ある一族、ボーダーへ (千紫万紅)
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プロローグ1

前回は設定集だったけど、今回から話に入っていきます!



 気がつくと私は水の中に居た。

 とても澄んでいて、外の景色も見えるけど私の意識がはっきりしないのか、周りはぼやけていた。

 ぼやけた視界で辺りを見回してみると、私は暗い部屋で円柱状のカプセルに入っていることがわかった。

 ふと私が正面を見ると、さっきまで誰もいなかったのに女の人が立って私のことをずっと見ている様な気がした。

 私は、今この状況にぼやけた頭だがとても不安を覚えると同時に、とても安心できるような錯覚に陥った。

 安心できる感覚は、目の前の女の人を見ている時だけだった。

 私が女の人を見て、少しでもこの不安をぬぐい去ろうとしていた時、私は急激な眠気に襲われ抵抗することもままならないまま、意識は闇へと消えていった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 何分、何時間、もしかしたら何日何カ月単位で寝ていたかもしれない眠りから私は目覚めた。

 しかし、私の意識の覚醒は平凡なものではなかった。

 私は身体に違和感を感じ、自分の体を見てみると、私の体にはいくつもの管が取り付けられていた。

 管からは絶えず私の身体に何かが投与されていたが、すぐに死なないことから毒物の類であることは否定された。

 私は動かせぬ身体を動かすのを諦め、正面を見るとまたあの女の人が立っていた。

 前回よりもぼやけた視界はマシになっており、女の人の顔は何故かぼやけていたが、女の人の頬を伝いこぼれていく雫ははっきりと見ることが出来た。

 それを見ることが出来たと同時に私の意識はまた、闇へと消えていった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 次に起きた時、私はカプセルではなく診察台のような場所に寝かされていた。

 私の周りを引っ切り無しに多くの人が駆け回っているのが見えた。

 

 「意...た!です...血...せん!」

 「戻...!...対に...!...故...!」

 「この...では...ん....す!」

 「ええい!そ....はわ....る!何..だ!意.....てきて...ず.........や血......昇し..!」

 

 大きな声のはずなのに、ところどころ聞き取れない。

 私の身体はどうなったの?あなた達は誰?あの人はどこ?

 そんな考えばかりが頭の中をぐるぐるとまわっている。

 もうあの女の人を見ることが出来ない?そんなの嫌だ...嫌だ!

 

 「心肺と血圧が上昇し始めました!こんな事があり得るんですか?!」

 「どうしたんだ!」

 「トリオン外部供給機の中に溜めてあったトリオンがすべて吸収されました!」 

 「何だと!?まったく!これだから異常個体(イレギュラー)は!仕方ない...ありったけの供給機を接続しろ!最悪すべてなくなってもかまわん!また他から取ってくればいい!」

 「「「「「わかりました!」」」」

 「これから最終調整だからな。これ以上何も起きないでくれよ?」

 

 

 今度ははっきりと周りの音を聞きとることが出来た。

 だが、呼吸器から気体が送られてくるとたちまちに意識が遠のき、また闇へと消えていった。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「私...花、そろ……さい」

 

 私を呼ぶ声がすぐ耳元で聞こえてくる。

 何故呼ばれているのが私とわかったのかという疑問は尽きないが、考えても答えなど出る訳もなくあっさり私は考えることを放棄し、重い瞼を開けると目の前にカプセルから私を見ていた女性の顔が、私のすぐ目の前にあった。

 

 

 「...誰?」

 「ねぼすけさんやねぇ。うちは災花ちゃんのお母さんやよ」

 「お母さん...?」

 「そうやよ、それにしてもうちに似て、かいらし顔やわぁ」

 

 母はそう言うと、私の顔と髪を何度も撫でてくれた。

 私を撫でてくれるたびに、母の匂いが感じられた。

 

 「起きたばっかりでかんにんしてな?これから災花ちゃんを鍛えるんよ」

 「うん、大丈夫」

 「おもに受ける訓練は、戦闘訓練、座学、そんで体力づくりやからおきばりんさい(がんばりなさい)

 

 私はその日から1年間、みっちりと訓練を受けさせられた。

 母が親身になって教えてくれるから、私も精一杯がんばった。

 訓練の過程で知ったのだが、どうやら私は他の姉達よりもすべての能力が抜き出ており訓練するたびに強くなっていく私を見て母はとても嬉しいようだ。

 私の体は15歳をベースにされているが、どうやら15歳での平均身長よりも小さいようで、母も心配していたが私は私なりに小さい身長でも戦える力を身に付けた。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 そして1年が経過し、一回目の私の誕生日に近付いたところで母から訓練の最終テストとして近くに接近してくる国をメイドを連れて計3人でマザーを破壊してきなさいというものだった。

 

 「災花ちゃん、紹介しますえ?こっちの紅い髪がアモン、こっちの白い髪がアスタロト、仲ようしたってな?」 

 「ご紹介にあずかりました。アモンです。勿論女です。そしてこっちのおっとりしたのが」 

 「アスタロトでーす!よろしく頼みまーす!」

 

 2人ともないすばでー(ナイスバディー)で私はまっ平ら。

 アモンはアスタロトの自己紹介が終わると、アスタロトの服をひっぱって隣の部屋に行ってしまった。

 隣の部屋から何かで叩く音と鈍い音がし、時折何かが飛び散る音が聞こえるのは気のせいだろう。

 しばらくすると、2人とも戻ってきた。アスタロトだけゲッソリしていたが...。

 

 「ほんならアモン、アスタロト、災花ちゃん任せるなぁ」 

 「承りました。私アモン、精一杯頑張らせていただきます」

 「わかりました!がんばります!」

 「そうそう災花ちゃん、1回目のおめでとうやらかうちからプレゼントがあるんよ」

 

 そう言って母は、自分の胸の谷間に手を入れ小さな箱を取り出した。

 私はその様子を見て黄昏ていると、アモンとアスタロトから「これから大きくなりますよ」「まだ一年なら希望はありますよ!」とフォローを入れてくれたが、持っている者から言われても余計むなしくなるだけなんだよ。

 

 「災花、お誕生日おめでとうやわぁ。これは災花ちゃんの武器やから大切に扱ってぇな」

 

 そういって母は箱から黒い腕輪を取り出し私の腕に嵌めてくれた。

 

 「ありがとうお母さん!大切にするね!」

 「災花ちゃんは短剣の使い方も上手やったけど、鉤爪(クロー)の扱いが一番上手やったから鉤爪型のを贈らせてもらったんよ。戦闘で役立ててぇな」

 「私がんばる!」

 

 私はアモンとアスタロトを連れて家の玄関まで行き、教えてもらった通りに空間に向けて拳を振るう。

 すると、空間にひびが入りその作業を何度か続けると私の身長を超え2人が通れるくらいの大きさの穴が出来た。

 穴の向こうには、砂漠が広がっており近くの惑星国家とつながったとわかる。

 

 「今回災花ちゃんが行く国は砂漠の国エリモス。あんまり強い国でも無いから物足りんと思うかもしれんけど、油断せずにきばりんさい」

 「わかった!」

 

 私は勢いよく穴へと飛び込み砂の国エリモスを星を喰う為の戦いを開始した。

 

 

 




読んでくださりありがとうございました。
感想、評価、誤字脱字報告など遠慮なく送ってきてください!

星喰いの国家には住人はおらず、メイドと一族しかいません。
家は和装で日本屋敷をベースにしています。
屋敷の大きさは東京ドーム1.5個分です。


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プロローグ2

 「暑い...」 

 

 砂漠の国に降り立った私を待っていたのは、灼熱地獄と大差ない砂漠の熱気だった。

 私はあまりの暑さに、日傘をアモンにさしてもらっても汗が止まらない。

 しかし、私とは反面にアモンとアスタロトは涼しい顔をして汗ひとつかいていない。

 

 「なんで2人とも汗かいてないの...」

 「鍛えておりますので」

 「それはですね。長生きしているとこんな砂漠がある国にも攻めることがあるんですよ。それを何回か繰り返せば自然と慣れてきましたね」

 「長生きって...2人とも何歳なの?」

 「私は忘れましたけど、アモンは確か今年でごひゃ「殺す!」熱い熱いですって!洒落になってませんよ!ジョーク!お茶目なジョーク!!」

 

 余計なことを言ったアスタロトは、アモンに頭を掴まれ熱い砂漠に頬を押し付けられています。

 私はこの時、年齢の話は絶対にしないと心に誓いました。

 しばらくして、アスタロトのお仕置きが終わると、アスタロトの頬は赤くなっており痛そうに頬をさすっていたが、すぐに赤みが引いていき、いつも通りの肌色になっていた。

 

 「アスタロト治り早くない?」

 「折檻の受け過ぎで、治癒能力は高いんですよ。いやー、私じゃなかったら死んでますね」

 「アスタロト、今度は頭を砂漠に埋めてほしいようね?」

 「冗談!冗談ですって!」

 

 そんなアモンとアスタロトの婦婦漫才を観賞しながらしばらく歩くと、壁らしきものが遠目で見えてきたがアスタロトが私の前に手を出し私を制止させる。

 アスタロトは遠目に見える壁を睨みつけている。

 

 「アスタロトが目が良いのは知ってるけど、この距離で見えるものなの?」

 「彼女の視力は両目とも5.0なので、この位置からでもはっきり壁が見えているのではないですか?」

 「お嬢様、どうやら先客がいたようですよ」

 「え?!」

 

 アスタロトのいきなりの発言に驚きながらよく目を凝らして遠くにうっすらみえる壁を見るが何がどうなっているのか全く分からない。

 アモンに関しては見えないことがわかっているのか、戦闘態勢に入れるよう準備をしている。

 

 「とりあえず、あそこまで行ってみようよ」

 「そうですね。微妙に煙が新たに上がっているのが気になるんですけど、まぁ敵は全部排除すれば解決ですね」

 「アスタロト、慢心しているのなら後ろから刺しますよ?」

 「まじめにやりまーす!」

 

 仲良いな~。

 

 そんなことを考えながら、全速力で壁に向かって走る。

 私が本気で走っても大体60km/Hしか出ないのに対し、アモンとアスタロトは私以上に早く走ることが出来る。

 年を重ねるごとに強くなっていくのが星喰いの特徴なので、私もまだまだ強くなる余地があるということで不満たらたらな心を落ち着ける。

 

 

 大体30分ほど走り続けると、壁が徐々に近づくにつれ大きくなっていく。

 壁のすぐ近くまで来ると、壁の中では未だに戦闘が続いているのか爆発音やらいろんな音が聞こえてくる。

 私は初めての実践がすぐ手を伸ばせば届く距離にあると思うと、そろそろ我慢の限界が近い。

  

 「お嬢様、作戦はどうなさいますか?」 

 「攻撃する奴は...全部殺す!」

 「「承りました」」

 

 私達3人はそれぞれの黒いトリガーを取り出し、装備する。

 

 「起動」 

 

 私がそうつぶやくと、腕輪が反応し両手に大きな鉤爪型のトリガーが装備される。

 鉤爪の大きさは、私よりも大きく重いが全然扱える。

 このトリガー専用の能力もその使い方も頭に入って来た。

 アモン達も既に戦える状態なので、私は右手の鉤爪「黒桜」の手のひらを壁に当てて能力発動のキーワードを口にする。 

 

 「ブラスト!」

 

 ドガァッ!!

 

 すると、壁に直径3mほどの穴が開き壁の内側で戦闘をしていた人たちが一斉にこちらを向く。

 勢力的には、この国の兵士たちが圧倒的不利に立たされているようで、この国のものではないであろうトリオン兵が大量にいた。

 おもに、バンダーとモールモッドが多数とバムスターが5体ほどいる。

 

 経験が少ないのか訓練が足りてないのかは知らないが、明らかにこの国の兵士は弱い。

 トリオン兵は多いが、敵の近界民は3人しかいない。

 

 「アモン、アスタロト、この国に攻めてきた敵を殺るよ」

 「好き勝手やるよー!」

 「それではお嬢様、ご武運を」 

 

 2人はそう言うとそれぞれの方向に向かって走って行き、戦闘を開始する。

 

 「さてと、死にたい人から向かってきてくださいねー」

 「こんなところに来て、そんなこと言うなんてよっぽど死にたいらしいな!」

 

 3人ほど、自分の戦っていた人たちを軽く倒し私の方に向かってきた。

 まぁ、こっちに来るまでに何もしないとは行ってないんですけどねー。

 私は左手の「白桜」の手のひらを相手の方向に向け、黒桜と同じようにキーワードを行って能力を発動する。

 

 「炸裂誘導弾(トマホーク)!」

 

 すると、いくつもの光の線が出現し敵ABCに向かって飛んでいく。

 

 「こんなもんに当たるかyドドドン!」

  

 敵Aが難なく避けたトマホークは軌道を切り替え、背後から敵Aの身体に着弾し炸裂していく。

 その時に少々威力が強すぎたのか、トリオン切れで生身になってからもトマホークが降り注ぎ、爆発の煙幕が晴れるときには既に敵Aはただの肉塊になっていた。

 

 「てめぇ!よくも仲間を!」

 「そんなこと言われても私だって使うの初めてなんだからなにが起こるかなんて知らないよ」

 

 私が呆れたように言い放つと、敵Bはキレたようで突っ込んできた。

 

 「てめぇも同じように肉塊にしてやるよ!」

 「愚直だー」

 

 私はタイミングよく、飛び込んできた男を黒桜で捕まえる。

 掴まれた敵Bは首だけを出した状態で喚き始める。

 

 「俺らがどこの国の者かわかってやってんだろうな!俺たちはタイラントだぞ!!」

 「そんな国知らん。あと上から話しすぎね?」

 「軍事国家タイラントをしらねえだと!?てめえどこの国だ!」

 「私の居る国に名前なんて無いと思うけど?いろんな国からは星喰いって言われるけど」

 「なっ!星喰いだと?!伝説上の存在じゃないのか?!」

 

 私が星喰いだと言うと、周りの人たちが騒ぎだし蜘蛛の子を散らすように一斉に逃げ始める。

 捕まえた男も逃げようと必死で逃げようとしているのか、もぞもぞと動いている。

 

 「悪かった!俺が悪かったから助けてくれ!お前に手は出さないから!」 

 「じゃあ良いよ」 

 「ふぅ...助かった」

 

 男が安堵したところに私はキーワードを口にする。

 

 「圧壊(コラプス)

 

 そう言うと男の体が急に弾け飛び、生身の男が出てきた。

 男は何が起こったのかわからない様子で私を見てくる。

 だから、私はもう一度キーワードを口にした。

 

 「圧壊(コラプス)

 「待っグシャッ!」 

 

 男は私の手の中で弾け飛んだ。

 返り血が辺りに飛び散り、私にもかかった。

 敵Cがその様子を振り返りざまに見ていたが、引き返すことも無くどこかへ行ってしまった。

 恐らくだが、輸送船のある場所まで戻ったのだろう。

 

 「うわっ、黒桜汚れちゃった。白桜の能力もう1つあるから試したかったのに逃げちゃったからどうしようかな」

 

 私が黒桜に付着した臓物を落としていると、すごい勢いでモールモッドとバンダ―がこちらに向かってきた。

 私は爪の部分を向かってくるモールモッドに向け、能力ではないが機構の1つを使用する。

 

 「射出(インジェクション)

 

 すると、鎖の付いた爪がモールモッドに飛んでいき弱点の目に突き刺さる。

 私は手を横なぎに払い、死んだモールモッドで向かってくるモールモッドを薙ぎ払っていく。

 モールモッドが面白いくらい簡単に吹き飛んでいく。

 爪が折れたもの、目が壊れたもの、足が無くなったもの、一度の薙ぎ払いで多くのモールモッドを戦闘不能に追い込むことが出来た。

 私は、爪からモールモッドを外し爪を元に戻す。

 モールモッドを全滅させ、今度はバンダ―で遊ぼうと思いバンダ―を見ると、浮遊する物体がバンダ―を解体していた。 

 

 「アスタロト!私が遊ぼうと思っていたバンダ―取らないでよ!」 

 「え!?すみませーん!!」  

 

 私が叫ぶと、同じように謝罪の言葉が返ってきた。

 浮遊するする物体、アレはアスタロトの黒トリガーで「浮遊する盾(フローディングシールド)」。

 形状を好きなように変えることが出来、他のメイド達からはファ○ネルやシールドビ○ドと言われている。

 アレの嫌らしいところは、全部アスタロトの思考にタイムラグ無しに動かせることだ。

 

 「すみませんお嬢様、流石にキツイかなと思いまして~」

 

 いつの間にかアスタロトがこちらに戻って来ていた。

  

 「今度はちゃんと聞いてよ?じゃないとアモンに言いつけるからね!」

 「ほんと気をつけますから良いつけだけは勘弁してください!あの人腕細いのに怪力なんですよ!怪力女ですよ!」 

 「あ」 

 

 私は絶句してしまった。

 アスタロトの後ろで、笑顔のまま額と手に青筋を浮かべたアモンが立っていたからだ。 

 

 「お嬢様どうしたんですか?そんな終末でも見たような顔をして」

 「アスタロト、ご愁傷さま!」 

 「ええー!どうしたんですかぁぁぁ??!!?!?!」

 「アスタロト、殺すぞ?」

 

 私が折檻されることは無いが、ちょっと見たくないので敵Cが逃げた方向へ私は走った。

 後ろから阿鼻叫喚の声が聞こえたが、気にせず走った。

 途中バムスターの死骸を見つけたが、気にせず走った。

 

 少し走ると、輸送船があったであろう場所に到着した。 

 輸送船は無かったので、私は本来の目的であるマザートリガーのためアモン達の元へと戻る。

 実際戻りたくないが...。

 

 結局仕方ないので戻ったが、案の定アスタロトが見せられないよ状態だった。

   

 「アモン、やり過ぎじゃない?」

 「これくらいで良いのですよお嬢様」

 「酷いですよお嬢様...いるならいるって言ってくださいよ...」

 「まぁほっとけば治るから良いか」

  

 5分ほど待つと、アスタロトは元に戻ったのでマザートリガーがあるであろう街の中央にある城に向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

 




読んでくださりありがとうございました。
災花の黒桜&白桜のモデルはfa○eのパッショ○リップの鉤爪が元になっています。


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プロローグ3

遅くなりました!すみませんでした!なんでもするのでゆるしてください(なんでもするとは言ってない)


 「これで大丈夫だよ。でも応急処置だからちゃんと医者に行ってね?」

 「ありがとうございます」

 

 私たちは、先ほどの戦闘で出たであろう負傷者を見つけたのでついでに手当をしながら城に向かっている。

 アモンもアスタロトもわたしのすることに賛成してくれている。

 しかし全く奇妙なものである。

 侵略しに来た国はすでに攻撃を受けておりそれに介入する形で私たちが侵略。

 私たちも侵略するためにマザートリガーのある城に向かっているのだが、私たちの戦闘で出た負傷者を放置するのも後味が悪いので、こうして負傷者を見つけては手当をしているのだ。 

 

 「というか、アモンはよく応急処置の道具を持ってたよね」 

 「戦闘で破壊された道具屋からパk...もらってきました」 

 「それだめだよね?!」

 「潰れた道具屋を漁ってたのはそういうことなんですか」

 「アスタロトも見てたのなら止めようよ!」

 「お嬢様、この世にはこんな諺があります」 

 「絶対ろくでもないと思うけど一応聞くよ」

 「一度地面に落ちたものは地に帰ったので拾った者のものです」

 

 そんな自信ありげな顔をされても悪いことは悪い。

 小さいころからずっと思っていたが、アモンは時たま変なことを言う。

 ただで持ってくるのは悪いことだとお母さんが言っていたので、とりあえず後で道具屋の人に謝っておこうと思う。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 しばらく歩くと、城の入り口の門前まで来た。

 

 「砂漠の国なのに意外に大きいね」

 「国の主の住処が大きいければ大きいほど国民からの信頼が厚いか、圧政を強いているかです」

 「でもさっき兵士はお城ににげていきったので、信頼は厚いようですね!」

 

 私的には国民から慕われているのに国を滅ぼすのはあんまり気が進まない。

 

 門前には門番はおらず、簡単に城の中に入れた。

 そして、城内に入っても人は全くおらず静まり返っている。

 

 「国を捨てて逃げたのでしょうか?」

 「うーん、とりあえず警戒はしておいて城内を探索しよう」 

 「敵は見つけたら倒していいですよね?」

 「せめて捕獲して」

 

 私たちは一つ一つ部屋を調べていったが結局誰とも出会わなかった。

 途中、アスタロトがアモンに対して数回悪戯をしていたが、すべて躱され折檻された。

 

 「残るはこの部屋だけですけど、中から人の気配が大量にします」

 「見取り図によると、その部屋は王の間ってなってますよ」

 「私が先に入るから2人とも私の後ろで待機しててね?」

 「お嬢様、危険すぎます」

 「まぁまぁ先輩は過保護すぎですよ。たまには無茶もさせてあげましょうよ」

 

 珍しくアスタロトがまともな意見を言ってることにアモンは顔をしかめながらも、私が部屋に先に入ることを了承してくれた。

 部屋に入ると、部屋には傷ついた兵士や国民が大量に居た。

 辺りを見回していると、1人の少女が私のほうに近づいて来る。

 少女は、薄黄色の髪に黒い瞳を持ち服装は体のラインが出る服を着ている。

 

 「初めまして。(わたくし)は砂の国第一王女アイリス・エリモスと申します。父と母は現在侵略を受けた影響で負傷したので代理として私が参りました」 

 「私は災花・アポカリプス。一応この星の侵略者かな?」

 「えぇ、存じております。この度は襲われている国民や兵士を助けていただいてありがとうございました」

 「私たちも侵略者ってことわかってる?」 

 「わかっております。お願いですからマザートリガーを破壊しないでください!」

 

 そんなことを言われても私たちは侵略者。

 できれば私も弱った星を破壊するのは、気が引ける。

 

 「アモン、アスタロト、相手の王女さんやめてほしそうなんだけど」 

 「こればかりは仕方ないです。弱いのが悪いのです」

 「確かに同情はしますけどね」

 「お母さんに聞いて従属させちゃダメかな?」

  

 私が2人に聞くと、二人とも「あー...」というような顔をした。

 確かにお母さんが言ったのは「破壊」だが、お母さんは気まぐれなので頼めば破壊から変わるかもしれない。

  

 「アモンかアスタロト、お母さんに連絡取れる?」

 「一応アスタロトがメッセンジャートリガーを持っていますが」

 「アスタロト、そのトリガー貸して」

 「いいですよ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 メッセンジャートリガー

 

 起動し、伝言を伝えると伝えたい人にまで空間跳躍(ジャンプ)する。

 必要なトリオン量は文字数に比例して大きくなる。

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 私はアスタロトからメッセンジャートリガ-を受け取り、お母さんに対しメッセージを入れトリガーを起動させるとトリガーが手元から消える。

 

 「あの...何をしているんですか?」

 「ちょっと黙ってて。メッセージ待ってるんだから」

 

 私が突っぱねるように答えるとアイリスはシュンと落ち込んで部屋の隅に行き、ブツブツと独り言を言いながら床に「の」の字を書き始めた。

 その様子を見てアモンは汚物を見るような顔でアイリスを見、アスタロトは苦笑している。

 しばらくいじけるアイリスの様子を見ていると、手元にメッセンジャートリガーが返ってきた。

 メッセージの内容は、従属させることを了承するもので、星自体がひどいものなら技術者を送ってくれるとのことだった。

 私は初めてお母さんが気まぐれな人で良かったと安堵した。

 

 「星は破壊しません。その代わり私たち一族へ従属してもらいますけどいいですか?」

 「どうせ私なんていろいろ頑張ってきましたけど砂漠ばっかりで作物のさの字も無く慕ってくれる国民を飢えさせてばかりで役に立たないんですよ...挙句他の惑星から攻められて結局マザートリガーが破壊されちゃうんですよフフフ」  

 「なんか王女さん暗黒面に堕ちようとしてない?」

 

 暗黒面に堕ちそうになっていたアイリスをアモンが叩いて引き戻し、破壊しないことを伝え代わりに従属を提案したら破壊されるよりはマシと言い、従属を了承した。

 

 その後、(ゲート)から技術班と医療班、合わせて計10名がお母さんから送られてきた。

 アイリスは両親に従属したことを報告しに行き、両親からは仕方なかったがこれからも頑張っていこうと決めたようだ。

 送られてきた技術班のメイドたちはまず食糧問題から解決するために計画を立て、医療班は負傷者を一か所に集め治療を開始している。

 

 「とりあえずはこんな感じでいいかな」 

 「何から何までありがとうございます。この恩は忘れません!」

 「また攻められたら技術班と医療班のメイドたちが排除してくれるから。でも頼りすぎはダメだから戦い方を教わるといいよ」

 「わかりました」

 

 私は技術班と医療班のメイドたちに後のことを任せ、エリモスの人たちに見送られ(ゲート)をくぐり家へと帰った。

 

 

 

 

 

 




読んでくださりありがとうございます。
誤字脱字、質問等ございましたらご気軽にどうぞ!
 
アイリスは菖蒲のことで、花言葉はメッセージ、希望、信頼、友情、賢さです。


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少女、玄界に行く...はず

 私がエリモスから帰ると、お母さんにいきなり呼び出しを受けた。

 

 「行きたくないよ~...」 

 「ご愁傷さまです(行ってみないとわかりませんよ)

 「アモン先輩、本音と建て前が逆ですよ」

 「あれ?でも私の直感が怒られると囁いてこない...」

 

 私のサイドエフェクトは「直感」

 能力も名前通り、本能的になにが起きるのかがわかる。

 だけど、わかるのは私自身のことだけでほかの人のことなんかはわからない。

 まぁ、そんなもんだろう。

 

 私はしぶしぶお母さんの部屋に行くことにした。

 部屋のほうに一歩ずつ歩くたびに、気持ちが沈んでいく。

 怒られるわけではないはわかっているが、わざわざ地雷原に自ら突っ込んでいくような感じは何なんだろう。

 とても嫌な予感がする。

 

 「入りたくない」

 

 結局、いろいろ考えているうちにお母さんの部屋の前までたどり着いてしまった。

 いつもなら、特に何も思わない龍の襖が今日に限って重圧(プレッシャー)をかけてくる。

 

 「お母さん、入るよ?」

 「ええよ。入ってきんさい」

 

 意を決して部屋に入る。

 お母さんは爪をいじっており、特に怒っているような様子はない。

 だが私は知っている。

 お母さんは爪をいじっているときは、ろくなお願い事をしないということを...

 

 「災花、とりあえずお疲れ様やねぇ。先客がおったようやけど自分なりに考えて行動できたのは偉かったね」

 「怒らないの...?」

 「自分のやりたいことをやったんやろ?褒めはしても怒りはせんよ」 

 

 私は安堵で、腰が抜けた。

 畳にへたり込んでいると、お母さんは惑星軌道予測装置を押入れから取り出し私に見せてきた。

 

 「運のええ事に近々もう一個惑星国家が近づいてくるんよ。確か名前が...玄界(ミデン)やね」

 「え、でも玄界(ミデン)は次女の崩花お姉ちゃんが行ってるよ?」  

 「そうやっけ?まぁええよ。行ってきんさい」

 「休みがないー!」

 「まぁ来るまでにまだ三日間はあるからゆっくり休んでてええよ」

 「じゃあ行くよ」

 

 私は三日間の休日と引き換えに玄界(ミデン)に行く決意をした。

 我ながら安い対価だと思うが、お母さんのいうことだから何か意味があるはず!

 私は勝手にそう思いながら部屋を出た。

 

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 母side

 

 うちは嬉しそうに部屋を出て行った娘を見て何か伝え忘れたことがあったと思ったがすぐに思い出せないので思い出すことをやめた。

 ぶっちゃけ今回、災花を玄界(ミデン)に行かせる理由もさらに強くなってもらいたいからである。

 

 「先に介入してた国家が国家やし、面倒なことになるのは100%決まっとる。うちの娘はどう対処するのか見ものやねぇ」

   

 娘が処分した敵はうちが数十年前に壊滅寸前まで追い込んだ軍事国家タイラント。

 うちへの恨みはまだあるのか知らんが、子供らを狙うのは予測出来る。

 

 「これからが楽しみで仕方ないわぁ。フフフ」 

 

 この笑った声が廊下まで漏れており近くを通ったメイドたちが何か間違いを犯したと勘違いし泣きながら先輩たちに助けを求めたのは秘話である。

 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 休日一日目

 

 この日はとりあえず疲労を抜くために、家の外の露天風呂に朝から入りに行った。

 驚いたのはメイドたちが大量に居たことだ。

 みんな急いで出ていこうとしたが、引き留め親睦を深める意味でも一緒に入った。

 恋バナや髪の手入れを教えてもらい、「これが夢のガールズトーク!」と心の中で興奮していた。

 途中からアモンとアスタロトが入ってき、「次からは誘ってください」と言われたので誘おうと思う。

 風呂の後は、コーヒー牛乳を一気飲みした。

 アスタロトが出てくるのが遅いので見に行ったら頭から逆さに露天風呂に刺さっていた。

 まるで犬〇家のようだった。

 

 「ちゃんと剃ってるんだ...」

 

 どことは言わないがまじまじ見ていたらほかのメイドたちに「気にしない気にしない」と言われながら露天風呂から連れ出された。

  

 二日目

 

 私が生まれた場所に行ってみた。

 手術室で指揮を執っていた人を見つけ、会いに行ってみた。

 あの時はうっすらとしか見えていなかったが、見た目は若い。

 風貌からしても研究員の見本のような格好だ。

 ヨレヨレになった白衣、ぼさぼさの髪、これは女の人としてどうなんだろう。  

 

 「その節はお世話になりました」

 「あぁ異常個体(イレギュラー)じゃないか。どうしたんだい?こんな辺鄙なところにきて」

 「私は災花っていうんです。ずっと興味があったんだけど来る機会がなかったから今日来ました」

 「興味があることはいいことだ。軽く説明するとここはトリオン技術の開発と製造部門だ」

 「トリオン兵でも作ってるんですか?」 

 「あんな機能美のない糞以下の存在なんて作るわけないでしょ。何をするにしても自分の手でしないとやりがいないでしょ」

 「え、じゃあ何を作ってるの?」 

 「主にトリガー関連だね。黒トリガーは大量にあるがなじまない子がたまにいるからノーマルなトリガーを作ったりしている。もちろん要望は言ってくれれば出来るだけ適える」 

 「ということはあのメッセンジャートリガーも?」 

 「あれは結構前に作った骨董品だよ。まだあったんだね」

 

 あれが骨董品というとは中々すごい。

 お土産として、骨董品のメッセンジャートリガーを3つほどもらっておいた。

 

 「新しいのが欲しくなったらいつでもいいな。それと整備も任せな」

 「いろいろありがとうございます」

 「使われないより使ってもらったほうが助かるんだよ」

 「在庫処分的な?」

 「いや、せっかく作ったのに使われないなんて可哀想だろう?」

 

 この人は口では骨董品などと言ってるけど、すべてのトリガーに等しく愛を注いでいるんだろう。

 

 「そういえば、名前教えてください」

 「私の名?私はザガンっていうんだよ」

 「なんか男っぽいですね。よく言われるよ」

 

 ザガンはハハハと笑いながら研究室の奥に消えていった。

 

 三日目

 

 この日は明日のための準備に使った。

 服なども持っていくと考えると相当な荷物になってしまう。

 この問題を解決するために、朝からザガンのもとに相談に行った。

 

 「収納用のトリガーを作れるかだって?」

 「明日出発なんですけどどうにかなりませんか?」 

 

 ザガンは少々考えた後、夕方にまた来てくれといった。

 夕方まではまだまだ時間があるので、とりあえずお母さんのもとに遊びに行くことにする。

 

 「お母さん~遊びに来たよ~?」 

 「よう来たねぇ。何して遊ぶん?蹴鞠するん?」 

 「する!」

 

 蹴鞠はお母さんといつも一緒にする遊びで、ルールは先に落としたほうの負けというシンプルなものである。

 100を超えたら球を1個ずつ追加していくというルールが最近できた。

 

 「今日は負けないよ!」

 「いつまでも付き合ってあげるから気張りぃや」

 

 蹴鞠をしながらいつも私はお母さんと話をする。

 雑談からお母さんのことや私のこと。

 たまに歌に合わせて蹴りあう。

 

 まる たけ えびす に おし おいけ あね さん ろっかく たこ にしき し あや ぶっ たか まつ まん ごじょう せきだ ちゃらちゃら うおのたな ろくじょう しち(ひっ)ちょうとおりすぎ はちじょう(はっちょう こえれば とうじみち くじょうおおじでとどめさす

 

 「あ!」

 「今日も災花ちゃんの負けやねぇ」

 

 考え事をしていたら、私は球を1個落とし私の負けとなった。

 気づけば、もう日が傾き始めてる。

 庭先に植えてある枝垂桜に夕日の赤色が重なり合ってとてもきれいだ。

 

 「お母さん!私が帰ったらまたやってくれる?」

 「いつでもやってあげるから強うなってき?」

 「約束だよ!」 

 

 私はザガンのところまで走っていく。

 しかし研究室にザガンはおらず、研究員の一人が私に近づき私にネックレスを渡してきた。

 

 「所長は疲労のためお休み中です」

 「あー...なんかごめん」 

 「いいんです。所長も最近休んでいなかったのでいい機会です」

 

 確かに休まなそうなイメージあったけど本当に休んでなかったんだ。

 私はネックレスを受け取り、部屋に急いで戻った。

 

 すでにアモンとアスタロトが荷物をまとめてくれていたので、もらったばかりの収納型トリガーをアモンに渡し荷物を仕舞ってもらった。

 

 出発日当日

 

 いつもより早く目が覚めた....食堂で

 昨日の夜、メイドたちがパーティーを開いてくれたのは覚えている。

 周りを見ると、酔いつぶれたメイドたちが辺りに転がっていて死屍累々の状態だ。

 

 「ちょっ!みんな起きて!片付けないとお母さんに怒られるよ!」

  

 私が焦ったように起こし始めると、怒られるのワードに反応して起き始めた。

 みんな怒られるのは嫌なのだろう。

 その後は急いで片付け、いろいろとチェックをしていたら出発は昼を回っていた。

 

 「ほんならいってらっしゃい。気を付けるんよ?気が向いたら行くかもしれんからね」

 「気を付ける...よ?え?来れるの?!」 

 

 私が質問した瞬間、足元に(ゲート)が開き重力に従って私はアモンとアスタロトと一緒に落ちた。

 

 

 

 



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少女、玄界に降り立ち一騒動

 拝啓お母様。そちらはとても暑く、メイドたちも夏バテしていました。かくいう私も冷房の効いた部屋から出たくはありませんでした。

 しかし私は今、暑いほうがマシだと思えるほど寒い場所にいます。

 どこだと思いますか?

  

 「いきなり上空に転送するのはやめてよぉぉぉぉぉぉ!」

 

 現在私たちは雲より上から落ちてます。

 とにかく寒い!身体を見てみると徐々に指先がパキパキと音をたてながら凍り始めていた。

 

 「だいたいマイナス50くらいでしょうか。結構肌寒いですね」

 「先輩ちょっと冷静すぎません?!私寒すぎて...へくしょん!死にそうなんですけど!」

 

 アモンとアスタロトはいつもどおりの平常運転だ。

 特にアモンは平常ぶりがいつも通り過ぎて逆に頭のネジがいくつか飛んでるように思える。

 

 「これからどうしますか?このままでは地面に激突して真っ赤な花が咲きますよ?」

 「先輩それはシャレにならないですって!」

 「とりあえず全員トリガーを起動してそれからアスタロトのトリガーに乗ってゆっくり降りる!」

 「起動!」

 

 アスタロトがトリガーを起動させると私たちの足元にシールドが来た。

 とりあえず地面に赤い花を咲かせずに済んだがまだ問題はある。

 

 「寒い!どうにかして!」

 「私のトリガーじゃ落下速度は軽減できても寒さまでは軽減できないんですよ!」

 「これだからアスタロトは使えないんですよ。お嬢様、一緒に抱き合えば温まりますよ」

 

 そういってアモンは自身の服を脱ぎ始めた。

 

 「ちょちょちょ!ここではだめだから!アモンが凍えちゃうから!」

 「先輩!この非常時に百合なんて見たくないんですよ!」

 「アスタロト...殺すぞ?」

 「理不尽!」

 

 私とアスタロトは必死になってアモンを止める。

 アモンはおとなしく服を着てくれた。

 すると、いつの間にか街が見え始め白く大きな建物が視界に入った。

 私たちが落とされたのは、日本の三門市だということは地上に降りてすぐ知ることになる。

 白く大きな建物はボーダー基地だということは三門市を知ってすぐのことになるとは思っていなかった。

 

そして私たちは減速したまま川へと落ちた。

 約3分間の出来事である。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 災花たちが上空から自由落下している直後の基地内 

 

 

 「ん?上空に奇妙なゲート反応が出現しました」 

 「奇妙とはどういうことだ?」 

 「なんというか、通常のゲートより小さいんです。まるでドアじゃなく窓から入ってきたようにゲートが小さいんです」

 「わかった。付近にいるものに周囲の確認に向かわせてくれ」

 「了解しました」 

 

 忍田本部長の指示でB級隊員が3名向かうこととなった。

 しかし、すでに災花たちが川に落ちた後であった。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 B級隊員たちが向かう頃、災花たちは川から上がり橋の高架下で服を乾かすため各自のトリガーを起動していた。

 すでにアスタロトは起動していたため寒いとかは特にないため焚火を起こさせている。

 

 「アスタロト、これで焚火を作りなさい。訓練でやったでしょ」

 「発火装置か何かないんですか?!」

 

 アモンはアスタロトに木の板と木の棒を投げ渡し、自分の服を絞って水を絞っている。

 ついでに私の服も絞ってもらった。

 

 「あ!先輩火種ができましたよ!」

 「それではそこに落ち葉でも被せて火を大きくしてください」

 「今春なのにあるわけないでしょう!?」

 

 アモンの無茶ぶりにアスタロトを見ていると哀れに感じてくる。

 私は収納型トリガーを起動し、燃えそうな紙を数枚出し火をつけてあげた。

 

 「うわーんお嬢!先輩が虐めるんですよー!」

 

 アスタロトは私に縋り付き、日ごろからの不満を吐露した。

 アモンにはもうちょっと優しくしてあげるように後で行ってあげようと思う。

 

 「アスタロト?ちょっと話があります」

 「ひっ!助けてぇぇぇ!」 

 

 アモンはアスタロトの頭を掴み柱の陰に引きずっていった。

 

 バキッ!ゴキッ!ゴッ!ゴッ!ドゴゴゴゴ!

 

 柱の陰から何か鈍い音がしているが絶対に見に行きたくない。

 音が鳴りやむまで私は自分の服を乾かすことに専念した。

 その後、アモンがアスタロトを引きずって戻ってきたときにはアスタロトは白目を剥いていた。

 トリオン体同士のため衝撃がフィードバックし何度も殴られたのだろう。

 

 「すみませんお嬢様、虫がついていましたので処ぶ...退治しました」 

 「あ、うん。ありがとう」

 

 相変わらずアモンは平常運転。

 

 「本当にこの辺りにゲートの反応があったのか?」 

 「司令部からの情報じゃこのあたりだ」

 「せっかくの休みなのにな~」

 男数名の声が聞こえてきた。

 その瞬間のアモンの行動はとても速かった。

 瞬時に焚火を消し、ダウン中のアスタロトを橋の鉄筋部分に投げ置き瞬く間に私たちの痕跡をほとんど消した。

 かくいう私はアモンの脇に抱えられ鉄筋部分に隠れた。

 

 「お嬢様、どうされますか?今後の為というならここで処分したほうが賢明かと」

 「私のトリガーじゃ2人までしか倒せない。1人お願いするね。アスタロトはアモンのおかげでしばらく起きそうにないし」

 「申し訳ありません。もう少し手加減していれば...」 

 

 そんなことを話しているうちに高架下に同じ服を着、武器らしきものを持った男たちが来た。

 右から順にA,B,C,と仮定し、Aは拳銃を持ちBは手ぶら、Cは刀らしきものを持っている。

 

 作戦としては、このまま私たちの下まで歩いてきたと同時に攻撃を仕掛ける。

 顔を見られないように3人同時に倒し、さらに本体が出現したと同時に再度攻撃を仕掛け仕留める。

 

 私の使用するトリガーは「白桜」「黒桜」

 アモンの使用するトリガーは「炸裂鎖(サラマンダーチェーン)

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 マザーの解説コーナー(ここでは鍵括弧を使いません)

 

 唐突に任されたんやけど、まぁうちも暇やさかい解説するわ。

 

 アモンの「炸裂鎖(サラマンダーチェーン)」は使用者のトリオンを鎖に変え使用するトリガーで名前の通り任意の位置やタイミングで爆発する鎖である。

 ちなみに触れても爆発するから注意しましょう。

 このトリガーのいやらしいところは、鎖といっておきながら実は小さなトリオンの糸が何重にも束ねられて鎖の形をしており、使用者の手腕1つで鎖から糸になったり糸から鎖にしたりと厨二臭いトリガーだ。

 普段は使用者の周りを浮遊しており、無限に跳弾していく。

 鎖の先端には釣り針のように返しがついており、刺さった場合引き寄せることもできるから結構汎用性の高いトリガーです。ちなみに糸して攻撃をする場合対象を切断可能なので気を付けましょう。

 

 ふぅ、まぁこんなとこやね。

 え?ファンタジー臭い?そんなんうちに言われても知らん。作者に言いや 

 以上で解説は終了するで?必殺仕事人がそろそろ始まる時間やさかい。

 標準語で喋るのもしんどいわ。 

 

                      マザーの解説コーナー Fin

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「特に異常はないな」

 「それじゃさっさと戻ってゲームの続きでもしますかね」   

 「だな」

 

 私たちが攻撃を仕掛ける前に男3人は踵を返し、帰り始めた。

 しかしここで逃がすのはもったいない。

 なぜならこの星の戦闘員にどのくらいの力があるのかを図るいい機会だからだ。

 

 男たちは前に2人後ろに1人というフォーメーションで高架下を出ようとしている。

 後ろのBをアモンに任せ、私はBを排除した後、頭上からA、Cを捕まえ「変化炸裂弾(トマホーク)」と「圧壊(コラプス)」を発動すればいい。

 

 アモンは後ろを歩くBの首に細い糸にした「炸裂鎖(サラマンダーチェーン)」を徐々に首に巻き付くように操作していく。

 そしてアモンが素早く糸を引くと...

 

 「それでよ~ってどうした?さっきから話に入ってこないけ...なっ!」

 「お前なんでトリオン体から生身に戻ってるんだよ!」

 

 Bは再度「炸裂鎖(サラマンダーチェーン)」が鎖の状態で巻き付き鉄筋の上へと連れ去られた。

 AとCが気を取られているうちに私は2人の後ろに飛び降り、2人を白桜黒桜で掴み持ち上げる。  

 

 「くそっ!なんだこれ!」

 「誰かは知らないが今すぐ離せ!」

 「圧壊(コラプス)変化炸裂弾(トマホーク)

 「「緊急脱出(ベイルアウト)!!」」

 

 私がキーワードを言うと同時に2人は叫び、するとB同様に光となって大きな建物の方角へ飛んで行った。

 まさか逃げられるとは思っていなかったため多少驚きはしたが、どこに逃げかを追跡するのは後でもいい。

 

 「逃げられたね」

 「多分遠隔操作か、本体が別の場所にいるかですね」

 「とりあえず今は...」

 「捕虜の尋問ですね」

 「お前ら近界民(ネイバー)だな!貴様らに話すことなど何もない!」

 

 私とアモンがBを見ると反抗する姿勢を見せた。

 しかしそんなことは逆効果である。

 相手が抵抗する姿勢を見せればそれをへし折り再起不能にすることで定評のあるアモンにそんなことをしても自白する時間が早まるだけだ。

 

 それから約15分後、私たちはこの世界の大まかな情報を手に入れた。

 もちろん捕虜は記憶を消して開放しておいた。

 

 



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