『一生に一度のお願い』 (食券乱用)
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小学校編
1、一生に一度の出会い


シリーズ物を少しずつ投稿していきます。悩みましたが、結局折本かおりを選ばせて頂きました。
小説を書いていて気付いたのですが、私は情景描写が物凄く下手なようです。想像力が無いのでしょうね。

【追記】11/7加筆修正しました。



目の前にはプラハ城すら霞むくらい立派な城が出来ていた。今日一日この砂場に居座り作り上げた城。小学校に入りたての妹に是非見せてやりたい。さぞ驚くだろう。

 外観は何と無く姫路城に似ている気もするが、そんなことを指摘するのは野暮ってもんだ。

 

「我ながら見事だ」

 達成感に浸っていると、作業中は気付かなかったが同じ砂場で女の子が遊んでいた。住宅街の外れの方にある小さな公園の小さな砂場なのに、気付かないものなんだろうか。

 目を女の子の方に向けてみると、その子は俺の作った立派な城を眺めていた。足元には自分で持ってきたのだろうバケツやスコップが置いてある。あ、これ同じやつじゃん。こいつもダ○ソーで買ったんだな。いいよなダイ○ー。大体のものはそこで揃っちゃうし。けどドン○ホーテもいいよなー。安いし便利、激安ジャングルなんて公式の歌に入れるのも納得だ。そういえば店の名前とセルバンテスの作品名の間に何か繋がりはあるのか?元ネタとか?

 そんなことに思考を巡らせて女の子の方を見つめていると、俺の視線に気付いたのか女の子はハッと視線を足元のスコップやバケツに落とし、それを使って何かを作り始めた。大方、姫路城を再現するつもりなのだろう。しかし、建てる上で一番大事な水の存在を忘れている。それが手元にない時点で城など諦めるんだ。

 

 バケツに砂を詰めてはひっくり返しを繰り返し、土台を作ろうとしているが上手くいっていない。だから水が必要なんだって。

 この小さな公園には幸い水道が通っている。そこから水を汲んでこればいいのだ。そのことについて教えてやったほうがいいのだろうか。しかし、もしかしたら女の子は水が必要と知った上で砂のみで城を建てるという難題に挑戦しているのかもしれない。そうならば気遣いなど無用で、むしろ恥をかいてしまう。ええいどうしよう。話しかけるべきかそっとしておくべきか。実に難しい。

「むぅ〜〜〜!…バンッ!」

 度重なる失敗に嫌気がさしたのか、ついに女の子はバケツを砂場に叩きつけた。どうやら前者で正解だったようだ。

 自分のバケツを持って水道の通っている所まで水を汲みに行く。水で重くなったバケツを持って砂場の方に行くと、女の子はまだ不貞腐れた顔で目の前にある砂の山を見つめていた。ほっぺを河豚のようにぷくっと膨らませたその怒った顔は不覚にも可愛いと思ってしまった。

「これ使うといいよ」

 水で一杯になったバケツを差し出しながら女の子に声をかけると、その子はキョトンとこちらを見つめた後、バケツの方に目を向けた。そのキョトンとした顔もすごく可愛かった。

「…水?」

 

「砂と水を混ぜると砂が硬くなって壊れにくくなる」

 

「そうなの?やってみる!」

 女の子は水の入ったバケツを受け取ると、そこにスコップですくった砂を入れていく。えぇ…この子もしかしてアホの子…?

 

「いやいやいや、砂をバケツに入れた後に少し水を混ぜるんだって」

 

「えっ?そうなんだ…えっと…」

 イマイチ理解できていなかったので、女の子が使っていなさそうだった空のバケツを取り、そこに砂を入れていく。砂がある程度入ったら水を注ぎ、砂を全体的に湿らせ、固くしていく。

 

「……」

 女の子はまるで工場見学で複雑な商品の生産ラインを見ているかのようにこちらを興味深く眺めていた。そんな顔も素敵だった。女の子からの視線を感じて少し顔をそらす。

 

「…こんな感じ」

 男の照れた顔なんざ需要がない。先ほどできた硬くなった砂を女の子の前に置き、後ろを向いて赤くなった顔を手元の水で濡らした。

 女の子はバケツを先ほど自分が何度もしていたように逆さに置き、慎重に、慎重にバケツを引き抜いていく。

 

「わぁ!できた!」

 女の子の前には少し形が崩れてはいるが、台形の山ができていた。俺の2段台形、即ち姫路城には遠く及ばないが、それでも達成感溢れる作品であった。

 

「ねぇ!できた!できたよっ!やったぁ!」

 女の子はすごく嬉しそうだ。やっと成功したのだ、そりゃ嬉しいだろう。

 

「おめでと」

 

「ありがと!!」

 女の子は自分が作り上げた台形をずっと眺めている。まあ、バケツに混ぜ合わせたの私なんですけどね…。

 けど、謎の達成感に浸っている女の子の笑顔はやっぱり可愛かった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…!帰るわよー!」

 公園の入り口の方から砂場の方に呼びかける女性の声が聞こえた。俺に声をかけてくるような相手はいないので、おそらくこの子のお母さんかなんかだろう。

「はーい!」

 元気な返事だな。その元気を幾分か分けていただきたいものだ。

 女の子は自分が持ち込んだスコップやバケツなどをかき集め、小走りでお母さんの元へ向かって行った。しかし俺は見過ごせなかった。あの女は走って通り過ぎる際、砂場の中央に堂々と建っていた姫路城を踏み潰して行ったのだ。これは流石の俺でも怒ってしまう。

 女の子に文句を言うために砂場を出ようと今日持ってきていた道具をかき集めていると、夕暮れの公園の砂場の中に微かに輝くものを見つけた。

 思わず手に取って見ると、それは腕にはめる貴金属…ブレスレットと言う類のものであった。お母さんがつけてるのを見かけた気がする。それにしてもこのブレスレットどこかで見覚えがある。お父さんがこの前家でやってたゲームの…アレ…えっと…。

 

「『ほしふるうでわ』みたいだ」

 

 驚くくらいにていた。今ここでつけたら足早くなんねぇかな?そしたら今度の運動会で大活躍できるじゃん。あ、けど目立っちゃうからパス。

 

 ブレスレットを両手で大事に掴んで見ると、それは砂で汚れながらも新品のようであり、目立った傷も見当たらなかった。大事にされているみたいだ。

 きっと先ほどの不届き者の落し物なのであろう。文句を言うついでに届けてやるとする。

 自分の荷物と、拾ったブレスレットを持って足早に公園の出口へと向かった。

 

 幸いにも公園から住宅街への道は一本道であり、2人もそこまで進んでいなかったためすぐ目についた。

 やはり、あの女の人はこの子のお母さんだったようだ。お母さんは電話に出ているのか、携帯電話を耳に当てて女の子から少し離れて立ち止まっている。

 何か問題があるわけではないが、変に心配させるわけにもいかない。ささっと腕輪を渡して帰ることにしよう。もちろん文句も。

 

「なあ」

「…」

 

 女の子は道端に咲いていた花に興味津々で、こちらに気付く気配はない。少し離れた所にいるお母さんに聞こえないようにもう少し声の大きさをあげる。

 

「おーい」

 

 すると女の子がこちらに気付き、驚いた様子で俺のことを見た。さっきまで砂場で一緒にいたことを覚えているだろうか…流石に覚えているか。気付いて貰えたことに安堵しつつ、砂場の中で見つけたブレスレットを女の子の前に差し出す。あれ?これデジャブ感すごいな。さっきは水入りバケツだったけど。

 

「忘れ物」

 そう行って腕輪を女の子に差し出す。それにしても本当にほしふるうでわにしか見えないな。

 女の子はキョトンとした顔で腕輪を差し出す俺を見ていた。あれ、これもデジャブ感すごいな…。女の子は差し出されたモノの存在に気づき、自分の左腕を確認する。

 

「…あっ!パパから貰ったプレゼント!」

 女の子が差し出された忘れ物が自分のものであることに気付き、受け取ってくれる。良かった、この子のものであってたみたいだ。

 

「ありがとう!これパパから誕生日に貰った大切な宝物なんだ」

 そんな大事なものを砂場に忘れるんじゃありません!全く…次からは気をつけていただきたい。

 

「渡せてよかった」

 

「うん!本当にありがとっ!」

 そう言う女の子の笑顔は今日一番に、先程女の子が見ていた向日葵のように明るかった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 女の子の笑顔を眺めていると、視界の端に電話を終えてこちらに近づいてくる女性が見えた。こちらには気づいているが、話しかけられるのは不味い。目的も果たしたし、撤収だ。

 

「それじゃあ」

 と言って顔の前に手を出し、女の子にお別れの音葉をかけながら公園の方向へと走りだす。

 

「あっ!またね!」

 女の子の元気そうな声が後ろから聞こえてくる。あの女の子のことだ。漫画ならブンブンと効果音がかかれるくらいに大きく手を振っているのだろう。

 

 

 ちらりと後ろを見るとこちらの方向を指差しながら嬉しそうに女性と会話する女の子が見えた。

 

 

 今日は良い1日だった。

 




最近は小学生すらスマホ持っているんですね。高校生からガラケーを持ち始めた筆者には驚きでした。
反面、インターネットを利用する上での注意喚起などは勧めてほしいです。現場からは以上です。


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2、一生に一度の助け

中学編から本格的に書きたいと思っていたので、小学生時代は回想程度にして大分簡略化しています。
毎日少しづつ書いているので今後も更新は遅くはなりますが、気長に待ってる頂けたらなと思います。
作品に対する指摘や感想、批判など受け付けていますので、コメントを少しでも残して行って貰えたら嬉しいです。



回想

 

「ギャハハ!ダッセー!」

「キモー!」

「こっちくんなよー!」

 

どうしてこうなったのだろう。

 

「おーいヒキガエル!」

「ヒキガヤ菌だ!」

 

何を間違えてしまったのだろう。

 

「おい、今あいつこっち見たぞ!」

 

何が悪かったのだろう。

いや、原因はわかっている。自分が悪いんだ。

 

女の子が皆にハブられているのを偶然見てしまった。

元気で明るい子だったのに、やけに大人しくなったと思っていた。

理由はわからないが、小学生の中でのいじめなんて所詮皆と少し違うというだけで始まってしまう。もちろん、何が違っていたなんてこと自分にはわからないのだが。

そして、この女の子は不幸にも目をつけられたのだ。

干渉する義理はないはずだった。

 

 

 

 

 

帰宅後に上履きを忘れたことに気づき、学校へと取りに帰る。

置いていてもよかったのだが、最近汚れが目立ってきたので洗っておきたかったのだ。

学校への道を憂鬱な気持ちで進み、正門を抜け、教室の方へと昇降口を通る。

自分が普段使っている教室のある2Fに上がり、階段を上がってすぐにある教室に入ろうとした時、席に座ってる不幸な女の子が見えた。

自分の席は教室の入り口付近なので見て見ぬ振りをすれば良いだけだ。さっさと上履きを回収して帰ろう。

 

「なんで…泣いているんだ」

 

気付けば、女の子に話しかけていた。 

彼女の顔に、窓から差し込む夕焼けの光で頰を伝わる雫が見えた。

 

「!…比企谷くん…だっけ」

 

「寂しいか?」

 

「…うん、凄く寂しい」

 

「皆と一緒に遊びたいよな」

 

「…うん、いっぱい遊びたい」

 

「皆とまた一緒にいれる考えがある。やるか?」

 

「!…うん!」

 

「なら明日は7時40分ごろに学校へ来てくれ」

 

「うん、わかった!ありがとう!」

女の子は先ほどとは打って変わって満面の笑みを見せる。

やはり、男は女の子の涙に弱いみたいだ。

 

 

 

 

 

 

「どうするんだよ!!」

朝の教室に男の怒号が響く。

男の前にいる女子生徒は涙目になりながら男の方を見上げていた。

 

朝の早い時刻だったので登校している児童は疎らだったが、それでも真面目に朝から学校に登校していた一定数の児童が2人に注目していた。

「おい!」

男の太い声。

 

「…ご、ごめん…」

少女の細い声。

 

「これが謝って済むもんか!」

 

そう言って男が指を差す方向には割れて破片の飛び散った花瓶と、汚い地べたとは対照的に綺麗に床の上で咲くなもなき花。

児童たちには優しいクラス担任の先生がすごく大事にしていた花瓶と花だとすぐにわかる。

 

そう、女の子は先生の大事なモノを壊したのだ。

 

 

割れた花瓶を持って教室を出て行く。

先生には何て言って謝ろうか、弁償なんて言われたらどうしよう。

小町に被害は出ないかな、女の子転ばせちゃったけど怪我してないかな。

 

 

 

「さいかちゃん大丈夫?」

「怪我とかしてない?」

「今のヒキガヤだっけ?ほんと最低!」

「ね!さいかちゃんかわいそう…」

 

遠くから声が聞こえてくる。

 

 

 

 

 

いいか?よく聞け。お前はこの花瓶に水を入れてきて、俺のところまで持ってくるだけでいい。

あとはみんながお前に近づいてくるだろうから、それで終わりだ。

え?そんなことで皆が来てくれるわけない?心配するな。そこは俺に任せろ。

ほら、皆も来始めた。早く水を入れてこい。

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、一瞬で人が集まっただろ?」




全く脈絡もなく申し訳ないのですが、TUEEE八幡や高スペック八幡などにはならない予定なので、期待された方がいればここでお詫びしておきたいと思います。
次作はすでに書いてるので、近いうちに投稿できると思います。


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3、一生に一度の遠足

次は早く投稿できると言ったな。あれは嘘だ。
ウソダドンドコドーン

なんてしてる場合じゃなかった…。遅れて申し訳ありません。感想お待ちしてます。


「ふあぁ〜」

 思わず欠伸が出てしまう。

 気付けば、女の子に落し物を届けたあの日より既に2年が経過していた。

 以来、砂場のあるあの公園には近づいていない。

 そもそも同じ小学校の生徒に一人で遊んでいるところを見られたくなくて、少し離れた公園に来ていたので何ら問題はないのだ。

 

 よくあるラブコメ作品や青春モノにおけるお約束の〝再会〟なんてことは微塵もなく、平和な生活を送っていた。しかし…

「暑い」

 その一言に尽きる。本当に暑いのだ。

 小学6年生の夏、自分の通う小学校は遠足という名目で近所にある大きな公園に来ていた。大きさを東京ドーム基準で表したいところだが、東京ドームの大きさなんて行ったこともないのし知っているわけがない。何平方センチメートルだとか言われても全然想像がつかない。算数なんざ糞食らえ。だいたい面積とか図形とか覚えて人生にどう役立つんだよ!計算はできないと困りそうなのはわかる。分数とか少数はまだ大丈夫だ。けど図形ってなんだよ!絶対に使わないぞ!しかも中学に入ったら図形がすごい複雑になって、面倒臭くなるらしい!やっぱ算数なんて要らない!

 話が逸れた。暑さに頭がやられたのかもしれない…。

 そうそう、この遠足は毎年近隣の小学校と合同で行っている。なんでも、このあたりには中学校が一つしかなく必然的にほとんどの児童がそこへ行くから、前もって面識を作るためにこのような合同イベントを開いているらしい。友達100人出来る子からしたら良いイベントなんだろうけど、別に友達を作る気のない児童…俺みたいなやつからすれば無駄なイベントだ。変に輪に入って乱すよりかはこうして離れて過ごしている方が気楽だ。

 まあ、これは俺が受けるべき報いなんだ。別に寂しくなんて無い。ホントだよ?ハチマン、ウソツカナイ。

 

 各校の児童がカバンやレジャーシートを敷いて集まる場所は日陰が少なく太陽からの攻撃に耐えることはできそうに無かったので、密集地帯がギリギリ見えるくらい離れたところにあった木の陰へと逃げ込む事にした。

 いくら日陰といえども身体中を覆うこの暑さから逃れることは叶わないが、直射日光を浴びない分マシではあるだろう。心地よい風でも吹かないだろうか。 

 

「あっつーい!!暑いよ!!」

 逃げた先の木の根元に腰を下ろし、マシにはなった熱気と仲良くしていると女の子の声が聞こえた。

 割と離れている場所に来たはずなのに、人がいたとはびっくりだ。ここは割と集団から離れてるし、避暑地を求めてくるにしても木は向こうにも沢山ある。まさか…俺のストーカー!?いや、わかるぞ!最近少し目つきが悪くなったと妹に言われたことと、目が生け簀に入れられた魚みたいに濁って来たことを除けばイケメンだもんな!いやーストーカーなんていてもおかしくない!サインでもしてやるか!この前小町が読んでた目が顔の半分をも占めてた漫画…名前忘れたけど、それに出てた王子様系男子みたいなこと囁けば良いんだろう!?

 根拠もなく自信満々な顔で横に座っていた女の子を見てみるが、見覚えは無い。他校の可能性が高いが、同じ小学校に通う女子児童でさえ全く知らないので実は同じクラスにいるのかもしれないが。

 

 それにしても暑い。こんなにも暑いという単語を繰り返し言っているのだ。それほどまでに暑いということを理解していただきたい。不謹慎ではあるけど、熱中症で誰かが倒れて来年よりこの行事自体廃止にならないだろうか?…けど来年以降居ないんだった。これからもこの大切な行事続けるんだぞ!!仲良しごっこ大事!!

 女の子のことや世界平和について考えていると、ふと喉が渇いた。これはいけない。こんな暑さの中水分を摂取しないなんて自殺行為も同然だ。すぐさまカバンの中からアクアリアスの入った水筒を取り出し、喉を潤す。あぁ…生き返る…。

 

 喉の問題が解決して、ストーカーのことを思い出し、横の女の子を見ると、女の子は水筒付属のコップに飲み物を注ごうとしていた。しかし、待てども待てども水筒の中から出てくるはずの液体はなく、ただ無の空間が生じていた。女の子は持参した水筒を何度も振って、中から目当てのものが出てくるのを待っているが現実は厳しく、何も出てこなかった。こんな時魔法の力や便利な道具があれば…。助けてよド○えもーん!!

 

「むぅ…」

 女の子はふくれっ面で水筒を睨んでいた。あれ、この顔どこかで見たことある気がする。この可愛い怒った顔、どこで見たんだっけ…。

 まあそのことは置いといて、この暑さの中水分もなしに過ごすのは非常に危ないな。赤の他人とはいえ、放置した結果熱中症などで倒れられでもしたら寝覚めが悪い。情けは人の為ならず。いいことが帰ってくると信じて、女の子を助けよう。

 

「これ…飲んで」

 アクアリアスを水筒付属のコップに移してあげ、未だ不貞腐れた顔をしている女の子に差し出す。

 

「…」

 すると、女の子はキョトンとした顔で見つめて来た。あれ、これもデジャ(ry

 隣に座って来た、もしくはいた奴から突然コップを差し出されているんだからな。そりゃこんな顔するわ。

 

「…いいの?」

 女の子は意図に気づいたのか、受け取ることを躊躇しているっぽい。まあここで確認を一応とる辺り、いい子なんだなぁと思う。

 女の子はコップを受け取ると、一気に中身を飲み干した。よほど喉が渇いていたのだろう。

 

「はー!生き返るー!」

 仕事終わりにビールを飲むサラリーマンかお前は。

 

「ありがとっ!水筒の中お昼ご飯の時に全部飲んじゃったみたいで…えへへ」

 

 照れ臭そうに笑った。

 まあ暑かったから仕方ないけど、昼ご飯の時に全部飲んじゃうのはバカだなぁ…」

 

「あー!今バカって言ったな!バカっていう方がバカなんだよ!パパもそう言ってたもん!」

 

「今自分で言ったじゃん」

 

「えっ、あっ、そ、それは数えないもん!」

 

「やっぱバカじゃん」

 

「だから違うもん!」

 

「バカって言う方がバカなんだっけ?」

 

「そっ、そうだけど違うくて…。あぁ!もう!」

 忙しい表情の変化に思わず笑ってしまう。…そういえば笑うのは久しぶりだな。いつぶりだろう。

 

「「…ふふっ」」

 2人のくすりと笑う声がハモった。

 

「ねぇ!名前教えてよ!」

 

「名前を聞くときは先に自分が名乗るって習わなかったか?」

 

「あっ!ごめんね…。私はかおり、折本かおりだよ!」

 

「八幡、比企谷八幡だ」

 

「はちまんね!よろしく!私のことはかおりって呼んでね!」

 

 彼女…かおりは笑顔の似合う女の子だった。

 

「ところでさ!なんでこんなところに…」

 この子は人と話すのが好きなのかな。

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 互いのことや家族のこと、好きなものや小学校での出来事などの話は積もり、気づけば長い間話をしていた。時間のほとんどは女の子…かおりが話していたのだが、時たま俺にも話題をふって来た。自分自身のことについては面白さも無いし、基本話したく無いのだが、この子と話していると自然と出て来た。かおりは聞き上手なんだろうな。

 夕暮れ時の公園で児童が徐々に集まり始めているのが見えた。そろそろ解散の時間なのだろう。時が経つのが早いと実感するのはこういう時なのだろうか。

 カラスが鳴くから帰りましょ。

 

「あっ!もう帰る時間だね!」

 

「そうだな」

 

「お別れ…だね」

 先ほどまであんなに楽しそうに喋っていたのに、急に顔が暗くなった。

 

「…また会えるさ」

 その悲しい顔が見てられなくて、根拠もないことを言う。けど、本当になんだかまた会えそうなのだ。

 

「…うん!また会おうね!」

 

「おう!」

 

 

 返事をすると、かおりは先に走ってみんなの集まる方へと向かって行った。

 

 今日は、久々に笑えた気がした。

 




次からは中学編の予定です!皆さんの知ってる俺ガイルじゃないかもしれませんが、見守っていただけたらなと思います。
原作でも割とターニングポイント扱いされている中学編ですが、ほとんど創作で書き上げるのは楽しみです。


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中学校編
4、一生に一度の再開


かなり遅れてしまったことをお詫びします。添削や手直しする時間をポケモンの発売やらどうぶつの森アプリ版リリースで取られてしまいました。私は悪くない!全部ゲームが悪いのだ!
というより村人を落とし穴にハメることは出来ないのですか…?
評価や感想など励みになるので、是非お願いします!


回想

 

ウェストミンスターの鐘が鳴る。

 

「じゃあ今日の授業はここまで。教科書の17ページから20ページを次の授業で扱うから予習しておくように。では日直の方お願いします。」

 

宿題は今読んでいる『少年の日の思い出』をもう一度読んでくること。〝そうかそうか、つまり君はそういう奴だったんだな〟というセリフで有名なあの作品だ。もちろんうちの中学校でもそのセリフはものすごく流行っている。年代など関係なく、この年頃にはものすごく印象的なのだろうか。まあ、会話の途中で無理やりそのセリフに繋げるのはやめていただきたいのだが。

「起立、礼」

 

「「「ありがとうございました」」」

 

「着席」

まだ中学校が始まって一月ほどだが、もう授業は本格的に始まっている。全く、少しは休みをくれてもいいじゃないか。

 

「○○ちゃーん!ご飯食べよ!」

「よし!外行くぞ!」

 

先生が教室を出て行くや否や、それを待っていたと言わんばかりにクラスの男子生徒は挙って外に向かって走り出し、一部女子生徒もそれに続いて行った。残りの女子生徒たちは一箇所に固まって、お昼ご飯を食べる準備をしていた。気づけば、教室には俺と女子集団だけがいた。これは不味い。さっさと移動するとしよう。今日も忘れずに持ってきた弁当を手に取り、休める場所へと向かう。

うちの中学は給食制度ではなく、弁当を持参する制度だ。俺は小学生の時も弁当を持参するのが普通だったから特別違和感を感じているわけではないが、小学校が給食制度で、中学でも同じ制度だと思っていた友達には違和感バリバリらしい。え?俺に友達がいるわけが無いって?見栄を張るなって?ふん!…非常に残念なことに、俺にも友達がいるんだ。もちろん向こうから友達と呼ぶことを強要されているのだが…。俺に友達とか世界の終わりでも近づいているのか?

 

朝母親から貰った弁当を、某タヌキ型ロボットが腹のポケットから出す時間を操作する風呂敷に似たもので包み、人気のない場所…屋上の方へ向かう。人気のないところと聞くとなんかすごい悪いイメージあるな。よくある漫画の展開としては学園バトル系なら決闘とか、ラブコメ系ならカッコよく主人公がヒロインを悪役から救うシーンとか。コメディ系に行くなら弁当がタ○ムフロシキで宇宙飯みたいなゼリー状のなんかに変わって出てくるとか。…ということは現代の10秒飯さんは未来の先取りでもしてるんかな?。まあ結局ライトノベルや漫画なんて高校が中心なんですけどね。話が逸れた。

うちの中学校は校舎が4階まであり、各学年の教室は2~4階に収められている。そして上の階に行くほど学年が下がるので、俺たち一年生は4階だ。1年間限定とは言え週5で一番上まで行かなきゃいけないとかまじ重労働。学校いきたくない。ましてや屋上は4階から階段をもう一階層分上がったところにある。…つまり、俺は毎回昼ごはんを食べるためだけに1階層分余分に上り下りしていることになる。これは残業なのでは?絶対サービス残業だよね?あぁ、中学生なのに早くも立派に社畜している父の気分を味わっている。

 

そんなこんなで屋上前の階段を登っていると上から声が掛かった。

 

「おっそーい!」

そこにはフグみたいに膨れた顔で俺を待つ『友達』がいた。別に怒っているわけではないと思うが、こういうのは謝っておくのが吉。

 

「ごめん、授業が長引いてた」

ごめん嘘、言い訳します。だって悪いことしてないのに謝るとかおかしくない?

 

「嘘!さっきAちゃんとかB君が走って階段降りて行くのちらっと見えたもん!」

 

「そのAちゃんとかB君が誰か知らないけど、俺のクラスはチャイム鳴っても授業続いてたぞ?」

 

「二人とも八幡と同じクラスだよ!?」

 

「なら絶対見間違えだな。お前、その2人の顔確認したわけじゃないんだろ?」

 

「ま、まあそうだけど…」

 

「ならお前の勘違いということでこの話は終わりだ」

 

「う、うん…あ、じゃあご飯食べよ!」

 

こいつが少し頭の残念なやつでよかった…。A,Bが誰かは知らないが、クラスメイトとか興味がない。というよりも、今の発言でこいつの交友関係がうちのクラスにまで及んでいることがわかった。俺は2組、あいつは6組。複数クラスでの合同授業や体育も2組と6組はまず一緒にならないし、こいつは帰宅部に所属していたはずだ。こいつと同じ小学校出身の知り合いが2組にいれば話は簡単だが、2組の教室に入ってくることを見たことがない。つまり…こいつはコミュ力のバケモノなんだ!ひゃあ怖い!一緒にいれば友達がどんどん増やされるんだ!このぼっちの天敵めっ!

 

「というかお前じゃない!かおりって呼べ!」

 

 

こいつとの『出会い』…というよりは『再会』は1ヶ月前の入学式まで遡る。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

つい先日小学校を卒業し、今日から中学生だ。入学式までの春休み期間は妹とゲームをするか寝ていた気がする。中学校に入ったからと何かが変わるわけではない。この辺りには中学校が一つしかないから、引越しや受験でもしない限り近隣の小学校にいた奴らがくる。だから、人間関係に大きな変化は生まれないし、ただ元あったコミュニティーが合体して拡大するだけだ。

そんなこんなで憂鬱な気持ちになりながら、真新しい制服に袖を通して中学校の方へと向かう。

 

「はぁ〜」

 

入学式当日に遅刻しちゃいそうで、パンをくわえながら走っていたら曲がり角で女の子とぶつかるみたいなラブコメ展開無いかな。あるかも。ちょうど目の前に曲がり角あるしやってみるか。けど肝心の食パンがない。何か四角くて薄くて噛めそうなもの…あっ。

 

 

どんっ!!

 

 

派手にぶつかったな。というよりも本当に人にぶつかるのかよ。ラブコメの神様も捨てたもんじゃないな。中学生初日の曲がり角から始まるラブコメ生活…。日本の未来は明るいようだ。さあ、女の子と仲良くなるぞ!

「大丈夫かい僕!?」

 

「だ、大丈夫で…」

ん?声が大分渋い気が…そう、お父さんみたいな…。女の人って声もっと高いよね?だ、大丈夫!声が低い女性の方だっているんだから!諦めたらそこで試合終了!一応確認しておこう。

「ほら、手貸して。立てる?」

前言撤回、やっぱラブコメの神とかいねぇわ。目の前には錆びれた肌とカサついた唇、太陽の熱を反射させてスペシウム光線を出せそうな頭頂部が広がる男性…そう、おじさんがいた。

「大丈夫です!」

勢いよく立って、自分が怪我をしてないことをアピールする。実際怪我してないし本当に大丈夫です。こういう風に心配してくれるあたり日本は本当にいい国だな。しかし驚くくらいパッと立てたと我ながら思う。起立世界選手権なんかあったらいい線いけるんじゃないか?

「本当に大丈夫?」

「はい!」

「そ、そう?じゃあおじさん急いでるから行くね?」

急いで行くおじさんに手を振って見送ることにした。はぁ、やっぱりこの世に希望などないのだ。落とした食パン擬きを拾って早く学校へ向かうとしよう。

 

「ねぇ!!なんでノートなんて咥えながら走ってたの!?」

ん?この声は…女の子!?ぶつからなきゃ(使命感)!

 

声に反応して後ろを見てみると女の子がいた。良かった、女の子だった。女の子は何か面白いものを見たかのような興味津々な素振りでこちらを見つめる。辞めて、照れちゃう。

「…」

というかこの女の子見覚えがある。制服を着てはいるが、こやつ、小学校の遠足で一緒に話していた例の女だ。しかも服装がうちの中学校指定の制服。これは下手に関わらないほうがいいだろう。とすれば逃げるが吉。逃げるは恥なんていう輩もいるが、恥の多い生涯を送ってきている俺に怖いものなどもう無いのだ。

 

後ろを向いて思いっきり学校に向けて走り出す。

 

「あっ!待って!!」

ここから学校の距離はそんなに離れていないはずだ!振り切れば後はどうにかなる!俺には何も聞こえない!風になれ!

 

気付けば、中学校の校門を少し抜けた所にある建物の陰で乱れた呼吸を整えていた。どうやら振り切ったようだ。

 

 

何事もなかったかのように昇降口へ向かい、クラスを確認する。俺は…2組か。まあ知り合いがいる訳でも無いのでどこのクラスでも変わらないのだが。一応あの女が同じクラスでないことだけは確認しておこう…。よし、あいつは6組だ。なら、奴が学校に来る前にここから退散しておこう。

 

 

始業式が終わって教室に戻ってきたところで今日は解散。クラス委員や自己紹介などは明日やるらしい。今日終わらして明日休みにしてくれよなほんと。2日に分けるのがなかなかに腹立たしい。

特に周りに声をかける必要も無いし、もう帰ろう。お家が待っている。

 

カバンを持って教室から出ようとすると、突然目の前の扉が開き、目の前には俺より小さめの女の子がいた。あっ、こいつ。

 

「ねぇ八幡!ちょっと来て!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

それ以来よく話しかけられるようになり、ご飯も一緒に食べることになってる。

 

「あっ、じゃあ私次体育だから先行くね!」

 

「おう、いってら」

 

「また放課後ね!!」

 

全く、どうして俺はこんな奴と仲良くしてしまったんだか…。




そろそろ更新せねばと焦って書いたので、割と後半が駆け足です。また時間が取れ次第少し加筆修正したいと思います。
話は変わりますが、先日中学時代の友人と久しぶりにお会いしました。何年経っても意外と変わらないものですね。
次の更新は12月初旬中に出来ればなと思ってます。よろしくお願いします!


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【閑話】口は災いの元

気分転換に少し未来の2人を書きました。この2人が結婚したら八幡は確実に尻に敷かれるでしょうね。

地の文無しでお送りします!よろしくお願いします!あと、下にお知らせあるのでそちらだけでも見ていただけると助かります!


「ただいまー!!」

 

「おう…おかえり」

 

「ごめんねー、遅くなっちゃった!えへへ」

 

「いや大丈夫…ってお前絶対酒飲んで来ただろ」

 

「んー?ちょっとだけね!ウケる!」

 

「ウケる要素無いし、お前それちょっとどころじゃ無いだろ…」

 

「せっかくの同窓会だよ!?皆とも久しぶりに会えたし飲まずにいられるかー!」

 

「はぁ…こっち来て休め。飲み物取ってくる」

 

「ありがとー八幡!愛してるぞー!」

 

「あーハイハイアイシテルアイシテル」

 

「ムッ!棒読みジャン!本当にそう思ってるのー!?」

 

「ウソツイテナイヨーアイシテルヨー」

 

「ムッカー!!」

 

「ほらこのスポドリ飲…フフッ…顔が猿みたいに赤くなってるぞ」

 

「ウキー!」

 

「ノリノリだな」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…あれ?ここどこ?」

 

「おっ、おはようさん。ここは火星だ」

 

「…んなわけないでしょ。ウケる」

 

「酔いは覚めたみたいだな。良かった良かった」

 

「迷惑かけてごめんねー。周りのみんなも飲んでたし、私だけ飲まないなんて出来なくって…」

 

「気にすんな。迷惑なんて毎日かけられてるからもう慣れたわ」

 

「おっ、言うね〜…まあ、ありがと」

 

「どういたしまして」

 

「あっ!そういえば千佳がさー」

 

「ハイハイ同窓会の話は後で聞く。とりあえず仕事行く準備しろ」

 

「はーい。全く…」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「…なんだってさー!いやー昔からの親友としては嬉しい限りだよ」

 

「へぇー千佳ちゃんが…」

 

「…千佳ちゃん…?」

 

「仲町さんが!仲町さんが!」

 

「ふーん…」 ニヤリ

 

「いやほんとごめんなさい」

 

「あぁー!今私はすっごい傷付いたなぁー!長い付き合いなのに未だにプロポーズすらしてくれない彼氏の口から!まさか呼び捨てで他の女の名前が出るなんてなぁー!これは浮気されてるのかなぁー!?一度雪乃ちゃんとか小町ちゃんに相談しなきゃいけないかもなぁー!」

 

「やめろ!やめてくださいほんと…。そ、そうだ!今日ちょっと仕事で東京の方に寄るんだわ!その時に美味しいスイーツでも買ってくるかな!かおりには日頃からお世話になってるし、いい機会だ!」

 

「…スイーツだけなのかなぁ?」

 

「あぁ!!あぁ!!!最近かおりも頑張ってるし、最近給料も入った!!折角だから今話題のダイ◯ンコードレス掃除機買ってしまおうかなぁ!!」

 

「おぉ、太っ腹!嫁のためにここまでしてくれる旦那が浮気してるはずないね!相談はしなくて大丈夫そうかなぁ…」

 

「…ハァハァ…嫁か…」

 

「息切れとかウケる!…うちは覚悟決めてんだから早くしてよね」

 

「早くして欲しいなら色々強請るなよ…」

 

「それとこれとは別☆問☆題!」

 

「はぁ…早く仕事行くぞ」

 

「はぁーーい!」




本編についてのお知らせです。
全世界おそらく10人にも満たない数少ない読者様、当作品を読んでいただき本当にありがとうございます。引き続き亀更新で進んで行く予定ですが、最後までお付き合いして頂けたらなと思います。
本題に入ります。現在、中学生だった頃の記憶を元に物語を書いているのですが、10年ほども前に行われたイベントや行事などが思い出せず四苦八苦してます。もし、読者様の中に中学生時代の記憶がある方や現役中学生の方などがいれば、こんな話を書いて欲しいとかこんな行事あったよなどと教えて頂けると助かります。
長文失礼しました。


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5、一生に一度の出会い【ヒロイン視点】

お久しぶりです。気付けばクリスマス、また大晦日が近づいてますね。次話は年内なのか年明けなのか…。
今回もまた、ほとんど対話形式でお送りしてます。文章力をくれ!

感想や評価ありがとうございます!読者様からの意見や希望、批判などを作品に生かしていきたいので、何でも構いません!コメントなどお待ちしてます!それでは、本編をどうぞ!



「ねぇ八幡!ちょっと来て!」

 

 1年6組の教室の扉を開けてみると目の前に偶然八幡がいたから、思わず声をかけちゃった。学校指定のカバン持ってるし、すぐにでも帰ろうとしたのかな?

 まあいいや!聞きたいこととか色々あるし、連行だ!

 

「……」

 あれ?はっちまーん?

 

「おーい?はっちまーん?生きてる?」

 

「……」

 

「おーい」

 

「…なんで来た」

 

「んー、八幡がそこにいたから!」

 

「理由になってないぞ」

 

「いいの!とにかく行こ!」

 行かないなら手を引いて連れてっちゃえ!

 

 そういえばこの男の子、八幡と初めてあったのは2年ほど前の小学校からの帰り道だったな。

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「Cちゃん、Dちゃんじゃあね〜!」

「「バイバーイ!」」

 私は学校から帰って来る途中の、この道があまり好きじゃない。だって大好きな友達とバイバイしなきゃいけないから。そりゃ次の日になれば学校でまた会えるけど、その日その日に起きた出来事を一緒に味わえないのはなんだかツマラナイ。一度お父さんとお母さんに友達皆が住んでる方面に引っ越しできないか相談したことがあったけど、お金の問題とか何かでダメなんだって。もう!お父さんの意地悪!

 

「うー…ツマンナイ!」

 けどお金とかは小学生の私にはどうしようも無い。なら、友達とできるだけ長く一緒に帰れる方法を見つけるべきだ。そうしよう。

 友達と別れた後に通る住宅街には、大きくは無いけど公園がある。私はそこのブランコに座り込み、考えることにした。

 

「友達の家まで行くのは……けど遠回りだし、遅いとお母さんが心配しちゃうな。2人に私の家まで一緒に来てもらうのも迷惑かけちゃうし……どうすれば長く友達といれるだろう…」

 結局諦めるしか無いのかな…。あっ、一層の事、家がこの近くにいる子と友達になるとか!……けどこの辺りに住んでる子は皆違う小学校に通ってるんだよね…。

 

「諦めろ」

 

 うんうん。やっぱ諦めた方がいいのかな。中学校に入ったらここの地域の子達とも友達になれるしそしたら一緒に……ってあれ?誰の声?

 

「友達と居ない時間があるから、一緒に居る時間が楽しめるんだろ?諦めろ」

 

「……」

 

「……」

 

「……誰?」

 

「…」

 

「…」

 

「……妖精だ」

 

「妖精!?本当に妖精なの!?」

 

「そ、そうだ。この公園を護る妖精だ」

 

「へぇー!けど妖精って羽があって小さいんじゃなかたっけ?テレビで見たティン◯ーベルちゃんはそうだったよ!」

 

「バ、バッカ!それはディ◯ニーの妖精だ!座敷童子とか知らないのか?」

 

「……?ポ◯モン?」

 

「家を護ってくれる神様だよ!!」

 

「神様なんだ!じゃあ君は神様なの?」

 

「ち、ちがう!俺は妖精だ!」

 

「じゃあなんでそんなに大きくて羽が無いの?」

 

「そ、それは座敷童子みたいな…」

 

「けどその座敷なんとかちゃんは神様なんでしょ?」

 

「……ッチ」

 

「今舌打ちしたよね!?絶対舌打ちしたよね!?」

 

「き、気のせいだ…」

 

「あっ!ふふ〜ん、分かっちゃった!さては…地球侵略に来た宇宙人だな!」

 

「……(?????)」

 

「やっぱ当たった!?うわー!本当に宇宙人なんているんだね!人間に化けてるの?」

 

「……!そ、そうだ!地球の情報を集めに何億光年離れたわ「で、どの小学校に通ってるの?」くせい…」

 

「……」

 

「……」

 

「…◯△小学校」

 

「へぇ〜!じゃあこの辺りに住んでるんだ!」

 

「なぜ知ってる」

 

「◯△小学校の子達皆んなここら辺に住んでるからね。というか自分で答えちゃってるじゃん笑」

 

「…」

 

 この子に興味が湧いて来た。

 

「ねぇ、名前教えて!」

 

「人に名前聞くときは自分から名乗るって聞いたことないのか?」

 

「あっ、ごめんごめん。私は折本かおりだよ。」

 

「比企谷八幡、妖精だ」

 

「人間でしょ〜?でさ八幡!」

 

「いきなり呼び捨てか「友達にならない?」よ……は?」

 

「ちょうどこの辺りに住んでる子と友達になりたいと思ってたんだよね!」

 

「…断る」

 

「えぇ〜!なんでよ!」

 

「暑苦しい」

 

 めっちゃ嫌そうな顔された。友達になるだけじゃん!なんでダメなの!

 

「断ることを断る!今日から友達ね!」

 

「横暴すぎる…」

 

「でさでさ!昨日公園の近くで亀さん見つけたの!」

 

「えぇ…」

 

 この後結構長い間八幡とお話ししてた。イヤイヤ言いながらも最後まで付き合ってくれたし絶対いい子だ!もっと仲良くなろ!

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

「じゃあねかおりちゃん!」

 

「バイバーイ!」

 

 友達と別れの挨拶を交わして、駆け足で帰り道のあの公園へと向かう。最近は学校で友達と同じ時間を過ごすよりも、公園で八幡と一緒に過ごす時間の方が楽しい。まだ友達になって一週間しか経ってないのにね!この前もcちゃんの家で遊ぼうって誘われたけど断ちゃった!

 

「はっちまーーーーん!!」

 公園の入り口に立って思いっきり名前を叫んでみる。絶対不機嫌になるだろうなー。

 

「うるせぇ、叫ぶな殴るぞ」

 ほら、やっぱ不機嫌になった!

 

「女の子を殴るなんてサイテー!人間のゴミ!浮気者!100回死ね!」

 

「お、おぉ、流石に引くわ。そんな言葉どこで覚えて来たんだ…」

 

「近所に住んでるおばちゃんが家の前で叫んでたよ」

 

「あぁ、あの駄菓子屋前の」

 そういえば八幡の家はすぐ近くにあるんだった。行こうと思えばいつでもいけるんだよね。今度遊びに行こうかな?

 

「そうそう!おじちゃん家の前で土下座しながらぷるぷるしてたよ!」

 

「…そういうのは真似しちゃいけません」

 おじちゃんがプルプルしてたのめちゃくちゃ面白かったのに…。

 

「はーい…あっ、そういえば今日体育で面白いことがあったんだ!」

 

「……」

 

「今日体育で跳び箱をやったんだけどね、その時cちゃんが跳び箱跳んだ後に足を引っ掛けちゃって!…って聞いてる?」

 

「聞いてる聞いてる」

 

「絶対聞いてないじゃん!じゃあなんの話してた?」

 

「あれだろ…注文の多い料理店で死んだはずの犬が最後に現れた理由だろ…」

 

「全然聞いてないじゃん!というかそれは2人の男の人が犬は死んだと思ってただけなんじゃ無いの?」

 

「いや、そうなんだが…そういえば来年は国語の授業で宮沢賢治の『やまなし』をやるらしいな」

 

「なにそれ?」

 

「あークラムボンって知らないか?」

 

「……(????)」

 クラムボン?魔法の名前かな?

 

「まあ来年にはわかるさ」

 むぅ…バカにされて感じがする!

 

「うーん…ってらそんなことよりもcちゃんの話!」

 

「…ッチ」

 

「今絶対舌打ちしたよね!?じゃあ八幡の話が聞きたいな!」

 いつもは私が話してばっかだし、たまには八幡の話が聞いて見たい!そういえば八幡について私ほとんどなにも知らないや…。

 

「俺の?…俺の話なんて聞いてもつまらないぞ」

 

「判断するのは私!なんでもいいからさ!」

 

「はぁ…。この前の事なんだが、家に帰ってきて喉が渇いたからお茶を飲もうと冷蔵庫の中ににプリンが置いてあったんだ。しかもテーブルの上には『たべないで』なんて可愛い字で書かれてた。もう妹のプリンだってすぐわかったよ」

 へー、八幡は私みたいに一人っ子だと思ってたら妹がいるんだ。名前とか後で聞いてみよ!というか普通に話してくれるんだ笑。

 

「だが、俺はその日物凄くプリンが食べたかった。もうプリンを食べないと地球が滅んでしまうくらい食べたかった。だから妹のプリンを食べちゃったのは仕方がなかったんだ。」

 

 う、うん?納得しかけたけどダメなことじゃん!妹ちゃんかわいそうに…。

 

「気づいたら目の前には空になったプリンカップと汚れたスプーン。俺も男だ。悪いことをしたし、謝ろうと思って妹の帰りを待ったんだ。まあテレビ見てたら伝えるの忘れてたんだが…。そのまま存在を忘れてくれれば良かったんだが、晩御飯を食べた後に妹はプリンが無くなったことに気づいてな…。すぐさま俺のとこに来て問い詰められたよ…。俺も腹をくくって謝ろうと思ったんだが、そこで親父の笑った顔を見つけて、こう、『ざまあみろ』とでも言いたいかのような顔で笑ってやがったんだ!だから俺は妹に『さっきお父さんが食ってたぞ』って伝えたわけ。そしたら小町…あぁ、妹の名前なんだが小町がお父さんのところに行って騒ぐわ泣くわ親父に『プリン買ってこい!』だってさ!その時の親父の困った顔とトボトボ歩いて買いに行く姿がめちゃくちゃ面白かったなぁ…」

 八幡なんだかひどいなぁ。男だから腹くくって謝るってなんだったのほんと。けどうちのパパが同じことやってるなんて想像したら面白いなぁ…。そんなことよりも八幡の妹がきになるな!是非会ってみたい!…けど面倒臭がりな八幡のことだ、きっと断ってくるだろうなぁ。ダメ元でもお願いしてみよう!

 

「……八幡の妹見て見たい!」

 

「話の感想よりの先にそっちかよ。……今度暇だったら連れて来てやる」

 

「やったー!小町ちゃんに会えるの楽しみだな〜」

 

「小町はお前にやらんからな。俺の大事な妹だ」

 

「とらないよ!楽しみにしてるね!…でcちゃんの話なんだけど…」

 

「はぁ……」




小学生らしく無い言動についてはもう設定だと思ってスルーして下さい…。小学生っぽい会話ってなんだ!(地団駄)
そういえば折本かおりの代名詞とも言える「ウケる」が一切使えないのが辛いです。まあウケるだけのキャラじゃ無いんですけど…。


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今宵はバレンタイン【おまけ】

八折を書いたと思ったけど書いてなかったかも知れない。


「お疲れ様です〜お先に失礼します〜」

 

「お疲れ。明日は大事な会議があるから遅れないようにね比企谷くん」

 

「いつも遅刻してるみたいな言い方やめてくださいよ山田さん笑。それは田中に言ってください」

 

「ちょっ!比企谷!それは無しだろ!」

 

「田中くんはいつもギリギリに来る癖をどうにかしてほしいものだね笑」

 

「うぅ……ほんとすみません……」

 

「ではお先に失礼しますね」

 

「うぅ……じゃあな比企谷!」

 

 ア!ヒキガヤサン!ヨカッタラコレウケトッテクダサイ!

 ヒキガヤサン!イツモオセワニナッテマス!

 

 

「比企谷くんは随分とモテモテみたいだね」

 

「そうなんですよ!アイツ他の女性社員からも凄い人気で……!入社した後の飲み会で、同期に昔はぼっちだったとか言ってましたけど絶対そんなことないですよアレ!女の子侍らせてあんなことやこんな事してたに違いないっす!」

 

「ハハハ、随分と仲が良いんだね田中くん」

 

「話すと中々に面白いやつ何ですよ笑。この前の飲み会の話なんですけどア「随分と楽しそうね?」イツ……」

 

「山田さんと田中さんは大事な会議を明日控えているはずよね?会議に向けた資料はバッチリなのかしら?」

 

「うっ……部長……。」

 

「も、申し訳ありません雪ノ下部長。しかし明日の会議の件であれば大丈夫です。こちらがその資料になります。」

 

「ありがとう山田さん。……問題はなさそうね。ただ大丈夫では困るの、完璧でお願いするわ。」

 

「はい!畏まりました!」

 

「そういえば、ヒキガエ……失礼。比企谷くんが居ないけど彼はどうしたのかしら?」

 

「部長今ヒキガエルって言いかけたな!?……アイツならさっき帰りましたよ。」

 

「……全く哺乳類ですら無い下等なヒキガエルが私より先に帰るなんて……ブツブツ。もっと仕事の量を増やしてあげましょうか……ブツブツ」

 

「雪ノ下さーん!いつもの癖出てますよ!山田さん顔引きつってますから!!」

 

「……失礼。今のは聞かなかったことでお願いするわ。」

 

「ハハハ……雪ノ下部長と田中くん、それと比企谷くんはお知り合いなのですか?」

 

「俺と比企谷、それに雪ノ下部長は同じ大学の同期なんですよ。まあ俺と比企谷は同じ学部で部長は違う学部だったんですけどね。あと、部長と比企谷は同じ高校出身みたいです。」

 

「3人とも大学でのお知り合いでしたか。雪ノ下部長が田中くんと比企谷くんにたまに当たりが強かったのがやっと納得できましたよ笑。」

 

「そ、そんなことないわ!私は部内の社員に私情を挟まず平等かつ各々の能力を判断して仕事を割り振っていて……」

 

「やっぱバレてんじゃん雪ノ下さん笑笑」

 

「うぅ……違うわ!それよりも比企谷くんよ!帰ったのなら彼の家まで直接出向くまでよ……今日は早めに帰らせてもらうわね。おお疲れ様でした」

 

 ブチョウオツカレサマデス-

 オツカレサマ

 

「わお。雪ノ下さんはっやーい」

 

「も、もしかしてだけど、部長と比企谷くんはお付き合いされてるのかな……?さっきも家まで行くとか言ってたけど……」

 

「部長が比企谷に対して好意を抱いてる可能性は大学生の時から感じてましたけど、付き合ってはないっすよ。それに比企谷確か奥さんいますし」

 

「えっ!比企谷くん結婚してるの?初耳なんだけど……」

 

「騒がれたくないからって社内では基本指輪外してますからね。まあ大学1年生の時から彼とは仲良くしてますけど、もうその時点で結婚してたっぽいですね。」

 

「へ、へぇー(引きつった笑み)。雪ノ下部長はそれを知ってて行ってるのかな?」

 

「俺はあんまり知らないんですけど、奥さんの方も雪ノ下さんと高校時代の知り合いらしくて」

 

「私が知らなかっただけで、皆凄い関係だったんだね……笑」

 

「はぁ〜〜!良いなぁ比企谷は…。それに比べて俺は「チョンチョン」……ん?」

 

 アッ!タナカサンコノマエハアリガトウゴザイマシタ!

 イイッテコトヨ!キニスルナ!

 ソレデ…アノ-コンドノニチヨウビナンデスケドヨカッタラ//

 

「……若いって良いなぁ」

 

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 ピンポ-ン

 

「はーい!」

 

 ガチャ

 

「はっちまーんおかえりー!!!!」

 

「……」

 

「……ん?雪乃ちゃん?どしたの?」

 

「よくそのままのテンションで居られるわねかおりさん。比企谷くんはいる?」

 

「私だからね!八幡ならまだ帰ってないけど……何かやらかした?」

 

「いいえ、仕事に関してじゃないわよ。仕事ぶりについてなら……いつも助かってると言えば大丈夫かしら?ふふっ」

 

「……そっか笑。いつも夫がお世話になってます!ささっ!とりあえず上がってよ!」

 

「えぇ、お邪魔するわね」

 

「えっと雪乃ちゃんは確か紅茶だよね?」

 

「お願いするわ」

 

「はーい!雪乃ちゃんみたいに上手く淹れられないけどね笑」

 

「美味しい紅茶なら簡単よ。道具は私からの贈り物を使って貰って、あとは水の温度、それから」

 

「はいはい!分かったから!けど今度じっくり教えてね?」

 

「ふふっ、良いけど妥協は許さないわよ?」

 

「雪乃ちゃん怖いなぁ〜笑ほんとウケる!……その紙袋は?」

 

「社内で貰ったのよ」

 

「今日はバレンタインだもんね!相変わらずモテるなぁ雪乃ちゃん!」

 

「もちろん女性社員からよ。男性からは何もなかったわ」

 

「そっかーモテるなぁ〜アハハ(乾いた笑い)」

 

「ところでかおりさん……?なぜキッチンに大量のチョコがあったのかしら?あと如何わしそうな雑誌が見えたのだけど」

 

「あ〜、あれは八幡にあげるチョコ作り!バレンタインだもんね!」

 

「お菓子メーカーがチョコレートを大量に押し売りするイベント……くだらないわね」

 

「も〜雪乃ちゃんちゃっかり貰ってるくせに!それと八幡と同じようなこと言ってるよ!やっぱ2人とも凄い似てるね笑」

 

「あんな男に似ているなんて一生の恥よ……あ、ごめんなさい。悪気があるわけでは無いの」

 

「大丈夫!雪乃ちゃんが本心で言ってるなんて思ってないから!長い付き合いじゃん!」

 

「……彼があなたを選んだ理由が少し分かった気がするわ」ボソッ

 

「ん?何か言った?」

 

「なんでも無いわよ。それよりもチョコの量多すぎじゃないかしら?」

 

「……紅茶ドゾッ!んーそろそろ普通にチョコあげるのも面白味が無いっていうかマンネリしちゃうというか。ということで新しい渡し方を探ってたわけ」

 

「ありがとう。……まだ練習が必要みたいね。で、新しい渡し方が見つかったのかしら?」

 

「そう!偶然八幡の部屋掃除してる時に見つけた雑誌に書いてあったんだけど、身体中にチョコを塗りたくった全裸の女の人が『私がプレゼントよ』って男に迫るの!」

 

「……まさかその準備をしてたというの?」

 

「面白そうじゃん!これを実際に見た時の八幡の顔を想像するだけでウケる!」

 

「はぁ……彼のことは変態だと感じていたけど、貴女も大概ねかおりさん」

 

「それは褒め言葉として受け取っておきます笑!で、どう思う!」

 

「却下ね。チョコが勿体無いこと、衛生面の問題、後片付けだって大変よ。」

 

「ハハハ、ダヨネー、ワタシモソウオモッテタ」

 

「貴女は本気でやるつもりだったようね。けれど友人として言うわ。辞めておきなさい」

 

「はぁ……なら雪乃ちゃん何か案はある?」

 

「そうね……。サプライズとしては弱くなるかも知れないけれど、こんなのはどうかしら」

 

「さっすが雪乃ちゃん!なになに!」

 

 ゴニョゴニョゴニョゴニョ

 ゴニョゴニョゴニョゴニョ

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

「じゃあ私はこれで失礼するわね」

 

「うん!またおいで〜!」

 

「そういえば由比ヶ浜さんや川崎さんも貴女に会いたがっていたわね。今度連れてきても良いかしら?」

 

「全然いいよー!千佳ちゃんとか小町ちゃんもみんなに会いたがってたし今度女子会でも開かない?もちろん八幡は家から追い出して」

 

「良いわね。細かいことはL◯NEで決めましょう。……成功を祈ってるわ」

 

「ありがとー!じゃあね〜」

 

 バタン

 

「あれ?雪乃ちゃん何しにきたんだろ?」

 

 ーーーーーーーーーー

 ガヤガヤ

「……」

 ガヤガヤ

 

 オニイサ-ンコノアトイザカヤトカイカガデスカ~?

 オレハカイゾクオウニナルンダ-

 

「……お、雪ノ下お疲れさん。お前の家駅から反対だがどこに行ってたんだ?」

 

「……あら比企谷くん。仕事お疲れ様。先に帰ったと田中くんに聞いていたけれど?」

 

 カイゾクオウ?ドコノマンガノハナシデスカ-!

 スイマセンカレモウコノトオリナノデシツレイシマス!!!

 

「質問に質問で返すな。ちょっと寄るところがあっただけだ。……人の多い通り道じゃアレだ。うちに来るか?」

 

「結構よ。質問の返答にもなるけれど今行ってきたところだわ。かおりさんに貸していた本を取りに行っていたの」

 

「かおりのやつが読書?……なんか裏がありそうだな。本を読むなんてあいつ風にいえば『読書とかウケる笑』」

 

「声真似のつもりかしら?彼女に全く似てないのと、貴女の言い方が物凄く不愉快だわ」

 

「相変わらず酷ぇな。じゃあおれは帰るぞ。お疲れさん」

 

「お疲れ様。明日の会議でドジ踏まないようにね」

 

「任せとけ。そんなことして目立ちたくねぇ」

 

「……あっ、比企谷くん。これあげるわね」

 

「ん?……そういえば今日はバレンタインか。まーたお菓子メーカーどもが理由をつけてチョコを売りやがって。お前もついに奴らの陰謀にやられたか?」

 

「ふふっ……確かに」

 

「ん?何笑ってんだ?」

 

「先ほどのかおりさんとの会話を思い出しただけよ。……そういえばかおりさんも何か準備していたわね。楽しみにしてなさい」

 

「チョコ貰うだけだろ……じゃあな」

 

 ーーーーーーーーーー

 

「ただいま〜」

 

「お帰りはちまーん!」

 

「はぁ今日も仕事……って!?」

 

「ハッピーバレンタイン!!」




つい昨日年を跨いだかと思えばもう2月中旬……お久しぶりです〜。シリーズものって書き出したは良いけどそのあと続かないですよね。ネタはあるけど書く自信がない。悲しい。
亀更新で引き続き頑張りたいと思います。


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