専業主夫目指してるだけなんですけど。 (Aりーす)
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▶︎1

10月12日に1話を再構成致しました。転生要素を入れていましたが、話に何も絡まない為、不必要と判断した為です。もし改定前に読んで下さった方は再び1話をご覧になっていただけると嬉しいです。読まなくても内容は一切変わらないので、大丈夫ではあります。

変更前 主人公は転生者、前世の記憶あり

変更後 主人公は食戟のソーマの世界観で生まれ育つ。前世などは存在しない。少し親に設定あり(重め?)

また、今まで投稿した話しの前書きや後書きに書いた転生に対する系統の質問返答も消させていただきました。


 

 

 

 もうすぐ中学が終わる、なんて言えば色んな人が受験を彷彿とさせる言葉だと思う。ほとんどの人が通る道ではあると思う。家を継ぐだったり、中学卒業後に就職の道を考えない限りは、だけど。

 

 世の中は今、料理というものがかなり重要視されている。それは日本のみならず、世界中が料理を極め自らを高みに連れて行こうとしている。

 

 料理に全てをかける人もいれば、もちろんかけない人だっているだろう。俺は後者の方だ。料理は出来るが、全てをかけるほどの覚悟はないし……俺はある夢のために料理を練習している。

 

 俺の夢、それは『専業主夫になる事』これに尽きる。……言いようによってはヒモになるんだけどさ。

 

 この世界では料理を作るのは子供がいれば母親になる。まぁそれは別に不思議な事ではないが、ウチの家庭ではそれが当たり前とはあまり思えなかった。

 俺が幼稚園に通っていた頃、父親が消えた。死んだわけではないだろうが、何も言わずに消えた。理由は中学に入ってから聞いた。その時にはほとんど離婚に近い話し合いを繰り返していたらしい。

 

 それ以来、食事は母が常に作っていた。幼稚園の頃、俺の記憶には2人で仲良く作っていた光景が今でも鮮明に思い出される。

 

 あんなに仲が良かったはずなのに、それは嘘だったのだろうか?……あまり信じたくはないが、人は仮面をつけるものだと思うと怖く感じてしまった。あの笑みも全て、薄っぺらいもので……写真で3人で笑い合う姿も嘘だったと思うと、人の怖さが思い浮かんだ。

 

 せめて、そう思い俺は料理をし始めた。母の手助けをするために、だ。……だが何度作ろうと、母の料理には遠く及ばない。味や見た目ではない、何かが俺にはないように感じてしまったのだ。だからこそ、母の料理以上ではない。

 

 これに関係するが、俺にはそれなりに話す先輩がいる。その人は料理が相当美味い。料理を食べた時、俺には足りない何かがあると感じた。母と同じように、だが形が違う俺の知らない『何か』が。

 

 それが分からない限り、俺は一般人程度の料理しか作れていないと考えている。どうしても、誰かが作った料理より何かが足りない気がしてならないのだ。毎日夜、誰もいない時に作ったりもするが変わりはしない。

 

 店を持ちたい、というのも考えない。だから将来を担える料理人になるという目標を掲げていないのだ。今は料理人である事が普通、そんな風に近づいている世の中だ。

 

 だが俺にそんな腕はないし、料理における覚悟もない。だが俺はいつも憧れて夢に見る事がある。もう一度父と母が仲良く厨房に、もしくはキッチンに立つ姿を。

 

 でもそれは叶わない。だから自分がなろうと思った。先程言った通り腕はないからこそサポートに回りたい。でも店に出せる腕でもないから、家庭での料理を主に置く専業主夫になりたいと思った。

 

 ……長々と語ったが相手はいない。むしろ俺はこういう事を話した事もないし、人と会話するのは苦手。さらにコミュニケーション能力も乏しいと言った、客相手には最も向いてないし、正直専業主夫の前にそう言ったところをどうにかするべきだと思う。

 

 独り言とか、そういうのだったら得意なんだけどなぁ……

 

 

 

 ここから話は変わるが、日本には遠月学園という学園がある。料理の専門校みたいな感じらしいが……そこに行こうとは思ってなかったし、普通の高校に通うつもりだった。

 

 だが先輩から驚きの事を言われた。『遠月学園の入学試験を受けてもらう』という内容を。……正直目が点になった。さらに母からの許諾は得ているらしい。

 

 というかいきなり面白い所に連れて行くからー!みたいに誘われたら、そう言われたってだけだ。……思い切りの良い先輩だって知ってたけど、ここまでとは思ってなかった。

 

 さらに先輩とすら目を合わせて会話も出来ないので、何か反論する事も出来ずに受ける事になった。……というよりやる気満々に見えたらしい。

 

 ……てか明日試験って嘘やろ……いいや、受からないし。先輩に何故か日記つけてみてーって言われた。……まぁ受からないし、受からないし。大事な事は何回でも言います。明日試験終わったら日記書き始めようと思います。おやすみなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〇月〇〇日 天気 くもり

 

 

受かったんだけど。なんで?ほわいじゃぱにーずぴーぽー?一般人受からせるってヤバくない?誰かと間違えてるんじゃないの?

 

現実逃避はやめよう。なんだっけ、なんか試験官の人がいてね…2人だったかな?喋ってたのは主に1人だったけど。

 

金髪のロングヘアーの子とその付き添い?なんかメイドみたいな立ち位置な気もしたけど、名前は聞いてなかった。だって夕飯何にしよーかなって思ってただけだし

 

しかも気づいたら俺ともう1人以外いなくなってた。というか入学試験まで料理なんだね。卵料理だったかな?それがテーマだった。夕飯卵料理にしようかなー?って思ってたら卵料理がテーマって言われた。

 

もう1人の子はすぐに調理に取り掛かってた。いや、気づいたら完成してたよその子の料理。入学試験より夕飯の方が大事だったから…

 

でも不合格って言われてた。美味しそうだったのになぁってぼーっとしてたら俺も呼ばれた。とりあえずプレーンオムレツを作った。合格って言われた。

 

もう帰って良いって言われたから帰ってきて、日記書いてみた。なんかよくわからないので寝ます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

△月△△日 天気 いつか晴れる

 

 

合格通知届いちゃったよ、マジで正式な奴。先輩には褒められた。悪い気はしなかったけども、少し複雑。複雑な感じが顔に出てたようで先輩は変な顔してた。怒らせちゃったのかな?

 

あっちは寮に入るってさ。自由が失われていく感覚って、こんな感じなんだね。しかも俺は口下手だから何かと言えないし。

 

数日後には入学式って書いてあった。それと試験官の子はすごい子だって噂がある。「神の舌」って言われてるらしいんだけど、ならなんで俺受かったの?

 

いつか本人に聞けたら良いな。ごめんコミュ障なんだもん、日記でだけこういう長ったらしいこと言うだけ。実際アホみたいに無口だから…先輩くらいだ、それなりに話せるのは。それなり(当社比)

 

本人の名前を呼ぶどころか苗字すら呼べないと思う。付き合い長い先輩ですら、先輩としか呼べないし。

 

というか本当、なんで受かったのか未だに分からない。料理は専業主夫に重要なスキルだからそれなりにってレベルなんだけど。…専業主夫の前に相手がいない件は放っておこう。

 

母が喜んでたのは、正直嬉しかったです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○月ーー日 天気 くもり、その後くもり

 

 

やばい、明後日入学式や。寮に移らないといけないからって荷物の準備で時間がほぼ消えた。明日は出発しないといけない、てぇへんだてぇへんだー…

 

とりあえずそれなりには調べておいた。なんか色々ヤバいらしい。例えば退学が簡単にあったり、食戟とかいうなんかバトル的な料理があるらしい。3分クッキングみたいに平和的にはいかないのかな…

 

それと十傑って言うんだったかな?その人達がトップ10みたいな感じらしい。まぁ会う事ないだろうから十傑って言葉しか知らないんだけど。

 

個人的には試験の時に一緒だった子が気になる、ふりかけごはん食べたかった。すごい美味しそうだったし。でも不合格って言われてたし残念。お店とかないのかな?

 

まぁ折角受かったから専業主夫スキル上げの為に頑張る!あ、やっぱヤダ、なんか急に退学を貰った方が良い気がしてきた。家から遠いのも面倒だよ。はぁ…日記でまでため息つくって

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月日は犠牲になったのだ 天気 犠牲の犠牲にな…

 

 

吐きそう、人多くて吐きそう。都会怖すぎ………

 

電車じゃないよあれ、もはや人を乗せた魚雷とかそんなレベルだよ。人多すぎて怖い。田舎者は帰っていいですかね…?

 

というより学園に日記って持ち込んでいいのかな?思ったより書くのが楽しくなってきた。毎日書いたりしたいなぁ

 

今日はホテル泊まり。先輩も実は通ってたらしい、遠月さんに。お金もあるんだとしてもいつか高額請求されたりしたらどうしよう、と思ったりする。多分人柄的にしないと思うけど

 

入学したから本番みたいな事を言われたけど、雪なら余裕でしょーって軽く言われた。退学余裕って事かな?

 

さらに先輩に料理を作ってもらえた。やっぱりすごい美味しかった、口下手なのが本当にイライラするくらい、無口で食べてた記憶しかない。先輩はニコニコしてたけど、先輩だから許してくれたんだろうなぁ

 

とりあえず目標は専業主夫スキル上げ!って事で先輩にはそんな感じに伝わったと思う。スキル上げるっていうサインしたし、人差し指を上に向けたし。先輩はもっとニコニコしてた。その後は談笑してた。

 

そろそろ眠くなったから寝ようと思う。勉強は学生の本分…なんて認めたくはないんだけども、ちょっとくらい頑張るぞー、おー。みたいな感じでいこうと思う。おやすみなさい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

/月//日 天気 晴れて欲しくない

 

 

 

 

 

やっぱり退学になった方がいい気がしました、おやすみなさい




食戟のソーマがもっと広まってほしい


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▶︎1−2【先輩】

▶︎1やこれから投稿する▶︎2は主人公の日記、▶︎1−2【〇〇】などは主人公の行動を見た人達視点の話になります。【〇〇】の〇〇は誰視点か、を表します


 

 

 初めて会った時の印象は「一体誰なんだろう」という感情だった。目の前にいるはずなのに、目の前の人を見ていないかのような目つき。誰かと話す事がほとんどなく、口を開いた姿を見た事がなかった時期もあった。

 

 小学生の時に初めて出会い、それからもう10年にいくかいかないか…そんなレベルだとは思う。なのに、未だに本当の意味で目を合わせてくれることは無い。話すことは出来るし、意思疎通はできる。だけど、しっかりと見てくれていないような気がする。

 

 いつしか、夢中になっていく自分がいた。千崎雪夜という少年の何かに、惹かれている自分がいるのが分かる。今は恥ずかしい……訳ではないけど、心の中の半分は彼で満ちていた。

 

 あの時初めて、ほんの少しの微笑みを見たときに……全てが変わったんだと思う。料理を作って食べさせた時……あの時は自分を見てくれた気がした。あぁ、こんな風にも微笑むんだなって。他の誰でもない、店の料理でも無く。

 

 

 

 

 

 

 

 あたしの、小林竜胆の料理で、見た事のない微笑みを浮かべてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

「なーなー、雪ー!ちょっといい所行こーぜー?」

 

 今日もあまり返事は返してくれない。だけど明確に意思を表示してくれている。今もあたしが行こう、と言った時にはあたしの後ろについてくれている。

 

 付き合いが長くなって、不思議と言いたい事は分かってくる。あたしがわざわざ確認しなくても良いくらいに。あたしの言いたい事は雪は分かってくれる、雪が言いたい事は私も分かる。

 

「たのしい所!さ、行こ行こー!」

 

「……はい」

 

 そっけない返事に聞こえるだろうけど、あたしにはこの返事が心地良い。返答まで時間がかかるのも、ほんの少し流れる静寂も最早必要となる時間の一つだ。……いつもは嫌だけどねっ!たくさん話したい事はあるもんっ♪

 

 あたしは高校生として遠月学園に入学してすでに一年が経つ。入学式が終われば2年経った事になるから、3年生になる。雪はこれから高校生になり、高校生活を楽しむと思う。中等部から通っていたから実質は2年間にプラス3年されることになるけど。

 

 ……もしかしたら友達できないかもしれないけどー……いや、その時はあたしがいるからな!

 

 雪には悪いと思ってはいるが、雪には遠月学園の入学試験を受けてもらう事になっている。雪のお母さんからも許可を貰った。普通なら雪が行きたい、という場所に行かせるべきなんだろう。

 

 でも、あたしや雪のお母さんは知ってる。毎日とはいかなくても、暇な時間には料理を作りレシピの考案をノートに書いている、そんな姿を。それをあたしや雪のお母さんには見せないようにしてる事を。

 

 レシピ自体は普通、と言っても良い。だけど、雪が作れば話は変わるのをあたしはよく知ってる。あまりにも美味しすぎる、という言葉でしか表現できないほど…料理の次元を超えているからだ。

 

 どうやって作るかを見せないのに、レシピを書いたノートを簡単に置いているのも、単純に自らの自信の表れなんだとあたしは思う。レシピを見た程度では誰にも真似できない……そう言っているんだ。

 

 一度聞いてみた事がある。どうして料理を作っているのか、と。そしたら簡単に答えは返ってきた。「……夢のため」とだけ。

 

 内容は知らない。どんな夢かも分からない。ただ、あたしには想像できないし……世界のどこを探しても雪の思想や夢、料理を完全に知る事が出来る人はいないだろう。

 

 でも、その夢を全力で応援したいと思った。その為ならあたしが踏み台になってでも、叶えさせてあげたいと。……だから遠月学園に入学させる、そう決めたんだ。

 

 正直、雪なら簡単に受かるだろう。無口、表情もほとんど崩さないから印象は悪く思われるかもしれない。だけど関係ない。雪には自信と、自信を裏付ける実力が有り余るほど存在してる。

 

 何も心配はしてない。……雪は遠月学園の入学試験を受けると聞かされ、少し驚いているようだ。……だがその目には確かに闘志が宿っているのが分かる。でも、それも一瞬で消える。

 

 そして、あたしにも聞こえづらい程の小さな声で言った。「……めんどい」と。……心配なんて持つだけ意味はない。試験を面倒と言えるほど、試験は雪にとっては『受かるのが当たり前』なんだろう。

 

 ……ふふっ、あー、やっぱ雪はすげぇな。必ず、雪は上に上がる人間だよ。あたしも自信を持って言える。

 

 多分暇だろうから、雪には日記をつけてみて?って言った。レシピを書くのは無し、とも。日記帳がレシピ帳になったら意味ないもんね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雪が受かった。分かってた事だし当たり前だ。心配だったのは審査員が薙切えりなっていう、通称「神の舌」と呼ばれる子だった事だったけど……余裕だったみたいだね〜。

 

 合格通知が来てから、雪にはホテルに泊まって貰うために2日前から、家から出る準備をしてもらった。ちゃんとやってるかーっ!と突撃しようとしたら、雪はパソコンで何かを見ていた。

 

 どうやら遠月学園の奴だとは思う……視力は悪くはないんだけどねー、覗き見みたいな形だから見づらいしー……

 

 雪はある所で手を止める、『食戟』と『十傑』の単語の所で。……でもそれも一瞬、中には食戟の内容や十傑に選ばれている人らの名前も載ってるはず。しかし、それは見ない。

 

「……十傑…別にいいか」

 

 ボソッと聞こえた独り言。雪からしたら、十傑なんてものには興味はないんだろうなぁ……。多分、選ばれても断るだろう。雪からすれば、『十傑』なんてものは邪魔でしかない。

 

 雪は目立つのは嫌うタイプだ。あたしとは結構真逆な気がする……あ、そこは良いや!称号なんてものに興味は抱かない、ただ抱いてるのは夢のひとつだけなんだろう。

 

 あたしも十傑に入っている内の1人だ。二席に付いてる。簡単に言えば遠月学園の2番目、という事だ。正直、あたしは一席の司瑛士には勝てない。……雪が見てるなら話は別なんだけどなー!

 

 あたしは面白かったり、ドキドキするなら別になんでも良い。……でも何よりあたしは、雪の隣にいれる存在でいたい。その為なら、絶対に勝てない相手だとしても挑める……なんてな!

 

 今は、雪の前にいる。ただそれは歳が上というだけだ。あたしは本当は後ろにいてもいけない、そんなレベルだ。……でもこの2年、あたしは何もしてない訳じゃない。必ず追いつく。

 

 それから雪は日記を書き始めたみたいだ。……内容がかなり気になるけど、日記を見るのは気がひけるし……嫌われたくはない、し。

 

 

 

 

 

 

 次の日、ホテルに到着したあたしと雪は部屋でゆっくりしている。あたしは帰らないといけないんだけどね〜……許されるなら泊まりたいけど!

 

 入学式までもう1日を切ったのに雪は平然としている。まぁいつも通りだよね。お祝いとして、あたしは雪に料理を作った。あたしが遠月学園に入学してから、会える頻度は高くなかったから……料理を作って食べさせるのはかなり久しぶりだった。

 

 不安もあった。雪が笑ってくれるか、そんな心配ばかりをしながら作った料理だ。いつもならもっと野生の子らを使うんだけど……持ち込めないしね!

 

 それに雪は……言うなれば安い食材で作ったものが好きだ。例えばフカヒレとかそう言った高級食材はまず食べないらしい。……安い食材であろうと、全てを生かし活かすのが雪の料理だ。

 

 あたしが作ったのは変哲も無いパスタだ。あさりが入るボンゴレパスタ、簡単に作れる部類のパスタだ。ただ少し辛めに作り、アスパラガスを少し入れている。

菜の花を入れても良かったし、あさりをワイン蒸ししてスープをかけても良かったけど…時間もあったし、手間はかけられない。

 

 変哲も無い料理を作る時こそ、料理っていうのは人が表れる。普通の料理を普通に作り、普通に食べさせ、普通に美味しいだけ……それでは料理人では無い。普通の料理を普通に作り……普通に食べさせるまでは同じだ。

 

 ただ美味しいではダメ、それは『生きた言葉』では無い。どう美味しいか、そこから旨味が言葉を展開させてこそようやく、『生きた言葉』の美味しいになる。

 

 雪は普段無口であたしの料理を食べていた。微笑むまではあっても、美味しいと言われても。……どこかあたしの中で、それは何かが違ったような気がしていた。

 

 今日、久しぶりに雪はあたしの料理を食べる。一口、二口と食べていく。……あたしはその時見たものは忘れられることはないだろう。

 

 

 

 

「…先輩、これ…美味しい」

 

 言葉だけ見れば、ただ淡々と言われてるだけだ。だけどあたしには違う景色が見えた。雪は笑っていた。それは長く付き合ってるあたしから見たら、微笑みと言えるものではなかった。

 

 それは笑顔だった。あたしに向けられた、まぎれもない美味しいという言葉と、笑顔。食べるスピードもどんどん上がっていく。一口、一口と口に運ばれるたびに、あたしの心は満ちていった。

 

 雪を、あたしの料理で笑わせることが出来た。あたしを「先輩」と呼ぶ事も、珍しい事だ。あたしから名前を呼ぶことはあっても、雪からあたしを呼ぶことは本当にない。……頼りない先輩だにゃー……

 

 でも、これで満足してはいけない。あたしの目標は雪の隣でいれる料理人だ。雪の夢の為に、そしてあたしが夢の一部に入れるように……改めて決意した。

 

 雪が認めるような人が、雪が信頼できるような……そんな人が1年にいたり、友達になったり……学生としても料理人としても、上に上がって欲しいと思いながら、あたしはホテルの部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……だけど……あたし以外の女子が隣にいるのは……絶対に認めないけどね。友達ならいいけど、それより上は……あたし以外にいて欲しくない。いてたまるものか。

 

 




PaniPaniにハマってます。やっと全キャラ出ました( •ω•ฅ)


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▶︎1−3【秘書】

 

 

新戸緋沙子、それが私に付けられた名前だ。別に名前に誇りがある訳ではないが……知られている名前の一つではある。

 

 理由として、私が秘書をしている事。そして私が仕えている相手がえりな様…薙切えりな様である事が揺るぎようのない理由だろう。

 

 私が幼少の頃からお仕えし続けた人物、それがえりな様だ。私にとってえりな様は、主人であり、大切な方であり、守るべき方であり……言葉では表現するのにはあまりに多すぎるから、この辺りでやめておくが……

 

 そして、少なからず私はえりな様の人柄、立ち振る舞いなどを理解しているつもりだ。私が全てを理解するなどはおこがましい、故に少なからずを選ぶ。

 

 その人柄、そして存在感が今のえりな様をさらに上へと登らせている。『神の舌』と呼ばれるまでに格上のステージへと。

 

 料理において妥協をしない、それがえりな様であり……それは他者の料理に対する評価においても同じだ。『美味しい』か『不味い』か、その2択における。

 

 それは料理においては運命を左右する言葉だ。美味しくない料理は、料理とは呼べない。だが、ただ美味しいだけでもそれは通用しない。

 

 誰しもが得意な分野の料理がある。それを伸ばし、努力する事で初めて本当の意味で美味しいと言われる、そんな料理になるのだ。

 

 だからこそえりな様の料理に対する評価は甘くない。彼女が許した料理のみ、舌で踊ることを許され、喉を通る許可が降りるのだ。

 

 もちろん評価を下すだけではない。えりな様は生粋の料理人だ。遠月学園においてのトップ10、十傑の第十席に入ることも決定している。この先、さらに上の席へ行くはずだ。

 

 私も、その様子をただ傍観する気はない。私も1人の料理人として、えりな様に置いていかれるだけの人間にはなりたくない。それではえりな様の側にいてはいけない存在になる。

 

 えりな様に次ぐ2番目になる事…それが私の全てだ。

 

 少し話を戻す。私はえりな様の人柄を少なからず知っている。そして今回、えりな様は入学試験の試験官として選ばれた。

 

 今年の入学希望者は不幸だと思う。えりな様が試験官と聞けば、誰1人として料理を作って持っていくという行為すら、できなくなる可能性の方が高いだろう。

 

 えりな様の試験からの合格者は0、私はそう思っていた。試験が始まるまで、ずっと。それが間違いになる事を知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 えりな様にたった1人だけ、料理を作った男……幸平創真。途中まで完成形が何も見えなかったにも関わらず、あれだけの料理を作ってみせた。

 

 認めたくはないが、あの男は恐ろしい。私が試験官だったならば、えりな様以外が試験官だったならば容易に合格していたはずだ。現に、器に残った彼の料理『化けるふりかけごはん』は私の食欲を駆り立てている。

 

 あの男はえりな様の存在すら知らなかったのだろう。何一つ考えなさそうな顔をしていたし、誰かにえりな様の事を聞いていた。世間知らずとしか言いようがないが、腕は確かだ。……えりな様はあの男が気に食わないようで不合格を出したが。

 

 そして、ふと気がつくと器の料理を見ている人物がいた。えりな様も私と同じタイミングで存在に気がついたようだ。ただ、幸平創真の料理をまじまじと見ている。まるで、私やえりな様は眼中にないかのように。

 

「あら、貴方も作る気?」

 

「……一応」

 

 幸平創真のアレを見てなお、作る気がある……幸平創真以上のバカではないだろうか、と私は思った。見た限り、どこにでもいそうな顔立ちだ。だが、目つきはさほど良いとは言えない。話し方も誰かと話すには向いていないような話し方だ。

 

「そう…まぁ頑張って。ただ長くは待つつもりはないから」

 

「…了解」

 

 その男は何かを作り始めた。私はその間に目の前の男のプロフィールを確認した。名前は千崎雪夜、家が料理店というわけでもないごく普通の一般人、という印象だ。

 

 編入生として、という事だろう。この学園は編入生をよく思わない生徒の方が多いはずだ。いわばアウェーとなる訳だ。

 

 気がつくと、ほとんど仕上げに移っていた。……その時違和感を覚えた。作っているのはただのオムレツ、料理においては基本と言えるであろうプレーンオムレツだ。

 

 そこまで時間がかかるものではないが、料理人の腕を確かめるにはこれ以上ないものとも取れる。基本が出来ていなければ料理は出来ない。感覚だけで作れるほど料理は甘くない。

 

 だが、どうしても違和感を覚える。作る手順も普通、作る速度が速いという訳でもないのに……目が離せなくなる。それはえりな様も同じようで、食い入るように見ているのが分かる。

 

 

 

「…どうぞ」

 

 目の前に置かれる2皿。片方は私、もう片方はえりな様の分らしい。……二つ同時に作っていた事に違和感を……?いや、それだけでは拭いきれない何かがある。

 

 その違和感を探しているうちに、私の皿からは全てが消えていた。時間にして1分……いや、時間感覚すらも掴めていない。

 

「……なっ…!?」

 

 驚きを隠せない。料理が消えるという事はあり得ない。ならば理由は一つだけだ。私が私でも気付かないうちに『全てを食べ終わった』という事しか。

 

 胃の中から美味しさが呼びかけている。それは分かっていても自分の脳がそれを認識していない。まるで、呼吸をする事と同じように……当たり前の事を当たり前にするように、食べてしまっていた。

 

「……合格よ」

 

「…………」

 

 無言で出て行く。受かるのは当然、と言わんばかりに。ただの基本のプレーンオムレツのはずなのに、私には世界が変わったかのように思えた。

 

 そして違和感が掴めた。見てたはずだ、目の前で見ていたはずなのに……ここまで美味しさを感じ取れているはずなのに、私の脳が感じ取れていない何かがようやく、私の脳に伝わってきた。

 

 千崎雪夜の作った料理の手順を見ていたはずなのに、覚えていないのだ。……すでに私はその手順を覚えているからだ。矛盾するような事だが、そう表すのが最も良い。

 

 彼は何も工夫をした訳でもなく、アレンジを入れた訳でもなく……ただ普通にプレーンオムレツを既存のレシピ通りに作っただけなのだ。

 

 だからこそ、私の脳には伝わってこなかった。作り方も手順も全てが同じだからこそ、今まで食べてきた、もしくは作ってきたプレーンオムレツとは格が違う美味しさだという事に、一瞬気づけなかったのだ。

 

「…緋沙子、彼の名前は?」

 

「千崎雪夜…何の変哲も無い一般人の家庭に生まれ、店も持っていない…ただの一般人です」

 

「…そう。…一般人でない方がありがたかったわ。基本中の基本が…あそこまでの味を出せるなんて、ね」

 

 私の舌では、一口目では感じ取れないレベルの美味しさ。おそらく料理に存在する黄金比、それが関係しているのではないかと思った。

 

 調味料にも黄金比がある。だが彼の場合、焼く時間も卵の溶き方も…全てが完全なタイミングでありやり方だった。それが彼の工夫なのだろう。

 

「緋沙子、帰るわよ。報告もしないといけないからね」

 

「はい、えりな様」

 

 彼は合格、つまり今年の新入生として入ってくる。…私程度では敵ですらないだろう。だが私には一つ、目標ができた。千崎雪夜を超える、それくらい出来なければ…えりな様の隣にいれるはずがない。

 

 私やえりな様が食べている間も、彼は何も言葉は発しなかった。説明をする必要もない、と静寂が訴えかけていた。

 

 血の滲むような努力と、生きていた全てを費やしてでも辿り着けるかわからない境地に、千崎雪夜はいる。その先に何があるかは分からない。

 

 だが一つわかる事がある。彼のプロフィールの志望動機にはほんと少しだけだが、ある言葉が書かれている。「夢のため」と。志望動機にしてはあまりにも短すぎる単語だ。

 

 しかし、それは私には到底理解できないものなんだろう。彼の料理を食べて初めてわかる。彼の存在の恐ろしさ、そして彼が書いた夢が私では想像がつかないほどの大きな、崇高たるものなのだろう、と。

 

 私は気を引き締め直し、えりな様と共に車に乗り込む。彼に負けない為、追いつく為、そして……えりな様のために、私は決意をさらに固めた。

 

 



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▶︎2

読んで下さってる方からすれば丸わかりでしょうけども、作者は料理にわかです…料理の描写とかが無いのは…そういう事です…

遠月学園の中等部の存在を忘れてました…小林竜胆先輩って中等部からですもんね…忘れてた……修正入れます。指摘してくださった方ありがとうございます。




 ♦︎♦︎月X日 天気 くもり時々くもり

 

 

 入学式のあまりにもショックすぎる出来事があって、日記を三日坊主にするところだった。何があったのか書き記したいと思う。

 

 どうやら入学試験で俺の前に作ったあの男の子。幸平創真って言うらしいんだけど、合格してたっぽい。あの時不合格って言われてたみたいだけど、良かった良かった。正直目の前で誰かが不合格になるって見たくなかったし

 

 ただそれからが問題だったって言うか。どうやら編入生だとか、店を持ってない人ってのはかなり下に見られるらしい。彼も見下されてる1人だった。

 

 ちなみに俺もだけど。元から無口コミュ障ろくに友達いない、この三点リーダー『……』じゃなくて、三種の神器みたいなの持ってるのにさ。まさか友達とかより話すことすら許されなさそうだよなぁ

 

 それと学園長さん?だったかな。あの人がいきなり凄いことを言い出したんだよね。なんだっけ、99%は1%を磨くための捨て駒?捨て石?多分どっちかだったと思うんだけど。

 

 いきなりだよね、簡単に言えば「お前らリストラ直前だから。仕事できる奴だけ正社員入りな?」って事じゃん。完全に俺は99%側だもんなぁ。今思ったんだけど退学とかになったらどうするんだろ?退学金とか出るのかな?考え方がおっさん。

 

 で、それからが少し面倒だったというか、編入生は所信表明とかしないといけないみたいだったらしく、先に幸平創真くんが行ったんだよね。一応頑張れとは声をかけたんだけど、話し終わったらそりゃもう大ブーイングの嵐。アイドルのコンサート並みに騒がしかった。

 

 驚いてスマホを落としちゃったし画面にヒビ入った………。まじつらい、おこ。元からヒビは少しあったけども。しかもその後俺だし、ちょっと愚痴ってみた。

 

 とりあえずうるさいよーって事とか、まぁそこまで話さなかったけどね。しかもマイクでハウリングするミスしたし。俺も大ブーイングのタイフーンだったけど。最近の若い子ってすごいね(小並感)

 

 幸平創真くんとは結構話が合う気がした。呼び方は自由に呼んでいいって言われたから、幸平と呼ばせてもらう事にした。先輩の名前も今度呼んでみよっかな?竜胆先輩。うん、なんかしっくりくる。許してくれるかな?

 

 幸平くんが「お前すごいな……」って言ってたけど何がだろ?スマホのヒビのことかなぁ?買い換えた方が良いかな?呼ぶときは幸平の方が呼びやすいんだけど、書くときは幸平くんにしておこうかな。

 

 

 

 

 あ、日記終わろうとしたんだけどまだあった。その後ペアでの調理だった。クジ引きで決まるらしいんだけど。すごいよ、俺ぼっちだったんだ。理由としてペアがいなかったというより、いなくなったの方が正しいかな…

 

 俺がペアって知った瞬間にいなくなったしさぁ。まぁ別に結果的には良かったから良いけど。先生からも許しは得たから1人で作った。幸平くんの方はまた別の所に行ったみたいだし、多分女の子がペアだったとは思うんだけど

 

 俺がいた所の課題は肉の種類は問わないが、ロティを行ったもの、だった。あまりロティという言葉に馴染みはないと思うんだけど、俺もあまりした事ないし。

 

 とりあえず作らせてもらった。鴨肉にするか牛肉にするか迷ったが牛肉にした。時間制限もあったし、一番乗りで作って持っていったらAって判定を貰った。周りがざわついてたのを覚えてるけど終わったから普通に出てった。

 

 Aってすごいのかな?ゲームならAAとかSとかありそうなもんだけどそう考えると下の方なのかな?評価について説明されなかったしAなら合格しか言われてないもん。

 

 その後は寮に、って思ったんだけど、どうやら先輩が場所を作ってくれたらしい。しかも1人で暮らせる場所。最高じゃんか。それと前に調べた十傑、それに先輩も入ってるらしい。

 

 十傑っていうのは思ってた以上にすごいらしい。この場所も先輩のものになった場所で、それを俺にくれるらしい。

 

 お礼の意味も込めて、初めて先輩を竜胆先輩って呼んだ。ありがとうも言ったよ?なんかすぐ出てっちゃったけど。怒らせちゃったのかな?今度会ったら謝らないと

 

 今書いてる事全部昨日のことじゃん。まぁいっか、今日は特に何があったわけじゃなかったし。おやすみなさい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

A月AA日 天気 快晴+曇り=晴れ 晴れー快晴=曇り

 

 

 特に書くことはない、訳ではなかった。いや、毎日のように料理を作ってA判定貰って帰ってるだけだし。なんかこんなんで良いのかなぁって申し訳なくなる。

 

 あ、ただある子と話した。入学試験の時の薙切えりなさんと秘書の新戸緋沙子さんと話す機会があった。というより2人も同じくらいに終わったらしく、たまたま出会ったってだけなんだけど。

 

 30分程度だけど話した事は学園の事とか十傑の事とかかな?食戟が主だったけど「貴方は受ける?」って言われた。とりあえず来たらやりますけど来ないですよ、とだけ言っておいた。気に食わないとはいえ俺に挑まないでほしい!こう、穏便にやっていきたい。

 

 どうやら薙切さんも十傑らしい。すごいねって思って褒めたんだけど、なんか闘志が目に見えたのは気のせいかな?ただその後は新戸さんといた。薙切さんは別の仕事みたいなのがあるみたいで、しばらくは新戸さんと話してた。

 

 正面切ってから言えないけど、可愛いよね。俺だって一応高校生だからさ、薙切さんも先輩もだけど可愛いとは思う。俺みたいなのに言われても嬉しくはないだろうけど。

 

 新戸さんは俺に勝ちたい、って言ってた。その目は本気だったとは思うんだけど、なんで俺なんだろ。一応いつでも挑んでも良いですって意味で大丈夫、とは言ったんだけど言葉が伝わったか心配。

 

 後それなりに身長差があって首が大変そうだった。見上げすぎは良くないですよって言ったけど、新戸さんはそのままお礼を言って立ち去っていった。食戟っていつか挑まれるのかな?

 

 あ、そうそう。俺の方じゃないんだけど、どうやら幸平くんが食戟をするらしいんだ。丼研だったかな?そこを賭けて薙切さんの所の子と食戟するらしい。

 

 テーマは肉を使った丼物。牛丼食べたくなってきたから後で作ろっと。まだ何も形が決まってないらしいけど、幸平くんだから普通じゃない物を作りそうな気がする。

 

 その食戟は本当にすごい会場でやるらしい。相手が相手だからだとは思うし、幸平くんは良くも悪くも注目されてるからかな?一応俺も見に行くつもりだけどね。

 

 入学試験の時は作り方を見てなかったし、幸平くんの今回作る物をメモさせてもらおうとは思ってる。俺にはアレンジとかの発想力がとことんないから、そこを補いたいとは思ってる。

 

 ほら、専業主夫はやっぱ安くて美味しい物を作らないといけないし、アレンジは学びたいよね。食戟よりスーパーの安売りで戦うかもしれないけど。奥様方と。

 

 ……まずここを卒業できるかとか、相手が見つかるのかとか、そっちの心配をするべきだよね……はぁ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♡月☆★日 天気 明日はきっと良い日になる

 

 

 今日は色々すごかった日だ。やっぱり幸平くんの料理はすごい。シャリアピンステーキを作るところもそうだけど、何よりさっぱりとした風味を効かせる為の練り梅をご飯に入れる点。

 

 あれはアレンジであり、お店で厨房に立ちなおかつ客のことを考える人のアレンジだ。別に店を持ちたいとかはないけど、人を笑顔にさせるってのは良いことだと思う。

 

 あまり好きじゃないのは、勝った幸平くんを褒めてない周りの人達かな。でも、幸平くんはそんなの気にしてないみたいだから俺も気にしない。

 

 それにあの対戦相手の子、水戸郁魅さんだったかな。あの子もいい子っぽいよね、話した事ないのにそんな事言うと痛い目に遭うらしいけど。情報源は本とか。

 

 レシピ通りに作るのが当たり前なんだけど、アレンジでそれが一つ上に行くなら話は別だとは思う。ただ問題は俺の頭が乏しいから思いつかないって所だけど。気長に考えようっと

 

 終わってから薙切さんに会った。話によるとどうやら宿泊研修があるらしい。1年生はそこでふるいにかけられるようだ。わざわざホテルを使うって気合い入ってるなぁ

 

 何日間かで行われ、例年何百人と落ちていくらしい。しかもかなりハードスケジュール。日記書く時間あるかな?ってそんなこと呟いてたら聞こえてたらしく、余裕ね?なんて言われちゃった。

 

 だってホテルって遠くまで行くんだよね。そこで退学になったら野垂れ死にそうだし帰りはどうやっても帰れない気がする。優しくないしこの学園。

 

 まぁ頑張ろ。帰ってきたら竜胆先輩に料理作ってくれないか頼んでみよっかな。

 

 

 




原作でそこまで出番がない子を視点に置きたい。例えば四宮さん以外の卒業生とか。えりなさんまじヒロイン。大体3000文字前後に抑えて書いてるんですけど、もう少し増やしても良いですかね?

日間ランキング1位になってました。急にお気に入りとか増えたなーって思ってランキングチラ見したら1位。目が逝かれたかと思いました…本当にありがとうございます!!日間もルーキー日間も一位でした。本当にありがとうございます!評価をくださった方々もありがとうございます。お気に入り登録も2900を超えました。この小説をきっかけに原作を知る方が増えてくださるとうれしいです。感想や評価等で批判してる方々はほかに読んでくださる方が不快にならない程度でお願いします。批判は悲しいですけど;; 



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▶︎2−1【神の舌】

 

 

 

 私はいつしか、自らが認めた者の料理のみを食べ、気に入らない者や気に入らない料理を全て切り捨ててきていた。それは正しい事の一種だとは感じている。しかし、完璧に正しいと言われたならそれは違うはず。

 

 おいしいとまずい、この2つだけが料理の全てではないにも関わらず、私にはどちらかにしか傾かせることができない。いわばコインの裏表。投げれば裏しか出ないし、表しか出ない。

 

 私には、そこからあり得ない様……例えばコインを投げた瞬間に誰かにとられたり、落ちたコインが立ったり……不可能に近い物を自分の中で見下していた気がする。

 

 それは驕りだ。それだとしても頭の中ではそれを否定しきれないし、肯定しきれない。あの日から私は狂い、壊れてしまったのかもしれない。その心情を知る者もいない。私自身が私を殻に閉じ込めさせているから。

 

 救いを求めようとしても、声は出せなくなるし抵抗する気も薄れていく。私はただの人形である事を望んでなんかいないのに。……そしていつか、自由という表現を羨み始めた。

 

 私もいつか、自分の意思で羽ばたく事が出来る日が来るのだろうか。信頼できる人もいる、自分でも腕があると思う。それでも、きっと何かが足りなくなる。

 

 そこを補える、そんな存在を……あの日、入学試験のあの日から求め続けていた。だからこそ、あの2人から目が離せなくなる。心の底から何かの感情が湧き上がって来る。

 

 それは嫉妬でも見下した感情でもない。だけど、この感情を全て知っているわけじゃない。だから私はこの感情の正体を知ることから始めようと思った。きっとあの2人に近づくには、私がそれを知らないといけないから。

 

 それだけじゃない。私は自らが信頼を置いている人物にも、話していないことがある。私自身が知り、学び、変わらない限り近づくのは不可能だ。だけど、変われることができたならきっと毎日が楽しくなる。

 

 その先にはきっと、私が望む世界が広がっているはずだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の名前は薙切えりな。遠月学園に入学する事が決まっている……だが、私は入学試験の試験官として選ばれた。

 

 私の秘書でもある新戸緋沙子、緋沙子も喜んでいてくれた。そして私を変えるであろう、そんな人達に会った。

 

 「神の舌」といつからか呼ばれ始めた。由来は様々な料理を食べてきた時にほとんどの料理に「まずい」という評価を下し続けたからだ。全てがまずい料理ではない。

 

 私にとって美味しいの基準が高すぎるのだろう。だからこそ、出る言葉は批判の言葉に近いものとなる。まるで仮面のように、私はいつも通りに毒を吐く。

 

 私の噂はかなり広まっている。街を歩けば「神の舌」と噂される日も少なくない。だからこそ、私が試験官であるならばより優秀な者がいるのではないか……という考えだと思う。

 

 しかし、私が試験官と知った時に合格を求めた人達は顔をあからさまにしかめた。やはり良い方向でも悪い方向でも広まっている、ということか。だから私は救済としてある事を提案した。

 

 受けられない人は帰っていい、と。ただそういうだけで蜘蛛の子を散らすように人が減っていく。あまりにも脆い、そう感じてしまった。料理人を目指している人たちが、仮に試験官とは言え、逃げる事は客を捨てていくのと同じ行為ではないだろうか?

 

 私は気づかなかった。多勢を見ていた事により、少数……残った人の存在を。その1人が幸平創真。

 

 あまりにも庶民、そう感じた。彼が作る料理のテーマを聞いた時もふざけているとしか感じなかった。その時点で私は、彼に負けていたのかもしれない。

 

 美味しい、その限りにつきた。心も体も満たされるような、それでいて子供の頃の純粋さを思い出させてくれるような味。だけど、私はどこかから拾ってきた自尊心とプライドが私の心に立ちふさがった。

 

 そして彼には「不合格」、つまり美味しくないと言ってしまった。彼の人柄は私を舐めているように感じてしまった。そこが癪に触った、というべきなのだろうか?

 

 彼はそのまま出て行った。後ろ姿が、不思議と過去に会った方の背中に見えた気がしたのは、私の気のせいだろうか。

 

 そして、それでも私は気づかなかった。もう1人、幸平創真が作った料理『化けるふりかけごはん』を食い入るかのように、それを焼き付けようとしている1人の姿に。

 

 名前は千崎雪夜。顔立ちも極めてカッコいいだとか、かっこ悪いなんて訳ではない。しかし目つきが少し悪い所が欠点と思えた。それが第一印象。

 

 彼も入学試験を受けにきた1人。淡々と料理を作り始めた。……そして作り方を見て何かを感じた。それは一流の料理人であったとしても気づけない、ほんの少しだけの何か。

 

 作り出したのはプレーンオムレツ。基本の料理の1つだが……そこから自分なりのアレンジを入れる、それでより料理人の腕が引き立つ物でもあるだろう。何もしないまま出すという事は、自信の表れか何も知らない愚者か……2択だ。

 

 そして気づく。あれはただレシピ通りに作っている物だと。レシピ通りに作る、聞こえは簡単だが実は難しい。それは焼く工程があるならば焼く時間だ。本にも詳しく書いてある事は少ない。約〇〇分、何火で……なんて事しか書いていない。

 

 焼く、切る、蒸す……料理には様々な工程があるけれども、全て1つのミスで味は格段に落ちる。1秒多く焼けば旨味は逃げるし、1mm切る場所がずれれば繊維が落ちたりと細かな所こそが料理人の真価を発揮する。

 

 そんな事を考えていればすぐに出来上がる。……私には食べる前から結果が分かっていた。これは「美味しい」と。

 

 そしてそのまま結果を伝えた。だが彼はその表情に喜びはほとんどなかった。幸平創真よりも早く部屋から出ていった。結果なんて聞くまでもなかった…という表れだろう。

 

 彼には自信がないのだろう。だがそれは、自信という物を持つ必要がないという事だ。「当たり前に美味しい」から「当たり前に合格する」には成り立つ事はない。世界はそんなに甘くはないのだから。

 

 だが彼にはそれが成り立っている。自分にとっての「当たり前」は他者にとっての「当たり前」ではない。逆もまたそうだと思う。だからこそ彼の普通ではない点が見えてくる。

 

 当たり前の基準が高すぎるのだろう。……彼の動作以外にも見ておくべきだった。彼は必ず未来の料理の世界を担える人間だ。彼という存在を見極めないといけない。

 

 私も負けるわけにはいかない。私は薙切えりなだからこそ、彼のような人に負ける訳にはいかない。彼は試験中もどこか上の空だった。私はその程度としか見られていなかった、その事実は私の胸を締め付ける。

 

 そして奮い立たせるのを感じる。目の前に広がった強者と圧倒的な壁。それを超えるという目標と、その先に何が待つのか……あぁ、楽しみで仕方ない自分がいる。

 

「緋沙子、帰るわよ。報告もしないといけないからね」

 

「はい、えりな様」

 

 緋沙子もどこか雰囲気が違う気もする。私と同じで負けず嫌いの子だから、何か思う所があった、という事。

 

 明日からは、良い日になりそうだ。ひたむきに何かに向き合える、そんな日がやってくるような気がしてならなかった。

 

 




過去だったり心情だったりは原作でもよく出てくるけど、えりな様はあまり語られてない気がする…独自解釈が含まれてたりしますよねこれ絶対…
後続きます。次は入学式の日からの薙切えりな視点ですね。うちの主人公は何も知らない愚者の方かも知れない、自分の腕の良さを分かってないから。
ウチのえりな様少し丸いかもしれないな……勘違い系主人公はラノベの鈍感主人公より鈍感……お気に入り4000件突破致しました。ありがとうございます!

追加です。転生要素は必要なさそうですし、意見も多数寄せられてるので転生要素を消す方面で、1話を再構成したいと思います。みなさま、ご意見ありがとうございます。


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▶2-1②【神の舌】

転生要素を消しました。それに伴い転生タグを外す、1話や1−1【先輩】などが改変されています。読まなくても一切物語に支障はありませんが、暇な方は読んでくださると嬉しいです。
また、転生要素を無くした為、前書きや後書きに書いた転生要素に対する質問の返答を全て消させていただきました。


 今日は栄えある入学式、遠月学園の門をくぐることを許されるのは入学試験

を合格した者のみ通ることができる。しかしそれ以上に同じ門から卒業という形で通ることができるものはさらに減る。決して合格者と卒業者の数がイコールで結ばれることはない。

 

 その先には料理人としての高みが待っているだろう。だがそれは過酷な三年間を生き残れた者のみ、進級すらできない、もしくは一年間も過ごすことができず退学……そんなこともあり得る世界だ。

 

 入学が始まりだと思うならば、それは間違いだと私は考える。ここでの生活はまだ顔を出してもいない。スタートラインを見ることが許された、せいぜいそのあたりだろう。

 

 私が選ばれた人間、と謳うつもりはないが選ばれるべき人間にならなくてはいけない。私に敗北や諦めといった言葉は似合わない。だからこそ今よりも上を目指さなくてはならない。

 

 入学試験での千崎雪夜は私だけではなく、この学園に通う者の大きな壁になると私は思っている。今回、編入生として入ってくる人たちは生徒の前に立ち、所信表明をしなくてはいけない。今年の編入生は何人いるかは知らないが、毎年多いとは思えない。

 

 中等部から通っている人たちですら、この学園に入学することを簡単に許されない。にもかかわらず、それまで一般の中学校に通っていた者が受かる可能性はより低い。

 

 だが一人私が合格を言い渡した人物、それが千崎雪夜。彼の腕はただ努力だけでも、ただ才能があるだけでも簡単にはたどり着けない。必ず運が混じってくる。その時の環境も設備も何もかもは分からない。それが入ったことがない場所の厨房なら尚更だ。

 

 それを一回で成功する、それはただの偶然だったとしても奇跡に近い物だと思う。本当の天才と呼ばれる、それは高校生で呼ばれることはないだろう。ただ料理をうまく作れる、それが遠月学園の1位であったとしても不可能に近い。

 

 経験、客層、配慮、そこから評判の伝わり方から従業員まで全てが見られている。高校生程度では経験が足りない。だからこそ経験を積んでいないにも関わらずこの遠月学園に入学する編入生という存在は、疎まれやすく見下されやすい。

 

 私も千崎雪夜の料理を食べる前は、いや、幸平創真の料理を食べた時から考えは変わっていったのかもしれない。だがそれを顔に出すことは無い。私は幸平創真を落とした人だから。

 

 

 

 

 

 そう思って、いた。私が学年賞の授与をされた後に私を孫に持つ、つまりお祖父様の薙切仙左衛門学園長が話を終えた後に放送が流れる。

 

『えー、最後に高等部から編入する生徒を2名紹介します』

 

 ……2名?1名は千崎雪夜で間違いないはず。ならもう1人、別の試験で誰かが受かったという事?……いえ、それは問題ない。私が上に行くことに変わりはないから。

 

「じゃー手短に、二言三言だけ」

 

 そして、意識する事で聞こえてきた聞き覚えがある声。普通の人ならば声を覚えることは早々ないはずなのに、私の耳から伝わるものは聞き覚えのある声だという事のみ。

 

 そう、壇上に立っているのはあの男。私が試験官として料理を作らせ、私自身が不合格にした男であるはずの……幸平創真本人だった。あまりに不可解すぎて頭が混乱する以外の選択肢を持っていなかった。

 

 さらにてっぺんをとる、なんて事を言い出し周りの生徒全員から大ブーイングを受けていた。……あの男はバカなのだろうか?呆れを通り越した何かが私の中を駆け巡る。今すぐ文句を言うために裏に回った。

 

「あ、貴方ねぇ!何でここに……!?」

 

「そりゃあ合格通知が届いたんだから来るだろ。……それより少し静かにしててくれ」

 

「は、はぁ!?よりにもよって私に、だ、黙れと言っているの!?」

 

キーーーーーンッ……

 

「っ!?い、今のは……」

 

 おそらくマイクのハウリング音。……そうか、幸平創真がいるのは不可解極まりないが……私が実際に合格を出した彼がいる。だが他の生徒には私が合格を出した、と言うことは伝わっていない。伝える必要性もないからだ。

 

「……機嫌、かなり悪そうだったからな。こっちがうるさくしたら後が怖い。……そんなの考えるなんて思ってもいなかったけどな」

 

「……貴方は彼をどう思っているの?」

 

「圧倒的、としか言いようがない。今はそれだけだ」

 

 ……それだけで十分だ。彼の凄さは料理を食べた者が分かる。見た目で、雰囲気で、凄腕と分かる人はほとんどいない。幸平創真はそれを感じ取れたのだろう。

 

 あのハウリングはブーイングを止め、自らに集中させる為。注目を集めるのにこれほど効果的な物はないだろう。そして、彼が話し始めた。時間にして1分も話していないくらいだろう。

 

 

 

 

 

 

「……千崎雪夜。今年から編入することになりました。……ブーイング、うるさかったです。……まぁ、そういうことする人たちは落とす事には気をつけてください。……割れてからじゃ遅いですし」

 

 あまりにも不遜に、だが確実に全てを語った。彼はゆっくりと壇上を降りる。じきに彼が言った事を理解し始めた生徒達が、口を揃えてある言葉を言い始める。

 

「ふ……ふざけんな!!!」

 

「何様のつもりだ!!!てめぇ!!!」

 

 騒ぎは先程よりも大きくなっている。だが彼は平然と幕を通り、こちらへ戻ってくる。

 

「すごいな、お前……」

 

「そう、か?別に……普通の事しか言ってないと思う」

 

 普通ではある。だがそれを他人から言われれば、それは立派な煽り文句になるだろう。彼が言う「落とす」とは単位、もしくは判定や評価、自らの腕といったものを落とすという意味。

そして「割れる」というのは、進級、もしくは卒業できるメンバーから割れる……つまり退学にならないように、そう言ったのだ。

 

「……貴方達ね……!ど、どういうつもりよ!」

 

「いや、別に。ただせっかく受かったしな、言うのは自由だろ?」

 

「そ、そうだとしても!」

 

「それに、まずいって言われたまんまで『はいそーですか』、とかで引き返しちゃあ店に泥を塗る事になる。今度はちゃんと言わせてやるよ。アンタの口からはっきりと、美味いって言葉を」

 

……そうか。彼は真っ直ぐな人間なのだろう。……だがそれは認められない、貴方の料理の全て、そして貴方自身の全てを見極めるまでは。

 

「……ふんっ、勝手にしてなさい。私は忙しいからそんな暇はないかもね!貴方が生き残れたら、の話だけど」

 

「生き残るよ。それに、高い壁ってのがあるのも分かった。超えなきゃ親父になんて勝てねー」

 

「高い壁……えぇ、彼は凄いわ。私だって負ける訳にはいかないのだけど」

 

 彼はいつの間にか消えていた。これから調理の試験が1つ組み込まれている。すでにそちらに向かったのか、それとも私達に興味は無いのか……それは彼のみぞ知る、かしらね。

 

 その後、私や幸平くんはそれぞれの試験を受けに行った。彼は私より下、だけどそう考え続けるのは絶対にダメだ。……そうだとしても私は負けない。私は薙切えりなだから。

 

「えりな様、どういたしました?やけに楽しそうですが……」

 

「……ふふっ、なんでもないわ。さぁ、緋沙子、貴女も落ちないようにね?」

 

「っ!当然です!私はえりな様以外に負けるつもりはありません!」

 

「千崎雪夜、幸平創真……私も薙切えりなとして負けない。1位になるのは私だから……!」

 

 薙切えりなとして、1人の料理人として……何より私自身の全てをぶつけるために、彼らに打ち勝つ。この学園の1年間での一位は私が奪い取る。

 

 下から見下げるのも落とされるのもごめんよ。彼らに私を常に見上げさせる……必ずね。

 

 



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▶︎2−1③【神の舌】

 

 

 あの日、入学式からすでに数日が経過した。編入生の噂は良くも悪くも遠月学園に広まっていっている。幸平創真は最初の試験で実質上のA以上の判定を貰った。

 

 今では極星寮という寮に入っているようだ。確かあそこには十傑第七席の一色慧先輩がいたはずだ。それ以外にも複数の生徒が寮生活をしている。

 

 まぁあれ以来大きな騒ぎは起こしていないようだ。……私も一つ一つ行動を知っているわけではない。むしろ知る必要性はないからだ。それに今は私の勢力を広げるために動いている。

 

 今は丼研という研究会との食戟が控えている。もちろん私が出るわけではない。出るのは私の刺客である、水戸郁魅。別名ミートマスターと呼ばれる肉のスペシャリストだ。

 

 負けは万に一つもない。周りの生徒達は丼研に対しての同情が強い。当たり前だ、私に目をつけられて逃げることができる訳がない。

 

 ……そしてもう1人、千崎雪夜に関してはむしろ謎が深まるような気がしてならない、というのが私の素直な感想だ。試験の判定は全てA、さらに誰よりも早く終わらせてはすぐさまどこかに消えていく。

 

 どこかで暮らしているはずだが、その場所は不明だ。幸平くんの寮に行く姿は見かけた事はあるがその先はもちろんわからない。私はストーカーじみたことをする事になるし、プライバシーの問題もあるからだ。

 

 2人組は彼にとっては必要ないと判断されたらしい。最初の試験では2人組になるはずだった相手が逃げ出してしまったそうだ。おそらく悪い噂が立ち始めてすぐだったからこそ、悪目立ちを避けるためだろう。

 

 ……逃げるのは如何なものか、と私は思うが。だがそれにより、彼の腕は判定をする教師側に伝わり始めている。特に意外であったのはスイーツだ。

 

 彼はその日自由にスイーツを作れと言われ、複数の種類のスイーツを作ったらしい。全て決して時間がかかるものではなかったからこそ、だろう。

 

 だが「味は完璧とすら言える」、これがその時の教師の言葉だったらしいが、判定を聞く前に教室から出ていった、という噂が広がっている。……傲慢すぎる、という悪い噂として、だが。

 

 その噂がろくに上の人、例えば2年生や3年生に伝わる事はほぼない。その人自らが見にこない限りは。2年生や3年生はそれぞれの事があるからだ。

 

 あれからも千崎くんとは話した。十傑の事や、食戟の事など。食戟については受けないそうだ。本人は来るはずがない、と言っていたが……自分に挑むなんて無謀な人は現れない、ましてや同級生の人達なら、という事だろう。

 

 十傑内で彼を知っている人物はいるのだろうか?幸平くんは一色先輩が知ってるとは言え、彼の情報を集めるつもりはさらさらない。彼が今の時点で私に勝負を挑むような、愚直ではないと分かっているから。

 

「えりな様、報告したい事が……」

 

「えぇ、何かしら?」

 

「丼研との食戟ですが……相手側から出てくる人が変わったとの事です」

 

「あら……一体どこの命知らずが出てきたの?」

 

「……ゆ、幸平創真です」

 

「はい???」

 

 ついつい私らしからぬ変な返事をしてしまった。でもそれも仕方ない。丼研と幸平創真は無関係のはずだし、所属をしているという話も聞いた事はない。だが何故、彼が食戟に代わりに出るのか?

 

 ……いや、それはどうだって良い。彼がこの程度で潰れるならば、所詮はその程度。大口を叩いただけの世間知らずという評価が、より一層広まるだけだ。

 

「んんっ、そう。でも私には関係ないわ、勝利は揺るがないのだから」

 

 水戸郁魅は決して弱くない。むしろ強い部類に入る料理人だ。だからこそ私は彼女に厨房を与えるなどの施しをしている。にも関わらず、負けたと言うならばただで済む筈はない。

 

「えりな様、次はこれなんですが……」

 

 私には様々な要件が飛んでくる。気に入らないものを1つ潰す程度に、時間を費やすわけにはいかないのだ。……幸平創真の食戟、彼はどう思うのかしらね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして訪れた食戟が行われる日、私は信じられない事を複数も体験した。まるで入学試験の時と同じように、だ。

 

 幸平創真が食戟において勝利を収めた事。それは予想外という他なかった。彼は編入してから数日、初めての食戟の筈なのに勝利を収めた。テーマは決して幸平創真に有利なものではなかったし、むしろ肉というジャンルがある限り水戸郁魅の方が有利だった筈。

 

 だが彼は類稀なるアレンジと気遣い、料理人としての格の違いを見せつけた。1日2日、例え一ヶ月準備期間があったとしても彼の料理まで至る料理人は数えられる程になる、そう私の直感が告げている。

 

周りの生徒達は驚きの表情を顔に浮かべている。だが私は、それ以外にも驚く事があった。この食戟の間、客席にいたある人物が普通ではない行動をしていた事。

 

 千崎雪夜が料理をメモし続けていた。しかもそれは幸平創真限定で、だ。最初から最後まで幸平創真の料理のみを観察し続け、メモを取っていた。勝ちは分かっていたかのように。

 

 だが彼はどこか不機嫌そうだった。自分ならそれより上手く出来ると、その程度しかできないのか、と。そして周りの生徒達はこの食戟の勝利の行方すらわからないのか……全てを含んだような、そんな不機嫌さを纏い会場から出て行った。

 

 私は緋沙子を連れ彼を追いかけた。彼は会場から出ていたが、そこまで遠くには行っていなかった。

 

「……薙切さん?」

 

「……ふぅ……千崎くん、さっきの食戟を見てたでしょう?」

 

「一応、ですけど。……まぁ幸平だから、勝つとは思ってましたけど」

 

「私は万に1つも勝ち目がないと思った。……何故そう思ったのだ?」

 

「幸平は強い、と思いますから。……俺が持ってない何かを持ってる。それだけです」

 

「……そう。話は変わるのだけど、貴方は宿泊研修を知ってる?」

 

「……知らない」

 

「し、知らないのか……宿泊研修は1年生が全員参加する行事だ。だが楽しいものではない、待つのは地獄以外の何物でもない」

 

「いわばふるいにかけられる、ということよ。そこでミスをすれば簡単に落としてしまう、一瞬で学園から退学よ」

 

「さらに言えば何百人落とされるのも当たり前だ。数日に分けて行われる、おそらく日程もそろそろ配られるはずだ」

 

「そう、か。……まぁ準備くらいはしておきます。ありがとうございました」

 

 彼はすぐさま立ち去った。準備……まるで旅行にでも行くつもりみたいな口調ね。舐めてるとしか思えないけど……何も知らないからかしら?それとも自信があるからか……まぁ分からないわね。

 

 私も舐めてかかるわけにはいかない。先に進むためにこんな所で立ち止まるわけにはいかないから。

 

 必ずこれから先、様々な人との蹴落とし合いになる。1つのミスは命取り、生き残れない大きな傷になってしまう時だってある。

 

 だけどそんな傷、私には付かない。そんな傷は私には似合わないし、何より私は『薙切えりな』だから。

 

 

 

 

 




本当に申し訳ありませんでした。色々な励ましを感想やメッセージでいただき、すごい嬉しく思いました。前話の後書きも消させていただきました。本当にありがとうございました。これからも精進してさらに良い小説にしたいと思いますので、これからもどうぞよろしくお願いします。


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▶︎3

今回かなりオリジナルが入ります。時系列的に宿泊研修の前です。宿泊研修は他者視点で出せそうなのがタクミ君か秘書子、後はえりな様の3人かなぁ?後は卒業生の方々か……でも口調が印象的じゃないしなぁ……


 

 

^=^月°-°日 天気 君は晴れる事を信じているか?

 

 

 宿泊研修について結構説明があった。五泊六日の日程で行われるらしい。まぁ内容がどんなものかは全く知らないんだけど、実際は試験と同じらしい。だから内容を言う人はいないよね、そりゃ。

 

 どこだったかな、確かホテルでやるって言ってた覚えはある。なんて名前のホテルだったかは覚えてない。ホテルとか自分の金で泊まった事自体ないのになぁ。いや、宿泊研修も自分の金じゃないけど。

 

 そこで生き残れないとお話になりませんよ、みたいな感じらしい。幸平くんに薙切さん、新戸さんは生き残れるだろうけどね。個人的には水戸さんとも話してみたいんだけど。

 

 でもどんな試験なんだろ?食材を取るのすら命がけ、みたいな試験だったら退学確定じゃん。審査員さん次第、後は運もあるだろうけど。

 

 試験は実力が全てって訳じゃない。魚をどれだけうまく捌けても釣れなければ話にならない。俺もそこら辺は見よう見まねだし。記憶がある限りだけど、母さんの捌き方を真似してるからな。

 

 母さんは料理は相当上手い。ただなんだろ、超がつくぐらいのアレンジ癖がある。出汁を取るって言ってスルメを使うのはいいんだけど、そのスルメだけしか入ってないスープって何?あれ、アレンジじゃないなこれ。

 

 そう言えば最近凄い子をまた見た。名前は分からないけど凄い体がデカかったかな?やり方が色んな人たちに似てるってイメージだった。俺も真似事だけど、彼は人のやり方をそのまま使ってる、気がした。

 

 凄い才能だなって思った。真似をするって簡単そうに聞こえるけど、料理に関しては簡単にはいかないと思うし。真似が出来るって事はその真似に自分の技術をプラスしたら、さらに凄いのが出来るって事だもんね。

 

 今日の課題は珍しい気がした。魚は自由のムニエルを作ることになったんだ。舌平目のムニエルって聞いた事はあるんだけど、食べた事ないんだよね。鮭とか白身魚を使ったのしか食べたり、作ったりした事ないし。

 

 ムニエルってのは魚に塩コショウ、後はスパイスとか?それで下味をつけて小麦粉をまぶす。それからフライパンを使ってバターで両面を焼いて、その人個人によるけどタレをかける。そんな感じの料理。

 

 たまには料理の事を書いて見たくなった。まぁ料理の事はレシピに書いてあるから、日記に書く必要はないかな。別に見られる訳じゃないし。

 

 今回はオールスパイスを使ってみた。いつもは手元にそんなのないし、塩コショウだけでも十分美味しくなるしね。ブラックペッパーとかガーリックスパイス、後はナツメグとかなら香りを立たせられると思う。

 

 スパイスと言えばカレーだけど、本場みたいに沢山スパイスを入れたりしないからなぁ。レトルトカレーとか美味しいじゃん。

 

 ちょっと悩んだのはソースの方。バター醤油、レモン、トマトソース、タルタルソースとかオーロラソースだったり、種類が結構思い付いた。後は添える野菜とかも。

 

 レタスとトマト、後はなんとなくオシャレかなって思って刻んだパセリを乗せた。結果レモン風味のソースにした。トマトソースとかだとスパイスの味が強くないと、かき消されそうだったし。

 

 キノコを使うのもアリだったかな。ムニエルって枠のソースにとらわれなかったら甘酢餡かけとかもアリ?今度試してみようかな、宿泊研修終わった後になりそうだけど。

 

 バジルも香りを良くできそうだなぁ。レシピ日記になっちゃうからこれ以上はやめておく。竜胆先輩に怒られそう。

 

 竜胆先輩はりんどー先輩って感じがする。なんでいきなりこんな事書いたんだろ。せっかくだから消さないでおく。

 

 そう言えば今回もAだったんだけど、どうやらAが最高評価らしい。それ以上をあげられる人もいるみたいに言ってたけど、どう言う人たちなんだろ?なんかこう、偉い人?

 

 他の人がどんな評価をもらってるのかは分からない。それに他の人はペアの人が多いし。ペアの中で唯一のぼっちとは俺の事だ。書いてるだけで悲しくなる。

 

 悲しくなったから今日の日記はここまでにする。おやすみなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「」月()日 天気 心の中と同じ天気

 

 

 今日はまた珍しい日記になると思う。今日一日中新戸さんと行動を共にしてた。理由はクジでペア決めをすることになって、偶々一緒になったから。

 

 でも料理をする訳ではなく、2人1組でそれぞれの料理の研鑽に努めるって感じだった。今日一日中それだったから新戸さんとほぼずっといた。

 

 ここでしか書けないんだけど、新戸さん無防備な気がする。目の前に男いるじゃん、少しくらい視線を気にしたりとかしないのかな?よく漫画とか小説ならあるよね、女子は男子の視線には敏感とか。

 

 一応ほら、男だし。見たくないわけじゃないからさ、限りなく視線に入れないようにはしてるんだけど、新戸さんがその度に「何故目をそらす?」って近寄ってくるんだもん。

 

 俺は可愛い女子がいたら目をそらすタイプなんだっ。ナンパとか出来る人たちの精神状況を知ってみたいよ。そんなことしたら心臓が7つあっても足りない。

 

 新戸さんは俺の思いを汲み取ってはくれなかったよ。俺が口下手だってのは分かり切ってることだけど、距離は変わらなかったし。

 

 新戸さんはパーソナルスペースが狭そうなイメージなんだけどなぁ。こう、薙切さん一筋!みたいな気がしてるし。俗に言う同性愛者とかではないだろうけど。

 

 同性愛は否定されるべきものじゃないよね。時と場所を考えたら別に良いのに、それを気持ち悪がる人が多い気もする。健全じゃない!とか言ってるけど男女のキスでも健全じゃないじゃん。

 

 誰とも付き合ったことがない人ですからね俺は。独り身で料理がそれなりに出来る人のまま天国へ旅出しそうだよ。

 

 入学試験の時なんて結構怖い顔してたよ、新戸さん。そのこと言ったら「わ、忘れてくれ……私はそんな酷い顔だったか?」とか聞かれた。別に酷い顔というか、可愛い顔のままですけどって言った。

 

 言ってから気づいた。ナンパじみたことしてるよ俺、バカだ。新戸さん口あんぐりして固まってるし、顔赤いし。流石にここで熱があるのかな、とかいうくらいの鈍感じゃないから。恥ずかしいんだと思う。

 

 口調も合わさって、どっちかというとかっこいいって言葉が似合いそうな気もするのが新戸さんだし。幸平君には厳しく話してるイメージ、というよりそういう姿を見たし。

 

 恥ずかしがってる姿も可愛いってなかなか無いと思う。多分書いてる時は思い出して書いてるだけだけど、見返した瞬間に恥ずかしくなるパターンだよこれ。俺には分かる。

 

 話を戻すと、新戸さんは薬膳に関する事に特化してる感じらしい。俺は薬膳自体そこまで知らなかったし、かなり良い時間になったと思う。

 

 薬膳はスパイスとはまた違うし、独学でやるには知識もやり方も何もかも足りない。今度新戸さんに教えてもらおうかな?料理に使えそうだし。

 

 俺はあまり教えられるとかないんだけどって思いながら、とりあえず自分の作りやすい作り方を教えた。時間とかは測った事ないけど、自分の中で何分何秒ってのは不思議と分かる。

 

 それは作る回数が増えれば増えるほど分かる、そんな気がする。ズレが入ったら味が落ちるって考えが俺の料理の考えだから、コンマ1のズレは失敗並み。

 

 ちょっと体調が悪かったり、手が痛かったり器具が痛んでたり、要因は色んなことが考えられるけど、味が落ちる瞬間は料理人なら日に日に分かってくる。

 

 食材の活かし方、環境、それと客が求める味とか、そういうのは特に必要だと思う。俺は客に出す料理なんて作る気は無いんだけど、笑顔になってくれると嬉しいし。

 

 新戸さんは今まで以上に真面目に聞いてた気がする。後はなんだったかな、料理人には必殺料理、スペシャリテって言うのが必須らしい。それは料理人の全てを凝縮した自分の最も美味しく、自信の持てる料理らしい。

 

 十傑とか、料理人として名を馳せてる人たちは作れるらしい。要は得意料理って事だとは思うけど。

 

 作るとしたらやっぱりアレ。得意料理と言うより母さんから初めて教えてもらった料理。アレが俺の中で1番美味しいと思える料理だ。

 

 ただ、それを必殺料理とかでは呼びたくない気がする。温かい家庭を作った後なら必殺料理って呼びたいな、相手を探せと何回書けば気がすむんだろう。

 

 今日は新戸さんと色々話したり、色んな一面を見たりした日だった。こういう風に誰かと話せるの、先輩以外ではいなかった気がする。

 

 薙切さんや幸平くんとも話せるけどね。そう考えると入学前より俺は育っているのかもしれない。育ってる方面が料理じゃなくてコミュ力だって事になるけど仕方ない。

 

 これからは宿泊研修。新戸さんと一緒に生き残るってのは約束した。いつか食戟しよう、とも言われたけど生き残れたらね?と言っておいた。勝てないと思うし。

 

 宿泊研修、頑張りたいと思います。おやすみなさい。

 

 

 

 




これから先の投稿は大体主人公→原作キャラ→原作キャラ→主人公って感じの話運びになると思います。偶に原作キャラ1人だけの時もあるとは思いますが、原作キャラの視点が多すぎるのもアレなので……
気づいたらお気に入り5000件を超えていました。本当にありがとうございます!


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▶︎3-1【秘書】

今更ですけど、とことん料理はにわかなので描写もにわかになります……。タグも付けてますけど、料理ガチ勢の方はイライラしてもおかしくないのでお気をつけ下さい。
タグ名を「勘違い」から「勘違い要素あり」に変更しました。話を進める毎に少ない勘違い要素がさらに減っていってるので……タグ名変えても似たようなもんですけど。



 

 

 宿泊研修が日に日に近づいている。五泊六日の日程で進めるらしい。もちろん私たちに内容は一切明かされていない。

 

 だがわざわざホテルを使うという事は、ただの宿泊研修というレベルでもないだろう。いつも学園でやっているような授業とは訳が違うはずだ。退学も先に進むも一瞬で決まる。

 

 学園の授業では判定が存在する。Aを取っていれば退学の心配は一切ないと言っても過言ではない。だがそれはただ授業を受け続けた場合のみ、だろう。

 

 遠月学園には無数の壁がある。1年生として最終的な壁となるのは進級試験だ。しかしそれまでにもいくつかの壁がある。

 

 宿泊研修から始まり、秋の選抜やスタジエールと言った行事がある。秋の選抜はその名の通り、選抜された者のみが出場できる一種の大会だ。ベスト8まで上り詰める事が出来れば、現十傑とも何かしらのイベントがあるはずだ。

 

 予定が変わらないのであれば紅葉狩り、と称されるだろう。……だが十傑はそんなものに興味はないはずだ。2年生、3年生でそれぞれ向いている方向が違う。1年生ごときに目を向ける時間すら惜しい、そういう感じだと思われる。

 

 スタジエールとは県外への実地研修、と言った感じだ。それぞれが指定された店に行き、その場で力を振るう。もしそれが規定に届いていなかったりすれば、退学になるだろう。

 

 研修と名が付くものは退学が忍び寄っている、私はそう考えている。おそらくスタジエールも常に誰か遠月学園の者に見られながら、働かなければいけないと思う。

 

 その後には他の学校では文化祭と呼ばれるもの、通称『月饗祭』というものもある。……まぁだがこれはかなり先の話になるから、説明は避けておこう。それに今生き残れなければ、先の行事を気にする意味もなくなるからな。

 

 今日は珍しくペアのくじ引きをし直した。今回限りのペアだそうだが……変わった事をするものだ。授業の内容もいつもの料理実習とは形が違う。

 

 ペアとの研鑽……それぞれの知識などをペア同士で共有するらしい。ペア同士が味方というわけではないというのにな。ペアと言えども、食戟などでは敵にもなる。

 

 ならば敵に塩を送るようなものだ。えりな様がペアならば話は変わるが……えりな様がペアでは私から教える知識などはない。

 

 ……だがどうやらくじ引きの運とやらは、自然に、かつ効率的に働いていくもののようだ。

 

「……あ、新戸さん」

 

「千崎?……まさかペアは」

 

「多分、そうだと思います。……よろしくお願いします」

 

 願っても無いチャンスだろう。私のペアとなったのはなんの因果か、私が必ず勝つと目標においた男。千崎雪夜だった。

 

 

 

 

 

 

 あれから少し時間が経ち、千崎とも話した後の事だ。私達は丸いテーブルを挟んだ形で椅子に座りながら話している。そして、自然に私の口は言葉を発し始める。

 

「千崎は入学試験の事、覚えているか?」

 

「……一応は覚えてます」

 

 一応、か。謙遜しているようで、覚える必要もそこまで無さそうな雰囲気だ。まぁ所詮は入学試験、と言ったところか?

 

「その時、新戸さんの顔怖かったですよ」

 

「なっ……!?」

 

 何故入学試験の事はそこまで興味が無さそうな感じなのに、そんな事は覚えているのだ!?わざわざ人の表情を覚える奴がいるか!?

 

「ど、どんな顔だった……?」

 

「……こう、自分の領地に入ってくるなって警戒してる、猫みたいな……?」

 

「……何だろう、そこまで怖い顔じゃない気がしてきた」

 

「……別に、今みたいに可愛い顔だったと思いますけど」

 

「!!?」

 

 下手な表現の後に何故そんな爆弾発言をするんだ!?顔が熱くなるのを感じる。こういう事は私は言われ慣れていないからか、今までに感じたことのないくらいに熱い。

 

「……変な事言ってごめんなさい」

 

「……べ、別に構わん。だ、だが!その時の事は忘れてくれ!」

 

「……あの、近い、です……」

 

「……何故目をそらす?私は忘れてくれとお願いしてるだけなんだが……」

 

「……忘れますから、少し近いというか……」

 

「何故だ?話す訳なのだから、距離は近くて当然だろう?……ん、もしかして隣の方が話しやすかったか?」

 

 人と話す時は距離が近い方が話しやすいだろうしな。そう思い椅子ごと移動し、千崎の隣に移動した。肩が少し触れそうになる程度の距離だが、別に気にしない。

 

 私は女で、千崎は男だがそんな事をするような奴には見えないしな。……さっきの発言はかなり危険だがな。もしあれが無意識で言っているならばより一層危険だ。

 

 まぁ私に恋といったものは無縁だがな。……しかし隣に行ってからより一層目をそらすのは何故だ?席も遠ざけようとしているし……

 

「何故離れようとする?」

 

「……いや、その……話すなら近くなくても……」

 

「別に私に気を使わなくてもいいぞ?私は男女間での距離などは気にしていないからな。特に千崎なら尚更だ」

 

「……その、恥ずかしい、というか……」

 

「……え?」

 

 正直に言って意外だ。人と話すのは確かに苦手そうには見えるが、女子と近いだけで恥ずかしがるとは思わなかった。……嫌がられているように感じるんだがなぁ……

 

「なら慣れることから始めようか?私相手で、な?」

 

「……なんかいい笑顔ですね、可愛らしいです」

 

「ごまかしは無駄だぞ?まずは私の目を見て話すことから、だ」

 

「……過保護な感じになってますけど……」

 

「ふふっ、別にそれでも構わないぞ?」

 

「結構、Sですよね……」

 

「顔を赤くしながら言われても別に何も思わないな。千崎は恥ずかしがり屋か?」

 

「……別に良いじゃないですか……」

 

 拗ね方が子供みたいだな……弟がいる姉が小さい弟をあやす時みたいだな。何故かそんな感じに思えた。子供っぽい一面もあるのだな……第一印象だけで人は測れないと言うのは、こういう時に言うんだろう。

 

 だが私がSというのは認めたくないな。別に苛めたい欲求などはないんだが……千崎が苛められたいなら話は別、いや、そういう問題じゃないな。千崎がMなんて想像がつかない。

 

 Sならえりな様の方が似合うと思う。……こんな事を考えててえりな様にバレたら後が怖いからこれ以上はやめておく。

 

 その後はしばらく料理の話になった。私は薬膳についての知識なら誰にも負けない自信がある。千崎は薬膳などはあまり知らないらしく、熱心に聞いていた。

 

 その後は千崎から話を聞いたが……基本である事をさらに上のステージに登らせたような、そんな雰囲気を感じた。

 

 ズレはどんなことでも起きる。ただ普通に食材を均等に切ろうとしても、全て一ミリの誤差もなく切るという事は、もはや感覚と経験の問題になるだろう。

 

 だが千崎はそれを感覚だけでやっているわけではない。研ぎ澄まされた感覚を使いこなす才能と、努力があってこそだろう。

 

 後は環境の話にもなった。料理人や周りの環境、器具が毎日ベストコンディションである事はあり得ない。料理人としての感覚が育てば育つほど、そちらに目がいかない人も現れる。

 

 やはり経験の違いだろう。いや、正確に言えば経験にも種類がある。千崎が重ねてきた経験は私やえりな様とは違う経験なのだろう。

 

 だからこそ、私は彼を超えたい。生き残ったら食戟を挑んでもいいか?と聞いた。すると千崎はこう返した。

 

「別に良いですけど……生き残れたら」

 

 ……ふふっ、千崎もだが、これは私に言っているのだろう。食戟をしたいなら、お前が生き残らないと話にならない、と。

 

 必ず生き残る。そしてえりな様の為、そして自分の為に。千崎がいるところまで必ずたどり着く。待っててはくれないだろうがな。……ちなみに千崎をからかうのは楽しかった。

 

 

 




更新ペースを基本3日おきにしようと思います。遅くなる事はあっても早まる事はないです……。もしかしたらテンション上がって土日だけ連日投稿はあるかもしれませんが……だって原作は今26巻までいってますけど、宿泊研修とかは3巻の辺りだと思うんです(確か)スタジエールとかは特に1話で終わる気しかしない。なので日間投稿だと原作にすぐ追いつく可能性があるので、3日おきにと言うわけです。ご理解のほど、よろしくおねがい致します。


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▶︎4

200000UAいきました。本当にありがとうございます!何故前書きで書いたかは不明。




 

 

 

☆月$$日 天気 ホテルから見る空は青かった

 

宿泊研修 1日目

 

 

 今日から待ちに待ってるわけはないが、宿泊研修が始まりました。竜胆先輩からもがんばれーっ!って応援を貰った。少しやる気が出てました、この頃は。

 

 今日、俺は絶対に超えられない壁にぶつかった。もはやそれは地獄と呼ぶにふさわしい場所だった。その場所にたどり着いた瞬間に死を覚悟するレベルだった。

 

 そう、バスという壁に。俺は乗り物に弱い方ではないが、飛行機とバスはとにかく無理だ。バスは揺れがヤバい、飛行機は耳が痛くなるのが嫌だ。飴さんが欲しい人生でした。

 

 隣に座ってた彼には迷惑をかけた。目が隠れてたけど結構心配してくれてるようだったし、本当に有り難かった。今度会ったらお礼をしようと思う。

 

 バス如きと馬鹿にしたらいけない。バスは悪魔の乗り物だ。何故1人が座るにもそこまで広いとは決して言えない席を、二つ並べただけの場所に座らないといけないんだ。

 

 隣が知らない人、ましてや女子だったらどうするんだ!痴漢に間違われて銀色のブレスレットを常時装備して、圧倒的守備力の壁の中で生活する羽目になるんだぞ!

 

 まぁ街を走ってるバスとは少し違って、補助席が付いてたりする方だったからまだ良し。隣も男の子だったし、そこら辺はちゃんと考慮しているんだろう。

 

 もし隣が新戸さんになったものならあの日の再来だ。またSモードになる、俺の予想は何割かの確率で当たるはずだ。多分100回に1回くらいは当たる。

 

 バスから降りたら世界が変わったね。空気がここまで美味しく感じるなんて思わなかった。人が密集してるとさ、まぁ色々あるから。

 

 バス事情はここまでにして今日会った事を全部書く。1日目はそこまで厳しくはなかったけど、多分これから厳しくなるだろうから早めに寝たい。

 

 まずホテル、見たらデカすぎだと思いました。多分庶民とかならたくさん働かないと泊まることすら出来なそうなホテルって感じ。ここで5泊6日のリゾート気分!なんて訳はないって事はわかりきってました。

 

 遠月学園の卒業生の人達がわざわざ来ていた。率直に言うとすごいなってイメージだ。一人一人紹介されてたからここにも書こうと思う。すごい料理人なら一回くらい店に行ってみたいし。

 

 

 

 まず1人目、四宮小次郎さん。パリで開いてるフランス料理店でのオーナー、だったと思う。プルスプール勲章というすごい賞を貰ったすごい料理人らしい。

 

 なんか書いてるとふわっとしてる気もするが仕方ない。いきなり1人を退学にしたからそっちのインパクトが強いんだ。柑橘系の匂いがどうとか。

 

 そこまで厳しい世界なんだろうとは思うけど、いきなりそんな事するって凄いなって感じ。ていうかなんであの距離で匂いがする人まで分かるのかな?

 

 2人目、水原冬美さん。イタリア料理店のエフって所を開いているらしい。周りの人と比べると小さめの印象を受けた。ちなみに俺の1日目の課題の審査員もこの人だった。

 

 椅子に変わった座り方してたけど、常に無表情って感じだった。でも審査は厳しめだった。そこは後で書くけど。

 

 3人目、関守平さん。ひのわって言う鮨店を銀座に開いてるらしい。目が細めだったけどあれで寿司とか握れるのかな?俺自身は寿司が好きじゃない。

 

 食べるとしても高いのより安いの、なおかつ魚じゃないのを食べてしまう。例を挙げるとたまごとか。美味しいからいいじゃん、回転寿司最高。

 

 4人目、ドナート梧桐田さん。オーベルジュのテゾーロという店のシェフだったと思う。

 

 オーベルジュって聞き覚えはあまりなかったけど、後で新戸さんに聞いたら宿泊施設が付いてるレストランらしい。この人いきなりナンパってぽい事してたから気が合わなそう。

 

 多分話しかけてたのは幸平くんのペアの子だったはず。田所恵さんだったかな。幸平くんと結構話してる所を見てるし、いい雰囲気じゃないとか思ってみた。

 

 5人目、乾日向子さん。日本料理店の霧のやという店を持ってる人。ドナートさんと同様いきなりナンパから入った人。

 

 何言ってるかはわからなかったけど、多分同性だとしてもあまり言われることのないこと言われたんだろうなって。田所さん顔赤くしてたし。

 

 で、最後に堂島銀さん。料理人かってくらい体つきがヤバい。ボディービルダーみたいな体つきでしょ、あれ絶対。全員すごい人だけどこの人だけはオーラが違うように思えた。

 

 今回の宿泊研修はあの人達が審査員らしい。自分自身の城を持つ人達が従業員と同じように、今回の審査を行う。もちろん通らなかったら退学まっしぐら。というかそれ以前に退学させられる可能性もあるって事だもんな。

 

 その後はそれぞれ各自指定された人の所での審査が始まった。俺は水原冬美さんの審査の場所だった。

 

 作る料理はイタリア料理。指定は特にないが、制限時間はいつも通りある。イタリア料理店の人にイタリア料理を持ってけって事だから大変だよね。作り続けた経験が違う訳だから、判断する舌も違う。

 

 いや、指定は一応一つだけあったかな。作る料理は早い者勝ち。同じ料理は持ってくる事は許されなかった。合格、不合格関わらずにだ。

 

 厨房ってのはスピードも重要だしって事かな。まぁスピードは問題はないんだけど、問題は作る課題がイタリア料理って事。

 

 俺は外国の料理はそこまで作らない、というより知らないと言った方が正しい。そんな外国のあまり知られてないような料理を、家庭の料理としては出さないし。

 

 と言うわけでそこまで知名度が高くない、でもイタリア料理と言えばってのを作る事にした。もちろんパスタ、ただ作るのは日本のパスタでは馴染みがない人が多いと思う。

 

 と言っても使う麺が馴染みがないってだけだとは思う。今回使った麺はブカティーニ。パスタの麺とかについては調べてた時期があるし。

 

 ブカティーニと言えば俺が思うのはアマトリチャーナだった。麺はその麺の特性や長所によって使い分けられる。まぁ市販のパスタに合いそうなのを探してたらやってみたってだけだけど。

 

 アマトリチャーナは基本、グアンチャーレと呼ばれる豚頰肉の塩漬けや、ペコリーノロマーノと呼ばれるチーズ、それとトマトをベースにしている。

 

 だが時間が時間、さらにグアンチャーレはたしか一週間や二週間かけて作るものだったはず。だから代わりになるのは家庭でも良くあるベーコンだ。

 

 あっちではパンチェッタと呼ばれる。生ベーコンとかもパンチェッタとして呼ばれるらしいから、今回はそれを使った。まぁグアンチャーレなんて使った事ないけど。

 

 元のレシピではサラダ油は使わず、グアンチャーレから出る脂を利用するらしいがもちろんそれはない。だからサラダ油を使った。通常ならオリーブオイルだったはずだけど。

 

 トマトを入れないアマトリチャーナもあったはずだけど、今回はトマトを入れる。それくらいの時間はあったし、最高級のパンチェッタもあったから早めに作らせてもらった。

 

 今回はダブりがアウトだし、早く出す方が有利だ。ただ味はパンチェッタを使うから本場より落ちる。その為、揚げたニンニクを入れる事でカバーを少し入れる。今思えばオリーブオイルで揚げても良かったかな。

 

 茹で時間自体は9分程度だから時間はそこまでかからない。イタリア料理は時間はそこまでかかるイメージはない、特にパスタに関しては。

 

 気づいたら俺のすぐ側に椅子を持ってきて座っている水原さんがいた。声が出そうになったけどなんとか堪えた。ここまで近くで見なくてもいいじゃんか?

 

 結果は合格、一番最初に持って行けたって事もあって運が良かった。もし俺が知らないイタリア料理なんて出されたら終わりだし。

 

 レシピ通りで殆どを作ったし。アレンジを入れる余裕を作ってみたいがそこができない。レシピ自体が一種の料理だからこそ、下手なアレンジで崩れたらと思ってしまう。

 

 幸平くんに今度教わってみようかな?安上がりになるアレンジならより一層知りたい。

 

 その後も試験的なものはあった。満足できるレベルで50食を作れって課題だった。スピードと量が大事だなって思ったからすぐお腹いっぱいになりそうな料理をした。

 

 たくさんの料理を短時間、なおかつお腹いっぱいにさせるってのは家庭の料理では基本だ。これは得意中の得意だったし、会場内では一番最初に抜けさせてもらった。

 

 薙切さんは俺より少し早く終わってたらしい。風呂場の前でたまたま会った。これから風呂に入るらしい。混浴とかじゃないから良かった。

 

 余裕があったらトランプでもしない?って言われたから日記を書いた後でお願いした。もう書く事がなくなったので薙切さんの部屋に行こうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追記 薙切さんトランプ強かったです、新戸さんジョーカーを俺に送りすぎです。負けまくりました。

 




小学の頃、卵焼きを練習してなんどもスクランブルエッグになった。そして何度も練習してようやく卵焼きができたって思って、スクランブルエッグを作ろうと頭の中で思ってたら、手は勝手に卵焼きを作ってた事があります。

宿泊研修って他の人が主人公を見る暇がなさそうな気がしてきた。他の人の視点を作れない気がしてきた。宿泊研修にオリジナルはそこまで入れられないし……。多分この次の話は水原さんの視点になると思います。短い気がする。


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▶︎4-1【エフ】

原作見てなきゃ【】内で誰か分からない気がするぞ???水原冬美シェフです、可愛いです。検索してみて下さい、可愛いです。可愛いです。
原作じゃそこまで出てくるキャラとは言えないから、今回結構自分の中での心情って感じです……(´・ω・)多分シェフ同士の呼び方もオリジナルだと思います、原作読んだのどれくらい前だろ。しかも宿泊研修って相当前だし……


 

 

 私の名前は水原冬美、自分で言うのはなんだけど名は知れてる料理人だ。遠月学園での3年間を過ごし、卒業までたどり着いた数人の中の1人。今は自分の店も持っている。

 

 イタリア料理店のエフ、それが私が持つ城の名前。イタリア料理においては負けるつもりはない。見た目だけで判断されるのは負けとは認めないから。

 

 悲しいことに私の料理の腕が上がるたびに、自覚した事がある。身長は比例とはいかなくても、少しくらい伸びて欲しかった事実を認めざるを得なくなってきた事。

 

 他に卒業した人達、男子は仕方ないとしても女子の中ではかなり低い方だった。さらに今回も悲しいことに一番低い気がする。認めたくはないが、認めたくはないが。

 

 日向子ですら私より高い。四宮は仕方ないけど、なんかムカつく。鼻に付く感じがあるし、でも腕は私よりも上だし。なんか認めたくないけどムカつく。

 

 ……私の愚痴はここまでにしたいと思う。今回、私は審査員として呼ばれた。宿泊研修、遠月学園に入学したばかりの一年生が最初にぶつかるであろう、高い壁の一つ。

 

 卒業生が試験官となる。それは聞いただけでもレベルの高さがわかる。退学が一つのミスで決められてしまうからだ。

 

 今回は四宮や私がいる79期、日向子らがいる80期、そして関守さんは一つ上の先輩だ。呼ばれるのは初めてではないけれど、今回はいつもとは違うかも知れない。

 

 例えば薙切えりな。彼女は神の舌と称され、一年生ながらにして十傑に入っている。私も元々は十傑の第二席だが、簡単に入れるような世界ではない。

 

 今回は期待しても良いだろうか?私が退屈しない程度の料理を出してくれる人が、名前を聞いたこともないような一年生らが、私や他の人を唸らせてくれるだろうか?

 

 あまり変わることない私の表情も、その時は少し笑っていたと思う。四宮には気持ち悪い笑みを浮かべるな、と言われた。相変わらず高飛車な奴。今度日向子を四宮の店に送りつけてやる。対四宮人型兵器だ。

 

 まぁアイアンクローされる未来しか見えないが。四宮は女子に対しても容赦がない。デリカシーもない。さらに愛想も悪いと三点アンハッピーセットだ。

 

 しかし料理の腕は確かだ。誰にも負けない自信も腕もある。……だがどこか、今まで会ってきた中で一番何も感じない気がしている。そう、四宮に何も感じない、なんてあり得ないのだ。

 

 もちろん私が四宮に恋をしているわけではない。無駄に腐れ縁が続いているというだけだが、オーラのような何かが感じなくなってきている。なぜかそう感じてしまったのだ。

 

 この宿泊研修にそれを掴めればいい、とも思いながらホテルの中へと移動する。これから卒業生メンバーとして壇上に立つのだ。自分の店を出てまで来る価値を感じさせる人はいるだろうか?

 

 私や他のメンバーが出てくる。一気に騒がしさが増していくのが分かる。……出て早々四宮が1人を退学にさせるとは思わなかった。鼻が効きすぎなんだと思う。嫌味を言う口と同じように鼻まで嫌味が……

 

 それからは普通に進んでいった。彼らの最初の課題は割り振られた場所に行き、審査を合格すること。まぁ宿泊研修の日程はその審査が大体だ。全てというわけではないが。

 

 四宮の所に行く人は不幸だと思う。いきなり20人くらい落としてもおかしくないから。まだ私は優しい方だけど、簡単に合格は出さない。

 

 椅子に座り、私の審査を受ける人たちの顔を見る。料理人として大成出来る人は顔つきも違う、そう考えぐるっと見回してみたが……やはり数えられる程度しかいなかった。

 

「じゃあ、課題を発表するから聞いてて。課題はイタリア料理、種類は問わない」

 

 ざわつく声が聞こえてくる。私はイタリア料理の専門、簡単に審査が通るわけがないと考え始めているんだろう。だけど、それじゃあこの先を生き残れるわけがない。ざわつく生徒達へ、私はさらに一言告げる。

 

「ただ、合格であれ不合格であれ……今回の審査において、料理の種類の被りは無し。私に同じ料理は持ってこないで」

 

 料理の世界は速さも問われる。自分の城を持つなら当然そこの技量が問われてくる。人気が出れば出るほど、客足は比例して増えるものだ。

 完全予約制、などを取っていない限りはだが。誰でも入れる、例えば大衆料理屋だったりはスピードが命。一つの遅れは全ての作業を遅らせる。

 

「質問はある?」

 

 ……どうやらないようだ。さぁ、私が退屈しない程度にお願い。退屈したら審査を終わらせたっていいんだから。

 

「ないなら、始め」

 

 全員が慌ただしく料理の準備を始める。やはりメニューの被りという縛りは、人の判断を鈍らせている。それより早く作ればいいだけなのに。

 

 言葉だけでも惑わされている。パスタにおいても麺は複数の種類がある。それが違うだけでも全く違う料理になる。私の舌はその程度を見抜けないほど頓珍漢ではない。

 

 早く料理に取り掛かっている人は数人いる。だけどスピードを重視しすぎても受からない。ちょこちょこいい雰囲気を出してる人はいる。一人一人の名前は覚えてないけど。

 

 まぁゆっくり待とう。そう考えていた私の目を覚ましたのは、会場自体がいきなり静かになったことだ。この人数がいていきなり静かになるはずがない。

 

「……これでいいか」

 

 ボソッと聞こえた。作るメニューは完全に決まっているのだろう。ただの生徒のはずなのに、周りは彼に注目している。

 

 作っているのはパスタ、麺はブカティーニ……と言うことは作るのはアマトリチャーナだろうか?時間としてはパスタなら早く終わるだろう。

 

 問題は茹で時間の間、何をするかだ。ソースを作るのは当たり前だが、アマトリチャーナに関しては本場では有名なものがある。グアンチャーレ、と呼ばれるものだ。

 

 ペコリーノロマーノと言うチーズは用意されていたが、グアンチャーレは数週間を使って作るものだ。ここでは用意されていない。

 

 代わりに彼が使っているのはどこにでもある、ベーコン。彼が作っているのは確かにアマトリチャーナだが、本場のアマトリチャーナではない。

 

 油はサラダ油、使っているのはベーコン。彼が作っているのは本場のイタリア料理では無く、日本でも出来るイタリア料理だ。

 

 決して思いつかない発想ではないし、実際そちらを使うレシピも存在する。もちろんそれを知っていれば容易に出来るだろう。そうだとしても、速い。

 

 一瞬も止まっていない。頭の中でレシピを思い浮かべていたとしても、完全に記憶していたとしても、止まることはある。そこから先は知識ではなく経験の話になる。

 

 レシピを知っているから料理ができる訳ではない。包丁の使い方を学んでいなければ、料理は出来ない。彼は全ての動きが等しく、完成されている。包丁の手捌き、料理の手順、時間感覚まで全て等しく完全に近いものだ。

 

 気づけば私は彼の料理を間近で眺めていた。その間、彼は私に目をくれることはない。ただ目の前の料理のみに全てをかけているような。

 

 ほぼ完成したと同時に、ようやく彼は私の存在に気づいたようだ。だが今度は私が彼を見ていなかった。完成された料理が、皿に盛られていない状態でも見えてくる。

 

 食べなくても分かる。これは美味しい。本場で通用するかどうかは分からない、彼らの舌と日本人の舌は違う。だが彼の作り方は日本人向けの作り方。

 

 イタリア料理と言ったが、アレンジを加えるなとは言ってない。近頃では外国の料理と和食を合わせたりなんてのは、簡単に出来ている。

 

 皿に盛られ始める。茹で時間も完璧だ。素人や料理の始めたての人は時間を計測して茹でたり、焼いたりしている。料理人は経験だけで時間を計測しているが、彼にはそれが存在している。

 

 作り方だけなら、日本向けのアマトリチャーナというだけだ。だがその手順、動きの全てが彼の経験や才能を表している。だからこそ、彼が作り始めた瞬間に静寂が訪れたのだろう。

 

 これで高校一年生とは思えない、それほどの経験を感じさせる。特に私や卒業生、先生達や自分の料理に腕があると思っている料理人ならば、何度も修羅場をくぐったとしても辿り着けない世界に辿り着いていると、脳が告げるだろう。

 

「……どうぞ」

 

 目の前に置かれた料理を、私の口に運ぶ。たった一口で全てが達する思いに至った。美味しさが脳から足先まで痺れるほどに伝わる。トマトの酸味、その中に含まれる甘み、それを殺さない程度の風味と辛味。完璧な食感のブカティーニと、アマトリチャーナで言われる「重い」ソースも完璧に作られている。

 

 ソースの味付けも完璧。グアンチャーレの代わりにサラダ油を使えばその分の旨味は無くなる。その部分を唐辛子と、ニンニクを入れることで辛味と匂いを追加している。

 

 さらにニンニクは揚げているのだろう。ソースやパスタの風味を邪魔しない程度、しかしその中で主張してくる。ベーコンもただのベーコンではなく、敢えて生ベーコンを使っている。油での風味を強くさせすぎないためだろう。

 

 告げる答えは、たった一つ。

 

「……合格」

 

「……お疲れ様でした」

 

 おそらくどの会場にも、これほどの速さで合格した人は片手で数えられる程度だろう。

 

「……やっぱり、考えが足りないかな」

 

 不思議な事を言い残し会場から出て行く。彼はこの料理でも、満足していないのか?まだ上がある、と。それは当たり前なのだろう、料理人には必殺料理が存在する。

 

 彼の得意料理などは私には分からない。だがこれ以上がある、おそらく彼は今壁にぶつかっている。それも普通の料理人なら辿り着けない壁に。

 

 そして既視感を覚えた。あぁ、四宮だ。今の四宮と同じ雰囲気を感じた。四宮も今、壁にぶつかっているのだろうか?それは正しいか分からない。彼の壁は美味しさや速度では無く、何かが足りないと思っているのだろう。

 

 その「何か」は、彼自身しか知らない悩み。あの完成された料理に何を加えるのか、ただ想像しているだけで私の口から涎が出そうになってしまう。

 

 願うならば壁を壊して欲しい。そして他の審査ではあまり目立って欲しくない。彼は……私の店に欲しい。目をつけるのはアリ、と言われている。

 

 この中で誰よりも早く目をつけたのは私。なら声をかけるのも私が一番最初だっていいはずだ。心でそんなワガママを言いながら、審査を続けていった。

 

 

 

 




前話の後書きで短くなると言ったな、むしろ最長(4126字)になった。食戟のソーマ特有の料理に対する変わった評価の感じ、あれは出さないようにします。まず思い付かないのと、料理自体そこまで知識にわかなので出せないんですよね……実際作ってみるのも出来ないし……まぁにわかな部分が気になったらとことんスルーしてください。


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▶︎5

気づいたらお気に入り6000とは……本当にありがとうございます!月間でも3位にいたりしてたので、かなり嬉しかったです。今後ともゆっくりめですがよろしくお願いします


 

 

 

〒月€€日 天気 部屋の天井を眺めるだけじゃ天気は分からない。

 

 

宿泊研修 2日目

 

 宿泊研修2日目、なんだけどそこまで書くことがなかったです。というより書いていいのかなって言う事を体験した。

 

 まぁ見られなければいいと思うから書く。審査的にはいつも通りだった。今回は四宮さんの所で料理を作ることになった。テーマは「9種の野菜のテリーヌ」というテーマだ。

 

 まず一言。テリーヌってなんだ。レシピ見たけど意味が分からん。いや、作り方は載ってるからそのまま作るってのは俺の得意分野だけど。レシピマンと呼んでくれ、誰にも見られないから呼ぶ人いないけど。

 

 初日で結構四宮さんは人を落としたらしい。30人前後落としたって噂が流れてた。まぁ第1印象がいきなり人を退学させた人だから、正直1日目に50人くらい落としてもおかしくないとか思ってた。

 

 これは結構簡単な方らしい。経験がある人からしたら簡単だとは思うけど、初めて作る人が簡単に合格できるものじゃないでしょ、あれ。とりあえずは合格したけど。

 

 ただいつもの料理が出来てない印象があった。理由は何個かある。まず始まりにテリーヌってなんだろってずっと考えてた。調理実習じゃないんだからボーッとするなよこの時の俺。

 

 二つ目、眠い。薙切さんと新戸さんとトランプしすぎた。負け続きだったからやけになって長い時間やってたし、あの人らコンビで攻めてくるんだもん。昔から数は暴力って決まってるんだ。

 

 それに俺のいつもの就寝時間は遅くても23時だ。大体22時には確実に夢の世界へ旅立っているというのに、普通に時間を通り越してしまってた。中学の修学旅行とかと違って、寝る時間とかは特に制限されてないし。見回りが来るわけでもなかったからさ。

 

 原因を書いたけど2つとも自業自得すぎる。いつもよりゆっくりめにやった。なんか切りながら思ってた事あるんだけど、新戸さんへのアドバイスした時のテキトーさがヤバかった。

 

 コンマ単位でのズレとか分かりませんから。料理に合わせてこれくらいのサイズでいいかなぁ、って切ってるだけだ。コンマ単位のズレがないってのは俺の理想。しかも絶対届くはずのない理想。

 

 俺が本格的に料理をやり始めたのも最近だし。レシピだけ頭に入れて一回も作ってないのとかあるし。ただしテリーヌなんて知らない。何度書いても正体は不明だ。

 

 ちなみに合格した後、やっぱり大食いの人たちにご飯を作れってのはあった。量が増えてたけど、量も得意分野だしね。ただそこからが問題なんだよね。

 

 部屋でゆっくりしてたらいきなり誰かがドアをノックしてたから、出たら何故か水原さんがいた。え、合格取り消し的な奴?って思ってたら違った。

 

 幸平くんが四宮さんに喧嘩を売ったらしい。理由は田所さんが落とされた事。揉めてたのは見えてたけど内容は知らなかったし。ゲストとして来て、って言われた。

 

 断る理由はないし、何より幸平くんが負けたら退学になるらしいし。そしたらさらに俺がやってみようかなって思った。田所さんはあまり知らないけど、幸平くんがそんな事をするってことはここで落ちる人じゃないってことだし。

 

 幸平くんだって落ちる人じゃない。退学取り消しはできなくても、馬鹿にしてる雰囲気しか出してなさそうだし。そうだったら謝らせてやる、人を馬鹿にする人は好きにはなれないから、なんて思ってた。

 

 まぁ結果は最終的には残留、という事になった。てか審査にすら参加してないのに俺は食べていいのかって思ってたけど、水原さんがくれたから食べた。どっちも美味いじゃ駄目なのかな?

 

 そして食べてて話をほとんど聞いてなかったです。水原さんにはバレバレだったけど。だって隣に椅子持ってきてるし、そりゃバレるよね。

 

 幸平くんお疲れ様、田所さんも、とだけは言っておいた。若干田所さんからは怖がられてたけど、まぁ仕方ないといえば仕方ないよね。実際初対面に近いわけだし。

 

 水原さんは不思議とよく俺に話しかけてきていた。結果が出た後もだ。なんか幸平君らが出て行った後は他の人にも俺が見られてたけど。

 

 今回の勝負、どう思った?って聞かれたんだけど、よく聞かれる気がする。とりあえず、結果は良かったと思います。止まったままにもなってませんし、わざわざ食戟をさせて正解だったと思います。どっちも上に行くのは決まってますし。とは返した。

 

 なんか俺が何か質問されるたびに、若干驚いた雰囲気が出るのはなんでだ?だって田所さんと幸平くんについて聞かれてるんだし、そう答えるのが正解だと思ったんだけど。

 

 気づいてたの?って言われたけど何がだろう。一応あれかな、田所さんのオールスパイスの事かなって思ってYESを返しておいた。

 

 その後は普通に帰ってきた。書き終わったからすぐ寝る、明日の予定が空白なのはなんで?まぁいいや、おやすみなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

→月←←日 天気 ホテル内は明るいから晴れ

 

 

宿泊研修3日目

 

 

 空白の意味が分かった。書いてるのは22時過ぎてるから眠気がやばいけどとりあえず書いておく。宿泊研修毎日日記書き隊です。

 

 どうやらホテルの朝食を作るらしい。なんと課題は卵料理。プレームオムレツで良いかなって思ったけど、ホテルの朝食には元からありそうだ。

 

 一応一回作ってきただけで帰ってきたけど。要は美味しくて朝食に合うやつって事だ。朝から胃にくるものは無しって事でしょ?和洋は問わないって言われたし。

 

 ゆで卵でもおいとけばいいんじゃないかな。塩をおいとけば普通に取ってくれると思う。

 

 まぁ冗談はさておき、俺が作るのは茶碗蒸し。まさか審査員に卵アレルギーの人を呼ぶなんて恐ろしい事はしないでしょ。卵料理以前の問題になるからね。

 

 ただ茶碗蒸しで考えられるのは貝など。貝をアレルギーとする人、鶏肉を入れれば鶏肉のアレルギーを持つ人と色々考えられてしまう。

 

 どうしようかかなり悩んでる。三つ葉を散らすのとかまぼこは入れる。子供の頃から茶碗蒸しのかまぼこはみんな大好きだろ、練り物が嫌いな人とか以外は。

 

 しいたけを入れるのもアリ。問題は味の方なんだよな。コーンの缶詰と中に入ってる汁を使って日本酒を入れるなら甘みが強めになる。ただ隠し味として柚子ってのもアリ。正確には柚子胡椒になると思うけど。

 

 ただ結構めんどくさいからなぁ。すが立たないように作った方が断然美味しくなるし食感も良くなる。他の人の料理と近すぎると温度を貰って調節しづらい可能性もある。まぁそこは、どうにかしよう。

 

 良し、まぁ明日頑張ろう。目標は200食、頑張って超えるぞ。他の人は頑張ってるだろうけど、早めに寝よう。おやすみなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

#月ハッシュタグ日 天気 疲れた

 

 

宿泊研修4日目

 

 

 200食いきました。無事合格しました。疲れたので今日は終わりです。おやすみなさい。

 

 

 




いきなり2日目から4日目に行きましたが、仕方ない。水原さんみたいに視点が作れないので。いや、2日目から4日目全部書いても他視点が無いです。
5日目と6日目が次の話になって、その後は秘書視点か神の舌視点になると思います。次の話で主人公視点での宿泊研修編は終わりです。早いな。
宿泊研修終わったら原作だとすぐ秋の選抜編にいきますが、オリジナル入れます。竜胆先輩と十傑のロリとか入れたいですね。男視点が難し過ぎる。


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▶︎6

 

 

日月月日 天気 天気予報は信じられない

 

宿泊研修 5日目

 

 

 ようやく終わった。まずは4日目起きたことから書く。4日目は3日目でも書いた通りだったんだけど、結構早めに200食は取れた。ただ唯一の問題は300食分しか作ってなかったってこと。

 

 別に200超えればいい程度で作ってたら、意外にも手を伸ばしてくれる方が多かったからか、無くなってしまった。まぁもう一度作るってのもアリだったけど……

 

 まだ食べたい、と言ってくれてた子供達には悪い事したかな。ひとまず代わりになるものは作った。と言っても入学試験の時にも作ったプレーンオムレツだけど。

 

 少しだけ工夫したのは甘味を強くしたって所。小さな子供に塩っ気が強いものを食べさせるのは気が引けた。まぁ卵焼きとかの類は家での味付け次第でもあるんだけど。

 

 甘みをとるか塩っ気を取るか、意外にそこは聞かないと分からない。ウチはとことん甘い方だったから自然に俺が作るときも甘めになる。家の味ってのは作る時にも出てくるものだと思う。

 

 子供が笑ってくれるってのは本当に嬉しい。いつか俺もこんな風に笑ってくれる子供がいて欲しい。ただしそれはただの願望である。

 

 他の人からもあまり見られなかったから目立たずにいれた。会場は複数あったから自由に動けたし、別の方の会場に行ってみた。そこで結構驚く事があった。

 

 幸平くんが200食どころか100食も行ってなかった。幸平くんなら30分なんて簡単に残して終わらせそうだと思ってたんだけど。薙切さんは余裕だろうけど。

 

 あ、新戸さんも同じ会場だからみとけば良かった。薬膳とか使ったりしてたのかな?まぁ終わった事だから仕方ないか。

 

 そう言えば気になった事もある。薙切って苗字の人がもう1人いたって事。何だったかな、薙切アリスさんだったと思う。別に話したわけじゃないけど。

 

 その人結構凄かった。俺がプレーンオムレツ作り終わったくらいには200食どころか300食分いきかけてたし。多分薙切さんと何かしら関係はあると思うんだけど、そこは聞いてみないと分からない。

 

 その後は幸平くんが怒涛の追い上げをしてた。多分行けたなって思って自分の会場に戻ったけど。テレビとかでよくある魅せる料理、そんな感じだったかな。

 

 あぁいうのも結構いいね。見ててワクワクする感じが楽しめると思う。ただそのワクワク感を抱いたまま、また沢山の量を作る課題がやって来たときはマジですか、ってなった。

 

 日に日に量が増えていくのは辛い。スピードの分配ってわけじゃなく、早く作らないといけないからな。いきなり量が倍増したりしたら流石に頭おかしいんじゃないかって疑うけど。

 

 

 

 

 

 で、ここからは今日の日記。今日は16時から集合だったが3日目と同じように空白だった訳だ。今度は夕食で400食とかあり得そうだなって思ってたが、実際そんな事なかった。

 

 卒業生の人達が組んだフルコースを味わう時間だった。まぁフルコースがあるって事は知ってたけど、あんなサプライズ風に出してくるのは知らなかった。

 

 ちなみに何でフルコースが出ることを知ってるのかと言うと、水原さんに聞いた。全く何もしてないけど、審査の手伝いしてくれたからって教えてくれた。そこまで生き残ってね、とも言われたけど。

 

 四宮さんとか結構アイアンクローとかしてて、仲が良いのか悪いのか分からない人達が協力できるのかな、とこっそり思ってしまったのは秘密だ。水原さんに失礼だからな。

 

 意外にも俺は水原さんに気に入られてるようだ。別に自惚れという訳ではなく、本人からそう聞いた。アマトリチャーナがうまくいってたからかな?それと勧誘もされた。

 内容は自分の店、エフにシェフとして来ないかというお誘いだった。普通に、というよりかなりすごいお誘いだった。普通なら受ける方が良いとは思ったんだけど、俺は別の事が目標だし。

 

 ひとまず今回は断った。ずっとは無理ですけど卒業できたら、偶に顔出すとかじゃダメですかね?と聞いたらそれでも良い、と返された。水原さんすごい優しい。しかも卒業しなくても来て良いってさ、優しすぎやろ。

 

 路頭に迷うことは無さそうで安心できる。高校一年生にして働き口を見つけたぞ。専業主夫になっても偶にならいけそうだし。あれ、専業してないじゃん。矛盾やん。

 

 まぁ今更だし、いつか暇が出来たらエフに伺おうとは思ってる。それがいつの話になるかは分からない。暇が出来る時がいつかなんて俺には分からないし。なんかいきなり食戟に巻き込まれたりするかもしれない。

 

 いや、巻き込まれないとは思うんだけど。でも新戸さんとも食戟するみたいな約束してたし、しないといけないのかな?だって沢山の人に見られながらするんだよ?胃に穴が開くって。

 

 だがこの日記を読んでるあなた。これ誰に向かって書いてるんだ?いや、これを見直した未来の俺に捧げる。ついに宿泊研修は終わったが、俺にとっての地獄はまだある。

 

 そう、6日目は日程が全て終わったことにより、遠月学園に帰る。さて、何で帰るか。もちろん行きと同様、バスでの帰りになる。もはや死を覚悟している。

 

 しかも今回はバスが違うらしく、席は決まっていたから見に行ったんだ。すると隣にはこんな名前が書かれていた。『新戸緋沙子』と。

 

 心に穴が開きそう。いつでも口からリバースしてもおかしくないのに、隣が新戸さんって事はリバースしたらヤバイ。世間的にもヤバイ。女子にリバースするとか死んでも許されないでしょ。

 

 つまり明日に俺の本当の戦いが始まる。死地と言っても過言ではない。しかも酔い止めが効く体質ではないんだ俺は。酔い止め飲めば大丈夫!とか言ってて飲んで遠足に行ったら弁当にリバースしたからな。

 

 バスだけは天敵だ。バスを敵に回すくらいなら竜胆先輩を敵に回した方がマシだ。ただ竜胆先輩を一回本気で怒らせたときも、同じくらい死を感じた。基本俺は小動物未満のメンタルだから。

 

 ちなみに怒らせた理由は竜胆先輩が着替えてる時に部屋に入ってしまった事。確か中学2年の時だったけど、なんか言葉もかけられずとりあえず無言で頭を下げて部屋から出たら、高速で捕まった。

 

 「りんどー先輩の着替えを見て、その程度ってどういうことかな〜???」って言われた。なんて返せば良かったのかいまだに分かっていない。だって興奮しましたとか言ったら変態だよ?

 

 しかも何故か服を上に着ないまま下着の状態で説教してくるから、目のやりどころに困り果てた。目を瞑ろうかとも思ったけどさらに怒らせそうだと思って、とにかく意識を別のことに集中させた。

 

 過去の話を書くのはやめておこう。しかも明日には地獄が待ってるから早く寝ないと。精神安定させないとあの敵とは戦えない。もう見ただけで戦意喪失するから。

 

 事前に新戸さんには謝っておいた。本気でバスは無理だから、って言ったらすごい笑われた。頭まで撫でられたのは解せぬ。どこか歳下だと思ってない?新戸さんって。

 

 とりあえず寝ます。死にたくないなぁ、おやすみなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月 日 天気

 

 

 おもいだしたくないので、ねます おやすみなさい

 

 

 




次は秘書視点かな?宿泊研修終わったらオリジナル回です。
多分竜胆先輩と主人公、伊武崎くんと主人公、茜ヶ久保先輩と主人公とかですかね?活動報告でオリジナル回のリクエスト募集してます。よければご覧下さい、そして送って下さい。
偶に日間ランキングに顔出しをしてたり、300000UAを超えたりと嬉しいことが沢山ありました。ありがとうございます!
3日後の更新は事情があり休みます。次の更新は11月9日になります。その先の更新はリクエストが活動報告やメッセージで送られればリクエスト、無ければ普通にオリジナル展開を書きます。


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▶︎6-1【秘書】

 

 

 

 宿泊研修が始まった。5泊6日の地獄の日程が組まれた、宿泊研修という言葉を謳った悪魔のような存在。だが私は落ちる訳にもいかない、地獄のような日なら私だって過ごしてきている。

 

 だが私でも予想はあまりしていなかった。まさか審査員となる方々がこの遠月学園の卒業生達だとは。甘い物ではない、そうは分かっていたがここまでの面々を集めるとは思っていなかった。

 

 元十傑第一席や二席だっている。私たちからしてみれば先輩であり、その場所まで辿り着いていない世界だという事。自らが自分の城、店を持っている面々ばかりだからだ。

 

 特に四宮シェフ、彼はプルスポール勲章を受け取ったことのある日本人として有名かつ、外国でも活躍する一流の中の一流。卒業すれば地位は約束されるだろうが、ここまでの地位は自らの力を卒業後も磨かなければ辿り着けないだろう。

 

 今の状態では、私では到底辿り着いていない。えりな様であっても辿り着いてはいないだろう。認めたくはないが、幸平も私……いや、それよりは上、えりな様よりは下の場所にいるだろうが、辿り着いていない。

 

 可能性がない訳ではない。誰しも才能を持つ訳ではないが、努力という世界で補い上に立っている人間だっている。だからこそ可能性がゼロである料理人はいないだろう。

 

 一つあり得るとするならば、千崎だろう。千崎は私や幸平、えりな様よりも上にいるだろう。えりな様も自分より上だと認めている。だからこそ、私やえりな様は千崎を気にかけている。

 

 それは幸平も同じだろう。だが周りはそれを認めようとしない。料理にその日の運が関係する事はほとんどない。それは実力の内に入るはずなのに、それを認めようとしない故に千崎を下に見ている。

 

 それは編入生だと言うだけか、それとも自らの力が足りないと自覚したくない故の、嫉妬なのか。そこはわからないし、分かる気もない。千崎自体も気にしてはいないからな。

 

 ……話が脱線し過ぎているな、1日目はいつものように審査だ。だが審査員が卒業生というだけで周りの緊張はかなり高まっている。

 

 普段はA判定を貰えれば良い、すぐに退学になる事はそうそう無いが……今回は彼らに退学させる権利が存在している。だからこそ緊張し、いつもの料理ができない人も居るだろう。

 

 私は取り乱さない。目の前にいるのは審査員ではなく、1人の客であり、料理人。この程度の壁を超えられないでえりな様の隣に……ましてや千崎に追いつけるわけがない。

 

 1日目など始まったばかり、その程度で落ちればその程度の人間というだけ。周りよりも早く、そして誰よりも上の評価をもらう為に……誰にも負けやしない為に、ただ上に行くのみだ。

 

 自分の料理を作り、評価は合格。……予想外だったのはその後に呼ばれた方々に50食を作る、という課題だ。量も味も保証できなければ不合格、さらに制限時間も短い。

 

 そして1日目は終わった。かなり早い段階で私も課題を終わらせることができたが、えりな様や千崎はそれよりも早くに終わらせていた。えりな様はお風呂を後にしていたし、千崎とも会ったと言っていた。

 

 さらにトランプをする約束をしたらしい。千崎やえりな様はやはり余裕があるようだ。……えりな様や千崎とトランプ、か。心のどこかで楽しみにしている自分がいる。

 

 ちなみに千崎が来る前にえりな様と裏で繋がり、千崎に何回も負けてもらった。……若干涙目だった気がしなくもないが、楽しくなってきたので無視して続行した。

 

 えりな様も同じ気持ちだったと思う。えりな様はSだな……まぁ千崎限定なら弄るのが楽しいのは同感できる事だがな?

 

 

 

 

 

 

 

 2日目も同じだったが、3日目からは一気に展開が変わった事がある。……いや、2日目もかなり驚く事はあったのだが私には直接関係していないからな。

 

 2日目は幸平が田所恵という女の為に、四宮シェフに食戟を挑んだらしい。3日目はその噂がかなり広まっていたし、千崎もそれを見ていたらしい。

 

 水原シェフに誘われ、その審査員として呼ばれたらしいが……むしろなぜ呼ばれたのか。非公式の食戟だから普通なら生徒を呼ぶはずはないのだが……確か1日目で水原シェフの課題だと言っていたな、千崎は。

 

 つまりは、私やえりな様と同じだろう。彼の料理を食べ、彼の腕前を、努力や才能の一面を見てしまった。だからこそ、彼を普通として認識できないから呼んだのだろう。

 

 ……私達とのトランプより優先されたのは、少し悔しい気もする。仕方ない事だが、こう、なにかやるせない何かを感じてしまうのは何故だろうか?

 

 3日目の内容は夜からだったが、そこには何も書かれていなかった。その日に初めて内容を告げられたからだ。課題は卵料理だったが、条件はそれだけではない。

 

 次の日の朝食としての卵料理を一品考え、出す。さらにそれを制限時間内に200食食べて貰わなければいけない、という事だ。朝という事は時間がほとんど無いに等しい。

 

 寝る時間などは存在しないも同じだ。さらに卵料理にそこまで種類はない。卵料理、ではなく卵を使った料理ならば視野は圧倒的に広がるだろうが……そこに気づかない人もいるだろう。

 

 新メニューを考える、それは1日なんてものでは考えつかないものだ。他とは重ならないように、しかし味も良く様々な人に食べてもらえるような料理でなければいけない。

 

 各自、様々な厨房を作り夜通し考えている生徒が多かった。だがその中にえりな様や千崎は含まれていない。えりな様はかなり早い段階でお帰りになられた。

 

 千崎は一旦部屋に帰って戻ってきてから作り、一回作っただけで帰っていった。その試食係を私に頼んできたから、驚いたが。

 

 作っていたのは茶碗蒸し。これなら確かに朝食にはキツすぎず、知名度もあるから取られやすいだろう。試食という事で一口食べたが、言葉では表せなかった。

 

 味はもちろん、おそらく誰に対しても美味しいと感じる味だ。だがそれだけではない。出汁も素材の味も何もかもが、ここまで一つの皿で生きるものなのだろうか?

 

 さらに遊び心も含まれている。かまぼこを花の形に切っているからだ。これは審査員が子供だったりすれば手に取られやすいだろう。決して目につくような工夫ではないが、不思議と見てしまう。

 

 舌触りは濃厚かつ、溶けるような味わい。温かさが私の何もかもを溶かしてしまいそうなほど、暴力的に、しかし繊細に私を少しずつ溶かしていくような甘みと味わい。

 

 ただ一つの料理でここまで何かを感じさせる、そんな料理を作れる人は早々存在するものではない。それを食べ感想を述べて千崎がいなくなった後も、しばらく料理に集中出来なかった。

 

 あの暴力的な味わいがずっと、口の中に残り続けているからだ。胃の中からも私に語りかけてくるような、そんな。これは言い過ぎなのかもしれないが、こうでしか表せないのだ。

 

 料理に対する評価をうまく言えない私を呪う。あの料理を全ての深さを味わえる舌でない自分を、とにかく呪いたくなるレベルだ。

 

 おそらく、いや、確実に千崎は200食を優に超えるだろう。えりな様も超えるだろうが、もしかしたらそれよりも早い可能性もある。誰よりも早い、というのは言い過ぎだとしても……

 

 ……いや、私がなんでこんなことを考える必要がある?千崎やえりな様は簡単に超えてくる、それなら問題は私だろう。私が不甲斐ない結果を出すわけにはいかない。課題は200食だが、私は300食を目指す。

 

 えりな様や千崎は400食いくかもしれない。決してその世界にはまだ私は踏み入れていない。だからこそ、他の者に簡単に負けるわけにはいかないんだ。上に、ほんの少しでも確実に上に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 4日目も終わり、5日目は卒業生の方々が組んだフルコースを食べる事となった。だが私の心は葛藤が生まれていた。

 

 不甲斐ない結果を出してしまった。結果は298食、2食分目標に届かなかったのだ。……たかが2食、されど2食だ。その差は大きい。200食と300食ではまるで話が違う。

 

 えりな様は気にしなくてもいい、と言っていただけたが……やはりどうしても気に病んでしまう。情けなさ、不甲斐なさに甘えを生じさせてしまっている。

 

 悩んでいる間、時間が経っていた。ふとした時、私の部屋のドアをノックする音が聞こえた。えりな様?だがこの時間にここにくるとは言ってなかった……不思議に思いドアを開けると、意外な人物がいた。

 

「……どうも、新戸さん」

 

「……千崎?なぜわざわざ私の部屋に……」

 

「少し話があるんです。明日、帰るじゃないですか」

 

「まぁ、な。バスの座席はまだ見に行ってないが……」

 

「俺が、新戸さんの隣なんです」

 

「む、そうなのか。……それを報告に?」

 

「……その、言いにくいんですが……」

 

「言いにくい事?千崎にもあるんだな」

 

「……どういう事ですか。……俺、バスが苦手なんです」

 

「……に、がて?」

 

「……嫌いです。気持ち悪くなるし、泣きそうになります」

 

「……ち、千崎が?……ふふっ……」

 

「笑わないでくださいよ……迷惑かけたくないので、謝りに来たんです、先に」

 

「ふふふっ……!わ、わざわざそんな?」

 

「……む……笑いすぎです」

 

「はははっ!仕方、ないだろう?そんな事のために来たし、まさかバスに弱いとは思わなくてだな……ふふふっ」

 

「……別に弱くても良いじゃないですか」

 

「ふふ、拗ねるな。悪いとは言ってないぞ?」

 

「……なんで、撫でてるんですか」

 

 少し拗ねさせてしまったので千崎の頭を撫でる。身長差もあるが手が届かない範囲ではないし、撫でてしまう。こう、何かをくすぐられるような気持ちになる。

 

 少し子供っぽいところもある。しかもそれをかなりの頻度で私に見せてくるから、どこか満たされるような気持ちになっている。……会った時なんて、千崎に癒されるなど微塵も思ってなかったけどな。

 

 もう少し話していたかったが、少し眠たそうな目をしていたので早めに別れた。子供っぽい一面も最近知り、少し知りたいという欲求が強くなっている。私、らしくないか?

 

 ちなみにバスの中ではこっそりだが、横に倒れてきたので膝枕の要領で寝かせてあげた。おそらく千崎は完全に寝ていたから気づいてはないと思うが。

 

 こっそり、写真を撮ったのも私だけの秘密だ。

 

 

 

 




お気に入り7000件イッターーーーー(*0ω0从*)
次は秘書子との買い物日記です。秘書子視点っている???ただのラブコメ風味な視点になるだけなんですがそれは。
視点募集したら竜胆先輩や幼女先輩()、幸平視点のリクエストがありました。ここは予想してたんですが、主人公の親視点と美作視点がリクエストで来るとは思ってませんでした(´・ω・)
ついでですけど投稿し始めてから1ヶ月が経ちました。


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▶︎7

 

 

 

M16月glow日 天気 なんか、晴れ

 

 

 宿泊研修?それは行きと帰りがあまりにも地獄すぎた行事だよ。とりあえず昨日は死にかけてたので、昨日の分を取り返すべく日記を書きます。

 

 というか昨日の記憶はほとんど無いに等しい。なんか、バスで色々記憶が吹っ飛んだ。乗る前の記憶から乗った後の記憶が結構すっぽ抜けるくらい地獄を見た。

 

 バスって凶器なんだ、俺にとっては。この苦しみを分かる人は同級生にいそうにもなかった。だってみんなキャイキャイしてたし、新戸さんは隣にいたから俺の体調を気遣って静かにしてくれてたけど。

 

 何気に新戸さんの優しさだけは覚えてる。ただ頭を撫でられた記憶があるのは何故だ?バスの中で頭撫でられるようなことしたのか?それ以外は外の風景の記憶すらも無いです。

 

 バスの移動時間が長いし、信号は良く止まるし。もう寝るしか無いと思ったけど、揺れるし吐きそうだし寝れそうにもなかった。まぁ気づいたらバスが止まって新戸さんに起こされたから、いつの間にか寝てたらとは思う。場合によっては気絶の可能性もあるけど。

 

 そう言えば乗る前に薙切さんが何かをとりに戻った気がしたけど、戻ってきたような記憶もないんだよな。でも学園にはいるっぽいし、多分俺の記憶違いだとは思う。さっきから思う、思うとかそれしか書いてないな。

 

 あ、そう言えば珍しく外に出る事になった。というより買い物に近いんだけど、またバスに乗る事になったら嫌だから酔い止めとか、出来れば効く奴がいいけど。そういうのを買いたい。

 

 後は少し生活に必要そうなのを買ってきたい。たまにある休みには羽を伸ばしたいし、服とかも買いたい気分になったから買い物に行く事になった。

 

 新戸さんと。最近すごい新戸さんと一緒にいる気がするなぁ。でもなんか結構約束をした。宿泊研修が終わってからは普通の課題とかしかないし、宿泊研修に比べれば余裕な奴が多い。

 

 新戸さんと買い物をして、竜胆先輩と俺が住んでる場所でゆっくりしたりとかの約束をした。後、竜胆先輩は誰かを連れてくるらしい。聞いたところによると十傑のどなたからしい。

 

 話によると俺に興味がある、とかなんとか。なんで俺なんかに興味を持つんだろうか?俺は専業主夫兼家庭の料理人になる気しかないんだけど。あ、相手が見つからなかった時は水原さんに雇ってもらう。

 

 水原さんの店にも行ってみたい。暇がある時に早めにいかないとまた色々行事があるし。秋の選抜っていう行事もあるらしい。確か何十人とか、1年生の中から選ばれて予選だったり本戦だったりするらしい。

 

 俺は選ばれるのだろうか?選ばれなかったら別に関係はないんだけど、A判定とかそういうのが関係してくるなら、選ばれる可能性はゼロではない、はず。

 

 別に選ばれないから卒業できない、とかそういうわけじゃなさそうだし。いや、その前に進級っていう大きな壁がある訳だし、選ばれようが関係ない可能性もある、かな?

 

 とりあえず明日は新戸さんとお出かけって事だし、早く寝ます。ああいう可愛い人の隣に冴えない人がいると目立ちそうだなぁ。でも寝なかったらクマとかできて目立ちそう。しかも隣は街中にも早々いないくらい可愛いし。

 

 日記でしか書けない事だよ、これが見られたらもうおしまい。新戸さんに永遠に嫌われてもおかしくないレベル。とりあえずそれはどうでもいいので寝ます、おやすみなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 最近思ったけど、おやすみなさいって書いたところで別に誰かから返事が返ってきたりはしないのに、なんで書いてるんだろ?まぁいっか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

melt月parade日 天気 曇りかけてたけど青空見えてたからsafe

 

 

 

 知ってますか、女子って怖い生き物なんだよ?誰に語りかけてもいないのにこんな書き出しから始まる日記、珍しい。今日は趣向を変えてみたかった、なんか誰かに見られてる前提で書いてみようかなって。

 

 まぁまず、買い物に行きました。新戸さん集合が早かった。女子を待たせたらおしまいってよく聞くから、集合の40分前に行ったらその10分前に新戸さんは来てたらしい。

 

 なんだろ、似た者同士なのかな?くっ、今度は1時間早く来るべきだ。次があるかどうかは分からないものとするけど。ただ少し面倒くさいことがあったけど、俺の情けない姿が見れるだけなので割愛。

 

 新戸さんと歩いて店に向かったり、回ったりはしたんだけどやけに見られてる気がした。まぁ仮に彼氏彼女の関係に見えてたとしたら、彼氏が冴えない人すぎて実は脅されてるんじゃないか、とか思われてたのかな?

 

 新戸さんと話してみろ、脅す前に脅されるぞきっと。最初会った時はかなり堅苦しい口調と雰囲気だったのに、今はふんわりした気がするけども。内心はドSな本性を隠し持っている。

 

 主人が主人なら従者も従者って事だよ、薙切さんもS。ちなみに俺はどちらでもないけど、Sになれる気はしない。人を弄る前に自分が弄られる人生を歩んできてるから。例えば竜胆先輩とかりんどー先輩とか。

 

 個人的な買い物も終わらせたんだけど、新戸さんもどうやら服を見たかったらしく見て回ったんだけど、ここからが女子の本領が発揮される訳です。

 

 まぁ仕方ないとは思う、ほら、女子って服とか見た目にこだわるし。男子でもこだわる人はいるけど、それでも女子並みまでこだわる人は引かれる可能性もある。

 

 俺は楽な格好でいるのが好き。冬でもズボンは半ズボン。流石に上は長袖の服を着るけど、家の中で長ズボンは歩きづらいし寝るときにゴワゴワする感じが好きじゃない。

 

 新戸さんは寝る時は寝巻きを着るらしい。俺は一切着ないタイプだけど新戸さんは着るらしいし、一度見てみたいと思ったけど見たら部屋に侵入してる気がする。

 

 薙切さんとかも寝巻きを着てそう。竜胆先輩は寝巻きを着ててもはだけたりしてる。実際その現場を見たことがあるし。遠月学園に通ってる時でも休みが続いてる時は帰ってきて俺の家に泊まったし。

 

 新戸さんは自分の服を見る時はかなり早かったんだけど、俺がそこらへんの良さそうなのをテキトーに取ってたらカットインしてきた。

 

 もしこの日記を見てる人ならもうわかると思う。着せ替え人形のようになった。試着室の前に陣取られて逃げようにも逃げられなかったし、着たらすぐ次の服が無限ループのように渡されたし。

 

 いや、別にそんなに買った訳じゃないよ?結果買ったのは上下2つずつだし。やっぱ安い服ってのは財布にも優しい。お金がどれだけ入っても高い服を買いたいとかは思わない。

 

 人の価値観はそれぞれだし。高い食べ物を食べたい!よりかは近くのファミレスとかでいつも700円くらいのを奮発して900円くらいのにしよう!って感じが俺のスタイルだから。

 

 but、一応ハプニングがあった。というより結構アウトなんだけど、新戸さんが普通に着替えてる途中に服を俺に渡してきて、半裸を見られた。まぁ上半身が裸ってだけだったからまだセーフ、だとは思う。

 

 下は履いてたから。履いてなかったら軽犯罪が成立してターイホって事に繋がりかねない。新戸さんは顔真っ赤にしてたけど、普通にチラチラ見てきてた。きっとこれは自意識過剰なだけ。新戸さんが見てきたりはしなさそうだし。

 

 まぁ雰囲気が続けられる雰囲気じゃなくなったし、そのあとは普通に帰った。ただ途中で爆弾を落とされたといえば落とされた、気がする。知らない間に今日の写真をたくさん撮られてた。しかもお店の方の許可は得てたらしいし。

 

 用意周到ですね、というより撮りすぎじゃないですか、とは言ったんだけど。すごいニコニコ笑ってたから、こう、なんかさらに言えなかった。笑顔って凶器にもなる物、なんだなぁ。

 

 今度はえりな様も一緒に、行かないか?と誘われたので了承はしておいた。両手に花って奴なんだろうけど、胃薬が必要になるかもしれない。綺麗な花には毒付きの棘がつきもの、とか。

 

 これ見られたら本当に2人に殺されそうだ。変な事書きすぎないようにここら辺で終わろう。

 

 あ、そういえば街中で十傑の人がいたのを覚えてる。遠目から見ても小さい感じがした。竜胆先輩が十傑の人の見た目とかは見せてくれたし。イケメンとかかっこいい人とか多くないですかね。

 

 まぁそれくらい、かな。おやすみなさい。

 

 

 




秘書視点が多すぎる気がします。ここの秘書視点無しでも大丈夫な気もしてきたぞっ(゚ー゚*?)オヨ?→やっぱ書きます。総合評価ptが10000超えました。嘘やろ……?
全く関係ないですけど最近、ガルパ(バンドリ)のフレンド機能が追加されたらしいです。普段ぼっちでやってる人からしたら協力ライブしないので意味ないですね。誰かフレンドなってください(´・ω・)45830561です。総合力21万弱とかいうクソ雑魚ですけど……


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▶︎7−1【秘書】

ラブコメ味なんて書けなかったんや。元からラブの味なんて知らないんだよなぁ


 

 

 柄にもなく楽しみにしている、なんて事は良くあるのかもしれない。どんなことでも楽しみにしている人はいるだろう。ほんの些細なことでも喜ぶことができる、それが人だ。

 

 まぁ私だって楽しみにしている事はある。私だって好きな物はあるし、楽しみにしている事なんてザラにある。えりな様も同じような事を考える事もあるだろう。

 

 人それぞれ、とは言ってもそれにはやはり違いが生じる。例えば好きな食べ物が出てきた、好きなテレビ番組が始まった……こういった日常の中で生まれる楽しみがある。

 

 ならば人と会うのが楽しみ、と感じてしまうのは。それはきっと非日常に近いものじゃないだろうか?いつも通り日常を過ごしているならば、誰かと会うなんてしない。

 

 たまたま外にいれば出会うかもしれない。だがそれは偶然であり、必然ではない。嫌いな人物と会う可能性だって考えられるのだ。だからこそ非日常の出来事なのだろう。

 

 約束をしていた、それも日常なら存在し得ない事だ。今までの自分なら、あり得ない事だと感じているから私は、こんな事を思っている。

 

 えりな様以外の誰かといる、ましてやそれが男子……入学当初なら確実にあり得ない事だ。私自身が変わったのだろうか?この問いに答える人は自分自身しかいないけれども。

 

 ……さて、そろそろ考え込むのもやめよう。例え楽しみにしている事を除いたとしても、私は後悔してる真っ最中なんだから。……集合時間の50分前に来るなどという、普通ならあり得ない事をしでかしているからだ。

 

 少し時を遡るまでもないが、私は千崎との待ち合わせをしている。理由は単純に買い物をする為だ。私も都合が良かったし、何の問題はないからな。

 

 ……そういえばえりな様が変な事だけはダメよ?って言ってたけど変な事とはなんだろうか。どこかこう、子供を見るような目で見られていた気もするんだが。

 

 しかし本当に早く来すぎた。千崎が早く来る確証なんてない訳だが、何故早く来てしまったのか私にもわからない。だが……部屋でじっとしていられなかった、というべきか。

 

 楽しみにしていたのはわかっていたが、もはや自覚してなかったんじゃないかと自分で自分を疑ってしまう。ついでに言うならば1人で待っているからか、よく人に見られている気がする。

 

 遠月学園の生徒だからだろうか?と思っていたが今の私は制服ではなく、私服だからもちろん分かる筈もない。なら何故私はよく見られているのだろうか?特に男子からの目線が多い気がする。

 

 

 

「あー、お嬢ちゃん1人?」

 

「……1人以外に見えるか?後、お嬢ちゃんという言われ方は嫌いだし、誰だ」

 

「ひゅーっ!ガッチガチって感じじゃん?もう少し緩く行こーぜ?」

 

 ……顔も名前も知らない男2人組に近づかれている。何故だ、とは言わない。テレビでもよく見たことがあるナンパ、という奴か?私がされる理由はよく分からないんだが。

 

 せめて誘うなら人の話を聞こうとしろ、まず誰かと聞いて緩く行こうと言われて、何を返せばいいんだ。……しかし面倒だ、騒ぎを起こす訳にもいかないし。

 

「こんな所で1人とか寂しくない?俺らとどっか楽しい所に行こーぜ?」

 

「……別にずっと1人でいるわけでは無いし、お前達と行った所で楽しくはならない、そう思うが」

 

「ガード固いね〜……つか結構言うのな?見た目可愛いのにさ〜」

 

「いきなり話しかけてくる、見知らぬ奴に親しくする必要はないだろう」

 

「まぁそりゃあな?でも関係ないでしょ、これからいっぱい親しくなるんだぜ?」

 

「……何一つ話が通じていないようだな、ならハッキリ言おう。私の目の前に立つな、邪魔だ」

 

「しかも気が強いと来た……いいね、すっごい好み!」

 

 ……耳が存在していないんじゃないか、こいつら。何を言っても無駄な気がしてきた。だが付いていくのはまず無しだろう。出来ることなら相手にもしたくはない。

 

「とりあえず行こーぜ?待ち合わせかなんか知らねーけど?そんな奴より俺らの方が良いっしょ?」

 

「……はぁ……比べるのすら意味を感じない。お前達のような取り柄も何もなさそうな奴と、比べる意味を、な」

 

「……へー、言ってくれんじゃん?別に路地裏に連れ込んでも良いんだぜ?」

 

 そう言って私の腕を取ってくる。別に振り解くのは簡単だが……流石に目立つし怪我をさせてしまう。そうなればえりな様に迷惑をかけてしまうかもしれない。

 

「……それは困る、約束があるからな」

 

「はっ!約束なんざほっぽりだせば良いだろ?今更怖くなっても遅ぇぞ、喧嘩売ったのはお前だしな」

 

「……喧嘩売ってるのはアンタらだろ」

 

 いつの間にか、と言うべきか。男の腕を掴んでいた。……あまり感情を出していなかった私の待ち合わせの人が、私でも分かるほど怒っている。千崎が、ここまで怒ることがあるのか、と思えるほど。

 

「どいてくれ。約束がある」

 

「あぁ!?んだよテメェは……」

 

「……待ち合わせ相手だが、悪いか?」

 

「テメェみたいな冴えない奴を待ってたのか?……うーわ、引く。つかほんと俺らの方が良かったろ〜」

 

「……別に俺の事はどうでも良いが、人に引くなんて言える奴らにナンパは出来ないな」

 

「……はっ、うぜぇ。別に潰しても良いんだぞ?」

 

「……さっきも言わなかったか?」

 

 一瞬、本当に目の前にいるのが千崎かどうかも疑ってしまう。……だがそんな考えはすぐ消える。私を庇うように立ってくれているのを私は分かっているから。

 

「……約束がある、どいてくれ、と。……優しく言ってやってるんだから、ちゃんと聞いてくれ」

 

「はぁ?何言ってんだ?」

 

「……邪魔だ、どけ。無駄な時間を使わせるな。ここから消えろ、手を上げないだけマシだと思え。……それとも、痛い目を見たいか?」

 

 ……私には分かってる。入学式の時のように、誰かの心に簡単に入っていくように話しかけているが……うん、強がりだって事はわかる。

 

 なんでかって?……私にもそこまで力で勝てていない千崎が、誰かを殴れるはずがないだろう?まぁ、あの2人はそれより強がっていたようで、こんな事を考えていたら居なくなってたわけだが。

 

「……もう勘弁して下さい、帰っていいですか」

 

「ほう、こんな目に遭った人を、置いていくと?」

 

「……別に新戸さんだから平気じゃないですかね」

 

「なるほど、私だから、か?それは私に喧嘩を売っているのか?」

 

「さっきよりやばい人に俺が絡まれてる……とりあえず行きましょ。今度があるなら、俺の方が早く来ますから」

 

「……ふふっ、まぁその時は、な?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから時間が経ったが、私はかなりの戦いを強いられている。それは千崎のある点について、だ。本人は完全に無意識のつもりだろうが、何というかタラシな部分を垣間見ている。

 

 いや、私に歩幅を合わせてくれたり昼食の時は奢ってくれたりと、優しい部分がある。だが普段あまり話す印象がない分、かなり新鮮に感じるのだ。

 

 思っていたより店員と話せている、という事実が。しかも私と話す時より饒舌に話しているのだ。……こう、何か言い表せないモヤモヤ感がある。

 

 もちろんそれだけでタラシ、と判断した訳ではない……ただとにかく優しいのだ。店員が困っていても客が困っていても、自分が分かる事なら手伝っているし、とにかく気を配れるタイプなのだろう。

 

 実際買い物の途中での話では、自分で何かやるよりかは誰かを支える方がいい、とは言っていたが、言ってはいたが。……ここで発揮するものなのか、それは。

 

 ……何故こんなにモヤモヤするかは分からない。しかも何の因果か知らないが女子の所に行く事が多い。……まぁ服屋にそこまで男子の店員自体いないのかもしれないが……。

 

 むぅ……やっぱりモヤモヤする。ずっとモヤモヤしていたら千崎にもそれは伝わったらしく、何故かすぐ離れようとしていた。まぁこのモヤモヤを解消する為に、少し、いや、かなり弄らせてもらおう。

 

 とりあえずそのまま別の服屋に移動し、名目をつけて千崎を着せ替え人形にした。別に女子の服を一回挟んでも面白そうだとは思ったが、流石にやめておいた。ついでと言っては何だが、着替えた後の千崎はこっそり撮らせて貰った。

 

 ……しかしアクシデントがなかったわけではない、というより私があまりにも無意識すぎた、というべきだろう。同年代、しかも男子の半裸を見てしまった。

 

 最早これは逆セクハラに繋がってもおかしくないんじゃないだろうか?もしこれが上半身だけ裸ではなく、もしズボンまで脱いでいたらと考えれば……正直まずい。開けた側は私だから、悪いのは私になるわけだしな。

 

 ……平静を保とうとはしているが、チラッと鏡から覗き込む私の顔は赤かった、とだけは言っておく。

 

 買い物はここまでだ。早く来たからこそ少ししたアクシデントには巻き込まれたが、千崎が庇ってくれたというのもあり無事に解決はした。正直かなり楽しかった。

 

 また今度、えりな様と3人で行かないか?とは誘っておいた。何故か変なことを考えられていた気はしたが、何も聞かないでおいた。……あとは謝っておいた。男子とはいえ女子に半裸は見られたくはないだろう、と思ったからだ。するとこう返された。

 

「……別にいいです。逆じゃないだけ」

 

「逆?……ふふっ、まぁその時はどうなるだろうな?」

 

「……俺の明日が無くなります」

 

「そうか?次の日だけで済めばいいな。……あ、もし私が許せない!って言うなら別に見せてもいいんだぞ?」

 

「……堂々と顔赤くしながら言わないでくださいよ、からかいすぎです」

 

「からかいと分かっていても、お前は顔を赤くするんだな?」

 

「……そりゃ言われ慣れてるわけないんで」

 

「私だって慣れてないぞ。……じゃあまた今度な」

 

「はい。今日は、楽しかったです」

 

「私もだよ。楽しかった、こうして男子と出かけるのも初めてだからな」

 

「……竜胆先輩を除けば初めてです。同年代なら初めて、ですね」

 

「……そう、か。初めて同士だな」

 

「そうです、ね。……変なカップルみたいな会話やめません?」

 

「ふふっ、別にこれも楽しくて良かったんだが。それじゃあな、後!負けないからな?」

 

「……?了解、です」

 

 食戟でも負けない。1人の人間としても負けない。……もしかしたら、だけど。負けたくない対象は増えてしまったのかもしれないが、そこは私だけで考えておこう。

 

 

 




この小説書いてる時って大体歌ってみたのカテゴリの歌を聴きながら書いてるんですけど、歌を聴きながら寝ていた時は驚きました
本当に全然関係ないんですけど、個人的に好きなデレマス小説を書いてる方の小説が日間ランキング1位になってるのを見て、すごい嬉しかったです。こう、自分が書いてる小説がランキングに載るのとは違う嬉しさがあります。びっくりしたのはその方からこの小説に評価をいただけた事です。う れ し い


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▶︎8(リクエスト回1–先輩組)

リクエスト回の時はこうやってリクエスト回ってタイトルにつけようと思います。オリジナル回だと思ってください。ラブコメ風味だったり色々だと思います。ifリクエストをくれても良いのよ???ただし主人公が女性パターンはまずいです。先輩組って書いてますけどりんどー先輩出てきてねぇ、詐欺か


 

 

 

日にちや月日はいらない。偶にはそんな日もある。

 

 

 おはようございますこんにちはこんばんわおやすみなさい。多分これを見てる時は朝か昼か夜かわからないのでこんな挨拶にしました。寝てる時に日記を読み返すなんて不可能だけど。

 

 現在俺が住んでいる場所には3名の所在を確認しています。1名は言わずもがな俺です。むしろ俺がいなかったら誰がいるんだ。幽霊か、それとも座敷わらしか。はたまたストーカーか。俺にストーカーとかあり得ませんね。

 

 あ、でも最近よく見かける人がいる。俺が行く所大体にいる気がして、話したいんだけどあまり近寄ってくれてない人がいる。薙切さんに聞いたら美作くんって言うらしい。

 

 何だっけ、パーフェクトステッカー?なんかそんな感じじゃなかったかな、見た目で色々持ってかれてるから思い出せない。名前とかより見た目で印象を覚えられるタイプだよ、彼。

 

 俺から話しかけたりしたんだけど、若干避けられてる気がしなくもない。一回俺がひつまぶしと言う名の料理を作ってたんだけど、その時にも来てくれてたから結構良い印象持たれてるのかなって思ってたのに。

 

 なんか俺の料理を遠慮がちにまじまじと見てたし、別に食べても良いよって言ったんだけど。その時からやけによそよそしくなったって言うか。まぁというより元々沢山話したりしたわけじゃ無かったけど。

 

 なんか数人を除いて大体俺って引かれてる気がする。数人ってのは薙切さんと新戸さんと幸平くんと伊武崎くん。幸平くんに招かれて極星寮に行った時もあの一色先輩を除いて、警戒されてる気がしたし。

 

 ただ出迎えの中に裸エプロンがいたのは流石に予想外。女子がいるのに裸エプロンになれるってすごいことだけど、なんか凄いって思ったらダメな気もする。

 

 中に水着着てるらしいけど、それでもダメじゃない?こう、倫理観とかそういうの的に。何でか一色先輩にはよく知られてるらしい。何でですかって聞いたら君の先輩から、って言われてなるほど納得。

 

 だって先輩の知り合いって1人しかいないし。某小林竜胆先輩。某って付ける意味あった?

 

 まぁ個人的に見たらトラブルメーカー感溢れてるんだけど、それが今日の日記につながるわけです。今日の日記の最初に書いたけど、今日は俺以外に2人の人物がいるわけです。しかも泊まり込み。

 

 部屋があるとは言え泊まるのは何故や。3年生側が早く終わっただけやん、1年生は別に早く終わってなんかいないぞ。しかも1人は初対面の人なんだけど、泊まりに来るって何故?

 

 1人はこれも言わずもがな竜胆先輩。ただもう1人が俺は会ったことどころか話したこともない人なんだよね。十傑第四席、茜ヶ久保もも先輩。何で俺の知り合いって半分くらい十傑なの???

 

 茜ヶ久保先輩は何というか、見た目的にはギリ中学生ってレベルな気がする。前も書いた気はするけど俺はそこまで身長は高くないけど、その俺から見ても低い。

 

 後ずっとぬいぐるみを抱えてる。名前はボッチー?いや、そんな悲しい俺を表すような言葉じゃないな、ブッチーだな多分。持ち方的にブッチーの首を絞めてるんじゃないかと思っている。もし見た目が筋肉モリモリだったりすればあのブッチーはすでに五回は死んでるな。

 

 茜ヶ久保先輩がなんで来たのが不思議でならなかったんだけど、理由は結構簡単だ。竜胆先輩に話したことがそのまま伝わったらしい。いつだったかの課題でスイーツを作ったんだよ。

 

 こう、家庭でできる手軽スイーツとかやっぱ作りたいじゃん。女子力とかは皆無だけど、なんか作れたら良さそうじゃんか。だから母さんに頼んで教えてもらった。今更だけど母さん何でも作れるよな。

 

 で、それを竜胆先輩にも食べさせた事もあるんだけど、それがどうやら伝わったらしい。茜ヶ久保先輩はパティシエらしいし、スイーツって聞いたら居ても立っても居られない、みたいな感じ。

 

 かと言って俺の所に来るか?一年生と三年生だよ?見た目的には逆に見えるかもしれないけど。わざわざ下級生の所に来なくても良いと思うんだけど。

 

 竜胆先輩が少し席を外す時間もあったし、その最中に話したりはしたんだけど俺と同じ感じ。こう、コミュ障感が溢れ出てる。ある意味繋がりを感じた。

 

 まぁそれは茜ヶ久保先輩も同じらしく、たまに話す程度の良い時間を過ごせた。竜胆先輩がいると必ずどちらかに近寄って来るもんな。その話をすると茜ヶ久保先輩も被害に遭った事はあるらしい。

 

 それとスイーツを作って、と言われた。遠月学園の中でスイーツNo. 1って言う人に作れ、と?いや、無理でしょ。しかも何故かそれは茜ヶ久保先輩には伝わらなかったし。

 

 何でや、それまで話さなくてもコミュ障同士での繋がりで分かってたじゃん。知ってるか、コミュ障ってのは人が近くにいると目をそらす分、何かと気を配れるのだ。

 

 例えば水がないとか、そういうのは気づける。まぁそこで行動を起こせるかどうかはコミュ障レベルと相手次第。もし上司とかだったらコミュ障とか言ってられないから、きっと。

 

 作って?って身長差もあり上目遣いで言われたからやるしかないじゃん。子供とか泣かせたらもう大変よ。10分連れまわすだけでも捕まるような世界だからな。

 

 スイーツって言っても時間がかかるのは無し。そして秋の選抜が近づいているという事でお題はカボチャ。2時間程度冷やす作業はあるけど、悲しいかな、この2人が来たのって17時くらいなんだよ。竜胆先輩が出て行ったのも18時とかだし、それから作れば21時には作り終わるし。

 

 まぁ舌に合うかどうか分からないけど、わざわざスイーツで馬鹿高いフルーツを使ったりとはしない。やっぱ安い物で美味しさを代用しないとな。

 

 という事で今回使うのはなんと、チョコレートクッキーという名のオレオさんです。久しぶりに食べたくて買って来たこやつを使ってかぼちゃのムースを作ります。

 

 オレオがムースになったりするわけじゃないけどな。ついでに多分余るしタルトレットも作る。あ、オレオの上にタルトレットを作ります。

 

 意外に簡単だから。かぼちゃをレンジとかで温めてバター、砂糖、生クリーム、蜂蜜、卵黄と一緒に混ぜる。ミキサーとかで混ぜた方が良いよ、簡単だし家庭にもあるし。

 

 誰に説明してんだよこの日記。まぁ思い返せるから良いけども。あ、バターは溶かすのがどちらかと言うといいから温めたかぼちゃとは早めに混ぜた方が良い。

 

 ちなみに風味を入れる為にラム酒を入れました。子供とかいるならやめた方が良いとは思う。まぁ高校生なら大丈夫でしょ、小さじ程度だから。酔っ払ったら弱すぎ、なのかな?

 

 まぁそれをテレビでよく見る奴に入れて、オレオを2つに切ります。こう、中のクリームが見えるように切るんだ。で、その間に作ったペーストを若干オシャレっぽく上にかける。やり方的には外から中へ、って感じかな。

 

 後はこれをオーブンでチーン!いや、音おかしいかな?まぁ家庭にあるのレンジだからオーブントースターは買うしかないかな。俺の家にも一応あるし。まぁおかし作りに無縁なら買う必要はない。

 

 あ、ちなみにムースの方なんだがオレオは砕きます。麺棒なりなんなりで砕くとやりやすいと思う。ちなみに皿はココット型。聞き覚えはないかもしれないけど家にはあるかもしれない。

 

 まぁ俺の家ではスープとかの皿で使われてたけど。小さめな奴もあるから。ムースの方はゼラチンとか色々工程はあるんだけど、書きたくないのでカットで。今書いてる間にも普通に寝泊まりしてるから、あの2人。

 

 一応男女のはずなんだけど。とは言え結構長い間いる竜胆先輩に知り合ったばかりの、見た目結構小さい先輩に手を出そうとも思わないんだけど。当たり前だよな。

 

 まぁ完成してから食べてもらった。普通に美味しそうに食べてくれたから良かった。まぁここまでは良かったんだけど。良かったはずなんだけど。ここからが問題なわけです。

 

 

 

 

 

 

「……まだ、起きてる?」

「……そろそろ日付変わりますけど、何でここに来たんですか」

「……名前、呼び方考えようって思った」

「別に何でも……罵るのだけは無しで」

「……じゃあ好きに呼ぶ、ゆっきー」

「……ブッチーと同じ運命を辿りそうですね、その名前」

 

 コミュ障同士のはずなんだけどまだ寝ずに話しに来るんだよな、茜ヶ久保先輩。あ、ここは日記じゃなくて心の中で思ってる事だから。竜胆先輩は……うん、寝てるかもな。結構寝るの早い方だとは思うし。何で知ってるかって?泊まりなんて何回もあったし。

 茜ヶ久保先輩はコミュ障の中でも結構上の方らしい。竜胆先輩でもちゃんと話せるようになったのは1ヶ月経ってからだそうだ。まぁ竜胆先輩はコミュ力とか数値で表せないくらいだと思うし。

 

「ゆっきーは、パティシエになる気はない?」

「食べてた時にも聞いてたじゃないですか。なる気はないです」

「……スイーツを作る気は?」

「それはあります。でも俺はそれを極めるとか、じゃないです」

「……そっか、残念。今度誘うね」

「……諦めの選択肢を先輩に授けます」

「誘いを受ける選択肢を、140個くらいあげるね」

「……多すぎですよ。というかさっき29個もらったんですけど」

 

 さっきもかぼちゃのムースとか食べてる時に誘われたし。別に極めるつもりがないのは本当だよ。ただそれを活かそうとしてるのが家庭のキッチンでだからさ。こう、合ってないじゃん?

 後コミュ障のはずなのに同類とはよく話せるみたいですね。俺も話せてる気はするんだけど、多分それは見た目の効果も加わってるよ。警戒する必要があまりないもん。変な事になる確率も少ないし。

 

「……そうだっけ?ブッチーが授けたんだよ」

「ブッチーの所為ですか……まぁそろそろ寝ますよ、俺も」

「……そう。じゃあおやすみ」

「おやすみなさい、先輩」

「……あ、そうそう。今度は私と一緒に作ろ?」

「……気が向いたら、で」

「じゃあ、今から?」

「……気が向かないので今度でお願いします」

「ん、分かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日記に戻るけど、まぁ寝るって言っちゃったんで寝ます。おやすみなさい。

 

 




日記形式は一文ごとに改行してますけど、会話とかの場合は続けるようにして区別してみました。ちなみに今回限りですよきっと。
「食戟のソーマの世界観にオレオってあるの?」ってツッコミは無しでお願いします!!!
もも先輩可愛いから調べろ、調べて。ロリコンではないぞ。それと誘いを受ける選択肢はもも先輩に因んだ数字です。
どうでも良いことですけど、食戟のソーマの新作書こうかなって思ってます。他にあまりない気がするんで、生徒じゃないけど教師でもない、だけど遠月学園にいそうな人をメインに書こうとしてます。投稿したらよろしくお願いします



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▶︎8−1【幼先輩】

ちょっと紳士ー!もも先輩の事を幼女とロリって言うのやめてあげなよー!せめて幼先輩に!!!(変わってない)
質問でもも先輩ってあだ名つける相手は格下じゃないんですか?ってのが来ましたが今回でそれに対する描写は入れてます。まぁまずもも先輩があだ名つけてない人ってほぼいないんですもん……


 

 

 その彼を知ったのはいつだったかな?私もあまり覚えていない。知り合いから聞いたのか、それとも噂で聞いたのか、それとも……人との出会いとか知った時の印象ってのはそこまで人の記憶には残らない、そう思う。

 

 友達同士でも出会った当初は他人同士。一体どうやって仲良くなったかなんて事をはっきり覚えてる、そんな人はあまりいない気もする。それが動かない物、例えばぬいぐるみとかなら話は別になる。

 

 誰かに買ってもらった、自分で貯めたお金で買った、お年玉で買った……多分過程は様々だけどそれは記憶に残ってる人が多い。なのに人との付き合いは記憶に留まっていない事が多いんだろう?

 

 無機物と有機物の違いのようなものだろうか?でも、それはどれだけ考えたってわからない。だって結果として覚えていない、そんな答えにしか繋がらないから。

 

 別に語るつもりはなかったけど、なんとなくこんな事が思いついた。……何の話だったかな?あ、そうだ。彼をどういう風に知ったか、だったかな。

 

 きっと、多分、そう思える出来事はあったけど不思議と確信は持てない。まぁでもそれはどうでもいい事。今はしっかりと知り合ってるから。

 

 ひとまずその彼の紹介の前に私も名乗らないといけない、と思う。私の名前は茜ヶ久保もも、遠月学園高等部3年に所属する十傑第四席だ。そして私がいつも抱えているのがブッチーだ。

 

 ……あ、ここからは私って一人称じゃなくてもも、の一人称でいく。もともと話す時は自分の事をももって呼んでるし。

 

 ……ももの事は別にそこまで触れなくてもいいんだけどね。ひとまず彼の話に移ろうと思う。彼の名前は千崎雪夜。今年入学したての1年生、さらに言うなら編入生。

 

 別にただの1年生なら気にも留めないし、興味が湧かない。ただ唯一興味を持ったのは同じ十傑に所属している小林竜胆、りんどーが話す事があるからだ。

 

 とは言っても話してきたのはももくらいだと思う。あ、後1人くらい話してそうだけど……多分口が軽い人とか堅苦しい人じゃないとは思う。まぁそこに触れるつもりはないけど。

 

 りんどーがそんなに言うなんて初めて。まぁ同級生の中でも変わった感じではあるんだけど。身長と胸に関しては同級生とは認めてないから。ももはまだ育つから。

 

 ……だからももの事は良いんだって。まぁ聞いた限りすごいのか、凄くないのかはっきりしない感じ。料理はできるけど目立ちたくないとか、ここに実際来るつもりはなかったとか。

 

 来るつもりがなかったのにどうして来たんだろう?それに来る気がなかったけど受けたら受かった、なんてレベルで受かれるほど甘くはないはず。審査員がよほどポンコツじゃない限りだけど。

 

 どうやらその審査員は薙切えりな、十傑第十席についている一年生らしい。まぁ流石に彼女は知ってるけど……合格が出たとかどうとかには興味がなかったし。

 

 ただそれだけ聞くとさらに頭には疑問しか浮かばないももがいた。どれだけ聞いても感想は「よく分からない」の一択だった。少なくとも分かってるのは男だと言う事、それと名前。

 

 不確定情報、って言うんだっけ?それが多分多いんだと思う。1年生の情報は実際入っても来ないから知らないに等しい。ただりんどーが目をかけてるってだけだ。

 

 多分、その印象はあの日までは同じだったと思う。ももはパティシエだからスイーツの匂いは嗅ぎ分けられる。珍しく一年生が課題を受けている教室に近かった時がある。

 

 その時作られてたスイーツは目で見たわけじゃない。でも分かる。あきらかに匂いが周りとは全く違う。まるで生きて呼吸しているかのように、主張が激しいと思った。

 

 食べたい、見てみたい……授業という名目で来ていなかったら教室に入り込んでも良かった。それくらい、もも以外でここまで主張が激しいスイーツは初めてだった。

 

 その後、ももはりんどーと会話をしてたらその時と全く同じ事がわかった。りんどーは彼がその時作ったのがスイーツであり、複数の種類を作ったらしい。りんどーもそれを食べたらしい。

 

 多分住んでる場所……寮か何かで作ったんだと思うけど。確証があるわけでもないのに、私はそれが彼が作ったものだと不思議と確信を得ていた。矛盾ってのはこういう事なのかな?

 

 興味は留まる事を知らなくなった。日に日に知りたいという欲求は増えていき、りんどーに聞く回数も自覚するレベルで増えたと思う。りんどーはたくさん話してくれたけど。

 

 そしてある日、約束を取り付けてくれたのだ。時期的に1年生は宿泊研修が終わった頃だとは思う。彼が住んでる場所に連れて行ってくれるという。ちなみにりんどーは泊まるらしいけど。

 

 大事な後輩らしいけど、寝泊まりはどうかと思う。りんどーは長い間一緒にいたし今更泊まっても何も言われないよ♪みたいに言ってたけど……まぁりんどーに対しては何言っても意味がない的な。

 

 ……なんかそんな事を考えてたらりんどーに怪しまれた。というより何を思ったー?はけー!ってくすぐられた。それは卑怯、ももはくすぐりには強くない。

 

 まぁ少しだけ楽しみな部分もある。少しわがままを言うならスイーツを作って欲しい気持ちもある。……ただももはわがままではない、りんどーみたいにわがままじゃないから我慢をするのだ。えっへん。……なんか子供っぽくなった、やめよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてその日がやって来た。ドアが開いて彼の姿を初めて見た。なるほど、たしかにりんどーが言ってた通りの見た目をしてる、と思う。普通の顔立ち、あまり笑わなさそうな表情をしている。

 

 あぁ、同類だ。そう思ったももは悪くないと思う。ももだって人と話すのなんてあまりしたくない。十傑のメンバーとも目を合わせて話せる人が全員、ってわけじゃないし。

 

 コミュ障、って言うらしい。まぁ人と話すのは苦手だしできる事なら話さなくても良いと思ってる。ブッチーがいればどうにかなるってももは思ってるから。決して寂しくなんてない、から。

 

 彼も、ももと目を合わせてないし。普通に中に入らせてくれたあたり、お人好しなのか迫られるのに弱いのか……相手がりんどーっていうのが悪いのか。

 

 ただりんどーが忘れ物した!とか言ってももを残したのは許さない。……まぁ、なぜか不思議と話せたけど。なんて言うか気が合うのか、無理矢理話しかけたりしてこないし、一緒にいて面倒とかは思わなかった。

 

 ……目を合わせようとしてみたけど、あっちが見てくれなかった。少しそこは残念な気がした。……りんどーがいない時間は静かで、でもたまに話したりしながらゆっくりしてた。

 

 それとなくももはスイーツの話をしてみた。一応私がパティシエだって事くらいは知ってた……っぽいけど実際の所は分からない。別にそれに興味はないのかもしれないけど。

 

 意外に話の流れで作ってくれることになった。ただ少し違和感というか、変な気がした。こう、なんか年下を見る感じの雰囲気で「仕方ないな」って言いたげで厨房に向かったのだ、アイツ。

 

 ……なんでか悪い気がしなかったのも変だ。あそこにいるのは年下なのに、なんか年上に思えてしまう。優しいから?でもそれだけで絆されるほど、ももは軽くない。軽いのは体重くらい。

 

 みた限りと匂いでかぼちゃを使うらしい。ムースを作ってるのはわかったけど、もう1つは少し分からない……というより何かを砕いてるらしい。音で判別してたけど、どう考えたって何かを砕いてる音がした。

 

 まぁ何を作ってるかは分からないけど、スイーツって言うのは大体は冷やす工程が入っている事が多い。つまりその冷やしてる間、味が落ちる可能性もあり得るんだ。

 

 もちろん私はパティシエだからそんなミスはしない。厨房を覗いてみたけど、作り方や動きはスイーツの作り方を確実に知ってる。ももより早く作ってるわけではないし、でもそこらへんの料理人よりかは遅くない。

 

 ただ思うのは、その後ろ姿から分かるほどの自信。何1つ自分の作るものの美味しさを疑ってないような、そんな作り方だと思った。何を作る、ってのは今考えたばかりのはずなのに、かなり早いタイミングで作り出してる。

 

 柄にもなくドキドキしてる。スイーツに厳しい判定をくだす時だってあるけど、ただ楽しみという感情がももの中を駆け巡っている。小さい頃のおやつの時間が来る時のワクワク感みたいな。

 

 ……今も子供だろって思った人はブッチーの餌。身長が20くらい縮めばいいと思う。この世にいるももより高い人は縮めばいいと思う。平均をももに近づければ低くなくなるから。

 

 冷やす工程があるのがあれば無いのだってある。どうやらもう1つはタルトレットだったらしい。……でもタルトレットは何かの上に乗ってる。料理じゃ使った事がない奴だ。

 

 まずはタルトレットだけ食べる。まず思った事は、美味しいという事だった。料理においては当たり前に近い評価だけど……それは意味合いが変われば価値観は全く変わる。

 

 手を加える必要性を感じないくらい、美味しい。スイーツは甘みが強すぎたって万人には受けない。甘みはある、だけど不思議と食べていて飽きがくる味ではない。

 

 スイーツは食べているうちに飽きてしまう、そんな表現が生まれやすいと思ってる。甘いだけ、美味しいだけ、食べれるだけ……1つでも成り立ってないと食べてはもらえないけど、成り立っていたって状況では食べれない。

 

 甘い物は別腹、とも言う。だけど飽きはある。下にあるのはその飽きに対する対策でもあるんだと思う。下はチョコレートクッキーだ。中にクリームが入ってるタイプの。

 

 そこで残念に思ったのはここの部分も手作りの方がいい、と言う事だ。だけどこの素朴な味だからこそタルトレットと一緒に食べた時、美味しさが活きてるのかもしれない。

 

 ……思う事はたくさんある。でも、ももの口から出る言葉は自分でも予想してない事だった、のかもしれない。

 

「……パティシエになる気は、ない?」

 

「……ないです。得意ってわけじゃないですし……」

 

「……そう、残念……」

 

「俺にパティシエは合ってないですし」

 

 ……後ろ姿からはそんな事は思えないんだけど、ね。逆、なのかな?パティシエじゃあ、自分の全てはぶつけられないって意味かな?……むぅ……少しムッときた。

 

「……分かった。でもまた誘うから」

 

「……話を聞いてないんですか、先輩は」

 

「聞いてる。りんどーとは違うから」

 

「……諦めって言葉を覚えてください」

 

「覚えてる。……少し馬鹿にしすぎ」

 

「……そういうつもりはなかったんですけど」

 

 そう言いながら頭を撫でてきた。……すぐにやってる事に気付いて手を離したけど。まぁ先輩だし、歳上だし……?すぐに謝ってきたけど、逃げるように部屋に行っちゃったし。

 

 そしたらすぐにりんどーが帰ってきた。私が食べてるのをみてずるい!と言いながら普通に食べてた。……りんどーが言ってたのはよく分かった。りんどーが勝ちたい相手と言ってたのも、分かる。

 

 ももだって本気でやって勝てるかどうか、はっきり言って分からない。でもそれはほんの少ししか話したことも会った事も、料理を食べた事もないからだ。

 

 りんどーは長くいるからこそ、まだあるはずの本質がわかってるんだと思う。……ちょっと、いや、かなり興味を持った自分がいる。

 

 あと、どうしてか撫でられて悪い気はしなかった。そのことをりんどーに言ってみたら「兄と妹みたいだもんなー?」って言われた。……お兄ちゃん、的な?

 

 ……普通に想像できてしまった。なんか、ももから見たらそう見えてきたっていうかそうとしか見えなくなってきた。……歳はももの方が上のはずなのに。

 

 ……お兄ちゃん、か。……いや、そう呼ぶ気はないから。ただ寝泊まりするって事もあってさらにそう感じてきた。寝る前にも少し部屋にお邪魔したし。

 

 あ、呼び方を決めた。ゆっきー、って呼ぶ事にした。りんどーみたいに呼び捨てでもよかったけど、りんどーは雪って呼んでるから近づけてもみた。……ブッチーみたいですね、って言われた時は笑いそうになった。

 

 他の人からは可愛らしいあだ名をつける時は、その相手を格下に見てる時って言われる。実際はその通りだけど……ゆっきーは少し違う。

 

 スイーツの腕前はまだ私には届いていないのが、一つの理由。でも届くことは出来るし、その道だけを選べば必ず今のももを追い越せる。

 

 二つ目の方がもっと大事な理由。私視点からの考えだけど、これが本当に重要。……ももの中で、ゆっきーというあだ名は『可愛らしいあだ名』には入ってないって事。可愛らしいあだ名の判断はもも基準だから。

 

 その後は寝泊まりしてすぐに朝出てったけど。……りんどーの起こすのは大変そうだったけど放っておいた。助けを求めるような目で見られたけど無視した。パティシエの誘いを断るからだ。……パティシエになって欲しい気持ちは本当だし、諦めないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……バレないように、いつかお兄ちゃんって呼んでみたいな。これはももの心の中だけで隠してる事。

 




見た目でたくさん(作者に)判断されてる話ですね(´・ω・)お兄ちゃんだと勘違いされてるんじゃない???5000文字いったやん……次は主人公の親か美作視点かな?それと思ったより竜胆先輩出せなかったので、竜胆先輩の話は新しく入れます。親、美作、竜胆先輩、水原先輩でリクエスト回は終わろうと思います。聞いて、別視点で男視点って美作が初です。

同級生の新戸緋沙子(姉)と上級生の茜ヶ久保もも(妹)に挟まれる主人公な。まぁ恋愛感情ないしハーレムではない。ある意味温かい家庭だけど。


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▶︎8−2(リクエスト回−2)【母】

最初は少しシリアスめです。


 

 

 裏切られた、と思った。だけど、あの子を泣かせたくないと思った。いつからだろう、私があの子らの前でしか笑えなくなったのは。いつからだろう、あの子らがこんなにも、愛しく感じてしまっているのは。

 

 私の夫がいなくなってから?だけどそれは要因の一つにしか過ぎない。あの2人は、よく一緒にいた。だけどそれ以上に私の周りにいてくれていた。

 

 1人じゃないって言ってくれているかのように、私に温かい時間をたくさんくれた。泣きそうな時も辛い時も、あの子らは私の隣に、後ろに、時には前にいてくれていた。

 

 ……こんなに親バカになるなんて、結婚前も離婚後も思わなかったのかな?愛しいって気持ちが、まるでドーパミンのように溢れ出てくる、そんな親バカ精神に。

 

 とことん思う。あの子らより先に死にたいけど、あの子らの幸せを見届けてから死にたいと。あの子らの味方であり続けようと、思い続けるのはおかしいことだろうか?

 

 私は、写真立てに入っている……3人とほんの少しの家具しか写っていない写真を見ながら、1人の家の中で思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の名前は千崎(ちさき)真夜(まや)、悲しい事を言うけど四捨五入すれば40になるおばさん、かな。好きな事は料理、大好きなのは私の愛しの息子と娘。……あ、娘は本当の娘じゃないけど。

 

 暗い話はしたくないからすっぱりと切るけど、まぁ簡単に言うと私は離婚したのだ。理由は夫の浮気。今は笑い話にも出来るけど、あの時は辛かった。

 

 家に居たくもなかった。ゆきくん……あ、息子なんだけどね。まだ幼稚園の頃に離婚をした。まぁ大人の話になるんだけど、子供の事とかそういった裁判だったり、そういうのは必要なかった。

 

 幼稚園の頃は問題なかった。というよりまだ小さかったから、世話をしないといけないって気持ちだけで動いてた。小学生になると、ゆきくんはある子と仲良くなった。

 

 その子が私の娘……というより私が思ってるだけでちゃんと親はいるけど、小林竜胆、私はりんちゃんって呼んでるけど。りんちゃんと仲良くなって、家に来ることも多くなった。

 

 家が近かったのもあったけど、小学生になったら本格的に仲良くなったらしい。……その頃から、私自身がおかしくなってたのかもしれない。

 

 ゆきくんはいつか離れていく、そう考えると私は一体何の為に生きればいいのか、わからなくなる。小学5年、6年になっていき、りんちゃんは中学になった頃にはもう、私が私じゃない気がしていた。

 

 辛かった。毎日過ごすのも、ただただ辛かった。だから私はゆきくんを置いて家を出てしまったことがある。世間的に言えば家出だろう。いい大人が子供を置いて家出、なんて考えられないことなのに。

 

 3日後にはちゃんと家に戻った。……というより、私は戻る事を決意する出来事があったのだ。私に励ましと、説教をくれたのは誰でもないりんちゃんだった。

 

 私は遠くまで行ったつもりだった。だけど自然に足は少しずつ家に帰っていたのだろう。だから簡単にりんちゃんに見つかった。あの時は本当に驚いたね、あんなに怒ってるりんちゃんを見るのは初めてだったから。

 

 『なんで雪を置いて行ったんですか』とか『なんでそんな事したんですか』って、ね。まだ中学生だったりんちゃんに詰め寄られ、家から出て行った理由を全て説明した。

 

 その上でたくさん説教された。中学生に説教されるなんて生まれて初めての体験だったなぁ……怒られて、そして一切想像してない事を言われたのが今でも、鮮明に覚えてる。

 

 『雪、この3日間……何も食べてないんですよ』って言われた時、家出した時以上に何も考えられなくなった。3日間、私が家出した期間……ゆきくんが何も食べていない、そう言われて。

 

 りんちゃんからの説教を受けてたのに、私の身体は家に走り出していた。りんちゃんも追いかけては来なかった。何か言われた気もするし、私が走ってる姿を見て色んな人に心配をされていた気もする。

 

 だけど、それは私の耳には入らない。家に帰ってきた、入るのに一切躊躇する事なくドアを開ける。そして私は、ゆきくんにこう言われた。

 

『おかえりなさい、母さん』と。たった一言のはずなのに、私の心に簡単に染み渡った。私を責めてもおかしくない、家出したと知ってなくてもいきなりいなくなった、そんな私に対して。

 

 責める事も、何もしないで、ただ私に『おかえり』と言ってくれた。気づいたら私の目からは涙が溢れていた、そしてゆきくんに抱きしめられていた。

 

 いつの間にか、私の身長にも近づいてきた背丈。少しずつ大人の男の子っぽくなっていってる腕、身体。そして顔付き。その時私は、本当の意味で初めて息子を見たのかもしれない。

 

 謝ることしか出来なかった。なのにゆきくんは何も言わず、私を抱きしめてくれた。こんなに優しく育っていたなんて、分からなかった自分があまりにも惨めで、最悪な人間だと思った。

 

 その後はすぐにゆきくんにご飯を作った。3日しか経ってないはずなのに、少し小さめのテーブルを囲んで食べてるこの空間が、懐かしく、温かく感じていた。

 

 りんちゃんもそのあと来てくれて、私の料理を食べてくれた。りんちゃんにこっそり伝えられた事がある。『雪、母さんのが食べたかったんだって。私が作ってもダメだったんだよ?』って。

 

 『私も真夜さんのが食べたかったんだよっ?』なんて言われて、また泣いてしまった。そしてもう二度とこんな馬鹿げたことはしないと決めた。

 

 私が不幸になったって、私がたとえ死んだって、この2人は私の家族で私の愛する子供達で、私のかけがえない存在なんだ。それから、かな?親バカなんて言葉で表して欲しくないくらい、あの2人が好きになったのは。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……どうしたの?なんかぼーっとしてるみたいですけど」

 

「ん?なんでもないよー、りんちゃん」

 

 今はりんちゃんが家に来ている。ゆきくんも遠月学園に行った今、この家は私しかいない訳だが……たまにこうして帰って来てくれるのだ。今度はゆきくんも連れて帰ってくるらしい。

 

 うん、久しぶりに息子の顔を見たいって思うのは親バカじゃないもんね。りんちゃんなんて少し会わないだけでどんどん成長してるのが分かるもん。

 

「いつまでりんちゃん呼びなんですか〜……私だって、こう、大人になってるんですよっ?」

 

「え〜?りんちゃんはりんちゃんなのに〜?……まぁ、体の一部分は大人を通り越してるみたいだけどねー!」

 

 りんちゃんのプロポーションは高校生のそれじゃないよ。私が高校生の頃だってそんなプロポーションの子はいなかったし。ま、まぁ私も負けてないから。いい歳した大人が何を張り合ってるんだろう。

 

「あ、真夜さんの料理食べさせてくださいよ〜、久しぶりに食べたいんです〜」

 

「りんちゃんは育ち盛りだからよく食べるのかな?……ふふっ、何が良い?」

 

「にひひっ!真夜さんのオススメ!」

 

「オススメ?ならそこらへんの野草でも拾って……」

 

「にゃ〜!?そ、それは料理じゃないですよっ!」

 

「あははっ!冗談だよ。たまには一緒に作ってみない?」

 

 りんちゃんの頭を撫でながら提案してみる。りんちゃんは偶にゆきくんの頭を撫でたりしてるみたいだけど、それは私が教えた(ドヤっ)まぁりんちゃん猫みたいだもんね。

 

「私が?うーん……でも真夜さんの腕には敵わないし〜……」

 

「もうそろそろ遠月学園も卒業が近づいてるんでしょ?十傑の第二席まで上り詰めたんだし、私に敵わないなんて謙遜すぎるよ〜」

 

「……むー、謙遜してるのは真夜さんじゃないですか!『元十傑第一席さん!』」

 

「……うふふっ、そんな昔の事、覚えてないかな?」

 

 一応だけど、私も遠月学園に通ってた。あ、ちなみに私の今の歳は35歳。ゆきくんを産んだのは20の時なんだよね。こう考えると早め?

 

 ついでに言えばその時の十傑では第一席についてた。まぁ面倒で自分からすぐに辞退しちゃったんだけどね♪あの時は若かったから生意気だったんだよねぇ……その事をゆきくんにも教えてないし。

 

 血筋、とはまた違うけど……ゆきくんは才能はあると思う。ただそれを上回る努力があって、しかもそれを曝け出そうとしないから周りには普通のことしか見られない。

 

 私が家出した理由を話した時から、本格的に料理を始める姿を見てきた。最初から包丁の握り方も完璧だった。あれは偶然の産物、それに才能を合わせたものだろうけど。そこから才能を努力で導いたのはゆきくん。

 

 うふふっ。でもゆきくんは自分に自信はないだろうし、自分の料理の腕は普通、なーんて思ってるんじゃないかな?これでも母親だからね、分かることは分かるんだよ♪

 

 無自覚だけど、どんどん料理の腕が上がるのが分かる。うん、いつかは私を抜いちゃうかもね?……ま、遠月学園を卒業できた程度じゃ抜かせてあげるつもりはないけど♪

 

 願うなら良い子と彼女彼氏の関係になって欲しかったり。卒業なんてゆきくんなら簡単だろうし、友達付き合いとか恋愛とかそっちがお母さんは気になっちゃいます。

 

 ま、ぽっと出じゃありんちゃんには勝てないけどっ!今度帰ってきた時は、ゆきくんに根掘り葉掘り聞いて、面白そうな話をたくさん聞かせてもらおっと♪

 

「じゃ、作ろっか?ついでにゆきくんとの関係が進んだかどうかも、ね?」

 

「うぅっ……お、お手柔らかに〜……」

 

「うふふっ、やだ♪」

 

「真夜さぁ〜ん……」

 

 

 




最大のチートは母だったでござるの巻。ガチ天才さんは母です、竜胆先輩どころか主人公でも勝てないです。息子が無自覚チートなら母は自覚チートって奴です。
あの自由奔放な竜胆先輩でも敬語で話すくらいなんやで、しかも勝てないんやで。さらに自分から第一席を高速で辞めてるから、他の人にほとんど知られてないんやで。

ついでにですが、新作投稿しました。そっちはキャラ崩壊させたり、ネタ多めだったり、恋愛あったり(しかし料理描写は言わずもがな)です。読んでくださると嬉しいです。



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▶︎8–3(リクエスト回–3)【追跡】

時系列的には今までの話をほとんど通る感じの時系列です。ちなみに美作昴という男視点です。9割はイケメンな男性遠月学園生徒の中に突然現れた新星、その巨体と厳つい顔、さらに隠れきれない不審者感を備え持つキングオブストーカー。それのどこが悪い事なんですゥ?ってセリフの時の顔が面白いです。知らない方は美作昴と画像検索して見てください。それで出てくる人は洋菓子店の息子です。




 

 

 俺がやってる事が正しいとは思わない。だが悪いと感じる事はいつからか無くなっている。その時から俺は今の自分になっていたのだろうか。まぁどうでも良い事だ。

 

 時に思う。この世の中は理不尽だと。例えばスポーツに置けばバスケ。身長の高さで優遇が決まる人だっている。それは料理の世界でも言える事だ。

 

 ほんの少し有名な店だから……たったそれだけの理由で他者の店は淘汰される運命にすらある。ほんの少しの理由だけで、人は差別され、正当な評価を受ける事がなくなる。

 

 とことんふざけた世の中だ。どの世界だろうと差別された人間に、もう一度チャンスが来るほど優しい世界ではない。それなら正当な評価を受けるにはどうすれば良い?

 

 決まっている。それならばほんの少し上に立てる人間であれば良い。差別される側の人間になれば、食われるのをただ待つだけの小動物に過ぎない。どれだけ力があろうと、発揮できなければゴミ同然。

 

 なら差別される側の人間を俺自身が作れば良い。どれだけ失うものがあろうと、それは他者にとっての失う物。俺には一切関係がない話なのだから。

 

 弱い者が食われるなんざよくある話だ。教科書に載る偉人だろうが、国のトップだろうが、ほんの少しの失敗やほんの少しの問題だけで死に、またはトップの座から降ろされている。

 

 認められないだけの世界のまま、生きていくなんて俺はゴメンだった。誰にも見られないまま1人で生きていく、そんな生き方を俺は求めちゃいなかった。

 

 生まれた時から勝手に期待され、答えようとしたら、期待を裏切るような行為としか見られなくなった。それならば最初から期待なんてされなければ良かったんだ。

 

 弱いまま生きていりゃあ、強い者と勘違いする自分なんざ生まれなかった。弱い自分をひた隠しにしようとするのは仕方ない、なんて考えも生まれなかった。

 

 目の前で泣いている女の気持ちも、弱いままなら分かってやれたのかもしれない。そう頭の中では思っていようが、今の自分にそんな考えは不要と、脳が判断する。

 

 自分は強い、そんな言葉に惑わされている俺に弱者の気持ちは分からない。淘汰される側の人間の気持ちは分からない。分かってはいけない。分かれば俺はまた弱者の頃の俺に戻ってしまう。

 

 俺と目の前で泣く女の食戟を見ていた観客も、審査員も誰も彼も……俺を親の仇であるかのように見ている。女は一点を見続ける。俺の手にある女が使っていた、大事な包丁を虚ろな目で見続けている。

 

 何本目になるだろうか。食戟で手に入れ奪った人の包丁は。何回目だろうか。俺が数多の観客に睨まれ、蔑まれるような視線の中心にいるのは。

 

 ……くだらねぇ。そうやって見ることしか出来てない奴らが、何が出来る?悔しいなら俺を殴ればいい。食戟を挑めば良い。ただただ見てるだけの連中は、自分が強いと勘違いする奴らの集まりだ。

 

 イジメが起きれば最も責められるべきなのは、黙って見てる連中だ。それを認めようとしない大人なら尚更罰されるべきだ。ただ見てるだけの連中が偉そうに正義を語るんじゃねぇ。

 

 語るなら俺を罰してみろ。そして……こんなクソッタレに堕ちた俺を、誰でもいいから……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 勝てない。そう思った事はあるし、どの手を使おうと勝算が見えない時だってある。だが、勝算を考えることすらふざけている、と思ったのは初めてかもしれない。

 

 毎日毎日飽きずにやり続けている授業。そこに初めて見る奴がいたというだけ、最初はそれだけの印象だった。俺の中でリストアップしてる連中には入っていない、そんな奴が。

 

 だが誰かは知っている。千崎雪夜……幸平創真と同じ編入生であり、いまだに一度も食戟をしていないにも関わらず、かなりの頻度で噂を聞く事がある。

 

 大半は悪口だ。編入初日にいきなり生徒に喧嘩をふっかけた、そう思われてもおかしくない挨拶をしていたからだ。そりゃ悪い噂が広まるに決まっている。

 

 だがその中で広がっている噂はそいつの腕前。授業を見た奴曰く、その場所だけ世界が違うのではないか、という錯覚にすら陥るらしい。教師陣からもA判定を受けている。

 

 A判定を貰い続けるというのは別に珍しい、とは言えない。薙切えりなやその秘書、幸平創真……他にも薙切アリスやタクミ・アルディーニなど、A判定を貰い続けている連中はいるからだ。

 

 ……まぁそいつらに負けているつもりはねぇ。腕前だけならともかく、食戟ってのはまた世界が違う。ルールに縛られた世界ってのは、ほんの少しの理由だけで簡単に支配下における。

 

 噂が正しいのかどうか、確かめさせてもらう。そう思っていただけで、ほんの少し目をやる回数が多かっただけだ。そしてそれは噂では無く、確信に変わる。

 

 雰囲気があまりにも違う。一つの食材に向ける感情、それがオーラのように出ているかのように。だがおそらく、仮説に過ぎないがそれは他の奴らには理解できないものだ。

 

 もし料理を少し出来る程度なら確実に気づかない。料理が出来る程度になれば雰囲気が違う事に気づく可能性はある。だが、それは所詮気付くだけに過ぎない。

 

 人ってのは第一印象が悪ければ、その後どういった立ち振る舞いをしても悪い風に見えてしまう。それと同じだ。雰囲気が変わってると思っていても、脳はそれを否定する。

 

 編入生というレッテル、挨拶での煽り。それらの第一印象が正当な評価を脳が拒んでいるわけだ。他の生徒からしてみれば、立ち振る舞いが完璧であろうと、美味しいかどうかは別だ、そう頭で思っている。

 

 作った料理を教師が食べ、A判定をもらう。だがそれすらも信じていない。最早哀れに感じるほどだ。A判定を貰ったのもたまたまだろ?としか思っていない弱者の集まりだから、だろうか?

 

 だが紛れもなく、千崎雪夜は強者だ。奴の周りに薙切えりなや幸平創真がいる事も頷ける。強者ならば分かる、千崎雪夜の異常性とその強さ。

 

 ……そしてこれは俺にしか分からない事だ。おそらく千崎雪夜は弱者の部類だ。……いや、正確には千崎雪夜自身が千崎雪夜を弱者として見ている。

 

 ……ははっ、アレには勝てねぇ。俺の全てを集めようが、小石のように蹴り飛ばされるだろうな。……だが負けるだけってのはゴメンだ。調べ尽くして、調べ尽くして、その上で判断する。

 

 千崎雪夜という人間を、美作昴という人間が超えられるかどうかを、な。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そこから行動は早かった。だがはっきり言おう。全てが弱者のそれに近い。生活態度も普通、寝る時間から起きる時間、過ごしている時間の殆どが普通の人間と同じなのだ。

 

 その中で垣間見える異常性はあった。夜中に自分で料理を作っていた、それは遠月学園の生徒ならする事はある。だが、行動そのものは普通じゃなかった。

 

 その時も俺は千崎雪夜の作る姿を見ながらメモをしていた。だが千崎雪夜は俺を見るなり、自分の所に招いてきたのだ。

 

「……食べるか?」

 

「っ!?……そりゃ、俺に言ってんのかい?」

 

「まぁ、な。それ以外人はいないだろう?」

 

「へぇ……食わせても良いのか?俺にだぞ?」

 

 実際、俺のやり方などは広まっている。もちろんそれを知らない奴、というより興味がない奴は俺のやり方は知らないだろう。千崎が俺のやり方を知っているかどうかも謎だ。

 

「……何の問題もない。見ていたのも知ってるからな」

 

「別にそれに関しちゃ驚きはしねぇが……それでも俺に食わせるってか?」

 

「……やり方の参考になるかもしれないし、聞きたいだけだ」

 

 ……俺のやり方を知ってなお、俺に食わせる、か。しかも俺にやり方を見せて味まで俺に教えるなんてな。俺も舐められたもんだ。

 

 さらに俺のやり方の参考だと?お前の作り方は全てメモしてある。味が分かればメモと合わせればお前の料理は完全に把握したも同じ。いつだってお前を喰い殺せる。

 

 一口、口に運ぶ。そして瞬間、俺の頭によぎったものは間違いでも勘違いでもないだろう。

 

 ……俺のやり方じゃあ、勝てねぇと。メモと比べてもこいつの料理は殆どがレシピ通りだ。どちらかと言えば高級食材より安価な食材を使っている。

 

 安価な食材ならアレンジの幅はかなり広がる。高い食材ってのはそれだけで完成された食材だ。無駄なアレンジをすれば旨さを殺される可能性もある。

 

 だがこれには、アレンジの余地があるとは思えなかった。何故か?この料理は完成された料理だから、としか言いようがない。

 

「……美味い。こりゃ……本当にただの料理か?」

 

「……変哲も無い、アマトリチャーナだが……?」

 

「……はっ、ふざけてやがる。参考になるなんて、嘘つきやがって……」

 

「……そうか。参考になれば良かったが、実力不足だな」

 

 強者は強いと感じた瞬間、自らを磨く事を止めることがある。または壁にぶつかり、自らの強さを隠してしまう人間もいる。だが千崎雪夜は強者であるが、自分を強いと感じていない。壁にぶち当たる事はあるだろうが、それを乗り越えている。

 

 世界が違う、なんて表現をしたのは何処のどいつだ?全くもってその通りじゃねぇか。料理の腕前だけじゃねぇ、人としても強者の部類だ。しかも弱肉強食の世界なら頂点に立てるほどに。

 

「……千崎雪夜、お前は調べてた以上に変な奴だな」

 

「……変?」

 

「……けっ、まぁ良い。美味かった、ありがとな」

 

「あぁ。また、いつか」

 

「……会うかどうかは分からねぇがな」

 

 俺は厨房を去った。……アレが、千崎雪夜。おそらく今の俺じゃあ真似するなんてことすら出来ない。格上でもそれをコピーする自信はあった。

 

 千崎雪夜の料理をコピーする事は出来るかもしれない。だがコピーだけでは確実に勝てない。だからこそのアレンジだが、千崎雪夜は技術と才能、努力で料理を完成させている。

 

 俺にはそれが足りない。あの日から努力って事を忘れちまってるような、俺には到底千崎雪夜の料理は作れない。

 

 食い殺すなんて事はもう、頭にはねぇ。目の前に立つなら排除するだけだ。それに変わりはねぇ。だが必ず、千崎雪夜自身を俺の全てをかけてコピーする。

 

 ……自分から、包丁を握ろうと思ったのは。誰かに認めてもらいたいと思い、厨房に立ちたいと思うのはいつぶりだろうか?そんなのは考えたってわからねぇ。

 

 認めさせてやる。周りの人間にも、上に上り詰めて……千崎雪夜に俺自身を認めさせてやる。今は格下なんてレベルとすら見られちゃいねぇんだ。

 

 俺は千崎雪夜について書いたメモを全てゴミ箱に捨て、いつ厨房を使い何を作ろうか、考えながらベッドに入った。

 

 

 

 




他者視点の始まりがシリアスっぽい気がする。でも原作キャラって何らかの過去があるものだよね。その中でも美作は歪む原因がはっきりしてるキャラだから、シリアスめになるのかなぁ。作者は美作好きなんです。こう、憎めない悪役になってる感が好きで。この作品の美作は心の内側では弱い自分が形成されている、っていう感じです。勝ちたい、ではなく認めさせたい。美作らしいんじゃないかなって個人的には思ってます。原作通り創真と戦って完全改心ですけどね、流れは。


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▶︎9(リクエスト回−竜胆先輩&水原さん)

 

 

 

プロト月ディスコ日 天気 曇りだっていいじゃない、人生だもの

 

 

 また始まってしまうのさ、遠月学園の地獄の授業って奴が。……あ、別に始まってはいるんだけど、堂々とこれからが地獄だ的な発言されたからね。

 

 時期的には秋の選抜が近づいてるって結構書いた覚えあるんだけど。まぁそれが終わるまではイベントとかは無いし。ただ秋の選抜が始まってからはイベントラッシュだと。

 

 秋の選抜が終わったら紅葉狩りだったかな。確か現十傑の人達と秋の選抜の上位8人?くらいがするんだって。まぁこの日記を書いてる奴はそんなのに参加できないけど。

 

 その後は文化祭的なのがあるらしい。ちょっと漢字が思い出せないから書かないけど、多分読みはげっしょくさい、とかだった気がする。別にそこまで頭がいいわけじゃないんだよ。

 

 誰に弁明してるんだこの文章は。まぁそういう事で本腰が入る前にゆっくりしとこう、と思っていた自分がいた。過去形なのは察してほしい。まぁこれから書くけど。

 

 現十傑、尚且つ一番知っているあの人が突撃してきたわけです。正確には俺が帰って来る前に入ってたんだけど。部屋のベッドに隠れてたらしいけど、気づかず着替えたバカがいるそうです。

 

 竜胆先輩とは言え、別に一緒に風呂に入ってたなんて小説とか、漫画ならよくある展開をしてたわけでもないし。ほぼ裸に近い状況を見せるのは初めてである。

 

 逆ならあったけど。ラッキースケベなんて求めてないです。別にそんな主人公補正みたいなの俺は備え持ってないから。俺が持ってるのは日記補正だから。

 

 日記を自由に書けるって能力だ、素晴らしいだろ。これ、誰でも持ってる能力なんだぜ。自分の特殊な能力の無さに泣けてくる。

 

 で、竜胆先輩と出会ったというかエンカウントというか、偶然というか最早運命のレベルの出会いだったとは思うけど、出会った訳です。

 

 ただ意外だったのはてっきり外に出るかと思ってたんだけど、違ったらしい。外じゃなくこのまま中でゆっくりしよー?って言われたから賛成した。出来る事なら休める時間に外には出たくない精神の持ち主が俺だから。

 

 話は大きく分けると二つだった。最初は結構真面目な雰囲気で、秋の選抜について話された。秋の選抜に俺が選ばれる前提で竜胆先輩が話してたのはびっくりした。

 

 なんかこう、言い出せない雰囲気だったし言えなかったけど。別に選ばれる可能性がゼロとは言わないし、判定的な意味なら選ばれる確率の方が高いとは思う。

 

 ただそこから別に何をするかとかは知らないし、A判定なんてたくさんとってる人いるじゃん。後は食戟での勝利数とかも関係するらしいけど、一回もやってないよ。

 

 前々から書いてるけど俺が戦うのはスーパーと値段だから。安い料理でどれだけ良いものが作れるかだから。最近では結構良い感じのが出来てる気はする。

 

 二つ目に移ろう。二つ目の方が本題って言われたけど違うよね。二つ目の方が副題っていうか別に良くない?って思ってしまった。

 

 頬をハムスターみたいに膨らませた竜胆先輩が、多分拗ねてる感じの雰囲気を出しながら言ってきた。そんな雰囲気感じ取った時点でなんか違う気がする、とは思ったけど。

 

 「他の子に料理作ったりお出かけしてるみたいなのに、私を放ったらかしってひどいと思うぞー!」って。目が点になってる自信があったね、あの時は。

 

 多分お菓子を作ったり買い物に出かけたりしてる事、かな?とは思ったけども、放ったらかしにしてるってちょっと、こう、言い方が悪くないですか?別にハーレムとか築いてる主人公じゃないんですけど。

 

 結果として竜胆先輩と2人で夜ご飯を作ることになった。なんでそうなったかって?一緒にいれて料理の要素も含まれてるじゃん。買い物?冷蔵庫にある食材は買い物したものだから(テキトー)

 

 作ってる間に母さんの事を話された。俺が買い物に行ったりしてる時に竜胆先輩は、母さんがいる家に行ったらしい。俺も帰ればよかった。なんでその選択肢が出てこなかったんだよ、親不孝者か?最悪だろ。

 

 母さんも帰ってきて欲しそうだったらしい。今度休みとかあったら真っ先に帰ろう。「その時は私もなー?」って言われたけど、まぁ家族みたいなものだからって言ったらしばらく厨房に戻ってこなくなった。

 

 理由は一切分かりません。顔赤くしてたし、こう、母さんとか俺とかと家族だと小っ恥ずかしい気持ちがあるのかな?まぁ竜胆先輩にも普通に家族はいるもんな。

 

 もしかして母さんとの思い出()を思い出したのかな?母さんってこう、竜胆先輩のことをりんちゃんって呼んでるし、俺の事はゆきくんって呼んでるけど、結構フランクというか。

 

 竜胆先輩と母さんが一緒に風呂に入ったり、一緒の布団で寝てたりしてるのは知ってるけど、その話をすると竜胆先輩は確実に恥ずかしがる。「あの時は若かったんだ!」って言ってたけど今も若いじゃん。

 

 母さん?昔は若かったんじゃないかな。なんか書きながら寒気がしたので歳の話を書くのはやめたいと思います。

 

 小学生の頃は竜胆先輩って母さんにかなり甘えてたし、その時の写真を俺のアルバムと同じくらい持ってるし。竜胆先輩は捨てさせて欲しいって言ってたけど母さんには勝てなかったらしい。

 

 その後はゆっくりしながら一緒に夜ご飯を食べた。今度は母さんと3人で、許されるならここで食べてもみたいかな。でもそんなの許されないだろうしなぁ。

 

 竜胆先輩に相談してみたけど、なんか苦笑いを浮かべてた。「多分いけるとは思うけどね〜……」って言ってたけど、十傑としての権力的な何かかな?

 

 「んー、秘密!」って言われたけどすごい気になる。でもたぶん母さん絡みだと思うし。なんだろ、料理の腕とかじゃ一切勝てないけど、人柄としても勝てない気がする。

 

 母さんっていつもふわふわしてるんだけど、ある日以来弱みとか一切見え無いっていうか、隠し事してもその次の日にはバレてたりしてたんだよね。あの人に勝てる人っていないんじゃないかって疑うレベル。

 

 今度母さんの所に帰ったらどんな事をしようか、という会話を結構した後竜胆先輩は帰っていった。てっきり泊まるのかな、と思ったけど泊まらないらしい。

 

 ただかなり目をそらしたりしてたから、多分母さんに色々聞かれたんだろうなって。竜胆先輩はとことん母さんには勝てないらしい。まぁ俺もだけど。

 

 結構楽しい日になった。一応明日も予定はある。お礼とか色々兼ねて水原さんの店に行こうと思ってる。1人で行く予定だし、わざわざ予約席を取ってくれたらしい。

 

 日本のトップレベルの腕前のシェフと電話番号だったりを交換してるとか、普通なら考えられないよなぁ。まぁ確実に庶民の俺が普通に行ける店じゃないし、無駄に緊張してるので寝ます。おやすみなさい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

///月###日 天気 高級そうな天井を見たので、晴天

 

 

 

 さて、今日のことを日記に書こうと思う。ていうかほんとすごかったっていうか、うん、すごかった。語彙力の無さを鍛えるためにもう少し日記で賢そうな言葉を使おうかな。たた漢字ミスとかでバカにしか見えなくなりそう。

 

 水原さんの店、エフ。別に店自体を知らなかったわけじゃ無い。普通に有名店として紹介されてたりはするし、母さんは美味しそうな料理店はチェックしてるらしいし。

 

 でも当たり前だけど来るのは初めて。そんな美味しいって確実に言えるような店って高いのがお決まりだよ。しかも遠月学園の卒業生だから、普通に高い値段をつけても問題はないだろうし。

 

 庶民がお邪魔するお店ではないってことを書きたかった。こう、スーパーとかで慣れると高い物を初めて食べた時、感動を覚えるとかってあまりない気がする。

 

 高い料理とか高い食材を本当の意味で美味しい、って言えるのは舌が常人じゃないと思うんだ。例えばフカヒレとかさ、見る事もほとんどないかは美味しそうって思わないっていう感じかな。

 

 まぁ食べ慣れてないってのもあるだろうけど、若いうちは食べれない物ってのもあるわけだし。ゴーヤとかレバーって子供の頃は食べれないけど、大人になると自然に食べれる感じかな。

 

 まぁこんな事はどうでもいいや、エフって凄いんだよって事を日記に書いておきたい。外観から中まで全部一流、というより超一流って感じだった。

 

 わざわざ従業員の人が外でずっと待っててくれてたし、そのまま案内もしてくれた。従業員もこんな超一流の店で働けてるんだから、水原さんレベルなのかな?って個人的に思ったりもした。

 

 でもそこまで多いわけじゃなかったし、店が広いって印象はなかった。でも広いから良い店って事はあり得ないし、これくらいの広さが一番良いのかもしれない。そういう運営的な事は分からないからなぁ。

 

 水原さんの他にいた従業員は4人か5人だったと思う。予約をしてくれてたらしいけど、さらっと遠月学園の卒業生の人がいたのは結構びっくりした。

 

 乾日向子さんが普通に店にいたし、俺が座った場所の隣にいた。その後なぜかこっちのテーブルに来て飲んだりしてたけど。この人の試験はあの時受けなかったんだよな。

 

 水原さんと四宮さんとかは受けたけど、日数的に全員の試験を受けるってのは到底不可能だし。水原さんがわざわざ注文を取りに来たのもびっくりしたんだけどね。

 

 はっきり言ってメニューからどれが美味しそう、ってのが分かりませんでした。というかどれも美味しそうだし、ただただ迷ってたら水原さんが気づいてくれたらしく、オススメを作ってくれることになった。

 

 その間は乾さんと話した。遠月学園は今はどんな感じ?とかそういう話から俺のことだったり、他の生徒の事を聞いてきたりもした。乾さんも気になる生徒はいるらしい。

 

 ただこう、どっちかというと女っ気がある感じがしたというか、可愛いものに目がない感じがした。男子より女子の方が聞いてくる比率高かったし、何となくだけど。

 

 そういえば乾さんって確か田所さんに初日でセクハラじみた事をしてたような?乾さんと話してる時に思い出さなくて良かった。ついつい聞いてしまう可能性もあったし。

 

 話をしてる間に水原さんが料理を持ってきてくれた。持ってきてくれた料理は俺が水原さんの試験で作った料理、アマトリチャーナ。覚えていたらしいけど、凄い嬉しい。

 

 一口食べる前に匂いだけで、これが本場の、そしてこれが本職の人が作る料理なんだな、と思った。匂いだけで一つの世界が形成されているような、そんな感覚に襲われた。

 

 そして一口食べて、レベルが違うと今更ながら分かった。あれからたまにアマトリチャーナを作ったりもしたし、水原さんに作った時より腕は上がったとは思っていた。

 

 だけど、あれから半年も経っていないような短い期間で目に見えるほどに腕が上がる、なんて事は無いんだと改めて思った。それくらい、自分のとは遠く違う料理だと。

 

 世界が形成される作品、っていう印象だった。相変わらず水原さんは椅子の上で体育座りをしていたけど、改めて目の前にいる人は存在している世界が、高さが違うと自覚した。

 

 食べてる最中、ちょこちょこ意外そうな感じで見られてる気がしたけど、どうかしたのかは聞かなかった。何でだろうか。

 

 その後は水原さんと乾さんと話をした。8割は学生時代の事を話してもらった。ちなみに残りの2割は四宮さんに対する愚痴でした。

 

 話を聞いてて分かったけど、正直乾さんって四宮さんの事を好きなんじゃないかって話を聞いてて思った。まぁ人の色恋沙汰に首は突っ込みたくないから聞かなかったけど。

 

 学生時代の、かぁ。大人の人の学生時代の話とか写真を見ると、今と変わってない!って思ったら全然違う!って思うことがあったり、十人十色って感じだよね。

 

 宿泊研修で来ていた卒業生の人達の、学生時代の時の集合写真も見せてもらった。四宮さんイケメンすぎない?ってのが率直な感想です。これはモテたんだろうなって。

 

 ちょっとそこの話に触れてみたらやっぱりそうだったらしい。乾さんが愚痴を漏らす感じでずっと不満を言ってたし、気が気でなかった、なんて言ってた。本人は気づいてなさそうだけど、普通に好きって告白したんじゃないかって思った。

 

 水原さんも気づいただろうけど、そこには触れないようにしてた。多分気づいたら2人とも記憶を消される可能性がある。乾さんも水原さんも少しお酒入ってたし。

 

 あ、俺は飲んでないよ?普通に未成年だからオレンジジュース飲んでましたよ。子供っぽい飲み物だと思うだろ、オレンジジュースは神。異論は認めるけど。

 

 学生時代の話を聞いた後はお開き、となった。こっそり酔ってるのか少し顔が赤い水原さんが近づいて耳元で囁いてきたときはちょっとヤバかった。こう、女子に近づかれるとかさ。ほら、基本コミュ力ないから俺って。

 

 後耳とか弱いんです。乗り物、バスとかバスとか、バスとか。それにも弱いけど耳が弱いのは昔から知ってる。こう、昔って親に耳かきをしてもらった事ってあるじゃん?

 

 とにかくこそばゆいし、息を吹きかけられるとくすぐったいレベルを通り越す感じがする。だからこそかなりびっくりした。

 

 「私の誘いの返事、いつでも待ってるから……その時はよろしくね?」って言われた。もし俺が勘違い野郎だったら告白と勘違いされてもおかしくない事を言われて、こう、ドキッとしてしまいましたごめんなさい。

 

 ほら、年上の人にそんな事言われるとドキッとするってよく言うじゃん。言わないか。まぁ、こう、一応男子だからドキッとする事もあるのです。

 

 乾さんとも普通に電話番号などを交換した後、解散となった。2人からその後今日はお疲れ様、みたいなのが届いた。スタンプと返事を送りました。

 

 楽しかったし、学生時代の話を聞けるってなかなかない体験だった。しかも料理も食べれたし、凄い充実した1日だったと思う。それでは本日も、おやすみなさい。

 

 

 




もしかしたらですけど、リクエスト回があと2話で終わる予定なんですが、これからは不定期更新とさせていただきます。作者がしばらくリアルで忙しかったり、色々控えてたりするので……できれば週一で投稿したいとは思ってますが、不定期更新なので分かりません……ご理解の程、お願い致します。


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▶︎クリスマスイブ -プレゼント箱は恋模様-

今回はクリスマス(イブ)特別編って事で、本編より主人公が話します。日記じゃないです。日記形式でも良かったんですけど、他者視点を入れるとクリスマスどころか年明けそうなんで……
後これはifの1つです。本編とは無関係です。原作での薊の話は一切ないです。薊が出てこない世界線の話です、だって薊とかの話って時期的に冬だから……本編で出てきてないキャラは出てこないので、あしからず。



 

 

 今日は巷ではクリスマスイブ、と言うらしい。いや、知らなかったわけではないけれども……今までクリスマスイブなんて普通に過ごしてた記憶しかないからな、どうでも良い日の一部にしか過ぎなかった。

 

 まず、クリスマスならサンタがやって来る。子供にとっても親にとってもこれは一大イベントだろう。だがクリスマスイブとなると……これはどういう風に過ごせば良いんだ?

 

 クリスマスの前日となれば、確かに心が踊りそうにもなる。楽しみに待ち望んでいる日がやって来る、と思う人が多いだろうから。まぁ俺は家から基本出ないクリスマスを過ごしていたわけだが。

 

 いや、だってクリスマスっていつの季節にあるか知ってる?冬だよ冬。しかも年明け間近ってことはもう、極寒の冬だよ?毛布でくるまって過ごすのが一番に決まってるじゃないか。

 

 恋人とかいるなら違うのかもしれないけど、恋人どころか友達とすらクリスマスに出かけたこと無い人だってこの世にはいるんだよ。俺とか俺とか俺とか。

 

 クリスマスの思い出は竜胆先輩と俺と母さんの3人で、クリスマスの準備を家でしていた時にクリスマスツリーの飾り付けをしていた。そしてツリーの一番上に星を飾った瞬間、電気が流れて光って驚いて小さな脚立から落ちたことくらいだ。

 

 あの頃は俺も若かったんだっ……脚立があんな危険な存在だと知っていれば、乗ろうだなんて考えなかったはずだ!まぁ竜胆先輩はそれ以来、クリスマスとかそういった行事の時には家に来なくなった。

 

 理由って言われても、そもそも竜胆先輩って俺の家の子供じゃないし。あっちの家庭でも楽しくやってたらしい。少し寂しかった時があるのは、俺だけの秘密だ。

 

 ……あ、とりあえず本題に入ろうと思う。今日はクリスマスイブという事で遠月学園でイベントがあるらしい。その名も……いや、別にイベント名なかった。

 

 折角クリスマスイブという事で、学園長が企画したらしい。今の1年、2年、3年それぞれ関係なく立食パーティーのようなものを開き、親睦を深めようという感じらしい。

 

 しかもわざわざ全員に正装を渡してくるというおまけ付き。ありがたいんだけど、こんな堅苦しい奴を着たくはなかった。だけど私服のセンスなんて皆無だからまだ良かったのかもしれない。

 

 に、しても……これで合っているだろうか?こんな正装なんて人生で着るとは思ってなかったなぁ……

 

「グッド、モーニングーー!雪ー!着替え終わったか〜?」

 

「……終わりました。着方、これで合ってますかね?」

 

「……あ、あぁっ、うんうん!合ってると思うぞ!」

 

 色々考えていたらいつのまにか時間になっていたらしい。今日は竜胆先輩と一緒に会場まで行くと約束していた。ちなみに今は午後5時だから、決して朝ではない。

 

 会場と言っても、別に遠月学園の中にあるし遠くはないんだが……まぁそこは気分の問題と言われた。俺と行って気分を悪くする一方なのでは、という言葉は飲み込んだ。

 

「……ほ、ほんと反則……雪、まじ……」

 

「……あ、竜胆先輩も似合ってますよ?」

 

「ふぇっ!?へ、へへっ、そうだろー?まぁあたしもこういうの苦手なんだけどな〜」

 

 今の竜胆先輩の服はドレスだ。少し薄めの赤色と少し宝飾がされている豪華なドレス。胸元が少しだけ空いていて、目のやり場に困る。いつもと違い髪を下ろしているから、いつもと全く違う印象に見える。

 

「んじゃいこーぜ!折角のパーティーだし楽しんだ者勝ち!雪も楽しんでいくぞ!」

 

「……善処します」

 

「お、こういう時エスコートとか頼んだら良いのかなっ?」

 

「勘弁してください……俺にエスコートのやり方とか分からないです」

 

「手とか繋げば良いんじゃないかな?やり方知らないなんて知ってるぞー?」

 

「……手?こういう、感じですか?」

 

 竜胆先輩の手を握る。すべすべしていて女の子らしい手って感じだ。こんな細い腕であんな風な料理をするんだから、人ってのは本当によく分からない生き物だと思う。

 

「……おっ、おう!こ、こんなんでいいと思うっ!!」

 

「……顔赤いですけど……やめた方が良かったですか?」

 

「い、いやっ!?こ、このままで……お願いしますっ……」

 

 なぜか急に敬語になって、すごいしおらしくなった気もするけど手を繋いだ状態で会場へと向かった。向かっている途中、竜胆先輩が顔を赤くしたまま全然話してくれなかったから、気まずかった。

 

 しかも結構顔うつむかせてるし……手を離そうとしたら「ダメッ!!」って言ってくるし……クリスマス前日だと、こんな風になるのだろうか?イベントの日に一緒にいるのは久しぶりだから、その間に竜胆先輩が変わったりしたのだろうか?

 

 んー……今度母さんに聞いてみようかな……あと、新戸さんにも聞いてみよう。新戸さんなら分かりそう……な気がする。でも俺の勘ってそこまで頼りにならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 会場に着いたが、1年、2年、3年は予想通り場所が結構違う。というより自由なのだが、一年は一年同士、と言ったように自分の学年の人達と集まっているようだ。

 

 竜胆先輩は会場に着くなり手を離して「そっ、それじゃ!ちゃ、ちゃんとっ、た、たのしめよっ!」と言って三年生の人達が集まっている場所に小走りで向かっていった。

 

 ……やっぱり怒らせたりしてるんじゃないだろうか、とも思ったが最近こういう考えをしているとため息を吐かれることが多くなった。未だに理由が分かっていない。

 

 入り口に立ったままだと邪魔なので、とりあえず目についた人の所へ向かう。周りに結構な人がいるけど、多分話してくれるとは思う。

 

「……ん?お、千崎!お前も来たのか!」

 

「まぁ、折角だからな。……すごい人数に囲まれてるな、幸平は」

 

「そうか?別にいつも通りだけどな……てかほら、田所とかは寮で一緒だからここに来る時も一緒ってだけだしな!」

 

「……むしろこんな人数とよくいれるな……」

 

「いやいや、店だったらこんな人数じゃ済まねえって!……あ、つか秘書子が探してたぜ?」

 

「秘書子?……あぁ、新戸さんか。次はそこにいく予定だけど」

 

「……いや、最初にそっちに向かった方が良いと思うんだけど?」

 

「……なんでだ?順番とか別に意味ないだろう?」

 

「……はぁ……クリスマスが近づいてるのに未だにそれは健在なんだなぁ……とりあえず行ってやれって」

 

 ……よく分からない事言うんだな、幸平は。ひとまず幸平の言うことに従って新戸さんを探す事にした。

 

 

 

 

 

「……まさかとは思ったが、何一つ進展していないとは……」

 

「ほ、本当ですね……部外者の僕達でも分かるんですが……」

 

「いや、流石にあの鈍感さは、ねぇ?」

 

「まぁあれが彼の持ち味なのかもしれないね?……別に幸平くんにも当てはまらない訳ではないんだけどね?」

 

「え、俺?いやいや、俺は別に鈍感とかじゃないですし、まずあんな風に好かれたりはしてないと思うんですけど……」

 

「(……隣の田所ちゃんとか見た方が良いと思うんだけどねぇ……1年生男子ってのは鈍感が基本スキルだったりするのかな?)」

 

「(……創真くんのばか!)」

 

「???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、千崎くん。貴方も来たのね?」

 

「薙切さん……俺が来るのって意外ですか?」

 

「そう、ね……どちらかと言えば参加しなそうなイメージだったわ。ほら、今回のパーティーは参加自由じゃない?」

 

「……え、そうなんですか?」

 

「……し、知らなかったの?」

 

 知らなかった。竜胆先輩に誘われたし、断る理由はなかったしそもそも参加を拒否できるなんて知らなかったんだけど。……いや、知ってても竜胆先輩からの誘いだから断ってないけどさ。

 

 一応明日は予定あるから早めに帰りたい気持ちはあるし。明日はクリスマス当日という事で、家に帰る……前に水原さんの店で食事をさせてもらう事になっている。水原さんに頼んで少し持って帰らせてもらう事になっている。折角だから母さんにも食べさせたいし。

 

「……あ、そうだ。新戸さん知りませんか?」

 

「露骨に話を変えたわね……緋沙子?……んー、知ってるけど、自分で探したらどう?」

 

「……知ってるのに教えないってドSだからですか……」

 

「よく本人を目の前にそんな事言えるわね……まぁそうじゃないわよ。でも貴方の為でもあるし、緋沙子の為でもあるのよ」

 

「……よく分からないんですけど……」

 

「……はぁ……まぁ貴方が思いつく場所を探しなさい。ヒントを出すなら、この会場にはいないわ」

 

 ……この会場にはいないの?折角のパーティーなのにいないってどういうこと?……でも知ってるって言ってたしなぁ……考えていても分からないので、思いつく場所に向かってみることにした。

 

 

 

 

 

「……まったく、まだそこまでしか行ってないなんてビックリよ」

 

 ……いくらなんでも鈍感にも程があるんじゃないかしら?緋沙子も緋沙子ね、あの子は自覚してるのに、ちゃんと踏み込もうとしてないんだもの。

 

 ライバルがあの小林竜胆先輩、だって事はあるにしても……流石にヘタレとしかいう他ないわね。まぁとうの本人はそんなことにも気づかず鈍感さに磨きをかけてるようだけど。

 

 全く……千崎雪夜はいつか刺されるんじゃないかしら?女子の気持ちを『3人』も持って行くなんて、ね。

 

 ……ふふっ、どうしてかまだ諦められないのよね。緋沙子に幸せになってほしいから、ちゃんと決意したはずなのに。自分の気持ちを諦めて、緋沙子の気持ちを優先したのに。

 

 私の目から流れる、涙という存在は。私の心みたいに嘘をつける賢い存在ではなかったみたいだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 思いつく場所に来てみたら、いた。会場から出ていつもよく話したりしている、円形の小さなテーブルに座っていた。格好はドレスで、見えるのは後ろ姿だけだが、いつもよりも綺麗に見える。

 

「新戸、さん?」

 

「っ!?ち、千崎!?何故、ここが……?」

 

「薙切さんが、思いつく場所にいるだろうって言ってくれたんで……探しに来たんです」

 

「……別に、私を探しに来る理由はなかったんじゃないか?」

 

 新戸さんは俺と目を合わせようとしない。ひとまず目の前の椅子に座るが、それでもこちらを見ようとしてくれていない。

 

「……折角、パーティーなんですし……俺は新戸さんとも話したかったんです」

 

「……たったそんな理由で探しに来たのか?」

 

「……後、幸平とか薙切さんに探せって言われたのもあります。どうしてか2人にため息吐かれましたけど……」

 

「……私だってため息吐きたい気分だよ。さっきの答え、私じゃなかったら殴られてもおかしくないぞ?」

 

 え?ちゃんと正直に答えたはずなんだけど……怒られてしまうような理由があったのだろうか?

 

「分かってない顔だな?全く……こんな気分になる私がバカらしいじゃないか。……ふふっ」

 

「……俺にはよく分からないです」

 

「いいさ、今は。いつか分かってくれればいい。私の気持ちにも、他の人の気持ちにも、な」

 

「……善処します」

 

 俺がそう返事すると、空から白い物が降ってきた。季節的にはピッタリな白い、俺の名前にもある雪が空から降ってきた。ふわふわ、ふわふわと……ゆっくり、俺の肩や新戸さんの肩にも優しく乗ってくる。

 

 ホワイトクリスマス、という奴だろうか?実際住む場所にもよるがクリスマスの時期に雪が降る、というのはあまりない気もする。北海道とかなら話は違うかもしれないが……九州なんかじゃほとんど降らなそうなイメージだ。

 

「……戻るか、千崎。雪も降ってきたし寒くなりそうだ。えりな様を心配させたくないし、な」

 

「……はい」

 

 俺はふと、さっきの竜胆先輩と会場に来た時を思い出す。あの時は俺が言われてやった事だけど……どうしてか今は、俺からやらなければいけない気がした。

 

 これは雪のせいなのか、それともクリスマスイブなんてよく分からない行事の所為なのだろうか?俺の意識や脳よりも早く、俺の手は新戸さんの寒そうな右手へと向かっていった。

 

 簡単に手を握れた。新戸さんはいきなり握られたのに、何も言わない。その手はかなり冷えていた。俺が想像しているよりも、長くここにいたのだろう。申し訳なさなのか、それとも俺の気の迷いなのか。

 

 少しずつ新戸さんの体温が上がっていくのが、繋いだら手からわかる。歩いてはいるが、2人とも言葉を一切話さない。聞こえてくるのは会場から聞こえる華やかな声。雪がゆっくりと降る、そんな音。

 

 

 

 

 そして、今まで経験した事がない程響く、自分自身の胸の鼓動。

 

 長時間走った後の動悸とはまるで違う。どこが痛いような気もするのに。

 

 こんな時間が続いて欲しいと願っているのは、俺だけだとは思うけど。

 

 胸の鼓動がこんなに心地よく思うのは初めてだ。

 

 

 

 

 ふと覗き見た、俺と手を繋ぐ少女の顔は……寒さに当てられたのか、顔が真っ赤だった。

 

 そして、窓に映り込んだ俺の顔も、同じように赤かったのは……単なる見間違いなのだろうか。それとも。

 

 

 

 

 

 

「なぁ、千崎」

 

「……なんですか?」

 

「……千崎。これから言うことは嘘でも冗談でもないから、聞いてくれ」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は、お前の事が………………」

 

 

 

 

 

 

 

 鳴り響くベルでかき消されたようにも感じてしまう、そんな小さな声で言われた言葉は。はっきりと俺の耳に届いた。この聞こえた音は、声は、言葉は。

幻聴でも夢でも何でもないのだろう。

 

 この先の事は、話さないようにする。だけど一つ言える事は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺にとって、この時以来。クリスマスイブがクリスマスよりも大事なイベントになった、と言うことだけだ。

 

 




刺されろよ(直球)恋愛無理(直球)
お久しぶりです。忙しかったんですが、昨日くらいから時間ができてました。なのになぜ投稿しないのか……理由は一つ。白猫してました。茶熊のティナが欲しいんや。30連したけど出てこないんや。今ジュエル貯めてます。どなたかフォロワーになってくれたりしませんか。名前検索で「Aりーす」でランク95、アイシャがリーダー(おそらく)の人が出て来るはずです(多分)空きがある限りフォローしますから!お願いします(土下座)クリスマスイブもクリスマス当日もなんと!白猫するぜっ!石1000個貯めるからな、ぼっちで。


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▶︎9-1【先輩】

 

 

 

 懐かしい、夢を見た気がする。あたしがまだ小さい頃、雪とは毎日とまでは行かないけどたくさん遊んでいた時期だ。その時の夢を見た。

 

 雪と、雪のお母さんである千崎真夜さんと、3人で雪の家でテーブルを囲んでいる、そんな日常の風景。最近ではあたしも雪も遠月学園に通い、帰ることもままならなくなっているけど……

 

 あそこはあたしの第2の家、と言ってもおかしくない。ほぼ毎日のように入り浸って、他人の家と思う事がなくなっていってた。真夜さんはよくあたしを可愛がってくれてた。

 

 でも、ある時に日常は一旦崩壊を迎えてしまう。あたしもあまり顔を見た事はなかったけど、真夜さんと結婚をしていた人が浮気をしていたらしい。

 

 その人も遠月学園に通っていて卒業した生徒だったからか、顔が広かったのかは分からないけれど、浮気をして家から出ていったらしい。世間的にもそうなのだろうけど、浮気っていう行為は考えられない行動だと思う。

 

 浮気は男子でも女子でも関係なく出来てしまう。でも好意があったはずなのに、どうして他の人へと好意が向かってしまうのだろう?あたしには分からない。あたしがまだ子供だからなのか。

 

 ……浮気は別にいい。真夜さんも今は気にしてないし、家にはその人の写真すらも残ってない。だけど浮気されてからしばらくは精神が参っていた時期があった。

 

 そして、そんな気持ちが日に日に溜まっていき、あたしが中学に入り、雪も小学校高学年になった時に真夜さんは家を出てしまっていた。いわゆる、家出という奴だろう。

 

 あたしはただ困惑するばかりだった。雪を置いて出ていくという事に怒りを覚えたし、その時はどうして家出したのか分からなくて、気持ちの整理が何一つ付いてなかった。

 

 3日経っても帰ってこなくて、何よりも辛かったのは真夜さん自身と、雪だった。雪は真夜さんが家出している間、ご飯を一切食べていなかったからだ。

 

 あたしは必死に探した。真夜さんを連れ戻すために、雪を死なせたくないって思う事もあったけど、真夜さんの帰りを待ち望んでいるのは雪だけじゃなく、あたしもだったから。

 

 ……あの日以来、あたしは真夜さんに「りんちゃん」と呼ばれるようになり、家族同然の扱いを受けた。あの家にいる時は、家族のように温かい空間だった。

 

 またいつか、高校生になったあたしと雪、真夜さんで小さなテーブルを囲んで食事をして、色んなことを話したりして……やりたい事が山積みだった。

 

 そんな夢を見たからか、あたしは無性に雪に会いたくなった。こっそり雪が住んでる場所の、雪が寝ている部屋のベッドに忍び込んだ。……雪がここで寝てると考えた時、恥ずかしくて死にそうになったあたしがいるけど。

 

 ただ唯一の問題が……雪も授業を終えて帰ってきたのに、あたしがいることに気付かず着替え始めてしまったことだ。もちろん小さい時や、あたしが中学一年の頃とかまでなら別に気にしなかった。

 

 だけど今は、自分の気持ちに気付いてしまっている。真夜さんにそういう所とか、進展とか根掘り葉掘り聞かれたのが最近だから、それも余計にあたしの恥ずかしさを増加させる原因にもなった。

 

 いくら小さい時から遊んでた雪とは言え、もうあたしも雪も高校生。着替えなんて別々というのが常識なのに……まるでこれじゃ、あたしが雪の着替えを見たいから忍び込んだ、と思われて変態扱いされてしまうかもしれない、と思ってすぐさまベッドから飛び出た。

 

 ……ベッドから出て数秒間の無言の時間が、一番恥ずかしかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれはベッド事件と名付けよう。ごめんなさい、出来心だったんです。……と、とにかくあれはあたしの中でも忘れようと思う!……上半身だけだったけど、うん、小さい時とは変わったなって……

 

「……竜胆先輩、どうしました?」

 

「ふぇっ!?い、いや!?なんでもねーぞ!?」

 

「呼びかけても、返事しなかったんで……」

 

「あ、そ、そうなのか……ごめんごめん!何話してたっけ?」

 

「えっと……今日はここでゆっくりする、って事と話が二つある……事だけは聞きました」

 

 その話しした後に、ちょっと思い出してトリップしてしまっていたわけなんだな……予想外とは言え、少し罪悪感が否めない。

 

「あー、雪はさ、今度ある秋の選抜は知ってる?」

 

「一応。……選ばれるかどうかは、そこまで興味ないですけど」

 

 まぁ、そうだよな。雪が選ばれない筈がない。現時点で1年生の中でトップは間違いなく雪だ。雪もそれを分かっているから、興味が無いんだろう。

 

 他の人は選ばれるかどうか、に興味が惹かれる。だけど雪は選ばれるかどうか、じゃなく選ばれる、と確定しているんだ。興味があるのは、それより先の事だと思う。

 

 あたしも秋の選抜には参加したけど……今までのとは全く違ったもんな、あの行事。あたしが知らなかった同級生らの、すごい料理をいくつも見てきた訳だし。

 

「……ま、そーだよな!で、ちなみに二つ目が本題なんだけど〜……あたしは非常に怒っている、雪に対して」

 

「……?」

 

 首をコテン、と傾げた雪を可愛いと思ってしまった。あたしの怒りが急激に下がりそうになった。……なんかあたし、最近雪とそこまで触れ合えてないからなのか、気持ちがいつも以上に揺さぶられるなぁ……

 

「前さー、ももが来ただろー?あたしはしばらく出てたけどさー……いつのまにかももと仲良くなってるし!雪は料理してるし!格差はいけないと思うぞ!」

 

「……いや、竜胆先輩も食べたじゃないですか」

 

「それはそれ、これはこれ!それに聞いたぞ!他の子に料理してあげたり、お出かけまでしてるらしいな〜!」

 

「……誰から聞いたんですか、それ……」

 

 カマかけたら当たった。あたしの怒りボルテージが上がってしまったぞ。これならスーパーウンタラカンタラ人3くらいまでならなれるかもしれないぞ。なれないけど。

 

「やっぱそうなのか……ずるいぞ〜!あたしは最近構ってもらってないのに〜!」

 

「か、構うって……」

 

 むぅ……雪に期待はしてなかったけど、ここまであたしの言いたい事に気付かないなんて思わなかった!……ほんと、真夜さんの言った通りだなぁ……

 

 真夜さんは言ってたし。「多分、りんちゃんを女の子としては見てるだろうけどね〜、気持ちに気付くまでが闘いかな?ゆきくん、確実に鈍感だし」って。その通りだったよ、ほんとすごいなぁ、真夜さん。

 

 結果として今回は妥協案として一緒に料理を作る事になった。遠月学園で作るような料理じゃなく、あたしと雪と真夜さんでの食卓に出てくるような、家庭料理のオンパレードだ。

 

 まずあたしは肉じゃが担当。家庭料理の定番って言ったらこれだし、雪は一番これを練習してはいるんだけど……今回はあたしがすることになった。

 

 雪は魚料理をするらしい。おそらくだけどサバの味噌煮、かな?実際雪の得意料理ってのはないと思う。例えば他の人なら得意ジャンルがあって、その中で最も自信がある料理が得意料理になると、あたしは思ってる。

 

 だけど雪は違う。得意ジャンル全てが雪にとっては得意料理。ただそのジャンルがね……洋風とか、どこかの国の料理とかじゃなくて『家庭料理』が得意ジャンルだからなぁ……

 

 真夜さんが教えたりしたのも家庭料理だし。あたしに食べさせてくれるのもほとんど家庭料理として出てくる物。まぁ家庭料理のレベルじゃないんだけどね。もしあんな美味しい家庭料理が毎日出て来たら他の料理が食べれなくなる、かもね。

 

 だって真夜さんの子供だし。真夜さんって昔、真夜さんの料理を食べたら他の料理には二度と戻れない、とすら言われてたらしいし……一瞬で味わいの天国と、それ以外の料理では満足できなくなる地獄を合わせて、『天獄』って呼ばれてたらしい。

 

 家だと、私と一緒にお風呂入ったり一緒の布団で寝たり……ほんと、真夜さんってあたしとよくいる気がする。まぁ雪より会う機会は少ないから、なのかな?

 

 雪の顔立ちは平凡、もしくはそれより少し上って感じだけど……真夜さんは30代とは思えないほど綺麗だ。20代と言われても簡単に納得すると思う。ただ自分への評価が低いんだよねぇ……

 

 そういう所を雪は受け継いだのかなぁ……?まぁ顔立ちが似てたら確実に女子がたくさん寄ってくるから、そこは良かったのかもしれない。……良かったな、かな?ちょっと分からない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時々話しながら料理は完成し、雪と向かい合う形でテーブルを挟み、椅子に座った。こういう風に食べるのも久しぶりだ。中学くらいまではあたしも食べてたけど……遠月学園に行ってからは減ったから、新鮮にも感じる。

 

「なーなー、雪。少し前に真夜さんに会いに行ったんだよ」

 

「母さんに?」

 

「うんっ。真夜さん、結構帰ってきて欲しそうだったぞ〜?」

 

「……ちゃんと帰らないと、ですね。もうそろそろ半年、って所ですかね?」

 

「だな〜。そろそろ季節も秋になってくし、それくらい経つな!」

 

 前帰った時は、雪との関係をとにかく聞かれて一緒にお風呂にも入った。……もうあたしも高校三年生なんだけどなぁ、まだ子供って言われちゃったし……

 

 まさか寝るまでずっと聞かれるとは思わなかったけど。……「りんちゃん、意外にヘタレ?」って言われた時、胸にぐさっと刺さる感じがした。そ、そうですけどっ!そうですけどねっ!

 

「……今度、一緒に帰りません?」

 

「あたしもか?んー……でもいつくらいにする?」

 

「秋の選抜が終わったら……冬ですよね、クリスマス辺りとかは?」

 

「んじゃ、真夜さんにクリスマスプレゼントとか持っていこっか!雪を箱に入れて……」

 

「……俺じゃプレゼントにならないでしょう……」

 

「え、なると思うけどな〜。なんたって真夜さんだし!」

 

 雪のこと大好きな真夜さんだし。あそこまで溺愛してるのも珍しいレベルだと思うけどなぁ……あたしまで溺愛されてる気もするけど、一切悪い気はしない。ただちょっとセクハラ的なアレがあるのは、容認できない……

 

「……とりあえず冬に帰りましょうか」

 

「おっけー!!ん、おいしっ」

 

 相変わらず雪の料理は美味しい。でもこれでも、真夜さんが本気を出したら勝てないらしい。真夜さんはまだ負けてないよって元気いっぱいに言ってたけど、強すぎだよねぇ……

 

 でも、冬かぁ……真夜さん大喜びするだろうなぁ。なんたって親バカだし。あたしが言うのはおかしい気もするけど、親バカだし。

 

 ……その時には、真夜さんにもう少しいい話ができるように進展してたらいいなって、あたしは心の中で思った。

 

 その日は泊まろうとも思ったけど、いきなりやらかしてしまったこともあったから素直に帰った。こう、意識しすぎて寝れそうにもなかったし。

 

 そう言えば雪はちゃんと日記をつけているのだろうか?あたしが勧めたんだけど、三日坊主とかで終わってたりレシピ帳になってたりしないだろうか?

 

 ……雪だからないか。あたしとの約束は基本的に守ってくれるし、な。ただあたしの気持ちには、こう、気付いてくれないけど。あたしから踏み寄らないとダメかなぁ……

 

 自分の部屋に入り、ベッドに転がる。……どうやら自分のベッドで寝ても、あの時の恥ずかしい気持ちは隠せないようだ。雪の半裸も頭の中でフラッシュバックする。

 

 今日は、寝れそうにもなかった。

 

 




1日に2話投稿ー!年末までに本編を1話は進めるって決めた!それが今日だ!!本編進めるの久しぶりすぎて、キャラとか前の話を忘れてた……ヤバイな、結構ヤバイ。気付いたらお気に入り8000_:(´ཀ`」∠):_ありがとう……
前のクリスマスイブ編でも書きましたが、白猫フォロワーさんまだまだ募集中です。絶対埋まり切らないレベルでフォロワー空いてますし……Aりーす、で検索したら出てきます。後、茶熊ティナが欲しいって言ってるのにみんな茶熊ティナリーダーで申請してくるから、涙が流れちゃいます。ティナください。クリスマスプレゼントください、ティナかリンゴのカードください。ランク350ってなんや……ティナ出すぎだよみんな、一体くらいちょうだい。




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▶︎9-2【エフ】

皆様、この話で今年の投稿は終わりとなります。メリークリスマス、もしくは今年もお疲れ様でした。新年を迎えようとしている、この小説を読んでいる皆様方のおかげで日間、週間、月間から、四半期、さらに累計までランキングに載っていました。本当にありがとうございます。
投稿し始めて2ヶ月過ぎ、年が明けます。来年も不定期にはなりますが、投稿していきたいと思います。今年はありがとうございました。来年もよろしくお願いします。


 

 

 今日という日を待ち望んでいた私がいる。ドキドキしてるのもある。そして不思議と緊張している、というのも否めないのが今の私の気持ちだ。

 

 千崎雪夜。私が今年、宿泊研修の審査員として呼ばれた時に私の試験を受けた生徒の1人。もちろん、ただの生徒なら名前を覚えたりはしない。

 

 私はあの性格の悪い、かませメガネみたいに大量に落としたりはしないし。だけどその分、あまり覚えたりはしなかったけど……料理をする姿からできた料理の味、全てが昨日のことのように思い起こせる。

 

 ……自分で自分が笑えてきてしまう。まるで恋心を抑えようとしている、乙女みたいな考えだな、と思ってしまって。でも、もしかしたらそれに近いのかもしれない。

 

 あんな腕があれば、と思ってしまうけれども。彼自身のレベルが高すぎる。いつか私を抜かしてしまうのは、私自身が確信している。だけど私の店に欲しいと思ってしまう、こんなワガママな気持ちは恋心にも近いのかもしれない。

 

 こんな気持ち、料理をしてるアイツの顔を見る以来なのかもしれない。……まぁあっちはヒナコがいるから、いつかくっつくとは思うけどね。あのメガネは気づく様子ゼロだけど。

 

 今日という日を、私自身楽しみにしている。私だって料理人だからこそ、客がどんな表情で食べているか分かれば、心の底から美味しいと思ってもらえているかは分かる。

 

 料理をしている時の千崎雪夜は、無表情にも近かったけれど、その目はしっかりと楽しいという気持ち、上に上がるという気持ちを感じさせるような熱を感じた。

 

 ただ少し予想外だったことは、何故かエフに千崎雪夜を招くことをヒナコに知られていたことだ。普通に連絡がきて、「今日来てもいい?」っていわれたし。

 

 断ろうとも思ったけど……「千崎くんって言う、目をつけた子が来るんでしょ〜?」といわれ、一体どこから情報が漏れたのか未だに分からない。

 

 今はヒナコと2人でエフの中にある。もちろん私以外も従業員はいるのだが、今日は全員を呼んでいない。1人だけ、千崎雪夜を店に招く従業員はいるけど、それ以外は今日はお休みにした。

 

 理由は私自身が彼に料理を作るため。そうじゃなきゃ、招く意味がないから。

 

「ねぇねぇ〜、まるで恋をしてる女の子みたいだよ〜?」

 

 ひとまずヒナコの頭をグリグリしておいた。ヒナコのドヤ顔ほどムカつくものはそうそう無い。どれくらいってあのメガネに馬鹿にされるくらいムカつく!

 

「痛い!痛いですよ!?」

 

「痛くしてる。それくらい罪深い許されない事をした」

 

「何がですかぁ〜!?あっ、頭が、頭がっっ!!!」

 

 ヒナコが痛みに悶えていると、外から少しの話し声が聞こえる。私が用意しておいた案内役の従業員の声と、私が招いたあの子の声。ヒナコもおちゃらけた雰囲気ではなくなっていた。

 

 卒業生がまだ卒業もしていない生徒に、こんな形で招くなんて異例と言った方が正しいのかもしれない。宿泊研修は確かに卒業生が在校生に目をつけるため、という名目でも参加することができる。

 

 ただそれはいわばスカウトのようなもの。卒業するであろう、そんな予想を立てた上で自分の店で働かないか、という事を伝える。もちろんただの生徒には声を掛けたりはしない。

 

 もちろん噂が広がっている子らもいる。例えば薙切えりな。彼女は現学園長との血縁というアドバンテージもさながら、その実力も確かなものだ。ただ生半可な腕の料理人がスカウトするものなら、食われてしまうだろう。

 

 ……でも、薙切えりなや他の1年生にもない何かを感じ取ることが出来たのは彼だけだ。その正体は一体何かは掴めないけれど、彼自身を知らなければどうしようもない、かもしれない。

 

 考えていると、千崎雪夜は私の店に入店してきた。ひとまず私も立ち上がり席に案内する。……わざわざヒナコは席を移動して隣にいったみたいだけど……ヒナコも興味あるの?

 

「今日は、お招きありがとうございます」

 

「堅苦しくなくていい。今日は私が招いたから……」

 

「うふふ、いつも通りで良いんですよ〜」

 

「……まぁ、それなら……」

 

 まだ少し堅苦しい感じは抜けてないけど、元からこんな感じだった気もする。どこか他人行儀でありながら基本的なマナーだったりは守ってる、そんな感じ。

 

 ひとまず今日は私が料理を振る舞う場だ。メニューを渡し、好きなものを頼んでもらう。

 

「……んー……」

 

「うふふ、迷ってるんですか?」

 

「こういう高級そうな店は、初めてなので……」

 

「そうなの?私はてっきり、普通に行った事くらいはあるかと……」

 

「普通の家庭で過ごしてきたんで……外食とかはファミレスとか安上がりな所に言ってました。美味しいですし……」

 

「あら、そうなんですか。でも噂は聞いてますよ〜?先生だったり、ね?」

 

「……噂?そんなのあったんですか……」

 

 ……他者からの噂とか、一切気にしないんだ。まぁ、実際実力もある。自分より下の人間の発言や噂にいちいち反応するような人は、強者ではそうそういない。

 

 強い人にはそれなりの強さの根本となる、何かがある。料理人なら得意料理のジャンル、そしてその中でも最も自分が美味いと思える料理、もしくはそれを作る調理器具だったり……強さとは、証明になるから。

 

 もちろん強者には種類があるし、他者に手を差し伸べられる聖人君子のような人間もいる。ヒナコはどちらかと言えばそちら側の人間なのかもしれない。本人に言ったら調子に乗るから絶対に言わないけど。

 

「それじゃあ……私のオススメ、ってのは?」

 

「水原さん、の?……それでも良いんですかね」

 

「一つに決められないんですからね〜、それでも良いと思いますよ?オススメなんて珍しいですよ!なんたって、あぁっ!!あ、頭が潰れます!!!」

 

「トマトみたいにしてやろうか……それじゃあ作ってくる。ヒナコセンサーがある限り、変な事を言ったりしたら一回につき1ミリ頭が凹むから」

 

「それは酷くないですかぁ!?私への扱いへの改善を求めますぅ!!!」

 

 ぎゃーぎゃー喚くヒナコをそのまま置いていき、厨房に入る。オススメ、とは言ったけど……一つ挑戦でもあるかな。でも、あれじゃなきゃ卒業程度のレベルは測ってもらえないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出来たよ」

 

「……これって……」

 

「アマトリチャーナ、ですね。確か千崎くんが試験で作った、とも聞きましたが……」

 

「水原さんの試験で作りました。……オススメ、でこれが出てくるとは思ってなかったです」

 

「そう?まぁ、食べてみてね」

 

 千崎雪夜は私が作ったアマトリチャーナを口に運ぶ。ほとんど無表情と言って差し支えない表情だった彼が、一瞬で顔を崩した瞬間を見た。

 

 静かに、その味を噛みしめるかのように一口、一口と食べていく。その間、不思議なことに私も、ヒナコも恐ろしいほどに静かだった。まるで食事の邪魔をしないようにする為に。

 

 ヒナコには私から色々伝えた事がある。千崎雪夜という人間について、私が今の時点でわかった事を。ただその時はまだ疑心暗鬼、というか……はっきり言ってそんな確証はどこにもないから、どことなく信じてはなさそうだった。

 

 だけれども、今のヒナコには私が伝えた事全てが理解出来たのだろう。本当に一流の料理人っていうのは、料理だけでなくその立ち振る舞いにも現れる、なんて事を料理が主体の世界では言われる。

 

 店を出すなら作る側の人間もマナーは基本ではなく、一流でなくてはならない。もし作りながらスマホで電話しながら、タバコを吸いつつ片手間で料理を作っていたら食べる気も失せるだろう。

 

 そんな世界に入り込めるのは人類の0.000何%なんてレベルだ。もちろん私達がそんな世界に入り込んでいる、なんて自惚れはしていないけれど……目の前の彼は入り込めるのではないかと、思ってしまう。期待してしまう。

 

「……美味しいです。つい、無言になってました……」

 

「っ!……うん、ありがと」

 

 彼は珍しくも、笑顔だった。私は知り合いなんてレベルでもないのかもしれないけど、笑顔がここまで私の心に響く、そんな笑顔を初めて見たのかもしれない。

 

「うふふ……千崎くん、笑うんですね」

 

「俺だって笑う時は笑います。あまり笑いませんけど」

 

「ここに入店してから今まで、表情が変わってなかったんですけどねぇ……それであまり、はないんじゃないんですか〜?」

 

「……かもしれない、ですね」

 

 彼は私が作ったアマトリチャーナを食べ終わり、そこからしばらくは談笑に入った。私とヒナコは少しだけどお酒を飲んだ。……ヒナコは千崎に酒を飲ませようとしたのは、流石に殴った。

 

 彼はしばらくして帰った。まぁここは宿泊施設とかそんなものではないし、帰るのは当たり前なんだけど。

 

 ……どれくらいなものかわかったのかな?彼は今の時点でも卒業する、そんな気はしてる。だけど卒業するだけでは彼自身の何かは満たされることはないだろう。

 

 話してる間でわかった。彼の夢っていうのは、店を出す事だったりそんな事ではないのだろう。夢自体を聞き出すことはしなかった。人の夢を聞くのは、あまり好きじゃなかったから。

 

 さて、彼は今の遠月学園でどれだけの進化を遂げるのかな。出来ることなら一つ一つ見てみたい気持ちもあるけれど、私にも暇はそこまでないし……彼自身、ずっと見てられるなんて気が気でないだろう。

 

 ……私も自分自身を進化させたい気持ちはある。だけど大人になると、自分の限界が見えてしまう時だってある。あのメガネもそうだ。壁を感じていたらしいし。

 

 彼自身の成長は彼自身でしかなし得ない。……今度、また別の機会に誘ってみよう。今度は私の本気で、本当の得意料理を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……となりの酔っ払ったヒナコをどうにかしなければ、という気持ちをひとまず捨てておきながら、そう思った。

 

 

 




白猫合計115連くらいした!
結果はオスクロル×2、ルビィ×2、ユキムラ、ティナ、ノア、ネモでした!!本当さ!茶熊2017のセイヤ!主人公らしくて本当に好き!ティナの思い出6のセイヤとの絡みが特に好き!!!ノアネモは至高。カプ厨ではないけどセイヤとティナが好きなんです!!!後、茶熊2017後半イベのデートストーリー面白かった。エル姉しかり、ルビィが可愛いっっっ!!!お姉ちゃんとか!!!ギャルゲーかな?ついでに大樹の道難しくない??
正月が近いですね。今の時点で650個ほどしかジュエルが無いので、1人引けたら撤退ですかね……まだまだフォロワーさん募集してます。今の名前は『Aりーす@専業主夫』です。誰か!白猫の恋愛物書いてくれ!キャラ同士、もしくはオリ主×キャラの短編系の!恋愛を!書いてくれないなら自分で書く!(誰も期待してないです)(誰得?)


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▶︎10

前書きから失礼します。気づくと700000UA。最終話まで行くかもわかりませんが、もし最終話までいったら1000000UAが夢じゃないかもしれません。最近読んだという方、投稿し始めの四苦八苦していた頃から読んで下さっている方々、お気に入り登録して下さっている約8000人の方々、そして高評価低評価それぞれして下さっている約300名の方々、皆様が読んでくださるお陰でここまでいきました。新年明けてから初投稿ですが、今年もよろしくお願い致します。皆様、本当にありがとうございます。




 

 

夏月秋日 どちらかと言えば秋が好き曜日

 

 

 気づくと宿泊研修から時は進み、季節は暑い夏から秋へと移り変わろうとしている。なんて頭の良さそうな文体(笑)で始めたけどやっぱ向いてないので諦めます。

 

 という事で日記の中からおはようございますこんにちはこんばんはおやすみなさい。千崎雪夜です。もう遠月学園での授業も完全に慣れ始めてきています。

 

 まぁ今日もいつも通り授業を受け、1日が終わったから日記を書いているわけです。ただすっかり頭から抜け落ちていた、と言うわけではないけど発表日を全く知らなかった行事がありましたとさ。秋の選抜さんだけど。

 

 前回の日記とかでも書いていたけど、ようやく秋の選抜に出場するメンバーが完全に決定したらしい。朝登校したらよくわからないのが貼り出されてて、てっきり俺は合格発表か何かかと思った。

 

 まぁそれはいい。さらっと俺も選ばれていたのも流そうとは思う。ただほんの少しムカつく事があった。今はここには書かないでおくけどね。

 

 こんな感じの日記は似合わないので、ひとまず今日あった事を書く事にする。と言っても珍しく幸平くんと料理をしたんだよね。ゲテモノ好きだってのは初めて知ったけど。

 

 使ってる食材は決してゲテモノじゃなくて、市販のスーパーとかでも普通に売ってる物ばかりだったんだけど、組み合わせが普通思いつかないものばかりなんだよね、しかもどれもこれも不味いって言うおまけ付き。

 

 いくら表情筋がそこまで動く事がない俺だからって、流石にあれをいくつも食べるのはキツい。もう何を食べたか覚えてない、というより頭が覚えることを嫌がってますねこれは。

 

 それからはちゃんと作ってくれたりしたけど。幸平くんが住んでる極星寮の子達も来たのは少し驚いた。正直伊武崎くん、ギリギリで田所さん辺り以外は話した事がほとんどないし。

 

 どうしてか俺は同級生に近寄られないみたいだし。理由はまぁ、どうみたってほとんど笑ってないからじゃないかな。または近寄りがたい雰囲気が出てるらしい。

 

 美作君とかに聞いたけど、同じことを返されたし。やっぱりこの仏頂面とかはどうにかした方がいいのだろうか?かと言って笑え、と言われて簡単に笑えるわけではないが。

 

 なんで写真を撮るときに笑わないといけないんだ?俳優とか女優とかじゃ無いんだから、表情なんて自由で良いじゃん。集合写真の笑ってない奴俺だけとかの時あったけど。

 

 笑って笑ってー、とか言われた時自分でうまく笑えてるとか思ったことないんだよな。証明写真とかを使う日々が多くなる未来が見えてるのに、笑顔を撮ってどうするんだ!無表情の方が気楽だろ!笑い方が気持ち悪いとか言ってくる人だっているんだぞ!

 

 漫画とかフィクションなら普段無表情の奴が笑うとギャップが、とか言うけど現実でそんな上手くいくわけないんだよなぁ。なんで後ろから光差すんですか?笑顔で光が生まれるなら光合成し放題じゃん。二酸化炭素ないかもしれないけど。

 

 いや、日記だからって脱線しすぎでしょ。今日は幸平くんとの料理の後に薙切さん、新戸さんの2人と料理をした。まぁ授業ではなく暇潰し的な感じだったけど。

 

 びっくりしたのは薙切さんは秋の選抜に選ばれていないことだ。正確には選ばれていない、というより選ぶわけにはいかなかったらしいけど。

 

 まぁすでに勝ち組の十傑に入ってるわけだし、それだと勝ちが決まってるようなものだから今回は選ばれなかったらしい。まぁないとは思うけど贔屓とかも考えてらしい。

 

 学園長が学園長だしないとは思うけど、実際権力ありまくりな人の孫な訳だし、薙切さん自体が待っててもおかしくないよな。

 

 あ、新戸さんはちゃんと参加枠に入ってたらしい。まぁ新戸さんも薙切さんと一緒にいるだけの人じゃないからね、選ばれて当然だし。んー、折角なら上に行ってほしいよね。

 

 秋の選抜で当たったらよろしく、とも言われたけどね。流石に買い被りなんじゃないかな?まぁもしかしたら奇跡が起きて勝ち上がったらできるかもしれないけどさ。どれだけの確率だろうね?

 

 薙切さんも俺と新戸さんが当たるのが楽しみ、とか言ってくれてはいたんだけど。え、俺って勝ち上がる前提なの?いや、もしかしたら作るお題が肉じゃがとかだったら負ける気はしないぞ!

 

 俺の得意料理は家庭的な料理だからな!まぁ母さんには勝てる気はしないんだけど。母さんに勝てる日って例え卒業できたとしても無理な気がする。何であんなに料理できるんだろ?今度聞いてみようかな?

 

 あ、そういや秋の選抜にはお題的な何かしらがあるらしい。何のお題かは秋の選抜の数日前にならないと分からないらしいけど楽なお題がいいな。

 

 いきなりサバイバル生活をしながら拾い集めた食材で料理をしろ、とか言われたらもう勝てないよ。サバイバル術なんて一般人にあるわけがない。原始的な火の起こし方もわからないよ。

 

 そう言えば話してる途中に薙切アリス?さんだっけ、薙切さんの関係者っぽい人が通りかかって話しかけてきた。付き人みたいな人も居たんだけど、苗字の漢字がわからないんだよね。

 

 名前を聞いてもいざ日記に書こうとすると漢字とか分からないって、あるよね。薙切さんの薙とか、スマートフォン検索戦法を使いながら書いてたよ、この日記書き始めた時。

 

 やっぱり人類が開発した文明の機器って、偉大なんだなって。料理でも機械を使うのが当たり前になりつつあるもんなぁ。燻製とかそう言った手の込んだ物とかは特に。

 

 多分先輩とか、まだ話した事ないだけで機械とかそういうのに詳しい人とかいるんじゃないかな?まぁ俺はさほど使いたいとは思わない。というより家庭料理にそんなガチ機械を使うってどんだけ金持ちだよ。

 

 誰しも金が財布にある訳じゃねぇんだ!お金の重みは無くなってから初めてわかるんだ!何を力説してるんだこの日記は。金の亡者日記始めました、じゃないんだから。

 

 薙切さんって書くとごっちゃになるから、薙切(ア)って書いとこうかな。薙切(ア)さんも秋の選抜に選ばれてるらしい。その付き人の人も。そう言えば宿泊研修の時に居た気がしなくもない。

 

 すっごい今更だけど秋の選抜とか、そういうのに選ばれるくらい料理ができる人って、大体美男美女だったり見た目だけで覚えられる人たちだよね。身体的特徴があるって事なのかな?

 

 そんなイケメン美少女に囲まれるフツメンの俺はどうすりゃいいんだ。漫画で言うなら一瞬だけ出てくるモブだぞ?モブ崎雪夜さんと改名するべきか?

 

 書いてて俺はどれだけの悲しみを背負えばいいのか、分からなくなりました。今日の日記はここまで!それではー、次回のサ◯エさんは〜?いつになるか知りません、おやすみなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千の風に月なって日 墓の前で曜日

 

 

 

 何となくこの曲が思いついたから日にちにしてみた。たまに懐かしい曲とかその時流行った曲が、頭の中に流れてきたり口ずさんだりした事ってない?俺はあるんだけどね。

 

 前回の日記から数日経ちました。なんでかって?なんか普段の授業風景しか書く事なかったし、ここ数日如何してか幸平くんとか薙切さんとか新戸さんと会わなかったから書くことが、もとい書くネタが。

 

 りんどー先輩とかも先輩だから忙しいみたいだし。なんか秋の選抜には十傑の人が1人、運営的な立場にいるらしいけどね。あるけみすと?錬金術師とかそんな意味らしいけど、なんで二つ名みたいなのが付くんだろう?若干厨二病感が否めない。普通に漢字で表してそれをわざわざルビでカタカナみたいなのつけるあたり。しかもそれただの英語だからね。

 

 ダークフレイムマスターとかそんな感じだよきっと。何たらマスターとか、◯◯の◯◯とか、そういう風に表されるよね。まぁカッコいいものはあるんだけど、偶にこれはないでしょ、みたいなのあるよね。

 

 例えば漢字の文字数とカタカナの文字数があまりに違いすぎるのとか。漢字が少なくてカタカナが多いのはよくありがちだけど、その逆は少ない分変に感じる時もある。これを書いてると小説家でも気取ってるのか、って思うけど俺もそんな文章力ありませんでした。てへっ。きも。

 

 文面で気持ち悪いとか流石俺。という事で前置きがあまりにも長すぎるのでそろそろ日記書きます。今日はようやく、ようやく秋の選抜のお題が来ました。

 

 何とお題は『カレー料理』カレーってあのカレーだよね?俺が知らない何かしらの民族料理とか、実は火霊とかそんなよく分からない当て字が付いてたりしないよね?

 

 カレーだったらまだ何とかやっていけそう。カレーだってたくさん種類あるもんね。野菜カレーとかシーフードカレーとか、使う肉だって豊富だし、かぶる事はなさそうかも。

 

 カレーといったらレトルトカレーだから。本格的なのも美味しいけど今の時代のレトルトカレーとか、あれすごい美味しいと思う。むしろあの作り方を教わりたいよね、企業とかどこかしらに。

 

 何作ろう?カレーなら母さん得意のレシピは覚えてるんだけど、何となくそれは使いたくないしなぁ。シーフードカレー?そう言えば聞いた程度だけどフィッシュヘッドカレーなんて言う物もあるらしい。

 

 魚の頭を使ったカレーでしょ?そんな英語使わなくてもビンタカレーとかでいいんじゃないかな?これ方言だけど。これが伝わる人ってどれくらいいるんだろう?

 

 まぁ書きながらレシピを考えるって難しいし、ゆっくり考えていこう。他の人がどんなのを作るか楽しみだし。どうせなら作る側より食べる側に回りたいよね。食べるだけとか楽じゃん。

 

 幸平くんとか想像もしないカレー作りそうじゃない?まぁ俺が知ってる人がそこまでいないってのもあるんだけど。得意料理があるならそれに近づけたりしてるだろうし。

 

 でも秋の選抜って選ばれた人達だけが作るわけだから、それを他の生徒がずっと見たりしてるって事?1番プレッシャーかかる奴じゃん。絶対審査の人とか厳しい人連れてくるんだよ、俺知ってる。

 

 宿泊研修で卒業生の人達を連れてくるんでしょ?絶対今回の審査員にもいるはず。もしかしたら卒業生じゃなくても、すごい料理人とか連れて来てもおかしくない。流石金持ち伝統もある学園は違いますわぁ。

 

 書いててうざい日記になりつつあるので、書くのやめます。読む人なんていない(これを書くのも何回めか分からない。今度数えてみようと思う)からいきなりパーティーピーポーな日記になっても良さそうだけど。

 

 所でパーティーピーポーってどういう人達?流石に頭がいかれてる人とかそういう人達の総称ではないよね?なんかテレビとかで見ると頭おかしいとか思っちゃうんだけど。

 

 あ、日記終わります。なんとなく次回予告でも入れてみよ。次回、日記死す!お楽しみに!次回予告っていうかネタバレだけど。おやすみなさい。秋の選抜くらいまで寝ます。嘘です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  月 日  曜日

 

 

 本当に死にかけました。俺が。腕が骨折してしまい料理も出来ません。秋の選抜不参加確定になっちゃいました。まさかいきなり上から木材が落ちてくるとは。骨折で済んで良かったナリ。

 

 まさかこんな形になるとは思わなかったでござる。というかあまり利き手じゃない方は使いづらいし、病院の中で書くと見られるかもしれないからしばらく書かないでおこう。

 

 今度は退院後書くぞー。おやすみなさい。

 

 

 




誕生日投稿です。ちなみに誕生日は作者本人のですけど。
原作通り進めるために、予選すら主人公には参戦させない形にしました。理由としては参加して予選勝ち上がって、さらにトーナメントまで勝ち上がったら流石に自分の料理の腕の勘違いが出来ないと思ったから、そして作者自身が料理描写を書き続けられないからです。確実に投稿できなくなります。まぁ主人公の怪我には裏がありますが、そっちはりんどー先輩が色々動きます。ここから少し原作とは違う感じになりますね多分。問題は一応今の原作の十傑戦までいこうとは思ってますが、りんどー先輩をどっち側にするかですよね。ようやくえりな様出てきましたやん!カワイイかよどっちも。一色先輩好きやなぁ……


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▶︎10-1【先輩】





 

 

「…………」

 

 今、あたしは少し面倒な会議?に参加している。まぁ基本的には緩く話したりしてるんだけどなー……今回はちょっと真面目な内容らしいし。……ただなー、どうもムカつくことがあるから嫌なんだよなー……

 

「……じゃ、始めよっか。今回話す事は前もって全員に伝えたとは思うけど……」

 

 今この場には現十傑が揃っている。……いや、十席の子は来てないね。まぁ仕方ないといえば仕方ないのか……ま、そこは正直にいえばどうでも良いんだけどね。

 

 一席、司瑛士。二席のあたし、小林竜胆。三席、女木島冬輔。四席、茜ヶ久保もも。五席、斎藤綜明。六席、紀ノ国寧々。七席、一色慧。八席、久我照紀。九席、叡山枝津也。合計9人が揃ってる。

 

「今回話す事は学園長の辞めさせ、新たな学園長として……薙切薊を任命し、この遠月学園を変革させるかどうか、だ」

 

「…………」

 

「ふむ……伝えられていたとは言え、なかなかの議題だ」

 

「まぁ、そうだね。こんな事そうそう有るものじゃない。でも決めないとね……過半数取るかどうかで、これからの全てが変わるんだから」

 

「うわ、おっもーー!そんな議題とかやりたくねぇ……んでも、やんなきゃいけねーんだもんなー」

 

「そうだよ久我。君だって十傑の1人なんだから」

 

「しかし、それについて何かしら意見などあるのですか?わざわざ会議など開かなくとも、賛成か反対か……どちらかで良いのでは?」

 

「うーん、そうしたいんだけどね……すぐに決めろってのも酷な話だと思うんだ。全員が決まってる、そう言われたら違うでしょ?」

 

 司が言うと、場は一気に静かになる。心のどこかで決めている自分と、それに反対している自分が相反しながらも、両立しているような気持ちで存在しているからだろう。

 

 あっ、相反とか両立とか結構あたし頭良さそうな事言わなかった?……って雪があれば言うし、司とかだけの時とか、もうちょっと緩めの会議とかなら口に出すのになー……まず心の中だからダメか。

 

「まぁ、早く決めるに越した事はないでしょ。やっと秋の選抜が終わって、俺がやる仕事とかも減ったんすから……」

 

「……はぁ……仕事って言うより、金づるが居なくなって残念なんじゃないの、アンタは」

 

「さぁ?まぁ大事なお客様にクライアントなんだからなぁ……仕事ほっとくわけにもいかねえだろ?」

 

「あっ、今日も毒舌だ。気をつけたほうがいいよ、いつも通り生理なんだと思う!」

 

「殺す。アンタ毎日私を生理にするのやめてくれない?男には分からないだろうけど、特にアンタは」

 

「まぁ俺、男の子だし☆」

 

「……会議、脱線してるぞ」

 

 重い会議じゃなければ基本こんな感じだからな、この十傑メンバー内の絡みって。……ももは一切興味無さそうだけど。多分頭の中お花畑……いや、スイーツ畑だから……

 

「……何か変な事考えられた気がする」

 

「さて、話を戻した方が良いのではないか?少なくとも賛成、反対は決めなくてはいけないのだろう?」

 

「……だね。……それで良いかな、女木島に一色」

 

「……俺は別に構わない」

 

「それで良いと思いますよ。……わざわざ聞く理由があるのか、知りませんけどね」

 

「あぁ、ごめん!少し発言してなかったからね。女木島はともかく、一色がそこまで黙り込むとは思わなかったから……」

 

「……いえ、僕も僕なりには考えていますから。ここで茶化すような人間ではないですよ」

 

「……そっか。それじゃ、長引かせても悪いし……賛成か反対か、決めようか。賛成の人は挙手を」

 

 手をあげる。挙手したのは司、もも、斎藤、寧々、叡山の5人。挙げてないのはあたし、女木島、一色、久我の4人だ。……さて、あたしはどうすっかな?

 

「意外だな、一色や女木島は挙げないとは思っていたが……久我と小林も、か?」

 

「んー、俺はどっちでも良いからね〜。どうなろうと知った事じゃないし。……まぁ俺の性格上、あの人とは合わねえかなって感じ?」

 

「けっ、まぁ1番合わなそうだもんな」

 

「女木島はどうしてだい?」

 

 司はいつも通りの雰囲気で女木島に話を振る。少し考える様なそぶりを見せて、女木島は話し出す。

 

「……元々、俺は食戟自体に参戦するつもりはなかったし、十傑になるつもりもなかった。……なら、より縛るような考えには賛同出来ん」

 

 ま、そういう奴だもんな、女木島は。食戟の誘いがしつこくて受けたら十傑に入った、このメンバーの中で唯一十傑の座に興味がないと言っても良いからなぁ……

 

「まぁ、それでも良いのだけどね。けど、結果的に十傑が過半数賛同している、とは言い難い気もします。十席の彼女を抜いてるわけですし、ね」

 

「……一理ある。十傑全員からの過半数ならば、6票が無ければ完全に決定できる訳でもないからな」

 

「まぁ、賛同の最終的な決定は任せますよ。今いるメンバー内、9人では反対派の方が少ない訳ですし」

 

 一色はいつもニコニコしてるなぁ……なんか食えない感じがするけど、そこが一色らしさだよなぁ……それに実際本気でやったら、っていう強さが分からないし。

 

「……じゃあ、竜胆はどうしてだい?てっきり賛同すると思ってたんだけど」

 

 あたしに目線が集まる。まぁ普段のあたしなら賛同する方だよな。ワクワクするのは事実だし、今までの学園のままでいくか変革?だっけ?そんな感じの学園にするか、って言ったら後者の方がワクワクするし。

 

 けど、完全に賛同できない自分がいる。その理由は明白だろう。……それに、正直疑いもあるし。完全についていくってのは正直無理だと思ってしまう。

 

「んー……なんかな、スッキリしないんだよなー……」

 

 ワクワクする方と明確な理由、比べるならあたしは明確な理由の方を絶対に取る。だけど、あたしはあの事の真相を知りたい。その結果によっては、あたしは許すことができなくなる。

 

「……りんどーでも、悩む事ってあるんだ」

 

「それはしつれーだぞ!?りんどーさんでも悩む事くらいあるから!」

 

「えっ、そうなのかい?」

 

「それは初めて知ったな」

 

「へー、悩むなんて知らなかったぜ☆」

 

「あたしへの愛を感じる!……保留って事にするのはダメだもんなー。でも、なぁ……」

 

「……一体、何で悩んでるんだ?」

 

「……言えない、かな。これはあたしの問題だし。……その問題の結果によっては、十傑とか遠月学園とかどうでも良くなるけどね」

 

 少し雰囲気が重くなるのを感じる。……自然とあたしの両手には力が加わってるのが分かる。……それに、事実であればあたしも、あの人だって許すことができるはずがない。

 

「ん、悪い悪い。やっぱあたしは賛成派に行くよ。あたしのやりたい事とか知りたい事は、そっちの方が知れるだろうし」

 

「……そっか。何があるかは聞かないでおくよ。なら過半数だね。それで、良いかな?」

 

 司が全員に返事を促す。誰も否定を述べるつもりはないようだ。……そもそも過半数を取った時点でこの会議は賛成派の意見を取る、そういうルールだし。

 

「それじゃ、今回は解散だ。各自、ちゃんと休んでね?」

 

 司の合図で一色と女木島は真っ先に出て行った。それに続くようにあたしも出て行く。さて、と……んー、念の為お願いしておこっかな。遠月学園のどうたらには関係ない事だし、ね。

 

 よーし!気持ち切り替え!雪のお見舞い行ってくるぜ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「雪ー?」

 

「……あ、りんどー先輩」

 

「あり、起きてた?もしかして起こした?」

 

「大丈夫です。さっきまで他の人がお見舞い、来てましたし」

 

 知ってる。あの子達だよね。さっき受付の所でたまたま見ちゃったし。……良かったと言えば良かった。怪我してる時にお見舞いに来てくれるような友達ができたんだよね、雪にも。

 

 雪と、こう……うん、そういう関係になりたいって気持ちはあるけど、1番は雪に幸せになってほしいもんなぁ、雪が幸せになればあたしも幸せだし。……雪が結婚してもこの関係が続いたら嬉しいな。どれだけ先のことになるか分からないけどっ!

 

 幸平もいたし、なんでか一色も来てたらしい。おかしいな、あたしが少し遠月学園で仕事?っぽい事をしてたとは言え、来るの早くない?一色はもしかして瞬身の術使い!?……裸エプロンで来そうだよな。

 

「大丈夫か?まぁ大した事なくて良かったけどさー……流石に料理はしてないよな?」

 

「流石にしませんよ……幸平達にも言われたんですけど、そんなに無理しそうに見えます?」

 

「当たり前じゃん。見えない方がおかしいよ?」

 

「えっ」

 

 鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしてるけど、まぁ置いておこう。実際無理しそうな雰囲気なんだよね。利き手の方を怪我してるとは言え、雪って両利きでもあるし。基本的に使わないだけで。

 

 意識してるかしてないかは分からないけど、夜中にメモ帳に何かしらを書いてるらしい。看護師さんから聞いた事ではあるけど、その時の雰囲気が声をかけられないような雰囲気だったらしい。

 

 その日はぴったり秋の選抜の予選突破者が本戦を開始する日だった。幸平だったりはその前にもここに来てるらしいから、おそらくその時に自分が作るお題を言ったんだと思う。

 

 『もし自分だったら、このお題でどういう風に作るか』なんて事を書き記していた、って事だろうけど。……雪らしいっちゃらしいけどね。予選なんて突破して当然だと思ってる辺りから、ね。

 

 まぁもちろん、雪が参加してれば予選は余裕で突破できるってあたしも思うけど。本戦はまだ分からないかな?あたしがまだ知らない料理人が後輩にいるかもしれないし、ね?

 

 それであったとしても雪が勝ったと思う。身内に対する贔屓とか、そんなのを一切含めないにしても。

 

 この事を聞いて不安になったのは、病院を抜け出したりしないかって事。いくら雪でも怪我には勝てない。どんな一流だろうと英雄だろうと、怪我をしながら無理をしたら、二度と料理ができなくなるかもしれない危険性だって考えないといけない。

 

 それだけは嫌だ。雪が料理をしてる姿は大好きだし、料理自体も大好きだ。何より、二度と出来ないなんて事になれば、雪が1番苦しむ。あたしはそんな姿なんて絶対に見たくない。例えあたしが死んでも見たいなんて思わない。

 

「雪、無理だけはするなよ?あたしだって、心配なんだからな」

 

「……分かってます。母さんにも心配をかけたくないし……」

 

「今度帰ったら怒られるかもな、無理したら。まぁあたしがチクるんだけど!」

 

「うっ、それはちょっと勘弁です……」

 

 あたしは負けるのは嫌だ。でも、悪くないと思う時だってある。雪に負けていると思う事があるからこそ、全てが悪いとは思わない。雪のおかげであたしも料理を続けられるんだから。

 

 だから雪、本当に無茶はしないでくれ。あたしがちゃんと雪を守る。雪は自分の道を進めば良い。……その道を応援する事だってあたしはする。その道に……料理以外で邪魔するなら、あたしはそいつを全力で排除する。

 

 雪に知られたらあたしは怒られるじゃ済まないだろう。真夜さんにはこっぴどく怒られて、泣いてしまうかもしれない。でも、あたしはあたしなりに雪を応援する。

 

 雪を認めてるからこそ、好きだからこそ……絶対に雪を守るから。

 

 

 




別にりんどー先輩は死なないし酷い目に遭ったりしませんので( ˘ω˘ )投稿間隔空き過ぎィ!
ちょっとシリアスなのはすぐ無くなります。裏でりんどー先輩が動くだけですので…ついでにもう1人動きますけど、まぁそれはここからのお楽しみ。それと、次の話は色んな人の主人公お見舞い話になります。番外編っぽくなるかもですね。
後、勘違い日記形式の作品を新しく一つ投稿しようと思ってます。今の所、1番合いそうなのが天空侵犯って言う漫画です。天空侵犯面白いです。まぁシリアスゼロな作品にしますけどね!もし投稿したらよろしくお願いします。


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▶︎10-2【極星寮】

ついにっ、原作主人公視点がっ(少しだけ)!どこに料理要素があるんですかね。お見舞い回なんていらないんじゃないかなって()
この作品でヒロイン感がすごい秘書子をお見舞いさせるかどうかで悩んでます。ストーリーを進めた方がいいような、そんな感じ……くっ……


 

 

 

 ようやく俺が出てきたとかそういう話はまぁ置いておこう。この作品俺の影とかほぼないからな。……あ、幸平創真って言います、知らない方は知っといてなー。

 

 遠月学園に入学してから色々なことがあった。この学園に通って良かった、と思う事ばかりだった。ここに来なかったら絶対に知らなかった人達や、料理の世界を見ることができたから。

 

 その中でもより印象があるのは、今俺が行こうとしている場所にいる。名前は千崎雪夜。同世代とは思えないってのがアイツの印象そのものだ。先輩とか、すでに自分の店を持ってるって言われた方がよっぽどだ。

 

 入学式の時に初めて見たが、あの時から独特の雰囲気というような、そんな何かを感じていた。どこか感じ取れない、掴みきれないような、それであって格上としか思うことができないほどの、そんな何か。

 

 勝てないと思ったことはほぼない。勝てなくても自分の料理をすることで、そして努力する事で自分をより強く、上にいけると思っているから。……だけど、アイツだけは違う。

 

 俺以上に努力している雰囲気、そして一度も負けた事がないという事実。それを信じていない奴らもいるだろうけど、そうだとしてもアイツを目の当たりにすれば嫌でもわかるはずだ。

 

 ……雪夜の印象を語り過ぎたかな。とりあえず俺は今、雪夜がいる病院へと足を運んでいる。……なぜ病院にいるのかというと、雪夜は学園内で事故に巻き込まれたからだ。

 

 何かを建築していたのかは知らないけれど、木材が落下して腕を骨折。頭をその時打っていたようで下敷きになった状態で発見されたらしい。意識はすぐ回復したらしいし、少しすれば治るらしい。

 

 そうだとしても、あまりにも時期が悪すぎる。今、遠月学園は秋の選抜という大会のようなものが開催されているからだ。俺は予選を突破したが、雪夜はそれにすら参加できてないんだ。

 

 あれだけの努力をしている雪夜だ。まだ同世代にも実力が一切分からない奴だっている。予選の時から雰囲気が違う奴らだっていた。葉山アキラだってその1人だ。

 

 ……こんな事を今更どうのこうのを言ったって意味はないし、結果が覆る事は無い。だが、アイツの実力を少しでも知ってる奴らからしてみれば、こんな事になったのはあまりにも残酷すぎる。

 

 どんな顔をすればいいかは分からない。だけど、お見舞いはしないといけない。……少しだけ気が重くなるのを感じる。

 

 そんな事を考えながら、病室に着いた。扉を開けると、こちらに目線が向く。紛れもなく雪夜の目線が。少し意外そうにこちらを見つめてくるその目には、隠しきれない悔しさが見えるような気がする。

 

「よっ、大丈夫か?」

 

「割と。……まぁまだ治りきってないけど」

 

「いきなりお見舞いきてゴメンな?何も持って来なかったし……」

 

「持ってくるものを楽しみにしてる訳ではないぞ?……わざわざ悪いな」

 

「秋の選抜中だけど、こっちの方が大事だと思ったんだ。……お前とは、絶対当たると思ってたから」

 

「……俺も、そうは思ってた。他にもいるけど」

 

 ……やっぱり、秋の選抜の予選なんてものはこいつにとっちゃ通過点でしかないんだな。俺と、そして他のメンバーと当たるってのは本戦以外はないし……

 

 怪我をしたのも秋の選抜の予選のメニューが発表されてからだった。どんな風に作るかは考えていたはずだし、もちろんそれに向けて練習であったりはしてたはずだ。

 

「俺ももう少しで本戦だし、相手とメニューも決まったんだ。……雪夜は見るのか?」

 

「その頃には多分治ってる、はず……見るぞ、全員分」

 

 その目は闘志が宿っているように見えた。……雪夜は自分の料理もさる事ながら、他人の料理はより一層関心があるように思う。他の人の料理も自分の力にしようと常に見ている。

 

 薙切から聞いた事だけど、俺の食戟も見ていたらしい。しかも俺の料理だけを。……まるで、結果が分からなかったはずなのに俺が勝つというのが分かっていたかのようだった、と聞いた。

 

「……頑張れよ、幸平。折角だから優勝してこい」

 

「……へへっ、当たり前だろ!」

 

 雪夜がいない、というのは本戦に上がったメンバーの大体からすれば、自分にもチャンスが巡ってきたと思ってしまう。雪夜との対決を楽しみにしてる一方、確実に負けてしまうかもしれないという、どこか不安があるのだ。

 

 どんな時だって雪夜は結果を出しているし、他人の料理から自分の可能性を広げる、そんな先見の明がある気がする。……あれ、先見の明とかこんな意味であってたっけ?分からないけどまぁいいや。

 

 お見舞いはそこまで長くいない方がいいだろう。……ほんの少し話しただけでも、悔しさとどうしようもできないもどかしさ、この2つを雪夜の行動の全てから感じるし、それを感じさせている存在である俺がいる事が、どうしようもなくダメに思える。

 

 こんな事を言ったら「違う」と言われるだろう。アイツは顔にあまり出さないけど、人思いだから。優しいという気持ちは、料理からも人柄からも伝わってくるから。

 

 ……願うなら、アイツと本戦の舞台で会いたかった。それはアイツを知る全員が言うことだろう。……次、何かがある時は必ず。例え勝てなかったとしても、な。

 

「……さて、人の心配してるだけじゃダメだな。俺が負けたらさっき言われた事を全部無駄にしちまう」

 

 俺は病院を出て、自分の戦いのために。そして雪夜に優勝を伝える為に。メニューをさらに上へと上がらせるそんな中を掴みに、歩みを進めた。

 

 

 

 

 

side.一色

 

 

 ……あれ、僕?……いや、そんな事言ってる場合じゃなかったんだったや。はーい、一色でーす。一応十傑の中に入ってる1人だけど……まぁ僕自身の紹介はそこまで興味も無いかな?

 

 そもそもこれ、僕は一体誰に対して会話してるんだろ?目の前に誰かいるわけじゃないのにねぇ、しかも心の中でとか……もし顔とか話してないつもりで口を開いてたりしてたら痛い人だよね。

 

 っと、本題を忘れてたや。今日は授業とかそういうのじゃなく、ちょっとした私用で外出してるんだよね。しかも普通ならそんな行くことのない病院という場所に。

 

 そこまで病院は好きじゃないんだけどねぇ。病院好きっていう人はいるだろうけど、多分その人たちはマイノリティ側の方々だと思うんだよね。注射大好き、みたいな人そうそういないと思う。

 

 ……で、来た理由なんだけど、可愛い可愛い後輩君が怪我をしたって聞いてね。時期が時期だから来ちゃったって事なんだけど……

 

 本人には一切何も伝えずに来てるわけだし、もしかしたらびっくりされるかもね。その後輩君、僕とそこまで会話したりしてるわけじゃないからねぇ……

 

 まぁ、こっちからしたら結構話したい相手でもあるし……遠月学園という場所に通っている以上、何かしらの形で話したりしたいと思う相手。それが後輩だから話しかけづらいんだけど……

 

 名前は千崎雪夜くん。今年入学した一年生にして、正直今の二年生や三年生でも割と敵わない子の方が多いと思ってる。実力は噂で聞いたり、ほんの少し見た程度なんだけど……自分でも勝てるかどうかははっきりしないってところだね。

 

 少し前に極星寮に来た事もあったけど、あの時に初めて会った時の雰囲気はまだ覚えてる。それくらいの存在感がある、もしくはそう思わせるほどの威圧感のような、言葉で表すことが出来ないものがある。

 

 言葉で表せないなら一体何で表せばいいんだろうねぇ?なんて自問自答を心の中で繰り返していると、彼がいる病室へ着く。……まぁ病院にいるって時点で何かしらあるって事なんだろうけど、さ。

 

「やっほー、体調その他諸々大丈夫かい?」

 

「……一色先輩?……わざわざ、どうも」

 

「いやいや、可愛い後輩のお友達後輩君が怪我をしたんだからね。僕が来ないわけにも行かなかったのさ」

 

「……幸平、ですか?」

 

「正解。……ま、本音もあるっちゃあるけどね?君と話したりしたいって事とか、さ」

 

「……そう、なんですか……確かに、こうやって一対一は初めてですかね」

 

 やっぱり少しびっくりしてるっぽいね。まぁ、実際部外者と同じような立場の僕にいきなり病室に来られて、しかもその理由が後輩がどうのこうのって言われてもピンとは来ないよねぇ……

 

「ま、お見舞いだよ。……少し真面目な話もあるっちゃあるんだけどね」

 

「……ありがとうございます。後、選抜の事はさほど気にしてないので、大丈夫です」

 

 『さほど』ねぇ……それはどこの平均数値に合わせた『さほど』なんだろうね?少なくとも負けず嫌いの人の『さほど』は一般の人からすれば……そうだね、気にしてないなんてお世辞を言えないほど気にしちゃってるレベルだと思うんだよね、個人的に。

 

 それに君は嘘は決して得意じゃない。ほとんど無表情だからこそ、むしろ変化する時の方が分かりやすいものさ。今の君は、負の感情ばかりが心の中で渦巻いてるようにしか見えないんだよね。こんな事は言わないけど、さ。

 

「……そうかい。じゃ、ちょっと真面目な話なんだけどね。君の怪我についてなんだけど……まぁ治る治らないの話じゃないから安心してよ」

 

「……事故じゃなかった、とか?」

 

 ……はてさて、この子は一体どこまで認識を改めないといけないんだろうねぇ?少なくとも僕と……竜胆さんしか知らなかったと思うんだけど、ね。誰かから聞いたって事はほぼないだろうし。

 

 その上、例え誰かから聞いていたとしたならば……何かしら自分の怪我の原因が他人にあると分かっているならば……少なからず怒りの感情が垣間見えてもおかしくはない。

 

 ただ、彼にはそういった感情が何も見えない。まるで怪我なんてもの、事故だろうと故意だろうと関係がないかのように。怪我をしたのはあくまで自分のせいでしかない、と思っているかのように。

 

 感じる、と言うならば悔しさに関する負の感情だけかな。……それであったとしても事故じゃなかったと頭で考えられる、ってのは冷静なんてレベルじゃ表せない気がする。

 

「……ふふっ、まぁそんな口ぶりなら興味も特に無さそうだね。……そっちは彼女がやるだろうし」

 

「……彼女?」

 

「はは、こっちの話だよ。そうそう、君が退院した頃にはちょうどスタジエールが始まるからなんだよね。君はどう思う?」

 

「……いつも通りやります。場所とかも興味はないんで……」

 

 大物、だねぇ。……まぁ君が行くところなんて限られてると思うけど。多少名の知れてる程度の店に君が行ったら、勢いのままその店を乗っ取ったり気が付かないうちに潰しちゃいそうだし、ね。

 

「あははっ、なら安心だね。まぁ君が行くところはそれなりに……いや、結構なの知れた場所だと思うから」

 

「……俺がそんな場所に行くんですか?」

 

 ……今のはどっちの意味かな?俺ごときがそんな店に行っていいのか、って意味なのか……それとも、俺が名の知れてる『程度』の店に行くのか、って意味なのか……

 

 前者だったら自分を過小評価しすぎてる、よねぇ。むしろ皮肉にも感じ取れちゃう。後者なら……あり得なくはないか。彼の実力は十傑の中の数名にも広まってるわけだし。

 

 尊大、と言えばそこまでだけど……決してそれが否定される理由になるかと問われれば違うだろう。彼にはそれ相応の実力も、努力も、実績もあるのだから。

 

「……ま、僕が君の行く場所を決める権利なんてないからね。楽しみにしてるよ。君の活躍も……いつか君と戦う日もさ」

 

「……恐縮です」

 

「ふふっ、謙遜も過ぎないように、ね?いらない敵を作る時だってあるだろうから」

 

「……です、ね」

 

「うんうん。……さて、そろそろお暇するよ。もう少しここで君と話していたいんだけどねぇ、時間が許してくれないって奴さ」

 

「……話すのは、また別の機会って事で」

 

「そうだね。それじゃあ無理しないで治してね?いきなり来ちゃってゴメンね」

 

 僕は彼の病室を後にする。……んー、なんだろうね。こうして話すと実力を持ち、努力をし続けていると思えないほど平凡なんだよねぇ。人は見かけや第一印象によらないって奴なのかもしれない。

 

 彼について調べた方がいいのかもしれない、と思う一方……それはやってはいけないような気もする。それでいらない事まで知ってしまう、なんてこれからの関係にヒビが入る可能性だってあるかもしれないし。

 

 それに、第二席の彼女に怒られてしまいそうだ。過保護とまではいかないけど、お気に入りなようだからね。……それに、多分だけど千崎くんと接触したことがある十傑はまだいる気がするんだよねぇ。

 

 ……どこの誰なんだろうね。十傑のお気に入り君を傷つけて……あまつさえ料理人としての人生を潰すような輩は。

 

 ……ま、少しくらい動かさせてもらわないと。後輩君の秋の選抜への道を誰かの勝手な何かしらの事情で途絶えさせる、そんな輩を許すつもりなんてあるわけがないし、さ。

 

 ……ふふっ、僕らしくないかな。幸平くん並みに肩入れしてるような気がするよ。

 

 




投稿間隔とは何だったのだろうか(困惑)ゴールデンウィーク!投稿祭りしてやる!そう思っていて気づいたら最終日……
思った通りのメンバーが最後に残ったな、って感じの展開ですよね。今の原作。むっちゃテンション上がりました。えりな様強スギィ……化けるふりかけを使う辺り、最終回が近づいてる感が否めないんですよねぇ!?
800000UAって嘘やろ……?他作者様の食戟のソーマ作品がランキング入りすると、すごい嬉しいです。


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▶︎11

 

 

 

腕月治った日 次は怪我しないと決めた曜日

 

 ついに治りました。やっと治った。骨折って割と長いときは長いんだな。今まで骨を折ったことは無かったから知らなかった。精々バスケでボールの取り方がまずくて突き指をして、そのまま続けようとした瞬間にボールが飛んできて指がヤバくなった時以来の痛さだ。骨折の方が痛かったけど。

 

 まぁ結構日にちが経った。ほんとはもう少しちゃんと日記を書いたり、料理の練習をしたり、大会本戦の様子を現場で見たりしたかったのだけど、見事にドクターストップとりんどー先輩に止められた。

 

 一応結果だけは知ってる。幸平くんは薙切(ア)さんに勝って、美作くんにも勝って決勝まで行った。新戸さんは残念ながら負けてしまったらしい。でもその相手は結果的に優勝した訳だし、仕方ないといえば仕方ないのかもしれないけど、そう割り切れるほど心は強くないと思う。

 

 決勝は幸平くん、葉山アキラくん、黒木場リョウくんという3人での決勝だったらしい。なんで3人で決勝することになったんだ、とか色々気になることはあったけど、まぁそこは気にしなくていいと思う。そんな時もあったんだって感じ。

 

 決勝は確か秋刀魚だったかな。秋刀魚って割と難しい魚だと思う。ジャンル次第では捌く事も得意じゃない人だっていると思うし、自分で市場に行って秋刀魚を選ぶのが前提だったらしい。

 

 つまり秋刀魚を選ぶことが出来ない人もそこで落とされる。流石は決勝と言うべきなのか?でも魚を一切使わない国の料理を作ったりしてる人にとっては無理なお題だよな。オールジャンルで出来るようになれ、ってのを今言われても割と無理だよなぁ。

 

 料理自体は一応映像では見た。作ってる段階で確実に美味しいってのはわかったけど、優勝が誰かまでは予想できなかった。あの中だと幸平くんは発想ではピカイチだったけど、圧倒的に上に立てるジャンルが無いってのが今回は仇になったかな。

 

 他の2人は自分の得意ジャンルを活かしたりできてる訳だし。幸平くんは発想と腕の2つで上に立ってる。だけどそれじゃ特化してる人には一歩足りない時がある。今回はそうなっちゃっただけ。実際あの3人の実力はほぼ横一線だと思うし。

 

 葉山アキラくんは優勝後のインタビュー的な奴で俺のことを言っていた。優勝する以前に、一年の中で最も脅威と思っていた者が参加すらしていなかった。今回の優勝は嬉しく思うが、全てを受け止めることはできない。と言っていた。

 

 これのどこに俺の要素があるのだろうか?りんどー先輩とかは俺の事とか言ってたけどなぁ、参加してない人なら他にもいるじゃん。薙切さんとかだって出てないし、俺はてっきりそっちを言ってるとしか思えない。

 

 そう言ったらりんどー先輩に溜め息を吐かれた。本当に頭の上にクエスチョンマークが浮かんでたよな、俺に。もしくは矢印とかで何言ってんだこいつ、みたいにされてるかもしれない。

 

 いつかあの2人とも話したりしてみたい。出来るなら料理とかを食べたり、作ってる姿を見たりして勉強してみたいとも思う。治ったばかりで無茶するなってすぐに言われるけど。

 

 そう言えば学園ではこれからスタジエールと呼ばれる実地研修が行われるらしい。それぞれが指定された店に行き、目に見える実績を残せないものは退学になる、という恐ろしい行事だ。

 

 の、はずなのだが。俺は怪我のせいもあり若干授業も欠席していた。その為スタジエールは俺は不参加になるらしい。りんどー先輩が言うには、雪はスタジエールは免除!というかねぇ、雪に見合う店ってのがあまりにも少なすぎて……と言われた。

 

 俺に見合う店ってなんだ?まぁ答えは分かってる。俺は家庭料理を作る専門になる人間。又の名を専業主夫になる人間。家庭料理を売りにしている店は少ない、いや、むしろ無いと言っても過言では無いからか!となった。多分これは正解。

 

 一応行かせる店はあったらしいが、怪我の安静時期と少しだけ重なったのと、予定では外国の店に行く予定だったらしい。その後日本に戻ってきてまた一軒、というハードスケジュールの為中止。どんなスケジュールを作ったらこうなるんだ?

 

 あ、だけどちゃんと代わりはあるらしい。どうやら今度誰かしらを呼んでその人に料理を振る舞う事になっているらしい。それに加えて何人かギャラリーが来るらしいけど、どんな状況になったらそうなるんだろうか。

 

 学園長、つまり薙切さんの祖父も何故かそれを見に来る、という事を言われた。おかしいだろ、秋の選抜の審査員としていたのは知ってるけど、俺は秋の選抜には参加してないぞ。運良く参加枠を手に入れてたけど。

 

 多分それは抽選枠とかが一個あったのかもしれない。もしくはそれまでの成績。俺は決して悪くなかったとは思うし、その加点が効いたのかもしれない。選ばれたからって一位とか決まってるわけじゃなかったし。

 

 で、スタジエールは三日後。その次の日に俺はそのよく分からないのに参加するらしい。何故か名前まで付いていた。秋の選考会というらしい。選抜からレベルダウンしてるからってネーミングセンスが良くなってるわけではない。悲しいね。

 

 いや、誰が来るかも知らないけど割と緊張するよ。先生とかも来るって言ってるらしいし。これは選考会っていうかこれは完全にあれだよ、補習だよ。不参加分を取り戻せって休みにでて来る補習みたいなのと同じだよ。

 

 お題まで渡されたし。でも良かった、お題は正直個人的には作りやすい食材だった。俺に与えられたお題はウナギだ。これはあっちで用意してくれるらしい。

 

 普通ならひつまぶしとかなんだよなぁ、個人的にはウナギも好きだけどやっぱりそれにかける蒲焼きのタレ。あれは市販のタレでも非常に美味しいと思う。あのままご飯にかけて食べる事すらあるぐらい。

 

 今回は流石にそれを作るわけにはいかないもんなぁ。そもそも俺はひつまぶしにつける山椒とかはかけたりしないから、ひつまぶしアレンジってのはあまり思いつかない。お茶漬けにする程度かな。しようと思ってはいるけどしたことはない。

 

 子供の頃はよくひつまぶしを暇つぶしと言い間違えた記憶がある。そういえば土用の丑の日にうなぎを食べるっていう習慣的なものの起源ってなんなんだろうな、今度調べてみるか?

 

 書きながら思ったけど安静しろって言われてる時点で、その選考会改め補習会まで練習とか出来ないんじゃないだろうか?まさかぶっつけ本番でやらかすのを期待しているのでは!?な訳ねぇわ。

 

 スタジエールに他の生徒が出発した後なら使えそうだし。ま、頑張れるだけ頑張ろう。数日間スタジエールに使われるなら選考会も数日使われる、とかそんな事思っちゃいけない。もしそれなら精神的にもたないぞ?

 

 久しぶりに部屋のベッドで寝るぞー、おやすみぃ。日記を読み返す50年後の俺くらいにおやすみぃ。

 

 

 

 

1万年と月2千年前から日 愛してる(多分)曜日

 

 

 日記をしばらく書けなかった反動なのか知らないが、月日と曜日の書き方が一気に爆発してる気がする。エクスプロージョンメモリーみたいな感じだ。直訳したら思い出が爆発四散してるけど。

 

 今日、ようやく選考会が終わった。呼び出されて緊張しながら行ってみたらさ、メンバーがおかしいんだよ。学園長は分かる、先生らがいるのも分かる。なんで水原さんと乾さんもいたんだ?

 

 そして極め付け。なんであの先輩いるんだろうなって思った。りんどー先輩とかはいるかもなって思ったけど、俺が唯一りんどー先輩以外でこの学園に入る前に知ってた人がいるとは思わなかった。

 

 まぁ、多分色々運営側とかやってるんだろうけど。あの人料理もだけど運営とかそっちの方が圧倒的に得意だろうし。実質コミュ力高いよ、初期からステ振りされてるレベル。

 

 その人の名前は叡山枝津也。俺より一年先輩の人で、りんどー先輩より少し後に知り合った人だ。正直俺からしたら先輩というカテゴリではなく、面倒見のいい兄のような感覚なのだが。

 

 多分あれは中学に入る前だったか。家でも色々あったし、俺も母さんがそこまで抱え込んでいたことも知らなかった。若干自分の事が嫌になってた時期もある。母さんを苦しめていたのは自分じゃないのか、とか。今になって思えばガキが何を考えてるんだ、って話だけど。

 

 その頃で1人になっていた時にたまたま会ったのが枝津也さんだった。あの頃から割と今みたいな感じだった。自分は恐ろしく上手く立ち回るが、敵を作ることを一切厭わない、という感じだ。

 

 だが、俺が1人でいるたびに枝津也さんは現れた。というかいつも同じ公園にいたからだろうけど。その時から相談に乗ってもらったり、時には何かを奢ってもらったりとされていた。

 

 何でここまでしてくれるのか、というのを中学二年ぐらいに聞いた覚えがある。まぁろくに答えてもらえなかったが。偶々であったり、いずれ俺に恩を返させる為、などと言っていた。言いながら目をそらしてる時点で嘘だと分かった。

 

 枝津也さんが居たことは知ってたし、ここに入学する事になった時はちゃんと連絡した。母さんとりんどー先輩と枝津也さんの3人しか連絡先が無かった中学時代、これが灰色の時代か。

 

 枝津也さんはりんどー先輩と同じように十傑に入っているらしい。2つ名は錬金術師、とかだったかな。たまに自作を作って持ってきてた事もあったし、料理が恐ろしく上手いのはわかってはいたけど、ここまでだとは思ってなかった。

 

 1度目があった瞬間にしてやったり、みたいな顔で笑われた。若干騙されたような気がする。結果的にこの日は何も聞かなかったし、いずれ直行して聞いてみようとは思う。

 

 予想外とは言え、ちゃんとやらなきゃいけない雰囲気だったので自分の力を出し尽くすつもりで作った。今回俺が作ったのは鰻のチーズオムレツと鰻のパエリアだ。

 

 チーズオムレツは元々頭の中にあった作り方だ。鰻とチーズは相性は良い方だし、チーズオムレツは切った瞬間のとろける感じがたまらない。そこに鰻の香りをつけるって事でチーズオムレツにした訳だ。

 

 ただパエリアに関しては作るつもりではなかった。元々俺はチーズリゾットを作る予定だったが、チーズを重ねるのはどうかという点もあったし、チーズリゾットは割と簡単に思いつく発想だからだ。

 

 だからパエリアにした。パエリアは基本的に海鮮系を使う料理だから鰻を入れても違和感はない。問題は蒲焼きで入れたとしても他の魚とあまり調和しないという所だ。

 

 そこで加えた工夫、というか工夫とも言えないけど。匂いと匂いをぶつける為にガーリックを少し多めに、またご飯の味付けには蒲焼きのタレも使った。これを使わなきゃダメだよな、普通。ひつまぶし感は否めないけど。

 

 あとは鰻はかなり小さめにカットしたり、貝類にも一つ一つほんの少しずつ分量を変えて味付けして最も合う味付けにはしてみたが、ぶっつけ本番だから不安しかなかった。

 

 作り終わって審査員の先生とか卒業生の人らに持ってく時に割と驚いたよね。なんかいきなり学園長は服脱いでるんだもん。ていうかお爺ちゃんとは思えないくらいの筋肉だったよ、なんだアレ。

 

 周りはあり得ないものを見るような目でこっちを見てた。そりゃそうでしょ、気づいたら学園長脱ぎ出してるんだよ?完全にヤバイ人認定されてもおかしくはないからね。

 

 満場一致で合格、みたいな事にはなった。枝津也さんはなんか当たり前みたいな顔してた。そう言えば枝津也さんが入学して少しした後、たまたまあって2人で料理作った事もあったっけな?

 

 選考会が終わった後、水原さんとか乾さんからは怪我は大丈夫だった?と心配された。後2人からは本当は自分たちの店でスタジエールをしてほしかった、と若干不満そうだった。

 

 いつか伺います、とは返事して、心配かけてすいませんでした、と頭を下げてたら2人に頭を撫でられた。割とびっくりした。後、うん、良い匂いした。俺って年上にすごい弱い気がする。

 

 後、相変わらず水原さんは俺との距離がなんか近い気がする。また耳元でこの前の返事、考えてくれた?って言われた。酔った勢いとかそんなんじゃなかったんだ。まだです、と返す以外思いつかなかった。

 

 後、学園長からはスタジエールはこのまま不参加で構わない、と言われた。やっぱり安静とかを考えてくれてるんだな、って思うとやっぱり良い学園長なんだって思った。脱ぐけど。でも薙切さんの関係者だしなぁ。

 

 あ、そう言えば新戸さんからは連絡がきた。どうやら幸平くんと同じ店でスタジエールをしてるらしい。新戸さんは声から若干凹んでる感じだったし、負けてるのが尾を引いてるんだろうなぁ。

 

 とりあえず慰める、とかはあまりできないから頑張って、とは言っておいた。後他にもなんか言った覚えはあるけど、いきなり怒られちゃって切られた。俺は何かしでかしてしまったのだろうか?

 

 今日の日記はこれで終わりです。という事で寝ます。新戸さんに今度謝らないと、と思いつつベッドに入る。なんでベッドに入るとかを日記に書いてるかはその日の気分。

 

 おやすみなさい。

 

 

 




2ヶ月ぶりの投稿(困惑)前回の投稿から7月20日まで一文字も書いてませんでした。そして21日から書いたら今日には書き終わってました。このスピードを保ちたい人生(無理)第五人格とかモンストとか白猫とかメモデフしてました(土下座)
十傑あそこまで変わるとは思ってなかったぜ!てっきり最終回かと思ったらまだ続くんだね、びっくり。でもこの作品十傑が数名主人公側に来そう……つまり成り立たない説……さらっと出したけど叡山先輩は好きです。男子キャラだと好きな部類……最近投稿されてる叡山先輩主人公ものずっと見てるもん……


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▶︎11【アルケミスト】

 

 

 

 ……あぁ、面倒でしかねぇ。無駄に俺に突っかかる奴はいるわ、面倒な動きをする奴はいるわ……その上仕事は基本的に俺に回されるし……どんだけ俺は胃薬を料理に入れて違和感が無くなる料理を考えなきゃいけねぇんだ……

 

 俺が住む場所の自室内で、ふとそんな事を考える。机に向かいながらすぐそばに佇む数多の資料の数々。……こいつを処理するのにどんだけ時間がかかると思ってやがる……クソッタレ……

 

 どれだけ毒を吐こうが仕事が無くなるわけじゃねぇ。……はぁ、ったく……あのアホも先輩らも無駄に目立ちすぎなんだよ。俺もそれを言える立場じゃねぇけどよ。

 

 ……いつからだろうか。利益と事業と己の事しか考えて生きてきてなかった俺が……叡山枝津也とあろうものが、この学園の為とやらなのか、誰かの為なのか、んなくだらねぇことを考えながら仕事をする事に苦を思いづらくなったのは。

 

 んなの決まってるわな。あのアホがここに入学して、様々なことをやらかし……そのくせして自分を1番下に見てるアホがのうのうとゆっくり過ごしてるから、だろうな。

 

 あのアホ、千崎雪夜を初めて見かけたのはいつだったか?始まりなんてのは覚えちゃいねぇ。少なくとも俺が中学に入ってる頃だろうな……あの頃、ほんの気まぐれにしか過ぎなかったことが今の俺を変える、なんてどこの誰が予想する?

 

 千崎雪夜は小学生だった。その頃、あいつは家庭の事情やら何やらで色々傷ついていた。精神的にも、物理的にも。おそらくあいつの親には言ってないんだろうが、何かしらのトラブルに巻き込まれたんだろう。

 

 あんだけの傷が、ただ転ぶ程度で出来るはずがねぇ。完全に他者からの意図がない限り、な。……その時の俺は中学だった。たまたま学校が休みの期間だったが、流石に公園に1人でいる、そんな傷だらけの奴を見て見ぬ振りできるほどに大人じゃなかった。

 

 ついつい声をかけてしまった。ついでに親に頼んで傷の処置もしてもらったしな。……まぁ、その少し後からは俺自身で金を稼げるようになったから、処置で治りきってなかったところの治療は俺がした、というか医者を呼んでさせたが。

 

 ……あれほどの傷に気づかねえ、ってのはないと思ってはいたが……運悪く親やらあの先輩は遠くに出かけていたらしい。その上こいつは軽い病気になっていて留守番をしてた、と。

 

 ……その頃からこいつを異常とは思っていた。小学生が親に対して、自分は平気だから楽しんできて、なんて言えるのか?意地でもついていきたい、1人が寂しいと思う頃ではあるだろうに……とな。

 

 二泊三日だからすぐ戻ってくるらしかった。……まぁ、こいつをそのまま放置って訳にもいかず、その三日間だけは世話をしてやった。普通ならそこで終わるはずだった。

 

 それからもその公園に行くたびに雪夜はいた。……物理的じゃなく、精神的に次は攻めてきている、というのはすぐにわかった。だがこいつはそれを耐えている。所謂、イジメという奴だ。

 

 話を聞けば、雪夜は中学の奴にイジメられているらしい。……親に心配されないように、先輩とやらに迷惑をかけないように、と涙ながらに俺に言い訳のようなものをしていた。

 

 ……その頃からだろうな。こいつに対する何か、守らなければいけない、なんてふざけた思いを持ったのは。雪夜自身の事は然程知らなかったが……ふざけたイジメなんぞで潰れていい存在ではない、なんて事を思っちまった。

 

 ……気づけば、そのイジメをしたやつを潰していた。いや、正確にはそいつの父の会社を取り込んだ。その上でイジメをしたやつの親に色々としてやったに過ぎないが。……感情的とは言え、特に必要もない会社を取り込む羽目になるとはな……

 

 イジメがなくなった、と聞くのはすぐ後だった。……何故か俺が動いていた事は気づいていたらしいがな。それ以来、雪夜と俺はその休みの間だけ毎日のように公園で会うようになった。

 

 俺が料理を作り食べさせた事もある。まぁその時に雪夜の料理の才能ってのに気づいた訳だが。……あぁ、そういやふざけた事も聞かれたな。どうして見ず知らずの俺を助けたのか、なんて事を。

 

 まぁ普通に返した。悪いがお前の為にやったとかじゃねぇよ。この料理の腕が将来俺の為になる、この恩をお前に返させる為だ、とな。……もう少し良い言い訳はなかったのか、とその頃の俺を殴りたい。

 

 ……雪夜は自分がいじめられ、精神的に参っていた事を苦に思っちゃいねぇんだろう。あいつの中じゃ自分の優先順位は究極的に低い。……話を聞いてみりゃあ、あいつは他のイジメられたやつを助けたらしいからな。そのせいで狙われた、ってだけと本人は軽く言っていたが。

 

 ……んな事を言われりゃあ、ほっとけなくなるのも仕方ねぇだろう。1人にすりゃあすぐ無茶をしそうな気しかしねぇ。少なくとも何かしらの首輪やらリードを付けなけりゃ、傷付くだけ傷ついて孤独に生きちまう。そんなアホを、ほっとける訳はねぇんだよな……はぁ……

 

 

 

「……なんで俺はあいつとの出会いなんてのを気にしてんだよ、クソッタレが……」

 

 過去を思い出してみて、無駄に恥ずかしさを感じる。仕事は手につかなくなる一方だし、あのアホはいずれ俺に会いにくる、という連絡をよこしやがった。

 

「……あぁ、クソッ!……あのアホがちゃんと元気でやってるってだけで十分だってのに……会いに行くなら竜胆さんにしとけよ……」

 

 小林竜胆、先輩だが正直自由奔放さで呼び捨てにしたいレベル。だがこの先輩は雪夜と一番長くいる人物だ。……雪夜といる中で知り合い、それ以来ちょこちょこ俺の所へもやってくるようになった。ありがた迷惑。

 

「……あの学園長も無茶をさせやがる。あいつは怪我をして治ったばっかだってのに……しばらくは最高級の医者と病院の手配の準備を整えておかねぇと……」

 

 近くで雪夜を守るのは竜胆さんの、裏方であいつを守るのは俺の仕事だ。……1人で傷付くあのバカを見るのは御免被るからな。なら守って損はねぇ……ついでに、竜胆さんと雪夜が上手くいきゃあいいんだが……

 

「……新戸緋沙子も、竜胆さんと同じだろうな。……俺はどっちを応援すりゃいいのかね……人の恋とやらに踏み込みたくはねぇが、幸せにはなってほしいし……ついでに言えば雪夜が幸せなら問題はねぇ」

 

 雪夜と竜胆さん、そして雪夜の母親、真夜さん。ここらが幸せになるなら俺は誰でも歓迎なんだが……まぁもしここが傷付くようなアホが近づくなら容赦無く潰す。

 

「……さて、と。雪夜をああした奴に目星はついてるが……所詮下っ端。上は……あの男だろうな。……チッ、学園の支配だの料理がどうのに興味はねぇが……雪夜を傷つけた奴を学園長だのと認めるわけにもいかねぇんだっての」

 

 ……だが、アイツは俺より権力がよっぽどある。現に十傑はほぼ全員があっち側に行く事を承認してる。……竜胆さんにも伝えてはないが、いつかは伝えないとな。

 

 ……雪夜の自由を完全に奪うつもりだった。それは邪魔になるからだろうな。雪夜の料理はあの男からしてみれば存在する価値もないと思われる料理だ。にも関わらず実力があるからこそ、消そうとしたんだろう。

 

 ……消しきれなかったのは間抜けだが、雪夜が傷付くのを黙って見る結果になった俺も相当間抜けだ。……次はこんなヘマはしねぇ。アイツが傷付く前に潰してやる。

 

「……鏑木。お前にも動いてもらう。面倒なことに巻き込む事になるが、構わねぇな?」

 

「……もちろん。……後、祥子で構わないと言った。なら叡山はそれを許容すべき」

 

「……そういうお前が俺の名前を呼べてねぇだろうが。この前もお前が呼べば、って言ってやったのに逃げやがったもんな」

 

「……うぅっ……そ、それは、まだ心構えが出来てなかっただけで……」

 

「名前を呼ぶのになんの心構えが必要なんだよ……つーか、いたのは気づいてたがいつからいた?」

 

「もちろん叡山が入る前から、だけど?」

 

「それを世間一般じゃ不法侵入って言うんだよ……!どうやって入りやがったテメェ……!」

 

「合鍵。竜胆さんとももさんから許可は得た、完璧」

 

「……堂々と権力振りかざしやがって……ちっ!鏑木、合鍵はよこせ。俺がいる時なら入っても構わん」

 

「……つまり、通い妻」

 

「ンなわけねぇだろが!?……最近の俺の周りの奴は……どれだけ胃薬と頭痛薬が必要だと思ってやがるっ……!」

 

 ……本当に面倒だ。人付き合いってのもビジネスの為なら苦ではねぇが……先輩に同輩、さらに後輩まで俺に面倒事を持ってきやがる……俺の苦労も一切知らずに……

 

 仕方ねぇけどな。仕方なく、アイツらのために動いてやってるだけだ。それ以外の理由なんてねぇ。乗りかかった船みてぇなもんだろ……鏑木に関しては何故俺に付きまとうのか分からねえがな。

 

 さて……また仕事の続きをしねぇとな。……ついでに、内部から壊す方法もそれなりには思いついた。その為には……俺が無様に負ける機会を作らねぇとな。1年で俺を負かす実力がある、雪夜以外となりゃあ……

 

 あの男を最大限に利用してやる。……アイツが住んでる寮も使えるかもしれねぇな。一色はあの総帥の考えには賛同しなかったし、後々の何かしら仕掛けてくるであろう時に、一色は一年側にいておいた方がいい。

 

 ……場合によっちゃ久我も一年側に行ってくれるなら万々歳だがな。だが、そんな未来の話のみを考えてても意味はねぇか。……さて、俺の思い通りに動いてくれよ?幸平創真、そして一年諸君。

 

「……悪どい顔してる」

 

「……考え事してんだよ!頬をつねるんじゃねぇ!?」

 

「……ふふっ、変な顔」

 

「潰すぞテメェ!!!鏑木ィ!!!」

 

 クソッタレ!!!やっぱり面倒でしかねぇ!!!

 




(原作の)叡山とは違うのだよ、(原作の)叡山とは!
こいつ誰だよ、って思いながら書きました。どうやらすでに2ヶ月経ったみたいだな……あれ、1週間後に投稿してる……?病気か?なんて思うくらい早く書けました、叡山先輩書くの楽しかった!
鏑木祥子さんはオリキャラじゃないです、ちゃんと原作キャラです。一切どんな料理が得意なのかというのが明かされる以前に、口調すら分からないキャラですけどね!でも可愛い見た目してたし!叡山先輩と同輩だし!なら出すしかねぇ!
最近第五人格というゲームにはまってます。ハマるゲーム多すぎなんだよなぁ……また投稿間隔開くのか()


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▶︎12

ハーメルンの食戟のソーマ作品をいろいろ漁ったけど、ほぼ1話で秋の選抜が終わったのはこの作品だけじゃなかろうか。他の作品の料理描写と料理知識をください!!!



 

 

三日月満月新月日

 

 なんとなく思いついた月の名前をただ並べたかっただけ。最近知ったんだけど、月の名前も沢山あるんだなって知った。十五夜とか十六夜とかくらいは知ってたけどね。無知って事を日記でバラすスタイル、謎。

 

 今日は前の審査とかも終わったし、今日やるべき課題もしっかり合格をもらったので、しばらく自由時間をもらった。というか、あの学園長先生はどれだけ露出狂アピールをしたら気が済むんだ?

 

 枝津也さんに聞くと、おはだけとかって言うらしい。名前つける必要が果たしてあったのだろうか。そりゃ料理食って気づいたら裸、とかどこの世界線にも存在しない必殺技だろうけど。自分が社会的に必ず死ぬ必殺技。ターイホ。

 

 ついでに気になることは枝津也さんが女の人をずっと隣に置いてたって事かな。鏑木祥子さんって言うらしい。冗談で彼女?みたいに聞いてみたら、否定と肯定が同時に返ってきた。

 

 枝津也さんが否定の方だよ。鏑木さんは彼女に見えますか!?えへへっ!ってすごい喜んでた。枝津也さん、ほんの少し見なかっただけで女の子に好かれる人になってたとは思わなかった!なんだろ、兄貴分に彼女ができた感じ。

 

 こいつは纏わり付いてくるだけだ、鬱陶しい、とか言ってたけど。枝津也さんって嫌いな人は近づけないし、むしろ場合によっては近寄らない状況にさせる人だと思うんだけどな。

 

 つまり実際は嫌いではない=実は心の中では好きって言う方程式が出来上がる。こんな感じの話はテレビとかで見た。枝津也さんにもこれが適応されると思う。

 

 枝津也さん結構表情おかしかったし。なんて言うか、恥ずかしさとか困惑とか入り混じった顔。枝津也さんの彼女に鏑木さんがなったら、ならなくても好きな限りは応援したいなぁ。

 

 枝津也さんと鏑木さんが彼氏彼女か。枝津也さんが誰かと付き合うとかあまり想像できないんだよな。でもあんな風に話せるって事は鏑木さんもかなり料理が出来るんだろうなぁ。

 

 今の一年生だって上手い人はいる。だけど、2年と3年の2学年と圧倒的に違うのは経験と修羅場の数だ。特に料理が上手い人ほど、修羅場をくぐり抜けてきてるって事になる。

 

 俺も見習わないといけないんだと思う。俺はこの学園に来てから、大して何かやったわけでもないし。未だに食戟をした事もないからな。いつかやってみたい、とは思うんだけどね。ここら辺りは行事ラッシュらしい。

 

 俺も元々は秋の選抜に参加する予定だったし、スタジエールにも参加する予定だった。もしかしたら奇跡的に勝ってたら、の話だけど十傑メンバー全員と顔合わせができたのかもしれない。

 

 もみじ狩り、だったかな。現十傑と秋の選抜で上位に入ったメンバーが一度に集まるイベントがあったらしい。枝津也さん曰く、問題児が今年もいやがった、との事だ。

 

 多分、というか十中八九幸平くんだとは思う。枝津也さんとかは1番ソリが合わないタイプだと思う。逆にりんどー先輩はかなり気が合うとは思う。おなじ、感覚と経験タイプだし。

 

 ついでに話されたけど、枝津也さんは幸平くんを自分の派閥に勧誘したらしい。断ったらしいけど、その実力を試すために美作くんを使ったらしい。美作くんは枝津也さんに一目置かれる存在なんだな、って改めてすごい人物なんだと思った。

 

 幸平君との食戟でいろいろ思うことがあったらしく、今は人が変わったかのようになってるって言われたけど、俺が会った時からそこまで悪い人には見えなかったけどな。味見してくれたし。

 

 で、次の行事は文化祭との事だ。出店したりはできるらしいけど、基本的には十傑の人たちの店が繁盛するのが当たり前らしい。ランキングとかも独占するらしいけど。

 

 枝津也さんにはお前も店を出したらどうだ、と言われた。流石にそれはなさすぎるんじゃないかな。俺が恥を晒すだけだよね、一個も売れない未来もあり得るわけだし。

 

 だから枝津也さんには俺が出す意味あります?みたいに返しておいた。この言葉を聞いた後、可笑しそうに笑い出したのはよく分からなかった。流石は雪夜だな、とか言われた。果たしてそれは褒められたのだろうか?

 

 まぁ気にしても仕方ない。そろそろスタジエールも終わるらしい。新戸さんも割と吹っ切れたものはあったらしい。幸平君との交流ってのは、立ち直るって事に関しては最高な処方箋なのかもしれない。

 

 明日、スタジエールが終わった後には何人かに会う予定がある。スタジエールのことは個人的に気になるし、俺だけ実体験が出来てないってのは結構不利な気もするし。

 

 明日が楽しみだ。では、ぐっどなーいと

 

 

 

 

 ツンヤンクー月デレデレデレ日

 

 本にはこんな三つのタイプがあるって書いてあったから書いてみた。料理は素材を女の子だと思え、とか書いてた本だけど正直発売停止とかにしたほうがいいと思った。

 

 ちなみにツンデレ、ヤンデレ、クーデレらしい。素直にならない性格、相手を想うあまり我を強めてしまう性格、常に冷静沈着なクールな性格。

 

 でも女の子だと思ったらさ、食材をまな板の上に置いた時点で切ったり煮たりしないといけないわけじゃん、あまりに心苦しくなるよね。

 

 昨日も書いたけど、今日は何人かに話を聞いた。幸平くんは偶々都合が合わなくなったから、新戸さんと黒木場くんの2人に会った。先に会ったのは黒木場くん。黒木場くんはその時が初対面に近かったけど、薙切アリスさんから紹介を受けた。

 

 黒木場くんは料理する時とそれ以外のテンションが、正直二重人格なんじゃないか、と疑うくらい性格が変わる。今日はちょこっとだけ食戟風に料理をさせてもらったし。

 

 やっぱり誰かと一対一ってのは緊張した。りんどー先輩とかを除いて、なおかつ料理対決って黒木場くんが初めてだし。対決って言っても審査員はいなかったけど。

 

 審査する気は無いけど食べたい、と言ってきた薙切(ア)さんならいたけど。すごい子供っぽい感じだったけど、この人も料理の腕は凄いってのは知ってる。

 

 ホテルの時もすごい結果だったらしいし、相手が幸平くんじゃなかったらベスト4には入れたと思う。幸平くんは個人的には優勝して欲しい気持ちもあった、そうすれば優勝者と料理できたのに。

 

 葉山アキラ君が優勝だけど、その葉山君とは一切会えてないし。黒木場くんとかとはよく一緒にいるらしいのになぁ、俺の時間があまりにも合わなすぎるのかな。

 

 黒木場くんが気になる事を言ってきた。もし大会に出ていたら、優勝は確実だった。それはあまりにも買い被りな気がする。例えそうだったとしても、出れなかった自分にそんな資格はない、とは返したけど。

 

 出れなかった奴が何言ったって仕方ないからね。それに、出れたとしても優勝かどうかはそこまで興味は無いし。どうせなら沢山の人と料理して、技術とか知りたいとは思うけど。

 

 黒木場くんからは若干笑われた。どうやら取っつきにくいタイプだろうと思われてたらしい。まぁ確かにあまり表情とかは変えないけど、そんな感じに思われるよね、そりゃ。

 

 とりあえずその後は本戦の事とかスタジエールの事を聞いた。かなり参考になる事もあったし、結構いい時間になった。黒木場くんとも話せたし、連絡先も交換できたし。あ、薙切(ア)さんからも貰いました、イェイ。自分で書いたけど、文字にしたイェイとか気持ち悪すぎ。

 

 

 

 2人と別れた後は新戸さんに会いに行った。落ち込んでる風はそこまで感じなかった。むしろ、薙切さんに顔合わせができるような自分になりたい、とのことだ。

 

 それと、俺ともいつかは食戟をしたいと言われた。本戦にも出てないような奴なんだけどな。でも話す人たちってほとんど本戦出てるじゃん。そう考えるとすごい人らばっかだよなぁ。

 

 新戸さんの都合のいい時なら、いつでも良いですよ。なんて返したけど、挑戦的な感じに取れるのかな?新戸さんすごい、なんかこう、怖い笑顔してたし。

 

 その後は2人でなんかお出かけみたいな事をした。スタジエールの事とか本戦の事とか、薙切さんの事とか薙切さんの事とか、薙切さんの事とか話しながら買い物をした。基本的に薙切さんの話を聞かされた感あったけど。

 

 でも話してる時、自分のことみたいに嬉しそうに話すからね、止めようなんて思いもしなかったね。多分、薙切さんは早く帰ってきてほしいんだろうけどな、なんて思った。

 

 2人、すごい仲良いし。主従とかそんなの関係ないとは思うけど、2人の問題でもあるだろうし。多分、薙切さんが薙切さんである限り、新戸さんは今の新戸さんのままだと思う。

 

 どうせなら、超えるくらいはやってしまえばいい、なんて無責任な事を新戸さんに言ったら、怒りたそうな、でも吹き出してしまいそうな、すごい変な顔をしてた。

 

 別れ際まで、割と俺の言ったことは気にしてたらしい。最後にこんなこと聞かれたし。もし私がえりな様を超える、と言ったらお前はどうする?もし、私たち2人が違う道を歩み、戦うとしたならば、と。

 

 ちゃんとした答えは返せなかった。間違ってる人がいるなら、正しい方を応援する。だけど、意地の張り合いとか、ただ単に新戸さんが薙切さんを超えたいなら、俺は新戸さんを応援すると思う、と返した。割とキザなこと言ったよね、これ。

 

 少し黙った後、赤い顔でありがとう、と言われた。流石に失礼だったのだろうか、怒りを我慢してたのか、よく分からない。その後、私の事は緋沙子と呼んでくれ、と言われたし。

 

 これからは日記でもそう書いたほうがいいかな。うん。慣れないと、多分、恥ずかしくて呼べない。同年代で女子の下の名前呼び捨ては厳しいし。

 

 少しくらい、コミュニケーション能力高めないとなぁ。今日は寝よう、おやすみなさい、自分。

 

 

 




祝30話。そしてお気に入り9000件、そして後20日くらいでこの作品も1年。UAも100万近づいてる。本当にありがとうございます。
次の話は秘書子(ついに緋沙子呼び)視点。黒木場くん視点は微妙……後、秘書子ちゃん視点投稿したら文化祭編ですね。その後の連帯食戟もかなり独自になると思います。そこまでお付き合いくださると嬉しいです。でも、それ終わったらりんどー先輩卒業だからなぁ……どうしよ……
とりあえず秘書子の可愛さを知れ。ついでに原作叡山先輩を見て、この作品の叡山先輩と見比べてくれぇ……鏑木さんはきっとかわいい(確信)


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