怪獣娘~ウルトラ怪獣ハーレム計画~ (バガン)
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未知なる友達

 「東京か・・・久しぶりだな。」

 

 大きなキャリーケースを引いて、一人の少年が壇上に現れた。キャリーケースには彼の名札・・・生年月日、血液型、連絡先までもが事細かに書かれている。個人情報ダダ漏れである。

 

 まあそれはともかくとて。『濱堀(はまほり)シンジ』、それが彼の名前だった。その年頃の男子には少し小柄ではあるが、ごくごく普通の純朴そうな、お上りさんの少年だ。

 

 「よっし、まずは東京タワーを目指そうか。」

 

 シンジの今回の目的は『観光』ではない。けれど、少しだけ見物してから目的地に向かうのもいいだろう、とシンジは楽観視していた。これからの不安を考えれば、少しでも楽観的にならなければやってられないというのが理由だが。

 

 そういえば東京タワーの脚のアーチ部分の高さが40mらしい。

 

 ともあれ、まずは行動を開始したシンジ。東京タワーほど目立つ建造物であれば迷うことなく辿り着いた。展望台からの見晴らしはすごいものだった。晴天ならば富士山や房総半島まで見渡せるそうだ。晴れていれば。詩的に言うと空が泣いている。

 

 シンジは生まれついての雨男であった。運動会、遠足、文化祭、入学式や卒業式の学校行事に始まり、家族旅行やちょっとした外食、深夜コンビニに出かけようとした矢先に降り出したことすらあった。コンビニがどうかは知らないが、大抵大きな出来事の前には雨が降っていた。

 

 展望台のガラスに雨粒がつく。小さな粒は集まって大きな雫になり、大地に向かって垂れていく。それにつられるようにシンジの視線も下がっていく。気晴らしのはずが、ただただ気分が重くなっていた。

 

 「げー!見えないじゃーん!富士山ー!」

 「さっきまでは晴れてたんですけどねぇ・・・。」

 「エレベーターに乗ってる間に曇るなんて・・・。」

 

 なにやら女子高生たちが騒いでいる。こんな雨男がいるせいで、せっかくの景観を台無しにしてしまって本当に申し訳ない。遠くまでは見えないが、都内であればいろいろなものが見える。新宿、霞が関、緑地公園。もしも自由に空を飛べて、あのあたりを舞うことが出来ればさぞ気持ちが良いだろう。

 

 と、遠い世界に思いをはせても自らの心の問題は晴れない。そっと、懐に手を伸ばして一通の手紙を取り出す。あて名には『濱堀シンジ様へ』、自分の名前。差出人は『濱堀ソウジ』、父の名だった。受け取ってから何度も読み直し、その度に気分を落ち込ませてきた、忌まわしき文書であった。

 

 「こんな招待文で、人がやって来ると思ってるのかな?」

 

 手紙を懐へと仕舞い、ふと眼下に広がるビル群に目をやった。昼間だというのに夕闇のような薄暗さの道を、傘差す人が歩いているのが見える。まるでアリのような小ささだ。空を飛んで見下ろした世界と言うのは、ちょうどこんな感じなのだろうかと、再びシンジが夢想を広げていたところ、ビルの屋上に何かが見えた。

 

 (あれは・・・影?)

 

 人影・・・とも違う、不定形でうねうねとしてはっきりとしない、不気味な存在が、そこにあった。あれも東京名物かな?不思議だなぁ・・・とのん気にしばらく見続けていると、さらなる異変を目の当りにした。

 

 「うわぁっ!なんか揺れてない?!」

 「地震?!」

 

 グラグラと振動を感じた。それは気のせいではなく、周囲にいた人々が皆同じような反応を示していた。全員が白昼夢を見ていたわけでないとすれば、明らかに地震だった。

 

 「皆さーん!落ち着いてくださーい!」

 「落ち着いて係員の指示に従ってください!」

 

 にわかに騒がしくなった観光客であったが、そんな中で先ほどの女子高生たちが声をあげている。自分と同じ位の年頃の少女たちのその落ち着きように、シンジは正直地震より驚いていた。しっかりした子がいるもんだな、と。

 

 そしてさらにそれを上回る衝撃と、さらにさらに上回る体験に出会うと、誰が予想できただろうか。

 

 とりあえず窓際は危ないと、シンジを含めた人々がエレベーターの方へと向かいはじめた時、その背後から異様な気配を感じた。

 

 「なん・・・だと・・・!?」

 

 いつの間にか、窓には黒い影がびっしりと張り付いていた。それは先ほどビルの屋上にいたやつだったと、シンジにはわかった。

 

 「わぁあああああああ!!!」

 「うわぁあああああああ!!!」

 「きゃぁああああああ!!」

 「アイエエエエエエエエ!?」

 「ハルトォオオオオオオオオ!」

 「もうダメだぁ・・・おしまいだぁ・・・。」

 

 「シャドウ・・・!」

 「こんなところにまで出てくるなんて!」

 

 一瞬にして展望台は阿鼻叫喚の地獄絵図となった。人々は完全にパニックとなり、エレベーターへと殺到した。泣き叫ぶもの、絶望するもの、狂乱するもの、そして覚悟を決めるもの。

 

 「ねぇ、なんかここ傾いてない?!」

 「まさか、ここを崩落させるつもりなんじゃ!?」

 「そんなこと!させません!」

 「うん!」

 

 さらに事態は刻一刻と悪化していた。影が一方行に積み重なり、展望台が重さで傾いているのであった。人々は必死にしがみついて耐えている。そんな中、3人の少女たちは立ち上がる。それと同時、とうとう影が窓を割ってなだれ込んできた。あわや万事休す!だが、希望の光は輝いた!

 

 「「「ソウルライド!」」」

 

 「アギラ!」 「ミクラス!」 「ウインダム!」

 

 光の中で、少女たちは自身のもう一つの名を叫び、『変身』を遂げた。

 

 「あれが噂の・・・『怪獣娘』・・・。」

 

 シンジもまた、その光景に見とれている内の一人だった。先ほどまでの絶望から一転して、人々の間には正気が戻ってきていた。

 

 「今の内に、早く避難を!」

 

 怪獣娘さんの一人、メガネの子が指示を出し、係員は落ち着いて非常階段への誘導を始めた。しかし、その行く手にも影が襲い掛かってきた。

 

 「させるかぁ!」

 

 今度は元気っ子が、ドロップキックで迫りくる影を弾き、腕力でもって薙ぎ払った。さらにその先では、我先にと駆け込む人々が、階段の前で団子になっていた。

 

 「落ち着いて、2列で歩いてください!」

 

 最後に眠そうな目の子が誘導を行っていた。不安をかき消すように、寝ぼけ眼の子は励ましてくれた。本当に不思議だ、あの子の笑顔には、そんな不思議な力があるようだった。

 

 ここからおよそ600段降りれば大展望台から地上へ降りられる。その間にも、影は迫ってきていたが、怪獣娘さんたちの活躍で人々は無事だった。安心するには少し早いが、シンジも胸をなでおろした。

 

 『マユー!?マユちゃんどこ行ったのー?!』

 

 少し後ろで、女性の悲鳴が聞こえた。考えなくてもわかる、子供がいなくなったのだろう。この人混みの中、散り散りになってしまっては探しようがない。もしも探しに行ってしまえなおのこと危険だ。別々に無事に降りられたことを祈るしかない・・・。と、普段冷静なシンジは考えていただろう。

 

 しかし哀しいかな、それともこの場合は運が良かったのか、シンジはこの時冷静ではなかった。気が付けば人混みから抜けて辺りを見回していた。

 

 「どこにいる・・・どこに行った・・・?」

 

 五感を研ぎ澄ませ、手に汗を握り、シンジは最悪の事態を想定していた。人間は結果を想像すると、大体最悪か最高の状態を想定するらしい。そしてその予想は現実となった。

 

 「いたぁ!」

 

 たしかに子供はいた。影が侵入してきて、今なお傾き続けている窓のすぐ傍、そこに座り込んで泣いていた。

 

 「ちょっと・・・!ミクちゃん、ウィンちゃん!あれ!」

 

 気づいた時には既に息する事すら忘れて走っていた。もうすぐ息が止まることになったとしても、足を止めるわけにはいかなかった。傾きによって機材が滑ってきているのが見えていた。あのままでは当たる、その前に。

 

 「うおぁああああああ!!!」

 

 間一髪、子供を抱えて機材を避けることには成功した。だが坂道を駆け下りたことにより、ブレーキが利かない。寸でのところで割れたガラスに右手を引っかける。

 

 「ぐぅうう・・・!」

 

 雨で濡れて滑る、それ以前に手が裂ける。必死の形相を浮かべてシンジは耐える。今自分が抱えているのが、自分1人の命だけだったならもう落ちていたろう。けれど今は、2人分抱えているんだ。

 

 「わぁああああああ!!」

 

 さっきの寝ぼけ眼の子が駆け寄ってきていた。あと少し、あと少し耐えれば!ほのかな希望が湧いた。しかしそれが命取り、一瞬気が緩んでしまった。

 

 「あっ・・・。」

 

 瞬間、全身から力が抜けた。そして悟った。もう助からないと。

 

 

 

 

 

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 意識を失う前、シンジが見たのはあの子の顔だった。表情に哀しみは浮かんでいなかった。もっと強い、決意を秘めた顔をしていた。それよりもシンジが思ったのは、この子供への罪悪感だった。もう少し自分が早く気づいていたなら、もう少し根性があったなら、少なくともこの子だけは助けられたのに。せめて、自分がクッションになって助けてあげられないか。悲痛な想いと共に抱きしめた。

 

 すると不思議なことに、自分自身が抱きしめられているような感触があった。温かい、陽だまりのような優しい力に。

 

 「んっ・・・あれ?僕・・・。」

 

 冷たいアスファルトの感触で目が覚めた。雨水と砂にまみれて気持ち悪い。

 

 「気が付いた?よかった・・・!」

 

 次に見えたさっきの女の子の顔。こちらをのぞきこんでいた。表情は先ほどとは違い、柔らかい笑顔だった。正直ちょっと惚れた。

 

 「・・・生きてる?」

 「はい、生きてます。ボクも、その子も。」

 

 左腕の中にいる子供も無事だった。気を失ってはいるが傷一つ無い。

 

 「ここにいると危ないかもしれないから、少し移動しましょう。歩けますか?」

 「うん・・・大丈夫、です。」

 

 子供を彼女に預け、自分の足で立ち上が、生きていることを確認する。うん、確かに自分は今生きている。それは理解できるが、なぜ生きているのかは納得できていない。たしかに、地上150mの大展望台から転落したはずだった。

 

 と、先ほどまで自分がいた場所を不思議そうに見上げると、事態は収束を迎えているようだった。影を撃滅し、安全を確保するもの。人々を誘導し、無事を確認するもの。空を飛びながら、崩落寸前だった建物を支えるもの。それぞれが自分にできることを、可能な限りやっている。

 

 (これがプロの仕事か・・・。)

 「おーい!アギちゃーん!」

 

 何度も首を上下させて、まだ少しぼんやりとした頭を廻しつつ足を動かしていると、遠くの方から声が聞こえてきた。聞き覚えのある声だったので、先ほどまで大展望台にいた内の一人だとすぐにわかった。

 

 「んもー!いきなり飛び出すからびっくりしたよー!」

 「ごめんミクちゃん、そっちは大丈夫だった?」

 「ええ、あの後すぐにレッドキングさんやキングジョーさんが来てくれましたから。大きな怪我をした人もいませんでした。」

 

 声のした方向から、すぐにその姿が見えた。あの二人もここにいるということは、もう終わったんだろう。本当に、生死を賭けた緊迫の瞬間だった。何はともあれ命を拾って今ここにいることを実感し、安堵した。

 

 「痛っ。」

 「あら?アギさん、そちらの人は?」

 「そうだ、この人怪我してる。それに、こっちの子のお母さんが探してると思う。」

 「わかった!すぐ医療班のとこに連れてくよ!」

 「ふぇっ?」

 「ちょっと、ミクさん?!」

 

 元気っ子がそう言い終わるや否や、有無を言わさず担ぎ上げられて特急便を味わった。ショックで血圧が下がっていたのもあるが、まさか地上でブラックアウトを味わうとも思わなかった。

 

 数分後、救護所には白目を剥いたシンジの姿があった。

 

 

 

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「どうも、ありがとうございました。」

 

 手に包帯を巻いたシンジが救護所を後にした。もう少し休んでいけばいいとも言われたが、それ以上に先ほどの親子が気になっていた。無事に再会できただろうか、どうしても確かめたかったのだ。

 

 (いた。)

 

 ほどなくして、目的の人物は見つかった。抱き合って無事を喜んでいた。それが見れただけでシンジは満足だった。せっかく喜んでいるのだ、水を差しては忍びない。

 

 (スピードワゴンはクールに去るぜ・・・。)

 

 さて。どうしよう。遠くではまだ怪獣娘さんと思わしき人が駆けている。さっきの三人娘にお礼を言いたいところだが、今は忙しいだろうし、どこに行ったかもわからない。会いに行っても邪魔になるだろう。

 

 さっきまで多くの人に囲まれて、同じように恐怖や奇跡を体験してある種の一体感を味わっていたけれど、終わってみれば途端に疎外感を味わう。あるあるだと思う。

 

 「あ、いましたよ!」

 「おーい!さっきの人―!」

 

 今日はもう既に聞き慣れた声がした。あっちの方が僕を見つけてくれた。

 

 「もー、探したじゃーん!あそこ(・・・)にいてくれればよかったのに!」

 「ミクちゃん、その言い方はどうかと思うよ。」

 「どうも。」

 

 この三人は、三人で一組なんだな。すごく仲がいい。仕事仲間とか、チームとかそういうのを越えた友情があるんだろう。

 

 「先ほどはありがとうございました、怪獣娘さん。」

 「いーっていーって!仕事だからね!」

 「あの、本当に大丈夫なんですか?」

 「はい、おかげさまで。五体満足で生還できました。」

 「本当に?」

 「本当です。」

 

 両手両足をヒラヒラさせてアピールする。3人とも・・・いやメガネっ子と元気っ子だけが驚いているようだった。寝ぼけ眼はそんなに驚いていない。

 

 「あの、すごいんですね。あんな高さから落ちたのに・・・。」

 「ザンドリアスみたいに空飛べるんだ!」

 「飛べませんよ?」

 

 僕は怪獣娘じゃないんだから、空飛べるわけないんだ。

 

 「それはそうと、あの子無事に届けてくれてありがとうございます。」

 「そうそう、お礼言われたよ!」

 「だから、あなたにも伝えたくって。」

 「僕は・・・大したこと出来なかったですし。」

 「そんなことないですよ!」

 「君が気づいてなかったら、どうなってたかわかんなかったし!いやーホントよかったよ!」

 

 いざ褒められると照れる。そもそも女子高生3人に囲まれるなんて状況自体がものすごく照れる。

 

 「じゃ、じゃあ僕、行くところがあるのでそろそろこの辺で・・・。」

 「あ、はい。呼び止めてしまってごめんなさい。」

 

 もう少しこの状況を楽しみたいのは山々だが、恥ずかしさの方が勝ってしまった。後ろ髪を引かれるようだが、手紙に記された場所へ・・・。

 

 「あれ、無い?」

 「どうしたの?」

 「内ポケットに入れてた手紙が・・・ない。」

 

 落ちてる最中に落としてしまったのか?可能性は低いけれど、それしか考えられない。

 

 「一緒に探しましょうか?」

 「でも、見つかるかどうかわからないですし。」

 「ジーっとしててもドーにもならないって!」

 

 答えを聞かずに元気っ子は走っていった。猪突猛進とはこのことか。

 

 「行っちゃった・・・。」

 「行っちゃいましたね。」 

 「白い封筒で、裏に僕の名前が書いてあります。」

 「そういえば、名前。私は『アギラ』。」

 「『ウインダム』です。走っていったのは『ミクラス』です。」

 「僕は『濱堀シンジ』、よろしく。」

 

 なんやかんやで手分けして探すことに。雨で濡れているから封筒もグシャグシャになってるだろうし、最悪車に轢かれてズタボロかもしれない。

 

 それはそれでいい気もするが。消極的な方法とはいえ、ブラックアウト以上に頭に抱えていた悩みから解放されるのだから。

 

 まあそういうしがらみ(・・・・)に限ってやり過ごせないものなのだけれども。運命なんだろうきっと。

 

 「あれは・・・?スク水?」

 

 それらしいブツを持った人がいた。まず目を引いたのはその恰好。スク水だ、どう見てもスク水だ。そして太い尻尾と三日月のようなツノ。あれも怪獣娘さんだ。

 

 「あの・・・その手紙って。」

 「ん?これ・・・キミの?」

 

 間違いない、濡れて字が滲んでいるがさっきまで僕が持っていたものだ。

 

 「見つかった・・・。」

 「そっかそっか、キミが・・・。」

 

 正面からその人の顔を見据える。うんうんと頷いて、納得したようにして、こちらの顔を覗き返してきた。

 

 「じゃあこれ、シンちゃん(・・・・・)の。」

 「ありが・・・シンちゃん?」

 

 そんな呼び方されるのは、過去一度だけだった。

 

 「シンちゃん!シンちゃんだ!!懐かしいなぁ~!」

 「うおっと!」

 

 突然、その子はボディプレスをかましてきた。否、抱き着いてきた。

 

 「・・・え?誰?」

 「ゴモたんだよー!」

 「知らないよ!」

 「おぼえてないかな?昔近所に住んでた『黒田ミカヅキ』だよ!」

 

 黒田?ミカヅキ?記憶にある人物を片っ端から当てはめていく。えーっとえーっとと唸りながら顔をしかめていると、目の前の幼馴染(らしき人)もだんだん膨れっ面になってきていた。

 

 「んもー!」

 「ぬわー!」

 

 シンジは生命の危機を感じ取った。それがシンジの脳を覚醒させたのか、はたまた死に瀕したことで走馬灯を覗いたのか。

 

 「ミカヅキ?ミカ?ミカちゃん?」

 「そう!ミカちゃんだよー!」

 「ぐえー!」

 

 思い出せたところで結局絞められた。辛うじて意識を飛ばさずに済んだが、でもそれ以上に嬉しかった。

 

 「ミカ、怪獣娘になったのか。」

 「そうなんだよー!今はゴモたんで通ってるけど。」

 「大怪獣ファイトちょっと見てたけど、まさか知り合いが出てたなんて思わなかった・・・。」

 「見てくれてるの?!うれしーなー!」

 「なんというか・・・変わったな、ミカ。」

 「ふっふーん、今の私は元気なゴモたんなのだよー!」

 「あばばばば」

 

 今度は振られ揺さぶられ目を廻すことに。

 

 これが彼女たちとの出会い、そして再会だった。ここから、濱堀シンジの運命は動き出す。




 そもそも雨降ってたら展望台から外見えないんじゃないのかとか言わないで。どんな構造してんだとか言わないで。ちなみに大展望台のある150mの地点から落ちると、大体6秒ぐらいで地面に激突する。のんびり走馬灯流してる余裕すらない。

 執筆中に2期決定されてビックリしたね。キングジョーさんも出てくるしこれは見逃せない!でもそれと同じくらい『ここではこうう書いてるけど、後から発表された設定と齟齬が発生するぞぐぬぬ』ってなってしまう。まあ気楽にいこうか、所詮二次創作だ。

 ネタ解説

 濱堀シンジ:苗字の由来はハマーとボリスから。名前の方は呼びやすい名前を意識してつけた・・・かったんだけど、どうしても碇さんのシンジ君が思い浮かぶ。庵野監督もウルトラマンが好きなことで有名ではあるけど。

 東京タワー:特撮ではしょっちゅう壊される建造物の筆頭候補。そんな東京タワーも一度だけ怪獣に勝ったことがある。相手は誘拐怪人ケムール人。弱点であるXチャンネル光波を照射され、溶けてしまった。しかしその3話前のガラモンの二度目の侵略によって破壊されてしまっているけど、たった三週間で修理されたんだろうか?

 アーチ部分が40m:40mと言えばちょうどウルトラマンの身長に等しい。じゃあその展望台と同じぐらいの高さに顔があったガラモンや、展望台のあたりを掴んでいたベロクロンは一体何なのか。ひょっとすると、頻繁に怪獣に壊されるようになったから、再建しやすいようにミニチュアの東京タワーだったのかもしれな

 雨男:特撮にしろアニメにしろ、雨のシーンには印象的な場面が多い。ウルトラ的一番はムルチの回だろうか。

 マユちゃん:執筆当初特に気にしていたわけではなかったけど、ウルトラマンジードにもマユちゃんって女の子がいる。ひょっとすると、この親子は伊賀栗さんだったのかもしれない。


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怪獣娘と少年

 「へー、ゴモたんとシンジさんにそんな関係が・・・。」

 「そうなんだよー!ホントびっくりしちゃった!」

 「痛いから!」

 

 ベシベシと背中を叩いてくる幼馴染に苦言を呈するシンジと、怪獣娘が4人並んでハンバーガーをかじっている。と言っても、セットメニューを食べているのがゴモラとミクラスだけだが。

 

 「それで?シンちゃんは何しに東京にきたのん?」

 「ん、うん。手紙が来たんだ、父親から。」

 「お父さん?」

 「そう、『遺産』を受け取りに来いって、それだけ。」

 「『遺産』!財宝とか山とか満漢全席とか?!」

 「最後のはなんか違うと思うよミクちゃん。」

 「お金持ち、なんですね?」

 「いや、そんなことはなかったよ。子供の頃は貧乏だったし。」

 

 今もだけど、と小さく付け足す。実際シンジは今コーヒーしか飲んでいない。本当は水だけでよかったけど、女の子たちのいる手前、そんなみみっちい真似ができない。要するに見栄を張りたかった。高楊枝はくくったが、胃は抗議を求めてキュウと鳴いた。

 

 「ん?シンちゃんお腹すいてる?はい、あーん。」

 「いらないよ・・・。」

 「いいからいいから、あーん。」

 「あっ・・・あー・・・。」

 

 されるがままにナゲットを口に突っ込まれてしまった。そもそもの力に差がありすぎて抵抗すらできない自分が恥ずかしかった。こんなことなら、ご一緒にポテトされておけばよかったと後悔した。

 

 「お?あげる!」

 「いらないから!」

 「ミクさん、シンジさん困ってますから!」

 「ウィンちゃん的には、男の子同士でやってるのがいいのかなー?」

 「べべべべつにそういうわけでは!」

 

 牛丸ミク、通称ミクちゃん。この子は恐らくミカと同じタイプの人間だと判断した。ダム子もといウィンちゃんこと白銀レイカ、はそのストッパー、けどちょっと不安が残る。

 

 「じゃあここいらで、再会を祝して一発芸やってみようか!」

 

 「「「アギちゃん(さん)が!」」」

 「うひー。」

 

 アギちゃんこと宮下アキは・・・いじられキャラ?とにかく、いい子たちだ。とても先ほどまで戦っていた怪獣娘さんだなんて思えないほど、ごく普通の女の子たちだ。越してきて早々に友達が出来たのは素直に喜ぼう。

 

 「さてっと、僕もうそろそろ行くよ。」

 「あっ!そういえばもうすぐ大怪獣ファイトが始まっちゃう!」

 「ではこの辺りでお開きにしましょうか。」

 「そだねー、行こっかシンちゃん!」 

 「なんで?」

 「なんでって、シンちゃんが行こうって言いだしたんじゃない?」

 「それはそうだけど、僕はついてきて欲しいなんて一言(ひっとこと)も言ってないゾ?」

 「そこはホラ、私たち友達だし?いつでも一緒じゃん?」

 「遺産が手に入っても何もあげないぞ?」

 「えー。」

 「そのつもりだったのかよ!そもそも、多分金目のものじゃないよ?」

 「どうしてそう思うんですか?」

 「もしそうだったら今こんな苦労(びんぼう)してないはずだし。」

 (たしかに。)

 

 おこぼれが目当てだなんて、そういうわけではないというのはわかっている。ミカなりに心配して付いてきてくれるのだろうと。だったら断る理由もないし、連れてきてもいいだろう。決して心細かったとか、そういうのではない。

 

 「それで、どうして君たちまでついてきているのかな?」

 「だいじょうぶ!大怪獣ファイトは録画してあるから!」

 「ミクちゃんが行こうって言うから。」

 「一人で行かせるのも不安なので・・・。」

 

 結局3人も付いてきていると気づいたのは、駅の改札でレイカが引っかかった時のことであった。

 

 (アキバに寄った分の、電車賃のチャージを忘れていました!)

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「ここか。」

 「ほへー、おっきいお家だね。」

 

 手紙で記された場所には、家と言うには少々大きい屋敷が建っていた。傾きかけた陽に逆側から照らされ、その巨体をより一層影で大きく見せながら、やってきたシンジたちを迎える。

 

 「土地代だけでいくらしてるんだろうね?」

 「一坪200万はしてるんじゃないかな?」

 「やっぱお金持ちなんじゃん?」

 「あー、相当悪い事したんだろうな。」

 「えぇっ・・・まだそうと決まったわけでは・・・。」

 「悪い事でもしなきゃこんなところに家が建つはずがない。」

 

 全国のいいことをしながら都内に豪邸持ってる人ごめんなさい。

 

 「じゃ、入ろうか。」

 

 そう言い切るよりも早くシンジは門に手を添える。が、帰ってきた反応は全くの『暖簾に腕押し』だった。

 

 「お待ちしておりました、シンジさま。」

 「あらっ?」

 

 シンジが戸を開けるよりも早く中から開けられ、思わず肩透かしを食らった。

 

 「シンちゃん!」

 「大丈夫、ですか?」

 

 その勢いは止まらず、そのまま前へと倒れ込んでしまった。するとどうなるか。

 

 「あちゃ~。」

 「あわわわ・・・。」

 

 自分を出迎えたその人を、押し倒す形となった。これが、相手が女の子だったらまだよかっただろう。(全然よくない)だが男だ。こんな画を誰も求めてはいないだろう。

 

 「ハァ・・・ハァ・・・・コレハ・・・。」

 「ウィンちゃん?」

 「はっ!いえなんでもありませんよアハハハ・・・。」

 

 一人いたようだ。

 

 「えっと、ごめんなさい。」

 「いえ、大丈夫です。お待ちしておりました、シンジさま。」

 

 立ち上がって埃を払うと、澄ました顔で仕切り直しとばかりにリピートした。

 

 「そちらの方々は?」

 「友達です、一緒に入れてもらってもよろしいですか?」

 「構いません、お茶の用意をします。」

 「いいね!お菓子もあるかな?」

 「ミクちゃんさっきハンバーガー食べたばっかりなのに・・・。」

 

 後ろが賑やかなおかげで、シンジも気楽でいられた。この気分は後の選択にも影響を及ぼしていた。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 一行は通された部屋でお茶とお菓子を楽しみながら待つこととなった。

 

 「それにしても、人が住んでるような気配が全然ないね。」

 「掃除は行き届いてるみたいですけれど。」

 

 部屋の棚には立像のオブジェや、飛行機・車といった模型。それと(なん)かの記念の楯が綺麗に並べられている。埃が積もっているわけでも、チリひとつすら落ちていない。

 

 「あの人だけが住んでるんじゃないかな。見た目執事っぽし。」

 「完璧執事ってやつ?アニメみたいじゃん!ねーウィンちゃん?」

 「そ、そうですね・・・執事に攻められるうら若きご主人・・・いや、そう見せかけて・・・ゴニョゴニョ。」

 

 なにか戯言が聞こえてくるが無視。どういうわけか、いやどういうわけもこういうわけもないが、この家は丸ごとシンジに譲渡されたのだそうだ。あの執事、『チョーさん』と呼べばいいらしい、がそう言った。家の管理は全て、あのチョーさんに任せられるよう、シンジの父ソウジより命令されているのだと言う。

 

 「お待たせいたしました。」

 

 もう一つ、彼には重大な秘密がある。彼はロボットなのである。ミカが『証明してみてよ。』と言ったものだから、顔のカバーを外して中身(・・)を見せつけられてしまった。結果シンジは夜中トイレに行けなくなった。

 

 まあそれはともかくとして、部屋に戻ってきたチョーさんは、金属製のケースを机に乗せた。

 

 「こちらが、ソウジ様より仰せつかった『大いなる遺産』でございます。」

 「この家だけじゃないのか。」

 「この『大いなる遺産』と比べれば、この家屋の価値も霞むと、ソウジ様はおっしゃっておりました。」

 

 一坪200万の豪邸よりもすごい、すごい遺産だって?そりゃすごいけど正直嬉しくない。「嫌な予感がするなぁ。」と口では言っているが、内心好奇心もある。旅行やイベント前に不安を感じるけど、しっかり楽しむタイプなのだ。

 

 「すっげーじゃん!見せて見せてよー!」

 「ミクちゃん、落ち着いて。」

 「そうですよ、これはシンジさんの物なんですから。」

 「ちなみに、受け取らないって選択肢は?」

 「あります。」

 「え?受け取らないの?」

 「だって、絶対なんかあるだろうし・・・。」

 

 「じゃあアタシがもらう!」

 「いやいやここは私が!」

 「・・・じゃあボクも。」

 「あっ私も立候補します!」

 (この流れは・・・。)

 

 知っているし、アピールもされている。お膳立てされたからには乗らなければいけない、しかし受け取りたくもない・・・。

 

 「じゃあ僕が。」

 「「「「どーぞどーぞ。」」」」

 

 乗った。

 

 「まあまあ、一目見てから決めてもいいんじゃないかな?」

 「そうそう!まずは当たって砕けろだよ!」

 「砕けたくないなぁ。」

 

 そう言いつつケースに手を伸ばす。思わず「軽っ。」と声が出たが、ますます不安と好奇心を加速させた。

 

 「じゃ・・・開けるね。」

 「ゴクンッ・・・。」

 (ゴクンって口で言う人初めて見た。)

 

 ケースに備えられたカギを外し、ゆっくりと開ける。

 

 「うおっ、まぶしっ。」

 「何の光!?」

 

 ケースの中から、目の眩むような光が漏れだしてきた!同時、ドキドキとワクワクを高めるような音楽も響いてくる。シンジは、その『光』を確かに掴んだ。

 

 

 

 それは『運命の光』だった。

 

 

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「で?」

 

 所変わってGIRLS本部、その談話室。

 

 「なんだったんだその勇者が宝箱を開ける時のような演出は?」

 「ケースに備えられてた機能だったようです。」

 

 ホラ、と件のケースをアギラが開け閉めしてみせる。ピカピカ眩しいし、うるさい。

 

 「随分凝った仕掛けだな・・・。」

 「オルゴール、でしょうかねぇ?」

 (実用性を重視したオルゴール?)

 「それで、その『大いなる遺産』とやらを持って、ソイツも連れてきたってわけか。」

 「はい、今検査されているところなんです。」

 「怪獣娘に関わるアイテム・・・か。」

 

 ふーんと顎に手を添える彼女は、鍛え抜かれた両腕と尻尾のリボンがチャームポイントのレッドキング。大怪獣ファイトの初代王者にしてアギラ達の頼れる先輩である。かわいい。

 

 「お待たせー!おっ、レッドちゃんもいたんだ!」

 「おうゴモラ、そいつが例のミラクルマンか?」

 「ミラクルマン?」

 「東京タワーから落ちて生還したんだって?聞いたぜ。俺はレッドキングってんだ、よろしくな!」

 

 そういえばそんなこともあったなぁ、ミカとの再会の衝撃が大きすぎて忘れかけてけど。握手を交わしながらぽつりと思い出す。

 

 「それで、そのアイテムってのは?」

 「あっ、これです。」

 

 シンジは左腰のホルダーから、手のひらサイズの機械をとって見せた。

 

 「これか・・・なんかソウルライザーに似てるな。」

 「ソウルライザーよりちょっと厚いですけど。」

 

 ソウルライザー、それは怪獣の魂(カイジューソウル)を呼び覚まし、怪獣娘へと変身させるアイテムだ。

 

 「父の研究書類によると、これの名前は『バディライザー』と言うそうです。」

 「『バディライザー』・・・。他には?」

 「何も、名前しかわからなかったんです。」

 

 レッドキングの手から返されたバディライザーを左手に、右手はは反対側のホルダーをまさぐる。

 

 「それと、わからないことがもう一つ。」

 「なんだそりゃ?カードか?」

 「何も描いていないカードです。これがついていました。」

 

 ただ赤いだけの、絵のついていないカードが10数枚。

 

 「多分バディライザーで読み込むんだと思うんですが、やってみても何の反応もないです。」

 「ふーん。」

 

 ライザーの読み取り機と思わしき場所にかざしてみるも反応はない。そもそもどうやって電源を入れるのか、どうやって動かすのかもわからない。

 

 「仮にソウルライザーのそっくりさんなんだとするとよ、どうすればいいのかもその内わかるんじゃないのか?」

 「ソウルライザーはどうやって動かすんですか?」

 「説明しよう!・・・アギちゃんが。」

 「ふぇっ!?え、えっと・・・。」

 「アギちゃんがんばー!」

 「変なプレッシャーかけないで!」

 

 「私たちが怪獣だったころの記憶や本能が、今の私たちに影響を及ぼすことがあって、それが『カイジューソウル』。そのカイジューソウルが高まった時に、自然と体がソウルライザーを動かして、怪獣娘に変身できる・・・かな?」

 「そうそう!あたしの場合は『もっと強くなりたい』って思いで、ウィンちゃんの場合は・・・。」

 「ウィンちゃんは『おまピト』だったのかな?」

 (おまピト?)

 「『知識欲』!知識欲です!あは、あはははは・・・。」

 (何故焦る?)

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「つまり、自分の好きな事ややりたい事が鍵ってワケだ。」

 「そんなこと言われてもなあ。」

 

 一人河原で物思いにふける、一雨来そうな空模様である。

 

 (好きな事ややりたい事・・・ってなんだろう。)

 

 趣味と言えばパズルがあるけど、そんなんで覚醒なんかできるの?

 

 「とりあえず1000ピースを買うか。」

 

 やる気はあるらしい。

 

 「こんなところにいたんだ。」

 「ん?宮下さん。」

 「アギラでいいよ。」

 

 宮下さん、もといアギさんがいつの間にか背後にいた。

 

 「どうすればいいのかわからない、って顔してるね。」

 「そんな顔してた?」

 「いや、そうじゃなくて・・・。ボクもそうだった。」

 「え?」

 「自分が何をしたいとか、何に夢中になればいいのかとか、わからなかった。」

 

 シンジの隣に腰かけ、思い出すように語りかけてきた。遠くで子供の声だけが聞こえている。

 

 「シンジさんは、ボクと似てる気がする。」

 「え?!」

 「あっ、嫌だった・・・かな?」

 「いえいえいえ、どこが?どうして?」

 「その掌の傷。」

 「・・・?これ?」

 

 タワーの事件でついた傷。まだ包帯は取っていない。

 

 「あの時、ボクがシンジさんの立場だったとしても、同じことをしてたと思う。それが、ボクのカイジューソウルだったんだ。」

 「ふーん・・・。」

 

 「シンジさんの場合、ボクと違って答えが見つからないんじゃなくて、もう持ってるんじゃないかなって思う。自分が気づいてないだけで。」

 「そう・・・かな。」

 「ボクの気のせいかもしれないけどね。それだけ言いたかった。」

 「え?」

 

 それだけのために?とシンジが言いかけたところで、アギさんから音が鳴る。

 

 『アギアギ!シャドウがあらわれましたぁ!』

 「わかった、すぐに行くね。」

 「シャドウって、昨日の・・・。」

 「うん、人類の脅威。ボクたち怪獣娘にしか倒せない敵。行かなきゃ、じゃあね。」

 「あ、アギさん!」

 

 走り出した背中を、思わず呼び止めてしまった。

 

 「えっと、その・・・ありがとう!それから、が、がんばって!」

 「・・・うん!」

 

 拳を握りしめ、エールを送った。今のシンジにはそれしか出来なかったけど、アギラは笑顔で応えてくれた。

 

 戦いに向かう背中を見送り、再び一人となったシンジ。違いがあるとすれば、今は立っているということ。

 

 「答えはもう、持ってる・・・。」

 

 包帯の巻かれた掌をじっと見つめる。ふと、腰に震えを感じて目線を移すと、バディライザーが光っていた。

 

 「こいつ、動いてる!のか?」

 

 タッチすると、ぐるぐると画面が切り替わって声がする。

 

 『バディライザー・スタンダードモードの起動を確認しました。』

 「その声は、チョーさん?起動を確認したって、やっぱりこれ動いてるの?」

 『そうです、来るべき時が来た、ということです。』

 「来たのはいいけど、どこに行けばいいのさ?」

 『マップをご覧ください。』

 

 パッと表示された周辺の地図に、点滅している場所がある。ここに行けということだろうか。

 

 「なんか釈然としないけど、別にいいか。」

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「もうちょっとだな・・・。」ゼェゼェ

 

 折り畳み自転車でも携帯できればという感想が沸き上がったが、それはさておき。この先に一体何があるのか、肝心なことを機械は教えてくれない。目的もわからずに走らされるのはかなりしんどい。

 

 「ちょっと休むか・・・ん?」

 

 日陰に腰かけようとしたその矢先、たまたま目に入ったのはモゾモゾと動く黒い影。野良猫かな?それとも宇宙から来た殺人昆虫?それだったらどんなによかったものか。モーターを持っていなければ襲われないから。

 

 「あれは・・・あっ!」

 

 シンジが記憶を掘り起こすよりも先に、影は立ち上がってぐわっと来た。昨日出くわしたばかりで記憶にも新しい、シャドウだ!

 

 「逃げろっ!」

 

 口がそう動くよりも速く走りだした!が、既に体力を消費している以上、いつまで持つかわからない。道を曲がって撒くか、それとも隠れるか。いずれにせよ焦ると失敗する。高いところでバランスを崩さない秘訣は何か?手の力を抜かずに、下を見ないこと。シンジは後ろを向いてしまった。

 

 「あっ。」

 

 そして背筋が凍り付いた。シャドウは目前、スレスレのところにまで迫っていた。運が良かったのは、転んだ拍子にシャドウの突撃を躱せたこと。

 

 「あ、足が・・・。」

 

 次は足を捻挫した。衝撃で掌の傷も開いたし、散々だ。もっと恐ろしいのは、シャドウが今度こそはと狙いを定めてにじり寄ってきている事。

 

 「もう・・・ダメか・・・うわぁあああああ!!」

 

 目を閉じてみっともない叫びをあげた。

 

 「とぃやっ!」

 「あああああ・・・あぁ?」

 「シンジさん、大丈夫?」

 

 神の助けか?地獄に仏か?いいえ、彼女は怪獣娘!

 

 「アギさん・・・。」

 「どうしてここに?ここあぶないよ。」

 「実は・・・バディライザーが反応して、ここに。」イテテ

 「ホントだ・・・と、話をしている場合じゃないね。」

 

 わらわらとシャドウが沸いて寄ってきた。応戦するアギラに背を守られ、シンジは足を引きずりながら物陰に隠れる。

 

 「てやぁ!」

 

 「すごい・・・。」

 

 素早い身のこなしと、ツノのパワーであっという間に片づけていく。これがあの寝ぼけ眼で大人しそうな女の子の力なのか?

 

 「おぉおおおおおお!そいやぁ!」

 

 「あれが『怪獣娘』・・・。」

 

 最後のシャドウを仕留めたアギラに抱えられながら、シンジは退避する事となった。怪獣娘のその力をまざまざと見せつけられ、自嘲するように言葉を漏らす。

 

 「一体なんの為に来たのか・・・。」

 「今は危険だから、落ち着いたらまた来よう?」

 「何もできないなんて・・・。」

 「シャドウは怪獣娘にしか倒せないから、仕方がないよ。」

 

 人間には向き不向きがある。そして可能なことと不可能なことがある。シンジは不可能な人間だ。決して二次元人の血を引いていたり、地底から使命を帯びて来たわけでもないし、宇宙人に力を授けられたりもしていない。

 

 ただ一つ、違うところがあるとすれば。『光』を持っているということだ。

 

 「うわっと!?」

 「この揺れは・・・!」

 

 『ギキキョアアアアアアアアアアアアアアアン!!!』

 

 突如、地面が揺れはじめた。普通の地震とも性質が違うそれは、道路に大きな穴を開けて、正体を現した!

 

 「でかっ!」

 「シャドウ・・・ビースト!」

 

 今度の敵はデカすごだッ!丸太のように太い四つ足に、2人が見上げるほどの巨体をもたげ、シャドウビーストは迫ってきた。

 

 『ギャアアアアアアアアアアアアン!!!』

 

 「危ない!」

 「ギャッ!」

 

 寸でのところでシンジはアギラに突き飛ばされ、ゴロゴロと転がりながら離れて行った。

 

 「てってて・・・アギさん・・・?」

 

 『ギョォオオオオオオオオオオオオ!!!』

 

 「ぐぅうっ!」

 「アギさぁん!」

 

 シンジを逃がした結果、アギラはシャドウビーストの足に捕まってしまった。ギリギリと体重をかけられ、道路にもヒビが入っていく。

 

 「うぅっ・・・逃げて・・・早く・・・!」

 「アギさん!」

 「ボクのことはいいから・・・行って・・・あぁっ!」

 

 アギラをいたぶり、弄ぶようにじっくりとシャドウビーストは力を込めていく。でも今なら、足を怪我していても逃げられる。そうすれば助かる。そうするしか出来ない。

 

 (僕は・・・ただの人間なんだ。戦いようがないんだ、逃げたって仕方がない・・・。)

 

 ここに来たことを心底後悔した。こんなに辛い思いをすることも、その必要もなかった。

 

 (けど・・・。)

 

 その時、シンジは足元に転がっていた空き缶をシャドウビースト目がけて投げつけていた。自分が何をやっていたのかわかったのは、甲高い音を立ててシャドウの顔に当たった時だった。

 

 「ただの人間だから、出来るんだよ・・・こっちだァ!」

 

 『ギュルルル・・・。』

 

 「うっ・・・どうして・・・。」

 

 興味の対象が移ったのか、のしのしとシンジの方へと歩みを進めてきた。啖呵を切ったはいいけど、その先の事は何も考えていない。そうか、ミカが言っていた『一発ギャグ』とは、アドリブ力を鍛える訓練だったのかと現実逃避を始める始末である。

 

 「逃げろっ!」

 

 『ギュォオオオオオオオ!!!」

 

 激痛が走る足に鞭打ち、必死で駆ける。やがて追い付かれて踏みつぶされようとした時、アギラがシンジをさらって横っ飛びに跳ぶ。

 

 「大丈夫?」

 「なんとか・・・。」

 

 今は、お互いに生きていることを確かめ合った。もう残された時間はあとわずかだ。アギラにシンジを連れて逃げられる余裕もない。

 

 「行ってくる・・・ね。」

 

 それでも、アギラは立ち上がる。

 

 「アギさん・・・。」

 

 

 この絶望的な状況にあって、シンジは言葉に詰まった。胸の内には様々な感情がこみ上げてきた。

 

 

 「がんばって・・・!」

 

 その中で、シンジは『心からの言葉』を口にした。

 

 

 

 

 

 

 そしてそれは、これから起こる奇跡の鍵だった。

 

 

 

 

 

 「!これは?!」

 「なんの光?」

 「バディライザーが・・・。」

 

 光を放ちだした。もう一つ、右腰のホルダーが暖かさを感じた。

 

 「白紙のカードに・・・絵が!」

 「AGIRA・・・!」

 

 大きなトサカを持った、トリケラトプスのような怪獣のカードが入っていた。すぐに理解できた、これが『アギラ』だと。

 

 「やってみよう、一か八か!」

 「うん!」

 

 2つのアイテムを手にした時、体が勝手に動いた。バディライザーの前面にカードをセットし、トリガーを引く!

 

 「「バディライド!」」

 

 「「アギラ!!」」

 

 2人そろって腕を前に掲げ、声が重なる。バディライザーのボディが二つに分かれ、画面に星のマーク(ペンタグラム)が灯り、一層強く発光する。

 

 「「はぁああああああああああああっハァッ!!」」

 

 さらにカードが光子化し、一瞬怪獣の姿を象ったかと思うと、その光がアギラに降り注いだ!

 

 「「おぉおおおおおおおおおおお!!!」」

 

 怪獣の本能が体にみなぎり、叫びとなってあふれ出す!

 

 「で、どう変わったんだろ?」

 「力が・・・みなぎってくる!」

 「そっちだけ?」

 「うん・・・でも、これなら!」

 

 『ギャアアアアアアアアアアン!!!』

 

 ようやく標的を見つけたシャドウビーストが襲い掛かってくる。それに立ち向かうべく構えたアギラの体から、一瞬オーラのような光が迸ると、シンジはアギラの姿を見失った。

 

 「えっ?!」

 「速い・・・今までにないくらい!」

 

 アギラはシャドウビーストの背後に一瞬で移動していた。シャドウビーストは尻尾を振り回して応戦するが、アギラはそれらを見切って突貫する。

 

 「でぇえええい!」

 

 『ギャワアアアアアアアアアアアン!』

 

 腹に突撃を喰らったシャドウビーストはもんどりうって倒れた。今までの苦戦が嘘のような攻撃だ!

 

 「パワーもすごい・・・。」

 「アギさん、次で決めよう!」

 「うん!」

 

 シンジがホルダーから、今度は黄色いカードをもう一枚取り出し、セット、トリガーをひく。

 

 「「ダイノダイッシュ!!」」

 

 怪獣のアギラの姿が再び光子の姿で現れると、それを纏って怪獣娘のアギラが走り出す!その間にシャドウビースト体勢を立て直し、大口を開けて迎え撃ってきた。

 

 「「いっけぇえええええええええ!!」」

 

 しかしアギラは止まらない!光のような速さでシャドウビーストの向こう側(・・・・)にまで突っ込んだ!

 

 「やったか・・・!」

 

 ズン・・・ズン・・・と数歩歩いたところで、シャドウビーストは活動を停止した。どうやら自身の頭が吹き飛ばされたことに、最後まで気づいていなかったようだった。

 

 「勝った・・・!」

 「・・・助かった。」

 

 シュタッとアギラは地面に着地し、対照的にシンジはその場にへたり込んだ。バディライザーの光もその時消えた。

 

 「シンジさん、大丈夫?」

 「うん・・・なんとか。」

 

 へたりこんだまま、自分を心配する声に応える。そして今できる限りの精一杯の笑顔を忘れない。

 

 「おーい!アギちゃーん!」

 「すごく光ってましたけどー!」

 

 遠くから声が聞こえてきた。事はもう済んだんだろう。心なしか澄んだ気持ちで寝転がり、右手に携えた機械を見つめる。そこにはアギラのカードがある。

 

 「これが・・・僕にできること。」

 

 手の向こうに広がる空は曇っていた。けれども切れ間からは光が差し込んで綺麗に見えた。だからシンジも信じることにした。困難を乗り越えた先に見える、向こう側の光を。

 

 

 

 

 

 「・・・おもしろい。」

 

 しかしその時、その様子を見つめていた影の存在に気づく者はいなかった。




 そこで問題だ!この捻られた足でどうやってあの攻撃をかわす?

 ①ハンサムのシンジは突如逆転のアイデアがひらめく

 ②誰かがきて助けてくれる

 ③かわせない。現実は非情である。

 本当は入れたかった

 くぅ疲!自分の遅筆さに泣く。もうこれで完結していい?2話の時点でこんなペースじゃあこの先思いやられるよ・・・でも、行きつくところまでは行きたい所存。

 ネタ解説

 チョーさん:モデルはロボット長官。一応お手伝いロボットという立ち位置だけど、必要とあらば戦闘だってこなせる。見た目は若いけど、某蝙蝠男や某無敵鋼人の完璧執事を思い浮かべて欲しい。レムのように人間っぽい心が芽生える予定はない。

 レッドキングさん:かわいい。

 バディライザー:ソウルに対するバディ、相棒という意味のバディのダブルミーニング。エクスデバイザーを想像してもらったらちょうどいい。

 二次元人の血、地底からの使者、宇宙サイボーグ:ご存知、ミラーマンとファイヤーマンとジャンボーグA。ジード劇場版にも出てきたのが記憶に新しい。もともと彼らとウルトラマンAを合わせて『銀河連邦』を組む予定だったらしいがうやむやに。時代を経てUFZでそれは実現した。

 今度の敵はデカすごだっ!:ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナのキャッチコピー。でも正直強敵感はデスフェイサーの方があった気が・・・何気に、CGで描かれた巨大なラスボスというのはこいつがクインモネラが元祖?

 ペンタグラム:四次元殺法コンビの白くて翼のある方の名前がペンタゴンだが、ペンタゴンは五角形のことであり、そのペンタゴンの顔に描いてある五芒星(星マーク)はペンタグラムである。ペンタグラムの中には黄金比が隠されており、きっと黄金回転の力が眠っているんだろう。



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怪獣出んか?

 サブタイトルが思いつかなかった挙句、こぉんな最低な親父ぃギャグでお茶を濁そうとする最低のダメ☆ダメ作者など必要はない!この世から消し去ってしまえ~!ピロロロ


 「バディライド!」

 「「アギラ!」」

 

 ・・・。しかしなにもおこらなかった!

 

 「ダメだ。」

 「ダメだね・・・。」

 「うーん、なにが足りないんだろうね?」

 

 騒動から一夜明けて、GIRLS本部のトレーニングルームに一同は集まっていた。本日の主役は昨日覚醒した2人。その2人を囲んで祝賀会・・・ではなく、実験が行われていた。少なくともミクは祝賀会のつもりだったらしいが。

 

 「一度起動できたってことは、なにか切っ掛けがあるはずだよな?」

 「シンジさんはどんなことをやったんですか?」

 「えっと・・・特に何も?強いて言うなら『がんばって。』って言っただけですけど。」

 「じゃあ、もっと熱く言ってみればいいんじゃないかな!」

 「もっと、熱く・・・。」

 

 

 「頑張れ頑張れできるできる絶対できる頑張れもっとやれるってやれる気持ちの問題だ頑張れ頑張れそこだ!そこで諦めるな絶対に頑張れ積極的にポジティブに頑張る頑張る北京だって頑張ってるんだから!」

 (コピペ乙、です。)

 「どうだ?頑張る気持ちになってきたか?」

 「いえ、全然。」

 「なんかお腹すいちゃったし、ご飯食べ行こうか?粉もん!」

 「そこはお米じゃないんだゴモたん!」

 

 などと、真面目なのか不真面目なのかわからない問答をしていると、そこに赤い髪の非常にかわいい女の子がやってきた。ものすっっっっごくかわいい。

 

 「みなさ~ん!シンシンの検査結果が出ましたよ~!」

 「シンシン?」

 「なんかパンダみたい。」

 

 この赤くてぴょんぴょんしているかわいい子はピグモンさん。シンシンというのがシンジの事なのは言うまでもない。スチール星人の怪獣娘がいれば、このネタでもう少し引っ張ってたけどやーめた。

 

 「まずですね~、シンシンは怪獣娘ではありません!」

 「知ってる。」

 「だって男だし。」

 「でも、身体測定の結果から推察されるに、『怪獣娘が人間の時』に相当する身体能力があるようです。昨日の怪我ももう治ってますし。」

 「えっ、そうだったの?じゃあシンジさん何者?」

 「少なくとも、一昨日までは普通の人間だったよ。こうなったのは、今日か昨日のこと。」

 「やっぱり、昨日のことが影響しているんじゃないかな?」

 「『バディライド』ですか・・・。」

 

 『バディライド』、たしかにシンジはあの時そう言った。それによってアギラは超絶パワーアップを成し遂げ、単身巨大なシャドウビーストを倒したのだ。では、あの時シンジの身には何が起こっていたのか?

 

 「あの時、僕はアギさんと繋がっているような感覚だった。」

 「ボクもそう思ってた。背中を押されるような、頼もしさがあった。」

 「なるほど、繋がりか。」

 「つまり、アギちゃんとシンちゃん繋がって、お互いに力を与え合ってたってことだね!」

 「僕、そんな大それた力なんて持ってないよ?それこそ、バディライザーの力なんじゃないかな?」

 

 それとも、このカードの力なのか。怪獣の描かれたカードを取り出す。

 

 「資料映像で見たことがあります。それが、『実物の』アギラさんですね。」

 「うん、がんばってって言った時、このカードが現れたんだ。」

 「おー!なんかかっこいいじゃん!あたしもほしー!」

 

 これとは別に、アギラの描かれた黄色いカードも入っていた。これが怪獣娘の潜在パワーをさらに引き出すのだろう。

 

 「それから、シンシンの身柄はGIRLSが預かる事となりました!」

 「へー、そうなんだ。」

 「まあそうなりますよね。」

 「仕方がないね。」

 「待って。」

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「まさか拒否権すらないとは。」

 「事態が事態ですから。」

 「GIRLSにいればバイト代も出るし、一石二鳥だよ!」

 「それはありがたいけど、それとこれとは・・・。」

 

 と、口では言っているがそこまで反感は持っていない。納得のいく理由と説明をもらったからだ。

 

 「任されたからには、まずこいつ(・・・)の使い方を解明しなくっちゃね。」

 「元々シンジさんのものとはいえ、自由に扱わせてもらえてよかったですね。」

 「うん、遺産としてどうかと思ってたけど、ちょっと気に入ったよ。ちょっとだけね。」

 

 シンジには、バディライザーを使用して、怪獣娘たちのサポートを行うことを依頼された。原理がどうあれ、戦力アップになることは間違いないのだから、これを放っておく手はない。

 

 「さっそくですが、シンシンと行動を共にするパートナーを決めたいと思いま~す!」

 「はいはーい!あたしやりたいあたしやりたーい!」

 「痛い、痛いからそんな掴まないで!」

 「一緒に行動するからには、体力と根性もしっかりつけてもらわねえとな!オレがみっちり鍛えてやるぜ!」

 「だから痛いって!」

 

 いくら少し強くなっているとはいえ、肉体派2人に組み付かれちゃたまらない。既に両方の腕がギリギリと悲鳴を上げている。

 

 「ちょっと2人とも、それじゃあシンジさんの体がもちませんよ!」

 「お?ウィンちゃんも立候補するの?」

 「いえそういうわけではありませんが・・・順当にいけばアギさんが適任なんじゃないかなと思いまして。」

 「ボクぅ?」

 「たしかに、今一番近いのはアギアギかもしれないですね~。ね?アギアギ。」

 「それはそう・・・かもだけど、シンジさんは?」

 「え?僕は・・・ちょっ痛いから!」

 

 ひょんなことから、世の男どもが涙を流して羨むシチュエーションに出くわした。ここにいる美少女6人から、一人をパートナーとして選べとお偉いさんが言うのだ。それもここにいるだけでなく、選択肢を広げればまだまだ増える。うわぁ、夢が広がりんぐ。

 

 などと、無責任なことが言えるのは他所の人間だけ。当の本人はと言うと、あまりの事態に色を好むどころか困惑の色しか出ない。誰を選んでも、他の人から恨みを買ったりするんじゃないのか。選ばれた方も選ばれた方で内心嫌なんじゃないのかとか。(両腕に掴まっている二人はその限りではないんだろうが)つまり『誰にしようかな?』ではなく『どうすればいいんだ?』というのが目下の悩みだ。

 

 と、そんな様子を後ろから(´・~・`)みたいな顔をして窺っていた人物が、シンジの頭に飛びついてアピールをしてきた。

 

 「私がやるー!私がシンちゃんの面倒みるー!」

 「ゴモたん?!」

 「ねね、いいでしょう!アギちゃん!」

 「う、うん。ゴモたんがやりたいっていうのなら・・・。」

 「やったー!」

 「お゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」

 

 チョークスリーパーだとかアイアンクローだとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてねえホールディングを味わい、今日一番の叫びをあげるシンジだった。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 数日後、とあるイベントホールでの一幕。

 

 「入場待機列はこちらでーす!4列になってお並びくださーい!」

 「走らないでくださーい。」

 

 ミカとの共同生活(?)が始まった。ミカはゴモラ、もといゴモたんとしてアイドル活動に勤しんでいるので、そのマネージャーのようなお仕事が日課となった。

 

 「でも結局アギさんも一緒なんだね。」

 「ゴモたんに何故か気に入られちゃってて・・・。」

 

 ゴモたんはその愛くるしいキャラとはっきりとした明るい性格で人気を博している。その待機列を捌ききってひとまずは一段落して、休憩室でお昼を食べている。

 

 「何人か女性のスタッフも見かけたけど、あれも怪獣娘さんなのかな?」

 「そうだね、GIRLSのロゴを持ってる人はみんな関係者だよ。」

 「怪獣娘さんからも人気なんだな。」

 

 すげぇよミカは。心の中でつぶやいた。

 

 すると一つ疑問がわく。僕っていったいミカのなんなんだろうか?接点は幼馴染で、今はGIRLSの見習いアルバイトとして一緒に仕事をしているというところ。

 

 「僕のとりえってなんだろう?」

 「何突然?」

 

 そもそも今ここにいられるのも、バディライザーを動かせたという一点だけ。そしてバディライザーを一番に手にできたのも、父からの遺産だからということだけ。

 

 「いや・・・僕以上にバディライザーを使いこなせる人間もいるんじゃないかな?って。」

 

 ありていに言えばこうだ。

 

 「えっと・・・。

 「ごめん、変な事言ったな。忘れて。」

 「エビフライもーらい。」

 「あ゛っ。」

 「ゴモたん、いたの。」

 

 最後にとっておいたエビフライを、横から掻っ攫われてしまった。

 

 「なんてことを・・・。」

 「変なこと言うシンちゃんへの罰だよーだ。」

 「聞いてたんだ。」

 「そりゃあ、いやでも聞こえるよね。こんなに大きな独り言されたら。」

 「痛い痛いぐりぐりするな。」

 

 右手の指でシンジの頬を刺しながら、いやみったらしく言って見せるが、そこまで不快感は感じない。

 

 「なになに?私の人気に嫉妬しちゃったとか?それとも幼馴染が誰かにとられちゃう~とか思ってたの?ねぇねぇ?」

 「そんなんじゃないっての!」

 「ほーん?じゃあなぁに?」

 「シンジさん、バディライザーがうまく使えなくて不安なんだと思う。あれから一回も成功してないから。」

 

 そうなのだ。あれから毎日暇を見つけては練習を繰り返してはいるのだが、一向に上手くいかない。

 

 「そんなことかぁ。大丈夫だって、一回出来たんだったらその内またできるようになるよ!まだ数日しか経ってないじゃない。」

 「それはそうかもしれないけど、もし1年経っても出来なかったらと思うと・・・。」

 「その時は、その時までに別の何かを見つければいいんじゃないかな?道って一つだけじゃないよ?」

 「ミカ・・・。」

 

 やっぱりすげぇよミカは。

 

 「お?惚れたかな?いやーゴモたんったら罪作りなんだからもー!」

 「自分で言うな自分で。」

 「ってわけで、シンちゃんの悩みが解決したところで、一発ギャグやってみよー!」

 「うぇええ?」

 

 あぁ、この流れもこの数日間何度も見て来たな。ミーティングが終わったら一発ギャグ、仕事が終わったら一発ギャグ、寝る前にも一発ギャグ、もはやお馴染みの展開だ。シンジもこの流れに乗るようになった。

 

 「シンちゃんが!」「アギさんが。」

 

 

 

 

 「あれ?」

 

 

 

 

 

 「わーい引っかかったー!自分は指名されないって安心しきってたー?その油断が命取りー!」

 「は?へ?」

 「シンジさん、ファイト。」

 「え?いや、え?」

 「ってゆーわけで!シンちゃんこの後のステージの前座よろしくね!」

 「ちょっ、おまっ。」

 

 この後、シンジが3分を懸けて考えた命がけのギャグは、わずかに会場の空気和ませることに成功した。その後、楽屋ではスプーンが思いっきり叩きつけられる音が響いた。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「そこのあなた、ちょっといいかしら?」

 「はい?」

 

 楽屋でひとしきり泣いた後、後片付けの為に廊下に出て少し歩いたところで、後ろから声をかけられた。振り返れば、・・・なんというか青い女性がいた。GIRLS関係者かな?

 

 「実はお話があって・・・。」

 「あっ、御免なさい、セールスはお断りなんです。」

 「ちがう!ちゃんと許可をもらって通ってきているわ・・・。私は、こういうものです。」

 

 と、名刺をとりだしてきた。名刺は受け取ったら読み上げて確認するのが社会人のマナーだ。

 

 「私立探偵事務所『ブルーコメット』の、天城ミオさん?」

 「以後、お見知りおきを。」

 

 GIRLSの所属ではない・・・けど、嘱託かなにかの人なのかな?

 

 「あなたも、怪獣娘さんなんですか?」

 「ええ、そうよ。今日はあいさつに来ただけだから、また会いましょう(・・・・・・・・)。」

 「どうもこちらこそ。」

 

 それだけ言うとミオさん去っていった。本当に、顔合わせしに来ただけだったんだろうか?ひょっとしたらミカやアギさんが何か知っているかもしれないし、後で聞いてみよう。

 

 「と、はやいとこ戻ろうか。また一発ギャグさせられちゃかなわん。」

 

 もらった名刺は本人の前ではしまわないのが社会人のマナーだ。名刺入れに入れるべきだが、生憎持ち合わせてはいない。GIRLSの社員証の中に挟んで、廊下をかけて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「濱堀シンジ、あなたは怪獣娘の希望の光か、それとも底知れぬ闇・・・かな?」

 

 天城ミオがそう問いかける。答えを知るものは、誰もいない。




 レッドキング「さすがダークネスファイブのリーダーだ!」
 ベリアル「や め ろ 。」

 一か所「これがやりたかっただけだろ」ってネタがあるけどわっかるっかなー?

 なお、今回小説版を読んでいないために、キャラ付けに不明瞭なところがあるにもかかわらず。ベムラーさんを出してしまったことを深くお詫び申し上げます。

 二次創作には原作への深い理解と愛とリスペクトが伴わなければならないという己のポリシーを曲げてでも、ここでベムラーさんを出すべきだと思ったことをここに懺悔します。可能な限りセリフは最小限にとどめて、キャラ崩壊などを起こさせないように努めます。

 小説版単行本化はよ。

 見返してみるとこの回だけ異様に短い。

 ネタ解説

 頑張れ頑張れry:山ちゃんはサデスを演じる時はまんまこの人をイメージしたそうな。特殊能力と言えば並外れた再生能力ただそれだけ、ひたすら格闘能力に優れているというのがシンプルに強い。殴るとみせかけて腕の銃を乱射してくるのが怖い。

 エビフライ:ゴモたんの中の人の出身が名古屋で、名古屋と言えばエビフライ。

 スプーン:銀のスプーン目に当てry

 天城ミオ:なんか思わせぶりなセリフだけど、別にこんなダークな人じゃなかった。


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いざお出かけ!

 「その人、きっとベムラーさんだ。」

 「ベムラーさん?たしか・・・一番最初に発見された怪獣娘さんだっけ?」

 「うん、今は私立探偵をやってるって聞いた。」

 「そう名刺には書いてあるね。」

 

 イベントは終わっても今日の仕事はまだ終わらない。ゴモラ宛てに届いた大量のファンレターやプレゼントの仕分けがある。

 

 「私立探偵が何の用なんだろう?聞いとけばよかったな。」

 「シンジさんの身辺調査とかじゃないかな?」

 「僕頼んでないよそんなの。」

 「そうじゃなくて、GIRLSからの依頼だったんじゃないかな。」

 「なら調べるべきは僕じゃなくて、父の方だろう。僕はただの一般市民だし。」

 

 一通のファンレターの封を綺麗に切り、中身を確認する。目を通しても毒はないので、綺麗に戻してボックスへ入れる。今のでちょうど30通目だ。

 

 「シンジさんのお父さんって、今どこにいるかわかるの?」

 「いんや、全く。あの家は一時期寝て起きるのに使っていただけらしいし、チョーさんはその時に作られたんだって。バディライザーだけは、最近海外から小包で送られてきたみたい。」

 「海外って?」

 「『フリドニア』って国らしい。他にも『ロリシカ』とか『ファロ』とか『オベリスク』とか、色んな所を転々としてたらしいけど。」

 

 後の二つは島の名前らしいが。父とチョーさんの間で、定期的に情報交換が行われていたらしい。自分の知らないところで、自分の情報が見知らぬ誰か(・・・・・・)に渡されていたのかと思うと寒気がする。

 

 「会いたい・・・とか思う?」

 「・・・全然。会ったところでなぁ・・・って感じ。」

 

 何を話せばいいのか。父のことを何も知らないのだから。

 

 「さっ、口動かしてないで仕事しよ。まだまだいっぱいあるし。」

 

 と、次の手紙を手に取って目を通すと、一瞬表情が凍り付いた。

 

 「どうしたの?」

 「いや・・・なんでもない。」

 「・・・よくあることだよ、そういうの。」

 「・・・『こういう人たち』がいるってことはわかってたけど、醜いね。」

 

 これ以上雰囲気が暗くならないうちに話を切り上げたが、余計に暗くなった。その手紙、否燃えるゴミを雑に封筒にしまうと、足元の箱へ投げ入れた。

 

 「今はこうでも、いつかは変わるよ。いや、ボクたちが変えるんだ。ゴモたんは特に頑張ってると思う。」

 「ミカは強いんだな。」

 

 つい先日まで、記憶の片隅にまで飛んでいた幼馴染の背中が、今は大きく見えた。

 

 「その言葉、直接本人に言ってあげればいいと思うよ。」

 「・・・恥ずかしいな。」

 「まぁまぁ。これも一歩を踏み出す修行だと思って。」

 

 ふふふ、といたずらっぽく笑って見せるアギさんにシンジは苦笑するが、おかげで落ち込んでいた気分も回復した。

 

 「アギさんも、ミカの影響を受けたんじゃないかな?」

 「そう、かな?」

 「うん、アギさんも優しいし、なんだかあったかいよ。」

 「も、もう!そういうのはボクに言うんじゃなくてゴモたんに言いなよ・・・。」

 

 一瞬赤面したかと思うと、ぷーっと頬を膨らませて抗議してくる。それからは特に言葉は交わさなかったけれど、つつがなく明るい雰囲気で最後までこなせた。ほんの一部、そういう人たちがいるだけで、いい人たちの割合の方が圧倒的に多い。

 

 『ハァハァ、ゴモたんの立派なツノ(意味深)prprしたいお///』

 

 ただやっぱりこういうのは許しておけないなぁ。今すぐ破り捨てたい衝動を抑えて、後でまとめて焚書するのだ。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「おしごとおーっわり!ごはん食べにいこー!」

 「かえりたい。」

 「せっかく名古屋に来てるんだから、名古屋に行こうよ!」

 

 と、今は観光中。この後食べ歩きにも付き合わされるので、目一杯腹は空かせておく。

 

 「ほら見てー、シャチホコー!アギちゃん並んで撮ってくる?」

 「ダメだよ!」

 

 名古屋城、金のシャチホコで有名であり、名城、金鯱城、金城なんていう風にも呼ばれる。

 

 (金城かー・・・。)

 

 シンジが思っているその金城さんは沖縄出身であるが。ま、それはそれとして。ミカとアギさんがわいわいしている様子を少し離れたところから見ていると、やはり普通の女の子にしか見えなかった。本当に、本当に不思議な存在だ、怪獣娘とは。

 

 「ねー、シンちゃんもそんなとこにいないで、写真撮ろー!」

 

 以前、初めて彼女たちに会った時も同じ感想を抱いていたような気がするが、そこはやはり変わらない。故に知りたい、彼女たちの事を、もっと。

 

 「なあ、ミカ。」

 「なーにーシンちゃん?」

 「今度、2人で一緒に遊ばないか?」

 「うん、いいよ!」

 

 

 

 

 「・・・え?」

 「え?」

 「シンちゃん、なんだって?もう一回言ってくれないかな?」

 「だから、今度2人で遊ぼうって。」

 「今度ぉ?」

 「うん。」

 「2人でぇ?一緒にぃ?」

 「そうだよぉ。」

 「わーい!行く行く!」

 「あーぅ。」

 

 自身の背丈の倍は跳躍し、抱き着きもとい押しつぶして来た。これもここ数日の間では日常茶飯事で慣れたもんだ。

 

 「慣れても痛いけど。」

 「えー?なに突然?シンちゃんから誘われるなんて嬉しいなー!」

 「いや、ゴモラ(をはじめとして怪獣娘さん)のこと、もっと知りたいって思ったから。」

 「いやーん!恥ずかしいよー!」ベシッベシッ

 「痛いから!」

 

 後で思い返したことだが、この時は言葉足らずだったなと後悔した。

 

 ともあれ、デートの予約をとりつけたところで、上機嫌のミカからこの後ミソカツ、ミソおでん、ミソ煮込みうどんのフルコースをおごられた。でもそんなに食えないから!

 

 「うぅ・・・胃が破ける・・・。」

 「青汁飲む?」

 「これじゃあ小倉トースト食べられないよ・・・。」

 「まだ食べる気だったの?」

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「ただいまー。」

 「おかえりなさいませ、シンジさま。お風呂が沸いております。」

 「うん。」

 

 シンジ、お疲れの帰宅。住み始めた頃は、天井の高さに違和感を覚えていたここでの暮らしにも慣れた。とは言っても、一日の内の活動時間の長さで言えば圧倒的に外にいる時間の方が大半だが。

 

 「夕飯はいかがいたしましょうか?」

 「んー・・・そんなに空いてないから、軽い物でいいや。」

 「承知しました。」

 「・・・チョーさん。ひとつ聞いていいかな?」

 「なんでございましょうか?」

 「父って、どんな人だったの?」

 

 「あなたのお父上、ソウジ様は聡明なお方であられました。私と言う優秀なロボットを作ったこともさることながら、お若いころは生物学、脳科学、人間工学の分野において様々な研究や論文を書いておられました。」

 「・・・それが怪獣娘と関係あるのかな?」

 「シンジさまが生れた頃は、『怪獣娘』ではなく、『怪獣』の研究をなされていたようです。」

 「『怪獣』の?」

 

 怪獣、かいじゅう、カイジュウ。怪しい獣。今では見る事も無くなったけれど、昔々に確かに存在していたという危険で強大な生物。

 

 「そのデータって、あるの?ここに。」

 「その件に関する情報には、プロテクトがかかっています。」

 「ちぇー。」

 

 少しでもGIRLSに貢献できればと思っていたけれど、そう簡単に行っちゃくれないか。

 

 「まあそれは一旦置いておくとして、他には?」

 「ソウジ様は、常にシンジさまのことを考えておられ、定期的にシンジさまのご様子を覗われておりました。」

 「それってつまり、僕の情報が、僕の知らぬところで受け渡しされてたってこと?よくないなぁ、そういうの。」

 

 鞄に個人情報を書きまくった名札をつけていた人間とは思えない発言。

 

 「それに、僕の事を思ってたなんて信じられないなぁ。この歳まで放置されてたんだよ?」

 「毎月仕送りをするよう、指示されておりました。」

 「お金の問題じゃないんだよ・・・。」

 「愛はお金で買えなくとも、Iはお金で買えると、TVでは言っておりますが?」

 「そういう問題じゃなくって、どうしたら顔も知らない、どんな性格なのかも知らない人間の事を好きになれる?」

 

 シンジの持つ、父への不信感はその一点に尽きる。そしてこの一点が、覆しようのない王手なのである。

 

 「はぁ、言いたいこと言えたらスッキリした。風呂入ってくる。」

 「はい、いってらっしゃいませ。」

 

 まあ、ここにいない人間の事でとやかく言っていても始まらない。それよりも、ミカとのお出かけについて考えていた方がよっぽど有意義だと思考を切り替えていく。

 

 (どこがいいかな・・・。お昼はまたお好み焼きかな?)

 

 湯船から上がって、髪を乾かしながらうんうんと考える。あっそういえば、と。

 

 「右手・・・もう治ってる・・・よな?」

 

 治癒力が上がっていても、ズキズキとしばらくは傷んでいたので包帯は変えていたのだが、今日はもう痛くなくなっていた。相当深く傷が入ったために回復も遅れていたのだろう。

 

 (変な痕が残ったな、まいっか。)

 

 傷跡とは、男の勲章だ。誰かが言っていた気がする。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「雨かぁ・・・。」

 「雨だねー。」

 

 そしてデート当日。案の定というか予想通りというか雨だ。

 

 「ごめんね、雨男で。」

 「いいっていいって、シンちゃんのせいじゃないよ。」

 

 GIRLS本部前を集合場所として、午前の10時を予定していたが、お互い30分前行動で同じタイミングで合流できたのだからすごい。

 

 「それで、シンちゃんはどこに連れてってくれるのかな?」

 「ミカはどこか行きたいところある?」

 「うーん・・・シンちゃんがいるならどこでもいいよ?でもお昼は粉もんがいい!」

 「今日のお昼はカレーの気分だなー。」

 「おっ、カレーもいいね!カツカレーたべたーい!」

 「カツカレーか・・・それがいいな。」

 

 まずは映画でも見ようということになって、映画館に向かうこととした。

 

 「ちょっとミクちゃん、あんまり押さないで。」

 「よく見えないよー。」

 「声が大きいです、聞こえちゃいますよ。」

 

 近くに、いるな。普通に聞こえる範囲にいるけど、今は無視しておこう。ミカは既にポップコーンとチュロスを買っている。

 

 「ポップコーンはキャラメルでしょ。」

 「いやいや王道の塩だよ!チュロスが甘いんだし。お好み焼きがあればもっとよかったけど。」

 「シアターに匂いの強いものはダメでしょ。」

 

 でも売店の前とか、イイにおいがしてるね。機械のガラス越しに見える、こんもりと積もって黄金色に照らされた山をみると、ついつい財布を取り出したくなる。シンジはドリンクしか買わなかったけど。

 

 「90分ぐらいだと、お腹もすかないし、それにこの後昼食だし。」キュー

 「その割には、お腹の自己主張が激しいけど?」

 「お昼まで我慢する。」

 

 「塩!バター!キャラメル!のコンボ!」

 「そんなに食べて大丈夫なんですか?」

 「こぼさないようにね。」

 

 元気なのはいいけど、シアターでは静かにね。

 

 ~73分後~ 予想より意外と短かった。

 

 「いや~、楽しい映画だったねぇ!シンちゃん泣いてたし。」

 「ぐすっ、登場シーンのBGMはアレ卑怯だよ・・・。」

 

 子供向け番組だと侮るなかれ、子供向けだからこそ『本物』で出来ているのだから。そういうミカもポップコーンを食べる手を止めて見入っていた。シンジは氷が溶けて少し薄くなっていたジュースを飲み干して、時間を確認した。お昼には少々早いかもしれないが、店を探すがてらぶらつくのもいいだろう。ちょっと目を離した隙にポップコーンの容器が空になっていたことにまた少し驚いたが。

 

 「すっっっっっっっげー!おもしろかったー!ビュンビュン飛んじゃってバンバン行っちゃってもー最高ー!」

 「お゛ぁ゛あ゛あ゛・・・。」

 「ミクちゃん、落ち着いて。」

 

 一人でも多く楽しんでもらえて、同士が増えたなら幸いだ。後でちょっと語り合いたい気分だが、それよりもまずはミカとの予定が先になるけれど。

 

 「でも、付き合ってくれてうれしいな。一人で観に行くのもちょっとだけ物悲しかったし。」

 「まああえて言うなら、女の子とのデートでヒーローもの観に行くのは正直どうかと思うけどね!」

 「ご、ごめん。どういうのにすればいいか、正直迷っちゃって・・・。」

 「んもー、こういうシチュエーションで行くとすれば、選択肢はひとつじゃんか?」

 

 くいっくいっと、親指で指さされたポスターを見て。『ああ、そりゃそうだよな。』と納得した。

 

 「じゃあ、今度はアレ観に来ようか。」

 「うん、また今度はね。」

 

 折よく『次』の予定もできた。なんかイイね!と心の中でガッツポーズを決めたが、また気を使わせてしまったかとモヤモヤした。

 

 (このままじゃイカン。もっとオトナな対応力を目指さなければ・・・!)

 「それでシンちゃんは、お昼どうしたい?」

 「よし、そうだな・・・。」

 

 選択肢は多いぞ。先ほどカレーがいいと言っていたので、もちろんカレー屋さんに行くべきだろう。しかし一口にカレー屋といっても、町で評判のカレー屋さんもあれば、全国展開されたチェーン店もある。辛さがウリの店や、歴史を重ねた老舗、雑誌で載った人気店、どれを選ぶか。それに『カレー』というカテゴリーでいえば、本場のインドカレー屋さんや、タイカレー屋なんかもある、でっかいナンがおかわり自由とかの。タンドリーチキンも食べたい。しかしそこにはおそらくミカの好きな『カツカレー』はない。

 

 「うーん・・・。」

 「シンちゃーん?」

 

 いや、カレーならファミレスでも食べられる。旅行先で、食事に悩んだらとりあえず『カレーライスとコーヒー』してたシンジにはそれが慣れていた。カレー以外のメニューもたくさんあるし、ついつい目移りするけど、そこが楽しいってのもあるだろう?(結局カレーを選んでたんだけど)

 

 「光か闇か・・・。」

 「おーい?」

 

 しかしミカは最初粉もんがいいとも言っていた。だからお好み焼き屋さんという選択肢だってなくはない。僕に気を使ってカレーにしようとしているのなら、ここは譲り合って僕の方からお好み焼き屋さんに・・・いや、東京ならもんじゃ焼きをやっているところも多い。でももんじゃ焼きって粉もんって言えるんだろうか?たしかにどちらも材料が似た物で、鉄板で焼いて、コテを使うけど、焼いても固まらないし。いや、お好み焼きなら広島風ってのもあるぞ、焼きそばが入ってるやつ。以前、ベロクロンさんがやってるとか聞いたこともあるけど、そこもいいんじゃないのか?

 

 「うま味かダシか・・・。」

 「もう!シンちゃーん!」

 「ウ゛ェッ、何?!」

 「注文決めた?」

 

 気づいたらもう店内の席に座っていたのだから始末に負えない。

 

 「・・・チキン 

 「カレー、ライス大盛で。」

 「じゃ、私カツカレー特盛で!あとマンゴーラッシーとミニサラダ!」

 

 おかしいな、辛いは辛いんだけどなんか塩の味がする。

 

 「シンちゃん、水のむ?」

 「ありがと・・・。」

 

 情けねえったらありゃしない・・・。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 『終わらな~いで欲しいっなっ?ねっ!』

 

 デートと言えばここ・・・だと思うスポット一位のカラオケボックス。その一室では人知れず、今を時めくアイドルのミニライブが行われている!って、なんか夢がある。

 

 「ほ?」

 「ほらほらもっともっと乗ってよ!」

 「ぶっ続けで10曲も歌ってて、辛くない?」

 「へーきへーき!ライブで鍛えてるから!」

 「すごい、人気だよな。ミカ。」

 「えっへへー?すごいでしょ!」

 「うん、ミカはすごいよ。」

 「ちょっ、どうしたの急に?」

 

 てへへ、とちょっと照れたように頬をかく仕草がまたかわいい。

 

 「ミカ、すっごい努力してるでしょ。アイドル活動も、怪獣娘としても。がんばってるミカ、とても輝いて見えるよ。」

 「うん、大変なこともあるけど、楽しいし!GIRLSに入ってから、色んな子たちと出会えたし。」

 「僕には・・・そんなに前向きになれないな。不安な事いっぱいで・・・ちょっとだけ、ちょっとだけね。ミカのことが羨ましいなって思ってたんだ。ミカならなんだって出来ちゃいそうだって、そんな気がするから。」

 「そんなこよないよ、私まだレッドちゃんに勝ててないし。いっぱい努力してるつもりだけど。」

 「それでも、ミカならいつか越えられる。そう思うんだ。」

 「ありがと、シンちゃん。」

 

 胸の中を色んな感情が渦巻いて、何を言えばいいのかわわからない。

 

 「それで、シンちゃんの調子はどうなの?あれから。」

 「僕は全然、からっきしダメだ。今朝も、ジャムの蓋が開けられなかったんだ。」

 「ジャムの蓋?」

 「力が戻ってるんだ。バディライド出来なきゃ、結局僕はただの人間なんだ。」

 「そんなに気に病むことなんてないじゃない、シンちゃんはシンちゃんだよ。」

 

 優しく微笑んでくれたその顔が、今の僕には辛かった。そして今わかった。なんでこんなにモヤモヤしているのか。

 

 「だってこのまま、なにも出来なかったら・・・。」

 

 

 

 「ミカに、愛想つかされるんじゃないかって。」

 

 

 

 「ミカだけじゃなくて、アギさんたちにも。」

 「シンちゃん・・・。」

 

 

 

 

 

 「このバカちんがっ!!」

 「ぶほっ!」

 

 悪い子には鉄拳制裁。部屋が壊れるんじゃないかと思うが、そこはゴモたん、しっかり手加減してくれた。

 

 「私やアギちゃんたちが、そんな人間だと思ってたの?!」

 「いや・・・そんな・・・。」

 「シンちゃんのこと心配してたんだよ!私もアギちゃんもみんな!」

 「うん・・・。」

 「友達の事、見捨てたりするわけなんかないじゃん・・・!」

 「ごめん、ミカ。」

 

 こんなの絶対間違ってるってわかってた。けど不安で仕方が無かった。その結果、目の前にいる女の子を悲しませてしまった。ダメダメだ、やっぱり僕って。

 

 「だから、もっと私たちのことを信じて?」

 「うん・・・わかった。」

 「じゃ、罰としてシンちゃんもなんか歌って!振りつけ付きで!」

 「えっ。」

 「ほらはーやくー!」

 「うひー!」

 

 結局、時間いっぱいまで体を動かし続けることになった。けど途中からミカと一緒に歌ったりもして、楽しい時間を過ごせた。やっぱりミカはすごいって思った。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「あーたーのしかったー!」

 「つかれた・・・。」

 

 すっかり暗くなってしまった。時間が過ぎるのが早いと思えるってことは、それだけ楽しかったってことだ。

 

 「今日は、ありがとね。誘ってくれて。」

 「ううん、僕の方こそありがとう。ちょっとスッキリしたよ。」

 「そりゃどーも。」

 

 ニカッと笑って応えてくれた。夜なのに眩しい。

 

 「そういえばひとつ、聞きたいことがあるんだけど。」

 「なーに?」

 「ミカが頑張れる理由、なんだろうって。」

 「私が頑張る理由か・・・。」

 

 うーんとちょっと考えると、スラスラと言い切った。

 

 「私は、みんなを笑顔にしたいから。大怪獣ファイトでも、アイドルでも。それになにより、『ゴモラ』のことを好きになって欲しいから!」

 

 まっすぐ未来のビジョンを見据えて、より一層輝いて見えた。この都会の夜のネオンにも負けないほど強く瞬く、星のように。

 

 地球の夜空では小さな6等星も、何万光年と離れた場所では太陽よりも強く輝いている。ミカが、どんな思いでこの言葉を紡いでいたのか、僕はまだ知る由もなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「この情報は・・・たしかなものなんですか?」

 「そのツテ(・・)の、確かな情報よ。信憑性は高いわ。」

 「もし本当だったとしたら・・・。」

 

 

 

 

 「これ以上、シンシンを怪獣娘と関わらせるのは危険ですね・・・。」

 「人類にも、怪獣娘にとっても危険な存在よ。アレは。」




 遅筆と言うか駄文と言うか、長ったらしくて読む方にストレスじゃないだろうか?ふと不安になる。

 なお、ベロクロンさんはまだ擬人化されていません。広島に現れたという繋がりで、名前だけ出ていただきました。

 読み返してみると、その当時の自分は一体何を考えていたのかわからなくなって困る。

 ネタ解説

 フリドニア、ロリシカ、ファロ、オベリスク:フリドニアについては後述。ロリシカはモスラ、ファロ島はキングコング、オベリスク島はガッパのそれぞれの出身地。ガッパだけすごくマイナー。

 金城:巨匠。この人の描く脚本は一風変わっていることで有名。シリーズの最初で、こんな変わり種な話を描けたことが本当にすごい。

 Iはお金で買える:潔くカッコよく生きていこう、たとえ二人離れ離れになっても

 カツカレー:ゴモたんといえばカツカレー

 73分:きたぞ!われらのウルトラマンがそれ

 子供向けだからこそ本物で出来ている:ウルトラシリーズ初期の怪獣デザインを務めた成田亨氏の言葉。子供向けと子供騙しは大きく異なるという意味だ。

 ベロクロンさん:この当時はまだベロクロンさんのデザインは発表されていなかった。最初広島に出てきたということで、広島風お好み焼き屋さんを経営していることにしていた。

 ゴモたんの歌:カーニヴァル・ジャパネスクで検索


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雨がやんだら

 本作に登場するいかなる人物、団体、国家は全て架空の物であり、現実のものとは一切関係がありません。


 その日は朝から雨だった。もう何日も太陽を見ていない気がするが、昼間だというのに夕闇のように一段と暗かった。

 

 「暴走?」

 「そう。怪獣娘は心に孔が開くと、怪獣に心を支配されてしまうんだ。」

 「怪獣娘が、怪獣になっちゃうのか。」

 「そう、ソウルライザーはそうならないためのデバイスなんだ。」

 「成程なぁ。」

 

 今日はシンジとアギさんと2人で、GIRLSに呼び出しをくらった。待たされている間に、まだまだ足りない知識を補ってもらっている。

 

 「でもアギさんたち、優しいからそんなイメージわかないな。暴走なんて。」

 「そうとも言えないんだけどね・・・。」

 「?」

 「なんでもない、それにしても遅いね。」

 

 話題を逸らすようにドアの方を見やるアギさん。シンジは『なにか変な事を言ってしまったか?』と自問する。

 

 今の生活は、嫌じゃない。毎日、同じことを繰り返しながらも、今を意識しながら生きている。温かい寝床と食卓。それに明るい仲間たちに囲まれている。

 

 中でも一番気になるのが、幼馴染の黒田ミカヅキだ。ずっと小さい頃、人生の中で見てみればほんのわずかな時間ではあるが、たしかにあった記憶のひとかけら。それを無数の人々が行きかうコンクリートジャングルの中で拾い上げられたのは、奇跡と言ってもいいだろう。まあむしろ拾い上げられたというべきなんだろうけど。

 

 「幸せだな・・・。」

 「なに?」

 「いやなんでもない。」

 

 思わず声に出してしまっていた。聞かれたら恥ずかしいが、それは事実だった。ミカと再会してから、何もかもが変わった。とにかく、とても楽しいのだ。

 

 今ある幸せは、ミカがくれた。僕は、ミカになにが出来るだろうか?それが今、シンジの悩ませていることであった。

 

 人を幸せにするために悩むことは、とても幸せなことである。誰かが言っていた気がする。

 

 その幸せに突然出会えたように、お別れも突然訪れた。

 

 「お待たせですぅ。2人とも、今日の気分はどうですかぁ?」

 「良くも悪くも、いつも通りです。」

 「天気も悪いよ。」

 「いつも通り、ですね。」

 

 ピグモンさんは今日も可愛い。しかし今日は、いつも快晴のようにさんさんと明るいピグモンさんも少しだけ暗かった。否、真剣な表情だった。

 

 「突然ですが、シンシン。あなたは、自分のお父さんの所在を知っていますか?」

 「父の?いえ、知らないです。海外を転々としているとは聞いていましたが。」

 「フリドニア、だっけ?」

 「そのフリドニアが、最後に分かっている国です。他には何も。」

 「そうですか、やはり・・・。では次に、あなたのお父さんの研究内容を知っていますか?」

 「チョーさんが言うには、怪獣の研究をしていたとか。バディライザーもきっと、その産物なんだと思います。詳しい事はわからないですけど。」

 「そう・・・ですか。」

 

 一呼吸おいて、再びピグモンさんは切り出してきた。

 

 「シンジさん、あなたは本当に、お父さんのことを知らないんですか?」

 

 シンジは、少し答えることに息詰まった。一体、なんのことを聞かれているのか。心臓が高鳴り、背中に寒気が走る。アギラは事の成り行きを見ているしかなかった。

 

 「知りません、全く。父の事で、何かあったんですか?」

 「・・・。」

 

 表情を落とし、少し考えたように瞼を閉じてから、まっすぐシンジの眼を見据え、はっきりとした声で言った。

 

 「シンジさん、あなたのお父さんは、テロリストに加担していた可能性があります。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 なに?無意識にシンジは口走った。その声は暗雲立ち込める空が放つ稲光にかき消され、誰の気にも留めなかった。

 

 「バディライザーのことを、ひいては開発者であるあなたのお父さんについて、色々と調べた結果、その可能性が浮き彫りとなってきました。」

 

 「そのテロ組織『GSTE』は、怪獣娘を操り、暴走させて社会に混乱を招こうとする集団でした(・・・)。」

 

 「およそ5か月前、GSTEの活動拠点とされる国家『フリドニア共和国』は内乱で消滅し、その動乱の最中に組織そのものも壊滅したとされています。」

 

 パッパッとスライドが表示され、ピグモンさんからかなりわかりやすい説明を口頭でも行われている。肝心のシンジの頭にそれらの情報は一切入ってこないが。

 

 「ちょっ、ちょっと待って。」

 

 つまり『やーいお前の父ちゃんテロリストー』ということである。テロリストと言っても全身緑色で、手に刀を持って、頭にウ〇コを乗っけているようなやつのことではない。

 

 「はぁ・・・。」

 「シンジさん・・・。」

 「いや、大丈夫。どうせろくでもない人間だろうってわかってたから。それで、父は具体的にはどんなことを?」

 「・・・この手の組織は、怪獣娘の誘拐、それも未覚醒の状態の少女たちを拉致し、洗脳あるいは人体実験が定石です。」

 「誘拐・・・。」

 

 どんなに恐ろしい事をやっていたのか。聞くだけでも嫌だし、それが事実であろうということがなお嫌だった。

 

 「じゃあ・・・コレ(・・)は?コレは一体、『なんなの』?」

 「おそらく、それらの研究の末に作り出された、怪獣娘をコントロールする装置。そのプロトタイプです。」

 

 手のひらに収まるぐらいの、ほんのちっぽけな発明が、多くの人々の運命を歪めさせ、そして狂わせていく。

 

 「事実、先日のアギアギの急激なパワーアップ現象は、暴走に近い状態でもあったようなのです。」

 「暴走・・・。」

 「意図的に暴走させる仕組み、ってことか・・・。」

 

 先ほど、暴走の事について聞いていたのでぞっとした。なにより、知らぬ間にその事態に片足突っ込んでいたアギさんの心情も穏やかではないだろう。

 

 あまりの事実に、シンジは顔を覆った。血の気が引いていくのを感じた。

 

 「シンジさん?!」「シンシン!」

 「大丈夫・・・大丈夫・・・。」

 

 ふっと、意識を失いかけて椅子から転げ落ちる。衝撃で机に乗っていたバディライザーも高い音を鳴らしながら、シンジの顔の前に落ちてきた。

 

 目の前にあるこれが憎らしい。今、この場で、破壊してしまいたい衝動にすら駆られた。

 

 「僕は・・・僕はどうしたらいい?」

 

 バディライザーを拾い上げて、誰に言ったわけでもなく、呟いた。

 

 「それは、シンジさんが決めてください。どうするかも、シンジさんの自由です。」

 

 ああ、この人はこんなに険しい表情も出来るんだな。まあそれはそれとして。

 

 『自由』と言う言葉は、簡単に口にできるほど自由なものでもない。押すか引くか、壊すのか守るのか、どの選択をとるのか自分で決めていいのが『自由』だ。だが、全ての選択には『責任』が伴う。

 

 ちらり、と視線を隣に移してみる。不安げな表情の寝ぼけ眼がこちらを見返していた。

 

 今の僕には、何ができる?この機械を、手足を動かすように扱えるわけでもない。怪獣娘さんたちを暴走させる危険性を孕んでいるのなら、なおのことだ。

 

 答えは出ていた、話を聞いた時点で既に。

 

 ゆっくりと、歩みを前に進めていくシンジを、ただただアギラは見ているしか出来なかった。

 

 「・・・これを、預かっていてください。」

 「・・・いいん、ですね?」

 「僕より・・・うまく『扱う』ために、好きにしてください。」

 

 「きっと、こいつには、僕の想像も付かないような、すごく大きな力があります。いいようにも、悪いようにも出来る、そんな力が。・・・僕には、無理だから。」

 

 哀しみ、怒り、諦め、失意、様々な感情の言葉を綴って、シンジはとぼとぼと歩いて部屋を後にした。

 

 「待って、シンジさん!」

 「行かせてやれ。」

 「レッドキングさん・・・。」

 

 隣の部屋で聞いていたのか、いつの間にかレッドキングさんがそこにいた。

 

 「今のアイツに必要なのは、一人で考える時間だろう。」

 「ずっと、いたんですか。」 

 「ああ、もしも(・・・)の時のためにな。・・・よく耐えられたな、ピグモン。」

 

 バディライザーとカードホルダーを託されたピグモンをそっと撫でてやる。アギラが見てみれば、ピグモンは頬を紅潮させ、目に涙を浮かべていた。

 

 「よくこんな辛い仕事を引き受けたな、大したもんだぜ。自分にも責任の一端があるってさ。」

 「ふぇええ・・・雷怖いですぅ・・・。」

 「そっちかよ!」

 (ピグモンさん、天然だ。)

 

 ぴええ、と泣きついてくるピグモンさんをレッドキングさんは優しく抱きとめた。アギラは一人、シンジを案じた。

 

 そしてここにもう一人、姿を見せることはなけれども、このあまりにも若すぎる戦士の行く末を見守る者がいた。その背景に己の姿を見い出し、ならば自分に出来ることは何かと、自分に問いた。結果、今は彼と同じ雨に打たれている。

 

 「僕は・・・どこに行けばいい・・・?」

 

 頬を雨粒が伝った。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 息が苦しい・・・ここは地獄か戦場か、様々な『針』がシンジの体を突き刺す。あの父の子として生まれたサガ、犠牲となった多くの人たちから向けられる怒声、そして周りの人々が離れていくという恐怖。今まで心の底で積もっていた恐れが、一切合切攻めてくる。

 

 「頭痛い・・・。」

 

 そのような夢を見るのは、決まって風邪をひいたときだ。どうやら昨日の雨に打たれすぎたらしい。家に帰ってきてからの記憶がない。

 

 「お目覚めですか、シンジさま。朝食はいかがいたしましょうか?」

 「・・・食欲ないや。」

 「温かいスープなどはいかがでしょうか?」

 「いらない・・・。」

 

 そんな気分でもない。もうひと眠りしようと布団を被ると、黙ってチョーさんは出て行った。

 

 (夢なんか見たくないな・・・。)

 

 今の自分には、なにもかもから逃げ出して、惰眠を貪ることしか出来ない。いっそこのまま・・・とも思いながら再び眠りに落ちる。せめて今日ぐらいはそっとしておいてほしい。明日には繋がらないだろうけども。

 

 「こんにちはー!シンちゃんあーそーぼー!」

 

 ドンドンドン!とけたたましく誰かが玄関を叩く音で目が覚めた。昼過ぎの事であった。

 

 誰?というのは愚問だ。そんな呼び方をするのはこの世に一人しかおるまい。

 

 (会いたくないな・・・。)

 

 放っておけば気を利かせたチョーさんが対応してくれるだろうと思い、無視してもう一度目を閉じる。案の定、ミカの声はしばらくして聞こえなくなった。

 

 やれやれと思ったその矢先に窓の外から声がする。

 

 「シンちゃーん!腹を割って話そう!」

 

 腹よりも先に頭が割れそうになった。まあこうなるわなとは予想していた。頭痛もそうだが眩暈もしてきた。

 

 「おっはよーシンちゃん!元気ぃ?」

 「・・・最悪。」

 

 まだ雨降ってるのに、傘もささずに窓の外の木の枝からぶら下がっている幼馴染を見た。いつもと変わらぬ笑顔がそこにあって、知らない間にほんの少しだけ安堵していた。

 

 「シンちゃん、今日来なかったね。」

 「GIRLSは風邪で休んじゃいけないの?」

 「だからって届け出もないのはいけないよぉ?」

 「はぁ・・・。もうGIRLSには関われないんだよ。」

 「・・・なんで?」

 「それは・・・。」

 

 言おうとして、ちょっと戸惑った。本当の事を言うべきか言うまいか。いっそ嫌われてしまった方が、ミカにも迷惑をかけないんじゃないだろうか。そんな考えが脳を巡って口から出そうになった時、先に相手から切り出してきた。

 

 「聞いたよ、全部。アギちゃんやレッドちゃんから。」

 「聞いてたのに、わざわざ来たの?」

 「シンちゃんの口から聞きたかったから。シンちゃん、今嘘吐こうとしたでしょ。」

 「それって超能力?」

 「ううん、幼馴染の勘、かな。」

 

 てっへへと舌を出して見せる。

 

 「お父さんのことがどうとか、バディライザーがどうとか、関係ないよ。シンちゃんはシンちゃんだって。」

 「・・・ミカなら、そう言うと思った。」

 「ホント?私たち以心伝心だね!」

 「なら、僕の辛さがわかる?たとえ関係ないんだとしても、それが父なんだって宿命が。」

 

 あえて、意地悪な事を言ってみた。心がささくれまくってつい出てしまった。心中でしまったと思ったが、もう遅い。吐いた唾は呑めぬ。

 

 「・・・ちょっとだけなら、わかるよ。どうしようもない、宿命って。」

 「・・・。」

 「ボク(・・)も同じだったから。」

 「え?」

 「・・・なんで自分が、とか。自分が何者なのか、とか。そんな事ばっかり考えてた時期が、ボクにもあったから。ずっと、『答え』が欲しかった。」

 「・・・。」

 「けど、『自分が何をやりたいか』、その答えを自分で出したんだ。大きな声で。その時、今の私(・・・)が生まれたの。」

 「自分が何を、やりたいか・・・。」

 「その時まで、私たち(・・)は待ってるから。それだけ。風邪、早く治してね!またね!」

 「うん、また・・・。」

 

 バイバイ、と手を振って木から跳び移って行って、窓からはすぐに見えなくなった。今のシンジには見送るしか出来ない。

 

 「寝るか・・・。」

 

 と、再びベッドで横になろうとした時、テーブルの上に置いてある物体に気が付いた。栄養ゼリーとスポーツドリンクだ。チョーさんが用意していたのだろう。とりあえずそれらを口に放り込んで眠った。

 

 瞼の裏には、先ほどのミカの顔が写っていた。あの顔は、懐かしそうな、寂しそうな、複雑な感情がこもっているようだった。

 

 (何がしたいか、か・・・。)

 

 答えは既に持っている。その言葉を反芻して、今はただ眠る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 未だ、雨は止まず。





 ネタ解説

 フリドニア、GSTE:ウルトラマンマックスのゴモラ回に登場した国と組織。マックスの世界ではゴモラはフリドニアに生息する珍獣という設定で、GSTEがそれを生物兵器として利用した。ゲストの女性の父親がその研究に関わっており、シンジの場合はそれのオマージュ。面白い話だが、元々この回にはテレスドンが登場する予定だったのが、人気投票によりゴモラに代打が回った。そしてゴモラはかつて、初代ウルトラマンでジェロニモンに復活させられる予定だったのをテレスドンが代役を務めた。そしてマックスでの出演を契機に、大怪獣バトルなどに引っ張りダコになったことを考えると、塞翁が馬ということだ。

 腹を割って話そう!:僕は再三「帰れ」って言ってるわけですよ。もう大先輩だ、人生の。その人にさっきから僕は「バカ野郎 帰れ! 即刻帰れ」と再三罵声を浴びせかけているにも拘らず、帰らないんですよ。

 いっそ嫌われてしまったほうが迷惑をかけない:ウルトラセブン最終回の、ダンの告白にはそういうニュアンスも含まれているんじゃないかと思う。にもかかわらず、アンヌは優しく応えてくれた。だからこそダンは死ぬ気で戦えたんじゃないかな。

 超能力:ゴモラの中には超能力を持って、天変地異を引き起こしたり怪獣軍団を率いたやつもいたらしい。

 なんで自分が、自分が何者なのか:ウルトラマンダイナ終盤のダイゴの台詞より。抱えた悩みは同じでも、アスカは違う答えを出した。


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私とボクの名前

 なお、この作品には既存の登場人物たちへのオリジナル設定が存在しています。ご了承ください。


 「はやくいこーミカちゃん!」

 「まってよシンちゃーん!」

 

 その日はたしか晴れていた。天気のいい日は布団を干して、子供は外で走り回る。そんなごくごくありふれた、普通の人間の日常だった。

 

 ずっと忘れていた、僕とミカとの遠い記憶。あの頃はたしか、僕の方がミカを引っ張っていた。毎日大人しいミカを泥だらけにしたり、泥だらけにされたりして遊んだものだった。

 

 その日が来るまでは。

 

 「ミカちゃーん!おいてくよー!」

 「まってまってー!」

 

 ほんの僅かな悪戯心だった。いつもやってることだった。僕だけ先に走って行って、後からゆっくり来るミカのことを座りながら待っている。それが習慣だった。

 

 「シンちゃーん・・・きゃっ!?」

 「ミカちゃん?!」

 

 人気のない道に出たその時、一台の車が僕たちの間に割って入った。ドアが開いて、数人の大人たちがミカを捕えた。

 

 「!!待って!!!」

 

 僕は必死で追いかけた。けれど、子供の足で自動車に勝てるわけもなく、すぐに曲がり角で見失ってしまった。

 

 「ミカちゃん!ミカちゃーん!!」

 

 僕は泣きながら走っていた。もうどうしたらいいのか、全くわからなかった。子供心には、もうミカに会えないんじゃないかと言う恐怖心があった。

 

 「はぁ・・・はぁ・・・ミカちゃん・・・。」

 

 そして、息を切らせて曲がり角を越えた。涙も引っ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアオン!!!!

 

 

 

 

 そこにいたのは、あの大人しかった幼馴染ではなく、

 

 「ミカ・・・ちゃん?」

 

 一匹(・・)の『怪獣』であった。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 いつからだったろうか。どこにいても、どんなときでも、子供の泣き声に反応してしまう。なにかをしてあげたいという衝動にも駆られるが、自分にどうしろと言うのだろうか。誰かが助けを求めてる、どこかで誰かが泣いている。そう思うと走り出さずにはいられない。

 

 「答えは・・・既に持っている。」

 

 じっと手を見る。そこには、全てが始まったあの日についた、傷が遺っている。

 

 「答えは、既に持っている・・・!」

 

 懐かしい夢から覚めた時、風邪は治っていた。相変わらず空は曇っているが、気にしない。服を着替え、身支度をしていた時、携帯が鳴った。

 

 「ピグモンさん?もしもし。」

 『シンシン、今大丈夫ですか?』

 「元気溌剌、どこへでも行けますが?」

 『そうですか・・・シャドウが現れて、ゴモゴモやアギアギが出動しました!』

 

 突然だな、悪いことは何もかも。

 

 なら、いいことだって突然なハズだ。

 

 「ピグモンさん、すぐに会えますか?」

 『・・・いつでも待ってますよ、ピグモンも、ゴモゴモも、みんな!』

 「・・・はい!」

 

 決断は済ませた、あとは実行するだけだ。

 

 「お目覚めですか、シンジさま。」

 「うん、行ってくる。」

 「その前に、温かいスープはいかがですか?」

 

 キュゥとお腹が鳴った。そういえば昨日からロクなものを食べていなかったのを思い出した。

 

 「軽いのを何か、ちょうだい。」

 「かしこまりました。」

 

 元気が出る温かいスープと、ビタミンたっぷりのサンドイッチと、デザートのリンゴを貰って家を飛び出した。まず目指すは、GIRLS本部だ!

 

 「ハァ・・・ハァ・・・横っ腹痛い・・・。」

 

 豪快に食べて走り出せばそうもなるが、今は我慢する。自分でも、こんなに早く走れるんだと驚きながら、目当ての建物に駆け込んだ。そしてエントランスのすぐのところに、ピグモンさんはいつもの笑顔で立っていてくれた。

 

 「やっとついた・・・ピグモンさん!」

 「はい、なんですか?」

 「バディライザーを、貸してください!」

 「どうして、ですか?」

 

 答えは一つ。

 

 「『僕がやりたいから』、です!」

 

 周りの人が驚くほどの、大きな声でそう言った。

 

 「シンシン、元気元気ですね!元気があればなんでもできます!」

 「なんだってしてみせます。」

 「はい、どーぞ、です☆」

 

 一昨日渡した時と寸分変わらない、バディライザーを手渡された。シンジはそれを懐かしむように撫でる。

 

 「また何か調査して、わかったこととかありますか?」

 「いーえ、調査もしてませんよー。っていうか、誰にも渡してません。」

 「? どうして?」

 「だって、シンシンから『ピグモン』に預けられたものですからー☆」

 

 実際、本当にGIRLSの技術部へと預けられていたならば、昨日の今日でシンジの手元に戻ることはなかっただろう。

 

 「その・・・いいんですか?こんなことしてて?」(僕が言うのもなんだけど。)

 「何が悪いんですか~?ピグモンはただ、『友達』から大事なものを預かっていて、それを今返しただけですよ~☆」

 

 ピグモンさん、マジ天使。

 

 「ピグモンさん、ミカは、ゴモラはどこに?」

 「練馬です!」

 「ちょっと遠いな・・・。」

 「人間の足じゃあ、駆けつけた頃にはもう終わってるかもしれませんねぇ。」

 

 それはそれでいい、と言うか、その方が危険が少なくていいと思うけど、

 

 「今すぐ会いたいんだ!遠くっても行くぞ!」

 「れっつごー、です!」

 

 と言うより、今日を逃したらもうチャンスはないと思った。何が理由かとか、そんなものはないけど、本能的にキャッチした。『今日』は出来る気がする。

 

 本部の玄関を出て、いざ走り出そうとした時、蒼いバイクが停まっているのが目に入った。それに跨っていたのは・・・。

 

 「ベムラー、さん?」

 「覚悟、決めたの?」

 「・・・はい!」

 

 真っ直ぐ目を見て、そう答えた。ベムラーさんは納得したように頷くと、後ろを指さした。

 

 「乗せてくれるんですか?」

 「じゃあ、ピグモンも乗りまーす。」

 「3人乗りはマズいんじゃないかな?道交法的に。」

 「問題ない。」

 

 手元のスイッチを弄るとガチャガチャと音を立ててバイクが変形した。

 

 「さあ、テイクオフだ!」

 「えっ、飛ぶの?」

 「飛びます飛びます☆」

 

 ちょっと待ってと言う暇もなく、マシンは青い流星となってビルの谷間を駆け抜けていった。なお、シンジはこの前のタワーの事件以来、高いところが苦手になっていた。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 道路がひび割れ、ビルは瓦礫の山と化す。このような光景も、この世界では珍しくもない。街が危ない、火が迫る。

 

 「ほわたっ!」

 「てぃやー。」

 

 2人の怪獣娘が、次々と現れるシャドウの群れを蹴散らしていく。一方は素早いツノのラッシュで、もう一方は強靭な尻尾の一撃で。

 

 「結構倒したね、大丈夫アギちゃん?」

 「平気、けど今回多いね。」

 「また巣があるパターンかな?そっちはエレちゃん達を信じよう。」

 「うん、となるとそろそろ・・・。」

 

 ドカーン!と大きな音と地響きを伴って、道路を割って巨大な姿が出てきた。

 

 「もはや様式美だね。アギちゃん、ちっちゃいやつらヨロシク。」

 「ゴモたん、一人で大丈夫?」

 「へーきへーき!」

 

 「シンちゃんにゴモたんが活躍するところ、見せてあげたいからね!」

 

 (`・ω・)bグッと親指を立てて見せるゴモラを、アギラは軽く笑みで見送る。

 

 (ボクは、ボクに出来ることをする・・・。)

 

 左手で近くにいたシャドウを吹き飛ばす。

 

 (今自分に出来ることに、命を懸けて。)

 

 ツノで正面のシャドウをなぎ倒す。

 

 (だから信じてる、『ボクと同じ』、シンジさんを。)

 

 両手で掴んだシャドウを振り回し、周りの奴らを巻き込んで投げ飛ばす。

 

 飛んで行ったシャドウは、巨大な流れ弾を喰らって消滅した。シャドウビーストだ!

 

 「かったいねー、おたく。」

 

 『グォオオオオオオオオオオオオオン!』

 

 「私の尻尾もダメ、ツメもダメってなると、あとはアレ(・・)しか・・・。」

 

 古代怪獣ゴモラの、隠された能力。本来は地中を削掘するための能力を、攻撃手段へと転化させた技。まさに、奥の手なのだ。

 

 その技を放つ隙を伺う。敵は強靭な手足と、太い尻尾を武器にする、ゴモラと同じスタンダードな『怪獣』のタイプだ。

 

 (右パンチのあとは、必ず左キックがくる。それから尻尾と来て、最後に両腕の振り下ろし。その後にチャンスが来る!)

 

 だからこそ、どう動いてくるかを『ゴモラ』にも察知できる。

 

 「どん、どん、どーんの、はい、今!」

 

 尻尾でうまくバランスをとりながら、空中で一回転して着地、そして横に滑りながら向きを合わせつつ、ツノに力を溜める。

 

 タイミングよし!角度よし!狙いよし!パワー充填完了!

 

 「『超振動波』!」

 

 そう叫んだ瞬間!ゴモラの三本のツノから稲妻のような熱線が放たれた!

 

 『グワォウウウウウウウウウ・・・』

 

 「やった・・・!」

 

 最後のシャドウを倒したアギラがそう確信する。今まで幾度となくゴモラの勝利を間近で見てきたが、その中でも超振動波は撃破率100%を誇る。

 

 『グルルルルルル・・・・・』

 

 「なに・・・!?」

 

 超振動波を浴びるシャドウビーストの胸は赤熱化し、ヒビ割れていた。しかし、徐々にそのヒビが収まっていき、逆に超振動波を吸収し始めているようだった。

 

 『ゴォオオオオオオオオオオ!!』

 

 「ゴモたーん!」

 

 とうとう超振動波のすべてを吸収し終えたシャドウビーストは、嘲笑うように吠えると、纏めてお返しとばかりに猛烈な火炎を吐いてきた。体力を使い果たしたゴモラは、成すすべなく炎に飲み込まれてしまった!

 

 「・・・ぐっ・・・あ・・・。」

 「ゴモたん!」

 

 体から煙を漂わせながら、ゴモラは力なく倒れた。援護に入ろうと、アギラは手近なところにあった車を投げて、シャドウビーストの気を引いた。

 

 (応援が来るまで、ボクが頑張らないと・・・!)

 

 『ガァアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

 寝ぼけ眼に闘志を滾らせ、アギラは構える。次はお前の番だと言わんばかりに、シャドウビーストは吠え、轟く叫びが無人のビル街に木霊する。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 遠くに雄叫びが聞こえる。すぐ間近で起こっていることが、ずっとずっと遠い世界のように思えた。

 

 (ボクは・・・やられちゃったのか・・・。)

 

 体が鉛のように重いのは、ダメージのせいだけではない。今まで無敵を誇った超振動波を破られたショックもある。けれどそれ以上に辛かったのが、他ならぬ幼馴染のことであった。

 

 (また(・・)・・・嫌われちゃったかな・・・。)

 

 シンジとの関係が再び始まったあの日あの時、ゴモラはとても嬉しかった。幼馴染の友達として、もう一度やり直せると思ったから。自分の手で壊してしまった、あの思い出の日々を。

 

 もしも自分が怪獣娘じゃない、普通の女の子だったら、怪獣とかそんなのが無い世界だったらとか、そんなことを思う時はある。

 

 (けどそんなこと考えるのは、今じゃないね。)

 

 痛む体を起こすため、目を開けて力を入れる。アギラが戦っているのが見える。そうだ、今の自分は大怪獣ファイトの期待のルーキーで、あの子たちの頼れる先輩なんだから。

 

 「しっかりしなよ・・・ゴモラ・・・!」

 『ミカァアアアアア!!!しっかりしろぉおおおおおお!!!!!』

 「ほぇ?」

 

 自分を叱咤する言葉に続いて、自分を叱咤する言葉が聞こえてきた。上から。

 

 「シンちゃん・・・?」

 「ピグモンもいますよぉ?」

 「しんどい・・・。」

 

 ふよふよとピンクの風船にぶら下がって、2人の人影が降りてきた。心配そうな顔をしているピグモンに対して、シンジは具合の悪そうな顔をしている。

 

 「シンちゃん、ピグモンちゃん・・・ここ、危ないよ?」

 「わかってます!だからピグモンたちも応援に来たんですよ!」

 「ミカ、立てる?」

 「へ、平気だよ、ぜんぜん・・・。」

 「無理するな・・・って言っても、無理やっちゃうんだろうな。」

 「わかってるじゃん、シンちゃん。」

 「ううん、ミカがどんな思いで怪獣娘をやってるのか、全然わかってなかった。」 

 

 へへへっと笑うミカの顔を見て、シンジは少し安心した。そして、落ち着いた口調で切り出した。

 

 「大体のことは、ピグモンさんや、ベムラーさんに聞いたんだ。」

 「ベムラーちゃん?」

 

 空を見上げれば、青い流星がシャドウビーストの気を引いている。乱雑に放たれる火炎を華麗に避け、時折青い熱線が放たれる。ピグモンも、風船を飛ばしてかく乱している。

 

 「ミカが、怪獣娘が世間に受け入れられるように努力しているのは、なにより『ゴモラ』のことを好きになって欲しいから。怪獣娘としてのゴモたんでも、その正体であるミカのことでもなく、『怪獣』のゴモラを、みんなに受け入れて欲しいからがんばってるんだって。」

 「・・・。」

 「怪獣がみんな、恐ろしいものだけじゃない、共に生きていける仲間だっていうことを、ミカはみんなに伝えたかったから・・・。」

 「・・・うん、おかしい、かな?」

 「そんなことない!そんなことない!!ミカはずっとずっと未来を見てたんだ。人間も怪獣も、手を取り合って生きていけるような、そんな暖かい未来を・・・。」

 

 溢れるまま、自分の思いを吐き出していく。声が上ずり、頬が紅潮しながら。何が言いたいんだろう、いや、色んな事を言いたい。今はただ、ミカと向かい合っていたかった。

 

 「そんな、ミカのことを知って、やっぱり思った。自分に何ができるかとか、自分がなんのためにいるのかとかよりも、」

 

 どんな風に受け止められるか、知ったこっちゃない。これが、今僕が一番やりたいことだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「僕は、ミカと一緒にいたい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ミカと『共に生き』たい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 なによりも強い願い、仲間と自分自身と向き合った末に導き出した答え。

 

 「!」

 「それは・・・?!」

 

 光と共に現れた、一枚のカード。前方に湾曲した特徴的な首、三日月のようなツノ、太くて長い尻尾。これが今の、僕たちの切り札。

 

 たとえ拭ええぬ闇から力だとしても、精一杯向き合い、光に染めていこう。その為に、行使することを厭わない。

 

 「行こう、ミカ。まだ行けるだろ?」

 「その前に、ひとついいかな?」

 「なに?」 

 「名前、まだ呼んでもらってない。」 

 「名前?」

 「そう、『私』と『ボク』の名前!知らないわけないでしょ?なんせ、みんなに愛されるアイドルで、大怪獣ファイトの期待のルーキーなんだから!」 

 「・・・そっか!」

 

 『グワァアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 

 シンジが納得したその時、シャドウビーストの放った紫色の光線が、背後のビルを破壊した。その瓦礫の大きな塊が、シンジたちのところへ降ってきた。

 

 「ゴモたん!シンジさん!」

 「あぶないですぅ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目と目合わせ叫び、そして生まれ変わる。怪獣娘とそのパートナー、そして怪獣と人間が手と手繋げる、新しいステップへ!

 

 「バディライド!」

 

 一瞬の閃光の後、卵のカラを破るように、振り上げた拳で瓦礫を粉砕してゴモラが現れた!

 

 「「はぁああああああああああああっハァッ!!」」

 

 炎のようなオーラが、粉塵を吹き飛ばす。アギラもピグモンも、そしてベムラ-も、思わず言葉を失った。ゴモラの姿が、普段以上に大きく見えた。

 

 「うっオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!イケる!!!!」

 

 「前の時よりも、強い『叫び』を感じる・・・!」

 

 燃える、燃える、心も体も炎のように!!『隣にいる』シンジも、その姿に圧倒される。 バディライザーを持つ手がビリビリしているが、それが心地よくもある。バディライドできたということもあるが、それ以上に、こうして隣にいれることの喜びに震え、熱い鼓動をかき鳴らす。

 

 「本当に、本当にすごいよミカ・・・!」

 

 っと、のんびり眺めてもいられない。気にくわないものを見つけたのはシャドウビーストだ。やっつけてやったちっこい奴が、なにやらパワーアップして立ち上がってきたのだから。もう一度踏みつぶしてやる!と吠える!

 

 『ギャォオオオオオオオオオオオオオオオオン!!』

 

 アスファルトの地面が割れる、コンクリートのビルが揺れる。巨大な壁のような威圧感が迫ってくるが、2人は動じない。大きく息を吸って、真っ直ぐ見る。

 

 「行けぇ、ゴモラぁあああああああ!!!!」

 「いっくぞー!!!!」

 

 その声を皮切りに、大決戦が始まった!自分の数十倍の体格はあろうシャドウビーストに向かって、ゴモラは突進する。

 

 「だぁっ!」

 

 『ガァアアアアアアアアア!!!』

 

 繰り出された拳を、ゴモラはその身一つで受け止める。しばらくギリギリとかちあった後、大きく一歩を踏み出して、その勢いで持ち上げた!

 

 「すごい・・・!」

 

 アギラたちはその様をただひたすら見ていた。いや、見ているしか出来なかった。怪獣娘の戦闘力を明らかに超えた、『怪獣同士の戦い』。もはや、神話の光景を見ているような感覚だった。

 

 「『押しつぶし』だぁ!」

 「でりゃぁっ!」 

 

 倒れた相手への追撃も忘れない。尻尾で大地を蹴って空へと舞いあがり、重力加速に任せたボディプレスをかます。このまま黙ってやられるシャドウビーストでもなく、反撃をしかけるが、これはシンジの指示で危なげなくかわせた。

 

 (意識のシンクロもしている・・・?)

 「がんばれ♡がんばれ♡」

 

 「まだまだぁ!」

 

 ゴモラが飛び退いた隙に慌てて立ち上がったシャドウビーストは、今度は尻尾を振り回してきた。

 

 「『大回転打』だぁ!」

 「おっしゃー!!」

 

 強大な力がぶつかり合う衝撃で、空気がキンっと鳴る!打ち合いに勝ったのはゴモラだ。尻尾勝負でゴモラに敵う者はいない!

 

 「足をもってけぇえ!」

 「っそぉい!!」

 

 『ゴォオオオオオオオオ・・・!』

 

 そのままの勢いを維持して、シャドウビーストの足を掬う。

 

 「レッドちゃん、技借りるよぉ!」

 

 倒れた足を掴んで、グルグルと振りまわす!ビルやら街路樹やらにぶつかった、被害が増えたような気がするが、気にしない!

 

 『グシュゥウウウウウウウウウ・・・』

 

 「そろそろ・・・フィニッシュかな?」

 「ああ、大技決めてやろうぜ!」

 

 シンジはカードホルダーから、黄色のカードを取り出し、バディライザーにセットする。これにより、ゴモラは更なる力を呼び覚ます!

 

 「「はァああああああああああ!!!!!!」」

 

 再びゴモラは、燃えるようなオーラを纏う。そして大地を揺るがし、抉りながら一歩一歩駆けだす。

 

 そして、ダウンしているシャドウビーストの胸倉に、ゴモラは己のツノを突き立てて、叫んだ!

 

 「「『超振動波・ゼロシュート』!!!!!!」」

 

 声と声が、胸の高鳴りが重なる!最強の技を、直で喰らわせてやる!

 

 「「うォおおおおおおおおおおお!!!!せりゃぁあああああああ!!!」」

 

 シメは、ツノでかちあげる!!!

 

 『グルルルルルルルル・・・・』

 

 かちあげられ、墜落したシャドウビーストの巨体は、少し唸ると動かなくなり、しまいには爆発を起こした。

 

 勝った。

 

 「やった・・・。」

 「おっ、シンちゃん大丈夫?病み上がりなのに。」

 「大・・・丈夫・・・」

 

 じゃないかも。ちょっとハシャぎすぎた。一気に顔面蒼白となって倒れ込んで、気を失った。

 

 「空が・・・青いな・・・。」

 「大丈夫?顔色青いよ?」

 

 いつの間にか、遠くから人の声が聞こえてきたので、応援が来たんだろう。安心感と充実感に満たされて、目を瞑った。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「ん・・・。」

 「おっはよ、シンちゃん。」

 「もう、夕方か・・・。」

 

 赤い光が眩しい。シンジはゴモラの膝枕で目を覚ました。

 

 「もう大丈夫?」

 「うん、ありがとう。」

 「どういたしまして。」

 

 ゆっくりと体を起こして、周囲を見回す。少し離れたところのビルが壊れているのが見えた。

 

 「・・・夢じゃなかったんだ。」

 「何が?」

 「いや、夢みたいな体験だったから。」

 「もう二回目なんでしょ?」

 「何回やっても感動するもんだ。ミカもそうじゃない?」

 「・・・そうだね、毎日色んな発見があるよ。」

 

 「でも・・・初めての時は、怖かった。」

 「・・・そっか。」

 

 「ミカ、昔は自分のことを『ボク』って呼んでたよね。」

 「うん、でも今は私の中に『もう一人』いるから。」

 「『ゴモラ』か。」

 「うん、もう一人の自分。」

 「そのゴモラのことも好きになって欲しい、って意味だったんだな。」

 「えへへ、そのとーり。」

 

 「あの日・・・。」

 「ん?」

 「いや、僕の中にあった疑問がひとつ解けたかなって。誰かの力になれたらって、願いの理由だ。」

 「それは?」

 「あの日、『泣いてる』ミカのこと、ずっと助けたかったからだった。」

 「シンちゃん・・・。」

 「僕、今ミカの助けになれてるかな?」

 「そんなの、いわなくてもわかってるでしょ?」

 「そっか、これでいいんだ。」

 

 「あっそうそう、もうひとつ正すべきところがある。」

 「それは、なに?」

 「僕が前、ミカは後ろだ。」

 「は?」

 「子供の頃は、僕が前でミカを引っ張って、ミカが僕の後ろをついてきてたじゃないか!認めないぞ、ミカが前なんて!」

 「・・・ぷっ、なにそれ?」

 「これからは、ミカの隣にいたいってこと。言わせんなハズカシイ。」

 「いいよ、シンちゃんは特別だからね。」

 

 

 

 

 

 他愛無い話をずっと続けていた。こうしていられる幸せを感じていた。

 

 

 「ゴモたんさん、シンジさん、そろそろ行きますよー!」

 「早くしないと日が暮れちゃうよー!」

 「2人とも疲れてるだろうから、無理しなくていいのに・・・。」

 「大丈夫だよー!今行くー!」

 「ちょっと待って、いてて体の節々が・・・。」

 

 もう日が暮れる。そろそろみんなのところへ帰ろう。仲間たちのところへ・・・。

 

 「いよーし!本部までランニングしよー!」

 「無理だよ、足並み合わせるなんて。」

 「そうですよミクさん、私だってもうクタクタですし・・・。」

 「お腹もすいちゃったし。」

 「おっ、じゃあ帰る前にご飯たべてこーかー!」

 「先に方向に帰りましょうよ・・・。」

 

 ミクさんは相変わらず元気だし、ウィンさんは真面目だし、アギさんは寝ぼけ眼だし、なんだか、初めて会った日のことを思い出す。ただ違うのは、空がとっても綺麗だってこと。

 

 「あっ、一番星。」

 「えっどこどこ?」

 「一番星は西の空、明けの明星は東の空だけど。」

 「あれかな、一番大きい星。」

 「ステキですね・・・。」

 「へー、シンちゃん、幸せなんだね。」

 「どうして?」

 「一番星は、幸せな人間にしか見えないんだって!」

 「・・・幸せだよ、とっても。」

 

 

 「それとね、見つけたよ、僕のやりたいこと。」

 「どんなのどんなの?」

 「怪獣娘さんみんなと仲良くなりたい。ミカだけじゃなくて、アギさんたちも、まだまだ会ったことのない人とも、これから出会う人とも、全員と。」

 「じゃあ、私はその最初の一人なんだ。」

 「うん、これからもよろしくね、ミカ、ゴモラ!」

 「うん!」

 

 

 手と手繋ぎ、進んでいく。優しくて暖かい未来を掴むために...。

 

 

 




 くぅ疲。これにて最終回となります。次回、エピローグを入れてこのお話は終わりとなります。お付き合いありがとうございました・・・!

 ネタ解説

 誘拐されるミカ:ゴモラも無理矢理連れ去られた被害者だった。とすれば、そのゴモラのソウルが目覚める条件も似たようなものになると予想した。

 ベムラーさんのバイク:変形して飛ぶって原画展で見た。

 街が危ない火が迫る:斗え!ウルトラマンの歌詞。実際には『し』が迫ると歌っている。『あたり一面焼け野原』とかが戦争を連想させてNGになったとか云々。

 ピグモンの風船:風船はピグモンさんの能力で出せるらしい。

 ゴモラ、ピグモン、ベムラー:漫画版大怪獣バトルのイオの手持ち怪獣。これがやりたいがためにベムラーさんを出したまである。

 泣いてるミカを助けたい:誰かが救いを求めてる、どこかで誰かが泣いている

 僕が前、ミカは後ろ:お前が下だ!ポルナレフッ!

 一番星は、幸せな人間にしか見えない:帰ってきたウルトラマン2話の最後のシーンの坂田健の台詞。この回が好きだから、一番入れたかった台詞。


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見えない絆

 エピローグは終わりじゃない。新しい始まり。


 「すまない、待たせたかな。」

 「いえ、全然。」

 

 あの激闘から数日後、GIRLS本部のサロンで、シンジはベムラーさんと会っていた。今回は以前と違って、眉間に皴が寄るような雰囲気ではない。

 

 「また父のことでなんやかんや聞かれるのかなーと。」

 「まあ、そんなところだ。もっとも、今回は私が言う側だが。」

 

 連日、GIRLSのお偉いさんやら好奇心旺盛そうな怪獣娘さんやらに同じような事を聞かれては、曖昧な受け答えしか用意できない現状に辟易としていたところだった。ロクに答えられなくて申し訳ないという意味で。

 

 その中で疑いの目や奇異の目に晒されることもあったが、そんな中でもミカやアギさん達の存在は救いだった。

 

 「少しフォローをしておきたかったからな。」

 「フォロー?僕なにかやらかしましたか?」

 「いや、君は悪くないんだ。」

 

 既に色々やらかしてしまっているような気はするが。ベムラーさんが持ってきてくれたコーヒーをずずずっと啜って自問する。

 

 「あ、それとも父のことはもう関わりたくないと思っていたりは?」

 「大丈夫です、もう覚悟決めましたから。」

 「なら、なおさら聞いておいて欲しい。」

 

 あくまで可能性の話なのだが・・・と小さく呟きつつ、鞄から書類を取り出して渡してきた。

 

 「これは?」

 「君のお父さんの調査結果だ。元々はGIRLSから依頼だった。」

 「そのために、あの時僕と接触したってことですか。」

 「そういうことだ。君に対して個人的に興味も沸いたのだけれどな。」

 「えっ?」

 

 ふふっと意味深げに笑うベムラーさんに一瞬気を取られるが、すぐに元の表情で見つめ返してきたので慌てて書類に視線を落とした。

 

 以前ピグモンさんから説明されたことと、大体一致していた。GSTEのこと、フリドニアのこと。以前無かった情報としては、顔写真があったことだろうか。

 

 「これが、父の顔・・・。」

 「20年近く前の写真になるがな。それしか手に入らなかった。」

 

 シンジはじぃっとその古ぼけた写真を見つめた。なんとも、不服そうな、むすっとした不愛想な表情で写っている。言われてみれば、少し自分に似ているかもしれない。20年前となると、今の自分より少し上ぐらいの年頃だったんだろうか。

 

 「当時は『二階堂』という名前で、若くして古生物学、生態学のスペシャリストとして大成し、学会でも注目されていたが、ある時追放された。」

 「怪獣のことを研究していたから?」

 「そう、怪獣を蘇らせ、操る事を可能だと発表したんだ。元々プライドが高く群れることを嫌い、浮いた存在だったこともあって、学会からは危険視された挙句追放というわけだ。」

 「・・・むしろそんな危険人物を、野に放つほうが間違いだったんでは?」

 「私もそう思う。が、当時としては『ありえない』と思われていたんだろう。まだ『怪獣娘』の存在が明らかになる前のことだったから。」

 

 と、当のその本人が言う。シンジは口を一文字にしてページをめくった。

 

 「それから表舞台から姿を消し、しばらく行方をくらませていた。しかしある時、そんな彼に手を差し出すものがいた。」

 「それが、GSTE。」

 「そう、怪獣娘の存在が明るみになり、その力を悪用しようとする者たちが現れ始めた。その中でもGSTEは、学会を追放された天才に目を付けた。」

 「そして、バディライザーは作られた・・・。」

 

 コトッと机の上にその機械を置いた。あれから、何度か起動することに成功している。その度に入念な検査が行われているが、今のところ僕にもミカにも問題は出ていない。力はまた付いてきているが。

 

 「ここまでがGIRLSの依頼に関する話だ、何か質問はあるかな?」 

 「えっと、GSTEは壊滅したんですよね。たしかフリドニアごと。」

 「そうだ。これも調べたところ、どうやらGSTEが原因らしい。」

 「自分たちで自分たちの拠点を壊したんですか?」

 「ああ、GSTEは怪獣娘たちを使って非人道的な実験を行っていたらしい。その怪獣娘の力が暴走した結果、巡り巡って全てを破壊したらしい。」

 「その怪獣娘さんは?」

 「それも消息不明だ。目撃情報を照らし合わせた結果、『ジラース』に似た怪獣である可能性が高い。」

 「ジラース?」

 

 えりまき怪獣 ジラース

 

 身長:45m

 重さ:2万トン

 イギリスのネス湖に生息していた恐竜の一種。口から吐く青い熱線が武器だ。

 

 「へー。」

 「岩のような黒い体や、青い熱線が目撃されていた。しかし気になることに『えりまき』が無かったそうだが。」

 

 怪獣図鑑を見て感嘆の声を漏らす。怪獣っていろんなのがいるんだなと。

 

 「父もGSTEと運命を共にしたんでしょうか?」

 「いや、そうとも言い切れない。フリドニアの壊滅と、バディライザーが日本へ送られてきたタイミングはほぼ一致している。危険を察知して、いち早くバディライザーだけを君の元へと送ろうとしたのかもしれない。」

 「もっとデータを集めさせるために?」

 

 コツンコツンと指でバディライザーを叩く。せめて説明書のひとつでもつけてくれれば、こんなに苦労することもなかったのだけれど。

 

 「で、だ。ここから先は『探偵』としての話。」

 「探偵として?」

 「濱堀ソウジへの、個人的な解釈意見を述べさせてもらう。キミは、父のことをどう思っている?」

 「・・・最低の人間だな。誰にも彼にも迷惑ばっかりかけてるし。」

 「ほう?」

 「僕が生まれる前に、家を出て音沙汰無し、母はいつも苦労していました。家は貧乏だし。」

 「そうか・・・。」

 

 こうして今はその理由がわかったが、マイナスがさらにマイナスになっただけである。

 

 「濱堀博士がGSTEに入ったのも、ちょうどその時だろう。しかしここに疑問点(ファクター)がある。」

 「どんな?」

 「当時使っていた名前だ。二階堂という名前で博士号をとり、GSTEにも参加していた。しかし、彼の本名は『濱堀』だ。なぜ偽名を使っていたのか?そして使い続けていたのか。」

 「単純に身元が割れないようにするためでは?実際情報がほとんどなかったんでしょう?」

 「そう、『身元を割れさせなかった』。そこにひとつの『答え』があるんじゃないか?」

 「つまり、どういうこと?」

 

 ぴくり、とシンジの指と眉が動いた。

 

 「あえて偽名を使っていたのは、君たち家族のことを隠すためだったんじゃないか?そう私は思える。」

 「隠す?」

 「研究に何かがあった時、君たちにも危害が及ぶ可能性を危惧していたんじゃないか。例えば人質にされたりとか。」

 「自分の弱みになるから?」

 「そう思うなら、最初から作らなければよかった。そのはずだろう?」

 「たしかに。」

 「それに、バディライザーを君に託したということ。君の事を信じていた、と言うことなんじゃないだろうか?」

 「心配してるんなら、そんなものよこすなって思います。」

 「君に継いで欲しかったんじゃないだろうか、自分の夢を。」

 「怪獣娘を使って、世界を滅ぼすことを?」

 

 「本当にバディライザーが、怪獣娘を暴走させるだけの機械なんだろうか?暴走させるこっとが目的なら『それだけでいい』はずだ。なのに、バディライザーの使用条件は・・・」

 「怪獣娘と、心を通わせること・・・。」

 「そう、今使いこなすことが出来るのは君だけだろう。そんな不確かなシステムを、支配するために使うだろうか?」

 「・・・よく、わからないです。」

 

 

 

 

 

 「じゃあなにか?父は僕を愛していたと?」

 「そうだ、とも言いきれないが、そうかもしれない。」

 

 

 

 窓から入る日差しが、強く2人を照らしていた。その火照りに促されるように、会話もヒートアップしていた。

 

 「さっきも言いましたが、本当に愛していたならこんな危険なものを送ってくるのはおかしいんじゃないですか?」

 「さっきも言ったが、自分の後を継いでも欲しかったんだろう。両方だ、その矛盾する両方なんだ。」

 「危険に巻き込みたくないけれど、継いで欲しい・・・。」

 「だから、君に手紙を出したんだ。『遺産を継いで欲しい』という手紙を。そして、君は来た。」

 

 あの時の手紙をは、今も上着の内ポケットに入っている。頭を抱えたくなった。

 

 「・・・でもそれも、ベムラーさんが言ってる事全部、想像の話ですよね?」

 「そうだ、あくまで私の頭の中の空論だ。可能性があるというだけだ。」

 「いや、きっとそれが最大限、最善の可能性なんでしょうね。」

 「事実は小説よりも奇なりとも言う、もっと斜め上の真実かもしれないし、もっともっと最悪の真実かもしれない。けれど、空想する分にはタダだ。どう『思っていても』いい。」

 「そこになんの意味が?」

 「ない。ただ、どう思っていてもいいなら、少しでもいい方を選んでいたいだろう?箱を開けてみるまでどっちが正しいかはわからないが、どっちであってほしいか願うことは出来る。ただの人生の先輩としてのアドバイスだ。」

 

 

 泣いて暮らすも一生、笑って暮らすも一生、か。

 

 「話はこれだけ。付き合わせて悪かったな。」

 「いえ、少し気持ちが軽くなりました。」

 「ならよかった。困ったことがあれば相談しに来ると良い。力になる。」

 「はい、ありがとうございます。」

 「それと、これをあげよう。」

 「これは?」

 

 ピンク色のこの駄菓子は・・・すもも漬け?

 

 「おいしいぞ。」

 「はぁ・・・?」

 「ではな、アリーヴェデルチ。」

 

 イタリア語で挨拶をして、ベムラーさんは去って行った。

 

 「・・・どれを選ぶかは、自分で決められる。」

 

 べりっと封を開けて口に入れる。この後は、GIRLSのお偉いさんの教授に会う約束がある。見習いのバイトじゃなく、本格的にGIRLSで働くための面接のようなものだ。

 

 「どんな圧迫面接でも負けるつもりは無いけど!」

 

 食べ終わったゴミを捨てると、よっしと気合を入れる。空が眩しい。最近は雨も降らなくなってきた。雨男が嘘のようだ。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「ネタの解説ほど野暮なものもないよね。」

 「何よ突然。」

 「いやさ、せっかくボケたのに笑ってもらえなくて、笑いどころを説明しなきゃいけないのってミジメだよね、お笑い芸人として。」

 「ミカお笑い芸人だったっけ?」

 

 GIRLSの仮身分証や『ニコニコ生命保険』のパンフの入ったカバンを脇に置いて、鉄板越しにミカと向かい合っている。他人の金で焼き肉が喰いたい!ということで、今日はミカに奢ってもらうこととなった。2人でGIRLSの合格祝いと言ったところだ。アギさんたちからも誘われたので、明日もみんなでやる。

 

 「それでどんな話したの?」

 「シフトの話と、保険の話と、ちょっと世間話だけ。」

 「私も大概そうだったかなー、意気込みとか聞かれた?」

 「うん、そんなところ。」

 

 金網の上でジュウジュウと音を立て、脂と香ばしい薫りを出す様はとてもおいしそうだ。何故客観的な物言いなのかと言うと、シンジが焼いた端から、ミカが食べていってるから。

 

 「シンちゃんどんどん食べなよ。せっかくの私のおごりなんだからさー。」

 「そういってミカ、さっきは野菜しか焼いてなかったじゃん。肉は僕がやる。」

 

 焼くのが好きな人、食べる専門の人。よく焼く人、レアがいい人。野菜が好きな人、野菜を食べない人。白飯を頼む人、ビビンバを食べる人。それぞれシンジは前者でミカは後者。

 

 「シンちゃんは調査課に入るのかな?」

 「うん、新しい人を見つけて、仲良くなるのが仕事かな。結構余裕があるから、他のとこの応援にも行くだろうけど、」

 「そっか、じゃあまた私のマネージャーやれるんだね!」

 「うん、いいよ。ミカの頼みならなんでも。」

 「そこは一回でも『えー?』とか言うところじゃないかなぁ?ノリ的に。」

 「僕がミカのお願いが聞けないと思う?」

 「うっ、そんなハッキリ言われるとハズカシイ・・・。シンちゃん、この短期間でちょっと成長しすぎじゃないかな?」

 「それもミカのおかげだよ。」

 「はキュン・・・♡」

 

 ミカの箸が止まった。今がチャンスだ、食べごろのお肉をかっさらえ。

 

 「ま、まあこれからのシンちゃんの成長に期待だね。わかってる?これからが大変なんだよ?」

 「ん?たとえば?」もぐもぐ

 「体を鍛えなきゃいけないし、知識も付けなきゃいけないし、あとコミュ力も重要になってくるよ!」

 「ミカは全部揃ってるね。」

 「いやいや、私だってまだまだだよ。弛まぬ向上心こそが、日々の未来を作っていくんだよ!」

 「ほへー、まあなんとかなるっしょ。」

 

 「よーし気分がノッてきたー!もう一軒いこー!」

 「え、僕もうお腹いっぱいだよ。」

 「じゃじゃ、カラオケ行こ!カロリー消費できるし体力もつくよ!」

 「明日も早いんじゃなかったっけ?」

 「明日からは、またみんなと一緒だから・・・今日だけは、離したくないかな。ダメ、かな?」

 

 ちょっとうるんだ瞳で、いつもと違う雰囲気で、イイ感じに火照った頬を染めて、薄暗い道でそんなこと言われちゃったら、断れません。

 

 「・・・ちょっとだけね。」

 「やったー!シンちゃん大好きー!」

 

 どうやら、シンジはミカには一生勝てない(さが)を背負っているようだ。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「ミクさんは切り込みつつ前進を!」

 「ほいさー!」

 「アギさんはミクさんの援護を!」

 「おっけー!」

 「ウィンさんは撃ち漏らしの迎撃を!」

 「はい!」

 

 次の日、お祝いパーティーの最中に警報が鳴った。シャドウ出現の報せだ。当然これに駆り出される一行は、2手に別れてシャドウの巣食うビルへと進軍する。その一方、いつもの3人ことアギラ、ミクラス、ウィンダムに同行することとなったシンジは、遠くから指示を飛ばす任に着いた。

 

 「ミクさん!上からも来てます!一旦ストーップ!」

 「へーきへーき!ってわぁ!」

 「ミクさん!」

 「シンジさん!」

 「うん!バディライド!」

 

 スパーク!アギラさん、パワーアップ!

 

 「ヒューッ!すっごいねー!あっという間にバーッと片づけちゃったよ!」

 「この調子で、先を急ぎましょう!」

 「うん、一気に決めよう!」

 「ちょっ、置いてかないで・・・。僕、足はそんなに速くなってないから。」

 

 RPGで例えるなら、ミクラスは壁役にもなる剣士、アギラはアタッカーの格闘家、ウィンダムは遠距離攻撃の弓使い、シンジはブースト役の魔法使いだろうか。大抵魔法使いは素早さが成長しやすいものなので、これからの成長に期待したい。自転車やローラーシューズを使うのはどうだろうか?

 

 「ついた!」

 「おっ、アタシたちが一番じゃない?まだ先輩たち来てないよ!」

 「競争じゃないんですから、急ぐべきではありますけれども!」

 「ちょっと・・・待って・・・。」

 

 道中現れるシャドウをちぎっては投げちぎっては投げの快進撃で歩を進め、わずか2分で目的地まで到達出来た。辺りには不穏な空気が立ち込めており、今にも何かが飛び出してきそうだ。

 

 「心臓が飛び出しそう・・・。」

 「大丈夫ですかシンジさん?」

 「皆元気よすぎ・・・。」

 「アタシたち元気がとりえだからねー!」

 

 これだけでヘタレる自分が情けないと思う反面、女の子に体力で負けたくないとは常々思う。彼女たちは強い怪獣娘だけど、本質は普通の女の子だ、と言う前提があるから。

 

 「っと、そろそろ来るんじゃない?ボス。」

 「そうだね、今までのパターンから察するに。」

 「私たちだけで大丈夫でしょうか?」

 「へーきへーき!今のアギちゃんなら何も怖くない!」

 「フラグやめて!」

 

 その言葉を皮切りに、待っていたかのようにビルの壁を破壊して巨大なシャドウが姿を現した!

 

 「よっしゃー!いっけーアギちゃん!」

 「ボク任せ?」

 

 まずアギラが先手をしかけ、隙をついて2人が攻撃する。シミュレーション通りだ。この戦法は幅広く応用がきいて、シミュレーションでも実用性が高かった。

 

 そう、シミュレーション上では。

 

 「いっくぞ・・・あれ?」

 「どうしたの?」

 「なんか・・・力が・・・。」

 「あれ?あれれ?」

 「どうしたんですか?」

 「バディライザーが・・・待機状態に戻っちゃった。」

 

 『グルルルルルル・・・』

 

 「まさか、」

 「時間制限が、」

 「あったの!?」

 「知らなかった・・・。」

 

 『ギャアアアアアアアアアアアアアン!!!!』

 

 「やっば。」

 

 不測の事態だ。まわりにはちっこいシャドウもウヨウヨ湧いてくるし、目の前にはでっかいのもいる。もしかしなくても孤立無援のやべー状態だ。

 

 「シンジさーん!もう一回バディライドできないのー?!」

 「やってるけど反応しない!」

 「どどどどどうするんですか!いくらなんでもこの数はまずいですよ!」

 「一旦退避しよ・・・うっ・・・。」

 「アギちゃん!」

 

 一気に体力を失ったアギラが、膝をついてしまった。

 

 「アギさん!」

 「シンジさん危ないよ!」

 

 自分のせいでこうなったんだ、せめてこれぐらい、命張らさせて欲しい。

 

 「シンジさん、来ちゃダメ・・・。」

 「うぉおおおおおおおおおお!!」

 

 無防備な彼女の、命の盾ぐらいにはなれる!せまる炎に背を差し出し、歯を食いしばって覚悟する。

 

 「・・・熱くない?」

 「これは・・・!」

 

 いつまでたっても痛みを感じないので、ゆっくりと振り返ってみれば、そこには透明な壁があって、僕たちを守ってくれていた。

 

 「バリアー?」

 「ゼットンさんだ!」

 

 気が付くと、周囲に異変は起こっていた。小さなシャドウたちが次々に倒れていく。速すぎて目で追えない何かが、片っ端から叩きのめしているようだった。

 

 「あっ、あそこ!」

 「どこ?」

 「上だよ上!」

 

 ようやくシンジはその姿を捉えた。黒いボディのクールビューティ、噂に聞いていた最強の怪獣娘、ゼットンさん。

 

 「あれが・・・。」

 

 新たな標的を見つけた威嚇か、それとも仲間たちを倒されて怒ったのか、それともビビったのか、吠えるシャドウビースト。地面も空気も揺らさんその咆哮に、普段の僕たちなら身じろいでいただろう。しかし、今は全然そんなことはなかった。

 

 なにせ、既に必殺技の体勢に入ったゼットンさんがいるんだから。

 

 「一兆度の炎、体感してみる?」

 

 『ギャアアアアアアアアアン!!!』

 

 哀れ爆殺。シャドウビーストは見せ場の一つもなく退散してしまった。

 

 「ゼットンさん・・・。」

 「アギラ、平気?」

 「はい、ありがとうございます。」

 「そう・・・。」

 

 アギラの無事を確認して、ゼットンさんはワープで去って行った。少し微笑んでいたようだった。

 

 「行っちゃった・・・。」

 「アギちゃん、シンジさん、大丈夫?」

 「うん。」

 「あれがゼットンさんなんだね・・・。強いなぁ・・・。」

 「うん、ボクもまだまだだね。きっとバディライドしてても、まだゼットンさんに敵わないと思う。」

 「アギさんなら、いつかなれると思うよ。僕がいなくても。」

 「そう・・・かな・・・。」

 

 「シーンー・・・ちゃぁああああああああああん!」

 「おわっ!」

 「大丈夫だったシンちゃん?アギちゃんも平気?」

 「う、うん、ゼットンさんが来てくれたから。」

 「相変わらずはええなぁ。」

 「レッドキングさん、お疲れ様です。」

 「おう、調子はどうだシンジ?」

 「あやうく命を落としかけました。」

 「えぇー!シンちゃん大変じゃん!!!」

 「苦しいから・・・今まさに失くしそうになってるから・・・。」

 

 ミカもこんな調子だけど、心配してくれてたんだ。自分のことも、それから仲間の事もみんな守るためには、バディライザーをもっと使いこなす必要があるし、もっと強くならないといけない。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「僕も・・・もっと強くならないと。」

 「その意気だぜ!特訓したいならオレも協力するぜ!」

 

 たしかに僕はあの時そう言った。けど・・・。

 

 「こんな命がけの特訓なんて知らないよ!」

 「逃げるなー!車に向かってこーい!」

 「やーだーむーりー!!」

 

 なんか仮面のヒーローとか5色の戦士とかが戦ってそうなどっかの採石場に、ブロロロロ~!と鉄の獣の唸り声が響く。

 

 現在は、レッドキングさん指導の元、その弟子のザンドリアスと共に、根性をつけるための特訓中である。

 

 「やめてください!!レッドキングさん!!」

 「泣き言を言うな!お前の涙でシャドウを倒せるか!!」

 「どわー!」

 

 あやうく轢かれかけるところを飛び退いてかわせた。まだザンドリアスが逃げ続けているのを、死んだ魚のような目でぐったりとしながら見つめている。

 

 「休憩は済んだか?じゃあ次いくぞ!」

 「やめてください、今度こそ、本当に死んでしまいます。」

 「いやー!ママー!」

 

 「いよっ、やってるねレッドちゃん!」

 「ようゴモラ。」

 「あっミカ助けて!」

 「おい、お前もか!これじゃオレが虐めてるみたいじゃねえか!」

 「やっぱり虐めてるようにしか・・・。」

 「差し入れ持ってきたんだよ!」

 

 ミカ他、いつもの3人が来てくれた。神の助けか、地獄に仏か。

 

 「愛の鞭ですね先輩!」

 「喰らってる方からしたら痛いだけなんだけどなぁ。」

 「そうそう、鞭だけじゃなくてアメもそこそこあげないとね。」

 「なかなかシビアなこというじゃないかミカ。」

 「よーし、じゃあここで一個アメちゃんをあげようってことで、一発ギャグいってみよー!シンちゃんが!」

 「どう考えても鞭じゃないか。」

 「レッドキングさんの鞭と、どっちがいい?」

 「・・・正直、どっちも嫌。」

 

 結局どっちもやらされたシンジであった。

 

 「ってぇ、わたしのことは無視ぃ!?」

 「ごめんごめん、タコ焼き食べる?」

 「いただきまぁす!」

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「もしもし?お母さん、元気?」

 

 「うん、元気だよ。こっちの生活にも結構慣れたし。」

 

 「うん、うん、大丈夫だよ。友達もたくさんできたし、ミカ覚えてる?子供の頃一緒だった。そうそう、あのミカ。」

 

 「うん、すごい変わってたよ、色々と。それが一番うれしかったかな。」

 

 「じゃあ、またかけるから。じゃあね。」

 

 「え?大丈夫だって。うん、じゃあね。」

 

 命の危険を感じた時、脳内をよぎったのは優しい母の顔であった。別にザンドリアスのように叫んだりこそしてないが、心の中には浮かんでいたので自分も同類か。ところで、戦場で恋人や女房の名前を呼ぶ時と言うのは、瀕死の兵隊が甘ったれて言う台詞だそうだ。

 

 「シンジ様、コーヒーをお持ちしました。」

 「ありがと、そこ置いといて。」

 「先ほどの電話のお相手は、マユミ様ですか?」

 「うん、久しぶりに話した。」

 

 チョーさんの淹れてくれたコーヒーは、温度も砂糖の量もちょうどいい。正確さを求めるならやはり機械に任せるのが一番だ。

 

 ほぅと一息吐きながら思い浮かぶのは母の事。女手一つで自分をここまで苦労して育ててくれた大切な親。

 

 あんなに優しい人を、どうして父は置いていったのか。いや逆か、母は何故そんな父を選んだのか。と言うか、どこで出会ったのか。気が向いたら聞いてみるのもいいだろう。それよりも自分は目下勉強中。

 

 「機械工学に、量子力学、それにまつわるエトセトラ。どれだけ覚えても足りるということが無いよ。」

 「私も微力ながらお手伝いさせていただきます。」

 「頼りにしてるよ。」

 

 GIRLS調査部がこの家と、この家に隠された研究施設に本格的に立ち入り、天井裏から床下までひっくり返して調査を行った。

 

 「ベッドの下まで探られなくて本当に良かったですね。」

 「やめれ。」

 

 その結果、数々の研究データが見つけられた。かつての怪獣の出現記録から割り出された、怪獣の眠りを呼び覚ます音波の周波数。怪獣を手懐けるにおい(・・・)。そして、怪獣の力を利用する兵器。まるで本物の怪獣が現れることを想定していたかのような内容であった。

 

 「少なくとも今の時代では使えないような代物ばかりだった。」

 

 これから先そんな時代が来ないとも限らないがさておき。しかし怪獣娘さんたちのために利用できないこともない。そしてその父の研究を引き継げるのは、息子であるシンジしかいないと、自分で名乗りを上げた次第だ。

 

 そしてそれは受け入れられ、今に至る。あとは努力を続けていくだけだ。

 

 覚えれば誰にでも出来たことかもしれない。けれど、誰にも真似できないレベルまで高めれば、それは自分だけにしか出来ない個性となる。

 

 「よーし、がんばるぞ・・・!」

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「んにゅ・・・?朝・・・?」

 

 いつの間に眠っていたんだろう、足が痺れて口の中が渇いている。

 

 「朝ごはんは何かな・・・ん?」

 

 窓の外に影を見た。まさかシャドウか?

 

 「おっはよー!シンちゃん!」

 「玄関から入れ!」

 

 人影の、正体見たり幼馴染。

 

 「もう10時だよー、今頃起きたの?」

 「昨日も遅くまで勉強してたから・・・。」

 「だろうね、顔に書いてあるよ?」

 「何が?」

 「数式。」

 

 鏡を見ると、たしかに顔に数式が描いてあった。

 

 「ノートに突っ伏したせいか・・・。」

 「とりあえず、顔洗ってきたら?それまで待ってるよ。」

 「待ってる?何を?」

 「んもー!今日デートする約束だったでしょ?」

 「・・・そうだっけ?」

 「そうだって!ほら行った行った!」

 

 とりあえず大人しくコーヒーでも飲んでてもらうとして、いそいそと支度をする。

 

 「ちらっ。」

 「いやんバーガー。」

 

 用意された朝食をとって、さっそく出かける。行き先は、また映画館でいいか。

 

 「じゃあ、行ってきます。」

 「行ってくるねー。」

 「はい、いってらっしゃいませ。」

 

 ガチャっとドアを開く。眩しい光が目に飛び込んでくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日も、いい天気だ。




 ネタ解説

 GIRLSのお偉いさんやら:小説版に登場した人たちを思い浮かべてくれたらいいかな。多岐沢マコト博士は、特に親身になってくれただろうと予想。個人的には、怪獣娘2期のナレーションとか館内放送の声の人がマコト博士なんじゃないかと思ってたり。

 濱堀ソウジ:名前の由来は特になし。強いて言えば、シンジの父なら最後の『ジ』は共通していると考えてのこと。基本的に謎が多く、シンジのこともまっとうな父と子と考えているのか、それとも『俺のDNAだ!』としか考えていないのか不明。

 俺のDNAだ:ブレンパワードの主人公、勇の父親の台詞。富野作品にありがちなクズ親の典型的なパターンだ。

 二階堂:大分麦焼酎ではない。初代ウルトラマンのジラースの回で、ジラースをネス湖から連れ出した人。ただ名前を借りているだけなので、別にジラースっぽい怪獣に踏み殺されてはいない。

 ジラースらしき怪獣:もはや何も言うまい

 今も上着の内ポケットに:ウルトラマンXの戦士の背中より、神木隊長の絵のオマージュ。伏線回収にハッとさせられたいいシーンでした。神木隊長の過去で、出撃しなければならなかった相手の怪獣はテロチルスだったそうな。そりゃほっとけないわな。

 泣いて暮らすも一生、笑って暮らすも一生:有言実行姉妹シュシュトリアンの最終回の『個人曰く』。シュシュトリアンにはウルトラマンも出ていたことで有名。

 アリーヴェデルチ:アリアリアリアリアリアリ・・・

 ニコニコ生命保険:ウルトラマンジードに登場するダミー企業(?)本当に保険会社として働いているのかはさておき、こっちの世界では普通の保険会社として存在しています。プランの中には対怪獣災害保険も含まれています。

 迫る炎に背を差し出し:ピッコロさんのように前を向いていると死ぬ

 一兆度の炎、体感してみる?:モン娘は~れむにおいての、ゼットンさんの一兆度の火球使用時の台詞。進化後はトリリオンメテオにパワーアップし、「この技、あなたに見切れる?」に変わる。ゼットンさんの意外な一面が見れてすごいかわいいモン娘は~れむ、みんなやろう。

 仮面のヒーローとか五色の戦士が戦ってそうな採石場:いわゆるいつもの場所。いつもの崖とかいつもの海岸とかもある。登場するたびに名前が変わっているということは、それらは全部違う場所にあるということなんだろうか?あんな風景が日本のあちこちにあるっていうのか。

 ブロロロロロ~!:バロム1のOPより。加工されえて霊帝の断末魔になってたりもする。

 戦場で恋人や女房の名前をry:∀ガンダムの御大将ことギム・ギンガナムの台詞。映画とかでのあるあるに言及したセリフ・・・なのかな?

 お母さん:名前は濱堀マユミ。特撮でマユミと言えば、ジバンの女の子かな?出演者の中で一番ギャラが高かったという・・・。本職は地質学者で、フィールドワークの最中にソウジと出会ったのが馴れ初め。地質学者という設定は大空大地のお母さんから得た着想。

 ベッドの下:やめてください。


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私闘!ゴモラ対ゴモラ!

 ノベルが発売されるまで投稿しないと言ったな。スマンありゃウソだった。

 ウルトラかいじゅう絵本シリーズの「オーブとたびびとのふく」、アリャ面白すぎる。


 「あけましておめでとう!」

 「一週間ぐらい前にも聞いたよそれ?」

 「お年玉ちょうだい!」

 「幼馴染からたかる気?」

 

 世間は既に正月ムードから抜け出して、平常運転が始まる今日この頃。正月ボケが抜けてないのかとんでもないことを言い出したぞこの幼馴染は。

 

 「突然だけどシンちゃん、戦おう!」

 「なんで?本当に突然だね。」

 「いやー、お正月ってついついダラダラとかゴロゴロとかしちゃうじゃん?だから体鈍っちゃってさー、シンちゃんもそうじゃない?」

 「んー、そんなことはないけど?」

 

 さすがのシャドウもお正月は休んでいたようだったけど、僕には正月とはいっても事務仕事はあるし、日課のトレーニングだって欠かしてない。むしろ周りが動いてない分、よけいに働いている気がする。

 

 「でもミカだって、お正月の特番とかに出てなかった?バラエティとか歌番組とか。」

 「いやー、それがそのね・・・お正月の料理っておいしいから、ついつい食べ過ぎちゃってね?もう!女の子にこんな話させるなんてシンちゃんたらー!」

 「知らんがな・・・。」

 

 そういえばテレビでおいしそうなの食べてたね、エビとかカニとか。それにお餅もカロリーが高い。ミカの好物の粉もんだって、意外と侮れない。

 

 「そこんところ、僕は毎日代わり映えしない栄養バランスのいいものを食べてたね。」

 「食べてたんじゃなくて、食べさせてもらってたんでしょ、チョーさんに。」

 「・・・否定はしない。それで、ミカはどうしたいの?」

 「だからいっちょ戦おう!今の私になら、シンちゃんも勝てるんじゃないかな?」

 「要するにダイエットがしたいんだね。」

 

 確かに、特訓を始めてからミカとの戦績は50戦50KO負けという結果が続いている。そりゃもちろん、相手は大怪獣ファイトの期待のルーキーだし、そもそも僕は人類に毛の生えた程度の力しかない。はなっから勝負にならない相手だけど。

 

 「まあ・・・いいかな?」

 「よっしゃ!負けたら一発ギャグね!」

 

 さりとて誘われたからには乗らないわけにはいかない。意地があんだろ。男の子には。

 

 「むしろお笑い芸人のサガじゃないかな?」

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 なにも丸腰で戦いに行くわけではない。

 

 「あー、ピッチリ。この感覚クセになる。」

 

 こういう戦いの時には、対・特殊事件用スーツS.R.I(特殊反射インナー)を着込んでいく。ある程度の防護能力は保障してくれるし、夏は暑くて冬は寒い優れものである。GIRLS支給品の保護スーツにちょいと手を加えただけなのだが、そのちょい(・・・)が重要なのだ。

 

 「生体電流・・・良好。システムオールグリン。」

 

 スーツの調子を告げるバディライザーを腰にマウントし、鏡に向かう。

 

 「もうちょっとデザイン凝りたかったなー、仕方ないとはいえ。」

 

 紫を基調とし、いくつかの銀のラインが走っている。特に脚の縦ラインが、足を長く見せる効果を持っている。が、どうにもシンジには物足りなく感じられ、もうちょっとカラフルな感じにしたいらしい。

 

 「でもそうなると性能が落ちちゃうからなぁ、配分が難しい。」

 「オレからしたらまだ地味すぎるぜ。もっと腕にシルバー巻くとかさ!」

 「うわぉ!?」

 「オッス、調子はどうだ?」

 

 鏡に夢中になっていたシンジは、後ろから近づいてくるレッドキングさんに気づかなかった。独り言まで聞かれてしまったのなら恥ずかしい。

 

 「鏡の前でなにボケーっとつっ立ってんだよ?アレか?色が気になるお年頃ってか?」

 「そりゃ誰でも色ぐらい気にするでしょ?服ならなおさら。レッドキングさんだって、今日の尻尾のリボンいつもと違うじゃないですか。今日のもかわいいですね。」

 「かわっ!///ハズカシいこと言ってんじゃねえよっ!」

 「たわばっ!!」

 

 ゴングが鳴るより前にノックアウトされそうな一撃がシンジを襲う。少なくとも備え付けのベンチは粗大ゴミ行きだろう。

 

 「いやーそんな面と向かって言われるとハズカシいぜ嬉しいけどよ・・・///」

 「おーいちち、それでレッドキングさんはなにしにここへ?」

 「おうっ、ちょっと激励をしにな。」

 「首が逆方向むきそうなほどにブン殴るのが激励?」

 「悪かったって・・・。」

 

 「んまー、なんだ。確かにお前は負け続けてるのかもしれないけど、それでも何度でも挑戦するのはいい度胸してると思うぜ!」

 「そりゃあ、あれだけレッドキングさんにしごかれてたら、意地でも負けたくなくなりますから。」

 「嬉しい事言ってくれるじゃねえか!師匠に冥利に尽きるってもんだ。けどなシンジ、オレの教えた戦い方にこだわる必要もねえと思うんだ。お前にはお前の勝ち筋があると思う。オレにはない戦い方ができると思う。」

 「その結果、50戦50KO負けですが。」

 「ハハハ、ならそれだけじゃダメだったってことさ!51回目を頑張ってこいよ!」

 「・・・ラジャー!」

 

 レッドキングさんにグッと親指を立てて見送られ、シンジもグッとしてはにかん(・・・・)で答えた。その表情を固定するように、首元からマスクがせり上がって、同時にイヤーマフも装着される。

 

 「よし・・・行くぞ!」

 

 階段を上がって出た先は、やはりどっかで見たような採石場のようなフィールド。あまり目にかけたことはないが、同じような見た目の崖や廃工場や海岸もあるらしい。いつか行く事があるんだろうか。大怪獣ファイトの最初期は、山奥の田んぼのそばや竹藪の敷地を借りて撮影していたと聞くが、真相は定かではない。

 

 「来たかい、弟ー!」

 「いつから僕が弟になったわけ?どっちかっていうとミカが妹でしょ。」

 「私はむしろアギちゃんを妹にしたいけどね!」

 「わかる。」

 『何言ってんのふたりとも。』

 

 少し離れた観客席に、いつもの3人やピグモンさんの姿が見えた。他にもチラホラ人影が居るのを見ると、結構ヒマしてる人が多いんだろうかと疑いたくなる。

 

 「ところで、さっきの話覚えてる?」

 「負けたら一発ギャグ、ってやつかい?」

 「そ、今のうちに考えといたら?」

 「その言葉、そっくりそのまま返すよ、ゴモラ(・・・)。」

 「ほーぅ?いうねシンちゃん。」

 「今日は、『太陽の塔』以外を見せて欲しいね!」

 「させてみれば?」

 

 まだゴングは鳴っていないというのに、火花が散っている。ここにいる二人は既に仲良しの幼馴染ではない、鎬を削り合うライバルなのだ!

 

 「ゴモゴモもシンシンもがんばれ♡がんばれ♡」

 「今日こそ勝てるといいねシンジさん。」

 「でもゴモたんも、毎日強くなってるからなぁ。」

 「じゃあやっぱシンジさん勝てないんじゃん!」

 「それはちょっと酷いですよミクさん・・・。」

 『聞こえてるぞー。』

 

 カーン!

 

 さあ試合開始のゴングが鳴った!まずお互いの手を取り合ってがっぷり四つの力比べだ!

 

 「ぐぎぎぎぎ・・・!」

 「ふっふふふふ・・・。」

 

 これは地力の差でゴモラが有利か、シンジは苦い顔を浮かべているが、ゴモラは余裕の表情だ。

 

 「だぁっ!」

 「おっおっ?」

 

 このまま押し切られるか?というところでえ、シンジは体勢を変えて下からゴモラをすくいあげた。ゴモラは大道芸のようなポーズでシンジの上に掲げられた。というよりも倒立している。

 

 「いいぞいいぞー!」

 「あそこからどうするんでしょうか。」

 (ますますショー染みてきたかも。)

 「がんばれ♡がんばれ♡」

 

 「とらぁっ!」

 

 肩をひねって、ゴモラの体を空中錐もみ回転で投げ飛ばす。プロペラのように少し上昇する頂点で、シンジもその体に飛びついて、最初の技のポーズに入る。

 

 「落ちろッ!パイルドライバー!」

 「甘いねっ!」

 「ぐはっ!」

 

 回転で視点が定まらないうちに、一気に畳みかけようという算段であったが、これぐらいのことはゴモラも予測済み。尻尾で打ち返して逆に空中でバランスを取り戻した。

 

 「ちぇッ!さすがにそううまくいかないか。」

 「何回戦ってると思ってるの?今度はこっちからいっくよぉ!」

 

 姿勢を低くして突撃の構え。ツノかち上げからのパンチの流れか。こっちだって何回も見てる。

 

 「それはフェイクだ!」

 「もちろんね!」

 

 こっちも負けてられない。ツノに見せかけての尻尾での足払いを足を畳んだ側宙かわして、ゴモラのサイドをとる。

 

 「そしてすかさず!」

 

 尻尾が元の位置に戻らないうちに、自分の左足ゴモラの左足をとらえ、ゴモラの右脇に回り込んで、左腕を首の後ろに伸ばし、さらに右手でホールド!

 

 「コブラツイストぉ!」

 「ぐっぐぐぐぐぐ・・・!!まだまだ・・・!」

 

 2、3回尻尾で叩かれるが、意地でも解かない。とにかく固め技で体力を奪ってから、フィニッシュホールドで必殺をかける。これが今のシンジの主な戦い方だ。

 

 いくら相手が強い怪獣娘だからといって、女の子に手を挙げるような真似は出来るだけしたくないシンジの心の表現でもある。じゃあ固め技ならいいのかというツッコミはさておき。

 

 「はっ、甘いねシンちゃん。カスタード入りタイ焼きよりも、ねっ!」

 「ぐあっ!」

 『あー、解かれちゃった。』

 

 器用に尻尾を使って足をすくい、フリーの両手でホールドを解いて脱出されてしまった。お返しにとむんずと頭を掴んで背負い落す。普通死ぬ。

 

 「人間同士のプロレスならまだしろ、怪獣娘の大怪獣ファイトじゃあ、ちょっと地味だ、よっ?!」

 「人間様に何求めてんのさっ!」

 

 ゴモラの追撃のストンピングを両腕で抑え、逆に蹴り返すが簡単にいなされる。慌てて飛び退くと、ストンプされた地面がひび割れて砕ける。

 

 「ちょっとはホンキ出したら?待っててあげるよ。」

 「そうやって、自分のリングで戦いたいだけだろ!」

 「そうでもあるけどっ!」

 

 大剣、否大槌のように脚を振り下ろし、地面を衝撃波を伝わらせる技、アースクラッシャー。本来はレッドキングがその剛腕でやる技であるため、これはその簡易版だ。

 

 (ゴモラのやつ、また技にキレがかかってやがるぜ・・・。)

 

 自身の渾身の技を、見様見真似で会得されたレッドキングさんであったが、その表情は嬉しそうであった。

 

 嬉しくないのはそれが眼前に迫るシンジの方である。こうなれば逃げ場はひとつしかない。

 

 「跳ぶ!」

 「逃がさないよ!超振動波!」

 

 

 「レッドパワー、オン!」

 

 

 顔の前両腕をクロスさせ、腰に振り下ろすと、銀のラインをバリバリと電流が走って、紫の服が赤へと変わる!

 

 「うぉおおおおおおネバギバッ!!」

 

 迫りくる超振動波に向かって拳を振りかざすと、流星のようなスピードでゴモラめがけて落ちていく!

 

 「ひぐっ!!ようやく、骨のあるやつがきたね・・・。」

 「言ってろ、燃やすしつくしてやるぜ!」

 

 超振動波を押し返して、額の角に一撃を与えて吹き飛ばした。その爆炎の中からゆっくりと立ち上がるシンジの体は、赤く燃えているようでもあった。

 

 これがシンジの着るS.R.Iの機能の一つ、『互換変化』。つまりタイプチェンジ能力である。コンパチとも言う。スーツの側から生体電流を操って、腕力を増大させたりできる。簡単に言うと『どこでも火事場の馬鹿力』機能だ。

 

 「あーっ、あーっ、あーっ!!クセになる・・・。」

 「キモッ。」

 「ちょっとそれは傷つくなぁ・・・あん、あん、痛気持ちいい・・・。」

 「いやいやマジでキモイから。」

 

 例えるなら、冬場の冷えた足のままで湯船に浸かったときのようなピリピリ感。思わず『あ~っ』て声が出るあの感覚。

 

 「10時から仕事なのに、12時に目覚めたら『あぁっ?!』って声が出るよね。」

 「それでどうしたの?」

 「どうせ間に合わないからゆっくりコーヒー飲んでからシャワー浴びちゃうね。」

 

 ゴキッゴキッと関節を鳴らして、ファイティングポーズをとる。ここからはネクストステージ、ダメージ覚悟での殴り合いだ!

 

 「オラッ!オラァッ!!」

 「あたたたたっ!」

 

 チョップ、チョップ、キック!キック、キック、パンチ!パンチ、パンチ、パンチ!肉弾戦というにはあまりにも重々しい音を響かせながら、戦いはヒートアップしていく。

 

 「ぜぇっ!ぜっ!!」

 「どらああっ!!」

 

 しかし、いくらパワー重視に攻めたところで、ゴモラの圧倒的優位に変わりはない。なにせ、かの怪獣退治の専門家すらも、万全状態のゴモラには肉弾戦で全く歯が立たなかったのだから。二戦目の、ゴモラの尻尾が切断された状態というアドバンテージがあって、やっと倒せたぐらい、ゴモラは強いのだ。

 

 「そぉれ!」

 「ぐわぁっ!!」

 

 怪獣娘となって、その力は衰えるどころかより一層格闘能力に優れた形となって表れている。加えて、今のゴモラ(・・・・・)には卓越したセンスと柔軟性が備わり、まさしく、鬼に金棒と言った状態なのである。

 

 (一発でガードごと吹き飛ばされるような一撃が、連続で襲い掛かってくるなんて、まさに悪夢だ!)

 

 そんなゴモラのメガトンテールを、片腕で防ぐレッドキングさんのすごさがよりおわかりいただけたであろうか?

 

 「ずるいわ。」

 「なにが?」

 「色々あるけど、やっぱ強すぎるわゴモラ。」

 「あれあれ?シンちゃんのそのツノのついてない頭は、帽子を乗せるためだけの台座なのかな?」

 「ぬかせ。」

 

 一呼吸おくと、再び顔の前で腕をクロスさせる。

 

 「ブルーパワー、オン!」

 

 赤、とくれば次は青。スピードに特化した青い服へと変わる。

 

 「パワーがてめぇなら、スピードはオレだ!一生かかってもおいつけんぞ!」

 「まだまだ元気じゃん!」

 

 そのすぐ直後にスピードでも抜かれるような発言が飛び出すが、早くなったのは体の動きだけではない。脳の処理速度も上昇し、ゴモラの動きを見切ることも出来るようになる。

 

 「チェスト!!」

 「ぐぬぬ・・・!」

 

 少しずつだが着実にダメージを重ねていく。肉体へのダメージはわずかでも、全ての攻撃をかわすことで焦りも誘っていく。そして隙を見せたら、

 

 「こんのっ!」

 「今だっ!」

 

 すかさず技にかける!両腿でゴモラの頭を挟み、バク宙の形で投げる!

 

 「フランケンシュタイナー!」

 「ぎゃん!!」

 『おおー!決まった!!』

 『ミクちゃん、興奮しすぎだから・・・。』

 

 さらに畳みかけるようにフライングニードロップの体勢に入った!

 

 「甘いって、言ったよね?わたし。」

 「はっ?!」

 「おりゃあっ!

 

 仰向けだったゴモラは、両手両足、それと尻尾で地面を叩いて飛翔し、シンジの膝を迎え撃った。

 

 「あ、足が・・・。」

 「油断しすぎだよ、シンちゃん。」

 

 墜落するシンジを見下し、窘めるように言う。

 

 「どうする?もうギブアップして一発ギャグ行っちゃう?」

 「・・・そうだね、一発芸はしようかな?」

 「あれ?マジで?」

 「うん、マジ。でも・・・。」

 

 

 

 

 

 

 「ギブアップはしないかな。」

 

 バンッ!と跪いた状態から地面を蹴って、ロケット頭突きでゴモラを突き放す。

 

 「てて、なにすんの?」

 「こうすんの!」

 

 腰にマウントしてあったバディライザーを手に取り、反対側にあるホルダーから、一枚のカードを取り出す。

 

 「モンスライド!」

 

 「ゴモラ!!」

 

 カードをバディライザーに入れ、それをスーツの左肩にセットする。

 

 

 

 すると、肩口を起点として、一層激しい電流と発光が生じた。

 

 

 

 「ぬぬっ・・・これは!?」

 『なんだアレー!?』

 『ボクは前ちょっとだけ見せてもらったけど・・・。』

 『新兵器・・・ですか!?』

 

 

 

 巌の如き赤褐色の肌に、腹部には棘のような無数の突起。指先からは鋭い爪が、肘とカカトからはスパイクが伸びるその姿は、本物のゴモラを模したものであった。

 

 「尻尾は別売りだけどね。」

 

 全体的に、ゴモラを模したマッシブな体躯となった。また、胸から鼻の上のツノが、右肩からは三日月ツノの片方が生えている。

 

 ただ茶色単色だといかんせん地味である。尻尾もついていないため、上半身と下半身とで体躯のバランスが少々悪い。非常に悪い言い方をすれば、どこか着ぐるみ然としている。いかに元のデザインと、擬人化がスマートなものであったがうかがえる。(ただの文字だからわからないが)

 

 「それが、一発芸なんだ?すごいじゃん。」

 「・・・まあね。」

 「どしたの?元気ないじゃん?」

 「いやね、ちょっとばかし理性が飛びそうなの。比喩とか中二でもなんでもなくて。いっつもこんなのに耐えてたんだね、ゴモラは。」

 「今は解放してもいいんじゃない?そのための大怪獣ファイトなんだよ?」

 「そっか・・・そうだね。それなら・・・。」

 

 ドンッ!と重い音が聞こえた時、ゴモラの体は後ろへ吹っ飛んでいた。

 

 「がっ・・・は・・・?!」

 「ごめんゴモラ、3分(・・)耐えて。」

 

 アリーナに設けられた岩々を砕き、なぎ倒しながらゴモラが飛んでいく。少し遅れた、先ほどまでシンジのいた後ろの岩が衝撃で吹き飛ぶ。

 

 対して、シンジの右肩のツノからは白煙が上がっていた。先ほどゴモラを襲った衝撃は、このツノを使ったショルダータックルだった。強化された脚力は、音速を越えるスピードを発揮していたのだった。

 

 「ガッァアアアアアアアアアアアアア!!!!気が、高まる、溢れるぅ・・・ォオオオオオオオオオ!!!」

 

 『あれ、ちょっとマズいんじゃないの?!」

 『まるで暴走してるみたい・・・。』

 『止めましょう!このままじゃゴモたんさんが!』

 

 『待ちな。』

 『レッドキングさん、どうして?』

 『まあ見とけよ。』

 

 

 

 「ダァアアアアアアアアアアアッ!!」

 「せいっ!」

 

 先ほどまでとは打って変わった、野性味溢れる荒々しいインファイトが展開される。

 

 「さっきより、正確になってるじゃん・・・!」

 「ゴモラの技とパワーをトレースしたということは、ゴモラの動きを把握しきったということだ!!」

 「理性とばしたものの言うセリフじゃないね!ぐっ!」

 

 手を出そうとすれば、そこ(・・)を突かれ、ゴモラは一方的に殴られている状態に陥った。

 

 「ははっ、はっ、ちょっとしんどいね。」

 「超、しんどう・・・波ァアアアアアアアア!!!」

 

 壊れた電化製品のように肩のツノから火花をあげ、胸のツノから超振動波を放たれる。おもわずフッと息を吐いてゴモラは眼前に迫る脅威を見やると、キッと目を吊り上げ、

 

 「これが本家本元の、超振動波だぁあああああああ!!!」 

 

 

 『す、すごいエネルギーだ・・・!』

 『すごすぎてなにも見えません!』

 『ほぁー!すっげぇー!!』

 

 ぶつかり合う、振動と振動。揺れる大地、震える大気。アリーナは怪獣無法地帯とも呼ぶべき惨状をあらわした。ゆらぐ空に、在りし日の大怪獣の姿すら見えた。

 

 その様に驚嘆の声を上げるもの、もはや何もかもを見失うもの、ただじっと見据えるもの、

 

 

 そして、勝利を確信して口角をあげるものがいる!

 

 「たしかにそのパワー、ボク(・・)と同じか、それ以上かもね。」

 

 激しい光の中を、燃える炎を走り抜け、古代怪獣は吠える。

 

 「けど、尻尾の無いゴモラなんて、マヨネーズのかかってないタコ焼きみたいなもんだよ!」

 模造された獣が気付いた時には、もう遅い。

 

 「ゼロ・シュートォオオオオオオオオ!」

 「ガァアアアアアアアアッ!!」

 

 シンジの胸に、熱く滾るもうひとつのツノが突き立てられた!

 

 「どうしたの?まだ1分ぐらいしか経ってないと思うけど?」

 

 そしてゴモラの黄金コンボ、かちあげ攻撃!

 

 「太陽の塔は見飽きた?なら、私も見せてあげるよ!新しい一発ギャグ(フィニッシュホールド)!」

 

 

 空中に舞うシンジの背に、自分の背を合わせる形で跳ぶ。

 

 その状態から、尻尾をシンジの首に回し、自身の両腕でシンジの太腿をホールド。

 

 そしてシンジの体を海老反らせるように、太腿を持ち上げ、首を押し込む。(普通死ぬ)

 

 この姿勢で大地に降り立てば、背骨、二か所の大腿骨、股関節、首の5か所を同時に破壊する。その芸術的作品の名は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 「『シン・太陽の塔』!!」

 

 

 

 

 

 

 「がっ・・・あ・・・。」

 「芸術は・・・爆発だぁ!」

 

 そう叫ぶと同時に、前方宙返りの要領で、尻尾でシンジの体を投げ飛ばす。

 

 

 

 

 

 そして空中で、体内を駆け巡るゼロシュートのエネルギーが臨界に達し、大爆発を起こした!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「興奮したー!すっっっげー!興奮したー!!」

 「な、大丈夫だったろ?」

 「全然大丈夫じゃないよレッドちゃーん、さすがに私もヤバイと思ってたところだよー?」

 「いやいやいや、全然大丈夫じゃなさそうでしたよ、シンジさんが?!」

 「というか、なんで生きてるの?」

 「アギさん、なんて言い草だ。」

 「ごめん、そういう意味じゃなくって・・・。」

 

 母様、お元気でしょうか。私シンジはどっこい生きています。今はあたたかい仲間たちに囲まれて、幸せな毎日を送っています。

 

 なーんて、遠い記憶に思いを馳せている場合ではない。

 

 「ピグモンヒール!どうですぅ?」

 「うん、平気です。」

 「ゴモゴモも、あんまり無茶しちゃダメですよぉ?」

 「無茶だけど、無理じゃなかったからね。いやーまさかあんな隠し芸を用意してたなんて、私もビックリだよー!」

 「まだまだ改良の余地は大きいけどね。」

 「技術の改良だけじゃなくて、他にも鍛える必要があるぞ?カイジューソウルのコピーに引っ張られて、理性を失っちまうなんて修行が足りない証拠だぜ!」

 「善処していきます。けど、ちょっとでも怪獣の心に触れられて、よかったです。」

 

 技と体だけじゃなく、心もなりきらなきゃいけない。けれどそれは冷酷で残忍な心ではなく、熱い闘志を秘めたソウル。ここにいる怪獣娘さん達は皆、その境地にいるんだ。

 

 これはますます、負けてられない。全部まるっと包み込めるような、あっついハートを結んでみせるんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ところでさ、すっごい戦いで興奮したんだけど。」

 「ん、なにミクさん?」

 「やっぱりゴモたん強いよね!これはレッドキング先輩も危ういかも?」

 「おいおい、そりゃないぜミクラス。オレはゴモラにまだまだ負けちゃあいないぜ?」

 「ふっふーん、レッドちゃんもそんなんじゃ甘いよ?もうすーぐ私追い抜いちゃうから。」

 「ほう?じゃあ今からやってみるか?オレも戦いたくてウズウズしてきたところだ!」

 「のぞむところよー!」

 「はいはーいアタシもやりたい!」

 

 「はは、はははは・・・あんなに戦ったのにもうゴモたんさんは・・・。」

 「これはもう・・・笑うしかないかも。」

 (ああ、もうこりゃ勝てないわ・・・。)

 

 怪獣娘、恐るべし。

 

 「私に限界はない!」




 とりあえず2期が始まるまでにひとつ書けた。やっぱり楽しいな、創作すると。みんなももっと書こう!

 あっそうだ(唐突)。気軽にコメント・感想などを書いていただければ励みになります。誤字脱字報告などもご一緒にどうぞ。

 ネタ解説

 あけましておめでとう:この作品に季節感などない。

 粉もんだって侮れない:しかし同時に野菜も多く摂取するので、悪くはないはずである。

 意地があんだろ、男の子には:スクライドの台詞より。勘違いされやすいが、一番最初にこのセリフを言ったのは主人公のカズマではなく、その相棒の君島が先。

 S.R.I:怪奇大作戦の主人公のチームがS.R.I(Science Research Institute)。現実にも科学捜査研究所が発足され、怪奇大作戦の中では『特殊』科学捜査研究所の名前に変わった。ちなみに、マックスのメトロン星人回こと狙われない街にも、似たような名前の研究所が登場している。

 紫を基調に銀のライン、タイプチェンジ:勿論、ティガがモデル。スーツは定期的にアップグレードや改修を行っているので、後の話では設定が変わってたりするけど、そこは御愛嬌。

 来たかい、弟ー!:∀ガンダムの御大将ことギム・ギンガナムの台詞。このセリフを吐いた時点では乗機のターンXに意識を乗っ取られており、弟にあたる機体のターンエーに対して言っている。

 がっぷり四つの力比べ:どっちかっていうと審判のロックアップかも。

 ツノかち上げからのパンチ:ジード2話でのスカルゴモラが行った、フェイント攻撃が元。ただの怪獣ではなく、中にいる伏井出ケイが操っているベリアル融合獣特有の戦い方とも言えるかも。

 固め技で体力を奪う:初代ウルトラマンが投げ技を多用していたように、これがシンジの主な戦い方となる。しっかり要点を押えられれば、相手の力を抑えつけることはできるはず。ということを念頭に置いている。

 そうでもあるけどっ!:リーンの翼のサコミズ・シンジロウの台詞「そうでもあるがぁああああああ!」が元。異世界転生した特攻隊員が、転移先の世界で活躍して英雄になり、老後その扱いに余って邪険にされるというなかなか哀しいお人。

 ネバギバッ!:ガオレンジャーのガオブルーの口癖、後にガオブラックにも伝授。

 タイプチェンジ:電流で一時的に筋力を上げているだけなので、反動でしばらくうごけなくなったりもする。

 クセになる:最近EMSを始めたんだけど、本当に癖になってついつい過負荷をかけてしまう。感電や火傷のおそれもあるから注意しようね!

 10時から仕事なのにry:声優無法地帯と名高いビーストウォーズリターンズでのチータス、というか高木渉のアドリブ。高木渉は遅刻魔として有名なので、多分実話。

 パンチ、パンチ、パンチ!:ゴジラとジャガーでパンチパンチパンチ!

 頭は帽子を乗せるための台:ドマイナーどころかろくな情報すらない『ガンとゴン』というショートアニメの台詞。内容は半ばキ〇ガイ染みてるけど、この言い回しは好き。

 モンスライド:モンスライブ+カメンライド、的な?試験運用として詰め込めるだけ詰め込みまくった試作スーツの機能のひとつ。元の怪獣の意匠をもった姿にスーツを作り替える。足りないパーツはサイバー怪獣のように新造して付け加えるという改修プランがなくはないです。けどこれ以降出番があるかは知らん。

 本家本元の超振動波:ドラゴンボールの悟空さの『これが本場のかめはめ波だー!』が元。

 マヨネーズのかかってないタコ焼き:クリープを入れないコーヒー

 シン・太陽の塔:イメージとしては、掛け手側の顔が中央の『現在の太陽』の位置に、喰らってる側の顔が上部の『未来の太陽』の位置に来る。シンは新とシンジのシンを意味する。2人でかけるツープラトン版では、背面部に位置する『過去の太陽』と地下に位置する『地底の太陽』も再現する予定。

 芸術は爆発だ:太陽の塔のデザイナーの岡本太郎氏の台詞。本当に喰らってる側の体は超振動波のエネルギーできたねぇ花火になる。

 ピグモンヒール:モン娘は~れむでのピグモンさんの回復スキル。ピグモンさんはサポート向けなスキルの持ち主なので、いるとすごく捗る。



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記憶健忘!今日は誕生日だった!

 本当は次はレッドキングさんルートを書きたかったけど、ゴモたんの誕生日だったということを失念していたために急遽書き始めました。(1/8)


 「ほんっっっっっっっとうに申し訳ない!!」

 「・・・。」

 

 (どうしようこの空気。)

 (アタシたちは悪くない・・・よね?)

 (でもどうにかしたいですね。)

 

 ひとつ、シンジは土下座している。ふたつ、ミカはすごくご立腹である。みっつ、空気がスカイドンより重い。

 

 「いやー、おこってないよ?ぜんっぜんおこってないから。」

 

 ここはGIRLSの談話室。ここで今日はパーティが行われていた。主賓は今頭の中がソドムより熱くなっているゴモラこと、黒田ミカヅキ。そしてなんのパーティなのかと言うと。

 

 「まぁまぁ、せっかくゴモたんの誕生日パーティなんだから、ちょっと落ち着こうよゴモたん。」

 「私は冷静だよぉ?シンちゃんをどうやって料理してあげようか考えてるところだから。」

 (あ、ダメだわ。)

 

 1月8日はゴモたんの誕生日です。じゃあそのゴモたんが、どうしてこんなに怒り心頭なのか。順を追って話をしよう。

 

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 ~数時間前の同じ場所~

 

 「おはよー、レッドキングさんは・・・ってみんななにしてるの?」

 「おっはよーシンジさん!手伝って手伝ってー!」

 「ああいいけど、レッドキングさん知らない?」

 「レッドキング先輩はゴモたんと一緒に戻ってくるよ!それまでに急いで用意しないと!」

 「そっか・・・でもなんの?」

 「なんのってそりゃもちろん・・・あっアギちゃんウィンちゃん、ピザ買えた?ピザピザ!」

 「シンジさん、おはようございます!」

 「おはよーシンジさん。買ってきたけど、まだ食べちゃダメだからね?」

 「はーい、でもいいニオイ!」

 

 ピザなんて何年ぶりに見ただろうか。郵便受けにチラシが入っていれば、注文するつもりが無くてもついつい眺めてしまう。

 

 「よいしょ・・・こらしょ・・・。」

 「で、一体なんの・・・。」

 「あっピグモンさん、一人でそんなに持ったら危ないよ?」

 「だいじょーぶですよ~、ピグモンひとりでなんとか・・・あわわ!」

 「あぶないあぶない!」

 「はわわ!ありがとうございます、アギアギ、シンシン!」

 「少し持つよ、どこに持って行けばいい?」

 「あっちです~。」

 

 ダンボール箱?何が入っているんだろう?中身は紙類みたいだけど。

 

 「ねぇ、ピグモンさん、これ中身は・・・。」

 「あー、ミクちゃんまだ開けちゃダメだってば!」

 「ニオイだけ・・・ニオイかぐだけだから・・・!」

 「それもうニオイだけじゃ済まなくなるやつですから!」

 

 キュゥ・・・とお腹が鳴る。朝ごはんはちゃんと食べたし、お昼までもうちょっと時間があるはずなんだけどなぁ。ニオイの力ってすごいや。ここにいるとニオイだけで空腹にやられちゃいそうだ。

 

 「レッドキングさん、探しに行こうかな・・・。ちょっと出てくるよ。」

 「うん、12時には戻ってきてね。」

 

 「だからなんのパーティなんだって?」

 

 すっかり聞きそびれたのを、うっかり忘れてしまっていた。ここがケチのつき初めだった。

 

 

 

 

 ~1時間ほど後~

 

 「ただいまー。」

 「おかえり、ゴモたん見つかった?」

 「いや、レッドキングさんも見つからなかった。ここで待ってたほうがいいのかなと思って。」

 「だろうね、なにか用でもあったの?」

 「いや、大したことじゃないんだけど・・・。」

 「おーっすみんな揃ってるからー・」

 「あっ、レッドキングさん。・・・そちらの方は?」

 「エレキングさん!」

 「ああ、シンジは初対面だったかな。こいつはエレキング、どっちかっていうと、調査チームのメンバーだけどな。」

 「エレキングです。よろしく。」

 

 三日月のツノに、長い尻尾、ここだけを表現するとゴモラと被るかもしれないが、その体色は白と黒。マッシブなゴモラに対して、スマートな印象だ。そして何より、一番ゴモラと、否ミカと異なっているのは・・・。

 

 「ど、どうも・・・。初めまして、シンジです。」

 「お話は伺っているわ。調査課として仲良くしましょうね。」

 「は、はい。恐縮です・・・。」

 「・・・ちょっと、いいかしら?」

 「はい?なんでしょう?」

 「初対面なのに、目を合わせて話さないなんて失礼ではなくって?」

 「あ、ご、ごめんな・・・さい。」

 「はぁ・・・こっちを向きなさい。」

 「はぎっ!」

 

 無理!顔を見る以前に、ついつい視線が下に行っちゃうし。そっちの方がよっぽど失礼になるっての!

 

 「・・・そういう反応をされることにも慣れているけれど、これからも怪獣娘と関わっていくのなら早く慣れてしまってほしいわ。」

 「ごめんなさい。」

 「あれあれ?シンシンはエレエレに一目惚れしちゃったんですかぁ?」

 「ピグモンさん、違うから。」

 

 クール・・・というか落ち着いた人だな。どっちかというとシンジにはこういう人の方がタイプだ。

 

 「お前鼻血出てるぞ。」

 「うっそぉ、ホントだ。」

 「大丈夫ですか?ピグモンがちょちょいと治してあげますよ!」

 「ありがとう、ピグモンさん。」

 

 あーもう第一印象滅茶苦茶だよ。帰ったら布団にくるまってジタバタしよう。そしてこれが1番目の失態。

 

 「それはそうとレッドキングさん。」

 「ん?なんだ?」

 「今度どっか一緒に遊びに行きませんか?時間があればですが・・・。」

 「うぇっ!?オ、オレとか?!」

 「はい。」

 「そ、そりゃかまわねぇど、オレなんかと一緒に行っても・・・というかなんでこんなタイミングで・・・。」

 「タイミング?」

 

 これが2番目の失態。

 

 「はぁ~・・・。」

 「あれ?ミカどこに行ってたの?レッドキングさんたちと一緒にいるって聞いてたけど。」

 「そうだね、一緒だったんだよ、さっきまでね。で、ちょっと外で待ってて言われてたんだ。」

 「?なんで待つ必要があったの?」

 「・・・シンちゃんは今日が何月何日か知ってる?」

 「今日は・・・1月8日。」

 「何の日だと思う?」

 「えーっと、成人の日。それから元号が平成になった日。」

 「そうなんだ!」

 「そうだよ。」

 

 「そ う じ ゃ な く て ッ !」

 「なに?!」

 「今日は、『誕生日』なのッ!!」

 「誰の?」

 「ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛ン゛!!!」

 「もしかして・・・ミカの?」

 「そうなんだよっ!」

 

 キョロッ、キョロッと周りの面々をみやると、皆それぞれ頭を抱えていた。

 

 もしかして、やっちまった?

 

 「ごめん、僕何も用意してなかったや・・・。」

 「ブンッ!!」

 

 これが3番目の失態。

 

 

 あー・・・GIRLSのビルってこんなに高かったんだなー・・・。ガラスのシャワーを浴びながらの3秒後のシンジの心情であった。

 

 「あっ、救急車はいらないですから。平気です、はい。怪我人がいなくってよかったです。」

 

 アスファルトにできた人型を尻目に、玄関から入って何食わぬ顔でエレベーターに乗り込み、談話室に戻って開口一番。

 

 

 「ほんっっっっっっっとうに申し訳ない!!」

 

 冒頭に戻る。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「もう、そのぐらいにしときなよ、ゴモたん。」

 「んむぅ・・・。」

 「本当はあんまり怒ってないんでしょ?納まりが付かなくなっちゃっただけで。」

 「そうなの?」

 「頭が高い!」

 「ははぁ!」

 

 まるで戦国武将のように仁王立ちしていたミカ、否いつの間にかソウルライドしていたゴモラであったが、土下座し続けるシンジを前に膠着した状態に痺れを切らしたアギラが話しかけてきた。

 

 「そうだよ、きっとシンちゃん覚えてないと思ってたよ。ちょっと前まで私のことも忘れてたんだから。」

 「返す言葉もございません。」

 「でもそれもしょうがないと思ってたよ、言葉にせずに思ってるだけのことが、伝わるはずなんかないのに。ボクがそうだったらいいなって期待してただけ。お年玉とか、ダイエットとか!」

 (昨日のあれ、アピールだったのか。)

 「でも、でもねぇ!目の前で突然エレちゃんにデレデレしだしたり!」

 「いやべつにデレデレとは・・・。」

 「だ ま ら っ し ゃ い !

 「はい。」

 「突然レッドちゃんのことをナンパしだすし!」

 「ナンパじゃなくて・・・いやナンパだわ。」

 「突然あんなこと言われたら、()だってハズカシイぜ・・・みんなの前で・・・。」

 

 「えーっと、総括すると。」

 

 「あなた、ちょっとデリカシーが欠けてるわ。」

 「がーん!」

 

 たしかに、最近ちょっと調子に乗っていたのかもしれない。少しずつとはいえ力を付けてきていたことに、慢心していたのかもしれない。

 

 「ごめんなさい、ミカ、ゴモラ。」

 「謝るのは私にだけでいいのかな?」

 「みんな、ごめんなさい。もっと精進します。」

 「気にすることはないわ。誰でも失敗はあるものだもの。」

 「うんうん、シンジさんもまだまだこれからだって!」

 

 めでたしめでたし、かな。これで全部丸く収まった・・・。

 

 「で、シンちゃんは私になにくれるのかな?」

 「ドキッ!」

 

 「ごめん!埋め合わせになんでもするから、今日だけは見逃して!」

 「ん?今何でもするって?」

 「ゴモたん。」

 「わかってるわかってる。シンちゃんの性格からして、今日誕生日パーティがあるってわかってたら、『どこかに行こうぜ』って誘えるわけないって思ってるから。」

 「知らなかったから、当然のようにナンパしていたのね。」

 「エレエレ!」

 「は、ハズカシイ・・・1時間前の自分の行いが恨めしい・・・。」

 

 「そーだなー、うーん、どうしよっかなー。」

 「一発ギャグ?」

 「それもいいけど・・・うん、決めた。」

 「落下しながら一発ギャグ?」

 「違うよ!シンちゃんの贈り物だから、シンちゃんが決めて欲しいな、やっぱり。」

 「それはつまり・・・。」

 「シンちゃん、私をデートに誘いなさい!」

 「・・・ちょっと考えさせて。」

 「まさか、レッドちゃんのを先にとか?」

 「しないから!ミカのことが最優先だから!」

 「オレと行くのはもう決定事項なのか・・・。」

 

 今度こそ、丸く収まったところで。ようやくパーティが始まる。

 

 「じゃー、みんなグラス持ったー?せーのっ!」

 

 「「「「「「「「かんぱーい!」」」」」」」」

 

 「ってことで、パーティの余興その1-!一発ギャグやってみよー!」

 

 「アギちゃんが!」

 「えっ、ボクぅ?!」

 「最近シンちゃんばっかり当たってたから油断してたでしょ??ここらで一発ね!」

 

 あー、ピザおいしいなぁ。ピザといえば生地部分が薄いのがメジャーだけど、僕はふっくらパン生地のが好きかな。ホワイトソースに、ソーセージやオニオン、ポテトが乗ってて食べ応えもバッチリ。

 

 「シンジさん、のんびり食レポしてないで助けてよぉ!」

 「ん?それは僕がやったら次はアギちゃんがもっと面白いのをやってくれるってことでいいのかな」

 「えっ。」

 「アギさん見ててください、僕の『一発ギャグ』!」

 

 このあとメチャクチャベッドでジタバタした。そして目が覚めたら泣いた。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「日付はOK、プレゼントもよし、コースも・・・たぶんいい。」

 

 あの日からからもう数えて32回目のチェックを済ませ、いざ当日!という時。不安要素は可能な限り取り除いた。落とし穴が無いか入念にチェックした。それはもう、どこまでやっても足りないってぐらいに。けれどそれは、この空を覆う曇り空のように晴れることはない。

 

 「午後からは晴れるって言ってたけど・・・。」

 

 ボヤいていても仕方がない、行こう。いざとなったらプランBで行く。

 

 「行ってきます!」

 「いってらっしゃいませ。」

 

 歩いても十分に間に合う時間だが、つい走ってしまう。はやる気持ちを抑えつつ、脳に酸素を送り込む。

 

 「おはよー、シンちゃん!」

 「おっ、はよー・・・。」

 「さっそく噛んだねシンちゃん。」

 「・・・走りすぎて舌が回らなかった。」

 「そんなに私に会いたかった?照れちゃうね。」

 

 約束の時間の30分前に合流できた。ここまでは想定内。

 

 「じゃあさっそくだけど、ご飯食べに行こうか!」

 「ズコーッ!」

 

 初っ端からこれでは先が思いやられる。

 

 「ミカ、今日は僕がエスコートするってことになってたはずだと思うんだけど・・・。」

 「じょーだんだって!それで、どこ連れてってくれるのかな?」

 「まずはね・・・。」

 

 デートの定番、遊園地。今はちょっとしたイベントで、スケート場が開かれている。夏はプール、冬はスケート場というわけだ。

 

 「でもシンちゃん、滑れるの?」

 「ローラースケートならやったことあるし、平気平気!」

 

 と、思っていた時期が僕にもありました。

 

 「ヤベェわこれ。」

 「ヤバイねー、チョー楽しいよ!」

 「ま、待って!引っ張らないで!」

 

 まあ、楽しめたんならいいか・・・。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「楽しかったねー!

 「うん、楽しかった・・・。」

 

 服の下に青痣出来てそうだけど、楽しめたからよし。

 

 「次あれ乗ろっか!観覧車!」

 「いいね、ちょっと高いけど・・・。」

 

 しれっとまた主導権を握られているが、これはもういい。

 

 「あっ、アレなにかな?」

 「たしか動物の展示もやってるって書いてあったけど・・・。」

 「かわいい!リス?ネズミ?」

 「いや、プレーリードックでしょ。」

 

 ガラスの向こう側にいたのは、30cmほどの大きさの毛むくじゃらの動物。シンジの言う通り、プレーリードックである。おそらくつがい(・・・)の。

 

 「石の上に立ってる!」

 「プレーリードックは、ああやって巣穴周辺の見張りをやるんだ。危険が近づくと犬みたいな声で警告するから、ドックってつくんだって。」

 「へー。」

 

 ちなみに、プレーリーは縄張り意識が激しく、オス同士で喧嘩する果てに、生き埋めにしたりされたりするそうだ。

 

 2本足で立ち上がってキョロキョロとあたりを警戒する様は非常に愛らしい。すると、警戒している方にもう一匹の方がやってきて、口を合わせてキスをした。

 

 「わっ!なになに?なにやってるんだろアレ?」

 「あれがプレーリードックの挨拶なんだって。」

 「へー・・・そうなんだ。」

 

 2頭はしばらくわちゃわちゃとすると、巣穴替わりのバケツの中に入っていって、仲良く眠り始めた。

 

 「そろそろ行こうか、観覧車。」

 「う、うん、そうだね。」

 

 「プレーリードックか・・・。」

 「どうしたのシンちゃん?」

 「いや、大したことじゃないんだけど・・・。」

 

 知っているか!観覧車を回すギアには、大きなゴムタイヤが使われているのだ!そうすることで振動を抑え、天辺まで行っても揺れが少なくなるのだ。

 

 それはさておき。観覧車のゴンドラに、2人は向かい合って座っている。

 

 「山の上にある分、結構高いね。」 

 「そうだね、遠くの町までよく見える・・・あっ。」

 

 突然、シンジは立ち上がって前のめりなった。

 

 「な、なに?どうしたのシンちゃん??」(顔!顔がちかいって!!)

 

  ミカの脳内には、先ほどのプレーリードックのことがよぎった。

 

 (こ、これはまさか・・・?!そんな、気が早いよ・・・。)

 

 真面目なようで、どこか抜けている純朴そうな幼馴染が、こんな計画を建てていたなんて。こうなったら、私も乗れるところまで乗ってあげようじゃないか・・・とミカは臨戦態勢になった。

 

 「この景色、やっぱり見覚えがあるな?」

 「は?」

 「いや、さっきのプレーリードックと、ここから見える景色で思い出したんだけど、この遊園地、昔来たことあるわ。」

 「へ?」

 「ほら、あそこの噴水も覚えてる!あそこで遊んでたら落ちてびしょびしょになったんだ。」

 「へー・・・。」

 「どうしたの?」

 「べっつにー・・・。」

 

 ミカ、ちょっと残念。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「ここが天辺だね。」

 「そうだね。」

 「?なんか機嫌悪い?」

 「自分の胸に手を当てて考えてみれば?」

 「・・・ドキドキしてる。すごく。」

 「えっ。」

 「高いからね、ここ。」

 「そういえばシンちゃん、東京タワーから落ちたんだってね。」

 「うん、あれが全ての始まりだったね。」

 

 あそこから、ずいぶん遠くまで来たとおもう。いくつもの出会いを重ねて、今僕はここにいる。

 

 「なんか前にも言ったような気がするけど。」

 「うん?」

 「ミカのおかげだなった。今の自分がいるのってさ。」

 「ほほう?続けたまえ。」

 「ミカとこうして向き合ってると、本当にいつもそう思う。」

 

 「これって、『憧れ』なんだと思う。」

 「憧れ?」

 

 憧れは、僕たちの手と足を動かす。

 

 「最近は、そんなに近くにいることも少ないけど、ずっと変わらないよ。その憧れの感情は。」

 「・・・それなら私を見習って、そんな回りくどいいい方せずにハッキリ言って欲しいな?」

 「え・・・。」

 「ほれほれー!言ってみろー!」

 「そ、そんな、恥ずかしい事言えないよ!とてもじゃないけど・・・。」

 「そんな恥ずかしい事まわりっくどく言ってたの?シンちゃんのすけべー!」

 「うるさーい!真面目に言うと恥ずかしくなるんだから、まわりっくどく言うのは普通でしょ!」

 

 しっとりムードからとたんに騒がしくなってきた。

 

 「ははは・・・やっぱり笑ってた方がいいね。」

 「うん、そうだね・・・ん?」

 

 騒がしいのは、ここだけではないようだ。

 

 「シャドウ反応・・・!?」

 「場所は・・・あっ?!」

 

 シンジは見た、隣のゴンドラの上に乗っている影を。

 

 「ちゃんと500円払えよ!」

 「そこ?!って下見て下!」

 

 他にもシャドウが現れて、人々を襲っているのが見えた!平日で人はあんまりいないのが幸いか。

 

 「行こうシンちゃん!」

 「ああ!でも、どうやって?」

 「もちろん、『降りる』!」

 「やっぱり?!」

 

 ドアを蹴破り、シンジを抱えてミカは飛び出した!

 

 「ソウルライド!ゴモラ!」

 「ちょっ、怖い怖い怖い!!」

 

 ズドーン!っと砂ぼこりを舞い上がらせ、ゴモラが着地する!続いてお姫様抱っこのポーズでシンジがキャッチされる。

 

 「さーて、片っ端からやっつけてやりましょうか!」

 「待って、シャドウの反応がいくつか固まってるみたい。」

 「アトラクションの列に並んでるのかな?」

 「そんな律義な性格してなさそうだけど。」

 

 バディライザーの機能で、シャドウの居場所を割り出す。こういう時には画面が大きいと便利だ。

 

 「おーい!ゴモたん!シンジさん!」

 「おっ、さっそく応援が来た。」

 「っていうか、ずっとそばに居たんじゃないかな。前みたいに。」

 「ゴモたん!シンジさん!一緒に行こう!

 「いえ、ここは一旦別れて分担したほうがいいのでは?」

 「そうだね、この辺り地形が高いから、ここから僕が指示を飛ばすよ。」

 「おっけー!戦うのはまかしといてよ!」

 「シンジさん、一人で大丈夫ですか?」

 「平気、下にS.R.I着てるから。」

 「常に着てるのそれ?」

 「そうじゃないと意味ないでしょ。寒っ!」

 

 これだけでは心許ないかもしれないが、何もないよりずっとマシだし、最後には己の力と技がモノを言うのだ。根性というのはこういう時に見せる。

 

 「じゃあ、避難誘導を補佐しつつ、シャドウの集まりを各個撃破していきましょう!」

 「ラジャー!」

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 『こちらアギラ、ゲート周辺のシャドウは倒しましたどーぞー。』

 『こちらウインダム、園内に人は残っていません、無事避難できたようですどーぞ。』

 『こちらミクラス!広場の方にいたのいっぱいやっつけたよ!どーそー!』

 「こちらシンジ、広場の方から反応は消えました。あとはジェットコースターの方だけかな。どうぞ。」

 

 よし、とバディライザーのレーダーを確認しながら通信し合う。

 

 『こっちももう終わったよ!』

 「これで全部かな・・・おつかれさま。」

 『楽勝だったね!』

 『一旦集まりましょうか。』

 「一応、避難した人たちの確認だけしたほうがいいかも。応援来るまでまだちょっとかかりそうだし。」

 『了解。シンジさんも気を付けて。』

 

 一旦通信を切って一息つく。緊張が解けたら急に寒くなってきた。あったかい飲み物でも探すか・・・と自販機に近づいた。

 

 「シンちゃーん。」

 『なに?』

 「どうしよっか、デートって空気じゃなくなっちゃったし。」

 『とりあえず本部に戻って報告しなくちゃね。』

 「あーあ、せっかくいいところまで行ってた気がするんだけどなー。本部戻る前に、ご飯食べてかない?粉もんがいいな!シンちゃーん?おーい?聞いてるのー?」

 

 「シンちゃん?」

 『ごめん、聞いてなかった。なに?』

 「どうかしたの?急に黙り込んで。」

 『急用が出来た。』

 「なにそれ?」

 

 「今囲まれてる。」

 『シャドウに?!』

 「シャドウに。おっと。」

 『すぐ行くから待ってて!』

 「なるはやでお願い。」

 

 ひい、ふう、みい、数えただけで10体はいそうだ。今こそ、修行の成果を見せる時。

 

 「どりゃっ!」

 

 まず手近なところにいたこちらを窺っていたやつに、跳び蹴りをかまして一目散に逃げだした。

 

 「追ってくる?追ってくるよな?」

 

 後ろをちょっと確認して、突進を横っ飛びに躱す。少し開けた場所に出ると、そこで改めて向き直る。

 

 「レッドパワー、オン!」

 

 まず一匹目!さっき突撃してきたやつにチョップを浴びせてから、角?を掴んで振り回す!

 

 「ハンマー投げだぁ!」

 

 近場にいたもう一体にぶつけてやる。よく見れば、追ってきたのは4体ばかしだ。これだけならなんとかなるだろう。こちらの思わぬ反撃に、シャドウもたじろいでいる。

 

 「なら、こっちから行ってやるぜ!」

 

 掴みかかってボコボコに殴る蹴るする。タックルをして体勢を崩してやると、連続ストンピングで追い打ちをかけ、トドメをさす。

 

 「まだまだぁ!ブルーパワー!」

 

 最後に一匹、逃げようとしているやつの背中を捕え、一通り打ち据えると腰に力を入れる。

 

 「これで、フィニッシュだぁ!」

 

 にゅるん、と変な感触だが、しっかり頭から着地させる。

 

 「よっしゃ!」

 

 最後の一匹が、痙攣して動かなくなり霧散すると、ガッツポーズをして勝利を喜ぶ。

 

 今回、実際にシャドウと戦うのは初めてだったわけだが、それによって色々見えてきたものもある。以前ゴモラの言っていた、コブラツイストが地味という発言。確か見るからに軟体なシャドウに対しては関節技の効き目は薄いだろう。やってみなければわからないこともある。改めて実感した。

 

 「さて、残りのやつらはどこに・・・っと、その前にミカと合流しようか。」

 

 追ってこなかったやつらが気になる。まずは通信して、無事を知らせよう。

 

 「こちらシンジ、ひとまず問題は解決した・・・あれ?通じてない。」

 

 まさか壊れた?それとも通信障害か。いずれにしろ、直接会あわねばなるまい、動き出そうとしたその時。

 

 「おわっ、揺れてる?!地震?違うか!」

 

 見れば、先ほど自分のいた観覧車周辺が怪しい。バチバチと火花が上がり、支柱は折れ曲がって倒れた。

 

 「め、目玉?!!」

 

 見えたのは巨大な目玉のようなシャドウビースト。それが地底から出てきたのだ。観覧車が倒れ、鼓膜を破壊せんばかりの轟音が響く。

 

 「通信障害も、こいつのせいなのかな。こればっかり、みんなに任せたほうがいいか・・・。」

 

 衝撃で、どこからか安全第一の看板が降ってきたが、まさにその通り。いのちだいじに!一旦離れて体勢を立て直そう。応援ももうすぐ来てくれるだろうし、そうなれば余程のことが無ければシンジはお役御免だ。

 

 「ゲートの方に向かえばいいかな・・・。」

 

 ふと、その足が止まった。何か忘れていないか、不安がよぎる。

 

 「あっ!」

 

 と呟いた時には足は動いていた。

 

 「にゃろー!弱い者いじめすんな!」

 

 先ほど癒しをくれたプレーリーさんたちや、他の動物たちをシャドウが襲っているのが見えた。これは放っておけない。

 

 「オラオラオラァン!?かかってこいやぁ!」

 

 もう滅茶苦茶に叩きまくって群がるシャドウを檻から引きはがす。中の動物たちは無事のようで一安心だった。

 

 「ぐっ、この!」

 

 シンジ、後ろからどつかれる。

 

 「くらえ!くらえ!この!」

 

 シンジ、横から殴られる。

 

 「はっなっせっこのやろ!」

 

 シンジ、足を掴まれる。

 

 「えーい!このやろ!さっさとくたばれぇ!」

 

 シンジ、もしかしなくてもヤバイ。

 

 「お、多すぎる!」

 

 見れば数はさっきの数倍にはなっていた。狭い空間にスシ詰め状態で身動きも取れない。

 

 「まさか、狙いは僕の方だったって言うのか?ぐっ・・・。」

 

 後悔してももう遅い。通信は妨害され、アギさん達はシャドウビーストの方に行ってしまっているだろう。

 

 救援は呼べないし、来てもくれない。

 

 「こうなったら・・・モンスライドして一気に・・・。」

 

 腰のホルダーになんとか手を伸ばそうとする。

 

 「・・・!ダメだ、こんなところで暴れたら、この子たちも巻き込んでしまう・・・!!」

 

 だが使わなければ自分が死ぬ。もはや迷うことも出来ない。ガラスが割れて、プレーリーの檻にシャドウがなだれ込む。

 

 「ぬぅっ!やめろぉ!」

 

 少し足が傷ついたが、無理矢理抜け出して後を追うように檻に入る。ここはさっきよりも狭い。もはや外には脱出不可能だ。

 

 「はぁ・・・はぁ・・・。」

 

 怯えるプレーリーを見た。キャンキャンと鳴いている。助けなければ、いけない。

 

 「ほらっ、こっちだ。ここに入れ。おしっこするなよ。」

 

 せめてもの、服の中に入れてやって保護する。これで少しは生きながらえることが出来るだろう。跪いてうつぶせになる。もう何もできない。せめてカバーしてやるぐらいしかできない。

 

 「がっ・・・うっ・・・ぬっ・・・。」

 

 蹴られ、殴られ、いたぶられる。肺から空気が漏れだす衝撃も、血が流れだすような痛みも、だんだん感じなくなっていく。

 

 とうとう終わるのか。こんなところで、なにも達せられずに。死ぬのか。黒い影に、覆われて。

 

 死んだら、もう会えなくなる。大切な人にも、伝えられなくなるのか。

 

 嫌だ。

 

 そんなの嫌だ!

 

 「助けてぇえええええええ!!!!ごふっ」

 

 残った体力を振り絞って、最後の声を上げた。口の中に鉄の味がする。こんなところで、届くはずもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時だ、太古の眠りを覚まさんとす叫びが、影を威嚇し。

 

 その時だ、地をも割らんとする猛りが、影を蹴散らし。

 

 その時だ、友を救わんとする憤りが、影を照らす。

 

 

 「シンちゃああああああああああああああん!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あっ・・・うっ・・・。」

 「シンちゃん?!大丈夫?」

 「・・・じか・・・。」

 「なに?なにシンちゃん?」

 「動物は・・・無事か・・・?」

 

 薄暗い空に目が霞んで見える。いつも元気で笑顔なはずの顔も滲んでみえない。

 

 「・・・大丈夫だよ!みんな生きてるよ!シンちゃんも!」

 「・・・よかっ・・・。」

 

 再びシンジは意識を失った。

 

 「シンちゃん・・・。」

 

 傷ついたシンジの体をぎゅっと抱きしめ、山の上をみやる。そこではまだ戦いが続いている。先輩の自分が、急いで加勢しなければならない。

 

 「・・・っ・・・。」

 

 けれど、彼を今置いていくわけにはいかない。いや、『置いていきたくない』。

 

 「・・・ごめんね、シンちゃん。すぐ戻るから。」

 

 ミカは、『怪獣娘』であることを優先した。後ろ髪を引かれるようにしながら、その場を抜け出して走り去った。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「んっ・・・、くすぐったいな・・・。」

 

 全身がズキズキする。レッドキングさんとの特訓の、初日の夜よりも辛いかも。目を開けると、自分が助けたプレーリーさんが、自分の顔に口をよせつけていた。

 

 「よかった・・・無事だったんだな・・・。

 

 途端に、涙が出てきた。痛みを感じてるってことはまだ生きてるってことを実感したからなのか、今頃襲われた恐怖を感じたからなのか、その両方なのか。

 

 「ミカ・・・ミカ・・・?」

 

 ついさっきまで、彼女がそこにいた気がした。いや、間違いないと確信していた。

 

 「・・・行かなきゃ・・・いって。」

 

 手も足も出血している。背骨も動くと激痛が走る。だけども動き出した体は止まらない。

 

 「おまえら・・・もうちょっと隠れてろよ。もうちょっとの、辛抱だからな・・・。」

 

 バケツを被せて隠してやると、割れたガラスの向こう側へと足を延ばした。

 

 遠くで戦いの音が聞こえる。苦戦しているのだろうか。相手はかなりの大きさと不気味さだった。なにより、人間を罠に嵌める狡猾なやつらだ。何か手を打つ必要があるかもしれない。

 

 「通信は・・・ダメか・・・。やっぱりアイツのせいなのか?」

 

 このノイズは、磁場の乱れのような、強い磁力によるものだ。それがアイツとなにか関係があるのだとすれば・・・。ダメだ、頭が回らない。

 

 「うぶっ・・・。」

 

 ちょっと休もう。喉も乾いたし、すごくさむい。そういえば、さっきはコーヒーをのもうとしていたんだっけ。おなかもすいた。

 

 「磁気嵐・・・じきあらし・・・。」

 

 自販機も壊れているのか、缶が大量に排出口に詰まっている。財布は服と共にどこかに行ってしまったので、お金を払えないのが申し訳ないがいただこう。ついでに食べ物もしっけいしよう。

 

 「強い磁力か・・・。」

 

 モリモリとホットドックを口に詰め込み、ジュースで流し込みながら考える。何故遊園地に現れたのか。そういえば、いくらかのシャドウは最初固まってあらわれていた。場所はたしか、各アトラクションの近くだ。

 

 「何の目的があって・・・。」

 

 人を襲うため?いや、人の集まる出入口の方は、アギさんがかなり容易く制圧できていた。避難だってスムーズに行われていた。

 

 「とすると・・・エネルギーか?」

 

 遊園地は毎日大量の電力を消費している。電気を狙ったとすると・・・。

 

 「アイツの体は、電気を纏っているのか・・・?」

 

 ここからではよく見えないが、巨大な目のようなものが見えた。地下から伸びてきたということは、地面より下は細長い形をしてるのかもしれない。

 

 「放電攻撃しているのか・・・。ん?これは・・・。」

 

 持っていたスチール缶が、坂を転がり昇りはじめた。

 

 「そうか!もしかしたら!」

 

 まずはシャドウが集まっていた場所に行ってみるか。ひょっとすると、この予想は当たっているのかもしれない。食べて飲んで頭を使っていたら、いつの間にか元気も回復していた。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「もー!なんなんだよコイツー!ビリビリして全然近づけないじゃん!」

 

 観覧車のあった場所で戦うゴモラたちは、苦戦を強いられていた。

 

 「近・中距離は放電で、遠距離は物を飛ばして攻撃してくる・・・。」

 「もう一回、レーザーショット!」

 「・・・しかも、バリアまで持ってるなんて。」

 

 ウインダムの発射したレーザーが、見えない壁に阻まれて立ち消える。大きな目がギョロリと動いて不気味だ。

 

 「このままじゃ埒があきませんよ!」

 「ゴモたんなんか方法ないのー?!」

 

 言葉を投げかけられた当人は、瓦礫を乱暴に投げ捨てて、己に言い聞かせるように啖呵を切った。

 

 「このシャドウは、ボクが殺る!!」

 

 「アイツ・・・どうしちまったんだ?」

 「レッドキングさん!来てくれたんですね!」

 「ああ、けどあんなに荒れてるゴモラも初めて見た。」

 「なんかゴモたん怖い・・・。」

 「うん・・・。」

 

 もう誰の手も借りない。自分一人で片を付けてやる。

 

 「超振動波!超振動波!!ちょうしんどうはー!!!」

 

 電撃もバリアも力ずくで突破し、目玉を殴りつける。その分エネルギーのロスも、返ってくるダメージも大きい。手や足が傷つくのも構わず、ゴモラは前進する。

 

 このままでも倒せていたかもしれないが、ここで異変が起こった。

 

 「あれ?電撃が止まった?」

 「本当だ。」

 

 『・・・ちらシン・・・応と・・・。』

 

 「おっ、シンジか?そっちは大丈夫か?今どこにいるんだ?」

 『外の変電設備です。遊園地への電気を止めさせてもらいました。通信が復帰したってことは、予想が当たってたみたいです。』

 「つまり、シャドウが弱体化したってことだな。」

 「やるじゃんシンジさん!」

 

 『それで、今ミカは、ゴモラはどこに?』

 「ゴモラは・・・今戦ってる。一人で。」

 『大丈夫なんですか?!』

 「大丈夫だ。」

 

 「終わったよ。」

 「だ、そうだ。」

 「ゴモたん・・・。」

 「ごめん、後にして。シンちゃん迎えに行かないと。」

 『ミカ、大丈夫?』

 「平気、シンちゃん今どこ?」

 『今さっきの動物コーナーに向かってる。』

 

 それだけ聞くと、ゴモラはまた走り出して行った。その顔は無表情だったが、横から見ていたアギラには、とても辛そうに見えた。

 

 (ゴモたん・・・。)

 「さっ、シンジを拾って撤収しようぜ。オレはなんも出来なかったけど。」

 「そんなことないっすよ!レッドキング先輩来てくれなかったら今頃・・・今頃・・・。」

 「いうな、何も言うな。余計に空しくなるから。」

 

 誰もなんだか笑えるような気分じゃなかった。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「あーあ、服がボロボロだ。」

 

 シャドウに襲われた時に着替えも落としていたんだろう。これはもう着れそうにない。

 

 「これも・・・中身は大丈夫かな?」

 

 ポケットに入っていた小さい箱を探り出すとため息をつく。これも変形してしまっている。

 

 「シンちゃん。」

 「あっ・・・ミカ、おかえ・・・り。」

 

 振り返った先にいた、肩で息をしながら戻ってきた幼馴染も、ボロボロだった。手足や顔をすりむいて、火傷もしているようだった。

 

 「ミカ・・・。」

 「シンちゃん・・・生きてるよね?シンちゃん死んでないよね?」

 「生きてるよ。ミカこそ、痛くない?」

 「平気だよ・・・。」

 

 気が付けば、僕たちはお互いの体を抱きしめ合っていた。先ほどまで戦っていたミカの体は熱を帯びていたけど、反対にシンジの体はとても冷たかった。

 

 「よかった・・・ほんとうに、よかった・・・。」

 「・・・ごめんね、ミカ、僕がもっと・・・。」

 「いいから・・・シンちゃんは悪くないから・・・。」

 

 おかしいな、会えたら言いたいことがいっぱいあったはずなのに、言葉が出てこない。そうしているうちに皆も来たけど、その後のことはよく覚えていない。気が付いたらGIRLS本部に戻っていた。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「・・・大変だったね、今日は。」

 「一番大変だったのはシンちゃんの方でしょ?服新しいの買わないとね。」

 「あれ、結構気に入ってたんだけどなー。」

 「今度は私が選んであげるよ!」

 「ははっ、ミカの趣味ってなんか合わないんだよなぁ。」

 「んもー!親切で言ってあげてるのにー!」

 

 夜。GIRLS本部の屋上で二人は佇んでいる。本来のデートコースのものとは違うが、ここから見える景色もなかなか悪くない。

 

 「・・・いつかね。」

 「ん?」

 「いつか、こんなことが起こっちゃうんじゃないかって不安だったんだ。私は怪獣娘だし、シンちゃんはただの(・・・)人間だし。」

 「僕も、考えたくも無かったな。体験するまでは。」

 「・・・でも。でもシンちゃんの自分で選んだ道なんだもんね。私には、『やめて』なんて言えない。けど。」

 

 「けど、本当はシンちゃんには、戦ってほしくないんだ・・・。危険な目に遭ってほしくないんだ。」

 「・・・そっか、そうだよね。」

 

 シンジも、なにも言えなかった。本当に死にそうになったし、あんな目に遭うのはもうごめんだと思った。

 

 けど、一度決めた道を、そんな簡単に諦めたくもない。

 

 「はーっ、やめやめ!こんなこと話してても困るだけだよね。」

 「そうだね、明日考えられることは、明日にしよう。」

 「うんうん、ケセラセラ(明日は明日の風が吹く)ってね!」

 「おっ、意外だな。ミカがそんなオシャレな言葉使うなんて。」

 「なにさー!私だって女の子だーい!」

 

 「そっか、女の子か。じゃあそんな女の子のミカヅキさん。少し目を瞑ってください。」

 「へ?なにいきなり。」

 「いいから、目を瞑るんだよ。」

 「なになに・・・?」

 

 ミカ、ちょっと期待する。二人っきり、夜景が綺麗、タイミングもバッチリ。

 

 「・・・はい、開けていいよ。」

 「これ・・・ペンダント?」

 「そう、三日月の。そして上をご覧ください。」

 「上?空?あっ。」

 

 空にもポッカリと三日月が浮かんでいた。それと同じ、三日月のペンダントがキラキラと輝いている。

 

 「ミカ、ゴモラ、誕生日おめでとう。」

 「あっ・・・あっ・・・。」

 「これでもちょっと考えたんだよ。どういうプレゼントがいいかとか、どういうシチュエーションにしようかとか、どこで渡すかとか。一番悩んだのは、三日月の日かな。ほら、今日曇ってたでしょ、午後から晴れるって言ってたけど。それでダメだったらもうどうしようもないって思って焦ったよ。それに・・・えっとその・・・。」

 

 早口で捲し立てるシンジも、少し照れくさそうにそっぽを向いた。

 

 「・・・よし、これも言っちゃおう。ミカ。」

 「・・・なに?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ミカのこと、大好きです。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あー言っちゃった。あーあ、あー・・・。」

 「ありがとう・・・ありがとうシンちゃん!!!私も、ボクも、だいだいだいだぁああああああああああああい、すきっ!!」

 「うん、ありがとう。」

 

 二人は、またいつの間にか抱きしめ合っていた。ただちょっと違うのは、どちらもとても嬉しそうにしていたというところ。

 

 「シンちゃん・・・。」

 「ミカ・・・。」

 「大好き、だよ・・・。」

 「うん・・・。」

 

 ゆっくりと、2人の顔も近づいていく。恥ずかしさも迷いもなにもない、ゆっくりと、まっすぐと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ふたりともー!焼き肉食べに行こ―!!レッドキング先輩のおごりー!!」

 

 

 「あー、いいね、焼き肉。」

 「そ、そうだね、ボクもお腹すいちゃったよははは・・・はぁ~・・・。」

 

 「あれ?2人ともなにかしてたの?」

 「いーえ、ぜんぜん。」

 「なーんにも、しておりゃしませんよ。」

 

 タイミングが良いのか、悪いのか。

 

 「ミクさーん、ゴモたんさんたちいました?」

 「いたいた!二人一緒だった!」

 「二人一緒だったって・・・ごめんね、2人とも。」

 「いーえ。」

 「なんにも。」

 「なになに?なんの話?」

 「なんでもないってば!行こっ、シンちゃん!」

 「ああ。」

 

 

 

 今日は本当に色々あった。

 

 「あれ、ゴモたんソレ・・・。」

 「これー?ふふーんいいでしょ!」

 

 辛いことも嫌なことも、楽しいこともうれしいことも。

 

 僕はきっと、生涯今日の事を忘れない。

 

 「ハッピーバースディ、ゴモラ。」

 

 三日月だけに聞こえるように、そう祈った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いてっ、転んじゃった。最後までしまらないなぁ。




 誕生日記念と言いながら、もう一週間たっちまったよ!それに誕生日記念の話のハズが、途中から普通にメインストーリーの続きになってしまった。あと2話くらいでまた最終回が来ます。なかなか他のヒロインルートに移れない・・・。


 第一話放送されたし、アプリも配信されたし、モン娘は~れむはロボットガールズとコラボするし!某wikiにもモン娘は~れむのページが出来てたし、みんなも見よう。ロボットガールズコラボキャラは、進化させると立ち絵が水着に変わる素敵仕様。今ならログインでグレートちゃんが、イベント参加でグレンダさんがもらえるぞ。Zちゃんとトリプルガイちゃんはガチャ排出だけど、正直某カルデアや某空騎士団よりよっぽど有情な排出率だし、5ステップ目では☆5確定だから価値あるぞ。みんなも回そう。


 それにしても誰がJJの登場を予想できただろうか。先行上映会に行けた人たちが羨ましい。

 感想、ご意見などもお待ちしております。ブックマークやしおりがすこしずつ増えていくことの喜びに、打ちひしがれております。皆さま、本当にありがとうございます!

 ネタ解説

 サブタイトル:元はMAC全滅!円盤は生物だった!原型が無さすぎる。

 ソドム:高熱怪獣といえばザンボラーとかもいるけど、『ソドムとゴモラ』的な意味でここではソドムを例に挙げた。

 アスファルトに出来た人型:漫画とかではよくあるリアクションだけど、実際に激突したらどんな風になるんだろう・・・。

 戦国武将:ゴモラのツノは黒田長政の兜がモチーフ。

 言葉にせず思っていることが伝わるはずがない:ブレンパワードのマザコンなライバルキャラのジョナサンの母親への生憎入り混じった台詞。ジョナサンはママンが金で買った優秀な人物の精子で体外受精を行った結果生まれた子で、ママンは親でいることよりも女であることを選んで、旦那を作る事を面倒がった結果子供の世話をすることにも面倒に思った・・・とジョナサンは考えていた。一方ママンの方はというと、自分では子供思いなビジネスウーマンだと思っていたらしい。その結果、クリスマスは家に帰るものという発想すらできなかった。

 あなた、ちょっとデリカシーが欠けてる:元は確か「あなた、ちょっと下品」だったと思うが、なんの台詞だったか思い出せない。

 見ててくださいry:仮面ライダークウガ2話での主人公五代雄介の台詞。これがあるから最終決戦での台詞も熱い。なお、2話の燃える教会のシーンは、本当に教会に火をつけたらしい。関係ないけど、怪奇大作戦の『呪いの壺』でも寺が燃えるシーンがあるけど、こっちは精巧なミニチュアだった。しかし、あまりの精巧さに寺社などから苦情が殺到したという。

 デートコース:デートコースはもう決めたんだ、明日の夢が膨らんでくる

 夏はプール、冬はスケート場:ひらパーことひらかたパークのこと。2017年のウルフェスも行われ、作者も行きました。このデートでのシンジの台詞は、その体験に基づいています。

 憧れは僕たちの手と足を動かす:ウルトラマンマックスの『遥かなる友人』より。憧れは理解から最も遠い感情という言葉もあるけど、眺めているのと目指しているのと差なんだろう。

 砂ぼこり舞い上がる:ガイアのアレ

 列に並ぶ:キョーダインのアレ

 追ってくる?追ってくるよな?:ちょっと富野語録をイメージした言い回し。この作品中でもたびたび見かけられる、文字に起こすと変な言い回しだけど、人物の感情や場面には即しているセリフ。

 目玉:ガンQがモチーフのシャドウビーストです。

 おしっこするなよ:ギャバンが子犬を保護して自分の服の中に入れたときの台詞。ギャバンの劇中ではしょっちゅう子犬を拾っていたようなイメージ。

 死んだら、好きな人にも会えなくなる:ティガの「うたかたの」でのマユミの台詞。ダイナの「うたかたの空夢」の予告でもマイが言っていたが、この二つのエピソードは指す向きがまるで違う。

 磁気嵐:マグネットパワー!目玉シャドウビーストは、電気を集めて磁界を発生させていたのだった。

 ペンダント:黒田ミカヅキは元のデザインからキバかツノのようなデザインのペンダントを下げている。

 月:月が綺麗ですね=I love youの意味。夏目漱石が英語教師をしていた時のエピソードだという。正直そんな文学的な感性を持った人間がごろごろいるとも思えない。

 誕生日:ハッピーバースデイデビルマン!


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うたかたの。

 ゴモラルート、というかメインシナリオはこれと次で最終回。この後別ヒロインに手を出しに行ってよし。このままひたすらゴモラと甘々になってよし。


 ここは闇の底。すべてが暗雲に包まれた、絶望の最中。彼方には赤黒い塔が、天を指すようにそびえ立っている。

 

 「みんな・・・どうしちゃったんだ・・・。」

 

 一人息を切らせ、ゴーストタウンと化した街をシンジは走る。光差さぬ闇の中を、懸命に逃げ回っていた。

 

 「あぁっ!」

 

 突如、地面が割れ、影が瓦礫や砂をまき散らしながら飛び出してくる。それらは、人のような姿をしていた。

 

 「ゴメス、デマーガ、テレスドン・・・!」

 

 怪獣の名を呟く。目の前にいるのは、それらの魂を宿していたはず(・・)の怪獣娘

 

 『ギャオオオオオオオオオオオン!!』

 『ギュラァアアアアアアアアアア!!』

 『グロロロロロロロロロロロロロ!!』

 

 だった、怪物たち。今の彼女たち、いやヤツらは、凶暴性に支配された怪獣そのものだった。

 

 「・・・ハァ、いい加減、しつこい。」

 

 来た道を引き返し、今度は別の道を行く。またその先に怪獣があらわれ、その度にまた逃げて・・・を繰り返す。

 

 「ハァ・・・ハァ・・・・どうすれば・・・どうしたらいい?」

 

 どうにもできない。目の前のピンチを切り抜けることすら、シンジには出来ない。

 

 「はっ・・・また・・・今度はなんだ?」

 

 聞き慣れたはずの声、一瞬だけ希望を抱かされた叫び。誰だ?と問うまでもない。

 

 『ガァオオオオオオオオオオオオオ!!』

 

 「ゴモラ(ミカ)・・・。」

 

 ゴモラだけじゃない。レッドキング、エレキング、ザンドリアス、ウインダムもミクラスも、アギラもいる。

 

 「みんな・・・なんでだよ・・・。」

 

 涙交じりの呼びかけも、全く意に介さず迫りくる。

 

 「ちくしょう!ちくしょうちくしょう!!」

 

 轟く叫びを背に受けて、無我夢中で走り出した。もはや逃げ場はない、どこへ行けばいいのか見当もつかない、ただひたすら延命のためだけに走り続ける。

 

 「ああっ・・・ああ・・・。」

 

 そして最後の影が現れた。明滅する黄色い光と、燃えるような青い光。

 

 「ゼットン・・・ベムラー・・・。」

 

 もうおしまいだ。すぐ後ろにはゴモラたちが、目の前にはゼットンたちがいる。

 

 「たすけて・・・たすけて・・・。」

 

 縋るように空を見る。分厚い黒雲が覆う、闇が広がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その闇、哀しみの空を壊すように、一筋の光が差し込む。

 

 

 

 燃えるような、照らすよな、赤く熱い光。

 

 

 「あれは・・・。」

 

 光は、シンジの前で人のような姿となった。

 

 

 『ヘェアッ!』

 

 その表情は、像のように動かなかったが、優しく微笑んでいるようにも、激しく怒っているようにも見えた。

 

 『シュワッ!』

 

 『光』はあっという間に怪獣たちに囲まれた。けれど『光』は、片っ端から怪獣たちを討って行った。

 

 またもやシンジは、見ているしか出来なかった。かつての友や仲間が倒されていく様子を、ただじっと眺めているしか出来なかった。

 

 あのゼットンすらも、徒手のみで下し、最後に残ったゴモラにも挑みかかっていく。

 

 『ヘェッ!』

 『グォオオオオオン・・・』

 

 尻尾を切られ、ツノを折られ、何度も何度も投げ飛ばされるゴモラ。

 

 「やめて・・・。」

 

 ふらふらと力なく倒れても、未だ闘志を折らないゴモラ。

 

 『ヘァッ!』

 

 「やめてぇえええええええええ!!!」

 

 『光』は腕を十字に組み、必殺技を放った。

 

 シンジの体は、ゴモラを庇うように、その前へと割り込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「・・・っは・・・ここは?」

 

 あと一瞬のところで、目が覚めた。顔から布のようなものがはらりと落ちたが、シンジは気がついていない。それよりも、見知らぬ天井と、寝心地の違うベッドに気が向いた。

 

 「・・・ひどい夢だった。」

 

 ひどいことは夢の中だけで起きるに限るが、見たくないものはやはり見たくない。夢というのは時に自身の想像すら上回るようなことが起こるが、これが何かの予兆だと思うと気分が重い。

 

 「ここは・・・GIRLSの施設かな?」

 

 少なくとも自分の家ではない、ということはわかった。服も、昨日借りたGIRLSのジャージのままだ。それにお腹が空いている。

 

 「顔でも洗うか。ミカも探して・・・あれ?」

 

 バディライザーがない。携帯はぶっ壊したばかりだけど、通信機もない。誰かに預けたんだっけ・・・と昨晩ことを思い出そうとするが、記憶にない。

 

 「まいっか。」

 

 ともかく先に洗顔だ。ベッドから降りて、履き物もない事に気が付く。別に靴下だけでもいいが、スリッパがないか部屋の中を探す。

 

 と、その最中、部屋に誰かが入ってきた。服装を見るにナースさんのようだけど。ちょうどいい、スリッパを借りよう。

 

 「おはようございます。あの、スリッパ・・・。」

 

 「キャアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 すごい悲鳴を上げて走って行ってしまった。サンダルも脱ぎっ散らかして。しょうがない、ひとまずはこれを借りておこう。

 

 「顔になんかついてるのかな?」

 

 洗面所を探してブラブラと歩き回る。

 

 この後、お手洗いでのんびり顔を洗っている中、突如入ってきたお医者さんとピグモンさんに非常に驚いた顔をされた後検査室へと連行された。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 暗い暗い闇の中、そこにミカはいた。

 

 『ゴモたん・・・。』

 「・・・入ってこないで。」

 

 雨戸を締め切り、電気の灯っていない部屋の中、ベッドの上で体育座りをしたミカはいた。その眼には、生気が無かった。

 

 『辛いのはボクだってそうだよ、けどこんなところで閉じこもってたって。なんにもならないじゃない。』

 「アギちゃんになにがわかるのさ!!」

 

 「ボクだってわかんないよ・・・ボク目の前で、シンジさんは突然・・・。」

 『そんなはずないもん!シンちゃんは私を置いてどこにも行かないもん!』

 「現実を見てよ!ここから出てきてよ!」

 『やだー!!』

 

 「泣きたいのはボクだってそうだよ・・・。」

 「アギさん・・・。」

 「アタシも信じらんないな・・・シンジさんが死んじゃうなんて・・・。」

 「私もです・・・まだ、出会って間もないのに・・・。」

 

 出会って間もない、半年ぐらいしか経っていないというのに。やっと事態が好転してきた、仲良くなってこれたという時だった。

 

 「・・・これからどうなるんだろうね。」

 「いろんなこと、宙ぶらりんなままですからね・・・。」

 「まずゴモたんをどうにかしないと・・・ん?ピグモンさん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今は、誰の顔も見たくない。それどころか、動くことすらままならない。

 

 「ダメ・・・出てきちゃダメ・・・。」

 

 怪獣娘は、その心に孔が開いた時、カイジューソウルが暴走する。今まさに、それを抑え込んでいる状態なのだ。

 

 右手をぎゅっと握りしめる。その手には、昨日プレゼントされたペンダントが入っている。

 

 「こんな・・・こんな辛い思いをするなら・・・こんなもの・・・!」

 

 投げ捨てようとするが、それは出来ない。振りかざした手がプルプルと震え、きつく胸に抱きしめる。

 

 「シンちゃん・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 「生き返ったぁ!?」

 「しかも超元気ぃ!?」

 『そうなんですぅ!ピグモンもビックリなのですぅ!』

 

 バコォオオオオン!と衝撃音が響く。

 

 「ゴモたん?なに今の音?・・・ゴモたん?」

 

 多少強引に鍵を開け、部屋に入ると、その目に飛び込んできたのは、ゴモたんの形をした立派な穴だった。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「それで結果は・・・。」

 

 「まったくの正常値です。健康そのものと言っていいです。」

 「バランスのとれた食事が効いたね。」

 「ったく、一体何だったんだよ?」

 「僕が知りたいです。」

 

 検査が終わり、元の病室へと戻ってきたシンジと、付き添いのピグモンとレッドキング。昨晩、本部の屋上で突然倒れたシンジは、そのまま心停止、息を引き取った・・・かに思われたがこうして今は生きている。

 

 「みんな心配してたんだぜ、ゴモラも、エレキングも、アイツら3人も、あのゼットンすらついさっきまで来てたんだぜ?」

 「ゼットンさんも?」

 「特にゴモラなんか・・・。」

 

 突然、ズドドドドドドドという地響きが襲ってくる。地震ではない。

 

 「なんだなんだ?」

 「あー、こりゃ多分。」

 

 何かを悟っていたレッドキングに対して、慌てて窓を開けて外を見たシンジに、超特急の影が突っ込んできて押し倒した。

 

 「シンちゃん!シンちゃん生きてるの?!レッドちゃん!」

 「あー、3秒前までは生きてたんだけどな。」

 「死んでないです。」

 「!!!!!シンちゃーん!!!」

 「死ぬ。」

 

 首がペコちゃん人形のように揺らされまくり、ミシミシと背骨をベアハッグで折られる。

 

 「生きてた・・・シンちゃん生きてる・・・。」

 「ミカ・・・。」

 

 ミカは今涙を流してくれている。僕のために。生きていてよかったと心底思う。

 

 「ん・・・。」

 「なに、シンちゃん?」

 「いや・・・。」

 

 ゴモラのツノを撫でながら、ふと夢の事を思い出した。

 

 「シンちゃん・・・そこくすぐったいよ・・・。」

 (ちゃんとついてるよな・・・。)

 

 折れてるどころかキズ一つ入っていないツノを確かめて安堵する。続いて、ゴモラの腰の、尻尾へと手を伸ばす。

 

 「切れてない・・・なっ。」

 「もー!シンちゃんのえっちぃー!」

 

 あっ、飛んでる。今日も空が青いなぁ。

 

 「違う、落ちてる。」

 

 そう気づいたのも束の間、直後に地面と接触して目が覚める。

 

 「シンジさん?こんなところでなにやってるの?」

 「・・・穴に埋まっているんだ。」

 

 遅れてやってきた三人娘に助け起こされ、パンパンと土を払う。なんだ、よく見ればGIRLS本部のすぐそばの建物じゃないか。

 

 「わー!ホントに生き返ってる!」

 「むしろ死んでたって実感がないんだけど。」

 「だからって、怪獣娘の尻尾を触るなんてこのスケベ!」

 「え?尻尾ってそういう扱いなの?」

 「ボクも尻尾触られるのは恥ずかしいかな・・・。」

 「レッドキングさんが毎日尻尾のリボンを変えてるぐらい大切な部分ってのはわかったかな・・・・。」

 「急にオレにパス回すな!」

 

 「しかし、結局原因はなんだったんでしょうか?」

 「わからん。」

 「いやいや、どう考えてもあのス-ツが原因でしょ、電気ビリビリいってたし。」

 「ああ、アレは絶対体に悪いぞ、客観的に見ても。」

 「そうですか?痛気持ちいですけど。」

 「気持ち悪いからダメ!」

 「ちょっとショック。」

 

 「あっ、もうすぐ2時だ。」

 「2時がどうしたんだ?」

 「トレーニングに行かなきゃ。」

 「待てぃ、自分がどんな状態かわかってんのか?」

 「わかりません。」

 「なおさら悪いわ!しばらくは休め、先輩命令だ!」

 「はーい。そういえばバディライザーが無いんですが?」

 「ここにありますよ~、はいどーぞ。」

 「ありがとー・・・って画面割れてるじゃん!」

 「そうなんですー、シンシンが倒れた時、割れているのが見つかったんです。」

 「落としただけで壊れるものかなぁ?散々殴られたり落ちたりしたのに壊れてなかったのに。」

 

 一応電源は入るし、操作も受け付ける。が、ちゃんと動いてくれるかどうかは、動かしてみなければわからない。

 

 「じゃあちょっと試して・・・。」 

 「ダメ!」

 「だよね。わかった、大人しくしてる。」

 「まあ何はともあれ、無事でよかった。」

 「うん、心配してくれてありがとう。」

 「なにかあったら、すぐ呼んでくださいねー。」

 

 じゃーねー、と帰っていく一同を見送り、壊れたバディライザーの画面を見つめる。割れたガラスに自分の顔が映る。

 

 「ミカ、行かなくていいの?」

 「ううん、もうちょっといる。」

 

 バディライザーを持つ手に、ミカが手を重ねてくる。

 

 「うん・・・ちゃんと脈あるね。」

 「うん。」

 「ちょっと見せて。」

 「なに?痛い痛い首が折れる。」

 

 突然顔を掴まれ、瞳を覗き込まれる。目と目が合うシチュエーションって、もっとドキドキするものじゃなかったっけ。

 

 「瞳孔も開いてないね。」

 「今まさに開きかけたよ・・・。」

 「心臓も・・・動いてるね。」

 「ああ・・・。」

 

 シンジの胸にミカは耳を当て、シンジもそれを受け入れる。今気づいたけどドキドキするシチュエーションは、生きていることを確かめるのと似ている。

 

 「ねぇシンちゃん・・・死んでる間どうしてた?」

 「なにそれ?どうしてたって、死んでたら何も出来ないじゃん。夢は見てたかな。」

 「どんな夢だった?」

 「・・・哀しい夢かな。あまり思い出したくない。」

 「ボクは・・・ずっと辛かった。数時間しか経ってないはずなのに、もう何年も離れ離れだったような気がしてる。」

 

 「昨日も言ったけど、シンちゃんには危険から離れてて欲しいんだ・・・。」

 「・・・どのみち、しばらくは戦えないよ。」

 「今はね、でもこれからどうするのか、シンちゃんはどうしたい?」

 「僕は・・・。」

 「ごめんね、ボクのワガママだよね。決めるのはシンちゃんだから、気にしないで。」

 

 「ふわぁあ・・・安心したらなんだか眠くなってきちゃった。」

 「寝てないの?」

 「眠れなかった・・・昨日はね。」

 「なら休んだら?」

 「そうする、おやすみ。」

 「そこ僕のベッドじゃないのか。」

 「ぐーぐー。」

 

 わざとらしく寝息を立て始めた。ちょっと外へ出ていよう。

 

 「いっしょに寝てくれないのー?」

 「子供じゃあるまいし。」

 

 半端なセリフを吐き捨てて部屋を後にする。とりあえず屋上にでも行こうか。それにしても何かを忘れているような気がする・・・。

 

 「・・・あっ、焼き肉。」

 

 食べたかったなぁ、それも大事だけど。

 

 「家に連絡入れてないや。チョーさんどうなってるだろ?」

 

 携帯を取り出しつつ屋上への階段を登って行った。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「もしもし?」

 『シンジさま、おはようございます。昨晩はお楽しみでしたね?』

 「いや違う、あー・・・思いもがけず外泊してしまった。連絡を入れていなくてすまなかった。」

 『成程。』

 「で、しばらく検査のために家に帰れなくなった。だから夕飯はいらない。」

 『承知しました。』

 「あー、でも一回着替えを取りに帰るよ。」

 『用意しておきます。』

 「えーっとそれと・・・。あのさぁ、」

 『はい?』

 「もしも僕が二度と戻れなくなったとしたら、チョーさんどうするの?」

 『なにも。』

 「え?」

 『なにもしません。私は、シンジさまが『いってきます』とおっしゃられれば、お戻りになるまでに部屋を掃除し、夕飯の支度をし、いつお戻りになられてもいいよう、スープを温めておくだけです。』

 「そっか・・・ありがとう。」

 『どういたしまして。』

 

 通話を終え、柵の向こう見える景色を見て思いをはせる。

 

 「あの夢はなんだったのかな・・・。」

 

 妙に質感がリアルだった。感じた恐怖も、哀しさも。

 

 「・・・最近こんなんばっかりだな・・・。」

 

 空が青いなぁ・・・。

 

 「ここにいたの。」

 「ん?ゼットンさん・・・。」

 

 いつの間にか、すぐ後ろにゼットンさんがいた。

 

 「えっと、こんにちは。」

 「ええ、こんにちは。」

 

 あまり話したことが無い、というか掴みどころが無くてよくわからない。

 

 「お見舞いに来てくれたそうで、ありがとうございます。」

 「いい、その時あなたは・・・。」

 「今は、平気ですけど。」

 

 心配して来てくれたのだから、やっぱり優しい人なんだろうけど。

 

 「・・・。」

 「・・・。」

 

 何話せばいいんだろうか。

 

 「空が青いですね・・・。」

 「そうね・・・。」

 

 ゼットンさん、わかっていることは、すごく強いってこと。そんな強い人には、周りはどう見えているんだろうか。

 

 「あの、ゼットンさん。」

 「なに?」

 「ゼットンさんに怖い物とか、怖い体験とかってあるんですか?」

 「・・・。」

 

 黙り込んでしまった。怒らせてしまったか?

 

 「リゼ料理・・・。」

 「え?」

 「なんでもない。なにかを恐れることは、とても当たり前のことだと思う。」

 「はぁ・・・。」

 「もう行く。」

 「あっ、ありがとうございました。変なこと聞いてしまって・・・。」

 「いい。それじゃあ。」

 

 ピシュン、とテレポートでどこかへ行ってしまった。アギさん曰く、河原にいることが多いらしいけど。

 

 「着替え取りに行くか・・・。」

 

 行って、帰ってきて、まだミカは寝ていた。時間つぶしがてら、家の研究室から持ってきた怪獣の資料を眺める。

 

 「蘇り・・・再生怪獣。」

 

 死んだ怪獣が蘇ったり、蘇らされたりする例は何件かある。古代の眠りから覚めたミイラ怪獣ドドンゴ。バラバラにされた状態からゾンビのように蘇った海象怪獣デッパラス。海岸に流れ着いた死体が、落下のショックで蘇生したゾンビ怪獣シーリザー。

 

 逆に蘇らされるパターンとして、生物の魂を奪い、その死体を操る幽霊船怪獣ゾンバイユ。人間の脳にバイオチップを埋め込み、手駒として操った邪悪生命体ワロガ。一番有名なのは、怪獣たちを蘇生させ、怪獣軍団を率いて人類に攻めようとした怪獣酋長ジェロニモンだろうか。ウララー

 

 あるいは、ただの人間の死体を操っただけのシャドウマンというのもいる。今の僕も、ひょっとしたらシャドウマンなんだろうか?シャドウと同じ名前の・・・。

 

 「お邪魔します。」

 「邪魔するんやったら帰ってや・・・ふにゃ・・・。」

 「寝ながら反応するな!いらっしゃい、エレキングさん。」

 「おはようございます。」

 「おはようございます、もうお昼ですよ?」

 「ただの挨拶だから。」

 「アッハイ。」

 

 ゼットンさんの次は、エレキングさんが訪ねてきた。

 

 「ピグモンから聞いたけど、元気そうね。」

 「はい、おかげさまで。色んな人が心配してくれたそうで、とてもありがたいです。」

 「それはなによりだわ。」

 

 ゼットンさんと同じ、クールな人だけど、大分話しやすい。今度はちゃんと目を合わせていられる。

 

 「それで、今日はなにをしに?」

 「そこで寝ている甘えん坊を引き取りに、ね。今日も予定があったそうなの。」

 「成程、さっきからずっと寝てますけど。」

 「それだけ昨日は眠れなかったんでしょう。けどそれはそれ、これはこれだから。」

 

 今はとても安心して眠っている。

 

 「あら?それは・・・何を見ていたのかしら?」

 「これですか?これはちょっと、蘇る怪獣について調べてました。」

 

 画面は割れているが、以前問題は無し。サッサッと情報をめくって見せる。

 

 「自分が蘇ったことに、何か関係があるんじゃないかと思って。」

 「そう、それでなにかわかった?」

 「全然。こういうのとは関係ないのかも。そうそう、エレキングさんといえば、怪獣のエレキングの中にも、蘇った個体がいるみたいですね。」

 

 月光怪獣再生エレキング。初代の個体が、月光エネルギーで復活した姿だ。電気のかわりに火炎で攻撃する。

 

 「月を見て踊ったり、側転して得意げに笑ったり、なんかかわいいですね。」

 「かわいい・・・かしら?」

 「それからエレキングって一口に言っても、様々なバリエーションがあるみたいですよ。」

 

 二酸化炭素を発する個体や、鋭いツメを持った個体。昼寝が好き、なんてやつもいる。

 

 「中でもかわいいのがコレ、リムエレキング!手乗りサイズですっごいかわいいんですよ!」

 「かわいい・・・。」

 「エレキングそのものがかわいいですから。勿論エレキングさんもかわいいですけど。」

 「はぁ・・・ついでのように褒めないでちょうだい?」

 「うっ、ごめんなさい・・・。でも、エレキングさんをかわいいと思ったのは本心ですよ?」

 「はぁ・・・一言余計よ、あなたはまったく。今度は私をナンパしているのかしら?」

 「あっ、いえそんなことは・・・あだっ!」

 「うにゃうにゃ・・・。」

 「・・・ミカ、起きてる?」

 

 背中を尻尾で殴られたが、ミカはたしかに寝ている。

 

 「さて、そろそろその寝坊助を連れて帰りましょうか。」

 「だってさ、ミカ起きろー。」

 「あと5分・・・。」

 「少し、離れてくれるかしら?」

 「これぐらい?」

 「もう少し。そこ。」

 

 一体何をするんだろうかと首を傾げたのも束の間、エレキングさんは尻尾を取り外すと、それを寝ているミカに巻きつけた。

 

 「しびればびれぶー!」

 

 眠れる古代怪獣が痙攣して跳び起きた。

 

 「んもー、ちょっとシゲキ的すぎだよエレちゃんー!」

 「はやく起きないからそうなるのよ。」

 「大丈夫ミカ?」

 「へーきへーき!これぐらい電気風呂みたいでちょうどいい湯加減だよ!」

 「あら、なら毎朝やってあげようかしら?」

 「丁重にお断りするよ!」

 

 ふわぁっと欠伸をして、ポリポリと顔をかいたりしながらミカは歩きだした。

 

 「じゃあシンちゃん、またね。」

 「うん、エレキングさんも、また。」

 「ええ、またね。」

 

 二つの背中を見送り、今度はゴモラのバリエーションについて調べてみようかと思い立つ。

 

 ジョンスン島で平和に暮らしていたのを、万博に展示するために連れ去られ、空輸中に落下したショックで本能が目覚めた古代怪獣。

 

 見た目はゴモラそのものだが、腕からロケット弾や拘束光輪、ツノから破壊光線を発するゴモラⅡ。実は初代のようなゴモラザウルスではなく、微生物の変異体だという。

 

 アンデス山脈で見つかったミイラが、大雨を浴びて蘇ったパワードゴモラ。その生態はのっそりとした水牛のようで、蘇生してほどなくして自然死してしまった。

 

 元はとある国に生息する珍獣だったものが、テロリストの実験によって凶暴な怪獣にされたしまった、というのもいる。なんか聞いたことがあるというか、他人事のように思えない話だ。

 

 また、タイに現れ、超能力を用いて天変地異を引き起こしたり、怪獣軍団を率いたりした・・・という未確認情報があるという。あまり触れないほうが吉だろうか。

 

 総じて言えるのは大抵のケースで、ゴモラは人間の身勝手によって目覚めさせられたり、暴れたりしているということ。ゴモラだけじゃない、一部の怪獣も人間の身勝手な考えによって不当な扱いを受けたことがあるという。

 

 「これは・・・トップシークレット・・・。」

 

 ゴモラに関して、2つ3つ不明なデータが存在する。それらを纏めてもってきたが、中身はわからない。

 

 「バディライドしたとき、ゴモラの体が燃え上がるのと何か関係があるのかな?」

 

 間近で感じたが、あれは幻覚などではない。まるで太陽のような燃える熱気を感じた。

 

 萌えるじゃなくて燃える。その熱に当てられて、僕自身も何でも出来て島ような錯覚に陥るぐらいだ。

 

 「こんにちは、久しぶりだねシンジ君。」

 「あ、ベムラーさん、お久しぶりです。」

 

 次はベムラーさんが来た。最後に会ったのは、GIRLSへの所属が正式に決定したあの時だったろうか。

 

 「突然の訃報かと思えば、情報が二転三転して驚いたよ。」

 「その当事者の僕が一番驚いてますよ。」

 

 お土産に持ってきてくれたすもも漬けを食べながら話をする。食事制限なんかはされていないし、食べても問題ないだろう、多分。

 

 「この情報も無駄になってしまうかと思ったが、その心配もなさそうだな。」

 「なにか進展があったんですか?」

 「ああ、まっさきに君に伝えるべきだと思って。独占スクープだ。」

 

 そう言って、鞄の中から取り出したるは大きな封筒。中には写真と、数枚の書類が入っている。

 

 「この写真は・・・?」

 「それは小笠原諸島にある大戸島という島で撮られたものだ。その写真の、右上の部分をよく見てくれ。」

 「右上?人が写ってるだけですが・・・この人がもしかして?」

 「そう、君の父だ。撮られたのは2か月ほど前のことだが、事前情報と99%一致している。」

 

 何気ない観光写真に見えるそれに、とても重大な情報が載っていた。

 

 「隣にいる・・・女性は?怪獣娘さんなのかな?」

 「以前言っていた、フリドニアで暴れた怪獣娘だと思われる。今は一緒に行動しているんだろう。」

 「いい年した息子がいる親が、妙齢の女性と一緒にいるって、なんか浮気調査みたいですね。」

 「言うな、私だって気づいたけど言いたか無かったのに。」

 

 女性の方の顔や表情はよくわからない。白いワンピースに、白い帽子という、絵に描いたような『少女』というべきその存在は、神秘のヴェールに包まれていた。様々な理由が重なったとはいえ、一国を滅ぼした、恐るべき『怪獣』だというのに、シンジもその美しさに魅せられようとしていた。

 

 「とにかく、父は生きている。そういうことですね。この二か月の間に不慮の事故にでもあってなければ。」

 「そういうことだ。そしてかなり日本の・・・いや、君の近くにいる。」

 「僕に会いに来たってわけではなさそうですけど。」

 

 写真は一旦置いておいて、次なる興味は数枚の書類の方に移った。なにかの研究レポートのようだ。

 

 「『怪獣と地球外鉱物の相乗関係』なにこれ?」

 「ソウジ氏が研究していたが、学会へは未発表だった論文だ。半分焼き捨てられていたものをある程度復元できたんだ。」

 「そんな技術があるのか。」

 「色々あるんだよ。」

 

 簡単にまとめるとこうだ。怪獣は、ある種の周波の波動を感知して現れることがあったという。その根幹を司る物質が地球外には存在し、それらが隕石となって地球へ降り注いでいるという可能性があるということ。

 

 「そして、ソウジ氏は実際にそれを発見し、精製することによってある機械のパーツとした。」

 「それが、バディライザー。」

 「そういうことだ。怪獣を操る研究というのは、あくまで全体からみた一部分だったのだろう。本来の目的は、別にありうる。」

 「それは?」 

 「現在調査中。大戸島で見かけられたことと、何か関係があるのかもしれないが。」

 

 情報をすべて封筒になおしてベムラーさんに返すと、窓の外を見た。あの空の向こうにいるかもしれない人を思って。

 

 「・・・父は何を考えているんでしょうか。」

 「それは調査中だ。」

 「そうじゃなくて・・・以前の話の続き。どんな人なんでしょうか。」

 「ああ・・・。」

 

 少し、ベムラーさんの表情が変わったようだった。

 

 「僕の事を、放置しているわけでもないし、構ってくれてるわけでもない。よくある、家族よりも仕事の方が大事ってやつなのか。」

 「・・・。」

 「お母さんも、あんまり父のことを話してくれなかったんですけど、父から手紙が来た時、すごく喜んでました。だから、お母さんは父のこと、愛してるんだと思います。」

 

 話題を切り出したはいいが、何を言えばいいのかわからない。頭の中でぐるぐるしていた考えをぶちまけていく。

 

 「父にとって、父の研究にとって、これ(・・)が大事なものなんだってわかります。それを託されたって意味も、なんとなく理解してます。けど・・・その、父はこれを『うまく使え』とは言っても『どう使え』とは聞いてないんです。その、実際にそう言われたわけではないけど、そう言われたような気がするってだけなんですが・・・。」

 「そうか・・・。」

 「本当は、本当はね・・・仕事のことでも、家族のことでも、どっちでもよかったんです。ただ、父が僕のことを見てくれたってだけで。」

 

 

 

 

 

 

 

 「でも、じゃあ、父にとって僕は、都合のいい道具なのかなって?」

 

 

 

 

 「・・・そんなことは、ないさ。」

 

 少し間があって、ベムラーさんは応えた。はっきりと、強い言葉で。

 

 「君の事を本当に都合のいい道具だと思っているのなら、それこそ、『都合のいい道具』を使うさ。人間なんて腐るほどいるんだから。君は腐った人間なんかじゃない。」

 

 「何故なら、君の周りには『光』があふれている。目を開けて周りを見渡してみれば、いつでも見えるだろう。」

 

 思い出せるもの、多くの友達、仲間たち。

 

 「光あるところ影もあるが、君には影ができる隙間も無いほど、周りから照らされている。私も、私自信をその一つだと思っている。虚勢でもハッタリでもなんでもなく、君は一人じゃない。」

 

 そういうベムラーさんの目はとても暖かった。

 

 「それだけ。元気がでたかな?」

 「はい、ありがとうございます。」

 「ならよかった。また会おう、ではな。」

 

 小さく手を振ってベムラーさんは行ってっしまった。

 

 少し、目頭が熱くなってきてしまった。布団にくるまって目を閉じる。

 

 悩んで複雑な事を言ってしまったが、こんなにも簡単に言いくるめられてしまった。

 

 (ああ、こんなことに悩んでたんだな、僕。ちょっと疲れてるんだ。)

 

 眠りの世界へと落ちていく。先ほどまでミカが寝ていたベッドだ、心地よい夢が見れそうだ。安心につつまれながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「焦げ臭っ、ひょっとして電気ショックのせい?」

 

 この後滅茶苦茶洗濯した。




 ネタ解説

 ゴメス、デマーガ、テレスドン:オーブ最終1話の冒頭で、マガタノオロチの毒気にやられた3体。

 哀しみの空:哀しみに覆われてるこの空を壊すよ

 優しく微笑んでいる:ウルトラマンの口元は、アルカイックスマイルと呼ばれる意匠が施されている。見るものによって、笑っているようにも怒っているようにも見えるそれは、デザイナーの成田亨氏の『本当に強い人はいつも笑っている』という想いが込められている。

 看護婦さんに怯えられる:帰ってきたウルトラマン1話のオマージュ。のちにメビウスの『無敵のママ』でもそのパロディがある。

 暗い部屋のミカ:元は遊戯王ZEXALの、アストラルを喪った遊馬のシーン。鋼どころか菩薩のようなメンタルの遊馬が、珍しく折れかけた場面でもある。ちなみに、遊戯王ZEXALにはエレキングの中の人が出てるし、前作にあたる5D'sにはレッドキングの中の人もいる。さすがチームサティスファクションのリーダーだ!

 尻尾を触る:よくモン娘ものとかで、尻尾触られると感じるシーンがあるけど、それって尻尾を武器にする怪獣的にはどうなんだろう?性感帯を叩きつけるってそれ乳ビンタみたいなもんじゃないの?ぜひ受けたい。

 レッドキングさん:2期でよりキャラが掘り下げられて、さらに可愛さに磨きがかかったとも言える。

 目と目が合う:目と目が合う瞬間好きだと気づいた、あなたは今どんな気持ちでいるの

 チョーさんの信条:シンジが家を出る時は、必ず行ってきますと、チョーさんのいってらっしゃいませがセットになる。また、落ち込んだり急いだりしている時でも、チョーさんは必ず温かいスープを勧めてくる。温かいスープの下りは、THE ビッグオーの完璧執事ことノーマンの台詞から。ノーマンは他の完璧執事と少し違って、主人のロジャーではなく、あくまでビッグオーのパイロットを補佐する存在である。チョーさんもそういうところ似てる。

 空が青い:空が目に沁みやがる・・・

 リゼ料理:モン娘は~れむの怪獣娘コラボ一回目の時、ゼットンさんほかミクラス、ピグモンはリゼの料理を食べて正気を失った。ひたすら風船を押し付けてくるピグモンさんが怖いのなんの。なお、ウインダムは平常運転だった。

 ウララー:ジェロニモ違い

 エレキングのバリエーション:マックスに登場する過去作の怪獣は、設定だけでなく皆少しだけデザインが違っていたりする。エレキングは比較的その中でもデザイン・・・というか質感が違う。

 ゴモラの体が燃え上がる:ただ一瞬燃え上がるのはブレイブバーストにあたる。

 大戸島:ご存知、初代ゴジラの出現した場所。

 君の周りには光が溢れている:元はパワード最終回の台詞「私は光だ」から。いいセリフだ。


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ヴァージョンアップ!

 次はどんなウルトラマンが登場するんだろう。ワンチャンアイゼンボーグ放送する可能性もあるけど。


 パチン、パチンと駒を進める音が病室に響く。二つ音がしてからやや間があって、一つ目の音が鳴るとすぐに二つ目の音が鳴り、また少し間が開く。

 

 「・・・これで、どうだ?」

 「はい。」

 「んぐっ・・・。」

 「どうする?」

 「いいや、待ったはしない待ったはしない。・・・どうすっかな。」

 

 うーんと唸るシンジに対して、余裕のあるアギラ。相変わらずの寝ぼけ眼が、次なる出方を窺う。

 

 「・・・こうするしかないかな。」

 「王手。」

 「ぐわぁーん、だな。参りました。」

 「と金をちょっと狙いすぎたね。」

 「バレた?」

 「バレバレだよ。」

 「男を手玉に取るなんて悪い女ね。」

 「何それ、意味わかんない。」

 

 負けたシンジは折り畳み式の将棋盤を仕舞い、アギラは席を立って部屋の中を見まわす。

 

 「それにしても、この部屋こんなに物が置いてあったっけ?」

 「色んな人が来てくれたから、どんどん増えてったんだ。」

 「そんなにいっぱい来て、迷惑じゃなかった?」

 「全然、むしろ注目されて嬉しかったぐらいだよ。」

 

 それも今日で終わりだが。およそ一週間、毎日検査が行われたが、これといって問題は見つからず、また起こらなかったため、今日で入院生活も終わりを告げることとなった。

 

 「でもこんなに持って来られたら、返しに行くのも大変だね。」

 「ほとんどは『くれた』ってことになってるけど。この漫画とか。」

 「『おまピト』・・・ウィンちゃんから?」

 「そう、全刊持ってこられてもなぁって。」

 

 『少年ツブラヤ』の本誌は読んでいないが、どちらかというとおまピトと同じくツブラヤ連載の『マッスルマン』の方が好きだ。ミクラスも好きだったようで、その話でたまに盛り上がる。

 

 「読んでみたら結構面白かったけどね。」

 「そうなんだ。こっちのぬいぐるみは?」

 「それはレッドキングさんとザンドリアスから。僕が特訓に来なくなった分、よけいにしごかれてるってザンドリアスが泣きついてきたんだよ。」

 「はやく戻ってあげられるといいね。」

 「うん、僕もそう思う。」

 

 他にも色々来てくれた。GIRLSで出会った怪獣娘さんたちや、お偉いさんがたも。今もこうしてアギさんが来てくれた。

 

 「荷物はこれでおっけーっと。」

 「忘れ物ない?」

 「大丈夫、あっても取りに来れる場所だしへーきへーき。」

 

 病院を後にし、帰路に就くこととする。

 

 「・・・。」

 「どしたの、アギさん?忘れ物した?」

 「いや・・・そんなんじゃないんだけど・・・。」

 

 アギラの見つめる先にあったのは、赤くそびえ立つ塔。東京タワーである。

 

 「タワーがどうかしたの?」

 「なんか・・・嫌な予感がしてて。」

 「嫌な予感?」

 「前もこんなことがあって、その後シャドウが現れたから・・・。」

 「虫の知らせか・・・。」

 

 東京タワー、色んなことを思い出させられるのは言わずもがな。

 

 「あそこで、アギさんに助けられたんだよね、僕は。」

 「ん?」

 「いやさ、色んなことあったけど、あそこでの体験が一番キツかったかもって。」

 「展望台から落ちたもんね、シンジさん。」

 「でもアギさんが助けてくれたし。あの時の自分の情けなさといったら・・・。」

 「そんなことないよ、あの時誰よりも早く動いたのはシンジさんだったじゃない。」

 「でも、それ以降がダメダメだったし。」

 「ボクだって、他に何かが出来たわけじゃなかったよ。せいぜいシンジさんたちが落ちた時の衝撃を少しだけやわらげられたぐらいだろうし・・・。」

 「? 無事に着地できたのって、アギさんのおかげじゃないの?」

 「ボクにはそんなことできないよ。」

 「じゃあ、あの時感じた暖かい感覚はいったい?」

 「それは・・・ボクも感じたかな。」

 

 ちょっと、衝撃的だ。今まで勘違いしてたの?いや、もっと不思議なことに出会っていたのか?

 

 「だから、シンジさんも特別な人間なんじゃないかなって、思ってたんだけど。」

 「そんなまさか、ただの人間だよ僕は。」

 「前はそうだったかもしれなけど、少なくとも今は違うよ。」

 「・・・そうだね、僕の周りにはいろんなものが溢れてる。」

 

 腰からバディライザーを取り外して見つめる。

 

 「まずは、これを直すところから始めないとね。明日からまた頑張るよ。」

 「うん、頑張ってねシンジさん。」

 

 じゃあね、と別れた2人。

 

 「嫌な・・・天気だな。」

 

 「何かが起こりそう、とてつもない何かが・・・。」

 

 だがその2人は、違う場所から同じところを見ていた。東京タワーの上に集まる、マガマガしい黒雲を・・・。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 

 

 

 

 

 

 

 この宇・・・球に危機が・・・いる

 

 

 

 

 

 

 かつて我・・・戦った・・・の・・・が・・・

 

 

 

 

 

 君に先行し・・・査・・・を・・・

 

 

 

 

 

 わかりまし・・・輩方の・・・

 

 

 

 

 

 

 「今度は、何の夢だ?いや、夢だったのか?いいや、それよりも・・・。」

 

 深夜2時を周る頃だったろうか。自室で目を覚ましたシンジは、すぐさま研究室へと向かった。バディライザーをその手に持って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「コレが・・・原因です。」

 「何かの、部品ですか?」

 

 

 翌朝、シンジがピグモンに提示したのは、指先よりも小さいチップだった。

 

 

 「これは、バディライザーの中核ともいえる、『シンセナイザー』という部品だそうです。」

 

 怪獣の魂とシンクロし、それを操ったり強化したりする、バディライザーの根源。その正体が、こんなちっぽけなチップだった。

 

 「ここから逆に流れてくる怪獣娘の激しいエネルギーの奔流が、僕の体を痛めつけていた。簡単に言うとこういうことだったんです。」

 「どうして、そんなことがわかったんですか?」

 「夢で見た・・・って言ったら、笑いますか?」

 

 自分が言っていることに、自分でバカバカしくなっている。正式な部隊であれば謹慎を命じられているような『ありえない』理由だった。だがピグモンさんは真剣な面持ちで聞いてくれている。

 

 「最近・・・よくない夢を見てるんです。怪獣娘さんたちがみんな暴走したり、その暴走した怪獣娘さんを『裁く』光が現れたり。それで昨日見た夢が・・・。」

 

 机の上に置かれたバディライザーをつつく。

 

 「・・・ただの夢とも思えない、何かげっそり(・・・・)するような恐怖心でした。」

 「だから、戦うのをやめたいと?・・・ピグモンはそれでもいいと思います。」

 

 「以前もこんなことがあって、その時もシンシンは戻ってきてくれました。」

 

 「でも、ちょっと違うのは、前は周りの怪獣娘への危険を考えてのことでした。」

 

 「今回は、シンシン自身の命に関わる問題です。だから、ピグモンには何も言えませんでした。」

 

 「また辛い役割だったな、ピグモン。それだけ、信頼されてたってことなんだろうけどよ。」

 「けれど、もしシンシンが戻ってきた時、ピグモンはこれを返せるかわからないです・・・。」

 

 ピグモンの手にはシンセナイザーが握られていた。

 

 「それに、シンシンが言っていた夢のこと。ピグモンも思い過ごしだと思えないんです。」

 「怪獣娘が皆暴走する世界と、光か・・・。」

 「このことは、誰にも言わないで欲しいのです・・・とくにゴモゴモには。」

 「もう聞いちゃってるんだなぁ、これが。」

 「盗み聞きなんて、いつからそんな悪い子になったんだゴモラ?」

 「悪い子は私だけじゃないし?」

 

 ぞろぞろと壁の向こうから人が出てくる。

 

 「アギアギたちに、エレエレも。」

 「別に立ち聞きしていたわけではないわ。たまたま聞こえてしまっただけ。」

 「自分が止めたくせに・・・。」

 「ミクちゃん噛みつかないの、ボクたちが出てったら余計シンジさん混乱させちゃっただろうから。」

 「ゴモゴモは、シンシンのことで平気なんですか?」

 「んー、私はむしろホッとしてるかなー。シンちゃんが戦いから離れてくれるのなら。」 

 「本当ですかぁ?」

 「ホント。」

 (本当にそうかな?)

 

 ゴモたんがもしも喫煙者だったらタバコを逆さに咥えていそうなぐらい、アギラには動揺しているように見えた。いつも素直なゴモたんが珍しく己を隠している。半分は本心だから平気でいられるのかもしれないが。

 

 「それにしても、シンジさんの見た悪い夢って・・・。」

 「アギラの言う通り、東京タワー周辺に異常がないかチェックしているところだ。けど、そんなことしなくてもいいぐらいビンビンに感じてるぜ・・・。」

 

 窓の外を見上げてみれば、昨日よりも暗い雲が巻き起こっている。

 

 「事態が急変するのも時間の問題になりそうですね・・・。」

 「これはもう用意しておいた方がよさそうだね。」

 「避難準備も進めておいた方がよさそうね。」

 

 思い過ごしであったならそれでよし、常に最悪の事態を想定して動く。

 

 得てして現実は最悪の更なる上を行くのだから。

 

 (シンちゃん・・・これでいいんだよね?)

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 その数時間後、観測所は東京タワー上空に異常なエネルギーの高まりを感知し、GIRLSもそれを受けて怪獣娘を派遣した。事前の用意もあり、避難は滞りなくすすめられた。

 

 そんな喧騒から離れた河原に、シンジはひとり佇んでいた。天を指すようなビル群に挟まれたこの場所からはその騒ぎは見えない。

 

 『観測史上最大規模のシャドウ反応です!』

 『都外に散っている怪獣娘にも応援要請を!』

 『現在避難状況は全体の70%。完全に避難しきるまで1時間ほどかかると思われます!』

 

 「・・・。」

 

 ビデオシーバーをオープンチャンネルに合わせて聞いていたが、その内にスイッチを切った。

 

 「・・・どうしようか。」

 

 切ったからと言って足が動き出すわけでもない。膝を抱えたまま川の水面を見つめる。ゆく川の流れは絶えずして。こうしている間にも、タイムリミットは刻一刻と迫っている。

 

 今の自分に何ができるのか、そんなことはわかり切っている。けど、そこまで行ける勇気がない。それ以前に、果たしてその答えが最適解かもわからない。実際僕が行かなくてもなんとかなると思う。

 

 ではこの心に重くのしかかる不安感は何だ?あの夢の意味は?

 

 「怪獣娘の、暴走・・・。」

 

 暴走という言葉が使われているが、はたしてそれは『暴走』なんだろうか?怪獣は元々強く、荒ぶる生き物だった。そりゃあ、モノによっては大人しいやつや、友好的なやつもいる。けれど、『初めてあらわれたゴモラ』が古代の眠りから覚醒し、暴れまわったように、『暴れている方が本来の姿』とも考えられるのだ。

 

 あくまで『暴走』という表現は、人間の側から見た言葉、いわば人間のエゴなのかもしれない。

 

 こうして考え事をしている間は、目の前の問題から目を背けていられる。

 

 じゃあそろそろ現実に帰ってこよう。行くのか、行かないのか。行けないなんてことはない。自分には足が生えてるから。

 

 「けどこの力を使ったら、ヤバいことになる。」

 

 さっき考えた暴走の話、それが『本来の力を引き出す』ということならバディライザーとは合点がいく。解き放つことも、従えることも出来るこの力は、闇であり、光である。一つ間違えば、あの悪夢のような光景をも作り出せる諸刃の剣。触れてはいけないパンドラの箱。プロメテウスの火。禁断の力。

 

 「これを使うことは、本当に正しいんだろうか?」

 

 自分が危険に置かれるという意識はさらさら無い。ここで死ぬつもりもない。ただ怖いだけ。

 

 自らの手で世界の破滅のトリッガーを引くことでも、戦いの中で自らの命を散らすことでもない。あの、絶対的な力を持った『光』が怖い。

 

 「やっぱ・・・ダメ・・・だよな・・・。」

 

 ビデオシーバーに当てていた手をどける。ここで待って居よう。呼んでいないくても、明日はやってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「けど、自分の明日は自分でしか掴めないぜ?」

 

 「えっ?」

 

 いつの間にか、背後に人が立っていた。黒いコートに、帽子を被り、首から金属のなにかをぶら下げている、若い男性だ。しかしその立ち振る舞いには、長年旅をし続けてきたような渋さも感じる。

 

 「限界を超えた時、初めて見えてくるものがある。掴みとれる、力が。・・・昔ある人から聞いた言葉だ。」

 「限界を超えた時・・・。」

 「あんたにも、越えたい壁があるだろ?叶えたい夢も、掴みとりたい未来も。」

 

 そういって、男性は・・・その風来坊はビンを渡してきた。ごく普通のラムネだ。

 

 「ありますよ、途方もなく遠い夢が、たっくさん。」

 「たとえば、どんなだ。」

 「・・・世界中の怪獣娘さんと友達になる事。」

 「素敵な夢じゃねえか。」

 

 カポン、っとラムネを開けて飲む。ずっと昔、ミカとも一緒に飲んだことがあったっけ。その時と変わらない味だ。

 

 「けど・・・僕に与えられたのは、『闇』なんです。人が手にしてはいけない、振るっちゃいけないような、禁断の力なんです。そんなの、僕みたいな軟弱物が使っていい権利も無いんです。」

 「力には『権利』なんてないぜ、あるのは持つべき『責任』だ。一度生まれた力なら、いくら地の底奥深くに埋めようと、いずれ誰かが掘り返す。そいつが『責任』を負えるとも限らない。」

 「だとしても・・・!」

 

 「それにな!」

 

 風来坊は、一層強い語気で言い放った。

 

 「たとえ闇だって、力尽く消せばいいってわけじゃない。逆に抱きしめて、自分自身が光を放てばいい。そうすりゃ、闇は生まれなくなる。」

 

 シンジは、いつの間にか風来坊の目を見ていた。暗黒の宇宙に浮かぶ幾千もの星の輝き、それが、見えた。

 

 「闇を・・・抱きしめる。」

 「そうだ、人間には皆、そんな力があるんだ。『愛』っていう、この宇宙で唯一永遠なものだ。」

 「『愛』・・・。それって、どこにあるんですか?」

 

 嘘、もう知ってることだ。

 

 「さあな、自分で見つけろ。あばよ、少年。」

 

 風来坊は、振り返らずに去っていく。

 

 「あの!あなたの名前は!」

 

 「誰でもない、ただの風来坊さ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「いつかまた会うだろう。地球は、丸いんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 ~♪

 

 

 

 

 

 

 

 ハーモニカの音色が聞こえてきた。少し切ない、けれど、どこか懐かしいような不思議なメロディ・・・。

 

 「ここにいたか、シンジ君。」

 「ベムラーさん。」

 

 土手の下にバイクが急停車し、ベムラーさんが声をかけてきたので振り返った。その間に風来坊の背中を見失ってしまった。

 

 「・・・。」

 「どうかした?」

 「いえ・・・ベムラーさんこそ、一体何が?」

 「シャドウが現れた。それも、今までにない大きさのだ。」

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「どわぁ!!」

 「ミクちゃん!」「ミクさん!」

 

 東京タワー、高度経済成長期の最中誕生し、東京のシンボルとして今日まで親しまれてきた。時に怪獣に倒されたり、クリスマスツリーになったり。それが今は、未曾有の戦場となっている。

 

 「くっ!このままじゃ埒があかねえぞ!」

 「こうも攻撃が激しくては、近づくこともままならない・・・。」

 

 無数の火球の弾幕に、陸も空も埋め尽くされている。空を飛ぶものはことごとく撃ち落され、地を行くものは足を取られる。

 

 「こいつって、前に遊園地で暴れたやつに似てる。」

 「前のとは、大きさそのものがケタ違いだけど、一体どこから湧いて出てきたんだろ?」

 

 東京タワーの大展望台に、デカデカとそいつは巣食っている。ヘドロのような気味の悪い物質が糸を引き、巨大な玉のような形をしている。その表面にいくつか発光体をもち、そこから火の玉が飛んでくる。

 

 「やっぱりダメです!レーザーショットが弾かれます!」

 「近距離もダメ、遠距離もダメってなるとどうすりゃいいんだよ!」

 「いっそ地下から進むとか?」

 

 「超振動波の本来の使い方ー!」

 

 誰かが口にした案を即断即決して、地下特攻隊が組まれることとなった。

 

 「いやー、地下からなら安全に進めるね!」

 「ここには攻撃が来てませんね。」

 「地下のトンネルを掘ったら、直上して攻撃に移るよ。」

 

 ようするにいつものゴモラ+いつもの3人(かぷせるがーるず)だ。

 

 「あともうちょっとかな?アギちゃんたち、準備しといてね!」

 「おっけー!」

 「ん・・・?」

 「どうかしましたか、アギさん?」

 「今、なんか変な音が・・・。」

 

 超振動波が掘削する音とは異なる、別の音。

 

 「上?」

 『オマエら!すぐそっから離れろ!』

 「へ?わぁ!」

 

 トンネルの床を突き破って、触手が伸びてきた。

 

 「これもシャドウ?!」

 「ゴモたん!」

 「そっち行けない!アギちゃんたちは逃げて!」

 「でも!」

 「いいから早く!」

 

 この密閉空間で瞬く間に分断され、ゴモラは孤立する。

 

 「こりゃちょっとヤバいかも。」

 

 前へも後ろへも行けない。となれば、行く道は一つしかない。

 

 「上っきゃないよね・・・!」

 

 ズドドドっと真上へ掘り進んで追撃を回避する。

 

 「危機回避!っとはならないか・・・。」

 

 外に出たということは、また弾幕に晒されるということ。しかも外に出たことでようやくわかったが、シャドウの姿は大きく変化していた。雷龍のような長い首が生え、全身が鉱物のように硬質化している。背部からは触手が生え、発光器官も大きくなっている。

 

 「進化・・・いや、分裂しようとしてる?」

 「下がれー!ゴモラー!狙われるぞ!」

 

 言われなくてもスタコラサッサだぜー!という応える暇もなく火球と触手の波状攻撃が襲ってきて、ゴモラは走り回るだけだった。

 

 「とっとぉ!お?」

 「ゴモラ、平気?」

 「ゼットンちゃん・・・ナイスアシスト!」

 

 攻撃に飲まれる直前。ゼットンさんがテレポートで割って入って、そのまま無事に後退できた。

 

 「ナイスだぜゼットン。」

 「ゼットンも来てくれたんですねぇ!」

 「けれど、これは厳しい。」

 「はぁ・・・はぁ・・・時間を置くごとに、だんだん進化していってる?」

 「はやくなんとかしねぇと・・・いっそ特攻するか?」

 「それは危ないですよ!」

 

 助けに入れば、そいつも危なくなる。リスクを冒してでも一心に突撃するしか、突破する方法はないと思われた。

 

 「囮にはオレが行く。隙を見てゼットン、お前が攻撃しろ。」

 「・・・。」

 「なんだよ、なんか文句あるか?」

 「危険が大きすぎる。リスクにリターンが見合わないわ。」

 「エレ、お前まで弱気なったのか?」

 「現実的に考えてそうなるってことよ。ゴリ押しと力押しは違うわ。」

 「なにぃ?」

 

 「ああ、なんか険悪なムードに・・・。」

 「こんなことしてる場合じゃないのに・・・。」

 「・・・あっ、あれ。」

 「ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 「こんな時こそ冷静であってほしいわ。」

 「オレは冷静だ!」

 「はいストーップ!喧嘩はそこまでー!」

 

 ベムラーさんのバイクの後部席からシンジが呼びかける。

 

 「濱堀シンジ、ただいま到着しました!」

 「私立探偵から運送会社に鞍替えした方がいいかしら?」

 

 「シンジさん、来たの?」

 「来たよ!」

 「なんで来たのシンちゃん!」

 「僕がやりたいから!ってことでピグモンさん、シンセナイザー返して。」

 「はい☆どーぞ、ですぅ!」

 「ピグモンちゃんも!」

 

 受け取ったチップをテキパキとバディライザーに組みなおす。画面が割れたままだが、それは今はいい。再起動させて状態をチェックする。

 

 「システムは問題ないな・・・いけるいける!」

 「シンちゃん、自分が危ないってこと、わかってるんでしょ?」

 「わかってるよ、自分の身は自分で守れるから、ゴモラは自分の戦いに集中して。」

 「そうじゃないよ!心配なんだよボクは!」

 「じゃあ、ミカは僕と立場が逆だったら、黙って見てられるの?」

 「それは・・・。」

 「僕も同じだよ。なんでこの力を手にしたのか、どうして僕なのか。あれからも何回か悩んだ。けど、その度に出す答えは同じだった。」

 

 

 

 

 

 

 

 「やっぱり夢を諦めたくない。怪獣娘全員と友達になるって夢。」

 

 一周まわって元の場所に戻ってきたけど、それでいい。これが、本当の僕なんだ。何度迷っても、時には立ち止まっても、必ず帰ってくる。多分螺旋階段をぐるぐる回ってる。

 

 

 

 

 「だから、みんなの力を貸してほしい。次に進むために、明日をさがすために。」

 

 

 しばし沈黙があって、意外なところから返答は来た。

 

 『いいよ!わたしの力貸すよ!』

 『私のも使って!』

 『この力、ゆめゆめ粗末にしてくれるなよ?』

 

 「えっ?誰?」

 「さっきまで、ここ一帯にいる怪獣娘全員と通信が繋がってたんですよぉ。指示のために。」

 「みんなに聞こえてたみたいだな、さっきのセリフ。」

 「あっ・・・なんか恥ずかしい・・・。」

 「いいじゃん、それがシンジさんの気持ちなんでしょ?」

 「私たちだって、同じですよ!」

 「みんなで掴みとろう、未来を!」

 「みんな・・・。」

 

 今この場にいるのは、アギラ、ミクラス、ウインダム、レッドキング、エレキング、ピグモン、ゼットン、ベムラー、そしてゴモラ。それぞれの顔を見まわして、皆頷いてくれる。通信の向こう側からも、たくさんの人から応援が来ている。

 

 

 

 「ありがとう・・・!」

 

 

 その時、不思議なことが起こった。

 

 「! これは!」

 

 腰のカードホルダーがブルブルと震えている。恐る恐る触ってみると、

 

 「どわっ!!」

 「うわっ!なんかいっぱい出てきた?!」

 

 何十枚というカードが飛び出てきた。それぞれに違う怪獣、超獣、宇宙人の絵が描かれ、それらが宙に浮いている。

 

 「レッドキング・・・オレのか!」

 「私のもある・・・。」

 「まさか、今ので全員のカードが出来たの?」

 「よーし、これなら・・・。」

 「シンジさん、まさかこれ全部を?!」

 「無茶だけど、無理じゃない!多分。」

 「止めても無駄そうだね。」

 

 こいつは僥倖だ!絶対に勝つ!取り出したバディライザーに、スッとゴモラが手を重ねてくる。

 

 「シンちゃん・・・。」

 「ミカ、止めてくれるなよ。もう覚悟してんだから。」

 「そうじゃなくて、これ終わったら、今度こそ焼き肉食べに行こう!約束!」

 「・・・ああ!」

 

 

 

 

 

 「いくぜ、みんな!」

 

 前に掲げたバディライザーに、全てのカードが集まっていく。

 

 

 「「「「「「「「「「「「「「バディライド!」」」」」」」」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 闇を抱きしめる。今までこの力を、半分忌むべきものだとも思っていた。それは、父への思いと重なっていたのかもしれない。

 

 さんざんほっぽり出して、今だって連絡一つ寄越さない、横柄な父への怒りだったのかもしれない。

 

 けど今なら、父の気持ちに少しだけ触れられた気がする。

 

 解き放つのでも、従えるのでもなく、怪獣娘とひとつになるための力。

 

 それがバディライド、そしてその時は今なんだ!

 

 

 

 

 「怪獣娘の力、お借りします!」

 

 口から自然にこんな言葉が出た。不思議としっくり来る言葉だった。

 

 「ぐっ・・・うっ・・・なんつーエネルギーだ・・・!」

 

 今までのとは非じゃない衝撃が腕を振るわせ、体にまで沁み込んできた。

 

 「これは・・・怪獣たちの記憶?いっぱい流れ込んでくる・・・。」

 

 様々な風景、感触、感覚、すべてが脳内に流れ込んでくる。時には山で、時には海で、時には街で。火を吹く、光線を吐く、怪力を振るう。皆それぞれ違う能力を持った怪獣としての記憶。あまりの量に全てを詳細に確認することは出来なかったが、それらほぼすべてに、共通することがある。

 

 「光の・・・巨人。」

 

 その多くが、かつて光の巨人と対峙していたという記憶。その時の記憶が、特に鮮明に映し出された。

 

 「夢で見たあの赤い光の玉と、同じ・・・。」

 

 そして確信した。あの夢の意味と、今自分が何をするべきなのか。

 

 

 

 「・・・みんな、行ける?」

 

 「おう!パワーが溢れてくるぜ!」

 「感情も、意識も高まっているのを感じるわ・・・!」

 「怪獣娘全員と、もっとも~~~~っと仲良く気分です!」

 

 『うぉおおおおおおお!バーニンンンング!』

 『なんか・・・気持ちいいかも・・・!』

 『昂る・・・昂るぞ!!』

 

 パワー全開!皆120%でいける!

 

 「パワーアップしたのはいいけどよ、なんか作戦あんのか?」

 「作戦、というか、あいつのパワーの根源には心当たりがあります。」

 「マジで!?」

 「そこを断つことが出来れば、勝機も上がるかと。」

 「確証はあるの?」

 「僕の予想が当たっているなら、間違いないかと。」

 「・・・。」

 「あーわかった!これなら上手くいきます!命かけてもいいから!」

 「また小学生みたいな文句を・・・。」

 「冗談よ、試しただけ。」

 

 「じゃあ全員聞いて、あいつは・・・。」

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 『ギギィイイイイイイイイイイイイイイイ!!』

 

 作戦会議している間に、首長竜型シャドウビーストは、球体から分離して地上に降り立った。額と腹の部分に大きなコアのようなものも出来ている。だがこいつの対処に関しては、普段通りのシャドウビースト戦を思い浮かべいいので割愛する。

 

 ここで相手にするべきは球体の方。大切な要素は三つある。第一、まずは火球攻撃について。

 

 「オラオラァ!どこ狙ってやがるノーコンがぁ!」

 「タネが割れれば目ぇ瞑ってても避けられるね!」

 

 火球にも三種類の飛び方がある。一つは、標的に対して真っ直ぐ飛んでくるストレート。二つ目は、標的の動く先に飛んでくる偏差型。三つ目は、全く関係ないところに飛んでいく目くらまし。

 

 要はこの内の二つに注意していれば避けるのは問題ない。常に動き続けて、時折降りかかる火の粉を払えばいいのだから。

 

 「そーれ!そーれ!風船どうぞー!」

 「しかもやたらめったら動くものに反応してるから、ただの風船でもデコイの役割になってくれてる。」

 「ピグモンも、みんなの役に立てて嬉しいですぅ!」

 

 「こうやってオレたちが囮になってる間に・・・。」

 「アギちゃんたちが!」

 

 第二、触手について。

 

 「ダイノダッシュ!」

 「バッファローフレイム!」

 「レーザーショット!」

 

 戦いの最中、突然触手が生えてきていた。それと同時に、地下から近づこうとしていたゴモラ達の接近にも気づいた。迎撃するために触手を伸ばしたのか?違う、逆なのだ。

 

 「ヤツは、集まった敵の数に対応するために、大量の火球を発射している。それも、かなり正確に狙ってきている。」

 

 「あの発光器官は『口』だ。火球を吐き出す発射口だ。では『目』はどこについているのか?それが『触手』なんだ。」

 

 「つまり、触手で敵を感知して攻撃してきている、ということね。」

 

 「そう。イソギンチャクと同じで、触手が触角の役割にもなっているんだ!」

 

 エレキングさんが尻尾ムチを振るい、触手も火球もまとめて薙ぎ払う。

 

 「エレキングさんは両方やれるのか・・・。」

 「こっちだって負けないぐらい千切ってやるもんねー!」

 「って、こっちに攻撃が来ましたよ!」

 「させるかぁ!」

 

 作戦はこうだ。飛び道具持ちや素早いアタッカーは触手を攻撃し、レッドキングやゴモラなどのパワー系怪獣はタンクとして火球をひきつけて援護。

 

 「目立つのなら得意だよ!」

 「ちょっと、忙しいわね。」

 

 『イケるイケる!私にも出来ちゃう!』

 『カ・イ・カ・ン♡』

 『よき力だ・・・。』

 

 ぶっつけ本番、打ち合わせ無しでも皆お互いをカバーし合いながらうまくやれている。全員同時にバディライドしているおかげで、心が近くなっているのかもしれない。

 

 「おっと、コイツの相手もしてやらねえとな。」

 「調査チームのエレちゃんに負けてらんないっしょ!こっちはまかせて!」

 

 山を蹴散らし、ビルをなぎ倒さんとする巨大なシャドウビースト。火を吐き、首を伸ばして攻撃してくるが、こんな単調な相手に後れを取る大怪獣ファイターではない。

 

 『あーあー、こちらベムラー、もうすぐ目的の場所に着くどーぞー。』

 「こっちもOKです、いつでも始めてくださいどーぞー。」

 『だってさ、行くよゼットン。』

 『わかった。』

 

 そして第三、ヤツのエネルギーはどこからやってきているのか?

 

 ある一点を拠点として動かず、遠距離攻撃で敵を寄せ付けないというスタイルは、以前遊園地で暴れた眼球シャドウと似ている。遊園地のやつの場合は、地下から電気をよせ集めて己の物としていた。

 

 「園内に固まって現れたやつらは、電気のケーブルを奪っていたんだ。」

 

 さらに、観覧車下の地中で、集めた電気を使って電磁力を発生させ、操っていたというのが正体だった。

 

 今回の東京タワーに巣食う巨大な球状シャドウも、同じくどこかからエネルギーを集めていると考えられる。

 

 「けど違うのは、『地下』からじゃなくて『空』から得ているということ。」

 

 そのための東京タワー、日本有数の電波塔と言う舞台だ。

 

 『見えたよ。すごいエネルギーが渦巻いてる。』

 「読み通りです。」

 『すごいね、天才少年。』 

 「それほどでも。」

 

 先行してタワー天辺のアンテナの確認に向かったベムラーさんが目撃したのは、空、いや宇宙から降り注ぐ膨大な宇宙エネルギーだった。そしてアンテナの下部に、シャドウの黒い糸のようなものが絡まっている。

 

 『ここ数日の不穏な天気も、このエネルギーの仕業だったってことね。』

 「果たしてシャドウが呼んだものなのか、それとも自然に降り注いできたものをシャドウが利用しているだけなのか、定かではありませんが・・・ともかく、アンテナの『解体』を。」

 『了解、手早く終わらせようか。』

 

 波動エネルギー、ダークマター、あるいは恐怖の宇宙線か、宇宙には未知なるエネルギーが存在するという。それがこのような形で人類に牙を剥くこととなった。自然は必ずしも、人間の味方とは言えないのだろう。

 

 『修繕費用とかもろもろ、GIRLSの方が持ってね!』

 「だいじょーぶです!上にはピグモンが説得しますから!」

 『なら安心だな。っと、こっちにも気づいたか。』

 

 一旦通信を打ち切り、ベムラーは目の前の事態に集中する。先ほどの間での地上の地獄絵図と比べれば、今自分に向かってきている刃は雀の涙のようなものだ。しかし今は回避に専念しておく。

 

 「こうしてこうして・・・ヒューッ!スリル満点!じゃ・・・あとはよろしく。」

 「問題ない。」

 

 アンテナ周辺が手薄になった瞬間、テレポートで現れる一つの影。当然、ゼットンさん。

 

 「トリリオン・バースト・・・!」

 

 

 

 

 

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 

 

 

 上空に強烈な爆裂音が響いて、誰もが一瞬視線を上にやった。それが出来るだけの暇がみんなにはあった。

 

 「やった・・・!」

 

 そう誰かが口にした。ひょっとしたら誰もが言ったのかもしれない。

 

 「見て!シャドウの様子が!」

 「縮んでいく・・・。」

 

 見る見るうちに球体シャドウは収縮していった。明らかにパワーダウンの状態だ。発光器官から火球は途絶え、触手もへなへなと萎れていった。

 

 「チャンスだ!一気にたたみかけろー!」

 「「「「「「「「「おー!!」」」」」」」」」

 

 レッドキングさんの合図を皮切りに、怪獣娘たちの一斉攻撃が始まった!先ほどまでとは逆の、火炎放射やビームの波状攻撃だ!

 

 「最大出力レーザーショット!!」

 「放電光線!」

 「風船!風船!」

 「ピグモンさん、もう風船はいいから。」

 

 わずかにしがみついている球状シャドウの糸を切り裂き、飛び道具のない怪獣娘も、ビルの上から手あたり次第に物を投げまくって追撃する。

 

 『はいみんな下がって―!』

 

 おまけに空から壊れたアンテナが降ってきて、展望台にくっついていたシャドウ本体もとうとう地に落ちた。発光器官は、命が尽きたように止まった。

 

 「あとはコイツだけだな!」

 「こいつはまだ元気そうだね。」

 

 分離したことでエネルギーも独立したものとなったのか知らないが、バックアップのいなくなったタンク役などただの的だ。

 

 「これでとどめだ!本家本元の、アースクラッシャー!!」

 「超振動波ァ!!」

 

 大地が裂けんばかりの二大怪獣の必殺技が炸裂!!!長かった戦いよ、さらば!!!

 

 「勝った!」

 

 首長竜シャドウビーストは、腹を地割れに破壊され、首を超振動波でもぎ取られて倒された。誰が勝者なのかは、火を見るよりも明らかだ。

 

 「やったやったー!やったよー!!」

 「勝ちましたね!!私たち!!」

 「なんとかなって、よかったね!」

 

 最後の一撃が決まった時、一斉に歓声が湧き上がった。

 

 「パ、パワー切れ・・・。」

 「シンちゃんだらしなーい!もっと誇りなよ!」

 「そうだぜ!今回の功労者はお前だ!」

 「あいてっ!ちょっと強く叩きすぎですよ。」

 

 「あなた、中々やるのね。冷静で的確な判断だったわ。」

 「君は本当によくやったよ、ここにいる皆が保証する。」

 「エレキングさん、ベムラーさん・・・ありがとうございます。」

 

 ただ、自分に出来ることをやっただけだ、本当にがんばったのは戦ってくれたみんなだ。

 

 「みんな・・・本当にありがとう!」

 「うんうん!帰って焼き肉行こうね!」

 「ああ、今日はオレが奢ってやるやるよ!好きなだけ食いな!」

 

 ほんの一瞬前まで戦場だったビル街に、楽しい笑い声がこだまする・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、暗雲はまだ晴れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「!?」

 「なに・・・これ・・・?!」

 

 

 ドクン・・・ドクン・・・と心臓の鼓動のような寒気がやってきた。

 

 

 「もう・・・終わったはずでしょ・・・?」

 「はぁ・・・はぁ・・・。」

 

 

 それは、墜落して朽ちていくだけだったはずの球体から発せられている。

 

 

 「みんな・・・構えろ、第二ラウンドだ・・・。」

 「ただでさえ消耗しているっていうのに。」

 

 

 やがて球体はひび割れ、中から瘴気とも言うべき禍々しき気配が漂ってくる。

 

 

 「あれは・・・。」

 

 

 

 「人型の・・・シャドウ・・・?」

 

 

 二本足で立ち上がり、真っ黒で堂々たる体躯を見せつけてくる。肩からは邪悪な赤いツノが生え、その両腕には鋭利なハサミを持ち、顔には表情など微塵も感じさせることのない球体が嵌め込まれ、代わりに胸には目のような発光体がある。

 

 『ゲッゲッゲッゲ・・・・』

 

 

 

 「いくぞッ!」

 

 「みんな!気を付けて!どんな能力があるかもわからないよ!」

 

 

 先鋒はレッドキングが務める。岩山をも砕くその拳を顔面に叩き込むつもりだった。だが、

 

 

 「クッ、かわされ、ぐあっ!」

 

 

 人型シャドウ・・・『シャドウマン』か。シャドウマンは一瞬でレッドキングの背後をとって右腕を振るう。

 

 「テレポート、そいつはさんざん見てきたぜ!」

 

 すぐさま体勢を立て直したレッドキングはラリアットで反撃する。

 

 「ぐっ・・・なんつーパワーだ・・・。」

 

 『ゲッゲッゲッゲ・・・』

 

 「何笑ってやがん、だッ!」

 

 組み付いた状態から、レッドキングは頭突きをくりだした。が、シャドウマンは大したダメージを受けた様子もない。

 

 

 『ゲッゲッゲッゲ・・・』

 

 「ぐわっ!」

 「レッドキングさん!」

 「援護します!」

 

 頭部の球体からレーザーを発射してレッドキングを撃った。そこへすかさずかぷせるがーるずが割って入った。

 

 『ゲッゲッゲッゲ・・・』

 

 「何!?」

 「増えたぁ?!」

 「分身ですか!」

 

 なんと、戦線に新たに加わった3人に対して、シャドウマンも3人増え、それぞれがそれぞれと戦い始めた。

 

 「ぐぇっ!強い・・・!」

 「全く歯が立ちません・・・。」

 「パワーもスピードも、段違いだ・・・。」

 

 見れば、そこかしこで戦っている怪獣娘一人ひとりが、それぞれシャドウマンひとりずつと戦っている。『相手の数だけ分身出来る』とすれば、数的優位は無いに等しい。

 

 「悪魔か・・・。」

 

 今度ばかりは、皆で徒党を組んで集中攻撃することも出来ない。しかももうバディライド終了によりパワーダウンだってしている。回復も装備変更も無しにラスボス2連戦させられるようなものだ。

 

 「こんな、こんなことって・・・。」

 

 シンジの脳内に浮かんだのは『撤退』の二文字。一旦体勢を立て直して、改めて反撃に転ずる。逃げるのだって立派な戦略だ。

 

 「うう・・・。」

 

 「やられた・・・。」

 

 「これは厳しいわね・・・。」

 

 

 

 『ゲッゲッゲッゲ・・・』

 

 「今度はなんだ?」

 

 全員を平等に痛めつけたシャドウマンは、分身を消して自分が出てきた球体のところに戻ってきた。

 

 「まさか、パワーを吸収しているのか!?あの球体から!」

 

 あの球体は、シャドウマンの卵、いや繭だったのか。それとも、繭がシャドウマンの本体なのか。いずれにしろ、これは撤退する事もリスクが伴うこととなった。撤退して身支度をしている間にも、やつは優々とパワーをたくわえることが出来るのだとすれば・・・。

 

 「もうダメだ、おしまいだぁ・・・。逃げるんだ、勝てるわけがないよ。ヤツは、伝説の超シャドウなんだぁ・・・。」

 「なにを寝言言ってる!不貞腐れてる暇があったら戦え!」

 

 

 ここに来てシンジがヘタれた。無理もない話であるが。

 

 

 

 『ゲッゲッゲッゲ・・・』

 

 

 シャドウマン、繭からパワーを吸収して滾る。そして胸の発光体をスパークさせて、今にも何かを発射せんと構える。

 

 

 「やばい!なんかやばい!」

 

 

 ザーッ!!とノイズのような音と共に、閃光が迫る。街も道路も何もかも飲み込む、破壊の光だ。

 

 「ゼットンシャッター!」

 

 間一髪、光の壁が皆を守った。

 

 「ゼットンさん・・・。」

 「・・・っ!」

 

 普段無表情なゼットンさんも、今はすこし苦悶の表情を浮かべている。すでにその体にも多数の傷が見られた。

 

 

 「これ以上は・・・早く、逃げて・・・。」

 「みんな・・・撤退して!はやく!」

 

 渇いた喉で声を振り絞る。破壊光線によってゼットンシャッターもミシミシと音を立てはじめた。

 

 「もう・・・ダメ・・・。」

 「「「「「「うわあああああああああああ!!」」」」」」

 

 遂に無敵のゼットンシャッターが破られた。だが辛うじて、喰らったのは余波だけで済んだ。ゼットンさんが来てくれなかったら、全員やられていたところだったろう。

 

 「ゼットンさん・・・。」

 「平気・・・?」

 「ゼットンさんこそ・・・。」

 「私は大丈夫・・・あなたは、撤退して・・・。」

 

 ゼットンさんが片膝をついている。未だかつて大怪獣ファイトで見たことのある光景だったろうか?

 

 「私にはまだ、やることがあるから。」

 「ゼットンさん・・・ぐっ・・・。」

 

 衝撃で全身を痛めた。誰もがそうだ。こちら側は満身創痍、対して相手は健在。

 

 圧倒的絶望、圧倒的な『壁』。

 

 

 (これが・・・かつて怪獣たちが戦っていた相手・・・?)

 

 

 思い出される、先ほどのフラッシュバック。その中で見た、光の巨人の圧倒的な強さ。

 

 

 

 「・・・ぜんぜん違う。」

 

 

 そんなわけがない。光の巨人からは『見た目』からも、どこか安心させられるものがあった。けどこいつにはそれがない。

 

 

 「・・・あったまきた・・・。」

 「なに?」

 「ゼットンさんこそ、下がってて、僕が行く!」

 「無理、危険すぎる。」

 「あんなもんに・・・!あんなもんに僕たちの未来をとられてたまるか!!」

 

 体の痛みはどこへやら、ふつふつと沸き起こる怒りを闘志に変えて、シンジは走って立ち向かっていく。ボロボロになった上着を破り捨て、下に着こんでいたS.R.Iを晒す。

 

 「一対一なら、時間を稼げる。」

 

 多人数で攻めかかっても意味がないなら、逆に一人ずつ戦っていれば時間を稼げる。これに賭けるしかない。ホルダーからカードを一枚取り出し、バディライザーに挿入して、スーツの肩に嵌める。

 

 「モンスライド!ゴモラァ!!」

 

 バチバチとバディライザーから火花が散る。勝率はゼロに等しいどころか、まず勝てるはずがない。それでも、この一手に全てを賭けたかった。己の命を含めたすべてを!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おや?」

 

 

 

 

 

 火花は散った、しかしそれ以外何も反応が無い。

 

 

 

 

 

 

 

 「まさか?」

 

 

 

 

 

 

 慌ててバディライザーを取り外して確認してみる。

 

 

 

 

 

 

 

 「壊れたのかよ、さっきので。」

 

 

 

 

 

 

 

 がーん、だな。出鼻をくじかれた。

 

 

 

 

 

 

 

 かっこわる。破壊光線の第二射が来た。もうおしまいだ。

 

 

 

 

 

 (あーあ・・・結局、なんも出来なかったな・・・。)

 

 

 

 

 せめて痛みもなく葬ってくれることを祈って、目を閉じた。

 

 

 

 

 己の無力さに、悔しさに、自然と涙すら流していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブゥウン!という疾走音に気が付いて目を開けた。直後、シャドウマンにぶち当たって破壊光線を阻止したソレが、シンジの前に降り立つ。

 

 

 『グルルルルルルルゥ・・・。』

 

 「ゴモ・・・ラ・・・?」

 「ゴモ・・・たん・・・?」

 「ゴモラ・・・。」

 

 

 

 『誰だ・・・。』

 

 しかしそこにいたのは、シンジの知る、否皆の知るゴモラではなかった。

 

 『誰だ・・・誰だ!シンちゃんを泣かせたのはぁあああああああ!!!!!!』

 

 

 

 燃え上がる。ゴモラの体から、熱いオーラが迸り。

 

 

 

 

 

 ゴモラの体を進化(ヴァージョンアップ)させる!!!

 

 

 「・・・すごい・・・。」

 

 

 そう誰もが口にした。

 

 

 全身をもっと深い色をした棘のような鋭い甲殻が包み、肘からも鋭いスパイクが生えている。なによりゴモラの特徴であった尻尾が、より長く、鋭く変化している。

 

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 

 暗闇の底で何かが叫んだ。ボクの心の中にいる、もう一人のボクだ。

 

 わかっている、まだ終われない、まだ戦える。まだ、未来を掴んじゃいない。

 

 大切な人と共に生きる未来を!

 

 だから限界を越えられる!

 

 

 「本当の戦いは・・・。」

 

 

 その大切な人が、今まさにピンチだ。

 

 「本当の戦いは・・・。」

 

 ならやることは一つだ。

 

 「本当の戦いは、ここからだ!」

 

 

 自分でも驚くほどの力で大地を蹴って、シンジの前にゴモラは降り立った。

 

 

 『ガァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!』

 

 燃えるような力よ、それは正義か悪の化身か。その眼に宿る怒りを、刃に変える。

 

 

 「ゴモラ・・・なのか?」

 

 シンジは、ゴモラのその変貌っぷりに困惑して、聞くまでもないことを聞いていた。

 

 『グルルルル・・・。』

 

 返ってきたのは、進化したゴモラの眼差しだった。冷たく、鋭くなっている。

 

 

 「・・・がんばって!」

 

 

 その言葉に、ゴモラはゆっくりと頷いた。そして、再び敵を見据えて立ち向かう。

 

 「シンジさん大丈夫?それに・・・。」

 「あれが・・・ゴモたんなの?」

 「まるで、別人みたいに変わって・・・。」

 「変わってない。」

 「え?」

 「変わってないよ、ゴモラはゴモラだ・・・。」

 

 涙交じりの声でシンジは言った。

 

 

 進化したゴモラは全身凶器と言える鋭さを持つ手足で攻め立てる。一撃一撃が、進化前よりも桁外れの威力となってシャドウマンの装甲を削る。

 

 『ゲッゲッゲッゲ・・・』

 『グルルルルルルルルァ!!!』

 

 対してシャドウマンもテレポートでゴモラの背後をとるが、直後にその考えは甘いと思い知らされる。

 

 「尻尾が・・・!」

 「あんなに長く伸びるのか!」

 

 槍のようになった尻尾がシャドウマンの体に突き刺さる。すごい威力だ!

 

 「もはやゴモラはゴモラを超えた・・・EXゴモラ・・・。」

 「EX・・・ゴモラ・・・。」

 

 『ゲッゲッゲッゲ・・・』

 『ガァアアアアアアア!!!』

 

 突き刺さったシャドウマンを引き寄せ、爪で叩き落とす。

 

 「やった!今度こそ!」

 「なんかフラグっぽい台詞ですね。」

 「まだ動くみたい・・・。」

 

 ウインダムの懸念とアギラの読み通り、シャドウマンは苦も無く立ち上がった。見れば、貫かれた傷もみるみる再生していくではないか。EXゴモラも負けじと立ち向かい、殴り合いへと発展する。

 

 「もはや怪獣娘の領域を超えた、怪獣同士の戦い・・・。」

 「今のうちに、撤退しましょう。」

 「でも、ゴモたん一人置いてくの?」

 「悔しいけど、ボクたちにはあんな戦いについていけないよ・・・出て行っても足手まといになるだけだ・・・。」

 

 ビルも道路も、飴やウエハースで作ったみたいにいとも簡単に破壊しながら戦っている。自分の背丈よりもずっと大きい建物も、今では『壁』ではなくただの『障害物』に過ぎない。

 

 「行こうミクちゃん、ウインちゃん、シンジさんも。」

 「僕は・・・ここにいる。」

 「危ないよシンジさん!ただでさえ足手まといなのに!」

 「ミクさん、ちょっと酷くありませんか?」

 「足手まといでも、ここにいたい。いなきゃいけないんだ、ゴモラの、ミカの戦いを見届けないと・・・。」

 「シンジさん・・・。」

 

 パワーアップしたとはいえ、EXゴモラとシャドウマンの強さはほぼ互角か、それかこちら側が不利かもしれない。一進一退の攻防を繰り広げている。

 

 「ゴモラ・・・あんなに強くなりやがって・・・でも。」

 「レッドキング先輩?」

 「ゴモラー!」

 

 光線で吹き飛ばされるゴモラに、レッドキングは叫ぶ。

 

 「いつかオレを越えるんだろ!だったらそんなヤツに負けてんじゃねえぞ!!」

 「レッドキングさん・・・。」

 「そうだ、がんばれゴモたん!!大怪獣ファイトの期待の星!!!」

 「ミクちゃん・・・。」

 

 「がんばれーゴモたーん!!」

 「まけるなー!」

 「が、がんばれ!!」

 

 「みんな・・・。」

 「みんなシンシンと同じ気持ちですよ!ピグモンも応援します!風船もいっぱいつくりますよ!」

 「いや風船はもういいんじゃないかな・・・。」

 

 がんばれ!まけるな!それゆけ!そして鳴りやまないゴモラコール。それに応えるため、ゴモラは一層激しく戦う!

 

 「あともう一息だというのに・・・。」

 「なにか・・・なにかないか?」

 「がんばれ!がんばれ!まけるなゴモゴモ!」

 「風船・・・そうだ!」

 

 思いついた!それと同時にシンジは走り出す。向かうは、あの繭。

 

 「シンジさん、何する気?!」

 「わるあがき!」

 

 勿論、それだけで終わらせるつもりもない。あの時シャドウマンは、繭から得たエネルギーを、直接破壊光線へと転化させていた。なぜ一度にエネルギーを自身の体内へ取り込まなかったのか?

 

 「それはあいつ自身が、エネルギー全部に耐え切れないからだ!」

 

 ならばそれを一遍に喰らわせてやれば、風船のように膨張して自壊する。その確証がある。

 

 「よっと、ここか・・・。」

 

 繭からは不穏なエネルギーが漏れ出している。これをすべて、ヤツにぶつける。

 

 「最後ぐらい、役に立ってくれよ!バディライザー!」

 

 怪獣娘のすべてのエネルギーを受け止められるコイツなら、可能なはずだ!カードをリードする要領で繭のエネルギーを吸いつくす!

 

 「うぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!ぐっ・・・がぁあ・・・!」

 

 当然その反動は自分にも返ってくる。今度こそ本当にお陀仏かもしれない。

 

 「けどやるんだ!僕にしかできないなら!!!!」

 

 バディライザーも火花をあげている。全てを飲み込む『闇』が、シンジの体をも蝕んでいく。

 

 「闇を・・・抱いて・・・光となる!!」

 

 僕もコイツも、生まれた時から運命づけられていた。この瞬間の為に、命張って頑張る。一所懸命ってやつだ。だから、こんなところで倒れるのだけは御免だ。

 

 その最後の祈りに応えるようにバディライザーも輝きを放ち始めた。

 

 「できた・・・!」

 

 繭にはエネルギーは残っていない。しおしおと枯れ始めている。

 

 「あとは・・・これを・・・っ!」

 

 間一髪、頭の上を光線が掠めていった。シャドウマンがこっちを向いている。

 

 「これを・・・どうやってぶつけたらいいんだ?」

 

 肝心なことを忘れていた。EXゴモラはダウンをとられて動けないでいる。

 

 『ゲッゲッゲッゲ・・・』

 

 シャドウマンがテレポートで距離を詰めてくる。あれを、いくら強化されているとはいえ人間の反射神経で見切ることは不可能だ。それどころか、他の怪獣娘たちにも出来なかった。

 

 「うわっ!」

 

 他の怪獣娘、ならば。

 

 『ゲッゲッゲッゲ・・・ゲゲ!?』

 

 「この技、見切れなかったようね・・・。」

 

 ゼットンさんの一撃が、シャドウマンの不意を突いた。さすがのシャドウマンもこれにはたじろいだ。そこへ、

 

 「オラオラァ!保険下りねえぞぉ!」

 

 『ゲッゲッゲッゲゲェ??!!』

 

 ベムラーさんのバイクが突っ込んできて、そのまま引き摺りはじめた。

 

 「行けぇ!シンジ!」

 「決めろー!!」

 「シンジさん!!」

 「勝って!!」

 

 バイクを破壊して止めたシャドウマンに、

 

 

 「エネルギーが欲しけりゃ・・・」

 

 

 バディライザーを押し当てる!!

 

 

 「くれてやる!!!!!」

 

 

 ザァアアアアアア!!っという爆音とが響き、誰もが耳をふさいだ。眩い光に誰もが目を覆った。

 

 シンジただ一人を除いて。

 

 「どうだ?!」

 

 『ゲッゲゲゲゲゲゲゲゲゲゲ!!!!???』

 

 みるみる内にシャドウマンは醜く膨れ上がっていく。このまま自壊するのも時間の問題だろう。

 

 「ぐっ・・・これ以上は・・・もう動けないか・・・。」

 

 シャドウマンの自爆に巻き込まれるか?それだと本当に悪あがきになってしまう。が、それは杞憂だった。

 

 

 『ゲゲェ~~!!!』

 

 『グルルル・・・。』

 

 「尻尾!?ゴモラか!」

 

 地面から尻尾が突き出して、シャドウマンを上へと吹き飛ばした。その主は勿論EXゴモラだ!

 

 『ギャアアアアアン!!!』

 

 「そうか、そうだな、最後の一撃!」

 

 ゴモラの言いたいことがわかる。言葉じゃなくて、心で理解できる。ゴモラの全身に燃えるエネルギーが迸る!

 

 「行けぇ、ゴモラぁ!!『EX超振動波』ァアア!!」

 

 『ギャアアアアアアアアアアアアアオオオオオオオン!!!!!』

 

 今までの比じゃない、まさしく太陽のような激しい超振動波が全身から発せられる!

 

 『ゲゲゲゲゲゲゲゲ!!!!』

 

 それはシャドウマンを空へと押し上げ、ビルの群れを抜け、雲を突き破り、宇宙まで飛び出した!

 

 

 「行ッッッッけぇええええええええ!!!」

 

 『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!』

 

 『ゲッ・・・ゲッ・・・』

 

 地上からも、超新星爆発のようなその閃光はよく見えた。いつしか空を覆っていた暗雲をも吹き飛ばし、雲一つのない青空が帰ってきた。

 

 

 

 

 

 「やった・・・今度こそやったぁ!!!!」

 

 わぁっと歓声があがった。今度こそ、今度こそ完全な勝利だ!

 

 

 『グルルルル・・・』

 

 「ふう・・・終わった。」

 「ゴモたん!ゴモたんすっげぇー!!」

 「本当にすごかったですゴモたん!!」

 「ちゃんと戻った?指何本に見える?」

 「戻ってるよー!元の愛らしいゴモたんだよ!」

 「一瞬本当に暴走しちまってたのかと心配したぜ。」

 「私がそんなんするわけないじゃん!」

 

 無事にゴモラも元に戻った。他の怪獣娘たちも集まってきている。

 

 

 「よかった・・・本当に・・・。」

 「シンジ・・・。」

 「ゼットンさん・・・おつかれさまです。」

 「あなたは・・・。」

 「大丈夫、僕はもう、十分に生きた・・・。」

 

 

 空は青く、太陽が人々を照らしていた。

 

 その逆光の中に、フラフラとシンジの体は揺れた。

 

 そして仰向けに倒れると、ゆっくりと瞼を閉じた。

 

 「シンちゃん?!シンちゃんしっかりして!」

 

 シンジにはもう何も聞こえなくなっていた。

 

 その目の前には、泥のような闇だけが映っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、突然赤い光が割って入ってきた。




 あさつきかわいいよあさつき。あぁ^~ロリコンになるぅ^~

 あ、次回エピローグで最終回です。果たして風呂敷は纏められるのか。

 感想お待ちしております。

 ネタ解説

 マッスルマン:キン肉マン。

 マガマガしい黒雲:マガタノオロチ出現の前触れ。けど、黒雲と聞くとレッドジャックが浮かぶ

 本当にそうかな?:本当にそうか、ベジータ?

 タバコ逆さ:リサリサ先生・・・タバコ、逆さだぜ。

 ビデオシーバーをオープンチャンネルに:セブン最終回の、本部の状況を聞くダンのシーン

 自分の明日は自分でしか掴めない:タイムレンジャーの自分達の明日ぐらい変えようぜ!が主なところ。けど、発言の主を考えると、明日を捜せってところが最もだろう。

 通信だけのモブ怪獣娘:前回冒頭に出てきたデマーガ、ゴメス、テレスドンの三人。中二っぽい台詞のがデマーガ、元気なのがゴメス。後の一人がテレスドン。

 首長竜型シャドウビースト:ドレンゲランがモチーフ。クラウドファンディングでなんとかならないかなぁ・・・。

 火球の三種類:マクロスなどでおなじみの板野サーカスがモチーフ。なお、本来の板野サーカスの意義は、高速でアクロバティックに動く飛行物体とそれを追うもの。それらを高速で撮影するカメラも必要であり、ミサイルだけでは成立しないらしい。

 エレキングさんは両方やれる:Zガンダムで、ブランクがあるはずのアムロがランドセルだけを切り落とす様を見たカミーユの台詞。ある意味中の人ネタ

 東京タワーに巣食う邪悪:宇宙からエネルギーを呼ぶのはスペースゴジラから。タワーに繭を張るのはモスラから。

 シャドウマン:モデルはザム星人。宇宙から呼び寄せていたのはダークマターのエネルギーだった。分身能力はバルタン星人と、ハイパーゼットンのテレポートによる同時顕現から。コイツ自身の性質としてはハイパーゼットンに近い。

 もうダメだぁ・・・おしまいだぁ!:ヘタレ王子

 あったまきた:ダイレンジャーの「あったまきた」頭に来た、とあっ玉が来たのダブルミーニングが面白い

 壊れたのかよ:壊れたのかお・・・(´・ωメ`)

 それは正義か、悪の化身か:フュージョンライズ!の歌詞より。初めて聞いた時からこの着想があった。

 応援するレッドキングと、それにつられるみんな:ウルトラマン超闘士激伝の『ハイパーゼットン』戦より。

 風船より着想:同上のハイパーゼットン戦より。超闘士の直前の博士の台詞からここの流れが、結構泣かせに来る。

 見切れなかったこの技:モン娘は~れむでのゼットンさんのトリリオンバーストの台詞より。

 保険下りねえぞ:クレヨンしんちゃんアッパレ戦国大合戦のひろしのセリフ。ぶつかる直前、ベムラーさんはバイクから降りているのでご安心を。ただし、マシンはオシャカになってしばらく登場しない。

 EX超振動波:ツノだけではなく、全身から発せられるのが特徴。とすると、EXになると全身がツノと同質の存在に変化しているんだろうか?宇宙までいくのはノア・インフェルノから。

 倒れるシンジ:さらばウルトラマン

 泥のような闇:ウルトラQ

 赤い光:ウルトラマン


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光へ

 最終回です。(最後とは言っていない)


 ここは、どこだろう?

 

 

 僕は、死んだんだろう?

 

 

 じゃあここがあの世?

 

 

 あの世って随分赤いんだなぁ。煉獄ってやつかな?

 

 

 

 

 『気が付いたか?』

 

 「誰だ?天使?死神?」

 

 

 それとも、何の変哲もないこの僕にチート能力を授けて異世界転生させてくれる都合のいい女神とか?

 

 

 『そのどちらでもないよ。私は、M78星雲の宇宙人だ。』

 

 「M78星雲の宇宙人?」

 

 『ある地球では、『ウルトラマン』とも呼ばれている。』

 

 「ウルトラマン・・・。」

 

 

 目を閉じて眠っているはずの自分が、そのウルトラマンを見上げていた。銀色の肌に赤いラインが入った体と、暖かい光を蓄えた目と柔らかな微笑みを浮かべた口元のマスクを持っている。

 

 もしかしなくても、かつて怪獣たちと戦っていた、あの光の巨人だ。たしかに夢で見た光そのもの・・・けれど、あの夢で見たような不安感はない。神秘的なその姿に、安心感すら覚えた。

 

 

 『君の体は、深いダメージを負い、危険な状態にあった。そこで私が一時的に一体化することで、その命を繋ぎ留めることにしたのだ。』

 

 「じゃあ、僕は生きていられるってこと?」

 

 『そうだ。かつて私が地球に留まっていた時もそうしていたのだ。』

 

 

 あの時確かに、自らの命が体を離れていくのを感じた。けれど今は心地よく感じるのは、そのせいなのだろう。

 

 「ありがとう、ございます。おかげでまた仲間たちのところへ帰れます。」

 

 『お礼を言わなければならないのは、我々の方だ。君たちは本当によくがんばってくれた。おかげで希望が見えた。』

 

 「それは・・・どういう意味?」

 

 「そこから先は俺が説明しよう。」

 「今度は誰?」

 

 驚いて。今まで閉じていた目を開いた。すると目の前に、今度はグレーと青の制服を着た青年が現れた。これは不思議なことだが、今自分は横たわっているはずなのに、目の前の青年は『立って』いる。この空間には上も下も無いのだろうけれど。

 

 「俺の名はレイ。地球人のレイオニクスだ。」

 「レイ・・・オニクス?」

 「レイオニクスは、かつて宇宙を支配していた『レイブラッド星人』の遺伝子を持ち、怪獣を操る能力を持った者たちのことだ。コレ(・・)をつかってな・・・。」

 

 青年、レイが掲げたのは青と金で出来たツノのようなものが生えた機械。バディライザーに少し似ているかもしれない。自分の物と比べてみてみるが、バディライザーは黒焦げてボロボロだったことに気が付いた。

 

 「こいつは『バトルナイザー』。レイオニクスが一つづつ持つものだ。」

 「バトルナイザー・・・。」

 「そしてかつて、巨大な悪が振るった、100体もの怪獣を操れる特別なバトルナイザーがあった。」

 

 「その名は『ギガバトルナイザー』。」

 

 「俺たちは、その悪と『怪獣墓場』で戦い、勝利した。その時、ギガバトルナイザーも消滅したはずだった・・・。」

 

 「けれど、消えずに残ってしまったギガバトルナイザーの欠片が、怪獣墓場を飛び出して別の宇宙にまで飛び散ってしまった。」

 

 『怪獣墓場は、あらゆる宇宙と繋がっている。我々もそこを通ってここへ来たのだ。』

 

 「そしてギガバトルナイザーの欠片は、この宇宙の太古の地球に落ち、今この時代に蘇った。」 

 「それがこの、バディライザーのシンセナイザーだったんですね・・・。」

 

 壊れたバディライザーの割れ目から、件のシンセナイザーを取り出す。レイの持つバトルナイザーに反応するように、それは光っていた。

 

 「俺たちはそれを探しに来たんだ。レイブラッドの力を悪用されないよう、封印するために。」

 「元々、あなたたちの世界の物だったんですね。これは、おかえしします。」

 

 

 途中から話のスケールの大きさに若干追いつけなくなっていたが、この力が悪用される未来・・・それなら容易に想像できる。あの悪夢の正体も、今なら理解できる。

 

 

 「いつか起こるかもしれないという懸念が、僕にあの夢を見させたのだとしたら。最悪の事態を避けられるなら、そうするに越したことはないでしょう。これもなにかの運命なんだろう。」

 

 安心半分、少し落胆した。シンセナイザーを失うということは、もうバディライド出来なくなるということ。 

 

 「そうだな。だが、人間には、そうした運命を乗り越えていける力がある。」

 「え?」

 「俺たちレイオニクスもそうだった。精神だけとなったレイブラッド星人の新たな肉体を選ぶために、俺たちは生み出されたんだ。」

 

 レイは、バトルナイザーを見つめて言った。

 

 「けど、最後にはレイブラッド星人も倒して、その運命を乗り越えられた。」

 

 「そこにはいくつもの光があったから。たくさんの仲間たちや、同じレイオニクスのライバル。そしてなにより・・・。」

 

 シンジもよく知っているはずの怪獣。

 

 「ゴモラ・・・。」

 

 レイは無言で頷いた。

 

 「仲間がいれば、どんな苦難も運命も乗り越えられる。お前には、そんな仲間たちはいるか?」

 「・・・はい、守りたいものも、共に戦う仲間も、いっぱいいます。」

 

 ホルダーの中には、たくさんのカードが入っている。今まで戦ってきた仲間たち、これから出会う友達。

 

 「なら、大丈夫だ。俺はそいつ(・・・)をお前たちに任せていいと思う。」

 『私も同じ意見だ。君の周りには、そして君たちの未来には、暖かく強い光が見える。』

 

 「お前の未来を決めるのは、お前自身だ。お前は、どうしたい?」

 

 そんなの、決まってる。

 

 「僕に・・・これを、預からせてもらっていいですか?きっと平和のために役立てて見せます。」

 「ああ、頼んだぜ。」

 『困ったときは、これを使うといい。』

 

 カードホルダーに光が宿り、一枚のカードが追加された。

 

 「これを・・・使うとどうなる?」

 『ヘッヘッヘ…シンパイスルコトハナイ。』

 「不安だよ!」

 

 「ははは・・・俺たちはもう行くぜ。こうしている間にも、新たな危機が迫っているかもしれない。」

 『君の体はもう大丈夫だ。』

 「はい、ありがとうございました・・・そうだ、僕の名前。」

 「名前がどうしたんだ?」

 「僕まだ挨拶していなかったです。僕は濱堀シンジ、えーと・・・ごく普通の高校生です。」

 「そうか、シンジ。また会おうな!」

 「はい!今度はゴモラとも会いたいです!こっちのゴモラと一緒に・・・。」

 『さらばだ、シンジ。』

 

 ウルトラマンが、スティックのようなものをシンジに向けると、それが眩い光を放った。

 

 

 「戻って・・・きたのか・・・。」

 

 

 瞼を開けると、右手を高く掲げたポーズで地上に立っていた。空の上には、赤い光の球が浮いている。

 

 

 「ありがとう、さようなら・・・ウルトラマン、レイさん。」

 

 ウルトラマンが頷いているように見えた。シンジは飛び去る赤い球を見送り、いつまでも青い空を眺めていた。

 

 

 「おーい!シンちゃん!!」

 「ミカ、ただい・・・うわっと!」

 「もー!心配したじゃん!!!一体なにがあったの?体は?指何本に見える?」

 「おーい、また死んでるぞそいつ。」

 

 お約束の光景だ。

 

 「うぇっへぇっごへぇ・・・昇天しかけた・・・。」

 「大丈夫シンジさん?」

 「大丈夫・・・みんなこそ平気?」

 「平気だよ!シャドウもばっちりやっつけたし!」

 「ゴモたんさんとシンジさんのおかげです!」

 「いや、僕はそんなに大したこと出来なかったかな・・・。」

 「謙遜しちゃってー、もー!シンちゃん大活躍だったじゃない!」

 「ミカの方こそ、すごかったじゃん。」

 

 「濱堀シンジ。」

 「エレキングさん?」

 「先ほどの私の発言、撤回するわ。あまりに無謀すぎる。お世辞にも冷静な判断とは言えないわ。」

 「ちょっと-!せっかくシンジさん頑張ってたのにそりゃないんじゃないの!」

 「客観的に見た意見よ。」

 「・・・そうですね、自分でやってて危なかったと思います。」

 「けど、あなたの的確な判断のおかげでみんなが助かったわ。ありがとう。」

 「え、ああ、どういたしまして。エレキングさんに褒められると嬉しいです。」

 

 ならいいのだけれど、と言ってエレキングさんは下がっていった。彼女なりに心配してくれたのだろう。

 

 「それよりもシンちゃん、あの赤い球はなんだったの?中で何が起こってたの?」

 「あれはね・・・怪獣退治の専門家と、怪獣使い。」

 「なにそれ?」

 「ひょっとしたら、僕はものすごい体験をしたんだろうか。あの光の中で、目が体を離れて、不思議な世界に入っていったような・・・。」

 

 

 

 

 「彼の名前は・・・ウルトラマン・・・。」

 

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 夕焼けに染まった河原に、ハーモニカの音色が響いている。

 

 「・・・ウルトラマンさん、お疲れさまです。」

 

 『君もよくやってくれたようだな、オーブ。』

 

 「俺は何も。ただ、夜道の迷子に明かりを持たせてやっただけです。」

 

 『そのおかげで、新たな希望を見いだせた。』

 

 あの風来坊が、夕陽に語り掛けている。

 

 『この世界は、我々が手出しせずとも平和を守っていけるだろう。あの怪獣使いの遺産を使いこなす少年と、怪獣の魂を宿した彼女たちがいれば。』

 

 「地球は人類自らの手で守ってこそ意味がある・・・けれどいつか、俺たちと肩を並べて戦える日が来るのかもしれませんね。」

 

 『そう願いたいものだ。』

 

 この星にはまだ無限の可能性が眠っている。まだ見つかっていない怪獣娘もいる。その数は計り知れない。

 

 『ベムラー、レッドキング、ピグモンにゴモラ、そしてゼットン。懐かしいな。』

 

 「かつて戦った怪獣たちが、今はこうして人間として生きているなんて、不思議な宇宙もあるんですね。」

 

 『私も驚いているよ。そして嬉しく思う、彼らが幸せに生きていられるこの世界のことを。』

 

 少し遠くに、その彼女たちの姿が見える。

 

 『そしてその中心にいるあの少年・・・シンジ。未熟な面もあるが、可能性を秘めた若さを持っている。』

 

 「最初にあいつのことを見た時から、そう思ってました。あの日、彼女たちと出会ったあの時から・・・自分の危険も顧みない無鉄砲さも。」

 

 何万年と生きるウルトラマンたちにとって、半年など瞬きするほどの時間もないだろうが、それでも貴重な思い出だった。

 

 『私はそろそろ行こう。今も宇宙のどこかに、私たちの助けを必要とする場所があるだろうから。』

 

 「俺もそろそろ、旅に戻ります。またどこかでお会いしましょう。」

 

 『ああ、さらばだ。』

 

 人知れず、赤い光の球は地球を去って行った。風来坊だけがそれを見届けた。

 

 「お前は月だ、シンジ。太陽の光を浴びて、夜の闇を、また別の誰かを照らす。そんな優しさを、お前は持っている・・・。」

 

 風来坊も、やがて夕焼けの光の中に消えていった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うーん、いないか。お礼言いたかったのに。」

 

 人知れず二人の宇宙人が地球を去ったころ、シンジもまたその近くで途方に暮れていた。ラムネの瓶を二本手に持って。

 

 「名前も連絡先も聞いてないし、どうすっかなぁ・・・ん?」

 

 河原の土手をもう少し行った所にゼットンさんの姿が見えた。

 

 「ゼットンさん、お疲れ様です。」

 「シンジ・・・体は大丈夫?」

 「はい、もうすっかり。デブリーフィングの後にまた検査されましたけど、異常なしって。」

 「そう・・・。」

 

 やっぱり心配してくれていたんだな。アギさんが憧れるのもよくわかる。

 

 「ゼットンさんは、この辺りで風来坊さんを見ませんでしたか?黒いコートでハーモニカを吹いてる人なんですけど。」

 「・・・さっき会った。ファンだというから、サインをあげた。」

 「ゼットンさんがサインを?」

 

 雑誌のインタビューなんかも敬遠して避けているというゼットンさんには、ちょっと珍しいことなのかもしれない。

 

 「名前とかは、聞いたんですか?その人の。」

 「聞いていない。ただ、いつかまた会えると思う。地球は丸いから。」

 「あの風来坊さんも言ってたな・・・いつか会えるならいいか。じゃあこれ、ゼットンさんにどうぞ。」

 「・・・。」

 「ラムネ・・・いらなかったですか?」

 「ううん、ありがとう。」

 

 一人で二本も飲むつもりもないので、一本ゼットンさんにあげた。

 

 「ちょっとこぼれちゃった・・・。」

 「・・・。」

 「素朴な味ですけど、いいですね、これ。」

 「・・・。」

 

 「ケプッ・・・。」

 

 (ゼットンさんが・・・『ゲップ』した・・・。)

 

 ふふ、その、下品なんですが、『可愛い』と思っちゃいまして・・・。

 

 (また今度あげようかな・・・。)

 

 などと邪悪な企みを浮かべていた。そうしている間に、ミカたちがやってきた。

 

 「シンちゃーん!ゼットンちゃんも!なにやってんの?」

 「黄昏れてんの。」

 「ラムネだ!私にもちょーだい!」

 「ない。」

 「いいじゃんひとくちー!」

 

 と、シンジの飲みかけを強奪する。間接キッスとか全然気にしない。

 

 「ぷはー!懐かしい味だね!ヘック!」

 「下品だぞミカ。」

 「いいじゃん、2人しかいないんだし。」

 「あれ?さっきまでゼットンさんがそこに・・・。」

 「もう行っちゃったよ。」

 

 騒がしいのが嫌いなのか・・・いや、きっと気を使ってくれたんだろう。二人っきりになれるように。

 

 「シンちゃん、本当に体はなんともないの?」

 「なんともないよ。ウルトラマンに助けられたからね。」

 「本当に、ウルトラマンに会ったんだね、シンちゃんすごいね。」

 「かつてこの地球にいたウルトラマン本人なのかはわからないけどね。『この宇宙』とか言ってたし。それにもう一人会ったんだ、怪獣使いのレイさん。」

 「怪獣使い?」

 「かつて、怪獣を操る宇宙人同士で争っていたことがあったんだって。その時レイさんもゴモラをパートナーにしていたんだってさ。」

 「へー、そっちのゴモラにも会ってみたいな・・・。」

 

 「そういえば。」

 「なに?」

 「ミカの方こそ、体大丈夫なの?」

 「ボクは平気だよ!だってみんなのゴモたんだし!」

 「理由になってないと思うけど・・・聞いたところによると、レイさんのゴモラもミカみたいに進化するんだって。怪獣使い、レイオニクスの力で。」

 「ふーん、そうなんだ。じゃあシンちゃんもあの時なにかしたの?」

 「ううん、僕は何も。バディライザーも壊れてたし。」

 

 その後に無茶した結果、今はもっとボロボロになってるけど。

 

 「ってことはやっぱり、ミカ自身の意志で進化した、ってことなのかな?」

 「どうなんだろ、わかんないや。でもなろうと思えばなれると思うよ。コツは掴めたし。」

 「あの一回だけで?すごいねミカ。」

 「けど、大怪獣ファイトでは使えないかな。あれって完全に『殺す』ための力だし。」

 

 「ボクは、怪獣娘の力を『生かす』戦いがしたいから。」

 

 「生かすための力か・・・。」

 「だからかな、シンちゃんのことを思った途端、急に力が沸いてきたんだ。あの時は・・・あの時だけは『君だけを守りたい』って思ったから。」

 「・・・そっか、ありがとう、心配してくれて。」

 「思えば簡単な話だったよね。シンちゃんを危険にさらしたくなかったら、ボク自身が強くなればいいだけだって。なんでこんなことに気が付かなかったんだろ?」

 「・・・暴走する危険があったから、とか?」

 「・・・そうだね。本当に怖がってたのは、ボクの方だったんだ。自分を見失うことが怖かった。」

 「けど、僕を『生かす』ために力を発揮できた。それが、『闇を抱いて光となる』ってことじゃない?」

 「闇を抱いて?」

 「光となる。さっき風来坊さんから聞いたんだ。・・・きっと、あの人も・・・。」

 「風来坊・・・か・・・なんか珍しいね。」

 

 カラン、っと空になったラムネの瓶を置いて、2人で夕陽を見つめる。

 

 「・・・ミカが進化して。」

 「ん?」

 「その後目が合って、頷いてくれたでしょ?」

 「うん。」

 「どんな姿になっても、どんなに力に溺れそうになっても、僕はミカとゴモラのことを信じてる。僕の事を救ってくれた、ミカと、ゴモラのことを。」

 「うん・・・ありがとう。」

 

 夕陽を見つめたまま、ぎゅっと手のひらを重ねた。その顔は非常に晴れ晴れとしていた。

 

 「おーい!ゴモたーん、シンジさーん!」

 「なにやってんの2人で?」

 「「黄昏れてんの。」」

 

 長い影を引き連れてみんながやってきた。

 

 「お腹空いたから、みんなでご飯食べに行こうよー!」

 「ミクちゃんさっきお菓子食べたばっかりじゃない。」

 「お菓子は別腹だって!アギちゃんこそめしめし食べてたじゃん!」

 「別腹って、メインを食べる前から発動できるものなんでしょうか・・・。」

 「30分後くらいに満腹中枢が働いてくるから、メインがあまり食べられなくなると思う。」

 「じゃあ、晩御飯までランニングしよー!」 

 「もっとやだよ。」

 

 あんな戦いの後だってのに、元気なもんだな。とシンジは感心した。けれどそれは、決して怪獣娘だから、というだけではない。

 

 「これが若さか・・・。」

 「シンジさん、おっさんぽいよ?」

 「自分だけ大人びたふりをして!」

 「なにがぁ!」

 「本当は御自分が一番冷静だと思っているのでしょう!」

 「そうでもあるがぁ!」

 

 違う、疲れてるんだ。変なことを口走る程度には。

 

 「まあそれはそれとして、早くいこ!ベムラーさんがお店抑えててくれてるからさ!」

 「走って?」 

 「ロンモチ!いくよー!あの夕日に向かって走るんだー!」

 「ちょっと待ってミクちゃん・・・速すぎ・・・。」

 「そっち反対方向ですよ!」

 「行っちゃった・・・。」

 「のんびり行こうよ、自分のペースでさ。」

 「そうだね・・・。」

 

 よく耳を澄ましてみれば、彼女たちの笑い声に混じってハーモニカの音が聞こえてきていた。けど、今はいい。今は彼女たちと一緒にいることを選んだ。

 

 「地球は、丸いんだ・・・。」

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 

 「ただいまー。」

 「おかえりなさいませ、シンジさま。」

 「んー。」

 

 日付が変わる前に家に帰ってこれた。2次会3次会でさんざんあちこち連れまわされてボロボロだ。正直シャドウを相手にしている時より疲れた。

 

 「シャドウを相手にするよりも大変だったかも・・・。」

 「温かいスープなどいかがでしょうか?」

 「一杯だけもらうよ。」

 「かしこまりました。」

 

 上着を脱いでハンガーをかけると、ダイニングに移動して待つ。しばらくする、ほかほかと湯気を立たせた皿が運ばれてくる。

 

 「今日はオニオンスープか、いただきます。」

 「脂っこい食事には合うと思いまして。」

 「ありがとう、うん、おいしい。」

 

 動き回って汗をかいて冷えた体に染み渡る。胃も少しスッキリするし、血管もサラサラになる。

 

 「ごちそうさま。」

 

 後は風呂入って、歯磨いて、また来週だ。

 

 「シンジ様、他に何か仰せつかることはございますでしょうか?」

 「・・・さすがに何もできないほど子供でもないしな・・・そうだ。」

 

 家事に掃除、炊事までやってもらってる身だし。ただ、ひとつ思い出した。チョーさんにしか頼めないこと。

 

 「んんっ。覗いてるのか、それとも報告を送らせてるのか知らないけど。」

 「・・・。」

 「一人息子が会いたがってるんだから、連絡の一つくらい寄越したらどうだ?と、伝えておいて。伝えられる機会があったら。」

 「承知しました。」

 「それだけ、おやすみ。」

 「おやすみなさいませ。」

 

 長い長い一日がようやく終わりを迎えた。文字通り命を燃やすような出来事の連続だったが、まだ終わりじゃない。今日と同じくらいか、それ以上の出来事が起こるだろう。

 

 けど、もう何も心配はない。

 

 今の僕には、かけがえのない仲間がいるのだから。

 

 苦難を共に乗り越え、これからも共に歩いていく仲間たちが・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おはよー!シンちゃん!!」

 「ふぁ・・・?おはようミカ・・・なんでここにいるの?」

 「起こしに来たんだよー!今日デートでしょ?」

 「・・・いや、さすがに今日はデートの約束した覚えないぞ?」

 「私じゃなくて、レッドちゃんとだよ!」

 「え?約束したっけ?ていうか、今日だっけ?」

 「昨日約束してたでしょ?次の日曜って!」

 「次の日曜って・・・今日か!」

 「曜日感覚失くしすぎだよ。」

 「・・・入院生活してたせいか・・・。」

 「だろうと思った。来てよかった、レッドちゃん待たせるとこだったよ?」

 「ありがとう、用意するからコーヒーでも飲んでな。」

 「ういうい!」

 

 

 

 さっそくこれだ。急いで支度をして朝ごはんも済ませる。

 

 

 

 「いってきます!」

 「いってらっしゃいませ。」

 

 

 

 でも、やっぱりこれが僕らしいってことなんだ。こんなに騒がしい毎日をおくっている僕が、一番僕らしい生き方なんだ。

 

 

 「でも今日から大変だね?」

 「なにが?」

 「だって、明日はエレちゃんとデートだし、明後日はミクちゃんと。そのまた次の日はウイン・・・ダム子とで、その次の日はアギちゃんと!」

 「・・・えっ。いつの間にそんな約束を・・・?」

 「だから昨日してたじゃん、覚えてないの?」

 「ぜんぜん・・・とんでもないことをやってしまったのか・・・僕は?」

 「まーまー元気だしなよ、せっかくのいい天気なんだからさ!」

 

 

 とほほ・・・と頭に雲がかかっている。

 

 「あーもう!こうなりゃヤケだ!とことん楽しんでやる!」

 「その意気だよー、人生は楽しんでなんぼだよ!」

 

 

 泣いて暮らすも一生、笑って暮らすも一生。なら、笑ってないと損だよね?




 怪獣娘のカードスリーブがどこ行っても置いてない。せっかくバトスピのゼットンデッキに使おうと思ってたのに!

 それはそれとして、これにて一応完結です。(二回目)。感想などお待ちしております。

 ここまでお付き合いありがとうございました!

 ネタ解説

 チート能力授けられて転生:正直あんまり好きじゃないノリ。異世界転生まではいいとして、チート能力まで与える必要あるの?ところで、怪獣娘はジャンルとしては『転生』に入るんだろうか?

 ウルトラマンがスティックのようなものを向ける:さらばウルトラマンでの、ゾフィーがベータカプセルを使うシーンより。

 ギガバトルナイザー:その欠片とはいうものの、ウルトラファイトオーブではレイバトスが復活させたり、ジード本編でベリアルが使ってたり、そこんとこどうなの?ってなるけど、復活の際に戻らなかったほんのひと欠片がシンセイナイザーに使われていると思っていただきたい。

 ゼットンさんのファン:石黒さんがそうなんだって。ちなみに、ベムラーさんとも駄菓子談義で華を咲かせていたりする。

 その、下品なんですがry:吉良吉影とモナリザ。でもゼットンさんの意外な一面ってかわいいと思う。

 生かすための戦い:活人剣という考え方。守るための力も、振り方を間違えれば暴力になるし、逆に言えば傷つけるための力だって正しく使えるはずだ。


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夕焼けの決闘

 書きたいネタはいくらでも湧いてくるが、どういうことかと説明を求められたら、いましばらく時間と予算をと答えざるを得ない。

 それよりも、ハーレムものが書きたいと言いながら全然ハーレムしていないこの作品の明日はどっち?


 話は少しさかのぼる事、シンジがゴモラに決闘を申し込まれた日。その午後。

 

 「ハリケーンミキサー!」

 「グワー!」

 

 シンジはアリーナの宙を木の葉のように舞っていた。

 

 「一発!」

 

 「二発!」

 

 「散髪。」

 

 「四発!」

 

 「一体何のバカ騒ぎかしら?」

 「あら?エレちゃんおはー。」

 「見てのとおり、試合だ。ルーキー同士のな。」

 「あらそう、猫がじゃれて遊んでいるようにしか見えなかったわ。」

 「厳しいなー。」

 

 観客席にエレキングさんが入ってきた。この時点ではまだシンジとは面識がない。

 

 「あれが、例の男の子かしら?」

 「そ、シンちゃん。私の幼馴染なんだー。」

 「今まさにボロ雑巾のように地面に叩きつけられているけれど、いいのかしら?」

 「いいの、私もさっききたねぇ花火にしたから。」

 「そう。」

 「心配しなくても、あいつはなかなかタフだぜ?成長するのが楽しみだ。」

 

 そういうレッドキングの視線の先で、シンジは立ち上がる。

 

 「さっきの技は・・・。」

 「ふっふーん、『マッスルマン』の『デビルバッファロー』の必殺技だよ!」

 「ミクさんも『マッスルマン』好きなんだ?」

 「シンジさんも?あの熱いバトルと、友情がたまんないんんだよねぇ!」

 「僕も結構、あの漫画を参考に技とか覚えてるからね・・・。」

 「やっぱりー?!なんかそんな気はしてたんだよね!」

 

 思わぬところで同胞に出会えた。『マッスルマン』は今から40年も前、週刊少年ツブラヤで連載されていたプロレス漫画だ。既に原作は完結を迎えているが、ゲームやアニメで今なお根強い人気を誇り、原作者自らの手で新シリーズが最近開始されたばかりだ。

 

 なお、初期は怪獣退治ものとして連載開始したり、登場人物が女体化されたり、主人公の息子の名前がタロウと、なにかと縁があったりする。

 

 「あたしが好きなのは『デビルバッファロー』なんだ!まさに力こそパワー!って感じで!」

 「ミクさんらしいね。」

 「シンジさんは誰が好きなの?マッスルマン?ジェントルマン?」

 

 『こらー、おしゃべりしてないでちゃんと戦えー!』

 

 「だってさ、話は後にしよっか。」

 「う、そうだね・・・いっくぞー!」

 

 ハリケーンミキサー、それはデビルバッファローの必殺技。主人公たちの10倍以上のド迫力パワーをもって放たれるそれは驚異の一言だ。

 

 「くらえー!」

 「でもここは、四角いリングじゃないんだぜ?」

 

 周囲に所々岩こそあるが、それらを差っ引いてもプロレスのリングよりずっと広い。そう何度も喰らうものではない。

 

 「まだまだー!」

 「こっちだこっちー!」

 

 かまわず突っ込んでくるミクラスの突進を、岩へと誘導してダメージを誘う。しかしいくらぶつけさせても、その勢いはとどまるところを知らない。

 

 「なんて頑丈さ・・・いや、馬力なんだ。」

 「みよ!カプセル怪獣一の500万馬力のパワーを!」

 

 500万馬力、馬500万頭分パワーと言うことだ。同じツノを持つ怪力怪獣、300万馬力のシルバゴンのパワーアップした姿、キングシルバゴンが470万馬力だというから、それよりも強い。より簡単に言うと、初代ウルトラマンが100万馬力なので、パワーだけならミクラスはウルトラマンの5倍強いのだ。

 

 なお、馬力という単位が制定された当時の馬と現代の馬を比較すると、現代の馬は4倍強いらしい。良い子の諸君!

 

 「言っておくが、このS.R.Iスーツがあったところで、発揮できるのは50万パワーが限界ってところだ。」

 「つまり、あたしの方が10倍強いってことだ!」

 「人間には力が無くとも、知恵と勇気がものをいうのさ!」

 

 「これもその知恵のひとつ、『アクセルグリッド、脚部限定』!」

 

 スーツの右脚部分に、エネルギーが集まる。一時的にエネルギーを集約させ、威力を高める機能だ。

 

 「そして、キィイイイック!」

 「なんの、こっちもドロップキッーク!!」

 

 空中で交差し、片方が弾き飛ばされ、片方が難なく着地する。

 

 「ぐわっ!」

 「へっへーん、どうよ?」

 

 地を舐めたのはシンジの方だ。当然だ、パワーがダンチなんだ。この問題は一生付き纏う。

 

 「とても賢い人間の戦い方とは思えないわね。」

 「まあそう言うなって、時々あっと驚かせるようなことをするのが、あいつの強みなんだよ。」

 「だったら道化にでもなったらどうかしら?」

 「まあこのままじゃピエロだわな。」

 

 人を楽しませる仕事をするのが道化。その中でもマヌケなことをして観客から笑いを買うのがピエロだ。ピエロには目の下に涙のマークがついている。心では泣いているというサインだ。

 

 シンジは滅多なことでは涙を流さないが、負けて悔しくないはずがない。その為に頭を使う。

 

 「なら・・・これならどうだ!」

 「今度は両足ってわけか・・・!」

 

 岩の上に立ち、再び攻撃の準備に取り掛かる。両足にパワーを集中させ、さらなる高みを目指す。

 

 「50万+50万で100万パワー!」

 

 先ほどよりも高く飛び上がり、アクロバットのように宙を舞う。

 

 「いつもの2倍のジャンプがくわわって、100万×2の200万パワーっ!」

 

 狙いを定め、コマのようにスピンする。

 

 「さらにいつもの3倍の回転を加えれば200万×3の」

 

 「ミクラス!おまえをうわまわる600万パワーだ!うおっ~~!」

 

 シンジの体が600万パワーの炎を纏う!空気との摩擦によって起こった炎の追加ダメージだ!

 

 「なんの!こっちはツノで勝負だ!ハリケーンミキサー!」

 

 両社の激突によって起こった爆発に、思わず誰もが目を覆う。そして各々が目にしたのは、見事に着地したシンジと、宙に投げ出されたミクラスの姿だった!

 

 「シンジさん、やったの?!」

 「いや・・・あれは失敗だ。」

 

 「ウギャー!!」

 「よっ・・・と。」

 

 着地できたはずだったシンジは前のめりに倒れ込み、ミクラスは空中でバランスを取り戻して難なく着地する。

 

 「勝った!」

 「負けた・・・。」

 

 「結局パワーってなんだったんですか?あんな簡単に増やせるものなんでしょうか?」

 「理屈は悪くなかったが、実践するには技量が足りなかったな。無茶なスピンに回転軸がブレて、うまく直撃しなかったんだ。」

 「試験なら落とされていたわね。」

 「あれ、エレちゃんもう行くの?」

 「ちょっと寄っただけだから。まだ仕事がある。」

 「そう、がんばってねー。」

 「あなたたちも、もう少し緊張感を持ったらどう?最近シャドウの動きが活発化しているし、不穏な動きも見せているのよ?」

 「はいはーい。」

 

 緊張感を持てと言われて持つミカではない。勿論それなりに注意はしても、ペースは乱さない。むしろ乱している姿の方が、エレキングは見たことがないぐらいだった。

 

 「負けました。」

 「惜しかったね、今度は勝てるといいね。」

 「いぇいいぇい!見てた?あたしのハリケーンミキサー!」

 「やはりミクさんのパワーはすごいですね、大抵の相手なら薙ぎ倒せるんじゃないかってくらいです。」

 「いやー、それほどでもー?戦ってて楽しかったし、またやろーねシンジさん!」

 「今度はもっとお手柔らかにお願いね?」

 

 

 

 「うっし、じゃあ次はオレが行くか!」

 「さっきはゴモたんと戦ってましたけど、次は誰と?あたし?」

 「いや、シンジ立て。」

 「はい、なんですか?」

 「来い。」

 「はい?」

 「来いっつってんだよ!」

 「恋?はしゃぐコイは?」

 「池の鯉、って違うわ!次はオレが相手してやるってんだよ!」

 「ナイスノリツッコミ。」

 

 わけもわからずに、なんだかんだと再びアリーナに戻された。

 

 「本当にやるんですか?」

 「まあ、ちょっとした洗礼だと思えよ。お前の基礎的なところもっと見たいと思ったしな。」

 「これってパワハラ?」

 「ちがう、『可愛がり』だ。」

 「レッドキングさんの方がよっぽどかわいいですよ?」

 「バカ!そんなこというな!///」

 「うおっあぶねっ!」

 

 照れ隠しに岩をぶん投げてきた。さすがにまっすぐ飛んでくるだけの岩には当たらない。

 

 「歯ぁ食いしばれよ!」

 「その歯が全部抜け落ちるような攻撃は勘弁!」

 

 ブォン!という音と共に鍛え上げられた丸太のような腕が頬をかすめる。避けた先にあった岩が粉微塵に砕け散る。

 

 「こんなん喰らったら骨が折れる程度じゃ済まないんじゃ!」

 「大丈夫だ、ジェロニモンの力で生き返れる!」

 「ウララー!」

 

 よしんばそれで生き返っても、腕の形が変わったりするのは御免だ。ひとまず距離をとる。レッドキングには岩投げなどは出来ても、固有の飛び道具というものは持っていないはずだ。

 

 「なんて考えてたんなら、お慰みだぜっ!」

 「ぐぉっ・・・口から岩が・・・!」

 

 しかも、爆発性のある危険なやつだ。ほぼ爆弾やロケット弾を撃って来ているのと変わらない。

 

 「常に相手がどんな動きをしてくるか予想しておけ!実際はその上を行くからな!」

 「これでもイマジネーションは結構あるほうだと自覚してますよ?」

 「そうか、なら、こいつは予想できるか?!」

 

 剛腕を振るって地面を殴る。すると、ひび割れが走ってシンジの足元に迫る。ゴモラの見せたアースクラッシャーとは違う、元祖・アースクラッシャーだ!

 

 「おぉー!これが本家か!」

 「見た目もゴモたんが使った時より派手だね。」

 「そりゃー、レッドちゃんが元祖だからね。」

 「でも、シンジさんあそこから動きませんよ?!」

 

 「見た目は派手だが・・・。」

 「今のをよく『避けなかった』な。」

 「レッドキングさんが、こんな単調な攻撃しかけてくるはずないと思ってたので。」

 「言ってくれるじゃねえか。」

 

 見事に、シンジの周りにだけひび割れが走っていた。慌てて避けていたならば、たちまち餌食となっていただろう。

 

 「かといって上に飛び退けば、岩で撃ち落とされていた。」

 「そこまで読んでいたんなら、10点やろうか。」

 「あと90点は?」

 「オレを倒せたらやるよ!」

 

 赤点にならないようがんばろー!パワー自慢のレッドキングに殴り合いを申し込むのは自殺行為に等しい。いっちょここは躱して殴っては退くのヒットアンドアウェイで行こう。

 

 「せいっ!せいっ!」

 「そんなへなちょこパンチ効かねえぜ!」

 「おわっと!」

 

 躱すこと自体はそこまで難しくはない。目をしっかり凝らせば軌道が見える。しかし一瞬の隙や気の緩みが生死を分ける緊張状態に、徐々に精神が摩耗していくのを感じる。

 

 そして精神が摩耗してくると、普段しないような判断やチョンボをする。

 

 「そこっ!」

 「ぐっ・・・!」

 

 「あっちゃー、いいのもらっちゃったね。」

 「これ以上は持たないかな・・・?」

 「いいや、シンジさーんがんばれー!」

 

 がんばれなんて、軽く言ってくれる。脳震盪で目は回るし、肺から空気が漏れて息もし辛い。けど、応援してくれているからには、おちおちやられているわけにもいかない。

 

 「こんのっう!」

 「おっ!」

 

 飛んできた拳を寸でのところでいなして、腕を掴んでジャンプして落とす。ジャンピングアームブリーカーだ!

 

 「そしてすかさず!」

 「うっ!やったな!」

 

 倒れた相手の上に覆いかぶさり、神業的速さで腕ひしぎ逆十字固めに持って行く!面食らったレッドキングさんはなすがままにされてる。

 

 「なかなか・・・やるじゃねえか・・・!」

 「結構練習しましたから・・・暴れんな、暴れんなよ・・・!」

 

 練習したのは半分、もう半分はS.R.Iスーツにインプットされた格闘技のデータのおかげ。あらかじめプログラミングされた動きを、必要に応じて半自動で技をかけてくれるのだ。

 

 「けど、このまま塩試合になるのは勘弁願うぜ!」

 「うおっ!」

 

 力尽くで振りほどかれ、逆に掴まれる。やっぱり固め技は地味なんだろうか?絵面的に。

 

 「そらよっ!」

 「あーあーあーあーあー!」

 

 そのままぶんぶん振り回されて、挙句岩に向かって投げ飛ばされた。レッドキングの得意技のジャイアントスイングだ。

 

 (あっ・・・。)

 

 背中に衝撃が走り、意識がとぶ。脳内に、今までの人生がフラッシュバックしてきた。何も出来なかったあの日のこと、雨が降ったの日の事、すべてが始まった日のこと。

 

 (死ぬな、これ・・・。)

 

 正直、今まで感じた事も無いレベルに、生命の危機を感じ取った。

 

 「気絶してるヒマはねえぞ!もっと熱くなれよ!!」

 

 無理無理、もう燃やす物残ってないって。風前の灯火どころか、風にとける灰も同然。

 

 「シンジさーん!」

 

 「おっ・・・と・・・?!」

 

 気が付けば、体が勝手に動いていた。向かってくるレッドキングさんをいなして、思いっきりすっ転ばせていた。

 

 「やりやがったな・・・!」

 

 すべてがスローに見える。S.R.Iによる補助とは違う、もっと生な、感覚的なスローだ。相手の動きが見えるだけでなく、次にどうしたらいいかもわかってしまう。

 

 「だらぁっ!がっ・・・!」

 

 「あの構えは・・・。」

 

 シンジが自然ととっていたのは、猫背ばって手を前に突き出した、柔道のようポーズ。相手の出方をみつつ、時に掴み、時に受け流すことに特化した構えである。

 

 「がっ・・・あぁ・・・!」

 

 倒れて一瞬レッドキングの気がそれた刹那、一気に距離を詰めると、その両手で首を締めあげ、チョップを喰らわせ、その状態で宙に持ち上げる。

 

 「あれで一気に体力を奪うつもりだね。」

 「ちょっと・・・激しすぎませんか?」

 「今まで散々、もっとすごい怪獣ファイトを見て来たけど?」

 「なんというか、生々しい戦い方だね。」

 

 脇に手を通し、ジャイアントスイングの要領で振り回し、投げ飛ばす。

 

 「ててて・・・オレの十八番(オハコ)をやりかえされるとは・・・ちょっとショックだぜ・・・。」

 

 「そいやっ!!」

 

 これでトドメだ!脳に酸素が行き届かず、未だグロッキー状態にあるレッドキングの首を再び掴み、ハンマー投げで地面に叩きつける!

 

 もうもうと砂埃が舞い散り、その中心にシンジは佇む。

 

 「はぁ・・・はぁ・・・勝った・・・?」

 

 「うっそー、シンちゃん勝っちゃった?」

 「すごいです!」

 「すっげー!シンジさんすっげー!」

 

 ついさっきまで、自分はなにをしたのか?そのあたりの記憶が曖昧であるが、目の前の現実は本物だ。

 

 「やた・・・やったー!初白星だー!」

 

 シンジは諸手を挙げて喜んだ。今まで無理だ無理だと口にし、頭の中でも諦めていたけれど、マグレでも本当に勝ててしまったらそれは嬉しい!今日は人生最高の日かもしれないぞ!

 

 「シンちゃーん!」

 

 「ミカー!見てたー?今の超ファインプレー!」

 

 「後ろ後ろ―!」

 

 むんずっ

 

 「へ?」

 

 頭に強い握力を感じ、振り返ってみれば、そこには太陽よりも明るい笑顔を浮かべたレッドキングさんが立っていた。

 

 「・・・さいなら。」

 「待てぃ!」

 

 逃げ出そうとする暇もなく、肩と頭を掴まれ、空へと放り投げられる。

 

 「あー。」

 「よくもやりやがったな!こいつはお礼だぜ!」

 

 両脚を両手で掴まれ、両腕を足でロックされ、上下逆さまの状態で地面へと突っ込んでいく。

 

 「コイツがレッドキングの、『レッドライバー』だ!!」

 

 ズガーン!と、先ほどのとは比じゃない砂埃舞い上がる。

 

 「あちゃー。」

 「良いところまでいったのに。」

 「油断大敵、だね。」

 

 戦場のド真ん中、シンジの墓標が建った。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「ひどいめにあった。」

 「戦場ではしゃぐからこんなことになるんだよ。」

 「まあ途中まではオレもヤバイって思ったけどよ、あそこでガッツポーズはねえよ。」

 「そこはオマケして負けておいてくれるところじゃ?」

 「世の中そこまで甘かない。」

 

 怪我の治療をされながら、ぶーたれるシンジであった。ぬか喜びに水の泡だったのだから仕方がない。

 

 「じゃー、シンちゃん負けたから、なんか罰ゲームね!」

 「え?そんな約束してたっけ?」

 「したよー、今さっき。」

 「後出しじゃないか。」

 「でもどうせ負けるでしょシンちゃん?」

 「それだったら最初っから約束なんかしないっての。」

 

 ひどい言われようだ。ミカは別に悪気があって言っているわけではないとはわかるけど、さすがに傷つくわ。

 

 「大体、こんなことになったのもミカがダイエットしたいとか言い出したせいでしょ。これ以上付き合う必要ある?」

 「うっ・・・そりゃまあ・・・そうだけどさ・・・。じゃあせめて、特訓として付き合ってくれたミクちゃんとレッドちゃんになにかお礼したら?」

 「あたし?あたしは別に・・・そうだなー・・・うーん・・・。」

 「オレも、気にしてくれなくっていいぜ?なかなか楽しかったしな。」

 

 少し残念そうにミカは食い下がった。今となっては昔の話だが、この時にもう少しシンジも気を使っていられたら、あんな大ごとにはならなかったのだが。

 

 「じゃあ・・・今度一緒に遊びに行きませんか?」

 「おっいいねー!どこ行こっか!ジムとか?」

 「遊びに行くのに汗流したくないかな・・・。」

 

 この後は、色々遊ぶ予定だけを立ててお開きとなった。具体的な日時などは決めていない、ただの空論であったが、今はそれでよかった。彼ら彼女らにはその為の時間がいくらでもあったから。

 

 今は、そんなありふれた『明日』があることが、とても幸せなことだと思えた。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 それからしばらくカレンダーをめくったある日の朝。

 

 「うーん・・・慌てて飛び出してきたのはいいけど・・・。」

 「何か不安?シンちゃん。」

 「いや、どこ行くかとか全然決めてないし。」

 「私が思うに、レッドちゃんの喜びそうなところがいいと思うよ!」

 「そりゃそれが一番だけどさ。」

 

 二人並んで小走りで本部前に行く。全く身に覚えのないこととはいえ、約束してしまったからには行かないわけにはいかない。そんなことしたら男の風上にも置けなくなる。

 

 「ついた・・・けど、レッドキングさんいない?」

 

 平日ならば行きかう人も多いこの場所も、休みの日となると人影もまばらだ。時間は午前9時、お店もあまり開いていない時間だ。

 

 それはともかくとして、この場にはレッドキングさんはいない。ひょっとして、約束はしたけど、来てくれなかったとか?いや、レッドキングさんに限ってそんなはずはない。そもそも約束した記憶すらないんだけど。

 

 「ねえミカ、待ち合わせ場所ってここで合ってるの?」

 「うん、そうだよ。いっつもここにしてるじゃん。」

 「それはそうだけど・・・じゃあなんで来てないんだろ?」

 「そりゃあ、約束の時間まであと4時間ほどあるからじゃないかな?」

 「は?」

 「午後の1時でしょ?約束は。」

 「・・・。ミカ、いい加減殴っていいか?」

 「優しくしてね♡」

 

 へなへなと座り込むシンジと、相変わらずあっけらかんに笑うミカ。人のいない広場に、コツンと乾いた音が響いた。

 

 「考える時間をくれたんだね、ありがとう。」

 「どういたしまして。中でちょっと休もっか。」

 

 また忙しい日々が始まる。フンドシ、もといハチマキを締めなおそう。しかしこの幼馴染には締め上げても簡単に逆襲されるであろう。

 

 「・・・空が青いな・・・。」

 




 公式ノベルのレッドキングさんが可愛すぎる件について。

 ネタの仕上がり具合はミクラスとのトーナメント編が7割ほど出来上がっている。けど、2期アニメの出方を窺いたいので少々時間がかかる。というかはやくこっちが書きたい。

 あと出来るものならウルトラニャンとかも出したい。出来るものなら。

 感想、おまちしております。

 ネタ解説

 ハリケーンミキサー:バッファローマンの必殺技

 デビルバッファロー、ジェントルマン:それぞれバッファローマン、ロビンマスクのパロディ

 良い子の諸君!:チート能力の持ち主な四次元殺法コンビのネット上での発言。原作者のゆでたまごは著作権の侵害だと言っている模様。

 おまええをうわまわる600万パワー:いわゆるウォーズマン理論である。ベアークローを追加してパワーが2倍になるのなら、ベアークローのないウォーズマンは0パワーなのか?

 はしゃぐコイは池の鯉:胸のタイは抱かれたい

 大丈夫だ、ジェロニモンの力で生き返れる:でぇじょうぶだ、ドラゴンボールで生きけぇれるさ

 見た目は派手だが:機動戦士ガンダム第08MS小隊でのノリスの台詞。主人公シローとの戦闘経験の差が光る。

 ジャイアントスイング、首締め、ハンマー投げ:初代レッドキングの戦いを再現したもの。でもハンマー投げ=ジャイアントスイングとは違うのかな?トドメはは一本背負いじゃないのかな。

 レッドライバー:キン肉ドライバー


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怪獣娘は隣にいる

 作品タイトルをどうしようか迷う今日この頃。こんなに続けるつもりもなくってテキトーにつけてしまったからな・・・。


 シンジはひとりサロンにて、カチャカチャと工具と部品を弄りながら机に向かっている。ボロボロになったバディライザーの外装を外して、中の配線を整えている。

 

 「これで・・・ひとまずはいいか。」

 「おっ、もう直ったのそれ?」

 「ボロボロだったみてくれと、最低限の機能だけはね。本格的に使うにはもっといる。」

 

 とりあえず電源は入って、中のライブラリやデータを見ることはできるようになった。元々通信機能が付いていない機械だったし、データが見たければコンピューターで抽出すればいい話だったが。

 

 「一応ボディも応急処置ぐらいしたかったけど、こればっかりは新しいのに交換するしかないか。」

 「それで色だけ塗って誤魔化してるんだ?それなら持ち運ぶ必要もないんじゃない?」

 「なんかもう、愛着が湧いちゃったから。手放してると落ち着かないよ。」

 「それスマホ依存症って言うんだよ。」

 「通信も出来ないスマホか。」

 「それだって、スマホの画面が壊れたままでも意地でも使い続けようとしてるようなもんでしょ?」

 「いや、それはちょっと・・・まあそうだな。」

 

 少し改良を加えれば、通信ぐらい出来るようになるが、それをしたせいでなにかしらのバグが発生したりしたら大変なので手が付けられないでいる。実際通信には携帯かビデオシーバーで十分だし。

 

 「そういえば、カードが増えたんだよね?前は私とアギちゃんのしか無かったけど。」

 「うん、あの場所にいた怪獣娘さん全員と、それから・・・。」

 

 赤い怪獣カードの中で、一際目立つ銀のカード。そこに描かれているのは、光の巨人。

 

 「これがウルトラマンかー。怪獣の映像は見たことあるけど、ウルトラマンは初めて見たな。」

 「会ったのはウルトラマンだけじゃなかったんだけどな・・・。」

 「なに?」

 「ううん、なんでもない。」

 

 このバディライザーのルーツも含めて話すとなると、色々ややこしいので今日は説明はやめておこう。

 

 「それに怪獣カードもこんなに!30枚ぐらいあるのかな?」

 「あの場で手に入れたカードはほとんどブロンズだけどね。」

 「ブロンズ?」

 「カードの枠が銅の色のやつ。一番最初はそれが出てくるみたい。」

 

 僕と怪獣娘さんの、絆の第一歩。それがブロンズランクのカードとなる。

 

 「そこから次に進むと、シルバーになる。前のミカや、今はアギさんのがそうなってるはず。」

 「ホントだ、アギちゃん銀色だ。私のは?」

 「ミカのは金、ゴールドだ。」

 「おー!無事故無違反の証!」

 「免許じゃないんだよ。」

 

 順当に行けば、ブロンズの次にシルバー、その次にゴールドと来るところだろう。カードのランクによって、バディライドで引き出せる力もアップしている。

 

 「で、こっちの黄色いカードを使ったら、必殺技が出せるんだね。」

 「というより、ちょっとブーストをかけるだけみたいだけどね。必殺技自体はみんなが元々使えるはずだし。」

 「それもそうだね。けど、そのおかげで私もゼロシュートを使えるようになったんだよね。」

 

 必殺技を発動させる、というより『閃かせる』という表現があっているのかもしれない。元の怪獣だった頃の記憶や経験から、最適な行動を選択できるようにするのが、この技カードなんだろう。

 

 「ところで、このウルトラマンのカードにはどんな効果があるの?」

 「それもわかんないや。詳細なことは教えてくれなかったし。ただ、使わずに済んだらそれが一番じゃないかな。」

 「それもそうだけど、どうなるか興味ない?」

 「よしんば何か起こったとして、実害被るの主に僕だからやらない。」

 「えー、つまんないの。」

 「それはそうと、今は目の前の問題をどうにかしないと。」

 

 テーブルに7並べのように広げていたカードを仕舞い、すべてを腰に戻すと本題に入った。

 

 「レッドキングさんって、なにが好きなんだろ?」

 「やっぱ筋トレとかじゃないかな?都内一周マラソンとかどう?」

 「休日にまで訓練とかしたくないなぁ。それデートって言える?」

 「楽しかったらデートなんじゃないかな。レッドちゃんがどこ行きたいかも大事だけど、シンちゃんが楽しめる場所でもないとダメだよ?」

 「うーん、一理ある。」

 

 デートの場所=相手が楽しめる場所であっても、相手が楽しめる場所=自分が楽しめる場所とは限らない。勿論そういうところも纏めて飲み込めるのが人との付き合いってもんなんだろうけど、今はまだその前段階だ。軽ーくジャブで牽制してみるのもいいだろう。

 

 「僕だったらそうだな・・・最近なにかと忙しかったから、『癒し』が欲しいな、かわいい動物とか。」

 

 「と、いうわけで。」

 「なにがというわけなんだ?」

 

 時計の長針が3回ほど回ったところで。レッドキングさんと共に、場所はお洒落な店の立ち並ぶアーケードへと移していた。

 

 「で、どこに行くんだ?」

 「ここです、ここ。」

 「ここって・・・。」

 

 ファンシーなお家のような外観に、1時間1000円と書かれたオシャレな看板。そして窓から覗くモフモフな生命体。

 

 「猫カフェです!」

 「猫・・・ネコ・・・。」

 

 思わずにゃーん!と口にするところを思いとどまり、レッドキングさんの反応を窺う。シンジの目には無反応、というか放心状態のように映った。

 

 「レッドキングさん、ネコ嫌いでしたか?」

 「いや・・・別に嫌いじゃないぜ?・・・かわいいのはむしろ好きだし。」

 「OK!レッツゴー!」

 

 店内に入ると、休日なだけあって結構な客入りであった。老若男女問わず猫と戯れている。ドリンクを注文して適当な席に座ると、一口啜って話を切り出す。

 

 「お前、こういうとこ来たことあるのか?」

 「いいえ。猫カフェは無いですが、動物園のふれあい広場にならあるんですが。」

 「そことはどう違うんだ?」

 「うーん、猫だけじゃなくて、犬にも触れました。あとアルパカとかカピバラとか、プレーリードッグもいました。」

 「動物園か・・・最後に行ったのいつだったかな・・・?」

 「この前ミカと行ったのは、動物園もある遊園地でしたけど。やっぱり、生で見る動物もかわいいですね。写真や動画とも違って。あっ、ほら、ネコちゃん来ましたよ。」

 「おっ・・・。」

 

 トテトテと、白い毛におおわれた仔猫がやってきた。まだ小さいからか、色んなものに興味津々なんだろう。

 

 「かわっ・・・、ああっ。」

 「逃げちゃった。」

 

 いきなり手を出されてびっくりしたのか、仔猫は逃げて行ってしまった。

 

 「やっぱ、オレみたいなガサツなやつには懐かないのかな・・・?」

 「そんなことないですよ。レッドキングさん、私服もかわいいですよ。」

 

 パンツルックで活発そうな服装で、髪にはかわいいリボンがあしらわれている。

 

 「特に、髪型にはそうとうこだわってるんじゃないですか?その縦ロール、女の子らしくってかわいいと思いますよ。」

 「そ、そうか・・・?変じゃないか?」

 「ぜんぜん、その髪だったら服もロングスカートとか着ても似合うと思いますよ。」

 「そうか・・・似合うか・・・。」

 

 「よーし、じゃあこうしましょう。」

 「なんだ藪から棒に?」

 「今日はレッドさん『オレ』って言うの禁止で。」

 「はぁ?」

 「そんなにご自分の可愛さに気づけないのなら、もうちっと口調とか気を使ってみればいいんでは?と思って。」

 「なんでオレがそんなこと!」

 「はい、1ペナ。」

 「ぐぬっ・・・まだやるって言ってねえし・・・。」

 「じゃあ、これからやるんですね。」

 「そうでもなくってな・・・!」

 

 「あっ、また来ましたよ、さっきのネコちゃん。」

 「ん?」

 

 さっきの仔猫がまたやってきていた。楽しげな雰囲気を察して、惹かれてきたのかもしれない。

 

 (レッドさん、今度は触らずに、近寄ってくるまでじっとしてみましょうか。)

 (そうか、わかった・・・。)

 

 トテトテとレッドキングさんの足元まで寄ってきた仔猫は、すんすんと鼻を動かして脚をくすぐった。

 

 「あっ・・・。」

 (まだ動かないで・・・。)

 「ほっ・・・ほっ・・・。」

 

 やがて気に入ったのか、仔猫はレッドキングさんの膝の上に乗ってきた。居心地がいいのか、丸くなって動かなくなった。

 

 「か~っかっかっかっ・・・。」

 「もう大丈夫じゃないですか?触ってあげたら。」

 「お、おう・・・はぁ・・・。」

 

 背中や頭を撫でてやっても、今度は逃げずにいてくれている。レッドキングさんの顔も思わずほころんでいる。

 

 「かわいぃ~~~~♡」

 「よかったですね、レッドさん。」

 「なぁ~これすっげぇあったかいよ!この重さが、すっごい幸せだ・・・。」

 

 大怪獣ファイトの時や戦闘の時のような荒々しくも凛々しい先輩怪獣娘はなく、そこにいるのはただの可愛い物好きな女の子であった。

 

 (ここに来て正解だったな。)

 「なぁ、お前も撫でてみろよ。」

 「あっ、はい、じゃあ失礼して。」

 

 思った通り、毛は柔らかい。一見硬いと思いきや、思いのほか柔らかい。そしてなにより暖かい。

 

 「・・・おい。」

 「はっ。」

 「なんでオレを撫でるんだよ!」

 「あまりに可愛すぎたんで、つい・・・。」

 「アホー!」

 

 超音速の拳が、弁解を述べる口を強引に閉じさせて吹っ飛ばした。天井から青空が覗いてる。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「あなた、バカ?」

 「返す言葉もございません・・・。」

 

 翌日。今度はエレキングさんと、お洒落なカフェテラスでお話中。

 

 昨日は結局、お店に多大な迷惑をかけてしまい、うやむやなままにお開きとなった。なお、壊した建物の修理代などはGIRLSにつけておいた。

 

 「いくら親しい仲だからと言って、女性にみだりに触るなんて失礼よ。」

 「ミカとのなれ合いで、麻痺していたようです・・・。」

 「なら、もっと好感度を上げてから出直してらっしゃい。」

 (触ることについては否定しないのか・・・。)

 

 落ち着いた大人の雰囲気を漂わせるエレキングさんの言うことには、黙って従わざるを得ない『重さ』がある。その恰好も加味すると、なお一層の事だ。

 

 「エレキングさん、オフの日もスーツなんですね。」

 「ええ、私は普段からこの恰好よ。」

 「そのせいで、なんか学校の先生と面談してるような感覚ですけど。」

 「なら、先生の言うことは聞いてちょうだい。」

 「はーいせんせー。」

 

 曰く、いかなる時もTPOを選ばず、コーディネートを考える時間を削減できる選択らしい。なんつーか、テスト勉強のためにテキストのページを丸々暗記するような暴論である気もするが。

 

 というか、仮にも(仮じゃないけど)デートだってのに、ファッション選ぶ気もないって、それってつまり、僕との付き合いも仕事上の話でしかないってこと?ちょっとショック。

 

 「服装の話をするなら、あなただって普段からあのスーツを着ているんではなくって?」

 「はい、今も下に着てます。いつでも戦えるように。」

 「見せなくていいわ。」

 

 常に待機状態のS.R.Iスーツを着込んでいる。そのために、服は脱ぎやすいものを選んでいる。脱ぐだけなら少なくとも電話ボックスは必要ない。

 

 「でも、そのメガネは最高にクールっす。」

 「ありがとう。」

 

 シンジの正直な意見に一言だけ応え、温かいお茶をすすり、甘い香りの立ち込めるパンケーキにぱくつく。このお店の一番人気メニューが、この『帝王(ウルル)パンケーキ』だ。家で作る物よりも分厚く、それでいてふわっとしているスポンジに、生クリームやシロップがこれでもかとふんだんにかけられている、まさにスイーツのエアーズロックだ。

 

 「・・・ふっ。」

 

 ふと一瞬、エレキングさんの口元が上を向いたように見えた。本当に刹那で、見間違いかもしれないと思ったが、ただその一瞬だけ、目の前にいるのが年相応な女の子の素振りに見えた。その一瞬をもう一度見たくて、ついエレキングさんの顔を凝視していた。

 

 「なにかしら?」

 「いえ・・・頬にクリームが。」

 「あら。・・・ありがとう。」

 

 声をかけられたとき、鐘が響くように胸が高鳴るのを感じた。なんというか、不思議な魅力のある人だ、この人の瞳は、声は。

 

 「お待たせいたしました、こちら『アイゼンパフェ』になります。」

 

 「おっ来た来た。これ一回食べてみたかったんですよ。」

 「そう。」

 

 シンジが注文したのは、イチゴの赤とメロンの緑が特徴的な大きなパフェ。一人分とするには、少々大きすぎる。

 

 「注文できるのが『カップル限定』だったかしら?」

 「そうそう、そのためのスプーンもふたつ。どうですか?一口。」

 「結構よ。」

 「さいですっか・・・。」」

 

 おいしっ、と口へと放り込んでいく。甘いはずのクリームが、ちょっとしょっぱく感じるのは気のせいだろうか。

 

 「それが食べたかったのなら、最初からゴモラとここに来ればよかったのではなくて?」

 「ミカと一緒だと、大抵ソース味のものになるので。タコ焼きも嫌いじゃないんですが。」

 「ならなおさら、たまに別の物をって提案するべきじゃないのかしら?」

 「いやーでもその、なんというか、ミカと一緒にいる時は、タコ焼きが食べたくなるんです。金曜日には必ずカレーを食べるとか、最初の一報は信じてもらえないとか、右顎は必ず折られるとか、そんなお約束なんです。」

 「そう。仲が良いのね。」

 

 食べ始めると、会話が弾まなくなる。元々弾むほどの会話のキャッチボールをしていたわけじゃなかったけど、食べながら喋るのはマナー違反だって言われそうで言い出せない。なのでもくもくと目の前の山に挑む。クリームばかり食ってちゃ胸焼けして体に悪いぜ、間・・・間にフルーツを食べるんだ。お茶もちょっと渋いぐらいがいい。

 

 「・・・。」

 「どうしました?じっと見て。」

 「・・・メロン、もらっていいかしら?」

 「どうぞ、はい。」

 

 はい、とやってはたと気が付いた。今、自分の手はどこを向いているのか。そのスプーンは誰のものか。

 

 「・・・いただくわ。」

 「ごめんなさい・・・。」

 「なにが?」

 「いえ、なんでも・・・。」

 

 つい(・・)、『いつもの癖』で、相手に『食べさせて』しまった。自分のスプーンで、相手の口に。

 

 エレキングさんは何事も無かったかのように自分のパンケーキに戻っていった。慌ててお花摘みに行かれたとか、そんなことされたりしたらもう泣いてたね。

 

 「・・・。」

 

 じゃあ、このスプーンはどこに置こうか?自分も何事もなかったかのように使い続ける?それとも、あらかじめ用意されていた、もう一本のスプーンに持ち替える?どっちをやっても気まずくなるだろう・・・。

 

 「・・・じゃあ、持って帰る?」

 「ダメよ。」

 「はいせんせー。」

 

 どうしよう、甘さに舌が痺れてきたのかな、味がしなくなってきた。コーヒーが足りない。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「へー、そんなことが。やっぱ疲れるよね、あの人とタイマンなんて。」

 「別に喧嘩してたわけじゃないんだよ?」

 

 翌日。ミクさんとアリーナにて。今日は新必殺技の開発に付き合うこととなった。遠巻きにアギさんとウインさんもいるが。

 

 「それにしても、いやな天気だね。」

 「一雨来そうだね、早いとこ完成させよ?」

 「おっけー!じゃあこっちに向かって走ってきて!」

 

 曇天の下、特訓が開始された。

 

 「これってデートって言えるのかな?」

 「本人たちが楽しめているなら、デートなんじゃないでしょうか・・・。」

 

 ミクラスは、突進してくるシンジをラリアットでかちあげ、空中で足を掴んでブレーンバスターの体勢に入る。

 

 「とりゃー!」

 「ゲェッ!」

 

 ズガーン!と地面に脳天を突き立てられる。ちょうどこれと似たような状況を、つい先日目の当りにしたばかりだ。

 

 「うーん・・・レッドキング先輩のみたいに綺麗に行かないなぁ・・・。」

 「無理に再現する必要ないんじゃない?」

 「でもアタシもなんかオリジナルの必殺技欲しいし!なんか参考になるかと思ったんだけど。」

 

 そこまで行くまでにシンジの体が持つかはともかく。大怪獣ファイターとして活躍するミクラスにとっては、これは大きな問題だろう。レスラーたるもの、フィニッシュホールドの一つ持っていなければならない。

 

 「でもアタシ、頭使うの苦手だし。」

 「その為に僕がいるんでしょ?決してサンドバッグやカカシの目的で連れてこられたんじゃなし。」

 「なにかいい案ある?シンジさん。」

 「そうだな・・・。」

 

 実際のところ、多少強化はされどシンジには怪獣娘ほどの超パワーは持っていない。それゆえ、シンジに出来ることは人間のプロレスの延長線上でしかない。

 

 「だから、最大限怪獣の力を振るうには、ミクさん自身のひらめきが必要になると思う。」

 「人任せじゃいられないってことだね、わかった。」

 「それで、両方のドライバーを受けた身としての意見だけど。」

 「ふんふん。」

 「なんというか、レッドキングさんのはかなり『加減』されてた気がする。」

 「加減?手加減ってこと?」

 

 「手加減もそうだし、なによりコントロ-ルされてた。バランスや角度を正確に、地面に突っ込まされたって感じ。ミクさんのは、メチャクチャ力任せに叩きつけられてたって感じだった。」

 「えー、それこそ力こそパワーじゃん?」

 「えっとね・・・どんなに肩力があっても、それをストライクゾーンに投げられなきゃ名ピッチャーにはなれないんだよ。レッドキングさんの技は、力任せなようでその実かなり計算されてるよ。」

 「そうなのか・・・。」

 「あのレッドドライバーは、乱戦で出せる技じゃないや。トドメの一押しの、決まれば確実に勝てる、まさしく『必殺技』なんだ。」

 

 要は戦闘開始初っ端から放った光線技が弾かれるのと一緒。

 

 「ミクさんには、どっちかっていうと乱戦中からチャンスをもぎ取るようなタイプの技がいいんじゃないかな?スピアータックルでマウントとるとか、バックブリーガーで離さないとか。」

 「なるほど・・・じゃあさっそく試してみようか!」

 

 習うより慣れろとも言う。さっそく訓練にとりかかる。

 

 「でりゃー!」

 「ゲェフッ!」

 

 タックルからのパワーボム、ジャイアントスイング。バッファローの脚力と膂力を持って、反撃する隙を与えない技のラッシュ、ひとまずは形になってきた。

 

 「うん、なんか習得できたかも!」

 「そりゃよかった、付き合った甲斐があったってもんだ。あいたたた。」

 

 体の節々が痛むけど、それは別に構わない。この笑顔には変えられない。

 

 「じゃあ、次はアタシがシンジさんの技に付き合うよ!」

 「そう?そうだな・・・ちょうど色々試したいものもあったから、それでもいいかな?」

 「おーけーおーけー!」

 

 そいじゃさっそく・・・と、シンジは一つのガジェットを取り出した。

 

 「なにそれ?銃みたいだけど?」

 「そう、銃。やっぱり丸腰で戦うのもなんだと思って、ちょっと作ってみたんだ。『ライザーショット』ってところかな。」

 

 シリンダーを引いてカートリッジを詰め、腰にマウントされているバディライザーに、カードを一枚挿入する。すると、一瞬だけ光のケーブルがカートリッジと接続して、エネルギーを供給する。

 

 「今のカードって、ウインちゃんの?」

 「うん、ウインダムのレーザーショットの力を、このライザーショットで再現するんだ。今はレーザー撃てるってこと。」

 

 適当な岩に狙いを定め、トリガーを引くとレーザーショットが発射され、岩が爆散する。

 

 「へー!すっげーカッコイイじゃん!」

 「でしょ?怪獣の力だけじゃなく、カートリッジ交換で麻酔弾や冷凍弾も撃てるんだ。種類があったら鎮圧とか、なにかと便利でしょ。」

 

 カードがなくても普通のショットとかも撃てる。怪獣娘由来の力なら、シャドウにだってきっと効果があるだろうという算段だ。

 

 果たしてこれが、怪獣娘の力を兵器として転用するという、以前から抱いていた懸念事項に引っかかるかはさておいて。

 

 「じゃあ、ちょっと戦ってみようか、模擬戦。」

 「おっけー!またやっつけてやるじゃん!」

 「僕だってやられっぱなしじゃないよ。」

 

 パンッ!と拳同士をぶつけて意気込む。毎度ボコボコにされているけれど、さりとてこれ以上負けたくないと思い、また無謀にも挑んでいく。

 

 それでも日々様々な策を弄しては、皆をあっと驚かせるようなものを投じてくるのは進歩と言えよう。

 

 「いっくぞー!まずは顔面にボディブローだ!」

 「どっちだよ!」

 

 振るわれた腕をとって、小手捻りで軽くいなす。

 

 「銃使わないんだ・・・。」

 「なんか、いざ撃とうと思ったら申し訳なくなっちゃって。」

 「気にしなくていいよ、練習になんないじゃん。それに、同じ怪獣娘にだって飛び道具持ってる人はいるし。」

 

 ミクラスにとっても、飛び道具への対処の掴み方にはなる。ならば遠慮なくと、

 

 「構えて、撃つ・・・!」

 「させるかおりゃー!」

 

 シンジは冷静に狙って撃ったつもりだった。が、突進してくるミクラスに当てられなかった。

 

 「ぎゃっ!」

 「もいっぱつ!ハリケーンミキサー!」

 

 対象が近くに寄ってくると、焦って照準がブレやすいという。この辺りは射撃の腕前以上に、いかなる時も平常心を忘れない、精神力の問題となるだろう。空中に放り投げられながら心の中でかみしめる。

 

 「レーザーショットなら、薙ぎ払って使うことも出来る!」

 「くっ!」

 

 シンジの反撃に、ミクラスは歩みを止めてしまう。そうなれば、ますます集中砲火の餌食となる。

 

 「このまま押し切れるか・・・?!」

 「なんのー!まだまだ!」

 

 ミクラスは拳でレーザーを弾きながら、無理矢理突破してきた。とて、それを予測できないシンジでもない。

 

 「接近戦になると、レーザーは使いにくいか・・・。」

 

 冷静に冷静に、かわして避けて退く。シリンダーを引いて、カートリッジを交換する。今度は怪獣娘の力を借りない半面、反動の少ないレッドショット光弾に切り替える。試しに当ててみるが、しかしひるむ様子もない。

 

 「威力が足りないか・・・なら。」

 

 再び振るわれる拳を受け止め、今度は銃口を突き付けてゼロ距離射撃を試す。

 

 「ちょっとは効いた?」

 「ぜんぜん、へっちゃらだし!」

 

 おかえしにとボディに強烈な一撃をもらう。効かないと言われたが、やせ我慢だと思う。少しプルプルしている。

 

 「なるほど・・・ちょっとわかった。」

 「なにが?」

 「銃を使うにしても、相性があるってこと。ミクさんみたいな頑丈なタイプには、効果薄いのかも。」

 

 ライザーショットを仕舞い、立ち上がって息を整える。

 

 今回見れたのは銃そのものの性能と有用性。そこに使用者の技能が合わさって、初めて戦力になったと言えるだろう。つまり、要練習、要研究。

 

 「じゃあ、もうやめる?」

 「全然、性能テストと勝負はまた別だし。」

 「そうこなくっちゃ!シンジさんもなかなかのバトルマニアになってきたね?」

 「いつまでも、守られっぱなしってわけにはいかないからね!意地があるんだよ。男の子には!」

 

 研究していたのは武器だけじゃない。技の修練にも余念はない。相変わらずのプロレス技主体だが、その組み合わせ方は無限大だ。

 

 「じゃあ今度はこっちが!バッファフレイム!」

 「うぉっ!そういえばミクラスは熱線を吐けるんだった!」

 

 ミクラスの資本は格闘能力にあるだろうが、かといって遠距離攻撃にも隙が少ない。パワー重視のオールラウンダー、思えばかなりの強敵を相手にしているんだと、己のうかつさを嗤った。

 

 「けど、こっちには作戦があるんだ!」

 

 スーツの青い機能を発揮させ、スピードを上げる。瞬発力ならばミクラスが勝るかもしれないが、全体的なスピードには今のシンジに軍配が上がる。

 

 「将を討たんとするなら、まず馬を射よ!」

 「なに?しょー・・・ショーウィンドウ???」

 「ちがうわっ!まずフランケンシュタイナー!」

 

 一気に詰め寄り、足で相手の首をとって振り落とす。仰向けで地面に倒れた相手の片足を掴み、一回、二回、三回とそこを軸に回転して締め上げる!

 

 「スピニングトーホールド!」

 「あぎゃー!!」

 「続いて!」

 

 さらに相手をひっくり返してうつ伏せにし、もう片方の足も巻き込んで固める!

 

 「テキサスクローバーホールド!」

 「こ、この技は・・・『テキサスキッド』の・・・!」

 「そうさ!足を徹底的に痛めつけるのさ!」

 

 あらゆる攻撃、あらゆる格闘技において、足運びが重要なことは言うまでもない。その足を破壊して、徐々に有利な状況を作っていく。相手が武器を持っているなら、まずはその武器を奪ってしまえばいいのだ。

 

 「決してあきらめず、最後には勝利をもぎ取る、それが僕の好きなテキサスキッドさ!」

 「なるほどね・・・けどデビルバッファローのほうがパワーは上だよ!!」

 「テクニックはテキサスキッドの方が上さ!」

 

 もがくミクラスを制し、さらにギリギリと締め上げる

 

 「ぐっうぅ・・・さすがにこれはキツイ・・・かも・・・。」

 「どうだ!まいったと言え!」

 「まだ・・・まだまだぁ!アタシだって・・・もっと強くなるんだ!うぉおおおおおおおおお!!」

 

 吠えるミクラス、それに呼応するように全身が熱く燃える。

 

 「バッファローパワー!!」

 「ぐぅう・・・こんなパワーが・・・!」

 

 持っていた足に、強引に振りほどかれ、たまらずシンジは飛び退いて様子を窺った。

 

 「なんてすごい・・・だけど、十分にダメージは与えたはず!」

 「アタシに・・・限界はない!!」

 

 両腕を、前脚のように地面に叩きつけ、ロケット頭突きでシンジの足を掬う。空中に投げ出されたシンジに、さらに頭突きの追撃を行う。

 

 「ハイ!ハイ!ハイ!ハイィイイ!」

 「ぐわぁあ・・・!押され・・・るっ!」

 「いける!今ならいける!」

 

 その時、ミクラスに電流走る。天啓を得た、新たな技のひらめき!

 

 両腕と、傷ついた両脚も総動員して、ロケット頭突きに回転を加える。宙を舞うシンジの背中を、その逞しいツノが捉える。その状態から、タケトンボのようにきりもみ上昇し、その頂点でシンジの頭を掴み、神の鎚のように大地へと振り落とす!

 

 「バッファロー・・・ストーム!」

 

 

 

 

 しかし、その振り下ろす直前、本物の雷が2人を直撃して、技は不発となり、仲良く墜落することとなった。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「さぁー今日も張り切っていこー!」

 「いや本当に大丈夫なんですか?昨日雷落ちてましたよね?!」

 

 翌日。今日はウィンさんと映画を観に行く予定だった。

 

 「どうやらあの瞬間、ミクさんが潜在パワーを発揮したことによって、『あの場で最もトガった物体』として認識され、雷に狙い撃ちされたらしい。」

 「どんな理屈ですか。」

 

 そんなバカな、とあきれるウインダムをよそに、シンジはずんずんと歩を進めていく。その眼は渦を巻いて正気を失っているようにも見える。

 

 「で、今日は『おまピト』の劇場版の再上映だっけ?」

 「そうなんです、当初の予定より半年以上延長されたロングランから、さらに今回リバイバルまで決定したんですよ!」

 「快挙だねー。」

 「それよりもシンジさん!しっかり予習はしてきてくれましたか??」

 「漫画は全巻読んだし、アニメも一通り見たよ。OVAと小説は見てないけど。」

 「それだけあれば大丈夫です!さあ行きましょう!」

 (Wikiとかで先にネタバレ見ちゃったんだよなぁ・・・。)

 

 公開当時、ウインさんはひと悶着あったらしいけど、今はこうして楽しくやってるんならいいんじゃないかな。

 

 「上映時間になってからが長いよね。」

 「え?」

 「いやさ、映画ってまず宣伝から始まるじゃん?新しい映画とか、映画館そのものとかのCM。それだけで20分ぐらいあるよねって。」

 「ああ、ありますね。」

 「その中でも、明らかに映画そのものの対象年齢から外れてるような広告とか見ると、なんだかなぁ・・・ってなったり。」

 「ありそうですね、そういうの。」

 「明らかに対象年齢『下』だろって、思ったり。」

 「『下』?・・・ああ、そっち(・・・)の。てっきり『上』かと・・・。」

 「なに?」

 「いえ、なんでもありませんアハハ・・・。」

 

 ・・・。3秒考えてシンジも悟った。

 

 「ああ、そういうことね。ウインさん、女児向けアニメとかも見るの?」

 「え!?あ、まあ、結構・・・ネットとかでもよく話題になりますので、一応。」

 「決して子供向け作品が幼稚とか、そう言いたいわけではないよ?実際子供向け作品って、侮れないぐらい面白かったりするし。」

 「そう・・・ですよね、いつ見ても面白いですよね。」

 「子供向けだからこそ、大人も本気で作ってるんだなって、そう思う。」

 「おまピトだって負けてませんよ、子供向けじゃないかもしれませんが、製作者から作品への愛を感じます!」

 「・・・中高生向けじゃなかったっけ元々、おまピト?」

 「あっ・・・そうですね、中高生も子供ですよね、アハハ・・・。」

 

 「えっと、つまり何が言いたいかっていうと、誰が何を好きなのかなんて、結局自由なんだって。それだけ。」

 「私も・・・そう思います。今度は、シンジさんの好きなものをオススメしてくださいね。」

 「と言っても、好きな漫画といえばマッスルマンぐらいだけど・・・。」

 「ミクさんも好きって言ってましたね。私も興味あります!」

 「そっか、じゃあオススメのシリーズは・・・。」

 

 ~2時間後~

 

 「面白かったね、原作愛に溢れてたと思う。」

 「そうでしょう!そうでしょう!!特にあの一話のあのシーンがリフレインして・・・。」

 

 リバイバルにあたり、追加された新グッズを手に劇場を後にした2人。

 

 「なにか軽い物でも食べますか?」 

 「そうだね、さっきポップコーン食べたけど、今度はなにかしょっぱいものが食べたいかも。」

 

 ファーストフード店でポテトとクリームソーダを注文した。クリームソーダは魔法の飲み物だ。何歳になってもその甘美な誘惑には勝てない。

 

 「ソーダに氷を浮かべておかないと、アイスが沈んでとけちゃうから、家で作るときは気を付けようね。」

 「外は寒いのに、アイス好きなんですか?」

 「どっちかっていうと、クリームが好きかな。」

 

 んー♡と甘いのを口にしては、しょっぱいポテトを味わう。交互に食べることで違う食感を味わうのだ。

 

 「なんというか、幸せそうに食べますね。」

 「うん、おいしいよ。ウインさんもアイス一口どう?」

 「えっ。あー・・・じゃあ一口だけ。」

 

 コーヒーのマドラーでアイスクリームを掬い、はむっと頬張る。口の中でじゅわっと溶ける甘味に頬が綻ぶ。

 

 「なんていうか。」

 「はい?」

 「今までで一番デートらしいデートをしている気がする・・・。」

 「大変・・・だったんですね。」

 「うん、大変だった。」

 「でもみなさん、それだけシンジさんのことを信じてるってことじゃないでしょうか?シンジさんのこともっと知りたいって。」

 「そう思ってくれてたら、嬉しいかな。」

 

 「・・・シンジさんって。」

 「うにゅ?」

 「力を恐れたことって、ありますか?」

 「いつも恐れてるよ。コレに関しては特に。」

 

 パンパン、と上着の上から腰を叩く。

 

 「封印することも出来るかもしれないけど、それでもやっぱり逃げきれないと思うし。だからもう、一蓮托生って思ってる。」

 「・・・強いんですね、シンジさんは。」

 「そんなことないよ、みんながいるおかげ。」

 「・・・こんなこと、言われても困るかもしれないんですが。」

 「聞くよ、悩みごとでも懺悔でも。」

 「私、以前は周囲と壁を作ってたんです。こんな趣味してるから、相入れないだろうって思って。」

 

 「そのせいで、この映画が最初に放映された時、暴走しかけてしまって。本当に自分が情けなくって。もしも他に誰か、同じ気持ちを共有できる友達がいたら、もっと違ったのかもしれないなって、今になって思ってて。」

 

 「あんな・・・あんな下らない理由なんかで、暴走しかけたってことが、なんだか恥ずかしくって。」

 

 「下らなくは、ないでしょ。」

 「・・・。」

 「下らなくはない。僕だって、小さいとき、そのマッスルマンのテキサスキッドが死んじゃった時は本当にショックを受けたんだ。今だってそう、好きな女優さんが結婚したり、好きなシリーズの打ち切りが決定したときは落ち込むよ。ウインさんの場合、それがたまたま当たり所が悪かったってだけでしょ?それに今はもう乗り越えられたんだろうし。」

 「それは・・・。」

 「あの映画、本当に面白かった。特にラスト5秒のパスラッシュからの逆転ゴールには、思わず息をのんだくらい。試合にどんなに負けそうになっても、最後逆転しちゃえばOKってことだよ!それにこの興奮を教えてくれたのは、立ち直ってくれたウインさんじゃん。」

 「・・・あっ。」

 「その・・・正直言っちゃうと、最初はウインさんのことを知りたいって思って読んでた。けど今は純粋に、僕もおまピトのファンになったよ。ウインさんが教えてくれたおかげで。本当に、ありがとう。」

 

 「だから、これからもよろしく。」

 「・・・はいっ。」

 

 ぎゅっと、固い握手を交わす。今ここに、同じ星(おまピト)の下に強い同盟が結ばれた。

 

 「ふふっ、それにしても・・・。」

 「なに?」

 「ゴモたんさんと同じようなことを言うんですね、シンジさんも。」 

 「・・・どこが?」

 「人生ショックなことぐらいあるってことと、次から気を付ければいいってところです。」

 「・・・かなわないなぁ、ミカには。」

 「ふふふ、がんばってくださいね、シンジさん。」

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「・・・王手。これでどうだ?」

 「ふぐっ・・・。」

 

 パチン、パチンと駒を弾く音がサロンに響く。

 

 「さぁ、今度こそ勝った。」

 「いや、まだまだ。シンジさん嘘吐いてるから。」

 「僕が嘘?」

 「シンジさん嘘吐くとき、指組むから。まだどこか詰めれるってことだ。」

 「ぐぬっ、なら逆転してみせい。」

 「望むところ。」

 

 前回の対局との違いは、現状シンジが優勢だということ。アギラは盤面をじっと見て考え込んでいる。

 

 「こっち・・・かな・・・?」

 

 アギラは、自分が駒のひとつに手を伸ばしたその時、一瞬シンジの口角が動くのを見逃さなかった。

 

 「やっぱこっち。」

 「あ゛ぁ゛っ゛!?」

 

 一瞬の油断が命取り。

 

 「なんでだよ、なんなんだよ、一度ぐらい勝たせろよ・・・。」

 「ゴメン、勝負は真剣だから。」

 

 「っていうか、なんかごめんね。せっかくデートだっていうのにどこにも行かなくって。」

 「ううん、ボクもゆっくりするのが好きだから。シンジさんも疲れてるでしょ?」

 「まあ、毎日大変だったからね・・・。」

 

 ずずっとお茶をすすって一息つく。連日ハードワークの体を気遣ってくれてか、GIRLS本部での遊びを提案してくれた。やることと言えばボードゲームぐらいなものだが。

 

 「バディライザー、もう直ったの?」

 「いや、もうすぐ発注してたパーツが届くから、それに交換したら終わりかな。」

 「そんなことできるの?」

 「うん、ほとんどのパーツはごくありふれたものだったし、それに勉強したからね。特別なのは一個だけ。」

 「シンセナイザー、だっけ。」

 「うん、バディライザーの中核部分にして、ブラックボックス。」

 

 自分の指先よりも小さいようなちっぽけなパーツに、世界の命運を左右するほどの威力を秘めている。

 

 「シンジさん、ちょっと詰め込みすぎじゃない?」

 「なにが?」

 「毎日、怪獣娘と会ったり、勉強したり、体を鍛えたり、もうちょっと自分の体をいたわったら?」

 「うん、よく言われるよ。けど、どれだけやっても、どれだけ研鑽を積んでも、足りないような気がして。」

 「足りない分は、ボクたちが補えばいいんだよ。もっとボクたちを、頼ってね。」

 「うん、ありがとう。」

 「・・・ホントにわかってる?」

 「わかってるよ。」

 「嘘、また指組んでる。」

 

 シンジは自分の手を見て、あわててパッと離した。

 

 「シンジさんみたいな、人の事を頼りにし辛いヒトのことは、よくわかるよ。他人の事を信じてないわけじゃなくて、それ以上に自分を信じてないってこと。」

 「ほ?」

 「自分に自信が無いから、自分で何もかもやらなきゃいけないって重圧に考えてしまう、そうでしょ?」

 「まぁ・・・たしかに。」

 「けど、それを補い合ってこその仲間でしょ。ボクに出来ないことを、みんなや、シンジさんがやって欲しいんだ。」

 「・・・じゃあ、今度一発芸フラれたら、アギさん身代わりなってね?」

 「えぇ?!・・・って、ボクは真面目に話してるんだよ!

 「ごめんごめん、わかったよ、今度こそわかった。」

 「ほんとにぃ?」

 

 大事なことだけど、すぐ忘れそうになる。けど、忘れた時には思い出させてくれる。一人じゃないって。

 

 「ほんとのほんと。アギさんの寝ぼけ眼見てたら、安心してきたよ。」

 「んもー、地味にひどい事いってる。」

 「ごめんごめん・・・なんだか、僕も眠くなってきたや。ごめんね、せっかく一緒にいるのに。」

 「ううん、それじゃあ・・・。」

 

 「ひ、膝枕、してあげよっか?」

 

 「・・・なんだって?」

 「もー!人がせっかく勇気だして言ったのに!」

 「ごめん、ごめんって。いいのほんとに?」

 「ボクがいいって言ってるんだから、いいに決まってるじゃない。」

 「そっか、じゃあ・・・お言葉に甘えて・・・。」

 

 とはいうが、内心シンジもバックバクだった。女の子の膝、どことは言わないが、女の子の大切な部分に色々と近づいてしまう。多分、普通にハグするよりも緊張するんじゃないだろうか。けど、アギさんの好意をフイにするわけにもいかない。さっき言われたばかりだ、ちょっとは甘えろと。だから、シンジもちょっと歩み寄ろう。

 

 「失礼、します・・・。」

 「ど、どうぞ・・・。」

 

 ほどよく柔らかく、そして暖かい。自室のベッドの枕とも違う感覚、けれど安心感がある。

 

 「あぁ・・・。」

 「ど、どう?」

 「至福・・・。」

 「そう、よかった・・・。」

 

 こんな感覚、最後に味わったのはいつだったろうか。いつか、ミカと抱き合った時とも違う、もっと柔らかい羽毛に包まれるような、元始に回帰するような、懐かしく暖かい光・・・。

 

 (あぁ・・・これだ・・・僕が欲しかったもの・・・。)

 

 本当に、アギさんには何もかもを見透かされる。不思議な人、とても大切な、僕の仲間・・・。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「おはよーシンちゃん!大変だったね!」

 「あー、ミカか・・・。」

 「なにさ!ミカか・・・って!ほかの女の子に夢中だから、幼馴染はもう眼中にないっての?釣った魚に餌やらんの?」

 「なにそれ、意味わかんない。」

 

 翌日、やっと平穏が戻ってきた。今日は、なにかしらをやるものの、なにもない日だ。今日の午後にはバディライザーのパーツも届く予定だし、それまでにもう少し修正する箇所があったので、そこを詰めるもよし、あるいは体を動かすのもいい。とにかくフルに使う。

 

 「それよりもシンちゃん!お楽しみだったんじゃない?」

 「ん?そうだね、色々あったけど楽しかったな。また約束出来たら、一緒に遊びに行きたいかな。」

 「そっか、ところで、あと一人誰か忘れてない?」

 「あと一人?」

 「そう!あと一人、大切な人のこと!」

 「うーん・・・。」

 

 ポク、ポク、ポク、チーンと頭を回してひらめいた。

 

 「そっか、ピグモンさん。ピグモンさんにはいっつもお世話になってるから、何かお返ししないと。」

 「そうじゃない!そうだけどそうじゃないよ!」

 「違うの?じゃあ・・・ゼットンさんとか?でもゼットンさん、そういうの断りそうだしなぁ。」

 「ちがうよ!」

 「違う?じゃあベムラーさん。『仕事だから』って割り切られてそうだけど、やっぱり何かお返しもしたいし。」

 「もー!わざとやってるでしょ!」

 「わざともなにも、この前行ったばっかりでしょうが!」

 

 もはや漫才のようなかけあいだった。

 

 「違うの!みんなと行ったんだから、次は私にも同じのが欲しいの!」

 「同じのって?」

 「ネコカフェ行って、喫茶店行って、バトルして、映画観に行って、膝枕してもらうの!アギちゃんに。」

 「最後のはアギさんに頼みなよ。」

 「とにかく!絶対行くの!今すぐ!」

 「いつかは行ってあげるけど、今日は勘弁して。もうクタクタだから。」

 「ホント?じゃあ明日行こうね!」

 「明日?全部?」

 「イエス!」

 「・・・わかった、他ならぬミカのお願いなら、一緒に行こう。」

 「えっ、ホントに?」

 「えってなんだえって。」

 「だって、疲れてるんでしょ?無理してくれなくって、いいんだよ?」

 「無茶だけど、無理じゃないよ。ミカと一緒に行きたいって思ってたのは事実だから。」

 「!!!!んもぉ~!!シンちゃん大好き!じゃあ明日ね!約束ね!」

 

 ついつい、軽はずみで約束をしてしまった。けどまあいい、明日を楽しみにして、今日を過ごそう。

 

 

 

 

 

 そして、翌日。時計は午前6時。

 

 

 

 

 

 「シンジ様、お目覚めください。」

 「ふぁ・・・なに?自分で起きられるよ・・・?」

 「朝早くから失礼致します。お客様がお見えになっておいでです。」

 「お客?」

 

 お客、って表現はミカには当てはまらない。顔パスで玄関を通って、部屋にまで上がり込んでくるのがいつものミカだ。それに、こんなに早い時間に突撃してくるなんてことは今までなかった。

 

 「わかった、すぐ着替えるから、ちょっと待っててもらって。」

 「それまでに、温かいスープなどはいかがでしょうか?」

 「あー、一杯だけ食べるよ。あとパンも一つ。」

 「承知いたしました。」

 

 いそいそと支度をし、軽い朝食を流し込むと応接室に急ぐ。

 

 

 ドアノブに手をかけたとき、何かを感じ取った。

 

 

 これはまた、長い一日が始まるのかもしれない、と。

 

 (鬼でも蛇でも、シャドウでも怪獣でも何でも来いだ。)

 

 窓から取り込まれた、朝の陽ざしがシンジをつつんでいく・・・。




 クロゥリア出ねぇ・・・しかもその直後にシンシアも来た。さらに怪獣娘コラボも控えている。果たしてこの先生きのこれるのか。

 そうそう、ジード試写会行ってきました。ネタバレ:面白い。ここでこうくるかーっ!てなるポイントとか、見所満載でした。上映後のトークショーには、りっくんと、飛び入りでジャグジャグも来てくれました。りっくん、本当に大きかった・・・。

 ネタ解説

 唐突に始まるガジェット解説:よくある総集編回。昭和特撮、特にメタルヒーローには一度はヒーローのスペックを説明する回があったと思う

 カードについて:元ネタはDC大怪獣バトルシリーズのカードから。怪獣カードのランクは、裏面の怪獣の背景の色から。

 ネコカフェ:レッドキングさん、可愛い物好きでもこういうところは行ったことないかも。

 好感度を上げて出直してらっしゃい:モン娘は~れむのホーム画面にて、エレキングさんにタッチしまくると叱られる。モン娘は~れむにおいてエレキングさんは、魔王(主人公)のことを調べれば調べるほど、自分のことがわからなくなってくる・・・という。

 電話ボックス:元祖スーパーヒーローとも言えるスーパーマンが、クラーク・ケントからスーパーマンに変わるときは電話ボックスを使っていた。最近デッドプールがそのパロディをやっていたのが記憶に新しい。

 帝王パンケーキ:アイゼンボーグの恐竜帝王ウルルから。エアーズロックの別名がウルルなことも含めたダブルミーニング。モン娘は~れむでエレキングさんを進化すると、立ち絵でパンケーキに舌鼓を打つエレキングさんが見れるぞ。

 アイゼンパフェ:善と愛の橘兄弟がアイゼンクロスすることで、アイゼン1号はアイゼンボーグ号になり橘はアイゼンボーグマンになる。メロンとイチゴで緑と赤をイメージ。

 マッスルマン:戦いの中でわかり合い、そして互いを高め合うというスタンスがキン肉マンの基本である。大怪獣ファイトに限らず、色んなバトルものにおいても好ましいスタイルである。

 ライザーショット:デザイン的にはジェクターガンとかダッシュライザーとかの系譜。

 拳でレーザーを弾きながら突進:サンダーブレスター初登場回の3連マガ迅雷弾きのシーンから。ここすき。

 テキサスキッド:テリーマン。

 鬼が出るか蛇が出るか:ダイナ最終2話のアスカの台詞。のちに演じるつるの氏が某クイズ番組に出た時、この経験を生かして答えることができた。


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大変!キョウダイが来た!

 ちょっとだけ作品タイトル変えました。果たしてこれしか思い浮かばなかったのか。

 というか、よくよく考えたら作品説明文も大分間違っている。そうとう不可思議空間だぞこの世界。


 やめて!わたしのために争わないで!

 

 漫画とかでよく見る台詞だ。どんな漫画にあったシーンかはよく思い出せないがさておき。しかしこの場面の中心で叫んでいるキャラクターは相当腹黒だと思われる。二人の人間が、自分を取り合って争うさまを眺めながら悦に浸っているように見える。

 

 「双方、矛を収めよ!家主の御前であるぞ!」

 「シンちゃんはちょっと黙ってて。」

 「・・・。」

 

 いつになくビリビリとした殺気を立てるミカと、もうひとり。ゴゴゴゴゴ・・・と無言の威圧感を醸し出すのは、謎の少女。

 

 「説明しよう。」

 

 今からおよそ2時間前のこと。応接室にやってきたシンジは、その来客に会った。

 

 「お待たせいたしました。」

 「・・・。」

 「どうも、こんな朝早くから・・・。あなたは、たしか。」

 「・・・。」

 

 なにを言っても黙りこんでいるが、父の写真に写っていた少女。写真と同じ、白いワンピースを今は着ている。

 

 目を引いたのは、その瞳だった。まるで生気を感じない、深い海溝の底のような暗さがあった。じっと見ていると吸い込まれそうな深淵がそこに開いていた。髪は黒と白でグラデーションかかったような色をしている。長くもなく、短くもない長さだが、とても綺麗な艶をしていた。

 

 ただ、彼女は不思議な雰囲気を醸し出している。写真で見た時よりも、ずっと引きよせられるような魅力があり、それがかえって怖かった。いかんいかんと、邪な考えを打ち切って席に着く。

 

 「それで、なんの御用?父は一緒ではない?」

 「・・・。」

 「手紙?」

 

 スッと一通の手紙を差し出してきた。封を切ると、そこに書いてある字は、以前の父からの手紙のものと同一の物であった。

 

 「えーっとなになに・・・『その子の名前はアイラ。お前の義妹になる。私は好きにした、君らも好きにしろ。』・・・どうしろっちゅうじゃい。」

 

 パーン!と手紙を投げ捨てる。と、したところですぐに拾いなおして読み直す。

 

 「えーっと、君はアイラって言うんだね。」

 「・・・。」

 「なんかリアクションが欲しい。」

 「・・・。」

 「なにか食べる?」

 「・・・。」

 「困ったなぁ・・・。」

 

 とりあえず、チョーさんに何かつまめるものを出してもらい、なんとかコミュニケーションを図る。しかしこうも無反応では、言葉が通じているのかすら怪しいぐらいだ。

 

 「『好きにしろ』って言われても、どうすりゃいいのか・・・。」

 「おまたせ致しました、ラスクとフルーツ盛りと、こちらコーヒーとなっております。」 

 「ありがとう・・・ミカンなんてあったっけ?」

 「こちらのミカンは、ソウジ様からのお土産です。」

 「ミカンねぇ、愛媛にでもいるのかな?」

 

 以前リンゴを送ってきたこともあった。その前はイチゴだったか。だったらメロンをよこせ。

 

 丁寧に皮を剥かれ、ヒゲまで取り除かれたミカンを一房ひょいと口に放り込むと、爽やかな甘みと程よい酸味が合わさったジューシーな果汁が広がる。サクサク食感のラスクも、コーヒーとあわせておいしい。ついさっき軽めの朝食をとったが、これならどんどんいける。

 

 (おや?)

 

 ふとアイラを見ると、アイラも口を動かしていた。少し不思議なのは、ミカンばっかり食べて、ラスクや他のフルーツに手を出していないということ。この差は一体なんだろう、不思議だ。

 

 「ひょっとして、父の寄越したものしか食べないの?」

 「・・・。」

 「また反応なし・・・。」

 

 ますますわからん。彼女は一体どうしたのか?父は僕に何をさせたいというのか?そして僕は何を見落としているのか・・・?

 

 「・・・そうだ。」

 

 肝心なことを忘れていた。人と人が出合って、まずしなければならないこと、それは

 

 「こほん、挨拶がまだでしたね。僕は濱堀シンジ、多分知ってる思うけど、濱堀ソウジの息子です。よろしくね。」

 「・・・! 私、アイラ、よろしく・・・。」

 

 どうやら、これが正解だったようだ。南国の海のような透き通った声で返してくれた。挨拶は大事、古事記にもそう書かれている。

 

 「アイラ、綺麗な名前だ。どうしてここに来たの?」

 「シンジに会いに行けって、パパが。」

 「パパ?!パパなんて呼ばせてるの?!いやまあそれはいい・・・僕に会って、それでどうしろって?」

 「わからない・・・。」

 「それじゃあ、僕も何をしてあげればいいかわからないな・・・。」

 

 なら、予定していたことをやればいい。まずはGIRLSに行こう。そこでアイラが何の怪獣娘なのかもわかるし、ソウルライザーだって渡せる。

 

 「よし、じゃあさっそく・・・。」

 「おなか、すいた・・・。」

 

 キュルルルッと腹の虫が鳴いて、情けない声でアイラが呟いた。

 

 「あー、じゃあ何か食べようか?チョーさん、何か適当にお願い。」

 「承知いたしました。」

 

 今度はおつまみ(・・・・)とは違うちゃんとした料理が運ばれてきた。パンにハムエッグにフルーツを添えて、そしてスープ。しかし目の前に運ばれてきた馳走に、アイラはなかなか口を付けない。

 

 「・・・。」

 「ん?どうぞ召し上がれ。」

 「・・・! いただきます!」

 

 どうやら、言ってあげないと食べないらしい。けどさっきミカンは食べていた。

 

 「ミカンだけは、自分が持ってきたもの、だからかな?」

 「ふご?」

 「ああ、食べてていいよ。ちょっと考え事してくる。」

 

 考え事をするにはトイレに籠るに限る。公衆トイレというのは、公共の場でありながらプライベートが約束される最高の場所である、と誰かが言っていたような気がする。

 

 最も古いトイレは、古代メソポタミア文明にあったと言う。しかもその当時ですら水洗式であったとされる。ろくに下水道が整備されていなかった14世紀のヨーロッパでは、ペストが大流行して大勢の死人が出た。たかがトイレと侮ってはいけない。

 

 「本当につまらない(・・・・・)話で尺なんか稼いでいるバヤイか。」

 

 いつでも綺麗な水が蛇口から出てくることは、とても幸せなことだけど、そんなこぼれ話は全て水に流して、本題に戻ろう。

 

 「ただいまー、ってまだ食べてるの?」

 「ふがっ。」

 「ところでひとつ気になってたんだけど、アイラなんか磯臭くない?」 

 「・・・。泳いできたから。」

 「泳いでって、どこで?」

 「海。」

 

 アザラシかなにかか?何年か前に東京の川で野生のアザラシが目撃されていたのを思い出した。

 

 「そのままだと不衛生だから、後でお風呂に入ってきなさい。」

 「いいの?」

 「いいもなにも、ここはアイラの家でもあるんだよ?同じ父を持つなら、キョウダイってことになるし。」

 「キョウダイ・・・。」

 「僕がキョウダイじゃ嫌だった?」

 「ううん、そんなことない。うれしい。」

 

 そういえば、一人っ子だった僕は、小さい頃弟や妹をせがんだことがあったっけ。それが今こうして叶ったわけだけど。あまり望まぬ形で。

 

 「ごちそうさま。」

 「綺麗に食べたね、よろしいおあがりで。」

 

 ご飯を食べさせて、次にお風呂に入らせて、それからGIRLSへ連れて行こうとなった。

 

 「今のうちに先に連絡だけ入れておこうか。」

 

 いきなり行っても準備も何もないだろう。ソウルライザーも用意しておいてほしいし、アイラがどんな怪獣娘なのかも調べたい。とりあえずいつもの教授と・・・それからベムラーさんにも連絡しておこう。

 

 「・・・ベムラーさん、出ないな。仕方がない。」

 

 とりあえずGIRLSの方には連絡が付いた。いつでも来てくれたらいいとのこと。

 

 「シンジ様、アイラ様のお召し物はいかがいたしましょうか?」

 「服?・・・あっ、そうか女物の服なんて置いてないぞ。」

 

 ワンピースも磯臭いので洗濯させてしまった。なんというウカツ!とりあえず仮にワイシャツを着せておくものとして、それではあんまりなので代替策を練らねばならない。

 

 「うーん・・・どうしたものか。」

 

 ていうか、なんか忘れてるような気がする。

 

 「なにか身震いのするような、恐ろしいことを忘れているような・・・。」

 「とうとうバレンタインネタを入れそこなったこと?」

 「はてさてなんのことやら・・・。」

 「ホワイトデーは3倍返しだよ!」

 「0には何掛けても0だよ。」

 

 貰っていないもののお返しなどできるものか。今話している人物は、インターホンすら鳴らさず入ってきていたが。

 

 「おはよう、ミカ。ちょうどいいところに来てくれた。」

 「おっはよーシンちゃん!なにがちょうどいいの?」

 「さっそくだけど、ミカの服が欲しい。」

 「え・・・やだ・・・ちょっとこんな朝からそんな///」

 「君は何か勘違いをしている。勘違いするような言い方をした僕が悪いんだけど。」

 「ところで、なんか磯臭くないこの部屋?」

 「それなんだけど、実は・・・。」

 

 タイミングがいいのか悪いのか。件の人物がやってきた。そう、今日は元々ミカとのデートの約束の日だったのだ。

 

 「ほ?じゃあ今新しい怪獣娘がいるんだ。ぜひとも仲良くなりたいね!紹介してよ。」

 「うん、そうなんだけどまず服をね・・・。」

 「シンジ・・・これ似合う?」

 「あー・・・すごく・・・マズイです・・・。」

 「ほ?」

 

 と、ここで冒頭のシーンに戻る。ミカは身構えている一方、アイラは動かない。

 

 「ねぇ、どうしてそんなに殺気立ってるのミカ?」

 「シンちゃん・・・そいつ(・・・)なんか危ないよ?」

 「今のミカの方が危ないと思うけど?どうどう。」

 「なんなの、そいつは?」

 「さっき言った怪獣娘の子だよ、名前はアイラ。僕の義理のキョウダイになったんだ。」

 「キョウダイ?家族ってこと?」

 「そう。」

 「私よりも先にシンちゃんの家族になったって?」

 「は?」

 「なんでもない。とにかく、危険だよその子は。『ゴモラ』がそう言ってる。」

 「危険だったら、なおさらほっとけないでしょ?」

 「・・・。」

 

 半分は納得したように、渋々構えを解いた。振り返れば、アイラは少し震えているようだった。

 

 「アイラ、驚かせてゴメンね。こいつはミカ、僕の幼馴染、悪い子じゃないんだ。自己紹介してあげて?」

 「・・・アイラ、よろしく。」

 「黒田ミカヅキ・・・さっきはごめんね、私もちょっと驚いただけだから。ゴモラ、ゴモたんって呼んでいいよ。」

 「・・・ゴモラ!よろしくね。」

 「・・・うん、よろしくね。」

 

 ミカの差し出した手にアイラも応え、ミカの表情も明るくなった。

 

 「シンちゃんが信じるなら、私も信じるよ。」

 「ありがとう、ミカ。」

 「それより、女の子にこんな格好させてちゃダメでしょ。マニアックだなぁシンちゃん。ていうかこのシャツ、シンちゃんのだよね?」

 「決してやましい気持ちはないぞ?だからミカの服を貸してほしかったんだよ。」

 「わかってるよ、適当にいいの見繕ってくるから、待ってて。」

 

 そういって出かけてから、ものの数分で帰ってきた。

 

 「おまたせ!アイラにはスカートの方が似合うかな?」

 「アイラ、着てくれる?」

 「わかった。」

 

 衣料が色々入った鞄を持って、奥の部屋へ消えていった。

 

 「あんなにいっぱい服持ってくる必要あった?」

 「だって、女の子なら色んなの着たいでしょ?シンちゃんわかってないなー。」

 「はいはい、どうせ女心は把握できてませんよ。」

 「ホントにねー・・・。」

 

 はぁ・・・とミカはため息をついた。しばらくしてアイラが戻ってきた。

 

 「どう・・・かな?」

 「いいじゃん、かわいいよアイラ。」

 「うん、似合ってるじゃん、さすが私の見立て通り!。」

 「ありがとう・・・。」

 

 先ほどまで来ていた白いワンピースとは違う、赤紫なタイトスカートとニット服の組み合わせ。落ち着いた雰囲気のお洒落な着こなしだ。

 

 「っていうか、ミカがこんな服持ってたのが意外だったかな。今まで着てたところ見たことないし。」

 「だって、私は今のこの服の方が好きなんだもん。」

 「なら、今度着て見せてよ。」

 「うん、いいよ。」

 「うーん・・・。」

 「どうしたのアイラ?何か問題でも?」

 「ちょっと、苦しい・・・胸が。」

 

 カッチーンと、何かが弾ける音がした。

 

 「やっぱ敵だわこの子・・・。」

 「ミカ、なにもそんな青筋立てなくってもいいだろ?」

 「どうせシンちゃんは巨乳の方が好きなんでしょ!エレちゃんといいレッドちゃんといい!」

 「いやぁ・・・そんなことは・・・ないよ?」

 「目を見て話せコノー!」

 

 この後、ヘソを曲げてしまったミカを宥めるのに時間がかかり、GIRLSに到着したのは昼前の事であった。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「やっと終わった・・・。」

 「これが、ソウルライザー・・・。」

 

 急遽ピグモンさんがセットアップしてくれたおかげで、難なくスムーズに話が進んでくれた。だがまだ肝心なことが残っている。

 

 「一体アイラは、なんの怪獣娘なのか・・・。」

 

 ベムラーさんの言うことには、ジラースに似てるそうだけど、それだけではないのかもしれない。もっと色々な可能性を論じてみたほうがいいだろう。

 

 「三人集まれば文殊の知恵とも言いますしね。」

 「もんじゃ?」

 「違う。」

 「もんじゃよりお好み焼きがいいと思うな!」

 「勝手にしろ!」

 

 船頭多くして舟山登るという言葉もあるがさておき。ひとまずいつものメンツに集まってもらった。集まってもらったというより、自主的に集まってくれたというのが正しいが。

 

 「新しい仲間となら、早く仲良くなりたいしな!」

 「ピグモンもそう思いまーす!」

 「調査よ。」

 

 「しかし、アイラが元はどんな怪獣だったのか、皆目見当がつかないけど。どうしたもんかな・・・?」

 「?」

 「どうすればいいかって?それはもちろん綺麗なものをたくさん見て、おいしいものをたくさん食べるんだよ!」

 「まあ、そうしたら仲良くはなれるかな?」

 

 どっちかっていうと友達(フレンズ)になるためのフレーズのようだけど、今はそれでいいだろう。日常のふとしたことに、きっかけが見つかるかもしれない。

 

 「アイラの好きな食べ物ってなに?」

 「・・・クジラ。」

 「シブいもん食ってるなぁ・・・。」

 

 専門店とか、北海道とかに行かないと食べられないんじゃないかな?

 

 「好きな歌は?」

 「・・・歌は知らない。」

 「じゃあ趣味は?」

 「・・・ない。」

 「じゃあ、これから作ろっか!」

 

 「よーし、じゃあまずは景気づけってことで・・・。」

 「ことで?」

 「一発芸いってみよー!ミクちゃんが!」

 「えっ、アタシ!?」

 「直球勝負の私だって、たまにはボール玉も振るよ!」

 「アタシ牽制球かよ・・・。」

 「一発芸って?」

 「なにかギャグを言えってこと。」

 「・・・ギャグならひとつ知ってる。」

 「おっ?アイラまじ?やってみてやってみて!」

 (助かった・・・のかな?)

 

 皆が固唾をのんで見守る中、中央に立ったアイラは、その場で飛び跳ねて、

 

 「シェー。」

 

 「古っ、いや逆に新しいか?」

 

 何度もピョンピョンとしながらやる姿は、驚いたポーズというよりも勝利の舞かなにかのように見えた。

 

 「アイアイぴょんぴょんしてますねぇ、ピグモンもぴょんぴょんするですぅ!」

 

 ぴょん、ぴょーん!とウサギのようにいっしょに跳ねまわって遊んでいる。それにしてもアイアイって、南の島のおさるさんさか。マダガスカルに生息するそのおさるさんは、童謡のような愛らしいものではなく、現地住民からは『悪魔の使い』として恐れられ、中指が異常に長いという非常に冒涜的な生物であることは割と知られていることである。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「ごめんね、本当に。」

 「なにが?」

 「今日の約束、守れなくって。」

 「ああ、なんだそんなこと。気にしてないよ、しょうがないって。」

 

 買い物したり、買い食いしたり、遊びまわって日が暮れた。ごくごく普通の子供らしい日常を満喫できた一日だった。

 

 「アイラ、いい子だね。」

 「最初はあんなに邪険に扱ってたのに?」

 「あれは・・・なんて言うんだろうね、怪獣娘の勘ってやつが働いたのかな。」

 「単純な嫉妬心とかじゃなくて?」

 「それは・・・どうかな?」

 

 そうは言ったが、ミカの言うことにも一理あるだろう。なんせアイラは、一国を滅ぼしたという謎の怪獣娘だから。結局今もアイラの正体について何も掴めていない。

 

 「けど、やっぱりはアイラも同じなんじゃないかな、私たちと同じ。」

 「ただの(・・・)怪獣娘?」

 「ただの女の子ってこと。」

 

 河原の土手に腰かける2人から離れた場所で、アイラを含めた彼女たちがバトミントンで遊んでいる。

 

 「えいっ。」

 「アイラさん、上手い。」

 「ミクさんお願いします!」

 「あいよー!」

 

 水面も大地も朱に染まる夕焼けの光の中、一分一秒でも長く共にいることを楽しんでいる。しかしそれもそろそろ終わる時間だ。

 

 「もう暗くなるから、そろそろ帰ろうぜ。」

 「帰ってアニメを見る時間だわ。」

 「よい子は『夕焼け小焼け』が聞こえてきたら帰るんですぅ。」

 

 夕焼け小焼けで日が暮れて。全然関係ない話だが、光の国と姉妹都市提携しているある市では、夕方には夕陽の似合う巨人のテーマが流れているらしい。

 

 「アイラ、帰ろうか。お家に。」

 「帰る・・・。」

 「アイラさん、また明日ね。」

 「また明日!」

 「また・・・明日・・・。」

 

 それぞれが帰路について、再びアイラと二人っきりになった。

 

 「また、会えるの・・・?」

 「また明日、一緒に遊べばいい。もう友達になったんだから。」

 「友達・・・。」

 「アイラは・・・。」

 

 他の友達はいるの?と聞こうとして止まった。アイラが何の怪獣娘なのかもそうだけど、アイラの過去もよく知らない。GSTEに酷い事されていたのかもしれない、辛いことだらけかもしれないと思うと、聞くのを躊躇ってしまう。

 

 GIRLSでは、そのことについての調査を命ぜられた。このまま正体不明のアンノウンとしているわけにも、当然いかない。GIRLSの掲げる『救助』と『指導』には、当然必要となる情報なのだから。

 

 いずれ聞くか、調べなければならないことであったが、その時はすぐに来た。

 

 「おかえりなさいませ、シンジ様、アイラ様。お客様がお見えです。」

 「ただいま。お客さん?」

 

 誰だろう?ひとまず荷物をチョーさんに任せ、応接室へと向かう。

 

 「来たね、シンジ君、そして、アイラという少女・・・。」

 「ベムラーさん、来てたんですか。」

 「君が留守電を残してくれたからな、急いで戻ってきた。」

 

 コーヒーカップを片手に、ベムラーさんは待っていた。シンジの後ろにいたアイラの姿を見やると、わずかに微笑んだ。テーブルにはミカンの皮もあった。

 

 「・・・。」

 「アイラ、この人はベムラーさん。同じ怪獣娘さんで、私立探偵をやってるんだ。」

 「ベムラーだ、よろしく。」

 「・・・アイラ、よろしく。」

 

 ベムラーさんが、目くばせをしていることに気が付いた。

 

 「アイラ、疲れたでしょ?先に休んできなよ。お風呂にでも入って。」

 「わかった。」

 「パジャマも、新しいの買ってたよね?チョーさん、あとよろしく。」

 「かしこまりました。」

 

 「これでよかったですか?」

 「察しがよくて助かるよ。これからもその調子で頼む。」

 

 「それで、君の父はなんと?」

 「この手紙の通りです。」

 「なんとも・・・大雑把な内容だな。」

 

 ベムラーさんもその内容には苦言を呈した。ベムラーさんの方も結構行き詰まっているところだったらしい。

 

 「居場所の手がかりどころか、本人が来てしまっては、これでは私立探偵の名折れだ。」

 「なら小説家にでもなりますか?」

 「考えておこう。それよりも・・・。」

 

 コーヒーを飲み干し、ソーサーに置いて本題を切り出す。

 

 「君はあの子をどうしたいと思っている?」

 「とりあえず、今日GIRLSに紹介して、彼女たちとも合わせました。それがベターだと思って。」

 「君自身の、意見としては?」

 「・・・あんまり、戦いとかとは無縁でいて欲しいと思ってます。いつも何かに怯えてるようで、とてもなにかと争ったりできるようには見えないんです。」

 「過去、一国一組織を滅ぼした実績があるけれど?」

 「それは・・・だからこそ、そうさせないためのソウルライザーで・・・。」

 「怪獣娘でいる限り、トラブルとは縁は切れない。力をコントロールさせるには、実戦を積ませることが有効じゃないか?」

 「そうはそうなんですが・・・本人がどう思ってるのか。」

 「いつ爆発するかわからない爆弾を、野放しにしておくわけにもいかないぞ?」

 「・・・。」

 

 そりゃあ、そうだけど。出来ればそうしたくないって思いが、胸の中がチクチクと刺さる。それをわかっていたのか、ベムラーさんは見かねて助け船を出してきた。

 

 「ところで、あの子は何日ぐらい滞在する予定なんだ?」

 「いえ、なにも聞いてません。ただ、明日すぐ帰るってわけでもないみたいです。明日も約束していましたから・・・。」

 「約束・・・。」

 「ただ、遊びに行くってだけですけど。」

 「なら、もう少し様子見でもいいかもしれないな。今日のところは、私も失礼するよ。」

 「・・・ごめんなさい、気を使ってもらって。」

 「いいさ、これでおあいこだろう?」

 

 ぱっ、と立ち上がり、帰り支度をしていくベムラーさん。

 

 「そうそう、それからもうひとつ。君の方は、なにか掴めたかい?」

 「ラボのパソコンのデータベースですか?少しずつなら紐解けていますが、アイラに関する情報は手付かずになってます。ロックがかかってるみたいで。」

 「ハックすることはできないのか?」

 「正規の手段以外で臨むと、破棄されるようになってるみたいで。それに、パスワードの入力も一回しか受け付けてないみたいで。」

 「一回か・・・それはキツいな・・・よほど覗かれたくないのか、それとも・・・まあいい。なにか進展があったら教えてくれ。」

 「はい、ベムラーさんも何かあったら言ってくださいね。」

 

 お土産がてらミカンをプレゼントして見送った。それにしてもミカンが多すぎる。絶対食べきれなくて底の方は腐るぞコレは。

 

 「オレたちは腐ったミカンじゃねえ!」

 「シンジ、どうしたの?」

 「なんでもない。パジャマかわいいね、似合ってるよ。」

 

 少し幼めな印象があるが、そもそもアイラの歳も知らない。けれど、ピンク色のかわいいやつだった。

 

 何度も言う、やっぱりこんなかわいい女の子が、凶暴な怪獣だとは思えなかった。

 

 「? シンジ、それ・・・?」

 「ん?ああこれ?ストラップだよ。手作りのだけど、ちょっとした優れものだよ。」

 「綺麗・・・。」

 

 透明なカプセルを金属のオリで包み、綺麗な球が埋め込まれている小さなストラップ。

 

 「そうだ、これをアイラのソウルライザーに付けておきなよ。お守り替わりだ。」

 「くれるの?」

 「うん、気に入ったんならあげるよ。」

 「ありがとう・・・。」

 

 アイラは、ストラップを愛らしそうに抱きしめた。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「ふわっ・・・あぁ・・・。」

 「眠そうだねシンちゃん。」

 「んー・・・昨日よく眠れなかったんで。」

 

 翌日。また今日も一緒にいる。

 

 「バディライザーの修理とか?」

 「そんなところ。もうこれでオッケーなはず。」

 「じゃあさっそく試してみないとね?」

 「そうならないことを祈ってるよ。」

 

 フレームを新しくして、ボディには新しくペイントも加えた。赤と銀でウルトラマンを意識した色合いにして、アクセントとして少々黒いラインも加えて引き締めた印象になった。

 

 「今日はどこ行くー?ていうか、アイラどこ行きたい?」

 「わからない・・・なにも私知らないから。」

 「では、アニだらけに行きましょう!アイラさんにもおまピトの魅力を・・・!」

 「ウインちゃん、さすがにそれはちょっと落ち着こうよ・・・。」

 

 一つ屋根の下にいて、少しわかったことがある。アイラには『過去』がない。忘れてしまったのか、それとも元から無かったかのように、昔の事を何一つ覚えていない。どこで生まれたのか、何が好きだったのか、何一つ思い出せない。あるのは、父と会ってからの事。

 

 だからだろうか。空っぽなアイラの心を、『ごく普通のの女の子』としてのピースを埋めるために、ここに来たんだろうか?

 

 でもそれ以上に、僕たちがアイラと築く思い出も重要となるんじゃないだろうか?

 

 「アイラのことを、絶対忘れないように・・・アイラを強く記憶に遺せるように。」

 「そうだね、じゃ、もっともっと仲良くならないとね!」

 

 相槌を打とうとした、その時であった。

 

 ズォオオオオオオオオオオオン・・・

 

 

 「なに!?」

 「爆発?敵襲?!」

 

 少し離れた場所から、爆発音が響いてきた。暴走した怪獣娘か、それともシャドウか、どっちにしろGIRLS出動の時だ!

 

 「シンジ・・・。」

 「アイラ・・・。」

 

 不安げな目で、アイラが事の成り行きを見ていた。皆は既に爆発のあった方へ向かっている。

 

 どうしよう、アイラも連れていくか?でもまだアイラは不安定かもしれない、戦いの場に連れ出すのはまずいかもしれない。

 

 じゃあ、僕だけ残る?・・・それも出来ない、というかしたくない。仲間のことより、何より自分も、戦いを見つめていたい。今後のことを考えるためにも・・・。

 

 「・・・アイラ、ここで待ってて。すぐに戻るから。」

 

 結局、どれがベストな選択かはわからない。けど悩んでいる暇もない、悩むぐらいなら走る。前からそうしてきたから、今回もそうする。

 

 「シンジ・・・!」

 

 怯えるアイラをその場に残して、シンジも走り出した。」

 

 

 

 

 

 1人に、させてしまった。

 

 

 

 

 「シンジ・・・イヤ・・・イヤだよぉ・・・。」

 

 アイラの背後に、忍び寄る影があった。

 

 

 

 

 

 

 「はやく片付いてよかったね!」

 「うん、はやくアイラのところに戻ろう!」

 

 幸いにも、現れたのは小型のシャドウが数体だけ。すぐに片がついた。

 

 「アイラ大丈夫かな?今になってやっぱり心配になってきた・・・。」

 「少し、無責任が過ぎるわよ?右も左もわからない人間を置き去りにするなんて。」

 「まーまー、さすがにアイラもこれぐらいなら平気だって、もう子供じゃないんだろうし。」

 「幼児体形のあなたが言うの?」

 「なにをー!いいもん、ハートはビッグだもん!」

 

 喋りながら走って、急いで戻ってきた。

 

 

 まずその眼に飛び込んできたのは、青い閃光。

 

 

 「ウソ・・・。」

 「アイラ・・・アイラ、どこ!?」

 「これ・・・アイラさんの・・・。」

 

 そして、原型すら留めていないアイラのソウルライザーだけが、その場に落ちていた。

 

 「これは・・・『壊れた』わけではなさそうね・・・。」

 「どうなってんの・・・アイラはどこに?まさか誘拐されたとか・・・?」

 「いや・・・いる・・・。」

 「いるって・・・?!」

 「感じるだろ、この感覚、『衝撃』・・・!」

 

 空気がビリビリと震える『不安感』や、腹の底から湧き上がるような『恐怖心』。

 

 

 

 

 

 『ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!』

 

 

 

 やがてアイラは姿を現した。

 

 「あっ・・・あぁ・・・。」

 

 そこにいたのは、全てを()くした少女でもなく。

 

 「なんて・・・プレッシャー・・・。」

 

 真っ白なキャンバスのようなキョウダイ(・・・・・)でもなく。

 

 「アイ・・・ら・・・。」

 

 

 

 

 

 一匹の、否、唯一無二なる『怪獣王』だった。




 ところで、ピグモンさんのつけるあだ名は基本皆ひらがなで表記されるのだけれど、この作品の上では皆カタカナ表記になっています。今更訂正するのも面倒くさいのでこのままで行きます。ご了承ください。

 ちょっと急ぎ足で書き上げたので、推敲が足りなかった部分があると思われます。少し落ち着いてから修正する予定です・・・。

 3/10追記:ちょっとだけ手直ししました。『しかし』とかの繰り返しには気を付けねばなりませんね・・・。

 ネタ解説

 透明なカプセルをry:オキシジェンデストロイヤーがモチーフ。VSデストロイアや、東京SOSのラストシーンにも出てくるのが印象的。



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黒き王の咆哮

 アニメの方も大分シリアスでクライマックスな感じになってきたけど、この作品は平常運転です。というか、シリアスばっかり書いててそれしか出来んのかこん猿ゥ!とか思われてそうですが、本当はお気楽なギャグの方が好きです。好きだけど書けないってだけで。


 昼下がり。GIRLS本部に併設されている病院は、阿鼻叫喚の様相を呈していた。

 

 「どうして・・・こんなことに・・・。」

 

 痛みに疼く腕を押さえ、俯いて己の罪を追想する。

 

 

 

 

 数時間前。まだ辛うじて街が平和だった時。『厄災』は目を覚ました。

 

 オォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ・・・・

 

 それはもはや、叫び声なんてものではない。弦楽器をめっちゃくちゃに引っ掻いたような、あるいは何もかも薙ぎ倒すチェーンソーの駆動音のようでもあった。

 

 「あっ・・・あっ・・・。」

 「アイラ・・・どうして・・・。」

 

 自分の目が信じられない。目の前にいるものを、同じ地に立つ者として受け入れたくなかった。

 

 全身を覆う獣殻(シェル)は、あらゆる干渉を拒む岩肌のような感触、色は石炭よりも黒い。背中には、剥き出しの骨のような背鰭が並び、鋭利な刃物のようにもなっている。髪は生気を失ったかのように真っ白だ。そして眼は虚ろで、なにか存在しないものを見つめているようだった。やがてはっきりとこちら側の事を視認し、そして『外敵』とみなした。

 

 「暴走してる?」

 「なんとかして、治めないと・・・。」

 「シンジさん、なにか作戦ある?」

 「はぁ・・・はぁ・・・。」

 「シンジさん?」

 

 ヴォアアアアアアアアアアアアアアアア!!

 

 「シンジ!さがれ!」

 「うっ!」

 

 危険を察したレッドキングさんに飛ばされて、シンジは道路を転がった。

 

 「とにかく、押さえつけるぞ!」

 「おぉー!」

 

 レッドキングを筆頭に、ミクラス、ゴモラ、アギラと続く。エレキングとウインダムとピグモンはシンジの傍でカバーしている。

 

 「シンシン?怪我はないですか。」

 「大丈夫・・・けど、あれは・・・。」

 

 人間が進化を続ける中で捨てていったはずの本能が告げている。ただの人間、もといただの人間に毛が生えた程度であるはずのシンジにもわかった。

 

 「あの時・・・ミカが、ゴモラが感じた脅威って・・・。」

 

 今更悔やんだところで・・・あの時に何かが出来たわけでもなくても・・・後悔先に立たずか。

 

 「一体どんな能力を持ってるかもわかんねぇ、十分気を付けろ!」

 「はい!」

 

 数で包囲して殴る。人類が、その叡智を手にする以前からとられてきた、もっとも有効な戦術と言っても過言ではない。レッドキングが殴れば、次はゴモラ、その次にミクラスと、矢継ぎ早に攻め手を交代することで、相手に狙いを定めさせない。

 

 「くっそ、どんだけ硬いんだこいつ!」

 「殴られても、全然こたえてない!」

 「なら捕まえる!」

 

 それぞれが両手両足と、尻尾を掴んで地面に組み伏せる。

 

 「ぐぅ・・・すげぇ膂力(りょりょく)だ・・・!」

 「で、こっからどーすんの?」

 「シンジのいつもの作戦で行く!」

 

 体力を失うまでじっと待つ。アイラはソウルライザーを失い、暴走状態にある。となれば、エネルギーを無暗に消費し、先に変身が解除されるのは必然だ。

 

 ただし、相手が抜け出せる能力を持っていなければの話。

 

 ガァアアアアア・・・ググッ・・・

 

 「こいつ、なにをッ?!」

 「うわぁああ!!」

 

 アイラの喉の奥が一瞬光ったかと思うと、全身から強い衝撃波が発せられ、ゴモラたちを引きはがす。

 

 「今の・・・熱線?」

 「いや、ちがう。エネルギーを体内で爆発させたんだ。」

 「じゃあ、熱線も撃てる?」

 「だろうな。今はまだ使ってきていないが・・・。」

 

 ゴフッゴフッと咳払いするように輪っかの煙を吐いて、アイラは立ち上がる。散開して様子をみるゴモラ達を見やり、低く唸る。

 

 「なら次は?」

 「私にまかせて、みんなは技の準備を!」

 「おう、頼んだぞ、ゴモラ!」

 

 頭を下げた低姿勢による突進で距離を詰める。迎え撃とうとするアイラの攻撃を軽く躱し、脛に尻尾の一撃を加える。

 

 「なんだ、結構遅いじゃん。このまま攻める!」

 

 弁慶の泣き所を徹底的に叩く。いかに強固な皮膚を持とうと、弱点であることには変わりない。理性のない獣は、怒り狂う。

 

 「おっと!当たらないよ!」

 

 仕返しにとばかりに暴走アイラも尻尾を振り回してくるが、これにはゴモラは当たらない。

 

 「くらえ!バッファフレイム!」

 「爆発岩石弾!」

 

 ゴモラの作った隙をついて、ミクラスとレッドキングが後方から遠距離攻撃を仕掛ける。アイラは少しよろめく。

 

 「少しは効いた?」

 「油断するな!」

 

 ギョロリとその眼にレッドキングたちを映すと、大きく静かに息を吸い込み始めた。

 

 「背鰭が・・・。」

 「光ってる?」

 

 尻尾の先からうなじ(・・・)にまで続いてる背鰭が、尻尾の先から順番に青い光を放ち始めた。

 

 「なんか・・・なんか猛烈にヤバい!」

 

 今度は髪が青く染まり、ストロボのような音をも放ち始めた。

 

 「伏せろッ!」

 

 青い閃光。圧倒的、ひたすら圧倒的パワーの塊。アイラの小さな口から放たれた『暴力』が、ビルを数棟いとも簡単に薙ぎ倒す。

 

 「う・・・あっ・・・。」

 

 そして残ったのは・・・

 

 「なんて・・・破壊力・・・。」

 

 幾多の瓦礫の山と・・・

 

 「・・・原爆・・・?」

 

 ドス黒いキノコ雲であった。

 

 「もうダメだ、おしまいだ・・・。」

 「なにを寝言言ってるの?不貞腐れている暇があったら戦いなさい。」

 

 シンジは完全に戦意を喪失した。それまでに、既に戦う気力を失っていたが、もはや逃げる気力すらも失っていた。

 

 「勝てっこないよ・・・あんなの・・・。」

 「立ってくださいシンシン!このままじゃみんなやられちゃいます!」

 「僕のせいだ・・・僕があの時アイラを置き去りにしなければ・・・こんなことには・・・。」

 「そんな、シンジさんのせいじゃ・・・。」

 「いえ、私たち(・・・)の責任よ。」

 「エレエレ!」

 「今更逃げてどうするというの?!失敗を後悔するよりも、どう役目を果たすのか考えなさい!」

 

 普段冷静なエレキングさんらしくもない、荒々しい語気で言い放った。

 

 「私は行くわ。」

 「エレキングさんも危険です!」

 「それが、怪獣娘の役割よ。」

 「エレキング・・・さん・・・。」

 

 シンジは弱々しく目線を上げた。エレキングさんの手が、震えていた。

 

 「待って、エレキングさん。」

 「なに?」

 「ちょっとだけ、勇気をください。」

 「これが、勇気のある人間の手に見えるかしら?」

 「だったら、僕のひと欠片と、交換しませんか?」

 「ふっ・・・いいわよ。」

 

 足の筋肉は、今にも逃げ出そうとせんばかりに震えている。けど逃げる方向は、アイラへの向きだ。

 

 「なにか策はあるの?」

 「ちょっとだけですが、アイラの動き方は見えました。今のアイラは、『不完全』です。」

 

 ライザーショットを抜いて、黄色のシリンダーを込める。これは麻酔弾だ。

 

 「ウインダムさん、大丈夫?」

 「私にはくれないんですか?勇気。」

 「勇気だけでいいの?」

 「じゃあ、今度ケーキを奢ってくださいね?」

 「コーヒーもつけるよ!ウインダムさんは、アイラの足元だけを狙ってください。当てなくていい。」

 

 飛び出すエレキングさんに続いて、シンジも前へ出る。

 

 「みんな、攻撃しちゃダメだ!」

 「あぁん?なんで?」

 「アイラは攻撃を受けて進化、いや『学習』してるんだ!自分がどんな技を持ってい『た』のか、思い出してるんだ!」

 

 ゴモラの大回転打の後に尻尾攻撃、バッファフレイムや岩石弾の後に熱線を吐いた。最初の全身からの衝撃波・・・体内放射も、単に『熱線の吐き方』がわからなかったからだ。

 

 (アイラは、記憶を失ったんじゃなくて、『消された』んだ。)

 

 きっと父は、どうにかこうにかしてアイラの記憶を消し、その脅威を取り払ったんだ、一時的に。けどそれが限界になってきたから、こっちに寄越したってこと?

 

 「せいっ!」

 

 グゥウウウウ・・・

 

 「効いてる?電気に弱いのかな・・・エレキングさんはそのまま攻撃して!レッドキングさんは、アイラの動きを封じて!」

 「お前はどうすんだ?」

 「なんとかして、麻酔を撃ち込みます!」

 

 考えるのは後にして、今は目の前の問題に集中する。怪獣娘の打撃にビクともしなかった表皮に、今の麻酔針が刺さるかはわからない。せめてシェルを剥がせれば・・・。

 

 「念には念を押す!ゴモラ、バディライド!」

 「オッケー!」

 

 カードを取り出して挿入する。機能は問題なく働いてくれる。

 

 「ゴモラ、ゼロシュートだ!そのために・・・レッドキングさん!」

 「あいよ!アースクラッシャァアアア!」

 

 地割れがアイラの足元まで広がり、その動きを封じる。怒る獣は、熱線を吐こうと背鰭を光らせる。

 

 「ミクラスは尻尾を押さえて!ウインダムさん、顔を狙って!」

 「おっけー!」

 「わかりました!」

 

 真正面から攻めれば、たちまち狙い撃ちにされる。けどそこまで織り込み済みだ。

 

 「持っててよかった、煙幕!」

 

 一発だけ試作した煙幕弾を投げ、アイラの視界を奪う。こちらには、はっきり青い光が見えている。可能な限り意識を逸らさせて、一撃を狙う。

 

 「行け、ゴモラ!超振動波・ゼロシュート!」

 「うぉおおおおおお!!」

 

 煙幕を突っ切り、ゴモラのツノが姿を現す。それと同時に尻尾を掴んでいたミクラスも離れる。

 

 「ぐっ・・・ぐぅうううううううう!!!!」

 

 ゴォオオオオオオオオオ!!

 

 アイラは熱線を体内放射に切り替え、ゼロシュートに抗う。だが、いかにその威力が桁違いであろうと、一点集中のゼロシュートには部分的に耐えられない。

 

 「うぅうう・・・うわぁっ!!」

 

 ゴモラの体が、耐え切れず吹っ飛ぶ。しかしアイラの胸のシェルには、僅かながらも孔が開いている。しかしその強靭な生命力を持って、すでに事故治癒が始まっていた。

 

 「孔がもう塞がるぞ!シンジ!」

 「そのために、ボクが・・・!」

 

 ゴモラの突進のすぐ後ろを、シンジを背に乗せたアギラが控えていた。ゴモラの体をカモフラージュに、アイラの死角を突いたのだった。

 

 「当たれぇえええええええええ!!」

 

 アギラに投げられたシンジがライザーショットを構える。ほんの僅かな孔に、麻酔弾が3発吸い込まれるように入っていった。孔から逸れた2発が、表皮に弾かれる。

 

 「やった・・・・!?」

 

 グルルル・・・

 

 アイラの動きが、僅かに鈍くなってきていた。しかし、まだ止まる気配はない。

 

 「おい、麻酔本当に効いてるのか?!」

 「アフリカ象だってブッ倒れる劇薬ですよ!それも3発!」

 「アギちゃん!逃げて!」

 

 アフリカ象に効くものが、怪獣にも効くのかどうかはさておき。再び熱線のチャージが始まった。しかも今度は、光る速度が速い。

 

 「チャージが速くなってる!?」

 「伏せろ!」

 

 再び地獄の釜が開かれる。アギラとシンジはまだ退避できていない。そこにすかさず一つの影が割って入る。

 

 「くっ・・・!」

 「ゼットンさん!」

 「はやく退避・・・して・・・。」

 

 ゼットンさんが来た。しかしゼットンシャッターにもヒビが入っている。

 

 「シンジさん、はやくこっちに!」

 「もう・・・限界・・・。」

 

 

 

 「あっ・・・。」

 

 

 ゼットンシャッターに入ったヒビから、わずかに熱線が漏れ出した。

 

 

 

 「シンジさん!!」

 

 

 

 それが運悪く、本当に運悪く、離れようとするシンジのすぐ傍に着弾した。

 

 

 

 シンジの体が、ボロクズのように宙を舞った。

 

 

 「ゴハァッ!」

 

 肺から空気が叩きだされ、痙攣して呼吸すら危うくなる。

 

 「シンちゃん!しっかりしてシンちゃん!」

 「あっ・・・あぁ・・・ミカ・・・。」

 

 一瞬視界が暗転したが、意識ははっきりしている。死んではいない。

 

 「シンちゃん!すぐに救護がくるから!いや連れていくから!!」

 「ダメだミカ、ミカがいなくなったら前線はどうなる。」

 「ゼットンちゃんが今がんばってくれてるから!はやくシンちゃん!」

 「ダメよゴモラ、動かしては!」

 「エレちゃん離して!シンちゃんが!シンちゃんが!!」

 

 首が右を向いて動かせないので、ミカの声しか聞こえていない。しばらくして、レッドキングさんやミクラスもやって来たのを感じた。

 

 「おいシンジ、しっかりしろ!」

 「大丈夫です、大丈夫・・・大丈夫・・・。」

 「シンジ・・・さん・・・。」

 「大丈夫・・・だから・・・。」

 

 全然痛くないから、本当に。全然、『痛くない』んだ・・・。

 

 「ねえ、誰か・・・ミカ・・・アギさん・・・エレキングさん・・・。」

 「シンちゃん!」

 「シンジさん!!」

 「・・・っ!」

 

 

 

 「僕の左手・・・どうなってるの?」

 

 左腕が、動かせない。それどころか、感覚もない、痛みがない。

 

 「シンちゃん、大丈夫だよね?!本当に大丈夫なんだよね!すぐ病院連れてくから!!」

 「動かしちゃいけない!!」

 

 ミカが、エレキングの腕を振り切ってシンジの体を起こす。今のシンジに目が釘付けになっていた一同は、その制止が遅れた。

 

 「ダメ!!」

 「あっ・・・あぅ・・・?」

 

 体が起き上がって、やっと気が付いた。今まで必死になって、理解しようとしなかった事実がわかってしまった。

 

 「あっ、あぁ・・・ああああああ!!ああああああああああああああああ!!!!!!!」

 「いけない、押さえて!!」

 

 理解した途端、痛みが襲ってきた。痛みと恐怖がシンジの脳を食い潰そうとしてきた。心臓が激しく鼓動する。たちまちパニックになり、ビチビチと陸に上げられた魚のように手足をバタつかせ、暴れる。

 

 「マズい!出血が酷くなってきた!このままだとショック死するぞ!」

 

 シンジは、出鱈目なことを口走った。

 

 「止血しないと、ゴモラどいて!」

 

 シンジは、誰かに向かって謝り始めた。

 

 「ダメ!すぐ連れてかないと!」

 

 シンジは、正気を失っている。

 

 「シンジさん!シンジさん聞こえる?!」

 「こうなったら・・・離れて!」

 

 エレキングさんは、尻尾を振るってシンジの体に電流を流した。

 

 「あびゃあばばば・・・あぁ・・・?あれ?」

 「シンジさん?意識戻った?」

 「あぁ・・・はぁ・・・。」

 

 「今の内に止血を、ピグモン!」

 「わかってます!」

 「あぁ・・・?・・・ピグモン・・・さん?」

 「そうです、ピグモンですぅ!シンシンは大丈夫ですよ!」

 「そ、そか・・・そっか・・・。」

 

 一瞬気を失ったことで、正気と落ち着きを取り戻した。左腕はジンジンと痛むが、それがかえって正気を保たせた。正気を取り戻せば、すぐに冷静なシンジが帰ってくる。

 

 「今、アイラは?」

 「ゼットンさんが戦ってるよ。けど、それでも厳しいかも・・・。」

 「今のうちに、シンジさんを病院に!」

 「待って、まだやらなきゃいけないことが!」

 「その体じゃ無理よ、どんな無茶だって出来ないわ。」

 「わかってます、体が無理でも、頭は動いてます。僕の銃は?」

 「えっと・・・あった、あそこ・・・。」

 

 少し離れたところに飛ばされたライザーショットを、アギラが拾いに行く。

 

 「これを、どうするの?」

 「麻酔がダメなら、冷凍弾を・・・。片手じゃ無理か。アギさん、シリンダーを引いて、カートリッジの下のボタンを押して。」

 「えっと・・・こうか。外れたよ。」

 「じゃあ、この・・・こっちを詰め替えて、シリンダーを戻して。」

 「これでいい?」

 「それでいい。」

 

 青いカートリッジが冷凍弾。-200℃まで一気に冷却にできる。

 

 「それを、アイラの背鰭に撃ち込むんだ。表皮よりも、エネルギー器官に直に届くと思う。」

 「・・・どうやって?」

 「そんなの、狙って引き金を・・・。」

 

 突然、視界が揺らぎ始め、頭も急に重くなってきた。貧血だ。

 

 「ごめん・・・これ以上は僕もう無理だ・・・。」

 「・・・わかった、なんとかするよ。だからシンジさんは。」

 「ありがとう・・・ごめんね。」

 

 アギラへ伸ばした手が離れていく。ようやくこの戦場から離れられるという安心感からか、シンジは少しの間気を失っていた。気が付いた時には、既に決着はついていた。

 

 

 

 

 ここで冒頭に戻る。病院の一室を当てがわれていたが、眠る気にはならなかった。いてもたってもいられずに、GIRLS本部の方へと足を進めようとする。左腕に巻かれた包帯を擦りながら。

 

 「なんか、騒がしいな。」

 

 街は混乱している。あちこちで煙が上がり、遠くにサイレンも聞こえてくるが、もっと騒がしいことはすぐ近くで起こっているようだった。

 

 「デモか、あれ?」

 

 騒ぎが起こってまだ半日も経っていないというのに、もう反怪獣団体や、マスコミが動き始めた。今までも話には聞いたことがあったが、実際に見るのは初めてだ。マスコミも、こんなところで出待ちするよりやることがあるんじゃないの?

 

 「裏口から出入りさせてもらうか。」

 

 GIRLS本部はすぐ目の前だというのに、とんだ遠回りを強いられる。

 

 「おっと。」

 

 裏口を出て角を曲がったところで、いかにもな一団がこっちに歩いてくるのが見えた。捕まったら面倒だと思い、一旦引き返そうかと思ったが、今度は来た道の方向からマスコミがやってきた。おそらくその両方に、シンジの顔が割れていることだろう。

 

 「しまった・・・。」

 

 両手が空いているなら、塀を乗り越えてやり過ごすことも考えたが、生憎左腕はまだ完治していない。多少無理をしてでも、ジャンプして飛び越えられるか試そうとした、その時。

 

 「こっち。」

 「えっ?」

 

 ピシュン、っと路地からシンジの姿は消え、デモ団体とマスコミはただすれ違って終わった。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「えっ?」

 「大丈夫?シンジ。」

 「ぜ、ゼットンさん??どうしてここに?ってか、ここは?」

 「GIRLSの屋上。」

 

 気が付けば、見覚えのある場所へと移っていた。何度かミカとも2人でえ夜景を眺めたりもした場所の、昼の時間に今はいる。ゼットンさんと一緒に。

 

 「これを、あなたに。」

 「これ、ライザーショット・・・。どうしてゼットンさんが?」

 「私が借りた。役に立った。」

 「え?あれは・・・。」

 

 すっとゼットンさんが指さした方向・・・東京湾、アクアラインの辺りに、巨大な氷塊が浮かんでいた。

 

 「あれを、ゼットンさんが?」

 「テレポートであそこまで運んで、あなたの銃を使った。」

 「この銃、そんな威力があったんだ・・・。」

 

 自分で作って、使用を促しておいてこの言いようはないと思うが。ともかく、海水ごと凍らされたおかげで、溶けきるまで時間が稼げそうだ。そのころにはある程度は麻酔も効いているかもしれない。

 

 「みんなは、今どこに?」

 「もうすぐ作戦会議がある。そこで集まっている。」

 「僕らも行きましょうか。」

 「あなたは、平気なの?」

 「・・・大丈夫です。行かないわけにもいきません。」

 「そうなら、いいのだけれど・・・。」

 

 平気なのかと言われると、そうでもない。後悔や後ろめたさに押しつぶされそうになっている。けど、ここで歩みを止めるわけにはいかない。

 

 「今は一分一秒も惜しい状況ですから。」

 「・・・。」

 

 作戦会議、いつもの会議室を使って対策本部が作られている。

 

 「『未確認怪獣娘対策本部(仮)』か・・・。」

 

 本当に大事になってきたな・・・まあそれも仕方ない。

 

 『現在、対象の未確認怪獣娘は、アクアライン周辺にて凍結中。氷の大きさ、使用された麻酔薬から、48時間は動かないことが計算されています。』

 

 壇上で、ピグモンさんがブリーフィングを行っている最中だった。適当に席に着くと、配られていた資料に目を通す。

 

 (暴れた結果、ビルが6棟全壊、13棟半壊、怪我人が十数名と、死者は無しか・・・。)

 

 すごい被害だが、死者が出なかったことだけが幸いか。それでも、怪獣娘への社会的なダメージは免れない。今すぐ外でやっているデモがそれだ。

 

 「ソウルライザーで制御できないカイジューソウルを、どうやって治めるんですか?」

 『それも現在は調査中です。ともかく今は、すべての怪獣娘の活動を停止し、いつでも万全の態勢でいられるよう心掛けていてください。』

 

 つまり、『なにもできない』ということだ。会議室の中では不満の声も上がっているが、別にピグモンさんが悪いわけではない。

 

 「シンジさーん。」

 「アギさん、ミクさん。ウインさんは?」

 「ウインちゃんは調査中。って言っても、どこで何を探せばいいのかわからないって言ってたけど・・・。」

 「そう・・・。」

 

 現状、アイラのことを一番知っているのは僕だ。だがそれでも不十分だ。その義務もある。

 

 「僕が、行かないと・・・。」

 「シンジさん、大丈夫?顔色悪いよ?」

 「あぁ・・・そういえば、昨晩はよく寝れなかったんだったな・・・。」

 「その上怪我までしてるんだよ、無理しちゃだめだよ。」

 「でも、僕にしか出来ないから・・・。」

 「だからこそ、無理しちゃダメなんだよ。休もう、ね?」

 

 アギさんに促され、とりあえず場所を移すことにした。それなら最初から病室にいればよかったのに、一体何をやっているんだろうと心の中で呟いた。外に出ることも出来ないし、どの部屋も空いていないだろう。なら屋上に戻るとしよう。

 

 「騒がしいな・・・。」

 

 下ではイカれた群衆がやいのやいの言っているし、上はヘリコプターがバタバタ言っているが、それは自衛隊やGIRLSのものではない。

 

 「あんなに飛んでたら邪魔になるだろうに・・・。」

 

 そのヘリコプターの向かう先は、アクアラインの氷塊。バディライザーの望遠機能で眺めてみると、近くの埠頭や展望台にも人が集まっている。観光でもしてるつもりか。

 

 「・・・狂ってる、何もかも。」

 「どうして?」

 「アギさん、いたの?」

 「シンジさん、休まないつもりかとも思って。」

 

 すぐ後ろにアギさんが来ていて、悪態をついていたことを見られてしまった。

 

 「何が狂ってるの?」

 「狂ってる、というか矛盾してる。」

 「矛盾?」

 「怪獣娘が危険だっていう主張は、たしかに間違っちゃいない。あ、ごめん、アギさんたちがそうだって言いたいわけじゃないんだけど。」

 「それはわかるよ、それで?」

 「危険だ危険だって言ってる人間が、その危険の最前線に自分から入ってきている。下にいる連中も、あそこで写真撮ってる連中も。」

 「そうだね、マスコミの取材も病院の前でもやってて、搬入の邪魔になってるみたい。」

 「ついでにあの報道ヘリの数もね。」

 

 まるでお菓子の山に群がるアリや羽虫のようにブンブンと飛んでいる。

 

 「壊れたビルだって、みんな保険に入っているし、当人以外が文句を言える筋合いはないはず。」

 「今のご時世、怪獣保険に入っていないところなんてないもんね。」

 

 『ニコニコ保険』のパンフレットなら、どの建物にでも置いてある。今や火災、災害に次いで怪獣保険は無くてはならないものだ。勿論お金の問題ではないのだけど。

 

 「それに何より、なんでこんなに怪獣娘のことを責めるの?自分達とは違うから?そんなこと全然ないのに、みんなただの(・・・)女の子なのに。」

 「こうして被害が出てるんだから、それも仕方がない事だよ・・・。」

 「でも守ったのも怪獣娘なんだよ?!GIRLSのみんなが頑張ったのに・・・なのに、『ありがとう』も言えないの!?」

 「それは・・・。」

 

 涙が出てきた。悔しさや怒りと、哀しみで。

 

 「本当に悪いのは違うのに、みんなでもアイラでも・・・僕のせいなのに・・・。」

 「そんな!・・・そんなこと・・・。」

 

 これが一番の本音だった。慰められるよりも、ただ怒ってほしかった。なのに皆、僕に優しくしてくれた。それが何よりも堪えた。

 

 「誰か、僕を叱ってよ・・・!」

 「・・・そうだね、ボクはシンジさんの事嫌いだ。」

 「・・・。」

 「今みたいに、ウジウジして甘ったれてるシンジさんなんて嫌い!」

 「アギさん・・・。」

 「シンジさんを裁く権利なんて、ボク達にも、誰にもないよ。自分自身で立ち上がって、自分の手で見つけないと。シンジさんになら、出来るでしょ?」

 「僕に・・・出来る?」

 「シンジさんも、アイラのことも救えるのはシンジさんだけなんだよ、ボクはそう思う。ボクたちは、その手助けができるだけなんだ。だから、立って。」

 

 アギさんが、手を差し出してくれた。こんな時にも、僕の肯定してくれた。

 

 「そうか、そうだね・・・わかったよ。僕がやるんだ。」

 「ボクたちが、ね。」

 「うん、ありがとう、アギさん。」

 

 ひとしきり泣いて清々した。立ち止まっているわけにはいかないんだった。大事なことなのに、すぐ忘れる。1人じゃないっていうのが、本当にどういうことなのかも。

 

 「安心したら、なんだか眠くなってきた・・・。」

 「寝てないんでしょ?少し休もう。また、膝枕してあげるよ。」

 「いや、それは・・・お願いしちゃおう、かな?」

 「うん、どうぞ。」

 

 ちょっとぐらい、甘えさせてもらってもいいかな?季節は冬だけど、今日は日差しもあったかいし、お昼寝日和だ。

 

 「けど、ちょっとうるさいな・・・。」

 「じゃ、じゃあ・・・こうしてみる・・・?」

 「おっ?おぁっ!?」

 「あんまり、動かないで・・・。」

 「あっ・・・あぁ・・・。」

 「変な声も出さないで・・・。」

 

 アギさんが、上体を折り曲げて耳を塞いでくれた。より柔らかい感触のサンドイッチ・・・暖かさも倍。

 

 (胸の音が・・・心地いいな・・・。)

 

 その鼓動に耳を傾けている内に、夢の世界へと入っていった・・・。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「・・・っはぁ!?」

 

 時計は2時を指している。しかし外は暗いので、午前の2時だ。自分の部屋の自分のベッドで、汗をかきながら目が覚めた。遊びに行く約束は今日の昼からだった。起きるにはちょっと早すぎる。

 

 「あんまり、よくない夢・・・だった・・・な。」

 

 枕元に置かれた水差しを傾け、一杯煽る。GIRLSに所属するようになってから、こういった夢をよく見るが、予知夢の能力にでも本当に目覚めたんじゃなかろうか。それならもっと楽しい夢が見たいけど。

 

 「・・・はぁ・・・。」

 

 しばし考えて、携帯に手を伸ばす。電話帳の中から『天城ミオ/ベムラーさん』の項目を選ぶ。こんな時間に電話をかけるなんて非常識、とエレキングさんになら叱られそうだけど、今はすぐにでもベムラーさんと話がしたかった。数回のコール音の後、明るい声色のベムラーさんが出た。

 

 「もしもし、シンジです。夜分遅くに失礼します・・・。」

 『もしもし、構わない。今も仕事中だったから。徹夜はいい仕事と美容の敵だけどね。』

 

 いつもと変わらない口調に安心感を覚えた。気を使ってくれたのか。

 

 「その・・・今日のことなんですが・・・。」

 『ああ、彼女の処遇についてかい?こんなに早く結論を出してくれるなら嬉しいよ。』

 「いえ、本当はあの時に言うべきだったと・・・。」

 『冗談だよ、どうしたんだい、こんな夜更けに?』

 

 一呼吸おいて、喉の奥から言葉をひねり出す。

 

 「・・・怖いんです、本当は『知る』ことが。」

 『怖い?』

 「アイラの過去のことも、父たちがアイラにしたことを知るのが怖いんです。アイラだけじゃない、父たちの実験の犠牲になった怪獣娘さんたちのことを考えると・・・。」

 『・・・どんなことをされたのか、想像することが?』

 「いえそうじゃないんです、いやそれもあるけど・・・『向き合うこと』が怖いんです、父の所業に、罪に向き合って、背負うことが・・・。」

 

 「今までずっと・・・ほんの半年ほど前までは、父とも関係ない場所で過ごしていたのに、今は『ここにいる』。それがどうしても・・・。」

 『飲み込めない?』

 「そう、飲み込めないんです。みんなと出会えたことは、とても嬉しいことだけど、父の所業を思うと、後ろめたさに潰されそうにもなる。それを今、アイラの隣にいて実感してるんです・・・。」

 『・・・そうか。』

 

 ただ気楽に、仲間たちと一緒に過ごしていたかった。けどそれを、父は許してくれなかった。父だけじゃない、父の実験の犠牲になったものたちに・・・。

 

 『以前私が、シュレディンガーの猫について言ったことを覚えているか?』

 「本当の父は、どっちなのか開けてみるまで分からない、ってことですか?」

 『そうだ、今の君はまさに、その箱の蓋に手を添えているんだ。そして「開けない」と言う選択肢が無い。』

 

 『世の中には、不都合な真実がいくらでもある。目を背けていられないようなことが、生きている内にいくつも出会う。けどそれを乗り越えていくことが、「大人になる」という事なんだ。』

 「大人になる・・・。」

 『そしてもう、君は「選んだ」んだ。そのバディライザーを手にした時、この運命は決まっていることだったんだ。それを「わかっていた」ハズだ。』

 「・・・。」

 『大丈夫だ、わかっていても、現実に直面すれば立ち止まってしまうということもある。それを助けるために、私たち「大人」がいるんだ。私に頼ってくれればいい。・・・これが聞きたかったんだろう?』

 「・・・はい!ベムラーさんには、かないませんね。」

 『私の方がずっと大人だからな?それで、どうして欲しい?』

 「僕は、父のことに直面することを避けていました。そのせいでアイラについての調べ事が遅れていました。」

 『例の、データベースのことだな。』

 「そうです、それ以上に、僕の頭ではパスワードを解けないようです。」

 『だから私に依頼したい・パスコードの入力と、中身の調査を?』

 「はい、お願いできますか?」

 『いいとも、ちょうどこっちも行き詰まっていたところだ。新しいパズルが出て来たなら、そっちに手を出そうとしているところだった。』

 「では、お願いします。チョーさんには、ベムラーさんがこの家のあらゆる物に手を出してもいいように言っておきます。」

 『ベッドの下もかい?』

 「そこはやめてください。」

 『ははは、冗談だよ。わかった、任せてくれ。』

 「お願いします、それから、ありがとうございました。」

 『いいさ、報酬には期待しておくよ?」

 「はい、ではまた。」

 

 少しだけ、安心が出来た。これで枕を高くして眠れる・・・という時間でもないか。

 

 「少しでも休眠しないと・・・明日も大変だぞ。」

 

 正確に言えば今日になるけど。どんなところへ行くだろう?色々遊んだけど、こんどはなにを・・・。

 

 

 

 

 

 「シンジ様、お目覚めください。お客様がお見えです。」

 「ふわぁ・・・お客?ベムラーさん?」

 「そうです、お召し物と、何か温かいスープはいかがですか?」

 「いや、今はいい。すぐ済むはずだから、着替えだけ。」

 「かしこまりました。」

 

 時間は午前6時。いくらなんでも早すぎじゃないか?いや、深夜に電話した僕に言えることでもない。

 

 「お待たせしました。」

 「いや、平気だ。今日君の予定は?」

 「アイラと一緒に、みんなと遊びに・・・。その荷物は一体?」

 「ああ、しばらく厄介になるよ。住み込みで隅々まで調べさせてもらうからな。構わないね?」

 「いいですけど、デザートは当分ミカンですよ?」

 「はは、3食までつけてくれるならありがたいよ。」

 

 チョーさんに説明し、一部屋もあてがってもらう。つくづく、一人暮らしには広すぎる家だと思った。

 

 「でもくれぐれも、」

 「わかってるベッドの下だろう?」

 「ベッドの下が、どうしたの?」

 「ヴぇっ、アイラ、起きたの?!」

 

 寝間着姿のアイラが起きてきた。

 

 「ねえ、ベッドの下にはなにがあるの?」

 「えっと・・・その・・・。」

 「ベッドの下には怪物が潜んでいるんだよ。」

 「怪物?」

 「そう、夜明かりを消す前には、戸締りを確かめて、ベッドの下には何もいないことを確認するんだ。そうしないと、明日の朝日が拝めなくなるかもしれない。」

 「・・・怖い。」

 「そうだろう、だからこの話はおしまいだ。もっと楽しい話をしよう。」

 

 アイラはシンジの後ろに隠れた。

 

 「アイラ、今日はどこに行くんだっけ?」

 「みんなと一緒に遊びに行く・・・楽しいところに。」

 「そうだね、でもその前に、朝ごはんを食べて支度をしようか。ベムラーさんもどうですか?」

 「構わないかな?ちょうど朝食はまだだったが。」

 「アイラもいいかな?」

 「うん、一緒がいい・・・。」

 「じゃあチョーさん、お願いできるかな、三人分。」

 「かしこまりました。」

 

 しばらく後。

 

 「じゃあアイラ、準備はいい?ソウルライザーは持った?」

 「うん、これも・・・。」

 「つけてくれたんだね、そのストラップ。ありがとう。」

 「ううん、シンジがくれたものだから。」

 

 「じゃあ、行ってきます。」

 「いってきます・・・。」

 「行ってらっしゃいませ。」

 「ああ、楽しんでおいで。」

 

 ガチャリと開けた玄関から、眩しい朝日が入ってくる。

 

 今日も、いい一日になればいいな・・・。




 モン娘は~れむ怪獣娘コラボきったぁあああああああああああああああ!!でも、若干シナリオがネタバレになってはいませんか?気になる人はいますぐにプレイだ!!ログインボーナスでアギちゃんとジャッパちゃんがもらえるよ!

 思ったよりも長くなりそうだ。前後編を予定していたけれど、エピローグ含めて全4話か5話ぐらいになりそうな予感。

 感想、評価もお待ちしております。感想は、乾いた大地に降る恵みの雨のように、活力になります。(感想(乾燥)だけに。)作者は評価を待っているのよ・・・新着通知が来るのを、今か今かと窺っているの。

 ネタ解説

 輪っかの煙:ミニラが最初に吐いた失敗熱線が元。ゲームによってはゴジラが吐いたりもする。

 ショック死:ショック死とは、なんらかのトラブル血圧が不足し、血流が不十分になったことで死亡することをいう。別に驚いて死ぬことがショック死ではなく、失血死も失血性ショック死という。

 アクアライン:シン・ゴジラの登場シーンから

 


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ネバー・セイ・ネバー!

 そういえば、ジード最終回の少し前、6体ものギャラクトロンが襲撃してくる夢を見ました。あれも何かの予知夢だったのか・・・。


 『お電話ありがとうございます、国際怪獣救助指導組織『GIRLS』東京支部です。』

 「あ、あの!」

 『大変申し訳ございませんが、ただいま大変回線が混雑しております。お手数ですが、時間を置いて・・・』

 「ダメだ、通じない・・・。」

 「きっと、苦情や問い合わせが殺到しているんですよ。この大騒ぎですから無理もありませんね・・・。」

 「こんなすぐ目の前にいるっていうのに、手が届かないなんて歯がゆい・・・。」

 

 彼らの言う通り、GIRLS本部はてんてこ舞いであった。次々に寄せられる問い合わせに、電話回線もメールフォームもパンク。エントランス前は人だかりでごった返し、完全に立ち入り禁止状態であった。

 

 「あーっもう、邪魔な野次馬だなぁ。こんなところで(たむろ)してたってなんにもならないってのに!」

 「真実を知らない者ほど、大騒ぎしたがるという言いますしね。」

 「私たちは違うっていうのに・・・。」

 

 彼らがここにいる理由はただ一つ。『真実』を伝えること。しかしどれだけ声高々に叫ぼうと、愚鈍な群衆の前にはまるで無力だ。

 

 「どうしますかキャップ?」

 「このままここで待ってても、埒が明かないと思うけど?」

 「そうねぇ・・・。ん?」

 「いっそ、裏口から侵入する?」

 「そんなことしたら僕たち掴まっちゃいますよ、不法侵入ですよ不法侵入!」

 「でも話せばわかってもらえるかもしれないじゃん。そうだ、シンさんの発明でなんとかならない?透明になったりとか、催眠術とか?」

 「ありませんよ、僕の発明にそんなちゃち(・・・)な使い方は!」

 「ねぇちょっと二人とも、アレ見て?」

 「なに?」

 「なんですか?」

 

 雲一つない青空に、一つの影が見える。それに気づいたのは、この場においては彼ら三人だけだ。

 

 「鳥か?」

 「飛行機ですか?」

 「いや、違う。」

 「「「自動車だ!!」」」

 

 乗用車が空を飛んでいる。夢でも幻でも、吹っ飛ばされて飛んできているのでもない、紛うことなく『空を飛んでいる』!

 

 

 

 

 

 

 「あだぁ!」

 「ご、ごめんシンジさん・・・。」

 「おっはよーシンちゃん。」

 

 時を同じくして、GIRLS本部屋上。いきなり地面に叩き落されて、シンジは目を覚ました。

 

 「あれ・・・ミカ?なんでここに。」

 「なんでもなにも、シンちゃんを探しに来たんだよ。アギちゃんのことも。」

 「ほとんどボクが目的だったんじゃないの・・・?」

 「?」

 「しーっ。それよりシンジさん、怪我してない?」

 「怪我ならしてるよ、左腕が。」

 「その、左腕の事なんだけど。さっきはごめんね、シンちゃん・・・。」

 「ミカは心配してくれただけでしょ?僕がこうして生きてるんだから、平気だよ。」

 「ボク、シンちゃんのことが心配で・・・そのせいでシンちゃんが余計に傷ついて・・・本当になんて言ったらいいのか・・・。」

 「怪我を負ったのは、僕がドンくさかっただけだから、ミカのせいじゃないよ。」

 「でも・・・。」

 「大丈夫・・・・大丈夫だから、さ?」

 

 アギさんが、ジェスチャーでなにかを伝えようとしている。手を回して、抱き寄せる?マジですか。

 

 (まあ、やっちゃうんだけど。)

 「シンちゃん・・・。」

 「ミカ・・・ミカが無事でよかった。」

 「うん・・・。」

 

 「で、これからどうするの?」

 「どうって?」

 「アイラのこと。あのままにはしておけないでしょ?」

 「うん・・・けど、なにが出来るんだろ。また暴れたとして、今度も力尽くで抑えられるとは限らないし・・・。」

 「そうだよねー・・・。」

 

 遠くに見える氷塊は微動だにしていない。けど、いつ動き出すかもわからない。GIRLSはその対応に追われている。・・・はずなのだが実際のところ、クレームへの対応にひどく手を取られ、調査も思うように進んでいない。後手に後手に回っている。

 

 「それに、アイラをどうにかしただけで解決するわけでもない。」

 「そうだね、GIRLS、いや怪獣娘全体が苦境に立たされてる。」

 

 今までの平和は、怪獣娘が積極的にその安全をアピールすることで成り立ってきていた。けどそれも今は崩れた。世論は、怪獣娘を排除しようとする方向に動くかもしれない。

 

 「・・・本当に、とんでもないことをしてしまったんだ・・・。」

 「シンちゃん、元気出してよ。シンちゃんは怪獣娘と人間の架け橋になるんでしょ?シンちゃんがそれじゃあ始まらないよ。」

 「何か手はない?バディライザーを使って、とか。」

 「そうだな・・・。」

 

 おもむろに、カードを取り出して眺めてみる。今考えられる最強の手札、それは当然、

 

 「ウルトラマン・・・。」

 「それ使ったら、アイラにも勝てるかな?」

 「わからない、どんな効果があるのかも知らないし、勝てるかどうかもわからない。それに・・・。」

 「それに?」

 「力で解決しても、それだけじゃダメだと思う。」

 「そうだね・・・。」

 

 銀のカードを見送って、さらに進めていく。もしも、怪獣の怒りや興奮を抑える能力を持ったカードがあれば、それが有用な一手になれただろう。けどそれは今無い。基本的には怪獣は『破壊者』だ、攻撃的な存在が圧倒的多数を占める。

 

 「殴れば、殴り返される・・・ん?」

 「どうしたの?」

 「いや・・・見覚えのないカードが。」

 

 それは不気味なほど真っ黒なカード。黒く塗りつぶされ、何も描かれていない。描かれていたとしても、読み取ることは出来ない。試しにバディライザーに挿入してみるが、なにも反応しない。

 

 「ひょっとして、アイラのカードなんじゃないかな?」

 「アイラの?・・・アイラの、心なのか?」

 

 なにもかも拒絶し、何色にも染まらない、黒。それが今のアイラなのか。

 

 「ここでジーっとしててもドーにもならないけど、なにをしても空回りしそうだな、なんか。」

 「ならもうちょっと休んだら?案外降ってくるかもよ?」

 「答えが降ってきたら苦労しない。・・・と?」

 

 携帯が鳴っている。マナーモードにしていて気が付かなかった。発信者は・・・チョーさん?珍しい。

 

 「もしもし?チョーさん?」

 『シンジ様、ベムラー様がお待ちしております。』

 「なにか進展があったってこと?わかった、すぐ帰る・・・って、ちょっと外に出るのも時間かかるかも・・・。」

 『ご心配なく、只今お迎えに参っております。』

 「迎え?」

 「シンちゃん、降ってきた。」

 「降ってきた?なにが?」

 

 ズキュゥウウウン!と轟音響かせ、それは舞い降りた。

 

 「車。」

 「見りゃわかる。なんだこれ、ウチにあった車じゃん。」

 「シンジ様、お乗りください。」

 「はぁ・・・これ、飛ぶんだね。わかった、一旦帰ろう。」

 「シンジさん。」

 「シンちゃん!」

 「うん、行ってくる。なにかあったら連絡ちょうだい。」

 

 グッと親指を立てて、後部座席に乗り込む。

 

 「シートベルトを着用ください。」

 「わー、こわい。たかい。」

 

 ふわっとした浮遊感を味わい、お尻がムズ痒くなる。以前の東京タワーの事件以来、少し高所恐怖症のが気が出ていたのを思い出した。

 

 「うわっ・・・本当に人がいっぱい集まってるな・・・。」

 「それでは飛ばします(テイクオフ)。取っ手にお掴まりになって、舌を噛まないようにご注意ください。」

 「そんなに飛ばすな・・・」

 

 言い切る前にエンジンに火がついて、Gで舌が引っ込んだ。

 

 「シンちゃん・・・がんばって。私たちもがんばるから。」

 「うん、行こうゴモたん!」

 「アギちゃんも、随分頼もしくなったね。先輩として嬉しいよ。」

 「ゴモたんのおかげかな、それにシンジさんも。」

 「じゃあ、さっきの続きも聞かせてくれるかな?」 

 「うぐっ、もー早く行こう!」

 

 一体なにを話していたのかは、2人だけの秘密。

 

 

 

 

 「あぁあああキャップ見てください、飛んでいきましたよ!」

 「すっげぇ・・・空飛ぶ車なんて初めて見た・・・。」

 「レトロフューチャーに描かれた、エアカーのようですね・・・あのエンジン音は、おそらくイオンエンジンの一種ですね、ぜひ開発者とも話し合ってみたい・・・。」

 「もう、それよりどうやって中に入るか考えないと!」

 「ねぇ、今の車に乗ってた人・・・どっかで見たような・・・そうだ、前に雑誌のインタビューで見た・・・。」

 

 キャップと呼ばれた女性が、携帯の画面を弄って、その答えを導き出す。

 

 「これよ!『怪獣娘とつながる少年』。この人になら・・・!」

 「よーしそうと決まれば、シンさん、あの車どこ行くか分かる?」

 「まかせてください!僕の発明したこの新式レーダーでなら、火星まで居場所を・・・。」

 「はいはい、時間は待っちゃくっれないんだから、急ぐわよ!」

 

 「Something(サムシング) Search(サーチ) People(ピープル)、出動!」

 「「了解!!」」

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「ただいま!」

 「おかえり、さっそくだけどデータベースへアクセスできた。こっちへ来てくれ。」

 

 家に帰れば、ベムラーさんが出迎えてくれた。さっそく成果があったようで、重畳重畳。

 

 「その前にシンジ君、一つ確認しておきたいことがある。」

 「なんですか?」

 「本当に、見ても大丈夫だな?踏み出したことに、後悔しないな?」

 「・・・はい。」

 「そうか、なら。」

 

 データベースに繋がったパソコンの前に来た。

 

 「今の状況に、最適だと思われる情報だけをかいつまんで(ピックアップして)ある。・・・ちょっとショッキングかもしれんが。」

 「・・・。」

 

 それは実験の経過を記録した、日記のようなものだった。他にもある膨大なデータの内の、ほんの一部。一番最後、『26番目』の、実験データだ。

 

 「カイジューソウルの、製造実験?」

 

 簡単に言うと、カイジューソウルを人為的に生み出す計画だ。それまでの実験で、怪獣娘一人ひとりが引き出せる力には限界があり、それは先天的に備わった、一種の『法則』。『怪獣は必ずどこかで「負ける」』という『運命』のようなものだ。その運命を乗り越えうる、究極にして無敵の怪獣を作り出すという計画だ。

 

 「アイラは、生まれついての怪獣娘じゃなかったの?」

 「薬物や、過度なストレス負荷による怪獣娘の実験が、それ以前から行われていた。その中で、アイラに使われたのは、一種の降霊術らしい。」

 「降霊術?コックリさんとか?」

 

 イタコのように、伝説上の怪物や妖怪の類を、アイラの体に降ろした。そういうことだ。

 

 「これとは別の、ソウジ氏の手記によると、降ろされた怪獣は、『別の宇宙』の存在だと言われている。それも、複数の宇宙から。」

 「別の・・・宇宙・・・。」

 

 別の宇宙に、別の自分がいるように、別の宇宙に同じ名前の怪獣がいたりする。例えばレッドキングは、どくろ怪獣と呼ばれて、多々良島や日本アルプスに生息していたと言われるが、はたまた、ギアナ高地や、次元の境目を漂う幻の島に住んでいるものもいたという。どちらも間違いなく『レッドキング』ではあるが、その生態は大きく異なる。

 

 「複数の宇宙に存在する、同じ名前の怪獣を集めた・・・。」

 「『破壊神』『虚構』『最終兵器』『自然バランスの調停者』『教育パパ』、そして『怪獣王』・・・様々な呼び名があったと、手記には記されている。」

 「なんかひとつ変なのが混ざってません?」

 「とにかく、同じ名前であっても、全く役割の異なる存在が、一堂に集められた。もはや残っているのは、『名前がもつ概念』だけだろう。『最強』という概念・・・。。」

 

 原初にして、頂点、怪獣の中の怪獣、怪獣王。アイラという少女に与えられた運命は、あまりに重い。

 

 「名前・・・。」

 「名前か、研究者たちは、26番目の実験体ということで、『ブネ』と呼んでいたらしい。ソロモン72柱の26番目の悪魔で、悪霊を操る竜の悪魔だという。」

 「ブネ・・・。」

 「だが、ソウジ氏は違う名をつけていたようだ。研究者たちが口々にしていた『(God)』と、26番目の最後の計画から『終焉(Z)』、そして『アイラ(Illa)』。それらを纏めて・・・。」

 

 と、いいところでチョーさんに呼ばれた。

 

 『シンジ様、来客のようです。』

 「来客?怪獣娘の誰か?」

 『いえ、怪獣娘とは関係のない人たちのようです。』

 「誰だろう?とりあえず出るよ。」

 

 研究室から出て、インターホンを代わる。モニターには、女性が一人と男性が二人、皆大学生ぐらいの年齢の人たちがいる。

 

 「はい、濱堀です。」

 『ごめんください、私たち、『SSP』というものです、濱堀シンジさんのお宅で間違いないでしょうか?』

 「そうですけど、マスコミは遠慮させてもらってます。」

 『違います!マスコミ・・・とはちょっと違うんです!お話をさせていただきたくて・・・。』

 

 「SSPってなにかわかる?」

 「たしか・・・インターネット上で活動してる・・・オカルト研究チームだったかな?よくガセ情報とか掲載して炎上してるのを見たことがある。」

 「マスコミより酷くない?」

 「そうかもな、なら断ったらどうだ?」

 

 「あの、すいません、やっぱり今日のところはお引き取りを・・・。」

 『あの怪獣娘さんについて、知って欲しい事があるんです!あの時暴れていたのには、わけがあったんです!』

 「えっ?!」

 

 僕の知らない、アイラの情報。ひょっとすると、とんでもない情報じゃないのか・・・?良くも悪くも。

 

 「ベムラーさん、どうしよう?」

 「君は、どうしたい?」

 

 そんなの決まってる。

 

 「・・・中へどうぞ。あっ、車だけはガレージの方へ移してください。路駐だと邪魔になりそうなので。」

 『・・・ありがとうございます!!』

 

 3人を迎え入れ、応接室へと通す。リーダーのキャップと呼ばれる女性は、ちょっとおっちょこちょいだけど、明るくて誠実な人。ジェッタという青年は、やかましいけど、根はしっかりしてる人みたい。シンさんというメガネの人は、変な機械を持ってるし、言い回しが周りっくどいけど、かなり真面目な人だ。

 

 「私『夢野ナオミ』です。」

 「濱堀シンジです。」

 「さっそくですが、これを見てください。」

 

 挨拶もほどほどに、タブレット端末の動画を提示される。いきなり爆音から始まって面食らったが、その中心にいる人物はよく知っている。

 

 「アイラ!」

 「この怪獣娘さんが、暴れた・・・いや戦っていた最初の頃の時間です。突然、黒い影・・・シャドウが現れて、人を襲い始めたんです。」

 

 アイラが戦っている相手は、たしかにあのシャドウだ。あの時、僕たちが行った場所以外にもシャドウは現れていたんだ。その戦い方は、お粗末にも上手とはいえず、無我夢中で手足を振り回しているようであった。

 

 「この戦いの中で、彼女は明確に人間を守ろうとしています。この人たちへのインタビューも、僕たちは行いました。」

 「アイラが、守ってたんだ・・・。」

 

 その内に、シャドウはアイラへと狙いを定め、数で一斉に取り囲み始めた。途端に苦しみだすアイラ。

 

 「アイラ!」

 

 そしてシャドウに覆いつくされ、アイラの姿が見えなくなった時、突然青い光がシャドウを吹き飛ばした。そして、その次の瞬間に映っていたのは、理性を吹き飛ばされた、あの状態であった・・・。ここで動画は途切れた。

 

 「アイラ・・・暴走してたんじゃなくて、守ろうとしてたんだな・・・。」

 

 タブレットの向こう側の、物言わなくなったアイラに指を添え、涙交じりに呟いた。本当は怖かったろうに、自分を喪ってでも、必死に戦おうとした。

 

 「このことを、GIRLSへ伝えたかったんですが、生憎どこにも繋がらなくって。」

 「それで、濱堀さんの姿がたまたま見えて、濱堀さんなら聞いてくれるだろうと思ったんです。雑誌のインタビューで見た、怪獣娘と人間の架け橋になる濱堀シンジさんなら。」

 「ありがとう・・・ありがとうございます・・・!」

 

 なんて、なんていい人達なんだ。無駄な喧騒や根も葉もないデマで埋もれてくだけだった真実を、ここまで真摯に訴えてくれた。人間、捨てたもんじゃないなと、心からそう思った。

 

 「本当にありがとうございます。アイラのこと、本当に信じていいんだって思えました。」

 「よっし、これで、()はとれた!これなら大スクープだよキャップ!」

 「これでアクセス数稼げれば、家賃も払える!」

 (やっぱ間違いだったかな?)

 

 これだから人の本音というものは聞きたくない。けど、上っ面だけ綺麗ごとを並べて甘い汁をすするような連中よりも、こんなに裏表が無くてわかりやすい人物のほうが好感が持てる。嘘がつけないんだろう、この人たちは。

 

 「ともかく、この真実が公開されば、怪獣娘やGIRLSへの信頼を取り戻すことが出来るかもしれない。」

 「こちら側としても利益になる。Win-Winなところだろう。」

 「じゃあさっそく、サイトにアップロードして・・・!」

 「・・・通信?ピグモンさんから?」

 

 ジェッタが意気込んでいるところで、シンジのビデオシーバーが鳴った。

 

 『大変なんですシンシン!』

 「はい??」

 「いや、シンさんのことじゃないから・・・・どうしましたピグモンさん?」

 『アイアイが、アイアイがいないんですぅ!』

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 もぬけの殻、まさにその言葉通りだった。アクアラインに浮かぶ氷塊を調査したところ、水面下の部分には穴が開き、そこから既にアイラは抜け出していたのだった。

 

 「抜け出したって、どこに!?」

 『わかりませぇん!今大騒ぎで探しているところなんですぅ!』

 「もし、見つからなかったら?いや、見つかったとして、どうなるの?」

 『わからないわ、現在GIRLS上層部もその対応に追われているの。』

 「エレキングさん・・・GIRLSはなんて?」

 『・・・彼女は不安定な状態なの。もしも再び暴れだすことがあれば・・・最悪の手段もとらなければならなくなるかもしれないわ。』

 「そんな・・・せっかく、アイラの無実を証明できる手がかりがあるのに!」

 『手がかりがあっても、決定的な証拠が無ければ無意味よ。それを、彼女自身が摘んでしまうかもしれない。』

 「・・・そんな。」

 『とにかく、私たちも大急ぎで捜索するわ。あなたの力が必要になるかもしれない、それだけは覚えておいて。』

 「・・・わかりました。」

 

 プツッと通信を切った。

 

 「わかったもなにもないよ、どうするの!?」

 「状況が変わってしまった。今この動画をアップロードしてもなんの意味もないだろう。この混乱の渦に飲まれるだけだ。」

 「・・・せっかく、ここまで来たのに・・・。」

 

 アクアライン付近の埠頭では、緊急避難命令が敷かれ、SNS上にも不安の声が上がっている。アイラへの、怪獣娘への不信感は増す一方だ。

 

 「アイラさん・・・どこへ行ってしまったんでしょう?」

 「アイラが見つかっても、今アイラがどんな状況なのかもわからない。海底でエネルギーを蓄えているのかもしれないし、全然違うところへいってしまっているかもしてれない。」

 

 もしも違う場所で暴れ始めれば、被害はますます増えるばかりだ。そうなれば、もうカバーしきれなくなる。

 

 「アイラぁ・・・。」

 「シンジさん、アイラさんを信じてあげて。アイラさんを一番信じられるのは、シンジさんだけなのよ。」

 「そうだけど・・・。どこへ行ってしまったのか・・・。」

 

 ふと、自分の言葉に思い当たる節があった。そしてそれは次に確信に変わった。

 

 「キャップ、これ見てください。」

 「なに、シン君?」

 「今、東京湾の三浦半島沖の辺りに、微弱な電波が発せられているんです。」

 「漁船の無線かなにかじゃないの?」

 「民間の無線やビーコンに使われるている周波数とも違う、特殊な電波のようです。」

 「これってもしかして、怪獣娘が発してるとか?」

 「いえ、これは生物の発するエコーなどとも違う、周期的なシグナルです。」

 「ひょっとして・・・。」

 

 バタバタとシンジは自分の部屋の机の上の機械を引っ張り出してきた。

 

 「これじゃないかな?迷子用のGPSを試しに作ってみたんだけど?その試作品をアイラにあげたんだ!」

 「この周波数、間違いありません!これです!このシグナルを追えば、向かう先も割り出せますよ!」

 「やったねシンくん!シンジさんも!」

 「さすが名前が似てるだけある!」

 「それ関係あるかなぁ?」

 

 アイラにあげたあのストラップ、あれがこんな形で役に立った。なにより、アイラがあのストラップをまだ持っていてくれていた、それが嬉しい。

 

 「出ました、気流や海流を計算した結果、小笠原諸島の方に向かっているようです。」

 「小笠原?そんな長距離泳いでいくつもりなの?」

 「いや、アイラはこの家に来た時も、『泳いできた』って言ってた。泳ぐのが得意な怪獣だったのかも・・・。」

 「でも、小笠原のどこだろう?ひょっとしたら、そのさらに南にまで行っちゃうかも・・・。」

 「いや、小笠原だとしたら、心当たりがある。」

 「どこです?それは!」

 「大戸島だ、かつてソウジ氏と一緒にいるところを目撃された場所。そこに向かう可能性が高い。」

 

 生物には、生まれた場所へと帰る本能がある。アイラにとっての始まりの場所、それが大戸島なのか。

 

 「大戸島、って?」

 「小笠原の端の島ですね。何年か前に火山活動が活発化して、人は住めなくなっていましたが、最近は観光としての入島は許可されているはずです。」

 「じゃあさっそく、大戸島に行って・・・!」

 「キャップ、いくらなんでもそりゃ無理だよ。船もないのに。」

 「それに、居場所が分かったところで、アイラになにをしてあげればいいのかわかってないし・・・。」

 

 一歩進んでは立ち止まる、けど着実に前進して行っている。流れが、追い風が今吹いている。

 

 「大戸島について調べてみよう。ベムラーさん、データベースに大戸島に関する資料が無いか調べてみてください。キャップたちも、お願いできますか?」

 「もちろん!任せておいて!SSP、調査開始よ!」

 「「おぉー!」」

 「おー!」

 

 それぞれが調べ始めたところで、シンジも自分がとれうる手立てを考える。

 

 「アイラ・・・そこにいるんだな?」

 

 ビーコンの点滅が、応えてくれる。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「ありました!大戸島の伝説の怪物!」

 

 数時間後、タブレットに張り付いていたシンさんが声を上げた。

 

 「伝説って?」

 「はい、『太平風土記』という古文書によると『厄い(わざわい)の獣、森羅万象乱れし時目覚め、人魂をもちて、人々を断罪せん・・・。』と書かれています。」

 「人魂・・・青い炎?」

 「それに、この姿、まるで・・・。」

 

 黒い体表に、白い背鰭、そして口からは青い炎を吐いている。まさにアイラのあの姿そっくり。

 

 「森羅万象乱れし時?」

 「おそらく、環境の変化のことを指していると思われます。火山の噴火や、寒波の襲来、あるいは太陽の黒点の移動。それに伴う災害や飢饉を、『怪物(もののけ)』という形で表したのが始まりでしょう。」

 「日本では古来から、怪物や妖怪なんかの邪悪なものも、神様として祀ることでその怒りを鎮めた、っていう話がいくつもある。厄いの獣も、荒神(あらがみ)のひとつなのかも。」

 

 厄いの獣の絵の隣に、大きな漢字が3文字書いてある。

 

 「この、漢字は?」

 「おそらく、名前だと思われます。呉爾羅・・・『ゴジラ』と読めます。」

 「ゴジラ・・・それがアイラのもう一つの名前。」

 「ゴジラか・・・偶然か、それとも運命か。」

 

 ベムラーさんも来た。手には資料を持っている。

 

 「そちらもなにか発見が?」

 「ああ、先ほどシンジにも言ったが、ソウジ氏はアイラのカイジューソウルに独自の名前を付けていた。『God』、『Z』そして『Illa』。綴れば『GodZIlla』・・・。」

 「ガッズィーラ?いや、こっちも『ゴジラ』か!」

 「そうだ、ゴジラという名前で呼ばれる、そういう運命を背負っているんだ、この怪獣は。」

 「逃れられぬさだめ・・・。」

 

 ますます信憑性が増す。少なくとも、SNSで呟かれているゴミのような憶測よりもよっぽど信頼性が高い。

 

 「それで、その古文書の続きは?」

 「あ、はい。『獣の暴虐に立ち向かわん幾多の猛者(つわもの)、その牙に倒れる。しかし一人の賢人、秘蔵の附子(ぶし)を持ちて獣の口に飛び込まん。やがて獣、附子にて海へと還る。』とあります。」

 「附子?ぶしってなんだ?」

 「毒草のトリカブトのことで、ブスとも呼ばれます。古くから暗殺などにも使われ、『武将の兜をとってしまう』という意味で、トリカブトと言われています。」

 「つまり、毒薬を自分ごと飲み込ませて、退散させたってこと?随分野蛮な方法ね・・・。」

 「けど、あの表皮にはどんな注射針も刺さらないと思う。毒を盛るなら飲ませるしかないと思う。」

 「『薬は注射より飲むのに限る』とも言うしな。」

 「いえそんなはずはありませんよ、飲み薬は胃で消化されて、吸収されるまでのタイムラグがありますが、血中への注射ならすぐに効果が現れるもので・・・。」

 「はいはい、ただのたとえ話だから・・・。」

 

 

 「毒殺か・・・でもただの毒じゃ効き目なさそうだな。」

 「秘蔵の附子と書かれていますからね、特別な製法を用いられた秘薬か・・・あるいは鉱毒かもしれません。大戸島は火山島ですから、そういうものが昔からあったのかも。」

 「ヒ素や、鉛?」

 「あるいは、『放射性物質』か。」

 

 自ら悪魔の口へと飛び込む捨て身の戦法というのも納得がいく。そんな危険なものを扱えば、扱った当人もただでは済まない。

 

 「ベムラーさんの方は、なにか?」

 「ああ、ゴジラは、絶対に負けることのない無敵の怪獣として生み出された。平行宇宙を観察し、あらゆる兵器、あらゆる外敵、そしてあらゆる『事象』にも勝った(・・・)怪獣として、ゴジラが選ばれた。」

 「あらゆる、事象?」

 「そうだ、おそらくその毒物にも勝ちうる『ゴジラ』の要素も備えている、ゴジラの中でも最強のゴジラ、それが今のアイラだ。ひょっとすると、『時間』ですらも『ころす』ことができないかもしれない。」

 「『時間』・・・。」

 「そして実験の最中、アイラは暴走し、GSTEもフリドニアも壊滅した。そのアイラを止める方法を、ソウジ氏は実行したんだ。」

 「そ、それは、どうやって!?」

 

 

 「それは・・・『忘れる』ことだ。」

 「『忘れる』・・・?」

 

 

 「そう、忘れること。ソウジ氏はアイラの首筋に、特殊なコントローラーを埋め込んでいた。それを使って、アイラの中の『ゴジラ』の『記憶』の一切合切を『消した』んだ。『忘れる』・・・いや、『忘れられる』ことによって、『ゴジラ』も一時的に消えた。」

 「人は、思い出の中で生きている・・・。」 

 「そうだ、逆に言えば、思い出の中から消えてしまえば、その時本当に人は死んでしまう。ゴジラもそれには逆らえなかった・・・。」

 「じゃ、じゃあ、そのコントローラーを使って、もう一度アイラさんの記憶を消せば?!」

 「『止める』ことは可能だろう。」

 「けど、それじゃあ・・・。」

 「そうだ、人間は一歩も進歩していないということだ。同じ過ちを繰り返す、愚かな人間という証明だ。」

 「それに、ゴジラの中には、《どんな兵器も一度受けたら耐性ができる』個体がいたかもしれません。同じ手が通用するとも限らない。」

 

 

 「『私は好きにした』・・・。」

 「え?」

 「父の手紙に、そう書いてありました。『私は好きにした、君らも好きにしろ』、と。きっと、このことだったんでしょう。だから、父とは違う方法探さなければいけません。父とは違う道を・・・。」

 

 それが、シンジがとるべき道。父を超えるという証明。

 

 「でも・・・できるかな、そんなこと?」

 「シンジさん・・・。『ネバー・セイ・ネバー』!」

 「?」

 「出来ないなんて言わないで!シンジさんならきっと出来る!だってシンジさん、怪獣娘全員と仲良くなるんでしょう?」

 「・・・そうか、そうだった。ありがとう、ナオミさん。」

 「どういたしまして!」

 

 諦めたら終わりだ、僕の未来も、怪獣娘の未来も閉ざされる。

 

 「よっし!じゃあ取れるだけの可能性を探そう!ベムラーさんは、もうちょっとデータベースを探ってみて。SSPの皆さんも、協力してください。僕は・・・可能な限り、自分の限界に挑戦してみます。」

 「ああ、まかせておけ。」

 「ええ、ここまで来たら乗りかかった船よ!!」

 「俺たち、もう仲間だし!」

 「最後まで一緒ですよ!」

 

 ここにきて、頼もしい仲間が増えた。とても頼もしい『人間』が仲間になった。

 

 出会えてよかった。心の底からそう思えた。まだ安心するには早いが、希望が見えた。




 まさか1日でこんなに書けるとも思っていなかった。それほどまでに筆が乗った。まあ、ほとんど会話ばっかりで場面が全然動いていないけど・・・。会議ばっかりの映画が面白いわけないだろう!?(2016年7月29日までの前評判)

 初めて予約投稿を使ったけど、上手くいくかちょっと不安。次回で最終決戦の予定。

 引き続き、感想・評価お待ちしております。日に日にお気に入り登録者がジワジワ伸びていることが、嬉しく思っています・・・。

 そうそう、モン娘は~れむもよろしくね。怪獣娘の次はモン娘は~れむがアニメ化する番だ!

 ネタ解説

 SSP:ウルトラマンオーブのあの3人。勿論、テレビシリーズのあの人たち本人というわけではないが、怪獣娘を支持する一般の人間という立場にもってこいな人たちだと思ったので今回登場してもらいました。

 鳥か?飛行機か?:大元はスーパーマンの登場シーン。後々タケちゃんマンとかでもパロられる。

 教育パパ:ゴジラの息子で、ミニラに熱線の吐き方をスパルタで教えるが、失敗して吐いたリング状熱線もキングギドラにトドメを刺したりしている。

 伝説って?:ああ!それってハネクリボー?

 


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君の名は、

 今更ですが、この作品に登場する人物、団体等は全て架空の物であり、現実のいかなるものとは一切関係ありません。


 「ここが・・・大戸島か・・・。」

 「本当に人っ子一人いない、離島ね。」

 

 怪獣娘たちの本隊より一足早く、シンジとSSPのメンバー、それに運転手のチョーさんが大戸島に到着した。あの空飛ぶ車を使って。

 

 「いやぁ~すごい、感激です。未だかつてどこの機関でも開発されていないであろう新式イオンエンジンを体感できるなんて・・・。」

 「お褒めにあずかり、光栄でございます。」

 「ぜひ、これを開発した人とお話を・・・。」

 「ちょっとシンさん、ここに来た趣旨忘れてない?」

 「そうよ、これを逃したら一生無いってレベルの大スクープなんだから!」

 

 そう、この島で、今から史上最大の作戦が始まる。怪獣娘と人類の共存する未来、そしてシンジとアイラの未来を賭けた戦いが。そしてその中心人物がここに・・・。

 

 「・・・。」

 「シンジさん、大丈夫?」

 「・・・酔った。」

 「主役がこれじゃあ、この先思いやられるよ?」

 「大丈夫、大丈夫だから。」

 

 天気は曇り、やや風が強いがこの程度は問題ない。少し風に当たって酔いを冷ます。

 

 『シンシン、状況はどうですか?』

 「・・・問題ない。今からセットアップを行います。」

 『顔色悪いけど大丈夫?』

 「なんの、ただの武者震いさ。」

 『どうせ酔ったんだろ、こっちも何人かそうなってるけど。』

 「心配事があると、船酔いしやすくなるって言いますからね。酔い止め以外にも、胃薬にも意外な効果があったりしますよ。」 

 「そういえばじーちゃんが、乗り物酔いの時はコーラを一気飲みすると効くって言ってたよ?」

 「コーラ、買ってこようか?あそこ自販機あるし。」

 「いや、いい。こういうところのジュースって、高くつくから。」

 

 この期に及んで貧乏が抜けない。

 

 「それにしても、この匂い・・・。」

 「匂いが、どうかしたの?」

 「これは硫黄の匂いですね。長らく噴火はしていないとはいえ、煙は漂ってきているようですから。」

 「そんなの、戦ってる最中にドカーン!とか来たりしないの?」

 「計測上は、向こう10年は噴火の見込みがないそうですが、なにせ相手は大自然ですからね、何が起こってもおかしくはありませんよ。」

 「ちょっと、怖い事言わないでよ・・・。」

 

 かつては人が住んでいた島だったが、火山活動による避難命令が出されて以来、ここに住む者はいない。かつての家屋も、風に含まれる微量の硫黄によって朽ちている。

 

 『それだけ受け答えが出来ているなら、問題ないわね。』

 『エレ、お前は落ち着きすぎだ。』

 「いえ、レッドさん僕は大丈夫です。」

 『そうか、ならいいんだが。』

 『いい?あなたたちの任務を確認するわよ。』

 

 確認されるまでもない、何を隠そう、その作戦立案者が、ここにいる面々なのだが。

 

 

 

 

 話は数時間前に遡る。

 

 「納得がいきません!こんなの!」

 

 SSPとベムラーさんを連れ立って、シンジはGIRLS本部の会議室・・・未確認怪獣娘対策本部(本)に戻ってきた。そこで告げられたのは、残酷な指令であった。

 

 「『アイラの正体を明かすことなく、秘密裏に葬り去れ。現存する戦力の総てをもって、未確認敵性生物として葬り去れ』なんて、そんなの酷すぎる!アイラのことを、忘れろなんて!それがGIRLSのやる事か!」

 「今ならまだ、国連の力を使ってでもすべてを揉み消せる。そういう判断よ。」

 「誰がそんなので納得するもんか!」

 「ここにいる誰も、納得なんかしていないわ!!!」

 

 エレキングさんも声を荒げた。叩いた机の上から、ペンが転がり落ちる。ここには、地球上全てではなくとも、日本中の集まることが出来た怪獣娘がいっぱいいる。

 

 「こんなこと、あっていいはずがないわ・・・。」

 

 幸せは犠牲なしに得ることはできないのか、時代は不幸なしに越えることは出来ないのか。

 

 「怪獣娘であるベムラーさんはともかく、民間人はここにいてはいけないわ」

 「私たちだって、無関係じゃないわ!」

 「もはや全人類に、無関係な人なんていません。これはもう、人類と怪獣娘全てがかかってるんです!最終作戦(ファイナルウォーズ)の用意だってしてきました!最後のチャンスをください!」

 「私は、一介のGIRLS職員よ。私に決定権はないわ。・・・どこへ行くの?」

 「上に掛け合ってきます。」

 「それでダメだったら?」

 「これ(身分証)を返すだけです。」

 

 あの日、GIRLSに入った時にもらった身分証明書。

 

 「もう、GIRLSにはいられなくなるわよ?」

 「思えば、簡単なことでした。GIRLSが全てじゃない。怪獣娘を守るための組織が、1人の怪獣娘、いや、一人の女の子を排除しようというなら、僕はもう・・・組織にはいられない。」

 

 「たった一人で行動するというの?テロリストとみなされるかもしれないわよ。」

 「・・・もう、嘘を吐きたくないんです。自分にも、向かい合う誰かにも。」

 (これって、俺たちも巻き込まれてるのかな?)

 (テロリストはいやですよ!)

 (静かに!シンジさんを信じましょう。)

 

 「たとえ一人でも、僕は行きます。」

 「ちょっ・・・マジ!?」

 「シンちゃんさぁ、落ち着きなよ。」

 「止めてくれるなミカ、僕はもう選んだんだァ!?」

 「まずお前が落ち着け。自分の言葉に酔うのもやめろ。」

 

 ミカと、レッドキングさんに止められた。というか投げられた。

 

 「私もね、シンちゃんと同じ気持ちだよ。私だけじゃない、レッドちゃんも、アギちゃんたちも、エレちゃんも、それに・・・ゼットちゃんも。一人で抱え込んだりしないで?何回も言ってるでしょ、仲間を頼れって。」

 「ミカ・・・。」

 「今更水臭ぇこと言うなよ。その最終作戦っての?説明してからでも遅くはないだろ?」

 「レッドさん・・・。」

 「まったく、少し顔つきが変わったと思ったけど、私の見間違いだったのかしら?」

 「エレキングさん・・・。」

 

 見渡せば、皆が僕に注目していた。その眼には、皆同じ光が宿っていた。

 

 「うん・・・シンさん、ベムラーさん。作戦の説明をします、手伝ってください。」

 「あぁ、まずはシン君からだな。」

 「は、はい!・・・こんな女の子だらけの中での発表なんて、緊張するなぁ。大学でのレセプションとはまた違う・・・。」

 「はいはい、シンさんは私たちのブレインなんだから、もっとしっかりして!」

 

 「・・・以上のように、この『太平風土記』に描かれた『呉爾羅』こそ、アイラさんの正体だと推測されます。したがって、この伝記に従う形に、本作戦はなります。」

 「具体的には、どうすればいいの?」

 「次は僕が。伝記に従うとすれば、必要となるのは『秘蔵の附子』。大戸島の風土から推測された、この附子の正体は、『カドミウム』だと結論付けました。」

 「『カドミウム』?水銀コバルト?」

 「そう、高度経済成長期に、亜鉛鉱山から流れ出た廃水に含まれるカドミウムによって『イタイイタイ病』が蔓延したことが有名です。大戸島にも、僅かながら亜鉛の鉱脈があることがわかりました。カドミウムは亜鉛鉱に含まれていることが多いんです。」

 

 詳しい説明は省く。作者の頭がそこまで追い付いていない。

 

 「そうして開発されたのが、この『カドミウム弾』です。これを伝記のとおりに、口の中に撃ち込めば、間違いなく『ころす』ことは出来ます。」

 

 シンジは黒いカートリッジを取り出して見せた。ざわざわと会場内がざわつく。

 

 「もうひとつ、ゴジラの能力について知るべき、恐るべき事実があります。ゴジラの発する熱線の温度は、50万度から高くて100万度程度。これは、みなさんの火炎攻撃や熱線と比べれば『低い』部類に入ります。」

 

 元が人間だった怪獣、ジャミラの火炎は100万度。ミサイル超獣ベロクロンの火炎は1億度。ご存知、ゼットンの火球は1兆度。昔見た怪獣図鑑のビデオだと、ベロクロンの火炎は100万度だって言ってたけど。どういうことなの戦闘のプロさん?

 

 「そして背鰭からも発せられる、あの青い光。ここから、ゴジラの熱線の正体、ひいてはエネルギー源は、『核融合』だと推測されます。」

 

 会場内はさらにざわついた。

 

 「ちょ、ちょっと待てよ?核融合だと!?じゃああいつの体内には原爆があるってことか?!」

 「『核融合』と『原爆』は、直接的な繋がりはありません。この辺りは・・・シンさんの方が詳しいかな。」

 「はい、簡単に言うと、原爆には『核分裂』が、水爆には『核融合』が使われています。原爆は、ウランやプルトニウムといった放射性物質の原子核が起こす、核分裂反応に伴う莫大なエネルギーを使用しています。対して水爆は、重水素がヘリウムに融合する核融合反応に伴うエネルギーを用います。ただ、その核融合を起こすことそのものに、莫大なエネルギーが必要になり、水爆の起爆には原爆が必要となります。水爆による放射能=起爆装置の原爆の放射能、という認識でもらって間違いはありません。」

 「核融合そのものには、放射能は伴わないということ?」

 「決してゼロではありませんが、そういうことです。ゴジラが行っているのは、その核融合なんです。」

 「けれど、ゼロではないのだとしても、あの現場から放射線は検出されていなかったわ?」

 「ゴジラが行っているのは、人間の科学力や常識を上回る、さらに進んだ核融合・・・おそらく、爆発してから数秒で半減期に入る、特殊な評者性物質が作られているとしか考えられません。・・・こんな不思議に直面するのは、生まれて初めてかもしれません。」

 

 ちなみに、起爆に原爆を使用しない水爆の、純粋水爆というものもある。当然こちらも残留放射線などは少なくなる。つまり、これを使っているんだと思っていただきたい。

 

 「カドミウムは、原子炉の制御にも使われています・・・が、これはほぼゲン担ぎです。カドミウムの毒性にかけるしかありませえん。」

 「そんな、ふわっとした理論でいいのか?」

 「こっちは本命じゃありませんから。本命は、もっと辛くて険しくて、丸く収められる方法ですから。」

 「本命?」

 「ならそれを早く聞かせて頂戴。もう時間も無いのだから。」

 「はい、いいですか・・・。」

 

 

 冒頭に戻る。

 

 

 「で、俺たちは記録して、拡散させる。」

 「アイラさんが、怪獣娘さんたちと和解する、決定的瞬間をスクープするのよ。」

 「ジェッタ君、カメラのバッテリーは大丈夫ですか?この前みたいなことは御免ですよ。」

 「大丈夫、チョーさんがいっぱい持ってきてくれたし。」

 

 SSPには、戦いの様子を記録してもらう。カメラは2台あり、ひとつはSSPが、もうひとつはシンジが持っている。録画、録音されたデータは、チョーさんが車で保管してくれる。

 

 「シンジさん、S.G.M(Solid Graphic Monitor)の調子はどうですか?」

 「問題ない、シンさんが調整してくれたおかげで、予定より前倒しに出来た。」

 「それがもうひとつの(カメラ)にもなっていますから、壊さないようにしてくださいね。」

 「わかってる。こっちの情報も、後々そちら側に回すからね。」

 

 カメラ機能や、赤外線モード、昨今のビデオカメラやスマートフォンに備わっている機能が、大体この片目ゴーグルに入っている。

 

 「今僕たちがいるのは、島の北側。ここから南西方向が波止場で、みんながここから上陸する。僕たちは、ここから南東方向へ行って、場所を確保しておきましょう。」

 「戦うのにちょうどよくて、収録現場(ベストショット)にもいい場所ね。」

 「そう、皆さんの安全の為にも、いい場所をとっておかないと。」

 「ビーコンは、島の南端を示しています。アイラさんはそこでしょう。」

 「よし、聞こえましたか?今の。」

 『聞こえているわ、今あなたたちの姿が見えた。アギラたちをそちらに回すわ。私たちは島中の捜索を行ってから合流するわ。』

 「了解。じゃ、行きましょうか。」

 「SSP、出動!」

 「「了解!」」

 「了解。」

 「了解しました。」

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「それにしても、廃墟だらけだねこの辺りは。」

 「島の観光客も、この辺りには来ないのね。」

 「廃墟に入るにも管理者の許可が必要になりますし、いつ崩れるかもわからないから危険なんです。元から立ち入り禁止なのかもしれませんね、この辺りは。」

 「ここも、忘れられた場所なのかな・・・。」

 

 先行しつつ、戦うのにうってつけの場所を探す。ここら辺は物陰が多く、狭いので戦うには向かないだろう。

 

 「衛星写真では、この先に広場があるみたいですね。そこへ行ってみましょう。」

 「こういうところも、いつかは取材に来てみたいって思ってたけど・・・そんな場合じゃないよなぁ・・・。」

 「そうね、せっかく小笠原に来るなら、ゆっくり観光にでも来たかったわね。けど今は仕事集中しなくっちゃ。」

 「この島の目玉は、火山を始めとする自然と、温泉みたいですね。」

 「温泉かぁ・・・たまには骨休めもしたくなりますね。」

 

 全部終わったら、温泉に寄ってみるのもいいかもしれない。などとあらかじめフラグを立てることによって、本命の死亡フラグを折っておくのだ。

 

 「まさにゴーストタウンって感じだな・・・あれ?」

 「ジェッタ君、なにか見つけましたか?」

 

 カメラのモニターと、実際の風景を見比べてよく確認したが、どうやら見間違いではないと悟った。

 

 「シンジさん、あれ見てあれ?」

 「なんですか?」

 「なんです?」

 「いやシンさんじゃなくて・・・あの家の表札。」

 「表札?」

 

 廃屋のひとつ、もう何年も手入れされていない生垣が生い茂り、林のようにもなっている家。その門に掲げられた、その家の主を示す名前。

 

 「『濱・・・堀』?」

 「ここ、シンジさんと関係あるのかな?」

 「どうだろう・・・濱堀姓は父のものなんですが・・・それも偽名の可能性があるので・・・。」

 「って、入っちゃって大丈夫なんですか?」

 「ちょっと、ちょっと覗くだけ。」

 

 ギィ・・・と門を開けて、中を見てみる。朽ちた物干しや、草の伸びきった庭、雨戸が締め切られていて、中の様子は見えない。

 

 「玄関も・・・開いてないか。行きましょうか。」

 「シンジさんのお父さんって、どんな人だったんですか?」

 「古生物学者・・・だったかな、怪獣を研究をしてたんだって。あの家の研究室とかも、そのための物だった。」

 「そうじゃなくて、人柄とか、その出身とか。」

 「・・・僕も全然知らないです。けど・・・ひょっとしたら。」

 「ひょっとしたら?」

 「いや、また今度に。先を急ぎましょう。」

 

 シンジが先導して、坂を上って広場を目指す。この廃屋群、かつては住宅地だった場所の先に、目的地はある。それがなんとなくわかった。

 

 「ここか、結構広いな。」

 「ここなら十分じゃない?見通しもいいし、傾斜もない。」

 「風もあまり強くありませんね。」

 

 果たしてその先にあった。衛星写真で見るよりも、それは広く見える。片方は崖に、もう片方は森と、さらにその先に海に面している。

 

 「あの崖、崩れてるわね。ひょっとして、アイラさんが?」

 「いや・・・あの崩れ方を見るに、台風で崩れたんでしょう。それもかなり前に。」

 「戦闘中に何かの拍子で崩れると危ないし、こっちの岩場に潜伏しましょうか。」

 「そうだね、よっしシンさん手伝って。」

 

 剥き出しの土と、その麓に積もった土砂。元々ここも開発の途中だったのかもしれないと推測できる。新しく家か何かが建つ予定だったところで、避難命令が出た・・・。それ以来手付かずのまま放置。

 

 「ここ、お願いします。僕はもうちょっと先の様子を見てきます。」

 「一人で大丈夫?」

 「大丈夫です、無線はONにしておくので、なにかあったらすぐ伝えます。それじゃあ。」

 

 シンジは一人、広場のさらに先の丘を登っていく。

 

 『シンちゃんどこ行くの?』

 「ちょっと、気になることがあって・・・。」

 『単独行動は危険よ?』

 「わかってます、ちょっと確認するだけ・・・やっぱりそうか。」

 『知ってるのか?ここのこと?』

 『じゃあ、やっぱりさっきの家も?』

 「来たことがある・・・なんか見覚えが・・・ある。」

 

 ぼんやりとおぼろげな記憶で、ただ『来たことがあるような気がする』という思い違いかもしれない。森ばかりで、こことよく似た景色が、日本中のどこにでもありそうだった。

 

 『感傷に浸るのはほどほどにして、早く持ち場に戻って欲しいわ。アギラたちは、既に到着している頃よ?』

 『私たちも、もうちょっとしたら合流に行くから、それからアイラを迎えに行こう!』

 『お前が作戦の立案者で、要なんだからな!・・・おい、聞いてんのかシンジ?』

 「ああ、聞こえてますよ。ただ、ちょっと問題が・・・。」

 『何?』

 「今目の前にいる。」

 『・・・あ!な!!た!!!なにやってるの!』

 

 今シンジのすぐ目の前、アイラがいる。時間としては24時間も経っていないが、別れる前見た時と同じ格好で。ビーコンは島の南を指していたが、磁場の影響で実際の位置とズレていたのかもしれない。

 

 『すぐに引き返せ!!オレたちも急行する!』

 『シンちゃん逃げてー!』

 『聞こえているの?シンジ!返事をしなさいシンジ・・・』

 

 プツッ、とゴモラ達の声が聞こえなくなる。無線機のスピーカーだけを切った。波が岩場にぶつかり、砕け散る音だけが今は聞こえる。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「アイラぁ!!」

 

 波音に負けないぐらい大きい声で叫ぶ。ゆっくりとアイラは振り返り、その顔を向ける。相変わらず不愛想、というか無表情だったが、少し安堵の表情にも見えた。

 

 「アイラは・・・自分が誰なのか、知っている?」

 「・・・。」

 「僕は、知ってる。」

 

 あれはそう、ミカがいなくなってすぐの頃。家の周りが事件のゴタゴタで騒がしくなり、ほとぼりが冷めるまで実家を離れることとなった。それで来たのがこの島。父の故郷だ。

 

 「そこで君と初めて会った。・・・そこで会った女の子が、君じゃないか?」

 「・・・。」

 

 コクン、とゆっくり頷いた。シンジは頬を緩ませ、アイラも同じ表情をした。

 

 「僕と君は、初めから従姉弟(キョウダイ)だったんだな。・・・それなのに、父は君を・・・。」

 「パパは、私を助けてくれたの。」

 

 「昔の事、何もかも失くして、暗闇の中にいた私に、外の世界の光をくれた。」

 

 「地平線に沈まない太陽や、満天の星空を覆うオーロラ。色んなものを見た。世界には、綺麗なものがいっぱいあるんだって、教えてくれた。」

 

 「でも・・・それも消えてしまう。私の中の、黒い私が・・・、私の知らない色んな私が、すべてを飲み込もうとする・・・。」

 

 紐が千切れたストラップを、アイラはギュッと握りしめる。

 

 「そうなる前に、私を、『私たち』を止めて?」

 

 悲願するように訴えてきた。物事には、かならず終わりが来る。アイラはもう、『疲れた』のかもしれない。埋まることのない、自分の『孔』に。

 

 シンジは、腰のホルスターに手を這わせる。カートリッジは付け替えてある。今なら狙って、トリガーを引くだけで全てを終わらせられる。

 

 「それは、できない。」

 「・・・どうして?そのために、ここに来たんでしょ?」

 「なぜなら、君自身がまだ諦めていないから。」

 「私が、諦めていない?」

 

 「そうだ、君はあの時だって人を守ろうとしていた。それがなによりの証拠じゃないか?」

 「私は・・・守ってなんかいない。勝手なことを言わないで。」

 「いくつもある君の力(ゴジラ)の中の、本当の自分の力をコントロールしようとした。そうじゃないのか?」

 「それは今まで、なんどもやって来た。けど、その度に上手くいかなかった・・・。私に出来るはずがない、ミカやアギみたいに・・・光になれない。」

 「『出来ないなんて、言わないで。』諦めなければ、最後にはきっと勝ち取れる。」

 

 丘の向こう側に答えがあるなんて思っていない。ただ、沈んでいく夕陽を見たいだけ。

 

 「必ず君を救って見せる。だから、君が諦めないで!」

 

 アイラの体から黒いオーラが漂い、その様に世界が色を失う。いよいよおいでなすった、この世の終わりか?それとも新たな時代の始まりか?

 

 「・・・来い。」

 

 はたまたそのどっちでもないのか?ジリッと足に力をこめ、来た道を駆け出す。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「来た!」

 「カメラOK?」

 「OK!」

 

 ゴモラたちは既に集合を終えている。カメラもバッチリ、最終作戦の準備は整った。その場に、丘の向こうからシンジが駆け下りてくる。

 

 「来た来た来たぁ!」

 「シンちゃんはやくぅ!」

 

 やや遅れて、厄いの獣が見を乗り出してきた。纏うオーラが、その姿を何十倍もの大きさのように見せながら。

 

 

 グゥワァアアアアアアアアアアアアォオオオオオオオオオオオオン!!!!!

 

 腹の底から響くような咆哮、揺れる大地、まさしくそこにいるのは『怪獣王』。

 

 「みんな、いくよ!」

 「「「「「「「「「「「「「「ソウルライド!!」」」」」」」」」」」」」」」

 

 この場に会した全ての怪獣娘が、一斉にその力を解き放つ。

 

 「新たな時代の幕開けの為に、怪獣娘の力、お借りします!!」

 

 ホルダーからバラ撒いたカードが、シンジの掲げるバディライザーに吸い込まれる。

 

 「バディライド!」

 

 そして、最後にもう一枚。いつの間にか持っていた黒いカードを取り出す。

 

 「アイラ、君が闇を抱きしめられないなら、僕たちが半分持つよ。」

 

 バディライザーに入れられたとたん、そのカードは黒い火花を放ち始めた。そしてカードの表面が一枚ずつ剥がれていくように、いくつも重ねられた絵が散らばっていく。そしてその一枚一枚が、怪獣娘のゴジラの姿へと顕現(リアライズ)する!

 

 

 

 

 「アイラの中のゴジラが目覚めたあの時と、時を同じくしてこのカードが現れました。」

 

 場面は、会議場での発表会(ブリーフィング)に遡る。

 

 「最初はこのカードは何も描かれていない、真っ黒なだけのカードだと思っていました。」

 

 パッと、場内全員に表裏を見せる。

 

 「しかし解析してみた結果、このカードにはいくつもの絵が『重ねられている』状態であるとわかりました。何枚もの絵を透過処理して重ねられた結果、全てが混じって真っ黒で何も描いていないように見えていた、ということなんです。」

 

 スクリーンに、立体的なモデルが提示される。解析された結果、一枚一枚に『違う』ゴジラの絵が描かれているのが確認できる。

 

 「これが全部『ゴジラ』なの?」

 「うん、データベースには詳しい情報は載っていなかったけど、大よそ特徴は一致する。」

 「でも、細部まで見たらかなり違うぞ?」

 

 体色が微妙に違ったり、背鰭の形が違ったり、はたまた骨格からして別モノなやつもいる。特に違うのが『顔』だ。目が大きいヤツ、白目剥いてるヤツ、耳が無いヤツ、歯並びがいいヤツ、明らかに『眉』があるヤツ。大別しても15、細かいバリエーションで30はあるかもしれない。

 

 「そんな無茶苦茶なバリエーションのソウルが、アイラ1人に集中させられているんです。」

 「ソウルに向き合おうにも、ソウル全てが『オレもオレも』と自己主張が激しいから、一人ひとりと向き合って、制御することも出来ない・・・。」

 「だから、その荒ぶるソウルを、僕たちで止める。」

 「そんなこと出来るの?」

 「そのための、バディライド。」

 

 「バディライド中は、皆の心とリンクした状態になります。それは、同時バディライド中の怪獣娘同士にも当てはまります。」

 「じゃあ、みんなで一斉にバディライドした状態で、さらにアイラとバディライドすれば、ゴジラのソウルとも『対峙』できるってことか。」

 「そう。」

 

 なんか、あらかじめ用意して隠されてた方法にたどり着かされた、って感じが否めないですが。結局父の掌で踊らされているのか。

 

 「けれど、百歩譲ってその方法があっていたとして、私たちはゴジラに勝てるの?」

 「・・・正直、かなり厳しいかと。一体一体が一騎当千クラスの強さを持っていて、実質それらを同時に相手取ることになります。それでも、アイラ一人を相手取るより幾分温情なレベルですが。」

 「何の慰めにもならないわね。」

 「アイラの中のゴジラに、僕たちの味方に働いてくれる個体がいることを願うしかありません・・・。」

 

 怪獣王とは言っても、個体ごとに性格だって異なるはずだ。中にはイイやつだっているだろうし、我関せずなやつもいれば、逆にメチャクチャ凶悪なやつだっているだろう。

 

 というか、むしろ同時に顕現したら、勝手に喧嘩を始めるんじゃないかとも思う。『今の自分』を一番邪魔しているのは、紛れもなくすぐ隣にいる『自分自身』なんだから。

 

 

 

 

 「予想通りというかなんというか。ここまで来るともはや滑稽だぞ。」

 

 島のあちらこちらで熱線の嵐がレーザー演出のように吹き荒れ、怒号の重奏が鳴り響く。

 

 「ライブ会場かなにかか!」

 

 心なしか勇ましいマーチが流れてくるような感じだ。だがまあ勝手につぶし合いをしてくれているなら助かる。

 

 「物凄い光景です!まさにこの世は怪獣大戦争!」

 「ジェッタ君!身を乗り出すと危ないですよ!!!」

 「キャアアアア!」

 

 SSPも命がけの実況をしている。編集が大変なことになりそうだ。

 

 ギャアアアアアアアン!

 

 「あっ、このアイラいい子だ。」

 「あっちのはアイラは寝てる・・・。」

 「あっちは笑ってますよ。」

 

 ある程度予想していたことであったが、驚くべきことに、人間や怪獣娘たちの為に戦ってくれるゴジラが多く存在した。まさしく彼ら・彼女らも『正義の味方(ヒーロー)』なのだろう。

 

 ともかく、作戦は順調に進んでいる。既に半数以上の『ゴジラ』が『満足』し、それらが粒子となってカードに還元されていく。カードには、新たな『ゴジラ』の絵が現れ始めている。

 

 「このカードが完成したとき、アイラは完全に開放される・・・!」

 

 個体ごとに差はあるものの、冷凍攻撃や電撃に弱いものが多いということもわかっていた。そういった能力のある怪獣娘を筆頭に、果敢に攻めかかる。

 

 「特に強いのは・・・こいつか!」

 

 グワォオオオオオオオオオオオン!

 

 高い格闘能力に加え、体内放射などの技能にも優れた、最初に戦ったアイラに一番近い、ゴジラの中でも屈指の強さを持つ個体。恐らく、多くの強敵と対峙(VS)してきたのだろう。その相手となるのは、

 

 「レッドキング!」

 「エレキング!」

 「キングジョー!」

 「ブラックキング!」

 「ライブキング!」

 

 (キング)のファイブカード!!

 

 「戦法は変わらねえ!アースクラッシャー!」

 

 まずレッドキングが足を掬い、

 

 「エレクトリックテール!」

 

 エレキングが痺れさせ、

 

 「デスト・レイ!」

 「ヘルマグマ!」

 

 キングジョーとブラックキングが攻め、

 

 「わはー!」

 

 ライブキングが踏みつぶす!

 

 「即興にしちゃあ、なかなか合ったチームプレーじゃねえの?」

 「安心するにはまだ早いわよ?」

 

 この程度で負けるゴジラではない。怒り狂ってさらに攻撃は苛烈になる!熱線は赤みを帯び、全身も燃え滾る様に赤く光る。

 

 「すごいパワーだ・・・。まるで本物のマグマのよう・・・。」

 「本当の戦いはこれからだってか?やってやるぜ!!」

 

 キングたちが戦う一方で、また別の戦いが起こっている。目つきがかなり鋭く、体形もスマートで、速さと破壊力を兼ね揃えた個体。幾多の怪獣たちをすべて薙ぎ倒し、最終戦争(ファイナルウォーズ)すらを生き残った絶対的強者に立ち向かうのは、大怪獣ファイトの絶対強者と、全ての始まりの怪獣娘。

 

 「すもも漬けいる?」

 「・・・あとでもらう。」

 

 かかってくるなら、相手をしてやる。それがこのゴジラのスタンスであろう。他を寄せ付けない圧倒的な強さを持っている。

 

 「『球体変化(ブルーコメット)』!」

 

 ベムラーが、青い光の球となってゴジラへと突進をしかける。しかしそれを見越したゴジラは熱線で迎撃する。

 

 「くっ!そう簡単に当たっちゃくれないか!」

 「ゼットンシャッター!」

 「ナイスキャッチ!」

 

 ゼットンが、光球化したベムラーを撃ちかえす。すかさずゴジラ、何を思ったのかゴールキーパーのようにベムラーを拾いに行く。

 

 強さの中に、どこかユーモアを持ち合わせている。

 

 「あんたにそっくりだね。」

 「そうかな?」

 「そうだよ。先輩の事はもっと丁寧に扱おう、ね?」

 「わかった。」

 「わかってないだろ!」

 

 戦場の最中、白熱の怪獣バレーボールが開始された。

 

 「もうやめて・・・。」

 

 さて、ベムラーさん命が尽きようとしているのと同時、これもまたひときわ異彩を放つゴジラがいる。全身血走るような赤みを帯び、目がどこを向いているのかわからない。なにより、何を考えているのかすら読めない。この地球上の、あらゆる生き物と言う生き物を超越(シン化)した、完全なる生命体。それに立ち向かうは、無限の進化の可能性を秘めたタッグ。

 

 「ゴモラ!超振動波!」

 「いっくぞぉ!!オルァアア!!」

 

 シンジとゴモラの、シン・ゴモラコンビ!

 

 グォオオオオオオ・・・

 

 「効いてる!?自分でやっておいてなんだけど驚き!」

 「耐久力には難があるのかも・・・その代わり、カバーできるように適応能力が高いのかもしれない、気を付けて!」

 「オッケー!どんな相手でも油断はしないよ!」

 

 超振動波を受けたなら、口を大きく開いて反撃しようと試みる。ならこちらは、その手をつぶすだけ。

 

 「冷凍弾をくらえぃ!」

 「よく噛んで食べろぉ!」

 

 口を氷漬けにされた、ならば今度はと、なんと背中から熱線のシャワーを浴びせてきた!

 

 「くっ、本当に予想の一手上を行ってくれる!」

 「ならこっちは、二手先を行くだけだよ!」

 「よし!ゴモラ、EXだ!」

 「ウォオオオオオオオオオ!!!」

 

 EX化したゴモラの硬殻で、熱線のシャワーを身をもって防ぐ。

 

 「「見せてやるぜ、人と怪獣娘の可能性(ボクたちのキズナ)!」」

 

 『何がしたいか』はわからずとも、『どうするつもりか』ならある程度予想が付く。最後には、人間の叡智が勝ってみせる!

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「こっちは終わったぜ!」

 「こっちも、終わった。」

 「遊んで満足して帰っただけじゃないか・・・。おかげで私がボロボロだけど・・・そっちは大丈夫だった?」

 「こっちも、戦いに満足して帰っていったわ。」

 

 長い戦いにもようやく終わりが見えてきた。どの個体にも総じて言えることは、すごくワガママだということ。

 

 「暴れたいから暴れて、戦いたいから戦う。こんなに怪獣らしい怪獣もいねえのかもな?」

 「まあ、例外的に目的が一切不明なのもいるようだけど?」

 「それも含めて、ゴジラの魅力なんじゃないのかな?」

 

 つまり、ゴジラとは『怪獣』なのだ。あらゆる世界、あらゆる時代に存在し、常に人間と共にある、時に仲間、時に敵、不変であり、変わり続ける存在。

 

 「けど、これでもう終わりだな?」

 「はい、カードの絵もすっかり出来上がりました!」

 「どれどれ・・・カッコいいじゃねえか?」

 「ええ、ホントに・・・。」

 

 強靭な手足に、長い尻尾、特徴的な背鰭。実にシンプルながら、これ以上に魅力的な要素はない。黄金比的な美しさすら感じる。

 

 「よっし!これで最後じゃないかな?・・・みんな満足してくれたんだね。」

 「うん、みんなお疲れ様!」

 

 ここにゴジラのカードは完成した!そしてアイラも元の一人に戻った。

 

 「シンジ・・・!」

 「アイラ!やったね!もう大丈夫だ!」

 「うん・・・もう、大丈夫・・・。」

 

 「視聴者の皆さん、見てください!今ここに、新しい怪獣娘の仲間が加わりました!その名はゴジラ!」

 「やったんですね・・・厄いの獣を退けたんですね!」

 「うん・・・これで!!」

 

 アイラは自らの運命に打ち勝ち、世界に可能性を示せた。最高のシナリオだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「だが、無意味だ。」

 「は?」

 

 皆の気が緩んだその一瞬、アイラの口から放たれたのは、吐き捨てるような言葉と、青い炎。

 

 「うわぁああああああああ!!!」

 「みんな!アイラ、なぜ?!」

 「なぜ?」

 

 「敵を「ころす」のに、理由がいるの?」

 

 その目は白く、まるで生気を感じさせないほど冷たかった。息を吐くように命を奪い、あらゆるものを破壊する、悪魔とよぶべきほどの冷酷さ。

 

 「みんなは敵じゃない!アイラ、君の仲間だ!」

 「仲間?貧弱、貧弱ゥ!おれ(・・)にとっての敵とは、この世に生きるもの全てだ!」

 

 「厄いの獣とは・・・お前か!?」

 

 その問いかけに応えんと、再び熱線を発する。異常とも言えるほどの威力と危険性を孕んでいる。成すすべもなく吹き飛ばされるシンジ。

 

 「ぐわっ!」

 「シンジさん大丈夫?」

 「どうなってんの、これで万事解決なんじゃ?!」

 「いや・・・見てくださいこのカードの絵・・・。」

 「カード・・・もう完成なんじゃ!?」

 

 そうしてSSPの下へと飛ばされてきた。そしてシンさんが指摘する。

 

 「まだです、よく見てください。目が描き込まれていません。まさに『画竜点睛を欠く』、大事な一手が未完成なんです!。」

 「未完成!?ってことは、まだアイラさんの中に?!」

 「潜んでいたんだ・・・まさか、このタイミングを窺っていたのか!?」

 

 異質だ、シンジとゴモラが戦ったゴジラもそうであったが、今アイラを支配しているゴジラは、『ゴジラ』の中で、最も邪悪で、最も恐ろしい存在。この世を呪うためにいる『悪霊(ゴースト)』。

 

 「こんな・・・こんなことって・・・。」

 「シンジさん・・・。」

 

 『シンジ、どうした。皆が戦っているんだぞ?』

 

 「・・・誰?」

 「どうしたの?」

 「今、誰かの声が?」

 

 『シンジ、わからないのか!』

 

 「誰だよ?」

 

 心の折れたシンジの背中を押す声の正体は、一体誰なのか。

 

 「・・・いや、そうだ。もう、止まってちゃダメなんだ。」

 「シンジさん?」

 

 意を決したシンジが、銀のカードを手に取る。

 

 「どんな理由があろうと、暴力を振るうものを放っておくわけにはいかない。」

 

 そう言い聞かせながら、バディライザーに挿入する。

 

 「光の力・・・お借りします。」

 

 眩い光が、シンジの体を包んだ。

 

 グルル・・・

 

 ゴジラもその輝きに目を覆う。

 

 「この・・・力は・・・。」

 

 S.R.Iスーツが赤と銀に彩られ、胸の中心には命の灯火が宿る。顔は柔和な笑みを蓄えたフェイスガードに保護される。そして光り輝く視線が、『悪』を射抜く。

 

 「あれが・・・ウルトラマン?」

 

 その姿は、たしかにウルトラマンに似ている。誰も見たことはないが、誰もがそう直感した。

 

 (与えられたこの力を、こんな形で使わせていただくことをお許し願います。ただこの一度、一度だけのワガママをお許しください。)

 

 分かり合うはずだった。ぶつかり合い、励まし合い、哀しみのない世界を作る為の力だったはずだ。なのに、今自分はなにをしようというのか。

 

 (けど、泣くのは後だ!)

 

 『ヘァッ!』

 

 掛け声高らかに、捨て身の戦いを始める。

 

 「あれが、伝説の巨人の戦い?」

 「なんか・・・荒々しいね。」

 

 お世辞にもスタイリッシュとは言えない泥くさい戦いだった。掴んで、殴って、投げて、

 

 『ショウワッ!』

 

 グワォオオオオオオ!

 

 蹴って、絞めて、撃つ!シンプルを極めた、究極の『戦い』がそこにあった。光の力を帯びた攻撃に、ゴジラの黒い怨念のオーラも剥がされ、着実にダメージが加わっていく。

 

 「ヤベェ・・・なんか・・・ゾワゾワしてきた。見てるだけなのによ・・・。」

 

 その戦いざまに、皆戦慄を覚えていた。しかし不思議と畏怖感はなく、心の底に眠る闘争心をくすぐられるものが多かった。

 

 黙ってやられているゴジラでもない。伸ばされたパンチを喉で受け止め、逆に噛みついて掌を破壊しにかかる。

 

 ならばとシンジも、ゴジラの背後に回り、首絞めで脱出を試みる。しかしその瞬間を待っていたのはゴジラの方だ。至近距離からの体内放射で一気に仕留めようと、シンジの首に尻尾を回して動きを封じる。

 

 ガガガガッ!

 

 『ドァアアア!!!」

 

 まんまと目論見は成功し、もろに攻撃を浴びるシンジだったが、吹き飛ばされる衝撃を逆手にとって、尻尾を掴んで投げ飛ばす。

 

 お互いにボロボロになるほどのダメージを負っているが、それでも倒れようとはしない。

 

 『ええい、何故戦う!?何故ころす!?』

 『この世全てに生きるもの全てが憎いからだ!』

 『何故!?』

 『憎しみに意味などあるものか!』

 

 吐き捨てるように熱線を撃ってくる。ガッチリとガードを固めることで防ぐ。

 

 『だんだんこの体にも慣れてきた、これ以上はお前の好きにはならないぞ!』

 『そうか・・・ならば!』

 

 ゴジラはそっぽを向いて熱線の準備に入る。その視線の先には・・・

 

 「ちょっ、こっち向いたよ!」

 「はやくはやく逃げて!」

 「む、無理ですぅ!」

 

 SSPの、生身の人間たちがいる。すかさずその前にアギラたちが割って入るが、その前にシンジが攻撃を阻止しようと走り出す。

 

 ニヤリッ

 

 『何!?』

 

 しかしそのすぐ背後まで迫った時、ゴジラは反転して無防備なシンジに向かって撃った。ズルズルと地面を引きずられながら熱線に焼かれる。

 

 『シュワァ・・・』

 

 胸のランプが青から赤に変わり点滅を始め、危険信号の合図だ。それをわかっているのか、ゴジラがトドメを刺そうと近づいてくる。

 

 『そうまでして、人間が憎い?なんで?』

 『誰にもわかるまい、わたしたち(・・)がどれだけ苦しめられたのか。生きるもの全てが、どんなに憎らしいか!』

 『わたし・・・たち?』

 

 他人にはどうやってもわからない苦しみが、ゴジラと、アイラの中にはあって、そのことをシンジすらも知らなかった?

 

 (いや、知ろうともしなかったんだ。)

 

 アイラのことを、心のどこかでは避けていた。そのせいでこんな事態にまでなった。自分の事を、ますます許せなくなる。

 

 『君のことを知りもしないで、ただ「誰かを傷つけるのをやめろ」とか、「本当の自分を取り戻せ」とか言ってたんだな・・・。』

 『・・・。』

 

 大変な思い違いだ。結局は、自分もネットの向こうから攻撃している人間とそう変わらない。それを『人類全体の業』だとか、適当な理由を見つけて見ないふりをしていた。

 

 『そんな自分に、腹が立つ!』

 

 吠える。全身に気を滾らせ、立ち上がる。もう何もかもから目を逸らすのは御免だ。

 

 『これが、最後の・・・八つ・・・裂き・・・!』

 

 グォオオオオ・・・

 

 胸から後部へかざした掌が、まばゆい光を放ちながら高速回転する輪を形成する。それに合わせて、ゴジラも最後の一撃を放とうと息を吸う。

 

 ガァアアアアアアアアア!!!

 

 『こォう・・・りィん!!』

 

 寒空の空気を切り裂いて、断罪の光の輪がとぶ。しかし所詮は『線』の攻撃、その後ろにいる相手もろとも『面』の攻撃で焼き尽くそうとする。

 

 『憎しみは憎しみを呼ぶだけだって、わかれ!!』

 

 光輪が90度横を向き、熱線を防ぐ盾となる。激しい光輪の回転により、熱線も渦を巻く。その中心、リングが見通す先は無風だ。

 

 『スペシウム・・・光線ンン!』

 

 腕を十字に組み、思いっきり力を籠める。放たれた閃光が、リングと熱線を貫き、厄いの獣をうつ。

 

 ガァアア・・・グゥウウウウウ・・・ッガァアアアアアア!!!!

 

 数秒間照射され続ける光線に無敵のゴジラもたじろぐ。その視線が未だ相手を捕え続けているのは、怪獣王の意地がそうさせているのか。

 

 その視線も、自らの胸元で起こった爆発に遮られる。次こそ、次の一撃にこそ全てをかけて、すぐさま反撃の体勢に移る。

 

 『ウルトラ・・・』

 

 しかし、それでは少し遅かった。光線が当たった時、既にシンジの行動は終了していたのだった。

 

 『かすみ切りィ!』

 

 すれ違う瞬間、シンジの左手がゴジラの胸を切り裂く。一瞬反応が遅れて、ゴジラのラリアットがシンジの首を捉える。

 

 「シンちゃん!」

 

 仰向けに倒れ込むシンジ。その場にカランッ!と乾いた音が響き、シンジのスーツが変化したヘルメットが落ちてくる。

 

 「うっ・・・いってぇ・・・。」

 

 呻きをシンジあげたのはシンジだった。

 

 「ぐっ・・・。」

 

 遅れてゴジラは、アイラはついに倒れた。

 

 「シンちゃん!大丈夫?怪我してない?」

 「あぁ・・・ヘルメットが無ければ即死だった・・・。」

 

 額から垂れる血を拭いながら立ち上がる。スーツの変身も解除され、飛んでいったヘルメットも粒子化して消えていく・・・。

 

 「それよりも、アイラは・・・ぐっぅ・・・。」

 

 一歩踏み出した途端、激痛が全身を襲う。アドレナリンが切れたせいか、急に意識を失いかける。

 

 「あっ・・・。」

 「アギちゃん?・・・おっ・・・。」

 「雪・・・。」

 

 曇り空から、ちらちらと白い粒が降ってた。熱の籠っていた戦場が一転して、一気に冷やされていく。まるで幕切れ(カーテンコール)を告げるように・・・。

 

 「・・・うっ・・・。」

 「アイラ・・・。」

 

 目を覚ましたアイラに、シンジは一歩ずつ向かって行く。その途中、バディライザーや、ライザーショットを落としたことにも気づかず、一心不乱に・・・。

 

 「カードが・・・。」

 「完成・・・したんですね。」

 

 一枚のカードが、風に乗せられてくる。そこにあったのは、邪悪に満ちた厄いの獣ではなく、一匹の怪獣の絵であった。

 

 「シンジ・・・わたし・・・。」

 「いいんだ・・・アイラは何も悪くないんだ・・・。」

 

 ひしっ、とただの人間に戻った二人が抱き合い、動かなくなった。

 

 

 

 痛みと、様々な感情に火照った二人の体を冷ますように、しんしんと雪が積もっていく・・・。




 途 中 で 力 尽 き た。どこぞの奇機械宇宙人には「もっと熱くなれよぉ!」と檄飛ばされそうだけど。ユルシテ 来週の自分がなんとかしてくれると思ったけど、そうはいかなかった。

 今更な話、どこかの先駆者様とかのネタと被っていたりしたら申し訳ないです。何せゴジラは人気コンテンツなので・・・。だからこそ、自分なりの解釈や意見を含ませたかったのに、こ☆の☆始☆末。起承転結の『転』で満足した自分を殴ってやりたい。

 エレキングさんに「あなた!」って呼ばれたい人生だった。

 ネタ解説

 サブタイトル:シン・ゴジラと同時期に放映されたあの映画がモチーフ。やたらテレビで主題歌とかが流されて、あまりの過多ぶりに逆にウンザリしてたけど。初代ゴジラの時にも、同時期に同じタイトルの映画が放映されていたそうな。

 正体を明かすことなく葬り去れ:ジャミラへの科特隊パリ本部から通達された処遇が元。このことを伝えたアラン隊員は後にこの事実の暴露本を執筆。しかし某国からの圧力によって逮捕されるたという。GIRLSは理念からしてそんな黒い組織ではないと思うけど、対策本部に来た通達は、「あくまでそうなる可能性がある」というだけだったのを早とちりしたためで、本決定ではなかったということにしておいてください。

 幸せは犠牲無しに得ることは出来ないのか:OVA作品ジャイアントロボ地球が静止する日より、父・草間博士から子・草間大作への遺言。父と子という構図が、この作品のテーマでもある。

 身分証:GIRLSの徽章のこと。直談判に行った先は多岐沢博士のところ。博士も昔同じようなことしたことがあるので、快諾するか、責任を肩代わりするつもりで乗ってくれたことであろう。

 まずお前が落ち着け:水ドン

 カドミウム:シンジたちはあくまで、文献からカドミウムと推測しただけであって、これが答えというわけでは必ずしもない。

 S.G.M:ミラーマンに登場する組織。元は非武装の捜査チームだったが、後にジャンボフェニックスを配備する。ジャンボフェニックスは後にジャンボーグAのPATでも使われ、ジャンボットの飛行形態・ジャンバードのモデルにもなった。

 崩れた崖:初代ゴジラが大戸島を襲った時に残した爪痕がモチーフ。

 地平線に沈まない太陽:白夜のこと。オーロラといい、極地へとアイラを連れて行っていたわけだが、実際のところソウジは人気のない場所でアイラを凍結させて封印しようとしていた、というのが真相。けれど、自然の美しさに目を輝かせるアイラを見ると、それも出来なくなってしまった。

 世界は色を失う:ここのシーンは白黒映像になっているというイメージで。

 喧嘩を始める:VSゴジラとか、機龍ゴジラとかは仲間に飢えていたので喧嘩はしなさそう。

 いい子:多分流星人間ゾーンに登場したゴジラ。

 寝てる:我関せずなギャレゴジ。

 笑ってる:地球最大の決戦のゴジラ。モスラにやられるラドンを見て笑っていたので。

 キングのファイブカード:アニメに登場したレッド・エレ・お嬢と、小説に登場したブラックはともかく、ライブキングはまだ出ていない。一応1期ラストに登場した怪獣娘がライブキングだと言われているが、モットクレロンだという説もある。

 バレーボール:FWでのアンギラス・ラドン・キングシーサーとのサッカー対決が元。ゼットンが勝ってもゴジラが勝ってもなんだかなぁ・・・となったので、穏便にスポーツ対決をしてもらいました。

 だが無意味だ:感動的だな(^U^)

 背中を押す声:帰ってきたウルトラマンのムルチ回での隊長の言葉。どんな理不尽な現実も、それを乗り越えなければ明日もない。拳ではなく花で向き合おうとすることへの、ある種の諦めでもある。

 S.R.Iウルトラマンモード:モンスライドの発展型が、ウルトラマンの力によってその場で目覚めた姿。デザインや能力こそ初代ウルトラマンに則っているが、戦闘能力はそこまで上がっていない。が、対怪獣戦闘においては補正がかかる仕様。

 振り返って熱線:GMKでのゴジラがモスラを撃った場面が元。明確に人に向けて熱線を吐いたり、この映画のゴジラの悪辣さは群を抜いている。

 そんな自分に腹が立つ:先述のOVAジャイアントロボより、人間爆弾・静かなる中条こと中条長官の台詞。自らの命と引き換えに、地上最大の爆発を起こす必殺技ビッグバンパンチを使用する決断を下した時の台詞。本作品と同じ監督の真マジンガーにおいても、同名の必殺技が存在するが、こっちはマジンガーZ自身がロケットパンチに変形する。

 ヘルメットが無ければ即死だった:機動戦士ガンダム最終回で、ライバル・シャアが主人公・アムロとの生身でのフェンシング対決の末の台詞。アムロは肩を切り裂かれたが、シャアは額を貫かれ、ヘルメットが無ければ死んでいた、という場面でのシャアの台詞。

 雪の中抱き合う二人:ゴジラの息子のラスト、気象コントロールマシンによって降る雪の中で抱き合うゴジラ親子が元。


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Echoes of Love

 祝☆怪獣娘新シリーズ発表&グリッドマン情報解禁!

 まあ2期以降の内容はこれから書くことになるんですけど・・・。


 「シンジ様、朝食はいかがされましょうか?」

 「・・・いらない。」

 

 雪の降るある場所で、お互いの体を温め合うように抱き合う男と女。今、そんな映画のワンシーンを切り取ったような一枚の写真が、ネット上では話題になっている。

 

 正確に言えば、その写真と同時期に上げられた動画と、それを掲載しているサイトが話題沸騰中だ。

 

 「一応当事者なんだけど、すごい反響なってるね。」

 「ええ、よく出来たシナリオ(・・・・)だわ。」

 「なーんか、腑に落ちねえけどよ・・・。」

 

 そのサイトとはSSP。GIRLSと協力して、未確認怪獣娘の真実を公表し、怪獣娘と人類の未来を取り持った立役者。

 

 「あくまで、作られた『真実』だけど。」

 

 そう、全ては『(ショー)』だ。ただスタジオではなく、現場で撮影された、臨場感も衝撃も全てが本物であるだけの、『見世物』だ。

 

 「アイラの潔白と、怪獣娘の信頼を取り戻すためには、どうしてもあの映像を公開する必要があった。」

 「けれど、それはGIRLSが流したプロパガンダではなく、あくまで民間人によって撮影された『衝撃の真実』でなくてはならなかった。」

 「決して嘘ではない、けれど全てが真実ではない・・・。」

 

 曰く、上手い嘘の吐き方は、真実を織り交ぜることだという。

 

 『歴史はスタジオで作られる。』誰が行ったのかは知らないが、それは当たっている。真実を語り継いでいくのは、それを見た大衆に委ねられる。ステージの上のスポットライトを浴びているドラマ部分が真実だと声高々に叫べば、それだけが真実になる。舞台裏や楽屋裏のドタバタ劇になど、誰も目もくれない。

 

 勿論それの煽りを一番受けているのは、公開しているSSPの方だ。

 

 「Not even justice, I want to get truth.」

 「真実は見えるか・・・。」

 「案の定、炎上してるわね・・・。」

 

 よりよい未来を求めて活動していた。だから、この動画の公開にも納得していた。けれど後悔していないかと言われると・・・。

 

 「もうちょっと・・・なんとかならなかったかなぁ?」

 「覆水盆に返らず、後の祭り、吐いた唾は呑めぬ。」

 「今更どうしようというわけではないけど・・・。」

 

 ジャーナリストとして、この行為は果たして正しかったのだろうか?煮え切らないままコメントは増えていく。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「はぁ・・・。」

 

 そして場面は一番煮え切らない人物のところへと戻る。

 

 「何も食べないのはダイエットにはならないぞ?」

 「別に体形は気にしてませんよ。」

 「ならなおさら食べるべきだな。」

 

 サンドイッチのひとつをつまみながら、ベムラーさんが訪ねてきた。

 

 「多少想定外の事こそあったが、概ね万事上手くいっていた。誰も120%の成果なぞ期待していない。それに関してはわかるだろ?」

 「作戦のことじゃないんです・・・それに、作戦はみんなで考えたものですし、実行したのも僕じゃないです。」

 「ではなんだ?アイラが今なお拘束状態にあることか?」

 

 現在、アイラの身柄はGIRLに預けられている。検査・入院という名目で。

 

 「それも・・・あるんですけど、もっと個人的な話・・・。」

 「それは?」

 「僕が、アイラとちゃんと向き合えていなかったってこと。アイラのこと、ちゃんと知ろうとしなかったってこと・・・。」

 

 「前もそんなこと言っていなかったか?」

 「そればっかり、頭の中をよぎるんです。僕がもっとしっかりしてれば・・・こんな事態にもならなかった。」

 「所詮結果論だ。形はどうあれ、どの道ああいう事態にはなっていだろうさ。」

 「それでも・・・。」

 「自分のせいじゃなければよかったか?別の誰かがヘタを掴んでくれていればよかったか?」

 「そんな!・・・ことは・・・。」

 「百歩譲って君が原因だったのかもしれないが、君は治めて見せた。それで十分だろう?」

 「その治め方も、結局最後は・・・力によって得た空しいものでした・・・。」

 「『力』ねぇ・・・。」

 

 その力も今は手元に無く、机の上に置かれている。持ち主の指示が来るのをじっと待っている。

 

 「ウルトラマンのカードは、消えてしまいました・・・。使い方が悪かったのか、それとも、ウルトラマンに愛想を尽かされちゃったのか、どっちにしろ、僕が持つべきではなかった・・・。」

 「まるで、お気に入りのおもちゃを取り上げられた子供のようだな。」

 「そう・・・僕は、浮かれて舞い上がっていたんだ。自分が、なんでも出来るように錯覚していたんだ・・・。」

 

 代わりにゴジラのカードが残った。

 

 「ウルトラマンの力を発揮したとき、物凄い高揚感もありました。けど同時に、色んなものに鈍感になっていくようにも・・・痛みとか、恐怖とかがどんどん薄れていって・・・。」

 「それはアドレナリンのせいだ。興奮すると息が荒くなったり、心臓が激しく拍動したりする生理現象だ。特別珍しい事でもない。」

 「知ってます。気に入らない相手を叩き潰すのだって、人間の本能の一部分、『業』だっていうのも理解できます。けど、もっと穏便に、理性的に解決がしたかったんです、僕は。」

 「そんな理想や常識が通用しない相手もいる。怪獣がその最たる例だ。」

 「だからこそ、僕がやるべきことだったんです。なのに、僕まで力を振り回してたら一体どうなる?怪獣娘と人類の間に立っているべきなのに・・・。」

 

 「ちょっと背負いすぎだ、お前は。人類の業とかを語るに、お前は若すぎる。そんな硬い使い方してると、その頭脳が泣くぞ。」

 「不都合なことを飲み込んで、乗り越えていくのが大人なんでしょう?そう言ったのは、あなたですよ?」

 「確かに言った。だがな、身にふりかかる現実を、有り余る勢いで押し切る事を『青春』と言うんだ。お前は、そこまで老けちゃいないだろう?」

 「青春?」

 「そうだ、最後まで決してあきらめず、不可能を可能にして見せる。そんな勢いがお前にはあるだろう?こんなところで、膝を抱えている場合ではないだろう?」

 「僕は・・・何をしたらいいんだ?」

 「するべきことなら、いっぱいあるだろ。考えなくったって。」

 「例えば?」

 「飯を食え。」

 「いただきます。」

 

 喝を入れられると、急にお腹が空いてきたのを感じた。

 

 「まあ、悩むのもダイエットするのも人生だが、何事もほどほどにな。」

 「そうですね。あっ、メロンがある。」

 「それにな、力を持って振るうことに、お前はそんなに悩まなくていい。」

 「いざという時は止めてくれる仲間がいるから?」

 「そうだな。それに、君は心に思ったことを素直に実行すればいい。そうすれば自然と上手くいく。そんな星の下に生まれているよ。」

 「それって、占い?」

 「いや、探偵の勘だ。」

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「こんにちはー!」

 「おっ、シンジさんにベムラーさん!元気でしたか?」

 「ええ、まあ。協力していただいた感謝の挨拶が遅れて申し訳ないです。あとこれお土産です。」

 「なになに?桐の箱?メロンだ!」

 「ウチの父が、ミカンの次はメロンを送ってきました。」

 「一体これにはどういう意味があるのかと勘ぐったがな・・・。」

 「ミカンは、『あぶり出し』の暗喩だったんですよね。」

 

 あぶり出し、皆も子供の頃作ったことがあるだろう?(「ねーよ。」)ミカンを絞って、その汁で紙に文字を書くと、裏から火であぶった時に文字が宇浮かび上がるのだ。

 

 「それが、あの手紙に施してあった。そしてそれがデータベースへのアクセスコードだった。」

 「『1954113』でしたっけ?何かの日付でしょうか?」

 「当時、大戸島は季節外れの台風に見舞われ、それでソウジ氏の父親の妹、つまりソウジ氏の叔母が命を落としたそうだ。それを忘れないために、その日付をコードにしたんだろう。」

 「つまり、僕の大叔母さんか。あの島で生まれて、あの島で育った・・・。」

 

 それが、今回の件とどう関係があるのかはさておき。

 

 「あっ、今お茶淹れてきますね。ちょっと待ってて。」

 「じゃあ俺も、特製シフォンケーキをご馳走しちゃおうかな!」

 

 それぞれ台所へ取りに行った2人を見送って、今度はシンジとシンさんが科学話に花を咲かせる。

 

 「そうそう、S.G.Mのレーダー機能を少し見直してみたんですけど、ちょっと見てみてくれませんか?」

 「どれどれ・・・ほうほう、生体探知機の応用ですね?」

 「うん、主にカイジューソウルや、シャドウに反応するように色々試作してみたんです。」

 「なるほど、あまり感度が高すぎると、よけいな物にまで反応しそうですね・・・もう少し周波数を絞ってみては?」

 「私も機械いじりは好きだが、君たちはそれ以上だな。」

 

 「シンさん、ひとつ気になっていたことがあるんですが。」

 「なんでしょうか?」

 「気分を害されてしまったら申し訳のないことなのですが、シンさんほどの腕なら、どこか有力な研究機関や、会社から声がかかったりとかはないんですか?」

 「確かに、君ほどの頭脳の持ち主はなかなか見ないな。それこそ、引き抜きとかありそうなぐらいだ。」

 「・・・確かに、僕の子供のころの夢は、3位が獣医で2位がタイムマシンの開発者、1位は人の役に立つ災害救助用ロボットの開発でした。今も変わりませんが。」

 

 シンさんは、しばし目を伏せて考えるように話し始めた。

 

 「大学にいた頃は、ひたすら勉強漬けの毎日で・・・よく1人でいることが多かったです。」

 

 「けど、そんな僕に声をかけてくれたのが、キャップとジェッタ君でした。」

 「あの2人への、恩返しのために一緒にいる、ってことですか?」

 「それもありますが・・・それ以上に、あの2人のことが好きなんです。キャップはそそっかしいし、ジェッタ君はやかましいけど・・・あの2人でないと、なんだか始まりません。」

 

 「機械には温度は測れても、心の熱さは測れない。頭じゃなくて、心で物事を見ろ。僕の恩師の言葉です。僕は、自分の心に正直でいることを選んでいるんです。」

 「自分の心に、正直にか・・・。」

 「ごめんなさい、ちょっと説教っぽくなっちゃいましたね。」

 「いえ、僕もその言葉に賛成です。かけがえのない仲間は、どんなにお金を積んでも手に入りませんから・・・。」

 

 心や思いやりを、綺麗事だと罵るものもいる。しかし綺麗事だからこそ実現する価値があるとも言う。

 

 「おまたせ!紅茶でよかったかな?」

 「シフォンケーキおまたせー!なんの話してたの?」

 「なにも。お2人がいい人だって話。」

 

 と、いいところで帰ってきた。

 

 「そうそう、要件はもう一つあって。先日の戦いで必要になった費用を経費で落とせるんですが、SSPの皆さんの分も僕が立て替えておこうかと思って。」

 「いえ、それには及ばないわ。私たちはあくまで、私たちの取材で行ったんだから。」

 「でも、壊れたカメラの分ぐらい。」

 「いいの、十分元がとれるぐらい、アクセス数も稼げてるんだから。」

 「まあ、途中でカメラが壊れたおかげで、肝心のシンジさんの激闘のシーンは逃しちゃったけどね・・・。」

 

 幸か不幸か、アイラが白目のゴジラに乗っ取られて再び牙を剥いたシーンから先は撮影出来ていなかった。ギリギリ最後の瞬間だけはシャッターに収められたおかげで、十分に『綺麗』な画が撮れていたが。

 

 「うーん・・・でもなぁ、これ(メロン)ぐらいじゃ足りないくらいの恩があるしなぁ・・・。」

 「まあ、そう言うなシンジ君。彼らが必要ないと言っているのだからお金(マネー)はいいだろう。それより、もう必要ない機材を引き取ってもらうとかはどうだ?」

 「あっ、そうか。じゃあ、撮影の時に使ったデータの送受信機はいりませんか?あれならGIRLSではなく、元々ウチの家にあったものなので。」

 「あっ、それ助かるな。いざって時に容量が足りなくなるとか無くなるだろうし!」

 「でもいいの?あんな高そうな機械。」

 「いいんです。改造してくれたのはシンさんですし、それにもしもそういうのが必要になったときは、またSSPさんに撮影をお願いできますし。」

 「Win-Winな関係ということだな。」

 「じゃあ、お言葉に甘えて・・・。」

 

 商談成立。ベムラーさんはこういう手合いにも慣れているのか、スッとフォローしてくれる。

 

 「それから、もうひとつ気になっていたことが・・・。」

 「あぁ・・・それって、報道の真理について?」

 「はい、真実を公表することが使命であった皆さんのポリシーを曲げてしまうことになってしまったんじゃないかと・・・。」

 「たしかに、今は炎上してるけど、それが全てじゃない。」

 「アイラさんっを含めて、怪獣娘さんたちと手を取り合っていくことが、僕たちの求める『真実』ですから。」

 「だから、私たちは嘘を吐いたつもりはないわ。だって、アイラさんは本当は優しい人でしょう?そしてあなたは、それを救った。」

 

 彼らなりに、そう飲み込んだんだと思う。いつまでぐじぐじとしていられない。賽は投げられた、The show must go on.(ショーは続けなければならない)だ。

 

 「大人なんだな、皆さん・・・。」

 「まあ、私たちもたまにはバカだってやるよ?」

 「それこそ、今まで鳴かず飛ばずの炎上続きだったけど、今回の件で注目されてるし、これから巻き返せる。」

 「いい機会をくれたんですよ、シンジさんも。」

 「「「本当に、ありがとうございました。」」」

 「えぇっ!?いやいや、こちらこそ本当にありがとうございました!」

 「「「いやいやいやありがとうございました・・・。」」」

 「あっあっあっ、ありがとうございました・・・。」

 

 お互いに深々と頭を下げては、また頭を下げるループを繰り返している。それを失笑しながらベムラーさんは眺めていた。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「ん?通信だ。はいこちらシンジ。」

 『シンシン!ピグモンですぅ。シンシンとアイアイに会いたいという人が本部に来てます!至急来てくださぁい!』

 

 「ということで、来ました。SSPさんと。」

 「一応、今回の件の関係者ですし・・・。」

 「まあでも、これ以上のスクープは期待できないと思うよ?」

 「あっ、ゴモたんさん・・・サイン貰っていいですか?この前はそういう雰囲気じゃなかったので・・・。」

 「ジェッタ君?」

 

 「会いたい人って、どんな人ですか?」

 「アメリカから来た、シラガミ博士って人だってさ。」

 「シニガミ博士?」

 「イカ。アメリカからの遣いじゃなくて、個人で来たみたいだよ。

 「白神博士・・・聞いたことがあるような。」

 「たしか、遺伝子工学の権威だったかと。以前論文を発表してましたね。」

 

 パパッとそのニュース記事を出してくれる、さすがシンさん手が早い。

 

 「なになに?『花が環境に与える影響』?枯れない花による、砂漠などの緑地計画・・・なんかすごくキナくさい。」

 「まあそう言わないで。シンちゃんのお父さんとアイラとも知り合いらしいよ。」

 「じゃあ、何故父本人が来ない?こんな大変な事態を放置して、代わりの遣いを寄越すなんて言いご身分だ。」

 「何度此方から呼びかけても応答しないあなたが言えるのかしら?」

 「エレキングさん・・・。」

 「全く、いくら辛いからと言って、連絡の一つも寄越さないなんて失礼だわ。報告書も書いてもらわなければいけないというのに。」

 「すいません・・・ご迷惑を。」

 「そんなこと言ってー、一番心配してたのエレちゃんじゃないのー?仕事中もそわそわしたりため息ついたりもがが・・・。」 

 「だまらっしゃい。あなたもフラフラしてないで仕事のひとつを手伝いなさい。」

 「ゴメンゴメン。私はみんなのケアしてたんだってば。」

 

 グリグリと音を立てながらエレキングがミカを締め付ける。

 

 「心配、してくれてたんですね・・・ありがとうございます。」

 「別に、普通の事でしょう?」

 「照れちゃってもーあだだだ。」

 「だから普通のことだと言っているでしょう?」

 「じゃあなんでこんなに隠そうとしているのかな?」

 「あの、その辺でやめてあげてください・・・それで、白神博士ってのは今どこに?」

 「この先の部屋よ。あなたには会って話をしてもらわなければならない。」

 「わかってます。そのために来ましたから。」

 「そう、なら行って。アイラも迎えに行くわ。」

 「がんばってねーシンちゃん。」

 「僕一人だけ?」

 「一人じゃ不安か、シンジ君?」

 「全然!」

 

 知らない人と会うのは、ちょっと心細いけど仕方がない。少しは大人になろう。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「失礼します。」

 「やあ、はじめまして。濱堀シンジ君。」

 「あなたが、父の知り合いの白神博士?」

 「いかにも、私が遺伝子工学会の鼻つまみ者で、古生物学会の異端児こと濱堀ソウジの友人。『花屋』の白神だ。よろしく。」

 「異端児の息子です。」

 

 ちょっとよれた(・・・)コートを着た、ヒゲ面のおっさん。だらしねえな。やはり科学者というのは変人なのか?それがシンジの第一印象だった。

 

 「父はどこですか?」

 「落ち着け、そんな剣幕ですごまれ(・・・・)ちゃ、ビビッて話もできねえ。居所が聞きたければ、俺たちに協力しろ。」

 

 「OK?」

 「OK!」

 

 ズドン!

 

 「待て、本当に撃つな。悪かった、悪ノリした私が悪かったから、さぁさ、銃を収めたまへ。」

 

 何故撃ったのか?お約束には誰も逆らえないからだ。お遊びもほどほどに、本題に入る。

 

 「父はどこに?」

 「うむ、君の父は生きているよ。まだ怪獣についての研究をしている。主にアメリカの、ある場所でな。」

 「ある場所、とは?」

 「言えないのだ。極秘の研究であるから。私はその通達役(メッセンジャーボーイ)でしかない。」

 「それじゃあ死んでいるのと変わりませんよ。二度と会えないのなら・・・。」

 

 「近いうち、ソウジは君と会うだろう。そこでどんな会話をするのかは、私にはわからない。ただひとつ言えることがあるとすれば、君は少々父を誤解しているだろうということだ。」

 「「誤解?」

 「ソウジは、君が思っているほど冷酷な人物ではないよ。確かにこと研究、いや『自分の世界』の事となると、ものすごーく偏屈になるが、家族のこと、アイラのこととなると物凄く甘いぞ。メープルよりも。」

 「つまり、家族やアイラのことは『自分の世界』じゃないんですね。」

 「あぁ、言い方が悪かった。家族と自分の世界以外の事には無関心な男だ。それこそ、人里離れた場所に居を構えるぐらいにな。私は・・・偏屈同士気が合ったんだがな。」

 

 ハハハ、と自嘲するように笑って、白神は別の話を切り出す。

 

 「私にも娘がいる。娘、ローズは私の研究も手伝ってくれている。ソウジもそうして欲しいんだろう。だから君に手紙を送った。」

 「父の手の代わりということで?」

 「違う、自分の子に、自分の夢を継いで欲しいんだ。」

 「夢?」

 「そう、夢だ。人間が己の限界を超えて挑もうとするのは、そこに夢があるからだ。だが人間には限られた時間がある。その限られた時間の中で、何を残し、何を伝えていくのか。それが人生の意義だ。」

 「僕が父の夢を継ぐとでも?」

 「継いでいるさ、既にな。」

 

 さっと取り出したのは、雑誌の1ページ。シンジには忘れもしない、あのインタビューの記事だ。

 

 「この記事を見て、ソウジはアイラを送ることを考えた。そしてあの動画を見て、迎える決心をしたんだ。」

 「試した・・・ってこと?」

 「信じていたんだよ。」

 

 少し、気にくわない。シンジは自分で道を選んだつもりだった。けれどそれは父の誘導に乗っただけだったというのは悔しい。

 

 「それに、もしもこの道に乗らなかったら、一生放置するつもりだったってこと?」

 「いずれ君は乗っていただろうさ。それはきっと、君の『運命』だ。」

 「『運命』・・・。」

 「シンジ・・・。」

 「アイラ!もう大丈夫なの?」

 「うん、大丈夫・・・おじさん、久しぶり。」

 「ああ、久しぶりだなアイラ。」

 

 その場へアイラも合流してきた。声にも張りがあるし、顔色もよさそうだ。

 

 「そういえばアイラと白神さんって、知り合いなんだっけ?」

 「うん、知り合い。」

 「アイラとローズは仲が良いんだ。本当の姉妹のようにね。」

 

 見せてくれとも頼んでいないのに、写真を見せつけてきたところを見ると、白神博士は相当な親バカと見える。青々と生い茂る森のような緑の髪と、パッと艶やかに咲いた花のような赤い目が特徴の美人だ。

 

 「へぇ・・・。」

 「娘はやらんぞ?」

 「何も言ってませんよ?」

 「シンジ、浮気ダメ。」

 「しないよ?」

 「色恋沙汰かな?どんな話だい?」

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「お、戻って来たね。」

 「おかえりー、どんなこと話したの?」

 「んー、色々。」

 

 30分ほどして、皆が待つ談話室にシンジとアイラが戻ってきた。お茶を一杯注ぐとそれぞれも席に着いた。

 

 「そうだな・・・まず、アイラはアメリカに行くみたい。」

 「なんで?!」

 「父がアメリカにいるから。今はちょっと騒ぎになってるから、ほとぼりが冷めるまで父のところへ戻るんだって。それに、元々アイラは父のところにいるのがいいみたいだし。」

 「えー、そうなの?せっかく友達になれたのに・・・。」

 「また、会いに来るから・・・。」

 

 「他には?」

 「他?うーん・・・白神博士に娘さんがいるとか、家族のこととかかな。」

 「家族か・・・。」

 「他には他には??」

 「他ぁ?」

 

 うんうんと唸るが、シンジはなかなか口を開かない。

 

 「まあいいや!それよりシンちゃん、約束。」

 「約束?なんの?」

 「とぼけちゃって!今度こそ二人っきりでお出かけの約束だよ!」

 「あぁ・・・そうだね。けど、今外は出歩きたくないな。」

 「シンジさん、有名人だもんね。」

 「ここに来るまでも顔隠しながら、結構ビクビクしてたんだよ?」

 

 今は見つかったら無断で写真を撮られてSNSに挙げられる時代だ。

 

 「じゃあ・・・シンちゃんの家でいいから!」

 「ミカ、今日じゃなきゃダメ?」

 「ダメ!すぐがいいの!」

 「しょうがないなぁ・・・なら、ウチに来る?」

 「行く!レッツゴー!」

 

 後ろでエレキングさんが呼んできているが、それを跳ねのけるようにミカはシンジを連れて走り出した。

 

 「あの2人、幼馴染なんですよねたしか。」

 「羨ましいなぁ・・・俺の幼馴染なんてキャップだし・・・。」

 「ジェッタ?」

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 ズルズル、ガチャッ、バタンッ、ドスン!

 

 「うおっ!もうちょっと丁寧に扱ってよ・・・。」

 「さぁシンちゃん観念しなよ?」

 

 自室のベッドの上で、ミカに馬乗りにされながらシンジは呻く。

 

 「なにが?なにを?」

 「まだ言ってない事あるんじゃないの?」

 「なんの?」

 「かくしごと。それぐらいわかるよ?」

 

 言っていないことは確かにある。言うべきか言わざるべきか、けどいずれ言わなきゃいけないこと。

 

 「わかってるの、ホントに?」

 「わかるよ、シンちゃんのことだもん。」

 

 シンジの頬に手を添えていつになくマジなトーンで語り掛けてくる。いつだったか落ち込んだシンジを励ましに来た時も、こんな声をしてきた。

 

 「ミカに隠し事はできないってことか・・・。」

 「そうだよ!さあはけ・・・っとうわぁ。」

 「そうだな、じゃあ言うよ。」

 

 ミカの脇をとってグルリと上下を入れ替える。

 

 「僕・・・アメリカに行くよ。留学する。」

 「・・・そっか。」

 「向こうなら、色んな事を学べると思うし、それに父にも・・・父と、ちゃんと会って話がしたいから。」

 「そっか。」

 「止めないの?」

 「止めないよ。」

 

 右へ左へ、上へ下へ。言葉は少なくとも、お互いの心をキャッチボールのように体位を入れ替える。

 

 「それが誰かの思惑でも、決められた運命だったとしても、そこを歩いていくのはシンちゃん自身なんだよ。途中で迷ったり、回り道するのは、シンちゃんが決めていいことだよ。」

 「今一、納得は出来てないけど。父の掌の上でさ。」

 「なら、最後に見返してやればいいじゃん。お父さんの思ってた以上の、すごいことやりとげちゃったりとか?」

 「そうだね。鳴くまで待とうホトトギスってか。」

 「私は、ううん、ボクたちは待ってるから。だから、いってらっしゃい。」

 「うん、行ってくる。止めてくれた方が、それはそれで嬉しかったけど。」

 「そう?じゃあ今度は止めてあげるよ。」

 

 「ただし、ひとつだけ約束して?」

 「それは?」

 「向こうに行っても、浮気しないこと。向こうにもいっぱい怪獣娘はいるだろうしね。」

 「じゃあこっちだって、他のかわいい怪獣娘に(うつつ)を抜かしちゃやだよ?」

 「そんなことしないよ~、だってボクは・・・。」

 

 

 

 

 

 シンちゃんのこと、大好きだもん!

 

 

 

 

 ああ、僕もミカのことが好きだ。

 

 

 お互いの熱を感じられるほど、近く、そして強く今はいる。

 

 「ん?」

 

 通信機が鳴っている。多分エレキングさんだ。

 

 「ダーメ。」

 

 通信に出ようとシンジが手を伸ばそうとしたところで、一足はやくミカに取られて遠くに放り投げられてしまった。

 

 「今は、ボクだけを見てて・・・。」

 「うん・・・。」

 

 このあと、通信に出なかったことを怒られそうだが、そんなことはどうだってよかった。今はこうしていたいという感情が勝った。

 

 

 

 

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「それじゃあ、行ってきます。」

 「おう、しっかり勉強してこいよ!」

 「体には気を付けてくださいね~!」

 

 数日後、空港にシンジ達はいる。レッドキングさんやピグモンさん、エレキングさんとベムラーさんが見送りに来てくれた。

 

 「向こうの支部でも、粗相のないようにね?それから食べる物にも気を付けて。」

 「わかってます、しっかり勉強してきます。」

 「旅はいいものだ。けど、帰る場所があればもっといい。君の帰る場所はここだということを、忘れるなよ?」

 「はい、色々指導でしてくれてありがとうございました、ベムラーさん。」

 

 夢は大きく、けど荷物は軽く。旅は身軽な方がいい、旅を楽しくするのは最低限のカバンと、少々の冒険心。

 

 「父と会えると良いな。」

 「はい、なにを話したらいいのか、まだ決まってないですけど。」

 

 もう時間が来る。名残惜しいが別れの挨拶はそこそこに済ませ、搭乗ゲートへ向かう。

 

 「では、行ってきます!」

 「「「「行ってらっしゃい!」」」」

 

 

 

 「ゴモたん、見送りに行かなくってよかったの?」

 「いいの、こっから見えるから。」

 

 GIRLS本部の屋上で、ミカとアギが佇む。雲一つない空には、一筋の飛行機雲が線を描いている。

 

 (これは、お別れじゃないんだ。ちゃんと帰ってくるなら、バイバイは言わないよ。)

 

 何も言わず、ただ右手をかざす。それだけで十分だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ああ、俺だ。お前の息子に会ったぞ。」

 

 「なに?ああ、元気だよ。ありゃまさしくお前の息子だ。まごうことなく。」

 

 「どこがって?即断即決、お前の得意分野だよ。」

 

 「なにより、あの眼だ。ここではない、もっと未来を見据えるような眼。あんな綺麗な眼をしている奴は、他には1人しか知らないよ。」

 

 「ああ、そうだ。共にアメリカへ渡ることとなったよ。お前の望んだとおりだろう?」

 

 「なに?・・・はぁ?!正気か、お前?」

 

 「・・・そうだな、お前は一度決めたらすぐそうするもんな。即断即決。」

 

 「わかった、わかった。説明は俺がしておくから、イッテヨシ。」

 

 プツッ、通話を切って白神は大きなため息をつく。

 

 「おじさん、どうしたの?」

 「ん?んー・・・とな、あいつ、フィリピンの方で新種の化石が見つかったって言って、出て行っちまった。」

 「いつ、戻るの?」

 「わからん、おかげで入れ違いだよ。シンジになんて説明しようかな・・・。」

 「元気出して。ローズに会わせたら機嫌直すよ。」

 「娘はやれん・・・しかしなぁ・・・。」

 

 それは出国の1日前のことであった。




 もうすぐノベル発売になるけど、ベムラーさんが果たして本家ではどんな口調や性格なのか。最初は原作との剥離を恐れて、あまり出番を作らない予定だったのに、このポジションが気に入ってしまった。

 感想お待ちしております。次話の投稿はノベル発売以降になるかな?はやく30日になーれ。

 ネタ解説

 歴史はスタジオで作られる:アニメ星のカービィより、カービィをプププランドから追い出そうと画策するデデデ大王の台詞。この作品中ではなんか雄々しく言ってるけど、原作ではギャグ口調である。子供向けとは思えないほど非常に風刺の効いた作風だけど、見ていた当時の子供心的には普通に楽しめて、今見ても面白いと思えるアニメだった。

 Not even justice, I want to get truth.真実は見えるか?:太陽の牙ダグラムの予告で毎回流れる台詞。ダグラムはある種リアル路線を突き詰めた作品で政治劇がメインでもある。劇中でも「マスコミは怒らせると後が怖い」といったセリフがある。

 身に降りかかる現実を、有り余る勢いで乗り切る事:THEビッグオーでのロジャーの台詞。

 1954113:初代ゴジラの封切り日。劇中、ゴジラは大戸島に嵐と共に襲ったので、そのイメージで。

 大学時代のSSP:キャップとジェッタは幼馴染、シンさんはキャップの大学の後輩、という設定がオーブ超全集に載っていた・・・と思う。確認のために読み返そうと思ったら、どこに置いたのかわからなくなてしまった。

 失笑:鼻で笑うというニュアンスではなく、思わず吹き出してしまうというニュアンスが正しい。

 白神博士:ゴジラVSビオランテで、抗核バクテリアやビオランテを作っちゃった博士。この作品ではそんなバカな真似はしていない。娘の名前のローズも、薔薇という意味合いで付けた。

 


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 日々じわじわりと伸びているお気に入り率に一喜一憂している毎日です。しかし自分ではよく書けているつもりなのに、なかなか伸び悩んでいるのは何故なのかとも悩む毎日であります。(ひどいウヌボレ)やはりオリ主は人気が無いのか、それともジャンルがニッチすぎるせいなのか、はたまた主人公の名前や境遇がまんま新世紀なオバンゲリダンな彼と被っているせいなのか(スパロボFの動画見てて今気づいた)。はたまた作者の書く文章が面白くないのか、それとも作者自身が『あんたの存在そのものが鬱陶しいんだよ!』と思われているのか。それとも自分でも気づいていないようなポカがあるのか。いずれにしろ、感想をください。(切実)


 ジャラジャラと鎖を鳴らして歩く音が廊下に響く。しかしこれはファッションではなく、拘束具としての重々しい物だった。

 

 (ここは・・・?)

 

 気が付けばシンジは、ほの暗い廊下を手錠や足枷を身に付けながら歩いていた。両脇にはロボットのように無機質なマスクのガードマンが並んで歩いでいる。

 

 「どこここ・・・なんで!?」

 

 見知らぬ場所に、自分一人。これがサバンナの大平原とかなら夢も広がるだろうけど、ここは閉塞的な・・・どこかの施設の中だ。声も壁に反射して返ってくる。

 

 困惑しつつも、足は前に進んでいく。まるでシンジの意志に沿わないように、勝手に進んでいく。そして、その眼前には荘厳な扉が現れる。

 

 「この部屋は・・・ぬっ・・・。」

 

 ギギギ・・・と重苦しい音を立てながらゆっくりと開いていき、シンジの足はまたも歩み始めた。

 

 「それでは、被告人濱堀シンジ氏へのリンチ、否稟議を行う。」

 「っていうか裁判じゃないのこれ?」

 

 扉を潜り抜けた先は、裁判所のようであった。『ようであった』というのは、シンジの知る裁判所の法廷とは違い、シンジのいる証言台の周りが、自分を見下すように高く据えられており、シンジはその『底』にいる。

 

 「それでは、被告人の罪状を読み上げる。」

 

 「ひとつ、大怪獣ファイトが行われているのは、アリーナではなくジョンスン島に設けられたバトルフィールドである。また、撮影・中継もドローンによって行われており、周囲に人は配置されていない。」

 「知らんがな」

 

 おい検事、なにを読んでる。それは3月30日に発売された怪獣娘のノベルじゃないか。さっくりと読めながら、中々読み応えのある作品じゃないか。

 

 「ふたつ、天城ミオこと、ベムラーさんはもっと寡黙な人である。」

 

 「みっつ、多岐沢マコト氏は現在教授ではなく、博士である。」

 「誰だよ、いや知ってるわ。」

 

 「あとその他諸々。以上の罪状から被告人は極☆刑でGE☆SUなwww」

 「ふざくんな!!!」

 

 こんな横暴な話があっていいものか!

 

 「『待った!』日本の法律では、故意のない罪は罰せられない!」

 「『意義あり!』『知らないという罪』もある!」

 

 そこに続くのは知りすぎる罠だ。知らなくてもいいことだってある。

 

 「判決を言い渡す。被告は有罪!禁固2万年と脳矯正を命ずる!以上閉廷!」

 

 「な、なにをするきさまらー!?」

 

 ドヤドヤとやってきた白衣の人間に取り押さえられ、ストレッチャーに乗せられる。

 

 「おい!こんなのないぞ!横暴だ!反モラルだ!」

 

 ストレッチャーに手足をベルトで固定され、身動きは取れなくなった。動かせるのは首から上だけだ。

 

 そのまま、さっき来た廊下を通って連れていかれる。シンジの目の前を、心許ない明かりがいくつも通過していく。

 

 「離せー!自由にしろー!」

 

 もがいても叫んでも、周りの人間は眉一つ動かさない。それどころか呼吸をしているようにすら見えない。ひたすら不気味だ。

 

 やがていくつかの扉をくぐり、エレベーターで地下へと潜って行きついた先は、

 

 「えっ・・・?!」

 

 見れば壁は赤黒く染まっており、揺れる照明にちらちらと照らされている。その天井裏からは、なにか黒い影がこっちを覗いている。耳をすませば、足音や車輪の音に混じって、不穏で形容しがたい悲鳴や金属音がする。血や腐敗臭とも違う生臭さが鼻をくすぐる。

 

 「・・・。」

 

 そこまで来ると、シンジも言葉を失った。異常だ、この状況自体が異常だが、それ以上にこの空間を信じられないでいた。まるで現実感が無い、異世界にでも落ちたような不条理さ。

 

 廊下はまだまだ続く。シンジはもはや達観したように落ち着きを取り戻した。

 

 しかしその冷静さも、次の扉をくぐった先で早々に打ち砕かれることとなる。

 

 「あれは・・・アイラ!?」

 

 アイラの、服だ。白いワンピースが黒焦げて落ちている。その周りには、ビルの破片や壊れた車の残骸がぷすぷすと煙を上げて燻っている。そんな惨劇の一場面を切り取った、ジオラマのような光景が眼に入った。

 

 「アイラ・・・アイラはどこに・・・。」

 

 そういえば、今は自分しかいないが、仲間たちはどこへ?というか、なんで今はここにいるんだ?そんな考えも及ばなくなるほど、目の前のものに衝撃を受ける。

 

 「タワーが・・・街が!」

 

 黒く禍々しく変貌した東京タワーがそびえ立ち、街は瓦礫となっている。まるで、あのシャドウマンの時のような・・・。

 

 「あっ・・・あぁ!?」

 

 次に見えたのは、道端に落ちた子供の靴の片方。けどシンジには、とても見覚えのあるものだった。

 

 「ミカ・・・ミカぁあああああああ!!」

 

 ミカの靴。あの時落っことしていったミカの靴だ。シンジのトラウマ。

 

 「いやぁあああああああ!!ミカぁああああああ!!!」

 

 トラウマを呼び起こされ、我を忘れて叫ぶ。そして運び込まれたの手術室。すでに術式の準備は整っているようだ。ぶっとい注射針がシンジの額に迫る。

 

 「あぁああああああああ!!」

 

 ぶすっと、額に孔が開くのを感じるが、不思議と痛みはなかった。その代わり、ジリリリリリと脳内に警告音のようなものが響き、そこで意識はぷっつりと途絶えた。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 ジリリリリリリ!!

 

 「ん・・・んっ・・・んんぅ・・・。」

 

 布団の中から手探りで目覚ましを止める。目を開ければ見知らぬ天井で、窓の外には青空が広がっている。

 

 「あ・・・そうか。もう引っ越してきたんだっけ。」

 

 1LDKの部屋の中には自分一人。ベッドやイスなどの最小限の家具と、未開封のダンボールがいくつも積まれている。

 

 そうだ、この春から東京の大学に通うため、一人暮らしを始めたんだった。家具家電は備え付け、駅まで数分の好立地。これから始まる新年度に不安半分、好奇心半分に心を弾ませる。

 

 「いってきまーす。」

 

 いそいそと支度を済ませ、家を出る。お出かけは、一声かけて、鍵かけて。家に誰もいなくても、声は出そう。

 

 ともあれ、今は大学の講義に集中しよう。高校の時と違って、講義室は広く、席も自由だ。皆それぞれもう友達を見つけたのか、それとも元から友達だったのか固まって席についている。

 

 シンジはどうか?何も言うまい。

 

 「あー、一人で食べる昼飯はおいしいなー。」

 

 食堂は学生以外に一般の人も利用できるのでかなり混んでいる。友達連れだと席を複数確保しなければならないので、1人でいるのは気軽だ。

 

 さて、今日の講義はもう終わった。東京の街をめぐってみるのもいいだろう。

 

 「渋谷に着いたぞ。」

 

 勿論、一人で。一人で渋谷って相当難易度高いと思うけど。

 

 名所めぐり。まずはハチ公像から始まり、スクランブル交差点や109を眺めていく。平日でも人は多い。

 

 街ゆく人は、列を作って目を伏せて歩く。人はたくさんいても、都会とは孤独な世界だ。おのぼりさんのシンジには少し抵抗感がある。それもじきに染まっていって気にならなくなるだろうが。

 

 しかしこんな若者っぽい街はシンジには少し合わなかった。今度は巣鴨にでも行こう。

 

 「あれ・・・あれ・・・おかしいな?早起きしたせいかな?」

 

 そんなことを考えていると、なんだか泣けてきた。理由はよくわかんないけど目頭が熱くなってきた。

 

 故郷の友達に会いたいなぁ・・・早くもホームシックだ。

 

 「あの・・・大丈夫ですか?」

 「え?」

 

 気が付けば、知らない女の子に声を掛けられていた。目つきが悪い、というか眠そうな眼の大人しい子だ。

 

 「いや・・・大丈夫です。なんか、ホームシックみたいで。」

 「春から東京で通うようになったとか、ですか?」

 「そう、そしたらなんか、この都会の空気感に押されちゃって・・・。」

 「そうなんですか、ボクもたまにはこう言うところに来てみようかと思ったんだけど、なんだか馴染めなくって。」

 「ちょっと似てますね、僕たち。」

 「そうですね・・・。」

 

 波長が合ったのか、少し気が和らいだ。癒しのオーラでも出てるんだろうか、彼女は。

 

 「じゃあ、一緒にお茶でもしませんか?」

 「ナンパされた・・・生まれて初めて・・・。」

 「あー、そうじゃなくって・・・せっかくだから、友達が欲しいなって思って・・・ダメでしたか?」

 「ダメ・・・じゃあないけど、名前も知らない人にはついてっちゃダメだってお爺ちゃんが言ってたから。」

 「そうか、自己紹介もしてなかったね。僕は濱堀シンジ。あなたは?」

 「ボクは・・・。」

 

 と、その時。ハチ公像のところに置かれていた空き缶が地面に落ちた。風が吹いたわけではなく、すぐにその異変に誰もが気づいた。

 

 「地震?!」

 「結構強い!」

 

 ただの地震とは違う。突然強烈な縦揺れが襲ってきた。すぐさまハトが一斉に逃げるように飛び立つ。

 

 そして、道路を盛り上げ、砕きながら元凶が姿を見せた。

 

 「怪獣だ!」

 

 鼻先から歪んだツノを生やした、山のような大きさの怪獣が出現する。その口に地下鉄を咥え、それを乱棒に放り投げて捨てると、自分の存在を誇示するように大きく吠えた。

 

 『ヴァオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!』

 

 それは現実にいるどの動物と似ても似つかない異音、なにかの爆発音のようだった。ともかく、その合図を皮切りに一斉に人々は逃げだした。

 

 「はやく逃げましょう!」

 「うん・・・あっ!」

 

 「うぇえええええん!おかぁさぁああああん!!」

 

 逃げ遅れている子供がいるのを見つけてしまった。脳は今すぐにでもこの場から逃げ出したがっていたが、足は勝手に動いていた。

 

 「大丈夫?お母さんいっしょ?」

 「濱堀さん、あぶないよ!」

 「うぉおお!!」

 

 シンジと子供の上に瓦礫が降ってきて彼女は警告する。シンジは思わず子供を彼女の方へと突き飛ばして避難させるが、その間を瓦礫に隔てられる。

 

 「濱堀さん大丈夫ですか!」

 「・・・大丈夫!なんとか・・・子供は?」

 「大丈夫です!今そっちに行きます!」

 「ダメだ!その子を連れて早く逃げて!僕の事はいいから!」

 「けど・・・!」

 「いいから行け!僕も後から行く!」

 

 「再会出来たら、今度こそお茶しに行こう。名前も教えて、な?」

 「・・・わかった。絶対だからね!」

 

 残念なことに、その約束は果たせそうにない。瓦礫に足を潰されて、動くことすらできない。遠目に見えるあの怪獣は、だんだんとこちらへ向かってきているようだった。ここからの生還はもはや絶望的。

 

 けれど、不思議と恐怖は感じなかった。むしろ温かいものを心には感じていた。今までもずっとそうしてきていたような、しっかり役目を果たせた充足感と安心感が。

 

 「あぁ・・・彼女欲しかったなぁ・・・。」

 

 故郷にいる幼馴染もいいけど、どっちかっていうと大人しい子の方が好みだから。そう考えるシンジの上に、怪獣の足が降ってきた。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「ぶふっ!」

 

 顔にクッションが降ってきて、シンジは目が覚めた。たしか・・・ソファーで仮眠していたんだっけか。

 

 「やっと起きたかシンジ?さっそくだが書類の整理を頼みたいんだが?」

 「了解です、ミオさん。」

 「ここでは所長と呼びたまえ?いつも言っているだろう。」

 「所長。」

 「うむ。」

 

 そうそう昨日は徹夜で作業していたから、休憩がてら昼寝していたんだった。

 

 「仕事に入る前にコーヒーを頼んでもいいかな?2人分。」

 「はい。砂糖3つでしたっけ?」

 「ミルクもな。」

 

 自分のとミオさんの愛用のマグに注いで、砂糖とミルクを加えて。それから軽いお菓子も。

 

 「おまたせー。」

 「うん、ありがとう。」

 

 入れ替わりに、今度はシンジが仕事を始めて、ミオさんは休憩に入る。せっせと仕事を片付けるシンジの背中を見つめながら、ミオさんはコーヒーを啜っている。

 

 「な、なんすか?なんか変ですかい?」

 「いや、なんでもないよ。」

 

 あんまり見られてちゃ頬っぺた赤くなりますよ。無視して作業を黙々と続けることとする。

 

 数時間後、辺りも暗くなり始めた頃。

 

 「ふぅ~、終わり。」

 「お疲れ様。もう夕飯の時間だし、なにか奢ろう。」

 「いいんですか?」

 「ああ、なんでも食べたいものを言ってみな。」

 「じゃあ・・・牛丼。」

 「ははは、随分私の財布も安くみられたものだな・・・。」

 「牛丼が好きなんです。」

 

 そうはいいつつ、ミオさんもいそいそと出かける準備をしている。大体シンジが外食をするときは牛丼と決まっているからだ。

 

 「所長がいっつもすももづけ食べてるのと要は一緒。」

 「すももづけのどこがいけない?駄菓子屋さんではお高くてお上品な駄菓子だぞ?」

 「別にいけないとは言ってませんよ。」

 

 今も事務所の1スペースを占領しているのがすももづけの山だ。たしかにおいしいが、あんまりたくさん食べていると舌が麻痺しそうだ。

 

 「その点牛丼は、様々なサイドメニューと合わせて様々な味や食感も楽しめるんですよ?しかも早くて安くてうまい。」

 「卵とみそ汁もつけてな。」

 

 牛丼一筋300年~♪そんな間抜けな歌が聞こえてくる店内でもぐもぐと食べる。牛丼屋の店内は、U字テーブル越しの客同士でいつ喧嘩がぼ発してもおかしくない雰囲気だとか聞いたことがあったけれど、別にそんなことは一切ない。

 

 「ごっそさん。」

 「ごちそうさまー。」

 

 パッと食ってパッと出る。ファーストフード店に長居は無用だ。

 

 「さぁて、もう少し付き合ってくれるかな?今日終わらせられるものは今日で終わらせておきたい。」

 「いいですよ、残業代出るなら。」

 「さっきのが残業代の代わりだ。」

 「ならもっと高いところにすればよかったかな・・・。。」

 「選んだのは君だろう?」

 

 今日できることを今日することには賛成だ。僕とミオさんは何かと波長が合う。僕が今のこの仕事についてから、常々思っていることだ。

 

 今のこの、天城ミオの助手としての生活にも、とても満足している。

 

 けど最近は、何か胸に引っかかるものがある。

 

 「なにをそんなに悩んでいるんだ?」

 「え?」

 「なにをそんなに悩んでいるんだ、と言ったんだ。」

 「なにを、って?」

 「仕事内容に何か不満があるとか、給料の支払いに不服があるとか?」

 「そんなことは全然。」

 「じゃあ、他にはあるのか?」

 「ん・・・。」

 

 そのことはミオさんにはお見通しだったようだ。今日片づけておきたい仕事って、このことかな?

 

 「すごく、バカげた話なんですよ?」

 「賢い君が考えていることは、バカじゃないことってことだ。聞かせてくれ。」

 「そうですか?」

 

 「最近、夢を見るんです。」

 「夢?将来の事か?」

 「そっちじゃなくて、目を閉じてみる夢です。」

 「ああ、予知夢というやつかい?」

 「予知夢、とも違うんです。別の人生を体験する、ような夢なんです。」

 「別の人生?」

 

 「僕が、ここ(ブルーコメット)じゃなくてGIRLSで働いてる夢です。色んな怪獣娘さんと出会ったり、仲良くなったりするような、今とは違う人生・・・あ、別に今が楽しくないとか、そういうわけじゃないですよ?」

 「そうだと嬉しいよ。それで?」

 「それで思ったんです。平行世界(マルチバース)の観点から言えば、その夢の中で見た人生も、平行世界の自分としてありえると思うんです。けどひょっとしたら、『今の僕は夢の中にいる』んじゃないかとも思ったりして・・・。」

 「『胡蝶の夢』というやつか。」

 「そう、それに、もしも違う人生だったら、出会えたりした人や経験もあるのかな、とも思ったら、世界の広さを感じてしまったり・・・あ、再三ですが、別に今の人生が楽しくないとかそういうわけでは。」

 「わかってる、それはわかってるさ。けれど、『そっちの世界』についての未練や興味あるっていうことだろう?」

 「そう・・・ですね。」

 「成程なぁ・・・。」

 

 普通の人なら『何言ってんだお前』と流されそうな与太話にも、ミオさんは真摯に向き合ってくれる。そういう人だから、この人についていきたいと思えたんだが。

 

 「では逆に考えてみよう。そっちの人生でも、君は私と会えただろうか?」

 「会えは・・・したと思いますよ。所属はGIRLSですから。」

 「では、こういうのは・・・どうかな?」

 「えっ・・・ちょっ・・・。」

 

 突然、ミオさんは腕をシンジの首筋に伸ばして、抱き寄せてきた。

 

 「この感触が、暖かさが、泡沫(うたかた)の夢幻だと思えるかな?」

 「いえ・・・そんな・・・。」

 「私もそうであって欲しいと思う。君の心と体を通して出ているこの力が、本物であってほしいと願っている。」

 「えっと、所長・・・。」

 「ミオと、今は呼んでくれ。」

 「ミオ・・・さん・・・。」

 「こんなタイミングで、こんな形でしか表現できないが、言わせてくれ。」

 

 

 

 

 「私は、君が好きだ。賢くて、可愛くて、何事にも懸命な君が好きだ。」

 

 「ミオさん・・・。」

 

 シンジは、ギュッと抱き返すことしか出来なかったが、それだけで十分であった。

 

 「嬉しいよ・・・シンジ君・・・私が君の元を訪れた時、君が私の元に来た時、こうすることを望んでいた・・・愛しいよ・・・。」

 「僕も・・・ミオさんのこと・・・。」

 「うん・・・ありがとう。」

 

 

 

 

 「さっきの続きですけど。」

 「うん?」

 「たとえ別の選択や、人生があったとしても、僕はそれを羨んだりはしてませんよ。」

 「それは?」

 「今こうしていられることが、とっても幸せですから。」

 「そうか・・・私も幸せだ・・・。」

 

 指と指を絡め合い、ここにある確かな絆を確かめ合う。

 

 「でもやっぱり夢なんじゃないかと思うなぁ。」

 「なんで?」

 「今まさに夢みたいな状況ですから。目覚めたらキツネやタヌキに化かされてるんじゃないかと。」

 「むっ、ひどいじゃないか。」

 「あいたっ!」

 

 戯れにミオはシンジをベッドから突き落とす。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「あいたっ!」

 

 シンジは床とキスをした。

 

 「いってて・・・。」

 『お目覚めですか、シンジ様?」

 「あっ・・・うん・・・あまりいい目覚めではないけど。」

 

 この感触は自室の天井とも、GIRLS付属の病院の天井とも違う。もう少し狭い部屋だ。

 

 『あと1時間ほどで日本に到着となります。迎えの手配も整っております。』

 「ああ・・・、ありがとう。しかし、まさか自家用ジェットまで保有してたなんてな。」

 

 アメリカでの留学を終え、ソウジの所属するグループが所有する超音速ジェットに乗って、単身日本へと戻っている最中だ。巡航速度は驚きのマッハ3、かの超音速旅客機コンコルドの1.5倍のスピードで、東京~ワシントン間をおよそ3時間で移動できる。ジェット気流の影響で、その数字通りというわけにはいかないが。

 

 「あつ~いお茶でも飲むか。」

 

 勿論、機内は至れり尽くせりの家具家電完備。高級ホテルのワンルームのような装いだ。その内装には似つかわしくない渋い湯呑にアッツゥ~イ昆布茶を淹れて、窓際の椅子に座って雲を見下ろす。外に広がる雲海は、まるでクッションのように受け止めてくれそうだ。もちろんそんなことをすれば、今度は地面と熱烈なキッスをするはめになるが。

 

 「・・・さて、荷物の用意しておくか。」

 

 本機はただ移動の足として使われて、さっきまでは仮眠をとっていたので、広げるような荷物もない。ただ、手荷物の中に忘れ物が無いかだけは確認しておく。

 

 「えー・・・っと、これはある、これもある・・・あと手帳は・・・あったあった。」

 

 ベッド脇のチェストの上に、手帳がひとつ置いてあった。留学に旅立つ前、ベムラーさんから貰ったものだ。自分の目で見た物、感じた物をひとつひとつ記していく、日記のようなものだ。手に取って、それまでのことを思い出すようにパラパラとめくっていくと、あるひとつのページに目が留まった。

 

 「こんなの書いたっけ?」

 

 つけられた題は『マルチバースとガリバーについて』。相当疲れていたか、それとも酔っていたのか、線がふにゃふにゃで読みにくい。到着までの時間、清書がてら読み直してみることにした。

 

 「ガリバー旅行記において、ガリバーは様々な国を旅した。本来それは風刺として書かれたものであるが、ひょっとするとガリバーは様々な平行世界(マルチバース)を旅していたのかもしれない。」

 

 ここまで読んで思い出した。そう、アメリカのGIRLS支部で出会った、大学教授もしている高山博士と話をする機会があった。その時、僕はよく見る不思議な夢について話したんだった。ミカと別れた過去を思い出させる夢や、シャドウマンの出現の予知夢、アイラへの不安から見た悪夢、大事な出来事の前には決まって必ず夢に見ていた。

 

 そのことを高山博士に相談したとき、博士が引き合いに出したのがガリバー旅行記の話だった。ガリバーが様々な国を歩いたように、僕も夢の中で様々な平行世界を体験していたんじゃないか?そういうことらしい。

 

 「それは、平行世界からの『警告』なのかもしれない。今この平和を壊しちゃいけないという危険予知だ。」

 

 「それともう一つ。平行世界の自分自身について。」

 

 僕だけじゃない、他のみんなも含めて、平行世界にもそれらは存在しているはずだ。ある一点の違いだけで、それぞれの人生は違う道をたどっていたことだろう。とすれば疑問が沸く。それらは僕たちと同一の存在であると言えるのだろうか?極めて非常に極端な言い方をすれば、名前が同じで、プロフィールも同じ人間は、果たして同一人物だと言っていいのだろうか?

 

 平行世界の内の僕には、いいやつもいればきっと悪いやつもいる。いつか()の僕も、そんな悪い僕に侵食されるんじゃないだろうか?という疑問が沸いた。

 

 「端的に言えば、答えはノーだった。」

 

 高山博士は、グラスを手に持って言った。『このまま手を離せば、このグラスは割れる。』、床は固い、プラスチック製でもない限り間違いなく割れるだろうと思った。

 

 『でも、それに意志が働けば?』、床にグラスが落ちるまでに、空いた手でキャッチしてみせる。大切なのは、『変えようとする意志』だ。変わる点(ターニングポイント)を待つんではなくて、チャンスを自分から作っていくんだ。

 

 では、そうするためにはどうすればいいのか?と問うと、その答えをもう君は出している、と言ってくれた。

 

 「この世界は絶対に滅んだりしない、未来を信じている限り。」

 

 予言はあくまで予言でしかない。それを基に、未来をどういう形にするかは僕たち次第だ。高山博士は、曇りの無い瞳でそう言い切ってくれた。このページはその言葉で締めくくられている。

 

 「いい人、だったな・・・。」

 

 まだ若いのに、量子力学や物理学の分野において天才的な頭脳を発揮しているそうだ。シンジは知る由もなかったが、今乗っているジェット機や、シンジの家の空飛ぶ車の基礎を作ったのも高山博士だった。それでいて、お高く留まってはおらず、常に子供のように好奇心を募らせている、夢のある人だった。もう一度会いたいな。

 

 「さて・・・そろそろ時間か。」

 

 機体の高度も大分下がってきているようだった。雲を抜け、眼下には緑が広がって見える。

 

 『本日は、星川航空をご利用いただきまして、誠にありがとうございます。まもなく着陸いたしますので、ご着席のうえシートベルトをご着用ください。』

 

 アナウンスが流れてきた。いよいよ故郷の地だ。手荷物や備え付けの湯呑などを棚に仕舞って、席に着く。この瞬間が一番緊張するが、パイロットの腕は信用している。この道20年以上のベテランパイロットで、そのお父上も同じ仕事をしていたそうだ。もっとも、お父上の乗機はセスナ機で今はパイロットは引退して、そのころ体験した不思議な出来事を小説にしたためているそうだとか。

 

 「ん・・・ついたか・・・。」

 

 タイヤが滑走路を擦る感覚を感じてから、徐々にスピードが落ちていき、最後には景色も動かなくなった。どうやら周囲を緑に囲まれた個人用の滑走路らしい。

 

 「長旅お疲れさまです。足元お気をつけてどうぞ。」

 「ありがとうございます、素敵なフライトでした。」

 

 素敵なパイロットさんと握手を交わし、タラップを降りる。ちょっと湿っぽい空気が顔にぶつかって鼻をくすぐる。

 

 「シンジ様、お迎えに参りました。」

 「おかえり、シンジ君。」

 「ただいま、チョーさんにベムラーさんも。」

 

 懐かしい顔がみえた。しょっちゅう連絡は取り合っていたが、こうして直に会えるのとは違う。

 

 「シンジ君、すこし逞しくなったんじゃないか?体格がこう、がっしりしている。」

 「そうですか?結構向こうでも鍛えてたのでそのせいかも。本場のルチャ・リブレも学んできましたよ。」

 「ルチャ・リブレはメキシコじゃないかな?」

 

 中南米で盛んに行われているプロレスの形態のひとつ、それがルチャ・リブレだ。軽快に跳びまわるアクロバティックな動きが特徴的だ。すばしっこいシャドウに対しては有効な戦術となりうるし、何より見た目も派手でカッコイイ。

 

 「それに色んなガジェットも作ったし、色んな人と話もしました。」

 「肝心のお父さんとは会えなかったみたいだけど?」

 「そうなんですよ!どうやら入れ替わりでフィリピンに行ってたみたいで、一体なんの為にアメリカに行ったのか・・・。」

 「でも、おかげで安心したんじゃないのか?会わなくて済んだって。」

 「それは、まあ・・・。」

 

 荷物を車のトランクに詰め終わり、後部座席に座ると、間もなく車はチョーさんの運転で発進した。

 

 「ふわ・・・あぁ。」

 「シンジ君、眠そうだな。時差ボケがまだ抜けてないんだろう?」

 「仮眠はとったんですけど・・・途中で目覚めちゃいまして。」

 「また夢でも見たのかい?」

 「いや、ベッドから落ちたみたいです。」

 「ああ、その顔の痣はそれだったのか?」

 「あざ?」

 「鏡見ろ鏡。」

 「え?うわっ、なんだこれ。」

 

 ミラーで確認すると、シンジの右目の周りには痣が出来ていた。かっこ悪い。

 

 「まあ、その内消えるかな・・・ふわぁ・・・。」

 「少し眠ったらどうだい?都心まで少し時間がかかるぞ。」

 「そうさせてもらいます・・・。」

 「どれ・・・。」

 

 ベムラーさんは、ポンポンを膝を叩いてアピールしてきた。

 

 「いいんですか?」

 「どうぞどうぞ、減るものでもないし安いものだ。」

 「じゃあ、遠慮なく・・・。」

 

 バイク乗りらしく、引き締まった太腿だ。しかしそこから香るほのかな汗の匂いが、フェロモンとなってトリップさせるのか、シンジはすぐに眠りに落ちた。

 

 「・・・かわいいな、君は。」

 

 自らの脚に横たわる少年の頬をそっと撫で、腰に据えたバックパックにへと手を伸ばす。

 

 「人の日記を盗み見るようで申し訳がないが、そういうものを探るのが探偵という職業だし、それにこれは元々私があげたものだから構わないね?」

 

 答えは聞いてないけど。と心の中で呟いて、そのページを開く。チョーさんは運転に集中しているし、誰も咎めはしない。

 

 もっとも、これは『仕事』としてではなく『個人的』な調査であるが。

 

 「気に入った相手のことは、なんでも知りたくなる。そうだろう?」

 

 何を言ったところで、当の本人はスゥスゥと寝息を立てているだけで、聞こえてはいないようだが。

 

 安全運転で2時間はかかる道を、1台の車がゆっくりと進んでいく。『星川航空』の看板を背にして・・・。

 

 




 アニメ2期も終わっちゃったし、そろそろこの作品にもガッツ星人さんとかが出したいと思う一方、キャラを増やしたところで見せ方がなってないと反省している最中です。もっと多角的に、色んなキャラの視点で物語を進めるべきだよなぁ・・・と考えています。

 感想、評価などお待ちしております。

 ネタ解説

 ストレッチャーに乗せられる以降のシーン:「ジェイコブズラダー」という映画のパクリです。ホラーゲームのサイレントヒルのモデルになったとも言われている映画で、色々考えさせられる作品です。映画中でも、様々な世界線に主人公は飛ばされる。

 罪状:作者がこの作品中でやらかしたポカ。探せばもっとある。

 極☆刑:アニメ星のカービィより、デデデの側近のエスカルゴンの台詞。子供向けアニメとは思えない台詞だが、このアニメの中では日常茶飯事だ。

 大学に進学したシンジ:怪獣娘が存在しない世界線の話。世界線をまたいでも、登場人物たちの年齢は変わらないので、実際のシンジの年齢も18歳ぐらいなんだろう。ミカは故郷で元気にしている。渋谷でシンジが会った女の子は、この世界での宮下アキ。この2人が合うことは、どの世界線でも変わらない。地下から怪獣が現れるシーンは、ウルトラマンn/aより。最終的にシンジは潰れ死ぬように見えたけど、一応ウルトラマンがこの後助けてくれたということで。

 ミオの助手になるシンジ:シンジがGIRLSに入らない、シンジがミカと再会しなかった場合、引いては東京タワーに行かなかった世界でもある。割とすぐそばに幼馴染同士がいることに、お互いが気づいていない。片や幼馴染の存在を忘れている、片やたまにGIRLSで見かける男性の名前を知らない、という状況であるため。

 牛丼一筋300年:はやいのうまいのやっすいの~

 体を通して出る力:そんなものでモビルスーツを倒せると思っているのか?

 飛行機に乗っているシンジ:ここが本来の世界。アメリカ留学を終え、個人用ジェットにのって日本に帰るまでの話だった。

 高山博士:ウルトラマンガイア、高山我夢のこの世界でのロール。世界線が変われどやはり天才である。しかし日本ではもてはやされてうんざりしていたところを、自由の国アメリカでのびのびと研究できる毎日を得た。ガリバー旅行記は超時空の大決戦でのエピソードから、グラスを落とすのは「いつか見た未来」から。

 超音速ジェット機:これの模型が、シンジの家の応接間などに置かれている。

 星川航空:ウルトラQの主人公、万城目が所属する会社。万城目はそのころ経験した不思議な事件をウルトラQという小説にした、ということがメビウス小説版にて明かされている。

 右目の痣:ウルトラマン第二話侵略者を撃てより。


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激ファイト!?シンジVSガッツ星人

 一応ここから2期以降のお話になる予定。シンジが海外留学に行っている間に、2期の出来事が起こったという感じで。多少お話は矛盾するけど、気にするな!


 「シンちゃ~ん・・・。」

 

 愛しの幼馴染が旅立ってから数か月経った。その残り香を求めて、毎日のようにシンジの自室にミカはお邪魔している。

 

 「すんすん・・・はぁ・・・。」

 

 こうして定期的にシンジ成分を吸収して鋭気を養っている。自分が思っていた以上に、幼馴染に依存していたと思い知らされる。

 

 「よっし・・・。」

 『ゴモたん、またシンジさんの部屋いるの?』

 「うん、今日もシンちゃん成分補充完了!」

 『そんなことするくらいなら、通話すればいいんじゃないの?』

 「それとこれとはちょっと違うんだよぉ・・・。」

 

 ロクに通信網の発達していない時代ならともかく、今は人工衛星越しに繋がる時代だ。実際、現状報告がてらシンジからの通信は定期的に行っている。つまり、離れていても顔を合わせる機会はいくらでもあるのだ。

 

 「シンちゃんが無事に帰って来るまで、私はシンちゃんとは連絡とらないって決めたの。」

 『本当は、いざ通信しちゃうと気丈に振舞ってるのにボロが出そうだからしたくても出来ないだけじゃないの?』

 「ほーほー、アギちゃんは会心のネタが出来たからぜひともみんなに見せたいと、そう言いたいんだね?」

 『そうは言ってないけど、どうせいつでもそうさせるつもりでしょ?」』

 「わかってるならいいんだよ。」

 

 「そ、わかってるならいいんだよ。私は大丈夫だよ!それよりも、シンちゃんの方は何か言ってた?今すぐゴモたんに会いたいよー!とかミカがいなくて寂しいよー!とか?」

 『ううん、淡々とその日あったこととかを報告してくるだけ。録画映像なんじゃないかって疑うぐらいシンプルだよ。』

 「そっか・・・でも、別に変わったところとかはないんだよね?怪我してたりとか。」

 『うーん、絆創膏とかは貼ってたよ。特訓だかなんだかで。けど病気とかはしてないと思う。』

 「そっか・・ならいいんだけど。そろそろそっち戻るね。」

 『うん、今日もまたイベント頑張ってね?』

 「もっちろん!アギちゃん前座の一発芸考えといてね!」

 『残念、今日は僕キングジョーさんのイベントに行くんだ。』

 

 プツッ、と通信を切って立ち上がる。ここでジーッとしててもドーにもならない。シンちゃんが帰ってくるまで、ボクはボクの役割を全うするよ。

 

 「じゃあね、行ってくるね。」

 

 無人の部屋にそう言い残して、ミカは小走りで会場へと向かう。

 

 

 

 

 「うーん・・・。」

 「どしたのアギちゃん?今日のお昼はファミレスにするか牛丼にするか悩んでるの?」

 「そんなんじゃないよ、シンジさんのこと。」

 「病気とかはしてないんですよね?」

 「病気じゃないんでだけど・・・ホームシックにはなってるかも。」

 

 シンジは心情が顔に出るタイプだった。そうでなくとも、鋭いアギにはまるっとお見通しだが。

 

 「結局似た者同士ってことだよね、2人とも。」

 「でも、相変わらずのようで安心しました。」

 「そうだね、帰ってくるのが楽しみだな。」

 

 「アメリカと言えば、キングジョーさんもアメリカから来たんだよね?」

 「そういえば、そうでしたね。GIRLS発足前から日本にはいたみたいですけど。」

 「そのキングジョーさんと今日会うんだよね・・・どんな人なんだろう?」

 「がんばってねアギちゃん!」

 「がんばってください!」

 「うん、ちょっと緊張してきたかも。」

 

 この日、アギラはキングジョーさんのイベントの警護にあたり、そして新しい物語がスタートすることを、今はまだ誰も知る由もなかった。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 その数か月後、

 

 「いっただっきまーす!!」

 「日本に帰ってきて、一番最初の食事がコレ(・・)か。」

 「牛丼が好きなんですぅ!」

 

 シンジは日本に帰国し、最初の昼食をとっている。牛丼一筋新発売~♪そんな間抜けな歌が聞こえる店内で、久しぶりの大盛り・つゆだくに舌鼓を打っている。

 

 「なんせ全日本牛丼愛好会の会員ですから。」

 「そんなのあるのか?」

 「レッドさんとミクさんも入ってますよ。」

 「そうなのか・・・。」

 「向こうではスライス肉の汁かけライスなんて食べられませんでしたから。」

 

 別段食べ物に困っていたわけではなかったが、週に一度はこの味を食べなければ生きていられない体になっていたらしい。

 

 アメリカにも牛丼屋はあるにはあったが、やはり味付けは日本のものに敵わない。日本人の舌だからかな。

 

 「すいませーん、追加注文でカルビ丼お願いしまーす。」

 「まだ食べるのか?」

 「なんかやけにお腹すいちゃって。」

 「そうは言うがもう5杯目だろう?最初っからメガ盛りを頼めばよかったんじゃないか?」

 「ネギだくやつゆ切りも食べたくって。おっキタキタ。」

 

 ちょっとリッチに、カルビ丼。カルビ丼のカの字はかっかっか~♪と店内BGMが変わった。

 

 「うん、これもイイな。」

 「本当によく食べるもんだな。」

 

 待ちぼうけをくらうベムラーさんも、何か追加注文しようかと思ってメニューを開いたその時、外で異変が起こる。

 

 「おっ?爆発音。なんか懐かしいこの感覚。」

 「いくらなんでも平和ボケしすぎじゃないか?」

 

 外を見れば、ビルの向こう側で煙が上がっている。

 

 「またシャドウかな?向こうでは全然見なかったけど。」

 「すぐGIRLSが来ると思うが、我々も急ごう!」

 「よーっし、修行した成果をみせてやるぞ!」

 「うむ、その意気だ!」

 「あと3杯食べたら。」

 「もういいだろ!」

 

 首根っこを掴まれ、チョーさんの待機する車に押し込まれると、間もなく車は発進した。

 

 「・・・お金!」

 「あっ!」

 

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「あやうく食い逃げになるところだった・・・。」

 「もっと落ち着いて行動してくださいよ、大人なんだから。」

 「誰のせいだ誰の!」

 

 大急ぎで現場に駆け付けると、多くの人が苦しんでいるようだった。

 

 「人?!」

 「これは・・・シャドウミストか。」

 「ちょっとだけ報告で聞きました。人に取り憑くタイプだって。」

 「人だけではなく、怪獣娘にも取り憑くんだがな。とにかく、気絶させてシャドウミストを追い出すんだ。」

 「かしこま!」

 

 トランク開けて中のキャリーケースを開けてさらに黒いガンケースを開けると、銀一色のリボルバー型拳銃を取り出す。

 

 「それは?」

 「スーパーガンR、試しに作ってみたんです。

 「光線銃ならもう持ってるだろう?」

 「向こうで本物の拳銃を撃つ機会があって、リボルバーが気に入ったんです。」

 

 これは実弾ではなくショックガンの一種で、弾薬の代わりに電池を6発弾倉に込める。

 

 「よっしと・・・さあいこう!」

 

 さっそくこちらの存在に気づいたミストに取り憑かれた人々が向かってくる。シンジは耳の後ろに人差し指をやると、そこからメガネのつる(・・)が伸びて、目の前に青いレンズが浮かび上がる。

 

 「新しいメガネも作ったのか?」

 「ひとついりますか?」

 「生憎だが目はいい方だよ。」

 「残念、ベムラーさんメガネ似合いそうなの、にっ!」

 

 向かってくる人の脚を素早く撃ちぬく。3発撃って3人倒れた。まあ及第点だろう。

 

 「いい腕だな。」

 「目がよくなったので。」

 

 S.G.Mにも改良を加えた。通信機能などはついていないが、周囲には見えないレーザーサイトで射撃を補佐してくれている。

 

 「さて、銃はこんなもんでいいか。次は格闘だ!」

 

 バッ!と上着を脱ぎすてると、こちらも新調したS.R.Iスーツを見せつける。上半身が青で下半身が赤、両腕にはヒレのような突起があり、これが風を斬る。さらに左胸に外付けのペースメーカーがついている。逆三角形型の青いランプが、生命維持装置のエネルギー残量を示す。腰の後ろにはバックパックが巻かれている。これも使いたいものを瞬時に取り出してくれるスグレモノだ。

 

 「とぉらっ!」

 

 まず一人、向かってくる相手にフライングニードロップを浴びせて沈める。続けざまに、右から殴ってくる腕を捕まえてロックし、反対側から向かってくる相手に投げつける。

 

 「よいそっ!」

 

 殴りかかってくる相手をかがんで躱し、お返しに足払いで転ばせる。今度は二人続けてやってきたので、一人目を跳び箱のように飛び越え、そのままドロップキックで後ろのやつを沈める。

 

 「ちょいさっ!」

 

 転がりながら近づいて、足払いで跳び箱を倒し、最後の一人は腕のフリップでサマーソルトキックを放ち、顎を蹴り上げながらで起き上がる。

 

 「おわりっ!」

 「7点。」

 「低くない?」

 「ちょっとやりすぎじゃないか?ゴモラだってもうちょっと手加減すると思うぞ。」

 「ぐぬっ・・・たしかに、サマーソルトはちょっとやりすぎだったかも?ごめんなさい。」

 

 気絶している相手に謝ってもしょうがないが。やれやれとベムラーさんは首を振る。

 

 「・・・遅かったか。」

 「ん?あなたは・・・。」

 

 腰まで伸びた長い髪に、赤いマフラー。キュロットのようなミニスカートに縞々のタイツ。そしてぴょこんと跳ねたアホ毛がチャームポイント。

 

 「ガッツ星人さん?おひさしぶりです。」

 「・・・。」

 

 あいさつしたのにあいさつが返ってこない。それどころか、怪訝そうにこちらの様子を窺ってきている。

 

 「あの、僕です、濱堀シンジ。アメリカ留学から今日帰ってきたんです。覚えてないですか?」

 「・・・あなた、」

 

 「おーい!」

 

 やっと口をきいてくれた、と思ったところで誰かがやって来た。ただし誰か、という表現は適切ではない。よく知っている声だ。

 

 「ガッツさーん!まーたひとりでやってんのー?」

 「一体誰に似たのかしらね?」

 「もう、いいじゃんそのことは!」

 

 ドヤドヤとやってきた一団を見て、シンジも声を上げた。

 

 「みんな!」

 「おー!シンジさん!シンジさんじゃん!」

 「帰ってきたんですね!」

 「うん、さっきね。そしたらシャドウが出てきて。」

 「おー!なんかシンジさんおっきくなってんじゃん!腕カチカチじゃん!」

 

 本当はGIRLS本部で再会する予定だったけど、こんなところで会うとは。懐かしいみんなの姿を見まわしてみる。ミクさん、ウインさん、アギさん、レッドさん、エレキングさん、それにガッツさん・・・ん?

 

 「シンちゃああああああああああん!!!」

 

 一足遅れてミカもやってきた、が、シンジの興味はそっちにはない。

 

 「おっすミカ。」

 「ずわぁああああああ!!」

 

 駆け寄ってくる幼馴染を華麗にスルーして、ガッツさんに近寄る。

 

 「あれ、こっちにもガッツさん?あっちにもガッツさん??」

 「ああ、あっちは私の分身・・・なんだけど、色々あって双子?みたいな関係なんだ。」

 「へー、ガッツさん双子だったのか。」

 「うぅ・・・シンちゃんが冷たいよう・・・アギちゃんなぐさめてぇ・・・。」

 「よしよし。」

 

 とまあ、なんやかんやで再会した一同は安心して帰路に就いた。

 

 「・・・。」

 「どうかしたの?」

 「いや・・・。」

 

 ただ一人、黒い方のガッツさんは除いて。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「おまたせー、報告済んだよ。お土産も渡した。」

 「おつかれ-、私たちにお土産は?」

 「ちょっと待ってね・・・。」

 

 スーツケースに詰め込んだみんなへのお土産をそれぞれ配る。特にお世話になっている皆には、それぞれ趣向を凝らしたものを選んだつもりだ。

 

 「お~!カーボーイハット!ウェスタ~ン!」

 「ミクさんに似合うと思って。」

 「コーヒー豆・・・。」

 「旅立つ前、梅昆布茶をアギさんくれて本当助かったよ。」

 「メイプルシロップ?」

 「カナダにも行ったので。パンケーキ好きでしょうエレキングさん?」

 

 「あっ、しまった。」

 「どしたの?」

 「ガッツ星人さんの分、増えてるとは思わなかったら・・・。」

 「あー、別に私の分は気にしてくれなくていいよ?」

 「え、でも・・・。」

 「いいからいいから、それ、あの子にあげて?」

 

 ガッツさんに渡すつもりだった小箱を、壁にもたれかかりながらこちらを見ていたもう一人のガッツさんのところへ持って行く。

 

 「ガッツさん、これよかったら・・・」

 「フンッ。」

 

 ぺいっ、と差し出された小箱は片手で弾かれて飛んでいく。

 

 「ちょっとマコ!」

 「えぇ・・・。」

 

 飛んでいった箱をガッツさんが受け止め、もう一人のガッツさんに詰め寄る。

 

 「ねぇ、いくらなんでもこれはないんじゃない?何が不服なのよ?」

 「あんたには関係ないことよ。」

 「なにぃ?」

 「2人とも落ち着いて・・・。」

 「どうどうどう。」

 

 喧嘩をはじめる2人に、慌ててアギさんとミカが仲裁に入る。

 

 「あんた、今すぐ私と戦いなさい。」

 「はい?」

 「まーまーマコちん、シンちゃん帰って来たばっかで疲れてるだろうから、ファイトならまた今度でね?」

 「ダメ、今すぐよ!」

 「ちょっとマコ、いい加減にしなさいよ!」

 「大丈夫、僕なら大丈夫ですから!今すぐ行けますって!」

 

 いてもたってもいられず、シンジは声を上げる。羽交い絞めにされていたもう一人のガッツさん・・・ややこしいのでマコさんということにしておくが、マコさんは絞めを振りほどいて、シンジに告げる。

 

 「逃げたりしたら、承知しないからね?」

 「・・・。」

 

 それだけ言うと、マコさんは先にサロンを後にした。それを追うようにシンジも歩き出すが、その手をミカに掴まれる。

 

 「シンちゃん、疲れてないの?私が代わりに行こうか?」

 「平気だよ、それにそんなことしたら、逃げたことになるんじゃない?」

 「ごめんね、シンジ。あの子気難し屋なんだけど、本当は悪い子じゃないんだ。」

 「わかってます。感じるものはガッツさんと同じものですから。」

 「全く誰に似たのかしらね。」

 「もー、言わないでよ!」

 

 そういって再び歩き出すと、自然とミカの手も離れていく。

 

 「シンちゃん・・・なんか変わったね。」

 「変わったって?」

 「なんか、ドライになったっていうか、冷たい。」

 「向こうで色々あったんじゃない?人は変わるよ。」

 「それだけならいいんだけど・・・。」

 「・・・。」

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 さて、場所は変わってアリーナ。本来大怪獣ファイトが行われるのは、絶海の孤島のジョンスン島だが、普段トレーニングや模擬戦にはこちらの人里離れたアリーナが使われている。そういうことにしておいて。

 

 「なんで戦う必要があるのかな?」

 「力を見てみたいとか?マコちゃんにとっては、シンちゃん初対面になるし。」

 「そんな戦闘狂なキャラでもないだろ?」

 

 観客の見守る中、戦闘開始のゴングが鳴るまで当事者の二人は動かない。

 

 「確認するけど、」

 「なに?」

 「本当に僕が相手で間違ってない?本当はレッドさんとかとじゃなくって?」

 「あなた以外に誰がいるの?」

 「そう・・・。」

 

 まあ確かに、シャドウミストの取り憑かれた人間が相手じゃあ、シンジの力試しには力不足だった。なお『役不足』という表現は、力に対して役目が軽すぎることを言う。よって、こういう場面では力不足という言葉が正しい。

 

 「それにしても、随分ごてごてした格好ね。そんな重装備で山登りにでも行くの?」

 「なーに、ほんのピクニックさ。バックパック(お弁当箱)背負ってね。」

 

 カーン!試合開始だ。合図とともにガッツさんはゆっくり距離を詰めながら、光弾を発射して牽制する。対してシンジは落ち着いてS.G.Mを起動してから左手でスーパーガンRを構え、ジグザグに動いていく。ガッツさんの指先をよく見て、どっちを狙ってくるか的確に判断して躱す。

 

 「動きは格段に良くなってるな。」

 「シンちゃん基礎を固めるのは得意だからねー。」

 

 ガッツさんもあくまで牽制とはいえ当たるようには撃っているはずだったが、一向に当たらないことで痺れを切らしたのか足を速くして近接戦闘に持ちこみにかかる。対するシンジは、向かってくるガッツさんに冷静に銃口を向けてトリガーを二回引いて、ガッツさんは二回だけ拳を振るい、足を止めない。

 

 「はぁっ!」

 「ふっ!」

 

 ガッツさんの右ストレートをシンジは右手でいなしつつ、今度は至近距離から発砲する。弾丸を最低限の動きで躱したガッツさんは、その流れでスピンキックを放つ。

 

 「ぬぇいっ!」

 「ちっ。」

 

 上半身を後ろへ大きく反らせ、リンボーダンスのような姿勢でキックを躱すと、フリーな状態のガッツさんの背中へ弾丸を叩き込む。

 

 「ふんっ。」

 「ぐっ!」

 

 ガッツさんはさらに姿勢を低くし、コンパスのようにその場でターンして足払いを放つ。よけきれずに足元を掬われたシンジは背中を地面に叩きつけられる。その腹に目がけて断頭台のような脚をガッツさんは振り下ろす。

 

 「ちいっ!」

 「ふん。」

 

 間一髪、横に転がってクリーンヒットを免れる。シンジは掌でスーパーガンRをクルリと一回転させ、手首の部分に留める。これで互いに素手の状態だ。

 

 「はぁっ!」

 「はっ!」

 

 そこからは格闘技の応酬が始まった。ガッツさんは目にもとまらぬ拳のラッシュを放ち、シンジはそれを躱しきれずに何発かもらう。しかしただ負けているシンジでもなく、一瞬の隙をついて腕をとり、脇固めをしかける。

 

 「なにっ!?」

 「こっちよ。」

 

 しかし、腕を捕えたはずのガッツさんが忽然と姿を消し、シンジの真後ろに立っている。ガッツ星人もゼットンと同じく、瞬間移動の持ち主なのだ。悠長に向き合っていては相手の思う壺だと直感したシンジは、手首に固定していたスーパーガンRを持ち直し、声のした方向に早撃ちを決める。

 

 「遅い。」

 「ぐっ!」

 

 しかしシンジの反応するより一歩速く、再び瞬間移動シンジの背後の背後・・・つまり真正面をとって逆に光弾をぶつける。背中を焼かれて転がるシンジのその先に、再び瞬間移動して頭を踏みつける。

 

 「あちゃー、完全にやられちゃってるよ。」

 「あれ、大丈夫なんですか?」

 「あれくらいで参るやつじゃないぜ、以前からな。」

 

 前にマコさんに同じようなことをされたことのあるアギさんとしては見ていて辛い物もある。だがやられているということは、同時にチャンスもそばにあるということでもある。

 

 「やられてたまるかっ!ドラゴンスクリュー!」

 「くっ!」

 

 隙をついて脚を掴み、ガッツさんを一回転させて今度はシンジが上に立つ。

 

 「スピニング・・・くそっ!」

 「甘いよ。」

 「そこだぁっ!」

 「なにっ!?」

 

 シンジは得意のスピニングトーホールドを極めようとするが、瞬間移動で逃げられるが、それも承知の上のこと。今までのパターンから予測して、背後を何も見ずに銃弾を放ち、それは見事当たった。

 

 「おお、ちょっとビックリだね。」

 「ちょっとガッツの方が慢心してたな。」

 「ガッツ気を付けないと。」

 「いや私はあんなヘマしないから。」

 

 手ごたえを感じたシンジは、すぐさま右腿のホルスターからライザーショットも抜いてさらに追撃を加える。

 

 「くっ、これは!」

 「専売特許を一足お先に奪っちゃったかな?バインド光線だ!」

 

 ガッツ星人の得意武器、ビームバインドを模した拘束光線でガッツさんの動きを封じ、その隙にシンジは素早くスーパーガンRのバッテリーををリロードし、ライザーショットのカートリッジも交換する。

 

 「このっ!」

 「喰らえ!」

 

 拘束を解いたガッツさんに、両手の銃でさらに畳みかける。左手からはショック光線を、右手からは破壊光弾を放ちつつ、一歩ずつ歩みを進める。

 

 「ぐぅっ!動こうとすれば・・・」

 「そこ(・・)を狙う。」

 

 避けようと脚を動かそうとすれば脚を撃ち、反撃しようと手をかざせば手を撃ちぬく。動きを封殺しながら距離を詰めて、今度はシンジがスピンキックでガッツさんの側頭部を蹴り飛ばし、倒れたガッツさんにさらに銃撃を加える。

 

 「えげつないわね・・・。」

 「ホントにあれシンジさんなのかな?」

 「人は変わる・・・けど。」

 (シンちゃん・・・。)

 

 観客席にいる者は皆いい顔はしていなかった。あるものは不安の表情を浮かべ、あるものは眉間に皴を寄せる。

 

 「今までのアイツは・・・。」

 「レッドキングさん?」

 「普段からしてそうだったけど。アイツ、スパーリングの時も相手のことを気遣ってて、無意識的に手を抜いてたんだよな・・・。」

 「今は完全に相手を倒すつもりでやっている・・・ということ?」

 「それが果たして成長だと言えるのか?」

 

 観客席の不安な空気をよそに、リングでは凄惨な戦いが続けられていた。スーパーガンRの弾が切れれば、ライザーショットを両手で構えて狙う。ガッツさんはひたすら防御して耐えるが、その間にシンジはゆっくり近づいてわき腹にサッカーボールキックを入れる。

 

 「ぐぁっ!!」

 「終わりだ。」

 

 最後の引き金を引く。しかしその弾丸が貫いたのは虚影。手ごたえの無い幻だった。

 

 「分身か!」

 「正解!」

 

 カーン!と振り返って見たのは2人のガッツさん。すかさず撃てばそれらも幻、危うい雰囲気を感じて岩陰に身を翻し、再びスーパーガンRをリロードする。

 

 「遅い!」

 「おっと!」

 

 身を隠していた岩が破裂する。一目見ただけで分身は3人、その3人が自分一人を狙って光線を撃ってくるのだからさあ大変。その弾幕をかいくぐる事は、到底不可能な話だったろう。それが以前のシンジであったのなら。

 

 「はぁっ!!」

 

 走りながら岩を蹴って三角跳びをし、空中で捻りを加えて見事に光線を避け切り、その内角に入る。着地の瞬間に一発、分身の一体に撃ち込むと霧散する。

 

 「とどめ!」

 

 両手の銃がそれぞれの標的を捉え、銃口が火を吹いて分身は消える。3体は全て分身だった。本物はどこに?

 

 「こっちだろ!」

 「なに!?」

 

 また後ろ、と思わせて実は斜め上。しかしその奇襲すらもシンジは見抜いて撃ちぬく。落ちてきたガッツさんに、再び斉射攻撃を加える。

 

 「オラオラオラ、どうしやがった?強気だったのは口だけだったのかな?」

 「くっ・・・舐めんじゃ・・・ないわよ!!!」

 

 ブワッ!とオーラを放ってシンジを怯ませる。シンジが一瞬目を逸らしたその間に、ガッツさんは強烈なボディブローを叩き込んでいた。

 

 「かっ・・・あっ・・・。」

 「調子乗ってんじゃ・・・ないわよ!!」

 

 血気迫るガッツさんから黒いオーラが漂っているようにも見えた、が、それは見間違いだ。ガッツさんはかつてシャドウミストに侵され、怪獣娘たちを襲っていたこともあった。だがそれも、GIRLSの協力によって払いのけられた。では、現に今アリーナで際立つ存在感を放っている違和感の正体とは?

 

 「あれって・・・シャドウミスト?!」

 「シンちゃんの体から出ているの?!」

 「シンジはシャドウミストに憑かれていたのか!?」

 

 そうなのだ。人の心の孔に入り込み、凶暴化させるシャドウミストが、いつの間にかシンジに取り憑いていた。本人も全く無自覚のまま、今まで過ごしていたのだった。

 

 「シャドウミストに侵された人と戦った時、やたら好戦的になっていたのも、そのせいだったのか・・・。」

 「ベムラーさん、その時見てたの?」

 「ああ、だがちょっと留学で揉まれて変わったんだと思っていたが、違ったようだな。これでは探偵の名折れだな。」

 「じゃあじゃあ、今すぐガッツさんを助けないと!」

 「みんな、待って。」

 「ガッツ・・・どうして?」

 「あの子を、信じてあげて。お願い。」

 

 ミコにとって、今戦っているマコは自分の半身であり、かつてはシャドウミストに負けた自分自身でもある。とすれば、今度はマコがシャドウミストを倒す番であり、ミコはそれを見届けるべきだ。

 

 「シンちゃん・・・。」

 

 「ウォオオオオオオオオオオオオ!!!」

 「こんのっ、やかましいっての!」

 

 シャドウミストの影響が顕在化し、力も正確さもアップしたシンジの攻撃を危なげなくガッツさんはいなしていく。シャドウミストは、シンジの心に掛かっていたリミッターを外し、一切の妥協を許さぬ冷酷な戦闘マシーンへと作り替えた。

 

 「あの時の私に・・・私たちに足りなかったもの・・・。それが今はある!」

 

 ガッツさんは飛び退いて、再び分身を作り、シンジは手数で対抗する。膨れ上がったシンジの闘気が、S.G.Mのゴーグルを妖しく羽ばたく蝶のようなバイザーに変える。その眼は的確に攻撃の予測地点や本体の位置を読み取り、怪獣娘にも引けを取らぬスペックをもたらす。

 

 (射撃戦にかなり慣れてきている。ここは接近戦で仕留める!)

 

 分身を見ればすかさず射抜きに行く。逆に言えば、分身に対しては否が応にも反応してしまっている。それに気づいたガッツさんは、分身を囮に距離を詰めに行く。結果は成功、銃の役に立たない至近距離にまで近づけた。

 

 「こっからは!」

 「グォッ!」

 

 再び拳の応酬。今度は先ほどとは違い、シンジも的確にガッツさんのラッシュを捌いている。お返しにとシンジはキックを放ち、それをいなしたガッツさんの手刀が入る。が、それをシンジは逆に吹き飛ぶことによって衝撃を逃がす。

 

 再び少しの距離を置いたその刹那、バックパックからアタッチメントを取り出してスーパーガンRの銃口に取り付け、ガッツさん目がけて撃った。すかさず光弾で撃ち落とすが、その爆発と同時に厚い煙幕が発生した。

 

 「くっ・・・めくらましかっ!」

 

 毒ガスの類ではないが、視界を遮られる。神経を研ぎ澄まし、僅かな痕跡をも見逃さないよう耳を尖らせる。

 

 「!そっちか!」

 

 そこへ破壊光線が飛んでくる。だが特に苦も無く躱して、逆に撃ち返すと、それは爆発して上へと飛んでいく。

 

 仕留めた!と心の中で思ったが、目に入ってきたのはオートで発射を続けるライザーショットのみ。

 

 「囮か!」

 「ドラァ!」

 

 気づいた時には遅かった。ガッツさんのむいている方向とは真逆、その上方からシンジのフライングニードロップが迫る。シャドウミストによって強化された、必殺レベル

の一撃。

 

 誰もがそれを躱せないと思った。ただ一人を除いて。

 

 「ガッ!」

 「えっ・・・。」

 

 一番に驚いたのはガッツさんだった。突然シンジの体が吹き飛んだことではない。自分の腕が無意識のうちに、死角のシンジの方に向けられ、光弾を発射していたことだった。

 

 「今よ!!」

 「あ、あぁ!『ビームバインド』!!」

 

 ミコの声に我を取り戻したマコは、得意の念導光線を放ち、シンジを固める。

 

 「これで、トドメ!」

 「グォオオオオオ!!」

 

 そして腕をクロスさせ、発生させた十字架にシンジの体を捕らえる。放たれたエネルギーに焼かれ、シンジの体からシャドウミストが抜けていく。

 

 「・・・終わった。」

 「・・・うぅ・・・。」

 

 十字架を解除し、シンジの体は自由を取り戻すが、そのまま気絶しまった。だがこれでもう安心だ。観客席にいたみんなが寄ってくる。

 

 「あいつ・・・。」

 

 マコには見えた。ミコがウィンクをしているのを。あの時、完全に虚をつかれたマコの体を動かしていたのは、観客席からシンジの姿が見えていたミコだった。それがその場で出来た能力なのか、はたまた分身として生まれたマコが持った性質なのか、それはわからない。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「うっ・・・ん・・・なんか、哀しい夢を見ていたような・・・。」

 「シンちゃん!」

 「大丈夫ですかシンジさん?!」

 「あっ・・・平気だよ。全然平気。」

 

 しばらくして、シンジも意識を取り戻した。戦っていた最中のことはよく思い出せない。ただぼんやりと、自分の意識が自分の物でなくなるような感覚はあった。

 

 「ガッツさん、気づいてたんですか?」

 「別に。ただ気にくわないから叩きのめしてあげただけよ。」

 「もうマコ、そんな言い方ないんじゃないの?」

 「いえ、ありがとうございました。おかげで目が覚めました。」

 「ふん。」

 

 立ち上がってお礼を言うシンジに、マコはそっぽを向くが、少し満足そうにしているのがミコには見えた。そのことに気づいて慌てて表情を元のむすっとした顔にもどしたが。

 

 「でもいつの間にシャドウミストなんかに憑りつかれてたんだ?そんな自覚あったか?」

 「いえ・・・でも帰りの飛行機の間、よくない夢を見てたのは覚えてます。それがどんなのだったか思い出せないですけど。」

 「よくない夢?」

 「例えるなら・・・自分が自分じゃないみたいな。その時にはもう憑かれてたのか、憑かれてたから見たのか。」

 「自分が自分じゃないって?」

 「・・・わかんないや。今自分が本当に起きてるのか、それとも夢を見てるのか。」

 「シンちゃん・・・。」

 

 ぎゅっと、ミカが抱き着いてきた。突然の事に皆があっとするが、シンジにはその感覚をじんわりと噛み締められた。

 

 「これでも、夢だって思う?」

 「いいや、夢じゃない。幻覚でも意識だけの存在でもない。こうやってミカを抱くことが出来るんだから。」

 「シンちゃんだって、私が抱けるからうれしいのよ・・・。」

 

 「・・・もういいだろ!」

 「熱々なのはいいけれど、それはもう他所でやってちょうだい。」

 「あ、はい。ミカ?放してほしいんだけど?」

 「シンちゃん・・・シンちゃぁあああああああああん!!!」

 「あ、ああ、ああああああああああ!!!やめ、やめてええええええええ!!!」

 

 ベキベキと背骨が圧し折れる音がする。正直戦いで受けたダメージよりも大きい。

 

 「しぬっ。」

 「大丈夫?」

 「へいき。」

 

 ひとまず、一段落ついた。

 

 「そうだ、シンジ。このお土産なんだけど。」

 「あっ、そういえば忘れてました。」

 「自分の用意したものなんだから忘れちゃダメでしょ。これってさ、イヤリングだよね。」

 「はい、ガッツさんといえば十字架なので。」

 

 十字架をモチーフにしたイヤリングだ。ガッツさんは髪が長いのであまり耳が目立たないが、隠れたところでもこだわるのがオシャレだ。

 

 「じゃあさ、これ一個ずつ私とマコで貰って、それでよくない?」

 「おー、いいじゃん!ペアルック!」

 「そうか、そういう手が。」

 「じゃあこれ、シンジさん。」

 「なんで僕に?」

 「君が渡さないと意味ないじゃん。ほらマコも。」

 「ちょっ・・・。」

 「えっと、ガッツさん・・・じゃなくてマコさん・・・でいいのかな?これ、よかったら、もらってください。」

 「うっ・・・わかったわよ。一応もらっておくわ。」

 「マコ、そうじゃないでしょ?」

 「言われなくたってわかってるわよ・・・ありがとう。」

 「どういたしまして。」

 

 しっかりとマコさんは受け取ってくれた。

 

 「さ、帰ろうぜ!今日はシンジが帰ってきた記念に、焼き肉にでも行こうぜ!」

 「おぉー!いいっすねぇ!」

 「ただしベムラーさんの奢りで。」

 「なんで!?」

 「シャドウミストに気づかなかったでしょ?そのペナルティってことで、おなしゃす!」

 「「「「じー。」」」」

 「うー、わかった!奢ってやる!なんでも食え!」

 「やたー!」

 「ほら、マコも行くよ。」

 「なんで私まで?」

 「一緒に食事に行くのも仕事の一環だよ。」

 「・・・しょうがないわねぇ。」

 

 ようやく、元の空気が帰ってきた。今度こそみんなの元に帰ってこれたと、シンジは実感した。

 

 「やっぱいいな、日本は。」

 「どしたの急に?」

 「向こうでの暮らしも悪くなかったけど、やっぱりこっちがいいやってこと。」

 「そっか・・・。」

 

 「あのねシンちゃん。」

 「ん?」

 「おかえり、シンちゃん!」

 「あぁ、ただいま、ミカ。」

 

 また激動の日々が始まるだろう。今までの留学はほんの骨休めだ。さらにパワーアップした新しい日々が始まる!

 




 マコちゃんの口癖や性格が今一掴み辛い。モン娘は~れむだけが情報源だけど、デートしても基本ツンデレだからなぁ・・・。それも正しい意味でのツンデレ。とにかく、これからは2期で登場したキャラや、まだアニメに出てないキャラにもスポットライトを当てる予定。本当の戦いは、ここからだ!

 ネタ解説

 牛丼一筋新発売:牛丼音頭には2パターンある。

 カルビ丼:キン肉マンⅡ世ことキン肉万太郎の好物はカルビ丼。なお、万太郎の名前はキン肉・万太郎であって、キン肉マン・タロウではない。

 スーパーガンR:渋川さんが持ってたスーパーガンリボルバーと基本的に同じもの。ただしモデルはニューナンブではなく、『ピースメーカー』ことシングルアクションアーミー。シンジがアメリカで本物のガンマンを見て、さらに実際に発砲まで体験した際、装備にリボルバーが欲しくなったために開発した。6発ごとにリロードが必要ではあるが、一応ライザーショットよりも取り回しがよく、本家スーパーガンよろしく銃口にアタッチメントを付けることで様々な弾を撃てる。なお、シングルアクションアーミーのリロードは、一発一発指で外さなければならない固定式だが、この銃はスイングアウト式を採用している。モデルにしているのはあくまで見た目だけ。

 新しいS.G.M:横からにゅいんとゴーグルが現れるのは、仮面ライダー剣で天王寺が初登場時につけていたサングラスが元。さらに言えば、天王寺の役者さんは森次さんである。

 脚を撃ちぬく:殺傷ではなく鎮圧するにはよく脚を狙われる。とはいえ、足にだって大動脈は通っているので当たり所が悪ければ普通に死ぬ。特撮でやたら足狙って撃つキャラといえばカーレンジャーのシグナルマンが思い浮かぶ。

 新調したS.R.Iスーツ:スーツそのもののデザインはゼロ。両腕のヒレはパワード、またはジード。左胸のペースメーカーはナイスのカラータイマーから。

 フライングニードロップ:ジードの初手はニードロップのイメージ。また、背後からニードロップを後頭部に喰らわせればカーフブランディングだ。

 無意識から手加減していた:コスモスのエクリプス3部作での強さに固執するムサシから。強さに固執した結果、エリガルは・・・。

 シャドウミスト:前話、シンジが最初に見ていた悪夢はシャドウミストに憑りつかれたせいだった。シンジの心にのしかかる不安を、外への攻撃に向かわせていたのだった。曰く、「悪い事をする敵」というものは「心に弱さ」を持った人であり、真に怖いのは弱さを攻撃に変えた者なのだ。という。

 蝶のようなバイザー:ジードの目って、正面から見ると青い蝶に見えない?見えないか・・・。特撮で青い蝶と言えば555のOPだよね。

 オートで発射し続けるライザーショット:機動戦士Vガンダムで、ウッソが初戦闘で使った囮戦法。探してみれば他にもあると思うけど、作者的にはこれが思い当たった。

 幻覚でも意識だけの存在でもないry:新訳:劇場版Zガンダムのラストの台詞。新訳とある通りTV版とは大きく異なる展開を見せ、その結果ZZガンダムとは繋がらない結末となった。(無理ではないんだろうけど)

 イヤリング:それぞれ一方ずつをつけてるとポタラ合体しそう。

 


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空の虹に怪獣は踊る

 べつなの書いてたら遅れた。(白目)


 「・・・。」

 「おはよーシンちゃん?どうかしたの?」

 「・・・うん。」

 

 シンジはベッドの上で違和感を感じていた。昨日は・・・楽しかった。留学に行っている間に、GIRLSに頼もしい後輩も増えて、彼女たちといっしょにしこたま遊んだんだった。

 

 「大丈夫?お腹痛いの?」

 「・・・胃がすごく痛い。」

 「食べすぎ?」

 「どうもそうらしい、動くと痛む。」

 「お腹に優しい物作ってきてもらおうか?」

 「お願い、ホットミルクが飲みたいな。」

 「わかった、ちょっと待っててね。」

 

 シャドウミストに憑りつかれて昨日の今日だが、それにしても色々つらい。何が辛いって、胃よりもむしろもっと別の場所が辛い。

 

 「シンちゃん、元気?」

 「あぁ、元気は元気だよ・・・ありがとう。」

 

 ホットミルク、ハチミツ入り。やさしい甘さが体をいたわる。ミカも同じものを飲んでいる。

 

 「ふぅ・・・あったまるね。」

 「甘くておいしいね。」

 

 こんな大したことのない一幕に幸せを感じられる喜びよ。

 

 「今日は後輩ちゃんたちと遊びに行くんだっけ?」

 「そうそう!昨日紹介したあの子たちね!」

 「マガジャッパちゃんに、マガバッサーちゃんね。」

 

 いつの間にか僕にも後輩が出来たことになる。マガジャッパちゃんは大人しくておっとりな感じのする子で、マガバッサーちゃんは逆に明るくて活発な子だ。全く正反対な性格の二人だけど、とても仲が良いようだ。

 

 「姉妹だっけ?」

 「ちがうよ!」

 

 「さて、ちょっと落ち着いたかな。朝ごはん食べて出ようかな。ミカはもう朝ごはん食べた?」

 「ううん、シンちゃんと一緒に食べたいって思ったからまだだよ!」

 「それ、もしもう僕が先に食べてたらどうするつもりだったの?」

 「細かいことは気にしなーい!先に行って待ってるねー。」

 「うん、すぐ行くから。」

 

 ミルクを飲み干したマグを回収して、ミカは部屋を後にする。さてっとシンジも立ち上がって着替えを始める。

 

 「・・・。」

 

 ちょっと、元気すぎないか?ナニがとは言わないけど。

 

 まあそれはそれとして。着替えて食堂に行くと、既にミカが着席して待ちわびていた。

 

 「おそーいシンちゃん!さっ、食べよー!」

 「うん、いただきます!」

 

 食卓に並ぶ御膳は、白米に味噌汁、納豆とまさに純和風な朝食だ。

 

 「納豆に味噌に豆腐って、ほとんど大豆だね。」

 「向こうじゃ毎日ハンバーガー食べてたから、このあっさりした感じが懐かしい!」

 「なるほどねぇ・・・。」

 「なにがなるほどだ?」

 「いやシンちゃん、太ったなと思って。」

 「え?」

 

 「いや、そんなはずはない・・・むしろいっぱい運動してたから、筋肉が付いただけで・・・決して脂肪がついているわけではないはずだ・・・。

 

====☆====☆====☆====☆====☆====☆====

 

 「だから食べるものには気をつけなさいと言ったのよ?」

 「面目ない・・・。」

 

 正直なところ、「やせ気味」だったのが「普通」になった程度なのだが、一度太ると癖が付く。

 

 「米だったところを肉に、お茶だったところをコーラに替えればこうもなろう。」

 「他に食べるものが無かったんです・・・。」

 

 それと同時に、環境の変化によるストレスも一因と考えられる。野生動物も、いきなり別の環境に連れてこられればストレスで早死にするという。

 

 「じゃあ今日本に帰ってきてるから、すぐ体形は戻るってことだね!」

 「そっか!」

 「『そっか!』じゃないわ・・・この際だから、毎日のトレーニングメニューを見直してみるべきね。」

 

 (ねぇ、なんでエレキングさんこんなに僕に構うの?)

 (多分、後輩2人の指導を任されたから、教員魂に火がついたんじゃないかな?)

 (結構面倒見がいいですからね、エレキングさんは。)

 

 エレキングさんの熱血指導に多少期待はしたものの、その後テキストとしてスポ根漫画を持ってこようとしたことはまた別の話。ともあれ今日は後輩2人と親睦を深めるのだ。

 

 「せんぱーい!」

 「お、おはようございましゅっ!・・・はうぅ・・・。」

 

 と、そこへちょうど後輩2人がやってきた。マガバッサーちゃんはラフながらセクシーな格好を、マガジャッパちゃんは落ち着いた雰囲気の恰好をしている。こういうところでも性格の対照さが際立つ。

 

 それにしても、2人とも年下とは思えないスタイルのよさだ。こうしてみるとミカが本当に可哀想でならない。

 

 「シンちゃ~ん、今なんか失礼なこと言った?」

 「いいえ。」

 「・・・すけべぇ。」

 

 じとーっとした目でミカは抗議してくるが、気にしない。それより今日は、2人のリクエストで行く場所を決めるんだ。

 

 「はいはーい!わたし、大怪獣ファイトを体験してみたいです!」

 「よしやろう!シンちゃん!」

 「なに?」

 「いっしょにやろう!ジャッパちゃんも!」

 「ふぇえ?!」

 「昨日の今日なんだけど?」

 「シェイプアップにもなるよ!」

 「よしやろう。」

 「よっしゃー!」

 「えぇええ?!」

 

 困惑するマガジャッパちゃんをよそに、マガバッサーちゃんの要望で大怪獣ファイトの模擬戦がと行われる運びとなった。シンジはこの展開の速さと言うか強引さにもう慣れたけど、マガジャッパちゃんはまあ我慢してくれ。ミカと付き合ってたらこれぐらいのことは日常茶飯事だ。あとでジュースを奢ってあげるから。

 

 「ってことで、先輩後輩タッグ対決を提案しまーす!」

 「先輩後輩タッグ対決?」

 「そ!私とシンちゃんと、バッサーちゃんとジャッパちゃんで組むタッグマッチ形式がいいなって!」

 「先輩からの洗礼ってことっすね!やりますやります!」

 「ジャッパちゃん、パワハラを感じたらすぐに訴えてくれていいからね?ミカはいつもこんなんだけど。」

 「い、いえ、大丈夫です・・・。」

 

 とはいえ、その遠慮のなさがミカのいいところでもあるのだけれど。後輩相手にもなにかと気に掛けてくれる、いい先輩なのだ、基本的には。ただそれが行き過ぎて、無茶振りさせすぎることもまれにあるのが玉に(キズ)

 

 さて、いつものアリーナへ移動し、いつの間にかギャラリーも増えていた。最初の場にいたのは、ミカやかぷせるがーるずを除けばエレキングさんだけだったが、今はピグモンさんにレッドキングさんにガッツさん達がいる。

 

 この場にはいないが、少し前の事件(アニメ2期)ではキングジョーさんやノイズラーさんも協力したらしい。アメリカにいる間、何かとキングジョーさんの話は耳にしていた。一応以前にも顔合わせ程度にはお話したこともあったが、結構すごい人だったんだなと改めて実感した。すごくフレンドリーというか、気さくというか、パワフルな人だったけど。

 

ノイズラーさんのことはあまり知らない。聞けば、ザンドリアスとバンドをやっているそうだ。それにしても、今はマガちゃんたちがいるからザンドリアスも先輩になったわけだな。喧しい妹みたいな子だからそういう風に見てたけど、知らないうちに成長しているものなんだな。

 

 「さーて、シンちゃんの修行の成果を今度こそ見せてもらうよ!」

 「昨日はちょっとアレだったからね。今度こそ見せたいな。」

 

 ガッツさん達にも安全なところを見てもらえば、ちゃんと信頼を得られるし。こういうところがあるから、ミカはいい子なんだよ。

 

 「で、シンちゃん負けたら一発ギャグね!アメリカでの修行の成果を見せてよ!」

 「別にお笑いの修行に行ってたわけじゃないんだけどなぁ?」

 

 アメリカのコメディは、シットコムみたいに観客の笑い声が入ってないと笑いどころがイマイチつかめない。それに、笑うにいはユーモアを感じ取るセンスというものも必要になる。総じて難易度が高い話だ。例えばピエロのパリアッチみたいな。

 

 「シンジさん、ルチャ・リブレの特訓してきたんだって?」

 「うん、『ハーキュリーズ』って人達と一緒に特訓したんだ。」

 「『ハーキュリーズ』って、あの『ハーキュリーズ』?すげーじゃん!」

 「知ってるんですかミクさん?」

 「うん、日本で一番のプロレスチームだよ!いいなー!」

 

 あらゆる困難は気合と根性で乗り切る。それがハーキュリーズだ。アメリカへ遠征がてら修行に来ていたところを出くわして、一緒に特訓させてもらった。たまたま一緒に居合わせた高山博士もそれに巻き込まれてヒイヒイ言っていた。今は仲良くしているらしいが。

 

 「じゃ、ボクたち観客席の方に行ってくるから。」

 「うん、後でね。」

 

 反対側のマガちゃんたちのところには、今頃レッドさんやエレキングさんが行って檄を飛ばしているところだろう。

 

 「でも、新人ちゃん2人にミカ充てるなんて荷が勝ちすぎるんじゃないかな?」

 「そのためのシンちゃんだよ、ハ・ン・デ♡」

 「僕は重荷になるつもりもないよ?」 

 「頼もしいじゃん!」

 

 このこの~と肘で突っついてくるのをいなして、バックパックの中身を確認する。スーパーガンRの弾頭として使用するアタッチメントが主だが、他にも様々な小道具や非常食なんかもごっちゃに入っている。それらを一旦纏めてひっくり返して整理する。

 

 「またなんか色々増えてるね。」

 「色んなものを試作してたからね。」 

 「どう見てもおもちゃみたいなものもあるんだけど?なにこのヨーヨーは?」

 「振り回して使う。」

 「子供が真似して危ないからダメだよ。」

 

 どこぞのスケバン刑事や超電磁ロボやおとなもこどももおねーさんも使うヨーヨー武器。とりあえず作ってみたはいいが、上手く扱える自信が無い。せいぜい振り回してフレイル(鎖付き鉄球)のように使うしかない。

 

 「ま、要は組み合わせなんだけどね。」

 「なにか考えがあるんだ?」

 「まあね。」

 

 ミソとなるのはバックパックに入っている物ではなく、その外に持っているものだ。

 

 「これ使うのもなんか久しぶりになるな。」

 「バディライザーね、向こうでもカードは増えたの?」

 「うん、ちょっとだけね。」

 

 全員が全員キングジョーさんのようにフレンドリーだったというわけでもないが、本当にいろんな人たちと仲良くなった。一番衝撃的だったのは、パワードゼットンさんの存在だろうか。僕らの知っているゼットンさんと似て非なる存在。それによく手合わせをしてもらったパワードバルタンさん。一番仲良くなったのは、日本文化に興味があるペギラさんだろうか。

 

 「なるほどねー、色々あったんだねー。」

 「うん、どれも貴重な体験だったよ。」

 

 思い出すのもほどほどに、今は戦いに集中するとしよう。今回の相手は新進気鋭な後輩ちゃんたち。しかもエレキングさんの指導付きときたもんだ。今回の対戦は、2人の成長を見るための物でもあるのだろう。

 

 「シンちゃん作戦はある?」

 「まずは相手の実力を測りながら、様子見かな。」

 

 軽く準備運動をして、アリーナの入場ゲートへ。反対側のゲートを見れば既にマガちゃんたちはスタンバイしていた。マガバッサーちゃんはやる気満々だが、マガジャッパちゃんはまだ少しオロオロとしている。2人とも落ち着きが無さそうだという点については一緒だが。

 

 「みんなあんな感じなんだよねぇ、初めてのファイトの時ってさ。」

 「そうなの?」

 「そうだよ、シィちゃんもだけどシンちゃんもそうだったよ。」

 「シィちゃん・・・シーボーズさんだっけ?」

 

 そうだよ、とミカは短く答えた。シーボーズさん、ミカが最初の対戦相手を務めた大怪獣ファイター。決して戦闘向きの怪獣ではなかったかもしれないけれど、最後までミカに喰らいついていったという。僕もそれぐらい出来ていただろうか?

 

 「先輩方、今日はおねがいしまーす!」

 「お、おねがいします!」

 「うんうん!胸を借りるつもりで、ドーンとおいでよ!」

 「貸せるほどの胸もない癖に。」

 「なんか言った?」

 「いいや。」

 

 ビターンっと大きな衝撃が背中を襲うが、すぐに立ち直って対戦相手に向き直る。既に全員戦闘態勢(ソウルライド)済み、いつでも行ける。

 

 「よっし、行くよジャッパ!」

 「うん!バッサーちゃん!」

 

 カーン!試合開始のゴングが響く。まずは様子見・・・のはずだったのにミカは突出していくし、後輩ちゃんたちも構わず突っ込んでくる。作戦なんてなかった。

 

 「そーれっ!」

 「はっ!」

 

 低空飛行しながら突進してくるマガバッサーちゃんに、ゴモラはお決まりの尻尾攻撃で迎え撃つが、マガバッサーはひらりと躱してノーダメージ。

 

 「とぉー!」

 「うわぉ!」

 「油断するなよゴモラぁ!」

 

 ひらりと躱したマガバッサーの影から、マガジャッパのマガ水流が飛んでくる!シンジはそれを素早くライザーショットで撃ち落とす。

 

 「シンちゃんいい腕してるぅ!」

 「技術(テクノロジー)のおかげさ。」

 

 そのまま続けてマガジャッパを狙い撃つが、その銃弾の全てがマガジャッパの腕から出てきた大きな泡に阻まれる。

 

 「ふぬぬぬ・・・ぱぅっ!」

 「なんっ!?」

 

 銃撃を防ぎ続けていた泡が弾けて、それまでに吸収していたエネルギーが衝撃波となって返ってきた!

 

 「わたたっ!思ったよりもやるじゃん!」

 「とーぜんっすよ!なんたって『魔王獣』ですもんわたしたち!」

 「魔王獣?なんだそれ。」

 「わたしたちにもよく・・・。」

 

 魔王獣、それは大魔王獣の眷属にして、存在するだけで災いをもたらすとされる。

 

 「わたしマガバッサーは、嵐を起こすことが出来るんすよ!」

 「へー、そりゃスゴイ。マガジャッパは?」

 「わ、わたしは・・・その・・・。」

 

 シンジの問いかけに言葉を濁すマガジャッパちゃん。魔王とつくからには、どんなすごい能力なのか気になる。

 

 『あなたたち、口を動かしてないで体を動かしなさい。』

 

 「おっと、ギャラリーから苦情が飛んできたぞ。」

 「よーっし!ならわたしもやっちゃうぞー!」

 「うわっ!すごい風だ!」

 

 エレキングさんからのブーイングに、マガちゃんたちは立ち直って攻撃が再開される。マガバッサーがその大きな翼で羽ばたけば、たちまち嵐が巻き起こる。対峙する2人は飛ばされないように地面にしがみつくのがやっとだ。

 

 「シンちゃんどうすればいいの?!」

 「竜巻の時は地下シェルターに避難するんだよ!」

 「そうか!超振動波!!」

 

 ズドドドッと地面に大穴を開けて、そこに身を隠す。だが隠れてばかりいても敵には勝てない。

 

 「で、これからどうするの?」

 「ちったぁ自分で考えろよ!空を飛ばれちゃどうしようもなくなるからなぁ。」

 「シンちゃんだって飛び道具持ってるじゃない?」

 「物には限界があるんだよ。」

 

 黒鉄の城だって空を飛べるようになるまで様々な苦難があったのだ。おいそれと克服できるほど甘くはないのだ。

 

 「一応、方法は無きにしも非ずだけど。」

 「どんな?」

 「それはねぇ・・・ん?なんだこのニオイは・・・。」

 

 作戦会議中の穴の中に、フローラルな香りが漂ってきた。

 

 「なんかクセになりそうな・・・。」

 「すごく・・・イイにおい・・・。」

 「しかもリラックス効果つきだこれ・・・ねむい・・・。」

 

 これはイカン、と慌てて穴を掘り進めて出口をつくる。

 

 「こ、これでよかったかな?」

 「待ってましたぁ!ジャッパちゃんナイス!」

 「えぇいまたしても!シンちゃん!」

 「おう!」

 

 穴から飛び出して、攻撃がとんでくる前に体勢を立て直す。ゴモラの角にシンジは脚をかける。

 

 「そーれっ!」

 「うぉおお!!」

 「なにぃ!そうきたか!」

 

 あとはゴモラのツノかち上げの要領でシンジは飛ぶ、いや跳ぶ。滞空しているマガバッサーの元へ一直線だ。

 

 「あらよっ!」

 

 しかし単純に真っ直ぐ飛んでくるだけでは当たるものも当たらない。簡単にマガバッサーは避けてしまうが、そんなことを想定していないシンジではない。

 

 「リストビュート、伸びろ!」

 「うわっ!?」

 

 S.R.Iの手首の部分からワイヤーが伸びて、マガバッサーの脚をとらえる。ヒーローの本場アメリカで学んだワイヤーアクションをスーツの機能に取り入れてみたのだ。

 

 「これは使い勝手が良いな!」

 「離せー!このー!」

 「うわぁ!!」

 

 捕えたはいいものの、その状態でマガバッサーは全速力で飛び回るから、シンジは揺られるジェットコースターだ。

 

 「ぬわぁああああああ!!」

 「落ちろやぁあああ!」

 「なんとぉおおおおお!!」

 

 調子づいたマガバッサーがシンジの体を地面に叩きつけようと、急降下を開始するの直前、ワイヤーを解除して空中に留まる。続いて、空中で体勢を立て直してからもう一度ワイヤーを引っかける。まるでイルカの背に乗って跳ねるアクロバットショーのようだ。

 

 「再び、捕まえたぁ!」

 「くっ!こんのぉしつこい!」

 

 将を射んとすればまず馬を射よ。マガバッサーの戦闘力はその大きな翼に起因する。背中に取り付いたシンジは、バックパックからアイテムを取り出す。

 

 「必殺、本結び!」

 「翼がっ!」

 

 先ほどおもちゃと言ったヨーヨーを巧みに操り、一対の翼を固めて羽ばたけなくさせた。これでもう自由に空を飛ぶことは出来まい。

 

 「そして、これで決まりだ!」

 

 そのままマガバッサーの体を後ろへ反らせ、脚を脇に挟んで、されに腕を掴んで固定し、そのまま垂直落下する!

 

 「人も建物も焼き払う、『カンパーナ・エアレイド(釣鐘爆撃落とし)<