ハイスクールDevil×Ex-aid (不知火新夜)
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登場人物紹介(ライダー変身者)

◎リアス・グレモリー眷属

兵藤(ひょうどう)一誠(いっせい)/仮面ライダーエグゼイド

CV:梶裕貴

種族:人間→転生悪魔(人間)

ランク:兵士(ポーン)

誕生日:4月16日

身長:173cm

体重:60kg

神器:『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』…基本的に原作通り。当初は所有していなかったが、8章での英雄派との交戦の際、誠次郎をリプログラミングした事で手に入れた。

今作の主人公で、原作の主人公。駒王学園2年生。今作ではとある理由から(8章まで)赤龍帝ではない一方で、天才ゲームクリエイター『IS(アイズ)』として活動、その過程で誕生したバグスターウィルスの力を取り入れたライダーシステムを用い、仮面ライダーエグゼイドとして街の人達を守るべく戦っている。また原作と違って変態丸出しな言動は無いものの、これは弟である兵藤誠次郎(せいじろう)を反面教師としているだけで、その本質は原作同様、生粋のおっぱい星人。

【1章】街に潜入した堕天使に対処する過程でリアスと出会い、彼女の眷属悪魔となる。原作とは違って赤龍帝では無い為、消費した駒は兵士1個のみ。

その後、アーシアを救うべくバグスター達を総動員し、自らもまた堕天使と戦闘、圧勝した。

【2章】ライザー眷属とのレーティング・ゲームに臨む際、リアス達に仮面ライダーへ変身する為の処置を施す。

これが結果的に勝因となった事も相まって、リアス達から告白され、受け入れた。

【3章】エクスカリバーが盗まれた事件に関して、イリナを危険な目に合わせたくない等の理由から、原作通りゼノヴィアに共同戦線を申し込んだ。その後のコカビエルとの決戦の際に発した言葉が、偶然聞いていたヴァーリの心を動かす切っ掛けになる。

【4章】リアス、朱乃、アーシア、イリナ、ゼノヴィア、白音と恋仲である事に着目したミカエルから、原作通りアスカロンを託される。

禍の団との戦闘ではリバースクロスナイトガシャットを使用、ヴァーリ達と共に敵を難なく制圧した。

【5章】禍の団に対する危機感からガシャットの開発作業に没頭、その結果過労で倒れる一幕もあったが、ガシャットギアデュアルαやデンジャラスゾンビガシャット、アスカロンをガシャコンウェポン化したガシャコンキースラッシャーを開発、実戦投入出来た。

ソーナ眷属とのレーティング・ゲームでは祐斗と共に立体駐車場エリアに進撃、椿姫を圧倒した。

【5.5章】冥界のグレモリー領から戻った際リアス達と同様、駅から数分の洋館に引っ越す事となる(車代等も含めた代金は一誠がこれまでに稼いだゲームの売上金から支払われた)。

その後、夢(?)の中で出会った少年、水澤悠を助ける為に赤い異形――仮面ライダーアマゾンアルファと戦闘、その際にアルファオメガアマゾンガシャットを入手して使用、アマゾンアルファを倒した。

【6章】グレモリー領から戻った後も新しいガシャットの開発を続行、ガシャットギアデュアルβとγを2つずつ開発し、βを祐斗と朱乃に、γをイリナとゼノヴィアにプレゼントした。

【6.5章】レイヴェルから人間界への留学の真相を聞き複雑な様子を見せるが、彼女の想いを聞き、それを受け入れた。

その後、レイヴェル専用のライダーガシャットを作るべく開発を続けている様子。

【7章】北欧の主神オーディンが日本神話の神々との会談の為に来日した際、その護衛として同行したロスヴァイセと知り合う。

その後、オーディンが設けた彼女とのお見合いの場で彼女への想いを認識、婚約者として迎え入れる事となった。

その後、彼女用のライダーガシャットを開発していたが、破損してしまった様で…

【8章】京都での修学旅行の際、西の妖怪達を束ねる九尾の八坂が、禍の団の派閥である英雄派に狙われている事を知り、護衛の依頼を受ける。

護衛の依頼中に英雄派と遭遇、其処で誠次郎が英雄派に加入していた事を知り、自らも狙われる事となるが、トゥルーブレイブに変身したロスヴァイセの尽力で一旦は退ける。

その後、京都での決戦では新たに開発したマキシマムマイティXガシャットを実戦投入、そのリプログラミング能力で赤龍帝の籠手、黄昏の聖槍、絶霧の奪取に成功した。

 

◯リアス・グレモリー/仮面ライダーゲンム

CV:日笠陽子

種族:純血悪魔

ランク:(キング)

誕生日:4月9日

身長:172cm

体重:58kg

3サイズ:99/58/90

今作のヒロイン(1人目)で、一誠達の主人。駒王学園3年生。

【1章】街に潜入した堕天使に対処する過程で一誠と出会い、彼を眷属とした。

【2章】ライザーとのレーティング・ゲームに臨む際、一誠の提案で仮面ライダーへ変身する為の処置を施されて成功、仮面ライダーゲンムに変身出来る様になった。尚その際に授かったマイティアクションXのオリジンガシャットが、彼女の滅びの魔力を吸収するというハプニングが発生した。

レーティング・ゲームではライザーとの一騎打ちに勝利し、その立役者となった一誠に告白、受け入れられた。

【5章】ソーナ眷属とのレーティング・ゲームで、一誠からプレゼントされた自分専用ガシャット『デンジャラスゾンビ』の力を存分に振るい、ソーナにトドメを刺すも、テンションが上がり過ぎた結果、言動が一時的におかしくなった。

【5.5章】冥界のグレモリー領から戻った際一誠達と同様、駅から数分の洋館に引っ越す事となる。

その後、夢(?)の中で出会った青年、門矢士――仮面ライダーディケイドとの戦闘を余儀なくされ、その圧倒的な実力に追い詰められるも、寸での所でバーコードウォーリアーディケイドガシャットを入手して使用、彼を撤退させた。

【6章】ゾンビゲーマーレベルXは余りの強さからレーティング・ゲームでの使用が禁止され、ディオドラとのレーティング・ゲームではゾンビアクションゲーマーレベルX-0で臨む事に。

ディオドラとのレーティング・ゲームの場に襲撃して来た禍の団に対応していた際、突如として発生した滅びの魔力による暴風から身を守る為にデンジャラス・クリティカル・ストライクを発動、自分達の身を守る事には成功した。

 

姫島(ひめしま)朱乃(あけの)/仮面ライダースナイプ

CV:伊藤静

種族:転生悪魔(ハーフ堕天使)

ランク:女王(クイーン)

誕生日:7月21日

身長:168cm

体重:54kg

3サイズ:102/60/89

今作のヒロイン(2人目)。駒王学園3年生。原作とは違い母親である朱璃が健在な為か、堕天使の血筋に嫌悪感を持っていない。

【1章】一誠との自己紹介の場で、彼が自分達家族を救ってくれたヒーロー、仮面ライダーだと確信、感謝の意志を示した。

【2章】ライザーとのレーティング・ゲームに臨む際、一誠の提案で仮面ライダーへ変身する為の処置を施されて成功、仮面ライダースナイプに変身出来る様になった。

レーティング・ゲームではゲーム中最多の5キルを達成する等大活躍し、その後リアス達の告白に便乗して自らも告白、受け入れられた。

【4章】三大勢力首脳による会談の前に行われたミカエルと一誠との非公式会談の際、住んでいる神社を場所として提供、そのまま一誠と同席する。

【5.5章】冥界のグレモリー領から戻った際一誠達と同様、駅から数分の洋館に引っ越す事となる。

その後、夢(?)の中で出会った仮面ライダーワイズマンとの戦闘を余儀なくされ、その圧倒的な実力に追い詰められるも、寸での所でマジックザウィザードガシャットを入手して使用、仮面ライダーワイズマンを倒した。

【6章】2学期に入って程なく、一誠からガシャットギアデュアルβをプレゼントされる。

 

塔城(とうじょう)白音(しろね)/仮面ライダーノックス

CV:竹達彩奈

種族:転生悪魔(猫又)

ランク:戦車(ルーク)

誕生日:11月23日

身長:138cm

体重:31kg

3サイズ:67/57/73

今作のヒロイン(3人目)で、黒歌の妹。駒王学園1年生。今作では後述する理由から、本名の白音のまま。

【1章】眷属の中では唯一、以前から一誠と知り合いだった。

【2章】ライザーとのレーティング・ゲームに臨む際、一誠の提案で仮面ライダーへ変身する為の処置を施されて成功、仮面ライダーノックスに変身出来る様になった。

レーティング・ゲームに勝利後、リアス達の告白に便乗して自らも告白、受け入れられた。

【5章】あらゆる分野において中途半端な己に危機感を抱いた結果、過剰なトレーニングを行い倒れてしまう。

それを目の当たりにした一誠が寝る間も惜しんで、プレゼントしてくれたガシャットギアデュアルαを開発していた事を知り、それをどう活かすか現在模索している。

ソーナ眷属とのレーティング・ゲームでは黒歌と共に中央広場へと進撃、桃をワンパンで倒した。

【5.5章】冥界のグレモリー領から戻った際一誠達と同様、駅から数分の洋館に引っ越す事となる。

その後、夢(?)の中で出会った恐竜グリードとの戦闘を余儀なくされ、その圧倒的な実力に追い詰められるも、寸での所でジャングルオーズガシャットを入手して使用、恐竜グリードを倒した。

 

◯ロスヴァイセ/仮面ライダートゥルーブレイブ

CV:加隈亜衣

種族:ヴァルキリー→転生悪魔(ヴァルキリー)

ランク:戦車

誕生日:8月8日

身長:173cm

体重:59kg

3サイズ:96/61/89

今作のヒロイン(9人目)。駒王学園教師(公民担当)。

【7章】日本神話の神々との会談の為、自らの主君であるオーディンが来日するのに同行、其処で一誠と知り合う。

その後、オーディンが設けた彼とのお見合いの場で彼への想いを認識、婚約者として迎え入れられる形でリアスの眷属悪魔に転生、9人目の恋人となった。

その後一誠が、自分用のライダーガシャットを開発する様子を偶然耳にし、破損してしまったガシャットを廃棄するとの言葉を耳にし…

【8章】京都での修学旅行に教員として同行していたが、一誠達と鉢合わせた際に英雄派の襲撃を受けるも、廃棄予定だったタドルレガシーガシャットを拝借して仮面ライダートゥルーブレイブ・レガシーゲーマーレベルXに変身、難なく撃退した。

 

◯アーシア・アルジェント/仮面ライダーポッピー

CV:浅倉杏実

種族:人間→転生悪魔(人間)

ランク:僧侶(ビショップ)

誕生日:5月11日

身長:155cm

体重:44kg

3サイズ:82/55/81

神器:『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』…基本的に原作通り。

今作のヒロイン(4人目)。駒王学園2年生。

【1章】一誠達が住む街の教会にシスターとして赴任する目的で来日するも道が分からず困っていた折に一誠達と知り合う。

街に呼び寄せられた事の真相が、自らの神器を狙った堕天使の凶行による物だったが、一誠に救われ、その恩返しも兼ねてリアスの眷属となった。

【2章】ライザーとのレーティング・ゲームに臨む際、一誠の提案で仮面ライダーへ変身する為の処置を施されて成功、仮面ライダーポッピーに変身出来る様になった。

レーティング・ゲームに勝利後、リアス達の告白に便乗して自らも告白、受け入れられた。

【5.5章】冥界のグレモリー領から戻った際一誠達と同様、駅から数分の洋館に引っ越す事となる。

その後、夢(?)の中で出会った我望光明との話し合いの末、スペースギャラクシーフォーゼガシャットを入手した。

【6章】原作とは違い、教会を追放された一件の真相を知る事は(ディオドラが拉致する前に、滅びの魔力を浴びて消滅した為)無かった。

 

◯ギャスパー・ヴラディ/仮面ライダークロノス

CV:佐倉綾音

種族:転生悪魔(ハーフヴァンパイア)

ランク:僧侶(変異の駒)

誕生日:3月14日

身長:150cm

体重:40kg

神器:『停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』…基本的に原作通り。

リアスの眷族。駒王学園1年生。

【2.5章】原作と同じ理由から封印されていた中、事態の打開を望んだリアスの要望で、仮面ライダーへ変身する為の処置を施されて成功したが、其処で仮面ライダークロノスへの変身資格者『王の半身』だと判明する。

【4章】原作と同じ理由で解放されたが、クロトの指導によって原作とは比べ物にならない程、性格面で改善が見られた。クロトが口にする『勝利のイマジネーション』という言葉を大事にしており、ネガティブになりそうな時は何時もそれを思い出している様子。

【5章】ソーナ眷属とのレーティング・ゲームではガーディアンウォーズゲーマー・レベル3に変身、量産した監視アイテムが功を奏し、圧勝の決め手となった。

【5.5章】冥界のグレモリー領から戻った際一誠達と同様、駅から数分の洋館に引っ越す事となる。

その後、夢(?)の中で出会ったグレートアイザーと遭遇、その圧倒的な実力を前に弱気になるも奮起した所で開眼ゴーストガシャットを入手して使用、グレートアイザーを倒した。

 

木場(きば)祐斗(ゆうと)/仮面ライダーブレイブ

CV:野島健児

種族:転生悪魔(人間)

ランク:騎士(ナイト)

誕生日:5月30日

身長:172cm

体重:61kg

神器:『魔剣創造(ソード・バース)』…基本的に原作通り。

リアスの眷族。駒王学園2年生。

【2章】ライザーとのレーティング・ゲームに臨む際、一誠の提案で仮面ライダーへ変身する為の処置を施されて成功、仮面ライダーブレイブに変身出来る様になった。

【3章】聖剣に対する憎悪は原作通り、故にエクスカリバーが盗まれた事件に関して単独で介入するも、護衛を命じられたカイデン達の協力もあって克服した。

【5章】ソーナ眷属とのレーティング・ゲームでは一誠と共に立体駐車場エリアへと進撃、巴柄を翻弄した。

【5.5章】冥界のグレモリー領から戻った際一誠達と同様、駅から数分の洋館に引っ越す事となる。

その後、夢(?)の中で出会った駆紋戒斗と戦闘、互角の戦いを繰り広げた末に刀剣伝ガイムガシャットを入手して使用、ロード・バロンとなった戒斗を倒した。

【6章】2学期に入って程なく、一誠からガシャットギアデュアルβをプレゼントされる。

 

◯塔城黒歌(くろか)/仮面ライダーパラガス

CV:高橋未奈美

種族:転生悪魔(猫又)

ランク:騎士(変異の駒)

誕生日:10月1日

身長:161cm

体重:51kg

3サイズ:98/57/86

今作のヒロイン(7人目)。リアスの眷族で、白音の姉。駒王学園教師(歴史担当)。今作ではリアスの眷族なのもあってかはぐれ悪魔にならず、その為白音も本名のまま。

【2章】ライザーとのレーティング・ゲームに臨む際、一誠の提案で仮面ライダーへ変身する為の処置を施されて成功、仮面ライダーパラガスに変身出来る様になった。

【5章】冥界へ帰省していた最中に一誠に告白して受け入れられ、7人目の恋人となった模様。

その後、妹の白音と同じくガシャットギアデュアルαをプレゼントされる。

ソーナ眷属とのレーティング・ゲームでは白音と共に中央広場へと進撃、憐耶をワンパンで倒した。

【5.5章】冥界のグレモリー領から戻った際一誠達と同様、駅から数分の洋館に引っ越す事となる。

その後、夢(?)の中で出会った石動惣一(エボルト)と遭遇、リモコンブロスとエンジンブロスの2人との戦闘を余儀なくされるが、その際に惣一から仮面ライダービルドガシャットを入手して使用、リモコンブロスを倒した。

 

紫藤(しどう)イリナ/仮面ライダー風魔

CV:内田真礼

種族:人間→転生悪魔(人間)

ランク:兵士

誕生日:9月29日

身長:164cm

体重:53kg

3サイズ:87/59/89

今作のヒロイン(5人目)。教会に所属するエクソシストだったが、原作とは違い4章から悪魔に転生した。今作では神に対する信仰心が原作以上な一方、教会に対して不信感を抱いており、事ある毎に持論を展開する事から『信者(自称)』と言われていた。

【3章】エクスカリバーが盗まれた事件に対応する為に派遣されるも、祐斗の憎悪を目の当たりにしてショックを受けるが、一誠のアドバイスもあって立ち直った。

その後、パラド達の独断で仮面ライダーへ変身する為の処置を施されて成功、仮面ライダー風魔に変身出来る様になり、その力でエクスカリバーを奪還、同時に教会を離脱してリアスの眷属になる事を宣言、一誠と想いを通じ合わせた。

【5章】ソーナ眷属とのレーティング・ゲームでは、元士郎の嘗ての言動にマジギレし、彼と留流子をウルトラデ○ソースによる激辛地獄で嬲り殺しにした。

【5.5章】冥界のグレモリー領から戻った際一誠達と同様、駅から数分の洋館に引っ越す事となる。

その後、夢(?)の中で出会ったテラー・ドーパントとの戦闘を余儀なくされ、その能力によって恐怖に囚われかけるも、寸での所で振り切り名探偵ダブルガシャットを入手して使用、テラー・ドーパントを倒した。

【6章】2学期に入って程なく、一誠からガシャットギアデュアルγをプレゼントされる。

 

◯ゼノヴィア/仮面ライダーレーザー

CV:種田梨沙

種族:人間→転生悪魔(人間)

ランク:兵士(駒3つ消費)

誕生日:2月14日

身長:166cm

体重:56kg

3サイズ:87/58/88

今作のヒロイン(6人目)。教会に所属するエクソシストだったが、原作通り4章から悪魔に転生した。尚、ランクは黒歌がいる関係で、原作とは違って兵士である。

【3章】エクスカリバーが盗まれた事件に対応する為に派遣されるも、同じく派遣されたイリナから(己の言動を咎める形で)事ある毎にツッコミという名の暴力を振るわれていた。

その後は一誠の申し出を受けて共同戦線を張り、その縁からコカビエルとの決戦にも参加するが、其処でコカビエルから神の死を告げられて絶望するも、イリナによって救われる。

【4章】神の死を知った事で教会を追放され、同じく追放されたイリナの伝手を頼ってリアスの眷属となる。その後、仮面ライダーへ変身する為の処置を施されて成功、仮面ライダーレーザーに変身出来るようになる。

同じ頃一誠に告白して受け入れられ、6人目の恋人となった。

【5.5章】冥界のグレモリー領から戻った際一誠達と同様、駅から数分の洋館に引っ越す事となる。

その後、夢(?)の中で出会ったハート・ロイミュードとの戦闘を余儀なくされ、その圧倒的な実力に追い詰められるも、寸での所でフルスロットルドライブガシャットを入手して使用、ハート・ロイミュードを倒した。

【6章】2学期に入って程なく、一誠からガシャットギアデュアルγをプレゼントされる。

 

◎その他のライダー変身者

◯レイヴェル・フェニックス/仮面ライダーレーザーX

CV:西明日香

種族:純血悪魔

ランク:僧侶

誕生日:6月3日

身長:153cm

体重:47kg

3サイズ:85/59/84

今作のヒロイン(8人目)。フェニックス家令嬢にして『Z』ことゼファードルと共に『L』としてその名を轟かせる天才ゲーマー。

【2章】ライザーの眷属としてリアス眷属とのレーティング・ゲームに参加する事となったが、元々戦いに参加しない方針だった事に加えて、一誠に対するライザーの態度にマジギレしていたのもあって傍観に徹していた。

【5章】レーティング・ゲーム後、トレードによって母親の眷属(という名のフリー)となったのもあってか、レーティング・ゲームに関する一件で兄を完全に見限った様子。

【6章】2学期に入ると同時に、見聞を広める為に人間界へ留学するとの名目で駒王学園に転校する(が、その真の目的は後述)。

【6.5章】留学の真の目的を一誠に打ち明けるが、その目的とは関係無しに一誠を慕っていると告白、受け入れられ、8人目の恋人となった。

【7章】ロキによる襲撃時に、一誠からプレゼントされたガシャコンバグヴァイザーⅣを基に組み立てたバグルドライバーⅣと、ギリギリチャンバラガシャットを用いて、仮面ライダーレーザーXに変身した。



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登場人物紹介(バグスター)

◎バグスター

一誠が4歳の頃に生み出した、コンピュータウィルスを基とした電子生命体。

其々、一誠が開発したゲームに登場するキャラクターをモチーフとした姿になっており、そのゲームのライダーガシャットを媒体として現実世界で活動する為の身体を構築している。

ライダー達は、バグスター達の媒体となっているライダーガシャットを用いて、バグスターから力を借りて仮面ライダーに変身する。

 

○ソルティ

CV:前田剛

パートナー:兵藤一誠

一誠への呼び方:父上

モチーフ:マイティアクションXに登場するライバルキャラ『ソルティ伯爵』

マイティアクションXガシャットを媒体としたバグスター。変態。

 

○ガットン

CV:井口祐一

パートナー:兵藤一誠

一誠への呼び方:ファザー

モチーフ:ゲキトツロボッツに登場するボスキャラ『ガットン』

ゲキトツロボッツガシャットを媒体としたバグスター。ソーナの眷属である元士郎と声がそっくりだと言われているが気のせい。

【1章】一誠を危険視した堕天使が彼を暗殺しようとした際、一誠に呼び出されて即座に堕天使をパンチ一発で昏倒させた。

 

○ゲノムス

CV:梶裕貴

パートナー:兵藤一誠

一誠への呼び方:ファザー

モチーフ:マイティブラザーズXXの2Pキャラ『ゲノムス』

マイティブラザーズXXガシャットを媒体としたバグスター。普段は一誠の姿に擬態している。

【5章】ソーナ眷属とのレーティング・ゲームでは、一誠がダブルアクションゲーマーレベルXXにダブルアップする際にダブルアクションゲーマーレベルXXLへと変身、翼紗を捻じ伏せた。

 

○ロックソルティ

CV:前田剛

パートナー:リアス・グレモリー

一誠への呼び方:お父様

モチーフ:マイティアクションXに登場するライバルキャラ『ソルティ伯爵』の色違いキャラ

マイティアクションXオリジンガシャットを媒体としたバグスター。

【2章】パートナーであるリアスとの初対面の際、滅びの魔力を吸収、我が物として見せた。

 

○チャーリー

CV:穴井勇輝

パートナー:リアス・グレモリー

一誠への呼び方:ダディ

モチーフ:シャカリキスポーツに登場するライバル選手『チャーリー』

シャカリキスポーツガシャットを媒体としたバグスター。

 

○リボル

CV:稲田徹

パートナー:姫島朱乃

一誠への呼び方:父上

モチーフ:バンバンシューティングに登場する敵部隊長『リボル』

バンバンシューティングガシャットを媒体としたバグスター。朱乃の父であるバラキエルと声がそっくりだと言われているが(ry

 

○バーニア

CV:松田健一郎

パートナー:姫島朱乃

一誠への呼び方:親父

モチーフ:ジェットコンバットに登場する敵パイロット『バーニア』

ジェットコンバットガシャットを媒体としたバグスター。

 

○ギリル

CV:山本千尋

パートナー:塔城白音

一誠への呼び方:パパ

モチーフ:バクレツファイターに登場する女性サイボーグ戦士『ギリル』

バクレツファイターガシャットを媒体としたバグスター。

【1章】アーシアと遭遇し、教会への道案内をしていた一誠と鉢合わせし、役目を引き継ぐ。

その帰りにはぐれエクソシストと思しき集団からの襲撃を受けるも、返り討ちにした。

 

○ロボル

CV:棚橋弘至

パートナー:塔城白音

一誠への呼び方:親父

モチーフ:メタリックフィストに登場するサイボーグレスラー『ロボル』

メタリックフィストガシャットを媒体としたバグスター。自らをバグスター1の天才レスラーと称している。

 

○ラヴリカ

CV:諏訪部順一

パートナー:アーシア・アルジェント

一誠への呼び方:お父様

モチーフ:ときめきクライシスに登場する案内キャラ『ラヴリカ』

ときめきクライシスガシャットを媒体としたバグスター。普段はリアスの兄であるサーゼクスの姿に擬態している。

 

○ポッピーピポパポ(ポッピー)

CV:松田るか

パートナー:アーシア・アルジェント

一誠への呼び方:パパ

モチーフ:ドレミファビートに登場するマスコットキャラ『ポッピーピポパポ』

ドレミファビートガシャットを媒体としたバグスター。戦闘力が余りない事から、普段はバグスター達のオペレーションを行っている。

 

○クロト

CV:岩永徹也

パートナー:ギャスパー・ヴラディ

一誠への呼び方:パパ

モチーフ:ハコニワウォーズに登場する副官『クロト』

ハコニワウォーズガシャットを媒体としたバグスター。戦闘力が余りない事から、普段はバグスター達のオペレーションを行っている。かなりのファザコン。

【4章】禍の団による襲撃をいち早く察知し、ギャスパー達に指示を飛ばした。

 

○マサムネ

CV:貴水博之

パートナー:ギャスパー・ヴラディ

一誠への呼び方:我が父

モチーフ:ホームガーディアンに登場するラスボス指揮官『マサムネ』

ホームガーディアンガシャットを媒体としたバグスター。戦闘力が余りない事から、普段はバグスター達のオペレーションを行っている。

 

○アランブラ

CV:松本大

パートナー:木場祐斗

一誠への呼び方:お父様

モチーフ:タドルクエストに登場する悪の大魔法使い『アランブラ』

タドルクエストガシャットを媒体としたバグスター。

【2章】部室に突如現れたライザーの狼藉を止めるべく一誠に呼び出され、己の魔術を駆使する。

 

○グラファイト

CV:町井祥真

パートナー:木場祐斗

一誠への呼び方:我が父

モチーフ:マドウダンジョンの主人公『グラファイト』

マドウダンジョンガシャットを媒体としたバグスター。

【4章】禍の団による襲撃の折、ナイトオブサファリガシャットを用いて真の姿『龍騎士態』に変貌、襲撃者を圧倒した。

【5章】所有していたナイトオブサファリガシャットを、祐斗に譲渡した模様。

 

○ハテナ

CV:小西克幸

パートナー:塔城黒歌

一誠への呼び方:お父様

モチーフ:ハテサテパズルに登場するマスコットキャラ『ハテナ』

ハテサテパズルガシャットを媒体としたバグスター。

 

○ドラル

CV:鈴之助

パートナー:塔城黒歌

一誠への呼び方:親父

モチーフ:メテオブロッカーに登場する案内キャラ『ドラル』

メテオブロッカーガシャットを媒体としたバグスター。

 

○モータス

CV:大畑伸太郎

パートナー:ゼノヴィア

一誠への呼び方:オトン

モチーフ:バクソウバイクに登場するライバルレーサー『モータス』

バクソウバイクガシャットを媒体としたバグスター。

【1章】魔力不足の為に転移用の魔法陣が使えなかった一誠の為に、契約者の家まで送迎を行う。

その帰り際にはぐれエクソシストからの襲撃を受けたが、一誠の協力もあって返り討ちにした。

 

○カイデン

CV:かわのをとや

パートナー:ゼノヴィア

一誠への呼び方:父上

モチーフ:ギリギリチャンバラに登場する剣豪『カイデン』

ギリギリチャンバラガシャットを媒体としたバグスター。バグスター1の実力を有する。

【3章】

パトロール中、2振りのエクスカリバー(『天閃の聖剣』と『透明の聖剣』)を装備していたはぐれエクソシストから襲撃されたが、難なく返り討ちにし、2振りとも鹵獲した。

 

○バガモン

CV:小山剛志

パートナー:紫藤イリナ

一誠への呼び方:父ちゃん

モチーフ:ジュージューバーガーに登場する食いしん坊モンスター『バガモン』

ジュージューバーガーガシャットを媒体としたバグスター。争いを好まない性格から、普段は兵藤家の家事を行っており、一誠(と白音)の昼食用に毎日オリジナルバーガーを作っている。

 

○パラド

CV:甲斐翔真

パートナー:なし

一誠への呼び方:親父

モチーフ:ドクターマイティXXに登場するパートナードクター『パラド』

ドクターマイティXXガシャットを媒体としたバグスター。戦闘力が余りない事から、普段はバグスター達のオペレーションを行っている他、媒体としてるガシャットの特性故に、バグスターウィルス免疫付加処置を施している。



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登場人物紹介(仮面ライダー関係以外)

◎ヴァーリチーム

○ヴァーリ・ルシファー

CV:逢坂良太

種族:ハーフ悪魔(人間とのハーフ)

神器:『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)』…基本的に原作通り。

堕天使勢力の特命組織、通称『ヴァーリチーム』リーダー。現在は堕天使側の使者に任ぜられ、駒王学園2年の生徒として在籍している。

【4章】原作同様、禍の団からスカウトされたが一誠の言葉に心を動かされ、断った。

その後、禍の団に『赤龍帝』がスカウトされた事から勧誘の話が無くなったとの事。

 

○アーサー・ペンドラゴン

CV:石川界人

種族:人間

ヴァーリチームメンバー。アーサー王の末裔で、ルフェイの兄。現在は堕天使側の使者に任ぜられ、駒王学園の教師(英語担当)として在籍している。

 

○ルフェイ・ペンドラゴン

CV:篠田みなみ

種族:人間

ヴァーリチームメンバー。アーサー王の末裔で、アーサーの妹。現在は堕天使側の使者に任ぜられ、駒王学園中等部の生徒として在籍している。

 

美猴(びこう)

CV:保村真

種族:猿の妖怪

ヴァーリチームメンバー。孫悟空の末裔。現在は堕天使側の使者に任ぜられ、駒王学園の用務員として在籍している。

 

◎ゼファードル・グラシャラボラス眷属

○ゼファードル・グラシャラボラス

CV:村田大志

種族:純血悪魔

ランク:王

グラシャラボラス家次期当主『代理』にして、『L(エル)』ことレイヴェルと共に『Z(ゼータ)』としてその名を轟かせる天才ゲーマー。原作と比べて他人を客観的に見定める事が出来る等、冷静になっている。一誠とは彼が悪魔に転生する前から親交があった。

【5章】原作とは違い、サイラオーグ眷属とのレーティング・ゲームで完封勝利を収め、その終了間際サイラオーグを「ウァプラの操り人形」と痛烈に批判、魔王には絶対なれないと断じた。

【6章】サイラオーグ眷属とのレーティング・ゲームで完封勝利を収めた事で冥界での評価が見直され、正式にグラシャラボラス家次期当主となる。

その人気にあやかって自らの冠番組『ZSTV』が放送される事に。

 

○リース

CV:小松未可子

種族:転生悪魔(ヴァルキリー)

ランク:女王

外見:聖剣伝説3のリース。

ゼファードルの眷属である少女。元は北欧の主神オーディンに仕えるヴァルキリーだった。

 

西村(にしむら)鉄男(てつお)

CV:嶋田真

種族:転生悪魔(人間)

ランク:戦車

外見:遊戯王ZEXALの武田鉄男。

ゼファードルの眷属である少年。Zとしての彼の弟子でもあり、ゲーマー『鉄心(てっしん)』として活動している。名前の由来は武田鉄男とDJ YOSHITAKA。

 

田口(たぐち)雪奈(ゆきな)

CV:小林ゆう

種族:転生悪魔(人間)

ランク:戦車

外見:ファイアーエムブレム覚醒のルキナ。

ゼファードルの眷属である少女。Zとしての彼の弟子でもあり、ゲーマー『ルキナ』として活動している。名前の由来はルキナとTAG。

 

木村(きむら)(なぎさ)

CV:金田アキ

種族:転生悪魔(人間)

ランク:騎士

外見:遊戯王5D'sのカーリー渚。

ゼファードルの眷属である少女。Zとしての彼の弟子でもあり、ゲーマー『カーリー』として活動している。名前の由来はカーリー渚とARM。

 

○ナッシュ・ベリアル

CV:増田俊樹

種族:純血悪魔

ランク:騎士

外見:遊戯王ZEXALの神代凌牙。

ゼファードルの眷属である少年。元72柱の一角ベリアル家出身で、レーティング・ゲームのチャンプであるディハウザーの親戚。メラグの双子の兄。

 

○メラグ・ベリアル

CV:藩めぐみ

種族:純血悪魔

ランク:僧侶

外見:遊戯王ZEXALの神代璃緒。

ゼファードルの眷属である少女。元72柱の一角ベリアル家出身で、レーティング・ゲームのチャンプであるディハウザーの親戚。ナッシュの双子の妹。

 

九十九(つくも)遊一(ゆういち)

CV:畠中祐

種族:転生悪魔(人間)

ランク:僧侶

外見:遊戯王ZEXALの九十九遊馬。

ゼファードルの眷属である少年。Zとしての彼の弟子でもあり、ゲーマー『U1(ゆういち)』として活動している。名前の由来は九十九遊馬とU1-ASAMi。

 

◎その他の登場人物

○バラキエル

CV:稲田徹

種族:堕天使

朱乃の父親で、グリゴリの最高幹部。一誠と朱乃の交際は既に認めている、というより式場の手配をしようとする等、発展させようとしている。一方でアザゼルへの態度はかなり辛辣で、事ある毎に鉄拳制裁を見舞っている。

【4章】ミカエルと一誠の非公式会談に同席、一誠と初対面し、家族を救ってくれた事への感謝の意思を示した。

【5章】若手悪魔同士のレーティング・ゲームに向けてリアス達の指導を担当した。

【7章】日本神話との会談の為に来日したオーディンの護衛として同行、その縁でロキによる襲撃を迎え撃つ役割も担った。

 

○サイラオーグ・バアル

CV:中村悠一

種族:純血悪魔

ランク:王

大王バアル家次期当主。

【5章】原作とは違い、ゼファードル眷属とのレーティング・ゲームで完敗してしまい、その終了間際にゼファードルから「ウァプラの操り人形」と批判される。



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仮面ライダー紹介(エグゼイド)

◎仮面ライダーエグゼイド

一誠が変身する仮面ライダー。ジャンルはアクション、専用武器はガシャコンブレイカー及びガシャコンキースラッシャー。変身時の決め台詞は「ノーコンティニュー(レベルXX時のみ「超協力プレー」)で、クリアする(もしくは「して見せる」)!」

 

○アクションゲーマーレベル1

パンチ力:7.7t

キック力:11.5t

ジャンプ力:一跳び30.5m

走力:100mを7.6秒

ゲーマドライバーにマイティアクションXガシャットを装填して変身する、待機形態。

変身音声は『レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!アイムア仮面ライダー!』(全ライダー共通)。

TV本編の様な能力を有していない為、この形態で戦う事は殆どない。

 

○アクションゲーマーレベル2

パンチ力:5.7t

キック力:10.2t

ジャンプ力:一跳び43.1m

走力:100mを3.2秒

アクションゲーマーレベル1時、或いはガシャット装填と同時に「大変身!」の掛け声と共にゲーマドライバーのレバーを開いて変身する、通常形態。

変身音声は『マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクション、エックス!』。

 

○ロボットアクションゲーマーレベル3

パンチ力:57t(強化アーム)/11.4t

キック力:14.3t

ジャンプ力:一跳び39.3m

走力:100mを4秒

「大大大変身!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーの左側のレベルアップ用スロットにゲキトツロボッツガシャットを装填する事で、スクリーンから召喚したロボットゲーマと合体した形態。

変身音声は『マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクション、エックス!アガッチャ!ぶっ飛ばせ!突撃!激突パンチ!ゲキトツロボッツ!』

 

○ナイトアクションゲーマーレベル5(プレデター)

パンチ力:19t

キック力:25t

ジャンプ力:一跳び49m

走力:100mを2.7秒

「大大大大大変身!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーの左側のレベルアップ用スロットにリバースクロスナイトガシャットを装填する事で、スクリーンから召喚したナイトゲーマと合体した形態。エグゼイドの場合は、ナイトゲーマの頭部が装甲『プレデターファング』として装着されると共に、左腕にショットガン『ディザスターショット』が装備される。

変身音声は『マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクション、エックス!アガッチャ!マックス、パワー!マックス、スピード!リ、バース、クロス、ナイト、エグゼイド!』(BGMはゴッドイーターのBGM『街を覆う影』の冒頭部分)

 

○アマゾンアクションゲーマーレベル7

パンチ力:23.3t

キック力:29.1t

ジャンプ力:一跳び66.6m

走力:100mを2.3秒

「アマゾン!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーにマイティアクションXガシャットとアルファオメガアマゾンガシャットを装填、レバーを開いて変身する形態。

イメージモデルは仮面ライダーアマゾンオメガ。

変身音声は『マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクション、エックス!アガッチャ!デンジャーデンジャー!野生本能!アルファオメガアマゾン!』(BGMはデンジャラスゾンビ(レベルアップ時)等と同様)

両腕・両脚から生やしたヒレ状の刃『フィンスラッシャー』やガシャコンブレイカー等を用い、アルファオメガアマゾンガシャットの仕様による衝動を活かした野性的なバトルスタイルで戦う。

また左手首から生やしたグリップ状の機構『ブレイクアームズ』を引き抜く事で様々な武器として用いる事が出来るとの事。

 

○ダブルアクションゲーマーレベルX

パンチ力:22.2t

キック力:28.7t

ジャンプ力:一跳び54m

走力:100mを2.2秒

ゲーマドライバーにマイティブラザーズXガシャットを装填、レバーを開いて変身する待機形態。

変身音声は『マイティブラザーズ!二人で一人!マイティブラザーズ!二人でビクトリー、エックス!』

此方もTV本編の様な能力を有していない為、この形態で戦う事は殆どなく、後にレベルXXへ直接変身する様になる。

 

○ダブルアクションゲーマーレベルXX

パンチ力:32.3t

キック力:40.6t

ジャンプ力:一跳び66.6m

走力:100mを2秒

ダブルアクションゲーマーレベルX時、或いはガシャット装填と同時に「だーい、変身!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーのレバーを開閉して変身、2人に分裂する形態。

変身音声は『俺がお前で!お前が俺で!ウィーアー!マイティマイティブラザーズ!ヘイ!ダブルエェェェェックス!』

TV本編通り連携強化装置『スマッシュリンカー』を搭載している他、『新世紀エヴァンジェリオン』に登場する第七使徒の能力をベースとした相互修復装置『SeventhMirroringSystem(SMS)』を搭載した事で、2人同時に同じ部分を攻撃しないとダメージを与えられない仕様となっている為、それを活かすべくR(一誠)が後衛、L(ゲノムス)が前衛として戦う。

●ダブルアクションゲーマーレベルXX R

オレンジを基調とした方。人格は一誠が担っている。

●ダブルアクションゲーマーレベルXX L

水色を基調とした方。人格はゲノムスが担っている。

 

◎エグゼイドの武装

○ガシャコンブレイカー

エグゼイドが所有するガシャコンウェポン。

ダブルアクションゲーマーレベルXX時は主にL(ゲノムス)が使用する。

○ガシャコンキースラッシャー

ミカエルからプレゼントされた聖剣アスカロンを改造して作り上げたガシャコンウェポン。

ダブルアクションゲーマーレベルXX時は主にR(一誠)が使用する。

基本的な性能はTV本編通りだが、アスカロンの『龍殺しの聖剣』としての性質もそのまま保持している為、悪魔やドラゴンに対してはより強大なダメージを与えられる。

尚、改造と言っても一誠曰く「ガシャコンウェポンとしての『ガワ』を付けただけ」らしく、やろうと思えば即座に分解する事で元のアスカロンに戻せるとの事。

 

◎エグゼイドの必殺技

○マイティ・クリティカル・フィニッシュ

ガシャコンブレイカーのスロットにマイティアクションXガシャットを装填する事で発動する技。

●ブレードモード

TV本編同様、刀身にエネルギーを収束させ、鋭い斬撃を連続で放ち相手を切り裂く。

●ハンマーモード

此方もTV本編同様、打撃部にエネルギーを収束させ、強力な一撃を叩き付ける。

○ゲキトツ・クリティカル・ストライク

ゲーマドライバーのキメワザスロットにゲキトツロボッツガシャットを装填する事で発動する技。TV本編同様、左腕の強化アーム『ゲキトツスマッシャー』にエネルギーを収束させ、強烈なパンチを叩き込む。

○アルファオメガ・クリティカル・ストライク

キメワザスロットにアルファオメガアマゾンガシャットを装填する事で発動する技。

巨大化したフィンスラッシャーで相手を切り刻む。

○マイティブラザーズ・クリティカル・ストライク

ダブルアクションゲーマーレベルXX変身時、ゲーマドライバーのレバーを開閉する事で発動する技。TV本編同様、2人同時に飛び蹴りを放つ。

○マイティブラザーズ・クリティカル・フィニッシュ

ガシャコンキースラッシャーのスロットにマイティブラザーズXXガシャットを装填する事で発動する技。TV本編同様、ガシャコンキースラッシャーが2つになり、膨大なエネルギーを放つ。

 

◎エグゼイドが所有するガシャット

マイティアクションX:変身用ガシャット。ジャンルは『2Dアクション』。

ゲキトツロボッツ:レベルアップ用ガシャット。ジャンルは『ロボットバトル』。

リバースクロスナイト:レベルアップ用ガシャット。ジャンルは『ハンティングアクション』。媒体とするバグスターは存在せず、起動と共に10個に分裂して運用する。その性質上、ライダーが10人(もしくはバグスターが10体)いないと運用出来ない。

マイティブラザーズXX:ダブルサイズの変身用ガシャット。ジャンルは『協力アクション』。

アルファオメガアマゾン:レジェンドライダーガシャットと呼ばれるガシャットの1つ。モチーフは仮面ライダーアマゾンズ。



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仮面ライダー紹介(ゲンム)

◎仮面ライダーゲンム

リアスが変身する仮面ライダー。ジャンルはアクション、専用武器はガシャコンバグヴァイザー。変身時の決め台詞は「ノーコンティニューで、クリアする(もしくは「して見せる」)わ!」、レベル7時のみ「通りすがりの仮面ライダーよ。覚えておくと良いわ!」

 

○アクションゲーマーレベル1

パンチ力:7.7t

キック力:11.5t

ジャンプ力:一跳び30.5m

走力:100mを7.6秒

ゲーマドライバーにマイティアクションXオリジンガシャットを装填して変身する、待機形態。

変身音声は『レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!アイムア仮面ライダー!』(全ライダー共通)。

基本的に他のライダーと同様。

 

○アクションゲーマーレベル2

パンチ力:5.7t

キック力:10.2t

ジャンプ力:一跳び43.1m

走力:100mを3.2秒

アクションゲーマーレベル1時、或いはガシャット装填と同時に「グレード2!」の掛け声と共にゲーマドライバーのレバーを開いて変身する、通常形態。

変身音声は『マイティジャンプ!マイティキック!マイティアクショォォォォン!エックス!』。

 

○スポーツアクションゲーマーレベル3

パンチ力:10.3t

キック力:18.4t

ジャンプ力:一跳び45.3m

走力:100mを3秒

「グレード3!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーの左側のレベルアップ用スロットにシャカリキスポーツガシャットを装填する事で、スクリーンから召喚したスポーツゲーマと合体した形態。

変身音声は『マイティジャンプ!マイティキック!マイティアクショォォォォン!エックス!アガッチャ!シャカリキシャカリキ!バッドバッド!シャカットリキット!シャカリキスポーツ』

 

○ナイトアクションゲーマーレベル5(バスターブレード)

パンチ力:19t

キック力:25t

ジャンプ力:一跳び49m

走力:100mを2.7秒

「グレード5!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーの左側のレベルアップ用スロットにリバースクロスナイトガシャットを装填する事で、スクリーンから召喚したナイトゲーマと合体した形態。ゲンムの場合は、左腕に大剣『ディスペラーバスター』が装備される。

変身音声は『マイティジャンプ!マイティキック!マイティアクショォォォォン!エックス!アガッチャ!マックス、パワー!マックス、スピード!リ、バース、クロス、ナイト、ゲンム!』

 

○ディケイドアクションゲーマーレベル7

パンチ力:24t

キック力:32t

ジャンプ力:一跳び100m

走力:100mを2秒

「グレード7!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーにマイティアクションXオリジンガシャットとバーコードウォーリアーディケイドガシャットを装填、レバーを開いて変身する形態。

イメージモデルは仮面ライダーディケイド・コンプリートフォーム。

変身音声は『マイティジャンプ!マイティキック!マイティアクショォォォォン!エックス!アガッチャ!通りすがる!世界巡る!おのれディケイドォォォ!』

肩・額・胸部に強化アーマー『ヒストリーオーナメント』が展開され、ディケイドのそれの如くクウガからディケイドまでのライダーカードが装填される。

この状態でガシャコンバグアイザーにバーコードウォーリアーディケイドガシャットを装填する事で、後述する必殺技という形でクウガからキバまでのライダーの力を引き出す事が出来る。

 

○ゾンビゲーマーレベルX

パンチ力:測定不能

キック力:測定不能

ジャンプ力:測定不能

走力:測定不能

「グレードX!」の掛け声と共に、バグルドライバーにデンジャラスゾンビガシャットを装填、起動する事で変身する形態。

変身音声は『デンジャーデンジャー!ジェノサイド!デスザクライシス!デンジャラスゾンビ!フゥゥゥ!』

データ化した滅びの魔力を内包したデンジャラスゾンビガシャットを用いて変身している事から、その身はリアスの兄であるサーゼクスが本気を出した時と同様、滅びの魔力『その物』と化しており、これによってゲンムへのあらゆる攻撃が『滅び』、一挙手一投足が全て滅びの一撃となる。

また両手に嵌められた手袋『リビングデッドグローブ』と両足に履かれた靴『リビングデッドシューズ』が周りの物体を不必要に滅ぼす事の無い様に制御している為、サーゼクスとは違い地上を歩く事も、武器を持って戦う事も出来る。

更に変身中はデンジャラスゾンビガシャット内の滅びの魔力データがコピーされて供給され続ける為、体力という概念その物がないのでライダーゲージが表示されておらず、よってTV本編とは違いライフジェイルアーマーが装備されてなく、露出したエクスコントローラーはボタン部分が真っ白になっている。

この様に『無敵』と言っても過言では無い耐久力を有している為、レーティング・ゲームでは使用禁止となっている。

 

○ゾンビアクションゲーマーレベルX-0

パンチ力:81.9t

キック力:88.8t

ジャンプ力:一跳び66.6m

走力:100mを1.4秒

「グレードX-0!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーにマイティアクションXオリジンガシャットとデンジャラスゾンビガシャットを装填、レバーを開いて変身する形態。

変身音声は『マイティジャンプ!マイティキック!マイティアクショォォォォン!エックス!アガッチャ!デンジャーデンジャー!デスザクライシス!デンジャラスゾンビ!』

基本的に先述したゾンビゲーマーレベルXの代替形態として、レーティング・ゲームの際に変身する。

 

◎ゲンムの武装

○ガシャコンバグヴァイザー

ゲンムが所有するガシャコンウェポン。

また、バグスターバックルを装着する事でゾンビゲーマーレベルXに変身する為の変身ベルト『バグルドライバー』にする事が出来る。

 

◎ゲンムの必殺技

○マイティ・クリティカル・ストライク

ゲーマドライバーのキメワザスロットにマイティアクションXオリジンガシャットを装填する事で発動する技。

相手に連続での飛び蹴りを叩き込み、その際に滅びの魔力を流し込む。

○シャカリキ・クリティカル・ストライク

キメワザスロットにシャカリキスポーツガシャットを装填する事で発動する技。

●レベル2

スクリーンから出現したスポーツゲーマに乗り、メガスピンをしながら突進する。

●レベル3

両肩に装備された車輪型パーツ『トリックフライホイール』に滅びの魔力を纏わせて、投げつける。

○バーコードウォーリアー・クリティカル・ストライク

キメワザスロットにバーコードウォーリアーディケイドガシャットを装填する事で発動する技。

強大なエネルギーを右足に収束させ、飛び蹴りを放つ。

○クリティカル・キック

ガシャコンバグヴァイザーのスロットにバーコードウォーリアーディケイドガシャットを装填、ディスプレイに表示されたアイコンの中からクウガのアイコンを選ぶ事で発動する技。

仮面ライダークウガ・アルティメットフォームを召喚し、同時に飛び蹴りを放つ。

○クリティカル・クラッシュ

アギトのアイコンを選ぶ事で発動する技。

仮面ライダーアギト・シャイニングフォームを召喚し、一緒に相手を切り刻む。

○クリティカル・ストーム

龍騎のアイコンを選ぶ事で発動する技。

仮面ライダー龍騎・サバイブとドラグランザー、ブラックドラグランザーを召喚、バイク形態に変形したドラグランザー達に搭乗し、突進しながら火球を連射する。

○クリティカル・スマッシュ

ファイズのアイコンを選ぶ事で発動する技。

仮面ライダーファイズ・ブラスターフォームを召喚し、同時に飛び蹴りを放ち、ヒットした瞬間に真紅のエネルギーを解放する。

○クリティカル・フラッシュ

ブレイドのアイコンを選ぶ事で発動する技。

仮面ライダーブレイド・キングフォームを召喚し、5枚のエネルギー板を突破しながら斬撃を放つ。

○クリティカル・セイバー

響鬼のアイコンを選ぶ事で発動する技。

仮面ライダー響鬼・装甲を召喚し、エネルギーを纏った巨大な斬撃を放つ。

○クリティカル・サイクロン

カブトのアイコンを選ぶ事で発動する技。

仮面ライダーカブト・ハイパーフォームを召喚し、同時に砲撃を行う。

○クリティカル・パンチ

電王のアイコンを選ぶ事で発動する技。

仮面ライダー電王・クライマックスフォームを召喚し、同時に飛び掛かりながらストレートパンチを放つ。

○クリティカル・ブレイク

キバのアイコンを選ぶ事で発動する技。

仮面ライダーキバ・エンペラーフォームを召喚し、一緒に相手を切り刻む。

○デンジャラス・クリティカル・ストライク

キメワザスロットにデンジャラスゾンビガシャットを装填する事で発動する技。

滅びの魔力で出来た分身を生成し、相手に組み付かせて滅ぼさせる技だが、ディオドラとのレーティング・ゲームに乱入した禍の団との戦いでは、突如として発生した滅びの魔力による暴風から身を守る為に発動した。

○クリティカル・デッド

バグルドライバーのAボタンとBボタンを同時に押して待機状態にした後、Bボタンを押す事で発動する技。基本的にデンジャラス・クリティカル・ストライクと同じ。

 

◎ゲンムが所有するガシャット

マイティアクションXオリジンガシャット:変身用ガシャット。マイティアクションXの試作版。リアスが受け取った際、内包していたバグスターウィルスが滅びの魔力を取り入れた為、リアスにしか扱えなくなってしまう。

シャカリキスポーツ:レベルアップ用ガシャット。ジャンルは『Xスポーツ』。

デンジャラスゾンビ:リアス専用に開発された変身用ガシャット。最初から滅びの魔力を内包している為、リアスにしか扱えない。

バーコードウォーリアーディケイド:レジェンドライダーガシャットと呼ばれるガシャットの1つ。モチーフは仮面ライダーディケイド。



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仮面ライダー紹介(ポッピー)

◎仮面ライダーポッピー

システムボイス:松田るか(ポッピーピポパポ)

アーシアが変身する仮面ライダー。ジャンルはサウンド、専用武器はガシャコンバグヴァイザー(トライ)。変身時の決め台詞は「ポパピプペナルティ、退場です!」

 

○クライシスゲーマーレベル1

パンチ力:7.7t

キック力:11.5t

ジャンプ力:一跳び30.5m

走力:100mを7.6秒

ゲーマドライバーにときめきクライシスガシャットを装填して変身する、待機形態。

変身音声は『レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!アイムア仮面ライダー!』(全ライダー共通)。

基本的に他のライダーと同様。

 

○クライシスゲーマーレベル2

パンチ力:6t

キック力:7t

ジャンプ力:一跳び32m

走力:100mを3.4秒

クライシスゲーマーレベル1時、或いはガシャット装填と同時に「セカンドステージ!」の掛け声と共にゲーマドライバーのレバーを開いて変身する、通常形態。

外見は基本的にTV本編の仮面ライダーポッピーと変わらないが、胸部のディスプレイが他のライダーと同じ、背部にレベル1時の頭部装甲が装着されている等の違いがある。

変身音声は『ちょっぴり照れるわ、ときめき!クライシス!』。

 

○ビートクライシスゲーマーレベル3

パンチ力:12.3t

キック力:16.8t

ジャンプ力:一跳び36.3m

走力:100mを3.8秒

「サードステージ!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーの左側のレベルアップ用スロットにドレミファビートガシャットを装填する事で、スクリーンから召喚したビートゲーマと合体した形態。

変身音声は『ちょっぴり照れるわ、ときめき!クライシス!アガッチャ!ド、ド、ドレミファソラシド!オーケー!ドレミファビートォォォォ!』

 

○ナイトクライシスゲーマーレベル5(ヘヴィムーン)

パンチ力:19t

キック力:25t

ジャンプ力:一跳び49m

走力:100mを2.7秒

「ファイナルステージ!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーの左側のレベルアップ用スロットにリバースクロスナイトガシャットを装填する事で、スクリーンから召喚したナイトゲーマと合体した形態。ポッピーの場合は、左腕に円形の刃『メテオライトムーン』が装備される。

変身音声は『ちょっぴり照れるわ、ときめき!クライシス!アガッチャ!マックス、パワー!マックス、スピード!リ、バース、クロス、ナイト、ポッピー!』

 

○フォーゼクライシスゲーマーレベル7

パンチ力:24.5t

キック力:29.2t

ジャンプ力:一跳び69m

走力:100mを1.9秒

「エクストラステージ!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーにときめきクライシスガシャットとスペースギャラクシーフォーゼガシャットを装填、レバーを開いて変身する形態。

イメージモデルは仮面ライダーフォーゼ・コズミックステイツ。

変身音声は『ちょっぴり照れるわ、ときめき!クライシス!アガッチャ!ぶっ飛ばせ!友情!青春ギャラクシー!3.2.1.フォーゼ!』

 

○ときめきクライシスゲーマーレベルX

パンチ力:60.3t

キック力:70.1t

ジャンプ力:一跳び64m

走力:100mを1.7秒

「アンコールエクストラステージ!」の掛け声と共に、バグルドライバーⅢにときめきクライシスガシャットを装填、起動する事で変身する形態。

変身音声は『ドリーミング・ガール!ぱわー!恋のシミュレーション!乙女はい・つ・も・ときめきクラシス!』

 

◎ポッピーの武装

○ガシャコンバグヴァイザーⅢ

ポッピーが所有するガシャコンウェポン。

また、バグスターバックルを装着する事でときめきクライシスゲーマーレベルXに変身する為の変身ベルト『バグルドライバーⅢ』にする事が出来る。

基本的な能力は他のガシャコンバグヴァイザー系列と変わらないが、カラーリングがピンク等のパステルカラーになっている他、システムボイスがポッピーピポパポの声となっている。

 

◎ポッピーの必殺技

○ドレミファ・クリティカル・ストライク

ゲーマドライバーのキメワザスロットにドレミファビートガシャットを装填する事で発動する技。

楽譜型のエネルギーを放出、相手を拘束する。

○クリティカル・ドリーム

バグルドライバーⅢのAボタンとBボタンを同時に押して待機状態にした後、Aボタンを押す事で発動する技。

何処からともなくマイクを取り出し、これまた何処からともなく流れるBGMに合わせて歌い、その曲調に応じた効果を有したエネルギーを放出する。

 

◎ポッピーが所有するガシャット

ときめきクライシス:変身用ガシャット。ジャンルは『サウンドノベル』。

ドレミファビート:レベルアップ用ガシャット。ジャンルは『音ゲー』。今作ではポッピーピポパポバージョンとなっている。

スペースギャラクシーフォーゼ:レジェンドライダーガシャットと呼ばれるガシャットの1つ。モチーフは仮面ライダーフォーゼ。



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仮面ライダー紹介(ブレイブ)

◎仮面ライダーブレイブ

祐斗が変身する仮面ライダー。ジャンルはRPG、専用武器はガシャコンソード。変身時の決め台詞は「これより、○○切除手術を始める!」、レベル7時のみ「此処からは僕のステージだ!」

 

○クエストゲーマーレベル1

パンチ力:7.7t

キック力:11.5t

ジャンプ力:一跳び30.5m

走力:100mを7.6秒

ゲーマドライバーにタドルクエストガシャットを装填して変身する、待機形態。

変身音声は『レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!アイムア仮面ライダー!』(全ライダー共通)。

基本的に他のライダーと同様。

 

○クエストゲーマーレベル2

パンチ力:7.5t

キック力:13.5t

ジャンプ力:一跳び32.7m

走力:100mを4.2秒

クエストゲーマーレベル1時、或いはガシャット装填と同時に「術式レベル2!」の掛け声と共にゲーマドライバーのレバーを開いて変身する、通常形態。

変身音声は『辿る巡る!辿る巡る!タドルクエストォォォォ!』

 

○ダンジョンクエストゲーマーレベル3

パンチ力:13.6t

キック力:19.8t

ジャンプ力:一跳び47.9m

走力:100mを3秒

「術式レベル3!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーの左側のレベルアップ用スロットにマドウダンジョンガシャットを装填する事で、スクリーンから召喚したダンジョンゲーマと合体した形態。

イメージモデルは仮面ライダーブレイブ・ハンタークエストゲーマーレベル5フルドラゴン(但しドラゴンソード、ドラゴンガンは装備されていない)。

変身音声は『辿る巡る!辿る巡る!タドルクエストォォォォ!アガッチャ!惑う世界!深まる闇!マドウダンジョン!』(BGMはタドルレガシー(変身時)と同様)

 

○ナイトクエストゲーマーレベル5(ショートナイフ)

パンチ力:19t

キック力:25t

ジャンプ力:一跳び49m

走力:100mを2.7秒

「術式レベル5!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーの左側のレベルアップ用スロットにリバースクロスナイトガシャットを装填する事で、スクリーンから召喚したナイトゲーマと合体した形態。ブレイブの場合は、左腕に短刀『クラウディアナイフ』が装備される。

変身音声は『辿る巡る!辿る巡る!タドルクエストォォォォ!アガッチャ!マックス、パワー!マックス、スピード!リ、バース、クロス、ナイト、ブレイブ!』

 

○サファリクエストゲーマーレベル5

パンチ力:18.2t

キック力:24.4t

ジャンプ力:一跳び48.7m

走力:100mを2.8秒

「術式レベル5!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーにタドルクエストガシャットとナイトオブサファリガシャットを装填、レバーを開いて変身する形態。

変身音声は『辿る巡る!辿る巡る!タドルクエストォォォォ!アガッチャ!ライオン!シマウマ!キリン!真夜中のジャングル!ナイトオブサファリ!』

 

○ガイムクエストゲーマーレベル7

パンチ力:24t

キック力:32.1t

ジャンプ力:一跳び40m

走力:100mを2.9秒

「術式レベル7!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーにタドルクエストガシャットと刀剣伝ガイムガシャットを装填、レバーを開いて変身する形態。

イメージモデルは仮面ライダー鎧武・極アームズ。

変身音声は『辿る巡る!辿る巡る!タドルクエストォォォォ!アガッチャ!オレンジ!イチゴにパイナップル!バナナ!ブドウ!メロン!ソイヤ!ガイムゥゥゥ!』

Fateシリーズにおけるギルガメッシュの宝具『王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)』の如く異次元から多種多様なウェポンを出現、それを射出したり自ら手に取ったりして戦う。

 

○ファンタジーゲーマーレベルX

パンチ力:61.7t

キック力:71.6t

ジャンプ力:一跳び57m

走力:100mを2.2秒

「術式レベルX!」の掛け声と共に、ガシャットギアデュアルβのダイヤルをタドルファンタジー側に捻りゲーマドライバーに装填、レバーを開いて変身する形態。

変身音声は『辿る巡る!アールピージー!タドォォォォルファンタジー!』

 

◎ブレイブの武装

○ガシャコンソード

ブレイブが所有するガシャコンウェポン。

●ガシャコンソード・オーバーエッジ

ダンジョンゲーマーレベル3に変身すると共に、ダンジョンゲーマの尾であるブレードパーツ『テイルエッジ』と合体した薙刀型の形態。

 

◎ブレイブの必殺技

○タドル・クリティカル・フィニッシュ

ガシャコンソードのスロットにタドルクエストガシャットを装填する事で発動する技。刀身に纏ったエネルギー(炎剣モード時は炎、氷剣モード時は冷気)の刃を放つ。

○マドウ・クリティカル・フィニッシュ(聖魔黒龍剣)

ガシャコンソード・オーバーエッジのスロットにマドウダンジョンガシャットを装填する事で発動する技。灰色のオーラを纏った斬撃を放つ。

○刀剣伝・クリティカル・フィニッシュ

ガシャコンソードのスロットに刀剣伝ガイムガシャットを装填する事で発動する技。フルーツの力を纏った斬撃を放つ。

○タドル・クリティカル・スラッシュ

ファンタジーゲーマーレベルX変身時にゲーマドライバーのレバーを開閉する事で発動する技。TV本編同様、刀身に纏った膨大なエネルギーの刃で切り裂く。

 

◎ブレイブが所有するガシャット

タドルクエスト:変身用ガシャット。ジャンルは『RPG』。

マドウダンジョン:レベルアップ用ガシャット。ジャンルは『ローグライクRPG』。

ナイトオブサファリ:レベルアップ用ガシャット。ジャンルは『サバイバルライフ』。元はグラファイトが龍騎士態に変身する為に所有していた物。レベルアップ専用である為、媒体とするバグスターは存在しない。

刀剣伝ガイム:レジェンドライダーガシャットと呼ばれるガシャットの1つ。モチーフは仮面ライダー鎧武。

ガシャットギアデュアルβ:『タドルファンタジー』と『バンバンバースター』、2種類のゲームを内包したガシャット。



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仮面ライダー紹介(スナイプ)

◎仮面ライダースナイプ

朱乃が変身する仮面ライダー。ジャンルはシューティング、専用武器はガシャコンマグナム。変身時の決め台詞は「任務開始(ミッション・スタート)ですわ!」、レベル7時のみ「さあ、ショータイムですわ!」

 

○シューティングゲーマーレベル1

パンチ力:7.7t

キック力:11.5t

ジャンプ力:一跳び30.5m

走力:100mを7.6秒

ゲーマドライバーにバンバンシューティングガシャットを装填して変身する、待機形態。

変身音声は『レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!アイムア仮面ライダー!』(全ライダー共通)。

基本的に他のライダーと同様。

 

○シューティングゲーマーレベル2

パンチ力:6.6t

キック力:13.5t

ジャンプ力:一跳び37.9m

走力:100mを3.7秒

シューティングゲーマーレベル1時、或いはガシャット装填と同時に「第二戦術(セカンド・タクティクス)!」の掛け声と共にゲーマドライバーのレバーを開いて変身する、通常形態。

変身音声は『ババンバン!バンババン!イェーイ!バンバンシューティング!』

 

○コンバットシューティングゲーマーレベル3

パンチ力:14t

キック力:15.4t

ジャンプ力:一跳び46m

走力:100mを4秒

第三戦術(サード・タクティクス)!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーの左側のレベルアップ用スロットにジェットコンバットガシャットを装填する事で、スクリーンから召喚したコンバットゲーマと合体した形態。

変身音声は『ババンバン!バンババン!イェーイ!バンバンシューティング!アガッチャ!ジェット!ジェット!インザスカイ!ジェットジェット!ジェットコンバァァァァット!』

 

○ナイトシューティングゲーマーレベル5(チャージスピア)

パンチ力:19t

キック力:25t

ジャンプ力:一跳び49m

走力:100mを2.7秒

第五戦術(フィフス・タクティクス)!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーの左側のレベルアップ用スロットにリバースクロスナイトガシャットを装填する事で、スクリーンから召喚したナイトゲーマと合体した形態。スナイプの場合は、左腕に槍『フェザードスピア』が装備される。

変身音声は『ババンバン!バンババン!イェーイ!バンバンシューティング!アガッチャ!マックス、パワー!マックス、スピード!リ、バース、クロス、ナイト、スナイプ!』

 

○ウィザードシューティングゲーマーレベル7

パンチ力:22.8t

キック力:37.3t

ジャンプ力:一跳び74m

走力:100mを2.3秒

第七戦術(セブンス・タクティクス)!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーにバンバンシューティングガシャットとマジックザウィザードガシャットを装填、レバーを開いて変身する形態。

イメージモデルは仮面ライダーウィザード・オールドラゴンスタイル。

変身音声は『バンバン!バンババン!イェーイ!バンバンシューティング!アガッチャ!ド・ド・ドラゴ!ラーラララーイズ!フレイム!ウォーター!ハリケーン!ランドォォォォ!オールドラゴン!』

背中に装着された翼型パーツ『ドラゴウィング』によって飛び回りながら、両腕・両脚に装着された爪型パーツ『ドラゴヘルクロー』と、腰に装着された尻尾型パーツ『ドラゴテイル』を用いた接近戦の他、胸部に装着された龍の頭らしきパーツ『ドラゴスカル』からの火炎放射と、多種多様な魔法による遠距離戦でも戦う。

 

○バースターゲーマーレベルX

パンチ力:60.6t

キック力:70.7t

ジャンプ力:一跳び53m

走力:100mを2.3秒

特殊戦術(スペシャル・タクティクス)!」の掛け声と共に、ガシャットギアデュアルβのダイヤルをバンバンバースター側に捻りゲーマドライバーに装填、レバーを開いて変身する形態。

ジャンルの都合から、TV本編のシミュレーションゲーマーから名称変更となっているが、基本的なスペックに変更は無い。

変身音声は『スクランブルだ!出撃発進!バンバンバースター!発進!』

 

◎スナイプの武装

○ガシャコンマグナム

スナイプが所有するガシャコンウェポン。

 

◎スナイプの必殺技

○バンバン・クリティカル・フィニッシュ

ガシャコンマグナムのスロットにバンバンシューティングガシャットを装填する事で発動する技。変身者である朱乃の身に内包した雷光の力を込めた強大なエネルギー弾を発射する。

○ジェット・クリティカル・ストライク

キメワザスロットにジェットコンバットガシャットを装填する事で発動する技。装着している武装から大量のミサイルを発射する。

○マジック・ザ・クリティカル・ストライク

キメワザスロットにマジックザウィザードガシャットを装填する事で発動する技。上空へと飛び上がり、ドリルキックを放つ。

○バンバン・クリティカル・ファイヤー

バースターゲーマーレベルX変身時、ゲーマドライバーのレバーを開閉する事で発動する技。TV本編同様、全身の砲塔から砲撃を行う。

 

◎スナイプが所有するガシャット

バンバンシューティング:変身用ガシャット。ジャンルは『ガンシューティング』。

ジェットコンバット:レベルアップ用ガシャット。ジャンルは『フライトシューティング』。

マジックザウィザード:レジェンドライダーガシャットと呼ばれるガシャットの1つ。モチーフは仮面ライダーウィザード。

ガシャットギアデュアルβ:『タドルファンタジー』と『バンバンバースター』、2種類のゲームを内包したガシャット。



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仮面ライダー紹介(パラガス)

◎仮面ライダーパラガス

黒歌が変身する仮面ライダー。ジャンルはパズル、専用武器はガシャコンパラブレイガン。変身時の決め台詞は「私の掌で踊るが良いにゃ!」、レベル7時のみ「勝利の法則は、決まったにゃ!」

 

○パズルゲーマーレベル1

パンチ力:7.7t

キック力:11.5t

ジャンプ力:一跳び30.5m

走力:100mを7.6秒

ゲーマドライバーにハテサテパズルガシャットを装填して変身する、待機形態。

変身音声は『レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!アイムア仮面ライダー!』(全ライダー共通)。

基本的に他のライダーと同様。

 

○パズルゲーマーレベル2

パンチ力:5.9t

キック力:6.8t

ジャンプ力:一跳び41.3m

走力:100mを2.8秒

パズルゲーマーレベル1時、或いはガシャット装填と同時に「2連鎖!」の掛け声と共にゲーマドライバーのレバーを開いて変身する、通常形態。

外見は仮面ライダーパラドクス・パズルゲーマーレベル50に似ているが、ライダースーツの色が青ベースに黒いジグソーパズルを模したラインが入った物、両肩のマテリアライズショルダーが無い、胸部のディスプレイが他のライダーと同じ、背部にレベル1時の頭部装甲が装着されている等の違いがある。

今作ではパラガスの能力によってのみ、エナジーアイテムを生成・使用出来る(ガシャコンパラブレイガンから任意で取り出す)。

変身音声は『運命の鎖、解け!ハテサテパズル!』(BGMはパーフェクトパズルと同様)

 

○ブロッカーパズルゲーマーレベル3

パンチ力:9.5t

キック力:16.2t

ジャンプ力:一跳び51.1m

走力:100mを2.5秒

「3連鎖!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーの左側のレベルアップ用スロットにメテオブロッカーガシャットを装填する事で、スクリーンから召喚したブロッカーゲーマと合体した形態。

胸部にT型の紫、左手にI型の水色、左肩にJ型の青、左腕にS型の緑、右手にO型の黄色、右肩にL型のオレンジ、右腕にZ型の赤い装甲が装着され、両肩の装甲パーツ『ジェイエルクリエイター』から、メテオブロッカーをプレイしながら多種多様な効果をミックスしたエナジーアイテムを生成する。

変身音声は『運命の鎖、解け!ハテサテパズル!アガッチャ!ティーオー!エスゼット!ジェイエル!そしてアイ!メテオブロッカー!』(BGMはロシア民謡『コロブチカ』のアレンジ)

 

○ナイトパズルゲーマーレベル5(ヴァリアントサイズ)

パンチ力:19t

キック力:25t

ジャンプ力:一跳び49m

走力:100mを2.7秒

「5連鎖!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーの左側のレベルアップ用スロットにリバースクロスナイトガシャットを装填する事で、スクリーンから召喚したナイトゲーマと合体した形態。パラガスの場合は、左腕に大鎌『プラキディアサイズ』が装備される。

変身音声は『運命の鎖、解け!ハテサテパズル!アガッチャ!マックス、パワー!マックス、スピード!リ、バース、クロス、ナイト、パラガス!』

 

○ビルドパズルゲーマーレベル7

パンチ力:27.9t

キック力:30.6t

ジャンプ力:一跳び43.2m

走力:100mを1.8秒

「7連鎖!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーにハテサテパズルガシャットと仮面ライダービルドガシャットを装填、レバーを開いて変身する形態。

イメージモデルは仮面ライダービルド・ジーニアスフォーム。

変身音声は『運命の鎖、解け!ハテサテパズル!アガッチャ!有機物と無機物!イェーイ!スーパーベストマッチ!ヤベーイ!完全無欠!仮面ライダービルド!スゲーイ!モノスゲーイ!』(BGMはノックアウトファイター2と同様)

身体中に装填された多種多様なフルボトルの力を駆使して戦う。

 

○パーフェクトパズルゲーマーレベルX

パンチ力:59t

キック力:68.5t

ジャンプ力:一跳び62m

走力:100mを1.9秒

「全消し連鎖!」の掛け声と共に、ガシャットギアデュアルαのダイヤルをパーフェクトパズル側に捻りゲーマドライバーに装填、レバーを開いて変身する形態。

変身音声は『ゲット・ザ・グローリー・イン・ザ・チェイン!パーフェクトパズル!』

 

◎パラガスの武装

○ガシャコンパラブレイガン

パラガスが所有するガシャコンウェポン。基本的にTV本編と同じだが、スロットに装填出来るガシャットは1つのみ。

 

◎パラガスの必殺技

○ハテサテ・クリティカル・フィニッシュ

ガシャコンパラブレイガンのスロットにハテサテパズルガシャットを装填する事で発動する技。ガシャコンパラブレイガンに膨大なエネルギーを注入し、強烈な攻撃を叩き込む。

○メテオ・クリティカル・ストライク

キメワザスロットにメテオブロッカーガシャットを装填する事で発動する技。様々な効果を有するエナジーアイテムを生成する。

○仮面ライダー・クリティカル・ストライク

キメワザスロットに仮面ライダービルドガシャットを装填する事で発動する技。上空へと飛び上がり、飛び蹴りを放つ。

○パーフェクト・クリティカル・コンボ

パーフェクトパズルゲーマーレベルX変身時、ゲーマドライバーのレバーを開閉する事で発動する技。TV本編同様、発揮しているエナジーアイテムの効果を活かした攻撃を繰り出す。

 

◎パラガスが所有するガシャット

ハテサテパズル:変身用ガシャット。ジャンルは『パズル』。

メテオブロッカー:レベルアップ用ガシャット。ジャンルは『落ち物パズル』。

仮面ライダービルド:レジェンドライダーガシャットと呼ばれるガシャットの1つ。モチーフはタイトルの通り、仮面ライダービルド。

ガシャットギアデュアルα:『パーフェクトパズル』と『ノックアウトファイター』、2種類のゲームを内包したガシャット。



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仮面ライダー紹介(ノックス)

◎仮面ライダーノックス

白音が変身する仮面ライダー。ジャンルは格闘、専用武器は無いが、ゲーマドライバーの右腰にガシャットギアホルダーらしきスロットがある。変身時の決め台詞は「心の滾りのままに、ぶん殴ります!」、レベル7時のみ「欲望のままに、ぶっ潰します!」

 

○ファイターゲーマーレベル1

パンチ力:7.7t

キック力:11.5t

ジャンプ力:一跳び30.5m

走力:100mを7.6秒

ゲーマドライバーにバクレツファイターガシャットを装填して変身する、待機形態。

変身音声は『レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!アイムア仮面ライダー!』(全ライダー共通)。

基本的に他のライダーと同様。

 

○ファイターゲーマーレベル2

パンチ力:10.6t

キック力:11.4t

ジャンプ力:一跳び31m

走力:100mを3.8秒

ファイターゲーマーレベル1時、或いはガシャット装填と同時に「ラウンド2!」の掛け声と共にゲーマドライバーのレバーを開いて変身する、通常形態。

外見は仮面ライダーパラドクス・ファイターゲーマーレベル50に似ているが、ライダースーツの色が赤ベースに黒い炎を模したラインが入った物(カオスウルトラマンのそれ)、両手のマテリアライズスマッシャーが無い、胸部のディスプレイが他のライダーと同じ、背部にレベル1時の頭部装甲が装着されている等の違いがある。

ライダーとしての特殊な能力は持たない一方でパンチ力がレベル2の中で最も高く、その剛腕を活かして戦う。

変身音声は『ぶち込め正拳!バクレツファイター!』(BGMはノックアウトファイターと同様)

 

○フィストファイターゲーマーレベル3

パンチ力:12.8t

キック力:13.7t

ジャンプ力:一跳び41.3m

走力:100mを2.8秒

「ラウンド3!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーの左側のレベルアップ用スロットにメタリックフィストガシャットを装填する事で、スクリーンから召喚したフィストゲーマと合体した形態。

武骨な外見とは裏腹に、最適な姿勢制御を行う機構『コンビネートキャンセラー』によって身軽な動作を実現、それによって息つく暇を与えない連撃を繰り出し戦う。

変身音声は『ぶち込め正拳!バクレツファイター!アガッチャ!ジャブ!ジャブストレート!ジャブストレートアッパー!浮かせて叩き込め!メタリックフィスト!』(BGMはバーチャファイター3のOPのラスト一節)

 

○ナイトファイターゲーマーレベル5(ブーストハンマー)

パンチ力:19t

キック力:25t

ジャンプ力:一跳び49m

走力:100mを2.7秒

「ラウンド5!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーの左側のレベルアップ用スロットにリバースクロスナイトガシャットを装填する事で、スクリーンから召喚したナイトゲーマと合体した形態。ノックスの場合は、左腕にハンマー『リゲルハンマー』が装備される。

変身音声は『ぶち込め正拳!バクレツファイター!アガッチャ!マックス、パワー!マックス、スピード!リ、バース、クロス、ナイト、パラガス!』

 

○オーズファイターゲーマーレベル7

パンチ力:15.7t

キック力:30t

ジャンプ力:一跳び210m

走力:100mを0.222秒

「ラウンド7!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーにバクレツファイターガシャットとジャングルオーズガシャットを装填、レバーを開いて変身する形態。

イメージモデルは仮面ライダーオーズ。

変身音声は『ぶち込め正拳!バクレツファイター!アガッチャ!タトバ!ガタキリバ!シャウタ!サゴーゾ!ラトラタ!プトティラ!タジャドルオーズ!』

ガシャット内にデータとして存在する様々な動物の力を解放、その多様な組み合わせを駆使して戦う(本編ではタジャドルコンボのみ使用)。

 

○ノックアウトファイターゲーマーレベルX

パンチ力:64t

キック力:68.5t

ジャンプ力:一跳び62m

走力:100mを1.9秒

「ファイナルラウンド!」の掛け声と共に、ガシャットギアデュアルαのダイヤルをノックアウトファイター側に捻りゲーマドライバーに装填、レバーを開いて変身する形態。

変身音声は『エクスプロージョン・ヒット!ノックアウトファイター!』

 

○パーフェクトパズルゲーマーレベルX

パンチ力:59t

キック力:68.5t

ジャンプ力:一跳び62m

走力:100mを1.9秒

「超変身!」の掛け声と共に、ガシャットギアデュアルαのダイヤルをパーフェクトパズル側に捻りゲーマドライバーに装填、レバーを開いて変身する形態。

変身音声は『ゲット・ザ・グローリー・イン・ザ・チェイン!パーフェクトパズル!』

基本的にはパラガスのそれと同じだが、頭部デザインやライダースーツの模様が違うなど、あくまでノックスとしての形態である。

 

◎ノックスの必殺技

○バクレツ・クリティカル・ストライク

右腰のスロットにバクレツファイターガシャットを装填する事で発動する技。手に膨大なエネルギーを貯め、放つ。

○バクレツ・メタリック・クリティカル・ストラッシュ

右腰のスロットにバクレツファイターガシャットとメタリックフィストガシャットを装填する事で発動する技。エネルギーを貯めた状態で、相手に連続攻撃を仕掛ける。

○バクレツ・ジャングル・クリティカル・ストラッシュ

右腰のスロットにバクレツファイターガシャットとジャングルオーズガシャットを装填する事で発動する技。現在解放している動物の力を用いた強力な攻撃を放つ。

○パーフェクト・クリティカル・コンボ

パーフェクトパズルゲーマーレベルX変身時、ゲーマドライバーのレバーを開閉する事で発動する技。基本的にパラガスのそれと同じ。

○ノックアウト・クリティカル・スマッシュ

ノックアウトファイターゲーマーレベルX変身時、ゲーマドライバーのレバーを開閉する事で発動する技。TV本編同様、防御力無視のパンチを放つ。

 

◎ノックスが所有するガシャット

バクレツファイター:変身用ガシャット。ジャンルは『2D格闘』。

メタリックフィスト:レベルアップ用ガシャット。ジャンルは『3D格闘』。

ジャングルオーズ:レジェンドライダーガシャットと呼ばれるガシャットの1つ。モチーフは仮面ライダーオーズ。

ガシャットギアデュアルα:『パーフェクトパズル』と『ノックアウトファイター』、2種類のゲームを内包したガシャット。



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仮面ライダー紹介(風魔)

◎仮面ライダー風魔

イリナが変身する仮面ライダー。ジャンルはステルス、専用武器はガシャコンニンジャブレード。変身時の決め台詞は「さあ、振り切っちゃうよ!」、レベル7時のみ「さあ、貴方の罪を数えなさい!」

 

○ニンジャゲーマーレベル1

パンチ力:7.7t

キック力:11.5t

ジャンプ力:一跳び30.5m

走力:100mを7.6秒

ゲーマドライバーにハリケーンニンジャガシャットを装填して変身する、待機形態。

変身音声は『レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!アイムア仮面ライダー!』(全ライダー共通)。

基本的に他のライダーと同様。

 

○ニンジャゲーマーレベル2

パンチ力:1.1t

キック力:11.1t

ジャンプ力:一跳び100m

走力:100mを1秒

ニンジャゲーマーレベル1時、或いはガシャット装填と同時に「チャプター2!」の掛け声と共にゲーマドライバーのレバーを開いて変身する、通常形態。

外見は映画版の仮面ライダー風魔に似ているが、胸部のディスプレイが他のライダーと同じ、背部にレベル1時の頭部装甲が装着されている等の違いがある。

全ライダー随一の素早さや、様々な忍術を駆使して戦う。

変身音声は『マキマキ!竜巻!ハリケーンニンジャ!』

 

○バーガーニンジャゲーマーレベル3

パンチ力:17.7t

キック力:20.8t

ジャンプ力:一跳び45.5m

走力:100mを2.9秒

「チャプター3!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーの左側のレベルアップ用スロットにジュージューバーガーガシャットを装填する事で、スクリーンから召喚したバーガーゲーマと合体した形態。

TV本編からレベルが1下がっているが、基本スペックに変化はない。

尚、右腕の調味料発射装置『レッドチャップランチャー』にはウルトラデ○ソースが充填されている(イリナのリクエスト)。

変身音声は『マキマキ!竜巻!ハリケーンニンジャ!アガッチャ!バーガー!バーガー!ジュージューバーガー!』

 

○ナイトニンジャゲーマーレベル5(ロングソード)

パンチ力:19t

キック力:25t

ジャンプ力:一跳び49m

走力:100mを2.7秒

「チャプター5!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーの左側のレベルアップ用スロットにリバースクロスナイトガシャットを装填する事で、スクリーンから召喚したナイトゲーマと合体した形態。風魔の場合は、左腕に太刀『亡竜刃刀』が装備される。

変身音声は『マキマキ!竜巻!ハリケーンニンジャ!アガッチャ!マックス、パワー!マックス、スピード!リ、バース、クロス、ナイト、風魔!』

 

○ダブルニンジャゲーマーレベル7

パンチ力:26t

キック力:34.5t

ジャンプ力:一跳び150m

走力:100mを1.8秒

「チャプター7!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーにハリケーンニンジャガシャットと名探偵ダブルガシャットを装填、レバーを開いて変身する形態。

イメージモデルは仮面ライダーダブル・サイクロンジョーカーエクストリーム。

変身音声は『マキマキ!竜巻!ハリケーンニンジャ!アガッチャ!サイクロン!ジョーカー!二人で一人!サイクロン!ジョーカー!二人でエクストリーム!』

持ち前のスピードに加え、原点のダブル同様、身体の中心部『クリスタルサーバー』による分析によって相手の行動を先読みし、優位な戦況を作り出す。

 

○ライジングゲーマーレベルX

パンチ力:11.1t

キック力:100t

ジャンプ力:一跳び111.1m

走力:100mを0.111秒

「チャプターX!」の掛け声と共に、ガシャットギアデュアルγのダイヤルをハリケーンライジング側に捻りゲーマドライバーに装填、レバーを開いて変身する形態。

イメージモデルはメタルギアライジングの主人公、雷電。

変身音声は『レッツスニーキング!ハリケーンライジング!』(待機BGMはメタルギアライジングのモンスーン戦BGM『The Stains of Time』のイントロ部分、変身BGMはサビ部分)

他のレベルはおろか、全ライダーでも飛びぬけて高い素早さを有する他、左眼に眼帯型時間流制御装置『ザンゲキクロックアッパー』を装着、体力を消費する事で風魔の思考・感覚・行動速度を急激に高める事が出来る。

 

◎風魔の武装

○ガシャコンニンジャブレード

風魔が所有するガシャコンウェポン。直刀型『ニンジャブレードモード』と、2つの刀身(うち1つは、ニンジャブレードモード時はグリップ内に納刀されている)と1つのグリップ部の三方手裏剣型『シュリケンモード』(変形時『シュ・パーン』と鳴る)の、2つの形態を有する。

 

◎風魔の必殺技

○ハリケーン・クリティカル・フィニッシュ

ガシャコンニンジャブレードのスロットにハリケーンニンジャガシャットを装填する事で発動する技。神速の如き斬撃で相手を仕留める。

○名探偵・クリティカル・ストライク

キメワザスロットに名探偵ダブルガシャットを装填する事で発動する技。上空へと飛び上がり、ドロップキックを放つ。

○ハリケーン・クリティカル・スパイク

ライジングゲーマーレベルX変身時、ゲーマドライバーのレバーを開閉する事で発動する技。1秒に数十発ものキックを叩き込む。

 

◎風魔が所有するガシャット

ハリケーンニンジャ:変身用ガシャット。ジャンルは『ステルス』。

ジュージューバーガー:レベルアップ用ガシャット。ジャンルは『バーガー』。

名探偵ダブル:レジェンドライダーガシャットと呼ばれるガシャットの1つ。モチーフは仮面ライダーダブル。

ガシャットギアデュアルγ:『ハリケーンライジング』と『バクソウターボ』、2種類のゲームを内包したガシャット。



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仮面ライダー紹介(レーザー)

◎仮面ライダーレーザー

ゼノヴィアが変身する仮面ライダー。ジャンルはレース、専用武器はガシャコンスパロー。変身時の決め台詞は「ノリ良く行かせて貰おう!」、レベル7時のみ「化け物よ、ひとっ走り付き合え!」

 

○バイクゲーマーレベル1

パンチ力:7.7t

キック力:11.5t

ジャンプ力:一跳び30.5m

走力:100mを7.6秒

ゲーマドライバーにバクソウバイクガシャットを装填して変身する、待機形態。

変身音声は『レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!アイムア仮面ライダー!』(全ライダー共通)。

基本的に他のライダーと同様だが、この形態からガシャコンスパローを装備出来る(バクソウバイクガシャットにガシャコンスパローを呼び出す機能が搭載されている)他、TV本編同様レベル2との兼ね合いから比較的この形態で戦う事も多い。

 

○バイクゲーマーレベル2

最高出力:150.5ps(110.7kw)

最高時速:278km/h

バイクゲーマーレベル1時、或いはガシャット装填と同時に「2速!」の掛け声と共にゲーマドライバーのレバーを開いて変身する、通常形態。

変身音声は『爆走!独走!激走!暴走!バクソウバイク!』

 

○チャンバラバイクゲーマーレベル3

パンチ力:15.2t

キック力:16.6t

ジャンプ力:一跳び34.2m

走力:100mを4.1秒

「3速!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーの左側のレベルアップ用スロットにギリギリチャンバラガシャットを装填する事で、スクリーンから召喚したチャンバラゲーマと合体した形態。

変身音声は『爆走!独走!激走!暴走!バクソウバイク!アガッチャ!ギリ、ギリ、ギリ、ギリ、チャンバラァァァァ!』

 

○ナイトバイクゲーマーレベル5(バイティングエッジ)

パンチ力:19t

キック力:25t

ジャンプ力:一跳び49m

走力:100mを2.7秒

「5速!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーの左側のレベルアップ用スロットにリバースクロスナイトガシャットを装填する事で、スクリーンから召喚したナイトゲーマと合体した形態。レーザーの場合は、両腕パーツと、踵に刃『ジェノサイドエッジ』を生やした両脚パーツが装備される。

変身音声は『爆走!独走!激走!暴走!バクソウバイク!アガッチャ!マックス、パワー!マックス、スピード!リ、バース、クロス、ナイト、レーザー!』

 

○ドライブバイクゲーマーレベル7

パンチ力:27t

キック力:31t

ジャンプ力:一跳び45m

走力:100mを0.643秒

「7速!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーにバクソウバイクガシャットとフルスロットルドライブガシャットを装填、レバーを開いて変身する形態。

イメージモデルは仮面ライダードライブ・タイプトライドロン。

変身音声は『爆走!独走!激走!暴走!バクソウバイク!アガッチャ!ブブンブン!ブンブブン!脳細胞がトップギア!』

 

○ターボゲーマーレベルX

パンチ力:46t(ライダーモード時)、69.7t(アームズモード時)

キック力:54t(ライダーモード時)、79.2t(アームズモード時)

ジャンプ力:一跳び68.1m(ライダーモード時)、60.1m(アームズモード時)

走力:100mを1.3秒(ライダーモード時)、1.7秒(アームズモード時)

最高出力:450ps(331kw)(バイクモード時)

最高時速:612km/h(バイクモード時)

「爆速!」の掛け声と共に、ガシャットギアデュアルγのダイヤルをバクソウターボ側に捻りゲーマドライバーに装填、レバーを開いて変身する形態。

イメージモデルは仮面ライダーレーザーターボ・バイクゲーマーレベル0(ライダーモード時)、仮面ライダーエグゼイド・バイクアクションゲーマーレベル0(アームズモード時)、ホンダ・ゴールドウイング(バイクモード時)。

変身音声は『爆走!独走!激走!暴走!バァァァァクソウターボ!』(待機BGMは仮面ライダードライブ・タイプフォーミュラのそれ、変身BGMはプロト爆走バイクガシャットのそれ)

レベル2のそれと酷似したバイクに搭乗する『ライダーモード』、バイクを装甲として変形・装着する『アームズモード』、バイクと合体して大型バイクと化す『バイクモード』、3つの形態を駆使して戦う。

 

◎レーザーの武装

○ガシャコンスパロー

レーザーが所有するガシャコンウェポン。基本的にはTV本編と同じだが、上述の理由でレベル1から使用できる他、バイク形態時はハンドルパーツとして装着される。

 

◎レーザーの必殺技

○フルスロットル・クリティカル・ストライク

キメワザスロットにフルスロットルドライブガシャットを装填する事で発動する技。上空へと飛び上がり、飛び蹴りを放つ。

○バクソウ・クリティカル・ブースト

ターボゲーマーレベルX変身時、ゲーマドライバーのレバーを開閉する事で発動する技。

形態に応じた様々な攻撃を繰り出す。

 

◎レーザーが所有するガシャット

バクソウバイク:変身用ガシャット。ジャンルは『バイクレース』。

ギリギリチャンバラ:レベルアップ用ガシャット。ジャンルは『チャンバラ』。現在はレーザーXへの変身の為、レイヴェルに譲渡されている。

フルスロットルドライブ:レジェンドライダーガシャットと呼ばれるガシャットの1つ。モチーフは仮面ライダードライブ。

ガシャットギアデュアルγ:『ハリケーンライジング』と『バクソウターボ』、2種類のゲームを内包したガシャット。



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仮面ライダー紹介(クロノス)

◎仮面ライダークロノス

システムボイス:諏訪部順一(ラヴリカ)

ギャスパーが変身する仮面ライダー。ジャンルはストラテジー、専用武器はガシャコンバグヴァイザー(ツヴァイ)。変身時の決め台詞は「貴方は、絶版です!」、レベル7時のみ「命、燃やします!」

 

○ウォーズゲーマーレベル1

パンチ力:7.7t

キック力:11.5t

ジャンプ力:一跳び30.5m

走力:100mを7.6秒

ゲーマドライバーにハコニワウォーズガシャットを装填して変身する、待機形態。

変身音声は『レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!アイムア仮面ライダー!』(全ライダー共通)。

基本的に他のライダーと同様。

 

○ウォーズゲーマーレベル2

パンチ力:10t

キック力:10.9t

ジャンプ力:一跳び32m

走力:100mを3秒

ウォーズゲーマーレベル1時、或いはガシャット装填と同時に「第二戦略(セカンドストラテジー)!」の掛け声と共にゲーマドライバーのレバーを開いて変身する、通常形態。

外見は基本的にTV本編の仮面ライダークロノスと変わらないが、ベルトがゲーマドライバーになっている、胸部のディスプレイが他のライダーと同じ、背部にレベル1時の頭部装甲が装着されている、腰から下のマントが無い等の違いがある。

変身音声は『ハコニワウォーズ…!』(BGMは仮面ライダークロニクルガシャットの変身時のそれ)。

 

○ガーディアンウォーズゲーマーレベル3

パンチ力:11.9t

キック力:12.4t

ジャンプ力:一跳び48m

走力:100mを2秒

第三戦略(サードストラテジー)!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーの左側のレベルアップ用スロットにホームガーディアンガシャットを装填する事で、スクリーンから召喚したガーディアンゲーマと合体した形態。

両肩及び胸部に装甲車の様なアーマーを装着し、ガシャコンバグヴァイザーⅡの操作によって多種多様な兵器や計器類をアーマー内で量産する。

変身音声は『ハコニワウォーズ…!アガッチャ!敵軍勢が、来るぞ!敵軍勢が、来るぞ!迎撃態勢整えろ!迎撃態勢整えろ!迎え撃て!狙い打て!ホーム!ガーディアン!』(BGMはファミコンウォーズのCMソング)。

 

○ナイトウォーズゲーマーレベル5(ライフル)

パンチ力:19t

キック力:25t

ジャンプ力:一跳び49m

走力:100mを2.7秒

第五戦略(フィフスストラテジー)!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーの左側のレベルアップ用スロットにリバースクロスナイトガシャットを装填する事で、スクリーンから召喚したナイトゲーマと合体した形態。クロノスの場合は、左腕に小銃『オヴェリスクライフル』が装備される。

変身音声は『ハコニワウォーズ…!アガッチャ!マックス、パワー!マックス、スピード!リ、バース、クロス、ナイト、クロノス!』

 

○ゴーストウォーズゲーマーレベル7

パンチ力:24.6t

キック力:28.8t

ジャンプ力:一跳び48.8m

走力:100mを3.3秒

第七戦略(セブンスストラテジー)!」の掛け声と共に、ゲーマドライバーにハコニワウォーズガシャットと開眼ゴーストガシャットを装填、レバーを開いて変身する形態。

イメージモデルは仮面ライダーゴースト・ムゲン魂。

幽霊の如き浮遊能力や、様々な偉人の魂を宿したパーカー型の幽霊を使役する能力を駆使して戦う。

変身音声は『ハコニワウォーズ…!アガッチャ!アガッチャ!ゴー!ゴゴー!ゴゴー!開眼!レッツゴー!ゴー!ゴゴー!ゴゴー!開眼!覚悟!』

 

◎クロノスの武装

○ガシャコンバグヴァイザーⅡ

クロノスが所有するガシャコンウェポン。

 

◎クロノスの必殺技

○開眼・クリティカル・ストライク

ゲーマドライバーのキメワザスロットに開眼ゴーストガシャットを装填する事で発動する技。

 

◎クロノスが所有するガシャット

ハコニワウォーズ:変身用ガシャット。ジャンルは『ストラテジー』。

ホームガーディアン:レベルアップ用ガシャット。ジャンルは『タワーディフェンス』。

開眼ゴースト:レジェンドライダーガシャットと呼ばれるガシャットの1つ。モチーフは仮面ライダーゴースト。



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1章『旧校舎のMIGHTY ACTION X』
1話_Disortotionを抱えた世界


真夜中、とある街の一角にそびえる廃墟…

其処には、

 

『マイティアクションエックス!』

「く、空間転移だと!?何なんだ貴様は!?ただの人間では無かったのか!?」

 

何とも名状しがたい姿をした怪物と、

 

「貴様に教える必要などない。変身!」

『ガシャット!レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?アイムア仮面ライダー!』

「この街の運命は、俺が変える!」

『ガシャコンブレイカー!』

「ノーコンティニューで、クリアして見せる!」

 

1人の戦士が、対峙していた。

 

------------

 

「よし。マイティブラザーズXXの大まかな挙動は、これでOKだな」

 

翌朝、とある街の中心部に位置する学園『駒王学園』、その高等部のある教室にて、1人の少年が目前のノートパソコンで行っていた作業を終え、そう呟いていた。

彼の名は兵藤(ひょうどう)一誠(いっせい)、駒王学園高等部の2年生で、一見すると龍を思わせる茶髪、理性味と野性味が混在した整っている顔立ち以外は、何処にでもいる普通の男子高校生に思える。

尤も彼の正体を知れば、普通の男子高校生だとは到底言えないのだが…

 

「待ちなさい!この変態2人組!」

「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」

「やれやれ、またあのコンビか」

 

そんな一誠が作業に用いていたパソコンを鞄にしまい、授業の準備を進めていた所、とある女子生徒が男子生徒2人組を追いかけ回していると思しき騒々しさが、彼の耳に入って来た。

その騒々しさを毎回引き起こしているであろう存在を思い出し、またかと嘆息した一誠、様子でも見ようと考えたのか、廊下に繋がるドアを開けた。

 

「あべし!?」

「ひでぶ!?」

 

その際に足払いを掛けるかの様に右脚を突き出すと案の定というべきか、その2人組が突き出された脚に引っ掛かり、ド派手にすっ転んだ。

 

「松田に元浜。性懲りも無くまた覗きか?全く…」

「く、くそぉ!離しやがれ、兵藤!」

「いつもいつも邪魔しやがって!」

 

そんな2人に近づき、何処からともなく手にした結束バンドで2人の両腕を縛り上げる一誠、その2人組は一誠の予想通り、駒王学園の2大変態として悪い意味で有名な、松田と元浜という男子生徒だった。

 

「毎度毎度懲りもしないでって、兵藤君!また捕まえてくれたの?ありがとう!」

「俺は己の欲望のままに誰かを傷つけ、それを何とも思わない奴が大嫌いなだけだ。毎度言っているが、気にするな」

「それでもありがとうね、兵藤君!さあ変態2人組、覚悟しなさい!」

「「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」」

 

其処に2人組を追って来た女子生徒が到着、既に一誠が2人を捕まえていたのを把握した彼女は彼にお礼を言いつつ、拘束されている2人を連行して行った。

 

「本当に、嫌な奴等だ。『アイツ』と言い、松田や元浜といい、何故俺の周りには人の迷惑を顧みない奴が多いんだか…」

 

何時もの光景を見届け、そんな言葉を呟きながら教室に戻る一誠。

その表情からは、松田達の様な存在に対する軽蔑の色が浮かんでいた。

 

------------

 

「うん、旨い!やはりアイツが作るハンバーガーは最高だ!それでいて、良い意味でブレがあるからいつも食べていても飽きが来ない、アイツこそハンバーガーの『神』だ!そうだろう、白音(しろね)ちゃん!」

「はい、一誠先輩!絶妙な味付けのソースに、シャキシャキの野菜!それにジューシーで風味豊かなハンバーグに、ふわふわのパン!全てが最高です!いつもありがとうございます、一誠先輩!」

 

そんな朝に起こった何時も通りの出来事の後に授業は開始、それも滞りなく進んで今は昼休みの時間、一誠は屋上で、隣に座る銀髪が特徴的な後輩の女子生徒と共に『家族』の手作りであるハンバーガーに舌鼓を打っていた。

一誠の隣に座る彼女の名は塔城(とうじょう)白音、高校生とはとても思えない小柄な体躯と、それに見合った幼さが出ながらも端正な顔立ちから『駒王学園のマスコット』として学園内では知られている。

 

「どういたしまして、っと俺が作った訳では無いけどね。俺からもアイツに伝えておくよ、白音ちゃんが何時も大喜びしている、と」

「あの、何時も気になっているんですが、このハンバーガーを作ってくれた方ってどなた何ですか?一誠先輩のご家族だと思いますけど…」

「その認識で合っているよ。ああ、直接会ってお礼が言いたい、というのは少し待って欲しい。アイツ何時も忙しいから、白音ちゃんと会える時間を取れるかどうか…」

「そうですか、いつも美味しいハンバーガーをご馳走になっているので、お礼が言いたいのですが…」

 

そんな学園の有名人である白音と一誠がこうして何時も昼食を共にしているのは、一誠が何時も食べているハンバーガーの匂いに白音が引き寄せられたのが切っ掛けなのは、言うまでも無い。

 

「ご馳走様でした、一誠先輩!」

「お粗末様、っと俺が作った訳では無いけど。さて、作業の続きを、ん?」

「どうしたんですか、先輩?」

 

そのハンバーガーを作った『家族』とはどんな存在かという疑問をぶつける白音と一誠の会話もそこそこに、2人共ハンバーガーを食べ終え、一誠が朝行っていた作業を再開しようとしたその時だった。

 

「ほら、あそこにいる制服着た女の子。見た感じからして他校の高校生っぽいけどさ、この近くにあんな感じの制服を採用した学校ってあったっけか?」

「そういえば、あんなカラーリングの制服、この近くの学校ではありませんね…」

 

校門前に見慣れない制服を着た女子が立っているのをふと見かけた一誠、彼に言われて気付いた白音と共に、その光景がどういう事かを気にしていた。

 

「学生の身分で白昼堂々と、遠くの学校に出向くとは好ましい事ではないな。確か白音ちゃんは、生徒会の人達と浅からぬ仲だそうだね?」

「はい、うちの部長と生徒会長が幼馴染だそうで」

「そしたら生徒会に、校門前に不審者がいるって伝えて来てはくれないかな?俺が言っても構わないけど、とある一件で一部の生徒会員から睨まれていてね。無用に事を荒立てたくはない」

「とある一件…?

まあ、それなら仕方ありません、伝えて来ますね。それじゃあ一誠先輩、また明日」

「ああ、またね」

 

その女子がどういう意図で此処に来ているかは分からないが、何であれ放っておいて良い問題ではない、そう判断した一誠は、この件を生徒会に伝える様頼んだ。

自分が行けば良いのでは?と考えなくも無かった白音だったが、行きづらい理由が一誠にはあった様で、それならと承諾し、屋上を後にした。

 

「まったく『はぐれ悪魔』の次は『堕天使』と来たか。一体この街を、この街に住む人達を何だと思っているのか…」

 

そう一誠が呟いた事に気付かず…



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2話_Ex-aid、始動

「あの、兵藤一誠さんですよね!」

「ん?あ、あぁ。兵藤一誠は俺だが?」

 

午後の授業も全て終わり、家に帰って作業の続きをやろうと考え、下校しようとした一誠。

だが校門に差し掛かったところで、彼を呼び止める声があった。

その声の主は、

 

(何故未だ、この女が此処にいる?白音ちゃん経由で生徒会に伝えていた筈だが)

 

そう、昼休みの時に校門前にいたのを一誠が見つけた、あの女子である。

 

「それで、一体何の用かな?あ、此処だと皆の邪魔になる、場所を移そう」

「あ、はい。分かりました」

 

昼休みに彼女が校門前にいた事は白音が伝えてある筈、その不審さから生徒会が何かしらの対応を取っても良い筈なのに、未だ校門前に彼女がいた事を訝しむ一誠ではあったが、ともあれ話を聞いてみないと始まらない、そう考え、場所を移すことにした。

その旨を彼女に伝え、了解を取った一誠は、学校から少し離れた公園へと移動した。

その際、何故か公園内に人っ子一人いなかった事、公園の敷地内に入った瞬間に何とも言い難い違和感を覚える等、何かしら気になる事があったが、一誠はそれらに構う事無く公園内を進み、中程に来た所で彼女へと振り向く。

 

「それで、

 

 

 

天界から叩き落とされた烏が俺に何の用だ?」

「え!?な、何のこと」

「とぼけても無駄な事だ。近場の学校では見られない制服姿で白昼堂々と出待ちする女子高生が何処にいる?完全にダウトだよ、『堕天使』」

「そう、最初からバレていたの。なら遠慮はいらないわね、結界は既に張った後だし」

 

彼女の『正体』はお見通しだと、言い放ちながら。

一誠に『正体』を見抜かれていた彼女は、最初は何の事だと白を切るも、違和感丸出しだという一誠の指摘によって諦めたのか、あっさりと本来の姿――露出の激しい黒のボンテージを身に纏い、背中から黒い翼を生やした黒髪の少女へと変貌した。

その姿は一誠が言う様に『堕天使』のイメージぴったりである。

 

「神器は無さそうだけど、昨日貴方がはぐれ悪魔を殺したというドーナシークの報告が間違いじゃないであろう事、今の問答ではっきりしたわ。貴方は此処で始末」

『ゲキトツロボッツ!』

「排除」

「あぐっ!?」

 

正体を見せた彼女が何やら不穏な事を呟きながら一誠へと飛びかかろうとしたその時だった。

某野菜をもじった名の戦士が主人公を務めるバトルアニメの主題歌を歌う歌手と思しき声が響いたかと思うと、一誠の背後に『GEKITOTSU ROBOTS』の文字と真紅に輝くロボット戦士がデカデカと映ったスクリーンが出現、其処から何者かの影が飛び出し、彼女に突進していった。

余りに唐突な事態に彼女は何の対応を取る事も出来ず、突進をまともに喰らってしまい、外壁へと叩きつけられ、その衝撃によって粉塵が舞った。

 

「攻撃対象、沈黙確率80%。ファザー、次の指示を」

「まだ増援がいるかも知れない。ガットン、お前は周囲を警戒して貰う。ヤツは俺が対応して置く」

「了解、索敵モードに移行」

 

突如として現れた影――一誠がガットンと呼んだ、赤を基調としたカラーリングに、クレーンのアームを思わせる右腕が特徴的な如何にもロボットと言える異形に、一誠は指示を飛ばしつつ、先程吹っ飛ばされた少女に対処すべく準備に取り掛かる。

指示を受けたガットンが公園を出ると同時に制服のジャケットを脱いだ一誠、それによって露わになった、腰に巻かれたベルトのバックルは、ライムグリーンを基調とした据置型ゲーム機らしき異様な外見であった。

そんな妙なベルトを巻いている一誠、だがそれに突っ込む存在は何処にもおらず、一誠も気にする事無く、ベルトの左腰部分にぶら下げていたホルスターらしき場所からゲームのカセットを思わせる物体を取り出し、

 

『マイティアクションエックス!』

 

起動させた。

すると一誠の背後に『MIGHTY ACTION X』の文字とピンクを基調としたほぼ一頭身のキャラクターがデカデカと映ったスクリーンが出現、

 

『父上、今宵の敵は随分と良い体つきの女ですな。捕えて薄い本の如き展開に持ち込みましょうぞ!』

「ソルティ、そう言うのを死亡フラグと言うんだ。そうなる事は千に一つもないだろうが、油断するな」

 

一誠がソルティと呼んだ、某変態と言う名の紳士な熊と思しき声が響き渡った。

余りにも変態丸出しなソルティの発言、だが一誠は何故かその内容では無く発言のタイミングに対して突っ込みを入れ、

 

「ライダー、変身!」

『ガシャット!』

 

某世界で最初に誕生した仮面戦士の変身ポーズを思わせる挙動を見せながら、左手に握っていたカセットを、バックルの左側に設けられたカセットの差込口らしき部分に突き刺した。

 

『レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?アイムア仮面ライダー!』

 

すると音声と共に一誠の周囲を回る様に十数枚ものパネルが出現、その中からピンク色の髪をしたキャラクターが映ったパネルを一誠が選択すると『Select!』の文字と共にそのパネルが彼の身体に重なり、パネルに映っていたキャラクターと同じ顔、体力を現しているかの様なゲージを映し出したディスプレイとゲームのコントローラーらしき4つのボタンを設けた胸当て、モノクロを基調とした4頭身のずんぐりむっくりとした体躯のキャラクターへと変身した。

 

「この街の運命は、俺が変える!」

『ガシャコンブレイカー!』

「ノーコンティニューで、クリアして見せる!」

 

そんな、今から命のやり取りをするとは思えない様な可愛らしい、どストレートに言うならゆるキャラな姿に変身した一誠、だが彼は何も気にする事無く己の決意を叫ぶ、それと同時に新たに現れたパネルからハンマーを思わせる武器――ガシャコンブレイカーが出現、装備し、未だ舞っている粉塵の向こうにいる少女に対処すべく、身構える。

やがて粉塵が晴れて行く、と、

 

「…………

 

 

 

あれ?」

『何処にも、おりませんな。これは失敬、別の意味でフラグを立ててしまった様ですな』

 

少女の姿は何処にもなかった。

 

「これからどうした物k、何、魔法陣?」

『新手!これはどうやら、無駄足にならずに済みそうですな』

 

が、事態はまだ終わりでは無かった。

標的の少女がいなくなってしまい、どうした物かと考え始めた一誠とソルティ、だが次の瞬間、その近くに何故か、真紅の魔法陣と思しき物がひとりでに描かれていき、完成すると共に紅く発光したのだ。

 

「あら?此処に堕天使の気配があった筈だけど…」

 

やがてその光と共に人影らしきものが現れ、その人影のシルエットがはっきりして来たと同時に光が晴れ魔法陣は消失、

 

「リアス・グレモリー、先輩?」

 

其処から、一誠の知る人物が出て来た。

腰まで届く赤髪に、一誠に匹敵する身長のグラビアモデルばりの体躯を駒王学園の制服で包んだ美少女――リアス・グレモリー。

彼女は『駒王学園の2大お姉さま』として駒王学園では知られている。

 

「え?ええ、そうよ。私の名を知っているって事は貴方、駒王学園の生徒かしら?」

「はい。あ、変身を解いた方が良いですね」

『ガッシューン』

「あ、貴方確か兵藤一誠君?白音が、毎日ハンバーガーをご馳走して貰っているって言っていた…」

「はい、その兵藤一誠です」

 

そんなリアスと一誠が出会った事で、運命の歯車は、回り始めた…!



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3話_Devilとの会談

「粗茶です」

「ありがとうございます、朱乃先輩」

 

公園にて『堕天使』の少女から襲撃されるも難なく退けた一誠だったが其処でリアスと遭遇、話し合いを要求された彼はあっさりとそれに応じ、彼女が部長を務める『オカルト研究部』の、駒王学園旧校舎にある部室へと通された。

既にそこには部長であるリアス、部員だという事が判明した白音の他、白音の姉でオカルト研究部顧問を務める歴史教師の塔城黒歌(くろか)、オカルト研究部副部長を務める姫島(ひめしま)朱乃(あけの)、部員の木場(きば)祐人(ゆうと)の、オカルト研究部の全部員が集結、入って来た一誠に興味津々と言いたげな視線を向けていた。

リアスにも負けないスタイルの良さと温厚な性格から『駒王学園の2大お姉さま』のもう一角として知られる朱乃、背丈はともかく3サイズではリアス達にも匹敵するナイスバディな体躯と蠱惑的な雰囲気から『駒王学園のセクシーティーチャー』として有名な黒歌、イケメンで柔和な物腰から『駒王学園の王子様』として女子から絶大な人気を誇る祐人、そしてリアスに白音と、駒王学園における有名人が揃いも揃って自分に視線を向けているという状況に若干居心地の悪さを感じる一誠ではあったが、それも予想出来た事だと覚悟を決めて勧められた椅子に座り、朱乃から出されたお茶を一飲みした。

 

「それで、兵藤一誠君。ちょっと呼びにくいわね、イッセー、と呼んでもいいかしら?」

「はい。そちらが呼びやすい呼び方で構いませんよ」

「ならイッセー、何件か聞きたい事があるけど、良いかしら?」

「ええ」

 

それを切っ掛けとして始まった一誠とリアス達との話し合い、

 

「まずは、貴方がどれ位『この世界』の事に付いて知っているか、話して貰ってもいいかしら?」

「分かりました」

 

最初の、これから話し合う事に対する前提となるであろう質問に、一誠は答えていく。

 

突然だが、この世界に住まう『高度な知的生命体』は人間だけではない。

先程一誠を襲った堕天使や、その堕天使が『堕ちる』前の存在である天使、そして彼らと対立している勢力である悪魔といった『三大勢力』の他、各地の言い伝えに出て来る土着の神族に妖怪等、果ては魔獣やドラゴンと言った超常的な存在も、この世界で暮らしている。

その中でも殊に大きな影響力を有しているのが『三大勢力』であり、天使はこの世界の天上にあると言われる『天界』を、悪魔や堕天使はこの世界の地下の奥深くにあると言われる『冥界』を其々本拠地とし、この世界――俗に言う『人間界』に、少なからず影響を及ぼしている。

その代表例と言って良い物が『神器(セイクリッド・ギア)』や『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』であろう。

まず神器、これは天使勢力のトップである『聖書の神』が作り上げたシステムの産物であり、それを宿す事で様々な能力を有する事が出来、殊に『神滅具(ロンギヌス)』と呼ばれる激レアな神器は段違いの能力を有していると言われている。

因みにこれを先天的に宿せるのは人間、或いはその血を引く者のみであり、一応持ち主から奪い取る事で後天的に宿す事も可能ではあるが、持ち主の生命力、ひいては魂と密接に結びつくという性質上、抜き取られると死に至ってしまうし、後天的に宿した者も元から持っていた能力が使えなくなったり制御に全力を費やされる事を強いられかねなかったりもするが、これは余談。

次に悪魔の駒、これは一言で言うと、他種族を悪魔として生まれ変わらせるアイテム、である。

実を言うと三大勢力は遥か昔、其々の存亡を賭けた大戦争を引き起こした事によって勢力が大幅に弱体化、特にトップであった4人の魔王が揃って戦死した悪魔勢力が、事態を打開する為に開発したのが、他種族を自らの勢力に引き込める悪魔の駒である。

これを用いて、他種族の才有る存在を招き入れる事によって悪魔勢力は大きく持ち直す事に成功したのだが、それによる弊害もまた生まれた。

それが『はぐれ悪魔』と呼ばれる存在だ。

悪魔の駒によって悪魔に生まれ変わった存在――転生悪魔は、転生させた悪魔の眷属となるのだが無論、事はそう単純に運ぶ筈は無い。

中には無理矢理転生させられたり、眷属として過ごす中で主人への反逆の意志を募らせたりする存在もいるかも知れない。

はぐれ悪魔とは、そういった存在が主人を殺したり脱走したりして、お尋ね者となった悪魔の事である。

 

「と、これ位ですね、俺が知っている事は」

「ありがとう、イッセー。どうやら一通りの事は知っているみたいね」

 

と、一誠がこの世界の事、というか『裏』の事に関して自分が知っている事を全て明かし、リアスも一通り知っていると見て、満足げにうなずいた。

 

「それじゃあ次に、さっき見た時に変身、で良いのかしら?貴方がなっていたあのゆるキャラみたいな姿は一体何?」

「あの姿ですね。あれははぐれ悪魔の様な、この街を、この街に住まう人々の命を脅かす敵と戦う為に俺が生み出した戦士です。俺はあの姿を『仮面ライダー』と呼んでいます」

「仮面ライダー…!?」

 

そのリアスの次なる質問、先程変身していたキャラクターについての説明を求められて応じた一誠、その際に朱乃が何やら驚いた様な様子を見せたが、一誠は構わず説明を続ける。

 

「その仮面ライダーになる為の力を取り込んだのが、この『ライダーガシャット』です。このガシャットを、俺が腰に巻いている『ゲーマドライバー』に差し込む事で、仮面ライダーに変身出来ます」

「それが、そのゲームのカセットみたいな物が、その仮面ライダーに変身する力を…

聞いた感じでは神器みたいだけど、それらしき力は感じないし、何よりイッセーが作ったそうだから、神器とは違うみたいね。それ程の力が、本当に…」

「論より証拠、実演しますね」

 

そう説明しながら、据置型ゲーム機の様なバックル――ゲーマドライバーと、ゲームカセットの様な物体――ライダーガシャットを見せる一誠、その説明に何処か半信半疑な様子のリアスを見て、変身を実演する事にした。

 

『マイティアクションエックス!』

「い、イッセー先輩の背後に、何か画面みたいなのが!?」

「それに、空間が転移したかの様に歪んだ!?」

「これが、仮面ライダーの、仮面ライダーに変身するライダーガシャットの力…!」

「やっぱり、間違いない…!」

『おぉ父上、絶世の美女が勢ぞろい、これは実に心踊りますぞ!あ、序でにワタクシを滾らせるクソイケメンまでいるとは』

「ソルティ、お前は後で、パラドに絞められて貰うぞ」

『ち、父上!?そんな殺生なぁ!其処はせめてポッピーピポパポかギリルに!』

「な、何かスクリーンから変態丸出しな声が聞こえて来たのにゃ…」

 

その実演で繰り広げられる光景に驚きを隠せない一同、その中で朱乃は何処か確信めいた様に頷いていた中、スクリーンから聞こえて来たソルティの変態丸出しな声に、何とも微妙な空気が流れた。

 

「お前の空気を読まない発言でこの場が白けたんだ、その責任は後で取って貰う!それはともかく、行くぞ!ライダー、変身!」

『ガシャット!レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?アイムア仮面ライダー!』

 

そんな状況にしたソルティに対して厳罰を宣告した一誠、後ろから聞こえて来るソルティの抗議も無視し、一連の流れで先程変身したキャラクター――仮面ライダーへと、その姿を変えた。

が、

 

「更に行きます。皆さん、良く見ていてください!大変身!」

『ガッチャーン!レベルアップ!』

 

此処で更にワンアクション加わった。

ゲーマドライバーの前面にあるピンク色のドアの様な機構、その取っ手を右手で掴み、開くと、

 

「ハァッ!」

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクション、エックス!』

 

前方に出現した姿見サイズの、戦士の絵がピンク色で描かれたパネルを通過すると共に空高く大ジャンプして異空間へと転移、そのアクションゲームのステージの様な異空間でジャンプや飛び蹴りの様なアクションを見せた直後、その身体は頭部を残して飛び散った、と思いきや残った頭部から身体が飛び出て、その状態で元の場所へと帰還した。

 

「俺が変身している仮面ライダー、その名はエグゼイド。アクションゲームをモチーフとした仮面ライダーです。先程の姿はアクションゲーマーレベル1、そしてこの姿は、アクションゲーマーレベル2!」

 

帰還した今の姿――仮面ライダーエグゼイド、アクションゲーマーレベル2の姿は、先程の姿――アクションゲーマーレベル1とは、大きく変わっていた。

ピンク髪を立たせた様な頭部や胸部のディスプレイこそ余り変わらないものの、その身は4頭身から8頭身位のスマートな体型へと変化し、ピンクを基調としたライダースーツに覆われ、背中にはアクションゲーマーレベル1の時は頭部だったパーツが背負われている。

そして関節部や脛といった急所部分に装着された装甲と、先程までのゆるキャラ感とは一線を画した、正に戦士と言える姿になった。

 

「仮面ライダーさん!」

「うおっと!」

「あ、朱乃!?」

 

と、そんな姿を見た朱乃が突如、エグゼイドに抱き付いて来た。

 

「ずっと、ずっと会いたかった、会って、あの時のお礼が言いたかった…!

まさか、イッセー君が仮面ライダーさんだったなんてびっくりですわ…」

「ああ、あの時の娘さんか!まさか朱乃先輩がそうだったとは、運命とは分からない物ですね…」

 

リアス達が驚くのにも構わずエグゼイドを抱きしめる朱乃、エグゼイドもまた、彼女と初めて出会った日の事を思い出し、その過去を思い返していた。



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4話_人としてのFinal Time

「びっくりだわ。まさか数年前に朱乃達を助けた戦士が、エグゼイドに変身したイッセーだったなんて」

「俺も正直びっくりしています、あの時助けた人達が朱乃先輩達だった事に。世間って案外狭いですね」

 

突如としてエグゼイドに抱き付いた朱乃に困惑していたリアス達、だがその訳を把握すると納得した様子を見せた。

 

実を言うとエグゼイドと朱乃は、これが初対面ではない。

数年前、一誠が遠出した際にふと訪れた神社、其処で数人の武装した男に囲まれていた母娘を見かけ、助け出したのが初対面だった。

普通に考えて当時小学生位の一誠が、武装した大の男数人を相手にする等無茶にも程があるが、この時には既にゲーマドライバーやライダーガシャットを開発し、仮面ライダーエグゼイドとして文字通り街を脅かす敵との戦いに明け暮れていた中で、戦闘技術を磨いて行ったのだ、撃退は難なく完遂出来た。

 

「でも数年前からそれ程の手腕を持っていたなら、ここ数年この街にはぐれ悪魔、それもB級以上の存在と思しき死骸が相次いで発見されていたのも納得ね。あれ、貴方の仕業でしょう?」

「はい。あ、勝手に倒したり、報告しなかったりだったのは、不味かったですか?」

「いえ、むしろ助かったわ。私もこの街の『裏』に関する管理を大公様から任されている身ではあるけど、まだまだ至らない面は多いもの。実際、貴方がいなければこの街に侵入したはぐれ悪魔によって、多数の犠牲者が出ていたでしょう。そんな事態は管理者としてあってはならない事よ。報告に関しても、いきなり此方に乗り込んではぐれ悪魔を倒しました、なんて言われても信じない、そうでしょう?」

「そうですね、もし俺がリアス先輩の立場なら救急車を呼びますね、それも黄色いのを」

 

そんなエピソードからエグゼイドが持つ戦闘能力の高さを認識したリアス、同時に此処最近この街で多数寄せられるはぐれ悪魔と思しき死骸の発見報告、それに彼が関わっているのではと当たりを付け、問いかけるとあっさりと認めた。

それに関してエグゼイドは余計な事をしたのではないか、事後処理がなっていなかったのではないかと若干ばつの悪そうな様子を見せるが、リアスは寧ろ、自らが対処しきれなかったであろう事態を未然に防いでくれた事に感謝の意を示していた。

 

「それでイッセー、そんな貴方の腕を見込んでお願いしたい事があるんだけど、良ければ私の眷属に」

「良いですよ」

「え?ちょ、ちょっと待って、あっさりと決めるわね。誘った私が言うのも変だけど、悪魔に生まれ変わるのはメリットばかりじゃないのよ?光には弱くなるし、神聖な物は天敵になるし」

 

そんなエグゼイドの腕を見込み、自らの眷属にならないかと誘うリアスだったが、それに対して即答で応じたエグゼイド、余りにあっさりと快諾した事で逆に戸惑い、何故か考え直すよう説得していた。

が、

 

「悪魔になる事でのメリット・デメリットだとか、そういう物は関係有りません。

 

俺は、つい最近までうちのクズな弟、兵藤誠次郎(せいじろう)が起こして来た事件の責任を、そんな弟をああなるまで放って置いてしまった家族としての責任を取りたい。アイツの所為で迷惑を被って来た人達に、少しでも償いをしたい。今まではぐれ悪魔の駆除を行って来たのも、それが理由です。そんな俺をリアス先輩が必要としてくれるなら、俺はそれに応えたい。それで少しでも罪を償えるなら」

 

一誠の意志は固かった。

 

「兵藤誠次郎…

確か、幼少期から性的な犯罪を立て続けに起こし、今は少年刑務所に入れられている男よね…」

「まさかあの男がイッセー君の弟だったとはね、血の繋がった兄弟でも此処まで違う人に育つんだ…」

「成る程、さっき一部の生徒会員に睨まれていると言っていましたが、そういう事だったんですか。えっと、苦労しているんですねイッセー先輩…」

「まああんな変態を弟に持つと、風評被害も致し方ないって事かにゃ。私達はそう思っていないけどね」

「そうです、イッセー君はそんな悪い子ではありませんわ。イッセー君の人となりを見もしないで、あんな男の兄と見るなんて、いけない人達です。誰だか分かりませんが、お仕置きしませんと…!」

 

己の弟が起こした罪の数々、それを少しでも償えるならと、あっさり応じた理由を話したエグゼイド、その中で上がった名にリアス達はそれがどの様な存在かを思い出した。

兵藤誠次郎。

一誠の双子の弟として生まれた彼は、幼少期より性的な犯罪を立て続けに起こして来た事で、この街では『史上最悪の性犯罪者』として悪い意味で有名だった。

覗きやセクハラ発言ならまだ可愛い方で、18歳未満閲覧厳禁な雑誌・ビデオの万引きや下着泥棒、盗撮・盗聴、挙げ句の果てには性的暴行を行おうと女の子を襲撃する事もあった。

流石に性的暴行は未遂に終わってはいたし、上記の犯罪を起こしても必ず捕まってはいたのだが、その取り調べに対する供述も「兄がやろうとしていたのを見咎めようとしただけだ」だとか「兄に脅されたんだ」だとかの様に兄である一誠に罪を擦り付けようとする物、それもどう考えても嘘だと分かる物ばかりで反省の態度が見られず、数か月前に少年刑務所へと送られていた(尚、これが初めてではない)。

 

「でもそれは貴方自身では無く貴方の弟がやった事、それに貴方だって言って見れば被害者でしょう?聞いたわよ、捕まって取り調べられても貴方の所為にするばっかりだって」

「それでも、です。ああなってしまったのは兄である俺が至らなかったのもあると思うんです。だからこれは俺の罪。はぐれ悪魔を駆除する事も、先輩の眷属になる事も、償うにはどうすれば良いかを考えた結果です」

 

そんな弟の所業を兄として背負う姿に、リアスはエグゼイドの所為ではないと言葉を掛けるが、それでも彼の意志は揺るぎなかった。

 

「まあ、幾らそれがあると言っても、この街の管理者なら誰でも、という訳では無いですけどね。最大の理由は、リアス先輩や、此処にいる皆の人となり、いや、悪魔だから悪魔となり?ですね。さっき朱乃先輩も言っていましたけど、悪魔となりを見もしないで、この街の管理者とその眷属として見て、眷属になろうとするのは良くない事です。そんな関係、絶対に長続きしません」

 

が、それだけではない事も打ち明けた、それを語る際の彼の堂々とした様子は、それが場の空気を変えんが為の嘘では無いと知らしめる様だった。

 

「其処まで買ってくれるなんて、嬉しいわイッセー。なら、これを」

 

その決意を聞いたリアスもまた、彼を眷属とする事を決め、何処からともなくチェスで使われる様な駒を取り出した。

 

『ガッチャーン!ガッシューン』

「はい!」

 

それを見たエグゼイドは変身を解除、リアスへと歩み寄った。

 

------------

 

「…まさか、兵士(ポーン)1つで転生出来るとは思わなかったわね。

イッセー程の実力者なら複数の駒、或いは僧侶(ビショップ)戦車(ルーク)を使わざるを得ない筈だけど…」

 

無事に一誠の悪魔への転生に成功したリアス、だがその結果に彼女は何処か拍子抜けした様子を見せた。

 

「恐らく、エグゼイド自体はともかく、俺自身のスペックはそれ程ではない、と判断されたという事ではないでしょうか?」

「それでも戦い慣れしている部分を加味してもいい筈、だけど…

まあ良いわ。イッセー、私達オカルト研究部は貴方を歓迎するわ、悪魔としてね」

 

その一誠が有するであろうポテンシャルに対して余りにも低い消費で転生出来た理由、それに一早く思い当たった一誠自身が己の考えを話したが、それでもリアスはまだ釈然としない表情だった。

だがこれ以上考えても仕方ないと切り替え、一誠に歓迎の意を伝えた。

 

「改めまして、私は姫島朱乃。リアスの女王(クイーン)ですわ。イッセー君、これからも宜しくお願いしますね」

「僕は木場祐斗。リアス部長の騎士(ナイト)だよ。宜しくね、イッセー君」

「私は塔城黒歌にゃ。祐斗と同じくリアスの騎士をやっているのにゃ。今後とも宜しくね、イッセー」

「黒歌姉さまの妹の、塔城白音です。リアス部長の戦車です。改めましてイッセー先輩、これからも宜しくお願いします!」

「そして(キング)のリアス・グレモリーよ。今後とも宜しく頼むわね、イッセー」

「改めまして、今回リアス先輩、いや部長と言った方が良いですね、部長の兵士となりました、兵藤一誠です。これからも宜しくお願いします!」

 

そして一誠は、オカルト研究部の、リアス・グレモリー眷属の一員となった。



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5話_We're the バグスター!

「此処が、俺の家です。ささ、どうぞ」

 

リアス達との話し合いを経て、彼女の眷属となった一誠、その際に「これから部長達とは家族も同然の身、ならば隠し事は無しで行きたい」と、彼女達全員を家に招待する事にした。

『裏』の事に付いて云々以前に突然他人の家に押しかけるのもどうか、と遠慮しようとしたリアス達だったが「家族は皆、『裏』の事を知っています。それにはぐれ悪魔の駆除の件でも家族が関わっていますし、管理者である部長と顔合わせした方が良いかと思いまして」と勧められ、応じた。

 

「ただいま。帰ったぞ、バガモン」

「お帰りだガ、父ちゃん。其処にいるのが、さっき言っていたお客さんだガ?」

「ああ。お茶の準備は?」

「ンガ。ささ、此方へどうぞガ」

 

数分後に一誠の家へと到着した一行、その玄関のドアを開け、待っているだろう家族に帰宅を告げる一誠、だが彼らを出迎えたのはバガモンと呼ばれた『異形』だった。

 

「あ、あのー、イッセー先輩?今のが、イッセー先輩の『家族』ですか?」

「イッセー君を父ちゃんと呼んでいたし、そう、だろうけど…」

「なんか、何処からどう見ても只物じゃ無かったのにゃ…」

「というか、イッセー君を父ちゃん呼ばわりって、イッセー君は高校生ですよね…?」

「一体何者なの、彼?は…」

 

何処からどう見てもハンバーガーにしか見えない頭と右肩、何処からどう見てもベルトコンベアにしか見えない左腕、辛うじて人の様に見えなくもないそれ以外の部分は全身鎧で覆われたバガモンの外見は、とても人には、一誠の『家族』には見えなかった。

 

「彼はバガモンと言います。詳しくは中で話しますが、彼、いや『彼ら』は俺が生み出した、文字通りの『家族』です。あ、何時も俺が昼に食べているハンバーガー、あれはさっきのバガモンが作った物です」

「え」

 

だがそんなバガモンも、一誠にとってはれっきとした『家族』だ。

そんな彼らについての説明をする為にもリアス達をリビングに招き入れた一誠、その際に告げた衝撃の事実によって白音が驚きの余り固まったりしたが、流された。

 

「粗茶をどうぞガ」

「あ、ありがとう…」

「バガモン、お茶入れて貰って直ぐに悪いけど、パラドとポッピーを呼んで来てはくれないか?部長達はこの街の『裏』の管理を担っている、お前達の事も紹介しておきたい」

「ンガ」

 

左腕――ベルトコンベアになっている左腕の先端に取り付けられたフック型の手で器用にお盆を持ちつつ右手でお茶を配る姿が何故か様になっているバガモンに未だ戸惑いを隠せないリアス達、一方で一誠にとってはもう慣れた光景なのかさして気にする事無く、何処かの部屋にいるであろう他の『家族』を呼ぶようバガモンに頼んでいた。

 

「さて、アイツが呼びに行っている間に話を進めますね。先程、俺が仮面ライダーに変身する為の力をライダーガシャットが有していると言いましたが、其処には、さっきのバガモンと同じ様な存在が、俺の『家族』達が関わっています」

「彼の様な存在が…?」

「もしかして、さっきのバガモンに、さっきイッセーがエグゼイドに変身した時に声が聞こえた、あのソルティとか言う変態っぽい奴はイッセーの使い魔的な存在で、その力を用いて仮面ライダーに変身しているって事なのかにゃ?」

「ご明察です、黒歌先生」

「な、何だか理解が追いつきませんわね。イッセー君が仮面ライダーだった事にも驚きですが、その力を提供しているあのバガモンという存在とイッセー君がどういう関係なのも…」

 

その間に話を進める事にした一誠、仮面ライダーへの変身にはバガモンの様な存在が関わっている事を話すと、黒歌がドンピシャな推察を立てた。

そう、黒歌の言う通り仮面ライダーは、ゲーマドライバーを介してライダーガシャットに取り込まれたバガモン達の『力』を用いて変身する戦士の事である。

 

「へぇ、アンタがこの街の管理者なんだ。流石親父が仲間入りを望む程のモノはある、が、まだまだそれを発揮する為のピースは全然揃っていないって所かな」

「ちょっとパラド、これからパパのご主人様になる人だよ!パパの顔に泥塗る真似はしないの!」

 

と、再び話し始めた一誠達の元に、バガモンと共に二人の人物がやって来た。

一人は水色のTシャツに紫色のレギンスを着用し、黒のコートを羽織った、パラドと呼ばれた少年。

リアスに対して値踏みする様な視線を向けたり、その大いなる可能性を見出しながらもまだまだ未熟だと言わんばかりの発言をしたり等の傲岸不遜な態度を除けばマトモな存在ではある。

パラドの態度を嗜めていたもう一人の、ポッピーと呼ばれた少女も、ピンク色のショートボブに音符の飾りが付いた王冠の様な髪飾り、パステルカラーを基調とした服装に音符やスピーカーといった音楽関係の物体を模した飾りといった出で立ちは奇抜ではあったが、それでも異形としか言いようのないバガモンと比べれば、これもまたマトモと言え、

 

「えーと、それってもしかして『ドレミファビート』に出て来る、ポッピーピポパポのコス?」

「コスじゃないよ、本人だよ!」

「ポッピー、オイラ達の事知らないのにそう言われても信じないと思うガ…」

 

無かった。

その少女の出で立ちは、元は同人ゲームとして産声を上げ、後に専用筐体を持ったアーケードゲームになる程の人気を有する事となった人気音ゲー『ドレミファビート』のマスコットキャラクター、ポッピーピポパポそっくり、というかコスプレだった。

 

「バガモンの言う通りだぞ、ポッピー。パラドも部長に対して失礼だろう、その態度は。まあともかく、お前達もこっちに座ってくれ」

 

それを祐斗に指摘され、何故か自分がそのポッピーピポパポだと主張するポッピーと、その言動に常識的な突っ込みを加えるバガモン、一誠もまたポッピーとパラドの言動を嗜めたが、今は説明が先かと思ったのか一言注意するに留め、3人に対して座る様促した。

 

「さて、改めて紹介します。左側にいる黒いコートの男はパラド。真ん中にいる女の子はポッピーピポパポ、呼びにくいならポッピーと呼んで下さい。そして俺の隣にいるのがバガモン。3人共俺の『家族』です。3人共、真ん中にいるのがリアス部長。知っているだろうけどこの街の『裏』の管理を担っている方で、俺の王となった方だ。で、その左側にいるのが朱乃さんと木場、右側にいるのが黒歌先生と白音ちゃん、4人はいわば、俺の同僚的な存在かな」

「パラドだ、宜しくな」

「皆宜しくね!ポッピーだよ!」

「オイラ、バガモンだガ!そういえば白音ちゃんってまさか、オイラが作ったハンバーガーを何時も絶賛してくれているって父ちゃんが言っていた…」

「は、はい」

「ありがとうガ、白音ちゃん!いやぁ『家族』以外に感想聞く機会なかったから、凄く嬉しいガ!」

「わ、私こそ、何時も最高なハンバーガーを作ってくれて、本当にありがとうございます!あ、さっき見た目の事で驚いてしまって、すいませんでした。イッセー先輩が中々バガモンさんに会わせてくれなかったのは、この事だったんですね…」

「白音ちゃんが謝る事じゃないガ。ゲーム画面の中で出るならともかく、リアルで出て来るのがこんな姿だったらびっくりするのは当然だガ」

 

その3人が座り、改めて互いの紹介をした一誠、その中でバガモンが、何時も自分のハンバーガーを美味しいと言ってくれる女の子が白音である事に気付き、満面の笑み(その顔付きの関係でいまいち伝わりにくいが)で白音に感謝の意を伝え、白音もまた何時も美味しいハンバーガーを作ってくれるバガモンに感謝と、先程その容貌の件も相まって固まっていた事に対する謝罪の意を伝えていた。

それに対して気にしていないとバガモンが返し、その場が落ち着いたのを見計らって一誠が口を開いた。

 

「彼ら3人の正体は『バグスター』、俺の家族であり、ライダーガシャットに力を与えてくれる存在であり、

 

 

 

 

 

13年前、俺が4歳の頃に生まれた、コンピュータウィルスをベースとした電子生命体達です」



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6話_この男、天才Game Creatorにして仮面ライダー!

「こ、コンピュータウィルスって、トロイの木馬とかブラクラとか、パソコンに悪影響を及ぼすって言う、あのコンピュータウィルス?」

「木場、お前色々な種類の悪質なソフトウェア(マルウェア)と混同しているぞ…

まあ、その話は後にしよう。切っ掛けは13年前、俺が開発していたとあるゲームの実行テスト中に発見されたバグで、その原因であろう部分を調査すると、それがゲームプログラムを宿主として増殖するプログラム、つまりコンピュータウィルスである事が判明しました」

「え、ちょっと待って、4歳の頃にゲーム開発をしていたの!?朱乃の件の時には既にエグゼイドに変身出来た事と言い、色々と凄いわね…」

 

一誠がパラド達の正体を、仮面ライダーへと変身する力を与えてくれる彼らの正体を明かし、それについて詳しい説明を始めた中、リアスが至極尤もなツッコミを今更ながら入れていた。

4歳という歳は普通に考えたら幼児教育を受けている頃である、その歳でゲーム開発を行っているというのはいささか信じがたい事ではある、その他にも朱乃が幼い頃には既に仮面ライダー関連のアイテムを開発し、使いこなしていた等のツッコミ所も多かったのだが、一誠の(エグゼイドとしての)力量、バガモンと言う異形としか言えない姿のバグスター、といった要素で誰も突っ込めていなかった。

 

「そうだぜ、管理者さんよ。俺達バグスターと親父が初めて会った時、親父は年端もいかねぇ子供だった。でもその時から親父はゲームクリエイターとして並外れた力を発揮し、その果てに俺らバグスターを生み出し、そして現実世界へと出してくれた。正にパーフェクトな存在だよ、親父は。神と呼んでも過小評価な位だ」

「止してくれ、パラド。いつも言うが、パーフェクトとか、神呼ばわりとかは買いかぶり過ぎだ。まあ常人より飛びぬけているのは認めるが」

「いや常人より飛びぬけている程度じゃ済まないから、イッセー」

 

そんな一誠に驚愕するリアス達の姿に、パラドは誇らしげに一誠の凄さを自慢していた。

一誠は謙遜するが、その余りの凄さ故かまたもリアスに突っ込まれていた。

 

「さて、話を続けますね。そんなコンピュータウィルスの調査を続けている内に、ゲームプログラムを取り込んだ事が影響したのか、自我を持った多数のプログラムの塊となり、それはやがて25体の、今いるパラド達の様な、俺が考案及び開発したゲームに登場するキャラクターを模した姿のバグスターとなりました」

「え、という事はさっきポッピーが言っていたのは…!?」

「そう、

 

 

 

私ポッピーピポパポはドレミファビートに登場する同じ名前のキャラをベースとしたバグスターで、そもそもドレミファビートはパパが開発したゲームだよ!」

「更にこの俺も親父が開発した医療アクションゲーム『ドクターマイティXX』のパートナードクター、パラドをベースとしたバグスターで」

「そしてオイラも父ちゃんが開発したバーガーゲーム『ジュージューバーガー』の食いしん坊モンスター、バガモンをベースとしたバグスターだガ!」

 

 

 

「「「「「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」」」

 

そんな状況を変えるべく説明を続けた一誠、だがその後にまたまた告げられた衝撃の真実に、今度はリアス達全員が驚愕の声を上げていた。

 

「ドレミファビートだけじゃなくて、ドクターマイティXXやジュージューバーガーも開発したのかい!?」

「どれも同人ゲームでは異例の大ヒットを遂げた人気作にゃ!それをイッセーが子供の頃に!?」

「そういえばその3つとも元は同人サークル『IS(アイズ)』が作った作品でしたね、姉さま」

「ISといえばその3つの他にも様々なジャンルにおいて人気作を世に送り出して来た、同人ゲーム業界で知らない人はいないと言って良いサークル、という事は…!」

「まさか、イッセーがそのIS…!?」

「ああ、親父がそのISでゲーム開発を担当しているんだぜ。な、凄いだろ親父は」

 

その衝撃の真実、それに補足するかの様に告げられたパラドの言葉に、リアス達全員が今度は固まった。

無理もない、朱乃が言った様にISは様々なゲームジャンルにおける人気作を世に送り出して来た、同人ゲーム業界で最も有名と言っても過言じゃないサークル。

先程上がったドレミファビートの他にも、外科手術の緊迫感を忠実に再現したその硬派さから人気を博したドクターマイティXX、マスコットモンスターであるバガモンのコミカルさを始めとしたポップな雰囲気で子供から絶大な人気を得たジュージューバーガー等の名作を生み出して来たのだ。

それらの開発が全て、一誠によってなされたのだ、リアス達の驚きは計り知れない物だろう。

 

「いやこれもう本当に、常人より飛びぬけている程度では済まされない功績でしょう、イッセー…」

「あ、あはは…

えーと、話を戻しますね。その後もバグスターに関して調査を続けた所、何かしらの媒介を用いる事で現実世界に具現化する事、元はコンピュータウィルスであるという性質上、下手な扱いをすれば生物に対する病原体になりかねない事、人外の存在を相手にしても互角、或いはそれ以上に渡り合える力を有している事が判明しました」

 

そんな経歴にますます驚かれ、羨望の眼差しを向けられる事となった一誠、何処か気恥ずかしさを覚えた彼は強引に話を戻し、バグスターに関する説明を続行した。

 

「それが判明し、そんな力を有したバグスターという存在をどう活かしていくべきか…

その考えの果てに作り上げたのが、バグスター達のデータを取り込み、現実世界で活動する為の『身体』を具現化するライダーガシャットに、そのライダーガシャットを差し込む事でバグスターの力を装着者に供給、仮面ライダーへ変身させる際のフィルターとなるゲーマドライバーです。俺はこれらのアイテムを使って今日まで、バグスター達と一緒に人知れずはぐれ悪魔等、この街の平和を脅かすであろう存在に対処して来ました」

「そ、そうだったの…

何だか色々と、凄い道のりね…」

「まさかイッセー君達がこの街のはぐれ悪魔を倒していただけじゃなくて、僕達もよく知っているゲーム達を作っていたなんてね…」

「なんか、色々と凄すぎて訳が分からないにゃ…」

「其処までの方がこの街に住んでいて、駒王学園に通っていて、昼休みに私と一緒にハンバーガーを食べていて、そして今私達と同じく部長の眷属になったなんて、今でも信じられません…」

「現実は小説よりも奇なり、とはよく言った物ですね」

 

紆余曲折はあったが一通り説明を終えた一誠、聞き終えたリアス達は余りの衝撃に未だ驚き、戸惑っていた。

 

「今日より俺は、いや、俺達は、リアス部長の下で己が力を振るって行く所存です。今後とも、宜しくお願いします!」

「わ、分かったわ。期待しているわよ、イッセー」

 

それを知ってか知らずか、改めて決意を表明した一誠、リアスも何とか立ち直り、その決意に応えた。



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7話_聖女とのEncounter

「はわう!?」

 

一誠がリアスの眷属として悪魔に転生してから一夜明け、何時も通り学校へと向かっていた彼の眼の前に、アニメやゲーム等でしか見られない様な光景が広がっていた。

シスターと思しき服装の少女が、何の障害物も無いであろう路面に躓きすっ転んでいたのだ。

 

(何もない道で転ぶって『ときめきクライシス』でも設定していない展開だぞ…

現実は小説よりも奇なり、とはよく言った物だな。と、そんな事考えている場合じゃない)

「だ、大丈夫か?」

 

その余りに現実離れした展開に一瞬、自らが開発した恋愛系ビジュアルノベル『ときめきクライシス』を例に上げてまでその状況に心中で突っ込んでいたが、直ぐに考え直し、その少女に声を掛けた。

 

「は、はい、大丈夫です…

はぅ、何故何も無い所で転んでしまうんでしょうか、これも神から授かった試練なのでしょうか…?」

(これが神の試練だとしたら、随分と不条理な神がいた物だ。何処のあらゆる危険から助かる方法を授ける(自称)じーさんだ…)

「よし、と。これ、君の荷物だろう?見た所、シスターの様だが、何故これ程の荷物を持ってこの街に?」

「あ、ありがとうございます!実はこの街の教会に赴任する事になっていたのですが、道に迷ってしまって…

道行く人達に尋ねても言葉が通じず、困っていた所なんです」

 

その声掛けに応じた彼女の、何ともツッコミどころ満載な言葉に再び心中で突っ込みつつも、転んだ際に周囲へと転がって行った彼女の荷物を纏めながら尋ねた。

尚、金髪碧眼と日本人離れした美少女、という風貌の通り彼女は日本人では無く、口から発する言葉も日本語では無い、此処は日本の市街地であり、住んでいる人の殆どが日本人なので言葉が通じないのも致し方ないと言える。

では何故一誠と彼女が普通に会話出来ているのかと言うと、悪魔は多言語理解能力――自らの最も理解出来る言語に自動翻訳する能力を有しており、昨日悪魔に転生したばかりの一誠もまたその能力を得たので、こうして会話できるのだ。

 

「教会か、俺で良ければ案内しよう」

「本当ですか!?ありがとうございます!」

 

そんな困っている彼女を放っておけず、道案内を買って出た一誠、だが、

 

(いや待て俺、彼女は何処からどう見ても天使勢力に属するシスター、悪魔である俺とは敵対する存在。その存在をあろう事か悪魔である俺にとって何より避けるべき場所である教会に道案内する事、それを二つ返事で了解してどうする!?今から自殺しますと堂々と宣言している様な物じゃないか!それにあの教会、出払ったのでは無かったのか?もう何年も前にそうなっていた筈、となれば廃墟であろう其処に案内するというのもどうだろうか?だが今更ダメだとは言えないし…)

 

と、案内し始めて数秒でその事を後悔していた。

今や一誠は悪魔勢力に属する存在、そんな彼が天使勢力に属するであろうシスターらしき彼女を道案内する等、色々と不味いどころの話では無いからだ。

それを抜きにしても一誠の想像通り、この街の教会はもう数年前に神父等の関係者が出払って以来管理されていない状態、廃墟となってしまってもおかしくない状態だ、重い荷物を抱えた彼女を其処まで歩かせて案内するのは意地悪ではないか、その考えも彼の頭を過ぎっていた。

 

「あれ、パパ?こんな所でどうしたの?」

「ギリルか」

 

とはいえ一度やると言った事を投げ出す等出来ないと悩みながら歩いていると、其処に救世主が現れた。

某悪に染まった光の巨人の息子が怪獣相手に戦う特撮ドラマにおける武闘派ヒロインの少女によく似た、丈が短めな白衣姿の少女、ギリルが一誠の姿を見るや否や駆け寄って来た。

 

「実を言うと其処の女の子が道に迷っていたみたいなんだ。聞いてみるとこの街の教会に赴任する事になったらしいから道案内をしていたんだが…」

「分かったわ、パパ。後は私に任せて、パパは学校に」

「ありがとう。助かるよ、ギリル」

 

偶然鉢合わせたギリルに訳を説明すると、その裏にある一誠の深い事情を察したのか、道案内の件を受け継ぐと申し出て来た。

 

「初めまして、シスターさん。パパなんだけど、実は急いで行かないといけない用事があるから、此処からは私が教会へ案内するわ。宜しくね」

「はい、宜しくお願いします!」

 

道案内を継いだギリルがシスターの少女にそう告げ、2人は一誠と別れた。

 

(ギリル。良かったら、その女の子が赴任するらしい教会について、出来うる限り調べてはくれないか?昨日俺が堕天使に襲撃された件もある、もしかしたら…)

(任せて。情報が入り次第、パパ達に連絡するわ)

 

別れ際、一誠がギリルにそんな指示を小声で飛ばしながら…

 

------------

 

「二度と教会の関係者に近づいちゃダメよ」

「すいません部長、軽率な行動でした」

 

放課後、オカルト研究部の部室に来た一誠は、朝の件を何かしらの手段で見かけたらしいリアスからお説教を受けていた。

開口一番にリアスからそう咎められ、何の事か一瞬で察した一誠も、案内を買って出た事に関して直ぐに後悔していた事もあって己の軽率な行動を謝罪していた。

 

「教会関係者、それも悪魔祓い(エクソシスト)が私達悪魔にとってどれだけ危険か、彼らの攻撃を受けた悪魔がどうなってしまうか、幼い頃からエグゼイドとして戦って来た貴方なら分かるでしょう?」

「はい」

 

悪魔祓いの攻撃、それは教会、というより天使勢力を象徴する光。

悪魔にとっては天敵と言ってもいいそれをまともに喰らえば、たとえ上級悪魔であっても致命傷になる、それだけには留まらず、魂まで消滅してしまい、この世界から文字通り『いなくなる』。

故に悪魔にとって天使勢力は勿論、天使が堕ちた存在とその血族からなる堕天使勢力も同等の力が使えるが為に、単なる過去の蟠りに留まらず避けるべき相手なのだ。

 

「ですが部長、そのおかげと言ってはおかしいですが、それによって有用な情報が得られました。

 

 

 

この街に潜伏している、堕天使達に関する情報です。それには、昨日俺を襲った堕天使も関わっている様です」

「な!?それは本当なの、イッセー?」

「はい。どうやら件のシスター――アーシア・アルジェントは、今は堕天使勢力に属している様です」

 

そんな天使勢力に属するであろうシスターと接触した軽率さを説教されていた一誠、だがそれは有益な情報を彼らに齎した。



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8話_少女のSneaking

一誠が手にした有益な情報とは一体何なのか、その答えは、時間を遡って明かす。

一誠と分かれ、この街の教会へと向かっていたシスターの少女とギリル、

 

「そういえば自己紹介していなかったわね。パパとの話を聞いていたなら知っているかもしれないけど、私の名はギリル。貴方は?」

「アーシア・アルジェントと言います。ギリル、さんでいいんですよね?」

「ええ。もしかして変わった名前だと思った?」

「い、いえ!そんな事は!」

「良いのよ。人からビックリされる様な名前だって理解しているから」

 

その道中で互いに自己紹介した際、少女――アーシアは、ギリルの名前に何処か違和感を持った。

それを見抜いたギリルに指摘されて慌てて否定していたが、ギリル自身もそんな反応は理解していて、気に留めてはいなかった。

そんな微妙な雰囲気が漂う中、2人の耳に男の子らしき泣き声が聞こえて来た。

 

「あっ」

 

その声が耳に入るや否やその方へと駆け寄って行くアーシア、ギリルがアーシアの方へと向くと、其処には泣き声をあげていた男の子にアーシアが一言掛けながら、手をかざしている姿があった。

どうやら転ぶか何かして膝を怪我した様だ、アーシアがかざしていた手が淡い光に包まれると、その怪我が瞬く間に治って行った。

 

「…神器、それも回復系の物みたいね。確かあれって『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』だったかしら?」

 

その様子を見たギリルは、今起こった現象が神器による物だと想像がついたらしく、そう呟いた。

それを知ってか知らずか、治療を終えたらしいアーシアがギリルのもとへと戻って来る、その様子は何処か複雑そうだったが、

 

「ありがとう、お姉ちゃん!」

 

怪我が治った男の子の、心からのお礼の言葉と笑顔で手を振っている様を見て、それも晴れた。

 

「ありがとう、って言っているわ」

「はい。すいません、ついお節介を」

「良いんじゃないかしら?人として素晴らしい事だと、私は思うわ」

「あ、あのギリルさん、聞かないんですか?」

「何か、聞いて欲しかった事でもあるのかしら?」

「…あの力の事です」

 

そんな一幕を経て、再び教会へと歩み始めたギリルとアーシア、その最中に先程起こった事に付いて何も気にしていない感じのギリルが気になったのか、アーシアが訊ねて来た。

 

「ああ、あの神器ね?知っている事を態々問い質すなんて失礼な真似はしないわ。見た感じ、あの神器に対して複雑な感情を抱いているみたいだったし」

「い、いえ、そうでは無いんです!この力は神様から授かった物、この力を授けられた事は私の誇りです。ただ…」

 

ギリルは先程ぽつりとつぶやいた通り、あの光景がどの様に引き起こされるかを知っていた、その後に複雑な表情を浮かべていた事もあってギリルは問い質さなかったのだ。

何も聞かなかった事に対して訊ねて来たアーシアにそう返したギリル、だがアーシアが複雑な想いをしていたのはギリルが思っていたのとは違った様子だった。

 

「成る程、その力に関して誰かに良くない反応をされた訳ね。大丈夫よ、私はそうは思わない。心優しい貴女に似合った、素敵な力だと思うわ」

「あ、ありがとうございます」

 

その様子から、あの複雑な表情にさせる何かがあった事を察したギリルのフォローが入りつつ、2人は教会への歩みを進め、

 

「此処よ」

「良かったぁ!やっと着きました…」

 

数分の後、2人は教会に到着した。

 

(思っていた通りの惨状ね、もう何年も管理されていないという事実が見え見えじゃない。こんな場所に『聖母の微笑』を持ったシスターの少女が赴任するなんて、如何にも何か企んでいるって言っている様な物ね。さてそれが天使陣営による物か、或いは…)

 

目的地である教会の現状を見てそんな感想を抱いたギリル、彼女が思う様に、教会は外壁の所々がひび割れ、至る所に蔦が絡まり、庭には雑草が生い茂る…

そんな如何にも暫く手入れされていませんでしたと言いたげな様相を呈していた。

そんな管理を放棄してもう何年も経った状態の教会に、今更アーシアが赴任したという事実に直面したギリルの警戒心は跳ね上がっていた。

 

「あ、あの、ギリルさん。もし宜しければ、此処まで案内して頂いたお礼をさせて貰いたいのですが…」

 

そんなギリルの様子を知ってか知らずか、そう声をかけて来たアーシア。

 

(彼女の好意を悪用する形で申し訳ないけど、教会内に潜り込める理由が出来たわね。パパからも調べて来る様に頼まれていたし、此処は甘えましょう。それに…)

「お礼なら一先ず保留にして置いて。それよりも、身の回りの部分だけでも掃除して置くわ。年頃の女の子がこんな環境のままで生活していたら駄目よ、アーシア」

「え、良いんですか!?幾ら何でも其処まで…」

「良いのよ。この街で知り合ったのも何かの縁だから」

 

その申し出を渡りに船、と乗る事にしたギリルだったが、今現時点での教会の惨状は流石に見るに堪えない物だった様で、渋るアーシアを他所に清掃を始めた。

 

------------

 

「ふぅ。これで一先ずは大丈夫そうね」

「ありがとうございます、ギリルさん!案内して頂いたばかりか、掃除まで…

あ、お茶をどうぞ」

「ありがとう、アーシア」

 

それから数時間掛けて、一先ずアーシアが生活する場になるであろう部分の掃除を終えたギリルは、アーシアが淹れたお茶を貰い、一服していた。

 

「何から何までやって頂いて、ありがとうございました、ギリルさん。どうお返しすればいいか…」

「其処まで気負う必要は無いわ。案内は元々パパから頼まれた事だし、掃除は私がしたかっただけだし」

 

自らもテーブルに座りつつ、ギリルに礼を言うアーシア、どうすれば良いかと気負った様子のアーシアに気にするなとギリルは返した。

 

「ギリルさん、その『パパ』って、先程私の事を助けて頂いた方ですよね。あの方にも後でお礼を言わないと。ギリルさんとは知り合いの様ですが、どんな…」

「文字通りの意味よ、アーシア。パパ――兵藤一誠は、私の父よ」

「え」

 

その中で出て来た一誠の存在が、転んだ自らを助けてくれた存在であったこともあって気になったアーシアはギリルに一誠との関係性を訊ねたが、返って来たのは(彼女にとって)意外な言葉だった。

アーシアと同じ位の背丈ながら出る所は出ている体躯に、何処かクールで大人びた雰囲気も相まって、とても一誠の娘とは思えなかったからだ。

無論、一誠の『単なる』娘ではないのだが…

 

「その話は今度ね。また会いましょう、アーシア。パパや私へのお礼は、その時までに考えていて」

「わ、分かりました!今日は本当にありがとうございました、ギリルさん!また今度、お会いしましょう!」

 

その事実に驚きを隠せないアーシアの姿に苦笑いを浮かべながらアーシアに別れを告げたギリル、アーシアからの送り迎えを受けながら、教会を後にした。

 

「…何時までこそこそと、後を付けているつもりかしら?」

 

その道中、羽織っていた白衣を瞬時に脱ぎ『肩まで鈍色の装甲で覆われた』両腕で構えを見せながら、背後に向けてそう告げた…



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9話_Fallen angelな彼女

「その後、ギリルは追手の撃退に難なく成功、同時刻に連絡を受けていたバグスター達の尾行等によって追手はこの街の、アーシア・アルジェントが赴任した教会に潜伏している堕天使及びはぐれのエクソシストだと判明しました。其処で何か大掛かりな事を成そうとしているらしく、その妨害となりかねないギリルの始末に出向いたのだと思われます。バグスターであるギリルの敵ではありませんでしたが」

 

こうして一連の説明を終えた一誠、今更ではあるが、ギリルもまた一誠が生み出したバグスターの一体である、故にアーシアとの意思疎通が可能だったのだ。

 

「部長。潜伏している堕天使の目的が何であろうと、これは立派な侵略行為です。宜しければ、バグスター達に調査及び突入を指示致しますが、どうしましょうか?」

「確かに私が管理するこの街で好き勝手されるのは我慢ならないわね…

でも急いては事を仕損じるわ。バグスターの存在が公になっていない以上なるべくなら足が付かない様にしないと。バグスター達が堕天使達の集団を蹴散らせる実力を持っていると、その力を借りて変身する仮面ライダーが人間でもなれる、という事が知られたらそれこそ危ないわ」

 

そのギリルからの連絡によって今説明した様な情報を得た一誠、何か大事が起こる前に対処すべきではないかとリアスに判断を仰ぐが、問題が問題なだけに彼女も慎重な対応をする事にした様だ。

 

「まずは裏を取らないとね。そのギリルが入手した情報を踏まえると、教会に潜伏している堕天使及びはぐれエクソシストは相当な人数の筈。その『大掛かりな事』も、上層部が関わっているかも知れないわね。朱乃、貴女のお父様に、バラキエルさんに連絡をお願いできるかしら?」

「分かりましたわ、リアス」

 

が、此処で朱乃に、何処かへ連絡をする様に指示を出した。

 

「部長、今出て来たバラキエルって、聖書にも出て来る堕天使の名前でしたよね?その堕天使に朱乃先輩が連絡って…?」

「イッセー?まさか貴方、朱乃がどういう存在か知らなかったの?数年前に助けた時に、朱乃のお父様に会ったりしなかった?」

「あ、はい。撃退して、直ぐに帰りましたけど…?」

 

その指示が、というよりその際に出て来た名前が気になりリアスに訊ねた一誠だったが、それに対するリアスの反応は、何故か困惑していると言いたげな物だった。

その問い掛けに対して素直に答えた一誠に「私てっきり知っている物だと思っていたわ。何処から説明しようかしら…」と頭を抑えながら呟き、

 

「実を言うとね、今言ったバラキエルは貴方の言う通り聖書にも記された堕天使で、堕天使勢力を統括する組織『グリゴリ(神の子を見張る者)』の最高幹部、そして、

 

 

 

朱乃の実のお父様なの。朱乃は元々、堕天使の父と人間の母の血を継いだハーフ堕天使なのよ」

「ゑ?」

 

一誠の疑問に答えた。

 

「貴方が朱乃を助けた時に戦った、武装した男達だけど、彼らは朱乃のお母様、姫島朱璃(しゅり)さんの親族だったのよ。朱璃さんはこの日本において古来より異形の怪物から平和を守って来た異能力集団『五代宗家』の1つである姫島家の出身だったのだけれど、堕天使であるバラキエルさんと出会って恋に落ち、朱乃を産んだの。でもそれを、宗家にとって敵同然の存在と見ていた堕天使と結ばれた事を快く思わない親族から朱乃の命を狙われ、幾度となく刺客を差し向けられたそうよ。その度にバラキエルさんが撃退したそうだけど、ある時たまたま彼が不在の時に襲撃を受け、絶体絶命の状況となった。その時に現れたのが仮面ライダーエグゼイド、そう、貴方なの、イッセー」

「成る程、そうだったんですか。何とも物々しい雰囲気だとは思いましたが…」

 

その答えに驚きの余り固まる一誠を他所に説明を続けるリアス、それを聞き、何故朱乃が襲撃を受けたのか一誠は納得した。

 

「その後も襲撃が続いた或る日の事。自分の存在が、姫島の家から狙われる自分の存在が、両親にとって重荷になっているんじゃないかと悩んだ朱乃は家出、紆余曲折の末に私と出会い、眷属にして欲しいって頼んで来たのよ。当時の私も快諾して彼女を女王として迎え入れたのよ」

「あれ?でも、朱乃先輩は堕天使勢力においてトップクラスの存在であるバラキエルの娘、一方の部長は悪魔勢力でも指折りの家と聞きました。大丈夫でしたか、その、勢力間の問題とか…」

 

その後朱乃がリアスの眷属となるまでを聞いた一誠はふと思った、敵対関係にある勢力における実力者の娘を悪魔勢力に引き入れて大丈夫だったのか?と。

 

「事が発覚して、朱乃共々こっぴどく叱られたわ…

『考え無しに行動し過ぎだ!』とか『今回の件は悪魔勢力を揺るがしかねない問題だというのを分かっているのか!』とか、色々とね…

事実その件に関して、グリゴリのトップであるアザゼルと、悪魔勢力を統括する四大魔王の一人『ルシファー』であるサーゼクス兄様が極秘裏に会談する事となったの。どうやら個人的な関係を持っていたみたいだったが故に実現した会談の結果、姫島家に対するグリゴリの対応に不手際があったが故として朱乃は正式に私の眷属となったわ」

「成る程、ところで部長って悪魔社会トップと兄妹だったんですね。さらりと流していましたが…」

「ええ。だからこそと言うべきか、叱られ方も壮絶な物だったわ。挙げ句その後アザゼルからはリアス・ヒ○トンなんて変なあだ名を付けられるし…

私は何処の人間界にその人ありと言われていたお騒がせセレブよ…!」

 

大丈夫じゃ無かった。

その時の事を思い出して何とも複雑な表情を見せながら一誠に答えていくリアス。

何気に自らが悪魔勢力のトップである魔王と血の繋がった兄妹だと発言していた、だったら尚更ダメな事ではあるが。

 

「良い、イッセー。今言った様に、他勢力の存在、それも天使勢力や堕天使勢力の存在との接触は相性の悪さだけじゃない、悪魔勢力を揺るがしかねない、いわば国際問題に繋がりかねない行為なの。今回の件だって、もしバグスター達と私達との関係が明るみに出たりしたら、それを口実に突っつかれかねないわ。分かったら今回の様な事は控える事、良いわね?」

「分かりました」

 

そんなリアスの忠告、余りにも痛い目を見たが故か迫真に満ちた忠告には、流石の一誠も頷かざるを得なかった。



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10話_一誠、初めてのContract

「さて、イッセー。昨日転生してから直ぐで悪いけど、今日から貴方には契約を取りに行って貰うわ」

 

一誠がアーシアと接触していた事に関して色々と動きがあってから数時間が経過した真夜中のオカルト研究部の部室、其処でリアスは一誠にある事を指示した。

此処で、悪魔がどうやって生計を立てているかを説明しよう。

今でこそ、人間界で行われている様なビジネスを展開している悪魔も少なくないが、基本的に悪魔は人間等の願いを叶える代わりに魂を対価として奪っていく存在である。

その手にした魂、言い換えるなら寿命を糧としているのが悪魔という種族なのだ。

といっても今は、魂の代わりに金品を代価とするケースも少なくないが。

 

「うふふ、流石はイッセー君と言うべきでしょうか?眷属になって直ぐに契約を取りに行けるなんて。本来なら眷属になって暫くはチラシ配りとかの下積みをするのですけれど」

「そうね、朱乃。本来はそうして貰うつもりだったんだけど、エグゼイドとして、バグスター達の生みの親として人知れずこの街を守ってくれたイッセーには、そういう下積みは要らないと考えたの」

「ありがとうございます、部長。精一杯、頑張らせて頂きます!」

 

それはともかく、昨日眷属となったばかりの身で契約を取りに行くというのはかなり異例らしく、それだけ一誠の実力を、実績を買っている事の現れと言えよう。

 

「それでは、依頼者の元へ転送する為の術式をイッセー君に記しておきますわね。さあイッセー君、お手をお借りしますわ」

「はい、朱乃先輩。どうぞ」

 

その期待に応えたいという意気込みに満ちた返事をした一誠、其処に筆らしき物を持った朱乃が歩み寄り、一誠が差し出した左手の甲に何かしらの図式を書き込んでいた。

 

「これでOKですわ。これで依頼者からの呼び出しによって転移、依頼者の元へと一瞬で行けますわ」

「さあ、魔法陣に立って。其処から依頼者の元へと転移するわ」

「分かりました。では行ってきます!」

 

程無く図式は書き終わり、2人に送られて一誠は魔法陣の中央に立ち、転移、

 

 

 

 

 

「…ん?」

「あ、あれ?」

 

出来なかった。

 

「おかしいわね、転移術式は発動された筈。後は僅かな魔力さえあれば転移は出来る筈なのに…」

「リアス、考えたくはないのですが、イッセー君には転移に必要な魔力すら足りていない、とか…」

「ゑ?」

 

想定外の事態に困惑しているリアスと一誠、其処に朱乃が、この事態の原因に思い当たった。

 

「つまり、俺は自分の足で依頼者の元へ行くしかない、という事ですか…?」

「という事になるわね、イッセーの実力からして、考えたくはないけど…」

 

転移に必要な『僅かな』魔力すら持っていない事が判明した一誠、つまり自分の足で依頼者の元へと出向かなければならず、このままでは依頼者を大いに待たせてしまう事になり、結果として依頼者の心象に悪影響が及び、契約が難しくなってしまう。

 

「俺の到着を待っている依頼者がいる以上、やむを得ないか。頼むぞ、モータス!」

『バクソウバイク!』

 

だが一誠には『辛うじて』足があった。

 

「よっと!どうした、オトン?」

 

ふと外に出た一誠が懐から取り出した黄色いライダーガシャット、それを起動すると、一誠の背後に『BAKUSOU BIKE』の文字と荒野をバイクで駆け抜けるライダーがデカデカと映ったスクリーンが出現、其処からバイクの駆動音と共に何者かの影が飛び出し、一誠の眼前でターンを決めた。

一誠がモータスと呼んだ影の正体は、背中からエキゾースト(排気)及びインテーク(吸気)の両パイプを生やし、胸にはエンジンを模した装甲を有した、黄色と青を基調としたカラーリングの正に異形と言うべき存在で、ヘッドライト部が異様な形状をしているバイクに乗って一誠達の前に現れた。

 

「す、スクリーンから出て来た!?一誠、まさかその、彼?もバグスターかしら?」

「おうよ!アンタがオトンの主人だそうだな。俺様の名はモータス、バクソウバイクに出て来るレーサー、モータスをベースとしたバグスターだ!以後、夜露死苦ゥ!」

「ば、バクソウバイクのモータスを基にしたバグスター…

どうりで見た目とか喋り方が荒っぽいですわね」

「モータス、小説である事を利用して無理矢理ヤンキー感を出すな…

おっと、パトロール中に呼び出して済まないが、此処まで送ってくれないか?」

「お安い御用だぜ、オトン!俺様のモータスヴァイパーは、F1より速いぜ!」

 

突如として現れたモータスに驚きつつもその正体を推測したリアス、彼女の言う通りモータスもまた一誠が生み出したバグスターの1体で、これまた一誠が開発したゲームの1つ、爆弾を投げたり銃器を乱射したり、鈍器でぶん殴ったりいっその事体当たりを決めたり、とにかく何でもアリなルールのバイクレースでトップを目指すバクソウバイクのライバルレーサーを模した存在である。

そんなモータスのヤンキー感を無理矢理出した様な言動にメタ発言で突っ込みを入れつつ、呼び出した訳を伝える一誠、それにモータスが快諾したのを受けて後部座席に乗り込んだ。

 

「改めて行ってきます。部長、朱乃先輩」

「気を付けるのよ、イッセー。モータスも、イッセーの送り迎え頼んだわよ」

「行ってらっしゃいませ、イッセー君。初めての契約、頑張ってくださいね」

「勿論だ!風になるぜェェェェ!」

 

一誠が後部座席に乗り込み、リアスに出発の挨拶をした事を確認したモータスは、いきなりフルスロットルで校庭を飛び出していった。

 

------------

 

「到着っと!此処だろ、オトン?」

「ああ。流石だなモータス、ほんの数分で到着するとは」

「おうよ!俺様はオトンが生み出した最強最速のバイクレーサーだからな!」

「本当に助かった。それじゃあ、行って来る」

「おう、行ってらっさい」

 

学園を飛び出してから僅か数分、一誠を自らの愛車であるモータスヴァイパーの後部座席に乗せて出発したモータスは迷う事無く、依頼人が住んでいる家屋へと辿り着いた。

 

「御免下さい」

『え?ど、どちら様ですか?』

「ご依頼を承りました、リアス・グレモリーの眷属の者です。転送の際にトラブルがあり、玄関よりお伺いする事となりました」

「さて、俺もパトロールに戻るとしま…」

 

一誠が依頼主らしき声に事情を説明し、家屋の中へと入って行ったのを見届けたモータスは、パトロールに戻ろうとモータスヴァイパーのエンジンを掛けようとした、その時だった。

 

「んぁ?何だテメェら、こんな真夜中に何うろついてやがんだ?」

 

モータスの目の前で、聖職者ですと言いたげな恰好をした男女が現れ、彼の方へと近づいて来たのだ。

今朝方ギリルがアーシアと接触し、その帰り道に襲われた件はモータスも周知の通り、そんな状況下で聖職者の恰好をしてうろつく等、余程のバカ或いはその手の存在としか考えられない。

そう思い立ったモータスは、モータスヴァイパーに忍ばせていたバールの様な物を掴みながら、ヤンキー感丸出しの口調で威嚇するが、

 

「クソ悪魔の番犬には天誅ってねェェェェ!」

「ふ、フリードさん!?」

「うおっ!?」

 

返って来た反応は余りにも斜め上な物だった。

威嚇するモータスの姿を認識するや否や、2人組の片方である白髪の男――フリードが何処からともなく取り出した光の剣をモータスへと振り下ろしたのだ。

 

「あっぶねぇなテメェ!いきなり何しやがんだゴルァ!」

 

辛うじて掴んでいたバールの様な物でのガードに成功したモータスだったが、突然斬りかかられた事に激昂、フリードに反撃を仕掛ける…!



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11話_Warningな事態

『あっぶねぇなテメェ!いきなり何しやがんだゴルァ!』

「な、何だ今の!?」

「今の声、まさかモータスが!?」

 

一誠を送迎し、パトロールに戻ろうとしたモータスが突如、聖職者の恰好をした男に襲撃された――その異常事態は、襲撃され激昂した彼が発した叫びで一誠達の知る所となった。

 

「事情は後でお話しします!今は安全な場所に隠れていて下さい!」

「わ、分かった!」

『マイティアクションエックス!』

 

モータスを襲撃したのが、この街に潜入した堕天使勢力の存在ではないかと判断した一誠は、依頼主の男性に隠れる様指示を飛ばしつつ、左腰からピンク色のガシャットを取り出し、起動させる。

 

「大変身!」

『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクション、エックス!』

 

依頼主が何処かへと消えたのを確認して直ぐ、レベル1をすっ飛ばしてレベル2へと直接変身した一誠――エグゼイドは、外で戦っているであろうモータスの様子を確認すべく、玄関前へと向かいながら、

 

『ガシャコンブレイカー!』

「さて、外の様子はどうか…」

 

ガシャコンブレイカーを装備、玄関扉の覗き穴から外の様子を伺う事にした。

 

「む、あそこにいるのはアーシアか?ギリルからの報告を考えれば案の定と言うべきか、当たって欲しくはなかったと言うべきか…

だがモータスに斬りかかったはぐれエクソシストに協力するでもなく、何処か戸惑っている様に見えるな。どういう事だ?」

 

その様子を見て疑念を口にする一誠、そう、モータスを襲撃して来たエクソシストらしき2人組はアーシアと、モータスに今も尚斬りかかっている男だったのだが、その片方であるアーシアはただおろおろとしているだけだった。

 

「気になる事が山ほど出来たな、まずは身柄を確保するべきだ、な!」

「ん?」

「お、オトン!」

 

そんな光景について後で問い質さねばと決意した一誠、その声と共に飛び出し、

 

「セイヤァ!」

「へぶぁ!?」

「フリードさん!?」

 

一瞬で男の腹部にガシャコンブレイカーの一撃を命中、男――フリードを昏倒させた。

 

「安心しろ、手加減はした。大丈夫か、モータス」

「おうよ、オトン!このモータス様があんなヤローに後れはとらねぇぜ!ざけんなって思ったけどさ」

「そうか、なら良かった。さて…」

『ガッチャーン!ガッシューン』

「い、イッセーさん、だったんですか!?」

「ああ。また会ったな、アーシア」

 

同伴していたフリードが倒れた事に慌てふためくアーシアに告げつつモータスの身を案じるエグゼイド、彼の無事及び、周囲の気配がない事を確認すると変身を解除、その正体である一誠の姿にまたも驚くアーシアに声を掛けた。

 

「朝会って以来か。ギリルが色々とお節介を焼いたそうだが、迷惑では無かったか?」

「い、いえ、そんな事ありません!寧ろ色々と気にかけて下さって、助かりました!」

「んぉ?ああ、ギリルが言っていたシスターってお前だったのか!何でまたこのキチガイと一緒に…」

「おっと、そうだったな」

 

未だ混乱したままのアーシアと、モータスも交えて一言二言話した後に本題に入ろうとする一誠。

其処に、

 

「イッセー、大丈夫!?」

「大丈夫ですか、イッセー先輩!?」

「イッセー君、無事ですか!?」

「助けに来たのにゃ、イッセー!」

「無事かい、イッセー君!?」

 

魔法陣で転移して来たのか、眩い光と共にリアス達が現れた。

どうやら依頼主を狙ったこの件がリアスの元にも届いたのか、その様子は一誠の身を案じていると言わんばかりのそれだった。

尤も、既に一誠が鎮圧した後だったが。

 

「部長、それに皆…

俺は大丈夫です、襲撃を掛けた其処の男は既に無力化しました」

「そ、そう。流石はイッセーと言うべきかしら。ところで彼女は…」

「彼女が先程説明したアーシアです。其処の男と同伴していた様ですが、何やら戸惑う様子を…」

「えっと…」

 

一誠があっさりと事態を鎮圧して見せた事に、色々な事が起こり過ぎて更に混乱が深まるアーシアの姿に、どうした物かとリアスが思っていると、

 

「リアス!堕天使らしき者が複数近づいておりますわ!此処は離れましょう!」

 

事態はまだ鎮まっていなかった。

 

「っ!分かったわ朱乃、直ぐに撤退するわよ!皆、準備して!」

「「「「了解!」」」」

 

この場に複数迫って来る堕天使の気配、この場に留まるのは危険と判断したリアスは帰還の為の術式を展開する、が、

 

「分かりました部長、少しお待ちを!」

『ゲキトツロボッツ!』

「ガットン!お前は依頼主を、この家を守れ!」

「了解、ファザー。警戒モードに移行」

 

此処で一誠はとある行動に移った。

まずは赤色のガシャットを起動させてガットンを呼び出し、襲撃を受けていた依頼主を守る様指示を飛ばした。

 

「モータス!お前はアーシアを学校まで連れて来い!」

「任せろ、オトン!」

 

次にモータスに、アーシアを学校へ連れて来るよう指示を飛ばす。

 

「イッセー!さっきも言った筈よ、他勢力、それも堕天使勢力の存在と接触するのは」

「部長。お言葉ですがこの一件が堕天使による、悪魔が『裏』の管理をしているこの街への越権行為なのは明らか、彼女もまた同伴していた以上は関係者です。彼女の身柄を確保して事情聴取するのが、この街の『裏』を管理する存在として取るべき行為です!」

「っ!それもそうわね…

分かったわ、イッセー。モータス、彼女の事、お願いね」

「おうよ、主人さんよ!」

 

この指示はリアスから制止を掛けられそうになるが、管理者として取るべき行為であると説き伏せた。

 

「パラド!お前は全バグスターに第二種戦闘体制の連絡だ!堕天使及びはぐれエクソシスト達を見つけ次第無力化し、捕縛する様連絡しろ!」

『分かったぜ、親父!総員、第二種戦闘体制だ!この街にいるだろう堕天使及びはぐれエクソシストを見つけ次第無力化して捕縛、親父達の下に連れ出せ!』

 

そして家で待機しているパラドに通信機越しに、全てのバグスターへ警戒態勢を取る様連絡する様指示した。

 

「アーシア。恩着せがましい様で済まないが、朝のお返しをしたいなら、モータスに付いて来て欲しい。色々と話を聞きたい」

「は、はい!」

「リアス、準備が出来ましたわ!」

「分かったわ、朱乃!行くわよ、皆!」

「「「「はい!」」」」

 

転移の魔法陣が完成し、帰還をする一誠達、帰り際一誠はアーシアに、そう告げた。



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12話_怒りのFighters

「全員、揃っているわね」

「はい、部長」

「1人のもれなく、此処へと戻りましたわ」

「ふぅ、間一髪だったにゃ」

「後はイッセー先輩が担当した依頼者への説明及び保障と」

「アーシアへの事情聴取だけ、ですね。アーシアを連れているであろうモータスが到着するまで僅か数分、早急に方針を決めましょう」

 

堕天使の襲来を察知し、安全の為にオカルト研究部の部室へと転移した一誠達、全員が戻った事を確認した彼らは、近いうちに訪れるだろう事態に備えて打ち合わせを始めた。

 

「イッセー、そんな貴方に朗報、と言って良いのかしらねこれは…

今回の件に関して朱乃がバラキエルさんに連絡を取った所、幹部からの指示どころか、把握すらしていなかったそうよ。つまりこの街に潜入している堕天使達の独断で、隠れて起こした事案、という事ね」

「ゑ?ギリルからは、複数の堕天使にアーシア、あと結構な数のはぐれエクソシストを連れて教会に潜伏していたと報告を受けました。其処まで大規模な人員を動かす事案を全く把握していない筈が…」

「信じられないでしょうけれど、私の連絡があるまで幹部の誰も気づいていなかったそうですわ…」

「部下の管理が全くなっていないのにゃ…」

「実際に依頼者への襲撃もあったのですし、被害が出たとしたらどうするつもりだったんでしょうか?イッセー先輩、及びバグスターの皆さんによる警備があったから未然に防がれたものの…」

「以前にも似た様な事案があったみたいだし、組織として大丈夫なのかな…?」

 

その冒頭、朱乃による連絡の結果が報告されたのだが、その内容は一誠達にとって信じがたい物だった。

複数の堕天使が独断で大多数のはぐれエクソシストを引き連れ、悪魔が管理する土地に潜伏していた…

そんな大規模な行動を独断で、しかも上層部に把握される事無く行えたのだ、管理の杜撰が過ぎると言われても文句は言えない事態だ。

 

「まあその辺は後で、お兄様に抗議して貰うわ。で、今回の件は私達が、ひいては我々悪魔勢力がどう対応しても構わないとの、私達に対応を一任するとの連絡があったわ。つまり…」

「堕天使やはぐれエクソシスト達を俺達が、煮るなり焼くなり好きにして構わない、と?」

「ええ、そういう事よイッセー。折角だから貴方の実力、私達の目の前で見せて貰っても良いかしら?恐らくはモータスが連れて来るであろうその、アーシアだったかしら?シスターを追って堕天使が来るかもしれないわ。その迎撃に、ね?」

「勿論です、部長。ノーコンティニューで撃退(クリア)して見せます!」

 

そんな堕天使勢力の信じがたい裏事情を垣間見て頭を抱えざるを得なかった一誠達だったが、今はそれを追求すべき時では無い、今この街に潜入している堕天使達への対応について話が続行され、それに関して一任を受けたとリアスから報告され、一誠が実力披露の為に迎撃する事が決まった。

其処へ、

 

『済まない、親父!堕天使を1人、取り逃がしちまったみたいだ!後の連中は確保出来たんだが如何せん数が多くて足止めを食らって…』

「大丈夫だ、パラド。後は俺達が対処して置く」

「オトン、今連れて来たぜ!」

「良くやった、モータス!白音ちゃん、案内を頼めるか?」

「任せて下さい、イッセー先輩!」

 

パラドからは堕天使を1人取り逃がしたという連絡が、モータスからはアーシアを連れて到着したという報告がほぼ同時に届いた。

それを聞いた一誠は白音に案内を頼み、自らは、

 

『ガシャコンブレイカー!ジャ・キーン!』

「それでは、行ってきます!」

「行ってらっしゃい、イッセー!」

「期待していますわ、イッセー君!」

「油断しちゃダメにゃ、イッセー!」

「頑張って来て、イッセー君!」

「オトン、待っていたぜ!」

 

ガシャコンブレイカーを装備すると同時にその打撃部分の側面にある2つのスイッチ状の機構、その内『A』と書かれた方を押して刀身を展開させ、皆からの声援を背に窓から校庭へと飛び降りて行った。

其処には既にモータスヴァイパーから降り、自動小銃を持つモータスが、駒王学園へと来襲するであろう堕天使を今か今かと待ち構えていた。

そして、

 

「来るぞ、モータス!」

「あいよ、オトン!ハチの巣になりやがれ、烏如きがぁ!」

「なっ!?くっ!」

 

案の定と言うべきか学園へと向けて堕天使が襲来、それを見てモータスの自動小銃が、弾丸をばら撒く。

それを目の当たりにした堕天使が射線から外れようと回避行動をとったり、右手から光で出来た槍を生成し弾丸を防ごうとしたり等の行動を取るが、

 

「はぁっ!」

「きゃぁ!?」

 

其処に悪魔の翼を展開して飛び立った一誠の斬撃が、ガシャコンブレイカーの刀身による斬撃から放たれた衝撃波によって翼が斬り裂かれ、地上へと落ちて行った。

それを見て自らも着地する一誠、

 

「まさか貴様が現れるとはな。1日振りか」

「ああ、コイツが昨日オトンを殺そうと近づいて、ガットンのワンパンで返り討ちにした奴か!」

「兵藤、一誠…!」

 

モータスと共に、地に落ちた堕天使と対峙する一誠、その相手は昨日、一誠を襲撃しようと近づいて来たあの堕天使だった。

 

「我が主リアス・グレモリーが管理するこの街に、大層な人員を引き連れて潜入していたそうだな。一体何を企んでこの様な事を?」

「オトンに話した方が良いんじゃねぇか?どーせテメェは詰んでいるんだ、お仲間は既に俺のキョーダイ達によってお縄だしなぁ」

「く…!」

 

翼は斬られ、一誠とモータスの2人による「下手な動きをしたら殺す」と言わんばかりの威圧には流石に屈さない訳には行かなかったか、素直に何を企んでいたかを話し出した。

 

「教会から追放されたアーシアがレアな神器を持っていたから、有効に使えるよう私が頂こうと、この街で儀式を執り行おうとしt」

「もう良いや、喋んなクソアマ」

「きゃぁ!?」

 

その余りにも身勝手な計画にブチ切れたモータスは、未だ話している真っ最中の堕天使に向けて発砲、話を中断させた。

 

「碌でもない計画を立ててこの街に大挙して殴り込んだ挙げ句、邪魔だからとオトンに刃向けたクソアマを許すとでも、俺一言でも言ったっけか?許す訳ねぇだろうが!行くぜオトン!」

「ああ、モータス。アーシアの運命は、俺達が変える!」

『マイティアクションエックス!』

「大変身!」

『ガッチャーン!レベルアップ!マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクション、エックス!』

 

そして一誠もまたブチ切れた1人である、真っ先に殺意を向けたモータスの怒号を合図に、エグゼイドのレベル2の姿に直接変身した。

 

「な、何なのよその姿は!?」

 

今しがた一誠が変身して現れたエグゼイドの姿に驚きを隠せない堕天使。

それも無理は無いだろう、昨日の言動からして一誠が何の神器も持っていない人間というのが堕天使の認識だったのだ、それが神器による力としか思えない姿への変身を遂げれば誰でも驚く。

そんな堕天使に向けて、エグゼイドはこう告げた。

 

「仮面ライダーエグゼイド。この街を、この街の住人達を守る戦士だ。

 

 

 

ノーコンティニューで、クリアして見せる!」



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13話_圧倒的なAction

「せいっ、はぁっ!」

「ぐっ、きゃぁ!?」

 

一誠が変身したエグゼイドと、翼を切り取られた堕天使との戦い、その行方は火を見るよりも明らかと言っても過言じゃ無かった。

エグゼイドは引き続き刀身を生やしたガシャコンブレイカーで、堕天使は新たに生成した光の槍で斬り合った事で戦いは始まったのだが、直ぐに光の槍は砕け、尚も止まらぬ斬撃の嵐によって堕天使は防戦一方となっていた。

その状況を受けてかどうかは当事者たるエグゼイドのみぞ知る事だが、途中からその斬撃は峰打ちによる物となっており、相手を殺すというより痛めつける為の攻撃と化していた。

悪魔にとって天敵である、光の力を使える堕天使を相手取っているとは到底思えない、傍らで未だに自動小銃を油断なく構えているモータスの助けなど必要ないと言わんばかりの一方的な展開だった。

 

「これで終わらせる!」

『ガッシューン』

 

それでも尚エグゼイドは(少なくとも傍目から見れば)手を緩めない。

堕天使が連撃によって疲弊したのを見て、ゲーマドライバーからガシャットを抜き取り、

 

『ガシャット!キメワザ!』

 

ガシャコンブレイカーの側面に取り付けられた、ガシャット挿入スロットにそのガシャットを装填した。

するとガシャコンブレイカーに膨大なエネルギーが収束していき、

 

『マイティ!クリティカル・フィニッシュ!』

「セイ!ハッ!トゥ!オリャァ!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

その音声と共に解放、すると同時にエグゼイドはV字に斬り裂きながら跳躍、後方へと回り込みながら今度はX字に斬撃を放ち、堕天使の手足及び翼を根元から断ち切った。

 

「なあ、オトン。ソイツの手足をぶった斬る為に態々キメワザ使ったのは、血が飛び散らないようにする為か?」

「ああ、モータス。コイツを、俺を襲撃した罰として一思いに切り捨てるのは造作も無い事だ。だがコイツに罰を下す権利があるのは俺だけでは無い。彼女達がどの様な罰を下すか、それを見届けるべきだ。故に、俺が下す罰は以上だ」

「流石オトン!正に俺達を生み出した神だ、器の広さが段違いだぜ!」

「よせモータス、俺は其処まで大それた存在では無い。さて、そういう事だから、2人から下されるであろう罰も受けて貰おうか。それではお願いします、部長、アーシア」

「まさか私達の為に命『だけ』は奪わないなんて、気が利いているわね。イッセー」

「レイナーレ様…」

 

だがその斬撃のエネルギーが余りにも高かった事から、切断された両腕・両脚、翼の断面が瞬時に塞がれ、血が噴き出す事は無かった。

その理由をモータス『達』に話したエグゼイド、それを受けてかどうかは分からないが彼らの所へと来たリアス達の姿を見て、倒れ伏す堕天使――レイナーレにそう告げた。

一方でエグゼイドからレイナーレの処罰を任されたリアス達、彼の機転に感心した様子のリアスに対して、アーシアはレイナーレの真の目的を聞かされ、己の命が危うかったという事実に直面したのもあってか、何処か沈痛な面持ちだった。

 

「さて、私が『裏』の管理をしているこの街で随分な事をしようとしていたそうじゃない?それがどういう事か、堕天使である貴女になら分かっているでしょう?」

「り、リアス・グレモリー…!?」

「さて、本来ならイッセーの言う通り、アーシアの意見も聞くべきでしょう。けれど、彼女は見ての通り話を聞ける状態じゃない、だから私が貴女に罰を通告するわ。ああ、一応言って置くけど、グリゴリからの助けは来ないわ。先方からは貴方達への対応を一任されているもの」

「な…!?」

 

そんなアーシアへの対応は後にし、リアスはレイナーレに罰を通告する…!

 

「悪魔が『裏』の管理を担うこの街への不法侵入、契約の常連だった街の住人、及びアーシアに対する殺人未遂、それらを加味して、

 

 

 

貴方達には、冥界において仲間達と共にその裁きを受けて貰うわ」

「ま、待…!」

 

それは自らの独断では無く、冥界での正式な裁きに委ねる、という物だった。

そう告げると共に転送の為の魔法陣を展開、制止を求めようとするレイナーレの声を他所に発動、彼女を冥界へと転送させた。

 

「これでひと段落ついたと言って良いかしらね、イッセー」

「はい、部長。後はアーシアへの対応ですが…」

「…過去にあんな目にあった上に、自らを招き入れたレイナーレの下種な真意を聞いては、立ち直るのに時間が掛かるかも知れないわね」

「あんな目に?主人さんは何か聞き出したのか?」

「ええ、彼女の過去をね。本人の前で暴露するのもどうかと思うから、後で話すわ」

 

この街に降りかかるかも知れなかった惨劇は未然に防がれ、残るは事後処理のみとなったリアス達、その1つであるアーシアへの対応だが、リアスの言う通りそれは時間が掛かりそうだ。

その言葉の中で気になる事があったモータスがリアスに尋ねた所、リアスはアーシアから、その過去を聞いた事を話した。

 

------------

 

「んだよそれ、ふざけてやがる…!

悪魔1人の傷治した位で追放とかざけんじゃねぇぜ、全く!」

「教会に属する存在として、憎むべき敵である悪魔を助ける等言語道断という組織論理も分からなくは無いが、それにしてもドラスティック過ぎる。そもそも『隣人愛』を掲げ『敵を憎むな』と声高に主張していたのは他ならぬ教会の開祖だろうに…」

 

その後、リアスからアーシアの過去――嘗てその身に宿している神器である『聖母の微笑』の力によって『聖女』として担ぎ上げられながら、怪我をした1人の悪魔を治療した事で一転『魔女』として非難された末に教会を追放された果てに、レイナーレの誘いを受けて堕天使勢力に身を寄せたという過去を聞いた一誠とモータスは、その様な仕打ちをした教会に対して憤りを隠さなかった。

 

「私もイッセーと同じ意見ね、敵勢力である教会に対してあれこれ意見を言うのもどうかと思うけど。それで彼女をどうするかについてだけど、

 

 

 

彼女を、私の眷属に迎え入れようと思うの。彼女からもお願いされたしね」

「「ゑ?」」

 

そんな教会の対応に同じく憤りを覚えていたリアスの口から出たアーシアへの対応、その内容に一誠とモータスは戸惑いを隠せなかった。

 

「しゅ、主人さんよぉ、ギリルから聞いた話じゃあ、アーシアは敬虔なシスターだそうだぜ?そんな娘が悪魔に転生させてほしいだぁ?どういうこっちゃ?」

「モータスの言う通りです。悪魔に転生したとなれば神聖なる物が天敵になるのは勿論の事、神への信心を想起させる行いも出来ないでしょう。敬虔なアーシアが、何故それをもなげうってまで悪魔に転生しようと…?」

「まあ、普通はそう驚くわね。でもアーシアからその理由を聞いて納得したわ。『私はイッセーさんによって何度も救われました。身寄りもずば抜けた才能もない私ですが、そのご恩に少しでも報いたい!』と、何かキラキラした眼差しで言っていたわ」

「ははは、成る程な!敬虔なシスターを改宗させるたぁ、流石はオトンだぜ!」

「改宗って、俺は宗教か何かの教祖か、或いは信者に祀られるご神体か?」

「いやいや教祖とかご神体とか程度じゃねぇよ、オトンは神その物じゃねぇか」

「だからモータス、俺はその様な存在では…」

 

アーシアにとっては正に今までの自分を投げ捨てると言っても過言じゃない判断、だがその理由を聞いてモータスは得心がいったのか、その要因たる一誠を称え、一誠は大げさだと突っ込みを入れていた。

 

------------

 

「アーシア、私達は貴女を歓迎するわ。悪魔としてね」

「はい!私、精一杯頑張りますね!」

 

その後、アーシアはリアスの『僧侶(ビショップ)』として彼女の眷属に迎え入れられ、この騒動は一応の決着が付いた。




次章、ハイスクールDevil×Ex-aid――

「何度も言った筈よライザー!私は貴方とは結婚しないわ!」

リアスに持ちあがった結婚話――

「では『レーティング・ゲーム』で決着を付けるのは如何でしょうか?」

それを阻止すべく、リアス達はレーティング・ゲームに挑む事となった――

「皆さん、仮面ライダーになりませんか?」

厳しい状況の中、一誠は1つの決断をする――
そして、

「これより、序列37位眷属切除手術を開始する!」
任務開始(ミッション・スタート)!」
「ポパピプペナルティ、退場」
「私の掌で踊るが良いにゃ!」
「心の滾りのままに、ぶん殴ります!」
「「ノーコンティニューで、クリアして見せる!」」

フィールドに、7人のライダーが君臨する!

第2章『戦闘校舎のBANBAN SHOOTING』


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2章『戦闘校舎のBANGBANG SHOOTING』
14話_Riotの幕開け


「皆さん初めまして!アーシア・アルジェントと申します!日本に来て幾ばくも経っていないので色々とご迷惑をお掛けしてしまうかもしれませんが、宜しくお願いします!」

 

翌朝の一誠が属するクラスの教室、何時も通り松田と元浜(変態2人組)の変態丸出しな行動に対して一誠が制裁を下し、その後何事も無く作業――新ゲーム『マイティブラザーズXX(ダブルエックス)』の開発作業に戻り、他の生徒が入室する等という何時もと変わらない光景のまま迎えた朝礼、其処でアーシアがクラスの一員に加わる事が、アーシアが駒王学園に転入する事が発表された。

まだ来日2日目、しかもリアスの眷属となって日があけたばかりである、にも関わらず諸手続きを此処まで早く済ませて転入する事が出来たのは、ひとえに此処駒王学園の体制にあると言って良い。

実を言うとこの駒王学園、リアスの兄であり冥界のトップである魔王の1人、サーゼクス・ルシファーが理事長を務めており、学園上層部にも彼の手の者が何人か入っている。

そんな上層部が、理事長の妹であるリアスが眷属に招き入れた少女を学園に転入させたがっているという話を聞けば、成績証明書等の手続きに必要な書類を『無かった事』にして即転入させる事等造作もない。

駒王学園への入学・転入を目標に必死こいて受験勉強して来た学生達がこの事を知れば非難が殺到する事間違い無いが、眷属が一定時間離れた場所で其々拘束されている事態(この場合は授業等の為)と言うのは好ましくない、故に上層部からの許可はあっさり通った。

余談だが、悪魔に転生した事で教会に住む事が出来なくなった(アーシア曰く「悪寒が止まりません」との事)の為に別の場所に引っ越そうかという話が出た際、一誠の家にホームステイという形で同居させたらどうかという案が浮上したが、空き部屋が無かった事、家事を担当するバガモンの負担が増える事等からお蔵入りとなり、暫くはリアスと同居する事となった。

 

------------

 

「部長、只今戻りました」

「お帰りなさい、イッセーさん!お仕事、お疲れ様です!」

「只今、アーシア」

 

数日後の夜、契約を終えてオカルト研究部の部室へと戻った一誠を、アーシアが出迎えた。

まだ眷属となって幾ばくも経っておらず、即戦力同然だった一誠とは違ってアーシアはまだリアスの元で研修中、故に今部室にいて、こうして一誠達眷属仲間を出迎えるのは何時もの光景ではある。

が、

 

「部長?」

「部長さん?」

「ん、え?あ、あら、イッセー戻っていたの?」

 

一誠が呼びかけた相手であるリアスの様子は、何処かおかしかった。

 

「どうしたのです、部長?最近様子がおかしく見えますが…」

「そうですね、イッセーさん。先程からも心此処にあらず、といった様子でしたし…」

「い、いや何でもないわ。最近ちょっと疲れが溜まっていて…」

 

2人の心配する声に対してリアスはそう返すものの、それは明らかに嘘だと一誠達は見抜いた。

アーシアの言う通り、最近のリアスは心此処にあらずと言わんばかりに上の空になったり、何処かイライラした様子を見せたりと、何時もとは明らかに様子が違っていたのだ。

 

「部長さん。何か悩み事がありましたら遠慮なく私達に相談して下さい。出来る範囲で頑張りますから」

「アーシアの言う通りです、部長。部長も前に言ったではありませんか、眷属とは即ち家族である、と。家族が思い悩み、苦しんでいる姿を見つけたら出来うる限り力になる、それが家族のあるべき姿です」

「…ありがとうね、イッセー、アーシア。

でも本当に大丈夫だから。御免ね心配かけて、こんな体たらくでは王失格ね」

 

そんなリアスを気遣い、良ければ相談に乗ると声を掛ける一誠とアーシアだったが、それでもリアスは、悩みは無いと返すのみだった。

 

------------

 

「ふむ。2人協力が必須なギミックやアクションは、他にどの様な物が考えられるか…

意外とアイデアは浮かばない物だ」

 

その後、リアスの事が気になりながらもこれ以上声を掛けても逆効果だろうと判断して帰宅した一誠、気分転換も兼ねてマイティブラザーズXXの開発作業に移っていたのだが、こちらも状況は思わしくなかった。

『協力アクション』をジャンルに掲げたマイティブラザーズXX、複数のキャラが協力して行うアクションや、協力して仕掛けを解かないと動かないギミックはその肝と言って良い物なのだが、そのアイデアが中々浮かんで来ないのだ。

 

「1人で、根を詰めて考え込んでも仕方ない。近々ユーザーの代表と言って良い『彼ら』から意見を聞くのも良いかも知れないな」

 

そんな行き詰まりの状況下、1人で考え続けても良い結果は出ない、そう思った一誠は開発作業を切り上げ、布団に潜り込んだ。

 

(それにしても、最近の部長は明らかに様子がおかしい。部長の身に何か起こったとしか考えられない。だが部長に聞いても何も無いの一点張りだ、まるで俺達には知られたくないと言わんばかりに。まさか部長の身に起こっている事態は、俺達では対処出来ないと思われている程の大事という訳か?だとすれば考えられるのはグレモリー家、いや魔王様である部長のお兄さんも絡んでいるという事になるな…)

 

が、やはり其処でも考えるのはリアスの事、その身に起こっている事態は自分達の手には負えないだろうと思われている程の物ではないか、そう思い立った一誠はふとヘッドセット型の端末を取り出し、

 

「ポッピー。今大丈夫か?」

『パパ?どうしたのこんな時間に?』

 

別室にてバグスター達のオペレーティングを行っていたポッピーピポパポと連絡を取った。

 

「最近、部長の様子が明らかにおかしい。恐らく部長の身に何かあったのだろうが、俺達が聞いても何も無いの一点張りだ。余程の大事であろうと俺は見ている、俺達では干渉出来ないと思われている程の。それが何なのか、出来うる限り探りを入れて欲しい。頼めるか?」

『OK、パパ!身辺調査なら、ポッピー達バグスターにお任せ!』

「ああ、頼むぞ」

 

無論、リアスの身の回りの調査をポッピー達に頼む為だ。

それに対して快諾を得た一誠、手前味噌にはなるがこの分野に関して言えばコンピュータウィルスを基とした彼女達バグスターの右に出る者はいないと判断し、今度こそ寝床につこうとした、その時だった。

 

「さてと、ん…?」

 

一誠の部屋、その床一面に、見慣れた転移用魔法陣が展開され、

 

「ぶ、部長?一体どうして此処に…?」

 

先程わかれたばかりのリアスが転移して来たのは。

 

「イッセー、さっきはありがとうね。貴方の言葉、本当に嬉しかったわ」

「い、いえ、俺の考えを言ったまでですから」

「それでも、よ。御免ね、イッセー。私も少し意固地になっていたかも知れないわ。私一人でウジウジ考えたっていい答えは浮かばないのに、ね」

 

突然の来訪の理由を語るでもなく、先程の一誠の言葉に対するお礼を言うリアス。

余りの事態への戸惑い故か、一誠はそのお礼に対する返答をする事しか出来なかった。

 

「ねぇイッセー、貴方は私の事をどう思っているかしら?あ、主としては話さなくて良いわ」

 

そんな戸惑いを隠せない状態の一誠を他所に、リアスは話を進めた。

 

「部長の事、ですか?それはもう、申し分ない位魅力的な女性だと思いますよ。話し出すとかなりの時間を要する程には」

 

未だ戸惑ったままのイッセーだったが、リアスの問い掛けには素直に答えていた。

いや、戸惑っているが故に、思った事をそのまま話しているとも言えるか。

 

「そう、ありがとう。ならイッセー、

 

 

 

 

 

私の処女、貰って?」

「ゑ?」



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15話_愛を込めてBouquetを

「え、その、それはつまり」

「女である私に言わせる気なの?ほら『思い立ったが吉日ならその日以降は全て凶日』なんて何処かの美食屋が言っていた格言もあるでしょう、早く着ている物を脱いで」

 

自分の処女を貰って欲しい、そんな寝耳に水とはこういう事だと言わんばかりのリアスの発言に固まったままの一誠を他所に服を脱ぎだすリアス。

が、

 

「落ち着いて下さい、部長!」

 

このまま、されるがままではきっと取り返しのつかない事態になってしまう、そんな考えが頭を過ぎり、リアスの両肩を掴んで動きを止めた。

 

「部長の身に今、何が起こっているのか、それは漠然としか分かりません。それこそ俺達眷属には手に負えない事態かも知れない。だからと言って自棄を起こしてはいけません!」

「わ、私は自棄なんて」

「如何にも思い詰めた表情の何処が自棄を起こしていないと言うんですか!?」

「っ!」

 

急に動きを止められて思わず怯んだリアス、そんな彼女に一誠は必死と言いたげな様子で説得を行った。

事実、リアスの表情からは一誠の言う通り思い詰めた様子がにじみ出ていた。

彼女の身に降りかかっている事態が、余程の物だという事の表れだろう。

 

「ご、御免なさいイッセー、私…」

 

そんな一誠の姿で我に返り、己がやろうとしていた事の重大さを認識し、巻き込んでしまった一誠に謝罪しようとするリアス。

其処へ、

 

『エマージェンシー!エマージェンシー!部屋内を到着点とした未確認存在による転移反応を確認、遮断しました!安全の確保をお願いします!エマージェンシー!エマージェンシー!部屋内を到着点とした未確認存在による転移反応を確認、遮断しました!安全の確保をお願いします!』

「何、侵入者か!?」

「転移反応ですって?まさか…!」

 

先程一誠が連絡を取ったばかりのポッピーの声による、家の住人達への警報音声が流れた。

内容からして侵入者と思しき物、それに直ぐ様臨戦態勢に入る一誠に対して、その侵入者に心当たりがあると言いたげな反応を見せたリアス。

そんな彼女の反応を、一誠は見逃さなかった。

 

「その反応からして、部長の知り合いが来た、という事ですね。もしや部長の悩み事は、その知り合いも関わっている、という事ですか?」

「へ?え、ええ」

「後でどういう訳なのか、聞かせて頂きますよ。まずはその知り合いの方と話を付けましょう」

 

一誠の指摘が図星だったのか、思わず肯定したリアス。

彼女に事の真相を後で話す様に求めつつも、今は知り合いらしき侵入者への対処が必要、そう思い立ち一誠は家を出る。

其処では、

 

「さ、サーゼクス様!?何故この様な所に!?」

「ん?サーゼクス?ああ、どうやらこのイケメン君は貴女の知り合いの様だね」

「ラヴリカか、随分と早い到着だな」

「おお、お父様。偶々この近辺を通りかかった所で警報を受信しまして、直ぐに駆けつけた次第です。その直後に目前のご婦人が、魔法陣らしき物から現れましてね。どうやら彼女が警報で感知した存在の様ですが、如何いたしましょう?」

 

銀髪でメイド服の、某弾幕シューティングゲームの自機を経験した事のあるキャラそっくりな女性――グレイフィアと、赤髪で黒いスーツを纏う、リアスと何処か似た顔立ちの男性が対峙していた。

 

「ラヴリカ。どうやら其処の女性、部長とは知り合いの様だ。そうですよね、部長?」

「グレイフィア!そ、それにお兄様!?」

「おや、これはこれはお父様の主殿。このイケメン君は主殿の兄上殿でもありましたか。誤解を招いてはお父様の立場に関わるか。ならば、培養!」

 

其処にリアスも到着、対峙していた両者ともにリアスの関係者(の姿)だった事もあって驚愕していた。

その姿を見て大いに驚いた2人の姿を見た男性は、父と慕う存在の主の兄(の姿)である自分という存在が誤解を生みかねないと判断し、

 

「ふむ、偶にはバグスターとしての姿も悪くない」

「さ、サーゼクス様!?そのお姿は!?」

「お、お兄様がバグスターに!?」

「お二人共、落ち着いて下さい。ラヴリカが変身していた、あの男性の姿を解除しただけです」

 

掛け声と共に両手を広げるポーズを取る、するとその身からピンク色の泡が湧き上がり、薔薇の花束型のオーラが放たれると共にその姿は右肩から花束を『生やし』た、白とピンクを基調とした服装に身を包んだ異形――ラヴリカへと変貌した。

 

「お初にお目にかかります、レディ達。私の名はラヴリカ。以後、お見知りおきを」

「え、ええ。宜しくね、ラヴリカ」

「あ、はい…

おっと、本題を忘れる所でした。まさかこの様な場所にまで来て破談に追い込むつもりですか、お嬢様?」

「こうでもしないと話し合いにすら応じないでしょう?尤も、一誠のお蔭で頭の滾りも収まったわ」

 

突如として変貌したラヴリカの姿に戸惑いつつも、彼の自己紹介に応える2人、そんな挨拶を早々に済ませて、グレイフィアは本題を切り出した。

 

「貴方がお嬢様を止めて下さったのですね。私はグレモリー家にお仕えする、グレイフィアと申します。此度はお嬢様がご迷惑をお掛けしました」

「いえ、眷属として当然の事をしたまでです」

 

どうやらリアスの暴走を、行きついた先を素早く察知していた様で、それを止める為に転移魔法によって一誠の部屋へと行こうとしたらしいグレイフィア、兵藤家に張り巡らされたセキュリティ網の前に阻まれはしたが、結果的に一誠が止めて事なきを得た。

その事にお礼を言うグレイフィアに対し、一誠は礼には及ばないと返した。

 

「お嬢様、それでは」

「ええ。一度根城に戻りましょう、話は其処で聞くわ。朱乃も同伴で良いかしら?」

「『雷光の巫女』ですね?構いませんわ。王たる者、女王を傍に置くのは常ですから」

 

一誠の説得によって冷静になり、一方のグレイフィア(というよりグレモリー家全体)もリアスを追い詰めていた事を思い知ったのか、どうやら話し合いの場が設けられた様で、その場に移るべく転移していく2人。

 

「イッセー」

 

その別れ際リアスは、

 

「今日は本当にありがとうね。明日、部室で全て話すわ」

「は、はい」

 

一誠の頬にキスをし、そう彼に告げた。

 

「ふむ。お父様の神の如き魅力に惹かれし女性がまた1人、といった所か」

 

突然のキスに固まる一誠の姿にラヴリカは、微笑ましそうな様子でそう呟いていた。

 

------------

 

「では、私はパトロールに戻ります。お休み下さい、お父様」

「あ、ああ。お休み、ラヴリカ」

 

2人が転移したのを見送ってから暫くして、一誠とラヴリカも別れる事にし、ラヴリカはパトロールに、一誠は就寝の為に部屋へ戻って行った。

 

「部長は悪魔勢力のトップである魔王様の妹、となれば悪魔社会における立場も相当な物だろう。今回の件も、その立場故に生ずる政治的な物かも知れない。ラヴリカが駆け付けてくれたのは逆効果だったかも知れないな、悪魔勢力のお偉い方にバグスターの存在が知られかねない事を鑑みると」

 

部屋に戻り、リアスからのキスというサプライズによる動揺も収まり、今後起こりうるであろう事態を見据える一誠。

 

「そろそろ新たなるライダーが、新たなる『切り札』が必要になったか。現時点で未完成のライダーガシャットも少なくない、開発作業のペースも上げなくてはな」

 

そう呟きながらクローゼットの扉を開けた一誠、其処には彼が何時も装着しているそれとは別の、10台ものゲーマドライバーに、普段持ち歩いている3つのガシャットとは別の、計18個ものガシャット、更には剣、銃、弓、斧、手裏剣、ゲームパッドの様な形状の計8つのガシャコンウェポンがあった。

その中から、他と比べて大柄な形状の『DOCTOR MIGHTY XX』とラベルに記入された白いガシャットを取り出し、

 

「パラド。暫くお前には頑張って貰わなくてはならないな」

 

そう、言葉を向けた。



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16話_魔の道on Stage

翌日の放課後、同学年である一誠とアーシア、そして祐斗は何時もの通りオカルト研究部の部室へと向かっていた、と言ってもいつもと変わらぬ様子の祐斗やアーシアとは違い、一誠は何処か物思いにふけている様子ではあったが。

 

「イッセー君、難しい顔をしてどうしたんだい?」

「イッセーさん、もしかして部長さんの事を…?」

 

そんな只ならぬ様子を察知したのか、2人が聞いて来る。

 

「ん?ああ、今日の部活の前に事情を話すとは聞いていたが、果たしてどの様な内容か、今から気になっている。部長は悪魔勢力のトップである魔王様とは兄妹、その立場ゆえに生ずるものでは無いか、と」

「確かに、気になりますよね…」

「そうだね。でも今から悩んでもしょうがないよ。部長の話を聞いてから考えよう」

 

そうした会話を交わしながら歩みを進める3人、やがて旧校舎にある部室へと辿り着いた、が、

 

「…まさか僕が此処に来るまでこの気配に気がづかなかったなんてね」

 

祐斗が何か気配を察知したのか、部室のドアを開けようとしていた手を止めた。

何の事だか分からないと言いたげなアーシアや、思案していた様子の一誠は気付いていなかったが、

 

「数メートルまで近づかねば気付かぬ程、気配を隠す技量を持った強大な存在、か…

気にはなるが、一先ず入ろう。此処に留まっていても何も始まらない」

 

祐斗の言葉で、部室内で待っているであろう存在を察知した一誠、然し外で待っていてもどうしようもないと考え、部室に入った。

其処にはリアスに朱乃、黒歌に白音が既に待機していた他、昨日会ったばかりのグレイフィアもいた。

心なしか、部室内はピリピリした雰囲気が感じられる。

朱乃は何時もの笑顔こそ変わらない様だが何処か底冷えのしそうなそれに見えるし、リアスは不機嫌な様子を隠せていない、黒歌は気だるげな体勢からぶつぶつと呪詛の様なものを呟いているし、白音は厄介事は御免だと言わんばかりに部屋の片隅に避難してお菓子を食べていた。

 

「全員揃ったわね。実を言うと、部活を始める前に話があるの」

「お嬢様、宜しければ私が話しますが…?」

「大丈夫よグレイフィア、私が話すわ。実はね…」

 

そんな何時もとは明らかに違う雰囲気の部室内で、オカルト研究部のメンバーが揃った事を確認、一誠達に事情を説明しようとするグレイフィアを遮り、自ら説明を始めようとするリアス。

 

「魔法陣?これは、グレモリーの魔法陣では無いな…」

「…フェニックス」

 

其処へ前触れも無く、グレモリー家の物とは違った形状の赤い魔法陣が出現した、その時だった。

 

「何!?まさか直ぐ使う事になろうとはな!アランブラ、頼むぞ!」

『タドルクエスト!』

「お任せあれ、お父様!ヒケース!」

 

今しがた出現した魔法陣から炎が噴き出した事、それを見た一誠が瞬時に懐から水色のライダーガシャットを取り出して起動させた事、その瞬間一誠の背後に『TADDLE QUEST』の文字と城壁がデカデカと映ったスクリーンが出現した事、其処から赤と白を基調としたカラーリングの魔法使いみたいな恰好をしたバグスター――アランブラが登場した事、そしてそのアランブラの掛け声と共に右手の杖から霧状の水流が魔法陣に噴射された事、一連の出来事がほんの数瞬の内に繰り広げられたのは。

 

「うわっぷ!?な、何だこれは!?」

「火の勢いが収まらぬだと!?木造建屋内でかような勢いの火を放つとは一体何を考えておるか!ならばこれで頭を冷やすが良い!コゴエール!」

 

その魔法陣から誰かが登場した様で、アランブラの杖から噴射される水流に呑まれていたが、にも関わらず炎は吹き上がったまま、その勢いを見て、木造である旧校舎に引火する可能性が頭を過ぎり憤慨するアランブラは、今度は杖から絶対零度の冷気を放って、その登場した存在を凍らせようとするが、

 

「うわ!?つ、冷た!?なんのぉ!」

 

一部が凍ったのもほんの数瞬、氷は砕かれ、またも炎が吹きあがり、冷気を押し返さんとしてきた。

 

「おのれ小癪なぁ!ならば伝説の魔法を喰らうが良い!クダケチール!」

「な!?待てアランブラ!」

 

その状況にアランブラはブチ切れ、一誠の制止も聞こえていないのか杖から膨大なエネルギーを放ち、

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「うわ!?」

「「「「「「きゃぁ!?」」」」」」

「何という事だ…!」

 

それは標的に直撃、爆発した。

その爆発による衝撃波や爆風はすさまじく、突然の衝撃と言うのも相まってか、前もって知っていた一誠や放った本人であるアランブラ以外の部室内にいる面々がよろめきそうになっていたのに対し、一誠は爆殺するという手に出たアランブラの対応に頭を抱えていた。

 

「アランブラ、お前何を考えている!?」

「あ…

も、申し訳ありませぬ、お父様!余りにも彼奴が火を止めぬが故、火の勢いが収められぬが故、頭に血が上ってしまい…」

「確かに鎮火を頼もうとお前を呼び出しはしたが、幾ら何でもクダケチールはやり過ぎ」

 

そんな暴挙を見過ごすわけにはいかないと、恐らくは悪魔であろう相手を爆殺するという犯罪に手を出した事を見過ごすわけにはいかないと、一誠はアランブラを叱り出した。

が、

 

「おのれ貴様ぁぁぁぁ!」

「…だろう。

恐らく取り返しのつかない事態は避けられたのだろうが、普通なら標的を爆殺してしまう程の魔法だ、それを怒りのままに使う等もってのほかだ、分かったな!」

「ははっ申し訳ありませんでした、お父様!」

 

突如出現した炎、それが大きくなると共に人の形となっていき、やがて爆殺された筈の存在になって行く光景を目の当たりにし、最悪の事態は免れたと安堵した。

が、それでもアランブラの暴挙が許される物では無いと、一誠は引き続きアランブラを叱った。

 

「さてグレイフィアさん。今しがた迷惑極まりない非常識な手段で登場したそちらの方は一体?」

「此方はフェニックス家の三男、ライザー・フェニックス様で、

 

 

 

リアス様の婚約者です」

「婚約者、ですか…

成る程、繋がった」

 

アランブラへの躾もひと段落し、炎を撒き散らしながら登場するという暴挙にでた存在、赤いスーツ及びワイシャツを着崩した、ガラの悪いホストと言いたげな風貌の男――ライザーの素性をグレイフィアから聞いた一誠、それで大方の事情を理解したのか、そう呟いていた。

 

「やあ、愛しのリアス。会いに来たぜ。さ、式場も決めた事だし式のプランについて、ぬぉ!?」

「シバール。どうやら客人の様だが、客人には客人なりの礼儀があろう。それをまあ、木造建屋にも関わらず火を撒き散らしながら登場したり、お父様の主君に堂々とセクハラを仕出かしたり、まるで躾がなっておらんな。暫くは其処で大人しくしてもらおうか」

「くっまた貴様か、何処までも俺の邪魔をしやがって…!」

 

その間にライザーがリアスに堂々と近寄り、手を取ろうとした所でアランブラの魔法によって腕を拘束され、イライラしながらもリアスの向かいの席に座らざるを得なかったという光景が繰り広げられていたが、それはまた別の話。



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17話_運命のGame、開幕!

「何度も言った筈よライザー!私は貴方とは結婚しないわ!」

「ああ、聞いたさ。だがそういう訳にも行かないだろう。そもそもこの縁談は、純血悪魔をこれ以上減らさぬ為の、グレモリー家とフェニックス家、そして魔王サーゼクス・ルシファー様の総意なんだ。大体、その意志が通る程君のお家事情は切羽詰まっていないという訳じゃないだろう?」

 

オカルト研究部の部室に突如として、魔法陣から炎を撒き散らして登場するという非常識極まりない方法で押し入って来た、リアスの婚約者らしい悪魔ライザー・フェニックス。

リアスとライザーとの婚約に関して話し合いが行われたのだが、それは最早話し合いの体を成していない、言い争いの域に入ってしまっていた。

 

「余計なお世話よ!私はグレモリー家の次期当主、婿を自分で選ぶ権利は私にもあるわ!その上で言わせて貰うわ、私は貴方の様な存在とは結婚なんてしない!」

 

婚約を拒むリアスと、婚約を推し進めようとするライザーという構図、先程の暴挙を何とも思っていないと言わんばかりに婚約をしつこく迫る彼に、リアスはそう言い放った。

それが気に食わなかったのか、ライザーは舌打ちしながら、

 

「あのなリアス。俺もな、フェニックス家の看板を背負って今日、此処に来たんだ。家名に泥を塗られる訳には行かないんだよ!」

 

身体から熱気を撒き散らしつつ、

 

 

 

 

 

「俺はお前の眷属全員を焼き尽くしてでも、おごっあがぁ!?」

 

そう、リアスを脅迫しようとしたが、その言葉は寸での所で遮られた。

 

「貴様、今何と言った…?」

「うぐ、が、あ、きさ、ま…!」

 

ライザーが脅しの言葉を口にしようとしたその時、先程までライザーの腕を拘束していたアランブラが、今度は杖から鎖の様なものを生成し、瞬時にライザーの首を絞め上げたからだ。

 

「常識の常の字も知らぬチンピラめが、お父様やお仲間の方々を焼き尽くすだと!?先の放火未遂やセクハラでは飽き足らず、まだその様な暴挙に出るか!良いだろう、ならばそのまま絞め殺してやろうぞ!」

「ぐ、お、ごが、あ、ば、馬鹿な、焼き切れんだと…!?」

「無駄だ!貴様のしょうもない炎で、我が魔力で生まれし鎖が焼かれるとでも思うたか!」

 

リアスの眷属、つまりはアランブラの父である一誠すらも焼き尽くさんとしたライザーへの怒りが再燃したアランブラによる絞め上げ、ライザーも力業ではほどけないと踏んで手から炎を生成して鎖を焼き切ろうとするもびくともしない。

このままアランブラによってライザーが呼吸困難によってくたばる、そう思われたその時、

 

 

 

「お待ちください、これ以上は看過出来ません。サーゼクス様の命により此処にいる身故、尚も事を荒立てると言うのなら、私も一切の遠慮は致しません」

 

グレイフィアが止めに入ろうと、アランブラに向けて敵意を向けた。

 

「貴様確か、お父様の主君の家に仕えし者であったか。生憎だがこれはお父様達への危害を未然に防ぐための正当防衛である、邪魔立てすると言うならまずは貴様から」

「アランブラ!杖を下ろせ」

 

この場にいる誰よりも強烈な力を感じる気配、それを向けられながらもどうという事は無いと言わんばかりに、アランブラが空いていた左手をグレイフィアに向けようとしたが、一誠がそれを止めた。

 

「お父様?宜しいのですか、お父様達に危害を加えかねないこ奴等を野放しにして?」

「此処は話し合いの場であって殺し合いの場では無い。分かったなら杖を下ろせ」

「ははっ了解いたしました」

 

一誠達を焼かんとしていたライザー達を放っておいていいのかと疑問を一応投げ掛けたアランブラだったが、父親である一誠からそう言われれば素直に従うのかライザーを解放、グレイフィアへと放とうとしていた魔力も霧散させた。

 

「グレモリー家もフェニックス家も当人の意見が食い違う事は分かっておりました。故に、もしこの場で話が纏まらない場合の最終手段を用意しました」

「最終手段?まさか…」

 

アランブラが杖を下ろし、一切の敵対行動を中止した事で話を再開したグレイフィア、彼女が出した提案にリアスは何か見当が付いた様だ。

 

「それでは『レーティング・ゲーム』で決着をつけるのは如何でしょうか?」

 

レーティング・ゲーム。

それは一言で言うと『死ぬ可能性が殆ど無い戦争』で、今現在の悪魔勢力においてその成績が勢力内における地位にまで大きく影響される程の影響力を有する競技である。

異空間に使い捨てのバトルフィールドを創り出し、其処で上級悪魔が自らを『(キング)』として自らの眷族達と共に対戦相手と戦い、王を先に倒すか降参させる、または制限時間内に撃破した眷属の総合点で競うこの競技、本来なら成人した上級悪魔しか王として公式戦に参加出来ず、未成年であるリアスの参加は無理な筈なのだが…

 

「お嬢様もご存じの通り、公式のレーティング・ゲームは成人した上級悪魔しか王として参加出来ません。しかし非公式のゲームであれば話は別です。この場合、多くが」

「身内同士か御家同士のいがみ合い、という事ね…!」

 

あくまでそれは公式ゲームの話、記録の残らない非公式なゲームであれば参加不可能では無いのだ。

その事実に、自らがゴネた時の事を見越してレーティング・ゲームという落としどころ(と言えない何か)を予め両家が用意していた事に憤りを隠せないリアスだったが、

 

「良いわ、レーティング・ゲームで決着を付けましょう、ライザー」

 

裏を返せば婚約破棄を迫る上でこれ以上に無い好機とも言える、そう考えて承諾した。

 

「へぇ、受けるのか。それは構わないが、そっちの眷属はそれで全員か?」

「急に何?今の時点でアランブラ以外の全員が今回参加できるメンバー、アランブラはイッセーの使い魔みたいな存在だけど、それがどうかしたの?」

 

そんなリアスの意志が(ライザーにとって)良い意味で意外だったのか、或いは案の定か、ともあれリアスの参加表明に意味深な笑みを浮かべていたライザーがふとその様な質問を投げ掛け、リアスもその真意を図りかねながらも素直に答えた。

 

「いや何、随分と分の悪過ぎる勝負に出たな、と思ったまでだ。其処の目障りな魔法使いが使い魔だと言うのは意外だったが、それを抜きにすればお前の眷属は王であるお前含めて7人。一方の俺の眷属は」

 

その答えに対しライザーは一層笑みを深めながらその意図を話し、

 

「俺を含めて16人、フルメンバーだ。いくら其方に『雷光の巫女』や『幻惑の猫姉妹』がいると言っても、この人数、経験の差、そして『不死』は覆せまい」

 

指をパチンと鳴らしながら、分の悪すぎる勝負に出たと言うに至る事実を突きつけた。

そのライザーの合図と共に彼の後方から魔法陣が展開、其処から15人もの女性が現れた、が、

 

「え、L(エル)!?Lじゃないか!久しぶりだな、L!」

「あ、IS様!?何故IS様がこちらにおられるのですか!?」

 

その中の1人の姿を見た一誠が、予想外の反応を見せた。

まるで知り合いを見かけたと言わんばかりに現れた女性に声を掛ける一誠、声を掛けられた女性――一誠からLと呼ばれた、金髪の縦ロール、アーシアよりも若干小柄ながら出る所は出た体躯をフリル付きのワンピースで包んだ如何にもお嬢様だと言わんばかりの少女もまた、一誠をISとしての顔を知っているのか、この場にいる事に驚いた様な反応を見せていた。

 

「イッセー、彼女とは知り合いなの?」

「ええ。

 

 

 

数年前に彗星の如く現れて以降、ゲーム業界においてその名を大いに轟かせている天才ゲーマー。俺が開発したゲームのレベル・インファナル(最高難度)を、クリアなど絶対に不可能だと言われていたチャレンジの数々を尽く攻略して見せた史上最強プロゲーマーとして名高い2人の内の1人が彼女、Lです」

「ええ、リアス様。その縁でIS様とは様々なイベントで顔を合わせておりますわ。それにしても驚きですわ、まさかIS様がリアス様の眷属になっていたとは…」

「俺も驚いた。L達が悪魔だとは薄々感づいていたが、まさかライザー殿の眷属だとは。世間とは案外狭い物だ」

 

 

 

『え、えぇぇぇぇぇぇぇぇ!?』

 

そんな一誠達の関係を尋ねて来たリアスにそう答えた一誠とL、その事実はこの場を震撼させた。

 

「え、Lってイッセー君が言っていた通り2大プロゲーマーとしてZ(ゼータ)と共に話題になっている、あの!?」

「まさかそんな存在がそっちにいたにゃんて…」

 

 

 

「まさか貴様が、俺の妹レイヴェルを馬鹿げた道に歩ませた張本人だったとはな。しかも其処の目障りな魔法使いの主だそうじゃないか」

 

天才ゲーマーLと天才ゲームクリエイターIS、その2人の接点が意外な所で繋がった事に驚き、ざわめきを隠せない一同、だがそれはライザーのその言葉で鎮静化、というより凍り付いた。

 

「貴様は後日ゲームの場で俺が直々に燃やしてやろう、覚悟しておけ!帰るぞ、お前達!」

 

そんな空気も何のそのと言わんばかりに一誠に向けてそう宣告しながら帰って行ったライザー、余りの早業にアランブラ達も怒りを露わにする暇がなかった。

 

------------

 

その後、残っていたグレイフィアから10日後の深夜0時にレーティング・ゲームを行う事が発表されたが、その間一誠は固まったままだった。

 

「イッセー?だ、大丈夫?」

 

その一誠の様子から、ライザーの殺気にあてられて気絶したのではないか、或いは恐怖の余り表情を変える事すら出来なくなってしまったのではないかと心配になり、リアスは声を掛けた、が、

 

「馬鹿げた、道?馬鹿げた道、だと?」

 

当の一誠が抱いた感情はまるで違っていた。

 

「あの焼き鳥野郎…!

この俺が生み出したゲームの数々を、そのゲームに惹かれてこの世界に入った皆を馬鹿にしたな…!」

 

それは怒り、己の才を、己が生み出したゲームを、そしてそのゲームに惹かれた存在をボロクソに罵倒された事によって抱いた膨大な怒りだった。

 

「部長。この戦い、絶対に負ける訳には行きません」

「え、ええ、分かっているわ」

「ですが今のままでは、あの焼き鳥野郎の言う通り絶望的なのは事実、

 

 

 

其処で皆さん、仮面ライダーになりませんか?」

 

その怒りに満ち溢れたままの口調で告げられた提案、それがこの世界の未来を、大きく変える事になる…!



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18話_Riderに、なる為に

所変わって一誠の自宅のリビング、此処にリアス及び彼女の眷属全員が集結していた。

10日後にリアスの婚約を賭けて行われる事となったライザー・フェニックスとのレーティング・ゲーム、それに向けて仮面ライダーにならないかという一誠の提案を受けて。

 

「さて。仮面ライダーに変身するには、バグスター達を現実世界に具現化する為の媒介であるライダーガシャットを、装着しているゲーマドライバーに装填する事でなれる、とは以前説明しましたね」

 

全員が集結し、心の準備が出来たのを確認した一誠が説明を開始する。

 

「ですが、単にゲーマドライバーを身に着けてライダーガシャットを装填する、それだけで誰でもライダーになれる訳ではありません。これも以前説明しましたが、ライダーへ変身する為のパワーソースとなる、ライダーガシャットに封入されているバグスターウィルスは同時に、生物にとって毒性の強い病原体となりえます。フィルターとなるゲーマドライバーを介したとしても、下手に扱えば感染しかねません。ではどうすれば安全に扱えるのか、仮面ライダーとして変身できる様になるのか。それにはまず、このライダーガシャットを使用します」

 

そう説明しながら一誠が懐から取り出したのは『DOCTOR MIGHTY XX』とラベルに記入された白い、他と比べて大柄なガシャット。

 

「ドクターマイティXXのライダーガシャット…?」

「ええ。このドクターマイティXXガシャットは、他のライダーガシャットと比べてその毒性が大幅に弱まったバグスターウィルスが封入されています。これを、対象者が装着しているゲーマドライバーに装填する事で、封入されている弱毒化バグスターウィルスを投与します」

「え、と、投与するってつまり、バグスターウィルスが体内に流れ込んでくるって、感染するって事だよね?だ、大丈夫なのかい?」

 

今しがたその危険性を指摘したばかりであるバグスターウィルスを投与する、一誠の口から出た言葉に、幾ら弱毒化したそれとは言え大丈夫なのかと疑問に思った祐斗が一誠に問いかける。

 

「大丈夫だ、木場。予防接種の際に注射されるワクチンと同じ様な原理だ。あれもまた弱毒化した、或いは死んだ微生物やウィルスを体内に投与する事で、その感染症に対する免疫を得られる。そう、このドクターマイティXXガシャットによって弱毒化したバグスターウィルスを体内に投与する事で、バグスターウィルスに対する免疫を得られるのです」

「その免疫を得られさえすれば、仮面ライダーへ変身する事が…」

 

そんな祐斗の疑問に答えた一誠、それを聞いて仮面ライダーへ変身する事に対するハードルが意外と低いと感じ、そう呟いたリアス。

しかし、

 

「いいえ、部長。免疫を得られた人全てが仮面ライダーに変身出来るわけではありません」

 

事はそう甘くは無かった。

 

「弱毒化したバグスターウィルスを体内に投与して免疫が得られると言っても、その効果の発現には個人差があります。その中で高いレベルの免疫能力を持った存在が、仮面ライダーに変身出来ます。実際俺の両親も投与を受けていますが、免疫能力が仮面ライダーに変身出来るレベルに届きませんでした」

「何事も上手い話ばっかりじゃないって事かにゃ。まあ投与するデメリットが無いのが幸いね」

 

個人差があるバグスターウィルスへの免疫能力の強弱、それが高くなければ仮面ライダーになれない。

その事実を聞き、自分がその資格を得られるのかどうか想像したのか、何処か厳しい表情を浮かべるリアス達。

 

「イッセー先輩。その仮面ライダーへの変身資格を有しているか否かは、どう判別するのですか?」

「判別方法は処置方法と同じく、極めて簡単だよ白音ちゃん。このドクターマイティXXによる処置が終了次第、その判別が行われます。もし免疫能力が基準値を上回った場合、ゲーマドライバーのレバーがひとりでに開き、装着者を、医療ゲームをモチーフとした仮面ライダードクトル、ドクターゲーマーレベル1へと変身させます。下回った場合は、処置が終わっても何の動作もありません。今回の処置に関する説明は以上です。何か他にご質問は?」

 

そんな中で質問をした白音に答えつつ、説明を終えた一誠、改めて質問があるか問いかけたが手は上がらなかった。

皆の眼からは、仮面ライダーになるんだという決意がにじみ出ていた、心の準備は万端の様だ。

 

「それでは、処置を開始します。まずは、誰から行きますか?」

「そしたら、私が行くわ」

 

こうして開始したバグスターウィルスへの免疫を付ける為の、仮面ライダーへの変身資格を得る為の処置、最初に行うのは、リアスだ。

 

「分かりました、部長。ではゲーマドライバーを」

「ええ。確か腰の部分に押し当てれば、ベルトが自動で伸長して、ひとりでに装着されるのよね」

 

一誠からゲーマドライバーを受け取り、そう言いながら腰に押し当てたリアス、すると彼女の言う通りゲーマドライバーからベルトが伸び、彼女の腰に丁度いい長さで装着された。

 

『ドクターマイティダブルエックス!』

「では、始めます」

『ダブル・ガシャット!』

 

それを見てドクターマイティXXガシャットを一誠が起動、ゲーマドライバーに装填された事を示す音声を最後に、リアスの意識は失われた。

 

------------

 

患者(クランケ)の意識鎮静化を確認。バイタルサイン、良好です」

「了解。これより患者リアス・グレモリーへの、バグスターウィルス免疫付加手術を開始する」

(ぱ、パラド!?これは、一体…!?)

 

リアスが目覚めると、其処には医療ドラマ等で見られる様な手術室の光景が広がっており、手術衣で全身を覆ったパラドと、その助手と思われる、オレンジを基調とした奇抜な形状のヘルメットらしき物で顔を覆った白衣姿の人物達が、手術台らしき物に何時の間にか寝かされていた彼女を囲っていた。

ドクターマイティXXガシャットを装填した直前まで目にしていた物とは明らかに違う光景にリアスは驚きの声を上げようとするも、その口はこれまた手術の際に着けられるマスクで塞がれている為に喋れない、というか喋ろうと口を動かす事すら出来なかった。

 

外科手術刀(メス)

「はい」

(これ、本当に手術なの!?)

 

その急展開と言っても差支えない状況に戸惑うリアスを他所に、パラド達は作業を着々と進める。

最初に助手の1人から外科手術刀を受け取り、それを彼女の腹部に突き立てる。

 

(熱い感じが、直線的に!?これってまさか、斬られているの…!?)

「鉗子」

「はっ」

 

腹部を切り開かれている、痛みこそ感じない代わりに線上に広がって行く火傷した様な感覚からそう感じ取り、もはやこの処置が手術の域である事を実感したリアス、そんな彼女の反応を知ってか知らずか、パラドは助手から鉗子を受け取り、切り開いたリアスの腹部を固定した。

 

注射器(シリンジ)。それと、バグスターウィルスワクチンを」

「はい。ワクチンの準備、完了しました」

 

だがまだ処置は終わらない、パラドは助手から注射器を受け取りつつ、他の助手が持っていたパウチ状の物に入った液体を、その注射器の中に満たした。

その液体は言うまでも無く弱毒化したバグスターウィルスで満ちている物、いよいよこの処置の本番を迎える…!

 

(か、身体の奥が、熱い…!)

「飲み込みが良いな。これは期待出来そうだ、親父に次ぐ2人目のライダー誕生かな?」

 

身体の奥に何かしら熱い物を注ぎ込まれた様な感覚がリアスを襲う、その感覚に耐える彼女の側で、パラドは何処か嬉しそうな声音でそう呟いた、まるで良い結果が出そうだと言わんばかりに。

そして、

 

「喜べ、リアス・グレモリー。俺達の力、お前に託そう!」

『ガッチャーン!レベルアップ!』

 

一連の処置が終わった影響か意識が再び朦朧とする中、リアスはそんな言葉が聞こえた気がした。

 

------------

 

『ガッチャーン!レベルアップ!ドクターマイティ!二人で作る!ドクターマイティ!二人でメイキング!エックス!』

「へ、変身した…?」

「凄いです、部長さん…!」

 

再び目覚めたリアス、其処は先程までの手術室では無く一誠の自宅で、自らの眷属が己を囲っているという何時も通りの光景だった。

いや、何時も通りと言うのは語弊がある、何故なら、

 

「ん、んぅ…

あ、あれ、私…」

「部長。起きて早々すいませんが、一先ず身体の方、確認をお願いします」

「身体?私の身体が一体…

え、こ、これって、仮面ライダーの!?」

 

リアスの身はモノクロの宇宙服を纏ったかの様なずんぐりとした物――仮面ライダードクトル・ドクターゲーマーレベル1に変貌していたからだ。

そう、リアスは今この時を以て、仮面ライダーに変身する資格を得たのだ。

 

 

 

 

 

その後、他のメンバーにも同様の処置が行われたが、驚く事に眷属全員が仮面ライダーに変身する資格を得られるという、良い意味で予想外な結果となった。



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19話_其々のRider

「まさか一気に6人もの仮面ライダーを生み出せたとは驚いたぜ、それも今回処置を施した6人中全てだ。悪魔って、バグスターウィルスと適合しやすい体質なのか?」

「かも知れない。だが今回処置を施したのは部長と、部長が持っていた悪魔の駒で転生した皆だけ、それが関係した可能性もある。結論を出すのは時期尚早だ」

 

バグスターウィルスに対する免疫の付加処置をリアス達に施し終え「今日はワクチンを施したばかり、状態を安定させる為にも、今日は以上としましょう」と帰した一誠、その後、処置を担当したパラドと共に、とあるデータを整理していた。

そのデータとは、

 

「それにしても親父。何てゆーか、大方想像通りの適性傾向になったな、アイツら」

「そうだな、パラド。父親であるバラキエルさん譲りの雷光による遠距離砲撃が得意分野の朱乃さんはシューティング、騎士としてのスピードから繰り出す剣術が専門の木場はRPG(ロールプレイングゲーム)、同じく騎士としてのスピードと様々な術で相手を翻弄する黒歌先生はパズル、戦車としての頑強さと腕っぷしの強さが持ち味の白音ちゃんは格闘、そして争いを好まないアーシアはサウンドノベル…

黒歌先生を姉に持っている影響か、白音ちゃんがパズルに対しても高い適性を有していたのには驚いたが、大体が予想通りの傾向だ」

 

今しがた仮面ライダーに変身する資格を得たリアス達、その彼女達が何のゲームジャンルに対する高い適性を有しているかをレーダーチャート化したデータリストである。

 

「然し、想定外の傾向も見られる。部長のデータを見て欲しい。滅びの魔力による遠距離砲撃が持ち味の部長が、朱乃さんと同じくシューティングに対して高い適性を有していたのは想像通りだったが、アクションに対しても高い適性を持っているのは驚いた。アクロバティックな動作をするイメージは無かった筈だが…」

「調べた所によると、リアス・グレモリーは様々なスポーツを趣味にしていて、殊にテニスの腕前は駒王学園のテニス部員ともタメを張る位らしいぜ。スポーツと言えばあのゲーム、あれもアクションの1つ、其処も関係したのかもな。とはいえ、親父みたいにアクションジャンルのライダーに変身出来る程の適性があるとは驚いたな…」

 

そのレーダーチャートを見て話し合う一誠とパラド、そのデータ傾向は一部で予想外な高さを記録していた以外は想定通りだった様子だ。

 

「成る程、その辺りにバグスターウィルスが着目したという事か。だがこれは好都合だ。この傾向なら其々で使用するガシャットが、変身する仮面ライダーが被らずに済む」

 

その予想外な事態も、どうやら一誠にとっては好ましい物だった様だ。

その結果を受けて何処かにこやかな雰囲気で、一誠は懐にしまっていたガシャットを並べ出した。

 

「まずは木場。RPGに高い適性を有する彼が変身する仮面ライダーは、RPGをモチーフとした騎士、仮面ライダーブレイブ」

 

そう言いながら並べたガシャットは、先程アランブラを呼び出す為に起動させた水色の物と、ガスバーナーが放つ炎の様な青色の『MADOH DUNGEON』とラベリングされた物。

 

「次に朱乃さん。シューティングに高い適性を有する彼女が変身する仮面ライダーは、シューティングゲームをモチーフとした狙撃手、仮面ライダースナイプ」

 

そう言いつつ次に並べたガシャットは、紺色の『BANGBANG SHOOTING』とラベリングされた物と、オレンジ色の『JET COMBAT』とラベリングされた物。

 

「続いて黒歌先生。パズルに高い適性を有する彼女が変身する仮面ライダーは、パズルゲームをモチーフとした参謀、仮面ライダーパラガス」

 

続いてそう言って並べたガシャットは、空色の『HATESATE PUZZLE』とラベリングされた物と、灰色の『METEOR BLOCKER』とラベリングされた物。

 

「更に白音ちゃん。格闘に高い適性を有する彼女が変身する仮面ライダーは、格闘ゲームをモチーフとした格闘家、仮面ライダーノックス」

 

更にそう呟いて並べたガシャットは、朱色の『BAKURETSU FIGHTER』とラベリングされた物と、メタリックカラーの『METALIC FIST』とラベリングされた物。

 

「アーシアも忘れてはいけないな。サウンドノベルに高い適性を有する彼女が変身する仮面ライダーは、音楽をモチーフとした応援団長、仮面ライダーポッピー」

 

そう呟きつつ並べたガシャットは、ラメが散りばめられたピンク色の『TOKIMEKI CRISIS』とラベリングされた物と、桜色の『DOREMIFA BEAT』とラベリングされた物。

 

「そして部長が変身する仮面ライダーは、このマイティアクションXオリジンを用いて変身する、全ての仮面ライダーの源流(オリジン)、仮面ライダーゲンム」

 

そしてそう呟きながら並べたガシャットは、黒色の『MIGHTY ACTION X』とラベリングされた物と、黄緑色の『SHAKARIKI SPORTS』とラベリングされた物。

 

「覚悟しろ、焼き鳥野郎。俺達7人ライダーが、お前のおごり高ぶったその性根、粉々にして見せる!」

「ああ、親父!あの調子に乗りまくったホストかぶれのチャラ男に、目に物見せてくれよな!」

 

その並べたガシャットを前に、一誠とパラドは10日後のレーティング・ゲームに向けて意気込みを新たにしていた。

 

------------

 

「今からゲーマドライバーと、其々が使用するライダーガシャットを配布します。今日はそれを用いての変身を行い、慣れて行く所から始めましょう」

 

翌日のオカルト研究部の部室、其処で一誠は、昨日並べていたガシャットと同じ物と、各メンバー用のゲーマドライバーを配布していた。

 

「このガシャットは昨日、アランブラを呼び出した時に使っていた物だったね。タドルクエストか、という事は、アランブラはあの大魔法使いを模したバグスターなのかな…?」

「うふふ、私のはバンバンシューティング、ならこのガシャットの力で全て撃ち抜いて見せますわ!」

「ほえー、可愛いガシャットです!」

「ハテサテパズル、これみたく敵を私の掌で踊らせろって事かにゃ」

「バクレツファイターですか、私の戦い方にぴったりですね」

 

一誠からゲーマドライバーと、其々の専用ガシャットを受け取り、思い思いのコメントを口にする皆。

ところが、

 

「部長のは、こちらになります」

「マイティアクションX?これって一誠がエグゼイドに変身するのと同じ・・・?

でも黒い?それにラベルもモノクロだし、っ!?」

 

リアスが一誠からガシャットを受け取った、その時だった。

 

「な、何、これ・・・!?」

「い、一体何が起こっているんですか!?」

「ガシャットから、魔力が・・・?」

「その色合いに、気配、まさかリアスの滅びの魔力を・・・!?」

「だ、大丈夫か、ロックソルティ!?」

『わ、分かりませぬ、お父様!

然し身体中に、底知れぬ力が湧き上がってきます!』

 

突如ガシャットから紫色のオーラが噴き上がり、

 

「く、黒だったガシャットが、紫に・・・?」

「それに、ラベルも色付けされているのにゃ・・・」

「あらあら、一誠君のガシャットとはまた違った色付けですね・・・

何だか、禍々しい様な・・・」

 

それが消えた後には、本体が紫色に、ラベルの文字が赤色となったガシャットが、あいもかわらずリアスの手に握られていた。



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20話_Trainingの方針

「今日からの訓練についてだが、親父が今起こったマイティアクションXのオリジンガシャットの異変、その調査の為に抜ける事となった。よってここからは俺が訓練の方針を発表するぜ。リアス・グレモリー、先に言っておくがアンタの訓練方針は、担当者が不在だから後日改めて発表する」

「分かったわ」

 

突如として起こったマイティアクションXガシャットの異変、その調査の為に一誠が帰宅した後のオカルト研究部室、其処には指導担当として急遽呼ばれたパラドが、メンバーに訓練の方針を発表していた。

 

「まずは木場祐斗。お前に渡した2つのガシャットを起動しろ」

「この2つともかい?分かったよ」

『タドルクエスト!』

『マドウダンジョン!』

 

最初に呼ばれたのは祐斗、パラドの指示に応じて渡されたガシャットを起動すると、祐斗の背後に2つのスクリーン――片方はアランブラを呼び出した物だが、もう片方は『MADOH DUNGEON』の文字と洞窟らしき背景がデカデカと映った物だ――が出現、其処からアランブラと、異国から来訪した旅人というイメージぴったりな出で立ちをした青年らしき姿のバグスターが登場した。

 

「初めまして、木場祐斗。俺の名はグラファイト。マドウダンジョンの勇士、グラファイトだ。今日より俺達が、お前が一人前の仮面ライダーになれる様指導に付く」

「昨日会ったばかりの身で自己紹介というのもどうかとは思うが、私からも。私はタドルクエストの大魔法使い、アランブラである。グラファイト共々、宜しく頼むぞ、木場祐斗」

「まあ細かい所はグラファイト達に任せるが、お前は主にグラファイトを前衛、アランブラを後衛とした実戦形式での訓練を中心に受けてもらうぜ」

「分かったよ、パラド。宜しくね、グラファイトにアランブラ」

 

現れた青年――一誠が開発したゲームの1つ、鍔迫り合い等の細かな所にQTE(クイックタイマーイベント)を取り入れた臨場感ある冒険がウリのローグライクRPG『マドウダンジョン』の主人公を模したバグスターであるグラファイトと、同じく一誠が開発したゲームの1つ、王道を歩みながらも随所に考えさせられるメッセージを発信するストーリーと、初心者からやり込みゲーマーまでと極めて広い範囲の層を満足させる難易度設定で人気のRPG『タドルクエスト』に登場する悪の大魔法使いを模したバグスターであるアランブラが自己紹介をしたタイミングで、パラドが祐斗に訓練の方針を伝えた。

以前集めた情報及び一誠が転生してから今日まで祐斗を見極めた結果、基礎的な部分は問題無いだろうと判断しての、実戦形式による訓練の通達である。

 

「次に姫島朱乃、お前も同じく渡したガシャットを起動しろ」

「分かりましたわ」

『バンバンシューティング!』

『ジェットコンバット!』

 

次に呼ばれた朱乃もまた、指示されるままに渡されたガシャットを起動する、すると今度は『BANGBANG SHOOTING』の文字と数々の弾痕が刻まれた的がデカデカと映った物と、『JET COMBAT』の文字の横に顔が描かれた巨大ミサイルが並んでいる物、2つのスクリーンが朱乃の背後に出現、其処からサイボーグだと言わんばかりの姿の兵士と、ジェットエンジンにミサイルにバルカン砲といった戦闘機の様な装備を纏った存在、2体のバグスターが其々のスクリーンから出現した。

 

「よぉ、アンタが俺のパートナーか。俺の名はバーニア、ジェットコンバットのパイロットを模したバグスターだ。これから、宜しく頼むぜ」

「お初にお目にかかる、朱乃殿。自分はリボル、バンバンシューティングの部隊長を模したバグスターである。これよりバーニア共々、朱乃殿を一人前の仮面ライダーにすべく、指導に力を注ぐ所存」

「お前も実戦形式の訓練を中心とする。リボルが地上から、バーニアが空中からお前を狙う。それを回避したり、魔力で受け流したりしながら上手く立ち回れ」

 

そのバーニアと名乗る戦闘機の装備を纏ったバグスター――同人ゲームとは思えない程の美麗なグラフィックとリアルな機体挙動で業界を驚かせたフライトシミュレータ『ジェットコンバット』に登場するパイロットを模したバグスターと、リボルと名乗るサイボーグみたいな姿のバグスター――硬派なストーリーと、物理演算エンジンを搭載した事で「本物を撃っているかの様な」演出が話題となったガンシューティング『バンバンシューティング』に登場する敵部隊長を模したバグスター、この2体が朱乃に自己紹介する、が、

 

「・・・」

「む?どうなされた、朱乃殿?」

「あ、い、いえ、声がお父様にそっくりだったのでつい・・・」

「成る程そうであられたか。ラヴリカもリアス殿の兄君の姿に擬態していたが、それをするまでもなく声がそっくりだと聞く、意外な所に縁は繋がっておるのだな・・・」

「リボル、お前は何メタい方面で感慨に耽ってんだ?」

 

その内の1体であるリボルの自己紹介を聞いた朱乃は何故か、キョトンとしていたと言わんばかりに固まっていた。

それに直ぐに気づいたリボルが様子を伺った所、どうやら朱乃の父であるバラキエルと、リボルの声がそっくりだった事が要因だった事が判明した。

何ともメタいやり取りに、側で聞いていたバーニアは思わずツッコミを入れていた。

 

「さ、さて今度は塔城黒歌」

「分かったのにゃ!」

『ハテサテパズル!』

『メテオブロッカー!』

 

そんな唐突に流れ出した変な空気を払拭すべく、黒歌に同様の操作をする様促すパラド、黒歌も同じ考えだったのか素直に従い渡されたガシャットを起動する。

すると『HATESATE PUZZLE』の文字と数独やクロスワードて使われている様なマス目が刻まれたボードがデカデカと映った物と、『METEOR BLOCKER』の文字と様々な形状の隕石が大地に降り注ぐ光景がデカデカと映った物、2つのスクリーンが黒歌の背後に出現、其処から様々な形状のブロックを組み合わせた武将らしき存在と、首にドラゴンの尾を模したマフラーを巻いた男性研究者らしき存在、2体のバグスターが其々のスクリーンから出現した。

 

「初めまして、我がパートナーよ。俺の名はドラル。メテオブロッカーの案内役をさせて頂いているバグスターです。以後、お見知り置きを」

「・・・ハテサテパズルのバグスター、ハテナだ。以後宜しく申し上げる」

「お前の訓練方法は他の奴とは違ったものにするぜ。前衛をドラル、後衛をハテナとしてお前に攻撃する、此処までは一緒だが」

 

そのドラルと名乗った研究員風のバグスター――某世界一有名なパズルゲームに似ている様で似ていない落ち物パズル『メテオブロッカー』の案内役を務める青年博士ドラルを模したバグスターと、ハテナと名乗った武将の様なバグスター――シンプルながらも独特なゲームシステムで有名なボードパズル『ハテサテパズル』のマスコットキャラクターであるハテナを模したバグスター、2体の自己紹介に合わせてパラドが訓練内容を伝えるが、それは先ほどの2人とは違ったものだった。

 

「お前はそれらを凌ぎつつ、これをプレイしろ」

「こ、これってメテオブロッカー?」

 

それは、ハテナとドラルの連携攻撃を凌ぎつつ、メテオブロッカーをプレイしろ、というものだった。

 

「え?こんなんで訓練になるのかにゃ?」

「まあ気持ちは分からんでもない。だがお前が変身する仮面ライダー、パズルの力を有した仮面ライダーパラガスは、事実上そうやって戦う仮面ライダーと言っても過言じゃない」

「本当かにゃ・・・」

 

攻撃を凌ぎながらゲームをする、訓練でもなんでも無さそうな内容に首をかしげる黒歌、パラドもそれに理解を示したのかその意図を説明するが、却って黒歌の疑問は増すばかりだった。

 

「まあ詳しくは後でドラル達に聞け。続いては塔城白音」

「分かりました」

『バクレツファイター!』

『メタリックフィスト!』

 

そんな黒歌の疑念を他所にパラドは白音を促し、彼女も応じて渡されたガシャットを起動する、すると『BAKURETSU FIGHTER』の文字とアッパーを放つボクサーがデカデカと映った物と、『METALIC FIST』の文字と構えを取る拳法家がデカデカと映った物、2つのスクリーンが白音の背後に出現、其処からドラルと同じく白衣を着た2人、いや2体のバグスターが其々のスクリーンから出現した。

 

「あ、ギリルさん!お久しぶりです!この前は色々とお世話になりました!」

「あら、久しぶりねアーシア。色々積もる話もあるでしょうけど、また後でね」

「貴女が、アーシア先輩やイッセー先輩が言っていたギリルさんですか」

「ええ。貴女が白音ちゃんね、パパやバガモンが言っていた。私はギリル、バクレツファイターの戦士よ」

「よぉ白音ちゃん、初めましてだな!俺こそがメタリックフィストの戦士を模した、バグスター1の天才レスラー、ロボル様だ!俺とギリルによる修行のゴールは遠いぞ、付いてこれr、あだ!?」

「ロボル、調子に乗らない」

「全くだぜ、ロボル。それはともかく、お前はギリル、ロボルと組手だ」

「了解、頑張ります!」

 

現れたのはギリル――個性派揃いながらも、ゲームバランスがとれたキャラクター構成と爽快感を打ち出したゲームシステムでアーケード進出も果たした2D格闘『バクレツファイター』に登場する女性サイボーグ戦士ギリルを模したバグスターと、自らをロボルと名乗る、研究者というよりレスラーと言ったほうがいいガタイと赤いロボットアームと化した左腕が特徴のバグスター――「バクレツファイターの良さをそのままに3D進出した神作」と呼ばれる程の人気を誇る3D格闘『メタリックフィスト』に登場するサイボーグレスラー、ロボルを模したバグスター。

何やらロボルが俺様感丸出しな言動で自己紹介をしていたが、其処にギリルが容赦ないツッコミを浴びせていた。

 

「そしてアーシア・アルジェント」

「はい、パラドさん!」

『ときめきクライシス!』

『ドレミファビート!』

 

そして最後に呼ばれたアーシアもまた渡されたガシャットを起動する、すると今までとは違ってポッピーの声でゲーム名がコールされ、『TOKIMEKI CRISIS』の文字とポッピーらしき少女がデカデカと映った物と、『DOREMIFA BEAT』の文字とポッピーをゆるキャラ化した様なキャラクターが指揮棒を振るっている様がデカデカと映った物、2つのスクリーンがアーシアの背後に出現、其処から出て来たのは、

 

「ま、魔王様!?」

「アイェェェェ!?魔王様、魔王様ニャンデ!?」

「姉様、気持ちは分かりますが正気に戻って下さい!NRS(ニンジャリアリティショック)を発症した一般人(モータル)じゃないんですから!」

「あ、あらあら、これは流石に予想外ですわね・・・」

「え、えっと皆さん、どうしたんですか・・・?」

「ラヴリカ、お前なんで擬態して来たんだ!?」

「皆が誤解しちゃうでしょ、というか既にピプペポパニックだよ!早く本来の姿に戻って!」

「いやぁ、折角のご対面だしドッキリを仕掛けみたのさ」

「真面目な話している所でドッキリやっても心踊る訳ないだろ!さっさと本来の姿に戻れ!」

「やれやれ、仕方ないな。ならば、培養!」

「あ、やっぱりラヴリカの擬態だったのね・・・」

 

ポッピーと、擬態していたラヴリカであった。

まさかリアスの兄である魔王の姿に擬態して登場するとは思わなかったのか、その事を知らない祐斗達は驚きの余りパニックに陥り、リアスの兄の事を知らないアーシアは混乱した状況に戸惑い、パラドとポッピーはそんな暴挙に出たラヴリカに元の姿に戻る様キレ気味に叫んだ。

 

「こいつをこの場に呼び出して良かったのか・・・?

まあ良い。お前はラヴリカ達から、自らが使うであろう力の操作方法を教われ。後は基礎訓練だ」

「あ、はい・・・」

「訓練方針の発表は以上だ。では、各自訓練を始めろ!」

「「「「はい、ステージセレクト!」」」」

『ステージ・セレクト!』

 

最後にアーシアに訓練方針を伝え、訓練を開始する様号令したパラド、それに応じ、祐斗達は既に装着していたゲーマドライバーの、左腰のスロットにあるスイッチを押した。



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21話_Kingの想い

「まさかバグスターの方が、ライダー適合者が持つ力を求めるとはな。ロックソルティ、今はどんな感じだ?」

『悪い意味での異常はありませぬ、お父様。寧ろ身体の奥底から力が湧き上がる様な感じが致します』

「力が湧き上がる様な感覚、か・・・

リアス部長が持つ滅びの魔力は悪魔においても特別な物、それをバグスターの本能が求め、我が物とすべく取り込んで見せた、か」

『「自分の事は、自分が一番わからないもの」とはよく言ったものですな、お父様。私とリアス様が力を合わせライダーとして戦う、その事はひょっとすれば、世界が決めた運命だったのかも知れませんな。我らを生み出せし神であるお父様ですら干渉できぬ、運命・・・』

「だから言っているだろうロックソルティ、俺はその様な存在では無いと」

 

各メンバーがレーティング・ゲームに向けて訓練に励んでいた頃、一誠は1人、自室にあるPCの前で、先のマイティアクションXのオリジンガシャットに起きた異変の調査を行なっていた。

いや1人と言うには語弊がある、そのディスプレイに映る、茶色と白を基調とした体躯に黒のシルクハットを被り、黒のマントを羽織った貴族らしき出で立ちの異形が、一誠と言葉を交わしていたのだから。

その異形――一誠が初めて世に送り出したゲームで、オーソドックスながらも奥深い動作が持ち味の2Dアクション『マイティアクションX』に登場するライバルキャラ『ソルティ伯爵』の色違いキャラを模したバグスターであるロックソルティは、自分でも先の異変に関して予想外だと言いたげな反応をしていたが一方、それによってこれまでにない力の昂りを感じられる様になったと、己の強化を喜んでいた。

 

 

 

そう、あの時ロックソルティの媒体であるマイティアクションXのオリジンガシャットは、リアスが持つ滅びの魔力に反応、我が物とすべく彼女から漏れ出していたごく一部を吸収、データ化するという行動に出たのだ。

それによってガシャットの宿主であるロックソルティは滅びの魔力を取り込み、己の力とする事が出来、その副作用としてガシャット本体及びラベルの変色も起こったという事である。

 

「悪魔が持つ魔力とバグスターウィルスとの間に親和性があるとは予想外だったが、面白いな。あの時パラドが言っていた事の裏付けになるかも知れない。それを活かして適合者を増やすのも良いし、取り込んだ魔力をベースとしたライダーガシャットを作り上げるのも良いな。バグスターウィルスの可能性、まだまだ底が知れないな・・・!」

『正しく、心が踊りますな、お父様!』

「ああ、ロックソルティ!

それはともかく、原因が分かった以上ガシャットはリアス部長に返すとしよう」

『む?渡す、の間違いでは?』

「滅びの魔力が取り込まれた今となっては、このガシャットを用いてのライダーへの変身はリアス部長しか行えない。となれば、緊急時でも無ければ部長が持つべきだ。であるならば、このオリジンガシャットは部長の物、返すと言う表現で間違い無いだろう?」

『それもそうですな、お父様』

 

悪魔の魔力をも取り込んで我が物として見せるバグスターウィルスの可能性に心が踊りつつも、今臨むべきはライザー陣営とのレーティング・ゲーム、魔力の影響で彼女の物となったガシャットを何時迄も預かっているわけにもいかない。

そう思い立ち、リアスにガシャットを渡す、もとい返すべく、部屋を出た、が、

 

「あ、そういえばもう深夜だ。部長も寝ているだろうな・・・」

 

時刻は既に深夜、幾ら夜に強い悪魔といえど、仕事でも無いのにこの時間帯まで起きている存在は、

 

「あれ、リビングの灯りが点灯している・・・?」

 

いた。

既に皆眠っているだろうと判断して引き返そうとした一誠だったが、未だ明るいリビングの様子から、まだ誰かが起きているだろうと考え、其処へ足を運んだ。

其処では、

 

「部長、起きていたんですか?」

「あら、イッセー。ええ、今度のレーティング・ゲームに向けて、ね。そういうイッセーはどうしたの?」

 

眼鏡を掛け、赤いネグリジェを身に纏ったリアスが、本を読んでいた。

彼女の口振りから、開いていた本は兵法書らしく、其処に書かれた戦術を学びながら、数日後に迫ったレーティング・ゲームで取るべき戦略を練っていたのだろう。

 

「今しがたマイティアクションXのオリジンガシャットに起きた異変の調査が終わりまして、部長にガシャットを返そうと探していた所です。此方をどうぞ」

「あら、ありがとう。でも返すって、ガシャットは貴方の物でしょう?」

「調査の結果、そのガシャットは部長だけが使えると言っていい状態だと判明しました。ならば部長が持つべきだと判断しました」

「そ、そうなの・・・」

 

一体どんな調査結果が出たんだと言いたげな表情を、一誠の返答を受けて浮かべるリアス。

そんな彼女の様子も何処へやらといった感じでガシャットを差し出す一誠、リアスもまた素直に受け取った。

 

「レーティング・ゲーム用の兵法書・・・

その様な書物が売られていたんですね、流石は冥界での一大エンターテイメントと言うべきか」

「ええ、そうね。尤も教科書通りの戦術なんて、百戦錬磨のライザーには通じないでしょうけど」

「それでも、決まった型から入るのはアプローチの1つとして良いと思いますよ」

 

自らの用は済んだと言わんばかりにリアスが行っていた事――戦術の研究――に注目した一誠と、そんな彼と言葉を交わすリアス、だが彼女の表情は何処か思い詰めた様子だった。

 

「・・・聞かないの、イッセー?

私が何故、無謀としか言えないレーティング・ゲームに臨むのか、貴族の身分でありながら、ライザーとの結婚を嫌がるのかを・・・」

 

やがて我慢できなかったのか、何も聞いて来ない一誠に訳を聞いてきた。

 

「・・・何となくですが、その理由には見当が付いています。

ノブレス・オブリージュ。高貴さには、貴族と言う地位には義務が伴うという、有名な言葉です。今回の焼き鳥野郎との婚約もまた、その義務の1つに据えられている物なのでしょう。増して部長は魔王様の妹君、その地位も責も計り知れない程の大きさを有しているのでしょう。

 

部長はそれを理解した上で、それでも尚譲れないものがある。その譲れない物の為に、あの焼き鳥野郎とはどうしても結婚出来ない、という事なのでしょう。

 

態々見当が付いているのに、それを敢えて聞き出そうなんて、無粋な真似はしません」

 

その訳を、真剣な眼差しをしながら答える一誠、その答えに、一誠の洞察力と気遣いに一瞬驚いた様子を見せながらも、何処か決心がついたのか頷いたような素振りを見せたリアス、

 

「・・・私はリアス・『グレモリー』なの。

冥界の誰も、私を『リアス』として見てはくれないわ。何処へ言っても、私はグレモリー家の者として、魔王であるお兄様の親族として見られたの。グレモリー家の次期当主、魔王サーゼクス・ルシファーの妹君・・・

勿論それは何物にも代えがたい誇りではあるわ。けれど、私と共に歩む存在には・・・

私の夫には『リアス』として見て欲しい、私を1人の女性『リアス・グレモリー』として接して欲しい・・・

それが貴方が言っていた、私にとって譲れない物なの」

 

やがて、その訳を口にした。

 

「正直に言えば、あのライザーも良い面はあると思うわ、でなければあんな言動をする彼に、彼の眷属達の殆どが慕うなんてありえないわ。それでも彼は私を『グレモリー』としてしか見てくれない。そんな彼との結婚はどうしても出来ないわ、例え我儘と後ろ指を指されようと、無謀と言われているレーティング・ゲームに臨もうと。ごめんなさい、イッセー。私の我儘の為に、貴方達を巻き込んで・・・」

「俺は我儘だとは思いませんよ、部長」

「え・・・?」

「前にも言いましたが、人となり、悪魔となりを見もしないで眷属関係を結ぶなど、良くない事です。そんな関係、絶対長続きしません。婚姻となれば、それも悪魔社会の将来が掛かった物となれば尚の事。当人同士が互いを理解し、その想いを受け止めてこそ良き婚姻関係は生まれる。相手を見もしないで婚姻関係になっては関係は冷え込み、やがては袂を分かつ事に、離婚と言う事態に至るでしょう。それは両家の関係に、引いては悪魔社会の基盤にすらもひび割れを生じさせかねません。

 

ならば部長の想いは我儘じゃない、権利です。管理者としてこの街の治安を守ると言う義務を果たしている以上、権利の1つや2つ、通って然るべきです」

 

その理由を、自らの想いを口にしたリアス、その想いを己の我儘とし、それに自らの眷族を巻き込んでしまった事を詫びた彼女だったが、一誠はそれをリアスの権利と捉えた。

 

「あ、ありがとう、イッセー。でもこの街を守っているのは主に貴方やバグスター達でしょう?殆ど何もやっていない私が声高に権利を主張するのもどうかと思うけど・・・」

「部長。貴方は俺達の王です。自ら前線に立つ王の話を聞いた事はありますが、自分が前線で働いていない事を気に病む王の話など聞いた事ありません。それは俺達がすべき事です。

 

王として何が出来るか、何をすべきか。部長はそれを考え、実行していけば良いのです」

「・・・そうね、本当にありがとうね、イッセー」

 

そんな一誠の言葉に、リアスは決意を新たにした様子だ。



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22話_運命のFirst order

それから時は経ち、レーティング・ゲーム当日の夜11時半。

オカルト研究部の部室に集結したメンバー達は、今回のレーティング・ゲームの審判役を務める事となったグレイフィアの呼び出しを待っている間、其々の行動をとっていた。

 

「そうだ木場祐斗、その剣だ。良い剣さばきじゃないか」

「まだまだ行くよ!」

 

祐斗はグラファイトとの剣による打ち合いを、

 

「そうよ、白音ちゃん。相手の行動を読み取り、最も有効な行動を返す。戦いの基本よ」

「はい、ギリルさん!」

 

白音はギリルと組手を行なっていた。

2人共に前線に立って戦う存在故か、最後まで鍛錬を怠らない。

一方、

 

「…」

「アーシア?先程から震えている様だが、大丈夫か?」

 

メンバーの中で唯一シスター服を着用しているアーシアは、先程から持っていたアミュレットを握ったまま震えている、そんな彼女が心配になったのか、一誠は声を掛けた。

 

「イッセーさん。はい、その、今更ながら怖くなって来てしまって…」

 

そんな一誠に、震える訳を話すアーシア。

無理もない、レーティング・ゲームは、死ぬ可能性が殆ど無いとは言えど、それ以外は戦争と変わりないのだ、唯でさえその様な場に直面した事が無い上に、心優しい彼女の事だ、その事実に今更ながら恐怖と不安を覚えるのは是非も無い。

 

「気にする事は無い、アーシア。俺も、いや俺達もレーティング・ゲームは初めてだ。何時ものはぐれ悪魔の駆除とは勝手が違う、その点に関して不安はある。

 

だが大丈夫だ。俺が、木場が、白音ちゃんが、黒歌先生が、朱乃さんが、そして部長がいる。もし俺達と分断されたとしても、ラヴリカが、ポッピーが君の盾となる。それでも不安な気持ちが晴れないなら、皆と一緒にその不安と向き合うと良い。大丈夫、君は1人では無いのだから」

「1人じゃない…!

は、はい、イッセーさん!ありがとうございます!」

 

そんなアーシアの気持ちを察し、彼女が1人では無い事を告げる一誠、それは初めての戦場へ赴く不安が晴れなかった彼女には、過去聖女として祭り上げられてから最近までずっと1人だったと言っても過言では無かった彼女には、これまでにない程の激励だった。

 

「あらあら、何だかアーシアさんが羨ましいですわ。思わぬライバルの登場、といった所でしょうか。ね、白音ちゃん?」

「あ、朱乃先輩!?何で其処で私に振るんですか!?」

「なーに今更照れちゃってんのにゃ、白音?アンタ、イッセーにお熱なんでしょ?」

「ね、姉様まで!?い、いや、それは、その…」

「おや、黒歌さんはそうではない、と?」

「まあ、どうかにゃ?そりゃあ頭脳明晰で、身も心もイケメンで、それでいて子供心を忘れない男と来れば、白音が熱を上げるのも分かるけどね」

「イッセーにお熱、か…」

 

そんな2人の様子を、リアス、朱乃、白音、黒歌、そしてバグスターとしての姿となっているラヴリカが微笑ましい様子で見守っていて、その後彼女達の恋に関する話題で盛り上がっていた。

いや一部はそうでは無かった、此処にいるメンバーの主人であるリアスは、一誠を見つめながらも、何処か心ここに在らずといった様子である。

其処へ、

 

「皆様、準備は宜しいでしょうか?開始10分前になりました」

「ええ、グレイフィア。準備はOKよ」

「開始時刻になりましたら、こちらの魔法陣から戦闘用のフィールドへと転送されます。異空間に作られた使い捨ての世界ですので、思う存分戦って頂いて構いません」

 

審判役であるグレイフィアが転移され、事前連絡を伝えて来た。

 

「今回のレーティング・ゲームはグレモリー家とフェニックス家の皆様の他、魔王サーゼクス・ルシファー様を始めとした上層部の方々も、他の場所より中継で拝見されます。お忘れなき様」

「お兄様達が…!

分かったわ、グレイフィア」

 

その際にリアスの兄であり、魔王でもあるサーゼクスがこのゲームを見ていると聞き、俄然気迫が漲って来たリアス達。

 

「さあ私の可愛い眷属達、準備は良い?いよいよ不死身で知られるフェニックス家においても将来有望な才児ライザー・フェニックスとのレーティング・ゲームが始まるわ。言うまでもなく私達にとって初めてのゲームよ。だけど朱乃、祐斗、黒歌、白音、アーシア、そしてイッセー…

貴方達がこの10日間で得た力は、仮面ライダーの力は確かに身になっている筈よ。貴方達がそれを信じて立ち向かえば、私達眷属とバグスター達の力を合わせて立ち向かえば、敵わない敵じゃないわ。全力で勝ちにいきましょう!」

『はい!』

 

円陣を組んで決起の言葉を述べたリアスの口調からも、それが分かる。

それを受けて気合十分となったメンバー達は、開始時刻になると共に魔法陣へと乗り、部室を後にした。

 

――――――――――――

 

と思いきや、

 

「…部室?」

 

一誠達の目に入って来た光景は、先程と変わらぬオカルト研究部の部室その物であった。

先程と何ら変わらない光景に、転移に失敗したのではないかと訝しむ一誠だった、が、

 

「っ!名状しがたい色合いの空…

成る程、駒王学園を模した異世界という訳か」

 

その謎は、窓に映る『何時もとは違う』光景を見た事で解けた。

そう、一誠達が転移された空間、今回のレーティング・ゲームの舞台となったのは、駒王学園の敷地を模した異世界だったのだ。

 

(俺達も舐められた物だ。大方、俺達が勝てる可能性など無いと踏んで、ならば言い訳させない様、仕方ないと諦める様、ホームアドバンテージ等の優位な環境を敢えて与えようという魂胆か。良いだろう。なら、そのふざけた幻想をぶち壊す(クリアする)!)

『皆様。この度グレモリー家とフェニックス家の試合において審判役(アービター)を任ぜられましたグレモリー家の使用人、グレイフィアと申します。今回のレーティング・ゲームのフィールドとして、リアス・グレモリー様、及びその眷属の方々が通われる駒王学園の校舎をベースとした世界を用意しました』

 

この場所が舞台となったその真意を見抜き、戦意を高める一誠、其処にグレイフィアのアナウンスが聞こえて来た。

 

『両陣営が転送された、現在いる地点が其々の本陣でございます。リアス様が旧校舎の、オカルト研究部の部室。ライザー様が本校舎にあります、生徒会室となっております。両陣営の兵士(ポーン)は、相手方の本陣に足を踏み入れた瞬間、昇格(プロモーション)が可能となります』

 

此処で言う昇格とは、悪魔の駒のベースとなったチェス同様、兵士が他の駒の力を得られるシステムであり、騎士に昇格すれば圧倒的な素早さを、戦車であれば驚異的なパワーを、僧侶であれば膨大な魔力を得られ、女王に昇格するとなるとそれら全てを得られると言う訳である。

リアスの眷属で兵士は一誠のみ、一方でライザーの眷属はフルメンバー、つまり8人もの兵士にその可能性があると言う訳だ。

 

「皆、これを着けて。これで通信が可能になるわ」

『はい』

 

そんな説明がされている最中リアスが眷属達に、通信機の機能を有しているらしい光の球を配布した。

戦争において情報手段の確保は必要、それはレーティング・ゲームでも変わらない。

 

『チャイムが鳴り次第、開始となります。制限時間は人間界の夜明け、午前5時までとなっております』

 

そしてグレイフィアが説明を終えた直後、駒王学園でいつも聞くチャイムの音色が、ゲーム開始の合図が、鳴り響いた…!

 

「始まったわね。さてイッセー、貴方が思い描く作戦を聞かせて貰っても良いかしら?」

「お、俺ですか?」

「ええ、貴方よ。ゴリ押しが一切効かない硬派なストラテジー『ハコニワウォーズ』に、臨機応変さも求められるタワーディフェンス『ホームガーディアン』…

こんなやり応えのある名作シミュレーションゲームの数々を作り上げた貴方の考えを聞かせて欲しいわ」

 

レーティング・ゲームが開始され、作戦会議を始めたリアス、その場で彼女は、一誠の考えを尋ねた。

彼女が挙げたゲームもまた一誠が開発し、IS名義で世に送り出された名作ゲーム、それを作り上げた彼の戦略眼に期待したのだろうか。

 

「分かりました。ではまず、今回の戦いにおいて厄介なのが、中央に配置されている体育館ですね。此処は学園全体を満遍なく見渡せ、其々の地点へ素早く進撃出来る、拠点としては最適な場所です。故に相手は最優先で此処を確保しようと動く筈、取られてしまっては此方は動きにくくなります。とは言え仮に此方が確保に成功したとしても、それを維持出来る程人員に余裕はありません。此方の人員は7人、焼き鳥野郎の眷属の半数弱です。

 

ならば、いっその事潰しましょう。此処を焼き鳥野郎側の何人かが占拠した所を叩く、これで行くべきかと思います」

 

彼女からの指名を受けて、己が考えていた作戦を披露する一誠。

 

「次にその近辺にある、この森林地帯です。此処は鬱蒼としていて視界が悪い、故に敵に気付かれずに本拠へと襲撃する事も不可能ではありません。だが逆に言えば、気付かれる事なく襲撃する事も可能です。其処で此処には罠を仕掛けて、此処から近づいて来るであろう者達を嵌め、一網打尽にしましょう。

 

それとあの焼き鳥野郎、公式戦では主に、兵士等を囮として前線に送り、相手が疲弊したり油断したりした所を女王等のエースメンバーで潰すサクリファイス戦法を用いている様です。となると、こういった要所の近辺に向かわせる筈、其処を突けば相手の戦略は崩れる筈です。

 

そうなれば相手は戦略の立て直しの為に暫く動きを止めるでしょう。だがそれこそ俺達が望むシチュエーション、その間に俺達は強化を終えられ、万全の体制で総攻撃を仕掛けられます」

「良いわね、イッセー!分かったわ、その作戦で行きましょう!」

 

説明が終わった一誠の作戦、それはリアスの絶賛を受けるには十分な物、直ぐに採用された。

 

「そしたら一誠と白音は体育館に向かって。囮とするにしても、何も手を付けないのでは相手も怪しむでしょう。故に2人には、体育館を確保する『振り』をして貰うわ」

「了解です、部長」

「分かりました!」

「祐斗と黒歌は森の方を頼むわ」

「はい、部長!」

「了解にゃ、リアス」

「朱乃はエースメンバーの狙撃と、体育館の破壊をお願い」

「分かりましたわ、リアス。この『バンバンシューティング』で、狙い撃ちますわ!」

「アーシアは此処で私と待機していて」

「分かりました、部長さん!」

 

その作戦をベースとして各メンバーに指示を送るリアス、それを受けて各員は其々の行動を開始した。



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23話_必殺のSniper

「敵の気配がします。人数は4人、うち兵士が3人、残る1人は戦車です。此方が侵入するのを待ち構えているかの様相ですね」

「もうそれ程侵入されているのか。此方ものんびりしていた訳では無いのだが…

だが好都合だ、俺達の目的を鑑みれば」

 

体育館を確保する「振り」の為に出撃した一誠と白音は、彼の言う通り決して遅く無い時間で到着したのだが、その少し前に白音が敵の気配を察知していた。

妖怪の一種である猫又、その中でも強大な力を有する存在の子として生まれた彼女と黒歌両名は、その血筋故に仙術等の摩訶不思議な術式を用いる事が出来、白音も姉の黒歌程では無いにしても扱える、それを用いて体育館内に侵入した敵の存在を、その人数や駒の種類まで把握したのだ。

 

「白音ちゃん、ガシャットの準備は良い?」

「勿論です、イッセー先輩!」

「なら行こう!部長の運命は、俺達が変える!」

 

そんな体育館内の状況に驚きつつも、今回の作戦を踏まえればむしろ好都合だと言わんばかりの様子でガシャットを左手に持った一誠と白音は、真正面から突入した。

すると案の定と言うべきか、

 

「来たわね!」

 

ライザーの眷属であろう、4人の少女達が体育館内で待ち構えていた。

 

「白音ちゃんが察知していた通りだ、凄いな。これも仙術の、猫又の力という事か」

「まあ、姉様には遠く及びませんけどね」

『マイティアクションエックス!』

『バクレツファイター!』

「な、こ、これは!?」

 

そんな、想像通りな光景を前に言葉を交えつつ互いにガシャットを起動させた一誠と白音、無論その直後には自らの背に起動させたガシャットに関連するスクリーンが登場し、その周囲にドット状の波が広がるという、何時も通りの光景が繰り広げられた。

 

「大変身!」

「ラウンド2、変身!」

『『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!』』

 

とはいえそんな事は一誠達以外は初めて、故に突然の事態に驚きを隠せないライザーの眷属達。

それを尻目に、一誠は何時もの動作を、白音はファイティングポーズを取りながらガシャットをゲーマドライバーに装填、レバーを開き、

 

「「ハァッ!」」

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクション、エックス!』

『ガシャコンブレイカー!』

『ぶち込め正拳!バクレツファイター!』

 

一誠はこれまた何時も通りの挙動を見せつつエグゼイドに変身、ガシャコンブレイカーを装備する。

一方の白音は、赤い角刈りヘアに鉢巻の様な装備を付けたキャラクターが映ったパネルを殴って選択、『Select!』の文字と共にパネルが重なると同時にそれと同じ顔の仮面ライダー、そのレベル1の姿に変身、その直後に登場した赤いパネルを通過すると共に異空間へと転移、ボクシングリングらしき異空間で、対戦相手にワンツーパンチで体勢を崩しジャンピングアッパーを決める、と同時に頭部を残して身体が飛び散り、残った頭部からアッパーを決めた体勢のままな状態の新しい身体が出現、そのまま帰還した。

 

「な、何なの一体、その姿は…!」

 

一連の動作を経て並び立つ2人のライダーの姿に先程から驚愕しきりなライザーの眷属達。

 

「仮面ライダーエグゼイド、アクションゲーマーレベル2。アクションゲームをモチーフとした仮面ライダーだ」

「仮面ライダーノックス、ファイターゲーマーレベル2。格闘ゲームをモチーフとした仮面ライダーです!」

 

そんな彼女達の声に応える様に、エグゼイドと、赤のベースカラーと炎の様な装飾が特徴的なライダースーツに覆われ、エグゼイドと同じくレベル1時の頭部だったパーツを背負う仮面ライダー、ノックスはそう宣言した。

 

「くっ姿が変わったからって怖気つくと思ったら大間違いよ!」

「ボッコボコにしてライザー様の前に突き出してやるんだから!」

「「死なない程度に解体しまーす!」」

「行くよ、白音ちゃん!」

「はい、イッセー先輩!」

 

その宣言を受けてかどうかは分からないが、今はレーティング・ゲーム中だと気を引き締めたライザーの眷属達が飛び掛かって来るのを受けて迎え撃つ構えを取るエグゼイド達。

其処へ、

 

『ライザー・フェニックス様の『女王』、リタイア』

 

そんなアナウンスが流れた。

 

―――――――――――――

 

「私も行って来ますわ、リアス」

「ええ、頼んだわよ。朱乃」

 

その数分前、作戦会議を終えて其々の持ち場へと急いだ一誠達、彼らが出発したのを見届けた朱乃もまた、己の役目を果たすべく部室を出た。

 

『バンバンシューティング!』

第二戦術(セカンドタクティクス)、変身!」

『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!』

 

その移動の際左手で、西部劇でよく見られる早撃ちの如くガシャットをホルダーから抜き取って構え、同じく西部劇でお馴染みなガンスピンの要領でガシャットを回転させながらゲーマドライバーに装填、レバーを開き、

 

「行きますわ!」

『ババンバン!バンババン!イェーイ!バンバンシューティング!』

 

ライムグリーンの前髪らしき機構で右眼を覆い『STG』と書かれたヘルメットを装着したキャラクターが映ったパネルを、指鉄砲で弾いて選択、『Select!』の文字と共にパネルが重なると同時にそれと同じ顔の仮面ライダー、そのレベル1の姿に変身、その直後に登場した群青のパネルを通過すると共に異空間へと転移、至る所に配置された的を何時の間にか持っていた拳銃で次々と撃ち抜くと同時に頭部を残して身体が飛び散り、残った頭部から群青のベースカラーとライムグリーンのラインが特徴的なライダースーツで覆われ、ライムグリーンのマントと、これまたエグゼイド達と同じくレベル1時の頭部だったパーツを装着した新しい身体が出現、そのまま帰還した。

 

『ガシャコンマグナム!ズ・キューン!』

任務開始(ミッション・スタート)ですわ!」

 

一連の動作で朱乃が変身した仮面ライダー――仮面ライダースナイプ・シューティングゲーマーレベル2は、エグゼイドがガシャコンブレイカーを装備するのと同じ手段で拳銃型のガシャコンウェポン−−ガシャコンマグナムを装備し、その側面にある『A』と書かれたスイッチを押して銃身を伸長、狙撃用のサイトを展開、更に『B』と書かれたスイッチを押してエネルギーをチャージした。

 

「さて、と…

あらあら、案の定来ていましたわね。それもあの姿は確か爆弾王妃(ボム・クイーン)ユーベルーナ…

流石はイッセー君、読み通りですわね」

 

そのまま屋上へと歩みを進めたスナイプ、其処で索敵の為に周囲を見回し始めたが、狙いの敵は直ぐに見つかった。

一誠達が向かったであろう体育館、其処を見据えるかの様に周囲を浮遊している、如何にも魔導師だと言わんばかりの出で立ちをした女性がいたのだ。

 

「イッセー君達の安全の為にも、此処でさよならとさせて頂きますわ」

 

その姿を見つけるや否や、ガシャコンマグナムの銃口をユーベルーナに向けるスナイプ。

狙撃用サイトで狙いを定め、

 

『ライザー・フェニックス様の『女王』、リタイア』

 

引き金を引いた。

それによって放たれた銃撃、スナイプに変身している朱乃に宿った雷光の力を込めたその強力な一撃は、先程彼女が異名を付けて呼ぶ程の知名度を有するユーベルーナですらも防ぐ事など叶わず(そもそも直撃寸前まで気付いてすらいなかったが)、瞬時にリタイアとなった。

 

『やったわね、朱乃!そしたら、イッセー達が脱出次第、次お願いね』

「ええ、リアス」

『ガッシューン』

 

そのアナウンスを聞いたであろうリアスからの連絡を耳にしつつ、朱乃は『次』の為の準備を進める。

まずはゲーマドライバーに装填されていたガシャットを抜き取り、

 

『ガシャット!キメワザ!』

 

ガシャコンマグナムの後部に取り付けられた、ガシャット挿入スロットに装填する。

それによってガシャコンマグナムに膨大なエネルギーが収束されているのを確認しつつ、照準を体育館に合わせる。

そして、

 

『朱乃、イッセー達が離脱したわ』

「了解しましたわ、リアス」

『バンバン!クリティカル・フィニッシュ!』

 

リアスから、エグゼイド達が体育館から離れたという連絡を受けて引き金を引いた。

それによって解放された膨大なエネルギーは、ガシャコンマグナムの銃口から強大な雷光として体育館へと殺到、

 

『ライザー・フェニックス様の『兵士』3名、『戦車』1名、リタイア』

「…あらあら、出力が強すぎたかしら?」

 

体育館諸共ライザーの眷属達をリタイアさせたのは勿論、射線の先の地形すらも大きく抉り飛ばした。



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24話_未来へのAssault

「森の中に3人位の気配がするのにゃ。駒の種類は全て兵士ね。それと、この辺りに向かった連中以外は皆あの部室棟から動いていないにゃ」

「イッセー君が考えていた通りに動いて来ましたね。それじゃあ、僕達も行きましょうか、黒歌先生」

「行くのにゃ!あの焼き鳥野郎に目に物見せてやるのにゃ!」

 

一方、旧校舎の近くに鬱蒼と広がる森林地帯へと辿り着いた祐斗と黒歌、其処で彼女もまた敵の気配を察知した。

その際、それ以外の面子が何処にいるかも察知していた辺りは、術式に長けた黒歌の本領発揮と言うべきか。

 

『タドルクエスト!』

『ハテサテパズル!』

「術式レベル2、変身!」

「2連鎖、変身!」

『『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!』』

「「ハァッ!」」

 

そんな、敵の状況を把握した祐斗と黒歌もまた仮面ライダーになるべく其々の行動に移る。

 

『辿る巡る!辿る巡る!タドルクエストォォォォ!』

 

まずは祐斗、ホルダーから抜き取ったガシャットを回転させながら起動させてゲーマドライバーに装填、レバーを開き、兜で覆われたキャラクターが映ったパネルを選択、『Select!』の文字と共にそれと同じ顔の仮面ライダー――仮面ライダーブレイブのレベル1の姿に変身、その直後に登場した水色のパネルを通過すると共に浮き上がる様に異空間へと転移、其処に次々と現れる扉の中から1つを選んで開くと、水色をベースカラーとしたライダースーツに覆われ、左腕には盾を、背中にはレベル1時の頭部だったパーツを装着した姿となって帰還した。

 

『運命の鎖、解け!ハテサテパズル!』

 

次に黒歌、起動させたガシャットを一旦放り投げ、直ぐに逆向きの状態で掴んでゲーマドライバーに装填、レバーを開き、青いリーゼントヘアのキャラクターが映ったパネルを選択、『Select!』の文字と共にそれと同じ顔の仮面ライダー――仮面ライダーパラガスのレベル1の姿に変身、その直後に登場した青色のパネルを通過すると共に異空間へと転移、其処に自らと共に5×5の配列で並ぶ様々な色のブロックを入れ替え、自分と同じ列に青いブロックを並べた瞬間、ブロック諸共身体が頭部を残して爆散、直後に残った頭部から青のベースカラーにジグソーパズルを模した黒いラインが特徴的なライダースーツに覆われた新しい身体が出現、そのまま帰還した。

 

「これより、序列三十七眷属の切除手術を開始する」

『ガシャコンソード!』

「私の掌の上で踊るが良いにゃ!」

『ガシャコンパラブレイガン!』

 

其々が仮面ライダーとしての姿になると、決め台詞と共に、ブレイブは、刀身から炎を発する長剣型のガシャコンソードを、パラガスは斧型のガシャコンパラブレイガンを装備し、森林地帯へと入ろうとする。

其処へ、

 

『ライザー・フェニックス様の『女王』、リタイア』

 

体育館の周辺で待ち伏せしていたユーベルーナがスナイプに狙撃された事を示すアナウンスが流れた。

 

「どうやら朱乃がやった様にゃ。相手はこれで混乱状態に陥る筈、不意打ちなら今にゃ!」

『『透明化!』』

「はい、黒歌先生!」

 

それを聞きつけ、今がチャンスだと言わんばかりに、パラガスはガシャコンパラブレイガンの後方に空いている口らしき機構から、水色のベースカラーに人が透けている様な絵柄が描かれたメダルらしき物を2枚取り出し、その内1枚をブレイブに投げつける。

すると投げつけられたブレイブは勿論、パラガスも身体が透けていき、やがてその姿が消えた。

無論その場から離れた訳でも、レーティング・ゲームにおいて戦闘不能と判定されて安全の為に転移された訳でも無く、身体が透明になったのだ、その証拠に2人の足音は少しばかりながら聞こえている。

これを成し遂げたのは、先程パラガスが取り出したメダル状のアイテム――エナジーアイテムの力である。

これによって身体が透明になった2人が森林地帯にいるであろうライザーの眷属達が慌てふためいているであろう姿を捉えたその時、

 

「な!?」

「え、な、何、今の轟音!?」

「ユーベルーナ様が真っ先にやられた事といい、今の轟音といい、まるで意味が分からないわ!」

(確かに、それには同感なのにゃ。朱乃のパワー、上げ過ぎなんじゃない?)

『ライザー・フェニックス様の『兵士』3名、『戦車』1名、リタイア』

 

混乱を加速させるであろう、轟音とアナウンスが響き渡った。

無論これは、スナイプがガシャコンマグナムから放った必殺の一撃が、体育館は勿論、射線上の地形すらも巻き込んで眷属達を薙ぎ払った事による物である。

そして、混乱の加速は終わらない。

 

「きゃぁ!?」

「あぐぅ!?」

「うっ!?て、敵襲…!?」

『ライザー・フェニックス様の『兵士』3名、リタイア』

 

透明化したブレイブとパラガスが、森林地帯に潜んでいたライザーの眷属達を次々と斬りつけていった。

姿なき相手からの攻撃だった為に対応する事は出来ず、襲撃されたと気付いた時には既にその身は転移の為の光に包まれていた。

 

「これで相手との人数差は殆ど無くなりました。決戦の時は近いですね、黒歌先生」

「そにゃね、祐斗。となれば、白音達と合流しようかにゃ」

 

襲撃を終えると共に、エナジーアイテムの有効期間が切れたのか姿が再び見える様になったブレイブとパラガスは、既に体育館方面での役目を終えたエグゼイド達に合流すべく、移動を再開した。

 

――――――――――――

 

「…朱乃先輩、強過ぎです」

「…ライダーシステムを開発した俺がクレームをつけるのは筋違いでしょうが、幾ら何でも力を出し過ぎです、朱乃先輩」

 

その合流先であるエグゼイドとノックスは、先程スナイプが放った一撃の、余りの強烈さに唖然としていた。

だがそれも無理もない、目前の体育館は跡形もなくなり、射線上の地形も大きく抉れて黒焦げになっている光景を見せられては、そうもなる。

 

「ま、まあ、何はともあれ、状況は此方の思惑通りに進んでいる。後は俺達4人が前衛となって攻撃を仕掛けよう」

「そうですね、イッセー先輩。となれば、先程森林地帯で襲撃してきた様子の姉様達に合流しましょう」

 

とはいえまだまだレーティング・ゲームは終わっていない、そう切り替えたエグゼイド達もまた、ブレイブ達と合流すべく、抉れた地形を避けながら移動を開始した。

程なく、

 

「早かったですね、姉様、祐斗先輩」

「早速使いこなしている様だな、ライダーシステムを」

「うん、イッセー君。やっぱり凄いよ、ライダーシステムの力は」

「うわー…

祐斗、そっち見るのにゃ。あれ、さっき朱乃がやった奴みたいよ」

「あ、あはは…」

 

4人は倉庫の物陰で合流した。

 

「ま、まあそれは一先ず置きましょう、姉様」

「それで、この後はどう動こうか。黒歌先生の話では、残る眷属はあの部室棟に籠っている様子だよ」

「いきなり圧倒されて出るに出れないのか、或いは出方を未だに伺っているのか…」

 

合流した4人は、早速これからの戦術を話し合う事にした。

が、

 

「む?どうやら、その必要はなくなった様だ」

「あらら、本当にゃ。向こうからノコノコやって来た様にゃ」

「私はライザー様に仕える騎士のカーラマイン!こそこそと腹の探り合いをするのはもう止めだ!リアス・グレモリーの眷属よ!いざ、尋常に刃を交えようではないか!」

 

思わぬ形で切り上げる事となった。

部室棟の方向から1人、カーラマインと名乗った軽装の剣士と言いたげな出で立ちの少女が真正面から此方へと向かい、挙句名乗りを上げ、一騎打ちを申し込んで来たのだから。

戦争においてこの様な行為は自殺行為と言っても過言じゃない、レーティング・ゲームにおいてもそれは同じ事、そんな無謀な奴の挑戦状など受ける存在は、

 

「名乗られたからには僕も騎士として名乗らない訳には行かないね。僕はリアス様に仕える騎士、木場祐斗!またの名を、仮面ライダーブレイブ!騎士同士、剣で決着を付けよう!」

 

いた。

 

「あーあ、まんまと乗せられちゃって…

まあ良いのにゃ。同じく騎士の塔城黒歌にゃ!またの名を、仮面ライダーパラガス!」

「同じく戦車の塔城白音です。またの名を、仮面ライダーノックス!」

「同じく兵士の兵藤一誠。またの名を、仮面ライダーエグゼイド!」

 

カーラマインの挑発に乗せられる形で名乗り出てしまったブレイブ、こうなっては仕方ないと言わんばかりに残る3人も名乗り出る事にした。

その1人であるエグゼイドが名乗ると、

 

「あ、アイズ様!?そ、そのお姿は一体!?」

 

部室棟から現れた内の1人、エグゼイドが人間だった頃から親しい仲であったレイヴェルが、仮面ライダーとしての姿に驚きを隠せないでいた。

無理もない、彼女とエグゼイドは、天才ゲーマー『L』と天才ゲームクリエイター『IS』という存在での関係、彼が街の平和を守る為に暗躍していた戦士である事など彼女には知る由も無いのだから。

 

「ああ、そういえばL達には話していなかったか。この姿は、俺が人間だった頃に生み出した、人の身でありながら様々な人外達と戦う力をもたらすシステムを用いて変身した、平穏を守る戦士としての姿――仮面ライダーだ!」

「か、仮面ライダー…!

私達ゲーマーの心を常日頃踊らせてくれるゲームの数々だけでなく、その様な力まで生み出すとは、流石は、アイズ様ですわ…!」

「然し、人の身でありながら人外と渡り合えるシステムを作り上げた存在が、戦う相手である人外の1勢力である悪魔になるとは、何とも数奇な事か」

「それ程の力を有するという話が本当かどうかは、ユーベルーナが瞬殺されたのを見れば分かる。そのシステムを悪魔が用いるとなればどれ程の力があるのか…!

ますます面白い!仮面ライダーブレイブとやら!その力、私に見せてみよ!」

 

その姿の意味を、仮面ライダーという存在を明かすエグゼイド、それを聞いてまるで心酔しているかの様に感心するレイヴェルと、その開発者であるエグゼイドが悪魔に転生したという事実に何処か数奇な物を感じていると呟く仮面を被った女性の一方、その力の程を既に見ていたカーラマインはますます戦意をたかぶらせていた。

 

「どうやら、そっちは準備OKみたいだね。じゃあ、始めようか!」

「バッチ来いにゃ!」

「心の滾りのままに、ぶん殴ります!」

「ノーコンティニューで、クリアする!」

 

それを受け、其々の眷属達による決戦は始まった。



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25話_栄光の7人Rider!

「せいっ!やぁっ!」

「くっ!やるな、流石は仮面ライダーと言うべきか!」

 

カーラマインが独断で出撃した事によって起こった双方の眷属同士による決戦、その口火を切った彼女は、その名乗りに応じたブレイブとの1対1による決闘となり、互いに炎を纏った己の得物で斬り合いを繰り広げていた。

その戦況は、騎士として転生した事によって得たスピードは健在、どころかライダーシステムによって更に底上げされた事に留まらず、一撃一撃の重みも加わったブレイブが押していると言えるだろう。

一方、

 

「ふっ!はぁっ!」

「「にゃにゃぁ!?」」

「とう!そぉい!」

「ちぃっ!」

「しゅっ!」

「ぐぁっ!?」

『ズ・ガーン!』

「はいにゃ!」

「きゃぁ!?」

 

ノックスは自らと同じ猫又と思しき少女達を相手に1対2ながらも圧倒、エグゼイドは仮面を被った女戦士との戦闘を優位に進め、パラガスは大剣を持った騎士と思しき少女を斬りつける一方で、ガシャコンパラブレイガンを銃らしき形態に変形させた上で、後方で術式を展開しようとしていた十二単を身に纏っている少女を銃撃した。

其処に、

 

「援護しますわ!」

「「「「きゃぁぁぁぁぁぁ!?」」」」

 

戦いを察知したスナイプが、ガシャコンマグナムを拳銃らしき形態に戻した上で乱入、ライザーの眷属達のみに銃弾を浴びせる好援護を見せた。

 

「す、凄いですわ、これがライダーシステムの力…!

やはりアイズ様は天才と、いや神と呼ぶに相応しい存在…!

そんなアイズ様を燃やす等と、お兄様はなんて罪深い事を、後でまたお話ですわね…!」

 

そんな戦況を1人観戦していたレイヴェルは、ライダーシステムが持つ力に、それを生み出したエグゼイドの才に、先程と変わらず心酔しているかの様に魅入り、そんな彼に対して燃やすと宣言したライザーへの怒りを滾らせていた。

因みに何故彼女だけ戦っていないのかと言うと、彼女は元々、成人になるに合わせて上級悪魔になった時に向けての研修目的でライザーの眷属になったに過ぎず、レーティング・ゲームは傍観する事が事前に決められていたのだ。

尤も彼女自身、レーティング・ゲームに対して余り良い感情は抱いていないのだが…

 

「さあ、これで決まりにゃ!」

『ス・パーン!』

『『『『マッスル化!』』』』

「力が、漲ってくる…!」

「はぁっ!凄い力だ、これなら!」

「エナジーアイテムをありがとうございます、黒歌先生。これで決める!」

 

そんな彼女を他所にパラガスは、ガシャコンパラブレイガンを斧らしき形態に戻しつつ、赤色のベースカラーに己の筋力をアピールする人らしき絵柄が描かれたエナジーアイテムを4枚取り出し、前線で戦う其々のライダーに投げつけた。

すると4人の身体が一瞬にして筋肉隆々になるという演出と共に、其々のパワーが実際に上昇した。

それを受けて其々ゲーマドライバーに装填していたガシャットを抜き取り、

 

『『『『ガシャット!キメワザ!』』』』

 

エグゼイドはガシャコンブレイカー、パラガスはガシャコンパラブレイガン、其々の後部に取り付けられたガシャット装填スロットに装填、一方のブレイブはガシャコンソードの唾に当たる部分に取り付けられたガシャット装填スロットに装填、そしてガシャコンウェポンを持たないノックスは、己の右腰に装着された黒いガシャット装填スロットに装填し、

 

『マイティ!クリティカル・フィニッシュ!』

『タドル!クリティカル・フィニッシュ!』

『ハテサテ!クリティカル・フィニッシュ!』

『バクレツ!クリティカル・ストライク!』

 

其々の必殺技を放った。

 

「せいはぁぁぁ!」

「ぐぁぁぁぁ!?」

 

エグゼイドは、何か来ると察知して咄嗟に防御体制に移った女戦士を、ガードごとぶっ飛ばし、

 

「はぁぁぁ!」

「ぐぅっ!?」

 

ブレイブは、ガシャコンソードに纏っていた炎の勢いを増大させた状態で大上段に振り下ろし、それによって放たれた衝撃波に炎を纏わせてカーラマインを焼き尽くし、

 

「がぁぁぁぁ!?」

「安心するにゃ、峰打ちなのにゃ」

 

パラガスは何故か女騎士を、ガシャコンパラブレイガンの刃ではない部分でぶっ飛ばし、

 

「真◯波◯拳!」

「「にゃぁぁ!?」」

「きゃぁぁぁ!?」

 

ノックスは、某今日に至るまでの格闘ゲームの基礎を築き上げた2D格闘ゲームの主人公である、自分より強いであろう存在との出会いを渇望する格闘家の必殺技と同じ様な挙動で真紅のオーラを放ち、自らが戦っていた猫又の2人組と、十二単の少女を纏めて呑み込んだ。

 

『ライザー・フェニックス様の『戦車』1名、『騎士』2名、『僧侶』1名、『兵士』2名、リタイア』

 

それらの一撃は彼女達にとって耐え切れるものではなく、みんな揃ってリタイアとなり、ライザー側に残された眷属はレイヴェルのみとなった。

其処へ、

 

『み、皆さん大変です!此方に、火の鳥らしき物体が飛んできました!』

「何?分かった、アーシア。すぐに向かう。

…もしかしなくてもあの焼き鳥野郎か、随分と遅かった物だ」

 

リアスの側に付いていたアーシアから、何者かが襲撃してきた旨の連絡が届いた。

此処に残っている敵陣営がレイヴェルと、王であるライザーしかいない以上、ライザーがその襲撃者であると見たエグゼイド達だったが、アーシアへの連絡に反し、その足取りは何処か気楽そうだった。

 

「あの、アイズ様?他の皆様もそうですが、急がなくても宜しいのですか?幾ら眷族達を倒した所で、王であるリアス様が討たれては意味がないのはご存知でしょう?」

 

そんなエグゼイド達の動きを疑問に思ったレイヴェルが、それを隠さずに投げかけた。

それに対するエグゼイド達の答えは、

 

「部長なら、いや、仮面ライダーゲンムなら、あの焼き鳥野郎を倒せると信じている。それ程の力を有していると、信じているからな」

 

リアスへの、信頼だった。

 

――――――――――――

 

「まさか、これ程までとは思いもよらなかったぞ。だが、此処で俺をお前の所まで通した事でお前の負けは決まった!さあ俺のリアス、俺との婚約を受けて貰おうか!」

 

案の定、旧校舎へとやって来たのはライザー、その彼はもう勝った気でいるのか、勝利宣言していた。

確かにエグゼイド達は旧校舎から離れていてすぐには向かえない、その間にリアスを倒してしまえばレーティング・ゲームのルール上、ライザーの勝利は決まる。

 

「それはどうかしら、ライザー?行くわよ、アーシア!」

「はい、部長さん!」

『マイティアクションエックス!』

『ときめきクライシス!』

「な、なんだこれは!?」

 

だがそれは『今までの』リアスが相手であったならの話。

ライザーが知っている自分とは違う、そう知らしめる様にリアスはアーシアに呼びかけ、彼女と共に持っていたガシャットを起動させる。

 

「グレード2、変身!」

「セカンドステージ、変身!」

『『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!』』

 

そしてリアスはグリップ部分に指を引っ掛けてぶら下げる様にしながら、一方のアーシアは身体を一回転してからガシャットをゲーマドライバーに装填、レバーを開き、其々のライダーに変身する。

 

「行くわよ!」

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティアクショォォォォン!エックス!』

 

まずはリアス、髪が黒に、目が赤になったエグゼイドらしきキャラクターのパネルを選択、『Select!』の文字と共にそれと同じ顔の仮面ライダー、そのレベル1の姿に変身、その直後に登場した紫色のパネルを通過すると異空間へと転移する事なく、黒いエグゼイドと言わんばかりの姿となった。

 

「行きます!」

『ちょっぴり照れるわ、ときめき!クライシス!』

 

一方のアーシアは、ポッピーの声で流れる変身音声をBGMに、ピンク色のおかっぱヘアが特徴的なキャラクターのパネルを選択、『Select!』の文字と共にそれと同じ顔の仮面ライダー、そのレベル1の姿に変身、その直後に登場したピンク色のパネルとを通過すると異空間へと転移、其処にいる様々なタイプのイケメン男子に口説かれて照れが限界となったのか、身体が頭部を残して飛び散り、残った頭部から黒いライダースーツの上に黄色のワンピースを纏った新しい身体が出現、そのまま帰還した。

 

「な、何なんだその姿は!?」

 

先程とは明らかに違う、仮面ライダーとしての姿へと変貌したリアス達、その光景を見せつけられたライザーは、驚きのあまりそう問い詰めて来た。

 

「仮面ライダーゲンム、アクションゲーマーレベル2。全ての仮面ライダーの源流(オリジン)よ。ライザー、貴方をノーコンティニューで倒す(クリアする)わ!」

「仮面ライダーポッピー、クライシスゲーマーレベル2。サウンドノベルをモチーフにした仮面ライダーです!ポパピプペナルティ、退場です!」

 

そんなライザーに、リアスが変身した仮面ライダーゲンムは紫、アーシアが変身した仮面ライダーポッピーはピンクの、ゲームパッドを模したガシャコンウェポンを構えながらそう宣言した。

 



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26話_Gameの行方

「姿が変わった位で思い上がるな、そんな虚仮威し、フェニックスの『不死』の前には無力だ!」

 

ゲンムとポッピーの変身を目の当たりにして驚きを隠せなかったライザー、だがそれでも己の勝利を疑っていないのか平静を取り戻し、彼女達に向けて無数の炎を乱射した。

その1発1発がゲンムを、変身しているリアスを焼き尽くさんと言わんばかりの火力を持った物、それらを簡単に乱射出来る所が、単なる『不死』だけではない、ライザーが将来を嘱望される所以と言える。

尤も、

 

『ギュ・イーン!』

「ふっ!はぁっ!」

『ちゅ・どーん!』

「や、やぁっ!」

「なっ馬鹿な!?」

 

ゲンムも、ポッピーもそれらを苦もなく消しとばして見せたが。

ゲンムは先程構えていた紫色のゲームパッドらしきガシャコンウェポン――ガシャコンバグヴァイザーをチェーンソー型に変形させ、彼女が持つ滅びの魔力を纏った刃で文字通りライザーが放った炎を薙ぎ払い、跡形もなく消した。

一方のポッピーは、同じく構えていたピンク色のゲームパッドらしきガシャコンウェポン――ガシャコンバグヴァイザー(トライ)を銃型に変形させ、ハート型のエネルギー弾で炎を相殺した。

その光景が信じられないといった様子で、尚も炎を乱射するライザーだったが結果は同じ、その中でもゲンムは彼に近付きながら炎を消しとばして行く。

そして、

 

「せいっ!やぁっ!」

「ぐっ!がぁっ!」

 

ゲンムが放った刃がライザーを捉え、その身を叩き落とした。

此処がチャンスと言わんばかりに、立て続けにライザーを斬り裂くゲンム。

しかし、

 

「が、はぁ、やるなリアス…!

だが無駄だ、この程度の傷、直ぐに回復してくれる!」

 

それによってライザーの身に出来た傷は、其処から発生した炎が塞ぐ様にして元通りになった。

 

「それは百も承知よ、ライザー。並大抵の斬撃を浴びせただけでは貴方を倒せない事位、ね。だから、これで行くわよ!」

『ガッシューン』

 

だがそれはゲンムにとって分かっていた事、その合間にゲーマドライバーからガシャットを抜き取り、

 

『ガシャット!キメワザ!』

 

左腰に付けられているガシャットのホルダー、その上部にあるガシャット挿入スロットに装填、脇に付いていたスイッチを押した。

それによってゲンムの両足に膨大なエネルギーが収束され、

 

『マイティ!クリティカル・ストライク!』

「ふっ!はぁっ!喰らいなさい!」

「ぐっ!?がっ!?ごはぁっ!?」

 

もう1度スイッチを押すと共にライザーに飛び掛かり、連続での跳び蹴りを打ち込む中で解放していった。

その1発1発だけでも威力は強烈であり、ライザーに直撃する度に強大なダメージを物語るかの様な負傷の証を彼の身に刻んで行き、その身を吹っ飛ばすが、

 

「う、ぐぁ、は、はぁ、無駄だと、言っているのが、分からないか、リアス、例え強烈な、一撃であろうと『不死』の前には…

 

 

 

な、ば、馬鹿な、回復しないだと!?」

 

その真価は其処では無かった。

何と、今までどれ程のダメージを負っても自らの『不死』で回復して見せたライザーの傷が、今になって治らなくなったのだ。

余りの事態に狼狽するしか無いライザー、そんな彼に、ゲンムは衝撃の事実を告げる。

 

「ライザー、今の一撃で貴方の体内に膨大な滅びの魔力を、貴方の『不死』に反応する様に指向性を持たせた上で注入させて貰ったわ。これで貴方の『不死』は、暫くは効果を発揮しないわ、した所で滅びと相殺されるしかないけれどね!」

「な!?ば、馬鹿な、そんな事が」

「出来るのよ、それが。このライダーシステムなら、天才ゲームクリエイターであるイッセーなら!」

 

ゲンムは衝撃の事実を告げる。

 

「これで終わりよ、ライザー!」

『シャカリキスポーツ!』

 

その事実を受け入れられないライザーを他所に、ゲンムはトドメと言わんばかりに、ライムグリーンのガシャットを起動させる、すると背後に『SHAKARIKI SPORTS』の文字とBMXを乗りこなすライダーがデカデカと映ったスクリーンが出現、其処からピンクとライムグリーンを基調としたBMXがゲンムの側に出現した。

 

「行くわよ、チャーリー!」

『Yes,Sir!チャリンGOGO!』

『ガシャット!キメワザ!』

 

それが到着したのを受け、ふと虚空に向けて呼びかけながらBMXに搭乗、するとそれに応える様に陽気な声が響き渡った。

その声に乗せられたかどうかは分からないが、ゲンムは先程強烈な一撃を放つ為にマイティアクションXのオリジンガシャットを装填したガシャット装填スロットに、今度は今起動させたガシャットを装填、先程と同じくスイッチを押し、BMXにエネルギーを収束させると共にライザーに向かって漕ぎ出した。

 

「ま、待て、リアス!この縁談は魔王サーゼクス様も関わる、今後の悪魔社会にとって重要な物」

「黙りなさい、ライザー!」

 

その行動に、文字通り死の危険を感じ取ったライザーは、このレーティング・ゲームを行う切っ掛けとなった婚約の正当性を主張してゲンムの動きを躊躇わせようとしたが、それが逆に彼女の逆鱗に触れた。

 

「今の言葉で改めて分かったわ!所詮貴方は、私を『グレモリーの後継』としてしか、『魔王の妹』としてしか見ていない!そんな貴方との結婚なんか、まっぴら御免よ!貴方を、この婚約を、完膚無きまでに叩き潰させて貰うわ!」

『シャカリキ!クリティカル・ストライク!』

「い、嫌だ!嫌だ!嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

再びスイッチを押しながら、BMXの上級者向けトリックであるメガスピンを披露しながらライザーへと突っ込んで行くゲンム、やがてその回転は滅びの魔力を纏った竜巻となって、恥も外聞も関係ないと言わんばかりに逃げようとする彼へと直進し、

 

 

 

「ライザー・フェニックス様の投了(リザイン)を確認。よってこのゲーム、リアス・グレモリー様の勝利です!」

 

直前にライザーが投了した事によって空振りとなったものの、間違いなく勝負を決める一撃となった。

 

――――――――――――

 

「ありがとう、皆。皆のおかげで、ライザーに勝つ事が出来たわ」

「良かったのにゃリアス、あんな焼き鳥野郎と結婚なんてならずに済んで!」

「まさか地形まで抉るとは思いもよりませんでしたわね…」

「いや考えなしに最大出力にしたんですか朱乃先輩」

「今でも色々とドキドキしています…」

「イッセー君の戦略眼と、ライダーシステムのパワー…

正に、イッセー君がいたからこその勝利だ、本当にありがとう、イッセー君」

「止せ、木場。俺は俺の出来る事をしたまでだ。それに、それを最大限生かしたのはお前達だろう?」

 

レーティング・ゲームが終わり、激戦が繰り広げられた旧校舎屋上に集結したリアスとその眷属達。

少年少女達の話題は、レーティング・ゲームに関する物で持ちきりだった。

其処へ、

 

「イッセー、本当にありがとう。祐斗も言ったけど、貴方がいてくれたからこそ、私はライザーに勝つ事が出来た。私は私の権利を勝ち取る事が出来た。本当に、本当にありがとう!」

「部長、木場にも言いましたが、俺は俺の出来る事をしたまでですから。実際、あの焼き鳥野郎を倒したのは、他ならぬ部長です」

 

今回のレーティング・ゲームの勝敗を決定づけたリアスが、影の功労者と言っていい一誠に歩み寄り、感謝の言葉を掛けていた。

それに対する一誠の返答を受ける彼女、その眼は何処か、決意を秘めたものだった。

 

「…うん、やっぱりこういう事よね、今の私の想いは」

「ん?部長?」

「イッセー」

「はい、どうし」

 

改めて己を呼ぶリアスに、どうしましたか、そう尋ねようとした一誠の言葉は、最後まで放たれる事は無かった。

 

「ふふ、人間界じゃあファーストキスは、愛する人に送る物なのでしょう?

…これが、私の想いよ、イッセー。

貴方の事を、1人の男性として愛しているわ」

 

リアスが一誠に、キスをしたからだ、今度は頬ではなく、唇同士で。

まさかの事態、そして続けて行われた愛の告白に、一誠は先日の一件とは比にならない程長時間固まっていた。

やがて事の次第を把握し、顔を赤らめながら何かを言おうとした、が、

 

「ぶ、部長だけずるいです!こうなったら躊躇しません!私もイッセー先輩の事が大好きです!」

「うぉっ!?白音ちゃ」

 

それが口に出る事は無かった。

リアスの大胆な行動に触発されたのか、まずは白音が、

 

「あらあら、先を越されてしまいましたわ。ですが、イッセー君への愛なら負けませんわ!」

「あ、朱乃先ぱ」

 

次に朱乃が、

 

「わ、私もイッセーさんへの愛を捧げます!」

「え、あ、アーシアま」

 

そしてアーシアが一誠にキスをし、告白をしたからだ。

 

「イッセー、これが私の、私達の想い。受け取ってくれるかしら?」

 

余りの事態に動揺しきりな一誠に対し、恋敵と言ってもいい3人の行動に対しても、何処か予知していたのか、それでいて受け入れたのか冷静な様子で彼の返答を待つリアス。

彼女が何故冷静でいられるのか、それは所謂ハーレムが容認されている悪魔社会の制度や風潮もそうだが、何より天才ゲームクリエイターとして、何十体ものバグスターの父親として、そして仮面ライダーとして、己の使命を本気で全うしようとする彼の、沢山の人達を惹きつける魅力ゆえだろう。

 

「…まさか、1度に4人もの女性に告白されるとは思わなかったな。

ですが、部長に、朱乃さんに、アーシア、そして白音ちゃん…

本当に嬉しいです、俺自身異性として気になっていた女性達から此処まで慕われると言うのは。

 

 

 

兵藤一誠17歳、心火を燃やして貴女達を幸せにします!こちらこそ、よろしくお願いします!」

「「「「はい!」」」」

 

そんな彼女達の想いを、一誠は受け止めた。

 



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2.5章『夜間教室のHAKONIWA WARS』
27話_Angerは突然に


ライザーとのレーティング・ゲームで勝利し、彼との婚約話を破談に持ち込んだリアスとその眷族達。

その折にリアス、朱乃、アーシア、そして白音が一誠に告白、彼もまたそれを受け入れた事で晴れて恋人同士となった。

こうして新たな関係が結ばれて始まった新しい日常が数日繰り広げられたある日のオカルト研究部の部室に、

 

「What’s?Guestかい?そしたらme達バグスターはcome backしようかな?」

「その様だな。済まないなモータス、チャーリー。折角の非番なのに、気を使わせて」

「良いって事よ、オトン。俺様達バグスターの存在が知れちまったらヤバイのは理解してるさ。ラヴリカはリアスオカンの家族辺りにしか知られていないし、アランブラはオトンの使い魔扱いだ、だがそれ以外の奴が知れたとなったらなぁ」

「Yes。それじゃあ、bye,daddy」

「お、オカン…

義理とは言え、現役の高校生なのに母親呼ばわりされるのは何だか複雑な気分ね…」

 

来客を告げるノック音が聞こえて来た。

それを受けて非番だった事から寛いでいたバグスター達、モータスと、一誠からチャーリーと呼ばれた、両肩からバネを生やした異形――シャカリキスポーツに登場するライバル選手を模したバグスターの2体の身体が粒子状になり、やがて消えていった。

尚、去り際にモータスがリアスの事をオカン、つまり母親であるかの様に呼んでいたが、これはバグスター達にとって父親である一誠とリアスが恋仲になった、と言う事は自分たちにとってリアスは義理の母親になる、という発想からバグスター達がそう呼ぶ様になったのだ。

当のリアスは、まだまだ高校3年生である自分がもう母親呼ばわりされる事に良い顔はしていなかったが、一誠と恋仲になった事も実感できる為かその心中は複雑だった。

それは兎も角、部室へやって来た客は、

 

「生徒会長、か…

もしやと思ってはいましたが、やはり悪魔でしたか」

「あら、知っていたの?流石はイッセーね」

「ええ」

 

この駒王学園において、様々な場面で顔出ししている立場という意味で最も知名度が高いであろう存在だった。

入って来たのは黒髪に眼鏡を掛けた端正な顔立ちのスレンダーな少女、この駒王学園の生徒会長を務めている支取(しとり)蒼那(そうな)

そしてその正体は、

 

「アーシアさんは初めまして、ですね。学園では支取蒼那と名乗っていますが、本名はソーナ・シトリーです。上級悪魔、シトリー家の次期当主です」

 

リアスの生家であるグレモリー家と同じく悪魔社会において由緒正しい家の跡取りである。

余談だが、リアスが本名のままこの駒王学園に在籍しているのに対して何故彼女は本名を日本人っぽい書き方にした名で籍を置いているのかという疑問を抱いた存在がいなくもなかったが、その訳は本人にしか分からない。

 

「ソーナ、今日はどんな用かしら?」

「はい。私もアーシアさん達の様に新たな眷属を迎え入れたので、紹介しようと思いまして。匙、自己紹介しなさい」

「そう。ならイッセー、アーシア、貴方達も」

 

それは兎も角、用件を聞いたリアスに、己の新しい眷属を紹介する為と答えたソーナ、それに応じる様に、背後から茶髪の男子生徒が入って来た。

 

「初めまして。ソーナ・シトリー様の兵士となりました、2年の匙元士郎です。よろしくお願いします」

「は、初めまして!リアス・グレモリー様の僧侶、アーシア・アルジェントです!よろしくお願いしますね!」

「同じく、兵士の兵藤一誠です。今後ともよろしくお願いします」

 

その元士郎と名乗った男子生徒の自己紹介に応じ、まずはアーシア、次に(元士郎の声が何処かガットンに似ていた事に多少なりともビックリした事で遅れた)一誠も自己紹介した。

が、

 

「はぁ、よりにもよってあのクソ野郎の兄貴がリアス先輩の眷族になるとはなぁ、一体どんな汚い手段を使ったnゴハァァァァ!?」

「さ、匙!?」

 

一誠の姿を見た元士郎が彼を罵倒し始めた次の瞬間、白音の拳が彼の腹に直撃した。

元々猫又として生を受けた上、戦車として転生した白音はその見た目に反して強大な腕力を持つ、そのパワーから繰り出されるストレートパンチは、ノックスへ変身する前であっても大の男を捩じ伏せる事など造作もないのだ。

そんな一撃が腹に直撃したとなれば相当なダメージ、その衝撃で悶絶するしかない元士郎を前に、

 

「失礼、足が滑って咄嗟に手が出ました」

 

ぶっ飛ばした犯人である白音はしれっと言ってのけた。

今の一撃は明らかに元士郎の腹を狙って放たれた物、なのに事故と言い張るという如何にもな言動を見せる白音の姿に、恋人である一誠を罵倒されたからという明らかな動機も相まって誰もが『絶対わざとだ!』と思った。

然しながらそれを指摘する存在は誰一人としていない、何故なら、

 

((白音(ちゃん)、グッジョブ(ですわ)!))

 

元士郎の、一誠の弟である兵藤誠次郎の存在を前提としての、恋人を罵倒する言動に同じく腹を立てていたリアスと朱乃は、白音に『イイね!』と言わんばかりの良い顔を向けながら心中で褒めているし、

 

(し、白音ちゃん!?イッセーさんを悪く言われて怒る気持ちは分かりますけど暴力は駄目ですって言いたいのに何か口が動かない…!?)

(イッセー君、な、何だか白音ちゃんの身体から覇気みたいなのが出ているんだけど…)

(その様だな、木場。此処でツッコんだら俺達も巻き添えを食いかねない)

(こ、怖いのにゃ白音、何時の間に暴力系ヒロインになっちゃったの…?)

 

アーシアと一誠、祐斗と黒歌は白音の身体から放たれる覇気みたいな威圧感に恐れをなして声を掛けられずじまいだし、

 

「だ、大丈夫ですか、匙!?」

「か、いちょ、う、お、れは、大丈、夫で…」

 

ソーナは吹っ飛ばされた元士郎を気遣っていたのだから。

 

「うちの眷族がごめんなさいね、ソーナ。

 

 

 

でも偏見に罵詈雑言、そんな見るに堪えない行いは慎む様、彼に言い聞かせた方が良いわね。でないとまた誰かが何処か滑らせるかも知れないわよ?」

「「!?」」

 

そんなソーナと、殴り飛ばされた衝撃で息も絶え絶えな元士郎の様子を知ってかしらずか、リアスが白音の暴挙に(表向きは)謝罪しつつも、今しがた白音が放った様な威圧感を出しつつ、そう警告と言うべきか脅しと言うべきか、そう凄んでいた。

そんな彼女の威圧には、ただでさえ腹パンの衝撃で気絶寸前だった元士郎の意識を刈り取るには十分な物、ソーナは気絶した元士郎を抱え、リアスに謝りながら帰って行った。

余談だが後日、リアスからの威圧に屈したのか、或いはその後にソーナからきつく言われたのかは兎も角、元士郎が一誠に対して土下座で謝罪する姿があったとか。



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28話_Cronosとの出会い

ある日の夜、普段なら悪魔としての活動もひと段落して後は眠りにつくのみと言っても良い深夜頃、この日は悪魔関係において非番だった一誠はリアスから呼び出しを受けた。

何でも大事な用事があるらしく、来る際には予備のゲーマドライバーと、ドクターマイティXXガシャットも持って来る様にと、持ち物の指定まであった。

指定された持ち込み品からして、もしや新たなる眷属を迎えたのか、その眷属をもライダーにしたいとリアスは考えているのだろうかと、一誠は考えを巡らせたが、会えばわかるかと結論づけ、彼女が待っているであろう旧校舎前へと駆けつけた。

 

「お待たせ、リアス」

「ごめんねイッセー。こんな夜分に呼び出しちゃって」

 

案の定そこではリアスが待っており、急な呼び出しをした事に対して済まなそうにしていた。

尚、一誠が年上であり、学校の先輩であり、主人であるリアスに対して何故呼び捨てにした挙句、タメ口で接しているのかと言うと「恋人同士になったのに、他人行儀みたいな接し方はやめて欲しいわ」とリアスから要望された為で、一誠もあっさりと応じたからだ。

 

「それでリアス、大事な用とは何だ?予備のゲーマドライバーとドクターマイティXXガシャットを持って来いと言っていたが…」

「目的の場所に向かいながら話すわね。こっちよ」

 

到着した一誠が、指定した物を持っていたのを確認したリアスは、用件を尋ねる一誠を案内しつつ、話し始めた。

 

「隠していた様でごめんね。一誠とアーシアには説明していなかったけど、実を言うと私には、アーシアの他にもう1人の僧侶がいるの」

「他にもう1人!?白音ちゃんも朱乃も言っていなかったぞ…

バグスター達もその様な情報を掴んでいなかった筈だが…」

「まあ、流石のバグスター達も把握出来ないのは無理もないわね。その子、とある理由から私には扱いきれないだろうと考えたお兄様の指示で、とある部屋で厳重に封印されていたの。その封印は人も気配も遮断してみせる強力な物、インターネットを通じた侵入をも力づくで排除する代物だものね…」

 

其処で一誠は、自分達の他にもう1人の眷属がいる事を初めて知らされた。

その事実に、こういった情報収集においては右に出るものはないと思っていたバグスター達をもってしても入手出来なかった情報がかなり身近にあった事実に驚きを隠せない一誠、その眷属に掛けられた封印はそれだけ強固な物であったのだろう。

 

「尤もその封印は夜遅くになれば部分的とはいえ解放されるの。だからその子は、今の時間であれば旧校舎限定とはいえ部屋の外に出られるのよ。尤も本人が出たがらないんだけどね…

逆に言えば、この夜遅くであれば私達が直に接触する事も出来ると言う事。其処でイッセーに、その子の件をお願い出来ないか、と考えたの」

「成る程、つまりその眷属が厳重に封印される原因――リアスの話からして強大過ぎて自分自身ですらコントロール出来ない程の力か、それをバグスターウィルスの効力で制御出来ないか、と言う訳か」

「ええ、そうよ。本当にごめんねイッセー、貴方にばかり負担を押し付けて…」

「構わないさ、リアス。俺と君との仲だろう。それに俺にとってはそいつも家族同然、ならばそいつの為に出来る事をするのは当然だろう?」

「イッセー…///

着いたわ、此処よ」

 

そんな強固な封印をしなければならない程の力を持ち、自らでは対処出来ないであろう眷属への対処、リアスからの用件をそう察知した一誠。

そんな厄介事を一誠に押し付ける事に心底申し訳なさそうに謝るリアスだったが、一誠は全く気にしていない、寧ろ、同じ眷属として出来る事をやらねばという決意に満ちていた。

そんな彼氏の頼もしい姿に今一度見惚れていたリアス、そうこうしている内に目的地に到着した様だ。

 

「なんと言えば良いか…

如何にも何かヤバい物が中に居ます、と言いたげな厳重さだ」

「あ、あはは…」

 

縦横無尽に張り巡らされた『Keep out!』の文字が書かれているテープ、何かしらの封印の術を刻んだのであろう無数の術式…

其処は一誠がポツリと呟いた通り、明らかに「何かヤバそう」な状態だった。

尤も今は、テープは全て切られ、術式もその効力を失っている様だが…

 

「此処に、件の眷属が居る訳か」

「ちょっと待って、イッセー」

「リアス?」

「部屋に入る前に、変身して」

『マイティアクションエックス!』

 

そんな部屋に閉じ込められている存在とは一体誰か、好奇心をくすぐられた一誠が扉を開けようとしたが其処で、何時の間にかガシャットを起動させたリアスからの待ったが掛かった。

 

「イッセー。貴方の推察通り、この中にいる私の僧侶は、自分でもコントロール出来ない程の強力な力を有している。そしてそれが暴走したが最後、エグゼイドに変身しているなら兎も角、生身の貴方では対処の仕様がなくなってしまうわ。私でも生身では対処出来ない危険性があるもの。だから予め変身してから部屋に入るわ。良いわね?」

「それ程までか。分かった、リアス」

『マイティアクションエックス!』

 

呼び止めた訳を聞き、納得した一誠、彼もまたガシャットを起動させ、

 

「大変身!」

「グレード2、変身!」

『『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!』』

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクション、エックス!』

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティアクショォォォォン!エックス!』

「行くわよ、イッセー」

「ああ、リアス」

 

2人揃って変身、ゲンムの合図で2人揃って部屋へと突入した。

其処に、

 

「ひ、ヒィ!?何事ですかぁぁぁぁぁ!?」

 

女子と思われる甲高い悲鳴が響き渡った。

 

「ギャスパー。見た目が変わり過ぎているけど、私よ。リアスよ」

「り、リアスお姉様ですかぁぁぁぁぁ!?」

 

流石に見知らぬ2人が部屋に押し入ったとなれば普通は悲鳴をあげる物である、ゲンムもそれを理解して自らが、ギャスパーと呼んだ声の主、その主人であると釈明していた。

 

「イッセー。()が私のもう1人の僧侶、ギャスパー・ヴラディよ」

「ん?彼って、今…」

 

何とか声の主を落ち着かせたゲンムは、後から入ってきたエグゼイドにその存在を紹介した。

部屋に封印されていた存在は、金髪のおかっぱ頭、赤い瞳に尖った耳と何処か人外っぽさを持った端正な顔立ち、白音よりちょっと大きい程度の細身な体躯は駒王学園の『女子が着る制服』で覆われている。

可愛らしい装飾で飾られた部屋の中も相まって、何処からどう見てもその存在は『女子』にしか見えなかった、が、

 

「ええ。ギャスパーはこれでも、男の子なの」

「…そうか、男の娘か」

「…イッセー、気持ちは分かるけど、小説じゃないと分からない様な読み間違えしないで」

 

男だった。



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29話_Cronosの目覚め

(時を止める神器、それは自らですら制御出来ない程の力を有する、か。まさか…)

 

先日のリアス達に行ったのと同じく、ギャスパーの身に入り込んでの、バグスターウィルスの投与処置を開始したパラド。

彼はギャスパーに対して、彼に関するリアスの話に対して、何か予感めいた物を感じていた。

 

デイウォーカーと呼ばれる日差しを浴びてもある程度は平気なタイプの吸血鬼(ヴァンパイア)と、人間とのハーフであるギャスパー、悪魔以上に純血を尊ぶ傾向の強い吸血鬼社会の中において人間の血が混じっている事への軽蔑と、その血筋故に手にした神器が余りに強烈な効果を有している事への恐怖から、生まれた頃より迫害されていたギャスパー。

数年前にそんな現状を脱するべく故郷を離れたが、その矢先に付近で活動していたヴァンパイアハンターによって殺されてしまい、其処を偶然、旅行で通りかかったリアスによって救われ、眷属になった。

だが、手にしていた神器の力は強烈過ぎて自分でも制御が効かず、敵は勿論のこと、仲間達すらも危害を及ぼしかねないと判断したリアスの兄であるサーゼクスが、今の様な封印を施す事を決定、実施された。

その神器『停止世界の邪眼(フォービドゥン・バロール・ビュー)』は、視界に入った存在の『時』を文字通り『停止』させる力を持っている、所有者よりも強大な力を持つ存在には通じないそうだが、それが誰彼構わず効力を発揮するとなったら大事である、実際眷属となったばかりの頃にはリアス達もよく『停止』させられたとの事、それ故かギャスパーも自らの神器に対してトラウマにも似た恐怖心を抱えていて、今回の処置に対して藁にも縋る想いで快諾してくれた。

 

そんなギャスパーの持つ力の強大さに、パラドはとある存在を浮かべながら、処置を進めていた。

すると、

 

「っ!?こ、この気配に、注入したバグスターウィルスの反応…!

ま、間違いない!コイツは、コイツは…!」

 

処置を施していたギャスパーの身から放たれた強大な気配と、注入していたバグスターウィルスの顕著な反応をパラドは感じ取り、自らの予感が間違いでは無かったと確信した。

 

「親父!大変な事が分かった!」

『どうしたパラド、血相を変えて?』

 

そうと分かれば早速連絡しなければ、とパラドは即断し、身につけていた通信機で一誠――エグゼイドに連絡を取った。

 

「コイツは、ギャスパーは…!

 

王の、半身だ…!」

『なん、だと…!?』

 

――――――――――――

 

「ギャスパーが『王の半身』になりえる存在とはな…

もしかしたら、俺がリアスの眷属になったのは一種の運命だったのかも知れないな…」

「イッセー、どうしたの?王の半身って一体何の事…?」

 

ギャスパーへの処置が成功したのを確認した矢先にパラドからの連絡を受けたエグゼイドは驚きを隠せず、そう呟いていたのを、リアス――ゲンムは聞き逃さなかった。

無理もない、エグゼイドにとって1つの夢である『究極のゲーム』の完成、その夢に近づいたのだから。

 

「ああ、リアス。何処から説明しようか…

まずは、ギャスパーが変身するライダーについてだが、それは既に確定している。コイツだ」

 

エグゼイドもその件は別に隠すほどの物でもないと考えたのか、或いは恋人に対して隠し事は無しだと考えたのか、素直に説明を開始し、その際にPCの画面を見せた。

其処に映っていたのは、黒と黄緑の王冠みたいな頭髪、黒をベースに黄緑色の装飾が施されたライダースーツやローブを纏ったライダーだった。

 

「仮面ライダークロノス。ストラテジーをモチーフとした指揮官だ」

「ストラテジー…

ということは、変身する為に使うガシャットは『ハコニワウォーズ』と『ホームガーディアン』かしら?」

「ああ、そうだ。

 

だがそれは世を偲ぶ仮の姿。その実態は、仮面ライダーの『王』!トップクラスの戦闘スペックと反則級の能力を有した最強の戦士!」

「最強の、戦士…!」

 

そんな仮面ライダー、ギャスパーが変身するであろう仮面ライダーであるクロノスがどういう存在かを聞き、驚愕するゲンム。

そんな彼女の様子を他所に、エグゼイドは新たな画像を開くべくPCを操作しながら、話を進める。

 

「その為のガシャットが、完成させる事が俺の1つの夢である『究極のゲーム』、プレイヤー1人1人が仮面ライダーとなり、時にはバグスターと、時には他の仮面ライダーと、日夜戦いを繰り広げるサバイバルゲーム『仮面ライダークロニクル』…!

その頂点に立つ存在がクロノスなんだ。そしてそのクロノスに変身する為の力を齎す、仮面ライダークロニクルガシャットを媒体としたバグスターは、

 

仮面ライダークロニクルのラスボスにしてバグスターの『王』、ゲムデウス!」

「ゲムデウス…!

何だか、神々しい感じのバグスターね、流石は王と言った所かしら。そんな王の力を受け止められる存在に、クロノスに変身出来る資格を持った王の半身に、ギャスパーがなり得る、という事?凄いわね…」

 

こうして映し出された新たな画像に映っていたのは、背には翼を、頭部には天使を思わせる輪を有し、ローブの様な服に身を包んだ神々しい姿のバグスターだった。

そんな存在であるゲムデウスの凄さに、そのゲムデウスのパートナーに、自らの眷属であるギャスパーがなり得るという事実が判明した事に、ゲンムは彼の、根本的な意味で今まで孤独だった彼の将来に希望の光が見え、その行く末に心を躍らせていた。

 

「とは言え今言った様に仮面ライダークロニクルはまだまだ完成していない、ギャスパーもまた己の身に持つ力を制御出来ていないのが現状だ。いきなりクロノスとしての力を振るえと言われても無茶という物、それでギャスパーの状況が悪化しては本末転倒だ。だから」

『ハコニワウォーズ!』

『ホームガーディアン!』

「長い期間を掛けて、己の『力』に慣らしていくべきだな」

 

だがそれ程の存在にギャスパーがいきなり変身するのは危険極まりない、ただでさえ自分自身ですら自らの神器を制御出来ず、その為の名目で投与されたバグスターウィルスが思いのほか力を発揮している中でどう作用するかも分からない。

暫くは経過措置だと言わんばかりに、エグゼイドは懐から、黒色の『HAKONIWA WARS』とラベリングされた物と、緑色の『HOME GUARDIAN』とラベリングされた物、2つのガシャットを取り出して起動させる。

すると背後に2つのスクリーン――片方は『HAKONIWA WARS』の文字と敬礼のポーズを取る士官らしきキャラクターがデカデカと映った物、もう片方は『HOME GUARDIAN』の文字と様々な兵器が1体の標的を狙う光景がデカデカと映った物だ――が出現し、其処から2人の男、いや2体の人型バグスターが現れた。

 

「我が父よ、パラドから聞いたぞ。我らが王の半身たり得る存在が判明したと…!」

「パパ。私とマサムネが呼ばれたのは、王の半身たり得る存在のサポート役として、という事かな?」

 

現れたバグスターは、パラドやポッピーピポパポ同様、人にしか見えない姿だった。

まずマサムネと呼ばれたバグスターは、某その特徴的なハイトーンボイスで90年代の音楽業界を沸かせた歌手そっくりな姿に士官服を身に纏った、年齢が判別しにくい男性、もう1体のバグスターは、某シェアハウスで暮らす人々の生活を映した番組において『王子』と呼ばれたモデルそっくりな姿にこれまた士官服を身にまとった、大体20〜30歳位の男性に見える。

そんな2体のバグスターに、エグゼイドは指示を飛ばした。

 

「ああその通りだ、クロト、マサムネ。ギャスパーはまだまだ自分自身すらコントロール出来ていないのが現状だ。2人で力を合わせて、ギャスパーを導いて欲しい」

「パパの仰せのままに」

「勿論だ、我が父よ」

 

その指示を受けて、クロトと呼ばれたバグスター――ハコニワウォーズに案内役の副官として登場する同名キャラをモチーフにしたバグスターと、マサムネと呼ばれたバグスター――ホームガーディアンにてラスボスの司令官として登場する同名キャラをモチーフにしたバグスターは、そう応えた。

 

「私からもお願いね、クロトにマサムネ」

「お任せあれ、リアスママ。私達が彼を、我らが王の隣に立てる程の存在に導こう!何、私達には造作もない事だ。何故なら私達は、

 

神の子なのだからなぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

(だ、大丈夫なのかしら?)

 

リアスからの激励にも快く応じるクロト、だがシャフ度を決めながらそう自慢げに宣言する彼の姿を見て、リアスは何処か不安な気持ちを覚えたとか覚えなかったとか。




次章、ハイスクールDevil×Ex-aid――

「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側で管理、保管されていた聖剣エクスカリバーが奪われました」
「奪ったのはグリゴリの幹部、コカビエルだ」

教会からエクスカリバーが盗まれた――

「そして遂に手に入れたんだ、聖剣をも破壊する力を!」

憎悪のままに暴走する祐斗――

「今こそ、戦争の号砲を鳴らす時だ!」

戦争を引き起こすべく、暗躍するコカビエル。
其処に――

「俺達の力、それは貴様が下らないと断じた平和な日常の可能性だ!」

今此処に、怒りの鉄拳が炸裂する!

第3章『月光校庭のTADDLE QUEST』


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3章『月光校庭のTADDLE QUEST』
30話_Pastの闇


ある日の放課後、この日はオカルト研究部の部室がある旧校舎にて清掃があるとの事から、一誠の自宅にて活動を行う事となった。

その事をリアスから告げられたメンバーは兵藤家のリビングに集合、したは良いのだが、

 

「幼い頃のイッセー先輩…ハァハァ…」

「し、白音ちゃん何だか変態さんみたいですよ!?でも本当に素敵です、イッセーさん…」

「子供の頃から格好いいですわイッセー君、凛々しくもあどけなさのある笑顔で…」

「そうね、朱乃。それでいて年相応の可愛らしさもある、何か心が踊って来たわ」

 

其処に、今日は仕事が休みだった事から家にいた一誠の母である兵藤誠奈(せな)が「一誠の将来のお嫁さん達と初めて会う事だし、折角だから」と、幼少期からの一誠を映した写真を収録したアルバム(2桁に余裕で到達する程の冊数)を持ち込んだ事で、彼の恋人であるリアス、朱乃、アーシア、そして白音がそれに魅入られてしまい、オカルト研究部としての活動は事実上お流れとなった。

いや、彼女達だけではなかった。

 

「これは家族写真みたいね。前列にいるのはイッセーに両親の二人、ポッピーにパラドに、その脇固めている二人の男は確かクロトにマサムネだったかにゃ?後はギリルにドラル、ロボルにラヴリカ…

事情を知らないと一体どんな家族構成だ、なんてツッコミが殺到しそうね、これ。というか何でまたバグスター達も揃ったのが撮られてんのにゃ?」

「他にもありますよ、黒歌先生。これはガシャットかゲームか、何か完成した記念で撮られた物でしょうか、イッセー君と其々のバグスターとのツーショット写真だらけですね、何だか微笑ましいです」

 

一誠や、この場にいないギャスパーを除けば唯一の男である祐斗も、女性陣ではただ一人、一誠とは恋仲になっていない黒歌もまた、一誠の過去には興味があった様で、別のアルバムを見始めていた。

そして、過去を暴かれる側である当の一誠だが、

 

「やれやれ、仕方ないか。それにしても母さん、随分と撮った物だな。幾らバグスターの皆を撮った物も含まれていると言っても、十数冊って普通ではないぞ…」

「事ある毎に撮っていたら、いつのまにかここまで積み重なっちゃってね。まあイッセー達への愛の大きさって事で、ね」

「幾ら何でも大き過ぎるぞ、というか重さの間違いではないのか?」

 

己の過去を暴かれて恥ずかしいやら、それを食い入る様に見る彼女達の姿が微笑ましいやらと、複雑な様子ながら止めようとする素振りすら無かった一方、自分自身の他にバグスター達を撮影していたにしても多過ぎるアルバムの冊数を巡って、母である誠奈に突っ込まざるを得なかった。

そんな中、

 

「ん?一誠君、これ…」

「どうした、木場?」

 

とあるアルバムに収められていた1枚の写真、それを見た祐斗の様子が変化した。

先程までの微笑ましい感じは微塵も感じられぬまま、その写真を見せながら一誠に何事かを尋ねた。

 

「これに見覚えあるかい?」

「この、写真に映っている剣の事か?」

 

それは5歳位の一誠と、彼と同年らしいボーイッシュを通り越して男子にしか見えない女の子のツーショット写真、その背後に映っている剣の様な物を、祐斗は指差していた。

 

「それについては良くは分からない。だが、その俺と一緒に映っている幼馴染の女の子、名前はイリナというんだが、その子の父親である紫藤(しどう)トウジさんは確か教会に属するエクソシストだと聞いている。それと関係ある物かも知れないな…」

 

そんな祐斗の質問に素直に答えた一誠、その時一誠は祐斗の様子が何となくおかしい事に気づいた。

 

「まさかこんな事があるなんてね。よもや、こんな思いもよらない場所で見つけるなんて…」

(憎悪?まさかコイツと教会関係者との間に、何か深い因縁でもあるという事か?)

 

仄かながら祐斗の表情から滲み出る憎悪、それを一誠は感じ取った。

 

――――――――――――

 

「ふっ!」

「ぐはぁ!?な、何なんだよテメ」

「謀反者に語る言の葉などない」

「あぐっ!?」

「安心するが良い、峰打ちだ」

 

その晩とある路地で、虚無僧の様な出で立ちに2振りの刀を持った男と、聖職者の様な出で立ちに光輝く剣を其々の手に持った少年が斬り合いを繰り広げるという、現代日本ではまず見られない、というか見られた瞬間に通報されそうな光景が繰り広げられた。

いや、斬り合いと言うのは正しくない、何故なら虚無僧姿の男が聖職者姿の少年を圧倒した末に、峰打ちで気絶させていたのだから。

 

「ふむ、聖職者が愛用する剣の様だが、珍妙な気を纏っておるな。人の身でありながら物の怪の如き立ち回りを見せられたのもこの得物が成せる技という事か…

かような謀反者が持つべき得物ではない。このカイデンが貰い受けようぞ」

 

圧倒的な実力で少年を無力化した、自らをカイデンと名乗る男は、少年が持っていた剣を奪い取りながら、そう呟く。

カイデンの脳裏には、今から数十秒前に繰り広げられた、今の状況に至る前の光景が過っていた。

倒れ伏した少年からは人の域を超えた様な気配を感じ取れなかった、そんな常人である筈の少年が繰り広げた、攻撃の瞬間まで姿を見せず、地上最速の生物として名高いチーターをも凌駕する素早さでの奇襲。

並外れた五感と素早さでそれを難なく受け止めたカイデンはその後、今の様に捩じ伏せた訳だが、その時の光景には、それを成し遂げたあの光輝く剣に、彼は少しばかりの興味を持っていた。

 

「人智を超えし力を齎す得物、か…

かような物を手にして闇討ちとは、穏やかではない。またもこの街に禍が齎されるという事か…

これは直ぐ様、父上に報告せねばな」

「おっと、そうは行くか」

 

同時にその剣が、街にとって新たな騒動の火種になるだろうと危機感を抱いたカイデンは、自らが父と慕う存在に急いで伝えねばと踵を返すが、それに待ったをかけるかの様に背後から男の声と、カイデンを狙って何かを放った様な風切り音が響き渡った。

 

「な!?すり抜けただと!?」

「貴様、其処の謀反者の仲間か?其奴は眠っている、連れ帰るなら早うすると良い。安心すると良い、峰打ちで気絶させただけだ」

 

が、その何かはカイデンの腹に『空いた』空洞をすり抜けるだけに終わった。

その声と、自らの腹に空いた空洞を通った何かから、少年の仲間だと判断したカイデンはそう告げながら、空間に溶けて行くかの様に消えていった…



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31話_幼馴染、Ambush!

「聖剣計画、か…」

「そ、そんな、主に仕える者が、その様な非道な行いを…!」

 

昨日のアルバム鑑賞の際に祐斗から感じられた憎悪の感情、それがきっかけかは分からないが今日の彼は何処かおかしいと、一誠は考えていた。

唐突に上の空になったり、何かぶつぶつと呟いていたりと、何時もの彼を知っているならば、様子が変だと直ぐに気づく程の異変。

リアスも気づいた為に休む様指示をしたのか、或いは祐斗自ら休んでいるのかは定かでは無いが彼がいないオカルト研究部の部室、其処で一誠とアーシアは、祐斗がリアスの眷族となった経緯を明かされた。

聖剣計画、それは嘗て教会で密かに行われていた、教会の秘密兵器と言っていい力を持った武器である聖剣を扱える存在を人工的に生み出し、育てる為の計画で、悪魔に転生する前の祐斗も被験者として携わっていたとの事。

だが計画は失敗、聖剣を扱える存在を生み出す事が出来なかった事から祐斗達被験者は不良品として毒ガスによって殺害されてしまったそうだ。

その中で祐斗だけは仲間達の手助けもあって脱出に成功したものの、リアスが見つけた時には既に虫の息、救い出す為に自らの眷属悪魔として転生させたらしい。

その後は悪魔として、自らの過去に、聖剣計画という名の呪縛に囚われること無く真っ当に生きて欲しいと願ったリアス達の尽力によって、今の様な生活を送れてはいたのだが…

どうやらあの時の写真に映っていた聖剣らしき物、それが祐斗の過去を、憎悪を呼び覚ます事になってしまったと思われる。

 

「はぁ…

これはまた絶妙な時期に、とんでもない厄介事を持ち込んでくれた物だ…」

「厄介事?まさかまたこの街にはぐれ悪魔や、他勢力の存在が侵入して来たの?」

 

そんな祐斗の過去を聞いて、嘗て同じ主を信仰していた者同士であった筈の教会関係者が起こした蛮行に青ざめるアーシア、一方の一誠は、同じく昨日起こった『事件』を思い起こし、渋い顔をしていた。

そんな一誠の困った様子を恋人達は見逃さない。

 

「ああ。この件は、昨日対処に当たったアイツの口から話して貰った方がいいか」

『ギリギリチャンバラ!』

「父上、只今参った」

 

一誠の呟きに反応したリアスから聞かれて彼は懐から、黒を基調としたガシャットを取り出し、起動させた。

すると背後に、障子を切り裂いて出現した『GIRIGIRI CHAMBARA』の文字と剣豪がデカデカと映るスクリーンが出現、それと共にカイデンがスクリーンから飛び出した。

 

「ギリギリチャンバラのライダーガシャットから…

イッセー先輩、もしかしてそのバグスターは、カイデンって名前ですか?」

「左様。己が名はカイデン、ギリギリチャンバラのバグスターなり。位は剣豪」

「ああ、白音ちゃん。知っていると思うけどカイデンは、ギリギリチャンバラに登場する凄腕の剣豪を模したバグスター。

 

そして、バグスターの中でも最高クラスの力を有した『伝家の宝刀』だ」

「勿体無きお言葉、感謝の極み」

「さてカイデン、昨日遭遇した事態に関して、説明を頼む」

「承知」

 

現れたカイデン――一誠が開発したゲームの1つ、一瞬の隙が命取りな緊迫感が持ち味のチャンバラゲーム『ギリギリチャンバラ』にて幾度となく立ち塞がる凄腕の剣豪を模したカイデンバグスター、一誠による紹介と指示を受けて、昨日の事件を話し出した。

 

「今しがた己が脇に差している得物こそが、その時に貰い受けた物でござる。此方に」

「こ、これは、聖剣!?」

「しかもこれ、教会で保管されていた筈のエクスカリバーです!」

「何でまたこの様な物を、その襲撃者が所有していたのでしょう…?」

「確かにイッセー先輩の言う通りタイミングが絶妙過ぎます、祐斗先輩がこの場にいなくて幸いでしたね、いたらどうなっていたか…」

「阿鼻叫喚な展開待った無しね」

 

その中でカイデンが持っていた件の剣を見せると、それを見たリアス達から驚きの声が上がった。

無理もない、それはアーシアの言う通り教会にて厳重に保管されていた筈の聖剣エクスカリバーだったのだから。

尚、エクスカリバーといえばアーサー王物語に登場する聖剣として有名であるが、そもそもその出自に教会は関係なく、また1振りしか存在しない筈なのだが…

 

「という事は、この街に教会の関係者が潜入していると言う事かしら?でもカイデンの話からそれは無いわね」

「そうね、リアス。幾らカイデンがバグスターでも最強クラスと言っても、エクスカリバーを授けられる程の実力者があっさりやられるとは思えないわ。そもそもそれ程の存在が、この街の管理を魔王の妹でもあるリアスが担っている事を知らない筈は無いのにゃ」

「ですね、姉様。そして、知っていて辻斬りみたいな真似は出来ない筈です。藪を突いて蛇どころではありませんから」

「カイデンさんが上げていた協力者の存在も何か引っかかりますわ…」

 

それはともかく、そんな代物を何故この街に潜入した者が持っていたのか、協力者も含めて潜入した者の目的は一体何なのか、疑問が尽きないリアス達だった。

 

――――――――――――

 

部室の中で考えを巡らせていても仕方ない、そんなリアスの判断からこの日の部活動は解散、一先ず帰宅する事となった一誠だったが、

 

「イッセーきゅぅぅぅぅぅぅん!」

「うぉっ!?て、い、イリナ!?」

 

自宅まであと数十メートルと言った所で、自らの名を叫ぶ声と共に何かが抱きついて来た。

 

「うん!久しぶり、イッセー君!ずっと、ずっと会いたかったよぉ…!」

 

自らに抱きつき、挙げ句手足を背中に回してガッチリとホールドして来た『何か』、それはあの写真に映っていた一誠の幼馴染である少女、紫藤イリナだった。

尤も、ボーイッシュを通り越して男子にしか見えなかったその風貌は、茶髪のツインテール、出る所は出ている体躯等も相まって美少女と言えるものになっていたが。



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32話_兵藤一誠(とソルティ)はPervertである

「イリナ達教会のエクソシストが、この街の管理者であるリアスとの会談を望んでいる、か。十中八九エクスカリバーの事だろう」

 

数年ぶりの再会を果たした一誠とイリナ、教会のエクソシストになっていた彼女から、この街に帰ってきた訳を聞いた一誠は一人、その理由を考えていた。

イリナと、彼女と共にこの街へと来た、青髪に緑のメッシュを入れたエクソシストの少女ゼノヴィア、2人はエクソシストとしての任務としてこの街にやって来たそうで、その為の交渉を明日行いたいとリアスに、ソーナを通じて要望したそうだ。

昨日カイデンが、教会にて保管されていた筈のエクスカリバーを所有していた、聖職者らしき存在からの襲撃を返り討ちにした件を踏まえれば、それ関連の可能性は高い、一誠はそう踏んでいた。

 

「それにしても、ボーイッシュを通り越して男子にしか見えなかったイリナが、あれ程まで綺麗に成長するとは思いも寄らなかった。しかも抱きついて来た時に感じたおっぱいの感触…

重力などなんのそのと言わんばかりの弾力を有しながらも、もっちりとした正に天使のおっぱい…

数年という歳月は分からない物だ、もし俺がリアス達と出会わず、悪魔に転生していなかったら、イリナと恋人になっていたかも、あの究極なおっぱいを揉み尽くしていたかも知れないな、実に良いおっぱいだった」

『正に心踊る再会ですな、父上!父上でなければ塩をぶん投げていた所ですぞ!このリア充め、と!」

「うぉっ!?なんだ、ソルティか。驚かせるな」

 

そんな最中、変態丸出しな独り言を、両手をわきわき動かすというこれまた変態丸出しな行動を取りながら呟いていた一誠しかいない筈の部屋、其処に何処からともなく声が聞こえると共に、彼の背後からスクリーンがひとりでに出現、其処から青を基調とした体躯に黒のシルクハットを被り、黒のマントを羽織った、ソルティと呼ばれた異形――マイティアクションXのライバルキャラ『ソルティ伯爵』を模したバグスターが出現した。

 

「先の情熱的な再会からして、先方は父上に想いを寄せている様子。この際、イリナ殿も父上のハーレムに加えてみてはどうです?父上も満更では無いのは、今の独り言からも明白ですぞ」

「馬鹿を言うな、ソルティ。イリナの事を少なからず想っているのは否定しない。だが俺はリアスの眷族悪魔、イリナは教会のエクソシスト、お互い相容れない間柄だ。リアスの前任であるクレーリア・ベリアル女史とエクソシストだった八重垣正臣氏の最期、アーシアがこの街に来る切っ掛けとなった事件…

それらを踏まえるまでもなく、無理と言う物だ。大体、仮に俺とイリナが乗り気だとして、リアス達が受け入れると思うか?」

「むむむ、それもそうですな。折角父上と想いを支え合う存在がまた一人増えたと思ったのに…

父上が究極と称したあのおっぱいを、あわよくば堪能出来たかも知れんと思ったのに…」

「言っておくがソルティ、仮にイリナと恋仲になったとしても、イリナのおっぱいは誰にも触らせないぞ。増してやお前みたいな奴に触らせた日には…」

「しょ、承知しておりますぞ父上。ただ言ってみたかっただけです」

 

突如乱入したソルティは一誠に、イリナも彼女にしてはと提案するが、一誠の立場的に無理な話だ。

一誠が挙げた、リアスの前にこの街の『裏』を管理していた純血悪魔、クレーリア・ベリアル。

グレモリー家やシトリー家と同様に、悪魔社会において由緒正しい家系、ベリアル家の出身であるクレーリアは、管理者に任ぜられるや、家系故の太いコネクションを駆使してこの街の管理を全うして来た。

だがある日、教会において将来を嘱望された若手エクソシストである八重垣正臣と出会い、互いに恋に落ちた事でその運命は暗転する。

アーシアが悪魔を治療した事で追放された一件を例に挙げるまでもなく、悪魔陣営と天使陣営は一時休戦しているとは言えど敵対関係の真っ只中、それを問題視した悪魔社会及び教会双方から激しいバッシングを受ける事になったのだが、クレーリア及び正臣の想いは固く、結果として両者はエクソシストによって暗殺されたそうだ。

それを踏まえて、一誠とイリナが想いを通じ合わせたとなれば、その事によって激しいバッシングを浴びかねない、まして一誠はリアスという主人(兼恋人)、朱乃にアーシアに白音という恋人が既にいる身、彼女達をも巻き込みかねないのだ。

恋に立場は関係ないとは、恋愛モノの物語にありがちなフレーズだが、事は物語の様にはいかない。

 

「とりあえずイリナとの間についてはこれで終わりだ。エクスカリバーを所有していた襲撃者についても、カイデンが難なく対処出来た事を踏まえれば問題ない。それよりも、今の懸案は木場だ」

「仮面ライダーブレイブへと変身するあのクソイケメンの事ですな」

 

一先ず一誠とイリナの関係に関しては終結させ、祐斗に関する懸案に移った。

 

「知っての通り、木場は嘗て聖剣計画なる企てに参加させられた挙句、失敗作として仲間達諸共、酷いやり方で殺された。その憎悪は凄まじい、昨日あの写真に映っていた聖剣らしき物を目にして以来、その憎悪が木場を少なからずおかしくしている。そんなタイミングで聖剣計画の大元であるエクスカリバーを目にして見ろ、何を仕出かすか分からないぞ。下手をすればエクスカリバーを、その使い手を倒すべくブレイブに変身しようとしかねない」

「父上、宜しければこの私めがあ奴を塩で揉んでやろうと思うのですが」

「おい馬鹿やめろ、お前の場合加減を忘れかねない、色々な意味で」

「ちょっとしたバグスタージョークですぞ、父上。グラファイトやアランブラの折檻は勘弁願いたい」

 

それ以後も一誠とソルティは(所々変態丸出しな猥談も混ざったが)明日のイリナ達との交渉に関して話を進めてはいたが有効な対策は見つからず、夜は更けていった。



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33話_イリナ、色々とBerserkerだな…By一誠

注:今作でのイリナは、原作との違いが凄まじいです。
イリナファンの方、すいません。


迎えたイリナ達との会談の時間、此処オカルト研究部室には、リアス達オカルト研究部メンバーが悪魔側の代表、イリナとゼノヴィアが教会側の代表として、会談に臨んでいた。

正確にはリアスと、イリナとゼノヴィアの2人が向かい合う形での会談であり、一誠達は後方で待機しているのだが。

 

「この度、会談を了承して貰って感謝する。私はゼノヴィアという者だ」

「紫藤イリナです」

「私はグレモリー家次期当主、リアス・グレモリーよ。早速で悪いけど、悪魔を嫌っている教会側の人達が私達悪魔に何の用かしら?会談を求める位だから相当な事があったのでしょう?」

 

挨拶をそこそこに早速本題を切り出すリアス、つい先日教会で保管していた筈のエクスカリバーを所有した存在がこの街に潜入した挙句、辻斬り行為をしていた件もあってか何処かその言葉には棘があった。

 

「簡潔に言おう。

 

 

 

我々教会側が所有・管理していたエクスカリバーのうち数本が、堕天使達によって奪われた」

「なっ!?」

「っ…!」

 

そんなリアスの様子を察したかどうかはともかく、ゼノヴィアはその理由をあっさりと言った。

教会で管理していた筈のエクスカリバーが堕天使勢力の者達によって盗まれた、その事実に、カイデンが遭遇した一件を知らされていない祐斗は純粋に驚き、一方で堕天使勢力の幹部バラキエルの娘である朱乃は、この前のアーシアに関する一件に続きまたも同族の者がやらかした事を知って頭を抑えていた。

 

「教会は私が属するカトリック、イリナが属するプロテスタント、そして正教会の3つの派閥に分かれていて、所在が不明な1本を除いた6本を、其々2本ずつ所有していた。然しその内の1本ずつ、計3本が盗まれた。残るは私が持つ『破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)』と」

「私が持つ『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』、様々な形状に変化する力を有した聖剣です」

 

その子細を話すゼノヴィア、その中で自らが持つ布で巻かれた大剣を指さしていたが、同じく自らが持つエクスカリバーを指さしながら、能力まで明かしたイリナに眉をひそめた。

 

「イリナ、悪魔相手にエクスカリバーの力を明かすな、どぅっ!?」

 

が、苦言を呈そうとした瞬間、顔面に何かが炸裂した様な衝撃で吹っ飛ばされてしまい、遮られてしまった。

何が起こったのかと見回すと、其処にはどこからともなく取り出したハリセンを振るったイリナの姿。

 

「バカ言ってんじゃないわよ、ゼノヴィア。教会のザル警備が原因で堕天使にエクスカリバーを盗まれた挙句、直接関係のない悪魔勢力が管理するこの街に迷惑かけてんのよ。ならその慰謝料代わりになるかは兎も角、相手側に有益な情報を渡すのが筋ってもんでしょ、全くこれだから頭の固い異教徒は…

おっと、話が逸れましたね。我々がこの街に来たのは、エクスカリバーを盗んだ堕天使達がこの街に潜伏しているという情報を掴んだからです。我々はそれを奪還、或いは破壊する為にこの街へと来ました。堕天使に奪われ良い様に使われる位なら壊した方がマシ、という判断です」

「…そ、そう。

それで、盗んだ堕天使の名は?」

 

緊迫した空気の中で唐突に、目の前で繰り広げられたコントみたいな展開に唖然としながらも、意に介さず引き継いだイリナの説明を何とか理解したリアス。

 

「今回の一件を主導したのは、

 

 

 

グリゴリの幹部、コカビエルです」

 

そんな彼女からの質問の答えに、室内は驚きに満たされた。

無理もない、コカビエルと言えばバラキエルと同じく聖書にその名が記された堕天使、そんな大物がこの件を主導したとなれば、相当な大事になりかねないからだ。

 

「成る程、事の子細は分かったわ。そしたら、此方で預かっていた物は貴方達にお返しした方が良いわね。イッセー、カイデンを此処に呼んで」

「了解」

『ギリギリチャンバラ!』

「只今参った」

「うわっ!?ひ、人が出てきた!?」

 

ともあれあの一件の経緯がこれで判明した、そう考えたリアスは、カイデンが持っていた2本のエクスカリバーを返却すべく、一誠に彼を呼び出させた。

 

「其方の事情は把握した。この得物は盗品とあらば、元の鞘に収まるべきでござろうな」

「な、こ、これは盗まれた『天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)』と『透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)』!?やはり悪魔は堕天使と手を、ぐはぁ!?」

 

一誠がガシャットを起動させた事で出現したスクリーン、其処から突如としてカイデンが現れる、という一連の展開に初めて遭遇したイリナが驚きの声を上げる、という今更な状況をスルーしつつ、現れたカイデンが差していた2本のエクスカリバーを彼女達に差し出した。

それは彼女達が奪還する様に命じられていた件のエクスカリバー、その姿に驚きを隠せず、実は堕天使と悪魔は手を組んでいるのではないかとリアスに詰め寄ろうとしたゼノヴィアだったが、今度は後頭部に何かが直撃した様な衝撃を受けて倒れ伏した。

 

「だからバカ言ってんじゃないわよゼノヴィア。仮に手を組んでいたとして堕天使側から渡されたとして、なんでそれを態々教会側に返すの?教会側との交渉を優位に進める為?だったらまずちらつかせて、返して欲しければと言いながら条件を突きつけるのがお約束ってもんでしょうが。そんな事も分からないなんて、これだから異教徒は…」

 

と言いながら倒れ伏したゼノヴィアを見下ろすイリナ、その手には何処からともなく取り出したフライパンがあった。

 

「い、イリナ?お前が持っているのは、教会で厳重管理されていたエクスカリバーの1つだろう?それをツッコミ用の小道具みたいに使うのはどうかと思うが…」

 

そんな幼馴染のコントじみた行動に、流石の一誠も苦言を呈した。

無理もない、イリナはこれらの行動の為に、擬態の聖剣の能力を駆使してああいった小道具に変形させたのだから。

 

「良いの良いのイッセー君。元はと言えば教会のエクスカリバーなんて、アーサー王伝説に出てきたそれを元に教会の錬金術師達が勝手に作った奴だもん。まあ言うなれば、海賊版?パクリ商品?って奴よ。しかも嘗ての三大勢力間の争いでバラバラになっちゃった後の割れ物だし。そんな傷物でパチモンの扱いなんてこれで十分よ」

 

そんな一誠の苦言にも何のその、寧ろその経緯から教会のエクスカリバーを海賊版やらパチモンやら傷物やらとボロクソに罵倒するイリナだった。

教会に属する筈のエクソシストによる爆弾発言どころではない放言にまたも唖然とするオカルト研究部員達、然しながらこれが、教会内で『信者(自称)』と言われて問題視されているイリナの素なのだ。

 

「え、えーと…

それで、貴方達は私達に何を要求するのかしら?」

 

リアスもイリナのぶっちゃけ振りに、ちょっとズレた意味で動揺を隠せないながらも、自分達に交渉を求めたその目的を問いかける。

 

「はい。私達の要求、というか完全に上層部からの注文ですけど…

簡単に言えば悪魔勢力は関わるな、という物です」

「…成る程、悪魔にとって聖剣は忌避すべき物、使えなくしてしまえば万々歳だもの。

それを踏まえて堕天使と手を組みかねない、という訳ね」

 

その要求は、自分達の失態を、この街に及ぶかもしれない危害すらも棚に上げた理不尽極まりない物。

こんな理不尽な要求をされては普通マジギレする物だが、それでもリアスが落ち着いていられるのは先程のイリナが見せた言動から、彼女にとっても上層部からの要求を告げるのは不本意だと気付いたからだろう。

 

「なら言わせて貰うわ。私はそんな邪な想いを抱いた堕天使と手を組んだりはしないわ、決してね。グレモリーの名に賭けて、魔王様の顔に泥を塗る様な真似はしないわ。上層部にそう伝えておいてね」

「どうもすいませんでした。管理を担っているこの街の住人にも危害が及びかねない今回の件に関わるな、なんて無理難題なのは重々承知していますし、嘗て住んでいた私自身としても心苦しいのですが…」

 

そんなリアスからの言葉を聞いたイリナは、心から申し訳ないという様子で彼女に謝罪した。

 

「今日は忙しい中、会談に応じて頂き、ありがとうございます。ほらゼノヴィア、早く行くわよ!」

「あら、お茶は飲んで行かないの?」

「い、いえ!会談に応じてくれた上にそんな!」

「は、放せイリナ!貴様に引っ張られずとも歩ける!」

 

会談は一先ず終了、イリナは先程の一撃で倒れていたゼノヴィアを引っ張りながら足早に部室を後にしようとし、リアスからの誘いも丁重に断った。

其処で意識が戻ったゼノヴィアが、自らの首根っこを掴んでいたイリナの手を振り払いながら起き上がり、同じく部室を後にしようとしたが、

 

「もしやとは思ったが、アーシア・アルジェントか?」

 

その際、嘗て教会に属していたアーシアの姿を見つけた。

 

「あ、あの、えっと…」

「よもやこんな極東の地で『魔女』に出会おうt、がはぁ!?」

 

教会内でそれなりに有名だった彼女の姿を見つけ、何やら剣呑な雰囲気を纏わせて近づいたゼノヴィア、だが突如として顔面中に何かが突き刺さり、悶絶していた。

刺さっていたのは何処からともなく出て来た、華道で用いられる剣山、それを出したのは、

 

「あの頑固な異教徒が怖がらせて御免なさいね、アーシアさん。後でシバいて置くから」

「あ、はい」

 

勿論、イリナである。

 

「貴方の事、教会内で噂になっていたわ。我らの神から人々を癒す力を授かった聖女だったけど、悪魔をも癒して魔女として追放されたって。でも、私は貴方の事を誇りに思うわ」

「えっ?」

「貴方は神の教えに則り、その悪魔を癒した。そうでしょう?なら、その事を誇りこそすれ後悔する必要なんて無いわ。頭の固い連中があれこれ言ったかも知れないけど、そんなの右から左に流しときゃ良いのよ、小市民の戯言だって」

 

悪魔を自らの神器で傷を癒した、それによって『魔女』と罵られた挙句教会を追放され、その果てに悪魔に転生したアーシア、ゼノヴィアもそれに気づいて剣呑な雰囲気を出しながら近づいたのだろうと気付いて、同じく(雰囲気こそ違うが)近づいたイリナにどこかびくついた様子の彼女だった。

だがイリナは彼女の行動を否定しなかった、寧ろ誇りに思って良いとまで言い放った。

 

「それで、イッセー君とは何処まで行ったのかな?A?B?もしかしてCまで?」

「ふぇ!?な、なんでイッセーさんとの事知っているんですか!?」

「いやいや、信仰深かった貴方が悪魔に転生するなんて相当な事でしょ。その原因で思い当たるとしたら、イッセー君絡みかなって。大方、自分の身に危険が迫っていた所をイッセー君が颯爽と駆け付け救われ、イッセー君を追い掛けるべく悪魔になりましたってクチ?」

「な、なんで分かったんですか!?」

「ああ、やっぱりね。私もそのクチだから。幼い頃、ピンチだった私を助けてくれたのがイッセー君だったの。それで、思ったの。これは神様が繋げてくれたイッセー君との運命の赤い糸だと、強くなってイッセー君の背中を守るのが私の使命だと!何なら、私も悪魔になろっかな?」

 

そして、彼女が悪魔になった経緯も察知、図星を指されて動揺しまくる彼女を他所に、恋バナはヒートアップしていた。

事実、彼女はこの街に住んでいた幼い頃、一誠の弟である兵藤誠次郎に襲われ、性的暴行されそうになってしまった事があるのだが、それを阻止し、救ってくれたのが一誠だったのだ。

それ以来彼女は一誠に恋心を抱き、またこの出来事は神によって繋がれた、一誠と自分とを繋ぐ赤い糸による運命だと確信、それ以来神を深く信仰する様になったとか。

…その割には教会に対する言動がかなりアレであるし、たった今教会を裏切ると宣言したも同じ事を口走っていたがこれは本人曰く「神様は信じているけど教会は信用していない」というスタンス故だ。

が、其処へ、

 

「おのれイリナぁ!貴様事ある毎に私を甚振りおって!」

 

イリナからツッコミという名の暴行を受け続けてきたゼノヴィアが、怒りの声を上げながらイリナに詰め寄った。

 

「はぁ?それはアンタが甚振られる様な振る舞いをするからでしょうが、直そうとする気配すら無いし。これだから被害妄想甚だしい異教徒は嫌ねぇ」

「何だと、信仰心の欠片もない異教徒が!もう我慢の限界だ、表に出ろ!」

 

そんなゼノヴィアをまるで養豚場の豚を見るような目をしながら嫌味を言うイリナに、ゼノヴィアの怒りはますますヒートアップ。

このままエクソシスト同士で決闘、という仲間割れする事態は避けられないと思われた。

だが、

 

「おいおい、仲間割れは止めなよ。そんなに戦いたいなら、僕が相手になろうか?」

「何だ貴様、部外者は黙っていろ」

「部外者じゃないさ、君達の先輩だよ。

 

 

 

失敗作だったそうだけどね」

 

其処に、祐斗が割って入った。



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34話_Hatredの重さ

旧校舎前に広がる、芝生の広場。

先程のイリナとゼノヴィアの口論から(もっと言うとイリナのツッコミと称したゼノヴィアへの度重なる暴力沙汰から)勃発した仲間割れ、其処に割って入った祐斗の提案から彼とゼノヴィアが試合を行う事となった。

イリナからの度重なる暴力に晒されて鬱憤が溜まっていたのもあって意気揚々と広場へと向かっていたゼノヴィアに対し、イリナは思案する様な素振りを見せたかと思ったら、何かしらの事実に気付いた瞬間に顔は青ざめて足取りが覚束なくなってしまい、此処にいたメンバーの中で一番関わりのある(そしてお互いに相手への好意を秘めている)一誠の肩を借りて何とか辿り着いた。

 

「イリナ、本当に無理せず部室で一休みしたらどうだ。先ほどから顔が青白いし、足も震えている」

「迷惑かけちゃって、御免ねイッセー君。でも見届けないと、我らが神を信仰する同士が起こした『聖剣計画』なんて恥ずべき蛮行、その被害者らしい彼が抱く憎悪の程を…」

 

想いを寄せる一誠に、立場的に敵同士である筈の彼に心配と足労を掛けさせている事を詫びるイリナだったが、彼女に部室で休むという選択肢は、同じ神を信仰する仲間が引き起こした蛮行から目を背けるという選択肢は無かった。

イリナは気づいたのだ、祐斗が『聖剣計画』の被験者で、ただ1人処分を免れた生存者である事、彼らが地獄の様な日々を送った挙句、まるでゴミを処分するかの様な凄惨な方法で殺された事、そしてその『成果』が自分達聖剣使いに活かされている事…

一応教会内でも『聖剣計画』は最大級の禁忌とされており、責任者は異端の烙印を押されて処分されたと彼女は聞いている、だがそれで彼ら被験者の憎悪が晴れるかと言えば、それは違うと考えている。

そもそも禁忌としつつ、聖剣使いを増加させる為に『成果』を取り入れた時点で本当に事の重大さと向き合っているのかと彼女の頭から疑問符が尽きない、まあそれならば『成果』によって聖剣使いになれた自分はどうなのだと突っ込まれそうだが。

故に祐斗が抱く憎悪の程を見届けなければ、受け止めなければならないとイリナは考えている、それこそが己と一誠を結び付けてくれた神から授かった試練なのだと、一誠の背中を預かれる存在になる為の試練なのだと…

 

「では、始めようか」

 

そんなイリナの心情を知ってか知らずか、試合の準備を整えた2人、ゼノヴィアが羽織っていた白いローブを脱ぎ、ボディスーツで覆われた出る所は出ている体躯を露わにし、持っていた破壊の聖剣を構える一方、祐斗はガシャットを手に取りながら何処か不気味な笑みを浮かべていた。

 

「…笑っているのか?」

 

そんな祐斗が気になったゼノヴィアの問いかけに対し、彼は自らに宿りし神器『魔剣創造(ソード・バース)』の能力で周囲に魔剣を創造・展開させながら答えた。

 

「倒したくて、壊したくて仕方なかった物が目の前にあるんだ。つい嬉しくてね」

 

その答えは、大方の想像通りエクスカリバーへの憎悪に満ちた物だった。

 

「魔剣創造…

確か、聖剣計画の被験者で処分を免れた者がいると聞いていたが、もしや君が?」

 

その憎悪の出処に気付いたゼノヴィアが、遅ればせながら祐斗が聖剣計画の生き残りであると気付く。

そんな彼女に、

 

「ははははは…!

ああ、そうさ!あの地獄の日々を、そして仲間達が惨たらしく殺されたあの時を、僕は生き残った!全ては、全てはこの時の為!エクスカリバーを狩る為に!」

 

彼は狂気に満ちた笑い声を上げながら答え、

 

「そして、そして遂に手に入れたんだ、聖剣をも破壊する力を!あはははははは!」

 

持っていたガシャットを掲げながら起動、

 

 

 

出来なかった。

 

「あ、あれ?」

 

突然の事態に先程までの狂気も吹き飛び、戸惑いを隠せない祐斗、掲げていたガシャットを確認しながらもう一度起動スイッチを押すも、

 

「何故動かない!?」

 

結果は同じだった。

突如としてうんともすんとも言わなくなってしまったガシャットに対して苛立った様子を隠そうともせず、それから何度も起動スイッチを押しても状況は変わらない。

 

「何ともどす黒い狂気だな、木場。見ろ、アランブラが嫌がって出て来ないではないか」

「い、イッセー君!?」

 

そんな彼を見かねた一誠が止めに入り、

 

「今のお前に、仮面ライダーになる資格は無い。ガシャットは暫く預かって置く」

「な!?返せ、そのガシャットは僕の」

「元々俺の、いや、媒体としているバグスター本体の物だ。リアスの、この街を守る為の戦力の足しになればとお前達に貸しているに過ぎない。返せなどと、見当違いな事を口にするな!」

「なっ!?くっ…!」

 

祐斗が持っていたガシャットを2つとも取り上げた。

ガシャットは一誠からプレゼントされた物だと思っていた祐斗は一誠の行動に抗議の声を上げるも、初めて手にした際のハプニングもあってリアスが所有する事となったマイティアクションXのオリジンガシャットとは違い、その他のガシャットは戦力強化の為にと一誠が仲間達に貸している、媒体としているバグスターがその身を委ねているに過ぎない。

そう指摘する一誠の大喝に祐斗も一瞬たじろぐ、が、

 

「ガシャットが無くたって、僕には同志の無念の思いが作ったこの力がある!仮面ライダーになんてなれずとも、僕はこの力でエクスカリバーを破壊する!」

 

それで憎悪を引っ込める祐斗では無かった、寧ろ憎悪の根深さ故にたった今言った事について直ぐ手のひらを返したと突っ込まれそうな自分の言動にも気づくことなく、2振りの魔剣を手に取ってゼノヴィアへと切りかかる。

 

「憎悪の余り己の支離滅裂さも気付かないか…

君の魔剣など、我がエクスカリバーの相手ではない!」

「くっ!?」

 

そんな祐斗の斬撃など効かないと言わんばかりにゼノヴィアは冷静に対応、たった1回振るっただけで祐斗の魔剣を打ち砕くという、破壊の聖剣の名に恥じぬ威力を見せつけた。

 

「パチモンが7つに分かれて尚この威力か、だけど!」

 

その威力を見せつけられて尚も果敢に切りかかる祐斗だったが結果は同じ、そして、

 

「その聖剣の破壊力と僕の魔剣の破壊力!どちらが上か勝負だ!」

 

それなりの質量をもった魔剣を数多く作るのがダメなら強大な1振りを、とでも言わんばかりに祐斗は、巨大で尚且つ禍々しいオーラを放つ魔剣を手元に創造し、またもゼノヴィアへと切りかかった。

だが、

 

「ふん」

「ガハッ!?」

「残念だよ。君の売りは多彩な魔剣とスピードだ。巨大な剣を持てばそれが君の長所を封じる枷となる。そんな事も忘れる程か、君の憎悪の程は」

 

それは祐斗にとって逆効果だった。

ゼノヴィアの言う通り、巨大な見た目相応の重量を有する魔剣を手にした事で持ち味であるスピーディーさなど無くなってしまった祐斗の斬撃は彼女に届くわけなく、魔剣は破壊され、腹部に聖剣の柄が突き出されて昏倒した。

 

「さて、色々と騒がせた挙げ句、眷属の者との手合わせまでさせて済まなかった、リアス・グレモリー。ともかく、先の件、よろしく頼む」

「え、ええ。分かっているわ」

 

祐斗が倒れ伏したのを確認したゼノヴィアは、イリナとのいざこざに関してリアスに詫びつつ、要求を守るよう釘を差し、その場を後にした。

 

 

 

 

 

祐斗が抱く憎悪の根深さを目の当たりにして泣きじゃくりながら、聖剣計画によって犠牲になった人達へ鎮魂の祈りを捧げるイリナに気付くことなく…



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35話_Berserkerの悲しみ

「待ちなさい、祐斗!」

 

ゼノヴィアが去った後の旧校舎前広場、其処で先程彼女との試合に敗れて倒れ伏していた祐斗が起き上がったかと思ったら、何も声を掛ける事無く広場を、メンバーの元を離れようとした為、リアスが彼を制止すべく声を掛ける。

 

「私の元から離れるなんて許さないわ。貴方は私の大切な『騎士』なのよ!はぐれになんてさせないわ!」

「…部長、僕を拾って頂いた事、僕の命を救って頂いた事はとても感謝しています。だけど、僕は同志達のお陰であそこから逃げ出せた。同志達がいたからこそ、部長とも巡り合えたんです。だからこそ、僕は彼らの恨みを晴らさないといけないんです…!」

「祐斗!」

 

祐斗が憎悪の矛先を向けているエクスカリバーを破壊すべく動こうとしている事、その為に今しがた教会側と不干渉の約束を交わしたばかりなリアスの元を離れはぐれ悪魔になろうとしている事を察知したリアスは説得を試みるが、祐斗はそれを聞き入れず、彼を掴もうとした彼女の腕も空を切ってしまった。

 

「祐斗…」

「カイデン。話は聞いていたな」

「はっ、事情は大方察知しておりまする」

「ならば、お前に新たな任務を言い渡す。木場を逐一監視し、アイツを守り抜け」

「承知!」

 

その様子を見ていた一誠は、同じく見ていたカイデンを呼び、祐斗を守る様に命じた。

 

「木場に関しては、カイデンが付いてさえいれば命の危険は免れられる筈。結果的に今回の件に干渉する事になって、教会側が何か言って来ようと、眷属の身辺警護をしていたら巻き込まれただけと言って置けば問題ない。首を突っ込むなとは言われたが、堕天使側が仕掛けてきた時に迎撃するなとは言われていないからな。後はアイツ自身があの憎悪とどう向き合うかの問題だが、其処は本人次第か…

それよりも今は、イリナか。全くゼノヴィアと言ったか、不満を募らせるのは理解できるが、だからと言って同じ使命を受けた同士を悪魔の本拠地に置いていくとはな。尤も、今のイリナを連れていく訳にも行かないか…」

 

任を受けて広場を後にするカイデンを見送りつつ、そう言いながら肩を貸している存在に目を向ける一誠、其処では涙を流し、うわ言の様に「ごめんなさい…」と繰り返し口にしながら今も尚鎮魂の祈りを止めないイリナの姿があった。

 

------------

 

「落ち着いたか、イリナ?」

「うん、ありがとうねイッセー君。本当に御免ね、迷惑掛けっ放しで…」

 

あの後イリナへの対応の為に、一緒に帰宅した一誠、事情を察知したバガモンからホットミルクを受け取った彼は、一先ずリビングで彼女を休ませつつ、受け取ったホットミルクを差し出す等して、何とか落ち着かせた。

 

「涙にくれる女の子を助けるのに、理由はいらないさ。しかも今回は事が事だ。イリナにとっては、相当ショッキングな物だっただろう?」

「う、うん…」

 

だがあの憎悪を目の当たりにしたショックから立ち直ったかと言えばそうでもない、先程までの快活さも何処へやらと言った様子で一誠に返事をするイリナ、やがて自分が抱く今の想いを口にした。

 

「あの日、あの変態に襲われそうになった時にイッセー君が助けてくれた事、今でも鮮明に覚えてる。それ以来、イッセー君の背中を預かれる存在になる為に、この出会いを設けて頂いた神様の恩に報いる為に強くなりたいと思うようになって、パパの伝手もあって教会にエクソシストとして加入して、厳しい訓練に励んでいったの。訓練が辛い時もあった、教会の在り方に不信感を抱いた事もあった、教会が起こした過去の出来事に対してあれこれ口にした事も一度や二度じゃない。それでも私を守ってくれたイッセー君の為にも、運命を繋げて頂いた神様の為にも強くなりたい、そう思って耐えて来た。

 

でも、今日あの人が見せた憎悪の根深さを目の当たりにして、私の、私達エクソシストの強さは、そういった人達の屍の上に、憎悪っていう名の土壌の上に成り立っているって思い知った。そしたら、どうしたら良かったのか、これからどうすれば良いのか、もう何も分かんなくなっちゃって…」

 

全ては一誠の、信仰する神の為、その為にエクソシストになって強さを磨いて来たイリナ、だが身に着けた強さの土壌を知り、その土壌にされた祐斗達の根深い憎悪を知り、進むべき道を見失ってしまった。

そんなイリナの想いを静かに聞く一誠、

 

「イリナ、1つだけ言って置く。

 

俺の為だとか、神様の為だとか、一先ずそれは後回しにしろ」

「…え?」

 

やがて、自らの考えを口にした。

 

「何もかも分からない中で、自分ではない誰かを念頭に置いては駄目だろう。まずは自分だ、自分に向き合ってみる事だ。自分がどの様な想いを抱いているのか、本当は何をしたいのか。徹底的に自問自答を繰り返せ、己と言う存在に目を凝らせ。

 

そうした果てにどうすれば良いかが分かった時、改めてお前の想いを聞こう」

「うん、分かった、やってみる。本当にありがとうねイッセー君、少し、元気が出たよ」

「そうか、少しでも元気が出てくれて何よりだ。俺は元気なイリナの方が好きだからな」

「す、す…!」

 

どう進めばいいか分からないなら、まず自分がどう進みたいか徹底的に向き合え、そんな一誠の言葉に、少しではあるが笑顔を、元気を取り戻したイリナ。

そのお礼の言葉に対する返事にイリナが狼狽した様子を見せるのを尻目に、一誠はリビングを出た。



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36話_動き出すIS

祐斗が聖剣に対して抱く憎悪の根深さを目の当たりにして落ち込んでいたイリナを励ました一誠、彼は今、祐斗の監視に向かわせたカイデン達からの連絡を待ちつつ、自らもまた街を探索していた。

カイデンに祐斗の護衛を命じた事、その根本的な原因と言っていい聖剣に関する事に関しては他のバグスター達にも連絡しており、其々パトロールの中で祐斗にゼノヴィア、そして街に潜伏しているであろうコカビエル達を監視し、いざと言う時は実力行使で鎮圧する様命じてある。

電子生命体であるバグスター達だからこそ実現出来た迅速な情報共有、それをベースにして十数年もの間練り上げて来た組織力が成せる捜査網、1体1体が上級悪魔をも圧倒する個々の実力を以てすれば、そしてバグスター達と自分達悪魔との繋がりが浮かび上がっていない現状なら、今回の騒動も丸く収められるだろうと一誠は考えてはいるが、そんな中で何故一誠が自ら探索に出向くという、危険極まりない行為に出ているのか。

その理由は3つある、1つ目は純粋に祐斗が心配で、彼の憎悪を如何にか出来ないかと思い立った事。

祐斗が抱く憎悪の根深さは一誠も重々理解している、それが自分では対処のしようが無い様な物である事も、それでも同じリアスの眷属として、どうにか出来ないかと居てもたってもいられなかったのだ。

2つ目は、この件に悪魔として関われないなら『仮面ライダー』として関われないかと、ゼノヴィアに提案するのを思いついた事。

悪魔として転生する前からこの街の平和を、街に住む人々の平穏を守る戦士『仮面ライダー』としてバグスター達と共に活動して来た一誠、その点を挙げてゼノヴィア達と共闘出来ないかと閃いた。

此処で共闘関係を結んでおけば、現状において1人この街を彷徨う祐斗を監視・護衛するという名目で動かざるを得ないバグスター達を遠慮なく動かす事も、自らがこの件に介入する為の大義名分を得る事も出来る、一誠はそう考え付いたのだ。

勿論それが屁理屈である事は一誠も承知している、だが今まで十数年もの間、仮面ライダーとしてこの街を守り続けて来た彼は、今回の件を見て見ぬふりはやはり出来なかった。

そして3つ目は、

 

(リアス達は教会からの要求を呑んで、自分から首を突っ込んだりはしないだろう。しかしイリナは任務の関係で自ら関わらざるを得ない。だが、イリナを危ない目に合わせる訳には行かない!コカビエルは、聖剣を盗んだ連中は、俺達が討伐(クリア)する!)

 

単純にイリナを危ない目に合わせられない、と彼女を想っての事だ。

教会に属するイリナと、悪魔勢力に属する一誠、しつこい様だが幼馴染といえど立場的に相いれない2人である、にも関わらずイリナは悪魔となった自分と再会しても尚、自らへ向ける好意を捨てる事無く自分を慕ってくれている、しかもその場のノリから出たジョークだろうとはいえ教会を裏切ろうかと堂々と宣言もしていた。

幾らジョークでもそんな事を口にするなど大事、それを平気で口にするまでに想われているとあらば、それに応えないのは男ではないと、一誠は決意していた。

 

(さて、ゼノヴィアは一体何処へ、ん?)

 

そんな様々な理由の中から、まずはゼノヴィアとの接触を図るべく彼女を探そうとしたが、

 

「えー、迷える子羊にどうかお恵みをー」

「…思い至ったら直ぐ見つかるとか、ご都合主義にも程があるだろう、しかも何をしているのだろうか、アイツは?」

 

思いのほかあっさりと見つかった。

一誠の目の前には、乞食の如くカンパを募るゼノヴィアの姿があったのだ。

 

「…怒りに任せてイリナを置いてけぼりにした報いが此処で返ってくるとはな。

路銀の一切、アイツが持っている事を失念した結果、朝からパンの1つにもありつけぬとは…」

 

どうやらイリナが路銀を全て持っていたのを失念した事で、朝から何も食べられず空腹になっていた結果、今の様な行動に移っていた様だ。

尚、イリナも朝から何も食べていなかったが、先程ホットミルクを貰っただけでなく、一誠が出て行った後にバガモンが手作りのハンバーガー等を振舞った事で腹を満たしていたのは余談である。

 

「ゼノヴィア、腹を空かせているなら、このハンバーガーでも「う、美味い!」早いなお前!?」

 

そんなゼノヴィアを放って置けなかったか、或いは早速見つかってラッキーだと考えたのか、家を出る時にバガモンから弁当として貰ったハンバーガーをゼノヴィアに差し出そうとしたが、言い切る前にゼノヴィアはハンバーガーを手に取ってかぶりつき、その極上な味に舌鼓を打っていた。

 

------------

 

「それで、君が私に話し掛けた目的は一体何だ?」

 

それから数分後、ハンバーガーを食べ終えたゼノヴィアは一誠に対し、単刀直入に尋ねて来た。

先程までバガモンの手作りハンバーガーに舌鼓を打っていた時の騒ぎっぷりから一転、真面目な雰囲気で尋ねる様子からして、今回の件に関する物だと察した様だ。

 

「では1つ聞きたい。

 

 

 

仮面ライダーと相乗りする気、あるか?」

 

そんなゼノヴィアに、一誠は問いかけた。



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37話_Resentmentの終末

「先の返り討ちに懲りる事なくまた辻斬りとはな。貴様の字引には反省という文言が無いのか?」

「またあんたですかぁ!?そっちこそ一体何度邪魔すれば気が済むんですかこのコスプレ野郎!」

「コスチュームプレイなどでは無い、此の成りこそ己の真なる姿なり」

 

その夜、案の定と言うべきかエクスカリバーを破壊すべく街を彷徨っていた祐斗、そんな彼に目を付けたのか何者かの影が這い寄ってきたが、それを見抜いていたカイデンが割って入った。

まるで既に出会っていたかの様な言葉を交わすカイデンとその影の正体、そう、その影は2日前にカイデンを襲撃して返り討ちにあったあの聖職者みたいな姿をした少年であった。

その時に持っていた2振りのエクスカリバーはカイデンが鹵獲したのでその手にはない、代わりと言っては変だが、カイデンと鍔迫り合いを繰り広げているその両手には、その時とはまた違った気配を発する聖剣が握られていた、恐らくそれは盗まれたエクスカリバーのうち、残る1振りだろう。

カイデンもそれを察知し、いち早く鹵獲すべく聖剣を弾き飛ばすべく力を込めるが、

 

「おっと、同じ相手に2度もやられる俺様じゃあねぇんですよ!『夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)』の力を刮目して見やがれ!」

「成る程、幻覚を引き起こす類の得物か、中々に面倒な物だ」

 

弾き飛ばされた聖剣――夢幻の聖剣は霧散するかの様に消え、手持無沙汰になった筈の少年の手には聖剣が握られたまま、それを用いて再び斬りかかった。

そのからくりを瞬時に察知し、辛くも斬撃を回避したカイデン、其処へ、

 

「僕も加わろう!エクスカリバーは僕が破壊するんだ、嫌だと言っても加わらせて貰うよ!」

「左様か、なればその助太刀、謹んでお受けしよう」

「くそっ邪魔すんじゃねぇよどいつもこいつも!」

 

いつの間にか2振りの魔剣を作り出した祐斗が戦いに加わった。

彼の経緯も、それ故に抱くエクスカリバーへの憎悪もカイデンは知っている、故に鬱陶しがる事無くその乱入を受け入れ、彼の一挙手一投足に合わせるかの様に立ち回ってゆく。

類稀なセンスを有するカイデンが合わせた事もあってか、初めての共闘とは思えない連携を見せる祐斗とカイデンの立ち回りに圧倒される少年だが、

 

「随分と苦戦している様だな、フリード」

「何しにきやがった、バルパーのおっさん!」

「バルパー…?

よもや貴様が、かの計画の頭目であった、バルパー・ガリレイか?」

「っ!?貴様が、聖剣計画の…!」

「如何にも、と答えている暇は無いな。フリード、聖剣に因子を込めろ。さすれば聖剣の力が更に引き出される」

「へいへい、人使いの荒い事で。流れる因子よ、いざ聖剣にっ「「「「「てね!」」」」」」

「む、幻覚に重みを持たせ、実体ある分身を作り出したか、厄介な」

 

何処からともなく現れた初老の、聖職者と思しき服装の男――バルパー・ガリレイからの助言を受けて夢幻の聖剣に何かを込める様な挙動を見せる少年――フリード。

聖剣計画の首謀者であるバルパーの唐突な登場にカイデンと祐斗の注目が其方を向いてしまったのもあってそれをみすみす許してしまい、フリードは5人もの分身を作り出した。

バルパーの登場もあって態勢を立て直す事に成功したフリードは、驚きを隠せない2人に、分身と共に飛び掛かろうと聖剣を構えた、が、

 

『ステージ・セレクト!』

「な、何なんだ此処!?」

「空間転移だと!?何者の仕業だ!」

「これは、ステージ・セレクト?一体誰が…」

「思わぬ幸運だ。これで奴らの退路を絶てた」

 

ゲーマドライバーから発せられるそれと同じ様なボイスが何処からともなく聞こえたかと思ったら、ノイズの様なエフェクトと共に、彼らはいつの間にか武家屋敷、その庭園の様な場所へと転送された。

思わぬ事態に動揺を隠せないフリードとバルパーの一方、この光景に見覚えがあったのか、祐斗とカイデンは大して驚かなかった。

ステージ・セレクト機能。

ゲーマドライバーに搭載されている機能の1つで、ゲーマドライバーの左腰に付けられているガシャットのホルダーにあるスイッチを、ガシャットを装填しないまま押す事で、自らと周囲にいる『存在』を、作動させた仮面ライダーにとって最も力を発揮出来る専用のフィールドへと転移させる物だ。

祐斗達も嘗てグラファイト達との訓練の際に使用していたし、開発者である一誠は当初からはぐれ悪魔を討伐する際に周囲への被害を防ぐ為に積極的に使用している便利な機能ではあるのだが、此処に仮面ライダーは1人もいない。

仮面ライダーに変身出来る適合者なら祐斗がいるが、聖剣に対して抱く憎悪がバグスターに嫌悪されて現状は変身出来ず、それ故にこのステージ・セレクト機能も使えない筈。

なら一体誰の仕業なのか、此処にいる誰もが仕掛けた仮面ライダーを探していると、

 

「き、貴様、何時の間に!?」

「アイェェェェ!?忍者!?忍者ナンデ!?」

「白い忍者の、仮面ライダー…?」

「仮面ライダー、風魔…」

 

庭園の中心部に、その仮面ライダー――仮面ライダー風魔はいた。

白い無造作ヘアーが特徴的な顔、忍者装束の様な紺色のライダースーツの上に白色の帷子を身に着け、右手にはガシャコンウェポンと思しき短刀を持った、正に忍者と呼ぶに相応しい風貌をした存在、仮面ライダー風魔は、一誠が開発したゲームの1つで、様々な陰謀渦巻く世界情勢に翻弄されながらも己に課せられし任務を全うする忍者を主人公とした大人気ステルスゲーム『ハリケーンニンジャ』のライダーガシャットを用いて変身する仮面ライダー、そのバトルスタイルは圧倒的なスピードと多様な戦法で敵を翻弄する正に『忍者』その物だ。

 

「がっ!?あ…!」

「ふ、フリード!?いつの間に…!」

「は、速い、捉えられなかった…」

 

そんな風魔に対して隙を晒すなど何時でも殺せと言っているのも同じ、その隙を突いて一瞬の内にフリードに近づいた封魔はそのまま短刀を一閃、フリードは何も抵抗出来ずに息絶えた。

 

「木場祐斗よ、奴こそ貴様が抱きし憎悪の根源。用心棒亡き今こそ、仇を討つ絶好の機ではないか?」

「そうだね、カイデン。あの風魔という仮面ライダーも敵じゃないみたいだし、乗らせて貰うよ…!

バルパー・ガリレイ。僕は貴様が企てた聖剣計画の生き残りだ、いや、正確には貴様に殺された身だ。今は悪魔に転生した事で生き永らえている。バルパー・ガリレイ、今度は貴様が殺される番だ!」

「よ、止せ、やめ、うぐぁ!?」

 

その様子をただ1人冷静に見ていたカイデンは、邪魔者がいなくなった今こそ諸悪の根源であるバルパーを殺せるチャンスだと祐斗を唆し、それを受けて祐斗は、無様にも命乞いするバルパーの声を聞くことなく、憎悪を込めた一撃を振るう。

嘗てバルパーが企てた聖剣計画のもと非道な実験を受けさせられた末に惨たらしく殺された祐斗、何年かの時を経て今度は、悪魔として転生した祐斗自身がバルパーを殺害した。



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38話_KnightとNinjaの決意

「木場祐斗よ、事の良し悪しが分からぬ知らせがあるが、どうであろうか?」

「…良いか悪いか分からない知らせか、何だい?」

 

聖剣計画の首謀者であったバルパーへの、自分自身を含め仲間達を皆殺しにした彼への仇討ちを果たしたものの、何処か蟠りが残った様子の祐斗、そんな彼にカイデンは、バルパーの亡骸から零れた何かを拾い上げつつ、そう尋ねる。

何処か含みを持ったその知らせが気になったのか、祐斗は気分が晴れぬままながら、続きを促した。

それを受けて、カイデンは、その知らせの内容を少しずつ口にした。

失敗したと言われていた聖剣計画だが、実の所は成功していた事。

計画を進める中で、聖剣を操る為の因子を抜き出し纏める事で聖剣使いを誕生させられるのではないかという結論にバルパーは至り、結果として因子を『結晶化』させるのに成功した事。

その成果は今、教会において聖剣使いが受ける『祝福』という形で、実際の所は聖剣使いに不足している因子を補完する手段として実装化されている事。

つまり『不良品』では無かった祐斗達はしかし、極秘だった計画が漏れるのを防ぐ為だけに殺された事。

そして、

 

「バルパーの亡骸に、かような物があった。恐らくだが、彼奴めが最初期に結晶化させた、聖剣使いを生み出す件の因子であろう。つまり…

木場祐斗よ、これは貴様の仲間達の亡骸と言っても過言ではなかろうな…」

「こ、これが、皆の…!」

 

先程拾い上げていた物――祐斗の仲間達が有していた聖剣を操る為の因子の結晶を祐斗に差し出しながら伝え終えたカイデン、祐斗はその衝撃的な事実を目の当たりにしてもう堪える事が出来ず、滂沱の涙を流しながらそれを受け取った。

 

「皆、僕は、僕は!ずっと、ずっと思っていたんだ…

僕が、僕だけが、のうのうと逃げ延びて、生きて良いのかって…

僕よりも、夢を持った子がいた。僕よりも、生きようとしていた子がいた。皆、生きたかった筈だ…

なのに僕が、僕だけが、平和な生活をして良いのかって…」

 

そしてそれを抱きしめながら、少しずつ吐き出されていく祐斗が抱いていた『後悔』…

だが其処で、1つの『奇跡』は起こった。

 

「む?これは、聖歌であったか?成る程、被験者達はそもそも教会に属していた身、なればこそ、か」

 

結晶が淡い光を放ち、フィールドを包む様に広がったかと思うと、祐斗の周囲を囲う様に人の様なシルエットの光が次々と生まれ、その1つ1つが聖歌を歌い出した。

だがそれは悪魔である筈の祐斗にとって苦痛になる物ではない、寧ろ祐斗を癒すかの様な物だった。

 

『自分達の事はもう良い。君だけでも生きてくれ』

「皆…?」

『僕らは、1人では駄目だった』

『私達1人1人では、足りなかった。けど…』

『皆が集まれば、きっと大丈夫』

『聖剣を受け入れるんだ』

『何も怖い物なんてない』

『例え神が居なくても』

『神が見ていないとしても』

『僕達の心はいつでも』

「…ああ、1つだ!」

 

そして1人1人から発せられる言葉、それを聞き届けた祐斗は、長年積み重なった恨み辛みから全て解放されたかの様な表情で応え、彼らを受け入れた…!

 

「ありがとう、カイデン。それに、風魔も。僕は、皆を守る剣に、騎士に、仮面ライダーになるよ」

「礼には及ばぬ。己が役目を果たしたまでの事」

 

聖剣への憎悪から解放され、晴れやかな様子でカイデン達に礼を言う祐斗。

謙遜するカイデンに対し、何時の間にか夢幻の聖剣を回収していた風魔は、

 

『ガッチャーン!ガッシューン』

 

転送されていたフィールドから戻すと共に変身を解除した。

 

「き、君が、仮面ライダー風魔に変身していたのかい…!?」

「紫藤イリナ、か。成る程、さてはパラドらの独断の様だな。全く、父上に黙って何をしておるか…」

 

そして露わになった変身者、それはイリナだった。

 

「木場祐斗君。聖剣計画の存在を見過ごして来た事、首謀者であるバルパー・ガリレイを結果的に野放しにした事、計画を禁忌としながらその結果を取り入れた事、そして今回の出来事…

教会に属する身として、聖剣計画の恩恵を受けた身として、謝罪させて貰うわ。本当に、御免なさい」

「君が謝る必要は無いさ。それに、こうしてバルパーを討つ事も出来たし、皆が聖剣への復讐を望んでいた訳じゃなかった事も分かった。もう、良いよ」

 

先程謝罪出来てなかった事を気にしていたのか、変身を解除するや否や、驚きを隠せない2人の前で謝るイリナ、祐斗は既に恨み辛みから解放されたのもあってか、穏やかな様子でそれを受け止めた。

 

「それにしても、まさか君が仮面ライダー風魔だったとはね。適合術式は受けた様だけど、何でまた仮面ライダーに変身しようと考えたんだい?」

「左様。己らバグスターの生みの親にして、ライダーシステムを生み出せし父上は悪魔に転生した身。教会に属する身である貴殿がその力を手にすれば、如何様な事態になるか、分からぬ貴殿では無かろう?」

 

それはともかくとして、何故イリナが仮面ライダーになったのか、祐斗達は尋ねた。

 

「カイデン、だっけ?勿論それは分かっているよ。その上でパラド達からの提案を、適合術式を私は受け、仮面ライダー風魔になった。

 

この一件が終わったら、私は教会を抜けるつもりだよ」

「何と…!」

「教会を、抜ける!?いや確かに教会への不信感は持っていたみたいだけど、それにしても何で!?」

 

それを受けて、イリナは己の想いを語りだした。

まずは一誠に惚れ、神を信仰する切っ掛けとなった幼き日の出来事。

その一誠を守れる程の存在になるべく、また神への信仰を果たすべく教会のエクソシストとなった事。

教会への不信感こそ芽生えるも、初志を貫徹すべく耐えて来た事。

今回の一件でこの街に戻って来た事。

そして、

 

「その後聖剣計画の深すぎる闇を、私達エクソシストの強さの土壌を目の当たりにして、どうしたら良いのか分からなくなっちゃって、イッセー君に泣きついちゃってね。そしたらイッセー君に、まず自分がどうしたいのか向き合って見ろって言われて、ずっと考えたんだ。そして、改めて気づいたんだ。

 

私は、イッセー君の事が好き!イッセー君達とずっと一緒にいたい!ってね」

 

自分と向き合った末に至った、己の決意を、明かした。



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39話_Solution?

「聖剣の気配を辿って見れば…

もう、残りの1つを、夢幻の聖剣をイリナが回収していたのか」

 

イリナが祐斗とカイデンに己の決意を明かした直後、協力関係を結んでいた一誠とゼノヴィアが、聖剣の気配を感じ取ったのか合流してきたが、戦いは既に終わり、盗まれた残り1つである夢幻の聖剣もイリナが回収した後だった。

が、一誠にとって其処は気にならなかった、というか、ちょっと前まで自分の家で休んでいた筈のイリナがこの場にいる事、彼女が腰に装着しているゲーマドライバーが気になってそれどころではなかった。

 

「い、イリナ?その、腰に巻いているのは、ゲーマドライバー、か?」

「うん。パラドから仮面ライダーになる為の適合術式を受けないかって、誘われてね。色々と考えた末に、その誘いを受ける事にしたの。やっぱり、イッセー君と一緒にいたかったから」

「パラドォォォォォォォォォ!?おま、俺に黙って一体何をしているかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

まさか自分に黙って誰かに、それも幼馴染であるイリナにパラドが適合術式を施していたとは思わなかった一誠は思わず、この場にいないパラドに何やってんだと言う意味を込めて叫んでいた、が、

 

「いや、君がそれを言うのかい?『悪魔の手を借りるのが駄目なら、仮面ライダーの手を借りる事にすれば良い』と先程私に提案したのは、ほかならぬ君だろう?それも王であるリアス・グレモリーに黙って。まあ、そんな提案を受けた私も私だが…」

「え、イッセー君、そんな事していたのかい?僕が言えた話じゃないけど、流石にそれは…」

「父上。恐れながら、まことに恐れながら、それは屁理屈としか言えぬ物では…?」

 

ゼノヴィアから協力関係を結んだ背景を(聞かれてもいないのに)暴露され、今度は自分が、祐斗とカイデンから何やってんだと言う意味が込められたツッコミを入れられる事になった。

 

「これが屁理屈なのは分かっている、無理があり過ぎるのも承知の上だ。それでも、3つの理由から、介入せずにはいられなかった。1つ、眷属仲間として木場を放って置けなかった。2つ、仮面ライダーとしてこの街に、この街に住まう人々に危害が及ぶのを黙って見ていられなかった。3つ、3つ目は…」

「3つ目は、何だい?」

 

然しながらそれは一誠自身が分かっていた事、それでも介入せずにはいられなかった理由を明かすが、その3つ目を明かそうという所で、急にもじもじとした様子を見せる。

その理由が何なのか察知した祐斗、それでも一誠の口から直接聞きたいと考えたのか、煽るかの様に聞き直し、

 

「い、イリナを危ない目に合わせたくなかった。イリナは俺にとって大事な存在だから」

「い、イッセー君///」

 

そんな祐斗を後で〆ると決めつつ、その理由を、イリナへの想いを一誠は打ち明けた。

 

「ま、まあ、それはともかく。あのどす黒い狂気は晴れた様だな。以前の様な、いや今まで以上のイケメンフェイスではないか」

「そうかな?まあでも、色々な物と向き合えたから、というのはあるかな」

「そうか。なら、ガシャットを再び託しても良さそうだ。そうだろうアランブラ、グラファイト」

『はっ!お父様、今一度我らのガシャットを木場祐斗に!』

『木場祐斗よ、もう一度我らの力を授けよう!今のお前なら、今まで以上の力を得られるだろう!』

「イッセー君、アランブラ、グラファイト…!

ありがとう!僕はもう迷わない、この剣は皆を、大切な存在を守る為に!」

 

そんな一誠の気恥ずかしい告白を何処か微笑ましい様子で見ていた祐斗、そんな彼の様子から聖剣への憎悪が微塵も感じられなかったのを見抜いた一誠は、この場所での出来事が切っ掛けで立ち直れたのだろうと推測、取り上げていたガシャットを再び彼に渡しつつ、言葉を投げかけた。

それを受け取った祐斗は改めて、己の決意を示し、帰っていった。

 

「そちらの諍いは解けた様だな。此方も、盗まれた聖剣を全て取り返す事が出来た。ありがとう、君達のお陰で滞りなく任務を成し遂げる事が出来た。さて、帰り支度でもするとしよう。イリナについては上層部に話を通しておく、まあ上もイリナの素行には思う所があった様だし、問題ないだろう」

 

一誠達のやりとりを見守っていたゼノヴィアも、一誠達の尽力もあって任務を達成出来た事に礼を言い、帰り支度の為に泊まっていたホテルへと戻っていった。

 

「俺達も帰ろうか、イリナ。俺達の家へ」

「うん、イッセー君!これからも宜しくね!」

 

そして、教会を抜けて一誠と添い遂げる事を宣言、想いを通じ合わせた一誠とイリナも、家路についた。

 

------------

 

「イッセー、貴方が何をしていたか分かっているの!?血の気が引いたかと思ったんだから!」

「祐斗先輩を失いたくないのは私も一緒ですが、それでイッセー先輩までいなくなったら、私、私…!」

「イッセー君が強いのは分かります、ですが絶対は無いんです!イッセー君がもしいなくなったりしたら、私は、どうすれば…!」

「イッセーさん、イッセーさんの命はもうイッセーさんだけの物じゃないんです!どうか、たった一人で無茶する事はもう止めてください…!」

 

だがそのまま何事もなく一件落着、という訳にはいかなかった。

祐斗達と別れ、イリナと共に家へと帰った一誠を待っていたのは、目に涙を貯めていた己の恋人達。

何処からか一誠の行動を聞いていたらしい彼女達は、一誠の安否が気になり気が気ではなかった様で、無事に帰って来た彼の姿を見るや否や抱き着き、涙ながらに一誠を叱っていた。

 

「イッセー君。勝手に仮面ライダーになった私が言えた事じゃ無いけど、皆の言う通りだよ。イッセー君には、こんなにも愛し、慕ってくれる存在が大勢いるんだから。勿論、私も含めてね」

「本当にそうだな、イリナ。皆、心配かけて本当に済まない」

 

一誠も自分がとんでもない事をやらかしていたのは自覚していた為に言い訳せず、素直に謝っていた。

 

------------

 

「奪ったエクスカリバーをまんまと奪い返されおって。全く、どいつもこいつも使えん奴らだ。まあいい、最初から1人でも事は起こせたのだ。俺のやる事に何の変わりもない」

 

然し、この騒動はまだまだ終わってなどいなかった。



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40話_第一次Kamen Rider Wars!

それは一誠が帰宅し、彼の身を案じていた恋人達への謝罪を終わらせて少し経過した時だった。

 

『大変だ、パパ!学園の敷地に、堕天使と思しき存在が我が物顔で侵入、グラウンド上で何かしらの術式を描き始めたんだ!』

「何、それは本当なのかクロト!」

 

ギャスパーへの指導の為に駒王学園での生活を続けていたクロトから一誠に、緊急の連絡が入った。

あろう事か、リアスが管理する街に建てられている駒王学園に、生徒会長であるソーナが管理する学園に堕天使が土足で踏み入った挙句、何かしらの仕掛けを施しているという物だった。

ここ最近起こっている事件を例に挙げるまでもなく、そんな行動は悪魔勢力に対する宣戦布告どころか予告なしの侵略行為と言っても過言ではない、そんな事が出来るのは此処が悪魔の管理する街だと知らない存在か、或いは…

 

「その堕天使の特徴は?翼は何対だ?」

『何やら凶悪そうな面構えをしていて、翼は5対程、かなりの大物だと思われる!』

「5対もの翼、まさか…!?」

 

一誠の予測は、後者の方で当たった様だ。

今回の騒動の首謀者であるコカビエルが、奪ったエクスカリバーを全て奪還され、協力者であるバルパーもフリードも討たれた事を知り、自ら仕掛けようと動き出したのだろうと考える一誠。

何故そうまでして情勢を引っ掻き回そうとするのか、その訳も一誠は心当たりがあった。

コカビエルと同じく堕天使勢力の幹部であるバラキエルを父に持つ朱乃から、コカビエルの経歴――元々異常とも言える戦争狂である事に加え、遥か昔の大戦争において勢力の弱体化が比較的抑えられていたにも関わらず休戦の道を選んだアザゼル達に批判的な態度を取っていたその経歴を聞いていた一誠、今回の騒動は大戦争を再開させようという考えから起こしたのだと、推測していた。

 

「どうしたのイッセー、何か叫び声が聞こえたけど…」

「リアス、緊急事態だ。クロトから、駒王学園にコカビエルらしき堕天使が侵入したという連絡が来た。きっと戦争を再開させるべく事を起こそうとしているに違いない!」

「何ですって!?己の身勝手な考えの為にこの街で好き勝手させる訳には行かないわ!行きましょう!」

 

そんな事をされてこの街を荒らされる訳には行かない、事情を聞いたリアスはこの事態に対応すべく、一誠達と共に行動を開始した。

 

------------

 

「ゼノヴィア?お前も来ていたのか」

「ああ、何か胸騒ぎがしてね。聞けばコカビエルがこの場所で何か事を起こそうとしているそうじゃないか。任務達成を手助けしてくれた恩、此処で返させて貰うよ」

「そう、心遣い感謝するわ。では急ぎましょう」

 

悪魔勢力を統治する四大魔王の一角でありリアスの兄であるサーゼクス、バラキエル、更にはソーナ経由で彼女の姉でありサーゼクスと同じく四大魔王の一角であるセラフォルー・レヴィアタンと、己が持つ人脈を最大限活用してこの街で起ころうとしている重大な事態を発信したリアス達眷属とイリナ、そしてカイデンは、手早く準備を終えて駒王学園への道を急いだが、道中で意外な人物と合流した。

そう、今回の騒動で教会から派遣されたエクソシストで、ついさっき任務を終えて帰り支度をしていた筈のゼノヴィアだった。

 

「リアス。現在、私達で学園を結界で覆っています。これで余程の事が無い限り被害が外に出る事は無いでしょう。ですが飽くまで最小限に抑える物。正直な事を言うと、コカビエルが本気を出せば…」

「分かっているわソーナ、皆まで言わなくても良いわ。それで、セラフォルー様は何と?」

「到着まで40分掛かると言っておりました」

「40分ね、お兄様もその位、バラキエルさん達堕天使勢も30分は掛かると言っていたわね…

分かったわ。それまで、私達が持たせておくわ」

 

ゼノヴィアも加えて急行、到着した一行は先に到着していたソーナから現状の説明を受ける。

コカビエルが起こそうとしている事を食い止める為にソーナ達が張った結界はしかし相手が本気になった場合は抑えられるか分からない、いざとなった時コカビエルを止められるだろう存在が到着するのは最低でも30分の時間を要する…

状況は思わしくない、だがそれでもリアス達の目からは諦めの目は消えていなかった。

 

「皆!分かっていると思うけど、駒王学園に侵入したコカビエルは、聖書にもその名を刻む大物、本気で行かなきゃ時間稼ぎすらもままならないわ!レベル3で行くわよ!」

「「「「「「「はい!」」」」」」」

 

そんな大物相手に出し惜しみは厳禁だというリアスの言葉を受けて彼女達8人はホルダーから2つずつガシャットを抜き取り、構える、が、

 

「イリナ、お前はレベル2のままで行け」

「え、どうして?」

 

イリナが藍色のガシャットと共にオレンジ色のガシャットを抜き取ろうとした際、一誠が制止した。

 

「風魔をレベル3にするジュージューバーガーガシャットだが、正直に言うと戦闘の為に変身するのはデメリットが強すぎる。パワーこそ上がるが、装着される武装はどれも非戦闘用、精々目くらましになる位だ。風魔の持ち味であるスピードも半減してしまうから、この状況ではお勧めしない」

「わ、分かった」

 

何故かと問うイリナに対し、一誠は戦闘に不向きだからと答える。

確かに、このオレンジ色のガシャット――ジュージューバーガーガシャットを媒介としているのは争い事を好まないバガモン、そんな彼の力を借りて展開する武装が戦闘用かと言われれば、それは無いと考えるのが自然だ。

 

『『マイティアクションエックス!』』

『ゲキトツロボッツ!』

『シャカリキスポーツ!』

『バンバンシューティング!』

『ジェットコンバット!』

『タドルクエスト!』

『マドウダンジョン!』

『ハテサテパズル!』

『メテオブロッカー!』

『バクレツファイター!』

『メタリックフィスト!』

『ときめきクライシス!』

『ドレミファビート!』

『ハリケーンニンジャ!』

「行くぞ、皆!大大大!」

「ええ、イッセー!グレード3!」

「はい、イッセー君!第三戦術(サード・タクティクス)!」

「分かったよ、イッセー君!術式レベル3!」

「行くのにゃ、皆!3連鎖!」

「任せて下さい、イッセー先輩!ラウンド3!」

「私も頑張ります、イッセーさん!サードステージ!」

「うん、イッセー君!私だって頑張るよ!チャプター2!」

「「「「「「「「変身!」」」」」」」」

『『『『『『『『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!』』』』』』』』

 

ともかく、準備を終えた8人は、一誠の掛け声と共に各々のポーズを取りながらガシャットを起動、ゲーマドライバーに装填、レバーを開いて仮面ライダーへと変身する。

 

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクション、エックス!』

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティアクショォォォォン!エックス!』

『辿る巡る!辿る巡る!タドルクエストォォォォ!』

『ババンバン!バンババン!イェーイ!バンバンシューティング!』

『運命の鎖、解け!ハテサテパズル!』

『ぶち込め正拳!バクレツファイター!』

『ちょっぴり照れるわ、ときめき!クライシス!』

 

一誠達7人は、今まで通りの動作と共に其々が変身するライダーとなり、

 

『マキマキ!竜巻!ハリケーンニンジャ!』

 

イリナは、抜き取ったガシャットを空高く掲げながら起動させてゲーマドライバーに装填、レバーを開き、風魔の顔が映ったパネルを選択、『Select!』の文字と共に仮面ライダー風魔のレベル1の姿に変身、その直後に登場した白色のパネルを通過すると共に異空間へと転移、何処かの基地の様な異空間で敵に見つからない様動き回った末に、崖から飛び降りると共に頭部を残して身体が飛び散り、残った頭部から新しい身体が、仮面ライダー風魔・ニンジャゲーマーレベル2としての身体が出現、そのまま帰還した。

 

『『『『『『『アガッチャ!』』』』』』』

 

が、装填したガシャットが1つだけの風魔以外は、此処では終わらない。

 

『ぶっ飛ばせ!突撃!激突パンチ!ゲキトツロボッツ!』

 

まずはエグゼイド、何処からか飛来した赤いロボット――ロボットゲーマがエグゼイドの頭部に噛みついたかと思ったら、その身はエグゼイドを覆う鎧に変形して各部分に装着、最後に巨大な腕パーツが左腕に装着され、仮面ライダーエグゼイド・ロボットアクションゲーマーレベル3となった。

 

『シャカリキシャカリキ!バッドバッド!シャカットリキット!シャカリキスポーツ』

 

次にゲンム、何処からともなく出現したBMX――スポーツゲーマが突如ひとりでに動き出し、頭上へと回ると共にゲンムを覆う鎧に変形、そのままゲンムに装着され、仮面ライダーゲンム・スポーツアクションゲーマーレベル3となった。

 

『ジェット!ジェット!インザスカイ!ジェットジェット!ジェットコンバァァァァット!』

 

続いてスナイプ、何処かから飛来したオレンジ色の戦闘機型ロボット――コンバットゲーマが頭上に飛ぶと共にスナイプを覆う鎧に変形、そのままスナイプに装着され、仮面ライダースナイプ・コンバットシューティングゲーマーレベル3となった。

 

『惑う世界!深まる闇!マドウダンジョン!』

 

更にブレイブ、何処からか飛来した青いドラゴン型ロボット――ダンジョンゲーマが頭上に飛ぶと共にブレイブを覆う鎧に変形してそのままブレイブに装着、最後に薙刀の様な形をした尾のパーツがガシャコンソードの柄に装着され、仮面ライダーブレイブ・ダンジョンクエストゲーマーレベル3となった。

 

『ティーオー!エスゼット!ジェイエル!そしてアイ!メテオブロッカー!』

 

パラガスは、上空から飛んで来た様々な色と形状のブロック――ブロッカーゲーマがパラガスの各部分に装着、仮面ライダーパラガス・ブロッカーパズルゲーマーレベル3となった。

 

『ジャブ!ジャブストレート!ジャブストレートアッパー!浮かせて叩き込め!メタリックフィスト!』

 

ノックスは、何処からともなく出現した木製人形みたいな姿のロボット――フィストゲーマがノックスを覆う鎧に変形して各部分に装着、最後にパンチンググローブの様なパーツが両腕に装着され、仮面ライダーノックス・フィストファイターゲーマーレベル3となった。

 

『ド、ド、ドレミファソラシド!オーケー!ドレミファビートォォォォ!』

 

最後にポッピー、何処からか飛来したDJを思わせる姿の黄色いロボット――ビートゲーマがポッピーを覆う鎧に変形、各部分に装着され、仮面ライダーポッピー・ビートクライシスゲーマーレベル3となった。

 

「皆、突入するわよ!」

「ああ!ノーコンティニューで、クリアする!」

任務開始(ミッション・スタート)ですわ!」

「これより、堕天使幹部切除手術を開始する!」

「私の掌の上で踊るが良いにゃ!」

「心の滾りのままに、ぶん殴ります!」

「ポパピプペナルティ、退場です!」

「さあ、振り切っちゃうよ!」

「いざ、参る!」

「行くぞ!」

 

そして変身を終えた8人の仮面ライダーとカイデン、そしてゼノヴィアは、ゲンムの号令と共に戦場へと突入した…!



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41話_Godは死んだ

「ほぉ。初めましてだな、リアス・グレモリー。よもや眷属共々、噂に聞く仮面ライダーになっていたとは、思いもよらなかったぞ。」

「あら、気付いていたの、コカビエル?」

「ああ。顔が隠れていようと、お前の兄によく似た気配で分かるぞ。その忌まわしい気配でな」

 

エグゼイド達が校庭に入ると、其処には案の定と言うべきか、1人の堕天使が待ち構えていた。

何やら狂気を宿したかの様な風貌、5対もの漆黒の翼、クロトが言っていたコカビエルの特徴にそっくりな彼、言うまでもなくコカビエルその人であった。

 

「サーゼクスやセラフォルーが来るまで甚振ってやろうかと思ったが、案外楽しませてくれそうだ。噂が本当かどうか、こいつ等との相手で確かめさせてもらおうか」

 

校庭へと入って来たゲンム達仮面ライダーの姿に何処か面白げな表情になったコカビエルは、そう言いながら指を鳴らす、すると地表に幾つもの魔法陣が展開、其処から十数メートルにも及ぶ体長を有する三つ首の犬らしき姿の魔物が、計何十体もの大群で出現した。

 

「ケルベロス!冥界に続く門の周りに住む魔物を人間界に、しかも大群と言って良い程連れて来るなんて!行くわよ、皆!」

 

呼び出した魔物――地獄の番犬の異名で知られる魔物ケルベロスの大群を目の当たりにして驚きを隠せないゲンム、だがそれも一瞬の事、直ぐに指示を飛ばし、他のメンバーもまた其々の行動に移る。

 

「せいはぁっ!」

 

まずエグゼイドは、左腕に装着されたパーツによる強烈なパンチを見舞い、ケルベロスを1体1体吹っ飛ばす。

 

「食らいなさい!」

 

次にゲンムは、両肩に装着されている車輪型のパーツを手に取り、それに滅びの魔力を纏わせた状態で振るって敵を消滅させる。

 

「ふっ!はっ!やぁ!」

 

続いてノックスは、パンチンググローブを装着した様になった両腕を駆使し、フィールドを縦横無尽に駆け回りながら連撃を繰り出している。

 

「やっちゃうよ!」

 

風魔は、擬態の聖剣の代わりに手にしている短刀型のガシャコンウェポン――ガシャコンニンジャブレードを巧みに振るい、持ち前の素早さで翻弄している。

 

「僕は剣になる。僕と融合した同志達よ、共に行こう。部長、そして仲間達の剣となる!魔剣創造!」

『むむ?魔剣が持つ力だけではない、聖剣が持つ、聖なる力をも感ずる、だと?』

『成る程、禁手(バランス・ブレイカー)。それも魔剣と聖剣を併せ持ったそれを作り上げる代物か』

「ああ。『双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)』。聖と魔を有する剣の力で、未来を斬り開く!」

 

ブレイブは、先程の出来事が自らを高みへと上がらせたのか、自らに宿りし神器の更なる力『禁手(バランス・ブレイカー)』を発現、魔剣だけでなく聖剣の力をも宿した剣――聖魔剣を作り出し、薙刀型となったガシャコンソードとの二刀流で敵を薙ぎ払う。

 

「下がれぃ、外道に尻尾を振る事しか出来ぬ駄犬共めが!」

 

カイデンは、己の得物である二振りの刀で大立ち回りを繰り広げている。

何体ものケルベロス相手に余裕の表情でバッタバッタと切り裂くその佇まいは、一誠がバグスター1の実力の持ち主と称するだけはあると言っていいだろう。

 

「ペトロ、バシレイオス、ディオニュシウス、そして聖母マリアよ。我が声に耳を傾けてくれ。この刃に宿りしセイントの御名において、我は解放する!デュランダル!」

 

ゼノヴィアは、エクスカリバーとは違った聖剣――デュランダルを呼び出し、敵を切り裂く。

デュランダル、それはフランスにおいてシャルルマーニュの聖騎士として知られる英雄ローランが持っていたとされている聖剣で、切れ味の鋭さで右に出る物はいないとされる程の殺傷力を有する。

尚、その出自故に『パチモンの割れ物』とイリナからボロクソに言われている教会のエクスカリバーとは違い、このデュランダルはれっきとした教会由来の物である、念のため。

 

「やぁっ!大丈夫ですか、黒歌先生!」

「大丈夫なのにゃ、アーシア!お陰で、出来たのにゃ、皆!」

 

一方、後方でサポートに回っている2人、パラガスは両肩のパーツから展開された筐体でメテオブロッカーをプレイし、揃えた事で消える筈のブロックが変形する事で生成されたエナジーアイテムを前線にいるメンバーへと送り込み、ポッピーはそんなパラガスへ降りかかるであろう攻撃を防ぐべくバグヴァイザーの銃口からハート型のビームバリアを放出する。

 

「お父様譲りの雷光ですわ!」

「むっ!その声は、バラキエルの娘か!」

 

そして空中戦を持ち味とするジェットコンバットの力で前線の激戦から離れていたスナイプは1人、コカビエルとドッグファイトを繰り広げている。

純粋な力量こそ堕天使勢力の最高幹部であるコカビエルの方が圧倒的に上、しかし両腕にガトリング砲が装着された事による火力の大幅強化によって、互角『に見える』展開を見せていた。

 

「ははは、流石は仮面ライダーと言った所か、ケルベロスの大群をこうもあっさり蹂躙するとはな!だがそうでなくては面白くない!」

「次はお前の番だ、コカビエル!戦争など起こさせやしない!」

 

エグゼイドとノックスが飛び掛かって格闘戦を仕掛け、ブレイブと風魔、カイデンとゼノヴィアが斬りかかり、ゲンムとスナイプが後方から射撃攻撃で援護し、パラガスとポッピーが支援する…

息の合った連携を見せる10人、先程スナイプ単体でコカビエルと一見すると互角の勝負を繰り広げていたのもあって、圧勝すると思われていた。

だが現実とは残酷な物、コカビエルに決定打はおろか効果的なダメージを与える事も叶わず、

 

「期待通りの実力だな、実に楽しい戦いだ!」

「くっ!何という実力、これが聖書にも名を連ねる堕天使の、三大勢力による大戦を生き延びた存在なのか!」

 

彼の表情から余裕そうな様子は揺るがない。

 

「さて、楽しませてくれた礼だ、1つ良い事を教えてやろう。何、其処の騎士らしき姿の仮面ライダーが持つ聖魔剣なるものが生まれた訳にも関わる物だ、悪い話ではあるまい?」

「何…?」

 

それが見せかけの物では無いと言わんばかりに、何かを告げようとするコカビエル。

ブレイブが持つ聖魔剣が何故存在し得るのか、本来交わるはずのない聖剣と魔剣が何故融合出来たか、その訳にも関わってくると聞いて思わず攻め手を緩めてしまう一行。

今現在コカビエルと戦闘中である事を抜きにしても、それはこの場でやってはいけなかった。

 

「聖剣と魔剣、相容れないこの2つが交われるのは何故か、それは即ち、聖と魔、それらを司る存在の制御がままならなくなった事を意味する。では何故制御が効かなくなったのか…

 

 

 

それは先の三大勢力による大戦の折、四大魔王だけでなく聖書の神も死んだからだ!」

『なっ!?』

 

隙が出来た故に思い通りに喋る事が出来たコカビエル、彼の口から発せられたのは、驚きの真実だった。

 

「神が、死んだ…!?」

「神が死んでいた、ですって!?そんなの聞いた事無いわ!」

「それはそうだろう。あの戦争で悪魔勢力が四大魔王全員を始めとした多くの上級悪魔を失い、天使勢力は聖書の神というトップや多くの天使を失った。我ら堕天使勢力は其処まででは無かったが、大本が天使である以上いずれ純粋な堕天使は減ってゆくだろうとはアザゼルの言葉だ。三大勢力のどこも人間に頼らねば種の存続が出来ないほど落ちぶれたのだ。そんな状況下で神が死んだなんて事実が公になって見ろ、天使勢力総崩れ間違いないのは勿論、対極に位置する悪魔勢力にも堕天使勢力にも、どんな混乱が待っているか、考えずとも分かるだろう?だから隠蔽していたのだよ」

 

聖書の神が死んだ、その余りにも強烈な真実に言葉を失う面々、

 

「う、嘘だ、嘘だ…!」

「主は、おられないのですか?では、私達に与えられる、愛は…」

「まあ、ミカエルは良くやっていると思うがな。聖書の神に代わって、天使と人間を纏め上げているのだから。システムさえ機能すれば、神への祈り、祝福、エクソシストの力、聖剣、そして神器…

ある程度は機能する。だがそれも今日この時までだ!今こそ、戦争の号砲を鳴らす時だ!ははははは!」

 

特に、聖書の神を信仰しているポッピーとゼノヴィアは、それを聞いて打ちひしがれていた。

自らが告げた真実を耳にして混乱に陥る光景を見届け、高笑いをするコカビエル、

 

 

 

『ハリケーン!クリティカル・フィニッシュ!』

「は、あがぁ!?」

 

そんな彼の身体を、凶刃が貫いた。

その下手人は、同じく聖書の神を信仰している筈の、風魔だった。



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42話_神の、信者のSpirit

「ぐ、あ、あぁ、こんな、こんな事が…!?」

「アーシアさん、ゼノヴィア…

見損なったわよ、貴方達。貴方達の信仰心は、そんな程度なの?」

 

聖書の神が既に死んでいた事を告げ、衝撃を受ける面々の姿に高笑いをしていたコカビエル、だがそれも、その隙を突いた風魔によるガシャコンニンジャブレードでの必殺の突きを諸に受けた事で中断される事となった。

今の一撃が致命傷と言える位の深手だったか、或いはまさか教会のエクソシストであるイリナが変身した風魔からそんな攻撃を受けるとは思わなかったか、苦悶と動揺を隠せないコカビエル、そんな彼を他所に風魔は、神の死を告げられて絶望に瀕していたポッピーとゼノヴィアに対し、そう声を掛けた。

 

「馬鹿な、何故まともに動ける…!?

貴様も教会のエクソシストなら、神の死を聞いて何かしら思う所があるはずだ…!

なのに、なのに何故、そうやって平然としていられる…!?」

 

そんな風魔の様子に疑問を抱かざるを得なかったか、激痛に苦しみながらも彼女に問うコカビエル。

 

「聖書の神が、我らが信ずる神様が、亡くなられた、ね。

 

 

 

だからどうしたのよ?」

「な!?なん、だと…!?」

 

それに対する風魔の答えは、信者にしては余りにもドライ過ぎる物だった、が、

 

「確かに聖書の神という命は、我らが信ずる神様は、既にこの世より旅立たれてしまわれたのかも知れない。その事実をひた隠しにする教会の真意も理解は出来る、納得はこれっぽっちもしていないけど。

 

それでも、神様が齎せし奇跡は、神様が遺された物は、今もこうしてその力を振るっている!私達信者を、見守られている!

 

そして神様の教えは、精神は、意思は、そして魂は今でも生きている!私達の、心の中で!」

「がはっ!?」

「主様は、生きている、私達の、心の中で…!」

「は、はは、まさか、イリナの奴に気付かされる日が来ようとはね…」

 

その真意は、神の死を、不在を知って尚揺るがぬ、度が過ぎるが故に自称信者のレッテルを張られてしまった彼女の信仰心の、独特な表現であった。

そんな風魔の信仰心を目の当たりにし、ポッピーとゼノヴィアが絶望から立ち直った一方、刺さっていたガシャコンニンジャブレードを勢いよく引き抜かれた事で苦痛の声を上げるコカビエル。

 

「皆、一気に決めるわよ!」

「「「「「「はい!」」」」」」

『『『『『『『ガシャット!キメワザ!』』』』』』』

 

それを見て戦局が一気に此方側に傾いたと判断したゲンム達が、勝負に出た。

 

『メテオ!クリティカル・ストライク!』

「さあ、大盤振る舞いにゃ!」

『『『『『『『『マッスル化!鋼鉄化!高速化!回復!』』』』』』』』

 

まずは灰色のガシャットを左腰のガシャットホルダーに備わっているガシャット装填スロットに装填したパラガスが、様々なそれを継ぎ接ぎ状に纏めた様な姿のエナジーアイテムを各ライダーに供給、

 

『ジェット!クリティカル・ストライク!』

「食らいなさい!」

「ぬぉぉぉぉぉ!」

 

それを受けてオレンジ色のガシャットを左腰のスロットに装填したスナイプが、両腕のガトリング砲と背中から大量のミサイルを発射、

 

『シャカリキ!クリティカル・ストライク!』

「せいっ!はぁっ!」

「あぐっがはぁ!?」

 

それにコカビエルが対処している隙に、黄緑色のガシャットを左腰のスロットに装填したゲンムが、滅びの魔力を纏った車輪型パーツを投擲、ブーメランの如き軌道を描かせて直撃させ、

 

『マドウ!クリティカル・フィニッシュ!』

「『ドドドドドドド!聖魔黒龍剣!』」

「がぁぁぁぁぁぁ!?」

 

その衝撃によって錐もみ回転している最中、青色のガシャットをガシャコンソードのスロットに装填したブレイブが、コカビエルが自らに背を向けたタイミングで灰色のオーラを纏った斬撃を放って翼を切り裂き、

 

『ドレミファ!クリティカル・ストライク!』

「ピプペポ、パワー!」

「ぐうぅぅぅぅぅ!?」

 

空を飛ぶ手段を失った事で落下してくる所を、桜色のガシャットを左腰のスロットに装填したポッピーが、両手から譜面を模したエネルギー波を放って拘束、

 

『バクレツ!メタリック!クリティカル・ストラッシュ!』

「十連コンボです!」

「あばばばばばばばばばば!?」

 

其処を、右腰のスロットに2つのガシャットを装填したノックスが、全身を駆け巡る強烈なパワーを込めた連撃を叩き込み、

 

「馬鹿な、俺が、こんな、所で…!」

『ゲキトツ!クリティカル・ストライク!』

「俺達の強さ、それはお前が下らないと断じた、日常の可能性だ!」

「が!?あ…!」

 

トドメとして赤いガシャットを左腰のスロットに装填したエグゼイドが、強化パーツを纏った左腕から繰り出すパンチを直撃、捻じ伏せた。

流石のコカビエルも、其々の仮面ライダーが放つ必殺の攻撃を連続で食らったとあらば耐えられる物ではない、エグゼイドのパンチを食らって程なく、その息の根は止まった。

 

『GAME CLEAR!』

 

それを告げる音声が、コカビエルとの戦争に勝利(ゲームをクリア)した事を告げる音声を聞き届け、何処か安堵した様子を見せたエグゼイド達。

こうして、戦争を再開させようとした堕天使達による、一連の騒動は本当の意味で終わった。

 

------------

 

「戦乱の再起をはかったコカビエルを討ち滅ぼせし戦士、仮面ライダー。面白いな」

 

その様子を、学園から遥か上空で見ていた1人の存在がいた。

 

「仮面ライダーの強さは、日常の可能性…

まだまだその可能性は留まる所を知らなそうだ。その成長を見届けるのも、辿るべき道の一つ、か。

さて、アザゼルにはコカビエルが死んだ事、今しがた撮った写真を添えて伝えれば良いか」

 

白い龍の様な全身鎧を身に纏ったその存在は、そう呟きながら、去っていった。



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3.5章『昼休みのBAKUSOU BIKE』
43話_意外なNew Face


コカビエル達によるエクスカリバーの盗難事件から数日が経った。

その間に起こった事と言うと、最終盤に起こったコカビエルと仮面ライダー達の戦いの場になった影響か、駒王学園の校舎及び校庭等が損傷してしまい、生徒会長であると同時に学園の『裏』の管理を担うソーナ及び彼女の眷属、更には悪魔社会の上層部が手配した面々が徹夜で修繕にあたっていた。

その迷惑料と言えるのかどうかはともかく、後日学園のプール掃除をオカルト研究部の面々で行う事になったのだが。

また、盗まれたエクスカリバーも教会に戻っていった、が、

 

「皆。知っていると思うけどこのオカルト研究部に、私の眷属に新しいメンバーが2人加わったわ。イリナ、ゼノヴィア、自己紹介を」

「はい、部長!皆さん、改めまして紫藤イリナです。リアス部長の『兵士』に転生しました。これからも宜しくお願いします!」

「ゼノヴィアだ。イリナと同じくリアス部長の『兵士』となった。改めてよろしく頼むよ」

 

その返還の為に教会本部に帰っていたであろうイリナとゼノヴィアが、リアスの眷属悪魔として今、転生した事を他のメンバーに報告していた。

教会を脱退してリアスの眷属悪魔になる事を既に表明していたイリナは兎も角、まさかゼノヴィアまでいるとは思わなかった一誠達は、その光景にしばし唖然としていた。

 

「ぜ、ゼノヴィア?何故此処にいる?」

「神の不在を知っていると分かり、教会を追放されてしまったんだ。コカビエルも言っていた通り神の死は信者が知ってはならない禁則事項だったからね。尤も、デュランダルを没収されなかったのは不幸中の幸いかな。行く当ても無いし、イリナを経由して部長に、悪魔に転生させて貰う様頼み込んだんだ」

「いやー、上層部の掌返しは鮮やかだったよ。教会を脱退すると表明した時は『そんな事が許されると思っているのか』と力づくでも引き留めようとしていたのに、神は死んだ、と言った途端『知ってはならん事を知ってしまった貴様達を教会に置く訳には行かない。何処へでも行くがよい』だもん、怒りを通り越して笑っちゃうよねぇ」

 

代表して一誠が理由を聞き出すと、納得したと言わんばかりの空気になった。

それも無理はない、ばらした本人であるコカビエルが言っていた通り、聖書の神が死んでいたという事実は知ってはならない禁則事項、それを知っていた存在を留め置いては教会の存続に関わるのだから。

尚、追放を言い渡されたのを受けて駒王学園に向かっていたイリナ達を、教会のエクソシストと思しき集団が襲撃するも、風魔に変身したイリナがあっさりと返り討ちにしたという一幕があったが、それはまた別の話。

それはともかく、今しがた納得したのはあくまでゼノヴィアが此処にいる理由。

 

「然しゼノヴィア。イリナに関しては自慢になってしまうが、俺と言う存在が居たから分かる。だがお前まで、敵であった悪魔に転生する必然性は無かった筈だ。一体何が、お前に悪魔への転生を決断させた?」

 

悪魔への転生を決めさせた理由にはならない、そう思った一誠が尚も聞いた。

 

「その疑問も尤もだ。今まで私は神の、教会の、信仰の為に生きて来た。主の為に戦う、エクソシストとして悪魔と戦う事しか知らなかった。イリナみたいな穿った考えも、アーシア・アルジェントみたいな優しさも持ち合わせていなかったからね。

 

だが、そんな私が、私の様なエクソシストが教会を追い出されるという事、それ即ち『自分』の破綻に等しい。破綻した私に残っていたのは、同僚だったイリナの伝手しかない。藁にもすがる思いで、その伝手にしがみつくしか私の道は無かった。それに、

 

イリナがあの時言っていただろう。神が齎せし奇跡は、遺された物は今でも力を振るわれている。我ら信ずる者を見守られている。そしてその教えは、精神は、意思は、魂は我らの心の中で生きている、と。悪魔になったとはいえ、信仰を捨てるつもりはない。これからは悪魔としての道をお示し頂いた、主の教えを信仰していくつもりさ」

 

それに対するゼノヴィアの答え、それははぐれとなってしまったエクソシスト達が抱えるであろう問題を一誠達に知らしめつつ、それでも信仰を捨てる事のないゼノヴィアの決意を示した物だった。

 

「一皮むけたって感じだね、ゼノヴィア。エクソシストだった時はいけ好かない異教徒だと思っていたけど、人間、いや今は悪魔だったね、変われる物だよね。主よ、貴方のおみちびびびびびびびびび!?」

 

そんなゼノヴィアを見て何処か満足げなイリナが、感謝の祈りを捧げようとしたその時、突如として頭に襲い掛かった激痛に、奇声をあげながら身悶えしていた。

言うまでもないが、悪魔にとって神聖なる物は天敵、神への信仰心を想起させる行いすらも拒絶反応を示すのだ。

たった今イリナを襲っている激痛もまた、祈りを捧げた事に対する拒絶反応の類だろう、が、

 

「こ、これが悪魔に生まれ変わった事で引き起こされる拒絶反応…

でも、何のこれしき!これこそ、立場上敵となってしまった私に主が課した試練!私の変わらぬ信仰を試されておられるのね!ならば絶対に乗り越えて見せるわ!主よ、試練に臨む私達を見守りりりりりりりりり!?」

 

イリナはそれにへこたれる事無く、むしろ自らに課せられた試練なのだろうと結論付け、懲りずにまたも祈りを捧げ、結局激しい頭痛が再び襲い掛かった。

 

 

 

何はともあれ、こうしてオカルト研究部に、リアスの眷属にイリナとゼノヴィア、嘗て教会のエクソシストだった2人のメンバーが新たに加わった。



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44話_魅惑のPoolside

「皆、集まったわね。知っていると思うけど、今日は学園のプール掃除を行うわよ」

「掃除用具や洗剤等は、全部台車の中に入っているから、各自持って行って作業するガ。もし体調とかに何らかの異変を感じたら、直ぐに報告するガ。此処最近急激に暑くなって来たから、熱中症には十分に気を付けるんだガ」

 

イリナ達がオカルト研究部のメンバーに、リアスの眷属に加わって初めての週末、オカルト研究部員と、助っ人として駆り出されたバガモンは今、駒王学園のプールサイドに集結していた。

言うまでもないが、コカビエルの一件において後始末を担った生徒会との約束を果たす為、今日プール掃除を行うのである。

尚生徒会からは、掃除を終えたらプールを好きなだけ使って良いとも伝えられており、それ故か皆して水着を持ち込んでいた。

 

「さあ皆、生徒会が驚く位ピカピカに掃除するわよ!」

『はい!』

「皆!しっかり頑張るんだガ!」

 

だがそんな楽しみも掃除を全うしてこそ、リアスの号令、バガモンの激励を受けて、プール掃除は始まった。

 

------------

 

(さて、皆はどの様な水着を着て来るのだろうか?リアス達は矢張り、あのおっぱいをアピールするだろうビキニタイプだろうか?いや、アーシアは初めての水泳だと聞いた、となれば早速ビキニを着るのはハードルが高いか。だがスクール水着姿も良さそうだ。スク水と言えば、やはり白音ちゃんは似合いそうだ。今から待ち遠しいな、皆の水着姿が)

 

それから一時間位経過し、殆ど完璧と言って良い程綺麗になったプール。

朱乃の魔力によって透明度の高い水で満たされたプールの側に、黒地に熊爪の模様が施されたトランクスタイプの水着を着用した一誠が一足早く到着し、他のメンバーの到着を今か今かと待っていた(同じ場所に、黒いブリーフタイプの水着を着用した祐斗もいたが、彼女達の到着を待っている一誠の眼中には無かった)。

其処へ、

 

「お待たせしましたわ、イッセー君」

「お待たせ、イッセー!ねぇ、どうかしらイッセー、私達の水着は?」

 

まず、いち早く着替えたリアスと朱乃がやってきた。

 

「ああ、似合っている。リアス達の魅惑的な体躯をこれでもかとアピールした水着姿、最ッ高だ!」

「うふふ、其処まで言ってくれるなんて、嬉しいですわ、イッセー君」

「ええ、朱乃。新しいのを買った甲斐があったわね」

 

その2人の水着姿を見て、心の底から喜んでいると言いたげな笑顔で絶賛する一誠。

リアスの水着は、髪色と合わせたのか真紅のビキニで、グラビアアイドル張りの巨乳故か或いは小さめな布面積故か下乳が見え隠れしていた。

一方の朱乃の水着は、布面積が小さめな赤紫の布地に、紫色の紐がアクセントとなったビキニで、これまた下乳が見え隠れしていた。

 

「イッセーさん、私も着替えて来ました!」

「イッセー君、お待たせ!どうかな?」

 

次に、アーシアとイリナがやってきた。

 

「2人も似合っているよ。イリナはリアス達に劣らぬナイスバディを強調し、アーシアは純粋な雰囲気とベストマッチ、どちらも最ッ高だ!」

「あ、ありがとうございます、イッセーさん!」

「ありがと、イッセー君!イッセー君の水着も格好いいよ!えーと、オリエンタルな感じ、かな?」

 

アーシアの水着は一誠の予想通り、駒王学園指定のスクール水着で『あーしあ』と書かれていた胸元のワッペンは彼女の大き目な胸によって張りつめていた。

一方のイリナの水着は、赤と白のストライプ柄、首元で紐をクロスさせるタイプのビキニで、最早太い紐と呼んだ方がいい布地の影響でリアス達と同じく胸がはみ出ていた。

 

「ほら白音、恥ずかしがってないで早く来るのにゃ!折角の水着姿、イッセーに見せなきゃしょうがないでしょ!」

「いやこの水着、姉様が持って来た物じゃないですか!こんなの恥ずかしいですよ!」

 

続いて黒歌と白音の姉妹がやって来た、が、

 

「し、白音ちゃん、その水着は…?」

「え、えーとイッセー先輩、この水着は、姉様が持って来た物でして…

だから言ったじゃないですか姉様!こんな破廉恥にも程がある水着、幾らイッセー先輩でもドン引きするだけだって!」

 

白音の水着は、遠目から見れば布面積がやや小さめな以外、何の変哲もない様に見える純白のビキニ、なのだが、普通はある筈の、肩や首に引っ掛ける為の紐が存在しなかった。

つまり白音の水着は、背中に回している紐だけで固定されている状態、ちょっとしたきっかけで『ポロリ』といってしまう事は想像に難くない。

そんな過激な水着はしかし白音本人の物ではなく、黒歌が持って来た物を無理やり着せたらしい、その姿を見て固まった一誠を見て、姉のチョイスは間違いだったと非難する白音だが、

 

「よく見るのにゃ白音、イッセーったら鼻血垂らしながら喜んでいるのにゃ」

デャムフォシャジャフォエガ(そんな事無いよ)ジェゴムデバフィ(白音ちゃん)デョエシャウフォン(最高だ)!」

「イッセー先輩!?嬉しいですけど、何処のフェムシンムですか!?」

 

実態は全く違った。

一誠は白音の魅惑的な水着姿に見とれていたのだ、魅了され過ぎて鼻血を垂らしながらオーバーロード語を口走っていたが。

因みに黒歌の水着は、藤色の布地に黒い紐のビキニで、白音のそれと同様、肩や首に引っ掛ける為の紐が無かった。

一応、背中に回している紐が布地を挟む形で2本あるという違いはあるが、ちょっとしたきっかけで『ポロリ』といってしまう事に変わりはない。

 

「ジャシャバf、おっと、ところでゼノヴィアは?」

「ゼノヴィアなら、まだ更衣室で着替えているみたいだよ。初めての水着だし、手間取っているのかな?イッセー君、様子を見に行って貰っても良いかな?」

「分かった、イリナ。何しろこの暑さだ、少しでも油断していると熱中症になりかねない。見て来よう」

 

と、己の彼女達の水着に魅入っていた一誠だったが、まだゼノヴィアが来ていない事が気になった。

そんな一誠に答えたのはイリナ、今だ更衣室に籠っている様子のゼノヴィアを見て来て欲しいとお願いし、一誠は了解、垂らしていた鼻血を拭いながら更衣室へと向かって行った。

だが一誠は気づかなかった、イリナが悪戯を成功させた子供みたく無邪気な笑みを浮かべ、

 

「これでゼノヴィアも、こっち側だね。イッセー君、ゼノヴィアの事、宜しくね」

 

と呟いていた事に。




因みに、各メンバーの水着ですが、

リアス:FGOの水着信長(第三段階)
朱乃:FGOの水着スカサハ
イリナ:FGOの水着ネロ(第一段階)
白音:FGOの水着ニトクリス(第三段階)
黒歌:FGOの水着頼光(第三段階)
一誠:FEHの水着タクミ

となっています(アーシアは原作通り、祐斗は適当ですw)。
さて、ゼノヴィアの水着はどんな物か、次回をお楽しみに。


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45話_Paleでも、Strongな恋

「ゼノヴィア、其処に居るのか?居るのなら返事を」

「そ、その声は、兵藤一誠か?ああ、私は此処だ。待たせた様ですまないね」

 

程なく更衣室に辿り着いた一誠、もし着替え中だったらと考えるまでもなく、ノックせずに異性のいる部屋を開けるなど言語道断だと、扉をノックしつつ声を掛ける。

それに何処か慌てた素振りで、応じる様に出て来たゼノヴィアの水着は、青地に白い紐、そしてフリルが付いたビキニ、生まれてから今までエクソシストとして生きて来た彼女にしては、異性のいの字すら意識して来なかった彼女にしては、随分と可愛らしいチョイスだった。

 

「おお、似合っているな、ゼノヴィア。しかし随分とまた、可愛らしい奴を選んだ物だ」

「こ、この水着が私に似合っているのか。そうかそうか、似合っているか。ありがとう兵藤一誠、この前イリナに相談した甲斐があったな」

 

無論と言うべきかそれはゼノヴィア自身ではなく、イリナが選んだ物らしい。

 

「それにしても、随分と時間が掛かったな。イリナは着替えに手間取っていると言っていたが…」

「ああ、それもある。何しろ、こういった物は着た事無いからね」

 

それはともかくとして、遅くなった訳を尋ねる一誠、それに対するゼノヴィアの返答は先程イリナが言っていた通りだったが、

 

「だがそれだけじゃない。着替えた後に少し考え事をしていてね」

「考え事?」

 

それだけでは無いらしい。

 

「その件に関して兵藤一誠、いや、イッセー。折り入って頼みがある。聞いてくれるかい?」

「俺に頼み、か。俺に応えられる範囲なら構わない」

 

何か考え事をしていたらしいゼノヴィアから何かしらの頼み事を頼まれた一誠。

今まで教会に属するエクソシストとして、悪魔等の敵対勢力と戦う事しか知らなかった彼女を取り巻く環境は、この数日だけで目まぐるしく変わってしまった。

エクスカリバーを奪還すべくこの街へ派遣されたかと思えば、此処でその首謀者から信仰する神の死を告げられ、それが禁則事項だったが故に教会を追放、行きついた先が敵対していた悪魔への転生…

傍から見れば「まるで意味が分からんぞ!」とツッコみたくなる状況故、幾らあの時のイリナの助言で絶望から立ち直ったと言っても、思う所はあるのだろうと考え、応えられる範囲でならと応じた。

それを聞いたゼノヴィアは、ずいっという擬音が聞こえてきそうな様子で一誠に近づくと、

 

「ではイッセー、

 

 

 

私を『6人目』にして欲しい!」

「…ゑ?」

 

と、頼み事を口にした。

 

「イリナから聞いたぞ。イッセーにはイリナの他に、部長、姫島朱乃、塔城白音、そしてアーシア・アルジェント、計5人と恋人関係にあると。其処で、私を6人目の恋人にして欲しい」

「…何故、急に?」

 

6人目にして欲しい、つまり自らを一誠の新たなる恋人にして欲しいというゼノヴィアの頼み事に、思わず一誠はその訳を尋ねる。

無理もない、一誠とゼノヴィアは出会ってまだ半月も経過していない、その間の接点と言えばエクスカリバーが盗まれた一件において、一誠の方から協力を持ち掛けた位なのだから。

 

「確かに、そう思われるのも致し方ないか。では、順を追って話そう」

 

ゼノヴィアもそれを理解していたのか、経緯を話し始める。

 

「前にも話したが、今まで私はエクソシストとして、神の、教会の、信仰の為に生きて来た。主に仕え、戦う。それが私の全てだった。故に悪魔としての生き方を知らん。其処で部長に姫島朱乃に塔城黒歌…

悪魔として先輩と言える皆に尋ねたんだ。そしたら部長は「悪魔は欲を持ち、欲を叶え、欲を望む者。好きに行きなさい」と、姫島朱乃は「悪魔も堕天使も人も、欲を抱くという点は一緒ですわ。自分が抱く欲が何なのか、一度深く向き合ってはどうでしょう?」と、塔城黒歌は「一度、本能に赴くまま行動してみたらどうにゃ?例えば、子作りとか?」と言われたんだ。其処で私は女としての喜びである、子作りをしようと考えたんだが…

それを何処かから聞きつけたイリナに「何事にも順序って物があるでしょ!」と例の如く甚振られてしまってね。子作りへの順序としてまずは、異性に恋をしてみようと改めたのさ。

 

その時ふと、思い浮かんだ異性がイッセー、君だ。あの騒動で出会ってから数日、その間に少ししか君と言葉を交えてはいなかったが…

私にはその僅かな会話で十分過ぎた。イリナ達が君に惚れるのも分かる、君はそれ程の魅力を有した男だ。私の心もまた君の魅力に囚われ、そして今、己の想いを抑える事が出来なくなってしまったよ」

「ゼノヴィア…」

 

所々突飛な展開はあったが、嘘偽りなく紡がれる、ゼノヴィアが今の想いを抱く経緯。

 

「イッセー、いきなりで本当に済まないが、私の想い、受け取ってk」

 

それを聞いて、一見すると呆然としていた様に見える一誠の姿に不安を隠せないゼノヴィアが彼に今一度尋ねる、が、それが最後まで口にされることは無かった。

 

「んぅ!?」

「ん…」

 

その最中に、一誠がゼノヴィアの口を塞ぐようにキスしたからだ。

 

「ゼノヴィア、これが俺の答えだ。お前の想い、確かに受け取った。俺も、お前の事が好きだ!」

「イッセー…!

ありがとう、本当に、ありがとう…!」

 

ゼノヴィアを6人目の恋人にする、それが、一誠の答えだった。

それを聞き、涙目になりながらも満面の笑みを浮かべるゼノヴィア。

 

「では行こうか、ゼノヴィア。俺達の記念すべき、初デートだ」

「ああ!」

 

こうして恋人同士となった2人は、皆が待っているだろうプールへと足を進めた。




ゼノヴィアの水着ですが、FGOの水着清姫(第三段階)のものとなっています。

次章、ハイスクールDevil×Ex-aid――

「では、会談を始めるとしよう」

エクスカリバー盗難事件を契機に、和平を結ぶ事となった三大勢力――

「『禍の団(カオス・ブリゲード)』、三大勢力の現状をよく思わねぇ連中が結成した、いわばテロ組織だ」

其処にテロ組織『禍の団』が襲撃を仕掛けて来た!

「皆、これを!」
『リバースクロスナイト!』

緊迫した状況の中、禁断のガシャットが、

『マックス、パワー!マックス、スピード!リ、バース、クロス、ナイト!』
「ギャォォォォォォォォ!」

咆哮を上げる!

第4章『停止教室のBAKURETSU FIGHTER』


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4章『停止教室のBAKURETSU FIGHTER』
46話_Family来訪


ゼノヴィアが一誠の『6人目』となってから数日が経過したこの日、駒王学園では授業参観が行われ、一誠達がいる教室の後方には、生徒達の両親達が、授業中の我が子の姿を一目見ようと集まっていた。

一誠の両親である兵藤五郎(ごろう)・誠奈夫妻もまたこの場に来ており、一誠は勿論、彼の恋人であるアーシア、イリナ、そしてゼノヴィアの授業における姿を一目見ようと注目していた。

そんな中で始まったのは英語の授業、の筈が、

 

「先生、これは一体?」

 

一誠達に教材として配られたのは、何故か紙粘土だった。

 

「良い質問ですね、兵藤君。皆さん、今日は今渡した紙粘土を用いて授業を行います。さあ、この紙粘土で好きな物を作って下さい。動物や人、果ては家まで、とにかく己の好きな物であれば何でも良い。自分が今思い描いたありのままを形作るのです。英語とは会話、会話とはコミュニケーション、そしてコミュニケーションとは『伝える』事、そう!己の思いのままを紙粘土に込めて伝える事で、英語の原点に立ち返るのです!」

『なんじゃそりゃぁぁぁぁぁぁ!?』

「それでは、Let’s try!」

 

それに疑問を投げかけた一誠に対する教師の答え、その余りにも飛躍した解答に、更には『良い事言った』と言いたげなどや顔を見せる教師の姿に、クラス中がずっこけた。

だがそんな光景など知ったこっちゃないと言わんばかりに始めの号令を掛ける教師、生徒達も納得していないながらも渋々作業を始めた。

一誠も同じく作業に取り掛かり、

 

「こ、これは!素晴らしい、兵藤君!この短時間で此処までの物を作り上げるとは!」

「ど、どうも、ありがとうございます」

「こ、これは、ありがとうございます、イッセーさん!」

「あ、ありがとう、イッセー!此処まで想われるというのは、幸せな物だ…!」

「ありがと、イッセー君。イッセー君に恋をして、本当に良かったよ」

「す、すげぇ!まるでフィギュアだ!兵藤、5000円で売ってくれ!」

「ならイッセー君、私は7000円で買うわ!」

「何を!だったら8000円だ!」

「こうなったら後には引けないわ!諭吉出すわよ!」

「この際だ兵藤君、ゲームクリエイター業の傍ら、フィギュアの造形師を副業にやってみてはどうだね?」

「え、遠慮して置きます。その場の勢いで他業種に手を出すと碌な事にならないので」

 

リアス、朱乃、アーシア、白音、イリナ、そしてゼノヴィア、数日前に見た恋人達の水着姿を再現した紙粘土細工を、高級なフィギュアばりの精巧さで作り上げていた。

その完成度の高さに教師は絶賛、モデルとなったアーシア達は一誠の想いに大喜びしていた。

それを聞きつけ、紙粘土細工を巡ってクラスメート達が一誠に断りなくオークションを開始したり、教師が一誠にフィギュアの造形師になってはどうかと勧めたりしたが、余談である。

 

------------

 

「凄いわね、イッセー。こんな精巧に作ってくれるなんて」

「うふふ、ありがとうございます、イッセー君。イッセー君の想い、確り受け取りましたわ」

「嬉しいです、イッセー先輩。私、イッセー先輩の恋人になれて、本当に幸せです」

 

午前中のみだった授業は終わって、此処オカルト研究部の部室では、先程一誠が作り上げた紙粘土細工の鑑賞会が開かれ、モデルとなったリアス達が先程のアーシア達同様、大喜びしていた。

尚、恋人達『だけ』しか作っていなかったため、眷属の中でハブられる形となった黒歌は不満なのかブーたれていて、祐斗は凹んでいたが。

 

「ところでリアス、リアスのご両親は参観に来ているのか?折角の機会だ、挨拶をしたい。出来ればバラキエルさん達やトウジおじさん達にもと思ったが、只でさえ三大勢力の関係が思わしくない上に、つい最近あの一件があったばかりだからな…」

「お父様なら来ているわ。あと、お兄様もね。お兄様には言わない様口止めした筈なんだけど…

それはともかく。そしたらイッセー、一緒にどうかしら?お兄様も来た以上、学校の案内もしたいし」

「ああ。なら善は急げ、だ。早く行くとしようか」

 

そんな中一誠は、リアスの両親が学園に来ているのかを尋ねた。

どうやらリアスと付き合っている関係故に挨拶がしたい様で、それを受けて彼女と2人、部室を後にした。

 

「やあ、リアス。来たよ」

「酷いじゃないかリアス、私に黙っているなんてさ。しかも父上にも口止めしていたらしいじゃないか」

「済まない、リアス。約束通りサーゼクス達には情報が漏れない様、手は尽くしたんだが…」

 

歩いて数分して2人は、兄弟と思しき赤髪の男性2人と出会った。

1人はラヴリカが擬態していた姿とそっくりな青年、もう1人はその青年より少し年食った印象を受けるダンディな壮年男性だった。

気付いた人も多いだろうが、青年男性はリアスの兄であり、現代の悪魔社会を引っ張る魔王でもあるサーゼクス・ルシファー、そしてもう片方の男性は、

 

「リアス。側にいる其処の少年は、もしや?」

「ええ、お父様。紹介します、私の『兵士』で、恋人のイッセーです」

「そうか、彼がか。初めまして、兵藤一誠君。リアスの父、ジオティクス・グレモリーです」

「初めまして、兵藤一誠です。宜しくお願いします」

 

リアスの父親でありグレモリー家当主、ジオティクス・グレモリーだった。

 

「イッセー君、

 

娘の事、末永く大事にして欲しい。宜しく頼んだよ」

「は、はい!」

 

ジオティクスは一誠が、リアスの想い人である事を認識するや否や、彼にそう声を掛けた。

どうやらジオティクスは、リアスと一誠が結ばれる事に異論は無い様だ。

嘗て純血悪魔同士の繋がりを強めるべく組まれた、フェニックス家の三男であるライザーとリアスとの婚約話を反故にした最大の要因である一誠と愛娘との交際を随分あっさりと受け入れた様に見えるが、この件に関しては後日、詳しく話される事だろう。

 

「ところでリアス、セラフォルーは見掛けなかったかい?」

「セラフォルー様、ですか?いえ、見ていませんが…」

「そっか、途中まで共にいたんだけどな…」

 

そんな一誠とジオティクスの話はさておき、知り合いの姿を見かけない事が気になったサーゼクスが、リアスに尋ねた。

すると、

 

「ん?えーと、ジオティクスさん?」

「そんな他人行儀な呼び方は止したまえ。出来ればお義父さんと呼んで欲しい」

「あ、はい。では義父さん、何か体育館の方が騒がしい様な…」

「体育館が?そういえば周囲の生徒達がやれ『体育会で撮影会をしている!』だとか、やれ『体育館に魔法少女がいるぞ!』だとか言っていたが、まさか…?」

「お父様、きっとそのまさか、ですね。あはは…」

「行こうか、体育館に。今後の打ち合わせもあるし、早めに連れて行かないと」

 

体育館の方向から騒ぎを聞きつけた一誠と、道中で噂を耳にしていたジオティクスの発言で、リアス達は当たりを付け、件の体育館へと向かうことにした。

其処では、

 

「ソーたん、待ってぇぇぇぇ!」

「姉様、『たん』を着けないでとあれ程ぉぉぉぉ!」

「ははは、相変わらずだな、セラフォルーは。そう思うだろう、リーアたん」

「『たん』を着けて呼ぶのは止めて下さい。イッセーがいるんですから」

 

魔法少女の出で立ちをした少女――サーゼクスと同じく今の悪魔社会を引っ張る魔王、セラフォルー・レヴィアタンが、実の妹であるソーナを追い掛け回しているという、シュールな光景があった。



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47話_勝利のImagination!

…すまない、FEHやポケ森にドはまりした影響で、更新が遅れてしまってすまない(すまないさん並挨拶


授業参観及びその後の騒動も終結し、サーゼクス達魔王の面々が冥界へと帰って幾ばくか経った頃、オカルト研究部の面々は、旧校舎内のとある部屋に集結していた。

縦横無尽に張り巡らされた『Keep out!』と書かれているテープ、無数に刻まれた封印の術と思しき術式…

 

「アーシアにイリナ、ゼノヴィアにはまだ話していなかったわね。実を言うと私の眷属はもう1人、アーシアとは違う『僧侶』がいるの。ただ、その子の能力が強過ぎる上に自分自身でもコントロール出来ない不安定な物、私では扱いきれないと考えたお兄様の指示で、此処に封印されているの」

「この中に、私と同じお姉様の『僧侶』が…」

 

言うまでもなく、ギャスパーが封印されている部屋である。

現在はそろそろ夕方に差し掛かると言って良い時間、この時間では封印は解放されず、ギャスパーが部屋の外に出る事はかなわないが…

 

「とはいえそれも今日までの事、ライザーとのレーティングゲームや、先日のコカビエルとの一件から、もう大丈夫だろうと、さっきお兄様から告げられたわ。よって今日、この子の封印を解くわ」

「成る程、封印が必要だった程に強大な存在が此処に。果たして鬼が出るか蛇が出るか」

「ゼノヴィア、斬ったら駄目だからね。私達と同じ、リアス部長の眷属なんだから」

 

どうやらその封印を解除する許可を得た様で、ならば善は急げとばかりに此処に皆が集結したらしい。

リアスの話を聞いて戦意を漲らせるゼノヴィアと、それを窘めるイリナを他所に、朱乃達が術式の解除に取り組む。

そして難なく術式解除は完了、リアスは中にいるだろうギャスパー達に会うべく、扉に手を掛ける。

 

「そうだ、何事もネガティブに考えてはいけない!神器は持ち主の想いに呼応する物!後ろ向きに考えれば考える程、良からぬ働きをしてしまう!それを自分の所為と捉えてしまっては、負のスパイラルに陥ってしまう!だが、自分はやれる、自分なら出来る!そう信じてゆけば神器もまた君の想いに応え、想いの通りに動いてくれる!そう!勝利のイマジネーションだぁぁぁぁ!」

「は、はい!クロトさん!ボクはやれる!ボクなら出来る!そう、ボクはライダー世界のキング!」

「2人揃って何処の列車戦隊だ、全く」

 

扉を開いた先には、某列車をモチーフとし、イマジネーションを駆使して戦うスーパー戦隊みたくメンタルトレーニングを行っているギャスパーとクロト、そしてそんな2人にツッコミを入れるマサムネの姿があった。

 

「あら、随分と精が出るわね。どんな状況か心配したけど、杞憂だったかしら?」

「リアスママ。ああ、此処まで持ち込むのは随分と試行錯誤したものだがね」

「リアスお姉様!はい、クロトさんの指導、凄いんです!今ならボク、何でも出来そうな気がします!」

 

想像していた物と全く違う光景に驚きながらも、様々なトラウマを抱え引きこもっていた己の眷属がこうも明るい姿を見せてくれる事が嬉しくもあって複雑な表情を浮かべたリアス、一方でリアス達が部屋に入って来た事に気付いた2人が、リアスに近況を報告していた。

 

「この様子なら、大丈夫かしらね。あの時、イッセーに頼んで正解だったわ。本当にありがとうね、イッセー」

「構わないさ、恋人の頼みだし、何よりリアスの眷属仲間、同じ主人の下に集った家族だ。家族を助けるのに、理由はいらない」

「うふふ、男気に満ちたイッセー君も格好良いですわ。また惚れ直しちゃいました。それはともかく、そんなイッセー君に追加でお願いがあるのですが…」

「どうした、朱乃?」

 

以前のギャスパーを知る者から見れば信じられないと驚く位に明るくなった()の様子を、リアス達は感慨深げに見守り、其処へと導いたクロトを紹介した一誠に感謝していた。

とはいえ一誠にとってこれは眷属仲間の、家族の問題、苦労の内に入らなかった。

 

「実を言うと私と朱乃と黒歌はこれからお兄様達との打ち合わせに行かないといけないの。お兄様から近々、三大勢力のトップ同士による会談を、此処で行うそうなのよ。この前のコカビエルの一件もあって、ね。その会談についての事前の打ち合わせが急遽入っちゃって…

だから私達が打ち合わせに行っている間、ギャスパーの事を頼めないかしら」

「分かった、リアス。大変だな、急に打ち合わせの予定が入るとか…」

 

そんな一誠に何処か言いづらそうにしながら、問いかける朱乃、どうやらリアスと朱乃と黒歌は、近々この駒王学園にて行われる三大勢力の首脳会談についての打ち合わせに行かなければならないらしい。

其処でギャスパーの面倒を見てはくれないかと持ち掛けたリアス達、勿論一誠の答えはOKだった。

 

「そうそう、祐斗も同席してほしいと、お兄様から指名があったわ。何でも、貴方の禁手について知りたいそうなの、一緒に来てちょうだい」

「分かりました、部長。イッセー君、ギャスパー君の事は任せたよ。まああの様子なら大丈夫みたいだけどね」

「任せろ、木場」

「じゃ、留守番頼むのにゃ」

 

どうやら祐斗も同席を要請された様だ。

一誠からの返答を受けて、4人は魔法陣で転移していった。

 

「イッセー。少し良いか?」

 

こうして部屋には、一誠、アーシア、イリナ、ゼノヴィア、白音、ギャスパー、クロト、そしてマサムネが残ったが、いの一番に声を上げたのはゼノヴィアだった。

 

「マサムネから聞いたが、ギャスパーも仮面ライダーに変身出来るそうだな。それも仮面ライダーの『王』たる存在になれる、と。折角の機会だ、此奴と試合をしたいのだが、良いか?私もいざと言う時にイッセー達を守れる様、仮面ライダーの力に慣れて置きたい」

「ゼノヴィア…

其処まで言うなら。ギャスパーは、どうだ?」

「ゼノヴィア先輩ですよね、良いですよ!今のボクは、たとえ相手がエクソシストだろうとデュランダル使いだろうと、負ける気がしません!」

「言ったな、流石に仮面ライダーの『王』を称する事はある。だが私も負けんぞ!」

『ステージ・セレクト!』

 

ゼノヴィアから提案された、ギャスパーとの試合。

一誠を想うが故に、リアスや眷属仲間を思いやるが故に、仮面ライダーの力に慣れる為にとの提案に、一誠は了承、ギャスパーも快諾した。

その際のギャスパーが発した言葉を挑発として受け取ったかはどうかは分からないが、それを合図にゼノヴィアは、自らの腰に巻かれたゲーマドライバーのステージ・セレクト機能を作動させた。



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48話_RulerVSRider

「では始めるぞ、ギャスパー。試合とは言え、手加減はしない!」

「はい、ゼノヴィア先輩!お互い、全力で戦いましょう!」

『ハコニワウォーズ!』

『バクソウバイク!』

 

ゼノヴィアがステージ・セレクト機能を用いて展開した、サーキットを思わせるバトルフィールド。

その中心部で対峙するゼノヴィアとギャスパーは其々、己が仮面ライダーへ変身する為のガシャットを起動し、

 

「変身!」

第二戦略(セカンドストラテジー)、変身!」

『『ガシャット!』』

 

ゼノヴィアは左足を軸にターンを決めながら、一方のギャスパーは真横に傾けて構えていたガシャットの向きを変えて、と言った感じで、各々の変身ポーズを取りながらガシャットをゲーマドライバーに装填した。

 

『レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?アイムア仮面ライダー!』

 

まずはゼノヴィア、ゲーマドライバーのレバーを開かないまま、周囲を回るパネルの中から、他のパネルとは違ってメカメカしい外見のキャラクターが映ったパネルを、デュランダルで斬り付ける様に選択、『Select!』の文字と共に、バイクを思わせる機構が随所に取り付けられた姿の仮面ライダー――仮面ライダーレーザー・バイクゲーマーレベル1の姿に変身した。

 

『ガッチャーン!レベルアップ!ハコニワウォーズ…!』

 

一方のギャスパーはレバーを開き、クロノスの顔が映ったパネルを選択、『Select!』の文字と共に仮面ライダークロノスのレベル1の姿に変身、その直後に登場した緑色のパネルを通過すると共に異空間へと転移、戦場と思われる異空間の司令室らしき場所で指揮を執っている状況で突如、腹部に銃撃を受けて身体が爆散、したかと思ったら残った頭部から新しい身体が、仮面ライダークロノス・ウォーズゲーマーレベル2としての身体が出現、そのまま帰還した。

 

「ノリ良く行かせて貰おう!」

「貴方は、絶版です!」

 

其々の仮面ライダーに変身したゼノヴィア――レーザーと、ギャスパー――クロノス、2人は己の武器を構え、決め台詞と共に互いに飛び掛かった。

まずはレーザー、両腕に盾の如く取り付けられたバイクのタイヤ型パーツと、変身前から所持しているデュランダルを正面に構え、真正面に斬りかかる。

一方のクロノス、ゲンム達が所有しているガシャコンバグヴァイザーの兄弟機である青緑色のガシャコンウェポン――ガシャコンバグヴァイザー(ツヴァイ)をチェーンソーモードにし、飛び掛かるゼノヴィアを迎え撃った。

 

「流石です、ゼノヴィア先輩!レベルはこっちが上なのに、それを諸ともしない立ち回りで食いついてくる…!

流石に、教会のエクソシストとしてもまれて来た事はありますね!」

「そっちこそ、碌に鍛えていない軟弱な奴と思ったが、中々の立ち回りだ。まさか私が押されるとはな、レベル差もあるとはいえ、流石は仮面ライダーの『王』を名乗るだけはある!」

 

まずはデュランダルとガシャコンバグヴァイザーⅡの打ち合い、それでチェーンソーモードとなっているバグヴァイザーの特性を理解したレーザーは、バグヴァイザーの斬撃を両腕のタイヤパーツで受ける立ち回りに切り替え、クロノスを斬り払おうとする。

だがそれもクロノスは見越していた、タイヤパーツで受け止められた瞬間、チェーンソーにおける事故の要因として良く上げられるキックバック(木を切れなかった事等によって行き場を失った駆動力によってチェーンソーが反発し、使用者へと跳ね返る現象)を敢えて起こし、その勢いで身体を無理やり回転させ、デュランダルの斬撃を跳ね飛ばす。

そんな互角の戦況だったが次第に、レベルで劣るレーザーが押され始める。

レベル1の仮面ライダーは共通して、そのゆるキャラと表現出来るずんぐりむっくりとした体躯故に、パワーこそ引けを取らないが、立ち回りが鈍重になりがちなのだ。

故にレベル2であるクロノスの身軽な立ち回りに、レベル1のレーザーは対処し切れなくなり、胸のディスプレイに表示されている体力ゲージも攻撃を食らった事によるダメージの影響で少しずつ減って来た。

とはいえこれはレーザー自身も分かっていた事、では何故レベル2にならないのか。

別にレーザーは、変身前が如何にもひ弱そうだったり、戦闘のせの字も経験していなさそうだったりなクロノスに、教会のエクソシストとして数々の修羅場を潜って来た自分が相手では試合が直ぐに終わりかねない、と手加減しているつもりではない、寧ろ大人げない位に本気である。

では何故かと言うと、

 

「バイクに姿を変えるというのは初めての体験だが、これも慣れだ!2速!」

『ガッチャーン!レベルアップ!爆走!独走!激走!暴走!バクソウバイク!』

『ガシャコンスパロー!ブゥンブゥーン!』

「ぜ、ゼノヴィアが、レーザーが、バイクになった!?」

 

レーザーのレベル2の姿形が問題だからだ。

ゲーマドライバーのレバーを開くと共に前方に現れた黄色のパネル、それをレーザーが通過すると共に異空間へと転移、荒野を思わせる異空間に延々と伸びる道路を両腕のタイヤ型パーツを駆使して駆け抜け、道路が途切れた所で大ジャンプすると、その身体を覆っていたパーツが飛び散った、と思ったら、中から出て来たバイクの車体と思しき身体に、飛び散った筈のタイヤパーツが前後に装着、同時に出現した弓形のガシャコンウェポン――ガシャコンスパローが真っ二つに割れ、ハンドルがある筈の部分に装着、最後にデュランダルを荷台部分に括り付けて帰還した。

その姿――仮面ライダーレーザー・バイクゲーマーレベル2の姿は、観客であるイリナの言う通り、何処からどう見てもバイクとしか言い様のない姿だった。

そう、これが、レーザーがレベル1で戦っていた理由である。

元々レーザーは、レースゲームを司るが故に、他の仮面ライダーの移動手段としての能力も導入されて生み出された仮面ライダー、その為かレベル2の姿はバイク型となったのだ。

その能力を持った為か、一応自分自身の意思で立ち回る事も出来るのだが、真の力を発揮するには他のライダーを乗せて運転して貰う必要がある、というより元々人の姿で生きて来た変身者がいきなりバイクになってまともに立ち回れるかと問われると、お察しくださいと言われそうな案件である。

故に今のレーザーはレベル1で戦わざるを得ないのだ。

尤も更なるレベルアップによってその問題も解決出来なくは無いのだが…

 

「第2ラウンドだ、行くぞギャスパー!」

「望む所です、ゼノヴィア先輩!」

 

------------

 

「今日は試合に付き合ってくれてありがとう、ギャスパー。お陰でいい実戦経験になった」

「ボクもいい経験になりました!ありがとうございます、ゼノヴィア先輩!これからよろしくお願いします!」

 

結局、決着がつかぬまま戦いは終了、変身を解除したゼノヴィアとギャスパーは、互いの健闘を称え合っていた。



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49話_一誠という名のBridge

ギャスパーの封印が解除され、改めてリアスの眷属として迎え入れられた授業参観の日から翌日、一誠はリアスからの頼みで、街の外れにある神社に来ていた。

本来、悪魔にとって神聖なる物は避けるべき物、神社もまた神道における聖域、日本神話に登場する神々を祀っている場である以上例外ではなく、故に普段はリアスから出入りを禁止されている筈なのだが…

 

「いらっしゃいませ、イッセー君」

「朱乃。それは巫女服か?随分と似合っているな」

「うふふ、ありがとうございます」

 

其処に、一誠を出迎えるべく朱乃が鳥居の向こう側から(・・・・・・・・・)現れた。

 

「ところで朱乃、神社は神道における聖域、悪魔である俺達が入って大丈夫なのか?」

「ご心配ありませんわ。此処は裏で特別な約定が執り行われているので、悪魔でも入ることが出来るんです。先代の神主が亡くなって無人になったこの神社を、リアスが私の住居として確保してくれた際に取り計らってくれたのですわ」

 

悪魔に転生していた筈なのに何故神社にいられる訳を明かす朱乃、実際、一誠も一緒に鳥居を潜ったが、身体への異変は特に無かった。

 

「成る程、朱乃は今此処に住んでいるのか。色々と大変ではないのか、維持管理とか…?」

「いえ、そうでもありませんわ。気に掛けて貰って、嬉しいです」

 

それに一誠は一安心したのか、朱乃と言葉を交わしつつ、神社の拝殿へと入る。

 

「初めまして、兵藤一誠君。先日の一件は、本当にありがとうございました」

「初めましてと言うべきか、イッセー君。いや、仮面ライダー殿。本当に、本当にありがとう…!」

 

其処には聖騎士(パラディン)を思わせる鎧を身に纏い、何処か神々しい気配を纏わせる金髪の青年と、朱乃のそれと色合いが良く似た黒髪を角刈りにした、渋みを漂わせるがたいの良い壮年男性が其々、正座して待機していた。

どうやら一誠と朱乃を待って居た様である。

 

「紹介しますわ、イッセー君。此方はミカエル様」

「ミカエルって、四大天使の筆頭と呼べる存在で、天使達の長を務める、あの!?」

「はい、兵藤一誠君。そのミカエルです」

 

その一方である金髪の青年、それは今現在の天使勢力において事実上のトップを務める、熾天使(セラフ)の筆頭格ことミカエルであった。

まさか天使勢力のトップであるミカエルが来ていたとは想像だにしていなかった一誠は、驚愕の余り慌てふためいていた。

 

「あらあら、流石のイッセー君も思いがけないお客様に大わらわと言った感じかしら?」

「それは驚くだろう、まさか三大勢力の会談が迫って色々と忙しい中、まさか俺達に会う為に時間を割くなど想定外だ」

「うふふ、それもそうですわね。そして此方は、私の父、バラキエル」

「貴方が、朱乃の…!」

「ああ、イッセー君。やっと君に、お礼を言える日が来た。朱乃達が姫島家の手に掛かってしまったのではないかと気が気でなかったあの時以来、この日をどれだけ待っていたか。しかも今回の件では、コカビエルからも守ってくれた。本当に、本当にありがとう…!」

 

もう一方である黒髪の壮年男性は、グリゴリの最高幹部であり、朱乃の父親であるバラキエル。

此方は、娘である朱乃が同席しているのだからありえるだろうと想定していたのもあって、驚きは少なかった。

 

「その一件に関しては、私からもお礼を言わなければなりませんね。本当に、ありがとうございました。今回の一件、全ては貴方の力添えがあってこそ無事に解決出来たと聞きました」

「いえ、この一件は俺達全員いたからこそ解決出来た事だと考えています。俺は俺の出来る事を、皆は皆の出来る事をした、その結果です」

 

そのバラキエルが一誠に礼を言うのに合わせて、ミカエルもまた礼を言った。

 

「…聞かないのですか、いや、疑問には思わないのですか?」

「何をですか?」

「聡明な貴方であれば疑問に思う筈です。今回の一件を引き起こしたコカビエルは聖書に名を連ねる程の実力者、そんな彼相手にゼノヴィアと紫藤イリナ2人だけでは戦力不足は明白。なのにリアス・グレモリーとの交渉の折、悪魔勢力の助力を断った。無謀な判断の訳を、何故聞かないのです?」

 

各勢力の最高幹部である2人からの感謝の言葉に、謙遜した様に返す一誠。

その一誠から、何の不満も疑問も抱いた様子が見られない事に違和感を覚えたミカエルが尋ねた、今回の一件に対する天使勢力の対応について疑問は無いのか、と。

 

「あなた方の現状を知る今であれば、見当はつきます。『神は死んだ』、その事実に伴う悪影響を最小限に抑える為。その事実を知った2人を、神器の力で悪魔を癒したアーシアを追放したのも、それが理由でしょう。『表』ですら天使陣営を、教会を取り巻く状況は厳しいと思わざるを得ないニュースは毎日の様に聞きます、其処に『神は死んだ』等という禁忌が知れ渡ってしまったら…

 

態々見当が付いているのに、それを敢えて聞き出そうなんて、無粋な真似はしません」

 

その訳を、真剣な眼差しで答える一誠、その姿は、嘗てライザーとのレーティング・ゲームに臨むリアスに決心させたそれを髣髴とさせる物だった。

 

「物事の裏をも読める洞察力、苦悩や苦痛を理解し手を差し伸べる気づかい…

朱乃から聞いていたが、その年で随分と立派な青年だ。ゲームの開発・販売を手掛けて大層な収入を得ているとも聞く。朱乃の他に恋人がいるのも、その立派な人柄故であろう。そんなイッセー君になら、朱乃を嫁として託せる。既に相思相愛の間柄だ、今から朱璃と相談して、式場の手配をせねばな…」

 

そんな一誠の答えに、何処か満足気に呟くバラキエル、どうやら既に一誠と朱乃達の関係を把握し尚且つ認めており、彼らの将来に関して早くも準備をしようと躍起になっていた。

 

「心遣い、痛み入ります。貴方であれば、これを託しても大丈夫でしょう。今日、貴方を呼び出したのは、これを貴方に託す為です」

 

何とも気の早過ぎるバラキエルの呟きを他所に、ミカエルは一誠を呼び出した訳を説明すべく『何か』を出現させた。

 

「これはゲオルギウス――聖ジョージが龍を退治する際に用いた龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)、聖剣アスカロンです。これには特殊な儀礼を施してあるので、貴方でも扱える筈ですよ」

 

現れた『何か』はエクスカリバーやデュランダルとは違った聖剣、アスカロン。

アスカロン、それは古代ローマにおける聖人ゲオルギウスが、龍を退治する際に用いたとされている聖剣で、実際、アスカロンの刀身で反射された光が龍の口を貫いたという逸話が記されている。

尚、その出自故に『パチモンの割れ物』とイリナからボロクソに言われている教会の(ry

 

「何故、其処までして悪魔である俺にアスカロンを?」

 

そんな逸話を持った聖剣となれば、デュランダル等と同じく貴重な物、それを(事実上の)敵対勢力である悪魔でも扱える様に手間を掛けた上で一誠に渡すという行動に、疑問を持った一誠は尋ねた。

 

「嘗ての大戦後、大きな争いこそ無くなりはしましたが、小規模な小競り合いは散発されています。この状態が続けば、いずれ皆滅ぶ。自分達による消耗の果てか、或いは他勢力による襲撃か、どちらであっても、避けられないでしょう…

 

ですが、そんな三大勢力でも、大戦の際に手を取り合った事がありました。赤と白、二天龍と呼ばれる双龍が戦場をかき乱した時です。この時、我らの主である神、悪魔を束ねる魔王、そして堕天使を率いるアザゼルらの協力によって、二天龍を神器に封印する事に辛くも成功したのです。その代償として神も魔王も力尽きてしまいましたが。我々はその時の様に、再び手を取り合う事は出来る、そう願っています。

 

堕天使の最高幹部バラキエルの娘である姫島朱乃と、魔王サーゼクス・ルシファーの妹であるリアス・グレモリーと、教会のエクソシストだった紫藤イリナやゼノヴィア、聖女と言われていたアーシア・アルジェントと想いを通じ合わせる貴方の、貴方の周囲の様に。三大勢力其々の重要な存在と相思相愛の貴方に、嘗て三大勢力が手を取り合った切っ掛けである龍の襲撃から身を守る為の力を授ける…

言わば願を掛けたのです」

 

その一誠の疑問に、ミカエルもまた真剣な眼差しで、答えた。

 

「…分かりました、謹んで、お受けいたします」

 

だがそんなミカエルの気持ちに、一誠は一瞬、ほんの一瞬だが、応じるのに躊躇した。



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50話_人は俺を、おっぱい星人と呼ぶ(Don't call)

急遽街の外れに位置する、朱乃が住む神社にて開かれた一誠と朱乃、ミカエルとバラキエルの会談も滞りなく終わり、ミカエルとバラキエルの両名は其々、己の本拠地へと帰っていった(その帰り際、バラキエルが朱乃に「イッセー君との今後については任せろ。此方で出来る準備はしておく」と告げて、それが何かを察した朱乃が顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた場面があったが余談である)。

 

「俺が、三大勢力の架け橋、か」

 

2人がいなくなり、幾分か静かになった神社の拝殿、その回廊にて一誠は、ミカエルから託されたアスカロンを手にしながら、そう呟いていた。

 

「どうかしましたか、イッセー君?さっきも、返答に躊躇していたみたいですけど?」

「気づいていたか、朱乃。流石に良く見ているな、俺の事」

「うふふ、イッセー君の恋人ですから」

 

そんな一誠の様子が気に掛ったのか、朱乃が寄り添いながら、声を掛けた。

朱乃は見抜いていたのだ、先程の会談でミカエルからアスカロンを託された際に、一誠がほんの一瞬、それに応じるのを躊躇した事を。

 

「恋人、か。果たして俺は、朱乃達に対して恋人らしい事が出来ているのかどうか…」

「え?そ、そんな事ありません、イッセー君は私達の事を心の底から愛してくれて」

「それは違うな。嘗て俺は、焼き鳥野郎とのレーティング・ゲームに勝利した後に皆から告白された時、心火を燃やして、いや、これは意味的におかしかったな、今更ながら訂正しよう、一生懸命皆を幸せにすると宣言した。

 

だが俺はその宣言を果たす為の努力を殆どしていない」

 

そんな朱乃に対して、一誠は自分自身の気持ちを否定する様な事を言い出した。

 

「デートに誘われて応じる事はあれど、此方からデートに誘った事は今まで一度も無い。無論デートプランは朱乃達に丸投げだ。朱乃が此処で暮らしている事も、その経緯も今日初めて知った。俺は皆を愛していると、幸せにすると言って置いて、その実、皆の事について余り知らない、知ろうともしていない。皆の事を知らない癖に、幸せにする等どうやれば出来る?いや、出来る筈もない」

「でも、イッセー君はゲームの開発とか、ライダーシステムに関する作業とかで、色々忙しいからそんな暇がないのは、私は勿論、皆も知っていますよ、だから」

「忙しさにかまけて大事な人を省みない、それは典型的な亭主関白の発想だ。幾ら忙しいからと言えど、恋人の事について知るのを、考えるのを止められる理由にはならない。

 

今の俺は、ミカエルさんが言う様な存在では、このアスカロンを託される様な存在ではない」

 

その訳を話す一誠、朱乃がすかさずフォローするが、それすらも跳ねのけるかの様に自己否定を止めない一誠。

普通なら謙虚にも程があると怒られそうな一誠の言葉だが、それを隣で聞く朱乃は穏やかなまま、

 

「イッセー君も、自分で言っていたでしょう?自分は、自分に出来る事をするまで、と。人であろうと悪魔であろうと、天使であろうと堕天使であろうと、妖怪であろうと吸血鬼であろうと、1人で出来る事には限りがありますわ。その中でイッセー君がこれまで頑張って来た事の大きさは、私達皆知っていますし、純粋に凄いと思います。だからこそ私やリアス、白音さんやアーシアさん、イリナさんやゼノヴィアさんが恋慕い、イリナさんに至っては、エクソシストの立場を投げうってまでイッセー君を追っかけて来たのですよ。悪魔の一生は長いのです、それは転生悪魔であっても変わりません。その中で少しずつ、私達について知りたい時に知って行けば良い。私達もイッセー君の為に何か出来る事をやって行きますわ。恋人という物は、そうやって支え合って行く間柄でしょう?

 

尤も、イッセー君もそれは承知の上みたいですけどね」

 

そう一誠を諭した。

 

「ああ、俺は朱乃達の事を、好きな人達の事を、もっと知って行きたい。少しずつでも、長い時間を掛けても。皆の事を知って、皆と共に幸せになって、ミカエルさんから託されたこのアスカロンに相応しい存在になる」

 

尤もそれは一誠自身が考えていた様で、朱乃の言葉を受け、手にしていたアスカロンを掲げながら、決意の言葉を口にしていた。

 

「…ところで朱乃、先程から当たっているが」

「当てていますわ。というかイッセー君、気付いていますわね?態々見当が付いているのに、それを敢えて聞き出そうなんて無粋なのではありませんでしたか?」

「何を言う。お約束な展開をぶち壊す事の方が無粋だろう。それにしても、もちもちしていて暖かい。この時期に暖かいのは敬遠する所だが、おっぱいの暖かさだけは別物だ。最ッ高に幸せだ!」

 

そんな中、ふと先程から左腕に感じる柔らかい感触が気になったのか、隣に座る朱乃に尋ねた。

所謂『当ててんのよ』である。

そんなお約束な展開に朱乃と言葉を交わしつつ、左腕に感じる朱乃のおっぱいの感触を幸せそうに堪能していた。

 

「あらあら、イッセー君っておっぱい星人なんですか?」

「ああ、筋金入りのな。と言うより、哺乳類は程度の差こそあれ皆おっぱい星人だと俺は思うが。諸々の事情が無い限りは、生まれたての頃に吸って栄養にする物は一緒だろう?」

「うふふ、それもそうですわね。なら、存分に堪能してくださいね」



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51話_波乱含みのConference

一誠と朱乃、ミカエルとバラキエルとの会談が終わってから数日が経過したこの日、駒王学園。

いよいよ三大勢力のトップ同士による会談が行われる事となったこの日、リアスと彼女の眷属達もまた、コカビエルの一件を解決した事から参加する事となった。

 

「御免なさいね、ギャスパー。今日の会談は、三大勢力の首脳と言える方々を迎えた大事な物なの。封印が解除されたばかりで、神器が制御出来たかまだ判断が付かないという魔王様達の判断で、貴方は参加出来ない事になったの。本当に御免なさい」

「大丈夫です、リアスお姉様。クロトさん達もいますから、寂しくありません!」

 

だがギャスパーは、コカビエルの一件に関わっていなかったのもあるが、封印の理由となった神器の制御不安に関して、未だ悪魔勢力の上層部に懸念が残っていた事から、今回の会談を欠席する事となり、此処オカルト研究部の部室で留守番となった。

 

「パパ、ギャスパーの事は我らバグスターにお任せを。パパ達は会談の方に集中して欲しい」

「我が父よ、有事とあらば我ら直ぐに駆けつけよう」

「いってらっしゃい、親父。皆もな」

「偉い人達でいっぱいだろうけど、ピプペポパニックにならない様にね!何か話す前に人の字を3回書いて飲むと良いよ!」

「ポッピー、そのおまじないは舞台に出向く前にすべき事だろう…」

 

その部室にはギャスパーの他、クロト、マサムネ、パラド、ポッピーピポパポ、グラファイト、5体のバグスターが待機していた。

今回の会談は今まで敵対していた三大勢力の首脳会談、その重要度は計り知れない、故に校庭には天使や堕天使、悪魔の戦士達が周囲を警戒、というより互いが互いを警戒している状況、一誠達もなりふり構っていられないと、バグスター達の何体かを密かに配置、いざと言う時に学園内外から鎮圧に出向く準備を整えており、その指令本部としてオペレーター役の4人と、その護衛役であるグラファイトが待機しているという訳である。

 

「行って来る。皆、此処は頼むぞ」

「「「「「「了解!」」」」」」

 

いよいよ会談の時間が迫り、会場へと向かうべくギャスパー達に声を掛ける一誠、彼らの見送りを背に、部室を出た。

 

------------

 

「失礼します」

 

数分後、リアス達は新校舎の会議室前に到着、会談の場である部屋に、ひと声掛けノックをしつつ中へと入って行く。

其処には既に粗方到着したのか、今回の会談に参加する主だった存在が揃っていた。

悪魔側は四大魔王からサーゼクスとセラフォルーの2名、サーゼクスの妻で今回は給仕として来たらしいグレイフィア、それに会談の場である駒王学園を管理するソーナと、彼女とよく似た雰囲気の少女――ソーナの『女王』で駒王学園生徒会副会長である真羅(しんら)椿姫(つばき)が席に着いていた。

天使側はミカエルが、護衛として連れて来たらしい何体かの天使と共に着席している。

堕天使側は首脳の席である最前列中央に、黒髪に金のメッシュを入れたちょい悪オヤジ風の堕天使が座り、その脇をバラキエルと、一誠達と同い年位の、銀髪の少年が固めていた。

 

「紹介しよう、私の妹と、その眷属達だ。先日のコカビエル達による襲撃は、彼女達の活躍によって鎮圧された」

 

リアス達が入室したのを受けて、サーゼクスが他陣営に紹介をし、リアス達もそれに合わせて会釈した。

 

「存じております。コカビエルが首謀した一件について、本当にありがとうございました」

「悪かったな、俺んとこのコカビエルが迷惑かけ、あいだ!?何すんだよ、バラキエル!?」

 

その紹介に、ミカエルと、ちょい悪オヤジ風の姿の堕天使――グリゴリのトップであるアザゼルが対応したが、慇懃に応じたミカエルに対し、コカビエルによる騒動を止められなかった当事者である筈のアザゼルは悪びれる事無く、如何にもやる気無さそうな態度で返す。

が、それを許さない存在が背後にいた。

 

「お前は何時もそうだ、アザゼル。自分の不手際で周りに迷惑を掛けておいて悪びれる素振りもない…

常日頃シェムハザがどれだけ、副総督としてお前がサボった分をカバーしようと苦労しているか分かるか?本当に悪いと思っているのか?今後は状況が状況だ、今までみたいに見過ごされると思うな」

「うぐ…」

 

それは同じくグリゴリの最高幹部であるバラキエル、コカビエルの騒動に娘である朱乃も巻き込まれた事もあってか、或いは普段からアザゼルの振舞いに対して鬱屈が溜まっていたのか、アザゼルの謝罪になっていない対応にマジギレし『げ ん こ つ』というテロップが挟まれそうな鉄拳制裁を行った。

 

「うちのバカ総督が失礼した、サーゼクス殿。コカビエルの一件も含め、深くお詫び申し上げる」

「頭を上げて欲しい、バラキエル殿。アザゼルがそういう性分なのは此方も承知している、気を悪くはしていない。さて、皆揃った事だ、会談を始めるとしよう」

 

突如として降りかかった鉄拳に対するアザゼルの抗議を、普段の振舞いを盾に黙らせたバラキエル、そのままアザゼルの対応について謝罪したが、サーゼクスは気にした様子もなく、会談の開始を告げた。

 

「その前に確認事項を1つ。この会談の前提条件として、此処に集結している者達は皆、最重要禁則事項である『神の不在』を認識している…

では、それを認識している物として、会談を始めよう」

 

その際『神の不在』を認識しているかこの場にいる者に確認を求めたが、それには全員頷いた。

こうして始まった会談、とはいえ最初は嘗ての大戦及びその後の小競り合いを経た現状の確認であり、リアス達が口を挟む余地は無かった、その中でアザゼルが場を凍らせる様な事を口走って、バラキエルから鉄拳制裁を食らう場面が何度かあったが。

 

「それではリアス、コカビエルによる一件について、改めて報告を」

「了解しました、ルシファー様」

 

現状確認もひと段落し、サーゼクスがリアスに、コカビエルが起こした事件の説明を促した。

 

「数日前、教会本部から計3本のエクスカリバーを盗み出したコカビエル及び彼に協力するはぐれエクソシストの集団がこの街に侵入、それを用いて住人達を襲撃する事件を引き起こしました。はぐれエクソシストによる襲撃自体は我々の手の者によって未遂に終わり、その事に業を煮やしたコカビエルが此処駒王学園に襲来、何かしらの術式を発動させようとしましたが、これもまた我々と、当時教会のエクソシストであった紫藤イリナとゼノヴィア両名の協力によって鎮圧に成功しました。以上が、今回の事件の顛末です」

「ありがとう、リーアちゃん☆」

 

それを受けてリアスが説明を行ったが、其処でセラフォルーが何時もの調子で礼を言った事に、彼女の隣に座っていた、妹のソーナが窘める様な視線を向けていたのは余談である。

 

「さてアザゼル、この報告を受けて、堕天使総督である貴殿の意見を聞きたい」

 

その報告を聞いたサーゼクスが、アザゼルに弁明を促す。

 

「先日の事件は我ら堕天使の中枢組織、グリゴリの幹部コカビエルが単独で起こした物だ。本当なら組織の軍法会議によって『地獄の最下層(コキュートス)』での永久冷凍の刑に処する所だったが、まあ既に死んじまったからな。ともあれ、それで全部だ。というかこの辺の説明は、この間転送した資料に全て書いてあっただろ?俺説明する必要が、あべし!?」

「面倒臭がるな、アザゼル。お前は事の重大さを分かっているのか?」

 

それを受けてアザゼルが如何にも面倒臭そうに説明するが、案の定と言うべきかバラキエルからの鉄拳制裁を受けていた。

そんな光景にミカエルは苦笑いしながらも、

 

「全く、最低な部類の説明しか出来ない、身内からボコボコ殴られる、そんな様では、総督の名が廃りますよ。とはいえ、貴方個人、いや、貴方を含めた現在の幹部勢が我々と事を構えたくないという話は知っています。それは本当なのでしょう?」

「ああ。俺は戦争には否定的だ。コカビエルも俺やシェムハザの事をこきおろしていたと、そっちに報告が行っていたじゃねぇか」

「私もだ。というより戦争を行わない意志は、コカビエルを除いたグリゴリ最高幹部の総意である」

 

アザゼル達が戦争を望まない事を確認、アザゼルとバラキエルも応じた。

が、まだミカエルは何処か疑いを抱いていた様子で、

 

「バラキエル殿の意は、グリゴリの総意は分かりました。我らも今回の会談で三大勢力の和平を申し出る積りでした。サーゼクス、貴方もそうでしょう?」

「ああ、確かに私も和平の話を持ち掛けようと思っていた所だ」

「然しアザゼル、一方で貴方は神器所有者を集めているという報告もあります。それも『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)』に『黒刃の狗神(ケイニス・リュカオン)』…

神滅具を筆頭に、強力な物ばかり。一体何を考えているのですか?」

 

アザゼルのとある行動の真意を問うた。

 

「ああ、それな。神器の研究は俺の趣味ってのもある。だが、強力な奴に絞っていたのはとある存在を危惧しての事だ」

「とある存在?それは一体」

 

それにアザゼルは苦笑いしながら答えようとしたその時、

 

『親父!』

「どうした、パラド?」

 

 

 

『敵襲だ!』

 

パラドからの火急の知らせが、一誠に届いた。



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52話_龍騎士、Awakening!

時は少し遡り、オカルト研究部の部室で留守番する事となったギャスパー達は、

 

「コイツでトドメ!これで俺の勝ちだ!」

『K・O!』

「ま、また負けたァ!いやぁ強いですね、パラドさん!ボクのコンボが此処まで通じないなんて…」

「どうやら引き籠っている時に研究しまくっていた様だが、格ゲーは外に出向いて、他のプレイヤーと切磋琢磨してナンボだ。何時まで経ってもCPU相手じゃぁ、駆け引きは上手くいかねぇぜ」

 

厳かな雰囲気を漂わせる会談の状況など関係ないと言わんばかりに、ゲームをしていた。

因みに今ギャスパーとパラドがプレイしているゲームは、一誠が開発した『バクレツファイター』である。

ギャスパーも封印されている時に研究し尽くしていたのか相当な腕前ではあったが、対人戦の経験が全くなかった事による駆け引きの拙さが仇となり、百戦錬磨のパラドには成す術が無かった。

 

「でも嬉しいな、パパが作ったゲームに此処まで熱中してくれる人がいると。ね、皆!」

「その通りだ、ポッピー。人々から目を向けられる事無く、絶版に追い込まれるゲームが山ほどある中、ギャスパーの様なゲーマー達によって、我らが父のゲームが深く、そして広く楽しまれてゆく…

我が事の様に嬉しい物だ」

「応とも。出来る事なら皆がこうして、平和にゲームを楽しめる時が来て欲しい物だ。その時が来るか否かは、この会談の成否が関わっていると言っても過言ではない」

 

そんな2人が熱中する様子を、ポッピーとマサムネ、そしてグラファイトが微笑ましそうに見守っている中、

 

「…どうやら、招かれざる客が来た様だ」

 

クロトがふと、何かしらの気配を感じたかの様に呟いた。

 

「く、クロト?どうしたの、一体?何が、来たの?」

「敵襲だ。大方、会談の情報を聞きつけた各勢力のタカ派連中か、或いは三大勢力に恨みを持つ存在が妨害しようと、仕掛けたのだろう」

「て、敵襲!?」

「想定はしていたが、当たって欲しく無かったぜ!こっちを滾らせる様な真似しやがって!」

 

会談を妨害すべく襲撃して来た敵の存在を、いち早く察知したクロトは周りにその事を知らせつつ、戦闘に向けての準備に入る。

 

「だがクロト、そういった事態も織り込んで、この学園には三大勢力の実力者によって強固な結界が張られている筈。仮にそうであったとしても、慌てる必要は無いのではないか?パラドも落ち着け」

 

が、そんなクロトの行動と、パラドの激昂にグラファイトが待ったを掛けた。

そう、この会談は今まで敵対関係にあった三大勢力、その首脳同士による会談なのだ、今まで敵対していた者同士のトップ同士が話し合いの場を設ける事に不満を持つ内部の者、或いは三大勢力に恨みを抱く存在が、会談の存在を知ればそれを妨害しようと考えるのは容易に想像がつく。

故にその対策として三大勢力の実力者が協力して、強固な結界を張ってある、これによって如何なる手段を講じようと内部への侵入はおろか、外部への退出も出来なくなっているのだ、が、

 

「グラファイト、そうとも言えん様だ。セキュリティホールと言うべきか、結界に穴が出来た所がある。敵は其処から侵入している様子だ。凄腕の術者が此方に悟られぬ事無く穴を開けたか、或いは既に開いていたという情報が漏れたか…」

「それと、どうやらギャスパーの情報が、時を止める神器を有するギャスパーが、制御不安から此処で留守番しているという情報が何処かから漏れたらしい、一部が別動隊として、此方へ向かっている様だ」

「え、えぇ!?ぼ、ぼぼぼボクは、どどど、どうすれば…!」

 

何事にも絶対は無い、マサムネの探査によって、結界に穴が開いているのが見つかり、敵が其処から侵入している事も発見された。

更に悪い知らせは届く、どうやらギャスパーがこのオカルト研究部室にて留守番しているという情報が漏れたらしく、一部が此方に接近している事が、クロトの探査で発覚した。

恐らくは彼の、未だ制御に不安が残る神器の力を暴走させ、襲撃を容易にしようという魂胆なのだろう。

悪い知らせの連続に、ついさっきまで怖いものなしと言える位に快活だった時から一気に、嘗ての恐怖心丸出しな姿に逆戻りしてしまい、挙動不審になるギャスパー。

 

「落ち着くんだ、ギャスパー!言った筈だ、恐怖に囚われ、何事もネガティブに考えてはいけない!後ろ向きに考えれば考える程、神器は良からぬ働きをしてしまう!慌てふためいていては敵の思う壺だ!こういう時こそ勝利のイマジネーションだぁぁぁぁ!」

「勝利の、イマジネーション…!

はい、クロトさん!ボクは強い!ボクはやれる!ボクなら出来る!そう、ボクはライダー世界のキング!」

 

そんな彼に飛ぶクロトの檄、それによってギャスパーの心は平静を取り戻した。

 

「そうだ、その意気だ、ギャスパー!その意気で、君の主を、リアスママ達を守りに行くんだ!此処に来るのはあくまで別動隊、本隊は三大勢力のお偉いさんを討つべく大多数の人員を割く筈だ!此処は我らバグスターに任せ、新校舎の会議室に向かうんだ!」

「はい、行ってきます、皆さん!」

 

先程までの快活さを取り戻したギャスパーを見て一安心したクロト、そのままギャスパーに、リアス達がいる会議室に向かう様指示を飛ばし、ギャスパーもそれに応じて魔法陣によって転送された。

 

「あ、あれ!?一体何処に!?」

「あのハーフヴァンパイアが、いない!?」

「ギャスパーならもういないぞ。貴様らの考えは我らに筒抜けだ!」

『ナイトオブサファリ!』

 

それから数秒して、魔術師の様な格好の襲撃者達が部室へと入って来たが、標的であるギャスパーの姿がない事に戸惑いを隠せなかった。

そんな襲撃者達からクロト達を庇うべく前に出るグラファイト、その右手には、ベージュのガシャットが握られていて、背後には夜のサバンナらしき背景に『NIGHT OF SAFARI』の文字と、ライオンやシマウマ、キリンにチーターといったサバンナに住む動物達がデカデカと描かれたスクリーンが現れた。

 

「培養!」

 

そしてその掛け声と共にガシャットを胸に突き刺す、すると身体から緑色の泡が沸き上がり、同じ色のオーラが放たれると共にその姿は緑色のドラゴンを思わせる異形、マドウダンジョンの主人公である勇士グラファイトの真なる姿、自らに流れる龍の血が覚醒した龍騎士態へと変貌した。



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53話_逆十字に集いしKnights!

何でゴッドイーター3はVita対応じゃないんだろう…


「敵襲か!分かった、此方も対処する様、伝えて置く。其方は頼むぞ!」

『分かった、親父!と言っても』

『この世の平穏を脅かす不埒者共よ!この俺が直々に処断してくれる!』

『…こっちの敵は、もうグラファイトの奴が粗方片付けちまったけどな』

「…その様だな」

 

時は戻り新校舎の会議室、今しがたパラドから敵襲の連絡を受けた一誠が了解の意図を伝え、引き続き部室での任務を続ける様に連絡していたが、部室への襲撃がグラファイトの圧倒的武力で既に鎮圧を完了していた事実に、秒殺と言って良い事態に、パラド共々唖然としていた。

其処へ現れる魔法陣、其処から現れたのは、クロトからの指示で会議室へ向かったギャスパーだった。

 

「ギャスパー君!?君は向こうで待機する様リアスを通じて言い渡した筈だが…」

「クロトさんから、こっちに向かう様言われました!ボクの神器を暴走させて襲撃を迅速に進めたいが為に、別動隊が部室に押し寄せている以上、此処の方が安全だとの事です!」

「そういう事だったのか、分かった。それならば確かに此方の方が安全だね」

 

神器への制御不安から会談への参加を認めず、部室で待機する様リアスを通じて言い渡していた筈のギャスパーが此方に来た事を咎めようとしたサーゼクスだったが、ギャスパーからその経緯を聞いて納得した。

 

「どうやら奴らの初動は躓いた様だな。願ってもない好機だ、畳み掛けるぞヴァーリ。お前は外に出て、襲撃者共を蹴散らせ。『白龍皇』であるお前が出れば、相手も動揺するだろ」

「了解だ、アザゼル」

『Vanishing Dragon Balance Breaker!』

 

その様子を見ていたアザゼルは今の状況を好機と捉えたのか笑みを浮かべながら、隣にいる銀髪の少年――ヴァーリに指示を飛ばす。

それを受けてヴァーリは、自らに宿った神器『白龍皇の光翼』の真なる力――禁手『白龍皇(ディバイン・ディバイディング)の鎧(・スケイルメイル)』を発現、白い龍の様な全身鎧を身に纏い、校庭へと飛び立った。

 

「あれが神滅具『白龍皇の光翼』を宿した『白龍皇』…!

凄まじい実力ね、私達も行きましょう!」

「皆、これを!」

『リバースクロスナイト!』

 

校庭に出現した巨大な魔法陣、其処から現れた多数の襲撃者相手に大立ち回りを繰り広げるヴァーリに触発されたか、自分達も迎撃に回ろうと号令を掛けつつガシャットを構えるリアス、それに待ったを掛ける様に懐から1つのガシャットを取り出す一誠。

黄金をベースカラーとし、底部が狼の頭部を模した物となっている異様な外見のガシャットを起動させると、荒廃した都市らしき背景に『REVERSE CROSS KNIGHT』の文字と、神々しくも不気味な雰囲気を纏わせる魔獣、そして何処か機械的な武器を手に魔獣へと立ち向かう戦士達の姿がデカデカと描かれたスクリーンが一誠の背後に出現、更にガシャットが分裂するかの様に幻影が現れ、それらはやがて見た目がそっくりな9つのガシャットと化し、リアス達の手へと飛んで行った。

 

「イッセー、このガシャットは一体…?」

「リバースクロスナイトガシャット。このガシャットは他とは違い、バグスターの媒介となる事ではなく、仮面ライダーの強化――レベルアップだけを目的としたガシャットだ。このガシャットを併用する事で、ライダーのレベルを5まで引き上げられる!

 

だが、今まで使用して来たガシャットとは比べ物にならない程の力を有するだけに制御が厳しく、こうして10人のライダーが揃っていないとマトモに使用出来ない代物だ」

 

リバースクロスナイト――これもまた一誠が開発したゲームの1つで、遥か未来に突如出現した異形『カミ』を倒すべく、聖職者だった主人公達が『カミ』の力を取り入れた武器を手に立ち向かうハンティングアクションゲームだ。

その題名となっているリバースクロス――逆十字は一般的に、教会の象徴である十字架の逆位置という位置づけから神への反逆、悪魔崇拝の象徴として用いられる事が多く、ゲーム内においても聖職者だった主人公が人間の、地球の未来の為に信仰を捨てて『カミ』を倒すべき敵と捉えて戦う、という意味からそう名付けたとネット界隈では噂されているが、

 

「リバースクロス、逆十字、成る程、聖ペテロの十字か。まさか教会を追放され、悪魔となった私達が、今再び教会の、聖ペトロの下に集う事になろうとはね」

「そうね、ゼノヴィア。教会を追放されても、悪魔に転生しても、信仰を捨てなかった私達が再び、神の教えを守る騎士として集う、それも三大勢力の和平会談の場で。何の巡り合わせかしら」

「はい!行きましょう、イリナさん、ゼノヴィアさん!主の教えの下に!」

 

それは近代において『世界で最も邪悪な男』として知られるオカルティスト、アレイスター・クロウリーによる解釈に過ぎず、実際は教会の初代教皇として知られる聖ペトロが磔刑に処される際『教祖と同じ状態で処刑されるに値しない』として、自ら逆さまに掛けられる事を選び、実行された事から『謙虚』『教祖と比較しての無価値』の象徴、並びに教皇権を示すものとして用いられる。

一誠もそれは知っていて、聖職者だった主人公が『神』の教えの下に『カミ』を討つ、というダブルミーニングでこの題名を付けたのが事の真相だ。

 

「ありがとう、イッセー。気を取り直して、行くわよ、皆!」

「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」

『『マイティアクションエックス!』』

『タドルクエスト!』

『ハリケーンニンジャ!』

『バンバンシューティング!』

『バクレツファイター!』

『ハテサテパズル!』

『バクソウバイク!』

『ときめきクライシス!』

『ハコニワウォーズ!』

『プレデター!』

『ナイフ!』

『ソード!』

『ブレード!』

『スピア!』

『ハンマー!』

『サイズ!』

『エッジ!』

『ムーン!』

『ライフル!』

 

そんな題名に関する話は置いて、一誠からこの状況において心強い力を受け取ったリアスは改めて号令を掛け、その返事と共に全員がガシャットを起動させる。

 

「大大大大大!」

「術式レベル5!」

「チャプター5!」

「グレード5!」

第五戦術(フィフス・タクティクス)!」

「ラウンド5!」

「5連鎖!」

「5速!」

「ファイナルステージ!」

第五戦略(フィフス・ストラテジー)!」

「「「「「「「「「「変身!」」」」」」」」」」

『『『『『『『『『『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!』』』』』』』』』』

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクション、エックス!』

『辿る巡る!辿る巡る!タドルクエストォォォォ!』

『マキマキ!竜巻!ハリケーンニンジャ!』

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティアクショォォォォン!エックス!』

『ババンバン!バンババン!イェーイ!バンバンシューティング!』

『ぶち込め正拳!バクレツファイター!』

『運命の鎖、解け!ハテサテパズル!』

『爆走!独走!激走!暴走!バクソウバイク!』

『ちょっぴり照れるわ、ときめき!クライシス!』

『ハコニワウォーズ…!』

 

そして何時も通りの手順で、其々の仮面ライダーへと変身した。

すると、

 

『『『『『『『『『『アガッチャ!マックス、パワー!マックス、スピード!リ、バース、クロス、ナイト!』』』』』』』』』』

 

エグゼイドの背後にあったスクリーンから、狼を思わせる巨大なロボット――ナイトゲーマが出現、その頭部がエグゼイドの頭部と合体する、それと共にその身がバラバラになり、其々のライダーへパーツが飛んで行った。

 

『エグゼイド!』

「ギャォォォォォォォォ!」

 

まずはエグゼイド、頭部が合体しただけでは飽き足らず、左腕に赤色の腕輪が装着されると共に、その手にショットガンと思しきパーツが装備され、咆哮を上げた。

 

『ブレイブ!』

「これより、襲撃者切除手術を始める!」

 

次にブレイブ、エグゼイドの時と同じく左腕に赤色の腕輪が装着されると共に、その手にナイフと思しきパーツが装備され、ガシャコンソードとの二刀流の構えを取った。

 

『風魔!』

「さあ、振り切っちゃうよ!」

 

続いて風魔、左腕に赤色の腕輪が装着されると共に、その手に刀と思しきパーツが装備され、それを肩に担ぐ様に構えた。

 

『ゲンム!』

「ノーコンティニューで、クリアするわ!」

 

更にゲンム、左腕に赤色の腕輪が装着されると共に、その手に大剣と思しきパーツが装備され、重かったのか両手で構えた。

 

『スナイプ!』

任務開始(ミッション・スタート)ですわ!」

 

スナイプは、左腕に赤色の腕輪が装着されると共に、その手に西洋槍と思しきパーツが装備され、ガシャコンマグナムを装備した右手が前に、槍を装備した左手が後ろになる様、半身で構えた。

 

『ノックス!』

「心の滾りのままに、ぶっ潰します!」

 

ノックスは、左腕に赤色の腕輪が装着されると共に、その手にハンマーと思しきパーツが装備され、怪力に物を言わせて、片手で正眼に構えた。

 

『パラガス!』

「私の掌の上で、ばらばらにしてやるのにゃ!」

 

パラガスは、左腕に赤色の腕輪が装着されると共に、その手に大鎌と思しきパーツが装備され、風魔と同じく肩に担ぐ様に構えた。

 

『レーザー!』

「やはり人型になった方が、違和感が無いな。このままノリ良く行かせて貰おう!」

 

レーザーは、身体を覆っていたパーツが飛び散った後、変形する事無く浮き上がり、腕と思しきパーツ2つと、踵部分に刃を生やした脚と思しきパーツ2つが装着、人型の姿と化し、左手にガシャコンスパローを、右手にデュランダルを持ちながら、そう感慨深げに呟いていた。

 

『ポッピー!』

「私も、頑張ります!ポパピプペナルティ、退場です!」

 

ポッピーは、左腕に赤色の腕輪が装着されると共に、その手にチャクラムと思しきパーツが装備され、これまた重かったのか、ゲンムと同じく両手で構えた。

 

『クロノス!』

「ボクも戦います!皆さんを、お守りし、敵を絶版にします!」

 

そしてクロノスは、左腕に赤色の腕輪が装着されると共に、その手に小銃と思しきパーツが装備され、やる気十分と言わんばかりの声を上げながら構えた。

全員が変身し終えたのを受け、クロノス以外の9人がヴァーリを追う様に校庭へと飛び立ち、クロノスもまた会議室の窓から身を乗り出して銃口を敵へと向けた…!



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54話_Terroristの影

注:今回の投稿の前に4章を読み返し、加筆修正しました(48話におけるレーザーのライダーゲージ描写、53話における各ライダーの決め台詞)


堕天使勢力に属する『白龍皇』ヴァーリが先陣を切って、襲撃者を相手に無双乱舞を繰り広げている中に、リバースクロスナイトガシャットの力でレベル5となった仮面ライダー9人(+後方から狙撃するクロノス)が加勢すれば一体どうなるか。

答えは単純明快と言って良いだろう、蹂躙という言葉すら薄っぺらく聞こえる程の地獄絵図になる。

 

「我らが主の名の下、血祭りにしてくれる!」

 

左手にガシャコンスパロー、右手にデュランダルを持つだけではなく、両踵からも刃を生やしたレーザーは、激しい振付のダンスを踊っているかの様に大暴れしながら敵をバッタバッタと薙ぎ払い、

 

「ふっ!はぁっ!やぁっ!」

 

左手にナイフ、右手にガシャコンソードの二刀流で戦うブレイブは、炎や氷、雷等の様々なエネルギーを状況に応じて切り替えながら刀身に纏わせて敵を圧倒し、

 

「ちょっと、左手に刀は重たいかなぁ」

 

左手に刀、右手にガシャコンニンジャブレードの、ブレイブと同じく二刀流(但し得物の重みは逆になっている)で戦う風魔は、左手一本で持つ刀の重さに愚痴を零しながらも敵を切り裂き、

 

「あらあら、三大勢力の偉い方々が集う場に恐れ多くも土足で踏み入って、タダで済むとお思いですか?」

 

左手に槍、右手にガシャコンマグナムの武装で、右手を前にした半身の構えを取るスナイプは、マグナムによる銃撃で敵を撃ち抜きつつ、密着戦を仕掛けようとする敵を見落とす事無く槍を振るい、

 

「ほいほいっと!」

 

左手に大鎌、右手にガシャコンパラブレイガンの武装で戦うパラガスは、大鎌の重みを感じさせない攻撃スピードと、エナジーアイテムを駆使した立ち回りで敵を翻弄し、

 

「おりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!」

 

ハンマーを持つノックスは、どういう構造になっているのか、打撃部の片側をロケットエンジンに変形させ、その噴射による勢いを活かした怒涛の連撃を、持ち前の怪力で制御しつつ繰り出し、

 

「ギャォォォォォォォォォォォン!」

 

左手にショットガン、右手にガシャコンブレイカーを持ち、上半身が狼を模した装甲で覆われたエグゼイドは、ショットガンでの銃撃、ガシャコンブレイカーでの斬撃で的確に攻撃しつつ、頭部の装甲がまるで生きた狼の様に動き、敵を装甲や防御用の術式ごと食らいつくすかの様に噛みつき、

 

「食らいなさい、我が滅びの一撃を!」

 

大剣を両手で構えるゲンムは、その刀身に滅びの魔力を纏わせた状態で振り下して敵を消失させ、

 

「え、えいっ!」

 

チャクラム状の武器をゲンムと同じく両手で構えるポッピーも今回ばかりは致し方ないと考えたのか、襲い掛かる敵の攻撃をガシャコンバグヴァイザーⅢから放たれるビームバリアで凌ぎつつ、刃が無い部分で殴り飛ばす様に攻撃して昏倒させた。

更に前線から離れた会議室からも、

 

「そこぉ!はい次ぃ!」

 

窓から身を乗り出して小銃を構えるクロノスが、敵を狙って次々と、的確に撃ち抜いていた。

 

「はー、こりゃあすげぇ。これが噂に聞く仮面ライダーの力か。今のヴァーリにも引けを取らねぇとは」

 

会議室にいたアザゼルも感心する程の蹂躙劇に、このまま襲撃が滞りなく鎮圧されるだろうという空気が場を支配してくるが、勿論こんな状況を敵が指を咥えて見ている筈もなく、

 

「これは、旧レヴィアタンの魔法陣…!」

「そ、そんな、何で…!」

 

突如として会議室に出現した魔法陣、その形状を見たサーゼクスが、苦虫を噛み潰した様な表情をし、セラフォルーも驚きと悲しみを隠せていなかった。

 

「旧レヴィアタン、成る程、旧魔王派とか言う派閥か。この状況で乗り込んで来るとはもしかしてソイツは、いや旧魔王派は『奴ら』と手を組んだって事か?」

「アザゼル、奴らとは一体?もしや、先程言っていた『とある存在』と何か関係があるのですか?」

 

一方でアザゼルは、余りにも狙い過ぎなタイミングで出現した魔法陣に、とある存在との関係が頭を過り、ミカエルは先程からアザゼルが話題に上げる『存在』について問い掛けていた。

 

「ごきげんよう、偽りの魔王達よ」

 

そんな中で魔法陣から、褐色の肌に露出度の高いドレスを身に纏った女性が敵意を滲ませながら、慇懃無礼な挨拶をしながら出現し、

 

 

 

「『止まれ』」

 

そのまま次の行動に移る事無く、微動だにしなくなった。

 

「何だ?現れたかと思ったら急に動かなくなったぞ?」

「バラキエル、そういやぁアイツ、何か身体やら服やらがモノクロになっていねぇか?て事は、サーゼクスが言っていたハーフヴァンパイアの神器の力で時を止められたか…

何はともあれ、校庭の連中も片付いた様だし、これで一件落着か」

 

出オチと言わんばかりの展開に戸惑いを隠せないながらも、襲撃を仕掛けた女性を捕縛しつつ呟いたアザゼル。

其処へ、

 

「今、戻りました」

任務完了(ミッションコンプリート)、ですわ」

「ふぅ、滞り無く終わりました」

「お偉いさんが集まっていると分かっていて襲撃して来たっぽいからどれ程かと思ったけど、大したこと無かったのにゃ」

「そうですね、姉様。身の程知らずという言葉がぴったりです」

「白音、そういう奴を日本では井の中の蛙と言うのだろう、確か」

「その井の中での地位がどうだったかにもよるけどね」

「今でもドキドキしています、これが戦争…」

「大丈夫か、アーシア?まあ、無理もないか…」

 

前線に出ていた9人のライダー達と、

 

「今戻ったぞ、アザゼル…

ちっ、カテレア・レヴィアタンか。性懲りも無くまた来るとはね。何度も『禍の団(カオス・ブリゲート)』なるテロ組織に加担する積りは無いと断っている筈だがな…」

「え、ヴァーリお前『禍の団』から勧誘されていたのかよ?聞いてねぇぞそれ」

「聞かれなかったからな。安心しろ、今も言ったが加担する気は微塵もな、痛っ」

「安心できるか、馬鹿者!そういう重大な事は聞かれずとも伝えないか!」

 

ヴァーリが帰還したが、其処でヴァーリが色んな意味で爆弾発言と言える言葉を発し、それをバラキエルから鉄拳制裁という形で咎められた。

 

「『禍の団』?アザゼル、それは一体?」

「もしやアザゼル、その『禍の団』こそが、貴方が危惧していたという『存在』ですか?」

 

そんなアザゼル達の会話の中で、気になる単語を耳にしたサーゼクスとミカエルが尋ねた。

それを受けて「やっと話せる」とぼそっと呟いたアザゼル達が説明を始めた。

 

「実を言うとそんな前でも無いんだがな、うちの副総督であるシェムハザがとある組織の情報を掴んだんだ。その組織は三大勢力にとって危険分子と言える存在を集めて、何か大事を引き起こそうとしている。その組織の名は『禍の団』、三大勢力の現状を良く思わねぇ連中が結成した、いわばテロ組織だ」

「そのテロ組織には、旧魔王派も派閥全体で加担していた様だ。俺もその旧魔王派を通じて何度か勧誘されていたんだ、神滅具を宿した『白龍皇』として、そして、

 

 

 

旧ルシファーの血筋を持つ存在としてね」



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55話_Alliance結成!

旧魔王派、悪魔勢力が現在の方式でトップである四大魔王を選出するより前、大戦によって当時の四大魔王が全員亡くなる前まではいわゆる世襲の形で引き継がれており、その血筋を引く悪魔をトップとした派閥の事を指す。

だが大戦による混乱に伴う内紛によって旧魔王派は敗北、冥界の片隅へと追いやられていたのだ。

今回、アザゼルの言う『禍の団』に加担し、三大勢力の首脳が集う会談の場に襲撃したのも、それに対する不満が爆発した結果だろう、現に、今しがた会議室に乗り込むも、出オチと言わんばかりに返り討ちとなったカテレアもまた旧魔王レヴィアタンの血筋を引く、旧魔王派の悪魔だ。

そして、堕天使勢力に属する筈のヴァーリもまた、旧魔王の一角を占めるルシファーの血筋を引くと主張し、その証拠だと言わんばかりに『白龍皇の鎧』を解除した彼は、何対もの悪魔の翼を展開した。

 

「我が名はヴァーリ・ルシファー。嘗ての大戦で死んだ先代魔王ルシファーの孫である父と、人間である母との間に生まれたハーフ悪魔だ。わが身に神滅具『白龍皇の光翼』を宿したのも、人間の血をも引いているが故だ」

「そ、そんな…」

 

余りの事実に驚きを隠せない悪魔の面々、それを他所に、ヴァーリは話を続ける。

 

「旧ルシファーの末裔であり白龍皇でもある俺は紆余曲折を経てグリゴリに身を寄せ、アザゼルの下で修業に励んだ末、今の実力を得られた。そんな俺の実力、血筋、そして白龍皇という看板に目を付けたのだろう。つい最近、其処で固まっているカテレア・レヴィアタンから禍の団に加わらないかと勧誘されたんだ。戦闘狂である俺の性根を見抜いてか『アースガルズと戦ってみないか?』等と口説かれてね。もし、今の俺にとって興味を引く存在と出会っていなければ、二つ返事で了解していただろうね。ただ、断らせて貰ったよ」

「そういやぁ、さっきから疑問に思っていたんだ。今言った通り、お前の性根ならその誘いにホイホイ乗っかってもおかしくねぇ。それを断るなんて、一体どんな存在に興味を引かれたんだ?」

 

自らが此処まで強くなった経緯を挟んで、禍の団からのスカウトを受け、それを断った事まで話したヴァーリ、だが其処で疑問を持ったアザゼルが口を挟んだ。

 

「どんな存在って、アザゼルはもう気付いているんじゃなかったのか?

 

 

 

仮面ライダーだよ」

「え、俺達が…?」

 

そんなアザゼルに何処か呆れた様な素振りを見せながらも答えを明かすヴァーリ、その答えに戸惑ったのは、名指しで指名された仮面ライダー、その開発者である一誠だ。

 

「ああ。先日コカビエルが此処を襲撃した一件の際、コカビエルを鎮圧・回収する様にとのアザゼルの命でこの街に入り、其処で君達仮面ライダーの戦いを見させて貰った。俺とて白龍皇の力を駆使しなければ梃子摺るであろうコカビエル相手に果敢に立ち向かった末に倒して見せた挙げ句、今こうして禍の団による襲撃も難なく鎮圧して見せたその実力もそうだが、あの時の君の言葉に感銘を受けたんだ。

 

自分達の強さは、コカビエルが下らないと断じた、日常の可能性であると。

 

その言葉で俺は君達仮面ライダーに、その強さだと言う日常の可能性に、それの留まる事を知らないだろう成長に興味を引かれてね、それを見届けてみようと思ったんだ。だが禍の団に入ってしまえばそれを見届ける事はおろか、強さの源である日常を潰す事になりかねない。だから誘いを断ったのさ」

 

まさか自分があの時コカビエルに言い放った言葉が、ヴァーリが道を踏み外そうとしたのを引き留めたとは思いもよらなかったのだろう、一誠はヴァーリの話を何処か照れ臭そうに聞いていた。

 

「尤も、俺が嫌だと言ってもカテレアはしつこく食い下がって来たんだが、何処かから連絡が入った途端、後ろ髪引かれる様子だったが引き下がってくれたよ。何か『赤い龍』について話があった様だが…」

「『赤い龍』だと!?まさか、禍の団は『赤い龍』を既に…!」

「かも知れないね。二天龍が出会った時、それは死ぬまで続く壮絶な戦いの幕開け、それが二天龍を宿した者の宿命だ。それを危惧して、俺のスカウトを断念したのかも知れないな」

 

だがそんな和やかな雰囲気も、ヴァーリが口にした『赤い龍』の存在が吹っ飛ばした。

赤い龍、正式には赤龍帝と呼ばれる存在は白龍皇と対をなす存在である。

 

嘗ての三大勢力による大戦で聖書の神も四大魔王も亡くなったのは、実は2体のドラゴン――後世で二天龍と呼ばれる2体による戦闘に巻き込まれた結果が大きい。

何が原因かは未だ解明されていない二天龍による戦闘によって甚大な被害を被った三大勢力は、聖書の神や四大魔王、そしてアザゼル達の協力によってその魂を神器に封印する事にし、結果として聖書の神や四大魔王の犠牲を払う形で成功した。

この二天龍の魂を宿した神器こそが、ヴァーリが宿す『白龍皇の光翼』、そして『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』の2つ、どちらも神滅具だ。

だが神器に封印されて尚、この二天龍による戦闘の余韻は残っており、白龍皇と『赤龍帝の籠手』を宿した存在――赤龍帝が出会った時には、周りをも巻き込む壮絶な戦いの末に双方亡くなるという事態が過去何度も引き起こされている。

 

白龍皇であるヴァーリへのしつこいまでの勧誘が突如として止んだのは、禍の団が既に赤龍帝を配下に加えた故に、ヴァーリとの仲間割れを回避する為…

その事実に、会議室に戦慄が走ったが、それだけでは終わらなかった。

 

「それだけじゃねぇぜ。禍の団のトップだが、ソイツは『無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)』オーフィスだ」

「「「な!?」」」

 

アザゼルが発表した禍の団のトップ、それはこの世界において最も敵に回すべきでない存在だった。

 

『無限の龍神』オーフィス。

無限を冠した二つ名に恥じる事無く、無限の強さを有すると言われているドラゴンで、ドラゴン族、いやこの世界ですらも最強と言われている存在である。

だが無限とは『無』でもある、感情らしい感情が無く、故に野望も有していないオーフィスは、その強さとは裏腹に、この世界において何かしらの爪痕を残した訳では無かったのだが…

 

「長年憎み合って来たが故に噴出するであろう不満、そして我々の成すべき事を否定する『禍の団』…

問題は山積みです。ですが、いや、そうであるが故に、今こそ我々が手を取り合い、平穏なる未来に向けて連携すべき時!アザゼル、サーゼクス!今こそ我々の、平穏なる未来へと歩みを進めましょう!」

「「ああ!」」

 

そんな不安要素しかない状況、だがそんな時だからこそ手を取り合って前に進むべき、そんな考えで一致したミカエル、アザゼル、そしてサーゼクス。

こうして、嘗ての大戦以降睨み合っていた三大勢力の和平は成立し、同時に同盟が結ばれる事となった。

 

------------

 

「…完成だ、マイティブラザーズXXが、遂に出来た」

 

それから程なく、一誠は自室でそう呟きながら、ある機械に差し込んでいたガシャットを取り出す。

そのガシャットはドクターマイティXXガシャットと同じ大きさで、色はオレンジと水色のツートンカラー、ラベルには『MIGHTY BROTHERS XX』の文字と、マイティアクションXにも登場している一頭身のキャラクターの色違いらしきキャラクターが2体描かれていた。

 

「然し、満足している暇は無い。禍の団が何時また襲撃を行うか分からない上、今までのガシャットだけでは対処出来ない程の実力者も控えている様だ。開発予定にあるガシャットの開発スケジュールを前倒しするだけでは足りない、今までとは方向性の違うガシャットの開発にも取り組まないと行けないな。皆を、この街を、そして今の日常を守る為に!」

『マイティブラザーズダブルエックス!』

 

そう呟きながら、今しがた完成したばかりのライダーガシャットを起動させる一誠、その眼には、揺るぎない決意が滲み出ていた。




次章、ハイスクールDevil×Ex-aid――

「此処が、冥界か…」

夏休みに入り、冥界のグレモリー領で過ごす事になったリアス達――

「私もまた、魔王になる事が夢です」

其処でリアスは、己の夢を明かす――

「私は、役立たずだから、何もかもが中途半端だから…!
だから、皆以上に頑張らないといけないんです!」

その夢に向かって皆が突き進む中、白音が倒れる――

「後は、これを、白音ちゃんに…」

白音の悲壮な決意を聞いた一誠は、ガシャットの開発を加速、そして、

『デンジャラスゾンビ!』
「グレードX、変身!」

リアスは、禁忌に手を出した――

第5章『冥界合宿のHATESATE PUZZLE』


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5章『冥界合宿のHATESATE PUZZLE』
56話_いざGremory's Territoryへ!


「三大勢力首脳による会談の際にも顔を合わせてはいるが、改めて。今日付けで此処駒王学園に、堕天使代表特使として派遣される事となった、ヴァーリ・ルシファーだ。宜しく頼む」

「ヴァーリは二学期に入ってから、高等部二学年の生徒として正式に転入する事になったわ。それと同日、此処オカルト研究部に入部する事にもなっているわ。ヴァーリ、ちょっと早いけど、私達オカルト研究部は貴方を歓迎するわ、悪魔としてね」

「心遣い感謝する、リアス・グレモリー。いや、リアス部長」

 

翌日の放課後、オカルト研究部の部室、其処には何時ものメンバーに加えて、ヴァーリの姿があった。

どうやら同盟を結ぶ際、堕天使側から特使が駒王学園に派遣される事になった様で、その特使として、旧ルシファー家の血筋を引くハーフ悪魔であるヴァーリに白羽の矢が立ったらしい。

余談ではあるがヴァーリの話によると、アザゼルもその特使に立候補しようとしたらしいが「総督であるお前が態々行ってどうする。これを口実にサボろうなど許さん」とバラキエルから例の如く鉄拳制裁を食らい、お流れになっただけならまだしも「とか言ってお前も朱乃の事が気になって行きてぇんじゃねぇの?」と余計な事を口にした所為でプロレス技である卍固めを決められ、暫く失神していたとか。

 

「さて、夏休みの予定だけど、私達は夏休み中、冥界のグレモリー領に帰省する事になっているわ」

「そうなのか、丁度良いタイミングだな。ジオティクスさ、義父さんにはこの前挨拶したとはいえ、他の家族の方達にも挨拶をしなければならないし。そう思うと、今から緊張するな…」

 

何はともあれ、特使として派遣されたヴァーリの駒王学園高等部への転入と、オカルト研究部への入部も同時に決まり、話題は夏休み中の予定についてとなった。

 

「うふふ、新作ゲームの発売を伝える為に、夏コミの舞台である東京ビッ○サ○トのステージで大々的な発表会を行ったイッセー君も、案外緊張するんですね」

「それとこれとは訳が違うぞ、朱乃。あの場はある意味でホーム、ほぼ自分の望み通りに、内容やシチュエーションを整えた上で臨めたから出来た事。一方で今回はアウェイ、どの様な事態が待っているか…」

「心配は要らないぞ、イッセー。私達が付いている」

「悪魔勢力は一夫多妻制、私達も部長と同じく、イッセー君と付き合っている事を伝えなきゃ、だし」

「わ、私もイッセーさん達と共に頑張ります!」

「私もイッセー先輩の側で、共に頑張ります!行きましょう皆さん、私達の幸せな未来の為に!」

「そ、そんなに気張らなくても大丈夫よ、皆。いつも通りなら上手く行く、私が上手く行かせて見せる」

 

今年に入ってから眷属となったが故に、冥界のグレモリー領で過ごす事を始めて知った一誠達、殊に一誠はリアスの家族に挨拶をしなければと既に意気込み、少なからず緊張もしていた。

そんな一誠が抱く『重し』を分かち合うと言わんばかりに、ゼノヴィア達もまた意気込むが、余りにも気張り過ぎている己の眷属達にリアスは苦笑いを浮かべながらも、何処か幸せそうだった。

 

「あ、あれ、何だか口が甘ったるい様な…!?

く、口から砂糖が!?」

「祐斗先輩、漫画やアニメじゃ無いんですかr、ぼ、ボクの口からも砂糖が!?」

「木場祐斗、ギャスパー・ヴラディ、一体何をあs、お、俺もだ…」

 

そしてそんな甘ったる過ぎる空気にやられたのか、祐斗もギャスパーも、そしてヴァーリも口から砂糖を吐いていた。

 

「良いにゃぁ、皆。イッセーを中心に、恋という名の強固で、濃密で、キラキラした絆で結ばれている」

 

そんな光景を黒歌は1人、羨ましそうな、寂しそうな目で見ていた。

 

「私も入りたいのにゃ、あの絆の中に。だけどアラサーに足を踏み入れ、皆に出遅れちゃった私なんか、イッセーが恋人として見てくれる筈もないわよね、つい最近までそんな素振りも見せなかったし…

何処で選択を間違えちゃったのかしら、白音がイッセーと昼食を共にしている事を話し始めたあの時?イッセーが悪魔に転生したあの時?それとも、パラガスに変身する為の力を授かったあの時?良いなと思ってアプローチを始めるチャンスは幾らでもあったのに、今思えば何度もふいにしちゃったのにゃ…」

 

何時の間にやら芽生えた一誠への恋心と、既に割り込む余地が無くなってしまった目前の光景という現実、その葛藤に黒歌は苦しんでいた。

それ故に黒歌は気づかなかった、今のままならない状況に苦しんでいるのが自分だけでは無い事に…

 

------------

 

さて、そんな甘ったる過ぎる空気が蔓延していた影響で連絡が遅れていたが、どうやら今回の帰省は単なる里帰りではなく、次世代の悪魔勢力を担うであろう若手悪魔の会合が開かれる事となったそうだ。

 

「そういえばZもLと同じく純血悪魔、しかもあの様な風貌からは想像も付かない程の、由緒ある家の生まれらしいな。もしかすればその会合の場で、会う事になるかも知れない。配信開始したばかりのマイティブラザーズXXの感想を聞きたい物だ。アイツの事だ、俺が冥界に到着した頃にはもう、オールクリアしているかも知れない」

 

それを聞いた一誠の脳裏には、顔なじみである天才ゲーマーの姿が浮かんでいた。

 

------------

 

「へっぷし!」

「どうかしましたか、○○○○○○様?風邪ですか?」

「さぁな、誰か俺の事を噂してんじゃねぇか?おい○○○、そのスイッチはホバリング用だぞ」

「あ、すいません○○○○○○様!」

「大丈夫だ○○○、此処のルートには救済措置がある、よし、ステージクリアだ!」

 

同時刻、とある部屋にて、如何にもヤンキーだと言いたげな風貌の男と、露出度の高い緑色のワンピースに身を包んだ少女が2人で、とあるゲームをプレイしていた。

その最中、突如くしゃみをした男を気遣った少女がどうやらミスをした様で、男の指摘で申し訳なさそうにするも、問題ないと言わんばかりに男は余裕で対処して見せた。

 

「流石です○○○○○○様!」

「応よ○○○、この天才ゲーマーZ様の手に掛かりゃあ、この位の難易度は朝飯前だ!」

 

少女のミスも何のそのと言わんばかりにステージクリアして見せた男と、そんな男を称える少女、2人がプレイしていたのは、今日配信が開始されたばかりのマイティブラザーズXX、その上から2番目の難易度『レベル・ルナティック』だった。



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57話_Anxietyの種

「さあ、着いたわ。まずはイッセーとアーシア、ゼノヴィアとイリナは、私について来て。朱乃は他の皆を宜しく頼むわ」

「了解ですわ、リアス」

 

ヴァーリが堕天使側の特使として駒王学園に派遣される事が報告されてから幾日が経ち、学園が夏休みに入った今日、リアス達は冥界のグレモリー領へ帰省する事となった。

一誠もまた眷属として、またリアスの彼氏として向かう事になっている、リアス達からのお迎えを受けてとある場所へと向かったのだが、

 

「駅の、エレベーター?」

「ええ。皆、先に乗ってちょうだい。私と下りるわよ」

「え、下りるって、どういう事ですか?」

 

其処はこの街の駅にあるエレベーター、其処から『下りる』と発言したリアスに、アーシア達が疑問符を浮かべた。

無理もない、この駅は地上階しかない筈であり、今一誠達がいるのは駅の一階、つまり『下りる』階など無い筈なのだから。

 

「成る程、この街の『裏』を悪魔勢力が管理している事を受けて、この駅のエレベーターに、関係者だけが入れる冥界への入り口を設けた、という訳か。魔法陣による転送とはまた違う、許可を貰いさえすれば誰でも入れる入り口を」

「流石イッセー、冴えているわね。そう、此処の地下から冥界へ繋がっているの。そしてイッセーが言っていた『許可』を出す権限を有しているのが、管理者である私って事よ。さ、行くわよ」

 

だが一誠は容易に想像が付いた。

恋人である一誠の聡明振りにリアスは惚れ直したと言わんばかりに微笑みながら補足しつつ、エレベーターへと入って行く。

それに続く様に一誠達もまたエレベーターへと入ったのを確認したリアスは、何時も通り着用している制服、そのスカートのポケットから何やらカードらしき物を取り出し、エレベーターのパネルにタッチする、と、

 

「さ、下がっている?」

「ほ、本当にこれ『下りる』んだ…」

「び、びっくりしました…」

 

電子音と共に、エレベーターが地下にあるという空間へと『下り』始めた。

まさかの感覚に、イリナ達が戸惑う間も下り続けるエレベーター、それから数十秒経て到着、扉が開くと其処には、地下鉄の駅を思わせる様な人工空間が広がっていた。

 

「皆揃ったわね、そしたら3番ホームへ行くわよ」

 

程なく朱乃達残りのメンバーも到着し、それを受けて3番ホームへと進み、待っていたであろう列車へと乗り込んだ。

 

------------

 

「それでは皆さん、一か所にお集まり下さい」

 

こうしてリアス達を乗せて冥界へと発車した列車、前の車両にリアスが、後ろの車両に彼女の眷属が乗り込んだ車内で、この列車(どうやらグレモリー家の専用車らしい)の車掌であるレイナルドが、持っていた機械で一誠達を認証する等の出来事はあったが、

 

「…イッセー君、どうしたんですか、さっきからずっとパソコンに向き合って?」

「ああ、何だか尋常じゃない様子だったが…」

 

一誠はそういった出来事に加わる必要がある場合以外はずっと、持って来ていたノートパソコンに向き合い、作業を続けていた。

まるで何かに憑りつかれたかの様に、作業に没頭する一誠、そんな一誠が気になったのか、朱乃達が声を掛けた。

 

「…済まないな、皆。

以前朱乃に、皆の事を少しずつでも知って行って、幸せにしたいと言って置きながら、その舌の根も乾かぬ内に、皆を放って置いてガシャット製作に精を出している。それに関しては本当に済まないと思う。

 

…正直に言おう、現状に対して不安で仕方が無いんだ、俺は」

 

流石に周囲の声が聞こえない程没頭していたという訳でも無かったのか、周りに集まって来た自らの恋人達の声に反応、皆を構ってやれなかった事を謝罪しつつ、己の心の内を話し始めた。

 

「…不安、ですか?」

「ああ、アーシア。この前の、三大勢力の首脳による会談の場に襲撃を仕掛けた禍の団、あの場は難なく退けはしたが相手はテロ組織、あのまま引き下がるとは思えない。一度抜き放った剣は納めないと言わんばかりに、次なる襲撃を仕掛けるに違いない。ましてあのオーフィスをトップとしている以上、それ相応とはいかずとも、それに続く実力者も配下に付いているかも、次はそういった存在が出て来るかも知れない。今使用しているガシャットでは力不足になる日は、いずれ来るだろう」

「それは、そんな事は…」

 

一誠が心に抱いていた不安、それは会談の場でその存在が明らかになったテロ組織、禍の団に関する物だった。

 

「俺はリアスや朱乃程の魔力も、木場やイリナ、ゼノヴィアの様な剣術も、アーシアやギャスパーの様な神器も、白音ちゃん程のパワーも、黒歌先生の様な術式も持ち合わせていない。俺に出来る事と言えば、頭を働かせて、新たなる(ガシャット)を開発する事しかない。もしそれを怠って、いざ今以上の力が必要な時にそれが手元に無かったとしたら…

 

そうなってしまったら、俺は絶対に後悔する。だが後悔した所で、リアスも、朱乃も、アーシアも、イリナも、ゼノヴィアも、白音ちゃんも、そして他の皆も帰って来ない。現実はゲームじゃない、やり直したいからと初めからを選んだり、運命の選択を求められる場面まで戻ったりなど出来ない、まして攻略本や攻略サイトなど存在する訳がない。故に俺は、今以上の力を有したガシャットを、皆を守る為のガシャットを、これまで以上の強敵相手にも立ち向かえる(ガシャット)を作る。

 

皆の為だとか、押し付けがましい事を言うつもりはない、俺自身が後悔したくないから作る!」

「イッセー先輩…」

 

これまで以上の敵が立ちはだかり、今までのガシャットが通じなくなるのではないか、そんな不安が一誠を新たなガシャット開発に向かわせていた。

 

「本当に御免、皆。俺の我儘の為に、皆を蔑ろにしてしまって…」

「そんな、そんな事ないよ、イッセー君!」

「イッセー君が我儘だとしたら、世界中の人皆が我儘になりますわ!」

「イッセーさんは私達の事を本当に、大事に想ってくれています、何処が蔑ろですか!」

「そうだぞ、イッセー!私達はそんなイッセーに惚れ、今こうして恋仲になれた事を本気で嬉しいと思っている!」

「そうです、イッセー先輩!だからイッセー先輩、不安な時は今みたいに言って下さい!私達も、精いっぱいの事をします、イッセー先輩みたいに!」

「皆…!」

 

それ故に恋人達への対応が疎かになっていた事を謝る一誠だったが、彼女達はそう感じていなかった。

 

(やっぱり、この想いを抑える事なんて出来ない。例え受け入れられないとしても、言えず仕舞いになったら絶対に後悔する!搭城黒歌、行くのにゃ!)

 

そして、そんなやり取りをずっと見ていた黒歌は、決意を固めた。



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58話_そういえばリアスってPrincessだったな…By一誠

『お帰りなさいませ、リアスお嬢様!』

 

リアス達を乗せた列車が、冥界のグレモリー領にある駅に到着し、ホームへと降りると其処に広がっていたのは、グレモリー家が出迎えに送ったであろう数多の執事やメイド達の挨拶、楽器隊らしき隊列の演奏、兵隊らしき隊列の礼砲、それらが轟音となって響き渡ると言う、異様な光景だった。

 

「ありがとう、皆。帰って来たわ」

 

だがそんな光景は慣れっこだと言わんばかりに普段通りの態度を崩さないリアス、背後で驚きを隠せない一誠達を他所に出迎えた面々に対して満面の笑みで礼を言うと、それに応じるかの様に1人のメイド――リアスの義姉であるグレイフィアが前に出た。

 

「お帰りなさいませ、リアスお嬢様」

「ただいま、グレイフィア。元気そうね」

「お嬢様も、随分と元気そうで何よりです。それでは皆様、馬車を何台かご用意しましたので、お乗り下さい。グレモリー家本邸までご案内致します」

 

そのグレイフィアに、馬車(物凄くデカい)へと案内された一行は、それに従うまま乗り込んだ。

 

「私は電車の時と同じく、イッセーとアーシア、イリナとゼノヴィアと乗るわ。不慣れでしょうから」

 

無論と言うべきか、乗る馬車の割り振りはエレベーターの時と同じである。

 

------------

 

「さあ、着いたわ」

 

それから十数分、馬車での移動を終えたリアス達が降りると其処には、何処ぞの王宮かと言わんばかりの巨大な城が聳え立ち、その周りに広がる庭園、その正門から本邸と思われる城を繋ぐ道にはレッドカーペットが敷かれ、その両端には先程の駅と同じ様にグレモリー家の使用人が整列して並び、リアス達を待っていた(リアスが降りた瞬間、先程の様な出迎えの展開が繰り広げられたが、余談とする)。

 

「では皆様、どうぞお入り下さい」

 

そんな光景に未だ戸惑う一誠達への助け舟になるかどうかは兎も角、現れたグレイフィアの案内で、本邸へと入って行く一行。

 

「お帰りなさい、リアスお姉様!」

 

其処へ、リアスやサーゼクスに似た、しかし年相応に可愛らしい顔立ちに、リアス達と同じく赤い髪の少年が、リアスに抱き着いて来た。

 

「ミリキャス!ただいま、久しぶりね」

 

恐らくは血の繋がった親族であろう少年――ミリキャスの姿を見たリアスもまた、ミリキャスを抱きしめていた。

 

「あの、部長さん、その子は?」

 

そんな光景にふと、アーシアが尋ねて来た。

 

「この子はミリキャス・グレモリー。お兄様、サーゼクス・ルシファー様と、グレイフィアの子なの。ほらミリキャス、挨拶をしなさい」

「はい、ミリキャス・グレモリーです!宜しくお願いします!」

 

アーシアの質問に答えるべくリアスがミリキャスを紹介すると共に、ミリキャスに挨拶を促した。

 

「アーシア・アルジェントです。部長さ、リアスお姉様の僧侶です。宜しくお願いします」

「ゼノヴィアだ。リアス様の兵士をしている。宜しくな」

「私は紫藤イリナ。リアス様の兵士だよ。宜しくね!」

「俺は兵藤一誠、リアス、様の兵士を」

「あ、貴方まさか、天才ゲームクリエイターのISさんですか!?」

「え?あ、ああ、ISは俺だが?」

 

それに応じて挨拶したミリキャスに、自分達も挨拶を返そうとした一誠達だったが、一誠の番になった時、突然ミリキャスが興奮した様子でそれを遮った。

 

「僕、大ファンなんです!握手して下さい!あと出来ればサインも!」

 

その様子からして、一誠のゲームクリエイターとしての一面も知っていて尚且つ、ISとしての一誠の大ファンらしい、どうやらミリキャスもまた一誠が作り上げたゲームに熱中している様だ。

 

「この前配信されたマイティブラザーズXXも、凄く面白いです!余りに面白くて寝る間も忘れて楽しくプレーしています!まさか生でISさんに会える日が、こんなに早く来るなんて…!」

 

その、自らの半分位しか生きていない少年の年不相応な気迫におされたのか、握手に応じた一誠、それに喜びを隠せず、興奮を隠す気もない口調で話すミリキャスだが、

 

「…ミリキャス、また一時間を超えてゲームをしていたの?」

「あ、ご、御免なさい、お母様…」

 

その興奮は、母親として聞き捨てならない事を耳にしたグレイフィアによって鎮火された。

 

「全く。ゲームは一日一時間、外で遊ぼう元気良く、僕らの仕事は勿論勉強、成績上がればゲームも楽しい、僕らは未来の社会人…

と、人間界において伝説となったゲーマーの名言にもあるでしょう、ミリキャス。一誠様が作り上げたゲームが時間を忘れる程面白いのは分かるし、ゲームをしてはいけないとは一言も言っていないけど…」

 

と、グレイフィアのお説教が長くなりそうなので、ミリキャス達と一旦分かれ、リアス達は先に進む事にした。

 

------------

 

何やかんやあった末に、其々の部屋に案内された一誠達。

お風呂にキッチン、冷蔵庫にトイレ、挙げ句テレビにベッドと生活する上で必要な設備が全て揃った、最早住居と言っても差し支えない状態の部屋の中で、一誠は列車に乗っていた時と同じく、持ち込んでいたパソコンで作業をしていた。

 

「イッセー、ちょっと良いかにゃ?」

 

其処に、黒歌が尋ねて来た。



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59話_ライバル、Arrival!

リアス達が冥界のグレモリー領へと帰省して2日目、この日は前以て知らされていた若手悪魔の会合へ参加する為、サーゼクス達魔王が直接統治している領地、魔王領の都市ルシファードへと来ていた。

ルシファード、其処は嘗ての魔王ルシファーの一族が住処としていた事からその名が付けられた冥界の旧首都であり、それ故に今は魔王領となり、サーゼクス達の統治によって人間界のそれと余り変わらない現代的な都市と言わんばかりの光景になっていた。

其処へ、冥界へと来た時と同様、電車で移動したリアス達眷属一行だったが、

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!リアス姫様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

まるで大スターを迎えるかの様な歓声、事実この冥界においてトップアイドル級の知名度を有するリアスを迎えるべくホームに集結した悪魔の大群に捕まっては会合に遅れてしまう、よってこの会合での案内の為に送られたらしい黒服男性達に守られながら地下鉄で移動、会場の真下に建てられた駅のホームに到着した。

 

「皆、何が起こっても平常心を保って頂戴ね。これから私達が出会うのは、いわば私達にとって将来のライバルよ。無様な姿を見せては、これからずっと軽く見られるなんて事になりかねないわ」

 

其処から会場へと運ぶエレベーターで黒服男性達と別れたリアスは、乗り込む間際、己の眷属達にそう伝える、その顔は今から戦いに臨むと言わんばかりの気合に満ちた物だった。

それを受けて気を引き締める眷属達、そんな彼女達を乗せたエレベーターは程なく会場に到着した。

 

「サイラオーグ!」

 

其処で見知った顔と出会ったのだろう、リアスが声を掛けた。

 

「久しぶりだな、リアス」

「ええ、懐かしいわ。変わらない様で何よりね。あ、初めての人もいたわね。彼は、サイラオーグ、サイラオーグ・バアル。私の母方の従兄弟なの」

「俺はサイラオーグ・バアル。バアル家の次期当主だ」

 

その知り合いと思しき、黒い短髪、紫の瞳を有した野性的な顔立ち、プロレスラーと言わんばかりのがっちりした体格の青年――サイラオーグが、リアスの紹介に応ずる形で彼女の眷属達に名乗った。

バアル家とは、リアスの生家であるグレモリー家や、ソーナの生家であるシトリー家ら『元72柱』と呼ばれる、悪魔勢力において由緒正しい家系の中でも最も格が高く、魔王に次ぐ『大王』の地位を有した家系である。

リアスとサーゼクスの母親であるヴェネラナは実を言うとこのバアル家の生まれであり、リアス達が滅びの魔力を有しているのはこのバアル家に連なる血筋故である。

 

「ところで、サイラオーグ達は何故こんな通路にいたのかしら?」

「ああ。下らないから出て来たんだ」

 

それはともかくとして、まさかエレベーターから出て来て直ぐに鉢合わせするとは思わなかったのか、リアスが何故、待ち合わせ場所として手配された奥の待合室ではなく、此処で待っていたのかをサイラオーグに尋ねた。

 

「下らない?他のメンバーも来ているのかしら?」

「アガレスとアスタロトの跡取り、後はグラシャラボラスが既に来ているんだが…」

 

その訳をサイラオーグが話し始めると、

 

「…全く、だから開始前の挨拶などいらないと進言した筈なのだが」

 

その背後、待合室と思しき場所から巨大は爆発音が聞こえた。

それに何処か呆れた様子で嘆息しながら待合室へと向かうリアスとサイラオーグ、2人の眷属達もまたそれに続くと、

 

「ゼファードル、さっきから黙っていれば言いたい放題、こんな所で戦いを始めても文句は言えないのではなくて?死ぬの?死にたいの?殺しても上に咎められないかしら」

「ハッ!言いたい放題なのはテメーの方だろうが、このクソアマ。俺は事実を突き付けてやったまでだぜ、それをまあいきなり魔力をブッパしやがって。テメーの所為で会場がぐちゃぐちゃじゃねぇか、魔王様達もこの会合に来られるってのによぉ。これだからアガレス家の甘ちゃんは短気で嫌だねぇ。とどのつまり、大公家の跡取りって言っても一皮むけば単なる世間知らずのおバカ姫ってか。なら仕方ねぇ、この俺様が、テメーが井の中の蛙だって事を教えてやらねぇとな」

 

待合室は既にボロボロと言うしかない惨状、テーブルも椅子も粗方壊され、その中央ではこの惨状を引き起こしたと思しき2人の悪魔が睨み合い、其々の背後で控える2人の眷属と思しき悪魔達もまた只ならぬ様子で構えを取っていた。

 

「此処は若手悪魔が軽く挨拶をする場として設けられたそうだが…

案の定と言うべきか、血気盛んな若手悪魔を一緒にした途端、この有様だ。此処に着いて少ししたら、アガレス家の次期当主シーグヴァイラと、グラシャラボラス家の次期当主『代理』ゼファードルがどうもやり合い始めたんだ…」

「あ、アイツは!?」

 

眼鏡を掛け、青いローブを来た高貴そうな風貌とは裏腹に、如何にもマジギレしていますと言わんばかりに殺気をまき散らしながら物騒な言葉を並べる女性――大王バアル家に次ぐ『大公』アガレス家の次期当主であるシーグヴァイラに対し、上半身裸、履いているロングパンツは装飾品だらけ、緑の短髪に術式を思わせるタトゥーを刻んだヤンキーの様な出で立ちで、獲物を見つけた猛獣の如き構えを取りながらシークヴァイラを馬鹿にする男――元72柱の一角であるグラシャラボラス家の次期当主『代理』との事らしいゼファードル。

2人の言葉をそのまま受け取るならば、どうやらこの惨状は、ゼファードルの挑発にキレたシーグヴァイラが、彼を狙って放ったらしい魔力の攻撃によって引き起こされた物らしい。

このまま戦いは始まる、そう思われたが、意外な形で幕引きとなった。

 

「んぁ?おお、ISじゃねぇか!久しぶり!」

「Z!?Zじゃないか!ああ、久しぶりだな!」

 

2人のうちのどちらかが知り合いだった事に驚いた一誠、その声に反応したゼファードルがその方向に振り向くと、どうやらゼファードルも一誠の事を知っていた様で、親しげに話しかけた。

そう、ゼファードルこそが、Lことレイヴェルと肩を並べる天才ゲーマー、Zの正体だったのだ。

 

「LからISが悪魔に転生したとは聞いていたが、まさかこの場で会うとはなぁ、世間は狭いぜ」

「まあ、な。ところでこの惨状、一体何があった?」

「ああ、それな。あのアガレス家の甘ちゃんがよぉ、ゲキトツロボッツで勝負しねぇかって持ち掛けて来たんだが、アイツのランクがCの2だったんでさぁ、どれ位のハンデ付けた方が良いかって聞いたんだ。そしたら何を勘違いしたのか、ハンデなんていらないとか抜かしやがったんだよ。こちとら天才ゲーマーZとしてブイブイ言わせている身、ゲキトツロボッツのランクも最高であるSの1、身の程知らずも良い所だと、出直せと言ってやったら、これだよ。だろ、アスタロト家の兄ちゃん?」

「ああ、此処で一部始終を見ていたから、間違いないよ」

 

久しぶりに会い、親しく言葉を交わす2人だったが、それもそこそこに、この惨状の訳を聞く一誠。

それを受けてゼファードルが訳を話し、隅っこの席でお茶を飲んでいた、緑髪で優し気な雰囲気の悪魔に賛同を求め、彼もまた応じた。

 

「アガレス家の姫シーグヴァイラよ、この件は明らかに、其方に非がある。これ以上、事を荒立てるなら俺が相手になろう。これは最後通告だ」

「くっ…!

申し訳ありませんでした…!」

 

元72柱の一角アスタロト家の次期当主と思しき男性の証言もあってか、明らかにシーグヴァイラが悪いと言いたげな空気となる、そしてサイラオーグが強烈なプレッシャーと共に言い放った通告が決め手となったか、彼女は悔しそうにしながらも謝罪し、化粧直しの為かその場を離れていった。

 

「おぉ、こりゃあスゲェ…

助かったぜ、バアル家の兄ちゃん。流石に落ちこぼれから這い上がって、バアル家の連中をボコして次期当主の座を勝ち取った奴は違うなぁ。アガレス家の甘ちゃん、尻尾巻いて逃げやがったぜ」

「構わん、此処で間に入るのも大王家次期当主の仕事だ。然しゼファードル、お前も言葉を慎め。今回は明らかに、シーグヴァイラに非があるとしても、お前の言葉が火に油を注いだと言っても過言ではない」

「分かったよ、今度から何とかするぜ」

 

そのプレッシャーは、向けられていないゼファードルも感じ取れた程、その強烈さに感心しながら、この場を収めたサイラオーグに礼を言った。

とはいえゼファードルに何のお咎めも無しかと言えばそうでもない、終始シーグヴァイラを挑発していた彼にも、その言動を直すよう釘をさされた。



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60話_リアスのDreamは…

先程のゴタゴタはサイラオーグの介入等で収まり、その際にシーグヴァイラの魔力による攻撃でボロボロになった待合室も修復され、遅れていたソーナ達や、化粧直しの為に場を離れていたシーグヴァイラも改めて到着、後は会合の始まりを待つばかりとなった中、

 

「私はシーグヴァイラ・アガレス、大公アガレス家の次期当主です。先程はお見苦しい所をお見せして申し訳ありませんでした」

 

それまでの時間潰しを兼ねてか、今回の会合に参加する悪魔、その王達が自己紹介を始め、先のゴタゴタへの謝罪もあってシーグヴァイラが最初に挨拶をした。

 

「ごきげんよう。私はリアス・グレモリー、グレモリー家の次期当主です」

「私はソーナ・シトリー、シトリー家の次期当主です。宜しくお願いします」

「俺はサイラオーグ・バアル、大王バアル家の次期当主だ」

「僕はディオドラ・アスタロト、アスタロト家の次期当主です。皆さん、どうぞ宜しく」

 

それに続いて、リアス達他の悪魔達も挨拶をし、

 

「俺はゼファードル・グラシャラボラス、グラシャラボラス家の次期当主『代理』だ。本当だったらこの場には、次期当主である俺の兄貴が来る筈だったんだが、お前らも知っての通り、先日グラシャラボラス家で一悶着あってな、それに兄貴が巻き込まれちまって、死んじまったんだ。で、俺が今回の会合に次期当主の代理として来たって訳だ。まあ、宜しく頼むな」

 

そして最後、会合に参加する悪魔の中で唯一、次期当主『代理』扱いであるゼファードルが、その経緯も含めて挨拶をした。

それで丁度時間となったのか、

 

「皆様、大変長らくお待たせ致しました。どうぞこちらへ」

 

使用人と思しき悪魔が待合室へと姿を現し、リアス達を案内した。

 

------------

 

「今回の会合に良くぞ集まってくれた、次世代を担う若き悪魔達よ。今回、貴殿らの顔を改めて確認すべく、集まって貰った。これは一定周期毎に行う、若き悪魔を見定める会合でもある」

「早速、やってくれた様だがな」

 

コンサートホールからステージを取っ払った様な配置をしている会場、その一番低い場所で並ぶ若手悪魔達を見下ろすかの様に着席したサーゼクス達四大魔王と、その他の上層部と思われる悪魔の面々、その中の1人である初老男性と思しき悪魔の言葉で、会談は始まった。

尚、先のゴタゴタを耳にしていたのか、同じく初老男性と思しき他の悪魔が、ゴタゴタの原因であるシーグヴァイラに向けて皮肉たっぷりに声を掛け、それを聞いたシーグヴァイラは俯いていたがこれは余談である。

 

「君達は家柄、実力、共に申し分ない。文字通り、次世代を担うであろう悪魔だ。故に、デビュー前にお互い競い合い、力を高め合って貰おうと思っている」

「我々もいずれ禍の団との戦いに投入される、そういう事ですね?」

 

会合が始まったのを受けて、若手悪魔の面々を見回しながらそう言葉を掛けるサーゼクス、其処へサイラオーグが、禍の団という今現在の時点でデリケート過ぎる話題を挙げて質問する。

 

「それはまだ分からない。だが私達としては、出来るだけ若手悪魔を投入したくは無いと考えている」

 

それに対するサーゼクスの答えは『NO』であった。

 

「何故です?我らは若いとは言えど、悪魔勢力の一端を担っております。冥界の為に死力を尽くしたいという想いは皆同じです。それにこの場には、件のテロ組織と戦い、勝利し、生きて帰った者達もおります。この歳になるまで、これ程の力を付けるまで先人の方々からご厚意を受けて尚、何も出来ないと言うのは…」

「サイラオーグ・バアル、貴殿のその心意気は認めよう。だが無謀だ。何よりも、次世代の悪魔を失うのは余りにも大きいんだ。理解して欲しい、君達は君達が思う以上に、我々にとっては宝なんだ。だからこそ大事に、段階を踏んで成長して欲しいと思っている。

 

人間界にこの様な言葉がある。勇気と無謀を混同してはいけない。この言葉を、肝に銘じて置くんだ」

 

その答えに納得がいかないと言わんばかりに食いついたサイラオーグを窘める様にサーゼクスがそう言葉を掛ける、それには流石のサイラオーグも、渋々ながら納得した様だ。

サイラオーグの質問は終わったと判断したのか、その後は悪魔勢力の情勢や、レーティング・ゲームに関する仕組み等の小難しい話が続いた。

 

「さて、長い話に付き合わせて申し訳無かった。なに、先程も言ったが私達は若い君達に、私達なりの夢や希望を見出しているのだよ。其処だけは理解して欲しい、君達は冥界の宝である事を」

 

それはサーゼクスも理解していたのか、その言葉で一連の話を締め括り、

 

「最後に其々の、今後の目標を聞かせては貰えないだろうか?」

 

若き王であるリアス達6人に、そう問いかけた。

 

「俺は魔王になる事が夢です」

 

それに、最初に答えたのはサイラオーグ。

 

「大王家から魔王を輩出したとあらば、前代未聞だな」

「俺が魔王に相応しいと冥界の民が感じれば、必ずやそうなるでしょう」

 

その答えに感嘆の息を漏らし、そう呟く上層部の悪魔。

その呟きにもきっぱりと言い切ったサイラオーグ、初っ端からシンプルなれどインパクト十分な宣言をした彼に「先越されちゃったわね」と苦笑いを浮かべながらも、次にリアスが答えた。

 

「私もまた、魔王になる事が夢です。魔王となり、冥界をより良き世界へと導く、悪魔社会を皆様と共に発展させる。それが、私が果たすべき夢だと考えております」

 

リアスの答えもまた、サイラオーグと同じく魔王になる事、だがそれだけでは印象に欠けると思ったか、魔王になってからについても(思いっきりぼやけた形だが)付け加えた。

 

「兄妹揃って魔王となれば、これもまた前代未聞ですな」

「既に兄が魔王である以上、そのハードルはサイラオーグ以上であると考えています。並大抵の実力で魔王になっては『兄妹魔王にしたいが為の依怙贔屓』と捉えかねない、という考え故に。だからこそ、そのハードルを飛び越えて見せましょう」

 

だがそんな付け足しはいらなかった様だ、その目標に先程と同じく感嘆の息を漏らす者が多数を占めた。

 

「私の目標は、冥界にレーティング・ゲームの学校を設立する事です」

 

その後もゼファードル達が目標を口にし、最後にソーナが答えた、が、

 

「レーティング・ゲームを学ぶ学校ならば、既にある筈だが?」

 

その答えに、上層部の面々は眉をひそめ、その真意を問い掛けた。

 

「それは上級悪魔や、一部特例の悪魔の為の学校です。私が建てるのは下級悪魔等、全ての悪魔が平等に学ぶ事の出来る学校です」

 

それに、己の考えを包み隠さず宣言するソーナ。

人間界での生活を通じ、今の悪魔社会が抱える問題は何なのか、それを解決するにはどうすれば良いのか、それらを踏まえてソーナが思い至ったのが、現代の人間界におけるそれの様な差別なき学校。

そんなソーナの考えを、彼女の眷属達は誇らしげに聞いていたが、

 

『ハハハハハハハハ!』

 

それを聞いた上層部の面々は、喜劇や漫才等を見ていた観客の如く爆笑していた。

 

「これは傑作だ!」

「成る程、夢見る乙女という訳ですな!」

「若いと言うのは良い!然しシトリー家の次期当主ともあろう者が、その様な夢を語るとは。此処がデビュー前の顔合わせで良かったと言う物だ」

 

笑いながら、ソーナの夢を馬鹿にする上層部の面々。

 

「私は本気です」

「ソーナ・シトリー殿。下級悪魔は上級悪魔たる主に仕え、才能を見出されるのが常。その様な養成施設を作っては伝統と誇りを重んじる旧家の顔を潰す事になりますぞ。幾ら悪魔社会が変革の時期に入っているとは言え、変えて良い物と悪い物があります。全く関係のない、たかだか下級悪魔に教えるなど…」

 

そんな上層部の面々に毅然と言い放つソーナだったが、それすらも非難の声が上がった。

 

「黙って聞いていれば何でそんなに会長の、ソーナ様の夢を馬鹿にするんですか!こんなの可笑しいですよ!叶えられないなんて決まった事じゃ無いじゃないですか!俺達は本気なんですよ!」

「口を慎め、転生悪魔の若者よ。ソーナ殿、下僕の躾がなってない様ですな」

「…申し訳ございません、後で言い聞かせます」

 

そんな状況に我慢ならなかった元士郎が反論したが、そんな主張も軽くあしらわれた。

更にはその言葉に同調するかの様に、リアスに朱乃、白音に黒歌までもが、今の発言をした元士郎を、まるで養豚場の豚を見るかの様な目で見ていた、が、これは彼女達が上層部の面々と同じような考えだからという訳ではない。

リアス達は忘れてなどいなかったのだ、嘗て駒王学園で顔合わせをした際、元士郎が一誠の事を『史上最悪の性犯罪者(兵藤誠次郎)の兄』という偏見を基に、ボロクソに罵倒した事を。

自らの想い人である一誠自身の人となりを見もせず風評だけをベースに対応していた元士郎、そんな偏屈で浅はかで愚鈍な輩がソーナの夢を語っても薄っぺらい物だ、リアスも朱乃も、白音も黒歌も、そう言わんばかりに元士郎を見ていた。

尚、イリナとゼノヴィアは当時その場にいなかったが故、アーシアは生来の優しさ故にそうしなかった。

 

「これが、この様な体たらくが、悪魔社会の現実なのか…」

 

一方、そんな光景を目の当たりにした一誠は、頭を抱えながら、そう小声で呟いていた。

想像を絶する程の、今の悪魔勢力が抱える腐敗振りを嘆くその呟きは幸か不幸か、誰にも聞かれることは無かった、が、

 

「もう!おじ様達ったら寄って集ってソーナちゃんを虐めて!私だって我慢の限界があるのよ!これ以上言うなら、私もおじ様達を虐めちゃうんだから!」

 

悪魔勢力を引っ張る存在にも、今の状況をおかしいと思う存在が(着眼点はともかく)いない訳では無かった。

自らの妹であるソーナがボロクソに批判される事に我慢ならなかったのか、魔王であるセラフォルーが涙目になり、身体に魔力を纏わせながら叫んだ。

その剣幕には流石に上層部の面々もタジタジとなる。

 

「そうだ!ソーナちゃんがレーティング・ゲームに勝てばいいのよ!ゲームで好成績を残せば文句は言わせないんだから!」

「それは良いな、尤も近日中に君達、若手悪魔同士によるゲームをする予定ではあったがね。アザゼルが各勢力にいるレーティング・ゲームのファンを集めて、デビュー前の若手悪魔による試合を観戦させる名目もあったし」

 

そんなセラフォルーの提案も(影響したかと言えば無いと断言は出来るが)あって、夏休み終盤でのレーティング・ゲームの開催が決定した。



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61話_次のGameに向けて…

「君達も知っての通り、夏休み終盤に若手悪魔同士でのレーティング・ゲームが行われる事となった。その組み合わせだが、リアス殿の眷属はソーナ殿の眷属と戦う事になっている。それに向けて我々グリゴリが、其々の陣営に人員を送り、指導を行う。リアス殿、貴方の陣営にはこの私バラキエルが付く事となった。宜しく申し上げる」

「まさかいきなりソーナと対戦する事になるなんてね…

分かりました、バラキエルさん。宜しくお願いします」

 

会合から一夜明け、リアス達はグレモリー家の邸宅、その庭に集合し、グリゴリから指導者として送り込まれたバラキエルと顔を合わせていた。

どうやら夏休み終盤に行われるレーティング・ゲームに向けて各陣営に指導者を送り込んだらしい、バラキエルもその1人との事だそうである。

 

「お父様、1つ質問良いでしょうか?」

「どうした、朱乃?」

「お父様はグリゴリの最高幹部、本拠地を空けて大丈夫なのですか?その、運営面とか…」

 

だが最高幹部であるバラキエルがその役目に任ぜられた事に、彼の娘である朱乃が違和感を覚えた。

朱乃が言う様に、バラキエルはグリゴリの最高幹部、その役目から三大勢力の首脳会談に参加し、何度も場を凍り付かせる発言をしたアザゼルに対して、その度に鉄拳制裁を下した事は記憶に新しい。

 

「ああ、それか。グリゴリの運営に関してはアザゼル(バカ総督)シェムハザ(副総督)が手を尽くすから問題ない、それより、中々会う時間の取れない娘と夏休みを過ごして来い、と当のシェムハザから半ば強制的にこの件を任されたのだ。しかしあのバカを、アイツ1人に任せて本当に大丈夫なのだろうか?今回の件も自分から、しかも皆に黙って行こうとしていた様だし…」

「まあ、アザゼルですからね。お察しします、バラキエルさん…」

 

そんな娘の質問に、問題ないというシェムハザの言葉を伝えたバラキエルだったが、やはり内心は空けて来たグリゴリの事が(主にアザゼルのサボり癖に対して)心配だった様だ。

 

「さて、グリゴリにまつわる裏事情についてはもう良いだろう、指導の話に戻る。今は君達も知っての通り、禍の団という存在がある。よってレーティング・ゲームのルールに沿った戦術面では無く、其々の能力強化に重点を置こうと考えているが、何か提案はあるだろうか?」

「はい、バラキエルさん。提案、というより要望なのですが…」

「何だね、イッセー君?」

 

だがもう冥界の、グレモリー家の邸宅に来た以上はどうにもならないとバラキエルは切り替え、今後の指導方針を説明し始めたが、其処で皆からの提案を求めた所、真っ先に一誠が挙手をした。

 

「実を言うと、その禍の団への対策で今、新しいライダーガシャットを開発しています。出来れば其方に時間を割きたいのですが…」

「良いとも、先の襲撃でライダーガシャットの有用性は知られている、それ以上の戦力となるガシャットを作ってくれるとあらば有難い。そう思って君へのメニューは、この様に軽めの、基本的な物となっている。これも、時間があればで良い」

 

一誠の要望は、ライダーガシャット開発の為の時間捻出。

だがバラキエルは想定していた様で、最初から軽めのトレーニング内容になっていた。

 

「さて、他に提案はあるか?

 

無い様だな、では残るメンバーのメニューを今から発表する。まずはリアス殿」

「はい、バラキエルさん」

「と言っても、リアス殿の魔力、頭脳、そして仮面ライダーゲンムとしての運動性能、どれをとっても文句の付け様がない。このまま行けば何をせずとも成人を迎える頃には、最上級悪魔の候補にもなるだろう。然し今すぐにでも強くなりたい、それが貴方の望みと聞いたが?」

「はい。魔王になると宣言した以上、悠長に構えていては『本気で魔王を目指しているのか?』と周囲から厳しい目で見られるのは明らかですから」

「ならば、このメニューをきっちりとこなす事だ」

 

他に意見は無かった様で、それを受けてバラキエルは個人別の指導内容を伝える。

まずはリアス、魔王を目指すと決めた以上、精進しなければと意気込む彼女に、バラキエルは指導方針が書かれた紙を手渡すが、

 

「あの、これ殆ど基本的なメニューだと思うのですが…」

「それで良いのだ。貴方の才も、実力も既に上級悪魔でもかなりの物、総合的に纏まっている。故に凝った手を加えてはその強さが崩れかねない。よって、基本的なメニューをこなす事が重要なのだ」

 

書いてある内容はほぼ全て基本的なトレーニングメニュー、そんな内容に何処か困惑した様子のリアスに、バラキエルがその真意を伝えると、リアスは納得したのか頷いた。

 

「次に朱乃」

「はい、お父様」

「仮面ライダースナイプとなったお前は、雷光の力を機関砲の如くばら撒いたり、ミサイルの如く強烈な一撃を見舞ったりと、状況に応じた攻撃が行える。だが何れの攻撃であっても、お前自身が有する雷光の強さが欠かせない。よってお前の力を高める方針で行くぞ」

「分かりましたわ」

 

娘である朱乃への指導方針は、彼女に宿る雷光の力を高める、という単純明快な物だった。

 

「続いて祐斗」

「はい」

「君はあの聖魔剣を生み出す禁手を継続して使える様にならねば。仮面ライダーブレイブに変身していようといまいと、あの力が重要な物であるのは間違いないからな。目安としてはまず、禁手を解放した状態で1日、それが出来れば、実戦に明け暮れる中で1日…

目標は一週間持続出来る様にする事だな。神器についてはグリゴリ本部と連絡を取りながら私が行う方針だが、実戦、剣術の方は確か、君の師匠である沖田総司殿に習うそうだな?」

「はい、一から鍛え直して貰う予定です」

「「ゑ?」」

 

祐斗は、エクスカリバーに関連した騒動の中で至った禁手『双覇の聖魔剣』を持続させる事と、己の剣術を磨く事と決まったが、其処で日本人である一誠とイリナにとって意外な名前が出た。

 

「沖田総司って、新撰組一番隊を率いていた、あの沖田総司…?」

「剣術においては、新撰組の中でも右に出る者はいないって言われていた剣豪だよね?あれ、でも結核を患った事で若くして亡くなったって聞いたけど…?」

「ああ、そういえばイッセー君達は知らなかったのだな。実際そうなのだが、生き永らえようと様々な術式に手を出す中で偶然、サーゼクス殿を召喚したらしく、その縁でサーゼクス殿の騎士に転生したそうだ」

「まさかそれ程の剣士を師としていたとはな…」

 

まさか史実において、若くして死んだと言われていた筈の剣士、幕末において反幕府勢力を取り締まる組織『新撰組』にて最も強いと言われた剣士、沖田総司が実はサーゼクスの眷属として生きていたとは思わず、驚きを隠せない一誠とイリナ、一方で外国生まれの外国育ちであるが故に沖田総司について知らなかったゼノヴィアは、それ程の腕前を持つ剣士の存在に関心を寄せていた。

 

「続いて黒歌と白音」

「はい!」

「はいにゃ!」

「黒歌の場合はベースが出来ているし、応用力も十分だ。様々な術式の扱いや、仮面ライダーパラガスの特性を活かしたトリッキーな立ち回り…

故に私から、此処をこうしろという必要は無いと考える、寧ろそれは逆効果だ。だから黒歌には、白音のコーチをお願いする。人に物事を教える中で、自分もまたその物事の極意へと触れてゆくのだ。白音も、戦車としての才は十分、戦い方も仮面ライダーノックスの特性に合った物だ。

 

だが、今のままでは他のメンバーで良い、となってしまう」

「っ!は、はい、それは、分かっています…!」

 

続いて黒歌・白音姉妹の番となったが、其処でバラキエルは白音に、厳しい現実を突きつけた。

バラキエルがそう言い放つのも無理はない、白音が変身するノックスは、格闘ゲームをモチーフとしているが故に近距離での肉弾戦に特化した仮面ライダーではある(遠距離攻撃手段が無い訳ではないが)が、今のリアス眷属においては接近戦において、オフェンスという立場において、白音以上に力を発揮する者が多い。

祐斗が変身するブレイブは、神器による聖魔剣の生成と、騎士としてのスピードを活かした立ち回りで相手を圧倒できるし、王である為に本来は前線に出ないリアスが変身するゲンムも、滅びの魔力を纏わせた防御無視の斬撃や銃撃で妨害を突き破れる。

そういったライダー達に比べると、ノックスはパワーこそ勝るが、それ以外に秀でた所を見出しにくい、バラキエルはそう指摘したが、それは当の白音も分かっていた。

 

「ただ敵陣に殴り込むだけが戦車では、仮面ライダーノックスではない。君は基礎トレーニングに加え、黒歌の指導の下で様々な術式を学ぶのだ」

「了解なのにゃ」

「分かりました…!」

 

それ故か、妹が厳しい事を言われていて尚冷静な黒歌も、当の白音も、バラキエルが示す方針に頷いた。

 

「続いてアーシア」

「はい!」

「当初グリゴリでは君に、身を守る術を覚えさせた方が良いのではないかという話もあった。戦場において君の様なヒーラーは重要な存在、故に敵は君を狙ってくるだろうから、と。だが仮面ライダーポッピーとしてあの場で戦った姿を見て、それはもう十分だと理解した。故に長所を伸ばす方向で行こうと思う。神器による回復のオーラ、あれを広範囲に広げたり、遠方へと飛ばしたりといった応用を覚えて貰おう。後は基礎トレーニングで体力と魔力を上積みするんだ」

「はい、分かりました!頑張ります!」

 

現状、アーシアの神器『聖母の微笑』は回復したい相手に近寄らないとその効果が及ばないが、これでは先に挙げた様に、回復したい相手へと向かう隙を突かれかねない、それを防ぐ為のトレーニング方針にアーシアはやる気十分だ。

 

「続いてギャスパー」

「はい!」

「随分と元気の良い返事だな、朱乃から聞いていた通りだ。嘗て誰もが匙を投げる程だったあの様子から立ち直らせるとは、クロト殿は一体どんなメンタルケアを施したのか…

とはいえ、君の持つ神器は強力な分、少しでも扱い方を間違えれば危険極まりない代物である事に変わりはない。よって君には基礎トレーニングの他、神器を使いこなせる様、場数を踏んで貰おう」

「分かりました!勝利のイマジネーション全開で頑張ります!」

 

ギャスパーがリアスの眷属になってからつい数か月前までの引きこもり振りも、此処最近の異様とも言える快活な振る舞いも、全て朱乃を通じて知っていたバラキエル、そんなギャスパーを此処までにしたクロトの手腕に何処か興味を覚えながらも、やはりギャスパーの神器『停止世界の邪眼』は暴走の危険性を秘めた物、使いこなす為の場数は欠かせない、と指導方針を示した。

 

「続いてイリナ」

「はい」

「イリナ自体はエクソシストとしての、剣士としての戦い方で言えば十分だ。擬態の聖剣を使っていたが故の一級品な技術とスピード…

だが仮面ライダー風魔はステルスゲームをモチーフとした仮面ライダー、それだけでは特性を活かせるとは言えない。奇襲、諜報、トラップ配置、情報発信。こういったスパイ活動、まさに忍者と言える行動こそが風魔の戦い方だ。それらを習得して貰おう」

「了解しました!」

 

尚、イリナのトレーニング内容の中に『かくれんぼ』『缶蹴り』の文言が、バラキエル曰く「アザゼルの筆跡」で入っていたそうで、この件でバラキエルは後でアザゼルを〆ると決意したのは余談。

 

「そしてゼノヴィア」

「私か」

「正直、君のメニューが一番苦労した。何せ、バイクになって戦うなど異例だからな。流石にバイクでの戦いに慣れろと言うのは、この短時間では少々無理がある。よってまずは、デュランダルの扱いに慣れる事だ。仮面ライダーレーザーで戦うにしても、デュランダルは重要な武器だからな」

「分かった、やってみよう」

 

こうして各メンバーへの指導方針が伝えられ、各自其々のトレーニング内容をこなし始めた。



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62話_白音のTear

それは、バラキエルからトレーニング方針を各メンバーに伝えられてから数日が経過した日の事だった。

 

「うーん、やはり1つのガシャットに2つものゲームを、2種類のバグスターウィルスを共生させるとなると、所々の挙動にバグが発生してしまうな。そのバグによって今までのガシャットとは比べ物にならない程の出力を、レベルを得られたのは僥倖だ。然しこれを用いて戦う事、それはレーティング・ゲームの場を除いて命がけだ、肝心な時に想定外のバグが発生し、戦えなくなっては取り返しがつかない事態に発展してしまう。どうすれば良いか…」

 

その日、グレモリー家の邸宅にある一室、此処を割り振られた一誠は1人、新たなガシャット開発作業に取り組んでいたのだが、何処か行き詰った様子だった。

其処へ、

 

「イッセー先輩、大変です!」

「ギャスパー?どうした、如何にもな様子で?」

 

ギャスパーが慌てた様子で部屋のドアをノックしながら、一誠に大事が起こった事を伝えて来た。

一誠もそれが直ぐ理解できたからか、開発作業を邪魔されたと感じる事なく、直ぐに対応した。

 

「イッセー先輩、良く聞いて下さい。

 

 

 

白音ちゃんが今朝、倒れたんです!」

「な、何だと!?」

 

------------

 

白音が、自らの恋人である白音が倒れた、その衝撃的な事態を聞いた一誠は開発作業を中断、彼女が運ばれたメディカルルームへと(周りに迷惑を掛けない形で)急いで足を運んだ。

 

「白音ちゃん!」

 

ギャスパーからの報告からほんの数分でメディカルルームに辿り着いた一誠、其処にはベッドに寝かされ(人間界で過ごしているが故に染み付いた癖か)普段は隠している猫耳と尻尾が出ている白音、そして彼女を看病していたらしい黒歌の姿があった。

 

「イッセー!」

「黒歌、話はギャスパーから聞いた。済まない、直ぐに駆けつける事が出来なくて。白音ちゃんの現状は?」

「生傷の方はアーシアが治してくれたし、気の乱れは私が何とかしたのにゃ。後は安静ね」

「ありがとう、黒歌。流石は白音ちゃんのお姉ちゃんだ」

「当然の事をしたまでにゃ。というかお姉ちゃんなのに、妹の変調に気付けなくて不甲斐ないのにゃ…」

「そんな事は無いさ。オーバーワークだと聞いたが、何処までやれば良いかのさじ加減は自分自身でも分からない物だ、まして禍の団という脅威がある中で…」

 

その黒歌から白音の現状を聞く一誠、因みに今まで先生を付けていた黒歌に対して何故呼び捨てにしたのかと言うと、冥界に来たその日、黒歌から告白されて快諾、晴れて黒歌は一誠の7人目の恋人となったからであり「恋人になったからには、先生付けなんて他人行儀な呼び方は止めて欲しいのにゃ」という提案からである。

そんな黒歌からこの場を引き継ぎ、白音が休むベッドへと一誠は向かった。

 

「白音ちゃん」

「ご、御免なさいイッセー先輩、新しいガシャットの開発作業があるのに、心配をお掛けして…」

「気にする事は無い、恋人の心配をするのは当然の事だろう?

…白音ちゃんが良ければ聞かせて欲しいな、何故オーバーワーク等という無茶に至ったのかを…」

 

その姿を見た白音が、開発作業を中断させてまで足労を掛けてしまった事を謝ったが、一誠は気を悪くした様子も無く、何が白音を其処まで焦らせたのかを尋ねた。

 

「…イッセー先輩、強く、なりたいです。

 

何かと話題に上がる禍の団もそうですけど、部長の夢を叶える為に、皆と、イッセー先輩と共に在り、守る為に、強くなりたいんです、心も、技も、体も。皆も同じ考えだと思いますし、あんなにヘタレだったギャー君も今はもう立ち直って、クロノスの力を、仮面ライダーの王としての力を授かった事に恥じない様トレーニングに励んでいる中、負けられないのもあります。でも、イッセー先輩ぐらいに頭が回る訳じゃないし、祐斗先輩やイリナ先輩、ゼノヴィア先輩みたいに聖剣は扱えない。だからといって部長や朱乃先輩ぐらいの魔力量も無いし、アーシア先輩の様に誰かを回復させる力も、ギャー君の様な特別な力も無い。それに術式の扱いも、猫又としての力の扱いも、姉様には才能も努力も及ばない…!

イッセー先輩から授かったノックスの力も十分に使いこなせていると胸を張れる訳じゃない…!

私は、役立たずだから、何もかもが中途半端だから…!

だから、皆以上に頑張らないといけないんです!」

 

眷属の中で自分ならではと誇れる物が何一つない、得意分野と言える物は数あれどそのどれもが「他のメンバーで良い」と言われる中途半端な状態…

バラキエルからも指摘された「他のメンバーで良い、となる」という現実はバラキエルが指摘するずっと前から白音を追い詰め、修行開始から数日でのオーバーワークという事態に至ってしまったのだ。

 

「そうか…

白音ちゃん。そんな頑張る君に、プレゼントだ」

「これは、ガシャットの設計図、ですか?でも、今までのそれと随分違う様な…」

 

そんな白音の姿を目の当たりにし、何か決意を固めたのか、一誠は持って来ていたPCを取り出し、新しいガシャットの設計図を彼女に見せた。

 

「ああ。白音ちゃんは自分自身の事を中途半端だと言うが、俺はそう思わない。秀でる所が、誇りに思える所が幾つもある、マルチタレントと言うべきその長所は素晴らしい物だ。その幾つもの誇りに思える所が同じ場面で使い分けられるとしたら、一緒に使えるとしたら…

これは俺がそう思い至って考案し、思わぬ力を秘めたガシャットに今、花開こうとしている、そう!

 

 

 

これは、君の為のガシャットだぁぁぁぁ!」

「わ、私の為の、ガシャット…!」

 

------------

 

「もう少しだァ…!

もう少しでェ…!」

 

それから数週間が経過した日、あれから新しいガシャットの開発作業を継続していた一誠だったが、何らかの切っ掛けによって作業の行き詰まりが解消され、順調に進んでいた。

そして最後の調整作業も終了、エンターキーを叩く、と、

 

「出来た、遂に出来たァ、全く新しい、ガシャットがァ…!

後は、これを、白音ちゃんに…」

 

PCと繋げていた機械に装填されていた水色のガシャットにラベリングが施され、それを受けて一誠はそんな歓喜の言葉を呟きながら取り出した。

そのガシャットは大まかなサイズだけならドクターマイティXXガシャット等と同じだが、その形状は直方体に近い物となり、2つものゲームを共生させると言っていた通り、片方のラベルには『PERFECT PUZZLE』、もう片方には『KNOCKOUT FIGHTER』と異なるタイトルと絵柄が描かれ、そして正面部分には丸く、半円ごとに其々のラベルと同じ絵柄が描かれたダイヤルの様な機構まで取り付けられていた。

今までとは大きく違う姿となったガシャットを手に、それを待っているであろう白音へと向かおうとした一誠だった、が、

 

「あ、あれ…?」

 

その気持ちに反し、身体が思う様に動かず、やがて崩れ落ちてしまった。

 

「イッセー先輩!?ど、どうしたんですか!?」

「あ、白音ちゃん、丁度良かった…」

 

そんな事態が発生した一誠の部屋を偶々通り掛かった事で、彼が崩れ落ちた音を聞く事が出来たのだろう、白音が部屋へ入り、急いで駆け寄った。

 

「たった今、開発中のガシャットが完成したんだ。その名も『ガシャットギアデュアルα』。この一号機を是非、白音ちゃんにプレゼントしたかったのだが、君の方から受け取りに来てくれるとは嬉し」

「イッセー先輩?イッセー先輩!?しっかりして下さい、イッセー先輩!」

 

まるで運命が味方したかの様に駆け付けてくれた白音の姿に安どの笑顔を浮かべた一誠、手にしていた新しいガシャット――ガシャットギアデュアルαを白音に手渡したが、その瞬間、まるで操り人形の糸が切れたかの様に動かなくなってしまった。

まさか一誠の身にとんでもない事が起こってしまったのではないか、最悪の状況が頭を過り、必死で一誠に呼びかける白音。

 

「くー、くー…」

「ね、眠っただけですか、び、びっくりしました。それにしても、大きい隈です。開発作業に、寝る暇も削り過ぎていたのですね。本当に、ありがとうございます。ゆっくりお休みなさい、イッセー先輩…」

 

だが一誠は、眠っただけだった。

白音の膝の上ではっきりした寝息を立てながら、安らかな寝顔で熟睡をする一誠の姿に、白音はガシャット開発での苦労を想像し、労いの言葉を掛けた。

因みに徹夜続きの開発作業が影響して、一誠はそれから数日、目を覚まさなかったのは余談である。



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63話_戦いの前のParty

ガシャットギアデュアルαの開発作業を終え、数日間眠っていた一誠も目覚めたこの日、魔王主催のパーティが開催される事から、それにリアスと同伴で参加する彼らは正装を着用していた。

まず一誠と祐斗は黒のタキシードを着用し、グレモリー領本邸エントランスにて女性陣が来るのを今か今かと待っていた。

すると其処に、

 

「お待たせ、イッセー、祐斗。待たせちゃって御免ね」

「大丈夫だよリアス、来たばかりだ。それよりも今日まで寝込んでいて済まなかった。開発作業が佳境に入ると徹夜続きになる癖が今回も…」

「本当ですよ、イッセー先輩。いきなりぐったりした時には、びっくりしたんですから。もしかしたらイッセー先輩の身に何かあったんじゃないかって…」

「本当に御免、白音ちゃん。それにしても、皆似合っているな。普段から綺麗だが、身なりを整えると数割増しだ」

「うふふ、ありがとうございます、イッセー君。イッセー君も似合っていますわ、タキシード姿」

「そにゃね、朱乃。イッセーの格好良さが際立って、惚れ直しちゃったのにゃ」

 

ドレスを着用、髪型が整えられ、メイクが施された女性陣が到着した。

元より美女・美少女揃いである女性陣だったが、パーティに参加すべく手の施された彼女達の姿は、何時にも増して綺麗になっていた、そんな己の恋人達の姿を手放しで称賛する一誠に、彼女達もまた彼の姿を褒め称えた。

が、

 

「ギャスパー、お前もドレスなのか…」

「良いじゃないですかイッセー先輩、ドレス着たかったんですもん。ボク女顔だから違和感ないですし」

「それを自分で言うのはどうかと思うけどね…」

 

男であるギャスパーもドレスを着用していた。

ある意味想像通りだったギャスパーの姿に一誠が呆れ交じりに呟いたのを聞いたギャスパーは、自分の顔立ちを自賛しつつ反論、そんな反応に祐斗はツッコミを入れていた。

 

「ぱ、パーティなんて初めてですから、今から緊張します…」

「そうね、アーシア。増して今回は魔王様が主催する場、由緒ある悪魔達が集い、交友を広く、強固な物とすべく色々動き回るのでしょうね、そんな場でイッセー君の恋人として、リアス部長の眷属として恥じない行動をしないといけないけど、パーティに参加した経験が無いのが不安ね…」

「今から嘆いていても仕方ないぞ、アーシア、イリナ。会場についたらもう出たとこ勝負だ」

 

尚、眷属になって日が浅い方である、嘗て教会に属していた3人は、初めてのパーティという事で緊張しきりだった。

 

------------

 

「これで一通りの挨拶回りは完了したか。流石に魔王様が主催するパーティか、由緒ある家柄からの参加者が多いな」

「お疲れ、イッセー君。流石はイッセー君、冥界でも人気急上昇だね」

「お疲れ様です、イッセーさん。徹夜明けなのに大変ですね…」

 

会場である地上二百階建ての高級ホテル、その最上階に到着したリアス達、その中で一誠はリアスに連れられ、一誠と交友関係を持ちたがっているらしい悪魔達との挨拶回りをしていた。

悪魔勢力においても人気となっているゲームを多数作り上げた天才ゲームクリエイター『IS』である事が知られた故か、或いはライザーとのレーティング・ゲームや禍の団との戦いにおいて勝利を呼び寄せたライダーシステムの開発者である事が知られた故か、一誠と交友を持ちたがる悪魔は余りにも多く、ざっと1時間余り挨拶回りに時間を費やされた。

中には一誠をトレード(此処で言うトレードとは、王の間で同じ駒同士の眷属を交換する事である)して欲しいとリアスに持ち掛ける悪魔もいたが、リアスは全て断っていた。

 

「お疲れ様、イッセー。寝起きに挨拶回りは疲れたろう、料理をゲットして来たぞ。アーシアもイリナも食え」

「ありがとう、ゼノヴィア」

「これ位、お安い御用さ。ほら、緊張の余り喉を通らないとしても、飲み物くらいは口にしておけ」

「ありがとうございます、ゼノヴィアさん。やっぱり緊張で喉がカラカラで…」

「私も。やっぱり他の皆は場慣れしているわね。これから私達も慣れていかないとね…」

 

ともあれ一通りの挨拶回りを終えた一誠はアーシア達がいるフロアの端へと行き、同じく来たゼノヴィアが持って来た大量の食べ物や飲み物の一部を受け取り、口にしていた。

 

「お久しぶりですわ、IS様」

「L。久しぶりだな、あのレーティング・ゲームの時以来か」

 

そんな一誠達に、レイヴェルが近寄り挨拶をして来た。

言うまでも無くレイヴェルはフェニックス家の令嬢、魔王主催のパーティに参加している事は何らおかしくはない、一誠もそれを理解している為、特に驚くことなく挨拶を返していた。

 

「ああ、レーティング・ゲームで思い出したが、君の兄は今どうしている?あの時、リアスとの一騎打ちにぼろ負けしたとは聞いていたが」

「ああ、あの愚兄ですか。あれ以来塞ぎ込んでいますわ、負けると思っていなかったリアス様とのレーティング・ゲームで無様に負けた事が余程ショックだったのでしょうね。まぁ、良い気味ですわ」

 

此処でふと、レーティング・ゲームで戦ったライザーの事を思い出したのか、一誠がライザーの現況を尋ねると、レイヴェルはバッサリという擬音が聞こえて来そうな程に手厳しく、というか見限っているかの様に返答した。

尚、自分が作り上げたゲームを、それを愛好してくれるゲーマー達を馬鹿にした一件を未だに根に持っていたのか、一誠もそんなレイヴェルの、実の兄に、己の王に対する物とは思えない対応に疑問を持つ事は無かった。

また、レイヴェルは既にライザーと、ライザー達の母とのトレードによって移籍している為、兄に対しては兎も角、己の王に対する不敬は成り立たない、一応。

 

「お隣、宜しいでしょうか?」

「ああ、どうぞ。先月リリースしたマイティブラザーズXXの感想も聞きたかった所だ」

「流石はIS様、それはもう素晴らしいゲームですわ!協力プレイを前提としたアクションにステージギミック、元となったマイティアクションXとはまた違ったベクトルの面白さでしたわ!タッグモードはまだまだと言った所ですが、ソロモードは既にレベル・インファナルまでパーフェクトクリアして見せましたわ」

「もうレベル・インファナルを!?早いな、流石はLと言った所か」

 

それは兎も角、一誠の隣の席に座ったレイヴェル、話題は先月発売されたマイティブラザーズXXについての物となり、その面白さの余り此処が社交の場である事も忘れて興奮し切りな様子で絶賛していた。

 

「よう、ISにL!案の定お前達も来ていたか、俺も来た甲斐があったぜ。混ぜて貰って良いか?」

「Zか、構わないさ。あの時、Zの感想を聞いていなかったしな」

「お久しぶりですわ、Z様。ささ、どうぞ此方に」

 

それを聞きつけたのか、ゼファードルも眷属達を引き連れ、会話に加わった。

因みに流石のゼファードルも、魔王主催のパーティに参加するとあってか、普段のヤンキー丸出しな格好では無く、ちゃんとした正装で会場入りしていた。

 

「あ、そうそう、ISには俺の眷属達を紹介していなかったな。折角だし、紹介しても良いか?」

「そういえば、そうだったな。宜しく頼む」

「おう!といっても、半分ちょいはお前も良く知っている奴だけどな。お前ら、こっちだ」

「良く知っている奴…まさか…?」

 

此処でふと、己の眷属を紹介していなかった事に気付いたゼファードルが、眷属達を呼び寄せ、紹介しようとする、と、

 

「久しぶりだぜ、IS!まさか悪魔としてもISと会えるとはびっくりだ!」

「遊一、此処パーティの場だぞ、ISに会えて嬉しいのは分かるけどテンションを抑えろ」

「仕方ないですよ、鉄男。遊一ですし」

「雪奈、流石にそれで済ましたら駄目でしょ」

U1(ゆういち)に、鉄心に、ルキナに、カーリー!?お前達も悪魔に転生を!?」

 

U1と呼んだ、エビを思わせるメッシュを入れた髪型が特徴的な元気いっぱいの少年、鉄心と呼んだ、首回りが見えにくい(よく言えば)マッシブな体躯の少年、ルキナと呼んだ、ロングな髪含めて青ずくめな風貌の少女、そしてカーリーと呼んだ、牛乳瓶の底を思わせる眼鏡に、某「粉砕!玉砕!大喝采!」でお馴染みな社長の弟を思わせる服装に身を包んだ少女の姿に、驚きを隠せなかった。

それも無理はない、彼らは天才ゲーマー『Z』の4人の弟子として、顔見知りだったからだ。



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64話_さあ、Gameを始めよう…!

「まあISとLとコイツらは顔見知りだが、知らねぇ奴もいるんだ、紹介するぜ。まず、このエビみてーな髪型した奴は、U1こと九十九(つくも)遊一(ゆういち)。俺の僧侶だ」

「九十九遊一だ、宜しくな!U1って呼んでくれよ!かっとビングだ!」

「何に向かってかっとビングするんだ、お前は」

「今U1ツッコミを入れたコイツは、鉄心こと西村(にしむら)鉄男(てつお)。それと、青ずくめな服装のコイツは、ルキナこと田口(たぐち)雪奈(ゆきな)。どちらも俺の戦車だ」

「皆さん、宜しくお願いします。ルキナと呼んで下さい」

「そして、牛乳瓶みてーな眼鏡掛けたコイツは、カーリーこと木村(きむら)(なぎさ)。俺の騎士だ」

「カーリーよ。宜しくね、皆」

 

天才ゲーマー『Z』の弟子である4人、エビを思わせるメッシュを入れた髪型が目立つ少年――九十九遊一と、首回りが見えにくいマッシブな体躯の少年――西村鉄男、ロングヘアーまで含めて青ずくめな姿の少女――田口雪奈、そして牛乳瓶の底を思わせる眼鏡が特徴的な少女――木村渚。

まさかの面子に驚きを隠せなかった一誠を他所に、ゼファードルは己の弟子であり眷属でもある4人の紹介を始めた。

 

「リアス部長の僧侶、アーシア・アルジェントです!宜しくお願いします!」

「リアス部長の兵士、ゼノヴィアだ。宜しく頼む」

「同じくリアス部長の兵士、紫藤イリナです。宜しくね、皆!それにしても皆はどんな経緯で、その、Zさんで良いのかな?眷属悪魔に」

「「「「(俺)(私)達は師匠であるZ(さん)と共に在る!」」」」

「とまあどれだけ、それこそしつけぇって言われる位説得してもこんな調子でな、それ程の覚悟があるならと、眷属にしたんだよ」

 

それにこたえる様に、その場に一誠達と共にいた、元教会所属の3人が自己紹介をする。

その中でやはり、天才ゲーマーとして知られるゼファードルの弟子というだけで、特に変わった力を持っている様には感じられない4人が何故彼の眷属悪魔に転生したのかが気になったのか、イリナが尋ねようとした。

それも無理はない、悪魔に転生すると決める事、それは種族的なメリットやデメリットだけで判断して良い物では無い。

上級悪魔である主人の眷属に転生するという事、それは主人の臣下としてその耳目に、手足になって働いてゆく事と言っても過言ではないのだ。

今の悪魔社会は所謂中世ヨーロッパの様な貴族社会、故に上級悪魔となれば冥界の領地や人間界での『裏』の管理、レーティング・ゲームへの参加等、やるべき事は多く、眷属悪魔達はそんな主人の臣下としてそういった事に対して力を振るって行かねばならないのだ。

その中で己の力を認められれば中級・上級悪魔へと昇格し、自らもまた領地を持ち、眷属を従える存在となれる一方、そうでなければずっと下級悪魔のまま、中世ヨーロッパにおける平民の様な苦しい生活を強いられる事となる。

かと言って不満だからと反逆してしまったらはぐれ悪魔の烙印を押され、人外勢力の全てを敵に回す事になってしまう。

故に自ら悪魔に転生するという決断は、そういった深い事情を考慮しなければいけない。

ゼファードルもそういった事情を、本人曰くしつこい位に説明し、考え直すよう彼らに説得した。

だが彼らの覚悟は、決意は少しも揺らぐ事は無く、流石のゼファードルも根負けしたのか、或いはその強固な決意を買ったのか、彼らを己の眷属としたのだ。

 

「流石はZと言うべきか。此処まで弟子達に慕われるとはな」

「止せやIS、照れるじゃねぇか。まあ、続けるぜ。コイツはヴァルキリーのリース。俺の女王だ」

「ゼファードル様の女王、リースと申します。皆さん、宜しくお願いしますね」

「ヴァルキリーと言えば北欧の主神に仕えし戦乙女、よもやそれ程の存在を眷属にするとはな…」

 

それ程まで師匠を慕う弟子達の姿に、何処か照れ臭そうな様子のゼファードルだったが、眷属紹介を続けた。

それを受けて挨拶したゼファードルの女王である、露出度の高い緑色のワンピースに身を包んだ元ヴァルキリーの少女――リースに、そんなリースを眷属としたゼファードルに、一誠は感心した。

 

「んで、コイツらは俺の騎士であるナッシュ・ベリアルと、僧侶であるメラグ・ベリアル」

「おいゼファードル、俺らの紹介だけ何か雑じゃねぇか!イラっと来るぜ!」

「ナッシュの言う通りです、もう少し真面な紹介をして頂かないと。例えばレーティング・ゲームのチャンプであるディハウザー・ベリアル叔父様の親戚、とか」

 

そして残る2人である、共に前髪のみが水色に染まった青髪で、青を基調とした服装に身を包んだ目つきの悪い少年――ナッシュと、明るい色合いの服装に身を包んだ何処か気品に満ちた少女――メラグの(恐らく)兄妹の紹介があっさり終わった事に2人は抗議の声を上げていた。

 

「それでZ、お前の対戦相手は誰だ?」

「良くぞ聞いてくれたぜ、IS。俺の対戦相手だが、あのバアル家の兄ちゃんだ。若手最強って評判も伊達じゃねぇ力を持ったアイツが相手なんだ。下馬評じゃあ、バアル家の兄ちゃんが勝って当然だの、こっちは相手の眷属を何人倒せるかが評価の基準になるだろうだの、ひでぇ事ばっか言いやがる。実際、スペック的に及ばねぇのは百も承知だが、だからこそそれをひっくり返して、皆を驚かせてやりてぇな」

「流石は私に並ぶ天才ゲーマーですわね、期待して拝見致しますわ。あ、勿論IS様達のゲームも!」

 

とはいえこれでゼファードルの眷属紹介も終わり、近々行われる若手悪魔同士によるレーティング・ゲーム、そのゼファードルの相手が誰かが気になり、彼に聞いた一誠。

それを聞かれて、最初から教える、というよりひけらかす気満々だったのか、やる気満々だと言わんばかりに己の意気込みをペラペラと喋った。

 

 

 

その後、厳重な警備(魔王主催のパーティなので当然の事ではあるが)も功を奏して禍の団が潜入を仕掛けるなんて事態も起こらず(寧ろあってはおかしいのだが)、パーティは滞りなく終了した。



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65話_開幕、リアスVSソーナ

遂に迎えたレーティング・ゲーム当日、この日はリアス眷属VSソーナ眷属、サイラオーグ眷属VSゼファードル眷属、そしてシーグヴァイラ眷属VSディオドラ眷属、計3試合が全てブリッツ形式(制限時間が短めに設定された試合形式の総称。今回は3時間まで)で行われる。

今回の組み合わせは、レーティング・ゲームの運営委員会が『王』と眷属を含めての平均的な強さから付けた評価のランキング上位3陣営と下位3陣営が見事にばらけた格好となり、3位であるリアスと5位であるソーナの幼馴染対決、2位であるシーグヴァイラと4位であるディオドラの対決、そして1位であるサイラオーグと最下位であるゼファードルの、元は次期当主でなかった者同士の対決となった。

この組み合わせとなった事を受けての下馬評は、上位3陣営が勝つのは確定的に明らか、という物。

それも当然と言える、上位3陣営は、既に自らが最上級悪魔級と言って良い戦闘スペックを有する上に眷属も精鋭を揃えたサイラオーグ、サイラオーグと同様に眷属を精鋭で固めつつ自らの知略で最大限の力を引き出すシーグヴァイラ、各々が仮面ライダーの力を取り入れた事で急成長を遂げ目覚ましい活躍を見せるリアスと、錚々たる顔ぶれなのだから。

一方の下位3陣営、特に5位のソーナと最下位のゼファードルは、王のスペックは兎も角としても眷属の大半は特別な力を有していない普通の人間から転生した存在ばかり、しかもソーナの眷属は全員が駒王学園高等部の生徒で生徒会所属、ゼファードルの眷属は過半数がゲーマー『Z』としての弟子と、実力よりも縁故で眷属にしたとしか言えない状態だ。

一応ゼファードルの眷属にはヴァルキリーから転生した女王のリースと、純血悪魔である騎士のナッシュと僧侶のメラグのベリアル兄妹がいるし、ソーナにも戦闘において有用な神器を持った眷属が何人かいるが、精鋭で固めている上位3陣営には遠く及ばない、というのが委員会の、世間の評価である。

だが彼らは目の当たりにする事になる、奇跡が起こってもあり得ないと言われていた大番狂わせを…!

 

------------

 

まずはリアス眷属VSソーナ眷属の試合を見ていこう。

2陣営のバトルフィールドとなったのは、駒王学園の近所に建てられているデパートをモデルとした物、お互いに見知った場所を模したバトルフィールドとする事で地の利を公平にしようという考えで選定されたのだろう。

その2階東側フロアがリアス眷属の本陣、1階西側フロアがソーナ眷属の本陣に設定、レーティング・ゲームにおいて兵士が相手の本陣に辿り着く事で出来る様になる昇格は今回も行え、リアス眷属は一誠とイリナ、そしてゼノヴィアが、ソーナ眷属は元士郎を含めた2人がその対象となる。

仮面ライダーの力を得た事で精鋭揃いとなった上に、兵士の駒3個で転生したゼノヴィアという例外を除いて駒1個で眷属として来ながら、未使用の駒は戦車1個に兵士3個のみと粗方揃えて来たリアス眷属に対し、同じく兵士の駒を複数使用(此方は4個)させた元士郎を除いて駒1個で転生させて来ているが、騎士が1人、兵士が1人少ないソーナ眷属、質量共に優位なリアス眷属の勝利は揺るがない、寧ろリアス眷属にとってこの試合は消化試合という声まで聞こえる状態である。

だが、いや、だからこそと言うべきか、ソーナ眷属サイドはこのレーティング・ゲームでリアスから勝利をもぎ取れば、ソーナの目標である学校設立に向けて大いに前進するであろうとやる気に満ちていた。

とは言えやる気だけで勝てる程甘くは無い、よって準備時間の合間に綿密な戦略を練り上げた。

まずは、リアス眷属の目を担うと考えられるギャスパー、及び気配察知が使える黒歌・白音姉妹への奇襲攻撃。

今回のレーティング・ゲームにおいて、ギャスパーの神器は暴走に対する懸念が残っている事から使用が禁止されており、故にギャスパーは吸血鬼としての能力の1つである蝙蝠への変身等を駆使した偵察としての役割に回らざるを得なくなる。

それを見越し、ギャスパーを真っ先にリタイアさせる事でリアス眷属の索敵能力は大幅に削がれる。

その為に吸血鬼にとって天敵であるニンニクを生鮮食品売り場から調達、口に入れやすい様に加工しながら、その様子を敢えてギャスパーに察知させ、其処で彼に食べさせる事でダウンさせるという物だ。

またニンニクは、生態的に猫と良く似ている猫又だった黒歌・白音姉妹にも有効だ。

実を言うとニンニクやネギ、玉ねぎやニラといったネギ類の野菜を猫が食べると、それに含まれる成分が赤血球を破壊、貧血や呼吸困難、嘔吐等の症状を引き起こしてしまう、それ故に2人もネギやニンニク等を使った料理は食べられないのだ。

ギャスパーを倒した後、予め仕掛けて置いた術式を発動させる事で黒歌達の意識を其方に向かわせ、その隙に此方は引き続きニンニクを用いて2人をリタイアさせる、幾ら仮面ライダーに変身していようとニンニクに弱い体質まではどうにもならない。

こうして状況把握の術に長けた3人を撃破した後は、幾重にも張り巡らせた罠や幻術を駆使して時間切れ、或いは疲弊したタイミングを見計らっての撃破を狙う、それがソーナ眷属の戦略である。

 

(誰が何と言おうと兵藤一誠はあのクズ野郎の兄、アイツだってとんでもないクソ野郎に違いない!リアス先輩達はアイツに騙されているんだ!俺がこの手で会長を勝利に導き、皆の目を覚まさせねぇと!)

 

ゲームが開始されてから数分、ソーナの兵士である元士郎は、同じく兵士で、眷属で唯一の1年生である仁村(にむら)留流子(るるこ)をおんぶしながら、自らの神器『黒い龍脈(アブソーブション・ライン)』を駆使して、まるでターザンの如き動きで、仕掛けていた術式が捉えた気配のする場所へと、頑なと言っても過言じゃない事を考えながら急行していた。

すると、

 

「兵藤か!まずは一発食らいやがれ!」

 

仕掛けていた囮へと向かっているであろうエグゼイドを発見、相手側が気付いていないと確信し、このチャンスを逃してなるものかと神器による黒いワイヤー状の物体を突き刺そうとした。

が、

 

「な、なんdぐぁぁぁぁ!?がはっがはっ!?目がぁぁぁぁ!目がぁぁぁぁ!」

「こ、これhけほっけほっ!?か、辛いぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

 

それが触れようとした瞬間、突如としてエグゼイドの身体が爆発、血とは似ても似つかない黒褐色の液体がまき散らされ、元士郎達にも大量に降り注いで来た。

余りに唐突な事態に防御が間に合わずその液体をもろに被ってしまった元士郎と留流子は次の瞬間、鼻から感じる激臭、目や皮膚を突き刺す強烈な痛み、そして口内を襲う猛烈な辛味が炸裂し、のたうち回り出した。

 

「どうかな、私特製のウルトラデ○ソース製デコイの威力は?」

 

其処に、身体にハンバーガーを思わせる鎧、右腕に赤、左腕に黄色の調味料入りボトルを思わせる武装、両足にインラインスケートを装着した風魔――バーガーニンジャゲーマーレベル3が姿を現し、やらせていただきましたァンと言わんばかりの様子でそう説明していた。

尤も、余りの辛さにのたうち回る彼らは聞いていなかったが。

 

「さあ、私達を怒らせた事を、決して触れてはならない逆鱗に触れた事を後悔しながら地獄を楽しむと良いわ!

 

 

 

ウルトラデ○ソースビーム!」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

ウルトラデ○ソース、某ホットソースといえばこれと称される程有名なシリーズの中で、市販されている物では最も辛いと言われているソースである。

そのスコヴィル値(カプサイシンを含んだ食べ物の、辛さの指標)は1173000、何と市販されている催涙スプレーの数倍から数十倍、そんな武器にも使える強烈な辛さを有したソースだがしかし「これは調味料だよ」という風魔の主張が通ってしまい、左腕の調味料発射装置に充填されたのだ。

ただでさえそれをもろに浴びてのたうち回っている所に、口内に思いっきり噴射されたらどうなるか。

 

『ソーナ・シトリー様の兵士2名、リタイア』

 

人間と比べて色々と強靭な悪魔の身体であっても耐えられる物ではなく、口内で更に猛威を振るう辛味に苦悶の様子を見せながらリタイアによる転移の光に包まれていった。

 

「何とも不思議な物だ。凄惨な光景だと言うのに、これっぽっちも戦慄が走らないのは。イッセーを侮辱された怒りは、これ程と言う事か」

「そりゃそうでしょ。私、前にコイツがイッセー君にしでかした事を聞いた時、私もお仕置きしたかったなぁって思ったんだもん。主であるソーナ会長の夢を否定されてキレていたけど、自分も否定した人達と同類じゃん、ねぇ?どの口が言うんだか」

「ダブルスタンダードという奴だな」

 

その光景を見届けながら、風魔と、日本の武者を思わせる姿となったレーザー――チャンバラバイクゲーマーレベル3は、元士郎の言動についてボロクソに非難していた。

 

 

 

尚、この一件がトラウマとなったのか、元士郎と留流子は辛い物が一切食べられなくなり、また一誠への非難を、考えること自体しなくなったらしい。



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66話_There eyes障子

場所は変わって立体駐車場エリア、リアス眷属は此処にパワータイプである朱乃やゼノヴィアを送り込んでくるだろうとソーナは読んでいた。

今回のレーティング・ゲームでは、建物を破壊してはならないという追加ルールが課されている為、ド派手な攻撃を持ち味とする朱乃とゼノヴィアが力を発揮出来る場所は限られる、その1つが遮蔽物の少ない立体駐車場エリアである。

其処でそのパワーを逆手に取るべく、攻撃を跳ね返す能力を有した神器『追憶の鏡(ミラー・アリス)』を有した、女王であり生徒会副会長である真羅椿姫と、戦車である由良(ゆら)翼紗(つばさ)、そして騎士である(めぐり)巴柄(ともえ)の3人を送り込んだのだが、

 

「副会長に、由良さんに、巡さん。やはり、此処に来ていましたか」

「き、木場君に兵藤君!?何故此処に!?」

 

その読みに反し、此処にやって来たのはテクニックタイプである祐斗と一誠だった。

 

「ギャスパー君達を倒すべくニンニクを調達したり、黒歌先生達をかく乱する為に囮の術式を多数配置したり、朱乃先輩達が力を振るえると踏んで此処に貴方達を送り込んだり、ソーナ会長のデコイを設置して其処で全力を振るわせようとしたり…

貴方達の行動は全て、事前に配置していた監視アイテムでお見通しですよ」

「木場、上手く行ったからと言ってべらべらネタばらしするのはどうかと思うぞ。まあ、そういう事です。今頃、匙達はイリナが設置していたウルトラデ○ソース製デコイの餌食となっているでしょうし、ソーナ会長のデコイと共に中央広場に陣取っている花戒と草下の所には、黒歌と白音が殴り込んでいるでしょう、もしかしたら朱乃が狙いを定めているかも知れませんよ?流石に本物のソーナ会長が何処にいるかまでは把握出来てはいませんが、黒歌が必ずや吐かせるでしょうね」

「な!?」

 

ソーナ眷属の戦略は全て筒抜けであると伝える祐斗、そんな彼を一応は窘めつつ、一誠も便乗して椿姫達を煽った。

 

------------

 

話は数十分前、バトルフィールドに転送された時に遡る。

駒王学園近くのデパートを模したバトルフィールドへと転送され、審判役であるグレイフィアからルール説明を受けたリアス達は早速、作戦会議を始めた。

 

「バトルフィールドとなるデパートを破壊しない事、か…

私や副部長にとっては不利な戦場だな、広範囲の攻撃が行えない」

「困りましたわね。大質量による攻撃戦を封じられた様な物ですわ」

 

そのルール説明を受けて困り顔となったのがゼノヴィアと朱乃。

言うまでも無く、今回のルールで最も割を食っているのはこの2人だが、それだけじゃない。

 

「ギャスパー君の眼も効果を望めませんね。店内では隠れられる場所が多過ぎる。商品もそのまま模されるでしょうし、視界を遮る物だらけです」

 

ギャスパーの神器も己の眼で見る事によって初めて効果を発揮する物、発動を見越して隠れられてしまっては意味がないのだ、が、

 

「いいえ祐斗、ギャスパーの眼は最初から使えないわ。こちらに『ギャスパー・ヴラディの神器使用を禁ずる』との規制が入ったのよ。理由は単純明快、まだ暴走の懸念があるから、だそうよ。それでゲームが台無しになったら困ると言う判断でしょうね。しかもアザゼルが開発したらしい神器封印用のメガネを装着する様にとの事よ。本当、用意が良いわね。何時作ったのかしら、まさかまた職務をほっぽり出して…?」

 

此処は最初から禁止されていた。

 

「となると、ギャスパー君は魔力やヴァンパイアの能力を使うか、クロノスに変身して戦うかしかないと言う事になりますね」

「いや、後者は兎も角前者は危ないかも知れないぞ。最悪、ギャスパーが即座に離脱する可能性がある」

「どういう事だい、イッセー君?」

 

となればギャスパーは、他の持ち味で戦うしかないと確認する祐斗だったが、其処で一誠が割って入った。

 

「リアス、このバトルフィールドは、あのデパートを完全再現していると言っていたな。となれば生鮮食品等も陳列された状態だと思う、そう、ヴァンパイアは勿論、猫又である黒歌や白音にとっても有害である…」

『あ、ニンニク!』

 

今言った事の真意を説明する一誠、その途中で思い当たったのか、皆が同時に声を上げた。

 

「成る程、となると蝙蝠に変身しての監視も厳しいわね。ギャスパーには偵察をお願いする予定だったのだけど…」

「大丈夫だリアス、偵察自体なら出来る。ギャスパー、クロノスに変身して欲しい。レベル3で」

 

神器が使えないならと、ヴァンパイアとしての能力を活かした偵察役をギャスパーにお願いする予定だったらしいリアスだったが、それも危険性を考えると断念するしかないと肩を落とした。

然しながら、一誠に抜かりは無かった。

 

「はい、イッセー先輩!」

『ハコニワウォーズ!』

『ホームガーディアン!』

第三戦略(サード・ストラテジー)、変身!」

『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!ハコニワウォーズ…!

アガッチャ!敵軍勢が、来るぞ!敵軍勢が、来るぞ!迎撃態勢整えろ!迎撃態勢整えろ!迎え撃て!狙い打て!ホーム!ガーディアン!』

 

一誠の指示を受けてクロノスへと変身したギャスパー、するとその脇に現れていた装甲車らしき物体――ガーディアンゲーマがクロノスを覆う鎧に変形、そのままクロノスに装着され、仮面ライダークロノス・ガーディアンウォーズゲーマーレベル3となった。

 

「バグヴァイザーのディスプレイ部分を、タッチパネルみたいに操作すれば良いんですよね!カメラに、集音マイクに、レーダーに、赤外線センサー…」

「わわっ!?ギャスパー君の胸から色んな機器が出て来ました!」

 

変身を完了したクロノスは早速行動に移る。

右腕に装着されていた薄緑色のガシャコンバグヴァイザー――ガシャコンバグヴァイザー(ツヴァイ)からグリップ部分を取り外し、スマホの如く操作をし出すと、胸のアーマーが開き、其処から今しがた言っていた様な機器が出て来た。

レベルアップに使用したホームガーディアンのゲームジャンルはタワーディフェンス、そしてタワーディフェンスの目的は、迫りくる敵軍勢を、様々なアイテムや兵隊を随所に設置する事で食い止めるのが目的、そう、そのゲームシステムを基としたガーディアンウォーズゲーマーは、今しがた作り上げた監視機器やトラップ、設置式の兵器等を生産する事が出来るのだ。

 

「成る程、分かったわ。フィールドの随所に今しがたギャスパーが作った機器をセッティング、それを耳目として一括監視するという訳ね。これならギャスパーが蝙蝠に変身して出向く必要も無いわ。流石ね、イッセー。となれば、事は一刻を争うわね。祐斗、黒歌、イリナ。フィールドの状況確認がてら、ギャスパーが作った機器の設置を頼むわね」

「了解です、部長」

「分かりました!」

「行ってくるのにゃ、リアス」

 

一誠の思惑に気付いたリアスは早速、祐斗達に機器の設置をして来る様に指示を飛ばし、3人は持てるだけの機器を抱えてフィールドへと走って行った。

 

『それでは、ゲームスタートです』

 

そうこうしている内に開始時間となり、グレイフィアのアナウンスを受けて、ゲームは始まった。

 

「相手は駒王学園でも交流のあるソーナ。手の内を知られている以上、向こうも此方がどう動くかを読んで作戦を立てて来るはず。それでも私達は勝つわ。私達の力、存分に見せつけてあげましょう!」

『はい!』

 

それを受けてリアスが言い放った号令に皆が皆、気合が入った。

 

「ギャスパー、向こうの様子はどうかしら?私達の予想が正しいのなら、もう動き出しても良い筈」

「早速来ました!真羅副会長らしき人を含めた3人が立体駐車場エリアへと進軍を開始!此処に朱乃お姉様やゼノヴィアさんが来るのを見越した物かと思われます!あれ、何か結構速いスピードで2人位接近して来ます!こ、これは匙さん!?何か留流子ちゃんを抱えて、ターザンみたいな動きをしています!」

「た、ターザン!?何とも予想外な行動ね…

ともかく、向こうの出方が分かった以上、私達も行きましょう!イリナとゼノヴィアはその匙君達が向かう方向へ、イッセーと祐斗は立体駐車場へ、黒歌と白音は正面から進攻して!朱乃は遊撃を頼むわ!皆の進行具合を見て、私もアーシアも、ギャスパーも進攻をを開始するわ!」

『了解!』

 

そしてクロノスが作り出した監視機器から逐一入ってくる情報を受けて、其々の行動が決定、

 

「じゃ、早速行ってきます!チャプター3!」

『ハリケーンニンジャ!』

『ジュージューバーガー!』

「行くぞ、イリナ!3速!」

『バクソウバイク!』

『ギリギリチャンバラ!』

「「変身!」」

『『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!』』

『マキマキ!竜巻!ハリケーンニンジャ!アガッチャ!バーガー!バーガー!ジュージューバーガー!』

『爆走!激走!独走!暴走!バクソウバイクゥゥゥゥ!アガッチャ!ギリ、ギリ、ギリ、ギリ、チャンバラァァァァ!』

 

状況的に急ぐべきイリナとゼノヴィアの2人は早速変身、同時に現れたハンバーガーを模したロボット――バーガーゲーマと、武者を思わせるロボット――チャンバラゲーマが変形を開始、まず鎧型となったバーガーゲーマが風魔に装着され、仮面ライダー風魔・バーガーニンジャゲーマーレベル3となった一方、覆っていたパーツが飛び散った後バイク型に変形する事無く浮き上がったレーザーに、これまたバラバラになったチャンバラゲーマのパーツが装着、人型の姿――仮面ライダーレーザー・チャンバラバイクゲーマーレベル3となった。

 

「僕達も行こう、イッセー君!」

「待て、木場。急ぐのは良いが、変身は後でも良いだろう。

 

 

 

お前、グラファイトからナイトオブサファリガシャットを貰ったのだろう?ならば新しいガシャットのお披露目でもある、直前まで焦らすのも一興だろう?」

「成る程、そうだね」

「ただ変身した状態でカチコミするのもつまらないし、乗ったにゃ!」

「観客に、ソーナ会長達、皆の驚く顔が楽しみです!」

 

祐斗達も続けと言わんばかりに其々の持ち場へと向かいつつ、変身しようとしたが、此処で一誠が待ったを掛けた。

どうせなら変身の過程を皆に見せるのも一興という一誠の考えに他のメンバーも賛同、4人は変身していない状態で向かう事にした。



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67話_誇り高きBeast&Twins

そして時刻は現在に戻り、

 

『ソーナ・シトリー様の兵士2名、リタイア』

「どうやら、予想通りの展開になりましたね。さて、俺達も続くとしよう、木場」

「ああ!行くよ、イッセー君!」

『タドルクエスト!』

『ナイトオブサファリ!』

『マイティブラザーズダブルエックス!』

 

一誠が言っていた通り元士郎と留流子がリタイアした事を伝えるアナウンスが流れた為に、動揺が広がる椿姫達を他所に、2人は変身すべく、其々のガシャットを取り出した。

祐斗は何時も使用している水色のそれに加えて、グラファイトから託されたらしいベージュのガシャットを、一誠は夏休み前に完成させたオレンジと水色のツートンカラーで、ドクターマイティXXガシャットと同じ大型のガシャットを起動させ、

 

「行くぞ、ゲノムス!ライダー!」

「術式レベル5!」

「「変身!」」

『ガシャット!』

『ダブル・ガシャット!』

『『ガッチャーン!レベルアップ!』』

『辿る巡る!辿る巡る!タドルクエストォォォォ!アガッチャ!ライオン!シマウマ!キリン!真夜中のジャングル!ナイトオブサファリ!』

『マイティブラザーズ!二人で一人!マイティブラザーズ!二人でビクトリー、エックス!』

 

何時もの手順で変身する。

まずは祐斗、出現した水色のパネルを潜ると、何時もの様に異空間へと転移する事無く、頭にはライオンを模した兜、身体にはヒョウ柄の装甲、右手には装甲と同じくヒョウ柄の剣、左手にはこれまたヒョウ柄の鉤爪を装着した姿――仮面ライダーブレイブ・サファリクエストゲーマーレベル5に変身が完了した。

一方の一誠は、レベル1に変身するかの様な演出が繰り広げられる中、何時もの様に出現したパネルの中から、右半分がオレンジ、左半分が水色と、髪と眼の色が変色したエグゼイドらしきパネルを選択、『Select!』の文字と共に、エグゼイドのレベル1としてのそれに、髪と眼の色以外が酷似した姿に変身した。

勿論、全く同じという訳ではない。

 

「イッセー君、胸のコントローラーが随分と様変わりしているね。それに体力ゲージが何倍にも増えている様な…」

「様な、ではなく、実際に増えている。マイティブラザーズXXガシャットを用いて変身したこの仮面ライダーエグゼイド・ダブルアクションゲーマーのレベルはX。Xはローマ数字で10を表す他、未知な物に対してとりあえず付けて置く名としても使用される。そう、レベルXは2桁の壁を越え、尚も計り知れぬスペックを有する形態に与えた、強大なる力の証だ!」

 

ブレイブが言う通り、ダブルアクションゲーマーレベルXの姿となったエグゼイド、その胸のディスプレイに表示される体力ゲージは3本もある他、コントローラー状の機構も、オレンジ、黄色、水色のボタンがテンキー状に3個ずつ計9個配置され、その外周にも其々の色の、円の外周らしき形状のボタンが1つずつ配備されていた。

体力もそうではあるが、レベル1と思しき姿とは裏腹に、そのスペックが今までとは比べ物にならない程強化されているのは、その機構が物語っていたが、

 

「くっ!ですが私達だって負けられません!翼紗、巴柄!行きますよ!」

「「はい!」」

「これより、序列十二眷属の切除手術を開始する」

「木場!お前は巡を頼む!俺は、いや」

『ガッチャンガッチャーン!ダブルアップ!』

「「俺(僕)達は残る2人を相手する!」」

『俺がお前で!お前が俺で!ウィーアー!マイティマイティブラザーズ!ヘイ!ダブルエェェェェックス!』

「ひょ、兵藤君が2人になった!?」

 

これで終わらなかった。

突撃を仕掛けて来た椿姫達に応ずるかの如くブレイブに指示を飛ばすと共にゲーマドライバーのレバーを開閉すると、ドライバーからの音声と共にエグゼイドの身体が何と分裂、其々が椿姫と翼紗を迎撃したのだ。

 

「マイティブラザーズXXは、協力プレイをウリにしたアクションゲームだ。故に変身者である俺と、ゲーム中に登場するパートナーキャラを模したバグスター、ゲノムスとの2人で協力して戦う。それがこのダブルアクションゲーマーの真骨頂、レベルXXだ!」

『ガシャコンキースラッシャー!ズ・キュ・キュ・キューン!』

「ああ、僕がそのゲノムスさ!僕とファザー、2人の超強力プレイで、クリアしてやるぜ!」

『ガシャコンブレイカー!』

 

まさかの事態で驚きが更に広がる立体駐車場エリア、そんな中で、一誠が変身していると思しき、オレンジを基調とした色合い、某女子プロレス業界に様々な革命を起こした後にアメリカのプロレス王座にまで上り詰めたヒールレスラーの様な髪型となったエグゼイド――ダブルアクションゲーマーレベルXXRが、胸部のコントローラーと酷似したコンソールを持つ剣とも銃とも斧とも断言出来ないガシャコンウェポン――ガシャコンキースラッシャーを装備しながら説明をし、ゲノムス――マイティブラザーズXXでの2Pキャラで、様々な姿に変身出来る力を有した主人公のパートナーキャラを模したバグスターが変身していると思しき、水色を基調とした色合い、オレンジ色のエグゼイドのそれが反転したかの様な髪型となったエグゼイド――ダブルアクションゲーマーレベルXXLがそれを受けて、決めセリフを言い放ちながらガシャコンブレイカーを装備、翼紗に反撃を開始した。

其処からの戦いは、火を見るよりも明らかな展開だった。

 

「ふっはっやぁっ!」

「は、速い!?きゃぁ!?」

 

巴柄との騎士対決となったブレイブは、レベルアップによって得られた、シマウマの如きスタミナ故に息を乱す事無く、ライオンの如きパワフルさ、チーターの如き瞬発力、ヒョウの如き柔軟さで相手を圧倒していた。

レベルアップに使用したガシャットの元となったゲーム、ナイトオブサファリは、これもまた一誠が開発したゲームの1つで、様々な動物になりきり、大自然の中で狩るか狩られるかのサバイバルライフを送るサバイバルアクションゲームである。

 

「せいはぁぁぁぁ!」

「な、何てパワー!?これが、レベルXの力…!」

 

一方、翼紗と戦っていた水色のエグゼイドは、迎撃の際に食らったボディブローの影響などないと言わんばかりの立ち回りで、戦車である翼紗をも軽々と捻じ伏せるパワーを見せつけていた。

 

「ふっ!はっ!」

「くっ!まさか聖剣と同じ力を持った武器とは…!」

 

そしてオレンジのエグゼイドは、ガシャコンキースラッシャーの(恐らく)銃口から光の弾丸を連射、それ反射しようと神器による鏡を展開しようとする椿姫を事も無げに制圧していた。

実を言うと椿姫の神器『追憶の鏡』の効果は、攻撃その物を跳ね返すのではなく、展開した鏡が破壊された衝撃を倍加して跳ね返す物であり、それも破壊されてから瞬時に相手へ攻撃が届くわけではなく、CQBを想定した間合いよりも距離があると避けられる可能性があるのだ。

こうして立体駐車場エリアでの戦闘はエグゼイドとブレイブによる蹂躙劇と化し、

 

『ソーナ・シトリー様の女王、戦車、騎士、リタイア』

 

呆気なく終結した。

 

「ゲノムス、だっけ?さっき由良さんからボディブローをまともに食らっていたけど大丈夫なのかい?幾らレベルXとは言え、戦車である由良さんからの一撃が直撃したらタダじゃあ済まない筈…

あれ、ゲージが減っていない?どういう事だい?」

「木場、お前は新世紀エヴァンジェリオンに出て来る第七使徒は知っているか?」

「第七使徒?ああ、何か二体に分裂する使徒で、同時にコアを破壊しないと倒せないんだっけ?」

「ああ。このダブルアクションゲーマーレベルXXには、その第七使徒の特徴を基に、お互いの身体のあらゆる部分を常時比較し、良い状態の方を採用してコピペするシステム『SeventhMirroringSystem』、通称SMSを搭載している。どちらかのある部分に攻撃されても、もう片方の同じ部分が無傷ならノーダメージ、となる。俺達にダメージを与えたいならば、同じ部分に同じタイミングでダメージを与えるしかないという訳だ」

「そういう事、だから全然問題ないさ!まあ同じ部分に同じタイミングで攻撃が通れば良いから、全く同じ攻撃をする必要は無いけどね」

 

とはいえ全くのノーダメージでは無く、由良から一撃貰った水色のエグゼイドを心配するブレイブ、だが水色のエグゼイドの体力ゲージは全く減っていなかった、予想外の状況に疑問符を浮かべるブレイブにオレンジのエグゼイドは種明かしをした。

新世紀エヴァンジェリオン、大災害によって環境が大きく変わってしまった近未来の日本を舞台に、主人公の猪狩(いかり)シュウジが巨大ロボット『エヴァンジェリオン』に乗り込み『使徒』と呼ばれる敵と戦うアニメであり、其処に登場する第七使徒は、今祐斗が言った様な特徴を有していた事もあってシュウジ達も一度は敗北を喫してしまった強敵であった。

そんな第七使徒の特徴を再現したシステムを搭載したダブルアクションゲーマーが弱い筈は無かった。

 

「な、成る程、敵に回したら厄介極まりないシステムだね…

それとイッセー君、さっき副会長が言っていたけど、そのガシャコンウェポンは一体?何だか聖剣の気配を感じるんだけど…」

「ガシャコンキースラッシャーか。これ、

 

 

 

実を言うとアスカロンだ」

「ゑ?」

 

そんな反則級のシステムに、仮面の下で苦笑いを浮かべるブレイブ、話題は聖剣の力を有するガシャコンキースラッシャーにうつった。

 

「三大勢力の首脳同士による会談の前に、俺がミカエルさんからアスカロンを託されたのは知っているな。ミカエルさんは俺を、リアスや朱乃、イリナやゼノヴィア、アーシアや黒歌、そして白音と恋仲である俺を、三大勢力の架け橋となるであろうと見込んで、このアスカロンを託してくれた。

 

だがそれも、仮面ライダーの、バグスターの存在無くしては起こりえなかった。バグスターがいなければ、俺は今頃戦う力を持たない普通の高校生だっただろうし、リアス達と出会い、恋人となる事は無かっただろう。つまり三大勢力の架け橋は、バグスター達が苦労して懸架したという事だ。

 

ミカエルさんが俺を三大勢力の和平を象徴する存在として、願を掛ける意味でアスカロンを託すのならば、そのアスカロンはバグスターの力を取り入れた姿でなければならない、そう思ってアスカロンをガシャコンウェポン化したのがこのガシャコンキースラッシャーだ」

 

ブレイブの疑問に答えるオレンジのエグゼイド、その口調は何処か、己の子供達を誇らしく思う父親の様であった。



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68話_Sistersの新しい力、そして…

風魔とレーザーが匙と留流子を、エグゼイドとブレイブが椿姫、翼紗、巴柄を倒した事が伝わってから程なく、

 

「いやぁ、ホームガーディアンガシャットの力による監視アイテムの偵察能力は凄まじいわね、白音。無かったら今頃、私達迷いっ放しだったのにゃ」

「そうですね、姉様。イッセー先輩の開発手腕、改めて凄いの一言です」

「な、もう此処へ辿り着いたの!?」

「監視アイテム…!?

まさか、私達の行動は全て筒抜けだったと言うのですか!?」

 

中央広場に陣取り結界を展開していたであろう、僧侶である花戒(はなかい)(もも)草下(くさか)憐耶(れや)、そして結界内で待機していたソーナのデコイ、其処に黒歌・白音姉妹が到着、あまりにも早く嗅ぎつけられた事に動揺が広がる中、通信機越しに状況を把握したであろうソーナが、デコイ越しに全てを悟った様な顔になった。

 

「ソーナ本人が何処にいるか分からないから全て、という訳じゃにゃいけどね。準備時間中は相手と接触したらいけない規定がある以上、そっちの本陣やその周辺に監視アイテムを設置出来なかったし」

「ですが大した問題ではありません、貴方達2人を捻じ伏せた後で本物のソーナ会長の居場所を吐かせますので、姉様が」

『PERFECT PUZZLE!What’s the next stage?What’s the next stage?』

『KNOCK OUT FIGHTER!The storongest fist!Round 1!Rock & Fire!The storongest fist!Round 1!Rock & Fire!』

 

相手の弱点を突こうとしたつもりが、何もかもバレていた事が判明し更に動揺するソーナ陣営、そんな彼女達にトドメを刺すべく、黒歌と白音は懐に入れていたガシャットギアデュアルα(黒歌のそれはコピーした物)を取り出し、黒歌は『PERFECT PUZZLE』と書かれた側、白音は『KNOCK OUT FIGHTER』と書かれた側が上になる様にダイヤル部分を回した。

するとガシャットギアデュアルαが起動、其々の背後にラベルとほぼ同じ様なスクリーンが出現、待機音らしきメロディが繰り返し流れ出した。

 

「全消し連鎖!」

「ファイナルラウンド!」

「「変身!」」

『『デュアル・ガシャット!ガッチャーン!デュアルアップ!』』

『ゲット・ザ・グローリー・イン・ザ・チェイン!パーフェクトパズル!』

『エクスプロージョン・ヒット!ノックアウトファイター!』

 

その後は何時も通りの手順で変身作業を完了、すると黒歌の前方には青に、白音の前方には赤に、其々全体が染まり、変身後の姿が映ったパネルが出現、それを潜ると、黒歌は両肩に何かしらの機構であろう青いアーマーを、胸部にジグソーパズルと思しきイラストが描かれた装甲を装着したパラガス――パーフェクトパズルゲーマーレベルXに変身、白音は両手に炎の意匠が施された籠手を、胸部に炎のイラストが描かれた装甲を装着したノックス――ノックアウトファイターゲーマーレベルXに変身、

 

「てい」

「あぐっ…!?」

「ほいっ」

「うっ!?」

『ソーナ・シトリー様の僧侶2名、リタイア』

「「…あれ?」」

 

そのまま2人を制圧しようと突撃、したは良いのだが、手加減して放った積りの攻撃がリタイアさせるに十分な威力だった様で、2人は転移してしまった。

 

「…手加減した積りなのですが、強過ぎましたかね」

「みたいね、これは。これじゃあ尋問出来ないのにゃ。どうした物かにゃ…」

「あ、でも姉様、ソーナ会長と思しき気配を感じられるようになりましたよ。それも今までの様な偽装した感じの物では無いですね」

「あ、本当にゃ。どうやら眷属が皆リタイアしちゃったから、術式が維持出来なくなったのかにゃ?」

 

尋問しようとしていた2人を倒してしまい、どうした物かと嘆く2人だったが、その心配は無用の物となった。

眷属が全てリタイアした事で維持出来なくなったのか、これまで2人を攪乱しようと偽りの気配を発していた物や、ソーナの気配を消していた物、様々な術式が全て効力を失い、ソーナ本人の気配を察知出来る様になった。

その場所は…

 

------------

 

「まさか、屋上にいたなんてね。流石に其処は盲点だったわ」

「最後まで王が生き残る、それが王の役割です。王が取られる事、それ即ちゲームの敗北ですからね」

 

此処が異世界のバトルフィールドであるという事を物語る、真っ白な空が広がる屋上エリアへとやって来たリアス達、その中心部にはソーナがいて、何処か含みを持たせた様な言葉を発していた。

 

「そう、深くは聞かないわ。皆、手出しは無用よ。向こうもそれを所望の様でしょうし」

「部長!?危険です!」

「成る程。リアス、あのガシャットを、あの禁断と言って良い力を見せつけるのか」

「ええ、イッセー。折角のお披露目だもの、イッセーがくれた、愛のプレゼントを!」

 

その様子からソーナの狙いを察知したリアスだったが、此方も何か思惑があったのか敢えてそれに乗っかった。

それを諫めようとする眷属達、その中でオレンジのエグゼイドはそれに気づき、彼の考えが合っている事を知らしめる様に、リアスはソーナへと歩み寄りながら、懐から1つのガシャットを取り出した。

 

「ぶ、部長?そ、その、異様なオーラを纏ったガシャットは一体…?」

 

そのパールホワイトをベースカラーとしたガシャットは『DANGEROUS ZOMBIE』のタイトル名と白を基調としたゾンビがデカデカと描かれたラベルが施され、その本体からどす黒いと言える異様なオーラが吹き出ていた。

 

「折角だからソーナ、貴方にも教えてあげるわ。このガシャットはイッセーが私の為に作ってくれた、私専用のガシャットなの。何故かと言うと、このガシャットに封入されているのはバグスターウィルスでは無く、

 

 

 

滅びの魔力をデータ化した物、だから滅びの魔力を有し、尚且つ仮面ライダーへの変身が出来る私にしか扱えないわ」

「い、何時の間にそんなガシャットを作ったのですか、イッセー先輩…」

「何か話からしてもヤベーイ感じが凄まじいのにゃ…」

 

それに対して抱いた眷属達の疑問に、何処か己を誇示するかの如く説明し始めたリアス。

 

「勿論、私にしか扱えない分、今までのガシャットとは比べ物にならない程の力を私に齎してくれるわ。何時もの様にゲーマドライバーを用いて変身すれば、今までの仮面ライダーは勿論、さっき貴方の眷属を軽いワンパンで仕留めたレベルXをも、スペック上では凌駕するの。だけどね、このガシャットの真の使い方は違うわ。こうやって使うのよ」

『ガッチョーン…!』

 

そう説明を続けつつ、ガシャットを指に引っ掛けながら取り出したのは、バグスター達が身に着けていたベルトのバックルと思しきアタッチメント、それを同じく取り出したガシャコンバグヴァイザーに取り付けた瞬間、起動音声と共に重苦しい待機音が流れ出し、そのまま腰に押し当てるとベルトが伸び、ゲーマドライバーの時と同じくベルト――バグルドライバーとして装着された。

 

「此処で知ると良いわ、ソーナ。貴方がどんな策を講じようと、私達に勝つ事、一矢報いる事など絶対に不可能だと言う事をねェェェェ!」

『デンジャラスゾンビ!』

 

そして、狂気に満ちた叫び声を上げながらガシャットを起動すると、エレキギターと思しき起動音と共に、背後に『DANGEROUS ZONBIE』の文字、ラベルのそれと同じゾンビがデカデカと描かれたスクリーンが出現、

 

「グレードX、変身!」

『ガシャット!バグルアップ!デンジャー!デンジャー!ジェノサイド!デス・ザ・クライシス!デンジャラスゾンビ!ウゥゥゥ!』

 

ガシャットを装填し、バグルドライバー上部のスイッチを押した瞬間、変身音と共に銃口部分から黒い煙が噴出、リアスの身体を覆いつくし、それから数秒後に出現した白いフレームで囲われた真っ黒なパネルを突き破る様にして、ゲンムが出現した。

いや、出て来たのはゲンムと呼ぶべきか迷う程、異様な姿のライダーだった。

ドライバーが違うのは勿論だが、黒地に紫のラインが走るデザインだったライダースーツは白地に黒色がカビの如く侵食する様なそれと化し、赤色だった眼は左のみ水色のオッドアイとなり、真っ黒だった髪は一部が白髪へと変化、胸のコントローラーは白骨化したかの様に白く変色、身体の所々に装着されたプロテクターにも棘らしき物が生えていた。

それより何より、胸のディスプレイに本来なら表示されている筈の体力ゲージが、存在しなかった。

 

「デンジャラスゾンビ、なんて、なんて凄まじい力…!」

「り、リアス、その姿は一体…?」

 

余りの変わり様に、流石のソーナも怯えを隠せない様子で尋ねた。

 

「仮面ライダーゲンム・ゾンビゲーマー。ホラーゲームを司る形態よ。

 

 

 

グレードXの力、思い知れェェェェ!」

 

それに対し、ゾンビゲーマーレベルXと化したゲンムはそう答えながら、ゆっくりとソーナへ近づいて行った。



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69話_Dangerousなヤベー奴!

「くっ!ですがリアス、私も諦めません!あの子達が諦めなかった様に!我が水芸、とくとご覧なさい!」

 

ゾンビゲーマー・レベルXと化したゲンムの姿に恐怖を隠しきれないソーナ、それでも己が夢を叶える為にも、自らの夢について来てくれる眷属達の為にも負ける訳にはいかないと自分を奮い立たせ、魔力によって膨大な量の水を集め、それを猛禽や大蛇、ライオンに狼、そしてドラゴン等、様々な姿をした大量の尖兵に変化させ、ゲンムへと突撃させた。

此処までの尖兵を用意できたのも、このゲームフィールドがデパートを模した物であった為に貯蓄していた水を確保出来たのと、ソーナ自身が有する技量の高さがあった為であろう。

だが、

 

「ふっはっ」

 

ゲンムは余裕綽々な様子で自らに突っ込んで来る尖兵達を、腕の一振りや足払いで消し飛ばしていた。

攻撃と言えるかどうか疑問を覚えざるを得ない程ゆったりとした動作での行動にも関わらず尖兵達を消し飛ばす力、それを為せるのも滅びの魔力を封入したデンジャラスゾンビの恩恵故か。

だが相手は大量の水で作り上げた尖兵の大軍を従えるソーナ、そんなゆったりした動作では何れ押し切られてしまう、現にその隙を突いて一体の猛禽型の尖兵がゲンムの背後を捉え、体当たりを仕掛けた。

 

「…え?」

 

が、その体当たりがゲンムに直撃し、少なくないダメージと衝撃がゲンムを襲うかと思われたその時、信じられない事態が起きた。

猛禽型の尖兵がゲンムに触れるかどうかの位置まで突っ込んだその瞬間、身体の先端部分から消失していってしまったのだ。

 

「言った筈よ、ソーナ。デンジャラスゾンビガシャットには、データ化された滅びの魔力が封入されている、と。そして、それを用いて変身した私が、今どんな状態になっているか…

聡明な貴方なら分かる筈よ」

「まさか、滅びの魔力を全身に纏っていると言うのですか!?」

 

この状況を分かっているかの様に(実際そうだろうが)、余裕を崩す事無くソーナに問いかけるゲンム、その問いにソーナは今の事態を引き起こした原因に思い当たり、そのまま答えた。

だがゲンムはその答えに、違うと言うかの様に首を横に振った。

 

「惜しいわね、ソーナ。今の私は滅びの魔力を纏っている訳じゃない、

 

 

 

滅びの魔力その物と化したわ!そう、超越者と称されるお兄様が本気となられた時の姿、その域に私は至った、デンジャラスゾンビガシャットが導いたのよ!」

「ほ、滅びの魔力その物!?」

 

滅びの魔力を纏っているのではなくその物と化したゲンム、その事実にソーナは絶望感を露わにした。

ゲンムの変身者であるリアスの兄こと魔王サーゼクス・ルシファーは、同じく魔王であるディオドラの兄アジュカ・ベルゼブブと共に『超越者』と称されている。

超越者とは、正に次元が違うと言われる程の強大な能力を有しているが為に悪魔なのか疑わしいとされるイレギュラーな存在を指す。

その一角であるサーゼクスは、普段の状態でも旧魔王ルシファーを凌駕する魔力量を有している(が、本人自体はテクニックタイプである)ものの、その本気の姿である、人型に浮かび上がる滅びの魔力を解放すると、魔力量が旧魔王ルシファーとは桁違いの量と化し、放つ魔力球体一つ一つがドラゴンを簡単に消失させる程の威力を有し、何かに接触するだけでもそれを消失させる正に悪魔を越えた存在となる。

が、滅びの魔力その物と化したサーゼクスは、己の意思に関わらず周囲の物体を消滅させてしまう、それは己が立っている大地も例外ではない為、被害をまき散らさない為に浮遊しながら戦うそうだ。

では何故滅びの魔力その物と化した筈のゲンムは、デパート屋上の床に何事も無く立っていられるのかと言うと、それはゲンムの両足に装着された『リビングデッドシューズ』と呼ばれる靴が、滅びの魔力の制御を担っているからである。

これにより必要時以外に滅びの魔力が周囲へまき散らされるのを抑え込んでいる為に大地が滅ぶ事は無く、よってゲンムは地に立っていられるのだ。

また同様の制御能力を有する手袋『リビングデッドグローブ』が両手に装着されている為、ゲンムが持とうと思えば武器を持って戦う事も可能である。

そういったデメリット(と言うべきか分からないが)を解消し、更にデータとしての滅びの魔力を内包しているデンジャラスゾンビガシャットから無限に供給され続ける事で少なくとも防御面では凌駕した(攻撃面はゲンム自身の技術面からまだまだと言えるが)姿に、超越者と並び立てる域に至ったゲンムに、今のソーナが勝つ術はあるのか、いや無い。

 

「さて、そろそろ幕引きと行こうかしらねェェェェ!」

「ヒィッ!?」

 

そんなソーナにトドメを刺すべく、再びゆったりとした動作で前進を開始したゲンム、その姿がまるで己の命を狩るべく付け狙う怪物の様に見えたのか怯えを隠そうともしないソーナは、もうなりふり構っていられないと言わんばかりに尖兵を一斉に突撃させるが、結果は先程の猛禽型尖兵と変わらなかった。

ゲンムも無駄な抵抗だと捉え、先程みたいに尖兵達を追い払う動作すらしなくなり、ただソーナへと歩みを進め、

 

『ソーナ・シトリー様の投了を確認。よってこのゲーム、リアス・グレモリー様の勝利です!』

 

彼女の目前まで辿り着き、平手打ちの構えを見せた所で遂に心が折れたのか、それが直撃する事無くソーナはこの場から転送された。

 

「…ちょ、ちょっとやり過ぎたわね。

イッセーからプレゼントを貰ったのが嬉しくて、気持ちが昂り過ぎたわ、何だか恥ずかしい…」

 

自分達が勝利した事を知らせるアナウンスが流れたのを受けて変身を解除したゲンム――リアスだが、テンションが上がり過ぎてタガが外れていた状態での言動だった為か、先程まで自分が言っていた事を思い出して恥ずかしくなり、真っ赤に染まった顔を両手で覆っていた。



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70話_Giant Killingの裏で

注:今話はとあるキャラに対する痛烈な批判(アンチになるかな?)があります。


リアス眷属VSソーナ眷属のゲームは、前評判通りリアス眷属が圧倒的と言って良い地力と、ガーディアンウォーズゲーマーの力を利用した周到な事前準備で完全勝利を収めたが、他のゲームはどうなったか。

まずはシーグヴァイラ眷属VSディオドラ眷属のゲームを見てみよう。

此方も途中まで、いや最終盤まで、前評判通り地力で勝るシーグヴァイラ眷属が優位に立っていた。

が、ディオドラ眷属で残るは王であるディオドラ自身のみとなり、トドメを刺すべくシーグヴァイラが総攻撃を仕掛けた所で事態は急展開を迎えた。

 

「さて、そろそろ本気出しちゃおうかな!」

「な!?一体何なの、この膨大な力は!?」

 

突如としてディオドラの魔力が、此れまでとは桁違いと言って良い位に強大化し、それによる攻撃でシーグヴァイラの眷属達が瞬く間に蹂躙され、

 

『シーグヴァイラ・アガレス様、リタイア!よってこのゲーム、ディオドラ・アスタロト様の勝利です!』

 

それに驚いた隙を突かれてシーグヴァイラ自身もディオドラの攻撃を諸に食らい、まさかの逆転負けを喫したのだ。

 

------------

 

次にサイラオーグ眷属VSゼファードル眷属のゲームだが、此方は徹頭徹尾、信じがたい展開が続いていた。

 

「どうなっているんだ、これは!?俺達の動きが、全て読まれていると言うのか!?」

 

己の描いていた物とは全く異なる惨状となった今の状況に、焦りを隠せないサイラオーグ。

それも当然だろう、前評判ではシーグヴァイラ眷属やリアス眷属同様、いや彼女達以上に自分達の勝利は当然と見られていたにも関わらず、戦況は此方の圧倒的不利なのだから。

戦力的にはあの会合に参加した若手悪魔6人の中で最下位だった筈のゼファードル、一方でサイラオーグは6人中で他を寄せ付けないトップ、これでサイラオーグの負けを予想する評論家がいる筈もない。

勿論ゼファードルの眷属にも、元は北欧出身の半神ヴァルキリーで、主神オーディンに仕えていた頃は若手有望株と目されていたリースに、元72柱の一角を占めるベリアル家出身の純血悪魔で、レーティング・ゲームのチャンプとしてその名を轟かせているディハウザー・ベリアルの親戚であるナッシュとメラグの兄妹と、警戒すべき存在がいない訳じゃなかった。

北欧独自の術式による魔法を駆使し圧倒的火力を誇るリースに、ベリアル家の特性である『無価値』を有するナッシュとメラグの存在は、サイラオーグも頭に入れていた。

リースの圧倒的火力には『番外の悪魔(エキストラ・デーモン)』と呼ばれるアバドン家出身の女王クイーシャが、アバドンの特性である『(ホール)』を駆使して逆手に取り、特殊な力が通じない『無価値』を有するナッシュとメラグには、元72柱の一角バラム家出身の戦車ガンドマが誇るパワーと防御力、同じく元72柱の一角フールカス家出身の騎士ベルーガとその愛馬『青ざめた馬(ペイル・ホース)』アルトブラウとのコンビネーションによる純粋な近接戦でごり押しする算段で、他の眷属もその状況に持ち込もうと動いていた筈だった。

だがいざゲームが始まると、彼の思惑とは逆に戦況は動いてしまう。

まるでこっちの意図などお見通しだと言わんばかりに少しずつ、だが着実に脱落していくサイラオーグの眷属達、注意していた面々への対策だった筈のクイーシャ達も、逆を突かれてリタイアとなってしまい、今残っているのは王であるサイラオーグ自身と、とある理由から出撃出来ない、己の側で佇む仮面をつけた少年兵士レグルスのみ、制限時間も残すはたったの数分間。

思い描いていたのとは全然違う絶望的な状況に焦りが募るばかりのサイラオーグ。

 

『よぉ、バアル家の兄ちゃん。だいぶ焦ってるみてぇだな』

「この声、まさかゼファードルか!?」

 

そんな彼の神経を逆撫でするかの如く、屋内競技場を模したゲームフィールドのスピーカーから、ゼファードルの声が響き渡った。

 

『アンタは確かに強ぇさ。今の俺、いや若手のどいつも足元にすら届かねぇ位にな。今回のルールが普通の奴で良かったぜ、アンタ倒さなくても勝てるんだからさ。

 

 

 

だがな、幾らアンタが強かろうと、今以上に強くなろうと、その強さを示そうと、アンタが魔王になる事は絶対ありえねぇ』

 

スピーカー越しに聞こえるゼファードルの声、それはサイラオーグの実力を認めながらも、サイラオーグの目標である魔王就任などありえないと断じた。

 

『だってアンタ悪魔じゃねぇし。悪魔のトップである魔王に、悪魔じゃねぇ奴がなれる訳ねぇだろ』

「…何?」

 

そんな事は無い、力を示す事で誰もが魔王になるに相応しい実力を有していると認めれば絶対になれると反論しようとしたサイラオーグだったが、それを見越したかの様に言い放ったサイラオーグの言葉は、信じがたい物だった。

 

『バアルの家をオン出された時、実の親父から出来損ないとバッサリ捨てられた時どう思った?見返してやりてぇ、ぶっ殺してやりてぇと思ったんじゃねぇのか?』

「違う」

『自分の親父、兄弟、仕えていた連中、アンタを馬鹿にして来たバアル家の奴らをボコして、そいつらの目の前でその恋人の開通式と洒落込みてぇと思ったんじゃねぇのか?だから何処ぞのミスター・アンチェインみてぇな筋肉達磨になるまで鍛え上げたんじゃねぇのか?』

「違う!」

 

その言葉に動揺するサイラオーグに対して畳みかける様に、屈辱の日々に対する鬱屈を指摘するゼファードルの声。

然しながらその指摘は、サイラオーグにとっては事実無根と言っても過言では無い、故かゼファードルの挑発には乗らないと言わんばかりに、気丈な様子で否定した。

 

 

 

『此処でああそうだと心から思えねぇ様じゃあ、悪魔じゃねぇって事だよ』

「…え?」

 

だがゼファードルはそれを最初から見抜いていた上で、そんなサイラオーグを悪魔では無いと断じていたのだ。

 

『こんな事、態々言わずとも分かっているだろうが、悪魔ってのは欲望を尊ぶ存在だ。特に、己の心の内から欲する、己の為の欲、我欲をな。だがアンタにはそれがねぇ、何時だって誰かの為、自分ではない何かの為に動いていやがる。悪魔にとって、こんなにも気持ちわりぃ奴は他にいねぇなぁ!』

「黙れ…」

『魔力云々の前に、我欲のねぇアンタは、己の欲望のままに動こうとしねぇテメェは悪魔じゃねぇ、ただ外面が良いだけ、悪魔の間に生まれただけの人形だ!』

「黙れ…!」

『俺ら悪魔様のてっぺんに立とうなんざ烏滸がましいんだよ、ウァプラの操り人形風情が!』

「黙れェェェェェェェェ!」

 

純血悪魔だった筈の自分を、悪魔であった筈の自分を全否定するゼファードルの言葉、それは実の父親から出来損ないと否定された時以上にサイラオーグを苛む。

さしものサイラオーグも、周りにレグルスしかいなくなったフィールド内で叫ぶ事しか出来ず、

 

『3時間が経過しました、制限時間一杯となりましたのでゲームを終了します。ゼファードル・グラシャラボラス様、撃破(テイク)7、サイラオーグ・バアル様、撃破0。よってこのゲーム、ゼファードル・グラシャラボラス様の勝利です!』

 

そして、サイラオーグの敗北を、絶対に無いと言われていた大番狂わせが成し遂げられた事を知らせるアナウンスが、無情にも響き渡った。




ハイスクールD×Dの原作アンチ作品は数あれど、サイラオーグアンチの作品は聞いた事が無い、という方が大半だと思います。
それは何故か、それは正に『漢』と言って良い生き様からでしょう。
原作主人公であるイッセー以上に主人公なサイラオーグ、その生き様に尊敬する方も多いと思います。



ですが、そんなサイラオーグに尊敬する僕達って、悪魔じゃなくて人間ですよね?
では、人間である僕達にとっては尊敬出来ても、悪魔、それも純血悪魔はどうなのか。
今話は、そんな視点で書いてみました。


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71話_FirstNightを明けて…

「本当に、本当に有難う、イッセー。貴方が私と同じ時、同じ地域に生まれてくれた事、貴方と出会えた事、貴方を好きになり、貴方もまた私を好きになってくれた事、本当に嬉しいわ」

「イッセー君がいてくれたからこそ今の私があるんだと、今改めて思いますわ。有難うございます、イッセー君。あの時私やお母様をお救いして頂き、本当に、有難うございます」

「私もだよ、イッセー君。あの日からイッセー君は私の運命の人、側にいたい、守っていきたいと心から思える人になった。本当に有難うね、イッセー君!」

「イッセーさん。私、イッセーさんと出会えて、イッセーさんに助けて頂いて、イッセーさん達と幸せな日々を過ごせて、本当に良かったです。これからも末永く、宜しくお願いします!」

「ああ。イッセー、お前と出会えた事、それは私にとって何よりの誇りであり、財産だ。エクソシストとしての生き方しか知らなかった私に、女としての生き方を、恋という物をお前は教えてくれた」

「聡明で、優しくて、勇敢で、それでいて遊び心を忘れないイッセー先輩、だからこうして私も含めた色んな女性に慕われ、そしてその想いに真摯に向き合ってくれる。大好きです、イッセー先輩!」

「本当それにゃ、白音。私もいつの間にかイッセーに惹かれて、そして想いを打ち明け、こうして今皆と一緒に居られる、本当に幸せなのにゃ。さて皆、せーの」

「「「「「「「私の初めてを、あなたに捧げます」」」」」」」

「ああ。皆の初めて、頂こう」

 

レーティング・ゲームが終わってから数時間が経過した夜遅く、一誠に割り当てられた部屋の、キングサイズの物を2つも繋げたベッドに、一誠の7人の恋人達は、改めて己の想いを一誠に伝えていた。

その後何があったか、それはR-18指定になっていない此処で言う事ではないだろう。

 

------------

 

「それではイッセー君。また会える日を楽しみにしているよ」

「はい、義父さん」

「イッセー兄様、またお越しください!それまでLさんやZさんクラスのゲーマーになるべく精進します!」

「程々にな、ミリキャス。余り熱中し過ぎると、またグレイフィアさんが怒るぞ」

「は、はい。気を付けます…」

「リアス、向こうでもイッセーさんや眷属の皆さんに迷惑を掛けない様にするのですよ。全く、あのレーティング・ゲームでの奇行は何ですか。今でもキャラ崩壊にも程がある等のクレームが…」

「も、申し訳ありません、お母様。本当に、本当にあの時は舞い上がってしまって思わず…」

 

それから数日が経ち、いよいよ冥界で過ごすのも最終日となった今日、冥界と人間界を繋ぐ列車、その冥界側の駅でリアス達は、ジオティクスと、彼の妻でリアス達の母親であるヴェネラナ・グレモリー、そしてミリキャスの見送り(サーゼクスとグレイフィアは所用らしく此処にはいない)を背に、人間界へと帰ろうとしていた。

 

「そうそうイッセー君。リアスや眷属の皆にもだが、人間界でプレゼントを用意してある。駅で使用人をスタンバイさせているから、到着したら彼の案内に付いていく様に。良いね」

「あ、はい、義父さん」

「ぷ、プレゼント、ですか、お父様…?」

「ああ。詳しくは到着してからのお楽しみだ」

 

その間際、ジオティクスの意味深な言葉が気になった一行だが、ヴェネラナ共々口を割るつもりは無いらしい(ミリキャスは知らないのか、首を傾げていた)。

とはいえ帰れば分かる話かと切り替え、此処へ来た時と同様列車に乗り、一行は人間界へと帰還した。

 

------------

 

「ふぅ、久しぶりの人間界ね。ずっと住んでいても、一か月余り空けると何だか懐かしい感じね」

「そうだな、リアス。さて、グレモリー家の使いの人は一体何処に…」

 

そして人間界の駅に到着した一行は待機しているらしいグレモリー家の使用人を探す為に、地上行きのエレベーターへと足を進めた。

 

「ディオドラ・アスタロト君、一体何故、君が此処にいるのかな?」

「ま!?ままままま魔王様!?魔王様こそ、一体何故人間界に!?」

 

その後ろで、何故か此処まで付いて来たらしいディオドラが一行の誰かに声を掛けようとして、サーゼクス(に擬態していたラヴリカ)に呼び止められていた事に気付く事も無く…




次章、ハイスクールDevil×Ex-aid――

ジオティクスからのプレゼント、それは――

「まさか、此処までのサプライズプレゼントとはな…」
「此処が、私達の新居って事?お父様、気合が入り過ぎでは…?」

豪邸と言って良い新居と――

「アマゾン!」
「通りすがりの仮面ライダーよ。覚えておくと良いわ!」
「さあ、貴方の罪を数えなさい!」
「セイヤァァァァ!」
「仮面ライダーポッピー!タイマン張らせて貰います!」
「さあ、ショータイムですわ!」
「此処からは僕のステージだ!」
「化け物よ、ひとっ走り付き合え!」
「命、燃やします!」
「勝利の法則は、決まったのにゃ!」

一誠も知らないガシャットの数々――

5.5章、特別編『夏休みのLEGEND RIDERS』

平成の仮面ライダーよ(GENERATIONS)永遠に…(FOREVER)


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5.5章 特別編『夏休みのLEGEND RIDERS』
72話_一誠達の新たなるHouse…House?


「此処が、グレモリー家からのプレゼントです。今日より、此処でリアス様、眷属の皆様は此処で住む様にとジオティクス様から伝言を預かっております」

「まさか、此処までのサプライズプレゼントとはな…」

「此処が、私達の新居って事?お父様、気合が入り過ぎでは…?」

 

何故か人間界に、それも自分達の後を付いてくる形で来たディオドラが此方を呼び止めようとして、逆にサーゼクス(に擬態していたラヴリカ)に呼び止められていた事など知る由もないリアス達は、駅から出て程なくグレモリー家の使用人を見つけ、彼の案内でとある場所へと進んだ。

其処にはジオティクスの、いやグレモリー家の入り過ぎた気合の現れとも言うべき、豪邸と言うしかない巨大な洋館が、広大な土地に建てられていた。

まさかのプレゼントに、そのプレゼントである豪邸で住む様にとのジオティクスの指示に一誠もリアスも、他の眷属も開いた口が塞がらなかった。

 

「ジオティクス様はプレゼントと仰っていましたが、恩着せがましい事を言う積りはありません。土地や建築士等はグレモリー家の伝手で手配いたしましたが、お支払いは兵藤様側から頂きましたので。五郎様は「一誠が稼いだお金だから、一誠の為に使うべき」と仰っておりました」

「俺が稼いだお金って、ゲームの売上金の事だよな…

それは父さん達で使って欲しいと何時も言っている筈なのだが、それもこれ程の豪邸を建てる位の大金を、俺の為にはたいて…」

「尚、その五郎様達は「一誠達の新しい生活の邪魔になってはならないし、今の住まいから離れたくない」と、同居を固辞されました」

「そうですか。住む街は一緒だから距離的に直ぐ会えるとは言え、少し寂しくなるな…」

 

しかもその資金の出処が両親へ渡していたゲームの売上金だった事に、一誠は苦笑いを浮かべた一方、別居が決まった事には何処か寂しそうな様子を見せた。

 

「それにしても、ガレージに並んでいる車も、テスラのモデルSにモデルX、そしてロードスター…

電気自動車ばかりなのは流石とは言っても、父さんは何時からテスラの回し者になったんだ?」

「気づかれましたか。はい、全て五郎様のリクエストを基に、グレモリー家で手配した車です。此方も兵藤様側からお支払い頂きましたので、遠慮なく乗り回して下さい」

(イッセーを助手席に乗せてドライブデート…

それもアリね。丁度この前、運転免許を取れたし、今度誘っちゃおうかしら)

(これは私のドライビングテクニックをアピールする絶好の機会!冥界のインパクトブルーと呼ばれた私の腕前を見せちゃうのにゃ!)

(折角の車のプレゼントです、早く免許を取って、イッセー君とのデートに…!)

 

それは兎も角、豪邸の前方に併設されているガレージに納車されていた車の数々もまた、この豪邸に見合ったと言って良い物だった。

電気自動車分野のリーダーとも言われるテスラモーターズが販売している、セダンタイプのモデルSとクロスオーバーSUVタイプのモデルX(どちらも最上級グレードであるP100D)、そしてテスラが最初に販売したオープンカーのロードスター(此方も最上級グレードであるスポーツ)が並ぶ光景に、一誠がツッコミを入れていた一方、つい最近自動車の運転免許を取得したばかりのリアスと、既に免許を取得して数年経ち、プロドライバー顔負けの腕前となった黒歌は一誠をドライブデートに誘おうと決意、まだの朱乃は早く取得しようとこれまた決意を固めていた。

尚、電気自動車ばかりな五郎のチョイスを流石と一誠が言ったのは、兵藤家の現在の愛車であるBMW・i3を始め、長年電気自動車を乗り継いで来たからであり、乗り始めた理由も「誠次郎の件で人様に多大な迷惑を掛けている以上、他の面でも迷惑を掛ける訳には行かない」という考えから、環境に優しい交通手段と言われる電気自動車を、その動力源である電力もこれまた環境に優しい発電方法とされている太陽光発電を取り入れて来たからである。

そんな五郎の拘りは豪邸の方にも、屋根を覆い尽くすかの様に敷設された太陽光発電パネルという形で表れていた。

因みにこういった拘りを実現し切った豪邸を建てたり、3台もの高級電気自動車等を購入したりする為に支払った事で、兵藤家の通帳は、それはそれは綺麗な形でゼロが1つ減ったそうだ。

 

------------

 

「今まで暮らしていた家とは随分と様変わりした物だ、もしかしたらグレモリー家の本邸にも引けを取らないぞ、この規模は…

住めば都とは言うが、果たしてこれ程までの都に住み慣れていけるのだろうか、俺は…」

 

その後も使用人の案内で、新居の様々な豪勢振りを目の当たりにして来た一誠はその夜、自室で一人、何処か疲れた面持ちで呟いていた。

それも無理はない、個人用ルームがリアスとその眷属は勿論、現時点で22体が現実世界で活動しているバグスター達も含めて1人1部屋で割り振ったとしてもまだ数部屋もの空きが残る程あり、その他にリビングやキッチンと言ったごくありふれた部屋に加えて、会議室やクロト達用のオペレーティングルーム、トレーニングルームや屋内プール、エレベーターや屋内倉庫、果ては大浴場まで備わっている。

その一部屋一部屋もホテルを思わせる豪華さであり、例えば一誠の自室にあるベッドはキングサイズの物を2つも繋げたそれとなっている他、個人用のお風呂やキッチン、最新式テレビまで備えてあった。

こうした豪華設備を内包した地上6階、地下3階建ての豪邸に住まう事になったのだ、不安を覚えるのも仕方ない話である。

 

「流石に疲れた。ガシャットギアデュアルβとγ、そして新しいガシャット開発もあるが、今取り掛かっても進まないだろう。今日は休むとしよう」

 

そんな精神的な疲れを他所に、とは行かずベッドに寝転んだ一誠、そのまま深い眠りについた。

 

------------

 

「パパ達は眠りについたか。よし、早速このガシャットを起動させるとしよう」

 

同時刻、とある場所で、青年男性と思われる存在がとある機器を操作し、

 

『ナゾトキラビリンス!』

「パパ。私からのプレゼント、是非受け取って欲しい」

 

ガシャットと思しき物体を、その機器に装填した。



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73話_野生と養殖の交錯、その名はAmazon!

「あれ、此処は…」

 

翌朝、目が覚めた一誠は、目前の光景に己が眼を疑った。

 

「俺は昨日、引っ越したばかりのあの洋館、其処の俺の部屋で寝ていた筈だが…

まさか、夢か?いや…」

 

それも無理はない、今言った通り昨日一誠は、新居となった洋館の自分に割り当てられた部屋で眠っていた筈なのだが、今自分がいる所は、何処かの研究室らしき場所だったのだから。

 

「そうだ、ガシャットは…

あれ、マイティブラザーズXXガシャットが無い!ゲキトツロボッツガシャットも…!

あるのはマイティアクションXガシャットと、ブランクのガシャットが1つ、これは何時の間に…」

 

まさか己が身に関わる大事が起こっているのではないか、そう即座に判断した一誠は、自分の戦う術であるガシャットの有無を確認するが、懐に入れていた筈のマイティブラザーズXXガシャットは勿論、ホルダーに差し込んでいた筈のゲキトツロボッツガシャットも無かった。

持っていたのは、何時も変身の際に用いるピンク色のガシャットの他、トリコローレカラー(イタリア国旗を基とした、緑・白・赤の3色を並べたカラーリング)の、ラベリングがされていないガシャットだけであった。

 

「う、うぅ…」

「ん?人の呻き声!?おい、一体どうした!?」

 

今の自分にとって最も頼りになると言って良いマイティブラザーズXXガシャットも、圧倒的パワーを有するゲキトツロボッツガシャットも無い状況に危機感を募らせる一方、何時の間にか装填されていたトリコローレカラーのガシャットに疑問を抱く一誠だったが、考えている暇は無かった。

研究室の何処かから呻き声がするのを耳にした一誠、その声がした方へ足を進めると其処には、一誠と同じ年位の青年が、何処かを抑えている様な素振りを見せながら蹲っていた。

よく見るとその抑えている箇所らしき所から血が流れ出している、其処から青年が尋常な状況では無いと思った一誠は如何にか救えないかと周囲を見回しながら考えを巡らせる。

 

「おい、お前。ソイツを引き渡して貰おうか」

 

そんな一誠の行動を阻むかの様に、何処ぞの救急戦隊のサブリーダーらしき人の声がした。

一誠が振り向くと其処には、仮面ライダーと言えなくもない異形が立っていた。

ピラニアを思わせる赤を基調とした頭部、同じくピラニアをイメージしたと思しき胸から下腹部までを覆った装甲、赤いライダースーツはどれも傷だらけで、頭部とライダースーツからはライムグリーンの傷跡が痛々しく刻まれていた。

生物的なその部分とは対照的に、両腕・両脚を覆う黒い装甲、其処から生えたヒレと思しき刃、そして腰に巻かれたメタリックの、眼と同じく緑色の光を発するベルトは何処か機械的な印象を覚える。

サイボーグと言っても良いその赤い異形はどうやら、蹲っている青年を狙っているらしい。

 

「お断りだ。コイツを引き渡してどうする積りかは分からないが、コイツにとって都合が悪い事だという事は分かる。今にも死にそうなコイツを、お前に明け渡すなど後味が悪いからな」

「ソイツがお前を、お前にとって大事な存在を殺すかもしれない奴でもか?」

「何?」

「お前、仮面ライダーだとか言う奴に変身して、故郷をずっと守り続けていたんだってな、街に入り込んだ化物をぶっ殺す形で。なら何故その化物を殺さない?何故街の脅威になりえる奴を排除しない?」

 

その赤い異形から青年を庇うべく立ちながら拒否の意思を示す一誠、そんな彼に対し、赤い異形は青年が危険な、一誠にとって脅威となりえる存在である事を告げ、問いただした。

 

「止む無くお前の街に逃げ込まざるを、連中を殺そうとせざるを得なかった化物は殺す癖して、お前の街に逃げ込むかも、連中を殺すかも知れないその化物は殺さない。自分の都合で守るモンと守らないモンを選り好みしてやがる。正義漢ぶっているが、俺から言わせれば、お前の方がそんな化物だ」

 

街に侵入したはぐれ悪魔は例外なく駆除して来た一誠、にも関わらず脅威になりえるだろう青年を野放しにするのはどういう事かと指摘する赤い異形、そしてそんな一誠を、はぐれ悪魔と同じであると断じた。

 

「正義?随分と下らない事を口にする」

「何?」

愚弟(誠次郎)の行いに対する償いという意味もあるにはあるが、俺が街を守っているのは、其処が俺にとって守りたいと思える大切な場所だからだ。父さんに母さん、バグスターの皆、木場にギャスパー、そしてリアス、朱乃、アーシア、白音、イリナ、ゼノヴィア、黒歌…

家族と、恋人達と過ごして来た街は、俺にとってかけがえのない故郷だ。それを、俺にとって大事な物を守る為に、極端に言えば俺の為に刃を振るっているに過ぎない。街に侵入したはぐれ悪魔を駆除するのは、ソイツ自身の悪事は勿論、ソイツを付け狙う奴によって街の平穏が脅かされるから。一方でコイツは確かにお前の言う化物かも知れない、実際、常人とは思えない強大な気配を感じる。だが、街に入り込んだ訳でも無ければ、悪事を仕出かそうとしている様子もない。だから殺さない。誰かの為だとか、正義の名の下にだとか言う積りは無い。化物呼ばわり大いに結構、事実として俺は悪魔だからな」

「大切な物を、守る…!」

 

が、一誠にとってそれは一誠自身の想いに基づいた判断、赤い異形の言葉を大筋で認めつつ、それでも毅然とした態度で赤い異形の要求を突っぱねた。

 

「ん?『ALPHA OMEGA AMAZON』…

まさか俺の知らないゲームのガシャットが存在していたとはな。よし、物は試しだ!」

『マイティアクションエックス!』

『アルファオメガアマゾン!』

『ガシャット!』

 

そんな一誠の言葉に反応したのか、トリコローレカラーのガシャットが突如発光、それに気づいた一誠が手にすると、既にそのガシャットはラベリングされ、『ALPHA OMEGA AMAZON』というタイトルと、目前の赤い異形と、それによく似た緑の異形の顔がデカデカと描かれたラベルが貼られていた。

それを、ピンク色のガシャットと共に起動すると、一誠の背後にマイティアクションXのスクリーンと共に『ALPHA OMEGA AMAZON』のタイトルと、赤い異形と緑の異形が互いに飛び掛かる絵がデカデカと描かれたスクリーンが出現、それを受けて彼は2つのガシャットをゲーマドライバーに装填、すると、

 

(む!?こ、この身体の奥底から湧き上がる衝動と空腹感は一体…!?

成る程、コイツはいわば、俺の欲望を刺激する形で力を齎す訳か!なら、抑え込むのは厳禁だな!)

「ウォォォォォォォ!アマゾン!」

『ガッチャーン!レベルアップ!マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクション、エックス!』

 

突如として襲い掛かった空腹感と、それに呼応する様に膨れ上がった何らかの衝動に襲われる一誠、これが未知なるガシャットの効果だと気付いた彼は堪える事をせずそれを受け止め、雄叫びを上げながらゲーマドライバーのレバーを開き、何時もの手順でエグゼイドに変身した。

 

『アガッチャ!デンジャー!デンジャー!野生本能!アルファオメガアマゾン!』

 

すると、エグゼイドの身体から緑色のオーラらしき物が噴出、それが晴れた後には、胸のディスプレイが胸筋を思わせるアーマーで覆われ、ピンク色のライダースーツと両肩の装甲が緑に、スーツに張り巡らされた黒いラインとオレンジの眼は赤に染まり、両腕・両脚の装甲からはヒレ状の刃を、左手首からグリップの様な物を生やした姿――アマゾンアクションゲーマーレベル7に変化していた。

 

(凄まじい力だ、ダブルアクションゲーマーレベルXと同等、いやそれ以上…!

これなら!)

「猛獣の如き力、我が物と(クリア)して見せる!」

『ガシャコンブレイカー!ジャ・キーン!』

 

レベル7でありながらダブルアクションゲーマーレベルX以上の力を己が身から感じたエグゼイドは、いけると言わんばかりにガシャコンブレイカーを装備、そのまま赤い異形に飛び掛かった。

 

「せいっ!おらぁっ!」

「くっ!はぁっ!」

 

一誠を飲み込まんと膨れ上がる衝動に促されるまま苛烈に、然し普段と変わらず冷静にガシャコンブレイカーを振るい、或いはパンチやキック等の体術で赤い異形に攻撃を仕掛けるエグゼイド。

対する赤い異形も見た目とは裏腹に理性的な立ち回りでエグゼイドの猛攻に対応してはいるが、パワー等の純粋な戦闘能力は勿論、技量でも上回っているエグゼイドの攻撃を捌ききれず、次第に有効打を食らっていく。

 

『ガシャット!キメワザ!アルファオメガ・クリティカル・ストライク!』

「オォォォラァァァ!」

「ぐぉぉぉぉぉぉ!?」

 

そしてエグゼイドはいつも通りの手順でトリコローレカラーのガシャットを左腰のスロットに装填しその力を解放、と共に巨大化した両腕・両脚の刃を振るった。

手を横に凪ぎ、或いは振り下ろし、かと思えば足払いをするかの様に投げ出したかと思えば、上段回し蹴りの要領で振り上げ…

まるで何かしらの舞の如く踊りながら、赤い異形を切り刻み、トドメを刺した。

 

「ふぅ、やったか。お前、大丈夫か?」

「は、はい。貴方は…?」

「俺は兵藤一誠。お前は?」

(はるか)です、水澤(みずさわ)、悠…

あの、一誠さん、助けて頂いて、ありがとうございました」

「気にするな、悠。偶々通り掛かっただけの事、一期一会の縁という物だ」



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74話_知性と感性の共生、その名はW!

「あ、あれ?此処は一体…」

 

同時刻、一誠と同じく目が覚めたイリナは、これまた目前の光景に己が目を疑った。

 

「昨日の夜は確か、私の部屋で寝ていた筈なんだけど、今私がいるのは庭。私ってそんなに寝相が悪かったかな、それとも寝ぼけて外に出ちゃった…?

あれ、でも建物が全然違う…」

 

イリナが今いる場所は何処かの邸宅と思しき場所の庭先、その状況から、自らの寝相が余りに悪くて此処まで転がって来たか、或いは寝ぼけて此処まで彷徨ったかして外に出てしまったのではといった考えが浮かんだが、それは直ぐに捨てた。

何故なら彼女の目前に見える建物は、新居のそれではなく、東京上野の地に建てられた某博物館にそっくりな帝冠様式の邸宅であったのだから。

 

「どうやら私の身に何か起こったみたいだね。となれば、ガシャット…

良かった、ハリケーンニンジャガシャットはある。って何だろう、このガシャット…?」

 

その光景から緊急事態だと察したイリナは、それに対処する為に己の戦う術であるガシャットの有無を確認、何時もホルダーに差していたハリケーンニンジャがあった事に一先ずは安堵したが、一方でもう1つ差さっていた、緑・銀・黒の3色を並べたカラーリングの、ラベリングがされていないガシャットの存在に彼女は疑問を覚えた。

尚、そのガシャットの代わりにジュージューバーガーガシャットが無くなっていた事には、元々戦闘用では無かったのも相まって全く気にしていなかった。

 

「おや、気付いたか。ようこそ、私の世界へ」

 

謎のガシャットが何故ホルダーに差さっているのか、これは一体何なのか、考えを巡らせるイリナだったが、それを遮るかの如く、某古代王家の末裔である大佐らしき人の声がした。

その声に反射的に振り向くイリナ、其処にいたのは、何処か恐怖を煽るかの様に強大なオーラを放つ異形だった。

黒い肌を晒した筋肉質な上半身、巨大なマントが付けられた青銅の顔を模した冠、バックル部分に黄金の球らしき物が嵌め込まれたベルトで固定された赤い袴、と此処までなら辛うじて人間に見えなくもないが、上半身から所々生えた棘の様な物、胸にある髭を生やした髑髏、そして骸骨がマスク型の防具を身に着けている様にしか見えない顔は、異形としか言いようが無かった。

そんな強大さを有する異形がこの事態を引き起こした張本人だと判断、戦う為にホルダーからガシャットを取り出したイリナだったが、

 

「察しが良い。だがどんな抵抗も無駄だ、現に君は今、私の力にあてられて怯えているではないか」

「え…!?」

 

その意志とは裏腹に、彼女の手は、脚は、ガタガタと震えていた。

まるで今異形が指摘した通り、恐怖に怯えるかの如く。

 

「無駄だと言った筈だ。それを分からせてやるとしよう」

「くっ!?い、いや、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

それを抑え込むかの様にガシャットを持つ手に力を入れて変身しようとしたイリナ、だがそうはさせまいと異形が放った黒い粘液状の波動を受けた瞬間、恐怖心が一気に増大化、それに耐えきれなくなったのか彼女は跪き、蹲ってしまう。

 

「いや、来ないで、来ないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

「恐怖に囚われたか。もう二度と、立つことは出来まい」

 

恐怖に囚われ、何かに怯える様な悲鳴を上げる事しか出来ないイリナ、そんな彼女の様子からもう抵抗出来ないと判断した異形は、トドメを刺すべくゆっくりと近寄っていった。

 

(大丈夫だ、イリナ。俺が、俺達がいる!)

「い、イッセー君…!

そうだった、私にはイッセー君が」

『ガシャコンニンジャブレード!』

「皆がいる!」

「ぬぉ!?君も、恐怖を克服したのか…!?」

 

が、その手の間合いにまで近寄った所で(異形にとって)予想だにしない事態が起こった。

己の想い人である一誠の声を何処かから耳にしたイリナ、それによって増大した恐怖を振り払った彼女はガシャコンニンジャブレードを装備、近寄っていた異形を切り裂いたのだ。

 

兵藤誠次郎(あのクズ)に襲われた時も、進むべき道が罪なき人々の亡骸で舗装されていた事を思い知った時も、イッセー君は私を救ってくれた。何時だってイッセー君は、私にとっての心の支え、ヒーローだった。そんなイッセー君の為に、私は強くなると、彼を守り抜くと、絶望しないと決めた!」

 

想定外の状況に狼狽えつつも、追撃を避けるために飛び退いて様子を見る異形、それに対してイリナは、己の決意を言い放つ。

 

「私は守って見せる、イッセー君を、家族の皆を、故郷の街を!大切な存在を泣かせる奴は、誰であろうと私が許さない!」

 

そんなイリナの決意にあてられたと言うべきか、謎のガシャットが突如として発光、それに気づいたイリナが取り出すと、

 

「『MEITANTEI W』。へぇ、こんなガシャットもあるんだ。折角だから使ってみよう!」

『ハリケーンニンジャ!』

『名探偵ダブル!』

「チャプター7、変身!」

『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!マキマキ!竜巻!ハリケーンニンジャ!』

 

既にそのガシャットはラベリングされ、『MEITANTEI W』というタイトルと、目が赤く、左半身が黒、右半身が緑の、シンプルなデザインの仮面ライダーと思しき存在が仁王立ちする姿がデカデカと描かれたラベルが貼られていた。

それを、藍色のガシャットと共に起動すると、イリナの背後にハリケーンニンジャのスクリーンと共に『MEITANTEI W』のタイトル、黒と緑の仮面ライダーが決めポーズを取る姿がデカデカと描かれたスクリーンが出現、それを受けて彼女は2つのガシャットをゲーマドライバーに装填、何時も通りの手順で風魔に変身した。

 

『アガッチャ!サイクロン!ジョーカー!二人で一人!サイクロン!ジョーカー!二人でエクストリーム!』

 

すると、風魔の正中線を境として二手に分かれる様に、データ状のエネルギーが噴出、それが晴れた後には、ライダースーツが銀色に、右半身の帷子が緑色に、左半身の帷子が黒に変色(同時に、顔面や髪も同様に変色)し、胸のディスプレイは『W』を象った装甲で覆われた姿――ダブルニンジャゲーマーレベル7に変化した。

 

「エクストリーム…!

君もまた地球(この星)の意思に選ばれたという事、選ばれる資格があったという事か…!」

「さあ、貴方の罪を数えなさい!」

「ぐぉ!?な、何と言う速さ…!」

 

その姿に驚く異形に言い放った風魔だったが、次の瞬間にはガシャコンニンジャブレードで異形を切り裂いた後だった。

 

『シュ・パーン!』

「はぁぁぁぁぁ!」

「ぬぉぉぉぉ!?」

 

その余りの速さに対処が間に合わない異形、それを見て行けると確信したか、手裏剣の様な形に変形させたガシャコンニンジャブレードを手に、縦横無尽に切り裂いてゆく風魔。

 

『ガシャット!キメワザ!名探偵・クリティカル・ストライク!』

「やぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「見事…!

家族の元に戻るとするか…」

 

そして風魔は何時も通りの手順で緑・銀・黒の3色が並んだカラーリングのガシャットを左腰のスロットに装填しその力を解放、自らの身を包む様に発生した竜巻に乗る形で浮かび上がり、ある程度の高度に達した所でドロップキックを放ち、異形に直撃した。

その一撃を受けた異形はその言葉を最後に爆発、跡形も無く消えた。



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75話_希望と絶望の魔法、その名はWizard!

「あら?此処は何処でしょうか…?」

 

同時刻、一誠達と同様に目が覚めた朱乃だったが、やはりと言うべきか、目前の光景に己が目を疑った。

 

「私達の新居と同じく洋館らしいですが、庭先に湖なんて無かった筈」

 

彼女が今いる場所は、新居である洋館の、自らに割り振られたそれとよく似た部屋、ではあったのだが、その窓に映る風景が、自分の住まう場所では無いと知らせていた。

 

「何か、重大事態の様ですわね。そうだ、ガシャットは無事でしょうか…

ジェットコンバットガシャットが無い?何でしょう、代わりに差されていたこのガシャットは…?」

 

これまたやはりと言うべきか、重大な事態が起こっていると気付いた朱乃、ゲーマドライバーのガシャットホルダーに差しているガシャットを確認したが、変身に用いる紺色のガシャットはあった一方、レベル3に強化させるオレンジ色のガシャットは無く、代わりにあった黒と赤のリバーシブルなカラーリングで、ラベリングが施されていないガシャットの存在に、朱乃は疑問を覚えた。

 

「とはいえ、バンバンシューティングガシャットが無事なのは幸いですわね。脱出を急ぎましょう」

 

だがそれも一瞬の内、紺色のガシャットがあっただけでも良しとした彼女は、この場を切り抜けるべく行動を開始した。

 

「何処へ行く?」

 

が、それから数分経った頃、某「ドリルは男のロマン」を主題にしたロボットアニメにおいて地球を支配していた螺旋王とよく似た声が彼女を呼び止めた。

 

「雷光よ!」

『バンバンシューティング!』

 

その声の主がこの事態の黒幕だと読んだ朱乃は其処に振り向くと共にガシャットを起動、更に雷光の魔力を顕現、振り向いた先にいた白を基調とした魔法使いと思しき姿の、仮面ライダーと言えなくもない戦士に向けて降り注いだ。

 

『ディフェンド!エクスプロージョン!ナウ!』

「きゃぁ!?」

 

それに対応している隙を突いてスナイプに変身しようとした朱乃、だがそれは予想外の事態に阻まれてしまった。

何か電子音声と思しき声がしたかと思ったら、突如として朱乃の目前の空間が爆発、それが彼女に直撃してしまったのだ。

ガシャットの起動時に出現するスクリーンは、ちょっとやそっとの攻撃ではびくともしない防御壁としても使える、その為それを前面に出現させる事で仮に相手が攻撃して来ようと問題ないと判断していた朱乃はそれに対応出来ず、爆発の勢いに押されるまま大きく吹き飛ばされてしまった。

 

『グラビティ!ナウ!』

「くっ!?こ、これは、重力…!」

 

まさかの事態で少なくないダメージを負いながら、尚も変身しようとガシャットを握っていた手を動かす朱乃、だがそうはさせないと言わんばかりにまたも音声が響く、と同時に彼女の五体がまるで地面に縫い付けられたかの様に動かなくなってしまった。

その直前に聞いた音声、そしてその状況に至らせたであろう急激に重くなった身体…

其処から朱乃は、己の身に強大な重力が圧し掛かっているのだろうと気付いた。

後方からの狙撃という戦闘スタイル故か身体的な能力は高くない上、先程の爆発でダメージを受けていた朱乃に、それは余りにも効果的過ぎる枷となってしまった。

 

「ほう。力の差を見せつけられ、尚も絶望せず私に立ち向かうか」

 

自らは仰向けになった上、強大な重力によって地面に縫い付けられた状態、一方で白い戦士は、先程朱乃が放った雷光の魔力など物ともしていないと言わんばかりに無傷。

状況は絶望的にも関わらず、朱乃は白い戦士への敵意を隠す事無く、顔を向けて睨み付けながら、ガシャットを握る手を動かそうと奮闘していた。

 

「もしあの時イッセー君が助けてくれなかったとしたら、きっと私かお母様が殺されていたかも知れません。そしてもしお母様が殺され、私だけが生き残ったとしたら、きっと私は自身に流れる堕天使の血に絶望し、自暴自棄になっていたかも知れません。イッセー君が、私が至ったかも知れない絶望を、希望に変えてくれた…!

今度は私が、誰かの絶望を、希望に変える番ですわ!」

 

そして己の想いと共に気迫を高めた朱乃は、己を縛り付けていた重力の枷を振り払い、白い戦士に正対する様に立ち上がった。

 

「『MAGIC THE WIZARD』。あらあら、魔法使い対決という事でしょうか」

『マジックザウィザード!』

第七戦術(セブンス・タクティクス)、変身!」

『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!ババンバン!バンババン!イェーイ!バンバンシューティング!』

 

朱乃が重力の枷から解き放たれたと同時に、己の枷も解き放たれた、かどうかは分からないが、謎のガシャットが突如として発光、それに気づいた朱乃が取り出すと、既にラベリングされていて、『MAGIC THE WIZARD』というタイトルと、黒を基調とした魔法使いと思しき姿の、仮面ライダーと思われる存在がポーズを取る姿がデカデカと描かれたラベルが貼られていた。

それを起動すると、朱乃の背後に『MAGIC THE WIZARD』のタイトル、魔法使いと思しき仮面ライダーが決めポーズを取る姿がデカデカと描かれたスクリーンが出現、既に起動していた紺色のガシャットと共にゲーマドライバーに装填、何時も通りの手順でスナイプに変身した。

 

『アガッチャ!ド・ド・ドラゴ・ラーラララーイズ!フレイム!ウォーター!ハリケーン!ランドォォォォ!オールドラゴン!』

 

それと共に彼女の足元から赤い魔法陣が出現、それがスナイプの身体を通過すると、胸には龍の頭、背中には龍の翼、腰には龍の尻尾、そして手足には龍の爪を模したパーツが装着された姿――ウィザードシューティングゲーマーレベル7に変化した。

 

「さあ、ショータイムですわ!」

『ボルゲーノ!ナウ!』

 

ウィザードシューティングゲーマーと化したスナイプは、決め台詞と共に白い戦士へと飛び掛かる、白い戦士もそうはさせまいと言わんばかりに、身に着けていた指輪をベルトの、手を思わせるデザインのバックルにタッチさせる、すると先程流れたのと同じ様な音声と共に魔法陣が戦士の防御壁みたく出現、其処から膨大な炎が吹き上がったが、スナイプも負けじと胸に装着された龍の頭から炎を発射、相殺させる。

 

「やぁっ!食らいなさい!」

「くっ!はぁっ!」

 

その間に白い戦士との距離を詰めたスナイプは手足の爪、腰の尻尾を用いて接近戦を仕掛ける、白い戦士も笛の様な形の槍っぽい武器で応戦するが、武装の多さから来る手数の差は、接近戦に慣れていない朱乃の技量を加味しても防ぎきれるものではなく、次第に押されていった。

 

『ガシャット!キメワザ!マジックザ・クリティカル・ストライク!』

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「ぬぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

 

そしてスナイプは何時も通りの手順で黒と赤のガシャットを(爪パーツを装着した状態で器用に)左腰のスロットに装填しその力を解放、上空へと飛び立ってからドリルキックを放ち、白い戦士に直撃した。

その衝撃を受けては流石の白い戦士も耐えられずに爆発、跡形も無く消え去った。



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76話_欲望と終末の器、その名はOOO!

「此処は一体…?」

 

同じ時間に目覚めた白音は、例によって目前の光景に疑問を覚えた。

彼女が今いる場所は、特撮番組の戦闘シーンで良く見られる広い空間だった。

 

「緊急事態、という訳ですね…

不味いです、ガシャットギアデュアルαもありません。あるのはバクレツファイターガシャットと、何でしょうか、このガシャット?」

 

今の状況が自分にとって良くない物と即座に見抜いた白音は、懐に入れていたであろうガシャットギアデュアルαを取り出そうとしたが、ある筈のそれは無く、あったのは変身用の朱色のガシャットと、緑と黄色のリバーシブルなカラーリングで、ラベリングが施されていないガシャットだけであった。

 

「っ!こんな時に敵襲ですか…!」

 

知らないガシャットの存在に疑問を覚えた白音だったが、それを考える時間は与えられなかった。

彼女のいた部屋に、恐竜みたいな姿の異形が入って来たのだから。

 

「貴方には、愛する男性がいるそうですね。ですがその男性は、貴方だけを愛している訳ではない、そうでしょう?」

「…何故それを?」

 

その異形がこの事態を引き起こしたかは定かでは無いものの、自分の敵である事は間違いないと判断した白音が構える中、某地球防衛隊日本支部特捜班隊長らしき声の異形が、まるで彼女の人間(悪魔)関係を知っているかの様な疑問を投げかけた。

思いもよらぬ事を聞いて来たが故に気が逸れてしまった白音、それがいけなかった。

 

「愛する男性が貴方に見向きしてくれなくなる前に、貴方への想いを永遠の物としたいとは思いませんか?愛する男性が醜く変わる前に、美しい内に完成させたいとは思いませんか?」

「うぐっ!?がはっ!」

 

その隙を突くかの様に距離を詰め、白音の胸倉を掴んだ異形は、何処か意味深な問いかけをしながら、彼女を地面に叩きつけたのだ。

 

「物事は終わりを迎える事で初めて完成します、貴方の人生が終わる事で、愛する男性の、貴方への想いは完成するのです。私が完成させてあげましょう」

「あぐっ!いぎっ!」

 

尚も言葉を重ねながら白音を執拗に叩きつける異形、だが、

 

「お断りします!」

「ぬぅ!?」

 

一瞬の隙を突き、異形の腹部を蹴飛ばした白音、戦車として転生した彼女のパワフルな一撃には異形も怯み、彼女を掴んでいた手を離した。

 

「生憎ですが、イッセー先輩が私だけしか見ている訳では無いのは、私以外の女性をも愛しているのは承知の上です。いや、それを知った上で私はイッセー先輩を好きになり、恋人になりました。イッセー先輩の心は誰よりも大きく、誰よりも澄んでいて、それでいて深みがあって…

そんなイッセー先輩だからこそ、色んな人から好かれ、惹かれ、愛されていって、その絆は限りなく広がり、そして濃密な物となって行き、イッセー先輩もそんな絆を力強く背負って行くのでしょう。私も昨日のイッセー先輩よりも、今日のイッセー先輩の方が好きですし、きっと明日の、そのまた先のイッセー先輩をより好きになのだと思います。私の好きなイッセー先輩は、そんな存在なのですから」

 

異形から距離を取る事に成功した白音は態勢を立て直しながらも、先程異形が投げかけた問いかけに律義に回答していた。

 

「だから私は、貴方の言う『完成』など望まない!私はイッセー先輩の恋人の1人として、大好きなイッセー先輩への想いを抱いて生き続ける!」

 

勿論と言うべきか『NO』という回答を、恋人である一誠へ抱く想いの強さと共に。

 

「『JUNGLE OOO』…

オーオーオー?それともOの複数形(O’s)でオーズでしょうか?まあ良いです、使ってみましょう!」

『バクレツファイター!』

『ジャングルオーズ!』

 

その想いに応えるかの様に、謎のガシャットが突如として発光、それに気づいた白音が取り出すと、既にラベリングされていて、『JUNGLE OOO』というタイトルと、鳥らしき赤い頭部、虎らしき黄色の両腕、昆虫らしき緑の脚部を持つ仮面ライダーと思われる存在がポーズを取る姿がデカデカと描かれたラベルが貼られていた。

それを、朱色のガシャットと共に起動すると、白音の背後にバクレツファイターのスクリーンと共に『JUNGLE OOO』のタイトル、赤と黄色と緑の仮面ライダーが刀剣らしき武器を構える姿がデカデカと描かれたスクリーンが出現した。

 

「Oの複数形でしたか、まあ今はそんな事どうでもいいですね。ラウンド7、変身!」

『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!ぶち込め正拳!バクレツファイター!』

 

ふと覚えた疑問が解決したが今はどうでもいいと切り替え、2つのガシャットをゲーマドライバーに装填、何時も通りの手順でノックスに変身した。

 

『アガッチャ!タトバ!ガタキリバ!シャウタ!サゴーゾ!ラトラーター!プトティラ!タジャドルオーズ!』

「欲望のままに、ぶっ潰します!」

「ぬぅっ!」

 

すると、ノックスの周りを覆う様に赤色のメダルらしき物体が多数飛び回り、その中の鳳凰を思わせる2枚のメダルが巨大化、うち1枚はノックスの胸部に、もう1枚は左腕に装甲として装着され、背中からは鳥を思わせる3対の赤い翼が生えた姿――オーズファイターゲーマーレベル7に変化した。

新たなる形態となったノックスは異形に向かってそう言い放ちながら、背中の翼で広大な空間を飛行しつつ、左腕の装甲から炎の弾丸を異形に向けて連射した。

異形も手足で振り払ったり、重力を操作すると思しき波動で潰したりと対応するが、次第に対処し切れず、炎に焼かれていく。

 

『ガシャット!キメワザ!バクレツ!ジャングル!クリティカル・ストラッシュ!』

「セイヤァァァァ!」

「ぐぅ!?わ、私が、完成してしまう…!」

 

弱り出したと見たノックスはそのまま、ゲーマドライバーに装填していたガシャットを2つとも右腰のスロットに装填してその力を解放、身体から吹き上がる炎がまるで巨大な鳳凰であるかの様な姿となり、そのまま異形へと飛来した。

その鳳凰の体当たりが直撃した異形は、そんな意味深な言葉を残して爆発、消えていった。



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77話_宇宙と友情の激闘、その名はFourze!

今年最後の投稿は、当初の予定を変更しました。

変更内容:戦闘シーン無し


「え、あ、あれ?此処は…?」

 

同刻、アーシアもまた、目覚めたばかりの自分の眼に映る光景に戸惑いを見せた。

彼女がいたのは、何処かの学校の校長室を思わせる豪奢な室内だった。

 

「おや、目覚めたかね」

「え?あ、貴方は!?」

「おっと、驚かせて済まない。唐突にこの場へ連れ込まれた挙げ句に安心したまえ等というのは無茶な相談だろうが、君に対して手荒な真似をするつもりはない。少し話がしたいだけだ」

 

が、この先の展開は今までと違っていた。

まるで彼女が目覚めるのを待っていたかの様に、室内に声を掛ける存在がいたのだ。

驚いたアーシアがその方へ向くと其処には、暗い色合いのスーツをビシッと着こなしたダンディな壮年男性が、ドーム状の椅子から彼女に歩み寄る姿があった。

その口ぶりからしてこの事態を引き起こした存在だろうと判断し、条件反射でホルダーに差していたガシャットを抜き取ろうとしたアーシア、その姿から警戒していると見た(当然の話ではあるが)男性は謝罪しつつ彼女を宥めていた。

その口ぶりから男性が何か仕出かすつもりは無いのだろう、そう思ったアーシアは警戒を解き、話に応じる事にした。

 

「粗茶をどうぞ」

「うむ。まずは自己紹介をするとしよう。私は我望(がもう)光明(みつあき)。この天ノ川学園高校の理事長だ」

「あ、はい。アーシア・アルジェントと申します。宜しくお願いします、我望さん」

 

隅の方で控えていた男性――我望の秘書、というよりボディガードと言った方がしっくりくる程ガタイの良いオールバックの男性がお茶を差し出したのを合図に、話し合いは始まった。

 

「アーシア君か。では早速本題に入ろう。君には将来を共にすると決めた恋人がいたね。確か兵藤一誠君、いやIS君と呼んだ方が良いかね?うちの学園にも彼のゲームを愛する子が多いと評判だよ」

「な、何故イッセーさんとの関係を…!?」

「彼も中々の有名人だ、交友関係の噂話やゴシップ記事は少なからず耳に入って来る物だよ。『ISと仲睦まじく歩く女性の正体は?』的な感じでね、その女性が君だったという訳だ」

 

その話題として挙がったのは、天才ゲームクリエイターとして名の知られた一誠と、アーシアとの交際についてだった。

 

「彼はいわば太陽だと私は思う。その輝きは人に限らず様々な生き物を惹きつけ、惹かれていった生き物達に暖かさを齎し、生き物達の活力を引き出す。彼もまた色んな人達をファンとして惹きつけ、様々なゲームを世に齎し、ファン達を笑顔にさせる事で、彼らの活力を引き出しているのは知っているだろう。そして太陽、というより恒星全般に言える事だが、それにはその周囲に生まれ、今も尚囲む惑星や小惑星、衛星の存在が欠かせない。そう、君を始めとした恋人、家族、友、仲間といった存在だ。

 

だが一方で、目的の為にただ一人で、どの様な手を講じてでも突っ走る所があると私は見ている。太陽とは如何なる物であろうと近づけさせない、孤高の存在でもあるのだよ」

 

が、それを咎めている様子では無く、寧ろいて然るべきとの口ぶりだった。

穏やかな、それでいて厳格な雰囲気で一誠について語る我望、それはその功績を、人となりを評しつつも、一方でその危うさを指摘する物だった。

アーシアも、嘗て一誠がガシャットギアデュアルα開発の為に何日も寝ていなかった事、その反動で数日間もの間目を覚まさなかった事が記憶にあった為、その指摘に反論しなかった。

 

「いずれ彼は、己が目的を果たす為に成し遂げて来た『事柄』に向き合う事となるだろう。それが何時になるかは分からない、目的を果たした後か、それとも果たす前か。またそれは必ずしも良い意味とは限らないかも知れない、もしかすれば大きな災厄となってしまった『事柄』に立ち向かわねばならなくなるかも知れん。

 

 

 

その時になっても君は、いや君達は、彼と言う名の太陽に連なる星として、彼と共に立ち向かう覚悟は、あるかね?」

 

一誠が抱く危うさ故の暴走、それによって引き起こされるかも知れない災厄。

それに対して向き合う覚悟は、災厄に立ち向かう覚悟があるのかをアーシアに問う我望。

 

「私は嘗て一人でした。親と呼べる方はおらず、世間という物を全く知らず、ただ主から授かった神器の力で人々の傷を癒す毎日を過ごしていました。そんな私を、イッセーさんは大切な存在だとし、何度も救ってくれました!教会を追放され、堕天使に騙されて今住んでいる街に来た時も、イッセーさんは親身に接し、結果的にですが私の命をも救ってくれ、守る為の力を授けてくれました!そんなイッセーさんの行く先に何が起ころうと、私は、私達は恋人として共に立ち向かいます!」

 

だがそんな問いは愚問だった、何があろうと一誠の恋人として共に立ち向かう覚悟がアーシアには出来ていたのだから。

 

「それを聞いて安心したよ。それで良い、人との絆は、人を強くするのだから」

 

そんなアーシアの覚悟の程を聞き、安堵した我望、それに反応したかは分からないが、アーシアが装着しているゲーマドライバーの、左腰のドライバーに差していたガシャットの一方が光り輝いた。

それに気づいたアーシアがそれを取り出すと、

 

「『SPACE GALAXY FOURZE』…?」

「フォーゼ、か。きっとそれには、私の教え子が振るっていた力が宿っている筈だ。是非とも、これからの戦いに役立ててくれたまえ。今日はありがとう」

「此方こそありがとうございました、我望さん!私、頑張ります!」

 

手にした覚えのない、純白のカラーリングに『SPACE GALAXY FOURZE』のタイトルと、ロケットをモチーフとしたらしき仮面ライダーと思しき存在がポーズを取る姿がデカデカと描かれたラベルが貼られていたガシャットがあった(代わりにドレミファビートガシャットが無くなっていた)。

そんな謎のガシャットを訝し気に見るアーシア、そのタイトルを聞いた我望はどんな物か察しが付いたのか、彼女にアドバイスを送った。



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78話_果実と武士の覇道、その名はGaim!

新年最初の投稿は、主人公でもヒロインでもなく…


「あれ?此処は何処だろう…?」

 

同じ時間、祐斗もまた、目覚めたばかりの自分の眼に映る光景に戸惑いを見せた。

祐斗が目覚めた場所、其処は巨大なビルの影となっている、広場みたいな所だった。

 

「何処かのオフィス街かな?少なくともうちの近くにこんな場所は無かった筈…

どうやらナイトオブサファリガシャットは無事みたいだね、でも何だろう、このガシャットは…?」

 

その光景から己の身に何かあったのだろうと察知し、急いで懐を確認した祐斗、其処には今の自分が振るえる最大の力と言って良いガシャットがあった。

一方、ガスバーナーの炎らしき青いガシャットの代わりに差さっていた、紺色をベースカラーとしたブランクのガシャットに、祐斗は疑問を抱いた。

 

「貴様か、木場祐斗とか言う奴は」

 

その祐斗を呼び止める声がした。

それに振り向くと其処には、元パティシエなご当地アイドルとそっくりな、だが雰囲気は正反対と言って良い、黒と赤を基調とした服装の青年がいた。

 

「ああ、僕が木場祐斗だ。僕の名を知っているなんて、君は一体…?」

「何処の誰かと勘違いされたままという訳にも行かないからな。俺の名は駆紋(くもん)戒斗(かいと)、お前の強さを確かめに来た!」

 

剣士としての性分故かその呼びかけに応じた祐斗、それに返す様に青年――戒斗が何処かメタい発言をしながら名乗りを上げ、敵意を露わにした。

 

『タドルクエスト!』

『バナナ!』

「術式レベル2」

「「変身!」」

『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!辿る巡る!辿る巡る!タドルクエストォォォォ!』

『ロックオン!カモン!バナナアームズ!ナイト・オブ・スピアー!』

 

その敵意に反応し、何時もの手順でブレイブへと変身した祐斗、だがそれと同時に戒斗もまた動いた。

祐斗がガシャットを取り出すのと同時に、懐からバナナの絵柄に『L.S.-08』という型番らしき文字が書かれた南京錠らしき物を取り出し、側面のスイッチを動かして解錠、腰に装着されたベルトの、暗い色合いのバックルに装着・施錠し、右側の小太刀らしき機構を振り下ろすと錠前が斬られた様に開き、戒斗の身に赤と銀を基調とした西洋の鎧らしきデザインのライダースーツが装着された。

 

「え、バナナ?バナ、バナナ?」

「バロンだ」

 

その直後、上空の何もない所がまるでファスナーを開く様にめくれ上がり、其処から巨大なバナナと思しき物体が戒斗の頭に装着、戸惑う祐斗に戒斗がツッコミを入れたのを見計らってその物体が開き、鎧となって戒斗――仮面ライダーバロンに装着された。

 

「せいっ!やぁっ!」

「ふっ!はぁっ!」

 

両者が変身し、己の得物を手にしたその瞬間、戦いは始まった。

ガシャコンソードに、夏休みの特訓が功を奏して発動したまま一週間維持する事が出来る様になった禁手『双覇の聖魔剣』の力で作り上げた小太刀型の聖魔剣による二刀流で斬りかかるブレイブに対し、鎧が装着されると共に右手に装備された西洋槍と、鍔が銃の機構となった直刀らしき武器で遠近どちらにも対応した立ち回りを見せるバロン。

ロングレンジから直刀の鍔によるけん制の銃撃を放つバロンを、ガシャコンソードから放たれる炎でかき消すブレイブ、ならばとミドルレンジから槍の一撃を放てば、小太刀型聖魔剣或いはガシャコンソードで受け流しつつ接近、接近戦に持ち込んで使わなかった方を振りかざしたかと思ったら、直刀で鍔迫り合いになり、打撃で距離を空け…

と、戦いは拮抗していた。

 

「手強いな。コカビエルと戦った時以来だ、なら!」

『ナイトオブサファリ!』

『ガッチャーン!』

「術式レベル5!」

『レモンエナジー!』

「ならばコイツだ!」

『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!辿る巡る!辿る巡る!タドルクエストォォォォ!アガッチャ!ライオン!シマウマ!キリン!真夜中のジャングル!ナイトオブサファリ!』

『ロックオン!ソーダ!レモンエナジーアームズ!ファイトパワー!ファイトパワー!ファイファイファイファイファファファファファイッ!』

 

バロンの実力を見て、ギアを上げるべくベージュのガシャットを取り出して起動し、サファリクエストゲーマーレベル5にレベルアップしたブレイブ、と同時にバロンもベルトを外し、代わりに何処からともなく手にしたジューサーみたいな形状のベルトを装着し、スケルトンカラーにレモンの絵柄、『E.L.S.-01』という型番らしき文字が書かれた南京錠らしき物を取り出し、側面のスイッチを動かして解錠、バックルに装着・施錠し、果物を押し潰す様に右側の機構を動かすと錠前が開き、ベルトを外した時に同時に解除された鎧の代わりと言わんばかりに上空から巨大なレモンと思しき物体がバロンの頭に装着、新たな鎧となって装着され、これまた消えた西洋鎧の代わりに赤い弓らしき武器が装備された。

其々が新たな姿に変わったと同時にバロンは弓からエネルギー状の矢を放つが、ブレイブもまた光弾を放って相殺しながら接近し爪らしき機構で斬りかかるも、接近戦に対応する為か刃が付いていた弓で迎撃して距離を空け…

またも戦いは拮抗、どちらが優勢かまだまだ分からなかった。

 

「やるな、木場祐斗。その強さを以て、何の為にお前は戦う?」

 

互いに決め手が無く睨み合う2人、そんな中、己と渡り合う実力を見せつけたブレイブに、その強さに興味を持ったのか、ふとバロンが尋ねた。

 

「何の為に?愚問だ、僕は部長の、イッセー君の、皆の夢を叶える為に、守る為に戦う!」

「誰かを守る為、誰かの夢の為か。その強さなら出来るかも知れないが、自分の為に振るおうとは思わなかったのか?」

 

その問いかけに素直に答えたブレイブ、その答えに疑問を覚えたのか、バロンが重ねて問いかけた。

 

「自分の為に、か。ああ、以前の僕はそうだった。この力が己の物であると思い込み、復讐の為に、自己満足の為に振るおうとしていた。けど、色々な出来事を経て思ったんだ。

 

 

 

力とは、自己満足の為に振りかざす物じゃない、己が信念に、理想に、大義に則って振るう物なのだと!僕にとっての信念、それは僕の命を救ってくれた部長の、大切な人達の夢が叶う様尽力し、その成就を見届ける事!その為に僕はこの剣を振るう!」

 

そんなバロンにブレイブは言い放った、聖剣計画の被験者として苦難の日々を送った末に処分されかけ、死に際をリアスに救われ、復讐を企てた末に知った仲間達の想い…

そんな紆余曲折を経て至った、己の想いを。

 

「『TOUKENDEN GAIM』、僕に似合いそうなガシャットだ、使ってみるか!」

『刀剣伝ガイム!』

『ガッチャーン!ガッシューン』

 

そのブレイブの想いに呼応したかの様に、謎のガシャットが突如として発光、それに気づいて取り出すと、既にラベリングされていて、『TOUKENDEN GAIM』というタイトルと、オレンジを模した鎧を身に着けた武士らしき姿の仮面ライダーと思われる存在が構える姿がデカデカと描かれたラベルが貼られていた。

それを起動すると、ブレイブの背後に『TOUKENDEN GAIM』のタイトル、武士らしき仮面ライダーが構える姿がデカデカと描かれたスクリーンが出現した。

 

「術式レベル7!」

『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!辿る巡る!辿る巡る!タドルクエストォォォォ!アガッチャ!オレンジ!イチゴにパイナップル!バナナ!ブドウ!メロン!ソイヤ!ガイムゥゥゥ!』

 

ベージュのガシャットを抜き取り、そのガシャットを装填、何時も通りの手順で起動させると、レベル2の姿に戻った直後、上空から様々な果物らしき巨大な物体がブレイブの周りを飛び交い、それがブレイブを押し潰す様に集結すると爆発するように発光、それが晴れた後にはフルーツの絵柄が入った胸当てを始め、銀色の装甲を纏ったブレイブ――ガイムクエストゲーマーレベル7の姿があった。

 

「此処からは僕のステージだ!」

「その姿…!

それが、貴様が今出せる全力と言う事か。ならば、オォォォォォォ!」

 

その姿が、名乗りを上げるブレイブが何かを想起させたのか、突如としてバロンが雄叫びを上げると、その身が蔦らしき物に覆われ、異形と呼ぶしかない禍々しい姿――ロード・バロンに変貌した。

そして三度始まる戦闘、最初の時と同様に二刀流で戦うブレイブに対して何処からともなく装備した剣一本で戦うロード・バロン、しかもブレイブの背後からオレンジを模した刀、バロンが使っていた物とそっくりな西洋槍、ブドウを模した拳銃、スイカを模したガトリング砲…

様々な武器が雨あられという表現がぴったりな状態でロード・バロンに飛来していた。

ロード・バロンも流石に剣一本では分が悪いと、蔦の様な物を出現させて迎撃するものの手数の差は明らかで、次第に押されて行ってしまう。

 

「これで決める!」

『ガシャット!キメワザ!刀剣伝・クリティカル・フィニッシュ!』

「ぐぁぁぁぁぁ!」

 

優位と見たブレイブは何時も通りの手順で紺色のガシャットをガシャコンソードのスロットに装填してその力を解放、ロード・バロンを両断した。

 

「強いな、お前は…

ならば守ると決めた奴らを、意地でも守れ!」

「ああ、駆紋戒斗。僕は、大切な皆を守る為の剣だ!」

 

そう言い残し、オレンジの切り身みたいなエネルギーが飛ぶという奇妙な爆発と共に消え去った戒斗、その言葉に、ブレイブは己の決意を改めて宣言した。



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79話_激走と特捜の駆動、その名はDrive!

「此処は何処だ?何故私は此処に?」

 

その頃ゼノヴィアも、目覚めたばかりの自分の眼に映る光景に疑問を覚えた。

ゼノヴィアが目覚めた場所は、免許センターを思わせる施設の、広場と思しき場所だった。

 

「緊急事態か。となればまずは…

不味いな、ギリギリチャンバラガシャットが無い。というか、何だこのガシャットは?」

 

その光景を見て、己の身に何かあったのだと、抱いていた疑問に自答しつつ、左腰のホルダーを確認したが、何時もホルダーに差していた黒いガシャットは無く、代わりにあった赤いカラーリングで、ラベリングが施されていないガシャットの存在に、ゼノヴィアは訳が分からないと言いたげな様子だった。

 

「レベル1でこの場を切り抜けるしかない、という事か。幸い、デュランダルは取り出せる様だが…

む、アイツは?」

 

他に使える武器は無いか調べたら、悪魔に転生する以前から所有していた聖剣デュランダルは(内包する聖なる力が余りに強大であるが故の暴発を避ける為に普段保管されている)異界から呼び出す事が出来る事を確認したゼノヴィアは、状況を打開すべく調査を始める。

と、そんな彼女に向かって、1体の異形が歩いて来るのが見えた。

黄金を基調とした筋肉隆々な体躯は、同じく黄金の装甲を身に纏っている一方、胸は心臓が露出しているかの様な状態、頭部からはバッファローの様な極彩色の角を生やした人の様な姿をした異形を見たゼノヴィアは、それが今回の一件に関わりがあると判断、一瞬の内に警戒を強めた。

 

『バクソウバイク!』

「変身!」

『ガシャット!レッツゲーム!メッチャゲーム!ムッチャゲーム!ワッチャネーム!?アイムア仮面ライダー!』

「貴様も仮面ライダーか。来い!」

 

何時も通りの手順で変身したレーザーを見て、彼女がどういう存在かを察知した異形が突進して来たのを切っ掛けに戦いは始まった。

 

(くっ!ギリギリチャンバラガシャットが手元に無いのは誤算だ、これ程の相手、レベル1ではどうにもならない!)

「どうした、それでも仮面ライダーか!」

「ぐぁっ!」

 

が、いざ戦いが始まってみると、実力差は『悪い意味で』明らかになった。

対峙する異形は嘗て仲間達と共に死闘を繰り広げたコカビエルと同等と言っても過言では無い強さを有している一方、自らは初期形態であるレベル1。

(他のライダーと比べて)鈍重な立ち回りで繰り出される攻撃は簡単にいなされ、一方で異形が放つ強烈且つ素早い打撃の数々は防ぎ切れず、みるみるうちに胸のディスプレイに表示された体力ゲージが減っていた。

異形との実力差に焦りを隠せないレーザー、そんな彼女に、異形は何処か失望した様子で言い放ち、吹っ飛ばした。

 

「俺の知っている仮面ライダーはもっと強い人間だった。力だけでなく、心もそうだった。どんな苦難に直面しようと、あらゆる手を、それこそ大きな危険を伴う手段も講じて立ち上がり、突っ走って来た!俺の友達は、今のお前の如く簡単に足を止めたりしなかった!」

 

受け身を取れず倒れ伏すレーザーに向けて喝を入れるかの様に言葉を重ねる異形、

 

「言ってくれるじゃないか。確かに、私としたことが弱気になっていた様だ。戦う前から、敵の力量を図る前から勝てないと決めつけていては、勝てる戦いにも勝てないし、イッセーの、リアス部長の夢を叶える為の助けにもなれない。

 

後ろ向きに考えるのはもう止めだ、今は全力で突っ走る!」

 

その言葉で目が覚めたと、ネガティブ思考になっていた自分に「このままではいけない」と気づけたと言わんばかりに、レーザーは立ち上がった。

 

「『FULL THROTTELE DRIVE』、まさに突っ走って行けと言わんばかりのタイトルだね」

『フルスロットルドライブ!』

 

そんな彼女に共鳴するかの様に、謎のガシャットが突如として発光、それに気づいて取り出すと、既にラベリングされていて、『FULL THROTTELE DRIVE』というタイトルと、赤をベースカラーとし、車を模したであろう仮面ライダーと思われる存在がデカデカと描かれたラベルが貼られていた。

それを起動すると、レーザーの背後に『FULL THROTTELE DRIVE』のタイトル、車を模した仮面ライダーが決めポーズを取る姿がデカデカと描かれたスクリーンが出現、

 

「7速!」

『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!爆走!激走!独走!暴走!バクソウバイク!アガッチャ!ブブンブン!ブンブブン!脳細胞がトップギア!』

 

それをゲーマドライバーに装填、レバーを開くと、身体を覆っていたパーツが飛び散った後、変形する事無く浮き上がると同時に、タイヤを思わせるエネルギーが周囲に展開、其処にミニカーらしき物体が集結すると、腕と思しき物と脚と思し物、2対の赤いパーツが形成しそのまま装着、そして左肩部分にタイヤ型のパーツが装着され、レーザーの新たなる形態――ドライブバイクゲーマーレベル7となった。

 

「化け物よ、ひとっ走り付き合え!」

『カモン!モンスター!レッカー!トラベラー!タイヤカキマゼール!タフガイ!』

「その姿、ドライブの力を…!

良いだろう、その走りに付き合おう!」

 

新しき姿と化し、決め台詞を言いながら左腕に装備されたブレスレット状の装備を操作したレーザー、すると某2020年大河ドラマの主役である武将の子孫らしいマルチリンガルなナレーターと思しき声が発せられると共に、3つのタイヤがレーザーの左腕を通ってタイヤパーツと融合した。

その姿から誰かを思い出したのだろうか、何処か感慨深げに呟いた異形だったが、レーザーの決め台詞に反応する形で、再び突進、戦いが再開された。

其処からの戦いは、先程とは違って互角、いやレーザーが若干有利な展開と言って良い物だった。

互いに相手の攻撃をさばきながら打撃を繰り出していく両者、だがさばききれないと判断したのかノーガードの殴り合いに発展、立ち回りで追いついた上にパワーも上回ったのかレーザーが押して来た。

 

「はぁっ!」

「ぐぅっ!」

「これで決める!」

『ガシャット!キメワザ!フルスロットル・クリティカル・ストライク!』

「やぁぁぁぁぁ!」

「ぐぉぉぉぉぉ!」

 

そして胸部を狙ったストレートパンチが炸裂、異形が怯んだ隙に何時も通りの手順で左腰のスロットに装填してその力を解放、飛び蹴りを放った。

 

「それで良い、それでこそ仮面ライダーだ!」

 

その一撃をまともに食らった異形は、ネガティブな思考を振り払ったレーザーを評価するかの様な言葉を残し、爆発した。



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80話_生命と幽霊の開眼、その名はGhost!

「え、ええ!?こ、此処は何処ですかぁ!?」

 

同刻、ギャスパーも、目覚めたばかりの自分の眼に映る光景に驚き、慌てふためいた。

ギャスパーが目覚めた場所は、寺を思わせる場所の、庭先だった。

 

「な、なんで悪魔のボクがお寺さんの敷地内にいるんでしょうか、頭痛も何故かしないし…」

 

悪魔である自分が、神聖な場所である寺の敷地内にいるのに何故か頭痛がしない事も相まって暫く混乱が収まらなかったギャスパーだったが、どうにか平静を取り戻し、

 

「そうだ、ガシャットは…

あれ、何でしょうかこの黒いガシャット…?」

 

自分の身に何かしらの事が起こったのだろうと判断、左腰のホルダーを確認したが、何時もホルダーに差していた緑色のガシャットの代わりに差さっていた、黒とオレンジのリバーシブルなカラーリングで、ラベリングが施されていないガシャットの存在に、ギャスパーは疑問符を浮かべた。

が、その疑問を考える時間は、ギャスパーには与えられなかった。

 

「ば、爆発!?この近くで一体何が!?」

『私は全知全能の存在。私が世界を変える!』

 

突如として響き渡った爆発音、それに続けと言わんばかりにギャスパーごと揺れ動く地面。

それに驚いたギャスパーが外に出ると、遥か遠方で赤い一つ目、背中から天使を思わせる翼を持った黄金の巨人が、少年の様な声でそう告げると共に地上へと攻撃を行っていた。

一つ目から放たれる強大なビーム、両手から放たれる黄金のエネルギー弾、地上へと産み落とされる一つ目兵士の大群…

その圧倒的と言って良い猛攻に対し、攻撃を受けた街の人々は逃げ惑うしか無かったが、誰一人として逃がさないと言わんばかりに一つ目の兵士達が回り込んで来た。

 

(ど、どうしよう…

ボクがクロノスに変身して戦わなきゃ、あの人達が皆殺しにされちゃう。あの人達を守る力が、救い出せる力があるのに、それをせずに見殺しなんて出来ない…

でも、今使えるガシャットはハコニワウォーズしかない。あんな強大な力を持った相手にレベル2のボク一人で叶う訳ない。イッセー先輩もリアスお姉様も、黒歌先生も白音ちゃんも、他の皆もいない。ボクは、どうしたら良いんだ…)

 

そんな現状を全て見ていたギャスパーは今すぐにでもクロノスに変身して、逃げ惑う人々を救い出したいという思いがあった一方、巨人達の圧倒的な強さによる猛攻の前に、自分一人ではどうにもならないと及び腰になっていた。

 

(ボクがいかなきゃあの人達は、巨人達によって殺される、でも弱いボクが行っても結局は同じ、だったらこのまま、でも…!)

 

巨人に対する恐怖と、逃げ惑う人々を救いたいという想いの板挟みとなり、思考が負のスパイラルに陥って行くギャスパー、

 

『恐怖に囚われ、何事もネガティブに考えてはいけない!後ろ向きに考えれば考える程、悪い方向に事は進んでしまう!それを自分の所為と捉えては、負のスパイラルに陥ってしまう!だが自分はやれる、自分なら出来る!そう信じてゆけば事はそう進んでゆく!そう!勝利のイマジネーションだぁぁぁぁ!』

(クロト、さん…?

そうだ、勝利の、イマジネーションだ!)

 

そんなギャスパーを救い出したのは、己のパートナーであるクロトから常日頃言われ続けていた言葉だった。

 

(凄く怖くて、心細くて、今直ぐにでも逃げ出したくなる。でもボクがやらなきゃ、あの人達皆殺される!ボクがやるんだ、ボクは仮面ライダーの王に、ゲムデウスさんの相棒に相応しい男となるんだ!)

「勝利の、イマジネーションだぁぁぁぁ!」

 

クロトから、それこそ刷り込み教育と言われても過言では無い位に言われ続けた『勝利のイマジネーション』、それを思い出したギャスパーは己を奮い立てた。

 

「『KAIGAN GHOST』…

どなたか分かりませんが、ボクに力を貸して下さい!」

『ハコニワウォーズ!』

『開眼ゴースト!』

 

そんな彼の奮起に呼応したのか、謎のガシャットが突如として発光、それに気づいたギャスパーが取り出すと、既にラベリングされていて、『KAIGAN GHOST』というタイトルと、パーカーを羽織った、黒とオレンジをベースカラーとした幽霊を模したであろう仮面ライダーと思われる存在がデカデカと描かれたラベルが貼られていた。

それを黒い変身用のガシャットと共に起動すると、ギャスパーの背後にハコニワウォーズのスクリーンと共に『KAIGAN GHOST』のタイトルと、幽霊を模した仮面ライダーが決めポーズを取る姿がデカデカと描かれたスクリーンが出現、

 

第七戦略(セブンス・ストラテジー)、変身!」

『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!ハコニワウォーズ…!

アガッチャ!ゴー!ゴゴー!ゴゴー!開眼!レッツゴー!ゴー!ゴゴー!ゴゴー!開眼!覚悟!』

 

それらをゲーマドライバーに装填、レバーを開くと、何時もの手順でクロノスに変身した直後、虹色に光るパーカーを纏った幽霊らしき存在が出現、それを纏うと共に全身が虹色に発光し、胸のディスプレイには∞を模した装甲が着けられた姿――ゴーストウォーズゲーマーレベル7となった。

 

「命、燃やします!」

 

新たなる姿と化したクロノスは、何時もと違った決め台詞を言うと共に跳躍、まるで幽霊であるかの様に浮遊しながら巨人達に突撃した。

 

「ふっ!はっ!やぁっ!」

「あ、ありがとうございます!助かりました!」

「お礼は良いですから、早く逃げて!此処はボクに任せて下さい!」

 

今までとは比べ物にならない程の力を得たクロノスは、その力で一つ目の兵士達をバッタバッタと薙ぎ払い、追い掛け回されていた人々を逃がしてゆき、

 

『ガシャット!開眼・クリティカル・ストライク!』

「はぁぁぁぁ!」

『ぐぁぁぁぁ!?ば、馬鹿な、全知全能である私が…!』

 

全て救い出したと判断した所で、何時も通りの手順で黒とオレンジのガシャットを左腰のスロットに装填してその力を解放、飛び蹴りを放って巨人に直撃させた。

 

「お前は、間違えるな…!」

 

そのキックが貫通し、巨人の身体を通り抜ける最中、巨人の中に取り込まれていたであろう、某逆輸入俳優と何処か似ている青年がクロノスにそう、悲痛な形相で忠告するのを、彼はしっかりと聞いた。

 

「はい、ボクはこの力を、ボクに宿った神器の力を、仮面ライダークロノス(ライダーの王として)の力を、使いこなして見せます。正しき使い道で!」

 

飛び蹴りが決まり、巨人が爆発四散する中、クロノスは青年の忠告を聞き入れ、そう返した。



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81話_科学と感性の形成、その名はBuild!

今回は当初の予定を変更し、石動(に擬態したエボルト)と共闘させました。
流石に殆ど同じ展開ばかりというのも…ね(汗


「あ、あれ?此処は一体…」

「おや、目が覚めたかい?」

 

同じ時、黒歌も見知らぬ場所で目覚め、その光景に戸惑った。

其処には同じ状況に放り込まれたであろう、1人の男性がいた。

 

「あ、アタシは黒歌。アンタは?此処は一体何処?」

「おいおい黒歌、初対面のおじさんに向かって随分な聞き方だな。まあ良いや、俺の名は石動(いするぎ)惣一(そういち)。喫茶店のしがないマスターなんだが、君と同じくこんなだだっ広い場所に閉じ込められちゃったみたいなんだよね」

 

とある惑星の近衛隊長とよく似た風貌の壮年男性――石動もまた黒歌と同様、目覚めた時にはこのだだっ広く、所々柱がある以外に何もない、然し天井の存在から辛うじて建物の中だと分かる空間にいたそうだ。

己に何か緊急事態が起こった事、この状況を打開する為に相手と協力すべきと(石動はどうか分からないが)寝起きでありながら瞬時に考え付いたのか、お互い見ず知らずの間柄ながらあっさり話し合いを始めた黒歌と石動、

 

「おや、のんびり自己紹介している暇は無さそうだ。俺達を閉じ込めた輩が放った刺客か、あれは?」

「どうやらそうみたいね」

 

だが、お互い自分の名を名乗った所で中断せざるを得ない事態が発生した。

壁の存在すら認識できない程の広さを有する空間、その遥か遠方から、2体の戦士が真っすぐ向かって来たのだ。

暗い色合いのライダースーツ、全身を覆う様に装着された漆黒の装甲、片や左半分の頭部・胸部から左腕に至るまで装着された水色の歯車らしき物体、片や右半分の頭部・胸部から右腕に至るまで装着された白の歯車らしき物体、そんな風貌をした戦士達の姿を見た黒歌も石動も、2体が己の命を狙って来た刺客だろうと判断し、戦う準備を始めようとした。

 

「あ、あれ、ガシャットギアデュアルαが、無い…?

ガシャットギアデュアルαだけじゃない、メテオブロッカーガシャットも無い!」

「どうやらそっちは武装も無くなっている様だな、何処の誰が俺達を閉じ込めたかは知らんが、随分と用意周到な事だ。此処は俺が頑張るしかないか!」

 

懐に入れていた筈のガシャットギアデュアルαを取り出そうとした黒歌、だがある筈のガシャットギアデュアルαは無く、しかも己をレベルアップさせる灰色のガシャットも無かった。

あるのは変身する為の空色のガシャットのみ、思わぬ状況に狼狽える黒歌の様子から察したらしい石動は、自分が踏ん張らなければと気持ちを新たにし、黒をベースカラーとした武骨な作りの拳銃らしき武装を構えた。

 

「アンタだけに手間は掛けさせないにゃ!ハテサテパズルガシャットだけでも戦う!」

 

とはいえ黒歌も戦闘が出来なくなったわけではない、石動に負担は掛けさせられないと平静を取り戻し、空色のガシャットを起動させようとした。

 

「そのアイテムは…!

黒歌、良かったらこれを使ってみてくれ!」

 

それを、黒歌が構えているガシャットを見た石動はふと、彼女に声を掛けると共に何かを投げ渡した。

 

「『KAMEN RIDER BUILD』…?

このガシャット、一体どうしたのにゃ?」

「ガシャットって言うのか、それ。此処に落ちていたのを見つけて拾ったんだが、ラベルを見たら俺ん所に居候している奴が変身する、仮面ライダーと言う戦士の姿が書かれているもんだから、何かしら関連する力が入っているんじゃないかと思う。是非とも役立ててくれ!」

 

それは、赤と青のリバーシブルなカラーリング、『KAMEN RIDER BUILD』の文字と、赤と青が入り混じったカラーリングの仮面ライダーが構える姿がデカデカと描かれたラベルが貼られたガシャットだった。

それがきっと今の黒歌にとって心強い物となる筈、そう思って投げ渡した石動だったが、それに対して黒歌は、この得体の知れないガシャットを使って大丈夫なのか、これはひょっとしたら自分達を此処に閉じ込めた存在が撒いた罠なのではないのか、という疑念が頭を過り、それを使おうとしなかった。

 

「何を躊躇っている、黒歌!?君には大切な家族が、恋人がいるんじゃないのか!?自分が守りたい大切な物の為に戦うんじゃないのか!?それとも全部嘘だったのか!?」

 

そんな黒歌の姿が我慢ならなかったのか、石動が彼女を叱り飛ばした。

何故か全く説明していなかった筈の、彼女の家族や恋人の存在を引き合いに出して。

 

「…それもそうね、こんな弱気じゃ、守れるものも守れないわね」

『ハテサテパズル!』

『仮面ライダービルド!』

 

石動の言葉にハッとなった黒歌は、何で言ってもいない家族や恋人の存在を彼が知っているのかという疑問が浮かぶ事無く、受け取ったガシャットを構え、起動した。

 

「私は戦う。白音(ただ1人の妹)を、一誠(心から愛する恋人)を、リアス(私達を救ってくれた主人)を、皆を守る為、皆の夢を叶える為に!7連鎖!変身!」

『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!運命の鎖、解け!ハテサテパズル!』

 

背後にハテサテパズルのスクリーンと共に『KAMEN RIDER BUILD』のタイトルと、赤と青の仮面ライダーが決めポーズを取る姿がデカデカと描かれたスクリーンが出現したのを受けて黒歌は、何時も通りの手順でパラガスに変身した。

 

『アガッチャ!有機物と無機物!イェーイ!スーパーベストマッチ!ヤベーイ!完全無欠!仮面ライダービルド!スゲーイ!モノスゲーイ!』

 

すると、某ファンキーなラジオDJそっくりな声で発せられる音声と共に、パラガスの背後にプラントらしき設備が構築、そのラインにボトルを思わせる物体が多数運搬され、所定の位置まで運ばれたと同時にパラガスを突き刺す様に無数のラインが伸び、それに乗ってボトルが1本ずつ運ばれ、パラガスの身体に次々と刺さって行き、パラガスの身体の色合いが正に赤と青の仮面ライダーのそれと化した。

 

「勝利の法則は、決まったのにゃ!」

 

そうして変化した新たなる姿――ビルドパズルゲーマーレベル7となったパラガスは、決めポーズを取りながらそう、戦士達に向けて言い放った。

 

「さて、俺も行きますか!」

『コブラ!』

「蒸血!」

『ミストマッチ!コ・コブラ!コブラ!ファイヤー!』

 

と同時に石動も動いた。

構えていた武装の、銃口下に設けられた何かしらのスロットに、パラガスに刺さっている物と同じ種類かと思われる薄紫のボトルを装填、掛け声と共に銃口を上に向けてトリガーを引くと、銃口から黒煙が噴出して彼の身体を包み込み、花火と共にそれが晴れた後には、赤を基調としたボディカラー、コブラを模した緑の、胸の装甲が特徴的な戦士がいた。

 

「そ、その姿は一体?」

『この姿の名はブラッドスターク。まあ、仮面ライダーとはちょいと違う戦士と考えてくれ。と、喋っている暇は無いな、行くぞ!』

 

石動が変身したと思われる戦士――ブラッドスタークがパラガスの疑問に答えたのもつかの間、黒い戦士達がパラガス達に攻撃を仕掛けた為、2人は意識を切り替えた。

パラガスに攻撃して来たのは水色の歯車を有する戦士、ブラッドスタークが持っていた物と何処か似ている紫色の拳銃で銃撃を仕掛けて来たが、パラガスは咄嗟に左手を突き出し、其処から結晶状のシールドを展開して防ぎ、そのまま右手に炎を纏いながら突進、接近戦を仕掛けた。

黒い戦士も応戦するも、突如として右腕だけが極端にマッシブ化して吹っ飛ばされたかと思ったら、左手を翳したパラガスに引っ張られるかの如く戻され、今度は無数の棘を生やした右手を突き刺され…

と、何時にも増して変幻自在な猛攻を繰り広げるパラガスの前には成す術が無かった。

 

『ガシャット!キメワザ!仮面ライダー・クリティカル・ストライク!』

『ライフルモード!コブラ!スチームショット!コブラ!』

 

それを見てトドメを刺そうと、手慣れた動作で赤と青のガシャットを左腰のスロットに装填、と同時に此方も優勢だったのか、何処からともなく取り出した配管設備を思わせる武装を分解し、拳銃型武装と合体させたブラッドスタークが薄紫のボトルを再び装填した。

 

「はぁぁぁぁぁ!」

『食らいやがれ!』

 

パラガスの飛び蹴りと、ブラッドスタークの銃撃、2人の必殺技を其々食らった黒い戦士達は、それまでのダメージも相まって耐え切れず、爆散した。



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82話_破壊と創造の神、その名はDecade!

今回で各ライダーの戦闘パートは終わり、次回は後日談です。



「あ、あら?此処は何処かしら?」

 

同刻、リアスも見知らぬ場所で目覚め、己が眼に映る光景に戸惑いを隠せなかった。

リアスが目覚めた場所、それは荒涼とした平原だった。

 

「何か私に仕掛けられた、という訳ね。グレモリー家の次期当主たる私に随分な真似をしてくれるわ…

不味いわね、デンジャラスゾンビガシャットも、シャカリキスポーツガシャットも無いわ。あるのはマイティアクションXガシャットと、あら?何かしらこのガシャットは?」

 

若くして管理者に選ばれたその素質故か、或いは一誠達と共に仮面ライダーとして戦い続けた中で成長して来た故か、自らの身に何か仕掛けられたと判断したリアスは、この状況を打開すべく、所有しているガシャットを確認したが、自らを超越者と同等の存在に昇華させる白いガシャットも、レベルアップさせるライムグリーンのガシャットも無い。

あるのは変身に用いる紫のガシャットと、何時の間にかホルダーに差さっていた、マゼンタカラーのラベルが貼られていないガシャットだけだった。

 

「よぉ。お前がリアス・グレモリーか」

「あ、貴方は?」

 

手に入れた覚えのないガシャットの存在に疑問を覚えるリアス、だがそれを考える暇は彼女に与えられなかった。

リアスの背後からの呼びかけに振り向いた彼女、其処には某嘗ては凄腕の魔戒騎士だったがとある一件で闇落ちしたホラーとそっくりな青年がいた。

 

「通りすがりの仮面ライダーだ、覚えなくて結構だ。お前、魔王になりたいんだってな」

 

何時の間にか背後にいた青年に驚くリアス、そんな彼女の咄嗟に出た問いかけに、青年は暈しながらも律義に答えながら、そう問い掛け、

 

「それを叶えられる程の力があるか、試させて貰う。変身!」

『KAMEN RIDE!DECADE!』

 

戦意をむき出しにしながら、マゼンタカラーのカメラを思わせるバックルらしき機構を開き、其処に左腰のカードファイルらしき装備から取り出したカードを装填、鬼ごっこ番組のナレーションで有名なナレーターの声による読み上げに応じる様にバックルを閉じた。

 

「仮面ライダーディケイド、世界の破壊者だ」

『ATTACK RIDE!SLASH!』

 

すると、複数もの銀色の幻影が重なると共に青年の姿が変貌、顔の部分に7枚の板らしき物が刺さり、マゼンタカラーを基調とした戦士――仮面ライダーディケイドとなり、更にカードを読み込ませ、左腰のカードファイルを長剣に変形させ、構えた。

 

「どうやら、戦いは避けられそうに無いって訳ね」

『マイティアクションエックス!』

「グレード2、変身!」

『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!マイティジャンプ!マイティキック!マイティアクショォォォォン!エックス!』

 

その様子からしてディケイドが戦う気満々なのを理解したリアスは覚悟を決め、何時も通りの手順でゲンムに変身した。

 

「仮面ライダーゲンム、か。そういえば此処はエグゼイドの世界だったな。なら、コイツだ」

『KAMEN RIDE!EX-AID!』

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティマイティアクション、エックス!』

「え、エグゼイドになった!?」

 

その姿を見たディケイドは、何処か意味深な事を呟きながら新たなカードをバックルに装填、するとその姿が、驚くべき姿に変貌した。

リアスが狼狽えるのも無理はない、その姿は彼女の恋人である一誠が変身する仮面ライダー、エグゼイドだったのだから。

とはいえ、手に持っている武器はガシャコンブレイカーでは無いし、腰に巻いているベルトもゲーマドライバーではないという違いはあるが。

ゲンムもそういった目に見える違いがあったが故か直ぐに落ち着きを取り戻し、飛び掛かって来たディケイドの剣撃を受け止めた。

 

「驚くのはまだ早いぜ」

『FORM RIDE!EX-AID!ROBOT!』

『ぶっ飛ばせ!突撃!激突パンチ!ゲキトツロボッツ!』

「ロボットアクションゲーマーにまでなった…!」

 

だが驚く事はまだあった、新たなカードを装填すると、何処からともなくロボットゲーマが出現、それはそのままエグゼイドに変身していたディケイド――ディケイドエグゼイドに鎧として装着、ロボットアクションゲーマーレベル3にレベルアップしたのだ。

その姿に驚きを隠せないながらも、どういう形態なのか理解していたゲンムは即座に飛び退き、数瞬遅れて繰り出されてきた左腕によるパンチを難なく回避していく。

 

「流石に大振りな攻撃は通じないか、なら」

『FORM RIDE!EX-AID!SPORT!』

『シャカリキシャカリキ!バッドバッド!シャカットリキット!シャカリキスポーツ』

「そらっ!」

「くっ!流石にスポーツアクションゲーマー相手にこれではキツいわね…!」

 

だが、新たなカードによってスポーツアクションゲーマーレベル3となったディケイドエグゼイドの変幻自在な立ち回りには苦戦、両肩に付けられた車輪パーツによる攻撃を食らい、胸のディスプレイが示す体力が少しずつ減って行った。

 

「次は、コイツだ」

『FORM RIDE!EX-AID!FULL DRAGON!』

『ド・ド・ドラゴ!ナーナナナーイト!ドラ・ドラ・ドラゴナイトハンター、ゼェット!』

「な、何なのその姿は!?」

「コイツを知らないのか、エグゼイドの世界にいながら?なら、その身で思い知れ!」

 

更に、新たなカードによって呼び出したドラゴンみたいな姿のロボット――ドラゴンゲーマと合体した姿――ドラゴンアクションゲーマーレベル5・フルドラゴンの姿に驚き、その驚異的な戦闘スペックに追い詰められていった。

 

「どうしたリアス・グレモリー!お前の魔王になりたいと言う想いはそんな物か!?」

 

頭に装着されたドラゴンの頭を思わせる装甲から放たれる火球、左腕に装着された小銃からのエネルギー弾、右腕に装着された剣による斬撃…

多種多様な攻撃を、罵倒しながら繰り出すディケイドエグゼイドの勢いを捌ききれずに食らっていくゲンム、その体力ゲージがみるみる減って行き、遂には危険域であるレッドゾーンに達し、吹っ飛ばされてしまった。

 

「そんな訳、無いでしょ…!」

 

圧倒的な力の差を見せつけられるゲンム、状況は絶望的と言っても過言では無かったが、それでもあきらめる事無く立ち上がろうとする。

 

「私は魔王になる。魔王になって、悪魔社会を、世界をより良い方向に導いて見せるわ。

 

 

 

私は忌むべき物を破壊し、輝かしき未来を繋いで見せる!それが私の、イッセー達の主たる私の想いよ!」

 

魔王になるという夢への想いの丈を打ち明けながら立ち上がったゲンム、それに呼応するかの様にマゼンタカラーのガシャットが発光、それに気づいたリアスが取り出すと、

 

「『BARCODE WARRIER DECADE』…

この力、何だか行ける気がする!」

『バーコードウォーリアーディケイド!』

 

そのガシャットには既にラベリングが施され、『BARCODE WARRIER DECADE』のタイトルと、ディケイドらしき存在がデカデカと描かれたラベルが貼られていた。

それを起動すると、ゲンムの背後に『BARCODE WARRIER DECADE』のタイトル、ディケイドが決めポーズを取る姿がデカデカと描かれたスクリーンが出現、

 

「グレード7!」

『ガッチャーン!ガシャット!』

「はっ、一丁前に破壊者を語りやがって。悪いが、花を持たせる積りは一切無いぜ」

『KUUGA!AGITO!RYUKI!FAIZ!BLADE!HIBIKI!KABUTO!DEN-O!KIVA!』

 

それをゲーマドライバーに装填、している最中、ディケイドエグゼイドも動いた。

何処からともなく、携帯ゲーム機を思わせるアイテムを取り出して操作すると、電話の呼び出し音らしき音声が流れ、ディケイドエグゼイドの姿がブレると共に元のディケイドの姿に戻った。

 

『ガッチャーン!レベルアップ!マイティジャンプ!マイティキック!マイティアクショォォォォン!エックス!アガッチャ!通りすがる!世界巡る!おのれディケイドォォォ!』

『FINAL KAMEN RIDE!DECADE!』

「通りすがりの仮面ライダーよ。覚えておくと良いわ!」

「人の台詞を取りやがって」

 

そしてゲンムはレバーを開き、エグゼイドはアイテムを更に操作すると、まずゲンムの頭部にディケイドのそれらしき7枚のプレートが刺さる。

此処から、額にディケイドらしき仮面ライダーの絵が描かれたカードが装着され、両肩及び胸にカードホルダーらしき装甲が展開、其処に9人の仮面ライダーらしき存在の絵が描かれたカードが装填、そして目が赤紫色に変色、という一連の流れが双方同時に行われ、其々新たなる姿――仮面ライダーゲンム・ディケイドアクションゲーマーレベル7と、仮面ライダーディケイド・コンプリートフォームとなった。

新たな姿となってテンションが上がったのか決め台詞を叫ぶゲンム、その決め台詞が自分のそれだったのかディケイドがツッコんだのを皮切りに、再び戦いは始まった。

チェーンソーモードとなっているガシャコンバグヴァイザーを持つゲンムと、カードファイルが変形した長剣を持つディケイド、両者の立ち回りは先程とは打って変わって互角の物となった。

 

『ガッシューン!ガシャット!クウガ!クリティカル・キック!』

『KUUGA!KAMEN RIDE!ULTIMATE!FINAL ATTACK RIDE!KU-KU-KU-KUUGA!』

 

それを受けてかゲーマドライバーに装填していたマゼンタカラーのガシャットをガシャコンバグヴァイザーに装填するゲンム、すると画面に9個のアイコンが出現、その中から『ク』『ウ』『ガ』を組み合わせたアイコンを選ぶ、と同時にディケイドもまた、バックル部分に装填していた携帯ゲーム機型のアイテムを取り出し、同じアイコンを選ぶと、両者の側にクワガタ虫を思わせる黒と金色の仮面ライダーが出現、更なる操作と共に双方右足にエネルギーを纏って飛び蹴りを放ったが、これは威力が互角だったのか相殺され、双方吹っ飛ぶ結果に終わった。

 

『アギト!クリティカル・クラッシュ!』

『AGITO!KAMEN RIDE!SHINING!FINAL ATTACK RIDE!A-A-A-AGITO!』

『ブレイド!クリティカル・フラッシュ!』

『BLADE!KAMEN RIDE!KING!FINAL ATTACK RIDE!B-B-B-BLADE!』

『響鬼!クリティカル・セイバー!』

『HIBIKI!KAMEN RIDE!ARMED!FINAL ATTACK RIDE!HI-HI-HI-HIBIKI!』

『カブト!クリティカル・サイクロン!』

『KABUTO!KAMEN RIDE!HYPER!FINAK ATTACK RIDE!KA-KA-KA-KABUTO!』

『キバ!クリティカル・ブレイク!』

『KIVA!KAMEN RIDE!EMPEROR!FINAL ATTACK RIDE!KI-KI-KI-KIVA!』

 

その後も双方、龍を思わせる赤と銀の仮面ライダーと共に、光を纏った剣撃を繰り広げたり、カブト虫を思わせる金色と青の仮面ライダーと共に、前方に現れた5枚のトランプを思わせるエネルギーの板を潜り抜けながら斬撃を放ったり、鬼を思わせる真紅の仮面ライダーと共に、炎の様なエネルギーを纏った巨大な斬撃を振り下ろしたり、カブト虫を思わせる赤と銀の仮面ライダーと共に、強大なエネルギーの砲撃を放ったり、蝙蝠を思わせる赤と金の仮面ライダーと共に、刀身が真紅に輝く武器で斬り合ったり…

強力な攻撃をぶつけ合うが、見た目はおろかパワーも同じなのか、互いに決定打にならなかった。

とはいえ、全てが全て完全に同じという訳では無く、

 

『龍騎!クリティカル・ストーム!』

『RYUKI!KAMEN RIDE!SURVIVE!FINAL ATTACK RIDE!RYU-RYU-RYU-RYUKI!』

 

龍を思わせる赤い仮面ライダーと共に放った攻撃は、ゲンム達は同じく呼び出した、バイクらしき機構を取り入れたドラゴンに搭乗し、ドラゴンの口から火球を放ちながらディケイド達を轢き殺そうとしたのに対し、ディケイド達は炎を纏った斬撃を放って火球と相殺、爆発によって双方吹っ飛び、

 

『ファイズ!クリティカル・スマッシュ!』

『FAIZ!KAMEN RIDE!BLASTER!FINAL ATTACK RIDE!FA-FA-FA-FAIZ!』

 

機械的な姿の赤い仮面ライダーと共に放った攻撃は、ゲンム達は右足に真紅のエネルギーを纏いながら飛び蹴りを放ったのに対し、ディケイド達は大砲を思わせる武装から赤いエネルギー状の砲撃を放って相殺、

 

『電王!クリティカル・パンチ!』

『DEN-O!KAMEN RIDE!LINER!FINAL ATTACK RIDE!DE-DE-DE-DEN-O!』

 

電車を思わせる仮面ライダーと共に放った攻撃に関しては、ゲンムが呼び出した側は胸の装甲がターンテーブルを思わせるそれ、顔の仮面が桃を剥いたかの様なそれで、左腕に己を思わせる金色の物と龍を思わせる紫の物、亀を思わせる青色の物と計3つの装甲が装着された姿、ディケイドが呼び出した側は胸の装甲や顔の仮面が新幹線を思わせるそれで、仮面を組み合わせた装甲を有した奇妙な姿の剣らしき武器を構えた姿と、共に戦う仮面ライダーの姿まで違い、ゲンム側は左腕にエネルギーを纏った状態で飛び掛かりながらパンチを放ったのに対し、ディケイド側は新幹線を模したオーラに乗って突進して激突、双方吹っ飛んだ。

 

「これで決めて見せるわ!」

『ガッシューン!ガシャット!キメワザ!バーコードウォーリアー・クリティカル・ストライク!』

「世界の破壊者を舐めるな!」

『FINAL ATTACK RIDE!DE-DE-DE-DECADE!』

 

これでは埒が明かないと双方考えたのか、ゲンムは何時も通りの手順でマゼンタカラーのガシャットを左腰のスロットに装填、一方のディケイドも携帯ゲーム機型のアイテムを操作する事無く、右腰に据えたバックルにカードを装填、双方右足にエネルギーを纏って、

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」

 

飛び蹴りを放った。

だがこれも結局、数瞬の拮抗の果てに相殺され、双方吹っ飛ぶ結果に終わった。

 

「中々の強さだな、魔王になると豪語するだけの事はある」

「なっ待ちなさい!」

 

このまま戦いは続くと思われたその時、立ち上がったディケイドがそう呟いたと思ったらいきなり背を向けて立ち去ろうとし、彼を守ると言わんばかりに銀色のオーロラを思わせるエネルギーがディケイドとゲンムの間に現れた。

 

「じゃあな、縁があったらまた会おう」

 

立ち去ろうとするディケイドを止めようとするゲンムの叫びも空しく、ディケイドはそのエネルギーに溶けていく様に消え去った。



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83話_集結するLegend達

「あれ、此処は…

何時の間に戻って来たんだ…?」

 

赤い異形との戦いを終えた一誠だったが、悠と一言二言を交わしたその時、唐突に気を失い、次に目覚めた今、彼は新居の部屋にあるベッドで横になっていた。

 

「いや、そもそもあの出来事は現実だったのか?もしかして、あの研究所の様な場所にいたのも、悠もあの赤い異形も、全て夢の中の出来事だったのか?だが、夢にしてはリアリティ過ぎる。あの赤い異形を切り刻んだ感覚も、あのガシャットを使用した事による衝動も、本物だった筈だ…」

 

余りにも唐突に繰り広げられたあの非日常から、また唐突に戻って来た今の日常、という展開にあの非日常は夢だったのではと考えた一誠だったが、手足に残る赤い異形を切り刻んだ感覚、身体の奥底に未だ燻る、トリコローレカラーのガシャットを使用した事による衝動がそれを否定する。

そして、

 

「これは、アルファオメガアマゾンガシャット…!

やはり、夢では無かったか。だがそうだとして、俺はどの様にあの研究所へ行き、どの様に此処へ戻って来たのか、さっぱり分からない…」

 

着替えと共に手にしたゲーマドライバーのホルダーに装填されていた、トリコローレカラーのガシャットが、あの出来事は現実の物だという証拠になった。

尤もそれは、どの様な手段であの出来事に放り込まれ、此処へ戻って来たのかという新たな疑問を生む事にはなったが。

 

「一先ず考えるのは後にしよう。まずは朝ごはんだ」

 

とはいえ今それを考えても答えは出ない、そう思った一誠は、まずは朝ごはんを食べようと、越して来たばかりで慣れない様子ながらも1階の食堂に辿り着いた。

 

「おはよう、皆」

「おはよう、イッセー。あ、そうだイッセー。ちょっとこのガシャットについて聞きたい事があるんだけど…」

「『BARCODE WARRIER DECADE』…?

リアス、このガシャットを一体何処で?」

「リアスも、夢みたいな事でガシャットをゲットしたのにゃ?実は私もなのにゃ」

「これは、『KAMEN RIDER BUILD』…?」

 

その際、一誠と同じく夢としか言い様のない、だが現実に起こっている非日常の場面に放り込まれたリアス達から、謎のガシャットについて色々と聞かれたが、一誠自身が身に覚えのない事なので、返答に窮したのは言うまでも無い。

 

------------

 

「ナゾトキラビリンスは何の滞りもなく攻略(クリア)されたか。よし、これでパパ達の手にレジェンドライダーガシャットが渡ったな。パパ達の力となってくれれば良いが…」

 

その頃、とある場所で、青年男性と思われる男性がとある機器の操作を終えたのか、一息つきながらそう呟いていた。

 

「然しガシャットギアデュアルシリーズに、デンジャラスゾンビガシャット…

この私が長年掛けて開発したレジェンドライダーガシャットシリーズをいともあっさり凌駕するガシャットを開発したパパの、正に神と呼ぶに相応しい才も素晴らしき物だが、白音ママに黒歌ママ、朱乃ママにアーシアママ、イリナママにゼノヴィアママ、リアスママ…

パパを心から慕うママ達、木場祐斗、そして王の半身であるギャスパーとの出会いなくして、パパの才が更なる広がりを見せる事は無かったかも知れない。もしかしたら仮面ライダークロニクル(我らの夢)の完成も、長引いていたかも知れないな」

 

作業の結果が順調だったが故か満足そうに呟く青年、その顔は何処か感慨深げだった。

 

「これから先パパはいよいよ、夢の成就に向けて邁進するだろう。私はコンティニューしてでも守って見せる、パパを、ママ達を、家族の皆を、我らの夢を、そして笑顔を!」

『冒険野郎クウガ!』

 

だが決意を固めたかの様に真剣な顔つきになると共に立ち上がり、誰に告げるでもないが(実際、其処には青年以外の存在はいなかった)そう叫ぶと共に、手に握っていたガシャットを起動させた。

そのガシャットのラベルには、リアスがディケイドとの戦いで呼び出した、クワガタ虫を模した仮面ライダーと良く似た戦士がデカデカと描かれていた…




次章、ハイスクールDevil×Ex-aid――

「今日からこのクラスの一員となった、ヴァーリ・ルシファーだ。宜しく頼むぞ、皆」
「今日から皆さんの指導を行う事となりました、アーサー・ペンドラゴンです。宜しくお願いします」

2学期が始まり、続々と駒王学園に加わる人達――

「今日からこのクラスに加わる事になりました、レイヴェル・フェニックスと申します。皆さん、宜しくお願いしますわ」
「な、なんで此処にいるんですか!?」

驚き等がありながらも受け入れられていく中――

「次のレーティング・ゲームの対戦相手は、アスタロト家の次期当主ディオドラに決まった」

リアス達の次なるレーティング・ゲームの相手はディオドラに決まった――

6章『体育館裏のDANGEROUS ZOMBIE』


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6章『体育館裏のDANGEROUS ZOMBIE』
84話_Second Termの始まり


冥界への帰省、若手同士のレーティング・ゲーム、街に戻ってからの唐突な新居への引っ越し、一誠もその存在を知らなかったガシャットの入手…

様々な出来事が起こった夏休みも終わり、駒王学園は2学期に入った。

再び始まる学園での日常、だが今日は其処に、新たな人々(?)が加入した。

 

「今日から皆さんの指導を行う事となりました、アーサー・ペンドラゴンです。担当教科は英語です。どうか宜しくお願いします」

 

まず学園の講堂にて、始業式とセットで行われた教職員の新任式、其処で、金髪で西洋人風の端正な顔立ち、と祐斗と何処か通ずる(ただ、眼鏡を掛けているという大きな違いはあるが)風貌の男性――アーサーが新任の教師として紹介された。

 

「今日からこのクラスの一員となった、ヴァーリ・ルシファーだ。宜しく頼むぞ、皆」

 

次に一誠のクラスにて、ヴァーリが転校生として紹介された。

実を言うと堕天使勢力は、既に特使として派遣する事が決まっていたヴァーリの他に、彼と個人的な付き合いのある実力者達を送り込む事にした様で『本来の』エクスカリバーの使い手として知られるブリテン王アーサーの末裔であり、自身もまた凄腕の剣士であるアーサーが英語教師として、孫悟空の名で有名な猿の妖怪、闘戦勝仏の末裔である美猴(びこう)が用務員として、アーサーの妹であり、自分自身もまた優秀な魔法使いであるルフェイが駒王学園中等部の生徒として送り込まれた。

が、

 

「今日からこのクラスに加わる事になりました、レイヴェル・フェニックスと申します。皆さん、宜しくお願いしますわ」

「ゑ?な、な、なんで此処にいるんですか!?」

 

そんな堕天使側の事情とは関係なく、学園に加わった存在がいた。

その、白音とギャスパーがいるクラスに加わった生徒に驚きを隠せない白音、それもそのはず転校生として紹介されたのは、ついこの間の冥界への帰省の際、再会したばかりのレイヴェルであり、その時には2学期付けで駒王学園に転校して来るとの話は全く無かったのだから。

 

------------

 

「まさかレイヴェルまで転校して来るとは思わなかったわ…

ヴァーリ達については、グリゴリから事前に連絡があったから分かってはいたけど…」

「申し訳ありませんわ、リアス様。何分、急にあがった話でしたので、リアス様に連絡する暇も無く…」

 

その日の放課後、オカルト研究部の部室、其処には何時ものメンバーに、ヴァーリを始めとした堕天使勢力からの特使、そしてレイヴェルがいた。

レイヴェルの転校についてはリアスも知らなかった様で、白音からレイヴェルの事について聞かれた時の驚き振りは、それはそれは凄いの一言だった。

 

「おいおいおい、悪魔勢力の、フェニックス家の報連相はどうなってんだ?大事な娘っ子を預ける先に何の連絡も無しとか」

「いや、少なからず連絡はしてある筈だろう。駒王学園の学園長は悪魔勢力を束ねる魔王サーゼクス・ルシファー、そんな場所となれば元72柱の一角でしかないフェニックス家が許可はおろか連絡も無しに人員を送り込める筈は無い。よって少なくともサーゼクス・ルシファーに話は通っているだろう。となれば考えられるのは…」

「お兄様、ドッキリを仕掛ける積りで私達に黙っていたのね…

というかフェニックス家はどうして加担したのか、というよりそもそも何故レイヴェルをこの学園に…?」

「魔王の皆様はどんな状況でも芸人さんの如きユーモア精神を忘れない、素晴らしい方々なのですね!」

「ルフェイ、其処は感心する所ではありませんよ。というか美猴、貴方に報連相の不備を突っ込める資格があるとでも?」

 

そんな光景を見た美猴が連絡の不備について指摘していたが、ヴァーリが指摘する通り此処駒王学園の学園長はリアスの兄であり魔王でもあるサーゼクス、そんなサーゼクスに連絡も無しにレイヴェルの転入を通せる筈も無いし、仮に通ってしまったとしたら悪魔勢力を揺るがしかねない大問題だ。

ヴァーリの指摘を受け、これが兄であるサーゼクス達が仕組んだドッキリだと気付いて頭を抱えたリアス、それを仕掛けたサーゼクスに、金髪で可愛らしい、然し兄妹故かアーサーと何処となく似た顔立ちの少女――ルフェイは何故か感心していた。

それはともかく、そうなるとそのドッキリの切っ掛けとなるレイヴェルの転校は何故行われたか気になりだしたリアス。

実を言うと、グレモリー家との関係構築を諦めきれないフェニックス家、というよりその支援者の声を受け、フェニックス家長女であるレイヴェルを、リアスの眷属であり恋人でもある一誠に嫁入りさせるという目的があっての転校だったのだ。

レーティング・ゲームでリアスが勝った事によって結局は破談となったライザーとの婚約だが、はっきり言ってほぼ決まりかけていた婚約の話を唐突にひっくり返された事に納得の行かない支援者は多かった様で、その埋め合わせは有って然るべきとの声が大きかった。

サーゼクスもその声を無視する事、どんな傷も一瞬で全快させるアイテム『フェニックスの涙』を生産出来るというアドバンテージから悪魔勢力において少なくない影響力を有するフェニックス家を軽視する事は出来ず、また一誠とレイヴェルが前々から親密な仲だった事、当のレイヴェルが一誠に対して恋心を抱いていた事、一誠がISとして世に送り込んだ数々のゲームによる実入りが驚くほど良かった事、トドメに一誠が開発したライダーシステムを用いてリアス眷属が見せた活躍が目覚ましかった事もあってか、レイヴェルの人間界への留学という名の、兵藤家への嫁入りはあっさり決まった。

 

(支援者の思惑がどうあれ、これは千載一遇のチャンスですわ!天才ゲーマーLの名に賭けて、必ずやIS様のハートを攻略(クリア)して見せます!)

 

政治的な思惑が絡む物ではあれど、恋した相手へ近づくチャンスを得て心の中で意気込むレイヴェル、その想いはそれ程遠くない未来に結ばれる事となる訳だが、それはまた別の話。

 

「まあ、レイヴェルさんの転校に関わる話は一先ず置いておきましょう。先日行われた若手悪魔同士によるレーティング・ゲームの映像を見させて頂きましたが、実に素晴らしい物でした」

「そうだな、アーサー。強大な戦力を有するサイラオーグ・バアル眷属を事も無げに捻じ伏せるという信じがたい展開を見せつけたゼファードル・グラシャラボラスの手腕も凄まじいの一言だったが、やはり目玉は、仮面ライダーとなったお前達の圧倒的と言って良い実力だ」

「はい!私はIS様が変身して2人になったあの仮面ライダーが格好良かったです!2人となり力合わせて困難に立ち向かう姿、元となったマイティブラザーズXXを彷彿とさせました!」

「俺はリアス嬢が変身したあのゾンビみてぇな仮面ライダーだねぃ。『超越者』と称されるサーゼクス・ルシファーと同じ状態に達したとか、やっぱすげーな、イッセーの開発手腕は」

 

それはともかくとして、話は夏休み中に行われたレーティング・ゲームに移った。

奇跡が起こってもあり得ないと言われていた大金星を導いたゼファードルの王として求められる指揮能力等の見所はあったが、アーサー達が注目したのは仮面ライダーに変身したリアス達の実力だった。

 

「そうか、其処まで褒められると、開発者冥利に尽きる。折角だ、その仮面ライダーの力、模擬戦で体感してみないか?」

「良いのか?此方からお願いしたかった程だ、是非とも乗らせて貰うが」

「ああ。丁度、新しいガシャットが完成した所だったからな」



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85話_Brand New Riders!

注:原作におけるバンバンシミュレーションズですが、今作では既にシミュレーションゲームをモチーフとしたガシャットが存在する為、弾幕シューティングゲームをモチーフとしたバンバンバースターに名称変更(同時にシミュレーションゲーマーも、バースターゲーマーに名称変更)しています。
基本的なスペック・能力及び外見は変更ありません。


ステージ・セレクト機能を用いて採石場の様なフィールドへと転送された一誠達。

此処で一誠の提案通り、リアス眷属とヴァーリ達との模擬戦が行われる事となったのだが、ヴァーリ達と相対するのは、眷属の主であるリアスでも、ライダーシステムの開発者である一誠でもなく、祐斗、朱乃、イリナ、ゼノヴィアの4人だった。

その4人の手には、一誠が新たに完成させたと言うガシャットであろう、ガシャットギアデュアルらしき物が握られていた。

勿論一誠が新開発だと言っていただけあって白音と黒歌が所有しているガシャットギアデュアルαとは違う、まず祐斗と朱乃が所有しているそれはマゼンタのベースカラー、片側には『TADDLE FANTASY』のタイトルと魔王だと言わんばかりの存在が剣を構える姿がデカデカと描かれたラベルが、もう片側には『BANGBANG BURSTER』のタイトルとロボットみたいな風貌の指揮官らしき存在が戦艦の上で敬礼をする姿がデカデカと描かれたラベルが其々貼られた物。

次にイリナとゼノヴィアが所有しているそれは黄色のベースカラー、片側には『BAKUSOU TURBO』のタイトルとオープンカーと思しき車が走る光景がデカデカと描かれたラベルが、もう片側には『HURRICANE RISING』のタイトルとサイボーグらしき戦士が刀を構える姿がデカデカと描かれたラベルが其々貼られた物だ。

 

「それが、新しく開発したとイッセーが言っていたガシャットか。それとよく似たガシャットを使っていた塔城黒歌と塔城白音が、ソーナ・シトリーの眷属を軽いパンチ一発で仕留めたあのレーティング・ゲームでの光景は覚えている。さぞ、凄まじい力を持ったガシャットなのだろう?」

「ああ。元々マルチな才能を有していた白音の力を十分に発揮する為に開発したガシャットギアデュアルだったが、2種類のバグスターウィルスを共生させる事で今までとは比べ物にならない程の出力を得られることが判明して、他のゲームでも流用出来ないかと考えた末、朱乃達に渡した2種類が出来た。マゼンタカラーのβと黄色のγ、どちらも初号機であるαに引けを取らない、必ずやお前達を唸らせるだろう」

「おおぅ、それは楽しみだぜぃ」

 

それを見て好戦的な笑みを浮かべるヴァーリ達、彼らもまた戦いの準備は万端だった。

ヴァーリは会談の場でも見せた『白龍皇の鎧』を纏い、美猴は先祖である闘戦勝仏も使用していた如意棒を肩に担ぎ、アーサーは『選定の剣(カリバーン)』としても知られる聖王剣コールブランドを構え、そしてルフェイは如何にも魔法使いだという出で立ちで杖を握っていた。

 

「それじゃあ、始めようか」

『TADDLE FANTASY!Let’s going king of fantasy!Let’s going king of fantasy!』

『BANGBANG BURSTER!I ready for battleship!I ready for battleship!』

『BAKUSOU TURBO!Are you ready?Attention!Are you ready?Attention!』

『HURRICANE RISING!』

 

祐斗達も其々のライダーに変身すべく、持っているガシャットギアデュアルのダイヤル部分を回す、すると背後にラベルと同じ様なスクリーンが出現、四種四様の待機音が繰り返し流れ出した。

 

「術式レベルX!」

特殊戦術(スペシャル・タクティクス)!」

「爆速!」

「チャプターX!」

「「「「変身!」」」」

『『『『デュアル・ガシャット!ガッチャーン!デュアルアップ!』』』』

『辿る巡るアールピージー!タドォォォォルファンタジー!』

『スクランブルだ!出撃発進!バンバンバースター!発進!』

『爆走!独走!激走!暴走!バァァァァクソウターボ!』

『レッツスニーキング!ハリケーンライジング!』

 

その後は何時も通りの手順で変身作業を完了、すると祐斗の前方には水色、朱乃の前方には藍色、ゼノヴィアの前方には黄色、イリナの前方には真っ黒に、其々全体が染まり、変身後の姿が映ったパネルが出現、それを潜ると、祐斗は魔王を思わせる鎧を装着したブレイブ――ファンタジーゲーマーレベルXに、朱乃は戦艦を思わせる装備で固めたスナイプ――バースターゲーマーレベルXに、ゼノヴィアはレベル5以降の姿と同じ様な人型の状態でバイクを思わせる装備を身に着けたレーザー――ターボゲーマーレベルXに、そしてイリナは全身及び左眼を真っ黒な装甲で覆った風魔――ライジングゲーマーレベルXに変身した。

 

「これより、堕天使陣営特使との模擬戦を開始する!」

任務開始(ミッション・スタート)ですわ!」

「ノリ良く行かせて貰おうか」

「さあ、振り切っちゃうよ!」

「行くぞ、仮面ライダー!」

「全力で行きますよ!」

「行くぜ行くぜ行くぜぇ!」

「私も頑張りますよ!」

 

双方準備が完了したのを合図に模擬戦はスタート、互いに己が標的と見定めた相手へと向かった。

 

「レベルXの力と聖魔剣の力、これ程までとは!」

「アーサー先生こそ、かの有名なアーサー王の末裔の名は伊達ではありませんね!」

 

ブレイブは、自らと同じ剣士であるアーサーの方へと向かい、斬り合いをスタートさせる。

片やレベルXにまで上がった事によって過剰な程となったパワーとスピードから繰り出される剛剣、片や悪魔にとって天敵である聖剣でもトップクラスの力を有するコールブランド片手に繰り出される流麗な剣撃、お互い掠り傷であっても命とりと言うしかない状況下で、アーサーは最小限の動きで避けながら反撃を仕掛けるも、一誠曰く「今後開発する予定の、主人公である魔王が世界征服を企てるRPG」をモチーフとした事を裏付けるかの様に、左腕からオーラを放ってアーサーの剣撃を強引にいなしたり、ドーム型の障壁を展開して防いだりと、ブレイブもそれを許さない。

 

「あらあら、弾幕薄いかしら?ちょっとギアを上げましょうか」

「あれで本気では無かったんですか!?」

 

スナイプは、自らと同じく後方からの攻撃を得意とするルフェイに砲口を向け、砲撃を開始した。

一発一発が必殺級の威力を有する砲撃を、一誠曰く「今後開発する予定の弾幕シューティングゲーム」をモチーフとした事を裏付けるかの如く、全身に装備された数多の砲塔から掃射するスナイプ、ルフェイもそんな弾幕を、時には魔力弾で相殺したり、時には魔力による障壁を張る事で防いだりと、何とか凌ぎながら反撃の機会をうかがっていた。

 

「そのバイクもアンタも一体どうなってんでぃ!?大砲付きの鎧になったり分離したりアンタと一緒に合体変形したりもう訳分かんねぇ!」

「何でもありな無法レースがバクソウバイクの醍醐味らしいのでね、その続編たるバクソウターボもまた然りという事だ!」

 

レーザーは、変身の際に鎧となっていたバイクを分離・搭乗して美猴の方へと猛スピードで接近した。

美猴も流石は闘戦勝仏の末裔と言うべきか、足元に黄金の雲――觔斗雲を展開・搭乗してレーザーとの間合いを保ちつつ如意棒を駆使して立ち回ろうとするも、そうはさせんと言わんばかりにバイクを変身した時と同じく鎧として装着、ホイール部分から砲撃を放ったり、その鎧と自分自身を変形・合体させて大型アメリカンバイクの様な形態になって突進したりと、奇想天外と言うしかない立ち回りを見せるレーザーには驚きの連続であった。

 

「流石はイッセーと言うべきか、魔王と同等、いやそれ以上の力をこんな短期間で作り上げ、挙げ句リアス・グレモリーを超越者である兄サーゼクス・ルシファーと同じ領域に至らせるとはな!俺の眼に狂いは無かった、禍の団になぞ与しないで正解だった!こんなにも心躍る戦いを、特訓の名目で何時でも楽しめるのだから!紫藤イリナ、いや仮面ライダー風魔!もっとギアを上げて来い!」

「全く、戦闘狂此処に極まれりって感じだね!禍の団からの誘いに乗るんじゃないかってアザゼルが危惧していたのも分かるよ」

 

風魔は、堕天使陣営特使を束ねるヴァーリの方へと向かう。

レベル2の時点で他を圧倒するスピードを得ていた風魔だが、一誠曰く「今後開発する予定の、標的をバッサバッサと切り裂いて道を切り開くスタイリッシュ暗殺ゲーム」をモチーフとした事を知らしめるかの様に更なるスピードアップが施され、軽く走るだけで衝撃波が発生する程にまでなった、そのスピードを駆使してヴァーリを翻弄する風魔だが、そんな中でヴァーリは、ガシャットギアデュアル等を作り上げた事で自分や仲間達を魔王と同等クラスにまで強化して来た一誠を称賛しつつ、狂気としか言えない笑い声を上げていた。

そう、風魔が気付いた通りヴァーリは重度の戦闘狂で、強い奴との戦いを何よりも望む存在なのだ。

故にアザゼルは会談の折、ヴァーリが禍の団からオファーを貰ったとの話を聞いて寝返るのではないかと危惧していたのだ、尤もヴァーリ自身がそれを断ったため杞憂に終わったが…

 

その後数十分もの間、一誠から終了の声が掛かるまで模擬戦は続いた。



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86話_Rival達の戦果

「皆、集まったわね。今日は今後のレーティング・ゲームに向けて、夏休みに行われた若手同士のゲーム記録をチェックするわ」

『はい』

 

翌日の放課後、旧校舎にあるオカルト研究部の部室、其処に部員(リアスの眷属の他、レイヴェルも昨日付けで入部している)及び顧問である黒歌、昨日付けで副顧問に就任したアーサー、そして表向き所属している訳ではないが関係者である美猴とルフェイが集まったのを受け、部長であるリアスがそう、この日の予定を伝えた。

 

「既に知っているだろうが、今期の若手悪魔同士によるリーグ形式でレーティング・ゲームが行われる事になっている。その第一戦として夏休み中にお前達グレモリー家とシトリー家、大王バアル家とグラシャラボラス家、大公アガレス家とアスタロト家、この組み合わせで試合が行われた。今回の映像はそれを記録したものだ。敵を知り己を知れば百戦危うからずという言葉もある、良く見て置く様に」

 

リアスが話し終わったのを受け、ヴァーリがモニターの前に立ち、映像が入っているだろう記録メディアを端末に入れながらそう伝える、それにリアスの眷属全員が頷いていたのを見ると、皆が皆、他のチームがどの様な試合運びを見せたのかが気になる様だ。

それも無理はない、自分達の試合こそ仮面ライダーという圧倒的戦力と監視アイテムの設置という事前準備が功を奏して前評判通りの圧勝を収めはしたが、他の試合、特にバアル家とグラシャラボラス家の試合は超ウルトラスーパー、と頭悪い感じに修飾語を付けてもまだ過少評価と言うしかない位の大金星を、グラシャラボラス家次期当主『代理』だったゼファードルが手にしたのだから。

尚、だった、と言ったのは、この試合でゼファードルが見せた神懸かり的な采配、其処から王として、グラシャラボラス家当主として充分過ぎる素質があるとしたグラシャラボラス家、及びその支援者が彼こそ次期当主にすべきと満場一致で決めた為に『代理』の二文字が取れたからだ。

 

「まずはバアル家とグラシャラボラス家の試合よ」

 

その想いを汲んだのかは分からないが、最初に再生されたのはその試合だった。

 

「流石はZと言うべきか。サイラオーグ氏も油断なく采配を振るっていたのは、其々の眷属を送り込んだ地点を、その意図を考えれば明らかだ。だがZはそれを見抜いていたかの様に、的確に潰して行っている。ゲーマーとして幾多のライバルと様々なゲームで鎬を削って来たその経験が、デビュー前でありながらこれ程の采配を振るわせるという事か」

 

一誠がそう呟いた通り、其処に映っていたのは『武力』を有するサイラオーグ眷属を事も無げにあしらうゼファードル眷属の、王であるゼファードルの『知略』だった。

対ゼファードル眷属戦におけるキーパーソンである女王クイーシャ、騎士ベルーガ、戦車ガンドマを要所に配備し、他の眷属も其々の持ち味を発揮すべく的確な場所へと移動させたサイラオーグだったが、ゼファードルは全てお見通しだと言わんばかりに各個撃破を着実に行い、厄介なクイーシャ達も難なく潰して行った。

 

「ゲームに本格参戦すれば短期間で上位ランカーとなるのではと言われていた程サイラオーグは、彼の眷属は相当な実力を有していると言われていた。若手の中では頭一つ、いや他の若手は足元にも及ばないと言われていたサイラオーグが、此処まで翻弄されるなんてね…」

「若手同士の対決前に運営委員会が出した強さのランキングでは、一位はバアル、二位がアガレス、三位がグレモリー、四位がアスタロト、五位がシトリー、そして最下位がグラシャラボラスでしたわ。ですが今回の試合でそれは大きく崩れたと言っても過言では無いでしょう。巷では運営委員の目は節穴か、と運営の資質を問う論評が渦巻いている様ですわ」

「『グラシャラボラスの若頭』の才能、その片鱗だけでも冥界の民に与えた衝撃がそれ位大きかったと言う事ですわね。現に今一部で、良くも悪くも騒動が尾を引いていますわ」

 

そして映像は終盤、ゼファードルは誰一人として己の眷属を脱落させる事無くタイムアップ、王であるサイラオーグと兵士であるレグルスを除いて全滅させるという目覚ましい結果で勝利を収めた。

そんな前代未聞の大金星を手繰り寄せた采配は目撃した者全員を感嘆させるには十分、サイラオーグのいとこで、その強さを良く知るリアスもそれ故に、ゼファードルの知略には舌を巻き、そのインパクトの程を朱乃とレイヴェルが引き継ぐ形で評した。

因みにレイヴェルが言っていた『騒動』だが、まずこのゲームでの敗戦が切っ掛けとなりバアル家の、というよりサイラオーグを次期当主とすべきと言っていた支援者は悉く手を引いた。

一度はその才能の無さ故にバアル家を追われながらも並々ならぬ努力で実力を身に着けた末、父親であるバアル家当主や腹違いの弟でバアル家特有の『滅びの魔力』を受け継いだ『元』次期当主のマグダラン、その眷属やバアル家の親族達を叩きのめして次期当主の座に就いたサイラオーグだったが、腕っぷしだけが取り柄の野蛮で阿呆な粗忽者など大王家当主に相応しくない、やはり当主には『滅びの魔力』を有する者こそが就くべき、という声が圧倒的となり、その立場は風前の灯火となっていた。

逆に勝者となったゼファードルは正式にグラシャラボラス家次期当主となったばかりか、逆境を跳ねのけての大金星というヒロイックな活躍、天才ゲーマーZとして数多くのゲーム大会で結果を残して来た経歴、そして言動は荒いながらも男気溢れるその兄貴分な気質から、たちまち『グラシャラボラスの若頭』として冥界での人気が急上昇、試合終了間際にサイラオーグへ言い放った言葉から、葉巻を咥えながらライオンにバックブリーカーを掛けるゼファードルという構図をデフォルメ化した『獅子狩りヤッ君』なるマスコットキャラクターが作られ、そのぬいぐるみが発売早々に売り切れたとか。

その人気にあやかって彼を主役としたゲームバラエティ番組『ZS(ゼータズ)TV』が冥界全土で近々放送開始される様で、一誠とレイヴェルにそのレギュラー出演者としてオファーが来ているそうだ。

 

「気を付けて置け。今リアス部長が言っていた様に若手の中でも飛びぬけていると評されていたサイラオーグ・バアルも、蓋を開けてみればゼファードル・グラシャラボラスに良い様にあしらわれた。仮面ライダーの力を有したお前達も、魔王に匹敵する存在がゴロゴロといるリアス・グレモリー眷属も、油断していたら足元を掬われるという事だ」

 

戦力では確かに若手の中で最下位だったにも関わらず、己が知略で冥界に災害級の衝撃を与えたゼファードル、高を括っていたら次は自分達がやられる番だと、ヴァーリは釘を差した。

無論、此処にいる全員はそれを承知していた。

 

「一先ず、今は目先の試合を考えましょう。次の対戦相手はアスタロト家次期当主、ディオドラとついさっき連絡が来たわ。その研究の為に、次の映像を見ましょう」

「そうですね、何しろアガレス家次期当主シーグヴァイラ氏を相手に逆転勝利を収めたのですから。ゼファードル氏程では無いにしても、注意せざるを得ませんね」

 

とはいえそのゼファードルとの対戦予定はまだ無い、今は次なる対戦相手であるディオドラの映像を見る事にした、が、

 

「その事だが、不可解な点が見受けられる。今アーサーが言った通りアスタロトがアガレスを破った。これだけならグラシャラボラスがバアルに勝利した先例があるが…」

 

それはヴァーリが言った通り、何とも不可解な展開だと言うしか無かった。



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87話_聖女とのDate

翌日、9月の第2日曜日に行われる体育祭に向けての練習が全校で行われている中、二人三脚に出場する一誠とそのパートナーであるアーシアもまた、練習を行っていた。

尚、出場する種目を決める際、一誠達のクラスメートであり松田及び元浜の変態コンビに次ぐ変態として有名(ただ変態コンビの様な行動はしない為か、嫌われてはいない)な女子生徒、桐生(きりゅう)藍華(あいか)が一誠を罠に嵌める形で選出したり、そのパートナーに名乗る女子生徒がアーシアやイリナ、ゼノヴィアを始めとして殺到した末にその立場を巡るじゃんけん大会が開催されたりといった波乱が起きたが余談である。

 

「アーシア、二人三脚を行う上で重要な要素、それは個人個人の瞬発力でもスタミナでもない、2人のコンビネーションだ。2人の息を合わせなければ、コケるだけで前には進まない」

「私とイッセーさんのコンビネーション、ですね」

「ああ。其処で今回は、アーシアのペースに合わせていこうと思う。自分のペースに合わせ、1、2と声を出しながら足を出してくれ。俺もそれに合わせる」

「分かりました、イッセーさん!宜しくお願いします」

 

それは兎も角、一誠のアドバイスを受けてまずは自らのペースで進む事となったアーシアは、己の掛け声と共に足を運び、一誠もそれに合わせ、2人は着実に前へと進んで行く。

 

「おっと!どうした、アーシア?」

「す、すいませんイッセーさん、ちょっとボーっとしちゃって…」

 

が、ある程度進んだ所でアーシアのストライドが乱れたのか、よろけてしまった2人。

一誠が踏みとどまった事で転びはしなかったが、急にストライドが変わる程アーシアの集中力を乱す事があったのかと一誠は考えた末、何かを決心した。

 

------------

 

「アーシア。急に済まないが、今日は寄り道して行こう」

「え?で、でも、家に皆さんが待っているでしょうし、バガモンさん達もお夕飯を作って…」

「バガモンには既に連絡してある。今日は俺とアーシアの晩御飯は要らない、と。バガモンからは『2人きりのデート、しっかり楽しんで来るんだガ』と快く応じてくれたよ」

「で、ででで、デートですか!?わ、私と、イッセーさんの…」

 

その日の放課後、一誠はアーシアをデートに誘った。

唐突なタイミングだった事、一誠から誘う形での2人きりのデートが初めてだった(2人きりでなくても初めてだが)事もあって大いに驚いたアーシアだったが、恋人である一誠の誘いとあらば喜んで応じ、2人は何時もの帰り道とは逆の方を進んで行った。

 

「ディオドラ・アスタロト君。またこの辺りをうろついているとはねぇ」

「ま、魔王様!?魔王様こそ何故人間界に足しげく通われているのですか!?」

「私はこの学園の理事長でもある、視察に来ても何ら可笑しな話ではないだろう。だが君はこの学園、いやこの街の何処とも何かしらの関りを持たない。違うかね?」

「そ、それは…」

 

その背後からまたも人間界に来ていたディオドラが一誠達のどちらかに声を掛けようとして、更にその背後からサーゼクス(に擬態したラヴリカ)が呼び止めたのに気付くことなく…

 

------------

 

「今日の晩御飯は、此処で一緒に食べよう。丁度個室が空いていたからな」

「こ、此処って確か、凄く美味しいけど値段が張るってよく言われている焼肉屋さんですよね…?」

「お金の事なら気にするな」

 

駒王学園を出発し徒歩数分、駅前の繁華街に建てられた商業ビルに辿り着いた一誠達、そのまま一誠の先導で目的の場所がある階に到達すると、其処は高級焼肉チェーンとして全国的に有名な焼肉店だった。

普通の高校生はまず立ち入らないであろうこの場所を躊躇なく進んでいく一誠に戸惑いを隠せないアーシア、尤も一誠にとってこの店は何度も行った事がある、アーシアを案内しながら手慣れた様子で指定の個室に向かい、

 

「まずは、特選タン塩2人前に、海鮮盛り合わせに、キムチ2つ、ウーロン茶2つで」

「畏まりました」

 

そのままメニュー片手に注文を進め、それが届くや否や事も無げに目前の網に乗せていく様は正に常連のそれだった。

 

「俺の気のせいだったら良いんだが、今日の、いや、昨日のあの映像を見てからのアーシア、何処か変な様子だったからな。何か引っ掛かるものがあるのでは、と」

 

注文した物が焼けるのを待っている中、ふと一誠はアーシアに尋ねた。

今日の練習での事もそうだったが、昨日レーティング・ゲームの映像を見てからのアーシアは、何処か様子がおかしい所が見受けられたからだ。

 

「すいませんイッセーさん、気を使わせてしまって…

以前、私が教会を追放された経緯についてリアスお姉様を通じて聞かれましたよね?」

「ああ。ケガをしていた悪魔の傷を神器で治した事によって『魔女』の烙印を押された、と…」

「実はその方と、あの映像に映っていたディオドラさんが、そっくりだったんです」

「そ、そうか。それは気になるのも仕方ない、か」

(アスタロト家次期当主であるディオドラ氏が人間界、それも当時は敵対関係にあった筈の教会に、ケガした状態で、だと?由緒正しい家柄の者であれば教会には絶対近づくなと口酸っぱく言われてきた筈、そもそも用も無いのに人間界をフラフラしていては家の者、支援者、果ては冥界のマスコミが黙っていないのは分かるだろうに。然も教会に近づいて『普通の』ケガをしていたというのも気になる。教会のエクソシストは光の剣など、悪魔にとって天敵となる武器を使う筈、彼らの攻撃を食らっては『普通の』ケガで済むはずが無い。だとすれば、目的はアーシアに近づく為の自作自演か?いや、エクソシストに殺される危険性が高いのに其処までしてか?昨日の映像で見たご都合主義的過ぎる逆転劇、それを引き起こした不自然極まりないパワーアップと言い、何から何まで怪しいな、ディオドラ・アスタロト…)

 

そんな一誠の疑問に、素直に答えるアーシア。

その答えに様子がおかしくなるのも無理は無いと応じた一誠、一方でその一件での当事者らしいディオドラへの疑念は募るばかりだった。

それも当然と言えば当然だろう、昨日見たディオドラ眷属とシーグヴァイラ眷属によるレーティング・ゲームの映像、其処には途中まで圧倒的不利な状況に追い込まれていたディオドラが、正に唐突と言って良いパワーアップを遂げ、その力を以て逆転勝利を収めたという不可解極まりない光景が撮影されていたのだから。

能ある鷹は爪を隠すという諺の通りディオドラが真の実力をひた隠しにして来たからだという説は、実際にその力を測った堕天使勢力が否定、追い込まれるまでのそれがディオドラの『本来の』全力だと見ている。

其処までの実力者じゃなかったディオドラの不自然なパワーアップによる逆転劇、そしてアーシアが追放された一件に関わっていた件、それらがディオドラに対する不信感を募らせるのは必然だった。

 

「私、彼を、あの方を救った事、後悔していません。今でも彼を救えて良かったと思います」

「後悔は無い、か。それが切っ掛けでアーシアが色々と辛い目にあったにも関わらず。強いな、アーシア」

「い、いえ、そんな事無いですよ。確かに教会を追放されて色々悲しい事もありました。でも変な話ですけど、それが無かったらこうしてイッセーさんと出会う事も、お話する事も、こうして愛し合う事も無かったと思います。

 

 

 

私、この街が、学園が、オカルト研究部が、イッセーさんが好きです。皆さんと共に暮らし、共に学び、共に遊び、と、共にゴニョゴニョ…

と、とにかく皆さんと一緒の生活は本当に大切で、大好きな事ばかりで素敵なんです。ずっと一緒に過ごしていきたいです」

「そうか、アーシア。そう思ってくれているとは、恋人として嬉しいよ。さあ、湿っぽい話は終わりにして、食べよう。丁度タン塩も、海鮮も焼けて来た。キムチもまろやかな味付けで旨いぞ」

「はい、いただきます!」

 

それを知ってか知らずか、その件に対する後悔は無い事、今この時が幸せであり、大切な物である事を素直に話すアーシア、その顔は心の底からそう思っていると言わんばかりの笑顔に満ち溢れていた。

その笑顔には、ディオドラへの不信感で何処か渋い顔をしていた一誠も思わず表情が緩み、食べごろと言って良い焼き加減となった肉を、海鮮を取り、食事をスタートした。

その後2人は、初めてのデートを思う存分満喫した。



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88話_乗っ取られしGame

「そろそろ時間ね」

『はい』

 

それから数日が経過し、ディオドラとのレーティング・ゲームが行われる日となった今日、リアス達はオカルト研究部の部室に集結し、ゲームフィールドへと転移する魔法陣が光り輝くその時を今か今かと待っていた。

 

「良い事、皆。分かっていると思うけど、今日の相手はアスタロト家次期当主ディオドラの眷属。先日のレーティング・ゲームでは若手の中でサイラオーグに次ぐ実力を有していると言われた『大公』アガレス家次期当主シーグヴァイラを破るという金星を上げたわ。この試合に関しては不可解な点も見受けられるし、その他にも色々と不審な所が彼からは見受けられる。けど難しい事は後で考えましょう、今は彼とのレーティング・ゲームに、一切の油断なく臨むわよ!良いわね、皆!」

『了解!』

『マイティブラザーズダブルエックス!』

『マイティアクションエックス!』

『デンジャラスゾンビ!』

『ときめきクライシス!』

『スペースギャラクシーフォーゼ!』

『ハコニワウォーズ!』

『開眼ゴースト!』

『PERFECT PUZZLE!What’s the next stage?』

『KNOCK OUT FIGHTER!The strongest fist!Round 1!Rock & Fire!』

『TADDLE FANTASY!Let’s going king of fantasy!』

『BANGBANG BURSTER!I ready for battleship!』

『BAKUSOU TURBO!Are you ready!Attention!』

『HURRICANE RISING!』

 

その最中リアスが激を飛ばす、それに応じたのを受けて、各自がガシャットを取り出した。

今までゲームフィールドに入ってから、もっと言えば(一部を除いて)ゲームが始まってから変身して来たリアス達、だが今後そんな悠長な事をしていたら奇襲されるかも知れない、そう考え、予め変身してからゲームフィールドへ入る方針となった。

 

「だーい…!」

「グレードX-0!」

「エクストラステージ!」

第七戦略(セブンス・ストラテジー)!」

「全消し連鎖!」

「ファイナルラウンド!」

「術式レベルX!」

特殊戦術(スペシャル・タクティクス)!」

「爆速!」

「チャプターX!」

『変身!』

『ダブル・ガシャット!ガッチャンガッチャンガッチャーン!ダブルアップ!』

『『『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!』』』

『『『『『『デュアル・ガシャット!ガッチャーン!デュアルアップ!』』』』』』

『俺がお前で!お前が俺で!ウィーアー!マイティマイティブラザーズ!ヘイ!ダブルエェェェェックス!』

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティアクショォォォォン!エックス!アガッチャ!デンジャー!デンジャー!デスザクライシス!デンジャラスゾンビ!』

『ちょっぴり照れるわ、ときめき!クライシス!アガッチャ!ぶっ飛ばせ!友情!青春ギャラクシー!3.2.1.フォーゼ!』

『ハコニワウォーズ…!

アガッチャ!ゴー!ゴゴー!ゴゴー!開眼!レッツゴー!ゴー!ゴゴー!ゴゴー!開眼!覚悟!』

『ゲット・ザ・グローリー・イン・ザ・チェイン!パーフェクトパズル!』

『エクスプロージョン・ヒット!ノックアウトファイター!』

『辿る巡るアールピージー!タドォォォォルファンタジー!』

『スクランブルだ!出撃発進!バンバンバースター!発進!』

『爆走!独走!激走!暴走!バァァァァクソウターボ!』

『レッツスニーキング!ハリケーンライジング!』

 

その方針を受け、何時もの手順で今なれる最も強力な姿へと変身した仮面ライダー達。

その中でゲンムは、腰に装着されたベルトがゲーマドライバーで、胸のディスプレイに体力ゲージが表示され、左腕にガシャコンバグヴァイザーが装着された以外はゾンビゲーマーと変わらない姿――ゾンビアクションゲーマーレベルX-0に、ポッピーは、着用しているワンピースが水色になり、胸のディスプレイがX字型に拡張、両肩にスペースシャトルの翼を思わせる装甲を装着した姿――フォーゼクライシスゲーマーレベル7に、其々初めて変身した。

因みに何故ゲンムはゾンビゲーマーに変身しなかったのかと言うと、先日のレーティング・ゲームで見せたゾンビゲーマーの無敵と言うしかないその強さに「ゲームにならない、増して今回の若手悪魔が相手では誰であろうと圧倒的に勝つに決まっている」と運営委員会が危惧し、レーティング・ゲームでのゾンビゲーマーへの変身を禁止された為である。

とはいえデンジャラスゾンビガシャットの使用までは禁止されていない、という訳でレーティング・ゲームでの代替策として、デンジャラスゾンビガシャットの力を限定的ではあるが発揮出来るこのゾンビアクションゲーマーレベルX-0に変身したのだ。

 

「準備OKね。皆、気を引き締めていくわよ!」

『はい!』

「皆様、御武運をお祈りしておりますわ!」

 

其々が変身したのを見計らったのかは分からないが、部室中央に描かれた魔法陣が光り輝く、それを受けてのレイヴェルの声を背に、仮面ライダー達はゲームフィールドへと出陣した…!

 

------------

 

「此処は、ギリシャの神殿群を模したフィールドか?随分と開けた場所だ」

 

彼らが送り込まれたゲームフィールド、其処はエグゼイドが呟いた通り、ギリシャの地に建てられたそれと思しき神殿が幾つも並ぶ場所だった。

無論其処が人間界のギリシャその物でない事は、上空に広がる真紅一色の空が物語っている。

だが…

 

「…おかしいわね」

「アナウンスの声が、聞こえない?どういう事にゃ…?」

 

何時まで経っても審判役の声が聞こえない、その異常事態に皆が怪訝そうな声を上げた。

その時だった、彼らの疑問に答える様に、それほど遠くない場所で魔法陣が出現した、

 

 

 

「これは、アスタロトの紋章じゃない!」

『ガシャコンソード!』

 

 

 

彼らを囲む様に、多種多様なそれが、

 

「魔法陣全てに共通性は無いのにゃ、だけど…!」

『ガシャコンパラブレイガン!』

「全部悪魔ですわ。それも記憶が確かなら…!」

 

 

 

「旧魔王派、禍の団に皆揃って加入した旧魔王派に傾倒していた者達よ!」

 

今の悪魔勢力と敵対する事を決めた、裏切り者達のそれが。

 

「ディオドラが裏切ったか、或いは運営委員会の誰かが禍の団と内通していたか…

どちらにしろ、このゲームは仕組まれていた物という訳か!」

『ガシャコンキースラッシャー!』

「僕達は嵌められたって事かよ!」

『ガシャコンブレイカー!』

「やってくれたな、禍の団!」

『ガシャコンスパロー!』

「良いわ、そっちがその気なら、全力で振り切って見せる!」

『ガシャコンニンジャブレード!』

 

事態を把握した仮面ライダー達は、各々の武器を装備し、やって来るであろう敵に備えて構えを取る。

そして魔法陣から、大勢の悪魔達が敵意をむき出しにしながら現れた…!



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89話_Inexplicableな結末

「忌々しき偽りの魔王の血縁者よ。魔王の座を簒奪しただけでは飽き足らず、人間如きに頼りその座を、大王の座すらも穢した愚か者共よ。今此処で散るがいい!」

 

数多の魔法陣から現れた禍の団・旧魔王派に与する悪魔達、その中の1人が侮蔑と敵意を隠す事無くそう宣戦布告と言うしかない物言いをした。

彼らの立場からすればまあ当然と言えば当然の言葉ではあるが、そんな事を言われて黙っているゲンム達ではない、構えを維持したまま戦意を漲らせ、何時でも飛び掛かれる状態となった。

そんな時、

 

「空が…?」

「何?こ、これは一体…!?」

 

真紅一色だった空が、突如として冥界のそれを思わせる紫色に変色した。

その光景は周りの悪魔達にとっても想定外だった様で狼狽える者も少なくなかった。

 

「っ!皆、伏せて!」

『ガッシューン!ガシャット!キメワザ!デンジャラス・クリティカル・ストライク!』

「リアスお姉様、私も援護します!」

『シールド・オン!マグネット!』

 

そして何か風らしき物がフィールドに吹き荒れ始める、それに何か良からぬ気配を感じたゲンムは己の眷属達に伏せるよう指示を飛ばしつつ、何時も通りの手順でデンジャラスゾンビガシャットを左腰のスロットに装填、その力を解放した。

するとゲンム達を守ると言わんばかりに周りから滅びの魔力と似た漆黒の靄が吹き上がり、それはやがて無数の、ゾンビアクションゲーマーとなったゲンムそっくりな戦士となった。

本来ならこの後、周囲の物体に組み付く事で滅びの魔力をダイレクトに浴びせる事で腐敗を通り越して消滅までさせたりするのだが、今回はゲンム達を囲う様に隙間なく集合し、まるで組体操の如く互いが組み付いてドーム状に形成、風らしき物から文字通り身を挺して守る構図となった。

その動きからゲンムのやろうとしている事を察したポッピーもまた動いた、拡張されたディスプレイの左上部に表示された10個のアイコン、その中から『18』と書かれた物と『31』と書かれた物を選ぶと、電子音声と共に、ドーム状に組んだ戦士達を守る様に電磁状のエネルギーフィールドが展開された。

こうして二重の防壁を展開したゲンム達は何事も無く切り抜ける事が出来たが、

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「ば、馬鹿な、馬鹿なぁぁぁぁ!?」

「こんな、こんな事がぁぁぁぁ!?」

 

そういった対策が出来なかった(しなかった、とは言えまい)悪魔達が風らしき物にさらされた次の瞬間、その身が崩れ出し、やがて消滅していったのだ。

そう、それは、まるで、

 

「この風、まさか滅びの魔力…!?」

 

------------

 

「さて、いよいよか。今まで事ある毎にサーゼクス・ルシファーに邪魔されたけど、それも今日までだ。リアス・グレモリーとその眷属は禍の団のエージェントによって皆殺し、そしてアーシアは僕の物だ!今から心が躍るなぁ!」

 

遡る事数十秒前、フィールド内の神殿内に陣取っていたディオドラは、下種の極みと言って良い笑みを浮かべながらそう声高に叫んでいた。

案の定と言うべきか、禍の団と内通していた裏切り者はこのディオドラだったのだ。

以前より教会のシスターを罠に嵌めて『魔女』として追放させ、誘惑した末に堕として己の眷属としてきた彼、アーシアが追放された一件に出て来る悪魔の正体もまた彼だったのだ。

だが結果としてアーシアはリアスの眷属であり、そして今や一誠の恋人の1人となったが。

後者について彼は知る由も無いが、どうしてもアーシアを諦められない彼は秘密裏に禍の団と協力関係を結び、情報提供や騒動(ゼファードルの兄が死んだ一件も含まれる)の手引きと引き換えに、禍の団トップであるオーフィスの力の欠片『蛇』を入手、シーグヴァイラとのゲームではそれを用いて大逆転劇を成し遂げたのだ。

そして今回のレーティング・ゲームの乗っ取りも彼の手引きによる物、これで禍の団に属する悪魔達がリアス達を皆殺しにする間にアーシアの身柄を奪い去り、己が物としようという算段を立てていた。

取らぬ狸の皮算用と言っても良い未来を想像して悦に浸るディオドラだったが、そろそろ悪魔達がリアス達の元に転移しただろうと思い、その隙にアーシアを拘束しようと転移用の魔法陣を起動しようとした、が、

 

「な、こ、これは!?」

 

突如として何かが砕け散る音が鳴り響く、それに驚いて振り向いたディオドラの眼に映っていたのは、部屋の中心部に設置された大掛かりな装置が壊れ、破損した部分から紫色の気体らしき物が噴出する光景だった。

 

「ぎゃぁぁぁぁ!?ば、馬鹿なぁぁぁぁ!?こんな、こんな事がぁぁぁぁ!?」

 

その気体――滅びの魔力を諸に浴びてしまった事で身体が崩壊していくディオドラ、断末魔の叫び声を上げながら、程なく消滅した。

 

------------

 

暴風の如く吹き荒れた滅びの魔力、それが止んだのを受けてエネルギーフィールドも、ドーム状に組まれた戦士達も消え失せ、ゲンム達が周囲を見回してみると、其処にはもう何も無かった。

周囲に広がっていた神殿群も、奇襲を仕掛けて来た禍の団・旧魔王派の悪魔達も、今回の奇襲を先導したディオドラ達も跡形も無く消え去り、澄み切った青空が広がるだけだった。

 

「一体、何が起こったと言うの…?」

 

仮面ライダー達の困惑を代弁するかの様に呟かれたゲンムの言葉、だが当然ではあるが、その呟きに答える者はいなかった。

 

------------

 

レーティング・ゲームを利用した禍の団・旧魔王派による襲撃、だがその最中に突如として吹き荒れた滅びの魔力によってこの襲撃に参加した禍の団の構成員は全滅…

その余りにも不可解な事件を受けて調査が行われた結果、ディオドラと禍の団が協力関係にあった事が発覚、その監督責任を問われたアスタロト家は現当主を解任、及び次期魔王を輩出する権利を永遠に剥奪されるという処分が下った。

尚、この処分の根拠となるディオドラの罪状に教会のシスターに対する干渉行為は含まれていない、それを裏付ける証拠も、その事を知る存在もいない中、当事者であるディオドラも元シスター達も残らず消滅させられた今、真相は文字通り闇の中となった…



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90話_束の間のPeaceful

ディオドラとのレーティング・ゲーム、という名の禍の団による襲撃が不可解な結末で終結してから数日が経った頃、此処駒王学園では体育祭が予定通り開催され、各々が練習の成果を見せようと奮闘していた。

その中で、

 

「やるな、木場祐斗。流石はリアス・グレモリーの騎士だ。こういう勝負も悪くない」

「そっちこそやるね、ヴァーリ」

 

高等部2年男子による100m走で、一誠達のクラス代表となったヴァーリと、別クラスの代表となった祐斗が熾烈なデッドヒートを繰り広げた末カメラ判定でもしないと分からない程の僅差でゴール(流石にそんな設備は無かった為同率1位という結果になったが)、互いに健闘を称え合うという名シーンや、

 

「か、辛ぁぁぁぁ!?う、ウルトラデ○ソースは勘弁してくれぇぇぇぇ!」

 

何故か実施種目にあったパン食い競争に出場した元士郎が、運悪く激辛カレーパンを引き当てた事で夏休みに行われたレーティング・ゲームの場にて刻まれたトラウマが呼び覚まされて発狂するという何とも言えない光景が繰り広げられた後、

 

『次の種目は二人三脚です、出場する皆さんはスタート位置までお集まり下さい』

「俺達の出番か。行こう、アーシア」

「はい、イッセーさん!」

 

次に行われる種目は一誠達が出場する二人三脚、そのアナウンスを受けて2人はスタート位置へと移動し、彼の右足首と彼女の左足首を繋ぐ様に紐を縛った。

 

「位置について、よーい…!」

 

バァン、とこういった大会ではお馴染みであるスターターピストルからの炸裂音を合図に、出場する全員が走り出した。

 

「1、2、1、2!」

 

一誠とアーシアも、今までの練習通りアーシアの掛け声に合わせて其々の足を運び、順調なペースでトラックを進んで行き、

 

「頑張って、イッセー!アーシア!」

「トップ、行けますわ!」

「フレー、フレー、イッセー君!フレー、フレー、アーシアさん!」

「頑張れ、イッセー!」

「アーシアちゃんも頑張って!」

 

リアス達や一誠の両親からの声援を背に受けトップを独走、

 

「わ、私達がトップ…!

やりました、イッセーさん!」

「ああ、アーシア!俺達の勝利だ!」

 

そのままゴールテープを切り、トップの証である旗をスタッフから受け取った。

 

「ディオドラが何故裏切ったのか、そもそもアーシアが傷を治した悪魔はディオドラだったのか、だとすれば何故アーシアに近づいたのか。今となっては分からない事ばかりだ。

 

 

 

だけどこれだけは言える。例えどんな輩がアーシアを、俺にとって大切な存在を狙おうと、絶対に守って見せる。俺が、いや、俺達が。だから改めて言おう、恋人としてずっと側にいて欲しい、アーシア」

「は、はい!イッセーさん!改めて、宜しくお願いします!」

 

帰り際、アーシアと今一度、恋人としての誓いを立てたのは、余談である。

 

------------

 

「○○○○○○○さん、○○○○○○さん、此方が例の物です。どうぞ、受け取って下さい」

「これが、仮面ライダーに変身する為の力、魔王や超越者の領域に至る為のアイテムか…!」

「これがあれば、今の世界を変える事も、神を殺す事も不可能ではない、という程の力…!」

 

その頃、とある場所では一組の、夫婦と思われる男女が、1人の青年から何かを受け取っていた。

それを受け取り、何処か昂った様子で呟きながら眺める男女、男性が受け取ったのは『DOKIDOKI MAKAIJOU KIVA』のタイトルと蝙蝠をモチーフにした仮面ライダーらしき戦士がポーズを取る姿がデカデカと描かれた黄色と赤のガシャットと、赤と金色をベースカラーとしたガシャコンバグヴァイザー、女性が受け取ったのは『MOSHIMOSHI FAIZ』のタイトルとギリシャ文字のφをモチーフにした仮面ライダーらしき戦士がポーズを取る姿がデカデカと描かれた銀色と黄色のガシャットと、赤と黒をベースカラーとしたガシャコンバグヴァイザーだった…



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6.5章『陽だまりのTOKIMEKI CRISIS』
91話_決心するPhoenix


「IS様、L様、人間界でお忙しい中レギュラー出演のオファーを承諾して頂き、誠にありがとうございます。私、この番組のプロデューサーであるフミハル・アスモダイと申します。お二方、今後もどうぞ宜しくお願いします」

「此方こそ今回のオファー、嬉しい限りです。冥界に於いても此方で作り上げたゲームが身近になりつつある中、何時までも人間界での普及だけに拘ってはいけないと思っていた所でしたので」

「IS様やZ様が出られる中、二大天才ゲーマーの呼び声高い私も出ない訳には行きませんわ。それに今冥界では私達がこよなく愛するゲームに偏見を抱かれる方々が多いのも事実、我々の積極的な情報発信が冥界におけるゲームの普及には欠かせませんし」

 

駒王学園での体育祭を終えてから数日が経過したある日、此処冥界は魔王領ルシファードの中心部にあるTV局のスタジオにて、ゼファードルを主役としたゲームバラエティ番組『ZSTV』の初回放送分の収録が行われ、レギュラー出演者としてのオファーを承諾したらしい一誠とレイヴェルも当然それに参加、今は番組プロデューサーであり元72柱の一角アスモダイ家出身である、身体の所々から牛の如き角を生やした以外は普通の成人男性とほぼ変わらない風貌、ブラックスーツを身に纏いメガネを掛けた如何にもサラリーマンだと言わんばかりの出で立ちの悪魔――フミハルと挨拶を交わしていた。

今日は初回の収録とあって主役であるゼファードルや、レギュラー出演者である一誠達の紹介に重きを置いた放送内容にするらしく、其々のインタビューと、ゼファードルとレイヴェルのゲーム対決(実況は一誠)が収録される事となった。

 

「それでは、収録を開始します。お二方、どうぞこちらへ」

「了解です」

「分かりましたわ」

(今日はIS様と初めての収録、この時だけは他の方々もおりません。Z様からも「お前の想いのまま、ぶつかって行けよ」と応援を頂いた以上、悔いの残らない様に行きますわ!)

 

フミハルとの挨拶を終えたのを合図に他のスタッフから呼び出された2人、その中でレイヴェルは、収録終わりに自らの想いを一誠に伝えようと決意していた。

 

------------

 

「はい、OKです!皆様、収録の方お疲れ様でした!」

 

収録が終わった事を告げるスタッフの声、それと共に僅かながら緊張していた一誠達も何処か解けた様子となった。

幾らゲーム大会や発表会等の公の場に出る事が多いと言ってもTV収録は初めてである、それ故の緊張感は否めなかったのだ。

とはいえそれもひと段落した、それを受けて一誠は己に割り当てられた楽屋へと戻って行った。

 

「L、しっかりな。ISにお前の想い、ぶつけて来い!」

「はい。勿論ですわ、Z様!」

 

それを見てレイヴェルも己の想いを告げようと一誠の楽屋へと向かおうとする、そんな彼女に向け、ゼファードルはそう一声掛けた。

それに応ずる様にレイヴェルは、速足で一誠の楽屋へと向かった。

 

「IS様、お時間宜しいでしょうか?」

『L?ああ、構わないが』

 

数十秒後、一誠がいる楽屋へと辿り着いたレイヴェルは、扉越しに彼から許可を貰い、入って行った。

 

「そういえばL、駒王学園に転校してきて少しの日にちが経ったが、人間界での学校生活はどうだ?」

「お心遣いありがとうございますわ。ですが、心配ご無用ですわ。ゲーム好きに人間も悪魔も、貴族も平民もありません、直ぐにクラスの皆様と仲良くなれましたわ」

 

唐突なレイヴェルの訪問に少し驚いた様子の一誠だったがそれも一瞬の内、駒王学園に転校して来たばかりの彼女を気遣うなど、何時もの彼に戻った。

悪魔勢力において名門と言っても良い元72柱の一角フェニックス家令嬢であるレイヴェル、そんな彼女が人間界の、冥界における平民と同等の高校生達ばかりな学園生活に溶け込んで行けるのかと心配するのは彼だけでは無かったが、其処はゼファードルと並ぶ天才ゲーマーとして人間界及び冥界を股にかけて活躍中の彼女、何の心配も無かった。

 

「IS様、その人間界は駒王学園へ私が転校して来た件に関してなのですが。

 

 

 

恐らくは粗方お察しかと思われますが、今回私が人間界に来たのは私とIS様との、もっと言えばグレモリー家とフェニックス家との関係構築を諦めきれぬ支援者のごり押しで成された物です」

「っ!やはり、と言うべきか…

この前のパーティでのLの反応からしてまだ聞かされていなかったであろう転校の話が、幾ばくも経たない内に実現した事、知らされていた筈だろう義兄さんからの連絡が無かった事もそうだが、そもそもフェニックス家令嬢であるLが転校して来る時点でおかしいと思っていたが…」

 

いや、心配はあった。

そもそも今一誠が言った様に、フェニックス家のお嬢様であるレイヴェルには態々人間界の高校に通う理由が無い、ましてや冥界の学校から転校するという形式を取ってまで。

それにも関わらず今回の転校である、一誠も何となくその理由に感づいていたが、いざ本人の口から聞かれて、言い知れぬ感情が渦巻くのは当然であろう。

理不尽と言うしかない話をごり押しするフェニックス家の支援者達に、その根底にある思惑に対する怒り、そんな思惑に巻き込まれてしまったレイヴェルに対する心配…

 

「ですがIS様、いえ、イッセー様!私の想いは、支援者の思惑とは関わりありません!

 

 

 

私は、レイヴェル・フェニックスは、貴方をお慕いしております!でなければ例えフェニックス家の、悪魔社会の為と言えどこんな理不尽な話は受けませんわ!」

「え、L…?」

 

だが、それはレイヴェルの告白で吹き飛んだ。

 

「L、いやレイヴェル、俺は既に7人の恋人がいる」

「存じておりますわ」

「その今いる恋人達とさえ、恋人らしい事を中々させられないでいる」

「イッセー様はゲームクリエイターとしてお忙しい身、増して今は禍の団によるテロ活動への懸念から、ライダーシステム開発にも労力を割かねばならないと聞いております、致し方ない事情があるのは承知の上ですわ」

「更に言えば生粋のおっぱい星人だ、変態と言うしかない言動で不快な想いをさせるかも知れない」

「英雄色を好むと言いますわ、そうこなくては。私、おっぱいには自信ありますの」

 

レイヴェルの想いを聞き、最初は混乱の余り唖然としていた一誠、だがその意味を理解し、その想いの程を、己の現状を話した。

自らの性癖まで話す一誠、それでもレイヴェルの想いは揺れる事などなかった。

 

「其処までの覚悟を以て、政治的な思惑より生まれた理不尽に敢えて身を任せた、か。

 

 

 

なら、その想いを受け止めない訳には行かないな。此れからも宜しく頼む、レイヴェル。これからはゲームクリエイター『IS』とゲーマー『L』としてではなく、恋人同士として」

「!は、はい、イッセー様!」

 

その揺るがぬ想いを目の当たりにした一誠の答えは『YES』だった。



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92話_Powerとは

「という訳で皆様、本日から此処でお世話になりますわ」

「いや、あの、レイヴェル?大体の事情はイッセーから聞いているから分かるけどいきなり、という訳で、と言われても」

 

レイヴェルが己の想いを打ち明け、見事それが叶って程なく、彼女がかなりの荷物を抱えながら一誠達が住む屋敷へとやって来た。

余りにも唐突な展開に戸惑うしかないリアス達だったが、彼女の言い分からしてこの屋敷で住む事になった様だ。

フェニックス家支援者のごり押しによって、一誠に嫁入りするという目的から人間界に来たレイヴェルだったが、裏の目的がどうあれ転校して来た頃の彼女は、リアスの眷属でもなければ一誠と恋人同士だった訳でもない、勿論一誠が生み出したバグスターでも無いので、リアス達と深い関わりがある訳では無い彼女を同居させるのはどうかという意見から、当初はこの街のとあるマンションで生活していた。

しかし今は一誠とも結ばれた以上、別居する理由も無い、よって今日この屋敷に引っ越す事となった訳だが…

 

「何ですか、これが小説なのを良い事に重要な事まで省略するんですかこの焼き鳥姫は」

「あらメタ発言ですか、ぺちゃパイな白猫さん?」

「そのおっぱいをもいで唐揚げにして食べてやりましょうか?」

「し、白音落ち着いて!俺は白音のちっぱいも好きだから!あの掌に伝わるくりくりとした感触とか最っ高だから!」

「それとこれとは話が別です!何で私以外巨乳なんですか!?皆して見せつけているんですか!?」

 

メタい発言でレイヴェルに毒を吐いた白音、だが「焼き鳥」と言われてカチンと来たのか、レイヴェルも負けじと白音のオンリーワンに対して毒を吐いた。

毒舌の応酬に険悪な雰囲気が漂う中、一誠が(セクハラ丸出しな発言で)割って入ろうとするが、まるで意味が無く、結局宥めるのに数分は掛かったとか。

尚、此処最近一誠は白音の事を呼び捨てにしているが、これは夏休み中にガシャットギアデュアルαを白音に渡した後、白音に心境の変化があったのか「ちゃん付けは止めて欲しい」と言われた為であるが、これは余談である。

 

------------

 

「流石は天才ゲーマー『L』として名を馳せたレイヴェル、といった所か。全ジャンルにおいて高いレベルの適性を示すとは」

「すげーな親父、ライダー適性の総合力で言ったら親父やギャスパーを遥かに上回っているぜ」

 

その日の夜、自室にて一誠はパラドと共にデータを整理していた。

例によってバグスターウィルスに対する免疫の付加処置を施されたレイヴェルは、やはりと言うべきかライダーに変身出来る程の適性が判明、しかも此れまでにない高いレベルでの適性がある事が分かった。

 

「このまま其々のジャンル適性に合ったライダーに変身させても、それはそれで十分な力を発揮してはくれる。だがこのまま既存の、今後生み出す予定のライダーにレイヴェルを変身させて良い物かどうか」

「確かにな、今出来ているライダーガシャットの殆どは特定のジャンルに特化した物、『アレ』も例外じゃない。レイヴェル・フェニックスに変身させるとなると、他の適性を犠牲にしなきゃあならないな」

 

想像はしていたがそれでもこれまでにない才を有したレイヴェルの存在に興奮を隠せない2人、だが一方でその才を十分に引き出せる術が無い事に悩むという複雑な心境だった。

 

「待てよ?今も近い未来も、特化型のガシャットしか無い、か…

 

 

 

ならば作るか、今までの様な『完成した』内容をプレイするゲームじゃない、1からゲームを『作り出す』内容のゲームを!それを搭載したライダーガシャットなら、レイヴェルの適性を十全に引き出せる筈!」

「ゲームを作るゲームって事か!流石は親父、凄い発想だぜ!」

 

其処でふと新しいゲームのアイデアが閃いた一誠、それはゲームを『作る』ゲーム、という今までと全く違うアプローチの物だった。

このゲームを作るゲームの力を有したライダーガシャットを用いる事で、様々な状況に応じてゲームを作成、その力を行使する、というのが一誠の考えだ。

これなら全ジャンルに満遍なく高い適性を有するレイヴェルの力を最大限引き出せる、パラドもその発想に至った一誠に賛同した。

 

「とは言え今から、どういうアプローチでゲームを『作る』のか、考えるだけでも時間が掛かる。搭載したガシャットのレベルも分からない。今から少しずつでもバグスターウィルスに、ライダーへの変身に身体を馴染ませておかないといざと言う時に危険かも知れない。其処までの『繋ぎ』は…

 

 

 

丁度良い、レイヴェルの適性ならレベルXの力にも十分対応できる。今一度、お前には頑張ってもらいたい、カイデン」

 

然しまだそのゲームは構想の段階にすら入っていない代物、それまでの『繋ぎ』としてどんなライダーに変身させるかを決めた一誠、その手にはゼノヴィアが使用していた黒いガシャットが握られていた。

 

------------

 

「ラヴリカさん。1つ、お聞きしたい事があるのですが」

「なんなりと、アーシア母様」

 

同じ頃、アーシアは何か気になる事があったのか、ラヴリカを呼び出していた。

 

「リアスお姉様は、バグルドライバーを用いる事で更なる高み(レベル)に至りました。その基となるガシャコンバグヴァイザーはギャスパー君も、私も使用しています。ギャスパー君が変身するクロノスは仮面ライダーの王、きっとバグルドライバーを使ってその王としての力を得るんだと思います。もしかして、私も…?」

「お察しの通りです、アーシア母様。実を言うとこのラヴリカのレベルはカイデンやゲノムス等と同等のX。ですが私の媒介であるときめきクライシスガシャットは、ゲーマドライバーとの相性が良くなく、それを用いての変身となるとレベル2、他のガシャットを用いてもレベル7がやっとなのです。ですが母様が持っているガシャコンバグヴァイザーⅢをバグルドライバーⅢにし、それを用いて変身する事で母様は仮面ライダーポッピーの真なる姿――ときめきクライシスゲーマーとなるのです。そのレベルはX、ガシャットギアデュアルやマイティブラザーズXXガシャット、デンジャラスゾンビガシャットにも匹敵する力を得られます」

 

その疑問は、自らが変身するポッピーに隠された力が残っているのではないかという物、それに対するラヴリカの答えは『YES』だった。

現状は皆と比べて大きく劣る力しか持たない(とはいえ上級悪魔でも指折りと言って良い実力を有してはいるが)ポッピーだが、それはまだ本領を発揮していないだけ、バグルドライバーを用いる事で皆と肩を並べられる程の強さを得られる。

そんな話を聞いたアーシアは然し、何処か不安な表情だった。

 

「強大過ぎる力を振るう事で誰かを傷つけてしまうのではないか、苦しませてしまうのではないか、いやもしかしたら殺してしまうのではないか、その不安は分かります。その力を使うか否かは、母様次第です。ですがその力はきっと、母様にとって心強い物となる筈です。大丈夫、母様はお一人ではありませんよ。私やポッピーピポパポが付いています。何より、

 

 

 

母様にはお父様が、皆様がおられるでしょう?」

「は、はい。そう、ですよね!」

 

その不安の訳を察し、言葉を掛けるラヴリカ、それに笑顔で応じたアーシアだったが、それでも不安が全て解消された訳では無かった。

何時も愛用しているときめきクライシスガシャットも、ガシャコンバグヴァイザーⅢも、この時は何時と比べ物にならない重量で、アーシアの手を押しつぶさんとしていた様に彼女は感じた。



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93話_Gemstoneの輝きは強烈過ぎた

「まさか、これ程までとは…!」

 

その日、レイヴェルは目前の『存在』を、悔しさを隠す事無く睨み付けていた。

 

「私達が本気を出しても、戦略を練って何度挑んでも攻略出来なかったこの難攻不落の譜面、それをあのゲーマーはクリアして見せた。私達とあのゲーマーに、一体どれほどの差があると言うのですか…!」

 

その視線の先には『FAILED』とディスプレイに表示された、ドレミファステップの筐体があった。

 

ドレミファステップ。

一誠が開発した所謂『ドレビーシリーズ』と呼ばれる、ドレミファビートの派生ゲームの1つで、そのゲーム性を一言で言うなら『足でやるドレミファビート』。

プレイヤーが乗るそれを中心に、上下左右に斜めを加えた8方向の矢印が書かれたそれを繋げた3×3、9つのパネルをコントロールデバイスとし、画面に(基本的には楽曲に合わせて)流れて来る矢印と同じ方向のパネルをタイミング良く踏んでいき、最後まで1楽曲分プレイ出来ればクリアとなるこのゲーム、その難易度の中に、他のゲームにおけるレベル・インファナルに該当するREALIZE(現実)という物がある。

『現実に鳴る音の通りにステップを踏む』という設定意義の通り、楽曲内のちょっとした音にすらも合わせろと言わんばかりに大量の矢印が流れて来る事から『他の全ての難易度が過去になった』と言わしめたREALIZE、中でも『初音ミクの消失-DEAD END-』のREALIZE譜面は、その無茶苦茶としか言いようのない譜面から『究極のクソ譜面』『ISが遂にヤケクソになった』『人間辞めてもクリア出来ない』『そもそも筐体が耐えられるのか?』『生きている内にクリア者は出ない』『フルコンボ達成する前に太陽が終わる』という声が上がり、このゲームにおいても第一人者であるレイヴェルやゼファードルの実力を以てしても、サビどころかAメロにすら辿り着けず、これまで誰一人クリア者は現れなかった。

そう、現れ『なかった』のだが、つい先日、そんな状況をひっくり返すニュースが流れた。

 

『初音ミクの消失-DEAD END- REALIZE譜面、クリア』…

 

その信じがたいニュースに、当初は誰もがガセだと、釣り記事だと思っていたが、とある動画投稿サイトに突如としてアップされたドレミファステップのプレイ動画、其処には確かに『初音ミクの消失-DEAD END-』のREALIZE譜面をプレイし、完走した光景が映し出されていたのだ。

生きている内に出ないとまで言われたクリア者が現れると言う奇跡に沸き立ったゲーマー達、だがそれを成し遂げたのは、レイヴェルでも無ければゼファードルでも無く、U1を始めとしたゼファードルの弟子達でも無く、

 

『やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!やったのじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

 

『2B』と名乗る無名のゲーマー、幼女に見えなくもない短躯を巫女服で覆い、恐らくはカシューシャを装着しているからだろうか、金髪の間から狐耳が飛び出た様な出で立ちの少女だった。

 

2B(トゥービー)。まさか私達をも凌駕するであろうゲーマーが、こんなにも幼、若いとは驚きですわ。今までこれ程のゲーマーが無名だったのも納得ですわね。とはいえ私達もこんな若い相手に引き下がったままではいられませんわ、天才ゲーマーの名に賭けて!」

 

まさか自分をも超えるであろう才能を有したゲーマーが無名だっただけではなく、自分の半分くらいしか生きていない少女だった事に、当初驚きを隠せなかったレイヴェル、だが直ぐに2Bが持つゲーマーとしての類稀な資質を認め、ライバル心を剥き出しにした。

毎日の様に近所のゲームセンターに通ってはドレミファステップの筐体に向かい、何度失敗しても、息が絶え絶えになろうと、脂汗が流れようと諦める事無く難攻不落の譜面に挑み続けるレイヴェル。

そんな彼女と2Bはそう遠くない未来に邂逅を果たす事となるのだが、それはまた別の話。




次章、ハイスクールDevil×Ex-aid――

「ほっほっほ、求めに応じて来てやったぞい」

とある目的から、突如として来日した北欧の主神、オーディン――

「あの、兵藤さん」
「折角ですし、イッセーと呼んで下さい、ロスヴァイセさん」
「は、はい。では、イッセーさん」

オーディンの護衛として共に来日したヴァルキリー、ロスヴァイセと一誠が接近?――

「初めましてだな、諸君!邪魔しに参った!」

そんな彼らを妨害する存在もまた、日本に襲来――

7章『放課後のMIGHTY BROTHERS XX』


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7章『放課後のMIGHTY BROTHERS XX』
94話_Give Me a Break!


「そういえば2年生は、そろそろ修学旅行の時期ね」

「ああ、3泊4日の日程で京都へ行く事となった。リアス達は?」

「私達も京都ですわ。部長と一緒に金閣寺や銀閣寺と、名所を回ったものですわ」

 

ある日の放課後、此処オカルト研究部の部室、此処でふとリアスが修学旅行について話題に上げた。

そう、一誠達2年生は10月上旬に修学旅行で京都へ行く事となったのである。

その修学旅行の際、5人以上10人未満でグループを組んで活動する事となっているのだが、一誠達のグループは、一誠、ヴァーリ、アーシア、イリナ、そしてゼノヴィアの5人となり、一誠達とは別のクラスである祐斗もまた既にグループメンバーを決めていた。

 

「そうね、けど、3泊4日でも意外と行ける場所は限られてしまうわ。貴方達も高望みせず、詳細な時間設定を先に決めてから行動した方が良いわ。日程に見学内容、食事時間もそうだけど、移動にも案外時間が掛かるから、其処もきちんと入れておかないと、痛い目を見るわ」

「移動の時間まで把握していなかったのが今になって悔やまれますわ。部長ったらこれも見るあれも見るとやっていたら、最後に訪れる予定だった二条城に行く時間が無くなってしまって、駅のホームで悔しそうに地団駄を踏んでいましたわ」

「朱乃、それは言わない約束でしょう?まあ、私もはしゃぎ過ぎたわ。日本好きの私としては、憧れの京都だったから必要以上に街並みやお土産屋さんに目が行ってしまって」

「其処は任せるのにゃ、リアス!計画(プラン)立てに案内、この私がイッセー達の旅をしっかりサポートするのにゃ!」

「いやいや黒歌、黒歌は引率の教師として来る訳だから俺達『だけ』見ている訳には行かないだろう。公私混同は駄目だぞ」

「ちぇー、折角イッセーと一緒の旅行なのに残念なのにゃ…」

 

その修学旅行で昨年、一誠達と同じく京都へ行ったリアス達が実体験を交えた忠告を一誠達に告げると、黒歌が自信満々な様子でそう言い放っていたが、一誠から即座に突っ込まれていた。

今回の修学旅行では2年生を担当する教師であるアーサーの他、本来なら3年生の担当である黒歌もまた、臨時で同伴する事となった。

それは何故かと言うと、

 

「ん?連絡だ、パラドからか。と言う事は、またあの件か…?

もしもし、パラド。俺だ」

『親父。またかと、これで何度目だと、いい加減にしろと思っているかも知れないが、聞いてくれ。

 

 

 

禍の団の連中がまたこの街に乗り込んで来やがった。で、例の通りモノアイの奴が一網打尽にした』

「やはりか。これでもう何度目だろうな」

 

此処最近、禍の団の構成員と思しき集団が、各人外勢力の重要拠点へ頻繁に襲撃を仕掛けているからである。

この街もまた三大勢力が和平を結んだ象徴的な場である事、魔王の妹であるリアスやソーナ、旧魔王の末裔であるヴァーリらが住んでいる事からその対象となっており、一誠達の会話から分かる様に此処の所毎日の様に侵入して来ているのだ。

とはいえ他の拠点ならいざ知らず、バグスター達が日夜パトロールを行っているこの街での襲撃は1つの例外も無く未遂に終わっている、今日もまた何時もの様に侵入して来た所に、全く気付かれる事無く奇襲を仕掛け、全員の捕縛に成功した。

それはともかく、修学旅行で一誠達が行く京都の地もまた、西日本における妖怪達の本拠地『裏京都』があるなど日本神話勢力の重要拠点である、よって禍の団の襲撃も十分に考えられる為、黒歌も同伴する事が決まったのだ。

 

「人員を増やしたり、転移場所を変えたりと対策はしている様だが、それももう何回も仕掛けた結果、俺達相手には、バグスター相手には無意味と理解している筈だ。いや、理解する頭が無いのか?」

『無いんだろうな。無駄だと知らしめているにも関わらず、頻繁に仕掛けて来やがるからなぁ。他の重要拠点にもやたらと仕掛けているみたいだが、殊にこの街への力の入れ様は半端ねぇ』

「確かに毎日無駄な侵入を繰り返すなど、尋常ではない。もしかしたら俺達への襲撃とは別の目的が…?

まあいい、とにかく、引き続き警戒を続けて欲しい」

『了解だ、親父。じゃあな』

 

パラドからの報告を聞き終え、引き続き警戒態勢をとる様伝えて通信を切った一誠。

 

「イッセー、またなの?」

「ああ、まただ。一体何日連続だろうな」

「連中も何を考えているだろうねぃ。バカの一つ覚えみたいにただ送り込むだけとか」

「いや、案外イッセーが先程呟いた様に、連中には別の思惑があるのかも知れない。とはいえ今の所、この街は安泰か。出来れば今の状況が続いて欲しい物だ」

(続いて欲しい、か。俺も変わった物だな。以前だったらこの平和な日常を退屈に思っていただろう。それが今や口から自然と、平和が続いて欲しいと言う様になった。それだけこの日常が充実しているという事かも知れないな。レベルXに至ったライダー達との訓練の激しさを考えれば、それも当然か)

 

その彼の口ぶりから事の次第を把握したリアス達が渋い表情になる中、ふとヴァーリが、自分が呟いた言葉に少なからず驚いていた。

嘗てはその戦闘狂な性格故か禍の団に加入するのではと危惧されたヴァーリ、だが今の充実した日常は、その考えに決して短くない楔を打ち込んでいた。



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95話_知られざるFatherの流行

禍の団による襲撃があったとパラドから報告を受けた次の日、

 

「今日はありがとう、朱乃。俺の誘いを受けてくれて」

「イッセー君とのデートのお誘いですもの、喜んでお受けしますわ」

 

土曜日であるこの日、一誠と朱乃は2人、仲睦まじい様子(恋人なので当然と言えば当然ではあるが)で、駅前の通りを歩いていた。

言うまでも無いが今日は一誠と朱乃のデート、それも一誠から誘った物だ。

夏休み中は禍の団という脅威への不安故に、新型ガシャット開発に精を出し過ぎて彼女達を蔑ろにして来た(と思っている)一誠、だがディオドラとのレーティング・ゲームでの一件により、禍の団において最大の規模を誇った旧魔王派が壊滅した事もあってそれもひと段落し、これからは自分の恋人達との時間を大切にしていこうと決意、まずは此れまで恋人から誘われて行くだけで、計画も丸投げだったデートに、自分からも誘って行く事としたのだ。

 

------------

 

「深海魚って変な顔が多いのね」

「そうだな。地上の俺達や、浅い所の魚達とは見えている物、感じている物が全く違うから、それに適応した果てにああなったのだろう。そうなった訳を考えると奥が深いな」

 

デートが始まって数時間、水族館を回り終わった2人は楽し気な様子でそう言い、再び街中に繰り出した。

其処に至るまでも、高級ブランドの衣料品店では「これ似合う?それともこっち?」と朱乃が洋服を比べたり、ランチの為に入った喫茶店ではお互いに頼んだ物を「はい、あーん」と食べさせ合ったりと、恋愛物のドラマや漫画ではお決まりなシーンが続いた展開を2人は満喫していたが、その楽しさも益々膨れ上がり、何時しか朱乃の口調は何時ものお姉様的な物では無く年相応の女の子のそれだった、が、

 

「ん?あれは…」

「あの見覚えがあり過ぎる後ろ姿、まさか…」

 

ふと通り掛かったゲームセンターで2人が見た光景、それは、その外から見える場所に設置された『バクレツファイターアーケードエディション』――バクレツファイターをアーケード筐体に移植する際、様々な調整・新規要素を施したバージョンである――の筐体を挟む様に、向かい合う形で座った2人の男性、主にプレイする年代からは年が上という意味で大きく外れた2人――片方は一誠も朱乃も見覚えのある、というか朱乃に至っては身内である角刈りの壮年男性、もう片方はラフな格好をし、左眼に眼帯らしき物をつけた老年男性――が、目前の相手に勝って見せると言わんばかりにジョイスティックを素早く、無駄なく操作しているという物だった。

 

「負けませんぞ、オーディン殿!此処で負けては天才ゲームクリエイターの舅の立場が廃る!」

「片腹痛いわ、若造が!ゲームと言えど烏風情がワシに勝とうなど千年早いわ!」

「オーディン様、此処で何時までも油を売っている暇はありません!というかバラキエル様もですが、そんな色々とバラしちゃ不味い事を口にしないで下さい!」

 

その白熱振りたるや、老年男性の秘書と思しき出で立ちをした女性からのツッコミも全く耳に入らない程であった。

 

「お父様、いい年して何をムキになられているのですか…

イッセー君の舅の立場って…」

「あの秘書らしき女性の言う通り、色々と口にしては不味い事言っては駄目でしょうに…」

 

そんな光景に2人は唖然、先程までのムードも何処へやら、ツッコまずにはいられなかった。

 

「ぬぉ!?バラキエル坊、お主やりおるわ、ゲームとは言えこのワシが膝をつくとは…!」

「1、2、3、○ー!ん?あ、朱乃、それに、イッセー君…」

「「何やっているんですかお父様(バラキエルさん)…」」

 

そんな周囲を他所に勝負は決着、接戦の末に壮年男性――バラキエルが勝利を収め、某プロレスラーの如きガッツポーズを上げるが、其処で外から自らの娘である朱乃と、その将来の夫である一誠の姿に気づき、一瞬で気恥ずかしくなったのは言うまでもない。

 

「す、すまん、朱乃、イッセー君。折角のデート中に、とんだ醜態を晒してしまうとは」

「いや、それは良いのですが、何故お父様は此方に?」

 

白熱する余り、グリゴリの幹部として以前に世間一般の大人として普通やらかさない醜態を晒した挙げ句、一誠と朱乃のデートを台無しにしてしまった事を謝罪するバラキエル、流石の2人もどう受け止めたら良いのか分からず、彼が何故秘書を連れた老年男性と共に此処にいるのかに話題を変えた。

 

「ああ、そうだな。実を言うと其処におられる北欧の主神オーディン殿が今回、日本神話に属する神々とこの街で会談を行う為に来日されたのだが、その護衛として私が派遣されたのだ。とは言え会談まで日にちがある、其処でこの街を案内していた末にこのゲーセンに行きつき、オーディン殿からの勝負の申し出に、その、血が騒いでしまい、二つ返事で受けてしまってな…」

 

それを受けて、面白い光景を見たと言わんばかりに笑う老年男性――オーディンを紹介しながら、先程の出来事について説明するバラキエル。

 

「ほっほっほ、初めましてかの、天才ゲームクリエイターISよ。お主が作ったゲーム、大いに楽しませて貰っておるわい。まさかこの歳で人間の生み出せし遊戯に嵌るとは思わなんだ」

「あ、はい。楽しんで頂き、光栄です」

「して、今日はバラキエル坊の一人娘とデートか。仲睦まじさをこれでもかと見せつけるとはやりおる。流石に7人、いやフェニックス家の娘も加えて8人か?その年でハーレムを築く事はある」

「あ。あはは…」

 

紹介を受けて歩み寄って来たオーディンは、一誠がISとして世に送り込んだ様々なゲームを絶賛しつつ、共にいる朱乃を見て2人がデートしている事を察した。

その視線の先を辿ると、その眼は一誠の左手と朱乃の右手が、恋人繋ぎでしっかりと繋がっている状態を捉えていた。

その意図に気付いて照れ笑いをする2人だったが、気恥ずかしさの余り思わず手を放す、という事態にはならなかった。

互いに愛し合って止まぬ2人の想い、絆に何処かほっこりした様子のオーディンだったが、ふと一誠に耳を近付けるよう促し、

 

「其処でお主に相談なのじゃが、

 

 

 

 

 

ワシのお付きのヴァルキリー、名をロスヴァイセと言うんじゃが、あやつを嫁に貰ってくれんかのう?」

「ゑ?」

「あやつは器量良く、見た目も申し分ない。然し先の騒ぎを聞いていれば分かると思うが少々固い所があっての、未だに彼氏いない歴=年齢の生娘ヴァルキリーじゃ。と言ってもまだ19じゃが、このままの調子では何れ行き遅れになってしまうのではないか、其処が心配なのじゃ」

「へ、えーと、その…」

 

そう、秘書らしき姿のヴァルキリー――ロスヴァイセとの婚約を提案された。

思わぬ提案に驚きを隠せない一誠、然し後にこれが現実の物となるのだが、それはまた別の話。



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96話_Odin来日!

「ほっほっほ、求めに応じて来てやったぞい」

 

所変わって一誠達の屋敷。

どうやらオーディン一行の来日が想定よりかなり早かった事から、会談が行われるこの街の管理者であるリアスはこの件についてサーゼクスから何も聞かされなかったらしく、その経緯と屋敷を訪ねる旨を一誠から連絡を受けた彼女の驚き振りは凄まじかった。

ただバガモンや、屋敷の使用人達の尽力もあってかオーディン(及び、サーゼクスと共に会談を仲介していて、来日を受けて急遽駆け付けたアザゼル)を出迎える準備は何とか整えられた。

 

「爺さん、来日するにしては早過ぎねぇか?会談の日程は大分先だと俺は聞いていたが…」

 

その早過ぎる来日の真意を問うアザゼルに、オーディンは白髭をさすりながら、

 

「実を言うとわが国の内情で少し厄介事、というより厄介な輩にわしのやり方を非難されておる。で、事を起こされる前に先手を打っておこうと思ってのぅ」

 

と、ため息をつきながら訳を話した。

 

「厄介事って、ヴァン神族にでも狙われたってクチか?頼むから勝手に『神々の黄昏(ラグナロク)』を起こさないでくれよ、マジで」

 

その訳に、オーディン程の存在が厄介と感じるのであろう事柄を想像して苦笑いを浮かべたアザゼルは、ラグナロク――北欧神話において世界の終末が訪れると言われる日――でも起こるんでは無いかと皮肉気に返した。

 

「ヴァン神族はどうでも良いんじゃがな、まぁ、この話をしていても仕方ないのぅ。話は変わるが、アザゼル坊。どうも禍の団は、禁手に至った神器所有者を増やしている様じゃな。怖いのぅ、あれは稀有な現象と聞いておったが?」

 

が、これ以上この話題を引っ張っても進まないと思ったのか話題を変えたオーディン、その話題に一誠達は驚きを隠せなかった。

タイムリー且つデリケートな話題にも躊躇なく触れた事もそうだが、事態が想像していた以上に大事と化している事に対する物の方が大きかった。

確かに一誠達、というよりこの街でも禍の団が関わる事件は頻繁に起こっているが、その全てがバグスター達の手によって未然に防がれている状態、だが、此処以外もそうとは限らない。

 

「ああ、稀有だ。だが何処かのクズが手っ取り早く、それでいて恐ろしく分かりやすい強引な方法でその稀有な現象を乱発しようとしているって訳さ。もう幾つかの報告が上がっている」

「まさか、禍の団の真意は…!」

 

バカの一つ覚えの如く連続して行われる襲撃、だがそれその物が目的ではないとしたら…

オーディンと、応じたアザゼルの言葉に、一誠は1つの結論に至った。

 

「ああ、お前さんの考えている通りだ。下手な鉄砲も数打ちゃ当たる作戦さ。まず、世界中から神器所有者をかき集める。殆ど拉致だ。次に洗脳を施し、俺らへの敵意を植え付ける。そして強者が集う場所、例えばこの街だな。超常の存在が住まう重要拠点に神器所有者を送り込む。それを、禁手に至る者が出るまで続け、至った奴は強制的に魔法陣で帰還させるって寸法だ。こんなやり方、どの勢力も例え思いついていたとして実際にやれる訳がない。内外から非難に晒された挙句、それを口実とした戦争に発展するからだ。だが奴らはテロリストだからこそそんな手段が選べるって訳だ」

 

テロリスト故の形振り構わぬやり方、それを目の当たりにして怒りにかられると同時に、禍の団の恐ろしさを再認識した一誠達、其処に、

 

「アザゼル、お前その様な事を本気で思っているのか…?」

「バラキエル?お前何を言って」

 

何処か感情を押し殺すようなバラキエルの問い、それに応じようとしたアザゼルだったが、

 

 

 

 

 

「この分からず屋がぁぁぁぁ!」

「がはっ!?」

「お、お父様!?」

「バラキエルさん!?」

 

その言葉が最後まで口にされる事は無かった。

アザゼルの態度が琴線に触れたのか、怒りのままにその顔面をぶん殴ったバラキエル、だがそれだけでは収まらず、吹っ飛びそうになったアザゼルの胸ぐらを掴み、そのまま壁へと押し込んだ。

 

「貴様、この期に及んでまだ真実から目を逸らすか!良いか、禍の団に与する神器所有者は皆、殆どと言って良い位の者達が、自らの意志で加わった輩だ!多少なりとも洗脳を施されてはいたかも知れん、我らに刃を向ける意志が挫けぬ様に、囚われた際芋づる式に捕縛されぬ様にとな!だが彼奴等の我ら人外に向ける敵意は本物だった、洗脳によって植え付けられた薄っぺらいそれとはまるで違う!ではその敵意はどうやって芽生えたか!?

 

答えは単純だ、我ら人外は此れまで人間を力無きものと捉え、見下し、歯牙にもかけずに、今まで足蹴にしてきたからだ!例えば教会は世界のあらゆる地に布教と称してその支配の手を伸ばし、十字軍や魔女狩り、ホロコースト等という形で相容れぬ思想を有した人々を抹殺した!例えば堕天使は表向き、というよりお前が神器所有者の保護を提唱しながらその実組織ぐるみで危険視し、有無を言わさず排除して来た!例えば悪魔は悪魔の駒による眷属化を強引に行い、刃向かった者をはぐれ悪魔として処断して来た!かような事態が続けば、人間が抱く我らへの憎悪は募るばかりなのは自明の理!その憎悪を抱いた人々に神器という力が齎されたとしたら!はっきり言おう、禍の団とはその答えだ!そんな事をも見て見ぬふりをし、今まで通りただ抹殺するだけと言う気か貴様は!?そんな有様では第二、第三の禍の団は雨後の筍の如く生まれるだろう!」

 

バラキエルの怒り、それは長きに渡って人間を軽く見て来た人外達、その失政へ向けられた物だった。

だが同時に、そんな失政に関わって来た自分への怒りでもあった。

 

「こ、これバラキエル坊、気持ちは分からんでも無いが程々にせんか。これからにこやかにせねばならん場に、日ノ本の神々との会談に臨むという時に、その気が萎えては事じゃ」

「はっ申し訳ありません、オーディン殿。見苦しい物をお見せしました。詫びと言える物ではありませんがこれからこの街の、夜の顔をご案内致します。リクエストがあればなんなりと」

「では、おっぱいパブに行きたいのぅ!」

「はは、流石は好色と名高いオーディン殿といった所か。うむ、帰った後の朱璃が怖いが、武士に二言は無し。実を言うと最近、直ぐ其処にグリゴリの若い娘達がVIP向けにそういった趣向の店を開いたらしいのです、其処に招待しますよ。店の者共もオーディン殿が相手だ、大盤振る舞いでしょうな」

「うほほい!分かっておるではないか、バラキエル坊!お堅い烏かと思うたが、先のゲーマー振りといい、お主も話せるではないか!」

「私も欲に塗れ、天から堕ちた者ですから。では行きましょう、オーディン殿!」

 

まさか『お客様』である自分の前でバラキエルが怒りを爆発させるとは思わなかったオーディンは、その剣幕に少し引きながらも窘めた。

バラキエルもオーディンの目前でやって良い事では無かったと気付いて謝罪、その詫びに(殆どなっていないが)と2人で屋敷を後にし、夜の街へと旅立っていった。

 

「バラキエルさんって、あんなキャラだっけ…?」

 

そんな2人には、一誠達の唖然とした声も、

 

「だったら、どうすれば良かったんだよ…!

俺に一体、どうしろって言うんだよ…!」

 

アザゼルのやり場のない思いがこもった声も聞こえなかった。



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97話_襲来、Trickster!

「オーディン様、もうすぐ日本の神々との会談なのですから、旅行気分はそろそろお収め下さい。このままでは帰国した時、他の方々から怒られますよ」

「全く、お主は遊び心の分からぬ女じゃな、ロスヴァイセよ。何時もそんな張りつめていては疲れるじゃろう。もう少しリラックスを覚えたらどうじゃ、其処のバラキエル坊みたいに」

「元気があれば何でも出来る!元気があれば会談も上手く行く!」

「バラキエル様、その物真似、お気に召したのですか…?」

「中の人が嵌れば私も嵌る!有難う!バカヤロー!」

「お父様、メタ発言までしないで下さい、恥ずかしいですわ…」

 

来日してから数日が経過したが、日本の神々との会談に臨む筈のオーディンは緊張感など微塵も感じられず、会談本番が刻一刻と迫る中、護衛として同行している筈のバラキエル達(リアス眷属も、悪魔側の護衛に任ぜられる事となった)を連れ、視察と称して毎日の様に遊び回っていた。

ある時は寿司屋、ある時は遊園地、ある時はゲームセンター、ある時はキャバクラ等々…

様々な場所を遊びまわっている状況にロスヴァイセは毎日の様にツッコミを入れるもオーディンは聞く耳を持たず、その側で某プロレスラーの真似をしているバラキエルを見習えと、父親の醜態に恥ずかしがる朱乃の姿を他所に、ギャグにしか思えない返しをされていた。

尚北欧ではお決まりの返しだったのか、来て直ぐの頃は彼氏いない歴=年齢である事をネタにロスヴァイセをいじっていたオーディンだったが、一誠という彼氏が出来るまで同じく彼氏いない歴=年齢だったアラサーである黒歌の逆鱗に触れ、色々と痛い目を見て以後はそれをネタにしなくなったのは余談である。

 

「あの、兵藤さん」

「折角です、イッセーと呼んで下さい、ロスヴァイセさん」

「は、はい。ではイッセーさん、凄い量のチーズケーキですね。それもベイクドチーズにレアチーズ、チーズスフレ…

それ、1人で食べるのですか?」

 

その中でオーディン達がキャバクラに立ち寄った際、年齢の関係から外で待機する事となった一誠達は其々、思い思いの行動をしていた中、ゲーム開発作業をしていた一誠の所にロスヴァイセがやって来た。

その一誠の周囲には開発作業用のノートPCの他、様々な種類のチーズケーキが、全て4号ホールケーキの状態で置かれていた。

 

「ええ。ゲーム開発は頭脳労働、脳を酷使するので糖分補給は欠かせません。それとどうやら俺、牛乳や乳製品を摂取すると傷や体の不調が回復する体質らしいので、どちらも摂取できるチーズケーキが大好きなんです」

「そ、そうなんですか。オーディン様から伺ったのですが、幼少期より数々の大人気ゲームを世に送り出して来たとか。凄いですね…」

 

とロスヴァイセの疑問に応じながらチーズケーキを口に運ぶ一誠の思わぬ嗜好が判明した一場面もあったがこれも余談である。

それはさておき、そんな賑やかな、というか騒がしい状態な一行を乗せた巨大馬車、オーディンの愛馬である8本脚の軍馬『スレイプニル』が引っ張る巨大馬車の中でただ1人、

 

「はぁ…」

 

深く思い悩んでいる存在がいた、アザゼルだ。

数日前にバラキエルから一喝されたアザゼルはそれ以来、ずっとこの調子である。

それでも昨日まではサーゼクスらとの打ち合わせもあり同行していなかった為、この視察に悪影響を及ぼす事は無かったが…

 

「全く、これからにこやかにせねばならん場に臨むと言う時にそんな辛気臭い顔しおって!シャキッとせんか、アザゼル!」

 

そんなアザゼルの姿にとうとう見かねたオーディンが、彼を叱り飛ばした。

 

「これから1年、10年、いや1世紀先の将来について、いきなり悩んだ所で答えなぞ直ぐに出ぬぞ!それよりも今日じゃ、今日この時をどうすべきかを考えんか!バラキエル坊に喝を入れられた途端ウジウジしおって、これだから小僧だと言うんじゃ!」

 

オーディンが来日して直ぐの頃にバラキエルから指摘された事、それが未だ心に引っ掛かっていたアザゼルの様子を察したオーディンは、今すべき事、考えるべき事に専念しろと諭した。

 

「だったら爺さんは考えているのかよ。爺さんはこれから先の事、そして今日この時をどうすべきか考えているのかよ!」

「考えとるぞ、お主みたいな青二才と違うての。考えた末に答えを見つけた後はもう平気じゃからバラキエル坊と遊んd、ゲフンゲフン、異文化に触れておる訳じゃ。それに」

 

ならばそっちはどうなのかと聞き返すアザゼルに応じるオーディンだったが、

 

「こうやって態と隙を見せて置けば、この前言った厄介な輩がこうして殴り込んで来るからのう」

 

その最中、突如として馬車が大揺れした。

どうやらスレイプニルが急ブレーキを掛けた事で停止した事による物だった様子、それに驚きを隠せない面々の一方、オーディンはどうやらその理由を察していた様だった。

 

「初めましてだな、諸君!邪魔しに参った!我こそが北欧の悪神、ロキだ!」

 

その原因、それは馬車の進路に立ちはだかる、水色の長髪で端正な顔立ちの男――北欧のトリックスターとして名高い悪神、ロキだった。

 

「これはロキ殿、この様な所でお会いするとは。失礼ながら、如何様な御用でしょうか?この馬車には貴方の拠点たる北欧の主神オーディン殿がおられますが、それは承知ですかな?」

 

その存在に驚きを隠せない一同だったが、その中でも(思い悩んだ状態のアザゼルでは役に立たないと判断した)バラキエルが護衛の、堕天使の代表として前に出て、落ち着いた様子で対応していたが、

 

「いやぁ何、我らの主神殿が、我らが神話体系を抜け出で、我ら以外の神話体系に接触して行くのが耐えがたい苦痛でね。我慢出来ずに邪魔しに来たのだ」

「ほう、堂々と言うな、ロキ。この地で刃を交えようという訳か」

 

ロキの答えに態度は一変、殺気剥き出しで対応し出した。

 

「本来、貴様ら堕天使や悪魔、天使達と会いたくは無かったが致し方あるまい。オーディン共々我が粛清を受けるが良い」

「オーディン殿が接触するのには異議を唱えるのに、貴様が接触するのは良いと?明らかな矛盾だ」

「他の神話体系を滅ぼすのなら兎も角、和平をするのが納得出来ないのだよ。我々の領域に土足で踏み込み、聖書を広げたのはそちらの神話だろう」

「生憎だがそれを行った教会に属する者は此処にいない、抗議がしたいのなら此処では受け付けんぞ」

「抗議は後でするとして、主神オーディン自ら極東の神々と和平を結ぶのが問題だ。これでは我らが迎えるべきラグナロクが成就出来ないではないか。ユグドラシルの情報との交換条件で得たい物とは何なのだ、全く」

 

そんな殺気を平然と受け止めたロキとバラキエルの押し問答が始まった。

 

「埒が明かぬか。ならば1つ、貴様の行動は禍の団と繋がりが?いや、律義に答える悪神でも無いか…」

 

それでは得る物は無いと判断したバラキエルが問いかけるも、まともな返事は帰って来ないだろうと思っていたが、

 

「愚者たるテロリストと我が想いを一緒にされるとは不愉快極まりない事だ。これは己の意志だ、テロリストなど関係ない、我が意志で此処に参上している」

 

如何にも面白くないといった様子で、律義に答えてくれた。

 

「禍の団じゃねぇ、と来たか。だがこれはこれで厄介な問題だな。爺さん、これが、北欧が抱える問題って訳かい?」

「うむ、どうにも頭の固い奴がまだいるのが現状じゃ。こういう風に自ら出向くアホまで登場するのでな」

 

その問答を後方にて聞いていたオーディンとアザゼルは、禍の団関連では無いにしても厄介である事に変わりのないこの事態に渋い顔をしながら馬車から出て来た。

 

「ロキ様、これは越権行為です!主神に牙を剥くなど許される事ではありません!然るべき公然な場で異を唱えるべきです!」

「一介のヴァルキリー如きが、我が邪魔をしないでくれたまえ、我はオーディンに聞いているのだ。オーディンよ、まだこの様な北欧を越えた行いを続けるお積りか?」

 

同じく出て来たロスヴァイセが、臨戦態勢とでも言うべきか鎧姿となりながらもロキに物申していたが、彼は聞く耳を持たず、オーディンに迫る。

 

「そうじゃよ。少なくともお主よりサーゼクスやアザゼル、後バラキエルじゃな、こ奴らとコミュニケーションをとる方が万倍も楽しいわい。日本の神道を知りたかったし、向こうも此方のユグドラシルに興味を持っていた様でな。和議を果たしたら互いに大使を招き、異文化交流をしようと思っただけじゃ」

「認識した。なんと愚かな事か。

 

 

 

此処で黄昏を行おうではないか」

 

それを受けたオーディンの答え、それはロキにとってはふざけるなと言いたくなる物だった様で、ラグナロクを行おうと宣言した。

 

「それは宣戦布告という訳だな」

「如何にm」

『ギャァァァァァァァァ!?』

「なっフェンリル!?何時の間、に!?一体どうしたのだその深い傷は!?」

『ガ、アァ…!』

 

バラキエルの確認に応えようとしたロキ、だがそれは突如として現れた存在の叫び声で中断させられた。

それは体長10mを越していそうな巨体の狼――ロキの息子、フェンリルだった。

だが今のフェンリルは息も絶え絶え、何か苦痛に耐えている様子であり、その身体から流れ出たらしき血の池が地面に広がり出していた。

 

「またイリナに、風魔に助けられたな」

 

その要因にいち早く気付いた一誠、その視線の先には漆黒の装甲で覆われた白髪の戦士――ライジングゲーマーレベルXとなった風魔が、ロキ達を挟んで一誠達の反対側に、ガシャコンニンジャブレードを振り切った状態で立っていた。

良く見るとその刀身は血らしき液体で覆われているのか、赤黒く染まっていた。

そう、ロキが宣戦を布告したその瞬間、風魔に変身したイリナが奇襲を仕掛けたのだ。

軽く走るだけで音速を越える素早さを有するライジングゲーマーレベルXとなった風魔の奇襲には流石のロキも反応出来ず、親の危険を第六感で察知し駆け付けたフェンリルも出来る事と言えば、風魔の前に立ちはだかってロキを庇う事だけ。

大した抵抗も出来なかった末、その腹部は深々と袈裟斬りされ、立っているのもやっとな状態に至ったのである。

 

「くっ!今日は一旦引き下がるとしよう!だがオーディン!この国の神々との会談の日、またお邪魔させて貰おう!その時こそ我と我が子フェンリル『達』が、その喉笛を噛み切って見せよう!」

 

ロキもそれに気づき、このまま戦うのは不利と判断したのか、その捨て台詞を残し、何かしらの転移術式を使って消えていった。



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98話_第二次Kamen Rider Wars!

翌日の一誠達が住む屋敷、此処には住人達の他、アザゼルにバラキエル、ロスヴァイセ、そして昨日までは護衛に参加していなかったヴァーリ達が集結し、会談を妨害すべく来日したロキへの対応を協議していた。

因みにロキの襲撃対象であるオーディンは現在、ロキの襲撃に関して北欧に建てられし己が本拠ヴァルハラと連絡を取っている為に、此処にはいない。

また、ロキが襲撃の為にフェンリルを連れて来た事、そのフェンリルが風魔の奇襲によって深手を負っている事を聞かされたヴァーリは「勿体ない事をした、フェンリルがいると分かっていたら加わっていた」と渋い表情で呟いた為に「この戦闘狂が」とツッコミを受けていた。

 

「フェンリルに深手を負わせたのは僥倖だな。奴の実力は全盛期の二天龍に引けを取らねぇ程、ロキもその力を頼りにしていた筈だ。それが満足に動けねぇ程の傷を負わされたとなれば、向こうの戦力は大いに削がれたと言って良いだろ」

「やったな、イリナ。コカビエルの時もそうだった、お前の一撃が活路を開いたんだ」

「イッセー君のお陰だよ。イッセー君という存在が、イッセー君が生み出した仮面ライダー風魔の(ガシャット)が、私に立ち向かう勇気を齎してくれた」

 

その冒頭、ロキ側の重大戦力であろうフェンリルに対してその力を大きく削いだであろう深手を負わせた事が話題に上がり、それを成し遂げたイリナを褒め称えるかの如く、一誠は彼女の頭を撫でていた。

 

「ただ、それでも向こうは諦めた様子は無い、また襲撃すると言い残していた。となれば、フェンリル程では無いにしても強力な存在を率いているに違いない。先程ロスヴァイセ殿が物申していた通りこの一件は越権行為、目的を達しようと達せずともロキの北欧での居場所はもう無い、ならば必ずや成し遂げると言わんばかりに、戦力を整えているだろう」

「だろうね、バラキエル。フェンリルにはスコルにハティという息子がいたという話は良く知られている。会談の日にはそいつ等や、他にもそれに準じた存在を投入するかも知れないね、今からワクワクするな」

「馬鹿者。今回は失敗の許されない実戦だぞ、緊迫感を持って臨まないか」

「あ痛」

 

とはいえロキ側がそれで諦めた訳では無い、となればフェンリル抜きでもオーディンを殺せる程の戦力を有しているに違いないと気を引き締めた。

その際にロキ側が抱えているだろう強大な存在との戦いを熱望していたヴァーリに、バラキエルが頭を小突きながら窘めていたが余談である。

 

「となると、此方も出し惜しみする訳には行きませんね。レイヴェル、初めての実戦がとんでもない相手となってしまうが…」

「お任せ下さいませ、イッセー様!相手が誰であろうと天才ゲーマーLの力、見せつけてやりますわ!」

 

バラキエルの言葉を受け、此方も持てる戦力をつぎ込まねばならないと危機感を抱いた一誠だが、適合術式を受けたばかりのレイヴェルを投入するのは躊躇いがあった様子だった。

然し心配ご無用といった様子で答えるレイヴェル、その手にはギリギリチャンバラガシャットと、青と黒を基調としたガシャコンバグヴァイザーが握られていた。

 

------------

 

そして数日が経過し、会談当日となったこの日、会談の当事者であるオーディン、仲介役を担っているアザゼルが既に会場である、高級ホテルの一室に移動した中、リアス眷属、ヴァーリチーム、ロスヴァイセ、そしてバラキエルはその屋上で、襲撃を仕掛けるだろうロキに対応すべく待機していた。

 

「時間ね」

 

左腕に着けていた腕時計を見て会談が始まったのをリアスが確認したその時、

 

「来たぞ、皆!」

『ステージ・セレクト!』

 

ホテル上空の空間が歪み出したのを確認した一誠達、即座にステージ・セレクト機能を起動させ、自分達とロキを異空間へと転移させ、

 

『マイティブラザーズダブルエックス!』

『デンジャラスゾンビ!』

『ときめきクライシス!』

『ギリギリチャンバラ!』

『ハコニワウォーズ!』

『開眼ゴースト!』

『PERFECT PUZZLE!What’s the next stage?』

『KNOCK OUT FIGHTER!The strongest fist!Round 1!Rock & Fire!』

『TADDLE FANTASY!Let’s going king of fantasy!』

『BANGBANG BURSTER!I ready for battleship!』

『BAKUSOU TURBO!Are you ready!Attention!』

『HURRICANE RISING!』

「だーい…!」

「グレードX!」

「アンコールエクストラステージ!」

第七戦略(セブンス・ストラテジー)!」

「全消し連鎖!」

「ファイナルラウンド!」

「術式レベルX!」

特殊戦術(スペシャル・タクティクス)!」

「爆速!」

「チャプターX!」

「「「「「「「「「「「変身!」」」」」」」」」」」

『ダブル・ガシャット!ガッチャンガッチャンガッチャーン!ダブルアップ!俺がお前で!お前が俺で!ウィーアー!マイティマイティブラザーズ!ヘイ!ダブルエェェェェックス!』

『『『『ガシャット!』』』』

『『『バグルアップ!』』』

『デンジャー!デンジャー!ジェノサイド!デス・ザ・クライシス!デンジャラスゾンビ!ウゥゥゥ!』

『ギリ、ギリ、ギリ、ギリ!成敗!チャンバラァァァァ!』

『ドリーミング・ガール!ぱわー!恋のシミュレーション!乙女はい・つ・も・ときめきクラシス!』

『ガッチャーン!レベルアップ!ハコニワウォーズ…!

アガッチャ!ゴー!ゴゴー!ゴゴー!開眼!レッツゴー!ゴー!ゴゴー!ゴゴー!開眼!覚悟!』

『『『『『『デュアル・ガシャット!ガッチャーン!デュアルアップ!』』』』』』

『ゲット・ザ・グローリー・イン・ザ・チェイン!パーフェクトパズル!』

『エクスプロージョン・ヒット!ノックアウトファイター!』

『辿る巡るアールピージー!タドォォォォルファンタジー!』

『スクランブルだ!出撃発進!バンバンバースター!発進!』

『爆走!独走!激走!暴走!バァァァァクソウターボ!』

『レッツスニーキング!ハリケーンライジング!』

 

何時もの手順で変身した仮面ライダー達。

そんな中、青と黒を基調としたガシャコンバグヴァイザー――ガシャコンバグヴァイザーⅣをバグルドライバーⅣにして装着していたレイヴェルと、ガシャコンバグヴァイザーⅢをバグルドライバーⅢにして装着していたアーシアは、リアスと同じ手順で変身動作を終えた。

するとレイヴェルの前には青のパネルが出現、それがレイヴェルの身体を通過した途端、彼女の身体が青い炎に包まれ、やがてそれが消え去るとその姿はレーザーのチャンバラバイクゲーマーレベル3が青い炎を纏った様な姿――仮面ライダーレーザーX・チャンバラゲーマーレベルXとなった。

次にアーシアの前にはパステルカラーのパネルが出現、それがアーシアの身体を通過した途端、彼女の身体がハート型のエネルギーで覆われ、やがてそれが消え去るとその姿は胸部のディスプレイが覆われた以外はレベル2とほぼ変わらないポッピー――仮面ライダーポッピー・ときめきクライシスゲーマーレベルXとなった。

 

「「ノーコンティニューで、クリアする(わ)!」」

「ノーコンティニューで、未来を切り開きますわ!」

「ポパピプペナルティ、退場!」

「命、燃やします!」

「私の掌の上で踊るが良いにゃ!」

「心の滾りのままに、ぶん殴ります!」

「これより、邪神切除手術を始める!」

任務開始(ミッション・スタート)ですわ!」

「ノリ良く行かせて貰おう!」

「さあ、振り切っちゃうよ!」

「総員、迎え撃つぞ!」

「さあロキ!俺を楽しませろ!」

「行くぜ行くぜいくぜぇ!」

「蘇りし教会のエクスカリバー、その力、早速使わせて頂きますよ」

「行きます!」

「オーディン様達は必ずお守りします!」

 

迎撃準備を終えた彼らは、その姿を露わにし出したロキ達との戦闘を開始した…!



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99話_Inflationとは恐ろしい

投稿が遅くなってしまった上、途中で切る形となりすいませんでした。



「我らを自分達ごと異空間に閉じ込めるとは小癪な、だがまあ良い。貴様らを血祭りに上げた後で」

『ガッチャーン!キメワザ!ガッチャーン!バンバン・クリティカル・ファイヤー!』

「一斉射撃ですわ!」

 

オーディンを襲撃すべく、会談が行われるホテルの近くへと転移した筈のロキ達だったが、着いた先は採石場らしき場所、其処からエグゼイド達が行った妨害に気付き毒づくも、最後まで口にする事は出来なかった。

先日の風魔に続けと言わんばかりにゲーマドライバーのレバーを開閉したスナイプ、それによって全身の砲塔全てにエネルギーが収束、掛け声と共に砲撃の嵐がロキ達へと襲い掛かったからだ。

 

「やりましたか?」

「朱乃、それは良く聞くフラグという奴では無いか?」

 

砲撃によって巻き上がる大量の砂煙によって敵の状況を確認できない中、スナイプの発言にバラキエルがメタ発言でツッコミを入れていたが、

 

「やってくれるな、まさか今の砲撃でフェンリルの子5匹に、ミドガルズオルムのコピー5体がやられるとは…!」

「やったかと言ったら本当にやっていたとは、何処のRPG最弱ラスボスだ?」

「いやバラキエルさん、ロキ本人がやられた訳ではないんですから油断しないで下さい」

 

砂煙が晴れると其処にはやはりと言うべきか、無傷な状態のロキが、フェンリルとよく似た狼らしき存在と、緑の龍らしき存在と共に此方を睨み付けていた。

だが全く効いていないかと言えばそうでも無く、彼らの前方に、5匹のフェンリルらしき存在と、5体の龍らしき存在が息も絶え絶えの状態で横たわっていた。

 

「だがまだだ!此方には魔王共にも匹敵する戦力を揃えている!こ奴らの力で貴様らを見殺しにしてくれる!掛かれ!」

「来るぞ、心して臨め!」

「行くわよ、皆!」

『了解!』

 

それでもまだフェンリルらしき存在――ロキ曰くフェンリルの子だという存在は、怪我の影響が未だ残るフェンリル自体を含めて6体、ロキの子の一体であるミドガルズオルムのコピーだと言う緑の龍も6体いる、それを認識したエグゼイド達はフェンリル達を制圧すべく突撃した。

 

「そんな攻撃、僕には効かないよ!」

 

エグゼイド、XXL側のエグゼイドは、ダブルアクションゲーマーレベルXXの最大のウリと言って良いSMSを活かした捨て身(実態は全然違うが)戦法でフェンリルの子へ着実にダメージを与え、

 

「グレードXに、超越者であるお兄様と同じ域に至った私にはどんな攻撃も通じない!その事実を思い知って絶望すると良いわ!」

 

ゾンビゲーマーレベルXの特性を活かしたゲンムもまた捨て身(実態は全然ry)戦法でミドガルズオルムのコピーを甚振り、

 

「行くよ!」

 

ブレイブはフェンリルの子からの攻撃を障壁等で防ぎながら剣撃を繰り出し、

 

『マッスル化!鋼鉄化!分身!』

「「「「「「食らうのにゃ!」」」」」」

 

パラガスは本来一度に1つずつしかその効力を発揮出来ないエナジーアイテムを、パーフェクトパズルゲーマーレベルXの特性故か複数同時に使用、その効果を発揮させ、パンチ力と防御力を強化した状態で生成した複数の分身体と共にミドガルズオルムのコピーをボコボコにし、

 

「ふっ!やぁっ!」

『グォォォォン!』

「デカい癖してすばしっこい…!

ノックアウトファイターゲーマーでは厳しいですか、なら!」

『PERFECT PUZZLE!What’s the next stage?』

「超変身!」

『デュアル・ガシャット!ガッチャーン!デュアルアップ!ゲット・ザ・グローリー・イン・ザ・チェイン!パーフェクトパズル!』

『伸縮化!高速化!』

「避けようとすると却って痛いですよ!」

 

ノックスはミドガルズオルムのコピーによる蛇の如き身のこなしに当初は苦戦していたが、ゲーマドライバーに装填していたガシャットギアデュアルαを抜き取り、ダイヤルを半回転させて再び装填すると、その身を青い炎で包まれながら両手に装着されていたグローブ型装甲――マテリアライズアーマーが両肩に装着、仮面ライダーノックス・パーフェクトパズルゲーマーレベルXとなり、姉のパラガスと同じくエナジーアイテムを複数同時に使用、鞭の様にしなる両腕を振るう事で戦況を引き寄せ、

 

「ほらほら!ぼさっとしていると首が飛ぶよ!」

 

先日フェンリルに大ダメージを負わせた風魔は持ち前の素早さを今回も大いに発揮してフェンリルの子を翻弄、

 

「デュランダルとガシャコンスパロー、どちらの露となるのが望みか?」

 

レーザーは鎧として装着していたバイクパーツをある時は分離してバイクとして使用、ある時は再び鎧として装着するといった変幻自在な立ち回りをしながら、右手のデュランダルと、左手のガシャコンスパローによる二刀流でミドガルズオルムのコピーを切り刻み、

 

「其処です!」

 

レーザーXは、親譲りのスピードを活かして翻弄しようとしたフェンリルの子の気を削ぐかの如く攻撃をいなし、或いはカウンターを決め、距離を取ろうとすれば一瞬の踏み込みでそれを詰める。

 

『DivideDivide!』

「温いな、ロキ!俺は、俺達は常日頃こいつ等以上の相手と本気の実戦を積んでいる!」

 

ライダーではない者達も負けてはいない。

白龍皇の鎧を身に纏ったヴァーリはその力を如何なく発揮してミドガルズオルムのコピーを一方的に攻め立て、

 

「その程度、ブレイブの剣撃に比べたら!」

 

アーサーはフェンリルからの攻撃を正確に回避しながら、コールブランドともう一つの聖剣――欠片が全て揃った事で蘇った教会のエクスカリバーとの二刀流で立ち回り、

 

「おいおい、これで魔王級かい?」

 

美猴は何時も通りの戦法で、ミドガルズオルムのコピーを相手に有利な戦いを繰り広げている事に関して(相手の強さに)疑問を隠さず、

 

「元気があれば魔王級の相手でもボコボコに出来る!」

 

バラキエルは某プロレスラーの真似が嵌り過ぎて戦闘中の今でも抜け切らない中、フェンリルの子を相手に自慢の雷光を振るい、或いはラリアットやミサイルキック、果てはバックブリーカーといったプロレス技を積極的に仕掛けていた。

 

「ロスヴァイセさん、俺の側から離れないで下さい!」

「は、はい!イッセーさん!」

「偉人の皆様、お願いします!」

「皆さん、狙い打ちますわよ!」

「了解です、朱乃さん!」

「ピプペポ、パワーです!」

 

一方で前衛をレベルXXL側のエグゼイドに任せたレベルXXR側のエグゼイド、砲撃に特化したスナイプ、他のライダーと比べて現時点でのスペックで劣るクロノス、魔法使いであるルフェイ、そしてロスヴァイセは、後方から魔法や武装による砲撃を行ったり、パーカーを纏った幽霊らしき存在を呼び出したりしての援護に終始し、同じく後方から様々な術式を繰り出すロキの攻撃を阻止したり、フェンリルの子やミドガルズオルムのコピー達にダメージを与えたりしていた他、変身者の性格故に後衛に回っていたポッピーも、ハート型のエネルギーを仲間達へと放出し、力の底上げをしていた。

前線に立つ8人のレベルX(魔王級)ライダー、そのレベルXライダー達と日々本気に近い実戦訓練を欠かさないヴァーリ達、そしてバラキエルと、個々の戦力でも有利に戦える上、アウトレンジからライダー達の攻撃が一方的に降り注いでいる状況となればどうなるか、

 

「馬鹿な、こんな事があってたまるか…!

神であるこの私がこの時の為に揃えた戦力が、人間の生み出した玩具如きに劣る等と言う事が…!」

 

その答えはロキの腹立たしいと言わんばかりの表情と言葉通り、此方側が圧倒する態勢になる、という事である。

その状況を打開しようと、ロキはしまっていた『何か』を取り出そうと懐に手を伸ばす…

 

『クリティカル・デッド!』



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100話_Revoltは終わり、そして…

『クリティカル・デッド!』

「な、なんだ貴様ら!?くっ!」

 

圧倒的不利な状況を打開すべく、懐から『何か』を取り出そうとしたロキだったが、突如として己の周囲を囲む様に出現したゲンムらしき大軍に驚き、対処せざるを得なくなってしまった。

 

「皆、ロキが隙を見せたわ!今が仕掛け時よ!」

『了解!』

 

無論それはゲンムが、バグルドライバーのAボタンとBボタンを同時押しした後にBボタンを押した事で発現した物、それによってロキが此方への攻撃を行えなくなったのを見た彼女は今こそ決着の時と呼びかけた。

 

『『『『『『ガッチャーン!キメワザ!ガッチャーン!』』』』』』

『マイティブラザーズ・クリティカル・ストライク!』

『タドル・クリティカル・スラッシュ!』

『『パーフェクト・クリティカル・コンボ!』』

『バクソウ・クリティカル・ブースト!』

『ハリケーン・クリティカル・スパイク!』

『クリティカル・ダイセツダン!』

『クリティカル・ドリーム!』

『ガシャット!キメワザ!開眼・クリティカル・ストライク!』

 

その呼びかけを受け、各々は必殺の一撃を叩き込むべく準備を行う。

ライダー達やヴァーリらは其々所定の動作を経てエネルギーを貯める一方、アーサーは教会のエクスカリバーの切っ先をフェンリルへと向け、

 

「で、では行きます!ミュージック・スタート!」

 

そして、解放した。

まずはポッピー、何処からともなくマイクらしき物を取り出し、呼び掛けと共に何故かBGMが流れ出したのを見計らって歌い出し、身体からパステルカラーのエネルギーを放出、仲間達に分け与え、

 

「行くよ、ファザー!」

「ナイスだ、ゲノムス!」

「「セイヤァァァァァ!」」

 

エグゼイドは、前線にいたXXL側がフェンリルの子を上空へと吹っ飛ばし、それを見計らったXXR側と同時に飛び蹴りを放ち同時に直撃、

 

「「「「「「どりゃぁぁぁぁぁぁぁ!」」」」」」

「ゴム○ムの銃乱打(ガトリング)!」

 

パラガスは複数の分身体と共に、ノックスは上空から、ミドガルズオルムのコピー体にパンチの嵐を浴びせ、

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ブレイブは膨大なエネルギーを纏ったガシャコンソードを、避けようとしたフェンリルの子へと狙い違わず振り下ろし、

 

「ふっ!やぁっ!食らえ!」

 

レーザーはバイク型の鎧からの砲撃、タイヤパーツを回転させての打撃、デュランダルによる斬撃、そしてガシャコンスパローによる射撃と、多種多様な攻撃をミドガルズオルムのコピー体に食らわせ、

 

「あたたたたたたたたた!」

 

風魔はフェンリルの子にガトリング砲と思しきキックのラッシュを繰り広げ、

 

「これで終わりですわ!」

 

レーザーXはフェンリルの子の急所を見抜き、其処に寸分の狂いも無く手刀を叩き込み、

 

「英雄の皆さん、力をお借りします!」

『応!』

 

クロノスは、自らが身に纏うパーカーと同じ様な姿の、様々な色の幽霊らしき存在を多数呼び出して共に突撃、ミドガルズオルムのコピー体に連携して攻撃、

 

『HalfDimension!』

「これでトドメだ!」

 

ヴァーリは己の神器の力を応用し、ミドガルズオルムのコピー体の身体を半分にしつつ魔力の砲撃を放ち、

 

「そらよっとぉ!」

 

美猴は何かしらの術式でミドガルズオルムのコピー体を完全に拘束、

 

「ダァァァァァ!」

 

バラキエルはフェンリルの子に、雷光を纏った強烈なアッパーを炸裂させて昏倒させ、

 

「これが蘇りし教会のエクスカリバー、パクリと言えど凄まじい力ですね」

 

そしてアーサーは切っ先を向けていた教会のエクスカリバーの力を解放、するとフェンリルがまるで闘争心が無くなったかの様に大人しくなり、それを見たアーサーが指を鳴らすと魔法陣が出現、そのままフェンリルは転送されていった。

 

「締めはこれで行きます!超変身!」

『デュアル・ガシャット!ガッチャーン!デュアルアップ!エクスプロージョン・ヒット!ノックアウトファイター!』

 

これで残るは大将であるロキのみ、それを受け空中にいたノックスは再びファイターゲーマーレベルXとなり、

 

『ガシャット!キメワザ!』

『ガッチャーン!キメワザ!ガッチャーン!』

 

そのまま必殺の一撃を叩き込むべくレバーを開閉する、同時にXXR側のエグゼイドも、マイティブラザーズXXガシャットをガシャコンキースラッシャーのスロットに装填、するとXXL側のエグゼイドにもガシャコンキースラッシャーとそっくりな武器が装備された。

 

「こんな事が許されてなるものか!人間の生み出した玩具如きに神が屈するなど!」

「イッセー先輩が生み出した」

「僕達仮面ライダーの力!それは」

「お前が脅かそうとした、日常の可能性だ!」

『ノックアウト・クリティカル・スマッシュ!』

『マイティブラザーズ・クリティカル・フィニッシュ!』

「ふざけるな、ふざけるなぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

最早万事休すな現状を受け入れられないといった様子のロキに対し、自分達の強さの秘訣を、平和な日常の大切さを突きつけながら、2人のエグゼイドが持つガシャコンキースラッシャーから放たれたエネルギーに右拳を添え、着地したノックスもまた一直線に向かいながらストレートパンチをロキへと放ち、

 

「がばぁ!?」

『GAME CLEAR!』

 

彼の顔面へと叩き込んだ。

北欧、いや、世界でも随一と言って良い狡猾さからトリックスターとして名高い悪神ロキ、その反逆はこうして終わりを迎えた。

 

------------

 

「ロスヴァイセ、お主に新たなる指令を与える。これはお主にしか出来ぬ物じゃ、是非とも受けて欲しい。何、お主にとっても悪い話ではない」

「オーディン様、その、指令とは…?」

 

その夜、日本神話の神々との会談を終えたオーディンはロスヴァイセを呼び出し、何時になく真剣な様子でそう告げた…



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101話_Valkyrieの嫁入り

オーディンと日本神話の神々との会談から数日が経過したある日、

 

「義父さん、此処に俺との会談を望む方がおられるとの事ですが…」

「詳しくは向こうから口止めされているから言えないけど、イッセー君にとって馴染みのある、他勢力の方だよ。本来ならこの件には魔王様が同行すべきと言って良い程の存在なんだけど、外交担当であるセラフォルー殿は拒否を貫いているし、サーゼクスも色々と手が離せない様でね、魔王の親であり、イッセー君の義理の父でもある私が代行として選ばれたのさ。セラフォルー殿も最近、我儘が過ぎるのでは無いかな…?」

 

他勢力の存在から会談を申し込まれた一誠と、その案内をする事となったジオティクスの2人は、魔王領ルシファードのとあるホテルに到着し、一誠との会談を望む存在が待っているだろう部屋へと向かっていた。

その折、己が今回の会談で同行を任ぜられる事となった経緯を思い出し、他勢力との交渉担当であるにも関わらず拒否の姿勢を貫いたセラフォルーへの不満をぶつぶつと呟き始めるジオティクスだったが、余談である。

 

「ほっほっほ、今一度来たぞい」

「い、イッセーさん、今日はよろしくお願いします」

「お、オーディン様に、ロスヴァイセさん!?何故此処に!?」

 

他勢力の偉い人らしき存在が待っているであろう部屋へと辿り着き、入室する一誠とジオティクス、其処には、会談後直ぐに帰国した筈のオーディンと、ロスヴァイセの2人がいた。

 

「ISよ、初めて会うた時に話した事を覚えておるか?」

「話した事…まさか?」

「そうじゃ、ロスヴァイセを嫁に貰ってはくれんかと頼んだじゃろう、

 

 

 

その事で今日は改めて、ロスヴァイセ本人も交えて話をしようと思うてな。これは事前にお主の義兄であるサーゼクスにも話しておる、向こうも乗り気でのう、後は当人同士がどう思うておるかのみ。其処で今日、その場を設けて貰ったのじゃ。ささ、立ち話も何じゃ、はよう座らんか」

「あ、はい」

「失礼します、オーディン殿」

 

北欧に帰った筈のオーディンとロスヴァイセが何故いるのか思わず聞く一誠、それに対するオーディンの答えはなんと、

 

「あ、改めまして、オーディン様の秘書である、ロスヴァイセと申します」

「は、はい。改めまして、リアス・グレモリー様の『兵士』、兵藤一誠と申します」

「随分堅苦しいのぉ、お見合いかっ!」

「事実上のお見合いですよ、オーディン殿」

 

一誠とロスヴァイセとのお見合いの為の再来日だった。

 

------------

 

「どうかなイッセー君、1人の男としてロスヴァイセさんは?」

「そうですね、義父さん。以前オーディン様がおっしゃっていた通り、色んな所に気配りの出来る、しっかりした女性だと、魅力的な方だと思います。俺自身、一度でも使うと決めたらタガが外れたかの様にお金を使い込んでしまう面があるので、そういう時に手綱を引いてくれる方がいると有難いですね」

 

一誠もロスヴァイセも何処か緊張した様子で始まったお見合いだったが、既に見知った仲だったが故、直ぐに会話は弾み、其々の人となりを色々と知って行くにつれ、お互い相手に惹かれていっていた。

 

「ロスヴァイセさん、オーディン様から聞いているとは思いますが、俺には既に8人もの恋人がいます。もし貴方と、その、結婚を前提とした関係になるとしても、貴方には寂しい想いをさせてしまう」

 

とは言え一誠には既にリアス、朱乃、アーシア、白音、黒歌、イリナ、ゼノヴィア、そしてレイヴェル…

既に8人も恋人がいる身、そんな自分を受け入れてくれるのか、と不安になった一誠が聞こうとしたが、

 

 

「わたすは何番目でも構わねぇだ!イッセーさがわたすの事を想ってくれるなら!」

 

 

それは杞憂だった。

 

「わたす?」

「ねぇだ?」

「…ロスヴァイセよ、素が出ておるぞ」

 

ロスヴァイセの口からふと出た、方言丸出しな言葉遣いに一誠とジオティクスがポカンとしている一方、オーディンは彼女の『素』の言動に頭を抱えていた。

 

「はっ!?す、すいません、つい慌てた時の癖が…

い、イッセーさん、今のは忘れて」

「…可愛い」

「ふぇっ!?か、可愛い、ですか?」

 

ロスヴァイセも思わず出てしまった己の『素』に恥ずかしくなったのか慌て、呆れられてしまったかと焦る彼女だったが、一誠の反応はまるで違っていた。

ロスヴァイセの思わぬ一面が可愛く見え、また少し彼女に魅力を感じたのだ。

 

「ロスヴァイセさん。俺で良ければ、宜しくお願いします!」

「はい!此方こそ不束ですが宜しくお願いします、イッセーさん!」

 

色々とハプニングがあったが、こうしてロスヴァイセは一誠の婚約者になったのだ。

 

------------

 

「うーん、やはりコイツを通常サイズのガシャットに押し込むのは、今の技術的に無理があったか…」

 

ロスヴァイセが一誠の婚約者として悪魔勢力に移籍、その折にリアスの戦車として転生し、駒王学園の公民教師に就任してから数日が経ったこの日、一誠は自室にて渋い顔をしながら、完成したばかりの、いや、完成したとは正直言えそうもないガシャットを見つめていた。

『TADDLE LEGACY』の文字と威風堂々とした騎士が佇む姿がデカデカと描かれたラベルが貼られたそのガシャットは、白を基調とした本体部がまるで大理石の様な風合い、金色のグリップガードがアンティーク調の形状となっている等、今までのガシャットとは違った豪華な外見となっていた。

だがその本体部は所々破損によって基盤が剥き出しになり、其処から断線したらしい配線が飛び出してしまっていて、端子部にすら配線が無造作に飛び出してしまっていた。

 

『タドrル、レガsシー!』

「一応ライダーガシャットとして使えなくは無い様だが、破損している状況下で酷使させる訳にも行かない、ロスヴァイセに何かあっては不味い。後でコイツのデータをデュアルサイズのガシャットに移植し、ガシャット本体は捨てよう。デュアルサイズのガシャットなら問題なく収まる筈だ」

 

とは言えスイッチを押せば、タイトルをコールする声と共に、一誠の背後にラベルのそれと同じ絵柄のスクリーンが登場する事から、ライダーガシャットとして使える状態ではある。

然しながらタイトルコールの声が途中で途切れたり、スクリーンもノイズが走ったりで、十全に使えると言えないのは明らかだった。

例によってバグスターウィルスに対する免疫付加処置を施され、ライダーに変身出来る程の適性が判明していたロスヴァイセに渡す予定だったこのガシャットだがこんな状態で渡して、それを使用した彼女の身に何か起こってしまったら、そう危惧した一誠は、デュアルサイズのブランクガシャットにデータを移し替える事にし、破損してしまった方は廃棄する事を決めた。

 

(ちゃんと使えるのに捨てるなんて勿体ないですよ、イッセーさん!そのガシャットは私用のみたいですし、捨てる位なら貰っちゃいます!)

 

そんな一誠の言葉をロスヴァイセがしっかり聞いていて、それを受けて彼女が勿体ない精神丸出しにしていたとは、彼は気づかないままだった…




次章、ハイスクールDevil×Ex-aid――

「京都と言えばてんいち始まりの地!折角京都に来たんだ、てんいち総本店で昼飯にしようじゃないか!」
「ヴァーリって、こんなにテンション高かったっけ…?」
「確か美猴が言っていたな、ラーメンの事となると人が変わると」

修学旅行で京都の地へとやって来た一誠達――

「IS殿、母上をお頼み申しまする!」

だがこの地にも、禍の団による魔の手が迫っていた――

「八坂殿、我々と共に来て頂こうか」

京都の妖怪達を統べる八坂の身を狙う、禍の団・英雄派――

「会いたかったぜ、クソ兄貴!」
「俺は会いたくなかったよ、クズが…!」

そして、思わぬ存在との、再会――

8章『修学旅行はHURRICANE NINJA』



お久しぶりです、不知火新夜です。
また投稿が遅くなってしまってすいませんでした。

さて、今後の予定ですが、6月中は諸事情がある為、8章の投稿は7月になってからとさせて頂きます。
続きを待っている方、本当にすいません。


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8章『修学旅行はHURRICANE NINJA』
102話_School Tripの始まり


「皆、昨日リアスから渡された『フリーパス』は忘れていないかにゃ?」

「言わばパスポートと同じですからね、このパスは」

「勿論だ、黒歌、ロスヴァイセ」

「は、はい!大丈夫です!」

「これが無いと京都に行けませんからね」

「イッセー君との旅行をうっかりで台無しには出来ませんから」

「ああ、問題ない」

「折角の旅行を不意にするヘマはしないさ」

 

10月上旬のある日、遂に迎えた修学旅行の日。

屋敷から徒歩数分で辿り着いた駅前にて一誠達は黒歌と、急遽(一誠達がいる2年を担当しているので当然と言えば当然だが)引率が決まったロスヴァイセの問いかけに応ずる様にグレモリー家の紋様が描かれたカードらしき物を手にしていた。

言うまでも無いが京都の地は日本神話勢力にとって重要拠点、清水寺や金閣寺、銀閣寺といった有名所を始め、神聖な神社仏閣が多く、朱乃の住居だったこの街の神社みたいに悪魔側への配慮が施された所などある筈もない。

そんな場所に悪魔が乗り込んだら文字通りお陀仏、ハーフ悪魔である為に聖なる物に対する危険度が低いヴァーリとて例外ではない、其処で京都の裏を牛耳る陰陽師や妖怪達が、悪魔でも京都観光を楽しめる様にと発行したのが『フリーパス』である。

勿論他勢力に自らが管理する地へ入る事を許可するのだから相応の信用が無ければならない、増して今は禍の団という存在がネックとなって発行条件が厳しくなっていたのだが、其処はグレモリー家の存在が功を奏した形となった。

尚、学生であり、今日は何時も通り授業があるリアスと朱乃、白音とレイヴェルは此処にはいない。

それ故か4人は屋敷にて既に見送りを済ませていた、その際に案の定と言うべきか、一誠に対して所謂「行ってらっしゃいのキス」をしていたのは余談である。

 

「よし、皆準備万端ね。無くしたり盗まれたりしたら事だから、ちゃんと保管しとくのにゃ」

「黒歌さん、他の先生方がお呼びです、急ぎましょう」

「分かったにゃ、ロスヴァイセ。じゃあ皆、レッツゴーにゃ!」

「「「はい!」」」

「「「ああ!」」」

 

------------

 

「すぅ、すぅ…」

「むにゃむにゃ…」

「2人とも、余程この旅行が楽しみだったと言う事か。今朝も寝不足だった様だし」

「だろうな、私もこの旅行が楽しみ過ぎて、昨日は眠れなかったからね」

「教会での生活は余程禁欲的だったのだろうな。まるで遠足を楽しみにしている小学生だ」

「それはそうだろう。教会で『聖女』として祭り上げられた頃のアーシアは言うまでも無く、私もイリナもエクソシストだった頃は旅行なんてする暇もなかったし、主への信仰故か、そんな事思いつきもしなかったからね」

 

それから数駅を経て新幹線が発着する東京駅へと辿り着いた一誠達は、予め決められた座席に座り、京都の地へ着く時を今か今かと待っていた中、楽しみな余り眠れなかったらしいアーシアとイリナは、出発から僅か数分で眠ってしまっていた。

一誠達の班が割り振られた座席は車両の一番後ろ、3席ある方の真ん中が一誠、その窓側の隣がイリナ、通路側の隣がアーシアに割り振られ、通路を挟んだ反対側、2席ある方の通路側がゼノヴィア、窓側がヴァーリに割り振られた。

現在一誠は、己の身に寄り添って眠るアーシアとイリナを、ゼノヴィアやヴァーリと共に微笑ましい様子で見守りながら、何時も通り開発作業を進めていた。

 

(思えば今年になって、2年に進級してから色々な事があった。リアスの眷属悪魔への転生、グリゴリを離反したと思しき堕天使達との戦い、フェニックス家とのレーティング・ゲーム、今の屋敷への引っ越し、北欧神話内のゴタゴタ、そして禍の団…

色んな戦いを経て、俺にとって大事な人が沢山と言って良い位出来た。リアスに朱乃、アーシアに白音、イリナにゼノヴィア、黒歌にレイヴェル、そしてロスヴァイセ。嫁さんが9人も出来るとか、ほんの半年前には考えもしなかったな。他にも木場とギャスパーという兄弟同然の存在、ヴァーリにアーサー、美猴にルフェイという戦友、グレモリー家の皆、そしてバラキエルさん…

そんな大事な人達との日々は、これの完成を切っ掛けに新たなる展開を迎えるだろう。このガシャットは俺の夢の『最後の欠片(ピース)』という位置付け以上に、下手をすればこの世界を、この世の社会情勢を大いに揺るがすと言っても過言では無い力を有している重大な物だ。願わくはこの力が、今の世の中を良い方向へと導く為の物であらん事を)

 

今までの、もっと言えば悪魔に転生してから半年の歩みを思い出しながら開発作業を進める一誠、そのタイトル名と思しき項目にはこう書かれていた。

 

 

 

 

 

『MAXIMUM MIGHTY X』と…

 

------------

 

「はい、ワンツースリーフォー!にゃはは、私の勝ちにゃ!」

「く、黒歌さん、私初心者なんですから少しは手加減するかハンデを下さい!」

 

その頃、引率教師に割り振られた前列の席に座る黒歌とロスヴァイセはメテオブロッカーで対戦、北欧に居た頃はゲームなど殆どやった事の無かったロスヴァイセ相手にも手加減一切無しの黒歌は怒涛のコンボラッシュで圧倒していた。

何とも大人げない黒歌のプレイングに不満を口にするロスヴァイセだったが、その顔は楽しげだった。

 

「このまま負けられません、もう一回勝負です!」

「かかって来いにゃ!また返り討ちにしてやるのにゃ!」

 

心から楽しいと言わんばかりの様子で再戦を要求するロスヴァイセ、その懐から、ガシャットと思しき物体が僅かに顔を出していた事に、黒歌は気づいていなかった。



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103話_First Day

色々と微笑ましい光景が所々見受けられた新幹線での時間も目的地である京都駅に到着した事で終わり、一行は集合場所であり、今回の宿泊先である高級ホテルへと移動、其処で教師から旅行における注意事項の連絡を受けていた。

因みに今回宿泊するホテルの名は『京都サーゼクスホテル』…

言うまでも無くサーゼクスらグレモリー家が経営に関与しているホテルであり、その縁から毎年、駒王学園の修学旅行では宿泊場所となっており、ホテル代もかなり安く出来ているとか。

尚、其処から少し離れた所には『京都セラフォルーホテル』、これまた読んで字の如くセラフォルーらシトリー家が経営に関与している高級ホテルがあり、それを聞いた一誠達は某新喜劇の如くずっこけていたが余談である。

 

「皆さん。これから自由行動の時間ではありますが、駒王学園の生徒であるという自覚を持って、他人様に迷惑を掛ける事の無い様、楽しい旅行を満喫して下さい。間違った行動1つが場合によっては、楽しい旅行を台無しにしてしまいます、節度を守った行動を取る様に。旅行気分に浮かれて不純な異性交遊なんてもっての外ですよ、確かに修学旅行と言えば気になる異性と近づく機会だったり、親密を深めたり、なんて話をよく聞きますが、其処は学生ですから例え恋人同士であっても純粋で真面目な交際を心がける様、に…

イッセーさんと私の不純異性交遊、という事はあんな事やこんな事も…!?

イッセーさ、わたす初めてだから、優しくしてほしいだ…」

 

一誠達のクラスはロスヴァイセが連絡をしていたが、その途中で一誠と『見せられないよ!』と言いたくなる光景を想像、いや妄想したのか、ひとり己の世界に入ってしまっていた。

駒王学園に就任してからのロスヴァイセは、美人で真面目ではあるが何処か抜けた所が可愛らしいく、また歳も近いため『ロスヴァイセちゃん』と親しみを込めて呼ばれる人気の教師となっていた。

それ故か一誠との間柄がバレた際には、彼女に対して好意を抱いていたらしい男子生徒達が打ちひしがれる光景が広がり、彼への敵意が増加したとか何とか。

 

「何してんのにゃ、ロスヴァイセ。まあ良いにゃ、という訳で其々の部屋にデカい荷物を置いたら、午後5時まで自由行動なのにゃ。時間に余裕を持って行動する様にね。それじゃあ、解散!」

『はい』

 

それはともかく、完全にトリップしてしまったロスヴァイセを見かねた黒歌が連絡を引き継ぎ、其々のグループは行動を開始した。

 

「確か俺達の部屋は2階の207号室、2人部屋だったね、イッセー」

「ああ。で、イリナ達は3階の310号室、3人部屋だったな」

「うん。じゃあ私達は310号室に向かうね、イッセー君。ロビーで待ち合わせね」

 

一誠達もまた大きい荷物を自分達の部屋に置いていき、ロビーで集合する事とした。

 

「皆集まったか。今は午前11時、昼時か。何処で昼飯にしようか」

「なら皆、此処から電車やバスで40分位と遠くはなるが、行きたい店がある。其処にしないか?」

 

グループメンバー全員がロビーに戻ったのを確認した一誠、丁度昼時となったのを見て、まずは昼飯にしようと決めたが、其処にヴァーリがリクエストして来た。

 

「その店は、てんいちの総本店だ」

「てんいちって、あのスープが濃い、濃すぎてポタージュみたいになっているラーメンで有名な?」

「確かてんいちのファンは『ラーメンではなく、てんいちを食べに行く』と言う位、他のラーメン店とは一線を画す存在だったね」

「そういえばてんいちは京都発祥だったな」

「ほぇー、そんなお店が京都にあるんですね」

 

てんいち。

今しがたイリナがいった様に「箸が立つ」と言われる程の濃厚な鶏と野菜ベースのスープで有名なラーメン店であり、その独自の味で人気を博して来た。

今でこそ名古屋の『おおいし亭』などのてんいちをも上回る、箸はおろかレンゲすらも立つと言われる程の濃厚なラーメンを出す店も出て来てはいるが、それでも濃厚ラーメンの元祖として『関東の太朗、関西のてんいち』と未だ並び称される存在である。

 

「ああ、京都と言えばてんいち始まりの地!折角京都に来たんだ、てんいち総本店で昼飯にしようじゃないか!」

「ヴァーリって、こんなにテンション高かったっけ…?」

「確か美猴が言っていたな、ラーメンの事となると人が変わると。戦闘の時とは別の意味で確かに人が変わっているね…」

「あ、あはは…」

「ま、まあ良い、折角だからヴァーリの提案通り、てんいち総本店で昼飯にしよう」

 

そのてんいちの総本店での昼食を提案したヴァーリのキャラ崩壊と言うしかないテンションに一誠達が引き気味になりながらもその提案に乗り、一行はてんいち総本店へと向かう事にした。

 

------------

 

「これがてんいちのラーメンか。話には聞いていたが、凄まじい濃さだね」

「見るからに『濃いッッッ!』て感じのスープだよね」

「凄く濃厚なスープです、でもそんなにしつこい感じじゃないと言うか…」

「鶏だけではなく、野菜もスープに使っているらしいからな、それでクドさが和らいでいるのかもしれないな」

 

ヴァーリが言っていた通り出発から40分位でてんいち総本店へと到着した一誠達、全員がヴァーリのおすすめである『スープライスセット・こってり』を注文した。

各自がその味に驚きつつ舌鼓を打っている中、提案した本人であるヴァーリはと言うと、

 

「ぷはー…

学園近くのてんいちにも行った事はあるが、総本店の味はまた違うな」

 

スープをレンゲで口にした後は如何にも幸せそうな顔で一心不乱に麺を啜り、具を口にし、器からスープを飲み、セットに付いていた明太子ご飯も共に完食した。

食べ終わったヴァーリの表情は、正に至福の時、と言いたげであった。

その姿にヴァーリ以外の面々は普段とは明らかに違うヴァーリの姿に戸惑いを隠せない為か、或いはその幸せそうな姿が微笑ましく見えたか、度々箸を止めてその姿に見入っていた。

 

「どうしたお前達、早く食べないとのびるぞ」

 

その視線に、完食してから気付いたヴァーリの指摘を受けて再び食べ始めた一誠達、とは言え度々箸を止めていただけで食べ進めてはいたのでヴァーリからそれ程遅れる事無く全員完食した。

 

「さて昼飯も食べ終わったし、今日は何処を回るか」

「丁度ここから歩いて数分で銀閣寺がある、まずは其処へ行くか」

 

完食し、てんいち総本店を後にした一行、その近くに京都の観光名所として十指に入ると言って良い程有名な世界遺産である銀閣寺――正式には慈照寺と呼ばれる寺院へと向かう事にした。

その途上、

 

「…皆、気付いているかい、私達は監視されている様だね」

「ああ、俺達悪魔がこの街を散策しているからね、パスがあるとは言え警戒するに越した事はない、という訳か」

 

一行は自分達悪魔を監視しているであろう存在の視線を感じた。

ヴァーリが言った通り悪魔はこの地において余所者、信用出来る存在にしか配布されないパスを持っているといってもそれは変わらない、念のために見張りが付いているのだろうと彼らは思ったが、

 

「…いや、そうでも無いみたい。

いや、その目的もあると思うけど、それだけじゃ無くなっちゃっているみたいだね、あの様子は」

「この好意的な視線、そして微かに聞こえるはしゃいだ様子の声…

間違いない、妖怪か或いは『裏』に関わる人間か、監視に出向いた存在が俺のファンみたいだ」

 

イリナと一誠は、それとはまったく違う、好意的な物と感じた様だ。

その言葉を受けて一行が耳を澄ませると、

 

「ヤバいよヤバいよ、生ISだよ、本当にISが京都に来てるよ…」

「八坂様がおっしゃられた通りだ、本当にISがあそこに…!」

「監視の任が無かったら今すぐにでもサイン貰いたいのになぁ…」

 

雑踏の中に聞こえて来た声、ISとしての一誠のファンであろう存在の声がした。

あの様子からして気にしなくても大丈夫かと考えた一行は放置を決め、初日の京都観光を満喫した。



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104話_First Nightは終わらない

修学旅行初日、周りから自分達悪魔を監視しているだろう(が、完全に一誠の追っかけと化していた)視線を受けたり、てんいち総本店での昼食後に訪れた銀閣寺の姿にゼノヴィアが「銀じゃない、だと…!?」と驚愕したり、一方で金閣寺――正式には鹿苑寺と呼ばれる寺院の姿に「金だぞぉぉぉぉぉぉぉ!」と思いっきりはしゃいだり、そんなゼノヴィアにイリナが「落ち着きなさい、みっともない!」とツッコミと称してしばき倒したりしながらも京都での観光を満喫した一誠達だったが、

 

「「覗くぞぉぉぉぉ!」」

「させるか、クズが!」

「「へぶぁ!?」」

 

そのまま何事も無く一日は終わるとはならなかった。

ホテルに到着し、バイキング形式での夕食を済ませた後は入浴時間となっているのだが、其処で変態コンビと名高い松田と元浜が女湯を覗こうと行動に移り、それを前以て察知していた一誠が何時もの如く阻止、部屋から出て来た変態コンビをダブルラリアットで沈めた。

だがそれだけではおさまらなかったのか、

 

「貴様らは何時まで経っても学習しないな!」

「あべしぃぃ!?」

「人の迷惑を考えない行動ばかり起こして!」

「ひでぶぅぅ!?」

「クズ風情が女性を、変態をかたるなぁぁ!」

「「たわばっ!?」」

 

思いがけない一撃に状況を把握しきれなかった松田に対して垂直式ブレーンバスターで首から叩きつけ、先に仕掛けられなかったが故に何があったか理解して逃げ出そうとした元浜に対してはリバース・フランケンシュタイナーで後頭部から同じく叩きつけ、そしてトドメに悪魔となった事で得た高い身体能力に物言わせた、ホテルの天井近くまで跳び上がってのダイビング式ダブルギロチン・ドロップでフィニッシュ、変態コンビは耐えられず失神した。

 

「イッセーさん、一体どうしたんですか?何やら凄い物音がしましたけど…」

「ロスヴァイセ。またこのクズ達が事を起こそうとしたから叩きのめしておいた。先程叫んでいた内容からして、女湯を覗こうとした様だ」

「またこの変態コンビですか…

分かりました、まあやり過ぎな感は否めませんが、阻止に動いてくれてありがとうございます」

 

その物音を聞いて駆け付けたロスヴァイセに状況を説明し、失神している変態コンビを預けて部屋へと戻った一誠、この後変態コンビがどうなったかは語るまでも無いだろう。

 

「ははは、全くあの変態コンビも良くやる物だ。何度痛い目を見ても諦めないとか、その不屈の精神だけは称賛しても良いかも知れないね」

「笑い事ではない、ヴァーリ。女湯にはアーシアにイリナ、ゼノヴィアもいるかも知れないんだ、あのクズ共に3人の生おっぱいを覗かせてなるものか。3人のおっぱいを堪能して良い男は俺だけだ」

「君の変態振りも大概だね…」

「悪いか?俺は変態である事は罪ではないと思っている、他人に迷惑を掛けるのが駄目だと思っているだけだ」

 

それを聞いていたらしいヴァーリが変態コンビの行動と、それに対して苛立ちを露わにしながらも変態丸出しな発言をする一誠に呆れる中、

 

「イッセー、ちょっと良いかにゃ?」

「黒歌か、どうした?」

「訳は歩きながら話すから、ヴァーリと一緒に来てくれないかにゃ?」

「ヴァーリ、大丈夫か?」

「勿論だよ、イッセー」

 

一誠を訪ねて、黒歌が部屋の扉をノックして来た。

その様子からして何か不穏な事が起こっているのか察知した一誠とヴァーリは迷わず、黒歌に同行する事とした。

 

「さて、何処から説明しようかにゃ。実を言うと三大勢力は日本神話勢力、その地方自治?をしている京の妖怪勢力との協力体制を整えるべく交渉しに来たんだけどね。向こうから交渉に応じる条件として、イッセーを連れて来いって言われてんのよ」

「何故其処でイッセーの名が?確かにイッセーの、ISの名は良く知られていると聞いてはいるがあくまでそれは天才ゲームクリエイターとしてであり、悪魔としてのイッセーは其処までの実績を積んでいない下級悪魔でしかない。レーティング・ゲームも、コカビエルやロキ、禍の団との戦いも、イッセーがライダーシステムを開発したのが大元とはいってもリアス・グレモリー眷属全員や協力者とのチームワークで勝利を収めた、というのが『裏』世間一般の評価で、イッセー個人が大いにクローズアップされている訳じゃない。魔王サーゼクス・ルシファーの妹であるリアス・グレモリー、グリゴリ最高幹部バラキエルの娘である姫島朱乃、元72柱の一角フェニックス家の長女であるレイヴェル、オーディンの秘書を長年務めたロスヴァイセと、有力者に近しい存在との交友は広く知られているが、そうだとしてもイッセーを京の妖怪勢力は何故、名指しで会談の場に同席させようと?」

 

黒歌の案内に従う中で訳を聞く一誠達だったが、その訳――京の妖怪との会談に一誠の同席を求められた事にヴァーリが疑問を包み隠さず伝えた。

ヴァーリの言う様に、一誠の悪魔としての活躍は『裏』世間では余りクローズアップされていない。

ライザーとのレーティング・ゲームで勝負を決めたのはリアスだし、MVPは5キルを達成した朱乃、コカビエルとの戦いもトドメを刺したのは一誠だと言っても8人のライダーにカイデン、そして当時は教会のエクソシストだったゼノヴィアの連携の末による物、駒王学園での会談を襲撃した禍の団との戦いも首謀者であるカテレアを無力化したのはギャスパー、ソーナとのレーティング・ゲームも勝負を決めたのはリアス、ディオドラとのレーティング・ゲームに乱入した禍の団との戦いは始まる前に敵が全滅、ロキとの戦いも一誠の役割は後方からの援護射撃…

この様に一誠の悪魔としての活躍は、名声は殆ど広がっておらず、一誠といえば大抵は天才ゲームクリエイター『IS』の正体だとか、リアスに朱乃、レイヴェルにロスヴァイセ等といった様々な女性と交際するハーレム野郎だ、というのが世間一般の評判である。

そんな一誠を態々名指しで会談に同行させようとする京の妖怪勢力の考えが読めなかったヴァーリの疑問は当然と言えばそうだろう。

 

「それなんだけどね、詳しくは教えてくれなかったけど、向こうがこんな事を言っているのよ。

 

 

 

「いざと言う時は兵藤一誠を頼れ、彼が万事を解決してくれる」と助言されたってにゃ」

「「ゑ?」」

 

その疑問も尤もだと思っていたらしい黒歌の返答、だがその内容にやはりと言うべきか、2人はポカンとするしかなかった。



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105話_Another Worldを統べる者

西日本、ひいては京都に住まう妖怪達の本拠地『裏京都』。

先程訪れた金閣寺近くの奥まった場所にある鳥居を潜った先に、レーティング・ゲームにおけるフィールド生成の技術とよく似たそれを駆使して異世界に作り上げたらしい、その地はあった。

その地はまるで江戸時代にタイムスリップしたかの様な、時代劇のセットをそのまま持って来た様な家屋が立ち並んでいた。

…が、この地へと招かれた一誠とヴァーリ、アーシアとゼノヴィア、イリナと黒歌の耳には、殊にゲームクリエイターである一誠にとって飽きる程聞き慣れた、この時代劇そのままな世界では場違いと言うしかない電子音や現代的な音楽、決め台詞と思しき声が聞こえて来た。

そのミスマッチな状況に何か言いたげな一同に気付いたのか、案内をする妖狐の女性が説明を始めた。

 

「周りから流れる音が気になりますか?実を言うと裏京都でも十年くらい前から様々な現代文化を取り入れております。その中でもゲーム、特に兵藤様、この場合はIS様とお呼びした方が良いですね、貴方が開発したゲームの浸透ぶりは凄いの一言です。入って来るや否や老若男女問わず、殆ど全てと言って良い妖怪達がその魅力に嵌って行きました。最近では妖怪達だけで組織されたこの地を本拠とする『裏京都電子競技倶楽部』という名の、えーと『いーすぽーつ』でしたっけ?その団体も発足したのですよ」

 

eスポーツとはゲームを『競技』として扱う場合の名前で、その大会においては様々なゲームタイトルの中から競技性の高い物をスポーツにおけるそれと同じく『種目』として指定、世界中のゲーマー達が腕を競い合うのだ。

その団体がこの地で既に発足されているという事実に、一同はそれまで抱いていた裏京都の、妖怪のイメージが崩壊の一途を辿り唖然とする一方、一誠は自分の作り上げたゲームがこの地にまで浸透している事の嬉しさと、そのゲームが此処の環境を大いに変えてしまった事の気まずさが混ざって複雑な様子だった。

そんな一同を他所に先へと進む妖狐に付いていくと、やがて家屋が立ち並ぶ所を抜けて林へと入り、更に進むと巨大な赤い鳥居へと辿り着いた。

其処には別ルートで来たらしいロスヴァイセにバラキエル、セラフォルーの他に、豪華な着物に身を包んだ、金髪の間から狐耳を、背後から9本の尻尾と思しき物を生やした母娘らしき2人組がいた。

 

「八坂様、九重(くのう)様。皆様をお連れしました」

「来たか、皆」

 

自分の仕事は済んだと言わんばかりに、そう言い残し消えていった妖狐。

…その折、快く出迎えたバラキエルに対して、セラフォルーは渋い表情を隠そうともしなかったのは余談である。

 

「お初にお目に掛かる、IS殿。否、イッセー殿と呼ぶべきか。妾の名は八坂、この裏京都を統べる九尾の妖じゃ。この者は娘の九重」

「は、初めまして、IS殿!八坂の娘、九重と申します!」

「此度は此方側の我儘で此方に呼び寄せた事、お詫び申し上げる」

 

それは兎も角、その役目を引き継ぐ様に、八坂と呼ばれた母親らしき女性が自己紹介を始め、九重と呼ばれた娘らしき少女が促されるままに続いた。

 

「それは宜しいのですが、こうして一誠君も来られたのです、そろそろ訳を伺っても?」

「そうじゃな、バラキエル殿」

 

呼び出しておいて関係ない長話をするのも良くないと思っていたのか、挨拶もそこそこに、バラキエルの問い掛けに応じる様に八坂は事の次第を話し始めた。

 

------------

 

それは数日前、須弥山――アジア、というより東アジアを本拠とした神話勢力の事を指す――の主神である帝釈天の使者との会談に臨むべく、八坂が護衛の妖怪達と共に裏京都の地を出た所から遡る。

会談の場へと向かっていた八坂達だったが、突如として霧らしき物が辺りを覆ったと思った直後、真っ白な空間に閉じ込められ、何者かの襲撃を受けた。

八坂達も迎撃するも多勢に無勢、しかも襲撃者が使役したらしい魔獣と思しき存在には八坂達の攻撃が殆ど効かず、絶体絶命のピンチに追い込まれた。

そんな中で1人の戦士がその空間に乱入、追い込まれていた八坂達を助けるべく立ち回った。

黒のベースカラーに金色のラインが入り、各関節部からは角と思しき棘が生えた筋骨隆々な体躯、赤い複眼と金色の角が特徴的なクワガタムシを彷彿とさせる顔、携帯型ゲーム機を思わせる黒と金のベルトを腰に付けた戦士は、挨拶代わりと言わんばかりに魔獣達を焼き尽くし、想定外な状況に動揺を隠せない襲撃者達へ何処からともなく取り出した大量の石を乱射、その猛攻に襲撃者達は撤退に追い込まれ、八坂達は無事、元の場所へと戻る事が出来た。

その戦士、襲撃者の誰かが「クウガ」と呼んでいたその戦士に八坂は自らを助けた礼をすると共に、彼が何者かを訪ねた。

それに対してクウガは、

 

「いざと言う時は兵藤一誠を頼れ、彼が万事を解決してくれる」

「兵藤一誠…?」

「彼が兵藤一誠だ。近々、この京都の地へとやって来るだろう。その時、接触を図ると良い」

 

明らかに返答になっていない事を言いながら、1枚の写真を八坂に手渡す。

己の質問に答えなかったクウガの態度に憮然としながらもその写真を見た八坂、だが其処に映っていた存在の姿に驚きを隠せなかった。

 

「あ、IS殿!?そち、この御方とはどういう関係なのじゃ!?」

「私は彼の夢を応援する者、彼らの笑顔を守る者だ」

 

動揺する余りクウガを問い詰めた八坂、其処でやっとクウガは朧気ながら己の心情を明かし、その場を去って行った。

 

------------

 

「その後、妾は無事、帝釈天殿の使者との会談を行い、滞りなく終わらせる事が出来た。じゃがあの時クウガ殿がいなければ妾も、お供の者達もきっと無事では済まなかったであろう」

(クウガ、か。そういえばリアスが手に入れた『バーコードウォリアーディケイド』のデータに、クウガという名の仮面ライダーの物があった様な…?

それは兎も角として、妖怪達の攻撃が効かない、恐らく禍の団であろう襲撃者が呼び出した魔獣。だが仮面ライダーらしいクウガの攻撃は普通に通った、と言う事は…?

今までバカの一つ覚えみたいに人外勢力の重要拠点に送り込んでいた事、アザゼルさんは神器使いを強引に、禁手に至らせる為とは言っていたが、それだけで貴重な神器使いを酷使するとは、浪費するとは思えない。となれば…!

成る程、繋がった。となれば八坂さんがこの後言うであろう言葉、頷かない訳には行かない!)

 

経緯を話し終えた八坂、一方の一誠は彼女の話を聞きながら、彼女達を助け出したクウガの正体を予想し、同時に禍の団のこれまでの行動を振り返り、今しがた八坂から聞いた『妖怪の攻撃が効かない魔獣』の情報とも照らし合わせ、1つの結論に至った。

 

「それにまだ安心は出来ぬ。今『裏』を騒がせている禍の団、その一味が数日前に妾達を襲撃したと思うておる。彼奴等の狙いは分からぬが、あれで引き下がるとは思えん。あの妾達の術が効かぬ魔獣の事もある、今度襲撃されたら妾達だけではどうにもならん…」

 

そんな一誠の様子を知ってか知らずか話を続ける八坂、その姿を、裏京都を統べるに相応しい普段の彼女を見知っている者が見たらまず「何時もの彼女じゃない」と言うであろう程(実際に娘である九重はその姿に動揺しきりであった)、不安を隠せていなかった。

 

「其処でイッセー殿、お主に妾の警護をお願い申し上げる。

 

 

 

一生に一度しかない学校行事の最中にこの様な厄介事を押し付けるのは、誠に済まないと思っておる。じゃが、妾は」

「分かりました、八坂さん。貴方は俺が、俺達がお守りします!」

 

そんな彼女の頼みに、一誠は二つ返事で応じた。



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106話_そしてNext Dayへ…

「折角IS殿達に来て頂いたばかりか、母上の頼みも聞いて頂いたのじゃ、何のもてなしも無しでは申し訳ない。此処は我ら『裏京都電子競技倶楽部』の実力をお見せする事を以てもてなしとしよう!」

 

一誠が、八坂からの護衛の依頼を快諾してから数分後。

家屋が立ち並ぶ地域の一角にある木造の集会所を思わせる外見ではあるが、その内部は様々なアーケードゲームの筐体が立ち並ぶという何ともミスマッチな業態の施設――裏京都に唯一存在するゲームセンター『裏京都電子遊戯館』に、九重にそう言われ勧められるまま招かれた一誠達は其処で、彼女達のゲーマーとしてのハイレベルなパフォーマンスに釘付けとなった。

まずは言い出しっぺである九重はドレミファステップをプレイ、

 

「『初音ミクの消失-DEAD END-』のREALIZE!?幾ら妖怪と言えど無茶」

「まあまあ見ていてください、皆様。九重様の、我らのリーダーの、『2B(トゥービー)』の実力を!」

「2B?何処かで聞いた様な名前だ。確か…」

 

したのだが、その選曲と難易度設定はは無茶であると一行が止めようとした。

未だにレイヴェルもゼファードルもクリア出来ないその曲、妖怪と言えどまだ幼い九重に出来る筈がないと制止しようとしたが、それは狼の様な顔をした山伏姿の妖怪――木の葉天狗の少年に阻まれた。

こうして始まった九重のプレイ、一行の殆どが無理だと言わんばかりの視線を向ける中、木の葉天狗の少年が口にした名前に何か引っかかるものがあった一誠は、もしやと考えた。

そして、

 

「うーん、惜しいのじゃ。MISSは0じゃが、POORがあるとは…」

「く、クリアしただと!?しかも殆どパーフェクトに近い…!」

「信じられない、あの体躯の何処にあれ程の脚力とスタミナが…」

「す、凄いです!まるでタップダンスみたい…」

「いやアーシア、タップダンスでもあんなマシンガンみたいな激しい踏み込み音しないと思うよ」

 

見事にクリア、しかも殆どパーフェクトに近い形で完走して見せた。

年端も行かない九重が見せたスーパープレイに一同が驚く中、

 

「思い出した…!

つい最近、初めてこの曲のREALIZE譜面を完走したというニュースが流れ、そのクリア動画がアップされていたのだが、そのプレイヤーの名が2Bだ!まさか九重がその2Bだったとはな…」

「IS様はご存じでしたか。ええ、彼女こそが我ら裏京都電子競技倶楽部のエースである九重様こと、天才ゲーマー2Bです!今はまだ幼き身、この裏京都を統べる八坂様の後継という立場も相まって公式大会への出場は叶わないままですが、何れはあのLやZ、2大天才ゲーマーとも比肩しうる方ですよ!」

 

一誠は以前、彼女が実際に完走した光景を映したプレイ動画を見ていたのもあって、

だが、それだけでは終わらなかった。

 

「妾は複雑怪奇なタイプのゲームにはどうもついて行けん。どちらかと言うと『バンバンタンク』みたいなシンプルなゲームが好きじゃ」

 

と言った八坂は、一誠が開発した、戦車を駆って敵軍の本拠へと単身突っ込んでいく縦スクロールシュータータイプのシューティングゲーム『バンバンタンク』をプレイ、

 

「じゅ、十六連打…」

「な、何か声を掛けた瞬間、P(ペサンテ)40持ち出して戦車砲ぶっ放してきそうな気迫を感じる…」

「もしくはC(カルロ)V(ヴェローチェ)33を乗り回しながら機銃掃射して来そうだ…」

「…!」

 

したのだが、画面の光景に集中する余り無言となり、某元祖ゲーム名人の代名詞である、ボタンを押す指を意図的に痙攣させる事で小さく早く連打する連打方法――通称『十六連打』を駆使し、出て来る敵や障害物を一網打尽にしていた。

かと思えば、

 

「レッツゴーカズキぃぃぃぃ!」

「此処で超必殺を叩き込んで終わりです、ダイゴさん!」

「甘いわ葉山家の小童風情が!全てブロッキングしてくれる!」

「此処でカズキの超必殺を、ダイゴがブロッキングで凌いだ!これはカズキにとっては大誤算か、なんちて」

 

先程の木の葉天狗の少年、葉山(はやま)和希(かずき)と、烏の様な羽を背中から生やした山伏姿の妖怪――烏天狗の青年、風間(かざま)大悟(だいご)がバクレツファイターで対戦、残りHP1まで追い込まれた大悟の操作キャラに和希が超必殺を叩き込もうとするも、瞬時の判断でそれをさばき切り、超必殺技発動後の硬直状態に陥っていた和希の操作キャラに逆転の一撃をお見舞いするという、何時ぞやの名勝負の再現を見せるという光景もあった。

 

「凄いな、裏京都のゲーマー達のパフォーマンスは。まだまだ世に知られていないだけで、相当の実力を有したゲーマーはゴロゴロいるのかもな、裏京都電子競技倶楽部の皆、とりわけ九重の様な」

 

そんな裏京都電子競技倶楽部のゲーマー達による、世界で活躍する有力なゲーマー達にも見劣りしないパフォーマンスに一誠は喜びを露わにした。

 

「IS殿、どうか母上をお頼み申しまする!」

「ああ、九重!八坂さんは俺が、俺達が守って見せる!」

 

そして帰り際、母を思う九重の言葉に、一誠は快く応じた。

 

------------

 

「然しイッセー、二つ返事で応じて良かったのか?」

 

裏京都を出て、宿泊場所である京都サーゼクスホテルの部屋に戻った一誠とヴァーリ、其処でヴァーリは一誠の判断の意図を聞いた。

 

「今この京都には裏京都の妖怪達や俺達だけじゃない、バラキエルにセラフォルー・レヴィアタンといった各勢力の実力者がいる。八坂襲撃の首謀者が禍の団で、また襲撃を仕掛けようとしているのは明白ではあるが、だとしても彼らに任せればいい話ではないのか?幾らクウガとかいう存在に一誠を頼れと言われたという話があるとしても…」

「いや、無理だろう。俺の推測が正しければの話だが、禍の団との戦いはもう、俺達ライダーの力が無ければ泥沼化するだろう。それこそ『超越者』である義兄さんら実力者をつぎ込まねばならない位に」

「何?どういう事だい、イッセー?」

 

セラフォルーやバラキエルら実力者がいる以上、一誠達が首を挟む必要は無いと問い質そうとしたヴァーリだったが、一誠はそれを両断、

 

「禍の団の一派である英雄派が各勢力の重要拠点に何度も襲撃を仕掛けているのは、今更確認するまでも無いな。その目的はアザゼルさん曰く、神器持ちの禁手化を強引に至らせる為であると」

「ああ」

「だが、それだけで貴重な神器使いを使い潰すとは正直思えなかった。龍の手(トゥワイス・クリティカル)の様なありふれた神器ですら千に届くかどうかの割合でしか存在しない。そんな貴重な神器使いを、その様な目的『だけ』で使い潰せる程、人員に余裕がある訳じゃないと思う。襲撃の目的は他にもあると以前から考えていた」

 

自らの『推測』をヴァーリに話し始めた。

 

「其処で今日聞いた八坂さんへの襲撃に関する話。バラキエルさんからの話では、八坂さんの実力は魔王様や龍王にも比肩する程。にもかかわらず連中が使役した魔獣らしき存在に、八坂さんを含めた妖怪達の攻撃が殆ど通じなかった。という事は…!」

「成る程、奴らは構成員達の禁手化を強引に至らせるだけでなく、各人外達の情報を収集し、魔獣か、それに似た存在を生み出す神器を有した存在が、その情報を基にしたアンチモンスターを作り出す為に襲撃を仕掛けて来ていた訳か。随分と抜け目ない奴らだ」

「ああ。バカの一つ覚えと軽く見ていたが、訂正せざるを得ないな。だが、そんな奴らでも、情報を集められなかった人外がいる。それが」

「バグスターウィルス、及びその力を得て戦う仮面ライダー、という訳か」

「今話した事は全て俺の推測だが、クウガの攻撃が普通に通っていたのも、クウガが俺達仮面ライダーと同等の存在であれば説明が付く」

 

各人外勢力の重要拠点に度々襲撃していたのは禁手を強引に引き起こすだけでなく、人外の情報を集める為、それを基にしたアンチモンスターが作られている以上、堕天使であるバラキエルや、悪魔であるセラフォルーが幾ら実力者であろうと通じない…

そんな悲観的な、だが嫌でもそうだと納得出来てしまう推測を聞き、流石のヴァーリも頷かざるを得なかった。

 

「今や禍の団は、各人外に対する対抗戦力を有している。それを無視出来るのが俺達仮面ライダーだけである以上、俺達が戦わなければ、禍の団を討伐せねばならない。奴らが仮面ライダーにすらも対抗出来てしまう前に…!

 

禍の団との戦いは、京都の地で終わらせる。絶対に…!」



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107話_Second Day

修学旅行2日目。

昨日はてんいち総本店での昼食に、銀閣寺と金閣寺を訪ねる等、京都市北東側に位置する北区と左京区方面を回った一誠達、今日は京都市西側に位置する西京区と右京区に跨る、日本紅葉の名所100選にも選ばれている名勝、嵐山へと向かう事にした。

まず初めに訪れた天龍寺、室町幕府の初代将軍であった足利尊氏が、政敵であった後醍醐天皇を弔う為に、亀山殿という亀山天皇の子孫の離宮を改める形で建立されたこの寺院にやって来た一行が敷地内へ入ると、

 

「イッセー殿、待っておったぞ。方々も、今日は宜しく頼む」

「はい、八坂さん。今日は宜しくお願いします」

 

其処には昨夜、護衛を依頼して来た八坂が待っていた。

禍の団からその身を狙われている最中に裏京都から出て大丈夫なのかとツッコまれそうな状況だが、それについては今日の早朝、修学旅行中での八坂の身の振り方について妖怪達が話し合った所、何と当の本人が名所のガイドを兼ねて一誠達に同行すると言い出したのだ。

当然と言うべきか八坂のその発言を、話し合いの参加者揃って止めようとした。

妖怪の攻撃が効かない魔獣を使役出来るというアドバンテージがありながら、妖怪達の本拠地である裏京都に乗り込まず、会談の為に出て来た所を襲撃して来た事を鑑みれば、禍の団に裏京都へ直接殴り込む術を持っていないのは明白、此処は裏京都で待機しているのが最善ではないか、と。

だが八坂は、

 

「それは妾も分かっておる、この地で身を潜めておれば彼奴等は手が出せん。何れ警戒態勢を強める事で動きづらくなるであろう、なるべく早くカタを付けたいが、妾がこの地にいればそれも叶わぬ。

 

じゃがそれは妾達とて同じ、いや彼奴等以上に時間が無いのじゃ!イッセー殿が、仮面ライダーの方々が京におられるのは何時までじゃ!?今日も含めて3日、いや2日余りしか無いのじゃぞ!何れ帝釈天殿の使者と色々と話す機会もやって来る、其処を突かれてしもうたら妾は一たまりも無いわ!」

 

それを分かった上で、一誠達仮面ライダーが滞在している今のうちにカタをつけたがっており、自らを囮として襲撃者をおびき寄せようとしていたのだ。

その悲痛な叫びに部下達はこれ以上諫める事が出来ず、結果として八坂の同行が決まったのだ。

 

------------

 

「色々な所を歩き回ったな、流石は京都の妖怪を統べる八坂殿だ。天龍寺に二尊院、常寂光寺といった寺社に嵐山竹林、まるで自分の庭の如く先導してくれた」

 

こうして同行する事となった八坂のガイドで天龍寺を始めとした嵐山の名所を回った一誠達は、ゼノヴィアが感心する通り、地元である事の利を活かした効率的な観光ルートを考案していた為、当初の予定よりも多くの名所を回る事が出来た。

とはいえ普段は裏京都にて妖怪達を統べる身分、こうしたガイド役は初めてだった為か所々たどたどしい場面はあったが。

 

「此処の湯豆腐は、昆布の出汁が絶妙に効いていて絶品じゃ」

 

そうこうしている内に昼間となり、これまた八坂のお薦めである湯豆腐屋で昼食をとる事にした。

 

「これはイッセー殿の分じゃ。此処は様々な薬味がある、色々と試してみると良いぞ」

「はい、ありがとうございます」

 

其処でも八坂は、普段なら絶対にしないであろう湯豆腐の取り分けをすすんで行い、薬味の存在など、食べ方のアドバイスまでしていたが、

 

「ゼノヴィア、アーシア。何か八坂さん、イッセー君に随分とくっ付いてない?」

「言われてみればそうだ。確かに護衛を頼んで来たのは八坂殿だし、やると言い出したのはイッセーだ、そのイッセーの側にいないのは可笑しな話ではあるが、だからとは言え、あれはべったりし過ぎだね。しかも自分をさりげなくアピールしている様な…」

「ま、まさか八坂さんも、イッセーさんの事が…!?」

「あるかもね、元々ISとしてのイッセー君のファンだったんだし。其処に絶体絶命のピンチから救い出すなんて言われたらコロッといっちゃうでしょ、そりゃ」

「流石に経験者が言うと説得力があるね」

 

そんな八坂の姿を見て何か感づいたのだろうか、イリナ達3人はそう小声で話し合っていた。

 

「うん、流石は八坂の肥えた舌を唸らせた湯豆腐だ。優しくも旨味溢れるいい味だ。それにしても、恋人が9人では終わらないか、イッセーの周囲の賑やかさは、留まる所を知らないな」

 

そんな光景をヴァーリは微笑ましい様子で眺めていた。

 

------------

 

そんな場面があった昼食も終わり、

 

「あっ、イッセーさん!八坂様の護衛、お疲れ様です!」

「ロスヴァイセ、お前も見回りお疲れ様」

 

見回りをしていたロスヴァイセとも合流し、嵐山での名所の1つである渡月橋へと辿り着いた一誠達だったが、

 

「危ない、八坂さん!」

「むっ!?こ、これは…!」

 

何かただならぬ気配を察知した一誠が八坂の元へ飛んだ次の瞬間、

 

「イッセーさん、八坂さん、これはもしや…」

「うむ。どうやら、妾を狙う輩がまたも仕掛けてきおったわ」

「ですね。あの霧といい、それによって飛ばされた先らしいこの真っ白な空間といい…」

 

一誠達3人に突如ぬるりと生暖かい感触が全身を包み、次の瞬間彼らは真っ白な空間にいた。



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108話_Heroesの襲撃!

皆さん、お待たせしました。
別の意味でお待ちかねであろう、誠次郎の登場です。


「あの時と同じじゃ。此処へと飛ばされる前に妾やロスヴァイセ殿を覆うかの如く霧が出た。間違いない、この前と同じ、禍の団の襲撃じゃ」

「ええ、八坂さん。案の定仕掛けてきましたね。それにしても俺達が飛ばされる直前に覆った霧…

ロスヴァイセ、確か神滅具の1つに『絶霧(ディメンション・ロスト)』という物があったな?」

「はい、イッセーさん。覆ったものを別の場所へと飛ばす霧を放つ能力を有した、神滅具の中でも強力な部類の神器ですね。間違いなく、その力で私達は此処へと飛ばされたのでしょう。まさか上位神滅具の使い手がテロリストにまで落ちぶれるとは…!」

 

既にやられた経験がある八坂も、その八坂から話を聞いていた一誠とロスヴァイセも、真っ白な空間に飛ばされてから状況を把握するのに時間はかからなかった。

予測していた、というより此方の望み通りとなった状況で直ぐに話し合う3人、その中で一誠とロスヴァイセはこの空間へと飛ばした力の正体に気付いた。

 

「八坂さんと、側にいたロスヴァイセだけを狙って転移させようとした、という事は…

やはり向こうは、俺達仮面ライダーに対抗する術を持っていない。その状況下で目的を完遂すべく、標的である八坂さんを狙い撃ちしたか。ロスヴァイセはまだ仮面ライダーに変身した事も無ければ、現状は出来る状況でもないから巻き込んでも構わないと判断し、その分だけ狙いをアバウトにしたという事か。だが…」

「イッセー殿が咄嗟に飛び移ってくれた事で、奴らの目論見も崩されたな。イッセー殿。我が身、お預け致す」

「勿論です、八坂さん。ノーコンティニューで、御守りします!」

『マイティブラザーズダブルエックス!』

 

ヴァーリが持つ白龍皇の光翼と同等以上の力を有した神滅具の使い手が禍の団にいる状況にいら立ちを隠せないロスヴァイセだったが、そんな存在がいながらも、八坂を狙い撃ちにしなければ目的を達せないのであろう敵の状況から、仮面ライダーの力なら切り抜けられると見た一誠が懐からガシャットを取り出し、変身しようとした。

 

 

 

 

 

「くたばれやクソ兄貴ぃぃぃぃ!」

『Explosion!』

「っちぃ!」

『ガシャコンキースラッシャー!』

 

その時、そうはさせないと言わんばかりに渡月橋の向こう側から、何者かが物騒な事を叫びながら一誠へと襲い掛かって来た。

咄嗟にガシャコンキースラッシャーを装備した事で襲撃を防いだ一誠だったが、

 

「誠次郎…!

お前、刑務所から脱獄して来たのか!」

「あぁ!今の仲間が俺をスカウトして来た時に、有難くな!会いたかったぜ、クソ兄貴!」

「俺は会いたくなかったよ、クズが…!」

 

一誠に襲い掛かったのは思いがけない存在だった。

双子であるが故に一誠と瓜二つな顔立ちだがその表情は憎しみを剥き出しにした凶悪その物な少年――現在は少年刑務所に収監されている筈の一誠の弟、兵藤誠次郎が今まさに、一誠死すべしと言わんばかりに襲い掛かって来たのだ。

飛び掛かりながら左ストレートパンチを放った誠次郎、ガシャコンキースラッシャーで受け止められたその左腕は赤をベースカラーとし、手の甲部分に宝玉が嵌め込まれた、龍を模したデザインの籠手が装着されていた。

 

「ふっ!」

「おっと、ドラゴンショット!」

「はぁっ!」

 

一誠に対して憎悪むき出しで襲い掛かった誠次郎だが、一誠にとっても誠次郎は蛇蝎の如く嫌う存在、目障りだと言わんばかりに前蹴りを繰り出すもそれを読んでいた誠次郎が後ろに跳んで回避、同時に左腕の籠手から球型のエネルギー弾を放つも一誠の斬撃で両断、消滅した。

 

「イッセー殿が2人、いや、イッセー殿とは似ても似つかぬ邪悪な気配をしたあの男は…!」

「あの男が、イッセーさんの双子の弟『だった』、兵藤誠次郎…!

皆さんから色々聞いてはいましたが、まさか禍の団に入っていたとは…!」

 

そんな一連の戦闘を見ていた八坂とロスヴァイセ、2人は、特にリアス達からその所業を聞いていたロスヴァイセは、誠次郎に対して敵意を剥き出しにし、臨戦態勢をとる。

だがその時、ロスヴァイセが懐に入れていた『何か』を取り出していた事に、前方を警戒する一誠は勿論、隣にいた八坂も気付かなかった。

 

「誠次郎、勝手な行動をしては困るんだけどね」

「大目に見なさいよ、ジーク。憎くて憎くて仕方ない相手を目の当たりにしたんだもの、身体が勝手に動いたりするもんでしょ。ね、セージ」

「そう言う事だ、わりぃなジーク、今度は上手くやるからさ」

「ジャンヌ、お前は誠次郎に甘すぎだ」

 

それは兎も角として、後方へと飛び退いた誠次郎と並び立つ様に、彼が着るそれと同じ物らしき学生服を着た若い男女の集団が現れた。

その中でジークと呼ばれた、腰に何本もの剣をさした白髪の青年が誠次郎の行動を注意するが、ジャンヌと呼ばれた金髪の少女が逆にジークの苦言を咎めた。

 

「まあまあ2人とも、誠次郎の件は後で話し合えばいい。さて、初めましてと言うべきかな、八坂殿、そして兵藤一誠。俺の名は、まあ曹操とでも呼んでくれ。貴方達が良く知る曹操の末裔さ」

 

誠次郎の行動に関して言い争う2人を宥める様に声を上げた、曹操と名乗る神々しいオーラを放つ槍を手にした黒髪の青年が前に出て、自己紹介を始めた。

 

「魏王の末裔と名乗る、神滅具の代名詞たる『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』の使い手…

成る程、貴様が英雄派を仕切る者か」

「ああ。その代表として、単刀直入に言おう。八坂殿、我々と共に来て頂こうか」

 

その出自に加えて、神をも貫く絶対の槍として神滅具の中でも最強と称される黄昏の聖槍を持っている事から、英雄派のリーダーであると見た八坂の指摘をあっさりと認めた曹操。

 

「フン、答えは決まっておる、否じゃ。それに、妾が断るとして、易々と従う貴様らでもあるまい」

「ああ、分かっているじゃないか。兵藤一誠がいたのは想定外だが、大した問題じゃない。仮面ライダーが1人いた所で、この大軍を如何にか出来る訳でもあるまい!」

 

自らに付いて来いとの要求に拒絶の意志を示した八坂に対し、ならば力づくでと言わんばかりに、背後に控えていた魔獣達に攻撃の指示を飛ばす曹操。

指示を受けた魔獣達は、口から眩い光を生成し、それを砲撃として一誠達に放つ。

一誠もそうはさせないと言わんばかりに回避の態勢を取りながら、今一度変身しようとした。

 

「イッセーさんを如何にかするだけで事は上手く行くと?甘く見ないで下さい!」

『タドrル、レガsシー!』

「何!?」

 

が、その攻撃は突如として現れたスクリーンに阻まれた。

 

「タドルレガシーだと!?ま、まさか!?駄目だロスヴァイセ、そのガシャットは破損している!今変身したらお前の身に何が起きるか」

「変身!」

『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!辿る歴史!目覚める騎士!タドォォォルレガシー!』

 

その正体に、それを用いてロスヴァイセがやろうとしている事に気付き、焦りの感情を隠しもせず彼女を止めようとする一誠だったが、その言葉が届く事は無かった。

腰に装着していたゲーマドライバーにガシャットを装填し、レバーを開いて変身動作を終えたロスヴァイセ、直後に登場した白いパネルが彼女の身体を通過するとその姿は、祐斗が変身する仮面ライダーブレイブと似たライダーとなった。

とはいえその姿がブレイブと殆ど同じかと言うとそうでは無く、水色に染められていた部分はまるで錆び付いたかの様なくすんだ赤茶色と化し、眼の色もまるで血が混じったかの如き暗いオレンジ色に変色、ガシャットの破損を物語っているかの様な色合いに染まってしまっていた。

一方で身に着けている鎧は『魔王』を体現したブレイブのファンタジーゲーマーとは対照的に『聖騎士』を体現した、白をベースとした物であり、マントも真っ白な物になっていた。

 

『ガシャコンソードツヴァイ!』

「これより、禍の団切除手術を開始します!」

 

そんな騎士姿のライダー――仮面ライダートゥルーブレイブ・レガシーゲーマーレベルXに変身したロスヴァイセは、聖剣の如きオーラを放つ長剣型のガシャコンウェポン――ガシャコンソードツヴァイを装備し、その切っ先を前方にいる英雄派メンバー達に向けながら、そう宣言した。



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109話_Second Night、運命の始まり

「まさか他にも仮面ライダーを生み出していたとは驚きだが、それでも2人に増えただけだ!やれ!」

 

まさかロスヴァイセが仮面ライダーに変身するとは思いもよらなかったのか動揺を隠せない曹操ら英雄派メンバーだが、それでも仮面ライダーが2人になっただけ、一誠達が無勢なのは変わりないと切り替え、魔獣達に更なる攻撃を指示するが、

 

「剣よ、万物を貫け!」

「なっ!?」

 

その時にはトゥルーブレイブが何処からともなく大量に生み出した剣型のエネルギーが射出され、大半の魔獣が串刺しになった末に霧散していた。

 

「レオナルド、可能な限り悪魔用のアンチモンスターを頼む!ゲオルグはレオナルドの力を引き上げてくれ!他の皆は対処に回るぞ!」

「了解した!」

 

まさか大量にいた魔獣達が蹂躙されるとは思いも寄らなかったのか慌てふためく英雄派、その中で曹操はメンバー達に指示を飛ばすが、荒らげた声からして彼もまたこの事態は想定外だったのだろう。

 

「させると思いますか?」

「くっ!何時の間に!?」

 

然し次の瞬間には、何時の間にか曹操に接近し、斬り掛かるトゥルーブレイブの姿が。

何とかトゥルーブレイブの奇襲に気付き、持っていた聖槍で防御する事は出来たが、

 

「超アッパー!」

「へぶぁ!?」

 

その直後、今度は誠次郎の目前に、まるで瞬間移動したかの如く出現、左アッパーで吹っ飛ばした。

 

「余所見は厳禁ですよ!」

「ちぃっ!」

 

と思ったらジークの真横に瞬間移動、再び斬り掛かる等、トゥルーブレイブはたった1人で英雄派の大軍を圧倒していた。

 

「スペックはレベルX相当か。やはり破損の影響は否めないな」

「そうだね、ファザー。タドルレガシーガシャットを媒介にしているアイツの戦闘能力は、僕達の王(ゲムデウス)を除けば最も高い。その力を借りて変身するトゥルーブレイブは、今までのライダーとは比べ物にならないスペックを有する筈だからね」

「あれで本調子では無いのか!?凄まじいの、仮面ライダーとは…」

 

だがそんな大暴れするトゥルーブレイブを、何時の間にかダブルアクションゲーマーレベルXXに変身していたエグゼイドの2人は複雑な様子で見ていた。

2人の言動に信じられないと言うしかない八坂の言葉通り、今の時点で十分過ぎる戦闘能力を見せつけているトゥルーブレイブではあるものの、2人の見立てからしてまだまだ本来の力を発揮出来ていない様である。

 

「くっ!撤退するぞ、曹操!」

「分かった、このままじゃジリ貧だ!だが八坂殿、スポンサーの要望を叶える為にも貴殿の身が必要なのでな!必ずや、我々と共に来てもらうぞ!」

 

とはいえ本調子ではないらしいトゥルーブレイブの攻勢に成す術の無い英雄派の面々、ゲオルグと呼ばれた眼鏡の青年からの提案を受け、曹操はやむなく撤退を決断した。

捨て台詞を吐きながら、現れた時の如く、何時の間にか消えていった英雄派の面々。

 

『『ガッチャーン!ガッシューン』』

「大丈夫か、ロスヴァイセ!」

「イッセーさん」

「破損しているタドルレガシーガシャットを使うとは、なんて無茶な事を。後でパラドのメディカルチェックを受けて貰う」

「え、私は大丈夫ですよ。向こうの攻撃を食らった訳じゃないんですし」

「破損したタドルレガシーがお前にどの様な影響を齎すか、それは俺にも判明出来ていないんだ。何かがあってからでは、俺の嫁さんであるお前の身に何か良からぬことがあってからでは遅いんだ」

「よ、よ!?は、はい!分かりました!」

 

脅威が去ったのを確認したエグゼイド――一誠は変身を解除、同じく変身を解除したロスヴァイセの元へと駆け寄り、その身を案じていた。

後でパラドによるメディカルチェックを受けるよう伝える一誠、自身の身には何の問題も無いからと渋るロスヴァイセを何とか説得した。

 

------------

 

「イッセー君、大丈夫!?」

「イッセー、無事か!?」

「イッセーさん、お怪我はありませんか!?」

「どうやら、禍の団からの襲撃を退けた様子だな」

 

それから程なくして霧が晴れ、元いた渡月橋へと戻って来た一誠達、其処では絶霧による転移から取り残され、離れ離れになっていたイリナ達が、一誠達の身を案じていた。

 

「ああ、俺達は大丈夫だ。察しの通り禍の団、その一派である英雄派から襲撃を受けた。やはり連中は、八坂さんの身を狙っている様子だ。何でもスポンサーの要望を叶える為に必要だとか言っていたが…」

「スポンサー?テロ組織を支援するなどろくでもない奴だろうが、一体…」

 

自分達は無事だと伝え、イリナ達を安心させた一誠は、転移された先の空間で起こった事の説明を始めた。

 

「それと、イリナ達は余り知りたくない話だろうが…

 

 

 

誠次郎が脱獄して、英雄派のメンバーになっていた。アイツも言っていた通り、英雄派がそれを手助けしたのだろう」

「な、何ですって!?あのクズが、脱獄した!?」

「誠次郎って、あの兵藤誠次郎か?噂には聞いているが、そんなろくでなしを何故…?」

 

その中で自分の『元』弟であり、今は少年刑務所に収監されている筈である誠次郎が英雄派にいた事を伝えると、イリナ達は驚きに包まれた。

 

「それとアイツが俺に殴りかかった時、赤いカラーの、龍の様な籠手を左腕に着けていたのを見た。もしかしたら、あれは…」

「赤い龍の意思を宿した神滅具『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』か!?という事は、禍の団がスカウトしたという赤龍帝は…!」

「ああ、ヴァーリ。お前の宿敵は、アイツという事になる」

「なん、だと…?」

 

その誠次郎が自らに殴りかかった時に用いていた神器と思しき籠手、それを伝えると、ヴァーリがその正体に気付き、呆然としていた。

 

「それだけではありません。英雄派には兵藤誠次郎の他にも、神滅具の使い手が何人もいます。私達を転移させる霧を発生させたであろう『絶霧』、以前に八坂さん達を襲撃したのを含めた魔獣を生み出せる『魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)』、そして英雄派を束ねる曹操が所有していた最強の神滅具『黄昏の聖槍』…

13種ある神滅具のうち4種を、英雄派が所有しています」

「な、何だと!?」

「4つの神滅具が、テロリストの手に!?しかも1つは、主の…」

「そんな、そんな事が…!」

 

だがそれだけに留まらない。

それ以外にも絶霧と黄昏の聖槍含めた計4つの神滅具を所有している、そんなロスヴァイセの報告に、イリナ達の間でまたも驚きが広がった。

 

------------

 

「…完成だ」

 

英雄派の襲撃というアクシデントがありながらも嵐山観光を続けてホテルへと戻った一誠達。

その晩、ホテルの部屋でヴァーリが熟睡している隣でそう呟きながら、パソコンと一緒に持ち出していた機械に差し込んでいたガシャットを取り出す。

そのガシャットは今までに一誠が開発したどのガシャットとも似ていない、異様な形状だった。

大きさこそガシャットギアデュアルと同等クラス、銀と金のベースカラーに『MAXIMUM MIGHTY X』の文字と一頭身のロボらしきものに乗り込んだキャラクターが描かれたラベルが貼られた、と此処までは今までと同じだが、その上部には、エグゼイドが頭を出しているかの様なスイッチらしき機構があった。

 

「この修学旅行中に何か起こると踏んで開発を急いでいたが、間に合って良かった。このガシャットの力は必ずや、英雄派との戦いで大いに発揮されるだろう…!」

『マキシマムマイティエックス!』

 

そう呟きながら、そのガシャットを起動した一誠。

次の瞬間、一誠の眼が、赤く輝いた…!



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110話_Third Day,不殺の極み

英雄派の襲撃から丸1日経過したこの日、八坂の案内で清水寺や祇園等を中心に回った一誠達。

その間も昨日の様な奇襲が無いかと警戒していた彼らだったが、幸いと言うべきか分からないが襲撃は無かった。

とは言え昨日の襲撃から英雄派が京都の地、或いはその周辺に未だ潜伏しているのは明らか、狙いも八坂の身であると判明した為、三大勢力や妖怪達、彼らに協力する人外勢力が戦力をこの地へと派遣し、英雄派及びそれ以外の禍の団関係者を捕えようと、この地を守ろうと包囲網を張り、一般人が巻き込まれる事の無い様、大掛かりな人払いの結界を展開していた。

一誠達もまた就寝時間でありながらホテルを抜け出して包囲網に参加、英雄派の襲撃を今か今かと待っていた。

…その1人である一誠は「変身前を狙わないとも限らない、昨日も変身する前に誠次郎から攻撃されたからな」と言って既にガシャコンキースラッシャーを装備、そのスロットに昨日完成させたばかりのガシャットを装填しているという半ばフル装備な状態で待機していたが。

そんな時、

 

「八坂さん伏せて!」

「む、分かった!」

 

一誠が突如、八坂に対して叫ぶ様に指示を飛ばし、咄嗟に彼女が伏せたのを確認した後、

 

「迷える魂に導きの光を!」

『キメワザ!マキシマムマイティ・クリティカル・フィニッシュ!』

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

そんな掛け声を放ちながら逆袈裟斬りの様な斬撃を、さっきまで八坂がいた空間へと放った。

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁ…!?」

 

余りに突然な一誠の行動に皆が驚く中、その斬撃が虚空を薙ぐかと思われたその時、何かを切り裂いたかの様な音が響き渡り、其処からゲオルグと思しき叫び声が微かに聞こえて来た。

 

「うにゃ!?な、何か私の中に、もやもやしたのを纏った光球みたいなのが…」

 

と思いきや、その消滅した地点から霧の様な物を纏った光球が出現、それは黒歌の元へと向かって行き、そのまま彼女の身体へと入って行った。

 

「リプログラミング成功だ。これで英雄派はもう絶霧の力を使う事は、それによる強制転移を行う事は出来ない。それにしても、絶霧は黒歌を選んだか。相応しいと言えば相応しいか」

 

突如として自らの体内に入った物に混乱する黒歌、周りもまた一連の出来事に動揺を隠せない中、それを引き起こした一誠は1人、そう呟いていた。

其処へ、

 

「見た事無い紋様の魔法陣、それもかなりの大きさ…!

皆さん、襲撃の様です!」

 

一誠達の目前に出現した大きな魔法陣、其処から英雄派の大軍が現れた。

だが昨日一誠達が遭遇した時とは、様子がまるで違っていた。

絶霧を用いての奇襲を仕掛けて来なかったのもそうだが、その絶霧の使い手であるゲオルグは息も絶え絶えで、メンバーの肩を借りた状態で、一誠の姿を見つけるや否や、彼を睨み付けていた。

 

「兵藤、一誠…!

貴様、ゲオルグに何をしたぁぁぁぁ!」

 

大軍の先頭に立つ曹操は開口一番、何かを仕掛けたであろう一誠に対して叫ぶように問い質した。

 

『ガッシューン』

「昨日、大急ぎで完成させたこのガシャットの力さ。このガシャットが持つのは『不殺』の力。敵を殺さずして鎮圧させる、傷つける事無く無力化させる、そんな力だ!」

『マキシマムマイティエックス!』

 

その曹操の問いに対する答えとして、ガシャコンキースラッシャーに装填していたガシャットを取り出し、見せびらかしながら起動させた一誠、すると、

 

「イッセー君!?今、イッセー君の眼が…」

「イッセーの眼が、赤く…?」

「大丈夫ですか、イッセーさん!?まさか慢性的な寝不足の余り、充血ですか!?」

「え、それ本当なんですか、アーシアさん!?出撃して大丈夫だったんですか、イッセーさん!?」

 

突如として一誠の身に起こった異変、それにイリナ達は驚き、襲撃の真っただ中にも関わらず彼の身を案じた(黒歌は自らの身に起こった異変に対する混乱の余り、気付いていなかった)。

そう、ガシャットを起動した瞬間、他のガシャット同様にラベルと同様の絵柄が描かれたスクリーンが出現すると同時に、一誠の眼が赤く光り輝いたのだ。

だがこれは決して充血による物では無い、と一誠は自らの恋人達を宥める様に声を上げた。

 

「大丈夫だ皆、これは充血ではない。この眼の赤い輝きは、俺が極限に至った証。悪魔に転生してはや半年、様々な理不尽を目の当たりにしたり、様々な苦難に直面にしたりしながら強さを、皆を守る力を追い求めた末に至った、不殺の極致を示すものなり!行くぞ、トーテマ!」

『了解だ、父上!』

「今こそ、迷える魂に導きの光を!マックス大変身!」

『マキシマム・ガシャット!ガッチャーン!レベルマックス!最大級のパワフルボディ!ダリラガン!ダゴスバン!最大級のパワフルボディ!ダリラガン!ダゴスバン!』

 

己の進化を誇示するかの如く語る一誠、その後トーテマと呼んだガシャットを媒体とするバグスターと思われる、麦わらの一味であるサイボーグの様な声の主と言葉を交わし、変身動作を終えた。

だが銀色のパネルが彼の身体を通過した後に変化したその姿は、エグゼイドの基本的な姿であるアクションゲーマーレベル2と、装填しているガシャット以外は全く同じにしか見えなかった。

ところがその後、後方に出現したままになっているスクリーンから、

 

「で、デカァァァァァいッ説明不要!」

「何あれ!?エグゼイドの、顔!?」

「凄く、大きいです…」

「アーシア、その発言は色々と問題になるぞ」

「いやヴァーリさん、そう言うのも仕方ないと思いますよ。あの巨大な、ロボット?を見たら…」

「あれがあのガシャットの、力の根源…?」

 

エグゼイドの顔を巨大化した様な姿のロボット――マキシマムゲーマが出現したのだ。

その異様な姿に再び驚きに包まれる中、ガシャット上部のスイッチを押し込んだエグゼイド、

 

「はぁっ!」

『マキシマムパワー!エェェェェックス!』

 

それを合図にマキシマムゲーマの下部が大きく口を開け、それにエグゼイドは入って行く。

彼が入ったのを受けて、マキシマムゲーマから両腕、両足を含めた胴体が飛び出し、最後に入り込んだエグゼイド自身の頭が飛び出した。

 

「仮面ライダーエグゼイド・マキシマムゲーマーレベル99(マキシマム)!ノーコンティニューで、クリアする!」

 

一回り大きなロボットに乗り込んだ様な姿となったエグゼイド――マキシマムゲーマーレベル99は、着地と共にそう宣言した。

この宣言と共に京都を、八坂を巡る戦いは始まった…!



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111話_Maximunな衝撃

「マキシマムだか何だか知らねぇが今度こそくたばれやクソ兄貴ィィィィ!」

『WelshDragonBalanceBreaker!』

 

エグゼイドの言葉と共に始まった英雄派との戦い、まずは誠次郎が己の身に宿った神滅具『赤龍帝の籠手』の禁手である赤い龍の様な全身鎧――『赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』を纏ってエグゼイドへと突撃を仕掛けるが、

 

「当て身!」

「がはっ!?」

「悪いが貴様の相手はこの俺だ、兵藤誠次郎!貴様には色々とぶつけたい物があるのでな!」

 

それに待ったを掛ける様に体当たりした、白龍皇の鎧を纏ったヴァーリ、己が誠次郎に対して抱く怒りをぶつけるかの如く立ちはだかった。

その他にも其々が戦うべき相手と対峙する等して、続々と戦いの火ぶたが切られていた中、

 

「さて、今此処でお前達を直ぐ倒すのは造作も無い事だが、敢えて問おう。お前達英雄派は何故、テロリストの道を歩む?バラキエルさんが言っていた通り、人外達への復讐の為に身を落とした者も大勢いるだろうが、貴様を含めた幹部勢はそうでもなさそうだ。故に気になってな」

 

マキシマムゲーマーレベル99となったエグゼイドは、対峙する曹操にガシャコンキースラッシャーの切っ先を向けながら、英雄派の活動理由を問いただした。

 

「俺達の活動理由はシンプルな物だ。

 

 

 

俺達は『人間』として何処までやれるのか。悪魔や天使、ドラゴンに神々といった超常の存在に『人間』が何処まで通用するか、それが知りたい、其処に挑戦したいんだ。それに超常の存在を倒すのは何時だって後々に英雄として称えられる『人間』だ。いや『人間』でなければならない」

 

そんなエグゼイドの問い掛けに応じ、己の想いを声高に宣言する曹操。

 

「人間として?はっ、勘違いも甚だしいな。随分と薄っぺらい考えだ」

「な、何だと!?」

「人間として超常に挑むと言うが、お前達がその超常の存在に向けている物は何だ?神器だろう。そもそも神器は、超常の存在である聖書の神が作り上げし物、いわば超常の物だ。増してお前が用いる黄昏の聖槍は聖書の神の意思が宿った物、誠次郎が用いる赤龍帝の籠手は二天龍の一角たる赤い龍の魂が宿った物、何処から如何考えても超常の力、超常の存在だ!」

「っ!?」

 

だがエグゼイドは、そんな曹操の想いを、英雄派の活動理由を薄っぺらい物と断じた。

超常の存在によって生み出された超常の力である神器に頼り、その力を振るっていながらそれを否定し、超常では無い存在として越えると言う曹操の言葉は、エグゼイドの心に響く事はなかった。

 

「仮にお前達が超常の存在に挑み、倒したとしよう。けれどそれが果たされた時に生きている者達は、後世の歴史家達は『神器使い』が超常の存在を下した、としか見ない。『人間』が超常の存在を下したと考える者は、お前達をお前が言う『英雄』として称える者は誰一人としていない!」

「黙れ…」

「神器の力を振るう事でしか世界に影響を及ぼさないお前達は『神器使い』であって『人間』ではない!お前が口にしていた英雄と呼べる存在に、お前達が至る可能性は万に一つもない!」

「黙れ…!」

「『人間』として超常の存在に挑み、勝利したと言いたいのなら『人間』としての、超常の存在に頼らない純粋な『人間』としての力を磨き上げてから言うものだ!『人間』だった頃の俺がバグスターウィルスを生み出したのを切っ掛けに、仮面ライダーの力を一から作り、磨き上げた様に!」

「黙れぇぇぇぇ!」

 

そしてそんな曹操の、英雄派の『矛盾』を突きつける。

図星を突かれたのか、エグゼイドの言葉に曹操は逆上し、怒りのままに突撃するが、

 

『ガッチャーン!キメワザ!』

「迷える魂に導きの光を!」

 

その時には既に、エグゼイドは準備を終えていた。

 

『ガッチャーン!「マキシマムマイティ・クリティカル・ブレイク!」』

「ぐはっ!?」

 

激情の余り槍捌きが荒くなった曹操の攻撃を余裕で捌きながら、閉じていたゲーマドライバーのレバーを開いたエグゼイド、必殺の一撃を告げる音声に被せるかの如く宣言しながら、伸び縮みする手を活かしたフリッカージャブの要領で曹操に拳を叩き込んだ。

 

「がっ!?あぁぁぁぁぁ!?」

「曹操!?」

 

その一撃を叩き込まれた直後、曹操の身に異変が起こった。

苦悶の様子を露わにする曹操の身を縛り付けるかの様に、DNAを彷彿とさせる螺旋状の白いエネルギーが放出され、

 

「ひゃっ!こ、これって、黄昏の聖槍…?

わ、私が、主の意思を…?」

 

持っていた聖槍が消失すると同時に、彼の身体から手槍型のエネルギーが出現、それはジャンヌと戦う風魔の身体に入って行き、それと同時に彼女の左手には彼が持っていたそれと全く同じ槍が握られていた。

 

「今だ、一誠!」

『DivideDivideDiviDDDDD!』

「なっ!?くそ、離しやがれ!」

 

その光景を見て何を思ったか、ヴァーリが誠次郎を羽交い絞めにし、抵抗は許さないと言わんばかりに半減の力を連続で発動、誠次郎の力を吸収して抵抗を弱めた。

 

「そのガシャットが持つリプログラミングとやらの力が俺の想像通りなら、俺には効果が無い筈だ!俺は俺に宿った神滅具を、白龍皇としての自分を、アルビオンを信じる!だからイッセー、俺ごとやれ!哀れな赤い龍の魂を、このクズから救い出してくれ!」

「分かった、ヴァーリ!」

『ス・パ・パ・パーン!ガシャット!キメワザ!マキシマムマイティ・クリティカル・フィニッシュ!』

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「ぎゃっ!」

「ぐぅっ!」

 

先程ゲオルグと思しき存在から出て来たであろう霧を放つ光球と、曹操から出て来た手槍型のエネルギー、それを引き起こしたガシャットの力を、マキシマムゲーマーの『不殺』の力を見抜き、そして自分には効果が無いだろうと確信し、自分ごと誠次郎を攻撃する様に告げ、エグゼイドもそれを受けてガシャットをガシャコンキースラッシャーのスロット部に再度装填、根元にある斧の様な刃を、ヴァーリを巻き込む形で誠次郎に叩き込んだ。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

『遂に戻って来たぁぁぁぁ!』

「赤い龍の魂が、兵藤誠次郎から離れていく…!

俺の身には、何も無いか。有難う、アルビオン。俺を選んでくれて」

『お前は歴代最強にして最高の相棒だ、ヴァーリ。誰が離れてやるものか』

 

変化は直ぐに現れた。

禁手が解除され、曹操の時と同じく苦悶の様子を露わにする誠次郎、やはりその身を縛り付けるかの様に螺旋状の白いエネルギーが放出され、赤く小さいドラゴン型のエネルギーが彼の身体から出て来た。

一方でヴァーリの身には何も起こらず、そしてガシャコンキースラッシャーでの攻撃で付く筈の外傷も無かった。

自分が思った通りの結果となった事に、自らが宿す神器の根源である白い龍――アルビオン・グウィバーが自分を相棒であると認めてくれた事に、ヴァーリは何処か穏やかな様子で、アルビオンにお礼を言っていた。

 

『それよりもヴァーリ、一誠の方を見てみろ。赤いのの魂が、まさかの方向へと向かっていくぞ』

「何?其処にいるのは…!

はは、よもや道を踏み外しそうになった俺を引き戻してくれたイッセーが、俺の宿命のライバルになるとはね。運命とは分からない物だ」

「あ、ああ、俺の、神滅具が…!」

 

ヴァーリの身の中で発言しているのと同じである為に顔は見えないものの、恐らくどや顔でヴァーリを称賛するアルビオンだが、ふとエグゼイドの方向を向く様ヴァーリに促した。

それを受けてヴァーリが眼を向けると其処には、ドラゴン型のエネルギーがエグゼイドの身体に入って行く光景があった。



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112話_Third Dayの、戦いの終わり

マキシマムゲーマーレベル99となったエグゼイドが自らの力を振るい、英雄派メンバーから神滅具を奪取する少し前、此処でも異変は起こっていた。

 

「その程度かい?そんな様ではその魔剣が泣くよ!」

「くっ!これが仮面ライダーの力だと言うのか!?」

 

剣士繋がり故かジークと対峙するブレイブだったが、戦況はファンタジーゲーマーの力と、禁手化した魔剣創造の力を存分に発揮するブレイブが終始優勢であった。

ジークも、首から3本目の腕として出るという衝撃的な形で具現化する神器『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』――持ち主の力を倍にする――を活かし、投げつけるだけで戦士の身を両断する程の凶悪な切れ味と、五大龍王の一角であるファーブニルをも打ち破る龍殺しの呪いを併せ持った、北欧において最強の剣として知られるグラム等の3振りの魔剣を駆使して応戦するも、ドーム状の障壁で防御され、ワープによる奇襲を受け、纏う瘴気を腕型にしての打撃や、分身を形成しての体術、それが神器の力で次々と生み出される聖魔剣を握り、四方八方から振るわれては対応出来るはずもない。

ならば少しでも手数を増やそうと、腕を4本増やした禁手『阿修羅と魔龍の宴(カオスエッジ・アスラ・レヴィッジ)』を発現させ、残る2振りの魔剣と、教会のエクソシストが持っている光の剣も抜き放つが、結果は大して変わらなかった。

そして、泣きっ面に蜂という諺がある様に、英雄派にとっても悪い出来事は重なった。

 

「がっ!?あぁぁぁぁぁ!?」

「曹操!?」

 

そう、エグゼイドが曹操から神滅具を分離させたのだ。

まさかの事態に、自分が戦闘中であるにも関わらず、その方向へと向いてしまうジーク。

その隙をブレイブが見逃すはずもない。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「ぐっ!?あがぁぁぁぁ!?」

 

ジークの意識が曹操へと向いたのを見計らって、瘴気をジークの身に、魔剣を所持する腕に集中させ、腕をねじ切らんばかりに締め上げ、手指を強引に広げさせた。

ジークもブレイブがやろうとしている事に気付いて抵抗するも、その強烈なパワーの前には人の身である彼が耐えられる筈もなく、手放してしまった。

 

「グラムにバルムンク、ノートゥングにディルヴィング、そしてダインスレイヴ…

北欧にその剣ありと言われた魔剣ばかりだ。これはテロリストである君が、世界の平穏を脅かす君が持っていい物ではない、僕が頂こう!」

「馬鹿め、その魔剣たちは己が意思で使い手を選ぶ!君如きが使い手に選ばれるとでも思ったか!」

 

こうしてジークが手放した5振りの魔剣を、瘴気を操って奪取したブレイブだが、ジークの表情からは余裕が見受けられた。

 

「む!?この膨大な気、僕を飲み込まんとするプレッシャー…!

成る程ね、彼の言う通り、僕が使い手であるかどうかを試すという訳か…!」

 

彼の言う通り、ブレイブがその魔剣達を手に取ろうとした瞬間、それを拒絶するかの様に刀身から妖しい輝きを放ち、ブレイブに力をぶつけようとする。

 

「ふざけるな!作り物風情が、武器風情が神にでもなったつもりか!調子に乗るな!」

「なっ!?魔剣の力を逆に飲み込もうとでも言うのか!?なんて思い上がった事を!」

 

その行為に怒りを露わにしたブレイブは何と、腕から大量の瘴気を吹き上がらせ、魔剣を屈服させようと覆いつくした。

魔剣もそうはさせんと言わんばかりに妖しい輝きを強くするも、

 

「良いか!武器が生命を殺すのではない、生命が他の生命を殺すんだ!武器はその為の道具に過ぎない!道具を活かすも壊すも、それを使う生命の思い次第だという事を忘れるな!」

 

ブレイブの想いを体現するかの様に吹き上がり続ける瘴気の勢いに押されて行き、次々と瘴気に飲み込まれて、抵抗を止めた様に輝きを失ってゆく。

そして、

 

「僕が選んだんだ!この仮面ライダーブレイブが、リアス・グレモリー様の騎士、木場祐斗が!皆を守る為に、リアス様の想いを叶える為に!」

 

最後まで抵抗していたグラムも例外なく瘴気に飲み込まれ、それが晴れた後には妖しい輝きを失い、ブレイブの左手に装備されていた。

 

「あ、あり得ない。魔剣が君を選んだ、いや、君が魔剣を強引に支配したとでも言うのか…?」

 

一連の光景を目の当たりにしていたジークは、今起こった事が信じられないと言わんばかりに呆然としていたが、

 

「撤退だ!残念だが、実験は諦めざるを得ない!これ以上被害が拡大したら元も子もない!」

「くっ分かった…!

兵藤一誠!この屈辱は忘れないぞ!首を洗って待っているが良い!」

「今度はぜってぇにぶっ殺してやる、クソ兄貴!そして神滅具を返して貰うからな!」

 

ゲオルグの撤退を促す声に、弾かれる様に彼の元へと移動して突如として出現した魔法陣に入った。

英雄派の面々はどういう訳か1人の死者を出す事無く、誰一人欠ける事も無く、とはいえ何の成果を上げる事も出来ず、それどころか魔獣創造以外の神滅具、ジークが持っていた伝説の魔剣の数々を失うという結果を以て、曹操達が吐いた捨て台詞を残して去って行った。

 

「終わった、のか…?」

「おっと!大丈夫ですか、八坂さん?」

「う、うむ…

テロリスト共との戦いは、終わったの、だな。妾はもう、禍の団から狙われる事は、無いのだな…?」

「ええ、恐らくは。少なくとも英雄派が持っていた神滅具のうち3つは此方の物となりました、その中には絶霧もあります、よって急に何処かへと飛ばされ、奇襲を受けるという事は無いでしょう」

「そう、じゃな。わ、妾ともあろう者が、情けない。安堵の余り、腰が抜けてしもうたわ」

 

八坂を、京都の地を守り切り、神滅具を3つも奪取する等した末に撤退に追い込んだという、大勝利と言うべき結果に終わったこの戦い、もう英雄派の脅威に晒される事は無くなったのだと理解した八坂は、安堵の余り崩れ落ちていた。

 

「凄いな、木場。まさか伝説に聞く魔剣の数々を奪取するとは」

「イッセー君こそ、神滅具を3つも奪取したそうじゃないか。英雄派のリーダーから黄昏の聖槍を分離させる所、僕も見ていたよ」

「奪取、と言うべきなのか、あれは?俺がしたのはあくまで神器の所有に関する『初期化』まで、黄昏の聖槍がイリナを、絶霧が黒歌を、そして赤龍帝の籠手が俺を選んだのはあくまで神器の意思だ。実際、ヴァーリに宿っていた白龍皇の光翼も『初期化』したが、ヴァーリの身に留まったままだ」

『当然だ、イッセー。ヴァーリは歴代最強にして最高の相棒だからな。例え私に選ぶ権利があるとしても、私は迷わずヴァーリを選ぶ』

 

態勢を崩してしまっている八坂を介抱しながら、集まって来た仲間達とこの戦いを振り返るエグゼイド。

最高に近い形で平穏を守れた事で、晴れやかな気分となった修学旅行3日目は、こうして終わりを告げた。



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113話_School Tripは終わり…

禍の団との戦いで八坂を守り切り、敵が所有していた3つの神滅具と、数々の魔剣を奪取して撤退に追い込むという最高に近い勝利を手にしてから一夜明けた今日、修学旅行最終日。

昨夜の戦闘による疲労や寝不足も何のそのといった様子で、残り少なくなった京都での時間で京都タワー等のまだ訪れていなかった名所へと回り、お土産を購入した一誠達、

 

「方々、旅行中の身でありながら妾の無理難題に応えて頂いた事、この地をテロリストの魔の手から守って頂いた事、改めてお礼申し上げる。誠にかたじけない」

 

そして遂に京都から帰る時間となった。

京都駅の新幹線が発着するホームに見送りに来た八坂・九重母娘を始めとした裏京都の面々、その代表として八坂が、一誠達仮面ライダーらの尽力に対して礼をしていた。

 

「そしてイッセー殿」

「はい、八坂さn」

 

そして新幹線が発車する直前、一誠を呼び止めた八坂は、

 

「既に数多の女子(おなご)と想いを通じ合わせた貴方の関係に、一回り以上も歳が離れておる妾が割って入るのは迷惑やも知れん。裏京都を統べる身故に悪魔の下に入る事も出来ん、仮にこの想い通じ合わせたとして、所謂『遠距離恋愛』になるであろう。

 

 

 

それでも妾は女子として、貴方をお慕い申しております」

 

振り向いた一誠にキスをし、己の想いを打ち明けた。

余りに唐突な状況に思わず固まってしまった一誠、何か言おうとしてはいたがそれが間に合う事無くドアは閉まり、新幹線は一路、東京へと向けて発車した。

 

------------

 

(八坂さんが、俺を…

どうしたら良いのだろうな、俺は。今まで9人も彼女が出来た俺だが、皆リアスの眷属と、主人であるリアス本人。八坂さんの場合は今までと訳が違う。さっき八坂さんがいった通り彼女は裏京都を統べる身、彼女になったからと言って)

『相棒、相棒。今大丈夫か?』

「うぉっ!?この声、まさか『赤い龍』か?何処ぞの総司令みたいな声だ」

『総員、第一種戦闘ってやらせるな。おっと、初めましてと言うべきかな。俺こそがお前が持っている神器に宿った魂、『赤い龍』ことア・ドライグ・ゴッホだ。これからも宜しく頼むぞ、相棒』

「俺に宿って一晩しか経っていないのにもう相棒認定か?まあ良い。俺は兵藤一誠、昨日までお前が宿っていた兵藤誠次郎の双子の兄だ。宜しく」

 

その東京駅へと向かう新幹線の車内で八坂からの告白について考えていた所に、昨日リプログラミングによって誠次郎から分離され、一誠に宿った神器『赤龍帝の籠手』、それに宿る魂である伝説の二天龍の一角『赤い龍』――ドライグがふと一誠に呼びかけ、一誠も切り替えるべきと思ったのか応じた。

 

「そういえばドライグ、誠次郎の身体から切り離(リプログラミング)された時に何か叫んでいたな。『遂に戻って来た』だったか?どういう事だ?アイツがどうしようもないクズなのは、宿っていたお前が一番知っているだろう。そんなアイツに力を貸すのが嫌になるその心中は理解出来るが、それでも今代の赤龍帝に選ばれたのはアイツであって俺では無い筈。俺に宿って一晩しか経たない中でいきなり俺を相棒呼ばわりする事と言い、まるで俺こそが赤龍帝だったと言わんばかりの様子だが…」

『おっと、その件についてこれ以上俺が口にするのは禁則事項だ。歓喜の余りつい口が滑ってしまったが、幾ら相棒であれどもう口を割れん。まあ、そう遠くない内に分かるとだけは言えるが』

「自分で疑問を生む様な事を口走っておきながら、なんだその言い草は。とはいえ禁則事項という事は、他の誰かとの取り決めで口に出来ない訳か。ならばこれ以上お前を問い質しても無駄か」

『そういう事だ、済まないな』

 

其処で一誠は、リプログラミングした際にドライグが発した言葉が気になっていたのか、その真意を問い質した。

一誠の言う通り今代の赤龍帝に選ばれたのは一誠ではなくその双子の弟である誠次郎である、にも関わらずドライグはあの時、あるべき場所へと戻って来たと言っていたのだ。

確かに誠次郎の人間性を踏まえれば、彼が赤龍帝である事、神器として彼に力を貸す事に嫌気が差すのは当然ではあるが、だとしてもあの状況なら「解放された」とか「やっと抜け出せた」という様に、現状を抜け出せた的な意味の言葉を吐くだろう、「戻って来た」は明らかにおかしい。

そんな違和感丸出しな言葉に対して疑問をぶつける一誠だったが、ドライグは如何にも口止めされていますといった言葉でこれ以上は口を割らなかった。

 

------------

 

「パパの元にあるべき物が戻った。いよいよ、我々が本格的に動き出す時が来たか。○○○○○○○さん、其方はどうです?」

「此方も予定通り向かいそうだよ、○○○君。イッセー君達が神滅具を得た事、大王派の面々も掴んでいるだろうね、それで危機感を覚えて行動を起こす筈。動かない様なら先手を打つまでさ。間接的ではあるけどテロ支援をしていた須弥山を取り込む算段も整えた、今度行われる若手のレーティング・ゲームに主神である帝釈天を招待している、其処に来た所を秘密裏に粛清する。冥府のハーデスが目立った動きを見せないのは想定外だけどね。彼は、いや冥府に属する死神の大半は三大勢力への敵愾心を隠そうともしない、禍の団の行動に対して何かしらのアクションを起こす物だと思っていたけど…」

「問題ありません、○○○○○様。ハーデスが「蝙蝠」と侮蔑する悪魔(イッセー様達仮面ライダー)の活躍を聞いて黙っている筈はありません、必ずや何かしらの行動を起こすでしょう。その時こそ、冥府をも支配する好機です」

 

その頃とある場所では、夫婦と思しき男女と、1人の青年が何やら不穏な事を話していた…

 




次章、ハイスクールDevil×Ex-aid――

「さぁ、みんな……準備は出来てるよね?」

その日、思わぬ場所から一誠達を訪ねる客が――

「総員構え!」
「動くんじゃねぇ、テロリスト共!」
「貴様ら、此処が我らが義母様、リアス・グレモリー様の管理する街と知っての行動か!?」
『お前ら落ち着け!彼らは今日『煉獄の園(パーガトリー・エデン)』から親父を訪ねて来た人達だ!』

予想だにしない状況故か一触即発な状況となるも、パラドの連絡で無事、一誠の元へと案内された彼ら――

「初めまして。リアス・グレモリーの兵士、いや、仮面ライダーエグゼイド、兵藤一誠です」
「ご丁寧にどうも……異世界『煉獄の園』を統治する煉獄義姉弟の長男で仮面ライダー隷汽の鬼崎陽太郎です。以後、お見知りおきを……」

彼らは『煉獄の園』から世界の壁を越えてやって来た異世界の仮面ライダー達である――

「あれ?こんな闇深そうなステージ、組み込んでいたか?」
「おぉ、何か面白そうにゃ。折角だし、このステージにするのにゃ!」
「ちょ、黒歌!?」

一誠が組み込んだ覚えのないステージを舞台に行われる模擬戦――

「仮面ライダー隷汽……鬼崎 陽太郎、渾沌の夢に沈もう」
「仮面ライダー煉王、兵鬼 薫!渾沌の誇りを舞い掲げるよ!!」
「仮面ライダーロスト、鬼鉄 一輝!渾沌の誇りを舞い掲げる!!」
「仮面ライダーヘレナ……鬼町 夏煉!渾沌の定めに舞い殉じます!!」

其処で一誠達は、別世界のライダー達の力を目の当たりにする!

8.5章、特別編『異文化交流のPURGATORY EDEN』

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久しぶりです、不知火新夜です。
上記の予告通り、次回からは悪維持さんの作品『煉獄の義姉弟』とのコラボストーリーとなります!お楽しみに!


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8.5章 特別編『異文化交流のPURGATORY EDEN』
114話_Purgatoryからの来訪者


今話から、悪維持さんの小説『煉獄の義姉弟』とのコラボストーリーとなります!


此処は、他人からすれば異世界と呼ばれるとある世界…

大地は闇の如く漆黒で覆われ、いたるところにある樹木全ては灰色に染まり、木の象徴である葉は一つも付いていない。まさに地獄と呼ぶには相応しいと言えるだろう…

そんな世界の中枢には、まるでおとぎ話に登場する巨大な白き西洋の城が建てられており、その城の内部では様々な異形と呼ばれるモノ達…あるモノは全身が黒で統一されたパーカーを纏った怪人達が、あるモノは黒と白をイメージとしたギャングファッションをした怪人達が、またあるモノは青と黒を基調とした戦国時代の足軽に似た怪人達があちらこちらと慌ただしく、何かの準備を整える為に働いていた。

そんな城のある一室…其処には卓上型の機械を操作する白衣を着こんだ白のセミロングヘアーに深紅の瞳をした青年と、それを見守る赤のロングヘアーに蒼い瞳の女性と、黒髪のセミロングヘアーに翠の瞳の少女。そして彼等が視線を向けている場所にいるのは、まるで地獄の番犬ことケルベロスの装飾が施された全身が深紫色のカラーリングで、黄緑色のマントを着けた仮面の戦士だった。そして、その手には刀身にイコライザーの様なメーターがついた剣を持っていた。

 

『ウウウ…ヴヴォオオ!!!』

 

何処からか現れた全身黒色で岩を鷲掴みにする手のようにも見えるイメージをした巨大な怪物が唸り声をあげながら、背後から仮面の戦士に襲いかかる。仮面の戦士は怪物の存在をまるで最初から居たかの様に察知し、背後からの攻撃を回避すると左手で剣の持ち手にあるグリップを引っ張った。

 

『ヒッパレー!』

『ヴヴォオオオーーー!!!』

『スマッシュヒット!!』

 

グリップを引っ張った事で男性の音声が響き、テンポの良い音楽が周囲に流れる。すると剣の刀身を紫色の炎が燃え上がる様に包み込む。そして、怪物が再び襲いかかると仮面の戦士は剣のボタンを押しながら、紫炎を纏わせた斬撃を怪物に浴びせた。

 

『ヴォガァアアアアアア!?!?』

 

斬撃を食らった怪物は断末魔の悲鳴をあげながら、大爆発を起こして霧散した。怪物の最期を見届けた仮面の戦士は腰部の中央にある機械に装着された装置に手をかけて取り外すと、仮面の戦士は光と共に瞬く間に黒髪のウルフカットに深紫の瞳をした少年へと姿を変えた。そして少年は手にした装置に装填された小さなボトルを抜くと装置はまるで小さなケルベロスの姿をしたロボットに変形し、青年に視線を向けながら飼い犬の様にじゃれつきながら「ケル!ケルケル!」と吠える。

 

「『ロストケルベロス』とのシンクロ係数に異常は見当たらない、『ビートクローザー』の使い方は…まぁ、君なら剣に関しては問題は無いか。さて、これで一通りのシュミレーションプログラムは終了だ」

「はい、ありがとうございます。陽太郎(ようたろう)義兄(にい)さん」

一輝(いっき)、お疲れ様!これはぁ~アタシからのご褒美だよ♪」

「わっ!?ちょ…か、(かおる)義姉(ねえ)さん!?」

「義姉さん?少しは彼を休ませてあげなよ…これから実戦経験の為に()()()に出掛けなきゃ行けないんだからね?」

「イ・ヤ。だって長ったらしい研修みたいなのを一時間も休みなく続けたんだから、頑張ったご褒美くらいあげても良いじゃん?ねぇ、一輝ぃ~♪」

「あ、あの義姉さん…む、胸があたって…」

「アハハ…本当に薫義姉さんは一輝義兄さんの事が大好きだね?」

「ハァ、先が思いやられるよ全く…」

 

先ほどの仮面の戦士だった少年…鬼鉄(おにがね)一輝の元に、白衣を着こんだ青年…鬼崎(きざき)陽太郎がタブレットを片手に持ちながら記載された数値や、その結果を告げていると女性…兵鬼(ひょうき)薫が一輝へ力いっぱいに抱きつく。陽太郎が注意するも、薫はご褒美と称して一輝を更に抱きしめる。当の一輝は更に抱きしめられた事で、彼女の豊満なバストがあたり頬を赤らめる。苦笑と共に二人を眺める少女に対し、陽太郎は呆れながらタブレットを操作する。

 

「あ、話は変わるけどさ…なんでアタシが呼ばれた訳?夏煉(かれん)だって、今はヴラドさんが管理してる【ハイスクールD×D】の駒王町で仕事があるはずじゃん?」

「今回はその駒王町…正確には【ハイスクールD×D】の別世界に用があるのさ」

「「「???」」」

「まぁ、詳しい内容は“幽霊列車”に乗りながら話す事にするよ…フッ!」

 

薫の疑問に陽太郎は答えるが、薫と一輝と少女…鬼町(きまち) 夏煉は未だに頭上へハテナマークを浮かべている。陽太郎は詳しい説明を伝える為に場所を変えることを告げ、羽織っていた白衣を翻す様に脱ぎ捨てる。すると、彼の衣装が某幽霊世界のそれとそっくりな黒い軍服となった。

 

「さぁ、みんな。行くとしようか…」

 

陽太郎はそう言いながら微笑むと、開かれた扉へと足を運んだ。

 

------------

 

一方此処は、10月某日夜の駒王町。

 

「いやぁ、久々に静かな夜だぜ。あれ程あったテロリストの襲撃も、親父とトーテマが京都で奴らの牙を引っこ抜いてやった途端にパタリと無くなった。やっぱ平和な日常って良いもんだぜ。久しぶりにヴァイパーのエンジン吹かして風になろうかねぇ?」

 

『裏』の住人達にとっては最早お馴染みとなったバグスター達による日常パトロール、この時間帯を担当する1体であるモータスは、此処最近まで騒動に満ちたのが夢であるかの様に静けさを取り戻した夜の街中で、ご機嫌な様子で独り呟いていた。

そう、9月に入った頃から毎日の様に仕掛けられ、そして必ずや実行前に襲撃者が確保されていた禍の団によるこの街への襲撃、だがそれも主に行っていた英雄派の大幅な弱体化、具体的には神滅具所有者の殆どが一誠のリプログラミングによって己が神器を奪取された事で、襲撃どころでは無くなったのか嘘の様に無くなったのだ。

そんな平和な時間を満喫しながら街中を巡回するモータス、だが「嵐の前の静けさ」という諺がある様に、こういう時に限って思いも寄らない事態は起こるものだ。

 

「ん、何だ?空が、ぐにゃぐにゃに…

な、何じゃありゃぁ!?骸骨、いや、機関車!?」

 

人気が無くなった為にすっかりと寂れた工場跡地が見える場所へとやって来たモータスだったが、其処で信じられない光景を目の当たりにした。

何の遮蔽物も飛行物体も無い、秋雨シーズンにしては珍しい澄み切った夜空、だがその空が突如として歪み出し、其処から想像だにしない物が現れたのだ。

現れたのは列車、それも世間一般的にみられるそれではなく、先頭部が頭蓋骨を模した複雑且つ世間受けしない不気味なデザインの蒸気機関車だった。

 

「えーっと今日のシフトは、リボルとアランブラとロボル、オペレーターはパラドか!よし、繋がった!こちらモータス!たった今、街外れの工場跡地の上空から突如、骸骨みてぇな蒸気機関車が出現、線路を空中に敷設して走行中だ!殆ど前触れのねぇ出現の仕方からしてテロリスト共によるものの可能性が高い!直ぐ現場に急行してくれ!」

『了解!』

『承知!』

『任せろ!』

 

そんな光景を目の当たりにしてからのモータスの行動は早かった。

同じくこの時間帯を担当しているリボル、アランブラ、ロボルと、オペレーターであるパラドと通信を繋げ、今見た光景を報告、工場跡地へと向かう様指示を飛ばし、他の3体も応じた。

 

『ちょっと待て、骸骨みたいな蒸気機関車…

ま、まさか!?おいお前ら、それはテロリストのものじゃねぇ!それに乗っているのは』

 

そんな彼らに、パラドが通信機から必死に制止を訴えるも、聞く者は誰一人としていなかった。

 

「おぅ、来てくれたか」

「うむ、1人の欠員も無く到着だ」

「あれが、お前が言っていた骸骨らしき蒸気機関車か。あの如何わしさは反則だろ、よくもまあのこのこと現れたものだ」

「此処まで堂々と現れたのだ、禍の団でも相当な手練れかも知れん。近辺には奇襲に適した遮蔽物も電子機器も無い、心して掛かるぞ」

 

それから程なく、列車がまるでショッピングモールの車用スロープを降りる様に地上へ降り立とうとしていた頃には、第一発見者であるモータス、彼の連絡を受けたリボルにアランブラにロボル、そして暗い色合いにデジタルパターンの迷彩を施した軍服を纏う一方で、モータスヴァイパーのフロントカウルの様なド派手なヘルメットを装着するという何ともミスマッチな風貌の兵士達――戦闘員型バグスターウィルスの大軍が、列車を包囲した。

尚、何かに気付いて制止を訴えていたパラドの声はもう聞こえない、これは余りにしつこく制止を訴える彼の声が鬱陶しくなり、あろう事か皆して通信回線を切断した為である。

 

「総員構え!」

 

リボルの号令と共に各々の装備武器を構えて列車の扉へと向け、出て来るであろう存在に直ぐにでも対応すべく神経を張りつめるバグスター達、そして、

 

「さあ、お前らの罪を数えろ!」

「動くんじゃねぇ、テロリスト共!」

「貴様ら、此処が我らが義母様、リアス・グレモリー様の管理する街と知っての行動か!?」

 

扉が開いた瞬間、其処にいた存在に向けて、誰もが武器を突きつけた。

 

「夏煉。おかしいな、僕達は君達の主人が属する冥界とアポを取って来たんだけど?」

「あぁ?テロリストが何を証拠にそんな寝言を」

「此処にその証拠たる許可証もあるんだけどね」

「な!?た、確かにそれは冥界政府が発行している入界許可証、まさか…!」

 

現れたのは陽太郎に、モデル並みの体形に某独裁国家の制服を模した軍服を纏った薫、某人斬り治安部隊の副長が着ていたのと同じような黒い軍服を纏った一輝、モデルの様な体形に某忍者育成学校の選抜メンバーが着るそれの様な黒い軍服を纏った夏煉の4人、バグスター達の敵意剥き出しな行動に反応して何かを取り出そうとした夏煉を諫めた陽太郎が、事情を説明しながら、その証拠となる書類を取り出すと、列車を囲んでいたバグスター達に動揺が広がった。

 

『お前ら落ち着け!彼らは今日『煉獄の園(パーガトリー・エデン)』から親父を訪ねて来た人達だ!』

 

テロリストだと思っていた存在が実は、ちゃんとした手順に則ってこの地を訪ねて来たお客様だった、それを聞いて慌てて通信回線を接続すると、端末からはパラドの焦り丸出しな声が聞こえて来た。

 

「え、親父を訪ねて来た客だったのか!?パラド、おま、早く言えよ!」

『言っただろ、さっきから!だというのにお前ら「うるせぇ」と言って通信切りやがって!まずい事態になって相手を滾らせないか、俺は冷や冷やしたぞ…

今、黒歌のおふくろが車を飛ばしてそっちに向かっている。到着するまでにさっさと謝罪しろ、全く』

 

聞いていないと言わんばかりにモータスが非難の声を上げるが聞こうともしていなかったのはモータス達である、お前達が文句を言う資格は無いと言わんばかりに、相手方に謝罪する様指示を飛ばした。

 

「そう、か…

此度の無礼、誠に申し訳ございませんでした。遠く離れた地よりお父様を訪ねられたと言うのに、とんでもない事を…」

 

パラドからの連絡によって一誠を訪ねて来た客だと判明した陽太郎達、それを知り、そんな相手にとんでもない事をしてしまったと思い知ったバグスター達、その中からアランブラが謝罪の言葉と共に頭を下げ、モータス達も続いた。

 

「まあ、分かってくれたら良いよ。ほら、夏煉達も殺気を収めて」

「よ、陽太義兄さん?でも…」

「この世界の情勢は確認していただろう、禍の団が未だ倒されていない中で警戒心を解かないのは道理という物だよ」

「けどコイツら仕事でパトロールしている連中だろ?アタシらが来る事に関して何の連絡もしていないとか、一体こっちを何だと思っているんだか」

「義姉さん。どうやら向こうのオペレーターの話からして、彼らが連絡を遮断していたみたいですよ」

「それはそれで従業員教育がなっていないねぇ、全く」

 

その謝罪を素直に受け取った陽太郎、一方で何かしらの迎撃行動を取ろうとした夏煉達は不信感を抱いてはいたが、何とかこの場の騒ぎは収まった。

 

「はい、到着っと。全く、アンタら何やってんのにゃ。禍の団への警戒心があるのは分かるけど、早とちりして良い理由にはならないでしょうに。まあその様子だとパラドからこってり絞られたみたいだし、とやかくは言わないのにゃ。後は私に任せて、ささ、パトロールに戻った戻った」

「「「「了解!」」」」

 

陽太郎達がこの街に到着して早々に起こった騒動が収まってから程なく、黒歌が運転するテスラ・モデルXが到着、運転席から降りて来た彼女がバグスター達に指示を飛ばしながら一行へと向き直った。

 

「貴方達が煉獄の園からイッセーを訪ねて来た人達ね。私はリアス・グレモリーの騎士、いや、仮面ライダーパラガスって名乗った方が良いかにゃ?塔城黒歌、今日は宜しく頼むにゃ!」

(黒歌さん!?この世界の黒歌さんが、リアス・グレモリーの眷属…)

「ん?どうかしたかにゃ?」

「あ、いえ、何でもありません。煉獄義姉弟の次女、鬼町 夏煉です」

「先に言われちゃったか。異世界『煉獄の園』を統治する煉獄義姉弟の長男、鬼崎 陽太郎です」

「アタシは煉獄義姉弟の長女、兵鬼 薫だよ」

「僕は煉獄義姉弟の次男、鬼鉄 一輝です」

 

バグスター達を見送り、互いに自己紹介を始めた黒歌達、その際に夏煉が驚いた様な表情を浮かべたのに気付いた黒歌が気に掛けたが、深入りする事も無いと早めに切り上げた。

 

「イッセー達が待っているし、送るのにゃ。ささ、席へどうぞにゃ」

 

互いの自己紹介も終わり、一誠達が待つ屋敷へと送迎する為に車の座席へと案内する黒歌、陽太郎達も勧められるがまま其々が乗り込んで行った。

 

「それじゃあ、出発進行にゃ!」

 

そして、陽太郎達4人が乗り込んだのを確認した黒歌は車を起動させ、屋敷への道を進んで行った。



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115話_煉獄のRider's

「初めまして。リアス・グレモリーの兵士、いや、仮面ライダーエグゼイド、兵藤一誠です。先程は我が子達が失礼しました」

「ご丁寧にどうも…

異世界『煉獄の園』を統治する煉獄義姉弟の長男で仮面ライダー隷汽の鬼崎陽太郎です。以後、お見知りおきを…」

 

煉獄の園よりこの世界へとやって来た陽太郎達、誤解によって引き起こされた到着時のゴタゴタも収まり、一誠達が待つ屋敷へと向かい、無事に到着した。

車を運転していた黒歌がそのまま先導すると其処では、玄関前で待機していたらしい一誠達がいた。

 

「仮面ライダーゲンム、リアス・グレモリーです。今日は宜しくお願いします。さ、皆も自己紹介を」

「はい。仮面ライダースナイプ、姫島朱乃ですわ」

「仮面ライダーブレイブ、木場祐斗です」

「仮面ライダーノックス、塔城白音です」

「仮面ライダートゥルーブレイブ、ロスヴァイセです」

「か、仮面ライダーポッピー、アーシア・アルジェントです!」

「仮面ライダークロノス、ギャスパー・ヴラディです!」

「仮面ライダーレーザー、ゼノヴィアだ」

「仮面ライダー風魔、紫藤イリナです!」

「仮面ライダーレーザーX、レイヴェル・フェニックスですわ」

 

一誠と陽太郎、2人が挨拶を交わしたのを受け、リアス達も自己紹介を始める。

本来なら幾ら恋人と言えど、自らの主であるリアスを差し置いて自分が真っ先に挨拶するのは眷属として礼儀がなっていないと突っ込まれそうな話だが、今回陽太郎達が接触するのはリアスの眷属としての一誠達ではなく、ライダーシステム開発者としての、天才ゲームクリエイター『IS』としての一誠、一誠がリアスの眷属としての立場を言おうとして自らが変身する仮面ライダーの名に言い換えたのも、リアス達もまた続いたのもそれ故である。

 

「仮面ライダー煉王、兵鬼薫だよ」

「仮面ライダーヘレナ、鬼町夏煉です」

「仮面ライダーロスト、鬼鉄一輝です。宜しくお願いします」

 

それを受けて薫達も自己紹介を行った。

バグスター達から敵と勘違いされ武器を向けられていた事もあって当初は不信感を抱いていた3人だったが、陽太郎が気にしていなかった事、送迎中の車内での黒歌の気さくな対応で一先ずは張りつめていた気を緩めた。

 

「さて、一輝さんが変身するロストでしたか…

新しいライダーシステムを開発したので、その実戦データを収集すべく我々との模擬戦を行いたいとの事ですが…」

「はい、それでその件については」

「ええ、喜んで。俺としても、異世界のライダーシステムには大いに興味がありますから。アマゾンにディケイド、ダブルにオーズ、フォーゼにウィザード、鎧武にドライブ、ゴーストにビルド…

異世界には俺が開発したそれとは違うライダーシステムが数多く存在する、そのメカニズムを、力をこの目に焼き付ける事で新たな力が、其処に起因する新たなゲームのアイデアが生み出される。俺はそれが楽しみで仕方ありません」

 

挨拶もそこそこに本題を切り出した一誠、改めて了解を求めた陽太郎の問い掛けに快諾の意を示した。

今から一ヶ月以上も前に一誠達が突如として放り込まれた異世界、其処での様々な怪人との戦闘(我望との対談だったアーシア等、一部例外はあるが)を経て手に入れたレジェンドライダーガシャットの存在から一誠は気づいたのだ、自分が作り上げたそれとは違う力を持つ仮面ライダーが、その仮面ライダーが様々な怪人達と戦う異世界が存在する事を。

新たに作り上げたライダーシステムのテストという向こう側の都合とはいえ、その異世界の仮面ライダーである一輝…ロストとの戦いは自分達にとっても実りのある物になる、一誠はそう考え、高鳴る思いのままに快諾したのだ。

 

「さて、誰が出る?まあ俺が出ても良いけど…」

「イッセー君、そしたら私が出ても良いかな?丁度私も試してみたい事があって」

「分かった、イリナ。イリナの他には…

いない様だな。なら此方からはイリナ、風魔がお相手しましょう」

「宜しくお願いします、イリナさん」

 

こうして模擬戦が決まったのは良いが、誰がロストの相手をするのか事前に決めていなかった一誠達、自分が出たい気持ちを抑えて立候補を受け付けた一誠の問い掛けに真っ先に、というか唯一手を上げたのはイリナだった。

 

「それとこれは、個人的な頼みなのですが…

僕もこの世界のライダーシステムの開発者である貴方に興味がある。僕と貴方とでも模擬戦を組みたいのですが、どうでしょうか?」

「分かりました、是非やりましょう」

 

こうしてロストのテストを目的とした模擬戦の相手はイリナに決定したが、個人的な頼みと称して陽太郎自身も一誠に模擬戦を申し込んで来た。

唐突な申し出ではあったが、高鳴る思いが収まっていなかったのか二つ返事で快諾した。

 

「陽太義兄さんが戦うのなら、私も白音さんと戦いたいのですが良いですか?」

「私ですか。ええ、良いですよ」

(()()さんそっくりな彼女、けど彼女は()()()()()()()が呟いていた『白音』と名乗っていた。白音さんがこの世界における小猫さんと同じ存在だとしたら、もしかしたら小猫さんが…!)

 

そんな陽太郎に便乗してか、夏煉もまた白音に模擬戦を申し込んだ。

夏煉の心中には()()()()()()()()()()()()()()の存在があった、彼女が呟いていた『白音』という言葉、それを名乗っていた白音はもしや…

その夏煉の心中を知ってか知らずか、白音はその申し出を承諾した。

 

「陽も夏煉も戦うんだったら、アタシも良いかな?折角来たのにアタシだけ仲間外れ、ってのもねぇ。

ああ…そうそう、アタシは誰が相手でも良いよ」

「なら、私が受けて立つのにゃ!丁度この前京都で神器を手に入れたけど、実戦で試すのは初めてだからね」

 

こうして今回の訪問の目的であるロストの模擬戦の他にも2回の模擬戦が組まれたが、此処に来て自分だけ何も無しはどうなのかと思ったのか、薫も模擬戦を申し込んで来た。

誰が相手でもいいという薫の申し出に応じたのは、黒歌だった。

結果、模擬戦が計4回組まれる事となり、

 

「では、模擬戦のカードも決まった事です。戦闘ステージへと移動しましょう」

『ステージ・セレクト!』

 

一誠がそう言いながらステージ・セレクト機能を起動させた、が、

 

「あれ?こんな闇深そうなステージ、組み込んでいたか?」

 

模擬戦の舞台に相応しいステージを選んでいた一誠の視界に、見慣れないパネルが入って来た。

そのパネルは暗紫の空、石が敷き詰められた円形のフィールドが広がり、外周部には牙らしき物が所々から飛び出ているもの、一誠が組み込んだ覚えのないステージだった。

 

「おぉ、何か面白そうにゃ。折角だし、このステージにするのにゃ!」

「ちょ、黒歌!?」

 

まさかの事態に首を傾げる一誠だったが、元が猫又であるが故の好奇心を抑えられなかった黒歌がそのステージを勝手に選択してしまった。

黒歌による突然の暴挙に一誠が驚いたのも束の間、一行はそのステージへと転移していった…



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116話_第一試合、風魔VSロスト

今話から戦闘に入ります。


「さて、うちの黒歌がやらかした事で何やら闇深いステージに飛ばされる事になってしまいましたが、始めましょうか」

 

黒歌のやらかしによって、組み込んだ覚えのないステージへと転移する事となってしまった一行だが、模擬戦は予定通り行う事となった。

尚、やらかした当人である黒歌は、

 

「ねぇ、随分痛そうだけど大丈夫なのかい?後でアタシと模擬戦やる時に響いても困るんだけど…」

「大丈夫です、アーシア先輩がやってくれますから。大体もげればいいんです、あんな駄肉。そういえば…」

「な、何を言い掛けながらアタシや夏煉の胸に視線を向けているのかな!?」

「も、もいじゃ駄目ですよ!?」

 

咄嗟に逃げようとした所で白音が確保し「何ですか!?何ですかこの胸は!?また育ったのですか!?頭に行くべき栄養が全部そっちに行っているんですか!?」と某爆裂魔法の凄さに魅了された紅魔族の如き憎悪の籠った胸への往復ビンタを浴びせられる事となり、思いっきり痛がっていた。

そんな黒歌を、後で模擬戦をする事となっている薫がその身を案じたが、白音は気にするどころか、黒歌らと同じく巨乳である薫と夏煉の胸に何処か闇深そうな視線を向けていた。

 

「では、模擬戦を始めます。第一試合、紫藤イリナ、仮面ライダー風魔VS鬼鉄一輝、仮面ライダーロスト!」

 

それはさておき、ゾンビゲーマーとなったリアス――ゲンムの宣言によって開始した模擬戦、最初の試合で戦うイリナと一輝が中央に設けられたステージへと移動した。

 

「じゃあ、始めよっか」

「はい、宜しくお願いします」

 

ステージ中央で対峙するイリナと一輝、彼女の言葉と共に戦意を昂らせた両者は、其々のライダーに変身すべく準備を始める。

 

『HURRICANE RISING!』

「チャプターX!変身!」

『デュアル・ガシャット!ガッチャーン!デュアルアップ!レッツスニーキング!ハリケーンライジング!』

 

何時も通りの手順で仮面ライダー風魔・ライジングゲーマーレベルXへと変身したイリナ、一方、

 

『ケル、ケルケル!』

 

一輝は赤いレバーと円形のパーツに2つの歯車、そして2つの装填スロットとパイプが着いたドライバー――ビルドドライバーを腰部に装着する。

すると、ギリシア神話に登場する三つの首を持つ犬の怪物で冥界の番犬と呼ばれた幻獣『ケルベロス』をSD化させた様なメカ――ロストケルベロスが鳴き声をあげながら近寄って来るのを確認し、彼は左手を差し出す。

ロストケルベロスは一回転しながら跳び上がると、頭と尻尾を折り畳む様に引っ込めてガジェットモードへと変形し、一輝の左手に収まった。

そして、右側のポケットから取り出した黒色の小さなキャップが着いた緑色で、ケルベロスのイラストが銀色を基調としたエングレーブとして描かれているボトル――ケルベロスマイナソーフルボトルを上下に数回、シャカシャカと音を立てて振りながら、ボトルのキャップを正面にして変形させたロストケルベロスの背中にある窪みにセットする。

 

『ROD UP!』

 

セット時にロストケルベロスから音声が周囲に響き渡った後、一輝はケルベロスマイナソーフルボトルをセットした状態のロストケルベロスをビルドドライバーのスロットに挿入する。

 

『LOST CERBERUS!!』

 

ロストケルベロスをドライバーに挿入したと同時に力強い音声が周囲に鳴り響いた後、軽快なリズム音と猛犬の唸り声や遠吠えが重なりあう様な音楽が響き渡る。

そして、一輝はその音楽に合わせるかの様にビルドドライバーの右側にあるレバーを回し始めると、ドライバーから深紫色の液体が流れる2本のガラスパイプが出現、それと同時に周囲を囲うかの如く金属の土台が出現、それを伝い、まるでコンテナのような形に展開したガラスパイプがプラモデルランナーの様に彼の前方と後方に半分になっている特徴的な鎧の半身(ハーフボディ)を形成する。

 

『Are You Ready!?』

 

ドライバーから鳴り響く独特な待機音声が終わりを告げると同時に、力強い音声が一輝自身に問いかける、それはまるで「命を賭ける覚悟はあるか?」や「戦う準備は出来ているか?」を言われているかの様だった。

そして、その問いに答えるかの様に彼は深呼吸しつつ両目を閉じた後…

 

「変身!」

 

その言葉と共に目を見開いた瞬間、一輝の前方と後方に形成されていた深紫を基調とした2つのハーフボディが、土台の可動部が動くのに連動して勢いよく迫り、寸分の誤差も無く合体するかの様に一輝の身体を覆い尽くした。そして、左側の側面に青紫色を基調としたアーマーベストが彼の背部に取り付き、頭部と胸部を覆い被さる様に重ね着された。

 

『ROD UP WHOLE! HATRED LOST CERBERUS!!Yeah!!!』

 

全体的に深紫色を基調としたカラーリングで、両目の複眼は頭部が正面に向いている犬が唸りをながら威嚇をしている形状となっており、複眼の周囲を燃え盛る業火が囲み、それがアンテナ風となっている。

更に額にあたる中央部には威嚇と共に口から炎が吹き出ている一回り大きい犬が重なるように加わり、まるで『ケルベロス』をイメージさせる特徴的な仮面と口元には白いマスクが装着されている。

全身は同じく深紫色の装甲と黒色のアンダースーツに身を包み、胸部と両肩部には威嚇をしているそれぞれ三体の犬の頭部を象った青紫色の装甲が装着されており、両腕部には犬の頭部を象った赤紫色の装甲が装着している。

そして、装甲が装着されたと同時に背面から黄緑色のマントが出現し、風に靡いている。

そして、変身し終えた一輝――ロストは右手を翳すとビルドドライバーから青色のパイプが出現し、剣の形へと形成されると刀身にイコライザーの様なメーターがついた“奏剣”『ビートクローザー』となり、彼はそれを手に取ってビートクローザーの剣先を風魔へと向ける。

 

『ビートクローザー!』

「仮面ライダーロスト、鬼鉄 一輝!渾沌の誇りを舞い掲げる!!」

 

仮面ライダービルドガシャットでも聞き、ロストの一連の変身動作でも発せられ続けた某ファンキーなラジオDJの声による宣言と共に、ロストは名乗りを上げた。

それを受けてイリナも己の武器を手にするが、それは、

 

「仮面ライダー風魔、紫藤イリナ!主の意志と共に、全て振り切るよ!」

「あれは、黄昏の聖槍…?」

 

京都での英雄派との戦いで曹操からリプログラミングによって奪取、己が手にした黄昏の聖槍だった。

 

「僕の全力を以てして、君の全力を打ち破る!!」

「へぇ、その戦いへの決意、凄まじいね。なら言って置くけど、テストとは言え花を持たせる積りは無いから。覚悟、良いね?」

 

其々の武器を構え、戦意充分な両者、

 

「それでは…試合、開始!」

 

それを見てゲンムは、開始を宣言した、次の瞬間、

 

「ぐ、が、あぐ!?」

 

風魔の姿が消えたかと思ったら、何時の間にかガードの態勢をとっていたロストの身体が誰かに攻撃されたかの様に吹き飛ばされた。

 

「何処を見ているのかな?言った筈だよ、花を持たせる積りは無いと!」

 

謎の連撃によって振り回されるロストの身、それを行ったのは、何時の間にか彼の背後に現れた風魔だった。

ゲンムが開始を宣言した瞬間、持ち前のスピードを全開にして奇襲、更にそれに反応してガードしようとしたロストのがら空きな部分を狙い撃ちにしたのだ。

 

(速い!それに只速いだけではなく、僕が咄嗟に行ったガードを掻い潜って的確に攻撃をヒットさせている!あの動きは『読んで』いた上での物じゃない、確かに『見えて』いる!まるであの速さを『普通のスピード』と思える程に時間をゆっくりと感じているかの様に…!

そうか、クロックアップだ!あの仮面ライダーはサソードと同様、クロックアップが使えるのか!)

 

その一連の行動から、自分が何をされたか、何故がら空きの部分に攻撃を受けたのかを、持ち前の解析手腕で見抜いたロスト。

クロックアップ――ロストの変身者である一輝が嘗て変身していた仮面ライダーサソードに搭載されていたシステムで、身体を流れるタキオン粒子を操作する事で時間の流れに干渉し、その中での自在な活動を可能にする力である。

このクロックアップシステムを発動すると、周りの時間が止まっていると言っても過言では無い位にゆっくりな物に感じられ、システムを持たない相手に対して圧倒的なアドバンテージが得られるのだ。

そう、瞬間的なガードも止まっているかの様に見え、空いた所へ的確に攻撃をする事が出来る程に。

ライジングゲーマーとなった風魔も、左眼部分に装着された眼帯型の時間流制御装置『ザンゲキクロックアッパー』を起動する事で体力を犠牲に思考・感覚・行動速度を急激に高め、クロックアップと同等の効果を得られ、その力を活かしてロストに連撃を叩き込んだのだ。

 

「さあ、どんどん行くよ!」

(クロックアップと同等の力、確かに脅威だけどタネが割れてしまえば幾らでもやり様はある!)

 

そんなロストの考えを知ってか知らずか再びスピードを活かした奇襲を仕掛ける風魔だったが、同じ手は通じなかった。

クロックアップと同等の状態を活かした速くも精密な連撃をロストに繰り出す風魔ではあったが、迎え撃つロストもまた同等の状態に至ったかの如く、風魔が黄昏の聖槍から繰り出す連撃を『見て』捌き切ったのだ。

だがこれはロストにクロックアップ同様のシステムが搭載されているから出来ている訳では無い、これはロストが、一輝が偉人の域に達するまで磨き上げた技量が成せる業だ。

一輝は嘗て、煉獄義姉弟の一員となるまでは煉獄の園とはまた違う異世界で、明らかに劣る才能故に生家から想像を絶する迫害を受けながらも一流の騎士となるべく様々な剣術や武術を会得、それらを磨き上げた事で未だ成人とは言えない歳でありながら、歴史においてその人ありと言われた程の偉大なる武人に匹敵する技術を身に着けた。

それ故に己の集中力を高める事で感覚を研ぎ澄まし、所謂「ゾーンに入る」――クロックアップと同等の領域に至り、それによって聖槍の連撃を『見る』事が出来た。

それに加え、圧倒的に劣っていた才能で駆使できる数少ない力『身体能力倍加』を行使して行動速度を高め、連撃を捌き切る事に成功したのだ。

 

(な!?風魔の超スピードに、あの連撃に付いて来たですって!?いや、きっと偶々よ!)

 

自慢のスピードから繰り出される怒涛の連撃を捌き切るという、まさかの事態に動揺を隠せない風魔。

偶々捌けただけではないかと結論付けて再び仕掛けるも結果は同じ、しかも動揺が現れたのか槍さばきに粗が目立ち、故にいなされた際の反動がやや大きくなってしまった。

その隙を突いて何処からか、ギリシア神話に登場する蛇の髪の毛を持つ女性の姿をした怪物『メドゥーサ』のイラストが銀色を基調としたエングレーブで描かれている緑色のボトル――メドゥーサマイナソーフルボトルを取り出し数回、シャカシャカと音を立てて振り、黒色のボトルのキャップを正面にしてビートクローザーの空洞に装填した。

 

『スペシャルチューン!』

『ヒッパレー!』

『スマッシュスラッシュ!』

 

それと共に鳴り響いた声と共にグリップを引っ張るとまたも声が響き、それと共にテンポの良い音楽が鳴り出す、それを受けて剣の柄にあるボタンを押すと、三度響いた声と共に刀身が光り輝いた。

 

「か、身体が!?」

 

もう一度攻撃を仕掛けようとした風魔だったが、ビートクローザーの光り輝く刀身を見た瞬間、信じられない現象に襲われた。

突如金縛りに襲われたかの様に動けなくなってしまった風魔、その身はまるで石になったかの如く鈍色に染まっていった。

 

『ヒッパレー!ヒッパレー!』

『ミリオンスラッシュ!』

 

その現象を引き起こしたロストは再びビートクローザーのグリップを、今度は2回引っ張った。

すると声と共に、先程よりもアップテンポな音楽が鳴り出す、それを受けてまた剣の柄にあるボタンを押すと、刀身からエネルギーが放出、それはやがて蛇の様な形状となった。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「きゃぁぁぁぁぁぁ!?」

 

そのエネルギーを纏ったビートクローザーを鞭の如く振るうと、蛇型のエネルギーが蛇腹剣の如く風魔へと襲い掛かり、四方八方から彼女を切り刻んだ。

 

『ガッシューン』

 

風魔もこれ程のダメージを受けて耐えられる筈もなく、吹っ飛ばされながら変身は強制解除され、イリナの姿へ戻った。

 

「勝者!仮面ライダーロスト!」

 

一連の光景を見ていた審判役であるゲンムは、変身解除されたイリナを見て戦闘不能と判断、ロストの勝利を宣言した。



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117話_第二試合、パラガスVS煉王

「あちゃー、まさか風魔の超高速戦闘があっさり破られちゃうとはね。もしかして異世界じゃあ私みたいなのと戦うのは日常茶飯事なの?」

「日常茶飯事って訳じゃないけど戦う事もあるね。僕もロストになる前は、同じ様なシステムを搭載しているライダーに変身していたし」

 

戦いが終わり、変身を解除したロスト――一輝と既に解除されているイリナ、フェンリルに深手を負わせる等の活躍もあって風魔の能力に自信を持っていたイリナは、まさかそれが破られるとは思わなかったのだろう、悔し気な様子を見せながら、自分の様な存在が異世界にはゴロゴロと居るのかと一輝に聞きながら、ステージを後にした。

 

「第二試合、塔城黒歌、仮面ライダーパラガスVS兵鬼薫、仮面ライダー煉王!」

 

そんな2人が去った後のステージでは、進行役であるゲンムが次なる試合の開始を宣言した。

次の試合は黒歌――パラガスと薫――煉王、奇しくも其々の陣営においてお姉さん的なポジションに位置する者同士の対決となった。

 

「えーと、その、引っ叩かれた胸の方は大丈夫かい?」

「何とかね、お騒がせしたのにゃ。それはともかく、風魔のスピードに食らいついたばかりか返り討ちにしちゃうなんて、貴方の義弟さん凄い腕前にゃ。これは、貴方にも期待が出来そうね」

「ま、退屈はさせないから安心してよ。そちらさんこそ、手に入れたっていう神器で何処まで出来るか、期待しても良いんだよね?」

「勿の論にゃ!」

 

ゲンムの宣言に応じてステージへと上がった両者。

その際に薫は、先程白音から胸をビンタされていた黒歌にそのダメージの程を気遣っていたが、アーシアの尽力もあって回復した様だ。

 

『PERFECT PUZZLE!What’s the next stage?』

「全消し連鎖!変身!」

『デュアル・ガシャット!ガッチャーン!デュアルアップ!ゲット・ザ・グローリー・イン・ザ・チェイン!パーフェクトパズル!』

 

そんな会話もそこそこに、其々のライダーに変身する準備を始めた両者。

まずは何時も通りの手順で仮面ライダーパラガス・パーフェクトパズルゲーマーレベルXに変身した黒歌、一方で薫は、赤黒色のカラーリングに、自動改札機に備え付けてあるICカードの読み込み部を彷彿とさせるバックルと、その隣の4色のボタンが特徴的なベルト――煉王ベルトを取り出し、腰に勢いよく巻き付ける。

まるで其処に吸い込まれるかの様に、ベルトの先端がバックルに装着されると共に発せられる音声、それを受けてワインレッドカラーのボタンをプッシュすると流れ出す陽気なミュージックホーンによる待機音楽、

 

「変身!」

 

それをBGMに薫は宣言と共に、何処からか取り出した定期入れを彷彿とさせるアイテムを上空に投げ、その場を一回転した後に左手でアイテムをキャッチしてバックル部に接触させた。

 

『DRAGON FORM』

 

するとバックル部がワインレッドに輝いたと同時に結晶に似たエネルギーらしき物が放出、それが薫を包むと黒のベースカラーに電車を模した装甲を所々付けたライダースーツが装着され、それと同じく周囲に電車のレールが出現すると装甲が出現、それらはまるで電車がレールを走るかの如く進みながら変形して胸部に装着、最後に頭部後ろからまるで赤龍帝(ドライグ)を彷彿とさせるモノが眼前まで火花を散らしながら走り、その場で形状を整えて仮面となる。

そして、鎧や仮面がワインレッドカラーに炎の様なトライバル模様が刻まれた特徴的な龍を彷彿とさせるモノとなった。

 

「仮面ライダー煉王、兵鬼薫!渾沌の誇りを舞い掲げるよ!」

「仮面ライダーパラガス、塔城黒歌!私の掌の上で踊るが良いにゃ!」

 

一連の流れの末に変身した薫――仮面ライダー煉王・ドラゴンフォームは名乗りを上げ、パラガスもまた応じた。

 

「それでは…試合、開始!」

 

其々の準備を終えた両者、それを見たゲンムが開始を宣言、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()第二試合は始まった…!

 

「ねぇ、倒しちゃうの決定だから良いよね?答えは聞kきゃぁっ!あいたっ!?」

「ふっ!たぁっ!」

 

何やら不穏な事を言いながら、右手には電車を思わせる剣、左手にはガシャコンバグヴァイザーと思われるチェーンソー型の武器を装着してパラガスに飛び掛かろうとした煉王、だがその出鼻はいきなり挫かれた。

届きそうも無い距離にも関わらず打撃する素振りを見せたパラガス、ところが次の瞬間には煉王の身に誰かから打撃を受けた様な衝撃を襲った。

 

「い、一体何gぐはっ!あべしっ!?」

「せいっ!はぁっ!」

 

突如の事態に戸惑いを隠せない煉王だったがパラガスは待ってくれない、追い打ちだと言わんばかりにまたも打撃する素振りを見せ、次の瞬間にはやはり煉王の身に打撃らしき衝撃が襲い掛かった。

更に、

 

「転がっている今がチャンスにゃ!」

『マッスル化!マッスル化!伸縮化!』

 

予想だにしなかった攻撃に対して受け身が取れず、態勢を崩した煉王を見てチャンスと見たのか、ガシャコンパラブレイガンから何枚かのエナジーアイテムを取り出して使用したパラガス、

 

「そしてこれにゃ!」

『透明化!』

 

だが最後の1枚である水色のエナジーアイテムを使用したにも関わらず、パラガス自身の身体が透ける事は無く、代わりにステージ内に漂っていた靄が消えた。

 

「エナジーアイテムの効果で靄が透けた…

まさかあれ、絶霧の力で出ていた霧?って事はアンタが手に入れた神器っていうの、神滅具の1つである絶霧なの?」

 

その光景を煉王は見逃さなかった。

 

(もしあの靄が絶霧による物なら、あの訳の分からない攻撃も説明が付く、あれは絶霧が持つ強制転移効果の応用。パラガスは両手・両足に絶霧によって発生させた霧を纏わせると共に、このステージに所々靄を発生させる事で、打撃の瞬間だけ手足のみをアタシの直ぐ近くに転移、打撃を直撃させていたって事ね)

「Exactly。イッセーのお陰でテロリストから奪取出来た、私の新しい力にゃ」

 

戦闘開始前後から起きていた数々の異変、それ全ての理由となりえる1つの可能性に辿り着いた煉王はパラガスに聞く。

普通だったら己の戦術をバラす事と同じな情報を答える筈もないだろう、然し己の戦術が思い通りに行っていた影響で調子に乗っていたパラガスはあっさりと答えた。

 

(タネが割れたとはいえ、なら此処からどうするか、だね。さっきまでなら靄が何処にあるかを把握すればある程度の出処は予想出来たけど、エナジーアイテムの効果で透明化されたから判別が困難になっているし、何より打撃の際に何らかの術式を仕込んだのか身体が思う様に動かない。だったら…!)

「さあ、どんどんいk」

「その心臓、貰い受けるよ!」

「きゃぁ!?」

 

パラガスが仕掛けた奇襲の正体を把握し、どう動くべきかを模索する煉王。

だがそうはさせないと言わんばかりに、エナジーアイテムの力で筋力が増大化した上に身体の伸縮性もアップしたパラガスが更なる攻撃を仕掛けようとする。

絶霧の力で発生する霧が、エナジーアイテムの力で透明になった事で攻撃の出処が更に見えづらくなった上、打撃の際に仕込んでいた術式の影響で煉王は満足に動けない、己の思い描いていたシナリオ通りの展開故にあっさりネタバラシする等調子に乗っていたパラガスは余裕の表情で手足を振るおうとしたが、今度はパラガスの方が出鼻を挫かれた。

右手の剣を突き出す構えを見せた煉王が何の前触れもなくパラガスの目前に移動、直ぐ様構えていた剣を突き出し、防御の態勢を取れていなかったパラガスの胸部に直撃したからだ。

 

『FULL CHARGE』

「随分と甚振ってくれたね!今度はアタシの、ターンだよ!」

「あぐっ!うわっ!あいたぁ!?」

 

絶霧と術式による初見殺しの戦術を相手に翻弄されていた煉王だったが、調子に乗っていたパラガスに出来た一瞬の隙を突いて形勢逆転、此れまでの鬱憤を晴らすかの様に暴れまわった。

瞬時に接近した際、変身にも用いた定期入れ風のアイテムを再びバックル部に接触、エネルギーを溜める事を示す音声と共に、ワインレッドカラーの電流みたいなエネルギーが剣に流入、その中でアイテムを邪魔だと言わんばかりにポイ捨てしつつバグヴァイザーで斬りかかり、怯んだ所を足払いで転倒させ、

倒れた所にまたもバグヴァイザーによる一太刀を浴びせた。

 

「食らえ、必殺!アタシの必殺技…その1!」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

『ガッシューン』

 

そしてエネルギーが溜まり切った剣の力を解放、雷と光のエネルギーを纏った剣による強烈な斬撃をパラガスに浴びせた。

パラガスもこんな強烈な攻撃を受けては耐え切れず変身は強制解除、黒歌の姿に戻った。

 

「勝者!仮面ライダー煉王!」

 

一連の光景を見ていたゲンムはやはり、変身解除された黒歌を見て戦闘不能と判断、煉王の勝利を宣言した。



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118話_第三試合、エグゼイドVS隷汽

「途中までは上手く行ったんだけどにゃぁ…

というか薫、私がトドメ刺そうとしたあの時、瞬間移動したみたいだけど、あれどうやったの?風魔みたいに高速移動した様じゃないし、私みたいにワープした様でもないし…」

「ああ、あれ?あれは私の能力の1つだよ。因果の逆転って奴でね、普通なら『過程』を基に『結果』は導き出される物だけど、この能力で『結果』を予め作って置いて、それを基に『過程』を無理やり作り出したって訳さ」

 

戦いが終わり、変身を解除した煉王――薫と、既に解除されている黒歌。

京都での英雄派との戦いで、一誠のリプログラミングによって手に入れた絶霧を用いての距離と方角を無視した打撃戦を仕掛けて序盤こそ優勢だったが、薫の問い掛けに態々ネタバラシする等調子に乗った結果敗北した黒歌は悔しさを噛み締めつつ、逆転の切っ掛けとなった煉王の奇襲について、薫に聞いていた。

試合は終わった為か素直に答えた薫、だがその内容に黒歌は、

 

「え、つまりこういう事?私に向けてあの剣を突き出す『過程』からそれがあたる『結果』になるんじゃなくて、私に直撃する『結果』を作り出して、それを基に剣を突き出す構えのまま瞬間移動するなんていう無理矢理な『過程』を生み出したって訳?何にゃのそのチート!?そんなの避けられる訳無いにゃ!」

「似た様な事やったアンタが言うか。ご丁寧に術式まで仕込んでくれてさぁ…」

 

少し考えた後、その能力の仕組みに、それがかなり強力な物である事に気づいてツッコミを入れるが、直前まで似た様な事をして煉王をボコボコにしていた彼女がツッコむ資格は無い、薫も盛大なブーメランだとツッコミ返していた。

そんなやり取りをしながらもステージを後にした両者、

 

「第三試合、兵藤一誠、仮面ライダーエグゼイドVS鬼崎陽太郎、仮面ライダー隷汽!」

 

残ったゲンムは、続いての試合の開始を宣言した。

続いての試合は一誠――エグゼイドと陽太郎――隷汽、これまた其々の陣営において中心と言って良いポジションに位置する者同士の対決となった。

 

『マイティブラザーズダブルエックス!』

 

ゲンムの宣言に応じてステージへと上がった両者は、其々のライダーに変身する準備を始めたが其処で、

 

「あれ、マイティブラザーズXX?マキシマムマイティXは?」

 

一誠が起動させたガシャットが予想と違ったのか、陽太郎は疑問を口にした。

 

「先程までの2試合は確りと見させて貰いました。結果から見ても明らかですが、お二方のライダーとしての、お二方自身の実力は、我々とは比べ物にならない物です。恐らくは貴方も然り。そんな貴方を相手に、レベルの高さに物を言わせたごり押しなど通じません。

 

 

 

故に、小賢しい手で行かせて貰います!」

 

その答えを隠す事無く、一誠は打ち明けた。

確かにマイティブラザーズXXガシャットを用いて変身するダブルアクションゲーマーレベルXは、マキシマムマイティXガシャットを用いて変身するマキシマムゲーマーレベル99とは、レベルは勿論スペックも大きく劣る。

性能面だけで言えば、この選択は舐めプと言われても否定出来ないだろう。

だがダブルアクションゲーマーには、そんな性能差に目をつぶってでも使おうと一誠に思わせる程強力な特殊能力を持っている(マキシマムゲーマーもリプログラミングという特殊能力を持ってはいるが)。

今回の相手である陽太郎――仮面ライダー隷汽には、高い性能でのごり押しよりも、特殊能力を活かした戦法の方が有効であると考えた上での選択なのだ。

 

「小賢しい手、ね…

なら僕はその小賢しい手を、ずる賢い手で対応させて貰いましょうか」

 

そんな一誠の回答に、陽太郎は何処か不敵な笑みを浮かべながらそう応じる。

それをどう捉えたかは微動だにしない表情からは見受けられないが、

 

「だーい…」

「「変身!」」

『ダブル・ガシャット!ガッチャンガッチャンガッチャーン!ダブルアップ!俺がお前で!お前が俺で!ウィーアー!マイティマイティブラザーズ!ヘイ!ダブルエェェェェックス!』

『PHANTOM FORM』

 

両者同時に、変身動作を終えた。

何時も通りの手順でダブルアクションゲーマーレベルXとなったエグゼイドに対し、陽太郎は薫の持つ煉王ベルトとよく似た、だがカラーリングが青黒色である等細部に違いがあるベルト――隷汽ベルトを取り出し、腰に勢いよく巻き付ける。

その先端がバックルに装着されると共に、ディープブルーカラーのボタンをプッシュすると流れ出す汽笛らしき待機音声、それをBGMに定期入れらしきアイテムをバックル部に接触させると、バックル部がディープブルーに輝いたと同時に結晶に似たエネルギーらしき物が放出、それが陽太郎を包むと黒のベースカラーに電車を模した装甲、下半身を覆う黒いローブを有するライダースーツが装着され、周囲に人魂の様な青黒い炎が出現、それらの一部はディープブルーの装甲と化して胸部や両肩、または籠手と化して左腕に、また一部は電車のレールらしき真っ白なマフラーと化して首に装着され、最後に頭部後ろから頭蓋骨を模した装甲が火花を散らしながら眼前まで走り、其処で形状を整えて仮面となった。

 

「仮面ライダー隷汽、鬼崎陽太郎。渾沌の夢に沈もう」

「仮面ライダーエグゼイド、兵藤一誠!」

「同じく仮面ライダーエグゼイド、ゲノムス!」

「「超協力プレーで、クリアして見せる!」」

 

一連の流れの末に変身した陽太郎――仮面ライダー隷汽・ファントムフォームは名乗りを上げ、2人のエグゼイドもまた応じた、ゲノムスが変身している水色の方は右腕を、一誠が変身しているオレンジ色の方は()()()()()()左腕を突き出しながら。

 

「それでは…試合、開始!」

 

3人の名乗りを受けて、ゲンムが開始を宣言した事で、第三試合は始まった…!

 

「今日は俺が行く。ゲノムス、援護は頼むぞ」

『ガシャコンブレイカー!』

「了解、ファザー!」

『ガシャコンキースラッシャー!』

 

何時もなら水色のエグゼイドが前陣でガシャコンブレイカーを振るい、オレンジ色のエグゼイドが後方でガシャコンキースラッシャーによる銃撃を行うのが定石なのだが、今回はその逆、オレンジ色のエグゼイドが前陣でガシャコンブレイカーを振るう事となった。

 

「頼むぞ、ドライグ!」

『WelshDragonBalanceBreaker!』

『任せろ、相棒!赤に染まったエグゼイドの出力は3倍だ!』

「いや赤く染まっただけで出力は3倍になりませんから、何処の赤い彗星ですか」

『角も生やした方が良いか』

「いやだから角を生やしただけでも出力は3倍になりませんから!何なんだこの世界のドライグは…」

 

赤く染まった左腕――赤龍帝の籠手が宿った腕の力を解放、全身を赤に染め、後方からの水色のエグゼイドによる援護射撃を受けて突撃するオレンジ色のエグゼイド、その際にエグゼイドの呼びかけに対してネタ発言全開で応じた赤い龍(ドライグ)に思わずツッコミを入れた隷汽。

 

「だけど言った筈ですよ、ずる賢い手で対応させて貰います、と!」

「わっと!?」

 

だがその進撃は、足元からの思わぬ衝撃に阻まれた。

その衝撃に思わず足元を向くと其処には、

 

「べ、ベイブレイカー!?何故これが…」

 

一誠達の世界、その人間界で流行となっている、独楽タイプの対戦玩具――ベイブレイカーがあった。

 

「ゴー、シュート!」

 

まさかの存在に意識を向けてしまったオレンジ色のエグゼイド、その隙を突いて隷汽は再び仕掛ける。

何かを射出するらしい装置を手に、何か号令らしき物を叫びながら何かを発射した隷汽、それは案の定と言うべきか何個かのベイブレイカーだった。

 

「あ、それ壊さないで下さいよ?人間界から取り寄せる為の送料とかが掛かっている所為で決して安くないんだから」

「武器として使っといてナニイテンダアンタ!?」

 

挙げ句それをガンモードにしたガシャコンキースラッシャーで撃ち落とそうとした水色のエグゼイドに対し、壊れる前提で使っていながら壊すなという隷汽の無茶苦茶な発言には当然と言うべきか、水色のエグゼイドは突っ込んでいた。

今更だが読者の皆はこの手の玩具を人に向けて発射しては行けない、例えそれが仮面ライダー相手であっても。

 

「呆気ない結末ではあるけど、損失無く終われるに越した事はないからね」

『FULL CHARGE』

 

フィールドを飛び交って直撃し、或いは地雷の如く足元でバラバラに飛び散る(ベイブレイカーその物の仕様で、壊れた訳ではない)等のベイブレイカーの攻撃に赤いエグゼイドが中々進撃出来ない中、勝負を決めると言わんばかりに隷汽は更に動く。

変身にも用いた定期入れ風のアイテムを再びバックル部に接触、エネルギーを溜める事を示す音声と共に、ディープブルーカラーの電流みたいなエネルギーが、ベイブレイカーの射出装置に流入、それを受けてか射出装置に装填されていたベイブレイカーが黄金に輝いた。

 

「ガチで行かせて貰います!GT(ゴールドサウザンド)スティンガー!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

こうしてエネルギーが溜まり切ったベイブレイカーを発射、それは怒涛の勢いで赤いエグゼイドへと突撃、直撃する寸前に何千ものベイブレイカーに分裂し、それらは全て赤いエグゼイドに直撃した。

何千ものベイブレイカーによる四方八方からの攻撃に翻弄される赤いエグゼイド、その衝撃にフィールドに敷き詰められた石畳も耐えられず、削られた粉塵がまき散らされた。

これでエグゼイドは戦闘不能となり隷汽の勝利は決まった、今の光景を見た誰もがそう思うだろう、実際に煉獄義姉弟サイドで観戦している薫、一輝、夏煉はそう思っていた、が、

 

「ぐっ!やはり、そう上手くは行かないk、かはっ!」

「言った筈ですよ、小賢しい手で行かせて貰います、と!」

 

粉塵が舞う中で聞こえた打撃音と銃撃音、それらが響き渡った後に粉塵が晴れると其処には、隷汽の右腕に腕挫十字固めをすべく組み付く赤いエグゼイドとそれを振りほどこうとする隷汽、そしてその隷汽に銃撃をする水色のエグゼイドがいた。

 

「え、エグゼイドが何とも無いといわんばかりにピンピンしている!?」

「陽太義兄さんの必殺技はあの赤い方のエグゼイドに直撃した筈…!」

「一体何故…!?」

 

隷汽の必殺技が直撃したにも関わらず平然と組み付いている赤いエグゼイドに信じられないといった様子の薫達、朱乃達もその訳を聞いていたとは言え実際に見るのは初めてだった為か驚いた様子を見せる中、

 

「あれこそ今回の試合でイッセー君がマキシマムマイティXガシャットではなくマイティブラザーズXXガシャットを選んだ最大の理由、イッセー君が言っていた『小賢しい手』を体現したシステム。名付けて『SMS』です」

 

1人だけ訳を見知っていた祐斗はその訳を説明した。

 

「SMS?それは一体…」

「SMS、それは新世紀エヴァンジェリオンに登場した第七使徒の力にヒントを得たイッセー君が組み込んだシステムで、オレンジ、今は赤か、そのエグゼイドと水色のエグゼイド、互いの身体のあらゆる部分を常時比較し、良い状態の方を選んでそれをコピペするシステム。そのタイムラグは1ナノ秒、10億分の1秒。その極わずかなタイムラグに間に合う様に、同じ部分に攻撃するしか、ダブルアクションゲーマーにダメージを与える事は出来ないという事ですよ」

 

その説明に信じられないといった様子を見せる薫達、そうこうしている内にも試合は続いていたが、ある意味膠着状態と言うしかない状態だった。

赤いエグゼイドによる腕挫十字固めを振りほどこうと抵抗していた隷汽だったがそれも空しく両腕を固められ、攻勢に出られなくなってしまった一方、ならば盾にしてしまえと言わんばかりに水色のエグゼイドからの攻撃を赤いエグゼイドでブロックする、と、互いに有効打を与えられない状態に陥っていた(盾にされた赤いエグゼイドはSMSの恩恵もあってノーダメージ)。

 

「膠着状態、か。どうです、この試合、ドローにしませんか?」

「ドロー、ですか」

 

そんな状況が変わる事は無いと感じた隷汽は、そんな提案をした。

 

「ええ。さっきから攻撃を仕掛けている、ゲノムス、でしたか?彼の様子からして、この状況を打開出来る手は無いと見ました。一方で僕も、両腕を固められている状態では手を打てません。さっきからゲノムスによる攻撃を利用して振りほどこうとしているが、貴方の拘束は固すぎて振りほどける気がしません。つまり、互いに勝てないし、負ける事も無い。ドローとするのが妥当な結末だと思うのですが」

「そうですね。ゲノムス、お前はどう思う?」

「僕もそれが良いかな、打つ手無いのは事実だし」

「なら、決まりですね」

 

お互いに打つ手は無く勝ちもしなければ負けもしない、ならばドローとすべきという隷汽の提案に応じたエグゼイドは拘束を解除、両者同時に変身を解除した。

 

「この試合、ドロー!」

 

それを受けてゲンムも、ドローを宣言した。



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119話_第四試合、ノックスVSヘレナPart1

この対決はかなりの長丁場となるので、前後編に分けて投稿します。



「第四試合、塔城白音、仮面ライダーノックスVS鬼町夏煉、仮面ライダーヘレナ!」

 

両者決め手なしという状況の末にドローとなったエグゼイドと隷汽の試合から少し経ち、ゲンムが最後の試合開始を宣言した。

最後の試合は白音――ノックスと夏煉――ヘレナ、しつこい様だが、これまた其々の陣営において妹的なポジションに位置する者同士の対決となった。

尤も申し込んだ当人である夏煉にとっては、それ以上に意味のある組み合わせではあるのだが。

 

「白音さん、宜しくお願いします」

「はい。負けませんよ、夏煉さん」

『バクレツファイター!』

『ジャングルオーズ!』

『アーイ!バッチリミトケー!バッチリミトケー!』

 

互いに戦意充分な2人は、挨拶を交わしつつ其々のライダーに変身する準備を始めた両者。

だが白音が取り出したのはガシャットギアデュアルαではなくバクレツファイターガシャットとジャングルオーズガシャット、先に戦った他の3人がレベルXで臨んだのに対して白音はレベル7で臨む事となったが、これは先程戦った一誠同様、スペックを犠牲にしてでも選ぶ理由があったのだ。

一方の夏煉が自身のベルト部辺りに両手を翳すと、黒い霧がその部分に発生、目の形をしたクリアグレーのベルト――ゴーストドライバーが出現した。

その後、懐から黒紫色の目玉みたいなアイテム――ヘレナ眼魂を取り出し、横に取り付けられたスイッチを押すと、目を模した絵柄がアルファベットの『H』に変わった。

そしてドライバーのカバーを開き、内部のスロットにヘレナ眼魂をセットしてカバーを閉じ、右側のレバーを引くと目の部分から黒字に紫の縁取りが施されたパーカーを着用した幽霊――パーカーゴーストが出現すると共にポップな待機音声が流れ出した。

 

「ラウンド7!」

「「変身!」」

『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!ぶち込め正拳!バクレツファイター!アガッチャ!タトバ!ガタキリバ!シャウタ!サゴーゾ!ラトラーター!プトティラ!タジャドルオーズ!』

『カイガン!ヘレナ!デッドゴー!覚悟!キ・ラ・メ・キ!ゴースト!』

 

準備を終えた両者が掛け声と共に変身動作を終えた、白音が何時も通りの手順で仮面ライダーノックス・オーズファイターゲーマーレベル7に変身した(最初に変身した時とは、装着されるメダルが胸部のみの1枚、そのメダルも赤い鷹、黄色い虎、緑色のバッタのレリーフを組み合わせた物、両腕が黄色、両脚が緑色に染まっているという違いはあるが)のに対し、夏煉が引いていたレバーを押し戻すと、周囲に黒い霧が発生すると共に、その身が黒地に紫のラインが入ったボディースーツに包まれ、周りを回っていたパーカーゴーストが纏われ、紫色で鬼の様な顔らしき模様が描かれ、額に2本の炎らしき紫色の角が付いた仮面が装着された戦士――仮面ライダーヘレナとなった。

 

「仮面ライダーヘレナ、鬼町夏煉!渾沌の定めに舞い殉じます!」

「仮面ライダーノックス、塔城白音!欲望のままにぶっ潰します!」

「それでは…試合、開始!」

 

変身を終えた2人が名乗りを上げたのを受け、試合開始を宣言したゲンム、こうして最終試合は始まった…!

 

「たぁっ!」

「ふっ!」

 

開始の宣言を受けて先に動いたのはノックス、緑色に染まった両脚、その踵から脹脛までの部分にバッタの脚を模したジャッキを生成、左脚のそれを伸縮させる事でヘレナへと大ジャンプ、そのまま右脚を突き出し、飛び蹴りを叩き込もうとしたが、それを見越してドライバーの目の部分から大剣型の武器――ガンガンセイバーを取り出したヘレナがそれを刀身でブロック、右脚のジャッキが伸縮した事による衝撃も難なく受け流した。

 

「しゃっ!」

「甘いですよ!」

 

開始早々の強襲が防がれ、ジャッキの伸縮による衝撃で後退したノックスは再び仕掛ける。

ジャッキの力でジャンプするのは一緒だが、今度は先程よりも低い軌道で突進、同時に黄色く染まった右手から虎の爪を模した3本の爪型武器を生成、それをヘレナに突き出したが、ヘレナもガンガンセイバーで受け流し、更に勢い余って後方へと身体が流れるノックスの身に振り下ろした。

だがまるで後頭部に眼があるかの様に(実際、背中に顔を模した装甲があるにはあるが)爪型武器を生成した左腕を回して斬撃をブロックしたノックス、そのままの勢いを活かして距離を取った。

 

「やりますね、白音さん」

「そちらこそ、夏煉さん」

「此処はお願い、ノーヴェ!」

『任せな、夏煉!』

 

戦況は互角、それを打開すべくヘレナは動いた。

懐から青紫の眼魂――ノーヴェ眼魂を取り出してスイッチを押し、絵柄を09という数字に変えると、ドライバーのカバーを開き、セットされていたヘレナ眼魂と取り換え、カバーを閉じた。

 

『アーイ!バッチリミトケー!』

 

すると纏っていたパーカーが消滅して素の状態――トランジェントになると共に、ドライバーの目の部分から青と紫の薄手の生地、胸元にIXのマーク、両腕らしき部分が籠手の形となったパーカーゴーストが飛び出した。

 

「ゴツい両腕、打撃主体の様ですね。なら!」

『サイ!ゴリラ!ゾウ!サゴーゾ、サゴーゾ!』

『カイガン!ノーヴェ!格闘!疾走!敵を討つ!』

 

それを見たノックスも動いた。

両腕の籠手からしてパンチをメインとした打撃戦を得意とする姿だと見たノックス、次の瞬間彼女の周囲に大量のメダルが飛び回り、その中から犀を模した白っぽい物と、ゴリラを模した灰色の物、そして象を模した黒い物が出現、それらが合体して1つの巨大なメダルとなりノックスの胸部に装着、その身は白銀やガンメタリック等のモノトーンカラーに染まり、新たなる姿――仮面ライダーノックス・オーズファイターゲーマーレベル7サゴーゾコンボとなった。

同時にヘレナもドライバーのレバーを引き押しする事で、飛び出したパーカーゴーストが装着、2本の角とIXのマークが入った仮面、両腕に籠手型の装備――ガンナックルを装着した姿――仮面ライダーヘレナ・ノーヴェ魂となった。

 

「アァタタタタタタタタタタ!」

 

新たなる姿となった両者、此処でも先に動いたのはノックスだった。

パンチンググローブらしき装甲で覆われた両腕、それをまるでスタンドによるパンチラッシュか、或いは何処ぞの暗殺拳法の代名詞とも言える奥義かと言わんばかりに連続でパンチを繰り出し、そのパンチ1発1発を放つ際に装甲部分から拳型のエネルギー弾らしき物が発射、多数のエネルギー弾がヘレナへと飛来したが、

 

「はっ!やぁっ!」

 

ヘレナはローラースケートを装着しているかの如くステージを疾走、ノックスが放ったエネルギー弾の嵐を避けたり、避けられそうに無い物は此方もガンナックルからエネルギー弾を発射して相殺したり、両脚による蹴りで弾き飛ばす事で命中する事は無く、その間にも距離を詰め、

 

「大足払い!」

「きゃぁ!?」

 

打撃が届く距離となり、更に後方を取ったヘレナはノックスの足を払って態勢を崩し、回し蹴りで追撃しようとしたが、咄嗟にエネルギー弾を放ったノックスの迎撃に対して追撃を止め、後退した。

 

「イカちゃん!」

『了解でゲソ!』

 

互いに姿を変えはしたが戦況を優位にするには至らず、打開すべくヘレナはまた動いた。

懐から白と青の眼魂――イカムスメ眼魂を取り出してスイッチを押し、絵柄を03という数字に変えると、ドライバーのカバーを開き、セットされていたノーヴェ眼魂と取り換え、カバーを閉じた。

 

『アーイ!バッチリミトケー!』

 

トランジェント態になると共にドライバーの目の部分から白を基調としたワンピース、袖から2本、裾から8本、合計10本の青い触手が生えたパーカーゴーストが飛び出した。

 

「10本の触手、正にイカですね。そっちがイカなら、こっちはタコです!」

『シャチ!ウナギ!タコ!シャッシャッシャウタ!シャッシャッシャウタ!』

『カイガン!イカムスメ!侵略!征服!海の使者!』

 

それを見たノックスもまた動いた。

10本の触手を見て対処法を編み出したノックス、次の瞬間彼女の周囲に大量のメダルが飛び回り、その中から鯱を模した藍色の物と、鰻を模した青い物、そして蛸を模した水色の物が出現、それらが合体して1つの巨大なメダルとなりノックスの胸部に装着、その身は青系統の色に染まり、新たなる姿――仮面ライダーノックス・オーズファイターゲーマーレベル7シャウタコンボとなった。

同時にヘレナもドライバーのレバーを引き押しする事で、飛び出したパーカーゴーストが装着、イカをデフォルメした模様の仮面を装備し、袖と裾から計10本の触手――カラメルショクシュを生やした姿――仮面ライダーヘレナ・イカムスメ魂となった。

 

「はぁっ!」

『あの鞭、電気を纏っているでゲソ!』

「そうみたいだね。まともに打ち合うのは不利、なら手数で!」

 

新たな姿になったのと同時に、ヘレナは袖のカラメルショクシュを、ノックスは両腕にマウントされている2本の鞭を駆使して打ち合い始めたが、ヘレナは直ぐに戦術を切り替えた。

その理由はノックスの鞭、それには電気が纏われており、今でこそ直撃はしていないが、1回でもヒットしてしまったら最後、電気ショックによって戦闘に支障をきたす、そうなったら戦況は劣勢となってしまうからだ。

更に飛び交うノックスの鞭を後退して避けたヘレナ、今度は裾から生やした8本のカラメルショクシュも伸ばしてノックスに攻撃を仕掛けるが、

 

「あばばばばばばばば!」

 

ノックスも黙って受ける積りは無い、上空へジャンプしたかと思ったら、蛸の吸盤を模した両脚が其々4本、計8本の触手に分裂し、両腕の鞭と合わせて再び打ち合いを始めた。

これでは何も変わっていない、そう思ったヘレナは打ち合いの間隙を縫って触手からイカ墨らしき弾丸を何発か発射するも、其処で不思議な事が起こった。

その弾丸はノックスの頭部や胸部へと飛んで行ったが、その部分だけが液状化し、弾丸が通り抜けてしまったのだ。

 

「このままじゃジリ貧、なら!お願い、澪ちゃん!」

『任せなさい、夏煉!』

 

今はまだ戦況は互角だが、電撃というアドバンテージが向こうにある以上、何時向こうの優位になるか分からない、そう思ったヘレナは更なる手を打った。

懐から黒い眼魂――ミオ眼魂を取り出してスイッチを押し、絵柄を04という数字に変えると、ドライバーのカバーを開き、セットされていたイカムスメ眼魂と取り換え、カバーを閉じた。

 

『アーイ!バッチリミトケー!』

 

トランジェント態になると共にドライバーの目の部分から黒いレザー地の、タンクトップと言うしかない程丈の短いパーカーゴーストが飛び出した。

 

「此処はそうですね、物量で攻めます!」

『クワガタ!カマキリ!バッタ!ガータ、ガタガタキリ、バ、ガタキリバ!』

『カイガン!ミオ!過激な転移!三人に分身!』

 

それだけではその眼魂がどんな力を有しているか分からなかったノックスだが、合わせて動いた。

彼女の周囲に飛び回る大量のメダル、その中からクワガタムシを模した深緑の物と、蟷螂虫を模した黄緑の物、そしてバッタを模した緑色の物が出現、それらが合体して1つの巨大なメダルとなりノックスの胸部に装着、その身は緑系統の色に染まり、新たなる姿――仮面ライダーノックス・オーズファイターゲーマーレベル7ガタキリバコンボとなった。

同時にヘレナもドライバーのレバーを引き押しする事で、飛び出したパーカーゴーストが装着、北条氏の紋所である三つ鱗紋を逆さにした様な模様の仮面を装備した姿――仮面ライダーヘレナ・ミオ魂となった。

 

「行きますよ!」

 

新たな姿となったヘレナはその直後、ノックスの視界から消え去った。

 

「消えた…まさか、っ!?」

 

余りにも唐突な事態に戸惑いを隠せないノックスだったが突如として危険を察知、何処かへと振り向きつつ腕をクロスさせる形で防御の態勢をとった。

すると次の瞬間、ノックスの両腕、そのクロスしていた部分に殴られた様な衝撃が走った。

と思ったらまた危険を察知、今度は左脚を上げる形で何処かへ振り向きながらガードすると、またもその上げた片脚に同じ様な衝撃が走った。

かと思えば更に危険を察知、流石に片脚上げた不安定な態勢ではガードの態勢を取れなかったか、残った右脚に生成したジャッキを伸縮、その衝撃で横へと飛ぶ、その直後、先程までいた場所に何か風切り音がした。

 

「転移能力ですか。姉様の相手をした薫さんが、序盤ボコボコにされていたのも分かります。相手にするとこんなにもチートじみた能力なんですね」

「いや、それを凌ぎ切る貴方も大概だと思うんですけど…」

 

横へと飛んだ際、先程まで視界にいなかったヘレナの姿を、さっきまでいた場所から数メートル離れた、自分を挟んで反対側である場所に立つ姿を確認したノックスはその能力を察知、その強さは反則級だとこぼしたが、それによる連撃を凌ぎ切ったノックスも、ヘレナがツッコむ通り大概である。

そんな会話もそこそこに、再び転移能力を駆使して奇襲を仕掛けようとノックスの背後に回ったヘレナだったが、其処で予想外の事態が起こった。

 

「「「其処です、触覚ビーム!」」」

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

『ちょ、それアタシの中の人ネタ!』

 

ヘレナが転移したのと同じ時、3人に分裂、頭から生えたクワガタムシの顎らしき機構に電流を溜めたノックスは次の瞬間、何とその場所に来る事を読んでいたかの様に一斉に放電、それらは寸分の狂い無くヘレナへと襲い掛かったのだ。

…尚その際、パーカーゴーストの意識らしき声が、某ツンデレの代名詞として名高い存在と思しき声がメタい発言をしていたが余談である。

 

「此処は空中戦で行こうかな、ウェンディ!」

『了解っス、夏煉!』

 

電撃が直撃しつつも転移能力を駆使して態勢を立て直したヘレナ、状況を持ち直すべく更なる手を打った。

懐から青と紫の眼魂――ウェンディ眼魂を取り出してスイッチを押し、絵柄を11という数字に変えると、ドライバーのカバーを開き、セットされていたミオ眼魂と取り換え、カバーを閉じた。

 

『アーイ!バッチリミトケー!』

 

トランジェント態になると共にドライバーの目の部分から青と紫の薄手の生地、胸元にXIのマーク、両肩に何かのボードらしき装甲が装着されたパーカーゴーストが飛び出した。

 

「空中戦と言っていましたね。それにあのボードが怪しい、ならコレです!」

『タカ!クジャク!コンドル!タージャードルー!』

『カイガン!ウェンディ!攻防一体!敵を粉砕!』

 

その言葉をノックスは見逃さなかった。

空中戦を仕掛けるヘレナの意図と2つのボードの存在に着目したノックス、次の瞬間彼女の周囲に大量のメダルが飛び回り、その中から鷹を模した赤い物と、孔雀を模した朱色の物、そしてコンドルを模した緋色の物が出現、それらが合体して1つの、鳳凰を模した巨大なメダルとなり、更に2つに分裂して1つはノックスの胸部に、もう1つはノックスの左腕に装着、その身は赤に染まり、嘗てジャングルオーズガシャットを手にした時と同じ姿――仮面ライダーノックス・オーズファイターゲーマーレベル7タジャドルコンボとなった。

同時にヘレナもドライバーのレバーを引き押しする事で、飛び出したパーカーゴーストが装着、XIのマークが入った仮面、両肩にボードらしき装甲――ライディングが装着された姿――仮面ライダーヘレナ・ウェンディ魂となった。

 

「はっ!」

「こっちも行きます!」

 

空中戦に適しているであろう姿となった両者、先に空へと飛び立ったのはノックスだ。

背中から何対もの翼を展開したノックスは空へと飛び立ち、左腕に装着されたメダルらしき武装――タジャスピナーからの火炎放射でヘレナに襲い掛かった。

ヘレナもそれをライディングで凌ぎつつ、分割されていた2つを合体させてボード状にして飛び乗り、浮遊させる事で同じく空へと飛び立った。

こうして戦いの場を空中に移してリスタートした試合、ヘレナは小銃の様な形態にしたガンガンセイバーからの銃撃で牽制するが、幼い頃に転生悪魔となった事から翼を用いての飛行に慣れている上、自分の身体での飛行である為に手足の自由が利くノックスは曲芸飛行の如き動きで難なく回避、ヘレナに対してタジャスピナーでの火炎放射や、足から鎌形の爪を生成してのキックを繰り出す。

ヘレナもライディングを盾にしてガードしたり、ガンガンセイバーを装着しての砲撃に用いたりして立ち回るも、自由自在に飛び回るノックスを捉えられない。

 

「地上戦に持ち込んだ方が良かったね…日影!」

『任せとき』

 

空中戦では不利だと悟ったヘレナは、状況を変えるべく動く。

懐から黄色と黒の眼魂――ヒカゲ眼魂を取り出してスイッチを押し、絵柄を12という数字に変えると、ドライバーのカバーを開き、セットされていたウェンディ眼魂と取り換え、カバーを閉じた。

 

『アーイ!バッチリミトケー!』

 

トランジェント態になると共にドライバーの目の部分から黄色と黒の所々破れた布地、両袖にナイフケースが装着されたパーカーゴーストが飛び出した。

 

「多そうなナイフですね、斬撃勝負なら!」

『ライオン!トラ!チーター!ラタラーター、ラトラーター!』

『カイガン!ヒカゲ!皆無な感情!容赦は無用!』

 

その姿から刃物による白兵戦を仕掛けて来ると察したノックス、次の瞬間彼女の周囲に大量のメダルが飛び回り、その中からライオンを模したオレンジ色の物と、虎を模した黄色い物、そしてチーターを模したレモンカラーの物が出現、それらが合体して1つの巨大なメダルとなりノックスの胸部に装着、その身は黄色系統の色に染まり、新たなる姿――仮面ライダーノックス・オーズファイターゲーマーレベル7ラトラーターコンボとなった。

同時にヘレナもドライバーのレバーを引き押しする事で、飛び出したパーカーゴーストが装着、クロスした2本のナイフが描かれた仮面、両袖にナイフケース――喚蛇が装着された姿――仮面ライダーヘレナ・ヒカゲ魂となった。

 

「はぁっ!」

「く、は、速い!」

 

新たな姿となった両者だったが、此処でノックスが先程の仕返しとばかりにヘレナの視界から消えた。

と思えば切り裂くような轟音――ソニックブームが響き渡りながら、ヘレナに数多の衝撃が襲い掛かった。

その正体はチーターの力を得た両脚による超音速機動をしながら攻撃を繰り出すノックス、ヘレナもそれに気づいて、刀型と小太刀型、2振りに分割したガンガンセイバーに、換蛇に納められているナイフを駆使して何とか捌き切るも、防戦一方であった。

 

『ダイカイガン!ガンガンミイヤー!ガンガンミイヤー!』

『ダイカイガン!ヒカゲ!オメガドライブ!』

『オメガスラッシュ!』

「『超秘伝忍法…【おおよろこび】!』」

 

今は捌けているが何時までも出来る筈が無い、そう思ったヘレナは秘策に出た。

刀の方のガンガンセイバーをドライバーの目の部分に翳し、更にドライバーのレバーを引き押しした後にガンガンセイバーの柄についたボタンを押す。すると其々の動作の後に何かしらの強力な行動を行うと言わんばかりのボイスが流れ出し、2回目のそれが流れた直後、ヘレナの身体から禍々しい紫のオーラが纏われ、

 

「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!」

「なっ!?追いついて来た…!?」

 

超音速で動くノックスにすら追いつく程のスピードを、

 

「スピードだけじゃない、パワーも強大になっている…!」

 

自らの攻撃を捌いて来た時とは比べ物にならない程のパワーを、そして、

 

「あぐっ!?防御の上から切り裂いて来るとは…」

 

防御などすり抜けると言わんばかりの斬撃を得、ノックスに強烈なダメージを与えた。

だが其々の力を急激に上げて何のリスクも無いのかと言われればそうでもなく、

 

「くっ!?はぁ、はぁ…

やっぱりこの力、制御が厳しい…!」

 

ノックスへの突撃を終えたヘレナが突如、何かを抑え込むかの様な、苦悶の声を上げていた。

そう、スピードとパワー、そして強烈な斬撃を得られる反動として性格が豹変し、敵味方の区別なく攻撃を行うリスクがあったのだ。

 

「ライダーゲージが、かなり減って来ましたね…

此処は回復しましょう」

 

一方、今の攻防でライダーゲージを大幅に減らされたノックスは、減ったゲージを回復すべく新たな姿になろうとする。

此れまでとは逆に、ノックスの方が戦況を打開すべく動いたこの状況、

 

「させません!狂ちゃん、一気にカタをつけるよ!」

『お任せください、夏煉お姉様!』

「リ、リアスお姉様?」

「いや、今の声は私じゃないわよ?」

 

それを見逃さないヘレナでは無い。

この試合で初めて優位に立ったと言って良いヘレナ、そのまま勝負を決めるべく、懐から桃色と紫と白の眼魂――キョウコツ眼魂を取り出してスイッチを押し、絵柄を14という数字に変えると、ドライバーのカバーを開き、セットされていたヒカゲ眼魂と取り換え、カバーを閉じた。

…尚その際、パーカーゴーストの意識らしき声を聞いたノックスが、思わずゲンムの方を向き、ゲンムが自分の発言では無いと否定していたのは余談である。

 

『アーイ!バッチリミトケー!』

 

トランジェント態になると共にドライバーの目の部分から桃色と白のベースカラー、紫の掛け衿に『狂骨』と刻まれた着物、フードの後頭部から紅い蝶結びの髪止めをつけた長い黒髪を伸ばしたパーカーゴーストが飛び出した。

 

『コブラ!カメ!ワニ!ブラカーワニ!』

『カイガン!キョウコツ!骸の畏れ!貰うは眼球!』

 

そんなヘレナの行動を他所に新たなる姿へと変わる準備を進めるノックス、彼女の周囲に飛び回る大量のメダル、その中からコブラを模した茶色の物と、亀を模したライトブラウンの物、そして鰐を模したダークブラウンの物が出現、それらが合体して1つの巨大なメダルとなりノックスの胸部に装着、その身は茶色系統の色に染まり、右手には縦笛型の装備――ブラーンギーを持った新たなる姿――仮面ライダーノックス・オーズファイターゲーマーレベル7ブラカワニコンボとなった。

同時にヘレナもドライバーのレバーを引き押しする事で、飛び出したパーカーゴーストが装着、頭蓋骨と蛇が描かれた仮面を装着し、フードの後頭部から紅い蝶結びの髪止めをつけた長い黒髪を伸ばした姿――仮面ライダーヘレナ・キョウコツ魂となった。

 

「決めるよ、狂ちゃん!」

『はい、夏煉お姉様!』

 

先程の攻防によってノックスが弱っている今がチャンスとばかりに先制したのはヘレナ、ドライバーの目の部分からマジックハンドを彷彿とさせる武器――ガンガンハンドを出現させ、先端の手をグーにしつつ銃口を顕現させた銃モードにして装備、ノックスに向けて頭蓋骨や蛇の様な形状の弾丸を連射する一方、ステージ内に何の前触れも無く出現した頭蓋骨から無数の毒蛇を呼び出し、ノックスへと突撃させた。

とはいえそれを黙って食らうノックスでは無い、持っていたブラーンギーを吹くべく構える、すると両前腕に装着された亀の甲羅みたいな盾が重なり、それはノックスの全身を覆う巨大なエネルギーシールドとなり、正面や横方向から来る攻撃を防いでいた。

更にそのままブラーンギーを用いて演奏を始めると、

 

『シャシャシャシャーッ!』

 

ターバンを巻いた様な頭部からコブラが出現、まるでノックスには指一本触れさせないと言っているかの様に暴れ回り、シールドで防ぎ切れなかった後方などからの攻撃を捌いていたが、

 

「これって『Trip - Innocent of D』…」

「白音、何を選曲しているのにゃ…」

 

演奏している曲に、ある意味どストレートな選曲に外野からツッコミが入った。

そうこうしている内に、

 

「よし、回復完了!次はコレです!」

「くっむざむざと回復を許すなんて…」

 

ノックスの体力はブラカワニコンボの特殊能力によって完全回復、次なる行動に移った。

 

『娘よ、彼奴から強大なる力を感じる…妾を仕え』

「はい、羽衣狐さん!」

 

そのノックスから強烈な力の気配を感じ取ったのだろう、パーカーゴーストの意識らしき存在が発した警告を受け、懐から漆黒の眼魂――ハゴロモギツネ眼魂を取り出してスイッチを押し、絵柄を02という数字に変えると、ドライバーのカバーを開き、セットされていたキョウコツ眼魂と取り換え、カバーを閉じた。

 

『アーイ!バッチリミトケー!』

 

トランジェント態になると共にドライバーの目の部分から漆黒のセーラー服、裾から9つの、白銀に煌めく狐の尻尾が生えたパーカーゴーストが飛び出した。

 

『プテラ!トリケラ!ティラノ!プトティラーノザウルース!』

『カイガン!ハゴロモギツネ!魅惑の妖狐!統べるは漆黒!』

 

ノックスの周囲に飛び回る大量のメダル、その中からプテラノドンを模した赤紫の物と、トリケラトプスを模した桃色の物、そしてティラノサウルスを模した紫の物が出現、それらが合体して1つの巨大なメダルとなりノックスの胸部に装着、その身は紫系統の色に染まり、右手には斧型の武器――メダガブリューを装備した新たなる姿――仮面ライダーノックス・オーズファイターゲーマーレベル7プトティラコンボとなった。

同時にヘレナもドライバーのレバーを引き押しする事で、飛び出したパーカーゴーストが装着、九尾狐の後ろ姿が描かれた仮面、裾から9本の尻尾――ミスティックナインテールが飛び出た姿――仮面ライダーヘレナ・ハゴロモギツネ魂となった。

 

「しゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「くっ!何て重い攻撃…!」

 

新たなる姿へと変化した両者だったが、ノックスの変化は殊に顕著だった。

普段なら上げないだろう、猫が威嚇するかの如き叫び声を上げながら、猛スピードでヘレナへと突進するノックス、ヘレナも回避しようと横へ跳ぶもそれを先読みするかの様に身体を回転させたノックス、次の瞬間、咄嗟にガードしたヘレナの両腕に鞭で、それも威力重視のそれで打たれた様な衝撃が走り、ノックスの正面に強引に押し戻され、

 

「にゃにゃぁぁぁぁぁぁ!」

「す、凄いパワーです…!」

 

そのままトリケラトプスの如き角を生やした左肩によるショルダータックルに襲われた。

これも瞬時の判断で、先端にある手をパーにして杖モードとしたガンガンハンドで防ぎ、同時にメダガブリューを持つ右腕に添える事でその刃が振るわれるのを何とか阻止したが、

 

「しぃっ!」

「あ痛!?」

 

ならばと額の、プテラノドンの嘴を模した部分を利用して頭突きを仕掛けた。

流石に両手が塞がっている状態では防げずに後退するも、追撃として振るわれたメダガブリューの攻撃は、ミスティックナインテールから取り出した槍――四尾の槍を用いて受け流した。

 

「此処は立て直しましょう!春花さん、お願いします!」

『任せて、夏煉ちゃん』

 

一連の攻防で少なくないダメージを負ったヘレナはそれを回復すべく、桃色と白の眼魂――ハルカ眼魂を取り出してスイッチを押し、絵柄を15という数字に変えると、ドライバーのカバーを開き、セットされていたハゴロモギツネ眼魂と取り換え、カバーを閉じた。

 

『アーイ!バッチリミトケー!』

 

トランジェント態になると共にドライバーの目の部分から桃色と白のベースカラーに黄色いラインが入ったレオタード、頭部には桃色の大きいリボンを付けたパーカーゴーストが飛び出したが、

 

「仕切り直し、ですか。なら第2ラウンドの初めに、ちょっと怖い目に遭って貰いましょうか…」

『夏煉ちゃん、何か向こうからどす黒い感じが伝わって来るわ』

「こ、この邪悪さ剥き出しの気配は一体…?」

 

準備を進めようとした所で何やら不穏な事を呟いたノックス、彼女から伝わって来た邪悪な気配を感じ、思わずその方へ向いたヘレナだが、自分のやる事は変わりない、意識はそちらに向けつつも作業は続けた。

 

『ショッカー!ゲルショッカー!デストロン!地獄!地獄!地獄!悪の化身!大!ショッカー!』

『カイガン!ハルカ!傀儡!薬物!開発王!』

 

そして第2ラウンドの始まりに相応しいと言える姿に両者は変化した。

まずはノックス、彼女の周囲に飛び回る大量のメダルの中から鷲を模した金色の物と、蛇を模した銀色の物、そして蠍を模した銅の様な赤茶色の物が出現、それらが合体して1つの巨大なメダルとなりノックスの胸部に装着、頭部は鳥を模した装甲を施されし金色に染まった、と此処までは今までと一緒だがその後が大きく変わった。

銀色に染まった両腕、其処には銀色の蛇の大軍が巻き付き、やがてそれは生物的な装甲と化した。

更に赤茶色に染まった両脚は、甲殻類の殻らしき物や腕に巻き付いているそれの様な物、機械的な物、と多岐にわたる装甲が取り付けられた。

そして一連の変化と共にどす黒いオーラを噴出、その身は悪の化身と呼ぶに相応しい姿――仮面ライダーノックス・オーズファイターゲーマーレベル7大ショッカーコンボとなった。

一方のヘレナ、ドライバーのレバーを引き押しする事で、飛び出したパーカーゴーストが装着、と同時に出現した白衣――クスリトゲボクノホワイトコートを纏った姿――仮面ライダーヘレナ・ハルカ魂となった。

新たなる姿となった両者、こうして本当の意味での第2ラウンドは始まった…!




因みに大ショッカーコンボの変身BGMですが、仮面ライダーウォズの変身BGMがベースとなっております。


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120話_第四試合、ノックスVSヘレナPart2、そして…

今話で悪維持さんとのコラボは終了となります。
悪維持さん、コラボして頂きありがとうございました!


「行きなさい、兵士達よ!」

『イーッ!』

 

大ショッカーコンボとなったノックスは即座に、身体から噴出していたどす黒いオーラを周囲へと拡散させる、すると其処から、額の部分に付いた鷲のエンブレムが特徴的な目と鼻と口の部分が空いた黒い覆面、ろっ骨を模した柄の黒い全身タイツ、何処かの組織の紋章らしき巨大な銀色のバックルを設けたベルトを身に着けた兵士の大軍が出現、ノックスの指示を受けてヘレナへと進撃を開始した。

 

「ショッカー戦闘員…!

ですが、大軍には大軍です!」

 

だがそれへの対処方法が無いヘレナでは無い、纏っていたクスリトゲボクノホワイトコートから自らの傀儡ロボット――下僕ガジェットロボH(ハルカ)-1(ワン)を始めとした様々な機械兵士、胸にある骨の意匠以外は真っ黒な戦士――眼魔コマンドらを呼び出し、ノックスが呼び出した兵士――ショッカー戦闘員と戦わせる。

だが敵はショッカー戦闘員だけではない、

 

「エロ同人誌みたいにしてあげましょう!」

「お、お断りです!くっ!やぁっ!」

「白音それ色々とアウトにゃぁぁぁぁぁ!」

 

ノックス自身も色々と危ない発言をしながら、両腕に装甲として纏っていた蛇の大軍を操り(これまた色々と危ない挙動で)ヘレナへと攻撃を仕掛ける。

流石にそれを食らってしまっては自らの身が様々な意味で危ない、そう危惧したヘレナはコートに忍ばせていた試験管を数本取り出し、襲い掛かる蛇たちに投げつけた。

其々違う色の液体が入った試験管の数々が蛇たちに直撃すると、あるものは跡形も無く溶けていき、あるものは爆発に巻き込まれて爆発四散、あるものは苦悶の様子を見せながら膨大な湯気を発し、やがて黒い炭に変化した。

 

「ちっひどい目に遭えばよかったのに、エロ同人誌みたいに」

「止めなさい!やはりそのコンボは色々と危険過ぎるな、後でガシャットのデータを調整しないと…」

 

蛇による猛攻を凌がれ、舌打ちと共に普段の彼女なら発しないであろう色々と危険な発言をするノックスに一誠がツッコミを入れる一方、回復薬が入っていたであろう新たな試験管を用いて体力を回復したヘレナ。

 

「近接戦は色々な意味で危ないですね、なら、ディエチさん!」

『分かった、夏煉。流石にアレは…』

 

万全に戻しつつも近接戦闘は無理だと察知したヘレナは懐から青紫の眼魂――ディエチ眼魂を取り出してスイッチを押し、絵柄を10という数字に変えると、ドライバーのカバーを開き、セットされていたハルカ眼魂と取り換え、カバーを閉じた。

 

『アーイ!バッチリミトケー!』

 

トランジェント態になると共にドライバーの目の部分から青と紫の薄手の生地、胸元にXのマークが刻まれたパーカーゴーストが飛び出した。

 

「今の口ぶりからして遠距離戦向きの様ですね、ならば」

『タカ!イマジン!ショッカー!ターマーシー!タマシー!ターマーシー!ライダー魂!』

『カイガン!ディエチ!見つめる瞳!捉える砲撃!』

 

その発言から遠距離からの砲撃を仕掛けて来ると察したノックスも動く。

彼女の周囲に飛び回る大量のメダル、その中から鷹を模した赤い物と、桃がそのまま描かれた薄紅色の物、そして鷲を模した金色の物が出現、それらが合体し、桃が描かれた物の絵柄が桃太郎に登場する鬼を模した物に変化すると共に1つの巨大なメダルとなりノックスの胸部に装着、胴体から上が赤、脚部が金色に染まり、新たなる姿――仮面ライダーノックス・オーズファイターゲーマーレベル7タマシーコンボとなった。

同時にヘレナもドライバーのレバーを引き押しする事で、飛び出したパーカーゴーストが装着、Xのマークが入った仮面を装着した姿――仮面ライダーヘレナ・ディエチ魂となった。

 

「行きますよ!」

「はぁぁぁ…!」

 

互いに新たな姿となった両者、先に動いたのはヘレナだった。

銃モードに変形させた上でサイを模した懐中電灯型ガジェット――サイデントウを合体させた事でビームカノンモードと化したガンガンハンドを構え、ノックスに狙いを定め、ビームを連射する。

一方のノックスは、ドラグ・ソボールの主人公である空孫悟の必殺技であるドラゴン波の構えを取りながらエネルギーを溜め、放たれたビームを最小限の動きで回避する。

 

『夏煉、来るよ!』

「はい、ディエチさん!」

『ダイカイガン!ガンガンミトケー!ガンガンミトケー!オメガキャノン!』

 

エネルギーがある程度溜まった時点で強烈な攻撃が来ると察したパーカーゴーストの声を受け、ガンガンハンドをドライバーに翳したヘレナ、此方もガンガンハンドにエネルギーを溜めつつ狙いを定めた。

 

「発射!」

「ドラゴン波ぁぁぁぁ!」

 

そして放たれる強烈な砲撃、高エネルギーのビームをガンガンハンドから放ったヘレナに対し、膨大なエネルギーを纏ったメダル型の弾丸をドラゴン波の要領で放ったノックス。

互いに放った砲撃はやがて正面衝突、

 

「「きゃぁぁぁぁぁ!?」」

 

双方互角だった為か拮抗の末に大規模爆発を起こし、それに巻き込まれた両者は互いに吹っ飛ばされた。

 

「お願いします、チンクさん!」

『任せろ、夏煉』

 

双方吹き飛ばされた中、次なる手は決まったとばかりにヘレナは動く。

懐から灰色の眼魂――チンク眼魂を取り出してスイッチを押し、絵柄を05という数字に変えると、ドライバーのカバーを開き、セットされていたディエチ眼魂と取り換え、カバーを閉じた。

 

『アーイ!バッチリミトケー!』

 

トランジェント態になると共にドライバーの目の部分から灰色のロングコート、胸元にVのマークが刻まれたパーカーゴーストが飛び出した。

 

「此処は、脳筋戦法で行きます!」

『シカ!ガゼル!ウシ!シーガーゼシー!シガゼシー!シーガーゼシー!』

『カイガン!チンク!投げる刃!相手を爆破!』

 

そのパーカーゴーストの能力は見切れなかったノックスだが、戦術は決まった様だ。

彼女の周囲に飛び回る大量のメダル、その中から鹿を模した明るいオレンジ色の物と、ガゼルを模した暗めなオレンジ色の物、そして牛を模した白い物が出現、それらが合体して1つの巨大なメダルとなりノックスの胸部に装着、胴体から上がオレンジ色、両脚が白に染まり、新たなる姿――仮面ライダーノックス・オーズファイターゲーマーレベル7シガゼシコンボとなった

同時にヘレナもドライバーのレバーを引き押しする事で、飛び出したパーカーゴーストが装着、Vのマークが入った仮面、灰色のロングコート――シェルコートを装着した姿、仮面ライダーヘレナ・チンク魂となった。

 

「はぁっ!」

「きゃぁ!?」

 

両者が新たなる姿に変貌したその瞬間ノックスの姿が消失、それと同時に、フィールドに大地震の如き揺れが発生した。

突然の事態と、想像を絶する揺れに思わず上を向いたヘレナが目にしたのは、此方へとジャンプして襲い掛かるノックスの姿だった。

そう、フィールドに発生した巨大な揺れはノックスがジャンプした際、踏み込んだ衝撃によって発生した物だったのだ。

ノックスの姿を、彼女が何をしたのかを認識するも時既に遅く、組み付かれてマウントポジションを取られてしまったヘレナ、そんなヘレナにガゼルの角を模した武装――ガゼルアントラーを装着した腕でのパンチを繰り出すノックス。

だが、

 

「防がれた?成る程、目に見えないエネルギーバリアですか」

 

その一撃は目に見えない『何か』によって防がれたのかの如く、ヘレナに当たらなかった。

 

「なら、力ずくで打ち破るまでです!」

「くっ!調子に、乗らないで下さい!」

「きゃぁ!?」

 

その絡繰りを瞬時に見抜いたノックスは、攻撃を防いだ『何か』――シェルコートによって発生したバリアを力ずくで打ち破ろうとパンチを打ち込み続けるが、マウントを取られたとは言えそれを黙って受けるヘレナでは無い。

シェルコートに仕込んである投げナイフ――スティンガーを何本か手にし、パンチを叩き込むノックスの間隙を縫って投擲、それらが接触しようとする瞬間、ヘレナのフィンガースナップに合わせてその全てが爆発、ノックスに少なくないダメージを与えると共にフィールドの端へと吹き飛ばした。

 

「反撃です!詠さん!」

『ええ、夏煉さん!』

 

ダメージこそ無かったがマウントを取られた事への反撃に移るヘレナは、懐から青緑の眼魂――ヨミ眼魂を取り出してスイッチを押し、絵柄を06という数字に変えると、ドライバーのカバーを開き、セットされていたチンク眼魂と取り換え、カバーを閉じた。

 

『アーイ!バッチリミトケー!』

 

トランジェント態になると共にドライバーの目の部分から青緑と白を基調としたエプロンドレス、フード部分に青緑の丸い帽子を被ったパーカーゴーストが飛び出した。

 

「いたた…

此処は、防御重視で行きますか」

『エビ!カニ!サソリ!ビーカーソー!ビカソ!』

『カイガン!ヨミ!乙女の振る舞い!バトルは豪快!』

 

その様子を吹き飛ばされながら見ていたノックスも、着地と共に次なる行動に移す。

彼女の周囲に飛び回る大量のメダル、その中から海老を模した朱色の物、蟹を模した赤紫色の物、そして蠍を模した紫色の物が出現、それらが合体して1つの巨大なメダルとなりノックスの胸部に装着、頭部は朱色、胴体と両腕は赤紫、両脚は紫に染まり、新たなる姿――仮面ライダーノックス・オーズファイターゲーマーレベル7ビカソコンボとなった。

同時にヘレナもドライバーのレバーを引き押しする事で、飛び出したパーカーゴーストが装着、青緑と白を基調としたエプロンドレスと青緑の丸い帽子を身に着け、狼を模したガントレット型ガシャット――ウルフガントレットを両腕に装着した姿――仮面ライダーヘレナ・ヨミ魂となった。

 

「「行きます!」」

 

新たな姿となった両者は、近接戦を仕掛けるべく双方駆け出した。

 

「ふっはってやっ!」

「せいっやぁっ!」

 

蟹の鋏の様な武装をグローブ代わりにしてのパンチや、これまた鋏を備えた膝でのニーキックに、針状の機構が突き出したつま先を活かしての回し蹴り等といった打撃を仕掛けるノックスに対し、ヘレナはノックスの打撃をウルフガントレットで防いだり、いなしたりしながら此方も打撃戦を仕掛ける。

ノックスもまた両腕の鋏を盾代わりにして応じる等で両者互角の打撃戦が繰り広げられる中、

 

「ん?」

「其処です!」

 

ヘレナが掌底の要領で右手のガントレット――黒狼をノックスのボディに叩きつけようとした瞬間、信じられない事が起こった。

黒狼に空いていた銃口らしき空洞、其処から砲弾らしき物が発射されたのだ。

零距離で発射された砲弾には当然ノックスは回避出来る訳も無く、直撃によって大ダメージを受ける、筈だった。

 

「な!?き、効かない!?あぐっ!?」

「このコンボに、ただパワーがあるだけの、切れ味があるだけの攻撃は通じませんよ!」

 

が、またも信じられない事が起こった。

砲弾を受けた筈のノックスは然し何のダメージも受けていないと言わんばかりに平然としており、それに動揺した隙を突かれ、ヘレナは鋏をグローブにしたガゼルパンチをまともに食らってしまった。

 

「単純な打撃が通じないとなると、お願いパティ!」

『任せて、夏煉』

 

ノックスのパンチを受けて吹っ飛ばされたヘレナは、単純な攻撃が通じない状況を打開すべく動く。

懐から緑の眼魂――パティ眼魂を取り出してスイッチを押し、絵柄を07という数字に変えると、ドライバーのカバーを開き、セットされていたヨミ眼魂と取り換え、カバーを閉じた。

 

『アーイ!バッチリミトケー!』

 

トランジェント態になると共にドライバーの目の部分から緑の長袖、フードの頭部に青いカシューシャを付けたパーカーゴーストが飛び出した。

 

「此処は凍らせますか」

『セイウチ!シロクマ!ペンギン!セイシロギン!セイシロギン!』

『カイガン!パティ!粒子と変化し!不思議な女子!』

 

ノックスもまた動く。

彼女の周囲に飛び回る大量のメダル、その中からセイウチを模した灰色の物に、白熊を模した白い物、そしてペンギンを模した青い物が出現、れらが合体して1つの巨大なメダルとなりノックスの胸部に装着、胴体から上はモノトーンカラーに、両脚は青に染まり、新たなる姿――仮面ライダーノックス・オーズファイターゲーマーレベル7セイシロギンコンボとなった。

同時にヘレナもドライバーのレバーを引き押しする事で、飛び出したパーカーゴーストが装着、粒子状のマークが描かれた仮面、フード頭部に青いカシューシャ、粒子状のパーティクル・トランスコートを装着した姿――仮面ライダーヘレナ・パティ魂となった。

 

「はぁっ!」

 

此処でも先に動いたのはノックスだった。

熊の手を模した両腕の籠手に冷気を纏い(実際は周囲の外気温を奪う事でそう見えるだけだが)、ヒレの様な機構を備えた足の強烈な踏み込みで瞬時に接近、そのまま籠手を纏った腕の一撃を繰り出そうとしたが、

 

「あ、あれ?」

 

その一撃はヘレナに届かなかった。

手刀の要領で突き出された右腕、それは確かにヘレナの胴体をとらえ、直撃した筈だったが、まるで目の前にいるヘレナが幻であるかの様に通り抜けてしまったのだ。

 

「隙あり!」

「くっ!」

 

そんな動揺を見逃さないヘレナでは無い。

薙刀型に変形させたガンガンセイバーを手に反撃するヘレナ、ノックスもその攻撃を両腕の籠手や、頭部の横にツインテールの如く伸びた牙みたいな機構でガードして応戦するも、防戦一方だった。

 

「此処は、このコンボで!」

 

その状況を何とかすべく、距離を取りつつ新たな手を打つノックス。

 

「未来!」

『任せなさい、夏煉!』

 

それを見たヘレナも新たな手を打った。

懐から白黒の眼魂――ミライ眼魂を取り出してスイッチを押し、絵柄を08という数字に変えると、ドライバーのカバーを開き、セットされていたパティ眼魂と取り換え、カバーを閉じた。

 

『アーイ!バッチリミトケー!』

 

トランジェント態になると共にドライバーの目の部分から頭部には猫耳、背中には黒い鳥の翼、裾からは猫の尻尾を付けた黒いゴスロリのパーカーゴーストが飛び出した。

 

『サメ!クジラ!オオカミウオ!サラミウオ!サ・ラ・ミ・ウォー!』

『カイガン!ミライ!全弾必中!ダキューン!ドキューン!』

 

その頃ノックスは、新たなる姿への変身を終えようとしていた。

彼女の周囲に飛び回る大量のメダル、その中から鮫を模した水色の物と、鯨を模した青い物、そしてオオカミウオを模した赤い物が出現、それらが合体して1つの巨大なメダルとなりノックスの胸部に装着、胴体から上は青系統に、両脚は赤に染まり、新たなる姿――仮面ライダーノックス・オーズファイターゲーマーレベル7サラミウオコンボとなった。

直後にヘレナもドライバーのレバーを引き押しする事で、飛び出したパーカーゴーストが装着、左眼辺りに巴模様の眼帯を付けているかの様な仮面、両脚を覆うロングスカート――ディメンションスカートを身に着けた姿――仮面ライダーヘレナ・ミライ魂となった。

 

「蜂の巣になりなさい!」

 

新たなる姿となった両者、先に仕掛けたのはヘレナだ。

ガンモードにしたガンガンセイバーに、鰐を模した如雨露型ガジェット――ワニジョーロを合体させる事で西洋傘とも機関銃とも言える形態に変え、ノックスへ大量の弾丸を放った。

対するノックスは、放たれる弾丸を先読みしていたかの様に回避したり、鯨の頭部を模した手甲でガードしたり、水らしきエネルギー波で叩き落したりしてそれらを凌ぎつつ接近し、

 

「やぁっ!」

「させません!」

 

ある程度の距離となった所でエネルギー波を駆使して反撃を行う。

ダメージを与えられないまま接近を許したヘレナだが此方も攻撃を受ける積りは無い、エネルギー波を最小限の動きで回避しながら、ガンガンセイバーによる射撃を続け、

 

「発射!」

 

更にディメンションスカートから重機関銃を出現させ、それもノックスに向けて大口径の弾丸を連射したが、

 

「そ、そんな!?」

 

まるで先程ヘレナが見せた事のお返しだと言わんばかりに、ノックスの身に直撃した筈の弾丸が素通りしたのだ。

良く見ると着弾する筈の部分が液体の様に揺らめいている、そう、ノックスは自分の身体を液状化させる事で銃撃を無効にしたのだ。

一方のヘレナもガンガンセイバーの銃口から発せられるエネルギーバリアも駆使して、ノックスのエネルギー波を凌いでいた。

 

「このままじゃ千日手だね、カズラちゃん!」

『了解、夏煉!』

 

この互いにダメージを与えられない状況を打開すべくヘレナは更なる手を打つ。

懐から黒と薄紫の眼魂――カズラ眼魂を取り出してスイッチを押し、絵柄を13という数字に変えると、ドライバーのカバーを開き、セットされていたミライ眼魂と取り換え、カバーを閉じた。

 

『アーイ!バッチリミトケー!』

 

トランジェント態になると共にドライバーの目の部分から黒と薄紫のベースカラー、左端に黒髪のサイドテールを生やしたパーカーゴーストが飛び出した。

 

「此処は毒を食らわせますか」

『ムカデ!ハチ!アリ!チッチッチッチッチーッチーッチーッムカチリ!チリッチリッ!ムカチリ!チリッチリッ!』

『カイガン!カズラ!縛って読み取る!万能な触手!』

 

それを見たノックスも不穏な事を呟きながら次なる手を打つ。

彼女の周囲に飛び回る大量のメダル、その中から百足を模した紫の物、蜂を模した黄色の物、そして蟻を模した黒い物が出現、それらが合体して1つの巨大なメダルとなりノックスの胸部に装着、頭部は紫、胴体と両腕は黄色、両脚は黒に染まり、新たなる姿――仮面ライダーノックス・オーズファイターゲーマーレベル7ムカチリコンボとなった。

同時にヘレナもドライバーのレバーを引き押しする事で、飛び出したパーカーゴーストが装着、触手を模した仮面、黒いコート――テンタクル・トランスコートを装着した姿――仮面ライダーヘレナ・カズラ魂となった。

 

「今度は貴方がエロ同人誌みたいになる番です!」

「そうは問屋が卸しませんよ!」

 

先程の事態を根に持っていたのか、両腕を触手に変化させてノックスへと襲い掛からせるヘレナだったが、ノックスも負けじと頭部から生えた百足みたいな機構を伸ばして触手の様な動きで迎撃、同時に右腕に装着された蜂の針を模した槍を伸縮させる事でその間隙を縫って突き刺そうとし、それをヘレナは余った触手で迎撃させた。

 

「これでも状況を打開できない、か。焔、お願い!」

『やっと私の出番か。任せな、夏煉』

 

姿が変われど状況は変わらず、それを変える為にヘレナはとっておきと言って良い手を打った。

懐から黒と赤の眼魂――ホムラ眼魂を取り出してスイッチを押し、絵柄を01という数字に変えると、ドライバーのカバーを開き、セットされていたカズラ眼魂と取り換え、カバーを閉じた。

 

『アーイ!バッチリミトケー!』

 

トランジェント態になると共にドライバーの目の部分から黒のベースカラーに赤いラインが入ったセーラー服、フード部分から生やしたポニーテールに白い髪止め、其々の方に3本ずつの刀、背中に7本目の刀を背負ったパーカーゴーストが飛び出した。

 

「どうやら、一番自信のある力の様ですね」

『ガッシューン』

「なら、こっちも!ファイナルラウンド!」

『PERFECT PUZZLE!What’s the next stage?』

『カイガン!ホムラ!目指せ最強!迸る六爪!』

『デュアル・ガシャット!ガッチャーン!デュアルアップ!ゲット・ザ・グローリー・イン・ザ・チェイン!パーフェクトパズル!』

 

それを見て、一番自信のある能力だと察したノックスも手を打った。

今まで使用していたバクレツファイターガシャットとジャングルオーズガシャットを外しつつ懐からガシャットギアデュアルαを取り出し起動、何時もの要領で仮面ライダーノックス・パーフェクトパズルゲーマーレベルXとなった。

同時にヘレナもドライバーのレバーを引き押しする事で、飛び出したパーカーゴーストが装着、6本の刀が交差した様なマークの仮面、其々の肩に3本ずつの刀――ゴーストシックスブレイドと、背中に1本の刀――炎月花を装着した姿――仮面ライダーヘレナ・ホムラ魂となった。

 

『最初からクライマックスだ!だよな、夏煉!』

「勿論だよ、焔!」

 

其々一番自信のあるアイテムを用いて新たなる姿となった両者、先に仕掛けたのはヘレナだ。

パーカーゴーストの意志であろう声に乗せられる様にゴーストシックスブレイドを全て抜き放ち、何処かの奥州筆頭の如き構えを見せ、ノックスに斬りかかるヘレナだったが、

 

『鋼鉄化!高速化!回復!』

「ふっ!」

「逃がしません!」

 

ノックスもそれに対抗して、右腰のガシャット装填スロットから何枚かのエナジーアイテムを使用、体力を回復させつつ身体を鋼鉄に変え、更には機動スピードを高めてその剣撃を回避すべく縦横無尽に動くが、此処までにラトラーターコンボやシガゼシコンボ等のスピードに秀でた姿の挙動で目が慣れていたヘレナはその動きを捉え、或いは予測して剣撃を叩き込もうとする。

然しノックスも鋼鉄に変えた己の身を駆使し、その剣撃をさばいていった。

 

「全力全開で行くよ、焔!」

『しゃぁ!』

『エンゲツ!ダイカイガン!』

 

全力で行かねば勝てない、そう決意したヘレナは最後の手を打った。

持っていたゴーストシックスブレイドを地面に突き刺し、既にホムラ眼魂を装填していたドライバーのレバーを引き押しする。

 

『グレンホムラ!燃えろファイヤー!焦がすぜブレイズ!行くぞ紅蓮のイグニッション!』

 

全力を出すぞと言わんばかりの音声を受けて炎月花を引き抜くと、フードから生やしたポニーテールは炎と化し、パーカーに炎の模様が入り、そして全身から炎に似たオーラを噴出した本気の姿――仮面ライダーヘレナ・グレンホムラ魂となった。

 

「なら、私も!超変身!」

『KNOCK OUT FIGHTER!The strongest fist!Round 1!Rock & Fire!』

『デュアル・ガシャット!ガッチャーン!デュアルアップ!エクスプロージョン・ヒット!ノックアウトファイター!』

 

それと同時にノックスも己の本気と言って良い姿――仮面ライダーノックス・ノックアウトファイターゲーマーレベルXとなった。

 

『行くぜ行くぜ行くぜぇ!』

「行きますよ!」

 

互いに本気の本気と言っても過言では無い姿となった両者。

ヘレナは抜き放った炎月花に炎を纏わせて自ら剣撃を行った上、地面に突き刺したゴーストシックスブレイドを宙に浮かせ、遠隔操作でノックスへと斬りかからせた。

 

「ふっ!はぁっ!」

 

ノックスも此処まで来たらなりふり構っていられないと言わんばかりに、自らが傷つくのも躊躇わず(流石に攻撃する上で邪魔になりそうなそれはいなしたが)殆どノーガードでの格闘戦を仕掛ける。

ヘレナの斬撃がノックスを切り裂き、一方でノックスの打撃がヘレナに直撃し、攻防が続く中でダメージが蓄積していく両者、

 

『エンゲツ!ダイカイガン!グレンホムラ!クレナイ!オメガドライブ!』

「『超秘伝忍法奥義【煉獄】!』」

『デュアル・ガシャット!キメワザ!ノックアウト・クリティカル・ストライク!』

「アルティメット、サイ〇クラッシャー!」

 

それが数分続いた所で、お互いに必殺技を放つ準備を始めた。

ヘレナはドライバーのレバーを引き押しし、身体や炎月花、ゴーストシックスブレイドから噴出するエネルギーを右足に収束させ、それが蒼色と黒色を混ぜた様な色合いになったタイミングで飛び蹴りを放つ一方、ノックスはガシャットギアデュアルαを右腰のスロットに装填、全身から膨大なエネルギーを噴出させてジャンプ、錐もみ回転しながら突進した。

 

「やぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

ノックスの頭部とヘレナの右足が正面衝突、暫しの拮抗の末に、

 

「「きゃぁぁぁぁ!?」」

『ガッシューン』

 

衝突地点で大規模な爆発、それに巻き込まれた両者は変身が強制解除する程のダメージと共に吹っ飛んでしまい、

 

「「危ない!」」

 

そのままステージの外周部に聳え立つ牙らしき物へと、両者とも一直線に飛んで行った。

変身解除してしまった2人が衝突してしまったら大怪我は避けられない、誰もが最悪の事態を考えたが、

 

「夏煉!大丈夫かい?」

「よ、陽太義兄さん?」

 

仮面ライダー幽汽・ファントムフォームに変身した陽太郎が夏煉を、

 

「白音!危なかった…」

「せ、先輩?」

 

仮面ライダーエグゼイド・マキシマムゲーマーレベル99に変身した一誠が白音を、牙に衝突する直前に抱きかかえた事で、そんな事態が起こる事は無かった。

 

------------

 

「本日は新たに開発したライダーシステムの戦闘テストに協力いただき、ありがとうございました。お陰で、有用なデータが集まりました」

「此方こそ、今日は異世界の仮面ライダーに関するノウハウを見聞きしたり、間近で対峙したりする事で大いなる収穫となりました。ありがとうございました。また機会があればお会いしたいものです」

 

戦いが終わり、闇深いステージから屋敷へと戻って来た一誠達。

ロストの戦闘テストという当初の目的も果たした事から煉獄義姉弟が煉獄の園に帰る事となり、その帰り際、双方の代表である陽太郎と一誠が互いにお礼をし、別れの挨拶を交わしていた。

 

「私達とそう変わらない歳で、あれ程の力を、それを真っ当に使いこなす心を、力に頼り切る事無く切り抜ける技を兼ね備えているとは驚きました。私達の想像を絶する苦難を、私達が相手しているそれとは比べ物にならない脅威との戦いを経て来て今の強さがあるという訳ですね」

 

その折、自らの眷属達と煉獄義姉弟の試合を進行役としてずっと間近で見て来たリアスは、ライダーとなった眷属達相手に2勝2分けと勝ち越した姉弟達の強さに驚きを示しつつ、その強さを得た経緯に想像を巡らせたが、

 

「いずれ、貴方達も似た様な体験をするかも知れません。いずれ、ね?」

『いずれ?』

 

それに反応した陽太郎が、何かを仄めかすような事を言っていた。

 

「それではまた、お会いしましょう」

「じゃあまたね」

「今日はありがとうございました!」

「白音さん、次は負けませんよ!」

 

その言葉にどういう事かと困惑する一誠達を尻目に、幽霊列車に乗り込んだ姉弟達は別れの言葉を告げ、車内に入って行く。

 

『あ、ありがとうございました!』

 

それに気づいて慌てて手を振る一誠達の見送りを受けて幽霊列車は発動、やがて出て来た時の様に現れた空間の歪みへと向かい、其処に入ると共に消えていった。




次章、ハイスクールDevil×Ex-aid――

「サイラオーグと、プロルールでのレーティング・ゲーム…
マスコミが何と言おうと、気を引き締めて行かないとね」

急遽組まれた、サイラオーグとのレーティング・ゲーム――

「マックス大変身!」
「術式レベルMAX!変身!」
「これが今の私が出せる全力です!変身!」
「ハイパーシステム起動!」

強敵との戦いの場で続々と、新たなる力に目覚めるライダー達、そして――

「第1位眷属は絶版だァ…!」

君臨する仮面ライダーの王、クロノス――

9章『学園祭のTADDLE FANTASY』


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9章『学園祭のTADDLE FANTASY』
121話_Government内の抗争


兵藤一誠の弟である兵藤誠次郎が、テロ組織である禍の団に与していた――

この衝撃的な事実は全世界に、特に悪魔社会において瞬く間に広まる事となった。

 

------------

 

この事について話すにあたり、まずは悪魔社会の政治情勢について説明しよう。

現在の悪魔社会は、サーゼクスら四大魔王をトップとした所謂貴族社会で、魔王が主導して政を執り行ってはいるが事はそう単純には進まない、その政治構造に楔を打ち込んでいる勢力が存在するのだ。

それは元72柱の1位である『大王』バアル家を頭目とした貴族派、四大魔王よりも大王家を重要視し、純血である事や古くからの手法に拘る風潮の強い派閥である。

人間から転生したリュディガー・ローゼンクロイツがレーティング・ゲームにおけるトップランカー(現在7位)に登りつめて最上級悪魔となる等、表向きには実力重視を謳いながらもその実、純血を尊び転生悪魔を軽視する貴族主義な状況は、この貴族派が影響力を保持し続けている事による所が大きいのだ。

 

さて、そんな状況に少なからず変化を齎したのは最近の事、リアス達若手悪魔の、特にリアスとゼファードル、四大魔王と血縁にある悪魔達の活躍が切っ掛けとなった。

リアスは元々サーゼクスの妹という出自、バアル家出身の母ヴェネラナ譲りの滅びの力を宿した事による素質の高さ、『裏』の管理を担っている駒王町で(バグスター達の暗躍のお陰ではあるが)トップクラスの治安の良さを成し遂げた実績、絶世の美少女と言って良い端正な容貌とグラビアアイドル顔負けのスタイルから『紅髪の滅殺姫(ルイン・プリンセス)』として冥界において相当な人気を有してはいたが、今年になって一誠を眷属とし、彼が開発したライダーシステムを取り入れた事でめきめきと実力を上げていき、非公式とはいえライザー・フェニックスとのレーティング・ゲームで完封勝利、グリゴリの最高幹部であるコカビエルを処断、駒王学園にて実施された会談の場に乱入した禍の団への対処に主導的な役割を果たし、北欧の悪神ロキらによる襲撃を返り討ち、京都での禍の団・英雄派の襲撃を未然に防ぐという様に実績を積み上げた事でその人気は留まる所を知らず、彼女が会合の場で宣言した『兄と同じく魔王になる』という夢の実現も近い内に実現するだろうと見られる様になった。

一方のゼファードルは元々グラシャラボラス家を継ぐ立場に無かった上、人間界を度々放浪する(実際はゲーム大会に出場したり、弟子達のコーチングをしたりする為だったが)等の素業の悪さから『凶児』と忌み嫌われ、専門家の評価も若手悪魔の中で最下位ではあったが、サイラオーグとのレーティング・ゲームで大金星を挙げ、続くソーナとのレーティング・ゲームでも彼女やその眷属達をフルボッコにして大金星がまぐれでは無かった事を証明すると評価は一変、正式にグラシャラボラス家次期当主の座に収まり、今や『グラシャラボラスの若頭』として人気を不動の物としていた。

人間だった一誠が生み出したライダーシステムを手に活躍するリアスと、人間が生み出したビデオゲームでの活躍を引っ提げて悪魔社会に殴り込むゼファードル、方向性は違えど『若手二強』と称えられる程となった2人の活躍は、純血悪魔の転生悪魔達への意識を少しずつ変えて行く事となった。

一方のバアル家の次期当主であるサイラオーグ、ゼファードルとのレーティング・ゲームでの惨敗は勿論ではあるが、続くシーグヴァイラとのレーティング・ゲームでは勝利こそしたものの、そのやり方は『自らが最前線に立ちシーグヴァイラ及びその眷属を蹂躙する』という自分自身の高い戦闘能力に物言わせた作戦も何もないごり押し戦法だった事が災いして評価を得られず『若手二強』に対する『若手三弱』の一角に数えられる様になってしまった。

そんな四大魔王の親族ばかりが活躍し、大王家の跡取りが無様を晒す状況が、貴族派にとって面白くないと思うのは当然である。

一応サーゼクスの妻であるグレイフィアが、禍の団に加わっていた旧魔王派の家の出身である事、アジュカの血縁であるディオドラが禍の団と協力していた事、そもそもセラフォルーの妹であるソーナが『若手三弱』の一角に数えられている等、四大魔王の周囲に付け入る隙が無い訳では無いが…

そんな状況下で一誠の弟がテロ組織に加わったというスキャンダルに貴族派が食いつかない筈がない、貴族派の悪魔達は早速情報の裏どりを行い、それを冥界のマスコミ各社にリークする事で一誠の、彼の主であるリアスの失脚を、リアスの兄であるサーゼクスの影響力低下を目論んだ。

だがその矢先、

 

『兵藤家の恥さらしが一線を越えた 縁切りした筈の存在に苦しめられ続ける兵藤家』

『恥さらしによる悪行の数々 逆境に晒され続けた兵藤家の苦難の歴史』

『天才クリエイターに癌の如くへばり付く悪鬼 兵藤誠次郎の悪行三昧』

 

といったゴシップ記事が、悪いのは誠次郎自身のみであって一誠やリアスは、グレモリー家や兵藤家は一つも悪くないという論調が次々と掲載され、それらを掲載した雑誌等の媒体は一誠達の人気も相まってバカ売れ、世論は吐き気を催す邪悪だと言うしかない誠次郎の存在に振り回される一誠達に対する同情や、逆境にも負けず天才ゲームクリエイターとして大成した一誠を称えるものばかりと、貴族派の企みはものの見事に潰された。

この自分達の動きを先読みするかの如きタイミングで掲載された一連の記事、まさかこれは魔王達がリークしたのではないか、そう思い立った貴族派の面々は、

 

「サーゼクス、これは一体どういう事だ?」

「どういう事、とは?」

「しらばっくれるな!」

 

サーゼクスの邸宅へ出向き、彼を問い詰めた。

この行動の結果どうなったかは後に語る事としよう…



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122話_次なるGameの相手

「いやぁこのミスマッチな感じ、寧ろ良いね。まるで川崎にあった廃墟風ゲームセンターみたいだ」

「おい馬鹿止めろ木場、その話題は」

 

駒王学園の旧校舎。

此処では10月下旬に開催される文化祭に向けての、ハード面での準備が一通り進んでいた所である。

旧校舎を拠点としていたリアス眷属、もといオカルト研究部はこれまでその占有面積の広さに物を言わせて、お化け屋敷に占い館、カフェ等と様々な出し物を行っていた(部名の通りオカルトに関する研究報告も行っている)。

それが今回は天才ゲームクリエイター『IS』として知られる一誠に、天才ゲーマー『L』として名を轟かせるレイヴェルもいる事を活かし、旧校舎の大部分(残った地点で研究報告)をゲームセンターとする事にした。

バンバンタンクやジェットコンバットといったシューティング、バクレツファイターやメタリックフィストといった格ゲー、ギリギリチャンバラやゲキトツロボッツといった対戦アクション、ハテサテパズルやメテオブロッカーといったパズルに、ドレビーシリーズやバンバンシューティングといった専用モジュールを用いたゲーム等を用意している。

ただそれだけでは幾ら業界において有名な一誠とレイヴェルがいる事を踏まえてもその辺りのゲームセンターと変わらない、其処で一誠が現在開発している(ライダーガシャットは既に存在している)、3Dアクションアドベンチャー『マキシマムマイティX』、サバイバルホラーアクション『デンジャラスゾンビ』、新感覚パズルゲーム『パーフェクトパズル』、エクストリーム格闘『ノックアウトファイター』、弾幕シューティングゲーム『バンバンバースター』、タドルクエストのスピンオフRPG『タドルファンタジー』と『タドルレガシー』、ハイスピード暗殺アクション『ハリケーンライジング』、ハイウェイカーレーシング『バクソウターボ』のテスト版も設置し、そのテストプレイ及びレビューを行える事にしたのだ。

尚その為に使用する筐体について、ゲームその物を動作させるPCは学園の備品を借りる事で話はついたが、筐体の外装やコントローラー等のモジュール、特にドレビーシリーズやバンバンシューティングで用いられる専用モジュールは部長であるリアスの意見で、出来る限り手作りで作成する事となった。

今や何処の職場や施設にも身近にあるPCやキーボード等をそのまま置くというのは味気ないし、ゲームセンターに置いてある様な筐体をそのまま持って来るのは部の予算的に無理がある、という事で手作り出来る物は手作りで作成し、出来る限り出費を抑えようという方針となったのだ。

現在はゲームを動作させるPCの設置と専用モジュールの作成、プレイするゲームのインストールと簡単な動作テストを一通り終え、筐体の外装をそれっぽくする為の飾りつけ作業に移っていた。

 

「まあ文化祭の準備は順調だから良いとして。イッセー君、今気を引き締めて臨むべきはサイラオーグ氏とのレーティング・ゲームだね」

「ああ。Zに負けた事が影響してかその実力を酷評されてはいるが、それでも強敵である事は間違いない。特にサイラオーグ氏本人の実力は、レベルX相手でも互角以上と言って良いからな。増して対戦ルールがプロで行われるそれとなれば猶更だ」

 

------------

 

遡る事1日位、

 

「皆。若手悪魔同士のレーティング・ゲーム、その次の対戦相手と日程が決まったわ」

 

若手悪魔によるレーティング・ゲーム、その第三試合の日程が決まったという連絡がリアスに齎された。

当初の予定であれば第三試合どころか全試合終わらせる筈だったこのレーティング・ゲームだが、その参加メンバーの一角であるディオドラが禍の団と内通していた事によって起こった襲撃事件、それで浮き彫りとなったテロ対策の不備への対応と、そもそもディオドラが襲撃事件の折に眷属もろとも消滅させられた事でメンバーが奇数になった為の組み合わせ見直しがあり、第三試合以降の日程は無期限延期となっていたのだ。

そんな事情もあって延びに延びた末に実施される運びとなった第三試合、

 

「その対戦相手はサイラオーグ、

 

 

 

ルールはプロでも度々適用されている『ダイス・フィギュア』よ」

 

その相手はリアスの従兄弟であるサイラオーグで、プロルールが適用される形式となった。

ダイス・フィギュア。

対戦する双方の王が其々1つの6面ダイスを振り、出た目の合計で出場出来る眷属の大枠が決定、出した眷属同士による小試合、という一連の流れを繰り返した末に王を倒した方が勝ちというルールである。

この際其々の小試合に出せる眷属だが、その眷属が持つイーヴィル・ピースの価値(兵士であれば転生に使用した駒の数そのまま、騎士及び僧侶なら1つにつき3、戦車であれば1つにつき5、女王であれば9、王の場合は審査委員会が事前に定めた評価によって変動する)の合計が、出た目の合計を下回らなければならない(片方だけでも無理であれば振り直し)。

例えば自分側の目が『1』、相手側の目が『4』であれば合計は『5』となり、出せる眷属の価値の合計は『5』、この場合は戦車1人、または騎士or僧侶と兵士2人まで、または兵士5人まで出せる、という訳である(ただし、同じ眷属を連続出場させる事は出来ない)。

この制約から駒の価値が高い戦車と女王(と高評価を得た王)は中々出せない、または出せても袋叩きにされやすく、よってこのルールで活躍しやすいのは駒の価値が低く出しやすい兵士や僧侶、騎士である。

 

「サイラオーグと、プロルールでのレーティング・ゲーム…

マスコミが何と言おうと、気を引き締めて行かないとね。油断なく臨むわよ、皆!」

『はい!』

 

今までとは勝手の違うルールでのレーティング・ゲーム、増してや相手は(最近は落ち目だが)若手No.1との前評判を誇った程の強者であるサイラオーグとあって、引き締まった表情をしたリアスの言葉に、一同も応じた。

 

------------

 

「ダイス・フィギュアとなれば、駒の価値が低い上にレベルX以上である僕やイッセー君、イリナさんやゼノヴィアさん、黒歌先生やアーシアさんの出番が必然的に多くなる。殊にイッセー君はこの前の修学旅行でレベル99に至ったし、イリナさんは悪魔にとって天敵中の天敵である黄昏の聖槍を手にした。キーマンはイッセー君達2人と言って良いね」

「そうだな。とは言え連続出場出来ないというルールの関係上、ただ俺達を出せば良いという訳では無い、リアスが俺達を出すタイミングが重要になるな」

 

こうして決まったレーティング・ゲームに向けて、作業を続けながらも話し合う2人だった。

 

------------

 

「…あと少しだ、あと少しで、俺の夢の結晶が完成する」

 

その夜遅く、自室で1人ライダーガシャットの開発作業に勤しむ一誠。

その眼はまるで何よりも欲しい物に手が届きそうだと言うべきか、何処か爛々と輝いていた。

 

「ゲムデウス。いよいよお前をこの現実世界に顕現させる時が来た。俺の、俺達の夢の第一歩を、遂に踏み出す。今から心が躍るな」

『いよいよか、我が父よ。我が力をこの世に振るう時が、我らが想いを成し遂げるその瞬間が遂に…!』

 

そんな一誠はPCの画面、正確には其処に映っていた神々しい姿のバグスター――ゲムデウスと言葉を交わしていた。



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123話_開幕!リアスVSサイラオーグ

数日後、冥界の『大公』アガレス領上空に浮かぶ空中都市、アグレアス。

レーティング・ゲームの聖地として知られ、今回のリアス対サイラオーグのゲーム会場にも同地に存在する巨大ドーム『アグレアス・ドーム』が指定されたこの都市に、地上の乗り場と繋がっているゴンドラで向かう一団があった。

 

「皆、いよいよサイラオーグとのレーティング・ゲームね。何度も言ったけど相手は若手No.1と言われていたサイラオーグ、冥界のマスコミが幾ら酷評しようと強敵である事は間違いないわ。増してや今回は今迄みたいに其々の眷属全員での『戦争』なんてシンプルなルールじゃない、プロでも取り入れられているダイス・フィギュア。油断する事無く、全力で行きましょう!」

『はい!』

 

言うまでも無く、今日のレーティング・ゲームの一方の当事者である、リアス達だ。

アグレアスは悪魔勢力にとって特別な地であるが故、魔法陣を用いての移動が余程の事情でもない限り禁止されている為(と、景観の良さを知っていたリアスの勧めで)この様な移動手段で向かう事となった彼女はその途上、自らの眷属に油断なく戦う事を改めて命じた。

サイラオーグの親戚であるリアスは良く知っている、バアル家独自の『滅びの力』が無くとも今の地位へとのし上がれた彼の実力を、レベルX相手でも互角以上に渡り合うであろう彼の強さを。

だからこそ若手悪魔によるレーティング・ゲームで色々な失態を犯してその地位が危ぶまれる彼を酷評し、一方でレーティング・ゲームは勿論の事、北欧の悪神ロキや禍の団・英雄派による襲撃への対応で華々しい活躍を見せた自分達を過剰なまでに賞賛する冥界マスコミの声に揺らぐ事は無かった。

 

(遂にボクが仮面ライダーの『王』として一歩を踏み出す時が来た。イッセー先輩の、バグスターの皆さんの夢の結晶であるこの仮面ライダークロニクルガシャット、この力でクロノスの真の姿となる日が。ボクはもうただ力に怯えてメソメソしていたあの頃のボクじゃない!仮面ライダーの『王』となって、イッセー先輩達の夢を叶える為の力となるんだ!ゲムデウスさん、ボクに力を…!)

 

その中で一際、意気込む者が1人、ギャスパーである。

実を言うと昨日、彼は一誠から1つのライダーガシャットを託された。

黒いベースカラーにライムグリーンのハンドガード、『KAMEN RIDER CHRONICLE』という文字と、エグゼイド、ゲンム、ブレイブ、スナイプ、レーザー、風魔、パラガス、ノックス、ポッピー、トゥルーブレイブ、そしてレーザーX、11人の仮面ライダーと思しきシルエットをバックに、クロノスと思しきライダーの絵が描かれたラベルが貼られたそれは一見すると大多数のライダーガシャットと変わらないシングルサイズのガシャット、タドルレガシーガシャットの様に破損している訳でも無い。

だがそれは一誠の夢である『究極のゲーム』の名を冠したライダーガシャットである、強大な力を有している事を隠そうともしていないその底知れぬ気配が、それを物語っていた。

ギャスパーはそのライダーガシャットを握りしめながら、決意を新たにしていた。

 

(夏煉さんとの模擬戦で分かりました、今の私はまだまだ力不足であると。元々私の為にとイッセー先輩が作ってくれたガシャットギアデュアル、それを渡された中で一番使えているのは確かに私ですが…

今のままじゃいけない、このままでは頭打ちです。もっと、そう、例えばパーフェクトパズルとノックアウトファイター、2つのゲームの力を同時に使う事が出来る、みたいな感じにならなければ…!)

 

そしてもう1人、白音もまたガシャットギアデュアルαを握りしめながら、決意を新たにしていた。

 

------------

 

『さあ、いよいよゲーム開始です!まずは東口ゲート、サイラオーグ・バアルチームの入場です!』

 

それから数十分後、今回のゲームの実況である、元72柱の序列4位ガミジン家出身の上級悪魔で冥界の名物司会者としてお馴染みなアナウンサー、ナウド・ガミジンの声を受けて始まったレーティング・ゲーム、まずはサイラオーグとその眷属達が入場し、フィールド上に浮かび上がる2つの浮島、その片方であるサイラオーグ側の陣地へと移動した。

 

『続きまして西口ゲート、リアス・グレモリーチームの入場です!』

 

それを受けてナウドが西口ゲートで待機しているであろうリアス達に入場を促したが、其処で度肝を抜く光景が繰り広げられた。

 

『スクランブルだ!出撃発進!バンバンバースター!発進!』

「私はリアス・グレモリー様の女王、姫島朱乃、またの名を、仮面ライダースナイプ!」

 

その先陣を切ったのはバースターゲーマーとなったスナイプ、変身するや否や、数十メートルにも及ぶジャンプ力に物言わせてゲートから直接ジャンプし、浮島のもう片方であるリアス側の陣地に飛び乗った。

 

『エクスプロージョン・ヒット!ノックアウトファイター!』

「リアス・グレモリー様の戦車、塔城白音、またの名を、仮面ライダーノックス!」

 

次に名乗りを上げたのは、ノックアウトファイターゲーマーとなったノックスと、

 

『辿る歴史!目覚める騎士!タドォォォルレガシー!』

「同じくロスヴァイセ、またの名を、仮面ライダートゥルーブレイブ!」

 

レガシーゲーマーとなったトゥルーブレイブの戦車2人組、2人も先程のスナイプ同様、変身と共に陣地である浮島に飛び乗った。

 

『ゲット・ザ・グローリー・イン・ザ・チェイン!パーフェクトパズル!』

「リアス・グレモリー様の騎士、塔城黒歌、またの名を、仮面ライダーパラガスにゃ!」

 

続いて飛び乗ったのは、パーフェクトパズルゲーマーとなったパラガスと、

 

『辿る巡るアールピージー!タドォォォォルファンタジー!』

「同じく木場祐斗、またの名を、仮面ライダーブレイブ!」

 

ファンタジーゲーマーとなったブレイブの騎士2人組。

 

『ハコニワウォーズ…!』

「リアス・グレモリー様の僧侶、ギャスパー・ヴラディ、またの名を、仮面ライダークロノス!」

 

更に飛び乗ったのは、ウォーズゲーマーとなったクロノスと、

 

『ドリーミング・ガール!ぱわー!恋のシミュレーション!乙女はい・つ・も・ときめきクライシス!』

「お、同じくアーシア・アルジェント、またの名を、仮面ライダーポッピーです!」

 

ときめきクライシスゲーマーとなったポッピーの僧侶2人組。

 

『最上級のパワフルボディ!ダリラガン!ダゴスバン!マキシマムパワー!エェェェェックス!』

「リアス・グレモリー様の兵士、兵藤一誠、またの名を、仮面ライダーエグゼイド!」

 

その後、マキシマムゲーマーとなったエグゼイドと、

 

『爆走!独走!激走!暴走!バァァァァクソウターボ!』

『レッツスニーキング!ハリケーンライジング!』

「同じくゼノヴィア、またの名を、仮面ライダーレーザー!」

「同じく紫藤イリナ、またの名を、仮面ライダー風魔!」

 

ターボゲーマーとなったレーザーに、ライジングゲーマーとなった風魔が登場したが、その仕方は今までとは違った。

エグゼイドこそジャンプで飛び乗り、着地しながら名乗りを上げるという今まで通りのやり方だったが、レーザーと風魔は、レーザーが持っているバイクに2人乗りし、何処ぞの不良漫画の如く走らせたままジャンプして乗り込むというやり方で入って来たのだ。

 

『マイティジャンプ!マイティキック!マイティアクショォォォォン!エックス!アガッチャ!デンジャー!デンジャー!デスザクライシス!デンジャラスゾンビ!』

「そして私が仮面ライダー達の主、リアス・グレモリー、またの名を、仮面ライダーゲンム!」

 

そして、王であるリアス――ゲンムがゲートからジャンプ、陣地に降り立った。

 

『おぉっと!此処でグレモリー眷属の皆様、いや、仮面ライダーの皆様と呼ぶべきでしょうか、ド派手なパフォーマンスでの陣地入りです!これも仮面ライダーに変身した事で得た力の現れなのか!』

 

ゲンム達の派手な登場に驚きを隠せない観客を代弁する様なナウドのコメントもあったが、こうして、ゲームは始まりを告げた…!



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124話_マザルアップ!Paradoxの戦士!

『それでは両陣営の王の方、設置台の方へお進み下さい』

 

リアス達によるインパクト十分な登場もあったが、審判役であるリュディガーや、解説として参加する事となったレーティング・ゲームのチャンプで、ゼファードルの眷属であるナッシュらの叔父である『皇帝』ディハウザー・ベリアルの紹介、今回設定された特殊ルールであるダイス・フィギュアの説明、審査委員会が定めたリアスとサイラオーグの『駒』の価値の発表(両者共に12)等がナウドによって滞りなく進み、いよいよ開始となった今回のレーティング・ゲーム。

ダイス・フィギュアのレギュレーションに則りリアスとサイラオーグは、このルールの要であるダイスが設置された陣地前の台へと移動し、ダイスを手に取った。

 

(ゼファードルに負けて以来、荒れていたと聞いていたし、実際シーグヴァイラとのゲームでもサイラオーグらしからぬワンマンプレイが目立ったからどんな状態か気になっていたけど、やけに穏やかね。何処か達観していると言うか、冷静その物と言うか…

シーグヴァイラとのゲームから今日まで1ヶ月ちょっと。その間に何か、スランプを脱する『何か』があったと見て良いわね、この様子なら。『出撃させる眷属の組み合わせは、駒の価値の合計がダイスの目の合計と同じ、或いは一番近い物でなければならない』なんて特別ルールが課されていたのもあるけど、これは想定以上に、厳しい戦いになりそうね)

 

その際にリアスは、不振が続く己の従兄弟がどんな様子か気になり、正面に立つサイラオーグの顔を見たが、彼の表情は予想に反して穏やかな物だった。

然しながらゼファードルとのゲームで負け、それを引きずった影響かシーグヴァイラとのゲームでは自ら前線に立つというワンマンプレイを行ったのも事実、今の表情からして不振を脱却する切っ掛けがあったのだろうと彼女は判断、直前に通告された特別ルールの存在も相まって厳しい戦いになるだろうと気を引き締めた。

 

『これより、サイラオーグ・バアルチーム対リアス・グレモリーチームの、ダイス・フィギュアルールによるレーティング・ゲームを開始致します!ゲームスタート!』

 

そんなリアスの決意を他所にゲーム開始を宣言したナウド、それに合わせて2人がダイスを握る手に力を込め、

 

「シュートアウト!」

 

リュディガーの掛け声と共にダイスを振るった…!

 

『リアス・グレモリー選手が出した目は2!対するサイラオーグ・バアル選手が出した目は1!合計は3!』

 

こうしてレーティング・ゲームは始まった…!

 

------------

 

『ガッチャーン!キメワザ!ガッチャーン!タドル・クリティカル・スラッシュ!』

『はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』

『まさか、これ程とは…!』

 

リアスは祐斗、サイラオーグはベルーガ、両者共に駒価値3の騎士1人を出して開始された第一試合、それは一方的な展開となった。

地獄の最下層に位置する『氷の地獄(コキュートス)』に住まう高位の魔物『青ざめた馬(ペイル・ホース)』、死と破滅を呼ぶと言われるこの馬を、アルトブラウを完全に乗りこなすベルーガが人(悪魔?)馬一体のコンビネーションを披露せんと試合開始早々に飛び掛かった。

だがブレイブに、ファンタジーゲーマーに変身した祐斗が高速移動能力による回避及び奇襲、ドーム状のバリアによる受け流し、更には瘴気を用いたアルトブラウ達の拘束といった様々な搦め手で翻弄、

 

『サイラオーグ・バアル選手の騎士、リタイア!』

 

最後はガシャコンソードによる必殺の剣撃で決着、京都での英雄派との戦いで手に入れた魔剣はおろか、元から自らに宿っている神器『魔剣創造』を使う事も無く、仮面ライダーとしての力だけで圧倒して見せた。

 

『初戦を圧倒的な力で制したのはグレモリーチーム!このままグレモリーチームのワンサイドゲームとなるか、或いはバアルチームが逆転するのか!第二試合を開始します!』

「シュートアウト!」

 

ある意味で予想通りな展開で始まったこのゲーム、とはいえまだ始まったばかりだと改めて気を引き締めたリアスとサイラオーグは再びダイスを握りしめ、リュディガーの掛け声と共に振るった。

その目は、

 

『リアス・グレモリー選手、サイラオーグ・バアル選手、共に出した目は4!合計は8!』

 

共に4で合計は8、駒価値が9である女王を出す事は出来ない一方、駒価値が5である戦車は出せる上、他の種類の駒を有する眷属も一緒に出せる数値となった。

勿論、馬鹿正直に戦車を出す必要は無い、騎士もしくは僧侶を2人に加えて兵士2人を出しても良いし、極端な話兵士全員を出しても良い(兵士が、駒7つ有するレグルスしかいないサイラオーグに選択の余地は無いが)。

様々なパターンが考えられる中、リアスの選択は…

 

「今は最序盤、新しい力を手にした黒歌にイリナにギャスパー、イッセーを出すのはまだ控えた方が良いわね。となれば…

白音にゼノヴィア、2人にお願いするわ」

「ああ、了解だ」

「分かりました、リアスお姉様!心が躍る…!」

「し、白音?」

 

京都の地で祐斗と同じく新たな力を手にした黒歌とイリナと一誠、それに新しいガシャットを渡されたギャスパーは温存し、計算が立つ白音とゼノヴィアで、戦車である白音と兵士(駒3つ)であるゼノヴィアで、という手堅い物だった。

だが彼女に呼ばれて応じ、転送用の魔法陣へと向かう白音の様子に陣地内の誰もが少なからず違和感を覚えた。

とはいえ呼び止めようとした時には作戦会議の時間が終了となり、彼女の状態を確認する事が出来なかった。

 

------------

 

第二試合の場であろう神殿らしきフィールドに転移された白音とゼノヴィア。

向かい側にはサイラオーグが送り込んだであろう、3メートルはある筋肉隆々な巨人と、ライトアーマーに剣を装備した金髪の騎士がいた。

 

「俺はサイラオーグ様の騎士の1人、リーバン・クロセル。此方のデカいのは戦車のガンドマ・バラム。この2人でお相手する」

「…」

 

此方側が転移して来たのを受けて自己紹介を始める金髪の騎士――リーバン。

 

「ご丁寧にどうも。改めて私はリアス様の兵士ゼノヴィア、またの名を仮面ライダーレーザー!」

『デュアル・ガシャット!』

「こっちが同じく…?

あれ、白音?お前、ガシャットギアデュアルのダイヤル、回していないぞ。それをやらないと起動しない筈だが…」

 

それに応じたゼノヴィアだったが、隣の白音の行動によって、ガシャットギアデュアルαのダイヤルを()()()()ゲーマドライバーに装填するという行動によってストップした。

ガシャットギアデュアルは、本隊に設けられたダイヤルを回す事でゲームを選択、それによって初めて起動状態になるシステムである、白音もこれまで何度もこれを用いて変身して来た中でこの行動を欠かす事は無かった。

にもかかわらず今の行動に出た白音の真意が理解できず、注意するゼノヴィアだったが、

 

『The strongest fist!What’s the next stage?』

「な、何!?」

 

次の瞬間にはガシャットギアデュアルが起動していると言わんばかりの光景を目の当たりにし、驚きを隠せなかった。

白音の背後に並んで浮かび上がるパーフェクトパズルとノックアウトファイターのスクリーン、2つのそれを切り張りした様な待機音声、そして右眼は赤く、左眼は青く光り輝く白音の眼…

 

「マックス大変身!」

『ガッチャーン!マザルアップ!』

 

それを受けて、ポーズを取りながらゲーマドライバーを開いた白音、次の瞬間、背後のスクリーンが重なり、

 

『赤い拳強さ!青いパズル連鎖!』

 

前方にパーフェクトパズルとノックアウトファイターのそれを切り張りした様なパネルが出現、

 

『赤と青の交差!パーフェクトノックアウト!』

 

それが彼女の身を通過すると、赤い髪と青い髪が混ざったオールバック、青いジグソーパズルの模様と赤い炎の模様をごちゃ混ぜにした様な中華風のライダースーツ、左側は青、右側は赤い肩当てを装備した、パラガスともノックスとも違う仮面ライダーに変身した。

 

「パーフェクトパズルと、ノックアウトファイター、レベルXを誇る2つのゲームが混ざり合って1つになった(マザルアップした)、その名もパーフェクトノックアウト。今の私は、

 

 

 

仮面ライダーパラドクス・パーフェクトノックアウトゲーマー!レベルはイッセー先輩のマキシマムゲーマーと同じく99(マキシマム)です!」

『ガシャコンパラブレイガンツヴァイ!』

 

今まさに誕生した新しい仮面ライダー――パラドクスは、腰にぶら下げていた筈の黒いダブルサイズのガシャット装填スロットをくっつけた様な外見のガシャコンパラブレイガンを手に、名乗りを上げた。



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125話_Mixされた力

赤タグにもありますが、今話には物凄く残酷な描写があります。
ギャグマンガの描写ってリアルに考えると相当グロいのが結構ありますよね(汗


「ま、マザルアップ!?」

「マザルアップ、ですか…!?」

「マザルアップだって!?」

「マザルアップですって!?」

「マザルアップ…!」

『おぉっとぉ此処で塔城白音選手、見た事も無い姿に変身しました!見た所自身が変身する仮面ライダーノックス・ノックアウトファイターゲーマーと、姉である黒歌選手が変身する仮面ライダーパラガス・パーフェクトパズルゲーマーを足して2で割った様な姿です、マザルアップの名は体を表すと言う事でしょうか!』

 

白音が新たなる仮面ライダーに変身した。

その衝撃はフィールドを越え、会場内にも広がった。

白音が変身した新たなる姿、仮面ライダーパラドクス・パーフェクトノックアウトゲーマーレベル99の姿にリアス達は勿論の事、向かい側のサイラオーグ達や周囲の観客も驚きを隠せない中、

 

「あれこそガシャットギアデュアルにおける禁手。本来は2つのジャンルが違うゲームを素早く使い分ける為、1つのガシャットに共存させる目的で開発したガシャットギアデュアル。それを2つ同時に、もっと言えば2つを混ぜ合わせて使用する事で互いが互いに強く干渉し合い、より強大な力を持ったゲームへと融合する事で至る変身、それがマザルアップ!」

 

ガシャットギアデュアルの開発者である為、白音の身に起こった現象が何なのか(理論上は)知っていた一誠がそれに答えた。

 

「勿論、両方のゲームを融合させる事で高いレベルの形態となる訳だから、変身者には両方のゲームに対する、今までとは比べ物にならない水準での適性能力を併せ持つ事が求められる。ガシャットギアデュアルの力を最大限引き出せる変身者にしかなれない、正に禁手だ」

「あらあら。そうなると片方の適性しか持っていない私達はなれない、という事ですわね。選ばれし者だけが至れる、白音ちゃんが少し羨ましいですわ」

「そうだな、朱乃。ガシャットギアデュアル自体、様々な術式を扱う技能に格闘能力と、マルチな才能を有した、パズルゲームと格闘ゲームへの高い適性を併せ持っていた白音の力を最大限発揮させる為に開発した物だった。その後2つのゲームを1つのガシャットに共存させる事で、其々が少なからず干渉し合った結果今までとは比べ物にならない程のレベルに至る事が分かり、RPGとシューティングを合わせたβにステルスとレースを合わせたγといったバリエーションを開発、量産したが、やはり一番使いこなしていたのは白音だった。その白音がマザルアップに至ったのは必然なのかも知れないな…」

 

ガシャットギアデュアルに搭載された両方のゲームに対して高い適性を持った変身者しか至れない領域、マザルアップ。

その存在自体は知っていた為に説明は出来た一誠も、実際にそれが成されると思っていなかったのか、何処か感慨深げにそう呟いていた。

 

(ガシャットギアデュアルの禁手と言える力、マザルアップ…!

僕もガシャットギアデュアルβ(これ)を使えば…!)

 

その後ろでガシャットギアデュアルβを握りしめながらそう思った祐斗。

もしそれを一誠が察していたら「お前はシューティングの適性が無いから無理だ」と一刀両断していたであろうその思いを強く抱く祐斗、それに呼応するかの如く左眼がほんのり、赤紫色に輝いた…!

 

------------

 

『それでは第二試合、開始です!』

「重力よ!」

「む、これは…!」

 

一方のフィールド内、マザルアップというまさかの偉業を成したパラドクスに他の3人は驚きを隠せなかったが直ぐ平静になり、リーバンとガンドマが構え直し、ゼノヴィアもレーザーに変身して準備万端となった中、始まった第二試合。

開始早々に動いたのはサイラオーグ側の2人、パラドクスのレベルを聞いて真っ先に抑えるべき脅威は其方だという考えが一致したのか、まずはリーバンが自らに宿った神器『魔眼の生む枷(グラビティ・ジェイル)』で彼女の動きを封じに掛かる。

元72柱の一角「だった」クロセル家の末裔であるリーバン、クロセル家は大昔に断絶したと伝わっていたがその実、人間界に居を移していた事が最近になって判明、その中で人間との間に生まれた所謂『混血』の子がその跡を継いでいた様で、リーバンを始めとした末裔たちはその血を引いている。

その出自故に神器を宿したリーバン、彼の神器である魔眼の生む枷は重力(グラビティ)の名の通り重力に関連した能力を持つ物で、魔眼と言う通り視界内の場所に重力を発生させる事が出来る。

この力でパラドクスを視界におさめ続け、彼女を高重力によって拘束、其処をガンドマが叩き潰そうという魂胆だ。

その第一段階である拘束は、パラドクスが自らを覆いつくす重力に気付きはしても其処から動かない様子から成功した模様、念のために魔力でパラドクスの足元を凍らせたのを受けてガンドマが、スピードを活かして突撃しようとするレーザーをリーバンと共に牽制しながら接近する。

そしてその剛腕の一振りが届くまでに近づいた所で、パラドクスへとその腕を振るった。

戦車として転生しているのもあってそのパンチは上級悪魔も一撃必殺と言って良い物、まして今はリーバンの神器の効果で重力が増大している状態、その一撃を食らったらパラドクスもただでは済まないだろう、と思ったその時だった。

 

「其処です!」

「っ!?がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「ガンドマ!?馬鹿な、ぐぁっ!?」

『サイラオーグ・バアル選手の騎士、リタイア!』

 

ただで済まなかったのは、何故か腕を振るった筈のガンドマだった。

右腕からのストレートパンチでパラドクスを叩き潰そうとしたガンドマ、だがその攻撃が彼女を捉えようとした次の瞬間、何かが思いっきり潰れる様な轟音と共に、その腕がまるでギャグマンガの如く押し潰され、複雑骨折したであろう骨の破片が針鼠の如く飛び出、吹き出た血で即座に赤く染まった。

まさかの事態に動揺するリーバンも、直後に何処からか放たれた銃撃を諸に食らってしまい、それで戦闘不能状態に陥ってしまったのかフィールドから離脱してしまった。

 

「この程度の重力、蚊ほども効きませんよ」

 

そんなリアルで再現すると思いっきりグロテスクな光景になる状況を生み出したのは、重力の影響を受けた筈のパラドクスだった。

 

「私、体重は素で30kgちょっとなんです。パラドクスに変身した所で精々1.5倍、50kgもありません」

『ガッチャーン!ウラワザ!』

「そんな私に掛かる重力を10倍にした所で500kg、20倍にしても1tもありません。その程度の重力ではレベル99に至った私を止める所か、ほんのちょっぴりでも阻害出来はしません!」

『ガッチャーン!パーフェクト・ノックアウト・クリティカル・ボンバー!』

「真!昇○拳!」

「が!?あ…!」

 

高重力下に置かれた所で自分への影響は軽微だと、あの状況下で動けた理由を話したパラドクスはそのままゲーマドライバーを開閉し、潰れた右腕に走る激痛で身悶えるガンドマに連続でアッパーを叩き込み、

 

『サイラオーグ・バアル選手の戦車、リタイア!』

 

この試合を決めて見せた。



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126話_限界はPlusUltraするもの

「凄いな、白音。机上の空論でしか無かったマザルアップに至り、レベル99(マキシマム)の領域に入るとは」

「あ、ありがとうございます、イッセー先輩。夏煉さんとの模擬戦で思い知ったんです、私はまだまだだって。今のままではいけない、例えばそう、ガシャットギアデュアルの力を同時に扱える位にならないとって思ったら、自然と出来る気がしたんです」

 

マザルアップに至った白音がリーバンとガンドマを相手に圧勝したという衝撃的な形で、仮面ライダーパラドクスとしての初陣を飾った第二試合。

周囲がその衝撃の余り未だ固まる中で出迎えた一誠に、何処か確信めいたものがあったと語った白音。

 

『第二試合を終え、バアルチームは3名がリタイア。グレモリーチームは未だリタイア者ゼロ。グレモリーチーム優勢は変わりませんが、まだまだゲームは始まったばかり!バアルチーム、此処で悪い流れを断ち切りたい所、第三試合を開始します!』

「シュートアウト!」

 

白音とゼノヴィアがフィールドから戻り、所定の席についたのを受けて次の試合開始を宣言したナウド、それを受けてのリュディガーの掛け声と共に、リアスとサイラオーグは三度ダイスを振るった。

その目は、

 

『リアス・グレモリー選手が出した目は1!対するサイラオーグ・バアル選手が出した目は2!合計は3!』

 

第一試合と同じく合計3、特別ルールの兼ね合いもあってこれまた同じく1対1の構図となった訳だが、その内情は大きく異なる。

第一試合でベルーガが、第二試合でリーバンがリタイアした関係で『騎士』を使い果たしてしまったサイラオーグ側は『僧侶』を出すしかなく、一方のリアス側は第二試合に出場した『兵士』のゼノヴィアを出せない以外は誰でも出せる状況である。

その状況下でのリアスの選択は、

 

「此処も温存の方向で行きましょう。祐斗、貴方にばかり負担を強いる事になるけど、大丈夫かしら?」

「勿論です、リアス様。丁度良いタイミングです」

「丁度いい?どういう事かしら、祐斗?」

「まあ、見てのお楽しみです」

 

第一試合で既に出場した祐斗だった。

主からの指名を受けて魔法陣へと向かう祐斗だったが、その際に意味深な事を言っていたのがリアスは気になった。

 

------------

 

第三試合の舞台となったフィールドはだだっ広い花畑、其処に転送された祐斗の前には、サイラオーグ側の『僧侶』で元72柱の一角であるアンドレアルフス家出身の、スーツをビシッと着込んだ金髪の女性悪魔――コリアナ・アンドレアルフスがいた。

 

「今日は素敵な日ですね」

「あら、急にどうしたのかしら?」

「花は咲き誇り、小鳥達もさえずっている。こんな日には、貴方の様に敵として立ちはだかる方には…」

 

コリアナが自分の相手だと確認した祐斗はふと、彼女をナンパするかの如く喋り出した。

これから戦う相手に取るそれではない対応を見せる彼に怪訝な様子を隠そうともしないコリアナに、

 

 

 

 

 

地 獄 で 燃 え て し ま え ば い い

『デュアル・ガシャット!Let’s going for battleship!』

 

赤紫に輝かせた左眼を向けながらガシャットギアデュアルβを『ダイヤルを回す事無く』ゲーマドライバーに装填した。

 

------------

 

「ゆ、祐斗先輩も、マザルアップを…!?」

「あ、あり得ない…!

木場にはRPGは兎も角、シューティングの適性は無かった!ガシャットギアデュアルβを用いるのもファンタジーゲーマーに変身する為だけだった!マザルアップに至る条件は満たしていなかった筈だ!」

 

フィールド内の様子を映すスクリーンに広がる光景に、信じられいないと言った様子を見せる一誠。

しつこい様だが一誠も言った通り、祐斗が持っている変身適性はRPGのみ、シューティングの適性は有していなかった為にマザルアップは出来ない筈なのだ。

だがスクリーンに映されていた現実は、タドルファンタジーとバンバンバースターのスクリーン、2つのそれを切り張りした様な待機音声、そして、

 

『術式レベルMAX!変身!』

『ガッチャーン!マザルアップ!』

 

ゲーマドライバーを開いた瞬間に重なる背後のスクリーン、

 

『辿り着け!元の世界へ!』

 

前方に出現したタドルファンタジーとバンバンバースターのそれを切り張りした様なパネル。

祐斗もマザルアップの領域に至った事を物語る光景が広がっていた。

ところが、其処からはパラドクスとは違った。

 

『救い出せ!全ての民を!』

 

前方に出現したパネルが彼の身を通過すると其処にいたのは、パラドクスの時の如く全く新しいライダーではなく、レベル2の時のブレイブだった。

 

『消し飛ばせ!全ての敵を!』

「イッセー君、あれ…!」

「あれは、木場が京都の地でジークフリートから奪取した5本の魔剣…!

そうか、あれが木場に不足していたシューティングの適性を穴埋めしたのか!ならばマザルアップ出来たのも、マザルアップしたにも関わらずライダーとしてのベースがブレイブのままなのも説明が付く!」

 

更に、祐斗がブレイブと化した次の瞬間、懐に忍ばせていた5本の魔剣が彼の上空へと飛び上がると共に右眼が塞がった隻眼の、悪魔の頭部と思われる骸骨の様な装甲に変化、祐斗がマザルアップに至った真相を理解した一誠を他所にそれらはブレイブの両腕・両肩・そして頭部に装着、

 

『選び出せ!バンバンタドル!』

 

その時の衝撃による影響か背中に装着されていた、レベル1時の顔だった装甲が破損、何処かのクソ花が本性を露わにした時の如きゲスな笑顔を浮かべているかの様な形状と化した。

 

------------

 

「仮面ライダーブレイブ、バンバンタドルゲーマーレベル99(マキシマム)…!

これより、序列一位眷属切除手術を開始する!」

 

一連の動作を終えた末に新たなる姿に、バンバンタドルゲーマーレベル99に変身したブレイブは名乗りを上げ、マザルアップの影響かスロット部分が増設されたガシャコンソードの切っ先をコリアナに向けながらそう宣言した。

 

『な、何やら両陣営で予想外な事態が発生した模様ですが、第三試合を開始します!』

「くっ!」

 

まさかの事態に誰もが驚きを隠せない中始まった第三試合、まさかブレイブがゲーム中に進化すると思わなかったのか、焦ったコリアナは先手必勝とばかりに魔力で投げ槍(ジャベリン)型の氷を生成、ブレイブへと飛ばそうとしたが、

 

「ふっ!」

「あぐっ!?」

『サイラオーグ・バアル選手の『僧侶』、リタイア!第三試合はまさか、まさかの瞬殺です!』

 

それはブレイブでは無く、手に持っていた筈のコリアナを貫いた。

 

『ご覧になられましたでしょうか皆様!コリアナ選手が投擲しようと生成した氷の投げ槍を、祐斗選手が魔力らしき物で強奪、まだコリアナ選手の手中にあったそれを強引に射出する事で肩部へと突き刺し、一瞬の内に、リタイアに至るダメージを与えました!』

 

勿論これはナウドの言う通り、ブレイブが仕掛けた物だった。




因みにバンバンタドルゲーマーレベル99の変身音声イメージは、UndertaleのBGM『Megalovania』です。


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127話_DragonVSKnight

流石に圧勝続きだとあれなので予定変更し、戦闘シーンは次話に持ち越しました。


「正直、お前がマザルアップに至るとは思わなかった。まさか無いと言って良いシューティングへの適性を、伝説の魔剣で強引に穴埋めするとはな…」

「まあ、顔見せ程度で終わっちゃったけどね。あれ位なら少なくないタイムラグはあれど、ファンタジーゲーマーのままでも出来たし」

 

先程の白音に続いてマザルアップに至った祐斗が、コリアナを瞬殺したという形で勝利した第三試合。

マザルアップに至れる条件を祐斗が満たしていなかったのもあって、一誠も予想していなかった展開にポカンとするしかなかった周囲を他所に普段通りの様子で、フィールドから戻って来た祐斗は所定の席に着いた。

 

『第三試合を終え、バアルチームは残り5名!残り11名のグレモリーチームとは倍以上の差を付けられてしまいましたが、此処で巻き返せるか!第四試合を開始します!』

「シュートアウト!」

 

それを受けてナウドが次の試合開始を宣言、リュディガーの掛け声と共に、リアスとサイラオーグは今日4度目となるダイスロールを行った。

その目は、

 

『リアス・グレモリー選手が出した目は4!対するサイラオーグ・バアル選手が出した目は1!合計は5!』

 

戦車1人だけ出せる5。

サイラオーグ側は華奢で皺だらけな、一見すると『戦車』で転生させたのはミスだと言われかねない体格の男性――断絶されていたと思われた元72柱の一角ブネ家の末裔ラードラを出すしかない一方、リアス側は戦車1人を出すパターンの他、先程の試合に出場した祐斗以外の、駒価値3の眷属に一誠とイリナを一緒に出撃させる事も出来る。

この状況下で、

 

「…まあ、白音と祐斗、2人連続マザルアップで隠す意味も無くなっちゃった感はあるけど、此処も温存で行きましょう。

ロスヴァイセ、頼めるかしら?」

「分かりました、リアスさん!」

 

新戦力を温存する為に出撃させた筈なのに、いざ試合開始したら新たな力をひけらかしていた白音と祐斗の振舞いに頭を抑えながらリアスはしかし温存の方向性を維持、ロスヴァイセを出撃させた。

 

(イッセーさんもイリナさんも、木場君も黒歌さんも京都の地で新たな力を手にし、そして今白音さん達がマザルアップに至った。ゼノヴィアさんも朱乃さんも悪魔にとって天敵である『光』を扱える、アーシアさんも神器の力で傷をいやす事が出来る。リアスさんもゾンビゲーマーに変身した時の無敵振りは健在だし、極めつけはヴラディ君に渡されたあのガシャット…

私も現状のまま留まってはいられません!イッセーさんのお嫁さんとして恥じない強さを身に着けねば!)

 

まさかロスヴァイセがそう考えているとは知らず、2度ある事は3度あるという諺が現実の物になるとは思いもよらず。

 

------------

 

「初めましてと言うべきか、仮面ライダートゥルーブレイブよ。我が名はサイラオーグ様の戦車、ラードラ・ブネである」

「ブネ…?

まさかクロセル家と同じく、断絶されたと言われた元72柱の一角、ブネ家の方ですか。改めまして、リアスさんの戦車、ロスヴァイセです」

 

ゴツゴツとした岩が転がる荒れ地らしきフィールドに降り立ったラードラとロスヴァイセ。

 

「先程までの試合を見れば、我らと貴様達仮面ライダーとは、雲泥の差と言って良い程に力の差があるのは明白。とは言え我に逃げるという選択は無い!散って行った我が同胞の為にも、サイラオーグ様の夢の為にも、最初から力を余す事無く戦おう!」

 

互いに自己紹介した直後、もう出し惜しみはしないと言わんばかりに(ルールに反しない範囲で)ラードラが動いた。

老人に見えなくもない程華奢だったラードラの体躯がみるみる内に膨れ上がり、ドラゴンの如き翼と尾が生え、口から牙が剥き出しになり、手足の爪が鋭い物と化し、やがて黒いマッシブな体躯のドラゴンその物と化し、咆哮を上げた。

先程までとは想像も付かない様な姿へと変化したラードラ、これは彼が受け継いだブネ家の血に関係がある。

犬、グリフォン、そして人間の、3つの頭部を持つドラゴンの姿で現れるとゴエティアに記されたブネ家の悪魔はその記述の通り、一族の中でも限られた者だけがドラゴンに変身出来る力を有しているのだ。

ラードラもまたその力を得たのだが、ゼファードルとのレーティング・ゲームでは披露出来なかったのか、会場内では驚きに包まれていた。

 

「大切な存在を護る騎士の前に立ちはだかるは巨龍、という事ですか。中々洒落ていますね。ですが私も負ける訳には行きません!この手で必ずリアスさんを、眷属の皆さんを、イッセーさんを護ります!」

『タドルレガシー!』

 

然しながら対面するロスヴァイセの驚きは少なく、RPGにありがちな展開だと寧ろ戦意を滾らせてガシャットを起動させた。

ところが、

 

「こ、これは…!」

 

その後に繰り広げられた展開は、ロスヴァイセの予想とは違った物だった。

ロスヴァイセが信じられないと言いたげな表情を浮かべるのも無理は無い、破損の影響で起動音声に混じっていた筈のノイズは取り除かれ、背後に浮かぶスクリーンの乱れは無く、極めつけは、握っていたガシャットの破損が全て直り、新品その物の状態になっていたのだから。

 

「これが今の私が出せる全力です!変身!」

『ガシャット!ガッチャーン!レベルアップ!辿る歴史!目覚める騎士!タドォォォルレガシー!』

 

それを見てやれると判断したのか、何時も通りの手順でトゥルーブレイブへと変身したロスヴァイセ。

だがガシャットの破損が直ったのに合わせてか、トゥルーブレイブになった瞬間、まるで錆が浮き上がるかの如く赤茶色の部分が剥がれ、暗いオレンジ色に染まっていた眼も元の色に戻り、直後に装着した鎧以外はブレイブと見分けが付かない姿となった。

 

『ガシャコンソードツヴァイ!』

「仮面ライダートゥルーブレイブ・レガシーゲーマーレベル99(マキシマム)。貴方という脅威を、討つ者です!」

 

ガシャットの破損が直った事で本来の力を引き出せる様になったトゥルーブレイブは、召喚したガシャコンソードツヴァイの切っ先をラードラに向けながら、己の本当の名を宣言した。

 

『それでは第四試合、開始です!』

「行くぞ、トゥルーブレイブよ!」

「ドラゴン切除手術を開始します!」

 

それから程なく響き渡る、ナウドの戦闘開始を告げるアナウンス。

それを受けて一頭の龍(ラードラ)一人の騎士(トゥルーブレイブ)は、互いの敵に向かって行った…!



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128話_Kingは1人、このボクだ!

↓遊戯王SEVENSの情報、並びにラッシュデュエルなる新ルールを知った時の感想。

超・占事略決じゃねぇか!


「はぁっ!」

 

開始早々、小手調べだと言わんばかりに大量の剣型エネルギーを生成、ラードラへと射出するトゥルーブレイブ。

 

「甘い!」

 

ラードラもその攻撃は読めていたか、射出されるタイミングで斜め後方へと飛び上がって回避、火球を放つが、

 

「甘いのは其方ですよ!」

「やるな!」

 

瞬時にラードラの後方へと移動する事でそれを回避、そのまま斬りかかるも、先程の攻撃も含めて事前情報にあった為に即座に反応、尻尾を振りかざして剣撃を弾いた。

 

(このままでは埒があきませんね、ならば!)

 

一連の攻防を経て戦場を地上から空中へと移した両者、その戦況は拮抗していた。

トゥルーブレイブによる剣型エネルギーと、ラードラによる火球の打ち合いがあったり、トゥルーブレイブが持ち前の瞬間移動を駆使しての近接戦闘に持ち込むもラードラがそれを凌いだり、互いが相手に有効なダメージを与えられないまま時間だけが過ぎていた。

その状況を良しとしなかったトゥルーブレイブは、此処で捨て身と言って良い策を仕掛けた。

 

「くっ其処です!」

「な、がぁっ!?」

 

ラードラが大き目な火球を放とうとした瞬間、真正面に転移し、直撃するのも厭わずに斬りかかったのだ。

まさかの行動に驚いたのはラードラ、故に対処が遅れ、斬撃をもろに受けてしまった。

だが今しがた直撃した火球も高エネルギーの物、食らってタダでは済まないとラードラは思ったが、

 

「き、効いていない、だと!?ぐぁっ!?」

 

振り向いた先のトゥルーブレイブは全くの無傷、まさかの事態にまたも驚いた隙に連続で斬撃を浴びてしまい、それが決定打となってその身が転移の為の光に包まれて行った。

 

「効いていない訳ではありません。ですがレガシーゲーマーには元々、自分が受けた傷を自動的に回復する能力を有していたのです。今までは破損による悪影響か機能しませんでしたが、修復を遂げた今は問題ありません!」

「態々種明かしとは律義だな、貴様は…

凄まじい力だ。それ程の力を生み出す兵藤一誠、何とも恐ろしき叡智よ…」

 

その去り際、何故無傷でいられたのかをトゥルーブレイブは明かした。

その訳に何処か納得した様子で、ラードラは消え去った。

 

『サイラオーグ・バアル選手の『戦車』、リタイア!』

 

------------

 

『第四試合を終え、バアルチームは残り4名!ぎりぎりまで追い込まれました!まずは一矢報いたい所です!第五試合を開始します!』

「シュートアウト!」

 

第四試合が終わり、未だ全員健在なリアス側と比べてサイラオーグ側は残り4人、崖っぷちに追い込まれたと言っても過言では無い状況の中、リュディガーの掛け声と共に振るわれたダイス。

その目は、

 

『リアス・グレモリー選手、サイラオーグ・バアル選手、共に出した目は6!合計は最大値、12です!』

 

共に最高値の6、このルールで最も多くの眷属を出せる数となった。

これによってリアス側は勿論だが、サイラオーグ側にも複数の選択肢が齎される事となった。

現在サイラオーグ側で残っている眷属は、兵士の駒7つを有したレグルスと、残る1人となった『僧侶』のミスティータと『女王』のクイーシャ、そして駒価値12扱いのサイラオーグ自身。

今の状況ならミスティータとクイーシャの2人を出すか、サイラオーグ自身が出るかの2択を選べるという事である。

尤も、王自身がリタイアした瞬間に敗北が決まる以上、リスクの大きい選択は普通しないだろうが…

 

「白音や祐斗、ロスヴァイセが新たな姿を見せちゃったし、サイラオーグが自ら出て来る可能性もあるし、此処で仕掛けましょう。ギャスパー、行けるかしら?」

「はい!任せて下さい、リアスお姉様!」

 

とはいえ相手はシーグヴァイラとのレーティング・ゲームの際に自ら前線に立つという『普通しない』選択をしたサイラオーグ、自ら出て来るかも知れないと予測し、リアスは大胆な手を打った。

今まで新たな力を得た眷属を温存していた(が、出した眷属が新たな力に目覚めまくった)リアスだったが、サイラオーグが自ら出て来ても良い様にワイルドカード(新たなガシャットを手にしたギャスパー)を投入すると決めた。

 

「残りの駒9は…

朱乃、お願いね」

「うふふ、お任せください、リアス。ギャスパー君と共に、必ずや勝利をお届けしますわ」

 

となれば残る駒価値は9、ギャスパーと共に出撃させるのは朱乃に決まった。

 

------------

 

巨大な石造りの塔が並ぶフィールド、其処には、

 

「まさか、貴方達が参戦するとは。特に彼が出て来るとは思いませんでした」

「ギャスパー・ヴラディ、君の神器は使用が禁じられている筈。それでも出て来るなんてね…」

 

金髪をポニーテールにした女性――『番外の悪魔』アバドン家出身の『女王』クイーシャと、ギャスパーと同様に一見すると美少女に見えなくもない小柄な少年――断絶されていたと思われた元72柱の一角サブノック家の末裔ミスティータ。

 

「今、その訳を教えましょう…!」

『ガッチャーン…!』

 

対峙する2人の疑問に答えるべく話始めるギャスパー、その手にはアタッチメントを装着した事でバグルドライバーⅡにしたガシャコンバグヴァイザーⅡと、

 

『仮面ライダークロニクル…!』

「変、身!」

 

一誠から託されたガシャットがあった。

バグルドライバーⅡを装着してガシャットを起動したギャスパーはそのまま、

 

『ガシャット、バグルアップ!』

 

ガシャットを装填し、バグルドライバーⅡのスイッチを押した…!

 

------------

 

「此処は一体…?」

 

嘗て一誠達が陽太郎達との模擬戦の為に転移したステージを彷彿とさせる闇深い空間。

自らの媒介となっているガシャットを用いて変身しようとしたギャスパーに力を齎そうとしたゲムデウスは突然、この空間へ転移した。

まさかの事態に驚きを隠せなかったゲムデウスだったが、焦る事無く状況を把握しようとしている様は流石にバグスターの『王』と言うべきか。

そんな彼の前に、

 

「初めましてと言うべきかな、ゲムデウス」

「我が半身…?

否、その底知れぬ気配、もしやうぬが我と我が半身を繋ぎ合わせた…?」

 

ギャスパーそっくりな存在が現れた。

一瞬ギャスパーかと思ったゲムデウスだったが、ギャスパーとは似て非なる気配を感じ取り彼がギャスパーの様でギャスパーではない存在と察知、同時に彼こそが自分とギャスパーを繋げた存在だと、ギャスパーが自分の半身になれた要因だと見抜いた。

 

「流石はバグスターの『王』って訳か。そういう事になるね」

「それで、我をかような場へと呼び寄せるは如何なる訳か?」

「簡単に言えば、挨拶かな。これからギャスパーと一緒に戦うんだ、折角だからね」

「左様か。では改めて、我が名はゲムデウス。バグスターの『王』である」

「僕は、そうだね、ギャスパー・バロールとでも呼んでよ」

「我が半身が宿した神器の源流を名乗るか、大胆な奴よ。だがこれ程うぬに相応しき名も無い」

 

そんなギャスパーに似た存在――バロールと自己紹介したゲムデウスは、

 

「ではバロールよ、参ろうぞ。我が半身も待っておる」

「そうだね、ゲムデウス。今こそ我ら」

「「1つに!」」

 

闇深い空間に差した一筋の光へと向かって行った…!

 

------------

 

『天を掴めライダー!刻めクロニクル!』

 

所変わってギャスパー達がいるバトルフィールド。

今しがた変身準備を終えたギャスパー、直後に上空へと浮かび上がる緑のパネル、その後変身音声が流れる中でバグルドライバーⅡを囲う様に、時計の如き配置で出現するローマ数字、

 

『今こそ時は、極まれりぃぃぃぃ!』

 

1から12まで全て出現した次の瞬間、浮かんでいた緑のパネルがギャスパーの身を押しつぶすかの様に通過、消えた後には、

 

「第1位眷属は絶版だァ…!」

 

仮面ライダーの『王』と呼ぶに相応しい姿となったクロノス――仮面ライダークロノス・クロニクルゲーマーの姿があった…!



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129話_君臨する王、そしてLastBattleへ

復ッッッッッッ活ッ!


『それでは、第五試合を開始します!』

 

ナウドの掛け声と共に始まった第五試合、其処でサイラオーグ側の2人は直前の打ち合わせ通り、クイーシャは前線へと向かう一方、ミスティータは後方で魔法攻撃を行いつつ何かしらの準備を進めていた。

方針はこうだ。

アバドン家特有の『穴』を扱うクイーシャがスナイプの圧倒的火力を逆手に取る構えを見せて牽制し、その間にミスティータが己の神器『異能の棺(トリック・バニッシュ)』によってクロノスの力を封印する事でクイーシャの『穴』を十全に活かすという物だ。

作戦も何もない単純な方針ではあるが、少なくともそれが此処で勝利を掴む唯一の道筋だとサイラオーグ側は考えていた。

 

『ポーズ…!』

 

その重々しく発せられた音声を耳にする迄は。

 

------------

 

「第43位は絶版だァ…!」

『キメワザ…!』

 

試合開始と共に何かしらの準備を進めていたミスティータの姿を見たギャスパーは、ならば其処を突いてやろうと言わんばかりに、胸部のコントローラ型機構――エクスコントローラーの4つあるボタンの内2つ、プ○イステーションで言うなら×ボタンと○ボタン、X○OXやNin○enoSwitchで言うならAボタンとBボタンに該当する部分を同時押しした。

すると重々しい音声と共に砲撃を行おうとしたスナイプも、それを『穴』で迎撃しようとしたクイーシャも、後方で何か仕掛けようとしたミスティータも、もっと言えば外で観戦していた面々も動きを止めた。

普通に考えたらギャスパーの神器である『停止世界の邪眼』を発動したからだと思われそうだが時が止まったと思しき者達はおろか周囲の景色も色を失っていない、そもそも先程ミスティータが言った通り使用は禁止されており、万が一にも発動しない様にアザゼルお手製の神器封印用眼鏡も装着している、では何故クロノス以外の者達が皆動きを止めたのか、それはクロニクルゲーマーとなったクロノスの新たなる能力、ポーズによる物だ。

アクションゲーム等における『一時停止(PAUSE)』の如く空間内の時間を己の意志で停止させるポーズ能力、正に仮面ライダークロニクルにおける仮面ライダー(プレイヤー)サイドの代表的存在であるクロノスに相応しい能力と言えよう。

尤も停止世界の邪眼と同等、いやそれ以上の反則級能力でもある、余談だがこの試合の後に運営委員会がその強さを危惧してクロニクルゲーマーへの変身を禁止したとか。

それはさておき、自分以外の時を止めたクロノスはミスティータへと歩みを進めながらバグルドライバーⅡのAボタンとBボタンを同時押しし、必殺技を発動する為の準備を進める。

 

『クリティカル・クルセイド…!』

 

そして、ミスティータの目前へと辿り着くと共にAボタンを押す、その直後足元に出現した時計を思わせるエフェクト。

 

「はぁっ!」

 

その秒針が1回転するのと重ねる様に、右上段回し蹴りを放つ!

 

『リスタート…!』

 

その直前、再びエクスコントローラーのボタンを、ポーズを実行した時と同じ組み合わせで押した…!

 

------------

 

『リスタート…!』

「え…?」

 

謎の音声と共に突如、遥か遠方に居た筈なのに目前へと現れたクロノス、まさかの事態に驚く余り呆けてしまったミスティータ、それは此処がレーティング・ゲームの場だと言う事を差し引いても余りに致命的な事態である、彼が呆けている間にもその顔面へとクロノスの回し蹴りが迫り、

 

『サイラオーグ・バアル選手の『僧侶』、リタイア!』

「む?どうやら捉え損なった様ですね…」

「み、ミスティータ!?」

「其処っ!」

「うっ!?」

『サイラオーグ・バアル選手の『女王』、リタイア!一体何が起こったのでしょうか!突如としてミスティータ選手の目前へと現れたギャスパー選手、その光景に危険を察知したサイラオーグ選手がミスティータ選手を強制リタイア!それに気を取られたクイーシャ選手に朱乃選手の砲撃が直撃!第五試合は、何とも信じがたい結末となりました!』

 

直撃する寸前、危険を察知したサイラオーグによって強制リタイアとなった事でいなくなった為に空振りしたが、その事態に動揺したクイーシャの隙を突いたスナイプの砲撃で彼女もリタイアとなった。

 

------------

 

『第五試合を終え、バアルチームは残り2名!兵士のレグルス選手と、王であるサイラオーグ・バアル選手自身のみ!此処までの試合で、グレモリーチームの面々が変身する仮面ライダーの、圧倒的な力の前に他の眷属は全て討ち取られました!これは万事休すか、或いは大王バアル家次期当主の座を勝ち取った様に、己が手で一矢報いるのか!第六試合を開始します!』

 

第五試合が終わり、サイラオーグ側は遂に兵士であるレグルスと王であるサイラオーグ自身のみを残すのみ、一方でリアス側は相変わらず全員が健在、それも事実上のノーダメージである、勝負はもうついたとこの会場にいる殆どの者がそう確信していたが、その『殆ど』に該当しない者、このレーティング・ゲームの当事者たるサイラオーグ当人は勿論、リアスとその眷属達もまた此処で油断してはならない、気を緩めたら其処に付け込まれて戦況をひっくり返されかねないと戦意を切らす事は無かった。

そんな戦意の現われか、此処で設置台にスタンバイしていたリアスが行動を起こした。

 

『おっと此処でリアス選手、設置台の下に手を伸ばした!其処から取り出したのはエクストラダイスだ!リアス選手、大きい目を出してサイラオーグ選手を引っ張り出し、勝負を決める積りだ!』

 

設置台の下部にある何かを保管していると思しき引き出し、それを開け、中に入っていた赤いダイスを取り出したのだ。

エクストラダイスとは、ダイス・フィギュアにおいて1回だけ使用出来るアイテムで、それを手に取った時の試合のみ、通常のダイスに加えて出目の合計に加算出来る。

これによってこの試合での出目の合計は最大18、通常ならば6-6の組み合わせ、出目が最大の時で無ければ出場させられないサイラオーグを引っ張り出せる確率がぐっと上がったという事である、この試合で決着を付けて見せると言いたげだ。

だがそれに触発されたか、サイラオーグも同様にエクストラダイスを取り出した。

 

『あっと、それを見たサイラオーグ選手も設置台の下に手を伸ばし、エクストラダイスを取り出した!これでこの試合で出せる眷属の駒価値は最大24、サイラオーグ選手とレグルス選手両名を出せる可能性が出来たという事です!然しそれは逆に、グレモリーチームも仮面ライダーを多数出せるという事でもあります!サイラオーグ選手、此処で総力戦を仕掛ける積もりか!』

 

ナウドの言う通りこれによって出目の合計は最大24、先程迄は出来なかったレグルスとサイラオーグの組み合わせでの出場の可能性が出来たのだ。

だがそれが出来る計19以上の出目が出る確率は約10%、それ以外はレグルスかサイラオーグ、どちらか1人しか出場出来ないという分の悪すぎるギャンブルだ、だが通常時は勿論、リアスがエクストラダイスを出しただけでも片方しか出られないのは確定的明らかだったので、此処は出すしか無かったと言える。

 

『それでは、運命のダイスロール!』

「シュートアウト!」

 

そんな両者の思惑はさておき、掛け声を放つリュディガーに促されてダイスを振るう2人。

そして、

 

「やってくれるわね、サイラオーグ。貴方にとって最適の目を引き寄せるなんて」

『リアス・グレモリー選手が出した目は4と4、計8!対するサイラオーグ・バアル選手が出した目は、

 

 

 

6と5、計11!よって合計は19!この瞬間、この試合でバアルチームはサイラオーグ選手とレグルス選手、残る2名全ての出場が決定しました!』

 

サイラオーグは約10%の可能性を、最適な形で掴み取って見せた。

2人が同時に出場出来、尚且つリアス側の出場数を最大限絞れる理想の出目となったのだ。

 

「皆。聞いての通りこの試合でサイラオーグと、未だ詳細の分からないあの兵士が登場するわ。その兵士がどれ程の力を有しているか全く分からない一方、サイラオーグが最上級悪魔と言って良い位の実力者なのは、皆も良く知っているわね。此処で出し惜しみをしたら一気にひっくり返されるわ、良いわね?」

『はい!』

「さて、さっきの試合でギャスパーと朱乃を出したから2人は出せないとして、今出せるのは…

駒価値1のイッセーとイリナ、駒価値3の祐斗とゼノヴィア、アーシアと黒歌、駒価値5の白音とロスヴァイセ、そして駒価値12の私ね、よし!イッセー、イリナ、白音。

 

 

 

一緒に行くわよ!」

「「「え?」」」

「「「「「「「え?」」」」」」」



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130話_敵にSaltを送る

「兵藤一誠、戦いの前に1つ頼みがある。

 

俺の兵士、レグルスをリプログラミングしてくれないか?」

「「「「『ゑ?』」」」」

「さ、サイラオーグ様!?」

 

この戦いがどう転がろうとレーティング・ゲームの勝敗が決まる事実上の最終試合、其処へと転移して来たリアス達の姿、というより一誠の姿を確認したサイラオーグは開口一番、まさかの依頼をして来た。

リプログラミングをしろって一体?つまりレグルスは神器らしき物を保有しているって事?なら駒価値が7のも納得だけど、だとしたら何でそんな半ばデメリットしかない依頼をして来た?もしかしてリスクの高い神器なのか?いやそうであっても何で態々崖っぷちなこのタイミングに?様々な疑問が浮かぶ余りリアス達は唖然とするしか無かった。

 

「唐突で済まない。この頼みをしたのには、レグルスの出自が関わっているんだ」

 

サイラオーグも、無理も無いかと思い、事情を説明し始めるが、その際、レグルスに装着している仮面を外させた。

すると、

 

「ば、バキボキボーン!?ガキゴキボーン!?」

「メラメラバーン!?」

「いや2人共、つい先日完結した仮面ライダーじゃないんだから…」

 

一誠達とそう変わらない少年の容貌が露わになった瞬間、身体中から怪音を響かせながらその体躯を肥大化・変形させ、やがてその身が体長5~6m位の栗毛のライオンと化した。

まさかの事態に、イリナと白音が某小説家にして剣士が変身する仮面ライダーが、禁書を基とした力による強化形態へ変身する際の変身音を思わず口走り、リアスからツッコまれていた。

 

「『獅子王の戦斧(レグルス・ネメア)』。ギリシャ神話にて、ヘラクレスの十二の試練の相手として登場するネメアの獅子、その一匹を聖書の神が封印して出来た神器、それも兵藤一誠が手にした『赤龍帝の籠手』や、紫藤イリナが手にした『黄昏の聖槍』と同じく神滅具に位置する物だ」

 

そんなリアス達を他所に説明を続けるサイラオーグ、其処でレグルスが神滅具の一角を占める存在であると明らかになり、外野が騒然となる。

だが本当に驚くべきは此処からだった。

 

「と言っても俺が正式な所有者と言う訳では無い、俺自身は純血悪魔だから先天的には神器を宿せない身だ。俺がコイツの本来の所有者を見つけた時は、既に怪しげな連中に殺された後で、神器である斧だけが無事だった。然し所有者が死ねば神器はいずれ消滅する、その斧もまたそうなるであろうと思っていたんだが…

あろう事か意志を持ったかの様に獅子に化け、所有者を殺した集団を全滅させたのだ。俺が眷属にしたのはその時だ。獅子を司る母のウァプラ家の血筋が呼んだ縁だと思ってな」

 

それは神器の仕組みを知れば知る程、その異常性が分かる信じられない事だった。

何と所有者が死亡したにも拘らず神器は顕現したまま、己が意志で獅子に変貌して仇敵を皆殺しにした末、サイラオーグの眷属悪魔として新たなる生を得たと言うのだ。

神器のシステムから思いっきり逸脱している事実に、観客席の方からのざわめきが増した。

 

「然し所有者がいない状態のままな上、聖書の神が構築した神器のシステム内にいながら、魔王ベルゼブブ様が構築した転生悪魔のシステムにも強引な形で組み込んだ所為で、力がとても不安定でな。敵味方見境無しの暴走状態になって、勝負どころでは無くなるから単体で出せるものではなかった。出せるとすれば今回みたいに、俺と組める時だけだ。いざ暴走した時に止められるのは俺だけだからな」

 

当然、そんな神器のシステム上におけるバグだらけな挙げ句、その開発者たる聖書の神とは敵対関係な魔王アジュカ・ベルゼブブが開発した転生悪魔のシステムに組み込んだ事による影響は甚大だ、実際、レグルスの実戦投入は慎重に慎重を重ねる様バアル家関係者から釘を刺されていたそうな。

 

「無論、コイツの力を借りて禁手に至る事も出来るが、素の状態で暴走するのに禁手でも使ったらどうなるかは自明の理という物、故に俺は冥界の危機に関してのみ使うと決め、レーティング・ゲームではこの身体のみで戦うとしていた、2ヶ月近く前に行ったゼファードル・グラシャラボラスとのレーティング・ゲームで惨敗してからも、焦りにかられて誓いを破ってはそれこそ駄目だと自制した。

 

だがある日、耳にしたのだ。リアスの眷属である兵藤一誠と紫藤イリナ、塔城黒歌が修学旅行先である京都の地にて、禍の団・英雄派の幹部から神滅具を奪取した事を、その際に行使した力『リプログラミング』の存在を。そして思い至ったのだ、レグルスにリプログラミングを行えば、俺は『獅子王の戦斧』の正式な所有者になれるのではないか、レグルスの力を何の懸念も無く発揮出来るのではないか、と。尤も今俺達とリアス達は若手同士のレーティング・ゲームにおける対戦相手、事前の接触は躊躇われる身だから今この時までそれを口にする事は出来なかったが」

 

ゼファードルとのレーティング・ゲームはレグルスどころか自分自身も前線に出られず敗北していたのだがそれはさておき、自分自身と己の眷属が全力を発揮出来ないままその評価は地に落ち次期当主の座が揺らいでいたその頃、状況を一変出来るであろう情報を耳にした。

京都の地を襲撃した禍の団・英雄派が返り討ちに逢った挙げ句、幹部メンバーが所有していた3つの神滅具が一誠のリプログラミングによって奪取されたという情報だ。

神器はあくまで人間しか『先天的に』宿せないだけで、今回の話みたいに天使や堕天使、悪魔等の人外種族が神器所有者から神器を奪取して後天的に宿す事は出来る、其処でレグルスをリプログラミングして後天的に神器所有者になれば、そしてレグルスを所有者がある状態にすれば暴走の危険なく扱えるのではないかとサイラオーグは考えた。

だがサイラオーグは口にしていないが、リプログラミングによって初期化された神器はその後、己の所有者に相応しいとした存在へと飛んでいく、要はレグルスがサイラオーグ以外の存在を所有者に選んだ結果、己に次ぐ戦力を失うという可能性もあるのだ。

シークヴァイラとのレーティング・ゲームにおけるワンマンプレイこそあったが所謂脳筋では無く王として充分以上な知性を備えているサイラオーグが、その事実に気づいていない筈が無い、恐らくはそれを理解して尚、レグルスなら間違いなく自分を選ぶと信じて疑っていないといった所か。

まあその前にレーティング・ゲームにおける対戦相手の眷属である一誠がその依頼を受け入れるかどうかが問題なのだが…

 

「リアス、どうする?」

「イッセー、王として命ずるわ。

 

やっちゃいなさい!」

 

だがその前提となる問題は杞憂だった。

その事を察した一誠がリアスに判断を仰いだ所、彼女は満面の笑みで快諾したのだ。

 

「此処で拒否し、本領を発揮出来ないサイラオーグ相手に圧勝するのは簡単よ。だけどそれじゃあ何の意味も無いわ。皆も知っているでしょう、お兄様と同じく魔王になるという、私の夢を。その為にはこういう場でこれまで以上の力を見せつけなきゃならない。そう、真の本気で無いにもかかわらず既に最上級悪魔と同等の実力を得たサイラオーグの、本当の意味での全力を乗り越える位じゃないと!」

 

明らかにリアス側にとってデメリットにしかならなさそうなこの依頼、だがあっさりと受け入れたリアスの様子に驚きを隠せない観客席、だが一誠達はその真意を理解していた。

リアスの夢である魔王の座、それを勝ち取る為には依怙贔屓による物と言わせない程の実力を見せつけなければならない、そのハードルは他の誰よりも高い。

だが己の身だけでも最上級悪魔クラスなサイラオーグの、本当の意味で最強の力であるレグルスとの『禁手』に打ち勝てばその座はぐっと近づく、そのチャンスを逃してはならんと快諾したのだ。

ぶっちゃけてしまえばリアスの夢に向けての『踏み台』にしてしまおうという訳だ、尤もその『踏み台』は魔王の座への距離を一気に縮める程の高さだと認めてもいるが。

 

「分かった。なら!」

『ガシャット!キメワザ!』

 

真意が何であれ主であり恋人でもあるリアスが快諾するなら断る理由も無いと、一誠は手にしたガシャコンキースラッシャーにマキシマムマイティXガシャットを装填、その切っ先、というよりガンモードなので銃口をレグルスに向け、

 

「迷える魂に導きの光を!」

『マキシマムマイティ・クリティカル・フィニッシュ!』

「はぁっ!」

「ぐぅっ!?」

 

周囲を巻き込まない様にとの配慮からか限りなく集束させましたと言いたげな細めの、然しながら膨大なエネルギーを有するビームが発射、寸分の狂い無くそれは獅子の巨躯に直撃した。

 

「さ、サイラオーグ様!?ひ、引き寄せられる!?」

「レグルス!?」

 

すると次の瞬間、レグルスの身がまるで磁石に引き寄せられる砂鉄の如く、サイラオーグに向けて吹っ飛んで行ったのだ。

まさかそんな形になるとは思わなかったのか思わずたじろいだサイラオーグだが、その間にも2人、いや1人と1匹の距離は瞬く間に縮まり、そして、

 

「レグルス。お前は今、此処にいるのか?」

『はい!我が身は今、貴方の御側に!共に参りましょう、サイラオーグ様!』

 

衝突すると思われた次の瞬間、レグルスの巨躯は霧が晴れるかの如く消えて行った。

いや、消えたと言うよりサイラオーグの身に吸い込まれて行ったと言うべきか、事実、サイラオーグは己が身の中にレグルスの存在を感じ取り、呼び掛けると案の定、彼の声が内の方から聞こえて来た。

そう、分かり切った事ではあるが一誠のリプログラミングによってレグルス、いや『獅子王の戦斧』は正式にサイラオーグを所有者とした神器となったのだ。

それだけじゃない。

 

「これはレグルスの転生の為に使った兵士の駒…

成る程、正式に俺の神器となると同時に転生悪魔の枠から外れ、駒が排出された訳か。ならば何の問題なく力を発揮出来る。行くぞ、レグルス!我が獅子よ!ネメアの王よ!獅子王と呼ばれた汝よ!我が猛りに応じて、衣と化せ!『禁手化』!」

 

ふと足元へと目を向けたサイラオーグが見つけたのは、レグルスを悪魔に転生させる為に用いたのと同じ7つの兵士の駒、これが意味するのはレグルスがサイラオーグの眷属ではなくなったと言う事、転生悪魔では無くなったと言う事、神器でありながら転生悪魔でもあるという異常を解消し、元の神器としてのあるべき状態に戻ったという事だ。

 

「『獅子王の剛皮(レグルス・レイ・レザー・レックス)』、これが獅子王の戦斧の禁手だ!この力で試合、いや、死合と行こうでは無いか、リアス!紫藤イリナ!塔城白音!兵藤一誠!」

 

それを理解したサイラオーグは一切の躊躇なく禁手に至る為の呪文を詠唱、その身はやがて金色の獅子を思わせるデザインの全身鎧に包まれた。

 

「ええ、サイラオーグ!行くわよ、私の可愛い眷属達!」

「「「はい!」」」

『マイティアクションエックス!』

『デンジャラスゾンビ!』

『マキシマムマイティエックス!』

『HURRICANE RISING!』

『『デュアル・』』

『マキシマム・』

『『『『ガシャット!』』』』

「「マックス大!」」

「グレードX-0!」

「チャプターX!」

「「「「変身!」」」」

『『『『ガッチャーン!』』』』

『レベルアップ!マイティジャンプ!マイティキック!マイティアクショォォォォン!エックス!アガッチャ!デンジャー!デンジャー!デスザクライシス!デンジャラスゾンビ!』

『デュアルアップ!レッツスニーキング!ハリケーンライジング!』

『マザルアップ!赤い拳強さ!青いパズル連鎖!赤と青の交差!パーフェクトノックアウト!』

『レベルマックス!最大級のパワフルボディ!ダリラガン!ダゴスバン!マキシマムパワー!エェェェェックス!』

 

その全力の姿を、その身から発せられる圧倒的な威圧を感じ取ったリアス達は、此処で油断したら一気にひっくり返されると気を引き締め、其々が今なれる最強の形態へと変身した。

 

「「ノーコンティニューで、貴方に勝つ!」」

「心の滾りのままに、殴り勝ちます!」

「さあ、振り切っちゃうよ!」



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