バカとうさぎとご注文ですか? (zaurusu)
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プロローグ

「だぁ!ちくしょー!!」

 

どうも皆さん、僕は吉井明久です。

 

ちょっとお茶目でキュートな高校二年生の僕は、ただいま絶賛ピンチになっております。なぜかというと……

 

『待てー!吉井ぃいいいいいい!!』

 

『貴様、秀吉と遊園地に行ったなんて羨まし……許すまじ!!』

 

『異端者には死の鉄槌を!!』

 

『然り、然り、然り!!!!!』

 

背後から僕を追いかけてくるのは、黒いマントを身を包んだ、カルト教団。通称FFF団。殆どがFクラスの男子生徒で構成され、男は愛を捨て哀れに生きるをモットーに掲げた集団である。簡単に言うと、自分たちはモテないからモテる奴は敵だ!……と、ただの嫉妬の集まりで出来たようなものである。

 

普段は、バカの集まりなのに、こういうことになると、異常なまでの統率略と団結略が発揮される恐るべき集団である。

 

なぜ、僕が逃げているかというと、事の始まりは数日前に訪れた如月グランドパークでの出来事が原因だ。

 

僕と秀吉とムッツリーニは雄二と霧島さんのデートを面白おかしく……げほんげほん、とても素晴らしい思い出になるように色々と仕掛けを作ったんだ。

 

その時に、秀吉が美波達に言ったセリフがあらぬ誤解を受けて、地獄の鬼ごっこが始まったわけだけだ。詳しくは、ドラマCD僕と黒子と如月グランドパークを聞いてほしい。

 

それが、どういうわけかFFF団に伝わってしまい、今に至る。

 

くそ、どこから情報が漏れたんだ!

 

「アキぃいいい!待ちなさい!!今なら、屋上からのノーロープバンジーで許してあげるから!」

 

「明久君!大人しく捕まってください!詳しくO☆H☆N☆S☆H☆Iしましょう?」

 

「いや、それ死ぬから!!後、姫路さん!なんかお話の語呂がおかしいよ!?」

 

いつの間にか、美波と姫路さんまで加わっていた。

 

「待て、吉井!貴様に不純異性行為について聞かねばならんことがある!」

 

「げぇ、鉄人!」

 

「馬鹿者!西村先生と呼べ!」

 

さらに、追い討ちをかけるかのように鉄人事、西村先生が追いかけてきた。

 

「違うんです!これには深いわけが……て、うぉ!?」

 

弁明を始めた瞬間に、僕に向かってアイスピックが飛んできた。よく見ると、一際目立つ殺気を放つ、赤ゴリラがいた。

 

「雄二!貴様、僕を殺す気か!」

 

「たりめーだ!お前のせいで俺は危うく、人生の墓場を迎える羽目になったんだぞ!それに言っただろ、俺はお前の不幸が心底楽しくてしょうがないんだ!」

 

「外道!ゴリラ!悪魔!こうなったら奥の手だ!」

 

「あ?奥の手……まさか!」

 

僕はポケットからボイスレコーダーを取り出して、再生する。すると、雄二が何か慌て始めたが、時すでに遅し!

 

「翔子…よりも…姫路…の….方が…好みだな……胸も…大きいし。」

 

みなが、僕を追いかけるのをやめて、視線が雄二の方へと変わった。

 

「雄二、浮気は許さない。」

 

「翔子!お前、一体、どこから現れやがった!!」

 

「愛があれば、なんでも可。」

 

『諸君、ここは?』

 

『最後の審判を下す法廷だ!!』

 

『異端者には?』

 

『死の鉄槌を!!』

 

FFF団全員が雄二に向けて武器をかまえる。

 

「ちくしょう!こうなったら俺も奥の手だ!」

 

雄二も負けじと、ポケットから一枚の写真を取り出すと、それをFFF団目掛けて投だした。

 

『……………』

 

皆がそれをジーと見つめたのを、僕も気になって覗くと底には、ウェディングドレスを着た秀吉とタキシードを着た僕が写っていた。ウェディング体験の時のやつだ。

 

てか、これムッツリーニにこっそり焼き増ししてもらったやつじゃん!雄二の奴、どうしてこんなものを……

 

『吉井……』

 

今までにないくらい低い声に背筋がゾッとした。

 

先程よりも、濃厚な殺気が辺りに漂っていた。

 

「アキぃ?」

 

「吉井君?」

 

その中でも、美波と姫路さんがダントツで強かった。助かる方法はただ一つ!

 

ダーーシュ!!!!!

 

とにかく逃げるしかない!!

 

「あ、待ちない!!」

 

「逃げないでください!!」

 

『吉井ぃいいいいいい!!」

 

僕は逃げるよ!明日ある命のために!!

 

 

 

 

 

「ふぅ、助かった……」

 

「雄二、話はまだ終わってない……」

 

「翔子!これには深いわけが……がががが」

 

「はぁー、どうやったらこういう状況を作れるんだ、お前らは……」

 

事がことを呼び、その光景を見ていた鉄人は呆れるしかなかった。余談だが、この後、FFF団限定で補修が行われたとか。

 

 

 

 

「はぁ、何とか逃げ切った。」

 

あの後、ムッツリーニと秘蔵のエロ本3冊で交渉して、FFF団をどうにか巻いてもらった。その時に写真が使われ、それは明久が女装した写真だったが本人は知らない。

 

僕はというと、体育館裏にひっそりと佇んでた倉庫にの跳び箱の中にこっそり隠れてます。あと、五分でチャイムが鳴るだろうからそれまでの辛抱だ。

 

それにしても……

 

「こんな場所に、倉庫なんてあったけ?」

 

普段、FFF団から逃げるために逃走ルートや隠れ家の位置を把握するために、文月学園の全体図は把握してるつもりだったけど、こんな隠れた場所があったなんてね。

 

そろそろ、出ようかと思った時

 

「あれ、力がでないや……」

 

何故か、急に眠気が襲って、力が入らない。ちょっと無茶しすぎたのかな? この後、鉄人の授業だし遅れるわけには……

 

「だめだ……」

 

そして、景色が遠くなり、どこか吸い込まれていくかのような感覚が襲う。そのまま、僕は気を失った。

 

 

 

 

とある山道にて

 

「ウサギ、ウサギ、ウサギ〜」

 

今日はお得意先にパンを届けに行った時の、帰り道の時に事は起きました。

 

「だ、大丈夫ですか!?」

 

なんと、道端にブカブカで傷だらけな制服を着た私と同じくらいの男の子が倒れていました。

 

「………うーん」

 

よかった、意識はあるみたい。でも、いたるところ、泥だらけで肌も少し冷たい。このままじゃ、風邪ひいちゃうかも!

 

携帯を取り出して、助けを呼ぶことにした。

 

「あ、もしもし、お姉ちゃん!大変なの!人が倒れてて……」

 

事の状態を説明し終えると、直ぐに行くと、お姉ちゃんは言いました。

 

「大丈夫だよ!今、お姉ちゃんが迎えにくるから……」

 

私が手を握ると、男の子が握り返してきた。もう大丈夫だから、しばらくの辛抱だからね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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2話

「うーん……は!」

 

しまった、逃げ切った安心感から思わず寝てしまった。

 

てか、次の授業は鉄人が担当するから遅刻しようものなら容赦なく鉄拳制裁が下され、補修室(地獄)行きだ!

 

それだけはなんとしても防がなければ!

 

「あれ、なんでベットの上にいるのかな?」

 

急いで起き上がると、ふと、違和感を覚え、下を見ると何故かベットの上にいた。

 

僕の記憶だと、跳び箱の中にいて、埃かぶった冷たい倉庫の床下で寝落ちした記憶があるんだけど……

 

目の前に広がるのは、どこをどう見ても倉庫なのではない。

 

埃などなければ、冷たい床でもない暖かくポカポカ木の床だ。

 

それに……

 

「あれ、いつのまに着替えたのかな?」

 

制服だったはずが、私服に変わっている。

 

それと、なんだか視線が少し下がったような気がする。

 

というか、全体的に縮んだような……

 

「あ、気がついたんだね!」

 

扉が開くと、そこには見知らぬ少女がいた。なにやら、手には鍋のような物を手に持っていた。グツグツと音を立てて、いい匂いがしてきた。

 

「あ、あのー……」

 

「あ、まだ安静にしてなきゃダメだよ?元気そうだけど、あんなに傷だらけで冷たくなってたんだから! 」

 

君は誰?と聞こうとしたら、聞く前にベットに戻された。

 

「あ、紹介がまだだったね。私は保登心愛だよ!よろしくね!」

 

「へぇー、心愛さんか。優しくて暖かそうでいい名前だね。あ、僕は吉井明久って名前だよ。よろしく……でいいのかな?」

 

「えへへ、そうかな〜」

 

名前を褒められたのが、すごい嬉しいみたい。

 

若干、ホットココアの事を思ったのは内緒だけどね……

 

「えっと、明久君はなんであそこにいたの?」

 

「えー、なんて言えばいいのかな……」

 

今まで、あった事をまとめるとこうなる。

 

FFF団の処刑から逃げ、美波と姫路さんの話し合いと言う名のお仕置きから逃げ、西……鉄人の事情聴取から逃げてきて、倉庫の跳び箱の中に隠れていて、その間に寝てしまった気づいたらこの部屋の布団で寝ていた。

 

こんな馬鹿な話を誰が信じるのだろうか。

 

でも、事実には変わりがないし、誤魔化すのは僕は苦手だしな……何より、こんな可愛い子を騙すことなんて僕にはできない!

 

「えっと、実は……」

 

僕は今見でのことを包み隠さず、心愛ちゃんに伝えた。まぁ、それが僕の日常だったし、美波と姫路さんが怒って僕にお仕置きする事は理不尽な理由もあるけど、殆どは僕が悪いわけだし。

 

まぁ、特にいじめられていた訳でもないし、何より雄二たちといて退屈しなかった事はないから、僕的には面白おかししい笑い話的な感じで喋ったんだけど……

 

なんか、心愛さんの様子がおかしい。

 

なんか、話の途中で「そんな……」とか「なんで……」とか呟いていたんだけど、僕には不思議でしょうがなかった。

 

そして終いには……

 

「明久くん……じっとしてて」

 

「え、あ、心愛さん!?」

 

うっすら涙を浮かべ、何か失言でもあったのかと思って謝ろうとしたら、、僕に抱きついてきた。

 

「辛かったんだね。大丈夫、ここには明久君を虐める人なんていないから」

 

耳元でそう囁かれた。

 

「え、別にそういう訳じゃ……」

 

僕の話に虐めの要素なんてあったかな?たしかに、やりすぎな所はあるけど……それ以外は別にどうって事ないし。

 

「無理しなくていいから、落ち着いてね」

 

とは言え、こんな可愛い女の子に抱かれたのは初めてだし落ち着き用にも落ち着かない。何よりいい匂いが……は、僕は変態じゃない!

 

それから、明久は数十分間にも心愛に抱きつかれ、その間に慰められらのだが、慣れていない分心愛から「落ち着いた?」と聞かれたが、心臓がどくどくと爆発しそうで、それどころではなかったのだが、なんとか落ち着いかことができた。

 

「あ、お粥作ったから食べて!」

 

成る程、先程からするいい匂いはお粥だったのか。それに、見た目もいい。

 

スプーンを持って、頂こうかと思ったら、僕が持つより先に心愛さんが先に取ると適度にお粥をすくうと、火傷しないように息で優しく冷ますと

 

「はい、あーん」

 

FFF団がこの光景を見たら、即刻死刑になる事間違いなしの美少女によるあーんをしてきた。

 

恥ずかしいので、自分で食べると言ったんだけど……

 

「だーめ!明久君は怪我してるんだから!」

 

と、反論され、物凄い恥ずかしかったけどあーんをすることになった。

 

「ど、どうかな?」

 

一口食べて見たが、正直言うと味がなかった。

 

「やっぱりまずいよね?……私、パンなら上手く作れるんだけど、他の料理は全くで……」

 

心愛さんが少し、暗くなった。

 

でも、明久はそんな事は思わなかった。

 

「え、不味くないよ?」

 

「え?」

 

「確かに、味はないけど……暖かくて僕は好きだよ?」

 

正直、姫路さんや姉さんの殺人料理をいつも食べたからこのくらいはね……

 

あ、でも暖かいのは本当だよ?お粥が暖かいからじゃなくて、別の何かを感じるんだ。

 

多分、心愛さんの優しさなんだと僕は思う。薄味を作ろうとして意識しすぎたんだと思う。

 

現に、その優しさがこの料理に現れてる。

 

「そっか、ありがとう。優しんだね。明久君は……」

 

「そうかな?」

 

よく、馬鹿でお人好しだとは言われたけど、優しいとは言われたことがなかった。

 

「うん、なんか年下の子とかに優しそうだね」

 

「まぁ、昔の自分を見てるみたいでは可愛いからね」

 

「うん、私もわかるよ!明久君の場合、ちっちゃい子に、バカなお兄ちゃんとか言われても許しちゃいそうで、なんだか似合う気がするよ!」

 

「あはは……」

 

実際言われてるのだが、笑ってごまかした。

 

その後はと言うと、お粥を心愛さんのあーんで全部食べた後、心愛の姉であるモカさんが着替えを持って来てくれた。心愛さんよりも大人びた風貌で優しいお姉さんとはこの事を言うのだと思った。

 

心愛同様に僕の話を聞かせたところ、泣きじゃくってまた抱かれてしまった。しかし、心愛さんの時とは違ってドキドキよりも安心感が強かった。

 

そして、僕は暫く保登家にお世話になることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




遅れすぎた


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