対処できるけど…………赤龍帝ってあんなに弱いのか?」

 

「……………………」

 

「そうか、やっぱあいつが弱すぎるだけか」

 

 何故追跡をしなかったのか疑問は残るがコナミ君(仮)達は家の前まで来た。

 

 …………そして家のDホイールを仕舞う車庫の前で止まることになった。

 

「う、うぐぐ…………空腹で斃れるとは…………主よ…………そうだ、もう居ないんだった…………見放されるのも当然か…………」

 

 コカビエルと戦った時にギリギリで立っていた青髪の教会の戦士らしき女性が家の前で倒れていた。

 

 コナミ君(仮)は思った、一誠と出会った時と似たシチュエーションだなぁ、と。この先の未来が何となく想像できるのは何でだろう、と遠い目をしていた。




 特殊ルールは無し。

 活動報告にてアンケートを取ってます。よろしければそちらの方もお願いします。


 教会から追放された戦士は倒れ、決闘者に拾われる。彼女が語る教会の裏切りを聞く。忘れられた者は怒り、家主は黙り込む。そして明かされる聖書の神の不在、詐欺を行う天使に落胆を見せるも、彼女もまた第3のコナミ君だった事に気づく。

 次回、『デュエリストと元聖剣使い』

 もちろん第2のコナミ君は一誠である、デュエルスタンバイ。


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デュエリストと元聖剣使い

 謎の元聖剣使いのデッキが決まりました。いや、抽選アプリにかけてこの結果とは運命って怖いです…………


 

「美味い…………味のない粥だが美味い…………」

 

「……………………」

 

「なんかデジャヴを感じる…………」

 

 君が言ったことそのまんまだよ、と言いたそうな顔をしているコナミ君(仮)。

 

 一誠はコナミ君(仮)の方を向かないので気づいていない。

 

 なお、彼女の名前はゼノヴィアと言う。粥を食べる前に名乗るあたり律儀である。

 

「…………すまない、倒れたところを助けてくれた上に飯までご馳走になるとは」

 

「いや、謝ることないって。俺も似たような状況になったことあるから」

 

「なんだと…………君も道端で倒れたことがあるのか?」

 

 なんか同情というより共感がある空気の中、コナミ君(仮)は一人で風呂に入ることにした。

 

 20分ほど入って上がってきたらカオスな場面になっていた。

 

「クックックッ…………ドローフェイス時に『Sin World』の効果発動!デッキから『Sin』モンスターを3枚選び、その中からランダムに一枚選べ!」

 

「むむむ…………うっし、これだ!」

 

「貴様が選んだカードは『Sin レインボー・ドラゴン』!残り二枚はデッキに戻しシャッフル、スタンバイからメインフェイズ!デッキから『究極宝玉神 レインボー・ドラゴン』を除外して現れよ『Sin レインボー・ドラゴン』!」

 

「また上級モンスターかよ!?しかも今度は攻撃力4000だと!?」

 

「バトルフェイズに移行!ゆけ、『Sin レインボー・ドラゴン』!『ジャンク・ウォリアー』に攻撃!」

 

「甘いな、リバースカードオープン!『くず鉄のかかし』!その攻撃を無効にするぜ!」

 

「『屑鉄のかかし』だと!何度も伏せられるとは厄介だな…………カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

「攻撃力4000をどう倒すか…………俺のターン、ドロー!」

 

 机の上でデュエルしていた。もうデッキコンセプトも一発で分かった。

 

 どうしてデッキを持ってるかは聞かない、どうせカードを拾っていったらデッキができたと言うのはわかりきっている。何故なら前例があるからだ。

 

 ゼノヴィアはラスボスみたいな悪い笑みを浮かべ、一誠はそれに挑む戦士の顔をしている。

 

 流石にモンスターは実体化していない。だが敢えて言おう、この状況まるで意味がわからんぞ。

 

 ふとゼノヴィアのフィールドを見てみると、フィールド魔法とモンスターはさっき言ったから知っていたが墓地に『Sin レッドアイズ・ドラゴン』、除外してあるカードに『真紅眼の黒竜』があった。

 

 ゼノヴィアは超レアカードを大量に所持していることは明らかだった。それらを拾ってくるなら時械神カードを拾ってきてほしいものだとコナミ君(仮)は思った。

 

 二人はデュエルに夢中で戻ってきたコナミ君(仮)には気づいてないが、コナミ君(仮)は偶然はこうも重なるのかと思っていた。

 

 時械神を使用している自分、デッキは違うがアンチノミーと名乗る一誠、そして『Sin』モンスターを操るゼノヴィアと着実に未来組が揃ってきている。

 

 コカビエル出撃の時に一度見た彼女は真面目で信仰心はあったが、宗教的な『Sin()』の名を持つデッキを操ることになるとは、神に仕えていた身になんたる皮肉と言うべきか。

 

 そもそも教会に仕えていたのなら何故こんなところで行き倒れていたのだろうか?

 

 だが、楽しくデュエルしてる二人の邪魔をしてはいけない。白熱している二人の戦いを静かに眺めるのだった。

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

「手札から速攻魔法『シューティング・ソニック』を発動!ダメージステップ時に『スターダスト・ドラゴン』で攻撃した『Sin サイバーエンド・ドラゴン』をダメージステップ開始時にデッキに戻す!」

 

「なにっ!『Sin』モンスターはフィールドに一枚しか存在できないのを逆手に!」

 

「止めだ、ゆけ!『ドリル・ウォリアー』でダイレクトアタック!」

 

「くっ、私の負けだ…………」

 

「初めてのデュエルでここまで出来るとはやるじゃねえか!」

 

「いや、ここまでやれたのはカードが強かったからだ。戦術も君には劣るよ」

 

「いやいや、俺だって練習したからあそこまでやれたんだ。練習して調整すればもっと強くなれるからそう低く見ることないぜ!」

 

 結果は一誠の勝ちで終わった。二人ともそこにモンスターがいるかのように白熱していい勝負だった。

 

 コナミ君(仮)から言わして貰えば「お前『スターダスト・ドラゴン』をいつ手に入れたんだ」くらいしかなかった。

 

 ゼノヴィアのデッキも悪くなく、『トレード・イン』や『アドバンス・ドロー』などのドローソースは欠けておらず常に高打点モンスターを立てて一誠を苦しめた。

 

 二人ともいい顔をしていた。何処ぞの貶めるデッキしか頭になかった奴とは違う。

 

 そろそろ本題に入ろうとコナミ君(仮)は話をする。もちろん何故ゼノヴィアが教会から追放されたかだ。

 

 …………話は酷かった。聖書の神とやらの死を知ってしまったが故に電話で問い詰めると破門、もちろん行くあてもなく、ましてや悪魔に頼ることなどできなかった。

 

 今までギリギリ手持ちで凌いだものの資金が尽きて家の前で倒れていた、という事だ。

 

 一誠はブチ切れた。

 

「なんで簡単に捨てられるんだよ!信じてた神が死んでたってのは色々ヤバいんだろうけど、それを隠してたやつに聞くだけで追放とかふざけてやがる!」

 

「仕方ないことなんだ…………神の不在を知れば他勢力に攻め込まれる可能性があった、私がデュランダル使いと分かっていても切り捨ててリスクを減らしたかったんだろうな」

 

「何だよその理由…………!」

 

「……………………」

 

 激情と静かな苛立ちを募らせる二人に対してゼノヴィアは諦めに近い反応だった。

 

「今思えば悪魔になったアーシア・アルジェントの件も疑うべきだった。聖女と呼ばれた彼女は優しさ故に悪魔を癒し過ちを犯したが、償える範囲内だった。彼女には悪いことをした…………」

 

「……………………」

 

「た、多分その人も気にしてないって!だから落ち込むなよ」

 

 その元聖女に心当たりはあった。転生者を轢いてライフを0にしたが、それを蘇生していたのが彼女だ。

 

 …………彼女がいる限りあいつらを倒せないのではと思い始めてきたコナミ君(仮)であった。

 

 結局、デュエリストになった彼女を放置するのはいけないので居候という形で滞在することになった。パスポート?期限?そんなもの知ったことではない。

 

 このまま駒王街に住みながら害獣退治の日々が続く…………筈だった。

 

「……………………」

 

「え、それマジで言ってるのか?あんたが夏休みに入るとはいえ俺たちまで?」

 

「……………………」

 

「旅行か…………チケットや宿はどうするんだ?一誠はともかく、日本に戸籍のない私は外国人で下手したら怪しまれるぞ?」

 

「……………………(既に二人分の戸籍は作っておいたのさ、という顔をしている)」

 

「仕事が早い!?お前本当に何者なんだ…………」

 

「……………………」

 

「ありがとう、というか男二人に女一人って大丈夫なのか?」

 

「私は気にしないぞ?たまに男と間違われる」

 

「そういう問題じゃ…………本人が気にしてないならいいか」

 

「……………………」

 

 デュエリスト達、夏休みに旅行に行く。




 『Sin』とは、宗教や道徳上の罪、罪悪を意味する英単語で、法律上の罪を意味する「クライム(crime)」とはその性質を異にする。遊戯王wikiより抜粋

 地味に当たってる上に本人の象徴(?)である聖騎士ではなく『Sin』が当たるとは…………


 コナミ君(仮)の予想外の提案により彼らは旅行に行く。殺伐とした生活の癒しを得るため京都を満喫する。裏で妖怪が跋扈する土地だが悪戯程度で逆に楽しんでいく。だが、彼らに悪事を企む予想外の人物と再会する。

 次回、『デュエリストと旅行』

 和はいいものだ byゼノヴィア デュエルスタンバイ。


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デュエリストと旅行

 (一部除いて)ほのぼの回です。デュエルはありませぬ。

 11/11は遊戯王新パック発売日、ですが買いましたか?7パック買ってサクリファイス系が欲しかったのに他のウルトラ枠がバンバン出ましたよ。


「どうしてこうなった…………」

 

「どうしてこうなったかなんて私が聞きたい…………」

 

 夏休み、それは宿題さえどうにかできたら部活動をしている学生は全国大会に臨み、それ以外はゆったり自分勝手に過ごせる長期の休みだ。

 

 これでも学校に通っているコナミ君(仮)が夏休みに入ったことで京都に行こうということになったのだ。

 

 期限は1週間、好きなだけ遊べということだが資金はどこから出ているのか?

 

 この話はまた別として、アンチノミー仕様(サングラスとオールバックに整えた)の一誠と仮面で顔を隠したパラドックス仕様のゼノヴィアがとある広い屋敷に招待された。

 

 コナミ君(仮)はどこに行ったか、誰かを見つけた途端に走り出して行方をくらませたので二人は知らない。

 

 しかし、呼ばれたということは何かしらの話があるということになる。人目がつくところで誘われ、人目がギリギリまである所に来たので逃げる隙もなかった。

 

 コナミ君(仮)ならどう逃げるのかと考えているうちに、襖が開いて奥から狐の耳と尻尾を生やした美女(巨乳)が現れた。

 

「ようこそ、京都においでくださいました。京を仕切る妖怪の頭領の八坂でございます」

 

「…………私はアンチノミーだ。こっちの名はパラドックス」

 

「待て、その名前に納得したわけじゃ…………もういい」

 

 何故か抗議しようとしたゼノヴィアが一誠に軽く小突かれたため黙り込む。何が不満なのか、本人曰く「なんとなく気にくわない」とのこと。

 

「随分と仲がよろしいことで。部屋は2人分しか用意していませんが、急遽もう一部屋用意させていただきます」

 

「待ってくれ、何故京都の頭領が私達にそうする?私達の噂は世界中に広まっているはずだ」

 

 ゼノヴィアが疑問を堂々と伝える。人外嫌いのチームで敵は容赦なく倒すという噂が流れているのをこの場にいないコナミ君(仮)を含めた3人は知っている。

 

 だからこそ分からないのだ。下手に刺激したら爆発するものを懐まで近づけ、さらに泊めるということまですることが。

 

「もちろん、噂話は伺っておりますとも。ですから真偽を確かめたからこう誘っておるのです」

 

 断ったとしても何もいたしません、と最後に付け加えてまっすぐ二人を見る。

 

「…………この話、どう思う?」

 

「恐らく、京都に入った時点で付けられてたのかもしれない。あの赤帽子と上着は目立つからな…………」

 

 見つかった原因はコナミ君(仮)と言っても差し支えないだろうと確信していた。私服もあのスタイルなので見つけやすい上に突如どこかに行ってしまったのでその連れをまず引き込もうとしているのだ。

 

 それでも悪意というものを八坂と名乗る人物(?)からは感じ取れていない。むしろすれ違った妖怪達から歓迎されているような気もするのだ。

 

「本音を言えば、貴方方に助けられているお礼をしたいのです。好き勝手領地を奪った上にそこの住民に害を与える輩をすぐに排除しない悪魔と違って人を救うその姿勢、妾はそこを見込んで貴方方をお誘いしたのです」

 

「誰かに礼を言われるためにやっている訳じゃない。未来の、いや、俺自身のためだけにしていることだ」

 

「それでも感謝している人はいるものです。まあ、その人々の記憶はその地の管理者に消されているようですが」

 

 最後の部分だけ忌々しそうに言う。二人からしたら問題ないのだが、八坂にとって彼らの功績を無駄にしているようにしか見えないのだ。

 

「…………まあいいだろう。そちら側に害がないならそうさせてもらう。泊まるところも決まってなかったしな」

 

「まさかとは思いますが、飛び込み宿に泊まるおつもりでした?」

 

「ああ」

 

 3人、しかも1人は女性というのに飛び込み宿に泊まる若者を想像して苦笑いするが、すぐに真剣な顔になる。

 

「貴方方がこの地に来たことは大体の勢力に気づかれています。そんな中で呑気に旅行させると思いますか?」

 

「折角の旅行が台無しになるだろうが、その時は応戦するつもりだ」

 

「たとえそれが一般人に被害を与えるとしても?」

 

 一瞬で二人の気配が剣呑になる。ここまで反応するとは思っていなかったので八坂はすぐに訂正する。

 

「す、全ての組織が派手な行動をとる訳ではありませぬ。この地で暴れられると妾ら、日本神話が黙っておりません故」

 

「では、貴女は我々の味方になると?」

 

「左様でございます。我々は貴方方のことをよく知りませぬ、それ故に仲良くしたいのです」

 

 意図は読めないが、日本神話というグループとして彼らと友好関係を築きたいと述べている。信じるべきかどうか悩んだが、二人は頭領がいないため受けざるをえない。

 

 強力な力を持つとはいえ、たった3人なのにここで断って無理に敵を作る訳にはいかないのだから。

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 一方、その頃コナミ君(仮)はというと。

 

「ゲオルグ!奴は撒いたか?」

 

「ああ、霧の迷路を作った…………あそこまでしないと撒けない人間はいるのか…………?」

 

「規格外、という言葉があるだろう。俺たちも規格外だがあいつも…………っ!?逃げるぞ!」

 

「……………………!」

 

「馬鹿な!迷路とはいえ出口は作ってないはず!」

 

「謎解きは後だ!今は奴から逃げるぞ!」

 

 前にあった調子乗りコンビを追い回していた。

 

 何か京都で悪巧みをしていそうな二人を見つけ、場合によっては神器を使えなくなるためある意味恐れられていることを感じたため追い回している。

 

 何度も何度も魔法や神器で撒こうとしたがどれも成果は上がっていない。

 

 それどころか一般の家の出だと思われるコナミ君(仮)と英雄の魂を引き継いでいる二人の(物理的)距離が少しずつ狭まっていく。

 

 まさにランニング、デュエルはしていないが「はえーよホセ」と言われる日も近い。

 

 ただただ追い回していただけなため、長時間のランニングの末に結局二人を見失い一誠達と合流するのは2時間後になった。

 

 なんか途中で狐っぽい幼女に頭ガジガジされつつ歩く羽目になった。

 

「……………………」

 

「がぶがぶ、この不審者め!」

 

「いや、君は俺達と離れてる内に何があった!?」

 

「これ九重!客人になんてことを!」

 

 ひっついて離れない幼女こと九重を引き剥がさずここまで一緒に来たコナミ君(仮)には脱帽するばかりだ。

 

 帽子を脱がないコナミ君(仮)もだが、帽子越しに噛み付く九重嬢もある意味大物である。

 

 この後、誤解を解いた後に曹操とゲオルグという男を追っていたことを危険性も含めて話し、警戒を強めるよう八坂に言った。

 

 一誠とゼノヴィアは九重嬢とすぐに打ち解け変装を解いて遊ぶようになり、明日に京都を案内してくれるようだ。

 

 コナミ君(仮)とは気まずいのか、まだ距離を測っているようなので彼はそっとしておいた。

 

「あの子が失礼をして…………」

 

「……………………」

 

「貴方がそう言うのでしたら、例の件を事前にありがとうございます。何を企んでたかまでは分かりませんが、この地にそのような輩が来るとは警備をもう少し厳重にしなければなりませんね」

 

「……………………」

 

「もしかしたら悪魔も関わっていると?…………鵜呑みにすることはできませんが、そちら方面の警戒も引き上げておきましょう」

 

「……………………?」

 

「完全には信じておりませんよ?しかし、貴方には人を惹きつけ正しい道へ進ませる人望、いわばカリスマがあるようで」

 

「……………………」

 

「うふふ、ご謙遜を」

 

 妙に好感度を持ってる八坂に対してコナミ君(仮)は疑問に思うが、彼女も人を愛し守る立場ということもありある程度の信頼は寄せている。

 

 京都にこんなにも妖怪がいるとは思っていなかったが、人と共存できている場面を見た。綺麗な友好関係を築き、時に喧嘩も目撃したが最後には仲直り…………素晴らしいものだった。

 

 何処ぞの人外共も見習って欲しいと、その日の夜こっそり抜け出して妖怪の街を歩くコナミ君(仮)は思った。

 

 もしコナミ君(仮)一人だけならこのように招かれなかっただろう。2人、数としては少ないかもしれないが誰かがいるだけでこうも変わり、良くも悪くも楽しめるものだ。

 

 コナミ君(仮)は感慨に浸り、たまたま見つけた茶屋で団子を頬張った。

 

 10分後、見回りに抜け出した事がばれて鬼ごっこが始まった事を旅行初日の夜の部に追記しておく。

 




 特殊ルールは無し。


 京都を満喫した一行は妖怪と仲良くなる。彼らの理想、護るべき者を知り、そして共感する。だが、他勢力の魔の手はこの地にも伸ばされる。悪意なき惨劇を食い止められるか。

 次回、『デュエリストとテロリスト』

 似ているが貴様らと一緒にするな、デュエルスタンバイ。


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デュエリストとテロリスト

 テロリスト襲撃と同刻に小猫と黒歌が接触、そしてリアスと転生者が戦ってます。何故か転生者だけ痛手を負います。あとソーナとのレーティングゲームはソーナが勝ちます。転生者の早期敗退、ギャー坊の実力不足、下僕の不足が敗因です。

 なぜ書かないか?転生者が主人公達以外にボコボコにされる様を書いてて面白く無いからですよ。デュエルで滅べ!(直球)


 

「……………………」

 

「いや、何かの縁にと俺があげようと思ったんだ。ゼノヴィアは悪くない」

 

「いや、私も賛同したのだから同罪だろう。1人で責任を負おうとするな!」

 

「いや、渡したカードは大体俺が拾ったやつだし」

 

「……………………」

 

「「…………ごめんなさい」」

 

 京都に来て4日目、基本的に一誠とゼノヴィアが九重嬢と京都を歩き、コナミ君(仮)は昼間は飯時に合流するくらいで1人ぶらりと歩いていた。

 

 街を歩くとカードを拾う、なぜ落ちてるかは知らないが拾うものは拾うのである。

 

 その拾ったカードで一誠とゼノヴィアがデッキを作り九重嬢にあげた事がコナミ君(仮)にバレたのだ。

 

 2人は正座してコナミ君(仮)の説教を受ける羽目になった。

 

「……………………」

 

「すまない、私たちが軽率だった」

 

「説教はそこまででよろしいのでは?そろそろ夕餉の時間ですので」

 

「……………………」

 

「ま、待ってくれ、足が痺れて動けん…………」

 

 長時間の正座によりゼノヴィアは足が痺れて動けなくなった。その様子を一誠は苦笑い、八坂はクスクスと笑っていた。コナミ君(仮)の表情は変わらなかった。

 

 平和、いたって平和なのだがそう問屋は卸さない。

 

「八坂様!てぇへんです!」

 

「客人の前ですよ、何をそんなに慌ててるのですか」

 

「禍の団とかいう組織が攻めてきやした!」

 

「……………………!」

 

「あの時の奴らか!」

 

 ゼノヴィアは首を傾げているが、コナミ君(仮)と一誠は奴らを知っていた。

 

 簡単な概要を説明し、相手がどういう存在かを伝える。やはりテロリストという事なのでゼノヴィアは怒り、八坂は嫌悪を示す。

 

「妾たちの街に攻め入るなど蹴散らしてくれるわ!」

 

 流石に九重嬢を戦場に出すわけにはいかない。精神年齢と肉体年齢がまだ戦う時期になっていない。

 

 もちろん3人は九重嬢を戦場に立たせようなんて思っていない。今こそ彼らが戦う時なのだ。

 

「九重、君は待っていてくれ。私たちが片付ける」

 

「じゃが、そなたらは客人!手間かけさせるわけには」

 

「まー、これが俺たちが戦う理由でもあるしな」

 

「……………………」

 

 一誠の言葉に賛成するようにコナミ君(仮)が頷く。八坂もこのようになった彼らを止める事はできないと知っているため何も言わない。

 

 コナミ君(仮)は帽子を深くかぶり、一誠はサングラスをかけてオールバック、ゼノヴィアは仮面をつける。

 

「よし、行くぞ!」

 

「……………………」

 

「簡単にへばるんじゃねえぞ!」

 

 さあ、戦争(デュエル)が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

 伝説を見た。すぐに書かなければならないと思った。汚い字だという事に目をつぶってほしい。

 

 突如混沌を求める侵略者が現れ我々が住む京都は大きな被害を被るかと思っていた。しかし、八坂様とある人間達の活躍で死人どころか大した被害もなく終息した。

 

 1時間も経たないうちに終息したのだ。向こうは戦争を仕掛けてきたつもりだったろうが、簡単に滅ぼされた。

 

 まず、小人と鼠が融合した戦士の話だ。黒眼鏡をかけた男が素早い手つきで札を操り召喚獣を呼んだのだ。

 

 戦士の召喚獣は敵を殴り飛ばして対応していた。男自身も近寄る敵の攻撃を避けつつ鮮やかに反撃していた。

 

 そして何よりも星のように輝く龍が現れた時は、その場にいたほとんどが龍に目を奪われ動きを止めてしまった。

 

 生きてる内に龍を見る事になるとは思ってなかった。閃光を放つ龍は敵を吹き飛ばして行った。その姿、まさに無双。

 

 次に仮面をつけた女だ。結界を張ったと思ったら、先ほどの男とは違い手順を踏まずに巨大な龍を召喚した。

 

 その龍は拘束具のようなものが付いていたが、『滅びのばーすとすとりーむ』という攻撃名を女が叫び一掃していった。

 

 強靭、無敵、最強という言葉が何故か頭に思い浮かんだ。たった1頭の龍に女が相手をしていた敵は散っていった。

 

 こんなものか、女はそう呟いたのを私は聞き逃さなかった。強い、彼女は強い。手に持つ聖なる剣を持ってあの龍を操る姿、追放されてなお戦う勇者。

 

 そして、彼らを束ねる男も圧巻だった。

 

 神、別の神、さっきの神と入れ替わるように召喚獣、いやあれは獣と言えるのだろうか?

 

 その話は今置いておこう。あの神はまさに無敵と言えた。いくら攻撃を受けようと無傷、魔法を放たれようと無傷だった。

 

 それどころか反撃と言わんばかりに水流、いやあれはもはや洪水だった。それに業火に暴風、まさに天変地異のようだった。

 

 ちっぽけな妖怪である私はもちろん、この京にいる妖怪がどれだけ束になったら倒せるのかと思えるほど強かった。

 

 あの無双っぷりは恐怖を通り越して尊敬できる。何故あのようなものを操れるのか、本人の資質なのか向こうから契約しているのか、真実は彼しか知らないのだろう。

 

 そして途中で列車が現れたのは私の見間違いだったのだろうか?戦いが終わりすぐ調べたら轢き潰された死体があったので見間違いではなかった。

 

 あの3人の人間は敵に回してはいけない。遅かれ早かれこの日の武勇伝は全国、いや全世界に轟くだろう。

 

 八坂様に彼らと友好条約、いや同盟を組んでもらいたい。少なくともこう思ってるのは私だけではないだろう。

 

 

 ーーーーーーーある妖怪の書記から抜粋

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 コナミ君(仮)達は困っていた。やるべきことをやったまでなのに英雄として称えられている状況に。

 

「さあさ飲みな!え、未成年?16ならへーきへーき!」

 

「うちで作った飯、美味しかったですかぁ?そうですかぁ、よかったぁ」

 

「……………………」

 

「もはやお祭りだな…………」

 

 美男美女に囲まれ酒盛りをされても全員未成年なので断っている…………がそろそろ押し負けそうな気がしてきている。

 

 コナミ君(仮)はともかく、一誠とゼノヴィアに酒を飲ませたらとんでも無いことになりそうな予感がするコナミ君(仮)。

 

 一応保護者ポジションのため酒を飲ませることだけは阻止している。

 

 ちなみにだが八坂はコナミ君(仮)の隣に、九重嬢は一誠の膝の上にいた。かなり懐いているのははたから見れば分かる。

 

「すごかったのじゃ!龍がどーんとなぎ払ったり吹き飛ばしたりする様はかっこよかった!」

 

「は、ははは、そうか」

 

 ゼノヴィアの『Sin』モンスターと一誠の『スターダスト・ドラゴン』の事を言ってるのだろう。時械神とは違って派手に攻撃しているのでかなり華やかだった。

 

 一方、コナミ君(仮)の戦いは地味だと切り捨てた九重嬢であった。地味にコナミ君(仮)は傷ついた。

 

 あと八坂は酒が入ったせいなのかどうか真偽は不明だが、コナミ君(仮)とのスキンシップが多かった。

 

 身体を触るわ酒を屁理屈で勧めてくるわでとても対応に困った。なお、一誠は「いいなぁ……俺もおっぱい擦り付けられてぇ……」と九重嬢に聞こえないように言ったのを聞き流していなかった。

 

 ゼノヴィアが呆れの目で一誠を見ていたのは、まあいつものことである。

 

 昔も今も根本がエロ小僧なのは変わっていなかった。赤き龍は何をしている。

 

 何時間も宴会は続き、就寝する頃にはコナミ君(仮)は様々なアプローチを回避し続けていたので精神的にクタクタになった。

 

 流石に寝込みは襲われず泥のように寝込んだ翌朝、目覚めたコナミ君(仮)は宴会が終わったあと一誠とゼノヴィアと会ってないことに気づいた。

 

 コナミ君(仮)が起きた後、2人も一緒に遅れて起きてきた。何やら2人は気まずそうだったが…………

 

 テロリスト襲撃というハプニングがあったが京都の旅行は終わった。八坂や九重嬢、少人数とはいえその部下の妖怪達に見送られたので少し目立ったのは仕方ないことだ。

 

 また長期の休みになったら来るとコナミ君(仮)は約束したら「学生だった!?」という風に驚かれた。心外である byコナミ君(仮)

 




 戦闘描写はどこに行ったんだ。

 一誠が九重嬢に渡したデッキはもちろん妖怪デッキ。漫画版み、み…………三上さん?が使っていたような大行進デッキです。


 京都から戻り妙に仲が良くなった一誠とゼノヴィアを見るが仲良くなることは良いことだと良い顔で頷くコナミ君(仮)。2人が一緒に遊びに行った先に一誠の全てを奪った元凶、そして北欧の神に出会う。

 次回、『デュエリストと北欧神』

 予想外の邂逅に彼らは何を思う、デュエルスタンバイ。


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デュエリストと北欧神

 最近、万丈目サンダーになりつつある。

 おジャマデッキ極めたいなぁ…………


「…………あの、ゼノヴィア様?何故に俺たちはホテル街に来てるんでしょうか?」

 

「む、まずはホテルで一発では無いのか?」

 

「どこ情報なんだよそれ!?」

 

 ゼノヴィアの知識は、なんか歪んでいた。というのも一誠とゼノヴィアは京都襲撃事件から一夜明けた後、かなり仲良くなった、というよりもはや恋人同士になった。

 

 一誠は昔の夢であるハーレムは諦めていないが、ゼノヴィアはその夢を語られてもなお一緒にいると言うので中々だと思われる。

 

 そして晴れて2人っきりの初デートになったのだが、コナミ君(仮)が先に街の良いデートスポットを調べて教えてくれたにも関わらずゼノヴィアが暴走、ホテル街に来てしまったのだ。

 

 この状況に満更でもない一誠も一誠なのだが、コナミ君(仮)は良い場所を提示しただけでどうこうしたらいいなどは言ってないので彼も気にしないだろう。

 

 ただ、少しは自重しろと言うかもしれないが。

 

「あの時も言ったはずだが、教会だと禁則事項が多いのだ。だが、私はもう教会から破門された身だ。周りに迷惑かけない程度に好きな事を好きにやって構わなんのだろう?」

 

「うーん、うーん、ゼノヴィアがそう言うなら」

 

 悩むフリをしてかなり喜んでいるのは目に見えている一誠。思春期ということもあって欲望がダダ漏れである。

 

 女性恐怖症も患ってないので本人から積極的に行けるという点もありちょっとした暴走を許している。

 

 2人の中の予定ならこのままホテルに入った一発、いや下手したらホテルだけでデートが終わるかもしれない。

 

 お忘れだろうか、立場を奪われようと原作の主人公は一誠なのだ。こういう時に何か起きてしまうのだ。

 

「よっしゃ!入ろう…………っ!?」

 

「一誠、どうした?」

 

 一誠は見た、見てしまった。全てを奪った転生者こと兵藤一樹と、かつて一誠が通っていた学校の二大お姉様と呼ばれる姫島朱乃がデートしていた。

 

 殺意、特に苦労もせず美人と一緒に歩いている奴に対しての嫉妬が出た。が、ゼノヴィアに頭を叩かれて正気に戻る。

 

「…………ごめん、あいつ見たらどうも殺したくなる」

 

「あんな奴は放置だ。ささ、行くぞ」

 

 そう言った瞬間、姫島朱乃が何処からか現れた爺にセクハラされた。

 

 本来なら無視してホテルに入るはずだったが、その爺から神性を感じたのだ。ゼノヴィアはともかく何故一誠が神性と感じ取れたのか、神と付くカードを持つコナミ君(仮)のせいである。

 

 特に、試運転でコナミ君(仮)が手札に一枚だけ嫌な予感がするカードをよく握っているため、それが神性だと後で教えられたのだ。

 

 無視するにもその爺がいる方向を見てしまったのだ。向こうの爺も気づいてるため逃げることは難しいかもしれない。

 

 だが、ただで捕まるつもりもない。2人はサングラスまたは仮面をつけ即座にデュエルモードに入った。

 

「ほほう、そっちは鋭い。ルーンをゆっくり解いていったが、すぐに気づくとはな」

 

「え?あ、お前ら!?」

 

 アンチノミーとなった一誠は舌打ちをしたくなった。一樹に見つかったなら即座に襲いにかかってくるだろう。

 

 デッキを取り出して事を構えようとするがゼノヴィアに止められた。

 

「ゼノ…………んんぅ、パラドックス、何故止めるんだ?」

 

「君の気持ちは分かるが今この場で構えるのはマズイ。ここでやりあったらグレモリーはともかくあの神も黙ってないだろう」

 

「ほっほっほっ、冷静な判断じゃな。キョートの話をもちろん聞いとるぞ?流石に戦うとなれば巻き込まれるかもしれんのでな」

 

 くつくつと笑いながら神、オーディンは言う。

 

「(アンチノミー、あれは恐らく北欧の神だ。北欧の関係者に何度か会ったから分かるが、間違いなく最高位だろう)」

 

「(北欧で最高位の神って、まさかオーディン?ラグナロク起きてなかったのか…………)」

 

「聞こえとるぞ小僧。ラグナロクは、まあ神話通りの戦争じゃが起こっとらんよ」

 

 歴史、というより神話に矛盾を感じるが、叩けば叩くほど矛盾が出てくるのでこの話題はそっとしておく。

 

「オーディン様!先に行かないでください…………って何ですかこの殺伐とした空気は!?」

 

 神の名前がバレてしまった。オーディン、片目を捧げてルーンの全てを手に入れグングニルの槍を持つ北欧神話最高神である。

 

 遊戯王にもオーディンの名がつくシンクロモンスターはいるが、一誠達は持っていない。

 

「オーディン殿!無事ですか!な、朱乃!?」

 

「え…………何故あなたがここにいるのよ!」

 

 姫島朱乃の関係者らしき堕天使も来た。どうやら堕天使がセッティングしたオーディンの護衛らしい。何故姫島朱乃と関係があるのか不明だが、敵が増えたことには変わりない。

 

 姫島朱乃だけ堕天使を睨みつけているが、注目は一誠達に集まっている。

 

「美人がそう睨むでないわ。ほれ、よかったら儂と茶をせんかの?そちらの小僧もな」

 

「オーディン様!得体の知れない人間を気軽に誘うんじゃありません!」

 

「そう硬くなるなロスヴァイセ、茶の一つくらい許容出来ないようじゃ男なんて夢のまた夢になるぞ?」

 

「な、何故そこでその話が出るんですか!?今は護衛なんですよ!男歴なんて関係ないですよ、ええ!」

 

 護衛のヴァルキリーと漫才を始めた。何がしたいんだと一誠は思ったが、ゼノヴィアは違った。

 

「アンチノミー、ここは乗るべきではないか?」

 

「え、あいつもいるのに何で茶の誘いを受けようと?」

 

「我々は人に害をなすやつを倒すんだ、あの神が人をどうするか見極めようじゃないか」

 

「ほほう、儂を見極めるとな。なかなか豪胆よのぉ。あやつが男なら勇者としてロスヴァイゼを嫁がせていたかものぉ」

 

「なっ、何をおっしゃるんですか!私は女同士の恋に興味ないですよ!ちょっと興味はありますけども!」

 

 男なら、という部分を聞いてないのか盛大な自爆をしたのに本人が気づいていないという何とも言えない空気になった。

 

 一誠は、ゼノヴィアがこう言うと中々止められないのを承知しているためもう止める気もない。

 

 ただ、そいつ(・・・)だけはダメだった。

 

「兵藤一樹、これから起こることにそいつが一切絡まないならいいだろう」

 

「だから何で俺に恨みでもあんのかよ!あの時も集中して俺を狙ってたじゃねえか!」

 

 最後に轢かれたのは不注意だと思うのだが、そこは棚上げされている。

 

「ああ、俺は、俺達はお前が嫌いだ。今すぐにでも消したいくらいにな。だがここで消すなら北欧神とそこの堕天使が黙ってないだろう?これでも妥協した方だ」

 

「この条件が飲めないなら私達は帰る」

 

 本音を言うと、一刻も早くデートに戻りたいという事で恐らく堕天使が計画したであろう護衛ルートから外れないと思うため後で絡むであろう兵藤一樹を関わらせようとしないのだ。

 

 だが、これで簡単に折れるような神ではない。

 

「ふむ、あの小僧、未熟な赤龍帝にはちと、いや大分きついだろう。よかろう、その条件を受けようではないか」

 

「なっ、爺さん!」

 

「小僧、誰が儂を気軽に爺呼ばわりしていいと言った?」

 

 オーディンから放たれた圧に一樹は力が抜けたようにへたり込んでしまう。隣にいた姫島朱乃は何も感じていないようで、この場に立った1人にピンポイントで睨みを利かせたのだと一誠とゼノヴィアは悟った。

 

 ガタガタと震える一樹を心配するように姫島朱乃が身体を支えてオーディンを睨みつけるが、当の本人、いや本神?はものともしていない。

 

「オーディン殿、ですが観光プランは」

 

「元はお主が娘の気配を感じてここに来たのだ。その娘の逢い引きととあの2人との話、どちらを取る?」

 

 そう言われて堕天使、バラキエルは黙ってしまった。確かに確執があるとはいえ大切な娘に雑魚と言って過言ではないほどの赤龍帝との逢い引きと何者か詳しく分かっていないあの2人、どちらを取るかなんて言われても本当に困ってしまう。

 

 それでも数秒、感情的な面も入ってしまうがあの2人の存在がそれよりも優先させる。

 

「…………分かりました。ただし、アザゼルには連絡させていただきます」

 

「それくらいよかろう。ささ、アンチノミーとパラドックス…………だったかの?近くの喫茶で話をしようではないか」

 

「近くの喫茶じゃダメです!せめて高級なところで行ってください」

 

 そうじゃない、とツッコミを入れたい一誠だが、その後にオーディンが茶化してヴァルキリーの女性が泣くヴィジョンが浮かんだので何も言わなかった。

 

「そこの2人は何を惚けておる。お主らにはもう用はないのだ、もう行って構わないぞ」

 

 もう興味を失ったように踵を返し一誠達にくるよう顎をくいっと動かす。

 

 震えて動けない一樹を見ずに2人はオーディンについて行った。

 

「ちょっと待ってください、どこでお茶を飲む気ですか?」

 

「もちろん、女の子がたくさんいる所じゃ」

 

「ダメですよ!?流石に経費で落ちません!」

 

 …………何故かグダグダになり、結局堕天使が急遽用意した喫茶店で話をすることになった。

 

 




 デュエルしろよお前ら()



 オーディンとの対話、そして彼らが平和を望んでいることを知り人に害を成さないなら敵対しないと明言した2人、これだけでオーディンは未来を憂いている事を知り満足していた。だが、彼らが望むような平和を望まぬものが現れる。

 次回、『デュエリストと悪神』

 最悪の神殺しと共に奴は来る、デュエルスタンバイ。


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デュエリストと悪神

 

 

 アザゼルは堕天使総督である。部下が自分の好き勝手動くたびに頭と心を痛めたりしているマッドサイエンティストでもある。

 

 マッドサイエンティストと言っても多少の説明をした上で同意を得てから地獄のような特訓をさせたりするので一応はセーフの領域である。

 

 訓練は地獄だったが神器を上手く制御できるようになったと感謝の声も上がっていたりもする。

 

 そのアザゼルだが、駒王学園テロリスト襲撃事件に現れた謎の男二人組に女1人を追加した3人組になったと知り、そのうちの2人とバラキエル、いや護衛対象のオーディンが接触したと報告が入った。

 

 一度全ての仕事を放り出して現場に向かった。その時に一樹が腰を抜かしたとか言ってたので後で鍛え上げることも忘れずに。

 

 喫茶店で彼等は話をしていた彼等に遅れて来たアザゼルは言った。

 

「ジジイ…………立場弁えてくれよ、あんた一応狙われてるんだぞ」

 

「ほっほっほっ、構わんじゃろうて。志ある若いもんに出会ったからついちょっかいをかけたかったのだよ」

 

 対面に座っている二律背反(アンチノミー)と名乗った男ともう1人、自称逆説(パラドックス)という女はため息をついた気がした。

 

「ギリシャのように人間に迷惑をかけるつもりはないわ。いい加減あやつらは落ち着けというのに」

 

「しかも現在でもたまに人間の女性に関わり被害を与えてると聞く。それだけは断じて許せん」

 

「待て待て待て、お前ら神殺しをするつもりか?」

 

「人類の敵ならな」

 

 即答、なんの迷いなくアザゼルが半分冗談で言ったつもりの神殺しを肯定した。

 

 アンチノミーはサングラスで目は見えないが、パラドックスの仮面から見える目は本気だった。

 

 人の敵になるなら間違いなくここにいるオーディンも殺すだろう。

 

 思わぬ返答に護衛達は戦闘態勢に入るが護衛対象であるオーディンはくつくつと笑いながら茶を飲んだ。

 

「アザゼル、世界にはこういう馬鹿が何人もおる。個人的なこと、集団的なこと、世界的なことに対して全てを敵に回してでも護ろうとする者が。そういう者こそヴァルハラに相応しい」

 

「ですがオーディン様!この者達は!」

 

「だから見る目がないと言われるのだロスヴァイセよ、傲慢にも儂等を試してきおった」

 

 北欧神話の主神に対して試すような事を言ったのかと戦慄した。そもそも話し合ったあとに悪い空気が漂っておらず何もしていないということは今のところ敵意はないようだ。

 

 本当にビビらせてくれる、とアザゼルは内心思う。年も今指導しているリアス達とあまり変わらないと思うがそれに似合わぬ度胸を持っているとも感じた。

 

 なお、この時ゼノヴィアは内心ハラハラしていた。

 

「(敵対するからと言って神を殺すまで言ってしまった。破門された身だが何か心苦しいものが…………)」

 

 真面目だった故の葛藤、そして人の敵になるようなことをしていてもかつていた組織を信じたい心がせめぎ合っていた。

 

 そんな気も知らずにトラブルというものはやってくる。そのやってきた者がいる方向に向かない者はここにはいない。

 

 明らかな悪意を持つ誰かが外にいる、そう感じた。

 

「やはり、か。今出たら襲撃に遭うじゃろうが、どうする?」

 

「ここまでの悪意を持ってこられるなら対応せざるをえないと分かってて言ってるよな?」

 

 もちろんその意図で言ったのだ。そして先にアンチノミーが立ち、続いてパラドックスが立ち外に出る。

 

 悪意ある者は出入り口から出た彼らを見下ろせる場所に浮いていた。

 

「これはこれは噂の人間かな?そっちのサングラスはともかく奇抜な仮面を着けているな」

 

「私だって好きで着けてるわけではない!これしかなかったからだ!」

 

 なぜか魂の様な叫びに聞こえた人物、悪神ロキは思わず吹き出してしまった。何せ着けてる仮面は自分のセンスに合わないと言った瞬間にアンチノミーに頭を叩かれたからだ。

 

 このピリピリした空気で人間が漫才をやれるとは思っていなかったロキは耐えられなかった。

 

「ククク、私を前にして怖気付くどころか笑わせてくれるとは道化の素質があるな」

 

「誰が道化だ。私達はそのつもりで仮面を付けてるわけじゃない」

 

「パラドックス、絶対そうじゃない。あいつの言ってることはそのことじゃない」

 

 もはやわざとしか思えないほどのボケをかましてくるパラドックスに笑いをこらえるロキという空間ができた。本当に何してるんだ。

 

「様子見と言ったところだが、お前たちはオーディンの尖兵ではないな。私が用があるのはオーディンだけだ。ここでどこかに行けば見逃してやる」

 

「お前が他と手を組むのを望んでないからだろ?ここでドンパチやるつもりなのか?」

 

「俺としては不本意だが、奴らがやると言うのならやる」

 

「何故そこまでして止める。他勢力が介入することが気に食わないのは分かる、だが…………」

 

「俺だって基本的に適度にイタズラして誰かを困らせたいだけだ!」

 

 突然の叫びに2人の体が一瞬固まる。怒気を受けたことだけでない、理由が割としょうもないと思ってしまったのだ。

 

「堕天使とは気が合いそうだ。あいつらは俺と似たイカれた部分がある。だが天使と悪魔はダメだ。奴は間違いなく侵略者だ。奴らを身内に入れたらいつか俺を、俺の子供達を駒として、民を洗脳のように信者にして食いつぶしてくるだろう。何故それを全て見通すあいつが認める!」

 

 彼等にとって意外すぎる理由だった。悪神と称されるロキはトリックスターと言われる割に頭が固く、家族思いだった。

 

 雑な扱いをされるのはいつもの事だ死ねクソ親父とよくフェンリルに言われるが、裏でこっそり泣いていたりするのは内緒だ。

 

 残念ながら彼の子は力を持ちすぎていた。欲しがる者も少なくはないだろう。故に子を守るために立ち上がった。

 

「……………………」

 

 それ故に何も言えなかった。奪われた事を知るアンチノミー(一誠)、失う事を知ったパラドックス(ゼノヴィア)

 

 そして今目の前にいるのは奪われるかもしれない、失うかもしれないロキだ。神々の黄昏(ラグナロク)で滅びるかもしれない神である。

 

「どけ人間。私はどんな手段を使おうとあのジジイを止めなければならない。たとえ理解されなくてもな」

 

「…………だとしても、もっと穏便な方法は!」

 

「無い。ここまでくればもはや戦争だ。ああ、貴様らも分かっているはずだ。奴らは自ら従えてる(人間)を巻き込むだろう。憎たらしい聖書の神の信者ではあるが、そいつらも護るというのだろう?」

 

「お前…………っ」

 

「せめてもの慈悲だ、場所は変えてやろう。止めたければ止めて見せろ、貴様らが得意とする決闘(デュエル)でな!」

 

 そう宣言したロキは自身と2人の足元に魔法陣を展開して誰にも干渉されないように用意してあった戦場に転送した。

 

 3人の気配が消えて数分、喫茶店に篭っていたオーディンと従者はゆっくり出て、アザゼルは戦力の招集を急いだ。

 

「あの阿呆め、儂の目が曇ってると思っておるな」

 

「あ?どうしたってんだよ」

 

「アザ坊、儂は和平を結んだところで天使と悪魔は受け入れるつもりは無い」

 

「はぁ!?じゃあなんでこっちまで来て話つけようとしたんだ!」

 

「あの未来を憂いる人間に会うのも目的であった。だが本当の目的はお主じゃよアザゼル。儂等が本当の意味で手を組もうとしているのはお主の勢力だけじゃ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそっ、なんだよあの爺さんは!ドライグも未だに声すらかけてくれない…………」

 

「一樹、貴方はまだ成長途中なのよ。見返せるチャンスはまだあるわ」

 

「…………そうですよね、俺は赤龍帝だ、これにこの力もある!あんな奴ら見返してやる!」

 

「それじゃあ一樹君、カードを使わないでまず禁手に至れるように身体から鍛えようか」

 

「いや、これ無いと無理だろ」

 

「……………………」

 

 愚か者は力に酔う。赤き龍が力を貸さない理由も知らず子供のように表面上の力を振り回す。

 

 かの龍に関わった者はロクな生き方をしない、それを示すかのように。

 




〜その頃コナミ君(仮)は〜

「……………………」

 洗濯し終わったのはいいもののゼノヴィアの下着をどう干そうか悩んでいた。

 流石に外には干せないので部屋干しにしたが、同居人の彼女の下着を干すことで悩む自分に何故か虚しさを感じたとかなんとか。



 悪神の思いをぶちまけられた2人はそれでも止めようとデュエルを挑む。だが魔法に長けるロキと神殺しの狼フェンリルに苦戦を強いられる。まだロキは何か隠していそうだがひたすら戦うしか無い。

 次回、『デュエリストと神狼』

 神殺しの牙に対抗できるか、デュエルスタンバイ。


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デュエリストと神狼

「征くぞ決闘者(デュエリスト)共!俺と我が子を倒してみろ!」

 

 転送されたどこかの荒れ地にて、いきなり近いの火蓋は切られた。

 

 敵は悪神ロキに加えて始めから待ち構えていた神殺しの狼フェンリル。一番頼りになりそうなコナミ君(仮)はいない、一誠とゼノヴィアで対処しなければならない。

 

「アンチノミー!準備はいいか!」

 

「もちろんだ、いくぞ!」

 

「「デュエル!」」

 

 コナミ君(仮)のようなデュエルディスクは無いがカードを宙に浮かせる一誠の力を借りてゼノヴィアも参戦する。

 

「私の「俺のターン!ドロー!」」

 

 ロキとフェンリルは動かなかったが舐めてるわけでは無い。トリックスターたる者、既に仕込みは済ませてあるがあえて動かなかったのだ。

 

 遊戯王で例えるなら先攻で伏せカードを数枚セットしただけでターンエンドしたとなる。なお、何故かフェンリルにやる気は見られない。

 

「手札から『惑星探査車』を召喚!そしてこのカードをリリースしてフィールド魔法を手札に加える」

 

 

 惑星探査車(プラネット・パスファインダー)

 効果モンスター

 星4/地属性/機械族/攻1000/守1000

 (1):このカードをリリースして発動できる。

 デッキからフィールド魔法カード1枚を手札に加える。

 

「私が加えるのは『Sin Wrold』!そしてそのまま発動しエクストラデッキから『サイバー・エンド・ドラゴン』を除外、現れよ『Sin サイバー・エンド・ドラゴン』!」

 

 世界が突如塗り替えられ拘束具が付けられた三つ首の機械龍が召喚された。

 

「ドラゴン!?複雑な召喚法を使うとは聞いていたが所詮ただの噂だったか。我が子よ、あのドラゴンの相手をしてやれ!」

 

 いかにも渋々といった感じでフェンリルが『Sin サイバー・エンド・ドラゴン』に向かって動き出す。

 

「『Sin サイバー・エンド・ドラゴン』で攻撃!エターナル・エヴォリューション・バーストォ!」

 

 襲いかかるフェンリルに向けて火球を三連打で放つがフェンリルの毛先を焼くだけで大きなダメージは見当たらない。

 

 ここでゼノヴィアはコナミ君(仮)が言っていたことを思い出す。

 

 全ての生き物に攻撃力と守備力はある。遊戯王はそれを極端にして攻撃表示なら攻撃力、守備表示なら守備力と戦う。そして何よりの欠点が攻撃と守備を同時に行えない。

 

 言わば防御せず襲いかかるしかない。だが現実に生きるのは違う。攻撃と防御はほぼ混同されている。たとえ相手のライフが1000でも耐久力、言い換えると守備力が1000あると攻撃力1000で一発で倒せない。

 

 効果ダメージで倒す自分にはあまり関係ないが、と言っていた。

 

 フェンリルの毛先が焼けたことを見ると少々のダメージは入ったのだろう。だがそれだけ、恐らく守備力は3500はあるだろうと見た。

 

 フェンリルは『Sin サイバー・エンド・ドラゴン』に爪を立てる。引っ掻いた時に思いのほか硬かったのか痛みを感じたのかフェンリルの顔が少し歪んだ気がした。

 

 だが『Sin サイバー・エンド・ドラゴン』は傷つきながらも三つ首でフェンリルに炎やビームを放ち噛み付いたりしていた。これなんていう大怪獣決戦なのか。

 

「我が子に接戦を仕掛けてなお倒れぬとは大したドラゴンだ」

 

「『スターダスト・ドラゴン』で攻撃!シューティングソニック!」

 

「ふっ、甘いな星屑のドラゴンとやら」

 

 『スターダスト・ドラゴン』が放った閃光は突如空中に現れた魔法陣によって防がれた。もちろんこの魔法陣はロキが予め防御用に貼っていたものだ。

 

「私が何も仕掛けていないと思ったら大間違いだ。俺の魔法で燃え尽きろ!」

 

「『スターダスト・ドラゴン』の効果発動!リリースして破壊を無効にする!ヴィクテム・サンクチュアリ!」

 

 火炎の魔法を放つが一時的に消えた『スターダスト・ドラゴン』の効果により結界のようなものにより弾かれた。

 

「ほう、そう簡単に防がれるとはな。あのドラゴンは潰せると思ったがそうはいかないようだ」

 

「ターンエンド時に『スターダスト・ドラゴン』はフィールドに戻る」

 

 一度消えた『スターダスト・ドラゴン』が一誠を庇うように現れる。

 

 伏せカードを置いていないためまさに無防備と言える。このままターンを渡さなければならないため一誠は悩まされる。

 

「では私の番と行こうか。その白き龍よ、主人を守りたくば耐えてみせよ!」

 

 そこからの猛攻は激しかった。あらゆる魔法が襲いかかり、『スターダスト・ドラゴン』が辛うじて盾となりある程度凌ぐことはできた。

 

 だが、倒されたという事実は変えられない。

 

「頼りの龍は消えたようだな、なら眠れ人間!」

 

「くっ、ぐああああっ!」

 

 

 LP4000→2000

 

「一誠!くっ、フェンリルめ、頑なに離さないとは!」

 

 フィールドにモンスターがいなくなった事によりロキの魔法によるダイレクトアタックを受けてしまう。

 

 ゼノヴィアも援護に回りたいがフェンリルが『Sin サイバー・エンド・ドラゴン』を離さず、されど破壊しない程度に互いに噛みつきあってる状態で迂闊に動けない。

 

 魔法の着弾地は土煙で様子が見えない。だが、ロキは殺す気で放っておらず死なない程度に昏倒させるつもりで攻撃を放ったのだ。

 

 昏倒させるために2000ダメージを与えるとはいかに。神と人の基準のズレなのかは置いといて一誠が耐える前提で放ったのだ。

 

「貴様が何に向かって進んでいるのかは知らんが殺すには惜しい人材だ。今は眠れ、終わらせ貴様の居場所が無くなれば受け入れてやる」

 

 ロキが言った言葉は倒れ伏す一誠には薄っすらとしか聞こえなかった。

 

「(やっべえ…………ここで倒れたらあいつは止まらない…………悪ぶってるイケメンが正しく間違ったことをしようとしてるのは分かるけど…………)」

 

 薄れゆく意識の中、本当に止めるべきなのかどうか分からなくなっていた。

 

 あの悪神も思うところがあり行動に移した。それは今被害を出すだけでその先は本当に平和なのかもしれない。

 

 「(けれど…………今を犠牲にするのは間違っている、今も未来も救う為に俺たちはいる!)」

 

 腕の痣が光る、一誠に新たな力を与えようと伝えるように光る。

 

 手札は『ワン・フォー・ワン』と『グローアップ・バルブ』の二枚のみ。前に拾ったシンクロモンスターは出せるがロキを倒せない。

 

 なら、次のドローに賭けるしかない。

 

「くっ…………ぅ、ぅおおおおおおっ!」

 

「まだ立つか!それにあの痣はなぜ光っている?まあいい、今度こそ地に平伏せさせてやる」

 

「俺の、ターン!ドロォォーッ!」

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

 

「……………………っ!?」

 

 買い物に出かけたコナミ君(仮)は感じ取った。

 

 仲間が戦っている事に気付いた。

 

 デートに行ったはずなのに何故戦ってるのかと思った。

 

 嫌な予感がしたがそれより誰かが酷い目に合う気がした。

 

 

 そして何よりも突然プラ/シド処刑用BGMが頭の中で流れ始めた。ここ重要。

 

 

「……………………」

 

 買い物に行ってる場合じゃない。急いで一誠達を探さなければいけないとスーパーに行く事をやめ心当たりがある場所をあたろうとした時だった。

 

「あーっ!てめぇ決闘者(デュエリスト)!」

 

「……………………」

 

 午後4時、日暮れにはまだ早い時間なのに出会ってしまった。

 

「こんなところで出会うなんて奇遇ね。お久しぶりと言っておきましょうか決闘者(デュエリスト)さん?」

 

 急いでいる時にリアス・グレモリー一行に出会うとは、本当についてなかった。




 ネタバレ、一誠がドローしたのは死者蘇生。この後の展開は…………なぜ書かないか?バイクに乗ってなきゃ『Clear Mind』流せないでしょ!



 知らない誰かが突然のプラ/シドになる予感がして急ぐコナミ君(仮)の前に立ちはだかるリアス一向。この前の事を覚えていたらしく捉えようとしてきたが駆けつけたアザゼルに止められる。そして一誠達がロキに連れ去られた事を知らされる。

 次回、『デュエリストと悪魔+α』

 我儘姫とは馴れ合えない、デュエルスタンバイ。


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デュエリストと悪魔+α



 2箱でハリファイバー当たらなかった_(:3 」∠ )_


 急ぎたい時に限って邪魔が入る、そんな事はないだろうか?

 

 こういう時に何かしらあるという事はトラブルメーカーなのかもしれないと嘆息するコナミ君(仮)。

 

 しかも立ちはだかったのがよりによって何故か大体集合しているグレモリー眷属達、なんて日だ。

 

「一樹の戦いを邪魔したのもあるけど、貴方が私の領地で勝手をやってるのは見過ごせないわ」

 

「……………………」

 

「それに、今この街に来賓が来てるの。邪魔になる貴方は拘束させてもらうわ」

 

「……………………」

 

 なぜ機密情報らしいのを漏らすのか分からない。真性の馬鹿なのかこいつは、と疑問に思ってしまった。

 

 嫌な予感はおそらく一誠達がその来賓と接触している可能性が高い。ならもっと急ぐべきだと思った。

 

 目の前に悪魔がいなければの話だが。

 

「……………………」

 

「こんな事している場合じゃない?お前は色々やりすぎたんだよ!」

 

「……………………」

 

「尻拭い?まあ上から目線なこと」

 

 ダメだった。こいつらは自分の無能さに気づいてなかった。一昨日もはぐれ悪魔が出たのを対処したのに気づいてすらなさそうだ。

 

 こうなったら水ぶっかけて行動不能にしてから暴風で吹き飛ばしてやろうかと苛立つ。

 

 まだ日が昇ってるのにやるのもマズイのだが。

 

 ならばさっと駆け抜けるのみ。コナミ君(仮)の身体能力ならすぐ通り抜けられるだろうと思っていた。

 

「うおおおおっ!待てお前らああっ!」

 

 堕天使総督が走ってくるまでは。おそらく隠密系の何かを使えると思われるが走ってきた。着物なのに走りにくくないのかと思ったコナミ君(仮)。

 

「アザゼル!なんで貴方がここに」

 

「もしもかと思ってきたら思った通りかよ…………一樹と朱乃、お前ら行動が早すぎだ。いくら嫌いだからといって自分達だけで勝手に動こうとするな!」

 

「けどよ先生!こいつは何しでかすか分からない敵なんだぞ!」

 

「そうよ、私の領内で好き勝手することは許されないわ」

 

「だからと言って安易に手を出すなと言ってるんだ。一樹、お前はもう少し身の程を知れ」

 

 噛み付く2人に対してアザゼルは飄々と受け流した上で的確に問題点を言う。そういえば学園にアザゼル先生という人物が来たが、おそらく彼の事だろう。

 

 暇なのか貴方は。

 

 それはさておき止めてくれる人物が現れたのでここは何とかなりそうだ。と思ったが、グレモリーがキャンキャン喚く。

 

 吠えてるのがグレモリーと一樹だけで後は妙に静かだった。コナミ君(仮)にはその理由がわからない。

 

「なあ決闘者(デュエリスト)さんよ、後で話をつけられねえか?」

 

「アザゼル!何を言ってるのよ!」

 

「ちょっと黙ってろ。あんたのお仲間はこっちの事情で巻き込んだ。これは済まないと思ってる」

 

「……………………」

 

「…………どこに飛ばされたか場所はまだ分かっていない。あんたが人外を嫌うのは分かる。うちの馬鹿どもが世話になってることもな」

 

「……………………」

 

「もちろんだ、今は出来る限り協力させてもらう。今探してる途中…………は?何で敵の心配してるんだ?」

 

 アザゼルにプラ/シドの事を言っても分からないだろう。重要な人物がああなるかもしれないという事がコナミ君(仮)にとっての心配なのだ。

 

「…………まあいい。相手は北欧神話の悪神ロキ、ここにきたオーディンのクソジジイを襲いに来たんだ」

 

「アザゼル!」

 

「もうこいつにとってこっちの機密なんざあってないようなもんだ。リアス、お前たちは帰れ」

 

「でも!」

 

「これ以上何も言うな。前の件もあるし余計にサーゼクスにまで迷惑がかかるぞ」

 

 前の件とはコナミ君(仮)が間違って轢いた時のことなのかと首を傾げたが気にすることはない。

 

 アザゼルの一言にグレモリーは黙り込んだ。流石に都合が悪いのだろう。

 

 嫌な予感は未だに収まっておらず、一誠より敵の身が心配になっているコナミ君(仮)にとってはどうでもいい。早く見つけ出したいと思っていた。

 

「……………………?」

 

 その時だった。デッキの中にあるカードが反応しているように感じた。

 

 それもどこかを指しているような…………とコナミ君(仮)は一誠達の場所を指していることに気づいた。

 

「っ!?おい、そのデッキの中に何入ってやがる、って待て!」

 

「……………………」

 

 無言でアザゼルの横を通り抜けて現場に向かおうとする。

 

 グレモリー眷属も横を通り抜けるが、兵藤一樹にだけ無言の腹パンを食わらせる。

 

「がっ…………!?」

 

「一樹!?貴方一樹に何をするの!」

 

「リアス、よせ!」

 

「……………………」

 

 腹パンを食らった兵藤一樹はその場で崩れ落ち、コナミ君(仮)は何事もなかったかのように走り去っていった。

 

 まるで兵藤一樹と何かしらの因縁があるような行動だったが、同じカードを操る者同士、敵対する者に対しての嫌悪だとアザゼルは判断した。

 

 それにしても悪魔なのに人間の腹パン1発で倒れる一樹をどうしたものかと後が不安になった。これはアザゼルだけでなく木場佑斗、塔城小猫も思っている事である。

 

 そしてアザゼルが最も気になったこては一つ。

 

「あの時の時械神とやらじゃねえ、何故あのデッキから神の力が…………?」

 

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ、龍を操るのを見誤っていたか…………っ!」

 

「オオォォォォンッ!」

 

「くそっ、仕留めきれなかった!」

 

 ジェット機のようフォルムをした白き龍、『シューティング・スター・ドラゴン』は空を美しく飛んでいた。

 

 召喚した上で効果の一つである『自分のデッキの上からカードを5枚めくる。このターンこのカードはその中のチューナーの数まで1度のバトルフェイズ中に攻撃する事ができる。その後めくったカードをデッキに戻してシャッフルする』を発動しチューナーを3枚出した事による3連打をロキに向かって放ったのだが…………

 

「すまない我が子よ、あと1発でも食らえば俺は死んでただろう」

 

「まさかそっちに割り込むとは、くっ…………」

 

「ぺっ」

 

「何故!?」

 

 自分の子供であるフェンリルに礼を言ったら唾を吐くようなモーションをとった。割とロキの心に刺さったらしい。

 

 それより唾を吐くようなモーションと分かるような事をできたなと一誠とゼノヴィアは思った。

 

「俺たちの攻撃は届く、いくぞゼノヴィア!」

 

「ああ、今度こそ決める!」

 

「ふん、まだまだだ人間!寝坊助がいればもっと変わっていただろうが仕方ない。あの龍を倒せば奴らも諦めるだろう、フェンリル!」

 

「オオォォォォンッ!」

 

 ここから先を語るとまさに激闘、龍は分裂して飛び交い、神狼の牙と爪が振るわれ、罪の龍は倒されると次々現れ、ロキの魔法が飛び交う。

 

 両者共にしのぎを削っていくが、この中でライフが多く器用なのは誰なのか?

 

 一誠は回復手段を持たない、ゼノヴィアはパワータイプ、フェンリルは狼、となると残されたのは魔術に強いロキである。

 

 デュエルマッスルのみの一誠、前から鍛えていたがデュエルに本格的に参戦するのは最近だったゼノヴィアの体力は神と神狼に遥かに劣る。

 

「どうやら、ここまでのようだな」

 

「はぁっ…………くそっ!」

 

 一誠、残りLP1500

 

 ゼノヴィア、残りLP1000

 

 ロキ、残りLP2700

 

「なかなか楽しめたぞ。しかし、殺すには惜しすぎる。もう一度聴こう、俺の元に来る気はないか?」

 

「俺は、俺たちはやらなきゃいけない事がある!お前につく事はできない!」

 

「まあ…………期待はしていない。それでは、俺もやるべき事をやろう。さらばだ」

 

 トドメを刺す事はしない、ロキは彼らを見逃すつもりだった。自分より劣る人として見ていたが、気を抜けば一瞬で逆転されそうな状況に持ち込めた事への敬意を表してのことだった。

 

 舐められてると思った一誠達は歯噛みした。奴を止められなかった、と。

 

 そして、ここに乱入者が現れなければここで終わるはずだった。

 

「おい見てみろヴァーリ!お前と違う白い龍がいるぜ!」

 

「アンチノミーが呼び出したのだろう。ふふ、赤龍帝より面白い」

 

 禍の団に寝返ったヴァーリチーム、参戦。収まりそうな戦火にガソリンが注がれた。






 彼は主人公ではない(無言の腹パン)

 『シューティング・スター・ドラゴン』の攻撃力でフェンリルの防御は突破できなかった模様。


 ライディングしてないので『シューティング・スター・ドラゴン』で突破できなかった彼らに慈悲を与えたロキだが白龍皇の乱入者により場が混沌と化す。ロキが望まぬ戦いに一誠達は巻き込まれる。そして、怒りに満ちた彼が到着する。

 次回、『デュエリストと怒り』

 それは圧倒的な力である、デュエルスタンバイ。


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デュエリストと怒り

 奴が来るぞ…………!


 神とは、信仰の対象として尊崇・畏怖  されるものである。信仰だと一神教や多神教に分かれ、そこからさらに分かれるので割愛する。

 

 ここにいるロキは悪神と呼ばれてるだけあり畏怖される存在だろう。だが、それだけだ。

 

 畏怖される程度に働き娯楽を楽しむという点では間違いなく神である。無作為に大きな被害を与えるようなことはしない。

 

 基本的に自身の戦いに相手から頭を突っ込まない限り巻き込むことは無い。

 

 相手が周りを見ることさえしなければ。

 

「多少の消耗があることが残念だが中々楽しめるな!」

 

「白龍皇!俺の邪魔をするな!」

 

「オォォォンッ!」

 

「うおっとぉ!あぶねーあぶねー、あれ食らったら即死なのは勘弁してほしいぜぃ」

 

「美猴、もう少し小回りを利かせろ。大振りすぎて俺にあたりかねない」

 

 一誠達を見逃そうとしたロキに白龍皇、闘戦勝仏の末裔である美猴、騎士王の子孫であるアーサーが襲いかかってきた。

 

 相手の面子が厄介ではあったがロキはすぐに対処する事に成功する。

 

 しかし、一誠とゼノヴィアは違った。常に戦いに身を置いていない上に疲弊していることもあり戦いの余波に巻き込まれてしまった。

 

 主に白龍皇が放つ魔力弾をロキが逸らしたため彼らの近くに着弾、意識を刈り取られてしまう。

 

 死んではいないものの、ぐったりして動かない彼らをロキは何とかしてやりたかったがヴァーリ達の対処で手一杯だった。

 

 ロキほどならそれくらい造作も無いことだろう、と言いたいだろうが余計に巻き込む可能性があるため手を出せない。

 

 恐らく彼らとの戦いもクソジジイことオーディンが何か言って誑かして巻き込んだのだろう。

 

 それを含めて1発は殴らないといけない。

 

 フェンリルも鬱陶しそうに猿や白龍皇を叩き落そうとしているが中々素早く当たらない。しかし向こうもろくにダメージを与えられないので余計に面倒になっていた。

 

 これ以上戦えば負けることは無いがあの二人は死ぬだろう。

 

 『決闘者(デュエリスト)』が現れなかったら、の話だが

 

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

 よく分からない結界がある所まで来たコナミ君(仮)。かれこれ一時間ほど走り続けてようやくたどり着いた。

 

 これくらいの距離を一瞬で転移させる魔法ってヤバイと認識した。そもそも不本意とはいえ世界を跨いで転移したことあるコナミ君(仮)が言うことでは無いが。

 

 コナミ君(仮)だけで結界を突破することはできない。ここからデュエルスタートする。

 

 5枚ドロー、一番欲しいのは魔法罠を手札に戻し、永続効果を剥ぎ取らせる効果を持つ『時械神ザフィオン』だが残念ながら手札に来なかった。

 

 とりあえず『覇王眷龍ダークヴルム』をPゾーンに置いてデッキから『覇王門 無限』をもう片方のPゾーンにセット。

 

 半透明になっているものの覇王眷龍はコナミ君(仮)に擦り寄る。ちゃんと撫でてあげるあたり友好な関係を築いているようだ。

 

 覇王眷龍が擬人化しないことだけを祈っておくとだけ記す。

 

 何も出さずターンエンド、ここから3分待たなければならないのが腹立たしい。相手がそこにいるならすぐターンが回ってくる可能性があるが、ここはしっかり待たなければならない。

 

「……………………」

 

 3分が経った。ドローする。

 

「……………………」

 

 そしてそのままターンエンド。今必要なのは『オベリスクの巨神兵』ではない。

 

 さらっと究極時械神を除くOCG化された時械神のうちサディオン以外が手札に来ているというある意味事故を起こしているが、この状況だとPゾーンが破壊されない限りいい手札と言える。なお、三枚を出したら巨大ロボが出てくる。

 

 とにかくザフィオンが来るまで待つのみ。そうして4回目のドローフェイズになった。サーチ手段が乏しいので仕方ない。

 

「『時械神ザフィオン』を召喚」

 

 時械神ザフィオン・効果モンスター

 星10/水属性/天使族/攻 0/守 0

 このカードはデッキから特殊召喚できない。

 (1):自分フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードはリリースなしで召喚できる。

 (2):このカードは戦闘・効果では破壊されず、このカードの戦闘で発生する自分への戦闘ダメージは0になる。

 (3):このカードが戦闘を行ったバトルフェイズ終了時に発動する。相手フィールドの魔法・罠カードを全てデッキに戻す。

 (4):このカードがフィールドから墓地へ送られた場合に発動できる。自分はデッキから1枚ドローする。

 (5):自分スタンバイフェイズに発動する。このカードを持ち主のデッキに戻す。

 

 このカードにかかれば魔法なんてなんのその、攻撃を無効にされなかったらOKだ。

 

「『時械神ザフィオン』で攻撃」

 

 手に水の渦を発生させ結界に向けて放つといとも簡単に結界が消えていった。

 

「……………………」

 

 そのままターンエンドして走り出す。

 

 嫌な予感が収まらない、あの二人に何かなければいいのだが、と思いつつようやく中心部に到達した。

 

 その様子を見て、煮え滾るような何かが体の底から溢れ出てくる。

 

 いつの間に得たのかは知らないが確実にエースである『シューティング・スター・ドラゴン』と『Sin サイバー・エンド・ドラゴン』が主人を守っていて、例の敵らしき人物と会談の時に戦った白龍皇とそのお供が戦っていて…………

 

 龍に守られている二人はボロボロだった。

 

決闘者(デュエリスト)!ふふ、やはり来たか」

 

「あいつが決闘者(デュエリスト)…………待て、なぜ人間が、あんな奴が!?」

 

「おおっ?おおおっ!?ヴァーリ!なんかヤバイ、ズラかろうぜぃっ!」

 

 コナミ君(仮)からひしひしと伝わる神の気配にロキと美猴は恐れるが、ヴァーリは鎧の下で笑っていた。戦闘狂はやはり狂っている。

 

 だが、それでもだ、アレを見てまともに戦おうなどと思わなくなったと後に語る。

 

「…………俺のターン、ドロー」

 

 いつもより低いトーン、そして半透明の覇王眷龍と覇王門が輝き始める。

 

「裁きだ、怒りを思い知れ!大地を砕け鉄槌よ!ペンデュラム召喚!」

 

「前のようにエクシーズ召喚とやらか?」

 

 時械神とあの時の超弩級砲塔列車を知るヴァーリはまだ手を出さない。時械神は攻撃と効果を受け付けないことを知っているからだ。

 

「現われよ、『時械神ラツィオン』、『時械神サディオン』、『時械神カミオン』、『時械神ザフィオン』、『時械神メタイオン』!」

 

 まさかの時械神が5体も並んだ事に驚きを隠せない一同。なお意識を取り戻した一誠とゼノヴィアはこれらのカードを知っていた。

 

 伏せカードが無い為ほぼ無限ループは行われないが立ちはだかるだけでも絶望的といえる。

 

 だが、何故一気に出したのか一誠達は理解できなかった。

 

「なぁ、時械神って最終的に全部デッキに戻るんじゃ…………」

 

「彼が無駄な事をするはずがない、だが、一体何を考えている?」

 

 エクシーズでも戻されるためほぼ無意味とも言える事を知る二人は分からなかった。

 

「機械の神だと!?何故人間がそのようなものを持っている!何故、いや、何を呼び出そうとしている!?」

 

 ロキですら混乱し、フェンリルは怯えている。だが、これは時械神を見て怯えている訳ではない。

 

「なんだ、何をしようというのだ…………っ!?まさか神を降臨させようというのか!世界に存在しない、人間だけの新たな神を!?」

 

「新たな神、だと?」

 

 しっくりきていない白龍皇だがロキは理解してしまった。コナミ君(仮)が手に持っているある一枚のカードを。

 

「そして、三体の時械神を生贄に捧げる !」

 

 機械仕掛けの神が三体、舞うように光の粒子になっていく。何かを降臨させるように。

 

 

 

〜推奨BGM・神の怒りRe-arranged :type one〜

 

 

 

 空気が揺れる、大地が割れる、時械神が光となり消える。

 

「何が、起こるんだ…………?」

 

 大地の割れ目を吹き飛ばすように、火山が噴火するように巨人が現れた。

 

 ロキの知っている巨人ではない。青く悪魔のような、そしてロキを遥かに上回る神性を放つ巨人など聞いた事もない。

 

「な、ぁ…………」

 

 絶句、まさにこれが当てはまるだろう。この場にいるこの神を召喚した者以外言葉が出なかった、いや、息をすることすら困難になっていた。

 

 それほどまでに圧倒的な存在であることが分かる。本能から震えが止まらなくなる。

 

 勝てない、いくら戦闘狂だろうが神滅具を持っていようが圧倒的力に恐怖を覚えざるを得なかった。

 

「…………効果発動、残った時械神を生贄に捧げ攻撃力を上昇させる」

 

 オベリスクの両隣にいた2体の時械神が光の粒子となりオベリスクの腕にまとう。

 

 それと同時に攻撃力の上昇が始まる。

 

「何を、何をしようとするのだ貴様あああああっ!!」

 

 魔法を放つもまるで効かない、神を殺す我が子は怯えて動けない、戦闘勝仏の子孫、そしてある者の子孫であるヴァーリですら動けない。

 

 それでも、たかがその程度(・・・・・・・)で止まるはずもない。

 

 オベリスクの攻撃力4000→→→→→∞

 

「バトルフェイズ。オベリスクよ、敵を粉砕しろ!」

 

 攻撃宣言と同時に神が力の宿った腕で殴ろうとするために後ろに引く。

 

 即座に逃げようとしても体が動かない。受けたら即死ということを理解しているのに、動けない。

 

「ゴット・ハンド・クラッシャー!」

 

 それはまさに神の怒り、裁きの鉄拳そのもの。

 

 振り下ろされた拳を中心に大きな爆発が起きた。地震が発生したのかと思わせるほど、大地と空気が揺れた。

 

「……………………」

 

 間違いなく手応えはあった。だが、仕留めたという感触はない。

 

 恐らく攻撃はロキだけ辛うじて外れた、しかし爆風などのダメージでフェンリルが盾になろうが満身創痍になっているのは確実だ。

 

「がっ…………ごぶっ…………」

 

「ォ……グォ……」

 

 胴体を大きく抉られたフェンリルと瀕死のロキが煙から露わになった。

 

 白龍皇達は消滅したか逃げたのかは不明だが姿は見えなくなっていた。

 

「あの神の……神滅具では……ない……あれは……なんなの、だ……」

 

 うわ言のように呟くロキはもう持たないだろうと放置、一誠達の元に駆け寄る。

 

「……………………」

 

「…………俺は、大丈夫だ」

 

「……………………」

 

「そう、だな、ああ…………ごめん」

 

 何に謝ったのかコナミ君(仮)は分からなかった。やるべき事をしたまでと思っていたから、相手も何かを守ろうとしていたという事は怒っていた彼に届かなかったから。

 

 この日、世界に『オベリスクの巨神兵』という神が降臨した事を全ての神は感じ取った。そして後にロキが倒されたという情報も入り決闘者(デュエリスト)と言う男は本当の意味で人外の世界に知れ渡るようになった。

 

 『機械の神と破壊神を従わせる神代を終わらせた男に並ぶ最悪な人間』、と。

 

 




特殊ルール12・オベリスクの巨神兵について
 オベリスクの巨神兵・効果モンスター
 星10/神属性/幻神獣族/攻4000/守4000
 このカードを通常召喚する場合、3体をリリースして召喚しなければならない。
 (1):このカードの召喚は無効化されない。
 (2):このカードの召喚成功時、魔法・罠・モンスターの効果は発動できない。
 (3):このカードは相手の効果を受けない。
 (4):自分フィールドのモンスター2体をリリースして発動できる。攻撃力を上昇させる。
(5):このカードが特殊召喚されている場合、エンドフェイズに発動する。このカードを墓地へ送る。


 ほぼアニメ版と同じ効果ですがいかがでしょうか?不備があれば直します。



 ロキとフェンリルを倒したコナミ君(仮)はオーディンと接触する。ロキを回収し治療する彼らに不満を見せるが彼らの真意を聞き早とちりをしたと後悔するが後の祭り、もはや彼は勇者という立場に非ず。

 次回、『デュエリストと危険性』

 その力は世界を揺るがす、デュエルスタンバイ。


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デュエリストと危険性

 ランキング入り…………だと?読んでくれた方々ありがとう、オベリスクの人気は流石だぜ!


 神を降臨させロキを殴り倒し、一誠とゼノヴィアを肩で支えて退散しようとした時だった。

 

「……………………」

 

「おい…………何だこれは、何がおきた!?」

 

 一言で言うなら天使、堕天使、悪魔の軍勢が遅くやってきた。

 

 一体どこにいたのか、と言うより急いで転移してきたのだろう。

 

 相手が相手なだけにここまで人数を動員したのだろう。腐っても相手は神と神殺しの狼、確実に倒すならこれくらい必要だろう。

 

 そう思っていたコナミ君(仮)だがそれは思い違いである。

 

 彼らが動いたのはロキでは無い。縄張り内でロキを倒した『神』を鎮圧しようとしたため送られてきたのだ。

 

 そもそも日本は日本神話の縄張りなのだが…………この後のことは考えていないのだろう。

 

「お主が決闘者(デュエリスト)じゃな?」

 

「……………………」

 

「なぁに、お主と対話したいだけじゃ」

 

「いけませんオーディン様!その男はロキをたった一人で倒したのですよ!」

 

「少し黙っとれ。儂等だってこのままやりとうない。穏便に済ませるにはこうするしかないのだよ」

 

「ジジイ!だからと言ってこいつは危険すぎる!あの時は分からなかったか、今は分かる、こいつは野放しにしちゃいけねえ奴だ」

 

「どいつもこいつも分かっとらんとはな」

 

 呆れるようにオーディンはため息を吐く。コナミ君(仮)も大体何をしたいか理解した。

 

「小僧、ロキと狼の治療を任せる。くれぐれも死なすんじゃないぞ」

 

「おいっ!チッ、わーっだよクソジジイ!」

 

「……………………」

 

「もちろんだとも、儂等がその二人を話聞くついでに治療してやろう。それ、ついてきなさい」

 

 怪しみながらコナミ君(仮)は二人を担いでオーディンについて行った。

 

 軍隊同士が何故かギスギスした空気を漂わせていたのはまるっきり無視した。

 

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、儂からは以上じゃ」

 

「……………………」

 

 このオーディンは従者に一誠とゼノヴィアの治療を丸投げしてコナミ君(仮)と二人っきりの対談に持ち込んだ。

 

 そして北欧神話の事情、そして今回の襲撃者であるロキとのすれ違い、そして天使と悪魔とは手を組まず堕天使とだけ組んで技術情報の交換という互いの利益のために組むつもりということを聞かされた。

 

 コナミ君(仮)は今とても後悔している。あの時は怒りに身を任せていたが、よく考えたら白龍皇は戦闘狂であり強いのに襲いかかるのは当然で、何らかの事情があったのかもしれない。

 

 天を見上げて後悔したいが、目を離すと何されるか分からないのでずっと前を向く。

 

 もちろんコナミ君(仮)から目を離さないオーディンがいる。油断してたら一瞬で狩られるかもしれない。

 

「では聞かせてもらおうかの。お主がロキを倒した『神』について」

 

「……………………」

 

 やはりというか、当然というべきか。結界を剥がしたことにより全てが漏れ出ていたということは予感していた。

 

 時械神もそうだが、あのカードがあったからこそある人は時空を移動できたと言われている。だが、攻撃力が無いためオベリスクの方を優先したのだろう。

 

 遠回しな破滅より直接的な破滅が最も恐ろしいと。

 

「……………………」

 

「神のカードとな。しかも偶然見つけたと」

 

「……………………」

 

「惚けてるのは分かっとる。儂も長いこと生きているので忘れっぽくなっとるがかつて存在していたら誰でも知っとる筈だ」

 

「……………………」

 

「じゃが、真偽をここで知ることはできんだろう」

 

 最後の切り札とも言える神の召喚を簡単に口にするわけがない、とオーディンは初めから知るつもりはなかった。

 

 それは黙秘したコナミ君(仮)が一番分かる。何も言ってないのにすぐ話を切り上げるところ、相手の都合、下手したら自分の都合まで悪くなる可能性があることを聞くことは後でどう響くか分からないからだ。

 

 話し合った結果、オーディンはコナミ君(仮)と手を組みはしないが余程のことがない限り干渉もしないという事になった。それでも茶飲友達くらいの感覚でいて欲しいとかなんとか。

 

 どこぞの不貞しまくる神より人に迷惑をかけていない神であるので別に茶を飲むくらいならいいとコナミ君(仮)は思った。

 

「お主らについては儂から口添えしてやろう。なに、対価はいらん」

 

「……………………」

 

「止めさせてすまんかった。もう治療も終わった頃じゃろ」

 

 さっさと行けと言わんばかりに目を閉じるオーディンに、コナミ君(仮)は一誠達が治療している部屋へ行く。

 

 立って歩けるまで回復した二人と共に自宅へと帰った。

 

 二人が見ていないところでコナミ君(仮)は手に力を込める。

 

 気のせいか、と思うが体の調子がおかしかったので試してみたのだ。

 

 もちろん、オーラとか漏れたり…………

 

「……………………」

 

 他人に悟られるように漏れたりしない。まだあの領域(・・・・)には到達していない。

 

 神のカードは世界に影響を及ぼした。なら使った本人には?

 

 それは本人のみぞ知る。決闘者(デュエリスト)の危険性は本人が思っているより世界に知れ渡った。

 

 そこから数日後、彼等は無理矢理眷属にしようと上級悪魔や天使達がひっきりなしに来るため、その対処に追われた。

 

 正式な抗議として全員抹殺した。流石に上層部は何も言わず、さらに他勢力に非難されたとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

 ある組織のとある二人の会話から抜粋

 

「なかなか上手く事が進まないな」

 

「仕方ないさ、あの決闘者(デュエリスト)が俺たちの計画を邪魔してくるんだ。京都では偶然とは言い切れなかったからな」

 

「しかし、奴らの大雑把な襲撃のせいで迂闊に手を出せなくなった。まったく、余計な働きを」

 

「そういえば、組織が匿ったある男が逃げ出したらしい。場所は日本とだけしか把握していない」

 

「匿った男といえばシグルド機関の失敗作だったか。まったく、管理まで杜撰とは恐れ入ったよ。ああ、そうだ。オーフィスに用があるんだが、彼女を見なかったか?」

 

「少し前になにも言わず出かけていったよ」

 

「…………入れ違いか。まあいい、京都の件について新しい案を持ち込みたいんだがゲオルク、どうだ?」

 

「ふむ、これは…………」

 

 彼等の計画は進む。

 

 

 




 人間を見下している奴ほど早く死ぬ法則。トップがいい人なのではなく甘すぎて部下を無駄に信用しすぎているだけとも言える。



 毎日のように襲撃に遭うコナミ君(仮)達はそろそろ本気で滅ぼそうかと行動を移し始めようとしていた。そんなコナミ君(仮)は前に戦ったある男を見つける。その男の行動は前と変わらず、戦いは大きく変わっていた。

 次回、『デュエリストと命削る男』

 全ては家族のために、デュエルスタンバイ。


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デュエリストと命削る男

 それは偶然だった。天使や悪魔が現れ「庇護してやるから眷属になれ」的な事を言われて「言うこと聞かないから殺して蘇らせる」的な事を言われたのでそいつらを焼く日が続くことだった。

 

 午後4時、まだ日も暮れておらずコナミ君(仮)がケーキ食べたいなと思って下校中に寄り道をしている。

 

 もちろん一誠達に黙って向かっている。狙われているなら連絡の一つはしておけと言われてもおかしくはないが、逆にコナミ君(仮)を倒せる者が堂々と現れるか、と聞かれたら否である。

 

 現在行方不明のルシファーのやべーやつも来るとしても念入りに計画を立ててから来るだろう。

 

 そんなコナミ君(仮)は偶然見つけてしまった。

 

「かー…………へぶしっ!かー…………」

 

「……………………」

 

 ベンチでグースカ寝ている見覚えある神父を。

 

 前は敵対していたし、見つけたところでどうしろというのだ。明らかに敵意むき出しだったのだがあの時はすぐ逃げられたので何もできなかった。

 

 しかし、今ここにいる奴は警戒心は全くなくまるでホームレスに見える。

 

 そして遠慮なくその神父の腹の上に座った。

 

「ぐへぇっ!?」

 

「……………………」

 

 流石に起きた。

 

「ちょ、どちらさんですかいってあんた決闘者(デュエリスト)さんじゃないですかやだー。あれ、これ俺ピンチ?」

 

「……………………」

 

「ちょ、黙りですかい」

 

 初見との印象が違う。あの時は狂ったように殺すことを楽しんでいたのに、今は気の抜けたお兄さんにしか見えない。

 

「おーい、聞こえてますかー?耳ダイジョーブ?」

 

「……………………」

 

 うるさいので腰を上げた。そしてそのままケーキを買いに行く。

 

「ちょ、そこ放置なの?俺泣いちゃうよ?通報されるくらいに泣いちゃっ!?」

 

 無言の腹パンを決めて神父を地面に沈める。これ以上喚かれたら本当に通報されそうなので静かにしてほしいものだ。

 

 気絶したことを確認して今度こそケーキ屋に向かう。一誠達にも何か買おうと思い、神父は無視して徒歩で行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………?」

 

 帰宅したのに誰もいなかった。別に襲撃されたわけではなく家で争った訳でもなさそうだ。だが、慌てて出て行った形跡が残っている。

 

 まだ5時にすらなってないのにどうしたのやら。

 

「ここが旦那の家ですかい?いやー、ボロっちいとこに住んでるかと思ったらふつっ!?」

 

 二度目の無言の腹パンを食らわせる。何故こいつがナチュラルに家に上がってるんだ。ちゃんと靴を脱いでるところは評価するが。

 

 しかし、今度は倒れずフラフラと歩きソファにどっかり座り込む。

 

 とりあえず顔面に蹴りを入れるかどうか少し迷うコナミ君(仮)。

 

「敵にゃ暴力的なのは本当っぽいの認めるからその足下ろしてくんさわらばっ!?」

 

 やっぱりうるさいので蹴ったがそこまでダメージは入らなかったようだ。

 

「イッテェ口切った…………ちょ、二撃目はやめろって!俺も仲間なんだからさ、な?」

 

「……………………」

 

「え?前に殺しにかかってきたじゃんって?いやー、昔の話は水に流してさ、ほら『昨日の敵は今日の友』って言うし?あんたらと微妙な赤龍帝が持つカード拾ったし?」

 

「……………………」

 

 見せびらかすようにカードの束を出した。間違いなく遊戯王のカードだ。

 

 なぜどいつもこいつもカードを拾うのか理解できない。コナミ君(仮)もこっそり探しにいったが一枚も見つからなかった。サンダイオンが欲しかったと愚痴をこぼしたとか。

 

 しかし、それを持ってるから味方というわけではない。あの転生者のこともある、何考えてるかコナミ君(仮)分からないが…………

 

「……………………」

 

 何も言わずテーブルを挟むように座る。そしてコナミ君(仮)は自分のデッキを机の上に置いた。

 

「おっ?一回やろうって?効果は読み切ったし俺ちゃんの超絶コンボ見せてやりまりょうや!」

 

 敵が味方か、引き込むにしても相手がどんなデッキを使うかは一度決闘(デュエル)すれば全て分かることだ。

 

「「決闘(デュエル)!」」

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

「かーっ!旦那強すぎるぜ!なんすかあの破壊耐性、俺ちゃんのデッキの天敵じゃないですかやだー!」

 

「……………………」

 

 結果的に言うと神父、フリードが自爆して終わった。本当に色んな意味でヤバかった。

 

 2ターン連続で『強欲で貪欲な壺』を使用して除外されたカードと手札を増やし、『命削りの宝札』を使用して手札を一気に墓地に送りと大量のドローソースを使用してさらに墓地を肥やし、最初に並べた『紅蓮魔獣 ダ・イーザ』や『カオス・ネクロマンサー』の攻撃力を底上げしてきた。

 

 紅蓮魔獣 ダ・イーザ

 効果モンスター星3/炎属性/悪魔族/攻 ?/守 ?

 このカードの攻撃力と守備力は、ゲームから除外されている自分のカードの数×400ポイントになる。

 

 カオス・ネクロマンサー

 効果モンスター星1/闇属性/悪魔族/攻 0/守 0

 このカードの攻撃力は、自分の墓地に存在するモンスターカードの数×300ポイントの数値になる。

 

 相性が合わないように見えるが、肥えた手札を『命削りの宝札』で墓地に送ったりして墓地を肥やせたりするので打点は非常に高くなった。

 

 ただ、デッキ枚数が足らなかった。聞いたら44枚と中途半端な数字だった。

 

 もちろん打点だけでは時械神を倒せない。そう、フリードのデッキはゼノヴィアに劣らないほどの脳筋だった。

 

 だが、彼はまだ何か隠してる気がする。必要なカードが除外されただけで下手したら負けていたのではとコナミ君(仮)はみた。

 

 除去には弱いがこのパワーインフレが酷い世界だと何とかなりそうだ。

 

 召喚方法も通常召喚のみなので簡単に並べられる。オベリスク以外で攻撃力∞が現れない限り負けになることはないだろう。

 

 と、コナミ君(仮)の携帯電話が鳴った。そういえば連絡すらなく一誠達がいなくなったので彼らかと思ったが違うようだ。

 

 画面を見ると『妖怪連絡担当 サラマンダー・富田』と表示されていた。名前はともかく協力関係なので電話番号を教えていたのだ。

 

 ロキを倒した以来かかってこなかったが、何かあったのだろうかとコナミ君(仮)は電話に出る。

 

「……………………」

 

決闘者(デュエリスト)の旦那、いきなりですが単刀直入に言います、八坂様が攫われました』

 

「……………………!」

 

 ガタッと立ち上がり驚きを露わにする。詳しく聞くと須弥山の神々との会談に向かう途上で襲われたと護衛だった烏天狗が息絶える前に伝えたらしい。

 

 なぜ彼女が攫われたのか理由は不明。もちろん嫌な予感しかしない。

 

 ふと、コナミ君(仮)は気づいた。八坂が攫われたら九重嬢はどうした、と。

 

『先にアンチノミー殿とパラドックス殿と連絡してましたが…………』

 

「……………………」

 

「旦那、何か面白いことでもあったんですかい?」

 

 この事にコナミ君(仮)は頭を抱えた。せめて報告してくれたら寄り道なんかせずにすぐ帰宅して準備を素早く終わらせて向かったのに、と。

 

 説教は向こうで話を終わらせてからにする。すぐにいつもの赤服に着替えて帽子をかぶる、デュエルディスクもちゃんと持ち京都に向かう。

 

 …………公共機関で。

 

「なんか面白そうな予感!俺もついてこーっと」

 

「……………………」

 

「えー、俺ちゃんいい子にしてるからお願〜い☆」

 

「……………………」

 

 本日三度目の無言の腹パンでフリードを沈めてからコナミ君(仮)は京都に向かった。

 

 着いたとしても早くて深夜になるだろう。

 

 そして、この日は駒王学園2年生の修学旅行前日であった。

 





 最後の要約・面倒くさいのと鉢合わせする。


 先に京都に着いた一誠は九重を泣かせる敵は許すまいと心に決め、ゼノヴィアと一緒に彼女を慰める。捜索に協力し京都各地を探し回るがよりによって彼らの天敵と遭遇してしまう。

 次回、『デュエリストと正体』

 知られてしまったなら開き直れ、デュエルスタンバイ。


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デュエリストと正体

「彼女は寝たか?」

 

「ああ、あれだけ泣いたら泣き疲れるって」

 

 鼻をぐすぐすと言わせつつ寝ている九重を膝枕し、頭を撫でる一誠。

 

 こうなったのも無理もない。少女にとって一番な支えである母親が攫われたのだ。長の娘として気丈に振る舞っていたが、彼らが来ると一気に感情が溢れてしまった。

 

 親が居なくなったことによる不安は計り知れない。一誠も似たようなものだが、まだ幼い九重にとってかなり絶望的であろう。

 

 そして、誘拐した犯人に心当たりがある。

 

 奇跡的に情報を伝えることができた烏天狗によると霧が発生してすぐにやられたとのこと。コナミ君(仮)が前に京都で霧使いと槍使いを追い回したのが少し前の話。

 

 偶然ではない、これは一致している。曹操とゲオルクとやらがいるのだ。

 

 そうなれば一筋縄ではいかないだろう。コナミ君(仮)が追いかけても逃げ切れるほどの腕前を持っているのだ。

 

 なお、2人がコナミ君(仮)に追いかけられたら10分もしないうちに捕まる。

 

「…………許せねえよな。何が英雄になるだ、子供を笑顔にできない英雄なんているか?」

 

「歴史的に戦争で活躍した者こそ英雄だからな。あいつらも誰かを笑顔にしているんだろうな」

 

 その誰かがロクな奴ではないことは口で言わなくとも把握できる。

 

「Dホイールでかっ飛ばしてきたし、俺たちもそろそろ寝るか?」

 

「九重はどうする?しがみついたまま動く気配もないぞ」

 

「そっと俺が服を脱いで布団に寝かせようぜ?」

 

「…………いや、それはやめておいたほうがいいだろう」

 

 ゼノヴィアが一誠に寄り添う。その行動に一誠が固まってしまうがまんざらでもないようだ。

 

「このまま寝よう。別に構わないだろう?」

 

「あ、ああ、そうだなー」

 

 自分を落ち着かせようと自己暗示している間にゼノヴィアは寝てしまい、結局一誠は一睡もできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

 

 修学旅行当日、悪魔組である木場祐斗とアーシアに兵藤一樹、そして監督役であるアザゼルになんやかんやあってオーディンに置き去りにされたロスヴァイセが京都に到着した。

 

 ロスヴァイセは原作のように悪魔になっていない。リアスの誘惑、もとい勧誘を退けアザゼルに協力する方として教員になったのだ。

 

 ここで焦ったのが兵藤一樹である。これ以上原作と話がズレると何が起こるか予測できない。

 

 本当にこの世界で今を生きる者たちにとってかなりの侮辱である。

 

 ついでに松田と元浜とやらがセットでついてきた。一樹は適当に話を聞き流すだけである。桐生とやらもアーシアと一緒に喋っている。

 

「よしお前ら、何度も言うが京都は妖怪の本拠地だ。くれぐれも問題を起こすなよ。それじゃ、俺は酒飲みに行ってくる」

 

 身内だけ集めてこの宣言である。教師という肩書きを持っているのにいいのかそれは。

 

「アザゼル先生!幾ら何でも生徒を放置しておくのはどうかと思いますが?」

 

「いいんだよ、こう見えて会談する予定が入ってんだよ。そこがたまたま居酒屋って訳だ」

 

 渋々、本当に渋々といった形でロスヴァイセは監視と称してついていくことにした。つまり、ここからは生徒だけで行動しろということだ。

 

 それでも現状では上級悪魔なんて目じゃないほど強くなっているので放置しているのだ。ただ、やっぱり一樹が一番の不安になるのだが。

 

 アザゼル云々は置いといて、このチームはリアス直々に継承された『京都パーフェクトガイド』に沿って回ることになっている。

 

 彼女が回ることができなかったところに星マークが入っている。そこまでして回りたかったのか。

 

「えーと、次はここだっけな」

 

「そうだね。あれ、元浜君と松田君はどこへ?」

 

「あー、あいつらは揃ってお手洗いに行ったわよ」

 

「仕方ねえなー」

 

 何故一樹が皆の記憶から消えた兄の変態仲間を嫌悪してないか?あまり関わらず遠くから見てるだけで面白いから、以上。ぶっちゃけ他人事なのだ。

 

 妙な図太さだけが取り柄とも言える。

 

 2人が戻ってくるまで待機だが、用をたすには少し遅い。もしかしたら知らない女の尻を追っかけに行った可能性が出てきた。

 

「あの、迷子になってるかもしれませんしそろそろ探しに行った方が…………」

 

「アーシアは気にしなくていいの!どうせどこかふらついて後で合流できるでしょ」

 

 どう始末してやろうか、という桐生の小さな呟きは聞かなかったことにした一同。

 

 と、噂をすれば何とやら、松田と元浜が戻ってきた。

 

「いやー、悪い悪い。待たせちまったな」

 

「世界に3人の同じ顔を持つ人がいるって割と本当なのかもな」

 

「はぁ?何言ってんのよあんたら」

 

「ああ、一樹に似た奴が美女と幼女と一緒に居たんだよ。アーシアさんほっぽり出して何してんだって突撃したんだが、どうやら違ってな」

 

「いやー、あれは申し訳なかった。女の子のお母さん探してるって言ってたから手伝おうかと言ったんだが断られてな」

 

「そりゃ不審者がいきなり手伝うなんて言われたら断るでしょ」

 

「おいおいおい、俺たち制服着てるんだぞ?いきなり不審者ってことはないだろう。しかし、そっくりってだけなのに何か懐かしいっていうか、同類っていうか?」

 

「はぁ?何よそれ」

 

「ま、気のせいだろうけどな」

 

 わはは、と笑いつつ目的地へ向かう一行。しかし、1人だけ内心穏やかではない人物がいた。

 

 そう、兵藤一樹である。

 

「(俺と顔がそっくり?いや、追い出されてから聞いてないとは言え何の力も持たないアイツがここに来るはずがない。だけど、あの変態共が懐かしい、同類ってどう考えても…………)」

 

 思考を巡らすが確証がない以上、結論に至ることはできない。あと御宅のお兄さん新しい力を授かってますよ。

 

 そして、原作では九重の勘違いによって襲ってくるはずの神社に到着するが、何も起こらなかった。

 

 一方その頃…………

 

「どうした、顔色が悪いぞ?」

 

「あ、いや、大丈夫だから…………」

 

「あの2人組に何かあるのか?と、とにかく一休みするのじゃ」

 

 思わぬ再開により少しショックを受けた一誠。まさかこのタイミングで親友だった(・・・)学生に会うとは思わなかった。

 

 恐らく修学旅行に来ているのだと思い、元気そうな様子で安心した。

 

「…………よっし、八坂さんを攫ったやつ探すぞ」

 

「まだ休んだ方が良いのではないか?」

 

「いや、もう大丈夫だ。一体どこに行きやがったんだ?」

 

 一誠が強がっているのは一目瞭然だ。しかし、下手に心配すると逆効果になりそうだと思い何も声をかけない。いや、かけることができない。

 

 一番鼻が利きそうなコナミ君(仮)はまだ来ない。

 

「あれは一樹か?いや、違う、だがあまりにも…………どうなってやがる?」

 

 彼らは知らない。この世界の住民は知らない。

 

「……………………っ!」

 

「見つけた、新しい無限の力」

 

「旦那ぁっ!今すぐ逃げろ!そいつは今敵に回しちゃいけねぇ奴だ!」

 

 狂った歯車が崩壊する寸前だということを。

 

 




 天敵=親友の記憶。この道に進む限り二度と友として彼等と歩めないかもしれないという恐怖。



 八坂を探す一向が黒幕が接近する一方、コナミ君(仮)は最悪の龍と対峙していた。いくらフリードでも勝つことはできない。それはコナミ君(仮)も同じである。そして、彼がとった意外な行動とは。

 次回、『デュエリストと無限龍』

 誑かしてなどいない、デュエルスタンバイ。


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デュエリストと無限龍

 遅めの明けましておめでとうございます。先に注意、タイトル詐欺と言っていいほど意外というほどでも無いし無限龍のお方が出てこない。


 絶対絶望というのはこのことだろうか。無限と称される龍が立ちはだかることだろうか。

 

 今の手持ちの無限といえばオベリスクだが、破壊されないとなれば時械神で耐えることは可能だろう。

 

 だが、それで済ますようには思えない。というか、もしかしたらデッキ持ってる可能性まである。

 

「まさか挑むおつもり?いやいやいや、いくらなんでも無謀だって!」

 

「……………………」

 

「我、オーフィス」

 

 誰だと聞いたら答えてくれた。案外根は素直な子らしい。

 

 この時、フリードは最強の龍(幼女形態)相手に素直な子と言うコナミ君(仮)の精神を疑った。危険とは思ってるが怯えてはいない、度胸があるのか何も考えてないのか。

 

 だが、流石に時間を押しているためここで戦うのは得策とは言えない。下手したらものすごい被害を及ぼす可能性だってある。

 

 力を持ってるとはいえ、相手が強敵だからといって不用意に振るうつもりはないのだ。

 

「……………………」

 

「やること?なら、我手伝う」

 

「……………………」

 

「我、早く静寂を得たい」

 

「……………………?」

 

「グレードレッド倒す、我、そこに帰る」

 

「……………………」

 

「グレードレッドは次元の狭間にいるやべー龍ですたい。あれがいるから次元が保たれてるとかなんとか?」

 

 そんな世界が崩壊しかねない事に巻き込まないで欲しいとコナミ君(仮)は心底思った。

 

 そして無限龍となれば絶対に神のカードの力を感じ取ったためコナミ君(仮)まで辿り着いたのだろう。

 

 だが、それよりも、もっと重要な気配を、同類の気配を感じ取ってしまった。

 

 コナミ君(仮)は目を細める。この感覚だと間違いなくオーフィスも遊戯王のデッキを持っている。無限を持つ彼女(?)だからこそ最も扱える格上のカードを持っていることも。

 

「それで、どこへ?」

 

「……………………」

 

「え、そのまま素通りする度胸!うわー、逆にすげーわ。その痺れる背中を見習いたい!」

 

「こっち?」

 

 横を素通りしたら持ち上げられた、しかもお姫様抱っこ。

 

「……………………!」

 

「用事は、早く終わらせる」

 

 そしてそまま大跳躍。フリードの目ですら見えなくなる距離まで一瞬で飛んでいった。

 

「……………………あれ、俺置いてかれた?」

 

 ポツンと置いてかれたフリードは帰るわけにもいかず、一人で京都に向かおうとして迷子になったとさ。

 

 あとコナミ君(仮)の歩いた方向は京都と少しずれていたとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーん、もう仲良くなってた訳か。まあ別に何もいうことはないぜ?パラドックスはともかく、アンチノミーは日本人らしいしな」

 

「日本人なのは認めるが、まさか堕天使総督が修学旅行で遊びに来るとは」

 

「遊びじゃねえよ。名目上の会談だ」

 

「遊んでたじゃないですか」

 

「ロスヴァイセ、ちょっと黙ってくれ。しかし八坂姫が行方不明とはなぁ…………」

 

 居酒屋にはレヴィアタンの魔王の名を持つセラフォルー、アザゼル、ロスヴァイセ、妖怪の重役、九重嬢、そしてアンチノミーこと一誠がいた。

 

 ゼノヴィアがいない理由は堕天使と悪魔にはあまり接触したくないとのこと。

 

 今回は京の顔役である八坂がいればラッキー程度、重役の妖怪と話をするためにアザゼルは来たのだが、話の内容がまさに起こっていたのだ。

 

「禍の団にしてやられたか。そっち側の話を聞く限り『絶霧(ディメンション・ロスト)』の可能性が高い、いや、むしろそうだろうな。つーか、それより気になることが…………」

 

「今はどうでもいいだろ。それより禍の団の事について詳しく教えてくれ」

 

「『絶霧(ディメンション・ロスト)』に飲み込まれて自力で脱出するってどんだけだよ決闘者(デュエリスト)は!あれか?カードの力か?」

 

「今の論点はそこじゃないだろ」

 

 ウンウンとアザゼル以外が頷く。俺がおかしいのかと頭を抱えた堕天使総督だが、ここはスルーするしかないようだ。

 

 そんなこんなで話が進み、悪魔組に禍の団が接触する可能性がかなり高いという結論に至った。

 

 妖怪達は血眼になり八坂を探してるが故、勝算がある時にしか戦わない敵は挑んで来ないと見ている。そして格好の的となるのは悪魔達になる。

 

「ああ、こちらからも厳重注意する。つっても難しいかもしれないが」

 

「アザゼル殿、難しいとはどういう事ですかな?」

 

 訝しげに妖怪の重役が聞くと言いアザゼルは辛そうだったが隠しても意味はないと思ったらしか自白した。

 

「一応、俺の生徒になってる奴の使える力が一部使えなくなってな。今までやってきた戦法が使えんようになったんだよ。半ば自暴自棄になってるから危ないんだわ」

 

「それならなぜ止めない。生徒なら止めるべきだろう」

 

「崩れそうなジェンガを扱ってるようなもんだ。ふとした拍子に一気に崩れる。このことに関してはアンチノミーが一番知ってるんじゃないか?」

 

 視線がアンチノミーに集中する。何故ここで話を振るのかと思ったが、今になって気づいた。

 

「兵藤一樹のことか」

 

「ご名答。カードゲームなら制限とかあるだろ?といえば分かるか」

 

「なるほど、大体わかった」

 

 他の者ら頭の上にはてなマークが浮かぶが遊びまくってるアザゼルと実際にやってるアンチノミーだけが理解していた。

 

 九重嬢がなぜはてなマークを浮かべてるのかというと、妖怪デッキを渡した時に禁止カードや制限カードの話は一切していなかったからだ。

 

「この際に聞いときたい。何故お前らは一樹を敵視する?同じ力を持つなら協力しあえるんじゃないか?」

 

「敵視していたチームが味方になるのもよくある話ね☆」

 

「それはない、絶対にない」

 

「そこをなんとか頼むって。敵対してる原因さえ分かったらあとはこっちでなんとかする」

 

 なんとかするといった手前、問題解決に向けてアザゼルは全力で取り組むだろう。よく言えばお人好しなところもある彼は身内を大切にするだけでなくグローバルな平和を望んでいるのだから。

 

「……………………仕方ない、どうせいつかバレることだし」

 

 ため息をつき観念したのかそう呟く。

 

 おお、とアザゼルは少し喜び妖怪の重役と九重は良いのかと心配するが軽く微笑み大丈夫だと言った。

 

「悪い奴じゃないってのは分かってるぜ?何せ謎の過去を除いてやってきた行いは全部調べ上げたからな」

 

「まさに正義のヒーローね☆大体私達の身内のイザコザだからご迷惑をおかけしてるけど…………」

 

「自覚があるならもっと厳しくしろよ」

 

 流石にやってきた所業は調べたようだ。しかし、セラフォルーまで乗るのは少し不愉快である。

 

 アンチノミーの嫌味にセラフォルーは頰を少しひきつらせるがすぐに笑顔に戻る。一応、外交を担当しているだけあってこういった駆け引きの素人であるアンチノミーは気づかなかった。

 

 サングラスを外し素顔を晒す。それだけでなくあえてオールバックにしている髪型を戻す。

 

 するとどうだ、セラフォルーが目を見開き、アザゼルが唖然とした。

 

「俺は今まで彼に名乗るとしたらこれがいいと言われたからアンチノミーと名乗ってた。俺の名は兵藤一誠。どこかで見たことある顔だろ?」

 

 吐き捨てるようにアンチノミー、否、一誠が言う。兵藤という名字には心当たりがある。そして赤龍帝にそっくりすぎる顔。

 

 しかし兄弟がいたなんて聞いてない。国籍を調べてもそんな人物はいなかった。

 

「知らないって顔だな。あいつが関係者全員の記憶を消したからな」

 

「待て、記憶を消す?確かに一樹はカードを使うがそれまでは一般人…………」

 

 そこでアザゼルは気づいた。一樹が使ってるデッキのテーマはなんだ?ほとんどのカードに『SPYRAL』とついている。しかし、一部を切り取ると『SPY(スパイ)』の単語になる。

 

 『SPY(スパイ)』=『密偵』もしくは『間者』という意味になる。

 

 決闘者(デュエリスト)が神を宿したカードを持ってたから神の力を使うことができた(オーディンのクソジジイ談)。『SPY(スパイ)』ならデータを改竄してもおかしくは無い。

 

 ようやく重大性に気づいた。兵藤一誠と名乗った男より一樹が何者なのか分からなくなった。あの家には兵藤一樹という人間は元からいなかった?兵藤一誠の事が本当ならば彼の人生を奪った?そもそも奴は中級堕天使に一度殺されるような一般人なのか?

 

 そして何よりも恐ろしい結論にたどり着いた。

 

「…………まさか、お前が本物の赤龍帝なのか?」

 

「いや、それは知らん」

 

「可能性を否定するには不十分すぎる。クソッ、まさか京都に来てこんな事になるとは…………っ!」

 

 何が目的なのか?何をしたいのか?何があったのか?謎を解いた瞬間、より深い闇を覗いてしまったアザゼルは頭を抱えた。

 

 なお、一誠だけ何となくアザゼルの独り言を理解し、他のメンバーはまた頭にはてなマークを浮かべていた。




 朗報、一樹の包囲網が形成され始める。


 謎が新たな闇を引き連れてきた中、コナミ君(仮)は一足早く決戦の地に着いていた。そこに待ち構えていたのはいつぞやの英雄を目指すと言っていた者達。八坂姫を取り戻すべくコナミ君(仮)は挑む。しかし彼は戦う前にデュエルディスクを仕舞う。

 次回、『デュエリストと英雄』

 何が、どういう事が英雄なのか、デュエルスタンバイ。


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デュエリストと英雄

新年初パックを購入しました。4パック中二枚スーレア、一枚ウルトラレアが出ました。幸先がいいです。


 突如ドゴン、という何かが落ちた音が京都に潜伏していた英雄派のアジトに響いた。

 

 現在修学旅行で来ている悪魔達どころかアザゼルにすら知られていないはずの場所だ。それなのに明らかに今いる主力以外の大きな力を持つ者が侵入して来た。

 

 リーダーの曹操と幹部であるゲオルク、ジーク、ジャンク、ヘラクレスは勿論、禁手(バランスブレイカー)に至った者が即座に現地に集合した。

 

 その時間は30秒も満たない。たが、土煙が舞っている間に打撃音が聞こえる。それに加えて部下の悲鳴も。

 

 もちろん敵襲だった。まさか悪魔に見せびらかして始末する前にこんなに早く侵入されるとは思いもしなかった。

 

 しかし、殴る蹴るでここまで強いのはいたのだろうか?

 

「下がれ、今お前たちを消耗させるのは惜しい!」

 

 合戦というほどでもないが今ここで彼らを使えば後々大きく響くだろう。だから、幹部で一気に叩き潰す。人外相手に卑怯も糞もない。

 

 それが人外(・・)であるならば。

 

「……………………」

 

決闘者(デュエリスト)…………!」

 

「おー、あのヒョロそうなのがか?ゲオルクの結界を突破できそうに見えねえぞ」

 

「んー…………顔が見えないし微妙なのところね。帽子外してくれないかしら?」

 

 曹操とゲオルクを一時的に恐怖に貶めたコナミ君(仮)がデュエルディスクを出して立っていた。

 

 しかし、彼が見ているのは曹操達ではない。監禁している八坂姫の方角だった。

 

 なぜ分かるか?カードの導きである、といえばゴリ押しできるだろう、多分。

 

「……………………」

 

「そうだったな、京都の姫と仲が良いと聞いた。姫を助けにやってきたんだな?」

 

「……………………」

 

「まるでおとぎ話の王子様だな。まあ、前みたいにはさせないけどね」

 

「神器を封じるなら僕だな。あの爺さんのような力を持つなら魔剣が一番いいだろう」

 

 前に出たのはジーク、禍の団の中で最強の魔剣使いと呼ばれるほどの実力者であり、フリードが生まれたシグルド機関の成功例である。

 

 そんな事はどうでもいいが、コナミ君(仮)はただ歩いて近づく。いや、彼はデュエルディスクを仕舞った。

 

「…………どういうつもりだ?まさか、素手で勝てると思ってるのか?」

 

「……………………」

 

 立ち止まった。そして…………

 

「…………(かかってこいと手招きをしている)」

 

「っ!随分と舐められたものだな!」

 

 二本の魔剣を空間から取り出し一気にコナミ君(仮)に斬りかかる。その速さも技術も圧倒的に上位だと思われる。

 

 凶刃がコナミ君(仮)に襲いかかり血が舞う…………事はなかった。

 

「なっ!?」

 

「……………………」

 

 彼は二本の魔剣を右二本、左二本の指で掴み取ったのだ。ジークが動かそうとしてもビクともしない。

 

 筋力的には可能かも知れない。しかし、明らかに普通とは違う点があった。

 

「青い、オーラ?ぐっ!」

 

 突然の衝撃に襲われ吹き飛んだジーク。コナミ君(仮)はその時に魔剣を離していたらしくジークの手にきっちりと魔剣は握られていた。

 

 ここで突如、大柄の男が動き出す。

 

「へへへ、ヒョロいと思ってたがそっち方面らしいな!だったら俺の拳に耐えられるかぁ!?」

 

「ヘラクレス!曹操もなぜ止めない!」

 

「落ち着け、あいつが例の神器に時械神を出していない。つまり、今は封じるつもりもないという事だ。思うようにさせてやれ」

 

 オーラを纏っているとはいえ所詮は素手、ヘラクレスの神器による爆発に体は耐えられるものかと高を括ったのだ。

 

 それが間違いだった。拳がぶつかると思った瞬間、コナミ君(仮)は紙一重で避けた上で腹パンを食らわせる。

 

 いつもの腹パンではない。かなり加減はしているが、巨体のヘラクレスを吹き飛ばした上に意識を刈り取るには十分な威力だった。

 

 流石にこれは予想していなかったのか、部下の神器使い達にすぐさま撤退の指示、そして一度拳を食らったジークとヘラクレスは治療のため撤退した。

 

 残ったのはレオナルド、ジャンヌ、ゲオルク、そして曹操のみとなった。

 

 コナミ君(仮)はこの撤退の早さに焦りを感じていた。こうも早ければ八坂姫も一緒に連れ去られかねない。

 

 だが一々デュエル宣言をしてカードを引いていたらそれこそ手遅れになる。故に渋々神の力を使う事にしたのだ。まさか身に纏えるとは思ってなかったが。

 

「仕方ない、ここは作戦を放棄した方が良さそうだ。彼なら地獄の底まで追ってきそうだ」

 

「……………………」

 

「だが、今ここで仕留められるなら話は別だけどな」

 

 曹操が槍を構える。ジャンヌは創り出した聖剣を構える。レオナルドはありったけのモンスターを呼び出す。ゲオルクは結界を張り巡らせる。

 

 だが、コナミ君(仮)は前に進み続ける。仲間と仲良くなった子が泣いているのだ、助けなければどうする?

 

「……………………」

 

 コナミ君(仮)は彼らに問う、英雄とは何たるや。

 

「何故そんな事を聞く?まあ俺たちはそれぞれの理由だが、人間のできる事をしたいんだ」

 

「……………………」

 

「確かに、人間は弱っちいさ。それでも人間を遥かに超える存在に挑み、どんな手段、どんな物を使ってでも勝ちを奪い取る者こそ讃えられる英雄だ」

 

「まあ私はちやほやされたいからやってる訳だし?イケメン捕まえてハーレムできて貢いでくれたらオッケーだけどね」

 

 ちょっと余計なことが入ったが、間違ってはいない。理屈としては困難を乗り越えた者が英雄になる。神話で13の試練を超えたヘラクレスのような、誰かに讃えられる偉業を行なった者(・・・・・・・・・・・・・・・)こそ英雄なのだ。

 

「………………………………そうか」

 

 小さく、本当に聞こえるかどうか分からないほどの声の大きさ。

 

 神滅具使い3人に禁手化を扱える神器使い、普通に見れば圧倒的不利な状況だ。

 

 しかし彼は立ち向かう。

 

「おい、決闘(デュエル)しろよ」

 

 英雄に成るのに、資格なんていらない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つーことで、お前らの引率をやる事になった」

 

「な、なんかいきなりだなぁ…………」

 

 会談があった翌日、一樹、木場、アーシアの悪魔組に加えて松田に元浜、そして桐生の班に突然アザゼルが引率をする事になった。

 

 事情を聞かされていた悪魔組は神妙な顔をしているので桐生達に少し疑われているが、気にしない事にした。

 

 それからはと言うものの、彼らはアザゼルが事前に調べていた名所を巡って楽しむことは出来た。なお、本当のところはリアスが行きたかったところを回らせて報告してくれと頼まれたためやっているだけである。

 

「禍の団の襲撃がないな…………妙におかしくないか?」

 

「それは僕も思っているよ。昨日も初日だったとはいえ何かしらのアクションがあるはずだよ。この前のこともあるからね」

 

 この前の事とは曹操が勝ち目がなくても一樹らに神器使いを戦わせて死の淵で禁手化させると言う荒技をさせた事である。

 

 原作知識があった一樹が可能性を指摘していたが止められるものではない。

 

 と、三つ目の名所でアザゼルの動きが突然止まった。

 

「先生?もしかしてスッゲー美人が見えました?」

 

「あ、あっち見ろよ。着物美人に膝枕されてる奴がいる!羨ましい…………」

 

 と言いつつ松田が絵になると思い写真を撮ろうとした。しかし、それはアザゼルの手によって止められた。

 

「…………いくらなんでもあんなところを許可なしで撮っていいもんじゃないぞ?」

 

「そうよそうよ、もしかしたらカップルかもしれないじゃない?それをいつの間に語られてたなんて不愉快になるわよ」

 

「あー、そうだな。悪い悪い」

 

 流石に写真を撮ることは控えた。向こうも旅行かもしれないので水をさすのは余計だろう。

 

「そろそろ行きましょう先生…………先生?」

 

 しかし、視線は美人と膝枕されている人物に釘付けだ。それは悪魔組もそうだった。

 

「八坂姫…………何故ここに、まさか自力で脱出を?」

 

 アザゼルはそう呟いた。しかし、悪魔組は違った。

 

 

 何故、決闘者(デュエリスト)の服が若干ボロボロで膝枕されている?




 こう思った人もいるでしょう。おい、デュエル描写しろよ、と。



 八坂姫が救出されたとの報により妖怪の街は大騒ぎ。救出したコナミ君(仮)は祭り上げられ肉まんを掴む。九重嬢も大喜びだが肉まんだけは譲らない。妖怪界に束の間の平和が訪れた。

 次回、『デュエリストと肉まん」

 コナミ君と言ったら、ね?デュエルスタンバイ。


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デュエリストと肉まん

 コナミ君(仮)が目覚めると、そこは布団だった。

 

 英雄気取りの馬鹿共と戦い八坂姫を奪還したのはいいものの、力尽きてしまってからの記憶がない。

 

 そして天井には見覚えがある。明らかに日本屋敷だ。つまり、妖怪の誰かがコナミ君(仮)を見つけて運んだということ、だと願っておく。

 

 流石に敵地だったら元も子もないが、拘束すらないので大丈夫だと思っておく。

 

 眠っている間に服を着替えさせられたらしく、着流し姿で腹部に包帯が巻かれていた。腹部に攻撃を受けた跡は残っているのだろうか?

 

 とにかく痛みは感じないので自然に回復したのだろう。聖槍を食らって生きてる方がどうかしてるのだが。

 

 ヨロヨロと立ち上がり外に出ようと襖を開ける。

 

「あ」

 

「……………………」

 

 待機していた知らない妖狐のお姉さんと目があった。見張りをしていたのだろうか?まさか出て来るとは思っていなかったような顔をしている。

 

「……………………」

 

「あ、は、はい!」

 

 とりあえず関係者を呼んでほしいと伝えたら慌てて他の人を呼びに行った。行ったのはいいが慌てすぎて柱にぶつかったのを見て大丈夫かと思ってしまう。

 

 改めて服の下を確認してみる。包帯が巻かれているが痛みはないが薬品のような匂いがする。どれだけ塗りたくったのだろうか。

 

 しかし、英雄になりたいというだけあって強敵だった。オベリスクは使わなかったもののライフを4000以下にまで追い詰められるほどだった。

 

 一度だけ2000以下になってしまった時もあったが『時械神サディオン』の効果でなんとかしのいだ時の奴らの顔は面白かった。

 

 と、戦いを振り返っていたらドタバタと大きな足音が近づいて来くるのが聞こえた。

 

「目覚めたってほんとか!生きててよかった…………」

 

「私の言った通りだろう?彼がそう簡単にくたばるはずがない」

 

 真っ先に来たのがシンクロ次元組だった。しかし、ゼノヴィアの台詞と息切れ具合が一致していない。なんやかんやで心配してくれていた。

 

 仲間に恵まれたな、とコナミ君(仮)は思った。

 

 一誠とゼノヴィアからの質問責め(という名の説教)を受けてる間に八坂姫と九重嬢がやって来た。

 

「どうやらお目覚めのようで。此度は…………」

 

「……………………」

 

「もう少し休みたいと?確かに、病み上がりにこれは少し筋違いではありますね」

 

 なぜか口調がいつもより丁寧な気がする。けれど感謝は後にしてほしい、まだ二人の目が怖い。

 

 何故こんなに早く来れたのかは黙秘して帰る準備をしようとするコナミ君(仮)。これでも一応だが学校通いなのだ、このままだと無断欠席もそれなりの日数になってしまう。

 

 しかし、よく考えてほしい。オーフィスに無理矢理連れていかれたとはいえ、事実上単身でテロリストの有力なチームである英雄派の幹部複数人を相手に戦い、生き延びて八坂姫を救出したのだ。

 

 流石に力尽きてこっそり寺で休憩していたら目が覚めた八坂姫に膝枕されていたのは極一部しか知らない。

 

 膝枕はさておき、この功績は妖怪界で英雄と讃えられるクラスの事をしでかしたのだ。簡単に帰してくれるわけがない。

 

 一言で言うなら、宴会に強制参加することになった。もちろん駆けつけてくれた一誠とゼノヴィアも参加する事になった。

 

 まだちょっと疲労が残ってるのに勘弁してくれ、とコナミ君(仮)は思うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 酒というのは麻薬の一種だとコナミ君(仮)は考える。人の、いや人以外でも理性を外し、場合によっては人格すら変わってしまう魔性の飲み物だ。

 

 宴会となれば酒はもちろん出される。しかし、コナミ君(仮)は未成年という事で酒は飲まないが、一誠とゼノヴィアは何故か飲んでいた。

 

 言い訳として、国によってはこの年だと成人してたりするからセーフとのこと。みなさん、絶対にやってはいけません。他国がどうのこうのは通用しません。

 

 と、前置きはここまでにして場酔いと言うものがある。他が飲み、自分はアルコールを摂取していなくても酔ったような雰囲気になる事だ。

 

「……………………」

 

「ほれほれ、どうじゃ?今晩好きにしてもいいのじゃぞ?」

 

 八坂姫は人妻、というより未亡人である、多分。実際、九重嬢の父親の話は一切聞かないのでそういう事だと思っておく。助けてくれたた恩と酔いでなんやかんやが緩くなってる。

 

 そこで乗ってしまったのが運の尽き、場酔いしたコナミ君(仮)は会話をしながら一誠でもないのに(この事を言ったら抗議された)さりげなく肉まんを揉んだ、揉んでしまったのだ。

 

 浮かれていたのは認める、しかし八坂姫の子はどう思ったのかというと…………

 

「母上に何しとるんじゃーっ!」

 

「……………………!!」

 

 ミサイルかと思うほどのタックルをかまされぶっ飛ばされた。人外とデュエルマッスルで肉弾戦ができるとはいえ、気を抜いてたら吹き飛ばされる。

 

「このぉ!さりげなく母上の乳を揉むなんて許すまじ!妾が成敗してくれる!」

 

「……………………」

 

「お、なんだ喧嘩か?九重嬢と決闘者が姫を取り合う喧嘩してるぞ!」

 

「九重様、日々練習していた絵札をあやつに見せてやりましょう!」

 

 絵札というのは恐らくカードの事だろう。外野の言い方だと一誠に渡されてからかなり練習したんだろう。

 

 しかし、ライフに差があるし余興みたいなものである。大広間の東西に分かれて妖怪(プラスα)が見ている中で特別デュエルする事になった。

 

 特別ルールと言っても『お互い初期ライフを4000として計算する』『本気で傷つけない』と付け加えただけだ。それ以外は新マスタールールと同じだ。

 

「ええい、妖怪の力見せてやるのじゃ!」

 

「……………………(早く帰りたいという顔をしている)」

 

「「デュエル!」」

 

 それでもやらなければネチネチ言われそうなのでちゃんとやるコナミ君(仮)。先攻もコナミ君(仮)だった。

 

「手札から『時械神ラツィオン』を通常召喚。ターンエンド」

 

 先攻と言ってもやることはモンスターを出すだけである。そして手札に本当に必要ないカードが二枚来てしまい事故を起こしていた。

 

「妾の番じゃな。カードを引くのじゃ」

 

 キャラ設定なのか?と聞きたいが親ものじゃ系なので今更と思いスルーする。

 

「『時械神ラツィオン』の効果発動。1ターンに一度、相手がドローした時に1000ポイントのダメージを与える」

 

「ぬぅ…………っ!」

 

 九重嬢がドローした時、『時械神ラツィオン』が炎を吹きかける。もちろん加減はしており温かい風程度にしか感じない。

 

 九重LP 4000→3000

 

「お嬢様ー!頑張ってください!」

 

「姫様負けないでー!」

 

 とてもコナミ君(仮)にヘイトが集まっている気がする。

 

「ふふん、一気に攻めるのじゃ!手札から『ミイラの呼び声』を発動!」

 

 

 ミイラの呼び声・永続魔法

 自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、手札からアンデット族モンスター1体を特殊召喚する事ができる。この効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

「妾の場に召喚獣はおらん、よって手札から『牛頭鬼』を特殊召喚するのじゃ」

 

 描かれているミイラが叫び声をあげると牛の頭をした鬼が九重のフィールドに現れた。ふんす、と鼻息を鳴らして手にしていた槌を振り下ろす。床は壊れないように手加減はしていた。

 

 

 牛頭鬼・効果モンスター

 星4/地属性/アンデット族/攻1700/守 800

「牛頭鬼」の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分メインフェイズに発動できる。デッキからアンデット族モンスター1体を墓地へ送る。

(2):このカードが墓地へ送られた場合、自分の墓地から「牛頭鬼」以外のアンデット族モンスター1体を除外して発動できる。手札からアンデット族モンスター1体を特殊召喚する。

 

 

「『牛頭鬼』の効果発動、山札から同族の絵札を一枚墓地に送る。墓地に送るのは『九尾の狐』、そして手札から『堕ち武者』を通常召喚するのじゃ」

 

 

 堕ち武者(デス・サムライ)・効果モンスター

 星4/闇属性/アンデット族/攻1700/守 0

(1):このカードが召喚に成功した時に発動できる。デッキからアンデット族モンスター1体を墓地へ送る。

(2):表側表示のこのカードが相手の効果でフィールドから離れた場合に発動できる。デッキから「堕ち武者」以外のレベル4以下のアンデット族モンスター1体を特殊召喚する。

 

 

「『堕ち武者』が召喚に成功した時に効果を発動、山札から同族の絵札を墓地に送る。『牛頭鬼』と一緒じゃが…………妾は山札から『馬頭鬼』を墓地に送るのじゃ」

 

 現れた頭だけの骸骨のような武者が口を開け、九重のデッキから一枚のカード、『馬頭鬼』が『堕ち武者』の口の中に吸い込まれた。

 

 

 馬頭鬼・効果モンスター

星4/地属性/アンデット族/攻1700/守 800

(1):自分メインフェイズに墓地のこのカードを除外し、自分の墓地のアンデット族モンスター1体を対象として発動できる。そのアンデット族モンスターを特殊召喚する。

 

 

「……………………」

 

「ここまで来たらわかるじゃろ、墓地の『馬頭鬼』を除外し効果発動!さあ、蘇るのじゃ、妾と同じ『九尾の狐』よ!」

 

 地面から炎が吹き出る。その炎の中から九本の尾を持つ美しい狐が優雅に降り立つ。八坂姫から見るともう一人の自分が現れたような感覚になったとか。

 

 

 九尾の狐・効果モンスター

 星6/炎属性/アンデット族/攻2200/守2000

 このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが手札・墓地に存在する場合、自分フィールドのモンスター2体をリリースして発動できる。このカードを特殊召喚する。

(2):墓地から特殊召喚したこのカードが守備表示モンスターを攻撃した場合、その守備力を攻撃力が超えた分だけ戦闘ダメージを与える。

(3):このカードが戦闘・効果で破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。自分フィールドに「狐トークン」(アンデット族・炎・星2・攻/守500)2体を特殊召喚する。

 

 

 これで九重のフィールドにモンスターが三体並んだことになる。メタイオンで全て手札に戻したところで残った永続魔法からまた別のコンボをやられるだけになる。

 

「そのまま妾の番は終了じゃ。その時械神のことは聞いてある」

 

「……………………」

 

 ばっと一誠たちの方を向いた。思いっきり目を逸らされた。目線が後で覚えてろと語っていた(一誠談)

 

「ドロー、スタンバイフェイズ時に『時械神ラツィオン』はデッキに戻る」

 

 フィールドにいた『時械神ラツィオン』がコナミ君(仮)のデッキの中に消える。手札に有効ではないとはいえ時械神は残っているためまだ何とか凌げるらしい。

 

「手札から『時械神ザフィオン』を通常召喚。バトルフェイズ、ザフィオンで攻撃」

 

 『時械神ザフィオン』による放水で九重の場にあった『ミイラの呼び声』が消えていた。もちろん、効果でデッキに戻ったのだ。

 

 そしてなぜか九重も濡れていた。髪から水滴が滴り、怒りでプルプルと震えている。『九尾の狐』が小さな炎を出して乾かそうとしているのが微笑ましい。

 

「…………ターンエンド」

 

「むむむ、妾の番!」

 

 カードを引きニヤリと笑う。

 

「ここで終わらせるのじゃ!手札から二体目の『牛頭鬼』を召喚、効果は使わぬ。これで妾の場には四体の召喚獣がいる、この意味が分からんか?」

 

「……………………」

 

 妖怪デッキとしか知らないコナミ君(仮)はよく分かっていないが、一誠とゼノヴィア、そして練習に付き合っていた妖怪の面々は理解した。

 

「場に同族が二体以上いる時に特殊召喚できる僕、『火車』!」

 

「あー…………」

 

「……………………!」

 

 そういえばそんなモンスターがいたと思い、効果を思い出す。

 

 

 火車・効果モンスター

 星8/地属性/アンデット族/攻 ?/守1000

 このカードは通常召喚できない。

 自分フィールド上にアンデット族モンスターが表側表示で2体以上存在する場合のみ特殊召喚する事ができる。このカードが特殊召喚に成功した時、フィールド上に存在するこのカード以外のモンスターを全てデッキに戻す。

 このカードの攻撃力は、この効果でデッキに戻したアンデット族モンスターの数×1000ポイントになる。

 

 

「………………………………」

 

 コナミ君(仮)の伏せカード、手札誘発は0。このルール、状況でどうなるかは明白だった。

 

「『火車』の効果発動!場にある召喚獣を山札に戻し、戻した同族の数だけ攻撃力が上昇するのじゃ!」

 

 火車の扉が開き、ザフィオンはコナミ君(仮)のデッキの中に吹き飛ばされ、九重嬢の場にいたアンデット族は火車に乗り込む。

 

 火車の攻撃力 ?→4000

 

 これでコナミ君(仮)のフィールドはガラ空きになった。そしてライフはルールによって4000。

 

「このまま直接攻撃じゃ!『火車』、轢き殺せぇ!」

 

「えっ、あっし!?」

 

 本物の火車が反応しているが放置して遊戯王の方の火車が全力疾走し、コナミ君(仮)を轢き飛ばした。

 

 

 ゴキャァァァァァン!

 

 

 コナミ君(仮)LP4000→0

 

「いい飛びっぷりだな」

 

「いや、やばい音出てたって!あれ生きてる、のか?」

 

 錐揉み回転しながら吹き飛んだコナミ君(仮)はどこぞのギャグのように壁に頭から突き刺さった。そこからピクリともしていない。

 

 動かないコナミ君(仮)を急いで引っこ抜き、攻撃がわりと本気だったため怪我をした彼は京都の滞在時間を延ばさざるを得なかった。

 

 九重はやりすぎと叱られ、何故か一誠もゼノヴィアに叱られていた。コナミ君(仮)には一誠が叱られた原因がよく分からないが養生する事にした。

 

 コナミ君(仮)は思った。京都に来ると、ロクなことがない。




 コナミ君(仮)の初手・エクゾディアの契約、オベリスクの巨神兵、時械神ラツィオン、覇王門無限、機械天使の儀式、となっていました。


 コナミ君(仮)が養生しているその頃、一樹達は入ってきた情報に混乱していた。決闘者(デュエリスト)達が京都と繋がっていたこと、原作と歴史が大きく違っていると悩む一樹にある刺客が襲いかかる。

 次回、『転生者と刺客』

 その刺客は一樹に憎悪を抱く、デュエルスタンバイ。


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転生者と刺客

どうして普通にデュエルしたら反応が薄いのだろうか、やっぱり手腕かな…………


「情報が錯誤しすぎてもう何が何だかだね」

 

「…………ああ、そうだな」

 

 修学旅行の途中だが、木場と一樹は部屋で二人話し合っていた。

 

 頭の中が腐った女子が興奮しそうなシチュエーションだが、二人の顔は深刻だった。

 

 京都に来て、まさかの八坂姫の誘拐事件からのスピード解決。そして解決したのが前にボコボコにしてきた決闘者(デュエリスト)なのだから不快でしかない。

 

 一樹にとって、本来なら自分がなんとかして八坂姫を救出し担ぎ上げられると本来の歴史でそう思っていた。

 

 だが、現実は違う。おそらく同じ転生者であろう決闘者(デュエリスト)と何処から拾ってきたのか不明のお供達…………

 

 ロールプレイでもしてるんじゃないかと思っても仕方ないほどの出来だった。

 

 もっと最悪なことは決闘者(デュエリスト)が京都の妖怪勢力と繋がりがあったこと。こちら側がいろいろやって仲が悪いというのは既に知られており今敵対したところで妖怪全戦力が襲いかかって来るかもしれないとアザゼル先生が言っていた。

 

 流石にそこまで言われたら引き下がるしかない。一樹に向ける目が少しおかしかったのは気のせいだろう。

 

「なんであんな奴らが京都救うんだ?あいつら人外が嫌いなはずだったら英雄派にいてもおかしくないだろ」

 

「さあ、もしかしたら勧誘されたけど馬が合わなかったとかじゃないかな?それで一番身近な京都にお世話になったと言えるよ」

 

「…………思い通りにいかないな」

 

 『SPYRAL』のカードが一部制限され大きく弱った一樹だが、サイドデッキのカードを使うことによってある程度機能を回復させた。流石に黙ってはいられなかったのだ。

 

 それでも全盛期とはいかず、物理的な強さを鍛え始めるようになったのが最近。

 

 今から鍛えたら赤龍帝としてある程度は強くなれるだろう。これから降りかかってくる厄災に対しては無力になるだろうが。

 

「それにしても彼ら遅いね。生徒会に絞られてるのかな」

 

「まあ、そうだろうな。毎回毎回飽きないもんだな」

 

 彼らというのは松田と元浜の事である。何をしに行ったのかというと…………まあ、言わなくても分かるだろう。

 

 戻ってきたら顔を晴らしてそうな馬鹿を頭に浮かべながら今後について話していた。原作なら教会3人組とロスヴァイセがいるかも知らないが、歴史は既に大きく狂っているのだ。

 

 話をしている最中、『彼女』は突然現れた。

 

「一樹くんはこの部屋にいますかー?」

 

「ん?いったい誰だ…………っ!?」

 

 ホテルのオーナーが彼らの主人、リアスの兄で親日家のサーゼクスであるため和風な部屋の出入り口である襖が開けられた。

 

 無断で知らない人が開けたなら彼らは一樹に用があると思っただけだろう。

 

 だが、知ってる人なら?

 

「うん、聞いた通りここに居たわね」

 

「い、イリナ!?何でここに、向こうに帰ったんじゃ…………?」

 

「ああ、教会は抜けてきたわ」

 

 その一言を何気なく言い放った突然現れた人物こと紫藤イリナだが、一度その信仰心を見せつけられた木場と原作を知って居てイリナが異常に信仰深い事を知っている一樹は驚愕した。

 

 では、なぜ教会を抜けることができた?否、何が教会を抜ける理由になった?

 

「そうそう、なんでここにって言ったわね。まあこれは悪い事だと思ってるわ」

 

「イリナ?」

 

「既に私のターン(・・・・・)は貰ったわ」

 

 腕にデュエルディスクを装着し、明らかに決闘(デュエル)を挑んできた。

 

「イリナッ!?」

 

「さて、改めて言わせてもらうわ。お久しぶりね一樹くん、そしてさようなら異世界の異物」

 

 異世界の異物、という言葉に今すぐ止めようとしていた木場の動きが止まる。

 

 異世界?異物?一樹くんが?というのが木場の心境だろう。動こうにもどうすればいいのか分からなくなってしまった。

 

 迷っている間にイリナのターンが淡々と進められ、再びイリナのターン(・・・・・・・・・)になった。

 

「は、あ、あれ、俺のターンは!?」

 

「それすら気づかないのね、ガッカリだわ。それじゃあ、終わりよ!」

 

 一般生徒は語る、一樹と木場が居た部屋から爆発音が聞こえて避難することになった。外から見たら、ガス爆発が起きたと思われる爆発した跡が残って居た。

 

 そして一樹と木場の姿はなかった、と。

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

「はい、何?それは真でありますか?ふむ、分かりました」

 

 九重嬢にハンデありとはいえこっぴどくやられたコナミ君(仮)が何故か八坂姫の介護されている時に、コナミ君(仮)と八坂姫をあえて二人っきりにして外で待機している有能()な側近らしき人に通信が入った。

 

 通信といっても遠話の札による妖術的な物を使用した簡単に傍受されない方法である。

 

「……………………?」

 

「お楽しみの最中失礼します。八坂様、ご報告したいことが」

 

「分かった、少し待たれよ」

 

 八坂姫も外に行き側近と何かを話して居たのをコナミ君(仮)は聞いて…………いなかった。

 

 ぶっちゃけ何故に子持ちの妖怪の首領に好かれているのか分からない、何故あそこまで介護しようとするのか分からなかった。乳の押し付けはともかく着替えは自分でさせてほしいとコナミ君(仮)は謎の攻防をしていたりする。

 

「…のことは………伏せよ………定じゃ…」

 

「了解いた…………悪魔への……どうし……」

 

「……存ぜぬ……じゃ、妾らには…………」

 

 明らかに不穏なことは確かだ。しかし、全部の事柄に首を突っ込むわけにもいかない。

 

 人を守ると言いつつ無闇に首を突っ込むなど下策だ。ここはひとまず傍観するコナミ君(仮)。

 

 体調もそれなりに回復してきたのでそろそろ帰らなければならない。もちろんコナミ君(仮)だけ公共機関で。

 

 しかし、誰かを忘れているような気がするコナミ君(仮)。そうだった、オーフィスはまた何処かでまた会うだろう。その時にきっぱりと拒否すればいい。

 

 ちなみに一誠とゼノヴィアは暗いうちに先に帰らせた。Dホイールを一般の目に見せるようなことはしてはいけない。そして無免許を誤魔化すには一時的に暴走族として見られた方が都合がいいかもしれないと思ったからである。

 

「待たせたの、さあ続きを」

 

「……………………」

 

「なんじゃ、もう帰るとな?もう少しゆっくりすればよかろう」

 

 そのゆっくりをしたらいつまでも引き延ばされそうで恐ろしい。それでも確固たる意志を持ち帰ることを告げる。

 

「むむ…………仕方ないのじゃ。一応準備だけはしておる。今回の騒動の謝礼も含まれておりまする」

 

 何故最後だけ丁寧なのか、と聞くのは野暮であろう。

 

 その後はスムーズに帰宅することに成功した。いく先々の妖怪達に感謝の言葉をもらった。途中で八坂姫と結婚したらよかったのにと漏らした奴も居た。

 

 九重嬢の父親が存命なのかすら分からないのに八坂姫が実は未亡人説が頭の中で濃厚になってきているコナミ君(仮)はまだ早いと思いその発言はスルーした。

 

 電車に揺られながらコナミ君(仮)は思う。一誠達にアザゼルが直接接触したということは我々の目的と様々な力がある事を教えたも同然、それ目当てにさらなる刺客が来るかもしれない、と。

 

 だが、負ける訳がないし負ける気もしない。ただひたすらに勝ち続けるのみだ。

 

 電車越しに白髪の神父っぽいのとすれ違った気がする。はて、あれは誰だったのかと首を傾げたが思い出せなかったのでまあいいかと放置したコナミ君(仮)。

 

 そして、ちょうど自宅の前に着いた時だった。

 

「答え、聞かせて?」

 

「……………………」

 

 ここでか、と愚痴をこぼすコナミ君(仮)の後ろには無限幼女ことオーフィスが立っていた。

 

「……………………」

 

 とりあえずコナミ君(仮)はオーフィスを家に連れ込んだとさ。




イリナ「私のデュエル?だってあいつ時止めしらたすぐ終わるし見せどころが特にないからオッケーよね!手札誘発握れなかった一樹くんが悪いのよ!というか逃げられたわ!」


 オーフィスを連れ込んだことにより身内から通報されかけるコナミ君(仮)。誤解を解くも更なる誤解を生む元幹部の魔女が現れ求婚してくる。コナミ君(仮)の胃にそろそろ穴が開きそうだ。

 次回、『デュエリストと結婚志願者』

 この人ストーカーです、デュエルスタンバイ。


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デュエリストと結婚志願者

はい、長らく放置してすみません。多分次もかなり間隔が空くと思います。あと若干タイトル詐欺。


「……………………」

 

「待った!本当に待った!通報しようとしたのは謝るから少しずつにじり寄るな!」

 

 身内から通報されかけたため、まずはじめに一誠をしばき倒して携帯電話を持っているゼノヴィアににじり寄るコナミ君(仮)。

 

 原因は後ろにいる幼女ことオーフィスを連れ込んだから。連れ込んで真っ先に「こいつ、やりやがった!」と言われた。心外である。

 

 ひとまず事情を説明して内容を理解してもらう。意地でも、最悪物理に頼ってでも理解させる。

 

「……………………」

 

「な、なるほど、そんな事情があったのか。無限龍(ウロボロス)に頼られるとはやはり大物だな」

 

「神の力、我と共にしたらグレードレッド倒せる」

 

「……………………」

 

 ぶっちゃけどう倒せというのだ。話によればグレードレッドとは次元にとって必要とされるらしく居なくなれば崩壊待った無しとか。リアルにZ-oneになるつもりはない。

 

 そういえばと思い禍の団について聞いてみる。こんな幼女でも大きな組織の頭領だったりするのだ。対価はなくても恐らく純粋であろう彼女(?)は何か言うはずだ。

 

 その考えが甘かった。オーフィスは良い意味でも悪い意味でも純粋だったというのが分かってしまう。

 

「それで蛇とやらが、ふむ、厄介なものを渡してるな」

 

「それって、ただ利用されてるだけじゃ?」

 

「使い使われる関係、何か間違ってる?」

 

 一方的に使われていることに気付いていない。そのビッグネームだけで威圧でき、そして戦闘力を上げる『蛇』とやらを渡している。

 

 本人曰く、グレードレッドを倒したいから協力しろ、その代わり蛇をやるとの事。いや、素の状態で神クラスの力を持ってない奴らがグレードレッドと戦えるか?

 

 そもそも目もくれないだろう。弾かれて終わりの未来が見える。

 

 ともあれ、上手くいけは敵戦力を奪いこちら側に引き込むことも出来る。しかし、引き込んだら最後、無理難題を言ってくるので困る。

 

 どうしたものかと黙って頭を悩ませているとインターホンが鳴った。

 

「……………………」

 

「ああ、分かった。とりあえずもう少し話を聞くよ」

 

「汝からドライグの残り香がする、ドライグと知り合い?」

 

「ドライグって誰だよ」

 

 オーフィスの対応は二人に任せて来訪者がいると思われる玄関へ向かう。

 

 この気配だと間違いなく人間だ。悪魔の魔力のような闇っぽいエネルギーや天使のような光っぽいエネルギーが感じられない。堕天使はそれの中間くらいのエネルギーを持ってる感覚がするとコナミ君(仮)は言う。

 

 玄関を開けた。

 

 日本の結婚衣装、神前式と呼ばれるらしい、スタイルの女性がいた。

 

「初めまして、そして結婚してくだ」

 

 そっと扉を閉めた。鍵をかけた上にチェーンもして入らないようにした。

 

「さあ、って待って!ちょっと話を聞いてよん!」

 

 めっちゃ扉を叩いてくる。ガンガンガンガンうるさくてかなわないと思うが、もしかしたら周りの住人に聞かれているかもしれない。もし、そこから何か怪しいと漏れたら…………

 

 そう勝手に結論をつけて仕方なく、本当に仕方なく家に上がることにした。この男、割とチョロいのかもしれない。

 

「……………………」

 

「そんな嫌な顔をして欲しくないですわん。貴方の妻になりたいんですから♪」

 

 もう嫌な予感しかしない。コナミ君(仮)の目は彼女の目的が自分自身ではなく力の方に目をつけていると見た。

 

 もしや、神の力をどこかで見ていた?そう勘ぐってしまうのも無理はない。

 

「ふふふ、そう緊張しなくていいのよん?」

 

「……………………」

 

 不信感丸出しのためそう言われてしまう。少しも隠す気もないが、不審なものは不審だ。そう簡単に拭えるものではない。

 

 部屋の中に入ると、そこはお菓子だらけだった。

 

 一瞬、コナミ君(仮)も理解していなかったが一言で言うと餌付けである。

 

「もぐもぐ」

 

「松田あたりなら喜びそうだよなぁ…………」

 

「マツダが誰かは知らないが、結構可愛らしいところもあるのだな」

 

「……………………」

 

 和んでいるところに笑いが爆弾を投下する羽目になるのは辛いが、仕方なく爆弾を投下させる。それもとてつもない爆弾を、だ。

 

「お初にお目にかかります決闘者(デュエリスト)の方々、ヴァルブルガと申しますのん。これから末長く此の方と共に生きて生きますわん♪」

 

「え、美人だけどなんかキツそうな性格してそうで嫌だ」

 

「性根が腐ってそうだからお断りだ。早く追い出したほうがいいぞ」

 

 この10秒後、ヴァルブルガは追い出された。

 

「流石に酷すぎじゃありませんのん!?その力に惚れたんですぅ!全て見下せそうな力の側にいさせてくださいのぉぉぉっ!」

 

 外には誰もいないし何も聞こえない、いいね?

 

決闘者(デュエリスト)、答えは?」

 

「……………………」

 

 そしてこの問題に直面する。しかし、答えは未だに出ていない。

 

 こうなったら先延ばしにさせるしかない。しかし、敵に回したくもない。∞の力なんてそう簡単に倒せるものではないのだから。

 

 逆に言えば倒せると言うわけだが、遊戯王の世界観はある意味すごいと改めて認識した。

 

 コナミ君(仮)が何か言おうとしたところ、一誠がそれを遮る。

 

「だったらさ、しばらくここにいればいいんじゃないか?ほら、カードもあるし静寂だっけ?次元の狭間とかに行かなくても見つかるかもしれないぞ」

 

「ここにも静寂?それはどんなところ?」

 

「ああ!ところでそのカードケースは?」

 

「拾った。あとエジプトの知らない人に一枚渡された」

 

「……………………!?」

 

 この一言で何かの伏線が張られた気がする。エジプトといえば心当たりがいくつかある。あの『名もなきファラオ』がこの世界にもいたのかもしれない痕跡があるのだ。

 

 けれども今は深く探ってはいけない気がする。事件は向こうからいつも来るのだ。コナミ君(仮)の出生とかに関わってたりとか両親が行方不明だから云々みたいな展開になりそうで恐ろしい。

 

 そのカードとは一体なんなのか、聞いてみた。

 

「後でわかる」

 

「………………………………」

 

 はぐらかす気満々だった。無理に見ようなら一瞬でライフポイントを0にされかねない。コナミ君(仮)のライフは8000でも流石に素で∞は耐えられない。

 

 流石に不満な顔を晒していたのでフォローが入る。

 

「いいじゃないか、その時の秘密兵器みたいな感じで。そもそも簡単に手を見せびらかすことは三流だろう?」

 

「そ、そうだな。俺だって全部見せてないだろ?ほら、拾ったカード全部教えてるわけじゃないし」

 

「……………………」

 

「ちょ、そんな目で見ないでくれよ!こ、これ譲るから!」

 

 他にカードを隠し持っていたことに不満の目を向けられた一誠は易々とカードを渡す。

 

 今回の拾ったカードシリーズのテーマは『真竜』だった。枚数は2枚だったり一枚だったりと数は少ないが、それでも他のテーマと混ぜたら十分機能する程度の数だとコナミ君(仮)は思った。

 

 か、最後にあったカードを見て動きが止まる。

 

「わざと一番下に置いたけど、これって使ってたテーマだろ?あれ、どうした…………死んでる」

 

 あまりのショックにコナミ君(仮)の意識はどこかへ飛んでいた。それは喜びなのか驚きなのか、はたまた両方なのかは彼しか知らない。

 

 なにせ、そのカードの名前はこう書いてあったからだ。

 

 『時械神サンダイオン』、と。




 時械神サンダイオン実装で大歓喜な作者とコナミ君(仮)。多少の弱体化してるけど個人的には構わない。もっと実装しろ。


 幼女な無限龍とストーカーが増えたコナミ君(仮)の日々が続くが一誠に進展があった。一樹が表向き行方不明になり何かしでかすのではないかと危惧する。そんな中にかつての友と再会する。

 次回、『デュエリストと昔の親友』

 久々の再会のところ悪いが喧嘩を売らないで欲しい、デュエルスタンバイ。


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デュエリストと昔の親友

時械神全員収録で大歓喜。これは勝った(確信)


 オーフィスがたまにうちに来るようになり、ストーカーもよく出現するようになったこの頃、一誠の表情が優れない日々が続いた。

 

「……………………」

 

「あ、いや、ちょっと考え方をしてた」

 

 その理由は一樹が行方不明ということだ。まさか、あの日の京都で行方不明になるとは思いもしなかった。

 

 そこで不安になるのが彼の家族だ。深い事情もあるのだが、今まで迷惑をかけてきた親をこれ以上心配させたくない。それが一誠の思いだった。

 

「奪った挙句に行方不明って、あいつ本当にふざけてるよな。一体なんだと思ってるんだ」

 

「……………………」

 

「ああ、悪い。こんな愚痴聞かせちゃって」

 

「……………………」

 

「それに比べて、とても上機嫌だな。やっぱりあのカードか?」

 

「……………………(とても頷いている)」

 

 ここ最近、彼はとても機嫌が良かった。ストーカーにつけ狙われているものの、それすら許容できるほどに機嫌が良くなりすぎていた。

 

 その原因は一誠とゼノヴィアが拾ってきたカードテーマである『真竜』、時械神とシナジーが合いもう1つのデッキとして転生前に使っていたのだ。

 

 そして、念願である新たな時械神を手に入れたのだ!というより全者揃ったのだ!

 

 時械神を使う彼にとって最大の喜びである。しかも『虚無械アイン』、『無限械アイン・ソフ』、『無限光アイン・ソフ・オウル』まで手に入れたのだ。

 

 もう他の物と混ぜてまで組むんじゃない、純時械神を作れと神が囁いているとしか思えない。弱体化しようがなんだろうが、コナミ君(仮)は時械神を使い続ける。

 

「……………………」

 

「え?買い物についてきてほしい?ああ、今日は卵の安売りだっけ」

 

「……………………」

 

「分かった、今準備する」

 

 この世界の決闘者(デュエリスト)は基本的に一般人だ。節制もしないと生活費がすぐに底を尽きる。元々コナミ君(仮)1人だけの生活費だったが、2人増えたことによってさらに節約しなければならない。

 

 そこで恩人に対して協力的にならなければいけない。一誠だけでなくゼノヴィアもいるが、怠惰的になっておりここ最近は昼寝をしてしばらく起きなかったりする。

 

 夜寝ずに何していたかなんて聞いてはいけない。

 

 男2人で買い物の出かけたのはいいものの、目当てのお一人様一個の卵を買い損ねて意気消沈、それ以外の買い物を済ませて帰る途中だった。

 

「みぃぃつけたぁぁぁ!」

 

 上の方を見ると電柱に白髪でくたびれた神父服を着た男がようやく見つけたかのように、恨んでる声を出しながら叫ぶ。

 

「お、おい、あれは一体?」

 

「……………………」

 

「忘れたとは言わせんぜ!京都に行くと言ってたから俺様も行ったのになんか入れ違いになった挙句、クソ妖怪共に知り合いと言ったら疑われて追い回されるわ帰りの金なくなるわどれだけ時間かかったと思ってんだクラァァァァアア!!」

 

「えーと、勝手についていったのが悪いんじゃないか?」

 

「シャラップ!くらえ恨みのボディプレス!」

 

 一誠のささやかなフォロー(?)虚しく電柱から飛んでコナミ君(仮)にボディプレスをぶちかまそうとする白髪の誰かさん。

 

 だが、忘れてはいけないことが一つある。人類は忘れてはいけない、人間ならがらデュエルマッスルという謎の筋力を持つ人間がいることを。

 

 一誠に持っていた荷物を渡し、体をブリッジさせるように何度も勢い良く反らせながら、その腹筋で降ってきた神父ことフリードを弾ませるように跳ね上げる。 それでは足りず、空中に打ち上げるように空中で(・・・)さらに打ち上げる。

 

「ホゲーーーーーッ!?」

 

「あれはまさか!まさかこんなところでやるのか!」

 

「………………………………!」

 

 

 跳ね上げた空中で相手の首と片足、両腕を固定しエビ反りになるようにクラッチ!それはまるで英語の『K』を表している!

 

 その後、続けざまに相手と背中合わせの姿勢で手足を固定し、相手の頭と体を地面に叩きつけるように落下したーーーーーッ!

 

「あべしっ!?」

 

「これが、これが完璧マッ○ルス○ーク!」

 

 正確には擬きだが仕留めるには十分である。デュエル中に肉弾戦を仕掛けられた時にコナミ君(仮)はプロレス技(という名の超人技)をたまーに使う。

 

 幸いなことに、フリードを仕留めた時に誰も見ていなかった。

 

「ひ、ひでえ…………ガクッ」

 

「……………………」

 

「一応関係者っぽいし連れて帰ったらどうだ?ってそんな嫌な顔をするほどか」

 

「……………………」

 

 本当に仕方なしと思いつつコナミ君(仮)は意識を失ったフリードを背負う。そしてそのまま仕方なく、本当に仕方なく帰ろうとした時だった。

 

「ようやく見つけたー!」

 

「……………………」

 

 毎日が厄日みたいなものだがさらに悪くなる日が多々ある。この世に生まれさせた神を恨むばかりだ。

 

 今度は正面から現れた少女のことだが、コナミ君(仮)にも一誠にも覚えがない、否、一誠がほんの少し思い出した気がする。

 

「一誠くん…………やっと、やっと会えた!」

 

「えっ、ええっ!?」

 

 走ってきたかと思ったらいきなり一誠に抱きつく。その時に買い物袋を落としそうになったが、なんとか落とさずに済んだ。

 

「ま、待った!本当に誰だよ!?」

 

「イリナよ!紫藤イリナよ!」

 

「あのイリナ!?でもイリナは男のはずだ!」

 

「…………まさか、ずっと男と思ってたの?」

 

「……………………」

 

 少女が一誠の一言でかなり落ち込んだ様子。それも無理はない、今まで信じていた幼馴染が少しやんちゃしていたとはいえ本気で男と思われていたのだから。

 

 そんな些細なことよりもあることに気づいた。

 

「…………覚えてて、くれてたのか?」

 

「ううん、思い出したの。最近のことだけど一誠くんのこと思い出したの!」

 

「マジか…………全員から忘れられたと思ってた」

 

「その様子だとやっぱりそうなのね」

 

 自分が一誠を覚えていなかったのと同じく、誰も一誠の事を忘れ去られた事を確信して悲しそうな顔をしている。

 

 信じていた親友を忘れ、そして周りも彼のことを忘れられてしまった彼の心を考えると辛いのだろう。だが、一誠は助力もあって乗り越えてきた。

 

「えっと、確か決闘者(デュエリスト)よね?ありがとう、一誠くんを保護してくれて」

 

「……………………」

 

「でもね」

 

 一誠から離れてコナミ君(仮)に向き合う。その目は感謝しているけど仕方ないのよ、という感じの覚悟を決めた目だ。

 

「私はあなたを倒すわ」

 

「は!?なんで、この人は」

 

「ごめんね、いくら一誠くんでもこれは避けられないの。それに、貴方を見極めさせて決闘者(デュエリスト)さん」

 

「……………………」

 

 コナミ君(仮)はどこかに隠していたデュエルディスクを構え、イリナは腕輪が変化してデュエルディスクになる。彼も彼女も覚悟は決めた。

 

 方や親友の恩人、方や仲間の唯一記憶が残っていた親友。いったいイリナが何を思ってコナミ君(仮)に決闘(デュエル)を挑むのか。

 

「「決闘(デュエル)!」」

 

 答えは決闘(デュエル)の中で見つける他なかった。




コナミ君(仮)LP8000

イリナLP2000

一誠「…………あれ?」

 圧倒的ライフ差の理由は次回に続く(多分気づく人いるかも)

 コナミ君(仮)とイリナが決闘(デュエル)で分かち合ったとき、覇を持つ龍が現れる。恨み憎み嫉妬し欲して挑む変質した乱入者は何故彼らに挑むのか。そして乱入者の驚愕のスキルが発揮される。

 次回、『デュエリストと覇』

 我は全てを覆し統べ覇王也、デュエルスタンバイ。


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デュエリストと覇

「俺の先攻手札から『時械神ラツィオン』を召喚、カードを二枚伏せてターンエンド」

 

「よりによってそのカード…………私のターン!」

 

「ドローした時に効果発動、相手に1000LPのダメージを与える」

 

「くっ…………」

 

イリナLP2000→1000

 

 僅か一分もたっていない時間で早速ピンチに陥っていた。正直なところまさかライフがここまで少ないなんて思いもしていなかった。しかし容赦する必要もない、される必要も全くない。

 

 これは格差があろうとも真剣勝負なのだから。

 

「行くわよ!私は手札から『手札抹殺』を発動!5枚捨てて5枚ドロー!そっちは二枚捨てて二枚ドローね」

 

「……………………」

 

 お互いに何事もなかったかのように手札を全て捨て、捨てた分だけドローする。コナミ君(仮)の墓地に時械神1枚と『手札断殺』、イリナの墓地にはライトロード関連のものが落とされた。

 

「行くわよ!手札から『増援』を発動するわ!手札に加える戦士族は『ライトロード・アサシン ライデン』!そしてそのまま召喚するわ!」

 

 浅黒い肌を保つ光の暗殺者、と字面だけ言ったらなんなんだお前と言いたくなる矛盾を抱える戦士がイリナの前に現れる。

 

 

ライトロード・アサシン ライデン

チューナー・効果モンスター

星4/光属性/戦士族/攻1700/守1000

「ライトロード・アサシン ライデン」の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分メインフェイズに発動できる。自分のデッキの上からカードを2枚墓地へ送る。この効果で墓地へ送ったカードの中に「ライトロード」モンスターがあった場合、このカードの攻撃力は相手ターン終了時まで200アップする。

(2):自分エンドフェイズに発動する。自分のデッキの上からカードを2枚墓地へ送る。

 

 

「そのまま効果発動、デッキの上からカードを二枚墓地に送るわ。予想通り♪1枚はライトロードモンスターだからライデンの攻撃力は200アップ!」

 

 まるでスタンバイしていたかのように白き獣の戦士がフィールドに現れる。デッキから墓地に送られた場合に特殊召喚できるモンスターである『ライトロード・ビースト ヴォルフ』だ。

 

 もう一枚、墓地に送られたのは…………

 

「『THE WORLD』…………」

 

「その通りよ。デッキがバレちゃったけどでも私はまだ止まらないわ!レベル4同士でエクシーズ召喚!現れよ、『ライトロード・セイント ミネルバ』!」

 

 

ライトロード・セイント ミネルバ

エクシーズ・効果モンスター

ランク4/光属性/天使族/攻2000/守 800

レベル4モンスター×2

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。自分のデッキの上からカードを3枚墓地へ送る。その中に「ライトロード」カードがあった場合、その数だけ自分はデッキからドローする。

(2):このカードが戦闘または相手の効果で破壊された場合に発動できる。自分のデッキの上からカード3枚を墓地へ送る。その中に「ライトロード」カードがあった場合、その数までフィールドのカードを選んで破壊できる。

 

 

 聖なるフクロウを従えし聖女が降臨した。この時点で街を管理している悪魔は気づいてもいいはずなのだが一向に来ない。

 

 コナミ君(仮)と一誠は魔法や魔術はからっきしであり、イリナはやろうと思えばやれるが結界を貼り忘れ、フリードはそこに転がって動かない。

 

 管理者しっかりしろ。

 

「『ライトロード・セイント ミネルバ』の効果発動!X素材を取り除いてデッキから3枚墓地に送る!ふむふむ、ライトロードは一枚も落ちなかったわ。私は1枚伏せてバトルを行わずターンエンドよ」

 

「エンドフェイズにトラップ発動。『虚無械アイン』を発動!」

 

「やっぱり来てたわね!」

 

 『虚無械アイン』、コナミ君(仮)が新しく手に入れた、否、ようやく追いついた始まりを告げる罠カード。あのZ-oneが使用し主人公を苦しめたカードの1つである。

 

 

虚無械アイン

永続罠

(1):このカードはフィールドに表側表示で存在する限り1度だけ、相手の効果では破壊されない。

(2):1ターンに1度、以下の効果から1つを選択して発動できる。

●手札からレベル10モンスター1体を捨てて発動できる。自分はデッキから1枚ドローする。

●自分の魔法&罠ゾーンにこのカード以外のカードが存在しない場合、自分の墓地の「時械神」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターをデッキに戻す。その後、手札・デッキから「無限械アイン・ソフ」1枚を選んで自分の魔法&罠ゾーンにセットできる。

 

 

「手札から時械神を1枚捨てて1枚ドロー」

 

「まだ一枚なら何とかなる「その効果処理後、トラップ発動」っ!?」

 

 コナミ君(仮)が伏せていたカードは1枚ではない、2枚だった。突然発生し輪にもう1つの輪が付き∞の文字を表しているような形になる。

 

 

無限械アイン・ソフ

永続罠

自分の魔法&罠ゾーンの表側表示の「虚無械アイン」1枚を墓地へ送ってこのカードを発動できる。

(1):このカードは1ターンに1度だけ相手の効果では破壊されない。

(2):1ターンに1度、以下の効果から1つを選択して発動できる。

●自分・相手のメインフェイズに発動できる。手札から「時械神」モンスター1体を特殊召喚する。

●自分の墓地の「時械神」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターをデッキに戻す。その後、手札・デッキから「無限光アイン・ソフ・オウル」1枚を選んで自分の魔法&罠ゾーンにセットできる。

 

 

 このタイミングで使ったということ、そして墓地には既に時械神が落ちているということ。既に条件は揃っていたのだ。

 

「『無限械アイン・ソフ』を発動。墓地の『時械神ザフィオン』をデッキに戻し『無限光アイン・ソフ・オウル』をデッキからセットする」

 

「くっ、もう何もできないし止めることもできないわ」

 

「俺のターン、ドロー」

 

「スタンバイフェイズに伏せてたカードを発動させてもらうわ!」

 

 イリナが伏せていたのは『威嚇する咆哮』。攻撃宣言を封じる強力な罠カードである。

 

 攻撃できないということは時械神の効果を発揮できないということになる。まさに時械神の対策を練られていたということだ。コナミ君(仮)の手札が少ない今、すぐに除去される前に発動してきたということになる。

 

 だが、このカードを止められる訳ではない。∞となった『無限械アイン・ソフ』にもう一つの輪が加わり一気に神々しくなった。そして、その輪の中にナニカから姿を表そうとしていた。

 

「スタンバイフェイズに『時械神ラツィオン』はデッキに戻る」

 

 三つの輪が完成する前に役目を終えたという哀愁を醸し出して『時械神ラツィオン』は静かにデッキの中に消えていった。

 

「メインフェイズ、リバースカードオープン!『無限光アイン・ソフ・オウル』を発動!自分フィールドにモンスターがいない場合に発動できる!手札、デッキ、墓地から時械神を召喚条件を無視して特殊召喚する!現れよ、『時械神ザフィオン』、『時械神ハイロン』、『時械神サンダイオン』!」

 

 三体の時械神が3つの輪から威厳を持って現れる。圧倒的暴力、圧倒的慈悲、圧倒的妨害、言葉に表したらこんな感じだろう。

 

 だが、ここで一つおかしいことに気づく。

 

「貴方、どうしてさっきデッキに戻したカードを出さないのかしら?」

 

「……………………」

 

 『時械神ラツィオン』を召喚していればコナミ君(仮)の勝利は確定していた。それなのに攻撃できないこと場面であえてこの三枚を選択した。

 

 だが、舐めてる様子はない。コナミ君(仮)の目はイリナの覚悟を見ているような、試しているような眼差しだった。

 

「そう、切りぬけろってことなのね。私が時械神を倒さない限り認めないと、この後に続く戦いを切り抜ける道はないと!」

 

「…………ターンエンド」

 

「いいわ、終わらせてあげる!私のターン!」

 

 ニカッと自信満々の笑みでドローしようとしたその時だった。

 

「お前、ら…………」

 

「……………………!」

 

「えっ?後ろがどうした…………兵藤一樹!?」

 

「お前、京都で行方不明になっていたんじゃ!」

 

 突然の出来事だった。そりゃあこんなところでデュエルしていたら1人や2人はやってくるだろう。しかし、それはあくまでこの街を管理するグレモリーや街に居座っているアザゼルくらいだろうと思っていた。

 

 だが、ここでイリナが討ち漏らし行方不明だった一樹が現れるのは予想外だった。

 

 しかも、どこか暗い雰囲気を出していて何かがおかしい。恨みが積もり憎しみに満ちた目だ。それに、一樹がつけているデュエルディスク、否、赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)の宝玉らしき球の色もおかしい。

 

 赤色なのにライバルである白が混じり、毒龍を思わせる紫が混じり、絶望を思わせる黒が混じる。

 

「お前らさえ、お前らさえ大人しくしていれば俺は上手くやれたのに…………」

 

 絶望の底から放つような悍しい魔力が呟く声と共に膨れ上がる。

 

「お前達のせいで俺はどん底だ!俺が糞野郎から赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)を奪って、あのデッキを使って主人公になるはずだった!なのに、貴様が現れたせいで全て滅茶苦茶だ!」

 

 篭手でコナミ君(仮)を指差して恨み節を放つ、がぶっちゃけ滅茶苦茶にしたのは自分だろうとこの場にいる一樹以外誰もが思った。

 

 余計なこともしたのも、全て台無しにしたのも、『SPYRAL』の主要カードが制限行きになることを予測できなかったのも自業自得なのに何を恨んでいるのやら。

 

 一つ言えることは、奴の傲慢のツケがやってきて払わされたということだ。

 

「許さない、許さないからなぁぁぁぁぁあああああ!」

 

 デュエルディスクと化した篭手からカードがこぼれ落ちる。まるで捨てるかのような落ち方をしていた。簡単にカードは捨てるものじゃないのに。

 

 

「我、目覚めるは 」

 

 その詠唱は憎悪によって作られた。

 

「異界より覇の理をもたらす龍なり 」

 

 ほんの偶然の奇跡で手に入れた力を振りかざしたかった。

 

「世界の物語を嗤い、己の未来を憂う 」

 

 だが、ついてくる者はほとんど居らず敵ばかり。

 

「我、主人たる覇龍と成りて 」

 

 手に入れた力にすら裏切られて。

 

「汝を絶望のエンターテイメントに沈めよう!」

 

『愚か、やはり愚かだ。お前はどうしようもない野郎だ』

 

 都合の悪いものは全て滅ぼすことを決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クク…………」

 

 余波で家が崩壊していく。

 

「クハハ…………」

 

 人がいる家もたくさんあった。人がたくさん通る道もあった。それがどうしたと言わんばかりの破壊が広がる。

 

「クハハハハ…………!」

 

 そして、破壊の中心を見上げると『絶望』がいた。

 

「クハハハハハハ!我が名、我が名は覇王龍ズァーク!」

 

 一体何故そうなったのか人々は知らない。ただ我儘な男が引き起こした大惨事、後に人間界だけでなく冥界、天界、全ての界に語り継がれる大厄災。

 

「さあ、我とデュエルしろおおおおおおおおおお!」

 

 自らの栄光を毟り取る為に覇王龍は世に出現した。




 ということでイリナのデッキは『ライトロード・THE WORLD』でした。ソウルチャージも搭載したかったけどライフの都合かつ展開時間の関係で使用不可能に。その代わりに妨害系が入ってたりしています。

 一樹に至っては最初からこうなる予定でした。制限確定してたのにどうしてあのデッキで続けられようか。なお、この覇王化にドライグは勝手に触媒としての使用のみ関わりそれ以外は何一つ協力していません。いわば社会がズァークという悪魔を生んだ(ただの自業自得からの逆恨み)

 コナミ君(仮)達は爆心地にいたため少しの間お休み期間に入りました。


 最悪の龍が駒王町に降臨した。駒王町をはじめ破壊の波紋は広がっていく。覇王龍に挑む戦士達は散り世界は絶望に満たされいく中、小さき狐が絶望に挑む。

 次回、『覇王龍と小狐』

 故郷のために、母のために、そして友のために、デュエルスタンバイ。


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覇王と小狐

 皆さんお久しぶりです(超放置マン)

 筆をとったのはいいですが気づけば魔妖とかいう京都にピッタリなテーマとか出てきたり新しい不知火が出てきたりとどうしようか超悩みました。

 では小狐ちゃんのデッキはどうなっているのか(多分あんまり見せられないだろうけど)どうぞ。


『突如現れた謎の巨大生物により駒王町が破壊されました!もはや残っているのは火と瓦礫ばかりです!たった今、自衛隊が巨大生物に攻撃を仕掛けましたが、えっ、嘘こっち向いてない!?えっ、あ、いやあああ!!』

 

 日本はパニックになっていた。突如現れた怪物が数々の都市を壊滅させていく姿をテレビで見させられたことで恐怖した。

 

 それは平成ゴ〇ラの復活とかネット上で言われておりそこにいない、もしくは目撃していない人々にとってお祭りの種であった。

 

 これに頭を抱えたのが裏側を知る勢力達である。まず覇王龍ズァークを名乗る怪物を始末しなければカバーストーリー(という名の洗脳)を作ることはできない。

 

 現状でも何もしていないわけではない。上級悪魔、天使など様々な勢力から兵を派遣しているが全く歯が立たない。

 

「どうした!その程度で我を止められると思うなぁ!」

 

 神器持ちであろうと瞬殺されるため此度は各勢力トップクラスが出撃しなければならないと判断した。

 

 しかし、その判断を下すまで5時間かかっているという事実に気づいているのだろうか?すでに覇王龍は京都まで侵攻していた。

 

「こんなにもろいのか!こんなに弱いのか!想像よりも想定よりもこの力は凄いなぁ!」

 

 破壊と殺戮の限りを尽くすズァークは人間の住む場所や観光名所を破壊し、ついに妖怪達の本拠地まで踏みこんだ。

 

 ここには個人的かつ身勝手な恨みがある。あの狐の頭領に見向きもされずさっさと追い出されてしまった。それどころか搾りカスと正体不明のデュエリストが気に入られてしまったのだ。どう考えても彼らの功績からそうなるのは必然なのだが単なる逆恨みと言っていいだろう。

 

 むしろ逆恨み以外で何があるというのか。

 

「そこまでじゃ!」

 

 ズァークにとっては小さな声だったがしっかりと声が聞こえた。

 

 覇王龍となったこいつにとって無視すればよかったが聞き覚えのある声だったためほんの少しだけ足を止めてみるつもりだった。

 

「お前は小狐!はっ、矮小な分際で我の前に立ちふさがるか」

 

「妾が矮小なら貴様は図体がでかいだけの化物だな!」

 

「ほざけぇ!貴様程度簡単にひねりつぶせるんだぞ!」

 

 小狐こと八坂九重があのズァークと口喧嘩している、あの図体で口喧嘩とかおかしいと思うものは悲しいことにいなかった。

 

 もちろん、九重の力だけでは止めることはできない。

 

 だが友人から託されたカードがある、それだけでも九重は心強かった。

 

「おぬしは言っていたな。デュエルで我を倒せと!望み通り妾が倒してやる!」

 

「ふはっ、ふははははは!貴様が?笑わせてくれる。やれるというならやってやろうではないか」

 

 明らかな侮蔑を込めてズァークは何もないはずの空間からデッキを取り出す。

 

 それに対し九重は木の板でできたデュエルディスクを構える。

 

「「デュエル!」」

 

 ズァークLP8000

 

 九重LP4000

 

「我のターン!手札から『覇王眷竜ダークヴルム』をペンデュラムゾーンにセット!効果によりデッキから『覇王門無限』をもう片方のペンデュラムゾーンにセット。そしてカードをセットしてターンエンド」

 

「たったそれだけか?口ほどにもないの。妾の番じゃ!」

 

 僅かな行動しかしなかったズァークを怪しみながら九重はカードを引いた。

 

 この二倍あるライフ差は九重のデッキではそう簡単に埋められるものではない。

 

 しれでもこの少女は勝たなければならない、自分の故郷を守るために!

 

「進んでいるのは一誠だけでない!妾も常に進化し続けてるのじゃ!手札から『不知火の隠者』を通常召喚!」

 

 

 不知火の隠者・効果モンスター

 星4/炎属性/アンデット族/攻 500/守 0

 このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドのアンデット族モンスター1体をリリースして発動できる。

 デッキから守備力0のアンデット族チューナー1体を特殊召喚する。

(2):このカードが除外された場合、「不知火の隠者」以外の除外されている

 自分の「不知火」モンスター1体を対象として発動できる。

 そのモンスターを特殊召喚する。

 この効果の発動時にフィールドに「不知火流 転生の陣」が存在する場合、

 この効果の対象を2体にできる。

 

 

 

「効果により自身を自主的に墓地に送ることによって山札から『ユニゾンビ』を特殊召喚!」

 

 

 ユニゾンビ・チューナー・効果モンスター

 星3/闇属性/アンデット族/攻1300/守 0

 このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。手札を1枚捨て、対象のモンスターのレベルを1つ上げる。

(2):フィールドの表側表示モンスター1体を対象として発動できる。デッキからアンデット族モンスター1体を墓地へ送り、対象のモンスターのレベルを1つ上げる。

 この効果の発動後、ターン終了時までアンデット族以外の自分のモンスターは攻撃できない。

 

「なんだと?日本の妖怪の癖にゾンビに手を出すか」

 

「煩い、『ユニゾンビ』の効果発動じゃ。手札から札を一枚墓地に落とす。『馬頭鬼』を墓地に送り『ユニゾンビ』の位を1つ上げる!」

 

 ここでズァークが無意識のうちに舌打ちした。

 

 このコンボは彼の前世から使用されており出てくるモンスターは大体予想がついていた。

 

「墓地の『馬頭鬼』の効果によりこのカードを除外して現れよ『不知火の隠者』!」

 

 墓地に眠っていた『不知火の隠者』が炎を上げて場に舞い戻る。

 

 フィールドにはレベル4のモンスターとレベル4のチューナー、ここから何が出てくるのは分かりやすい。

 

「『不知火の隠者』よ、『ユニゾンビ』よ、同調せよ!同調召喚!現れよ『PSYフレームロード・Ω』!」

 

 

 PSYフレームロード・Ω シンクロ・効果モンスター

 星8/光属性/サイキック族/攻2800/守2200

 チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

(1):1ターンに1度、自分・相手のメインフェイズに発動できる。相手の手札をランダムに1枚選び、そのカードと表側表示のこのカードを次の自分スタンバイフェイズまで表側表示で除外する。

(2):相手スタンバイフェイズに、除外されている自分または相手のカード1枚を対象として発動できる。そのカードを墓地に戻す。

(3):このカードが墓地に存在する場合、このカード以外の自分または相手の墓地のカード1枚を対象として発動できる。そのカードと墓地のこのカードをデッキに戻す。

 

 

 アンデットとは無関係と言っていいほどの容姿をしたモンスターがフィールドに現れる。

 

「妖怪風情がサイキックに頼ってんじゃねぇ!」

 

「ふん、今の時代は『ぐろーばる』よ!それすら分からんとは時代遅れな奴よ。攻撃じゃ!あの愚か者に直接攻撃!」

 

『PSYフレームロード・Ω』が巨体のズァークに恐れずに念動波を放つ。

 

「ぐっ…………この程度で我を倒せると思うな!」

 

「やせ我慢じゃな、妾は三枚伏せて終了じゃ」

 

「生意気な狐が………我のターン、ドロー!」

 

「待機時間に『PSYフレームロード・Ω』の効果で『馬頭鬼』を墓地に戻す!」

 

 明らかに厄介なものが残っているが、九重は止まらない。

 

「そして更なる効果を発動!『PSYフレームロード・Ω』とおぬしの手札一枚を除外じゃ」

 

『PSYフレームロード・Ω』が消えるのと同時にズァークの手札も粒子となって消滅する。

 

「おのれ、だが貴様の場はがら空きだ。我は手札からフィールド魔法『天空の虹彩』を発動!」

 

 

 天空の虹彩・フィールド魔法

「天空の虹彩」の(2)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードがフィールドゾーンに存在する限り、自分のPゾーンの「魔術師」カード、「EM」カード、「オッドアイズ」カードは相手の効果の対象にならない。

(2):このカード以外の自分フィールドの表側表示のカード1枚を対象として発動できる。そのカードを破壊し、デッキから「オッドアイズ」カード1枚を手札に加える。

 

 

 そのカードが発動したと同時に空間が突如変わり始める。

 

「『天空の虹彩』の効果を発動、Pゾーンのダークヴルムを破壊しデッキから『覇王眷竜オッドアイズ』を手札に加える」

 

 効果により破壊されるダークヴルムには感情という物どころか道具の様に破壊されていく。

 

 この男はモンスターを道具としか見ていないということに九重は怒りを感じる。

 

「お主、やはり自分のことしか考えていないようだな?」

 

「自分本位で何が悪い!我は、この世界で思うように生きるのだ!我の場のカードが破壊されたことにより手札の

『アストログラフ・マジシャン』を特殊召喚する!」

 

 アストログラフ・マジシャン 効果モンスター

 星7/闇属性/魔法使い族/攻2500/守2000

(1):このカードが手札に存在し、自分フィールドのカードが破壊された場合、その破壊されたカードを対象として発動できる。このカードを手札から特殊召喚する。

(2):このカードがこのカードの(1)の効果で特殊召喚に成功した場合に発動できる。このカードの(1)の効果で対象としたカードを、そのカードが破壊された時に存在していた元々のゾーンに表側表示で置く。

(3):このカードをリリースして発動できる。自分のデッキ・エクストラデッキ・フィールド・墓地から、

「スターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴン」「クリアウィング・シンクロ・ドラゴン」

「ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン」「オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン」を1体ずつ除外し、

 エクストラデッキから「覇王龍ズァーク」1体を特殊召喚する。

 

 

 この時点でコナミ君(仮)がいれば異常性に気づいていただろう。

 

 この『アストログラフ・マジシャン』の効果は本来のOCGのものではなくアニメ効果という何でもあり状態だということに。

 

「我は『アストログラフ・マジシャン』をリリースし四種の我がドラゴンを墓地に送り…………」

 

 ここで一度黙り込み、醜悪な笑みを浮かべ最高の愉悦と共に叫ぶ。

 

「我を、『覇王龍ズァーク』を統合召喚する!」

 

 覇王龍が名乗りを上げた瞬間、京都は破壊の嵐に見舞われた。

 




 冒頭であんなこと言いつつ初動だけはガチガチのアンデシンクロしか見えなかったし分かることにしてしまった()

 そしてここで転生者(笑)がまさかの『ア ニ メ 効 果』

 いや、言い訳させてもらうとそれくらいじゃないとラスボス(笑)の風格は出ないだろうし噛ませだといけないと思ったから…………(震え声)


 破壊の嵐が京都を包み込み妖怪達を絶望の淵に陥れる。だが、彼女は諦めていなかった。カードを渡してくれた人との友情を信じ、九重は全力で立ち向かう。

 次回、『小狐と絆』

 私はあの人を信じている、デュエルスタンバイ。


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小狐と絆

はい、また放置しすぎてたら魔妖の新規が来たしまさかのSinの新規まで来てました本当にありがとうございます。

中途半端で短いですがご容赦ください……


 元の風景を知るものがいれば嘆いただろう、悲しんだだろう、憤りを感じただろう。

 

 なぜなら、京都は覇王龍の手によって瓦礫の街と化してしまったからだ。

 

「フハハハハハ!我が降臨するだけでこうだ!あの子狐もタダでは済むわけがない」

 

 その現状を覇王は『愉快の物』として捉えられていた。

 

 本来の主人公である兵藤一誠が無茶苦茶やりながらも守ったはずの京都が残骸ばかりしか残っていない。

 

 自身の召喚の余波、全モンスター破壊という効果により生意気な狐は死んだだろうとズァークは頑なに信じていた。

 

 しかし考えてみてほしい、どうして九重がたった一人で戦っていたのか?

 

 なぜ姫である九重に護衛の一人もついていないのか?

 

 全ては策略ということに(・・・・・・・・・・・)気づいていない愚か者は(・・・・・・・・・・・)一体誰なのだろか(・・・・・・・・・)

 

「ふん、その暴虐ぶりは聞いた通り(・・・・・)じゃな」

 

「なっ!貴様、あの破壊の嵐で生きているだと!?」

 

「伏せていた札を発動した。『和睦の使者』!お前の番が終わるまで妾は一切傷つかず妾の(しもべ)は戦闘で破壊されぬ!まあ、僕は誰もいないがな」

 

 

和睦の使者

通常罠

(1):このターン、自分のモンスターは戦闘で破壊されず、自分が受ける戦闘ダメージは0になる。

 

 

「猪口才な…………このターンをしのぐつもりか」

 

「妾はただではやられぬ!」

 

 ズァークにとって攻撃を封じられるということは隙を与えてしまうということ、ターンを引き延ばしにされるのはあまり喜ばしくなくストレスが溜まるだけだ。

 

 そして、九重もまた攻めあぐねていた。

 

 現状の手札では切り抜けることは難しい上にズァークの攻撃力を超えたとしても後で何らかの効果が入ることを予見していた。

 

だが、耐える事ならいくらでもできる(・・・・・・・・・・・・・・)

 

「ちっ!おのれ、ターンエンド!」

 

「妾の番じゃ!山札から札を引かせてもらう!そして待機時に『PSYサイフレームロード・Ω』を貴様の手札と共に妾の場に呼び戻す!」

 

 ズァークの手元に除外されていた手札が戻るとともに九重のフィールドに『PSYサイフレームロード・Ω』が舞い戻る。

 

 妖怪をテーマにしたデッキなだけあって、妙に場違い感がある『PSYサイフレームロード・Ω』は困惑している。

 

「よし、妾は手札から『翼の魔妖―波旬』を通常召喚する!」

 

 

 翼の魔妖―波旬・効果モンスター

 星1/風属性/アンデット族/攻 600/守 400

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから「翼の魔妖-波旬」以外の「魔妖」モンスター1体を特殊召喚する。

(2):このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分は「魔妖」モンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。

 

 

「『翼の魔妖―波旬』は山札及び墓地から魔妖を呼び出す!こい、『麗しの魔妖―妲己』!」

 

 

 麗しの魔妖―妲己・チューナー・効果モンスター

 星2/炎属性/アンデット族/攻1000/守 0

(1):「麗の魔妖-妲姫」は自分フィールドに1体しか表側表示で存在できない。

(2):このカードが墓地に存在し、「魔妖」モンスターがEXデッキから自分フィールドに特殊召喚された時に発動できる。このカードを特殊召喚する。この効果を発動するターン、自分は「魔妖」モンスターしかEXデッキから特殊召喚できない。

 

 

 『翼の魔妖―波旬』が念を放つと九重のデッキから美しき妖狐が出現した。

 

 妲己、かつて国を傾けた悪女として有名な女の名を関する狐はズァークを一目見るとつまらなさそうに溜息を吐いた。どうやらお目に敵わなかったらしい。

 

「妲己は『ちゅーなー』という同調召喚に必要なものじゃ、よって妾は波旬と妲己を同調させる!」

 

「なに!?まさかこんな奴がシンクロ召喚を行うだと!」

 

「妖の力よ、今こそ絆の力を組み込み新たな力と化すが良い!同調召喚!」

 

 妲己が飛び上がり空中で二つの光の環となり波旬がその中に入る。彼らは光と化し新たなモンスターへと変貌する。

 

「駆け抜けよ、『轍の魔妖―朧車』!」

 

 顔の付いた牛車が炎を纏いフィールドに守備の体制をとり(というか横向き)出現した。

 

 

 轍の魔妖―朧車・シンクロ・効果モンスター

 星3/地属性/アンデット族/攻 800/守2100

 チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

このカード名の(2)(3)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):「轍の魔妖-朧車」は自分フィールドに1体しか表側表示で存在できない。

(2):このカードが墓地に存在し、

元々のレベルが5の自分のSモンスターが戦闘または相手の効果で破壊された場合に発動できる。

自分の墓地から他のアンデット族モンスター1体を除外し、このカードを特殊召喚する。

(3):このカードが墓地からの特殊召喚に成功した場合に発動できる。

このターン、自分のモンスターは戦闘では破壊されない。

 

 

「朧車を召喚したことにより墓地にいる妲己の効果を発動じゃ!甦れ、妲己!」

 

 朧車の隣に炎が巻き上がりその中から妲己がめんどくさそうな顔をして現れた。ここから妲己がどのようになるのかはズァークは知らない。

 

「妲己と共に朧車を同調じゃ!次に現れよ。『毒の魔妖―土蜘蛛』!」

 

「おのれ、連続シンクロ召喚か!」

 

 新たなシンクロ召喚を行い土蜘蛛を呼び出す。しかし、これでは止まらないのが『魔妖』である。

 

「再び妲己を自身の効果でよみがえらせ土蜘蛛と共に同調召喚!」

 

「なんだと、ターン1ではないのか!?」

 

「旋風を巻き起こすがよい、『翼の魔妖―天狗』よ!そしてまた甦れ、妲己!そして再び同調召喚!」

 

 九重のシンクロ召喚は止まらない。ズァークが呆然と見ている中で九重はシンクロ召喚を繋げていく。

 

 これは彼女が思う絆を紡ぎ、新たな仲間を呼び出す境地にして最大の時間稼ぎ(・・・・)である。

 

 爆心地にいたはずの一誠は既に姿を消していた。

 

 最終決戦はすぐそこにある、彼らは反撃の準備は整っている。

 

 どこかでバイクが走る音が聞こえる、破壊の跡に群がる人々は口々に答えた。

 




 破壊の跡には何も残っていないわけではない。破壊から新たな創造に繋がるのだ。覇王龍の痕跡を辿り彼等は駆け抜ける。同じ経歴で世界にたどり着き道を外れたものを、かつての兄弟を止めるために。

 次回、『デュエリストと経歴』

 我々がここにいる理由は何なのか、デュエルスタンバイ。


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デュエリストと経歴

何もかも転生させた奴が悪いんだ(草加スマイル)


 時はズァークと九重がデュエルを始める数時間前、破壊が始まった中心地は瓦礫の山と化していた。

 

 しかし、その山の一部が少し動き中から赤帽子の男が現れた。そう、みんなのコナミ君(仮)である。

 

「………………………………」

 

 彼は街の現状を見て絶句した。自分が生きていたことが不思議なくらいの破壊の跡、周りには生きている人がいるかどうかと聞かれたら絶望的だと彼は答えるだろう。

 

 しかし、ここでボーっとしておくのは完全に時間の無駄ということ。今すぐに追いかけなければならない。

 

 だが忘れてはいけないのは仲間の存在、ここに一人の仲間とその幼馴染がいたはずなのだ。

 

「……………………」

 

 タフになっている彼らが死ぬはずがない。コナミ君(仮)はそう思い近くにある瓦礫を引っぺがし始めた。

 

 だが、よく考えてほしい。瓦礫という物はふつう重くて易々と持ち上げそこら辺にゴミと同じように投げ捨てていくのは明らかにおかしい。

 

 そもそも死人が出る大破壊の中で無傷という時点で異常性があるのだが、そのことについて彼はこう答えるだろう。

 

 ―――――デュエリストとしてデュエルマッスルを備えているのは当然だ。

 

 デュエルマッスルってなんだよ(当然の疑問)

 

 コナミ君(仮)が瓦礫をどかしていくと金属に包まれた何かが見えてきた。

 

 一誠でないことは明白だが友人であることは確か、ならば救出しなければならない。

 

 金属の塊らしきものを素手で掴み投げ飛ばした。コナミ君(仮)の筋力に関してもう突っ込んではいけない。

 

 外に投げ飛ばされたや否や、金属の包みが取れていき中から一人の少女が現れた。

 

「びっくりしたわ!一人であんな衝撃波を起こせるなんて!いったいこれで何人の人が犠牲に…………って一誠君はどこ!?」

 

「……………………」

 

 先ほどまで包まれていたとはいえ埋まっていたはずだがこの元気、本当にただものではないとコナミ君(仮)は感じた。

 

 しかし、彼女は発見できても肝心の一誠が発見できていない。ついでにもう一人いた気がするが、そっちの方は放置していても構わないだろう。

 

 コナミ君(仮)は再び瓦礫を素手で瓦礫をどかし始めるがふつうの人はポイポイとどかすことはできない。それを見たイリナは若干引いているが気にしてはいけない。

 

 いくら自力でどかそうともあたり一面瓦礫だと見つかるはずもない。

 

 途方に暮れるコナミ君(仮)達だったが突如悪寒が彼らを襲った。

 

 二人が悪寒を感じその場を飛びのいた瞬間、閃光が彼らの横を切り裂いた。その閃光は聖なる破壊の力を秘めておりいくら二人でもノーダメージは免れない。

 

 閃光は瓦礫を引き裂き気づけば深い溝が完成していた。

 

「……………………」

 

「この光、あのエクスカリバーに近いけどどこか違う。まさか彼女が!?」

 

 イリナは誰がこの閃光を放ったのか気づいたらしい。そして、コナミ君(仮)もある方向を向いて知人がいることを確かめる。

 

 その知人とはだれか明白。

 

「久しぶりにデュランダルを放ったな。いかん、体がなまっている」

 

 そう、我らがSin使いのゼノヴィアだ。どう見ても手にしている剣を振り下ろしたポーズとなっているため彼女がやったのは間違いない。

 

 デュエリストの悲しい性というべきか、デュランダルと聞いてアーティファクトテーマの奴を思い浮かんだコナミ君(仮)。

 

 ゼノヴィアは闇雲にデュランダルを放ったのかと思われたが、裂け目から誰かが瓦礫を押しのけ現れた人物がいた。

 

「ぺっぺっ、砂が口に入った…………」

 

「イッセー!無事だったか!」

 

「あ、ああ。なんとかおぶぅ!?」

 

 擦り傷だらけとはいえ元気そうな一誠にゼノヴィアが非常に勢いよく抱きしめた。

 

 デュエル後であり大破壊に巻き込まれた彼にとって怪力のゼノヴィアの抱擁はかなりの痛手になるのではないかとコナミ君(仮)は思ったが、2人にとって危機があった彼氏を迎えに来た彼女という構図のため何も言わないでおいた。

 

「私がいない間にゼノヴィアが一誠君の恋人みたいになってるんだけど…………夢よね、これ、夢よね?」

 

「……………………」

 

 ところがどっこい、現実です。彼女が理想としていた未来は既に変わった。既にデキてる二人に付け入るスキはない。

 

 膝から崩れ落ちる彼の幼馴染に対しコナミ君(仮)はポンと肩に手を置き慰めておいた。

 

「嘘だ!かなり昔のことだけど一緒に遊んだり家に招いてもらって友情をはぐくんでた私の方が有利だったのにぽっと出のゼノヴィアに寝取られてるだなんてふぎゃ!?」

 

「誰が寝取りをしただ!ちゃんとお付き合いしてヤッたんだぞ!」

 

「ぐ、ぐぬぬ、ゼノヴィアの癖にいっちょ前に恋なんてしちゃってぇ!悔しくなんかないんだからね!」

 

 かつての同僚から拳骨を食らうも強がっている彼女の目からボロボロと涙を流しているのがまた哀れに見える。

 

 今にも逃げてしまいたいのだろうが、それでは無責任という物。解決しなければならない問題を正義感の強い彼女が放置するはずがない。

 

「ぐすん、それよりあの男を追わないといけないわ。あいつが進むだけでこの有様よ」

 

「ああ、そうだな。今からバイクとっていかないと追いつけなさそうだ」

 

「そう言うと思ってバイクで来た。あのフォルムのは運転が物凄くしにくいぞ。それに、多くて二人しか乗れないぞ」

 

「……………………」

 

すぐさまズァークを追おうとする彼らをコナミ君(仮)は眺めていた。そして、何故彼が同じ転生者でありながら覇王龍ズァークになってしまったか、考えた。

 

 そもそもコナミ君(仮)は力を求めておらず、趣味であったカードゲームの力が使えたらいいなというくらいでいた。なぜなら日常生活では全く役に立たずよほどのこと(・・・・・・)がない限り使う事のない人生を送ると思っていたからだ。

 

 そのよほどが沢山起こっているので何とも言えないが、それはあえて置いておく。

 

 それに対して彼、兵藤一樹はどうなのだろうか?何やら先を見据えつつ力を求めていた。

 

 たとえ実の兄を蹴落としてでも、悪魔になってでも得たい物があったのだろう。コナミ君(仮)にはそれが理解できなかった。

 

 共通点を上げるとしたら同じ神に転生されたということ。思えば奴の余計なおせっかいで『オベリスクの巨神兵』を手にすることとなり大きな戦いに巻き込まれることになったのだ。

 

 そのくせして自分が転生させた者が悪さをし始めるとその後始末を自分に押し付けてきた自分からは特に何もしていない神だ。

 

 さらに、本来ないと思われる三幻神をばらまいた元凶でもあると予測される。

 

 コナミ君(仮)は納得した。全てあの神が悪いのだ。二人の始まりが同じであろうと、転生させる奴の質が悪いと容易く道から外れてしまう。

 

 彼と自分はほぼ同じスタートラインにいたのにどうしてここまで違ってしまったのだろうか。

 

「ちょっと!ぼーっとしてないであいつを追うわよ!」

 

「……………………」

 

「え?二人はどうしたって?二人とも変なバイクに乗っていって私たちは置いていかれたのよ!」

 

「……………………」

 

 それよりもこの少女が哀れに思えてきてどうにかしないといけない。事が終わったら一誠に進言しよう、コナミ君(仮)はそう誓った。

 

「…………んがーっ!プロレス技食らった上に生き埋めとか俺って超絶に不幸すぎる!ベランダにシスターが降ってきそうだぜこんちょくしょう!」

 

「あ、生きてたんだ。死んでた方が身のためと思ってたのに」

 

「……………………」

 

「え、何この辛辣ぶり。割と本気で泣いていい?」

 

 どこまでも理不尽な目に合う男は理不尽に合うしかなかった。これも全て物語を狂わせた神が悪い。

 




罪龍「心配した、最終決戦といこう!」

星龍「ああ!」

運命「ギリィ…………(歯ぎしりの音)」


 運命は必ずしも正位置に来るとは限らないのだよ…………


 ズァークと九重の戦いはついに佳境を迎えた。戦い切った彼女に救いの手が差し伸べられる。因縁の戦い、果たさざるを得ない兄弟の戦い、そして全てを取り戻す戦いが今ここに始まる。

 次回、『デュエリストと覇王龍』

 絆と覇道が激突する、デュエルスタンバイ。


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デュエリストと覇王龍

エタったかと思いました?忙しすぎて書く時間がありませんでした本当に申し訳ない(某博士並感)

忙しまくるしデッキが回らないし欲しいカードがなかなか見つからないしサイキックリフレクター先生が欲しくてパック買いして必要ないスー、ウルレアばかり当たる日々でした(それでもみずきちゃん来ませんでした)

次回も出来るだけ全速前進DA!とばかり行きたいので今後ともよろしくお願いします。


 時は戻り場所は京都…………

 

「はあ、はあ、ここまでか…………」

 

「ふは、ふははは!無駄に粘って苦しみを長引かせただけだったなぁ!」

 

 ズァークと九重の戦いは既に終盤を迎えた。ズァークの場にはズァークという高火力モンスター一体に対し朧車一体のみ。後続を展開していく魔妖はこのような状況になったということは後がないということに等しい。

 

 九重のエクストラデッキ既に尽きておりもう展開は不可能に等しい。もはや手札に解決策もなく、とどめを刺されかねない状況だった。

 

「所詮は狐、畜生は畜生らしくくたばっていろ!」

 

「知らぬのか、追いつめられた狐は虎よりも狂暴じゃぞ!」

 

「貴様のターンはない!手札から『ブラックホール』発動!フィールドのモンスターを全て破壊するが我は破壊不能!フハハハハ!」

 

「ぐっ…………」

 

 抵抗と言わんばかりに守備表示でいた『麗しの魔妖ー妲己』が九重とズァークのちょうど間に発生したブラックホールに吸い込まれ消えていった。

 

 もう九重のフィールドにセットカードはなく、ズァークのフィールドにはズァークがいる。

 

 たとえ九重のライフが最大、4000あろうと完全に詰みである。

 

「死ね!我でダイレクトアタック!滅んだ都と共に地獄へ落ちろ!」

 

 ズァークの処刑宣言と共に覇王龍の破壊光線といって過言ではないブレスが九重に向けて放たれる。

 

「うっ、母上、一誠、京都を守らなくて…………ごめんなさい…………!」

 

 避ける暇もない、もはや完全に攻撃を受けるしなくなった九重は悔しさを滲ませブレスに飲み込まれた。

 

 ズァークの顔に浮かぶのは愉悦、彼からして原作キャラである九重を容易く蹂躙できたことに対する喜びを表現していたが、デュエリスト以前に赤龍帝であるならばそれなりに鍛えたら身体的な面では容易く超えることができたであろうにそのことすら気づいていないのが全く持って愚かなところである。

 

 ブレスが巻き起こした破壊の副産物として発生した煙が晴れた先に残っているものはなにもない。

 

 正真正銘の破壊が全てをのみこんだ、とズァークは勘違い(・・・)した。

 

「たかが子狐が我を止められると思うな!止めるとするなら、そうだな、最初に我が葬ったあいつらを連れてくるのだな!」

 

「へえ、それって一体誰の事かな」

 

「無論、あの生き汚い搾りカスの………………なんだと!?」

 

「誰を、何を葬ったかは知らないが、これ以上お前を野放しにすることはできない。何もかもやりすぎたお前を、私たちが止める」

 

 破壊の跡、その隣から発せられた声の主達はズァークが既に殺したと思い込んでいた一誠とゼノヴィアであった。

 

 主人公補正という絶対防御的概念をはがし自分の者にしたと思っていたはずだが一誠が生きているなんて何かの間違いではとズァークは考えたが、人間としてこの場にいる一誠の生き汚さ(・・・・)の理由がはっきりと分かった。

 

「貴様ぁ………………カードの力で生き延びていたか!」

 

「舐めるんじゃねえ、こう見えてここ最近鍛えてるんだ!」

 

 普通は鍛えた程度で大破壊を免れることはできません。

 

「黙れええ!目障りな害虫ごときが我の前に立ちふさがるんじゃあないっ!しかも貴様、子狐をいつの間に助けた!」

 

「そんなの、お前の破壊光線が届く前に助けたに決まってるだろ!」

 

 普通はそんなに早く動くことはできません、だって人間だし。

 

 先ほど破壊したと思われた九重すら一誠の腕の中で眠っていた、意識を失い些細なダメージを与えているとはいえ最後の一撃を受けていないため目立つ身体的なダメージはない。

 

 九重のピンチに駆け付けことができた二人はまさしく『英雄』であった。

 

「おのれおのれおのれぇ!デュエルだ!ドライグをも吸収し完全無欠となった我の力でねじ伏せてやる!」

 

「奪った力はたかが知れてるんだ、それを今からお前に教えてやる!ゼノヴィア、九重をつれて離れててくれ」

 

「分かった。さっさと終わらせて後のことを考えるぞ」

 

「ああ、行くぞ一樹………………いや、ズァーク!」

 

「「デュエル!」」

 

 

 覇王龍ズァークLP8000

 

 一誠LP4000

 

 

「先攻は俺からだ!」

 

 二倍ものライフ差があるが、命を懸けた戦いをするときは先攻後攻は言い出したもの勝ちといういつの間にかできた暗黙のルールで一誠が先手を取る。

 

「所詮はスターダスト頼りのシンクロデッキ。貴様ごときがこの我に勝てると思うな!」

 

「やってみなくちゃ分からないだろ!手札から『サイキック・リフレクター』を通常召喚!」

 

「………………………………は?」

 

 

サイキック・リフレクター

チューナー・効果モンスター

星1/闇属性/サイキック族/攻 400/守 300

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。「サイキック・リフレクター」以外の「バスター・モード」のカード名が記されたカードまたは「バスター・モード」1枚をデッキから手札に加える。

(2):手札の「バスター・モード」1枚を相手に見せ、「サイキック・リフレクター」以外の「バスター・モード」のカード名が記された自分の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚し、そのレベルを4つまで上げる。

 

 

「な、何だそのカードは…………我は知らないぞ」

 

「デュエリストは日々進化する、それを忘れたお前が俺に敵うと思うな!効果発動、俺はデッキから『バスター・ビースト』を手札に加え、そのまま『バスター・ビースト』の効果発動!このカードを手札から捨ててデッキから『バスターモード』を手札に加える」

 

「貴様、カードを勝手に作ったな!?なんてことをしてくれる!」

 

「違う、これは俺達の絆の力で得たカードだ!」

 

 コナミ君(仮)すら実際に見たことがないカードだが無理もない。*1コナミ君(仮)の知識は時械神が全て発売されたからそれほど経ったくらいしかないのだ。

 

 だが、使えるカードは何でも使う、というか普通にこのカードは強すぎた。

 

「さらに『サイキック・リフレクター』の効果!『バスターモード』を見せ墓地の『バスタービースト』をレベル7にして特殊召喚!いくぞ、集いし願いが、新たに輝く星となる!光さす道となれ!シンクロ召喚!飛翔せよ!スターダスト・ドラゴン!」

 

『サイキック・リフレクター』が光の輪となり『バスタービースト』がその中に飛び込むことによって願いにより現れた星屑の竜が現れる。

 

その輝きは破壊されたこの地の中で最も輝き、まるで希望のように降臨している。

 

「カードを三枚伏せ、ターンエンド!」

 

「おのれぇ…………我のターン、ドロー!我は手札より『超天新龍オッドアイズ・レボリューション・ドラゴン』と500のライフを捨て効果発動、デッキから覇王眷龍ダークヴルムを手札に加える」

 

 

超天新龍オッドアイズ・レボリューション・ドラゴン

特殊召喚・ペンデュラム・効果モンスター

星12/光属性/ドラゴン族/攻 ?/守 ?

【Pスケール:青12/赤12】

(1):自分はドラゴン族モンスターしかP召喚できない。この効果は無効化されない。

(2):自分の墓地のドラゴン族の融合・S・Xモンスター1体を対象として発動できる。このカードを破壊し、そのモンスターを特殊召喚する。

【モンスター効果】

このカードは通常召喚できない。

手札からのP召喚、または自分フィールドのドラゴン族の融合・S・Xモンスターを1体ずつリリースした場合のみ特殊召喚できる。

(1):このカードを手札から捨て、500LPを払って発動できる。デッキからレベル8以下のドラゴン族Pモンスター1体を手札に加える。

(2):このカードの攻撃力・守備力は相手のLPの半分の数値分アップする。

(3):1ターンに1度、LPを半分払って発動できる。このカード以外のお互いのフィールド・墓地のカードを全て持ち主のデッキに戻す。

 

 

「何故ダークヴルムか一枚しか無いのだ…………手札から『覇王眷龍ダークヴルム』をペンデュラムゾーンにセットし効果発動!もう片方に『覇王門無限(インフィニティ)』をセット!」

 

「それにチェーンして俺は伏せていた『バスターモード』を発動。いくぞ、『スターダストドラゴン』をリリースし現れよ、新たな力!『スターダストドラゴン/バスター』!」

 

『バスターモード』のカードの中から青い光が『スターダストドラゴン』を包み、新たなる姿として『スターダストドラゴン/バスター』が現れた。

 

 

スターダストドラゴン/バスター

効果モンスター

星10/風属性/ドラゴン族/攻3000/守2500

このカードは通常召喚できない。

「バスター・モード」の効果及びこのカードの効果でのみ特殊召喚する事ができる。

魔法・罠・効果モンスターの効果が発動した時、このカードをリリースする事でその発動を無効にし破壊する。

この効果を適用したターンのエンドフェイズ時、この効果を発動するためにリリースされ墓地に存在するこのカードを、自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。

また、フィールド上に存在するこのカードが破壊された時、自分の墓地に存在する「スターダスト・ドラゴン」1体を特殊召喚する事ができる。

 

 

『/バスター』の中で一番使われている(と思われる)スターダストドラゴンがズァークの周りを旋回する。

 

「おのれおのれ…………我は」

 

「『スターダストドラゴン/バスター』の特殊召喚時に伏せていた『ツインツイスター』の効果を発動する!」

 

「我は…………は?」

 

 

ツインツイスター

速攻魔法

(1):手札を1枚捨て、フィールドの魔法・罠カードを2枚まで対象として発動できる。そのカードを破壊する。

 

衝撃の展開!ズァーク、まさかのペンデュラム召喚を行う前にまさかのペンデュラムゾーンを一気に破壊したではないか!

 

このままでは『アストログラフマジシャン』が現れてしまうではないか。

 

「馬鹿め!何をトチ狂ったかは知らんが自分フィールド上のカードが破壊されたことにより手札より『アストログラフマジシャン』を特殊召喚」

 

「『スターダストドラゴン/バスター』の効果発動!行けっ、スターダストドラゴン!」

 

「するっ、ってなにぃ!?」

 

『スターダストドラゴン/バスター』が粒子を纏いズァークに突撃、ドヤ顔で見せていた『アストログラフマジシャン』を打ち砕き自身も粒子となって消える。

 

「効果を使ったことにより墓地に送られるが、ターン終了時に使った力を取り戻してフィールドに戻る、忘れてないな?」

 

「ふ、ふんっ、調子に乗るのも今の内だ。手札より 『死者蘇生』を発動、蘇らせるのは『アストログラフマジシャン』!」

 

『死者蘇生』のアンク*2が光り『アストログラフマジシャン』が現れた。

 

「我の前にひれ伏すが良い雑魚が!我は『アストログラフマジシャン』をリリースし効果発動!」

 

既に準備は整った、ズァークは既に自身をフィールドに呼び出しもう一度この地を蹂躙、もはや完全なる『無』へと還そうとする。

 

「ふははははは!エクストラデッキから我が眷竜を除外して、我を融合召喚する!」

 

ズァークの高笑いと共に惨劇と化した京都に再び悲劇が起ころうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それはどうかな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何も起きなかった(・・・・・・・・)

 

「…………な、何が起きている?いや、何も、何も起きていない!俺は何もしていない!?」

 

「俺はこのカードを発動していたのさ*3!」

 

一誠の『バスターモード』の隣に伏せていたカードが表になっていた。そのカードは速攻魔法、故に『アストログラフマジシャン』の効果発動に間に合ったのだ。

 

「速攻魔法…………『墓穴の指名者』を!」

 

 

墓穴の指名者

速攻魔法

(1):相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを除外する。次のターンの終了時まで、この効果で除外したモンスター及びそのモンスターと元々のカード名が同じモンスターの効果は無効化される。

 

 

ズァークは知っておくべきだった。一誠の使用するスターダストドラゴンを中心とするデッキコンセプト(妨害が多いデッキ)を。

 

「き、貴様あああああ!屑の分際で、ゴミの分際で我の邪魔をおおおお!」

 

ズァークは理解しておくべきだった。コナミ君(仮)(主人公)の横に並ぶ一誠(元主人公)が持つ情熱を邪道(広域的エロ)から正道(正妻ゼノヴィア)に向けたことにより負ける要素はほぼ無くなっていたことを。

 

「リリースがコストとして使われるなら、既に墓地に送られた『アストログラフマジシャン』を『墓穴の指名者』で除外すれば何も起きない」

 

ズァークはなりきっていなかった(・・・・・・・・・・)

 

「このカードはあいつが見つけて俺にくれたものだ。これが、俺の、いや、俺たちの絆の力だ!」

 

決闘者(デュエリスト)になりきっていない者が本物の決闘者(デュエリスト)達の絆に敵うはずがないのだと。

*1
コナミ君(仮)はOCGにて時械神が全て出揃う前の時間でカードプールの更新が止まっている

*2
エジプトの幸運のお守り等に使われる輪つき型十字架。遊戯王カードwikiより

*3
上記の例のように罠カードなどで相手の攻撃や効果を防いだ時に使われる。 ルール上問題はないがみんなはちゃんと確認してからチェーンを組もう




 サイキックリフレクター先生…………あんた字レアなのにあれだけ強くてあんなに出てきてくれないんだ…………?

SF「だが俺はレアだぜ」

 一誠のプレイングの前に為すすべも無くライフを削られていくズァーク。彼が叫ぶ救いのない憎悪はどこにも届くことはなく、彼の所業に鉄槌が下される。倒れ臥すズァークの前に現れるのは彼を含むこの世界に2人しかいない転生者だった。

 次回、『本物と偽物』

 全ては2人から始まった、デュエルスタンバイ。


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本物と偽物

投稿に2回も失敗した非力な私を許してくれ…………


「我は、我は…………ターンエンド」

 

「エンド時に『スターダストドラゴン/バスター』が俺のフィールドに舞い戻る」

 

『アストログラフマジシャン』によるズァーク降臨を完全に防ぎなささは無くフィールドに何も張ることなくターンエンドせざるを得ない。

 

一方、一誠は手札を使い切ったもののフィールドには墓地から力を蓄え舞い戻った『スターダストドラゴン/バスター』がいる。

 

どちらが優勢なのかは見ての通りである。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

忘れているかもしれないが、これはライディングデュエルでドローと同時に一誠はDホイールを加速させる。スピードカウンターは無いので気分を盛り上げるための加速である。

 

「カードを一枚伏せてバトル!行け、『スターダストドラゴン/バスター』!」

 

「がっ、ぐああああ!」

 

ズァークLP7500→4500

 

「これで俺はターンエンドだ」

 

「我のターン、ドロー!…………も、モンスターを伏せてターンエンド」

 

先程で手札をほぼ使い切り、引いたカードも使える時ではないモンスターを伏せるしかない。

 

「いくぞ、ドロー!手札から『金華猫(きんかびょう)」を通常召喚!」

 

 

金華猫

スピリット・効果モンスター

星1/闇属性/獣族/攻 400/守 200

このカードは特殊召喚できない。

(1):このカードが召喚・リバースした時、自分の墓地のレベル1モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを特殊召喚する。このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは除外される。

(2):このカードが召喚・リバースしたターンのエンドフェイズに発動する。このカードを持ち主の手札に戻す。

 

 

「『金華猫』の効果により墓地にいるレベル1モンスターを蘇生する。こい、『サイキック・リフレクター』!」

 

『スターダストドラゴン/バスター』の右にいかにも刺々しい猫が現れ、地面から『サイキック・リフレクター』を引っ張り出す。

 

頭を咥えられて引っ張り出されたためか、ヨダレが少し付いているのは見て見ぬフリをして一誠は続ける。

 

「レベル1の『金華猫』にレベル1チューナーの『サイキック・リフレクター』をチューニング!集いし願いが、新たな速度の地平へいざなう!光差す道となれ!シンクロ召喚!希望の力、シンクロチューナー『フォーミュラ・シンクロン』!」

 

 

フォーミュラ・シンクロン

シンクロ・チューナー・効果モンスター

星2/光属性/機械族/攻 200/守1500

チューナー+チューナー以外のモンスター1体

(1):このカードがS召喚に成功した時に発動できる。自分はデッキから1枚ドローする。

(2):相手メインフェイズに発動できる。このカードを含む自分フィールドのモンスターをS素材としてS召喚する。

 

 

「『フォーミュラ・シンクロン』のS召喚に成功時、カードを一枚ドローする」

 

勢いよくカードを引き、一瞥してから『残りの手札』より一枚の魔法カードを発動する。

 

「手札から『死者蘇生』を発動!呼び出すのは『スターダスト・ドラゴン』!」

 

死者蘇生のアンクがフィールド上に現れ、光り輝く。

 

「ま、まさか、『アレ』がくるのか?このタイミングで、凌ごうと思ってるタイミングで!」

 

「アレが何を指してるかは知らないが、多分あってるさ。俺はレベル8『スターダスト・ドラゴン』にレベル2シンクロチューナー『フォーミュラ・シンクロン』をチューニング!」

 

加速する『フォーミュラ・シンクロン』と共にバイクを一気に加速させ一、一誠は風となる。

 

それに反してズァークは妨害もなくこれからの展開に想像がつき怯え、何もすることが出来ない。

 

「うおおおおおお!アクセルシンクロォォォオオオ!」

 

叫ぶ、己の魂を響かせ切り開いた境地を武器に突き進む。

 

腕の赤き痣も呼応するように輝いてあたり一面を輝く粒子で満たし始める。

 

「集いし夢の結晶が、新たな進化の扉を開く!光さす道となれ!生来せよ!『シューティング・スター・ドラゴン』!」

 

これは(一誠)の希望の星であり、(ズァーク)の絶望への運び屋で、全てに決着を付ける為に降臨した『白き龍』。

 

「…………やめろ」

 

「『シューティング・スター・ドラゴン』の効果。デッキを5枚めくり、その中に含まれるチューナーの数だけ攻撃できる」

 

「やめ、やめてくれ」

 

「俺が引いたチューナーは『ジャンク・シンクロン』と『エフェクト・ヴェーラー』の2枚。よって二回攻撃!バトル!『スターダスト・ドラゴン/バスター』でセットモンスターに攻撃!」

 

伏せられていたモンスターは『灰流うらら』もちろん苦し紛れのセットであり容赦なく破壊される。

 

「おわ、終わる?この俺が、こんなところで?まだ王にもなってないのに!」

 

「確か、お前は赤龍帝だったっけ。話じゃ全く使いこなせてなかったらしいけど」

 

「お前のような変態よりも俺の方がアレをうまく使えた!それが当然だろう!俺は『コレ』の力を全て知ってるのだ!」

 

「…………その言い方、元々は俺のものだった?」

 

「そうだ、お前なようなゴミから俺が奪っ「どうでもいい」……は?」

 

「奪ったとか云々はどうでもいい。でもさ、奪った王座で踊っていても力がなかったら何も出来ないだろ?」

 

「力…………が、ない?そんなはずはない!俺は、おれはああああ!」

 

「『シューティング・スター・ドラゴン』で攻撃!スターダスト・ミラージュ!」

 

「ひっ!あ、うわああああああああ!」

 

LP4500→1200→0

 

叫ぶズァークに流星の龍が二体に分散し同時にブレスを放つ。

 

情けない悲鳴をあげ、ズァークは成す術もなくブレスに飲み込まれてライフを全て失った。

 

『シューティング・スター・ドラゴン』がブレスを吐き終わった跡には何も残っておらず、デュエルが終了したためフィールドのモンスター達は光となって消えていく。

 

「終わったんだ、これで…………いや、まだやることあるよなぁ」

 

一誠の気の抜けた声が時間の終焉を物語る。

 

瓦礫の海を寝かしていた九重をおんぶして歩きその場から離れるのであった。

 

京都の復興、それが次の目標になるだろうと信じて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………まだ、だ。俺は生きてる。まだ、やり直せる」

 

一誠が行ったのを見計らい瓦礫の下からズァーク、もとい一樹が這い出てくる。

 

先ほどの覇王龍と名乗っていた姿はなく、ただの敗走した兵くらいにみすぼらしくなっていた。

 

しかしその目には生きる炎がみなぎっていた。

 

ただし、明らかに真っ黒で汚れ切った生き汚いものではあるが。

 

「ここから離れねえと、見つかったら今度こそ殺され…………」

 

這いずりながらも前を向いた一樹は見つけてしまった、いや、ここは見つかったというべきだろう。

 

「……………………」

 

「こ、コナミの野郎、なんでここに!」

 

彼は答えない、この災害の尻拭いをしに来た彼には一樹を始末しなければならない義務がある。

 

その始末する相手に何をしゃべるべきだったのか、コナミ君(仮)は答えない。

 

「お前が、お前が俺の邪魔をしなかったら!俺はあいつらでハーレムを作って幸せに長寿で生きていけたんだ!お前さえいなければ!」

 

「………………………」

 

「お前も神に力貰って転生したクチだよな?お前だけ優遇されやがって…………」

 

「……………………」

 

「ま、待て!その腕を降ろせ!と、取引しよう、俺のカードを渡すからお前の仲間に入れてくれ、なあ?」

 

青いオーラを醸し出すコナミ君(仮)に媚びるように言う。

 

だが、冷徹に見下ろす彼に許すつもりは見えないため悪鬼の形相で命乞いの次は罵倒し始める。

 

「クソが!なんで俺がこんな目に合わなきゃいけないんだ!お前のような陰キャ野郎が主人公の邪魔をするんじゃねえよ!俺が主役なんだ!俺がここで死ぬわけにはいかない!助けてくれリアス!助けろよおおおおお!」

 

いくら叫ぼうがこの男に助けが来るはずがない。

 

もはや死なせてやるのが一番であろうと喚く一樹に拳を振り下ろした。

 

ズァークでなくなった一樹に攻撃力4000は耐えることができるはずもなく、頭を潰された一樹は光の粒子となり消滅した。

 

モンスターが破壊されたときのエフェクトと同じように虚空へと消えていった。

 

悪魔は魂を残さないと聞いたが、それは除外判定になるのだろうか。

 

では、コナミ君(仮)(自分)の末路はどうなるのか?

 

命がけのこの世界でどうしても考えてしまう事であり、目を背けていたことでもあった。

 

ただ死ぬ(墓地送り)のか、それとも消滅(除外)するのか。

 

それとも…………『別のもの』になるのか。

 

今は分からない、けれども『力』が馴染んでいるのは身体が証明している。

 

いくら考えても結論は見えない、だけれどもやることはたくさんある。

 

この戦いの処理、誤魔化し、そして自分達の危険性及び希少性が公に知られてしまった。

 

コナミ君(仮)には守らなければならない人たちがいる、自分がまきこんだ同然の人間を守る義務がある。

 

決意を胸に、コナミ君(仮)は一誠の元へと歩む。

 

他の皆も合流しているころだろうと、それが敵味方問わずとも集まるに違いない。

 

決闘(デュエル)が終わろうとも、戦いはまだ続いているのだから。




これで事実上の第一期での戦いは終わりです。これ以降、転生者はコナミ君(仮)の身になりますがカードプールはどんどん増えていきます。世界壊れる(小声)



一誠の因縁に決着がついた。その戦いの傷跡は深く事後所為は無理矢理感があるものの収集を着けようとする。決闘者(デュエリスト)達とデュエルモンスターズの脅威は全勢力に知れ渡り、新たなる火種が燻り始めていた。そして、彼らは次なる戦いがいつか来ると考えしばしの休息をとるのであった。

次回、『デュエリストと事後処理』

次なる戦いに備えよ、デュエルスタンバイ。


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デュエリストと事後処理

リンクスにDSカーリーと極星が来ました。めっちゃ組みたいです、それだけです。


あの日、世界は震撼した。

 

日本に特撮のような怪獣が現れ我が物顔で横断し、近代兵器の類はほぼ効かずに蹂躙されていくばかりだった。

 

幸いにも、その怪獣は京都にて停滞し大破壊を行った後に消滅した。

 

この消滅には原因が不明だが、恐らく自滅だろうという意見もあれば日本のどこかに身を隠したに違いないという意見もある。

 

真偽は不明だが、この怪獣災害はしっかりと映像に映され連日テレビでニュースになっている。

 

この災害に関して日本は最大限の復興費用を全国にかけ、また世界中からの資金や物資の援助と共に生物に関するあらゆる分野のプロフェッショナルを招致して災害の全貌を暴こうとやっきになっている。

 

この災害での死者は確認されているだけでも数万人、行方不明者数十万となっており地球にはこのような怪物が実はいるのではと囁かれている。

 

この人類の不安は決して取り除かれることはない。

 

未知なる怪物が現れないかと永遠におびえ続けなければならない歴史を負ってしまったのだから。

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

 

「ってのがカバーストーリーだ。流石にテレビやSNSで流出してしまったもんはこっちでも全部は対処はしきれん。この一件、マジで被害がでかすぎる。悪魔や俺達堕天使だけじゃすまないし、何よりも日本神話の陣地の京都に大きすぎる被害が出た。奴さん、キレてたぜ…………」

 

アザゼルの報告を決闘者(デュエリスト)達は聞いていた。

 

堕天使総督であるこの男が言うのならほぼ間違いないだろう、最後の所に本気の恐怖が入っていたのにはぜったいに触れてはいけないところなので気にしないでおく。

 

「で、あいつを野放しにしたリアス・グレモリーは実家に強制送還されてその眷属達も王の管理能力に疑問を持たれて解散状態だ。ま、変な所には引き取られてないだろう」

 

その情報に一人は眉をひそめて、二人は侮蔑の感情を、さらに一人は微妙な顔をし、最後の一人はどうでもよさげだった。

 

右からコナミ君(仮)、元教会組のゼノヴィアとイリナ、一誠、フリードの順番である。

 

敵対していたとはいえ、それまでは普通に同じ学校の生徒ではあったのでこのような結果となった。

 

リアスに関しては色々と残念過ぎたとはいえ抱え込んだ爆弾の威力を誰も正確に把握できていなかったため少しの同情はあった。

 

「援助金に関してはグレモリー家のほぼ全財産を投げ打っているのが真相だ。復興だけでなく各所に詫び代もいる、はっきり言って破滅も近いな」

 

「悪魔が破滅とか笑えるわ。ま、人外はいつかは滅びる運命にあるのよ」

 

「それ、俺も入って言ってないか?まあ、いつかはそうなるだろうよ、最近堕天使になるやつのほとんどいないし、滅びる時は滅びるもんだ」

 

「……………………(少し意外という視線を向けている)」

 

「俺たちゃ堕天使はまっとうな悪だぜ?いつ滅んでもいい覚悟は、少なくとも俺は持っている。人間を見てたらそう思うのさ、いつかは俺達(人外)はいらなくなるって」

 

ここで一息つくようにアザゼルは緑茶を飲み、ジトっとした目でこちらを見る。

 

主に、視線を向けているのは『私は夜中に盛り過ぎました』と『私は夜中にうるさくしました』と書かれた板をぶら下げた一誠とゼノヴィアだ。

 

「さっきからずっと気になってたんだが、こいつら何やったんだ」

 

「……………………」

 

「あ、あはは、こっち(京都)のご厚意で泊めてもらってるのに彼の隣の部屋でうるさくしてたから…………」

 

「その件については本当に申し訳ない。だが後悔はしていない」

 

「お、おい…………そう言ってさっき思いっきり拳骨食らったんだからちょっと」

 

「…………いつ死ぬか分からないっていう本能としては忠実だとは思うが時と場合が悪かったな。というかここの施設の壁はかなり分厚いはずなんだが?」

 

それでも聞こえた者は聞こえていたのだ、隣の部屋のコナミ君(仮)がキレるくらいに。

 

フリードも隣の部屋だったのだがかなり遅れて到着して疲れにより爆睡していたので気づかず。

 

「まー、旦那らと一緒にいたら面白い事しか起きない。でもっ!なんで!俺様は良い感じのイベントに間に合わないっ!」

 

「いたらいたで絶対に厄介な事になるでしょう貴方は!恥を知りなさいここの異端者!」

 

「そういやフリード、お前は俺達が、というかいつの間にか首になった後どこにいたんだ」

 

「あれ、俺っち元雇い主にすら忘れられてた…………?」

 

変なところでショックを受けている馬鹿を他所に話し合いという名の報告会は続く。

 

「話を続けるぞ。はっきり言って今の俺にとって復興よりも重要な案件だ。災害(コレ)を引き起こした本人は死んだが、それと同様の力を追っている奴が知られた。お前たちのことだ。否が応でもおまえたちを手に入れようと躍起になるぞ」

 

「……………………」

 

「無論、俺の所にも引き込みたいぞ?でも一つの組織にいるとなったら色々と問題が生じる。表立ってはいないが水面下じゃあお前たちの取り合いをしている。当たり前だがお前たちがどこかに誘われて所属する達じゃないだろ?」

 

「まあ、私達は訳アリの集団だからな。今更なにを信じろという話だ」

 

「神もいないし平等に配られる奇跡は偽物、そう教えられたら……………父さんも信じられなくなっちゃうわ」

 

「親父さんの事か。まあ、俺がどうこう言うべき問題じゃないか。そこで、だ。お前たち人間でチーム組まねえか?」

 

「チーム?それってどういうことだ。確かにバイクには乗るけど一台しかないし」

 

「そう言うチームじゃねえよ。なんつーか、人間代表の組織に一つってことだ。例えば魔法使いの連中だ。メフィストの所の『灰色の魔術師(グラウ・ツァオベラー)』とか、最近は鳴りを潜めているが、『魔女の夜(ヘクセン・ナハト)』とかのようにな」

 

後者にコナミ君(仮)がぴくっと反応したのを見たアザゼルは「ああ、やっぱそういう奴らにも絡まれてるんだな」と思った。

 

絡まれてるどころか求婚までされて、なおかつ求婚された本人が知らないうちに組織内で完全に夫ポジションになっていることはこの場にいる全員は知らない。

 

「そんなもの作る必要はあるのかしら?余計に狙われそうな気がするのだけれど、元からそういう運命だったのかしら?」

 

「くっだらねえモンに縛られちゃあ世話がないざんすね」

 

「なによ!運命はあるわよ!いつか私と一誠君と結ばれるんだから!」

 

「ほほう、それは聞き捨てならないな。正妻の私を差し置いて結ばれるとは。その運命は妄想だったな」

 

「なによ…………久々にキレたわ。向こうに行きなさい、2人ともデュエルで決着をつけてやるわ!」

 

「望むところだ!いい加減昔からお前の妄想にうんざりしていたんだ、その鬱憤を晴らしてやる!」

 

「…………なあ、あれ放置していいのか?」

 

「……………………」

 

コナミ君(仮)はなれ合いだと思っておけと言わんばかりの無言で一誠は苦笑い。

 

言い出しっぺとはいえ何故か変則的デュエルに巻き込まれたフリードを見送ってアザゼルは思った。

 

こいつらやっぱり人間味があって面白い、と。

 

「すぐに決めろとは言わんさ。それまでは俺とオーディンのジジイで何とかする。お前たちは最も目を着けられている『禍の団』と悪魔と天使に集中しとけ」

 

そう言って立ち上がり、アザゼルは何も気にするなと出ていった。

 

その姿は生徒を守る教師のような、というかあんななりでも教師であった。

 

「…………そういやさ、アザゼルって俺らの学校(・・・・・)教師だったよな」

 

「……………………」

 

「あんな教師がいたら学校は楽しいだろうな」

 

そう呟いて何かを思い出すように目を閉じ、大きなため息をついた。

 

残った傷跡は簡単に治らない、特に一誠には家族という問題がある。

 

本当に、本当に大きな負の遺産を残していった馬鹿を恨むばかりである。

 

「あひゃひゃひゃ!行けえガンドラァ!デストロイ・ギガレイズゥ!からのダイレクトアタックじゃい!」

 

「ぐああああ!フィールド魔法が!私の『sin』が!」

 

「ゼノヴィアがやられたけどまだ私がいるわ!絶対に仇をとるんだからね!」

 

「か、勝手に殺すな!まだ私のライフはなくなっていないぞ!」

 

「……………………」

 

「(あ、これ後で三人とも拳骨貰うやつだ)」

 

言わぬが仏、触らぬ神に祟りなし、余計なことを言ってコナミ君(仮)の拳骨という巻き添えを受けたくない一誠は黙った。

 

こんなうるさい些細な休みも、決闘者(デュエリスト)達にとっては貴重で十分に英気を養うのだ。

 

些細なことで巻き込まれるな、これが怒った彼に付き合うために必要な教訓であった。




リアスの名にダイレクトアタック!グレモリー家にダイレクトアタック!魔王の名声にダイレクトアタック!ズァークにやられた悪魔の戦力にダイレクトアタック!日本神話からの効果ダメージ!各勢力からの非難の効果ダメージ!まだやめない!精神力は0でもライフはまだあるわ!君の、息の根が、止まるまで、殴るのを、やめない!


一つの戦いが終わり世界は新たな局面を迎えた。その一方で一誠は自分の問題に向き合う。一樹の仕業により失ったものを新たな仲間と共に取り返す、ゼロが再び一となる物語は幕を開ける。

次回、『一誠の再起』

彼等の物語はここから始まる、デュエルスタンバイ。


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一誠の再起

日刊ランキング4位という凄いことが更新してない間に2回ほど起きて何事かと思ってる植物です。

誤字も多く稚拙ながらも読んでくださり本当に感謝です。


今、決闘者(デュエリスト)らはデュエルに臨む以上に緊張していた。

 

目の前には一般の人が住む家しかないが、そこが誰の住居であるかというのが重要なのだ。

 

ここで誰が住居を持っているかといったらコナミ君(仮)しかいないのだが、もう一人は本来なら実家と呼べる場所があるのだ。

 

そう、一誠のことである。

 

「い、いいんだよな?本当に大丈夫なんだよな?」

 

「……………………」

 

「うじうじするなみっともない。大丈夫だ、お前ならなんとかやれる」

 

「そうよ!おじさんもおばさんも違和感は持ってたみたいだし、あの頃のように戻れるわ」

 

フリードは欠席で今は堕天使の所に一人連れていかれており、その話はおいおい明かされることとなるだろう。

 

そして、今うじうじしている一誠の背中を言葉で押して家の前から玄関のインターホンに指を当て、少しためらい、意を決して押した。

 

いたって普通の音が家の中で鳴り響き、パタパタと足音がする。

 

「はーい、どちらさまですか?」

 

扉が開かれ、中年の女性が顔を出す…………一誠の記憶と比べて若干老けているように思えた。

 

お互い顔と顔を見合わせ硬直、何を話せばいいのか一誠は咄嗟に出てこなかった。

 

数秒か、十数秒の沈黙が通った後、一誠は口を開いた。

 

「えっと、ただいま」

 

ただそれだけしか言えなかった。

 

玄関から一誠の母親が出てきてつかつかと怒ったように歩き一誠に近づいて、抱きしめた。

 

「…………おかえりなさい、一誠。みんな待ってたわよ」

 

「っっ!ただいま…………ただいま母さんっ!」

 

今まで忘れられていたが、今はしっかりと母親の記憶に一誠がいる。

 

ここで自分たちが介入するのは野暮だろうと、玄関前で泣きじゃくる二人の邪魔をしないように決闘者(デュエリスト)達は静かにその場を見守った。

 

 

 

 

 

 

〜●〜●〜●〜●〜

 

 

 

 

 

 

「貴方たちが一誠を泊めてたの?本当にありがとうねぇ、この子迷惑かけなかった?え、恋人出来たの!?あの一誠にこんな可愛らしい子の!?」

 

「母さん!いくらなんでもそれはないだろ!俺だってやれば…………」

 

「元浜君と松田君と学校で何やってるか言ってから言いなさい!」

 

「その節は本当に申し訳ありませんでした!」

 

感動の再会が終わり、恩人たち(コナミ君(仮)ら)を家に招きいれて現状の報告(多くを伏せてだが)をした。

 

イリナとの昔話やだいぶ前まではエロ小僧だったことを暴露されて赤面し、昔の一誠の一面を知ることができた決闘者(デュエリスト)は満足した。

 

たまにかつての一誠の行動にドン引きし、その失敗談で笑い、一誠にのみライフが五回くらい消し飛んでそうな精神的ダメージを受けたが気にしない。

 

ただ、ゼノヴィアの視線が少しだけ鋭くなっており「今もやるのか?」という問いに一誠は笑ってごまかした。

 

間違いなく悪手だったことに気づいたのはコナミ君(仮)とイリナだけである。

 

「だあああ!もう無理いいい!」

 

過去の黒歴史を暴露され恥ずかしさが頂点に達してしまった

 

「本当に、一誠にこんないいお友達と恋人ができたなんてね。そっちにいる時は迷惑かけてなかった?」

 

「……………………(首を振って否定している)」

 

「かわいげがあるぞ。私と付き合ってからの一緒に寝るときはなぁ」

 

「ゼノヴィアストップ!いきなり下の話はなしよ!?」

 

「ちょっと、やだ!あの子もう童貞捨てたの!恋愛は大丈夫かとずっと思ってたけれど、これはみんなに赤飯たかないと!」

 

「おばさん!?わ、私じゃなくてゼノヴィアの外堀が固められていく…………う、運命とは…………」

 

恋人関係までぶっちゃけすぎて女性陣がてんやわんや、コナミ君(仮)は端っこで置物のように座っている。

 

キャッキャとはしゃいでいる女性陣に男が入る隙はないのだ、フリードがいたらフリード共々空気となっていただろう。

 

しかし、話し込んでいるうちに母親の表情が暗くなっていく。

 

「義母様、どうなされた?もしや体調がすぐれないのでは」

 

「いいえ、違うの。違うの…………」

 

そして、ついに涙を流し始め一同は戸惑いを隠せない。

 

「私が何もしてあげらなかったのに、なんであの子を忘れてたのかすら分からないの」

 

「おばさん、それは…………」

 

「なにが起こってるのか分からない、あの日から分からなかったけど…………」

 

涙にぬれた顔を上げ、彼女たちに笑いかける。

 

「あの子を支えてくれて…………本当に、本当にありがとう…………!」

 

泣いて感謝する姿に、何も言えなかった。

 

元々一人で動き実の親をほぼ知らずに生きてきたゼノヴィア、親と決別に近い別れ方をしたイリナ、そして親と呼べるものがいないコナミ君(仮)。

 

言葉など見つからず、どうしていいのかもわからず戸惑う三人組、こういうところがまるっきり役に立たないのが戦闘に特化した者たちの悲しい所である。

 

「あ、あの!その、辛いことかもしれませんが覚えてなかった頃はどうなってたんですか?」

 

「…………最初から二人いたのが気のせいみたいな、そもそも初めから一人しかいない(・・・・・・・・・・・)のに二人だった頃が当然っていう時期があって、でもいつの間にか一人だけになって…………ごめんなさい、あの時のように思い出せないの」

 

「……………………」

 

一誠の母親も、父親も転生者(一樹)の被害者だと彼らは認識した。

 

何らかの記憶改ざんが施されており、一樹の死と同時にまた記憶が変わっている。

 

後で特別な精密検査が必要だろう。

 

「もう終わったことだ。義母様は気にする必要はない」

 

「だからその義母様ってのはやめなさいゼノヴィア!まだ籍も入れてないでしょう!?そもそも結婚はこの国じゃあ年齢的にまだできないんだからね!」

 

「…………ふふっ、貴女達を見てたらこれからも一誠を任せられそうね。」

 

「……………………」

 

「何が起きてるのか分からないけど、あの子を頼みます」

 

深々と恩人たちに頭を下げる、が本来の計画とは少し、いやかなり変わってしまっていた。

 

これから決闘者(デュエリスト)を狙う輩が増えていくと思われ、一番狙われやすいのは一誠の家族である。

 

人質にされてしまえば一誠でも手は出せない、そういう問題でコナミ君(仮)以外の人員をここに住まわせるよう説得する、そのつもりで来ていたが泣かれた上に妙に事情を察せられて託されたとなったらこっちが困る。

 

「………………………」

 

「え、ここで後は任せた?おい、ちょっと待て!」

 

何だか居づらい空気になった居間をさっさと逃げるように出ていくコナミ君(仮)、事情を説明するのはイリナとゼノヴィアだけでいいのか怪しい所なのだが。

 

ともかく、ギャーギャーワーワーと騒がしくなり始めた兵藤家を背にして一人で自宅に帰宅するコナミ君(仮)であった。

 

「……………………」

 

1人になるというのは久しぶり過ぎて少し寂しくなるものだ。

 

フリードもしばらくは帰ってこないため、一人で家に籠って一人でデッキを回そうと考えていたら自宅につく。

 

「……………………」

 

「おかえりなさいア・ナ・タ☆ご飯にする?お風呂?それともア・タ・ク・s」

 

魔女の服装をした知らない不審者(大嘘)が玄関で待ち伏せしていたのでそっと扉を閉めて通報した。

 





知らない魔女って一体誰なんだろーなー(棒)

そう言えば何か無限がどうのこうのの龍もいたり…………?


此度の事件にある程度の事情を知るアザゼルと当事者のフリードが他神話の神仏の前に呼び出される。決闘者(デュエリスト)を引き抜きたい彼等に静止を求めるアザゼルとは対称に、フリードは大きく立ち回る。

次回、『堕天使と堕神父』

狂人の言葉は狂ってるからこそ穿つ、デュエリストスタンバイ。


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堕天使と堕神父

コロナの自粛で外に出てないのと超スランプで筆が進まず投稿場所を間違えるバカです。(バカは禁止用語です〜)

ろくなのじゃなくてすみません。



 アザゼルは悩んでいた、今目の前にいる奴らをどう説得するかを。

 

 目の前にいるのは世界を創造することだってできる神仏の類、ほとんどが嘘偽りを申すなと言わんばかりの圧をはなち引き受けるんじゃなかったと今更後悔していたりする。

 

 せめてもの救いは全員が敵ではない事だろう。

 

 北欧神話のオーディンが一応、こちら側についているだけマシというもの。

 

 帝釈天やシヴァのような好戦的なものほど決闘者(デュエリスト)を欲しがっている、なにせ神話級の化物を人の身ながら神器のように、いやそれ以上の力を発揮して戦う英傑など修羅を求める神仏が手を出さない訳がない。

 

 そんな魑魅魍魎と言っても過言ではない(神仏に対して非常に失礼ではあるが)空間にあくびをして退屈している白髪の神父服を着た人間の青年が異様に目立っている。

 

 それもそのはず、この男こそ決闘者(デュエリスト)の一人であり殺伐とした空間に呑気に居座っている猛者である。

 

 さらに加えて青年が札付きの悪行神父でつい最近まではアザゼルの組織に所属していたフリードという事実が更に胃を痛める。

 

 だって、こいつを拾ってあっさり追放したの堕天使だから。

 

「では、今回起きた事件について話し合おうではないか」

 

「ワハハハハ!まずはあのドラゴンについてだな!」

 

 予想はしていたが、覇王龍ズァークについての議題は最優先だった。

 

 並大抵の神魔では太刀打ちできない誰も知らないドラゴンが突如現れ、破壊行動をしてしまったのだ。

 

 もちろんズァークは邪龍扱いで現在は消失という形となっているが経緯が経緯だけに新たなズァークの出現を危惧しているのだ。

 

 専門家(コナミ君(仮))が簡易にまとめた資料にはカードに宿す力が邪悪な精神に刺激され大きく変質した結果、あのように具現化してしまったとのこと。

 

 カードに宿りし力等は異世界の精霊云々と研究者にとってものすーーーーーごく頭を悩ませるものであった。

 

 実際、コナミ君(仮)自体が異世界からの転生者ということであっさり暴露しやがった上にズァークこと一樹も転生者ということを明かされたことでアザゼルは一度目の前が真っ暗になった。

 

 後にこのことを知ったとある死を偽装した最悪の悪魔が狂喜乱舞して遊戯王を用いた侵略を考えていたが、資料でコナミ君(仮)よりも何十倍もやべー奴(ヒトデ・クラゲ・カニ・エビ等)がいることを知って割とマジで侵略するかを悩ませていたりする。

 

 お前ごときが闇のゲームで勝てると思うな。

 

 それはさておき、配られた資料で全神魔が頭を悩ませているのを尻目にフリードが一言。

 

「デッキ調整したいから帰っていい?帰りまーす」

 

「待て待て待て待て!今っ、お前が抜けたら俺が死ぬ!主に内臓が!」

 

「いや、俺ちゃんこれ(カード)ノリで使ってるだけだし。皆もノリっしょ?」

 

「俺が知るか!というかあんなのノリで使ってるのかよ阿保なのかお前ら!」

 

 阿保なことに最初からノリで使っています。

 

「まあ、剣より使いやすいのは確かだし?ま、だれでも使おうと思ったら使えるから気にするな」

 

「気にするわボケえええ!」

 

 もはやどのような醜態をさらそうとお構いなしにフリードに掴みかかるもあっさりと逃げられてしまう。

 

 フリードにとって、いや、決闘者(デュエリスト)にとって今回の件は本当にどうでもいいのである、本人たちにとっては。

 

 決闘者(デュエリスト)が起こした事件は決闘者(デュエリスト)が解決する、それが彼らのスタンスなのだから。

 

「はー、つまんね。無駄に時間つぶすなら辞めたらこの仕事。いっそ全員ぶちのめせばモーマンタイ?」

 

 その発言に空気が凍った。

 

 絶句しているのではない、『たかが』人間に倒される、彼ら彼女らのプライドを大きく刺激したのだ。

 

「小僧、その言葉を口にするとは、覚悟はできているのだろうな?」

 

 ゼウスが言ったのか、シヴァが言ったのか、もう誰かが言ったなんてアザゼルには分かりたくないし分りもしない。

 

 どうしてこんなにも精神を攻撃してくるのか全く意味がわからない。

 

「覚悟?そんなモンはなぁ」

 

 なんでこんな奴が一時的にとはいえ神父に所属していたんだと事情を知らない者は悪い笑み笑みをみて思わざるを得なかった。

 

 だが、次のセリフで思考が止まらざるを得ないとは誰も思いも考えもしなかっただろう。

 

「持つわけないじゃーん!神程度(・・)どうとでもなるのに俺ちゃん死なないもーん」

 

「…………ああくそっ!言いやがった!」

 

 たかが人間が神をどのように扱えるなど不敬で済むレベルではないが、決闘者(デュエリスト)達は違う。

 

 彼らが戦う意志ある限りどうとでもなる。

 

 神すら倒す奇跡だって(・・・・・・・・・・)起こせるのだから(・・・・・・・・)

 

「じゃ、帰るわ」

 

「あ、おい待て!くそっ、最初から丸投げする気だっただろあいつ」

 

 そもそもコナミ君(仮)も現地説明が難しいので最初から最後まで丸投げするつもりだったということは言うまでもない。

 

 たった一人しか頼りにならないのを逃がしてしまったアザゼル、支援者はオーディンのみ。

 

 周りには決闘者(デュエリスト)を手に入れたい格上としか言えない神仏ばかり。

 

「(こんなもんどうやって対処しろというんだ!だが、ここでやらないと俺たち(堕天使)が詰みかねない。あからさまな逆境だが…………やってやろうじゃねえか!)」

 

 研究者としてはらしくないが、ロマンチストとしては燃える展開となってきたアザゼルは無理矢理そう考えて舌戦を繰り広げることになる。

 

 この燃え始めた魂が新たなものを引き寄せるかどうかはまだ誰も知る由もない。

 




最近、LotDを買いました。最初にめっちゃ叩かれてたけど、やってみるとかなり楽しい。時械神みんなも使おう(ステマ)


 アザゼルが奮闘する一方でコナミ君(仮)は目の前の魔女に困っていた。そこで魔女はある提案をして彼等に入ろうとする。それは、彼女に決闘者(デュエリスト)としての資格を試すものだった。

 次回、『デュエリストと資格』

 決闘者(デュエリスト)は選ばれず作れるのか、デュエルスタンバイ。


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