金色のガッシュベル!!SECONDLAP (アンドロイドQ14)
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邂逅編
LEVEL1 2度目の王を決める戦い


 とある国の森の中、ここにガッシュは寝ていた。

 

ガッシュ「ヌゥ、ついつい寝てしまったのだ」

 

 起きて周りを見てみると、森の中であることに気付いた。

 

ガッシュ「ウヌ、どうして私はここにいるのだ?」

 

 周りを見ても、魔物も何もなく、持っているはずの王杖すらなかった。

 

ガッシュ「ヌオォォォォォォッ!!ヌォッホッホッホッ!!」

 

 泣き叫びながら慌てふためくガッシュの背中から本が落ちた。

 

ガッシュ「これは…あの時の魔本なのだ!とすればここは…」

 

 魔本を見て、落ち着き、これまでの経験から、ガッシュはイギリスの森にいるのではないかと推測した。

 

ガッシュ「また清麿に会えるのだ!とりあえず、まずは父上殿に会いに行くのだ」

 

 

大学

 ガッシュはかつてのパートナー、高嶺清麿の父親、高嶺清太郎に会いに行った。

 

清太郎「君は清麿を知っているのかい?」

 

ガッシュ「父上殿、私を忘れてしまったのか?ガッシュ・ベルなのだ!」

 

清太郎「ガッシュというんだね。どうして私の知っているのかは知らないが、私は君と会うのは初めてだ」

 

ガッシュ「そ、そんな…」

 

清太郎「だが、君の持っている本は私にも解読できなかったから非常に興味深い。ちょっと早いが、清麿への誕生日の祝いも兼ねて日本へ行き、腑抜けている清麿を鍛え直してくれないか?」

 

ガッシュ「ウヌ、任せるのだ」

 

 

上空

 清太郎から手紙を渡されたガッシュは初めて日本へ行く時に連れて行ってもらったオオワシに掴まって移動している間、考え事をしていた。

 

ガッシュ「(父上殿が私の事を会うのは初めてだと言っておった。とすると、私は意識か魂が過去の体へ行ってしまったのかのう…)」

 

 

 1週間後、ガッシュの兄、ゼオンがデュフォーと共にイギリスの森に来ていた。

 

ゼオン「ガッシュの魔力が急に消えやがった」

 

デュフォー「他の魔物に倒された可能性は?」

 

ゼオン「ない。そもそも、ガッシュの魔力以外感じなかった。デュフォー、お前の力ならガッシュの居場所がわかるんじゃないか?」

 

デュフォー「お前、頭悪いな。ゼオンの言うガッシュに会った事がない以上、どこにいるのかの特定はできん」

 

ゼオン「ちっ…」

 

デュフォー「機嫌を悪くしたのか?」

 

ゼオン「いや、気にするな。いなくなったのなら、探せばいい(だが、妙に魔力が高かったな。もしかすると既に…)」

 

 

高嶺家

 同じ頃、本来であれば清麿がガッシュと出会う日の1週間前の事だった。自分の部屋にこもっていた高嶺清麿は母親の華に起きるように急かされていた。

 

華「そろそろ起きなさい、清麿!早く起きてご飯を食べなさい!聞いてるの?清麿!あんた、今日も学校サボるつもり!?」

 

清麿「俺が今更、中学に行って何、勉強するんだよ」

 

華「そんな事言ってるからいじめに遭うんでしょ!?悔しかったら友達の1人でも作ってみなさいよ!」

 

清麿「やかましい!何で低レベルな連中と友達にならなきゃいけねえんだよ!」

 

???「こら~~っ、清麿~~!母上殿に向かってやかましいとは何事だ!」

 

 声がした方を清麿が向くと、そこにはオオワシとその足に掴まっている素っ裸のガッシュがいた。

 

清麿「な、何で俺の名前を知ってるんだよ!!(落ち着け…。ってか、目の前にオオワシと素っ裸のガキがいて落ち着けるわけねえだろ!)」

 

 その後、窓を突き破ってガッシュは降りてきた。

 

ガッシュ「久しぶりだのう、清麿!我が名はガッシュ・ベル。この手紙を預かってきたのだ」

 

 ガッシュから渡された手紙を清麿は受け取って読んだ。

 

清太郎『清麿、突然だが、この手紙を届けたこの子供はガッシュ・ベル。仕事中に私と会ったんだ。清麿の事を知っていたようだから、清麿を鍛え直すように頼んだ。少々変わったところもあるが、いい子だ。少し早いが、お前の誕生日プレゼントとして受け取ってほしい。それと、この子が持っている赤い本は考古学教授の私にも読む事ができなかった。お前の頭脳で解き明かしてくれないか。じゃあな』

 

ガッシュ「清麿、父上殿に頼まれた通り、今日から私が教育係として鍛え直すのだ」

 

清麿「何でお前のようなガキに鍛えられなきゃなんねえんだ、ふざけるな!!」

 

 ガッシュが服を着ている時に清麿は魔本を持って叫んだ。すると、ガッシュの口から凄まじい電撃が放たれ、清麿の家の窓を破壊した。電撃の巻き添えになった清麿は倒れていた。

 

ガッシュ「清麿、どうしたのだ?しっかりするのだ、清麿!」

 

 破壊された窓と、息をしておらず、心肺停止の状態になった清麿の様子を見て、ガッシュはある事に気付いた。

 

ガッシュ「まさか、王族の力が既に目覚めておるのか…?とすれば、初めて清麿に会った時とは威力が比べ物にならぬ。早く病院へ連れて行かねば、清麿の命が危ない!母上殿、直ちに救急車を!」

 

 

モチノキ町立総合病院

 ガッシュの電撃で意識不明の重体に陥った清麿はすぐに病院に搬送された。

 

華「それで、清麿の容態はどうなんですか?」

 

医者「深刻である事に変わりはありません。私達も最善を尽くします」

 

 その頃、ガッシュは外を歩いていた。

 

ガッシュ「まさか、清麿を死なせかけてしまうとは…。優しい王様を目指せるのであろうか…」

 

???「……ガッシュ?」

 

 声がした方をガッシュが向くと、そこにはピンク色の髪の少女がいた。

 

ガッシュ「ヌ?」

 

少女「あ…(同じクラスだから話しかけちゃった…敵なのに…)」

 

ガッシュ「コルル、コルルなのだな?」

 

コルル「こ、来ないで!私、まだパートナー、いないから…」

 

ガッシュ「ウヌ。戦うとは言ってないのだ」

 

コルル「そんなはずない!この戦いに味方はいないの…生き残った最後の1人が王様になるのだから…」

 

ガッシュ「それでも、私はコルルとは戦わないのだ」

 

コルル「え…本当に?」

 

ガッシュ「ウヌ。それに、私のパートナーは今は意識不明の重体なのだから戦いたくても戦えないから安心するのだ」

 

 同じクラスの友達、コルルとの再会を喜ぶガッシュを呼びに華が来た。

 

華「ガッシュちゃん、その子は?」

 

ガッシュ「コルルと言って私の友達なのだ」

 

華「かわいいお友達ね。家族はいるの?」

 

コルル「……」

 

華「もしかして、家族がいないの?だったら、引き取り先が見つかるまで家にいていいわよ」

 

コルル「本当?」

 

華「ええ。困った子供を見てると放っておけないもの」

 

ガッシュ「母上殿はとても優しいのう」

 

 

 ガッシュの電撃を受けた清麿は生死の境をさまよっていた。

 

清麿「はぁ…、俺って何のために生きてるんだろうな…。どうせ俺が生きてたってろくな事はねえ…」

 

???A「清麿、死んではならぬのだ!清麿!」

 

???B「高嶺君!お願い、死なないで!」

 

???C「清麿、あんたが死んだら悲しいのよ!」

 

 

 数日後、清麿の意識が目覚めた時には、既に夕方で病室に寝ていた。

 

ガッシュ「おお!清麿の意識が戻ったのだ!」

 

華「よかったわね。外傷も治ったから家に帰れるわよ」 

 

清麿「そうか…。って、何で女の子までいるんだよ!」

 

華「このコルルって子は家族がいないから、引き取り先が見つかるまで家に住ませる事にしたのよ。清麿もちゃんと優しくしてあげなさい」

 

清麿「わかったよ」

 

 

高嶺家

 家に帰った後、清麿は華とガッシュ、コルルと共に夕食をとっていた。

 

華「清麿。感電して死にかけたのはコンセントに手を突っ込んだからでしょ?電化製品の扱いには気を付けるのよ」

 

清麿「違う、ガッシュの口から電撃が」

 

華「ガッシュちゃんから電撃が出るわけないでしょ。とにかく、明日から学校へ行ってもらうからね」

 

 華の言葉に耳を貸さず、清麿は夕食を食べ終わった後、自分の部屋にこもった。

 

コルル「華さん、清麿お兄ちゃんはいつもこうなの?」

 

華「そうね…、中学に入ってからああなったの。ところで、コルルちゃんもお皿を洗うのを手伝う?」

 

コルル「うん」

 

華「ガッシュちゃんは清麿に明日は学校に行くように説得するのよ。何だったら、ガッシュちゃんとコルルちゃんが清麿の最初の友達になってあげて」

 

ガッシュ「任せるのだ、母上殿」

 

 ガッシュは清麿の部屋に来た。一方の清麿はガッシュの魔本とコルルが持っていた魔本を読んでいた。

 

清麿「(何なんだ、この赤い本とピンクの本は。見たこともない文字だし、一定の文法すら…)」

 

 すると、赤い魔本のある部分に清麿は気づいた。

 

清麿「(第一の術ザケル、色の違うこの1ページは理解できる…)」

 

 他にもページをめくって読める文字がないか探した。

 

清麿「(第二の術ザケルガ、第三の術テオザケル、第四の術…ん?この部分は読めない上に他の読めない文節とは色も違う。第五の術ジケルド、第六の術ガンレイズ・ザケル、今の所、読めるのは5つだけか…。ピンクの本は一切読めなかったがな…)」

 

ガッシュ「清麿、私の本を読んでおるようだな」

 

清麿「なぁ、ガッシュ。この本は一体何なんだ?」

 

ガッシュ「ウヌ、私が説明しよう」

 

 清麿に聞かれてガッシュは自身とコルルが魔物である事、魔界の王を決める戦いの事等を話した。しかし、あまりにも規格外な話を清麿が信じる筈もなかった。

 

清麿「冗談じゃない!そんな事は誰が信じるものか!もう寝る!」

 

ガッシュ「ヌオ~~~ッ!!」

 

 結局、清麿は王を決める戦いの事を信じずに寝てしまった。しかし、ガッシュの言った事はやはり気にしていた。

 

清麿「(ガッシュの奴、魔界の王様になるっていうちゃんとした目標があるんだな。それなのに、自分の事を優先させずに俺を学校に行かせるとか…。あいつより俺の方がどうかしてるじゃねえか…。頭の良さにかまけて学校にも行かない…。俺も変わらなくちゃいけないけど…そのきっかけがないんだ…)」

 

 翌日、清麿は学校へ行く準備をしていた。

 

華「清麿、やっと学校へ行く決心をしたのね」

 

清麿「そうだが…、どうもいまいち勇気が出ない…。だからガッシュ、一緒に来てくれないか?」

 

ガッシュ「…ウヌ、私も一緒に行くのだ」

 

華「コルルちゃんは私の手伝いをしてね」

 

コルル「うん。清麿お兄ちゃん、ガッシュ、行ってらっしゃい」

 

清麿「ってお袋、そのバッグは何だ!?」

 

華「昨日、ガッシュちゃんに頼まれて作ったのよ。これなら、連れて行けるでしょ?」

 

 

モチノキ中学校

 ガッシュと一緒に清麿は学校へ登校し、授業を受けていた。

 

教師「高嶺」

 

清麿「…はい」

 

教師「この数式を解いてみろ」

 

清麿「a=4、b=8、c=0.3」

 

教師「…正解だ」

 

生徒A「ちっ、何だよあいつ…」

 

生徒B「また嫌味な事しやがって」

 

生徒C「勉強する必要ねーなら帰れよ」

 

清麿「(またか…、せっかく学校へ行こうと思ったのに、何で…)」

 

 そして、昼休みになり、清麿は屋上で寝っ転がっていた。そこへ、水野鈴芽が来た。

 

ガッシュ「おお、鈴芽ではないか!」

 

鈴芽「えっ、私を知ってるの?高嶺君、この子は誰?」

 

清麿「ガッシュって言って、昨日から俺の家に住んでるんだ。って、何してるんだよ、

ガッシュ!静かにしろって言っただろ!」

 

ガッシュ「ヌオオオオッ!(しまった、懐かしさのあまり、ついやってしまったのだ…)」

 

 慌てた清麿は外へ行った。

 

清麿「ちゃんと静かにしとけよ…。もし、教師に見つかったらどうするんだ?」

 

ガッシュ「済まぬのだ…。それより、清麿、正義の味方作戦で友達を作るのだ」

 

清麿「正義の味方作戦?」

 

ガッシュ「不良を倒してからまれている者を助けるのだ。そうすれば、周りも清麿の事を見直してくれるはずなのだ」

 

清麿「勝手に決めるな!それに、不良にからまれている奴がそんなに都合よくいるわけ…」

 

ガッシュ「金山がおるではないか」

 

清麿「な、何で金山の事まで知ってるんだよ!」

 

ガッシュ「今はそんな事はどうでもよかろう。さぁ、正義の味方作戦をやるのだ」

 

 放課後、清麿はガッシュと共に屋上へ向かった。

 

ガッシュ「清麿、ちゃんと私が不良に絡まれたら助けに来るのだぞ」

 

清麿「わかった…」

 

ガッシュ「本当に来るのだな?」

 

清麿「(こんな目で見つめられたら厄介払いできないじゃねえか…。仕方ない…)本当だ」

 

 じっと見つめるガッシュの力強いまっすぐな眼差しに嘘をついて逃げようとした清麿は観念して一緒に屋上へ向かい、待機した。

 

ガッシュ「どこにいるのだ?金山!いたら私が懲らしめてくれようぞ!」

 

 しかし、金山の姿はなかった。

 

ガッシュ「まだ来ておらんのかのう…?」

 

鈴芽「あら、ガッシュ君じゃない」

 

ガッシュ「鈴芽ではないか。金山はどこにおるのだ?」

 

???「お探しに金山は俺の事かな?」

 

 声と共に金山が来た。

 

ガッシュ「金山、お前のような不良は正義の味方、清麿がやっつけてくれるぞ」

 

金山「どうして俺の名前を知ってるのかは知らねえが、本当に来るかどうか、見せてもらおうじゃねえかよ」

 

 金山はガッシュに襲い掛かったが、ガッシュは金山のパンチやキックを全て余裕でかわした。

 

鈴芽「凄い…」

 

金山「すばしっこいガキめ、腹が立つぜ!」

 

清麿「(俺…、必要だったのか…?やっぱりあいつ、自分で言ってた通り魔物だったんだ…)」

 

 待機していた清麿は必要だったのか疑問に思っていた。

 

 

モチノキ町

 

 屋上の光景を何者かが望遠鏡で目撃していた。

 

少年A「うっひょ~~っ!カワイ子ちゃん、あの子のパンツは絶対白だ。よ~し、決めた!俺の彼女にしてやるよ!」

 

少年B「泳太、また女の尻を追っかけてんのか?」

 

泳太「あの屋上までひとっ飛びなんて、ご機嫌じゃねえか」

 

 もう1人の少年は望遠鏡で屋上を見ていた。

 

泳太「どうした?ハイド」

 

ハイド「一匹、弱っちい獲物見つけてさ。じゃあ、行くぜ泳太」

 

泳太「ジキル!」

 

 スケボーに乗ってから、本を持って呪文を唱えると、飛び上がった。

 

泳太「お前の風は最高だぜ!」

 

 着地してからしばらく進んだが、看板に見とれて鉄骨にぶつかってしまった。

 

ハイド「泳太、その癖、治せよ」

 

 

モチノキ中学校

 屋上では、相変わらず金山の攻撃をガッシュはかわしていた

 

金山「あいつなんか、永遠に学校なんか来なくていいんだよ!来てほしいと思ってる奴なんか誰もいねえんだよ!」

 

ガッシュ「黙れ!お前に清麿の何がわかる!清麿は好きで天才になった訳ではないのだ!清麿の父上が言ってたぞ!小学校までは普通に友達と遊んでたって!中学になって、だんだん友達が清麿の頭の良さを妬み始めたって!清麿が変わったんじゃない!清麿を見る友達の目が変わったのだ!清麿が実際何をした!?今日、学校に来た清麿が何をした!?お前のように誰かを傷つけたのか!?お前みたいに弱い者から金を奪ったか!?学校に来なくていいのは金山、お前の方だでくの坊!これ以上私の友達を侮辱してみろ!このガッシュ・ベル様がただではおかぬぞ!」

 

 ガッシュの言葉に清麿は涙を流していた。ところが、ガッシュはハイドの魔力を感じた。

 

ガッシュ「(これは…、魔物の魔力なのだ…)」

 

 ハイドの魔力に気を取られていたせいでガッシュは金山のパンチを受けてしまった。

 

鈴芽「ガッシュ君!」

 

清麿「ガッシュ、何をボーッとしてるんだよ!」

 

 清麿の登場に金山は驚いた。

 

金山「本当に…、来やがった…」

 

ガッシュ「本当に来ただろう。嘘つきはお前の方だ、金山!」

 

清麿「そうだぜ!俺様が来たからには一撃で」

 

 現実はそう上手くはいかず、清麿は金山にボコられる一方だった。

 

清麿「勝てない~~、勝てない~~!こんな作戦、無理だったんだ!」

 

ガッシュ「何を言う、清麿が来た時点でこの作戦は成功だぞ」

 

鈴芽「私も高嶺君が助けに来てくれるって信じてたもん。ありがとう」

 

清麿「だが、これから金山をどうするんだ?」

 

ガッシュ「勝てないのならば、私の本を持って呪文を唱えればよいではないか。でも、呪文の力は心であるから、ちゃんと心を込めて唱えなければならぬぞ」

 

 呪文という言葉を聞いて清麿はある事がひらめいた。昨日、自分が死にかけるほどの電撃が発動したのは苛立った状態で『ふざけるな』と言った際に偶然、第一の術ザケルが発動したのだと。

 

清麿「だ、だが…、あの電撃は俺が死にかけた程の威力なんだぞ。あれを人間に向けてやるのは…」

 

鈴芽「あ、何か来た」

 

清麿「え?」

 

ガッシュ「清麿、気を付けろ!魔物とそのパートナーが来る!」

 

清麿「な、何の事だ?」

 

 鈴芽の言う通り、上空からハイドとスケボーに乗った泳太が降りてきた。そして、金山に飛び乗った後、着地してから泳太は鈴芽のスカートをめくった。

 

泳太「イェイ、やっぱり白だ!」

 

 パンツの色を言い当てられて鈴芽は恥ずかしがった。

 

金山「ぐえっ、何だ、貴様!どうやってこんな屋上へ!」

 

泳太「風に乗って来たんだよ。って言っても、バカには通じないだろうがな」

 

金山「黙れ!」

 

泳太「ジキル!」

 

 殴りかかろうとした金山は風に吹き飛ばされた。

 

清麿「何なんだよ、今のは?」

 

ガッシュ「あれは、手から起こした風のように見えるが、実際は魔物の術による風だ」

 

清麿「何だって!?」

 

 金山を吹き飛ばした泳太は鈴芽に近づいて腕を掴んだ。

 

泳太「ヘイユー!俺の彼女決定!」

 

鈴芽「嫌、離して!」

 

泳太「俺は強いんだぞ。欲しい物は必ず手に入れる」

 

鈴芽「嫌、もうすぐ合唱部が始まっちゃう!」

 

清麿「やめろ!水野を離せ!」

 

ガッシュ「さもないと、私達が懲らしめるぞ!」

 

泳太「邪魔だ、ジキル!」

 

 風が清麿とガッシュに襲い掛かったが、ガッシュは清麿の前に立った後、マントを巨大化させて防いだ。

 

清麿「マントが巨大化した?」

 

泳太「何?風が防がれた?」

 

ガッシュ「その風を起こしているのは魔物であろう。隠れてないで出てくるのだ」

 

 言葉に応じてハイドが姿を現した。

 

ハイド「よくからくりがわかったな」

 

ガッシュ「(まさか、こんなにも早く魔物と遭遇するとは…)」

 

ハイド「泳太、こんな奴等、さっさと片付けようぜ」

 

泳太「よーし、俺達の力、見せてやろうぜ。ジキ」

 

清麿「(いちかばちかだ!)第一の術、ザケル!」

 

 泳太が呪文を唱える前に清麿は呪文を唱えてザケルを発動させた。これにはハイドも慌てて泳太を担いでかわし、その場から逃走した。昨日よりも更に強力な電撃は屋上一帯を跡形もなく消し飛ばした。

 

泳太「とんでもねえ威力だ…」

 

ハイド「今日のところは退散だ(俺達が戦ったのは本当にあのガッシュなのか?初級の呪文なのに、あの威力は明らかにギガノ級だ)」

 

 凄まじい威力に清麿は驚いていた。

 

清麿「とんでもない威力だ…」

 

ガッシュ「(やはり、私の王族の力は目覚めておる…)」

 

 

モチノキ町

 遠くから目つきの悪い魔物、ブラゴと品性のある女性、シェリーが見つめていた。

 

ブラゴ「あの爆発は…、魔物の力だ。それも、かなり強力な力を感じる…(この力の感じ…、雷帝に似てるな…)」

 

シェリー「とうとうこの街でも、魔物同士の戦いが始まったのね…」

 

 

高嶺家

 夜になった。

 

華「清麿、ガッシュちゃんをお風呂に入れてあげなさい。コルルちゃんは私が入れてあげるから」

 

清麿「何で俺が」

 

華「清麿!」

 

 華に言われて渋々ガッシュを風呂に入れた。

 

ガッシュ「おお!やっぱり清麿の家のお風呂は気持ちいいのう…」

 

清麿「やっぱり?何で俺の家に一度も住んだ事がないのにやっぱりって言うんだよ!」

 

ガッシュ「ウヌ?ついつい口走ってしまっただけなのだ」

 

 ガッシュを洗っていると、頭に小さな角がある事に気付いた。

 

清麿「つ、角!?」

 

 こうして、ガッシュにとっては再び優しい王様を目指す波乱の日々が始まる事となった。




また魔界の王を決める戦いが始まるという1話でした。
今小説はガッシュの逆行ものの二次小説とスーパーロボット大戦をやってて思いついた2周目みたいな話で、スパロボの引き継ぎ要素でガッシュは前の戦いの記憶と王族の力の覚醒、ある程度呪文が解禁された状態で始まります。
話はアニメ寄りにする他、早々に魔界に帰ってしまった魔物が仲間入りして長く生き残ったり、仲間入りが遅かった魔物が早々に仲間入りしたりする原作にはないような展開も起こります。アニメ寄りなため、ファウード編で終わりますが、ゼオンとの和解はきっちりやります。


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LEVEL2 似て異なる出来事

高嶺家

 休日の朝、清麿は赤の魔本とピンクの魔本を解読しようとしたが、手を焼いていた。

 

清麿「ダメだ!冗談じゃねえぞ、この赤い本とピンクの本…。この俺が徹夜で調べてもさっぱり解読できねえ。やはり、読めるのは赤い本の色が変わってる部分だけ。ピンクの本は全く読めねえ」

 

 そんな中、コルルが来た。

 

コルル「清麿お兄ちゃん、何をしてるの?」

 

清麿「ちょっと赤い本とピンクの本を調べてた所なんだ。赤い本は色が変わってる部分は読めるんだが、ピンクの本は全く読めないんだ。コルルはどうしてピンクの本が読めないのかわかるか?」

 

コルル「その本はパートナーの人間しか読めないの。だから、清麿お兄ちゃんには私の本は読めないの」

 

清麿「そっか…。疑問に答えてくれてありがとな、コルル」

 

コルル「うん」

 

華「清麿、ちょっとお遣いに行ってきてくれる?」

 

清麿「わかったよ」

 

ガッシュ「行ってきますなのだ」

 

 華とコルルは清麿とガッシュを見送った。

 

華「私達も掃除とかをしよっか」

 

コルル「うん」

 

 

モチノキ町

 お遣いに行った清麿とガッシュだったが、ある光景を見て驚いていた。

 

清麿「どうなってるんだよ!春なのに川が凍ってるじゃねえか!」

 

ガッシュ「あれも魔物の仕業なのだ」

 

清麿「魔物?ガッシュによく似た子供が魔物なのか?」

 

ガッシュ「魔物にも色々な姿の魔物がおる。私やコルルのように人間の姿をしてる魔物もいれば、動物の姿の魔物もいるのだ」

 

 そう言っていると、悪そうな男と青い髪の魔物が車を強奪するのを目撃した。

 

清麿「ガッシュ、あの子供も魔物なのか?」

 

ガッシュ「その通りなのだ。奴の名はレイコム。氷の力を持つ魔物だ」

 

清麿「やけに詳しいな」

 

ガッシュ「(まさか、銀行強盗が来る前にレイコムと細川が来るとは…。私がこれまで経験した王を決める戦いとは色々と違うのだ)」

 

清麿「さ、お遣いを済ませるぞ」

 

ガッシュ「ウヌ」

 一方の鈴芽は銀行に向かっていた。

 

鈴芽「いー天気ね。こんな日が休みだとウキウキするねー!ああ…なんか最近ついてるわ!昨日もピンチになったら高嶺君が助けに来てくれたし…それでも、もうダメかと思ったら、神様が雷を落して助けてくれたし…。さ…、早くチケット代振り込んで公園かどこかで昼寝しよう」

 

 銀行に入ってしばらくすると、鈴芽は細川に銃を突き付けられた。

 

細川「黙れ…。無駄口叩いてないで手を上げろ」

 

 その頃、清麿とガッシュはお遣いから帰ってるところだった。

 

ガッシュ「(確か、今日は……何かあったような…)」

 

TV『緊急のニュースです。甲虫銀行モチノキ支店に銃を持った男が立てこもりました。行内監視カメラの映像をご覧ください』

 

 緊急のニュースで、監視カメラの映像に鈴芽が映っていた。それにガッシュは驚いた。

 

ガッシュ「(そうであった、今日は銀行強盗が鈴芽を人質にとる日だったのだ…)」

 

清麿「何~~っ!!あいつ、また捕まってやがる…」

 

 映像の中に細川の姿があった。

 

ガッシュ「(何?銀行強盗はあの2人組ではなく、細川だと?)」

 

清麿「(あの男、確かレイコムとかいう魔物と一緒にいた青い本の持ち主だ。だが、氷の力を持つレイコムにどうやって…)」

 

ガッシュ「清麿、私の本を使うのだ!それしか鈴芽を救う方法はない!」

 

清麿「何を言っているんだ!俺が死にかけた上に学校の屋上を跡形もなく消し飛ばしたんだぞ!それを使えば銀行が…」

 

ガッシュ「呪文は加減して使えば清麿を死なせかけた時や学校の時より威力を抑える事が出来る。だから、私の本を使うのだ!鈴芽を助けずに自分に嘘をついて逃げたら一生後悔する事になるぞ!」

 

清麿「(自分に嘘をついて逃げたら一生後悔する…。ガッシュの言う通りだ。逃げたら今までの自分と同じだ…言い訳を重ねて、自分を正当化して…そしてまた自分に…)」

 

 ガッシュの言葉を聞いた清麿は決心した。

 

清麿「行くぞ、ガッシュ!甲虫銀行に!」

 

ガッシュ「おう!」

 

 ちょうどお遣いの帰り道に甲虫銀行があったため、2人は走ってそこに向かった。

 

ガッシュ「やはり、あの時と変わっておらんのう」

 

 一方、細川は銀行にたてもこったままだった。

 

細川「すげえ金だぜ。レイコム最高だな。この本さえあれば手に入らないものはない。いいか、ちょっとでも妙な動きしたら女だろうが子供だろうが撃ち殺すからな」

 

鈴芽「お願い、誰か早く助けて!」

 

 ガッシュと清麿は銀行が目の前に見える所にまで来ていた。

 

ガッシュ「清麿はどうやって銀行に入るか考えたか?」

 

清麿「ああ。少々荒っぽいが、ガッシュを2階の窓に放り込み、警官が気を取られている隙に俺も銀行に突入する。やれるか?」

 

ガッシュ「勿論なのだ。さぁ、早く私を放り投げるのだ!」

 

清麿「行くぞ!」

 

 清麿はガッシュを投げ飛ばしたが、ガッシュが手を離すのを忘れていたため、一緒に2階に行く事になった。

 

清麿「予想外の展開!!」

 

ガッシュ「(しまった、手を離すのを忘れてしまったのだ…)」

 

 しかし、結果的に銀行に入り込む事に成功した。そこを、シェリーとブラゴは車から目撃していた。

 

シェリー「ブラゴ、今の、赤い本を持ってたわよ」

 

ブラゴ「ガッシュだ」

 

 何者かが入り込んだ事に細川は気づいた。

 

細川「警察の人間か?とっとと出てこい!」

 

清麿「気付いたか?」

 

ガッシュ「まだ私達と断定してはおらぬようだ」

 

清麿「ガッシュ、俺にいい考えがある」

 

 清麿は考えた作戦をガッシュに伝えた。

 

ガッシュ「わかったのだ」

 

清麿「頼んだぞ」

 

 指示を受けたガッシュは飛び出した。

 

細川「何だ、このガキは!?」

 

鈴芽「あっ、ガッシュ君!」

 

ガッシュ「(今は返事をするわけにはいかぬのだ)」

 

 返事をせず、ガッシュは細川の背中に組み付いた。

 

細川「何っ!それと、あの赤い本は?」

 

清麿「よし、今だ。ザケル!」

 

 それから清麿も飛び出して唱えた。しかし、電撃は出なかった。

 

清麿「(電撃が出ない?なぜ!?昨日と同じように呪文を唱えたのに)」

 

ガッシュ「それは思いの込め方が足りないからだ。もっと思いを込めて唱えるのだ!」

 

清麿「そ、そんな事言われても…」

 

レイコム「へへっ、そんな本を持ち出すからどんな技で来るかと思えば、拍子抜けだな。まだ使いこなすこともできないとは」

 

細川「随分と勇敢な坊やかと思ったが、そういう事か。お前もその本で力を手に入れたつもりになっていたか。けど、お前なんかが持っていたって宝の持ち腐れだろう?その本をこっちへよこしな」

 

ガッシュ「残念だったな。私の本は清麿にしか読めんのだ。お前が持ってても宝の持ち腐れというのをそっくり返してやるぞ」

 

細川「ガキが!言わせておけば言いたい放題言いやがって!離れやがれ!」

 

 組み付いているガッシュを振りほどこうとしたが、既に王族の力に目覚めているガッシュの力は強く、振りほどけなかった。

 

レイコム「細川、上着を脱いで本を使え!」

 

 上着を脱いでガッシュを振りほどいてから、細川は本を出した。

 

細川「くらえ、ギコル!」

 

 防御もかわすのも間に合わず、ガッシュはレイコムの冷気を受けて氷漬けになった。

 

清麿「ガッシュが凍り付いた…。ガッシュ、大丈夫か!?」

 

レイコム「壊そうと思っても君の力じゃ壊せないよ」

 

清麿「(これでもう、ザケルも電撃も出せない…)」

 

レイコム「放っておくと心臓まで凍る事になるよ」

 

細川「さっさとその本を渡しな」

 

 清麿はガッシュの姿を見て、ガッシュが何かを伝えているような感覚になった。

 

清麿「お前達にこの本は渡せねえ!俺は、ガッシュで変わるんだ!」

 

 その言葉に応えるかのように氷にヒビが入った後、ガッシュは自力で氷を割った。

 

レイコム「そんなバカな!落ちこぼれのガッシュが自力で氷を壊すなんて!」

 

ガッシュ「私を甘く見たお前達がバカなのだ!」

 

 そのままガッシュはレイコムを殴り飛ばした。

 

清麿「ガッシュ、大丈夫か?」

 

ガッシュ「これくらいの冷気は大丈夫なのだ」

 

細川「この野郎…、このまま殺されないとわからないのか?言っとくが、脅しじゃないぞ。今の俺は人を殺す事なんか何も怖くねえ。警察だって全然怖くねえ。俺は強いんだ。この本のお陰で力を手に入れたんだ」

 

 細川の銃の銃口が鈴芽に向けられた。

 

鈴芽「殺される…」

 

清麿「やめろ!やめてくれ!水野を死なせたくないんだ!救いたいんだ!」

 

 清麿の思いに応えるかの如く、魔本が輝いた。

 

レイコム「何っ!?」

 

細川「こいつら全員の命はない!」

 

 慌てて細川は銃口を鈴芽に向けた。

 

ガッシュ「今ならザケルが撃てるぞ、清麿。思いを込めて唱えるのだ」

 

清麿「ああ。(頼む、水野を救ってくれ!)ザケル!」

 

 思いを込めて放ったザケルは細川とレイコムを巻き込んで窓を破壊し、2人を吹っ飛ばした。

 

ガッシュ「清麿、どうにか追い払う事ができたのだ。今のような感じで特訓を重ねれば出したい時にいつでも呪文を出せるようになるぞ」

 

清麿「そうか…」

 

 一方の細川とレイコムは逃走していた。

 

細川「くそっ!」

 

レイコム「仕返しはきっちりしてやりたいが、今のままではガッシュに勝てない。もっと力をつけてから仕返ししよう」

 

 一台の黒い車の中でシェリーとブラゴは細川とレイコムの様子を見ていた。

 

シェリー「なぜこの街には魔物が集まってくるの?」

 

ブラゴ「ガッシュのせいだ。魔の力は魔を呼び寄せる。これから始まるのは、そういう戦いだ」

 

シェリー「ならば、あの赤い本の子とその本の持ち主に会ってみる必要があるわね」

 

ブラゴ「あの力の強さなら、俺達が出向く必要があるようだな」

 

シェリー「ええ。一刻も早く、この茶番を終わらせるのよ」

 

 色々あったものの、ガッシュ達は帰路について家に帰ってきた。

 

清麿「ただいま」

 

華「人質を救出するなんて大手柄じゃない!夕食はごちそうにするわね。コルルちゃんも手伝ってね」

 

コルル「うん。ガッシュ、清麿お兄ちゃん、華さんと一緒にごちそうを作るからね」

 

ガッシュ「早く食べたいのだ」

 

 夕食ができるのを待っていると、魔本が輝いた。

 

清麿「何だ?」

 

ガッシュ「新しい呪文が使えるようになったのだ」

 

清麿「何だって?」

 

 清麿は魔本を読んでみた。

 

清麿「ガンレイズ・ザケルの次のページが読めるようになっている。これは…第七の術、ラシルド」

 

ガッシュ「第七の術がラシルドだと?清麿、どれぐらい術は読めるのだ?」

 

清麿「今まで読めた分を合わせると、第一の術ザケル、第二の術ザケルガ、第三の術テオザケル、第四の術は読めなかったが、第五の術ジケルド、第六の術ガンレイズ・ザケル、第七の術ラシルドだ」

 

ガッシュ「ウヌ、前と順番が違うのだ」

 

清麿「前と順番が違う?どういう事だ!?」

 

ガッシュ「さ、さっきのは間違いなのだ」

 

清麿「間違い?なら、いいけど…」

 

ガッシュ「(どういう事なのだ…?ラシルドは第二の術でジケルドは第三の術だったはず…。もしや、ティオが本来は第六の術だったチャージル・セシルドンより先にチャージル・サイフォドンを習得した時のように私の術を覚える順番が変わってしまっておるのか…?)」

 

 会った事もない魔物との戦闘、予定より早いレイコムとの戦い、そして習得する順番が変わった術にガッシュは戸惑っていた。




原作でのガッシュの呪文の順番は第2の術がラシルドになっていますが、似て異なる世界である事と既に王族の力が目覚めているので最初の3つはゼオンと同じ順番にしています。
ガッシュはもちろん、他の魔物も呪文の習得の順番が入れ替わったりオリジナルの呪文を習得したりするかも知れません。


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LEVEL3 黒い刺客

高嶺家

 細川を撃退し、鈴芽を助け出した事で清麿は学校で一躍人気者となった。しかし、レイコムは襲撃して来ず、次の日になった。ガッシュは自力でバルカンを制作して遊んでいた。

 

ガッシュ「(ウヌゥ…、昨日はレイコムが襲撃して来なかったのだ…。やはり、私がこれまで経験した王を決める戦いとは違うのか…?)」

 

 その後、清麿の部屋に来た。

 

ガッシュ「清麿、休日になったら呪文の練習をしに行こうではないか。他の魔物との戦いに備えておいた方がよいぞ」

 

清麿「あのな、魔物の存在は認めるよ。だが、魔界の王を決める戦いはまだ信じた訳じゃないんだ。外で遊んでおけ」

 

 そのまま清麿は学校へ行った。

 

ガッシュ「まだ王を決める戦いを信じておらぬのか…(そろそろ、私が魔界の王になった後、過去へ戻った事を清麿に話しておく必要がありそうなのだ。鈴芽殿を知っておるのを清麿は怪しんでおるからのう…)」

 

 学校が終わった後、ガッシュは外出中で清麿は考え事をしていた。

 

清麿「(ガンレイズ・ザケルの次のページが読めるようになったな。そう言えば、第二の術とか何なんだ?ザケルよりも強い電撃なのか?)」

 

 清麿はガッシュがさらに強い電撃で街を吹き飛ばすのを想像した。

 

清麿「(困ったなぁ…、どうすりゃいいんだ?ガッシュは戦いに備えて呪文の練習をしておけって言ってたけど…。それに、どうしてガッシュは俺の事はおろか、水野や金山、銀行強盗やレイコムとかいう魔物の事まで知ってたんだ?それに、時々悩んでるような様子も見せてるからな。ガッシュが帰ってきたら借りを返す形で相談に乗ってみるか)」

 

コルル「さっきから清麿お兄ちゃんは困った様子だけど、どうして?」

 

清麿「ちょっとガッシュの事でな」

 

 そんな中、インターホンが鳴った。

 

清麿「全く、こんな時に誰だ?」

 

 

モチノキ町

 その頃、外にいたガッシュはブラゴの魔力を感じ取った。

 

ガッシュ「(この魔力は…ブラゴ!)」

 

 

高嶺家

 清麿がドアを開けると、そこにはシェリーとブラゴがいた。ブラゴの姿を見たコルルは清麿の後ろに隠れた。

 

シェリー「この本を見せれば、大体の事情は察してもらえるかしら?」

 

清麿「(魔物だと?おまけにコルルが怯えている…)」

 

シェリー「安心なさい。私達は話し合いに来たの。争う気はないわ」

 

ブラゴ「上がるぞ。かまわぬな」

 

 上がったシェリーとブラゴは清麿と話していた。

 

シェリー「あなたの傍にいるピンク色の本の魔物の子はまだパートナーが見つかっていないのね」

 

清麿「ああ。だから、パートナーが見つかるまで引き取っている」

 

シェリー「赤い本の子から戦いの事は聞いているかしら?」

 

清麿「(戦い?まさか、あれは本当だったのか?)」

 

シェリー「聞いているようね。魔物の故郷、魔界の王を決める戦いが千年に一度、人間界で行われるの。魔界で選ばれた100人の子供が本と共に人間界に送り込まれ、人間に育ててもらいながら、王の座をかけて戦う。ルールは簡単、私もあなたも持ってるこの本。この本は人の心を力の源とし、この子達の能力を開発する、いわば使用説明書。しかし同時に、本が燃えてなくなれば王になる資格が失われ、魔界に強制送還される」

 

清麿「(強制送還される?じゃあ、本が燃えたらガッシュとコルルも…)という事は…」

 

シェリー「そう…、この魔物の子供達はこの人間界で最後の1人になるまで戦い、互いの本を…燃やし合う」

 

清麿「じゃあ…その生き残った奴が…」

 

ブラゴ「次の王だ」

 

シェリー「私からの説明は以上よ。最初に言った通り、あなたの赤い本とその子が持っているピンクの本を渡してもらえないかしら?」

 

清麿「渡したらどうするんだ?」

 

シェリー「燃やすの。そうすればその本の子は魔界に送還される」

 

コルル「やめて、清麿お兄ちゃん…!」

 

清麿「…だったら渡せないな」

 

シェリー「…もしかしてあなた、あの子の力を使い悪い事を重ねていい思いをしてたクチ?だとしたらよした方がいいわ。その程度の事でその本を持ち続けたら、あなた自身がもっとひどい目に遭うのよ」

 

コルル「清麿お兄ちゃんは魔物の力を悪い事に使っていないの!悪い事に使っていると勝手に決めつけるあなた達こそ悪いじゃない!」

 

ブラゴ「パートナーもいない癖に随分口答えする度胸もあるようだな」

 

シェリー「渡さないのなら、腕づくで奪うわよ。レイス!」

 

 重力の球が清麿とコルルに迫る中、ガッシュが戻ってきてマントで防いだ。

 

シェリー「呪文もなしに防いだ?」

 

清麿「ガッシュ!」

 

ガッシュ「清麿、あの者達は強敵だ。急に頼む形ですまぬが、一緒に戦ってほしい!」

 

清麿「そ、そんな事を急に言われても…」

 

シェリー「赤い本の子は少し静かにしてなさい。グラビレイ!」

 

ガッシュ「ぐあああっ!!」

 

 突如としてガッシュは倒れて動けなくなった。

 

コルル「ガッシュ!」

 

清麿「ガッシュ、どうしたんだ!?」

 

シェリー「話を戻すわ。大人しく本を渡して。本を渡さなかったら渡すまで赤い本の子が受けている攻撃を行うわよ!あの子といると、あなたは普通の生活を失うのよ!この戦いは本を燃やすだけじゃない!平気で相手を殺す子もいるのよ!当然、あなたも巻き添えをくうわ!半端な覚悟で本を持っていても…あの子と一緒にいてもあなたには災いしか降りかからないのよ!!」

 

清麿「…じゃあ、聞くぞ。お前はなぜ災いが降りかかると知っていながら本を焼かない?その上、なぜ他の子供の本まで焼いて回るようなことをしている?」

 

シェリー「…あなたにはわからないわ…。もう二度と…、もう二度と…あんな思いは…だから…だから私は…、私はこの子を王に育て上げる!あなたが本を渡さないなら、その手を引きちぎってでも奪い、燃やしてあげるわ!」

 

清麿「(この女…、一体何が…?)」

 

ブラゴ「フン、それに貴様、俺達が見逃した所で次々と敵はやってくるぞ。そう…戦いはもう始まっているんだ!」

 

清麿「(もう戦いが始まっていただと…、ガッシュはそれを知っていたから呪文の練習をして戦いに備えようって言ってたのか…。くそっ、もっと早く信じていれば…!)」

 

ガッシュ「清……麿………!」

 

 ガッシュの言葉を信用しなかった事を後悔した清麿だったが、グラビレイを受けながらもガッシュは立ち上がろうとしていた。

 

シェリー「この子、あれだけ圧力を受けてるのに立ち上がれるの?」

 

ブラゴ「……」

 

ガッシュ「清麿…、頼む…、私に…指示を出して…呪文を唱えて…一緒に戦ってくれ……!このまま…清麿と…別れたく…ない…私達は…友達なのだ!」

 

清麿「ガッシュ…」

 

コルル「お願い、清麿お兄ちゃん!ガッシュと一緒に戦って!ガッシュを失いたくない!だからお願い、清麿お兄ちゃん!」

 

 グラビレイに逆らおうとしているガッシュと涙ながらのコルルの頼みを聞いた清麿はしばらく考えた後、決心した。

 

清麿「…またガッシュに借りが出来ちまったな…。わかった、お前の頼み通り俺も一緒に戦うぞ!」

 

シェリー「物わかりが悪いようねグラビ」

 

清麿「ザケル!」

 

 清麿が呪文を唱える前にガッシュはブラゴの方に顔を向けた。ガッシュの電撃はブラゴに直撃してシェリーを巻き添えにして吹き飛ばした。その際にガッシュにかかっていたグラビレイも解けた。

 

清麿「このまま家の中で戦うのはまずい!一旦、外に出てから戦おう!コルルはしっかり俺の背中に掴まれよ!」

 

ガッシュ「おう!」

 

コルル「うん!」

 

 

モチノキ町

 家から出た後、公園に来てコルルを隠れさせてから追ってきたブラゴペアと鉢合わせした。

 

シェリー「家を出て外で戦うのは賢明な判断ね」

 

清麿「てめえが何を背負ってるのはわからん…。てめえに比べたらちっせえ事かも知れん。だがよ、俺にとってはでかい事だったんだよ!今までの俺を変える事だったんだよ!こいつのお陰でどれだけ変わったと思ってる?どれだけ…どれだけ助けられたと思ってる!?コルルもガッシュ程じゃないが、俺を支えてくれた!それを奪おうって言うのなら、俺は戦うぞ!」

 

ブラゴ「シェリー、甘く見るな」

 

シェリー「わかってるわ。ギガノレイス!」

 

清麿「ザケル!」

 

 ザケルとギガノレイスがぶつかり合い、競り合いの後、ザケルが競り合いに勝ち、ブラゴペアに襲い掛かった。しかし、競り合いで弱まっていたためか、ブラゴに片手で防がれた。

 

清麿「(防がれた?さっきの競り合いで弱まったせいか?だが、出し方のコツは掴んで来たぞ。ならば…)ガッシュ、奴に接近しろ!至近距離からザケルをぶち込む!」

 

ガッシュ「おう!(今のブラゴの最大呪文はギガノレイスのはず。今ならば、私達でも…)」

 

 指示通り、ガッシュはブラゴに接近した。

 

ブラゴ「シェリー、もっとでかいのを出すぞ」

 

シェリー「ええ。アイアン・グラビレイ!」

 

 グラビレイよりも強力な重力がガッシュと清麿を襲い、2人は動けなくなった。

 

清麿「ぐあっ、何だ、押し潰されてしまいそうだ…!」

 

シェリー「リオル・レイス!」

 

 螺旋状のレイスがガッシュと清麿を襲った。

 

ガッシュ「がああっ!!(最大呪文がギガノレイスではないとは…)」

 

清麿「ぐあああっ!!」

 

シェリー「レイス!」

 

 そのまま追撃を受けたガッシュペアは吹っ飛んだ。

 

シェリー「ブラゴ、一番大きいのをぶつけるわよ」

 

ブラゴ「あれを使うのか?大丈夫か?シェリー」

 

シェリー「これに対応できなきゃ、どの道他の奴等に殺されるだけだわ。さぁ、これで最後よ」

 

 シェリーは最大呪文を放つ準備をとった。

 

シェリー「ディオガ・グラビドン!」

 

 巨大な重力球がガッシュペアに襲い掛かった。

 

ブラゴ「終わったな」

 

 しかし、ガッシュとその本が金色の眩い輝きを放っていた。

 

ブラゴ「何?(あの色の光は…?)」

 

 本がラシルドが使えるようになっと時とは違う輝きを放っているため、清麿は本を見た。すると、ある事に驚いた。

 

清麿「ガッシュ、今まで読めなかった第四の術が使えるようになった」

 

ガッシュ「(第四の術?もしや…!)」

 

清麿「早速使って生き残るぞ!」

 

ガッシュ「ウヌ。私もこんな所で負けるわけにはいかぬ…!」

 

清麿「ガッシュ、戦うぞ…」

 

ガッシュ「おう」

 

清麿「戦うぞ」

 

ガッシュ「おう」

 

清麿「戦うぞ!」

 

ガッシュ「おう!!」

 

清麿「出やがれ~~っ、第四の術、バオウ・ザケルガ~~~ッ!!」

 

 ガッシュの前に門が出現し、そこから巨大な雷の龍が姿を現した。

 

バオウ「バオオオオッ!!!」

 

清麿「な、何だ!?あのデカイ龍は!ガッシュにこんな力があっただと!?」

 

 バオウはそのままディオガ・グラビドンをあっさり食べてしまった。

 

シェリー「ディオガ・グラビドンが!」

 

ブラゴ「ぐあああっ!!」

 

 ブラゴを襲った後もバオウは暴れまわるかの如く動き始めた。

 

清麿「(何だ…、コントロールできないし、力も抜けて…)」

 

ガッシュ「(清麿、意識を強く持つのだ!今のバオウはまだ私の制御下に入っておらぬ!今の私一人では無差別破壊を食い止めるので精一杯だ!だから、意識を強く持つのだ、清麿!)」

 

清麿「ガッシュ…!」

 

 

 それからしばらく経った後、公園は遊具などは破壊されており、ガッシュペアは倒れていた。しかし、ブラゴペアはバオウの直撃を受けたブラゴは倒れているものの、シェリーはまだ立てる上、本は無事だった。そこへ、ガッシュペアに近づくシェリーにコルルが立ちはだかった。

 

コルル「ガッシュの本を燃やさないで!」

 

シェリー「ピンクの本の子、2人の意識が戻ったら伝えておくことね。今回は見逃すけど、必ず本を奪いに来ると。その時まで、その本を大切に守り生き抜きなさいと。私達以外に負けたら承知しないと。それと、あなたに言っておく事があるわ」

 

コルル「何?」

 

シェリー「魔物の子である以上、生き残りたければ早くパートナーを見つけなさい。どの道、戦いの運命からは逃れられないわ。また会いましょう」

 

 伝えたい事を言った後、迎えの車が来て、シェリーは倒れているブラゴを抱えて車に乗り、去っていった。シェリーの言葉にコルルは目に涙をためていた。

 

 

高嶺家

 夜になり、清麿の部屋でガッシュと清麿はある話をしていた。

 

清麿「ガッシュ、借りを返す形でお前の相談に乗りたい。どうしてお前は時々悩むようなそぶりを見せてたんだ?どうして俺や水野、レイコムの事を最初から知ってたんだ?答えられるのであれば答えてほしいんだが…」

 

ガッシュ「清麿、実は…、私は一度魔界の王となった事があるのだ」

 

清麿「ちょっと待て。それはつまり…」

ガッシュ「私は、今の魔界王であるはずだった。ある日、どういう訳なのかはわからぬが、記憶を持ったまま過去の人間界に戻り、こうして清麿と会っておる。信じられぬとは思うが…」

 

清麿「だから、俺や水野達の事を最初から知っていたのか。これで納得した。お前が記憶を持って未来から来たというのも信じられるよ」

 

ガッシュ「済まぬのう…。だが、私の経験した王を決める戦いと今の王を決める戦いは色々と違う所があるのだ」

 

清麿「どこが違うんだ?」

 

ガッシュ「最初に戦った魔物が違うのだ。私が最初に戦ったのは風の力を持つ魔物、ハイドではなく、レイコムだったのだ。銀行強盗もレイコムとそのパートナーではなく、別の者達であり、コルルと会うのももっと遅かったのだ」

 

清麿「色々と違ってるな…」

 

ガッシュ「清麿、私はこれから仲間になってくれる優しい魔物を仲間にし、様々な悪い魔物を倒さねばならぬ。改めて力を貸してほしいのだ」

 

清麿「わかった。なんか、未来を知る魔物と一緒によりよき未来を作るのってワクワクするな。戦い抜こうぜ」

 

ガッシュ「おう!」

 

清麿「それと、ガッシュが言ってた呪文の練習もするぞ。ザケルガとかテオザケルがどういった呪文なにかも知りたいしな(だが、バオウはあまりにも危険すぎる…。もう使わないようにしよう…)」

 

ガッシュ「おう!」

 

 

某国

 ガッシュが見つからずに苛立っていたゼオンは八つ当たりも兼ねてTシャツ姿の人型の魔物を倒していた。

 

ゼオン「やっと終わったか…!」

 

デュフォー「パートナーが呪文を唱えられない赤子で助かったな。あのまま成長して呪文を唱えられていたら俺でも勝利の答えは導き出せるかわからなかった」

 

ゼオン「魔界を滅ぼすとかほざいていたクリア・ノートめ、殺してやりたい所だが、それでは俺の苛立ちは収まらん。もう二度とそんな事が考えられないように記憶を完全に消してやる」

 

 倒れているクリアの頭をゼオンは掴み、しばらくしてから手を離した。

 

ゼオン「これで奴は自分が魔物である事はおろか、名前さえ思い出せない。このまま魔界に帰してもいいが、更なる生き地獄を与えるか。デュフォー!」

 

デュフォー「バルギルド・ザケルガ」

 

 ゼオンが手をかざすと、凄まじい電撃がクリアを襲った。

 

クリア「ぐああああっ!!!」

 

ゼオン「この雷は、お前の体がボロボロになるまで、電撃の激痛を与え続ける。痛みで気絶することも許されない。体が壊れる前に、限りなく強くなるその激痛で、心の方が早くぶっ壊れる。どうだ!?身が引き裂かれるとはこのことだろう!?まさに地獄の拷問だ」

 

 ただでさえボロボロの状態でバルギルド・ザケルガを受けたクリアは黒焦げになった。

 

デュフォー「ザケル」

 

 ゼオンの電撃でクリアの本は燃えて、クリアは魔界へ帰った。

 

ゼオン「このガキはどうする?」

 

デュフォー「放っておけ。どの道、死ぬだけだ。ところで、ガッシュはまだ探し続けるのか?」

 

ゼオン「初めは見つからなくて腹が立ったが、落ち着いて考えてみればどの道、戦う事にはなる。だから、もう無理に探す必要もない。デュフォー、どんどん魔物を減らしていくぞ」

 

デュフォー「わかった」

 

 ガッシュの知らない所で最強最悪の敵だったクリアは呪文が使えないままゼオンと遭遇して脱落した。ガッシュが思っていた通り、この王を決める戦いはガッシュが経験した戦いとはどこかが違っていた。




今回は原作において重要な戦いになった最初のブラゴとの戦いですが、この時点のブラゴでは王族の力が覚醒したガッシュに瞬殺されるので、バオウ解禁も兼ねて既にディオガも使える状態で強さを上方修正しました。
また、今回の話の最後に描かれたクリア脱落は1話のあとがきでもあった通り、ファウード編で終わるのでクリア編をしないためです。なお、クリア編に登場する魔物のアシュロンとゴームは出番を前倒しする形でファウード編で出す予定です。


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LEVEL4 植物園の戦い

モチノキ町

 ブラゴ戦の傷が治った後、ガッシュペアは魔物のゴフレと戦っていた。

 

清麿「ザケル!」

 

 王族の力が目覚めたガッシュのザケル一発でゴフレはダウンしてしまい、巻き添えを喰らう形でパートナーが持っていた本も燃えてしまった。

 

清麿「案外、弱かったな」

 

ガッシュ「今の私は王族の力が目覚めておるから初めの頃に戦った魔物なら、ザケル一発で倒せるのだ」

 

清麿「王族の力?だからあんなに威力の高い電撃が出せるのか」

 

ガッシュ「その通りなのだ」

 

清麿「そろそろ帰ろう。近いうちに他の呪文の練習もしないといけないしな」

 

 

空き地

 それからしばらくして、誰もいない場所で呪文の練習をしていた。

 

清麿「ザケルガ!」

 

 ガッシュの口から収束したビーム状の電撃が放たれた。

 

清麿「なるほど、ザケルガは攻撃範囲がザケルより狭いが、速さと貫通力に優れているみたいだ」

 

ガッシュ「次はテオザケルなのだ」

 

清麿「テオザケル!」

 

 次はザケルより広範囲かつ強烈な電撃がガッシュの口から放たれた。

 

清麿「テオザケルはザケルより攻撃範囲が広くなってる上に威力が上がっているな。次はガンレイズ・ザケルをやるぞ」

 

ガッシュ「おう」

 

清麿「ガンレイズ・ザケル!」

 

 雷太鼓のようなものが出現し、そこからたくさんの電撃が放たれた。

 

清麿「ガンレイズ・ザケルは連続攻撃ができるのか」

 

ガッシュ「私は大抵の術を発動させている時は気絶しているから、ガンレイズ・ザケルを使う時は私を抱えて電撃のルートを確保しておくのだ」

 

清麿「わかった。残りのラシルドとジケルドはどんな術だ?」

 

ガッシュ「ラシルドは防御可能な攻撃を跳ね返す術で、ジケルドは相手に強烈な磁力を纏わせて金属に拘束する術なのだ。近くに金属がないとジケルドは使えないのだ」

 

清麿「ありがとう。これで今の時点で使える術の内容が全てわかったぞ」

 

ガッシュ「それと、心の力の配分にも気を付けて術を使うのだぞ」

 

清麿「何っ?無限に術を出せるんじゃないのか?」

 

ガッシュ「どんなエネルギーにも限りがあるであろう。でも、大切な人の事を思ったりする事で心の力を回復させる事ができるのだ」

 

清麿「大切な事を教えてくれてありがとな」

 

ガッシュ「まだ清麿には教える事があるのだ」

 

清麿「何だ?それは」

 

ガッシュ「それは…」

 

 

植物園

 植物園では、何者かがパートナーの魔物と共に何かをしていた。

 

???「ふう、連続だと6回が限度か…。まぁいい、これだけ使えりゃ上々だ。次は動く標的だな」

 

 

モチノキ町

 日曜日、ガッシュは清麿と共に植物園に向かっていたが、今はまだ再会できていないティオやウマゴン達の事を思っていた。

 

ガッシュ「(まだティオやウマゴン達とは会えておらんのう…。どうしておるのか…)」

 

清麿「ガッシュ、魔界での友達の事を考えてたのか?」

 

ガッシュ「ウヌ。昔に戻ったとはいえ、今はどうしておるのか気になってのう」

 

清麿「大丈夫さ。本が燃えてなきゃ、会える」

 

 一方のコルルはパートナー探しをしていた。

 

コルル「すみません、この本…」

 

 しかし、まともに読もうとする人はいなかった。

 

コルル「ブラゴのパートナーの人は探せと言ったけど…、見つかるのかな…?見つかってほしくないんだけど…」

 

 誰も読んでくれず、仕方なく高嶺家へ帰るコルルだったが、その道中にある女子高生とすれ違った。コルルは気付かなかったが、女子高生は気づいて振り向いた。

 

女子高生「気のせいだったかな?」

 

 気のせいだと思った女子高生はそのまま足を進めた。

 

 

植物園

 植物園でガッシュは鈴芽と一緒にはしゃいでいた。

 

ガッシュ「ウヌ、懐かしい、懐かしいのう」

 

清麿「ガッシュは前に経験した王を決める戦いでこの植物園に来た事があるのか?」

 

ガッシュ「そうなのだ。そこで、スギナとそのパートナーが植物園に来ていた人達を動く標的として攻撃していたのだ。この植物園に潜んでおるようだ」

 

清麿「とんだワルだな。だが、今は前の出来事を経験したガッシュがいるんだ。そうなる前にそいつらを見つけ出してタコ殴りにしてやろうぜ」

 

 スギナとそのパートナー、春彦を見つけ出して懲らしめるのも兼ねてガッシュペアはあちこちを回っていた。

 

清麿「しっかし、相変わらず空いてんなぁ、ここは。日曜日だというのに、客が数える程しかいねえじゃねえか」

 

???「何が空いてるって?」

 

ガッシュ「これはつくし殿ではないか!」

 

つくし「あたしを知ってるの?」

 

ガッシュ「あ、それは…」

 

清麿「こいつは最近、俺の家に住んでるガッシュなんだ。つくしの事を知ってるのも、俺が教えたからさ」

 

つくし「それだから知ってたのね。植物を傷つけないように見回しながら満喫していってね」

 

 植物を観賞しながら、ガッシュペアはスギナペアがいないか見回っていた。

 

清麿「この跡もスギナって奴の仕業か?」

 

ガッシュ「そうなのだ。スギナの魔力も近くにあるのだ」

 

 ガッシュは辺りを見回すと、スギナペアを発見した。

 

清麿「あいつがスギナか?」

 

ガッシュ「そうなのだ」

 

清麿「奴等が植物園に来ている人たちを襲う前に一気にカタをつけるぞ、SET、ザケルガ!」

 

 呪文のトレーニングをしようとしたスギナペア目掛けて出来る限り植物園を荒らさないように加減したザケルガが放たれ、スギナに命中した。

 

スギナ「ぐあああっ!!」

 

 ザケルガを受けたスギナは一発で気絶した。

 

春彦「な、何だ!?急にスギナが…!」

 

清麿「お前、関係のない人達を巻き込もうとしてただろ!?タコ殴りにしてやるぞ!」

 

春彦「くそっ、ひとまずここは逃げよう!」

 

 スギナを抱えて春彦は逃げた。

 

清麿「ありがとな、ガッシュ。お前が経験した王を決める戦いの時の俺はこんな事を教えていたのか」

 

 

回想

ガッシュ「清麿、戦闘中にあっち向けとか指示していたらすぐに敵の攻撃を受けてしまうのだ。そこで、清麿はSETという掛け声とともに右手の指をさして欲しいのだ。その方向へ私はすかさず顔を向ける」

 

清麿「俺もいちいちあっち向けとか言ってたらすぐに攻撃できないって思ってたんだ。お前の言うのも合理的でいいと思う」

 

ガッシュ「これは、前に経験した戦いの時の清麿が私に教えてくれた事なのだ」

 

清麿「へえー、ガッシュが経験した戦いの時の俺がガッシュに教えて、今のガッシュが俺に教えるのか。なんか、奇遇だな」

 

 

ガッシュ「お礼を言ってる暇はないのだ。急いでスギナの本を燃やすのだ」

 

 植物園から春彦は出たが、突如として動けなくなってしまった。

 

春彦「どうして俺の足が…?」

 

 足を見ると、いつの間にか凍っていた。そこへ、細川とレイコムが来た。

 

細川「おい、お前の抱えている小僧とその本をよこしな。よこさねえなら、痛い目に遭わせてやる」

 

春彦「くそっ、今日は最悪だ。トレーニングの邪魔をされた上、逃げてる時に他の魔物と遭遇するなんてよ…。スギナ、起きろ、スギナ!」

 

 ガッシュのザケルガのダメージが凄まじかったのか、スギナは起きたものの、ふらふらだった。

 

レイコム「お前、相当やられてるみたいだな。ガッシュにやられたのか?」

 

スギナ「ガッシュだと?あんな落ちこぼれにそんな凄まじい攻撃ができるのか?」

 

レイコム「何もわかっちゃいないようだな。今のガッシュは落ちこぼれなんかじゃねえ、ブラゴや雷帝にも匹敵する程の悪魔さ。ま、お前はここで俺に潰されな」

 

細川「ギコル!」

 

春彦「こんな所で負けてたまるか!ジュロン!」

 

 レイコムの氷とスギナの植物の蔓がぶつかり合った。

 

春彦「(思ったよりもスギナのダメージが大きい。長引かせるとこっちが不利だ…!)」

 

細川「やるようだが、植物は低温に弱いんだよ。レイコム、こいつを新呪文でも使うぞ」

 

レイコム「そうだな」

 

細川「ラギコル・ファング!」

 

春彦「ラージア・ジュガロ!」

 

 レイコムとスギナの戦いは熾烈を極め、植物園にも流れ弾が飛んできた。

 

つくし「氷と植物の種が飛んできた?どうなってるの!?」

 

 慌ててつくしは外に出ると、周りの事を気にせずに戦っているスギナとレイコムの姿を目の当たりにした。ちょうどその時にガッシュペアも外に出た。

 

ガッシュ「レイコムまで来ておったとは…!」

 

清麿「つくし、外に出るな!危険だ!」

 

つくし「あんた達、何かあったか知らないけど、あんた達の喧嘩の巻き添えであたしの友達を傷つけないで!」

 

細川「友達?何の事だか知らねえが、邪魔するなら容赦しねえ!ギコル!」

 

春彦「ラージア・ジュガロ」

 

 レイコムとスギナの攻撃がつくしに襲い掛かった。

 

清麿「ラシルド!」

 

 ラシルドで攻撃を弾き返した。

 

つくし「あ、ありがとう…」

 

細川「てめえ、あの時のガキじゃねえか。邪魔するなら容赦しねえ。ガンズ・ギコル!」

 

 複数の氷塊がガッシュペアを襲った。しかし、清麿はよけようともせずに受けたが、何ともないように立っていた。

 

細川「こいつ、レイコムの攻撃をわざと受けたのに何ともないのか!?」

 

清麿「てめえら……、いい加減にしろ!無関係な人間を巻き込もうとしたばかりか、周りの被害を気にしないで戦おうなんざいい度胸だな!てめえら全員、喧嘩両成敗でぶちのめしてやる!!」

 

細川「喧嘩両成敗?」

 

春彦「歴史の授業で習うあれか?ぶちのめすのはこっちのセリフだ!ラージア・ジュガロ!」

 

細川「ギコル!」

 

 レイコムとスギナの攻撃がガッシュペアに襲い掛かった。

 

清麿「ガンレイズ・ザケル!」

 

 二つの攻撃をガンレイズ・ザケルで掻き消し、攻撃を掻き消した後の残りの電撃がレイコムとスギナを襲った。

 

清麿「一気にケリをつけるぞ!今からいう事を行うんだ」

 

 清麿は作戦をガッシュに教えた。

 

春彦「何をやってるのか知らねえが、これで終わりだ!ラージア・ジュガロ!」

 

細川「ラギコル・ファング!」

 

 二つの呪文が襲い掛かった。

 

清麿「ラシルド!」

 

 またしてもレイコムとスギナの呪文はラシルドで防がれて跳ね返された。

 

春彦「またあの盾か。もう一度、ラージア・ジュガロ!」

 

 しかし、呪文は発動しなかった。

 

春彦「しまった!心の力が…!」

 

細川「くそっ、氷が出ねえ!」

 

 ラシルドが解除されたが、そこにはガッシュの姿はなかった。

 

スギナ「ガッシュがいない?」

 

レイコム「どこへ行った?」

 

春彦「…!スギナ、上だ!」

 

 上を見ると、そこにはマントで浮いているガッシュの姿があった。

 

清麿「チェックメイトだ、テオザケル!」

 

 春彦達をまとめて電撃に巻き込める位置でテオザケルが放たれた。

 

春彦達「ぐああああっ!!」

 

 上から放たれたテオザケルは落雷の如く春彦達に降り注ぎ、細川と春彦の持っていた本は燃えてしまい、レイコムとスギナは魔界へ帰った。

 

清麿「死なないように加減はしておいた。その痛みを以て今までしてきた悪事を反省しろ」

 

 その後、春彦は病院に搬送されたが、テオザケルをまともに浴びたためか、電気に異常に怯えるようになり、細川の方は今までの悪事ですでに逮捕状が出ていたため、駆け付けた警察に逮捕された。

 

つくし「やるじゃない、清麿、ガッシュ!」

 

ガッシュ「つくし、私と清麿はかっこよかったであろう」

 

つくし「当然じゃない。2人は私の友達を守ったヒーローなんだから」

 

清麿「じゃあ、俺達はこれで」

 

ガッシュ「また私達はここに遊びに来るのだ」

 

 レイコムとスギナを倒したガッシュと清麿は家に帰った。その光景をピエロみたいな魔

物、フェインが見ていた。

 

フェイン「落ちこぼれのガッシュからあんなに凄まじい力の波動を感じるなんて…。戦うのはやめといたほうがいいわね」

 

 ガッシュに勝てないと判断したため、パートナーと共にフェインはその場を去っていった。



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LEVEL5 ガッシュの決断

高嶺家

 家に帰った後、清麿とガッシュは今後の事を話し合っていた。

 

清麿「ガッシュ、前言ってた仲間になってくれるガッシュの友達ってどれぐらいいるんだ?」

 

ガッシュ「えっと…、ティオ、コルル、キャンチョメ…、とにかく、結構いるのだ」

 

清麿「コルルも含まれていたのか。だったら、早くパートナーが見つかるといいな。今までの戦いを経験したなら、ガッシュはコルルのパートナーが誰かわかるのか?」

 

ガッシュ「コルルのパートナーはしおりというモチノキ町に住んでいる女子高生なのだ」

 

清麿「女子高生か…。どこに住んでるのかわかるのか?」

 

ガッシュ「それが…、コルルから頼まれる形でコルルを魔界に帰した後、会っておらぬからどこに住んでおるのかわからぬのだ…」

 

清麿「どこに住んでるのかわからないのか…。まいったなぁ…」

 

 パートナーがわかってても、どこに住んでいるのかわからないため、2人にはどうしようもなかった。更にガッシュはある事を考えていた。

 

ガッシュ「(また、あの時のような事が起こるのか…)」

 

 ガッシュは自分が優しい王様にならねばならないと決心した『あの時』の事を思い出していた。

 

ガッシュ「(しおりが見つかって術が発動して大暴れすれば、コルルは絶対に本を燃やしてと言うかも知れぬ。だが、ゾフィスやゼオン、クリアを倒すには仲間の協力が必要なのだ…。それに、あの戦いの経験した以上、コルルを仲間にした上でもっとしおりと一緒にいさせてあげたいし、コルルを術の呪縛から解放せねば…!)」

 

 

回想

 王になった後、ガッシュは父親にコルルが言っていた事の真偽を確かめていた。

 

ガッシュ「父上、王を決める戦いでは戦う意志が弱い子には別の人格が植えつけられるのは本当であるのか?」

 

前魔界王「いや、そんな措置をとるという事自体、聞いた事がない。私自身もゾフィスがやったような精神操作自体嫌いだ」

 

ガッシュ「では、初めは戦う意志が弱かったウマゴンやモモンと違ってコルルは術を使うとなぜあのようになるのだ?」

 

前魔界王「あれは植え付けたものではない。多分、コルルの能力は戦闘向けに心と身体を変化させるものだろう。私の推測では、ガッシュが言っていた状態は戦う決意ができていないが故に術によって闘争心が暴走してああなったと思う」

 

ガッシュ「コルルに戦う決意ができていればゼルクを使っても自分の意思で行動できるようになるのであろうか?」

 

前魔界王「恐らく可能だ。ガッシュが危険な術、バオウ・ザケルガを制御して皆を守る力にできたように、コルルが術を制御できるようになるのも不可能ではない。どんな力でも使い方を間違えれば誰かを傷つける力になるし、正しく使えば誰かを守れる力になれる。力とは、諸刃の剣なのかも知れないな」

 

 

ガッシュ「(コルル、何として私が…)」

 

コルル「ガッシュ、ボーッとしてるけどどうしたの?」

 

ガッシュ「なぬっ!いつに間に!?」

 

コルル「華さんがご飯ができたから伝えてって言われたの。ご飯を食べよう」

 

ガッシュ「ウヌ…」

 

 食事と入浴が終わった後、ガッシュとコルルは寝た。

 

コルル「ねえ、ガッシュ」

 

ガッシュ「何なのだ?」

 

コルル「私、今日はパートナーを探しに行ったけど、戦うのが怖くて見つからなくてよかったって思ってたの。魔界に優しい王様がいたら、こんな辛い戦いはしなくてよかったのかなって思うのに…」

 

ガッシュ「そうであるな…(またそんな事を言われると悲しいのだ…)」

 

コルル「じゃあ、私は寝るね。おやすみ」

 

 

モチノキ町

 それから、しばらくの時が経った。これまでの戦いで清麿は術の内容の把握と十分な実戦経験を積んだが、未だにコルルはしおりと会えておらず、フェインはガッシュとの戦闘を行わない事を決めてモチノキ町から去っていった。その間、ガッシュは自由な時間があったら体を鍛えていた。そんなある日、ガッシュはナオミちゃんに追いかけられていた。

 

ガッシュ「ヌオオオッ!誰か助けてほしいのだ~~~!!」

 

ナオミ「ガッシュ、私が遊んであげるわよ!」

 

???「こらこら、イタズラも度が過ぎちゃいけないよ」

 

 誰かが諭すようにナオミちゃんに注意したが、その人物は大男だった。

 

ガッシュ「おお、進一殿ではないか!」

 

ナオミ「あああっ!!モンスター!!」

 

 進一を見たナオミは慌てて逃げていった。

 

ガッシュ「進一殿、相変わらず優しいのう!」

 

進一「君は僕を怖がったりしないのかい?」

 

ガッシュ「何を言う、私を救ってくれた恩人ではないか。何を怖がるのだ?」

 

進一「君はいい子だなぁ。それじゃあ、気を付けてお帰り。僕はもう行くね」

 

ガッシュ「(進一殿が来てるという事は…エシュロスも来ておるな…)」

 

 進一に言われてガッシュは家に帰ろうとした。進一も人間の姿に化けているエシュロス

と共に去っていった。帰ろうとしたガッシュは清麿が見てる事に気付いた。

 

清麿「ガッシュ、進一とか言っていた大男を知ってるのか?」

 

ガッシュ「進一殿は一緒にいた魔物、エシュロスのパートナーなのだ」

 

清麿「何っ!?ほんとに人間なのか!?てっきり、魔物だと思ってたぞ」

 

ガッシュ「進一殿は見た目と違って優しいのだ。だが、エシュロスは進一殿がかつて虐められていた頃の事を利用して騙し、進一殿が以前、通っていた学校を壊させようとしているのだ」

 

清麿「ほんと、エシュロスとかいう魔物は許せねえ野郎だ!」

 

ガッシュ「奴等は明日、学校を壊しに来る。待ち伏せしてエシュロスをやっつけるぞ」

 

清麿「ああ。って、何で明日…、そうか、明日は土曜日!学校が休みだから進一は関係のない人達を巻き込まないように休日を選んだのか?」

 

ガッシュ「その通りなのだ」

 

 

高嶺家

 明日、エシュロスを倒すという決意をしてガッシュと清麿は家に帰ってきた。

 

ガッシュ「ただいまなのだ!」

 

清麿「ただいま。まだ、おふくろも帰ってきてないか」

 

ガッシュ「コルルも帰ってきてないのだ」

 

清麿「パートナー探しに行ったんだろ。俺達はコルルのパートナーが誰なのかわかってても、どうしようもないな…」

 

 

モチノキ町

 夕方になり、ある女子高生は帰っていた。その際、女子高生は仲のいい兄弟や親子を見て、悲しそうに、そして羨ましそうに見ていた。

 

女子高生「…羨ましいなぁ…、私の家族もあんな感じだったらいいのに……」

 

 そう思いながらある学校を通り過ぎようとしていると、パートナー探しをしているコルルを見つけた。

 

コルル「すみません、この本…」

 

 誰もコルルの本を読もうとしなかった。そんなコルルの姿が可哀そうだと思った女子高生は近づいてきた。

 

女子高生「…ねぇあなた、その本を見せてくれる?」

 

コルル「はい…」

 

 女子高生はコルルの本を見た。暫く見ていると、ある部分だけが読めた。

 

女子高生「(あれっ?この部分だけが読める…)ゼル…ク…?」

 

 ある部分を読んでみると、コルルに変化が起き始めた。

 一方の進一とエシュロスは学校の近くに来ていた。

 

エシュロス「ここが、お前がいじめられられた学校か?」

 

進一「うん…。この小学校が一番辛かった…」

 

 進一は小学生の頃の虐められていた頃の事を思い出していた。

 

進一「ここが、弱虫の僕が始まった場所なんだ」

 

エシュロス「ならば決まりだ。ここを最初に壊そう」

 

進一「でも、大きいよ」

 

エシュロス「なぁに、今の俺の力なら簡単さ。臆する事など何もない。何度も言うが俺様は…、魔物の中でもエリートだ」

 

進一「…そうだね。この学校を壊そう。辛い思いでと共に全部…」

 

 その頃、鋭い爪が伸び、凶暴で筋肉質の体になったコルルの変貌ぶりに本を読んだ女子高生の心は恐怖で支配されていた。

 

女子高生「あ…あ…」

 

コルル「ねえ、もっと…もっと呪文を唱えて!暴れたいの…」

 

 突然の出来事に女子高生は恐怖で声も出なかった。

 

コルル「なぜ唱えない?本の持ち主…」

 

女子高生「本…?持ち主…?何の事…?」

 

コルル「…フフ、そうか…私は何も言わなかったのか…。これはね…戦いなのよ…」

 

女子高生「え…?戦い…?」

 

コルル「ちょうど獲物も来たみたい…」

 

 その言葉通り、学校を壊すのを次の日に決めた進一とエシュロスが通りかかった。

 

エシュロス「こんな所で魔物に遭遇するとはな」

 

進一「魔物?あの子、とっても怖いよ…」

 

エシュロス「安心しろ、俺はエリートだ。あんな魔物に負けはしない。見た感じじゃ、パートナーも魔物と会ったばかりみたいだ。行くぞ進一!呪文だ!」

 

進一「…うん」

 

 敵を見つけた途端、コルルは真っ先にエシュロスに近づいた。

 

進一「グランダム!」

 

 土の壁がコルルを襲ったが、コルルは鋭利な爪で壁を破壊して一気に接近し、エシュロスを切り裂こうとした。身体能力がコルルに劣っているエシュロスはコルルの猛攻にどうしようもなかった。

 

エシュロス「何て奴だ!パートナーはともかく、魔物の方はかなり厄介だぞ!進一、吹っ飛ばして距離をとれ!」

 

進一「ぐ、グランバオ!」

 

 地面の爆発でコルルは吹っ飛んだ。

 

コルル「ちいっ!本の持ち主、もっと呪文を唱えろ!」

 

女子高生「(た、助けて…!)ゼルク!」

 

 またコルルは近づいた。

 

 

高嶺家

 清麿とガッシュは次の日の事を考えていた。すると、家に帰ってきて夕飯の支度をしていた華が慌てて清麿の部屋に入ってきた。

 

華「清麿!小学校の近くでなんかすごい事になってるわよ」

 

清麿「急に部屋に入ってきた何だよ、お袋。その凄い事って何だ?」

 

華「いいからテレビのニュースを見るのよ」

 

 華の言った通り、TVでは速報のニュースが流れていた。

 

TV「速報です。小学校の近くに突如現れた化け物たちの戦いによってここモチノキ町は…」

 

ガッシュ「あの魔物は…コルル!」

 

清麿「何!?あの凶暴な姿の魔物がコルルだって!?」

 

ガッシュ「パートナーのしおりが見つかったのだ!清麿、急いでエシュロスが壊そうとした学校へ向かうぞ!」

 

 

モチノキ町

 急いでガッシュペアはコルルとエシュロスの戦いの現場へ向かった。

 

清麿「今でも信じられないぞ、あんな姿の魔物がコルルなんて…」

 

ガッシュ「信じられぬのも無理はないが、とにかく、今は戦いを止めるのが先なのだ!」

 

 数十分にもわたる死闘の末、コルルの爪によってエシュロスの本は引き裂かれて出火し、燃え尽きようとしていた。

 

エシュロス「ち、ちくしょう…!」

 

進一「エシュロス、ごめん…」

 

 ちょうど同じ頃、ようやくガッシュペアが到着した。

 

ガッシュ「あの女子高生がしおりなのだ!」

 

清麿「だ、大丈夫ですか!?」

 

 恐怖により、しおりは何も答える事ができなかった。

 

清麿「(無理もないよな…。俺だってすぐに戦う決心はつかなかったし、ましてや、急に

戦いを目の当たりにしたらこうなるよな…)」

 

 そうしている間にエシュロスの本は燃え尽き、エシュロスは魔界へ帰った。

 

ガッシュ「エシュロスは倒されたが、コルルはまだ呪文を制御できていおらぬから暴れておる!今度はコルルを止めねばならん!」

 

清麿「(だが、ガッシュだってコルルを攻撃したくないだろうし、俺もコルルを攻撃したくない…!何か…、何かコルルを傷つけずに止める方法はないのか…?)」

 

 考えている間にコルルはガッシュペアに気付き、近づいてきた。コルルを攻撃したくないガッシュはコルルの攻撃をよけたり、マントで防ぐ事しかできなかった。その間に清麿はある呪文に目を通した途端、いい考えが思い浮かんだ。

 

清麿「(いや、あるぞ…!ジケルドがある!だが、金属は…)」

 

 周りを見てみると、学校の滑り台などがあった。

 

清麿「ガッシュ、ジケルドでコルルの動きを止めるぞ」

 

ガッシュ「ウヌ(ジケルド…、コルルと別れてから使えるようになった術がコルルを止めるために使われるとは…)」

 

清麿「行くぞ、ジケ」

 

 ジケルドを撃とうとした途端、コルルが迫って呪文の発動を邪魔してきた。

 

清麿「くそっ、これじゃあジケルドを撃つ暇もないじゃねえか!」

 

 再び始まったコルルの猛攻にただでさえコルルに攻撃できないガッシュはかわすか、防ぐしか術はなかった。

 

清麿「(どうすればいいんだ…。あの状態のコルルは身体能力が高いからガッシュが張り付くのは難しいし、ジケルドを撃とうとしても邪魔してくる。誰かに取り押さえてもらった方が確実だ…。ん?)」

 

 誰にコルルを取り押さえてもらおうか悩んでいると、呆然としている進一の姿があった。

 

清麿「進一、頼む、あの魔物を取り押さえてくれ!」

 

進一「で、でも…あの魔物はエシュロスを倒したし、怖いよ…」

 

清麿「このままあの魔物を放っておいたら周りへの被害が大きくなるんだ!」

 

ガッシュ「私からも頼むのだ、進一殿!これは進一殿にしかできぬ事だ!強い自分の意志を、勇気を持って立ち向かうのだ!」

 

進一「強い自分の意志…、勇気…」

 

 ガッシュの言った言葉を聞いた進一は母親からの言葉を思い出していた。

 

進一の母親『進一、いじめの原因はあなたにもあるのよ。嫌だったら、やめてほしいってちゃんと言いなさい。それができないから、いじめられるのよ。意志を強く持って、自分で物事を決めなさい。勇気を出して。それさえできれば、いじめも減るはずよ。それさえしっかりできるようになってくれれば、もうママは何も思い残す事はないわ。あなたは心の優しい子…立派な大人になるのよ』

 

進一「ママ…!」

 

ガッシュ「ぐあああっ!」

 

 ガッシュのピンチに進一の中に眠っていた何かが沸き上がってきた。

 

進一「やめろ……やめろ………やめろ~~~っ!!」

 

 誰かを助けたいという自分の強い意志と勇気が進一を動かし、ガッシュに止めを刺そうとしたコルルを取り押さえた。

 

ガッシュ「進一殿!」

 

進一「ありがとう、君達のお陰で僕は変われた気がするよ」

 

清麿「ああ。進一の作ったチャンス、無駄にはしない!SET、ジケルド!」

 

 ジケルドはコルルに命中し、コルルは小学校の遊具にくっつけられた。

 

ガッシュ「これで、後は術の効果が切れるのを待つだけなのだ」

 

清麿「そうか…後、救急車を呼ぼう」

 

 しばらくすると、術が解けてコルルは元に戻った。その間に清麿は119番をかけた。

 

ガッシュ「進一殿、これでお主は母上殿に安心してもらえる立派な大人になれたのだ」

 

進一「そうか…。でも、エシュロスは…」

 

清麿「あいつはお前を騙していた悪い奴だ。もう気にする事はない」

 

ガッシュ「これからも強い意志と勇気を持ち続けてほしいのだ」

 

進一「わかったよ」

 

 

モチノキ町立総合病院

 病院にコルルとしおりが入院して一日経過し、ようやく落ち着いて話ができるようになった。

 

しおり「そう言えば、あの時はあなたの名前を聞いてなかったわね。名前は?」

 

コルル「コルル…」

 

しおり「コルルちゃんか…私はしおり。あなた達は確か…、清麿さんとガッシュ君ね」

 

清麿「あぁ」

 

ガッシュ「ウヌ」

 

しおり「昨日のあれは一体何なの?あの暴れていたのもコルルなの?この本は何?」

 

コルル「それは…」

 

 何も知らないしおりに魔界の王を決める戦いの説明をするコルルだったが、途中で言葉に詰まってしまった。

 

コルル「…私、私が…暴れたんだよね…私が…周りの人や…パートナーのしおりさんまで…」

 

しおり「(やっぱり、あれはこの子自身の意思でやったのではないのね…)」

 

 『あの時』と同じ状況にガッシュは沈痛な気持ちだった。

 

コルル「ガッシュ、この本を燃やして…」

 

ガッシュ「何を言う。本が燃えたら、魔界へ帰ってしまうのだぞ」

 

コルル「わかってるけど…」

 

清麿「…ガッシュ、どうする…?これは俺ではなく、コルルの友達であるお前が決める事だ」

 

 しばらくの沈黙の後、ガッシュは決断した。

 

ガッシュ「…本は燃やさぬ」

 

コルル「何で!?早く魔界に」

 

ガッシュ「気持ちはわかるが、魔界へ帰ってはならぬ」

 

コルル「でも、でも…」

 

ガッシュ「この戦いを勝ち抜き、王様になった者は魔物を消す事ができるのだ」

 

 ガッシュの口から話された『王の特権』にその場にいた者は凍り付くように静まり返った。

 

清麿「(そう言えば、王を決める戦いの時にそんな事を言ってたな。そうか…、もし、悪い奴が王様になったらコルルもガッシュも…)」

 

コルル「嘘だよね…?」

 

ガッシュ「嘘ではない」

 

コルル「そんな事、聞かされていないよ…きっと嘘…」

 

清麿「ガッシュはそんな嘘はつかない。それは、お前もよく知ってるだろう?」

 

コルル「そんな…でも、私が消されない可能性もあるんだよね…?」

 

ガッシュ「…このままでは、確実に消されてしまうのだ」

 

しおり「それって、どういう事?」

 

清麿「ガッシュの話によれば、ガッシュでは全く適わないぐらいとんでもなく強い上に王の特権を使ってすべての魔物を消す野望を持っている魔物がいるらしい。ガッシュはその魔物を倒すために協力してくれる仲間を集めているんだ」

 

ガッシュ「頼む、コルル、本当は戦いたくないのであろうが、一緒に戦ってほしいのだ!頼む!」

 

 志のあるまっすぐな目で頭を下げながらガッシュはコルルに一緒に戦ってほしいと頼んだ。

 

コルル「でも、私は術を使うともう1人の私が出るの。私、聞いた事があるの。この戦いで私みたいな戦う意志の弱い子には、別の人格が与えられる事があるって戦う事から逃げられないようにって」

 

ガッシュ「それは違う!魔界の王である私の父上は絶対にそんな措置はとらない!昨日の事は別の人格によるものではないのだ!」

 

コルル「えっ!?ガッシュが、魔界の王様の子供…?どうして家族と暮らしていないの?」

 

ガッシュ「ヌオオオッ!!ついつい私の家族の事を喋ってしまったのだ~~!!」

 

清麿「ガッシュはある事情があって家族とは暮らす事ができないそうだ」

 

コルル「そうだったの…。ところでガッシュ、別の人格が原因じゃないのなら、何が原因なの?」

 

ガッシュ「呪文は本来魔物自身の力…、コルルは術を制御できていないだけなのだ!私は術に存在そのものを食われかけた事がある!でも、強き心を持ち、訴えかける事で術を制御し、真の力を使えたのだ!」

 

清麿「(存在そのもの…バオウの事か…!)」

 

コルル「(そんな危ない術に食べられそうになった事あったっけ…?)」

 

 信じられないコルルだったが、ガッシュの目に偽りはなかった。

 

コルル「(ガッシュの事だから嘘はついてないと…思う…)」

 

ガッシュ「術を使いこなせるようになるまで私が特訓に付き合おう。だから…」

 

コルル「だけど、しおりさんに迷惑が…」

 

しおり「…手伝うよ。魔界の王を決める戦い」

 

コルル「えっ!?」

 

清麿「さっきの言葉、本当…なんですか…?」

 

しおり「本当よ。私だって、目の前で子供が『消えるかもしれない』なんて話してたら、何もせずにはいられないもの」

 

コルル「しおりさん…」

 

しおり「それに、妹ができると思えば、コルルちゃんと一緒にいるのも悪くないと思うし」

 

コルル「でも、私と一緒にいたら敵が襲ってくるよ!危ないよ!」

 

しおり「危なくないように、私とコルルちゃんも強くならなきゃいけないんでしょ?」

 

コルル「……」

 

 

モチノキ町

 やや強引ではあったものの、コルルの魔界への強制送還を阻止できたガッシュペアはホッとした後、帰る事にした。後日、人気のない場所で術の制御の特訓をすると決めて。

 

清麿「何とか、コルルを魔界に帰さずに済んだな」

 

ガッシュ「ウヌ。もっとしおりとの思い出を作ってほしいのだ」

 

清麿「ああ。俺としても同じ考えだ。魔物を皆殺しにしようとしてる奴って、ガッシュが前に話していたクリアの事だろ?」

 

ガッシュ「その通りなのだ。だが、クリア以外にもゾフィスやリオウ、私の兄ゼオンも倒さねばならぬ」

 

清麿「これから大変になるな…。仲間を集めて、特訓を重ねて強くならなきゃな」

 

 悪い魔物との戦いがこれから厳しくなると思い、強くならなければならないと二人は思った。既にクリアはゼオンに記憶を奪われ、雷への恐怖を植え付けられた上で魔界に帰されたとも知らずに。

 

 

高嶺家

 退院した後、しおりはコルルを引き取るために清麿の家に来ていた。

 

華「あなたの家がコルルちゃんの引き取り先になるのね」

 

しおり「はい」

 

コルル「華さん、今まで楽しかったよ」

 

華「どうも。ガッシュちゃんと遊びたくなったら、また遊びに来ていいわよ。元気でね、コルルちゃん」

 

 

しおりの家

 家に帰ってきたしおりはコルルと一緒に風呂に入っていた。

 

しおり「いきなり戦いに巻き込まれちゃったりしたけど、よろしくね」

 

コルル「うん…。しおりさん…」

 

しおり「ねーちゃんって呼びな」

 

コルル「…しおりねーちゃん」

 

しおり「何?」

 

コルル「どうして迷惑がかかるのを承知で私と一緒にいる事にしたの?」

 

しおり「迷惑がかかるなんて思ってないわ。むしろ…、コルルちゃんみたいな子を見てるとほっとけなくてね」

 

コルル「…私もまさかあんな時に呪文が発動するなんて思わなかった…」

 

しおり「実を言うと、私もああなるなんて思ってなかったの。私、感情移入しやすいタイプだからそれで心の力を使って呪文が発動しちゃったんだろうね。コルルちゃんって魔界ではガッシュ君以外に友達はいるの?」

 

コルル「同じクラスのティオがいるけど…」

 

しおり「そのティオって子ともまた会えるといいね。きっと、ガッシュ君のように一緒に戦ってくれると思うよ」

 

コルル「そうだね。しおりねーちゃんも私の事、コルルでいいよ」

 

しおり「これからもよろしくね、コルル」

 

 ガッシュがこれまで経験した戦いの時のようにしおりとコルルは巡り会い、姉妹のような絆で結ばれたのであった。




今回は原作ではガッシュが優しい王様を目指すきっかけとなったコルルの話ですが、それだけでは物足りないため、エシュロスの話と一纏めにしました。そのせいでエリートことエシュロスはガッシュと戦う事なくコルルに倒される損な役回りになっています。
原作にない展開として、今回のような展開や仲間入りの遅い魔物が早期に仲間入りしたりする展開も出てきます。
次はキャンチョメとフォルゴレの出番を飛ばして原作のヒロイン、恵とティオが出てきます。


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LEVEL6 信じあえる仲間

高嶺家

 コルルがしおりと親睦を深めていた頃、ガッシュと清麿は再び今後の事について話していた。

 

清麿「しおりさんが見つかったのはよかったが…、術の制御という別の問題が発生したな」

 

ガッシュ「ならば、私がコルルの特訓の相手になろう。マントやラシルドで防ぎ続け、コルルが術を制御できるまで」

 

清麿「それじゃあ、ガッシュの身が、って言いたい所だが、今の所はそうするしかねえか…」

 

ガッシュ「コルルを仲間にする事に成功したから、今度はティオを仲間にするのだ」

 

清麿「そのティオがどこにいるのかわかるのか?」

 

ガッシュ「簡単なのだ。ティオのパートナーは人気アイドル、大海恵なのだ」

 

清麿「大海恵?あの人気アイドルが魔物のパートナーだと!?なら、話は早いな。とりあえず、コンサートに行けばティオに会えるかも知れない。コルルとしおりさんも連れて行くか?」

 

ガッシュ「ティオに紹介したいし、親睦を深めるためにも連れて行くのだ。だが、ティオを消そうとマルスという悪い魔物が襲ってくるのだ」

 

清麿「戦いは承知の上だ。それで、マルスはどういった術を使う?覚えているのなら、教えてほしい。作戦を考える時の参考になる」

 

ガッシュ「ウヌ。マルスの術は…」

 

 ガッシュはマルスの使える術がどういった術であるのかを清麿に教えた。

 

清麿「これでマルスの術がどういったものか全部わかった。コンサートの日になったら、お前の圧倒的な力でマルスをコテンパンにやっつけてやろうぜ!」

 

ガッシュ「おう!」

 

 

コンサート会場

 コンサート当日、しっかり4人分のチケットを確保したガッシュペアはコルルペアを連れてコンサート会場に来た。

 

ガッシュ「(ウヌゥ、キャンチョメとフォルゴレは結局来なかったのう…。ロブノスも来ておらぬし…)」

 

清麿「すごい人だな…」

 

しおり「TVで見てたけど、人気アイドルは凄いわね」

 

???「高嶺君…、その人って…恋人…?」

 

 声がした方には、ショックを受けている鈴芽の姿があった。

 

しおり「違うわ。私はガッシュ君の友達のコルルの保護者でしおりっていうの。よろしくね」

 

鈴芽「そうだったんだ。なんか私、昨日寝てるときに高嶺君が他の女の人と恋人になっちゃう夢を見たの。もしかして本当にそうなったりして……」

 

清麿「そんな都合のいい事が起こる訳ねえだろ(いいか、ガッシュ。俺としおりさんは水野達と一緒にコンサートを見てるから、ガッシュはコルルと一緒にティオがどこにいるのか探してくれ。もし、マルスって奴が現れたらコルルに俺に知らせるよう頼むんだ。いいな?)」

 

ガッシュ「(わかったのだ。それでは清麿、コルルと一緒にティオを探しに行くのだ)」

 

 その頃、大海恵の控え室では…。

 

恵「ねえ、ティオ。やっぱりダメよ。コンサートは中止に…」

 

ティオ「まだそんな事言ってるの!?魔物の方は私に任せてって言ってるでしょ!絶対に邪魔はさせないわ!恵がファンを裏切ってどうするの!?恵はみんなの憧れなのよ。あなたの仕事はみんなを歌で元気づける事。あなたもそのためにアイドルになったんでしょ?集まってくれたファンのために歌いなさい!」

 

恵「でもね…そうしたらあなたが…」

 

 じっと見つめるティオに恵は反論できなかった。

 

恵「わかったわよ。敵が来ない事を祈るわ」

 

ティオ「それでいいのよ。がんばりなさい!」

 

恵「はぁ…、今私達を追ってきている魔物、例の落ちこぼれのガッシュ君だったらよかったのにね」

 

ティオ「そうね。ガッシュだったら片手で捻ってあげられるのにね」

 

恵「…違うよ、ティオ。味方になってもらって…」

 

 『味方』という言葉を聞いたティオの表情が一変して恵を睨んだ。

 

恵「…はぁ…、わかったわ。この戦いは周りの全てが敵だもんね」

 

ティオ「そうよ!私の前に現れるのはみんな敵なのよ!たくさん倒した子が強くなって生き残れるのよ!それに、あんな弱虫で泣き虫の落ちこぼれがこの戦いで勝ち残れてるわけないじゃない。とっくの昔に魔界に帰ってるわよ」

 

 ガッシュはコルルを連れてティオを探しに行った。

 

コルル「ガッシュ、関係者以外立ち入り禁止の場所に入っていいの?」

 

ガッシュ「向こうからティオの魔力を感じるのだ。あそこを通らねばティオに会えぬのだ」

 

 一方の恵は出番になった。

 

マネージャー「恵ちゃん、出番よ」

 

恵「あ、はい」

 

ティオ「頑張ってね、恵」

 

恵「(やせ我慢して…。味方はいない、周りは敵だけなんて…。でも、私達の力は守りの力。攻撃呪文は弱すぎて役には立たない。今までは必死に逃げてきたけど…もう…もう…)」

 

マネージャー「恵ちゃん、顔が暗いわよ。笑顔、笑顔!」

 

恵「はい!(ダメダメ、切り替えなきゃ。ステージに集中よ!ここで暗い顔してたら、またティオに怒鳴られちゃう!)」

 

 気持ちを切り替え、恵はステージに立った。

 

恵「みんなー!今日は来てくれてありがとー!!」

 

 恵の登場に観客は大はしゃぎした。

 

しおり「ほんとにコンサートに来てよかった~~!!」

 

清麿「(しおりさんまではしゃぐなんて…。すげえ、これがアイドルの力か…。ガッシュはもうティオを探し出せたのか…?)」

 

 

 一方のティオは控え室の前にいた。

 

ティオ「ふふ、始まったようね。さ、あとは私の仕事よ。もし敵が来るとしたらこの関係者用の裏口一つ!この扉の前に立って敵を待つ。本当にやつらが来たら、私が囮になってなるべく会場から離れた所に逃げる!これで完璧よ!誰にも恵のコンサートの邪魔はさせないわよ!……本当に逃げ切れるかな…」

 

 不安になったティオはふと、恵の言葉を思い出した。そして、自分がマルスから受けた仕打ちを思い出していた。

 

ティオ「…そうよ…、味方なんて…一人も…いないのよ…」

 

 そう思っていると、ガッシュとコルルが来た。

 

コルル「ガッシュの言った通りだ!」

 

ティオ「…ガッシュ…、コルル…」

 

ガッシュ「お!ティオではないか!久しいのう」

 

 ガッシュを見た途端、ティオは鬼のような形相で迫り、ガッシュの首を絞めた。

 

ティオ「ガッシュ、あんたまで私を倒しに来るとはねー!」

 

コルル「違うよ、ティオ!ガッシュは」

 

ティオ「コルルまで私を倒しに来たのね!ってか、どうしてガッシュとコルルは一緒にいるのよ!」

 

コルル「それは」

 

???「ハハッ、やっと見つけ、ガッシュと見慣れない奴がいるな」

 

 声と共にマルスとパートナーのレンブラントが来た。

 

マルス「…まぁ、いいや。今日は3体も一気に潰せるのだからな。まずは、ティオにするか…その後、ガッシュと見慣れない奴を潰し、締めにコンサートを潰してやるよ」

 

ティオ「だ、ダメよ!それだけはやめて!!」

 

マルス「そんな事、誰が」

 

ガッシュ「マルス、その言葉、取り消せ!そして、もう二度とティオの前に姿を現すな!」

 

 さっきの無邪気な態度とは打って変わって凄まじい怒りと気迫でゆっくりマルスに近づいた。

 

マルス「(な、なんだ…?何で俺が怯えているんだよ…。あんな落ちこぼれの気迫に怖気づくなんて…)」

 

ガッシュ「コルル、急いで清麿を呼んでくるのだ。術なしでマルスとどこまで渡り合えるか知らぬが、清麿が来るまでは耐えてみせよう」

 

コルル「うん!」

 

ティオ「ちょっとコルル!」

 

 急いでコルルは清麿を呼びに行った。

 

ガッシュ「ティオ、私の事が信じられぬか?」

 

ティオ「ガッシュ…」

 

ガッシュ「お主が私の事を信じてくれなくてもよい。お主のパートナーの恵殿のコンサートは私が守ってみせよう。だから、ここから逃げるのだ」

 

マルス「術なしで俺と渡り合う?バカじゃねえのか?パートナーがいなきゃ、お前はただのガキじゃねえか」

 

ガッシュ「それはどうかな?この戦いに参加しておる魔物は術無しでも強い者もそれなりにいるぞ。そしてその言葉、そっくりそのままお主に返してやろう!」

 

マルス「言わせておけば言いたい放題言いやがって…!レンブラント!」

 

レンブラント「ガロン!」

 

 マルスの手から巨大な鉄の鎖が出た。だが、ガッシュはマントで軽く受け止めて弾いた。

 

マルス「ま、マントで受け止めた?」

 

ガッシュ「何をしておるのだ、ティオ!早く逃げるのだ!お主は後でゆっくり話がしたい」

 

ティオ「ガッシュ…」

 

 迷った末、ティオはその場から逃げる事にした。

 

マルス「ガッシュ、ティオの後にしてやろうと思ったが、言いたい放題言いやがったからお前から消してやる!」

 

 言い終わって前を見ると、ガッシュはいなかった。

 

マルス「何処に行った?」

 

???「ここだ!」

 

 声がした方は、上だった。飛びかかったガッシュはマルスの懐に潜り込んで顔面にパンチを入れた。

 

ガッシュ「言ったであろう。術なしでも強い魔物もそれなりにいると」

 

マルス「この野郎…!俺の術をマントで防げるからっていい気になるな!!レンブラント!」

 

レンブラント「エイジャス・ガロン」

 

 頭に血が上ったマルスは次々とガッシュに攻撃を仕掛けた。勝負はガッシュの優勢ではあったのものの、過去の体に戻ってしまったが故、王族の力に目覚めていても体の鍛え方が足りないガッシュは自身の最も強い頃の身体能力は出せなかった。

 

ガッシュ「(やはり、過去の体故、鍛え方が足りぬのか…)」

 

 

 その頃、コルルは清麿にマルスが来た事を伝えていた。

 

清麿「わかった、すぐに俺も向かう!」

 

 同じ頃、ガッシュに言われて逃げたティオも恵を呼んでいた。

 

恵「ティオ!敵ね、敵が現れたのね!」

 

ティオ「うん、ごめん…。本当にごめん…」

 

 ティオペアが駆け付けると、術無しでマルスと戦い続けているガッシュの姿があった。

 

恵「ティオ、本当に…あの子が落ちこぼれのガッシュ君…?」

 

ティオ「そうなんだけど…、どうして呪文が使えないのにマルスと戦えるのかわからない…(あれが…、あのガッシュ…?)」

 

 勇敢に戦うガッシュが本当に自分の知ってるガッシュなのかと疑問に思うティオであった。術が使えないのに自分と渡り合うガッシュにマルスは苛立っていたが、恵が来たため、ある事を閃いた。

 

マルス「予定変更だ。あっちの方を狙うぞ」

 

レンブラント「ガンズ・ガロン!」

 

 マルスの手から飛ばされる無数の鉄球をガッシュはマントで防いだ。しかし、何発かはガッシュの頭上を素通りして恵の方へ行った。

 

ガッシュ「しまった!」

 

恵「(呪文の発動が間に合わない!)」

 

???「危ない!」

 

 鉄球が恵に迫った時、清麿が駆け付けて恵を押し倒す形で伏せさせた。

 

清麿「ぐあっ!」

 

 しかし、その際に清麿は何発か鉄球を受けてしまった。恵は自分の置かれた状況を確かめてみると、急いで伏せさせてくれたとはいえ、その際に清麿に抱きしめられていた。

 

清麿「怪我はないですか?」

 

恵「ないけど…(何、この人…。とってもかっこいい…)」

 

清麿「そう。よかった(間近で見るととても綺麗だ…)」

 

 清麿と恵はお互いに声に出すのが恥ずかしい想いが芽生えていた。

 

清麿「安心してください。コンサートは俺とガッシュが守ります」

 

ティオ「(この人が…、ガッシュのパートナー…)」

 

清麿「ガッシュ、奴等から目を離すな」

 

ガッシュ「おう!」

 

マルス「どこまでも邪魔が入りやがって!!」

 

レンブラント「ガロン!」

 

清麿「ザケル!」

 

 恵と共に起き上がった後、清麿は前を向かずにザケルを唱えた。ガロンとザケルがぶつかり合ったが、競り合いにすらならずにザケルがガロンを一方的に破壊し、マルスとレンブラントを襲った。

 

マルス「お、俺の術が、ぐあああっ!!」

 

 凄まじい威力のザケルを受けたマルスとレンブラントは一気にコンサート会場の外まで吹っ飛んだ。

 

ティオ「何!?あれがガッシュの術!?マルスの術を簡単に打ち破るなんて!初級どころか、明らかにギガノ級の術の威力じゃない!」

 

恵「(ギガノ級…?)魔界にいた頃からガッシュ君はあの威力の術が使えたの?」

 

ティオ「違う。もっと威力は低かったのに…。第一、ガッシュじゃあんな威力の術が撃てるはずがないのにどうして…?(それに、パートナーは振り返りもしないで…)」

 

清麿「外まで吹っ飛んだか…あんた達は安全な所へ。あいつらは一歩たりともこの会場内には入れさせん」

 

ティオ「ま、待って!何で、何で助けてくれるの!?」

 

清麿「俺には、何で君らがそんな事を聞くのが不思議だよ」

 

 ガッシュペアはマルスを叩きのめすため、外へ出た。そこへ、コルルが来た。

 

ティオ「コルル!」

 

コルル「ティオも清麿お兄ちゃんとガッシュの戦いを見届けよう」

 

 

 外にふっとばされたマルスはふらふらになっていた。

 

マルス「この野郎…!落ちこぼれのくせになんて威力だ…!」

 

清麿「どうした?落ちこぼれの一番弱い術たった一発でこのザマか?」

 

マルス「一番弱い術!?ふざけやがって…!!」

 

ティオ「(弱い術?あれで一番弱い術なの!?じゃあ、強い術の威力はあんなものじゃないとでもいうの!?)」

 

レンブラント「ガロン!」

 

清麿「ザケル!」

 

 再びザケルとガロンのぶつかり合いになったが、結果はさっきと同じでザケルがガロンを粉砕してマルスを吹っ飛ばした。

 

マルス「だったら…!」

 

レンブラント「エイジャス・ガロン!」

 

清麿「ガッシュ、俺をマントに包んでその場から離れろ!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

 エイジャス・ガロンを見た途端、清麿はガッシュに指示を出し、ガッシュは清麿をマントで包んでその場を離れた。すると、鎖付き鉄球が出てきたが、ガッシュはかわした。その後、ガッシュはマルスの背後をとった。

 

清麿「ジケルド!」

 

 ジケルドをマルスは受けた。マルスは異常な威力のザケルを二発も受けたため怯えたが、何ともなかったため、威張りだした。

 

マルス「…ふふふ、ふはははっ!何をしたかは知らねえが、意味のねえ術を覚えるとはやっぱり落ちこぼれだな!レンブラント、数だ、数で勝負だ!」

 

レンブラント「ガンズ・ガロン!」

 

 再びガッシュに向けて無数の鉄球が放たれた。しかし、途中で鉄球はマルスの方へ戻っていき、次々とマルスにぶつかっていった。

 

マルス「ぐがっ!俺の術が俺を襲うなんて!」

 

清麿「やっぱり、俺の考えた通りになった。どうだ?自分の術を自分が受ける気分は」

 

マルス「そんな!俺の術を初めて見ただけでどういったものかわかるんだよ!」

 

清麿「生憎、俺はガッシュと出会う前にお前とティオの戦いの現場を見た事があるんだ。だから、お前の攻撃は全て知っている」

 

マルス「くそう!くそう!」

 

 この清麿の言葉は戦う前に考えた嘘ではあるが、ガッシュから聞いた事でマルスの術を全て知っているのは事実であり、冷静な判断力を失っているマルスに信じ込ませるには十分な内容であった。

 

清麿「ガッシュ、あいつをブン殴ってやれ!俺もパートナーをブン殴る!」

 

 マルスが一方的にガッシュにやられている光景にティオは驚きを隠せなかった。

 

ティオ「凄い、マルスを一方的に叩きのめしているなんて…何であそこまで私達を助けようとするの…。なぜ私達を」

 

恵「…きっと、あの子達は私達よりずっと戦ってきたのよ。さっきだってそう…本の持ち主が後ろを向きながら敵に攻撃を当てる事なんて普通できないわ。それだけ、辛い戦いを重ねてきたんじゃないかしら?」

 

コルル「その通りだよ。ガッシュはあのブラゴとも戦った事があるから」

 

ティオ「ブラゴ!?あのブラゴと戦って生き残れたなんて…」

 

 ガッシュとマルスの格闘戦は完全にガッシュの優勢であった。同時にパートナー同士の殴り合いも清麿は機転を利かせつつ、優位に運んでいた。

 

マルス「くそう…、俺がこんな落ちこぼれに負けてたまるか!レンブラント、最大呪文だ!」

 

レンブラント「ギガノ・ガランズ!」

 

 巨大なドリルがガッシュを襲う。

 

ティオ「ガッシュ!恵!」

 

恵「ええ!マ・セシ」

 

清麿「ザケルガ!」

 

 ギガノ・ガランズを見ても清麿とガッシュは動じないままザケルガを放った。ザケルガたった一発でギガノ・ガランズは瞬時に破壊された。

 

マルス「そんな…、俺の最大呪文がこうもあっさり破られるなんて…!ぐがぁあああっ!!」

 

 そのままザケルガはマルスに命中し、大きく吹っ飛ばした後、マルスは倒れた。

 

レンブラント「あ…あ…」

 

 凄まじい強さと気迫を持つガッシュと清麿の姿にレンブラントは恐怖で戦意が揺らいでいた。ほどなくしてマルスは立ち上がった。しかし、余裕は全くなく、パートナー同様、怯えていた。

 

ティオ「(マルスが怯えている?)」

 

マルス「くそっ…、なぜこんなに邪魔をする……!てめえらには関係ねえだろ…!ティオ達を庇ったって……どうせあいつらとは…敵に」

 

 話している最中にガッシュはマルスを殴った。

 

ガッシュ「関係なくはない!ティオは…私の友達だからだ!それに、お主にとっても友達であったであろう!私の友達を傷つけ、自分の友達を捨てたお主の歪んだ心は私が打ち砕く!」

 

ティオ「友達って、魔界にいた頃からそういう所は全然変わってないじゃない…」

 

コルル「友達のためなら、いかなる困難にも立ち向かうのがガッシュだよ」

 

マルス「ふ、ふざけるな!!何で、この俺様がガッシュごときに倒されなければならん!俺は王に」

 

 激しい怒りと共にマルスを睨みながらゆっくりガッシュは近づいた。落ちこぼれとバカにしていたガッシュに最大呪文を簡単に破られ、気迫と怒りに威圧されたマルスの心は恐怖と絶望に染まっていた。

 

マルス「あ…、あ、あ……、来るな、来るな来るな!!」

 

レンブラント「ガンズ・ガロン!」

 

 無数の鉄球をガッシュはマントで全て弾いた。そんな中、ガッシュの本が輝いた。

 

清麿「これは…、新呪文?」

 

ガッシュ「試してみるのだ」

 

清麿「ああ。第八の術、マーズ・ジケルドン!」

 

 ガッシュの口から赤い球体が発射され、球体はガンズ・ガロンを弾きながらマルスを吸い込んだ。

 

マルス「な、なんだ、これは…?ぐああああっ!!!」

 

 球体から抜け出そうとしたマルスは凄まじい電撃が走った。動くと電撃が走る事も知らず、マルスは痛みで暴れ出そうとしたため、さらに電撃を浴び続けるという悪循環に陥った。

 

恵「あの技、まるで拷問みたい…」

 

清麿「この術は魔物を閉じ込める術なのか」

 

ガッシュ「もうこれくらいでよかろう。次の一撃で本を燃やすのだ」

 

 術を解くと、マルスは倒れ込んだ。

 

清麿「マルス、お前のようなクソ野郎はこの一撃で人間界からいなくなれ!テオザケル!」

 

 レンブラントが死なないように加減したテオザケルにマルスはパートナーごと飲み込まれ、マルスの本は燃えてしまった。

 

清麿「どうだ!?バカにしていた奴に手も足も出ずにやられる気分は!?二度とティオとガッシュをバカにするんじゃねえぞ!」

 

ガッシュ「マルス、この痛みを以てティオが受けた苦しみと気持ちがわかったであろう!魔界でこれまでのティオへの仕打ちを反省するのだ!」

 

マルス「ち、ちく…しょう……。レンブラント…」

 

レンブラント「お、おう…」

 

マルス「この先……、魔物に会う事が…あったら…ガッシュとティオを…潰すように伝えろ……。モチノキ町に…いるとな……」

 

レンブラント「…できればやっておこう」

 

 激痛と恐怖で意識が途絶えたマルスはそのまま魔界へ送還された。マルスの遺言を聞いたレンブラントはその場から逃走した。

 

ティオ「(ガッシュ、いい人に会えたのね。ガッシュが強くなったのもわかる気がする。でも、この戦いで生き残るのは…)」

 

 マルスを倒し終わった後、ガッシュペアは振り向いた。

 

ティオ「(そう…ガッシュ達が助けてくれた気持ちは嘘じゃない!ガッシュもあの人もいい人よ!でも、ガッシュも王様になりたくて戦っている。その気持ちも事実。私達は…やっぱり戦わなくちゃいけないのよ!だけど、勝てるの?マルスの術を簡単に破ったガッシュに…)」

 

清麿「さ、早くコンサートに!急がねえとファンが待っているぞ!」

 

ガッシュ「ちょうどマルスを倒し終わった事だし、ティオとゆっくり話がしたいのだ。コルルも久しぶりに同じクラスのティオと話がしたかろう?」

 

コルル「そうだよ」

 

ティオ「(…嘘、そんなはずない!この戦いに仲間なんていないんだ!どんなに信用してたって…、どんなに昔から仲良しだからって…、どんなに昔から変わってなくったって…周りは全員敵なんだ!)何で戦おうとしないのよ!生き残るのは1人だけなのよ!あなたと私は敵同士でしょ!?そもそも、ガッシュは敵のはずのコルルと一緒にいるのよ!」

 

ガッシュ「さっきの言葉を聞いておらぬのか?お主は私の友達だ。だから、戦いたくない」

 

ティオ「そ、そんなの関係ないでしょ!コルルこそどうして私やガッシュと戦わないのよ!仲間なんていないのよ!」

 

コルル「…ティオ、私も初めは敵に怯えながら過ごしててこの戦いに味方なんていないと思っていた…」

 

ティオ「なら、何で!?」

 

コルル「でも、ガッシュは一緒にいていいって言ってくれて嬉しかったの。それにね、ガッシュはある女の子と「優しい王様」になる約束したんだって。戦いたくないのに戦わされるこんな辛い戦いを終わらせるために。だから、私もそれを手伝っているの。まだ、パートナーも見つかったばかりで術の制御もできてないけど…。だから、ティオも一緒に目指そう、優しい王様を」

 

ティオ「……2人共何かっこつけてるのよ…!ハハハハハッ!落ちこぼれのガッシュと大人しすぎるコルルのくせに!や、優しい王様!?バカね、あんた達みたいな弱虫と内気な子に、かかか、叶えられるわけないじゃない!だ…、だから…、私も優しい王様を目指してあげるわ。私達が最後まで残ったら、誰かが勝っても優しい王様よ」

 

ガッシュ「ウヌ、その通りだ」

 

 ガッシュ、ティオ、コルルの三人は手を合わせた。ちょうどそこへ、しおりが来た。

 

しおり「コルル、戻ってくるのが遅いけど…」

 

 コルルを見つけたのと同時にしおりは恵の方へ視線が向いた。

 

しおり「ま、まさかあの大海恵さんとこんな場所で会えるなんて!サインください!」

 

恵「あ、はい…」

 

 しおりにサインをしてほしいと頼まれた恵はサインした。

 

しおり「ありがとうございます!」

 

ティオ「ねえ、あの人がコルルのパートナー?」

 

コルル「そうだよ。ティオもしおりねーちゃんに挨拶してね」

 

ティオ「私がコルルと同じクラスのティオよ。しおり、よろしくね」

 

恵「しおりさん、私の事は普通に恵でいいわ。歳も同じぐらいだから」

 

しおり「じゃあ、私の事もしおりで。ティオとコルルは魔界では同じクラスの友達って聞いてるから、私達も同じ女子高生同士よろしくね。携帯電話の番号でも交換する?」

 

恵「そうしましょう。いざという時の連絡手段にもなるわ」

 

清麿「よかったな、ガッシュ。ティオが仲間になってくれて」

 

ガッシュ「ウヌ。恵の都合がいい時はみんなで特訓しようかのう」

 

清麿「それ、いいな。戦いもだんだん厳しくなってくるだろうし、みんなで強くならなきゃな」

 

ガッシュ「清麿、恵を見る時は顔が赤くなっておったぞ。どうしたのだ?」

 

清麿「そんな事はどうでもいいだろ!」

 

ガッシュ「(ウヌゥ、私が前の戦いで一緒に戦った清麿は恵を見ても顔は赤くなっていなかったのだ。やっぱり、この王を決める戦いが違ってるように清麿も少し違うのであろうか…?)」

 

 こうして、ガッシュペアにはコルルペアのほかに新たな仲間にティオペアが加わった。コンサートが終わって恵はティオと共に帰る準備をしていた。

 

ティオ「恵、やけに清麿に視線が行ってたけど、もしかして…」

 

恵「え、えっと…」

 

ティオ「わかった!ひょっとして恵、清麿に恋をしたんでしょ!?」

 

 図星を突かれた事で恵は赤面した。

 

ティオ「かっこいい人からあんな風に抱きしめられたら好きになっちゃうよね。清麿も恵をやたら気にしてた様だし」

 

恵「もう、ティオったら!(でも、ティオの言っている事も間違いではないけどね)」

 

ティオ『恵のほかに信じられる人がいた…。こんな戦いの中でも…まだ…、4人だけど…』

 




これで今回の話は終わりです。
アニメでは恵が清麿に惚れるだけでなく、清麿も明確に恵に惚れていたため、今小説では清麿と恵がお互い惚れるきっかけをより大胆でわかりやすく描きました。自分は清恵派であるため、今後も清麿と恵のラブラブぶりはきっちり描いていきます。その代わり、鈴芽はその代償として事ある毎に悲惨な目に遭うと思います。
マルスとの戦闘は原作の描写に加えてゼオンvsリオウも参考にして王族の力が目覚めているガッシュが一方的にマルスをフルボッコにする爽快感溢れる内容にしています。
次はガッシュペア、ティオペア、コルルペアの3組揃って特訓ですが、出番が飛んでしまったキャンチョメとフォルゴレも出てきます。


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LEVEL7 英雄の来日

高嶺家

 マルスを撃破してから数日後、清麿の元へ電話が入った。

 

清麿「はい、もしもし…」

 

恵『清麿君ね。都合のいい日にみんなでやろうっていってた特訓、今度の日曜日は来れるから楽しみにしててね』

 

清麿「じゃあ、これで」

 

 その後、電話を切った。

 

ガッシュ「ティオと恵は来れるのか?」

 

清麿「ああ。日曜日は人気のない場所で特訓だ!」

 

 

イタリア

 イタリアでは、世界的スター、パルコ・フォルゴレがアヒルの嘴のような口の少年と一緒にロケの場所を後にしていた。

 

フォルゴレ「今日のロケも楽しかったな、キャンチョメ」

 

キャンチョメ「そうだね。でも、フォルゴレもガッシュを探してよ。ガッシュを見つけ出して倒してやるんだ!」

 

フォルゴレ「でも、どこにいるのかもわからないだろう?」

 

キャンチョメ「それでも…、僕のような落ちこぼれじゃ同じ落ちこぼれのガッシュにしか勝てないんだ!」

 

???「フフフフ、ガッシュをお探しなのかな?」

 

フォルゴレ「誰だ!?」

 

 声と共にレンブラントが現れた。

 

レンブラント「私はレンブラント。そこの君、ガッシュを倒したいと言ってたね」

 

キャンチョメ「そ、そうだけど…」

 

レンブラント「ガッシュなら、日本のモチノキ町という所にいる…。倒したければ行くがいい…」

 

キャンチョメ「ありがとう!フォルゴレ!」

 

フォルゴレ「ははははっ、日本のバンビーナ達が大喜びするだろうな」

 

キャンチョメ「だから、ガッシュを倒しに行くんだけど…」

 

レンブラント「(魔物に会ったらガッシュはモチノキ町にいると伝えろと言われたが、こいつらじゃダメだろうな…。)」

 

 マルスの遺言通りに行動しているレンブラントだったが、ガッシュの異常な強さを目の当たりにしていたため、キャンチョメでは勝てないと早々に判断した。

 

 

マンション 恵の部屋

 日曜日、恵とティオはお弁当を作っていた。

 

ティオ「やけに張り切ってるわね、恵」

 

恵「当然じゃない。ガッシュ君達があんなに強くなったんだから、私達も強くならなきゃね」

 

ティオ「…ガッシュがあんな威力のザケルを撃てるような感じで私も凄い防御力のセウシルを出せるようになるかな?」

 

恵「出せるようになるわよ、きっと。さ、清麿君の家に行きましょう」

 

 

高嶺家

 ティオペアは途中でコルルペアと合流してガッシュペアを迎えに来た。

 

恵「初めまして、清麿君のお母さん。私は大海恵と言います」

 

華「あの人気アイドルが何の用かしら?」

 

ティオ「清麿とガッシュともピクニックに行く約束をしてるの。いいでしょ?」

 

華「いいわよ。何だか清麿とガッシュちゃんは女の子にモテモテになってきてるわね」

 

清麿「お袋、俺は別にモテモテになったわけじゃ、ぐがっ!」

 

 慌てて清麿は階段から降りようとしたが、躓いて階段から落っこちた。

 

清麿「いてててっ…!」

 

しおり「清麿君とガッシュ君も来たようだし、出発しよう」

 

 

空き地

 人気のない場所にガッシュペア、コルルペア、ティオペアの3組が来た。

 

ガッシュ「おお!ピクニックに来たようなのだ!」

 

清麿「あのな、ガッシュ。俺達は遊びに来たんじゃないんだぞ」

 

しおり「清麿君、ガッシュ君達はまだ幼い子供なのよ。大目に見てあげましょう」

 

恵「ティオ、この前の戦いでギガノ級とか言ってたけど、それって何なの?呪文には何か法則でもあるの?」

 

ティオ「呪文には色々な法則があるの。学校で習った内容では主に呪文は初級、ギガノ級、ディオガ級、シン級というランクがあって、ランクが上がる毎に威力や効果も上がってくるのよ」

 

清麿「初級はわかるが、他のランクは人間界で例えるとギガノが中級、ディオガが上級、シンが最上級でいいのか?」

 

ティオ「その考え方の方が恵達にもわかりやすくていいわ」

 

恵「ガッシュ君のザケルみたいに呪文の威力を本来の威力から1ランク上の威力にする事は可能なの?」

 

ティオ「パートナーの心の力の込め方次第ではできない訳じゃないけど、外した時のリスクが大きいからあまりお勧めはしないわ。初級の呪文であんな威力を出せる魔物は私の知る限りでは力を目覚めさせた王族ぐらいよ」

 

コルル「そのガッシュも王族なのよ、ティオ」

 

 しばらく沈黙が続いた。

 

ティオ「ええ~~っ!!ガッシュが今の王様の子供!?」

 

恵「ほんとなの!?」

 

清麿「本当だ」

 

ティオ「じゃあ、何で私達と同じ学校に通ってたのよ!」

 

ガッシュ「訳があって私は家族と暮らせないのだ」

 

ティオ「…まぁ、王様の子供だったとしても、ガッシュはガッシュよ。それに、あのザケルの威力の高さの理由もわかって納得したわ」

 

ガッシュ「それはよかったのだ」

 

恵「どういった特訓をするの?清麿君」

 

清麿「うーむ…、どうやったら、ティオを強くできるのか…ん?」

 

 ふと、清麿の頭の中に何かが閃いた。というよりは、何をするべきかが思い浮かんだ。

 

清麿「ティオを強くする方法がある」

 

恵「どうするの?」

 

清麿「ティオ、痛いだろうけど、我慢するんだぞ」

 

 清麿はティオの頭のある部分に指を押し込んだ。

 

ティオ「ああ~~~~っ!!」

 

 ものすごくティオは痛がった。

 

ティオ「ちょっと清麿、何をしたのよ!とても痛いじゃない!」

 

しおり「これでティオは強くなれるの?」

 

清麿「後は特訓をすれば強くなれるさ。今のは、そのための準備なんだ」

 

恵「どうしてそのやり方にしたの?」

 

清麿「それが…、どうすればティオを強くできるのかと思ったら急にそのやり方が頭の中に思い浮かんだんだ」

 

ガッシュ「(これはもしや…、アンサー・トーカー?いや、清麿がアンサー・トーカーを身に付けるのはまだ先…あっ!)」

 

 ガッシュが経験した戦いで清麿がアンサー・トーカーを習得したのが生死の境を彷徨った事であったため、今回はそれが自身のザケルを受けて意識不明の重体になった事がきっかけではないかと判断した。

 

 

 まずは、ティオがガッシュの攻撃呪文を受け止める特訓から始めた。

 

清麿「恵さん、ティオが防ぎきれない時に巻き添えになって本が燃えないようにガッシュの攻撃呪文の射線上から離れてくれ」

 

恵「わかったわ」

 

ガッシュ「準備はよいのか、2人共」

 

ティオ「ええ!」

 

清麿「じゃあ、行くぞ!ザケル!」

 

恵「マ・セシルド!」

 

 ギガノ級の威力のザケルをマ・セシルドで受け止め、競り合いが続いた。

 

ティオ「やっぱり、ザケルですらマルスの最大呪文より威力が高い…!ああっ!」

 

 ザケルに耐えきれなくなったマ・セシルドは爆発し、ティオは吹っ飛んだ。

 

ガッシュ「大丈夫か?ティオ」

 

ティオ「これくらい何ともないわ。続けて!」

 

 ガッシュのザケルを受け止める特訓は何度も続けられた。それからしばらくした後…。

 

清麿「ザケル!」

 

 ようやくティオはマ・セシルドでガッシュのザケルを防ぎきる事に成功した。

 

清麿「一日目にしてはだいぶ進歩したな」

 

恵「見て、清麿君。新しい呪文が使えるようになったわ」

 

 恵が本を見てみると、マ・セシルドの行数が増えた他、新たに二つの呪文が使えるようになった。

 

恵「新しい呪文は…、ギガ・ラ・セウシルとサイフォジオね」

 

しおり「どんな効果の呪文なのかしら?」

 

清麿「結構心の力も使ったから、休憩して次の特訓に入ろう」

 

 休憩して心の力を回復させてから、次の特訓に入った。

 

清麿「次はコルルの術の制御の特訓だ」

 

ティオ「そう言えば、コルルはこの前、術の制御ができてないとか言ってたけど、どういう事?」

 

コルル「実は…」

 

 コルルは自分は呪文を使うと見境なく大暴れしてしまう事を話した。

 

ティオ「そうだったのね」

 

恵「責任を感じて魔界に帰りたいと考えるのも無理はないけど、制御できないまま魔界へ帰っても間違って発動させたら大変な事になっていたと思うわ」

 

しおり「どういう特訓をするの?」

 

清麿「危険だが、何度もガッシュが相手になるそうだ。制御できるようにならないと、連携もままならない」

 

ティオ「私達はどうするの?」

 

清麿「恵さんとティオは俺としおりさんに危険な事が起こったら防御呪文で守ってほしい。攻撃の要がガッシュなら、防御の要はティオだ」

 

ガッシュ「みんなを守るのがティオの仕事なのだ」

 

恵「任せて。防御の要は私達にとっていい褒め言葉よ」

 

 早速、特訓の準備に取り掛かった。

 

ガッシュ「コルル、準備はよいか?強き心で術を制御するのだ」

 

コルル「…うん!」

 

しおり「ゼルク!」

 

 コルルの姿が凶悪な姿へと変わっていった。これには、恵はもちろん、コルルと同じクラスであったティオも衝撃を隠せなかった。

 

ティオ「あれが…コルル…?」

 

恵「あんな可愛い子が…、凶悪な姿になるなんて…」

 

コルル「もっと…、もっと暴れたいの…」

 

 ガッシュ達の姿を見たコルルはガッシュに襲い掛かった。

 

清麿「わかっているな、ガッシュ。攻撃呪文は一切使わん!使う呪文はラシルドだけだ!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

恵「ティオ、すぐにでも対応できるように注意しておきなさい」

 

ティオ「ええ!」

 

 数十分にもわたってやったが、ティオの時と違って進展しなかった。

 

コルル「ごめんね…、制御が…」

 

ガッシュ「ま、まだ始めたばかりなのだ!これから地道にやっていけばきっと制御できるようになるぞ」

 

恵「みんな、そろそろお昼だからお昼ご飯を食べましょう」

 

 

モチノキ町

 レンブラントから聞いてモチノキ町に来たフォルゴレとキャンチョメはガッシュを探していた。

 

キャンチョメ「この町のどこにいるんだろう…ガッシュ…。フォルゴレは…って、フォルゴレ!?」

 

 フォルゴレはファンの女性達に囲まれていた。

 

フォルゴレ「あはは、そんなに引っ張らないでくれよ!」

 

キャンチョメ「フォルゴレ、僕達は遊びに来たんじゃないよ!さ、ガッシュを探そう!」

 

 

空き地

 昼になり、サイフォジオを試して回復呪文だと判明した後、ガッシュ達は昼ご飯を食べていた。清麿は恵の作った弁当を、ガッシュはティオの弁当とコルルの弁当をを食べていた。

 

清麿「恵さん、まさか俺の弁当を作ってきてくれたの…?」

 

恵「あら、もちろんよ。もしかして清麿君、アイドルは家事ができないと思ってた?」

 

清麿「は、はい…。意外だったもので…」

 

ガッシュ「おお!ティオの弁当もコルルの弁当もおいしいのだ!」

 

コルル「褒められて嬉しいよ」

 

ティオ「ありがとう、ガッシュ。(でも、コルルの弁当の方が盛り付けとかも綺麗にできててよかったなぁ…)」

 

しおり「ティオ、コルルをじっと見てどうしたの?」

 

ティオ「べべべ、別になんでもないわよ!」

 

しおり「もしかして、コルルの方がお弁当の盛り付けとかがきれいにできてるのを羨ましがってるんでしょ?」

 

 図星を突かれたティオは何も言えなかった。

 

ガッシュ「こんな場所でのお弁当は格別だのう!」

 

 楽しく食事をしているガッシュ達を離れた所からキャンチョメとフォルゴレが見つめていた。

 

フォルゴレ「おお、ガッシュのパートナーはバンビーナ2人に囲まれながら食事をしているな」

 

キャンチョメ「ガッシュも2人の女の子と一緒に食事をして羨ましいなぁ…」

 

フォルゴレ「これはいい機会だ!是非、私も行ってみよう!」

 

キャンチョメ「だから、僕達はガッシュを倒しに来たんだって!って待ってよ、フォルゴレ!」

 

 食事が終わったガッシュ達は特訓を再開しようとした。

 

清麿「よーし、食べ終わってしばらくした所で特訓を」

 

???「ハーイ、2人のバンビーナ!私と一緒にどこかへ行かないかい?」

 

 しおりと恵にフォルゴレはナンパしていた。

 

しおり「あなた、あのパルコ・フォルゴレ!?」

 

フォルゴレ「そう、私こそ絶世の美男子パルコ」

 

 フォルゴレの手の動きが怪しい事に気付いたティオはすぐにフォルゴレの首を絞めた。

 

フォルゴレ「ああ、やめて!お嬢ちゃん!」

 

ティオ「ふざけんじゃないわよ!絶世の美男子に相応しいのは清麿よ!あんたは恵としおりの胸を揉もうとした、ただの変態じゃない!!清麿だけが恵の胸を揉む権利があるのよ!」

 

恵「ちょっとティオ、恥ずかしい事を言わないでよ…!」

 

しおり「あれっ?恵ったら、もしかして清麿君になら、胸を揉まれてもいいと思ってるんじゃないの?」

 

恵「しおりまでからかわないで~~!」

 

ガッシュ「おお!フォルゴレではないか!」

 

清麿「ガッシュはそいつを知ってるのか?」

 

ガッシュ「フォルゴレはキャンチョメのパートナーなのだ」

 

清麿「この変態がか?」

 

???「フォルゴレを変態呼ばわりするな!」

 

 恵としおりに反応してフォルゴレが猛ダッシュで行ってしまったため、遅れてキャンチョメが来た。

 

ガッシュ「おお、キャンチョメではないか!」

 

清麿「こいつが…、キャンチョメなのか?」

 

キャンチョメ「フォルゴレは無敵の英雄なんだ!勝負だ、ガッシュ!お前に負ける気なんて…あっ!」

 

 ガッシュに戦いを挑もうとしたキャンチョメだったが、ティオに気付いた。

 

キャンチョメ「うわああっ!首絞めティオだあっ!」

 

コルル「(首締め…?)」

 

ティオ「あんた、何言ってるのよ!変な事言ったら許さないわよ!!」

 

キャンチョメ「ガッシュがティオと名前のわからない女の子の2人と組んでいたなんて……!」

 

清麿「(確か、ガッシュはキャンチョメは悪い奴じゃないと言っていたが、本当みたいだな。軽くあしらってやるとするか…)あんた、フォルゴレとか言ったな」

 

フォルゴレ「いかにも、イタリアの俳優、パルコ・フォルゴレさ!」

 

清麿「あんた、戦いに来たんだよな?」

 

フォルゴレ「絶世の美男子、イタリアの英雄、パルコ・フォルゴレさ!」

 

清麿「だから、戦いに来たのに恵さんとしおりさんへのナンパをなぜ優先させたんだ!?」

 

フォルゴレ「おいおい、僕のCDが欲しいって?ほら、2人のバンビーナも一緒に受け取りな!プレゼントするのは、パルコ・フォルゴレさ!」

 

 フォルゴレは清麿、恵、しおりにCDをプレゼントした。

 

清麿「『チチをもげ』パルコ・フォルゴレ!?」

 

恵「なんか、恥ずかしい曲名ね」

 

フォルゴレ「仕方ないなぁ、踊ってあげるよ!」

 

キャンチョメ「パルコ・フォルゴレー!!」

 

 持参したラジカセで『チチをもげ』を流した。そして、フォルゴレは曲に合わせて踊り出した。その光景にガッシュはもちろん、コルルとしおりもつられて踊っていた。

 

ティオ「恵、あんな奴につられて踊っちゃダメよ!コルルもしおりもガッシュもよ!」

 

コルル「そう言われても、見てると踊りたくなっちゃうよ」

 

しおり「本当に戦いに来たのかしら?」

 

清麿「(恵さんとティオ以外は踊らされて…。そうか、これは油断させて俺達の本を燃やすという敵の巧妙な作戦…!)ザケル!」

 

フォルゴレ「ぎゃあああっ!!」

 

 敵の作戦と深読みした清麿はすぐにガッシュに指示を出し、物凄く加減したザケルをフォルゴレに当てた。

 

キャンチョメ「フォルゴレ!」

 

ガッシュ「清麿、攻撃しなくてもよいではないか!」

 

清麿「あのな、ガッシュ。こいつらが悪い奴等じゃなかったとしても、もし、油断してる間に本を燃やされたら取り返しがつかなくなるぞ」

 

恵「キャンチョメ君は本当に戦いに来たの?」

 

キャンチョメ「当たり前だ!このキャンチョメ様は王様になるんだぞ!」

 

ティオ「あんたじゃ無理よ。ガッシュはおろか、私にさえ勝てないわ」

 

清麿「なぁ、お前ら、降参しないか?訳わからんし」

 

キャンチョメ「お前達、フォルゴレを舐めてるな!よし、教えてやろう!フォルゴレが無敵の戦士である事を!」

 

 急にキャンチョメは歌い出した。

 

しおり「何の歌なのかしら?」

 

コルル「しおりねーちゃん、あの人が!」

 

 歌の最中にフォルゴレが起き上がった。

 

しおり「起き上がっちゃった…」

 

キャンチョメ「ハハハハッ!どうだ、驚いたかい?無敵の英雄、それが…」

 

フォルゴレ「パルコ・フォルゴレさ!」

 

清麿「ザケル!」

 

 また清麿は加減したザケルをフォルゴレに当てた。

 

恵「またさっきの歌で起き上がるんじゃないかしら?」

 

キャンチョメ「ハハハハッ、その通りだ!」

 

 恵の予感通り、歌でまたしてもフォルゴレは立ち上がった。

 

清麿「ザケル!」

 

 またしてもフォルゴレは威力を抑えたザケルを受けて倒れた。

 

キャンチョメ「ハハハハッ、気が済むまで撃つがいい!フォルゴレはビクともしないぞ!」

 

ティオ「清麿や恵よりは頑丈だけど、流石にまいったみたいね」

 

 ティオの指摘通り、フォルゴレは参っている様子だった。

 

フォルゴレ「ゆ、許してくれ…。私は無敵じゃないんだ…、弱い人間なのさ…」

 

コルル「ねえ、降参した方がいいと思うよ。何だか可哀そうだし、私達は悪い魔物じゃなかったら本を燃やしたりしないから」

 

ティオ「まぁ、コルルの言う通り、こいつらはほっといても大丈夫そうね」

 

フォルゴレ「…お嬢ちゃん、あまり私をみくびらないでもらおうか。私もキャンチョメも、高貴なる魂を認め合って友となった!上辺だけ見ている君達に同情などされたくない!それに、まだ一度も反撃していない私達を可哀そうと言うのは、早とちりにも程があるんじゃないかな…?行くぞ、キャンチョメ!」

 

キャンチョメ「うん!」

 

フォルゴレ「私達を舐めた事を後悔させてやる!ポルク!」

 

 キャンチョメは大砲に変身した。それにはパートナー一同は驚いたが、ガッシュ達は驚かなかった。

 

清麿「何っ!?」

 

恵「大砲になった?」

 

フォルゴレ「化ける力を舐めるとは愚かだな!これで勝負はついたぜ!」

 

ティオ「清麿、恵、しおり、見た目に惑わされないで!これはただの見かけ倒しよ!」

 

しおり「って事は…、弾は出ないのね」

 

キャンチョメ「ああっ、ネタばらししないでよ!」

 

清麿「本当なのか?ガッシュ」

 

ガッシュ「ウヌ。ティオの言う通り、見かけ倒しなのだ」

 

清麿「わかった、ザケル!」

 

 またしてもフォルゴレとキャンチョメはザケルを受けた。

 

フォルゴレ「話を聞いて…もう電気ショックは撃たないで~!これが精一杯なんだ!呪文も、これ一つしかないんだよ!」

 

清麿「じゃあ、とっとと退け。みんなも、こいつらを見逃してやっていいか?」

 

ティオ「さっきも言った通り、見逃していいわよ。見てて倒す気もなくなったし」

 

コルル「私もいいよ」

 

フォルゴレ「本当に、見逃してくれるのか?」

 

ガッシュ「本当なのだ。お主達はいい奴だからのう」

 

フォルゴレ「帰るぞ、キャンチョメ」

 

キャンチョメ「待って、僕はまだ戦うよ!」

 

フォルゴレ「えっ!?私はもう、電撃の盾にはならんぞ。電撃を浴び続けたせいでもう限界なんだ」

 

キャンチョメ「……なら、僕が盾になるよ!」

 

 まだキャンチョメは戦おうとしていた。

 

キャンチョメ「ガッシュ、何でお前はそんなに強くなったんだ!?僕と同じ落ちこぼれでみんなからバカにされてたじゃないか!そんなお前にまで負けたら僕は…僕は…僕は……」

 

ティオ「キャンチョメ…」

 

 涙を流しているキャンチョメの姿にティオは既にガッシュは8個も呪文があり、一番弱い攻撃呪文のザケルですらギガノ級の術の威力になっている異常な強さになっているとは言えず、他の面々も何とも言えなくなった。

 

キャンチョメ「嫌だ、ダメだ、泣いちゃダメだ、諦めちゃダメなんだ!せっかくガッシュの居場所を突き止めてフォルゴレが日本まで連れてきてくれたのに、僕は弱いから遥々日本までガッシュを倒しに来たんじゃないか!」

 

 キャンチョメは服のポケットに入れているお菓子を食べた。

 

キャンチョメ「さぁ、電撃を撃つなら撃て!僕は無敵のキャンチョメだぞ!」

 

 泣きながらキャンチョメは『鉄のフォルゴレ』の替え歌を歌い始めた。

 

フォルゴレ「キャンチョメ…」

 

キャンチョメ「ここで負けたら…、ガッシュに負けたら僕はもう誰にも勝てない…。これからもずっと弱いままなんだ!そんなの嫌だ!僕は絶対に強くなるんだ!フォルゴレのように強くてかっこいい男になるんだ!」

 

フォルゴレ「!?そうだな、ここで逃げてはいかんな」

 

 フォルゴレは再び鉄のフォルゴレをキャンチョメと一緒に歌い出した。

 

恵「まだやるのかしら…?」

 

清麿「はぁ…」

 

フォルゴレ「さぁ、戦うぞ!」

 

 魔本を開いてみると、フォルゴレはある事に気付いた。

 

フォルゴレ「キャンチョメ、見ろ、新しい呪文が読めるようになってるぞ!」

 

しおり「新しい呪文?」

 

フォルゴレ「やったぞ!新しい攻撃ができるかも知れないんだ!勝てるかも知れないぞ!」

 

ガッシュ「(新しい呪文はもしや…)」

 

フォルゴレ「勝つぞ、キャンチョメ!」

 

清麿「ガッシュ、みんな、気を抜くな!あいつから目を離すな!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

フォルゴレ「行くぞ、第二の術、コポルク!」

 

 ガッシュペアはもちろん、ティオペアとコルルペアも警戒したが、煙と共にキャンチョメは姿を消した。

 

清麿「(何も起こらない…、いや、違う!キャンチョメが…消えた…?)」

 

コルル「ねえ、何かが動いているのが見えるよ」

 

ティオ「えっ、どこどこ?」

 

 コルル達の様子を見た清麿は辺りを見回した。すると、小さくなったキャンチョメがいた。

 

キャンチョメ「おーい、僕はここだよ!」

 

清麿「キャンチョメが小さくなった?」

 

キャンチョメ「うわぁ、みんなおっきいや!フォルゴレ、見えるかい?僕、頑張るよ!」

 

恵「キャンチョメ君、後ろを見て…」

 

 小さくなったキャンチョメの後ろに何かいる事に気付いた恵の言った通りにキャンチョメが後ろを向くと、そこにはトンボがキャンチョメを食べようと迫っていた。

 

キャンチョメ「うわああん、僕は美味しくなんかないよ!来ないでよ~~~!!」

 

 トンボに追いかけまわされるキャンチョメに一同は呆れていた。

 

フォルゴレ「ここまでか…」

 

 

 風のようにキャンチョメペアは去っていった。

 

ガッシュ「(しまった、仲間になってほしいと頼み忘れたのう。でも、また会った時に頼めばいいのだ)」

 

しおり「何だったのかしら?フォルゴレさんとキャンチョメ君、勝負がついたら急にいなくなっちゃって…」

 

コルル「でも、悪い人達じゃないみたいだよ。今度、会ったら仲間になってほしいって頼んでみようよ」

 

ティオ「あいつら、仲間にしても役に立つのかしら?」

 

恵「役に立つかどうかはわからないけど、特訓の続きを始めましょう」

 

清麿「よし。ティオ、次の目標はガッシュのザケルガをマ・セシルドで防げるようになる事だ!」

 

ティオ「ええ!」

 

 特訓は3時ごろまで続けられ、特訓が終わった後、買い物をしてそれぞれ帰る事にした。その際、ガッシュが覚えている限りの心の力を高める特訓のやり方を清麿に説明させる形で恵としおりに教えた。

 

しおり「確かに、心の力を高めれば、術を使える回数が増えるわね」

 

恵「仕事の合間でもできるから、やってみるわね(でも、心の力を自力で且つ、できる限り早く回復させるやり方はちょっと恥ずかしいわ…。私の思いつくのは、清麿君の事を想う事しか思い浮かばないし…)」

 

清麿「(ゼオンのパートナーのデュフォーは憎しみを滾らせる事で短時間で心の力を回復させていたってガッシュは言ってたが、憎しみを別の感情に置き換えてやるってなると…、俺はやっぱり恵さんの事を想うという選択肢しかないな…)」

 

 一同は戦いはもっと厳しくなるため、もっと特訓を重ねて強くならなければならないと考え、また機会があったら一緒に特訓をする事にした。

 

 




これで今回の話は終わりです。
バトル物ではよくある特訓の話ですが、今小説ではガッシュは既に強い状態で始まるだけでなく、ティオなどは今回のように呪文を覚えるのが原作よりも早くなったりします。もしかしたら、ティオは石版編でチャージル・セシルドンを習得してしまうかも知れません。
次はイギリス旅行になりますが、バルトロとキクロプは出ません。その代わり、ある人物が誤解で清麿とガッシュを襲ってきます。


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LEVEL8 イギリス旅行

高嶺家

 キャンチョメペアが来た後は魔物が襲ってくる事もなく、恵の都合がいい日は3組揃って一緒に特訓を重ねていた。ティオの方は並の魔物のギガノ級の術さえ容易に貫通するガッシュのザケルガをマ・セシルドで防御できるようになるなど、順調に成果も上がっていったが、コルルの呪文の制御の方はなかなか上手く行かなかった。それからしばらく時が過ぎて清麿の父、清太郎から『夏休みになったらイギリスへ遊びに来い』という手紙を貰って清麿はガッシュと共にイギリスへ渡る事にした。その際、恵は仕事中かも知れないと判断してしおりに電話をしていた。

 

しおり『清麿君とガッシュ君がいない間はティオとコルルだけで術の特訓をするわ』

 

清麿「魔物が来た時は十分に気を付けて戦ってください」

 

しおり『わかったわ。コルルも電話に出てみる?』

 

 パートナー同士の電話の次は魔物同士で電話に出た。

 

コルル『ガッシュは清麿お兄ちゃんと一緒にイギリスへ行くんでしょ?』

 

ガッシュ「そうなのだ」

 

コルル『ちゃんと生きて帰ってきてね』

 

ガッシュ「当然なのだ」

 

 ちゃんと帰ってくると言った後、電話は終わった。

 

華「清麿、ガッシュちゃん、くれぐれも気を付けてね。行ってらっしゃい」

 

ガッシュ「行ってきますなのだ!」

 

清麿「それじゃあお袋、行ってくる」

 

ガッシュ「(またバルトロとキクロプと戦う事になるのか…、父上殿はまた攫われておるのかのう…。でも、バルトロはともかく、キクロプは楽勝なのだ!)」

 

 

飛行機

 イギリスへ向かうガッシュペアは飛行機の中でくつろいでいた。

 

清麿「(親父に会うのは一年ぶりか…)なぁ、ガッシュ。確か、前にイギリスではバルトロとキクロプっていう悪い魔物がいるって言ってたけど、今回は勝てる自信はあるのか?」

 

ガッシュ「大ありなのだ。清麿も適切な指示を頼むぞ」

 

清麿「ああ。それと、ヨポポっていう奴はいい奴ってお前が言ってたから仲間にしような」

 

ガッシュ「ウヌ(なんとしても…)」

 

 色々やる事をやらねばならないとガッシュペアは決意していた。

 

 

空港

 空港に到着した後、待っている清太郎の姿を2人は見た。

 

清太郎「待っていたぞ、清麿、ガッシュ」

 

清麿「親父!」

 

ガッシュ「(なぜ父上殿は攫われておらぬのだ…?)」

 

清太郎「ガッシュ、何をボーッとしてるんだ?」

 

ガッシュ「いや、なんでもないのだ」

 

清麿「それとありがとな。教育係として送ってくれたガッシュのお陰で色々と変わる事ができた」

 

清太郎「そうか。それはよかったな。さ、私の勤めている大学へ行こう」

 

 

イギリス

 ガッシュ達は清太郎の勤めている大学へ向かっていた。その光景をある少女と緑のタイツの少年が見ていた。

 

少女「やっと見つけたわよ…、ヨポポを傷つけたあの魔物…!」

 

ヨポポ「ヨポイ?」

 

少女「どうしたのよ、ヨポポ。あのマント、髪型、どう見たってヨポポを襲った奴じゃない!この日のために特訓を重ねて強くなったんだから!」

 

 一方のガッシュ達は大学へ向かっていたが、ある紳士の男とすれ違った。

 

イギリス紳士「ちょっと、挨拶ぐらいしなさいよ」

 

ガッシュ「ウヌ?」

 

 紳士はガッシュを見た途端、表情が一変した。

 

イギリス紳士「ひ、ひい~~~っ!!化け物~~、命だけは助けて~~~!!」

 

 かなり怯えて紳士は猛スピードで逃げていった。

 

清太郎「何だったんだ?」

 

清麿「(ガッシュ、何であいつはお前を見て逃げ出したんだ?)」

 

ガッシュ「(私にはわからぬのだ。あの者はキクロプのパートナーのはずだが…どうしてキクロプがおらぬのか…)」

 

???「ミケル!」

 

 清太郎に聞こえないように話をしていたが、突如として魔物の攻撃が飛んできた。

 

清太郎「何だ!?」

 

ガッシュ「父上殿、ここは危ないから下がるのだ!」

 

清太郎「わかった」

 

 いう通りに清太郎は下がった。そこへ、少女とヨポポが来た。

 

ガッシュ「お主は…、ジェムとヨポポではないか!ぜひとも」

 

清麿「待て、ガッシュ!ジェムって女の子の目は明らかに俺達を敵視しているぞ」

 

ジェム「まさか、まだこんな所にいたとはね、ゼオン!今度は負けないわよ!」

 

清麿「ちょっと待て!こいつはゼオンじゃない、ガッシュだ!」

 

ジェム「髪を染めてマントを変えて誤魔化しても無駄よ!ドレミケル!」

 

 音波の攻撃がガッシュ達に迫った。それをガッシュはマントで防いだ。

 

ガッシュ「落ち着くのだ、ジェム!私はゼオンではない、ガッシュ・ベルだ!」

 

ジェム「散々、ヨポポを傷つけておいてとぼける気!?」

 

ガッシュ「とぼけてなどいない!」

 

清麿「ダメだ、ガッシュ!ジェムは頭に血が上っている!近くに金属がないからジケルドは使えない!少しヨポポに痛い思いをさせるけど、いいか?」

 

ガッシュ「ウヌ」

 

ジェム「ギガノ・ミケル!」

 

 ヨポポの口から巨大な音符が出た。

 

ガッシュ「(この術は見た事もない術なのだ!)」

 

清麿「(ギガノ級の術?ならば…)ザケル!」

 

 巨大な音符とザケルがぶつかり合った。清麿はザケルをある程度加減していたため、双方の攻撃は相殺された。

 

ジェム「特訓を積んで出た術が相殺された?」

 

清麿「マーズ・ジケルドン!」

 

 マルスの時と違ってヨポポへのダメージを最小限に抑えるために相当加減してマーズ・ジケルドンを放ち、ヨポポの動きを封じた。

 

ジェム「ヨポポ!」

 

清麿「俺達はヨポポの本を燃やす気はない。何があったのかを教えてくれないか?」

 

ジェム「誰がゼオンなんかに…」

 

ガッシュ「私はゼオンではないのだ。よく見るのだ」

 

 間近でガッシュの顔を見てみると、頭も冷えてきたためか、ようやくゼオンと違う事に気付いた。

 

ジェム「あなた…、ゼオンじゃなかったのね。だからヨポポも…。ごめんなさい!」

 

 ようやく誤解が解けて謝罪した後、ジェムは木陰で何があったのかを話していた。

 

清麿「ジェム、俺達と会う前に何があったんだ?」

 

ジェム「あれは、1か月ぐらい前になるわ…」

 

 

 

回想

ジェム『私がヨポポと会ってしばらくした後、キクロプとそのパートナーが私のお母さんとおじいちゃんとヨポポにひどい事をしたの。その時に現れたのがゼオンとデュフォーっていう目つきの悪い男だった…』

 

ゼオン「魔力を感じてここに来たが、ひ弱なチビと図体がでかいだけの雑魚しかいねえのか…」

 

イギリス紳士「図体がでかいだけの雑魚!?キクロプの強さが全くわかっていない上に失礼ね!キクロプ、身の程知らずのガキをやっておやり!」

 

 キクロプはゼオンに殴りかかったが、ゼオンはその前にキクロプにパンチを打ち込んだ。パンチだけでキクロプの鎧はあっけなく砕け、大きく吹っ飛ばされた。

 

イギリス紳士「そんな、素手でキクロプの鎧が!!」

 

ゼオン「これで終わりだ」

 

デュフォー「ザケル」

 

 ゼオンのザケルでキクロプは大ダメージを受けた他、本も燃えてしまって送還された。

 

イギリス紳士「ひ、ひぃ~~~っ、化け物だ~~!!助けてくれ~~~っ!!」

 

 キクロプを瞬殺したゼオンに怯えて紳士は逃げていった。

 

ジェム「助けて…くれたの…?」

 

 しかし、ゼオンからの返事はなく、手をヨポポに向けた。

 

デュフォー「ザケル」

 

 ザケルがヨポポに向けられ、ヨポポは凄まじい電撃で倒れてしまった。

 

ジェム「ヨポポ!あなた達、なんて事をするのよ!私達を助けてくれたんじゃなかったの!?」

 

ゼオン「助ける?何を勘違いしている。俺は最初からこのチビとさっきの図体がでかい雑魚を始末しに来たんだ。助けるとは一言も言ってないぞ。どうやら、ここには本がないようだな。デュフォー、お前なら、どこにチビの本があるのかわかるだろ?」

 

デュフォー「やろうと思えばすぐに答えは出せるが、いちいちこんな雑魚の本を血眼になって探すより、次に会った時に燃やした方が無駄な体力の消耗を抑えられるんじゃないのか、ゼオン」

 

ゼオン「それもそうだな。お前、次にそいつの本を持って会ったら俺達は今度こそ燃やすぞ」

 

 ゼオンはデュフォーと共に去っていった。

 

ジェム「許さないわ……、ゼオン…!!」

 

 

 

ジェム「それから、私達はいつかゼオンに会ったらやっつけてやるために特訓を重ねていたの。今日、あなた達を見た途端、ガッシュがゼオンとかなり似てたからゼオンと勘違いしてしまって…」

 

清麿「そうか…」

 

ジェム「誤解であなた達を襲ってごめんなさい!何か、お詫びでできる事があったら何でもしたいわ」

 

清麿「だったら、強くて悪い魔物が動き出したら一緒に戦ってくれないか?これから先、ジェムとヨポポの力を借りたい時が来るかも知れないんだ」

 

ジェム「わかったわ。お詫びも兼ねて協力するわよ。いいわね、ヨポポ」

 

ヨポポ「トポポイ」

 

ジェム「あははっ、清麿の事を友達と言ってくれているわ」

 

ガッシュ「ではヨポポ、私も友達であろう?」

 

ヨポポ「ノポポイ」

 

ガッシュ「ヌホ~~ッ!首を横に振るでない!」

 

ジェム「それじゃあ、清麿、ガッシュ、とても悪い奴との戦いでまた会いましょう」

 

ヨポポ「ヨポポイ!」

 

 

大学

 ジェムとヨポポが仲間になってくれた後、ジェムとヨポポは家に帰り、清麿とガッシュは清太郎と共にようやく大学に着いた。

 

清太郎「清麿、さっきの戦いやあの子達を傍から口出しせずにずっと見ていたが、あれは何だ?」

 

清麿「実は…」

 

 魔物同士の戦いを見た以上、父親に隠し通せないと判断した清麿はガッシュが魔物である事、魔界の王を決める戦いの事を話した。

 

清太郎「まさか、お前があのような危ない戦いに足を踏み入れていたとはな」

 

清麿「済まねえな…」

 

清太郎「いや、ガッシュのパートナーがお前にしかできないのであれば、止めはしないさ。これからも気を付けるんだぞ」

 

ガッシュ「ウヌ」

 

清麿「それで、見せたい物って何だ?」

 

清太郎「アフリカで見つかった際にガッシュの本と何か関わりがあるのではないかと思っていたんだ」

 

 研究室で清太郎が見せたものは、1000年前の魔界の王を決める戦いでゴーレンによって石版にされた魔物だった。

 

清麿「(これは…ガッシュから聞いた1000年前にゴーレンという魔物によって石版にされた魔物…!)」

 

ガッシュ「(これはもしや…、デモルトの…)」

 

清太郎「この石版、異形の生き物、魔物をかたどっているように見えるだろう。ここに書かれた文字、ガッシュのガッシュの赤い本と似ているように見えないか?」

 

清麿「ああ。確かに似てる」

 

清太郎「そして、最も興味深いのが、この石版が埋まっていたのが、1000年前の遺跡だと言う事だ。魔界の王を決める戦いも、1000年に一度と言っていたな」

 

清麿「そうだ」

 

清太郎「それと、何か関わりがあるのは間違いない。ちなみに、あの石は調査中だから、日本に帰った後に何かわかったら連絡してくれ」

 

清麿「ああ」

 

ガッシュ「父上殿、今日の仕事が終わったら食事なのだ」

 

清太郎「そうだな。とびっきりの美味しいものを食べよう」

 

ガッシュ「ブリはあるかのう…」

 

清麿「イギリスに来てもブリかよ…」

 

 

ジェムの家

 家に帰ったジェムとヨポポは本を見てると、新たに呪文が読めるようになった事に気付いた。

 

ジェム「ヨポポ、見て!新しい呪文が出てるの!」

 

ヨポポ「ヨポイ!」

 

ジェム「えっと…、第四の術、ヨポポイ・トポポイ・スポポポーイ、だって。どんな呪文なのかな?」

 

ヨポポ「ヨポイ…?」

 

ジェム「まぁ、使ってみればわかるわよ」




これでこの話は終わりです。
原作でのキクロプ戦はバオウを初めて使った戦いでしたが、今小説ではブラゴ戦でバオウが解禁されたため、キクロプはバルトロ共々、既にゼオンにやられた事にしました。
原作においてもゼオンは結構ガッシュと間違えられていましたが、今小説では今回の話のようにガッシュもゼオンと間違われるシーンを描きます。
戦闘においてのゼオンが素手でキクロプの鎧を破壊したのは原作のゼオンvsリオウ戦でゼオンがただの蹴りでリオウの鎧を砕いたため、ゼオンなら素手でキクロプの鎧を砕けるだろうと判断したためです。
なお、邂逅編ではコルルや今回のヨポポのように味方の魔物を脱落させる予定はありません。
次の話はフォルゴレのチャリティーコンサートの話ですが、鈴芽のボケがある人物の逆鱗に触れる原因になって鈴芽が大変な目に遭います。


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LEVEL9 雷帝の影

ホーバーク・キャッスル

 ガッシュペアは食事の後、ホーバーク・キャッスルへ向かった。しかし、バルトロはいなかった。

 

清麿「バルトロとかいう奴も既にやられてるみたいだな」

 

ガッシュ「そうみたいなのだ…」

 

清麿「バルトロを倒した奴って…やっぱりゼオンじゃないのか?」

 

ガッシュ「……私もそうとしか考えられぬ…(私がゼオンに記憶を奪われなかったら、こんなにイギリスでの出来事が変わってしまったとは…)」

 

清麿「とりあえず、何事もなくてよかったな。俺達も帰ろうか」

 

ガッシュ「ウヌ」

 

 

ロンドン

 同時刻、鈴芽は自分はイギリスにいるとも知らずに香港に来たと思ってロンドンの人気の少ないエリアを歩いていた。

 

鈴芽「う~ん…、私って今は香港のどの辺りを歩いているのかしら…?」

 

 そんな中、鈴芽は見覚えのある人影を見つけた。

 

鈴芽「あっ!あれって…ガッシュ君だ!」

 

 鈴芽は髪の色等の違いもわからずに見覚えのある人影に近づいた。

 

鈴芽「ガッシュ君、ガッシュ君も香港に来たの?」

 

ゼオン「……今、何って言った…!?」

 

鈴芽「ガッシュ君、自分の名前を忘れちゃったの?」

 

ゼオン「……またか…、俺をあのマヌケと間違える奴は…!!」

 

 ガッシュと間違えられて怒ったゼオンは鈴芽を殴った。

 

鈴芽「きゃっ!急に殴るなんてどうしたの?ガッシュ君」

 

 まだ鈴芽がガッシュと間違えているため、ゼオンは鈴芽の髪を掴んで至近距離で自分の顔を見させた。

 

ゼオン「お前、俺をガッシュと間違えるな!俺の名はガッシュじゃなくてゼオンだ!ガッシュと会った事があるなら、ちゃんと見れば髪の色とかで俺との違いぐらいわかるだろ!?」

 

鈴芽「何を言ってるの、ガッシュ君…」

 

ゼオン「俺を忌まわしい奴と同じ名前で呼ぶな!!」

 

 何度言っても自分とガッシュの違いがわからない鈴芽にとうとうゼオンの堪忍袋の緒が切れて怒り狂い、鈴芽に殴る、蹴るの暴行を何度も加えた。

 

ゼオン「このバカ女が!俺はガッシュじゃなくてゼオンだと言ってるだろ!いい加減にしろ!!」

 

デュフォー「…お前、かなり頭が悪いな。ゼオンに話しかける前の話も聞いてたがここは香港じゃない、イギリスのロンドンだ、それに、あれだけゼオンが言っても目の前にいるのがガッシュじゃなくてゼオンだという事がわからんとはな」

 

ゼオン「デュフォー、口で言ってもわからん筋金入りのバカのこいつにはお仕置きが必要だ。一応は死なんように加減はしておけ」

 

デュフォー「そうだな。ザケル」

 

 ゼオンは容赦なくザケルを鈴芽に浴びせた。

 

鈴芽「あああああっ!!」

 

 ザケルをまともに喰らった鈴芽は悲鳴をあげて黒焦げになり、倒れた。

 

ゼオン「いいか、二度と俺をあのマヌケと間違えるな!大馬鹿野郎が!とっとと行くぞ、デュフォー」

 

 何度も鈴芽からガッシュと間違えられた事で機嫌を悪くしたゼオンはデュフォーと共にその場を去っていった。

 

デュフォー「驚いたな。何度言ってもよく見させてもゼオンがガッシュじゃないとわからん程、頭が悪すぎる奴がいたとは。あの頭が悪すぎる女はどうしてゼオンとガッシュの違いがわからんのかが俺には理解できん」

 

ゼオン「あんな奴には口で言っても無駄だ。地獄の拷問のような痛い目に遭わせなければわかりはしない。今度、あのバカ女が俺をあのマヌケと間違えた時は心を完全にぶっ壊す必要がある。あの術を使ってな…」

 

 

しおりの家

 ゼオンが自分とガッシュの違いもわからない鈴芽に制裁を加えたその頃、日本ではガッシュと清麿が不在であり、恵も仕事中であるため、暇なティオがしおりの家に遊びに来ていた。

 

ティオ「ガッシュは清麿と一緒にイギリスでどうしてるのかしら?」

 

コルル「どうかわからない。でも、イギリスのお土産を買ってきてほしいね」

 

しおり「何を買ってくるのかしらね」

 

 そんな中、見ていたニュースで速報が入った。

 

TV『ただいま入った速報です。イギリスのロンドン郊外で旅行に来ていた日本人の女子中学生が怪我をした状態で病院に搬送されました。なお、女子中学生には落雷によるものと思われる火傷と殴られたような怪我があり、現地の警察は暴行を受けている時に急な落雷の被害に遭った傷害事件として捜査しています』

 

コルル「しおりねーちゃん、あのテレビに映ってた人、清麿お兄ちゃんの同級生の鈴芽お姉ちゃんじゃない?」

 

しおり「確かに鈴芽ちゃんね…。でも、一体誰が暴行を加えたのかしら…?」

 

ティオ「とりあえず、清麿に連絡しましょう」

 

コルル「連絡先はわかるの?」

 

しおり「問題ないわ。清麿君のお父さんはイギリスの大学に勤めてるって聞いたの。そこへ連絡してみましょう」

 

 

イギリス 大学

 ちょうどその頃、ホーバーク・キャッスルにバルトロがいないとわかって帰ってきた清麿達はくつろいでいた。

 

清麿「もうこれでイギリスでやる事はほとんど終わったな、ガッシュ」

 

ガッシュ「ウヌ。のんびりできるのう」

 

清太郎「清麿、知り合いから電話が来ているぞ」

 

 清麿は電話に出た。

 

しおり『清麿君、くつろいでいる時に呼び出してすまないわね』

 

清麿「それでしおりさん、何の用で?」

 

しおり『さっき、速報で清麿君の同級生の鈴芽ちゃんが何者かの暴行を受けて病院に搬送されたのよ』

 

清麿「何だって!?水野が!」

 

しおり『私も驚いて清麿君に連絡したの。明日はお見舞いに行くの?』

 

清麿「そのつもりだ」

 

しおり『わかったわ』

 

 電話はここで終わった。

 

ガッシュ「どうしたのだ、清麿」

 

清麿「…水野が何者かの暴行を受けて病院に搬送されたそうだ。明日はお見舞いに行くか?」

 

ガッシュ「行くのだ。もしかすると、フォルゴレとキャンチョメに会えるかも知れぬ」

 

清麿「あの2人に?」

 

ガッシュ「フォルゴレはよく病院でチャリティーコンサートをやってるのだ」

 

清麿「そうか…。変な奴だけど、意外な所があったんだな(けど、本当にそんな事をやってるのか?)」

 

 ガッシュの口からフォルゴレの意外な一面を知った清麿だが、まだこの時点では半信半疑だった。

 

 

ロンドン

 翌日、ガッシュと清麿は鈴芽のお見舞いに病院へ向かった。その道中、前の戦いにおいてガッシュが戦った事がない魔物、フリガロと遭遇して戦闘になった。

 

清麿「ザケル!」

 

 ラージア・フリズドなどの見た事もない術に少し手間取りながらも機転を利かせ、圧倒的な火力の差でフリガロを倒す事に成功した。

 

清麿「何とか倒せたな…。まさか、またガッシュが前の戦いで戦った事もない奴と戦うなんてな…」

 

ガッシュ「さぁ、早く病院へ行くのだ」

 

 病院へ向かうガッシュと清麿を建物の上からゼオンとデュフォーが見ていた。

 

デュフォー「あのお前にそっくりな金髪の奴がガッシュか?」

 

ゼオン「そうだ。あのマヌケが、これから待ち受ける地獄も知らずに笑ってやがる」

 

デュフォー「見つかったのなら、今すぐ消すか?」

 

ゼオン「すぐに消すのは容易いが、それでは俺の気が済まん。さらなる地獄で苦しんでから俺達の手で消した方がいいだろう」

 

デュフォー「それもそうだな」

 

 しばらく歩いていると、キャンチョメと遭遇した。

 

ガッシュ「おお、キャンチョメではないか」

 

キャンチョメ「ガッシュ、性懲りもなく勝負を挑みに来たか!返り討ちにしてくれる!」

 

ガッシュ「違うのだ、キャンチョメ。話があって」

 

清麿「とにかく、あいつと関わると面倒な事になる。とっとと病院へ行くぞ」

 

キャンチョメ「待ってくれ~~っ!」

 

 途中でキャンチョメは噴水に引っかかった。

 

キャンチョメ「うわ~ん、待ってくれ~~っ!話がしたいんだ~~!」

 

ガッシュ「話を聞いてあげるのだ、清麿」

 

清麿「…しょうがねえな」

 

 

フォルゴレの控え室

 2人はキャンチョメの話を聞く事にした。

 

清麿「その話はフォルゴレの事か?」

 

キャンチョメ「そうだよ。フォルゴレが行方不明なんだ。コンサートまであと1時間なのに…帰ってこないんだ」

 

清麿「そりゃあ、大変だな」

 

キャンチョメ「一緒に探してくれよ」

 

清麿「ガッシュから聞いたんだが、フォルゴレのいる場所は病院かも知れないそうだ。ちょうど、俺達も病院に用があるから一緒に行ってみるか?」

 

キャンチョメ「わかったよ。病院だね」

 

ガッシュ「その時に私達の話を聞いてほしいのだ」

 

 

病院

 ガッシュは自分の記憶を頼りに清麿とキャンチョメと共に病院へ来た。

 

キャンチョメ「それで、話って何?」

 

清麿「ガッシュ達の仲間になってくれってさ」

 

キャンチョメ「ええ~~っ!首絞めティオと一緒に戦えだなんて嫌だよ!」

 

清麿「心配するな。必要な時は俺が仲裁する」

 

ガッシュ「この魔界の王を決める戦いでは凄く強くて悪い魔物もいるから、その者を倒すためにもキャンチョメの力が必要なのだ」

 

キャンチョメ「僕の力が?でも、ガッシュのような攻撃力もないし、ティオみたいな防御力もないのにかい?」

 

ガッシュ「キャンチョメは鍛えれば私より強くなれるのかも知れぬのだぞ」

 

キャンチョメ「鍛えれば…僕がガッシュより強くなれる…?うん!仲間になるよ。いつか強くなって、悪い奴をやっつけたらガッシュに勝つんだ!」

 

清麿「(マジで鍛えればキャンチョメはガッシュより強くなれるのかよ…)」

 

 病院に入ってガッシュ達はフォルゴレを探した。

 

清麿「(本当に病院にいるのか…?)」

 

 そう考えていると、何やら大量の荷物を持っているフォルゴレを発見した。

 

清麿「フォルゴレ、何の用で病院に来たんだ?」

 

フォルゴレ「清麿じゃないか」

 

キャンチョメ「フォルゴレ、何してるんだよ!後少しでコンサートが始まっちゃうよ!」

 

フォルゴレ「何って、大事な用事があるって言ったじゃないか」

 

清麿「その用事って何だ?」

 

フォルゴレ「仕方ない。君達にも見せてあげよう」

 

 病室を開けると、そこにいる子供達からフォルゴレは歓声を浴びた。

 

子供「あっ、フォルゴレだ!」

 

 フォルゴレは順番にその病室の子供達にプレゼントを贈った。その光景に清麿は前に会った時と違うフォルゴレの一面に驚いていた。

 

清麿「(…ガッシュの言っていた事は本当だったのか…。フォルゴレがチャリティーコンサートをやってたなんて…)」

 

ガッシュ「私の言った通りであろう」

 

清麿「ああ、そうだな。それじゃあ、俺達は水野の病室へ行こう」

 

フォルゴレ「もう行くのかい?清麿。寂しいじゃないか。席を用意するぜ。ロンドンのコンサートも見て行けよ」

 

清麿「いや…コンサートならもう十分見せてもらった。俺達は怪我をした同級生のお見舞いで病院に来たんだ」

 

フォルゴレ「そうか…。だったら、そっちを優先するといい」

 

清麿「フォルゴレ…」

 

フォルゴレ「ん?」

 

清麿「生き残れよ…」

 

フォルゴレ「…ああ。キャンチョメは守り通す。私は無敵のフォルゴレだぞ」

 

ガッシュ「清麿、鈴芽の病室へ行こうぞ」

 

清麿「そうだな」

 

 2人は鈴芽のいる病室へ向かった。

 

清麿「なぁ、ガッシュ。お前が前に経験した戦いでは本当にキャンチョメはお前より強くなったのか?」

 

ガッシュ「本当なのだ。真っ向からの勝負では基本的にどんな魔物でも勝ち目がないほどキャンチョメは強くなったのだぞ」

 

清麿「キャンチョメがお前の言ったようになるぐらい強くなるのが信じられんな…」

 

 そう言っている間に鈴芽のいる病室に来た。ラウザルクなしでラウザルクを発動している状態のガッシュを超える身体能力を持つゼオンに何度も殴られ、さらにはザケルを受けた鈴芽はほぼ全身に包帯が巻かれてミイラのようになっていた。

 

清麿「水野、その怪我はどうした…?」

 

鈴芽「あっ、高嶺君!ガッシュ君!」

 

清麿「水野に暴行を加えた奴の顔はわかるか?」

 

鈴芽「…あれは夢ね。ガッシュ君が私を殴ったり、雷を手から出したりするはずがないもんね」

 

清麿「はぁ?……」

 

 鈴芽のボケに清麿は凍り付いた。

 

ガッシュ「どうしたのだ?清麿」

 

清麿「……帰るぞ、ガッシュ…」

 

 

ロンドン

 用事を終えて清麿とガッシュは清太郎の元へ戻っていた。

 

清麿「考えてたんだが、やっぱり、水野を襲った奴はもしかすると、ゼオンじゃないのか?」

 

ガッシュ「ウヌ。私は口から電撃を出すから、手から電撃を出せるのはゼオンしかおらぬ。どうしてゼオンが鈴芽にあんな事をしたのだ?」

 

清麿「多分、状況とガッシュの言ってくれたゼオンの性格から考えれば水野はゼオンをガッシュと間違えて怒らせてしまったんだろう。ガッシュを憎んでいた頃のゼオンはガッシュと間違えられると怒るんだろう?」

 

ガッシュ「その通りなのだ。あの頃のゼオンは私を恨まない日はないと言っておった程、私を憎んでおった。その私と間違えられるのがとても腹立たしかったであろう」

 

清麿「ドジで心の底からボケてる水野じゃガッシュとゼオンの違いがわからないのも無理はないか…。ほんと、あいつのボケがあんな事態に発展してしまったのはあまりにも不運としか言いようがないな」

 

 帰っている様子をある動物が見ていた。

 

仔馬「メルメルメ~~」

 

 ガッシュと清麿を追って仔馬も走り出した。

 

 

ロンドン郊外

 ガッシュペアを発見した後、ゼオンとデュフォーはロンドンを後にしてどこかへ行こうとしていた。

 

デュフォー「ゼオン、本が光っているぞ」

 

ゼオン「どうした?」

 

 魔本が光っていたため、何が起こっているのかを確認した。すると、だいぶ後のページに次のような事が書かれていた。

 

『おめでとう、人間界に生き残った諸君よ!この時点を持って、残りの魔物の数は70名となりました。これからも魔界の王になるべく、頑張って戦い合ってください』

 

ゼオン「やっと70人になったのか…。思ったよりも潰し合っていないようだな」

 

デュフォー「今まで通りで行くか?」

 

ゼオン「その通りだ。どんどん他の奴等を潰していく」

 

 

ロンドン

 残った魔物の数が70人になったという知らせはガッシュペアにも届いていた。

 

ガッシュ「前の戦いよりも残り70人になるのが遅いのう」

 

清麿「今回はガッシュが経験した戦いと違ってコルルとかが魔界に帰ってないからな。俺達も負けられないな、ガッシュ」

 

ガッシュ「ウヌ」




これで今回の話は終わりです。
鈴芽はかなりボケているので、ガッシュを憎んでいた頃のゼオンと遭遇したら絶対にガッシュと間違えてゼオンを怒らせてしまいそうだと考え、こんな展開にしました。恵優遇の反面、鈴芽の扱いの悪さに気を悪くしてしまったらごめんなさい。
次はガッシュ不在の状況の中、ティオとコルルだけでロブノスと戦う話です。


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LEVEL10 女の戦い

イギリス 大学

 鈴芽のお見舞いを終えて清麿達は戻って来た。そして、夜になった。

 

清太郎「鈴芽のお見舞いはどうだったか?」

 

清麿「とりあえずは、特に障害は残ってなかった」

 

清太郎「ところで、最近は清麿にも意識してる女性はいるのか?」

 

清麿「べ、別にいる訳じゃ…」

 

清太郎「私が言い当ててみよう。意識してる女性は…日本の人気アイドル、大海恵かな?」

 

清麿「げえ~~っ!!何で親父が言い当てる事ができたんだよ!」

 

清太郎「母さんが電話でその事を話しててな。私としても、清麿が付き合うのに相応しい女性だと思っている」

 

清麿「(お袋…、何で恵さんの事を親父にペラペラ話してるんだよ…!)」

 

ガッシュ「恵は料理などもできるのだぞ」

 

清太郎「料理もできるのか。ははははっ、清麿はいい恋人に巡り会えたな。正直言って、恵は清麿の同級生の鈴芽よりもかなりしっかりしてるから、清麿を支えてくれる素晴らしい奥さんになれると思うぞ。私も付き合うのを認めよう」

 

清麿「(親父まで恵さんとの付き合いを勧めるのかよ…)」

 

???「メルメルメ~~ッ!」

 

 話をしてる最中、ガッシュ達の後を追いかけていた仔馬が割り込んで来た。

 

清麿「(何だ?こいつ。小さいが…馬!?)

 

仔馬「メルメルメ~」

 

清太郎「羊か?」

 

ガッシュ「違うのだ!えっと……ウヌゥ……」

 

 親友であるこの仔馬の名前を言おうとしたガッシュだったが、本名を思い出せず、前

の戦いで呼んでいた仔馬の名前が出てきた。

 

ガッシュ「ウマゴン、ウマゴンなのだ!」

 

清麿「(こいつがウマゴン…ってか、いつの間にいたんだ…?)」

 

ウマゴン「メ、メル!?メルメル!!」

 

ガッシュ「スマヌ、お主の本名を思い出せぬのだ」

 

ウマゴン「メル…」

 

 本名を覚えていないガッシュにウマゴンは落ち込んで体育座りした。

 

ガッシュ「ヌオオッ、ウマゴン!泣くな、泣くでない!」

 

清麿「こいつとは知り合いなのか?」

 

ガッシュ「そうなのだ!知り合いどころではない、大親友なのだ!」

 

 本名を忘れられた事で一旦落ち込んだものの、すぐに気を取り直して親友のガッシュに再会できた喜びでウマゴンはガッシュを舐めまわした。

 

ガッシュ「や、やめるのだ、くすぐったいのだ!」

 

清麿「へえー、ウマゴンって人懐っこいな」

 

 便乗して清麿はウマゴンをなでようとしたが、ウマゴンは噛みついた。

 

清麿「いってぇ!何で噛みつくんだよ!」

 

ウマゴン「ガガガガガガッ!」

 

清麿「ぎゃああっ!!」

 

ガッシュ「やめるのだ、ウマゴン!清麿は私の大切な友達なのだ!」

 

 騒動はしばらくして何とか収まった。

 

清太郎「確か、この仔馬はウマゴンって言ってたね。どうするんだい?」

 

清麿「とりあえず、日本に帰ったらうちで面倒をみる事にする」

 

ガッシュ「ウマゴン、明日は私を背中に乗せて走ってほしいのだ!」

 

ウマゴン「メルメルメ~~」

 

清太郎「ガッシュは相変わらず元気いっぱいだな」

 

清麿「(そう言えば、恵さん達はどうしてるんだろうな?)」

 

 

モチノキ町 空き地

 

 日本のモチノキ町では、ティオペアとコルルペアでコルルの術の制御の特訓をしていた。

 

ティオ「コルル、どうしたの?」

 

しおり「コルル、動いて!」

 

 夏休みになってからも恵の都合がいい日に特訓をしていて、コルルは第三の術まで習得していたが、ゼルクの制御はようやく無差別に人を襲う事はなくなったが、仲間との連携はまだとれない状態だった。

 

コルル「ごめんね…、まだ私…」

 

ティオ「コルルが気にする事はないわよ。悪いのはそんな術をコルルに使わせるようにしたガッシュのお父さんよ」

 

恵「呪文の力はパートナーが制御するからね。コルルちゃんのケースは特殊だと思うわ」

 

コルル「でも…、私…」

 

しおり「あんまり引きずらない。今日はここまでだけど、たまには気分転換でもしましょう」

 

ティオ「そうだ、明日はモチノキ町で恵のコンサートがあるから、息抜きしましょう」

 

しおり「ちょうどよかったわね、コルル」

 

コルル「恵お姉ちゃんのコンサート、楽しみにしてるよ」

 

 

モチノキ町

 

 翌日、しおりとコルルはコンサート会場へ向かっていた。

 

しおり「今日はコルルが楽しみにしていた恵のコンサートよ。最後まで聴いてきましょう」

 

コルル「恵お姉ちゃん、今日のコンサートではどんな歌を歌ってくれるのかな?」

 

 

コンサート会場

 

 当日になり、恵はティオと共にコンサートの準備で会場に来ていた。

 

ティオ「もうマルスもいなくなって安心してコンサートに臨めるわね」

 

恵「そうね。あの追われていた日々が嘘みたいよ」

 

 そんな中、会場の人が来た。

 

スタッフ「恵ちゃん、恵ちゃん宛てに変な物が来てるよ」

 

 何やらスタッフが恵宛に来た紙切れを恵に渡すと、恵の表情が一変した。

 

 それから少ししてしおりとコルルがコンサート会場に到着した。

 

コルル「早く恵お姉ちゃんの歌を聴きたい!」

 

しおり「予定の時間にならないと始まらないわよ。でも、結構早く来たからあまり混んでないわね」

 

コルル「今のうちに会場に入って待とうよ」

 

しおり「そうね」

 

 会場に入ろうとすると、恵のマネージャーと遭遇した。

 

しおり「あの…、急いでいるようですけど、何かあったのですか?」

 

マネージャー「ねえ、あなた達、恵ちゃんとティオちゃんがどこへ行ったか知らない?」

 

コルル「私としおりねーちゃんはここに来たばかりで2人とは会ってないよ」

 

マネージャー「困ったわね…。コンサートがあと1時間半で始まるというのに…」

 

しおり「それでしたら、私達も探すのを手伝っていいですか?私、恵とは知り合いなので」

 

マネージャー「ありがとう。私も誰かに手伝ってもらいたいと考えていたから助かるわ」

 

コルル「恵お姉ちゃんはいつからいなくなったの?」

マネージャー「そういえばスタッフが…」

 

 恵がティオと共にどこかへ行ってしまったか、紙切れを恵に渡したスタッフに話を聞いた。

 

スタッフ「そう言えば、この紙切れを見た途端、急に恵ちゃんはティオちゃんと一緒にどこかへ行ってしまったよ」

 

しおり「見せてくれませんか?」

 

スタッフ「いいけど…」

 

 頼まれた通り、スタッフは持っていた紙切れをしおりとコルルに見せた。

 

しおり「何々、『大海恵へ。これを読んだらすぐに一緒にいる少女と共にモチノキ港8番倉庫へ来い。もしもこれを無視した場合、コンサートに来た客の命はないと思え』。これって、脅迫状じゃない!」

 

スタッフ「私もこれはただのイタズラだろうと言ったんですけど…」

 

しおり「(これは…魔物が絡んでいるわね…)紙切れに書かれているモチノキ港8番倉庫はどこにあるのですか?」

 

マネージャー「モチノキ港8番倉庫はこの近くにあるわ」

 

しおり「すぐにそこへ行って恵とティオを連れてきます」

 

マネージャー「もしも何かあったら連絡して。これはただのイタズラじゃない可能性も十分にあり得るわ」

 

コルル「それじゃあ、行ってきます」

 

 

モチノキ港8番倉庫

 

 脅迫状通りに恵とティオはモチノキ港8番倉庫に来た。

 

ティオ「ちょっとちょっと…、ここは冷凍倉庫よ…」

 

恵「ここに来いって言ってたけど…」

 

 突如としてレーザーが飛んできてティオに直撃した。

 

ティオ「がっ!」

 

恵「ティオ!」

 

 さほど間を置かずにまたレーザーが飛んできて今度は恵に直撃した。

 

恵「ああっ!」

 

ティオ「恵!ちょっと、隠れて撃つなんて卑怯よ!いるんだったら出てきなさいよ!」

 

???「どうする?ロブノス。出てやろうか?」

 

ロブノス「そうだね、リュック。おびき寄せるのに成功したからな」

 

 ティオの文句に答える形でロブノスがパートナーと一緒に出てきた。

 

恵「あなた達が脅迫状の送り主なの!?」

 

リュック「そうだ。人気アイドルをおびき寄せるにはこうする方が手っ取り早いと思ってな」

 

ティオ「あんた達、あんな脅迫状を送ったからにはけちょんけちょんにしてやるわよ!!」

 

ロブノス「ふふふ、君達では勝てないよ。リュック」

 

リュック「ビライツ!」

 

 ロブノスの目からレーザーが発射された。今度は恵とティオはちゃんと発射の瞬間を目撃したため、咄嗟にかわす事ができた。

 

恵「(この攻撃は相手をよく見れば呪文での防御が間に合わなくても避ける事は)」

 

ティオ「ああっ!!」

 

 正面にいるロブノスの攻撃をかわした2人だったが、今度は背後からビライツがティオに直撃した。

 

恵「そんな!ちゃんとティオも私と一緒によけたはずなのに!」

 

 不可解な事に気を取られている間に壁にぶつかって反射したビライツが恵を襲った。

 

恵「きゃっ!」

 

 ガッシュが経験した戦いでは、ロブノスとの戦いの際、清麿は反射の角度などからビライツが来ない安全地帯を短時間で割り出す事に成功した。しかし、恵には清麿のような頭脳はなく、不可解な後ろから来るビライツと反射するビライツに呪文を使う暇もないほど翻弄された。数分後、2人はボロボロになり、寒さで意識もはっきりしなくなっていた。

 

ロブノス「案外、あっけなかったな」

 

リュック「さて、まずは一体かな?」

 

恵「(清麿君…ごめんね…。私達、清麿君達の力になれなかった…。清麿君はガッシュ君と一緒にイギリスにいるとわかってるのにどうして清麿君がいてくれればって思っちゃうんだろう…?)」

 

???「恵、ティオ!」

 

 ロブノスが止めを刺そうとしたところ、しおりとコルルが到着した。

 

恵「しおり…」

 

ティオ「コルル…」

 

しおり「2人共ボロボロじゃない!」

 

ロブノス「おや、もう一体が来たか。おびき出そうと思ったけど、来てくれて手間が省けるよ」

 

コルル「どうして脅迫状を…!?」

ロブノス「決まってるじゃないか。君達をコケにしに来たのさ。ほんとはガッシュをコケにしてやろうと思ったけど、思った以上にかなりガッシュが強くなっていたから、勝てないと判断してガッシュがこの町からいなくなるのを待ってここに来たんだよ」

 

しおり「強いガッシュ君に勝てないから海外旅行でいなくなるのを待ってティオと恵を襲うなんて弱い者いじめじゃない!」

 

ロブノス「はははっ、我はその弱い者いじめが好きなんだ。ある奴が言ってたよ。守る事しか能がない弱い奴がモチノキ町にいるって。そんな弱い奴を仲間にしたガッシュもどうかしてるよ。強い攻撃呪文がないなら何の役にも」

 

コルル「その言葉…、取り消して!!」

 

 いつもの姿からは考えられないコルルの強い怒りにロブノスは思わず怯んだ。

 

コルル「ティオは役立たずなんかじゃない!私とガッシュの大切な友達よ!ティオと恵お姉ちゃんを傷つけてバカにするなら、私は絶対に許さない!!」

 

 激しいコルルの怒りに反応するかの如く、コルルの本が輝いた。

 

しおり「これは…」

 

ティオ「新しい呪文なの…?」

 

 本を確かめてみると、ゼルクの行数が増えている事に気付いた。

 

しおり「確か、行数の増えた呪文は強くなるんだったわね。戦う準備はいい、コルル!」

 

コルル「うん!ガッシュがいないから、私がしおりねーちゃんと恵お姉ちゃんとティオを守らないと!」

 

しおり「ゼルク!」

 

 呪文でコルルは凶暴な姿に豹変した。その光景にロブノスは驚き、リュックは思わずビビった。

 

リュック「かわいい女の子があんな化け物に豹変するなんて…」

 

ロブノス「何をビビってるんだ、リュック!」

 

リュック「そ、そうだな。ビライツ!」

 

しおり「コルル、このまま突っ込んで行くのよ!」

 

コルル「うん!」

 

 ちゃんとしおりの指示を聞いて返事をした事にしおりはもちろん、恵とティオですら驚いていた。

 

ティオ「コルルが…、敵味方の識別ができて話せる…」

 

恵「呪文の制御に成功したのよ!」

 

 ビライツを爪で弾いて反射させた後、コルルは一気にロブノスに接近して格闘戦を挑んだ。コルルの猛攻にロブノスはどうにもならなかった。

 

ロブノス「くっ、もう1人はこんなに強かったとは…」

 

リュック「ビライツ!」

 

ティオ「よく狙いを定めないで何をやって」

 

 すると、コルルの背後からビライツが飛んできたが、かすった程度であり、攻撃を続けた。

 

ティオ「恵、さっきのは見た?」

 

恵「ええ。あそこに何かいるわね。サイス!」

 

 ビライツが飛んできた方向へサイスを撃ち込んでみると、そこにもう1人のロブノスがいた。

 

ティオ「こいつが後ろから撃ってた張本人ね!コルル、今戦ってる奴を後ろへ投げ飛ばしなさい!」

 

コルル「ぜええいっ!!」

 

 今、戦っている方のロブノスを掴み、コルルはもう1人のロブノスの方へ投げ飛ばした。

 

しおり「これで終わりじゃないわ、ゼルセン!」

 

ロブノス「うぎゃ~~っ!!」

 

 ロケットパンチのような術を受けてロブノスは壁に激突した。

 

ティオ「凄いじゃない、コルル!」

 

恵「術を制御できるようになるとこんなに頼もしくなるなんて!」

 

ロブノス「くそっ、こうなったらリュック、合体だ!」

 

リュック「ああ。レリ・ブルク!」

 

 2体のロブノスはみるみるくっついていき、身体も大きくなった1体のロブノスになった。

 

ティオ「どうなってるの?合体して1体になるなんて!」

 

ロブノス「教えてやろう、今まで我は呪文で2体に分身していたからだ。さて、攻撃力、防御力共にフルパワーになった我に勝てるかな?」

 

しおり「(どれぐらい敵の強さが上がってるのかわからないけど…)ゼルク!」

 

 再びコルルはロブノスに猛攻を加えた。しかし、さっきと違って攻撃を受けてもロブノスは少ししか傷つかない上に少し下がる程度だった。

 

ロブノス「その程度か…」

 

 猛攻の中でも難なくロブノスはコルルの腕を掴んだ。

 

しおり「(思った以上に強い!これが、あの魔物の本来の力…?)」

 

リュック「ビライツ!」

 

 今までのビライツとは比較にならない威力のビライツがコルルに直撃した。ビライツの直撃を受けたコルルは吹っ飛んだ後、術が解けて元の姿に戻ってしまった。

 

しおり「コルル!」

 

ロブノス「やっぱり今日はついてるぞ。2体も魔物を倒せるんだから」

 

リュック「さて、止めと行こうか。ビライツ!」

 

しおり「(しまった!)」

 

 ビライツの直撃を受けたコルルの方を先に気にして駆け寄ったためにしおりはよけるのが間に合わなかった。

 

恵「セウシル!」

 

 ところが、間一髪でティオの防御呪文の発動が間に合った。

 

ロブノス「な、なんだ!?我の攻撃が防がれたなんて!」

 

ティオ「私の事を守る事しか能がないとバカにしてたけど、その守る力に泣かされる気分はどうかしら?」

 

恵「ガッシュ君との特訓で鍛えられた私達の守りの力は伊達じゃないわよ」

 

ロブノス「くそ、リュック、もっと力を込めて!」

 

リュック「もちろんだ。こんな盾、ぶっ壊してやる!」

 

 セウシルを破壊するため、リュックは全ての心の力を込めた。しかし、リュックがいくら心の力を込めてもガッシュとの特訓で強化されたティオのセウシルにはヒビ一つ入らなかった。

 

しおり「コルル、大丈夫?コルル!」

 

コルル「た、ぶん…」

 

しおり「コルル、こうなったら最後の手段よ。パートナーの持ってる本を狙うわ。敵が

ティオに気を取られている今がチャンスよ。準備はいい?」

 

コルル「いいよ、しおりねーちゃん!」

 

しおり「ゼルクッ!」

 

 再びコルルは豹変して今度はリュックの方へ向かった。一方のロブノスとリュックはセウシルを破ろうと必死になっていたため、コルルの接近に気付いていなかった。そうしている内にビライツの発射が止まってしまった。

 

リュック「しまった、心の力が!」

 

コルル「ぜえええぃ!!」

 

 リュックはコルルが来てる事に気付いてなかったため、無防備なままコルルの爪でロブノスの本をズタズタに引き裂かれてしまった。

 

ロブノス「そ、そんな…!ガッシュの仲間がこんなに強かったなんて…!」

 

 信じられない光景を認められないままロブノスは魔界へ送還された。その際、ゼルクの行数が増えた際にゼルクの任意解除も可能になったのか、しおりが心の力の放出を止めた後、コルルは元の姿に戻った。

 

 

 

 戦闘の後、冷凍倉庫は寒いので、一同は外に出た。

 

ティオ「恵…、私達…初めて勝ったわよね!」

 

恵「ええ。しおりとコルルちゃんの協力もあってだけどね」

 

しおり「それでも勝ったという事実に変わりないわ」

 

コルル「しおりねーちゃん、ちょっと荒っぽくなってたけど、やっと私も術を制御できたよ…。これで、暴れて他の人を傷つける事もなくなるよね」

 

しおり「その通りよ。コルルが戦う決意が出来たから制御が可能になったのかもね。私も、いつかコルルが術を制御できるようになるって信じてたから…」

 

ようやく術の制御ができた事にしおりとコルルは嬉し涙を流していた。そんな状況の中、リュックはしれっと逃げ出そうとした。

 

恵「どさくさに紛れて逃げるのかしら?」

 

リュック「ゆ、許してくれ!見逃してくれ!」

 

ティオ「脅迫状を出した上、恵を傷だらけにしておきながら許してくれですって!?息ができなくなるぐらい首を絞めてやるわよ!!」

 

 いつもより怒り狂っているティオの首絞めでリュックの首はかなり伸びた。

 

コルル「お巡りさんに知らせなきゃ」

しおり「そうね。脅迫状を送ったり暴行をやったからにはあの人は逮捕されても文句は言えないからね」

 

 通報により、駆け付けた警察によって脅迫状の件や恵への暴行の容疑でリュックは逮捕された。

 

ティオ「これで一件落着ね」

 

恵「まだよ、ボーッとしてるとコンサートの開始に間に合わないわ!」

 

しおり「後、30分よ!マネージャーさんやスタッフも心配してたし、早く行こう!」

 

 

コンサート会場

 

 何とか会場に到着し、予定に間に合った。恵のコンサートを楽しみにしていた面々の中には金山達の姿もあった。

 

しおり「今回もコンサートが台無しにならずにすんだわね」

 

コルル「うん。恵お姉ちゃんのコンサートは私も楽しみにしてたから、誰にも妨害されたくないよ」

 

 その日のコンサートは無事に終わったのであった。

 

しおりの家

 

 翌日、ある知らせがしおりの家に来ていた。

 

コルル「しおりねーちゃん、誰から電話が来たの?」

 

しおり「清麿君からよ。ガッシュ君と一緒に帰って来たって。コルルも清麿君の家に行く?」

 

コルル「行きたい。どうせだから、ティオも一緒に連れて行こうよ」

 

しおり「そうね」

 

 

 

高嶺家

 

 清麿とガッシュはウマゴンと共に家に帰ってきた。ガッシュとウマゴンが清麿のベット

で跳ねている最中、清麿の同級生が来た。前の戦いの時は鈴芽、岩島、山中が来たが、今回は鈴芽はゼオンに怪我を負わされて入院してまだ帰ってきておらず、代わりに金山が岩島や山中と共に来て清麿に勉強を教えてもらっていた。

 

金山「高嶺、水野はイギリスで怪我をして入院してるってニュースであったけど、まさかお前が怪我をさせたんじゃないだろうな?」

 

清麿「違うって!」

 

岩島「高嶺君の可能性は全くないぞ。ニュースでは、犯人とみられてる奴は詳しい事はわからないけど、逆立った金髪の10代後半ぐらいの奴と銀髪で白い服を着た小さい子供の2人だそうだ」

 

山中「清麿は黒髪だから犯人には全く該当しないな。よかったな、似たような奴が犯人じゃなくて!」

 

清麿「まぁ、そうだな(山中の言う通りよかった…。もし、ゼオンの外見がガッシュに似てるようにデュフォーって奴の外見が俺に似てたらたまらないぜ…)」

 

金山「ところで高嶺、あの馬は何かしてるぞ」

 

 金山の言う通り、ウマゴンは自分の本を読んでもらおうと見せびらかしていた。

 

山中「何やってんだ?あの馬」

 

岩島「いやいや、ロバだろ?」

 

清麿「(パートナーを探しているのか…。でも、俺とガッシュにはウマゴンのパートナーがサンビームって人だとわかってはいるが…、どこにいるのかわからないからコルルの時と同じでどうにもならないな…)」

 

華「清麿、ガッシュちゃん、可愛いお客さんが来たわよ」

 

清麿「可愛いお客さん?」

 

 華の言う通り、可愛いお客さんのティオとコルル、しおりが来た。

 

コルル「帰ってきたって聞いたから遊びに来たよ、ガッシュ」

 

ガッシュ「ティオにコルルにしおりではないか」

 

ティオ「恵が仕事でいなくて暇だったから、しおりとコルルの2人と一緒に来たの」

 

ウマゴン「メルメルメ~!」

 

 ティオ達にウマゴンは飛びついてきたが、しおりがキャッチした。キャッチしたしおりをウマゴンは舐めまわした。

 

しおり「や、やめて、くすぐったいわ!」

 

 すぐにウマゴンはティオとコルルにも懐いて舐めまわした。

 

しおり「清麿君、あの仔馬は何?」

 

清麿「こいつはウマゴンと言って、魔界にいた頃のガッシュの友達だそうだ」

 

ティオ「じゃあ、魔物?」

 

コルル「ちゃんと本を持っているよ」

しおり「それにしても、人懐っこいわね。コルルやティオにも負けないぐらい素晴らしい友達ね」

 

清麿「(なぜ俺にだけ懐かないんだ…、ウマゴン…)」

 

金山「おおっ、高嶺にも恋人ができたのか?」

 

清麿「違うって!」

 

しおり「私はガッシュ君の友達のコルルの保護者よ。清麿君の恋人は別の人よ」

 

山中「誰なんだ。教えてくれよ」

 

しおり「ひ・み・つ」

 

金山「教えるのがダメなら、せめてヒントを」

 

しおり「そうね…。ヒントは普通の女の子じゃなくて有名人の女の子よ。そこから考えてほしいわ」

 

岩島「う~ん…」

 

山中「有名人か…。やっぱ、誰なのかわかんねえな」

 

清麿「しおりさんも金山達の宿題を手伝いますか?」

 

しおり「そうね。中学時代の復習にもなるし、手伝うわ」

 

 しおりも金山達の宿題を手伝った。ウマゴンの方はガッシュとティオとコルルの3人と一緒に遊んでいた。金山達が帰った後、一同は清麿がイギリスに行っている間に起こった出来事などを話していた。

 

ガッシュ「コルルはやっと術を制御できるようになったのか」

 

コルル「これで一緒に戦う時もガッシュやティオを襲う事はなくなるよ」

 

ティオ「それより…ウマゴンはどうするの?」

 

清麿「パートナーがまだ見つかっていないからうちで面倒をみる事にした」

 

ガッシュ「ウマゴン、私を背中に乗せて走ってほしいのだ!」

 

ウマゴン「メルメルメ~~!」

 

 ウマゴンに乗ってガッシュは外に出た。

 

清麿「わざわざ外に出なくても…」

 

コルル「ウマゴンのパートナーってどんな人かな?」

 

ティオ「わからない。でも、清麿や恵にしおりのようないい人だといいわね」

 

 こうして、ウマゴンは清麿の家に住む事になった。




今回は出番が飛んだロブノスが出てくるとともに、いつもガッシュが圧倒的な力で敵を蹴散らしていくため、戦闘力が大幅に劣るティオとコルルだけでロブノスと戦うシチュエーションにしました。
今小説でのマルス戦では恵は原作と違って全く怪我をしていないため、その分も含めてティオ共々、ロブノスの攻撃に翻弄されてボロボロになるのを描きました。
次はアポロが登場します。
なお、感想で読みづらいとの指摘があったのでこの話から少し隙間を空けました。


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LEVEL11 自由な旅人

???

 ある場所を旅人が歩いていた。

 

旅人「見なよ、ロップス。雲があんなに早く流れている」

 

ロップス「かーう!」

 

旅人「はははっ、気持ちいいかい?僕もだよ。鳥になれたらもっと気持ちがいいのにな。なぜ人には翼が生えてないんだろう?」

 

ロップス「かーう、かう!」

 

 旅人の肩に乗っているロップスは降りてから走り出した。

 

旅人「はははっ、今度はそっちに行きたいのかい?」

 

 ロップスと旅人の行く先はモチノキ町だった。

 

モチノキ町

 夏休みが終わり、新学期が始まった。夏休み中にゼオンの逆鱗に触れて怪我を負わされた鈴芽はまだ一部に包帯をしているものの、始業式に間に合った。新学期開始早々、ガッシュはウマゴンと一緒に誤って家の門を壊してしまった。その修理のために清麿はお店で必要な品を買って帰ろうとしていた。

 

清麿「(くそ、せっかくの日曜日なのに何で俺が家の門の修理をしなきゃいけねえんだ?だいだい、門を壊したのはガッシュ達じゃねーか。全く…)」

 

???「ねえねえ、お兄ちゃん」

 

 声のした方を向くと、そこに何かを見せている子供がいた。

 

子供「このお店、どこかわかりますか?」

 

清麿「(玩具屋のチラシじゃねえか。1人で行くのか?)

 

子供「うん」

 

清麿「ここなら、あの向かいのビルだ。黄色い看板が見えるだろ?」

 

子供「あっ、あった!ありがとう、お兄ちゃん」

 

清麿「さてと、俺も家に…」

 

 ところが、あるものを見て驚いた。

 

清麿「おい、コラ、お前!赤信号だ!戻れ、急に飛び出すな!」

 

 清麿の制止も虚しく、子供は赤信号なのに飛び出してしまい、車に敷かれそうになった。

 

清麿「くそっ、くそっ!」

 

???「リグロン!」

 

 声と共にどこからともなくロープが出てきてロープの先のフックを車に引っかけて車を上に上がった。

 

清麿「あれは…」

 

 ロープの先を見ると、そこにはロップスと本を持っている旅人の姿があった。

 

清麿「(本…、魔物の本!あの男…!)」

 

 少し離れた場所にロープで吊り上げた車を動かした所でロープが消え、車が落ちた。それを見た旅人はロップスと共に去って行った。

 

清麿「ちょ、ちょっと待て!」

 

 子供を歩道に連れて行ったあと、清麿は旅人がどこにいるか見回したが、既に旅人はいなかった。

 

 

 

清麿「(しかしあの男、魔物の力をこの子を助けるために…。少なくとも悪い奴ではなさそうだな…)」

 

 旅人の後を追っていると、公園に来た。すると、笛の音色が聞こえた。

 

清麿「ん?(楽器の音色だ…。って、あの男!)」

 

子供A「すごーい!」

 

子供B「カサブタの次は君にこの声がとどきますようにって曲をやってよ」

 

子供C「いいや、見えない翼が先!」

 

清麿「(人気者だな…気付かれないように様子を見るか…)」

 

子供D「次はこの楽器をやってよ」

 

旅人「お、この楽器は初めてだなぁ。上手く吹けるかわからないぞ」

 

 しかし、初めてとは思えない程、上手なハーモニカの演奏をした。

 

清麿「(え、もう!?本当に初めてか!?こいつ、どういう奴なんだ…?)」

 

 子供達は他の楽器を旅人に演奏させてほしいと頼んだ。

 

清麿「(ハハッ、この男、すげえや…)」

 

旅人「君の本は何色だい?僕の本は空色だ」

 

 言葉通り、旅人の持っている魔本は青だった。

 

清麿「(何っ?)」

 

旅人「ごめんよ、君達。用事ができたんだ。もう行かなきゃ」

 

子供達「えー!」

 

 旅人と共に清麿は別の場所に来た。

 

清麿「(どうする…、見た所、悪い奴ではなさそうだが…)」

 

旅人「安心しなよ。話をしたいだけだ。それとも、君は戦いたいのかい?」

 

清麿「いや…、そんな事は…」

 

旅人「よかった。僕は旅が好きなだけでね…、戦いには興味がないんだ。まぁ、僕にとっては魔界の王の争いなんてどうでもいいんだよ」

 

ロップス「かう、かう!」

 

アポロ「はははっ、この事を言うとロップスは怒るけどね。さ、お互い自己紹介といこうよ。僕の名はアポロ。君は?」

 

清麿「清麿。高嶺清麿だ。あんた、魔界の王がどうでもいいって…」

 

アポロ「ああ。僕の家はアメリカの小さな財閥でね、跡を継ぐ前の最後の自由を味わうために世界を旅してるんだ。その途中でこの子と本を拾ったんだが…、それからというもの、戦いを挑んでくる奴が後を絶たない。それはもう、色んな奴に出会ったよ。どうやら魔物と一緒にいると、お互いに引き寄せあうらしいね。でも、自分から戦った訳でもないし、誰の本も燃やしてないよ。みんな、適当にあしらってさよならしたんだ。魔界の王を決めるために人間界に送られてきた魔物の子は100人もいるんだろう?今はもっと減ってるだろうけど、そんなの、いちいち戦ってられないよ」

 

清麿「じゃあ…、何でその子と一緒に…」

 

 そんな中、ロップスが何かを吐きそうにしていた。

 

アポロ「あはは、ごめんよ。梅干しはまだ苦手だったっけな」

 

清麿「……」

 

アポロ「だって、かわいいじゃないか、こいつ。ロップスと旅してると楽しいんだ。いい旅の道連れができたよ。ロップスの力も便利な時もあるけど、別に僕には必要ないしね。僕はなるべく人には関わらず、自由に旅」

 

清麿「(この男…、違う…。力や戦いに心をとらわれた今までの本の持ち主とは考え方が違う…!この男には何か、底知れぬ強さ、いや、大きさを感じる。一体、どんな奴なんだ…)」

 

アポロ「君は戦ってるのかい?」

 

清麿「ん、ああ。誰も彼もってわけじゃないけど…。俺の本の魔物はガッシュというんだが、俺はそのガッシュを王にしたい。口に出すのは照れ臭いが、苦しい所を助けてもらったんだ。あんたにはわからないと思うが、俺には、俺にはそれがとてもでかい事だったんだ。そのガッシュが優しい王様になりたいと言った。だから…、だから俺はガッシュを王にしたい。とにかくよかった。あんたとは戦わずに済んで。みんな、こうだといいのにな…。じゃあ、俺、そろそろ行くよ」

 

 門の修理もあり、清麿は帰ろうとした。

 

清麿「それでいいのかな…?」

 

アポロ「……ん?」

 

清麿「いや、何でもない。ごめん。何でこんな事聞いたんだろう?あんた達があんまり自由で幸せそうに見えたのかな?じゃあ」

 

アポロ「待ってくれ。どうやら君は僕にないものを持っているようだ。だから、僕にはさっきの君が大きく見えた。」

 

清麿「アポロ、何を?」

 

アポロ「うん、決めた!清麿、僕と戦わないか?」

 

清麿「何!?」

 

アポロ「君の魔物も僕の魔物もいつかは消える。ならば、僕は君と戦ってみたい」

 

 戦いなんてどうでもいいと言っていたアポロが戦いたいと言った事に清麿は衝撃を受けた。それから、アポロは戦う場所といつ戦うかを伝えた。

 

清麿「(今まで戦いを避けていた奴がなぜ、いきなり戦いたいなんて…。…そう言えば、ガッシュは前の戦いの経験があるから、アポロの事も知ってるかも知れない。ガッシュに聞いてみよう)」

 

 

 

高嶺家

 家に帰った後、清麿はガッシュからアポロの事について聞いていた。

 

ガッシュ「アポロは敵ではない」

 

清麿「やっぱり、敵じゃないんだな」

 

ガッシュ「しかし、戦った事もあるのだ」

 

清麿「…そうか…」

 

ガッシュ「清麿。我々は戦いに行かねばならぬ。そして、アポロには伝えねばならぬことがある」

 

清麿「前回、アポロとロップスに何かあったのか?」

 

ガッシュ「ウヌ。それと清麿、いくらこちらの方が術の威力が高いからといって今回の戦いは決して油断するでないぞ」

 

清麿「ああ…強いのか?アポロは」

 

ガッシュ「油断していたらすぐに本を燃やされる。一度見逃してもらったからこそ、私はロップスとの戦いで魔界へ帰らなかったのだ」

 

清麿「…そうなのか」

 

ガッシュ「心配はいらぬ。アポロもロップスも強いが卑怯ではない。正々堂々と向かってくる。1対1なら大丈夫であろう」

 

清麿「採石場へ行かないとな…」

 

 

 

モチノキ町

 一方のアポロとロップスも採石場へ向かっていた。

 

アポロ「ロップス、ちょっと止まってごらん」

 

ロップス「かう?」

 

 止まった直後、ロップスのすぐ近くに植木鉢が落ちてきた。

 

ロップス「か、かう~~~!」

 

アポロ「はははっ、危なかったな。怪我でもしたら大変だ…。大事な戦いなんだ…。そして、清麿は何か考えている。悪い事を考えている訳ではないようだけど、全力で戦った後に聞いてみよう」

 

 

 

採石場

 ガッシュペアとロップスペアは採石場に来た。

 

ガッシュ「私の名はガッシュ・ベルなのだ」

 

アポロ「ありがとう、ガッシュ・ベル、清麿。逃げ出さずによく来てくれた」

 

清麿「ああ。言っておくが、ガッシュの攻撃はかなり強力だ。まともに喰らったら大怪我じゃ済まないかも知れないぞ」

 

アポロ「怪我するぐらい承知の上だよ。清麿だって怪我を恐れずに戦ってきたんだろう?リグロン!」

 

 ロップスはロープで岩を持ち上げた後、ガッシュの元へ投げた。

 

清麿「ザケル!」

 

 投げられた岩を威力を加減したザケルで砕いた。

アポロ「なるほど、君の力は雷かな?かっこいいね」

 

清麿「どうだ?この砕かれた無数の岩はよけきれまい!?それとも、お前の力のロープで全てを動かしてみるか!?」

 

アポロ「いや、その必要はない」

 

 砕かれた岩をアポロは全てかわした。

 

清麿「あれだけの岩を全てかわした…?」

 

アポロ「なるほど、僕が持ち上げた岩をこんな風に使うとはね。やはり、君は頭がいい。感じた通りだ。だが、それだけでは僕には勝てないよ!」

 

 落ちてきて手で持ちやすい大きさの石を手にした後、アポロは石を投げた。咄嗟の行動に清麿は対処できなかったが、その光景を再び見たガッシュはマントで石を弾いた。

 

清麿「済まない、ガッシュ」

 

アポロ「清麿、手加減は不要だ。僕は容赦なく本を燃やす」

 

清麿「(強い…この男、ブラゴとそのパートナー以外では誰よりも…強い!)」

 

アポロ「目が覚めたか、清麿。ならばゆくぞ、リグロン!」

 

ロップス「かう~~!」

 

 今度は複数の岩を投げつけた。

 

清麿「これならどうだ!?ラシルド!」

 

 複数の岩をラシルドで弾き返した。ところが、弾き返す直前、アポロはロップスを抱えてその場から離れた。

 

清麿「何!?攻撃を跳ね返す前からよけて…。まさか、アポロはこの技をまだ見ていないはず…なのに、なぜその攻撃の効果を!?」

 

ガッシュ「アポロは勘が鋭い!気を付けるのだ!」

 

アポロ「大丈夫かい?」

 

ロップス「かう」

 

アポロ「次からはあの技にも気を付けないとな」

 

清麿「くそっ、今度はよけられない程速い術をぶつける!ザケルガ!」

 

 ザケルより貫通力とスピードに優れたザケルガの速さにはアポロも驚いていた。

 

アポロ「(強い攻撃が出ると思ったいたが…速い!)」

 

 ラシルドの時と同じようにかわしたが、アポロとロップスは思わずザケルガにかすってしまった。

 

清麿「(ザケルガが直撃しなかっただと!?何て奴なんだ…)」

 

アポロ「(さっきの攻撃…、速い上に威力も相当なものだ…。よけるのが少しでも遅れていたらただでは済まなかっただろうな…)」

 

 しばらく一進一退の攻防が続いた。

 

清麿「(どうする…、どうする…。奴はガッシュが言う通り、鋭い勘の持ち主だ…。落ちてくる岩をよけ、初めて見る術でも簡単によける。ラシルドは通じない…。一番スピードが速いザケルガでさえ直撃は望めない…。でも、使える術の中で一番強力だが制御できないバオウは使いたくない…。どうしたらいいんだ…)」

 

ガッシュ「清麿、アポロの強さに呑まれるでない!相手の強さに呑まれずに自分を信じるのだ!そして、相手の動きをよくみてから私に指示を!」

 

 ガッシュに喝を入れられて清磨は気持ちを切り替えた。

 

清麿「…そうだ…呑まれちゃいけない!アポロは凄い…!今まで出会った事のない天才かも知れない。だが、俺達だって…多くの戦いを潜り抜けてきたんじゃないか!アポロに負ける理由など、何もない!すまんな、弱気になってお前を王にすると心に決めたのに…」

 

ガッシュ「ウヌ。清麿、ここから本領発揮なのだ!」

 

清麿「ああ!本気で行くぞ!」

 

アポロ「(いい顔だ。来る…、清麿達の本当の強さが来る!)」

 

清麿「ガンレイズ・ザケル!」

 

 複数の電撃が襲い掛かった。

 

アポロ「まだこんな攻撃を隠し持っていたとは。リグロン!」

 

清麿「(慌ててよけた?そうか、アポロはさっきのザケルガも余裕でよけてたんじゃなかったのか!だとしたら、工夫すれば攻撃を当てる事だってできる!)」

 

 自分の所に来るたくさんの電撃を岩で相殺し、相殺できなかった分は慌ててかわした。

 

アポロ「煙?そうか、この煙…!リグロン!」

 

 攻撃によって発生した煙が何の意図だったのか理解したアポロは再び術を発動させた。

 

アポロ「ロップス、後ろだ!」

 

 アポロの言う通り、後ろから清麿が来た。ロップスはロープで清磨を投げ飛ばした。

 

アポロ「自ら本を奪いに来るとはいい度胸だ。それに…」

 

 清麿に気を取られている隙にアポロの背後にガッシュが回り込んだ。

 

清麿「ザケル!」

 

 持ち前の勘でアポロがガッシュのザケルをかわした。

 

アポロ「(最初に撃った時よりも威力と速さが違う!これが、あの技の本当の威力か…。それに、いいコンビネーションだ!これが、清麿達の強さか…)リグロン!」

 

清麿「ガンレイズ・ザケル!(何だ?最初の恵さん達との特訓の日の時のように何をすればいいのかが頭に浮かんでくる…)」

 

 ガンレイズ・ザケルで岩を全て粉砕した。

 

アポロ「(心の通じあった攻撃!予想を上回る動き!そして何より…、勝利への執念!先程から清麿の指示も正確さが増している!)」

 

清麿「そこだぁ!」

 

アポロ「しまった、狙いは!」

 

清麿「ザケル!」

 

 ロップスの方へザケルが放たれ、ロップスに命中した。

 

ロップス「かう~~!」

 

アポロ「ロップス!」

 

 ギガノ級の威力のザケルをまともに受けながらもロップスは立ち上がった。

 

ガッシュ「ロップス…」

 

 立ち上がるロップスの姿を見て、アポロは戦いの前に魔界の王の争いなんてどうでもいいと言っていた事を思い出していた。

 

アポロ「よくないよな…。ロップス、王様になろう」

 

ロップス「かう!」

 

アポロ「行くよ…、一番強い呪文だ」

 

清麿「来るぞ…」

 

ガッシュ「その通りなのだ」

 

アポロ「ディノ・リグノオン!」

 

 鎖で今までより巨大な岩を持ち上げた。その光景に清麿は驚いていたが、既に前の戦いで見ていたガッシュは動じなかった。

 

アポロ「清磨…、礼を言うよ。こんな気持ちは初めてだ…。僕達も負けられなくなった。決めさせてもらう!」

 

清麿「なんて技だ!(まただ、どうすればいいのかが頭に浮かぶのかが)」

 

 ところが、アポロはよろけた。

 

清麿「よろけた?」

 

アポロ「くっ、この術は流石にきついな…」

 

ロップス「かう…」

 

アポロ「大丈夫だ。途中で力尽きたりはしないさ…!言ったろう…、お前を王にするって…」

 

清麿「(あの顔…、覚悟を決めた顔だ…!)ガッシュ、テオザケルであの岩を吹き飛ばすぞ!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

清麿「アポロ、俺だってガッシュを王にしたいという覚悟は負けてねえんだよ!」

 

アポロ「行くぞ~~っ、清麿!!」

 

 巨大な岩が襲い掛かった。

 

清磨「行くぞ、テオザケル!」

 

 ザケルよりも強力な電撃が放たれ、ディノ・リグノオンで持ち上げられた巨大な岩を跡形もなく粉砕した。その衝撃で双方とも吹き飛ばされた。

 

ガッシュ「立てるか、清麿」

 

清麿「ああ、大丈夫だ。それよりも、アポロは…」

 

アポロ「僕の最大呪文を破るなんて…、凄いよ、清麿。僕はもう立てないのに君はまだ立てるのか。僕の負けだ。でも、気持ちがいいや。君と全力で戦ったからなのかな?」

 

 

 

 しばらくしてから、ある話をしてロップスに追われるガッシュをよそにパートナー2人は話をしていた。

 

アポロ「結局、本は燃やさないのかい?」

 

清麿「ああ。実は俺、戦いの後にアポロに仲間になってもらおうと思ってたんだ。無理にとは言わないが…」

 

アポロ「それが清麿の考えていた事か。う~ん…、友達っていう関係ならいいよ。そっちの方が気楽でいいし」

 

清麿「そうだな」

 

アポロ「それよりも清麿、気になった事があるが…」

 

清麿「何だ?」

 

アポロ「戦いの時に君の本から禍々しい力を感じたんだ。でも、これまでの攻撃にそんな禍々しさはなかった。これは僕の予想だけど、清麿は最大呪文を使ってないんじゃないかな。どうしてなんだい?」

 

清麿「……最大呪文は威力が高すぎる上、制御もできないから使わなかったんだ……」

 

アポロ「それが最大呪文を使わない理由か…。確かに制御不能な技は無理に使うべきではないね。それに、どうして途中から指示の正確さが上がったんだい?」

 

清麿「それ、俺も疑問に思ってたんだ。どうすればいいのかが頭に浮かぶのが」

 

アポロ「もしかすると、何か特殊な力じゃないかな。流石に僕でもここまでしか推測ができないよ。それじゃあ、僕とロップスはこれで」

 

 歩けるようになったため、去ろうとしたアポロとロップスにガッシュが待ったをかけた。

 

ガッシュ「待ってくれなのだ!」

 

アポロ「どうしたんだい?」

 

ガッシュ「この先、『私に似た者』を見ても、決して話しかけないでくれ!」

 

アポロ「(ガッシュに似た者…?)」

 

ガッシュ「その者は…想像を絶する程強い…絶対に…勝てぬ…」

 

アポロ「…もしかして、清麿が仲間になってほしいと僕に頼んだのも、『ガッシュに似た者』を倒すためなのかい?」

 

ガッシュ「それだけではないがのう…」

 

アポロ「…そっか。忠告ありがとう。行こうか、ロップス」

 

ロップス「かう!」

 

 アポロとロップスは再び旅に戻った。

 

清麿「これでアポロにゼオンの事の忠告はできたな」

 

ガッシュ「ウヌ…」

 

清麿「(何なんだ?どうすればいいのかが頭に浮かぶのは…。これはアポロが言ってた特殊な力なのか…?)」




これで今回の話は終わりです。
原作ではゼオンと遭遇して早々に王を決める戦いから脱落したアポロとロップスですが、今回は脱落せずに千年前の魔物との戦いに参加できるかも知れません。
次の話はダニーの話になりますが、意外な魔物が早々と顔見せしたりするなどの今度の展開の前触れもあります。


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LEVEL12 我が息子ダニー

高嶺家

 アポロとの戦いからしばらく経った日の事だった。

 

清麿「お……とうとう日本にも来るんだ」

 

ガッシュ「何が来るのだ?」

 

清麿「シェミラ像って言って18世紀の彫刻なんだ」

 

ガッシュ「シェミラ……(ダニーが来る日なのだ…)」

 

清麿「どうした?ガッシュ。シェミラ像の記事を凝視して…」

 

ガッシュ「実はのう…」

 

モチノキ町

 モチノキ町のモチノキ国際美術館へ向かっているある車の車内での事だった。ガッシュが言っていた魔物、ダニーとそのパートナー、ゴルドーは車で美術館へ向かっていた。

 

ゴルドー「ダニーボーイ、返事をせんか、ダニーボーイ」

 

 しばらくしてダニーは車の窓を開けて吐いた。

 

ゴルドー「全く、大人しいと思ったら車酔いか。もうすぐ着くわい、ダニーボーイ」

 

ダニー「俺はダニーだ、じじい!」

 

ゴルドー「若造をボーイと呼んで何が悪い?」

 

ダニー「このじじい!」

 

ゴルドー「年上に対する敬意が足りんな。この本、捨ててほしいのか?」

 

ダニー「うわああっ!待て、捨てるな!Mr.ゴルドー」

 

ゴルドー「まぁ、いい。それより、気を抜くなよ。そのシェミラ像を守り抜くのがお前の仕事だ」

 

ダニー「弱い人間がいくら襲って来ようとも屁でもねえ。しかし、どうして人間はこんな下らないもん一つに数百億の値を付けてみたり、盗もうとしたりするんだ?」

 

ゴルドー「ふん、確かにそれは人間の愚かな所だ。だが、この心を打つ芸術までバカにするのは許さんぞ。そして、お前はそれを守る仕事についているのだ。誇りを持て」

 

ダニー「はっ、こんなガキのお守りみてえな仕事の何が誇りだ」

 

 

 

 一方、ガッシュはウマゴンとコルルと共にモチノキ国際美術館に来ていた。

 

コルル「ガッシュ、本当にここで18世紀の彫刻が見れるの?」

 

ガッシュ「そうなのだ。コルルもシェミラ像を見たいのだな?」

 

コルル「うん!どういったものか実物を見てみたいなぁ…」

 

 そんな中、ダニーがいるのを見かけた。

 

ガッシュ「(ダニー…!)コルル、ウマゴン、私は用があるからここで待つのだ」

 

 ダニーを発見してガッシュは大急ぎで向かった。

 

コルル「どうしたのかな?ガッシュ…」

 

ウマゴン「メル?」

 

 一方のダニーはゴルドーからお遣いを頼まれ、たい焼きを買って美術館へ戻ろうとしていた。そこへ、ガッシュが来た。

 

ガッシュ「おお、ダニーではないか!」

 

ダニー「ん?お前、魔物だな!やるってんならやってやるぜ!」

 

ガッシュ「戦う気はないのだ!話をしたいだけなのだ!」

 

ダニー「何を言って…ん?お前、どうして俺の名前を知っている?」

 

ガッシュ「そんな事は今はどうでもいいのだ。それよりも、シェミラ像はどこに行けば見れ…」

 

 ダニーに頼んでコルルやウマゴンと一緒に先にシェミラ像を見ようと考えていたガッシュだったが、ある事を思い出した。

 

ガッシュ「ヌオオオオオッ!!」

 

ダニー「どうした?」

 

ガッシュ「今、ここで立ち止まっているのはまずいのだ!早く美術館へ戻らないとシェミラ像が危ないのだ!ダニー、今すぐパートナーの所へ行くぞ!案内してくれ!」

 

ダニー「シェミラ像が?まぁ、早く戻らねえとジジイが黙ってねえから戻るか。ついてきな」

 

ガッシュ「走らないと間に合わないのだ!」

 

ダニー「うるせえな!それじゃあ、走るぞ!ついてきてみやがれ!」

 

 大急ぎでダニーは美術館へ向かった。ガッシュもダニーの足の速さについてきていた。

 

ダニー「(こいつ、速いぞ!)」

 

 美術館へ向かう様子をコルルとウマゴンは見ていた。

 

コルル「どうしたんだろう…ガッシュ」

 

ウマゴン「メルメ?」

 

 

 

モチノキ国際美術館

 その頃、ゴルドーは美術館のオーナーと話をしていた。

 

オーナー?「さぞ長旅でお疲れになったでしょう、Mrゴルドー。シェミラ像は私達がお預かりしますので、ホテルでゆっくりお休みください」

 

ゴルドー「いやぁ、もう少しここにおるよ」

 

オーナー?「いやぁ、しかし、後は我々の手で」

 

ゴルドー「いたたたたっ、じじいの足が痛くてのう…ここで少し休ませてくれんかねえ…」

 

オーナー?「わかりました、それではどうぞお好きなだけ」

 

ゴルドー「(何で日本の美術館のスタッフが物騒なものを持っている…?こいつら全員、シェミラ像を狙っておるギャングじゃ。わしが隙を見せたら像はたちまち持っていかれる…。ダニー、早く戻って)」

 

ダニー「じじい!!」

 

 部屋にいる人間が全員ギャングである事を見抜いたゴルドーは早くダニーに戻ってきてほしいと思っていると、ダニーが戻って来た。

 

ゴルドー「ちょうどいい所で戻って来たな、ダニーボーイ。こいつらは全員ギャングじゃ」

 

オーナー?「な、何の冗談を…」

 

ダニー「そうか…、マントの奴が言ってた『シェミラ像が危ない』というのはこの事だったか!てめえら、ぶっ飛ばしてやるぜ!」

 

ギャング「ちっ、ばれちまったなら生かしては帰さねえ!野郎共、やっちまえ!」

 

 本性を現したギャングのリーダーは手下達と共にダニーに襲い掛かった。が、手下達はあっさりダニーに殴り倒されてしまった。

 

ギャング「ちぃっ、隠れてる奴等もかかれ!」

 

 部屋に隠れていた手下達が突然現れてダニーを銃撃した。

 

ガッシュ「ここなのだな。泥棒め、勝手に彫刻を盗むのは許さぬぞ!」

 

 遅れてガッシュも到着した後、素手やマントで次々とギャングをなぎ倒していった。

 

手下A「ぐあああっ!」

 

手下B「何なんだ、このガキは!?」

 

ゴルドー「ジオルク!」

 

 ゴルドーが呪文を唱えると、ダニーの傷はあっさり完治してしまった。

 

ダニー「やってくれたな…いてえじゃねえか、この野郎…!」

 

手下C「ど、どうなってるんだ!?」

 

手下D「こいつ、生き返ったぞ!」

 

 再びダニーの猛攻が始まった。その光景にギャングのリーダーは残った手下と共に逃走した。数分後、叩きのめされた手下は駆け付けた警察に逮捕された。

 

ガッシュ「(ウヌ…、船に行かせるのを阻止しただけでこうもあっさり終わるとは…)」

 

ゴルドー「…ふぅ、たいやきを買ってくるのにどれだけ時間がかかっとるんじゃ。もう少しお前が来るのが遅かったらシェミラ像は奪われておったのだぞ」

 

ダニー「す、すまねえ…」

 

ゴルドー「素直に謝るのは珍しいな」

 

ダニー「いや、こいつが…」

 

ガッシュ「ガッシュ・ベルなのだ」

 

ダニー「ガッシュが教えてくれなきゃ、じじいもシェミラも守れなかった…。今回は俺が未熟だった…」

 

ゴルドー「そうか。ガッシュとやら、ありがとう。どうしてわかったのか理由は聞かんが、とにかくありがとう」

 

ガッシュ「ウヌ」

 

 そんな中、コルルとウマゴンが来た。

 

コルル「ガッシュ、どうしたの?」

 

ダニー「こいつら、ガッシュの友達か?」

 

ガッシュ「そうなのだ。私の友達のコルルとウマゴンなのだ」

 

ウマゴン「メルメルメ」

 

ガッシュ「コルル達や清麿達と一緒にシェミラ像を見てもよいかのう?」

 

ゴルドー「助けてもらったお礼じゃ。見てよいぞ」

 

ガッシュ「ヌオオオッ、流石はじじ殿!」

 

 それから、学校が終わる時間帯にガッシュはウマゴンに清麿としおりを呼んでくるように頼み、学校が終わって帰る途中の清麿としおりもウマゴンに案内されて美術館に来た。

 

清麿「これが実物のシェミラ像か…」

 

しおり「とても素晴らしいわ。まさに芸術ね」

 

ダニー「おい、ガッシュ。よかったら俺も友達に混ぜてくれないか?シェミラの礼もあるしな」

 

ガッシュ「本当か!?」

 

ダニー「ああ。一緒に魔界の王様を目指そうぜ。いいだろう?じじい」

 

ゴルドー「フ、それもそうだな。素晴らしい友達ができたものだ。これからダニーボーイもガッシュを見習った方がいいぞ」

 

ダニー「それは余計だっつ~の!」

 

ゴルドー「余計とは何じゃ!(まぁ、ダニーの成長にはつながるだろうな。ボーイの卒業も割と早く来るかも知れん)」

 

 それから、一同は帰路についた。

 

清麿「よかったな、ダニーが脱落せずに仲間になってくれて」

 

ガッシュ「ウヌ」

 

 

 

イタリア

 その頃、イタリアではある女の子の魔物とパートナーの青年がある人物を探しており、飲食店で食事をしていた。青年の食べる量は他の客と大差ないが、少女の方は明らかに多かった。

 

青年「パティ、いくら何でも食べすぎだ」

 

パティ「何よ、ウルル。まだいけるわ。育ち盛りだからたくさん食べないと大きくなれないわ。それに、愛しのガッシュちゃんは今はどこに…?」

 

ウルル「またそれですか。何でも言ってますが、本を燃やされていなければいずれ会えるでしょう」

 

パティ「世界中を旅して探しているのにどうして見つからないのかしら。せめて、誰かガッシュちゃんの居場所を知ってる人がいたらいいのに…」

 

 パティの愚痴にある客が反応した。その客こそ、フォルゴレとキャンチョメ、ロブノスにガッシュの事をチクったレンブラントであった。

 

レンブラント「お探しのガッシュなら、日本のモチノキ町にいる。会いたければ行けばいい」

 

パティ「日本のモチノキ町?あそこに愛しのガッシュちゃんがいるのね!ウルル、すぐに日本のモチノキ町に行くわよ!」

 

ウルル「ええ、行きましょうか」

 

店員「お客さん、お勘定」

 

パティ「…ウルル」

 

ウルル「はぁ……アクル!」

 

 水の激流で吹っ飛ばした後、パティペアは退散した。

 

パティ「さ、日本へ行きましょう。待っててね、ガッシュちゃん!」

 

ウルル「(完全に自分の世界に入り込んでいるな…)」

 

 ガッシュに会える喜びに溢れているパティの姿にウルルは引いていた

 

 

 

???

 数日後、逃げたギャング達は海外へ逃走していた。

 

ギャング「くそっ、シェミラ像を奪い損ねるとは…」

 

手下A「もう少しで上手く行く所だったのに…、あのガキさえいなければ…!」

 

手下B「リーダー、人員を増やしてから今度こそシェミラ像を奪い取りましょう」

 

ギャング「そうだな。今度はじじいとその連れも報復で消すぞ…!」

 

 そう言っていると、ある2人組がギャング達の傍を通り過ぎようとしていた。

 

手下A「おい、ガキ。俺達に挨拶もなしに通り過ぎるなんて礼儀がなってないな。今から教えてやろうか…!?」

 

ゼオン「お前らに敬意を払う気はない。行くぞ」

 

 その2人組こそ、ゼオンとデュフォーだった。

 

手下B「ガキのくせになんて態度だ!大人になってから必要になる社会勉強を俺達がするぜ!」

 

ギャング「(あの少年、もしや…!)待て!そこの無口な少年と話がしたい」

 

ゼオン「話をしたいだと?」

 

ギャング「我々の仲間にならないか?君の力があれば美術館の警備システムの穴を見つけられるし、色々な事ができる。美術品を売り飛ばせば多くの金が手に入る。どうだ、悪い話ではないだろう?しょうね」

 

デュフォー「……俺をその名で呼ぶな。美術品にも、金にも、貴様らの話にも興味がない…。とっとと失せろ…」

 

ギャング「ほう…、我々の仲間にならないというのなら、てめえらはここで死にな!」

 

 手下と一緒にギャングのリーダーもゼオンとデュフォーに襲い掛かった。

 

ゼオン「バカ共が揃いも揃ってやられに来るとはな」

 

 戦闘に入ろうとすると、デュフォーが前に出てきた。

 

ゼオン「珍しいな。デュフォーが俺の頼みもなしに自ら動くとは」

 

手下A「ガキが!そんなに殺されたいのか!?」

 

 脅しにもデュフォーは動じず、逆に前進していきた。

 

手下A「こ、怖くないっていうのか!?俺達を舐めんじゃねえぞ!」

 

 顔色一つ変えず、脅しにも無反応なデュフォーに対して逆にギャング達が底知れぬ恐怖に駆られてデュフォーを殴ろうしたり銃撃しようとしたりした。しかし、デュフォーは最小限の動きでギャングのパンチや銃弾をかわし、殴りかかったギャングに足を引っかけて転ばせた。

 

ギャング「野郎…、舐めやがって…!!」

 

ゼオン「お前達のようなバカの銃撃などデュフォーなら容易くかわせる。今度はこっちの番だ」

 

デュフォー「ザケル」

 

 ゼオンの電撃でギャング達は全員倒れてしまった。

 

ゼオン「デュフォー、お前が自ら動いたのは奴等がお前の忌まわしい過去に触れたから機嫌を損ねたからか?」

 

デュフォー「そういう事だ」

 

ゼオン「ふっ、まぁいい。行くぞ」

 

香港 

 土曜日の事だった。有名なマフィアのボス、リィ・パクロンと娘のリィエンの口論があった。

 

リィエン「ウォンレイをどこにやったあるか!?」

 

パクロン「ふん。リィエン、奴はお前には関係のない男だ」

 

リィエン「だから、その場所を聞いてるある!答えて!!」

 

パクロン「いい加減に目を覚ませ、リィエン。奴は人ではない」

 

リィエン「いいえ、私の相手が誰だろうとお父さんは引き離したある!!もういいある、あなたを父親とは思わない!腕づくでもウォンレイの居場所を聞き出すある!ハイーーッ!!」

 

 リィエンは強烈なキックをかましたが、パクロンに受け止められた。

 

パクロン「ふん、じゃじゃ馬め。親心も知らず…、はああ~~っ!!」

 

 パクロンのチョップでリィエンは地面に叩きつけられた。

 

パクロン「1週間もすればウォンレイはワシの船で国外に追放する。お前は日本にいるお婆さんの家に行ってもらう。そこでゆっくり頭を冷やすんだな」

 

 叩きのめされたリィエンはどうしようもない悔しさに溢れていた。レンブラントにガッシュの居場所を教えてもらってモチノキ町へ向かうパティ、日本へ送られるリィエン、これから起こる様々な出来事がガッシュの予想よりも早く起ころうとしていた。




これで今回は終わりです。
ダニーの話はガッシュのお陰でギャングがシェミラ像を盗んで船に逃げるのを阻止するという内容になりました。
原作よりも早い登場となったパティですが、しばらくしたらガッシュと再会しますが、いつ再会になるのかはまだ秘密です。
次はマリル王女の話になります。


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LEVEL13 王女との遭遇

高嶺家

 それは、ギャングを撃退した次の日の事だった。コルルとティオが遊びに来ていた。

 

ガッシュ「ウヌ、今度の日曜日だな」

 

コルル「うん。ティオと相談して決めたの」

 

ガッシュ「遊園地!清麿、遊園地だぞ!(遊園地…となれば、バンブリ…ともじゃもじゃに会う事になるかの)」

 

清麿「しかし、いいのか?人気アイドルの恵さんが俺達なんかと一緒に遊園地に行って…」

 

ティオ「何言ってるのよ!清麿はかっこいいし、しおりもいるのよ!それにほら、私達、本と魔物の事情を知ってる同士じゃない」

 

コルル「デートには見られないと思うよ」

 

清麿「ま、まぁな…(だが、俺とガッシュ以外女の子ってのも、なんだかまずい気がするが…)」

 

ティオ「だから、恵もリラックスできるというか、私も楽しめるというか…。それに、清麿だって本当は恵とデートしたいでしょ?」

 

清麿「そ、それは…(どうする…、このまま本音を隠すか、いっその事、本音をぶちまけるか…もう腹を括るしかない!)…恵さんとデートしたい…」

 

ティオ「本当!OKなのね!やったわ、これで恵も大喜びするわよ!清麿、一緒にジェットコースターに乗ってね!」

 

ガッシュ「私も楽しみなのだ」

 

ティオ「あら?ガッシュはお留守番でいいんじゃない?」

 

ガッシュ「ウヌ!嫌だ、お留守番は嫌なのだ!き、清麿、私も連れてってくれるのだろう!?」

 

清麿「さぁ、どうしようかな?」

 

ガッシュ「ヌオオオッ!2人して意地悪とはひどいではないか!」

 

コルル「安心して、ガッシュ。ティオも清麿お兄ちゃんも本音じゃないから」

 

ティオ「じゃあ、遊園地の入り口に午前11時ね」

 

清麿「わかった。でも、ウマゴンはどうする?」

 

ティオ「ウマゴン?…遊園地は無理じゃないかしら」

 

コルル「魔物だけどお馬さんだし…」

 

清麿「それもそうだな」

 

 

 

日本

 同じ頃、パティペアもモチノキ町へ向けて進んでいた。

 

パティ「愛しのガッシュちゃん…。ああ、感動の再会が刻一刻と迫っているわ!」

 

ウルル「(ガッシュの居場所を聞いてからずっとこの調子だ…)」

 

 

 

 

モチノキ町

 そして日曜日、撮影を終えた恵とティオは電車でモチノキ町の遊園地に向かっていた。

 

恵「楽しみね。清麿君達と遊園地。ありがとう、ティオ」

 

ティオ「それ程でもないわよ」

 

恵「(ティオったら、本当によく笑うようになったわね。出会った頃に比べたら、大違いだわ。あの頃は…)」

 

 遊園地を楽しみにしているティオを見て、恵はティオと出会った頃の事を思い出していた。

 

恵「(ニコニコしちゃって)」

 

アナウンス『まもなく、モチノキ森街。モチノキ遊園地はここでお乗り換えです』

 

恵「ほら、ティオ。ニヤけてないで乗り換えよう」

 

ティオ「あ、ちょっと!私がいつニヤけてたのよ!?ニヤけてたのは恵じゃない!撮影中もデレ~ッとして」

 

恵「あら?そうだったかしら?」

 

ティオ「そうよ」

 

 電車から恵とティオが降りたが、その降りる乗客の中にパティとウルル、そしてリィエンもいた。

 

ウルル「モチノキ町行きの電車が来るのにまだ時間がありますね」

 

パティ「まだ来ないの?早く愛しのガッシュちゃんに会いたいのに…!」

 

ウルル「そう言っても、電車の時間はどうしようもないですよ…」

 

 話声は恵とティオにも聞こえていた。

 

ティオ「恵、さっきガッシュに会いたいだとかの話が聞こえたけど…」

 

恵「ガッシュ君の知り合いじゃないかしら?」

 

ティオ「それより恵、待ち合わせまで時間があるわ。どうする?恵」

 

恵「だったら、モチノキ森街で待ち合わせの約束をしているしおりとコルルちゃんと合流してこの街を探検してみない?」

 

ティオ「名案!早く2人と合流してお店を見て回りましょう」

 

 しばらく進んでいると、しおりとコルルを見つけた。

 

コルル「本当に王女様が日本に来ているの?」

 

しおり「今朝のニュースではそうみたいよ。まぁ、私達一般市民は会えないと思うけどね…」

 

コルル「あっ、しおりねーちゃん、恵お姉ちゃんとティオだよ!」

 

しおり「ほんとだ。お~い!」

 

 しおりとコルルを発見した2人は合流した。その頃、ある大型車が店の前に停車した。その場である女性と中年男性が降りた。

 

女性「カラオム」

 

カラオム「は、マリル様」

 

マリル「カラオム、店の中までついてこずともよいぞ」

 

カラオム「わかりました。でも、逃げないでくださいね」

 

マリル「私がいつ逃げた?」

 

カラオム「699回も逃げました」

 

マリル「うむ、そうだったな」

 

カラオム「ですから、ここで見張ってます」

 

マリル「好きにせい」

 

カラオム「では、欲しい物が決まりましたらお声を」

 

マリル「カラオムも自由に街を回ってよいのだぞ」

 

カラオム「ほほほほ、その手には乗りませんよ」

 

 そんな買い物をしようとするマリルをスナイパーが狙っていた。しかし、カラオムが照準に入ったため、その場での狙撃をやめた。

 

マリル「(ふむ、日本は良い品を置いている店が多いのう。こうなると、是が非でも自由に買い物をしたいが…どうやってカラオムから逃げ出せばよいか…)」

 

 そう思っていると、ティオペアとコルルペアが来た。それを見て、マリルは何かを思いついた。

 

 

 

 

恵「この街にこんないいセンスのお店があったのね」

 

しおり「もっと早く見つけておけばよかったなぁ」

 

 店を回っていると、ティオとコルルがあるドレスを見つけた。

 

ティオ「ねえ、恵、恵。このドレスなんかいいんじゃない?」

 

恵「ほんと、素敵ね」

 

コルル「恵お姉ちゃんに似合うと思うよ、きっと」

 

恵「(着てみたいけど、今日、こんなの着て行ったら、清麿君は驚くだろうなぁ…)」

 

しおり「何を躊躇してるの?恵。着てみたいなら、着ればいいわ」

 

恵「しおり…」

 

マリル「うーむ、それが気に入ったのか?」

 

 恵達が振り向くと、そこにはマリルがいた。

 

マリル「私のドレスも負けてはおらぬぞ」

 

恵「あら、ほんと…素敵…」

 

しおり「(え?この人…、見た事があるような…)」

 

マリル「よかったら、私の服とお主の服を取りかえぬか?私もお主の服を着てみたい。背格好も同じではないか少しの間だけ、互いのおしゃれを楽しもうではないか」

 

しおり「どうするの?恵」

 

恵「うん。いいわ、楽しそう」

 

マリル「おお、本当か?助かるぞ。……済まぬのう…、ちょっとの間だけじゃ……」

 

コルル「(どうしたんだろう…?あの人…)」

 

マリル「さぁ、早く着替えようぞ」

 

 着替えている途中、コルルはマリルがどこかへ行くのを見ていた。

 

コルル「(あの人、どこへ行くんだろう…?)」

 

 それから、着替え終わった恵はある事に気付いた。

 

恵「あっ、いない!あの人、どこへ行ったの!?」

 

コルル「私、あの人がどこかへ行くのを見たの」

 

ティオ「恵、カバンもない!」

 

恵「え、嘘!?あの中にお財布や本も入っているのよ!」

 

しおり「早く探さないと大変な事になるわ!探しましょう!」

 

 慌ててマリルを探す恵達だったが、カラオムが反応した。

 

カラオム「あっ、マリル様!お待ちくだされ!」

 

 マリルの服を着た恵をマリルと勘違いしたカラオムは飛びついてきた。

 

恵「何するのよ!」

 

カラオム「700回目は逃がしませぬ!マリル様、危ないのです!今度ばかりは逃げられてはダメなのです」

 

 恵にセクハラまがいの事をしたカラオムはティオの首絞めという名の制裁を受けた。

 

ティオ「恵に何するのよ!!」

 

コルル「おじさん、恵お姉ちゃんに謝って!」

 

 それから、カラオムは恵達の事情を聞いていた。

 

カラオム「何ですと?マリル様と服を交換?で、では…、先程出ていかれた方がマリル様?」

 

ティオ「そういう事になるわね」

 

カラオム「何という事だ!まずい、非常にまずい!」

 

ティオ「まずいのはこっちよ!」

 

しおり「(マリル様?もしかして…マリルってあの…)おじさん、あなたの探しているマリルって、あのカルノア王国のマリル王女じゃないのですか?」

 

カラオム「おお、話が早い!だが、その情報をどこで?」

 

しおり「今朝のニュースでマリル王女に関するニュースを見たんです。最初に会った時、似てたので親戚かと思ってたんですが、まさか本物のマリル王女だったとは…」

 

コルル「恵お姉ちゃんに迷惑がかかったからちゃんと謝ってよ!」

 

カラオム「お願いします!マリル様をお探しくだされ!」

 

ティオ「最初に私達に謝るのが礼儀じゃない!!」

 

カラオム「お願いだ!小娘にはもったいない程の金をやる!」

 

ティオ「あんた、私達と会話する気ないでしょ!?首絞めるわよ!!」

 

 再び激怒したティオの首絞めをカラオムは受ける羽目になった。

 

カラオム「ぐ…ぼぉおお…、王女様は命を狙われているのだ…」

 

ティオ「え?命を狙われている…?」

 

コルル「どういう事?」

 

 

 

 

カラオム「つい先ほど、本国から連絡が入ったのです。王女様の命を狙う者が日本に来ていると。マリル様が王位を継いだのはつい最近の事。しかし、女性が王になる事に最後まで反対していた者達もいたのです。反対派はそれならば王女様の命を狙おうと…」

 

 コルルペアとティオペアは手分けしてマリルを探した。

 

ティオ「全く、冗談じゃないわよ!何で私達が…!」

 

恵「まぁまぁ、命を狙われてちゃほっとけないでしょ?」

 

ティオ「それはそうだけど、恵も少しは怒りなさいよ」

 

恵「うん、でもね…私にはなんか…あの人を憎めないのよね」

 

ティオ「何で!?私達、騙されたのよ!ほら、遊園地だって遅れちゃうよ!」

 

恵「うん…、でも…なんか、きになるのよね…」

 

ティオ「気になる…あっ!」

 

恵「どうしたの?ティオ」

 

ティオ「今、大切な事に気付いたわ!恵が王女様の恰好をしてるって事は…!」

 

恵「…ああ~~~~っ!!」

 

暗殺者「見つけたぞ、王女、命をいただく!」

 

 ティオの危惧通り、暗殺者は恵をマリルだと勘違いして襲ってきた。それに2人は慌てて逃げた。

 

恵「ティオ、しおりとコルルちゃんと合流して王女様を探して。私が囮になる!」

 

ティオ「でも、危ないわ!」

 

恵「お願いね!」

 

 暗殺者を挑発して恵は逃げた。その直後、しおりとコルルが来た。

 

しおり「どうしたの?ティオ」

 

ティオ「しおりやコルルと一緒に王女様を探せって恵に言われたの。探せって言われてもそう簡単に見つかるわけ…」

 

コルル「ねえ、ティオ。あそこにいるのって…マリル王女じゃない?」

 

 コルルの言葉通り、マリルが通りかかった。

 

マリル「おう、満足じゃ。自由に好きな物を買えるとは楽しい事よのう…」

 

しおり「マリル王女、もう逃がしませんよ!」

 

 一方、囮になって逃げている恵は逃げる先で車が止まった。

 

カラオム「さぁ、早くお乗りください!」

 

恵「あ、あなたは…」

 

カラオム「さぁ、早く!」

 

 慌てて恵を乗せたが、間に合わずに暗殺者に追いつかれてしまった。

 

暗殺者「逃がしやしないよ」

 

 恵の顔を見てようやく暗殺者はマリルではない事に気付いた。

 

暗殺者「お、お前、王女じゃない!」

 

 その頃…

 

マリル「ああ、安心せよ。使ったお金は必ずカラオムに払わせる。だから」

 

しおり「今はそんな場合じゃないんです!」

 

コルル「服を交換したせいで恵お姉ちゃんが命を狙われてるの!」

 

マリル「何じゃと!?」

 

 緊急事態である事を知ったマリルはしおり達と共に恵を探した。

 

マリル「あんな所に車が」

 

 隠れて様子を見ると、暗殺者に銃を突きつけられている恵の姿があった。

 

暗殺者「さぁ、王女はどこだ!?」

 

恵「知らないって言ってるでしょ!?」

 

マリル「何という事じゃ…!」

 

ティオ「どう?これでわかったでしょ?」

 

 恵のバックからティオは自分の本を取り出した。

 

ティオ「(この本を恵に渡せば呪文の力であんな奴…簡単に…)」

 

しおり「私達が暗殺者を倒すから、王女様はここから動いてはダメ」

 

マリル「下がれ、ティオとその友人とやら。お主達、このマリル・カルノアに恥をかかせるつもりか?」

 

ティオ「え?」

 

コルル「王女様?」

 

 出会った時とは違うマリルの威圧感に押されてしおり達は制止できず、マリルは前に出てきた。

 

マリル「私の命を狙う者よ!マリル・カルノアはここにおる。その者は私とは関係ない!とっととその薄汚い手を離すのじゃ!」

 

暗殺者「何っ!?」

 

しおり「(何!?この威圧感…)」

 

ティオ「出ちゃダメ!隠れて!ちょっと…あなた!」

 

マリル「ティオ、友人達と一緒に下がれと言っておろう。私とて半端な覚悟で誇り高き王位を受け継いだわけではない!わが命愛しさに関係なき者を盾にしては、末代までバカにされるわ!!さあ、撃つなら私を撃て!我が血に流れる誇りは何者にも汚されぬ!それとも…王の首をとることに今更ながら怯えたか?」

 

暗殺者「く…おおおおっ!!」

 

恵「ティオ!」

 

ティオ「恵ー!お願いー!!」

 

暗殺者「くたばれ~~!!」

 

 銃弾が放たれたのと同時にティオの本を恵はキャッチした。

 

恵「セウシル!」

 

 呪文の発動が間に合ってマリルの周囲にセウシルが張られ、銃弾を防いだ。その光景に暗殺者は驚きを隠せなかった。

 

しおり「今度はこっちの番よ!ゼルク!」

 

 凶悪な姿になったコルルが飛び出してきて暗殺者に襲い掛かった。急なコルルの登場に暗殺者は取り乱して銃を切られた挙句、そのままドラム缶の方へ投げ飛ばされた。

 

マリル「お主ら…」

 

 それから、マリルと恵達は別れる事になった。

 

マリル「済まなかったな。私もこんな事になるとは思わなかったのじゃ…」

 

恵「そんな事いいのよ」

 

ティオ「そうよ。それより、何で一人で戦おうなんて無茶な事したの?そっちの方が許せないわよ」

 

マリル「ふふ…すまぬな…」

 

カラオム「皆様、許してくだされ…。マリル様は王位を守るため、これまでずっと1人で戦ってらしたのです。父君、母君が病気で亡くなられてからは誰にも頼る事なく…」

 

マリル「まさか、こんな旅先で出会った子に味方になってもらえるとは思わなんだぞ。ありがとうの」

 

ティオ「…ま、まあ、無事だったからいいんだけど…」

 

恵「(そっか…誰かに似てると思ったら、この王女様…ティオに似てるのね…出会ったころのティオに…)」

 

 ティオと出会ったころの事を恵は思い出していた。

 

しおり「恵、ティオ、待ち合わせの時間はとっくに過ぎているから早く行きましょう」

 

ティオ「ええ~っ、ウソ、大変!」

 

コルル「走って行かなきゃ!」

 

ティオ「マリル!こんな事あったけど…これから先、大丈夫?」

 

マリル「安心せよ。この事件を公表すれば、私の味方についてくれる者もでてくれようもう1人では戦わぬよ」

 

ティオ「ふふふ、安心したわ。じゃあね、マリル」

 

 

 

 

 その頃、マリルの暗殺未遂事件に巻き込まれなかったパティペアはティオ達より先に遊園地に向かっていた。

 

ウルル「遊園地に行くのですか…?」

 

パティ「そうよ。私だって遊園地で遊びたいし、もしかしたらガッシュちゃんも遊園地に来てるかも知れないのよ」

 

ウルル「…わかりました。遊園地でガッシュを探しましょうか…」

 

パティ「ガッシュちゃん、一緒にジェットコースターに乗ったり、観覧車で見つめ合ったり…それから…」

 

 再び自分の世界に入り込んだパティにウルルは引く一方であった。




これで今回の話は終わりです。
大まかな流れは原作やアニメと大差ありませんが、コルルとしおりがいたり、パティの様子も描かれているのも加えました。
次は遊園地での戦いになりますが、1話で出たハイドや4話で出たフェインが再登場したり、ティオだけでなく、コルルとパティも加わって大激戦になります。


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LEVEL14 遊園地での大激戦

モチノキ町

 マリル王女の件で遅くなった恵達と違い、パティとウルルは既にモチノキ遊園地に到着していた。

 

パティ「さぁ、遊園地よ。ガッシュちゃんはいるのかしら…?」

 

 ガッシュがいるのではないかと胸を躍らせるパティとは反対に、ウルルはいつもの低いテンションだった。一方のガッシュペアは早く着きすぎたため、アトラクションを回っていた。

 

ガッシュ「ティオ達は遅いのう…」

 

清麿「遅いっていっても、まだ待ち合わせの時間はあるぞ。それに、恵さんは仕事で遅くなってるんじゃないか?それに、そろそろ戻らないと」

 

ガッシュ「ウヌ、あと一個だけなのだ。次はそろそろ…あれに乗ってみたいのだ!」

 

 あれこれ言うガッシュ達の姿を見覚えのある魔物達が見ていた。

 

ハイド「まさか遊園地でガッシュを見つけるとはな。あの時は負けたが、今回は助っ人もいる…」

 

 ハイドの隣にはピエロのような魔物、フェインがいた。

 

フェイン「1人で倒すのは無理だけど、2人でならガッシュを倒せそうだからね」

 

清兵衛「もっとスカッとしねえとな」

 

泳太「そうだな。スカッとせずに勝敗が着かねえのは気に喰わないからな。それと、可愛い子ちゃんは見つからねえかなぁ」

 

フェイン「…ハイド、あんたはパートナーには苦労してるね」

 

ハイド「ああ。もう少し真面目になってくれたらいいんだけどな…」

 

 

 

 

 一方、ガッシュは無理やり清麿に引きずられていた。

 

ガッシュ「嫌なのだ!乗りたいのだ!」

 

清麿「こら!早く戻るぞ」

 

???「ええ~い、貴様!遊園地はみんなが楽しむ所ではないのか!?」

 

 声がした方を見ると、そこにはガッシュには見覚えのある魔物、パピプリオとそのパートナー、ルーパーと手を組んでいるトカゲの魔物、ゾボロンとパートナーのヒゲがいた。

 

ガッシュ「(あの者は…パンブリとモジャモジャではないか!)」

 

パピプリオ「小さいからダメだと!?ふざけるな!!乗りたい!乗りたい!」

 

ヒゲ「あきらめな、クソガキ、あまり恥ずかしい事すんじゃねえ」

 

ハピプリオ「恥ずかしいのはそっちだろ!?それは子供が乗るものだ!それにゾボロンも乗せてやれよ!かわいそうだろ!?」

 

ヒゲ「やかましい、100円入れたのはワシだも~ん!」

 

清麿「(おかしな奴等がいるな…)」

 

パピプリオ「ええ~い、もういい!乗せてくれないならこんなもの、壊してやる!」

 

 その言葉に清磨は驚いた。

 

清麿「ガッシュ、あいつらは…」

 

ガッシュ「あの子供はパンブリという魔物だ。早く止めないと大変な事になるのだ!」

 

清麿「ああ。マーズ・ジケルドン!」

 

 パピプリオが行動に移る前にマーズ・ジケルドンを撃ち込み、その動きを封じる事に成功した。

 

パピプリオ「何だ、これは…うわあああああっ!!」

 

ルーパー「パピー!!」

 

 何も知らずにパピプリオが動こうとしたら、電撃で苦しむ羽目になった。ある程度した所で清麿は術を解除した。

 

清麿「やりすぎたか…?」

 

ルーパー「大丈夫?パピー」

 

パピプリオ「そのパピーって何?」

 

ルーパー「愛称よ。ところで大丈夫?」

 

パピプリオ「凄い電撃でまだ体が痺れるよ…」

 

ヒゲ「誰があの赤い球を撃ち込んだんだ?」

 

 マーズ・ジケルドンが飛んできた方向を見ると、ガッシュ達と視線が合った。

 

ルーパー「あの赤い球を撃ち込んだのはあなた達ね!パピーをあんな目に遭わせたからには許さないわよ!!」

 

 パピプリオを抱えたままルーパーはヒゲと共に猛スピードで清麿達に迫ってきた。

 

清麿「俺達を追ってきたぞ!」

 

ガッシュ「清麿、あの者達は根っからの悪人ではない!話せば」

 

清麿「そうであっても今は人気のない場所へ逃げるぞ!」

 

 ガッシュと清麿も猛スピードで逃げ、プールエリアに来た。

 

ルーパー「まさか、こんな所で魔物を見つけるとはね」

 

ヒゲ「我ら、最強コンビの力を見せてやろう」

 

清麿「ガッシュ、あのパンブリとトカゲみたいな魔物はどういった奴だ?」

 

ガッシュ「ウヌ。パンブリは動きが素早く、攻撃力はないが、当たったら動けなくなったりする術を得意としておる。もう一方はスピードは遅いが、威力はある球を放つ術を使う」

 

清麿「わかった。特徴がわかればこっちのものだ!」

 

ルーパー「作戦会議は終わったかしら?こっちから行くわよ、ポレイド!」

 

清麿「ラシルド!」

 

 パピプリオの唾液をラシルドで跳ね返した。跳ね返されたポレイドをルーパーはかわしたが、パピプリオはよけきれずに喰らって電撃で痺れた後、動けなくなった。

 

ルーパー「パピー、いつもの足の速さはどこへ行ったの?」

 

パピプリオ「さっきの電撃の痺れが抜けてないから無理だよ~~!」

 

ヒゲ「だらしないなぁ。ワシの番だ。ドグラケル!」

 

 ガッシュが話した通り、ドグラケルは弾速が遅かった。それに臆せず、ガッシュは飛び込み、マントで掻き消した。

 

ヒゲ「ゾボロンの技があっさり防がれた!?」

 

清麿「よし、そのままマントで薙ぎ払え!」

 

 そのままガッシュはマントでヒゲとゾボロンを薙ぎ払った。マントと王族の力、そして前の戦いの記憶でパピプリオとゾボロンの攻撃を把握しているガッシュの圧倒的な強さにルーパーとヒゲは衝撃を受けた。

 

ヒゲ「ななな、なんて強さだ!」

 

ルーパー「我ら最強コンビがこうもあっさり負けるなんて…」

 

ガッシュ「パンブリ、話がしたいのだ」

 

パピプリオ「俺はパンブリじゃなくてパピプリオだ!」

 

清麿「こいつらと話をするつもりなのか?確かに悪者っぽくないが…」

 

ガッシュ「さっきも言ったろう。根っからの悪人ではないから話せば」

 

???「ジキル!」

 

 突然、放たれた風の攻撃にガッシュはマントでの防御ができずに吹き飛ばされた。

 

清麿「ガッシュ!さっきの攻撃…、もしかすると…!」

 

ハイド「久しぶりだな、ガッシュ」

 

 空から泳太とハイドが降りてきた。

 

泳太「オッサン、おばさん、手を貸すぜ」

 

ルーパー「おばさんなんて失礼ね!」

 

ヒゲ「生意気なガキが!」

 

清麿「お前、学校の屋上で会った奴だな!」

 

泳太「覚えていたみたいだな。ハイドも俺も今度こそお前達を叩き潰すために来たんだよ」

 

清麿「だが、1人増えたぐらいで」

 

???「ウィガル!」

 

 今度は別の衝撃波がガッシュ達を襲った。

 

清麿「今度は何だ!?」

 

泳太「ガッシュを倒すための助っ人だぜ」

 

 フェインと清兵衛が現れた。

 

フェイン「これだけいればガッシュを倒すのは簡単だわ」

 

清麿「あの魔物は何だ?ガッシュ!」

 

ガッシュ「あの魔物はフェイン。とても足が速い魔物なのだ。パンブリよりも速い」

 

清麿「前の戦いではどうやって奴を倒したんだ?」

 

ガッシュ「ジケルドで動きを封じて倒したのだが…、今回はジケルドを当てるのは難しいかも知れぬ…」

 

清麿「(最悪だ…!4対1になるなんて…。最も厄介なのは足のかなり速いフェインだ…。この状況、どうすればいいんだ…)」

 

 その頃、パティはアトラクションを楽しんでいた。

 

パティ「あ~、楽しかった。次はどこに行こうかしら?」

 

ウルル「ガッシュは探さないのですか?」

 

パティ「勿論、探しているわよ。こんな広い中のどこにガッシュちゃんが…」

 

 そう思っていると、プールサイドで見覚えのある人影を見つけた。

 

パティ「あれってもしかして…ガッシュちゃん!遂に運命の再会が訪れたのよ!」

 

ウルル「待ってください!」

 

 ガッシュを発見したパティは猛ダッシュで向かった。一方のガッシュと清麿は数の暴力による猛攻で防戦一方になり、追い詰められていた。

 

清麿「くそっ、このままじゃ…」

 

泳太「数でかかれば割と楽勝だな」

 

清兵衛「ま、フェインの実力によるものだがな」

 

フェイン「そうそう。ガッシュを追い詰められるのも私の力によるものよ。お前達は私の手下として指示に従うだけでいい」

 

ヒゲ「手下だと、ふざけるな!お前1人の手柄じゃねえんだぞ!」

 

ルーパー「そうよ!自分だけの手柄だと威張らないでくれる!?」

 

清兵衛「おばさん、オッサン、俺達に逆らう気か?」

 

フェイン「ま、私達が来なきゃガッシュにやられてたからあてにしてないわよ」

 

ヒゲ「あてにしてねえだと!?」

 

フェイン「私に逆らおうなんていい度胸じゃない」

 

ガッシュ「清麿、もしかしたらあの者達は…」

 

清麿「多分、仲間割れを起こしているみたいだ。上手くいけば…」

 

パティ「会いたかったわ、ガッシュちゃ~~ん!!」

 

 圧倒的に不利な状況の中、パティが来た。

 

ガッシュ「パ、パティ!?」

 

清麿「その子と知り合いか?」

 

パティ「ガッシュちゃん、私、あなたに会うためにずっと」

 

フェイン「誰が来たか知らないけど、黙らせてあげるわ」

 

清兵衛「ウィガル!」

 

 パティにとっての運命の再会を邪魔するかの如く、フェインはウィガルでパティを吹き飛ばした。

 

パティ「きゃあっ!」

 

ガッシュ「パティ!」

 

ウルル「パティ、大丈夫ですか!?」

 

清麿「あんたは?」

 

ウルル「私はパティのパートナーのウルルと言います」

 

清麿「それよりも、パティって子は…」

 

パティ「許さない……許さない…!私とガッシュちゃんの運命の再会を邪魔するなんて許さない!!」

 

フェイン「運命の再会?そんなものが運命の再会だなんて」

 

パティ「怨怒霊~~~!!!」

 

 さっきの様子からは想像もできないほど凄まじいパティの怒りにフェイン達は思わず怯えてしまった。

 

パピプリオ「あの女、すげえ怖いぞ…!」

 

フェイン「た、ただのこけおどしよ…」

 

パティ「私とガッシュちゃんの感動の再会を邪魔するばかりか、バカにするなんて許さないわ!!ガッシュちゃん、あいつらをギタギタのボロボロにしてから本を全て燃やしてやるわよ!!」

 

ガッシュ「ウ、ウヌ…(やっぱり、パティは怖いのだ…)」

 

清麿「一緒に戦ってくれるのか?」

 

ウルル「はい。パティはずっとガッシュを探していたので、そのガッシュと一緒に戦えるのは幸せなのでしょう」

 

清麿「(一緒に戦う?ティオとコルルも加えれば…)ガッシュ、上を向いてザケルを放つぞ!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

清麿「ザケル!」

 

 

 上に向けて威力を抑えたザケルを放った。それを遅れて遊園地に到着したティオペアとコルルペアは目撃した。

 

しおり「恵、さっきのは?」

 

恵「ガッシュ君達に何かあったのかも知れないわ。行きましょう!」

 

 

ウルル「何の目的であの技を?」

 

清麿「仲間を呼ぶための信号さ」

 

ウルル「仲間?もう仲間を作っていたのですか?」

 

パティ「ガッシュちゃんなら不思議じゃないわよ。包み込むような優しさで仲間にしたに違いないわ」

 

ガッシュ「とても頼りになるのだぞ」

 

フェイン「ふん、何の力もない女が加勢したところで」

 

パティ「力がないですって!!?ピエロ如きがふざけるんじゃないわよ!!」

 

フェイン「ひ、ひぃ~~っ!」

 

清麿「(フェインがビビっている、今がチャンスだ!)ザケルガ!」

 

 パティの気迫と怒りにフェインが怯んでいる隙にザケルガが放たれ、フェインに命中した。

 

清兵衛「フェイン!」

 

泳太「やべえ女だな、あいつ」

 

ハイド「だが、1人増えたぐらいで俺達の勝利は」

 

???「揺るがないですって?」

 

 今度はティオペアとコルルペアが到着した。

 

清麿「みんな!」

 

恵「お待たせ、清麿君」

 

泳太「何っ!?あの大海恵が来ただと?よーし!」

 

ハイド「全く、泳太の悪い癖が出ちまったぜ…」

 

 恵を見た泳太は目の色を変えて恵に迫り、腕を掴んだ。

 

泳太「ヘイユー!俺の彼女決定!」

 

恵「私はあなたの彼女になる気はないわ!離して!」

 

ティオ「恵には既に清麿という彼氏がいるのよ!あんたのようなチャラ男に恵はふさわしくないわ!」

 

泳太「な、なんだと~~!!」

 

恵「ティオに気を取られて私に背を向けるとは甘いわね。これでも私、人間同士なら…結構強いのよ!!」

 

 泳太がティオに気を取られている隙に振りほどき、泳太の腕を掴んだ後、恵は投げ飛ばした。

 

恵「それに、あなたのような人は私は嫌いよ!」

 

泳太「そ、そんな…」

 

ハイド「女の尻を追いかけるからこうなるんだ」

 

清麿「すげえ…」

 

しおり「恵は腕っぷしも強いって電話での話で聞いた事があるけど…これ程だったなんて…」

 

ティオ「私達が来たからにはもう大丈夫よ。それよりガッシュにくっついている女は誰?」

 

清麿「この子はパティと言って」

 

パティ「あっ、あんたは首絞めティオじゃない!私より活躍してガッシュちゃんを横取りするために来たんでしょ!?」

 

ティオ「べ、別に横取りなんて考えてないわよ!ガッシュとはただの友達なの!」

 

パティ「それは嘘に決まっているわ!顔にそう出てるわよ!」

 

ティオ「何でもかんでも疑い過ぎよ、パティ!」

 

コルル「2人共今は喧嘩してる場合じゃないよ。ガッシュ、早く2人の喧嘩を止めようよ」

 

ガッシュ「だが、どうすればよいのか…」

 

しおり「あなたがあのパティって子のパートナー?」

 

ウルル「はい、ウルルと言います。はぁ…、こんな時に喧嘩とは…」

 

恵「清麿君、どうやって喧嘩を…清麿君?」

 

 恵は清麿の異常な姿を目の当たりにした。その顔は、鬼そのものでもはや人の顔ではなかった。それには恵とガッシュはおろか、しおりとコルル、ウルルも衝撃を受けていた。

 

鬼麿「2人共いい加減にしやがれ!!今は4体の魔物と戦っている緊急事態なんだぞ!!お前達が足を引っ張り合ってガッシュが魔界に帰る羽目になったらどうするんだ!!?ええ!?」

 

パティ「ガ、ガッシュちゃんのパートナーが…」

 

ティオ「こ、怖い…!」

 

鬼麿「ガッシュが大切なのは2人共同じだろ!?戦いの時ぐらい喧嘩をやめて力を合わせろ!わかったな!!」

 

 鬼麿の説教でティオとパティは我に返った。

 

ティオ「清麿の言う通りね。パティ、まずはあいつらをぶっとばすわよ!」

 

パティ「ええ!ガッシュちゃんをいじめたからにはただでは魔界に帰さないわよ!」

 

コルル「清麿お兄ちゃんって凄いね…」

 

ガッシュ「凄すぎるのだ…」

 

 団結したガッシュ達を見た鬼麿も元の清麿に戻った。先程のザケルガをまともに受けたフェインはボロボロの姿で来た。

 

フェイン「さっきの電撃はかなり効いたわよ。ここまでボロボロにしたからにはお前達全

員、魔界送りにしてやるわ!さぁ、手下のあんた達も私と共に戦いなさいよ」

 

ヒゲ「誰がピエロに従うか!」

 

ルーパー「あんたの手下になった覚えはないわ!命令されるなんてうんざりよ!」

 

清兵衛「この野郎…!フェイン、ガッシュ達を蹴散らしてからオッサン共を吹っ飛ばすぞ!」

 

フェイン「そうね。ガッシュの仲間が来ても今なら私とハイドで倒せるわ。ハイド!」

 

ハイド「悪い、フェイン。泳太が…」

 

フェイン「もう、どいつもこいつも役立たずね!こうなったら、私1人でガッシュ達を潰してあげるわ!ここで誰も逆らえない王になるのを証明するのよ!」

 

清麿「よーし、みんな!俺達のコンビネーションを見せてやるぞ!」

 

パートナー一同「おう(ええ)!」

 

 敵の方はフェインペアのせいで仲間割れが発生し、フェインは他のペアを見縊って1人でガッシュ達を潰そうとした。一方、ガッシュ達は先程のティオとパティの喧嘩が嘘のように一致団結していた。

 

ティオ「そこのピエロ1人で私達を全員倒す気?無謀にも程があるわね」

 

フェイン「何ですって!?生意気よ!」

 

清兵衛「ウィガル!」

 

恵「セウシル!」

 

 ティオの挑発にキレたフェインはティオに攻撃を向けた。対するティオはセウシルでウィガルを防いだ。

 

清兵衛「防がれた?」

 

フェイン「だったら、壊れるまで攻撃し続けるだけよ!」

 

清兵衛「ウィガル!ウィガル!ウィガル!」

 

 何度もウィガルを放ってセウシルを破ろうとしたが、ガッシュとの特訓で鍛えられたティオのセウシルにはヒビ一つ入らず、攻撃を重ねるうちにフェインと清兵衛は息切れした。

 

フェイン「ぜぇ…ぜぇ…、あの盾は一体どうなってるのよ…」

 

ティオ「もう終わりなの?口の割には大した事ないわね」

 

フェイン「まだまだこれからよ!最大呪文で行くわ!」

 

清兵衛「ウィガ」

 

ウルル「アクル!」

 

清麿「マーズ・ジケルドン!」

 

 清兵衛とフェインの注意をティオに引きつけている隙に、ガッシュペアとパティペアはフェインの視界に入らない場所に移動し、パティのアクルでフェインが吹っ飛んだあとにマーズ・ジケルドンを撃ち込んだ。

 

フェイン「ふん、こんなた…ぶるぁああ~~~~っ!!!」

 

 パピプリオに撃ち込んだ時と違って威力を加減していないため、球を抜け出そうとしたフェインに凄まじい電撃が流れた。真っ黒焦げになったのを確認して清麿は術を解除した。

 

清兵衛「ウルク!ウルク!ウル~~ク!」

 

コルル「ぜえ~~いっ!!」

 

 目の前の光景に気を取られてコルルの接近に気付いていない清兵衛はそのままコルルに本を切り裂かれてしまった。

 

清麿「ナイスコンビネーションだ、みんな!」

 

恵「これも清麿君が考えた作戦のお陰よ」

 

 恵達パートナー一同は清麿に向けてガッツポーズをとった。

 

フェイン「そんなバカな…、誰も逆らえない王になるはずの私が…」

 

清麿「力で人々を無理矢理押さえつける奴は例え王だろうといつか滅びるだけだ。お前はそれが早まったんだ」

 

フェイン「ううっ…!」

 

 本が燃え尽きてフェインは魔界に帰った。

 

ヒゲ「ピエロがいなくなってすっきりしたぜ。あいつらに礼を言いたいぐらいだ」

 

ルーパー「最強コンビの力を今こそ見せる時よ。もう立てる?パピー」

 

パピプリオ「立てるけどまだ走れないよ~」

 

ヒゲ「なら、仕方ねえ。フォーメーション2だ!」

 

 ルーパーはゾボロンと一緒に、ヒゲはパピプリオと一緒にガッシュ達を挟み撃ちするフォーメーションをとった。

 

しおり「あの魔物達の特徴はわかる?」

 

清麿「あのパンブリとかいう奴は攻撃力はないが、触れたら痺れたりする厄介な術を使う。トカゲのような奴はスピードは遅いが威力の高い球を発射する術を使う」

 

ティオ「威力が高いって言っても、ガッシュのザケルには全然及ばないでしょ?」

 

ガッシュ「そうなのだ」

 

ヒゲ「行くぞ、ドグラケル!それからジャイアントスイング!&!」

 

ルーパー「ダレイド!」

 

 自称最強コンビはダレイドとドグラケルの挟み撃ち攻撃を行った。

 

ヒゲ「どうだ?この攻撃からはよけられまい」

 

泳太「俺とハイドまで巻き添えにすんじゃねえ!」

 

ティオ「だったら、防ぐだけよ!」

 

恵「セウシル!」

 

 ガッシュが経験した前の戦いではこの連携攻撃をティオはセウシルで防ぎ切る事はできなかった。しかし、今回の戦いでは王族の力が目覚めたガッシュとの特訓で鍛えられたため、ヒビ一つ入らずに涼しい顔をしてセウシルで防ぎ切った。その際、清麿達は何かの話をしていた。

 

ヒゲ「な、なんて防御力だ!」

 

ルーパー「我々のコンビネーションが効かない!?」

 

清麿「お前らのコンビネーションはこんなものか?今度は俺達のコンビネーションだ!」

 

ウルル「オルダ・アクロン!」

 

清麿「ザケル!」

 

 あっけにとられている隙にガッシュ達の攻撃が始まった。ガッシュの電撃を吸収した水の鞭がルーパー達に襲い掛かった。

 

清麿「まさか、パティの術に電気を吸収する術があったとはな」

 

ウルル「そのコンビネーションを瞬時に思いついた清麿も凄いな」

 

ハイド「やばいな…、泳太、ここは逃げ」

 

コルル「逃がさない!」

 

 逃げようとしたハイドと泳太をコルルは追いかけた。

 

ハイド「空を飛んで逃げれば」

 

恵「セウシル!」

 

ティオ「コルル、セウシルをジャンプ台にして追うのよ!」

 

コルル「うん!」

 

しおり「ゼルルド!」

 

 セウシルをジャンプ台にしてゼルルドを発動させたコルルは一気にハイドに追いついた。そして、泳太を抱えているハイドを叩き落とした後、ルーパー達の方へ吹っ飛ばした。

 

ルーパー「ちょっと、チャラ男も手伝いなさいよ」

 

泳太「チャラ男っていうんじゃねえ!ってか、俺達にまで変な唾をかけるな!ああ、もう頭にきた!こうなったら清麿とかいう野郎をぶっ飛ばして力づくでも大海恵を俺の彼女にしてやる!」

 

ルーパー「最初から力づくだったじゃない。あんまりしつこいと女の子に嫌われるわよ」

 

泳太「何だと!?おばさん!」

 

清麿「ガンレイズ・ザケル!」

 

ウルル「ガンズ・アクル!」

 

恵「ギガ・ラ・セウシル!」

 

 再び内輪もめをしているルーパー達にガンレイズ・ザケルとガンズ・アクルが次々と飛んできた上、ギガ・ラ・セウシルという反射板まで置かれたため、ギガ・ラ・セウシルに閉じ込められたルーパー達は必死に無数の電撃弾と水の球から逃げていた。

 

パピプリオ「不意打ちを仕掛けてくるなんて卑怯だぞ!」

 

パティ「悪いのはよそ見してるあんた達のパートナーじゃない。私達は何も悪くないわ」

 

パピプリオ「そんな言い訳しやがって!」

 

ハイド「あの女の言う通りだ。それを認めろ」

 

ヒゲ「ってか、このバリアはどうなってるんだよ!」

 

泳太「こんなバリア、ブチ破ってやるまでだ!オッサンも強い術を使え!ジキルガ!」

 

ヒゲ「オル・ドグラケル!」

 

 ハイドとゾボロンの技でギガ・ラ・セウシルを破ろうとしたが、破るどころか、ジキルガもオル・ドグラケルも跳ね返ってハイド達に襲い掛かった。

 

泳太「攻撃が跳ね返ってきたぞ!」

 

ルーパー「これじゃあ、どうにもならないじゃない!」

 

 必死に跳ね返る攻撃をかわすルーパー達だった。

 

恵「よくこんな連携を思いついたわね。清麿君は本物の天才よ」

 

清麿「この連携自体は前から考えていたんだ。ガッシュのガンレイズ・ザケルとティオのギガ・ラ・セウシル。これを組み合わせれば凄い攻撃になるんじゃないかと思って。それと、パティのガンズ・アクルを加えたのが今回の連携だ」

 

ウルル「清麿は天才とかどうとか言ってましたけど、本当に天才なんですか?」

 

しおり「そうみたいよ。何でも、IQ190の天才中学生って言われているわ」

 

ウルル「(中学生?高校生かと思ったぞ…)」

 

 ルーパー達はガンレイズ・ザケルやガンズ・アクルをよけ続けたために体力を消耗し、攻撃を受けてしまった。全員ダウンしたところで恵は術を解いた。

 

ティオ「さぁ、残りの奴の本も燃やしてやるわよ!」

 

清麿「ああ。ザケル!」

 

恵「サイス!」

 

ウルル「アクル・キロロ!」

 

しおり「ゼルセン!」

 

 攻撃が飛んでくるのを見たルーパーは急いで起き上がり、パピプリオを抱えて逃走した。

 

ルーパー「何が何でもパピーは私が守るわよ!」

 

パピプリオ「ルーパー…」

 

ヒゲ「こら、勝手に逃げるな!」

 

 もう攻撃をよける体力も残っていないヒゲと泳太はまともに攻撃を受けてしまい、本が燃えてしまった。

 

泳太「ちっくしょう…、大海恵にフラれた挙句、戦いにはボロ負け。おまけにハイドとお別れなんて最悪だな…」

 

ハイド「だけど、お前と一緒にいたのは楽しかったぜ、泳太。別れる前にこれだけは言っておくぞ。お前の女好きは大概にしておけよな」

 

泳太「最後の最後までハイドにこんな事を言われちまうとはな…」

 

 別れる時にさえハイドにきつい事を言われて泳太は苦笑いした。

 

ティオ「あっ!あのモジャモジャ頭とその魔物がいない!」

 

パティ「きっと逃げたのよ!ムキ~~ッ!今度会ったら本を燃やしてやるわ!」

 

ガッシュ「(結局、仲間になってほしいと言えなかったのう…。でも、また会う時に言えばいいのだ)」

 

コルル「でも、これで遊園地で遊べるよ。みんなでアトラクションを楽しもうよ」

 

 戦いが終わり、ガッシュ達は遊園地を楽しんだ。先程の戦いを偶然見ていたリィエンはある決心を固めた。

 

ティオ「どどど、どうなってるのよ…!」

 

パティ「小さいから乗れないですって!?せっかくガッシュちゃんと一緒に楽しめると思ってたのに…!」

 

ティオ「恵、タンコブよ!これで思いっきり私の頭を叩いて!」

 

パティ「私とコルルとガッシュちゃんの頭も叩くのよ!」

 

恵「よしなさい、他のアトラクションにしましょ」

 

ティオ「うわ~~!ジェットコースターがいいの!!」

 

パティ「そんな~~!」

 

ウルル「やれやれ……」

 

 アトラクションを楽しんだ後、全員で昼ご飯をとった。

 

パティ「ガッシュちゃん、隣で一緒に食べましょう」

 

ガッシュ「ウ、ウヌ…」

 

ティオ「私の隣にするのよ、ガッシュ!」

 

ガッシュ「コルル、私はどうすればよいのだ?」

 

コルル「ガッシュが決めなきゃダメだよ」

 

ガッシュ「ヌオ~~ッ!コルルは助けてくれぬのか!?ひどいではないか~~~!!」

 

 戦いでは一致団結したものの、戦いが終わればやはりパティとティオのガッシュの取り合いはまた始まってしまった。

 

しおり「ガッシュ君も仲のいい女の子が3人もいたら大変ね」

 

清麿「というか、ティオとコルルの時点でこうなってもおかしくなかったからな…」

 

しおり「それに比べれば、清麿君と恵は互いに男の競合相手も女の競合相手もいないから楽よね」

 

清麿「え、えっと…」

 

恵「し、しおり…。ちょっと恥ずかしいわ…」

 

しおり「2人共照れちゃって(まぁ、鈴芽ちゃんでは恵の競合相手にすらならないし、清麿君も恵に惹かれているからね)」

 

清麿「それより、パティはあんなにガッシュの事が好きなんだ?」

 

ウルル「何度もパティに聞かされている私が」

 

パティ「いいえ、私が話すわ。あれは魔界にいた頃よ…」

 

 パティのガッシュを好きになったいきさつ、そして王を決める戦いにおいてもずっとガッシュを探し続けた事を聞いている清麿達は若干苦笑いしていた。

 

清麿「ある意味凄いな…」

 

恵「強引だけど、ガッシュ君をずっと想って探し続けるなんて生半可な事じゃできないわ」

 

パティ「ガッシュちゃん、私はガッシュちゃんが王様になるなら本を燃やされていいと思ってたけど一緒に戦ってから考えが変わったの。私、ガッシュちゃんと一緒に戦うわ!いいでしょ?ガッシュちゃん」

 

ガッシュ「ウ、ウヌ…。よいのだ…」

 

パティ「いやん!ガッシュちゃんったら、嬉しくて照れちゃってるのね!」

 

ティオ「あんた、出しゃばり過ぎよ!ガッシュが嫌がってるじゃない!」

 

 わいわい騒ぐガッシュ達をよそに恵は何かを清麿に渡そうとしていた。

 

恵「清麿君、渡したい物があるけど…ちょっと離れた所でいい?」

 

清麿「どうして離れた所で?」

 

恵「ちょっと人前で渡すのが恥ずかしい物よ。いいかしら?」

 

清麿「いいよ」

 

 その場を離れる清麿と恵をしおりとウルルは微笑みながら見送っていた。

 

清麿「その渡したい物って…」

 

恵「私の写真集、今日のデートの時に清麿君に渡したいと思ってて」

 

 写真集を清麿は受け取って見てみると、その写真集は水着写真集であり、恵の大胆且つ、美しい水着姿の写真に清麿は見とれていた。

 

清麿「(す、凄いっ!恵さんの水着姿は美しすぎるっ!!)」

 

恵「清麿君、もしかして私の水着姿の写真に見とれたんでしょ?」

 

清麿「そ、そんな訳じゃ…」

 

恵「思ったよりもスケベな所が清麿君にもあったのね。じゃあ、この場で脱ごうかしら?」

 

清麿「は、恥ずかしいからやめてくれ!」

 

恵「勿論、冗談よ。うふふっ」

 

 写真集に見とれる清麿をからかった後、2人はガッシュ達のいる方へ戻っていった。




これで今回の話は終わりです。
パティ仲間入りの展開をしたのは、原作の展開を見て、もし、ガッシュに記憶があればパティは簡単に仲間になってくれていたのではないかと考えたからです。なお、石版編でパティの代わりに千年前の魔物をまとめる長の魔物は誰にするかちゃんと考えています。
パティとティオの関係は普段は喧嘩が絶えないが、戦いの時は息もピッタリという「喧嘩するほど仲がいい」感じにしています。
ちなみに、恵の水着写真集は魔界のブックマークのネタです。
次の話はガッシュと清麿だけでなく、ティオと恵も加わってウォンレイの救出に向かう話ですが、ウォンレイ救出に行く道中でとんでもない魔物と遭遇してしまいます。


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LEVEL15 目指す王の姿

高嶺家

 次の日の夜、清麿は恵に電話していた。

 

清麿「恵さん、リィエンの件で…」

 

恵『休暇の事を言ってるのね。でも、休暇をとる必要はないわ。だって、週末の仕事先は香港よ。だから、香港で合流しましょう』

 

 香港で合流する事を確認して恵は電話を切った。

 

ガッシュ「大丈夫であったか?」

 

清麿「ああ。まさか、俺達に助けを求める魔物のパートナーがいたとはな…」

 

 

 

 

遊園地

 それは、日曜日の遊園地での出来事だった。フェイン、ハイド、ゾボロンを倒し、パピプリオを退けたガッシュ達はアトラクションを回る清麿達だった。そこへ、何者かが突然現れた。

 

リィエン「ハイーーーーッ!!」

 

 その正体は清麿達を見続けていたリィエンだった。

 

リィエン「ハイーーーーッ!!」

 

 そのままリィエンは清麿と恵の本を奪い取り、猛スピードで逃げていった。

 

ガッシュ「(あの者はリィエン?だが、来るのが早すぎるのだ!)」

 

清麿「泥棒だ~~!!」

 

ガッシュ「本が奪われたのだ~~!!」

 

恵「急いで本を取り戻すわよ!!」

 

ティオ「ええ!本を燃やされたら冗談じゃないわ!!」

 

 4人は猛スピードでリィエンを追いかけた。リィエンが本を奪った光景に残りのコルルペアとパティペアはあっけにとられていた。

 

恵「清麿君、本を奪っていったあの人はもしかして…」

 

清麿「間違いない、魔物か、魔物の本の持ち主だ!」

 

 ある程度リィエンは走った後、進行方向を変えた。

 

ティオ「逃がさないわよ!」

 

ガッシュ「返すのだ~~!!」

 

 進行方向の先でリィエンは待っていた。それに清麿達は慌てて止まった。

 

清麿「うわああっ!!」

 

ティオ「危ないじゃない!ぶつかるところだったのよ!」

 

リィエン「いきなり本を奪い取ったりしてすまないある!まずは非礼を詫びるある!」

 

恵「あなたは?」

 

リィエン「私の名はリィエン。あなた達を魔物とそのパートナーと見て、お願いがあります!自分勝手と思うある……無茶なお願いとわかってるある!!でも…私はウォンレイを失いたくない!!どうか、私と一緒にウォンレイを救い出してほしいある!!」

 

 詳しい話をリィエンから聞く事になった。

 

リィエン「お父さんがみんな悪いある。私のお父さんはマフィアのボスある」

 

清麿「な、何っ!?」

 

恵「マフィアのボスですって!?」

 

清麿「しかし、とんでもねえ親父だな」

 

リィエン「だから私がどんな人と付き合ってきても、みんな、お父さんの名前がわかった途端、私から去って行った。でも、ウォンレイは違った。お父さんの正体を知っても、私から離れなかった」

 

ティオ「ねえ、もしかしてウォンレイって、あなたのパートナーの魔物?」

 

リィエン「話が早いある。ウォンレイは私のパートナーの魔物ある」

 

清麿「魔物?」

 

 

 

 

回想

リィエン『ウォンレイと出会ったのは、彼氏に逃げられてやけ食いしてた時ある』 

 

 彼氏に逃げられたリィエンはやけ食いしていた。そこへ、ウォンレイが来た。

 

ウォンレイ「そんなに食べると体に悪い」

 

リィエン「大きなお世話ある。ほっといて!」

 

ウォンレイ「何があったかは知らないが、自分をもっと大切にしろ」

 

リィエン「お節介な人ある!私はこのまま食べて食べてお腹を破裂させて死んでやるある!離すある!ハイーーーーッ!!」

 

 やけ食いを無理矢理やめさせようとしたウォンレイの行動に怒ったリィエンは蹴りを入れた。しかし、ウォンレイは避けなかった。

 

リィエン「なぜ、避けないある…?」

 

ウォンレイ「これであなたの気が晴れるなら、いくらでも蹴られよう」

 

 それから、リィエンはウォンレイと話す事にした。

 

ウォンレイ「それで、やけ食いをしてた訳か…」

 

リィエン「あなたも、お父さんにこんな所を見られたら命が危ないある。早く行くある…」

 

ウォンレイ「可哀想な人だ…。鳥かごの中の鳥と同じだ。なぜ、自由に空を飛ぼうとしない?」

 

リィエン「鳥かごから逃げたってって、お父さんはどこまでも追いかけてくるある」

 

ウォンレイ「なぜ諦める?なぜ自分で翼を広げようとしない?」

 

リィエン「そんな事言ってくれたのって、あなたが初めてある」

 

 すると、ウォンレイの持っていた本が光った。

 

リィエン「本が光ってるある」

 

 

 

 

ティオ「あなたはそのウォンレイって魔物の本の持ち主だったのね」

 

 その後もリィエンは話を続け、ウォンレイが戦うのをやめて姿を消した事を話した。

 

リィエン「それっきり、ウォンレイは私の前から消えてしまったある…」

 

恵「あなた、ウォンレイの事が好きなのね」

 

???「いたぞ!」

 

 声の主は黒づくめの男達だった。

 

リィエン「お父さんの部下ある!飛行機のチケットを用意するから、次の土曜日の香港行き出発ロビーに来てくれある!」

 

マフィア「待ちなさい、お嬢様!」

 

 マフィアの部下に追われてリィエンはその場から逃げた。

 

清麿「みんな、どうする?」

 

ガッシュ「決まっておるではないか」

 

ティオ「私達もウォンレイを助けるのよ」

 

恵「困ってる人を放っておけないしね」

 

 

 

 

 

香港

 出発の1日前の金曜日、強力な魔物、バリーがドンポッチョを追い詰めていた。

 

ドンポッチョ「降参する。許してくれ…」

 

バリー「降参だと?貴様、それでも王候補の1人なのか?」

 

ドンポッチョ「た、助けてくれ…」

 

バリー「ふざけるな!王を決める戦いで命乞いが通るとでも思っているのか?戦いの最中に敵に背中を向けてんじゃねえぞ!」

 

グスタフ「ギガノ・ゾニス!」

 

 竜巻でドンポッチョはパートナーごと吹き飛ばされ、その際に本が燃えて魔界に送還された。

 

バリー「クズ野郎が!何でこんなクソ弱いやつまで王を決める戦いに加わっているんだ?」

 

グスタフ「戦いに勝ってもイライラし、満足していない。なぜだ?」

 

バリー「知るか、そんな事!」

 

グスタフ「最近のお前はいつもそうだ。まるで、欲しい物が手に入らなくてわがままを言っている子供のようにな」

 

バリー「ふん、欲しい物などないわ。イライラしているのは事実だがな。まぁ、強い奴と戦って粉微塵にできたら、多少は気も晴れるだろうよ」

 

グスタフ「お前が欲しいのはそれか?バリー」

 

バリー「欲しい物なんてねえって言ってるだろ!」

 

グスタフ「まぁ、よい。ならば、戦ってみるか?強い奴と。ガッシュ、と言ったかな。以前、噂で聞いた。日本にいるガッシュという魔物に挑んで帰ってきた者はおらぬと。そのガッシュという魔物は圧倒的な強さを誇り、凶暴な女の魔物を3体も従えているらしい。どうする?」

 

バリー「…面白い。日本へ行こうか、グスタフ」

 

グスタフ「ふっ、いいだろう。バリー。だが、もう今日は遅い。次の日に日本へ向かうぞ」

 

 ホテルでバリーはグスタフと共に寝ていた。

 

グスタフ「魔界の王になるには戦いに勝てばいい、だったかな」

 

バリー「ああ。ただ、目の前の敵を倒せばいい。ふん、この分ならあっという間に王になれる」

 

グスタフ「ふん。本当にそれだけか?」

 

バリー「どういう意味だ?」

 

グスタフ「さあな、自分で考えな」

 

 それから、寝る事にした。

 

 

 

 

空港

 翌日、清麿とガッシュは朝早くに空港に来ていた。

 

清麿「なぁ、ガッシュ。ウォンレイってどんな奴だ?」

 

ガッシュ「ウヌ。とてもかっこいい魔物なのだ。おまけに強いのだぞ」

 

清麿「そっか…俺も会ってみたいな」

 

 そう言ってると、リィエンを見つけた。

 

ガッシュ「お待たせなのだ!」

 

清麿「待たせて済まなかったな」

 

リィエン「あ、あ…あなた達、底抜けのお人好しさんね!私、嬉しいある!一生恩にきるあるよ!」

 

清麿「自己紹介がまだだったな、俺は清麿、高嶺清麿だ」

 

ガッシュ「私はガッシュ・ベルだ」

 

清麿「この前の2人は大海恵とティオ。2人は仕事で先に香港に行ってるから、着いたら合流しよう。さ、奴等が来ないうちに早く!」

 

 

 

 

香港

 香港に到着したガッシュ達は仕事で先に香港に来ていた恵とティオの2人と合流した。

 

リィエン「恵とティオも底抜けのお人好しさんある!」

 

ティオ「それはいいから、早くウォンレイを助けようよ!」

 

 ウォンレイが幽閉されている妖岩島へ向けて出発した。一方、バリーはグスタフと共に空港へ向かおうとしていた。

 

バリー「ところで、ガッシュって奴はどんな外見の奴だ?」

 

グスタフ「聞いたところ、金髪にマントの魔物だそうだ。まぁ、今の時点でわかっている外見の特徴はそれだけだ」

 

バリー「もっと特徴を知りたいが、後は俺達が実際に探すしかねえな」

 

 ところが、バリーはある気配を感じた。

 

グスタフ「どうした?バリー」

 

バリー「魔物の気配を感じるぞ。もしかすると、ガッシュが俺達を倒しに来たのかも知れん。俺達が探すつもりが、先手を打たれてしまったようだ」

 

グスタフ「行くか?」

 

バリー「行くに決まってるだろ」

 

 ガッシュ達は妖岩島が見える所まで来ていた。

 

清麿「あれが妖岩島か…」

 

恵「あの島にウォンレイがいるのね…」

 

リィエン「さぁ、早くウォンレイを」

 

???「ガッシュ、俺達が日本に行こうと思ってたらまさかお前の方から来るとはな。お陰で日本に行く手間が省けたぜ!」

 

 声と共に術を使ってバリーがグスタフと共に空から降りてきた。

 

リィエン「何が起こったある!?」

 

バリー「金髪とマントの奴がガッシュだな。俺と勝負しろ!」

 

ガッシュ「バ、バリー!(な、なぜこんなに早く…確か、バリーと戦ったのは温泉の後…、そもそも、まだ魔物の数は40を切っていないのだ…!)」

 

ティオ「ガッシュ、バリーってあの虫みたいな頭の奴?」

 

ガッシュ「そうなのだ…。しかも、奴はとても強い…!」

 

バリー「む、虫みたいな頭…!ふざけやがって…、この生意気な小娘が!!」

 

 自分の頭を虫みたいな頭と言われて激怒したバリーはティオの方から先に攻撃した。その攻撃をティオは慌ててかわした。

 

ティオ「ちょっと、ガッシュに勝負を挑みに来たのに何で私を攻撃するのよ!」

 

リィエン「ウォンレイを助ける邪魔をするなある!」

 

バリー「ウォンレイ?てめえら…、俺との戦いよりもそのウォンレイとかいう奴を助けるのを優先する気か…!あ~~、イライラが収まらねえ!!てめえら全員、ぶっ飛ばしてやる!!」

 

恵「ウォンレイを助けに行く時に厄介な魔物に遭遇したわね…」

 

清麿「こうなったら、戦うしかない!恵さんとティオはリィエンが巻き添えにならないようにしてくれ」

 

恵「わかったわ。清麿君とガッシュ君も無理しないでね」

 

グスタフ「戦いの準備はできたか?」

 

清麿「ああ。ウォンレイを助けるためにも、お前達を倒す!」

 

バリー「開き直っているようだな。だが、俺はイライラしてるんだ。最初から本気で行くぞ!行くぞ、グスタフ!」

 

グスタフ「ガルゾニス!」

 

清麿「ザケル!」

 

 回転しながら突っ込むバリーとガッシュの電撃がぶつかり合った。前の戦いではザケルガとガルゾニスのぶつかり合いでバリーはほとんどダメージはなかった。しかし、今回はすぐにバリーはザケルに呑まれてしまい、吹っ飛ばされた。

 

バリー「ふっ、結構効いたぜ。いい呪文を持ってるじゃねえか」

 

グスタフ「(一番名前が短い呪文は最も威力が弱い傾向にあるが…、あの呪文の威力は異常だ…!もし、あれがガッシュの最も弱い呪文だとしたら…)」

 

清麿「(これまで戦った大概の魔物に大ダメージを与えたガッシュのザケルを受けても割とピンピンしてるとは…。こいつは相当強い魔物だ…)ガッシュ、奴に至近距離から呪文をぶち込むぞ!」

 

ガッシュ「うおおおっ!!」

 

 指示通りガッシュはバリーに突っ込んでいった。

 

バリー「接近戦を挑むのか。いい度胸だ!」

 

グスタフ「ドルゾニス!」

 

 ドリルのような竜巻がバリーの手を覆い、バリーは突っ込んで来た。

 

清麿「今だ、ザケル!」

 

 突っ込んで来たのをチャンスと見たため、ガッシュがマントでドルゾニスをガードしてから至近距離からのザケルを当てようとした。しかし、バリーは前の戦いの時のようにザケルをかわした。

 

ティオ「かわした!?」

 

恵「あんな距離でかわせるなんて…!」

 

バリー「バカが!敵の体勢を崩さずにそんな攻撃が当たるか!」

 

グスタフ「ゾニス!」

 

 そのままガッシュを清麿の方へ投げ飛ばしてからゾニスを高速移動に使ってガッシュペアに急接近し、2人を放り投げた。

 

バリー「攻撃のチャンスってのは…こうやって作るんだよ!」

 

グスタフ「ギガノ・ゾニス!」

 

清麿「(まずい、こうなったら、あの術を吹っ飛ばすしかない!)ガッシュ、マントを操作して体勢を立て直せ!」

 

ガッシュ「おう!」

 

清麿「ザケルガ!」

 

 ギガノ・ゾニスとザケルガがぶつかり合ったが、ザケルガがギガノ・ゾニスを貫通した。

 

バリー「何っ!?ギガノ・ゾニスを破っただと!?ぐあああっ!」

 

 ギガノ・ゾニスが破られた事に驚いたバリーはかわすのが間に合わず、ザケルガの直撃を受けた。一方の清麿は地面に叩きつけられたが、ガッシュはしっかり着地した。

 

ガッシュ「大丈夫か?清麿」

 

清麿「ああ。でかい一発をバリーに喰らわせる事はできたぜ…」

 

バリー「この野郎が…!調子に乗ってんじゃねえ!」

 

 立ち上がったバリーは突撃し、ガッシュに格闘戦を挑んだ。

 

バリー「どうだ、てめえに俺の攻撃が防げるか!」

 

ガッシュ「何が何でも私は負けられぬ!」

 

バリー「それもここで(な、何だ、このガッシュの目は…!)」

 

 ガッシュの強き瞳に思わずバリーは怯んだ。この隙をガッシュと清麿は逃さなかった。バリーが怯んだ隙にガッシュは頭突きを叩き込んだ。

 

バリー「ぐおおおっ!!」

 

清麿「ガンレイズ・ザケル」

 

 無数の電撃弾をバリーはかわそうとしたが、王族の力が目覚めたガッシュの頭突きのダメージは予想以上に大きく、かわせずに電撃弾を喰らってしまった。

 

清麿「ザケルガ!」

 

バリー「ぐああああっ!!」

 

 ガンレイズ・ザケルを受けて体勢が崩れた後、すかさずザケルガを撃ち込んだ。ザケルガをまともに受けたバリーは大きく吹っ飛んだ。

 

グスタフ「(あの少年、バリーが罵倒で言った事をすぐに戦い方に組み込んだとは…かなり頭がいいな…)」

 

バリー「うぐぐっ!何て威力だ…!」

 

清麿「どうだ!お前の言った通り俺達も体勢を崩して強い術を撃ち込んでやったぜ!ガッシュ、一気に畳みかけるぞ!」

 

ガッシュ「おう!」

 

清麿「テオザケル!」

 

バリー「ふざけやがって…!勝つのは俺だ!グスタフ、こうなったら最大呪文で吹っ飛ばせ!」

 

グスタフ「ディオガ・ゾニスドン!」

 

 テオザケルとティオガ・ゾニスドンのぶつかり合いは熾烈を極めた。最終的にディオガ・ゾニスドンがテオザケルを押し返した。

 

清麿「ぐあああっ!!」

 

ガッシュ「があああっ!!」

 

恵「清麿君!」

 

ティオ「ガッシュ!」

 

バリー「わめくんじゃねえ、女共!あいつらをぶちのめした後でぶっ飛ばしてやる。手を出したらてめえらから先にぶちのめすぞ!」

 

 かなりボロボロになりながらもバリーは近づいた。

 

ガッシュ「(何という事だ…。既にバリーがディオガ級の呪文を使えたとは…)」

 

清麿「(テオザケルが通じないだと?使える術の中でバリーを倒せそうな術は…バオウだけか…!だが、バオウは使いたくない…。使えばバリーを倒せるが、恵さんとティオとリィエンまでバオウに喰われてしまう!)」

 

ガッシュ「…清麿、バオウを使うのだ」

 

清麿「バオウだと!?無茶だ!あれならバリーを倒せるかも知れないが、制御が効かないから危険すぎる!」

 

ガッシュ「何を怯えているのだ、清麿!バリーを倒すにはもうバオウを使うしかないのだ!バオウに怯えていたらいつまでたっても使いこなす事はできぬぞ!」

 

清麿「だけど…」

 

バリー「俺を倒せる呪文だと?何なのかは知らんが、そんなものは使わせるかよ!」

 

 バオウを使う事を躊躇している間にバリーは清麿を殴ろうとした。そこへ、ガッシュが立ちはだかった。

 

ガッシュ「絶対に私達は負ける訳にはいかぬ!ウォンレイを助けるためにも!」

 

バリー「そんなにてめえからふっとば(ま、まただ!何でこのチビを殴れねえんだよ!)」

 

 再びバリーはガッシュの強き瞳に怯み、思わず距離をとってしまった。

 

清麿「(ガッシュ…、こんなにボロボロになっても…。そうだ…、俺達はウォンレイを助けるために香港に来たんだ。ここでバオウに怯えていたらバリーを倒すどころか、ウォンレイを助ける事も、ガッシュを王にする事もできねえ!)ガッシュ、バオウでバリーを倒し、ウォンレイを助けるぞ!」

 

ガッシュ「その言葉、待っていたのだ!」

 

バリー「くそっ、何で俺は俺との戦いよりも誰かを助けるのを優先しようとする甘っちょろいチビを殴れねえんだよ!こうなったらグスタフ、もう一度最大呪文であいつらを粉微塵にしてやるぞ!」

 

グスタフ「だが、ディオガ・ゾニスドンを撃てるのはあと1回だけだ」

 

バリー「1回で十分だ」

 

グスタフ「わかった。この一撃にすべてを込めるぞ…!」

 

 ディオガ・ゾニスドンを放つため、グスタフは心の力を溜め始めた。同時に清麿も心の力を込めていた。

 

清麿「行くぞ~~っ!バオウ・ザケルガ!!」

 

 再びすべてを破壊する雷の龍が姿を現した。その姿にバリーはおろか、グスタフさえ衝撃を受けた。

 

バリー「あ、あれがガッシュの最大呪文だと!?」

 

グスタフ「何という力だ…。想像を絶する程凄まじいが、それとは別に邪悪な気配を感じるぞ…!」

 

 ティオペアとリィエンも驚きを隠せなかった。

 

恵「あれは何なの!?」

 

リィエン「とても大きな雷の龍ある…」

 

ティオ「恵、清麿とガッシュが!」

 

 ブラゴ戦の時のように清麿とガッシュは体が黒くなり始めた。

 

清麿「ま、まただ…。力が…抜けて…。意識が……」

 

 清麿はブラゴ戦のように意識を失い始めた。

 

清麿「…ダメだ…、もう…これ以上は…」

 

恵「清麿君~~!!」

 

 バオウに喰われて意識を失いかけようとしている中、恵の悲痛な叫びが清麿に響いた。

 

清麿「恵さん…。そうだ、こんな所でバオウに喰われてたまるか!ガッシュ、行くぞ!」

 

 清麿の叫びからしばらくすると、バオウの様子が変化し、清麿とガッシュの黒くなった所が元に戻った。

 

清麿「体が軽くなっていく…。制御に成功したんだな!」

 

ティオ「見て、清麿とガッシュが!」

 

恵「よかった…」

 

 バオウの様子の変化にグスタフも何かを感じ取った。

 

グスタフ「(さっきまでの邪悪な気配が消えた…?どうやら、奴等はあの邪悪で強大な力を制御できたようだな…)」

 

バリー「何をボーッとあのデカイ龍を見てやがる、グスタフ!最大呪文でぶっ飛ばすぞ!」

 

グスタフ「よかろう。ガッシュの力とお前の力、どちらが上かはっきりさせるぞ。ディオガ・ゾニスドン!」

 

 バオウとディオガ・ゾニスドンがぶつかり合ったが、バオウはディオガ・ゾニスドンをあっさり食べてしまい、そのまま前進した。

 

グスタフ「何という事だ…!」

 

バリー「そんな…、俺の最大呪文があっさりと…ぐああああっ!!!」

 

 前の戦いの時と違い、バオウは真のバオウであったため、バリーは抵抗する事もできずに喰われてしまった。

 

清麿「勝ったな、ガッシュ…」

 

ガッシュ「ウヌ。真のバオウであれば、バリーでも耐えられないのだ」

 

 そう言っていると、煙が晴れた。そこには、バオウに当たらなかったため、無傷のグスタフとバオウをまともに受けたのにも関わらず、ボロボロながらもまだ立っているバリーの姿があった。

 

清麿「(そ、そんな…!バオウを喰らっても立っていられるなんて…!さっきのバオウで心の力を使い果たしてしまった!このままではまずい!)」

 

 清麿は焦ったが、グスタフは本を閉じた。

 

グスタフ「…この勝負、我々の負けだ」

 

清麿「負けだと!?バリーはまだ立って…」

 

グスタフ「お前達の最大呪文を受けてバリーはもう体を動かす事さえできない。それに、私も心の力を使い果たしてしまった」

 

 その言葉通り、バリーは力なく倒れた。

 

バリー「…ちくしょう…、体が…動かねえ…」

 

グスタフ「引き下がる前に聞きたい事がある。ガッシュといったな、お前はどのような王を目指している?」

 

ガッシュ「…優しい王様だ」

 

グスタフ「だから、我々との戦いよりもウォンレイという者を救うのを優先しようとしていたのか。だが、お前の進む道は険しいぞ。その覚悟はできているのか」

 

ガッシュ「勿論だ」

 

清麿「そうじゃなかったら、マフィアの島とか危ない場所へは行かないさ…!」

 

 ガッシュと清麿の目をグスタフはじっと見た。

 

グスタフ「…どうやら、覚悟はできているようだ」

 

バリー「優しい…王様…だと…!俺は…、こんな甘っちょろい奴を殴れずに…負けたのかよ…。ちくしょう…!」

 

 ガッシュに心でも力でも負けたバリーは自分への凄まじい怒りと悔しさで涙を流していた。

 

グスタフ「負けたのがとても悔しいのか。バリー、お前はどんな王を目指しておる?目の前の敵をただ倒していけばよい…そんなチンピラ同然の考えしか持たんお前に、この者の志ある本物の目は殴れんよ」

 

バリー「ふ…ふざけるな…!俺がガッシュに怯んだのはそれが理由なのかよ…!」

 

グスタフ「そうだ。そして、彼等があの凄まじい邪悪な力を制御できたのもその志故だ。バリーよ、お前はどんな王になる?」

 

バリー「…強え王よ…どんな荒くれも一殴りで黙らせる強え王よ…!どんな力にも屈しない、最強の王よ!!もう二度と負けないぐらいにまで強くなってやる!」

 

グスタフ「…よかろう、チンピラよりは格が上がったな」

 

バリー「ガッシュ、次の会う時には絶対にお前を殴り、叩きのめせるぐらいにまで強くなるからな!」

 

グスタフ「では、我々は引き下がるとしよう」

 

 倒れているバリーを背負ってグスタフは去って行った。

 

グスタフ「(あの者達があれほどの邪悪な力を制御できたのは、志だけではなく、勝利の女神もいたのだろうな…)」

 

 去って行くグスタフは横目で清麿がバオウに喰われ、意識を失いかけるのを救った恵を見ていた。

 

ガッシュ「勝ったのだ…、バリーに勝ったのだ!」

 

清麿「勝ったな…。これでウォンレイを…」

 

 戦いが終わって緊張の糸が切れたのか、清麿は倒れてしまった。

 

ガッシュ「清麿!」

 

リィエン「どうしたある!?」

 

恵「あんなにボロボロの状態で無理をしたから限界が来たのよ。ティオ、行くわよ!」

 

ティオ「ええ!」

 

恵「サイフォジオ!」

 

 ボロボロのガッシュペアはサイフォジオでの治療を受ける事になった。その際、赤い本が光った事にガッシュ達は気づいた。

 

 

 

 それからしばらくして清麿は目を覚ました。

 

恵「気がついたのね」

 

清麿「…恵さん、ここは…」

 

 起き上がってみると、清麿は自分達はゴムボートに乗っている事、そして恵に膝枕してもらった事に驚いていた。

 

清麿「お、俺は恵さんに膝枕してもらっていたのかよ!」

 

ティオ「恵が膝枕してくれる男は清麿だけなのよ。感謝しなさい」

 

清麿「…恵さん…。恵さんがいなかったら、バオウの制御なんてできなかった。ありがとう」

 

ガッシュ「私からもお礼を言うのだ」

 

恵「どういたしまして」

 

ティオ「まさに、恵は勝利の女神だったわね」

 

恵「それは大袈裟すぎるわ…」

 

清麿「ところで、このゴムボートは誰が動かして…」

 

リィエン「私が漕いでるある」

 

 ゴムボートを動かしていたのは必死で漕いでいたリィエンだった。

 

リィエン「今度は、私が頑張る番ある!」

 

清麿「いよいよか…」

 

恵「ウォンレイが閉じ込められている妖岩島は…」

 

 視線の先には目指す妖岩島があった。そこへ、ザバスとそのパートナー、ガリオントが近づいていた。

 

ザバス「さっき、とんでもねえ力のぶつかり合いがあったな。まぁ、どうでもいいや」




これで今回の話は終わりです。
原作から前倒しする形でバリーとの戦いと真バオウの制御を描きました。
邂逅編に出てる魔物の中でガッシュが真バオウを使わざるを得ない状況に追い込める強敵はブラゴ以外ではもうバリーしか残っていなかったため、バリーはブラゴと同様に既にディオガが使える状態で強さを上方修正しました。
この話の最後あたりで清麿は恵に膝枕してもらっていましたが、お色気描写も含めて今後も清麿が羨ましいと思えるような描写をどんどん入れていきます。
次はウォンレイ救出になります。


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LEVEL16 うなれ、恋愛カンフー!

妖岩島

 邪魔をしてきたバリーを退け、ガッシュ一行はようやく妖岩島に到着した。そこは、厳重な警備体制が敷かれていた。

 

リィエン「はぁ…はぁ…」

 

清麿「大丈夫か?少し休んだ方が…」

 

リィエン「休んでいる暇はないある…」

 

ティオ「あなた、どうしてそこまで…だって、魔物の子なのよ」

 

リィエン「さぁ、どうしてあるか。でも、清麿と恵の微笑ましい姿を見てると、ますます休んでいられないある」

 

清麿「(えっ、それって…)」

 

恵「(私と清麿君の姿が?もしかしてリィエン、ウォンレイの事が好きなのね…)」

 

清麿「それにしても、警備が厳しいな」

 

リィエン「この島には、父の組織の財宝や武器が蓄えられている。間違いなく、ウォンレイはここに閉じ込められているある。本当に危険なのはここからある。清麿達、本当に協力してくれるあるか?」

 

恵「私達が行かなくてもあなた1人で行くんでしょ?」

 

リィエン「ええ。その通りある」

 

ガッシュ「清麿」

 

清麿「ああ、行く」

 

恵「清麿君はバリーとの戦いでかなり体力と心の力を消耗しているから呪文を使わずに休んでて。今度は私とティオの出番よ。リィエンと清麿君達はティオと私から離れないで」

 

リィエン「はいある!」

 

清麿「…わかった」

 

ガッシュ「ウヌゥ…」

 

ティオ「仕方ないでしょ。清麿はもう術をほとんど出せないのよ。ここは私達に任せておきなさい。恵!」

 

恵「サイス!」

 

 見張りの1人をサイスで吹っ飛ばした。

 

見張りA「何者だ!?」

 

リィエン「ウォンレイを取り返しにきたある」

 

見張りB「お嬢さん!」

 

見張りA「誰であろうと関係ねえ。この島に入る奴は天才だろうがアイドルだろうが生かしちゃあ帰さねえんだよーー!!」

 

 見張りは銃を発砲した。

 

恵「セウシル!」

 

 しかし、恵達はセウシルで銃弾から守った。

 

見張りB「な、なんだと…!」

 

見張りA「構わん!撃ち続けろーー!!」

 

 驚きながらも、見張りは撃ち続けた。

 

恵「(私達の攻撃ではあなた達を倒す事は出来ないかもしれない。でも…防ぎ続けて、その弾を空にさせる事はできるのよ!!)」

 

 やがて、見張り達の銃の弾が切れた。

 

見張りA「ちっ!お前ら、かかれ!」

 

清麿「リィエン!」

 

リィエン「ハイーーーーッ!!」

 

 見張り達の銃の弾切れと同時に恵はセウシルを解き、リィエンは飛び出して次々と見張り達を一網打尽にしていった。

 

見張りA「くそっ!ならばあの弱そうなチビの女からだ!」

 

ティオ「……誰が弱そうなチビ…!?ワァアアアア!!」

 

 見張りの言葉にキレたティオは足元にあった石を見張りに向かって思いっきり投げつけた。

 

見張りC「ぐあっ、がっ…こいつ、股間を…!!」

 

見張りD「おい、大丈夫か?」

 

見張りA「ちっ、てめえら…調子に乗ってんじゃ…」

 

リィエン「ハイーーッ!!」

 

 次々と見張りはリィエンに倒されていった。

 

リィエン「大体片付いたある!みんな、行くあるよ!」

 

 しばらく進むと、また見張りが出てきた。

 

見張りE「何だてめえら!」

 

ティオ「また出たわよ!」

 

リィエン「ハイーーッ!!」

 

見張りE「フン、これでも喰らいやがれ!」

 

 リィエンが飛び出すのを見計らったかのように、横から丸太が激突する仕掛けが動いた。

 

リィエン「え…」

 

恵「セウシル!」

 

 セウシルで丸太は弾かれた。

 

見張りE「な、何だ!?バリアか何かが…丸太を弾き飛ばしただと!?」

 

リィエン「ハイーーッ!!」

 

 セウシルが解除されたのと同時にリィエンは飛び出し、見張りをなぎ倒した。

 

清麿「(あれだけの見張りをこうも簡単に倒せるとは…。敵に回したくないな…)」

 

恵「リィエンって強いのね」

 

リィエン「そんなことないある。清麿達がいなかったらとっくに死んでるあるよ」

 

清麿「さぁ、牢屋への道を探そう」

 

見張りF「ふっふっふっ」

 

ティオ「いつの間に!?」

 

見張りF「誰が行かせるかよ!」

 

 別の見張りは石でエレベーターを操作する機械を壊した。

 

見張りF「へ、これで牢へは行けねえ…」

 

恵「何ですって!?」

 

見張りF「このエレベーターが動かなきゃ、頂上へは絶対に辿りつけねえ。ざまあみろだ!」

 

ティオ「ま、待ちなさいよ!他の道はないの!?」

 

 清麿達を嘲笑って見張りは逃げてしまった。

 

リィエン「ガッシュ、清麿、ティオ、恵、ありがとう。ここまでで十分ある」

 

ガッシュ「リィエン…」

 

リィエン「後は…私1人で行くある」

 

 そう言ってリィエンは登り始めた。

 

ティオ「無茶よ!ただでさえリィエンはここまでボートを漕いで、見張りを倒して疲れているのよ」

 

リィエン「ありがとうある。でも…行くある!」

 

恵「清麿君、他に道はないの?」

 

清麿「いや、何とかなるかも知れない。恵さんは俺を手伝ってくれ」

 

恵「何とかなるって…」

 

 必死にリィエンはウォンレイと一緒に居た時の事を思い出しながら登っていた。

 

リィエン『ウォンレイ、魔界の王様になったら、どんな王様になるあるか?』

 

ウォンレイ『そうだな…みんなを守りたい。魔界の者全てを守れる王に私はなりたい』

 

リィエン『素敵な夢ある…』

 

リィエン「なのに…」

 

ウォンレイ『あなたは大切な人だ。戦いに巻き込んで傷つけたくない…』

 

リィエン「ウォンレイ、私はあなたが好きある!王になる夢を諦めちゃいけないある!私はあなたのためなら、傷つくことなど何でもない。だから、一緒に…うわああっ!!」

 

 手を滑らせてリィエンは落ちてしまった。だが、リィエンの横を動かないはずのエレベーターが通り、マントを伸ばし、命綱代わりにしてティオに掴んでもらったガッシュがエレベーターから降りてリィエンを腕を掴んだ。

 

ガッシュ「頑張るのだ!」

 

ティオ「私達がついているのよ!」

 

 そのままマントを縮めてガッシュはリィエンと共にエレベーターに乗り込んだ。

 

リィエン「清麿、恵、なぜエレベーターが?」

 

清麿「実は俺、こういう頭使う方が得意でね、工具が合わなくて手間取ったけど、何とか直す事ができたぜ」

 

恵「さ、ウォンレイが待っているわよ」

 

リィエン「うん…、いくある。早くウォンレイを助けるある」

 

ガッシュ「ウヌ、頑張るのだ、リィエン!」

 

 順調にエレベーターは頂上まで向かっていた。

 

恵「もうすぐ頂上かしら?」

 

リィエン「きっと…もうすぐある!」

 

ガッシュ「(もうすぐウォンレイに会えるのだ。だが…、私達はザバスより先に着くのであろうか…)」

 

ティオ「(ウォンレイってどんな魔物なんだろう…。かっこいいといいけどなぁ…)」

 

 そして、頂上に辿りついた。

 

リィエン「ウォンレイ、助けに」

 

???「ぐっ!」

 

 しかし、一同が目の当たりにした光景はザバスに苦戦しているウォンレイの姿だった。

 

ガリオント「こいつ、こんなに強かったとはな」

 

ザバス「でも、さすがのお前でも呪文なしじゃきついよなぁ?」

 

ガッシュ「(何という事だ…。バリーの妨害でここまで私達が遅くなってしまったとは…)」

 

ガリオント「オル・ウィガル!」

 

 風の鞭がウォンレイを襲う。

 

恵「セウシル!」

 

 しかし、セウシルで防がれた。その間に清麿達はウォンレイの元に駆け付けた。

 

リィエン「ウォンレイ!」

 

ウォンレイ「何しに来た…?リィエン…」

 

ザバス「…お前ら、魔物だな」

 

ティオ「ええ、でも、パートナーのいない魔物に攻撃をするような奴に答えたくなんかないわ!」

 

恵「パートナーがいない時に攻撃されてる時の恐ろしさ、怖さ…あなた達にはかわいそうと思う心はないの!?」

 

ザバス「ふん、くだらねえな!」

 

ティオ「…お前も、マルスと同じなのね…!絶対に倒してやるわよ、恵!」

 

恵「ええ!」

 

ザバス「行くぞ!」

 

ガリオント「ガルウルク!」

 

 翼に身を包んでザバスは弾丸のように突進してきた。

 

恵「セウシ」

 

 発動が間に合わずに恵とティオはザバスの突進を受けてしまった。

 

恵「きゃあああっ!!」

 

ティオ「あああっ!!」

 

ガッシュ「ティオ!」

 

清麿「恵さん!(どうする…、恵さんとティオじゃあいつらには勝てない…。俺とガッシュはバリーとの戦いでかなり消耗しているから呪文もろくに使えない…。他に戦えるのは…戦える奴…?そうか!)」

 

 一方のリィエンはウォンレイに一緒に戦うように話していた。

 

リィエン「ウォンレイ、大丈夫あるか!?すぐに本を私に渡すある!私、あなたと一緒に戦いたいから…傷ついても平気だから…私、ウォンレイが好きあるから!!」

 

ウォンレイ「…帰ってくれ、リィエン…」

 

リィエン「帰って…って、どうして!?」

 

ザバス「もう、そいつは俺達に負けると悟っているのさ」

 

ウォンレイ「私は…あなたが嫌いだ…」

 

リィエン「…そ、そんな…」

 

清麿「ふざけんじゃねえぞ、ウォンレイ!」

 

 リィエンを遠ざけようとするウォンレイを清麿は殴った。

 

清麿「てめえ、まだリィエンを傷つけるつもりか!」

 

ティオ「リィエンは…敵である私達に助けを求めて…ここまで来るまでだって、ほとんど一人でボートを漕いで、見張りも倒して…すごく、すっごく大変な思いをしてあなたを助けに来ているのよ!」

 

恵「…一緒に来た私達もお人好しだけど、行こうと思ったのは…リィエンの気持ちが伝わってきたから」

 

ティオ「リィエンはあなたの事が好きなのよ!どうしてこんな大変なところまでやってきたと思っているの!?」

 

ガッシュ「リィエンはここに来るときに言ってくれたのだ!お主が『魔界の者すべてを守れる王』になるのを手伝いたいと!」

 

清麿「戦いから逃げてて何が王!パートナーとして…リィエンはお前のために頑張るって言ってくれてるんだ!」

 

恵「辛い事しかない戦いかも知れないけど…それでもリィエンは…あなたの事が好きだから!あなたのために、ここまで来たのよ!」

 

ティオ「リィエンの事が嫌いだなんて嘘なんでしょ!好きなら守りなさい!王を目指しなさい!」

 

ガッシュ「運命や障害に立ち向かわないで何が王だ!」

 

 ガッシュ達の言葉にウォンレイは衝撃を受けた。

 

ガリオント「余興は終わったか?」

 

ザバス「クズが夢だの守るだの、王だのとよ!さしずめ、クズの魔物にクズの人間がくっついたってわけだ!よかろう、クズ同士仲良く木っ端微塵にしてやるぜ!ガリオント、まずはあの女達の始末が先だ!」

 

 ザバスの言葉に静かに激怒したウォンレイは本をリィエンに渡した。

 

ウォンレイ「リィエン、第四の呪文だ…!」

 

 一方のザバスは狙いをティオと恵に定めていた。

 

ガリオント「オル・ウ」

 

リィエン「ゴウ・バウレン!」

 

 敵より先にウォンレイの鉄拳がさく裂し、ザバスを大きく殴り飛ばした。

 

ガッシュ「戦う決心がついたのか!」

 

ティオ「遅いわよ!」

 

ザバス「クソ、なぜだ!なぜおまえが戦う気になりやがった!!」

 

ウォンレイ「…簡単な事だ。パートナーをクズ呼ばわりされて怒らない魔物がどこにいる?リィエンは大切な人だ。そしてそのリィエンを守ってここまで来てくれた彼等も傷つけてはいけない人達だ。君達のおかげで目が覚めた。…ありがとう」

 

清麿「それよりも、あいつを倒すのが先だ!」

 

ウォンレイ「君達は下がるんだ。まずはリィエンをクズ呼ばわりしたあやつを魔界へ帰す!」

 

ザバス「クソッ、不意打ちでいい気になるなよ!」

 

ガリオント「オル・ウィガル!」

 

ザバス「俺の本気を舐めるなよ!避けられるものなら避けてみな!」

 

 自在に動かせる風の鞭が襲い掛かった。

 

ウォンレイ「リィエン、私の後ろへ」

 

リィエン「はいある!」

 

ウォンレイ「風手双掌は風をもとらえる双手の掌!万槍を弾く鋼の門!」

 

清麿「(ここまで不規則な攻撃に合わせてるだと?)」

 

リィエン「レルド!」

 

 不規則な風の鞭の動きに対応し、攻撃を防いだ。

 

ガリオント「ええい、ならばスピード+パワーだ!さっきよりもパワーを込めて撃ってやる!」

 

ザバス「今度は簡単に避けられると思うなよ!」

 

ガリオント「ガルウルク!」

 

ザバス「女の方からやってやらぁ!」

 

 突進してきたザバスはリィエンに狙いを定めた。

 

ウォンレイ「『白王・虎爪』は封龍の虎!龍をも掴む豪傑の爪!」

 

 ところが、ウォンレイはザバスの頭を掴み、吹っ飛ばした。

 

ウォンレイ「リィエンには指一本触れさせん!」

 

 その後、さらにウォンレイは追い討ちをかけた。

 

ザバス「く、くそっ…、何だ…その動きは…?何だ…、その技は…?」

 

ウォンレイ「カンフー!」

 

ザバス「ガリオント!」

 

ガリオント「ガルウルク!」

 

 またザバスは突進した。

 

ウォンレイ「リィエン!」

 

リィエン「はいある!ゴウ・バウレン!」

 

 再びザバスは殴り飛ばされた。

 

ザバス「くそっ…」

 

ウォンレイ「まだ私の攻撃は終わらないぞ!」

 

リィエン「レドルク!」

 

 ウォンレイの足がかなり速くなり、一気にガリオントに迫った。

 

ザバス「し、しまった!」

 

リィエン「バウレン!」

 

 ザバスの本はあっけなく燃やされてしまった。

 

ザバス「お、俺の…本…が…」

 

ガリオント「ひ、ひ、ひいぃぃぃぃっ!!!」

 

 そのままザバスは魔界に送還され、ガリオントは逃げ出した。

 

恵「凄い…あっという間に倒しちゃった…」

 

清麿「(ガッシュの話ではウォンレイは強いと聞いていたが、これほどだったとは…)」

 

リィエン「大丈夫あるか?」

 

ティオ「大丈夫よ。これくらいでへばってたら魔界の王様になんてなれないわ」

 

恵「ティオったら、意地を張っちゃって」

 

ウォンレイ「ティオ、恵、清麿、ガッシュ、ありがとう。君達の言葉が私を導いた。リィエンを守ってくれた事から何まで、何とお礼を言ったらいいのか…」

 

清麿「お礼か…そうだな。俺達と一緒に魔界の王を目指さないか?」

 

ガッシュ「私達はティオ以外にもあと二組の魔物と仲間になっているのだ」

 

恵「ダメ…かしら…?」

 

リィエン「大丈夫に決まってるある!ウォンレイ、いいあるか!?」

 

ウォンレイ「もちろん」

 

ティオ「そろそろ帰りましょう」

 

 下が騒がしくなったため、ガッシュ達はその場を去る事にした。一応、ガッシュ達が囮になり、ウォンレイ達が逃げられるように行動した。しかし、ウォンレイ達が逃げた先に

はリィエンの父、パクロンが待ち構えていた。

 

パクロン「ウォンレイよ、うちの娘をどうするつもりだ?」

 

ウォンレイ「一緒に連れて行きます。例え、反対されても」

 

パクロン「ふん…寝言は寝てから言え。お前のような魔物に娘を預けられるか?」

 

ウォンレイ「リィエンは必ず守り抜きます。どんな敵が来ようとも、私は決してリィエンから離れません!」

 

パクロン「ふん、その敵が…このワシでもかーーーっ!!」

 

ウォンレイ「もう私は逃げはしない!」

 

 パクロンはウォンレイに剣を振り下ろそうとしたが、ウォンレイの一歩も引かない姿勢に剣を寸止めし、しばらく睨み合った後、剣をしまった。

 

パクロン「ふん、バカな奴め。どこぞの船が漂っておる。これでは、誰かが勝手に乗って行こうと仕方あるまい」

 

リィエン「お父さん!」

 

パクロン「とっとと行け!目障りだ!」

 

リィエン「お父さん、頂上には」

 

パクロン「皆まで言うな。お前をここに連れて来た連中は見逃してやろう」

 

リィエン「……ありがとうある!」

 

 ガッシュ達はパクロンが手配した船で帰る事になった。

 

清麿「何っ!?新しい呪文が出たぞ!いつから出たんだ!?」

 

恵「バリーとの戦いが終わって清麿君が気を失った後よ」

 

清麿「それを早く言ってくれよ…」

 

ティオ「あの時はウォンレイの救出を優先していたから言う暇がなかったのよ」

 

清麿「何々、新しい呪文は…ラウザルクとザグルゼムか…(どういった呪文か、後でガッシュに聞いてみよう)」

 

ガッシュ「(おお!よく使っておった二つの呪文ではないか!これで戦い方も広がるのだ!)」

 

恵「ところで清麿君、あの2人は大丈夫かな?」

 

清麿「大丈夫さ、きっと」

 

 その頃、残されたガリオントは……

 

ガリオント「ひぃぃぃ!!!」

 

パクロン「貴様か?この島に入り込む不届き者は」

 

部下「捕まえろ!!」

 

 そのままガリオントは捕まってしまった。

 

ガリオント「し、侵入者だけど…、侵入者はま、まだ上に…」

 

パクロン「聞こえんな」

 

部下「さっさと連れていけ!」

 

ガリオント「そ、そんな~~~!!」

 

 言葉は聞き入れられず、ガリオントはそのまま連行されてしまった。




これで今回の話は終わりです。
王族の力が目覚めたガッシュがそのままザバスと戦ったらザバスを瞬殺しかねない上、ウォンレイの活躍の場を奪ってしまうため、前回のバリー戦でガッシュと清麿が消耗した状態になったため、ろくに戦えないシチュエーションにしました。
次はパティとコルルがパートナーと共に温泉旅行に行きます。


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LEVEL17 姿なき狩人

モチノキ町

 これは、遊園地の次の日の事だった。

 

しおり「昨日、清麿君と恵はリィエンって人から土曜日に一緒に香港に来るように頼まれていたわね」

 

コルル「私も行きたかったなぁ…」

 

しおり「仕方ないわよ。そうだ、福引券を持ってるから福引でもしない?」

 

コルル「福引?」

 

しおり「ほら、あのガラガラができるのよ」

 

コルル「(四等、ブリ。ガッシュに持っていったら喜びそうだなぁ…)しおりねーちゃん、ガラガラやりたい!」

 

しおり「はーい」

 

???「ちょっと、私も混ぜてくれない?」

 

 そこへ、パティペアも来た。

 

しおり「パティもガラガラをするの?」

 

パティ「当然じゃない。四等のブリはガッシュちゃんの大好物なのよ!絶対に当ててやるわよ!」

 

 パティとコルルは福引をしたが、どっちもハズレしか出なかった。

 

パティ「ムキーーーッ!!何でハズレしか出ないのよ!!あぁ、悔しい~~~!!」

 

しおり「(あらら…)」

 

ウルル「機嫌が直るのに時間がかかるな…」

 

しおり「そんなにがっかりしないで!ね?」

 

パティ「もう、何で私達はハズレなの!?納得がいかないわ~~!!」

 

???「君達、ハズレちゃったのかい?」

 

 声の主は黒人の男だった。

 

パティ「そうよ!それでムシャクシャしてるのよ!!」

 

???「じゃあ、私の景品を譲ってあげよう」

 

コルル「その景品って何?」

 

???「一等の温泉旅行券だよ。おじさんはアフリカに帰っちゃうから…君達みたいな人に譲りたかったんだ」

 

しおり「コルル、よかったね」

 

コルル「おじさん、ありがとう!」

 

???「いいんだよ。『気を付けて』行ってきてね」

 

 男が温泉旅行券を譲ってくれた事にコルルペアとパティは大喜びしていたが、ウルルは少し凝視していた。

 

パティ「どうしたのよ、ウルル。嬉しくないの?」

 

ウルル「いえ…。ただ、アフリカとかへ帰るという理由で温泉旅行券を譲るというのは今まで聞いた事がなくて、少し怪しいと思うんですよ…」

 

パティ「別にいいじゃない。本当はガッシュちゃんとも一緒に温泉旅行に行きたかったけど、頼まれ事があるのなら、そっちを優先させるわ。一緒に行くティオが余計な事をしないのかが不安なのだけどね…!」

 

ウルル「(嫉妬深いな…)」

 

パティ「とにかく、私達も温泉旅行に行くわよ。コルルもそれでいい?」

 

コルル「しおりねーちゃんのお父さんとお母さんは仕事でいない事が多いから、一緒に行こうか」

 

パティ「ああ…、温泉で私の美貌はさらに磨かれるのね…。早く土曜日にならないかしら…?」

 

 ハイテンションで温泉旅行を楽しみにしているパティにしおりとウルルは苦笑いした。

 

 

 

 

温泉旅館

 そして土曜日、ガッシュ達がウォンレイ救出に向かったのと時を同じくしてパティ達は温泉を満喫していた。

 

パティ「あ~、いい湯だわ。生まれ変わる気分だし、私の美貌も一段と磨かれるみたい…。ガッシュちゃんと一緒に入りたかったなぁ…」

 

コルル「ガッシュは男の子だから一緒に入れないよ、パティ。だけど、あのおじさんちょっとかわいそう…」

 

しおり「お仕事らしいし、仕方ないよ。私のお父さんとお母さんだって仕事だし…」

 

コルル「そう言えばパティのパートナーのウルルって人はあのおじさんを疑っていたようだったけど…」

 

パティ「ウルルは仕事だから旅行券を譲ると言ったのを怪しいと言っているのよ。まぁ、本当かどうかはわからないけどね」

 

しおり「ウルルさんもそろそろ温泉から出てるだろうから、私達も出よっか」

 

 温泉から出た後、自分達の泊まる部屋でくつろいでいた。

 

パティ「私達より出るのが早かったわね」

 

ウルル「はい…、男湯も私1人しか入っていなくて…」

 

しおり「夕食まで時間があるわね。何をしようかしら?」

 

コルル「しおりねーちゃん、これ、あったよ」

 

 テーブルの上に紙切れがある事に気付いた。

 

コルル「…なんて読むの?」

 

しおり「秘湯、煮桃の湯…。コルル!奥の方に隠し湯…別の温泉があるんだって!」

 

コルル「へー!私行きたい!」

 

しおり「私も行きたい!決まりね、普段着に着替えて行きましょ!」

 

パティ「私達も行くわよ、ウルル」

 

ウルル「(おかしいな…。私達が来た時にはこの紙切れはなかったのに…どうして急に…。それに…、私が温泉から上がって部屋に戻る時にも何かが入ったような音もした…)」

 

パティ「話を聞いてるの?ウルル!私達も行くわよ!」

 

ウルル「あ、はい…」

 

 

 旅館を出て、紙切れにある隠し湯を目指して一行は進んだ。隠し湯を楽しみにする女性陣とは対照的にウルルは紙切れをかなり怪しんでいた。隠し湯を探したものの、見つからなかった。

 

しおり「おかしいな…この辺りのはずなんだけど…」

 

コルル「どこにも湯気がないよ」

 

パティ「本当にこの辺りなの?全然痕跡も見当たらないわよ」

 

ウルル「仕方ないので帰りましょうか」

 

 仕方ないので一行は帰る事にした。その光景を温泉旅行券を譲った男、ガルザとそのパートナーの豹の魔物、バランシャが見ていた。

 

ガルザ「ウォケル!」

 

 遠くからのため、かすかながらパティとコルルには聞こえた。

 

パティ「この声は何?」

 

しおり「きゃあっ!」

 

 突如として超音波のような攻撃がしおりを襲った。

 

ウルル「しおりさん!」

 

コルル「しおりねーちゃん、足、大丈夫!?」

 

しおり「なんとか…ねえ、もしかしてこれって…魔物の攻撃!?」

 

パティ「そうとしか考えられないわよ!さっき何かの声が聞こえたでしょ?きっと、あれがさっきの呪文だったのよ!」

 

ウルル「(前々から怪しいと思っていたが、これは罠か!)遠回りしてでも見通しの悪い所を通りながら吊り橋を渡りましょう!」

 

しおり「そ…そうしましょ」

 

コルル「(しおりねーちゃん、足引きずってる…痛かったんだ…)」

 

 ウルルに手を引いてもらい、一行は見通しの悪い場所を通りながら吊り橋を目指した。

 

バランシャ「あの男の方はこの温泉旅行が罠だと薄々気付いているようね」

 

ガルザ「だが、もう手遅れだ。一気に2体も狩る事ができるぞ」

 

バランシャ「今回の狩りも楽勝ね」

 

ガルザ「今回はいっその事、橋を落さずに帰れるという希望を持たせて一網打尽にしてみないか?」

 

バランシャ「それ、いいわね。ちょうど、あの子達は身を隠しながら逃げようとしているわ。今は岩を背にしているみたいよ」

 

ガルザ「ふふふ、その考えは甘いぞ。少し顔を見せてやるとしようか」

 

 吊り橋を目指す一行は遠回りしつつ、少し休んでいた。

 

ウルル「大丈夫ですか?」

 

しおり「傷自体は…そこまででもないから…」

 

パティ「コルル、私達は魔物が来たらウルルとしおりに伝えるわよ」

 

コルル「うん…」

 

ガルザ「ドルク!」

 

 鎧を纏ったバランシャがしおりとウルルが背にしていた岩を砕いて現れた。ウルルはしおりの手を引いて咄嗟にかわした。

 

バランシャ「咄嗟によけたけど、よけた際の隙が命取りよ!」

 

しおり「ゼルク!」

 

 コルルは凶悪な姿になり、爪でバランシャを引き裂きに近づいた。

 

コルル「ウアアアッ!!」

 

バランシャ「は、速い!?」

 

 咄嗟にバランシャは避けたが、コルルの爪が少しかすった。

 

バランシャ「ガルザ!」

 

ガルザ「ウォケル!」

 

 超音波をコルルは爪で防御した。

 

バランシャ「なかなかやるじゃない。でも、そろそろ撤」

 

ウルル「アクル!」

 

 コルルに気を取られている隙にバランシャはアクルで吹っ飛ばされた。

 

バランシャ「しまった!もう1体の魔物を見落としていたわ!」

 

ガルザ「グ・リアルク!」

 

 バランシャの姿が消えてしまった。

 

コルル「どこ…?」

 

パティ「どこにいるのよ!」

 

ウルル「(まずい…、見えなくなったら私達が不利になる…)」

 

バランシャ「(ふふ、どこにいるのかわからないようね…ゆっくりといたぶって狩りを楽しみわよ)」

 

ガルザ「ウォケル!」

 

 避ける体勢も整わないままパティはウォケルを受けてしまった。

 

バランシャ「(まずは、あまり強そうに見えない子から始末してあげるわ)」

 

ガルザ「グ・リアルク!」

 

 再びバランシャは姿を消してしまった。

 

パティ「怨怒霊…怨怒霊~~!!姿を消しやがって、コンチクショ~~~ッ!いい加減に姿を見せなさいよ!!」

 

 姿が見えずに一方的に攻撃を受けたパティの怒りはすぐに頂点に達し、凶暴化した。その凄まじい顔と気迫はバランシャはおろか、ガルザまでびびってしまった。

 

バランシャ「な、何なのよ、あのもののけ娘は!ガルザ!」

 

 声をかけるも、あっけにとられていたガルザには聞こえなかった。

 

バランシャ「ちょっと、ガルザ!聞こえないの!?」

 

ウルル「パティ!」

 

パティ「ええ!」

 

ウルル「アクルガ!」

 

 隙を逃さなかったパティはアクルガを薙ぎ払うように放った。薙ぎ払うように放たれるアクルガをバランシャは受けてしまった。まだ透明ではあったものの、水を被ってしまったため、位置がバレてしまった。

 

バランシャ「何て圧力の水なのよ!」

 

しおり「あそこに敵がいるのね…コルル、パティのお陰でどこにいるのかがわかったわ!あの動く水滴を追いかけるのよ!」

 

コルル「うん!」

 

しおり「ゼルク!」

 

パティ「ウルル、私も追いかけるわ!」

 

ウルル「アクロウク!」

 

 バランシャの体についた水を頼りにコルルとパティは追いかけた。

 

コルル「絶対に逃がさない!」

 

パティ「待ちやがれ~~!!」

 

バランシャ「ちょっと、透明になっているのに何で私を追いかけてくるのよ!」

 

 必死で逃げるバランシャはガルザと合流した。

 

ガルザ「バランシャ、大丈夫か?」

 

バランシャ「おかしいわ、ガルザ。私の姿、本当に消えているの?」

 

ガルザ「あ、ああ、もちろんだ。どこに」

 

 再びパティとコルルが来たため、慌ててバランシャはまた逃げた。

 

バランシャ「だったら、なぜあの子達は私を追えるの!?」

 

ガルザ「なぜだ…なぜ奴等は正確に位置を…ん?」

 

 透明になっているバランシャの体に水滴がついているのをガルザは見た。

 

ガルザ「水滴?そ、そうだ、あの時、バランシャは水を受けて…。だから、奴等はバランシャについた水滴を頼りに追えるのか!」

 

 バランシャはやがて疲れが出始め、コルルとパティに追いつかれた挙句、殴る、蹴るなどの攻撃を受け続けた。

 

コルル「よくもさっきはしおりねーちゃんに攻撃してくれたわね!」

 

パティ「私達を怒らせたからにはただでは済まさないわよ~~!」

 

 そして、バランシャはガルザの近くにふっとばされた。

 

ガルザ「くっ、一旦退いて体勢を立て直すぞ!」

 

パティ「逃がさないわよ~~!」

 

ウルル「しおりさん、立てますか?」

 

しおり「もう大丈夫よ。コルルはパティと一緒に頑張ってるから、私もじっといるわけにはいかないもの!」

 

 慌てて逃げるガルザとバランシャだったが、逃げた先は崖だった。

 

ガルザ「し、しまった!」

 

ウルル「どうですか?あなた自身が追われる立場になった気分は」

 

 声と共にウルルとしおりが来た。

 

コルル「しおりねーちゃん、大丈夫?」

 

しおり「十分休んだからバッチリよ」

 

ガルザ「おのれ、こうなったらバランシャ最大の攻撃形態、ギガノ・ガドルク!」

 

 バランシャの鎧がドルクの時とは違う頑丈そうで鋭利なものになった。

 

ガルザ「ふはははっ!常に我々は獲物を狩る側だ!お前達にこの攻撃形態を破る事はできるか!?」

 

ウルル「こうなったら私達も最大呪文を使いましょう!」

 

しおり「ええ!ラージア・ゼルセン!」

 

ウルル「スオウ・ギアクル!」

 

 巨大なロケットパンチと水の龍がバランシャに向かっていった。

 

ガルザ「ええ~~っ!!」

 

バランシャ「まさか、こんなに強力な呪文が使えたなんて~~!」

 

 二つの呪文をバランシャは受け止めようともせず、ガルザと共に崖から真っ逆さまに落ちていった。

 

コルル「何とかなったわね」

 

パティ「そうね。これぞ、私と友達のコルルの友情パワーって奴かしら?」

 

しおり「いつから友達になったのよ」

 

ウルル「まぁ、突っ込まない方がいいですよ。さ、早く帰りましょうか」

 

 パティとコルルの連携により、前の戦いでのガッシュが経験したバランシャとの戦いも楽に戦い抜く事ができた。旅館へ戻る際にパティの本が光った。

 

パティ「新しい呪文?」

 

ウルル「そうみたいですよ。テオアクルだそうです」

 

パティ「どんな呪文かしら?」

 

ウルル「さぁ、少なくともアクルよりは強いんじゃないですか?」

 

 

モチノキ町

 そして、月曜日になり、帰ってきた魔物の子達は公園に集まった。

 

コルル「ウォンレイって魔物だったんだ」

 

ティオ「そうよ。助けに行く途中でバリーっていうとんでもなく危なくて強い魔物と遭遇したけど、何とか退けてウォンレイを助け出せたわ」

 

ガッシュ「コルルとパティはバランシャという魔物に襲われたのか…」

 

パティ「でも、私とコルルが倒したのよ。本は燃やせなかったけど、また来ても返り討ちにするわ!」

 

???「あっ、ガッシュじゃない。女の子3人と何をしてるの?」

 

 声をかけたのはナオミちゃんだった。

 

ガッシュ「ナ、ナオミちゃん…!」

 

ナオミ「随分、会ってなかったわね。私が遊んであげるわよ」

 

ガッシュ「ヌオオオッ!!」

 

 ガッシュを追いかけまわそうとするナオミちゃんにパティが立ちはだかった。

 

パティ「怨怒霊~~、ガッシュちゃんをいじめるな~~!!」

 

ナオミ「ヒ、ヒィ~~ッ!!モンスター~~~!!」

 

 パティに怯えてナオミちゃんは逃げてしまった。

 

パティ「もう大丈夫よ、ガッシュちゃん」

 

ガッシュ「助けてくれてありがとうなのだ、パティ」

 

パティ「照れちゃうわ、ガッシュちゃんったら」

 

ティオ「ガッシュ、私と遊ぶわよ!」

 

パティ「ガッシュちゃんを独り占めするんじゃないわよ!」

 

ティオ「何ですって!?」

 

清麿「(やれやれ、パティとティオの喧嘩は日常になってきたな…)」

 

 またいつものパティとティオの喧嘩が始まった。その光景を清麿は登校時に見る羽目になった。しかし、これに限っては喧嘩する程仲がいいのかも知れない…。




これで今回の話は終わりです。
今回のバランシャとの戦いは原作では匂いを頼りにバランシャを追っていましたが、この話ではバランシャの体についた水滴を頼りに追うという流れにしました。
次の話は本来ならばファウード編にならないと登場しないある魔物が出番を前倒しする形で登場します。ちなみに、アニメオリジナルの魔物のグリザも最初から魔鏡強化後の状態で出てきます。


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LEVEL18 目覚めよ、チェリッシュ!

モチノキ町

 ウォンレイ救出と温泉旅行が終わって帰ってきたガッシュ達はパートナーが仕事や学校に行っているため、体を鍛えるため、マラソンをして、海岸まで来ていた。

 

ガッシュ「(ウォンレイを救出しに行く時のバリーとの戦いでは真のバオウがなければ私達は負けておった…。体を鍛えてゼオンなどの強敵との戦いに備えねば…)」

 

コルル「ガッシュ、ちょっと休憩しよう…」

 

ティオ「流石にここまでのマラソンは堪えるわね…」

 

パティ「だらしないわねぇ。私はガッシュちゃんと一緒なら、どれぐらいきつくても動けるわ!」

 

ティオ「ガッシュ絡みだととんでもないあんたと一緒にしないでよ…!」

 

 言い合いをしながら走っていると、海岸に2人の人が打ち上げられている事にコルルが気付いた。

 

コルル「みんな、人が打ち上げられているよ」

 

 打ち上げられている2人の元へガッシュ達が向かった。1人は黒焦げになっていたが、確かめてみると、その2人はガッシュには見覚えのある魔物とそのパートナーだった。

 

ガッシュ「チェ…チェリッシュ!(な、なぜこんな所にチェリッシュが…?チェリッシュと会うのはもっと後だったはずなのに…)」

 

ティオ「チェリッシュ?ガッシュ、この女の人を知ってるの?」

 

ガッシュ「この者は魔物なのだ」

 

ティオ「魔物って…」

 

コルル「もう1人の倒れてる人、本を持ってるよ」

 

 コルルが言った通り、本があったため、チェリッシュは魔物だという事がティオとパティにもわかった。

 

パティ「この倒れてる人って…、男?女?」

 

コルル「女の人みたいだよ。ほら」

 

 倒れているチェリッシュのパートナー、ニコルの帽子をとると、長い髪が露わになった。

 

ティオ「ほんとだ!」

 

コルル「2人共怪我してるよ。早く救急車を呼ばないと」

 

ガッシュ「私に任せるのだ」

 

 

 

 

モチノキ中学校

 ガッシュはマントで空を飛び、清麿のいる学校へ向かった。

 

ガッシュ「清麿~~、早く救急車を呼ぶのだ~~!」

 

清麿「ってガッシュ、何で学校に来たんだ!」

 

ガッシュ「マラソンの途中で怪我人を見つけたのだ。だから、救急車を呼んでもらうために学校に来たのだ」

 

清麿「わざわざ学校に来なくても公衆電話で連絡すりゃいいじゃねえか!近くに公衆電話はなかったのか!?」

 

ガッシュ「怪我人を見つけたのは海岸だったからなかったのだ」

 

清麿「わかったよ、呼べばいいんだろ?呼べば」

 

 

 

 

 

モチノキ町立総合病院

 清麿からの通報で駆け付けた救急車でチェリッシュとニコルは病院に搬送された。それから次の日、先にコルルとティオとパティが病院に向かい、清麿も学校が終わってからガッシュと共に病院に来ていた。

 

清麿「チェリッシュっていい魔物なのか?」

 

ガッシュ「そうなのだ。親のいない子供達の母親代わりになったりととても優しい上、その子供達を守るためならどんな悪人にも屈しないほど強いのだ」

 

清麿「すげえな!仲間になってくれたら心強いぞ!」

 

ガッシュ「ただ、チェリッシュは一度だけ、心から屈してしまった相手がいたのだ」

 

清麿「そいつは誰」

 

ティオ「ガッシュ、チェリッシュの病室はここよ」

 

 ティオに呼ばれてガッシュペアはチェリッシュの病室に来て、目立った外傷もなく、先に意識が戻ったニコルと話をしたり、チェリッシュの容態はどうなのかを聞いていた。

 

ニコル「あなた達の名前は高嶺清麿、ガッシュ・ベル、パティ、ティオ、コルルね」

 

コルル「うん」

 

パティ「ええ」

 

ティオ「そうよ」

 

清麿「あなたがチェリッシュのパートナーだったのですか」

 

ニコル「そうよ。私はニコル。鳥獣保護区で保安官をやっていたわ」

 

清麿「ガッシュ達から話を聞いたが、どうして男装なんかを?」

 

ニコル「女2人で旅をしてると色々と危ない事も多いから男装してるの」

 

清麿「聞きたい事がある。どうして二人はモチノキ町の海岸に」

 

コルル「みんな、チェリッシュが起きるみたいだよ」

 

 コルルの言う通り、チェリッシュは起きた。

 

チェリッシュ「ここは…」

 

ニコル「ここは病院よ。私達、この子達に助けられたみたいよ」

 

ガッシュ「意識が戻って良かったのう、チェリッシュ」

 

 チェリッシュの意識が戻って起きた事にガッシュ達は喜んだ。しかし、チェリッシュはガッシュを見た途端、ある人物に見えてしまい、顔色が変わった。

 

チェリッシュ「ゼ…ゼ、ゼ……ゼオン!!」

 

 一気にチェリッシュは怯えだした。

 

パティ「ちょっと、急にどうしたのよ」

 

チェリッシュ「な、何でこんな所にゼオンがいるのよ…!私達をしつこく追いかけてきたの……!?」

 

ティオ「ゼオン?何を言ってるのよ。話が見えてこないわ」

 

ニコル「チェリッシュ、落ち着いて!この子はゼオンじゃないわ、ガッシュよ!ゼオンに見えるかもしれないけど、落ち着いてよく見るのよ」

 

 怯えながらもチェリッシュはガッシュを凝視した。よく見た結果、ようやくチェリッシュは目の前にいるのはゼオンではなく、ガッシュである事がわかった。

 

チェリッシュ「…ゼオンじゃないかったのね…」

 

 チェリッシュを寝かせた後、病室の外で清麿達はニコルからどうしてチェリッシュがあのようになったのかを聞いていた。

 

清麿「チェリッシュはガッシュを見た途端、ゼオンと言ってたけど、何があったんだ?」

 

ニコル「…そもそもの発端はゼオンとの戦いよ…」

 

 

 

 

 

回想

 ある島でゼオンとチェリッシュは対峙していた。ゼオンは至って無傷だが、チェリッシュはボロボロだった。

 

ゼオン「ほう、俺の攻撃を何度も受けているのにまだ立ち上がれるとはな…」

 

チェリッシュ「(こいつ、かなり強い……私がこれまで出会った奴よりも…)」

 

ゼオン「だが、それも終わりだ。デュフォー、あれを使うぞ」

 

デュフォー「こんな奴にか?わかった。バルギルド・ザケルガ」

 

 ガッシュが経験した前の戦いでもチェリッシュはバルギルド・ザケルガを受けていたが、今回はさらに早くバルギルド・ザケルガを受ける事になった。

 

チェリッシュ「キャアアアアアアッ!!!」

 

ゼオン「この雷は、お前の体がボロボロになるまで、電撃の激痛を与え続ける。痛みで気絶することも許されない。体が壊れる前に、限りなく強くなるその激痛で、心の方が早くぶっ壊れる。どうだ!?身が引き裂かれるとはこのことだろう!?まさに地獄の拷問だ」

 

 数分後、バルギルド・ザケルガを受け続けたチェリッシュは黒焦げになった。

 

ゼオン「さて、次は本を燃やすか」

 

ニコル「(このままだとまずい!こうなったら…)」

 

 ニコルは背後が海である事を確認して本を海に投げ捨てた。

 

ゼオン「本を海に捨てただと?」

 

 思わぬ行動にゼオンが怯んだ隙にニコルはチェリッシュを抱えて海に飛び込んだ。

 

ゼオン「逃げられたか…」

 

デュフォー「珍しいな、ゼオンが敵を逃がしてしまうとは」

 

ゼオン「確かに逃げられたのは手古摺らないからデュフォーの指示はいらんと思っていた俺の詰めの甘さがあったからだろう。だが、奴等はずっと俺の影に怯えながら戦い続ける事になる」

 

 

 

 

ニコル「上手く私達はゼオンから逃げられたけど、逃げ切った後でもチェリッシュはひどく怯えていたわ。それから、私達は意識を失って海岸に打ち上げられていた所をあなた達が発見したの」

 

ティオ「そのゼオンってどういった魔物なの?」

 

ニコル「外見は色々とガッシュに似てるけど、特徴的なのは銀色の髪と白いマント、何よりも冷酷な目つきよ。性格は無邪気で優しいガッシュとは正反対で冷酷だったわ…」

 

パティ「ゼオンって魔物はまさに悪魔ね。愛しのガッシュちゃんとそっくりな外見で悪さをするっていうのは気に喰わないわ!」

 

ガッシュ「(今回でもチェリッシュはゼオンに心を折られてしまったのか…。せめて、こんな時にテッドがいてくれれば…)」

 

清麿「それで、ニコルさんとチェリッシュはこれからどうするんだ?」

 

ニコル「退院してからの予定も決まってないの…」

 

清麿「だったら、チェリッシュが本調子に戻るまで俺ん家に来ないか?」

 

ニコル「本当に…いいの?」

 

コルル「私達は悪い魔物としか戦わないの。それに、私もパートナーが見つかるまで清麿お兄ちゃんの家にいた事があるから、ニコルさんも遠慮したりしなくていいよ」

 

ニコル「…ありがとう」

 

 

 

 

モチノキ町

 その後、ガッシュと清麿は家に帰っていた。

 

清麿「病院に来る時に言ってたチェリッシュが屈した相手って、ゼオンの事じゃないのか?」

 

ガッシュ「その通りなのだ。チェリッシュはファウードでの戦いの際、ゼオンの術で心を壊されて無理矢理従わされておった…。そんなチェリッシュを救ったのがチェリッシュが魔界に居た頃に一緒に暮らしていたテッドという魔物なのだ」

 

清麿「だが、今回はガッシュが経験した戦いの時と違ってテッドって奴はまだお前と会ってないんだろ?」

 

ガッシュ「ウヌ…」

 

清麿「テッドという特効薬がない以上、ゆっくり療養するという方法しかないな…」

 

 

 

 

高嶺家

 それからしばらく経ち、チェリッシュはニコルと共に退院した。そして、清麿にチェリッシュの心の傷が癒えるまで家にいていいと言われて清麿の家に来た。

 

ニコル「わざわざすみません…」

 

華「いいのよ。遠慮なんていらないからね」

 

 その後、夕食になった。

 

華「チェリッシュちゃん、来た時から元気がないわね。何かあったの…」

 

チェリッシュ「……」

 

華「誰にも言えない辛い事でもあったの…。でも、おいしいご飯を食べれば少しは和らぐと思うわ」

 

ガッシュ「母上殿のご飯はおいしいのだ。食べれば元気が出るぞ」

 

 夕食をチェリッシュは一口食べてみた。すると、涙を流した。

 

チェリッシュ「……おいしい…」

 

清麿「(おいしいものを食べただけで涙を流すなんて…、ゼオンから受けた心の傷はよほど凄かったんだろうな…)」

 

 夕食を食べ終わった後、チェリッシュは進んで食器洗い等を手伝った。

 

華「あら、チェリッシュちゃんって家事もできるのね。とっても偉いわよ」

 

チェリッシュ「本当に…?」

 

華「本当よ。きっと、いいお嫁さんになれると思うわ」

 

 華に褒められてチェリッシュは少しだけ笑った。寝る時間になった際、ガッシュと一緒に寝る事になった。

 

チェリッシュ「ごめんね。私、病院に入院してる時から毎晩のように悪い夢を見るから一緒に寝てもらって…」

 

ガッシュ「気にするでない。コルルと一緒に住んでた時はコルルと一緒に寝ていたのだ」

 

チェリッシュ「あなた、確か名前はガッシュって言ってたわよね。どうして坊やは私達を助けてくれたの?」

 

ガッシュ「私はいい者が困ったりしているのを見ると、放っておけないのだ」

 

チェリッシュ「…この戦いでは味方はいないと思ってたのに、まさか坊やみたいな子に会えるとは思ってなかったわ。それに不思議ね。ゼオンは悪魔のようだったのに、そのゼオンとそっくりな坊やはまるで天使みたいよ」

 

ガッシュ「天使…」

 

チェリッシュ「もう寝ましょう。おやすみ、坊や」

 

 

 

 

 

モチノキ町

 翌日、お遣いを頼まれたガッシュは洗濯等をニコルに任せ、チェリッシュと共にお店に向かっていた。

 

チェリッシュ「坊やって戦いがない時はいつもこういった事をしてるの?」

 

ガッシュ「ウヌ。何もない時は公園で遊んでいるのだ」

 

チェリッシュ「やっぱり坊やも年頃の子供ね。聞きたい事があるけど、テッドに会った事はあるのかしら?」

 

ガッシュ「テッド…、会った事はないのだ…」

 

チェリッシュ「…気にしなくていいのよ。さ、お遣いを済ませるわよ」

 

 いつもガッシュがお遣いに来るお店の人はチェリッシュが来た事に驚いていた。

 

店主「坊や、この女の子はお姉さんなのかな?」

 

チェリッシュ「いえ、しばらくこの子の家に住ませてもらっているだけで…」

 

店主「それで、坊やは今日もお遣いに来たのかい?」

 

ガッシュ「そうなのだ」

 

 お遣いの品を買ったガッシュとチェリッシュは家に帰っていた。そこへ、ティオ達が来た。

 

ティオ「ガッシュとチェリッシュじゃない」

 

ガッシュ「ティオとコルルとパティではないか」

 

パティ「ちょっとチェリッシュ、ガッシュちゃんと一緒にいるのをいい事に私を差し置いてイチャイチャしてないでしょうね!?」

 

チェリッシュ「別にそんな事はしてないわよ」

 

コルル「何をしてるの?」

 

チェリッシュ「お遣いが終わって帰っているの。みんなは坊やの家に遊びに来たのかしら?」

 

ティオ「それだけじゃないわ。チェリッシュには届けたいものがあるの。見たら驚くわよ」

 

 

 

 

高嶺家

 ティオが持っていた箱をチェリッシュが開けた。中にはデコレーションが整っていないケーキが入っていた。

 

コルル「これ、ティオが焼いたの…?」

 

ティオ「恵が焼くって言ったけど、仕事もあるから負担をかけたくなくて私が焼いたのよ」

 

パティ「それにしても、全然デコレーションがなってないわね」

 

ティオ「何ですって!?ケーキを焼いた事すらない世間知らずのあんたに言われたくないわよ!!」

 

パティ「黙らっしゃい!!」

 

チェリッシュ「…これ、おいしいわね」

 

 ティオとパティが喧嘩してる間にガッシュと一緒にティオが焼いたケーキを食べたチェリッシュがおいしいと言ったのと同時に笑った事にガッシュ達は驚いていた。

 

ガッシュ「チェリッシュが笑ったのだ!」

 

ティオ「…え…?」

 

チェリッシュ「このケーキ、坊やのお友達なりに私に喜んでもらえるように作ったのね。お礼に私がケーキを焼いてあげるわ」

 

コルル「本当なの?」

 

パティ「どんなケーキができるのかしらね」

 

ティオ「楽しみだわ。ん?」

 

 ここにきて、ティオはチェリッシュを喜ばせるために焼いたケーキをガッシュが勝手に食べている事に気付いた。

 

ティオ「ガッシュ、何で私がチェリッシュのために焼いたケーキを勝手に食べてるのよ!!」

 

ガッシュ「とてもおいしそうだったから食べたのだ。ティオのケーキはおいしかったのう」

 

ティオ「ガッシュのバカ~~!!!」

 

ガッシュ「ぐ、ぐあああっ!!!」

 

 怒り心頭のティオはガッシュの首を絞めた。

 

パティ「ガッシュちゃんになんてことをするのよ!」

 

チェリッシュ「それぐらいにした方がいいわよ。勝手に食べたけど、坊やもおいしいって言ったのよ」

 

ティオ「…え!?それ、本当に!?」

 

 自分の焼いたケーキをガッシュがおいしいと言った事にティオは気が動転して顔が赤くなった。微笑ましい光景をニコルはそっと見守っていた。

 

ニコル「あんなに笑ったチェリッシュを見たのは初めてかな?」

 

 その後、チェリッシュはケーキを作った。器用にケーキ作りをこなすチェリッシュにガッシュ達は見とれていた。

 

ティオ「凄い…。恵にも負けないぐらいよ」

 

コルル「まるで、お菓子作りをするお母さんのように見えるよ。ガッシュの言った通り、親のいない子供のお母さん代わりになってたからなのかな?」

 

 ガッシュ達が見とれている間にケーキは焼き上がった。冷めてからチェリッシュは綺麗にデコレーションし、ケーキはできあがった。

 

チェリッシュ「さぁ、できたわよ」

 

ガッシュ「いただきますなのだ!」

 

 みんなでチェリッシュが作ったケーキを食べた。その反応はみんな同じものだった。

 

コルル「おいしい!」

 

パティ「ああ!この絶妙な甘さとデコレーションのセンスが光るわ!」

 

ティオ「どうしてこんなに上手にできるの?」

 

チェリッシュ「魔界にいた頃に色々と経験したからよ」

 

ティオ「私も恵やチェリッシュみたいにできたらいいのになぁ…」

 

チェリッシュ「誰でも始めは失敗したりするものよ。でも、経験を積めばいつかこんな風にできるようになるわよ」

 

 

 

 

???

 ある場所でデュフォーは事前にゼオンに本を預けておき、ある魔物とそのパートナーに会っていた。

 

老人「これを我々に渡すと?」

 

デュフォー「そうだ。この雷の結晶は結晶自体が電撃を出すわけではないが、お前の魔物が念じればある魔物に電撃の激痛を蘇らせる事ができる。その魔物は…お前の魔物が痛い目に遭ったという魔物だ」

 

老人「なんともありがたい。グリザ、魔鏡にこの雷の結晶があればお前の恨みを晴らす事ができるぞ」

 

グリザ「あの女…、今度こそ…。ハカセ、行きましょうか」

 

 グリザとハカセは去って行った。その後、ゼオンが現れた。

 

デュフォー「ゼオン、あのような雑魚に雷の結晶を託したのは間違いじゃないのか?」

 

ゼオン「所詮は魔鏡がなければ何もできん雑魚の中の雑魚にすぎん。チェリッシュが潰れようがあの雑魚が潰れようが俺達からすればどうでもいい話だがな」

 

デュフォー「それもそうだな」

 

 

 

 

モチノキ町

 チェリッシュペアが清麿の家に住んで1週間が経過した。その間、チェリッシュはガッシュ達と共に楽しい生活を送り、笑顔もよく見せるようになった。

 

清麿「チェリッシュもだいぶ心の傷が癒えてきたみたいだな」

 

ニコル「まだ完全とは言えないけど、順調なのは間違いないわ」

 

清麿「それじゃあ、俺は学校に行ってくる」

 

 買い物に行くニコルから離れて清麿は学校に向かった。一方のニコルはチェリッシュやガッシュ達と共に買い物に向かっていた。

 

ティオ「今日は何を買おうかな?」

 

ニコル「あんまり高いものはダメよ」

 

???「見つけたぞ、チェリッシュ!」

 

 声が聞こえた方を一同が向くと、そこにはハカセとグリザがいた。

 

パティ「あんた達、何者よ!」

 

ハカセ「自己紹介がまだだったな。わしはハカセ。そして、グリザだ」

 

ガッシュ「(グリザ?あの姿の魔物がグリザだと!?外見が違うではないか!確か、私が経験した戦いではグリザはブラゴに倒されたそうだが…)」

 

コルル「どうしよう…、今、パートナーがいるのはチェリッシュだけだよ」

 

ハカセ「今回の狙いはそこのチビ達ではない、チェリッシュだけだ」

 

チェリッシュ「私を狙いにやってくるとはね。坊や達を虐めたから私にボコボコにされたくせに未だに恨んでるの?」

 

グリザ「当たり前だ。あの時からお前を恨まない日などなかったぞ!そのために、魔鏡を持ち出したのだ!」

 

ティオ「魔鏡ですって!?」

 

ニコル「それって何?」

 

パティ「魔物の力を何倍にも増幅させる禁断具って私はパパやママから聞いた事があるわ。実物を見たのは私達も初めてよ」

 

ガッシュ「(だから、外見も変わっておるのか…。前の戦いでもグリザは魔鏡を勝手に持ち出したとは聞いておったが…)」

 

チェリッシュ「魔鏡だか何だか知らないけど、ぶっ飛ばすわよ!」

 

ハカセ「そんな強気な事を言ってられるのも今の内だ。グリザ、例の物を使え!」

 

ガッシュ「(あれは…!)」

 

 グリザはデュフォーからもらった雷の結晶を出した。すると、雷の結晶が光り、チェリッシュに思い出したくない痛みが蘇った。

 

チェリッシュ「キャアアアアアア~~~~ッ!!」

 

ティオ「どうしたのよ、チェリッシュ」

 

ニコル「(まさか…、あの結晶のせいであの時の痛みが蘇ったとでもいうの…?)」

 

ハカセ「何という効果だ!さぁ、グリザ、チェリッシュを思う存分痛ぶってやれ!」

 

 バルギルド・ザケルガの痛みが蘇って心の傷がまた開いてしまったチェリッシュは何もできないままグリザに一方的に殴られたり蹴られ続けた。

 

チェリッシュ「嫌~~っ!!もうあの痛みを思い出させないで!!」

 

グリザ「これは爽快だ!いつもチェリッシュにボコボコにされた俺が今度はチェリッシュをボコボコにできるのだからな。ただでは魔界へは帰さんぞ、徹底的に心も体も痛めつけてやる!」

 

 グリザの卑劣な行為にガッシュ達は怒りを募らせていた。

 

ティオ「人のトラウマを蘇らせて抵抗できなくしてから痛めつけるなんて許せないわ!」

 

パティ「私達も加勢するわよ!」

 

コルル「待って!私達、今はパートナーがいないよ!」

 

パティ「もう、どうしてこんな時に魔物が出てくるのよ!」

 

ガッシュ「…それでも私は行くぞ」

 

コルル「行くって…」

 

 そのままガッシュはチェリッシュの加勢に向かった。一方のチェリッシュは雷の結晶によるトラウマの再燃と一方的なグリザの攻撃で心も体もボロボロになっていた。

 

ハカセ「あはははっ!素晴らしい!魔鏡と雷の結晶でグリザが適わなかったチェリッシュを一方的に倒す事ができるとは。さて、とどめと」

 

ガッシュ「卑怯者め!これ以上チェリッシュを痛めつけるな!」

 

 ハカセとグリザの注意がチェリッシュに向いている隙を突いたガッシュはハカセとグリザを殴り飛ばした。

 

ハカセ「チビめ、パートナーがいない癖に邪魔をしおって!」

 

ガッシュ「チェリッシュの心の傷を開かせて一方的に痛めつけるお前達を私は許さぬぞ!」

 

ハカセ「それをやって何が悪い?グリザはもともと運も実力もないのだぞ。そんな奴がこの戦いで勝ち残るには魔鏡と相手の心の傷に付け込むアイテムがなければならんのだ」

 

ガッシュ「それはお前達の心と力が弱いからだ!身寄りのない子供達を養い、大人にも怯えずに体一つで子供達を守るチェリッシュはお前達が足元にも及ばない程、心も力も強いのだぞ!」

 

ハカセ「言わせておけば言いたい放題言いおって!グリザ、このチビを叩きのめせ!」

 

 魔鏡で強化されたグリザの前にはパートナー不在のガッシュは苦戦した。そして、チェリッシュの近くに殴り飛ばされた。

 

ニコル「ガッシュ!」

 

チェリッシュ「坊や…、何で…何でこんな弱い私なんかのために…」

 

ガッシュ「それは…、あの者の卑劣な行いを放っておけぬからだ…!チェリッシュ…、私ではお主がどんな時でも信じられるテッドの代わりにはなれぬ。だが、私達の姿を見て思い出したほしいのだ、お主の昔の姿を」

 

 再びガッシュは立ち上がり、グリザに突っ込んだ。

 

チェリッシュ「坊や…」

 

ティオ「チェリッシュ、あなたも立ち上がって戦うのよ!」

 

チェリッシュ「だけど…、今の弱い私じゃ…」

 

コルル「今、パートナーが近くにいるのはチェリッシュだけだよ」

 

パティ「このままだとガッシュちゃんがますます傷つくのよ!」

 

ティオ「あなた、魔界では子供達を守るためなら、大人にも屈しなかったのでしょ?」

 

チェリッシュ「それは魔界にいた頃の話…」

 

ティオ「今だって守るべき存在があるじゃない!」

 

チェリッシュ「守るべき存在……」

 

 清麿の家に住んでから1週間の事をチェリッシュは思い出していた。楽しくガッシュ達と過ごせていた事を。その一緒に過ごしていたガッシュが傷つくのを見たチェリッシュの目に力強さが戻った。

 

チェリッシュ「…ニコル、あのゲス野郎を叩きのめすわよ」

 

ニコル「チェリッシュ…」

 

 その頃、ガッシュはグリザの猛攻でボロボロになっていた。

 

ハカセ「さて、もう終わりだな。とどめと」

 

???「ゴウ・コファル!」

 

 突如、ハカセの頭目掛けて宝石が飛んできて、ハカセの頭に激突した。

 

ハカセ「ぐあっ!誰だ!?」

 

???「あんた達の狙いは私なんだろ?雑魚が!」

 

 ハカセの頭に宝石を当てたのはチェリッシュだった。

 

ハカセ「貴様、雷の結晶で心がボロボロになったのではないのか!?」

 

グリザ「もう一度心をボロボロにしてやる!」

 

ニコル「コファル!」

 

 再び念じてチェリッシュにバルギルド・ザケルガの激痛を蘇らせたグリザだったが、チェリッシュはさっきまでと違って痛みにも動じず、コファルで雷の結晶を撃ち抜き、破壊した。

 

グリザ「雷の結晶が!」

 

ハカセ「なぜ痛みに耐えられる!?」

 

チェリッシュ「私も弱くなったものね。こんな痛みにくじけるなんて…。この魔界の王を決める戦いで周りが敵ばかりになったせいかね?戦いで疲れた心にゼオンの強大な力が…この激痛が入ってきた…。後ろに守るべき坊や達がいれば、こんな弱い姿にならずにすんだのかね?」

 

グリザ「守るべきガキ共はこの戦いにはいないのだぞ!」

 

チェリッシュ「いるわ。私の守るべき坊や達は…ここにいるのよ!」

 

 チェリッシュが指差した守るべき子供達はガッシュ達の事だった。

 

ガッシュ「チェリッシュ…」

 

チェリッシュ「ありがとう。坊や達のお陰で昔の自分を思い出せたわ。ニコル、とっとと雑魚を魔界送りにしてやるわよ!」

 

ニコル「準備は万全よ!」

 

ハカセ「いい気になりおって!たとえ雷の結晶がなくてもこっちにはまだ魔鏡がある!ファイ」

 

ニコル「ガレ・コファル!」

 

 グリザの目を狙って指先から小さなコファルを発射した。小さいため、グリザは油断してよけなかったため、目に当たってしまった。

 

グリザ「ぐああ~~~っ!目が、目が~~~っ!!」

 

ハカセ「目を狙うとは卑怯だ!」

 

チェリッシュ「ふん、私の心の傷に付け込んだあんた達の方が私よりよっぽど卑怯よ!」

 

ニコル「ガンズ・ゴウ・コファル!」

 

 ゴウ・コファルが連続でグリザに飛んでいき、次々とグリザに命中して吹っ飛ばしていった。

 

ハカセ「おのれ!ギガノ・ファイガル!」

 

 炎がチェリッシュに迫っていた。

 

ニコル「チェリッシュ、さっき新しい呪文が出たわ。ぶっつけ本番で試すわよ!」

 

チェリッシュ「準備はいいわ」

 

ニコル「コファルク!」

 

 呪文を唱えた後、チェリッシュはなぜか宝石の像になり、その直後に炎を受けたがビクともしなかった。炎の攻撃が終わった後にニコルが術を解くと、宝石の像が割れてチェリッシュが出てきた。

 

ハカセ「何!?グリザの攻撃を受けてもビクともしない防御呪文だと!?」

 

チェリッシュ「今まで攻撃呪文ばかりだったから助かるわ。発動中は動けなくなるみたいだけど」

 

ハカセ「ええい、もう一度だ!ギガノ・ファイガル!」

 

ニコル「ギガノ・コファル!」

 

 炎と宝石がぶつかり合った。結果は競り合いの末、ギガノ・コファルが勝ち、グリザはハカセと共に吹っ飛ばされた。

 

グリザ「ぐがあああっ!!」

 

ハカセ「なぜだ!?なぜ魔鏡の力を得たグリザが押されている!?」

 

チェリッシュ「それは坊やが言った通りよ。魔鏡に頼るあんた達の心と力が弱すぎるだけさ!」

 

ハカセ「よ、弱いだと!?魔鏡という究極の力を得たのにか!?」

 

???「怨怒霊~~!!」

 

 突如現れたパティのキックをハカセはまともに受けてしまった。キックを受けて倒れた後、ティオのプロレス技を喰らって動けなくなった。

 

ティオ「今よ、コルル!魔鏡を叩き割るのよ!」

 

コルル「えいっ!!」

 

 ハカセが動けないその隙にコルルは魔鏡を奪い、地面に投げつけて割った。

 

グリザ「ま、魔鏡が!!」

 

 魔鏡の力を失い、グリザは本来の小さな姿に戻ってしまった。チェリッシュが近づいてきたため、グリザは後ずさりした後、土下座した。

 

グリザ「ゆ、許してくれ!俺が悪かった!そうだ、俺と一緒に組まんか?組めば魔界の王に」

 

チェリッシュ「…ニコル」

 

ニコル「ギガノ・コファル!」

 

 グリザとハカセの命乞いも聞かず、チェリッシュはギガノ・コファルで2人を吹っ飛ばした。その際にグリザの本が燃えてしまった。

 

チェリッシュ「あんた、私にボコボコにされた時はいつも命乞いをしてたわよね。あんたみたいな卑怯な手しか使わないゲス野郎の命乞いが通じると思ったら大間違いよ!私に怯えながら魔界へ帰りな!」

 

 言葉通り、チェリッシュに怯えながらグリザは魔界に送還された。

 

ガッシュ「チェリッシュは凄いのだ!」

 

ティオ「女なのにとてもかっこよかったわ!」

 

チェリッシュ「それ程でもないわ。私がトラウマを克服できたのも坊や達のお陰よ」

 

ニコル「(何だか、前にも増してチェリッシュは強くなった気がするわね…)」

 

 ゼオンに心の傷を負わされたチェリッシュがガッシュ達との交流で心が癒え、さらに強くなった事にニコルは微笑んでいた。

 

 それから、翌日の夕方になり、チェリッシュの心の傷が癒えたため、チェリッシュペアはモチノキ町を去る事になり、ガッシュ達はチェリッシュペアの出発を見送ることにした。

 

清麿「もう行ってしまうのか」

 

ニコル「チェリッシュの心の傷が癒えたから私達は出発する事にしたの」

 

チェリッシュ「坊や達と過ごした日々は楽しかったわ」

 

 そう言ってると、車が止まって恵、しおり、ウルルの3人が降りてきた。

 

恵「何とか間に合ったわね。あなたがティオの言ってたチェリッシュ?」

 

チェリッシュ「そうよ」

 

ウルル「チェリッシュが今日、出発すると聞いて思い出の写真撮影をしようと来たんです。自己紹介がまだでしたが、私はパティのパートナーのウルルと言います」

 

しおり「コルルのパートナーのしおりよ」

 

恵「私はティオのパートナーの恵。さ、みんなで写真撮影をしましょう」

 

 チェリッシュも含めてみんなで集合写真を撮った。

 

ガッシュ「出発したらテッドを探すのだな?」

 

チェリッシュ「そうよ。テッドは私の家族。絶対に探し出してみせるわ。でも、何かあった時は坊や達の力にもなるわ。また会いましょう、坊や達とそのパートナー」

 

 美しい髪をたなびかせながら、チェリッシュはニコルと共に出発した。テッドを探すというこれまでなかった新たな目標を持って。




これで今回の話は終わりです。
原作からかなり前倒しする形でチェリッシュの登場と仲間入りを描きました。
もともとは石版編の展開を見据えてバリーの仲間入りを考えていましたが、バリーは強すぎるので、他にどの魔物を早く仲間入りさせようか考えた結果、原作とは逆にテッドより先にチェリッシュが仲間になったら、というのをやってみたかったので、チェリッシュにしました。
pixivの方では説明してませんでしたが、邂逅編の時点でのチェリッシュはディオガ級の術はまだ使えない状態だろうと思うので、この時点での最大呪文はギガノ・コファルです。ディオガ・コファルドンは次の話で習得します。
今小説のチェリッシュは原作寄りですが、これからアニメの要素も一部出てきます。ちなみに、コファルクはドラクエの呪文のアストロンをガッシュの呪文で再現したら、というアイデアで考えました。
次もチェリッシュがメインですが、同時にある魔物も出てきます。


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LEVEL19 女の意地

某国

 香港でガッシュに敗れた後、バリーは己を磨くため、魔物と戦わずに修行をしていた。

 

バリー「くそっ!これではダメだ!ガッシュを殴る事も、最大呪文を破る事もできねえ!力は修行で付くが、あの目に怯まないようになるにはどうすればいいんだ!?」

 

グスタフ「修行に行き詰ったようだな。どれだけ実力が付いたのかも兼ねて他の魔物と戦ってみるか?強くなるためのきっかけが掴めるかも知れんぞ」

 

バリー「戦うなら、骨のある奴がいいがな」

 

グスタフ「現れるさ。きっとな」

 

 

 

 

モチノキ町

 チェリッシュペアがテッドを探しに出発して数日が経った。ウマゴンは引き続きパートナーを探しに行き、ガッシュと清麿は新しい呪文、ラウザルクとザグルゼムの練習をしていた。

 

清麿「この二つの呪文って前の戦いではよく使ってたのか」

 

ガッシュ「そうなのだ。ただ、ザグルゼムは途中で使う機会が減ったのだがのう」

 

清麿「なぁ、ザグルゼムは電撃を誘導したり電撃の術の威力を上げたりできるけど、前の戦いではザグルゼムで真のバオウを強化した事はないんだろ?」

 

ガッシュ「ウヌ、その通りなのだ」

 

清麿「これ、俺が考えたけどさ、もしかしたら真の姿に戻る前のバオウを強化して使ってた要領でザグルゼムで真のバオウを更に強化できるんじゃないのか?」

 

ガッシュ「わからぬ…」

 

清麿「できるかどうかはわからないが、とにかく戦い方の幅が広がったな」

 

ガッシュ「清麿、チェリッシュは今頃どこにいるのであろうか…」

 

清麿「わからんな。でも、簡単にやられる奴じゃない。チェリッシュの戦いぶりを見たお前ならわかるだろ」

 

ガッシュ「ウヌ。本調子に戻ったチェリッシュは強いのだ」

 

清麿「(パティやら、バリーやらの出来事がガッシュの知ってる戦いより早く起こってるな。ガッシュの知る戦いではもっと後にならないとチェリッシュと会えなかったそうだし…。もしかすると、ナゾナゾ博士とかいう奴が来るのも早くなるんじゃないのか?)」

 

 

 

 

 

イタリア

 その頃、チェリッシュペアはテッドを探しに旅をして、イタリアに来ていた。そして、遭遇した魔物と戦っていた。

 

ニコル「コファル!」

 

 正確にチェリッシュはコファルで敵の魔物の本を撃ち抜き、戦っていた魔物を魔界送りにした。

 

ニコル「前に比べて戦い慣れしてきたようね」

 

チェリッシュ「テッドを見つけ出すまでは魔界には帰れないわよ。それにしても、テッドは見つからないわね」

 

ニコル「まだまだテッドを探す旅は始まったばかり。そう簡単に見つからないのが世の中ってものよ。襲ってくる魔物は蹴散らしながら焦らずにテッドを探そう」

 

チェリッシュ「そうね。でも、気分転換でもしたいわ」

 

ニコル「でも、この街に気分転換できそうな場所を探さないとできないわ。それに、今晩泊まる宿を探すのも必要になるのよ」

 

チェリッシュ「宿ね。どこに泊まれそうな宿があるのかしら?」

 

 しばらく歩いていると、何やらオロロンサーカスと書かれてあるサーカスの会場が目に飛び込んだ。

 

チェリッシュ「サーカス?」

 

ニコル「チェリッシュの故郷の魔界にはないの?」

 

チェリッシュ「私、サーカスを見た事はないの。だから、一度見てみたいわ」

 

ニコル「まさか、こんなにも早く気分転換ができるとはね」

 

 チェリッシュペアはサーカスを見て気分転換する事にした。サーカスの会場は観客で満員だった。

 

チェリッシュ「ここに来た人達ってサーカスを楽しみにしてるのね」

 

ニコル「そうよ」

 

団長『レディース&ジェントルメン!本日は我がオロロンサーカスにようこそおいでくださいました!』

 

ニコル「始まるみたいね」

 

 一方、別の観客席ではなぜかバリーとグスタフがいた。

 

グスタフ「魔物の力はこの辺りから感じるのか?」

 

バリー「間違いねえ。でなきゃ、サーカスとかいうこんな所へは来ねえよ」

 

グスタフ「まぁ、ここへ来たからにはサーカスが終わるまでは大人しく見ておくとしよう」

 

バリー「サーカスに興味はねえが、魔物の気配を辿った挙句、ここまで来ちまったのならしょうがねえなぁ…」

 

 魔物の気配を辿ってサーカスの会場に来ていたバリーは不満ながらも渋々サーカスを最後まで見る事にした。そして、見る者を驚かせるショーが次々と行われ、ショーが全て終わると観客の全員が拍手した。

 

ニコル「面白かったわね」

 

チェリッシュ「今度はテッドと一緒に見てみたいわ。テッドがサーカスを見たらどんな驚き方をするのか楽しみよ」

 

???「おい、てめえ!今、俺の事をアリみたいな頭と言いやがったな!!」

 

 サーカスの公演が終わってチェリッシュペアは宿を探す事にしたが、会場を出た直後に怒鳴り声が響いた。怒鳴り声の主はバリーだった。

 

子供「だって…、アリさんみたいな頭をしてるもん…」

 

バリー「俺の無敵のヘッドをアリさんみたいな頭呼ばわりだと!?ぶっ飛ばしてやる!!」

 

グスタフ「落ち着け、バリー。その子は悪気があって言った訳ではないようだ。見逃してやれ」

 

バリー「1発殴らねえと納得がいかねえんだよ、グスタフ!」

 

???「ちょっとあんた、無力な子供相手に暴力を振るおうっていうのなら、私が相手よ!」

 

 子供に暴力を振るおうとするバリーの前にチェリッシュが立ちはだかった。

 

バリー「(この気配…、サーカスに来た時に感じた魔物の気配だ!)邪魔をする気か?魔物の女!」

 

チェリッシュ「よく私が魔物だとわかったわね。となると、あんたも魔物って事ね。痛い目に遭いたくなかったらさっさと帰りな!」

 

バリー「随分強気な事を言うじゃねえか…!俺は女が相手でも容赦はしねえ!」

 

チェリッシュ「その前に聞きたい事がある」

 

バリー「聞きたい事?」

 

チェリッシュ「私、テッドって魔物を探して旅をしているの。リーゼントの髪型の男の子よ。あんた、テッドと会った事はあるの?」

 

バリー「リーゼントの男?おい、女!王になる戦いのために旅してるんじゃないのか?」

 

チェリッシュ「まずはテッドを探すのが先、王になるのはその後からよ」

 

バリー「何だと!?おい、女!王になる事より男を探すのが先だと言ったのは本気なのか!?」

 

チェリッシュ「本気よ!ところでテッドには会ったの?会ってないの?」

 

バリー「そんな奴とは会ってねえ…!王になる事より男を優先する軟弱女め、ここで潰す!」

 

 王になる事よりテッドを探すのを優先するチェリッシュにバリーは腹を立てて襲い掛かろうとした。

 

グスタフ「待て、バリー。ここで無理に戦わなくてもよかろう。街外れに頂上が平らな山がある。あの魔物とは2時間後にそこで戦おう。その女とパートナーもそれでいいか?」

 

ニコル「いいわよ」

 

バリー「女、戦いから逃げるんじゃねえぞ」

 

チェリッシュ「逃げはしないわ。あんたこそそこまで言ったからには逃げるんじゃないわよ」

 

 2時間後に指定した場所で戦う事を約束して双方とも去って行った。

 

バリー「全く、王になる事より男を優先させるとかどういう考えをしてるんだ、あの女は!」

 

グスタフ「(あの女、バリーに怖気づかなかったどころか、堂々と言い返すとは…。あの目の輝きといい、相当な修羅場を潜り抜けてきたのだろうな…)」

 

 チェリッシュペアの方はまだ時間があったため、宿を探していた。

 

ニコル「チェリッシュ、あの魔物を見てたけど、ゼオン程じゃないにしろ何か嫌な予感がするわ。もし、あの時のように」

 

チェリッシュ「それ以上いう必要はないわ。テッドを探すためにも、絶対に負けられないのよ。女の意地にかけてね…」

 

ニコル「…そうね」

 

 約束通り頂上が平らな山でチェリッシュペアはバリーが来るのを待っていた。

 

ニコル「本当にここには何もないから戦いになっても誰にも迷惑はかからないわね」

 

 一方のチェリッシュは咲いていた花を眺めていた。

 

ニコル「チェリッシュ?」

 

チェリッシュ「似てるわ、形も匂いも私の好きな花に。テッドもよく私にくれた思い出の花…」

 

 花を見てると、チェリッシュの目から涙が流れ出した。

 

チェリッシュ「テッド、必ず探し出すからね…」

 

???「花を見つめて泣くとはな。お似合いだぜ、てめえみてえな軟弱女にはな」

 

 そんなチェリッシュを嘲笑うかのようにバリーペアが来た。

 

チェリッシュ「戦う事しか考えていないバカに言われたくはないわよ!」

 

ニコル「そういうお前は想いを踏み躙る事しかできないの?」

 

バリー「想い?また男の事か?ちっ、下らねえ」

 

グスタフ「(想い…バリーにはないものかも知れんな)」

 

バリー「この戦いに必要なのは力!この力でてめえも、その想いも、ぶっ潰してやる!」

 

チェリッシュ「やれるものならやってみな!私は簡単にくたばりはしないわ!」

 

バリー「来い、軟弱女!」

 

チェリッシュ「ニコル!」

 

ニコル「コファル!」

 

バリー「グスタフ!」

 

グスタフ「ゾニス!」

 

 宝石と竜巻はぶつかって相殺された。

 

バリー「離れた距離からの正確な射撃、遠距離タイプか!」

 

ニコル「ゴウ・コファル!」

 

バリー「遠距離タイプなら突っ込むぞ!」

 

グスタフ「ドルゾニス!」

 

 ドルゾニスでゴウ・コファルを砕き、チェリッシュに接近した。

 

バリー「喰らいやがれ!」

 

ニコル「ガンズ・ゴウ・コファル!」

 

 バリーがかなり近づいたのと同時にチェリッシュはガンズ・ゴウ・コファルでバリーを吹っ飛ばした。

 

バリー「ぐあああっ!!」

 

ニコル「その調子よ、チェリッシュ!」

 

グスタフ「(なるほど、ただの遠距離タイプではないようだな…)」

 

チェリッシュ「私が遠距離戦しかできないと思わない事ね。いざとなれば接近戦もできるわ。第一、接近戦が怖かったらこの戦いには生き残れないわ」

 

バリー「やるじゃねえか。なら、これならどうだ!?」

 

 再びバリーは接近してチェリッシュに格闘戦を仕掛けた。対するチェリッシュは腕でバリーの打撃攻撃を防御していた。

 

バリー「どうした?防ぐので精一杯か?」

 

チェリッシュ「流石に格闘戦はきついわね…。でも…、ニコル!」

 

ニコル「ガレ・コファル!」

 

 指先からの小さなコファルが当たった事を気にしてバリーの腕の動きが止まった。

 

ニコル「ゴウ・コファル!」

 

 その隙を逃さずにチェリッシュはゴウ・コファルを撃ち込んでバリーを吹っ飛ばし、距離をとった。

 

バリー「グスタフ!」

 

グスタフ「ゾニス!」

 

チェリッシュ「ニコル!」

 

ニコル「コファル!」

 

 再びゾニスとコファルがぶつかり合った。

 

グスタフ「ゾニス!」

 

ニコル「コファル!」

 

グスタフ「ゾニス!」

 

ニコル「コファル!」

 

 何回かゾニスとコファルのぶつかり合いが起こったが、全て結果は相殺だった。

 

バリー「ぐぬぬ、面白れえ事してくれるじゃねえか。グスタフ!」

 

グスタフ「ガルゾニス!」

 

バリー「行くぜ、軟弱女!」

 

 回転しながらバリーは突進してきた。

 

チェリッシュ「しつこいのよ!」

 

ニコル「ゴウ・コファル!」

 

 すぐにチェリッシュはゴウ・コファルを放ち、バリーのガルゾニスとぶつかり合った。

 

チェリッシュ「私の男を、家族を探して何が悪いのよ!!」

 

バリー「王を決める戦いに、そんなもの必要ねえ!」

 

グスタフ「ゾニス!ゾニス!」

 

 ゴウ・コファルとガルゾニスが相殺に終わった後、すぐにバリーはゾニスを後ろ向きに撃ってチェリッシュに一気に接近し、すぐさまゾニスをチェリッシュに撃ち込んだ。急接近して放ったバリーの攻撃にチェリッシュは対応しきれず、まともに攻撃を受けてしまった。

 

チェリッシュ「ああっ!!」

 

ニコル「チェリッシュ!」

 

チェリッシュ「来てはダメ、ニコル!魔界にいた頃はこれくらいボロボロになるのはよくあったわ…」

 

バリー「調子に乗んじゃねえ!遠距離タイプ如きが、遊びは終わりだ!」

 

 女のチェリッシュに対してもバリーは容赦なく殴るなり攻撃した。

 

ニコル「チェリッシュ!(この状況ではコファルクを使いたいけど…コファルクの発動中はチェリッシュは一切の行動ができない上、効果が解除される隙を突かれたらひとたまりもないわ…)」

 

 どうすればいいかニコルが考えている間にもチェリッシュはバリーの攻撃を受け続けていた。

 

バリー「軟弱女、止めだ!」

 

 ボロボロのチェリッシュを放り投げた後、バリーも大ジャンプした。

 

グスタフ「ギガノ・ゾニス!」

 

 放り投げられて身動きができないチェリッシュにギガノ・ゾニスが直撃しようとしていた。

 

ニコル「(頼むわよ、間に合って!)コファルク!」

 

 間に合ってほしいと思ってニコルがコファルクを発動させた。

 

チェリッシュ「私、あの時のようにやられたというの…?せっかく、テッドを探すという目標ができたのに…」

 

 そう思っていると、思い出の花に似た花が視界に飛び込んで来た。

 

チェリッシュ「あの花…!」

 

 花が散るのを見て、闘志を再び燃やしたその直後、チェリッシュはコファルクの効果で宝石の石像になり、ギガノ・ゾニスを防いだ。

 

ニコル「チェリッシュ…?」

 

バリー「何っ!?」

 

 コファルクでギガノ・ゾニスが防がれた事にバリーは驚きを隠せなかった。その直後、すぐにコファルクは解除された。

 

チェリッシュ「私は負けられないのよ!テッドを見つけるまでは!」

 

バリー「まだ言うか!」

 

 再びバリーはチェリッシュを殴ろうとした。しかし、チェリッシュの強き瞳に思わず怯んでしまった。

 

バリー「い、今のは…まるで、あいつじゃねえか!」

 

ニコル「ギガノ・コファル!」

 バリーが怯んだ隙を突いてチェリッシュはギガノ・コファルを叩き込み、バリーを吹っ飛ばした。

 

グスタフ「(想いの力か)」

 

ニコル「チェリッシュ、新しい呪文が出たわ」

 

チェリッシュ「だったら、すぐにそれを使って!こいつは生半可な威力の術では絶対に倒せない!」

 

ニコル「わかったわ」

 

バリー「グスタフ、最強呪文だ」

 

グスタフ「よかろう。お前の信じる強き力、あの者の想い、打ち砕いてみよ」

 

 パートナーは双方ともかなりの心の力を込めた。

 

チェリッシュ「(負けられないわ!テッドを見つけるまでは!)」

 

バリー「(どんな力にも屈しねえ、それが俺の最強の王だ!)」

 

グスタフ「ディオガ・ゾニスドン!」

 

ニコル「ディオガ・コファルドン!」

 

 ギガノ・コファルよりも巨大な宝石と凄まじい威力の竜巻がぶつかり合った。

 

 

 結局、戦いは引き分けに終わった。

 

バリー「グスタフ、なぜ最後まで続けなかった?」

 

グスタフ「無茶を言うな。山の形が変わってしまったではないか」

 

バリー「知った事か」

 

グスタフ「もっと後でよい。あの者との決着は」

 

バリー「ふん、想いか…。そうかもな。あんな目をした奴等との戦いは」

 

グスタフ「(強くなるきっかけをつかめたようだな)」

 

 一方のチェリッシュペアは朝になって出発した。

 

ニコル「とりあえずは何とか退ける事はできたわね」

 

チェリッシュ「あいつ、かなり強かったわ。私達ももっと強くならないとここから先は生き残れないわね」

 

ニコル「私の勘だけど、あのバリーとかいう魔物はきっかけがあったらあれよりもさらに強くなるかも知れないわ」

 

チェリッシュ「さて、テッドを探しに出発よ!」

 

???「急に頼む形で済まない!そこの金髪の女の子に頼みがある!」

 

 いきなり割り込む形でオロロンサーカスの団長が来た。

 

チェリッシュ「何の用なの?」

 

団長「実は…、サーカスの女性の団員の1人が怪我でショーに出られなくなった。だから、その団員に似てる君に我がサーカス団に入って代わりに出てもらいたいんだ。やり方はきっちり教えるから」

 

チェリッシュ「(サーカスに出たら…、もしかすると…)わかったわ」

 

団長「ありがとう!君に感謝する!」

 

 チェリッシュはサーカスに入るのを承諾した。色々と準備してる時にニコルはチェリッシュの決断の理由を聞いていた。

 

ニコル「チェリッシュ、どうしてサーカスに出るのを認めたの?」

 

チェリッシュ「簡単よ、テッドを探すためよ。サーカスに出演すれば、もしかするとテッドが見に来る可能性も出てくると思ってね」

 

ニコル「なるほどね。サーカスに入る以上、頑張らなくちゃ」

 

 オロロンサーカスの団長に代理で出てほしいと頼まれたチェリッシュはもしかするとテッドが見に来てくれるかも知れないと考え、サーカス団に入るのを承諾した。




これで今回の話は終わりです。
この話はアニメのバリーvsテッドの話が元ネタで、原作のファウード編のかっこいいバリーを出したいのと前の話でもあった通り、チェリッシュのディオガ・コファルドン習得のきっかけとしてテッドの出番の部分をチェリッシュと入れ替える形で執筆しました。
次の話はキャンチョメメインの話ですが、チェリッシュもまた出てきます。


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LEVEL20 キャンチョメの戦い

イタリア

 チェリッシュがサーカスに入ってしばらくした後の事だった。フォルゴレは多くの女性ファンに囲まれていた。

 

キャンチョメ「先行販売の日本では大ヒットしたらしいけど、これならイタリアでもヒット間違いなしだな」

 

 ふと、視線を向けるとそこにはお菓子があった。

 

キャンチョメ「あれ?お菓子がたくさん落ちてる」

 

 お菓子が気になったキャンチョメはお菓子が置いてあるトラックの荷台に乗り込んだ。

 

キャンチョメ「誰だろう?こんな所に捨てちゃったのは。もったいないなぁ」

 

 だが、キャンチョメが乗り込んだ直後、トラックの鉄格子が降りた。それに気づいたフォルゴレは慌てて向かおうとしたが、トラックは走り出した。

 

キャンチョメ「フォルゴレ、助けて~~!」

 

フォルゴレ「バカー、何してるんだ~~~!知らないおじさんについて行っちゃダメって言ってるだろ~~!」

 

キャンチョメ「フォルゴレ~~!」

 

 

 

 

 

高嶺家

 それからしばらく経った後、日本ではオロロンサーカスの中継がテレビであり、遊びに来ていたティオ達と一緒にガッシュは見ていた。

 

ガッシュ「おお!サーカスとはこういうものなのか!」

 

ウマゴン「メルメル」

 

 空中ブランコの際、ガッシュ達には見覚えのある人物が映っている事に気付いた。

 

コルル「ねえ、さっきの人って…チェリッシュじゃない?」

 

パティ「ほんとよ!」

 

ティオ「チェリッシュがサーカスをしてるなんて想像もつかなかったわ」

 

コルル「モチノキ町にいた時に言ってなかったっけ?魔界にいた頃は身寄りのない子供達を養うために働いてたって」

 

ティオ「あ、そうだったわね。でも、モチノキ町を出発してそう経ってないのにあんな短期間で他の人にも負けないぐらいの演技が身についたわよね」

 

コルル「それだけ努力したんじゃないかな?」

 

 

 

 

 

サーカス会場

 チェリッシュの空中ブランコが始まる前の事だった。スペインに来ているオロロンサーカスのサーカス会場ではひょんな事からオロロンサーカスのピエロとなったキャンチョメの出番が終わり、チェリッシュの出番になった。

 

キャンチョメ「チェリッシュの番だよ」

 

チェリッシュ「それじゃあ、行ってくるわ」

 

キャンチョメ「(いいなぁ…チェリッシュはサーカスに入ったのが僕より少し早いだけなのに、あんなに芸が上手くできるなんて…)」

 

団長「さて、小さなピエロ、キャンチョメの曲芸の次は我がサーカスの妖精、チェリッシュの曲芸をご覧ください!それでは、チェリッシュを拍手でお迎えください!」

 

 拍手と同時にサーカスの衣装に着替えたチェリッシュが来た。そこを、舞台の裏でニコルは見守っていた。

 

ニコル「(頑張るのよ、チェリッシュ)」

 

団長「さぁ、妖精の華麗なる空中ブランコをご覧ください!」

 

 ぎこちなくて玉乗り等が失敗したキャンチョメと違い、チェリッシュは華麗に空中ブランコなどを決め、観客は拍手した。こうしてチェリッシュの出番も終わった。

 

団長「いやぁ、君はよく短期間で空中ブランコなどを決められるようになったね」

 

チェリッシュ「故郷では身寄りのない子供達を養うために色々働いたりしてたから短期間で身に付ける事ができたと思うわ」

 

団長「君も相当苦労してきたようだね」

 

ニコル「団長はあのキャンチョメって子の事はどう思ってるんですか?」

 

団長「今はあの様子だが、きっと玉乗りとかを成功させて観客を喜ばせる事ができるはずだ。今日の公演はここまでだよ。さ、明日の公演に備えようか」

 

 

 

 

 

スペイン

 サーカスの衣装から普段着に着替えたチェリッシュはニコルと共に散歩していた。

 

ニコル「チェリッシュもこの村の噂を聞いた?」

 

チェリッシュ「お客さんが話しているのを聞いたわ。何でも、食料泥棒が出没してるそうだって」

 

ニコル「しかも、その泥棒はドラゴンみたいな怪物を連れているそうよ」

 

チェリッシュ「その怪物はどう考えても魔物としか考えられないわね…」

 

 そう言っていると、キャンチョメが女の子と話しているのを見かけた。

 

キャンチョメ「僕、キャンチョメって名前だぜ。今、この村に来ているサーカスで働いてるんだ。ピエロの役をやってるんだけどさ、芸が全然上手くならないんだ。でも、不思議なんだ。僕が芸を失敗するとお客さんが喜ぶんだよ。団長もさ、失敗すると褒めてくれるんだ。何でだろうな…。ほら、ジャグリングをやってみるぜ」

 

 石でジャグリングをしたが、石は落ちてしまい、少し経ってからキャンチョメの頭に石が落ちてきた。

 

キャンチョメ「な、ダメだろう」

 

少女「あははははっ!」

 

キャンチョメ「お前、笑えるじゃないか。喜んでくれるなら芸が失敗しても嬉しいや」

 

少女「トムトム。トムトム、空を飛ぶ。かっこいい」

 

キャンチョメ「そうか、だから上にあげてるのか」

 

ルシカ「キャンチョメ、失敗面白い。でも、成功したらルシカ、もっと拍手する」

 

キャンチョメ「お前、ルシカっていうんだ」

 

ルシカ「ルシカだけじゃない、みんなもきっとそう」

 

キャンチョメ「本当かい?」

 

ルシカ「うん」

 

キャンチョメ「じゃあ、練習頑張るよ。お前、僕の弟にしてやるよ」

 

ルシカ「本当?でもルシカ、女の子」

 

キャンチョメ「えっ?ははっ、お前、女の子だったのか。じゃあ、妹だぜ」

 

ルシカ「…嬉しい、兄ちゃんだ…嬉しい」

 

 微笑ましい様子をチェリッシュペアは見守っていた。キャンチョメがルシカと共にどこかへ行った後、2人は村へ向かっていた。

 

ニコル「食料泥棒をやっつけに行くのね」

 

チェリッシュ「魔物の仕業としか思えないし、悪党を野放しにはしておけないわ…」

 

???「化け物~~!!」

 

 出没している食料泥棒をやっつけようと意気込むチェリッシュペアだったが、ある悲鳴を聞いて駆け付けた。そこには、凶暴そうなドラゴンの魔物、バーゴとそのパートナー、フリトがいた。

 

フリト「バーゴ、ここの食料を全部いただいていくぞ」

 

バーゴ「うん」

 

???「人の食べ物を泥棒しようなんざいい度胸じゃない!」

 

フリト「誰だ!?偉そうに説教する奴は!」

 

 声と共にチェリッシュペアが現れた。

 

チェリッシュ「私よ。さぁ、食料を持ち主に返しな!」

 

ニコル「(あの本…予想通り、村の人が言ってたドラゴンはやっぱり魔物だったのね)」

 

バーゴ「フリト、あの女、とっても怖いよ…。食料を返した方がいいんじゃない?」

 

フリト「何言ってんだ、バーゴ!腹ペコで過ごしたいのか?」

 

バーゴ「お腹が空いたままなのは嫌だけど…」

 

フリト「それに、あの女は魔物みたいだ。吹っ飛ばしてやる!フレイド!」

 

 バーゴの口から炎が放たれた。その炎をチェリッシュはかわした。

 

ニコル「ゴウ・コファル!」

 

 宝石がバーゴに撃ち込まれた。

 

バーゴ「いてっ!」

 

ニコル「ガンズ・ゴウ・コファル!」

 

 今度は連続で宝石がバーゴに撃ち込まれた。

 

バーゴ「いててててっ!」

 

フリト「あの女、予想以上に強いぞ…。仕方ない…バーゴ、地面に術を撃ち込め!」

 

バーゴ「うん」

 

フリト「ギガノ・ビレイド!」

 

 地面にギガノ・ビレイドを撃ち込んで煙と突風を発生させ、チェリッシュの目を眩ませた隙にフリトはバーゴに乗って逃げた。

 

チェリッシュ「逃げられてしまったわね…」

 

ニコル「どこへ逃げたのかしら?」

 

チェリッシュ「どこに逃げても探すわよ」

 

 逃げたフリトとバーゴを追ってチェリッシュペアは周囲に住んでいる人に聞き込みを開始した。

 

村人「あの怪物なら、さっきリリっていうお婆さんの家の方角へ向かっていったぞ。確か、あそこの近くにはある女の子が世話をしている羊がいるんだが…」

 

ニコル「ありがとうございます。行くわよ、チェリッシュ!」

 

村人「ちょっと、怪物相手に挑むなんて無謀だ!」

 

 リリという老婆の家に向かったチェリッシュペアだったが、着いた時には既にルシカが世話をしていた羊はバーゴに持っていかれており、泣いているルシカとキャンチョメの声が夕方の空に響いていた。着いた後、チェリッシュとニコルはリリから様々な事を聞いていた。

 

リリ「2人はルシカの羊を取り返しに行くのかい?」

 

ニコル「はい」

 

チェリッシュ「私もあのルシカって小さい子供が泣くのは見たくないの。だから、取り返しに行くわ」

 

リリ「やめときなよ。女2人であの怪獣に勝てる訳がないよ」

 

チェリッシュ「どういわれようとも私は行くわ。羊を取り返すためにも」

 

ニコル「食料泥棒のアジトはどこにありますか?」

 

リリ「…あんたは強い娘だ。教えるよ…。噂じゃあ、海岸の洞窟にいるって」

 

チェリッシュ「海岸の洞窟…ニコル、あそこへ」

 

???「2人は手を出さないで!」

 

 フリトのアジトへ向かおうとするチェリッシュペアを止めたのはキャンチョメだった。

 

ニコル「キャンチョメ…」

 

チェリッシュ「あのドラゴンは坊やの手に負える相手ではないわ!私達に任せて!」

 

キャンチョメ「それでも、僕は行くんだ!それと、ルシカに伝えてよ。もう泣かなくていいってね」

 

 そのままキャンチョメはスケートボードで海岸の洞窟へ向かった。

 

ニコル「どうするの?チェリッシュ」

 

チェリッシュ「あの坊やを追うわ。でも、助けるのは坊やがどうにもならなくなった時よ」

 

 キャンチョメを追ってチェリッシュペアも海岸の洞窟へ向かった。

 

 

 

 

海岸の洞窟

 チェリッシュペアは海岸の洞窟を見つけると、キャンチョメにもフリトにも見つからないように隠れた。一方、キャンチョメは途中でフォルゴレと合流してバーゴとフリトの2人と対峙していた。

 

フリト「へへへへっ、こいつはいい!さっきのガキがアホな男一人連れて、羊を取り返しにやってきたぜ!」

 

フォルゴレ「はははっ、アホは君の方だ!ブサイクが美男子に勝てると思うのか!?」

フリト「てめえ!羊より先に食ってやる!やれ、バーゴ!」

 

キャンチョメ「さぁ、行くよ、フォルゴレ」

 

フォルゴレ「ああ」

 

キャンチョメ「ルシカを泣かした奴を…」

 

フォルゴレ「キャンチョメをいじめた奴を…」

 

キャンチョメペア「許すもんか!」

 

フォルゴレ「ポルク!」

 

 ポルクでキャンチョメはムキムキの巨体になった。これにはフリトはもちろん、隠れて見ていたチェリッシュとニコルも驚いた。

 

チェリッシュ「これがあの坊やの力?」

 

ニコル「見た目は強そうだけど、実際に強いのかはこれから見ないとわからないわ」

 

 変身したキャンチョメは近づいていた。変身した姿にフリトとバーゴは後ずさりした。

 

キャンチョメ「さぁ、ルシカの羊を返せ!降参しないなら…」

 

フォルゴレ「力尽くで奪い返すだけだ!」

 

フリト「くそ、こいつ…魔物だったのか…」

 

キャンチョメ「ふははは、その通り!僕は無敵の魔物、キャンチョメさまだったのだ!」

 

 キャンチョメが後ずさりしたフリトとバーゴを追って洞窟に入ったのを見たチェリッシュとニコルは洞窟の中の様子を隠れながら見ようとした。しかし、ある悲鳴が聞こえて見つからないように洞窟の様子を見ると、そこにはバーゴにチョップしたものの、逆にキャンチョメが痛がっていた。

 

ニコル「あれはただの見かけ倒しだったのね…」

 

 その様子を見た2人は唖然としていた。

 

バーゴ「ぼ…僕、まだ何もしてないよ…」

 

フリト「そうか、外見は変わっても…あいつ自身は変わらないんだ!そう、あいつは弱いガキのままなんだ!」

 

フォルゴレ「バカーー、違うぞ!キャンチョメは強いんだ!それ、強さを見せてやれ、キャンチョメ!」

 

キャンチョメ「そんなことしたら手が折れちゃうよ!(チェリッシュの言った通りになったよ…。あ~、こんな事だったら、見栄を張らずにチェリッシュと一緒に戦えばよかった…)」

 

フリト「へへへっ、やっぱりそうだ!バーゴ、一気に反撃だ!」

 

キャンチョメ「うわ~、バレるのが早すぎる~~!!」

 

フリト「フレイド!」

 

フォルゴレ「キャンチョメ、ぶわ~~~っ!!」

 

 キャンチョメの盾になる形でフォルゴレはフレイドをまともに受けてしまった。

 

キャンチョメ「フォルゴレ!」

 

フリト「はっ、もう終わっちまったぜ。魔物も弱ければ、人間も弱っちいぜ!」

 

キャンチョメ「フォルゴレ…僕が今、蘇らせてあげるよ!」

 

 キャンチョメが歌い出すと、フォルゴレが立ち上がった。

 

キャンチョメ「(そうさ、フォルゴレは無敵なんだ!)」

 

フリト「くっそ~っ、もう1回だ!バーゴ、一気にカタをつけるぞ!フレイド!」

 

 しかし、フォルゴレ達はかわした。

 

フリト「何!?よけた?ならば、これでどうだ!リン・フレイド!」

 

 今度は輪っかの炎が放たれた。

 

キャンチョメ「火…火…だんちょ…団長……団長!」

 

 リン・フレイドを見て、キャンチョメは団長に扱かれていた時のことを思い出した。そして、火の輪をくぐる要領でリン・フレイドをよけた。

 

キャンチョメ「そうだ、あの特訓だ!くぐる、火の輪をくぐるよ!だから、僕のお菓子をとらないで、団長!」

 

フリト「何っ!?こいつ、またよけやがった…!」

 

フォルゴレ「すごい、すごいぞ、キャンチョメ!(以前は…本当にドジなだけだったのに…)よーし、負けてられないぞ!キャンチョメ、反撃だ!コポルク!」

 

 キャンチョメは小さくなった。

 

フリト「何!?小さく!?くっ…どこだ…どこへ行った…?」

 

 小さくなったキャンチョメを探していると、何やら音がした。その方へ向くと、キャンチョメがフリトのズボンのベルトを外していた。

 

フリト「うわ~!こいつ何してやがる!」

 

キャンチョメ「僕の恐ろしさを見せてやる~~!」

 

 ベルトが外れてしまった事でフリトのズボンが下がってしまった。

 

フリト「やめろ~~!パンツまでおろすな~~!!」

 

キャンチョメ「ふはははっ!」

 

 調子に乗っていたキャンチョメはフリトが持ってる本で叩きはらわれた。

 

フリト「くそ、バーゴ、こいつを踏みつぶしちまえ!」

 

フォルゴレ「そうはさせるか~、ポルク!」

 

 今度はフリトの化けた。しかし、頭が本物より長かった。

 

フリト「な、何ィ~~~~~っ!!」

 

キャンチョメ「ふはははっ、どっちが本物かわかるまい!」

 

フリト「わかるわ~~!!バーゴ、わかってると思うが、俺が本物のフリトだからな」

 

キャンチョメ「おいおい、何言ってるのさ。僕が本物だ」

 

 キャンチョメがフリトに化けた事でバーゴはどっちが本物かわからなくなった。

 

フリト「何迷ってるんだ、この野郎!明らかにこいつが偽物だろ!」

 

キャンチョメ「はははっ、いくら賢くてかっこいいバーゴでも迷う事くらいあるよ。気にするな。僕は優秀な君を疑ったりはしないよ」

 

フリト「わかんねえのか、このウスラトンカチ!!」

 

バーゴ「こっちが偽物だ!」

 

 暴言を言ったフリトを偽物だとバーゴは判断し、殴り飛ばした。

 

バーゴ「やったよ、フリト、偽物をやっつけたよ!」

 

キャンチョメ「えらいぞ、バーゴ。やっぱり君は賢いや」

 

フリト「くそっ、てめえら、もう許さねえ…!バレイド!」

 

 牙を飛ばす攻撃をキャンチョメは受けてしまい、変身が解けてしまった。

 

フリト「はぁ…はぁ…どうだ?俺が、お前の本の使い手…俺が本物だ…そうだろ?バーゴ…」

 

バーゴ「う、うん…ごめんよ…」

 

フリト「だったら、あいつを本気でぶっ潰すんだよ~~!徹底的に、徹底的にな~~!!ギガノ・ビレイド!」

 

 それまでの戦いの様子を見ていたチェリッシュとニコルはギガノ・ビレイドが来たため、洞窟から離れて別の場所に隠れた。その後、何とか攻撃をかわしたフォルゴレとキャンチョメが洞窟を出た。

 

フォルゴレ「キャ、キャンチョメ!今度こそダメだ、逃げよう!かないっこない!」

 

キャンチョメ「でも、ルシカの羊が…」

 

フォルゴレ「バカ!死んじゃったら元も子もないじゃないか!そんな傷ついた体でどう戦うんだ?」

 

フリト「はははは、いたぞ、バーゴ!止めを刺してやれ!」

 

フォルゴレ「キャンチョメ、撤退だ!」

 

 この状況ではどうしようもないと判断したフォルゴレはキャンチョメを連れて撤退しようとした。それを見たチェリッシュはニコルと共に戦闘の準備をした。しかし、後を追ってきたのか、ルシカが来た。

 

ルシカ「ダメ~~!兄ちゃんをいじめるな!羊を返せ!」

 

フリト「邪魔だ、クソガキ!てめえも痛い目に」

 

 ところが、話す途中でコファルがフリトの足にぶつかった。

 

フリト「いてぇ~~~っ!!誰が俺に石をぶつけたんだ!?」

 

???「小さい子供に手を出そうなんて許さないわよ!」

 

 声と共にチェリッシュとニコルが姿を現した。

 

フォルゴレ「(魔物の本?だとすると、もう一方の女の子は…魔物…)」

 

キャンチョメ「チェ、チェリッシュ!」

 

チェリッシュ「さぁ、ここは危ないから離れるわよ!」

 

 ルシカの手を引いてチェリッシュはフリトから離れた。

 

キャンチョメ「ありがとう、チェリッシュ、ニコル。ごめんよ、フォルゴレ…どんなに危険でも…どんなに無茶でも…僕はルシカを見捨てる事はできないんだよ!ルシカ、おいで!」

 

ルシカ「お兄ちゃん!」

 

キャンチョメ「安心するんだよ、ルシカ…。僕が…僕が絶対にルシカを守ってあげるからね!」

 

フォルゴレ「(どうする?このままじゃ2人とも…。チェリッシュに協力してもらうように頼むしかないか…)」

 

 そんな時、キャンチョメの本が光った。

 

チェリッシュ「あの坊や、新しい呪文を?」

 

フリト「へっ、てめえら全員、まとめて吹っ飛びやがれ!」

 

ニコル「チェリッシュ、最悪の事態に備えるわよ!」

 

フォルゴレ「ええい、どんな技かはわからんが、もうこれしか可能性はない!第三の術、ディカポルク!」

 

 術の発動と共に巨大なキャンチョメの幻影が現れた。もっとも、それに気づいたのはこの時点ではチェリッシュペアだけだが。

 

フリト「で、でっけ~~~~~っ!!」

 

キャンチョメ「フォルゴレ、僕、いったいどうしちゃったの?」

 

フォルゴレ「新しい呪文の力なんだ!体が大きくなったんだぞ!」

 

キャンチョメ「…え?うわぁあ!なんて大きいんだ~!」

 

フリト「くそっ、こうなったら、全力で攻撃するまでだ!」

 

フォルゴレ「(まずい!今までのキャンチョメの術は外見は変わっても、強さは変わっていなかった…。今回もきっと弱いままだ…だから、攻撃されたら…)」

 

フリト「ギガノ・ビレイド!」

 

フォルゴレ「わ~、待った~~!攻撃はやめ!」

 

 バーゴの攻撃は幻影に当たった。しかし、あくまで幻影であるため、何も変化はなかった。

 

フリト「ははっ…やったぜ…。バカな術だ!標的がでかくなっただけじゃねーか!ははははっ、終わった!俺達の勝ちだ!え?何…?無傷だと!?」

 

チェリッシュ「(まだ気づいていないようね、大きい方は偽物だって事を)」

 

キャンチョメ「…そうか…こうなってるんだ…。ふは…ふはは…、うわ~~いっ!僕は無敵のキャンチョメ様だ!」

 

フリト「くそ!やられてたまるか!フレイド!バレイド!ギガノ・ビレイド!」

 

 幻影とも知らずにバーゴは攻撃を続けた。

 

キャンチョメ「ははははっ、わかったか?僕の強さが!」

 

フリト「くそ!くそ…なぜだ…なぜ攻撃が効かねえ!」

 

フォルゴレ「(わかったぞ…不死身の訳が…。攻撃が効いてないんじゃない…。すり抜けて当たってないだけなんだ…!そう…あの大きな姿は幻!そして本物は…ここにいる…)」

 

 ようやくフォルゴレもディカポルクのからくりがわかった。そして、フリトに向かって突っ走った。

 

フォルゴレ「よし、今なら本を奪える!奴等は呪文を使い過ぎた!もう心の力は残ってないはずだ!」

 

フリト「くっ…まだだ!まだ撃てる!フレイド!」

 

フォルゴレ「キャンチョメが作り出したこのチャンス、絶対に無駄にはしない!」

 

 炎の攻撃にもフォルゴレは怯まずに突っ込んでいった。

 

フリト「やったか…?」

 

フォルゴレ「君は知らないようだ。この世には、どんなピンチをも乗り越える男がいる事を…。無敵と呼ばれる男がいる事を…。そう、それがこの私、鉄のフォルゴレ!絶世の美男子、イタリアの英雄、パルコ・フォルゴレさ!よ~く覚えておくんだな!」

 

ニコル「(尻が丸見えだけど、雰囲気を壊さないためにも黙っておくしかないわね…)」

 

フリト「くそっ、バーゴ、こうなったらあのガキだ!あのガキを人質にとるんだ!」

 

フォルゴレ「何っ!?しまったあぁ!」

 

 バーゴはルシカを人質にとろうとした。そこへ、チェリッシュが立ちはだかった。

 

チェリッシュ「言ったはずよね、私は小さな子に手を出すのは許さないって!手を出したらタンコブ程度では済まないわよ!!」

 

 チェリッシュの気迫にバーゴは怯んでしまった。その隙にキャンチョメはルシカをバーゴから遠ざけた。

 

ルシカ「兄ちゃん…」

 

キャンチョメ「ルシカ、大丈夫かい?」

 

ルシカ「う、うん。兄ちゃんは大丈夫?」

 

キャンチョメ「もちろんさ…ルシカ。僕が守ってやるって言ったろ?」

 

フリト「くそっ、あのガキ!あの女!」

 

 キャンチョメとチェリッシュに気を取られている隙にフリトは本をフォルゴレに奪われた。

 

フリト「あっ、俺の本!」

 

フォルゴレ「はっ!」

 

 そのままフォルゴレはバーゴの本をバーゴのフレイドで発生した火に投げ込んだ。火に投げ込まれた本は燃えてバーゴは送還された。

 

フォルゴレ「もう悪あがきはよせ…、これでわかったろ?君は負けたんだよ!あの勇敢な戦士…キャンチョメにな!」

 

 フォルゴレとキャンチョメの様子をチェリッシュとニコルは微笑ましく見ていた。

 

ニコル「あまり私達が積極的に助太刀しなくてよかったわね」

 

チェリッシュ「そうね。もし、私が代わりに倒していたらあの子の成長は望めなかったかも知れないわ」

 

 

 

 

 

スペイン

 それから、次の日になった。キャンチョメは最後に団長達やルシカに玉乗りを披露してからサーカスをやめたが、チェリッシュはテッドを探すのも兼ねて残る事にした。

 

団長「結局、君達はサーカスに残る事にしたのか」

 

チェリッシュ「はい」

 

団長「君の探している男の子、きっと見つかるといいね」

 

ニコル「私達がテッドという男の子を探してるの、知ってたんですか?」

 

団長「たまたまそのような話を聞いててね。でも、サーカスのみんなもそれを手伝いたいそうだ。何だか、家族を探している君は『母を訪ねて三千里』の主人公っぽいな。いや、君の場合は家族を訪ねて三千里かな」

 

チェリッシュ「母を訪ねて三千里?」

 

ニコル「人間界で有名な小説よ。日本ではアニメにもなったわ」

 

団長「まぁ、どれぐらいの付き合いになるからわからないが、頑張って行こうじゃないか」

 

チェリッシュ「では、これからもよろしくお願いします」

 

団長「私の方からもお願いするよ」




これで今回の話は終わりです。
ほとんど原作やアニメ通りですが、チェリッシュの出番等も加えました。
ガッシュでは女の子の魔物が少ないため、早期に女の子の魔物を出して仲間入りさせました。うしおととらのヒロインで言えばティオは麻子、コルルは真由子、パティは誰にも該当せず、チェリッシュは礼子のポジションにしています。
次はアポロが再び来る話になりますが、原作やアニメと違って清麿は二つの出来事をアポロから聞かされる事になります。それと、ある魔物も出番を前倒しする形で出てきます。


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LEVEL21 二つの出来事

高嶺家

 それは、キャンチョメがバーゴを倒してから間もない日の事だった。

 

ガッシュ「清麿、魔物の石版をもう買ってきたのか!?」

 

清麿「ああ…。前の戦いでこの石版をお前がいた時代の俺が買ったのはもっと後なのか?」

 

ガッシュ「もうしばらくしてからだったのだ…」

 

清麿「そうか…。とりあえずこの石版、磨いて大切に保管しとかないとな」

 

ガッシュ「(ウヌゥ…前の戦いで私が記憶をなくしても石版を初めて見た気がしなかったのだが…、記憶が戻っても曖昧なままなのだ…。やはり、可能性としてはイギリスの森にいた時に何かの魔物の石版をどこかで見たのであろうか…)」

 

 翌日、清麿が学校に行った後、ティオ達が遊びに来た

 

ティオ「ねえ、この石版って何なのかしら?」

 

パティ「私に聞かれてもわからないわよ」

 

コルル「何か、悪い事の前触れじゃないといいけどね…」

 

ガッシュ「とりあえず、清麿は磨いて大切に保管すると言っていたのだ」

 

コルル「だったら、落書きとかはしないよ」

 

ティオ「ガッシュ、みんなで特訓しに行かない?」

 

ガッシュ「それがいいのう」

 

パティ「まずはマラソンをしましょ。いいでしょ?ガッシュちゃん」

 

ガッシュ「ウヌ…」

 

 

 

 

モチノキ町

 ガッシュ達は山を目指してマラソンを始めた。しばらくした後、ティオとコルルは息切れしたが、ガッシュとパティは息切れしてなかった。

 

コルル「パティってとてもスタミナがあるね。私なんか、もう休みたいって思ってるのに…」

 

パティ「当然じゃない!ガッシュちゃんと一緒なら、いくらでもスタミナがあるわよ。さ、ガッシュちゃん、隣で一緒に走りましょう」

 

ティオ「ちょっと、勝手にガッシュと馴れ馴れしくしないでよ!」

 

パティ「あら、嫉妬してるの?でも、ガッシュちゃんは私の恋人なのよ」

 

ティオ「パティ…、こうなったら山までどっちが先に着くか突っ走るわよ!」

 

パティ「臨む所よ!」

 

 2人ともスタミナ配分等を考えず、突っ走っていった。

 

コルル「行っちゃったね…」

 

ガッシュ「2人共怖いのだ…」

 

 残されたガッシュとコルルは自分のペースで山まで走るのであった……。

 

 

 

 

モチノキ中学校

 いつもの授業が終わって清麿は家に帰っていた。

 

清麿「さてと、今日も学校が終わったし、帰ろっと」

 

 そこへ、ある車が止まった。

 

清麿「な、何だ!?」

 

 車から、清麿には見覚えのある人物が降りてきた。

 

アポロ「久しぶりだな、清麿」

 

清麿「ア、アポロ、アポロじゃないか!」

 

ロップス「かう~!」

 

清麿「ロップスも元気そうじゃないか!(よかった、ゼオンにやられてなくて…!)」

 

アポロ「清麿に会いに来たのはある話をしたいからだ」

 

清麿「ある話?」

 

 

 

 

モチノキ町

 せっかくなので、アポロは清麿を家に送る事にした。

 

清麿「旅は終わったのか?」

 

アポロ「終わったよ。今の僕は会社を纏める社長さんさ」

 

清麿「アポロが話したい事って何だ?」

 

アポロ「…1つは君達の言っていた『ガッシュに似た奴』、ゼオンの事さ」

 

清麿「ゼオンだって…!アポロはゼオンと会ったのか!?」

 

アポロ「会ったが、君達の忠告通り自分から話しかけた訳じゃない。奴とはたまたま会ってしまったんだ…」

 

 

 

 

 

 

回想

アポロ『あれは、3週間前…僕達がオランダを旅していた時の事だ…』

 

 アポロはロップスと共に宿にいた。ちょうど朝になり、アポロは目が覚めたが、ロップスはまだ熟睡していた。

 

アポロ「思ったよりも早く目が覚めちゃったな。ロップスは気持ちよさそうに寝てるから無理に起こすと機嫌を悪くするだろうし、朝の散歩にでも行くか」

 

 無理にロップスを起こさず、本を宿に置いたままアポロは散歩した。

 

アポロ「清麿は今頃どうしてるんだろう…旅が終わったらお土産でも買って送ろうかな?」

 

???「お前、俺様をあのマヌケと勘違いしたな…!ただで魔界に帰れると思うなよ…!」

 

 のんびり散歩していたアポロだったが、声が聞こえてその聞こえた先へ進んだ。すると、驚きの光景を目の当たりにした。そこには、ゼオンとデュフォーがボクサーのような魔物とそのパートナーのコンビと対峙していた。気付かれないようにアポロは茂みに隠れた。

 

アポロ「(あ、あの少年…ガッシュにそっくりだ…!だが、凄まじい威圧感だ…。ひょっとすると、彼が清麿達の言ってた『ガッシュに似た奴』なのか…!)」

 

モブ魔物「おい、あんたはガッシュにそっくりなんだから間違えてもおかしくないじゃねえか!」

 

ゼオン「お前の話は聞かん。俺達に会った以上、逃がしはしない…」

 

アポロ『それから、戦いが始まった…』

 

モブパートナー「アムロン!」

 

 ボクサー風の魔物はゼオンにアムロンによる伸縮自在のパンチやアムルクによるパンチを連続で叩き込みまくった。しかし、放ったパンチはゼオンには全く当たらず、逆にゼオンの連続パンチを受けた挙句、アッパーを決められて吹っ飛んだ。

 

アポロ「(どうなってるんだ!?あの魔物のパンチは伸縮自在だったり巨大化してりして速い上に相手の動きをよく見て打ち込んでいるのに、ガッシュに似た奴はそれをかわすどころか、より速くて重いパンチを連続で叩き込めるなんて…!)」

 

ゼオン「おいおい、人間界のボクシングとかいう殴り合いが得意とお前が言ったから俺も同じような殴り合いをしたのに何だ、その様は!お前のパンチはトロくてよそ見しててもかわせるぞ」

 

モブパートナー「な、なんて強さだ…。パートナーを殴って本を燃やせ!」

 

 魔物はデュフォーへ急接近し、パンチを叩き込んだ。しかし、デュフォーはそれを最小限の動きでかわした。得体の知れないデュフォーに魔物は思わずパンチの速度を落としてしまい、ゼオンに殴り飛ばされた。

 

モブ魔物「まだまだこれからだ!俺達は既にディオガ級の術を習得した!この必殺パンチを受けてみやがれ!」

 

 ディオガ級の術による必殺パンチをボクサー風の魔物はゼオンに叩き込もうとした。

 

ゼオン「もうディオガ級の術が使えるのか」

 

デュフォー「どうする?ラウザルクを使ってこっちもパンチで倒すか?」

 

ゼオン「こんな奴にラウザルクはいらん。せいぜい使っても、パンチ1発と中級呪文1発だ!」

 

 その言葉通り、ゼオンは魔物の必殺パンチをかわしてからアッパーで上へ殴り飛ばし、大ジャンプして先回りした。

 

デュフォー「テオザケル!」

 

 テオザケル1発で魔物はダウンし、パートナーはデュフォーに首を掴まれて動けなくなった。

 

モブパートナー「(な、何だ…?この感じは…)お前、恐怖さえ感じない感情のないマシンのように振る舞っているようだが、凄まじい憎しみを感じるぞ…」

 

 その言葉にデュフォーは激怒したのか、ボクサー風の魔物のパートナーを放り投げて呪文を使おうとした。その本の光はとてつもないものだった。

 

アポロ「(本の光があんなに大きくなってるだと!?)」

 

デュフォー「ジガ…」

 

ゼオン「おい、こんな雑魚に本気を出すな。力の無駄だ」

 

デュフォー「ザケル」

 

 そのままボクサー風の魔物は本を燃やされ、魔界へ帰った。

 

アポロ「(な、なんて強さだ…!清麿達の言う通り、僕とロップスじゃ絶対に勝てない…!)」

 

 ゼオンのあまりの強さにアポロはその場を離れようとした。

 

ゼオン「おい、隠れているのはわかってるぞ。とっとと出てこい!さもないと…」

 

 自分の隠れている方へゼオンが手を向け、デュフォーが呪文を使おうとしたため、いう通りにアポロは茂みから出てきた。

 

アポロ「よく僕が隠れている事がわかったね…」

 

ゼオン「お前がここへ来た時からだ。何の用で俺達の戦いを見に来た?」

 

アポロ「た、ただ散歩してる時に君達と会っただけだよ…」

 

ゼオン「偶然か…」

 

デュフォー「ゼオン、こいつは嘘を言っていない。本当にたまたま俺達の戦いを見ただけだ。それと、こいつは魔物の本の持ち主のようだ」

 

ゼオン「じゃあ、そいつの持ってる本をすぐに燃やすか?」

 

デュフォー「だが、今は魔物と一緒にどこかに置いてきたようだ」

 

アポロ「(何で僕の言った事が嘘じゃないとわかるんだ…!)」

 

ゼオン「お前もお前の魔物も命拾いしたようだな。本がここにない以上、今回は見逃してやる。だが、本を持った状態で次に会った時は逃がしはしない。魔物ともっと長く一緒にいたいなら、俺達と出会わないように祈るんだな」

 

 デュフォーをマントで包み、ゼオンはその場から消えてしまった。その場にはあまりの恐怖で立ちすくんだアポロだけが残った。

 

 

 

 

 

アポロ「今思えば、その時の僕の行動が少しでも違っていたらゼオンに本を燃やされていたと思うとゾッとするよ…」

 

清麿「不幸中の幸いという奴か…。それで、俺に聞かせたい話はまだあるのか?」

 

アポロ「もう一つあるんだ。ゼオンと会ってしばらくしてから旅の途中でカエルの魔物に会ってね、その魔物は探し物をしてるけどなかなか見つからなくて困っていたようだったから、僕はそれを手伝ってるんだが…」

 

清麿「探し物って何だ?」

 

アポロ「何でも、石版を探しているようなんだ。魔界の文字が彫られてある石版なんだけど、知らない?」

 

清麿「その石版、俺は持ってるぞ!」

 

アポロ「じゃあ、僕に譲ってくれないかい?カエル君が探しているものかもしれないからね」

 

清麿「いいけど…」

 

 

 

 

高嶺家

 清麿は買ってきた石版をアポロに渡した。

 

アポロ「ありがとう。それと、カエル君からある事を頼まれたんだ」

 

清麿「ある事?」

 

アポロ「カエル君はパティっていう水色の髪の女の子の魔物を探しているんだが、どこにいるのか知らないかい?」

 

清麿「この町に来て住んでるぞ」

 

アポロ「そうか。じゃあ、僕はこの辺で帰るよ。何かあったら連絡を入れるよ」

 

 そのままアポロは去って行った。

 

清麿「あれは俺達がそのまま持ち続けてもどうにもならなかったし、探してる奴がいるなら、譲っても問題なかったかなぁ…」

 

 そう思っていると、ガッシュが帰ってきた。

 

ガッシュ「ただいまなのだ」

 

清麿「ガッシュ、どこへ行ってたんだ?」

 

ガッシュ「ティオ達と一緒に特訓をしてたのだ。清麿こそ何をしていたのだ?」

 

清麿「帰りにアポロに会ってな、カエルの魔物が石版を探していると聞いて持っていた石版をアポロに譲ったんだ」

 

ガッシュ「(石版を譲った…。これでよかったのであろうか…パムーン…)」

 

清麿「ところで、ガッシュはカエルの魔物に心当たりはないか?」

 

ガッシュ「カエル?その者の名はビョンコであるのだ。魔界では同じクラスになって…」

 

清麿「ビョンコっていうのか。そいつは困っていたようだったからアポロが石版探しを手伝っていたが、いい奴なのか?」

 

ガッシュ「ウヌ、ビョンコは…(あ…)」

 

 ビョンコはいい魔物だと言おうとした時、ガッシュはデボロ遺跡やそれに関連する事を思い出した。

 

ガッシュ「清麿、すぐにアポロにビョンコの石版探しを手伝うなと伝えるのだ!」

 

清麿「そんな事言われても、番号は知らないぞ!何かまずかったのか?」

 

ガッシュ「あ~……」

 

 

 

 

 

???

 清麿から譲ってもらった石版をアポロはカエルの魔物、ビョンコに渡した。

 

ビョンコ「間違いないゲロ!オイラの探していた石版ゲロ!」

 

アポロ「それと、パティっていう女の子のいる場所もわかったよ。いる場所はモチノキ町だ」

 

ビョンコ「ありがとうゲロ!これでパティを仲間にできるゲロ」

 

アポロ「カエル君、君は僕に仲間になってほしいと言ってたけど、戦ってみてから決めよう。君の強さを確かめてみたい」

 

ロップス「かう!」

 

ビョンコ「そうしたい所だけど、オイラのパートナーは呪文の発音がうまくできないゲロ…」

 

アポロ「本当なのかい?」

 

ビョンコ「本当だゲロ!」

 

アポロ「そんな状態だから僕達に助けを求めたのかい?もしかして、呪文が使えないから仲間を?」

 

ビョンコ「えっと…そんな所ゲロ」

 

アポロ「仕方ないなぁ、君に協力するよ。本当に困った顔をしてるし、僕の勘でも君が困っているのは嘘じゃないようだからね」

 

ロップス「かう!」

 

ビョンコ「ありがとうゲロ!」

 

アポロ「それと、君の石版集めを手伝っている時に気になったんだが、この石版は何のために集めているんだい?」

 

ビョンコ「それはマイロードの元で話すゲロ」

 

アポロ「ロード…?主君とか、そういう意味のロードかい?」

 

ビョンコ「そうだゲロ。オイラについてくるゲロ」

 

 

 

 

 

高嶺家

 清麿は前の戦いでの千年前の魔物やビョンコ等についてガッシュから聞いていた。

 

清麿「ビョンコが石版を集めているのはガッシュが前にも言ってた千年前の魔物を復活させるためだったのだな」

 

ガッシュ「ウヌ」

 

清麿「そしてゾフィスって奴はそのビョンコを手下にして悪さをしていたんだったな」

 

ガッシュ「それと、パティも…」

 

清麿「パティもか?どうしてあんなにガッシュにメロメロなパティがゾフィスの配下に?」

 

ガッシュ「忘れたのか、清麿。前の戦いでは私はゼオンに記憶を奪われて魔界の事を忘れてしまったのだ」

 

清麿「そうか、そのせいでパティは自分の事を忘れられたと思い込んでゾフィスの配下になったのか…。今回は記憶は奪われてないから上手く仲間に引き入れる事ができてよかったな」

 

ガッシュ「仲間になってくれたのはよいのだがのう…」

 

清麿「(ガッシュが素直に喜んでいないとはな…。パティって前の戦いでもハチャメチャだったのか…)ビョンコが石版集めをしてるのは、そろそろゾフィスが動き出す前触れだろうな。今のガッシュは千年前の魔物に勝てそうか?」

 

ガッシュ「そんなに多く来なければ大丈夫なのだ。前の戦いでは術の威力が低くて苦戦したのだが、今の私ならバオウを使わずとも、初級や中級の呪文で倒せるのだ」

 

清麿「そうか。千年前の魔物との戦い、桁違いの威力の術が使えるガッシュが大黒柱になりそうだな。俺達もその戦いに備えるぞ!」




これで今回の話は終わりです。
今回の話は原作の75話~77話、およびアニメの42話がベースですが、ゼオンにやられたのはロップスではなく別の魔物に変更してアポロは本を置いてきたままゼオンの戦いを目撃したと改変しました。ちなみに、アポロは原作と違ってロップスと共に千年前の魔物との戦いに参加します。
ここからゾフィスの様子も少しずつ描かれていきます。
次はナゾナゾ博士が登場し、アニメ基準で邂逅編は終了します。


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LEVEL22 大きな戦いに向けて

???

 それからしばらく経った後の事だった。アポロはビョンコに案内されて洞窟を進んでいた。

 

アポロ「ここはどこなんだい?」

 

ビョンコ「わが主君がいる場所ゲロ」

 

ロップス「かう?」

 

アポロ「そのロードも魔物なのか?」

 

ビョンコ「そうゲロ。しかし敵ではないゲロよ。協力さえすれば魔界でも地位がもらえるゲロ」

 

アポロ「(地位か…。こういう話が出たら何だか、胡散臭くなってきたな…)」

 

ビョンコ「それと、ロードに会ったら口には気を付けるゲロ。ロードはとても強くておっかないゲロ」

 

アポロ「ああ」

 

 洞窟を進むと、そこには仮面の魔物、ロードとそのパートナーがいた。

 

ロード「お帰り、ビョンコ」

 

ビョンコ「はは~~~っ、マイロード、マイロード~~~!」

 

アポロ「(何だ?ゼオン程じゃないが…このやばい感じは…)」

 

ロード「ロップス、そしてアポロだね?ビョンコの目を通じて見ていたよ…」

 

アポロ「初めまして、ロード様。石版集めをしてる時から聞きたかったけど、何の目的で石版を集めているのかな?」

 

ビョンコ「口には気を付けろと言ったゲロ!ロードを怒らせてはダメゲロ!」

 

ロード「怒らなくていいよ、ビョンコ。それくらい別にいいさ…。アポロ、石板を集めている目的は魔物達を助けてあげただけなのさ」

 

ロップス「かう…?」

 

アポロ「助ける?どういう事なんだ?」

 

ロード「まずはこれを見てほしい」

 

 ロードの言葉の後、洞窟の中が明るくなり、何枚かの石版が見えた。

 

アポロ「これは…清麿から譲ってもらった石版に似てるじゃないか!」

 

ロード「これは…前回の『魔界の王を決める戦い』の敗北者さ」

 

アポロ「何…?いや、それはおかしい!魔界の王を決める戦いは本を燃やされたら魔界へ送還されるはずだ!それに、どうして千年経った今でもこの世界に…」

 

ロード「いい質問だ。私も最初はそう思ったさ。それで調べた。そしたら…『石のゴーレン』という魔物に辿りついた」

 

 ロードは石版はゴーレンの術によるものだという事をアポロに話した。

 

アポロ「事情はわかった。だが、この石版を集めてどうする?」

 

ロード「蘇らせてあげたいのさ。いつまでも閉じ込められてるのはかわいそうだからね…。そこでロップス、アポロ。君達には石版を探すのを手伝ってもらいたいんだ」

 

アポロ「(色々と怪しいな…このロードという魔物は…)」

 

 

 

 

 

カナダ

 ブラゴペアはスノーモービルである場所へ向かっていた。

 

じい「お嬢様、そんなにスピードを出されては危険です!」

 

シェリー「魔物がすぐ近くにいるの!じい達こそ危険だからついてこないで!」

 

じい「そういう訳にはまいりませぬ!」

 

 そう言っていると、車が雪のせいで横転してしまった。

 

シェリー「じい!」

 

じい「大丈夫でございます…」

 

ブラゴ「ほっとけ!行くぞ」

 

 仕方なくシェリーはブラゴと共に先に行った。

 

シェリー「どう?ブラゴ」

 

ブラゴ「魔物の気が薄い。恐らく、立ち去った後だ」

 

シェリー「また無駄足を踏んだって訳ね。最近多いわね。寸前で逃げられるパターンが」

 

ブラゴ「久々に歯ごたえのある奴だと思ったが、尻尾を巻いて逃げやがったか。まぁ、逃げて正解だな。俺と戦う奴は、俺を敵に回した愚かさを知るだけだがな!」

 

 無駄足だったため、シェリーはブラゴと共に帰る事にした。その道中で出会った老人とその孫に関わるトラブルもついでで解決した。

 

 

 

 

モチノキ町 空き地

 その頃、ずっと敵の魔物が来ないため、ガッシュと清麿は人気アイドルの恵に比べると空き時間もとりやすいパティペアとコルルペアと定期的に特訓をしており、時々ティオペアも一緒に特訓した。

 

清麿「ザケルガ!」

 

ウルル「スオウ・ギアクル!」

 

 収束された電撃と水の龍はぶつかり合ったが、相殺された。

 

パティ「私の最大呪文がまた強力になったわ。これも、ガッシュちゃんとの特訓のお陰よ!」

 

ガッシュ「喜んでもらえていいのだ…」

 

清麿「特訓を重ねてスオウ・ギアクルの威力もガッシュのザケルガぐらいになったな」

 

ウルル「はい。威力が上がったのはガッシュと一緒に特訓できると意気込んでいたパティの頑張りによるものでしょう」

 

しおり「それにしても、魔物の本の術はどういう条件で増えたり強くなったりするのかしら?」

 

清麿「その事についてだが、ガッシュの話によれば魔物の眠っている力が目覚めるとその力は呪文となって本に現れるそうだ。でも、その力を目覚めさせるには魔物の心が成長するなどといったきっかけがないと目覚めないそうだ。もっとも、パートナーの強い感情に反応して術が増えるといったケースもない訳ではないらしい」

 

コルル「ガッシュって魔界にいた頃は落ちこぼれとバカにされてたのに、人間界に来てからはとても強くなったし、私達の知らない事を色々知ってる物知りになったね」

 

ガッシュ「こ、この戦いに行く前に魔界の色々な図書館で本を読み漁って知識を身に付けたのだ(本当は今までの戦いの記憶と経験に基づくものだがのう…)」

 

清麿「よし、今日はこれくらいにして買い物でもしてから帰るか?」

 

パティ「それ、いいわね!ガッシュちゃんにはブリを買ってあげましょうよ、ウルル」

 

ウルル「そうですね」

 

 

 

 

 

???

 ロード達は引き続き話しをしていた。。

 

アポロ「一つ聞かせてもらいたい。石版にされた魔物達を蘇らせたらその後はどうするんだ?」

 

ロード「簡単だよ。蘇らせたお礼にちょっと現在の戦いを手伝ってもらうんだよ」

 

アポロ「(善意が感じられないとは思っていたが、ロードは最初から自分が王になるために千年前の魔物を復活させるのか…)済まないけど、僕らはそんな事に興味はない。帰ろう、ロップス」

 

ビョンコ「どうしてゲロ!?」

 

ロード「ビョンコ、少しかがんでなさい。ココ」

 

ココ「ラドム!」

 

 ロードの手から光球が放たれた。

 

アポロ「リグロン!」

 

 咄嗟に持ち前の勘で察知したアポロはリグロンで岩にロープを引っかけてラドムを回避した。

 

アポロ「ロップス、当たってないな?」

 

ロップス「かう!」

 

ロード「ほう…あのラドムを呪文でよけましたか…。やはりその鋭さ…放っておくにはもったいない」

 

ココ「倒そうと思えばいつでも倒せるけど、ロードがあなたを仲間にしたいと言ってるのよ?大人しく従った方が、そのテントウムシ君のためにもなるんじゃない?ここで負けるのは嫌でしょ?」

 

アポロ「(この女、ロードと同じような感じだが…この違和感は何だ?いや、それよりも、ここでこいつらに歯向かったら勝てるのはおろか、逃げ切れるかさえわからない…!ゼオンの様な絶望的な差ではないが、こいつらもやばい…!)…仕方がない、協力するよ。石版探しだったね?」

 

ロード「それでいいんですよ、アポロ、ロップス。私は君達を評価しますよ…」

 

 ビョンコとアポロは石版探しに行った。

 

ココ「何であいつらは操らないの?あなたなら簡単に操れるのに」

 

ロード「今の私では操れる人数に限界があるのだよ。それに、彼等はあてにはしてないよ。時期が来れば切り捨てるからね。それまでは頑張ってもらわないと」

 

 

 

 

 

モチノキ町

 それからしばらく経ったある日、自称何でも知ってる不思議な博士、ナゾナゾ博士とキッドが来た。

 

清麿「ガッシュ、あいつがナゾナゾ博士か?」

 

ガッシュ「その通りなのだ」

 

ナゾナゾ博士「いかにも。私が何でも知ってる不思議な博士、ナゾナゾ博士だよ。ほう、君が天才児高嶺清麿君か。よく私の名前を知っていたね」

 

清麿「こっちには魔界とかに詳しい情報通がいるんでな、ある程度の情報は知っている」

 

ナゾナゾ博士「では、君達の相手は我が僕たちが務めよう!我が僕、アメリカ生まれの不思議な集団、マジョスティック」

 

清麿「ザケル!」

 

 前の戦いの時と違って、ガッシュからナゾナゾ博士の目的等を聞いていたため、すぐに戦おうとしない事に突っ込まずにはいられない清麿はザケルでマジョスティック12ごとナゾナゾ博士にザケルを喰らわせた。

 

清麿「あんた、俺と戦いに来たんだろ!?だったらそんなまどろっこしい事はしないでさっさと戦わんか!!」

 

ナゾナゾ博士「全く、君はせっかちだな…(何という威力だ…。初期呪文がキッドのギガノ・ゼガルを超えているとは…)」

 

 起き上がったナゾナゾ博士が手にしていたのは降参と書かれた白旗だった。

 

清麿「降参?どういう事だ!?」

 

ナゾナゾ博士「この旗に書いてある通り降参だよ。噂には聞いておったが、君達の強さは私の想像を遥かに超えておる。だから、戦って鍛えようと思ったのだが、その必要はないと判断したのだよ。そうだ、君達の強さがわかったから本や魔物の事について」

 

清麿「魔物の眠っている力が目覚めるとそれが呪文として本に現れるんだろ?」

 

ナゾナゾ博士「(どういう事なんだ?清麿君はなぜ本の秘密を…)せ、正解だ。その知識も情報通から得たのかな?」

 

清麿「そうだ」

 

ナゾナゾ博士「ははははっ、どうやら私達はとんでもなく強い魔物と凄い情報通から色んな知識を得ているパートナーを仲間にできたようだ。探究を続ければもっと強くなれるかも知れんぞ。”悪しき者”が徐々に力を集めつつある。その者との戦いの時は一緒に戦おう」

 

ガッシュ「ウヌ(ゾフィスの事なのだな)」

 

キッド「博士、そろそろ行こうか」

 

ナゾナゾ博士「そうだね」

 

清麿「待ってくれ!あんた、何でも知ってる不思議な博士なんだろ!?あんたに聞きたい事があるんだ!」

 

ナゾナゾ博士「何かね?」

 

清麿「実は俺は時々何をすればいいのかが急に頭に浮かんだりするんだ。その不思議な力の正体はあんたなら何か知ってるんじゃないのか?」

 

ガッシュ「(とうとう清麿もアンサー・トーカーの事を気にし始めたのか…)」

 

ナゾナゾ博士「(もしや、彼もあの力を…)いかにも知っているよ。私の推測が正しければ…君の不思議な力の正体はアンサー・トーカーではないのかね?」

 

清麿「アンサー・トーカー?」

 

ナゾナゾ博士「状況などにもよるが、色んな疑問や謎などに対して瞬時に答えを出せる能力だよ。もっとも、限度は存在するよ」

 

清麿「どうしてそんな力が俺に…?」

 

ナゾナゾ博士「アンサー・トーカーは生まれつき持つ者と生死の境の乗り越えて得る者がおる。清麿君はどっちかな?」

 

清麿「生まれつきか生死の境の乗り越える?もしかすると…!」

 

 最初にガッシュに会った時、王族の力が目覚めたガッシュのザケルをまともに受けて死にかけた時のことを思い出した。

 

清麿「1回だけ意識不明の重体になった事がある」

 

ナゾナゾ博士「それが清麿君がアンサー・トーカーを得るきっかけになったようだね」

 

清麿「だけど、さっきも言った通り、いつでも使えるわけじゃないんだ」

 

ナゾナゾ博士「それに関してはアンサー・トーカーの力を安定させるトレーニングを重ねなければ自在に扱う事はできない。何しろ、アンサー・トーカーは脳への負担が大きい。未熟で不安定な段階だと更に負担が大きくなるからね。自由に使えないのもその負担故にリミッターが働くためなのだろう」

 

清麿「色々話してくれたが、あんたもアンサー・トーカーなのか?」

 

ナゾナゾ博士「いかにも。ただ、若い頃より能力は衰えて答えを出すのに時間がかかるようになったから、魔物の戦いで使う事はできないよ。能力が衰えてしまったせいで救えなかった命もあったのだがな…」

 

清麿「それで、アンサー・トーカーを安定させるにはどういったトレーニングが必要なんだ?」

 

ナゾナゾ博士「少し待ってなさい。今から安定させるのに必要なトレーニングの答えを出そう」

 

 ある程度待った後、ナゾナゾ博士は必要なトレーニングの内容を紙に書いて清麿に渡した。

 

ナゾナゾ博士「これを数か月ほどこなせば君の力は安定するはずだ。その間は無理に能力を使ってはいかんよ。では、これで失礼するよ」

 

 前の戦いの時と違ってナゾナゾ博士は戦わなかったが、清麿の疑問に答えてから去って行った。

 

清麿「ガッシュ、前の戦いの時の俺もアンサー・トーカーが使えたのか?」

 

ガッシュ「使えたのだが…、それはリオウとの戦いで死んだも同然の状態になってその状態から回復してから使えるようになったのだ…」

 

清麿「死んだも同然の状態になってから使えるようになるってのはどうもいい気分にはなれないな…。ところで、どうしてガッシュはすぐにアンサー・トーカーの事を教えなかったんだ?」

 

ガッシュ「清麿がアンサー・トーカーの力が目覚めているのかどうかの確証が持てなかったから話せなかったのだ…」

 

清麿「確証が持てなかったからか…。確かに急にアンサー・トーカーが目覚めていると言われてもすぐには信じられなかっただろうな」

 

ガッシュ「気を引き締めるのだ、清麿」

 

清麿「ああ。そろそろゾフィスが動き出すだろうからな…」

 

 その頃、ナゾナゾ博士はキッドと共にどこかへ向かっていた。

 

キッド「博士、清麿に本などの秘密を教えてくれた情報通って誰なのかな?」

 

ナゾナゾ博士「気になるな…一体誰なのか…。まぁ、それは後にして今はティオという魔物の所へ行こうか」

 

 ティオの元へ行こうとしたナゾナゾ博士とキッドだったが、その道中でコルルとしおりに会い、戦闘になった。その戦闘でコルルは二つも呪文を覚えた。

 

ナゾナゾ博士「まさか、ティオの所へ行こうとしたら別の魔物に遭遇するとは…。おまけに二つも呪文を覚えたのは厄介な敵にヒントを与えてしまったのかな?」

 

コルル「…ティオ!?」

 

しおり「あなた…ティオを知ってるの?」

 

ナゾナゾ博士「それは私のナゾナゾに答えられたら教えてあげよう」

 

しおり「ナゾナゾ?」

 

ナゾナゾ博士「上は赤色、下は緑色。そんな私のかわいいペットの名前はなーんだ!!」

 

しおり「えっ?えっと…」

 

コルル「(う~ん…、赤…緑…かわいい…)赤緑ちゃん!」

 

ナゾナゾ博士「!?正解だ…ティオ君やガッシュ君の事を話そう」

 

 ナゾナゾに答える事ができたため、ナゾナゾ博士は自身の目的を話した。

 

しおり「それがあなたの目的だったのですね」

 

コルル「しおりねーちゃん、悪しき者って何?」

 

しおり「悪い奴の事よ」

 

ナゾナゾ博士「それではまた会おう。しおりくん、コルルくん」

 

 ナゾナゾ博士はキッドと共に去って行った。

 

ナゾナゾ博士「この町には魔物が多いようだね」

 

キッド「確か、ガッシュとコルルとティオとパティとウマゴンがいたよね」

 

ナゾナゾ博士「ウマゴンのパートナーを見つけてあげようじゃないか。彼もきっと心強い仲間になれるはずだ。さ、キッド。残るティオとパティの元へ行こう」

 

 今、善き魔物達と悪しき魔物達がそれぞれ力を集めていた。それは、善き者達と悪しき者達がぶつかり合う大きな戦いが始まる予兆でもあった。




これで今回の話は終わりです。
ネットではナゾナゾ博士のアンサー・トーカー説というものがあり、今小説ではそれを取り入れた形でナゾナゾ博士はアンサー・トーカーという事にしています。原作では戦闘で使った様子がないため、清麿やデュフォーと違って老齢により、能力が衰えて答えを出すのに時間がかかるようになったため、魔物の戦闘で瞬時に答えを出して指示を出す事ができないという風にしました。
この話で邂逅編が終わって一区切りつき、次の話からは石版編が始まります。


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石版編
LEVEL23 ゾフィス現る


???

 ロード一派は石版集めを続けていた。

 

ビョンコ「石版が40枚も集まったゲロ!」

 

アポロ「そうだね…」

 

ビョンコ「後は封印を解く光のフィルターの完成を待つだけだゲロ」

 

アポロ「さっきから気になったけどカエル君、あの41枚目の石版は何なのかな?確か、ゴーレンによって石版にされた魔物は40体だったはずじゃ…」

 

ビョンコ「ロードもその石版だけは触るなと言ったからオイラにも何なのかわからないゲロ。ただ、この石版はロードがイギリスの森で見つけたって言ってたゲロ」

 

アポロ「ところでカエル君、ロードはどこに行ったんだい?」

 

ビョンコ「何でも、用があるから出かけると言ってお出かけに行ったゲロ」

 

アポロ「そうか…。千年前の魔物を復活させたらパートナーの方はどうするんだい?」

 

ビョンコ「ロードは千年前の魔物から聞いて心の形が似た人間を集めろと言ったゲロ。今、オイラが知ってるのはそれだけゲロ」

 

アポロ「(なるほど…それは多くの関係ない人間を巻き込むようだな…。魔物が復活してパートナーを探すために本を渡されたらすぐに燃やそう。そうしたら、後はロードから逃げるだけ。無理かどうかはやってみなくちゃわからない…)」

 

 

 

 

高嶺家

 その頃、清麿はアンサー・トーカーを安定させるトレーニングをやりつつ、ナゾナゾ博士の言っていた悪しき者について電話で恵と話していた。

 

恵『清麿君、ナゾナゾ博士の言っていた悪しき者ってどういった存在なのかしら?』

 

清麿「今の俺も詳細はわからない…。だが、気を付けておかなきゃいけない事に変わりはない。恵さんも何かあったら俺やしおりさん、ウルルさんに連絡してほしい」

 

恵『わかったわ』

 

 電話を切った後、清麿は考え事をしていた。

 

清麿「(ゾフィスも色々な準備をしてる頃だろうな。俺達もアンサー・トーカーを安定させるためのトレーニングをやっていざという時に備えなきゃな……)」

 

 

 

モチノキ町

 その頃、しおりとコルルは買い物に行っていた。

 

しおり「今日の夕ご飯のおかずなどを買わなきゃね。今日は何を食べたい?」

 

コルル「お魚を食べたい」

 

しおり「じゃあ、決まりね。今日の夕ご飯は焼き魚よ」

 

 その道中、ウマゴンがパートナー探しをしてるのを目撃した。

 

しおり「ウマゴンもパートナーを探しているみたいね」

 

コルル「パートナーはどんな人かな?」

 

 しばらく見てると、ウマゴンの本を読もうとする人が出て、ウマゴンは震えていた。しかし、読めない事がわかるとほっとしたような態度をとった。

 

しおり「パートナーじゃなかったのにどうして?」

 

コルル「もしかしてウマゴン、しおりねーちゃんと出会う前の私と同じように本当は戦うのが嫌でパートナーが見つかってほしくないんじゃないかな?」

 

しおり「言われてみれば、そのようにしか思えないわね…。ウマゴンは以前のコルルのように戦いを好まないようだし、仮にパートナーが見つかってもそのパートナーが一緒に戦ってくれるかどうかもわからない…」

 

 建物の上でロードはココと共に下を眺めていた。

 

ココ「ロード。ガッシュを呼ぶ方法はどうするの?」

 

ロード「ガッシュの知り合いを操って招待しようか。ん?」

 

 ちょうど清麿やガッシュの話をしている鈴芽を見つけた。

 

ロード「ちょうどいい時に最適の人間が来たようですね。彼女を使いましょうか」

 

 鈴芽に狙いを定めたココとロードは降りていった。

 

 

 

 

高嶺家

 清麿はまだ会った事がないウマゴンのパートナー、サンビームの事について考えていた。

 

清麿「(そう言えばガッシュが言ってたウマゴンのパートナーのサンビームってどんな人なんだ?悪い人ではない事は確かだが…)」

 

 そんな中、インターホンが鳴ったため、清麿が出てみると、そこには鈴芽がいた。

 

清麿「水野か。宿題がわからないから来たのか?」

 

 しかし、鈴芽は答えなかった。そして、鈴芽はある手紙を渡してから倒れた。

 

清麿「水野!?この手紙は一体…」

 

 そんな時、ガッシュが帰ってきた。

 

ガッシュ「ただいまなのだ!どうしたのだ?清麿」

 

清麿「水野が少し前に来たんだが…まるで誰かに操られているようだった。ガッシュの知ってる魔物にそんな事ができる奴はいるのか?」

 

ガッシュ「だとすれば…ゾフィスしか考えられぬ…」

 

清麿「もうゾフィス自ら動き出したというのか!?それに、この手紙…」

 

 手紙を見てみると、ロードという文字があった。

 

清麿「ロード?何の事だ?」

 

ガッシュ「ロードはゾフィスが名乗っていた偽名だ」

 

清麿「今すぐ指定の場所に来い…か…。これは行くしかなさそうだな…」

 

 

 

 

モチノキ町

 指定の場所にガッシュペアは来た。そこへ、ロードとココが現れた。

 

ロード「よく来てくれましたね。自己紹介といきましょうか。私の名は」

 

ガッシュ「ゾフィスだな」

 

ゾフィス「(ど、どうして私の本当の名前を?それに…、この感じは…)瞬時に私の本当の名前を言い当てるとは流石ですね。まぁ、そんな事はおいておきましょうか。あなたのおっしゃる通り、私の本当の名前はゾフィス。傍にいるのが私のパートナー、ココ」

 

清麿「何の用で俺達を呼び出した?」

 

ココ「随分喧嘩腰ね」

 

ゾフィス「私達はあなた達と戦うために来たのではありません、手を組むために来たのです。ガッシュ、あなたの噂は耳にしていますよ。どうですか?私と手を組んでみては。王になる者は心清き者、心正しき者がなるべきです。違いますか?」

 

ガッシュ「断る!お前のような邪悪な者は絶対に王にはさせん!」

 

清麿「心清き者とか、そんな事をお前のような悪党が言っても説得力なんて全くないぞ!今すぐ魔界に送り返してやるぜ!」

 

ゾフィス「おやおや、断るのですか。では、あなた方には消えてもらうしかないようですね」

 

ココ「テオラドム!」

 

清麿「ザケル!」

 

 電撃と光球がぶつかったが、すぐに電撃が光球を打ち破ってゾフィスの方へ飛んでいった。

 

ゾフィス「(バ、バカな!ガッシュは強いと噂で耳にした上、それなりに強いと感じてはいたが、一番弱い呪文がこのような威力になっていたとは!)ぐあああっ!」

 

清麿「追い討ちをかけるぞ、ラウザルク!」

 

ガッシュ「ぬおおおおっ!!」

 

 ザケルを受けてゾフィスが吹っ飛んだあと、ラウザルクでガッシュの身体能力が一時的に上がって、ゾフィスへ向かっていった。肉体強化呪文がないゾフィスは距離をとろうとしたがすぐにガッシュに追いつかれ、一方的にガッシュに殴られ続けた。

 

ゾフィス「(何て強さだ…、ブラゴより強いんじゃないのか…!)」

 

 連続で殴られた後、ストレートパンチで大きく殴り飛ばされた。

 

清麿「ザケルガ!」

 

ゾフィス「ぐっ…ここで負けるか!」

 

ココ「ギガラド・シルド!」

 

 ラウザルク解除後にザケルガがゾフィス目掛けて放たれたが、ゾフィスは爆炎の盾で何とかザケルガを相殺させた。

 

ゾフィス「ココ、強力な呪文を使え!」

 

ココ「ディガン・テオラドム!」

 

 無数の火球がガッシュと清麿を襲った。

 

ゾフィス「流石に連続で受ければ…」

 

ガッシュ「絶対に許さぬぞ……!!」

 

 しかし、ゾフィスが見たのは炎の中から出てきたガッシュと清麿だった。炎から出ると、ガッシュは炎から守るために清麿を包む形で伸ばしていたマントを元のサイズに戻した。その気迫に満ちた顔を見たゾフィスは一気に顔色を変えてある人物の事を思い出していた。

 

ガッシュ「ゾフィス、お前のような他人の心を操り、弄ぶ者が王になる資格はない!私達に倒されて魔界へ帰るのだ!」

 

ゾフィス「(な、なぜだ…、なぜガッシュの顔が…あいつに…)」

 

 

 

 

回想

 魔界にいた頃、ゾフィスはある人物を見かけた。

 

ゾフィス「おやおや、あなたは落ちこぼれのガッシュなのですか?周りにいじめられてとてもかわいそうですね」

 

 ゾフィスが見た人物はガッシュではなく、ゼオンだった。そのガッシュと間違えているゾフィスの態度にゼオンは反応し、足を止めて振り向いた。

 

ゼオン「おい、お前。今、俺をあのマヌケと間違えやがったな…!」

 

ゾフィス「(紫電の眼光、白銀の髪、こ、こいつは…雷帝ゼオン…!!)」

 

ゼオン「俺をガッシュと間違えた以上、どうなるかわかってるのか?答えてみろよ…!」

 

 ゼオンの気迫と威圧感溢れる目に押されてゾフィスは声を出せず、動けなかった。

 

ゼオン「フン、所詮は強者には何もできんヘタレか。気が削がれて叩きのめす気にもなれん。魔界の王を決める戦いではずっと俺に怯えているんだな、ヘタレが」

 

 

 

 

ゾフィス「(なぜガッシュの顔が雷帝と瓜二つなんだよ!!)ひ、ひぃ~~~っ!!」

 

ココ「ゾフィス、どうしたの?」

 

ゾフィス「ココ、ここは撤退だ!奴等の目を眩ませろ!」

 

ココ「テオラドム!」

 

 今度は地面に向けてテオラドムを放った。テオラドムによる煙で清麿とガッシュの目は眩んでしまった。

 

清麿「しまった!ゾフィスは!?」

 

 煙が晴れて辺りを見回してみると、ゾフィスはココと共に姿を消していた。

 

清麿「逃げられたか…!だが、今の俺達でなら、あいつを倒せるかも知れないな」

 

ガッシュ「だが、止めはブラゴとシェリーに任せよう」

 

清麿「どうしてなんだ?」

 

ガッシュ「実は…」

 

 ガッシュはゾフィスとシェリー、ブラゴとの因縁を清麿に教える事にした。

 

清麿「そうだったのか…。わかった、止めはシェリーとブラゴに任せる事にする」

 

 

 

 

???

 ガッシュに圧倒されて必死でゾフィスは逃げていた。その光景をゼオンとデュフォーは見ていた。

 

デュフォー「ゼオン、あの魔物は?」

 

ゼオン「魔界の王を決める戦いが始まる前に俺をガッシュと間違えたヘタレさ。あの逃げっぷりも無様さもあのヘタレには相応しいぜ」

 

デュフォー「だったら、すぐに潰すか?」

 

ゼオン「すぐに魔界に帰したら俺という恐怖から解放されるぞ。敢えて燃やさずにしておいてずっと俺に怯え続けるというのもある意味拷問で面白そうじゃないか」

 

デュフォー「確かにゼオンの言う通りだな」

 

 慌ててゾフィスはココと共に本拠地に帰ってきた。

 

ロップス「かう?」

 

ビョンコ「お帰りなさいませゲロ。ってどうしたゲロ?」

 

ゾフィス「ちょ、ちょっと強い魔物と出会って相討ちになっただけですよ…。別に問題はありませんから…」

 

アポロ「(あれがロードの素顔…。ロードがこれほどやられて帰ってくるとは…。余程強い魔物と戦ったんだろうな…)」

 

ゾフィス「ビョンコ、その触ってはいけない石版に封じられている魔物も他の千年前の魔物とは別のタイミングで目覚めさせますよ」

 

ビョンコ「ほんとゲロ?」

 

ゾフィス「当然ですよ。(ガッシュめ…、必ず潰してやるぞ…!さすがにあの魔物と戦えば負けるはずだ…)」

 

ビョンコ「いつになったら光のフィルターは完成するゲロ?」

 

ゾフィス「協力者からの話ではあと数日といった所ですね。それが終わって千年前の魔物のパートナーを見つけたらいよいよ現在の魔物を一掃しますよ」

 

ビョンコ「楽しみゲロ。早く完成してパティを仲間にできたら……」

 

 

 

 

 

モチノキ町

 ゾフィスが逃げた後、ガッシュと清麿はゾフィスに操られて気を失った鈴芽を家に帰した後、自宅に帰っていた。そこへ、コルルとしおりが来た。

 

清麿「しおりさん、コルル」

 

しおり「偶然ね。今、買い物が終わって帰ろうとしてた所よ」

 

コルル「途中まで一緒に帰ろうよ」

 

ガッシュ「そうしようなのだ」

 

 そう言っていると、ウマゴンを見かけた。しかし、本を持っていない上、いつもの様子はなく、落ち込んでいた。

 

しおり「何があったのかしら?」

 

コルル「本もなくなってるよ」

 

清麿「(もしかすると、ウマゴンはサンビームって人に会ったのか?)」

 

ガッシュ「(ウマゴン、戦うか、戦わないのかはお主が決めるのだ…。お主自身が悩み抜いて、答えを出すのだ…)」

 

 ウマゴンがどういった答えを出すのかをウマゴン自身の判断に任せるガッシュであった。




これで今回の話は終わりです。
今回はアニメのゾフィスがガッシュと清麿の前の姿を現す話が元ネタですが、王族の力が目覚めたガッシュに一方的にやられて逃げ出す展開にしています。
なお、ゾフィスがガッシュの顔を見て、ゼオンとそっくりだというシーンはシャーマンキングのリゼルグが葉の顔とハオの顔がそっくりだと思うシーンが元ネタです。
原作やアニメの石版編と違って今小説の石版編では原作の石版編では出番のなかったゼオンとデュフォーもガッシュ達と顔を合わせる事はないものの、ちょくちょく出てきます。また、王族の力が目覚めたガッシュが相手ではゾフィスもデモルトも石版編のラスボスとしては力不足なので、ある魔物が石版編のラスボスになります。そのヒントは41枚目の石版かも知れません。なので、ゾフィスは最初からヘタレ全開で行きます。
次の話はビョンコとパティが対面しますが、あるすれ違いが発生して面倒な事になります。


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LEVEL24 目覚める千年前の魔物

高嶺家

 ガッシュと清麿は家に帰ってきた。

 

清麿「ウマゴンの様子はどうだった?」

 

ガッシュ「まだ落ち込んでいたようなのだ…」

 

清麿「ガッシュ、前の戦いではゾフィスが直接来た事はあったのか?」

 

ガッシュ「いや、前の戦いで私がゾフィスと直接対面したのは後の事だったのだ」

 

清麿「これも、前の戦いとは異なるな…」

 

ガッシュ「アポロは今はどうしておるのだろうか…」

 

清麿「ゾフィスは人の心を操れるから洗脳されてなければいいのだがな…」

 

 

 

 

???

 それからしばらく経ち、光のフィルターの完成はあと1日となった。

 

ビョンコ「あと1日で千年前の魔物は復活だゲロ!」

 

ゾフィス「そう言えばビョンコ、仲間になってくれそうな魔物がいると言ってましたね。迎えに行きますか?」

 

ビョンコ「行くゲロ!待ってるゲロ、パティ!」

 

 嬉しい気持ちでビョンコは本拠地を飛び出した。

 

アポロ「ロード、仮面はどうしたのかな?」

 

ゾフィス「この前の戦闘で前に付けていた仮面が壊れてしまいましてね。それで新しい仮面をつけているのです」

 

アポロ「聞きたい事があるけど、このフィルターを作っている協力者は何者なのかな?」

 

ゾフィス「それはお答えできません。石版が奪われてこれまでの苦労が水の泡にならないように見張りをお願いしますよ。よろしいですね」

 

アポロ「わかったよ(なぜロードは協力者を教えないんだ?)」

 

 ゾフィスが部屋を出た後、ある老人が入れ替わりに入ってきた。

 

アポロ「あなたは?」

 

アルヴィン「わしはアルヴィン。ビョンコのパートナーじゃよ」

 

アポロ「あのカエル君のパートナーがあなただったんですか?」

 

アルヴィン「そうじゃよ」

 

アポロ「でも、カエル君の話では呪文の発音が上手くできないと聞いてますけど…」

 

アルヴィン「あれはのう…」

 

 真実をアルヴィンはアポロに教えた。

 

アポロ「そうだったのですか…」

 

アルヴィン「これはビョンコには内緒じゃぞ」

 

アポロ「はい…」

 

 

 

 

 

モチノキ町

 その頃、清麿は通っている学校で体力測定があり、ガッシュ達はいつものように公園に来て遊んでいた。

 

ガッシュ「ティオ達の所にもナゾナゾ博士が来たのか?」

 

パティ「その通りよ。お陰でゴウ・アシルドが使えるようになったわ。ガッシュちゃんもナゾナゾ博士とかいう奴と戦ったの?」

 

ガッシュ「私は別に戦っておらぬが…」

 

パティ「それもそうよね。キッドじゃ無敵のガッシュちゃんに敵いっこないもの」

 

ティオ「だけど、ナゾナゾ博士の悪しき者って全然動きがないわね。けちょんけちょんにやっつけてやりたいのに」

 

コルル「でも、どこにいるのかわからないんじゃどうしようもないよ」

 

 遊んでいる様子を木の上でビョンコは見ていた。

 

ビョンコ「いたゲロ!やっぱり、アポロに頼んで居場所を聞いてもらってよかったゲロ」

 

 パティを見つけるとビョンコは降りてきた。

 

ビョンコ「パティ、オイラ達の仲間になって現在の魔物を一掃するゲロ」

 

 突然のビョンコの登場にガッシュ達は驚いていた。

 

コルル「カエルが降りてきたよ」

 

ガッシュ「(あの者は…ビョンコ!既にパティと会っておったのか…?)」

 

パティ「何の話なの?ビョンコ」

 

ビョンコ「前に会った時に言ったゲロ。オイラ達の仲間になってくれるって」

 

ティオ「パティ、あのカエルと知り合いなの?」

 

パティ「ガッシュちゃんと再会する前に会った事があるのよ」

 

ビョンコ「約束を忘れたとは言わせないゲロ」

 

 

 

 

回想

 ビョンコは石版集めと仲間探しをしていた。

 

ビョンコ「う~む…、石版はどこだゲロ…。ついでで仲間になってくれそうな魔物もいればいいゲロ…」

 

 そう考えていると、世界各国を旅してガッシュを探しているパティとウルルを見つけた。

 

パティ「ここにもいないわね。ガッシュちゃん、どこなのかしら…?」

 

ウルル「またそれですか…。本を燃やされてなければきっと会えますよ…」

 

ビョンコ「まさか魔物と会えるなんて思ってなかったゲロ。お前、オイラの仲間になるゲロ」

 

パティ「あんた、誰よ。今はあんたの仲間になるほど暇じゃないの」

 

ビョンコ「オイラはビョンコだゲロ。オイラの仲間になってロードに協力すれば、ロードが王になった暁には魔界で地位がもらえるゲロ。仲間になって損はないゲロ」

 

ウルル「パティ、あのカエルに協力しますか?あのカエルは地位やら何やら言ってますけど…」

 

パティ「今はそんな場合じゃないの。ロードとか顔も知らない奴と協力する気なんてないわ。それよりもガッシュちゃんを探すのが先!行こう、ウルル」

 

ビョンコ「そこを何とか頼むゲロ!」

 

パティ「もう、しつこいわね!あんたの言った事は考えておくから、私のガッシュちゃんを探す邪魔をしないで」

 

ビョンコ「本当ゲロ?わーい、仲間になってくれるって約束してくれたゲロ!」

 

 

 

 

 

ビョンコ「思い出したゲロ?だったら、オイラ達の仲間になるゲロ」

 

パティ「答えは至って簡単よ。あんたの仲間にはならないわ」

 

ビョンコ「どうしてゲロ?仲間になってくれる約束したのは嘘だったゲロ?」

 

パティ「あのね、私はあの時は考えておくって言っただけなのよ。別に嘘なんてついてないし、あんたの仲間になるとは一言も言ってないわ」

 

ビョンコ「…オイラの仲間になれば地位がもらえるのにそれを棒に振るなんて考えがおかしいゲロ!」

 

パティ「別に私は地位なんていらないわ。ガッシュちゃんと一緒に戦えればそれでいいの。だから、さっさと帰ってくれる」

 

ビョンコ「ゲロロロロッ、もう怒ったゲロ!仲間にならないのなら、ここにいる奴まとめてやっつけるゲロ!我が最大の呪文を受けてみるゲロ!ギガノ・ゲロスト!」

 

 ビョンコの行動にガッシュ達は大して反応しなかった。

 

ビョンコ「(しまったゲロ…!アルヴィンは歯医者に行ってたゲロ…)」

 

コルル「パートナーがいないのにどうやって戦うの?」

 

ティオ「パティ、あのカエルにパートナーはいるの?」

 

パティ「私もよくわからないわ。あいつにパートナーがいるのかどうか怪しいし」

 

ビョンコ「ちゃんといるゲロ!」

 

ティオ「私達に喧嘩を売ろうだなんていい度胸じゃない…!あんたの首を絞めてあげるわよ…!」

 

ビョンコ「ゲ、ゲロ…、今日のところはここまでにしてやるゲロ!どの道、お前達現在の魔物は一掃される運命になるゲロ!オイラの仲間にならなかった事を後悔するゲロ、パティ!」

 

 同じ条件下でもガッシュ達に勝てないと判断したビョンコは捨て台詞を吐いて逃げ出した。

 

コルル「あのカエルの言ってた事、本当なのかな?」

 

パティ「ただのハッタリよ。私達が力を合わせればどんな魔物だってギタギタのボロボロにできるのよ」

 

 ビョンコの言った事をパティ達はハッタリと思い込んでいたが、ガッシュは前の戦いの記憶があるため、ハッタリではない事に気付いていた。

 

ガッシュ「(パティの言う通り、力を合わせれば何とかなるのは間違いではないのだが、近いうちに千年前の魔物も来るみたいなのだ…)」

 

ティオ「ガッシュ、いつも能天気なあんたが何を深刻そうな顔をしてるの?」

 

ガッシュ「な、何でもないのだ!」

 

 

 

 

???

 パティに仲間になるのを断られたビョンコは機嫌を悪くして本拠地に戻って来た。

 

ゾフィス「お帰り、ビョンコ。どうしたのですか?機嫌があまりよくないようですね」

 

ビョンコ「パティの奴、仲間になってくれるって約束したのにその約束を破ったどころか、ガッシュの仲間になってたゲロ!せっかく仲間になってくれると思ってたのにゲロ!」

 

ゾフィス「まぁまぁ、そのパティという魔物に約束を破られた挙句、他の魔物の仲間になってて悔しいでしょう。仲間にならないのであれば、千年前の魔物の力で潰すだけですよ。それに…既に私はビョンコの言うパティよりも優秀な魔物をこちらに引き入れる事に成功したのですよ」

 

ビョンコ「ほんとゲロ!?」

 

ゾフィス「ええ。千年前の魔物達をまとめるだけでなく、正確な魔物の位置も把握できる素晴らしい力を持った魔物です。説得に少々時間がかかりましたが、パートナーもフィルターの制作に協力してくれました」

 

ビョンコ「凄いゲロ!もうフィルターは完成したゲロ?」

 

ゾフィス「もう次の日には完成しますよ。では、こちらへ」

 

 そして次の日、フィルターが完成して石版が保管されている場所では、上にライトが付けられていた。

 

ゾフィス「では、復活させますよ…」

 

アポロ「41枚目の石版はどうしたんだい?」

 

ゾフィス「それは今後の状況次第で目覚めさせます」

 

 千年前の魔物が復活するため、アポロはロップスと共に身構えた。

 

ゾフィス「身構えなくても急に襲っては来ませんよ…ライト!」

 

 光のフィルターが施されたライトが灯った。

 

ロップス「かう~…」

 

アポロ「(いよいよか…。ロードの話では石化を解く特殊な光は月の光によく似てると言ってたな…)」

 

 特殊な光にさらされた石版にヒビが入った。

 

ゾフィス「さぁ、目覚めよ!千年前の戦士達よ!」

 

 40の石版から魔物達が解き放たれた。

 

ゾフィス「さて、大変なのはここからですよ、ビョンコ」

 

アポロ「…あれ?僕達の事は呼んでくれないのかな?」

 

ココ「ロンド・ラドム!」

 

 自分を呼ばない事に疑問を持ったアポロの問いかけに対し、ゾフィスは返事の代わりに攻撃呪文を向けてきた。その攻撃をアポロとロップスはかわした。

 

アポロ「…ロード、何のつもりだ?僕達は逆らおうとは考えていないぞ」

 

ゾフィス「とぼける気ですか?あなた方からは…ビョンコと違って忠誠心が感じられないのですよ。何かをしようとする目…志ある目…希望を捨てずにいる目…気に食わないんですよ」

 

アポロ「そんな曖昧な理由で攻撃されるのかい?」

 

ゾフィス「やれやれ、はっきり言わないとわからないのですか?用済みなんですよ。あなた方は」

 

ココ「ラドム!」

 

 ゾフィスの攻撃をかわしながらアポロは本拠地の洞窟を脱出した。

 

ゾフィス「…さて、ゴミ掃除に行こうか…ビョンコ、彼等と共に千年前の魔物達は頼んだよ。ココ、外に出るよ」

 

ココ「あーあ、やっぱりあいつら始末する事になっちゃったのね。ま、フィルター作りにも協力してくれたなんとかQとそのパートナーの方が優秀だし、消えてもちっとも悲しくないしいいか」

 

ゾフィス「ふふ…だんだん私のパートナーらしくなってきたね、ココ」

 

ココ「嬉しいわ」

 

 洞窟を脱出したアポロは岩場を利用し、力の糸で遠くに引っかけては戻し、引っかけては戻しを繰り返してゾフィスから逃げていた。

 

ロップス「か、かう…」

 

アポロ「ロップス、頑張るんだ!(まさか、僕が忠誠心を持ってないというのに気付いていたとは…恐らく奴は…表情から心が読めるのだろうな…)」

 

 ゾフィスもココと共に追いかけたが、既にかなり距離を離されていた。

 

ココ「あいつら、結構遠くに行っちゃったね」

 

ロード「なら、大きいのをぶつけてやろうか」

 

ココ「いいわよ。ディガン・テオラドム!」

 

 遠くにいるアポロ目掛けて4つの火球が飛んできた。

 

アポロ「(…敵の強い攻撃が4つ来る…!しかも、リグロンでちょこまか動いてはその攻撃に当たってしまう!あれを使うしかない!)ロップス、あの大きな岩だ!」

 

ロップス「かう!!」

 

アポロ「ディノ・リグノオン!」

 

 近くにあった大きなを複数持ち上げ、ディガン・テオラドムの方へ投げ飛ばした。

 

ココ「あんな岩で防げると思われてるのかしら…」

 

ゾフィス「所詮は勘が鋭いだけの男だったね…圧倒的な力の前では何もできずに消えるだけだ…」

 

 投げ飛ばした岩は火球に当たって砕け、地面に落ちていった。

 

ココ「倒したかな?」

 

ゾフィス「さぁ…どうだろうね」

 

ココ「でも、あんなに岩の破片も降ってたら、よけられるわけないわよね?」

 

ゾフィス「確かによけられないさ。さぁ、帰ろう。千年前の戦士が待っているんだ」

 

 洞窟に戻る途中である眼鏡と白衣の少年とロボットみたいな魔物が現れた。

 

ゾフィス「コーラルQにグラブじゃないですか。あなた方のお陰で光のフィルターは完成しました」

 

コーラルQ「ピポポポポッ、これぞグラブの頭脳があってこそ大幅に短縮できたピヨ」

 

グラブ「俺の頭脳を評価してくれて感謝するよ。だが、何で勝てない戦いをしないコーラルQや俺を説得して仲間に引き込んだんだ?別に俺達なんかいなくても千年前の魔物だけで十分だろ?」

 

ゾフィス「いいえ、この作戦には私の意を受け、魔物達をまとめてくれるリーダーが必要です。その役目は現在の戦いの事情を知っている魔物でなくてはいけません。それに…コーラルQには魔物の居場所を正確に探知できる能力があるのです。あなたにぴったりの役目だと思いませんか?」

 

コーラルQ「ふむ、確かにこの役目は私でなければ務まらないピヨ。引き受けようではないか」

 

ゾフィス「(待ってろ…、ガッシュ…、ブラゴ…。千年前の魔物達を使ってお前達を蹴散らしてやるぞ…)」

 

 一方、アポロは相手の動きを読み、危険を察知する才能を駆使して岩の破片や火球をなんとかよけ、ゾフィスに倒したと思い込ませて逃げる事に成功していた。

 

アポロ「はぁ…はぁ…」

 

 そんな時、ナゾナゾ博士と遭遇した。

 

アポロ「あなたは?」

 

ナゾナゾ博士「私の名はナゾナゾ博士。何でも知ってる不思議な博士さ」

 

キッド「博士はアポロがピンチになってるのに気付いて助けに来たんだよ。そうだよね、博士」

 

ナゾナゾ博士「キッド、それはね、ウ・ソ」

 

 ナゾナゾ博士の嘘にキッドは驚愕した。

 

アポロ「ナゾナゾ博士、どうして僕の名前を…?」

 

ナゾナゾ博士「君は社長だから名前ぐらいは知ってるよ。私の僕、マジョスティック12が奴等の本拠地を突き止めたから奴等の実態を見ようと思ってここに来たのだが、何があったのかね?」

 

アポロ「僕はロードという魔物に脅されて石版集めなどで協力していたんですけど、千年前の魔物が復活した途端に用済みとして追われてたんです」

 

ナゾナゾ博士「だが、君は直前までロードの元にいたからロードについて何かわかった事はあるかな?」

 

アポロ「それなんですが…、千年前の魔物が封じられた石版は40のはずなのに41枚目の石版があったんです。おかしいと思いませんか?」

 

ナゾナゾ博士「確かにおかしい。千年前の魔物の石版は40だけだったはず。その41枚目の石版も魔物の石版だとすれば…何か嫌な予感がする…。アポロ君はこれからどうするのかね?」

 

アポロ「これから戻って休息をとった後、清麿達に千年前の魔物が復活したと連絡して彼等に色々な手配をします。彼らの協力がなければどうにもなりませんから…。博士はどうするんですか?」

 

ナゾナゾ博士「しばらく様子を見る。それから、仲間を集める予定だ。アポロ君も清麿君達と一緒に頑張るのだぞ」

 

アポロ「はい。ロップス、行こうか」

 

ロップス「かう!」

 

 アポロとロップスはその場を後にした。

 

アポロ「(魔物が目覚めたとはいえ、パートナーが見つかるのにはまだある程度時間がかかるだろう…!その間に何としても色々な手配を行わなければ…!)」

 

 ゾフィスの手で千年前の魔物が復活し、後はパートナーが見つけるだけになった。今、ガッシュ達は大きな戦いの渦に呑まれようとしていた。




これで今回の話は終わりです。
パティとビョンコの絡みは原作と違ってパティがガッシュと会う前に既に面識があった展開になっていますが、原作と違ってビョンコの勘違い等もあってパティとビョンコに確執ができてしまう流れになっています。
次の話はパティの逆襲の話が元ネタのビョンコがパティを潰すために逆襲に来る話ですが、ある千年前の魔物も出番を前倒ししてガッシュに立ちはだかります。どんな魔物が出て来るかはまだ秘密です。


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LEVEL25 ビョンコの逆襲

???

 復活してしばらくした後、コーラルQの持つ特殊なレーダーにより、早速何体かの魔物のパートナーが見つかった。

 

ビョンコ「ゲロロロロッ、こうも早く千年前の魔物のパートナーが見つかるとは思ってなかったゲロ」

 

 遺跡のある部屋を歩いていたビョンコは空に浮いているヒトデみたいなものを見つけた。

 

ビョンコ「何ゲロ?」

 

 普通に歩いていると、ヒトデからレーザーが発射された。

 

ビョンコ「わわわわっ、レーザーが飛んできたゲロ!?」

 

 慌てて逃げるビョンコにレーザーが次々と放たれまくった。そしてしばらくした後、レーザーは放たれなくなった。

 

ビョンコ「はぁ…はぁ…どうなってるゲロ…」

 

???「千年のブランクを埋めるトレーニングに勝手に付き合わせてしまって済まなかったな」

 

 ヒトデみたいな星を操る魔物が現れた。

 

ビョンコ「お前はパムーン!そのブランクを埋めるでトレーニングでオイラを殺す気かゲロ!!」

 

パムーン「一応は火傷すらしないぐらいに威力を加減したのだがな。だが、もう勘が戻ったから大丈夫だ」

 

ビョンコ「それよりもパムーン、勘が戻ったならちょうどいいゲロ。オイラと一緒にある魔物を倒しに行くゲロ」

 

パムーン「おい、その魔物って何だ?」

 

ビョンコ「ガッシュという魔物ゲロ。千年前の魔物の中でも強いお前なら、一捻りゲロ」

 

パムーン「それは実際に戦ってみなきゃわからん。それにしても、待機してろと言ったゾフィスが四天王の俺を魔物を倒しに向かわせるのはなぜだ?」

 

ビョンコ「それはオイラにもよくわからないゲロ。それと、月の石を持っていけって言ってたゲロ」

 

パムーン「わかった。お前と一緒に行こう(ガッシュと戦う事になるのか…。気が進まないが、やるしかない…)」

 

 

 

 

 

高嶺家

 それから1日後、清麿の元へある連絡が入った。

 

清麿「アポロ、無事だったのか!?」

 

アポロ『ああ。それよりも、大変な事になった。千年前の魔物が復活したんだ』

 

清麿「何だって!?」

 

 アポロは電話で敵の本拠地やそこへ行くための手配などを教えた。

 

清麿「わかった、敵の本拠地はデボロ遺跡だな」

 

アポロ『それと、ナゾナゾ博士からの連絡では少しだが千年前の魔物のパートナーが見つかったら千年前の魔物の襲撃に気を付けてほしい』

 

清麿「ありがとう、アポロ。現地に着いたら一緒に千年前の魔物とロードを倒すぞ!」

 

アポロ「勿論さ!」

 

 伝える事を伝え終わった後、アポロは電話を切った。

 

ガッシュ「清麿、いよいよ千年前の魔物が復活したのか?」

 

清麿「ああ。アポロからの連絡ではまだ少しだが、既に千年前の魔物のパートナーが見つかったらしい。それに、アポロが手配してくれるチケットなどは最低でも3日後に届くそうだ」

 

ガッシュ「ウヌ…そうなのか…」

 

清麿「だが、3日間動けないのは悪い事ばかりじゃない。その間に恵さんやしおりさんにも声をかけて、どこにいるのかはわからないが、ゴルドーさんやウルルさん。それから…ジェムは親父に頼んで連絡を入れよう」

 

ガッシュ「まずはしおりの所へ行くのだ」

 

清麿「そうだな。よし、まずはしおりさんに連絡だ」

 

 

 

 

モチノキ町

 しおりの家に向かおうとしていたガッシュと清麿を見つめる空飛ぶ魔物、フェリウスに乗っているビョンコとパムーン、その他、3体の魔物の姿があった。

 

ビョンコ「あいつがガッシュゲロ。お前はガッシュを倒すゲロ」

 

パムーン「他の奴等はどうするんだ?」

 

ビョンコ「他の奴はオイラが潰したい魔物がいるからそいつを倒しに行かせるゲロ」

 

パムーン「そうか。なら、俺はお前の言う通り、ガッシュを倒しに行く」

 

 パムーンを下ろした後、フェリウスはどこかへ行った。その頃、パティはウルルと共に買い物に行っていた。

 

ウルル「甘い物やするめいかを買うのは程々にしてくださいよ」

 

パティ「でも、毎日あまり食べられないのは嫌よ。お腹いっぱい食べたいんだから」

 

ウルル「前と違って食い逃げはできませんよ」

 

パティ「…わかってるわよ、もう…」

 

ウルル「それより、前に会った事があるビョンコとかいうカエルはいずれ現在の魔物を一掃するとか言ってましたけど、本当なのでしょうか?」

 

パティ「ハッタリに決まってるわ。あんなパートナーがいるのかさえわからない奴の言葉なんて信用できないもの」

 

???「ゲロロロッ、戻って来たぞ、パティ!」

 

 声と共にビョンコが空から降りてきた。

 

パティ「ビョンコ、ほんとあんたは懲りないわね」

 

ビョンコ「パティ、今度はお前の本を確実に燃やしに来たゲロ!」

 

パティ「あら、あんたにそんな事ができるのかしら?」

 

ウルル「!?パティ、上を!」

 

パティ「何よ、ウルル。あっ!」

 

 上を見ると、千年前の魔物、ボルボラ、エルジョ、ドグモスがパートナーと共に降りてきた。

 

パティ「何なのよ、こいつら!」

 

ビョンコ「こいつらは千年前の魔物ゲロ。もうこれ以上話す事はないゲロ。さぁ、やるゲロ!」

 

 ボルボラ達はパティに襲い掛かった。

 

パティ「(まさか、私達現在の魔物を一掃するって言ったのは千年前の魔物を使う事だったのね)どうするのよ、ウルル!」

 

ウルル「(敵は3体、不利なのはこちらだ…)…仕方ない、パティ、戦いましょう!」

パティ「ええ!」

 

 一方のしおりの家に向かうガッシュと清麿はパートナーのランスと共に空から降りてきたパムーンと対面していた。

 

ガッシュ「パ、パムーン!(まさか、いきなりパムーンが来るとは…!)」

 

清麿「ガッシュ、この魔物を知っているのか!?」

 

ガッシュ「ウヌ。パムーンは石版に封じられた千年前の魔物の中でも特に強い魔物なのだ。それと、千年前の魔物のパートナーは大概が操られておる」

 

清麿「という事は、ゾフィスは本気で俺達を倒そうとしてるようだな」

 

パムーン「俺の名前を知ってるとは意外だな。だが、お前達はここで終わりだ。もうトレーニングは済ませて勘を取り戻したから最初から本気で行くぞ!」

 

ランス「ファルガ!」

 

 複数の星からレーザーが発射された。

 

清麿「な、何っ!?」

 

 しかし、ガッシュのマントで全て防がれた。

 

パムーン「術無しで全て防いだだと?」

 

清麿「済まない…ガッシュ。あのパムーンの攻撃、前の戦いの時はどうやってかわした?」

 

ガッシュ「前の戦いでは相手の目を見て攻撃のタイミングや気配を感じてかわしていたのだ。なれるのは難しいが、コツを掴めばなんとなくわかるようになるのだ」

 

清麿「わかった(ヒトデ一つ一つではなく、相手の目を見る…!)」

 

ランス「ファルガ!」

 

 前の戦いでサンビームから教えられたことをガッシュは清麿に伝えた。その事を教えられた清麿はパムーンの目を見て、攻撃をかわす事に成功した。

 

清麿「ガッシュ、あいつの目は…」

 

ガッシュ「気付いたのか。だが、今は戦いに集中するのだ」

 

パムーン「ランス!」

 

ランス「デーム・ファルガ!」

 

 星達が整列し、格子状のレーザーカッターとなって襲い掛かった。

 

清麿「ラウザルク!」

 

 ラウザルクを発動させた後、ガッシュは清麿を自分の肩に掴まらせてデーム・ファルガを飛び越えた。

 

パムーン「飛び越えた!?だが、まだだ!集中!」

 

 星をXの文字の形作るように集めた。

 

パムーン「空中にいる状態ならよけられまい!」

 

ランス「エクセレス・ファルガ!」

 

 空中にいるときは身動きがとれないと判断したパムーンはエクセレス・ファルガの照準を空中にいるガッシュ達に向け、発射した。

 

清麿「ザケルガ!」

 

 空中にいる状態でラウザルクを解除してから迷わず清麿はパムーン目掛けてザケルガを発動した。ザケルガとXのレーザー、エクセレス・ファルガがぶつかり合った。しかし、競り合いにすらならず、ザケルガがエクセレス・ファルガを貫通した。

 

パムーン「何だと!?中級レベルの呪文でエクセレス・ファルガを破ったとは!ぐあああっ!!」

 

 ザケルガを受けてパムーンは吹っ飛ばされた。それから、ガッシュは意識が戻った後にマントを操作して落下速度を調整し、地上に降りた。

 

清麿「一気に接近戦に持ち込むぞ、ラウザルク!」

 

パムーン「くっ、ランス!」

 

ランス「オルゴ・ファルゼルク!」

 

 今度は互いに肉体強化呪文で強化してからの格闘戦になった。前の戦いではガッシュはパムーンに太刀打ちできなかったが、今回は逆にパムーンがガッシュに押され、太刀打ちできなかった。

 

パムーン「(何て強さだ…!中級呪文でエクセレス・ファルガを破り、肉体強化呪文では俺より上…!まさか、こんなに強力な魔物が現代にいたとは…!そして何よりも…あいつの姿がでかく見える…!)」

 

ガッシュ「パムーン、石に戻る恐怖に屈している今のお主では私には勝てぬ。恐怖を乗り越えねば私に心で勝つ事はできぬぞ」

 

パムーン「うるさい!恐怖から生まれる強さもあるんだ!」

 

ガッシュ「その強さは本当の強さに勝る事はない!恐怖を乗り越えるのだ!」

 

 ガッシュの気迫にパムーンは思わず怯んでしまった。

 

パムーン「(な、何だ、このゾフィスを超える凄まじい威圧感は…。だが、何だ…ゾフィスの目と違って温かい…)ガッシュ、お前のいう本当の強さと俺の恐怖から生まれる強さ、どちらが上か白黒はっきりつけるぞ!ランス、最大呪文だ!」

 

ガッシュ「清麿、こちらも最大呪文を使うのだ」

 

清麿「ああ。相手が最大呪文で来るなら、こっちも最大呪文だ!」

 

 互いのパートナーは最大呪文を使うため、心の力をかなり溜めた。

 

ランス「ペンダラム・ファルガ!!」

 

清麿「バオウ・ザケルガ!!」

 

 ペンダラムとバオウが激突した。前の戦いのこの激突はバオウがまだ真の姿に戻っていない事もあってペンダラムが圧勝した。しかし、今回はバオウが真の姿であり、しかも制御されている状態であるため、バオウがペンダラムをあっさり食い破って圧勝し、パムーンに迫った。

 

パムーン「(俺の最大呪文がこうもあっさり破られたとはな…。やっぱり、恐怖から生まれる強さはあいつの本当の強さには敵わなかったようだ…)」

 

 今回の戦いでのパムーンはガッシュに心でも力でも完敗し、バオウをまともに受けて倒れてしまった。

 

清麿「パムーンに勝ったな」

 

ガッシュ「ウヌ」

 

 ガッシュは倒れているパムーンに近づいた。

 

パムーン「俺は完全に負けたんだ…本を燃やせ…」

 

ガッシュ「本は燃やさぬ」

 

パムーン「俺を…見逃すとでもいうのか?敵の俺を…」

 

ガッシュ「私はお主の友達になりたいのだ」

 

パムーン「俺と…友達になりたい?」

 

ガッシュ「ウヌ。ゾフィスの与える地位よりも友達の方がとてもよいぞ。友達がいれば楽しく遊べるし、辛い時は支えてくれる存在になる。千年経って知り合いもいなくなったお主も友達がほしかろう?」

 

パムーン「…ふふふ、ははははっ!ほんと、お前は面白くておかしい奴だな、ガッシュ。確かにお前のいう通り、地位なんかよりも友達がいた方がいいよな。決めた、お前の友達になるぞ」

 

ガッシュ「パムーン、早速だが、お主に言いたい事があるのだ」

 

パムーン「言いたい事?」

 

 ガッシュは石化の術はゴーレンしか使えず、ゾフィスは使えない事、パムーン達が見た石化は幻に過ぎない事などを教えた。

 

パムーン「なるほどな。俺達のトラウマに付け込んだ仕掛けがあったのか」

 

清麿「今でも石に戻るのか怖いか?」

 

パムーン「いや、大丈夫だ。仕掛けがわかったし、何より俺が石に戻りたくない恐怖と向き合えるようになったのもガッシュ、お前のお陰だ」 

 

ガッシュ「ウヌ」

 

清麿「実は、ガッシュは既にお前とは別のトラウマを抱えた魔物の心を救った事があったんだ」

 

パムーン「そうか。俺からお礼で重要な事を伝えるぞ」

 

清麿「重要な事?」

 

パムーン「ビョンコは3体の魔物と共にパティっていう魔物を潰すそうだ」

 

清麿「何だって!?急いで向かうぞ!」

 

パムーン「待て!俺との戦いで心の力をかなり消耗した状態で行ってもやられるだけだ!月の石で心の力を回復させてから行け!」

 

 ランスはポケットから月の石が入ったビンを清麿に渡した。

 

清麿「(これが月の石…前にもガッシュから聞いた事があったが、実物を見るのは初めてだ…)」

 

 ビンから取り出した後、自分の体に石を近づけた。

 

清麿「…力が漲ってくるようだ!」

 

ガッシュ「ありがとうなのだ、パムーン」

 

パムーン「礼を言うのは俺の方だ。それとガッシュのパートナー、石に閉じ込められていた時に磨いて大切に保管してくれたのは感謝する。ありがとう」

 

清麿「礼を言われる事じゃないさ」

 

パムーン「これから俺も可能な限りお前達に協力する。お前達も負けるなよ!」

 

 パムーンはランスと共に去って行った。そこへ入れ替わるようにティオペアとコルルペアが来た。

 

恵「清麿君、ガッシュ君、大丈夫?」

 

清麿「恵さん、どうしてここに?」

 

恵「ナゾナゾ博士から千年前の魔物が襲撃したって連絡があって駆け付けたの。清麿君達を襲った千年前の魔物は倒したの?」

 

清麿「逃げられてしまったが、何とか追い払った。それよりも、今すぐパティの元へ行こう!早く行かないとパティがやられてしまう!」

 

しおり「でも、どうやって急ぐの?」

 

清麿「こういう時はガッシュに掴まって急ぐ。みんなもガッシュに掴まれ!」

 

 清麿はデーム・ファルガをかわした時のようにガッシュの肩を掴み、恵としおりもそれぞれティオとコルルをしっかり掴まらせてからガッシュの肩を掴んだ。

 

ティオ「頼むわ、ガッシュ」

 

ガッシュ「ウヌ」

 

清麿「ラウザルク!」

 

 ガッシュは建物の上を走りながらパティの元へ急いだ。

 

 

 

 一方のパティは千年前の魔物達の数の暴力で苦戦していた。

 

ウルル「(何だ?この敵の魔物の異様さは…。まるで、八つ当たりしたくてたまらないようだ…)」

 

パティ「あの魔物達…思った以上に強いわ…!ウルル、一気に蹴散らすわよ!」

 

ウルル「はい!スオウ・ギアクル!」

 

カルダン「ダイバラ・ビランガ !」

 

ヘンリカ「ギガノ・ガランズ!」

 

ポール「グランガ・コブラ!」

 

 水の龍が3体の魔物の最大呪文を打ち破り、ボルボラ達を襲った。

 

パティ「どんなものよ!」

 

ウルル「特訓の成果という奴ですね」

 

???A「ガロン!」

 

???B「ビライツ!」

 

???C「グランセン!」

 

 3体の魔物の最大呪文を打ち破って気が抜けた時にパティとウルルはボルボラ達の呪文をもろに受けてしまった。

 

パティ「どういう事よ…スオウ・ギアクルはあいつらにまともに当たったはずなのに…!」

 

ウルル「もしや、敵の最大呪文を打ち破った際に威力が弱まってしまって奴等へのダメージが小さかったのでは…」

 

ビョンコ「ゲロロロロッ、ボルボラ達3体相手にパティがここまで持ちこたえるとは思ってなかったゲロ」

 

パティ「当然じゃない…、こんな所でへこたれてたらガッシュちゃんの恋人としてみっともないもの…!」

 

ビョンコ「そのガッシュも今頃、別の千年前の魔物にやられているゲロ」

 

パティ「ふん、そんな事は信じないわよ…。だって、ガッシュちゃんは千年前の魔物とは比べ物にならないほど強いのよ。あんた達のような魔物が複数でかかってきてもガッシュちゃんならまとめて瞬殺できるわ」

 

ビョンコ「そんな強がりももうここまでだゲロ。さぁ、パティに止めを刺すゲロ!」

 

カルダン「ビライツ!」

 

ヘンリカ「ガロン!」

 

ポール「グランセン!」

 

 3つの攻撃がパティに迫った。

 

???「セウシル!」

 

 しかし、見覚えのあるバリアがパティペアを覆って3つの攻撃を全て防いだ。

 

パティ「このバリアはもしかして…」

 

ウルル「間違いありません、ティオ達が来ましたよ!」

 

 間一髪、ガッシュ達が到着した。

 

パティ「ガッシュちゃん!」

 

ビョンコ「ガ、ガッシュ!どうしてお前がここに!?まさか、パムーンを倒したゲロ!?」

 

清麿「逃げられてしまったがな」

 

ティオ「助けに来たわよ、パティ」

 

パティ「礼は言うわ。でも、どうして私のいる場所がわかったの?」

 

清麿「俺達を襲った魔物を倒した時に拷問していろいろと聞き出したからな。俺とガッシュを別の魔物で釘付けにし、狙いのパティを複数で仕留める作戦を知る事ができた。だが、俺達が来たからにはこの作戦は失敗だ!」

 

ビョンコ「ぐぬぬ…、一斉にかかるゲロ!」

 

 作戦がダメになった事でビョンコはヤケになり、ボルボラ達に突撃を命じた。

 

ガッシュ「清麿、私達も」

 

ティオ「せっかくだから、ここは私達に任せなさい」

 

コルル「特訓の成果を見せようよ、パティ、ティオ!」

 

パティ「そうね。ガッシュちゃんがこんな奴等とわざわざ戦う必要もないわ。さぁ、女の子の底力を見せてあげるわよ!」

 

 ガッシュを置いてパティ達は向かっていった。

 

しおり「コルルも私達もガッシュ君と清麿君に鍛えてもらったもの」

 

恵「だから、清麿君もガッシュ君も休んでてね」

 

清麿「そうだな…」

 

 コルルはボルボラに向かっていった。

 

ビョンコ「そんなひ弱な女の魔物じゃ千年前の魔物に勝てないゲロ」

 

しおり「果たしてそうかしら?ゼルク!」

 

 呪文でコルルは凶悪な姿に豹変した。

 

ビョンコ「ゲ、ゲロ!変身したゲロ!」

 

 そのままコルルは突っ込んでくるボルボラを弾き飛ばした。

 

しおり「ゼラルセン!」

 

 コルルの手から爪が発射され、追撃でボルボラに当たった。

 

カルダン「ダイバラ・ビランガ !」

 

ポール「グランガ・コブラ!」

 

 他の2体は最大呪文を放った。

 

ティオ「迂闊に私に向けて攻撃をするのは自殺行為よ!」

 

恵「ギガ・ラ・セウシル!」

 

 ギガ・ラ・セウシルによって跳ね返った呪文でエルジョとドグモスは自滅した。

 

パティ「これで終わりと思ったら大間違いよ!」

 

ウルル「テオアクル!」

 

 アクル以上の激流がエルジョとドグモスを押し流し、ボルボラの方へ吹っ飛ばした。

 

パティ「ティオ、コルル、あの連携で行くわよ!」

 

ティオ「ええ!」

 

コルル「さっさと千年前の魔物を片付けてやろうよ!」

 

ウルル「ガンズ・アクル!」

 

しおり「ゼラルセン!」

 

恵「ギガ・ラ・セウシル!」

 

 水球と爪がギガ・ラ・セウシルの中で跳ね返り、次々とボルボラ達を襲った。スオウ・ギアクルのダメージを引きずっていたためか、攻撃に晒されているうちにボルボラ達は倒れてしまった。

 

パティ「一気に止めよ」

 

ウルル「はい、アクル・キロロ!」

 

恵「サイス!」

 

しおり「ゼルセン!」

 

 パティ達の攻撃でボルボラ達の本は燃えてしまい、ボルボラ達は魔界へ帰った。

 

ビョンコ「そんな…ボルボラ達が…」

 

しおり「悪いわね、私達はあなた達と違って数じゃないの」

 

恵「1+1が4にも10にもなる、本当の仲間なのよ」

 

ビョンコ「くぅ~~っ!」

 

 作戦が失敗に終わった挙句、ボルボラ達を失ったビョンコは悔しがってフェリウスに乗った。

 

ティオ「逃げられてしまったわ!」

 

ビョンコ「いい気になるのも今のうちゲロ!オイラ達にはもっと強い魔物がいるゲロ!」

 

パティ「その魔物もガッシュちゃんの足元に及ばないわ。呪文が使えないくせに千年前の魔物とつるんでるあんたこそいい気になってるのは今の内よ!」

 

清麿「その強い魔物をいきなり俺達の所に送り込んだのは誰かな?」

 

ビョンコ「あ…とにかく、覚えてろゲロ!」

 

 図星を突かれたものの、捨て台詞を吐いてビョンコは逃げた。

 

ティオ「せっかく、黒幕の情報を聞き出せると思ったのに…」

 

清麿「いや、もうあいつから聞き出す必要はない。それよりも、操られた人をどうにかしよう」

 

 

 

 

 

タイ

 同じ頃、タイ南部でバランシャは千年前の魔物、イバリスと戦っていた。

 

ガルザ「くそ、やりやがる!一流のハンターである俺様とこのジャングルで互角にやりあうとは!しかも、奴等の戦い方には全く怯えがない!」

 

バランシャ「そう、私も感じていたわ。奴等、なんか変よ!」

 

 それは的中しており、イバリスには脅えがなかった。

 

バランシャ「ガルザ!」

 

ガルザ「これで決めるぞ、バランシャ!ギガノ・ガドルク!」

 

ピカール「ギガノ・デズル!」

 

 鎧に覆われたバランシャはイバリスに突撃した。対するイバリスもピラミッド型のようなもので攻撃した。バランシャは高速回転してギガノ・デズルを破ったが、イバリスは怯まずにバランシャに噛みついた。

 

バランシャ「(なんて戦闘意欲…まるで、憎しみをぶつけているような…)」

 

ガルザ「バランシャ、怯むな!一気に行け!」

 

???「ギガノ・ビレイド!」

 

 イバリスをそのまま地面にぶつけようとしたバランシャだったが、何者かの攻撃で鎧が砕けてしまった。

 

バランシャ「何が…」

 

 バランシャとガルザの視線の先には千年前の魔物のカルーラ、デンシン、パラマキロンがいた。

 

バランシャ「これは…」

 

 そこへ、呪文でバイクに変形し、猛スピードでコーラルQがやってきた。

 

コーラルQ「ピポポポポッ、追いついたピヨ。目を離すとすぐ突っ走るピヨ。最初からみんなで攻めればピンチなんてあり得ないピヨ」

 

ガルザ「こいつらまさか、みんな仲間なのか…」

 

コーラルQ「力は今、戦った奴以上ピヨ。そしてお前は戦いに敗れて…本を燃やされるピヨ」

 

 結局、バランシャは千年前の魔物に倒されてしまった。

 

コーラルQ「さて、私はパートナー探しを続けるピヨ」

 

 現在の魔物の掃討をやりつつ、コーラルQはパートナー探しをしていた。




これで今回の話は終わりです。
今回は原作のパティが逆襲する話を元ネタにビョンコが千年前の魔物を引き連れてパティに襲い掛かるという話に仕上げましたが、そのまま原作やアニメの展開をなぞるのは面白くないので、原作よりも早くパムーンを登場させ、王族の力が目覚めたガッシュと戦うのも加えました。
デボロ遺跡突入時にパムーンがどんな行動をとるのかも楽しみにしててください。
次は遺跡への出発の準備ですが、ゼオンが千年前の魔物と遭遇します。


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LEVEL26 いざ、デボロ遺跡へ

公園

 本が燃やされた事で洗脳から解放された人に自分達の故郷へ帰るように言った後、一同は公園に集まった。

 

清麿「恵さん、しおりさん、ウルルさん、ティオ、コルル、パティ、3日後にデボロ遺跡というところへ向かいたいと思う」

 

コルル「どこなの?」

 

清麿「南アメリカの山脈にあるという遺跡だ…。そこにはゾフィスという現在(いま)の魔物と、千年前の魔物…つまり、前回の戦いで敗れた者達が集っているらしい」

 

恵「ちょっと待って、魔界の王を決める戦いの敗者は魔界へ帰されるはずよ。それっておかしくない?」

 

しおり「私も疑問に思うわ。だって、前の戦いは千年も前よ。どうして…」

 

清麿「みんなの疑問ももっともだ。ガッシュ、千年前の魔物の復活とその元凶となったゴーレンについての詳しい話を任せてもいいか?」

 

ガッシュ「ウヌ。みんな、しっかり聞いてほしいのだ」

 

 ガッシュは石のゴーレンの事と、そのゴーレンによって石版にされた魔物の事、そしてその魔物が復活してしまった事を話した。更に、千年前の魔物はパートナーが操られており、石版にされた事で恨みつらみを晴らしたがっている事も話した。

 

ウルル「(あの魔物達から感じた異様な感じの正体は石版にされたが故に誰かにぶつけたいが故の恨みつらみだったのか…)」

 

ティオ「そんな事が…本当に…?」

 

パティ「ガッシュちゃんの話した事を疑うわけ!?」

 

ティオ「疑ってはいないけど、とても信じられないわよ」

 

清麿「本当の事だ。俺の知り合いのアポロはパートナーの魔物と一緒に実際にそこから逃げてきたという。それで、6人にも一緒に来て、戦ってもらいたい。この戦いは生半可な戦力じゃ勝てないんだ」

 

ウルル「私はいいですが、しおりさんと恵さんは大丈夫ですか?しおりさんは学校がありますし、恵さんに至っては人気アイドルなので…」

 

清麿「(それなら俺もなんだが…)」

 

ティオ「勿論、行くわよ。あんな卑怯な敵は絶対に許せないわ」

 

恵「休暇もちゃんともらってから行くわよ」

 

しおり「関係のない人を操った挙句、友達を襲ったんだから私達も許せないわ。ガッシュ君、私達も行くわよ」

 

ガッシュ「ウヌ!みんなありがとうなのだ!」

 

清麿「よし!後はヨポポとダニーか…」

 

コルル「ウマゴンはどうするの?」

 

清麿「パートナーが見つかっていないのなら、置いて行くしかないだろう」

 

ガッシュ「みんな、3日後にデボロ遺跡へ行くのだ!」

 

 こうして、ガッシュ達のデボロ遺跡行きは決まった。

 

 

 

 

アフリカ

 その頃、アフリカではシェリーとブラゴが襲ってきた千年前の魔物を返り討ちにしていた。

 

コーラルQ「何という事だ!これはロードに知らせねば!」

 

 魔物の掃討と同時にパートナー探しもしていたコーラルQはその光景を目の当たりにし、去って行った。

 

ブラゴ「あの人間達…心を操られていたな、シェリー」

 

シェリー「ええ、ブラゴ、その魔物…ロードとか呼ばれていたわ」

 

ブラゴ「フン、今回の戦いにロードなんて魔物はいない。心を操れる魔物はただ1体、あいつだけだ…」

 

シェリー「人の心を操れる魔物…私の親友ココを…、争いなんて全くできない心の優しいココの心を操り…残虐な性格にして、無理矢理戦いに巻き込んだ最低最悪な魔物…長かったわ…やっとあなたと戦えるのね…ゾフィス!!」

 

 

 

 

デボロ遺跡

 その後、ゾフィスはコーラルQからブラゴの事を聞いた。

 

ゾフィス「ふふふ…どうやらあの2人にも気付かれたようですね。だとしたら…もうこんな仮面は無意味だね…ココ」

 

ココ「ええ、そうね…ゾフィス!あなたは素顔が一番よ」

 

ビョンコ「大変ゲロ~~!!」

 

 負けたビョンコは途中でパムーンと合流して逃げてきた。そして、ガッシュ達に負けた事を報告した。

 

ゾフィス「(ま、まさかパムーンまで送ったのにガッシュを倒せなかったとは…!)どういう事ですか?パムーン。四天王のあなたがガッシュにボロ負けした挙句、月の石まで奪われてしまうとは」

 

パムーン「あいつには実力で負けた。ただ、それだけだ。俺がやられて戦力がダウンしなかっただけ、お前もよかったと思ってるんじゃないのか?」

 

ゾフィス「それはそうですがね」

 

パムーン「ゾフィス、お前が自分でガッシュを倒しに行かないのは俺達が石に戻るのが怖いように、お前はガッシュが怖いんじゃないのか?」

 

 パムーンに図星を突かれてゾフィスは余裕がなくなった。

 

ゾフィス「てめえ、余計な事を言ってんじゃねえ!今すぐ石に戻りたいか、本を燃やされたいかどっちだ!」

 

パムーン「俺を失ったら誰がガッシュを止めるんだ?」

 

ゾフィス「…まぁ、今の状況で四天王を1人でも失うのは妥当ではありませんね。私の指示にはしっかり従ってもらいますよ、パムーン」

 

パムーン「わかってる」

 

 ガッシュとゼオン、ブラゴが怖くて仕方ないゾフィスはすぐにパムーンを消したくても消せなかった。そして、デボロ遺跡のある場所で41枚目の石版をライトの下に置いた。

 

ゾフィス「本当は目覚めさせたくなかったが…パムーンでは適わない以上、こいつを使うしかない…」

 

 苦渋の決断の末、ゾフィスは千年前の魔物を目覚めさせたライトをつけた。すると、その石版に封じられていた魔物が復活した。

 

 

 

 

 

高嶺家

 次の日、清麿はジェムとゴルドーに連絡をとる事にした。

 

ガッシュ「あと2日なのだな…」

 

清麿「ああ、あと2日でデボロ遺跡へ出発だ。その前に、ジェムやゴルドーさんに連絡をとらないとな。前の戦いでデボロ遺跡の時はどれぐらい仲間は集まったんだ?」

 

ガッシュ「えっと…私にティオにキャンチョメにウマゴン、ウォンレイにキッドなのだ。遺跡でパティとビョンコと千年前の魔物のレイラも協力してくれたがのう」

 

清麿「今回はパティは最初から仲間だし、コルルにヨポポにダニーもいる。チェリッシュは来てくれるかどうかはわからないが…」

 

ガッシュ「清麿、チェリッシュならオロロンサーカスにおるぞ」

 

清麿「ほんとか?なら、連絡しないとな」

 

 

 

 

 

イギリス

 イギリスではジェムが清麿の父親、清太郎の勤めている大学で清麿と連絡をとっていた。その傍には、ナゾナゾ博士の姿があった。

 

ジェム「もしもし、清麿?」

 

清麿『ジェムか?話があるんだ』

 

ジェム「話?」

 

 清麿は千年前の魔物が復活した等の事情を話、一緒にデボロ遺跡に向かってほしいと頼んだ。

 

ジェム「事情はナゾナゾ博士から聞いてるわ。今、ナゾナゾ博士がお母さんに私を連れて行く交渉をしてる所なの」

 

清麿『じゃあ、ジェムはナゾナゾ博士と一緒に行くんだな』

 

ジェム「ええ。ナゾナゾ博士は仲間集めをしてるから清麿達との合流が遅くなってしまうけど、必ず来るわ。それじゃあね」

 

 話が終わって電話を切った。

 

ナゾナゾ博士「それじゃあ、ジェム君、君のお母さんに許可をもらいに行こうか」

 

ジェム「うん!」

 

 

 

 

某国 美術館

 次はゴルドーに連絡をとった。

 

ゴルドー「清麿か。よくここにおるとわかったな」

 

清麿『色々な美術館のサイトを見て、シェミラ像があったからわかったんだ。』

 

ゴルドー「シェミラ像か…。それもそうじゃな。ところで、何の用じゃ?」

 

清麿『実は…』

 

 ジェムの時のように清麿は千年前の魔物が復活した等の事情を話した。

 

ゴルドー「千年前の魔物が復活したからデボロ遺跡に来てほしい?だが、戦力になれるかはわからんぞ。ダニーボーイさえよければ行くつもりだ…」

 

清麿『お金やチケットは…』

 

ゴルドー「何、金なら少しはある。もし行くなら自分で行くわい。じゃあな」

 

 電話が終わったのと同時にダニーが帰ってきた。

 

ダニー「じじい、何かあったのか?」

 

ゴルドー「清麿から連絡があってな、千年前の魔物が復活したからデボロ遺跡に来てほしいそうじゃ。ダニーボーイは行くか?」

 

ダニー「当たり前だろ。ガッシュは俺の友達だ。その友達を助けない訳ないだろ」

 

ゴルドー「ふっ、そう言うと思ったわい」

 

 

 

 

ヨーロッパ

 最後に清麿はニコルとチェリッシュに連絡をとった。

 

チェリッシュ「何ですって!?千年前の魔物が復活して私達を狙っているの?」

 

清麿『そうだ。チェリッシュも一緒に来てくれないか?』

 

チェリッシュ「わかったわ。私達もデボロ遺跡に行くって坊やに伝えてね」

 

清麿『わかった。それじゃあ』

 

 清麿は電話を切った。

 

ニコル「行くのね、デボロ遺跡とかいう所にに」

 

チェリッシュ「勿論よ。千年前の魔物を率いているゾフィスは私にとっても絶対に許せない魔物よ。必ず叩きのめしてやるわ…!」

 

 次の日、ナゾナゾ博士はキッドとヨポポペアと共に息抜きも兼ねてオロロンサーカスを見ていた。

 

キッド「前に会った魔物達は全然協力してくれなかったのに、最近は協力してくれる魔物によく会うね」

 

ナゾナゾ博士「その魔物達に共通するのはガッシュ君と関わりがある事だ。ガッシュ君の人脈がこの結果を生み出したのだろうね」

 

キッド「サーカスが始まるよ、博士!」

 

 チェリッシュの演技にキッドは釘付けになっていた。そして、公演が終わってからナゾナゾ博士はキッドと共にチェリッシュペアと会った。

 

ナゾナゾ博士「千年前の魔物の話は既に清麿君から聞いていたのか」

 

ニコル「そうよ。だから、私達も行くわ」

 

キッド「ガッシュの人脈って凄いね」

 

ナゾナゾ博士「そうじゃな」

 

 

 

 

某国

 ガッシュ達にボロ負けしたビョンコは苛立った状態でカルーラ達を引き連れ、現在の魔物の掃討に向かっていた。

 

ビョンコ「ガッシュめ…、パティと一緒に絶対に倒してやるゲロ…!」

 

 そう思っていると、何やら見覚えのある人影を見つけた。

 

ビョンコ「あっ、ガッシュゲロ!仲間と逸れている今がチャンスゲロ!」

 

 人影の元にビョンコとカルーラ達は降り立った。

 

ビョンコ「やい、ガッシュ!あの時のリベンジに来たゲロ!」

 

ゼオン「…おい、バカガエル、今、俺の事をガッシュって言ったな…?」

 

ビョンコ「とぼけても無駄ゲロ!お前の姿ぐらいオイラでも…あっ!!」

 

 ビョンコが見つけたのはガッシュではなく、ゼオンだった。

 

ゼオン「俺をあのマヌケと間違えるとはいい度胸だな…!」

 

ビョンコ「(こいつ、ガッシュじゃないゲロ!)」

 

ゼオン「お前、ガッシュと会ったようだな。倒せたのか?」

 

ビョンコ「倒せなかったけど、いつか倒すゲロ!その前に、お前を倒してやるゲロ!」

 

ゼオン「…ふふふ、ははははっ!!ガッシュを倒せなかったお前達が俺を倒すだと?馬鹿馬鹿しくて笑いが止まらないぜ。パートナーもいない癖に群れて強くなったつもりか?」

 

ビョンコ「ぐぬぬっ!それはお前の強がりゲロ!」

 

ゼオン「強がってるのはお前の方じゃないのか?カエル。顔にそう書いてあるぞ」

 

ビョンコ「オ、オイラの連れている千年前の魔物はお前達非力な現在の魔物よりも強いゲロ!今にお前は戦いに敗れて本を燃やされるゲロ!」

 

ゼオン「千年前の魔物?父上が王になった戦いの時にゴーレンに石にされた連中の事か?」

 

ビョンコ「お前が知ってて説明する手間が省けたゲロ。お前も強さに驚いたゲロ?」

 

ゼオン「ああ、驚いているぞ。雑魚と群れて強くなった気でいるバカガエルの姿がな…」

 

ビョンコ「雑魚!?どういう事だゲロ!」

 

ゼオン「要するに、こいつら千年前の魔物はゴーレン以下の雑魚にしかすぎねえんだよ。それもわからんのか、バカガエル」

 

ビョンコ「もう怒ったゲロ!あの生意気な奴を徹底的にやっつけるゲロ!」

 

 カルーラ達はゼオンに襲い掛かった。

 

ゼオン「ふん…」

 

 すぐにゼオンはパラマキロンに近づき、手をかざした。

 

デュフォー「ザケル」

 

 至近距離からのザケルたった1発でパラマキロンは大きく吹っ飛び、動けなくなった。

 

ビョンコ「そんな!千年前の魔物は現在の魔物よりも体が丈夫で強いはずなのに、初級呪文1発でやられるなんて信じられないゲロ!」

 

デュフォー「カエル、お前、頭が悪いな。ゼオンもさっき言った通り、千年前の魔物の実力はゴーレン以下だ。そんな魔物が厳しい英才教育を受けて育ったゼオン相手に束になって勝てるとでも思っているのか?」

 

ビョンコ「ぜ、全力でかかるゲロ!」

 

ゾルゲ「ギガノ・ビレイド!」

 

マレーネ「オル・ロズルガ!」

 

 二つの呪文がゼオンに襲い掛かった。しかし、ゼオンは片手で止めた。

 

ビョンコ「か、片手で止めたゲロ!?」

 

デュフォー「ザケルガ」

 

 ザケルガで二つの呪文を貫通し、カルーラとデンシンを吹っ飛ばした。あまりにダメージが凄まじかったためか、カルーラとデンシンは立つ事さえできなかった。

 

ビョンコ「千年前の魔物の呪文があっさり破られたゲロ!」

 

ゼオン「デュフォー、あいつらのパートナーの様子がおかしいな」

 

デュフォー「千年前の魔物のパートナーは何者かに心を操られている」

 

ビョンコ「これぞ、ロードの力ゲロ。逆らわないし、出したい術を出せる便利な心の力のバッテリーゲロ」

 

デュフォー「そのやり方は愚かとしか言いようがないな」

 

ビョンコ「どういう事ゲロ!?」

 

デュフォー「パートナーが操られている状態だとそうでない状態に比べて柔軟な対応ができなくなり、術の威力や精度が低下する。千年前の魔物のパートナーが操られていなければ少しは俺達相手に善戦できただろうな」

 

ビョンコ「そういうお前の魔物だってお前を心の力のバッテリーみたいに扱ってるゲロ!」

 

ゼオン「バッテリーだと?全く頭を使わんバカだな。デュフォーが呪文を出すだけしかやってない理由を自分で考えてみろ」

 

ビョンコ「そんなの、理解できないゲロ!もっと…、もっと攻撃ゲロ!」

 

ゼオン「遅すぎるんだよ!」

 

 そのままゼオンはデンシンを掴んでパラマキロンの方へ投げ飛ばした。その後、立ち上がろうとしたカルーラの頭を踏みつけた。

 

ゼオン「全く話にならんな。お前らが経験した千年前の魔界の王を決める戦いは生温い戦いだったのか?ほら、待っててやるからさっさと起きな。それでも力を入れているのか?」

 

 ゼオンの暴言に怒ったカルーラは立ち上がろうとしたが、踏みつけているゼオンの力はとても強く、全く立ち上がれなかった。

 

ゼオン「やっぱり弱すぎるな、お前ら。これでは準備運動にすらならん」

 

 もう楽しむ事ができないと判断したゼオンは倒れているパラマキロンとデンシンの方へカルーラを蹴り飛ばした。

 

ビョンコ「そんな…カルーラ達が手も足も出ないなんて…」

 

ゼオン「もうこいつらとの遊びに付き合う気も失せた。デュフォー、本を燃やすぞ」

 

デュフォー「ガンレイズ・ザケル」

 

 ピンポイントにカルーラ達の本は燃やされてしまった。

 

ビョンコ「ゲロ…!」

 

ゼオン「カエル、お前とその空飛ぶ奴の本はないようだな…消えろ。さもないと…」

 

 ボコボコにされ、消えかかっているカルーラ達の方へゼオンは手を向けた。

 

ビョンコ「(消えかけているカルーラ達に何をする気ゲロ…!?)」

 

デュフォー「バルギルド・ザケルガ」

 

 チェリッシュとクリアの心を壊した地獄の拷問を今度はカルーラ達が受ける事になった。

 

カルーラ「アアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!」

 

 石化を超える地獄の拷問にカルーラ達は耐えられなかった。

 

ビョンコ「ヒ、ヒィィ~~~~ッ!!逃げるゲロ!」

 

 その凄惨な光景とゼオンの圧倒的な強さにビョンコは完全に戦意を喪失し、フェリウスに乗って逃げ出した。

 

デュフォー「ゼオン、千年前の魔物を従えている奴に心当たりはあるか?」

 

ゼオン「心を操る…そんな事ができる現在の戦いに参加している魔物の中では俺に恐れをなしたあのヘタレだけだ。まぁ、俺は心を操れなくても魔物を無理矢理従わせる方法があるんだがな…」

 

デュフォー「どうする?あの時はお前の言う通りに見逃したが、今から潰すか?」

 

ゼオン「いや、あんな奴に俺が自ら手を下すまでもないだろう。俺達は奴等の本拠地へ行って奴等が無様に落ちぶれていく姿を見物でもしておこうか」

 

 

 

 

高嶺家

 その頃、清麿はデボロ遺跡での戦い方についてガッシュと話し合っていた。

 

清麿「…ガッシュ、何か遺跡での戦いで注意すべき事はあるか?」

 

ガッシュ「とにかくコンビネーションと絶対に二組以上固まって動く事なのだ」

 

清麿「なるほどな。確かに単独でも千年前の魔物に圧勝できる俺とガッシュ以外はまともに太刀打ちできないからな。それと、仲間が分散させられることでもあるのか?」

 

ガッシュ「ウヌ。そして…私は何としてでも上の部屋に行かねばならぬ」

 

清麿「わかった。みんなで集まったら、作戦やらなにやらの会議をしよう」

 

ガッシュ「頼むのだ。頭を使う仕事は清麿の仕事なのだぞ」

 

清麿「ああ!(ナゾナゾ博士は安定するまでアンサー・トーカーを安易に使うなと言ったが、いざという時は使うぞ…)」

 

 

 

 

空港

 そして、出発の日になり、空港には前日に届いたチケットを持ってガッシュ達が集まっていた。

 

清麿「結局、ウマゴンも行くのか」

 

ガッシュ「そんなに私と一緒に行きたいのか?ウマゴン」

 

ウマゴン「メルメル」

 

清麿「(サンビームって人、会った事はないけど、来てくれるといいんだけどな…)みんな、チケットは持ったな!?」

 

ティオ「ええ!」

 

パティ「持ったわ!」

 

コルル「持ってる!」

 

ウルル「…持ってますよ」

 

恵「持ってるわ!」

 

しおり「私もよ!」

 

ガッシュ「ウヌ!それでは皆の者、出発するのだ!!」

 

一同「オオーーーー!!」

 

 いざ、清麿達はゾフィスと千年前の魔物が潜む本拠地、デボロ遺跡へ向けて飛行機に乗り、出発した。そして、少し遅い便にある人物が向かっていた。

 

???「ウマゴン、私もデボロ遺跡に行くぞ。君が悩みぬいて、苦悩の末に出した答えを確かめるために」

 

 その人物もその手に清麿達が持っているのと同じチケットを持っていた。ウマゴンの『答え』を確かめるため、その人物も飛行機に乗り、出発した。




これで今回の話は終わりです。
ガッシュ達の出発までの準備を描いていますが、個人的にゼオンが気に入っているので石版編にゼオンが出ていたらという考えでゼオンも千年前の魔物との戦いをきっかけにデボロ遺跡へ向かうという流れにしています。ちなみに、石版編でゼオンはガッシュ達とは対面しません。
次はいよいよデボロ遺跡での戦闘になりますが、アルム達との戦いの後で衝撃的な情報をガッシュ達は聞く事になります。


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LEVEL27 遺跡での初戦

飛行機

 清麿達は飛行機で移動していた。

 

パティ「まだなの?」

 

ウルル「まだですよ。飛行機を乗り換えたりしないといけませんから…」

 

コルル「どれぐらいかかるの?」

 

恵「3,4時間ってとこかしら?もう少しの辛抱よ」

 

ティオ「まだ長いのね…」

 

清麿「そうだ、今の内に誰と組んだ時はどういった戦法をとるのか意見を出し合おう」

 

しおり「そこまでやる必要はあるの?」

 

清麿「事前に何かしておくだけでその時になって慌てる事は少なくなるし、アイコンタクトをしたりしただけですぐに行動に移せる。時間もあるし、やっておく価値はあると思う」

 

恵「それ、いいわね。みんなで意見を出しましょう」

 

ガッシュ「清麿、どうして私達以外は誰もおらぬのだ?」

 

清麿「貸し切りだからな」

 

一同「ええ!?」

 

 

 

 

空港

 作戦会議であっという間に数時間経過し、空港に着いた。そこには、アポロがロップスと共に待っていた。

 

清麿「待たせたな、アポロ、ロップス」

 

アポロ「久しぶりだよ、清麿。ガッシュも元気そうだな」

 

ロップス「かう!」

 

パティ「(よかった、アポロって奴とそのパートナーの魔物が男で)」

 

恵「あの人がアポロなの?」

 

清麿「そうだ。アポロも俺達と一緒に戦ってくれる仲間だ」

 

しおり「こちらもよろしくお願いします」

 

 

 

 

南米

 早速、ガッシュ達は船に乗り込んで移動を始めた。

 

恵「さっきの飛行機や私達にチケットを手配してくれたのはアポロさんだったのね」

 

清麿「ああ。こっちで必要なものを用意してもらってるんだ」

 

ウルル「あの…スーツでそのままデボロ遺跡に向かうんですか?」

 

アポロ「違うよ。僕も冒険着を用意しているんだ」

 

 スーツを脱ぐと、その下は自由を満喫する旅をしていた時の服装だった。

 

清麿「その服、とっていたのか」

 

アポロ「もちろんだよ。スーツは仕事で必要だから、こっちが戦いの上でも大丈夫だと思ってね。しかし、驚いたな。清麿が女の子を連れて来るなんて。しかも、美人も含めて5人も」

 

 アポロのからかいで清麿と恵は顔が真っ赤になった。

 

恵「あ、あ…あ…あ……」

 

清麿「ア~ポ~ロ~~!それは」

 

しおり「2人共素直になった方がいいんじゃない?」

 

パティ「私はガッシュちゃんの彼女なのよ!パートナーに興味はないわ!!」

 

 ガッシュにべったりなパティにティオは猛烈に嫉妬し、コルルも少し嫉妬していた。

 

アポロ「それより、その馬は何だい?」

 

ガッシュ「ウマゴンと言って、私の友達なのだ」

 

ウマゴン「メルメルメ」

 

アポロ「だが、本もないし、パートナーもいないけど、君のパートナーはどうしたんだい?」

 

ウマゴン「メル……」

 

アポロ「ごめん、君にとって嫌な事を聞いてしまったようだ…」

 

 その後、アポロは全員に地図を配った。

 

清麿「地図か…」

 

アポロ「全員分、印刷してある。一応持っておくように」

 

清麿「到着するまでにまだ時間があるからアポロも作戦会議をするか?」

 

アポロ「そうだね。しようか。それと、リーダーを決めておく必要がある。僕としては…頭のいい清麿がリーダーに相応しいと思うけど、清麿やみんなはどういった意見か聞きたい」

 

ウルル「私は問題ありませんよ」

 

恵「清麿君がリーダーでいいわ」

 

しおり「私も恵と同じ意見よ」

 

アポロ「じゃあ、全会一致で清麿がリーダーだ。頼むよ、清麿」

 

清麿「ああ。アポロはサブリーダー的存在でいいか?」

 

アポロ「構わないよ」

 

 

 

デボロ遺跡 内部

 その頃、デボロ遺跡ではココは退屈そうにしていたが、ゾフィスは寝不足の様子だった。

 

ココ「ゾフィス、ここ最近、顔色が悪いわよ。何かあったの?」

 

ゾフィス「別になんでもありませんよ。ただ、作戦を考えて徹夜していたので…」

 

ココ「そう、何か面白い事が起こらないのかしら?」

 

 ココがその場を離れるとゾフィスはベットで眠った。しかし、ガッシュやゼオン、ブラゴ、そしてやむなく目覚めさせたある魔物が夢に出てきてしまい、跳ね起きてしまった。

 

ゾフィス「ま、また夢に出てきた…!!もう奴等は来ているのか…!?」

 

 ゾフィスはガッシュ、ゼオン、ブラゴの内の誰か1人でもデボロ遺跡に来ると想像しただけでも異様に怯えていた。

 

 

 

 

デボロ遺跡 外部

 一方、ガッシュ達は船から降りて荷物等を確かめていた。

 

清麿「みんな、いよいよ乗り込むぞ。水は持ったな?」

 

パティ「いざとなったら私がいるわ」

 

ウルル「(パティの術の水って飲めるのか…?)」

 

清麿「食料は持ったな?腹が減っては戦はできぬという」

 

恵「ええ。お弁当に、デザートのメロンもあるわ」

 

ティオ「ちゃんとみんなの分あるわよ」

 

清麿「よし。アポロに配られた地図は頭に叩き込んだな?」

 

ロップス「かう!」

 

ウマゴン「メル!」

 

コルル「(自信ないなぁ…)」

 

清麿「そして最後に…心の準備はできているか?」

 

アポロ「ふっ…できていなかったらみんなここには来ていないよ」

 

しおり「飛行機に乗り込んだ時点で覚悟は決めてきたわ…行きましょう、清麿君!」

 

ガッシュ「(共に戦う者が多いと心強いのう…)」

 

清麿「(俺も罠とかで色々と不安は少しあるが…でも、俺達がやるんだ。ゾフィスをぶっ飛ばすために!)よし、みんな、行くぞ!」

 

 ガッシュ達は道を進んでいき、遂にデボロ遺跡が見える場所に来た。

 

しおり「あれがデボロ遺跡…」

 

アポロ「もうだいぶ経っているから、パートナーもかなり見つかっているだろう」

 

清麿「となると、敵の警戒も厳しくなる。焦らないで、少しずつ慎重に行こう」

 

恵「清麿君、頼もしいわね。どんな戦いが待っているかわからないのに、敵の本拠地を見ても全然怯えてないもの」

 

清麿「いや、俺だってここに来るまでは…」

 

ウルル「皆さん、何かいるようです」

 

 ウルルの言った通り、何かがいるようだったため、全員警戒した。

 

コルル「何かいるみたいだよ」

 

パティ「早速、見張りのお出ましかしら?」

 

ガッシュ「(キャンチョメなのか?だが、念のため警戒せねばならぬ…!)」

 

清麿「仲間を呼ばれたら厄介だ!ここで倒すぞ!」

 

 茂みに隠れている何者かが出てきた。

 

清麿「行くぞ!」

 

キャンチョメ「うわああっ!」

 

清麿「ザケル!」

 

 隠れていたのはキャンチョメとフォルゴレだった。しかし、清麿は警戒していたため、

あまり加減せずにザケルを放ったため、フォルゴレとキャンチョメは黒焦げになった。

 

ガッシュ「(やっぱり、キャンチョメとフォルゴレであったか)」

 

清麿「キャンチョメ、フォルゴレ!」

 

フォルゴレ「ひどいぞ、清麿…」

 

キャンチョメ「凄く痛かったよ…!いきなり撃つなんて…!」

 

しおり「あなた達、どうしてここに?」

 

キャンチョメ「実は…」

 

 

 

 

回想

 それは、キャンチョメとフォルゴレが南極にいた時の事だった。ビョンコはカルーラ達を引き連れてキッドと戦っていた。

 

ナゾナゾ博士「ラージア・ゼルセン!」

 

 戦いは一進一退の様子だった。

 

ナゾナゾ博士「これでは埒があかんな。ならば、ギガノ・ゼガル!」

 

 ギガノ・ゼガルを氷山にぶつけて氷山をビョンコ達の所に落とした。

 

ナゾナゾ博士「よし、今だ!逃げるが勝ちさ!」

 

 ナゾナゾ博士はフォルゴレと共に飛び去って行った。ビョンコ達はその光景を見たが、それを人形とも知らずに。

 

ビョンコ「ま、待つゲロ!でも、こっちもダメージを負ったゲロ…。一旦引き上げだゲロ~~!」

 

 ビョンコ達はフェリウスに乗って逃げた。それを、人形でビョンコ達の注意を逸らさせたナゾナゾ博士が見ていた。

 

キャンチョメ「あれが千年前の魔物かい?」

 

ナゾナゾ博士「言ったろう。本当に我々を狙っていると。不思議な事に奴等は怪我を負っても必ず元気になって戻ってくる。恐らく奴等の本拠地にダメージを回復させる何かがあるのだろう。ロードが千年前の魔物を支配できるのも、そこに秘密があると私は睨んでいる」

 

キャンチョメ「じゃあ、その何かを壊してきてよ」

 

ナゾナゾ博士「君も一緒にね」

 

キャンチョメ「僕が敵うと思ったら大間違いだぞ!」

 

フォルゴレ「その通り!」

 

キッド「清麿とガッシュは既に動いているよ」

 

キャンチョメ「ええ!?」

 

ナゾナゾ博士「他にも助けてくれる魔物はきっといる。必ず、少しずつ集まるだろう」

 

キャンチョメ「でも、僕が行っても役に立つのかな?」

 

ナゾナゾ博士「勿論さ。君だって彼らを助けられる力を持っている。いや、君の力が必要なんだ」

 

キャンチョメ「……本当かい?」

 

ナゾナゾ博士「ああ、本当さ。君の力でガッシュ達を助けてあげるのさ」

 

 

 

 

清麿「(この話をガッシュの経験した戦いの時と重ねれば…回復させる何かは月の石だな…)」

 

キャンチョメ「でも、来てみたら誰もいなくて不安で不安で…」

 

 キャンチョメがガッシュ達に視線を向けると、ティオの姿に怯えだした。

 

キャンチョメ「うわ~~~っ、首絞めティオだぁ~~っ!!」

 

ティオ「いきなり何言ってるのよ!変な事したら許さないわよ!!」

 

 早速、ガッシュ達は騒ぎ始めた。

 

アポロ「随分騒がしくなったけど、キャンチョメはガッシュ達と知り合いなのかな?」

 

清麿「そうらしい」

 

恵「ちょっとティオ…」

 

フォルゴレ「ハーイ、2人のバンビーナ、この私が」

 

清麿「ザケル!」

 

 恵としおりにナンパしたフォルゴレに向けて再びザケルが放たれた。

 

清麿「フォルゴレ、恵さんとしおりさんにナンパやセクハラする暇があったら少しは頭を使って作戦を考えろ!!」

 

恵「清麿君…」

 

しおり「ちょっと、あれはやりすぎじゃない…?」

 

ティオ「でも、泣き虫キャンチョメがよく生き残ってたわね」

 

キャンチョメ「何を言うか、僕は強くなったんだぞ!」

 

パティ「ガッシュちゃんと違ってあてにならないわね。どうせ、攻撃にも防御にも使えない何の役にも立たない術しかないんでしょ?」

 

 パティの言葉が図星だったのか、キャンチョメは何も言えなくなった。

 

コルル「パティ、さっきのは言い過ぎじゃないの?キャンチョメが落ち込んでるし…」

 

パティ「ただ適当に言っただけよ。まぁ、攻撃も防御もできないのなら、とっとと帰ってくれる?はっきり言って落ちこぼれのあんたは邪魔よ」

 

キャンチョメ「うわあぁぁん、フォルゴレ!僕とガッシュは同じ落ちこぼれなのに何でこんなに差がついたんだ!?」

 

フォルゴレ「私に聞かれても…」

 

ティオ「ほら、泣き虫キャンチョメ!やっぱり弱いままじゃない!清麿、パティの言う通りキャンチョメ達は置いて行きましょう。本当に弱いの。連れて行っても足手まといになるだけよ」

 

清麿「いや、キャンチョメの術はとても役に立つ。俺達の本当の心強い力になってくれるよ。ここで仲間になれて、本当に嬉しいよ」

 

パティ「私はそうとは思えないわ」

 

アポロ「どの力も役に立つかどうかは使い方次第さ。キャンチョメの術が何なのかは僕はまだ知らないけど、意外と役に立つかも知れないよ」

 

 そんな中、鳥が飛び立った。

 

キャンチョメ「わあああっ!!フォ、フォ、フォ」

 

ガッシュ「落ち着くのだ、キャンチョメ。さっきのは普通の鳥なのだ」

 

フォルゴレ「キャンチョメの心臓が飛び出しそうだ!」

 

コルル「清麿お兄ちゃん、本当にキャンチョメって役に立つの?」

 

清麿「(ガッシュの話では後で強力な術を覚えるそうだが、今はやっぱり…役に立たないかな…?)」

 

 一同は遺跡の入り口に来た。

 

清麿「ここが敵の本拠地である以上、奴等に見つからない事が第一だ」

 

パティ「見つかってもやっつければいいのよ」

 

ウルル「もし、仕留め損ねて仲間を呼ばれたらどうするんですか?」

 

パティ「その時はその時よ」

 

 一同の中でキャンチョメは足が震えていた。

 

ガッシュ「行こうぞ、キャンチョメ」

 

ティオ「今にも泣きそうよ。ここで待ってたら?」

 

キャンチョメ「うるさい!僕は泣き虫じゃない!」

 

フォルゴレ「安心しろ、清麿。キャンチョメは変わった。本当に強くなった。だから…」

 

 フォルゴレの話を聞かずに清麿達はもう突入しようとしていた。

 

フォルゴレ「話を聞け~~!」

 

清麿「信じるよ。いくつもの戦いを通して俺達も成長した」

 

しおり「私達は清麿君とガッシュ君との特訓で強くなったり、ナゾナゾ博士との戦いで多くの事を教わったわ。フォルゴレさんもナゾナゾ博士との戦いで色々教わった?」

 

フォルゴレ「ま、まぁ…」

 

 フォルゴレはナゾナゾ博士と一緒に歌っていた時の事を思い出した。

 

恵「清麿君達との特訓で私達はさらに強くなったし、いくつかの新しい術を覚えたわ。フォルゴレさんは…?」

 

フォルゴレ「じゅ、術までは…」

 

コルル「とにかく頑張ろう、キャンチョメ」

 

キャンチョメ「勿論さ、僕の力は凄いんだぜ」

 

パティ「どこも凄くないわ。術による攻撃すらできないあんたと違って、ケタ違いの術の威力を誇るガッシュちゃんの方が何万倍も凄いのよ」

 

ティオ「どうせ敵が来たら泣いちゃうんでしょ?」

 

キャンチョメ「僕はもう泣かないんだ!」

 

アポロ「随分と騒がしくなったね」

 

ロップス「かう」

 

 

 

 

デボロ遺跡 内部

 一同は遺跡に突入した。前の戦いの時と違い、ゾフィスに従わされていた事があったアポロと前の戦いの記憶によって遺跡の構造を知っているガッシュがいるため、遺跡の地図とガッシュの記憶を頼りに一同は迷わずに進んでいた。

 

清麿「(ガッシュは前の戦いでデボロ遺跡に来た事があるから、こういった所では頼りになるな…)」

 

フォルゴレ「清麿、ナゾナゾ博士はここにはダメージを回復させる何かがあると言っていたが…」

 

清麿「月の石の事だな」

 

キャンチョメ「すげえ!もうダメージを回復させる何かの正体を突き止めたのか!?」

 

 思わず大声を出したキャンチョメはパティのキックとティオの首絞めを受ける羽目になった。

 

ティオ「いい加減にしなさいよ!敵に見つかったらどうするのよ!」

 

パティ「ガッシュちゃんのパートナーは怒ると怖いのよ!ちゃんとガッシュちゃんのパートナーの言う事を聞きなさいよ!」

 

フォルゴレ「ところで…改めて聞きたいけど、どうやって回復させる何かが月の石だとわかったんだ?」

 

清麿「俺達が戦ったある千年前の魔物が俺達から逃げた時にパートナーが落としたものだ。効果を試してみたら、疲れが抜けて、心の力も漲るようだったから、奴等の本拠地に月の石がたくさんあるんじゃないかって思ったんだ」

 

 実際はパムーンを見逃した際にお礼としてもらったものである。さらに、月の石の事自体もパムーンとの戦いの前にガッシュから聞いていた。

 

アポロ「僕達も知らない事を清麿は知ってるんだからすごいよ」

 

清麿「まぁ、その情報源は色々と詳しい情報通なんだけどな」

 

恵「その情報通って誰なの?」

 

清麿「詳しくは言えないが、俺の近くにいる」

 

恵「清麿君に詳しい魔物の事などを教えてくれる情報通って誰なのかしら?」

 

しおり「私も知りたいわ」

 

 そんな時、壁が壊れた。

 

コルル「何なの?」

 

清麿「みんな、静かに」

 

ガッシュ「千年前の魔物が来たのだ」

 

 壊れた壁の向こうには龍の魔物、ゲリュオスと小さい魔物、アルムがいた。キャンチョメが怯えて大声を出そうとしたため、コルル達は口を塞いだ。

 

清麿「デカイのが1体、小さいのが1体…(ガッシュの話ではもう1体いるそうだけどな…)キャンチョメ、出番だ」

 

キャンチョメ「えっ?」

 

清麿「キャンチョメは奴等を離れた部屋までおびき出してほしい」

 

フォルゴレ「バカ~~、そんなの無理に決まってるじゃないか!」

 

パティ「別にあのアヒルがおびき出さなくてもここでやっつけちゃえばいいのよ」

 

キャンチョメ「僕はアヒルじゃないんだぞ!」

 

アポロ「まぁまぁ。清麿は考えがあってキャンチョメにしかできないって言ってるんだ。そうだろう、清麿」

 

清麿「ああ。頼めるな、キャンチョメ」

 

 しばらく沈黙した後、ナゾナゾ博士に言葉を思い出したキャンチョメは決心した。

 

キャンチョメ「…わかった、やるよ!僕にしかできないんだね!」

 

しおり「いいのね、キャンチョメ君」

 

フォルゴレ「キャンチョメ、本気か!?」

 

キャンチョメ「うん!(そうさ、足手まといじゃなく、僕の力が必要だと言われた時、とても嬉しかったんだ…。だから、僕はここに来たんだ)」

 

パティ「そこまで言うのなら、ちゃんとやるのよ。いい?」

 

 キャンチョメに作戦を伝え、キャンチョメペア以外は別の部屋で待機した。

 

コルル「ガッシュ、キャンチョメは大丈夫かな?私達の誰かが一緒にいなくていいの?」

 

ガッシュ「キャンチョメを信じるのだ、コルル。絶対にキャンチョメは清麿の考えた作戦をこなすのだ」

 

アポロ「慎重な作戦だね、清麿。だが、戦いはこれだけではないんだ。スポーツで言えばこの戦いはいわば長距離走。心の力を無駄に使ったら心の力が切れてしまって後の戦いが大変になってしまう。だから、呪文の使用は最小限にした上で戦おう」

 

清麿「ああ、わかってる」

 

 その頃、キャンチョメは…

 

キャンチョメ「やい、千年前の魔物!2体いるからって怖くないぞ!お前らなんか僕一人でやっつけてやる!」

 

 アルム達に睨まれてキャンチョメは足が震えていた。そして、フォルゴレが何かに気付いた。

 

フォルゴレ「キャンチョメ…、もう1体…いるぞ…」

 

キャンチョメ「そ、そいつも…僕がやっつけてやる!」

 

 アルムとゲリュオスがいる部屋にいたもう1体の魔物、ガンツも加わってキャンチョメに襲い掛かった。キャンチョメはフォルゴレと共に必死で逃げ、何とかおびき出す事に成功した。

 

ティオ「やるじゃない、キャンチョメ!」

 

パティ「まぁ、少しは見直したわ」

 

キャンチョメ「それよりも大変なんだ!清麿が言ってた魔物以外にもう1体いるんだよ!」

 

清麿「もう1体いるのか!?」

 

フォルゴレ「でも、任せるんだ!今の私達ならちょちょいの」

 

清麿「バカ!一組で千年前の魔物に挑むのは無謀すぎる!」

 

アポロ「だったら、僕が加勢しよう」

 

ロップス「かう!」

 

 アポロはロップスやいつに間にか肩に掴まっていたウマゴンと共に取っ手を伝って壁を登った後、キャンチョメとフォルゴレの元に来た。

 

アポロ「君達はまだ聞いてなかったようだけど、デボロ遺跡では一組だけで戦闘をしてはいけない。必ず二組以上で戦うんだ」

 

キャンチョメ「よろしく頼むよ、ロップス」

 

ロップス「かう!」

 

アポロ「ウマゴンも手伝ってくれるようだし、行くぞ!」

 

 アポロ達はガンツに戦いを挑んだ。

 

清麿「よし、俺達も」

 

パティ「ガッシュちゃんがわざわざ戦うまでもないわ。こんな奴等、私達で十分よ」

 

ガッシュ「大丈夫なのか?」

 

ウルル「私達はガッシュと清麿に鍛えられたのです。ここはパティの言う通りにしましょう」

 

清麿「そうだな」

 

アルム「おい、ガッシュとかいう奴が戦わなくても女共だけで十分だと?軟弱な現代の魔物の癖に随分舐めた口を利くな」

 

ティオ「勝手に現代の魔物が軟弱だと決めつけたら痛い目に遭うわよ!」

 

 既にキャンチョメとフォルゴレを除く一同はガッシュによって千年前の魔物が喋ったり、パートナーが操られているなどの情報を知っているため、アルムが喋っても平然としていた。戦う気満々のパティとティオだが、コルルはある事に気付いていた。

 

恵「どうしたの?コルルちゃん」

 

コルル「…何だか、あの魔物達…無理矢理戦わされてるようで可哀そうな気がするの…」

 

しおり「本当にそうかも知れないけど、今は戦いに集中して」

 

コルル「うん…」

 

アルム「作戦会議は終わったようだな。行くぞ!」

 

 アルムとゲリュオスが襲い掛かった。対するガッシュ達はパティ達女子組が挑んだ。一方、アポロ達の方はロップスの火力ではガンツには敵わないものの、アポロの勘の鋭さによる指示でガンツの確実にかわし、呪文の使用を最小限に留めていた。ただ、フォルゴレは逃げ遅れたキャンチョメの盾になって攻撃を度々受けていた。『鉄のフォルゴレ』をノリノリで歌いながら踊ったりしていたガンツの様子にキャンチョメ達も気付いていた。

 

アポロ「キャンチョメの使える術は確か、化けるポルク以外に使える術は小さくなるコポルクと巨大な幻を作り出すディカ・ポルクだったよね」

 

キャンチョメ「そうだけど…」

 

アポロ「僕にいい考えがある」

 

 キャンチョメの使える術を聞いたアポロはその作戦をフォルゴレとキャンチョメに伝えた。

 

フォルゴレ「それなら勝てそうだが、アポロは大丈夫なのか?」

 

アポロ「問題ないよ。ゾフィスの攻撃に比べたら単調でかわしやすいからね。頼むよ」

 

フォルゴレ「任せたまえ!」

 

ウマゴン「メルメルメ~!」

 

ガンツ「ギル!!」

 

 まず、ウマゴンがガンツを挑発してその挑発にガンツが乗り、突っ込んで来た。

 

アポロ「リグロセン!」

 

 刃物付きのロープがガンツのパートナーに襲い掛かった。それをガンツはアムルクで全て振り払った。ガンツがアポロとロップス、ウマゴンに気を取られている隙にフォルゴレはポルクを発動させて壁に化けたキャンチョメと共にガンツのパートナーの背後に回った。

 

フォルゴレ「コポルク!」

 

 次はマッチを持った状態でキャンチョメは小さくなり、マッチを点火させて一気にガンツのパートナーに近づいた。アポロ達に気を取られていたガンツとそのパートナーはキャンチョメに気付かないまま本を燃やされてしまった。

 

フォルゴレ「我々の勝利だ…!」

 

キャンチョメ「僕達、勝ったよ、アポロ!」

 

アポロ「これも、みんなの頑張りのお陰だよ」

 

ロップス「かう!」

 

 本を燃やされたのにも関わらず、ガンツの様子はどこか解放されて嬉しそうな様子だった。

 

フォルゴレ「あの魔物、私達に倒されたのに嬉しそうだったな」

 

アポロ「千年も石版にされて魔界に帰れなかったんだ。故郷の魔界に帰れるのが嬉しかったんだろうね」

 

キャンチョメ「ねえ、また魔界で会えたら、友達になろうね」

 

 嬉しそうに頷いた後、ガンツは消えてしまった。

 

 

 その頃、パティ達女子組とアルム達は激戦を繰り広げていた。

 

ジョン「アクル!」

 

ウルル「アクル!」

 

 ゲリュオスとパティのアクル同士のぶつかり合いになった。このぶつかり合いは、ガッシュとの特訓で鍛えられたパティのアクルが押して、ゲリュオスを吹っ飛ばした。

 

アルム「何っ!?同じ術のぶつかり合いに現在の魔物が勝利しただと!?」

 

パティ「当然じゃない。私達は千年前の魔物の何十倍も強いガッシュちゃんに鍛えられたのよ」

 

コルル「よそ見してたらそっちがやられるよ!」

 

しおり「ゼルク!」

 

 一気にコルルはアルムとの距離を縮めようとした。

 

アルム「呪文だ、人間!」

 

真美子「ネシルガ!」

 

 アルムに接近するコルルの方へネシルガが放たれた。

 

コルル「あ…!!」

 

恵「セウシル!」

 

 コルルの前にセウシルが張られた。

 

ティオ「セウシルを踏み台にして進みなさい!」

 

コルル「うん!」

 

 そのままセウシルを踏み台にしてコルルはネシルガをかわしてアルムに接近戦を挑ん

だ。接近戦を挑まれたアルムは防戦一方だった。

 

アルム「バリアーを踏み台に!?だが、これならどうだ!」

 

真美子「ガンジャス・ネシルガ!」

 

 地中からいくつものエネルギー弾が放たれた。それと同時にパティとティオはパートナーと共に近づき、一緒にジャンプした。

 

ウルル「頼みますよ!」

 

恵「ええ、セウシル!」

 

 空中でセウシルを張ったため、地中という死角をなくす事に成功し、防ぎきる事に成功した。

 

しおり「ゼルルド!」

 

 コルルもゼルルドでガンジャス・ネシルガを回避した。

 

アルム「何なんだ、こいつらのコンビネーションは!」

 

 アルムとゲリュオスはパティ達のコンビネーションにどんどん押されていった。

 

ウルル「ガンズ・アクル!」

 

しおり「ゼラルセン!」

 

恵「ギガ・ラ・セウシル!」

 

 無数の水球と爪がギガ・ラ・セウシルの中で跳ね返り、次々とアルム達を襲った。

 

アルム「ちくしょう!人間、最大呪文だ!」

 

真美子「エグドリス・ネシルガ!!」

 

ジョン「ギガノ・ディオデルク!!」

 

 二つの最大呪文がパティ達に迫った。

 

パティ「こっちも最大呪文よ!」

 

ウルル「はい、スオウ・ギアクル!」

 

しおり「ラージア・ゼルセン!」

 

 ラージア・ゼルセンはエグドリス・ネシルガと相殺され、スオウ・ギアクルはギガノ・ディオデルクを打ち破ってゲリュオスを吹っ飛ばした。

 

アルム「(くそったれ、なんて強さなんだ!ゾフィスの言ってた事と全く違うじゃねえか!現在の魔物は軟弱じゃなかったのかよ…!)」

 

しおり「ゼルク!」

 

 再びコルルは近づいてきた。

 

ジョン「ガルデルク!」

 

 近づいて来るコルルの方へゲリュオスの攻撃が迫った。

 

コルル「よけられ…」

 

ウルル「テオアクル!」

 

 アクルの強化版の呪文、テオアクルでゲリュオスは吹っ飛んだ。

 

パティ「コルル、そのまま突っ込んでいくのよ!」

 

 頷いた後、コルルは再びアルムに近づいた。

 

アルム「どうして…どうしてお前らはそんな阿吽の呼吸で攻撃してきやがる!!くそっ…俺だって……あの戦いの時のように……がパートナーなら、もっと…。くそおっ、こうなったら、後ろでふんぞり返っているガッシュを狙ってやる!人間、最大呪文だ!!」

 

真美子「エグドリス・ネシルガ!!」

 

ジョン「ギガノ・ディオデルク!!」

 

 アルムとゲリュオスの最大呪文がガッシュと清麿に迫った。

 

アルム「どうだ、俺達の最強呪文を避けるか?それとも、そのまま受けるのか?」

 

 しかし、清麿とガッシュは動じなかった。

 

清麿「ガッシュ、少し俺達の力もあいつらに見せる必要があるようだな」

 

ガッシュ「ウヌ」

 

アルム「(なぜ、他の奴等は何もしねえんだ?)」

 

清麿「ザケルガ!」

 

 前の戦いでは覚醒前のバオウでエグドリス・ネシルガを破るのだけで精一杯だった。しかし、今回はザケルガでエグドリス・ネシルガはおろか、ギガノ・ディオデルクさえ簡単に破り、アルムとゲリュオスを吹っ飛ばした。

 

アルム「(ちくしょう…、俺達の最大呪文が中級レベルの呪文に為す術もなく破られるなんて…。あいつらの言う通り、ガッシュが動いてたら俺達はすぐにやられてただろうな…)」

 

清麿「悪い、敵が俺達に攻撃してきたから応戦する形になってティオ達が倒すはずの魔物を倒してしまって…」

 

恵「いいのよ。お陰で心の力もだいぶ温存できたし」

 

ウルル「敵の本はしっかり確保しましたよ」

 

 ウルルとしおりはアルムとゲリュオスの本を確保していた。

 

しおり「さぁ、本を燃やしましょう」

 

清麿「待ってくれ。あいつらと話をさせてくれないか?」

 

恵「話?」

 

 ガッシュと共に清麿はアルムとゲリュオスに近づいた。

 

アルム「何をしてるんだ…、早く本を燃やせ…」

 

清麿「なぁ、お前達…俺達と一緒にゾフィスを倒してくれないか?」

 

アルム「何だと…?」

 

ガッシュ「悪いのはゾフィスなのだ。ゾフィスに従うのが嫌ならば、私達と一緒に戦えぬのであってもここを出るのだ。魔界に帰ってはならぬ。魔界に帰れば」

 

アルム「そいつは無理な相談だ。ゾフィスには逆らえねえんだよ…!」

 

清麿「石に戻されるからだな?」

 

アルム「そうだ…戻されかけるのを見たんだ…ゾフィスに逆らおうとした奴だ…」

 

清麿「だがな…石の術を使えるのはゴーレンなんだよ。ゾフィスじゃねえんだ。本当にお前達の封印を解いた月の光は屋上にある月の石の光と同じか?」

 

恵「(清麿君は何の話をしているの…?)」

 

アルム「月の光だと!?なぜそこまで…」

 

清麿「俺には魔界に詳しい情報通がいるからな…」

 

 清麿はちらりとガッシュの方を見た。

 

アルム「それでもダメなものはダメだ。なぜなら…仲間が遺跡でゴーレンを見たそうだからな…」

 

 アルムの『仲間がゴーレンを見た』という話に清麿達は驚きを隠せなかった。

 

パティ「た、確かゴーレンって…」

 

コルル「ガッシュが言ってた千年前の魔界の王を決める戦いで40体もの魔物を石にした魔物だよ!」

 

ティオ「そんな魔物がまだ生きて人間界にいたなんて…」

 

ガッシュ「ゴーレンだと!?その話は本当なのか!?」

 

アルム「俺はその話はまだ半信半疑だが、仲間が見たと言っていた。それも、張りぼてでも幻でもねえ本物だそうだ。俺達を石にした張本人がもし、ゾフィスとつるんでいたら、石にされる恐怖がまた蘇って俺達は逆らえねえんだよ…」

 

清麿「(石版にした張本人がいたんじゃ、あいつらがゾフィスに逆らえないのも無理はないか…)」

 

ガッシュ「だが、魔界に帰れば消えてしまうのかも知れぬのだぞ!」

 

恵「(消える…?)」

 

 ガッシュは王の特権の事を話した。清麿とコルルとしおりはその話を聞いていたが…ティオと恵、そしてアルム達は動揺を隠せずにいた。

 

アルム「それでも、石に戻されるのは嫌なんだ!本を燃やしてくれ!」

 

ガッシュ「だが」

 

清麿「…ガッシュ、あいつらを魔界に帰してやろう…。あいつらは千年も人間界に辛い思いをしてきたんだ…。それに…本物のゴーレンがいるようなら、また石版にされるという恐怖がつきまとい続ける…」

 

ガッシュ「ウヌ……」

 

清麿「SET…ザケル…」

 

 やむなく、ガッシュ達はアルム達の本を燃やす事にした。

 

アルム「……俺達はまた石にされるのも消えるのも嫌なんだ…。だから…、俺達の命、お前達に預けたからな…。だから絶対に…負けんじゃ…ねえぞ…」

 

 やがて本が燃え尽き、アルム達は魔界へ帰った。

 

ティオ「…ねえ、魔界の王の特権って…嘘…だよね…?」

 

ガッシュ「…本当なのだ」

 

コルル「私も前に聞いたよ…」

 

しおり「ええ。あの時にね…」

 

恵「それじゃあ、もしティオが負けたら…」

 

ティオ「嫌、ヤダ…考えたくない!!」

 

 本来ならば、人間界に残っている魔物の子が10人にならなければ知らされない情報をガッシュによって早期に知ってしまったため、ティオと恵は激しく取り乱してしまった。

 

恵「清麿君、ティオが魔界に帰るだけならともかく、消えるなんて考えたら私、私…!」

 

清麿「恵さん、落ち着いて!俺だって…ガッシュが消えるのは想像したくもないんだ!(こうなるからあまり王の特権の事は行ってほしくなかったんだよなぁ…)」

 

 涙ながらに激しく取り乱した恵を清麿は優しく抱き締め、落ち着かせた。

 

ティオ「だって、だって…え?それじゃあ…もし悪い奴が王様になったら私も消えちゃうじゃない!!」

 

ガッシュ「そうならないよう、今はゾフィスを倒すべく力を合わせているのだ」

 

ティオ「でも、でも…どうしてガッシュは平気なの!?怖くないの!?」

 

しおり「ティオ、ガッシュ君を責めちゃ…」

 

ガッシュ「怖いに決まっておろう」

 

ティオ「……」

 

ガッシュ「だからティオやコルル、パティとロップスとキャンチョメとも一緒に戦っておる。ティオ、怖いのは一緒なのだ。だから……」

 

パティ「ちょっとちょっと、何を暗い感じで話してるの?」

 

ティオ「パティ、あんた、王の特権を聞いてないの?」

 

パティ「聞いたわよ」

 

ティオ「だったら怖くないの?」

 

パティ「私だって消えるのなんて考えたくもないし、怖いわ。だけどね、怖いからっていつまでも立ち止まっててもどうにもならないじゃない。消えるかもしれないって言っても、悪い奴を全員やっつければ私達が消えるなんて事はなくなるのよ。だから、前向きに行きましょ」

 

コルル「前向きに…そうだね!」

 

ガッシュ「ティオ、いつまでも立ち止まらずに前に進もうではないか」

 

ティオ「…そうね。今回はパティに一本取られちゃったわね」

 

 パティの前向きな姿勢に暗いムードが変わっていった。

 

恵「前向きに…。そうね、いつまでもこうしてはいられないわ。清麿君…その…私を落ち着かせてくれてありがとう…」

 

清麿「い、いや、その…恵さんが悲しんでいるのを放っておけなくて…」

 

しおり「2人共相変わらずね」

 

ウルル「そうですね…」

 

???「そっちは終わったみたいだね」

 

 声と共にアポロ達が洗脳が解けたガンツのパートナーと共に来た。

 

清麿「アポロ、大丈夫だったか?」

 

アポロ「大丈夫だよ。僕とロップスは敵の攻撃をほとんどかわしまくってたからね」

 

ウルル「でも、フォルゴレがやけにボコボコになってるようですけど…」

 

フォルゴレ「ちょっと敵にやられてね…」

 

アポロ「キャンチョメの盾になった関係でフォルゴレはボコボコになったんだ。でも、キャンチョメがいたからあまり呪文を使わずに済んだよ」

 

キャンチョメ「どうだい、僕は凄いだろう?」

 

アポロ「でも、キャンチョメの力はチームで発揮されるものだから自信過剰は禁物だよ」

 

キャンチョメ「褒めた後の注意はちょっと落ち込むな…」

 

アポロ「さ、洗脳が解けたパートナーにどこに行けばいいのか教えようか」

 

清麿「そうだな」

 

 洗脳が解けた真美子、ジョン、ビリーの3人を指定の場所へ行くように清麿達は伝えた。




これで今回の話は終わりです。
今回はデボロ遺跡突入とデボロ遺跡での最初の戦いであるアルム達との戦いを描きました。
アルム達の言っていたゴーレンの話は既にガッシュによって詳細が判明してしまっている月の石に代わって今小説の石版編の重要な謎になります。
次はいよいよおバカだけどとても強いネタキャラ、ビクトリームが登場します。


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LEVEL28 Vの衝撃

デボロ遺跡

 月の石がある部屋では石版から解放された千年前の魔物の中でも最強と言われているデモルトがパートナーのヴァイルと共に佇んでいたが、どうも退屈していた様子だった。

 

デモルト「退屈だ…、暴れるか動き回りたいぞ…」

 

ヴァイル「なら、少し散歩でもしてみるか?」

 

???「どこへ行かれるのですか?」

 

 そこへ、ゾフィスが来た。

 

ヴァイル「デモルトが退屈しているんだ。少しぐらい散歩にでも行っていいか?」

 

ゾフィス「まぁ、いつまでも運動せずにここにいるのは退屈でしょうからいいでしょう。その間、誰を代わりにここの見張りをやらせますか?あなた達の指名でよろしいですよ」

 

ヴァイル「そうだな…ベルギムかツァオロン辺りにでも任せておけばいいだろうな」

 

ゾフィス「わかりました。どっちにするかは私が判断します。では、気のすむまで運動してきていいですよ」

 

 ベルギムを連れてきた後、デモルトとヴァイルは降りていった。

 

ゾフィス「(頼みますよ…、もし、散歩中に侵入者でもいたら排除をお願いします…)」

 

 遺跡のある広間では千年前の魔物達が待機していた。その中には、前の戦いでガッシュに協力してくれたレイラと、デボロ遺跡での戦いでは終始敵だったのにも関わらず、クリアとの戦いで何故か手を貸してくれたビクトリームの姿があった。

 

ビクトリーム「ほう…あの侵入してきた力…生き残ったか…こいつは楽しみができた…」

 

レイラ「どこへ行くの?一人で行動しちゃいけないのよ」

 

ビクトリーム「何、少し下の方で物音がしたから、その様子を見てくるだけさ」

 

レイラ「そう…ならいいわ。私はここでお遊びをしてる」

 

ビクトリーム「(悪いな…こんな楽しみ、てめえらに分けてたまるか…あいつらは俺が楽しむのよ…。このビクトリーム様の餌食としてな…)」

 

 そのままビクトリームは下に降りていった。

 

 

 

 アルム、ガンツ、ゲリュオスとの戦いを終えた後、一同は清麿の指示(実際はガッシュの記憶)を頼りに、テラスへと登ってきた。

 

コルル「うわあ…空が見えるよ!」

 

アポロ「ふぅ、ここなら見通しもいいし、心身ともに休めそうだね」

 

ロップス「かう!」

 

 テラスについた一行はリラックスしていた。

 

パティ「ずっと薄暗い地下にいたからこんな所はもう最高よ!」

 

キャンチョメ「みんな見てよ、水だ、水が流れてるぜ」

 

フォルゴレ「だが、飲んでいいのか?」

 

清麿「これはこの遺跡の水道で、自然の湧き水を利用してるからそのままでも飲める」

 

ウルル「生水ですし、たくさんはダメでしょうね…」

 

パティ「アクルを使うまでもなかったわね…」

 

恵「(パティの術の水って飲めるのかしら…?)」

 

清麿「とりあえず、恵さん達はだいぶ温存したとはいえ、心の力を割と使ったから、呪文がフルに使えるようになるまで休もう」

 

 一同は水を飲んだり、顔を洗ったりしていた。

 

コルル「気持ちいい」

 

キャンチョメ「へへ、おいしいや」

 

ウマゴン「メルメルメ~」

 

キャンチョメ「なぁ、そうだろう、ガッシュ」

 

ガッシュ「ウヌゥ、気持ちがいいのだ」

 

 素っ裸になって水浴びをしているガッシュにキャンチョメとウマゴンとコルルは吹いてしまった。

 

パティ「いやん!素っ裸のガッシュちゃんも素敵!」

 

ティオ「嫌っ、何してるのよ、ガッシュ!みんなが飲む水が汚くなるでしょ!ってパティ、素っ裸のガッシュを見ても何とも思わないの!?」

 

パティ「そうよ。だって、この姿のガッシュちゃんも素敵なんだから…!」

 

ガッシュ「ウヌ?しかし、みんなも泳げば気持ちがいいぞ」

 

コルル「そうかも知れないけど、素っ裸はよくないよ!」

 

ティオ「いいからそこを動かないで!恵、しおり、上流よ!上流で水を汲むのよ!」

 

恵「はいはい…」

 

ティオ「ガッシュ、いつまで入ってるのよ!早く上がりなさい!」

 

ガッシュ「よいではないか。のう、恵、しおり」

 

ティオ「うわああっ、ダメ、恵!レディがこっち見ちゃダメよ!」

 

しおり「ティオも大変ね」

 

恵「そうね。あ、みんなでメロンを食べましょう」

 

フォルゴレ「メロン?」

 

パティ「言っておくけど私、甘い物にはうるさいわよ」

 

恵「このメロンは結構おいしいのよ」

 

清麿「さ、みんなでメロンを食べよう。恵さん、切り分けをお願いします」

 

恵「任せて」

 

 みんなでメロンを食べる事になった。メロンは恵が持って来た果物ナイフで切り分けた。そのメロンをみんなでおいしく食べた。

 

パティ「ああ、私の舌を唸らせるほどの甘さ…最高じゃない!」

 

ウルル「とてもおいしいですね」

 

ガッシュ「(メロン…見てるとあの者を思い出すのう…)」

 

アポロ「ガッシュはメロンが嫌いなのかい?」

 

ガッシュ「嫌いではないのだ」

 

 そんな所へビクトリームが来た。

 

ビクトリーム「ビクトリ~~ム!」

 

パティ「ガッシュちゃ~~ん、口移ししましょ~」

 

ティオ「恵、やけ食いよ!」

 

恵「あんまりないのよ…」

 

コルル「しおりねーちゃん、メロンおいしいね」

 

 しかし、一同はメロンを食べるのに夢中で無視された。

 

ビクトリーム「ビクトリ~~ム!」

 

 またしても無視された。

 

ビクトリーム「…………ブルアアアアアア!!!」

 

 無視された事でビクトリームの怒りはあっという間に頂点に達した。これに、ようやく一同もビクトリームの存在に気付いた。

 

フォルゴレ「うわああっ、敵だ~~~っ!!」

 

ビクトリーム「私を散々無視しやがって!私の名はビクトリーム、華麗なるビクトリーム様だ!!今からお前達を冥途に送ってやる!」

 

モヒカン・エース「マグルガ!」

 

清麿「ラシルド!」

 

 美しき?Vの字のビームが発射された。しかし、王族の力が目覚めたガッシュのラシルドであっさり跳ね返された。

 

ビクトリーム「何っ!?我が術を跳ね返してきただと!?(だが…いつ見ても美しいVだ…)」

 

 跳ね返された自分の攻撃に見とれてビクトリームは跳ね返されたマグルガを受けて吹っ飛ばされた。

 

ビクトリーム「ブルアアアアアッ!!クソ…我が攻撃に見とれたわ…」

 

アポロ「(自分の攻撃に見とれるなんてどうかしてるんじゃないかな…?)」

 

清麿「みんなはそのまま休んでくれ。ここは俺に任せるんだ」

 

フォルゴレ「何だか、強そうだけど大丈夫なのかい…?」

 

清麿「ああ。それに、ガッシュの術の威力は飛びぬけて高いんだ。それに、俺はさっきの戦いでは1回しか呪文を使っていないし、千年前の魔物との戦いの前に心の力を高める特訓を重ねてきたんだ。だから、大丈夫だ」

 

恵「無理はしないでね」

 

ビクトリーム「そこの前に出てきた奴以外はろくに呪文も使えないんだろう?」

 

清麿「言っておくが、ガッシュはかなり強いぞ。大概の千年前の魔物なら1発で倒せるんだからな」

 

ガッシュ「清麿。あの者はとてつもなく強いのだ…」

 

清麿「あのYがか?」

 

ビクトリーム「ベリーーシット!!Vだ!我が華麗なるVを侮辱するとは許さん!分離せよ、我が美しき頭部よ!」

 

 ビクトリームの頭部が体から分離した。

 

パティ「どうなってるのよ!頭と体が分離したわ!」

 

ウルル「呪文を使ってないので恐らく、元からあの魔物が持っていた能力なのでしょう」

 

ビクトリーム「視界良好。我が体はVの体勢で待機せよ!」

 

清麿「(何の意味があるんだ…?)」

 

ガッシュ「(いつ見てもかっこいいのだ…)」

 

ビクトリーム「荘厳回転3・6・0!加速、加速、加速、加速!!」

 

しおり「どんどん速くなってるわよ…!」

 

アポロ「(あの意味はわかる!まずい!!)」

 

清麿「みんな、ガッシュの後ろに!」

 

ティオ「えっ、私じゃないの!?」

 

恵「何か清麿君に考えがあるかも知れないわ。いう通りにしましょう!」

 

 清麿の言う通り、みんなはガッシュの後ろに集まった。

 

モヒカン・エース「マグルガ!」

 

 回転したまま無差別に攻撃を始めた。ガッシュはマントを巨大化させてマグルガをガードした。

 

フォルゴレ「ガッシュのマントにこんな力があったなんて…!」

 

清麿「まあな」

 

ビクトリーム「ふはははっ!こんな変ちくりんなマントでどこまで防げるかなぁ?」

 

 その後もビクトリームはマグルガを乱射し続けた。

 

ビクトリーム「部屋の壁、大破!テラス、粉砕!床、爆裂!天井、崩落!我が体、撃沈!!ブルァアアアッ!!」

 

 マグルガが分離してVの体勢で待機していた自分の体に当たって自滅し、ビクトリームの頭部は落ちてしまった。

 

清麿「(あいつ…バカだな…)」

 

ビクトリーム「くうっ、ミスったぁ…。貴様達、もう許さ」

 

 ところが、ビクトリームの視線に飛び込んだのはフォルゴレが持っていたメロンだった。

 

ビクトリーム「メロン…メロン…!」

 

ガッシュ「(メロン?あっ…!)」

 

 その時、ガッシュは思い出した。クリアとの戦いでなぜか仲間面して現れ、メロンの種を持って帰るようビクトリームが頼んだ事を。メロンを見たビクトリームはまるで飢えた獣の如く、メロンを食べようと走り出した。

 

キャンチョメ「うわあああっ、こっちに来たよ!」

 

フォルゴレ「どうしよう!!」

 

清麿「まだそんな力があったのか!こうなったら…!」

 

ガッシュ「いや、清麿。そのままにしてよいかも知れぬ」

 

清麿「どうしてだ?」

 

ガッシュ「それは…」

 

 ガッシュはビクトリームがメロンをこよなく愛する事を教えた。

 

清麿「そういう事だったのか…(だったら、メロンであいつを仲間に引き込めそうだな…バカだし…)」

 

 ビクトリームが近寄ったため、キャンチョメとフォルゴレは怯えた。

 

ビクトリーム「お前達…、持っているメロンを私に食わせろ…」

 

キャンチョメ「メロン…?」

 

フォルゴレ「わかりました。それではどうぞ、お召し上がりください、華麗なるビクトリーム様」

 

 差し出されたメロンをビクトリームは眺めた。そして、匂いを嗅いだ後、皮以外を隅々まであっという間に食べ尽した。そして、歌いながら踊り始めた。

 

アポロ「(何が始まるんだ?)」

 

ビクトリーム「キャッチ・マイ・ハート!ベリーメロン♪」

 

魔物の子一同「ベリーメロン♪」

 

ビクトリーム「キャッチ・マイ・ハート!ベリーメロン♪」

 

魔物の子一同「ベリーメロン♪」

 

ビクトリーム「お口にとろける~ベリーメロン♪」

 

魔物の子一同「ベリーメロン♪」

 

ビクトリーム「ワンツー、ワンツー、ベリーメロン♪」

 

魔物の子一同「ベリーメロン♪」

 

ビクトリーム「ブルァアアッ!ブルァアアッ!ベリーメロン♪」

 

魔物の子一同「ベリーメロン♪」

 

ビクトリーム「おかわりだ♪」

 

清麿「で、満足したか?」

 

ビクトリーム「満足したとも。お陰でパワー全開でお前達をぶちのめしてやるぞ!」

 

清麿「そうしたらメロンが一生食べられなくなるぞ」

 

ビクトリーム「メ、メロンが一生食べられなくなる…?ブルァアアアッ!私はぁどうすればよいのだ!」

 

清麿「じゃあ、俺達の仲間になれ。そうすれば、お前の大好物のメロンが食えるぞ」

 

ビクトリーム「お前達の仲間になればメロンを……」

 

清麿「(どう動く…まさか、俺達を潰す気に変わりないとでもいうのか…?)」

 

ビクトリーム「……よかろう、お前達の仲間とやらになろうではないか」

 

恵「思ったよりも上手くいったわね…」

 

アポロ「でも、ビクトリームの強さはともかく、かなり性格に癖があるからまとめる清麿の苦労も半端じゃないだろうね…」

 

しおり「あの魔物、石板に戻るのが怖くないのかな?」

 

パティ「それだけバカという事じゃないかしら?」

 

ウルル「確かにそうですね…」

 

ビクトリーム「では、もう一度行くぞ!」

 

 またメロンを食べた後、ビクトリームはベリーメロンを歌い始めた。それにガッシュ達も楽しそうに歌いながら踊ったのであった。パートナー達も一緒に踊ったり歌う中、清麿は取り残されていた。

 

清麿「一体、いつまでやるんだ…?」

 

 ただ一人、清麿は楽しく歌ったり踊るビクトリームとガッシュ達に唖然としているのであった。

 

 

 

 一方、広間ではビクトリームが戻って来ない事にレイラが不審に思い始めた。

 

レイラ「……ビクトリーム、遅いわね…下で何かあったのかしら?」

 

 そこへ、大きな足音と共にデモルトが姿を現した。そのせいで広間にいた魔物、ダルモスが起きた。

 

ダルモス「誰だ?俺を起こしたのは?」

 

レイラ「あの魔物は…デモルト…!月の石の見張りをやってたんじゃなかったの?」

 

デモルト「見張りをずっとやるのも退屈で散歩しに来たんだ、今の見張りはベルギムに任せてある。おい、ちょっと散歩で下に降りてみないか?もしかしたら、侵入者がいるかも知れないぞ」

 

ダルモス「侵入者がいたらブチのめすだけだ。行こうぜ!」

 

レイラ「それより、ビクトリームはどうなったのかしらね?」

 

ダルモス「あのバカの事だ。どうせやられたんだろうぜ。デモルト、いちいち降りるのも面倒だから床をぶっ壊して降りようぜ」

 

デモルト「任せろ。俺もそう思ってた所だ」

 

 デモルトは飛び上がった後、勢いよく着地して床を崩し、レイラとダルモスを引きつれて降りていった。ガッシュ達は前の戦いよりも早くデモルトと戦う事になろうとしていた。




これで今回の話は終わりです。
ビクトリームは原作でもアニメでも面白かったので仲間入りさせる事にしましたが、千年前の魔物同士では呪文を唱えられないため、役に立つのは当分先になります。
次はウマゴン初戦闘回ですが、それと同時にデモルトも前倒しで出てきます。


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LEVEL29 ウマゴン、初めての戦い

デボロ遺跡

 ガッシュ達は新たにビクトリームを仲間に加え、先へ進もうとしていた。

 

ビクトリーム「さぁ、お前達、この華麗なるビクトリーム様の後に続くのだ!」

 

フォルゴレ「はは~~~っ!」

 

清麿「(バカだから話聞かねえだろうし、突っ込んでも無駄か…)」

 

 テラスを出ようとしたその時、大きな地響きがして天井が崩れ、瓦礫がガッシュ達に落ちてきた。

 

ビクトリーム「ブルァアアッ!!」

 

フォルゴレ「どわぁぁっ!!」

 

恵「きゃっ!」

 

 瓦礫はビクトリームの頭に当たり、ビクトリームは気絶した。他にも瓦礫が何人かに当たってしまった。

 

フォルゴレ「ああ、華麗なるビクトリーム様が!」

 

清麿「(早々に気絶してどうするんだ…)それよりみんな、大丈夫か?」

 

アポロ「僕とロップスは瓦礫には一切当たってないから大丈夫だよ」

 

恵「私も…うっ!」

 

ティオ「どうしたの?恵!」

 

 恵が立とうとした途端、痛そうにしたため、ティオが恵の足を見てみると、恵は足を怪我していた。

 

ティオ「清麿、恵が足を怪我したみたいよ!」

 

 清麿は恵の足の怪我がどれほどのものか見てみた。

 

清麿「この怪我は…さっきの瓦礫が当たったせいでできたかもしれない…」

 

恵「大丈夫…、歩けるから…」

 

清麿「この怪我じゃ無理をして歩いてはいけない。応急処置でもしないと…」

 

???「お前らが侵入者か?」

 

 崩れた天井からデモルト、ダルモス、レイラがパートナーと共に降りてきた。

 

ガッシュ「(まさか、デモルトがこんなにも早く出てくるとは…!)清麿、あの悪魔のような魔物はデモルトと言って、石版に封印された千年前の魔物の中でも最も強い!」

 

清麿「何だって!?そんな奴が俺達を仕留めに来たとでもいうのか!」

 

ダルモス「ビクトリームはどこへ行ったんだ?」

 

レイラ「あそこ」

 

 気絶してフォルゴレが背負っているビクトリームとモヒカン・エースの姿があった。

 

ダルモス「あの野郎、俺達を裏切ったな」

 

デモルト「ふん、そんなのは俺は知った事じゃねえ。それより、てめえらが現在の魔王候補か。強そうに見えねえ奴等ばかりだな」

 

清麿「見た目で判断したら痛い目に遭うかも知れないぞ」

 

ヴァイル「ガキの癖に舐めた態度をとってくれるじゃねえか。ぶっ飛ばしてやろうぜ!」

 

コルル「あのパートナー、喋ったよ」

 

しおり「恐らく、ガッシュ君が言ってたゾフィスに協力的な操られていないパートナーでしょうね」

 

アポロ「清麿、これからどうする?」

 

清麿「このまま戦い続けたら仲間がどんどん来る可能性もあるからまずい!ここは一旦、休息も兼ねて退こう。アポロはフォルゴレ達と一緒に先に行ってくれ。俺はデモルトを倒してから恵さん達と一緒に行く」

 

アポロ「あのデモルトとかいう魔物に勝てる勝算はあるのかい?」

 

清麿「ああ。十分にある」

 

アポロ「わかった。必ず僕達に追いつくんだ、清麿」

 

パティ「あんな奴にやられないでね、ガッシュちゃん!」

 

 アポロはフォルゴレ達を連れて先に行った。

 

しおり「ウマゴン、何をやってるの!早く逃げるわよ!」

 

ウマゴン「メ、メル…」

 

清麿「ウマゴン、早くアポロ達と一緒に逃げろ!ここは俺とガッシュに任せるんだ!戦いが本当に嫌いなお前がよくついて来てくれた!」

 

ウマゴン「メル…」

 

清麿「そうだ、お前は優しい奴だ…だから戦いが…争い自体が嫌いだった…。お前が俺にだけ懐かない本当の理由、それは…俺という本の使い手がいるから…俺がいるせいで大好きなガッシュが戦いをするからだ!そうだろ?ウマゴン…」

 

ガッシュ「(清麿…)」

 

清麿「さぁ、行け、ウマゴン!今までありがとう…」

 

ウマゴン「メ…メルメルメ~~!!」

 

 ウマゴンはしばらく躊躇した後、走ってアポロ達の方へ行った。

 

ダルモス「おい、逃げた奴等は俺とレイラが仕留めていいだろ?」

 

ヴァイル「好きにしろ。ただし、この場にいる奴等はデモルトの餌食だ」

 

ガッシュ「そうはさせ」

 

デモルト「よそ見してんじゃねえ!てめえらは俺がぶっ潰す!」

 

 デモルトのパンチをガッシュは何とかかわした。その間にダルモスとレイラはアポロ達を追った。

 

清麿「(デモルト自体は今のガッシュの圧倒的な火力でどうにかなりそうだが…、足を怪我して動けない恵さんは絶好の的になってしまう…。仕方ない…!)」

 

 考えた後、清麿は恵の元に来た。

 

ティオ「清麿、恵は足を怪我して動けないの。どうするの?」

 

清麿「…俺が恵さんを抱える」

 

恵「清麿…君…」

 

 しばらく見つめてお互いに恥ずかしがった後、清麿は恵をお姫様抱っこした。

 

恵「ちょ、ちょっと清麿君…。その…」

 

清麿「その…恵さんが足を怪我してるから…、どうしても…こうするしかないと思って…」

 

デモルト「てめえら、俺達をほったらかしにして何をイチャついてやがる!!」

 

 自分達を無視していい雰囲気になっている清麿と恵にデモルトが地団太を踏みながら怒りの突っ込みを入れた。

 

ヴァイル「怪我人なんざほっとけばよかったものを」

 

清麿「生憎、俺達はそれはできないんだ。お前達をあっという間に叩きのめしてやる!」

 

デモルト「生意気な口を叩きやがって!」

 

 早速、デモルトは突っ込んできた。

 

ティオ「どう戦うの?」

 

清麿「俺は恵さんを抱えているからいつもより機敏に動けない。だから、ティオは俺達を守るためにも絶対に俺達の傍を離れてはいけない!それと、恵さんには手が塞がっている俺の代わりにSETの指示をガッシュにしてほしい」

 

恵「SET?清麿君がやってた指をさす指示の事ね。ガッシュ君、今回は私の指をさした方向に顔を向けて」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

ヴァイル「ラギアント・ジ・ゼモルク!」

 

 デモルトの右腕の角が大きく変化し、特大の門柱が連続で撃ちだされた。

 

恵「SET!」

 

清麿「マーズ・ジケルドン!」

 

ティオ「恵!」

 

恵「マ・セシルド!」

 

 恵のSETでも迷わずにガッシュは指差した方を向けた。そして、息を合わせて清麿はマーズ・ジケルドンを発動させた。攻撃範囲の都合上、清麿達の近くに飛んできた門柱はマ・セシルドで防御した。前の戦いではデモルトの攻撃に耐えられなかったが、今回は鍛えられていた事とマーズ・ジケルドンによって弾かれて勢いが弱まっていたため、何とかヒビが入った程度で済んだ。放たれたマーズ・ジケルドンは飛んでくる門柱を弾きながら、そのままデモルトに直撃してデモルトはマーズ・ジケルドンに取り込まれた。

 

デモルト「何だ、こりゃ?ルオオオオッ!!」

 

 何も知らずに動こうとしたため、、マーズ・ジケルドンに取り込まれたデモルトに電撃が走った。

 

ヴァイル「(な、何なんだ?あの赤い球体は?)」

 

 マーズ・ジケルドンのからくりは初めて見た事もあり、ヴァイルにはわからなかった。電撃を浴び続けた挙句、清麿がマーズ・ジケルドンを解除した時にはデモルトはふらふらになっていた。

 

清麿「ガンレイズ・ザケル!」

 

 手が塞がっている清麿に代わって清麿に抱えられている恵がガッシュを抱えて電撃弾のルートを確保した。電撃弾が次々とデモルトに当たった。

 

清麿「追撃をかけるぞ!ラウザルク!」

 

ガッシュ「ヌオオオッ!!」

 

 今度はラウザルクを発動させた。身体能力が上がったガッシュは一気にデモルトに接近し、格闘戦でデモルトを圧倒した。

 

ヴァイル「(どうなってるんだ…!デモルトが一方的に押されている…!)」

 

デモルト「ちくしょう!こんなチビに手も足も出ねえなんて!!」

 

 何度もガッシュのパンチやキックを受け、デモルトは倒れ込んだ。それと同時にラウザルクの持続時間も切れた。

 

清麿「デモルトが倒れ込んだのは好都合だ。ザグルゼム!」

 

 倒れ込んだデモルトの腹の上に乗った後、デモルトに向けてガッシュの口から赤い球体が放たれてデモルトに当たった。当たった箇所は光った。

 

ティオ「あれは何の呪文なの?」

 

清麿「見ていればわかる。ザグルゼム!」

 

 再びザグルゼムがデモルトに当たり、また光った。それと同時にデモルトは起き上がり、ガッシュはその場を離れた。

 

デモルト「調子に乗るんじゃねえぞ、チビが!」

 

ヴァイル「ディオエムル」

 

清麿「チェックメイトだ!テオザケル!」

 

 ヴァイルより早く清麿はテオザケルを発動させた。

 

デモルト「ルオオオオッ!!!」

 

 テオザケルがデモルトに直撃すると、ザグルゼムの連鎖反応と合わさって威力はさらに上がり、その威力に耐えられなくなったデモルトは倒れ込んでしまった。

 

ヴァイル「くそっ、俺達はまだ月の石を守らなきゃならねえ!こんな所で本を燃やされてたまるかよ!」

 

 あまりのガッシュの強さに恐れをなしたヴァイルは逃げてしまった。

 

ティオ「(凄い…、デモルトをこんなにもあっさり倒しちゃうなんて…)」

 

恵「ガッシュ君ってこんなにも強かったのね」

 

清麿「確かにガッシュは強いが、こんな状況下でデモルトを倒せたのは俺と恵さんが息を合わせてガッシュに的確な指示を出したお陰だ。それより、デモルトのパートナーは?」

 

 辺りを見回したが、既に逃げていた事に気付いた。

 

ガッシュ「逃げられてしまったのう…。ん?」

 

 ヴァイルがいた場所の近くに月の石が入ったビンが落ちていた。

 

ガッシュ「清麿、月の石なのだ!」

 

清麿「多分、デモルトのパートナーが逃げる際に落としたんだろうな。それを持ってきて恵さんの足に近づけてくれ」

 

 ビンを持って来た後、清麿が瓦礫に座ってからガッシュは持ってるビンに入っている月の石を取り出して怪我をしている恵の足に近づけた。すると、恵の怪我はみるみる治っていった。

 

ティオ「綺麗だったわ、あの石の光…!」

 

恵「怪我も治ったし、力も湧いてくるわ」

 

 試しに恵は歩いてみたが、怪我が治って痛みもなくなっていた。

 

恵「もう歩けるから大丈夫よ」

 

清麿「今からアポロ達と合流しよう!」

 

 アポロ達の元へガッシュ達は急いだ。それをある男が見ていた。

 

男「ふふふ…、2人が育む愛は素晴らしい…。あの2人は極上の芸術品になりそうだ…」

 

 

 

 その頃、アポロ達はダルモスとレイラから逃げていた。

 

アポロ「清麿が言ってたウマゴンが清麿に懐かない理由は何なんだ?」

 

しおり「はっきりとした事はわからないんだけど、ウマゴンは戦っているガッシュ君を見たくないからだと思うわ。ウマゴンはガッシュと大の仲良しで戦いが嫌いだから、ガッシュ君の本の持ち主の清麿君がいると大好きなガッシュ君が戦うから、清麿君に懐かなかったのよ」

 

コルル「それに、ウマゴンは本の持ち主を探す時はしおりねーちゃんと会う前の私のように本の持ち主が見つかってほしくなかったみたいだったの」

 

アポロ「なるほど。ウマゴンは争いのできない優しい性格だから清麿に懐かなかったのか…」

 

しおり「だけど、ウマゴンは今回、私達の役に立ちたいからついてきてくれたわね。本当によく頑張ってくれたわ」

 

コルル「あれから、ウマゴンの本はどこに行ったのかな?」

 

エリザベス「ベギルセン!」

 

 ダルモスの攻撃をかわしながらアポロ達はある部屋に来た。しかし、砂の部屋であったため、一同は進むのに苦労した。

 

アポロ「(ここは進みづらいな…。このままだと、あいつらから逃げ切れるかどうかわからない。だったら…)みんな、まだ心の力が全快ではないが、戦うしかない!」

 

ウルル「ウマゴンはどうするんですか?」

 

アポロ「ウマゴンだけでも先に逃げてもらおう!ウマゴン、君だけでも先に逃げるんだ!」

 

ウマゴン「メ、メル…!」

 

しおり「あなたはよく頑張ったのよ。私達も後で追いつくから、先に逃げるのよ」

 

ウマゴン「メル……」

 

 しばらく考えてからウマゴンは先に逃げて行った。

 

ダルモス「ふん、あんなウマ1匹ぐらいは逃がしても問題ないだろうな。残りの奴等は逃がさねえけどな…」

 

 ダルモスはアポロ達に襲い掛かった。

 

 

 

 

 その頃、ガッシュ達はアポロ達と合流するため、これまで通ったルートを急いで引き返していたが、アポロ達は見つからなかった。

 

清麿「アポロ達はどこへ行ったんだ!?」

 

恵「もしかして、来たルートとは別のルートに行ってしまったのかも知れないわ…」

 

???「君達はどこへ行くんだい?」

 

 声がした方を向くと、そこにはウマゴンと傍にいる男がいた。

 

清麿「あなたは…?」

 

 

 

 

 アポロ達はダルモスのパワーとスピードに苦戦していた。

 

アポロ「(こんなにスピードがあっては普通にディノ・リグノオンを使ってもかわされるだろうな…)」

 

ダルモス「おい、レイラも突っ立ってねえで戦え!」

 

レイラ「そうね」

 

 レイラはスティックをアポロ達に向けた。

 

アポロ「(攻撃が来る!)みんな、避けるんだ!」

 

フォルゴレ「えっ?」

 

アルベール「ミグロン!」

 

 レイラの攻撃をアポロ達はよけようとした。しかし、アポロ達の方へは行かず、壁の方を破壊した。

 

しおり「壁を破壊した?」

 

キャンチョメ「狙いを間違えたんじゃないかな?」

 

アポロ「(いや、あの魔物はわざと僕達に当たらないように外したみたいだ…)」

 

ダルモス「何をしている?」

 

レイラ「ええ、今度こそ当てるわ。アルベール、もう一度よ」

 

アポロ「まずいぞ、またさっきの攻撃が来る!」

 

アルベール「ミグロ……」

 

 しかし、アルベールは呪文を途中で止めてしまった。

 

ダルモス「どうした?なぜ呪文を止め……何!!?」

 

 呪文を途中から唱えないアルベールを疑問に思ったダルモスの視線の先にはスティックをダルモスに向けているレイラの姿があった。

 

ダルモス「レイラ!貴様、なぜ攻撃の手を俺に向けている?」

 

レイラ「…ダメね。やはり、千年前の魔物同士戦おうとすると、アルベールは呪文を使えないわ…」

 

パティ「ちょっとちょっと、どうなってるのよ!」

 

レイラ「あなた達、何をボーッとしてるの?早くそこの穴から逃げなさい」

 

コルル「穴から…逃げろ…?」

 

ダルモス「何!?レイラ、ビクトリームと同じように裏切るつもりか!?」

 

レイラ「早く逃げなさい」

 

ダルモス「お前の思い通りにはさせん!」

 

 レイラはスティックの先端を飛ばして壁に引っかけてから先端と柄を結ぶ光の鎖を引っ込め、アルベールと共にアポロ達の所へ一気に移動した。

 

ダルモス「裏切り者め、させるか!」

 

エリザベス「アムベギル!」

 

 武装されたダルモスの腕が伸びてアポロ達に向けられた。

 

フォルゴレ「こっちに来るぞ!」

 

レイラ「攻撃はダメでも、防御呪文なら出せるかしら?」

 

アルベール「ミシルド!」

 

 アポロ達はダルモスの攻撃をよけようとしたが、間一髪でレイラが先に来て防御呪文でダルモスの攻撃を防いだ。

 

レイラ「あまり持ちそうにないわね。やっぱりダメね、心が通い合ってない状態じゃ…本当のパートナーにならなきゃ、真の力は出ないのに…」

 

アポロ「どういう事なんだ?なぜ、僕達を逃がそうとするんだ?」

 

レイラ「今の私達のやってる事が間違ってる事くらい…私にはわかってるわ。せっかくの出口が砂で埋もれる前に早く逃げなさい!」

 

しおり「それはできないわね。あなたみたいな子を放って逃げる程、私達は薄情じゃないわ」

 

コルル「このまま放っておいたら何かひどい事をされるんでしょ?」

 

ウルル「それに、私達はまだ心の力が残っていますよ」

 

パティ「力を合わせれば勝てるんじゃないかしら?」

 

レイラ「…あなた達は本当にお人好しね。しっかり見てた?アルベール。あれが真のパートナーよ。お願い、心の呪縛を破って…。どんな状態でも再びパートナーを持てたのよ…こんな操り人形の関係で終わりたくない…」

 

 そう言っている間にもダルモスの攻撃でミシルドが砕かれてしまった。

 

レイラ「ミシルドが!」

 

ダルモス「侵入者が逃げねえのも好都合だ!てめえら全員捻り潰した後に裏切り者のレイラをロードの元に引きずり出してやる!」

 

レイラ「いよいよ本気で来るみたいよ」

 

アポロ「レイラは可能な限り防御に専念してくれ」

 

レイラ「千年前の魔物同士じゃ攻撃呪文が使えないから仕方ないわね…」

 

アポロ「みんな、攻撃の要のガッシュと防御の要のティオがいないからこの戦いは辛い戦いになるぞ…!」

 

パティ「それぐらい覚悟はできているわ…」

 

コルル「絶対に私達は生き残ってゾフィスを倒す!」

 

キャンチョメ「フォルゴレ、僕達はどう戦えばいいのかな?」

 

フォルゴレ「そんな事言われても…」

 

エリザベス「デトーザ・ベギルセン!」

 

 巨大なドリルが発射され、アポロ達の目の前に落ちた。

 

フォルゴレ「はははっ、どこを狙っているのだい?」

 

アポロ「(あれは…もしや…!)みんな、その場から離れて瓦礫の上に乗るんだ!」

 

キャンチョメ「えっ、どうし」

 

レイラ「早くあなた達の仲間の言う通りにしなさい」

 

 アポロとレイラの言う通り、その場から離れると、ドリルが撃ち込まれた辺りが蟻地獄のようになった。

 

フォルゴレ「まるで蟻地獄じゃないか!」

 

キャンチョメ「どうしよう!あれに飲み込まれたらドリルでぐちゃぐちゃにされて死んじゃうよ!」

 

レイラ「だから言ったのよ、早く逃げなさいって」

 

パティ「ねえ、ウルル、ここの砂に水をかけてドロドロの泥にしてしまえば蟻地獄はどうにかなるんじゃないかしら?」

 

ウルル「言われてみれば、砂に水をかければ砂は水を吸収して泥になりますね」

 

アポロ「だが、ここの砂が泥になったら返って動きにくくなるからやめた方がいい」

 

パティ「じゃあ、どうすればいいのよ!」

 

しおり「あの魔物を蟻地獄に突き落とせばどうにかなるんじゃない?」

 

アポロ「確かに、どうにかなるかも知れない」

 

 その間にも瓦礫はドリルに砕かれていた。

 

キャンチョメ「ちょっとまずいんじゃない…!」

 

フォルゴレ「そうだよな…!」

 

アポロ「レイラ、あの魔物の頭上に攻撃呪文を撃ち込んでくれ」

 

レイラ「わかったわ」

 

アポロ「その前に安全地帯に移らないとね。リグロン!」

 

 まず、アポロがロップスと一緒に先にリグロンを瓦礫に引っかけて蟻地獄の外に移動してから、他の面々をリグロンでアポロの近くに引き寄せた。

 

アルベール「ミグロン!」

 

ダルモス「どこを狙ってやがる」

 

 レイラの狙いはダルモスの頭上だった。

 

ダルモス「何っ!?」

 

 瓦礫がダルモスの上に落ちてその重量に足場が耐えられずに崩壊し、ダルモスは落ちてしまった。

 

コルル「止まったよ!」

 

アポロ「よし、次は奴を蟻地獄に放り込もう!」

 

ダルモス「舐めんじゃねえぞ、てめえら!」

 

 瓦礫を振り払ってダルモスはキャンチョメとフォルゴレに近づいた。

 

ダルモス「まずは攻撃して来ねえアヒルからぶっ潰してやる!」

 

キャンチョメ「うわああっ、来たよ!」

 

フォルゴレ「ここは…ポ」

 

 ダルモスのスピードの速さに呪文を使う暇もなく、キャンチョメはフォルゴレと共にダルモスに殴り飛ばされた。

 

ダルモス「へっ、あの女2人とテントウムシに比べればかなり弱いじゃねえか。おらよ!」

 

 そのままダルモスはキャンチョメとフォルゴレを掴んで蟻地獄に放り投げた。

 

キャンチョメ「うわああん、砂に埋もれて死にたくないよ~!」

 

コルル「キャンチョメ!」

 

しおり「フォルゴレさん!」

 

ダルモス「よそ見してんじゃねえぞ!」

 

 コルル達にもダルモスは襲い掛かった。アポロ達は蟻地獄に放り込まれたキャンチョメペアに気を取られたせいで全員ダルモスに殴り飛ばされ、蟻地獄を作っているドリルがキャンチョメとフォルゴレの目前に迫っていた。

 

ダルモス「これで万事休すって奴だな。残りの奴等も放り込んでやるか」

 

キャンチョメ「うわああん、僕達はもう終わりだ~~!」

 

パティ「いい加減にしなさいよ、アヒル!あんた達もあがきなさいよ!」

 

コルル「でも、どうやったらあの魔物を倒せるの…?」

 

アポロ「(どうする…、今、助けようとしても奴に邪魔されてしまう…!それに、奴は攻撃も簡単にかわせる…。ガッシュとティオがいない今、どうすれば…)」

 

レイラ「(確かに…、ここまでのようね…。甘かった…)ダルモス、もう降参よ。私をロードの所へ連れて行くなり好きにしなさい。その代わり、あの2人を助けてあげて」

 

ウルル「やめるんだ!」

 

パティ「どうせこいつに頼んでも無駄よ!戦ってやっつけるしかないわ!」

 

レイラ「いいのよ。勝てる見込みもないのに、助けようとするのだから。本当にバカね。でも、よかった…、石に戻る前にあなた達と出会えて」

 

 レイラの頼みも聞かず、ダルモスはレイラを掴んだ。

 

コルル「レイラ!」

 

パティ「その薄汚い手で女の子を掴むんじゃないわよ!」

 

ダルモス「はっ、誰が助けてやるかよ。たっぷり痛めつけてやる!まずは裏切り者のお前からだ、レイラ!」

 

 そのままダルモスは手に力を入れてレイラを握力で痛めつけた。

 

しおり「この状況、どうすれば…」

 

???「メルメルメ~~~ッ!!」

 

 突如、ウマゴンの声が聞こえた。

 

ウマゴン「メルメルメ~~ッ!」

 

 ウマゴンと共にウマゴンの本を持つ男が来た。

 

しおり「ウマゴン君…逃げなかったの…?」

 

アポロ「だが、その横にいるのは…まさか…」

 

コルル「ウマゴンの本が…」

 

パティ「光ってるわよ!」

 

ウルル「もしや、あの人が…ウマゴンの本の使い手…!」

 

ダルモス「ふん、一度逃げた奴が何をいまさら」

 

???「ウマゴンを舐めてると痛い目に遭うぞ」

 

 声と共にガッシュ達も来た。

 

アポロ「清麿、みんな、無事だったのか!」

 

清麿「ああ」

 

ダルモス「バカな!お前ら、デモルトと戦って生きて帰れただと!?これは何かの間違いだ!」

 

恵「間違いではないわ!現にこうして帰れたのよ!」

 

清麿「パートナーには逃げられて本は燃やせなかったがな」

 

???「この場はウマゴンと私に任せてくれないか?」

 

ガッシュ「ウヌ」

 

ウマゴン「メル!」

 

???「シュドルク!」

 

 ウマゴンの体が鎧に覆われた。

 

ティオ「これがウマゴンの術?」

 

コルル「結構かっこいい…!」

 

???「さぁ、行くぞ、ウマゴン!」

 

ウマゴン「メルメルメ~~~ッ!」

 

 そのままウマゴンは猛スピードでダルモスに体当たりしてレイラを解放し、次は脆くなっている瓦礫に体当たりして瓦礫を落とし、ドリルを壊してキャンチョメペアを救った。

 

レイラ「やるじゃない」

 

フォルゴレ「あ~、助かった~!」

 

キャンチョメ「一時はどうなるかと思ったよ」

 

アポロ「まだ気を抜くな!」

 

 ダルモスはウマゴンを追った。

 

ダルモス「さっきは不意を突かれたが、今度はそうはいかねえ!」

 

 今度はダルモスとウマゴンのスピード戦になったが、速い上に小回りも利くウマゴンにダルモスの攻撃は当たらず、逆にウマゴンの攻撃を喰らった。

 

アポロ「速い!」

 

ロップス「かう!」

 

ダルモス「くっ、スピードなら俺だって!」

 

 小回りが利かないダルモスはウマゴンに翻弄された挙句、蟻地獄に落とされた。

 

フォルゴレ「やった~~!蟻地獄に沈めばあの魔物だって」

 

清麿「いや、まだだ!だが、これで少しは時間を稼げる!」

 

 キャンチョメとフォルゴレは蟻地獄を出ようとしたが、ビクトリームとモヒカン・エースを背負っているフォルゴレはなかなか出られなかったため、ウマゴンのパートナーが引き上げてくれた。

 

アポロ「清麿、あの人は?」

 

サンビーム「私は、カフカ・サンビーム。ウマゴンの本の使い手だ」

 

しおり「じゃあ、あの時、ウマゴン君が本を持ってなかったのはサンビームさんが見つかったからだったのね」

 

パティ「本を持ってるのなら、どうしてすぐに来てくれなかったのよ!」

 

サンビーム「遅くなって済まなかった。許してくれよ、あの子も苦しんでたんだ。恐怖を乗り越え、運命を乗り越えるためにな」

 

ウルル「そうだったのですか…」

 

ガッシュ「サンビーム殿はウマゴンと共に戦ってくれるのだ」

 

サンビーム「私も働いている身だ。できれば、御免被りたいのだが…あの子の苦悩を目の当たりにしているのでな」

 

 

 

 

 

回想

サンビーム『私は日本の自動車工場に勤める技術者だ。そんな私の元へあの日…』

 

 仕事中、ナゾナゾ博士が来た。

 

サンビーム「あなたは…?」

 

ナゾナゾ博士「はっはっはっはっ、私の名はナゾナゾ博士」

 

キッド「世界一の寿司職人さ」

 

サンビーム「……嘘だな」

 

キッド「本当だよ。ねえ、博士」

 

ナゾナゾ博士「ウ・ソ」

 

 その言葉にキッドは驚愕した。

 

キッド「ええ~~っ、博士が前に握ってくれたウニのお寿司は!?」

 

ナゾナゾ博士「ああ、あれはプリンにしょうゆをね」

 

 

 

 

 

清麿「いつの事の事なんだ、それは…?」

 

サンビーム「2週間ほど前の事になる」

 

 

 

 

 

回想

サンビーム『Drナゾナゾは魔界の王を決める戦いの事を話してくれた後、私に会わせたい者がいると言った』

 

 パートナー探しをしていたウマゴンの本を犬が奪っていった。ところが、その犬の前にサンビームが立ちはだかった。そして、犬の頭に手を当てた。

 

サンビーム「この本はあの子の物だよ」

 

 犬は大人しくサンビームにウマゴンの本を渡した。

 

サンビーム「よし、いい子だ」

 

ウマゴン「メ、メル…」

 

サンビーム「君、少し読ませてもらうがいいかね?」

 

 サンビームの様子にウマゴンは緊張した様子で見ていた。そこへ、ナゾナゾ博士が来た。

 

ナゾナゾ博士「どうかね?サンビーム君」

 

サンビーム「はい、読めます」

 

ウマゴン「メル…!?」

 

サンビーム「君がウマゴンだね。私は君の本の使い手、カフカ・サンビームだ」

 

 見つかってほしくなかったパートナーが見つかってしまった事でウマゴンはショックを受けた。

 

ナゾナゾ博士「ウマゴン君、本の持ち主は見つかった。ガッシュ君達と一緒に千年前の魔物を。ウマゴン君?」

 

サンビーム「待ってください、Drナゾナゾ」

 

 ウマゴンの様子を察したサンビームはウマゴンの頭に手を置いた。

 

サンビーム「戦いが怖いんだね?ウマゴン」

 

ウマゴン「メル!?」

 

ナゾナゾ博士「何、怖い!?しかし、それでは…」

 

サンビーム「とても厳しい戦いが始まろうとしている。だからこそ、自分の意志で戦うかどうかを決めるんだ」

 

ナゾナゾ博士「ウマゴン君…」

 

ウマゴン「メルメルメ……メルメルメ…」

 

ナゾナゾ博士「ウマゴン君、なぞ…?」

 

サンビーム「Drナゾナゾ、済まないが、これでは戦えない」

 

キッド「嘘!?」

 

ナゾナゾ博士「くっ…仕方がない。無理に戦わせても足手まといになるだけだ。サンビーム君、遺跡までの地図を渡しておくよ」

 

 

 

 

しおり「でも、ウマゴン君は戦いを拒んでいたのにどうしてここに?」

 

サンビーム「ウマゴンを信じていたからさ」

 

コルル「そうだったんだ。よかったね、ウマゴン。いい本の持ち主と出会えて」

 

 しかし、ウマゴンは警戒していた。

 

清麿「来るぞ、奴が!」

 

サンビーム「……そこだ!」

 

 しばらくすると、ダルモスが壁を突き破って現れた。

 

キャンチョメ「そんな!あいつは蟻地獄に飲まれたはずなのに!」

 

フォルゴレ「どうしよう~~!」

 

ダルモス「人間、戦闘体型だ」

 

エリザベス「ベギルク!」

 

 再びダルモスは戦闘体型になった。

 

アポロ「みんな、ここは」

 

サンビーム「アポロ、済まないが、ここはウマゴンと私に任せてくれ。行くぞ、ウマゴン!」

 

ウマゴン「メル!」

 

 サンビームの指示と共にウマゴンはダルモスに突撃したが、ダルモスにはほとんどダメージはなかった。

 

サンビーム「ウマゴン、もう1度だ!」

 

 何度もウマゴンはダルモスに突撃したが、ダルモスへのダメージはほとんどないに等しかった。

 

ダルモス「スピードではこの俺の速さに追いつけても、パワーなら俺の方がまだまだ上だな!」

 

 あっさりとウマゴンはダルモスに振り払われた。

 

ティオ「ウマゴン!」

 

恵「私達も」

 

ガッシュ「いや、ウマゴンを信じるのだ(頑張るのだ、ウマゴン!)」

 

サンビーム「(まだだよな、ウマゴン!)」

 

ウマゴン「メル…メルメルメ~!」

 

 またウマゴンは突撃したが、何度やってもダルモスに簡単に振り払われた。

 

ウマゴン「メル…」

 

 ボロボロになっても仲間達の戦う姿を見てきたウマゴンは立ち上がって何度もダルモスに突撃したが、やはり同じように振り払われてしまった。

 

ダルモス「ふん、何度やっても同じなんだよ!」

 

 ダルモスの体にウマゴンは突撃しても大したダメージは与えられず、逆に振り払われた。

 

コルル「ウマゴン!」

 

ティオ「もう見てられないわ!ガッシュならあいつなんか一撃で」

 

ガッシュ「何度も言っておろう、ウマゴンを信じるのだと」

 

ダルモス「はははっ、どうだ、これで」

 

 前の戦いでダルモスとの戦闘になった部屋は違えど、同じような光景を見たガッシュはウマゴンの戦いに手出しせずにウマゴンが勝つのを信じていた。一方のダルモスは自分の絶対的優位を確信していたが、鎧の一部が砕けた。

 

ダルモス「何っ!?強化した俺の体にヒビが!まさか…」

 

ウマゴン「メル…メルメルメ~!」

 

ダルモス「この…調子に乗るなよ!」

 

エリザベス「ガンズ・べギル!」

 

 今度はマシンガンを発射したが、ウマゴンには当たらなかった。

 

ダルモス「この…、当たりやがれ!」

 

パティ「凄いじゃない、ウマゴン!」

 

アポロ「敵の攻撃を的確にかわしながら進んでいる」

 

 再び突撃をかけたが、ダルモスに振り払われた。

 

しおり「コルル、私達も助太刀しましょう!」

 

サンビーム「いや、君達は少し休んでいたまえ。君達はこれまでの戦いでよく頑張ったんだ。さっき言った通り、私とウマゴンに任せるんだ」

 

ウマゴン「メルメルメ~!」

 

 そんな中、ウマゴンはダルモスに踏まれてしまった。

 

ダルモス「はっ、ようやく捕まえたぜ」

 

 ウマゴンのピンチを見たサンビームはダルモスに向かっていった。

 

ロップス「かう!?」

 

アポロ「サンビームさん!まさか、あの魔物に向かって!」

 

ダルモス「命知らずが。弱っちい人間が強化した俺に突っ込むだと?」

 

レイラ「無茶よ」

 

サンビーム「今、あの子を見捨てたら私はカッコ悪い大人だ。それは私の主義に反する!」

 

 途中でサンビームは砂を一握りした。

 

ダルモス「バカが」

 

サンビーム「バカじゃない、いかしてるんだ。それが、グルービー!」

 

 ダルモスの目前に来たサンビームは砂をダルモスの顔にかけた。

 

ダルモス「こいつ、目を!くそっ、ふざけんじゃねえ!」

 

 砂が目に入ってしまってダルモスは怒り、サンビームをウマゴンごと振り払った。

 

キャンチョメ「こ、これじゃあ、ウマゴンに勝ち目はないよ~」

 

フォルゴレ「そうだよな…!」

 

サンビーム「大丈夫か?ウマゴン」

 

ウマゴン「メルメルメ~!」

 

ダルモス「ふん、雑魚が!所詮てめえは俺に決定的なダメージを与えられねえんだ!無駄な抵抗してねえでぶっ倒されやがれ!」

 

サンビーム「それはどうかな?この子を甘く見ると痛い目に遭うぞ。私は、この子の苦悩を目の当たりにしている。戦いへの恐れと、友達を助けたい思いがぶつかった、苦しい迷いを乗り越えて、運命と向き合おうと、この子は決めた」

 

 

 

 

 

回想

 それは、ダルモスとの戦闘中にアポロ達に言われてウマゴンが先に逃げ、逃げた先でサンビームと会った時だった。

 

サンビーム「答えが出たんだね、ウマゴン。だが、私が一度本を開き、呪文を唱えれば、もう二度と戦いからは逃げられなくなるんだよ」

 

 戦いから逃げられないという現実を突きつけられても答えを出したウマゴンは涙を流していたが、逃げなかった。

 

サンビーム「(とても強い目だ…すべてを承知の上での答えか…。君を信じてここへ、戦いの場へ来てよかったよ)」

 

 

 

 

ダルモス「けっ、何言ってやがる」

 

 ダルモスはサンビームとウマゴンに向かっていった。

 

ダルモス「これで終わりだ!」

 

サンビーム「わかるか、ウマゴンの強い決意がこの子自身の成長にもなったんだぞ」

 

パティ「ウルル、あの本の光はもしかして…!」

 

ウルル「新しい術ですよ。まさか、こんな短い間に第2の術まで…」

 

サンビーム「第2の術、ゴウ・シュドルク!」

 

 第2の術の力でウマゴンはさらに一回り大きくなり、鎧の形も変わって角が付いた。そして、ダルモスに突撃した。

 

ダルモス「何っ、ぐあああっ!!」

 

 これまでビクともしなかったダルモスの鎧をウマゴンは簡単に破壊した。

 

コルル「凄い…!」

 

パティ「あのデカブツの鎧を簡単に砕くなんて…!」

 

ダルモス「おのれ!人間、ありったけの呪文を唱えろ!俺の力を見せてやるんだ!」

 

エリザベス「キロロ・アムベギル!」

 

 ダルモスの両腕に刃物が生えた。すぐにウマゴンを斬ろうとしたが、かわされて瓦礫を斬った。

 

しおり「何て斬れ味なのよ!」

 

恵「よけて、ウマゴン!」

 

 そのままウマゴンは向かっていき、ダルモスの刃物を角で受け止めた。

 

ダルモス「何!?斬れない?」

 

アポロ「斬れないほど体が硬くなっているのか?」

 

 何度もダルモスはウマゴンを斬ろうとしたが、かわされるか受け止められた。

 

サンビーム「ウマゴン、剣を角で受け止めるのではない、受け流すんだ。そして一気に懐に入り、きつい一撃をぶちかませ!」

 

 指示通りウマゴンはダルモスにきつい一撃をかました。

 

サンビーム「グルービー!」

 

ダルモス「ならば、この術よ!」

 

 突然、エリザベスはダルモスから離れた。

 

ティオ「何!?」

 

サンビーム「ウマゴン!」

 

エリザベス「ベギルバオ!」

 

 よけろとも言わずにただ名前を言っただけでウマゴンはその場から離れ、ダルモスの術をかわした。

 

ダルモス「よけただと!?(この術の効力がわかったのか?いや…俺の術の力を見抜いたのはあの男の方か…。だが、逃げろとも言わなかったのになぜよけられた?)」

 

コルル「凄い…、心が通じ合ってるみたい…」

 

アポロ「(あのサンビームという人、まさしく、ウマゴンのパートナーだ。それも…この短い間にあんなにも強く深く結びついている!)」

 

ダルモス「この…!」

 

サンビーム「ウマゴン!(攻撃だ!)」

 

 サンビームがただウマゴンと言うだけでウマゴンは攻撃した。

 

サンビーム「ウマゴン!(危ない、よけろ!)」

 

 同じような指示のみでウマゴンは回避や攻撃を続け、ダルモスに攻撃を加えていった。

 

サンビーム「(奴の後ろに隙ができた)ウマゴン!」

 

ウマゴン「メルメルメ~!」

 

ダルモス「何!?うわああっ!」

 

サンビーム「グルービー!」

 

 後ろから攻撃されたダルモスは壁にぶつかった。

 

ダルモス「くそ…、まだだ…まだ使える呪文は…」

 

サンビーム「いや…もう勝負はついている」

 

ダルモス「何…?」

 

サンビーム「戦いの最中、ウマゴンはずっと語り掛けていたよ。『僕がこの魔物を本の持ち主から遠ざけるよ』ってね」

 

 サンビームの手にはダルモスの本があった。

 

ダルモス「そ…その本は…俺の…」

 

サンビーム「そう…君は負けたんだ」

 

 そう言ってサンビームはライターでダルモスの本を燃やした。

 

清麿「凄いぞ!これがウマゴンとサンビームさんの力なのか!」

 

ガッシュ「そうなのだ!」

 

アポロ「本当に心で会話しているようだ」

 

サンビーム「グルービーだぜ、ウマゴン」

 

 やがてダルモスの本は燃え尽き、ダルモスは魔界に送還された。




これで今回の話は終わりです。
ウマゴンの初戦闘回ですが、デモルトも前倒しで出しました。原作と違ってデモルトはガッシュ1人にあっさり倒されてましたが、王族の力が目覚めたガッシュならデモルトを瞬殺できるだろうと思ったためです。今小説のデモルトは大きい奴は噛ませになりがちなお約束通りさらにもう1回ぐらいあっさりやられてしまうシーンがあるかも知れません。次はナゾナゾ博士達がガッシュ達と合流します。


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LEVEL30 集まる仲間達

 仲間集めをしていたナゾナゾ博士はヨポポペア、ウォンレイペア、チェリッシュペアを連れて清麿達が泊まる予定のホテルがある街に来ていた。

 

リィエン「いよいよあるね」

 

ジェム「そうね。千年前の魔物なんてコテンパンにやっつけてやりましょう、ヨポポ!」

 

ヨポポ「ヨポポイ!」

 

チェリッシュ「あの子、やけに気合が入ってるわね」

 

キッド「一緒に頑張ろうね、ヨポポ」

 

ナゾナゾ博士「さぁ、行こうか」

 

 

 

 

デボロ遺跡

 ウマゴンの勝利に一同は驚いていた。

 

フォルゴレ「キャンチョメ、ウマゴンが勝ったぞ…!」

 

キャンチョメ「僕達…助かったんだね!」

 

 戦いを終えたウマゴンに一同は駆け寄った。

 

ガッシュ「やったのだ、ウマゴン!」

 

ティオ「とても強いじゃない!」

 

コルル「凄いよ!」

 

 しかし、術が解けてウマゴンはへなへなになってしまい、サンビームも座り込んだ。

 

パティ「ちょっとどうしたのよ、ウマゴン!」

 

ロップス「かう?」

 

サンビーム「何、気が抜けただけだ。心配しなくていい…」

 

しおり「サンビームさん!?」

 

サンビーム「ま、初めての戦いであれだけ頑張ったんだ。倒れない方がおかし…い…」

 

 青ざめた状態でサンビームは倒れてしまった。

 

清麿「サンビームさん!(確かこの人…、魔物の攻撃をもろに喰らって…)恵さん、心の力はどれぐらい残っているんだ?」

 

恵「ガッシュ君がデモルトをあっさり倒してくれたからかなり残っているわ。ティオ、行くわよ!」

 

ティオ「ええ!」

 

恵「サイフォジオ!」

 

 ウマゴンよりサンビームの方が深刻なため、サンビームはティオのサイフォジオによる治療を受けた。

 

レイラ「(デモルトをあっさり…、あのガッシュって子、ベルって苗字には聞き覚えがあるし、見た目は強くなさそうだけど、無傷でデモルトをあっさり倒せるなんてどれだけ強いの…!)」

 

アポロ「あれがティオの回復呪文か…」

 

フォルゴレ「一時は攻撃呪文かと思ったよ…」

 

サンビーム「済まないな…」

 

ウルル「気にしなくていいですよ。私達はこうやって支え合っているのですから」

 

しおり「でも、さっきの戦いではウマゴン君とサンビームさんは言葉が通じているようで当に凄かったわ。どうなってるの?」

 

サンビーム「何、そんなに難しい事じゃない。ウマゴンの声を聞くんじゃない、声に込められた思いを聞くんだよ。そう、言葉に頼り、上辺だけの会話をしてもダメなんだ…、常に相手の心から聞き、相手の心に語りかける会話をするんだ。そうすれば、誰とでも、何とでも会話はできるようになる」

 

恵「それがウマゴンとのコンビネーションの秘訣なのね。だったら、サンビームさんはウマゴンの言ってる事がわかるんじゃないかしら?」

 

 既にガッシュからサンビームの事を聞かされている清麿以外は感心しており、清麿も表情に出してはいないが、感心していた。そして、その言葉を聞いたウマゴンにある考えが思い浮かんだ。

 

ウマゴン『メルメ、メルメルメ~』

 

サンビーム『君の言っている事がわかるぞ。何!?君の本当の名前はシュナイダーだったのか!』

 

 そして、その考えを実行に移した。

 

ウマゴン「メルメ、メルメルメ~」

 

サンビーム「おお!メルメルメルメルメ!」

 

ティオ「恵、サンビームがウマゴンの言葉を!」

 

恵「話の内容はどうなのかしら…?」

 

 一同はその光景を興味津々に見ていた。

 

ウマゴン「メルメルメ~」

 

サンビーム「な、何だって!?『僕の名前はウマゴンだよ』だって!?そんな事は言われなくてもわかってる!!」

 

 自分の本名がシュナイダーだと言ってもサンビームに全く伝わらない事にウマゴンは落ち込んでしまった。

 

しおり「落ち込んでしまったわね…」

 

清麿「そう言えばガッシュ、イギリスでウマゴンと会った時に本名を忘れたとか言ってたな。今は思い出す事はできないのか?」

 

ガッシュ「ウヌ…シュ、シュ…」

 

ティオ「ちょっとガッシュ、ウマゴンって本名があったの!?」

 

コルル「だから、さっき落ち込んでたんだ」

 

恵「何とかウマゴンの本名を思い出す事はできないの?」

 

ガッシュ「どうしてもウマゴンの本名は思い出せぬのだ…」

 

恵「困ったわね…。ウマゴンの友達のガッシュ君が思い出せないのなら、どうすればいいのか…?」

 

キャンチョメ「だったら、表現のやり方を変えて伝えればいいんじゃないかな?」

 

 前の戦いにおいて、デュフォーにティオやシェリーより賢いと言われたキャンチョメは今回の戦いにおいても意外な一面で賢さを発揮した。

 

パティ「…あんた、戦いでは役に立たない癖にこういった時は役に立つじゃない!」

 

キャンチョメ「え?ええっ!ただ、思いついたから言っただけだけど…」

 

サンビーム「そうか、表現のやり方を変えればいいのか!ならば、ジェスチャーだ!」

 

 今度はロックンロールを始めたサンビームとウマゴンに一同は若干引いていた。

 

ウルル「(あの人…、真面目な顔をしてこんな事をするんですか…)」

 

アポロ「(人は見た目によらず…だね…)」

 

 またしてもサンビームに自分の本名がシュナイダーだと伝わらず、ウマゴンはまた落ち込んだ。

 

フォルゴレ「また伝わらなかったようだ…」

 

キャンチョメ「よーし、今度は僕がウマゴンの伝えたい事を当ててみるよ!」

 

サンビーム「ロックンロール!」

 

 今度はキャンチョメも加わり、ロックンロールを始めた。そして、ウマゴンはジェスチャーで本名を伝えようとした。

 

清麿「わかるか、ガッシュ」

 

ガッシュ「私にはウマゴンと伝えているようにしか見えぬのだ…」

 

キャンチョメ「も、もしかしてウマゴンの本名は…」

 

フォルゴレ「どうした?キャンチョメ!」

 

キャンチョメ「僕、わかったよ!ウマゴンの本名は……シュナイダーなんだ!」

 

 キャンチョメが本名で言ってこれた事にウマゴンは大喜びし、キャンチョメを舐め回した。

 

キャンチョメ「や、やめてよ、くすぐったいよ!」

 

コルル「ウマゴンの本名がシュナイダー…?」

 

ティオ「かっこいい名前じゃない!」

 

恵「清麿君、ウマゴンの本名がわかったから、これからウマゴンの事はシュナイダーって呼ぶ事にする?」

 

清麿「えっと…」

 

ガッシュ「私はウマゴンを呼ぶ時は本名よりもウマゴンの方が親しみやすくていいから、呼ぶ時はウマゴンのままでいいのだ」

 

 本名がわかってもシュナイダーと呼んでくれないガッシュの態度にウマゴンは落ち込んだ。それを気の毒に思った清麿はウマゴンの頭を撫でた。

 

清麿「ウマゴン、ガッシュはシュナイダーからウマゴンに改名しろと言ってる訳じゃないんだ。俺もシュナイダーって名前の方がかっこいいと思うんだが…ウマゴンの方が親しみやすいニックネームになるんじゃないか?」

 

ウマゴン「メル?」

 

サンビーム「ニックネームというのは、友達が親しみを込めて言う名前の事だ。君の事をウマゴンというのは、これからは親しい私達が言う君の愛称という事でどうかな?」

 

ウマゴン「メル…」

 

 勝手につけられたウマゴンという名前がニックネームでいいかと言われ、ウマゴンは一同が自分の本名を知った上で愛称でウマゴンと言ってくれる事にしばらく考えた後、承諾してくれた。

 

ガッシュ「ありがとうなのだ、ウマゴン!これからも私達は友達なのだ!」

 

ウマゴン「メルメルメ~!」 

 

レイラ「どうやら、いい物を持ってくる必要もないみたいね」

 

清麿「そのいい物ってのは、月の石の事だろ?」

 

レイラ「!?どうして、それがわかったの?」

 

恵「私と清麿君は実物を見た上に使った事があるの。だから、効果も知っているわ」

 

清麿「俺は実物を見る前にある情報通から月の石の事について聞いてるんだ」

 

レイラ「そうだったのね。(でも、不思議ね。ここまで月の石に詳しい情報通って何者なのかしら?)」

 

清麿「その情報通から朗報を聞いたんだ。レイラ達の封印を解いた月の光は月の石とは別の物だ。だから、月の石の光がなくなっても石に戻る事はないんだ!」

 

レイラ「えっ!?」

 

 ゾフィスから聞かされた情報を根底から覆す事実にレイラは衝撃を受けた。この話は清麿にその事を教えていたガッシュ以外は話について行けなかった。

 

レイラ「…ごめんなさい、その話、あまりにも衝撃的過ぎて私もすぐに信じる事ができないの…。他の魔物だったら、絶対に信じたりしないわ」

 

ガッシュ「(真実をこの段階で言ってもまだダメであったか…)」

 

レイラ「それに、上が騒がしくなってきてるみたいよ。まだ心の力は残っているようだけど、早く逃げた方がいいわ」

 

アポロ「僕達もそう思ってた所だ。この場で逃げるとしよう」

 

清麿「レイラ、お前もビクトリームと一緒に」

 

レイラ「私は行けないわ。まだ、さっきの話が信じられないもの…」

 

清麿「だが…」

 

アポロ「清麿、この様子では無理に連れて行くのはよくない。置いて行くしかない。ところで、レイラは裏切りの方は大丈夫かい?」

 

レイラ「心配しなくていいわ、ダルモスも魔界に帰ったし、誰も私の裏切りを知らないもの」

 

ガッシュ「絶対に無事でいるのだ、レイラ」

 

レイラ「ええ。ビクトリームの事をよろしくね」

 

フォルゴレ「任せたまえ」

 

レイラ「それと、逃げる際には私達千年前の魔物をまとめるリーダーの魔物に気を付けるのよ。その魔物は他の魔物の居場所を正確に探知できるわ」

 

ガッシュ「(探知?もしや…)」

 

 探知に聞き覚えがありながらも、ガッシュはそれについて考えるよりも仲間と逃げる事を優先して遺跡から逃げた。

 

レイラ「(驚いたわね、デモルトをあっさり倒せる実力を持つ魔物が現代にいたなんて…。あのガッシュという子なら、ロードさえ瞬殺できるんじゃないかしら?)」

 

 

 

 

 

 その頃、街の上空ではデボロ遺跡に帰還しようとしていたバディオスに載っているコーラルQとグラブ、そしてコーラルQが従えている千年前の魔物3体の姿があった。

 

コーラルQ「ピポポポポッ、魔物の魔力を7体も探知したピヨ」

 

グラブ「7体だと?で、襲うか?」

 

コーラルQ「その通りだ。行くぞ!」

 

 バディオスはガッシュ達の方へ向かっていった。その頃、ガッシュ達は見張りの魔物に見つかる事なく街に戻る事に成功していた。

 

しおり「追っ手も来ないわね」

 

フォルゴレ「どうやら千年前の魔物をまとめるリーダーは来てないようだな」

 

清麿「気を抜くな、レイラが言った奴が来てるかも知れないんだぞ!」

 

???「その通りだピヨ!」

 

 声と共にコーラルQ達が降りてきた。

 

ガッシュ「お主は…コーラルQ!(まさか、千年前の魔物をまとめるリーダーがコーラルQであったとは…)」

 

清麿「その魔物を知ってるのか?」

 

ガッシュ「あの魔物は体内に特殊なレーダーを持っておるから、正確な魔物の居場所がわかるのだ」

 

ティオ「そ、それじゃあ、あいつはそのレーダーで私達の居場所がわかったの?」

 

グラブ「その通りだ。説明を先にしてくれて手間が省ける」

 

清麿「お前達はなぜゾフィスに手を貸すんだ!」

 

グラブ「本来、俺達は勝てない戦いはしない主義だ。今回の戦いも加わらずにいようと思っていた。だが、ゾフィス自ら俺達の力が必要だと誘ったから生き残るために、俺の才能をフルに活かすために加わったんだ」

 

清麿「ゾフィスに手を貸したのが自分の才能を活かすためだと!?」

 

グラブ「俺は知能が高いが、その知能は通ってる大学では活かせない上に周りからのけ者扱いされてきたんだよ。そんな時にゾフィスが俺の才能が必要だと言った。奴の事は完全に信用しちゃいないが、俺の才能はここでしか活かせないんだ」

 

清麿「いくらのけ者にされて才能が活かせないからと言って、やっていい事と悪い事あるだろ!それの区別もできないのか!?」

 

コーラルQ「話は終わりだ。さぁ、行くがいい!」

 

 コーラルQが従えている千年前の魔物3体が前に出てきた。

 

パティ「あんたは戦わないの?」

 

コーラルQ「まだお前達のデータ収集は完全ではないピヨ。だから、こいつらが相手ピヨ」

 

アポロ「(少しまずいな…、清麿はともかく、他は心の力をだいぶ消耗している…)」

 

???「待ちたまえ、お前達が出る必要はない」

 

 声と共にビクトリームが気絶から目が覚めて復活した。

 

フォルゴレ「これは華麗なるビクトリーム様、お目覚めになられたのですか?」

 

ビクトリーム「当然だ。お前達の騒ぎ声で私は目が覚めた。後は私に任せるがいい」

 

コーラルQ「ビクトリーム、なぜ裏切って奴等に手を貸した?」

 

ビクトリーム「簡単な事よ、彼等は戦う事しか知らなかった私に素晴らしい事を説いた。だから、彼等に手を貸す事にした」

 

恵「そんな事、言ったかしら…?」

 

ティオ「勝手に美化しすぎよ…」

 

ビクトリーム「お前達など私が軽く捻り潰してやる。モヒカン・エース!」

 

 しかし、相手は同じ千年前の魔物であったため、モヒカン・エースは呪文を唱えなかった。

 

ビクトリーム「なぜ呪文を唱えない、モヒカン・エース!」

 

ウルル「千年前の魔物同士では呪文を唱えられないのを知らないようですね…」

 

パティ「まさに正真正銘のバカよ」

 

ビクトリーム「おのれ、こうなれば頭部を分離させるまでだ!」

 

 ガッシュ達と笑える奇妙な(?)戦いの時のように頭部を分離させ、高速回転した。

 

ガッシュ「こ、これはまずいのだ、清麿!」

 

清麿「よせ、ビクトリーム、その状態で呪文を使うな!」

 

モヒカン・エース「マグルガ!」

 

 再びビクトリームは無差別にマグルガを乱射した。今度は無差別であるためか、モヒカン・エースも普通に呪文を唱える事ができたが、当然、ガッシュ達は巻き添えを喰らう事になり、必死でかわしていた。

 

コーラルQ「何というバカだ!我々はおろか、味方まで攻撃するとは!」

 

清麿「この野郎、俺達まで殺す気か!!」

 

ビクトリーム「ふははははっ、これなら敵にも攻撃でき、ぶるぁあああっ!!」

 

 また胴体を攻撃してしまい、ビクトリームはダウンしてしまった。

 

キャンチョメ「ああっ、華麗なるビクトリーム様が!」

 

グラブ「勝手に自滅したな…」

 

 自滅したビクトリームに敵味方関係なくあっけにとられていた。

 

グラブ「…おっと、そんな場合じゃなかった!」

 

コーラルQ「みんな、戦闘態勢!」

 

アポロ「みんな、こっちも行くぞ!」

 

一同「おう(ええ)!」

 

 そんな時、宝石が千年前の魔物の方へ撃ち込まれた。

 

パティ「この宝石…もしかすると…」

 

???「ちょっと待った、ガッシュ君の仲間はまだまだいるぞ!」

 

しおり「この声…」

 

サンビーム「Drナゾナゾか!」

 

 声と共にナゾナゾ博士一行が姿を現した。

 

キッド「間に合ったね。もう少し遅かったら僕達の出番がなくなる所だったよ」

 

ガッシュ「おお、ウォンレイにリィエンにヨポポにジェムにチェリッシュにニコルではないか!」

 

チェリッシュ「久しぶりね、坊や」

 

キャンチョメ「えっ、チェリッシュはガッシュと知り合いだったの!?」

 

ティオ「私達ともね。そういうキャンチョメもチェリッシュと知り合いだったの?」

 

フォルゴレ「キャンチョメがサーカスにいた時に知り合ったんだ」

 

リィエン「清麿と恵も久しぶりある!」

 

恵「2人共元気そうね」

 

ナゾナゾ博士「今はそんな事を言っている時ではない」

 

ジェム「さぁ、悪い悪い奴等をやっつけるわよ!」

 

ヨポポ「ヨポポイ!」

 

コーラルQ「まさか、援軍がくるとは…各員、整列!」

 

 号令に応じて千年前の魔物は整列した。

 

ナゾナゾ博士「清麿君達、ここは私達に任せたたまえ。君達はデボロ遺跡で頑張ったんだ。私達も出番が欲しいからね」

 

 そう言ってナゾナゾ博士達は前に出た。

 

ジェム「あいつらはまとめてすぐにやっつけよう!」

 

ナゾナゾ博士「ジェム君、今の隊列を組んだ状態の敵に対して何の考えもなく突っ込んでいくのは危険すぎる。まともに攻撃を当てるのも難しいぞ」

 

ジェム「じゃあ、どうするのよ!」

 

ニコル「ナゾナゾ博士、何か秘策は?」

 

ナゾナゾ博士「ちゃんと秘策はある。私が先に突っ込み、隙を作る。その後に君達が追い打ちをかけてくれ」

 

リィエン「それでは博士が危険ある!」

 

ナゾナゾ博士「何、大丈夫だ。私にはマジョスティック12という僕がいる事を忘れたのかね?」

 

 話し声は後ろにいる清麿達にも聞こえていた。

 

ガッシュ「(今回もビッグボインが来るのか…?)」

 

清麿「マジョスティック12?」

 

ウルル「知らないのですか?」

 

清麿「初めて来た時はナゾナゾ博士も含めて変な連中だったから、イライラして紹介の前にザケルで吹っ飛ばしてしまった」

 

しおり「あらら…」

 

恵「(ナゾナゾ博士は清麿君の逆鱗に触れてしまったのね……)」

 

アポロ「生真面目で突っ込まずにはいられない清麿らしいね。僕が説明するけど、マジョスティック12はアメリカ生まれの超能力集団だそうだ」

 

清麿「そっか…。そのマジョスティック12、ガッシュのザケル1発でダウンしてたから役に立たないんじゃないのか?」

 

ナゾナゾ博士「ははははっ、皆の者、見て驚け、聞いて驚け!アメリカ生まれの超能力集団だ!紹介しよう!」

 

 後ろから光線が来て地面に当たり、その後に何かが来た。

 

グラブ「(地面が砕けた様子も焼けた様子もない…)」

 

パティ「何か来たわよ」

 

コルル「ティオ、あれってもしかして…」

 

ティオ「あの超能力集団?」

 

ガッシュ「(もしや…、今回はマジョスティック12が全員来ておるのか?)」

 

ナゾナゾ博士「目から光線、『ツー・ライティング・アイ』!走力は時速300キロ、『ロケット・フット』!飛行能力を持つ戦士、『フライング・ビート』!透視能力で全てを見通す、『セカンド・サイト』!腕の力は恐竜並み、『ダイナソー・アーム』!予知能力を持つ男、『ワンダフル・ザ・フューチャー』!すべての能力者をまとめる司令塔、『テレパシス・レーダー』!ビッグ、ビッグ、『ビッグボイン』!そして、こんな奴等も」

 

 ファイヤー・エルボーとブリザード・シンク、トレマー・モグラも現れた。

 

ナゾナゾ博士「ははははっ、彼等が我が僕、マジョスティック12だ!」

 

グラブ「ちょっと待った!マジョスティック12は12人なのにこの場にいるのは11人しかいないぞ!」

 

コーラルQ「インチキピヨ!」

 

ウォンレイ「確かに11人しかいない」

 

チェリッシュ「残りの1人はどうしたの?」

 

ナゾナゾ博士「念能力を備えた野生児、『サイコ・ジャングル』は…」

 

キッド「秘密指令で今はデトロイトさ。メジャーリーグに挑戦中なんだ。ね、博士」

 

ナゾナゾ博士「ははははっ、キッド、それは嘘」

 

 嘘にキッドは愕然とした。

 

ナゾナゾ博士「本当は彼は有給休暇をとっていてね、今頃、マイアミのリゾートでゆっくりしてるはずだ」

 

ニコル「(有給って、給料払ってるの…?)」

 

 そんな時、近くの茂みが動いた。

 

ヨポポ「ヨポイ?」

 

ナゾナゾ博士「おお!」

 

 茂みからサイコ・ジャングルが出てきた。

 

ナゾナゾ博士「我らのために休暇を放り出して駆け付けてくれたのか…!」

 

 マジョスティック12は感動の光景になっていたが、ナゾナゾ博士とキッド、フォルゴレとサンビーム以外のパートナー一同と女の子の魔物は唖然としていた。

 

清麿「ってか、今はそんな事をしてる場合か…?」

 

恵「清麿君のように強く言えないけど、確かに今はそんな場合じゃないわね…」

 

ナゾナゾ博士「では、12人揃った所で改めて行くぞ!この中で仲間外れはだ~れ?」

 

 突然のナゾナゾにコーラルQとグラブ、そして千年前の魔物達は唖然とした。

 

清麿「こんな状況でナゾナゾかよ!ふざけんじゃねえ!!」

 

 ナゾナゾ博士と最初に会った時にナゾナゾをやらなかった事が災いして、戦いの時にナゾナゾをやるナゾナゾ博士に対して清麿は怒っていた。

 

恵「ま、まずいわよ、ガッシュ君!このまま清麿君が怒りが溜まり続けたら鬼になるわ!」

 

ガッシュ「そうなってしまったら恐ろしい事が起きるのだ!!」

 

コーラルQ「グラブ、私のレーダーに異常反応!あのピヨ麿という男がさらに怒りを蓄積したらとんでもない事になる!」

 

 鬼になった清麿を見た事があるガッシュやティオ、コルル、パティとそのパートナー達は慌てふためき、コーラルQも清麿の異常さに慌てた。

 

グラブ「問題の答えがわかったぞ、答えは…ビッグボインだ!」

 

ナゾナゾ博士「ブッブー、ハズレ。正解はフライング・ビート、飛べるから!」

 

コーラルQ「ふざけるな!グラブはIQ190の天才だ!そのグラブは仲間外れが誰なのか考えた結果が何の能力も持たず、1人だけ女のビッグボインに行きついたのだぞ!ビッグボインだって十分仲間外れだピヨ!」

 

パティ「確かにビッグボインは1人だけ女だから十分仲間外れに入るわね」

 

コルル「あのグラブって人の言ってる事も間違いではないと思うよ」

 

清麿「(IQ190?あのグラブって奴、俺と同じぐらいの頭脳の持ち主じゃねえか!)」

 

ナゾナゾ博士「それでもハズレはハズレ。それではマジョスティック12よ、クイズにハズレた奴等にお仕置きだ!」

 

 マジョスティック12は向かっていき、まずはツー・ライティング・アイが光線を発射した。

 

グラブ「あの光線はよける必要もない!目を瞑るだけで十分だ!」

 

 コーラルQの言葉に清麿はグラブの頭脳を知り、少し冷静になった。グラブの指示通りにコーラルQと千年前の魔物達は全員目を瞑った。

 

ジェム「全然ダメじゃない!」

 

ヨポポ「ヨポポイ!」

 

ナゾナゾ博士「(もしやあのグラブという少年、最初にツー・ライティング・アイが撃った時にその威力を見抜いたとでもいうのか…?)」

 

 その後もマジョスティック12は挑み続けたが、敵の隙を作る事すらできずに散々な結果に終わった。その光景に清麿は怒るどころか、呆れて怒りも静まろうとしていた。

 

ティオ「一時はどうなるかと思ったけど、清麿が鬼にならなくて済んだわね」

 

恵「そうね」

 

しおり「清麿君が鬼になったら止められそうなのは恋人の恵しかいないからね」

 

恵「ちょ、ちょっとしおり、私と清麿君はまだはっきりとした恋人同士じゃないし、鬼の清麿君を止める事なんて…」

 

清麿「…なぁ、ガッシュ、お前の戦いではこの時はどうやって切り抜けたんだ…?」

 

ガッシュ「ビッグボインが頑張ってくれたから切り抜けられたのだ」

 

清麿「ビッグボインが?」

 

 そうしているうちに前の戦いの時のようにビッグボインが『ボインチョップ』で敵味方双方を呆れさせていた。

 

清麿「(これが…ガッシュの言ってたやつなのか…)」

 

ナゾナゾ博士「ギガノ・ゼガル!」

 

 その隙にナゾナゾ博士はキッドと共に敵の背後に回り、ギガノ・ゼガルで吹っ飛ばした。

 

ウォンレイ「本当に隙を作った…」

 

チェリッシュ「何とも言えないわね…」

 

ナゾナゾ博士「さぁ、ヨポポ君、君の出番だ!」

 

ヨポポ「ヨポポイ!」

 

ジェム「第4の術、ヨポポイ・トポポイ・スポポポーイ!」

 

 ヨポポの動きと共に敵の魔物も同じ動きをした。

 

コーラルQ「な、何だ?体が勝手に…」

 

ジェム「次はウォンレイよ!」

 

ウォンレイ「おう!」

 

リィエン「レドルク!」

 

 すぐにウォンレイは千年前の魔物に近づき、全員蹴り飛ばした。

 

ナゾナゾ博士「さぁ、1人ずつ本を狙うぞ!ゼガル!」

 

ニコル「コファル!」

 

ジェム「キロロ・ミケルガ!」

 

 キッドとチェリッシュは普通に術で敵の魔物の本を燃やしたが、ヨポポの方はヨポポの口から細いビームが出たが、ビームはレーザーカッターのように千年前の魔物の本を貫通した。貫通した後に木の枝もスパッと切れた。

 

ガッシュ「おお!あれがヨポポの新しい術か!」

 

キャンチョメ「すげえ!木の枝が簡単に切れちゃったよ!」

 

 千年前の魔物を倒したと浮かれていると、コーラルQはディゴウ・ロボルクでバイクみたいになった。

 

コーラルQ「今回は私達の負けだ。だが、我々は必ず倒しに来るピヨ!それまで首を洗って待っているピヨ!」

 

 コーラルQはグラブを乗せ、バディオスと共に逃亡した。

 

パティ「あいつら、逃げるわよ!」

 

ナゾナゾ博士「深追いは禁物だ。それよりジェム君、キロロ・ミケルガはあれ程人に向けて撃っちゃいけないと言ったのにどうして撃ったのかね?」

 

ジェム「だって、あれの方がミケルやドレミケルよりも早くて当てやすいから使っちゃうもん」

 

ナゾナゾ博士「だが、あれの威力は恐ろしいものだ。人間の体なんて豆腐のように切れるし、魔物の体でも容易く貫通できるのだから、せめて魔物に向けて撃とう」

 

 清麿はキロロ・ミケルガで切れた木の枝を見ていた。そこへ、恵達が来た。

 

しおり「どうしたの?清麿君。ヨポポとかいう魔物の術で切れた木の枝なんか見て」

 

清麿「この木の枝、チェーンソーとかよりも綺麗に切れている」

 

 断面を見てみると、驚くほど綺麗に切れていた。

 

コルル「ほんとだ!」

 

ティオ「あのヨポポとかいう魔物はレーザーで木の枝を切ったの?」

 

清麿「あれはレーザーじゃない。レーザーなら、焦げていたはずだ。俺の推測だがキロロ・ミケルガの正体は…超音波メスだ」

 

恵「超音波メス?」

 

清麿「簡単に言うと超音波を使ってより物を切りやすくした刃物の事だ。ヨポポは音を使った術を得意としているから、キロロ・ミケルガは音を一点集中して発射し、攻撃目標を切りやすくしてると思う」

 

恵「流石は難しい事がわかる清麿君ね」

 

アポロ「みんな、敵を撃退したからホテルで休もうか」

 

 一同は休息のため、ホテルに行く事にした。




これで今回の話は終わりです。
キロロ・ミケルガの由来はぶっちゃけガメラシリーズによく出てくる怪獣のギャオスの超音波メスで、超音波メスを魔物の術で再現したら、というのをやってみました。
次の話は休息回ですが、清麿と恵のラブラブぶりとサービスシーン、ゼオンの暗躍が描かれます。


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LEVEL31 休息の一時

ホテル

 戦いを終えた一行はホテルに着き、休息の一時を過ごしていた。

 

ガッシュ「みんな来てくれてよかったのだ!」

 

リィエン「当たり前あるよ。清麿や恵達が戦ってると聞いて飛んできたある」

 

ニコル「チェリッシュもガッシュの力になりたいから来たわ」

 

チェリッシュ「それに、私はゾフィスに個人的な恨みもあるしね」

 

ティオ「個人的な恨み?」

 

チェリッシュ「私が魔界にいた頃、テッドと一緒に暮らしていた坊や達と力を合わせて何とか作った家をゾフィスは何度も遊び気分で焼いた張本人だから会うような事があれば懲らしめてやりたいと思っていたのよ」

 

コルル「私は戦いは好きじゃないけど、ゾフィスのような悪い魔物は許せないよ」

 

しおり「女の子の怒りをぶつけてやっつけてやりましょう」

 

チェリッシュ「そうね」

 

恵「現代の魔物とそのパートナーが11組も集まるなんて思っていなかったわ」

 

清麿「いつになるかわからないが、後、ダニーとそのパートナーのゴルドーさんも来るそうだ」

 

パティ「これだけいれば千年前の魔物なんて楽勝よ」

 

ウルル「油断してると足元をすくわれますよ」

 

サンビーム「いくら仲間が大勢いるからといって、気を抜かずに行こう」

 

ウマゴン「メル」

 

ジェム「ところで、清麿達が連れてきたその変なY姿の魔物って…」

 

ビクトリーム「ベリーシット!!華麗なるVだ!」

 

ジェム「悪気があって言った訳じゃないのにそんな言い方はないでしょ!?」

 

アポロ「ビクトリームはあんな性格なんだ…。大目に見てやってくれ…」

 

ウォンレイ「そのビクトリームとやらは千年前の魔物なのか?」

 

清麿「ああ。千年前の魔物だが、仲間になってくれた」

 

ナゾナゾ博士「何か重要な情報を聞いてないかね?」

 

ビクトリーム「……私は重要な事は何も知らん」

 

ナゾナゾ博士「そうか…なら、いいよ…。ここに集まったみんな、既に知っている者もおるが、改めて聞いてほしい。敵の首領、ロードの正体がわかった。真の名はゾフィス、心を操れる現代の魔王候補だ!」

 

ウォンレイ「ゾフィスか…、少し噂で爆発の術を使う魔物と聞いている」

 

チェリッシュ「でも、遊び気分で悪事を働くゲスとしても有名よ。魔界にいた頃の私達が暮らしていた家を何度も焼いたからね」

 

ジェム「そいつが千年前の魔物を率いてる親玉って訳ね」

 

ナゾナゾ博士「いかにも。私は君達の他にもともに戦うように何組かの魔物達と会って来た。私はゾフィスの事をここに来る前に立ち寄ったある魔物とパートナーから聞いた。今まで会った魔物の中で最も強かったガッシュ君に次ぐ強大な力を持った魔物じゃった」

 

清麿「ガッシュの次に強い魔物?」

 

ナゾナゾ博士「その魔物の名はブラゴ…そしてパートナーのシェリー」

 

清麿「(やはりか!)」

 

ナゾナゾ博士「私はここに来る前、アンデスの山中で彼等に会ったのだ」

 

 

 

 

 

回想

 清麿達と合流する前、ナゾナゾ博士はブラゴとシェリーに会っていた。

 

シェリー「では、あなた方と手を組めと?」

 

ナゾナゾ博士「千年前の魔物達と戦うには皆が手を組まねば…」

 

ブラゴ「断る。俺がなぜ貴様らと手を組まねばならん。弱い奴のケツを守るのはゴメンだ」

 

ナゾナゾ博士「しかし、そのロードが率いる千年前の魔物は何十体もいる。我々が手を組まねば!パートナーのあんたもそう思う」

 

シェリー「申し訳ありませんがムッシュ、お引き取り願います」

 

ナゾナゾ博士「(な…何だ?この異様な殺気は!?)」

 

シェリー「今、話してくれたロードの情報、礼を言います。しかし、そのロードという者は私の宿敵でもあります。あなた方の力を借りて倒すつもりはありません」

 

ナゾナゾ博士「宿敵!?いや、奴等全てを1人では…」

 

シェリー「ムッシュ、あなたは他の魔物にも協力するよう呼び掛けているみたいですが、これだけはその魔物達にもお伝えください。あなた方のいうロードにだけは手を出さぬよう…。もし、手を出せば…あなた方もただでは済まないと。本当ならば、千年前の魔物も私達の手で始末する所です。くれぐれも、私達の邪魔だけはなさいませんように!」

 

ナゾナゾ博士「(こ奴、口だけではない…!たとえ死ぬことになろうと、1人で奴等を倒す気だ…!)あなたがそれ程までに敵視するロードとは、何者なのかね?」

 

シェリー「あなたが情報をくれたお礼に少しだけロードについて教えましょう。ロードとは仮の名、心を操る魔物の真の名は『ゾフィス』。私の命の恩人とも言える親友の心を操り幸せを奪った…最低最悪の魔物よ」

 

 

 

 

清麿「そうか…やっぱりな…」

 

ナゾナゾ博士「清麿君とガッシュ君は彼等を知っておるのかね?」

 

清麿「ああ、一度だけ戦った事がある。一応は勝ったけどな」

 

 その言葉にコルルと既にコルルからその事を聞いたティオやガッシュが無敵だと信じて疑わないパティ、ブラゴよりも圧倒的に強いゼオンと戦った事があるチェリッシュとそのパートナー達以外に衝撃が走った。

 

一同「えええええ!?あのブラゴと!?」

 

キャンチョメ「ブラゴは優勝候補と呼ばれているぐらい強くて怖い魔物なんだよ!そいつにガッシュは勝ったの!?」

 

ガッシュ「ウヌ。その時はまだ私の最大呪文は制御できる段階ではなかったから明確に勝ったとは言えぬが、退ける事はできたのだ」

 

キッド「信じられないよ!」

 

ウマゴン「メルメルメ…」

 

キャンチョメ「ティオ達はどうして驚いていないんだよ!」

 

コルル「私、ガッシュとブラゴが戦うのを直接見たの」

 

ティオ「私も初めて聞いた時は驚いたわ。でも、優勝候補のブラゴに勝ったガッシュでさえ勝てないだろうって言うぐらい強い魔物もいるのよ」

 

ウォンレイ「優勝候補のブラゴに勝ったガッシュより強い魔物…?」

 

チェリッシュ「その魔物の名はゼオン、ブラゴの何倍も強い上に一応は話が通じるブラゴやシェリーと違ってゼオンは話が全く通じないほど非情で冷酷な魔物よ」

 

キャンチョメ「ブ、ブラゴの何倍も強い魔物!?どうしてそんなとんでもない魔物の事を!?」

 

チェリッシュ「前に戦った事があってね…」

 

キッド「も、もしゼオンが千年前の魔物との戦いの時に乱入したら勝てっこないよ…」

 

ナゾナゾ博士「話が脱線してるから元の話に戻ろう。それより問題はそのゾフィスじゃな。敵がこちらの動きに気付いているのは明白だ。今はその事に集中すべきじゃ」

 

清麿「ああ」

 

ティオ「きっと大丈夫よ。さっきみたいにみんなで協力して戦えばきっと勝てるわ!」

 

ガッシュ「ウヌ、そうなのだ」

 

ティオ「(恵はデモルトとの戦いの時に足を怪我しちゃったから清麿にお姫様抱っこしてもらったけど…、私もガッシュにお姫様抱っこしてもらいたい…)」

 

パティ「何を考え事してるの?ティオ。もしかして、ガッシュちゃんとイチャイチャするのを考えてるんでしょ?」

 

ティオ「そそそ、そんなのは考えてないわ…!」

 

パティ「そうかしら?顔にはそう書いてあるわよ。でも、ガッシュちゃんは私の恋人よ」

 

ティオ「勝手にガッシュを独り占めするな~~!」

 

 またしても喧嘩に発展した。

 

コルル「喧嘩はよくないよ」

 

恵「ティオったら、パティとまた喧嘩したのね…」

 

ウルル「こんな時でもいつもの喧嘩ですか…」

 

ナゾナゾ博士「…とりあえず、各自自由な時間をとって過度の緊張をほぐすんだよ…。でも、街に出る時は二組以上で行動するんだ」

 

 それから、ナゾナゾ博士と清麿は話をした。

 

ナゾナゾ博士「話とは何かね?」

 

清麿「この戦いの発端ともいえるゴーレンの事なんだ…」

 

ナゾナゾ博士「ゴーレン?千年前の魔物を石版にしたゴーレンがどうしたのかね?」

 

清麿「千年前の魔物から聞いたんだが…どうやらゴーレンがデボロ遺跡にいるみたいなんだ」

 

ナゾナゾ博士「だが、ゴーレンは石版になっていない千年前の魔物なのだぞ。その魔物がまだ生きている状態で人間界にいるとは」

 

清麿「正直言ってその話をしてくれた奴等も半信半疑らしい。もし、奴等の言ってたゴーレンが本物だとしたら……」

 

ナゾナゾ博士「強敵になる事に間違いない。できれば、偽物であってほしい事を祈りたくなるぐらいだ…。清麿君も今の内に戦いでの緊張をほぐしておくんだ」

 

清麿「ああ」

 

 ガッシュ達が緊張をほぐすために街に出るのをナゾナゾ博士とキッドは見ていた。

 

キッド「ガッシュって3人の女の子に好かれててラブラブだね」

 

ナゾナゾ博士「まぁ、ここまで仲間を集められたのもガッシュ君のカリスマ性のお陰かも知れないよ。もっとも、まだ本人はカリスマ性という言葉を知らないかも知れないけどね」

 

 

 

 

 緊張をほぐす一同のうち、フォルゴレとキャンチョメはビクトリームと共にビクトリームの大好物メロンを買いに行っていた。

 

ビクトリーム「ぶるぁ…、どのメロンを選べばよいか迷うな…」

 

フォルゴレ「買いたいメロンは華麗なるビクトリーム様が決めてください。お金は私が支払います」

 

キャンチョメ「これはどうかな?」

 

 試しにキャンチョメは店に並んでいるメロンを1個ビクトリームに見せた。

 

ビクトリーム「ふむぅ…よかろう、こぉのメロンを3個食べよう。さぁ、代金とやらを支払うのだ」

 

フォルゴレ「はは~~っ!」

 

 一方のガッシュと清麿はティオと恵、コルルとしおり、パティとウルル、ウマゴンとサンビーム、ウォンレイとリィエンの5組と共に買い物に行っていた。前ではしゃぐガッシュ達をサンビームとウォンレイペアは後ろから見守っていた。

 

清麿「しおりさんはどうして買い物を?」

 

しおり「コルルは術を使うと服を破っちゃうからね。だから、予備をたくさん買っておこうと思って…」

 

コルル「いつまでも下着でいるのは恥ずかしいし…」

 

清麿「(コルルも女の子だから下着でいつまでもいるのは恥ずかしいだろうなぁ…)恵さんが俺と一緒に買い物するのは…」

 

恵「明日は大勢のお弁当を作らないといけないしね。それに…」

 

清麿「も、もしかして恵さん、俺と…」

 

 声に出さずにティオは応援していた。

 

ティオ「(ファイトよ、恵!)」

 

パティ「ガッシュちゃ~ん、買い物ではブリを買っていきましょうね~!」

 

ガッシュ「ウ、ウヌ…」

 

ティオ「いつまでもべったりしてるんじゃないわよ!」

 

パティ「何よ!妬んでるの!?」

 

 ガッシュの取り合いになり、2人はガッシュの腕を引っ張り合った。

 

ガッシュ「痛い、痛いのだ!腕が千切れそうなのだ~~!!」

 

ウォンレイ「ガッシュは大変だなぁ…」

 

サンビーム「どれだけ努力したってモテない人は辛いが、モテモテ過ぎるのも大変なようだ…」

 

ウマゴン「メル…」

 

 楽しく買い物に向かう一行はお店で買い物をした。

 

恵「ガッシュ君のお弁当にはブリを入れてあげなきゃね」

 

清麿「ブリ…南米でも売られてたんだ…」

 

???「その一緒にいる男は恵の婚約者か?」

 

 恵としおりとティオとコルルには聞き覚えのある声が聞こえて振り向くと、そこにはマリル王女がいた。

 

清麿「恵さん、その人は?」

 

恵「カルノア王国のマリル王女よ」

 

清麿「マリル王女!?あのマリル王女と恵さんは知り合いだったのか!?」

 

恵「ええ。遊園地に遅れたのもその人の事件に巻き込まれて」

 

マリル「済まぬのう、恵が巻き込んでしまった挙句、待ち合わせの時間に遅れさせてしまって」

 

清麿「いやぁ、もう済んだ事だから…」

 

マリル「そうか。ところで恵よ、その男の名は何と申す?」

 

恵「清麿君、高嶺清麿君よ」

 

清麿「王女様、よろしくお願います…」

 

マリル「2人は大人びておるからお似合いのカップルどころか夫婦のようにも見えるぞ。お互い気になるのであれば結婚すればよかろう」

 

清麿「け、結婚!?」

 

恵「そ、それは…その…」

 

清麿「それに…その…俺と恵さんはまだ未成年だし…」

 

ガッシュ「お主はマリルと言うのだな、私はガッシュ・ベルと申すのだ」

 

清麿「って、勝手に割り込むんじゃねえ!!」

 

ティオ「勝手に雰囲気を壊すんじゃないわよ!!」

 

 勝手に割り込んだガッシュは清麿とティオに怒られてしまった。

 

ガッシュ「ヌオオオッ!!挨拶ぐらいよいではないか~~!」

 

マリル「ガッシュとやら、ティオやコルルと一緒におるが、友達であるのか?」

 

ガッシュ「お主の言う通り、ティオとコルルは私の友達なのだ」

 

パティ「それに、このパティちゃんはガッシュちゃんの彼女なのよ!」

 

 パティの自己アピールやガッシュとべったりしてる様子にティオはやきもちを焼いていた。

 

マリル「ティオ、ガッシュとべったりしておるパティにやきもちを焼いておるのか?」

 

ティオ「ななな、なにを言ってるのよ!ガッシュが女の子の事に優柔不断だから怒ってるだけで……」

 

マリル「ティオは本音を隠すのが下手じゃのう。ティオもガッシュの事が好きなのじゃな」

 

 本心を言い当てられてティオの顔は真っ赤になってしまい、頭から湯気を出して倒れてしまった。買い物をしていたウォンレイとリィエンもそれを見ていた。

 

リィエン「ウォンレイもガッシュみたいに女の事に優柔不断になってはいけないある。わかったあるね?」

 

ウォンレイ「わかったよ、リィエン…」

 

 リィエンの気迫にウォンレイは冷や汗を垂らして頷いた。その光景を撤退したはずのコーラルQとグラブが見ていた。

 

グラブ「(何で清麿には恋人やたくさんの友人がいるんだ…?俺にはそんなのはないのに…)」

 

コーラルQ「グラブ、グラブ、何をボーッと見ているのだ?」

 

グラブ「わわっ!すまんな…」

 

コーラルQ「さっきからグラブは様子がおかしいぞ。ピヨ麿を見ているようだが、何か羨ましいのか?」

 

グラブ「…コーラルQ、俺もあいつみたいに恋人や友達を作れるのか…?」

 

コーラルQ「う~む…。今日は奴等の偵察はこの辺にしておいて本拠地へ戻ろう」

 

グラブ「そうだな…」

 

 清麿達に気付かれないようにグラブとコーラルQは本拠地へ戻っていった。

 

 

 

 

ホテル

 ホテルに残っているメンバーは、チェリッシュがキッドとジェムとヨポポとロップスの遊び相手になっていた。

 

チェリッシュ「ここではどうやって遊ぶ?」

 

キッド「鬼ごっこがいい!」

 

ヨポポ「ヨポ、ヨポポイ!」

 

ジェム「ヨポポはかくれんぼがいいと言っているわ」

 

ロップス「かう…」

 

アポロ「ロップスは迷ってるみたいだ」

 

チェリッシュ「う~ん…、どうしようかしら…」

 

 結局、かくれんぼで遊ぶ事になり、見つける役になったチェリッシュはあっという間に全員を見つけた。

 

ジェム「よく私達の隠れていそうな場所がわかったわね」

 

チェリッシュ「当然じゃない。魔界ではかくれんぼとかして遊んだ事もよくあったのよ」

 

キッド「凄いなぁ。チェリッシュはどんな王様になりたいの?」

 

チェリッシュ「えっと……まだ決めてないわ。テッドを見つけたらどんな王様になるか決めるわよ」

 

 幼い魔物の子の遊びに付き合ってくれるチェリッシュをナゾナゾ博士とニコル、アポロは見ていた。

 

ナゾナゾ博士「ニコル君、チェリッシュ君は魔界にいた頃から子供好きだったのかね?」

 

ニコル「ええ。チェリッシュは身寄りのない子供達と一緒に過ごしていたそうで…」

 

アポロ「子供達を養うために苦労したから、あの年齢で大人びた雰囲気が出たのだろうね」

 

 

 

デボロ遺跡

 ガッシュ達がホテルに戻った後、密かにゼオンはデュフォーと共にデボロ遺跡に侵入していた。

 

デュフォー「割と警備は緩いな」

 

ゼオン「こんなものは厳しいうちには入らん。ま、見つかっても吹っ飛ばせばいいだけだからな…」

 

 遺跡を進んでいると、何やらゾフィスが千年前の魔物を集めて何か話していた。それをゼオンとデュフォーは気づかれないように聞いていた。

 

ゾフィス「よくわかりました…ビョンコ。レイラの話と併せて、これで城にいた千年前の魔物達が消えた理由もよくわかりました。皆の者も警戒するように。後程、数体の魔物には特別な指示をするかも知れません」

 

ビョンコ「ゲ、ゲロッ、ロード、いや、ゾフィス様、それだけでゲロか?」

 

ゾフィス「何がですか?ビョンコ」

 

ビョンコ「これから街に奴等を倒しに行くとかは…」

 

ゾフィス「いえ、放っておけば彼等はこの城に来るでしょう。その時のためにこの城で迎え撃つ準備をするのが得策かと。バカなネズミを駆逐するためのね!」

 

ビョンコ「(流石ゲロ…)」

 

ゾフィス「それより…この魔物達の中に勝手に彼等の仲間になってしまったビクトリームのような裏切者がいないかどうかの方が問題かと思いますが…」

 

 ゾフィスも他の魔物もゼオンがいた事に全く気付いていなかった。

 

ゼオン「他の魔物も大した事ない連中だな。やろうと思えば俺一人で片づけられる」

 

デュフォー「話が終わったみたいだ。あの魔物の後を追うか?」

 

ゼオン「ああ」

 

 ゾフィスが移動したため、ゼオンはそれを追ってみた。その道中、ゼオンはある物がある部屋を見つけた。

 

ゼオン「何だ?この光る石は?」

 

デュフォー「月の石だそうだ。その光は魔物や人間の傷を癒し、心の力を回復させる事ができる。それから…」

 

???「てめえ、俺をボコボコにした日中のチビだな!」

 

 怒鳴り声と共にデモルトが姿を現した。

 

ゼオン「お前をボコボコにしたチビ?」

 

デモルト「そうだ!俺は覚えてるぞ!マントのチビの事を!」

 

ゼオン「マントのチビ…ガッシュの事か…。(なるほど、こいつを1人でぶっ潰せるようになるぐらい強くなったのか…)」

 

ヴァイル「このガキ、相当頭が悪いようだな。デモルトと戦った事を覚えてねえなんてよ!」

 

デュフォー「頭が悪いのはお前達の方だ。お前達が戦った魔物はゼオンとは別人だ。それに、俺とゼオンはこいつと会った事はないぞ」

 

ヴァイル「頭が悪いだと!?このガキ、舐めやがって!ラギア」

 

 ヴァイルが呪文を言い終わる前にゼオンはデモルトに近づき、蹴り飛ばして月の石の光が届かない場所へ吹っ飛ばした。

 

デモルト「ルオオオオッ!!」

 

ヴァイル「バカな!あのチビ、デカイ図体のデモルトをたった蹴り1発で吹っ飛ばしただと!?」

 

ゼオン「どうやら見かけ倒しだったようだな」

 

デモルト「マントのチビが、ふざけやがって!!」

 

 頭に血が上ったデモルトはゼオンに攻撃を仕掛けたが、ことごとくかわされて反撃を受けた。かなりの巨体を誇るデモルトが小柄なゼオンに手も足も出ない現実にヴァイルはどうしようもなかった。

 

ヴァイル「そんな、デモルトがチビに子供扱いされているなんて…!」

 

デュフォー「ゼオン、そろそろ遊びは終わりだ」

 

ヴァイル「終わりなものか!ギルガドム・バルスルク!」

 

 どうにもならないと判断したヴァイルは禁呪文、ギルガドム・バルスルクを使った。それにより、デモルトは全身に頑丈な鎧を纏った。

 

ゼオン「ほう…禁呪か…」

 

デモルト「調子に乗りやがって、このクソチビが~!!」

 

 デモルトはゼオン目掛けて拳を振り下ろした。しかし、デュフォーはよけず、ゼオンは臆する事なく突っ込んでき、デモルトを蹴り飛ばした。

 

ゼオン「こんな奴如きに強い呪文はいらん」

 

 禁呪を使ってもゼオンとデモルトの実力の差は変わらず、一方的にデモルトがやられていた。

 

ヴァイル「どうなってるんだ…!?ゾフィスから使うなと言われた呪文を使ってもあのガキに歯が立たないなんて…。こうなったら…!」

 

 デモルトはゼオンに敵わないと悟ったヴァイルはデュフォーから本を奪おうとした。しかし、デュフォーは足を引っかけてヴァイルを転ばせた後、ヴァイルの股間を蹴った。

 

ヴァイル「いて~~~っ!!!俺の股間を蹴りやがって!!ふざけんじゃねえぞ、このほとんどしゃべらねえガキが!」

 

 今度はデュフォーを殴ろうとしたが、デモルトをボコボコにした後に駆け付けたゼオンに蹴り飛ばされた。

 

ゼオン「パートナーが自ら本を奪いに来るとは大した度胸だな」

 

デュフォー「そろそろ遊びは終わりにするぞ、ゼオン」

 

ゼオン「ああ」

 

デュフォー「ソルド・ザケルガ!」

 

 何度もゼオンに殴られ、蹴られた事とソルド・ザケルガを受けた事で鎧は砕かれ、デモルトは倒れてしまった。

 

デモルト「ルオオオオッ!!!」

 

ゼオン「やはり図体がでかいだけの雑魚だったな。本を燃やすぞ」

 

デュフォー「本の持ち主はさっきお前が遠くへ蹴り飛ばしてここにはいないぞ」

 

ゼオン「人間への力加減を間違えてしまったようだな、まぁ、いいや。あのヘタレを追うぞ」

 

 そのまま進み、ゼオンが目にしたのは怯えるゾフィスとケンタウルスとゴルゴンを合わせたような魔物とコートを着た美形の男だった。

 

ゾフィス「この俺に高嶺清麿と大海恵の2人を生け捕りにしろだと!?」

 

男「そうだ。あの2人は私の最高の美術品になる」

 

ゾフィス「ふざけるな!そんな事ができるか、モーリス!」

 

モーリス「お前、また石になりたいのか?」

 

 ケンタウルスの魔物が睨んだ途端、ゾフィスは一気に怯えた。

 

モーリス「私は魔物も人間も関係なく男が、特にジジイが嫌いだ。本来なら、ココという女の子の美しさを引き立てられないクズのお前なんかすぐ石にして木っ端微塵にしてやるが、ゴーレンが利用価値があると言ったからお前に他の千年前の魔物を指揮する権限を与えて生かしておいているんだ。それを忘れてはいけないよ、ヘタレ君」

 

 恐怖で何も反論さえできないゾフィスはその場を去って行った。その光景をゼオンは嘲笑っていた。

 

ゼオン「あのヘタレに相応しい無様な姿だな」

 

デュフォー「ゼオン、あのケンタウルスのような魔物は知っているのか?」

 

ゼオン「あの魔物は恐らくゴーレンだ。千年前の魔界の王を決める戦いの時に父上とその仲間達との戦いでディオガ・ゴルゴジオを跳ね返されて自分が石版になって敗れたと父上から聞いたがな」

 

デュフォー「だから、今になっても人間界にいたのか」

 

ゼオン「さて、一旦野宿するためにも遺跡から出るぞ、デュフォー。次の日は奴等の戦いを楽しく見物できるな」

 

 そのままゼオンはデュフォーをマントに包んで瞬間移動して消えた。

 

モーリス「やれやれ、ここにいる男共は魔物も含めてほとんど使えない奴等ばかりだ。私がジジイと並んで最も嫌いな品のない男のヴァイルもまだ利用価値があるから生かしているが、ゾフィスを脅して作らせたあれを使う時が来たら始末するとするか」

 

ゴーレン「さっき、月の石の部屋を見てみたが、デモルトが何者かにやられていたようだ」

 

モーリス「パワーしか能がない単細胞と品のない男のコンビでは所詮そこまでだ。あれでゴーレンの頭脳とあの単細胞のパワーが合わさればどんな敵にも負けない魔物になれるんだけどね」

 

 コーラルQとグラブも帰ってきた後、ゾフィスとモーリスの会話を聞いていた。

 

グラブ「ここの所のゾフィスが何かに怯えているような素振りはこれが原因だったのか…」

 

コーラルQ「グラブ、このままビョンコのように従い続けるか、奴を見限るかどっちにする?」

 

グラブ「そうだな…、あのゴーレンという魔物をこのまま放っておいたら大変な事になる…!覚悟を決めるぞ、コーラルQ…!」

 

 

 

 

ホテル

 各自外出から帰ってきた後、入浴になり、先に恵とティオがお風呂に入った。

 

ティオ「ここのお風呂も気持ちいいわね」

 

恵「体も温まるわ」

 

ティオ「ねえ、恵、せっかくだから清麿に色仕掛けでアプローチする?」

 

恵「ちょっとティオ、色仕掛けは恥ずかしいわよ…!」

 

ティオ「何を言ってるの、清麿は恵の水着写真集に興味津々だったのよ。遊園地では清麿をからかってたじゃない」

 

恵「ただ、からかっただけで色仕掛けは…」

 

ティオ「案外、清麿は恵の裸にも興味津々かも知れないのよ。躊躇せずにやってみた方がいいんじゃない?」

 

 そう言ってると、ガッシュと清麿の話し声がした。

 

ティオ「そう言ってると来たわよ、恵。ファイト!」

 

 ティオに急かされて恵はバスタオルを巻いてから風呂場を通り過ぎようとしていた清麿の前に現れた。バスタオル姿の恵に清麿は動揺を隠せなかった。

 

清麿「め、恵さん!そんな恰好でどうして!?」

 

恵「き、清麿君…その…」

 

 話すのを躊躇しているうちに恵の巻いていたバスタオルがずれ落ちてしまい、恵の裸が露わになってしまった。当然、すぐに恵は恥ずかしがりながら腕で胸を隠し、恵に好意を抱いていた清麿も恵の裸に驚きを隠せなかった。

 

恵「きゃっ!!!」

 

ガッシュ「どうしたのだ?」

 

ティオ「ガッシュは見ちゃダメ!」

 

 慌ててティオはガッシュの目を塞いだ。

 

清麿「(め、恵さんの裸はとても美しすぎる…!!まるで、ヴィーナスみたいだ…!)って、何をいやらしい事考えてるんだ、俺!」

 

 思わずいやらしい事を考えてしまったものの、すぐに我に返って恵が巻いていたバスタオルを再び巻いてあげた。

 

恵「あ、ありがとう、清麿君」

 

清麿「恵さん、裸を見てしまったせいで何と言ったらいいのか…」

 

恵「気にしなくていいのよ。今のは私の方に落ち度があるから…。清麿君、お詫びといっては何だけど、私の胸を触りたいのなら、触っていいわよ…」

 

清麿「え?俺なんかが…」

 

恵「清麿君ならいいの。遠慮しなくていいわ…」

 

ティオ「フォルゴレとかと違って清麿なら恵の胸を触っていいのよ。私も首を絞めたりしないから」

 

 言われた通り、清麿は恵の胸を触った。

 

清麿「(やっぱり恵さんの胸は大きいし、柔らかい…)」

 

恵「触り心地はどう…?」

 

清麿「とてもいいです…」

 

恵「…ありがとう…。私の裸を見たくなったり胸を触りたくなったら言ってね。清麿君だったら…いいよ…」

 

 恵は胸を触られる事、清麿は女性の胸を触る事に慣れていないため、話すのもぎこちなかった。

 

ティオ「やれば色仕掛けもちゃんとできるじゃない、恵」

 

恵「で、でも…やっぱり恥ずかしいわ…」

 

ガッシュ「ティオ、せっかくだからみんな一緒にお風呂に入ろうではないか」

 

ティオ「…何であんたはすぐにそういった発想になるのよ!!」

 

 幼さ故に女の子と一緒にお風呂に入る事を恥ずかしく思わないガッシュはティオの首絞めという名の制裁を受けた。

 

恵「それじゃあ、私とティオはお風呂に入るから」

 

 ティオを連れて恵は風呂に入った。清麿とガッシュは自分達の部屋に行った。その一連の出来事を入浴準備をしていた女性陣は見ていた。

 

しおり「なかなか体を張った事をしたわね、恵。ところでコルル、清麿君の家にいる間はガッシュ君ってコルルと一緒にお風呂に入ろうとしたの?」

 

コルル「うん。でも、華さんが止めてくれたから何とかなったけど…」

 

パティ「私はガッシュちゃんと一緒にお風呂に入っても大丈夫よ」

 

ジェム「何でそう思うのかが不思議よ…」

 

リィエン「さ、私達もお風呂に入るある」

 

チェリッシュ「そうね。汗はきっちり流しましょう」

 

 他の女性陣も全員お風呂に入った。

 

パティ「あ~、いい湯だわ…。身も心も癒される~」

 

チェリッシュ「ティオとコルルはどっちから先に髪を洗う?私が髪を洗ってあげるわよ」

 

ティオ「私から先で」

 

チェリッシュ「わかったわ。コルルはその後ね」

 

コルル「うん」

 

恵「ニコルさんもこうやってみんなでお風呂に入った事はあまりないですか?」

 

ニコル「そうね…」

 

リィエン「ニコルもしっかり今日の疲れをとって明日に備えるある」

 

しおり「明日はとても激しい戦いになりそうね…」

 

 女性陣が入浴を楽しんでいた頃、フォルゴレとキャンチョメは風呂場を通り過ぎようとしていた。

 

キャンチョメ「フォルゴレ、女の子が入浴してる風呂場には間違っても入らないでね」

 

フォルゴレ「はははははっ、私はチチをもいでも覗いたりはしないぞ」

 

 そう言ってると、恵が濡れたまま一旦出たために濡れていた床でフォルゴレは誤って足を滑らせてしまった。

 

フォルゴレ「どわぁぁっ!!」

 

キャンチョメ「フォルゴレ!」

 

 足を滑らせたフォルゴレは風呂場に突入してしまった。

 

フォルゴレ「や、やあ…」

 

女性陣「きゃあ~~~っ!!」

 

ティオ「セクハラするだけじゃ物足りないから覗きに来たのね!!」

 

フォルゴレ「違う!私は断じてそんな事は」

 

コルル「セクハラも覗きも悪い事だよ!」

 

パティ「女の入浴中を覗くなんて最低よ!」

 

チェリッシュ「徹底的にお仕置きをしてあげないとね!」

 

リィエン「みんなでフォルゴレにお仕置きある!」

 

フォルゴレ「バンビーナ達の入浴中に入ってしまったのは謝る!でも、これは事故なんだ!だから、許して~~!」

 

 女性陣に覗きに来たと誤解されたフォルゴレはボコボコにされて風呂場から放り出された。その怒鳴り声は泊まっている部屋にいる残りの男性陣にも聞こえていた。

 

ウマゴン「メル」

 

サンビーム「どうやら、誰かが女性陣の入浴中を覗いてボコボコにされているようだ」

 

ウルル「女性が入っているお風呂場は楽園なんかじゃなくて地獄ですからね…」

 

清麿「覗きそうな奴はフォルゴレしかいねえな」

 

アポロ「わざとかどうかははわからないけど、女の子の入浴中を覗くとろくな事にならない事に変わりないからね」

 

 それから全員の入浴が終わった後、食事をとった。幼い魔物の子は食欲旺盛だった。

 

ガッシュ「ここの料理はおいしいのだ!」

 

ウルル「パティ、ちょっと食べすぎじゃないですか?」

 

パティ「いいじゃない、明日は激しい戦いになるのよ。戦いに備えていっぱい食べないと」

 

ティオ「(どこにそんな食欲が湧くのよ…)」

 

コルル「(食べ過ぎたら太っちゃうよ…)」

 

チェリッシュ「坊や達は育ちざかりだからたくさん食べていいのよ」

 

キッド「じゃあ、僕もたくさん食べるぞ!」

 

ヨポポ「ヨポポイ!」

 

ロップス「かう!」

 

ウォンレイ「(みんな食欲旺盛だなぁ…)」

 

 食欲旺盛な幼い魔物の子達にウォンレイは思わず引いてしまった。食事が終わった後、全員で作戦会議をした。

 

清麿「では、次の日は12組全員が一丸となって最上階まで目指す事に決定だ!」

 

フォルゴレ「確かにそれ、いいね!」

 

ジェム「これだけいれば怖くないわ!」

 

ビクトリーム「皆の衆が一丸となるのは良い事ではないか」

 

サンビーム「だが、敵も何か罠を仕掛けている可能性もある」

 

アポロ「その罠で僕達が分散されてしまうかも知れない…そうなった場合の事も考えておかないといけない」

 

ナゾナゾ博士「その時は傍にいる者達が手を組み、2組以上で行動しなければならない。間違って一組になってしまったら清麿君とガッシュ君はともかく、他のみんなは千年前の魔物に太刀打ちできなくなってしまうからね。みんな、必ず生き残るのじゃぞ!」

 

一同「おう!」

 

恵「私達は明日は早起きしてみんなのお弁当を作るわよ!」

 

しおり「お腹が減っちゃったら戦いどころじゃないからね」

 

ニコル「それじゃあ、今日はもう寝て明日の戦いに備えましょう!」

 

 一同は次の戦いに備えて寝た。そんな中、ナゾナゾ博士は月を見ていた。

 

ナゾナゾ博士「(明日の戦いは厳しい戦いになる…。私も…この戦いで…)」

 

 

 

???

 同じ頃、シェリーはブラゴと共にデボロ遺跡に向かっていた。

 

シェリー「(もうじきデボロ遺跡に着くわね、ゾフィス!あなたを倒して、ココを救い出す!!)」

 

ブラゴ「いよいよか…」

 

 因縁の敵、ゾフィスとの戦いに備え、シェリーとブラゴは闘志を燃やしていた。次の日はデボロ遺跡で凄まじい戦いが始まろうとしていた。




これで今回の話は終わりです。
今回は原作の石版編の休息の時を描きました。
ガッシュではらんまなどのようなサービスシーンがなかったので、もし、女性陣の入浴等のサービスシーンがあったらという考えでサービスシーンを描きました。
途中で挟まれているゼオンがデモルトを一方的に痛ぶって倒したシーンはインパクトの強い原作のリオウフルボッコを意識しています。
話の途中で出てきたゴーレンのパートナーのモーリスは千年前の方ではなく、千年前のモーリスの同姓同名の子孫です。現代のモーリスのモデルはクロスアンジュのエンブリヲで、喋るシーンや顔や髪型などは全てエンブリヲの声と顔で想像してみてください。
次は再度遺跡に突入する話ですが、原作とは異なるシチュエーションで味方が分断されてしまいます。どういったシチュエーションなのかは見てのお楽しみです。


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LEVEL32 遺跡への再突入

デボロ遺跡

 デモルトが何者かにやられた事に千年前の魔物達やゾフィスは衝撃を受けていた。

 

ベルギム「あのデモルトがこんなにもボコボコになってやがるぞ!一体誰がやったんだ!?」

 

ツァオロン「わからんな。だが、こんなにも強力な魔物が現代にいたのも驚きだ」

 

ゾフィス「(夜の間に誰にも気づかれずに遺跡に侵入してデモルトをあっさり倒しただと!?ガッシュは拠点にまだいるはずだし、こんな事ができるのは……!)」

 

 誰がやったのか考えた時、ゾフィスの脳裏にはゼオンの姿が思い浮かんだ。

 

ゾフィス「(まさか、雷帝がデボロ遺跡に来ているのか!?もし、奴がガッシュやブラゴと手を組んだら…!)」

 

 ブラゴやガッシュと共に恐れていたゼオンの影にゾフィスは不安を隠せなかった。

 

パムーン「(どうやら、ゾフィスも落ち目のようだな…)」

 

 

 

 

ホテル

 翌日、早起きした恵達は全員の弁当を作っていた。

 

恵「チェリッシュも手伝ってくれるのね」

 

チェリッシュ「当然じゃない」

 

ニコル「お腹が減ったら戦いどころじゃないのよ」

 

しおり「さぁ、みんなのお弁当を作るわよ!」

 

 同じ頃、早起きしたガッシュはホテルのベランダにいた。

 

清麿「眠れなかったのか?」

 

ガッシュ「清麿。眠れなかった訳ではないのだが…」

 

清麿「…さすがに朝は冷えるな…」

 

ガッシュ「…清麿」

 

清麿「ああ、わかってるよ…ゾフィスは許しちゃおけない…!それに…、あいつらの言っていたゴーレンの話も気になるからな…」

 

ガッシュ「清麿、正直言って今回のデボロ遺跡での戦いは色々と違う所があるから私の情報があっても苦戦するかも知れぬ」

 

清麿「ゴーレンという不確定要素もあるからな。俺達2人じゃ難しいかも知れない」

 

ガッシュ「でも、私達には信頼できる頼もしい仲間達がいる」

 

清麿「今回は前の戦いの時と違って仲間はさらに多いからな」

 

恵「あら?2人共早起きしたの?」

 

清麿「ああ。みんなより早く目が覚めてしまったんだ」

 

ティオ「みんなのお弁当もできたわよ。そろそろみんなを起こしに行こっか」

 

ガッシュ「ウヌ」

 

 そして、お弁当は全員分出来上がり、一同は朝食をとって戦いの準備を整えた。

 

アポロ「いよいよだな、清麿」

 

清麿「ああ。みんなで月の石を破壊し、ゾフィスを倒すぞ!」

 

一同「おう!」

 

 

 

 

空港

 他の面々より遅れてダニーとゴルドーも来た。

 

ダニー「もっと早く行く事ができなかったのかよ、じじい!」

 

ゴルドー「わしも色々とやらなければならん事だってあったんじゃ!そこら辺も少しは察するなりしたらどうだ?」

 

ダニー「ま、ようやく来れたし、デボロ遺跡ってとこに向かってガッシュ達と一緒に千年前の魔物をやっつけなきゃな!」

 

 

 

 

 

デボロ遺跡 

 清麿達より先にシェリーはブラゴと共にデボロ遺跡に来た。

 

シェリー「行くわよ、ブラゴ!」

 

ブラゴ「ふっ、立ちはだかる野郎共は全員吹っ飛ばしてやろうか!」

 

 その頃、ゾフィスはガッシュ、ブラゴ、ゼオンの脅威に怯えていた。

 

ココ「ゾフィス、どうしたの?最近様子がおかしいけど…」

 

ゾフィス「怯えてなんかいませんよ、いわゆる武者震いって奴です…。」

 

ココ「それより、あの2人は今頃どうしてるのかしら?」

 

 そんな時に千年前の魔物が報告しに来た。

 

魔物A「申し上げます!たった今、侵入者が来ました!」

 

ゾフィス「人数は?」

 

魔物A「金髪の女と目つきの悪い魔物の2人です!」

 

ゾフィス「どうやら、思ったよりも早く来てくれたようですね。パーティーを始めようか、ココ(ここで奴等を仕留めなければゴーレンが何をするかわからない…!もし、失敗したら…俺は…!)」

 

 今度は別の魔物が報告しに来た。

 

ゾフィス「今度は何ですか?」

 

魔物B「たった今、コーラルQから報告です!レーダーに12体もの魔物の反応があり、こちらにきているそうです!」

 

ゾフィス「(くそっ、何でブラゴと同時にガッシュまで来るんだよ!)私は先に来た客とのパーティーで忙しいのです。その魔物達の排除は四天王と共にお願いしますよ」

 

魔物B「ですが、奴等とどう戦えば…」

 

ゾフィス「今回は千年前の魔物全員に月の石を持つ事を許可します。それに…既に手は打ってあります。彼等を罠にかけて分断させればいいのですよ。そのための罠も用意してますけどね…」

 

 その頃、ガッシュ達は見つからないようにしてデボロ遺跡に来た。

 

パティ「もう、何でこそこそ隠れて進まなきゃいけないのよ」

 

ウルル「全員倒そうとするとゾフィスとの戦いの前に私達の心の力がなくなる可能性が高いんですよ」

 

 茂みの音を利用して見張りがどこかへ行った後、清麿達は前回とは別のルートからデボロ遺跡に侵入しようとした。

 

ガッシュ「どうしたのだ?チェリッシュ」

 

チェリッシュ「…ちょっと悪寒がしたのよ…。誰かに見られているような気がしてね…」

 

ティオ「もう見つかっちゃったの?」

 

清麿「見つかったのなら、どんどん来るはずだ。まだ見つかってはいないだろう」

 

恵「チェリッシュが誰かに見られている気がするのはどうしてなのかしら?」

 

 そのチェリッシュが感じた違和感の正体は遠くからガッシュ達を見ているゼオンとデュフォーだった。

 

ゼオン「あのデカブツをあっさり倒せる実力を持ちながら、他の魔物と群れているとはな」

 

デュフォー「あの中でガッシュの次に強いのはチェリッシュとウォンレイだ。他の魔物の実力は基本的に単独では千年前の魔物に苦戦するレベルに過ぎん」

 

ゼオン「デュフォー、お前の出した答えではあのヘタレは月の石の力で大勢の人間を操ってるんだろう?」

 

デュフォー「ああ。だが、他の人間が操られていようが、俺達には関係ないがな」

 

ゼオン「あのヘタレとガッシュ達、どっちが勝つかどうか見させてもらうぞ…」

 

 ゼオンとデュフォーは先回りしてガッシュ達と千年前の魔物の戦いを見物する事にした。

 

 

 

 

 前の戦いでは壁をよじ登っていったが、今回の戦いは別のルートからガッシュの記憶を頼りに清麿は指示を全員に出しながら進んでいった。

 

アポロ「清麿、これからどうやって進む?」

 

清麿「できれば敵に見つかりたくない…。だから、遠回りになっても敵の配置が薄いと予想される道を進む」

 

ニコル「でも、遺跡の中の道はわかるの?」

 

清麿「ああ。前回の突入の時に大まかにはチェックしてある(それに、ガッシュのナビゲートもあるからな…)」

 

ティオ「流石清麿!」

 

しおり「もう大まかにチェックしてるのは凄いわ」

 

ナゾナゾ博士「そこで我々の目的についてだが、まず第一に最深部にあるゾフィスの塔、そこにあるはずの月の石を破壊する事」

 

清麿「第2にゾフィスを倒し、操られた人間や魔物達を解放する事。そして最後にこれが一番重要だ…。必ず、全員が生きて戻る事、わかったな!」

 

魔物一同「おう!」

 

ナゾナゾ博士「いくぞ、みんな!先はまだ長い!」

 

 ガッシュ達は進んでいったが、見張りの魔物は進む先にはおらず、他の魔物が暴れたような跡があった。

 

ガッシュ「(どうなっておるのだ?見張りの魔物がおらぬとは…)」

 

清麿「(魔物が暴れたような痕跡もある。俺達以外にゾフィスと戦う魔物といえば…ブラゴか…)」

 

キャンチョメ「ベロベロベ~!」

 

イバリス「ああっ、敵だ!」

 

パティ「何で自分から敵に見つかるのよ!!泣き虫無力アヒルが!」

 

 見張りがいない事に調子に乗ったキャンチョメは挑発をかけた。すると、たまたま残っていた見張りの魔物がそれに気づいた。キャンチョメは激怒したパティに制裁を受けた。

 

コルル「今はそんな時じゃないよ!」

 

リィエン「急ぐある!」

 

イバリス「別の侵入者だ、そっちへ行ったぞ!」

 

バビル「よし、挟み撃ちだ!」

 

 その先にも魔物がおり、挟み撃ちにされた。

 

ジェム「こうなったら戦うわよ!」

 

清麿「みんな、左右へ逃げ込め!」

 

 左右へ逃げ、千年前の魔物の攻撃をぶつけさせた。それから、チェリッシュペアとウォンレイペアが前に出た。

 

ニコル「コファル!」

 

リィエン「バウレン!」

 

 攻撃で千年前の魔物を吹っ飛ばした。そして、その隙にガッシュのナビゲートを頼りに清麿は仲間達に指示を出しながら進んでいった。

 

清麿「よし、急ぐんだ!パティは他のみんなが階段を登るまで俺達と一緒に待機だ!」

 

パティ「ガッシュちゃんと一緒に何をするのかしら?」

 

 そうしてるうちに他の仲間達は階段を登った。

 

清麿「パティ、ウルルさん、天井にアクルガだ!」

 

ウルル「はい、アクルガ!」

 

 アクルガで天井を壊し、イバリスを足止めする事に成功した。

 

清麿「よし、登るぞ!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

パティ「ええ!」

 

ナゾナゾ博士「さすがじゃな、清麿君。狭い通路を選び道を塞ぐ事で敵の追撃を防ぐ。『地の利』をちゃんと活かしておる」

 

清麿「そうか。だが…俺達が先に潜入していたせいで敵の警戒が厳しくなっている。ブラゴが既に倒しているからなのか意外と少なかったが…」

 

ナゾナゾ博士「何を言うか?君達の働きは大きいよ。不透明だったこの遺跡の内部や千年前の魔物の置かれた状況、そして何より、月の石の情報まで手に入れたのだ!それらの情報があってこそ、この作戦を決行できたのだ!戦力を分散せずに、24人が一丸となって一気に中心部を目指す作戦をね!」

 

清麿「月の石に関しては、情報通から聞いたけどな。俺自身も本当かどうか考えていたが、情報通りだと思う」

 

ナゾナゾ博士「その情報通から得た情報は私の目から見ても間違いない。私の抱いていた疑問も全て解けたよ。きっと、情報通から得て君が出した答えが千年前の魔物や操られている人間を解放してくれる。無駄に全ての敵と傷つけあう事なくね。さぁ、行くぞ!」

 

 先へ進んでみたが、魔物はおらず、倒れている人間しかいなかった。

 

ジェム「この人達…操られていた人達?」

 

サンビーム「間違いないようだ」

 

清麿「多分、ブラゴと戦って敗れたんだろう。ここから先は行った事がないから何があるかわからないが、先へ進もう!」

 

 そのまま先へ進もうとすると、通路の途中でメロンが置いてあった。

 

ビクトリーム「おお!こんな所にメロンが!」

 

フォルゴレ「華麗なるビクトリーム様、こんな所にメロンがあるなんて驚きですね」

 

ビクトリーム「当然だ。早速、メロンを食べようではないか!」

 

キャンチョメ「はは~~っ!」

 

ジェム「ちょっと、独り占めしないでよ!」

 

 ビクトリームとモヒカン・エース、キャンチョメペア、ヨポポペアはメロンに向かっていった。

 

恵「こんな道の真ん中にメロンがあるなんて…」

 

ティオ「誰か落としていったんじゃない?」

 

ナゾナゾ博士「(こんな所にメロン?もしや…!)ビクトリーム君、そのメロンを持ち上げてはいけない!」

 

ビクトリーム「何?」

 

 慌ててナゾナゾ博士はビクトリームがメロンを持ち上げるのを止めようとしたが、既に遅く、ビクトリームはメロンを持ち上げた。すると、何か大きな音がした。

 

清麿「何だ!?」

 

 その時、メロンが置いてあった所の左右の壁が動いて穴が開いたのと同時に大量の水が流れ、その場にいたビクトリームとモヒカン・エース、キャンチョメペア、ヨポポペア、キッドペアは流されてしまった。

 

ビクトリーム「ぶるぁああああっ!!」

 

フォルゴレ「どわぁああっ!!」

 

ジェム「きゃっ!」

 

ガッシュ「水が流れたのだ!」

 

清麿「これは重りがずらされると動く罠か!」

 

ナゾナゾ博士「緊急時用の作戦Eの決行じゃ!私とキッドは流されたフォルゴレ君達と一緒に行動する!だから、残る君達も力を合わせて生き残ってくれ!!」

 

 重要な事を伝えようと必死で壁に掴まり、重要な事を伝えたナゾナゾ博士は激流に抗いきれずに流されてしまった。ビクトリームがあっさり罠にかかった事に天井の秘密通路から見ていた千年前の魔物は驚いていた。

 

魔物A「思ったよりも簡単に引っかかってくれたな」

 

魔物B「でも、敵の中で強い魔物が全然流されていないぞ!」

 

魔物A「心配するな。幸い、次の道の階段は罠にかからなかった事も想定してゾフィス様が壊しているから奴等はきっと引き返すだろう」

 

 水が流れるのが収まった後、残るガッシュ達は先へ進んだ。

 

 

 

 

 一方、ブラゴとシェリーは襲ってくる魔物を蹴散らしながら先へ進んでいた。

 

シェリー「だいぶ警備が厳しいわね」

 

ブラゴ「見つかってもぶっ飛ばせばいいだけの事だ。それに、操られた人間の持っていたその石、何だろうな」

 

シェリー「とりあえず、持っておいて損はないでしょうから持ちましょう」

 

 その頃、激流に流されたナゾナゾ博士達は流された所から道を進んでいた。

 

ジェム「もう、私達がこんな目に遭ったのはあんたのせいよ、ビクトリーム!」

 

ビクトリーム「何!?この華麗なるビクトリーム様にケチをつける気か!」

 

ジェム「何が華麗なるビクトリーム様よ!完全におバカなビクトリームよ!」

 

ビクトリーム「ぶるぁああっ!!許さんぞ!!」

 

キャンチョメ「ジェムも華麗なるビクトリーム様も喧嘩はやめてよ!」

 

ヨポポ「ヨポポイ!」

 

ジェム「あんな奴にはしっかり言っておかないと!」

 

ナゾナゾ博士「今はそんなことをしてたら体力と時間を無駄にしてしまう。起こってしまったものは仕方ない。だから、これからの事を考えよう」

 

ジェム「はぁい…」

 

 ナゾナゾ博士一行は道を進んだ。一方、ガッシュ達の方は…。

 

コルル「ナゾナゾ博士達、大丈夫かな?」

 

しおり「きっと大丈夫よ、コルル」

 

アポロ「いや、向こうはよくない状況だろう。ビクトリームは千年前の魔物だから同じ千年前の魔物との戦いでは呪文が出せないし、キャンチョメはかく乱は得意だが攻撃と防御はできない。もし、千年前の魔物と遭遇したら実質的にキッドとヨポポの2人だけで戦わなくてはならない」

 

恵「私達のグループとナゾナゾ博士達のグループでは魔物の強さにも差があるわよ」

 

ニコル「確かにそうね。私達の魔物の中で抜きん出た強さを持っている魔物はガッシュとチェリッシュ、ウォンレイの3人で、3人とも私達のグループにいるけど、向こうのグループの魔物は最大火力がギガノ級までしかないわ」

 

清麿「向こうのグループがギガノ級を超える威力の術が使える敵と遭遇したらひとたまりもない。だが、俺達はここで立ち止まるわけにはいかない!」

 

サンビーム「今は彼等の無事を信じて進むしかない」

 

ウルル「とりあえず、ここから先は罠に注意して進みましょう」

 

 進んでいると出口が見えた。

 

リィエン「出口が見えたある!」

 

 出口の先は階段があった。

 

ウォンレイ「ここを通らなければならなさそうだ」

 

清麿「ああ。でも、ここを登ればきっと奴等の本拠地だ」

 

ガッシュ「(そろそろゾフィスが来るのだ…)」

 

チェリッシュ「ナゾナゾ博士達が罠にかかってしまうというアクシデントはあったけど、とりあえずはここまで来れたわね」

 

清麿「(ガッシュの話が正しければ、ここでゾフィスが現れるのだろうな…)」

 

恵「先へ進みましょう、清麿君」

 

清麿「ああ」

 

サンビーム「待つんだ!この道は何者かに破壊されて途中で途切れているようだ!」

 

 サンビームの言う通り、階段は途中の部分が既に破壊されており、道は途切れていた。

 

ティオ「嘘!?これじゃあ進めないわよ!」

 

パティ「どこかに他の道はないの!?」

 

清麿「多分、存在しないだろう。城は王様の住む所だからな。この遺跡は王族など…選ばれた人達以外は容易く通れない仕掛けになっているようだ」

 

アポロ「敵は僕達がここを通るのを見越した上で破壊して進めなくしようとしたのだろうね」

 

コルル「清麿お兄ちゃん、どうやってここを通るの?」

 

清麿「ちゃんと通る方法はある。みんなでここを通るにはウマゴンとロップスがカギだ!」

 

ウマゴン「メル?」

 

ロップス「かう?」

 

清麿「まず、アポロとロップスはウマゴンに乗って飛び越えてくれ」

 

アポロ「わかったよ」

 

サンビーム「行くぞ、ウマゴン。ゴウ・シュドルク!」

 

 アポロとサンビーム、ロップスを乗せてウマゴンは途切れた道を飛び越えた。

 

清麿「次はアポロ、リグロンで俺達を引き上げるんだ!」

 

アポロ「頼むぞ、ロップス。リグロン!」

 

 ロップスのリグロンで残りの面々を引き上げてもらい、先へ進む事に成功した。

 

ニコル「よく短時間で渡る方法を思いついたわね」

 

清麿「ウマゴンとロップスの力を見たから、思いついたんだ」

 

恵「このまま順調に進めば城まであっという間に着きそうね」

 

ガッシュ「(どういう事なのだ?ゾフィスは現れぬし、階段はすでに壊されておった…)」

 

 飛び越える様子を見ていた魔物達は驚いていた。

 

魔物A「何だと!?あらかじめ階段を壊しておいたのに奴等、そのまま乗り越えたぞ!」

 

魔物B「とにかく、報告だ!」

 

 すぐに見ていた魔物達はゾフィスに報告した。

 

ゾフィス「何ですって!?ガッシュ達が道を引き返さなかったどころか、私が壊して途切れさせておいた階段を仲間との連携で乗り越えた!?」

 

魔物A「とても信じがたい話ですが…」

 

ゾフィス「奴等は数で攻めなさい。幸い、連中は突入時の12体の魔物のうち、4体が罠で分断されていて8体だけです。そうすれば、半分ぐらいは倒せると思いますよ」

 

魔物B「はっ」

 

 報告を終えた魔物達はその場を去って行った。

 

ゾフィス「何て奴等だ…!あらかじめ道を途切れさせておけば引き返すと思っていたのに…!分断された奴等も含めての始末は頼みましたよ…四天王の皆さん…(何としてもガッシュだけは倒してくれ…!私じゃあいつには勝てないんだ…!)」

 

 恐れているブラゴとガッシュが迫りつつある現実にゾフィスはゴーレンの件もあって全く余裕はなかった。

 

 

 

 その頃、ガッシュ達は途切れた道を乗り越え、進んでいた。

 

ティオ「まだ罠はあるんじゃないかな?」

 

ガッシュ「罠ばかりではないぞ、まだ千年前の魔物はたくさんいるのだ」

 

パティ「でも、私達が力を合わせればチョチョイのチョイよ」

 

 進んだ通路の出口に部屋があったが、そこには十数体もの千年前の魔物が待ち構えていた。

 

ティオ「ちょ、ちょっと、こんなにたくさんの魔物が待ち構えているなんて!」

 

コルル「たくさんいたらここでの戦いでみんなバテちゃうよ!」

 

清麿「(こんなにたくさん魔物と真っ向から戦ったらゾフィスやガッシュの言ってた四天王との戦いの前にみんなの心の力をかなり消耗させてしまう!)みんな、ここは俺とガッシュで食い止める!だから、先へ進んでくれ!」

 

恵「無茶よ!いくらガッシュ君が強くてもこんな数を相手にしてたら仮に全員倒せたとしても清麿君の心の力が尽きてしまうわ!」

 

清麿「だが!」

 

サンビーム「頭の血を下げるんだ、清麿。一組では負担が大きすぎるなら、二組以上で戦えばいいのではないか?」

 

清麿「(…そうだ!先を急ぐあまり、俺はつい後先考えなくなっていた…)それで、俺のほかに誰が残ってあいつらと戦うんだ?」

 

アポロ「僕とロップスも残る事にするよ。何組かが敵の軍勢を足止めし、残りのメンバーが先へ進むというのには賛成だ」

 

ニコル「私とチェリッシュも残るわ。他のみんなは急いで!」

 

リィエン「わかったある!」

 

しおり「急ごう、恵!」

 

恵「ええ!清麿君、絶対に追いついてね!」

 

清麿「ああ!」

 

ウルル「では、行きましょうか!」

 

 ガッシュペア、ロップスペア、チェリッシュペアがその場に残ってその部屋にいる千年前の魔物と戦い、残る面々は先へ進む事にした。

 

魔物A「行かせるか!」

 

ニコル「コファル!」

 

 コファルをぶつけられて魔物の注意がガッシュ、ロップス、チェリッシュの方へ行き、ウォンレイ達はその隙に先へ進んだ。

 

魔物A「てめえらから先にやられたいのか?」

 

チェリッシュ「違うわよ、私達があんた達を全員ぶっ飛ばしてやるのさ!」

 

ロップス「かう!」

 

魔物B「女とガキ2人の分際で舐めやがって!」

 

アポロ「舐めてるのはそっちの方じゃないのかい?ロップス達はとても強いよ」

 

魔物A「ガキ共と女と人間風情が!かかれ!」

 

 千年前の魔物達は襲い掛かった。

 

ニコル「どういう作戦で行く?」

 

清麿「作戦は考えてある。できる限り最低限の呪文で奴等を全員倒す作戦だ。行くぞ、ガッシュ!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

清麿「ラウザルク!」

 

 ラウザルクでガッシュの身体能力が向上した。

 

清麿「千年前の魔物達を全員吹っ飛ばせ!」

 

ガッシュ「ヌオオオッ!!」

 

 ガッシュは猛スピードで千年前の魔物達に向かっていった。

 

魔物A「わざわざ先にやられに来たか。人間、最大呪文だ!」

 

パートナーA「ギガノ・ウィガ」

 

 千年前の魔物のパートナーが呪文を言い終わる前に魔物はガッシュにワンパンで吹っ飛ばされてしまった。

 

魔物B「た、たったパンチ1発で…!」

 

魔物C「か、数はこっちの方が多いんだ!やっちまえ!」

 

 千年前の魔物達が束になってかかってきたが、ラウザルクがかかっている状態のガッシュには全く敵わず、全員パンチ1発やキック1発、頭突き1発でやられてしまった。最後の1体を倒した所でラウザルクの持続時間は過ぎた。

 

魔物A「ちっくしょう…!人間、呪文を!」

 

 しかし、千年前の魔物達のパートナーは呪文を唱えなかった。

 

魔物A「どうした!?なぜ呪文を唱えない!?」

 

アポロ「これがないと僕達の魔物も君達も術を出せないだろう?」

 

 アポロ達の方には千年前の魔物達の本をリグロンで絡めとって奪ったロップスと本を何冊か持っているチェリッシュの姿があった。

 

魔物B「き、貴様ら、いつの間に!?」

 

チェリッシュ「あんた達が坊やに気を取られている隙に私とテントウムシの坊やがあんた達の本を奪い取ったのよ」

 

アポロ「さぁ、仕上げと行くか。リグロセン!」

 

ニコル「コファル!」

 

 その場にいた千年前の魔物達の本は全てロップスとチェリッシュに燃やされてしまい、魔界へ送還された。

 

ガッシュ「上手くいったのう」

 

アポロ「こういった作戦なら、呪文を1、2回程度の使用に留める事ができるよ」

 

清麿「もっとも、ガッシュが抜きんでた強さじゃないとこんな作戦自体不可能だったし、敵がハマるかどうかがカギだったがな」

 

ニコル「敵は倒し終わったから急いで先へ進みましょう!」

 

チェリッシュ「そうね。早くしないと先に行ったメンバーがやられている可能性だってあるのよ」

 

清麿「待った、千年前の魔物のパートナーは月の石を持っているぞ!」

 

 清麿の言う通り、倒れている千年前の魔物のパートナーは月の石を持っていた。

 

ニコル「もしかしたら、ここにいる全員が持っているかも知れないわ」

 

 ニコルの推測通り、千年前の魔物のパートナーは全員月の石を持っていた。

 

アポロ「こんなにも月の石がたくさん手に入るとはね」

 

清麿「よし、今度こそ先に行ったみんなと急いで合流しよう!」

 

???「お前らか?ここにいた魔物達を全員ぶっ飛ばしたのは」

 

 声がした方を向くと、そこにはブラゴとシェリーがいた。

 

清麿「ブラゴ、シェリー!」

 

シェリー「久しぶりね、赤い本の子とその本の持ち主」

 

ブラゴ「そこにいた千年前の魔物は俺達がぶっ飛ばそうと思ってたのだがな」

 

シェリー「いいじゃない、ブラゴ。あの子達のお陰で私達の体力を温存できるし、早くゾフィスの元へ行けるから」

 

清麿「俺達はあんた達の邪魔はしない。ゾフィスはあんた達の手で倒すんだ。俺達は残りの千年前の魔物を倒す」

 

シェリー「言われなくてもそのつもりよ。行くわよ、ブラゴ!」

 

清麿「それと、青く光る石、月の石は心の力を回復させる。もし、拾ったら有効活用しろよ」

 

シェリー「貴重な情報をありがとう。そうさせてもらうわ」

 

 そのままシェリーはブラゴと共にゾフィスの元へ向かっていった。千年前の魔物のパートナーが持っていた月の石を全部持った後、急いでガッシュ達は先に行かせたティオ達の元へ向かった。

 

 

 

 

その頃、ティオ達が着いたある部屋ではツァオロンとパムーンがいた。

 

リィエン「千年前の魔物が2体いるある」

 

サンビーム「だが、2体ともただならぬ雰囲気だ…。恐らく、今まで戦った千年前の魔物よりも強いだろう…!」

 

ウォンレイ「一筋縄ではいかないようだ…」

 

パティ「でも、私達が力を合わせれば2体とも倒せるんじゃないかしら?とにかく、行くわよ!」

 

パムーン「(ガッシュ、お前が来るまで俺がお前の仲間がどれほどの実力かどうか試してやろう)」

 

玄宗「(確か、ゾフィスから聞いた話では、遺跡に侵入した魔物の中ではガッシュという魔物が一番強いそうだな。ま、こいつら相手でもどれぐらい楽しめるか試したいがな!)」

 

 前の戦いの時と違い、四天王のツァオロンとパムーンが同時に待ち構えていた。ティオ達は強敵の魔物2体と化け物クラスの人間、玄宗の計3体と戦う事になった。果たして、ガッシュ達は間に合うのか?




これで今回の話は終わりです。
今小説ではゾフィスはブラゴだけでなくガッシュも恐れているため、ガッシュ達の分断をあらかじめ仕掛けた罠でやるという流れになっています。
罠に引っかかるのがビクトリームにしたのは、ビクトリームがバカで割と罠に引っかかりやすそうで分断のシチュエーションを作りやすいと思ったからです。
次はティオ達がツァオロン&パムーンと戦う話になり、ティオのある術が原作より大幅に前倒しされる形で解禁されます。


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LEVEL33 女神の盾

デボロ遺跡

 早速、ティオ達とパムーン&ツァオロンは睨み合っていた。

 

パティ「待ってるのは気に食わないわ!突撃あるのみよ!」

 

ウォンレイ「迂闊に突っ込むのは危険すぎる!棍を持つ魔物は一見すると無防備に見えるが、隙がないんだ!」

 

サンビーム「それに、もう一方の魔物の近くに浮いている星はその魔物の武器かも知れないぞ。奴等がどんな術を使ってくるのかわからない時に突っ込まない方がいい」

 

パティ「じゃあ、どうすればいいのよ!」

 

サンビーム「そうだな…まずは…、敵がどんな術を使うのか確かめる必要がある」

 

パムーン「心配しなくてもいい。俺達はずっと待ってたから待ちくたびれているんだ。そっちが来ないのなら、こっちから行くぞ!」

 

ランス「ファルガ!」

 

玄宗「エルド!」

 

 星から発射されるビームと棍がティオ達に襲い掛かった。

 

パティ「わわわわわっ!」

 

ウマゴン「メルメルメ~!」

 

恵「セウシル!」

 

 ファルガとエルドをティオのセウシルでなんとか防御した。

 

パムーン「なるほど、優秀な防御の術が使える魔物がいたのか」

 

パティ「ちょっと、あのビームはたくさんのヒトデから発射されるのよ!ティオの防御呪文なしだとどうやってよけるの!?」

 

ウルル「そんな事言われても…」

 

サンビーム「それについてだが、相手の目に注意するんだ。相手の目をよく見れば攻撃のタイミングや気配などか感じられるはず。慣れるまで難しいが、コツを掴めば何となくわかるようになる」

 

ウルル「わかりました」

 

コルル「あの棍を持ってる魔物でも通じるの?」

 

サンビーム「恐らくな。ウマゴンとパティはあのヒトデを操る魔物と戦う。コルルとウォンレイはあの棍使いの魔物と戦ってくれ」

 

ウォンレイ「わかった」

 

ティオ「私は?」

 

サンビーム「ティオはどちらかによけきれない攻撃が迫ったら防御してほしい。ちなみに、防御する時は敵の目をよく見ればタイミングが何となくわかるはずだ」

 

恵「わかったわ!」

 

しおり「(サンビームさんは清麿君不在時の司令塔も同然ね)」

 

 早速、ウォンレイはツァオロンと戦っていた。

 

ウォンレイ「(この棍使いの術は棍を強化するのか!)」

 

ツァオロン「受け流してるとはな。どこまで続くかな!?」

 

ウォンレイ「私に気を取られたままだとそこで終わりだ!」

 

 ツァオロンがウォンレイに気を取られている隙にリィエンはコルルと共に玄宗に向かっていた。

 

コルル「パートナーが無防備だから本を燃やせるね!」

 

リィエン「まずは1体ある!」

 

ツァオロン「ふっ、それはどうかな?」

 

 しかし、玄宗はリィエンとコルルの攻撃を受け止めた。

 

コルル「嘘…!」

 

恵「(まさか、デモルトのパートナーと同じ心を操られていない人間!他にもいたのね!)」

 

リィエン「おかしいある!心を操られている人間は簡単な命令なら守れるかも知れないあるけど…!」

 

しおり「リィエン、よく聞いて!ガッシュ君の話によればゾフィスに好意的な人間は操られないのよ!」

 

リィエン「じゃあ、あの魔物のパートナーは…!」

 

玄宗「ほう、ゾフィスの課したルールを守れば操られないというのを知ってる奴がいたとはな。わざわざ教える手間が省けて嬉しいぞ!」

 

 そのまま玄宗はリィエンを吹っ飛ばし、コルルを投げ飛ばした。人間のリィエンと違ってコルルにはほとんどダメージはなかった。

 

リィエン「(この技は…中国拳法の高等技!)」

 

恵「セウシル!」

 

 リィエンに追撃をかける玄宗の拳を何とかセウシルでガードしたが、前の戦いの時と違ってガッシュとの特訓で強化されたはずのセウシルにもヒビを入れていた。

 

ティオ「(嘘!?特訓で強化したセウシルに素手でヒビを入れる人間がいたなんて!)」

 

玄宗「貴様ら、多少なりとも武術の心得がある奴がいるようだな」

 

 また玄宗は突撃したが、今度はウォンレイが相手になり、格闘戦に突入したが、魔物相手に互角の格闘戦を繰り広げる玄宗の強さはリィエン達はもちろん、パムーンと戦っているサンビーム達も驚いていた。

 

ウマゴン「メ、メル…」

 

サンビーム「何て強さなんだ…!こんなにも強い人間がいたとは…!」

 

パムーン「よそ見をしている場合か!」

 

 パムーンの猛攻にサンビーム達はよけ続けるしかなかった。ウォンレイは格闘戦で押されて弾き飛ばされた。

 

玄宗「ほう、さすが魔物はタフだな。そう来ねえと俺も戦いに参加した意味がねえ。貴様らの中で最も強い魔物のガッシュならさらに楽しませてくれそうだな」

 

リィエン「なぜゾフィスに味方するある!?」

 

玄宗「理由は至って簡単、強い奴と戦えるからだ。俺はゾフィスに本を渡された時にこの戦いの全てを聞いたんだよ…この本の事、魔物の事、千年に一度行われる魔界の王を決める戦い…。面白れえと思った。魔界の王になんざ興味はねえが、強え奴と戦える。それが俺が奴に手を貸した理由だ。俺の名は玄宗。もう弱い人間相手では、拳が満足できなくなった男よ!さぁ、メインディッシュのガッシュが来るまで俺を楽しませろ!」

 

 理由を語った後、玄宗はツァオロンと共に襲い掛かった。

 

しおり「来るわよ!」

 

恵「セウシル!」

 

 再びセウシルでガードしたが、やはりヒビが入った。

 

しおり「なんて人なの!強い相手と戦うためだけに魔物と戦うなんて!」

 

リィエン「いるあるよ、ああいう輩は!善悪の区別なしに強さのみを求める人間が!」

 

玄宗「ゴウ・エルド!」

 

 ツァオロンの棍の一撃がセウシルに叩き込まれたが、さらにヒビは広がったものの、ギリギリの所でセウシルは壊れなかった。

 

玄宗「思ったよりも頑丈だな。ヒビを入れたのにギリギリまで耐えているとは。だが、こうでなくてはな!」

 

 更なる玄宗の一撃でセウシルが砕かれてしまった。

 

恵「こうなるのはさっきの呪文を防いでから予想していたわ!」

 

しおり「ゼルセン!」

 

 玄宗にゼルセンが飛んで玄宗は押されたが、止まった時にその姿を見てみると、ゼルセンを受け止めていた。

 

ティオ「魔物の術を受け止めた!?」

 

リィエン「今ある、ウォンレイ!」

 

 隙を突いてウォンレイは向かっていったが、少し走った段階で玄宗は既に迫っていた。

 

ウォンレイ「な!?速い!」

 

 玄宗の素早い動きはウォンレイによける暇さえ与えなかった。そのままウォンレイは玄宗の攻撃を受けてしまった。

 

リィエン「この男、無茶苦茶な強さある!」

 

 次はコルルペアとティオペアに玄宗の拳が向けられた。

 

恵「マ・セシルド!」

 

 ところが、玄宗は寸止めした。

 

ティオ「(拳を止めた?この人、本能で盾の強さを!?)」

 

玄宗「ツァオロン!」

 

ツァオロン「はあああっ!!」

 

玄宗「ザオウ・ギルエルド!」

 

 今度はツァオロンの最大呪文が迫った。前の戦いではその当時のティオの防御呪文ではザオウを防ぐ事は出来なかった。しかし、今回の戦いでは王族の力が目覚めたガッシュとの特訓で並の魔物のギガノ級の術さえ容易に貫通するガッシュのザケルガをマ・セシルドで防御できるようになったため、ザオウを完全に防ぐ事に成功した。

 

ツァオロン「俺の最大呪文が防がれた…?」

 

 ツァオロンの最大呪文を防いだ事には防いだティオと恵も驚いていた。

 

恵「かなりの威力だったわね…!」

 

ティオ「ガッシュとの特訓がなかったら防げなかったわ…!」

 

玄宗「ボーッとしてる暇はないぞ!」

 

 ツァオロンの攻撃ではティオの防御呪文を突破できないと判断した玄宗はツァオロンと共に呪文を使う暇さえ与えないほどの絶え間ない攻撃を加えるためにウォンレイ達に迫った。

 

 

 

 その頃、パティとウマゴンはパムーンと戦っていたが、パムーンの猛攻に押されていた。

 

パムーン「どうした?お前達の力はこの程度か?」

 

ウルル「これまでの千年前の魔物とは違うようだ…!」

 

パムーン「当然だ。俺は四天王の1人だからな。それにお前ら、この俺やツァオロンを倒せないようではこれからの戦いでは通用せん。ガッシュの足手まといにならないように俺が魔界に送り返してやる」

 

パティ「冗談じゃないわよ!私はガッシュちゃんの恋人、あんたなんてギタギタのボロボロにしてやるわ!」

 

ウマゴン「メルメルメ!」

 

サンビーム「(妙だな。あの魔物の目からは強さを感じる。だが、話す事はまるで私達を試しているようだ…。あのヒトデを操る魔物は本当に私達を倒そうとしているのか?)」

 

ランス「デーム・ファルガ!」

 

 デーム・ファルガがパティ達に迫った。

 

パティ「この攻撃はどうやってかわすのよ!」

 

サンビーム「その方法ならある!ゴウ・シュドルク!」

 

ウマゴン「メルメルメ~~!」

 

サンビーム「ウマゴン、ヒトデが並んでいるところを崩すんだ!横のビームだけでも崩せば何とかよけられる!」

 

 指示通りにウマゴンは横の星を弾いた。

 

ウルル「これなら何とかなりそうですよ!」

 

パムーン「まだまだぁ!」

 

 弾かれた星からまたビームが放たれた。

 

パティ「弾いたってダメじゃない!」

 

サンビーム「こうなったら接近戦しかない!ウルル、行くぞ!」

 

ウルル「はい、アクロウク!」

 

サンビーム「ゴウ・シュドルク!」

 

 今度はパムーンに接近戦を挑んだ。

 

ランス「オルゴ・ファルゼルク!」

 

 ガッシュとの戦いの時のように星がパムーンに張り付いた。

 

ウルル「ヒトデが奴の体に!?」

 

パティ「そうなってもこの爪で引き裂くまでよ!ラアアアッ!!」

 

ウマゴン「メルメルメ~!」

 

 パティとウマゴンはパムーンに襲い掛かったが、パムーンはパンチ1発でパティとウマゴンを吹っ飛ばした。

 

パティ「きゃああっ!!」

 

ウマゴン「メル~~ッ!」

 

ウルル「強化された2人が手も足も出ない?」

 

サンビーム「こうなったら挟み撃ちだ!」

 

 今度は挟み撃ちを仕掛けたが、パムーンにあっさりと受け止められてパートナー達の方へ投げ飛ばされた。

 

パムーン「これで終わりじゃないぞ!」

 

 パティ達の方へパムーンは星を飛ばした。飛ばした星によってパティ達は拘束されて動けなくなった。

 

パティ「ちょっとこれ、動けないし引きちぎれないわよ!」

 

サンビーム「まさか、星で拘束して動きを封じる事ができるとは…」

 

パムーン「お前達の方は片付いた。次は残った奴等だ…!」

 

 一方のティオ達はツァオロンと玄宗の連携に為す術もなかった。

 

リィエン「何て強さある…!ラオウ・ディバウレンも通じないし、ウォンレイもコルルもボロボロある…!」

 

玄宗「ここまで持ったのは流石だな」

 

パムーン「俺の方は片付いた。手伝おうか?」

 

ツァオロン「好きにしな」

 

恵「まさか、サンビームさん達は…!」

 

 パムーンがツァオロンに加勢した事に嫌な予感がした恵とティオが視線を向けると、パムーンの星に拘束されたサンビーム達の姿があった。

 

ティオ「(嘘!パティ達が動きを封じられているなんて…!ただでさえ玄宗とツァオロンに苦戦しているのにもう1体の千年前の魔物まで襲ってくるなんて…!)」

 

玄宗「パムーン、俺達の力であの盾を破る事はできん。破るにはお前の力も必要だ」

 

パムーン「わかった」

 

玄宗「行くぞ、ツァオロン!」

 

ツァオロン「ああ!」

 

 玄宗とツァオロンは今度は上から迫った。

 

ティオ「私の盾を破る事はできないわ!」

 

恵「マ・セシルド!」

 

 ザオウを放つ前の時と同じく、玄宗はパンチしようとせず、ツァオロンも棍を振り下ろさないでマ・セシルドの上に乗った。

 

しおり「また攻撃しなかった…」

 

玄宗「パムーン、お前の番だ!」

 

 ティオ達の頭上には星が待機していた。星が待機しているのを見た玄宗とツァオロンはマ・セシルドから飛び降りた。

 

ウォンレイ「まさか…、奴等の狙いは…!」

 

ランス「ディオガ・ファリスドン!」

 

 ティオ達目掛けて高出力のビームが襲った。マ・セシルドと競り合ったが、競り合いの末、マ・セシルドを破った。

 

ティオ「きゃああっ!!」

 

ウォンレイ「があああっ!!」

 

 その場にいたティオ達は全員吹っ飛ばされた。

 

 

 

 

 

 その頃、ガッシュ達は先に行かせたティオ達との合流を急いでいた。

 

ガッシュ「清麿、何だか嫌な予感がするのだ…!」

 

清麿「俺もだ…。特に恵さんに何かあったら他の仲間に何かがあるよりも落ち着きがなくなるんだ…!とにかく、急ごう!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

 

 

 

 吹っ飛ばされたティオ達は倒れていたが、何とか立ち上がろうとしていた。

 

パムーン「仕上げだ」

 

 星を動かし、今度はウォンレイ達を拘束しようとした。

 

コルル「危ない!」

 

ティオ「えっ?」

 

 星がティオと恵に迫っているのを見たしおりとコルルは2人を突き飛ばし、直後にウォンレイとリィエンと共に星に拘束されてしまった。

 

ティオ「みんな!」

 

恵「(ここにいるみんなは私達以外は全員拘束されて何もできない…。こんな状況はどうすればいいの…?)」

 

ツァオロン「これで攻撃できる魔物はパートナーも含めて全員パムーンが拘束して、残るは盾の奴だけか」

 

玄宗「終わりにするか?」

 

パムーン「待て、ここは俺がやる。お前達は待機しておけ」

 

 ツァオロンと玄宗は待機し、パムーンがランスと共に来た。

 

パムーン「盾の女、お前に選択肢をやろう」

 

ティオ「選択肢?」

 

パムーン「この状況でお前の生死を決める決定権は俺達にある。だが、あえてその決定権をお前に委ねよう」

 

恵「あなたの言う選択肢は何なの?」

 

パムーン「1つは、ここにいる仲間を全員見捨てて逃げるのであれば、俺達はお前とそのパートナーを見逃す事。もう1つは仲間と一緒に魔界送りにされる事だ。さぁ、仲間を見捨てるか、一緒に魔界送りにされるのか、どちらかを選べ!」

 

 パムーンの示した選択肢は王の特権で消えたくない上に仲間を失いたくないティオにとってはどちらも到底受け入れられないものだった。

 

恵「(ガッシュ君と再会するまでティオは仲間がいなくてずっと辛い想いをしていた上にガッシュ君から王の特権を聞いて消えてしまうのも怖がってる。そんな選択肢にティオは答えられないわよ)」

 

ウォンレイ「ティオ、私達に構うな!君だけでも生き残ってガッシュの力になるんだ!」

 

パティ「私がいなくなったらガッシュちゃんはあんたが守るのよ!」

 

ティオ「みんな…」

 

パムーン「さぁ、どっちを選ぶ?」

 

ティオ「……嫌だ…、そんなの、どっちも選べないわよ!」

 

パムーン「なぜだ?」

 

ティオ「私、人間界に来てからパートナーが見つからなくてずっと寂しかったし、やっと会えた友達も平気で私を傷つけて誰も信じられなくなった!でも、恵やガッシュを始めとする心から信じられる人達に会って嬉しかったの!それに、悪い奴が王様になって消えてしまうのは嫌!だから、私は仲間を切り捨てて生き残るのも、魔界に帰るのも選ばない!!」

 

パムーン「(悪い奴が王になったら消える?何の事だ!?)…ならば、仲間諸共消し飛ばす!ランス、最大呪文だ!」

 

恵「ディオガ・ファリスドンは最大呪文じゃないの?」

 

パムーン「そうだ。さぁ、盾の女よ、答えを変える時間はもう残り少ないぞ。考えを変えるなら今の内だ!」

 

恵「(まずいわ…!パムーンの攻撃はヒトデみたいなものから放つからギガ・ラ・セウシルで跳ね返す事もできない上にディオガ・ファリスドン以上の攻撃が来たら防ぐ手段がない!)」

 

ティオ「答えは変えない!私は仲間を見捨てない、絶対に守る!!!」

 

 仲間は全員拘束され、ディオガ・ファリスドン以上の攻撃が来るという絶望的な状況の中、涙ながらの仲間を守ろうとするティオの強い思いに本が輝いた。

 

恵「これは…、新呪文!?」

 

パムーン「何が使えるようになったのかは知らんが、ここで終わりだ!」

 

ランス「ペンダラム・ファルガ!」

 

 パムーンの最大呪文がティオ達に迫った。

 

ティオ「恵、新しい呪文が出たのなら、使って!」

 

恵「ええ!第6の術、チャージル・セシルドン!!」

 

 前の戦いの時ではチャージル・サイフォドンと習得する順番が入れ替わった上、ゼオン戦で習得する事になったチャージル・セシルドンだったが、今回はデボロ遺跡での戦いの時に本来の順番で習得した。女神の盾はペンダラムとの競り合いには一歩も引かなかった。

 

パムーン「(俺のペンダラムと競り合いになるほど強力な防御呪文だと!?それに、何かが映っている!)」

 

 女神の盾の女神像の胸の水晶には拘束されているウォンレイ達の姿が映っていた。

 

パムーン「(まさか、この術はあの女の守りたい心が強くなれば防御力が上がるのか?)」

 

 結局、ペンダラムはチャージル・セシルドンに競り負けて消滅した。ペンダラムが消滅したため、恵も術を解いた。

 

恵「これが…ティオの新しい防御呪文…。ティオの守りたい思いで盾が強くなるのが本を通して伝わったわ…」

 

ティオ「何とか…なったわね…」

 

玄宗「その安心感による気の緩みが命取りだ!ザオウ・ギルエルド!」

 

 ペンダラムを防ぎ切ってすっかり安心して気が緩んだティオの隙を突いて玄宗とツァオロンが襲い掛かった。

 

ティオ「しまった、玄宗の事を忘れていたわ!」

 

恵「(呪文の発動も間に合わない!)」

 

???A「ディオガ・コファルドン!」

 

???B「ラウザルク!」

 

 巨大な宝石がツァオロン目掛けて飛んできた。ディオガ級の術にツァオロンの最大呪文が勝てるはずもなく、ディオガ・コファルドンがザオウを簡単に打ち破ってツァオロンは吹っ飛ばされた。玄宗の方も素早く来た何者かに殴り飛ばされた。

 

ツァオロン「ぐあああっ!!」

 

玄宗「ぐほっ!」

 

ティオ「…この攻撃…もしかして…ガッシュにチェリッシュ!!」

 

 玄宗を殴り飛ばしたのはガッシュだった。遅れて清麿達もやってきた。

 

チェリッシュ「よく頑張ったわね、坊やのガールフレンド」

 

ガッシュ「待たせて済まぬのだ、ティオ」

 

ティオ「ガッシュ…遅いじゃない!」

 

清麿「遅れてごめん、恵さん」

 

恵「清麿君…!」

 

アポロ「みんなを助けないとね。リグロセン!」

 

ロップス「かう!」

 

 リグロセンで切り裂き、拘束を解いた。

 

清麿「みんなボロボロじゃないか!」

 

サンビーム「敵の猛攻でな…」

 

パティ「でも、ガッシュちゃんがいてくれるだけで力が湧いて来るわ!」

 

パムーン「(流石だな、ガッシュ。その場にいるだけでボロボロの仲間達を更に奮い立たせる事ができるとは…)」

 

玄宗「お前がガッシュか。遺跡に侵入した魔物の中で一番強い奴が来てくれて嬉しいぞ。どれ程の強さか見せてもらうか!」

 

ガッシュ「(あの者が玄宗か…。ウォンレイが戦ったという並大抵の魔物より強い人間…!)」

 

ウォンレイ「玄宗はとても強い!ツァオロンと戦う時は魔物が2体いるものだと考えた方がいい!」

 

チェリッシュ「わかったわ。魔物の方は私に任せて!」

 

清麿「行くぞ、ラウザルク!」

 

 チェリッシュはツァオロンと交戦した。ディオガ・コファルドンをまともに受けたツァオロンはふらふらながらも向かっていった。

 

ツァオロン「女が俺に勝てると思っているのか!?」

 

チェリッシュ「女を甘く見たら痛い目に遭うわよ!」

 

玄宗「ゴウ・エルド!」

 

ニコル「ゴウ・コファル!」

 

 ツァオロンは棍をチェリッシュに叩き込もうとしたが、叩き込む前にゴウ・コファルで棍を弾き飛ばされた。

 

ツァオロン「しまった!」

 

ニコル「ギガノ・コファル!」

 

 そのままツァオロンはギガノ・コファルを受けて吹っ飛ばされた。一方、ガッシュはラウザルクがかかった状態で玄宗との格闘戦に突入した。

 

玄宗「速い!」

 

ガッシュ「ヌオオオッ!!」

 

 王族の力が目覚めたガッシュに玄宗が敵うはずもなかった。あっという間に玄宗は圧倒され、殴り飛ばされた。

 

コルル「凄い…!あの玄宗って人を圧倒しちゃった…!」

 

清麿「よし、このまま」

 

ウォンレイ「待ってくれ、ガッシュ、チェリッシュ、あの者達とは私が決着を着ける!」

 

清麿「だが、ウォンレイの実力では…」

 

リィエン「頼むある、ウォンレイの玄宗とツァオロンとの決着を着けさせてほしいというわがままを聞いてほしいある!」

 

恵「私達からもお願いするわ、清麿君」

 

清麿「……わかった、ウォンレイに決着を着けさせる。だが、本当にどうしようもない時は加勢するからな」

 

ウォンレイ「心得た」

 

恵「でも、リィエンが心の力を結構消耗しているわ。サイフォジオで」

 

清麿「サイフォジオはいらない。リィエン、月の石を受け取れ!」

 

 月の石を受け取った後、リィエンは胸に当てて心の力を回復させた。玄宗の方も月の石で心の力を回復させていた。

 

リィエン「これで心の力も体力も全快ある!」

 

玄宗「ガッシュと交代していいのか?」

 

ウォンレイ「その通りだ。お前達との決着は私達が着ける!」

 

ツァオロン「チマチマ時間をかけるのも面倒だ。玄宗、一気にカタをつけるぞ!」

 

 リィエンと玄宗は互いに最大呪文を放つために心の力を最大限に込めた。

 

ティオ「負けないでよ、ウォンレイ!」

 

チェリッシュ「私達がついているのよ!火事場のクソ力を出して奴等をやっつけなさい!」

 

ガッシュ「私達や自分を信じるのだ、リィエン、ウォンレイ!」

 

リィエン「ウォンレイ、何だかこの場にいるみんなの思いも流れ込んでくるみたいある」

 

ウォンレイ「私もだ。私達には心が通じ合った仲間がいる!みんなの思いと力、確かに受け取った!」

 

 ウォンレイの本の光がかなりのものになった。

 

玄宗「思いだと?そんな物がなくても俺達は強い!ザオウ・ギルエルド!」

 

リィエン「行くある!ラオウ・ディバウレン!」

 

ツァオロン「何だ、あれは!?でかいぞ!」

 

 巨大な白虎とサメがぶつかり合った。

 

ツァオロン「ぐおおっ、何だ、この力は…、この術に込められた半端じゃないエネルギーは!!」

 

ウォンレイ「私やリィエンだけの力ではない!この場にいるみんなの思いも注がれたこの術、お前達一組の力で勝てる術ではない!!」

 

ツァオロン「ぐあああっ!!!」

 

 やがて白虎がサメを食い破って勝利した。その際にツァオロンの本も燃えた。

 

玄宗「ちっ、ツァオロン!く…そっ…たれが…今までの術とは力のレベルが段違いだぞ、一体…」

 

 玄宗の目の前にはウォンレイが立っていた。

 

玄宗「ふん…やるじゃねえか。あの術を金髪の女とお前が破るとは思わなかったぜ。まぁ、ツァオロンがいなくなっちまったが、別にいい。俺は強え奴と戦えればそれでいいんだ。てめえも術が残ってたら使っていいんだぜ」

 

ウォンレイ「いや、その必要はない」

 

玄宗「そうかよ…だったら俺の勝ちだなぁ!」

 

 最後は互いに拳の1発で決めようとしてぶつかり合ったが、玄宗にはウォンレイの拳が大きく見えた。

 

玄宗「(でかく見える!?こいつの拳が…こいつの拳が…なぜだ!?気迫で負けているというのか?)くそ…いくら魔物でも術を使ってねえんだ。俺が1対1で負ける事など…」

 

ウォンレイ「それは違うぞ、玄宗。私達は道楽で戦っているお前とは戦いに対する覚悟が違う!」

 

玄宗「この…ふざ…けるな…お…おお…ぐおおおおおっ!!」

 

 玄宗はウォンレイとの拳のぶつかり合いに負けて吹っ飛ばされた。

 

玄宗「なぜ…だ…、なぜ俺が…」

 

ガッシュ「至って簡単なのだ。ウォンレイ、いや、私達には傷つけてはいけない者達と信じあえる友がいる。それがお主と私達の決定的な差だ」

 

 ガッシュの言葉を聞いた後、玄宗は気を失った。

 

リィエン「やったある、ウォンレイ!」

 

ウォンレイ「いや、気を抜くのは早い!まだ千年前の魔物は1体残っている!」

 

サンビーム「パムーンとかいう魔物と戦うのか…」

 

 パムーンと戦った面々が警戒する中、パムーンは近づいた。

 

パムーン「ガッシュ、お前の仲間を試させてもらった。どうやら、魔界送りにする必要はないようだ」

 

ガッシュ「そうであったか、パムーン」

 

しおり「た、試した!?」

 

アポロ「ガッシュはあの魔物と知り合いなのかい?」

 

ガッシュ「ウヌ。前にパムーンとは戦った事があってその時に友達になったのだ」

 

コルル「友達だったんだ…」

 

ティオ「でも、みんなを拘束した時は本気で殺そうとしてたじゃない!ガッシュの友達なら何でこんな事をするのよ!」

 

パムーン「聞いてなかったのか?俺はお前達を試していたんだ。狙ってお前の新呪文を出そうとした訳じゃないから、もし、新呪文が出なかったらペンダラムは撃たずにあくまで脅し程度に留めてガッシュが来る時間を稼ぐつもりだった。俺のペンダラムを防げなかったら、これから先、お前は仲間を守れなくなるぞ。それに…、さっきの選択肢はお前が仲間の事をどう思っているのかも試していたんだがな」

 

ティオ「えっ?」

 

パムーン「魔界の王を決める戦いは裏切り等も多いからな。ティオ、お前の仲間を大切に思い、どんなに強い攻撃が来ようとも守ろうとする気持ちは確かに伝わった。だから、あの強力な防御呪文が出たのだろう。これからもその気持ちを忘れるなよ」

 

ティオ「うん!」

 

ガッシュ「(強力な防御呪文、もしや…!)ティオ、その強力な防御呪文の名前は何なのだ?」

 

ティオ「チャージル・セシルドンだけど…」

 

ガッシュ「(チャージル・セシルドン!?前の戦いの時よりも習得が早いのだ!まさか、千年前の魔物との戦いで習得するとは…)」

 

恵「どうしたの?ガッシュ君」

 

ガッシュ「た、ただどんな呪文か聞きたかっただけなのだ」

 

コルル「凄かったよ。だって、パムーンの最大呪文を防いじゃったんだから」

 

パティ「まさに最強の盾って感じね」

 

ティオ「べ、別にそんなに凄い訳じゃ…」

 

ウォンレイ「いや、私達がツァオロンと玄宗に勝つ事ができたのは間違いなく君のお陰だ。君が頑張ったからこそガッシュ達が間に合った上に私とリィエンも君や仲間達の思いに応える形でいつも以上の力が出せたんだ。ありがとう」

 

ティオ「そんな大した事じゃないわよ…。それよりウォンレイ、私を弟子にして!」

 

ウォンレイ「え?」

 

ティオ「カンフーでも何でもやるわ!私、ウォンレイやガッシュみたいになりたいの!」

 

ウォンレイ「私の目指す王は『守る王』、盾の術が主体の君にはちょうどいいかも知れない。私に教えられる事があったら何でも教えよう」

 

ティオ「本当!?」

 

ガッシュ「ウヌ、私みたいになりたいのであれば、私も教えられる事を教えようぞ」

 

恵「さっき、清麿君は月の石を持ってたわね。それ、どこで手に入れたの?」

 

清麿「俺達が倒した魔物のパートナーが持ってたんだ。まだあるから、月の石でみんなの心の力や体力を回復させてから先へ行こう!」

 

サンビーム「後、ウマゴン達の傷や体力も回復させないとな」

 

 ガッシュ達の様子をパムーンは微笑ましく見ていた。

 

パムーン「(いつ見てもゾフィスとは大違いだ。ゾフィスは自分より強い奴に怯えて俺達を恐怖で強引に支配していたが、ガッシュはどんな敵にも屈する事がない上に温かい心で仲間を惹きつけている。もしかしたら、ガッシュは生まれながらに王の素質を持った魔物かもしれない…)」

 

 様子を見ていたパムーンはゾフィスよりも遥かに勇敢で大きな器を持つガッシュは生まれながらに王の素質があるのではないかと感心したのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回はティオのチャージル・セシルドン習得とパムーンの加入を描きました。
石版編でチャージル・セシルドンを習得するシチュエーションを作るのにあたって、玄宗とツァオロンだけでは力不足と考え、パムーンまでも待ち構えるという原作だと詰んでもおかしくないシチュエーションにしました。それにより、原作に比べてウォンレイの活躍が減り、代わりにガッシュとティオ、チェリッシュの活躍が増えました。
ツァオロンは玄宗に比べてインパクトが薄かったので、今小説では最大呪文を3回も破られる扱いにしました。
次はベルギムとの戦闘回です。


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LEVEL34 ありがとう、僕の王様

デボロ遺跡 外部

 外にいたゼオンは何かに気付いた。

 

デュフォー「どうした?ゼオン」

 

ゼオン「大きな力が一つ消えた。恐らく、強い千年前の魔物がやられたのだろうな」

 

デュフォー「ここで様子を見てるのも退屈だ。中に入ってみるか?」

 

ゼオン「そう考えてた所だ。どういった戦いになってるのだろうな…」

 

 

 

 

デボロ遺跡 内部

 ティオ達は清麿達が持ってきた月の石で魔物は体力と傷を、パートナーはさらに心の力を回復させて全快の状態になった。

 

清麿「さぁ、ゾフィスをやっつけに行くぞ!」

 

ガッシュ「待つのだ、清麿」

 

清麿「何だ?ガッシュ」

 

ガッシュ「お腹が空いたのだ。ここでお昼ご飯をみんなで食べたいのだ」

 

ティオ「敵をやっつけに行くのに何でお昼ご飯を食べようとか言うのよ!!」

 

 急に昼ごはんを食べようと言ったガッシュにティオの首絞めがさく裂した。

 

パティ「お腹が空いたなら、お昼ご飯を食べてもいいじゃない!それと、ガッシュちゃんの首を絞めるな!!」

 

ティオ「何よ、パティ!」

 

 しかし、ガッシュの首を絞めている時にお腹が鳴る音がした。

 

パティ「誰のお腹が空いたのかしら?」

 

ティオ「だだだ、誰なのかな…?」

 

恵「ティオもお腹が空いたのね」

 

ティオ「べ、別に空いてなんかないわよ…」

 

恵「激しい戦闘で私もお腹が空いたから、ガッシュ君の言う通り早いけどお昼ご飯にしましょう」

 

 ちょうど全員がお腹が空いたため、弁当を食べる事にした。パムーンも一緒にお昼ご飯を食べた。

 

アポロ「ちょうどいいタイミングだったね」

 

清麿「そうだな。腹が減っては戦はできぬと言うからな」

 

アポロ「だろうね。この弁当、ロップスもおいしいだろう?」

 

ロップス「かう!」

 

パティ「ガッシュちゃん、一緒に食べましょう!」

 

ガッシュ「ウ、ウヌ…」

 

ティオ「ガッシュ、食べるのなら、私とよ!」

 

コルル「ちょっと、喧嘩はよくないよ!」

 

 パティとティオの喧嘩にパムーンは引いていた。

 

サンビーム「女は怖いな…」

 

ウマゴン「メル…」

 

ニコル「元気が有り余っているわね」

 

パムーン「(思ったよりもガッシュの仲間の女は怖いな…。ガッシュ、お前、相当女の事に苦労してるんだな…)これ、誰の弁当だ?」

 

しおり「ビクトリームとそのパートナーの弁当だけど、『私のお弁当はメロンだからその弁当はいらない』とか言っちゃって余ってたの。ちょうど食べてくれる子が見つかって嬉しいわ」

 

パムーン「バカで変わり者のビクトリームらしいな…。この弁当、ゾフィスが出す飯よりうまいな。こんなにうまいもんを食べたのは千年ぶりだ」

 

チェリッシュ「好評で嬉しいわ。坊や達が食べている弁当は私達の手作りよ」

 

サンビーム「パムーンはいつかパートナーと会話できるようになりたいか?」

 

パムーン「勿論だ。石にされた魔物の大半が人間を心の力のバッテリー程度にしか思っちゃいないが、少なくとも俺やレイラはガッシュ達みたいにパートナーと話をしたい」

 

ガッシュ「レイラはどうしておるのだ?」

 

パムーン「ろくに会話もしないから今はどうなのかは俺にもわからん」

 

コルル「そう言えば罠にかかってはぐれてしまったナゾナゾ博士達は大丈夫かな?」

 

パムーン「何?罠にかかっただと?」

 

ウルル「通路の途中でメロンが置かれていて、それをビクトリームが持ち上げたせいで罠が作動してキャンチョメ組、ヨポポ組、キッド組、ビクトリーム組がその罠のせいで私達とはぐれてしまったんです。パムーンは彼等がどこにいるのか知りませんか?」

 

パムーン「どこにいるのかは知らんが、ゾフィスが罠で四天王と遭遇するようにする的な事を罠を仕掛けている時に言っていた。多分、はぐれたお前達の仲間は今頃、俺やツァオロン、デモルトと同じ四天王のベルギムと遭遇してるのかも知れんな」

 

リィエン「ナゾナゾ博士達がそのベルギムとかいう魔物と!?」

 

ウォンレイ「ただでさえ四天王は私達でもガッシュが来なければ全滅していたかも知れない強敵だ。ましてや、ギガノ級を超える術が使える魔物がいないナゾナゾ博士達は下手をすると全滅する危険性もある!」

 

パムーン「その通りだ。だが、ベルギムは意外とバカだから案外、かなり粘れるかも知れんぞ」

 

チェリッシュ「でも、その四天王のデモルトとかいう奴はどこにいるの?」

 

パムーン「奴は月の石を守っているから、はぐれたガッシュの仲間はまだ遭遇してないだろう」

 

パティ「難しい事を考えるより今はご飯を食べながら休憩してこれからの戦いに備えましょ」

 

 

 

 

 

 その頃、ナゾナゾ博士達はパムーンの予想通り、ベルギムEOと対峙していた。

 

ジェム「何よ、こいつ…」

 

ナゾナゾ博士「今までとは一味違う魔物の登場か…って、ビクトリーム君、どうしたんだ?」

 

 今まで以上にビクトリームはすさまじい怒りを見せていた。

 

ビクトリーム「ベルギム、ここで会ったが1000年目、今日こそ決着をつけてやるぞ!」

 

ベルギム「ビクトリーム、お前にそれができるかな?」

 

ビクトリーム「ゆくぞ、モヒカン・エース!」

 

ベルギム「ダリア!」

 

 しかし、お互いのパートナーは呪文を唱えなかった。

 

ビクトリーム「こんな一大事になぜ呪文を唱えない、モヒカン・エース!」

 

ベルギム「ダリア、早く呪文を唱え…あ、そうだった!千年前の魔物同士だと呪文が唱えられなかった!ならば、椅子で直接突撃だ!」

 

 椅子に座ったままベルギムは突撃し、ビクトリームを突き飛ばした。

 

ビクトリーム「ぶるぁあああああっ!!」

 

フォルゴレ「ああ、華麗なるビクトリーム様が!!」

 

 ビクトリームはそのまま気絶した。

 

キャンチョメ「どうしよう…華麗なるビクトリーム様が負けたら僕達…」

 

ジェム「あんなバカを当てにしない!ここは先制攻撃で行くわよ!」

 

 そんな中、フォルゴレは前に出た。

 

ナゾナゾ博士「フォルゴレ君、何を?」

 

ジェム「まさか、1人で戦う気?」

 

ナゾナゾ博士「ダメだ、それはあまりにも無謀!」

 

フォルゴレ「そこを通してください!」

 

 その言葉にジェムとヨポポはずっこけ、ベルギムも反応した。

 

フォルゴレ「お願いします。僕達はそこを通りたいだけなのです」

 

ベルギム「答えは…No~~~~ッ!!」

 

ジェム「ダメじゃない!こんな奴に話なんて通じないわ!そういった奴は」

 

ベルギム「芸をしなさい。私は千年前の魔物、四天王の1人、ベルギムEO。とても強い魔物です」

 

ジェム「博士、四天王って…」

 

ナゾナゾ博士「今までの魔物より強いって事なんだ」

 

ベルギム「千年も石にされてとても退屈していたのです。歌でも何でもいい、楽しませてくれたら、通してもよい!」

 

フォルゴレ「ほ、本当だな?私がスーパースターであると知ってその条件を出してるんだな?」

 

キャンチョメ「フォルゴレ、そんな条件なら簡単さ!1発かましてやれよ!」

 

ベルギム「か~~~っ!」

 

フォルゴレ「よーし、やるぞ、キャンチョメ!」

 

ベルギム「ただし、つまらなかったら殺す!殺す!!さ、芸をしなさい」

 

 ベルギムの出した条件にジェムは不満そうだった。

 

ジェム「本当にこいつ、約束を守るのかしら?悪党だからどうせ破るに決まってるわよ」

 

ナゾナゾ博士「まぁまぁ。それよりもフォルゴレ君、芸を外さないでくれ…。口だけではなく、とっても強い力を感じるのだ…。わしも君が時間を稼いでいる間、奴を観察し、策を練る。得体の知れない奴を倒す策を」

 

ベルギム「さぁ、早く私を楽しませてください」

 

ナゾナゾ博士「(頑張れ、フォルゴレ君…!)」

 

ベルギム「さぁ」

 

フォルゴレ「ごめんなさい…、芸を磨いて出直してきます…」

 

ジェム「いい加減にしなさいよ、フォルゴレ!さっきの自信満々な態度はどこに行ったの!?」

 

ベルギム「芸を…しないのですか…?芸を…しないのですか…?」

 

ジェム「もう、フォルゴレがダメなら、ヨポポの出番よ。ヨポポ、自慢の踊りをやっちゃいなさい!」

 

ヨポポ「ヨポポイ!」

 

 そんな中、キャンチョメが『鉄のフォルゴレ』を歌った。

 

ヨポポ「ヨポイ…」

 

キャンチョメ「フォルゴレは凄いんだぞ!映画に出てるし、CDだって出してるんだ!」

 

フォルゴレ「そう、私は世界のスーパースター、パルコ・フォルゴレ!」

 

キャンチョメ「女の子にだってモテモテさ!」

 

ジェム「(お母さんはフォルゴレのファンだけど、私には入浴中を覗いたりセクハラしまくるあんな変態男がどうしてモテモテなのか理解できないわ……)」

 

フォルゴレ「私は愛の戦士…」

 

キャンチョメ「だから、だから…」

 

フォルゴレ「ははははっ、そんなに私の歌が聞きたいのかい?しょうがないなぁ、歌ってあげるよ!」

 

キャンチョメ「ミュージックスタート!」

 

 フォルゴレは『チチをもげ!』を歌い出した。その間、ジェムとナゾナゾ博士はベルギムの様子を見ていた。

 

ジェム「そう言えば博士、ベルギムEOのEOって何なのかしら?」

 

ナゾナゾ博士「う~む、わからんが、それが突破口になるかも知れん」

 

ジェム「私にはそうは思えないわ。それより、反応がないわね」

 

 ナゾナゾ博士はベルギムに有効な作戦を考え付く事ができなかった。その間にフォルゴレの芸は終わってしまった。

 

ベルギム「マキシマム…」

 

ダリア「ケケケケケ!ギガノ・リュウス!」

 

 突然のベルギムの攻撃にナゾナゾ博士は衝撃を受けた。

 

ジェム「攻撃したって事はやっぱりダメだったじゃない!」

 

ナゾナゾ博士「何という破壊力…!」

 

ダリア「ガンズ・ゴウ・リュウガ!エルム・リュウガ!リュウズ・ヨーヨー!リュウズレード・キロロ!」

 

 そのまま連続でベルギムは攻撃を仕掛けてきた。その攻撃をナゾナゾ博士達は必死によけ続けた。

 

フォルゴレ「死ぬ!死んでしまう~!」

 

ジェム「こいつは何なのよ~~!」

 

 攻撃が終わり、ベルギムは椅子に座ったまま降りて動きを止めた。

 

ベルギム「マキシマムグッド!」

 

 意外な返事に一同は驚いた。

 

ベルギム「とっても素晴らしい歌ですね~!ベルギムEOはとっても楽しいです~!」

 

フォルゴレ「え?やった~~!やった、やったぞ、キャンチョメ!」

 

キャンチョメ「やっぱりフォルゴレは世界の大スターさ!」

 

ベルギム「一緒に歌ってもいいですか?私も一緒に、歌いたいなぁ」

 

キャンチョメ「…どうする?フォルゴレ」

 

フォルゴレ「いいんじゃないか?あいつ、意外にいい奴かも知れないぞ」

 

ジェム「そうは思えないけどね…」

 

ヨポポ「ヨポイ?」

 

ナゾナゾ博士「(奴を倒す策がない今、機嫌を損ねぬ方がよいか…)」

 

フォルゴレ「ああ、いいよ!」

 

ベルギム「ほんとですか!?嬉しい、嬉しい、ぬははははっ!!」

 

 嬉しさのあまり、ベルギムは椅子に座ったまま回った。

 

フォルゴレ「やっぱりあいつ、いい奴なんだよ!よーし、行くぞ!私の後に続けて歌うんだ!」

 

ベルギム「うん!」

 

 再びフォルゴレは『チチをもげ!』を歌い出した。

 

ジェム「また始まったわね…」

 

ヨポポ「ヨポポイ!」

 

 呆れ気味のジェムとは反対にヨポポは楽しそうに踊り出した。ベルギムも一緒に歌おうとしたが、舌を噛んでしまった。

 

一同「うわ、舌を!!」

 

ダリア「ケケケケケ、ディオガ・リュウスドン!」

 

 舌を噛んでしまったベルギムは椅子に座ったまま飛んだあと、最大呪文をぶっ放した。

 

ベルギム「染みる!光線が舌に染みやがる!!」

 

 その後、ベルギムは椅子に座ったまま落ちた。

 

ベルギム「くそ、貴様ら!よくも私にこんな事を…」

 

フォルゴレ「ごめんなさい!でも、私のせいではありません!あなたが勝手に!」

 

ベルギム「やかましい!てめえらまとめてぶっ殺す!」

 

ジェム「自分からやっておいてそんな言い方はないでしょ!こっちこそあんたを叩き潰してやるわよ!」

 

ベルギム「調子に乗りやがってコンチクショー!!ベルギムEOの『EO』は椅子に座ってお仕置きよだ!!」

 

フォルゴレ達「そうだったんだ!」

 

ジェム「何でそんな事に驚く必要があるの?」

 

ベルギム「ダリア!」

 

ダリア「ケケケケケ~~!!」

 

ベルギム「笑うな!」

 

 怒鳴った通り、ダリアは笑うのをやめた。

 

ベルギム「よし、攻撃だ!」

 

フォルゴレ「く、来る!」

 

ダリア「ディオガ・リュウスドン!」

 

 しかし、術は出なかった。

 

ヨポポ「ヨポイ?」

 

ジェム「術…全然でないわね…」

 

ベルギム「あれっ?術が出ないよ…。そうか!芸に感動して術を使い過ぎたんだ!」

 

ジェム「相当バカね…」

 

ベルギム「ダリア、月の光で心の力を回復だ!」

 

ナゾナゾ博士「ラージア・ゼルセン!」

 

ジェム「ドレミケル!」

 

 術が撃てなくなった隙を突いてキッドとヨポポは攻撃を仕掛けた。

 

フォルゴレ「ナゾナゾ博士、ジェム!」

 

キャンチョメ「キッド、ヨポポ!」

 

フォルゴレ「ダメじゃないか!ベルギム様になんて事を!」

 

キャンチョメ「そうだよ!」

 

ジェム「何を言ってるのよ!あんな奴はできた隙をしっかり突いて倒さなきゃいけないのよ!」

 

ナゾナゾ博士「それに、こちらには奴の強力な攻撃を防ぐ術がないのじゃぞ!今が最大のチャンスじゃ!」

 

キャンチョメ「…そうだった…。ガッシュもティオも他のみんなもいない…」

 

ベルギム「痛い…椅子も汚れてしまった…。コンチクショー!ダリア、もう呪文は使えるな?」

 

ダリア「ケケケケケー!」

 

ナゾナゾ博士「よいな、作戦は今説明した通りじゃ!」

 

一同「うん!」

 

キッド「博士…」

 

ナゾナゾ博士「怯えるでない、キッド。私の名はナゾナゾ博士。どんな敵と戦おうと勝利へと導く不思議な博士じゃ」

 

ベルギム「てめえら全員、最大呪文でぶっ飛ばしてやる!!」

 

ダリア「ディオガ・リ」

 

ジェム「ヨポポイ・トポポイ・スポポポーイ!」

 

 呪文の効果でヨポポの踊りと同じようにベルギムは椅子に座ったままダリアと一緒に踊り出した。

 

ダリア「ケケケ、ケケケ、ケケケケ!」

 

ベルギム「な、何だ!?体が勝手に!?ってダリア、一緒に踊るんじゃねえ!!」

 

ナゾナゾ博士「ナイスじゃ、ジェム君、ヨポポ君!行くぞ、キッド!」

 

キッド「うん!」

 

ナゾナゾ博士「ガンズ・ゼガル!」

 

 

 

 キッド達の戦いぶりをゼオンとデュフォーは戦闘によって空いた穴から見ていた。

 

ゼオン「ギガノ級の術までしか使えん奴2体と攻撃さえできん雑魚の中の雑魚の1体の計3体の雑魚であんな奴によく粘る事ができるな」

 

デュフォー「あの魔物はとても頭が悪いからな。魔物の頭が悪くてもパートナーがまともならあの程度の奴等に手古摺ったりしない。それと、あの3体のパートナーのうち、老人のパートナーがそれなりに頭がいい奴だからあんなに力の差があってもあそこまで持ちこたえられるだろう」

 

ゼオン「だが、どんなにパートナーの頭がよくても最終的に勝敗を決めるのは魔物の強さだ。まぁ、俺だったらあのバカと違ってあの雑魚3体を1分程度で全員魔界送りにできるがな」

 

デュフォー「あの老人のパートナー、敵の隙を作るためのウソとはいえ、呪文無しで瞬間移動できるとか言ってたぞ」

 

ゼオン「俺なら、ウソどころか実際に実行できるけどな。雑魚が全滅するかあのバカがやられるのか、どっちになるのかな?」

 

 その頃、キッドたちはキャンチョメが地面に化けてダリアから本を奪おうとしていた。

 

ベルギム「元はといえばてめえだ!ウ・ソ・なんかつくからだ!」

 

 ベルギムはダリアと共にナゾナゾ博士の方へ向かっていった。

 

キャンチョメ「もう少しだったのに…」

 

フォルゴレ「博士、ジェム、ベルギムが!」

 

ナゾナゾ博士「案ずるな!キッドとヨポポを前に出す事で私とジェム君が危険に晒されるのは承知の上だ!奴の攻撃呪文は全て見ておる!後は敵の本が光るのを注意して見ておれば何とか奴の攻撃は回避できる!そして、奴の最大の弱点は…椅子から離れられない事だ!」

 

 立てないだろうと判断したナゾナゾ博士とジェムは段差のある所にベルギムを誘い出した。

 

ジェム「いつも椅子に座ってるガイコツファラオ!あんたは立てないから段差は超えられないでしょ?悔しかったら立ってその段差を乗り越えてみなさいよ!」

 

ナゾナゾ博士「(いいぞ、ジェム君!これなら…)」

 

 ジェムの挑発に乗ったベルギムは立ち上がって椅子を持って振り下ろそうとした。

 

ナゾナゾ博士「お、おい…お前、立てるのか…?」

 

ベルギム「上等だ、コンチクショー!椅子が直接お仕置きよ!」

 

ナゾナゾ博士「(私は何という計算違いをしてしまったんだ…。だが…、未来ある子供をここで死なせるわけにはいかん!)」

 

 ナゾナゾ博士とジェム目掛けてベルギムは椅子を振り下ろした。それに気づいたナゾナゾ博士はジェムを突き飛ばし、その攻撃を受けてしまった。

 

ジェム「ナゾナゾ博士!」

 

キッド「博士!」

 

ナゾナゾ博士「来るでない、キッド!作戦を止めてはならん…。1チャンスをものにできねば勝てぬ勝負だぞ…。何、キッド…私は大丈夫じゃ…何せ私は不死身の肉体を持つ人間だからな…」

 

ジェム「(何が不死身よ…!明らかにボロボロじゃない…!私を庇って…)」

 

キッド「ほんと?」

 

ナゾナゾ博士「ああ…本当さ…(ウ・ソ…)さぁ、攻撃に戻れ!勝ちに行くぞ!」

 

フォルゴレ「博士、大丈夫ですか!?」

 

ナゾナゾ博士「ワシに構うでない!向こうで頑張っているキャンチョメ君を見失うぞ!君のパートナーはあの子じゃろ!?」

 

 ボロボロながらもナゾナゾ博士は立ち上がった。

 

デュフォー「あの老人、さっきの攻撃でまともに体が動かなくなり始めたぞ」

 

ゼオン「あのジジイが倒れたら雑魚共に頭脳的な戦いはできなくなる。ようやくこの戦いが終わりそうだな。あの雑魚達の敗北を以って」

 

 戦いの中、ナゾナゾ博士は昔の事を思い出していた。

 

ナゾナゾ博士「まだだ…、まだ…倒れるわけにはいかん…。のう…キッドよ…」

 

 

 

 

回想

ナゾナゾ博士『私を外の世界に連れ出してくれたお前のためにも、こんな所で負けてられぬ…』

 

 自然の中にひっそりと建っている建物にナゾナゾ博士は1人でいた。

 

ナゾナゾ博士「珍しいな。訪問者など、何十年ぶりか」

 

キッド「うわぁ、凄い数の本だね!こんなにたくさんの本に囲まれておじいさんは何をしてる人なの?」

 

ナゾナゾ博士「……ワシは…私は、何もしてない人さ…」

 

ナゾナゾ博士『そうじゃ…何もしてない人、医者だった時もあったが…ワシの手術で我が孫を死なせてしまったひどい医者じゃった…』

 

キッド「こんなにも何でも知ってるのに何もしないなんてもったいないよ。ねえ、この本の事も魔界の王様を決める戦いの事もわかってるでしょ?ねえ、僕を王様にしてよ。おじいさんの物知りが僕を王様にしてくれる。僕を王様にしてくれるんだ!」

 

 そんな時、ナゾナゾ博士は自身の手術で死なせた孫の面影をキッドに重ねた。

 

ナゾナゾ博士「お前を…?ふふふふ、はははははっ!キッドよ、よくぞ私を見つけ出した。君の言う通り、私なら君を王にできる。なぜなら、私こそ前回の魔界の王を決める戦いで王となった魔物の本の使い手、私こそ、ナゾナゾ博士なのだ!」

 

キッド「ほんと!?」

 

ナゾナゾ博士「ウ・ソ」

 

 嘘にキッドは驚愕した。

 

ナゾナゾ博士「なに、君を王様にするという事は本当じゃ。約束しよう。」

 

 

 

 

 

 ベルギムの攻撃で体がまともに動かなくなりながらもナゾナゾ博士は必死の思いで戦っていた。

 

ナゾナゾ博士「(私は、何のためにたくさんの本を読んで来たのか…?何のためにあれ程の知識をあつめていたのか…?孫を死なせてしまった後悔からか?いや、違う!それだけではない!もうメスを握る勇気をなくした私が何のために!)」

 

 ヨポポとキッドの攻撃でベルギムが気を取られている隙に煙の中からキャンチョメは出てきてダリアから本を奪おうとした。

 

ベルギム「何、いつの間の…?」

 

フォルゴレ「ダメなら直接燃やしてやる!」

 

ベルギム「私の本に何をする!」

 

ナゾナゾ博士「いかん!」

 

 ナゾナゾ博士はフォルゴレとキャンチョメを庇い、ベルギムに殴り飛ばされた。

 

キッド「博士!」

 

ジェム「ナゾナゾ博士!(まずいわ!ナゾナゾ博士はベルギムの攻撃を2度も受けているのよ!もう博士の体は…!)」

 

ベルギム「ふはははは、やったぞ、ダリア。あいつはもう動けない」

 

ナゾナゾ博士「(そうじゃ…ワシは今のために知識を集めておったのじゃな…。今のキッドのために…キッドを王にするという約束のために…。良き王が国を治めればたくさんの命が救われる…。医者では救えん命もたくさん生きるのだ…。だが、まだまだキッドには教えねばならぬ事がたくさんある…。今は寝ている時ではないのだ…!キッドの暮らす国を幸せに…ワシの…ワシのかわいい孫の未来を…!)」

 

ダリア「ギガノ・リュウス!」

 

 ギガノ・リュウスがナゾナゾ博士に向けられた。

 

フォルゴレ「博士!」

 

ジェム「博士!」

 

キッド「博士、死んじゃいやだ~~!!」

 

 ナゾナゾ博士の代わりにキッドがギガノ・リュウスを受けたが、防ぎ切れずに自分の本が燃えてしまった。

 

ジェム「あっ、キッドの本が!!」

 

 キッドの本が燃えているのを見たジェムは慌ててキッドの本に着いてしまった火を消そうとしたが、消えなかった。

 

ジェム「消えない消えない!どうして消えないの!?」

 

ナゾナゾ博士「(私はどうなった…?生きておるのか…死んでおるのか…?キッドは…?キッドを守らねば…。意識が薄くなってゆく…キッドは…?)」

 

 意識が薄れゆくナゾナゾ博士の目に飛び込んだのはキッドだった。キッドが足掻く様子をゼオンとデュフォーは冷ややかに見ていた。

 

ゼオン「ふん、パートナーも動けなくなったのにあそこまで足掻くとはな…」

 

デュフォー「火事場のクソ力という奴か…」

 

ゼオン「あのバカも相当甘いな…本を燃やしたら次の一撃をすぐに本に当てて燃えるスピードを早めないと大変な事になるぞ…」

 

 ゼオンの思った通り、ベルギムが本に2発攻撃してすぐに燃やし尽くす事をしなかったため、キッドが立てた作戦でダリアが持っていた月の石をキャンチョメに奪われ、ベルギムは追い詰められていた。

 

キッド『博士…博士…』

 

ナゾナゾ博士「(キッド…まさか…!キッドは向こうで戦っているのに私の心に直接声がする…)」

 

キッド『博士、今までありがとう。僕はもう…お別れしなきゃいけないみたいだ…』

 

ナゾナゾ博士「(キッドなのか…?いや、キッドはあそこで戦っておる。これは…キッドの心の姿…)」

 

キッド『僕は博士に色々な事を学んだよ。王様になるために勉強しなきゃいけない事、1人の力の限界、みんなで協力した時にできる大きな力』

 

キッド「今度はディカ・ポルクだ!呪文の意味はわかるよね!?」

 

フォルゴレ「!!ああ、わかるさ!第3の術、ディカ・ポルク!」

 

 今度は巨大なキャンチョメの幻が出現した。

 

ベルギム「わわっ、大きくなった!どんどん大きくなるよ!!こ、怖いよダリア、どんどん攻撃だ!!ありったけの術を使え!」

 

ダリア「ケケケケ、エルム・リュウガ!ギガノ・リュウス!ガンズ・ゴウリュウガ!ディオガ・リュウスドン!」

 

 巨大な幻を本物だと思い込んだベルギムは無駄撃ちを始めてしまった。

 

ベルギム「うわああっ、倒せない!」

 

フォルゴレ「(そうだ、幻とも知らないでもっと技を出せ!そう、心の力がなくなるまで!それにしてもキッド、どうしたんだ?こんな作戦を瞬時に。まるで、ナゾナゾ博士がそこにいるみたいだ…!)」

 

キッド『僕が…僕がこんな指示をできるようになったのも博士のお陰だよ。博士はいつも僕と遊んでくれたね、いつも僕を笑わせてくれた。いつも博士と一緒にいるだけで楽しかった。博士、博士は僕の…ナゾナゾ博士は僕の王様なんだ…!ねえ、僕は成長したかな?今の姿を博士は喜んでくれるかな?ねえ、僕は博士のようになれたかな?だとしたら嬉しいな…。僕は…王様になれたんだよね…』

 

 そんな中、燃えているキッドの本が光った。

 

ジェム「キッドの本が!」

 

ベルギム「くそう!みんな、みんなぶっ飛ばしてやる!!ダリア、残った心の力で全てをぶっ飛ばせ!」

 

ダリア「ケケケケ、ディオガ・リュウスドン!」

 

 頭にきたベルギムはこれまで以上の威力のディオガ・リュウスドンで全てを消し飛ばそうとした。

 

フォルゴレ「何っ!?」

 

ヨポポ「ヨポイ!」

 

ジェム「こ、これじゃあどうにもならないわよ!!」

 

キッド『博士、もう行かなきゃ。さぁ、最後の呪文を唱えて。僕の新しい呪文が本に出たんだ。きっとその呪文は、博士とみんなを守ってくれるよ』

 

ナゾナゾ博士「キッド…」

 

キッド『今までありがとう…大好きな…大好きなナゾナゾ博士!』

 

ナゾナゾ博士「ミコルオ・マ・ゼガルガ!!」

 

キッド「(さようなら…博士…)」

 

 涙ながらにナゾナゾ博士は最後の呪文、ミコルオ・マ・ゼガルガを唱えた。呪文によって現れた機械の女神は最大パワーのディオガ・リュウスドンを一蹴し、ベルギムを魔界送りにした。

 

フォルゴレ「博士…!」

 

ジェム「博士、博士…!私のせいで…キッドは…せっかくヨポポと友達になったキッドは…」

 

ヨポポ「ヨポイ…」

 

ナゾナゾ博士「わかっておる…何も言うな…」

 

 キッドを失ったフォルゴレ達は悲しみ一色だった。今回の戦いではガッシュはクリアに対抗するため、コルルやヨポポを初めとした親しい魔物をできるかぎり生き残らせようとしたが、ガッシュの目の届かない所でキッドは最初の脱落者となってしまった。




これで今回の話は終わりです。
今回はキッドとの別れを描いたベルギム戦ですが、戦闘開始早々にビクトリームがやられたのはビクトリームがいたら感動のシーンが台無しになってしまうと思ったのでいきなりやられて気絶した状態にしました。
次は原作よりも早いタイミングでゾフィスとブラゴの戦いになりますが、本来ならばファウード編のあの名物シーンがフライングで出てくるかも知れません。誰がやるのかはまだ秘密です。


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LEVEL35 動き出すゴーレン

デボロ遺跡

 ミコルオ・マ・ゼガルガが放たれた際、ゼオンはデュフォーと共にその場を離れて天井の崩落から免れていた。そして、崩落が終わってからその場を見に来た。

 

デュフォー「あの頭の悪い魔物、本を燃やした奴と相討ちになったな」

 

ゼオン「これもすぐに本を燃やし尽くさないからさ。そうしないとああなっちまう可能性だって0ではない」

 

デュフォー「あいつら、仲間が1人消えたぐらいで泣いているぞ」

 

ゼオン「あの本を燃やされたガキもその仲間も弱いからああなったんだ。弱い奴は脱落し、強い奴だけが生き残る、それが魔界の王を決める戦い。地獄はまだ始まったばかりだ…。ちょうど昼だから飯でも食うか?デュフォー」

 

 戦いを見届けたゼオンはデュフォーと共に食事をとる事にしたため、瞬間移動で姿を消した。

 

キャンチョメ「博士…ごめんね…僕達の力が足りなかったから、キッドを助けられなかったんだ…。これ…ここに敵から奪った月の石を置いてくよ。もう心の力は使えないけど、ナゾナゾ博士の体は元気になるはずだよ」

 

 キャンチョメはダリアから奪った月の石をナゾナゾ博士の近くに置いた。

 

ジェム「後は私達に任せてね。きっと、この城の頂上にある月の石の元を壊すから…。ヨポポ、キッドの頑張りを無駄にしない為にも行きましょう」

 

ヨポポ「ヨポポイ」

 

ナゾナゾ博士「ふっ…はははは」

 

フォルゴレ「え?」

 

ナゾナゾ博士「月の石の元を壊してくる?何を言っとるか?このワシを抜いてそんな事、できるわけなかろう!!」

 

キャンチョメ「博士…」

 

ナゾナゾ博士「キッドが全てをかけたのにワシが寝ていて何になる!?こんな所で寝ていては消えていったキッドに顔向けができんわ!!行くぞ、キャンチョメ君、フォルゴレ君、ヨポポ君、ジェム君!!」

 

 月の石を握り、ナゾナゾ博士は立ち上がった。

 

ナゾナゾ博士「この作戦を成し遂げる事がワシがキッドにできる手向けとなろう!ワシにはまだまだやるべき事がある!(そうじゃろう、キッド)」

 

???「ぶるぁあああっ!!この私を忘れるなぁああっ!!」

 

 後ろの方を向くと、怒っているビクトリームがいた。

 

ジェム「(すっかり忘れてたわ…)」

 

フォルゴレ「こ、これは華麗なるビクトリーム様~!」

 

ビクトリーム「私が気絶してる間にベルギムを倒した事は誉めよう。だが、お前達にはこの私の力が必要であろう。さぁ、私について来るがいい!!」

 

 自信満々にビクトリームは突っ走り、残りの面々も後を追った。それをモーリスは望遠鏡で見ていた。

 

モーリス「全く、ここに先に来てるのは品性のない男共ばかりだ。女の子が一人いるが、まだ幼いからストライクゾーンではない…。ああ、早く残りの奴等は来ないのだろうか…?」

 

 

 

 

 その頃、お昼ご飯を食べ終わったガッシュ達はパムーンの案内に従って先へ進んでいた。

 

パティ「さっき、大きな揺れがしたわね。何があったのかしら?」

 

コルル「もしかしたら…、私達と逸れちゃったキャンチョメ達のうちの誰かが魔界に帰っちゃったのかな…?」

 

ティオ「ちょ、ちょっとコルル、そんな縁起の悪い事を言わないでよ。そんな事があるわけ…」

 

清麿「(確か、ガッシュの話では前の戦いではキッドはベルギムという魔物との戦いで相討ちになって魔界に帰ったそうだったな。逸れてしまったせいでキッドがこの戦いで魔界に帰るというのは変えられなかったのか…)」

 

アポロ「パムーン、まだ登らないとダメなのかい?」

 

パムーン「そうだ。この人数じゃフェイ・ファルグで一斉に上に移動させるのもきついと思ってな。きついとは思うが、頑張ってくれよ」

 

 しばらく進んだが、千年前の魔物は現れなかった。

 

チェリッシュ「千年前の魔物が出てこないわね。私達が大半を倒しちゃったからなのかしら?」

 

ウォンレイ「その可能性は十分に考えられる。だが、こうも出てこなかったら逆に不気味な感じがするな…」

 

パティ「何を不安になってるのよ。ゾフィスも残る最後の四天王のデモルトもガッシュちゃんには全然及ばないからもう私達に怖い物なんてないのよ。だから、自信をもっと持ちなさい」

 

アポロ「確かにゾフィスもデモルトもガッシュなら倒せるだろう。だが、まだ不確定要素のゴーレンの情報があるんだ。もし、本当にゴーレンがいるとしたら、どれ程の実力かわからないんだよ。自信を持つのも大事だけど、慎重さも忘れてはいけない」

 

パティ「わかってるわよ、もう」

 

ガッシュ「(それにしても、ゾフィスは一向に姿を現さんのう…。どうしたのであろうか…?)」

 

 

 

 

 当のゾフィスはある部屋でブラゴと鉢合わせしていた。

 

シェリー「まさか、待ってくれていたとはね…ゾフィス!ココを返してもらうわよ!」

 

ゾフィス「…あなた達ですか?私の戦士達を壊滅状態に追い込んだのは…」

 

ブラゴ「半数ぐらいはガッシュ達が倒したんだがな」

 

シェリー「手下もほとんどいなくなったあなたはまさに裸の王様とでもいえるわね」

 

ゾフィス「(ブ、ブラゴを倒して大海恵と高嶺清麿を生け捕りにしなければ奴に…奴に…石にされてしまう…!)わざわざ墓穴を掘りに来るとは命知らずですね…」

 

シェリー「(おかしいわ。ゾフィスが戦う前から怯えている?何かあったの?いえ、余計な事は考えてはいけないわ!)そういうあなたこそ、怯えているわよ。まさか、私とブラゴが怖いのかしら?」

 

ゾフィス「怖い…?違うな…数多くの手下を潰されて腸が煮えくり返っているのは俺の方なんだよ!!」

 

ココ「ギガノ・ラドム!」

 

シェリー「ギガノ・レイス!」

 

 互いのギガノ級の呪文がぶつかり合って相殺された。

 

ココ「ラドム!ラドム!テオラドム!」

 

 ココは次々と呪文を連射してきた。それらを難なくシェリーとブラゴはかわした。

 

ゾフィス「ココ、奴等を早く仕留めるためにももっと強力な呪文をどんどん出せ!」

 

ココ「やけに焦ってるわよ。ま、いっか。ギガノ・ラドム!ギガノ・ラドム!ディガン・テオラドム!」

 

シェリー「バベルガ・グラビドン!」

 

 連続で来る強力な呪文を避けきれないと判断したシェリーはバベルガ・グラビドンで全て防いだ。

 

ブラゴ「シェリー、気付いたか」

 

シェリー「ええ。ゾフィスは焦っている。きっと、何かに怯えているのよ」

 

ブラゴ「なら、もっと図星になりそうな事を言ってみるか?」

 

シェリー「そうしましょう」

 

ココ「ディオガ・テオラドム!」

 

シェリー「ディオガ・グラビドン!」

 

 二つのディオガ級の呪文がぶつかって相殺した。

 

ゾフィス「もっと撃て、ココ!」

 

ココ「少し前からやけに怯えているわよ、ゾフィス。何かあったの?」

 

ゾフィス「うるさい!俺が作った人格の分際で口答えする気か!そんな暇があったらもっと呪文を出せ!」

 

シェリー「…そうだったのね…」

 

ゾフィス「ああ、そうさ!今のココは俺が作った凶悪な人格だ!」

 

シェリー「ふふふ、怯えに怯えて自らネタばらしするなんて愚かね、ゾフィス!」

 

ゾフィス「な、何がおかしい!あっ!」

 

 ゴーレンとブラゴ、ゼオン、ガッシュの存在に怯えていたゾフィスは自らネタをばらしてしまった事にようやく気付いた。

 

ブラゴ「おい、てめえは誰に怯えてるんだ?雷帝か?ガッシュか?それとも…、この俺か?」

 

ゾフィス「あ、あ…」

 

ブラゴ「シェリー、このバカをとっとと仕留めるぞ!」

 

シェリー「ええ!」

 

ゾフィス「動くな!ココがどうなってもいいのか!?」

 

 自分でネタばらしをしてしまい、さらに焦ったゾフィスはココに隠し持っていたナイフで自殺させようとした。

 

ゾフィス「ふははははっ!人間っていうのはこういった状況になると何もできねえよな!さぁ、土下座でも何でもしろ!そうしないとココの命は…」

 

 最後の手段としてココに自殺をさせようとしてこの状況を切り抜けようとしたゾフィスだったが、当のシェリーは激怒すると共に鬼麿にも匹敵するすさまじい殺気とオーラを放った。

 

シェリー「どこまでも性根が腐っているようね…、ココを元に戻さないのなら、攻撃を続けるまでよ!!」

 

ゾフィス「ひっ…!」

 

ブラゴ「さぁ、やれ!あのバカへの怒りを力に変えろ!」

 

シェリー「レイス!レイス!レイス!ギガノ・レイス!レイス!レイス!ギガノ・レイス!」

 連発される攻撃にゾフィスはどうしようもなかった。その際にココの自殺は止まった。

 

ゾフィス「ぐはっ…があっ…ぐほっ…!」

 

 攻撃が止んだのでゾフィスがシェリーとブラゴの様子を見ると、シェリーは息継ぎをしていた。

 

ゾフィス「あの女…息継ぎしてやがる…!」

 

シェリー「レイス!リオル・レイス!レイス!リオル・レイス!リオル・レイス!レイス!レイス!オルガ・レイス!」

 

 絶え間ない攻撃は終わらなかった。

 

ゾフィス「げほっ、がはっ!…もう終わ…」

 

 やっと終わったとゾフィスは思っていたら、シェリーは手にした月の石で心の力を回復させていた。

 

ゾフィス「(あの女、月の石で心の力を…!)」

 

シェリー「レイス!ギガノ・レイス!レイス!オルガ・レイス!レイス!ギガノ・レイス!オルガ・レイス!ディオガ・グラビドン!!」

 

 前の戦いでロデュウが受けた拷問のような攻撃を今度はゾフィスがシェリーとブラゴから受ける羽目になった。連続で強力な呪文を受けたゾフィスはもうボロボロだった。

 

ゾフィス「げ…、ぐぁ…」

 

シェリー「さぁ、ココを元に戻しなさい!」

 

ブラゴ「シェリーの言った事をさっさとやれ!それとも…魔界に帰った後もこの俺から逃げ続ける生活を送りたいか!?」

 

ゾフィス「…はい…ごめんなさい…。あなたの言う通りにします…」

 

 ブラゴの気迫と殺気に押され、ただでさえガッシュやゼオン、ブラゴの恐怖に押しつぶされそうだったゾフィスは完全に恐怖に押しつぶされた。

 

シェリー「(終わった…。ココを取り戻すための長く苦しい戦いが…)」

 

 

???「ギガノ・ゴルゴジオ!」

 

 安心したのも束の間、謎の光線がゾフィスに飛んできてゾフィスは石になってしまった。

 

シェリー「ゾフィスが石になった!?」

 

 その時、無数のヘビが倒れているココを縛って持ち上げた後、引き寄せた。

 

???「ギガノ・ゴルゴジオ!」

 

 ギガノ・ゴルゴジオを浴びてココは石になった。

 

シェリー「今度はココまで!一体、何が起こったのよ!?」

 

???「役立たずを処分しに来た」

 

 声と共にゴーレンとモーリスが姿を現した。

 

シェリー「あなた達、何者!?」

 

ゴーレン「我が名はゴーレン。隣にいるのはパートナーのモーリス」

 

ブラゴ「お前があのゴーレンか。まさか、千年前の魔界の王を決める戦いで最も多く他の魔物を倒した奴とこんな所で戦えるとは思ってなかったぞ。相手にとって不足はない!」

 

モーリス「悪いが今は君達の相手をしてる暇はないんだ。極上の芸術品にしたい奴等がいるからね。君の親友も私の芸術品としてもらっていくよ」

 

シェリー「ココが芸術品ですって!?あなた、同じ人間を石にして芸術品と呼ぶなんてどういった神経をしているのよ!!」

 

モーリス「私からすれば人間も魔物も美女は私の芸術品になるべきさ。逆に男はカップルの男以外は人間も魔物も私に従う奴以外は存在する価値さえない。特にジジイと品のない男はね」

 

シェリー「そんな戯言に付き合う気はないわ!ココを返しなさい!!」

 

 シェリーはブラゴと共にゴーレンとモーリスに飛びかかったが、すぐにゴーレンのヘビになっている頭髪によって縛られてしまった。

 

ブラゴ「くそっ、気色悪いぞ…!」

 

シェリー「放しなさい!そしてココを返して!!」

 

モーリス「ゴルゴジオ!」

 

 光線を受けてしまったシェリーとブラゴは放り投げられた後、立ち上がろうとしたが、動けなかった。

 

シェリー「ココを助けないといけないのに動けないなんて…」

 

モーリス「ふふふ、麗しの美女が苦労を重ねて手にした勝利が逃げて絶望する姿は実に楽しい。それと言ったはずだよね、今は君達の相手をしてる暇はないと。君は後でココと同じ芸術品にしてあげるから、ここで大人しくしてるんだよ」

 

 清麿と恵を石にするため、モーリスはゴーレンと石にしたゾフィスとココを持って去って行った。ゴルゴジオの効果が切れて動けるようになった後、シェリーはココを助けられなかった絶望に打ちひしがれていた。

 

シェリー「ここまで来たのに…ココを助けるために苦しい戦いを乗り越えたのに…ココを助けられないなんて…」

 

ブラゴ「シェリー、手にした勝利が逃げたぐらいで諦めるのか?てめえの執念が追っていたものは…てめえの信じていたものは…一度手にした勝利が逃げたぐらいで潰されるものだったのか!?あの野郎は俺が倒す…!絶望から抜け出せないのなら、そのまま寝ていろ」

 

 しばらくした後、ブラゴの言葉によってシェリーは奮い立った。

 

シェリー「ブラゴ、私もあいつと戦うわ!手にした勝利が何度逃げても必ず掴む!そして、ココを助け出す!」

 

 立ち上がったシェリーにブラゴは少し笑った後、共にモーリスとゴーレンを追った。

 

 

 

 その頃、ガッシュ達はしばらく進んでいると、月の石の光が漏れている場所に来た。

 

恵「清麿君、この部屋の上に月の石があるのね」

 

清麿「その通りだ。あそこに月の石の光が漏れた一角がある。あれ程強い光が漏れているのなら、間違いないだろう(ガッシュの言ってくれた情報通りだ)」

 

パムーン「清麿の推測通りだ。この部屋の上に月の石がある」

 

パティ「もうゴールは目前って事ね。一気に突っ走って行くわよ!」

 

???「これ以上先へは進めないゲロ!」

 

 月の石がある部屋へ向かうガッシュ達の前にビョンコとコーラルQが現れた。

 

ガッシュ「コーラルQ!」

 

パティ「またビョンコなの?ほんとあんたは懲りないわね」

 

ビョンコ「よくもオイラの戦士を魔界送りにしてくれたゲロ!特にオイラを裏切ったパティは許さないゲロ!」

 

アポロ「カエル君、今は君と関わっている場合じゃない!通さないのなら、力づくでも通してもらうよ!」

 

ビョンコ「意地でも通さないゲロ!アルヴィン、出てくるゲロ!」

 

コーラルQ「出番ピヨ、グラブ!」

 

 それぞれのパートナー、アルヴィンとグラブが姿を現した。

 

コーラルQ「ふふふ、お前達は私の変形に驚くがいい!ガッシュ、まずはお前から血祭りにあげてやるピヨ!」

 

リィエン「(なんか、筋肉マッチョで戦闘狂の極悪人が言いそうなセリフある…)」

 

清麿「(ガッシュの話によればコーラルQは結構強いそうだが…そうは見えねえな…。まぁ、軽くあしらってやるか…)ザケル!」

 

グラブ「ザケルで来たか。ムロム・ロボルク!」

 

 ザケルをムロム・ロボルクで防御した。ガッシュ達は既に前の戦いでコーラルQの変形を見ているガッシュ以外はコーラルQの変形に驚いていた。

 

清麿「(何だ?あの変形は…ザケルが防がれるなんて…)」

 

しおり「さっきの変形、なんか無茶苦茶じゃない?」

 

ウルル「明らかに普通じゃありませんね」

 

コーラルQ「は~っはっは~っ!これさえあれば電撃の攻撃は怖くないピヨ!」

 

清麿「だったら、攻撃の方法を変えるだけだ!ガッシュ、マントを刃物のように鋭利にして切り刻め!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

 ゴムに電撃は効かないと判断した清麿は刃物で攻撃に切り替えた。ガッシュは指示通り、マントを刃物のように鋭利にしてコーラルQに斬りかかった。しばらくガッシュとコーラルQの戦いは互いのパートナーが出方を伺いながら適切な指示を出す戦いになっていた。

 

ビョンコ「アルヴィン、ガッシュは今、コーラルQとの戦いで隙だらけゲロ!オイラ達も攻撃ゲロ!」

 

アルヴィン「ヒィファホ、フェルヒゥホ!」

 

ビョンコ「呪文がちゃんと発音できてないゲロ!歯医者へ行って入れ歯を直してもらったんじゃないかゲロ~!」

 

アポロ「カエル君が悪い事をやめたら僕が手配して君のパートナーがちゃんと呪文の発音ができるようにしてあげるよ」

 

ビョンコ「そんな事を言ってオイラを油断させようとしてもそうはいかないゲロ!」

 

ウォンレイ「君だけで私達全員と戦う気なのかい?」

 

チェリッシュ「命知らずにも程があるわね、カエルの坊や」

 

ビョンコ「オイラを坊や扱いするなゲロ!」

 

ティオ「あんな奴は放っておきましょう。それよりも、ガッシュの方は…」

 

コルル「なんか、コーラルQとパートナーが戦闘をやめちゃったよ」

 

 コルルの言う通り、途中でグラブは本を閉じて呪文を出さなくなった。

 

グラブ「ガッシュの実力と清麿の頭脳、俺の想像以上だ」

 

清麿「急に戦いをやめてどうしたんだ?」

 

グラブ「清麿、ここは一時休戦して共闘を申し出る」

 

清麿「俺達と共闘だって?」

 

サンビーム「急にそんな事を言ったのはなぜだ?」

 

グラブ「君達も聞いているはずだ。このデボロ遺跡にゴーレンがいると。そのゴーレンを倒すための確実な方法が君達と共闘する事だった。急にそんな事を言っても信用してくれないだろうが、ゴーレンをこのまま野放しにしていたら大変な事になるというのはわかっているはずだ。だから、ゴーレンを倒すまで君達と共闘したい」

 

ガッシュ「清麿、どうするのだ?」

 

ティオ「一方的に襲っておきながら急に一緒に戦いますって言われても信用できないわよ」

 

恵「ティオの言いたい事もわかるけど、最終的な判断をするのはコーラルQのパートナーと話をしている清麿君よ」

 

アポロ「(どう判断する?清麿。僕には彼は嘘をついてないと勘が告げているが…)」

 

清麿「…わかった、一緒に戦うのを許可する」

 

グラブ「済まない…」

 

清麿「グラブとか言ったな。お前、ゴーレンを倒すためっていう一緒に戦う理由が完全な建前って訳じゃないって俺は思うけど、本音はやっぱり自分のやってきた事に罪悪感を感じたからなのか?」

 

グラブ「そうなるな…」

 

ビョンコ「コーラルQ、グラブ、ゾフィス様を裏切るゲロか!?」

 

コーラルQ「ビョンコは鈍いピヨ!近頃のゾフィスの様子がおかしい事に気付いてないとでもいうのか?」

 

ビョンコ「そんな細かい事はオイラにはわからないゲロ!こうなったらオイラ1人でここを通さないゲロ!」

 

ウルル「アクル!」

 

 意地でも通さないビョンコをパティはアクルで吹っ飛ばした。

 

パティ「しつこいあんたはそこで寝てなさいよ!今、私達は急いでるのよ!」

 

ニコル「邪魔をする魔物は誰もいないわ。さぁ急ぐわよ!」

 

 軽くビョンコを蹴散らしてグラブとコーラルQを仲間に加え、先を急ぐガッシュ達だが、月の石の光が差し込んでいる場所に魔物と操られているパートナーがいた。

 

コルル「あの子、レイラじゃない?」

 

チェリッシュ「あの子が坊や達を助けてくれたレイラっていう千年前の魔物なの?」

 

ティオ「そうよ!無事だったのね!」

 

ガッシュ「(いかん!今のレイラは…!)」

 

アルベール「ミグロン!」

 

 レイラはガッシュ達に攻撃を仕掛けた。

 

パティ「ちょ、ちょっと!」

 

ランス「ファシルド!」

 

 間一髪でパムーンがレイラの攻撃を防御した。

 

恵「ごめんなさい、パムーン。レイラが攻撃してくるなんて思ってなかったから攻撃を防いでもらって」

 

パムーン「別に謝る事じゃない。それよりも…なぜガッシュ達を助けたレイラが…?」

 

 突如として攻撃してきたレイラにガッシュと清麿を除く一同は動揺を隠せなかった。




これで今回の話は終わりです。
今回は原作よりも早いタイミングでブラゴvsゾフィスをやりましたが、原作のザケルザケルをやりたいものの、ファウード編をアニメ寄りの展開にするとザケルザケルができないので、代わりにブラゴペアが似たような拷問をするという展開にしました。
今までは1日に2話投稿していましたが、ようやくpixivに追いついたのでこれからの投稿は数日おきに1話になります。
次の話はレイラ説得の話で、原作と違ってガッシュ達も一緒にレイラを説得しますが、その後に清麿とガッシュが大変な事になります。


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LEVEL36 石への恐怖を乗り越えろ!

デボロ遺跡 内部

 自分達に味方したはずのレイラが攻撃した事に前の戦いの記憶があるガッシュとあらかじめその事を聞いていた清麿以外は驚きを隠せなかった。

 

ティオ「ちょっとレイラ、どういう事よ!あなたはゾフィスのやってる事に反対してるんじゃなかったの!?」

 

ロップス「かうかう!」

 

清麿「そこを通してくれ、レイラ!もう少しで月の石本体を壊して」

 

アルベール「オル・ミグルガ!」

 

 話も聞かずにレイラはまた攻撃を仕掛けてきた。

 

恵「セウシル!」

 

 今度はティオがレイラの攻撃を防御した。

 

コルル「どうしてなの?レイラ。ゾフィスを裏切れば石に戻るのを承知で私達を助けてくれたのに…」

 

ウマゴン「メル…」

 

アポロ「清麿、どうやらレイラは本気で僕達を倒すつもりのようだ」

 

清麿「さっきの攻撃からしてそうみたいだ…(前にガッシュが話した通り、ゾフィスによって石に戻る恐怖を叩き込まれているだろうな…)」

 

ビョンコ「いいゲロ、レイラ!それでこそオイラの家来ゲロ!」

 

グラブ「ロボルガ!」

 

 今度はコーラルQの攻撃でビョンコは吹っ飛ばされた。

 

グラブ「いい加減にしろ、カエル!レイラや他の千年前の魔物はお前や俺とコーラルQの家来じゃない!余計な事を言ったらもっと攻撃を喰らわせてやるぞ…!」

 

しおり「(やっぱりグラブって人、根っからの悪い人じゃなかったのね)」

 

グラブ「どうする?清麿」

 

清麿「グラブとコーラルQはレイラがああなった原因を知ってるか?」

 

コーラルQ「私とグラブは別の任務があったからその事は知らないピヨ」

 

恵「清麿君、レイラがなぜゾフィスに協力するようになったのか話をしてみましょう」

 

清麿「俺もそうしようと思ってた所だ。それに、同じ千年前の魔物のパムーンの説得なら少しは耳を貸してくれるかも知れない」

 

パムーン「だが、俺とレイラはほとんど面識はないから上手く行かないかも知れないぞ。それでもやるのか?」

 

清麿「少しでも可能性があるのならそうしたい」

 

ガッシュ「頼むのだ、パムーン」

 

パムーン「わかった。俺もやれるだけの事はやってみる」

 

サンビーム「ビョンコの方はどうする?」

 

ウルル「パートナーが呪文の発音が上手くできないようなので、実質的に無害なのも同然です。かかってきた時は適当にあしらってやればいいでしょう」

 

パティ「そうした方がいいわ。あいつ、力はないけど口だけは多いから」

 

ビョンコ「オイラは適当にあしらえるほど弱くないゲロ!」

 

 ビョンコがいくら言ってもアルヴィンは呪文の発音が上手くできないとガッシュ達に知られたため、レイラの事を優先するガッシュ達に無視されてしまった。

 

ビョンコ「コラ、オイラを無視するなゲロ!!」

 

レイラ「ビョンコ、下がってなさい。後は私がやるわ。大人しく本を燃やさせてくれれば、痛い思いをしなくて済むわ」

 

パムーン「レイラ、ガッシュ達はお前と戦う気はない!この上の部屋にある月の石本体を壊しに来ただけだ!それに、月の石本体を壊せば俺のパートナーもお前のパートナーも」

レイラ「なるほど…ゾフィスの言った通り、月の石を壊し、私を石に戻すために来たのね!」

 

ガッシュ「レイラ、昨日の清麿の話を聞いておらぬのか!?月の石を壊してもお主は石には戻らぬのだ!」

 

パムーン「清麿とガッシュの言ってる事は本当だ!信じてくれ!」

 

アルベール「ラージア・ミグロン!」

 

 同じ千年前の魔物のパムーンの説得にさえレイラは耳を貸さず、また攻撃してきた。ガッシュはラージア・ミグロンをマントで防いだ。

 

レイラ「確かに私達千年前の魔物の方が間違っている!それでも石に戻るのは嫌なのよ!それほどに…つらい石の千年間だったのよ!」

 

パティ「同じ千年前の魔物の話はおろか、ガッシュちゃんの話にさえ耳を傾けないなんてどういう事よ!耳の穴をかっぽじってないの!?」

 

レイラ「だから昨日も言ったでしょ!?そんな話はすぐには信じられないって!同じ千年前の魔物のパムーンがガッシュ達の話は本当だと言っても決定的な証拠がないと信じられないわ!」

 

清麿「(石に戻る恐怖は予想以上だ…。何とか手を打たないと…!)」

 

グラブ「その証拠はある。レイラ達千年前の魔物は月の石の光で復活したんじゃない、俺が開発に携わったある魔物の呪文を再現したライトで復活したんだ!」

 

 千年前の魔物を復活させるためのライトの開発に携わったグラブの発言にはレイラも衝撃を受け、すぐに言い返せなかった。

 

清麿「ありがとう、グラブ。お前の言葉はレイラに響いたみたいだ」

 

グラブ「それ程の事じゃない。一緒に話をしていくぞ」

 

ガッシュ「(ありがとうなのだ、グラブ。お主のお陰で突破口が見えるかも知れぬぞ)」

 

レイラ「それって…どういう事よ…」

 

グラブ「お前達を石にした張本人のゴーレンは石化解除呪文、メドルウが使えた。しかも、この呪文は人間界の月の光に似てる上、人為的な再現も可能だったんだ。それでゾフィスは俺と共同開発で特殊なフィルターを作ってからそのフィルターをかけたライトを使ってメドルウを再現し、レイラ達を復活させた。これが千年前の魔物の復活の真相だ」

 

レイラ「じゃ、じゃあ月の石は何なのよ!」

 

グラブ「そこは清麿が説明する」

 

 清麿は月の石の説明や石化の術はゴーレンしか使えない事、レイラ達の見た石化はゾフィスによる幻覚に過ぎない事を話した。その話を聞いたレイラは衝撃を受けていた。そして、前日の事を思い出していた。

 

 

 

 

回想

 それは、ガッシュ達が一旦ホテルに戻り、ゼオンが潜入している時の事だった。

 

ゾフィス「レイラ、あなたが彼等を逃がした事は知っています。だが、あなたが逃がした者達が月の光の石を壊しに来るようでしたら、あなたはまた石に戻ってしまうのですよ。このように…」

 

 ゾフィスが指を弾くと、レイラは足元から石化するという幻覚に襲われた。

 

レイラ「や…やめて!!」

 

ゾフィス「ふん、石に戻りたくなければ…」

 

 レイラは月の石の光が差し込んでいる場所へ吹っ飛ばされた。すると、レイラから見たら石化していた箇所が元に戻った。

 

ゾフィス「その月の光が降り注ぐ場所から外に出ない事ですね。そして、もし、その光が途絶えた時は…あなたは石に戻るのです…」

 

 

 

 

レイラ「幻覚…幻…もう石には戻らない…石には…」

 

 石化は幻に過ぎないと言われてレイラは月の石の光の外へ手を出そうとしたが、石化の幻覚に怯えていた。

 

リィエン「レイラは何をしてるあるか?」

 

ウォンレイ「だが、かなり怯えているぞ。清麿が言ったようにレイラは私達には見えない幻覚に苦しんでいるのかも知れない…」

 

レイラ「やっぱり…月の石は壊させない!大人しく…大人しく倒されなさい!!アルベール、早く呪文を!」

 

コルル「どうしよう…このままじゃ…」

 

 自分達の説得が届かない事にどうすればいいか悩む一同だが、チェリッシュはレイラの態度を見て立ち上がった。

 

チェリッシュ「ニコル、レイラに喝を入れるわ。だけど、攻撃呪文は使ってはダメよ」

 

ニコル「わかったわ」

 

 チェリッシュはレイラの前に来た。

 

チェリッシュ「いつまでも石に戻る恐怖に負けてるんじゃないわよ、レイラ!!昨日、坊や達が来たときは助けてくれたそうだけど、その時の石に戻るのも承知で坊や達を助けた勇気はどこに行ったんだい!?」

 

 チェリッシュの一喝にレイラは思わず怯んでしまった。

 

レイラ「石になった事のないあなた達現代の魔物にはわからないのよ!私達が石にされた苦しみが!」

 

チェリッシュ「私達現代の魔物だって石化とは別の様々な苦しみを受けたのよ。味方がいない事による疑心暗鬼、心が壊される程の拷問のような攻撃、ここにいる私達はそんな苦しみを受け、そして戦ってきたのよ!レイラは苦しみに抵抗しないでずっと逃げるつもりなの?情けないわね。こんなに言われてるのが悔しいのなら、あのゲス野郎の幻覚に打ち勝ちなさい!」

 

ガッシュ「(前の戦いの時の清麿よりも厳しいが、似たような事をチェリッシュが言ったのう…)」

 

ニコル「(チェリッシュ、今のレイラにゼオンとの戦いで心をボロボロにされた時の自分を重ねているからあんな事を……)」

 

アポロ「いざという時は呪文を…」

 

ニコル「みんな、攻撃呪文は使わないで!チェリッシュはレイラを説得してるの!」

 

アポロ「だが、万一の事も考えられる」

 

清麿「アポロ、ギリギリまで待ってくれないか?一番苦しんでいるのはレイラなんだ…」

 

アポロ「…レイラが苦しんでいるのはわかってるよ。それに攻撃するとは一言も言ってないからね。もしもの時はチェリッシュを助ける」

 

ガッシュ「清麿、私も説得に行ってくるのだ」

 

清麿「ああ。他のみんなも説得に行きたいのなら、行くんだ」

 

 他の魔物達もレイラの説得に向かった。

 

レイラ「あなた達…本当に死にたいの…!?」

 

ガッシュ「レイラ、お主はもうありもせぬ呪縛に縛られてはならぬのだ!」

 

レイラ「まだ続いているのよ、石の呪縛は!見たでしょ!?この光の外に出した手が石に変わるのを!」

 

ティオ「全然変わってないわよ!」

 

恵「レイラのさっきの行動はやっぱり…」

 

清麿「レイラからは本当に石に変わっているように見えてたんだ…。こうされると、いくらレイラでも…(ゾフィスの術はあそこまでレイラの心を蝕んでいたのか…)」

 

レイラ「石に変わるのがどれだけ…、1人ぼっちがどれだけ…」

 

パムーン「俺もガッシュと戦うまでは石に戻るのは怖かった…。だが、ガッシュが俺の友達になってくれたのと同時に立ち向かう勇気ももらった!だからレイラ、俺やガッシュ達はお前の友達になるから怖がらなくていい!石の呪縛に打ち勝ってくれ!」

 

 術を撃とうとしたレイラはスティックを落した。

 

レイラ「どうすればいいの?一体、どうしたら…」

 

コルル「レイラ…」

 

レイラ「わかってる、月の光から出した手も、あなた達には石に変わってない、普通の手に見えるのよね?これが、ゾフィスの幻覚だという事はわかった。でも…、でも、どうしようもないのよ!目の前が真っ暗になって心臓が止まりそうになる!おさえようがないのよ!!それに、私の本が燃えて魔界に帰っても、特別に私にかけられたゾフィスの暗示が解けてるかどうか…」

 

ビョンコ「何をしてるゲロ、レイラ!なぜガッシュ達を攻撃しないゲロ!お前が役に立たないのなら、オイラが!」

 

パティ「…黙りなさいよ、ビョンコ!」

 

 パティの怒りに満ちた顔にビョンコは怯えた。

 

パティ「あんた…、どこまで欲ばかり求める気なの…?グラブやコーラルQと違ってどれだけ悪い事をしてるのか自分でわからないの!?友達などの大切な人のために戦おうという心はないわけ!?」

 

ビョンコ「パ、パティだってわがままで欲張りで…」

 

パティ「私はあんたと違って美味しいケーキ食べ放題とガッシュちゃんや友達のどちらかをとらなきゃいけないという二択を迫られたらガッシュちゃんや友達の方をとるわ!あんたがレイラ達にしてきた事がどれだけ悪い事かわからないのなら、とっとと引っ込んでなさい!」

 

ガッシュ「(ウヌゥ…、最初から仲間になっておったらパティはこうも変わるとは…)」

 

レイラ「私、この月の光の外に出るわ…」

 

清麿「レイラ、無理に外に出たら」

 

パムーン「いや、止めるな。外に出るのだな?レイラ」

 

レイラ「ええ。あなた達を見てると、私も外に出ないともう何も進めないと思い始めたの。ありがとう、ガッシュ、パムーン、そして、私を説得してくれたみんな」

 

 レイラは月の光の外に出た。すると、レイラは石になったような感覚に襲われた。

 

ガッシュ「レイラ!」

 

チェリッシュ「(レイラ、その状態から再び立ち上がれるかどうかはレイラ次第よ…!)」

 

 外へ出たレイラの様子をガッシュ達はほとんどがパートナー共々もどかしそうに見ていたが、チェリッシュはニコルと共に落ち着いて見ていた。

 

レイラ「(体が固くなっていく…。重く、冷たくなって…、いや、違う!これは幻よ、幻覚なの!だから早く元の体に戻って!早く…)」

 

 しかし、その感覚は元に戻らなかった。

 

レイラ「(何で…何で元に戻らないの…?手が…足が…もう動かない…。千年前と同じように石に…いや…暗い…冷たい…いやぁあああ!!)」

 

 動かなくなってしばらくすると誰かの涙がレイラに落ちた。

 

レイラ「(何?温かい…ここだけ温かい…。いや、ここだけじゃない…手も温かい…誰かが握ってくれてる…?触れ合っているのもわかる…。鼓動も体の感触が元に戻っていく…。誰…?そこにいるのは…。ガッシュ?パムーン?他のみんな?それとも…)」

 

 レイラの手を握っていたのはアルベールだった。

 

レイラ「ア…アルベール…」

 

 アルベールの姿を見て、レイラはアルベールと共に過ごした日々を思い出していた。

 

レイラ「何よ…アルベール、私の声、届いていたじゃない」

 

ティオ「やったわ!レイラが目を覚ましたわよ!!」

 

恵「本当によかったわね、清麿君」

 

清麿「ああ。レイラは恐怖を乗り越える事ができた」

 

チェリッシュ「(よかったわね、レイラ。ゲス野郎の幻覚に打ち勝つ事ができて…)」

 

 ガッシュ達は大喜びし、チェリッシュも静かに笑っていた。

 

アポロ「一時はどうなるかと思ったけど、これでレイラの心の傷の件は一段落だね」

 

レイラ「ありがとう、アルベール。今度は私があなたを助ける番ね。みんな、気を引き締めて!この上で月の石を守っているのは」

 

ガッシュ「デモルトなのだな」

 

レイラ「話が早いわ。デモルトは千年前の魔物の中でも最強の魔物よ」

 

パティ「でも、昨日はパートナーが逃げたせいで本を燃やせなかったけど、ガッシュちゃんはそのデモルトに圧勝したのよ。だったら、今回も楽勝よ」

 

しおり「それに、こんなにも仲間がいるのよ。みんなで力を合わせればデモルトにもゾフィスにも勝てるわ」

 

パムーン「よし、月の石の光が差し込んでいる場所でコンディションを整えるぞ」

 

グラブ「月の石は壊さなければならないが、今はその回復させる力を逆に利用してやろう」

 

清麿「みんな、ベストコンディションで行くぞ!」

 

一同「おう!」

 

 一同は月の石の光を浴びてコンディションを整えた。

 

ニコル「ディオガ級以上の威力の術を使える魔物が3体、ギガノ級とディオガ級の中間の威力の術が最大威力の魔物が2体、こんなにも戦力が集まるなんてね」

 

パティ「これも全てガッシュちゃんの導きによるものよ!」

 

ウルル「(まぁ、否定はしないが…)」

 

リィエン「もう私達に敵はいないある。先に進んでデモルトとゾフィスをやっつけるある!」

 

清麿「ああ。それに、ナゾナゾ博士達の事も気になる」

 

 そのまま一同は先へ進もうとしたが、パムーンが待ったをかけた。

 

パムーン「待て!見えている階段からは上の部屋には進めない!」

 

ウマゴン「メ、メルメ!?」

 

サンビーム「では、どこに本当の階段があるんだ?」

 

パムーン「今からそこを開ける」

 

ランス「ファルガ!」

 

 部屋にある石像のうちの一つをパムーンが破壊すると、そこに階段があった。

 

コルル「階段が…」

 

レイラ「よく覚えていたわね、パムーン」

 

パムーン「当たり前だ。月の石の欠片を取りに行く時はいつもそこを通っていたからな」

 

清麿「さて、入口も見つかったから行くぞ、みんな!」

 

ビョンコ「待つゲロ!お前達が束になってかかってもデモルトには勝てないゲロ!帰るなら今ゲロ!」

 

パティ「さっきの話を聞いてなかったの?ガッシュちゃんはデモルトに圧勝したのよ。だから、デモルトなんて私達全員でかかれば瞬殺よ。そういうビョンコこそとっととここから逃げた方がいいんじゃない?」

 

コルル「私達は操られている人を救うために行かなきゃいけないの。私達を心配してくれてるかも知れないけど、それでも私達は行くよ」

 

ビョンコ「オ、オイラがお前達にそんな事するわけないゲロ!絶対に後悔するゲロ!お前達なんてデモルトにやられてしまえばいいゲロ!」

 

ガッシュ「早く来るのだぞ、ビョンコ」

 

ビョンコ「ゲ、ゲロ…」

 

 そのまま階段を登ろうとしたガッシュ達だったが、突如としてビームが飛んできた。

 

清麿「恵さん!」

 

恵「清麿君?」

 

 このままビームが進めば恵とティオに当たると判断した清麿はガッシュと共に恵とティオを突き飛ばした後、ビームに当たってしまった。

 

清麿「ぐあああっ!!」

 

ガッシュ「があああっ!!」

 

恵「清麿君!」

 

ティオ「ガッシュ!」

 

 ビームを受けた2人は石になってしまった。

 

ティオ「ど、どうなってるのよ…清麿とガッシュが石になってしまうなんて…」

 

???「ふふふ…、初めまして、とでも言うべきかな」

 

 ビームが飛んできた先からゴーレンが来た上、パートナーのモーリスも一緒にいた。

 

サンビーム「何なんだ、あの魔物は…」

 

ウォンレイ「今まで見た事もないぞ…!」

 

コルル「どうしたの?レイラ。あんなに怯えて…」

 

レイラ「…あいつはゴーレンよ…。私達千年前の魔物を石にした張本人…!」

 

 一同が見ている魔物がゴーレンだという事に一同は衝撃を受けた。

 

しおり「あいつが…レイラやパムーン達を石にした張本人…」

 

パティ「み、見間違いじゃないの…。本物がいたなんて…」

 

パムーン「見間違いなものか!あいつは間違いなく本物のゴーレンだ!あの姿は石にされて千年経っても瞳に焼き付いていやがる…」

 

恵「(アルムの言っていたゴーレンがいたというのは本当だったのね!)本当にゴーレンで間違いないのね?」

 

ゴーレン「いかにも。我こそはゴーレンだ。そして、隣にいるのはパートナーのモーリス(あの不意打ちで石にしたガッシュという奴、苗字があの男と同じベルである上に姿も似てる…恐らく…あの男の子供だな…)」

 

ティオ「レイラ達を石にした張本人のあんたは石になってないのにどうして千年経っても千年前の姿と変わらないのよ!」

 

ゴーレン「…石版にされていない?それは間違いだ。我はガッシュの父親とその仲間達との戦いでディオガ・ゴルゴジオを跳ね返されて石にされていた。それから千年経ち、ゾフィスが目覚めさせたのだ」

 

チェリッシュ「という事は、あんたはゾフィスの手下って事ね」

 

ゴーレン「手下?違うな。手下はゾフィスの方だ。ゾフィスはガッシュや雷帝、ブラゴに怯えて我を目覚めさせたが、我はパートナーが見つかってからすぐにゾフィスに反逆し、奴を石にして従わせて乗っ取ってやったのだよ」

 

レイラ「私達のトラウマに付け込んで押さえつけていたゾフィスが逆に石にされていたなんてね」

 

パムーン「まさに因果応報って奴だな」

 

恵「それよりも早く清麿君とガッシュ君を元に戻して!」

 

モーリス「そんな事をする必要はない。君も愛する男と一緒に私の芸術品になるんだ。本来なら、美しい女性だけを芸術品にするけど、君が高嶺清麿と愛し合っているから特別サービスで君達2人を芸術品にすると言ってるんだよ」

 

恵「(この人、話が通じない上に今まで会った魔物のパートナーよりも不気味過ぎるわ…!)」

 

レイラ「人間や魔物を石にする事のどこが芸術よ!石にされた苦しみをわからずにそんな事が平気で言えるわね!」

 

サンビーム「お前は美女を石にすると言ったが、男はどうなんだ!?」

 

モーリス「実を言うとね、私は人間も魔物も関係なく男が嫌いなんだ。カップルや夫婦ならまだしも、品のない男やジジイなんて私に従う奴以外は存在する価値さえない。ちなみに私がゴーレンと共にゾフィスに反逆したのもあんなバカな男の元にいるのが気に食わなくて追い落としたんだよ」

 

ウォンレイ「筋金入りに男が嫌いなのなら、どうして男を憎むようになった!?」

 

モーリス「ちょうどその説明もするよ。私はかつては芸術家だったが、素晴らしい作品を作っても誰も評価せず、あるジジイからはちっぽけな自己満足と言われたんだ。それ以来、私は以前から男が苦手だったのが嫌いになったんだよ」

 

しおり「それはあなたがそのおじいさんの言うちっぽけな自己満足に浸っているからそうなったのよ!」

 

ニコル「同情の余地はないわね」

 

モーリス「では、話が終わったところで女の子は全員私の芸術品になってもらおうか。もちろん、カップルならその男も一緒に芸術品になっていいよ」

 

パティ「冗談じゃないわよ!私の石像を作ってくれるのはともかく、幼気な女の子を石にしようだなんてどういう事よ!それに、愛しのガッシュちゃんを元に戻しなさいよ!」

 

ティオ「みんなでゴーレンをやっつけるわよ!」

 

アポロ「待つんだ!僕達は月の石も壊さないといけないんだ!このまま全員でゴーレンに向かったら勝てるかも知れないが、最悪の場合は全員石にされて全滅するというのもあり得る!」

 

パティ「じゃあ、どうすればいいのよ!」

 

グラブ「ここにいるメンバーが手分けしてゴーレンとの戦闘とデモルトとの戦闘、及び月の石の破壊を同時にこなすのが今の最善の手段だろう」

 

パムーン「だが、デモルトもゴーレンも強敵だ。メンバー分けはどうする?」

 

サンビーム「…ここに残るメンバーはティオ、ウォンレイ、チェリッシュ、パムーン、コーラルQだ。月の石を壊しに行くのはウマゴン、コルル、パティ、ロップス、レイラにする」

 

ウルル「どうして強い魔物をゴーレンとの戦いに?」

 

アポロ「ゴーレンの実力はまだわかっていない。念には念をって奴だろう。僕達は月の石を壊しに行く。みんなも気を付けてくれ!」

 

コルル「ティオも石にされないでね」

 

ティオ「当たり前よ!ガッシュを石にしたからにはけちょんけちょんにやっつけてやるわよ!」

 

パティ「後、絶対にガッシュちゃんを元に戻すのよ!」

 

 アポロは月の石を壊すメンバーを連れて上に向かった。残るメンバーはゴーレンと対峙した。ゴーレンを倒し、ガッシュと清麿を元に戻すために




これで今回の話は終わりです。
今回はレイラの話と同時にガッシュと清麿が石にされる展開にしています。
今小説ではガッシュが最初から強すぎるため、清麿が死亡する展開や最初からガッシュがいる状態で苦戦するという展開がやりづらく、死亡させないで一時離脱させる展開としてゴーレンによって石にされる流れにしました。
ちなみに、ギガノ・ゴルゴジオはネットやまるかじりブックでゴーレンの術を見て、ディオガ・ゴルゴジオとゴルゴジオがあるのなら、初級とディオガ級の中間のギガノ・ゴルゴジオがあってもおかしくないのではと思い、考えました。一応、ギガノ・ゴルゴジオはディオガ・ゴルゴジオと違ってただ石になるだけで失格扱いにはならないと設定しています。
次はデモルト戦とゴーレン戦を同時にやりますが、これまですぐ気絶したりして役に立たなかったビクトリームがようやく大活躍します。


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LEVEL37 唸れ、Vの一撃!

デボロ遺跡 内部

 アポロ達は先に月の石がある部屋へ向かっていた。

 

しおり「ガッシュ君と清麿君抜きでデモルトと戦うなんて…」

 

サンビーム「弱音を言っても仕方ない。こうなった以上、我々で月の石を破壊しなければならない」

 

コルル「キャンチョメ達はどうしてるのかな?」

 

アポロ「確かに気がかりだ。先に月の石がある部屋に来ているか、それとも敵にやられてしまったのか…」

 

パティ「案外、しぶとく生き残ってるんじゃない?」

 

ウルル「その可能性もない訳ではないですけど…」

 

???「ぶるぁああああっ!!!」

 

ウマゴン「メル?」

 

ロップス「かう?」

 

レイラ「この悲鳴はビクトリームね。何かあったのかしら?」

 

 月の石がある部屋に急ぎ、その部屋に到着するとボコボコにされたビクトリームとモヒカン・エース、そしてボロボロのフォルゴレ達がいた。

 

ロップス「かう~」

 

サンビーム「大丈夫か?」

 

ナゾナゾ博士「見ての通りボロボロじゃ…。デモルトの前ではヨポポ君では歯が立たず、ビクトリーム君は気絶しておる…」

 

アポロ「ボロボロだけど、何とか間に合ったみたいだね…」

 

コルル「あれっ?キッドがいない!」

 

しおり「まさか…」

 

ナゾナゾ博士「…今はそんな場合ではなかろう!」

 

デモルト「てめえら、あのマントのガキはどこに行った!?どこにいるのか言え!言わねえのなら、ぶっ潰してやる!!」

 

ウルル「デモルトは昨日、ガッシュにやられたのを相当根にもってるようですね…」

 

アポロ「敵がどう思ってようと関係ない。月の石を壊そう!」

 

 

 

 ティオ達はゴーレンと睨み合っていた。

 

リィエン「パムーンは前にもゴーレンと戦ったから何かゴーレンの戦い方とか癖はわかるあるか?」

 

パムーン「ゴーレンの術は絶対に喰らうな!ディオガ・ゴルゴジオはもちろん、ギガノ・ゴルゴジオでもさっきのガッシュと清麿がああなったみたいに石にできる!それに、ゴーレンは卑怯な手も使ってくる!誰かが引っかかりそうになったら絶対に止めろ!」

 

ウォンレイ「心得た!」

 

恵「グラブ、どうすれば清麿君とガッシュ君を元に戻せるの?」

 

グラブ「ゴーレンの術で石化したなら、さっきも言った特殊なフィルターをかけたライトがあれば元に戻せるが…」

 

ティオ「どうしたのよ!早く続きを言いなさい!」

 

コーラルQ「特殊なフィルターが付いたライトは手元にないピヨ」

 

グラブ「だから、そのライトがある場所へ取りに行く必要がある上にそのフィルターを懐中電灯に付ける作業もしなければならない。だから、俺はその部屋へ行くからそれまで持ち堪えてくれ」

 

ティオ「わかったわ。言ったからには絶対にガッシュと清麿を助けて!」

 

グラブ「ああ。行くぞ、コーラルQ!ディゴウ・ロボルク!」

 

 またもやコーラルQは奇妙な変形をし、バイクみたいな姿に変形してからグラブを乗せた。

 

コーラルQ「ライトのある部屋まで出発進行!」

 

 ライトのある部屋までコーラルQは突っ走っていった。

 

モーリス「ダメじゃないか、芸術品を勝手に元に戻そうとしちゃ。メドル」

 

ランス「ファルガ!」

 

 グラブを行かせまいとするゴーレンの方へビームが放たれた。

 

パムーン「(どうやら、ゴーレンには攻撃呪文が使えるみたいだな)ゴーレン、千年前のリベンジとでも行こうか」

 

ゴーレン「懲りない奴だな、パムーン。あの時の事が今でも昨日の事のように思えるぞ」

 

モーリス「どこまでも私の邪魔をするとはね。まぁいい、もう一組のカップルと女性4人を私の芸術品にするのを先にしよう」

 

チェリッシュ「1回見ただけでニコルが女だとなぜわかったの?」

 

モーリス「直感という奴だよ。まぁ、私はロリコンではないから幼い女の子の君はもっと大きく美しく成長してから来てほしかったんだけど、高嶺清麿と大海恵のおまけとして芸術品になりたまえ」

 

ティオ「おまけですって!?冗談じゃないわよ、おまけでも石になんかなりたくないわ!!」

 

モーリス「さ、まずは小さな女の子と大海恵から芸術品にしてあげよう。ギガノ・ゴルゴジオ!」

 

 ギガノ・ゴルゴジオがティオと恵に向かって放たれた。

 

恵「マ・セシルド!」

 

 即座にマ・セシルドで防御したが、ギガノ・ゴルゴジオを防いだマ・セシルドは石になってしまった。

 

ティオ「嘘でしょ…!」

 

恵「ティオの盾が…石になった…」

 

パムーン「ゴーレンの石化呪文は防御呪文で防ぐ事はできるが1回の発動につき1回しか防げない!もし、奴の石化呪文によって防御呪文を破られたら即死だと思うんだ!」

 

ティオ「わかったわ!」

 

ウォンレイ「こちらも行くぞ!」

 

リィエン「レドルク!」

 

 ウォンレイはゴーレンに急接近し、格闘戦を仕掛けた。

 

モーリス「ゴーレンに接近戦を挑むとは。ギガノ」

 

ランス「ファルガ!」

 

ニコル「コファル!」

 

 石化呪文を発動させようとしたモーリスだったが、パムーンとチェリッシュの攻撃に阻まれた。

 

パムーン「ランスがあの状態だから千年前のような調子が出せずに手伝わせて済まないな」

 

チェリッシュ「気にしなくていいのよ。それよりも、あの蛇馬をさっさと片付けて先に行かせたみんなと合流するわよ!」

 

 ウォンレイとゴーレンの格闘戦は互角だった。

 

ウォンレイ「流石は40体もの魔物を石にした千年前の魔物、一筋縄ではいかないか…」

 

ゴーレン「まさか、人間界の武術を習った魔物がいたとはな。予想以上の強さで驚いたぞ」

 

 ゴーレンがウォンレイ達に気を取られている隙にリィエンはモーリスから本を奪おうとした。

 

リィエン「ウォンレイ達に気を取られている今がチャンスある!」

 

 モーリスに蹴りを入れようとしたリィエンだったが、モーリスはそれを受け止め、リィエンとの格闘戦も少し押され気味ながら渡り合った。

 

リィエン「流石に玄宗ほどじゃないけど思ったよりも強いある!」

 

モーリス「まさか、これほどまでに格闘戦をこなせるパートナーがガッシュ達の仲間にいたとはね。腕っぷしの強い女性も嫌いじゃないよ」

 

リィエン「(この男にパンチを入れても気色悪さがぬぐえないある…!)」

 

 あまりにも不気味なモーリスにリィエンはある程度パンチやキックを打ち込んだ後、距離をとった。

 

ニコル「どうして距離をとったの?」

 

リィエン「あの男、とても嫌な感じがしたある…」

 

モーリス「今度はこちらから行くよ」

 

???「ちょっと待った~!」

 

 声と共にダニーとゴルドーが到着した。

 

モーリス「(あの忌まわしいジジイが来たか…!)」

 

ティオ「あんた、誰?」

 

ダニー「俺はダニー、ガッシュの友達だ。それと、隣にいるのはパートナーのゴルドーだ。それより、ガッシュは?」

 

恵「私とティオを庇って…石に…」

 

 石にされたガッシュと清麿の姿を見たダニーは拳を強く握りしめた。

 

ダニー「蛇馬が友達のガッシュを石にしたのか…?てめえだけは絶対に許せねえ!!」

 

 激しい怒りを露わにしたダニーはゴーレンに突っ込んでいった。

 

パムーン「待て、迂闊にゴーレンに近づくな!」

 

モーリス「バカだね、ギガノ・ゴルゴジオ!」

 

 ギガノ・ゴルゴジオを喰らってダニーは石になった。

 

パムーン「あのバカ!突っ込んだ挙句、石にされやがって…!」

 

ゴルドー「(いちかばちかじゃ…)ジオルク!」

 

 賭けでゴルドーはジオルクを発動させた。すると、石が割れてダニーが復活した。

 

モーリス「な、何っ!?石化解除呪文もなしで!」

 

ゴルドー「どうやら賭けに勝ったようじゃ」

 

チェリッシュ「さっきの呪文は何?」

 

ゴルドー「ダニーの呪文は瞬時にダメージを回復する事ができる。石化に効くかどうかはわからなかったから賭けで使ったが、どうやら石化にも効くようじゃ」

 

パムーン「だから突っ込んで行っても止めなかったのか。ダニー、そんな効果も知らずにバカだと言って済まなかった」

 

ダニー「気にする事じゃねえよ」

 

ゴルドー「それに久しぶりじゃな、モーリス」

 

モーリス「相変わらず忌まわしいジジイだ」

 

リィエン「おじいさんはあの男と知り合いあるか?」

 

ゴルドー「まぁ、そういう感じじゃ。あまりにも独りよがりな感覚じゃったからちょっと注意したんじゃが、全く直さないどころか、人間をコンクリート詰めにしようとして犯罪者に堕ちた挙句、魔物の力を使って下らん事をするようになったとはな」

 

恵「人間をコンクリート詰めにしようとしたですって!?」

 

ティオ「あんたはそれでも人間なの!?」

 

モーリス「ジジイと同じく君達も私の芸術がわからないようだね。ジジイはいずれ始末したいと思っていたが、まさか魔物を拾っていたとは。これでどちらが優れているのかが証明できる!」

 

ゴルドー「これも何かの縁じゃ。徹底的に懲らしめてやる必要があるようだ。行くぞ、ダニーボーイ!」

 

ダニー「ボーイは余計だっつ~の!」

 

 愚痴を言いつつもダニーはティオ達と共にゴーレンに向かっていった。

 

ビョンコ「どうしてガッシュの仲間はデモルトやあんな石にしてしまうヘビの化け物に怯えずに戦うゲロ…?」

 

アルヴィン「ビョンコ、お前はこれからどうしたいんじゃ?」

 

ビョンコ「ゾフィスは石にされてもうオイラには居場所なんてないゲロ…。デモルトもヘビの奴も化け物だし、アルヴィンは入れ歯を付け忘れて呪文を発音できないし、もうオイラはダメゲロ!」

 

アルヴィン「お前はカッコ悪いのう、ビョンコ。お前になぜワシが協力する気になったかわかるか?」

 

ビョンコ「ゲロ…」

 

 

 

 

回想

 それは、ビョンコがアルヴィンと出会ったばかりの頃だった。

 

ビョンコ「オイラはビョンコ、かっこいいビョンコだゲロ!一緒に魔界の王を決める戦いに参加するゲロ!」

 

アルヴィン「嫌じゃ」

 

ビョンコ「ゲ、ゲロゲ…」

 

アルヴィン『お前はとても落ち込んだ。そんなお前の姿を見て、ワシは…ワシは……頭の葉っぱが欲しくなった』

 

 アルヴィンがビョンコの頭の葉っぱを一つ千切った。そのせいでビョンコは大泣きした。

 

アルヴィン『お前は心底ショックを受けて泣いたな。ず~っと泣いた。ワシは眠れなくてとても困った』

 

 ビョンコが大泣きし続けたせいで眠れなくなったアルヴィンはビョンコのクッキーをあげた。

 

アルヴィン『仕方なくクッキーをやったらやっと泣き止んだな。だが、今度は…一晩中叫び続けたな』

 

 泣き止んだものの、今度はビョンコがクッキーを求め続けたせいでアルヴィンはまた眠れなくなった。

 

ビョンコ「クッキーくれゲロ、クッキーくれ!」

 

アルヴィン「おやつは3時と決まっておる!3時にならんとクッキーはやらん!」

 

アルヴィン『そしたらお前はしばらく考えた後…夢中になって何か作り始めた』

 

 ビョンコが作っていたものは3時と表示された時計を紙で作り、首にぶら下げた。

 

アルヴィン「やかましい!」

 

ビョンコ「3時だゲロ!クッキーくれゲロ!」

 

アルヴィン『その時じゃ…このカッコ悪いカエルをかっこよくしようと思ったのは。お前と一緒に戦おうと決心したのは…』

 

 

 

 

アルヴィン「そしたら何じゃ、ゾフィスなぞという悪党と組みおって…あんな自分より強い奴に怯える小悪党と手を組んでかっこいいわけなかろう!そんなカッコ悪いお前に誰が手を貸すか!」

 

ビョンコ「(その言葉…もしかしてアポロは最初からそれを知ってて…)」

 

 ビョンコはアポロが『悪い事をやめたらパートナーの呪文の発音ができるようにする』と言っていた事を思い出した。

 

ビョンコ「じゃ、じゃあデモルトや蛇の化け物と戦うのなら協力するゲロか?」

 

アルヴィン「勿論じゃ」

 

ビョンコ「なら、アポロに手配を…」

 

アルヴィン「あの坊主に頼まんでもよい。入れ歯なら持っとる。今戦えばお前は最高にかっこいいぞ」

 

ビョンコ「ゲロ…。アルヴィン、パティ達を助けに行くゲロ!」

 

 アルヴィンの言葉に改心したビョンコはアルヴィンと共に月の石がある部屋へ向かっ

た。

 

 

 

 同じ頃、グラブは千年前の魔物の封印を解いたライトがある部屋に到着し、そのライトから特殊なフィルターを剥がして懐中電灯に取り付ける作業を行っていた。

 

コーラルQ「グラブ、まだ作業は終わらないピヨ?」

 

グラブ「今、急いでいる!それに、あともう少しで完成するんだ!(早く完成させて清麿とガッシュを元に戻さないとみんなが危ない!あの禁断具が使われでもしたら…!)」

 

 

 

 その頃、パティ達はデモルトに苦戦していた。

 

アポロ「まずいな…、圧倒的に術の威力が高いガッシュが石になっている上、主力メンバーは全てゴーレンとの戦いに行っている。どうすれば…」

 

コルル「やっぱり…ガッシュがいないとダメなのかな…?」

 

パティ「弱気になっちゃダメよ、コルル!ガッシュちゃんだったらたとえ同じ状況になっても諦めないわ!私達も最後の最後まで戦い抜くのよ!」

 

ウルル「(パティ、ガッシュが石になってる上、こんな絶望的な状況なのにみんなを奮い立たせようとするなんて、随分成長したものだな…。これも、ガッシュと再会して特訓などを一緒にやったりした結果なのか…?)」

 

パティ「もう、こうなったらスオウ・ギアクルでデモルトごと月の石を壊すわよ!」

 

ウルル「ガッシュのテオザケル程の威力はないんですよ。それに、こちらの火力ではデモルトに大ダメージを与える事は…」

 

 火力という言葉にレイラはある事を閃いた。

 

レイラ「いるわ、ガッシュにも匹敵するぐらいの強力な術を使える魔物がこちらにも」

 

ナゾナゾ博士「その魔物は一体…?」

 

レイラ「その魔物はビクトリームよ。ビクトリームのチャーグル・イミスドンならデモルトごと月の石を破壊できるかも知れないわよ」

 

ジェム「まさか、あのビクトリームが強力な術を使える魔物だったなんて…」

 

レイラ「でも、その発動にはチャーグルという呪文を使わないといけないし、最大までチャージして撃たないとデモルトごと月の石を破壊する事はできないわよ。それに、チャージ中は隙だらけだし、千年前の魔物同士で攻撃呪文を使うには…」

 

アポロ「ダルモスの時のような要領なら大丈夫だと思う。一度呪文が発動すれば何とかなりそうだ」

 

フォルゴレ「チャージの隙に関してはキャンチョメの術で姿を隠して妨害されないようにしておく」

 

キャンチョメ「でも、華麗なるビクトリーム様が…」

 

フォルゴレ「途中で拾ったメロンがある。この匂いをビクトリーム様に嗅がせれば…」

 

 罠の作動に使われたメロンを手にフォルゴレはそのメロンの匂いをビクトリームに嗅がせた。

 

ビクトリーム「メロン…メロンの匂いだ!復活~~~!!」

 

 メロンの匂いによってビクトリームは復活した。

 

ナゾナゾ博士「早速だがデモルトを倒す作戦内容を伝える。この作戦はビクトリーム君が鍵だ」

 

ビクトリーム「ほう…この私が鍵だとはな。よかろう、作戦内容を伝えるのだ」

 

 頼りにされて機嫌が良くなったビクトリームは作戦内容を聞いてくれた。

 

ナゾナゾ博士「だが、デモルトから攻撃を逸らすための時間稼ぎは…」

 

???「オイラに任せるゲロ!」

 

 そこへ来たのはビョンコだった。

 

パティ「ビョンコ…」

 

ビョンコ「パティ…オイラが悪かったゲロ…。パティがオイラの仲間になるとは一言も言ってないのに裏切ったと勝手に思い込んでしまって…本当にごめんゲロ!」

 

パティ「今更過ぎた事を悔やんでも…」

 

アルヴィン「ビョンコはパティに仲間になってほしかったのは友達が欲しかったからだそうじゃ」

 

ウルル「だから、しつこく仲間になってくれと言っていたのか…」

 

ビョンコ「パティ、他の仲間と一緒に見てほしいゲロ…。オイラの…オイラのかっこいい姿を!」

 

 ビョンコはアルヴィンと共にデモルトに向かっていった。

 

しおり「待ちなさい、ビョンコ!デモルトはあなた1人で勝てる相手じゃないわ!」

 

コルル「ビョンコ、自分のやった事を反省したのね」

 

フォルゴレ「キャンチョメ、今のうちに華麗なるビクトリーム様を隠すぞ!」

 

キャンチョメ「うん!」

 

フォルゴレ「ポルク!」

 

 キャンチョメはポルクで周囲の景色に化け、ナゾナゾ博士と一番ボロボロになっているジェムとヨポポ、アルベールが操られている状態のため、同じ千年前の魔物相手に攻撃呪文が使えないレイラ、チャージを開始するビクトリームが見えないようにした。

 

ヴァイル「消えた?どうなってやがる!?」

 

アルヴィン「ギガロロ・ニュルルク!」

 

 ボロボロのパティ達に代わってビョンコがビクトリームのチャーグル・イミスドンのチャージ時間を稼ぐためにデモルトと戦った。

 

アルヴィン「ビョンコ、自分が犠牲になる覚悟で行くのじゃな?」

 

ビョンコ「そうでもしないと罪滅ぼしなんてできないゲロ…」

 

ビクトリーム「姿を見せられないのが残念だが、やむを得ないだろう。怒りのパワーを右腕に!」

 

モヒカン・エース「チャーグル!」

 

 ビクトリームは早速、チャージを始めた。

 

ナゾナゾ博士「これが…ビクトリーム君のチャージなのかね?レイラ君」

 

レイラ「そうよ。チャーグル・イミスドンを最大威力で撃つためには5回チャーグルを行わないといけないの」

 

ビクトリーム「我が強さを右肩に!」

 

モヒカン・エース「チャーグル!」

 

 チャージは第2段階に入った。

 

ビョンコ「(何としても月の石を壊さないといけないゲロ…。そのためにもビクトリームのチャージが終わるまでボロボロのみんなの代わりにオイラが時間稼ぎをしなきゃ…ガッシュやパティの友達になる事も、罪滅ぼしもできないゲロ!)」

 

アルヴィン「ラージア・ニュルセン!」

 

 ビョンコの奮戦とキャンチョメのポルクにより、デモルトもヴァイルも完全にビクトリームの事を忘れてビョンコに注意を向けた。

 

ビクトリーム「我が美しさを股間の紳士に!」

 

モヒカン・エース「チャーグル!」

 

 チャージも第3段階に移行したが、ビクトリームの股間が光った事にジェムは冷や汗を流した。

 

ヨポポ「ヨポイ?」

 

ジェム「(下品ね…)」

 

レイラ「後、2回でチャージは終わるわ」

 

ビクトリーム「ふははははっ!誇り高き心を左肩に!」

 

モヒカン・エース「チャーグル!」

 

 第4段階になり、チャージがあと1回で終わろうとしていた。

 

 

 

 一方、ティオ達とゴーレンの戦いは数の差もあり、ティオ達が優勢だった。

 

モーリス「メドルク!」

 

 ヘビの髪が伸び、ティオ達に襲い掛かった。

 

恵「セウシル!」

 

 しかし、全てティオの術で防がれた。

 

パムーン「次は俺達の番だ!」

 

ランス「ファルガ!」

 

ニコル「ゴウ・コファル!」

 

 四方八方からのファルガとゴウ・コファルを受けてゴーレンはふらついた。

 

リィエン「ゴウ・バウレン!」

 

 ウォンレイとダニーの攻撃でゴーレンは吹っ飛ばされた。

 

パムーン「ゴーレン、あの時はお前の卑劣な策に引っかかって負けたが、今回は俺達の勝ちのようだな」

 

モーリス「(流石に今のままだと5対1では不利か…)ゴーレン、あれを使うからここは一旦退くぞ」

 

ゴーレン「わかった」

 

ウォンレイ「リィエン、一気に勝負を決めるぞ!」

 

リィエン「はいある!ラオウ・ディ」

 

???「やめてよ~~!!」

 

 突如ティオ達には聞き覚えのある声がした。すると、ゴーレンの手にキッドが握られていた。

 

ティオ「嘘…どうしてキッドがここに?」

 

ダニー「あいつ、お前達の仲間か?」

 

リィエン「そうある」

 

ニコル「ナゾナゾ博士はどうしたの?」

 

キッド?「みんなゴーレンにやられて僕だけ人質にされてしまったんだ…」

 

モーリス「ふふふ、仲間が人質にされたよ。さぁ、どうするんだい?」

 

ウォンレイ「卑怯者め…!」

 

チェリッシュ「あの男はどこまでも性根が腐ってるようね…!」

 

パムーン「(いや、あいつは今までこの場にいなかった。だとするとあの時と同じ…)ランス!」

 

ランス「ファルガ!」

 

 急にキッドが人質にされている光景に見覚えがある事に気付いたパムーンは千年前と違って迷わずにキッドごとゴーレンを攻撃した。

 

ティオ「ちょっとパムーン、どうしてキッドごと攻撃したの!?」

 

パムーン「みんな惑わされるな!そもそもキッドとかいうお前の仲間は今までこの場にはいなかった!これが俺がさっき言ったゴーレンの卑怯な手だ!」

 

ゴーレン「我の髪を色んな幻覚や幻聴で惑わせる事ができるメドポルクをよく見破れたな」

 

パムーン「そう簡単に同じ手に引っかかってたまるか!」

 

ゴーレン「だが、こうなる事も想定済みだ」

 

 ファルガを受けたヘビの髪が突如として光り始め、その光はすぐに眩くなった。

 

ウォンレイ「くっ、光が強すぎて目が!」

 

パムーン「これは…衝撃で作動する閃光弾!?まさか、メドポルクを俺が破る事まで想定していたとは…!」

 

 光が収まった後、ティオ達は辺りを見回したが、ゴーレンとモーリスの姿はなかった。

 

ダニー「あいつら、俺達に怖気づいて逃げたのか?」

 

パムーン「そんな訳ないだろ。あいつは狡猾な奴だ。きっと、どこかで態勢をを立て直しているか、月の石を壊しに行った奴等を始末しに行ったに違いない」

 

恵「とりあえず、今はアポロさん達と合流しましょう!」

 

ウォンレイ「石にされたガッシュと清麿も連れて行こう」

 

 石にされたガッシュはダニーが、清麿の方はウォンレイが持つ事になり、一同は月の石がある部屋へ向かった。その一同の姿を隠し扉に隠れていたモーリスとゴーレンは見ていた。

 

ゴーレン「我々が上へ上がったと勘違いしているようだな」

 

モーリス「さて、私達はゾフィスに作らせた例の禁断具を取りに行くよ」

 

 

 

 

 一方、アポロ達の方はビョンコが時間を稼いでくれたおかげでビクトリームのチャージがあと1回になった。

 

ビクトリーム「Vの華麗な力を頂点に!」

 

モヒカン・エース「チャーグル!」

 

 とうとう最終チャージが終わり、チャーグル・イミスドンの発射準備は整った。

 

レイラ「ようやく最終チャージが終わったわね」

 

 ビョンコの奮闘にヴァイルとデモルトはイライラしていた。

 

デモルト「カエルがちょこまかとしやがって!!」

 

ヴァイル「一気に決めるぞ、ディオエムル・ゼモルク!」

 

ビョンコ「(まずいゲロ!このままだと当たる上にアルヴィンにまで…)」

 

アルヴィン「ワシを突き飛ばすのじゃ!」

 

 言われた通り、ビョンコはアルヴィンを横へ突き飛ばした。

 

アルヴィン「ギガノ・ニュシルド」

 

 突き飛ばされてから防御呪文を唱えた。デモルトの攻撃は防ぎ切れず、ビョンコの本は燃えてしまったが、アルヴィンとビョンコが大やけどするという事態は避けられた。吹っ飛ばされる際、ポルクが解除されてビクトリーム達が姿を現したのを見たビョンコは大喜びした。

 

パティ「ビョンコ!」

 

ヴァイル「ようやく1体か…」

 

ビョンコ「ゲロロロッ、お前達の負けゲロ!」

 

ヴァイル「何が俺達の負けだ!お前の本は燃えてるだろ!」

 

ビョンコ「オイラは初めからお前達の注意を引きつけるための囮ゲロ。もう月の石を壊す準備は整ったゲロ!」

 

ヴァイル「壊す準備だと!?まさか…!!」

 

 嫌な予感がしたヴァイルが見た方向には完全にチャージを終えたビクトリームの姿があった。それにヴァイルとデモルトは冷や汗をダラダラ垂らしていた。

 

ナゾナゾ博士「今じゃ、ビクトリーム君!ビョンコ君の作ったチャンスを無駄にするでない!」

 

ビクトリーム「モヒカンエース、月の石を壊してお前を解放するぞ!月の石よ、我がVの威光でロストしやがれぃ!!」

 

アポロ「僕のいる所に目掛けてチャーグル・イミスドンを撃つんだ!そうすれば例えデモルトが塞がっても発動できるはずだ!」

 

 ロップスのリグロンでアポロはビクトリームの視線から見て、月の石と重なるようにぶら下がった。

 

ビクトリーム「やれい、モヒカン・エース!」

 

モヒカン・エース「チャーグル・イミスドン!!」

 

 ビクトリームの最大呪文、チャーグル・イミスドンが月の石目掛けて放たれた。それを見たアポロは呪文を解いて降りた。

 

ヴァイル「月の石を壊されてたまるか!バウロ・ウルク!」

 

 慌ててデモルトはチャーグル・イミスドンの射線上に立ちはだかったが、チャーグル・イミスドンを防ぐ事はできず、そのまま吹っ飛ばされてその巨体とチャーグル・イミスドンの威力で月の石はあっけなく壊れてしまった。

 

デモルト「ルオオオオッ!!!」

 

 デモルトはチャーグル・イミスドンをまともに喰らって吹っ飛ばされた後、ボロボロになって落ちてきた。月の石が壊れた事で操られていた人間は全員倒れた。

 

コルル「やったよ!しおりねーちゃん!」

 

しおり「デモルトを倒せた上に月の石も壊せたから一石二鳥ね!」 

 

ジェム「あのデモルトをやっつけちゃうなんて……少しは見直したわよ、ビクトリーム」

 

ビクトリーム「私の手にかかればこんなものさ」

 

フォルゴレ「流石は華麗なるビクトリーム様、素晴らしい活躍でした!」

 

ビクトリーム「そうだな…、帰ったらメロンで宴だぁ!」

 

キャンチョメ「はは~~っ!」

 

サンビーム「確かにデモルトとの戦いのMVPはビクトリームで間違いないだろう」

 

アポロ「でも、MVPはもう1人いるよ」

 

 アポロの視線の先には消えかかっているビョンコと傍にいるパティがいた。

 

ビョンコ「オイラ達、勝ったゲロね…。パティ、アルヴィン、今のオイラはかっこよかったゲロ?」

 

アルヴィン「言うまでもなくかっこよかったぞ」

 

パティ「ガッシュちゃんには及ばないけど、私から見てもかっこよかったわよ」

 

ビョンコ「ゲロ…それよりパティ、オイラ、これでガッシュ達の仲間になれるゲロか?」

 

パティ「勿論よ…」

 

ビョンコ「へ、へへ…そしたらパティやガッシュ達も一緒に…魔界で遊ぶゲロ…。みんなで手を繋いで一緒に…」

 

 そう言ってビョンコは魔界に送還された。

 

パティ「ありがとう、ビョンコ…」

 

ナゾナゾ博士「この作戦の最大の功労者は間違いなくビョンコ君じゃ…」

 

ウルル「パティ、ビョンコと約束した以上、絶対に負けられないな…」

 

パティ「そうよ。悪い奴を王様になんかさせないわ…」

 

 ビョンコとの約束を果たすためにパティは改めて負けられないと心に誓ったのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回はデモルト戦とゴーレン戦を描きましたが、デモルト戦のデモルトへの決め手がチャーグル・イミスドンなのはデモルト戦の面々の中で最も強力な呪文が使えるのはビクトリームしかいなかったためです。
ゴーレンが言っていたあれは次の話で出てきます。
次の話はゴーレンがこの話で言っていたあれを使ってとんでもない事をします。さらに、次の話では恵が色んな意味で大怪我をするよりも大変な目に遭います。


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LEVEL38 悪夢の合体

デボロ遺跡

 石化を解くためのライト作りがようやく終わった。

 

コーラルQ「これでゴーレンに一泡吹かせてやれるピヨ!」

 

グラブ「行くぞ、コーラルQ!ディゴウ・ロボルク!」

 

 ライトを手に持ち、グラブはコーラルQと共に戦場へ急いだ。

 

 

 

 

 ビョンコの奮闘により時間を稼ぐ事ができたため、ビクトリームのチャーグル・イミスドンでデモルトを倒し、月の石を破壊する事に成功した。月の石が破壊された事でアルベールとモヒカン・エースは倒れた。

 

ウマゴン「メル?」

 

レイラ「大丈夫よ。アルベールとビクトリームのパートナーはようやく解放されたわ」

 

しおり「という事は、パムーンのパートナーも元に戻ったんじゃないかしら?」

 

サンビーム「それは十分に考えられる」

 

???「お~~い!」

 

 そう言ってると、ティオ達が来た。

 

ティオ「みんな、遅くなっちゃってごめん!」

 

恵「パムーンのパートナーが急に倒れちゃったからどうしたのかと思ったけど、月の石の破壊もできたようね」

 

ビクトリーム「いかにも。この私がいなければ月の石の破壊なんてできなかったのだからな」

 

パティ「あんたはただチャージして撃つだけだったでしょ?本当の功労者はあんたのチャージ時間を稼いでくれたビョンコよ」

 

ウォンレイ「ビョンコが協力してくれたのか」

 

パティ「もう魔界に帰っちゃったけどね…」

 

リィエン「でも、これで終わったある」

 

ニコル「ナゾナゾ博士、キッドは…?」

 

ナゾナゾ博士「…キッドなら、千年前の魔物と相討ちになって魔界に帰ったよ…」

 

チェリッシュ「そうだったのね…。コルルの悪い予感は的中していたわね…」

 

ダニー「もっと敵がいると思ってたのに、あんまりいなかったな…」

 

ゴルドー「わしらの到着が遅かったから他の奴等が倒したんじゃろう」

 

アポロ「まだ終わってはいないよ。デモルトは倒したけど、本を燃やさないといけないし、何よりゴーレンは倒せたのかい?」

 

パムーン「いや、奴は途中で俺達の目を眩ませてどこかへ行ってしまった。月の石を壊しに行った奴等を潰しに行ったのかと思ったのだが…そうじゃないとするとどこにいるのかわからん」

 

ニコル「じゃ、ゴーレンを探す前にまずはデモルトの本を燃やさないとね…」

 

 全員の視線がヴァイルに集中した。

 

ヴァイル「ちくしょう…ちくしょう!!てめえら、月の石をよくも壊しやがったな!!1人残らず生かしては帰さねえ!!」

 

チェリッシュ「悪党の遠吠えなんて聞く気はないわ!とっとと本を渡すか、私達にボコボコにされるか、好きな方を選びな!」

 

ヴァイル「このクソ女が調子に乗りやがって!あの呪文で…!」

 

???「しくじったようだね、ヴァイル」

 

 声と共にモーリスとゴーレンが現れた。

 

パムーン「ゴーレン、デモルトの本を燃やしてから探そうと思ってたが、どうやら手間が省けたようだな」

 

ナゾナゾ博士「ゴーレン?あのケンタウルスのような魔物がゴーレンだと言うのかね?」

 

レイラ「間違いないわ。あの魔物こそ、私達を石に変えた張本人、ゴーレンよ!」

 

ヴァイル「てめえ、何しに来やがった!?」

 

ゴーレン「奴等を倒すためだ」

 

モーリス「流石に私とゴーレンだけでは倒せそうにないから、デモルトの力が必要なんだ。この腕輪をデモルトに着けたまえ」

 

 すでにゴーレンが着けている腕輪と色は違うものの、同じようか模様の腕輪をモーリスからもらった。ヴァイルは早速倒れているデモルトに着けた。すると、ゴーレンとデモルトはお互いに引き寄せられて重なった途端、眩い光を放った。

 

ジェム「な、何が起こってるのよ!?」

 

サンビーム「とにかく、よくない事が起こりそうだ!」

 

 その予感通り、光が収まると下半身と頭はゴーレン、頭部以外の上半身はデモルトで胸にゴーレンにあった目の模様がある禍々しい魔物がその場にいた。

 

ティオ「な、何なのよ…あいつ…!」

 

コルル「デモルトとゴーレンが合体したみたい…」

 

パティ「あの腕輪、多分、魔合輪だと思うわ」

 

コルル「その魔合輪って何?」

 

パティ「パパやママから聞いた事があるけど、魔合輪は魔鏡などと並ぶ魔界の禁断具よ。着けた魔物を融合させる効果があるの」

 

恵「あの魔物、デモルトとゴーレンが合体したからゴモルトっていう名前になるんじゃないかしら?」

 

フォルゴレ「いやいや、それを言うならデモレンになるんじゃない?」

 

モーリス「この合体魔物は好きな名前で言っていいよ」

 

ヴァイル「デモルトとゴーレンが合体したのか!?とんでもなさそうな魔物になったじゃねえか!よし!」

 

 早速、呪文を唱えようとしたが、ヴァイルの手元に本はなかった。

 

ヴァイル「ほ、本がない!?どうなってやがる!?」

 

 ヴァイルがモーリスの方を見ると、モーリスの持っている本はゴーレンの本の色とデモルトの本の色が半分ずつになっていた。

 

ヴァイル「てめえ、何をした!?」

 

モーリス「言ったはずだよ。奴等を始末するのにデモルトの力が必要だって。別に君のような品のない男なんてせいぜい電池程度の価値しかないんだ。だから…私にとってジジイと並んで最も嫌いな品のない男のお前は消す」

 

ヴァイル「俺を消すだと…?俺もてめえのような気取った男は気に食わねえんだよ!!」

 

 モーリスの態度にキレたヴァイルはモーリスを殴った。しかし、殴られる際、モーリスはよけようともしなかった。

 

モーリス「……下等な男の中でも最も下劣な品のない男が私の顔に傷を付けたな!!貴様の命でその罪を償え!!」

 

 リィエンに殴られた時とは打って変わってヴァイルに殴られたモーリスはすさまじい怒りを露わにし、ヴァイルを殴り返した。凄まじい勢いのモーリスのパンチやキックにヴァイルは抵抗すらできず、殴り倒された後に顔をモーリスに踏まれるという屈辱的な目に遭った。

 

ヴァイル「ち、ちくしょう…こんなに腕っぷしが強かったなんて…。デモルト、俺を助けろ…!」

 

 しかし、ゴモルトは一切言う事を聞かず、拳をヴァイルに向けた。

 

ヴァイル「う、ウソだろ…!デモルト、俺の声が聞こえねえのか!?」

 

モーリス「この合体魔物、ゴモルトはゴーレンが主導権を握っているから貴様の言う事は一切聞かない。それにちょうどいい、デモルトの術が使えるのか試すのと、どれぐらいの威力の術で人間が死ぬのか貴様をその実験に使ってやろう!ディオエムル・ゼモルク!」

 

 ビョンコに対しても使われたディオエムル・ゼモルクを何のためらいもなくモーリスはヴァイル目掛けて発動させた。

 

ヴァイル「ちくしょう!!やっと一生懸命やろうと思ってた事を全て台無しにされた上、あんな気取った野郎にすべて奪われちまうなんて!!ちくしょう!!!」

 

 月の石を壊され、相方のデモルトをゴーレンと合体させられて全てを失ったヴァイルは炎の拳によって遠くまで殴り飛ばされてしまった。

 

モーリス「よく飛んだね。何mぐらい飛んだのかな?」

 

リィエン「何あるか……」

 

恵「男の人に殴られると豹変して…容赦なく魔物の術で攻撃した……」

 

モーリス「あ~すっきりした。男に顔を傷つけられると私自身、我を忘れて大暴れしてしまうのが悪い癖だ…。まぁ、あの男は気に入らなかったから徹底的に痛めつけて消すためにわざとその癖を利用したけどね」

 

ウォンレイ「お前は仲間を平気で裏切ったのか!?」

 

モーリス「あんな奴は最初から仲間だと思ってないよ。それに少し前にも言ったよね?私は男の中でも品のない男とジジイが特に嫌いだって。あんな品のない男なんて存在する価値なんてないんだよ」

 

サンビーム「どうやら、あの男は完全に邪悪な心しか持っていないようだな」

 

ゴルドー「第2ラウンド開始と行こうか。行くぞ、ダニーボーイ!」

 

ダニー「だから、ボーイは余計だっつ~の!」

 

ゴーレン「モーリス、例の呪文をテストしてみるぞ」

 

モーリス「わかったよ。ギルガドム・バルスルク!」

 

 昨日、ヴァイルが使った時と同じ鎧がゴモルトを覆った。

 

キャンチョメ「な、ななな、なんかやばいよ…!」

 

フォルゴレ「そうだよな…さっきより強そうになったし…」

 

ビクトリーム「起きるのだ、モヒカン・エース!」

 

パムーン「気を付けろ!バルスルクのついた呪文は禁呪だ!禁呪は使うと暴走状態になる上、普通の肉体強化呪文よりもパワーアップするぞ!」

 

パティ「じゃ、じゃあ…さっきより強くなってるの!?」

 

 そう言ってる間にゴモルトのパンチが飛んできた。

 

恵「チャージル・セシルドン!」

 

 ゴモルトのパンチはチャージル・セシルドンで防御された。

 

ゴモルト「まさか、これほどの防御呪文を習得した現代の魔物がいたとはな」

 

パムーン「何だと!?禁呪を使ったのになぜ理性を保っている!?」

 

モーリス「ゴーレンとデモルトを合体させたときに使った1対の禁断具のうち、ゴーレンに主導権を握る方を着けさせたから禁呪の副作用は全て主導権を持たないデモルトに押し付けたんだ。だから、ギルガドム・バルスルクは何のリスクもない強力な呪文と化したんだよ」

 

ナゾナゾ博士「まずいぞ…、禁呪のリスクがない以上、奴は弱点のない完璧な強敵じゃ…」

 

アポロ「とりあえず、恵とティオはボロボロのロップス達の回復を急いでくれ。パムーン達はパートナーを起こすんだ」

 

恵「わかったわ」

 

レイラ「それはさっきからやってるわよ。起きなさい、アルベール!」

 

チェリッシュ「月の石を壊しに行ったメンバーはキャンチョメ以外はボロボロでパムーン達のパートナーはまだ起きないとなると、今の時点でゴモルトと戦えるのは私とウォンレイとダニーしかいないわね…」

 

ダニー「弱音を吐いてる暇はないぜ!俺が奴の注意を引きつけるからその隙に攻撃だ!」

 

 ウォンレイ、チェリッシュ、ダニーの3人でゴモルトに戦いを挑んだ。ティオと恵はサイフォジオで仲間の傷を治していた。

 

恵「(早くみんなの傷を治してゴモルトとの戦いに加わらないと!)」

 

 恵とティオは術の発動中も横目でウォンレイ達がゴモルトと戦っているのを見ていた。

 

ティオ「今のままじゃ回復が間に合わない!もっと、もっと早くみんなを回復させる事ができたら…!!」

 

 ゴモルトに苦戦するウォンレイ達を見て、焦りを募らせるティオの思いに応えるかの如く、本が光った。

 

ティオ「新しい呪文?」

 

恵「そうみたいよ!ぶっつけ本番で試すわ!ギガノ・サイフォジオ!」

 

 新呪文を唱えると、サイフォジオと同じ天使の羽根が生えた剣が二つ出てきた。

 

ティオ「サイフォジオが二つ出てきた!」

 

 サイフォジオが二つ出てきたため、以前よりも早いスピードでパティ達の傷が治っていった。

 

アルヴィン「月の石とやらの欠片はわしらが大方回収した。それに、今は緊急時じゃし、月の石の欠片もたくさんあるから心の力を惜しむでないぞ!」

 

 一方、ウォンレイ達はゴモルトに苦戦していた。

 

リィエン「ガル・レドルク!」

 

 ゴモルトのパンチをかわしたウォンレイはガル・レドルクを喰らわせようとした。

 

ゴモルト「甘いな!」

 

 突如としてゴモルトの髪が伸び、ウォンレイを縛ってから放り投げた。

 

ウォンレイ「ぐあああっ!!」

 

ニコル「ガンズ・ゴウ・コファル!」

 

 今度はチェリッシュが攻撃したが、ゴモルトは全く意に介していなかった。

 

チェリッシュ「鎧も頑丈だからギガノ級以上の呪文でないと通じないようね…」

 

ウォンレイ「だが、他のみんながまだ戦えない以上、私達でやるしかない…!」

 

モーリス「結構強いね。でも、そんな程度じゃゴモルトに勝てないよ」

 

 ゴモルトは手を組んだ後、ウォンレイ達に振り下ろそうとしていた。

 

???「ギガノ・レイス!」

 

 だが、突如としてある攻撃が飛んできた。

 

リィエン「この攻撃は…?」

 

 その先にいたのはブラゴとシェリーだった。

 

ティオ「ブラゴ…!」

 

シェリー「ゴーレン!あなたを完膚無きにまで倒し、ココを元に戻すまでは地獄の果てまでも追い続けるわよ!!」

 

ブラゴ「外見が変わってるようだが、魔物同士を合体させる禁断具でも使ったのか?」

 

ゴモルト「ほう、魔合輪の事を知ってるとは。貴族か富豪の家の出身か?」

 

ブラゴ「そういうとこだな」

 

シェリー「御託はここまでよ、あなたを倒してココを元に戻してもらうわ!!」

 

ナゾナゾ博士「待つんだ!私達も」

 

シェリー「助けは不要よ。こいつは私とブラゴが倒す!」

 

パムーン「このバカ野郎!お前達はゴーレンの恐ろしさを知らんからそんな事が言えるんだ!意地を張ってないで俺達と共に戦うんだ!」

 

ブラゴ「群れてるてめえらは黙ってろ!喋るだけで戦いの邪魔だ!」

 

 共闘もせず、ブラゴはシェリーと共にゴモルトに向かっていった。

 

シェリー「ギガノ・レイス!」

 

 再びギガノ級の術をゴモルトにぶつけたが、ゴモルトはほとんどダメージを受けていなかった。

 

ゴモルト「効かんな。現代の魔界の王を決める戦いの優勝候補の実力はそんなものか?」

 

シェリー「ギガノ・レイスを喰らっても平気とはね」

 

ブラゴ「他の千年前のよりは手応えがあるな。こうでなくてはな!」

 

 ギガノ・レイスが効かずともブラゴは向かっていった。

 

シェリー「ディオガ・グラビドン!」

 

 ディオガ・グラビドンを受けたゴモルトは吹っ飛ばされた。

 

モーリス「流石はゾフィスが恐れる優勝候補の魔物だ。だが、これはどうかな?」

 

 ブラゴに押されるゴモルトを見てもモーリスは動じず、次の手を考えた。ゴモルトを押していたブラゴは一気に勝負を決めようとしていた。

 

ブラゴ「止めを刺すぞ、シェリー!」

 

シェリー「ええ!ディボルド」

 

???「やめて~~!!」

 

 突然の悲鳴にシェリーがゴモルトを見ると、そこにはゴモルトに掴まれているココの姿があった。

 

ココ「やめて、シェリー!今攻撃したら私も死んじゃう…」

 

シェリー「ココ?何でココがゴーレンに!?」

 

パムーン「騙されるな!ゴモルトが掴んでいるココとかいう奴は偽物だ!」

 

 パムーンからの警告も虚しく、ゴモルトの卑劣な手にまんまと引っかかったシェリーは思わず動きを止めてしまった。そこをゴモルトは逃さずにパンチを打ち込み、ブラゴとシェリーを吹っ飛ばした。

 

ブラゴ「てめえ、汚ねえ手を使いやがって!!」

 

ゴモルト「戦いは勝てばいいのだ。ガッシュといい、貴様といい、割とこんな手にすぐ引っかかるとは思わなかったぞ」

 

ブラゴ「おい、シェリー!反撃だ!」

 

 しかし、シェリーは答えなかった。ブラゴがシェリーの様子を見ると、シェリーは頭から大量の血を流して倒れていた。

 

モーリス「ダメじゃないか。彼女も私の芸術品にするんだから、女には加減して攻撃しないとダメだよ」

 

ゴモルト「すまない…。優勝候補といえど、人間がその様ではもうどうにもならないな。止めだ!」

 

キャンチョメ「そんな…ブラゴでもどうにもならないなんて…」

 

フォルゴレ「どうしたらいいんだ…」

 

モーリス「おや、まさかパルコ・フォルゴレがいたとは。堕落した上に魔物を拾っていたとはね」

 

しおり「フォルゴレさんを知ってるの?」

 

モーリス「知ってるよ。私をボコボコにしてくれた屈辱を与えた忌まわしい男としてね」

 

キャンチョメ「どういう事なんだい?」

 

モーリス「フォルゴレは元からこんな性格じゃなかったんだ。昔は私でも敵わない程強くて野蛮な荒くれ者だったんだよ。フォルゴレと一緒にいたのにそんな事も知らなかったのかい?」

 

キャンチョメ「う、嘘だ!!フォルゴレが昔はそんな性格だったなんて嘘だ!!フォルゴレは女の子にモテモテで無敵の戦士なんだ!不良なものか!」

 

フォルゴレ「キャンチョメ…」

 

 モーリスによって部分的に明かされたフォルゴレの過去に一同は驚き、一緒に生活しているキャンチョメは信じられなかった。

 

モーリス「真実を否定するとはね。フォルゴレも哀れだよ。あんな品のない男に堕落した上、こんな雑魚の魔物を引き当てるとは」

 

フォルゴレ「…キャンチョメをバカにしないでもらおうか。私とキャンチョメは高貴なる魂を認め合って友となった!そして、私は堕落などしていない!これでどうだ?ディカ・ポルク!」

 

 巨大なキャンチョメの幻が現れた。

 

ゴモルト「巨大化した?」

 

キャンチョメ「どうだ!?僕は強いんだぞ!」

 

ブラゴ「てめえら、俺達の邪魔をするんじゃねえ!」

 

ティオ「そういうあんたもパートナーがあの状態だったらどうにもならないでしょ!?さっさと治療を受けなさいよ!」

 

 ティオの言ってる事も事実なため、モーリスがキャンチョメに気を取られている間にブラゴは渋々シェリーを治療させる事にした。

 

モーリス「(巨大化する呪文など聞いた事がない。必ずからくりがあるはずだ…)」

 

 ディカ・ポルクを見ても冷静にモーリスは考え、辺りを見回すと、キャンチョメ本体がいた。

 

モーリス「どんな術を使うかと思えば、所詮は雑魚のようだね。やれ!」

 

 すぐにディカ・ポルクのからくりを見破ったモーリスはゴモルトに攻撃の指示を出し、ゴモルトはキャンチョメを踏みつぶそうとした。

 

フォルゴレ「すぐにディカ・ポルクのからくりに気付くなんて!」

 

キャンチョメ「うわああん!もうダメだ~!」

 

???「そう簡単にあきらめるのか?」

 

キャンチョメ「えっ?」

 

???A「ファルガ!」

 

???B「ミグロン!」

 

???C「マグルガ!」

 

 ビームがゴモルトに向けて発射され、ゴモルトは攻撃をやめた。

 

モーリス「さっきのビームは…」

 

 ビームが発射された方を見ると、そこには正気に戻ったパムーン達のパートナーとパムーン達がいた。

 

レイラ「いい出だしよ、アルベール」

 

ウォンレイ「もう大丈夫なのか?」

 

アルベール「ああ。それより待たせたな!俺達も加勢するぞ!」

 

チェリッシュ「遅いわよ」

 

ランス「遅れた分は後の活躍で取り戻すからね」

 

パムーン「ランスも出だしにしては上出来だ」

 

ビクトリーム「行くぞ、モヒカン・エース!私とお前の華麗なるコンビネーションをぉ奴に思い知らせてやろう!」

 

 ビクトリームの言葉にモヒカンエースは頷いた。

 

チェリッシュ「モヒカン・エースは全然変化がないけど…本当に洗脳は解けたの?」

 

ビクトリーム「ベリーシット!!モヒカン・エースがほとんど話さずとも、私とモヒカン・エースは心で繋がっている!さっきよりもパワーアップしてるのだぞ!!」

 

ニコル「いちいちそんなに怒らなくても…」

 

パティ「私達ももう治療は終わったから私達も加勢するわ!」

 

 ティオのギガノ・サイフォジオによる治療も終わってパティ達も加勢した。

 

リィエン「ブラゴのパートナーはどうある?」

 

ティオ「それが、傷は治ったんだけど、目を覚まさないのよ」

 

サンビーム「とにかく、今は私達でゴモルトを倒すしかない!」

 

レイラ「アルベール、最強呪文を使うわよ!ぶっつけ本番でやるけど準備はいい?」

 

アルベール「ああ!ミベルナ・マ・ミグロン!」

 

 ゴモルトの周りにたくさんの月が現れた。

 

レイラ「集中して、アル!この術は操られている心じゃ使えない難しい術なの!パムーンも連携を頼むわよ」

 

パムーン「ああ。ランスも落ち着いて術を使うんだ。俺も可能な限り発射角度などを調節する」

 

ランス&アルベール「ああ!」

 

レイラ「2、5、8、12、15、18、23!」

 

アルベール「ロール!」

 

 まず、レイラがゴモルト目掛けて月を操作した。

 

ゴモルト「当たるとまずそうだな…」

 

 前の戦いのデモルトと違い、ゴモルトは冷静に考えて月をかわしつづけた。途中でモーリスもゴモルトに飛び移ってレイラ達に狙われないようにした。

 

モーリス「これが最強呪文なのかい?火力はなさそうだね」

 

レイラ「さて、それはどうかしら?」

 

ランス「ファルガ!」

 

 かわしつづけているゴモルトを狙い、パムーンが飛ばした星からビームが発射されてそのビームがゴモルトに命中した。

 

ゴモルト「くっ!」

 

モヒカン・エース「マグルガ!」

 

 次は星からのビーム、そしてVのビームが当たった。そして、パティ達の攻撃も次々と放たれた。

 

パティ「私達も忘れてもらっては困るわ!」

 

チェリッシュ「乗せてくれて助かるわ、馬の坊や」

 

ウマゴン「メル!」

 

サンビーム「ウマゴンの機動性とチェリッシュの正確な射撃と威力を合わせればこんなものさ!」

 

 チェリッシュはウマゴンに乗せてもらって正確な射撃を行い、コルルはウォンレイやダニーと共にゴモルトに接近戦を挑んだ。

 

パムーン「(妙だな。パートナーは一切慌てる様子がない。何か隠し玉でもあるのか?)」

 

モーリス「禁呪を使ってもさすがにこんな大人数では手古摺るようだ。一気に勝負を着けるとしよう」

 

アポロ「ロップス、レイラと共に奴を拘束するぞ」

 

ロップス「かう!」

 

レイラ「わかったわ。1、3、9、15、20、22、24、26」

 

アルベール「コネクト!」

 

 月が光の糸で繋がれ、ゴモルトは絡めとられた。

 

アポロ「これはおまけだよ、ディノ・リグノオン!」

 

 さらにロップスの術でゴモルトは二重に拘束された。

 

レイラ「このまま転ばせてあげるわよ!」

 

モーリス「勝負はまだこれからだよ。ガンジャス・メドルク!」

 

サンビーム「!?ウマゴン!」

 

 突如としてアルベール達の背後に無数のヘビが地面から現れ、ウマゴンに乗っているサンビームとニコルとチェリッシュ以外のアルベール達パートナー勢とその近くにいたレイラ達を薙ぎ払った。アルベール達は術の操作に集中していたために急に地面からヘビが出てくる攻撃に不意を突かれてよける事さえできなかった。

 

ウォンレイ「レイラ、パムーン、みんな!」

 

ゴモルト「よそ見をしている場合か!」

 

 パートナーが吹っ飛ばされた事で拘束が解けたゴモルトはウォンレイ達を薙ぎ払った。

 

パムーン「まさか、まだこんな隠し玉があったとはな」

 

レイラ「禁呪を使っている間なのにどうしてゴーレンの呪文を?」

 

モーリス「奥の手はとっておくものだよ。禁断具の効果でデモルトの術が発動中の間でもゴーレンの術はいつでも出せるんだ。もっとも、心の力の消耗が激しいといったリスクはあるけどね」

 

 懐から月の石の欠片を出して心の力を回復させるモーリスのスーツの下にはビン詰めしてある月の石の欠片がたくさん用意されてあった。

 

アポロ「このリスクの解消法も編み出していたのか…!」

 

モーリス「当たり前だよ」

 

ダニー「それがどうしたってんだ!まだまだ終わりじゃねえ!」

 

モーリス「クソジジイの魔物よ、君はもう終わりなんだよ」

 

ダニー「何!?」

 

ゴモルト「お前のパートナーは我の手の内にある」

 

 よく見てみると、ゴルドーがゴモルトの髪に巻き付かれていた。

 

ダニー「いつの間に…!」

 

モーリス「余計な抵抗をするな、ジジイの魔物。抵抗すれば…ジジイの首がポキッと折れるぞ…。他の魔物も迂闊に攻撃すればジジイに当たる」

 

サンビーム「どこまでも卑劣な…!」

 

ダニー「くそっ…」

 

ゴルドー「何をしておるのだ、若造が!お前は友人のガッシュと共に千年前の魔物と戦うために来たはずだ!わしの事は気にせずに戦うのじゃ!」

 

モーリス「口の減らんジジイだ!命が惜しくないのか!?」

 

ゴルドー「ふん、強欲にまみれたバカタレには理解できんだろうな。わしが死んだ方がダニーボーイに枷にならんで済む。だからダニーボーイ、(気付くのじゃ、ダニー。グラブとやらが来ておるぞ…。もう少し時間を稼げばガッシュと清麿は復活する!)」

 

ダニー「ジジイ…(何だ、この音は…。もしかして…あいつが来ているのか…!)」

 

モーリス「言わせておけばどこまでも…!体の骨をバラバラにしてやる!!やれ!」

 

 ゴモルトは締め付けを強くしてゴルドーを絞め殺そうとした。それをダニーは止めようとしたが、ゴモルトに何度も薙ぎ払われた。

 

ダニー「……みんな、ジジイや俺の本にかまわずに攻撃しろ!」

 

パティ「ちょ、ちょっと、何を言ってるのよ!」

 

コルル「そんな事をしたらダニーは…!」

 

ゴルドー「ダニーの言う通りにするのじゃ!さもないと、取り返しがつかなくなるぞ!」

 

ダニー「(おい、ジジイ、ボーイが付いてないじゃねえか…!)」

 

モーリス「クソジジイが!もうこれで終わ」

 

ランス「ファルガ!」

 

 さらに締め付けを強くしようとした途端、ゴルドーを縛っているヘビの髪をパムーンはファルガで撃ち抜いた。その際にダニーの本に引火してしまった。

 

リィエン「レドルク!」

 

 ゴルドーが地面に叩きつけられる前にウォンレイがキャッチした。

 

ウォンレイ「大丈夫ですか?老人」

 

ゴルドー「そもそもお前さんがキャッチしてくれたから大した怪我自体ない。それよりも、ダニー、よくお前は自分の本が燃えてでもわしを助けすための指示を仲間にした。よくやったな…」

 

ダニー「そんなの、ジジイの命に比べれば王になれない事は大した事じゃないさ。それよりジジイ、ボーイが付いてねえじゃねえか…!」

 

ゴルドー「当り前じゃ。今のお前を誰がボーイと呼ぶか…」

 

ダニー「何だ…何でだよ…。魔界の王にもなれなかったのによ…何でこんなに嬉しいんだよ…」

 

ゴルドー「やりとげたからじゃ。お前は立派に仕事をやり遂げたんじゃ。お陰でグラブの到着が間に合ったからな。わしも嬉しいぞ、ダニー。我が息子よ…」

 

ダニー「ジジイ…ガッシュ…みんな…達者でな…」

 

 本が燃え尽き、ダニーは魔界へ帰った。

 

ウォンレイ「ダニー…、君は立派にやり遂げる事ができた…」

 

モーリス「…美しくない…。感動の別れは終わったかな?」

 

ゴルドー「外面は美しくても、中身は醜いものだな。わしらの希望はもう到着した」

 

 それと同時にグラブとコーラルQが到着した。

 

ティオ「コーラルQ」

 

コーラルQ「待たせて済まないピヨ!」

 

恵「ライトが完成したのね!早くガッシュ君と清麿君にそのライトを!」

 

グラブ「ああ!」

 

ゴモルト「我がそうさせるとでも思っているのか?」

 

 ゴモルトのパンチが飛んできたが、コーラルQはあっさりかわした。

 

コーラルQ「は~っはっは~っ!私にこんな攻撃は当たらないのだ!」

 

グラブ「あの術で奴の注意を引きつけるぞ!ガンシルド・ロブロン!」

 

 コーラルQは変形し、周囲にたくさんの盾が出現した。盾をゴモルトにぶつけつづけ、その隙にグラブは石にされた清麿とガッシュの方へ向かった。

 

ゴモルト「鬱陶しい術だ…ん?」

 

 ゴモルトとモーリスもグラブが清麿とガッシュの方へ向かっている事に気付いた。

 

モーリス「なるほど、そういう事か」

 

コーラルQ「しまった!奴等に作戦がバレてしまった!」

 

パティ「ガッシュちゃんを元に戻す邪魔はさせないわよ!」

 

 一同はグラブの邪魔をするゴモルトを足止めするために向かっていった。

 

モーリス「ふっふっふっ、そんな君達の様子を見てると希望の灯を消したくなってくるよ。それに、ゴモルトを足止めしたぐらいで止められはしない。ガンジャス・メドルク!」

 

 清麿とガッシュの方へ急ぐグラブの前に地面からヘビが出てきてグラブに襲い掛かった。

 

グラブ「ぐあああっ!!」

 

 ヘビはグラブの薙ぎ払った後、コーラルQの本を喰いちぎって燃やした。

 

コーラルQ「グラブ!」

 

ゴモルト「隙あり!」

 

 コーラルQがグラブに気を取られた隙にゴモルトはパンチでコーラルQを殴り飛ばした。

 

ティオ「そんな…せっかくここまで来たのに…」

 

モーリス「ふふふ、あ~っはっはっは~っ!希望を打ち砕くのは実に面白い。次はもう一つの私の最高の芸術品作りと行くか。やれ!」

 

 ゴモルトは一同目掛けてパンチを打ち込んだ。

 

ティオ「来たわよ!」

 

恵「チャージル」

 

モーリス「今だ!」

 

 パンチと共にゴモルトは髪を伸ばし、ティオと恵を縛り上げた。

 

ティオ&恵「きゃあああっ!!」

 

モーリス「ガンジャス・メドルク!」

 

 自分の元へ引き寄せた後、モーリスはガンジャス・メドルクで恵とティオが動けないように拘束した。

 

しおり「恵!」

 

コルル「ティオ!」

 

ゴモルト「よそ見をしている場合か!」

 

 一同は恵とティオを助けたくてもゴモルトが邪魔して助けられなかった。一方、薙ぎ払われて体を強く打ったグラブは這いずりながらも清麿とガッシュの方へ向かっていた。

 

グラブ「動け…動いてくれ、俺の体…。今動かないと、清麿とガッシュが…!」

 

コーラルQ「本は燃えてしまったが、私は最後の最後までグラブを支えるピヨ」

 

 消えそうな状態ながらもコーラルQはグラブを押し、グラブも必死に這いずって清麿とガッシュの元へ向かっていた。

 

グラブ「なぁ、コーラルQ、お前が消えたら俺は…俺はどうすればいいんだ…?」

 

コーラルQ「グラブも周りのみんなと友達になればいいピヨ。どう友達を作ればいいのかもピヨ麿に聞けば何とかなると思うピヨ」

 

グラブ「そうかも…知れないな…」

 

 石にされた清麿とガッシュが目前に迫った時にコーラルQの本は燃え尽き、コーラルQは魔界に帰り、グラブはライトの電源をつけた時に意識を失った。落としたライトはたまたま清麿の方を向き、石板にされた魔物の封印を解いた光が清麿に当たった。

 

 

 一方、恵とティオを拘束したモーリスは上機嫌になっていた。

 

ティオ「ちょっと、放しなさいよ!」

 

モーリス「少し黙っていてくれないかい?あんまり騒いだら品性が台無しだ。さて、現代のヴィーナスに相応しい君を今のまま芸術品にしてもそんな服では美しさを損ねてしまう。せめて、ヴィーナスのような姿にしてあげよう」

 

 モーリスはガンジャス・メドルクで拘束している恵に近寄り、恵の服を脱がし始めた。

 

恵「嫌…嫌!やめて!放して!」

 

モーリス「ふふふ、もうすぐ君は愛する男と共に私の芸術品になるんだ。その美しい体を晒さないと最高の芸術品にならないよ」

 

 恵の服を脱がすモーリスの下劣な行いに一同は怒りがたまっていた。

 

レイラ「この男、千年前のゴーレンのパートナーよりもさらに下劣で卑劣よ!」

 

パムーン「それだけじゃない、奴は戦力の要を確実に潰している。ガッシュと清麿を石にしたのも、あの2人への仕打ちも全て奴の欲望を満たしつつ、確実に戦力をそぎ落とす頭脳的な作戦だ!」

 

リィエン「お前のような女の子を平気で裸にしようとする男は許さないある!!」

 

モーリス「心配しなくていいよ。大海恵を芸術品にしたら次は君達も芸術品にするからね。ゴモルトもあまり彼女達を傷つけて美しさを損ねないように力加減を頼むよ」

 

ゴモルト「心得た」

 

 ゴモルトにパムーン達の足止めを行わせ、モーリスは恵の服を脱がすのを再開し、しばらく経つ頃にはもう恵は上着のボタンを全て外され、下着も外されて胸が露わになっていた。抵抗する事もできず、愛する清麿は石にされたままという絶望的な状況に恵は涙を流していた。

 

恵「(助けて、清麿君…)」

 

モーリス「全ての希望を打ち砕かれて絶望している君もまた美しい。もうすぐ愛しの男とずっと傍にいる事ができるよ」

 

ティオ「何がずっと傍にいる事ができるですって!?男嫌いで女をモノとしか思っていないあんたは最低最悪の人間よ!」

 

モーリス「どう騒ごうとも私の勝利は確定したも同然だ。他の奴等はじきにゴモルトに敗れ、その中の女性はみんな私の芸術品にな」

 

???「そんなてめえの腐りきった野望は俺達が跡形もなく打ち砕いてやる!!」

 

ティオ「この声は…」

 

モーリス「ど、どこだ、どこにいる!?」

 

 突然の出来事の後、モーリスは何者かに思いっきり殴られた。そして、もう1人の何者かは電撃の剣で恵とティオを拘束しているヘビを地面から根こそぎにして斬った。拘束から解放された恵はモーリスを殴った男に抱えられた。

 

ティオ「恵、清麿とガッシュが復活したわ!」

 

恵「ええ、間違いなく清麿君とガッシュ君よ!」

 

ガッシュ「遅れて済まぬのだ…!」

 

 その2人は清麿とガッシュであった。




これで今回の話は終わりです。
今回はゴーレンがデモルトと合体して恵達に襲い掛かる話ですが、この展開にしたのはゴーレンの強さはパムーンと互角ぐらいでいくら卑劣な手を使っても十数人もいるガッシュ達と渡り合うのは難しいと考え、デモルトと合体してパワーアップするという展開にしました。
ギガノ・サイフォジオはシンがあるならその中間のディオガやギガノがあってもおかしくないと考えたためです。
ヴァイルを平気で切り捨て、卑劣な戦法でパムーン達を追い詰め、恵を脱がしたりと変態ゲス男ぶりを見せつけているモーリスですが、ガッシュペアの復活により次の話で天罰が下ります。さらに泣きっ面に蜂のようにある魔物からの襲撃も受けます。


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LEVEL39 ゴーレンの最後

デボロ遺跡 

 グラブの執念により、清麿とガッシュは復活した。

 

ティオ「清麿、ガッシュ、本当に元に戻ったのね!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

清麿「ああ。グラブが俺とガッシュを解放してくれた」

 

恵「…清麿君!!」

 

 愛する清麿が復活した事で恵は涙を流し、清麿に抱き付いた。

 

清麿「恵さん?」

 

恵「私、あのゴーレンのパートナーに怖い思いをさせられたから清麿君が元に戻ってくれてとても嬉しいの!」

 

清麿「俺も恵さんやみんなが無事でよかったよ」

 

 いい雰囲気になっていたが、モーリスによって恵の服はボタンを全て外された上、下着も外されて胸が露わになっているのが清麿の視線に入った。恵の胸を見た清麿は思わず我に返って顔を赤くした。

 

清麿「恵さん、服…」

 

恵「えっ…?」

 

 清麿が元に戻った事で嬉しくなっていた恵も胸や下着が露わになっているのに気付き、顔を真っ赤にした。

 

恵「……(また清麿君に胸を見られたし、今度は私のブラも見られちゃった…)」

 

清麿「(恵さんの裸はいつ見ても綺麗すぎる…。それに恵さんの下着、初めて見た…。下着の色が薄い色だったなんて……)」

 

ガッシュ「2人共どうして顔が赤いのだ?」

 

ティオ「ちょっとガッシュ、見ちゃダメ!!」

 

 顔を赤くしてる2人の事が気になるガッシュの目をティオは塞いだ。その後、恵は下着をしっかり着直した上で服のボタンをしっかり閉じた。

 

パムーン「復活してよかったな、ガッシュ」

 

ガッシュ「ウヌ(じじ殿とグラブがいるのにダニーとコーラルQがいないという事は…2人は私と清麿を元に戻すために戦って魔界に帰ったのか…)」

 

パティ「私、どんなにボロボロになってもガッシュちゃんがいれば戦えるわ!」

 

ウマゴン「メルメルメ~!」

 

チェリッシュ「坊やが復活したからにはへばってられないわね!」

 

 ダニーとコーラルQが魔界に帰ったのをガッシュは声に出さずに悟った。ガッシュの復活に味方の魔物は奮い立った。

 

ティオ「さっきの剣、ガッシュの新しい術なの?」

 

清麿「それは」

 

モーリス「貴様、私にとって下劣で嫌いな男だが、温情で芸術品にしたのに私を殴ったな!男の分際で図に乗るな!!こうなればここにいる男共は皆殺しだ!!」

 

 清麿に殴られた事でモーリスは逆上した。

 

ティオ「何が温情よ!恵を裸にしようとしたあんたこそ下劣じゃない!」

 

清麿「あいつがゴーレンのパートナーか…!」

 

ゴルドー「あれこそがあの男の本性じゃ。普段は紳士ぶっておるが、男に殴られるとその醜く下劣な本性を露わにする」

 

恵「それに、ゴーレンはデモルトと合体しているからさらに強力になっているわ」

 

 モーリスと対峙した清麿は鬼と化していた。いつもと異なり、角は6本に増えていて肌の色や手、足まで鬼になっている他、瞳が螺旋状になっていた。

 

恵「き、清麿君…」

 

鬼麿「仲間を傷つけ、恵さんを脱がせたてめえは絶対に許さねえ!!行くぞ、ガッシュ!」

 

ガッシュ「ウ、ウヌ…!」

 

モーリス「許さないだと!?それはこっちのセリフだ!」

 

鬼麿「ザケル!ザケル!ザケル!ザケルガ!ザケル!ザケル!テオザケル!」

 

 ゴモルトは連続で強力なガッシュの攻撃を受けた。

 

ゴモルト「ぐほっ…!」

 

モーリス「何をしている、ゴモルト!」

 

ゴモルト「終わったか…?」

 

 鬼麿は息継ぎをしていた。

 

ゴモルト「(あの男、息継ぎしている…!)」

 

鬼麿「ザケル!ザケルガ!ザケル!ザケルガ!ザケルガ!テオザケル!」

 

ゴモルト「ぐほっ、がはっ…!」

 

鬼麿「恵さん、俺にギガノ・サイフォジオを!」

 

恵「(ギガノ・サイフォジオが出た時はまだ石になっていたのにどうして…?)え、ええ!ギガノ・サイフォジオ!」

 

 ギガノ・サイフォジオで清麿は心の力を回復させた。

 

ゴモルト「まだ終わらないのか!?」

 

鬼麿「ザケル!ザケルガ!ザケル!ザケルガ!テオザケル!テオザケル!」

 

 中級呪文連発でゴモルトは倒れてしまった。その後、鬼麿は元に戻り、ゴルドーやアルヴィンが持っていた月の石の欠片で心の力を回復させた。

 

モーリス「おのれ!!まだ終わっていないぞ!!」

 

 モーリスは持っていた月の石でゴモルトを回復させてから、自身の心の力を回復させた。

 

ゴモルト「モーリス、奴等は強敵だ。頭の血を下げろ」

 

モーリス「あんな下等な男に殴られて頭の血を下げられるか!こうなったら強力な攻撃を連続で叩き込んでやる!!ディオガ・メドルク!」

 

 ゴモルトの無数のヘビの頭髪が巨大化して伸び、清麿とガッシュに迫った。

 

清麿「第11の術、ブレールド・ディラス・ザケルガ!」

 

 落雷がガッシュ目掛けて落ち、ゼオンのソルド・ザケルガとは違う形の雷の剣が形成された。その後、清麿はガッシュにある指示を出した。

 

ティオ「やっぱりあの雷の剣はガッシュの新しい呪文だったのね!」

 

モーリス「そんなちっぽけな剣で止められると思うな!」

 

清麿「ストーム!」

 

 清麿がストームと叫んでガッシュが剣を振るうと、電撃を纏った衝撃波が放たれてヘビを切り刻みながらゴモルトの鎧のあちこちにヒビを入れて吹っ飛ばした。

 

モーリス「何っ!?ゴモルトのディオガ級の呪文が!」

 

ゴモルト「ぐあああっ!!」

 

ガッシュ「(やっぱりこの呪文はレイラの呪文に似てるのだ)」

 

 

 

回想

清麿「いいか、ガッシュ。ブレールド・ディラス・ザケルガはガッシュが話してくれたゼオンの呪文、ソルド・ザケルガに似ているが、ソルド・ザケルガと違ってお前が振るう時に俺がストーム、スピア、ラージ、リバースの4つのうちのいずれかを言えばそれに応じた追加攻撃ができるんだ。この術を使いこなせるかは俺とガッシュの呼吸を合わせられるかにかかっている」

 

ガッシュ「その新しい私の術はパートナーと息を合わせないといけない所がレイラのミベルナ・マ・ミグロンに似ておるのう」

 

清麿「とにかく、俺の指示をしっかりこなすんだ。それに、この術はラウザルクと同じようにガッシュは気絶しない」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

 

 

清麿「スピア!」

 

 次は槍状の電撃が剣から放たれた。

 

モーリス「ギガノ・ゴルシルド!」

 

 頑丈な石の盾で防御しようとしたが、あっさり貫通されてダメージを受けた。

 

清麿「ラージ!」

 

 今度は剣が巨大化し、ガッシュは飛び上がってから振り下ろした。凄まじい電撃の剣をゴモルトは受け止められずにまともに喰らった。

 

レイラ「あのガッシュの雷の剣の術、パートナーと呼吸を合わせないといけない所がミベルナ・マ・ミグロンに似てるわ」

 

サンビーム「確かにあの術は扱いの難易度はミベルナ・マ・ミグロンに比べると低いようだが、術の力を100%引き出すには難易度が高い事に変わりはない」

 

パムーン「呼吸を合わせる点はガッシュと清麿は既にクリアしている。だが…、まだ使いこなす練習はおろか、初めて使ったのになぜあんなに使いこなせるんだ?俺でも初めて出た呪文をあんなには使いこなせないぞ」

 

ナゾナゾ博士「ついに清麿君はアンサー・トーカーを本格的に使って戦って居るようじゃ」

 

ランス「アンサー・トーカー?」

 

恵「それって、何なのですか?」

 

ナゾナゾ博士「『どうすればよけられるか』、『どうすれば攻撃を当てる事ができるのか』などといった答えを瞬時に出せる者の事だ。その力を使っているからこそ、清麿君は初めて出た術の内容を使う前から瞬時に理解し、使いこなしておるのだ」

 

アルベール「魔物との呼吸とアンサー・トーカーの二つで初めて使う術をあんなに使いこなしているのか」

 

アポロ「僕達も見てるばかりじゃなくて清麿達と一緒にゴモルトを倒してこの戦いを終わらせよう!」

 

 ゴモルトはガッシュに格闘戦を挑んだ。

 

ゴモルト「禁呪を使った我のパワーを思い知れ!」

 

 ゴモルトのパンチをガッシュは軽々とかわした。

 

清麿「気を抜くな、ガッシュ!今から来る攻撃は二段攻撃だ!ヘビの髪にも注意してよけろ!」

 

 清麿の言う通り、ゴモルトはパンチとヘビの髪で攻撃するという完全回避を難しくした二段構えの攻撃を行った。ガッシュは清麿の指示通りにパンチとヘビの髪両方に注意してよけた。

 

モーリス「くそっ、なぜ奴はこの二段攻撃を読まれた!?ガッシュのパートナーは予知能力があるとでもいうのか!?」

 

 実際はアンサー・トーカーにより、どうすればいいのかの答えが出ているのだが、モーリスには予知能力としか思えなかった。

 

モーリス「だったら、回避不能の攻撃をしてやる!!ガンジャス・メドルク」

 

 地面からたくさんのヘビが出てきた。

 

清麿「みんな、ヘビを一掃するんだ!」

 

ジェム「そんなヘビなんかに近寄られたくないわ!キロロ・ミケルガ」

 

しおり「ゼルク!」

 

ウルル「アクロウク!」

 

サンビーム「ゴウ・シュドルク!」

 

 ヨポポはキロロ・ミケルガで、パティとコルルは鋭い爪でヘビの髪を切り刻み、ウマゴンは素早い動きと角を使ってヘビの髪を貫いていった。

 

ヨポポ「ヨポポイ!」

 

コルル「ぜりゃりゃりゃっ!!」

 

パティ「ラアアアッ!!こんな気色悪い髪でガッシュちゃんを縛らせはしないわよ!!」

 

ランス「デーム・ファルガ!」

 

 ダメ押しとしてデーム・ファルガを盾代わりにしてゴモルトのヘビの攻撃を防いだ。

 

パムーン「俺達を忘れていたようだな、ゴモルト!」

 

清麿「パムーンとレイラは奴の動きを封じてくれ!できるな!?」

 

パムーン「任せろ!」

 

レイラ「アル、パムーン、私達のコンビネーション、夜空の舞で行くわよ!」

 

しおり「夜空の舞?」

 

コルル「どうしてコンビネーションの名前をそんな風に?」

 

キャンチョメ「きっと、夜空に輝く星と月からとったんだよ」

 

ランス「その通りだよ」

 

アルベール「ミベルナ・マ・ミグロン!」

 

 再びレイラはパムーンとの連携をとった。

 

レイラ「3、5、9、13、15、18!」

 

アルベール「ロール!」

 

 月達はゴモルトに迫り、ゴモルトは月達をかわしていった。

 

ランス「ファルガ!」

 

 そこへ、パムーンの星が接近し、ゴモルトが避けた際の隙を突いてビームを発射した。それにはゴモルトは避けられずに喰らってしまった。

 

ビクトリーム「私も忘れるな!」

 

モヒカン・エース「マグル・ヨーヨー!」

 

ゴモルト「ぐはっ!!」

 

 ヨーヨーを受けてゴモルトは思わずふらついた。

 

チェリッシュ「隙が出来たわよ!」

 

ウォンレイ「強力な術をぶつけるぞ!」

 

ニコル「ディオガ・コファルドン!」

 

リィエン「ラオウ・ディバウレン!」

 

 遺跡に突入した現代の魔物の中で火力が高い2人の最大呪文をぶつけてもふらふらではあるが、ゴモルトはまだ立っていた。

 

チェリッシュ「流石にディオガ級の術1発とディオガ級とギガノ級の中間の威力の術1発だけでは倒れそうにないわね。もう1発ディオガ級の呪文を撃ち込めば」

 

???「ディオガ・グラビドン!」

 

 突如として放たれたディオガ級の呪文を受けてゴモルトは倒れ込んだ。その術を放ったのはブラゴとシェリーだった。

 

ブラゴ「あの蛇野郎だけは生かしちゃおけねえ!」

 

シェリー「さっきはよくもやってくれたわね!ココの幻覚を見せて騙し討ちをしたあなたはゾフィス以上の最低最悪の魔物よ!!私の受けた痛みを数百倍にして返してあげるわ!」

 

キャンチョメ「(今の状況でブラゴとブラゴのパートナーが復活したのはよかったけど…僕は活躍できそうにないな……)」

 

モーリス「ええいっ、もう完全に頭に来たぞ!!こうなればお前ら全員石になってしまえ!!ディオガ・ゴルゴジオ!!」

 

 完全に怒り狂ったモーリスは遂にゴーレンの最大呪文を使った。

 

清麿「恵さん!ティオ!」

 

ティオ「オッケー!」

 

恵「チャージル・セシルドン!」

 

 ディオガ・ゴルゴジオとチャージル・セシルドンが競り合ったが、ティオの思いにより、盾の石化した部分が元に戻っていった。

 

ゴモルト「そんなバカな!我が最強呪文を受け止めているのに盾の石化が解除されているだと!?」

 

 ディオガ・ゴルゴジオを防ぎ切る事に成功した。

 

モーリス「何っ!?ゴーレンの最大呪文を防いだだと!?」

 

ゴモルト「おのれ!だが、パワーは我の方が上だ!」

 

 完全にヤケになったゴモルトはパワーでガッシュ達を叩き潰そうとした。

 

パムーン「ガッシュのバオウで止めを刺すために奴の動きを封じるぞ!ランス!」

 

ランス「エクセレス・ファルガ!」

 

清麿「第12の術、エクセレス・ザケルガ!」

 

 エクセレス・ファルガとガッシュの新しい術、エクセレス・ザケルガがゴモルトに直撃し、ゴモルトは倒れ込んだ。

 

パムーン「まさか、俺のエクセレス・ファルガと似たような術を覚えるとはな、ガッシュ」

 

ガッシュ「私も予想外だったのだ」

 

モーリス「まだ動けるはずだ、ゴモルト!」

 

ゴモルト「まだだ…。今度こそ我のパワーで」

 

アポロ「ディノ・リグノオン!」

 

レイラ「オール!」

 

アルベール「コネクト!&、ハーベスト!」

 

 またしてもゴモルトは二重の拘束を受けた。

 

ゴモルト「こんなもの、我のパワーで!」

 

シェリー「バベルガ・グラビドン!!」

 

 次はすさまじい重力をかけられてゴモルトは完全に動けなくなった。

 

ゴモルト「ぐあああっ!体が全く動かない!!」

 

清麿「シェリー!」

 

シェリー「本当だったら、私達がとどめを刺したいけど、戦っている相手はゾフィスではないからとどめは赤い本の子に任せるわ。私達が押さえるから早くあの最低最悪の魔物に止めを刺しなさい!」

 

清麿「わかった!」

 

モーリス「なぜだ!?なぜゴーレンがデモルトと合体した上で禁呪を使ってもあんな奴等に押されているんだ!?」

 

清麿「他の魔物と無理矢理合体して得た力では俺達の人間と魔物、そして仲間同士の絆が生み出す力には一切勝てはしない!」

 

恵「自分とパートナーの魔物以外の全ての人や魔物を自分の欲望を満たす道具としか思わないあなたにそれは絶対にわからない!」

 

清麿「喰らえ!バオウ・ザケルガ!!」

 

 恵とティオ、コルル、パムーン、ブラゴ、シェリー、リィエン以外はバオウを見た事がなかったため、バオウの凄まじい大きさと迫力に驚いていた。

 

パティ「あ、あれがガッシュちゃんの最大呪文!!?」

 

しおり「でかすぎるわ!!」

 

キャンチョメ「(ガッシュ…さっきの呪文だけじゃなくてこんなに強力な呪文まで使えるなんて……)」

 

モーリス「そ、そんなバカな!!私の、私の夢が、私の最高の芸術が!!!」

 

ゴルドー「バカタレが。お前の醜い自己満足の芸術はガッシュ達の絆という名の芸術には敵わなかったのじゃよ」

 

 月と鎖と超重力によって完全に動きを封じられたゴモルトはバオウをまともに受けてしまった。

 

ゴモルト「ぐおおおおっ!!ガ、ガッシュはやはり奴の子だったのか!!」

 

モーリス「ぐああああっ!!!」

 

 ゴモルトとモーリスがバオウに食われてからバオウが消えた後、その場には瓦礫の山しかなかった。

 

清麿「これで…終わったな!」

 

キャンチョメ「僕達、勝ったんだね!」

 

ウマゴン「メルメルメ~~!」

 

 デボロ遺跡での長い戦いが終わり、一同は喜びに包まれていた。

 

恵「やっと終わったわね、清麿君」

 

清麿「それまでに払った犠牲は決して小さくはなかったがな…」

 

ナゾナゾ博士「だが、この場にいるみんながいなければ千年前の魔物やゾフィス、ゴーレンの野望を打ち砕く事はできなかった。みんな、力を貸してくれてありがとう」

 

ニコル「それで、デモルトのパートナーは死んだの?」

 

ナゾナゾ博士「さっきマジョスティック12から連絡が入ったが、全治4か月の全身やけどで死んではいないそうだ」

 

しおり「以外ね…。というより、私達って割と魔物の攻撃を受けるから普通の人より頑丈になってしまったのかしら?」

 

シェリー「石にされたココとゾフィスはどこにいるのかしら?」

 

清麿「最後に心当たりのある場所と言ったら…」

 

 その頃、ゼオンは魔物の力を感じていた。

 

デュフォー「どうした?ゼオン」

 

ゼオン「さっき、大きな力を感じた。遺跡へ行くぞ」

 

 

 

 

 最後に王の間に来たが、まだココとゾフィスは石にされたままだった。

 

シェリー「そんな!ゴーレンを倒したのに元に戻ってないなんて!」

 

パムーン「ゴーレンを倒したぐらいで元に戻る事はない」

 

シェリー「じゃあ、ずっとココは石にされたままだと言うの!?ここまで苦労したというのに…!」

 

清麿「いや、元に戻す方法はある。その証人がパムーン達だ」

 

シェリー「あなた達の味方になっている千年前の魔物が?」

 

レイラ「私達千年前の魔物はゾフィスが作ったゴーレンの石化解除呪文を再現した特殊なライトで石にされた状態から元に戻ったの。清麿とガッシュも石にされたけど、その特殊なライトに使われているフィルターを使った懐中電灯で元に戻ったのよ。ココという人もその懐中電灯を使えば元に戻るわ」

 

シェリー「だったら、早く使わせて!ココとゾフィスを元に戻してから、ゾフィスにやってもらわないといけない事があるの!?」

 

コルル「やってもらいたい事?」

 

 石にされてから元に戻った際にグラブが気を失って落とした懐中電灯を清麿は拾っていた。その懐中電灯をシェリーに渡し、シェリーはその光を石にされたココとゾフィスに向けた。すると、石にヒビが入り、ココとゾフィスは元に戻った。

 

シェリー「ううっ…うぅぅっ……ココ~~~っ!!!」

 

 凄まじく辛い戦いを乗り越えたシェリーはようやくココを助け出した事で泣きながら喜んだ。一方、ゾフィスは意識が戻った後、感動の場になっている場所から逃げ出そうとした。

 

ブラゴ「おい、どこへ逃げるんだ?」

 

ゾフィス「ブ、ブラゴ……」

 

 気が付くとゾフィスはブラゴ、ガッシュ、ウォンレイ、チェリッシュに囲まれていた。

 

ゾフィス「ガッシュ…、ウォンレイ…、チェリッシュまで…!」

 

ガッシュ「逃げ出してまた悪事を働くつもりなのか、ゾフィス!」

 

チェリッシュ「どさくさに紛れて逃げ出そうなんていい度胸ね。私はあんたに何度も家を燃やされた恨みがあるからその場で脳天をぶち抜くかも知れないわよ」

 

ウォンレイ「ブラゴのパートナーが言ってたぞ、貴様にはまだやってもらわないといけない事があると」

 

ブラゴ「どうする?またボコボコにされたいのか…?」

 

ゾフィス「…はい、あなた達の言う通りにします…。ココを元に…私と会う前の状態に戻します……」

 

清麿「これであんたの戦いも一つ終わったな、シェリー」

 

シェリー「ええ…、あなた達にも大きな借りができたわ…」

 

ガッシュ「みんなで帰るのだ」

 

 ゾフィスを縛って一同はホテルに帰った。

 

 

 

 

 一方、月の石があった場所ではモーリスとゴーレンが瓦礫の山から出てきた。モーリスは野望を打ち砕かれて怒り心頭だった。

 

ゴーレン「危ない所だった。禁断具を壊して合体を解除し、デモルトを盾にしなければ我らはやられていたな」

 

モーリス「おのれ…おのれ、高嶺清麿!おのれ、大海恵!次に会った時は必ず殺してやるぞ!!」

 

ゴーレン「とりあえず、立て直しをしてから奴等を倒そう」

 

???「そう立て直しが上手く行くのかな?」

 

 声がした方を向くと、そこにはゼオンとデュフォーがいた。

 

ゴーレン「貴様は……紫電の眼光、白銀の髪、ゾフィスが言っていた雷帝ゼオンか?」

 

ゼオン「よくあのヘタレから俺の事を聞きだせたな。だが、お前はもうこれで終わりだ」

 

モーリス「終わりなものか!復讐をしてやるのだよ!」

 

デュフォー「お前、あの男の元にいた助手か?整形していたようだったから俺も最初に潜入した時にはわからなかったぞ」

 

ゼオン「整形か。で、ボロボロになった今の顔は昔の奴の顔に似てるのか?」

 

デュフォー「そうだな」

 

モーリス「Dめ、まさかまだ生きていて魔物を拾っていたとは!こうなれば」

 

デュフォー「ザケル」

 

 容赦なくデュフォーはザケルを発動させた。

 

ゴーレン「何という威力だ…。ガッシュを超えている…」

 

ゼオン「お前、ガッシュと戦ったのか?」

 

ゴーレン「凄まじかったぞ…。雷の剣などの凄まじい威力の術、中でもバオウ・ザケルガは恐ろしい威力だった。合体していた魔物を分離させて盾にしなければ我も一緒に魔界送りにされていたぞ…」

 

ゼオン「…やはりガッシュはもうバオウを使えるようになったのか…。デュフォー、雑魚をとっとと蹴散らすぞ」

 

モーリス「私達をコケにするな!!」

 

ゴーレン「お前を石にしてやろう!」

 

 ゴーレンはヘビの髪を伸ばしてゼオンを拘束しようとしたが、ゼオンは難なくかわし、キックやパンチを叩き込んだ。

 

ゼオン「あっけないな。デュフォー、止めを刺すぞ」

 

デュフォー「ああ」

 

???「やめるのだ!」

 

 声がした方にはガッシュがゴーレンに握られていた。

 

ガッシュ?「やめるのだ!このまま攻撃すれば私も死んでしまうのだ!」

 

ゴーレン「(さぁ、隙を見せろ。恐らくガッシュとゼオンは血縁関係がある。家族であればゼオンは…)」 

 

デュフォー「テオザケル」

 

 ゼオンは何の迷いもなくゴーレンを攻撃した。

 

ゴーレン「ぐおおおっ!!」

 

モーリス「ぐああああっ!!」

 

 テオザケルを受けた際、ゴーレンの本は燃えてしまった。

 

ゴーレン「なぜだ…、ガッシュは大切な家族ではないとでもいうのか…?」

 

ゼオン「ほう、お前の推測は当たりだ。俺とガッシュは兄弟だ。だが、俺はガッシュの事が憎いんだよ!非常に腹立たしく、恨まない日などない程にだ!ガッシュの偽物を出したのは逆効果だったな」

 

ゴーレン「では、なぜお前はデボロ遺跡に来た?」

 

ゼオン「ガッシュが苦しむ姿を見に来たんだよ」

 

ゴーレン「嘘だな。口ではガッシュが憎いと言ってても、心のどこかではお前は弟を憎むどころか大切に思っている。弟が憎いというものお前の理性によるものに過ぎん。遺跡に来たのは弟の苦しむ姿を見に来たのではなく、どうしようもない危機になったら助けるつもりだったのだろう?非情を装っていても家族の事では非常になりきれないようだな、ゼオン」

 

ゼオン「黙れ…黙れ!!俺はガッシュが憎いんだ!デュフォー、もうこいつの顔は見たくもない!さっさと魔界に帰せ!」

 

デュフォー「ザケル」

 

 ゴーレンの言葉にゼオンは激しく怒り、燃えてる本に再び攻撃してゴーレンを魔界送りにした。

 

ゼオン「心のどこかではガッシュを大切に思っているだと…!?そんな事はない!バオウを奪い、辛い訓練の日々を送る俺の人生の原因を作ったガッシュが憎い、憎いんだ…!」

 

デュフォー「(こんなに動揺したゼオンは初めて見た…。ゴーレンの言葉は予想以上に響いているようだな…)次はあの男から聞き出したい事がある」

 

ゼオン「好きにしろ」

 

 デュフォーは初めて相棒の動揺した一面を見たが、すぐにモーリスから必要な情報を聞き出した。




これで今回の話は終わりです。
今回はゴーレンとの決着を描きました。
新たにガッシュが習得した電撃の剣の術の名前がソルド・ザケルガではなくブレールド・ディラス・ザケルガなのは、作者の「ガッシュはソルド・ザケルガを習得できませんが、似たような術は生み出せます」という発言を考慮した上でソルドを使わずに剣の呪文にするにはどのように名付ければいいのか考えた末、剣の名前でよく使われるブレードをもじってブレールド・ディラス・ザケルガにしました。
ブレールド・ディラス・ザケルガの元ネタは犬夜叉の鉄砕牙で、スパロボのダイゼンガーの斬艦刀が元ネタのラージを除けば全ての追加攻撃の元ネタは鉄砕牙の技です。
次の話は石版編のエピローグ的な話になりますが、モーリスから情報を聞き出した後のゼオンペアのその後の行動も描かれます。


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LEVEL40 戦いの後に

ホテル

 ブラゴとシェリーはゾフィスにココを元に戻させるために先に帰り、一同はホテルに戻って戦いの疲れを癒していた。

 

ナゾナゾ博士「ゾフィスの野望を打ち砕くために協力してくれたみんな、本当によく頑張ってくれた。悲しくも魔界に帰った者も出たが、君達の頑張りがあってこそ私達は勝利する事ができた。それを祝って、乾杯!」

 

 乾杯した後、一同は飲んだり食べたりした。

 

パティ「よかったわね、ガッシュちゃん!一緒に生き残った上で勝利する事ができて!」

 

ガッシュ「ウ、ウヌ…。ビョンコとは仲直りができたのか?」

 

パティ「できたけど…その直後にビョンコはビクトリームの術のチャージの時間稼ぎをするために単身デモルトと戦って魔界に帰ってしまったわ…」

 

ガッシュ「そうであったか…」

 

パティ「でもガッシュちゃん、ビョンコの活躍を無駄にしないためにも王様を目指しましょう!」

 

ティオ「ちょっとパティ、ガッシュを独り占めするんじゃないわよ!」

 

パティ「あ~ら、妬んでるのかしら?」

 

ティオ「べべべ、別に妬んでなんかないわよ!とにかくガッシュから離れなさい!」

 

パティ「嫌よ!ガッシュちゃんの隣で食べるんだから!」

 

ティオ「何ですって!?」

 

コルル「ちょっと、喧嘩はよくないよ!」

 

 いつものようにティオとパティの喧嘩が始まった。

 

ウルル「また喧嘩か…これで何回目だ…?」

 

恵「こんなに見てるとティオとパティの喧嘩も日常に見えてくるわね」

 

清麿「ほんとだな…」

 

しおり「そういう清麿君と恵は競合相手もいないから心も落ち着けるわよね」

 

清麿「し、しおりさん!」

 

恵「そ、その…」

 

グラブ「頭のいい清麿でも恋人の事となれば冷静になれないようだな」

 

清麿「こ、恋人!?グラブ、恵さんとはまだ交際は…」

 

恵「そ、そうよ!まだ私達は未成年だし…」

 

グラブ「2人を偵察してたら恋人同士にしか見えなかったぞ」

 

恵「わ、私達ってそんな風に見られてたの…?」

 

グラブ「それより清麿、友達や恋人を作るのってコツとかいるのか?俺、今まで友達がいなかったからコーラルQがいなくなって不安で…」

 

清麿「別にコツなんかいらないさ。とにかく、自分を偽らずに普通に接していればいいと思う」

 

グラブ「自分を偽らずに…。そうだな。学校に行ったら試してみようと思う」

 

ガッシュ「そうすればいいのだ」

 

グラブ「それと、伝えたい事がある」

 

清麿「伝えたい事?」

 

グラブ「俺とコーラルQは他の魔物を1体1体調べていたんだ。今、生き残っている魔物達は強者揃いだ。大半の魔物の強さはガッシュに劣るが、中にはガッシュに迫るかそれ以上の魔物もいるかも知れない。くれぐれも気を付けるんだ」

 

清麿「わかった、グラブも友達をたくさん作るんだぞ」

 

レイラ「みんな楽しそうね」

 

パムーン「辛い戦いが終わったからな。だから、気持ちを緩めたくなるんだろう」

 

レイラ「みんな、ありがとう。千年前の魔物を代表してお礼を言うわ。あなた達は私達みんなを助けてくれた。それで…最後にお願いがあるの」

 

アルベール「…ああ、俺からも頼む」

 

レイラ「私達の本を燃やして。それが最後の願いよ」

 

ガッシュ「それを今はやってはならぬ」

 

レイラ「どうして?その理由を教えて」

 

ガッシュ「それは…」

 

パムーン「それは俺が説明する。ガッシュの話では悪い奴が王様になったらとんでもない事が魔界に起こるそうだ。だから、ガッシュは悪い奴を全員やっつけるまで人間界にいてほしいと頼んでいるんだ」

 

 余計な不安を感じさせないように王の特権の詳細を上手く隠しつつ、悪い魔物を王にしてはいけない事をパムーンは伝えた。

 

ガッシュ「(ありがとうなのだ、パムーン)」

 

アルベール「その話は本当なのか!?」

 

清麿「本当だ…。だが、最終的に決めるのはレイラだ。それでもレイラは魔界に帰るのか?」

 

レイラ「……そんな事が起こるのなら、まだ魔界には帰る訳にはいかないわね。アル、いつまで世話になるのかわからないけど、悪い魔物が全員魔界送りになるまでお世話になるわよ」

 

アルベール「別に迷惑じゃないさ。学校なんて退屈だし、レイラが来れば少しは退屈しなくて済みそうだがな」

 

コルル「魔界にも学校はあるから学校生活に慣れるために人間界の学校に行くのはどうかな?レイラは角がある以外は人間と変わらない姿をしてるから上手く行くと思うよ」

 

レイラ「それも面白そうね」

 

アルベール「手配は俺がしておこう。俺の故郷に戻ったら面白い日々が待ってるぞ」

 

パムーン「俺はちょっと目立ちすぎるから人間界の学校に行くのはやめた方がよさそうだな」

 

ランス「じゃあ、どうするんだい?」

 

 一方のビクトリームはモヒカン・エースと共にメロンを食べていて話に参加していなかった。パムーン達は悪い魔物を全員倒すまで人間界に留まる事になった。

 

サンビーム「ウマゴン、好き嫌いはダメだよ」

 

ウマゴン「メル……」

 

ジェム「サンビームさんの言う通りよ。ヨポポは好き嫌いなんてしてないから見習いなさい」

 

ヨポポ「ヨポポイ!」

 

アポロ「ロップスも今すぐでなくていいから梅干し嫌いは治すんだよ」

 

ロップス「かう…」

 

チェリッシュ「坊や達は元気そうね」

 

ウォンレイ「戦いが終わってほっとしてるんだよ」

 

リィエン「私達のパートナーは落ち着いてるあるね」

 

ニコル「そうね。年長者だからだと思うわ」

 

 みんなは食事を楽しむ一方、キャンチョメはいつもの様子じゃなかった。

 

キャンチョメ「(ガッシュは魔界では落ちこぼれだったのに今では他のみんなとは飛びぬけた凄い強さを持っている…。他のみんなもとてつもなく強い呪文をどんどん覚えていくし、僕、このままだとみんなに置いてけぼりにされてしまうのかな…?)」

 

 キャンチョメはデボロ遺跡での戦いで他の仲間達の強力な術を目の当たりにしていたのを思い出した。

 

清麿『バオウ・ザケルガ!!』

 

恵『チャージル・セシルドン!』

 

ニコル『ディオガ・コファルドン!』

 

リィエン『ラオウ・ディバウレン!』

 

キャンチョメ「(僕って…本当の落ちこぼれなのかな…?)」

 

フォルゴレ「キャンチョメ、いつもの元気はどこに行ったんだい?」

 

キャンチョメ「へへ、いつも通りさ!」

 

フォルゴレ「(明らかに無理をして明るく振る舞ってるな…)」

 

 そして、女性陣から先に入浴となった。自分の部屋に戻ろうとしていた。自分の部屋に戻ろうとしていたグラブは風呂場を通ろうとしていた。

 

グラブ「ん?誰か入っているのか?」

 

 棚には女性陣の服が置かれていた。

 

グラブ「ティオ達が入っているのか…。でも…何だか頭がクラクラしてきた…」

 

 自分の意志とは関係ないかのようにグラブの体が動いた。

 

グラブ「い、いかん!体が勝手に!」

 

 グラブは風呂場に突入しようとした。その頃、女性陣は入浴を楽しんでいた。

 

ジェム「お風呂に入ったら疲れが吹っ飛んじゃうわ」

 

パティ「ねえ、コルル、背中を洗って」

 

コルル「うん」

 

ティオ「恵も大変な目に遭ったわね」

 

恵「そうね。傷だらけになるのはこれまでも結構あったけど、裸にされそうになったし…」

 

レイラ「千年前のゴーレンのパートナーはあんな風じゃなかったわよ。まさかあんなにすさまじい変態がゴーレンのパートナーになるなんて思ってなかったわ」

 

ティオ「あの変態男なんてもう二度と戦いたくないぐらい嫌よ!あの変態ぶりを見てたらフォルゴレがマシに見えるわ」

 

しおり「そういえばフォルゴレさんは昔はあんな性格じゃないとゴーレンのパートナーは言ってたわね。一体、何の事なのかしら?」

 

ニコル「意外と有名人や偉人は若い頃はグレていたりしてる事だって多いのよ。きっと、フォルゴレも最初はそうで後で改心して世界的スターになったんじゃないの?」

 

チェリッシュ「もし、そうだったとしたら相当苦労を重ねた事になるわよ」

 

リィエン「ニコルの推測通りだと、フォルゴレは苦労人かも知れないある…」

 

 そう言ってると、グラブが風呂場に突入した。

 

女性陣「きゃああ~~~っ!!」

 

グラブ「し、しまった!」

 

ティオ「グラブ、あんたは覗き魔だったのね!」

 

グラブ「(こんな時はどうすればいいんだ…!?)」

 

リィエン「覗いたからにはみんなでグラブにお仕置きある!!」

 

 昨日のフォルゴレのようにグラブはお仕置きされた。

 

グラブ「まさか、すぐに殴る蹴るのお仕置きをされるとは…」

 

恵「私達ってどうして覗かれちゃうのかしら?」

 

パティ「それだけ私達が美女揃いって証拠よ。美しくなりすぎると狙われやすくなっちゃうわね~」

 

しおり「それ、必ずしもそういう訳じゃ…」

 

???「みんな、何かあったのか!?」

 

 悲鳴を聞いた清麿達が駆け付けた。グラブをお仕置きしていた女性陣は体にバスタオルを巻いていたため、清麿に見つめられている恵以外は恥ずかしがらなかった。

 

ティオ「さっき、グラブが私達の入浴中を覗いたのよ!もう、昨日はフォルゴレに覗かれて今日はゴーレンのパートナーのせいで恵が裸にされそうになったし、最悪の変態日和ね!」

 

清麿「(変態日和っていうのも間違いではないがな…)」

 

フォルゴレ「私のはわざとじゃなくて事故だよ」

 

 こうして、お風呂の時間は終わったが、キャンチョメはバルコニーで落ち込んでいた。

 

フォルゴレ「どうしたんだい?キャンチョメ。1人で悲しそうに外を眺めて…」

 

キャンチョメ「……僕、みんなの役に立ったのかな…?」

 

フォルゴレ「何を言ってるんだ?ベルギムの時もデモルトの時もキャンチョメがいなかったら勝てなかったんだぞ」

 

キャンチョメ「でも、僕が弱かったせいでキッドが魔界に帰ったし、みんなの姿を見てると僕なんて足元にも及ばないぐらい弱いと実感したんだ!だから、もっと強くなりたい!せめて、僕がガッシュぐらい強かったらキッドも魔界に帰らずに済んだのに…!」

 

 泣きながら話すキャンチョメにフォルゴレは何とも言えなかった。そこをティオと恵が通った。

 

ティオ「どうしたの?キャンチョメ」

 

キャンチョメ「ちょうどいい所に来たね、ティオ。どうしてティオはあんなに凄い呪文が使えるようになったんだい?」

 

恵「どうしてそんな事を聞くの?」

 

キャンチョメ「僕はもっと強くなりたいんだ。今のままじゃ、みんなの足を引っ張ってしまう。だから…、強くなれた秘訣を教えてほしいんだ!頼むよ!」

 

 涙ながらのキャンチョメの頼みに恵とティオは強くなれた秘訣を話す事にした。

 

恵「ティオが強くなれたのは清麿君に頭のツボを押してもらったのと特訓を行った事よ」

 

フォルゴレ「ありがとう。キャンチョメ、清麿に頼みに行こう」

 

キャンチョメ「うん…!」

 

 キャンチョメはフォルゴレと共に清麿の所に行った。そして、キャンチョメは強くなるための特訓はどうなのかを清麿に教えてもらい、ツボを押してもらった。

 

キャンチョメ「さっき言ったのをこなし続ければ僕は強くなれるんだね?」

 

清麿「ああ」

 

キャンチョメ「ちゃんと毎日欠かさずやるよ。後、他のみんなにも清麿にツボを押してもらうように頼みに行ってくるよ」

 

フォルゴレ「それじゃあ、これで」

 

 キャンチョメはフォルゴレと共に自分の部屋に戻っていった。その直後に恵とティオが来た。

 

恵「キャンチョメ君のツボを押して強くなるための特訓の内容を伝えたのね」

 

清麿「強くなりたいという気持ちが伝わってな」

 

ティオ「まぁ、その特訓をこなしたら少しは強くなるんじゃないかしら?」

 

恵「でも、どう言えばいいのかわからないけど、私は何かよくない事でも起こるんじゃないかって思うのよ……」

 

清麿「(俺も嫌な感じがする…。明確にこれからキャンチョメがどうなるかという答えは出てないが…、恵さんの言うよくない事が起きてもそんなに不思議じゃないだろうな…)」

 

ガッシュ「心配するでない、キャンチョメのパートナーはフォルゴレなのだ。そのよくない事が起こってもフォルゴレが何とかするであろう。だから、清麿も恵も暗くするでない」

 

恵「そうね、確かにガッシュ君の言う通りだわ」

 

清麿「フォルゴレならきっと何とかするだろうな」

 

 その後、コルル達も清麿にツボを押してもらった。

 

 

 

 

モチノキ町

 そして、全員故郷へ帰っていった。数日後、ガッシュ達はパートナーが仕事や学校に行っているため、魔物だけで公園に集合した。

 

コルル「あれから数日経つね」

 

ウマゴン「メルメル」

 

パティ「何だかあの激しい戦いが嘘みたいよ」

 

ガッシュ「でも、本当に私達はあの戦いに勝ち、帰ってきたのだ」

 

ティオ「あれから、他のみんなはどうしてるのかしら?」

 

コルル「確かに気になるよ」

 

ガッシュ「みんな元気にやってるのだと私は思うぞ」

 

パティ「そうよね。ガッシュちゃんの言う通り、みんな元気にやってるわよ」

 

コルル「確かレイラは人間界の学校に通うって言ってたわよね。ちゃんと馴染めてるかな?」

 

ティオ「そう言えば、レイラは人間の大人よりも力が強いから案外、ちゃんと力加減ができずに色々壊したりして…」

 

コルル「それ、あり得ると思うよ…」

 

 

 

 

 

某国 学校

 アルベールが教師として勤めている学校ではレイラが初めて学校に登校した。

 

教師「転校生を紹介します」

 

レイラ「レイラです。よろしくお願いします」

 

男子児童A「結構かわいいな!」

 

女子児童「でも、角があるよ」

 

男子児童B「そんなのどうでもいいだろ?」

 

教師「レイラはアルベール先生の親戚の子で親の事情により、この学校に来ました。みんなもレイラと仲良くするんだよ」

 

 ちょうどその日、アルベールが勤める学校は体力テストの日だった。レイラのクラスはまずはボール投げで、次々と児童は挑戦していき、遂にレイラの番になった。

 

教師「では、レイラの番だ」

 

レイラ「ボールを投げればいいのね、えいっ!」

 

 思いっきりレイラはボールを投げた。しかし、これまでの児童の記録を大きく超え、遂にはグラウンドの外にボールが飛んでしまった。

 

男子児童A「な、なんて距離だ!」

 

教師「す、凄い…!校内の最高記録を大幅に更新している…!」

 

アルベール「あちゃ~…、加減しろって言ったのに加減が出来てないじゃないか、レイラ…」

 

 別のクラスの体力テストをしていたアルベールは加減ができていないレイラにため息をついた。次は走り幅跳びだった。

 

レイラ「それっ!」

 

 やはりレイラの場合は砂場を超えてしまった。次は50m走だった。

 

教師「よ~い、ドン!」

 

 合図とともに走り出したが、レイラは他の児童を大きく突き放して1位になった。

 

教師「ま、またしても最高記録を更新した…」

 

 屋外でのテストが終わり、次は体育館での体力テストになった。まずは握力だったが、案の定、レイラは力を入れ過ぎて握力計を壊してしまった。

 

男子児童「すげえ!レイラってかなり力持ちだな!」

 

女子児童「力持ちになった秘訣は何なの?」

 

レイラ「えっと…(まずいわね…、やっぱり人間の子供と一緒に授業を受けたりするために力を加減するのは難しいわ…)」

 

 結局、全ての記録でレイラが学年1位になった。学校が終わった後、アルベールと共に自宅に帰った。

 

レイラ「人間界での学校生活は難しいわね」

 

アルベール「初めはこういった事も多いからな。俺も務めたばかりの頃は結構失敗も多くてね。でも、そのうちレイラも馴染むさ」

 

レイラ「そうね」

 

 

 

 

某国

 一方、パムーンはランスと共にプラネタリウムにいた。

 

パムーン「すげえ!望遠鏡で見てみたが、星ってこんな風になっていたのか!」

 

ランス「そうさ。宇宙には色んな輝きを持つ星があるんだ。僕はプラネタリウムの管理人なんだよ」

 

パムーン「俺、こんなもん見せられたから掃除とかはちゃんとやるぞ!」

 

ランス「頼もしいな!」

 

 

 

 

 

モチノキ町

 時を同じくしてガッシュ達は公園で話を続けていた。

 

ガッシュ「ビクトリームはどうしているのかのう?」

 

ティオ「ビクトリーム!?」

 

コルル「流石にビクトリームはどうしているのかわからないね…」

 

ウマゴン「メルメル」

 

ティオ「案外、メロンを探し求めてるんじゃないかしら?」

 

パティ「あり得るわね。メロンが罠に使われていたら簡単に引っかかるぐらいメロン好きだからティオの言う通りにしてるかも知れないわ」

 

 

 

 

 

某国

 ティオの言った通り、ビクトリームはモヒカン・エースと共にメロンを探し求めていた。

 

ビクトリーム「モヒカン・エース、ゴージャスメロンを食べるまでは頑張ってくれ!」

 

 ビクトリームの言葉にモヒカン・エースは頷き、進んでいた。

 

 

 

 

 

モチノキ町

コルル「そう言えばグラブは残っている魔物はみんな強い奴ばかりと言ってたよね。私達、生き残れるのかな…?」

 

パティ「何を言ってるのよ。私達が力を合わせればどうとでもなるじゃない」

 

ウマゴン「メルメルメ~!」

 

ティオ「これから、どんな魔物が出てくるのかな?」

 

パティ「ゼオン以外でとんでもなく強い魔物と言ったら竜族の神童とかいるそうだけど、どんな魔物が出て来ようとも、ガッシュちゃんの前では瞬殺よ」

 

ガッシュ「ゼオン以外はのう。(ゾフィスをやっつけた後はファウードなのだ…。今なら清麿を死なせずにリオウを倒せるが…問題はゼオンなのだ…。今の私達でゼオンとどこまで戦えるのやら…)」

 

 

 

 

 

某国

 同じ頃、とある研究所ではある話題で大騒ぎになっていた。

 

研究者「デボロ遺跡に行ってたモーリスとの連絡がとれなくなっただと?」

 

研究員A「はい。数日前から…」

 

研究員B「月の石という画期的な調査するものが見つかったというのに何だ、これは!」

 

研究者「モーリスめ、デボロ遺跡にあるという月の石を持ち帰るように伝えたのに誰にも理解されん芸術と底なしの性欲を満たそうとするからこうなるのだ」

 

研究員A「数々の兵器を開発している我々も人の事は言えないのでは…」

 

研究者「何か言ったかね?」

 

研究員A「それよりも彼を極地に放置するのはよくなかったのではないでしょうか?彼は世界でも数えるほどしかいないとされる逸材なのですよ。彼を失う方が損失が」

 

研究者「全く、君はグレースと同じぐらいDに情が湧いているようだね。どうせ、Dは死んでるよ」

 

研究員A「万一という可能性もあるのですよ。あなたがそんな事をしたら彼は必ず復讐しに来ます!そうしたら」

 

研究者「口答えするのなら、もう君はどこかへ行きたまえ。我々の所には必要ない」

 

研究員A「言われなくても出てきます。後で後悔しても私は知りませんよ」

 

 良心的な研究員は出ていった。

 

研究者「全く、なぜ奴はDがまだ生きているという考えができると言うんだ。そんな可能性など」

 

???「ないとでも思っていたのか?」

 

 楽観的な考えをする研究者が声がした方を向くと、そこにはゼオンとデュフォーがいた。

 

研究者「D、なぜ生きている!?お前を極地の研究施設ごと破棄したはずだ!」

 

ゼオン「これからお前に言う必要はない」

 

研究者「それより警備の連中はどうした!?Dとガキが来たのになぜ我々へ連絡しない!?」

 

デュフォー「全員ねている」

 

ゼオン「デュフォー、こいつらがお前を長年苦しめてきた連中か?」

 

デュフォー「そうだ。こいつらの事はお前に会ってからどうでもいいと思っていたが、モーリスという不快な男を見て気が変わった。だから、始末する事にした」

 

ゼオン「お前ら、デュフォーを長年苦しめてきたそうだな。俺もお前らの事はどうでもいいが、デュフォーが始末したいと言っているから始末するぞ…」

 

研究者「な、何をしている!早くDとガキを取り押さえろ!」

 

 研究者の命令で多くの警備員が来たが、ゼオンに一蹴された。

 

研究者「人間のガキが大人を一掃したとは…!」

 

ゼオン「これから始末されるお前らに特別に言っておこう。俺はゼオン、魔物だ…」

 

研究者「魔物!?我々も研究対象にしようと考えていた不思議な奴等か!?」

 

 デュフォーの持つ本の光が大きなものになっていた。

 

デュフォー「最大呪文を撃つのを止めないのか?」

 

ゼオン「お前にとって忌々しい連中を排除するんだろ?だったら、お前の好きにするといい」

 

研究者「ま、待つんだ!君への仕打ちは全て我々が悪かった!そうだ、我々の全財産を君に譲るというので許してくれないか?名誉も賞状も全て君に譲る!悪い話では」

 

デュフォー「ジガディラス・ウル・ザケルガ!!」

 

 研究者の命乞いも聞かず、デュフォーはゼオンの最大呪文、ジガディラス・ウル・ザケルガを発動させた。凄まじい電撃は研究所を破壊し尽くしたのであった。それを出ていった研究員は目撃していた。

 

研究員A「あの研究所の爆発、デュフォーの仕業なのか…?そう言えば、私が独自に入手したデュフォーの情報では、デュフォーはあの銀髪の少年と一緒にいたな。もしかすると、あの銀髪の少年が彼を助けたのかもしれない…」

 

 ゼオンとデュフォーは燃える研究所を後にしていた。

 

ゼオン「つまらん景色だ」

 

デュフォー「そうだな。また違う景色はどうすれば見れるんだろうな?」

 

ゼオン「見なきゃ死ぬって訳でもないし、そう焦る事でもないだろう?」

 

デュフォー「そうだな…」

 

 2人は燃える研究所を後にした。デボロ遺跡での大きな戦いは終わったが、次の戦いの狼煙が上がるのはそう遠い事ではなかった。





これで今回の話は終わりです。
今回は石版編のエピローグとして、ホテルでの休息とその後を描きました。
グラブの『い、いかん!体が勝手に!』はアニメのグラブの声はサクラ大戦の大神隊長だったので、それにちなんだネタとして取り入れました。
悪い魔物が全員魔界に帰るまで人間界に残る事にしたパムーン達はファウード編でも再登場します。
ちなみに、最後のゼオンペアが始末した研究者はデュフォーの回想に出ていた悪い科学者で、本編には出ていなかったのでゼオンペアが始末したのではと思い、この展開を挿入しました。
この話で石版編は終わりですが、すぐにファウード編には入らず、アニメオリジナルの狭間の世界編に突入します。
次の話はキャンチョメペアがキッドを失って元気のないナゾナゾ博士を元気づける話です。


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狭間の世界編
LEVEL41 希望の光


日本

 サンビームは勤務が終わり、帰ろうとしていた。そこへ、同じ職場で働いているガルザが来た。

 

サンビーム「ガルザか。どうしたんだ?」

 

ガルザ「サンビーム、お願いがあるんだ」

 

サンビーム「何だ?」

 

ガルザ「中国旅行のチケットを貰ったんだが…生憎、私は出張で行く事ができないんだ。代わりにサンビームが知人と一緒に中国旅行へ行ってきてくれないか?」

 

サンビーム「中国旅行か…。清麿達を誘ってみるとするか。7人分あるから…ウマゴンはペット扱いという事にしていくとするか」

 

 

 

 

高嶺家

 それから、サンビームは清麿としおり、ウルルに中国旅行へ行くかどうか聞いていた。

 

清麿「俺達を中国旅行に?」

 

サンビーム『ああ。同僚からチケットをもらってな。清麿達も一緒に来るか?』

 

ガッシュ「行くのだ!中国旅行なら、ウォンレイやリィエンとも会えるかも知れぬからのう」

 

サンビーム『わかった。しおりとウルルにも電話をかけてみるよ』

 

 サンビームは電話を切った。

 

ガッシュ「清麿、私達は中国旅行へ行けるのだな?」

 

清麿「ああ。恵さんとティオは仕事中だから誘えないが、ガッシュの言う通り、運が良かったらウォンレイとリィエンに会えるかもな」

 

 

 

アメリカ

 その頃、アメリカではキッドを失った事でナゾナゾ博士は元気を失っていた。その事で悩むマジョスティック12はアメリカに来ていたフォルゴレとキャンチョメを呼び寄せた。

 

ナゾナゾ博士「何じゃ?」

 

テレパシス・レーダー「博士、お客様です」

 

 それから、フォルゴレとキャンチョメが来た。

 

フォルゴレ「お久しぶりです~、ナゾナゾ博士!」

 

キャンチョメ「アメリカに来たんで約束通り遊びに来たよ!」

 

ナゾナゾ博士「…わしも嬉しいよ、よく訪ねてくれた」

 

フォルゴレ「…はははっ…」

 

キャンチョメ「ねえ、フォルゴレ。博士は無理に笑ったように見えない?」

 

フォルゴレ「ああ…。じゃ、直接聞いてみようじゃないか。博士、突然お邪魔してご迷惑でしたか?」

 

ナゾナゾ博士「何が迷惑なものか。一緒に戦った仲じゃないか」

 

フォルゴレ「そうですよね。ほら」

 

キャンチョメ「ほらじゃないよ。やっぱり妙なまま」

 

フォルゴレ「席から離れているせいさ」

 

 いざ、食事をしようとしたら、フォルゴレが落としたスプーンを拾おうとした所、テーブルの下にビッグボイン以外のマジョスティック12がいた。

 

テレパシス・レーダー「お願いです、博士を元気づけてください」

 

フォルゴレ「どういう事?」

 

テレパシス・レーダー「博士、南米から帰ってきてからずっとああなんです…」

 

フォルゴレ「それってひょっとして…」

 

 その出来事こそ、デボロ遺跡での戦いで魔界に帰ってしまったキッドの事だった。

 

フォルゴレ「キッドの!?」

 

キャンチョメ「(そうだ。僕が弱かったせいでキッドが…)」

 

テレパシス・レーダー「し~っ…!」

 

フォルゴレ「何とか頑張ってみる!鉄のフォルゴーレ!無敵フォルゴーレ!」

 

 しかし、ナゾナゾ博士は元気にならなかった。

 

ナゾナゾ博士「ごちそうさま。すまないが、疲れてるので部屋に下がらせてもらうよ」

 

フォルゴレ「そ、そうですか…」

 

キャンチョメ「お休みなさい」

 

 その後、フォルゴレ達は作戦会議をしていた。

 

フォルゴレ「しかし、私のとっておきのスペシャル芸が不発とは…」

 

キャンチョメ「どうしよう…?」

 

フォルゴレ「そうだ!名案が浮かんだぞ」

 

 その案を他の面々はしっかり聞いた。

 

キャンチョメ「ええ~っ!で、でも、もしバレたら博士余計…」

 

フォルゴレ「わかってくれ、キャンチョメ。博士を元気づけるにはもうこの手しかないんだ」

 

キャンチョメ「わかった…。よし、僕頑張る!よし、行くぞ!」

 

フォルゴレ「ポルク!」

 

 自分の部屋にナゾナゾ博士は1人でいた。そこに、キッドに変身したキャンチョメが入ろうとしていた。

 

キャンチョメ「は、はか…」

 

フォルゴレ「大丈夫。キャンチョメ、自分の力を信じるんだ」

 

 ナゾナゾ博士の部屋に入るのを躊躇うキャンチョメをフォルゴレが後押しした。そして、キャンチョメはナゾナゾ博士の部屋に入った。

 

キャンチョメ「は、博士…ナゾナゾ博士…」

 

 元気のないナゾナゾ博士は声がした方を向くと、そこにはキッドに化けたキャンチョメがいた。

 

キャンチョメ「は…はか…」

 

 魔界に帰ったはずのキッドがいる事にナゾナゾ博士は驚いたが、正体がキャンチョメだとすぐに見抜いた。

 

ナゾナゾ博士「おお!私は夢を見ているのか!?そこにいるのはキッド!でも、どうして…?」

 

キャンチョメ「え、えっと…」

 

ナゾナゾ博士「いや、理由なんかどうでもいい!おいでキッド、さぁ、いつも通り、私の肩の上に!」

 

キャンチョメ「うん!」

 

 ナゾナゾ博士に言われてキャンチョメはナゾナゾ博士の肩の上に乗った。

 

ナゾナゾ博士「嬉しいぞ、キッド!よく戻ってきてくれた!ははははっ!」

 

キャンチョメ「僕も嬉しいよ、博士!」

 

 その様子にマジョスティック12も喜んだ。そして、ナゾナゾ博士は夜の外に出た。

 

ナゾナゾ博士「ははははっ。そうかそうか、よく戻ってきてくれた、キッド」

 

キャンチョメ「でも、博士が元気になってくれてよかったよ」

 

ナゾナゾ博士「元気と言えば…あの時もそうじゃったな」

 

キャンチョメ「あの時、えっと」

 

ナゾナゾ博士「ほら、ガッシュ君達と戦った時の事じゃ」

 

 

 

 

回想

 千年前の魔物との戦いが始まる前、ガッシュやコルルと戦い終わった後、キッドペアはパティペアと戦っていた。パティの水には自称、何でも知ってる不思議な博士のナゾナゾ博士でもどういった攻撃が来るのかの想像もつかなかった。

 

パティ「ふーん、そのキッドってガッシュちゃんと互角に渡り合ったって言ってたけど、それは嘘ね。ガッシュちゃんの実力は一緒に特訓した私は良く知ってるし、私に手古摺ってるようじゃ、ガッシュちゃんにボロ負けしたとしか思えないわよ」

 

ナゾナゾ博士「何という攻撃じゃ!水だけではどういった攻撃が来るのか想像もつかない!おまけに、敵にヒントを与えてしまうとは…」

 

パティ「当然じゃない。私の水は変幻自在なのよ。ウルル、最大呪文で決めるわよ!」

 

ウルル「はい、スオウ・ギアクル!」

 

 水の龍がキッドとナゾナゾ博士に襲い掛かった。

 

キッド「凄い攻撃だよ、博士!」

 

ナゾナゾ博士「案ずるな、キッド。ギガノ・ゼガル!」

 

 しかし、ギガノ・ゼガルはスオウ・ギアクルに押し負けてしまい、直撃を受けてしまった。

 

パティ「どんなものよ!さぁ、ウルル、とどめを」

 

ウルル「彼等、白旗を上げてますよ」

 

 その後、ナゾナゾ博士から千年前の魔物の事を聞いていた。

 

ウルル「そういう事でしたか…」

 

ナゾナゾ博士「君達も気を付けるんだよ」

 

 それから、次はティオと戦った後、ホテルに滞在した。

 

キッド「博士、次はどの魔物に会うの?」

 

ナゾナゾ博士「ふむ、次はガッシュ君ぐらい頼りになりそうな強い魔物をあたってみようか」

 

キッド「大丈夫?博士。ガッシュぐらい強い魔物を仲間にできるの?」

 

ナゾナゾ博士「もちろんさ!私は世界一の寿司職人だぞ。どんな魔物も私の寿司を食べれば尻尾を振ってついてくるさ!」

 

キッド「ほんと!?」

 

ナゾナゾ博士「ああ。キッドも食べてみるかい?」

 

 ナゾナゾ博士はプリンにしょうゆを混ぜ、それをしゃりの上に乗せた。

 

ナゾナゾ博士「ほーらキッド、ウニのお寿司だぞ~~!」

 

キッド「わあ~い、いただきま~す!」

 

 キッドはナゾナゾ博士が作ったウニのお寿司を食べた。

 

キッド「うっま~~い!!博士、これならどんな魔物もよだれを垂らして仲間になるよ」

 

 その後、ナゾナゾ博士はキッドと共に強い魔物に仲間になってもらおうとした。しかし、現実は非情だった。

 

テッド「興味ねえな。チェリッシュを探すのが先だ」

 

 また、他の魔物は…。

 

エルザドル「そんな奴等が襲って来ようとも倒すだけだ。用がなければ去れ!」

 

 またまた、他の魔物は…。

 

レイン「済まない…。カイルがあんな状態なんだ…。俺としてはすぐにでも仲間になりたいが…本当にあなた達やガッシュには申し訳ない!」

 

 さらに、他の魔物は…。

 

バリー「ふん、断る。今の俺は修行中だ。それに…お前達と仲間になれば日本のガッシュとも顔を合わせるだろう。奴とは修行が終わってからいずれ決着を着けねばならねえ。だが…今はその時じゃない!」

 

 誰も仲間になってくれない事にキッドは憤っていた。

 

キッド「どうしてだよ、博士!何でみんなは一緒に戦ってくれようとしないのさ!自分勝手な奴ばかりじゃないか!」

 

ナゾナゾ博士「いや、100体の魔物が互いに戦い最後に生き残った者が王になる。この戦いのシステムが仲間と言う言葉をなくしてしまっておるのじゃ…。そう考えると、ガッシュ君達は極めて異例としか言いようがない」

 

 その後、ナゾナゾ博士はキッドと共にデボロ遺跡を視察していた。しかし、その数はナゾナゾ博士の想像を超えていた。

 

ナゾナゾ博士「な、なんて軍勢だ…」

 

 その晩、ナゾナゾ博士とキッドはホテルに泊まった。

 

キッド「博士」

 

ナゾナゾ博士「何かね?」

 

キッド「もう…諦めようよ。僕達が勝てるわけないじゃないか!あんな軍勢、どう戦うのさ!?誰一人仲間になってくれない!僕らのやってる事は無駄なんだよ!」

 

ナゾナゾ博士「無駄か…。確かに絶望的な状況じゃな。しかし、光を失ってはいけない。光が弱かったら強くしなきゃいけないんだ」

 

キッド「なぜさ!?なぜ博士はそんな事が言えるの?仲間になるのを断られて、時には攻撃されて、その上にあの軍勢だよ!どうして頑張れるのさ!?」

 

ナゾナゾ博士「…わしは…光の大切さを知ってるからさ」

 

キッド「光って…光って何さ!?」

 

ナゾナゾ博士「希望だ。生きていく上で失ってはいけないものだ」

 

キッド「わからないよ!もうこれ以上無駄な事はしたくないよ!お休み、博士!」

 

ナゾナゾ博士「お休み。(わかってくれ、キッド…。そしたらお前はもっと…)」

 

 

 

 そして、次の日にはデボロ遺跡の周辺を調べていた。

 

キッド「博士、どこに行くのさ?僕はもう協力しないからね!」

 

ナゾナゾ博士「わかっておる、もうちょっと調査を」

 

???「さぁ、現代の魔物を倒すついでにパートナーをもっと探すピヨ!」

 

 ナゾナゾ博士達の頭上にバディオスに乗って出発するコーラルQの姿があった。

 

ナゾナゾ博士「あれは本の持ち主!千年前の魔物の本の持ち主は見つけるのに時間がかかると思っていたが…。いかん!清麿君達に警告を!」

 

???「誰に警告するんだ?」

 

 声がした方には見張りの魔物がいた。

 

カマック「お前か。ロードが言っていたちょろちょろ探りまわっているネズミは」

 

ナゾナゾ博士「気付かれておった…。ゼガルガ!」

 

カマック「ちょうどいい。千年間のブランクを埋める絶好の機会だ!」

 

ライオン「ギガ・ラ・レルド!」

 

 ゼガルガはギガ・ラ・レルドで跳ね返されてしまった。

 

カマック「はははっ、こいつはいい。ロードの精神操作は本物だ!人間が思った通りの術を出す!」

 

ナゾナゾ博士「何!?あの人間は心を操られておるのか…!キッド!」

 

キッド「うん!」

 

ナゾナゾ博士「ラージア・ゼルセン!」

 

ライオン「ギガノ・ビレイド!」

 

 カマックの強さにキッドとナゾナゾ博士は苦戦した。

 

キッド「(ほら…、やっぱり危ない目に遭うんだ…。そして博士が怪我をする…。博士が出しゃばって動くから千年前の魔物にも真っ先に攻撃される…。苦労して世界中をかけずり回って…その結果がこれさ…)え…?」

 

 ナゾナゾ博士の持つキッドの本は輝いていた。

 

キッド「(本があんなに輝いて…何で!?僕は怖くて仕方ないのに…)」

 

ナゾナゾ博士「キッド、そんな怯えた顔をするな。こんな時こそ希望を忘れてはいかん。例え絶望が襲って来ようが、我々現在の魔物が手を取り合い、1人1人が希望となれば必ず光は見えてくる。肝心なのは絶望に負けない事だ。ここで絶望に負け、千年前の魔物に負けたらキッドの暮らす魔界はどうなる?私はキッドの暮らす魔界を悪い奴等のものにはさせん!確かに今は辛い。だが、それに負けて光を見失ってはいかん。私には光輝くキッドの国しか見えておらん!私の名はナゾナゾ博士、我が魔物キッドを魔界の王にするために立ち上がった者!千年前の魔物如きに恐れを持つ程、弱き者ではないわ!」

 

キッド「僕の名前はキッド!ナゾナゾ博士と一緒に魔界の王になる魔物だ!博士がいる限り、お前らなんかに負けるものか!」

 

ナゾナゾ博士「ギガノ・ゼガル!」

 

 ギガノ・ゼガルでカマックは倒され、本は燃えてしまった。

 

キッド「ほら、早く次の仲間を探さないと!」

 

ナゾナゾ博士「おやおやキッド、無駄な事ではなかったのかね?」

 

キッド「何言ってるのさ、ワクワクしてしょうがないよ」

 

ナゾナゾ博士「次は協力を頼む前にガッシュ君の知り合いかどうか聞いてみよう。レインはパートナーの問題で断られてしまったが、他のガッシュ君の知り合いなら、協力してくれるに違いない」

 

キッド「それ、いいね!」

 

 

 

キャンチョメ「ええっ、南極!?それって、もしかして僕とフォルゴレの事!?」

 

 フォルゴレは慌ててジェスチャーをとった。

 

ナゾナゾ博士「そうだ、キャンチョメ君は期待した通り、とても勇気ある子だったね」

 

キャンチョメ「えへへ…」

 

 バレてないように見えたため、フォルゴレは安心した。

 

ナゾナゾ博士「それよりキッド、そろそろ魔界に戻る時間じゃないのかい?」

 

キャンチョメ「そ、そうだった!じゃあね博士、博士が元気になってよかったよ!」

 

ナゾナゾ博士「キッドのお陰さ。ありがとう」

 

キャンチョメ「じゃあね!(博士、僕は絶対に強くなるよ。もう、キッドの時のように仲間が消えるのは嫌なんだ!)」

 

ナゾナゾ博士「(ありがとう、キャンチョメ君、フォルゴレ君。わしゃもう大丈夫じゃ。わしがへこたれたらキッドに叱られる。全然へこたれてはおらん。いや、全然というのは…ウ・ソ)」

 

 その後、ナゾナゾ博士は準備をしていた。

 

テレパシス・レーダー「お出かけですか?」

 

サイコ・ジャングル「我々もお供させてください」

 

ナゾナゾ博士「いや、連れはおる」

 

配達員「ナゾナゾ博士に小包です、日本から」

 

 

 

???

 飛行機である場所へ向かうナゾナゾ博士が小包を開けると、それはキッドそっくりに作ったバルカンだった。

 

ロップス「かう?」

 

ナゾナゾ博士「それは、ガッシュ君からのプレゼントじゃ」

 

アポロ「それ、千年前の魔物との戦いが終わった際にロップスも一緒に作ったよな」

 

ロップス「かうかう」

 

 ロップスは自分そっくりに作ったバルカンを持っていた。

 

アポロ「ところで、例の件ですが…」

 

ナゾナゾ博士「とにかく、情報収集だ。今度は魔界の問題だけでは済まぬかも知れぬぞ。我々人間界にも」

 

 

 

 

中国

 それは、ウォンレイペアの住んでいる村の近くで起こっていた。

 

ウォンレイ「リィエン、あの光は何だ?」

 

リィエン「私も初めて見たからよくわからないある」

 

 見た事のない現象にウォンレイペアはどうすればいいのかわからなかった。

 

 

 

???

 何もない場所である者がいた。

 

???「ふふふ、さあ、王を競いし魔物達よ!光に集え、集うのだ!」

 

 その者はある野望を胸に暗躍しようとしているのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回はキッドを失って落ち込んでいるナゾナゾ博士をキャンチョメペアが励ますという内容ですが、原作ではナゾナゾ博士は様々な魔物に協力を要請しているシーンにテッドと思わしき魔物のシルエットがあったため、テッド本人と会ったという事にしました。原作を見て、レインがガッシュの住所を知っているのが不思議に思い、あるサイトでレインがガッシュの住所を知っているのはナゾナゾ博士と会ったからではないかという考察もあって、それを採用しました。
次はガッシュ達が中国旅行へ行きますが、そこで思わぬ出来事に巻き込まれてしまいます。


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LEVEL42 中国旅行

???

 人間界のある場所で光が放たれた。

 

高嶺家

 その夜、ガッシュは不思議な夢を見ていた。

 

ガッシュ「何なのだ…?」

 

 再び寝ようとしたら、清麿の毛布を引っ張っていった。

 

清麿「こら、ガッシュ、寝ぼけるな!」

 

 翌日早朝、中国旅行へ行くため、ガッシュ達はサンビームを待っていた。ガッシュは何やら石を積み上げていた。

 

ガッシュ「できた」

 

ウマゴン「メル」

 

ガッシュ「ウマゴン、これを知らぬのか?」

 

ウマゴン「メル?」

 

ガッシュ「私も知らぬ(昨日の夢は一体、何だったのだ…?)」

 

清麿「何やってんだ?ガッシュ。準備は終わったのか?」

 

ガッシュ「準備は終わっておるのだが…、私は昨日、おかしな夢を見たのだ」

 

清麿「その夢は前の戦いの時にも見たのか?」

 

ガッシュ「前の戦いの時はそんな夢は見なかったのだ」

 

清麿「これも、前の戦いと違うのか…ん?」

 

 ポストに手紙が入っていた。

 

清麿「何でエアメールが?」

 

 そんな時、電話が鳴った。

 

清麿「はい、もしもし…」

 

ナゾナゾ博士『元気にしているかね?清麿君』

 

清麿「その声は…」

 

ガッシュ「ナゾナゾ博士~!」

 

ナゾナゾ博士『その通り、何でも知ってる不思議な博士だ。ガッシュ君もウマゴン君も元気そうだな』

 

ガッシュ「元気いっぱいなのだ!」

 

ウマゴン「メルメルメ~!」

 

ナゾナゾ博士『早速だが、君に調べてもらいたい事がある。手紙が届いたと思う。同封した写真は衛星から撮ったものだ』

 

 封筒の中には2枚の衛星写真があった。一つは光が放っている時のもの、もう一つは光がない時のものだった。

 

清麿「これは?」

 

ナゾナゾ博士『光の正体はわからない。だが、不吉な予感がする。もしかしたら…』

 

清麿「ナゾナゾ博士」

 

ガッシュ「すっごい、すっごい!」

 

清麿「場所は…中国ですって!?」

 

ガッシュ「ちょうど私達も中国旅行へ行く予定なのだ!」

 

ナゾナゾ博士『もしかしたら、魔界と何か関係があるのかも知れない。中国旅行のついでの頼めないか?』

 

清麿「わかりました」

 

 電話が終わった後、華が来た。

 

華「清麿、ガッシュちゃん、ウマゴンちゃん、中国旅行に連れて行くサンビームって人が来たわよ」

 

清麿「わかった!」

 

 

 

 

飛行機

 ガッシュ達は中国に向かっていた。

 

ガッシュ「コルル達も同じような夢を見たのか?」

 

コルル「うん」

 

パティ「おかしな夢だったわ。いつものガッシュちゃんと結ばれる夢やティオに横取りされる夢じゃないの」

 

清麿「(夢の中でもパティはティオの事を敵視してるのか……)」

 

ウルル「(いつもの事ですよ…)」

 

しおり「何だが、ナゾナゾ博士の言う通り嫌な感じがするわ」

 

パティ「それだったら、その場所でガッシュちゃんのパートナーのアンサーなんとかっていうのを使えばいいのよ。そうしたら一瞬でわかるんでしょ?」

 

しおり「アンサー・トーカーよ。でも、ナゾナゾ博士の話によれば、アンサー・トーカーは自在に使うには数か月単位のトレーニングが必要なのよ。それに、脳への負担も大きいそうだからむやみに使うべきじゃないわ」

 

サンビーム「とにかく、何事もない事を祈ろう」

 

 そんな時、一同の本が一斉に光った。

 

パティ「一斉に光って何が起きたの?」

 

『おめでとう、人間界に生き残った諸君よ!この時点をもって、残りの魔物の数は40名になりました。試練を乗り越え、さらなる成長をし、魔界の王になるべく、これからも全力で戦い合ってください』

 

しおり「遂に魔物の数も半分を切ったようね」

 

ガッシュ「(千年前の魔物との戦いが終わってようやく40人となったのか…。今回はコルルやパティといった前の戦いでは千年前の魔物との戦いが終わった時点で既に魔界に帰っておる者達のうち、何人かが生き残っておるからのう…)」

 

サンビーム「半数を切って戦いもいよいよ後半戦だ。敵との戦いは気を引き締めて行こう」

 

パティ「その前に中国旅行を楽しみましょう!あ~、本場の餃子やチャーハン、北京ダックなどが食べたいわ…」

 

清麿「(食べ物が優先かよ…)」

 

 中国のおいしい料理を食べたいパティに清麿は呆れ、ウルルはため息をついていた。

 

 

 

 

中国

 中国に到着した後、一行は指定の場所を目指していた。

 

ガッシュ「ウマゴン、中国に来たのだ!」

 

ウマゴン「メルメルメ~!」

 

パティ「おいしそう……」

 

 売店を通り過ぎる度にパティは中国料理に目を光らせていた。

 

ウルル「はぁ…今回も食べすぎそうですね…」

 

サンビーム「パティが食べすぎるからウルルはお金の事で苦労してるな…」

 

コルル「せっかく旅行に来たから私達もお土産を買っていこうよ」

 

しおり「そうね。せっかくだから、お土産も買っていく?」

 

コルル「そうしようよ」

 

清麿「ま、中国まで来たからお土産を買おう」

 

 一同は中国のお土産を買いに売店に来た。

 

パティ「ねえ、ウルル、北京ダックを買いたいわよ」

 

ウルル「でも、値段が高いですよ…」

 

サンビーム「私は何を買おうか…」

 

ウマゴン「メル……」

 

コルル「しおりねーちゃん、このアクセサリーを買っていい?」

 

しおり「いいわよ。値段も安いし、コルルに合ってると思うわ」

 

ガッシュ「清麿は何を買うのだ?」

 

清麿「俺は……」

 

 何を買おうか迷う清麿だったが、偶然チャイナドレスが目についた。すると、恵がチャイナドレスを着ている姿が見えた。

 

清麿「(め、恵さんがチャイナドレスを着てるのが見えてしまうなんて…。とりあえず、チャイナドレスを…)」

 

???「何をニヤニヤしてるの?清麿」

 

清麿「どわっ、急に脅か」

 

 急に聞かれて声がした方を向くと、そこにはティオと恵がいた。

 

清麿「恵さん、ティオ!どうしてここに!?」

 

ティオ「恵の仕事で中国にいたの」

 

恵「清麿君達はどうして中国に?」

 

サンビーム「私が仕事の同僚からチケットをもらってな。清麿達も誘ったんだ」

 

清麿「後、ナゾナゾ博士から頼まれ事も頼まれている」

 

ガッシュ「ティオも何かお土産を買うのか?」

 

ティオ「まあね。清麿は何を買うの?」

 

清麿「俺は……」

 

ティオ「わかった、恵にチャイナドレスを着てほしいからチャイナドレスを買おうとしてたのね!」

 

 ティオの言葉が図星で清麿は蒸気が出る程顔が真っ赤になった。

 

ガッシュ「どうして清麿は恵にチャイナドレスを買おうと思ってるのだ?」

 

ティオ「見かけた時に清麿がチャイナドレスを凝視してニヤニヤしてたからよ」

 

パティ「恋に関しては敏感ね」

 

恵「清麿君が私に買ってくれるなんて…。じゃあ、私はウォンレイが着てるような服を清麿君に買ってあげるわよ」

 

 結局、お互いに中国系の服を買う事となり、着用してみた。

 

ティオ「なかなか似合うじゃない、恵!清麿も結構似合うし、お揃いって感じよ!」

 

恵「リィエンに見せたらどういう評価をするのかしら?」

 

コルル「それは実際に本人が見ないとわからないよ」

 

しおり「リィエンは中国のどこにいるのかな?」

 

ティオ「デボロ遺跡での戦いが終わって別れる時に聞いてなかったわね」

 

恵「運よく会えたらいいけどね」

 

 しばらく一同は恵の撮影を見る事にした。

 

清麿「(そう言えば、例の光が出ている場所はこの辺りだったな…。衛星写真を見比べてみると…光が出てない時に撮ったものは石の配置がまるで本の模様のようにも見えるな…)」

 

マネージャー「清麿君もその中国の服、似合ってるわよ」

 

清麿「そ、そうですか……」

 

マネージャー「恵ちゃんと並んだらもっと絵になるかもね。恵ちゃんのチャイナドレス姿もお似合いよ」

 

恵「清麿君と…?」

 

 マネージャーの発言に清麿と恵は顔を赤くした。その後、昼食は恵とティオも加わって楽しくとった。

 

清麿「何っ!?ティオもガッシュ達と同じ夢を見たのか!?」

 

恵「ええ。『光に集え』とかって声がした夢を見たそうよ。それに、少し前からこの辺りで光が放たれるようになって、地元の人は悪い事の前触れではないかと噂になっているわ」

 

清麿「恐らく、魔界が絡んでいるのだろう。とりあえず、夕方辺りに」

 

客「おい、昼間なのに例の光が出ているぞ!」

 

 客の声にガッシュ達が慌てて外に出ると、ナゾナゾ博士の写真と同じ光が出ていた。

 

清麿「あれは間違いない!ナゾナゾ博士の写真と同じ光だ!」

 

 光に驚いていると、何やら爆発音がした。

 

パティ「今度は何なのよ!」

 

ガッシュ「とにかく、行ってみるのだ!」

 

 ガッシュ達が光の方へ行ってみると、そこにはウォンレイとリィエンの姿があった。

 

ガッシュ「おお、ウォンレイにリィエンではないか!」

 

ティオ「まさか、近くにいるなんて思ってなかったわ。やっほー!」

 

リィエン「ガッシュ、ティオ、今は挨拶をしてる時じゃないある!」

 

ティオ「それってどういう」

 

 その言葉通り、魔物の攻撃が飛んできた。

 

パティ「ちょっと、誰が撃ったのよ!」

 

コルル「まさか、ウォンレイは他の魔物と…」

 

 攻撃が来た方からブラゴとシェリーが姿を現した。

 

サンビーム「ブラゴだと!?」

 

清麿「どっちもなぜこんな場所で戦っているんだ!?」

 

ウォンレイ「その理由は至って簡単、ブラゴが私達の仲を侮辱したからだ!私への侮辱は聞き流しても、リィエンへの侮辱は絶対に許さん!例え優勝候補であろうともな!」

 

ブラゴ「ふん、戦いそっちのけで女に現を抜かして呑気に暮らしている甘ちゃんコンビと言っただけでこうも怒るとはな」

 

ウォンレイ「ブラゴ、お前には私とリィエンの想いは理解できないであろう!行くぞ!」

 

ブラゴ「しゃらくせえ!」

 

 ウォンレイとブラゴは激突した。

 

恵「清麿君、私達も」

 

清麿「止めたい所だが、今のウォンレイとブラゴは頭に血が上っている。あの戦いは俺達には止められない…」

 

 凄まじい気迫でぶつかり合うウォンレイとブラゴの姿にはガッシュ達は入り込む余地はなかった。

 

リィエン「ガンズ・バウレン!」

 

 ウォンレイの連続パンチをブラゴは受け止め続けた。その隙にリィエンはシェリーに襲い掛かり、今度はリィエンとシェリーの女同士の格闘戦となった。

 

シェリー「ブラゴがまだ恋愛を理解してないが故にあなた達を怒らせてしまった事は謝るわ。でも、魔界の王を決める戦いの最後に生き残るのはたった一人。私はブラゴと違ってあなた達の事をバカにする気も恨みもないけど、勝たせてもらうわよ!」

 

リィエン「負けられないのはこっちも同じある!私達の方こそ勝つある!」

 

 拳をぶつけあったりした後、互いに距離をとった。

 

シェリー「アイアン・グラビレイ!」

 

リィエン「レドルク!」

 

 ブラゴのアイアン・グラビレイをウォンレイは脚力を強化してからリィエンを抱え、その場から猛スピードで離れた。

 

ウォンレイ「リィエン、このまま一気に奴の懐に飛び込むぞ!」

 

リィエン「はいある!ゴウ・レドルク!」

 

 更に脚力を強化してからウォンレイは一気にブラゴに接近した。猛スピードにはブラゴも反応が間に合わず、まともに蹴りを受けた。

 

ブラゴ「ちっ、こいつは俺よりパワーは劣るがスピードは勝ってやがる…!」

 

 

 

 

???

 ある場所ではその場所に設置されたコイルが作動していた。

 

???「強い力だ。この力ならば……」

 

 

 

 

中国

 ブラゴとウォンレイは今度は格闘戦で渡り合っていた。

 

ブラゴ「てめえのような女に現を抜かす軟弱な奴は魔界に帰りやがれ!」

 

ウォンレイ「ブラゴ、目指す王の姿は人それぞれだ。お前の目指す王の姿を私は否定しない。だが、リィエンへの侮辱だけは許さん!リィエンに謝れ!」

 

 お互いに距離をとった。

 

シェリー「あの魔物、できるわね」

 

ブラゴ「シェリー、一気に勝負を決めるぞ!」

 

ウォンレイ「リィエン、このまま長引かせると心の力で劣るリィエンが不利だ!一気に勝負を決める!」

 

リィエン「はいある!」

 

 互いに心の力をかなり込めた。

 

ガッシュ「次の一撃で勝負を決めるつもりなのだ」

 

コルル「どっちが勝つのかな?」

 

清麿「どっちが勝つんだ…?」

 

 念のため、アンサー・トーカーを清麿は発動させた。すると、どちらが勝つのでもない、とんでもない答えが出た。

 

清麿「(何なんだ?この答えは…!)」

 

恵「どうしたの?清麿君」

 

清麿「早くシェリーとリィエンに呪文を唱えるのをやめさせるんだ!そうしないと、大変な事になる!」

 

ティオ「そんな事をしなくても二つともチャージル・セシルドンで防げば」

 

清麿「そうしても同じ結果になる!早くするんだ!」

 

 答えを出した清麿の行動は間に合わず、シェリーとリィエンは互いにディオガ級の威力の呪文を唱えようとした。

 

シェリー「ディオガ・グラビドン!」

 

リィエン「ゴライオウ・ディバウレン!」

 

 巨大な重力の球と白虎がぶつかり合った。その際に近くで放っていた光が強くなった。

 

ウルル「光がさらに強くなりましたよ!」

 

サンビーム「一体、何が起ころうとしてるんだ…?」

 

ウマゴン「メルメルメ~!」

 

 

 

 

???

 ディオガ・グラビドンとゴライオウ・ディバウレンのぶつかり合いはある場所にいるある者も感じ取っていた。

 

???「おお!この力だ、この力を待っていたのだ!扉が、扉が開いて行く!」

 

 その通り、空間に穴が開いていた。

 

 

 

 

 

中国

 人間界でのディオガ・グラビドンとゴライオウ・ディバウレンのぶつかり合いは続いていた。しかし、二つの術は近くの光に吸い込まれた。

 

リィエン「こ、これは何ある…?」

 

シェリー「何かおかしいわ!」

 

恵「これが、清麿君の言ってた大変な事…!」

 

清麿「このままだと俺達まで…!」

 

 二つの術が吸い込まれるのと同時にブラゴペアとウォンレイペアはおろか、ガッシュ達まで光に吸い込まれていった。




これで今回の話は終わりです。
アニメオリジナルの狭間の世界編のこの話はガッシュとブラゴの激突により、双方のペアが狭間の世界に飛ばされるのですが、今小説のガッシュは既に魔界の王を決める戦いを通してブラゴの事をよく知っている上に今の時点でのガッシュとブラゴの実力差もすさまじいので、アニメのマジロウというガッシュの友達になった魔物がブラゴによって魔界に帰された事に激怒し、ブラゴに挑むという展開がやりづらく、ブラゴと戦う相手をウォンレイに変更し、戦いのきっかけもよりシンプルな誤解にしました。
ちなみに、アニメオリジナルの魔物のニャルラトとマジロウは今小説では70名になったという知らせの前に脱落しています。
今回、清麿と恵は中国系の服を着たまま仲間達と共にウォンレイとブラゴの戦闘を目撃して一緒に狭間の世界に飛ばされています。今小説の狭間の世界編では今回のゴライオウ・ディバウレンのように本来ならファウード編で出る一部の呪文が先行解禁されます。
次の話は狭間の世界が舞台です。


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LEVEL43 狭間の世界

???

 ディオガ・グラビドンとゴライオウ・ディバウレンのぶつかり合いにより、激突した二組とその戦いを見ていたガッシュ達は見知らぬ世界へ飛ばされてしまった。黒い光はある建物の近くへ、6つの光は遠くの方へ飛ばされた。

 

???「ようこそ、人間界の客人達。魔界との狭間の世界へようこそ。さて、客人はいずこへ?」

 

兵士「はっ、一組は城内に。もう一組と巻き添えになった5組は北西部平原に着地したと思われます」

 

???「余計な連中を巻き添えにしたが、何も問題はない。クロガネ」

 

クロガネ「はっ」

 

???「こちらから出迎えよう」

 

クロガネ「はっ」

 

 その言葉通り、ブラゴペアは城内に、他の6組は北西部の平原に着地した。

 

清麿「ここはどこだ……?」

 

 先に起きた清麿は起き上がろうとしたが、他の面々も近くにいたものの、恵に至っては気を失ったまま自身に抱き付いていた事に気付いて顔を赤くした。

 

清麿「(気を失っている恵さんの顔も綺麗だ…。って、いかんいかん!起こさないと!)恵さん、起きて!」

 

恵「…んんっ、清麿君…?あっ!?」

 

 未知の世界に飛ばされる際、清麿に抱き付いたまま気を失っていた事に恵は気づき、思わず顔を赤くした。

 

恵「清麿君、さっきの状態はわざとじゃなくて…」

 

清麿「と、とりあえずみんなを起こそう」

 

 2人はガッシュや他のみんなを起こした。

 

コルル「ここはどこなのかな?」

 

ウォンレイ「少なくともどこかへ飛ばされたのは間違いないみたいだ」

 

パティ「こういう時こそアンサーなんとかの出番よ。ガッシュちゃんのパートナー、さっさとアンサーなんとかっていう力を使いなさいよ」

 

清麿「その前にリィエンとウォンレイに聞きたい事がある。どうして二人はブラゴとシェリーの2人と戦っていたんだ?」

 

リィエン「それは、さっきの戦いの少し前の事ある…」

 

 

 

 

 

回想

 リィエンとウォンレイは畑仕事を終え、光の出ている場所へ向かおうとしていた。。

 

リィエン「あの光、少し前からよく出てるけど、何あるかな?」

 

ウォンレイ「私もあんな光は魔界でも見た事がない。あの場所は近いからその場へ行って確かめてみるか?」

 

リィエン「そうするある!」

 

リィエン『私達の住んでいる村の近く光が出たから、畑仕事が終わってからウォンレイと私は向かおうとしたけど、そこにブラゴとシェリーが来たある』

 

ブラゴ「おい。お前、ウォンレイとか言ってたな。戦いそっちのけでパートナーの女と何をしている?」

 

ウォンレイ「ただ、私はリィエンと共にあの光を見に行くだけだ」

 

ブラゴ「畑の様子をたまたま見てたが、お前とそのパートナーはお互いに現を抜かし合う甘ちゃんコンビのようだな。そんなんじゃ絶対に王になんかなれんぞ」

 

リィエン「…ブラゴ、さっきの言葉を取り消すある!」

 

ブラゴ「何…?」

 

ウォンレイ「私とリィエンは強い絆で結ばれている!私に対する暴言は聞き流してもいいが、リィエンへの暴言は絶対に許さん!覚悟しろ、ブラゴ!」

 

シェリー「(少しブラゴの対応はまずかったわね…。ある程度王の風格は備わってもまだあの2人の恋を理解していないようだわ…)」

 

ブラゴ「ふん、どっちにしろてめえともいずれは戦うんだ。てめえらがその気なら受けて立つ!」

 

 

 

 

リィエン「といった感じで私達はブラゴと戦っていたある」

 

しおり「確かにブラゴももう少し労わるような事を言うべきだったわね」

 

パティ「話が終わったのなら、すぐにアンサーなんとかを使いなさいよ!」

 

清麿「アンサー・トーカーだ。わかったから、ちょっと待ってろ」

 

 自分達のいる未知の世界がどこなのか清麿はアンサー・トーカーで答えを求めた。すると、驚きの答えが出た。

 

サンビーム「どこなのかわかったのか?」

 

清麿「……今、俺達のいる世界は…人間界と魔界の間にある世界、狭間の世界だ!」

 

 その言葉に一同は衝撃を受けた。

 

ガッシュ「(狭間の世界だと!?確か、父上が言っていた罪人の流刑地のあの狭間の世界なのか!?)」

 

恵「ガッシュ君は王の特権とかを知ってたりして割と物知りだけど、狭間の世界も知ってるの?」

 

ガッシュ「来たのは初めてなのだが、父上から聞いた事はあるのだ。この狭間の世界は悪い事をした魔物が追放される土地なのだと」

 

コルル「じゃあ、私達って王を決める戦いから脱落したの?」

 

ティオ「そんな訳ないでしょ!本が燃えたらこんな世界じゃなくて魔界に送り返されるのよ。第一、まだ私達の本は燃えてないわ」

 

コルル「でも、戻る方法がわからないなら、私達は脱落したも同然だよ」

 

 元の世界に戻れない事に一同の不安は広がっていた。

 

清麿「とにかく、このままじっとしていても元の世界に戻る事なんかできない!魔物を見つけたら聞き込みでもしながら元の世界に戻る方法を見つけよう!」

 

 ガッシュ達は煙が出ている方へ向かった。

 

清麿「これほど純度の高い鉄の鉱石は見た事がないな」

 

パティ「どうしてそういうのがわかるの?私達には普通の石にしか見えないわよ」

 

リィエン「私達にはそういったのはわからないのに清麿は凄いある」

 

ガッシュ「煙が出ている方に行けば住んでおる魔物に会えるであろう」

 

 

 

 

 一方、ブラゴとシェリーも起き上がった。

 

ブラゴ「こ、ここは…?」

 

シェリー「ブラゴ」

 

ブラゴ「どうやら、とんでもない所に来ちまったな」

 

シェリー「どういう事?」

 

ブラゴ「考えてる場合じゃなさそうだ」

 

 城から魔物達がぞろぞろと出てきた。

 

シェリー「一体、どういう事?」

 

 戦闘態勢に入ったブラゴペアを何者かは見物していた。

 

???「ふふふ、ここはもういい、お前は別の一組を城へ連れてこい」

 

クロガネ「巻き添えになった連中はどうしますか?」

 

???「お前の判断に任せる」

 

クロガネ「はっ!」

 

???「いよいよだ…ふふふっ」

 

 ブラゴと魔物達の睨み合いは続いていた。

 

ブラゴ「シェリー」

 

 魔物達はシェリーが本を持っている事に驚いていた。

 

兵士A「本が!」

 

兵士B「持ってる!」

 

シェリー「レイス!」

 

 何体かをレイスで一層した。

 

???「ふふふっ、ようこそ、狭間の世界へ。ようこそ、罪人の世界へ」

 

ブラゴ「狭間だと?」

 

シェリー「罪人の世界?」

 

マエストロ「私の名はマエストロ。私はこの世界を治める王たる者!」

 

 マエストロの自己紹介と共に歓声が上がった。

 

 

 

 

狭間の世界

 その頃、ガッシュ達は煙の方へ進んでいた。

 

パティ「これ、落ち葉じゃないわね」

 

清麿「多分、石の結晶の森なんだろう」

 

恵「なんか、生き物とかもいなくて不気味だわ」

 

 そんな中、空が曇って石の雨が降ってきた。

 

ガッシュ「石の雨なのだ!」

 

清麿「バカ、とにかく逃げるんだ!」

 

 一同は急いで煙の方を目指した。そして、途中の橋の下で雨宿りしていた。その際に男性陣は女性陣の代わりに石に多く当たってしまい、タンコブがたくさんできていた。

 

恵「清麿君、私の代わりに石にたくさん当たって大丈夫?」

 

清麿「恵さんに怪我がないならどうって事ないよ…」

 

ティオ「私達はガッシュのマントに隠れて何とかなったけど…」

 

ガッシュ「ウヌゥ、鉄の傘があればよかったのだが…」

 

ウルル「(そういう次元じゃないと思うぞ…)」

 

コルル「ねえ、あそこに村があるよ!」

 

 コルルの指差した方には村があった。

 

しおり「みんな、鉄の傘を持ってるわね」

 

清麿「マジかよ…」

 

リィエン「とりあえず、あそこで情報収集をするある」

 

 橋の向こうに見える村でガッシュ達は情報収集する事にした。

 

 

 

 

 一方、ブラゴペアはマエストロと会話していた。

 

マエストロ「狭間の世界。人間界と魔界の隙間にある世界」

 

シェリー「な、何ですって!?」

 

マエストロ「ここは罪人の流刑地。魔界の罪人が流されてくる見捨てられた土地なのだ。ここは最果ての地。空に見えるのは元の世界を示す印。しかし、ここは人間界へも魔界へも誰も戻る事はできぬ世界。つまり、お前達はもう…」

 

シェリー「私達は…」

 

ブラゴ「王を決める戦いから、脱落したというのか!!?」

 

マエストロ「ふっ、その通り」

 

 

 

 

狭間の世界

 その頃、ガッシュ達は村人から情報収集をしていたが、いまだに元の世界へ帰る方法は見つからなかった。

 

清麿「みんなで情報収集をしても有力な情報は得られないとはな…」

 

パティ「こうなったら最後の手段よ。ガッシュちゃんのパートナーのアンサーなんとかを使うのよ」

 

しおり「でも、アンサー・トーカーでも答えが出せない時もあるそうよ。もし、元の世界へ帰る答えが出なかったらどうするの?」

 

パティ「うぅっ…」

 

サンビーム「それに、清麿への負担も大きいんだ。今は安易に使わずに休ませて、いざという時に備える必要がある」

 

老人「お前さん達、早くここを離れた方がよさそうじゃぞ」

 

ウルル「一体どういう…」

 

???「いたぞ!こっちだ!」

 

 外を見てみると、そこには兵士と思わしき魔物がいた。

 

ウォンレイ「敵に見つかってしまったようだ!」

 

清麿「ここは逃げるぞ!」

 

 一同は逃げたが、進んだ先で囲まれてしまった。

 

清麿「囲まれたか!」

 

リィエン「こうなったら、戦うある!」

 

 パートナー一同は一斉に本を出した。

 

兵士A「本だ!」

 

兵士B「本を持ってる!」

 

ティオ「周りの魔物、何かに驚いているよ」

 

清麿「それにおかしいぞ、奴等は術で攻撃してこない」

 

恵「術で攻撃して来ないのにも何かあるんじゃないかしら?」

 

清麿「その可能性は十分にあり得る」

 

ガッシュ「皆の者、中央突破なのだ!」

 

サンビーム「まずは私達から行かせてもらおう。ウマゴン、清麿にツボを押してもらってから出た新しい呪文を試すぞ!」

 

ウマゴン「メル!」

 

サンビーム「ディオエムル・シュドルク!」

 

 ウマゴンは炎の鎧を纏った。しかし、炎を制御できずに近くにいた面々が熱がっていた。

 

サンビーム「あちちちっ!!」

 

パティ「熱いじゃない!もし、あんたの炎のせいで私達の本が全部燃えたらどうするつもりよ!!」

 

 自分のせいでガッシュ達の本が燃えたらと想像したウマゴンは体育座りして落ち込んでしまった。

 

サンビーム「まさか、新しく覚えた術がこんなに危険な術だったとは…」

 

ガッシュ「ウマゴン、今は落ち込むでない!」

 

パティ「だったら、私の水で吹っ飛ばしてあげるわ!」

 

ウルル「アクルガ!」

 

 アクルガで進行方向の先にいた兵士達は一気に吹っ飛ばされた。

 

パティ「もう、ガッシュちゃんのパートナーのお陰で私の術は水場が近くにあったらウルルの心の力の消費を抑える事ができたり威力を上げられることがわかったのにどうして水場が近くにないのよ!」

 

ウルル「そう言っても戦いはいつも水場の近くでやるとは限りませんよ」

 

サンビーム「さぁ、早く行くぞ!」

 

兵士「させるか!」

 

リィエン「ハイ~~ッ!!」

 

 襲い掛かった兵士はリィエンに蹴り飛ばされた。

 

兵士「この女、人間の癖に強いぞ!」

 

リィエン「次は誰がやられたいある?」

 

 人間なのに強いリィエンに思わず兵士達は後ずさりした。

 

清麿「みんな、今の内に行くぞ!」

 

 

 

 

 その頃、ブラゴペアは…。

 

マエストロ「一緒に来い。お前達を客人として迎えようじゃないか。」

 

ブラゴ「何?何が言いたい?」

 

マエストロ「私ならば、お前達を元の世界に帰す事ができるという事だ」

 

 それから、マエストロは配下の報告を聞いていた。

 

配下「マエストロ様、クロガネの部隊は予定通りに展開。よい報告ができるかと」

 

マエストロ「それはいい。客人を呼んでこい」

 

配下「ブラゴ様でございますか?」

 

マエストロ「そうだ」

 

配下「わかりました。すぐに呼んでまいります」

 

マエストロ「おっと、忘れてた。奴だけでいい」

 

 客人として迎えられたブラゴペアはある部屋にいた。

 

シェリー「ブラゴ、本当にこれでよかったのかしら?」

 

ブラゴ「どういう意味だ?」

 

シェリー「あのマエストロという魔物を信用していいか。人間界に戻る方法を知ってると言うけど、すんなり信用するのは危険だと思う」

 

ブラゴ「俺達はこの世界についてほとんど何も知らない。情報を得るにはこれが最良の選択だ。相手がどうあれな」

 

 そんな中、ノックする音が聞こえた。

 

配下「ブラゴ様、マエストロ様がお呼びでございます。シェリー様はここでお待ちを」

 

 ブラゴが行ったあと、シェリーは考え事をしていた。

 

シェリー「(あの紫の本の子達も来ているのかしら…?)」

 

 

 

 

 

狭間の世界

 一方のガッシュ達は一応、追っ手から逃げきった。

 

ウォンレイ「何とか追っ手から逃げる事ができたな」

 

コルル「清麿お兄ちゃん、私達ってどうして追われてるの?」

 

清麿「どういう訳かは知らないが、俺達はお尋ね者らしい。ガッシュ、なぜ狭間の世界の魔物達は術を使わないんだ?お前は何か知ってるのか?」

 

ガッシュ「使わないのではなく、使えないのだ。ここ狭間の世界では本を持つ魔物だけが術を使えると父上から聞いたのだ」

 

恵「だから、あの魔物達は本を持ってる私達に驚いていたのね」

 

ティオ「って事は…自分達の本を持っていればパートナー抜きで術が出せるのね」

 

ガッシュ「その通りなのだ」

 

パティ「でも、片方手が塞がっちゃうから不便よね~」

 

ティオ「恵と一緒に戦ってきたから、やっぱりここでも恵に本を持ってもらった方が落ち着くわ」

 

恵「そうね」

 

ウォンレイ「私もティオと同じだ。リィエンに持ってもらった方が落ち着く」

 

 パートナーと一緒に戦ってきた時間が長かったせいで本を持てば魔物だけで術を出せるとわかってもガッシュ達はパートナーに本を持ってもらう方が落ち着くのであった。そんな時、何かが落ちてきてガッシュ達はそれをかわした。上を向くと、そこにはクロガネ率いる部隊がいた。

 

サンビーム「見つかってしまったか!」

 

清麿「どうやら、そうみたいだ」

 

クロガネ「人間界より来た魔物と人間達、マエストロ様の所へ連行する!無駄な抵抗はやめて投降しな!」

 

パティ「誰がはい、投降しますってすんなり言うとでも思ってるの!?」

 

ティオ「私達はこんな何もない世界に来てしまってムシャクシャしてるのよ!あんた達の首も絞めてやるわ!」

 

清麿「(マエストロ?誰だ?そいつは…)」

 

クロガネ「このクロガネ様に向かって生意気に首を絞めてやるとか言ってんじゃねえ!お前達はただの道具だ!口答えする事すら許されてねえんだよ」

 

ガッシュ「私達が道具だと…!」

 

クロガネ「ああ?それがどうした?」

 

コルル「その言葉、取り消して!私達は道具なんかじゃない、ちゃんと自分の考えを持って生きている魔物とそのパートナーよ!」

 

ガッシュ「そこをどくのだ!私達は元の世界に帰る!」

 

ウォンレイ「どかぬというのであれば、お前達を蹴散らすぞ!」

 

ウマゴン「メルメルメ~!」

 

クロガネ「どうやら、この軍勢が見えてないらしいな。お仕置きだ、あばらの2、3本覚悟しろや!」

 

清麿「覚悟するのはお前達の方だ!」

 

恵「私達は共に戦う魔物と共に幾多の戦いを乗り越えた!」

 

しおり「その戦いはどれも厳しかったけど…!」

 

ウルル「乗り越える度に魔物や仲間との絆も深まった!」

 

サンビーム「仲間との絆はただ、数で来るだけのお前達よりも遥かに強固なものだ!」

 

リィエン「さぁ、行くあるよ!」

 

 パートナー一同は本を出した。それに、クロガネの舞台は驚いていた。

 

クロガネ「落ち着け、相手はたかが11人とおまけのペット1匹だ」

 

ウマゴン「メルメルメ~!」

 

サンビーム「ウマゴンをおまけのペット呼ばわりしたな!お前達を丸焼きにしてやるぞ!」

 

クロガネ「しゃらくせえ、攻撃だ!」

 

兵士「グランバオもどき!」

 

 兵士達はバズーカを発射した。

 

清麿「(も、もどき…?)恵さん!」

 

恵「セウシル!」

 

 グランバオもどきはセウシルによって軽く防がれた。

 

リィエン「もどきって…何ある…?」

 

サンビーム「恐らく、ガッシュが言った通り奴等は術が使えないから術を模した武器で攻撃しているんだろう」

 

清麿「よし、全員コンビネーションで奴等を蹴散らすぞ!」

 

 ガッシュ達は散開した。

 

兵士「ガンズ・ガロンもどき!」

 

 鉄球をガッシュとティオはかわした。

 

ティオ「ガンズ・ガロン!?あ~、何だかムカついてくるわ!ガッシュ、徹底的にやっつけてやるわよ!」

 

ガッシュ「ウ、ウヌ…」

 

恵「(マルスが使っていた呪文の名前を聞いてマルスの事を思い出したのね…)」

 

清麿「ガンレイズ・ザケル!」

 

恵「ギガ・ラ・セウシル!」

 

 ギガ・ラ・セウシルの中で電撃弾は跳ね返り、閉じ込められた兵士達に襲い掛かった。

 

しおり「ゼルク!」

 

ウルル「アクロウク!」

 

 コルルとパティは鋭い爪で次々と兵士達の鎧を両断していった。

 

しおり「ジオ・ラ・ゼルド!」

 

 攻撃の締めに地面から爪が出てきて兵士達を一掃した。

 

リィエン「ハイ~~~ッ!!」

 

ウォンレイ「ふんっ!!」

 

 ウォンレイは呪文を使わずにリィエンと共に素手で蹴散らしていった。

 

サンビーム「たくさんいる敵をやっつけるにはあの呪文を使うしかないか…。ディオエムル・シュドルク!」

 

 再びウマゴンは炎の鎧を纏ったが、まだ制御ができないため、サンビームは熱がった。

 

サンビーム「あちちちっ!やっぱり、またこうなるのか…!」

 

ウマゴン「メル…」

 

サンビーム「清麿、このウマゴンの術の炎は制御可能なのか答えを出してくれ!」

 

清麿「初めて見たときに答えは出した!この術の炎はウマゴン次第で制御可能だ!」

 

サンビーム「そうか。ウマゴン、この術はウマゴン次第で制御が可能なんだ」

 

ウマゴン「メル…メルメルメ…」

 

サンビーム「心配するな、炎のコントロールは私の心の力のコントロールでもある。私も一緒に加減するから安心して戦うんだ」

 

ウマゴン「メ、メル……」

 

サンビーム「私に怯えるな、ウマゴン!そして炎の制御を難しく考えるな!敵にだけ闘志を燃やすんだ!」

 

兵士A「ギガノ・ビレイドもどき!」

 

兵士B「リグロセンもどき!」

 

 兵士達は鞭でウマゴンに攻撃しようとした。サンビームの言葉通り、ウマゴンは敵にだけ闘志を燃やした結果、向かってきた敵にだけ炎をぶつける事に成功した。

 

サンビーム「いいぞ!その調子で扱いに少しずつ慣れていくんだ!」

 

 少しずつだが、ウマゴンは炎を制御できるようになった。

 

兵士「オルダ・ビレイロンもどき!」

 

 今度は鞭で攻撃した。

 

パティ「鞭には鞭で返してあげるわ!」

 

ウルル「オルダ・アクロン!」

 

 水の鞭で兵士達は一掃され、リィエン以外のパートナー一同は兵士達の武器を持った。

 

恵「あなた達の武器、使わせてもらうわよ!」

 

 パートナー一同も持った武器で敵を攻撃した。ガッシュ達の猛攻で半数近くの兵士がやられた。

 

清麿「(そういえば、リィエンやウォンレイが敵を蹴ったりした時の音には聞き覚えがあるな。もしかすると…!)」

 

兵士A「つ、強い…、強すぎる…!」

 

兵士B「やはり、本を持つ者相手じゃ…!」

 

クロガネ「ビビってんじゃねえ!態勢を立て直せ!2班3班は防御に専念、4班5班は援護攻撃、残りは突撃!」

 

 兵士達はクロガネの指示通りに動いた。

 

クロガネ「全く、たかが11人と1匹にここまで手古摺るとはな…」

 

清麿「この勝負、俺達の勝ちだ!」

 

クロガネ「何だと!?何を根拠にそんな事を!」

 

清麿「お前達の鎧は鉄でできてるんだろ?それが仇となったな!ジケルド!」

 

 清麿はアンサー・トーカーを使わずに自身の頭脳で兵士達の鎧が鉄でできているとわかり、兵士達にジケルドをぶつけて動きを封じた。

 

しおり「どんどん敵が動けなくなっていくわよ!」

 

ウォンレイ「これなら、私達の体力やパートナーの心の力の消耗も抑えられるな」

 

クロガネ「くそっ…!」

 

ティオ「口ほどにもないわね。この程度の実力で私達に勝てるとでも思ってたの?」

 

クロガネ「この俺様を雑魚と一緒にするんじゃねえ!」

 

ガッシュ「雑魚だと…?お主、仲間を何だと思っている!?」

 

クロガネ「おいおい、何言ってんだ?こいつらも足引っ張ってるだけ道具だ。仲間なんかじゃねえ、雑魚だ、雑魚」

 

清麿「こいつら、性根が腐ってるようだな…!」

 

恵「清麿君、私達の強さを嫌という程見せてあげましょう!」

 

クロガネ「リグロセンもどき!」

 

 ワイヤーによる攻撃をガッシュ達はかわした。その隙にウォンレイは懐に飛び込んだ。

 

リィエン「ガンズ・バウレン!」

 

ウォンレイ「うおおおおっ!!」

 

 ウォンレイの連続鉄拳を受けてクロガネは鎧のあちこちが凹んだ他、顔もタンコブだらけになっていた。

 

クロガネ「この野郎が…!ディノ・リグノオンもどき!」

 

 別のフックつきワイヤーでクロガネは巨大な岩を持ち上げた。

 

ウルル「テオアクル!」

 

 激流であっけなく岩は砕かれた。

 

クロガネ「そ、そんな!」

 

清麿「ジケルド!」

 

 クロガネが岩を砕かれた事に気を取られている隙にクロガネに近づいていたガッシュはジケルドをぶつけた。

 

清麿「だから言っただろ、俺達の勝ちだと」

 

クロガネ「何っ!?」

 

サンビーム「お前の切り出した岩は鉄を多く含む鉄鉱石、いわば鉄の塊!砕け散った鉱石は全てお前に来るぞ!」

 

 サンビームの説明通り、岩はクロガネに来た。

 

サンビーム「グルービーだ、清麿、みんな!」

 

パティ「こいつには色々と聞かなくちゃいけないでしょ?」

 

清麿「そうだ」

 

 ガッシュ達はクロガネから情報を聞いていた。

 

清麿「つまり、お前に俺達を城へ連れ帰るように命令したマエストロって奴はここからずっと北に行った所にある城にいるんだな?」

 

クロガネ「ま、そういう事だ」

 

リィエン「そのマエストロという奴に会って人間界に帰る方法がないか聞き出すある」

 

コルル「この世界の王様なら、きっと帰れる方法を知ってるかもしれないね」

 

ウォンレイ「では、すぐに向かおう」

 

クロガネ「やめとけよ…お前らの術じゃマエストロ様に勝てやしねえよ」

 

パティ「生憎、私達はさっきの戦いは本気で戦ってないのよ。どんな敵だろうとやっつけてやるわ!」

 

 ガッシュ達はマエストロの城へ向かった。

 

クロガネ「ふん、奴等…、自らマエストロ様の城へ向かっていきやがった…」

 

 

 

 

 マエストロの城では、マエストロは配下から報告を聞いていた。

 

配下「マエストロ様」

 

マエストロ「何事だ?」

 

配下「クロガネの部隊が連絡を絶ちました」

 

マエストロ「…そうか…」

 

配下「敵の一団はマエストロ様に会うためにこちらに向かっているとの情報も入っております。くれぐれも」

 

マエストロ「ふふふっ、ははははっ!全ては私の描いた筋書き通り。全て私の手に!時は来た!」

 

 今、マエストロの邪悪な野望が動き出そうとしていた。

 




これで今回の話は終わりです。
今回は狭間の世界での雑魚敵達との戦いを描きましたが、アニメのようにガッシュとブラゴだけでは寂しいので、ティオ達も出しました。
今回、ディオエムル・シュドルクが出ましたが、狭間の世界編ではまだサンビームが乗れるようにはならず、ファウード編のカルディオ戦で乗れるようになります。
今小説のガッシュが狭間の世界の知っているのは、前の魔界の王であるガッシュとゼオンの父親なら狭間の世界の事も知っていると考え、父親から聞いたという事にしました。
次の話はウォンレイとブラゴの激突とマエストロ戦の前半です。


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LEVEL44 マエストロの野望

中国

 その頃、中国にナゾナゾ博士とマジョスティック12、キャンチョメペアが来ていた。

 

フォルゴレ「博士、ここに清麿達が来ていたのですが?」

 

ナゾナゾ博士「うむ…ここで一体、何が起こったのか……?」

 

???「ねえ、あなた達、恵ちゃんや他の人達はどこに行ったか知らないの?」

 

 ガッシュ達の行方がわからず、どうしようもないナゾナゾ博士達の所へ恵のマネージャーが来た。

 

キャンチョメ「誰?」

 

マネージャー「恵ちゃんのマネージャーよ。あなた達は恵ちゃん達がどこへ行ったか知らないかしら?」

 

ナゾナゾ博士「申し訳ありません、我々も探していてどこにいるのか掴めておりません…。ところで、恵君達が消える前に何か変わった事はなかったのでしょうか?」

 

マネージャー「変わった事?そう言えば…恵ちゃん達が見当たらなくなる前にスタッフの誰かが銀色の髪の男と肌の色が悪くて目つきの悪い男が戦っているのを見たというのを聞きました」

 

ナゾナゾ博士「(銀色の髪の男と目つきの悪い男…恐らく…ウォンレイとブラゴか…!きっと、ウォンレイとブラゴの戦いの最中に何かがあったとしか思えん…!)」

 

フォルゴレ「恵のマネージャーさん、このイタリアの英雄、パルコ・フォルゴレが必ずや消えた恵とその同行者達を探し出してみます!」

 

キャンチョメ「(手掛かりもないのにそんな事を言って大丈夫なのかな…?)」

 

 

 

 

狭間の世界 マエストロの城

 一方、ガッシュ達は北へ進み、マエストロの城に近づいていた。

 

ティオ「本と同じマークが二つあるよ」

 

恵「あそこに何かありそうだわ。ところで、マエストロって何者なのかしら?」

 

ガッシュ「(そう言えば、私が経験した戦いにおいても参加者であったマエストロは戦いが終わっても失踪したままであったから死んだのではないかと囁かれていたのう…。もしや、狭間の世界の王のマエストロが参加者のマエストロと同一人物であったのであれば私の元いた時代のマエストロは今頃…!)」

 

清麿「ガッシュはマエストロを知っているのか?」

 

ガッシュ「詳しくは知らぬが、魔界の王を決める戦いの参加者であるのだ」

 

ティオ「ええ~~っ!!マエストロが王を決める戦いの参加者!?」

 

しおり「参加者の名前を把握してるのは流石ね」

 

恵「でも変よ。魔界の王を決める戦いの参加者のガッシュ君達は本と共に人間界に送り込まれたのよ。狭間の世界の王のマエストロが魔界の王を決める戦いの参加者なら、どうして人間界に来てないのかしら?」

 

清麿「そこが引っかかるな…」

 

サンビーム「本人に聞けばわかるんじゃないのか?」

 

清麿「そうした方が手っ取り早いな」

 

ウルル「ですけど、色々と見張りがいるんですよ。どうやって侵入しますか?」

 

パティ「正面突破がいいんじゃない?どうせこっそり忍び込んでも戦闘は避けられないし、あいつらは術が使えないから、私達の方が有利なのよ」

 

ウォンレイ「私やリィエンとしては早く人間界に帰りたいのだが…清麿はどういった侵入方法をとるんだ?」

 

清麿「…仕方ない、パティの言う通り正面突破と行くか!」

 

 一同は突っ込んでいった。

 

兵士「侵入者が来たぞ!」

 

 ガッシュ達が来たのをマエストロは見ていた。

 

マエストロ「ふっ、飛んで火にいる夏の虫か…」

 

 そこへ、自分の本を持ったブラゴがやってきた。

 

ブラゴ「やはり、奴等もこっちに来ていたか」

 

マエストロ「どうやら、手に入れたようだな。自由を。早速手に入れた力で腕慣らしをするといい」

 

 それから、マエストロは赤い魔界のマークを指差した。

 

マエストロ「あれが、人間界に通じる扉だ。あれを開くには奴等のうちの誰か1人を倒さなければならない」

 

ブラゴ「どういう事だ?」

 

マエストロ「本が燃やされた時、魔物を魔界に送り返すために力が生まれる。その力を利用すればあの扉を開く事ができる。それが、お前が元の世界に戻る事ができるたった一つの方法。そして、扉を通る事ができるのはたった一組の魔物というわけだ」

 

ブラゴ「やけに親切だな」

 

マエストロ「大事な客を無下にもできんだろ?」

 

ブラゴ「いいだろう。奴等とはいずれ、戦わなければならなかった」

 

 そのままブラゴはマエストロの部屋を去った。そのブラゴの姿をマエストロは嘲笑っていた。ブラゴが階段を下りていると、シェリーが待っていた。

 

シェリー「待ちなさい、ブラゴ!戦いに行くつもりね、だったら、本を渡しなさい!私も行くわ!」

 

ブラゴ「お前は来るな!部屋に戻っていろ」

 

 シェリーを突き放してブラゴはそのまま向かっていった。

 

 

 

 その頃、ガッシュ達は破竹の勢いで敵をなぎ倒しながら進んでいた。

 

清麿「ガンレイズ・ザケル!」

 

ウルル「ガンズ・アクル!」

 

しおり「ゼラルセン!」

 

恵「ギガ・ラ・セウシル!」

 

 ギガ・ラ・セウシルの中で跳ね返る攻撃を受け続けて兵士達は倒れてしまった。

 

リィエン「ゴウ・バウレン!」

 

サンビーム「ディオエムル・シュドルク!」

 

 ウォンレイの鉄拳1発で殴られた兵士は後ろにいた兵士を巻き込みながら大きく吹っ飛んでいった。ウマゴンを襲っていた兵士達はウマゴンの炎で火傷し、戦いどころではなくなっていた。

 

ウォンレイ「ウマゴンのお陰で道ができたぞ!」

 

ガッシュ「このまま一気に城の中へ進むのだ!」

 

サンビーム「(成長したな、ウマゴン。友のために自分から進んで突撃するとは…)」

 

 ガッシュ達はそのまま城へ突入した。一方のシェリーは部屋の中にいたきりだった。

 

シェリー「ピアノにはいい思い出がない。本当に辛かった。でも、ブラゴ、あなたとの戦いはどんなに辛くても乗り越える事ができた。それなのに……」

 

 ガッシュ達は城を突き進んでいた。

 

コルル「私達はどこを進んでいるの?」

 

ガッシュ「わからぬ…。だが、このまま突き進むしかない!」

 

 そのまま突き進んでいった。一方のマエストロは…。

 

マエストロ「全ては、計画通りだ」

 

 突き進んだガッシュ達が来たのはコイルがある所だった。

 

パティ「これは何よ」

 

清麿「電磁石のコイルのようだが、こんなものがなぜ…」

 

???「ようこそ、本を持つ者よ」

 

 声がした方を向くと、上の階の窓にマエストロがいた。

 

マエストロ「我が名はマエストロ。この地を治める王」

 

ガッシュ「あの者がマエストロ…」

 

ティオ「私達は人間界に帰りたいのよ!さっさと帰る方法を教えなさいよ!」

 

パティ「教えないのならボコボコにしてやるわ!」

 

清麿「まさか、俺達は誘い込まれていたのか?」

 

 そう考えていると、ブラゴが来た。

 

ガッシュ「ブラゴ!」

 

しおり「ブラゴが本を持っているわ!」

 

ブラゴ「覚悟はできているか?お前ら」

 

清麿「待て!俺達は今、戦っている場合じゃないだろ!?」

 

 そう言ってると、ウォンレイペアが前に出た。

 

ガッシュ「ウォンレイ、リィエン!」

 

リィエン「シェリーはどうしたあるか!?」

 

 リィエンの問いにブラゴは答えなかった。

 

リィエン「まさか…、シェリーをこの世界においていくつもりあるか!」

 

ウォンレイ「見損なったぞ、ブラゴ!お前はパートナーを大事にしてると思っていたら、自分だけが帰るために見捨てるとは!断じて許さん!」

 

ブラゴ「ウォンレイ、俺が気に入らんのなら、ここで決着を着けるぞ!俺もてめえとは決着を着けたかったからな!」

 

ウォンレイ「臨むところだ!」

 

清麿「待て、ウォンレイ、ブラゴ!今は争っている場合じゃない!戦うとすれば、マエストロだろ!?」

 

リィエン「清麿達は手出し無用ある!清麿達を私達の戦いに巻き込んでしまった以上、けじめをつけるためにブラゴをやっつけるある!」

 

 ウォンレイとブラゴは再びぶつかり合った。

 

ティオ「また2人とも戦うの!?急いで止めよう!」

 

サンビーム「迂闊に介入してはいけない。介入すると双方とも黙ってはいないだろう」

 

コルル「私達は見てる事しかできないのかな?」

 

 ウォンレイとブラゴの戦いをガッシュ達は見ている事しかできなかった。

 

ブラゴ「てめえはなぜ自分で本を持たん!?」

 

ウォンレイ「私は例え本を持てば自分で術を出せる世界でもリィエンに本を持ってもらい、術を出してもらう!パートナーを見捨てたお前にはわからんだろう!」

 

ブラゴ「てめえの判断だけで勝手に決めつけるんじゃねえ!」

 

 お互いにぶつかり合った。術同士がぶつかり合うとコイルが光った事に清麿達は気づいた。

 

パティ「あのへんなもの、光ったわよ」

 

ウルル「何か仕掛けなのでしょうか?」

 

清麿「(なぜ光ってるんだ?何か仕掛けでもあるとでもいうのか……。だが、アンサー・トーカーはギリギリまで使わないでおこう…)」

 

 一方のウォンレイとブラゴの戦いはウォンレイが格闘戦を得意としている事もあり、ブラゴは意外と手古摺っていた。

 

ウォンレイ「流石は優勝候補だ…。一筋縄ではいかない…!」

 

ブラゴ「アイアン・グラビレイ」

 

リィエン「レド」

 

???「マグネシルド!」

 

 ブラゴの攻撃をウォンレイの足の速さでかわそうとしたが、突如としてバリアがウォンレイペアの周りに張られた。

 

ウォンレイ「ティオが張ってくれたのか?」

 

ティオ「私じゃないわよ」

 

リィエン「じゃあ、誰が張ったあるか?」

 

 張ったのはマエストロだった。

 

ブラゴ「本か…。何のつもりかは知らんが、この俺を舐めるな!」

 

 ブラゴはさらに重力を強くしたため、マグネシルドが歪んだ。それと同時にコイルからの電気が強くなった。

 

マエストロ「よし、その調子だ」

 

 その頃、シェリーはピアノを弾きながらこれまでの事を思い出していた。

 

シェリー「そう、私はあなたと約束した。なのに…なぜ?ブラゴ、なぜ?」

 

 そんな中、シェリーはある事に気付いた。

 

シェリー「そうか…、ブラゴ!」

 

 外での戦闘は続いていた。

 

ブラゴ「喰らえ、ディオガ・グラビドン!」

 

リィエン「こっちも強力な術で行くある!ゴライオウ・ディバウレン!」

 

 再びディオガ・グラビドンとゴライオウ・ディバウレンがぶつかり合った。二つの術がぶつかり合った事でコイルからさらに電気が発せられて赤い魔界のマークに送られた他、ディオガ・グラビドンとゴライオウ・ディバウレンが消えてしまった。

 

リィエン「そんな…」

 

ウォンレイ「技が…消えた…?」

 

 二つの術は消えた後、赤い魔界のマークに吸い込まれ、赤い魔界のマークから何かが見えていた。

 

清麿「あれは一体…!?」

 

???「あれは…扉だ」

 

 声と共にマエストロが来た。

 

マエストロ「しかも人間界に通じる扉ではなく、魔界へ通じる扉だ」

 

サンビーム「魔界だと!?」

 

マエストロ「この扉を開けるためにお前達を呼び寄せ、それぞれの最大呪文の力を利用させてもらったのだ。まぁ、余計な連中が来てしまうというアクシデントも発生したがな」

 

ティオ「それが私達ね」

 

恵「本を持っているという事は…」

 

ブラゴ「貴様も100人の魔物の1人か」

 

マエストロ「マグネルガ!」

 

 マエストロの攻撃でブラゴは吹っ飛ばされた。

 

マエストロ「口の利き方に気を付けろ、ブラゴ!もう貴様の役目は終わった。生きていたければ、この私に従う事だな。そこにいるお前達も同じだ」

 

パティ「怨怒霊~~!誰があんたなんかに従うか!」

 

ウルル「何を企んでいる!?」

 

マエストロ「私はこのまま魔界を攻め落とす。魔界への復讐のためにな!」

 

しおり「魔界への復讐ですって!?」

 

リィエン「そんな事のために私達を利用して最後は切り捨てるなんて許せないある!」

 

マエストロ「時は満ちた!さぁ、立て!狭間に堕とされし魔物達よ!魔界への扉が開く!私と共に魔界への復讐を果たすのだ!」

 

 マエストロの言葉に兵士達はコールを送った。

 

マエストロ「さぁ、私に続け!魔界に攻め込むのだ!その前に貴様達を私の手で血祭りにあげてやろう!呼び寄せる予定のなかった余計な連中も含めてな!」

 

ティオ「誰が余計ですって!?ふざけるんじゃないわよ!」

 

パティ「あんたなんか八つ裂きにしてやるわよ!!」

 

ウマゴン「メルメルメ~!」

 

 魔界へ復讐しようとするマエストロにガッシュ達は怒っていた。

 

ウォンレイ「絶対に魔界への復讐などさせんぞ、マエストロ!そして我が鉄拳、受けるがいい!」

 

リィエン「レドルク!」

 

 一気にウォンレイはマエストロとの距離を詰めた。

 

マエストロ「マグネ・ドルク!」

 

ウォンレイ「ふんっ!」

 

 ウォンレイはマエストロを殴ろうとしたが、直前に呪文を唱えたマエストロには当たらなかった。

 

ウォンレイ「何だ!?今の感覚は?」

 

清麿「(さっきのようなのは何か仕掛けでもあるのか?)」

 

 マエストロの動きを疑問に思った清麿はアンサー・トーカーを使うべき時だと判断して使ってみた。すると、驚きの答えが出た。

 

清麿「(マエストロの力は磁力だと!?すると、あのコイルは…!)」

 

 コイルに関してもやはり清麿が思っていたのと同じ答えが出た。一方のウォンレイはマエストロの磁力のせいで攻撃が当たらなかった。

 

マエストロ「つまらん攻撃だな。今度はこちらから行くぞ!」

 

 マエストロのパンチをウォンレイはかわそうとしたが、引き寄せられてパンチが直撃してしまった。

 

ウォンレイ「ぐはっ!」

 

リィエン「ウォンレイ!」

 

サンビーム「さっきのマエストロの攻撃、まるで磁石に引き寄せられているみたいだ」

 

清麿「サンビームさんの言う通りだ。マエストロは磁力を操る魔物。周囲のコイルはマエストロの力を増幅させるためのものだ!」

 

恵「じゃあ、格闘戦が得意なウォンレイは…」

 

清麿「相当不利な相手だ…!」

 

ガッシュ「清麿、ウォンレイやブラゴではマエストロに勝てぬとでもいうのか!?」

 

清麿「1体1ならな。だが、勝てる見込みがないわけじゃない」

 

ガッシュ「勝てる見込み?」

 

 一方のウォンレイはマエストロの磁力で大苦戦していた。

 

マエストロ「どうした?お前の自慢の鉄拳とやらは全然私には当たらんぞ」

 

ウォンレイ「なぜ私の拳が当たらない…!」

 

リィエン「どうすればいいある……?」

 

マエストロ「今度はこちらから行くぞ。マグネルガ!」

 

 磁力によって回避不能の攻撃となっているマグネルガはウォンレイにはかわせず、リィエンまで直接受けてしまった。

 

ウォンレイ「がああっ!!」

 

リィエン「あああっ!!」

 

コルル「ウォンレイ、リィエン!」

 

 マエストロの猛攻で2人はボロボロだった。

 

マエストロ「ふはははっ!枠にとらわれた魔物は脆いものだな」

 

ウォンレイ「枠にとらわれただと…?」

 

リィエン「ふざけるんじゃないある…!私はウォンレイの事が大好きある。そして、ウォンレイも私の事が大好きある…!」

 

ウォンレイ「例えいずれ別れる事になろうとも、私達は共に戦う!マエストロ、大切な人を持たないお前に私達は負けはしない!」

 

ブラゴ「(あいつら……)」

 

 ウォンレイとリィエンの姿にブラゴは2人の事を誤解していたと気付かされた。

 

マエストロ「まだ立ち上がるとは…。だが…これで終わらせてもらう!」

 

 マエストロの背中のコイルがせり上がると、周囲のコイルの磁力と合わさって宙に浮かんだ。

 

清麿「まずい!俺達も加勢するぞ、ガッシュ!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

???「まだ終わらないわ!」

 

 声と共にシェリーが現れた。

 

リィエン「シェリー!」

 

ブラゴ「遅かったな」

 

シェリー「言ったはずよ。私はあなたを王にすると。さぁ、仕切り直しよ」

 

マエストロ「ふっ、人間1人が駆け付けたぐらいでどうにもなるまい」

 

シェリー「それはどうかしら?私はブラゴの言葉をずっと考えていたわ。その言葉が何を意味するかを」

 

 シェリーはブラゴの言った事を思い出していた。

 

シェリー「ブラゴはあなたとの戦いに備えて、私の心の力を温存していたのよ!」

 

ウォンレイ「何という事だ…、私は早とちりしてブラゴを勘違いしていた…」

 

リィエン「(ブラゴはシェリーを見捨てた訳じゃなかったあるね…)」

 

 ウォンレイペアもまた、ブラゴの事を誤解していた事に気付かされた。

 

マエストロ「(あの本の輝き、前とは全く異なる光を…)なるほど。ただ、踊らされていた訳ではないという事か」

 

ブラゴ「詰めが甘かったようだな、マエストロ」

 

マエストロ「何?」

 

ブラゴ「貴様の野望はもう終わりだ!行くぞ、シェリー!」

 

シェリー「ええ!」

 

 ブラゴは立ち上がってシェリーと共に向かっていった。

 

マエストロ「所詮はこの攻撃で」

 

シェリー「レイス!」

 

 ブラゴだけの時よりもレイスの弾速が上がっている事にマエストロはかわしながら驚いていた。

 

マエストロ「速い、こいつ!」

 

ブラゴ「どうした?さっきまでの威勢のよさはどこに行った?」

 

シェリー「リオル・レイス!」

 

マエストロ「マグネシルド!」

 

 マグネシルドでリオル・レイスを防いだものの、その衝撃でマエストロは地面に叩きつけられた。

 

マエストロ「同じ術でも比較にならぬ速さ。あの人間のせいか!」

 

 シェリーのフレールによる攻撃をマエストロはかわした。

 

マエストロ「くそっ、これでは術を使う事も」

 

 そうしていると、横からブラゴがマエストロを殴り飛ばした。次にシェリーが蹴り飛ばそうとしたが、マエストロは宙に浮いてかわした。

 

シェリー「アイアン・グラビレイ!」

 

マエストロ「ギガノ・マグネシルド!」

 

 マグネシルドの上位術でマエストロは難なく防いだ。

 

ブラゴ「もう一度だ!もっとでかい奴を!」

 

シェリー「ええ、わかったわ。ディオガ・グラビドン!」

 

 ディオガ・グラビドンもギガノ・マグネシルドには効かなかった。

 

リィエン「ディオガ級の威力の術が効いてないある!」

 

ティオ「どうなってるのよ!ギガノでディオガを防ぐなんて!」

 

清麿「そのからくりは奴の操る磁力だ。奴は周囲のコイルで磁力を増幅し、攻撃を防いでいる」

 

恵「どうにかして破る方法はないの?」

 

清麿「その答えは至って簡単だ。周囲のコイルを破壊する事だ。そろそろ俺達の出番だ、ガッシュ!」

 

ガッシュ「ウヌ!ウォンレイ、ブラゴ、ここから先は私達がマエストロと戦う!お主達は下がるのだ!」

 

ブラゴ「お前が出しゃばるんじゃねえ!」

 

ウォンレイ「元はと言えばガッシュ達まで来てしまったのは私のせいでもある。手出しはしないでくれ」

 

清麿「なら、お前達が協力するしか奴を倒す手段はない!」

 

リィエン「嫌ある!ブラゴは私達を侮辱したある!ブラゴが謝らない限り私達はブラゴと一緒に戦わないある!」

 

サンビーム「その気持ちはわかるが、今はそんな時じゃないんだ!」

 

シェリー「(確かにそうね。マエストロは1人1人で戦って勝てるような相手じゃない)」

 

ウォンレイ「それでも、私達は」

 

ブラゴ「…お前達を勘違いして済まなかったな。甘ちゃんコンビと言った事は謝る」

 

 ブラゴが謝った事にウォンレイペアはおろか、シェリーですら驚いていた。

 

シェリー「(ブラゴが謝るなんて…)」

 

しおり「さ、さっきブラゴが謝るって言ってなかった…?」

 

ウルル「聞き間違いではありませんよ。確かに謝りました」

 

ウォンレイ「さっきのは本当なのか…?」

 

ブラゴ「本当だ。お前達の戦いぶりを見て、俺はとんだ勘違いをしていたようだ」

 

ウォンレイ「だったら、私もブラゴがパートナーを見捨てたと勝手に思い込んでしまって済まなかった」

 

ブラゴ「謝るのはここまでにしろ。とっととマエストロをぶっ飛ばして人間界に帰るぞ!」

 

 戦いの中でわがだまりが解け、元の世界へ帰るためにウォンレイとブラゴは共闘した。

 

清麿「何とか協力してくれたか。ウォンレイとブラゴがそこまで言うのなら、ガッシュとティオはサポートに徹する!マエストロを倒すのはお前達に任せるぞ!」

 

シェリー「感謝するわ」

 

リィエン「ティオ、私の心の力を回復させるある!」

 

ティオ「ええ!」

 

恵「ギガノ・サイフォジオ!」

 

 ティオの術でリィエンの心の力が回復した。

 

マエストロ「まさか、力を回復させる魔物がいたとはな。徒党を組んで私に勝てるのかな?」

 

リィエン「行くあるよ、シェリー!」

 

シェリー「ええ!」

 

 シェリーとリィエンはパートナーの魔物と共にマエストロに向かっていった。




これで今回の話は終わりです。
今回はウォンレイとブラゴの戦いを描きましたが、2人の戦いの理由が誤解なのは、戦いの中で何かしらのきっかけがあればすぐに認め合って共闘できるようにするためです。
ガッシュをマエストロと直接戦わせずにティオと共にウォンレイとブラゴのサポート役に回したのは、王族の力に目覚めたガッシュならタイマンでも力押しでマエストロを粉砕できるため、すぐに戦いが終わってしまうためです。
次の話でマエストロとの戦いに決着が着き、ガッシュ達は人間界に帰れます。


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LEVEL45 パートナーの力

狭間の世界

 魔界への扉が開いたのを村の魔物達は見ていた。

 

村人「村長」

 

老人「うむ、わかっておる。魔界への扉…。マエストロといっとったあの若造、遂にやりおったのか…?」

 

 その頃、ウォンレイとブラゴは共にマエストロに向かっていった。

 

マエストロ「お前の拳では私を殴る事はできんぞ」

 

ウォンレイ「だったら、お前が術を使う前に拳を叩き込むだけだ!」

 

マエストロ「それは叶わんぞ。マグネ」

 

リィエン「ゴウ・レドルク!」

 

 レドルク以上のスピードでウォンレイはマエストロが呪文を言い終わる前に接近し、パンチを打ち込んだ。

 

マエストロ「ぐほっ!」

 

ブラゴ「まだ終わりじゃねえ!」

 

 次はブラゴのパンチを受けた。

 

マエストロ「がはっ!」

 

シェリー「今度は私達よ!」

 

リィエン「ハイ~~ッ!!」

 

 最後にシェリーとリィエンのダブルキックを受けてマエストロは吹っ飛ばされた。

 

清麿「(よし、マエストロはウォンレイとブラゴとの戦いに集中している。俺達はコイルをぶっ壊すぞ…!)SET、ザグルゼム!」

 

 マエストロが戦いに集中している間に清麿はザグルゼムを発動させ、コイルに撃ち込んでいた。

 

ティオ「何をしているの?」

 

清麿「コイルをぶっ壊す準備さ。ザグルゼム!」

 

 次々とコイルにザグルゼムを撃ち込んでいった。

 

清麿「よし、次は」

 

恵「何か聞こえないかしら?清麿君」

 

清麿「声…?」

 

 声がする方を向くと、そこには魔界へ行こうとする兵士達の姿があった。

 

清麿「まずいぞ!あいつらが魔界に行ったら…!」

 

ガッシュ「魔界には強い大人の戦士達がおるから攻め落とされる心配はいらぬ。だが、奴等を魔界へは行かせぬ!」

 

サンビーム「どうやら、私達の出番のようだな」

 

 兵士達の方へサンビーム達は向かった。

 

清麿「サンビームさん達は奴等の相手を頼む!」

 

サンビーム「ああ!」

 

パティ「あんな奴等なんて何体集まろうともボコボコにしてやるわよ!」

 

コルル「ちゃんと反省させなきゃね!」

 

ウマゴン「メルメルメ~!」

 

サンビーム「ディオエムル・シュドルク!」

 

 炎で兵士達は丸焦げになった。

 

パティ「ガッシュちゃんのパートナーのツボ押しで出た術を使うわよ!」

 

ウルル「はい!オルダ・スオウ・ギアクル!」

 

 パティの手で操作可能な水の龍が次々と兵士達をなぎ倒していった。

 

パティ「この水の龍はスオウ・ギアクルより威力はいくらか低いけど、オルダ・アクロンのように電気を吸収できるし、自在に操れるのよ!」

 

しおり「こっちも行くわよ、コルル!」

 

コルル「いいよ!」

 

しおり「ゼルク!」

 

 コルルは爪で兵士達の鎧を引き裂いていった。

 

しおり「清麿君のお陰で出たコルルの新しい術よ!ディゴウ・ガル・ゼルセン」

 

 高速回転するロケットパンチが発射され、次々と兵士たちを吹っ飛ばした。

 

恵「こんな数じゃいずれは押されるわ!何とか準備は終わらないの?」

 

清麿「もう少しなんだ!ザグルゼム!」

 

 一方、ウォンレイとブラゴはマエストロの磁力に苦戦していた。

 

ブラゴ「あの磁力が厄介だ…」

 

ウォンレイ「どうやってあの磁力の盾を破るか…」

 

シェリー「それだったら、私にいい考えがあるわ」

 

リィエン「いい考え?」

 

 いい考えが思いついたシェリーはその事をリィエンやウォンレイ、ブラゴに伝えた。

 

ウォンレイ「わかった。やってみよう」

 

リィエン「ゴウ・レドルク!」

 

 ウォンレイはマエストロに急接近した。

 

マエストロ「そんな攻撃は通用せんぞ!ギガノ・マグネシルド!」

 

 しかし、ウォンレイは攻撃を寸止めし、マエストロの上に飛び上がった。

 

マエストロ「何をするつもりだ?」

 

シェリー「ビドム・グラビレイ!アイアン・グラビレイ!」

 

 二つの重力の術を使い、ブラゴはマエストロ目掛けて降下し、踵落としを決めようとするウォンレイを急降下させた。急降下させた事でウォンレイの踵落としの威力はさらに上がり、ギガノ・マグネシルドを叩き割ってそのままマエストロに踵落としを決める事に成功した。

 

マエストロ「ぐはっ!まさか、急降下によって攻撃力をさらに上げるとは…!」

 

リィエン「凄い作戦ある、シェリー!」

 

 リィエンはシェリーとハイタッチした。

 

ガッシュ「短時間でこんなコンビネーションを考えるとは凄いのだ…!」

 

清麿「俺達も2人を勝たせるサポートをするぞ!エクセレス・ザケルガ!」

 

 エクセレス・ザケルガとザグルゼムを撃ち込み、事前に作り上げた連鎖のラインでコイルは次々と破壊されていった。

 

清麿「よし、次はパティ達と一緒に兵士達を吹っ飛ばすぞ!」

 

 ガッシュとティオはパティ達に加勢した。

 

ガッシュ「コイルは壊したから今度はパティ達に加勢するのだ」

 

ウルル「ですけど、兵士の数が多くてキリがないですよ。何か打開する方法は…」

 

清麿「かなり危険だが、ガッシュとパティ、ウマゴンの連携で多くの敵をなぎ倒せる。準備はいいか?」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

パティ「ええ!」

 

ウマゴン「メル!」

 

清麿「まずはウルルさん、オルダ・スオウ・ギアクルを!」

 

ウルル「はい、オルダ・スオウ・ギアクル!」

 

清麿「ザケル!」

 

 水の龍は電撃を纏い、兵士達を薙ぎ払った。

 

清麿「締めはウマゴンの炎だ!」

 

サンビーム「ディオエムル・シュドルク!」

 

 ウマゴンの炎を水の龍に当てた。すると、水の龍は大爆発を起こし、兵士達を大勢吹っ飛ばした。

 

ティオ「さっきの爆発は何なの?」

 

恵「もしかして、水素爆発?」

 

清麿「その通りだ、恵さん。さっきの水素爆発はガッシュ達の術を使った水の電気分解を利用したものだ」

 

ガッシュ「ウヌゥ、水の電気分解とかはよくわからないのだ…」

 

しおり「流石は天才中学生ね。ガッシュ君達の術で私達が理科で習う水の電気分解と水素爆発をやっちゃうなんて」

 

 コイルが破壊された事にマエストロは驚いていた。

 

マエストロ「何っ!?コイルが!」

 

ブラゴ「コイルをぶっ壊せとは頼んでねえが、一気に勝負を決めるぞ、ウォンレイ!」

 

ウォンレイ「おう!」

 

シェリー「ディボルド・ジー・グラビドン!」

 

リィエン「ゴライオウ・ディバウレン!」

 

 ブラゴとウォンレイの最大呪文がマエストロに迫った。

 

マエストロ「こんな事もあろうかと、予備の増幅コイルはあるぞ!ギガノ・マグネシルド!」

 

 破壊されたコイルの横に予備の増幅コイルが現れた。そして、増幅された磁力の力で二つの呪文と競り合った。

 

マエストロ「全てのコイルの力を我が術に!」

 

ティオ「そんな!せっかくコイルを壊したのに!」

 

ブラゴ「しゃらくせえ!一気に突破するぞ!」

 

ウォンレイ「私達は絶対に負けはしない!」

 

 シェリーとリィエンはさらに心の力を込めた。

 

マエストロ「ふはははっ!これを防げば私の勝ちだ!」

 

 勝ち誇っていると、ガッシュに壊されたコイルと違って脆かったせいか、予備の増幅コイルが壊れていった。

 

マエストロ「何っ!?」

 

シェリー「予備の増幅コイルを用意していたのは想定外だったわ。でも…」

 

リィエン「私達の力の方がマエストロにとっては想定外ある!」

 

 増幅コイルによる磁力の強化がなくなり、ギガノ・マグネシルドは破壊されてしまった。

 

マエストロ「まだだ!まだ終わるわけにはいかん!マグネシド・デュランガ!」

 

 剣を持った騎士が白虎を押していた。

 

ブラゴ「まだこんな大技を!」

 

シェリー「(まずいわ!あの時の競り合いで二つの最大呪文の威力が落ちている!このままだと…!)」

 

リィエン「(でも、私達は負けるわけにはいかないある!)」

 

シェリー「(マエストロ、パートナーを否定したあなたにはわからないでしょうね)」

 

リィエン「(元の世界に帰るために!それぞれのパートナーを王にするために!今の私達の気持ちは一つある!)」

 

 最大限にリィエンとシェリーは心の力を込めた。すると、ゴライオウ・ディバウレンが光り、黒くなった。

 

シェリー「黒い…」

 

リィエン「ゴライオウ・ディバウレン!?」

 

 黒き虎はそのまま騎士を噛み砕き、マエストロに迫った。

 

マエストロ「まさか、これが…人間のパートナーの力…。ぐあああっ!!」

 

 コイルが壊れたのと同時に魔界への扉も閉ざされた。

 

兵士A「マエストロ様が…」

 

兵士B「負けた…?」

 

兵士C「逃げろ~~!」

 

 マエストロの敗北を知った兵士達は一目散に逃げて行った。

 

村人「村長、扉が…閉じた…」

 

老人「これでいいんじゃよ、これで」

 

 戦いが終わり、ガッシュ達はマエストロの近くに来ていた。

 

恵「これで戦いは終わったのね」

 

清麿「ああ」

 

マエストロ「あと一歩の所で私の望みは叶うはずだった…。なぜだ…なぜ、私の望みを打ち砕いた…?」

 

ガッシュ「マエストロ、私達選ばれた100人の魔物の子は人間界に送られたはずなのに、なぜお主は狭間の世界に来てしまったのだ?そして、狭間の世界に来てから何があったのだ?」

 

マエストロ「…私は敗者だ…。それも話そう…。私は100人の魔物の子が人間界に送りこまれた時…、誤ってこの狭間へ落とされた…。人間界でない事をすぐにわかった…。だが…私は1人行くあてもなく、この世界を彷徨った…。そして、気付いたのだ…ここは、罪人達の流刑の地。迎えが来るどころか、魔界へ帰る事すらできない…。私は…魔界に見捨てられたのだ…。その時、誓ったのだ…人間界に行く道は捨て、この忘れられた魔物達と共に、魔界に復讐しようとな…!その野望もここで終わった…」

 

ブラゴ「言いたい事はそれだけか?お前は負けたんだ」

 

シェリー「レイス!」

 

 ブラゴはマエストロの本を燃やした。

 

ブラゴ「これでお前は魔界に帰れるぞ」

 

マエストロ「それでいい…。最後に一つ、教えてやろう…。人間界の扉を開きたいのなら、互いの術をぶつけ合え…」

 

ブラゴ「なぜ教える?」

 

マエストロ「さあな…お前達を気に入ったのかも知れん…。ああ、これでやっと、私は帰れるのだな…忌々しい魔界へ…あの懐かしい、魔界へ…」

 

 マエストロは魔界に送還された。マエストロという自分達でもあり得たかもしれない未来の姿にガッシュ達は沈痛な気持ちだった。

 

ティオ「…恵、私もどこか違ってたら…恵に会えずにマエストロのようになってたのかな…?」

 

恵「…そうかも知れないわね…」

 

ブラゴ「感傷に浸っている場合か?とっとと人間界に帰るぞ」

 

ウォンレイ「だが、リィエンとシェリーは心の力を使い果たしている。すぐには…」

 

清麿「いや、すぐに人間界に帰れるぞ。ガッシュとティオの術をぶつけ合えば人間界の扉を開けられる」

 

シェリー「でも、朱色の本の子には強力な攻撃呪文がないのよ」

 

清麿「マエストロは互いの術をぶつけ合えって言っただけで攻撃呪文同士をぶつけろとは言ってないだろ?俺の出した答えではぶつけ合う呪文の片方は強力な防御呪文でも可能だ」

 

シェリー「(答え?何を根拠に言ってるの?)」

 

ガッシュ「みんなも集まるのだ!」

 

 ガッシュ達は一か所に集まった。

 

清麿「恵さんとティオは準備はいいか?」

 

恵「私とティオはいつでもいいわよ!」

 

清麿「行くぞ、バオウ・ザケルガ!」

 

恵「チャージル・セシルドン!」

 

 雷の巨大な龍と女神の盾のせめぎ合った。

 

ブラゴ「相変わらずガッシュの最大呪文はとんでもない威力だ…」

 

ウォンレイ「これで私達は人間界に帰れる…!」

 

 二つの術のぶつかり合いにより、人間界への扉が開かれた。

 

 

 

 

中国

 光と共にガッシュ達は人間界に帰ってきた。ガッシュ達が帰ってきた事にキャンチョメペアと恵のマネージャー、ナゾナゾ博士達は喜んだ。

 

マネージャー「恵ちゃん、急に消えたから心配したのよ!よく無事で戻って来たわね!」

 

恵「ごめんなさい、何も言わずに姿を消してしまって…」

 

 何かパシャッという音が清麿と恵に聞こえたが、それはマネージャーが携帯電話で写真を撮っていた

 

清麿「マ、マネージャーさん!?」

 

マネージャー「清麿くんと恵ちゃんを撮ったのよ。待ち受け画面にしちゃおうかしら?」

 

恵「ちょっと恥ずかしいからやめて~~!」

 

 嬉しい悲鳴や喜びの声が飛び交う中、ウォンレイペアとブラゴペアは少し離れた所で話をしていた。

 

ブラゴ「ウォンレイ、お前と一緒に戦ったのは悪くなかった…。また会う時は互いに全力で行くぞ」

 

ウォンレイ「臨むところだ。ブラゴこそパートナーを大切にな」

 

 少しブラゴは笑った後、シェリーと共に去って行った。

 

リィエン「ウォンレイ、あの2人は少し私達に似てると思うある」

 

ウォンレイ「そうだと思う。もっとも、私達のように表に出していないだけで…」

 

 車で移動中のブラゴも考え事をしていた。

 

シェリー「ブラゴもあの2人の事が気に入ったの?」

 

ブラゴ「まあな。あいつらやガッシュとの戦いが楽しみだ」




これで今回の話は終わりです。
今回はマエストロとの決着と人間界への帰還を描きました。
一応、石版編では不発だったディボルド・ジー・グラビドンが出ましたが、今小説のファウード編のブラゴはもしかするとニューボルツ・マ・グラビレイを習得した状態で出てくるかも知れません。
今回で狭間の世界編は終わり、次はいよいよファウード編になります。
次は話はテッドとアースが出てきます。


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ファウード編
LEVEL46 風を語る少年と剣士の襲来


???

 それは、狭間の世界での戦いが終わってしばらく経った後の事だったある場所に奇妙な建物が出てきた。

 

 

 

 

ヨーロッパ

 いつものサーカスの公演の中、チェリッシュは考え事をしていた。

 

ニコル「チェリッシュ、テッドの事を考えてるの?」

 

チェリッシュ「そうよ。今頃、どこにいるのかしら…?」

 

 

 

 

モチノキ町

 いつもの日常のようにガッシュはコルル達と一緒に遊んでいた。そこへ、ナオミちゃんが来た。

 

パティ「怨怒霊!!ガッシュちゃんをいじめるモンスターめ、ガッシュちゃんに近づくな!!」

 

ナオミ「ヒ、ヒィ~~~ッ!!モンスター娘~~!」

 

 ガッシュはパティが怖いため、パティに強く出る事ができないのだが、皮肉にもパティのお陰でナオミちゃんに追い回されることはなかった。

 

パティ「この私をモンスター呼ばわりするなんて失礼ね」

 

コルル「(ナオミちゃんの言ってる事は間違いじゃないけど…)」

 

ガッシュ「(ウヌ…、そろそろファウードが人間界に現れる頃なのだ…。そして、テッドもこの町に…)」

 

 そろそろテッドが来るとガッシュが思っていた通り、テッドがパートナーのジードと共にモチノキ町に来ていた。

 

ジード「ほう、なかなかいい町だ、テッド。この町ならどうだ?」

 

テッド「いいんじゃねえか?海も近いし、風の吹き具合も悪くねえ。この風なら、俺の女の匂いも混ざってそうだぜ」

 

ジード「ふっ、風か…。てめえが俺のマネして風を語ろうなんざ100年早えんだよ」

 

テッド「やっかましい、ジード!」

 

 ある場所でジードはバイクを止めた。

 

ジード「ここらでいいか…。俺は飯だ。お前は宿をとってこい」

 

テッド「宿をとってこいって、ジード、金持ってるのか?」

 

ジード「俺の分はあるが、お前の分はない、いつもと同じだ。忘れたとは言わせねえぜ」

 

テッド「金がなかったら働け。それでも手に入らなかったら野宿しな」

 

ジード「そうだ。自分の事は自分でやるんだ」

 

テッド「わかってるさ」

 

ジード「ま、こいつだけは手を貸してやるがな」

 

テッド「ふん…。見てろよ、ジード、最高の宿をとってきてやるからな!」

 

 テッドは働こうとしたものの、どこからも断られた。

 

テッド「とほほ…やっぱりこの町も同じだ…。魔界にいた時はちゃんと働けたのに、働こうとしてもどこでもガキだからって断りやがる。力は人一倍あるんだ!舐めてねえで使ってみろってんだ!」

 

 そうぼやいていると、ガッシュ達を見つけた。

 

テッド「あいつら、呑気に遊んでるな…。はぁ…」

 

 遊んでいるガッシュ達はテッドと目が合った。

 

コルル「あの子、この辺では見かけない子ね」

 

ティオ「隣町から来たのかしら?」

 

ガッシュ「お主、テッドではないか!」

 

テッド「おい、てめえ、どうして俺の名前を知ってんだ!?そもそも、俺と面識あんのか!?」

 

パティ「テッド?」

 

ティオ「この子が…チェリッシュの言ってたテッド?」

 

テッド「おい、何でお前らがチェリッシュの事を知ってんだ?訳をきかせてくれよ!」

 

 テッドが来た事にガッシュ達は驚き、テッドも自分やチェリッシュの事を知っているガッシュ達に驚いていた。そして、話をする事にした。

 

テッド「お前達の名前はガッシュ、ティオ、コルル、パティだな」

 

ガッシュ「ウヌ」

 

テッド「それにしても驚いたな。人間界に来て魔物と話すのは初めてだし、何より俺やチェリッシュの事を知ってるのにはすげえビックリしたからな」

 

コルル「私達は悪い魔物としか戦わないの」

 

テッド「お前達、ほんと変わった奴等だな。ところで、お前達はどうしてチェリッシュの事を知ってんだ?」

 

ガッシュ「チェリッシュは以前、この町に来た事があるのだ。今はサーカスでテッドを探しながら働いておるが、デボロ遺跡での戦いにも来て一緒に戦ってくれたのだ」

 

テッド「チェリッシュは俺より先にこの町に来てたのか…。いいなぁ…、チェリッシュはちゃんと働かせてもらって…。ってデボロ遺跡での戦い!?あ~~チクショ~~~ッ!!自分で手掛かりを捨てちまったなんて~~!!ナゾナゾ博士の頼みを断るんじゃなかった~~!!」

 

パティ「あんたもナゾナゾ博士に会った事があるの?」

 

テッド「ああ。千年前の魔物との戦いに協力してほしいって言われたんだが…チェリッシュを探すのが先だと言って断ったんだ。まさか、チェリッシュが千年前の魔物との戦いに加わってたなんてな…」

 

ガッシュ「過ぎた事をいつまでも悔やんだって何も始まらないのだ」

 

テッド「それもそうだな」

 

???「コラ~~ッ!!何やってるテッド~~!」

 

 突如、テッドに拳骨したのはジードだった。

 

ジード「働きも宿探しもしないで何を道草くってる!?」

 

ティオ「この人がテッドのパートナー?」

 

ジード「ああ、そうだ。少し会話を聞いてたが、お前達は魔物だろ?」

 

ガッシュ「そうなのだ。テッド、宿を探しておるなら、私が母上殿に頼んでみるのだ」

 

テッド「ほんとか!?ガッシュ!」

 

ジード「へえー、こいつの名前はガッシュっていうのか。ま、今夜はよろしく頼むぜ」

 

 

 

 

高嶺家

 そして、学校が終わって清麿は帰ってきた。

 

清麿「ん?誰のバイクだろ?ただいま」

 

華「おかえり」

 

 清麿が家に入ると、玄関にテッドとジードの靴が置かれてあった。

 

清麿「お客さんか?」

 

 台所に来ると、そこにはテッドとジードもいた。

 

テッド「よっ!」

 

ガッシュ「清麿、今日、うちに泊まるのだ」

 

清麿「(リーゼント…こいつがテッドか…)」

 

華「ガッシュちゃんのお友達だそうよ」

 

ジード「こ、こんばんわ…」

 

清麿「こ、こんばんわ…」

 

ジード「お、おじゃましてます…」

 

清麿「い、いらっしゃい…」

 

華「清麿、立ってないで席に着きなさい!」

 

清麿「は、はい…」

 

 

 

 

モチノキ町

 モチノキ町を眺められる場所である魔物とそのパートナーが見つめていた。

 

???「ここか…、バオウを受け継ぎし魔物がいる町は…」

 

 

 

 

高嶺家

 食事の後、テッドは皿洗いしていた。

 

華「ほんとに偉いわね、テッドちゃん」

 

テッド「自分の事を自分でやってるだけさ。それよりおばさん、俺を「ちゃん」付けで呼ぶんじゃねえよ」

 

 テッドの態度に激怒したジードはテッドに拳骨した。

 

ジード「お~~う!何だテッド、その口の利き方は!?飯うまかったんだろ?泊めてくれるんだろ?世話になったんだろ?」

 

テッド「お母様…ちゃん付けで呼ばないでください…」

 

華「うふふ、わかったわ、テッド君。じゃあテッド君、明日の朝ご飯は何が食べたい?」

 

テッド「おおっ、朝ご飯か!?あ、あんた、いや、お母様…あの、卵焼き作れるか?黒く焦げてねえやつさ!俺、卵焼きが大好きなんだ!」

 

 それから、テッドはガッシュとウマゴンと一緒に風呂に入った。

 

テッド「なぁ、チェリッシュは前にこの町にいた事があったんだろ?どういった状況で会ったんだ?」

 

ガッシュ「それは私がティオ達と一緒にマラソンをしていた時に偶然浜辺に打ち上げられているのを見て会ったのだ」

 

テッド「浜辺でだと?」

 

ガッシュ「それで、病院に運ばれてから目を覚ましたのだが、目覚めた当初のチェリッシュは私をゼオンという魔物と間違えて怯えておった。それで、私と清麿はチェリッシュの心の傷が癒えるまで家に済ませる事にしたのだ」

 

テッド「(チェリッシュが怯えていただと?強くて綺麗でどんな時も弱い所を見せなかったあいつが…!)おい、どうしてチェリッシュは初めてお前と会った時は怯えていたんだよ?」

 

ガッシュ「パートナーのニコルの話によれば、私と会う前にチェリッシュはゼオンという銀髪と白いマント以外はほとんど私にそっくりで物凄く強くて非情な魔物との戦いで心をボロボロにされたのだ。その時はニコルの機転で上手くゼオンから逃げる事ができたのだが…心はボロボロのまま海岸に打ち上げられて私達と会ったのだ」

 

テッド「(ガッシュそっくりの奴がチェリッシュを…!絶対にゼオンと戦う事になったら顔を1発ぶん殴ってやる!!)それで、今は大丈夫なのか?」

 

ガッシュ「1週間ほどして心の傷が癒えたからチェリッシュはお主を探しに出発して今はサーカスで働いておる」

 

テッド「そっか…。チェリッシュがサーカスで働いてるのなら、チェリッシュの芸を見てえなぁ…」

 

ガッシュ「きっと見れるのだ」

 

ウマゴン「メルメルメ」

 

 ガッシュ達が風呂に入っていた頃、清麿とジードは前の戦いの時のようなやりとりをしていた。そして、寝た。それからしばらくして月が雲に覆われ、何者かが剣を地面に付いた際にガッシュと清麿は起きた。

 

???「ふん、やはり貴公ら、できるようだな。貴公らに向けた殺気だけで目を覚ましてくれた」

 

ガッシュ「お主は…アース、エリー!」

 

清麿「(この魔物が…アース…)」

 

アース「既に某とエリーの名を知っているのは驚いたぞ。戦える場へ赴き願おう。それと、この場にもう2体魔物がいるようだが…話があるのは貴公らのみ。万一、他の魔物に助太刀を頼もうなら、ここが戦いの場になると思え」

 

清麿「わかった。待っていろ、すぐに行く」

 

ガッシュ「清麿、アースは強いぞ」

 

清麿「それに、ガッシュの話ではアースの剣は斬った魔物の力を吸い取るそうだな。絶対に当たらないようにするぞ」

 

ガッシュ「ウヌ」

 

 

 

 

モチノキ町

 それから、川沿いの所に移動した。

 

アース「では、行くぞ!」

 

清麿「(アースが来たという事は…ガッシュの話通りなら、ファウードが人間界に来たという事になる…!)アース、まさかファウードが人間界に出現したとでもいうのか!?」

 

アース「ほう、某やエリーの名はおろか、ファウードの事まで知っているとはな。その通り、数日前に魔界の脅威、魔導巨兵ファウードが出現した。ファウードが出現した以上、もう一つの脅威、バオウを野放しにはしておけんのだ!」

 

清麿「待て!もうガッシュはバオウを制御できるようになったんだ!見逃してくれてもいいだろう!?」

 

アース「魔界の脅威のバオウを制御できるようになった?バオウは見境なく全てを食いつくす危険な術なのだぞ!そんなバカな話があるか!」

 

 ガッシュがバオウを制御できるようになったというのが信じられないアースは斬りかかった。

 

清麿「ラウザルク!」

 

 呪文が発動すると同時にガッシュはアースの剣をかわした。その後もアースは剣を振るい続けたが、ガッシュはアースの剣の特性を知っているため、一切当たらないように細心の注意を払ってかわしつつ、アースに攻撃を加えた。

 

アース「なぜ、奴等は某の剣を受け止めようとしない…?」

 

エリー「もしかするとあいつら、アースの剣の能力を最初から知っているかも知れないぞ」

 

アース「では、スピードで勝負だ!」

 

エリー「ウルソルト!」

 

 アースもスピードを速めたが、ラウザルクがかかったガッシュのスピードには追いつけなかった。

 

アース「何というスピード、そしてパワー!」

 

清麿「ザケルガ!」

 

 ラウザルクの持続時間が終わったのと同時にザケルガを撃ち込み、アースを吹っ飛ばした。

 

アース「中級呪文でこの威力だと!?バオウの使い手がここまで力をつけていたとは!」

 

エリー「アース、こいつは手を抜いているとすぐにやられるぞ!場合によっては奥の手も出し惜しみせずに行く!ボルセン!」

 

 アースの幻がガッシュに迫った。

 

清麿「ガッシュ、それは幻だ!SET!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

清麿「テオザケル!」

 

 清麿の指差した方をガッシュは迷わず向き、清麿はテオザケルを発動させた。その方向には本物のアースがいた。

 

アース「ぐあああっ!!」

 

エリー「何っ!?一目でボルセンを見破っただと!?」

 

ガッシュ「清麿、アースは剣の使い手であるからこっちも剣で勝負を決めたいがそれでよいか?」

 

清麿「ああ。ブレールド・ディラス・ザケルガ!」

 

 ガッシュの手に電撃の剣が形成されてガッシュはアースに斬りかかった。

 

アース「貴公も剣の術が使えるのか?剣と剣の勝負は臨むところだ!」

 

エリー「ジャン・ジ・ソルド!」

 

 アースの剣の術をガッシュは何の苦も無く剣で斬り、アースとの剣の勝負に入ったが、1発でアースの剣を弾き飛ばした。その行動にアースは急いで飛び上がり、剣をキャッチした

 

アース「まさか、某の剣をこうもあっさり弾くとは…!」

 

ガッシュ「行くぞ、アース!」

 

 ガッシュはジャンプして剣をアース目掛けて振り下ろそうとした。

 

エリー「アース、奥の手の内の一つを撃つぞ!このままだと俺達がやられる!」

 

アース「はっ、仕方ありませぬ。我が封神の型をとりて、一心に彼奴の術を打ち破らん!!」

 

エリー「バルバドス・ソルドン!」

 

 アースは奥の手の一つ、バルバドス・ソルドンを放った。

 

清麿「ラージ!」

 

 ガッシュの剣は刀身が巨大化し、バルバドス・ソルドンとせめぎ合いになったが、あっけなくバルバドス・ソルドンを打ち破った。

 

アース「ま、まさかこれ程の力とは!ぐああああっ!!」

 

 アースはブレールド・ディラス・ザケルガの直撃を受けた。煙が晴れると、そこには自身の剣を杖にして何とか立っているアースの姿があった。

 

アース「某は…魔界の脅威を止めるためにも…ここで倒れる訳にはいかぬ…!」

 

エリー「アース、もう退くぞ。剣を下げろ」

 

アース「しかしエリー」

 

清麿「まだアースはガッシュがバオウを制御できるようになったと信じられないのか?」

 

アース「その通りだ。バオウが制御できているというのなら、某の目で見なければ信じぬ」

 

清麿「だったら、バオウが制御できてるのを見せる。エリーもそれでどうだ?」

 

エリー「よかろう。見せてみろ」

 

 バオウを撃って周りに被害が出ないようにガッシュは上に顔を向けた。

 

清麿「よし、行くぞ!バオウ・ザケルガ!」

 

 バオウがしっかり制御されている様子にアースは驚いていた。

 

エリー「あ、あれがバオウ…!!」

 

アース「あの…魔界の脅威と言われたバオウが…貴公らの言う通りにちゃんと制御できている…!」

 

ガッシュ「信じてもらえたか?」

 

アース「その目で見た以上、信じよう」

 

エリー「この者達はバオウを悪用しないようだ。行くぞ、アース」

 

 アースはエリーと共に去って行った。それと入れ替わるようにテッドとジードが来た。

 

テッド「途中で邪魔が入ったりして遅くなって済まねえ!」

 

ジード「どうやら、敵はとっくに逃げて行ったようだぜ」

 

ガッシュ「テッドはここに来る前に誰と戦っておったのだ?」

 

テッド「それがな…」

 

 

 

 

回想

 それは、テッドがジードと共にガッシュを助けに行こうとした時の事だった。

 

テッド『俺達がガッシュを助けに行こうとしたらさ、ロデュウとかいう奴と遭遇したんだ』

 

ロデュウ「おい、てめえはこれからどこに行くんだ?」

 

テッド「俺は友達を助けに行かなきゃならねえんだよ!とっととそこをどけ!」

 

ロデュウ「てめえ、魔物だな!魔物を見逃すわけにはいかねえな!」

 

テッド「だったら、ぶっ飛ばすまでだ!ジード!」

 

ジード「ドラグナー・ナグル!」

 

 呪文でテッドはパワーアップした。

 

ロデュウ「チータ、一気に決めるぞ!」

 

チータ「大技をいきなり出したらきつくなるのよ。まずは様子見をしてからよ」

 

ロデュウ「わかったよ」

 

チータ「ガンズ・ラギュウル!」

 

 ロデュウの攻撃をテッドはかわしまくった。

 

ジード「セカン・ナグル!」

 

 またテッドはパワーアップし、壁蹴りして空中にいるロデュウに迫ってパンチを打ち込んだ。

 

テッド「1、2!」

 

ロデュウ「くそっ!」

 

 ロデュウは地上に降りた。

 

チータ「どうして地上に降りたの?空中の方が有利なはずよ」

 

ロデュウ「あのガキはブン殴ってやらねえと気が済まねえんだよ!」

 

テッド「邪魔すんじゃねえ!」

 

 テッドとロデュウの戦いはしばらく続いたが、しばらくしてロデュウの方から退いた。

 

ロデュウ「なぜ退く事にした?チータ」

 

チータ「体力の無駄遣いを防ぐためよ。それに、空高く飛べばあの子は追撃なんてできないわよ」

 

 

 

 

テッド「ってな訳で俺は遅れちまったんだ」

 

ジード「テッドの呪文は」

 

清麿「肉体強化だけだろ?」

 

ジード「清麿、テッドが戦ってるのを見てねえのによくわかったな!」

 

清麿「実を言うと俺はある事故で半ば超能力染みた特殊な力が身に付いてしまってさっきみたいな事ができるようになったんだ」

 

ジード「それでテッドの呪文がわかったって事か」

 

ガッシュ「テッド、もう帰るのだ」

 

テッド「ああ」

 

 今回の戦いではガッシュペアだけでアースを撃退したため、テッドの出番はなかった。同じ頃、モチノキ町のある場所では…。

 

デュフォー「ゼオンの奴、どこに行ってるんだ?」

 

 

 

 

???

 当のゼオンはある国にいた。

 

ゼオン「おい、ここは人間界のはずだろ…?」

 

 ゼオンの目の前には封印状態のファウードがあった。

 

ゼオン「これは、魔界の建造物だぞ…!なぜこれが…人間界に存在しているんだ…!一体、何が起こっている…?あり得ない事だ…どうやって人間界に…?何が起こっている?魔物が絡んでいるのか…?いや、魔物の力でこんな事ができるわけ…だとしたら…」

 

 ファウードを見ていると、封印を施している部分に鍵穴のようなものが見えた。

 

ゼオン「あのマーク、どこかで…。まぁいい、調べてみる価値はありそうだ。この存在がどんな答えを出す事になるかわからんがな」

 

 鍵穴に見覚えがあるゼオンはその場を去って行った。ファウードの出現で大きな戦いの狼煙が上がろうとしていた。




これで今回の話は終わりです。
今回はテッドとの出会いとアースとの戦いを描きました。
アースとの戦闘がテッドが来る前に終わったのは、王族の力が目覚めたガッシュならアースを一捻りで倒せるだろうと判断したからです。せっかく剣の術も覚えたので、剣同士の戦いも描きました。
テッドの戦闘描写なしで終わらせるのはちょっとあんまりだと思ったので、ガッシュの元へ行く途中でロデュウと遭遇して小競り合いを起こすという形で戦闘描写を入れました。ちなみに、この時点のロデュウはまだ誰とも組んでません。
次はサンビームが引っ越す話になりますが、3話のあとがきにもあった通り、アシュロンが出番を前倒しする形で前倒しで出てきます。


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LEVEL47 神童、現る

モチノキ町

 翌日、鈴芽は買い物をしていた。

 

鈴芽「いつか、高嶺君と結婚したいなぁ。結婚したら…」

 

???「おい、とても頭の悪い女、お前は高嶺清麿と結婚とやらをしたいのか?」

 

 声がした方にはデュフォーがいた。

 

鈴芽「えっと……誰だっけ?」

 

デュフォー「覚えてないのか?まぁ、俺の事は覚えてなくても無理はないが、お前を殴ったりしたゼオンぐらいは覚えてるだろ?」

 

鈴芽「ゼオン?誰?」

 

デュフォー「お前の頭の悪さは相当なものだな。何の進歩もない」

 

鈴芽「そんなに悪く言わなくても…」

 

デュフォー「それと、お前の清麿と結婚したいという夢は叶わん。俺の出した答えでは清麿は大海恵という女に夢中だからな。お前に対する特別な感情は一切持っていない。そんな夢はとっとと諦めろ」

 

鈴芽「そんな…高嶺君が私よりも恵ちゃんの方が好きだなんて…そんな~~!!」

 

 デュフォーがアンサー・トーカーで出した答えが信じられない鈴芽は泣きながら逃げて行った。

 

デュフォー「相変わらず頭が悪すぎる女だ」

 

 ロンドンで会った時からゼオン程ではないにしろ、鈴芽を鬱陶しく思っていたデュフォーはその場を去って行った。同じ頃、ドラゴンがモチノキ町の近くに降り立った。

 

???「ダンナ、この町に奴の気配がしたのは本当ですか?」

 

ドラゴン「数日前までだがな。今はもう気配は消えている」

 

???「またいつものように気付かれて逃げられたようですね」

 

ドラゴン「今回はそうとは思えん」

 

???「そう言えば、ここはバオウの使い手がいる町でもあるんですけど、ダンナはどうしますかい?」

 

ドラゴン「そうだな…。奴を追ってきたついででバオウの使い手がどういった奴なのかを見極めるとしよう」

 

 アースに続き、ガッシュペアに強敵が迫っていた。

 

 

 

 

 

高嶺家

 それは、テッドペアが出発した次の日の早朝の事だった。朝早くに誰かがインターホンを鳴らした。

 

清麿「ふあ~~っ、朝早くに誰だ?」

 

 目が覚めた清麿が扉を開けると、そこには男2人がいた。

 

清麿「(な、何だ…!?こいつは…!)」

 

アシュロン「我が名はアシュロン。バオウの使い手、ガッシュ・ベルはいるか?」

 

清麿「(アシュロンだと!?こいつがガッシュが言ってた竜族の神童…!確か、ガッシュの話では前の戦いでアシュロンと初めて会ったのはファウードでの戦いが終わってから来たはずなのに、なぜ今、来たんだ…?)」

 

アシュロン「お前がガッシュの本の使い手か?名は何という?」

 

清麿「高嶺…清麿…」

 

アシュロン「よし、俺のパートナーはこっちだ。名はリーン・ヴィズ。今日、これから戦えるか?場所は指定した場所で戦う」

 

清麿「話し合いは…?」

 

アシュロン「できぬ、もともとこの戦いは誰か1人が生き残るもの。話し合いや和平を求めるのは愚かだ」

 

清麿「(やむを得ないか…)ガッシュを起こしてから」

 

ガッシュ「私はもう起きておるぞ」

 

 すでにガッシュは起きて支度を終えていた。

 

アシュロン「今から向かうぞ…」

 

 

 

 

モチノキ町

 

 指定の場所でアシュロンとガッシュは対峙していた。

 

ガッシュ「清麿、アシュロンは今まで戦った魔物とは実力がケタ違いなのだ!気を引き締めて行くのだぞ!」

 

清麿「ああ(ガッシュの言う通り、アシュロンは今までの魔物とは雰囲気から実力がケタ違いというのがわかる…!しかも、力を抑えた仮の姿でこれ程とは…!)」

 

アシュロン「準備はいいようだな…では…行くぞ!!」

 

 アシュロンはすさまじい闘気と威圧感を放った。清麿もアンサー・トーカーを発動させていつでも行動できるように備えた。

 

清麿(来る!)

 

リーン「テオブロア!」

 

清麿「テオザケル!」

 

 二つの攻撃は相殺された。

 

リーン「ディガル・クロウ!」

 

 爆発の中からアシュロンが出てきて爪で引き裂こうとした。しかし、清麿はアンサー・トーカーで避ける答えを出してガッシュと共にかわした。

 

アシュロン「なぜ、この一撃をかわせた?」

 

清麿「ザグルゼム!」

 

リーン「ディシルド・ドラゴルク!」

 

 ザグルゼムを見たリーンは即座に反応して防御呪文でアシュロンの体にザグルゼムが当たらないようにした。

 

清麿「(アシュロンの鱗はかなりの耐久力を持つのに、ザグルゼムを見てからすぐに防御呪文で防いだとなると…アシュロンはザグルゼムの効果を知っている!)」

 

アシュロン「俺の体にあの球を当ててから後から撃つ電撃の威力を高めるつもりだったのだろうが、そう簡単にはいかんぞ!」

 

 再びアシュロンは爪で攻撃した。

 

清麿「伏せろ!」

 

 アシュロンの攻撃をかいくぐってまたガッシュはアシュロンの懐に潜り込んだ。

 

清麿「ザグルゼム!テオザケル!」

 

アシュロン「ぐおおおっ!!」

 

 連鎖反応による威力増大でアシュロンは吹っ飛ばされた。

 

リーン「(清麿の兄さん、完璧に決まった攻撃をかわし、ダンナの懐にガッシュを潜り込ませるとは…。もしかすると奴のパートナーと同様の力を持ってるのか?)」

 

清麿「一気に行くぞ、ガッシュ!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

清麿「ラウザルク!」

 

 ラウザルクがかかったガッシュはアシュロンに突っ込んでいった。

 

アシュロン「やるな。だが、この俺に気迫や闘気で張り合おうとは…100年早いわあぁ!!!」

 

 凄まじいアシュロンの闘気に清麿は足がすくんだが、前の戦いでも同様の闘気を受けたガッシュは怯む事なく突っ込んでいった。

 

ガッシュ「ヌオオオッ!!」

 

アシュロン「ほう、ははははっ!いいぞ、俺の闘気に怯まずにそれでも向かってくるか!」

 

リーン「ディガル・クロウ!」

 

アシュロン「ならばこれを受けてみろ!さっきの不意討ちの一撃ではない。ディガル・クロウの力を全て乗せた…まさに全身全霊の一撃だ!!」

 

 前の戦いの時のようにガッシュとアシュロンの拳がぶつかり合った。

 

アシュロン「受け止めおったわ、この小僧!そしてこの拳……」

 

清麿「(次の答えは……何っ!?)」

 

 次にアシュロンが何をするかの答えを求めたが、意外な答えだった。

 

リーン「(ふっ、かなりやるね、兄さん)おい、兄さん!もう終わりだ、朝早くから悪かったな!ダンナも満足したしな、俺ら、帰るぜ!」

 

清麿「お前達、俺達を何か確かめていたようだな」

 

アシュロン「その通り、バオウの使い手が善か悪かを確かめたかっただけだ。悪であればそのまま倒していた」

 

清麿「ガッシュが善だとわかったのはさっき、拳をぶつけ合った時だな?」

 

アシュロン「そうだ。拳を交わせば拳が語ってくれる。それに、ガッシュの拳にはいくつもの『大きな何か』を背負っている重さがあった。強くなれ、ガッシュ。今のままではダメだ。もっと強くなる必要がある。俺より強い奴はまだいる。そして、そいつは絶対に王にしてはならん!」

 

ガッシュ「(クリアであるな…)」

 

アシュロン「なぜならば…そいつが王になれば魔界に苛烈な圧政を敷くからだ!」

 

 前の戦いと違う言葉にガッシュと清麿は驚いた。

 

ガッシュ「(圧政を敷く?どういう事なのだ?)アシュロン、その者はクリア・ノートなのか!?」

 

アシュロン「…クリアを知っているとは意外だな。だが、クリアはもう人間界にはいない」

 

 クリアがもう人間界にいないという言葉にガッシュと清麿は衝撃を隠せなかった。

 

清麿「どういう事なんだ!?クリアは既に脱落したとでもいうのか!?」

 

アシュロン「その通りだ。俺は以前から魔界を滅ぼそうとするクリアの野望を阻止するために行動していた。だが、半年以上も前にクリアはパートナーの赤ん坊を残して姿を消した。俺も最初は呪文を唱えられない赤ん坊を見縊って別のパートナーを探しに行ったのかと思っていた。だが、ある魔物と会った時にそいつが『クリアは俺が倒した』と言った」

 

清麿「そいつは何者なんだ!?」

 

アシュロン「そいつは…ガッシュと同じ雷の力を持ち、パートナーは清麿と同じ予知能力染みた力を持つ者、雷帝ゼオンとデュフォーだ!」

 

 ゼオンがクリアを倒したという事実にまたしてもガッシュペアは衝撃を受けた。

 

ガッシュ「(ま、まさかクリアが半年以上も前にゼオンに倒されていたとは…。とりあえず、魔界が滅んでしまう危機は去ってよかったのだ…)」

 

清麿「アシュロン、アースという魔物の話では数日前にファウードが出現したらしい。ファウードを止めるためにも力を貸してくれないか?」

 

アシュロン「力を貸したい所だが、ゼオンの動向が気になる。ファウード出現後のゼオンの動向を見極めた上で判断する」

 

リーン「期待してるぜ、清麿の兄さん」

 

清麿「ところで頼みがあるんだが…、俺達を家まで送ってくれないか…?お前、元の姿になれば飛べるんだろ?」

 

リーン「そこまで気付いているとは抜け目がないな、兄さん。ダンナ、ガッシュと兄さんを送っていこうぜ」

 

アシュロン「そうだな。ヌオオオッ!!」

 

 アシュロンは元の姿に戻った。

 

清麿「これが…アシュロンの本当の姿…」

 

ガッシュ「アシュロンに乗るのだ、清麿」

 

 ガッシュペアはリーンと共にアシュロンに乗り、アシュロンは清麿の家に向かって飛んだ。

 

清麿「アシュロンはどんな王を目指してるんだ?ガッシュは優しい王様を目指してるんだが…」

 

アシュロン「俺も似たようなものだ。俺はみんなが仲良くできる差別のない魔界を作りたいんだ。ガッシュも王になったらそういった魔界にしたいだろ?」

 

ガッシュ「ウヌ。大変だとは思うが、そうしたいのだ」

 

アシュロン「そうか…、ならガッシュ、俺が倒れた時はお前がそれを叶えてくれよ」

 

 そう言っていると清麿の家に来た。アシュロンは清麿の家に着いた後、ガッシュペアを降ろした。

 

ガッシュ「さよならなのだ、アシュロン!」

 

 アシュロンは飛んでいった。

 

リーン「ダンナ、あいつらにあまり期待したらお陀仏だぜ。ダンナ1人でもゼオンを倒すくらいの気持ちで行かねえとよ」

 

アシュロン「ふん…あの凄まじい電撃の痛みは俺が一番よく知っている…。最低限の準備はした。後は俺自身を高めるだけだ」

 

リーン「それにしても不思議ですねぇ、ガッシュとゼオンは髪の色などを除けばほとんど瓜二つの姿をしている上に扱う術も同じ電撃。ただのそっくりさんとは思えないけど、ダンナはどう思いますか?」

 

アシュロン「姿があそこまで似てるのであれば、血縁関係があるとも考えられる。真実はゼオンが知っているだろうな…」

 

 空を飛ぶアシュロンの真下にはデュフォーがいた。

 

デュフォー「ゼオンが出かけてから3日経つな。あいつ、何してるんだ?」

 

 

 

 

 

高嶺家

 家に帰ってきたガッシュと清麿は朝ご飯を食べていた。

 

華「清麿とガッシュちゃんは朝早くからどこに行ってたの?」

 

清麿「ちょっと知り合いと話し合いに来いって言われてそこに行ってたんだ」

 

華「そうだったのね」

 

ウマゴン「メルメルメル」

 

 ウマゴンは手紙を口にくわえていた。

 

清麿「ん?何だ、ウマゴン」

 

 手紙を開けてみた。

 

清麿「誰からだろう?」

 

 それはサンビームからの手紙だった。

 

清麿「サンビームさんからだ。サンビームさん、今日引っ越してくるんだ。家からも近い。歩いて5分も離れてないぞ」

 

ガッシュ「ウヌ、本当か?よかったのう、ウマゴン」

 

ウマゴン「メルメル~!」

 

華「清麿、今日暇なんでしょ?ガッシュちゃんと一緒にお手伝いに行ってきなさいよ。お金も渡すから引っ越し祝いを何か買っていって」

 

清麿「そうだな。じゃ、買い物して行くか」

 

ガッシュ「ウヌ、お買い物なのだ!」

 

 ガッシュはブリをたくさん買おうとしていた。

 

清麿「ガッシュ、魚を買いに行くんじゃないからな」

 

華「う~ん、男の1人暮らしだし、お料理もいいかもね。鈴芽ちゃんも誘ったら?」

 

清麿「何で水野を呼ぶんだよ?」

 

華「だって、あの子しかお料理ができて喜んできてくれる子しかいないでしょ?」

 

清麿「いや、あいつ包丁さばきしか上手くないぞ」

 

華「じゃあ、お母さん出かけなきゃいけないから頑張ってね」

 

 その後、清麿は鈴芽に電話したが、意外な返事が返ってきた。

 

ガッシュ「どうだったのだ?清麿」

 

清麿「水野は昨日、誰かに悪口を言われたショックで風邪をひいたらしい。仕方ないからしおりさんとウルルさんを呼ぼう。コルルとかもその方が喜びそうだからな」

 

ガッシュ「ウヌ」

 

 

 

 

デパート

 ガッシュペアはコルルペアやパティペアと共に買い物をしていた。

 

ガッシュ「どうしたのだ?清麿」

 

清麿「いや、気のせいだ」

 

 その光景をデュフォーは見ていた。

 

デュフォー「ゼオンが戻ってくるまで退屈だ。少しあいつらの様子でも見るか」

 

 ガッシュ達は商品を見ていた。

 

コルル「しおりねーちゃんはどれにする?」

 

しおり「どうしようかしら…」

 

パティ「ウルル、あれを買いましょう」

 

ウルル「値段が高いですよ」

 

清麿「みんな何を買おうか悩んでるようだな…」

 

???「オラァ、とっとと金を出しやがれ!!」

 

 怒鳴り声がした方へ行くと、そこにはガッシュが経験した王を決める戦いでは銀行を襲った強盗2人が新たにマッチョな男を加えて恵とティオを人質にとっていた。

 

ティオ「ちょっと、私と恵を放しなさいよ!!」

 

強盗A「黙りやがれ、小娘!」

 

強盗B「てめえらから死にてえのか!?」

 

 強盗は拳銃を持っていた。

 

清麿「恵さん、ティオ!行くぞ、みんな!」

 

???「お前、なぜその女の事になるとろくに考えもせずに助けに行こうとするんだ?」

 

 恵を助けに行こうとした清麿に声をかけたのはデュフォーだった。

 

ガッシュ「(デュフォー、なぜここに…!)」

 

清麿「そもそも大切な人が危険な目に遭ったら助けに行くだろ!お前はそんな気持ちになった事はないのか!?」

 

デュフォー「ないな。別に俺は危険な目に遭っている他人がどうなろうと知った事ではない」

 

清麿「何だと!?お前は自分さえよければいいのか!?」

 

デュフォー「お前、何か勘違いしているようだな。俺はいつ死んでもいい。別に自分だけよければいいとは思ってない」

 

清麿「お前…、誰かがどうなってもいいとか、自分はいつ死んでもいいとか一体どういう考えをしてるんだよ!!」

 

デュフォー「多分、俺の考えは…お前達とは根本的にズレてるんだろうな」

 

清麿「何だと!?」

 

ウルル「今は言い争っている場合ではありません!何か助ける方法を考えましょう!」

 

 ウルルの一喝でその場は静まり返った。そして、恵とティオを助け、強盗を倒すために清麿は呪文を唱えた。

 

清麿「ラウザルク!」

 

 ガッシュによって強盗は反応する暇もなくあっけなく倒された。そして、強盗は逮捕された。

 

ティオ「やるじゃない、清麿、ガッシュ!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

恵「また助けられちゃったわね」

 

清麿「そうだ、せっかくだから恵さんもサンビームさんの引っ越し祝いを手伝いますか?」

 

恵「手伝うわ」

 

清麿「それと…お前も手伝うか?」

 

デュフォー「……今は暇だからな。手伝う」

 

 

 

 

サンビームの家

 買い物を終えた後、ガッシュ達は色んな事をしていた。

 

清麿「お前、家事できるんだな」

 

デュフォー「それぐらい簡単にできる。料理も簡単なものだ」

 

 夕方になってからサンビームも来た。

 

恵「あの人って何だか他の人とはどこか雰囲気が違うような気がするけど…」

 

しおり「ほとんどしゃべらないし、表情も変えないし…変わってるどころじゃないかも知れないわ」

 

ウルル「一応は家事もできますし、性格は真面目だと思いますよ」

 

サンビーム「(私にはあの少年は冷徹な仮面に下に何かを隠しているようにも思える…。すべてを焼き尽くすような何かを…)」

 

清麿「確かに雰囲気が違う。ってお前、何をやってるんだ?」

 

デュフォー「ここに来る奴の引っ越し祝いをするんだろ?だから、俺が料理を作っているんだ。味の方は保証する」

 

清麿「やけに親切だな…」

 

デュフォー「お前、あの頭の悪すぎる女と同じクラスなんだろ?その大海恵とかいう女の方が好きなら縁を切れ。料理もできん、勉強もできん、できん事だらけの何の才能もない女には価値なんかない」

 

清麿「頭の悪い女…水野の事か…。お前、どうして水野の事を悪く言うんだ…?」

 

デュフォー「俺の知り合いをそっくりな奴と間違えた挙句、名前を覚えようとしなかったからだ」

 

清麿「(こいつ、水野のボケが相当嫌いなのか……)」

 

 そんな中、テレビを見ていたらニュースがあった。ガッシュ達はもちろん、デュフォーも目撃した。

 

TV『次のニュースです。これからご覧いただくものは作り物ではなく、実在の映像です。レスカ山脈に現れた正体不明の山、いや、巨大な建造物と思われます』

 

ガッシュ「やはり、ファウードが現れたか!」

 

しおり「ファウード?」

 

清麿「詳しい話は今から話すが、あれは建造物なんかじゃない、巨大な魔物だ!」

 

コルル「巨大な魔物…?」

 

サンビーム「あんなのが動き出すだけで大迷惑だな」

 

パティ「もしかすると、コーラルQの超巨大バージョンじゃないかしら?」

 

ティオ「きっと、あれから巨大なロボットに変形するのよ」

 

清麿「(ロボット…危険なのは理解してくれたが、本当の姿についてはみんな間違った解釈をしてるみたいだ…)」

 

デュフォー「できたぞ。俺はここで帰らせてもらう。じゃあな」

 

 夕食を持ってきたデュフォーはそのまま帰っていった。デュフォーが作った料理を清麿達は食べたが、好評だった。しかし、引っかかる所もあった。

 

ティオ「とってもおいしいわよ!あの人、コックさんの子供なのかな?」

 

恵「確かにおいしいわね。でも…この味は何だか手作りで作ったとは思えない味よ。まるで…機械で作ったみたい…」

 

しおり「確か、あの人はちゃんと手作りで作ってくれたのよね」

 

ウルル「そうですけど…」

 

恵「どうしたらあの人が作ったように機械で作った味になるのかしら…?」

 

清麿「(食べてみたら恵さんが言っていたのと同じようだ…)」

 

 その後、ガッシュはファウードの事を話した。

 

サンビーム「ファウードは超巨大な魔物だったのか…」

 

ウマゴン「メル……」

 

コルル「パッと見では建造物に見えたけど……よく見ると巨人型の魔物のようにも見えるよ……」

 

しおり「あんな巨大な魔物が人間界で暴れ出すのを想像しただけでゾッとするわ……」

 

恵「清麿君、ファウードはどこにあるかわかるの?」

 

清麿「幸い、ファウードはTVで目撃したからアンサー・トーカーで場所は特定できる。現在、ファウードがある場所は…ニュースでもあった通り、レスカ山脈の辺りだ!」

 

パティ「じゃあ、すぐにそこへ行ってファウードをぶっ壊すわよ!」

 

清麿「待った!ファウードは外からは見えないようにする機械で姿を消しているから目視では探せない。それに、今のファウードは封印されている状態で暴れ出す事はないが、下手に近づくとファウードを目覚めさせようとする連中がファウードを別の場所に瞬間移動させてしまう可能性もある。今は焦らずにコーラルQのような探知能力に優れた魔物を見つけるなりして対策を練っていこう」

 

恵「わかったわ」

 

ウルル「ファウードが見えないのは厄介ですけど、まだ暴れないようでしたら、地道に対策を考える事ができますからね」

 

ガッシュ「(リオウが動き出す前にどこまで仲間を集める事ができるのかのう…)」

 

 

 

 

高嶺家

 清麿は家に帰った後、デュフォーの事について考えてみた。

 

清麿「(あいつの名前を聞いとけばよかったな。もうアンサー・トーカーも安定してきたし、答えを出して調べてみるか)」

 

 アンサー・トーカーで答えを求めると、とんでもない答えが出た。

 

清麿「な、何だって!?あいつが…デュフォー!?」

 

ガッシュ「清麿もあの者がデュフォーだとわかったみたいなのだ」

 

清麿「どうしてあの時、教えてくれなかったんだ?」

 

ガッシュ「下手にデュフォーを刺激したらゼオンが来てしまう恐れがあったからなのだ」

 

清麿「まさか、ゼオンのパートナーと会ってしまうとはな…」

 

 

 

 

モチノキ町

 先に帰ったデュフォーはモチノキ町のはずれに来ていた。そこにゼオンが来た。

 

デュフォー「遅かったな、ゼオン」

 

ゼオン「デュフォーこそ今まで何をやってたんだ?」

 

デュフォー「成り行きで清麿達と会って奴等の様子を見ていた。どうも、俺は清麿の事が気になる」

 

ゼオン「妙な親近感でも湧いたのか?」

 

デュフォー「俺とあいつは似てるような気がしてな。それと、ニュースであったんだが、巨大な建造物が現れたんだ」

 

ゼオン「建造物…俺が見た奴か?」

 

デュフォー「俺もそのニュースを見たが、ガッシュはその建造物をファウードと言ってた。しかも、清麿はファウードを巨大な魔物と言っていたんだ。ゼオンは何か心当たりはないか?」

 

ゼオン「…次の日辺りに俺の記憶に心当たりがないか確かめる」

 

 ゼオンペアはモチノキ町を去って行った。意図的ではないものの、デュフォーがガッシュ達と接触した事により、ゼオンペアは前の戦いよりも早くファウードの正体を突き止めてしまう事となった。




これで今回の話は終わりです。
今回は原作のサンビームの引っ越しの話が元ネタでしたが、それだけではちょっと物足りないと判断し、アシュロンとの戦いやガッシュがクリアの脱落を知る事とデュフォーの登場も加えました。
鈴芽の代わりにデュフォーが引っ越しの手伝いに加わるのにしたのは、ガッシュとゼオンの因縁に合わせてパートナー同士でも因縁を作るのと、清麿とデュフォーの温度差を描く事などで加えました。
これから、ファウードを横取りしようと企むゼオンの暗躍が始まります。
次は、ウマゴンがカルディオと戦いますが、その際にカルディオの最大術やウマゴンの新しい術が出てきます。


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LEVEL48 極寒と灼熱の戦い

高嶺家

 それは、ファウードが出現したニュースが放送されてしばらく経った後の事だった。歴史の勉強がよくわからない岩島、金山、山中が清麿の家に来て、コルルと一緒に遊びに来ていたしおりと共に清麿は教えていた。

 

清麿「しおりさんもわざわざすいませんね」

 

しおり「気にしなくていいのよ。中学時代の復習にもなるし」

 

山中「いやぁ、しおりさんはとってもかわいい妹みたいな子もいて羨ましいなぁ…」

 

岩島「それより、高嶺君。これ、注文のビデオだよ」

 

 清麿は岩島に頼んでいたビデオを受け取った。

 

清麿「ありがとな、岩島」

 

金山「それにしても、源平合戦の一ノ谷の戦いはすげえな!」

 

ガッシュ「一ノ谷の戦い?」

 

コルル「それって何なの?」

 

しおり「それはね」

 

???「源義経という武将が活躍した源平合戦の大きな戦いの一つだ」

 

 声と共にサンビームが来た。

 

清麿「サンビームさんも日本史を知ってたんですか?」

 

サンビーム「結構興味があったから歴史書を見てたんだ」

 

ガッシュ「一ノ谷の戦いは何なのか教えてほしいのだ」

 

ウマゴン「メルメル」

 

サンビーム「一ノ谷の戦いは源義経がある奇策を行った事でも有名な戦いの一つなんだ」

 

コルル「その奇策って何?」

 

清麿「義経は敵の裏をかくために敵の陣地の背後にある急な坂を下るという作戦をとったんだ。勿論、従っていた武士は馬で下りる事は不可能だと思っていたが、義経は地元の猟師から急な坂を鹿が下りたというのを聞いて『鹿にできて馬にできない訳がない』として急な坂を馬で下り、見事奇襲を成功させたんだ」

 

ガッシュ「私には歴史の事は難しくてよくわからないのだが、源義経はかっこいいのだ!」

 

ウマゴン「メルメルメ~!」

 

しおり「ガッシュ君達も私達ぐらいの歳になれば歴史もわかるようになるわよ」

 

清麿「ところで、サンビームさんは何の用で俺の家に?」

 

サンビーム「清麿とガッシュはちょっと私の家に来てくれないか?大事な話がある」

 

 

 

 

サンビームの家

 ガッシュペアはウマゴンを連れてサンビームの家に来た。

 

サンビーム「清麿達に来てもらったのは他でもない。私は仕事で1週間ほど北海道へ研修に行く事になった」

 

清麿「北海道…」

 

ガッシュ「北海道…」

 

サンビーム「その間、ウマゴンの事をよろしく頼む」

 

清麿「えっ?」

 

ウマゴン「メル?」

 

サンビーム「仕事だから、どうしてもウマゴンを連れて行けないんだ。それに、研修中に襲われたらとてもまずい状況になる。清麿達の傍に置いといてもらえないだろうか?」

 

清麿「ああ、もちろん大丈夫だ」

 

ガッシュ「ウマゴン、心配するでない。私達がお主を守るのだ」

 

ウマゴン「メル、メルメルメルメル!」

 

サンビーム「今回はダメだ、ウマゴン。清麿達と一緒の方が安全なのだ」

 

ウマゴン「メルメルメル」

 

サンビーム「大丈夫だ。帰りにおいしい干し草を買ってきてあげるよ」

 

 

 

 

空港

 サンビームは北海道へ出発した。

 

ウマゴン「メルメルメ~~!!」

 

 サンビームが研修に行った事でウマゴンは大泣きしていた。

 

ガッシュ「ウヌゥ、ウマゴン、泣くでない」

 

清麿「ほら、帰るぞ」

 

 ウマゴンは泣き止まなかった。

 

清麿「しょうがない、ウマゴンが落ち着くまで待つか。何か飲み物でも買ってくる」

 

 飲み物を買いに清麿はその場を離れた。

 

ガッシュ「ウヌ、ウマゴン、わかったのだ。そんなについて行きたいのなら、ウマゴンも北海道へ行くのだ。私も隠れて清麿の学校へよく行っておる。これは、とても役に立つバッグなのだが、貸しておくのだ。これさえあればどんな所にでも行けるのだぞ」

 

ウマゴン「メルメルメ~~!」

 

ガッシュ「ただしウマゴン、これだけは約束なのだ。私はずーっと家で待っておるから、必ず元気で帰ってくるのだぞ」

 

 その後、ガッシュは清麿と共に空港を後にした。

 

清麿「確か、ガッシュの話ではサンビームさんとウマゴンは北海道でカルディオという馬の魔物と戦うはずだよな?」

 

ガッシュ「ウヌ。だが、今のウマゴンでどこまでカルディオに通用するのか…」

 

清麿「カルディオはそんなに強い魔物か?」

 

ガッシュ「ウヌ。まだディオエムル・シュドルクを使いこなせていないウマゴンと違ってカルディオはディオギコル・ギドルクを使いこなしておる。最悪の場合は…ディオウ・ギコリオ・ギドルクを使ってくる可能性もあり得るのだ」

 

清麿「使いこなせてないって、あれでまだ使いこなせてないのか!」

 

ガッシュ「本当に使いこなした証はパートナーを乗せても火傷や凍傷をしないまでに炎や冷気を制御できるようになった状態なのだ」

 

 

 

北海道

 北海道での研修も終わった。

 

社員「研修も無事に終わったね」

 

サンビーム「1週間、お世話になりました」

 

社員「お疲れ。すぐに帰るかね?」

 

サンビーム「あ、いえ、少し車でお土産を買いに…そうだ!どこか、おいしい干し草を売っている所はありませんか?」

 

社員「おいしい干し草?あんた、変わってるね。郊外の牧場に行けば分けてくれるかもね」

 

 早速、サンビームは牧場へ向かった。

 

サンビーム「お、大きいな…」

 

牧場主「ああ、干し草ロールって言ってな、夏の間にこれ作って、草のない冬に餌として保存しとくんだよ」

 

サンビーム「干し草ロールか…」

 

牧場主「あんた、持って帰れるか?」

 

サンビーム「無理です」

 

牧場主「まぁ、そうだな。布袋に入れて持ってけや。あんた、面白えからお金いらんよ」

 

サンビーム「ありがとうございます」

 

 その牧場でウマゴンと再会したサンビームは観光する事にした。そのウマゴンペアの姿をある魔物が見ていた。

 

 

 

 

高嶺家

 その頃、ガッシュペアは他の仲間達にファウードの事を伝える準備をしていた。

 

清麿「ナゾナゾ博士達にもファウードの事を教えないとな」

 

ガッシュ「ファウードの位置はわかるのか?」

 

清麿「既にアンサー・トーカーで把握している。だが、見えない細工がされているとなると……ガッシュが言ってた最も魔力探知に優れている魔物のモモンが来るまでは待っておくしかない…」

 

ガッシュ「ウヌ…」

 

清麿「その間にお前の友達のレインの所へも行く事になるんだろ?だったら、レインにファウードを止めるまでは人間界に留まってほしいと頼んでレインに協力してもらう事もできるんじゃないか?」

 

ガッシュ「レインの手紙が届くのが楽しみだのう…」

 

 

 

北海道

 ウマゴンペアは観光を楽しんでいたが、雪遊びをしてウマゴンが凍えたため、サンビームは温かい飲み物を買いに行った。

 

ウマゴン「メルメル…メ!」

 

 殺気に気付いたウマゴンは外に出た。するとそこには馬の魔物、カルディオとパートナーのサウザーがいた。

 

サウザー「気配だけで気付いたな。間抜けなだけの魔物に見えたけど…そこそこ戦える奴らしいな」

 

ウマゴン「メル…」

 

 ウマゴンは身構えたが、よく一緒にいたガッシュ達がいないため、不安になった。カルディオはウマゴンのある臭いに気付いた。

 

サウザー「どうした?」

 

カルディオ「パルパルモーン」

 

サウザー「へえ、お前の体から別の魔物の臭いがするってよ。お前、魔物の仲間がいるのか?」

 

ウマゴン「メル…」

 

サウザー「そうか、仲間とつるまなきゃ戦えねえ魔物か…。オイラやカルディオの大っ嫌いなタイプだな。その仲間の魔物はここにいるのか?」

 

サンビーム「いいや、ここにはいない!ウマゴンは今、1体きりだ」

 

 戻って来たサンビームもウマゴンの元に来る前から殺気に気付いていた。

 

ウマゴン「メル!」

 

サンビーム「私がウマゴンのパートナー、カフカ・サンビームだ」

 

サウザー「はははっ、ウマゴンか。間抜けな姿だと思ったら、名前まで間抜けとはな。オイラはサウザー。魔物はカルディオ。ウマゴンと違ってかっこいいだろ?」

 

ウマゴン「メル!メルメルメ!」

 

サンビーム「ふざけるな!ウマゴンはシュナイダーが心を通わせた友にだけ言っていいニックネームだ!お前達のような奴がバカにして言っていい名前ではない!」

 

サウザー「シュナイダー?それがウマゴンの本名なのか?間抜けな姿に似合わねえ名前だな。本名とニックネームが逆じゃねえのか?」

 

ウマゴン「メル!!」

 

サンビーム「それに、仲間というのを悪く言ってるみたいだが、それは違うな!」

 

サウザー「何だと?」

 

サンビーム「仲間というのは心を支えてくれる素晴らしいものだ。仲間がいるから臆病者というのは間違いだ!ウマゴンは1人で戦う勇気も持っている。その辺を勘違いしないでいただこう」

 

サウザー「能書きはいい、来なよ!」

 

サンビーム「シュドルク!」

 

サウザー「ますますもって気に入らねえ!カルディオと同じような術を使いやがって!」

 

サンビーム「何だと?」

 

サウザー「ギドルク!」

 

 ウマゴンとカルディオは互いに鎧を纏った。

 

サンビーム「似た者同士が出会ったという訳か…」

 

サウザー「一緒にするんじゃねえ!やれ、カルディオ!」

 

カルディオ「パルパルモーン!」

 

サンビーム「行けっ、ウマゴン!」

 

ウマゴン「メルメルメ~~!」

 

 突撃対決は互角だった。

 

ウマゴン「メルメルメ~!」

 

カルディオ「パルパルモーン!(なるほど、パートナーが言った通り、こいつの本名はシュナイダーでウマゴンはニックネームか)」

 

 

 

 

モチノキ町

 その頃、ガッシュ達は公園で遊んでいた。

 

コルル「あれから1週間経つね」

 

パティ「ウマゴンは脱落してないのかしら?」

 

ガッシュ「そんな事はないのだ。ウマゴンは強いのだぞ。私達にできる事はウマゴンが帰ってくるのを信じて待つ事なのだ」

 

 

 

北海道

 ウマゴンペアは事前に用意していた作戦を実行したが、あまり上手くいかなかった。

 

サウザー「あはは、面白れぇ!こいつら、本当に心がバラバラだ!」

 

サンビーム「くそう!下手な小細工に頼ろうとしたのが間違いだった!いつも通りだ、ウマゴン!ゴウ・シュドルク!」

 

 第2の術を発動させた。

 

サウザー「ふん。こっちも行くぞ、カルディオ!ゴウ・ギドルク!」

 

 カルディオも第2の術で次の強化形態になった。ウマゴンは突っ込んでいったが、それを予測していたカルディオは雪煙で視界を悪くした。

 

カルディオ「(もらった!)」

 

サンビーム「ウマゴン!」

 

 雪煙を利用してカルディオは奇襲をかけたが、サンビームの掛け声だけでウマゴンは回避した。

 

カルディオ「(かわした?あのパートナーの掛け声だけで振り向きもせず)」

 

サンビーム「ウマゴン!」

 

ウマゴン「メル!」

 

 ウマゴンはサウザーに向かって突っ走った。

 

カルディオ「(俺のパートナーを!)」

 

サンビーム「ウマゴン!」

 

 サウザーの危機にカルディオは向かったが、またしてもウマゴンはサンビームの掛け声だけでカルディオに向かっていき、吹っ飛ばした。

 

サンビーム「グルービー!」

 

カルディオ「(な、何だ、この息の合い様は?本当にさっきまでの間抜けな2人か?)」

 

サンビーム「千年前の魔物との戦いを生き抜いた我々のコンビネーションを舐めないでもらおう!ウマゴン、このままパートナーの本を奪い取れ!」

 

 しかし、ウマゴンが進んだ先にはサウザーは既にいなかった。

 

ウマゴン「メル?」

 

サンビーム「いない?」

 

 当のサウザーはカルディオと共にウマゴンの背後にいた。

 

サウザー「上手く不意を突いたようだが、それで勝った気になってんじゃねえぞ。それぐらい息の合った攻撃はこちらにもできる!」

 

サンビーム「いつのまに…」

 

サウザー「そしてオイラ達はその一歩先も行っている。お前達に…これができるか!?ディオギコル・ギドルク!!」

 

 カルディオに乗ってサウザーが呪文を唱えた後、吹雪と共にカルディオは氷の鎧を纏った。

 

サンビーム「(この術、氷である点を除けばディオエムル・シュドルクに似てる…。しかも、サウザーはカルディオに乗っているのになぜ凍傷にならないんだ…?)」

 

サウザー「これはオイラも驚くほどの強力な術でね。最初はオイラ自身もダメージを負う危険なものだった。だが一度、オイラ達の心が一致して使いこなせるようになったら、これ以上ない無敵の術となったのだ!」

 

サンビーム「残念だったな。扱う属性は違うが、似たような術はウマゴンも使える!」

 

サウザー「何だと!?」

 

サンビーム「ディオエムル・シュドルク!」

 

 ウマゴンは炎の鎧を纏った。

 

サウザー「まさか、似たような術が既に使えるとはな。だが、その様子じゃまだ使いこなせてねえな」

 

サンビーム「何?」

 

サウザー「パートナーを乗せてもダメージを負わないようにするコントロールができてねえんだよ。ウマゴンの術もカルディオの術も扱う力は違っても扱い方は同じ。パートナーにダメージを負わせないコントロールを可能にするにはよほどの心の繋がりと血のにじむような訓練が必要なのよ!それができて初めて使いこなした事になる」

 

サンビーム「(そうか、だからサウザーはあの状態のカルディオに乗っても凍傷にならないのか…)」

 

サウザー「パートナーを乗せて戦う事ができないようじゃ、オイラ達には勝てはしねえ!」

 

カルディオ「パルパルモーン!」

 

 カルディオは突っ込んで来た。

 

サンビーム「ウマゴン!」

 

 掛け声を聞いてウマゴンはカルディオとぶつかったが、突っ込んで来たカルディオは冷気で作り出した分身だった。

 

ウマゴン「メル?」

 

サウザー「バカめ、オイラ達はこっちだ!」

 

 横からカルディオは突進してウマゴンを吹っ飛ばした。

 

ウマゴン「メル!」

 

サンビーム「ウマゴン!(やはり、サウザーの言う通り私が乗れるようにならないと奴等に勝ち目はない…)」

 

 そう考えていた通り、ウマゴンはサンビームが乗っても火傷しないようにするコントロールがまだできていないためにサンビームを乗せて戦う事ができず、積極的に攻められないためにカルディオに押されていた。

 

サウザー「やはりこの程度だな。とっととくたばりな!」

 

ウマゴン「メル…」

 

サンビーム「ウマゴン、お前は狭間の世界での戦いで仲間と連携できるような炎のコントロールができるようになったじゃないか。後は、私を火傷せずに乗せられれば奴等に勝てる!」

 

ウマゴン「メルメ…」

 

サンビーム「1週間前に源平合戦の勉強を少ししたのを覚えているか?源義経がなぜ一ノ谷の戦いで敵の軍勢に対して奇襲を成功させる事ができたのかを」

 

ウマゴン「メル……」

 

サンビーム「それは地元の猟師から鹿が急な坂を下りたのを聞いて、『鹿にできて馬にできない訳がない』と思い、それを実行したからだ。同じようにパートナーにダメージを負わせずにするコントロールがカルディオにできてウマゴンにできない訳がない!ウマゴン、私と自分を信じるんだ!そうすれば、必ずカルディオのような事ができる!」

 

ウマゴン「メル……」

 

サウザー「ろくな訓練もせずにそんな事がウマゴンにできるか!カルディオ、一気に仕留めるぞ!」

 

カルディオ「パルパルモーン!」

 

 カルディオは襲い掛かった。

 

サンビーム『カルディオにできてウマゴンにできない訳がない!』

 

ウマゴン「メル……メルメルメ~~!!」

 

 ウマゴンはサンビームを乗せ、カルディオに突進して吹っ飛ばした。

 

カルディオ「パル!?(何っ!?パートナーが熱がってないだと!?)」

 

サウザー「そんなバカな!こんな短時間でパートナーにダメージを負わせないコントロールができるようになっただと!?」

 

サンビーム「サウザー、ウマゴンがこの術を使いこなせたのはお前達が手本になったからだ。扱う力は違っても扱い方は同じ。それはカルディオにできてウマゴンにできない訳がないというのをお前達がその姿で否定してるからだ!」

 

サウザー「そんな事があり得るか!オイラ達だってこんなに力を使いこなすのに半年かかったんだぞ!訓練もせずにそれができるはずがない!」

 

サンビーム「お前達と違って私達の戦いはテクニックではなく、心で戦っている。それだからこそウマゴンはこうやって使いこなす事ができたんだ!今度はこちらの反撃だ!」

 

ウマゴン「メルメルメ~!」

 

 ウマゴンが乗せてる人間が火傷しないようにするコントロールができるようになったため、ウマゴンとカルディオは互いにパートナーを乗せての戦いになった。炎と氷の戦いは一進一退の攻防となった。

 

サウザー「くそっ、使いこなした途端にこんなに厄介になるとは…!」

 

サンビーム「どうやら私達とお前達は互角のようだな。だが、私達はお前達と違って仲間の元へ帰らなければならんのだ!」

 

ウマゴン「メルメルメ!」

 

カルディオ「(仲間の元へ帰るだと!ふざけるな!)」

 

 仲間の元へ帰るという執念でウマゴンペアは次第にカルディオペアを追い詰めていった。

 

サウザー「ふざけやがって、何が仲間だ!負けられないのはこっちも同じなんだよ!」

 

カルディオ「パル、パルパルモーン!」

 

サウザー「な、何だと!?カルディオ!あれを使うというのか!?あれを使ったらお前は…!」

 

サンビーム「(あれとは何の事だ?)」

 

カルディオ「パルパルモーン!」

 

サウザー「…わかったよ。もうあいつらを倒すにはあれを使うしかないようだ!」

 

 サウザーはカルディオから降りた。

 

ウマゴン「メル?」

 

サウザー「ここまでオイラ達を追い詰めるとは思ってなかったぞ。だが、オイラ達はこんな事もあろうかと奥の手を隠していたんだ。これで終わりだ、ディオウ・ギコリオ・ギドルク!」

 

 ディオギコル・ギドルクを更に超える冷気がウマゴンペアを襲った。

 

ウマゴン「メル!」

 

サンビーム「な、何だ!?さっきの術とは比較にならないこの凄まじい冷気は!まさか、奴等がこんな強力な術をまだ隠し持っていたとは…!(あのやりとりから推測すれば、カルディオに相当負担がかかる術だろうな…)」

 

サウザー「お前達は間抜けな面だったが、オイラ達が戦ってきた敵の中でもなかなかの強敵だったぞ。こんな術を使わざるを得なかった程にな!そのまま凍えちまいな!(頼む、すぐにくたばってくれ。この術は普通に使うだけでもカルディオが凍え死にかねない程なんだ…!)」

 

 凄まじい冷気に炎の鎧を纏っているはずのウマゴンは凍り付き始めており、何とかサンビームを凍え死なせないための熱を生み出すので精一杯だった。

 

カルディオ「(へっ、何がパートナーを守るだ!何が仲間の元へ帰るだ!仲間なんてものを頼りにするからお前は弱いんだよ!そんなお前にこんな術を使わざるを得なかったのが誤算だが、お前の負けだ。凍えて大人しく魔界に戻っちまえ!)」

 

 桁違いの冷気に晒されてもなお、ウマゴンは凍り付かないために炎を出し続けていた。そして、帰りを待っているガッシュ達の事を思い出していた。

 

ウマゴン「メル…メルメ…」

 

カルディオ「(なぜだ、あれだけの冷気を出しても奴は凍り付くのが遅いんだ!?)」

 

サウザー「カルディオ、お前は手を抜いて戦ってないよな?」

 

カルディオ「パル…」

 

サウザー「だったら…とっとと凍り付かせるんだよ!」

 

 凄まじい冷気に晒されたため、ウマゴンはもう凍り付く寸前でサンビームも凍えていた。

 

サンビーム「ウマゴン、こんな所で負けるわけにはいかない!何としてもみんなの元へ帰るんだ!」

 

ウマゴン「メル……メルメルメ~~!!」

 

 生きてみんなの元へ帰るという執念に反応してウマゴンの本が輝き、新たな力が目覚めた。

 

サンビーム「新しい呪文?」

 

サウザー「何が出たのかは知らんが、もうお前達は終わりなんだよ!」

 

サンビーム「言ったはずだ、私達は仲間の元へ帰らなければならないと!ディオウ・エムリオ・シュドルク!」

 

 ウマゴンは氷が溶けると共にディオエムル・シュドルクととは比較にならない炎を出せる炎の鎧を纏った。サンビームは体が温まったが、すぐに熱がってウマゴンから降りた。

 

サウザー「何っ!?こんな所で新しい呪文だと!?」

 

サンビーム「あちっ!ウマゴン、私の心の力はもう少ない。この一撃で勝負を決めるぞ!」

 

ウマゴン「メル!」

 

サウザー「こっちも心の力はあとわずかだ。これで決めるぞ、カルディオ!」

 

カルディオ「パルパルモーン!」

 

 ウマゴンとカルディオはぶつかり合った。灼熱の炎と極寒の冷気は激しくぶつかり合った。

 

カルディオ「(土壇場でこんな術を覚えやがって!)」

 

 ぶつかると同時に睨み合ったが、仲間の元に帰りたいというウマゴンの執念の目にカルディオは怯んでしまった。

 

ウマゴン「メルメルメ~~!!」

 

 その一瞬の隙を突かれてウマゴンが押した後、大爆発を起こした。

 

サンビーム「ウマゴン!」

 

サウザー「カルディオ!」

 

 爆発の煙が晴れた後、サンビームとサウザーは倒れている互いのパートナーの元へ駆け寄った。

 

サンビーム「ウマゴン、大丈夫か?」

 

サウザー「凍え死んでないだろうな?カルディオ!」

 

 サウザーは倒れているカルディオに触れてみると、ディオウ・ギコリオ・ギドルクを使った後とは思えないほど温かかった。

 

サウザー「ディオウ・ギコリオ・ギドルクを使った割には妙に温かいな。大丈夫か?」

 

カルディオ「パルパルモーン…」

 

サウザー「生きていたか、カルディオ…。でも、どうしてディオウ・ギコリオ・ギドルクを使った後のカルディオの体があんなに温かいんだ?普通に使ったら凍え死んでもおかしくなかったのに…」

 

サンビーム「恐らく、ウマゴンの術とカルディオの術がぶつかり合ったおかげでカルディオの体は温められ、ウマゴンの体は冷やされて互いに凍死と熱死を免れたのだろう」

 

サウザー「互いのパートナーがこんな様子じゃ戦いは続けられそうにないな。今回は引き分けにしておく。だが、次は必ず決着を着けてやるからな」

 

 倒れているカルディオを引っ張ってサウザーは去って行った。

 

サンビーム「ウマゴン、みんなの元へ帰ろう」

 

ウマゴン「メル…」

 

 ウマゴンを抱えてサンビームは山を下りた。

 

カルディオ「(怯えた…俺は奴のあの目に怯えたんだ…。引き分けなんかじゃない、俺は負けたんだ…)」

 

サウザー「俺はあいつらには引き分けと言ったが、カルディオは負けたと思ってるのか?」

 

カルディオ「パル…」

 

サウザー「仲間の元へ帰る、か…。こういった結果になったのも、仲間とつるむ魔物は弱いという俺達の認識が甘かったからだろうな…」

 

 この時点ではまだ仲間とつるまないカルディオペアだったが、仲間の元へ生きて帰るという執着心の強さを侮っていた事を痛感したのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回は原作のカルディオ戦ですが、そのままなぞっても面白くないので、締めにディオウ・ギコリオ・ギドルクとディオウ・エムリオ・シュドルクのぶつかり合いを描きました。
冒頭の歴史の勉強は自分は学生時代、歴史に興味津々で歴史の成績がよかったため、そういった描写を混ぜても違和感がないのと、ウマゴンがディオエムル・シュドルクを使いこなすきっかけとして挿入しました。
次の話は清麿がフォルゴレ達にファウードの説明をするのと、スケートの話になります。


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LEVEL49 パティのスケート教室

高嶺家

 ウマゴンとカルディオの灼熱と極寒の壮絶な戦いが終わった後、ガッシュペアはナゾナゾ博士やまだファウードの事を説明していなかったペアの中ですぐに来れるペアを呼び出してファウードの説明をしていた。

 

ナゾナゾ博士「あれはファウードという魔物で、建造物に見える部分は封印のためのものなのかね?ガッシュ君」

 

ガッシュ「ウヌ」

 

フォルゴレ「でも、とても魔物には見えないなぁ」

 

 そんな中、キャンチョメは震えていた。

 

ジェム「どうしたの?」

 

キャンチョメ「…ガッシュの言ってる事、間違ってないと思うよ…。あの建造物の中にあるもの、まるで腕を組んでいる巨人みたいだ…」

 

ウォンレイ「言われてみれば、私にもそう見えるぞ」

 

アポロ「これからどうするんだい?」

 

清麿「ガッシュの話ではファウードはまだ封印されている状態で封印を解くにはディオガ級以上の呪文が使える魔物が何体も必要だそうだ。だから、俺達は焦らずに対策を練ろう」

 

アポロ「わかった」

 

キャンチョメ「それよりガッシュ、帰る前に頼みがあるんだけど…」

 

ガッシュ「頼み?」

 

フォルゴレ「新しい呪文を試したいんだ。付き合ってくれないかい?」

 

ガッシュ「ウヌ。付き合おうではないか。よいであろう?清麿」

 

清麿「そうだな」

 

 外出した際、清麿はガッシュから聞いた様々な魔物の術の効果などをを記した手帳を落としてしまった。

 

キャンチョメ「清麿、手帳を落したよ」

 

 落とした手帳をキャンチョメが見ると、偶々見たそのページには清麿がガッシュから聞いて記したシン・ポルクの効果と使い方が記されていた。

 

キャンチョメ「シン・ポルク…」

 

フォルゴレ「説明するのは難しいが、とにかくすごい呪文だな…。キャンチョメ、落とし物をちゃんと清麿に返してあげよう」

 

キャンチョメ「うん(そのシン・ポルクって呪文、いつか習得できるといいな…)」

 

 いつかシン・ポルクを習得したいと思うキャンチョメであったが、今回の戦いでその時が訪れるのはそう遠い事ではなかった。

 

 

 

 

モチノキ町

 公園にガッシュとキャンチョメが対峙していた。

 

清麿「新しい呪文が3つも出たのか」

 

フォルゴレ「キャンチョメが清麿が作ってくれた特訓メニューをこなしているうちに3つも呪文が出たんだ。私達だけでは呪文の内容を把握するのが難しくてアンサー・トーカーでそれがわかる清麿に頼む事にしたんだ」

 

清麿「わかった。じゃあ、新しく出た呪文についてだが、まずはディマ・ブルクを使ってみろ」

 

フォルゴレ「ディマ・ブルク!」

 

 呪文を唱えるとたくさんのキャンチョメの分身が出てきた。

 

清麿「ディマ・ブルクはこのようにキャンチョメの分身を作り出す術だ。分身はキャンチョメの命令で動いてくれるが、キャンチョメがビビったりしてるという事を聞かなくなる。効果的に使うにはキャンチョメが強い気持ちを持ち続ける事が大事だ。例えば…こんな姿の俺を見てもだ!」

 

 鬼麿を見た途端、分身たちは一目散に逃げてしまった。

 

キャンチョメ「逃げちゃダメだよ!」

 

鬼麿「さぁ、この状態の俺を恐れるな!そうしなきゃ、ディマ・ブルクを使いこなす事なんざできねえ!」

 

キャンチョメ「恐れちゃダメだ…、僕は強くなったんだ!こんな所で恐れてたらデボロ遺跡での時みたいに仲間を失ってしまう!みんな、前に進むんだ!」

 

 鬼麿にも恐れないキャンチョメの心によって分身たちは逃げずに前進した。それを見た鬼麿も元に戻った。

 

清麿「まぁ、これぐらいできればまずは上出来だ。次はフォウ・スプポルクを試すぞ。ブレールド・ディラス・ザケルガ!」

 

 ガッシュは電撃の剣を持った。そして、前進した。

 

ガッシュ「ヌオオオッ!!」

 

キャンチョメ「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 

清麿「さぁ、フォウ・スプポルクを試してみるんだ」

 

フォルゴレ「わかった。フォウ・スプポルク!」

 

 キャンチョメの手から光と音が発せられた途端、ガッシュの電撃の剣が消えてしまった。

 

フォルゴレ「ガッシュの術が消えた…」

 

清麿「この術はキャンチョメの手から発せられた音を聞くか光を見た本の持ち主は無意識のうちに呪文を唱えたり心の力を出すのをやめるんだ」

 

キャンチョメ「だから、さっきガッシュの術が消えたように見えたんだ」

 

ガッシュ「そうなのだ」

 

清麿「最後にミリアラル・ポルクを試すぞ。フォルゴレ、ミリアラル・ポルクを唱えてからザケルって唱えるんだ」

 

フォルゴレ「わかった。ミリアラル・ポルク!ザケル!」

 

 キャンチョメはガッシュと同じように口から電撃を放った。その電撃をガッシュはマントでガードした。

 

清麿「この術は一見するとキャンチョメが術をコピーして使う術に見えるが、実際は術を喰らったという暗示をかけるガスを吹き付ける術だ。だが、この術を使う上で注意しておきたい事がある」

 

フォルゴレ「注意しておきたい事?」

 

清麿「この術は『どんな術で』『どんな効果を持つか』を知ってて、さらにその術を使える魔物にしか効果を発揮しない。例えば、パティのアクルをティオに使ってもティオはアクルを使えないから効果はない」

 

キャンチョメ「要するにこの術を有効活用するには敵に最大呪文を出させてそれをコピーして使うのが効果的なんだね?」

 

清麿「そんな感じの使い方でいい。キャンチョメ、これらの術を使いこなせばお前はガッシュ達と肩を並べて戦えるようになるぞ」

 

キャンチョメ「全部清麿のお陰だよ。僕、きっちり新しい呪文の練習をしてガッシュみたいに頼りになる男になるんだ!」

 

フォルゴレ「付き合わせてもらってありがとう」

 

ガッシュ「頼りにしておるぞ、キャンチョメ」

 

フォルゴレ「清麿、キャンチョメが落とし物だそうだ」

 

 キャンチョメから手帳を渡してもらった。

 

清麿「ありがとな、キャンチョメ」

 

 

 

???

 その頃、ゼオンペアはある国にいた。

 

ゼオン「ファウード、あれはデュフォーが聞いた通り、超巨大な魔物だ」

 

デュフォー「しかし、信じられんな。お前が現地で見たファウードの映像を見せてもらったが、あれはかなりのでかさだったぞ。あれが魔物なら、周りの山が膝の高さにも届いていない」

 

ゼオン「俺が昔見た本にあった呼び名は、魔導巨兵ファウード。その力があまりにも強大で危険だったために、魔界の極地に封印された魔物だ。なぜあれほど巨大な魔物が存在したか、それはわからん。俺が読んだのはファウードを封印するまでの過程だけだったからな。その魔物の誕生については全くの謎とされていた。ある記述ではその力を操っていた事から、魔導の術を以て作られた魔物だとも言われていたのだがな」

 

デュフォー「操れるのか?」

 

ゼオン「だからこそ皆がその力を手に入れようとして動き出しているようだ。あれ程の強大な力を操る、考えただけでゾクゾクしないか?」

 

デュフォー「…少なくとも、俺が今まで味わった事のない感覚だろうな。ゼオン、その力で今までとは違う景色が見られるか?」

 

ゼオン「俺も変わる。今までとは違う景色を見る。ガッシュ、憎たらしい上に落ちこぼれのお前がどうやってファウードの事を知ったのかは知らんが、ファウードの情報を俺達に提供してくれた事に感謝してるぞ」

 

 ふと、ゼオンはある考えが思い浮かんだ。

 

デュフォー「どうした?ゼオン」

 

ゼオン「決めた。ファウードの情報をくれた礼としてファウードをガッシュの墓場にしてやろう…」

 

 

 

 

モチノキ町

 それから、清麿のクラスの生徒はアイススケートに来ていた。その中にはウマゴンペア、コルルペア、パティペアの姿もあった。

 

コルル「わあっ、スケートだ!」

 

パティ「みんなでスケートをやるだなんてね。私の腕の見せ所よ!」

 

しおり「パティってスケートができるの?」

 

ウルル「パティの話によれば、パティは魔界にいた頃は色々な習い事をしていて、その一つがアイススケートだそうです」

 

しおり「スケート…パティって意外とスキルが多いのね」

 

パティ「当然じゃない。ガッシュちゃんの恋人として色んな習い事に取り組んで来たのよ。料理は人間界に来る前はできなかったけど、最近はウルルが教えてくれたおかげでできるようになったわ」

 

 しかし、ウマゴンは氷に怒っていた。

 

ウマゴン「メルメルメ!」

 

コルル「ウマゴン、何で氷に怒ってるの?」

 

ガッシュ「(やはり、ウマゴンとサンビーム殿はカルディオと戦ったのであったか…)」

 

サンビーム「私達は氷の魔物にひどい目に遭わされたからな」

 

ガッシュ「でも、この氷は安全なのだ(またスケートの場に来るとは…)」

 

 前の戦いの時にスケートで転びまくっていた時の事をガッシュは思い出していた。清麿はアンサー・トーカーで滑り方の答えを出し、転ぶ事なく滑っていた。

 

清麿「(あ~、今日みたいにアンサー・トーカーが自在に使えるようになってほっとした日はないな…)」

 

山中「高嶺!どうしてスケートができるんだ!」

 

清麿「いや、たまたま前にやってた時の事を思い出して…」

 

鈴芽「高嶺君、どうして私が転ぶのを助けてくれないの!?」

 

清麿「そんな余裕は俺にはねえよ!こっちは自分が転ばないように滑るので精一杯だ!」

 

鈴芽「そんな~~!!」

 

 その後、清麿と同じクラスの生徒達が挑んだが、結果は無残なものだった。

 

山中「くそっ、スケートで高嶺に負けちまうなんて!」

 

金山「もしや高嶺、スケートの靴に細工をしてるんじゃねえだろうな!?」

 

清麿「そんな事する暇ねえ!」

 

中田「おいおい、だらしがないなぁ、うちのクラスは…。少しは高嶺を見習ってほしいものだ」

 

ワイフ「そーよ!私がお手本を見せてあげるわ。私がモロッコで学んだワカマカダンスで完璧よ!」

 

中田「何!?モロッコ!?いつ行ったんだ、お前!」

 

ワイフ「さぁ、行くわよ!」

 

中田「おい、ワカマカダンスって何だ?」

 

 ワイフのステップに清麿達は驚いていた。

 

金山「おお、凄いステップだ!」

 

清麿「こけてない!」

 

ワイフ「そーよ、このダンスは腰で踊るの!足先で踊るのとではわけが…」

 

 しかし、ワイフはこけてしまった。

 

中田「おお、鯖江、鯖江!!」

 

 ワイフの元へ駆けつけようとした中田もこけてしまった。

 

清麿「(これで全員か…。それにしても先生の奥さん、鯖江って名前だったんだな…)」

 

 前の戦いの時と同じく、ガッシュ達は滑れず、しおりも滑れなかった。

 

しおり「流石にスケートは難しいわね…」

 

サンビーム「くそう!氷なんて大嫌いだ!」

 

ウマゴン「メルメルメ~!」

 

 一方、パティとウルルは華麗に滑っていた。

 

中田「凄いぞ、あの少女は!」

 

ワイフ「私もあの滑りに感激したわ!」

 

 パティは転んだガッシュに駆け寄っていた。

 

パティ「ガッシュちゃん、コルル、私が滑り方をレクチャーしてあげるわよ」

 

ガッシュ「教えてくれるというのか?」

 

パティ「当然じゃない。私達は恋人同士なのよ。それじゃあ、行くわよ」

 

 パティは正しい転び方や滑るためのコツを色々と教えた。

 

ガッシュ「意外と難しいのだ…」

 

パティ「焦らないで一つ一つこなしていくのよ。それが、華麗に滑るための近道なのよ」

 

 ガッシュとコルルは少しずつながらもこなしていき、遂にはスムーズに滑れるようになった。

 

ガッシュ「おお!テレビでやってるような滑りが私にもできるようになったのだ!」

 

パティ「華麗に滑るガッシュちゃんは素敵…ふべっ!」

 

 華麗に滑れるようになったガッシュに見とれてパティはよく周りを見ないまま滑り、壁に激突した。

 

コルル「大丈夫?」

 

パティ「えへへ、平気よ。壁にぶつかったのもガッシュちゃんの滑りに魅了された私自身が悪いんだから」

 

 一方のしおりもウルルに教えられて滑れるようになっていた。

 

しおり「滑るとこんなに気持ちいいなんてね」

 

ウルル「私もパティの滑りを見て、ここまで滑れるようになったので…」

 

中田「これはパティ先生、私の生徒達に滑り方を教えてください!」

 

ワイフ「私からも頼みます!」

 

パティ「あいつらに?わかったわ、教えればいいんでしょ?」

 

 パティはガッシュとコルルに教えたように滑り方を教えた。しかし、アンサー・トーカーで滑り方を覚えた清麿以外は全員滑れなかった。

 

パティ「もう、どういう事!?みんなきちんとした滑り方ができてないじゃない!!特にそこのあんた、ペンギン歩きすらできないなんてどういう事よ!不器用なティオだってそこまで不器用じゃないわよ!」

 

鈴芽「だって…」

 

パティ「だってもヘチマもないわよ!それをこなしてから次のステップに行かないと氷の上で滑る事なんて一生無理ね」

 

鈴芽「うえ~~ん!!ガッシュ君に教えた時と違って厳しすぎるわよ~~!」

 

パティ「(この女はガッシュちゃんのパートナーの恋人に相応しくないわね。ティオのパートナーの方がかなりしっかりしててスキルも豊富でよっぽどお似合いよ)」

 

 パティの鬼指導にガッシュ達は引いていたが、中田は絶賛していた。

 

中田「その姿勢こそ指導する者にふさわしい!」

 

パティ「あら、私を褒めてくれるの?」

 

中田「指導する者は時に厳しくできてない所をしっかり注意しなければならない。君はそれをしっかりこなせているぞ」

 

ワイフ「指導してくれたお礼は何にしようかしら?」

 

パティ「えっと…とにかくおいしいスイーツよ。それさえたくさんあればいいから」

 

中田「いくら育ちざかりでもお菓子の食べすぎはいけないよ。しっかり限度というものを弁えよう」

 

パティ「はぁい……」

 

清麿「(みんなはパティの鬼指導で大変だなぁ…。特に水野はペンギン歩きさえできてないせいでパティに色々言われまくってるし…。アンサー・トーカーで滑る答えが見つかってよかった…)」

 

 厳しい指導が続く中、パティの鬼指導に清麿はため息をつくのであった。

 

 

 

 

某国

 旅を続けるテッドはある魔物と言い争いになり、一触即発の雰囲気だった。

 

テッド「てめえ、覚悟ができてるのかというのはどういう事だ!?」

 

バリー「この戦いにおいて必要なのは力と強い心。そのチェリッシュとかいう女を探すてめえは覚悟はちゃんとできてるのだろうな?」

 

テッド「言われなくてもできてらぁ!バリー、てめえをぶっ飛ばしてやる!」

 

バリー「いつでも来い、テッド!」

 

???「おい、バリーとかいう奴、お前のパワーはすさまじいな」

 

 男の戦いに割り込もうとした魔物はロデュウだった。

 

テッド「てめえはロデュウ!」

 

ロデュウ「バリー、俺達の仲間になれ。お前の強大なパワーが」

 

バリー「断る。それよりも、男の1対1の戦いに割り込むとはいい度胸をしてるな。てめえを見てると、以前の俺を見てるみたいでイライラするぞ、チンピラが」

 

ロデュウ「てめえ、ふざけた事抜かすんじゃねえぞ!チータ!」

 

チータ「ディオガ」

 

グスタフ「ゾニス!」

 

 チータが呪文を言おうとした途端、バリーはゾニスでロデュウに急接近した。

 

ロデュウ「いつの間に…!?ぐはっ!!」

 

 バリーのパンチ1発でロデュウはふらふらになった。

 

テッド「(あいつ、すげえ奴だ…)」

 

ロデュウ「こ、この野郎……!チータ、最大呪文だ!」

 

チータ「ディオガ・ラギュウル!」

 

 バリーから距離をとった後、ロデュウは最大呪文を放った。

 

バリー「バカめ、何の考えもなく最大呪文を撃って勝負が決まると思ったら大間違いだ!」

 

グスタフ「ディオガ・ゾニスドン!」

 

 ディオガ・ラギュウルの弱所を見抜いたバリーはそこにディオガ・ゾニスドンを撃ち込み、ディオガ・ラギュウルを破った。そのままディオガ・ゾニスドンはロデュウに直撃した。

 

ロデュウ「ぐあああっ!!」

 

ジード「おい、あんたの魔物、かなりやるじゃねえか」

 

グスタフ「まぁな(エルザドルとの死闘を乗り越えて更に成長したな、バリー)」

 

チータ「あの魔物、想像以上に強いわ。ここは退くわよ、ロデュウ」

 

ロデュウ「バリー、この屈辱は必ず返す、覚えてやがれ!」

 

 ロデュウはチータを連れて退いた。

 

テッド「続きでもやるか?」

 

バリー「邪魔が入ったから今回はやめだ。テッド、俺は高みで待っているからな。俺と戦いたければチェリッシュを探してから生き残れ」

 

 ロデュウが乱入したため、今回の戦いをバリーはやめてグスタフと共に去って行った。

 

テッド「ジード、あいつは凄かったな」

 

ジード「ああ。あの古傷、あの目、相当な修羅場を潜り抜けなきゃ付かねえ男の勲章だ」

 

 バリーもテッドの事を考えていた。

 

バリー「(あいつの目もガッシュやチェリッシュ、エルザドルの目と似た輝きを持っている。流石はあの女が探している家族というだけの事はある)」

 

グスタフ「テッドの事を考えていたのか?」

 

バリー「ああ。あの女が探し求める家族とだけあって、心も力もでかかったぜ。あいつとは次の機会に1対1で戦いたいものだ」

 

 今回は邪魔が入ったため、改めて次の機会にテッドと戦いたいと思うバリーであった。




これで今回の話は終わりです。
今回はスケートの話が主ですが、ファウードの事を説明したり、キャンチョメの新しい術を試したり、バリーとテッドが遭遇したりするのも入れました。
チート術として名高いシン・ポルクは習得はいつになるかはまだ秘密ですが、ファウードでの戦いの最中に習得するかも知れません。
最後の方は、エルザドルとの死闘を乗り越えたバリーの実力の一端をロデュウとの戦闘で見せました。
次の話はレインの話になりますが、アシュロンの時と同じく、出番が前倒しされる魔物も出てきます。


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LEVEL50 親友との再会

高嶺家

 スケートからしばらく経ち、海外からガッシュ宛てに手紙が来た。

 

ガッシュ「(遂にレインから手紙が来たか…)」

 

 ガッシュは清麿の部屋に来た。

 

ガッシュ「清麿、レインから手紙が来たのだ!」

 

清麿「レインから手紙…?とうとうこの時が来たか…」

 

 

 

 

飛行機

 手紙にある通り、ガッシュペアはレインが待っている国へ向かった。

 

清麿「しかし、なぜ俺達に本を燃やしに来てほしいってわざわざ頼むんだ?」

 

ガッシュ「レインにはある事情があって私達に来てもらいたいのだ」

 

清麿「その事情って…」

 

 

 

 

某国

 レインがいる国にガッシュペアは到着した。

 

清麿「(レインか…。ガッシュの話では熊に似た魔物だそうだが、どんな奴だろうな…?)」

 

ガッシュ「清麿、清麿~~!」

 

清麿「何だ?」

 

 清麿が見た先には大きな魚を担いでいるガッシュの姿があった。

 

ガッシュ「見ろ、この魚を!とっても大きくてカラフルなのだ!」

 

清麿「って、早速素っ裸になってんじゃねえ!!」

 

 その後、ガッシュペアは待ち合わせの場所に向かった。

 

清麿「でっけえ家だな!」

 

ガッシュ「この家はレインのパートナー、カイルの家なのだ」

 

清麿「カイルって」

 

???「あんたら、何でジロジロ見てるんだい!?」

 

 声がした方にはいかにも悪そうな老婆がいた。

 

ガッシュ「ジル、レインはどこにいる?」

 

ジル「レインなんて」

 

 ジルがガッシュを見た途端、ある人物に見えてしまい、急に怯えた。

 

ジル「バ、バババ、化け物!!」

 

 怯えたジルは大急ぎで家に入り、閉じこもってしまった。

 

清麿「ガッシュ、あいつと何かあったのか?」

 

ガッシュ「この戦いではジルに会ったのは初めてなのだ」

 

清麿「(これまでにもガッシュを見て異様な敵意や怯えを見せた奴等はほとんどがゼオンと会っていた。あいつもゼオンと会って色々とボコボコにされたに違いない)」

 

???「ミッ…」

 

 声がした方を向くと、そこには小さな子供がいた。

 

ガッシュ「お主、カイルだな」

 

カイル「ミッ……」

 

ガッシュ「怯えるでない、私はレインの友達のガッシュ・ベルなのだ。レインの所へ行きたいのだ」

 

 怖がりながらもカイルはガッシュペアをレインの所まで案内した。

 

清麿「ここにレインがいるのか?」

 

カイル「ミ、ミ」

 

???「よく来てくれたな、ガッシュ」

 

 熊のような体の大きな魔物、レインが現れた。

 

ガッシュ「おお、レインではないか!久しいのう!」

 

レイン「久しぶりだな、ガッシュ!元気で何よりだ!」

 

 

 

 

カイルの家(小)

清麿「(ガッシュからレインは大きくて強いと聞いていたが、その通りだな…)どうしてガッシュ宛てに手紙を送れたんだ?」

 

レイン「以前、ナゾナゾ博士と会ってな。千年前の魔物との戦いに協力してほしいと言われた。俺もすぐに行きたかったが、その時はある事情で協力できなかった。ガッシュが戦ってるのに力になる事ができなくて済まなかった」

 

ガッシュ「事情があるのであれば仕方なかろう」

 

清麿「ナゾナゾ博士と会ったからガッシュ宛てに送る事ができたのか…」

 

レイン「お前がガッシュのパートナーか?」

 

清麿「清麿、高嶺清麿だ。手紙に書いてあった本を燃やしてほしいというのは…もしかして…」

 

レイン「そう、俺のパートナーのカイルの事でな。私の所に来る時にも見たと思うが、この子は本当に臆病者でな、争いごとはおろか、戦いなんて口に出したりしただけで逃げ出しちまう。魔物同士の戦いなんてしようものならこの子はすぐに気絶、呪文も唱えられやしないよ…」

 

清麿「よく今まで生き残ってきたな」

 

レイン「…実は、この子に隠れて呪文抜きで相手を倒してきたんだ」

 

清麿「なるほど」

 

レイン「なのに、バンバンと強力な術ばかり覚えていくんだ。それで、この間、恐ろしい術を覚えてしまってな。一度、カイルに目隠しをさせて呪文を唱えてもらったが、それは凄い威力だった。この俺も驚くほどに。あの力を見るだけでカイルは死んでしまうかもしれない。それで、もう限界だと思ってな。これ以上はカイルの精神が持たない。だから、ガッシュに本を燃やしてほしいんだ」

 

ガッシュ「レインはカイルの臆病を克服してから魔界に帰りたいのだな?」

 

レイン「そうだ。俺は王の事はどうでもいいからな。カイルの事が心残りなんだ…」

 

清麿「わかった。カイルの臆病の克服に協力しよう。その代わり、カイルの臆病が克服したらガッシュの頼みを聞いてから魔界に帰っていいか?」

 

レイン「構わないが…」

 

清麿「それと、俺はレインと2人で話がしたい。ちょっと外で話をしよう」

 

 

 

某国

 レインと清麿は話をしていた。

 

レイン「清麿の話って何だ?」

 

清麿「レイン、どんなに自分の使える術が強大でもその力に向き合っていかなくちゃならないんじゃないか?」

 

レイン「どうしてそれを?」

 

清麿「実を言うと、ガッシュもレインと同じぐらいかそれ以上に強力な術をたくさん使えるんだ。それに…俺もある強力な呪文が初めて使えるようになった時はレインと同じ心境になったよ…」

 

レイン「恐ろしい威力の術だったのか?」

 

清麿「それだけじゃない。制御も一切効かず、術者のガッシュや俺まで食い尽くす恐ろしい術だった…。その力に怯えた俺は一度はもう使わないと決めた程で、後に何とか制御できるようになった」

 

レイン「そうだったのか…」

 

清麿「もう一つ気になったのが、ジルという奴がガッシュに異常に怯えていたんだ。レインは何か知っているのか?」

 

レイン「…ジルがガッシュに怯えているのと、俺とカイルが出会ったきっかけはそのガッシュに似た邪悪な魔物、ゼオンだったんだ…」

 

 

 

回想

 レインの魔力を辿ってゼオンはやってきた。

 

レイン『ゼオンはパートナーが見つかっていない俺を始末するためにここに来た』

 

ジル「ガキ2人、この家をジロジロ見てるけど、用がないのならとっとと帰りな!」

 

デュフォー「ゼオンは集中してるんだ。痛い目に遭いたくないのなら黙ってろ」

 

 レインを気配探しているのに集中しているゼオンはジルの話を聞いてなかった。

 

ジル「話を聞いてるのかい!?ガキが生意気よ!!」

 

 ゼオンの態度に激怒したジルは蹴ろうとしたが、ゼオンに足を掴まれた。

 

ゼオン「クソババアが、俺をガキ呼ばわりした挙句、蹴ろうだなんていい度胸だな!」

 

 すぐにゼオンはジルの頭を掴んだ後、地面に押し込んだ。

 

ゼオン「身の程知らずが」

 

 近くにレインはいた。レインは見覚えのある人影を見つけた。

 

レイン「(あの影はもしかすると…ガッシュ!)」

 

 しかし、見覚えのある人影はガッシュではなかった。

 

レイン「(ガッシュじゃない!?色以外は瓜二つだが…感じるものはガッシュとはまるで正反対のものだ…!)」

 

ゼオン「お前が以前、魔界で大暴れしていたレインか…。その様子じゃ、ガッシュの事を知ってるな?」

 

レイン「いかにも、ガッシュは俺の友達だ。だがお前、なぜガッシュに似ている!?ガッシュの事を知っている!?」

 

ゼオン「そんな事をお前が知る必要はない。なぜなら、ここで俺に消されるのだからな」

 

デュフォー「ザケル」

 

 ゼオンの電撃をレインは何とか受け止めた。

 

レイン「ぐっ!」

 

ゼオン「ほう、俺のザケルを何とか受け止めるとはな。やはり、お前はかなりやるな。だが、物心ついてからずっと厳しい英才教育に明け暮れていた俺の方が遥かに上だ!」

 

 目にも止まらぬスピードでゼオンはレインに急接近し、レインを蹴り飛ばした。

 

レイン「ぐはっ!!(何という力だ…。呪文抜きでこれ程のものとは…!)」

 

ゼオン「デュフォー、こいつは多分、中級呪文程度では1発ではやられん。強い呪文を使っていい」

 

デュフォー「ジャウロ・ザケルガ!」

 

 ゼオンの手から電撃の輪が放出され、それから11本の電撃が飛び出してレインを襲った。

 

レイン「ぐあああっ!!」

 

デュフォー「ソルド・ザケルガ!」

 

 ジャウロ・ザケルガを全弾受け、更にソルド・ザケルガを受けたレインは倒れてしまった。

 

ゼオン「本はどこにある?」

 

デュフォー「この場にはないようだ」

 

ゼオン「命拾いしたな、レイン。本がこの場にない以上、今回は見逃してやる。だが、次にパートナーが見つかった状態で会ったら今度こそ消すぞ」

 

 ゼオンはデュフォーと共に去って行った。2人がいなくなった後、怯えながらもカイルが出てきた。

 

 

 

 

清麿「そうだったのか…」

 

レイン「俺は大人でも手におえない程強く、体が大きくて疎外されてたから、以前は色々と荒んでて大暴れした時期があったが、奴はそんな俺を一方的に叩きのめせる程強かった…」

 

清麿「ゼオンが物凄く強いのは俺達も知っている。何でも、優勝候補のブラゴでは足元にも及ばない程らしい。それと、近頃何か変わった事とかないか?」

 

レイン「変わった事はある。最近、変な奴等が『俺達の仲間になれ』とか言ってきてな、そいつらがまた来ると面倒になるんだ」

 

清麿「(いよいよリオウ一味が動き出したか…)レイン、今日はもう遅いから寝よう」

 

 

 

 翌日の朝になってある場所でパピプリオペアはロデュウに呼び出されていた。

 

パピプリオ「何だよ、こんな時間に呼び出して」

 

ロデュウ「報告しろ。レインの件はどうなっている?」

 

パピプリオ「えっと…どうもこうも順調さ」

 

ロデュウ「その割には時間がかかってるようだな」

 

ルーパー「もう少しよ、もう少しで彼を仲間にできるわ」

 

パピプリオ「あと一歩さ」

 

チータ「本当か?」

 

パピプリオ「俺達はワルだ。ワルに二言はない」

 

チータ「面白い事を言う」

 

ロデュウ「いいだろう」

 

パピプリオ「よっ、大統領!」

 

ルーパー「話わっかる~!」

 

ロデュウ「だが、しくじれば…わかっているな…?」

 

 ロデュウの恐ろしさにパピプリオペアはビビり、レインの方へ向かった。それと入れ替わるように空間に穴があき、カブトムシのような魔物とそのパートナーと思わしき女が出てきた。

 

ゴーム「ゴオォ~~~ッ!」

 

ロデュウ「ゴームとミールか。何の用で来た?」

 

ミール「リオウったらゴームより弱い癖に人使いが荒くてね、私達にロデュウの手伝いに行けって言ったのよ。それと、あいつらの言ってる事、全部嘘よ」

 

チータ「それくらいロデュウはお見通しよ」

 

ロデュウ「あいつらに期待なんか一切してない」

 

 

 

 それから、ガッシュ達はカイルの臆病を直そうとあれこれ試したが、前の戦いの時のようにカイルの臆病は直らなかった。

 

ガッシュ「(やはり、レイン自身がどうにかせねばならぬのか…)」

 

レイン「(ガッシュなら…何とかなると思ったのだが…)」

 

 どうにもならない状況にレインは本を燃やしてもらおうと考えた。そんな中、ガッシュはある気配に気づいた。

 

ガッシュ「さっきから気付いておるぞ。隠れてないで出てくるのだ」

 

パピプリオ「な、何で見つかったんだよ!」

 

ルーパー「仕方ないから出ましょう!」

 

 茂みからパピプリオペアが出てきた。

 

ガッシュ「やはり、パンブリとモジャモジャであったか…!」

 

パピプリオ「俺はパピプリオだ!間違えるな!」

 

清麿「レインを仲間に引き入れようとしてる事はレインから聞いた。だが、レインはお前達の仲間になる気はない。とっとと帰れ!」

 

ルーパー「生意気な事を言ってくれるわね!こうなったらパピーの恐ろしさを見せてあげるわ!」

 

パピプリオ「腰を抜かすなよ、ガッシュ!」

 

ルーパー「ギガノ・ジョボイド!」

 

清麿「ザケル!」

 

 ザケルたった1発でギガノ・ジョボイドは掻き消された。

 

ルーパー「パピーの呪文が!」

 

パピプリオ「何で俺達はあいつらと会ったら必ずこんな目に遭うんだよ~~!!」

 

 そのままパピプリオペアはザケルを受け、海の彼方まで吹っ飛んでいった。

 

レイン「……あっけなかったな…」

 

ガッシュ「気を抜くでない!強い魔物が来る!」

 

 その直後にロデュウペアが現れた。

 

清麿「(あいつが、テッドが途中で遭遇したというロデュウ!)」

 

ロデュウ「ふん、簡単にやられるとはな」

 

レイン「お前か?あのバカ共をよこしたのは」

 

ロデュウ「レイン、俺達には強大なパワーが必要だ。大人しく仲間になれ」

 

レイン「残念だったな、俺は本を燃やして王を決める戦いから降りるんだ」

 

ロデュウ「つまらん奴よ…そして、ムカつく奴だ!パワーがあるのに使おうとしない…くそったれな奴だ!」

 

チータ「ディオガ・ラギュウル!」

 

 いきなりロデュウは最大呪文を使った。

 

カイル「ミ、ミィ~~ッ!!」

 

レイン「何っ!?」

 

清麿「マーズ・ジケルドン!」

 

 弾きやすい角度からマーズ・ジケルドンをディオガ・ラギュウルに撃ち込み、レインから逸らさせた。

 

チータ「ロデュウの最大呪文が弾かれた!?」

 

ロデュウ「てめえら、何様のつもりだ!」

 

ガッシュ「パンブリにも言ったが、レインはお前達の仲間になる気はない。すぐに帰るのだ!」

 

ロデュウ「俺にとっとと帰れだと?ふざけんじゃねえ!チータ、こいつらに強い呪文をぶち込んでいくぞ!」

 

チータ「安易に撃つとさっきみたいになるわ。それに、あんなでかいのは連続ではいけないわよ、あいつらに当てるには間を空けてタイミングを見計らないとダメよ」

 

ロデュウ「ちっ。なら、小回りの利く術で行くぞ!」

 

チータ「そうね。ガンズ・ラギュウル!」

 

 ロデュウの翼が変形し、弾丸をたくさん放った。

 

清麿「ガンレイズ・ザケル!」

 

 前の戦いでもあったガンズ系の術の対決だが、今回はまだロデュウはゴデュファの契約を行っていないため、あっさり破られてダメージを受けた。

 

ロデュウ「くそっ、強そうに見えねえのに何て強さだ!」

 

レイン「(信じられん…、ガッシュがこれほどまでに力をつけていたとは…。それに、清麿もまるで予知能力があるかのような動きだ…)」

 

 ロデュウとガッシュの力の差は歴然であっという間にロデュウは追い詰められた。

 

清麿「テオザケル!」

 

ロデュウ「ぐあああっ!!」

 

 テオザケルを受けてロデュウはボロボロになった。

 

ロデュウ「この野郎…!」

 

 そんな時、空間に穴が開いてゴームが出てきた。

 

ロデュウ「ゴーム、何の用で来た…?」

 

ミール「随分やられてるようね。私達も助太刀しよっか?」

 

清麿「何だ!?あの魔物は!」

 

ガッシュ「あの魔物はゴーム、前の戦いではクリアと手を組んでいた空間を操る魔物なのだ!」

 

清麿「今回はクリアはもう脱落したとなると…さっきのロデュウとのやりとりから考えれば、ゴームはリオウの手先になっているようだな!」

 

ガッシュ「ミール、ゴームはリオウの手先になっているのか?」

 

ミール「ま、そういう感じだぴょん。でも、リオウって人使いが荒いのよ。ゴームの力が必要だからと力を貸した途端、あっち行けこっち行けとかうるさい上に逆らったら私に呪いをかけて殺すぞとか言うのよ。ちょうどゴームもそれでストレスが溜まってるから、うっぷん晴らしにやられちゃってね!」

 

清麿「そんなふざけた理由でやられてたまるか!行くぞ、ガッシュ!」

 

ガッシュ「ウヌ!清麿、ゴームは強敵なのだ!気を引き締めていくのだぞ!」

 

ミール「ディオボロス!」

 

 黒いエネルギー波を難なくガッシュはかわした。

 

ミール「やるじゃない。ギガノ・ディオボロス!」

 

清麿「ザケルガ!」

 

 ギガノ・ディオボロスの弱所を見抜いた清麿はそこにザケルガを撃ち込んで貫通させ、そのままザケルガはゴームに命中した。

 

ゴーム「ゴオォォッ!!」

 

ミール「ちょ、ゴームの術を貫通するなんて!でも、まだ強い術は残ってるのよ!ディオボロス・ザ・ランダミート!」

 

清麿「ラウザルク!」

 

 現れた立方体から無数に放たれる丸や三角がガッシュペアに襲い掛かった。清麿はその前にラウザルクを発動させ、ガッシュに肩車してもらってからアンサー・トーカーでどうかわせばいいかの答えを出し、ガッシュに指示した。

 

清麿「右、右、前、左、後ろ!」

 

 結局、一発たりともガッシュには当たらなかった。

 

ミール「むっかつく~~~っ!何であいつらに当たらないのよ~~!!」

 

チータ「あなた、何の考えもなく攻撃を出してもかわされるだけよ。それもわからないの?」

 

ミール「何?説教でもする気?」

 

チータ「仕方ないわね。心の力もだいぶたまったから私達も加わるわ。ロデュウ、まだ戦える?」

 

ロデュウ「勿論だ」

 

チータ「なら、2体で連携して戦うわよ。2体で連携すれば多少は勝機も見えてくるはずよ」

 

ミール「わかったわ」

 

チータ「ロデュウはガンズ・ラギュウルなどを使ってガッシュの動きを少しでも制限してゴームの術で決めるわよ」

 

ロデュウ「なぜ俺の術で決めさせねえんだ!?」

 

チータ「さっきも見たでしょ?ロデュウの術では簡単に弾かれてしまうのよ。わかった?」

 

ロデュウ「ちっ、わかったよ」

 

ゴーム「ゴ~~!」

 

 ロデュウとゴームは2体がかりでガッシュに襲い掛かった。

 

清麿「(まずいぞ!1体なら簡単に倒せても、こいつらが2体同時に攻めてきたら攻撃のチャンスが少なくなってしまう!)」

 

チータ「ガンズ・ラギュウル!」

 

 ロデュウの攻撃をガッシュはかわしたが、その傍にはゴームが待ち構えていた。

 

ミール「ディオボロス!」

 

 次々と繰り出されるロデュウとゴームの攻撃にガッシュペアは攻撃のチャンスがほとんどなく、回避や防御に回らざるを得なかった。しかし、それでもガッシュと清麿は諦めなかった。

 

ロデュウ「くそったれ!かわされたり防がれたりでしぶとい奴だ…!」

 

ミール「ほんと、ムカつくわよ!!」

 

ガッシュ「ここで私は倒されぬぞ!」

 

 ガッシュの姿にレインは昔の事を思い出していた。

 

レイン「(これだ…これなんだ!俺があの時、魔界で見たものは…!)」

 

 

 

回想

 それは、レインが魔界にいた頃の事だった。レインは大暴れしていた。

 

魔物A「レインがまた暴れ出したぞ!」

 

魔物B「よせ、レイン!」

 

 レインは体が大きい上に大人でも手におえないほど強く、止めようもなかった。

 

魔物C「大人ももう止められねえ!」

 

魔物D「誰か奴を!」

 

 大暴れしている最中、レインは崖から転落してしまい、大怪我を負ってしまった。

 

レイン「ぐああああっ!!(まじぃ、体を動かすだけで息が詰まる…。激痛が…!助けを……まだ上にいる俺の村の奴等に……。誰が…、助けになど来てくれるか…?追放する手間が省けたと喜んでるに違いねえ…。俺も…、ここまで…)」

 

 そんなところへガッシュが通りかかった。

 

ガッシュ「ウヌ…お主、大丈夫か?凄い傷ではないか、手を貸すのだ!」

 

レイン「や、やかましい!俺は何ともねえんだ。てめえ、俺を知らねえのか!?俺を舐める奴は誰であろうとこの爪で引き裂いてんだ!チビがムカつく真似すんじゃねえ!とっとと向こうへ行かねえと、向こうへ行かねえと、てめえの五体をズタボロに引き裂くぞ!!」

 

ガッシュ「何を言うか!ズタボロなのはお主の方であろう!早く何とかしなければ、お主が死んでしまう!」

 

 

 

 

 その魔界でのガッシュの姿は今でもレインははっきり覚えていた。

 

レイン「(俺は、あの姿を見て変われた。ガッシュの姿で強さを知ったんだ。俺みたいな乱暴な力に対してもまっすぐに立っているその姿によ。俺は何をしてたんだ?カイルの臆病を直すのはガッシュに頼むんじゃない!)」

 

 ガッシュの方はロデュウとゴームの攻撃で防御と回避しかできず、攻撃できなかった。

 

ミール「その調子よ!どんどん攻撃すればやっつけられるわ!」

 

ゴーム「ゴォ~~ッ!」

 

ミール「ギガノ・ディオボロス!」

 

チータ「ギガノ・ラギュウル!」

 

 二つのギガノ級の呪文をガッシュは回避が間に合わないため、マントでガードしようとした。しかし、レインが腕で二つのギガノ級の呪文を防いだ。

 

レイン「カイルの臆病を直すのはガッシュに頼むんじゃない。俺が、俺がカイルに見せてやらなければいけねえんじゃねえか!」

 

ガッシュ「レイン…」

 

レイン「カイル、よく見ておけ。これがお前に見せる、俺の最後の姿だ!」

 

 レインの本気の姿をカイルは怯えながらも見ていた。

 

レイン「ロデュウの方は俺に任せろ!ガッシュはゴームとかいう魔物の方を頼む!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

 レインはロデュウへ、ガッシュはゴームの方へ向かっていった。

 

ミール「増援の登場?助けが来たって二体ともやっつけてやるわよ!」

 

ゴーム「ゴーッ!」

 

ミール「ウィ~~・ム~~・ウォ~~・ジンガムル・ディオボロス!」

 

 独特のポーズをとった後、ゴームは巨大なエネルギー弾を発射した。

 

清麿「エクセレス・ザケルガ!」

 

 清麿はウィー・ムー・ウォー・ジンガムル・ディオボロスの弱所を見抜き、エクセレス・ザケルガをそこに撃ち込んでウィー・ムー・ウォー・ジンガムル・ディオボロスを打ち破った。

 

ミール「嘘!?こんなに強力な術まで破られてしまうの!?」

 

ゴーム「ゴ~~~~ッ!!」

 

 エクセレス・ザケルガの直撃を受けたゴームは吹っ飛ばされた。

 

清麿「ザグルゼム!ザグルゼム!ザグルゼム!」

 

 吹っ飛ばすのと同時にゴームと後ろにある岩場目掛けてザグルゼムが放たれた。

 

ゴーム「ゴオッ?」

 

ミール「光るだけで何も起こらないわね。ハズレ呪文を使って何になるのかしら?」

 

清麿「(よし、連鎖のラインは整った!)テオザケル!」

 

ミール「バークレイド・ディオボロス!」

 

 テオザケルをバークレイド・ディオボロスであっけなく防いだ。

 

ミール「あーら残念。この程度ならゴームでも防げるわよ」

 

清麿「ザケルガ!」

 

 今度はザケルガを別の方向へ向けて撃った。

 

ミール「何処見て撃ってるの?バーカ!」

 

 清麿の目論見にゴームペアは全く気付いていなかった。ザケルガを撃った方向にはザグルゼムを撃ち込んだ岩があり、連鎖反応でザケルガの進行方向が曲がってゴームの背後に飛んできた。背後からの攻撃をゴームは予想しておらず、まともにザグルゼムで強化されたザケルガを受けて吹っ飛ばされた。

 

清麿「バカはどっちかな?」

 

ミール「もう、あいつらはとことんムカつくわね!!今度こそ決めてやるわ!ディオボロス・ザ・ランダミート!」

 

 再びディオボロス・ザ・ランダミートを発動させてガッシュペア目掛けて放った。

 

ミール「今度こそ当ててやるわ!」

 

清麿「俺達に対して安易にそんな攻撃をするのは自殺行為だ!行くぞ!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

清麿「ブレールド・ディラス・ザケルガ!」

 

 ガッシュは電撃の剣を持った。

 

ミール「そんな剣で何ができるのかしら?」

 

清麿「リバース!」

 

 清麿の掛け声の後、ガッシュは剣を振るった。すると、風ではないが何かの凄まじい嵐が起こり、ガッシュに向かっていた丸や三角形の闇が全てゴームの方へ飛んでいった。

 

ミール「う、ウソでしょ!?攻撃を全て跳ね返すなんて!!?」

 

ゴーム「ゴ~~~~ッ!!!」

 

 自分の攻撃を諸に受けたゴームはボロボロになった。

 

ミール「こんな結果になるなんて…!ゴーム、ここは逃げるわよ!」

 

ゴーム「ゴーッ!」

 

 勝ち目はないと判断したミールはゴームが空間に穴を開けた後、ゴームと共にワープして逃げた。

 

ガッシュ「逃げられたか…」

 

 一方、レインはロデュウを吹っ飛ばした後、カイルに駆け寄った。

 

カイル「ミ、ミ……」

 

レイン「俺が怖いか?カイル。怖えだろうな。だがよ、本気の姿ってもんは、怖えもんなんだ。特に、大切なものを守ろうとする時はよ。お前には俺の姿がどう映るのかわからねえ。悪いのか?正しいのか?だが、必要なんだ!」

 

 しかし、カイルはまだ怯えていた。

 

レイン「ガッシュのようにはいかねえか…。やはり、俺は外道だなぁ。こんな姿でしかお前を守れねえ…」

 

 そのレインの姿は涙を流していた。

 

ロデュウ「ふん、そこか!」

 

チータ「ガンズ・ラギュウル!」

 

 レインはガンズ・ラギュウルを受け止め続けた。

 

レイン「カイル、早く逃げろ!早く逃げるんだ!」

 

 しばらく考えた後、カイルは逃げた。

 

レイン「(カイル、いつかはガッシュみたいになれるはずだ!なぜなら、ガッシュとお前はよく似ている。カイル、お前も前を向いて立てるんだ。どんな奴の、目の前でもよ!)」

 

 歩き続けた後、カイルが見たのはゴームを撃退した後のガッシュペアだった。

 

ガッシュ「カイル、これからどうするのだ?」

 

 ガッシュが持っていたのはレインの本だった。

 

ガッシュ「この本を持って戦えばレインを助ける事ができる。だが、私達はお主に戦いを無理強いしない。本を持って戦うか、このまま逃げるかはカイルが決める事なのだ。カイル、お主はどっちを選ぶ?」

 

 しばらくした後、カイルはある決断をした。その頃、レインは追い詰められていた。

 

ロデュウ「手間とらせやがって…。ゴームの奴、今頃どうしてるんだ?」

 

???「アボロディオ!」

 

 声がした後、レインは腕をクロスさせると、十字の衝撃波を放った。ロデュウは慌ててチータと共によけた。

 

チータ「何!?」

 

 レインの後ろにはカイルとガッシュペアがいた。

 

ロデュウ「ガッシュがまだいるって事はゴームめ、しくじりやがって…!」

 

 呪文を放ったものの、カイルはまだ足が震えていた。

 

レイン「カイル、お前、一緒に戦うのか?」

 

カイル「ミ、ミ…!」

 

ガッシュ「これはカイルが決めた事なのだ(カイル、恐れに立ち向かう心は勇気なのだ。怖がりで恐れを誰よりも知っているお主なら、怯えを克服した時、強い勇気を持てるであろう…!)」

 

レイン「そうか…。カイル、行くぞ!」

 

カイル「…うん!」

 

ロデュウ「この野郎…上等じゃねえか!チータ、最大呪文は撃てるか!?」

 

チータ「撃てるわ。ディオガ・ラギュウル!」

 

 再びロデュウは最大呪文を放った。

 

カイル「ガルバドス・アボロディオ!」

 

 レインに似た巨大な獣がディオガ・ラギュウルを打ち破り、ロデュウに襲い掛かった。

 

ロデュウ「こ、これほどまでに力の差が!チータ!」

 

 そのままロデュウは攻撃を受けてしまった。

 

清麿「やった!」

 

 戦いが終わり、緊張の糸が切れてカイルは気絶してしまった。

 

レイン「ありがとう、ガッシュ。これで、俺は安心して魔界に帰れる」

 

清麿「待ってくれ。カイルの事が終わったらガッシュの頼みを聞く約束だっただろ?」

 

レイン「お、そうだったな。その頼みって何なんだ?」

 

ガッシュ「私からの頼みは魔導巨兵ファウードを止めるまで人間界に留まってほしい事なのだ」

 

レイン「ファウード?それがどうしたんだ?」

 

清麿「レインに仲間になれと言ったロデュウ達の目的は強力な呪文を持つ魔物達を自分達の陣営に引き込み、その力で超巨大な魔物、ファウードの封印を解いて残った魔物達を人間界諸共吹っ飛ばすというものだ」

 

レイン「残った魔物達を人間界諸共吹っ飛ばすだと!?じゃあ、ファウードを止められなかったらカイルも…!」

 

清麿「そうなる…」

 

ガッシュ「だからこそ、レインも私達と一緒にファウードを止めてほしいのだ。やっと心残りがなくなって魔界に帰ろうとした所を止める形になって済まぬが…これは私からのお願いなのだ!」

 

 真剣な眼差しでガッシュは頭を下げて頼んだ。

 

レイン「…また新しい心残りができたようだな。ガッシュ、お前の頼み通り、ファウードを止めるまでは人間界に残る」

 

清麿「本当か!?」

 

レイン「ガッシュは俺の頼みを聞いてここまで来てくれたんだ。だから、今度は俺がガッシュの頼みに応える番だ」

 

ガッシュ「ウヌ!レインは私の友達なのだ!」

 

 話の途中でカイルは起きて聞いていた。

 

カイル「レイン、ファウードっていうのを止めるまでは人間界に残ってくれるんだよね?だったら、僕を鍛えてほしいんだ!」

 

レイン「ああ。魔物同士の戦いにもついていけるように鍛えるぞ!」

 

カイル「うん!」

 

 カイルの臆病は直り、ファウードという脅威に立ち向かうため、カイルはレインに自分を鍛えてほしいと頼むのであった。

 

清麿「今度はレインも仲間になってくれるのか」

 

ガッシュ「頼もしいのう」

 

 また、ガッシュ達に頼もしい仲間が増えたのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回はレインの登場と加入を描きました。
今回の話の戦闘パートでは、ロデュウだけでは王族の力が目覚めたガッシュがいる時にレインが戦わなければならない状況にならないので、原作ではファウード編に登場しないゴームも出てくる展開にしてレインが加勢するという流れにしました。
レインの加入に関しては、レインがファウードの事を知ったらファウードを止めるまでは人間界に留まるだろうと判断したので、理由を考えるのは困りませんでした。
次の話はアニメのウォンレイ主役回です。


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LEVEL51 ウォンレイの災難

某国

 翌日、ボコボコにされたロデュウはチータと共にファウードに戻っていた。

 

ロデュウ「くそっ!」

 

チータ「仕方ないな。あれ程の魔物がまさかいたとは…」

 

ロデュウ「あのガッシュとかいう野郎、チビの癖に何て強さだ!幸い、レインはまだ健在だから機会を見て引き込むが、あのチビは今度こそ仕留めてやる!」

 

 その頃、ガッシュペアは日本に帰る事になり、レインも人間の姿になってカイルと共に見送りに来ていた。

 

レイン「元気でな、ガッシュ!」

 

カイル「また遊びに来てね!」

 

 それから、ガッシュペアは何をお土産にするかで買い物をしていた。

 

ガッシュ「ウヌ、ウマゴンのお土産はこれにするのだ!」

 

 ウマゴンへのお土産は魚を釣っている人形にした。

 

ガッシュ「コルルとしおりはこれにするのだ!」

 

 コルルとしおりへのお土産はティーナ人形によく似た人形にした。

 

ガッシュ「ティオと恵には何にしようか…?」

 

清麿「えっと…ん?」

 

 南国のドレスとハイビスカス柄のビキニを見て、清麿は思わずドレス姿とビキニ姿の恵を想像してしまった。

 

清麿「め、恵さんとティオのお土産はあれにしよう…」

 

 結局、恵へのお土産は南国のドレスとハイビスカス柄のビキニにした。

 

清麿「フォルゴレやリィエンとかには何にしようか…?」

 

 皮肉にもフォルゴレはロケでレインとカイルが住んでいる国にいた。

 

フォルゴレ「おお、この眩しい太陽は私や仕事関係者にバンビーナ達を美しく照らすな!」

 

キャンチョメ「お菓子もミラノでは見られないものもいっぱいあるよ!」

 

 ビーチを眺めていると、何やら泳いでいるパピプリオペアを見つけた。

 

キャンチョメ「どうしたんだろう?」

 

 何とか岸に着いたパピプリオペアはお腹が減っていた。

 

パピプリオ「ルーパー、お腹が減ったよ…」

 

ルーパー「仕方ないわね、どこかで食べましょう。それにしても、ロデュウ様は迎えに来ないわね」

 

パピプリオ「まさか俺達、見捨てられたんじゃ…?」

 

???「ねえ、お腹が減ってるのなら、僕のお菓子を分けてあげるよ」

 

 お菓子をくれたのはキャンチョメだった。

 

パピプリオ「あ、ありがとう!!」

 

キャンチョメ「君は誰?」

 

パピプリオ「俺はパピプリオ。で、一緒にいるのがパートナーのルーパーだ」

 

ルーパー「あなた、パピーとそこまで歳が変わらないわね。名前は何って言うの?」

 

キャンチョメ「僕の名前はキャンチョメ」

 

パピプリオ「お菓子をくれてありがとな!そのお礼に俺、どうしたら…」

 

キャンチョメ「よかったら僕と友達になろうよ。友達になったらガッシュやティオを始めとする僕の友達を紹介するよ」

 

パピプリオ「ガ、ガッシュ!?」

 

キャンチョメ「どうしたんだい?」

 

パピプリオ「いや、何でもない。とにかくキャンチョメ、俺にお菓子をくれてありがとう!俺達はここで帰るけど、また会ったら遊ぼうな!」

 

 

 

某国

 逃げ延びたゴームペアはレストランでやけ食いをしていた。

 

ミール「あ~、あのガキ達は腹が立つ!!私達の攻撃は予知されるし、跳ね返されるし、もう、どうなってるのよ!リオウのうるささと合わせてストレスがすぐにたまるわ!」

 

ゴーム「ゴォ!!」

 

 ゴームペアがやけ食いしてしばらく経つ頃にはゴームもミールも20皿以上も食べていた。

 

ミール「悔しくてやけ食いしてたら20皿食べたぴょん。ゴーム、うるさいリオウの癇癪が始まる前に帰るわよ」

 

 食事が終わった後、ゴームは空間移動してファウードへ帰った。その際に何者かが髪の毛をゴームの空間移動の際に紛れ込ませていたとも知らずに。

 

 

 

 

中国

 リィエンの父、パクロンの元にある知らせが入った。

 

パクロン「奴がリィエンの排除に向かっただと?」

 

マフィア「我々もボスの後継者はお嬢様であると伝えたのですが…」

 

パクロン「あの馬鹿者め、私の指示を無視しおって…。これは、リィエンにお詫びの品を持っていかなければならないようだな」

 

 その頃、ウォンレイペアは…。

 

リィエンの祖父「2人はいつも仲がいいのう」

 

リィエン「ふふふ、勿論ある。私とウォンレイはラブラブあるよ。ね、ウォンレイ」

 

 しかし、ウォンレイは何やら考え事をしていた。

 

リィエン「ウォンレイ、聞いてるあるか?ウォンレイ!」

 

ウォンレイ「な、何だい?」

 

リィエン「何かあったあるか?」

 

ウォンレイ「い、いや、別に…」

 

リィエン「このところちょっとおかしいあるよ。ぼんやりしてて」

 

リィエンの祖父「どうかしたのかい?婿殿」

 

ウォンレイ「あの、午後の仕事なんですが…休ませてもらう事、できませんか?」

 

リィエン「ウォンレイ!」

 

リィエンの祖父「いいとも。今の時期は半日ぐらいどうって事ないさ」

 

ウォンレイ「すみません…」

 

 ウォンレイはどこかへ行った。

 

リィエン「おじいちゃん」

 

リィエンの祖父「なぁに、婿殿もたまには羽を伸ばしたいんじゃろうて」

 

リィエン「でも…」

 

 ウォンレイの行動が気になってしょうがないリィエンはウォンレイの後を追った。しばらく追ってみると、ウォンレイはある女と話していたが、リィエンには浮気しているようにしか見えなかった。

 

リィエン「ウォンレイ…こんな事、あるはず…ウォンレイに限って、そんな…!」

 

 女の謀略にリィエンは嵌ってしまった。

 

リィエン「何かの間違いある!私とウォンレイは…」

 

 リィエンはウォンレイ救出以降の事を思い出していた。

 

リィエン「私がウォンレイを信じないでどうするあるか…!でも、許さない!絶対に!!」

 

 

 

 

モチノキ町

 日本に帰ってから翌日、清麿はいつも通り学校に通った。休み時間にマリ子からある事を聞かれた。

 

マリ子「高嶺君って好きな女の子とかいるの?」

 

清麿「好きな女の子か…」

 

 清麿の好きな女は恵だが、迂闊に人気アイドルの恵が好きと言えば鈴芽はもちろん、最悪の場合は全校生徒を敵に回してしまってタコ殴りにされる事を恐れ、言えなかった。

 

マリ子「好きな女の子は同じクラスの鈴芽でしょ?」

 

清麿「悪い。そういった事は言えん」

 

 清麿は自分の席に座った。

 

鈴芽「マリ子ちゃん、高嶺君は私の事を好きと言ってくれた?」

 

マリ子「それが変なのよ。鈴芽が好きかと聞かれたら涼し気な様子でそういった事は言えんとか言ったのよ。もしかすると、高嶺君は別の女性の事が好きで鈴芽に対する興味なんて一切ないのかも知れないわ」

 

鈴芽「私の事が好きじゃない!?」

 

デュフォー『俺の出した答えでは清麿は大海恵という女に夢中だからな。お前に対する特別な感情は一切持っていない。そんな夢はとっとと諦めろ』

 

 清麿は別の女性の事が好きかも知れないとマリ子に言われた鈴芽はデュフォーから言われた事を思い出していた。

 

鈴芽「高嶺君が私の事を好きだと思ってないなんて……、そんなの嘘よ~~!!」

 

 思い出し泣きをして鈴芽は教室を出てしまった。

 

清麿「水野の奴、何やってんだ?」

 

 

 

中国

 ウォンレイはある場所に向かっていた。

 

ウォンレイ「は、はくしょん!」

 

女「どうかしたの?」

 

ウォンレイ「い、いや、ちょっと寒気が…」

 

 そこには、武闘大会の紙が貼ってあった。

 

ウォンレイ「武闘大会?あなたが?」

 

女「そう。用心棒を募集してるの。参加しなさいよ、きっと勝てるわ」

 

ウォンレイ「でも…」

 

女「いるんでしょ?お金」

 

ウォンレイ「そ、それはそうだが…」

 

女「だったら、迷う事はないじゃない」

 

 強く断り切れず、ウォンレイは武闘大会に参加する事になった。

 

審判「これより用心棒武闘大会を開始する!」

 

参加者「おぉ~~っ!!」

 

審判「勝ち抜き戦だぁ!最後まで残った1人が賞金1万元を獲得できる!」

 

女「ふふふ…(どうやら駒が揃ったようね…)」

 

 参加者の中には帽子を深く被って目元を見せていないものの、ウォンレイには見覚えのある人物がいた。

 

ウォンレイ「あの人……」

 

武闘家「一番は俺だ!命の惜しくない奴からかかってこい!」

 

女「出番よ」

 

ウォンレイ「いや、私はやっぱり…」

 

???「そんなに流されてばかりいると思わぬ災難が訪れるぞ。嫌だと思うならはっきり言え」

 

ウォンレイ「災難?」

 

女「そんなの見かけ倒しよ!」

 

武闘家「何?」

 

女「やっつけちゃいなさいよ!」

 

ウォンレイ「そんな……」

 

 謎の男の助言も虚しく、ウォンレイは女の態度に押されて武闘家と戦った。魔物でしかもカンフーを習得しているウォンレイに人間が敵うはずもなく、あっさり倒されてしまった。

 

女「強いのね、なんて頼もしいのかしら!」

 

リィエン「何よ、あの程度の奴に勝ったぐらいでイチャイチャして…!!」

 

ウォンレイ「はくしょん!気のせいか…?」

 

 気のせいではなく、リィエンの怒りはすさまじい勢いで溜まっていた。

 

剣士「今度は俺が相手だ!覚悟しやがれ!」

 

 次は剣士が向かったが、前の相手と同じく、あっさり倒されてしまった。

 

審判「さぁ、次は誰だ!?」

 

???「次は私ある!」

 

 その声の主は覆面をしてるものの、リィエンであった。

 

???「(やはり来ていたか、リィエン。ウォンレイ、リィエンは誤解で嫉妬と怒り心頭だぞ。この場はどう収める?)」

 

ウォンレイ「リ、リィエン!?」

 

リィエン「リィエンなんて知らないある!私は謎の美少女、恋々仮面である!」

 

ウォンレイ「そ、そんな事言われても…」

 

リィエン「そこの人、ギッタギタにのしてやるから覚悟するあるよ!」

 

ウォンレイ「リィエン、いや、恋々仮面、私達が戦い意味なんてないんじゃないか?」

 

リィエン「無意味?そっちになくてもこっちには大ありあるよ!!」

 

 リィエンの怒気に目元を隠した謎の男以外は気押されていた。

 

女「ふふふ(リィエン、あんたがいちゃ困るんだよ。今更『組織の跡継ぎを娘のリィエンにする』、なんて言われてもね。とんだ親バカさ)」

 

リィエン「行くあるよ!」

 

 リィエンの凄まじい嫉妬と怒りにウォンレイは押されていた。

 

???「(さぁ、早くしないと取り返しがつかなくなるぞ…)」

 

ウォンレイ「(強い…そして何より……)物凄く怖い!!」

 

リィエン「どうしたある!?よけてばかりじゃ私に勝てないあるよ!」

 

ウォンレイ「し、しかし私には何が何だか…」

 

リィエン「はん!ちゃんちゃらおかしいある!その程度の覚悟であんな事してたあるか!?」

 

 ウォンレイはリィエンの拳を受け止めた。

 

ウォンレイ「あんな事って一体何なんだ?」

 

リィエン「自分の胸に聞くある!」

 

 リィエンのキックを受けてウォンレイは吹っ飛ばされた。

 

ウォンレイ「落ち着け、リィエン!君は何か誤解している…」

 

リィエン「今更しらじらしい。騙されないあるよ!」

 

女「(私が香港の組織を手にするんだよ。そうさ、ボスになって暗黒街を支配する。そのためには、お前達が邪魔なんだ…)だいぶへばってきたようだから、そろそろ行くよ」

 

 ウォンレイはリィエンの気迫に押されっぱなしだった。

 

リィエン「痛かったあるか?だけど、私の痛みはこんなものじゃないある!」

 

???「リィエン、ウォンレイの話を聞いてやれ」

 

リィエン「勝手に首を突っ込まないでほしいある!」

 

 謎の男にリィエンは蹴りを入れたが、その男は受け止めた。

 

リィエン「(この感じ、初めて会った気がしないある…。それに、どうして私の名前を…?)」

 

???「少しは頭が冷えたか?ウォンレイの話を聞いてやるんだ。そして、周りの連中はグルになっているぞ」

 

ウォンレイ「仲裁してくれてすいません…。リィエン、私を信じてくれ…」

 

リィエン「ウォンレイ…」

 

女「あいつ、私を裏切ってリィエンについたようね!みんなやっておしまい!あの3人を生かして帰すな!!」

 

 集まった男達は襲い掛かった。謎の男はリィエン達に味方した

 

ウォンレイ「一緒に戦ってくれるのですか?」

 

???「当然だ。たまにはこうやって体も動かさんと体が鈍るからな」

 

リィエン「最初から私達が狙いだったあるか!この武闘大会、最初から胡散臭かったある!」

 

ウォンレイ「わかってはいたんだが、つい、その…」

 

リィエン「ついデレデレしたってあるか!?」

 

ウォンレイ「仮面をとった方が怖い…」

 

???「ウォンレイも少しはリィエンに誤解されるようなマネはするな」

 

 ウォンレイはリィエンと謎の男のダブル拳骨を受けた。その間にも男達は一掃された。

 

女「そんな、こんな事が!」

 

???「随分と勝手なマネをしてくれたな」

 

女「あんた、何者なの!?胡散臭いし、急にリィエンに味方して!」

 

???「お前、私の事を忘れたのか?」

 

 謎の男が帽子をとって目元を見せると、その正体はパクロンだった。

 

リィエン「お父さん…」

 

女「ボ、ボス!どうしてこんな場所に!?」

 

パクロン「お前の行動が気になったから正体を隠して追っていたんだよ。ボスの私がいつも建物の中でふんぞり返っているとでも思っていたのか?」

 

女「そ、そんな…」

 

パクロン「お前の処分は後で考える。それよりもリィエン、私の部下がお前に迷惑をかけて済まなかったな。お詫びの品をじいさんの家に届けている。その品はお前達が欲しかったものだぞ」

 

リィエン「お父さん…」

 

パクロン「ウォンレイ、お前は私がリィエンを託せると見込んだ男だ。お前がリィエンと籍を入れるまでは負けて魔界に帰るのは決して許さんぞ!リィエンの事が大切なら、何が何でも生き残って結婚式をやってみろ。金の方は私が出すからな」

 

 部下と共に女を連行してパクロンは去って行った。

 

リィエン「お父さんからのお詫びの品って何あるか…」

 

ウォンレイ「私にはそれが何なのか想像もつかない…」

 

 

 

ファウード

 ファウードではガッシュとレインにボコボコにされたロデュウとゴームが帰ってきた。

 

???「ロデュウ、ゴーム、何だ、その様は?」

 

ロデュウ「うるせえ、邪魔が入ったんだよ」

 

???「その邪魔のせいで力を取り逃がしたというのか?」

 

ロデュウ「口の利き方に気をつけな、リオウ!てめえに協力しちゃいるが、てめえの手下になった覚えはねえんだぜ」

 

ミール「そもそも私達に至っては呪い殺すっていう脅しをかけて無理矢理従わせてるじゃない!ゴームがキレたらどうなるかわかってるでしょうね!」

 

リオウ「余計な事を言うな、ミール。これ以上気に障る事を言ったら本当に今からお前を呪い殺すぞ。それが嫌なら大人しくしていろ」

 

ミール「全く、呪いを盾にして黙らせるなんてムカつくわね!あいつなんか他の魔物に再起不能になるまでやられちゃえばいいのよ」

 

ゴーム「ゴォ……」

 

 呪いで脅しをかけるリオウの態度にミールとゴームは不満だった。

 

リオウ「俺がいなければこの計画は実行できない。各自に与えた使命だけは守ってもらうぞ。とにかく強大なパワーが必要なのだ。こいつの鍵を壊すためにはな!」

 

ロデュウ「ファウードの封印か…リオウ、正直どれくらいなんだ?こいつの鍵を壊す力ってのはどれくらいなんだ?」

 

リオウ「2,3体、ディオガ級の術より強い力を出せる者が必要だ。急げ!ファウードに気付いた魔物も何体かいるはずだ。そいつらが妙な行動を起こす前に」

 

ロデュウ「焦らなくてもこいつを隠す魔法の装置は動いてて外からは見えねえようになってんだろ?」

 

リオウ「それでも強力な勘を持つ魔物はファウードの力を感知する。ただ、そんな奴が生き残ってるかはわからんがな。だが何であれ、邪魔が入るってのは、非情に腹が立つ!その前にこいつの封印を解き、人間界諸共残りの魔物を吹っ飛ばす!」

 

ロデュウ「レインはまだ残っているが、他は…」

 

???「リオウ、変な奴が乗り込んで来たぞ」

 

リオウ「どうした?ザルチム」

 

 ザルチムの案内に従ってリオウ達が来た所にはおかしな何かがいた。

 

リオウ「貴様、なぜ乗り込めた!?ザルチム、ファウードを隠す装置はちゃんと動いているだろうな?」

 

ザルチム「さっき、異常がないか確かめてみたが、装置は至って正常に稼働している」

 

リオウ「なぜ乗り込めたか話してみろ!」

 

???「そんな事はどうでもいいだろ?それよりも、お前達がファウードの封印を解くために求めているディオガ級以上の術を持つ魔物を教えてやる。一番手っ取り早くファウードの封印を解くにはシン級の術を持つ魔物、ガッシュ・ベルを引き込む事だ。まぁ、お前達に従ってくれないというのであれば、ヨポポという魔物を引き込め。そうすれば、ガッシュが仲間と共にファウードへ来るかもしれんぞ」

 

リオウ「何、シン級だと!?もうディオガ級を超えたシン級の呪文を覚えた魔物が現れたとでもいうのか!?」

 

ロデュウ「おい、そのシン級の術を持つ魔物がいればディオガ級の術を持つ魔物何体分ぐらいになるんだ?」

 

ザルチム「リオウの見立てでは、最低でも3体分、多ければ5体分以上になるらしい。実際に試してみなければわからんそうだがな」

 

???「他にも竜族の神童のアシュロンやこの戦いの優勝候補のブラゴなどといった強い奴等もいる。ファウードの封印を解くために誰を引き込むかはお前達次第だ。それでは、お前達の健闘を祈る」

 

 そう言って何者かは消滅した。

 

リオウ「ザルチム、あいつは何者なんだ?」

 

ザルチム「俺にはわからん。なぜ、奴は現れたのか?そいつはその情報で俺達を罠に嵌めようとしているのか、それとも、俺達を支援しているのか…」

 

リオウ「何者なんだ?姿を隠す装置があるのにも関わらずにここへ乗り込めるとは……」

 

 

 

 

某国

 デュフォーのアンサー・トーカーでファウードの所在地を突き止めたゼオンはその場所へ向かい、事前に使い魔の素材となる髪の毛をゴームの空間移動の際に紛れ込ませ、使い魔を通してリオウに情報を送っていた。

 

ゼオン「デュフォー、お前が偶然清麿と会ってファウードの映像を見たお陰でいつでもファウードの所在地がわかるようになったとはな」

 

デュフォー「今から乗り込まないのか?」

 

ゼオン「今はその時じゃない。ガッシュ達の情報をあのバカ共に送ったが、バカ共はどう行動するのかな?」

 

 怪しげな笑みを浮かべ、ゼオンはデュフォーをマントに包んで瞬間移動した。

 

 

 

中国

 家に帰ったウォンレイペアが見たパクロンからのお詫びの品はテレビと靴だった。

 

リィエン「これが…お詫びの品…」

 

リィエンの祖父「よかったな、リィエン、ウォンレイ。誰が送ったのかは知らんが、ウォンレイが欲しがっていたテレビが手に入ったのだぞ」

 

ウォンレイ「私が買おうとしていた靴まである!」

 

リィエン「ウォンレイはこれが欲しかったあるか?」

 

ウォンレイ「そうだよ。まさか、買えないと思っていたテレビまで手に入るとは思わなかったけどね」

 

リィエン「でも、お父さんはどうして私達のほしいものを…」

 

ウォンレイ「きっと、たまに様子を見ていたんだよ」

 

リィエン「ウォンレイ、誤解してごめんある。私はウォンレイが大好きある!」

 

ウォンレイ「私もだよ」

 

 ウォンレイペアの仲は修復されたのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回はアニメのファウード編でのウォンレイ主役回ですが、アニメとの違いとして、武闘大会に変装したパクロンが潜入していたという流れにしました。
途中であったリオウ一味のやりとりの中でシン級の呪文を持つ魔物はディオガ級の呪文を持つ魔物何体分になるのかというのは、この時点の原作ではまだシン級の呪文が登場していなかったため、最終的にやってみなければわからないという風にしました。
次は清麿が恵の過去について知る話になります。


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LEVEL52 アイドル恵誕生

某国

 ある国でナゾナゾ博士はアシュロンペアに会っていた。

 

ナゾナゾ博士「アシュロン君、ファウードが大暴れしてしまったら取り返しがつかなくなる。止めるために一緒に戦ってくれないか?」

 

アシュロン「そうしたいが、今はある魔物の行動を見極めたい。ファウードが出現してからのある魔物がどう行動するのか気になってな…」

 

リーン「ま、ダンナはその魔物の行動を見極めてからファウードを止めるのに協力したいと言ってるので、何か変わった事があったら俺達に知らせてください。すぐに駆け付けますよ」

 

ナゾナゾ博士「ありがとう」

 

 ナゾナゾ博士は他の魔物に協力を要請するためにどこかへ行った。

 

リーン「ダンナ、ゼオンは目立った動きをしてないですねぇ」

 

アシュロン「なぜ、そうするのかが気になる。とはいえ、奴はパートナー共々相当頭が切れる。きっと、ファウードの横取りを狙うために様々な策を練るなりしてるだろうな…」

 

 

 

 

ファウード

 ゼオンの使い魔によって送られた情報で誰を引き込むかリオウは考えていた。

 

ザルチム「何を考えている?」

 

リオウ「誰を引き込むかだ。あいつは強い魔物の事を教えてくれた。だが、教えてくれた魔物はどいつもこいつもとんでもない奴ばかりだ。だから、誰を引き込むのか慎重に考えてたんだ」

 

ザルチム「シン級の呪文が使えるガッシュはどうだ?」

 

リオウ「奴は抹殺しなければならん。奴はもう一つの魔界の脅威、バオウを持っているらしいからな。奴が伝えたシン級の呪文とはバオウの事だろう。もし、バオウを使われてみろ、ファウードの封印は解けても下手をすればファウードまで壊しかねないぞ」

 

ザルチム「それもそうだな。他の奴等は…?」

 

リオウ「アシュロンとブラゴは俺では太刀打ちできん。全く、奴はとんだ情報を持ってきたものだな」

 

 

 

 

モチノキ町

 ある日、長期の仕事へどうしてもティオを連れて行けない恵はティオを清麿の家に預けられる事となった。

 

恵「それじゃあ、ティオの事をお願いします」

 

華「恵さんも気を付けてね」

 

恵「ありがとうございます。ティオ、ちゃんと清麿君と清麿君のお母さんの言う事を聞くのよ」

 

ティオ「わかってるわよ」

 

ガッシュ「ティオの事は心配ない、私達に任せるのだ」

 

ウマゴン「メルメルメ」

 

ティオ「あんた達に言われたくない」

 

清麿「しかし、大変だな。仕事で1週間世界中を回るんだもんな」

 

ティオ「そうね。私を連れて行けないぐらいハードスケジュールなんてね」

 

清麿「ま、それだけ恵さんは人気者だって事だよな」

 

マネージャー「恵ちゃん、時間時間!」

 

恵「はい!それでは、お願いします」

 

 恵はマネージャーが運転している車に乗って行った。その事はコルルとパティも知る事となった。

 

パティ「何ですって!?ティオがガッシュちゃんの家にお泊り!?」

 

コルル「恵お姉ちゃんが仕事へ連れ行けないからだって」

 

パティ「冗談じゃないわよ!ティオがガッシュちゃんの家にお泊りしたら、きっとティオはガッシュちゃんとイチャイチャするに決まってるわ!コルル、私達も一緒にお泊りするわよ!」

 

コルル「う、うん……」

 

 

 

高嶺家

 強引にパティに誘われてコルルも一緒に清麿の家にお泊りする事になった。

 

ウルル「清麿、パティがあんな調子なのですいません……」

 

しおり「コルルも強引に誘われたけど、お泊りしたいっていうから……」

 

清麿「と、とりあえずうちは慣れてるから…」

 

 結局、パティとコルルもお泊りする事になった。

 

ティオ「何でパティまでお泊りしに来たのよ!」

 

パティ「あんたを監視しに来たのよ!ガッシュちゃんと勝手にイチャイチャしないようにね!」

 

ティオ「べ、別にそんな事はしないわよ!」

 

 パティとティオの喧嘩が早速始まってしまい、ガッシュ達には手が付けられなかった。

 

清麿「(恵さんって昔はどうだったのか?何がきっかけでアイドルになったんだろう?案外、俺って恵さんの事を知ったつもりでもほんとは全くと言っていいほど知らないのかも知れない…。アンサー・トーカーで調べるのもなんかずるい気がするし、ティオに聞いてみるとするか)」

 

 喧嘩が終わった後、清麿はティオに恵の過去の事について聞いてみる事にした。

 

ティオ「ごめん、清麿…。私、恵の昔の事はほとんど知らないの。恵も何がきっかけでアイドルになったのかの話なんてしないし、私もそんな事を聞こうなんて考えた事がなかったから…」

 

清麿「恵さんがティオを預ける前に聞いておけばよかったな…」

 

ティオ「でも、恵のお父さんとお母さんなら知っていると思うわ。私、一度だけ恵と一緒に恵の実家に来た事があるの。今度、機会がある時に呼んでみるわ。でも、どうしてそんな話を?」

 

清麿「俺、恵さんの事を知りたいんだ。昔はどんな感じだったのか、アイドルを目指すきっかけは何だったのかって」

 

ティオ「やっぱり清麿、恵の事が好きだからもっと恵の事を知りたいのね。流石はお似合いのカップル!」

 

清麿「い、いや、まだ交際してるわけじゃ…」

 

 結局、清麿は気持ちの整理がつかないまま学校へ行った。

 

ガッシュ「(やっぱり、清麿は前の戦いの清麿に比べて恵の事になると冷静になれんのう…)ティオ、どうして清麿は恵の事になればいつもあんな感じなのだ?」

 

ティオ「ガッシュはまだお子ちゃまね。清麿は恵に恋してるのよ。だから、あんなに恵の事を知りたがってるし、落ち着かないの」

 

ガッシュ「……恋は私にはわからぬのだ」

 

ティオ「あのね…」

 

パティ「ガッシュちゃん、恋というのは難しく考える必要はないのよ。無理をしないでじっくり考えればきっとわかるわ」

 

ティオ「勝手に割り込まないでよ!」

 

 またパティとティオの喧嘩が始まった。

 

コルル「また始まっちゃったね…」

 

ウマゴン「メルメル…」

 

 2人の喧嘩にコルルとウマゴンは唖然としていた。

 

 

 

 

モチノキ町

 いつも通り学校が終わり、清麿は下校していた。

 

清麿「(恵さんの両親か…。どんな人だろうな?って言っても、ここに来るわけないか…)」

 

鈴芽「高嶺君、それが今日はね…」

 

 通っていると、何やら見覚えのある後ろ姿を見た。

 

清麿「(あの人は…恵さん!?でも、恵さんは仕事で海外に行ってしまったし…何より和服を着てるイメージがない…)あ、あの…、あなたは恵さんの親戚か何かでしょうか…?」

 

和服美女「…どちら様ですか?恵の名前を知っているのは」

 

 恵に似た和服の美女は振り向いた。その顔は恵に似てはいるが、恵と違って落ち着いた

大人の雰囲気を漂わせていた。女性は清麿の顔をじっと見ていた。

 

清麿「俺、高嶺清麿と言います。あなたは恵さんの親戚でしょうか…?」

 

幸子「…あなたが恵の言っていた清麿君ね。私は大海幸子。恵の母親よ」

 

清麿「あ、あなたが恵さんのお母さん!?」

 

鈴芽「恵ちゃんのお母さんなんて凄い!」

 

幸子「清麿君、以前から私はあなたと話がしたかったの。私と夫はお出かけに来ていたから清麿君の家で話をしていいかしら?」

 

清麿「ちょうど俺も恵さんの事について色々聞きたかったので…」

 

鈴芽「私も一緒に」

 

幸子「話があるのは清麿君だけよ。あなたは家に帰ってなさい。さ、清麿君、行きましょうか」

 

 鈴芽を置いて幸子は清麿と一緒に行った。

 

鈴芽「うえ~~ん!!また仲間外しされちゃった~!」

 

 

 

 

高嶺家

 幸子は夫の恵司と共に清麿の家に上がっていた。

 

華「あら、あなたが恵さんのお母さんとお父さん?夫婦そろってとても若々しいですね。何か秘訣でもあるんですか?」

 

幸子「特に秘訣はありません。ただ、いつも通り生活しているだけですから」

 

恵司「私なんて地元ではパルコ・フォルゴレ以上のイケメンとか言われるんですよ。もう私も幸子も40代でパルコ・フォルゴレより年上なんですけどね」

 

幸子「清麿君も一緒に話をしましょう。恵の事をもっと知りたいんでしょ?」

 

清麿「は、はい…」

 

 清麿も話に加わった。

 

清麿「それより、どうして俺の事を?」

 

幸子「恵が電話でよくあなたの事を話すのよ。かっこよくて、頭もよくて、優しくて、恵が初めて好きになった男の子と言ってたわ。私と夫も一度会ってみたいと思ってたけど、やっぱり恵が言った通りね」

 

清麿「そ、そうですか…」

 

幸子「もしかして清麿君、恵にエッチな事、した事ある?」

 

清麿「え、えええっと…」

 

華「清麿、あんたはなんて事を恵さんにしたのよ!白状しなさい!」

 

幸子「気にしなくていいのよ、華さん。清麿君は自分からエッチな事をする子じゃないし、許してあげるわ」

 

華「…幸子さんがそこまで言うなら……」

 

恵二「まぁ、清麿は恵の婿になる男だから私も許す。だが、これだけは守っていただきたい。もし、男も女も問わず、誰かが恵に執拗な嫌がらせや破廉恥な行為をした時は……そいつに私が徹底的な報復を行うと言うんだ!叩きのめすまで地獄の果てまでも追い続けるともな!!」

 

清麿「(俺を恵さんの婿とか、俺と恵さんが結婚する事を前提で話してるし、恵さんの両親は意外と親バカだな…)」

 

恵二「何だったら、私達の事をお父さん、お母さんと言っても構わないぞ」

 

清麿「ま、まだ恵さんと結婚したわけじゃ……」

 

幸子「清麿君は恵の事を知りたかったわよね。昔の恵の事も話してあげるわ」

 

清麿「あ、ありがとうございます…」

 

???「私達も混ぜるのだ!」

 

 声の主はガッシュ達だった。

 

清麿「い、いつの間に!?」

 

ティオ「さっきからいたわよ。ねえ、恵のお母さん、恵の昔の事について教えて!私ももっと恵の事を知りたい!」

 

幸子「今から話すから慌てなくていいのよ。恵は合気道道場の道場主である夫と私の一人娘として生まれたの」

 

 

 

 

回想

幸子『私達は恵に大海原のように心が広くて優しくて強い子になるように合気道を教えたりして愛情を注ぎながら育てたわ。大きくなってからの事も考え、小さい頃から料理や家事などもできるように教えてた結果、幼稚園生の頃から他の子よりも大人びていたのよ』

 

園児「や~い、ここまでおいで!」

 

恵(幼少期)「やってくれたわね!許さないわよ!」

 

 自分に嫌がらせをした子に恵は激怒し、すぐに追いついて投げ飛ばした。

 

 

 

 

幸子「幼稚園生の頃の恵は性格は他の子より大人びてはいたけど、怒ると私達から習った合気道の技で虐めっ子を投げ飛ばすなりして『投げ飛ばし恵』と言われて恐怖の存在として恐れられていたのよ」

 

ガッシュ「ウヌ、幼い頃の恵はティオに似てるのだ」

 

ティオ「ってガッシュ、私と小さい頃の恵は似てないわよ!!」

 

 素直に幼稚園生の頃の恵がティオに似てるとガッシュが言った事にティオは激怒し、ガッシュの首を絞めた。

 

ガッシュ「ぐあああっ!!こういった所が似てるのだ…!」

 

ティオ「だから私は小さい頃の恵に似てないわよ!!」

 

パティ「あら、こうやってガッシュちゃんの首を絞めるのは自分から『小さい頃の恵に似てます』って発言してるのと同じじゃない」

 

ティオ「似てないわよ!!」

 

恵二「はははっ、ティオは小さい頃の恵にそっくりだ。まるで、小さい頃の恵をもう一度見てる気分だ」

 

ティオ「もう、どうしてくれるのよ!!!」

 

清麿「(小さい頃の恵さんはティオと同じぐらい勝気でやんちゃだったのか……)あの…、続きは…?」

 

幸子「ああ、続きね」

 

 

 

 

回想

幸子『恵は小学校に入ってからは次第に性格は落ち着いて4年生の時ぐらいから今のような優しい性格になったのよ。小学校を卒業するまでは順風満帆だったわ。でも、ある転機が中学に入ってから訪れたのよ。それが、恵がアイドルになりたいと言い出した時だった』

 

恵二「何?アイドルになりたいだと?」

 

恵「いいでしょ?」

 

恵二「ダメだ!私はアイドルの事はよくわからんから入るのはやめた方がいい。他の仕事に就けるように頑張りなさい」

 

恵「それでも私はアイドルになりたいの!」

 

恵二「ダメなものはダメだ!後で後悔するかも知れないんだぞ!それぐらいだったら最初から目指さない方がいい!」

 

恵「私の夢をダメって言うなんて……お父さんの意地悪!!」

 

 アイドルになりたいという夢を否定された恵は泣きながら出て行った。

 

幸子「恵……」

 

 夢を否定された恵は泣いていた。

 

恵「何で…何でお父さんはアイドルになるのを認めてくれないの…?」

 

幸子「恵、そんなにアイドルになりたいの?」

 

恵「なりたい…なりたいの…」

 

幸子「でも、アイドルになるのは大変よ。それに、芸能界というのはかなりドロドロしてるし、今の恵の想像からは思いつかないほど大変な仕事なのよ。きっと、夫はアイドルの事はわからなくても、恵の事を心配してそういった事を言ってると思うわ」

 

恵「お母さんまで私の夢を否定するの…?」

 

幸子「否定まではしないわ。最終的にアイドルを目指すか、目指さないかは恵が決めるのよ。恵、アイドルが大変な仕事だとわかった上でアイドルになりたいの?」

 

恵「私、私は……アイドルになりたい!」

 

 アイドルの実態を突きつけられてもそのアイドルになりたいという夢を捨てない恵に幸子はある姿が重なった。

 

幸子「…わかったわ。夫にもそう伝えて説得するわ」

 

恵「どうしてお母さんは私を応援するの?」

 

幸子「恵のアイドルになりたいという気持ちが痛い程わかってね」

 

 幸子は恵二を説得していた。

 

恵二「幸子、お前はなぜ恵にアイドルを目指させたんだ!?」

 

幸子「なぜ私が恵の夢を応援してるのかその訳を教えるわ」

 

 幸子は持っていたアルバムを恵二に見せた。その写真に恵二は驚いた。

 

恵二「…そうだったのか…。だから、お前は恵の事を…」

 

幸子「そうよ。だから、私は恵を応援しているの」

 

恵二「よく知らんからその夢を諦めろとか言った私がバカだった…。私も恵を応援する。よし、私達も恵の夢を叶えるための指導をしよう!」

 

幸子『それから恵のアイドルを目指す特訓の日々が始まったわ。私は歌い方などを全て恵に叩き込み、恵も私の厳しい指導にめげずについてきてくれた。そして、今の恵が所属している事務所のオーディション当日…』

 

審査員「オーディションの合格者は……大海恵に決定!!」

 

 この瞬間、アイドル恵が誕生した時だった。

 

恵「お父さん…お母さん…私、遂にアイドルになったわよ!」

 

 苦労が実り、アイドルになれた事に恵は嬉し涙を流して幸子に抱き付いた。

 

恵二「よかったな、恵」

 

幸子「でも、本当の苦難はこれから。恵はまだスタートラインに立ったばかりなのよ。気を引き締めて臨みなさい」

 

恵「ええ!」

 

 説明等が終わった後、恵一家は家に帰った。

 

恵「お母さん、どうして私のアイドルになりたいっていうのが痛い程わかると言ったの?」

 

幸子「実はね、私も中学時代は恵と同じようにアイドルを目指していたの。私の時は3回の審査があったけど、2回は他の候補生を大きく引き離していて、合格確定ではないかと噂されていたわ」

 

恵「それで、お母さんはアイドルになれたの?」

 

幸子「……最終審査の前日に私は喉の病に侵されたの。しかも、すぐに手術しないと命に関わると言われてね、アイドルになるか、長生きしたいかの選択を迫られたの。私は大いに悩んだ末、長生きするためにアイドルになるという夢を捨てたわ……」

 

恵「……お母さんはアイドルになれなかったのね……」

 

幸子「そう。だからこそ、アイドルになりたいという恵のその姿が昔の私と重なったのよ。病で夢を捨てるしかなかった私と違って、健康なのに夢を否定されて悲しむ恵が痛々しくて、どうしても恵の夢を叶えるために私は夫を説得したのよ。だから恵、夢を叶えたからには頑張りなさい。悩んだりしたら私達に相談するのよ」

 

恵「………お母さん、ありがとう!」

 

 母親が夢に挫折していた過去を語り、自分に親身になってくれた理由を知った恵は涙を流して幸子に抱き付いたのであった。

 

 

 

 

ティオ「恵にそんな過去があったなんて……」

 

清麿「(色々と苦労したんだな、恵さん……)そう言えば、俺をよく見ていたけど何か…」

 

幸子「清麿君をよく見ていた理由?実は私の中学時代の恋人は清麿君と顔がそっくりだったの」

 

清麿「ええ~~っ!!俺が幸子さんの恋人と顔がそっくり!?」

 

恵二「私も清麿の顔を見て驚いたよ。幸子の元恋人と顔がそっくりだったとは」

 

ティオ「親子2代揃って同じ顔の男の子に恋しちゃうなんてね」

 

ガッシュ「幸子殿の恋人とやらは今はどうしておるのだ?」

 

幸子「……私の中学時代の恋人は中3の時に病で亡くなったの…」

 

コルル「夢に挫折して恋人まで失うなんて…」

 

パティ「とても辛かったでしょうね……」

 

幸子「だからこそ、恵には私のできなかった事をやってほしいの。長い話に付き合ってくれてありがとう」

 

恵二「嫁をもらいたいなら、恵にするんだぞ。少なくとも一緒に下校していたあの少女では清麿と釣り合わんからな」

 

清麿「(恵さんの両親はどうしても俺と恵さんを結婚させるつもりなのか…?水野を悪く言ってるし…)」

 

幸子「清麿君、これからも私達の愛娘の恵の事をよろしくね」

 

清麿「はい!」

 

 好意を寄せている恵の事を知る事ができ、清麿は嬉しい気持ちだった。




これで今回の話は終わりです。
アニメではモモンの話の前にティオが恵と出会い、心を開くまでの話がありましたが、今小説のモモンの話の前の話は恵の過去について清麿達が知るという内容にしました。
今小説の恵の過去については、合気道の心得があった事から、合気道の道場の娘だったという過去が描かれた二次小説があり、そこが今回の話のアイデア元となりました。
アイデア元の小説では恵は親に反発してアイドルになったのに対し、今小説は初めは恵がアイドルになる事に父親が反発したものの、最終的にアイドルになるのを認めるというのを描きました。
ちなみに、恵の両親は母親は恵の穏やかさとコナンの蘭姉ちゃんの母親、妃英理の知的な大人っぽさを合わせたような感じで、父親は作中でもあった通り、40代なのにも関わらずかなりのイケメンという感じで描きました。声は清麿の母親の声が蘭姉ちゃんだったので、恵の母親の声はコナン、父親はロックマンXのレプリロイド、カーネルの声のイメージです。
次はモモンの話になりますが、原作以上にモモンの悪事がエスカレートし、被害者が増えます。さらに、原作よりも多く女の子の魔物が仲間になったため、原作以上の地獄絵画となります。


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LEVEL53 乙女達の怒り

某国

 恵は仕事の準備をしていた。

 

恵「(ティオはガッシュ君達と仲良くやれてるのかしら…?)」

 

 そんな中、ニュースが入った。

 

TV『ただいま入った速報です。A国G市で謎の下着盗難が発生しました。なお、目撃者からの話によれば、犯人はウサギと猿を足して2で割ったようなコスプレをした少年で、警察は少年による悪質なイタズラとみて、捜査しています』

 

恵「下着盗難…」

 

マネージャー「ちょうど私達がいる街ね。最近は子供も下着を盗むようになったわね。恵ちゃんも下着を盗まれないようにするのよ」

 

恵「わかったわ」

 

 その犯人こそ、清麿達が探していた魔物、モモンであった。

 

 

 

 

高嶺家

 ティオ達がお泊りした翌日。ガッシュとウマゴンはカマキリジョーを見る準備をしていた。

 

ガッシュ「おやつ、よーし!」

 

ウマゴン「メル!」

 

ガッシュ「おしっこ、よーし!」

 

ウマゴン「メル!」

 

ガッシュ「よーし、カマキリジョーの始まりなのだ!」

 

 テレビの電源を付けるとちょうどカマキリジョーが始まっていた。

 

ガッシュ「おお、始まったのだ!」

 

 そこへ、ティオ達が来た。

 

ティオ「大変大変、始まっちゃってるわ!」

 

 ティオがテレビのチャンネルを変えると、チュリプュアがあった。

 

パティ「ああ~~っ!!」

 

ティオ「よかった、間に合った」

 

パティ「ちょっとティオ、私はガッシュちゃんと一緒にカマキリジョーを見るのよ!」

 

ティオ「何ですって!?」

 

ガッシュ「カマキリジョーなのだ!」

 

コルル「ちょっと、喧嘩はやめようよ」

 

 見たい番組を巡って大喧嘩が始まってしまった。そこへ、華が来た。

 

華「あ~らあら、どうしたの?みんな」

 

コルル「カマキリジョーを見たいとかチュリプュアを見たいとかで喧嘩して…」

 

華「ガッシュちゃん、今日はティオちゃん達に付き合ってあげれば?みんなで仲良く一緒にご覧なさいな」

 

ティオ「やった!」

 

パティ「別に私もチュリプュアは嫌いじゃないけど…」

 

 その後、ティオ達は華の手伝いをしていた。

 

華「こうやって手伝ってくれるコルルちゃん達と一緒にお料理をするのって楽しいわ。清麿もガッシュちゃんもこういうの全然なのよ」

 

コルル「私もしおりねーちゃんと会うまで一緒に暮らしていたのを思い出して楽しいよ」

 

パティ「あら、ティオったら不器用ね。天ぷらの衣を泡立てちゃうなんて。泡立てるのはよくないのよ」

 

ティオ「何ですって、パティ!」

 

パティ「あ~ら、嫉妬かしら?私だっていつまでも世間知らずのお嬢様じゃないのよ。ウルルと一緒に暮らしたお陰で家事もお料理もできるのよ」

 

ティオ「私だってそれぐらいできるわよ!」

 

コルル「ちょっと2人共」

 

華「2人共喧嘩はよしなさい。それに、3人とも顔が真っ白よ。ここはいいわ、ティオちゃん達はお風呂に入ってらっしゃいな」

 

ティオ達「はーい!」

 

 3人ともお風呂に入る準備をしていた。

 

華「3人の着替えはここに置いとくわね」

 

 それと同時にガッシュとウマゴンが帰ってきた。

 

ガッシュ「ただいまなのだ!」

 

ウマゴン「メルメルメ!」

 

ガッシュ「ウマゴン、お風呂で泥を落とさぬと母上殿に叱られてしまうのだ!」

 

ウマゴン「メルメル!」

 

ガッシュ「お風呂へGoなのだ!」

 

 ガッシュは服を脱いでウマゴンと一緒にお風呂へ向かった。

 

華「あっ、ガッシュちゃん、今」

 

 すでに遅く、ガッシュはお風呂へ入る準備をしようとしていたティオ達と鉢合わせした。

 

ティオ「ああ~~っ!!」

 

パティ「いやん!ガッシュちゃんったら、私と一緒にお風呂に入りたいのね!」

 

ガッシュ「ティオ達が先にいたのであったか」

 

コルル「私達が先に入るからお風呂から出るまで待っててね」

 

ガッシュ「みんなで一緒に入ればよいではないか」

 

ティオ「えっ!?何言ってるのよ、ガッシュ!」

 

ガッシュ「テッドやチェリッシュも一緒に入ったのだ」

 

ティオ「同じ男の子のテッドはともかく、どうして女の子のチェリッシュと一緒に入ったのよ!」

 

ガッシュ「チェリッシュが一緒に入っていいと言ってくれたのだ。のう、ウマゴン」

 

ウマゴン「メル」

 

コルル「ガッシュ、素っ裸は恥ずかしいから服を着てよ…」

 

パティ「ガッシュちゃんったら、素っ裸も素敵!あ、棚にあるのは私達の着替えだからね」

 

 ウマゴンがティオ達の着替えを見ている事に激怒したティオはウマゴンの首を絞めた。

 

ティオ「見るなって言ってるでしょ!!?」

 

パティ「ガッシュちゃんはともかく、馬ごときが私の着替えを見るな!!」

 

 またしても大騒ぎになって華が来た。

 

華「あらあら、何を騒いでいるの?」

 

ティオ「ガッシュが…」

 

ガッシュ「ティオが…」

 

華「ガッシュちゃん、ティオちゃん達を先に入れてあげなさいな」

 

ガッシュ「どうしてなのだ?チェリッシュの時は一緒に入れたのに…」

 

華「ティオちゃん達は女の子なのよ。チェリッシュちゃんも女の子だけど、チェリッシュちゃんの時は一緒に入っていいと本人が許可したから一緒に入れてあげたの」

 

ガッシュ「ウヌ?」

 

華「お・ん・な・の・子、なの」

 

ガッシュ「ウヌ…女の子なのだな。しかし、女の子だとどうしてお風呂が先なのだ?」

 

 一度、王を決める戦いに勝ち抜いたガッシュだったが、相変わらず異性の事に関しては極めて鈍感であった。

 

 

 

 

しおりの家

 恵が帰国する前日、しおりは恵と電話していた。

 

しおり「恵、お土産は買って来れそう?」

 

恵『スケジュールの都合で買えるかどうかわからないわ…』

 

しおり「スケジュールの都合があるなら、無理に買わなくてもいいのよ」

 

恵『ありがとう。しおり、気になる事があったんだけど、5日ぐらい前に仕事先の都市で変な下着盗難事件があったのよ』

 

しおり「下着盗難?」

 

恵『それも、犯人はウサギと猿を足して2で割ったような子供だって』

 

しおり「実は、モチノキ町の近くでも同じような事件があったの。犯人はわかってないけど、同一人物の可能性も否定できないわ」

 

恵『しおりも下着の盗難に遭わないように気を付けてね』

 

 

 

 

モチノキ町

 そして恵が帰ってくる当日、ガッシュ達は砂場で遊んでいた。

 

ガッシュ「恵は早く帰ってくるとよいのう」

 

ティオ「うん。今回、置いて行くと言った時はショックだったけど、清麿のお母さん、料理もおいしいし優しいから」

 

コルル「色々騒いだりしたけど1週間楽しかったよ」

 

???「久しぶりね、坊や達」

 

 声の主はチェリッシュとニコルだった。

 

ティオ「チェリッシュ、ニコル、どうしてここに!?」

 

ニコル「オロロンサーカスの日本公演が決まって日本に来たの」

 

チェリッシュ「公演日じゃないから、私達は久しぶりにモチノキ町に来る事にしたのよ」

 

ガッシュ「チェリッシュ、朗報なのだ!テッドと会ったのだぞ!」

 

チェリッシュ「何ですって!?テッドは無事だったのね!」

 

パティ「そうよ。千年前の魔物との戦いを断ってしまったせいでチェリッシュの手掛かりを自分で捨てちまったとか言ったりしてたわ」

 

チェリッシュ「全く、テッドは全然変わってないじゃない」

 

???「あの…あなた達、ここで迷子を見かけませんでしたか?」

 

 声がして一同がその方向を向くと、そこにはシスターがいた。

 

ニコル「あなたは?」

 

エル「私はエル・シーバスと申します」

 

ガッシュ「(迷子…モモンの事であるな…。あの時がまた…)」

 

 ガッシュはモモンのせいでチャージル・サイフォドンを拝んでしまった時の事を思い出し、怯えていた。今回はそれを遥かに超える地獄になるとも知らずに。

 

 

 

 その頃、清麿はいつも通り学校が終わって下校していた。

 

清麿「(ティオが俺の家に預けられて1週間…ガッシュの話が正しければ、モモンという魔物が来る日だ。似顔絵は…)」

 

 ガッシュが書いてくれたモモンの似顔絵を清麿は見ていた。

 

清麿「(ウサギと猿を足して2で割ったような奴…)」

 

???「清麿君、下着泥棒を探すのを手伝ってくれない?」

 

 考え事をしてる時に声がしたら、そこに下校中のしおりがいた。

 

清麿「しおりさん、どうしたんですか?」

 

しおり「私の通ってる高校で同級生の何人かの下着が盗まれてしまったのよ!犯人はウサギと猿を足して2で割ったような子供よ!」

 

清麿「(まさか、犯人はモモン!?)しおりさん、犯人はこんな顔ですか?」

 

 ガッシュからもらったモモンの似顔絵を清麿はしおりに見せた。

 

しおり「だいたいそんな感じって下着を盗まれた子が言ってくれたわ!急いで捕まえましょう!」

 

 急いでいると、今度はウルルも来た。

 

清麿「今度はウルルさんまで!」

 

ウルル「私の勤めているスイーツショップの女性店員の下着が盗まれたんです!」

 

清麿「とんでもねえ野郎だな!」

 

 その道中で泣いている鈴芽とマリ子がいた。

 

鈴芽「うえ~~ん、高嶺君!ウサギと猿を足して2で割ったような子供に私とマリ子ちゃんのパンツとブラを盗まれた~~!」

 

清麿「水野まで!全く、どうなってるんだよ!!」

 

 そんな中、モモンを発見した。

 

清麿「コラ、モモン、待て!」

 

 

 

 

 一方、ガッシュ達はエルを家まで案内していた。

 

エル「私は訳あって旅をしていたのですが、この町に入った所でその子と逸れてしまって…」

 

ニコル「聞きたい事があるけど、あなたの探している迷子って魔物でしょ?そしてあなたは本の持ち主」

 

エル「およよよよ~~~!!」

 

パティ「およよよって」

 

ニコル「その本を見ればわかるわよ。私も魔物の本の持ち主だから」

 

 そう言ってニコルはチェリッシュの本をエルに見せた。

 

エル「じゃあ、そこにいる子供達は…魔物の子…」

 

ニコル「そう。私は一番背の高い女の子のチェリッシュのパートナー」

 

エル「およよよよよ~~!!は、初めて出会いましたわ…」

 

 

 

 

高嶺家

 その後、エルは清麿の家に上がっていた。

 

華「はい、どうぞ」

 

 華はジュースを出した。

 

エル「ありがとうございます」

 

華「あ、ティオちゃん達、お洗濯物、もう乾くから取りこんで畳んでおくわね。後で鞄に入れておくのよ」

 

ティオ達「はーい!」

 

 清麿の家にモモンの影があった。

 

コルル「エルさんは戦いに来たんじゃないのね」

 

エル「ええ。王を決めるために戦うなんて間違ってます。争いをやめさせるために旅をしてるんです、私。」

 

ガッシュ「ウヌ、私達はむやみな戦いはしておらぬのだ」

 

チェリッシュ「私達が戦う時は本当に悪い奴が襲ってきた時ぐらいよ」

 

エル「まぁ、ほんと!私、魔物ってもっと乱暴な子達ばかりだと思ってたの。嬉しいわ」

 

ティオ「私達のパートナーも優しいのよ」

 

エル「まぁ、ぜひお会いしたて」

 

???「ガッシュ、すぐに来い!モモンが見つかったぞ!」

 

 慌てた様子で清麿、しおり、ウルルの3人が来た。

 

コルル「しおりねーちゃん!」

 

ガッシュ「モモンが見つかっただと!?」

 

しおり「しかも、私の同級生や鈴芽ちゃん達、ウルルさんの勤めてる店で働いている女の人の下着を盗んだのよ!」

 

エル「それ、本当なのですか!?」

 

ウルル「あなたがモモンのパートナーなのですか?だったら、すぐに私達と一緒にモモンを追いかけましょう!」

 

 

 

 

モチノキ町

 モモンを一同は追いかけた。

 

エル「モモンがあなた達の友達の下着を盗んだのは本当なのですか?」

 

しおり「ええ。もしかして、海外であった下着盗難事件の犯人もモモンなの?」

 

エル「そうです!モモンがご迷惑をおかけした事を」

 

ウルル「パティ、ティオ、後ろ!」

 

パティ&ティオ「えっ?」

 

 その後ろには2人のスカートを捲ってパンツを見ているモモンの姿があった。

 

パティ「わ、私のパンツを……怨怒霊!!」

 

ティオ「この猿!!」

 

エル「これ、いけません、モモン!女の子のスカートを捲るなど!」

 

 激怒したパティとティオはモモンを追いかけた。

 

ティオ「パティ、あのエロ猿をけちょんけちょんにやっつけてやるわよ!!」

 

パティ「ええ!私のパンツをガン見しやがって、コンチクショ~~!!」

 

コルル「パティもティオも落ち着いて!」

 

チェリッシュ「落ち着かないと見えるものも見えなく」

 

しおり「コルル!」

 

ニコル「チェリッシュ、後ろ!」

 

 今度はコルルとチェリッシュまでモモンにスカートを捲られてパンツを見られた。

 

コルル「恥ずかしいわよ、モモン!!」

 

チェリッシュ「許さないわよ!!」

 

 パティとティオ程ではないにしろ、モモンにパンツを見られてしまい、コルルとチェリッシュも怒りだしてしまった。

 

チェリッシュ「みんな、あのモモンという猿を捕まえるわよ!」

 

 怒り狂う女の子の魔物達に一同は唖然としていた。

 

ニコル「あんなに怒るチェリッシュを見たのは初めてかも…」

 

ガッシュ「女の子は怖いのだ……」

 

しおり「清麿君、何とかあのすばしっこいモモンを捕まえる方法とかないの?」

 

清麿「今、答えを出した所、手っ取り早く捕まえるにはラウザルクを使うという答えが出た。行くぞ、ガッシュ!ラウザルク!」

 

 魔物の術を初めて見たエルは驚いていた。

 

エル「こ、これが魔物の術…!」

 

清麿「ガッシュ、モモンを追いかけろ!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

 ラウザルクでスピードアップしたガッシュはあっさりモモンに追いついた。

 

ガッシュ「モモン、大人しくするのだ!」

 

 ガッシュはモモンを取り押さえる事に成功した。

 

ティオ「でかしたわ、ガッシュ!」

 

パティ「このまま袋叩きにするわよ!!」

 

エル「待ってください!争いはダメです!」

 

 そのままエルはガッシュにモモンを放してもらった。

 

エル「お許しください。確かにこの子はエロ猿です。おてんばイタズラ大好きです。しかし、だからと言って傷つけあうのは!」

 

 しかし、モモンは全く反省してなかった。

 

ティオ「反省してねえ!!」

 

チェリッシュ「これはお仕置きが必要ね」

 

 そんな時に恵が来た。

 

恵「みんなどうしたの?」

 

しおり「大変よ、恵の言ってた下着泥棒が現れたのよ!」

 

恵「下着泥棒って」

 

ウルル「あのモモンというウサギと猿を足して2で割ったような子供です」

 

恵「た、多分、イタズラがすぎたんじゃ」

 

 何とかそれぞれのパートナーは魔物を落ち着かせようとしたが、モモンはティオ達のパンツを取り出すという火に油を注ぐ行動を行った。

 

ティオ「あのエロ猿……!!」

 

パティ「もう許さないわ!!ウルル、戦闘準備よ!」

 

コルル「しおりねーちゃんもよ!」

 

チェリッシュ「どうやら、あの子は反省の色がないわね。徹底的にやっつけるわ!!」

 

 ティオ達の怒りは収まらなかった。

 

エル「どうかお怒りをお静めください!この猿は後で私が懲らしめますから!これ、パンツから手を放しなさい!」

 

ティオ「恵!」

 

パティ「ウルル!」

 

コルル「しおりねーちゃん!」

 

チェリッシュ「ニコル!」

 

ティオ達「戦いの準備よ!」

 

 ティオ達の怒気に押されて恵達は渋々本を出した。

 

ガッシュ「ティオ、私も」

 

ティオ「ガッシュは手を出さないでよ!」

 

パティ「ガッシュちゃんが出るまでもないわ!こんなエロ猿は私達で懲らしめないと気が済まないの!!」

 

恵「と、とりあえず清麿君はアンサー・トーカーでモモンの特徴などの答えを出して」

 

清麿「は、はい……」

 

ウルル「(あのパンツはパティがとても大切にしているから取り返さないと…!)アクル!」

 

 あっさりモモンはアクルをかわした。

 

パティ「あの猿……!」

 

ティオ「すばしっこいわね!」

 

エル「およよよよ……」

 

清麿「(そう言えばガッシュのラウザルクを見た時もエルさんは怯えていたな。やはり、ガッシュから聞いた通り、この戦いでもまだ他の魔物に会ってなかったのか…)」

 

ウマゴン「メル?」

 

ガッシュ「やけに落ち着いておるのう、清麿」

 

清麿「ティオ達の怒りようが凄まじくてな…。恵さん達も今回ばっかりは逆らえないんだろう…」

 

恵「サイス!」

 

しおり「ゼルク!」

 

ニコル「コファル!」

 

 次々とモモンは攻撃をかわしたが、ゼルクで豹変したコルルやティオ、パティ、チェリッシュの攻撃にエルは怯えていた。

 

エル「およよよ、この戦いを終わらせなきゃ……」

 

しおり「清麿君、モモンの呪文はどんな効果なの?」

 

清麿「モモンの呪文は全て直接的な殺傷力を持たない術ばかりだ。モモンの術で本が燃やされるという危険性はない」

 

エル「アムロン!」

 

 モモンの手が伸びた。

 

エル「モモン、あの人達の本を奪うのよ!」

 

 しかし、モモンは本を奪わず、ティオ達のスカートを捲った。そのせいでパティとティオとチェリッシュの怒りは増していった。

 

パティ「アンチクショ~~!!」

 

ティオ「あのエロ猿が~!!」

 

エル「違うのです!本を奪うのです!」

 

コルル「こんなエロ猿は痛い目に遭わせなきゃね、しおりねーちゃん!」

 

しおり「そ、そうね……(も、もうコルル達を止められない…)」

 

恵「(普段だったらコルルちゃんやパティがティオのストッパーになってくれるけど、今回はみんな暴れん坊状態になっているわ…)」

 

ニコル「(チェリッシュまで暴れん坊になってしまったらもう誰も止められない…)」

 

ウルル「ガンズ・アクル!」

 

恵「サイス!」

 

ニコル「ガンズ・ゴウ・コファル!」

 

 あらゆる攻撃をモモンはかわし続けた。

 

エル「危ない、早く次の呪文を。(でも、このたくさんの呪文の中で私、さっきの手が伸びる呪文しか唱えた事がないのよ…)」

 

 そうしてる間にモモンはティオに迫ってきた。コルルは向かっていったものの、全く攻撃が当たらず、チェリッシュとパティの攻撃も当たらなかった。

 

チェリッシュ「もう、こんなにすばしっこい魔物に会ったのは初めてよ!」

 

パティ「こっちに来るわよ!」

 

恵「セウシル!」

 

 コルル以外の面々を守るためにセウシルが張られた。

 

エル「およよ!危ないわ、ぶつかる!アグラルク!」

 

 モモンは地中に消えた。

 

ティオ「あっ…」

 

清麿「みんな、さっきの呪文は地中の中を自由に移動できる呪文だ!モモンはティオ達の後ろに来る!」

 

パティ「後ろに?」

 

 清麿が言った通り、モモンはティオ達の後ろに現れ、ティオとパティのスカートを捲った。

 

エル「どうして清麿さんはさっきの呪文の効果をすぐにわかったの…?」

 

ティオ&パティ「きゃっ!」

 

ウルル「こんなに色んな使い方ができそうな呪文をスカート捲りに使うとは!」

 

エル「私は悪くありません!スカートを捲れとは一言も」

 

パティ「このエロ猿が~~!」

 

 パティ達は殴りかかった。

 

エル「何か、モモンの身を守る術を……。わからないけど、この呪文で。オラ・ノロジオ!」

 

清麿「その光線をよけろ!」

 

チェリッシュ「えっ?」

 

 モモンの光線を急によけろと言われてティオ達は戸惑い、チェリッシュに当たってしまった。

 

恵「光線が!」

 

チェリッシュ「さっきから思うように動けない…!」

 

清麿「その光線は8秒間だけ当たったものの時間の流れを遅くする術だ!」

 

ニコル「だから、チェリッシュは思うように動けないのね!」

 

 その後、モモンはチェリッシュのパンツをニヤけて眺めた後、つんつんした。その行為にガッシュの仲間の女の子の魔物の中で最年長で一番落ち着いているチェリッシュもとうとう激怒した。

 

チェリッシュ「……どこまで性根が腐ってるの…、このエロ猿が!!」

 

エル「ごめんなさい、ティオちゃん、コルルちゃん、パティちゃん、チェリッシュちゃん、私、そんな術とは知らなかったの!許してください!」

 

恵「やっぱり、さっきから様子がおかしいと思ったら、あなた、持ってる呪文の効果をほとんど知らないのね!」

 

清麿「(ほとんどの呪文の効果を知らないのは、ある意味一番怖いな…)」

 

恵「きゃあっ!」

 

 なんと、モモンはわずかに恵の鞄から見えたブラを見て、恵の下着を盗んだ。

 

エル「モモン、こんな事をしては」

 

恵「もう、許さな」

 

???「恵さんの下着を盗みやがって……このクソエロ猿が~~!!!」

 

 恵の下着が盗まれてしまった事でモモンは眠っている悪魔、鬼麿を呼び覚ましてしまった。しかも、今回は角が8本になり、金色の鬼麿になっていた。一時は怒りだしそうだった恵の怒りもすぐに鎮静化した。

 

しおり「清麿君が鬼になった!」

 

ウルル「しかも、色が金色なのでデボロ遺跡の時よりも何だか大変な事になりそうですよ!」

 

しおり「恵、清麿君を止めるのよ!止められるのは恋人の恵だけよ!」

 

恵「そ、そんな事言われても…あの状態の清麿君を止めるなんて…」

 

鬼麿「てめえのような野郎は絶対に許さねえ!!ガッシュ、俺達も加勢するぞ!」

 

ガッシュ「ウ、ウヌ……(こんな金色の鬼になった清麿は前の戦いでも見た事がないのだ…!)」

 

ティオ「恵の下着まで盗むなんて!!憎い、憎い!この猿が憎い!!」

 

コルル「ボコボコにしなきゃ気が済まない!」

 

パティ「コンチクショーが!」

 

チェリッシュ「流石に私の堪忍袋の緒が切れたわ!もう脳天をぶち抜く!」

 

 そんな時、一同の本が一斉に輝いた。

 

恵「まさか…新しい呪文…?」

 

しおり「こっちもよ!」

 

ウルル「私もです!」

 

ニコル「私も…!」

 

恵「じゃあ、清麿君の方も……」

 

ガッシュ「(ま、まさか私達全員同時に新呪文を習得するとは……!)」

 

鬼麿「もう許さねえ!!第13の術、バオウ・クロウ・ディスグルグ!」

 

 かつてガッシュが使っていたバオウの腕による攻撃、バオウ・クロウ・ディスグルグが使えるようになった。

 

鬼麿「ガッシュ、モモンを叩き潰せ!」

 

ガッシュ「ウ、ウヌ!」

 

 アンサー・トーカーを発動させてモモンに確実に当てられる答えを出した清麿はその指示をガッシュに出し、ガッシュはバオウの腕を振り下ろしてモモンに当てた。

 

エル「およよよ……」

 

鬼麿「まだ終わらねえぞ!第14の術、ジオウ・レンズ・ザケルガ!!」

 

 今度はバオウとは異なる電撃の龍が出現し、しかもその龍の鱗が分離してあらゆる方向からモモンに迫った。これも、アンサー・トーカーで確実に当てられる答えを出して狙ったものであり、モモンは避けられずに全部受けてしまった。

 

エル「およよよ~~!!このままじゃモモンが殺されてしまう…!何とか、強い術を……ミンフェイ・ミミルグ!」

 

 モモンの耳が長く伸び、プロペラになった。

 

ティオ「あのエロ猿、逃げる気よ!他のみんなも早く新呪文を使いなさいよ!!」

 

恵「え、ええ…。チャージル・サイフォドン!」

 

しおり「ギルゼドム・バルスルク!」

 

ウルル「スオウ・マーレ・ギアクル!」

 

ニコル「グラード・マ・コファル!」

 

 術を放ち終わり、意識が戻ったガッシュとモモンに怒りをぶつけて何とか正気に戻った清麿、ウマゴンは一同の新呪文に驚いていた。

 

恵「正気に戻ったのね、清麿君…!」

 

清麿「は、はい…(ガッシュが前に話した通り、あのチャージル・サイフォドンって術はかなりやばい!チャージル・セシルドンはティオの守りたい想いで強くなるが……この術はティオの怒りや憎しみと受けた痛みで強くなる!)」

 

しおり「コルル…?」

 

 コルルは更に筋肉質で爪も禍々しくなっていった。

 

しおり「まさか、あの時のように大暴れを……」

 

 しかし、コルルは無意味に暴れようとしなかった。

 

しおり「コルル、私達がわかる?」

 

 その問いにコルルは頷いた。

 

コルル「当然じゃない、しおりねーちゃん」

 

しおり「よかった…」

 

コルル「あのエロ猿、私は無性に叩きのめしたい!手加減なんかしてられないよ!」

 

 コルルは以前よりもすさまじいスピードでモモンに迫り、モモンを吹っ飛ばした。

 

パティ「次は私の番よ!」

 

 スオウ・ギアクルよりもさらに巨大化した水の龍がモモンに襲い掛かり、モモンは避けようとした。

 

パティ「避けようとしても無駄よ!」

 

 巨大な水の龍は4体の龍に分離してモモンに襲い掛かり、モモンはよけきれずに吹っ飛ばされた。殺されるという危機感を感じたモモンはプロペラのようになった耳で空を飛び、急いで逃げた。

 

ニコル「チェリッシュの新呪文がスナイパーライフルだったなんて…」

 

 チェリッシュの新しい術が大型のスナイパーライフルであった事にニコルは驚いていた。

 

チェリッシュ「逃がさないわよ、シュート!」

 

 宝石の弾丸が発射され、見事、モモンに命中した。

 

チェリッシュ「締めはティオに譲るわ!」

 

ティオ「いっけ~~っ!!」

 

 他のみんなが大暴れしている間にチャージル・サイフォドンの水晶の部分にティオがモモンにパンツを見られている映像が映し出されて女神の部分が次第に凶暴化していき、怒っているティオ達以外は怯えていた。そして、止めにティオはチャージル・サイフォドンを放ち、モモンに当てる事に成功した。

 

ガッシュ「やっと終わったのだ……」

 

 こうして、モモンによって怒り心頭のティオ達の怒りは静まった。

 

エル「モモン、罰が当たったのですよ。あのう、やはり私の本を燃やすのでしょうか?」

 

ティオ「当然でしょ!!」

 

パティ「その前にもっとボコボコにしてやるのよ!」

 

コルル「今日はこれくらいにしようよ」

 

ティオ「どういうつもりよ、コルル!」

 

チェリッシュ「これくらい痛い思いをすれば少しはモモンも反省するでしょうね。だから、今日はこれくらいで勘弁してあげるのよ、パティ、ティオ」

 

清麿「それに、モモンはコーラルQのように魔物の居場所を正確に探知できる魔物だ。ガッシュも魔物の居場所を探知できるが、距離は限られている。モモンは魔物の居場所を探知する事で魔物から逃げ続け、一度も魔物に会わなかったんだろ?」

 

エル「およよよ。そうなの?モモン」

 

モモン「うん…」

 

エル「では、私が世界中旅して魔物と出会わなかったのは…」

 

モモン「うん…うん…」

 

清麿「今回の下着泥棒をしたお前へのお仕置きはこれくらいで止める。だが、その代わりにファウードへの案内人になってもらうぞ」

 

 ファウードの案内人になってもらうという清麿の言葉にモモンは怯えた。

 

清麿「(やはり、ファウードのやばさはモモンも知っているようだな…)」

 

エル「おかしいわ、この子がこんなに怯えるなんて…これで2度目よ」

 

清麿「2度目?最初はどうだったんですか?」

 

エル「最初は半年以上も前にも同じようにモモンは怯えていたんです。その際にリーンという人から赤ちゃんを頼みますと言われてその子を近くの児童施設に預けました」

 

清麿「(ガッシュの話ではクリアのパートナーは赤ん坊だった。それに、アシュロンの話と合わせればモモンが怯えた原因はゼオンとクリアの戦いだ!)」

 

ティオ「さぁ、盗んだ下着を返してもらうわよ!」

 

 下着を取り戻そうとしたティオ達を見たモモンはまた逃げてしまった。

 

パティ「まだ反省してなかったのね!」

 

ティオ「待て~~っ、このエロ猿!!」

 

 パティとティオの2人と違い、チェリッシュは静かに怒っていた。

 

チェリッシュ「…ニコル」

 

ニコル「グラード・マ・コファル!」

 

チェリッシュ「シュート!」

 

 またしてもモモンはチェリッシュに狙撃され、その後、ティオ達の制裁を受けるのであった。そのティオ達の姿はもう誰も止める事はできない。




これで今回の話は終わりです。
今回は自分も執筆を楽しみにしていたモモンの話で、もし、モモンの話の時にティオ以外の女の子の魔物もいたら、という考えでパティやコルル、チェリッシュも出し、パワーアップ回にしました。
アニメではモモンは過去に無差別に下着泥棒もやってたので、原作以上に悪事がエスカレートして被害者も増やしました。
パティの新呪文のスオウ・マーレ・ギアクルはガッシュのジオウ・レンズ・ザケルガのような感じの名前を考えてこんな感じになり、威力はだいたいファノン・リオウ・ディオウぐらいの威力です。
コルルの新呪文のギルゼドム・バルスルクは文字通り禁呪で、他の禁呪程パワーアップはしない反面、コルルがより好戦的になるものの、理性は失わないという利点があります。
モモンがディオガ級以上の術を6発連続で受け続けて死ななかったのはギャグ補正だと考えてください。(モモンの耐久力では普通なら、死んでもおかしくないので…)
次の話はマリル王女がまた再登場します。それと、原作では決着が着かなかった清麿の恋愛事情にも決着が着きます。


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LEVEL54 清麿の選択

モチノキ中学校

 学校が終わり、清麿は帰ろうとしていた。

 

中田「高嶺、ちょっと個人的な話をしていいか?」

 

清麿「いいけど……」

 

中田「高嶺に好きな女の子はいるか?」

 

清麿「言えないけど、一応……」

 

中田「では、水野とその女の子が悪党に捕まり、1人しか助け出せないのなら、どっちを助ける?どっちも助けるという選択肢は認めない」

 

清麿「どちらかを助けるって……」

 

中田「現実というのは非情なものだ。正解のないこういった選択肢を迫られる事がたくさんある。この場ですぐに出せなくてもいいから高嶺なりに答えを出すんだ」

 

清麿「はい……」

 

 恵が好きとは言ってないが、清麿からすれば担任の中田の質問は鈴芽と恵を天秤にかけるようなものだった。

 

清麿「水野と恵さんが敵に捕まったらどっちを助けるか、か……。俺は恵さんは好きだが、水野にも恩はある。そんな状況になったら俺って……どっちを選ぶんだろうな……」

 

 恵と鈴芽のどちらかしか助けられない状況になったらどちらを助けるのか清麿にはわからなかった。

 

 

 

モチノキ町

 チェリッシュは空き時間を利用してグラード・マ・コファルを使いこなす訓練をしていた。

 

ニコル「命中率も随分上がったわよ」

 

チェリッシュ「この術、扱いが難しいけど、使いこなせばかなり強力な術よ」

 

ニコル「人間界のスナイパーライフルと比較してもその性能は歴然。しかも、二つのミラーサイトまで出てくるとはね」

 

チェリッシュ「清麿のアンサー・トーカーで詳細もすぐにわかって納得したわ。3つの銃口がある上に威力も人間が死なない程度に加減する事もできる。人質の救出にも役に立つわ」

 

ニコル「今日はこれくらいにして二日後のサーカスにガッシュ達を誘いましょう」

 

 

 

高嶺家

 家に帰った清麿はファウードの事を考えていた。

 

清麿「何とかモモンを発見できたが、肝心のモモンはガッシュから聞いた通り臆病か……。それにしても、ファウードが出現して1か月、敵の動きもより活発になってきてるはずだ……」

 

 そんな時、ガッシュとウマゴンが来た。

 

ガッシュ「清麿!」

 

清麿「どうした?」

 

ガッシュ「清麿、チェリッシュが来てるのだ!」

 

 下に降りてみると、チェリッシュペアがいた。

 

ウマゴン「メルメルメ~~!」

 

 ウマゴンはチェリッシュに飛びつき、チェリッシュは抱っこした。

 

チェリッシュ「もう、ウマゴンったら」

 

 抱っこしてくれたチェリッシュの顔をウマゴンは舐め回した。

 

清麿「ニコルさん、チェリッシュ、どうして?」

 

チェリッシュ「二日後はオロロンサーカスの公演があるの。だから、坊や達に見に来てもらいたくてね」

 

ガッシュ「清麿もファウードの事ばかり考えていないでたまには息抜きするのだ」

 

清麿「息抜き?確かに必要だな。それと、空いたペットボトルを持てる限り持つというのも知らせないとな」

 

チェリッシュ「どうしてそれが必要なの?」

 

清麿「ファウードに入った後で必要になるんだ」

 

ニコル「清麿、2日後のサーカスを見に行くチケットを渡すね」

 

 ニコルは清麿にチケット9枚を渡した。

 

清麿「そのチケットは?」

 

ニコル「これ、ガルザって人から『出張でサーカスへ行けないから君達にあげるよ』ってもらったの。だから、この町にいる魔物とそのパートナーにあげる事にしたのよ」

 

チェリッシュ「それに、私達は団長さんからお客さんを呼び込むのも頼まれているの」

 

ガッシュ「あれ?1枚足りないのだ」

 

ニコル「会場にはペットは入れられないの。だから、ウマゴンはペット扱いで外で待ってもらうしかないわ」

 

ウマゴン「メル……」

 

 ガッシュと一緒にサーカスが見れない事にウマゴンは落ち込んでしまった。

 

ガッシュ「ウマゴン、私もウマゴンと一緒にサーカスを見れないのは残念なのだ…」

 

チェリッシュ「それじゃあ、二日後のサーカスを楽しみにしててね」

 

 チェリッシュペアは帰って行った。それと入れ替わるように鈴芽とマリ子が来た。

 

鈴芽「高嶺君、二日後はハイキングに行かない?マリ子ちゃんと話して考えたんだけど」

 

清麿「悪い。俺、二日後は知人からの招待でサーカスを見に行くんだ。ハイキングには行けない」

 

マリ子「その持ってるのってチケット?」

 

鈴芽「そのチケットって余りのもの?だったら、私達もそのチケットでサーカスに行っていい?」

 

清麿「ダメだ。これは知人のために預かっているチケットなんだ。例え水野の頼みであっても渡せない」

 

鈴芽「高嶺君がチケットを渡さないなんて…。もしかして、私の事が嫌いなんじゃ……」

 

清麿「そ、そんな訳じゃ…。でも、預かり物は渡せないんだ」

 

鈴芽「そんな~~!」

 

マリ子「預かり物なら仕方ないわよ。鈴芽ちゃん、私がチケットを買ってあげるから泣かないでね」

 

 泣いている鈴芽を連れてマリ子は帰った。

 

ガッシュ「清麿、今日はやけに鈴芽に冷たいではないか」

 

清麿「悪い。今日はやけに気持ちの整理がつかなくてな…」

 

 夜になっても清麿の様子がおかしく、ガッシュは華にその事を聞いていた。

 

華「清麿が鈴芽ちゃんに冷たい態度をとったの?」

 

ガッシュ「それに、今日は気持ちの整理がつかないとか言ってたのだ。どうしてなのだ?」

 

華「実は珍しい事に清麿が私に相談していたのよ。先生に鈴芽ちゃんと恵さんが悪い人に捕まってどちらかしか助けられないなら、どっちを助けるのかって。清麿も将来、避けて通れない道を突きつけられたみたいね」

 

ガッシュ「そんなに深刻な事なのか?」

 

華「多分、先生は清麿がこれからどちらかしか選べない時が来る事を教えたのだと思うのよ。大人になって社会に出ればこういった事もよくあるわ。今はガッシュちゃんにはわからないけど、いずれはわかってくると思うわ」

 

ガッシュ「どちらかしか選べぬ…か……」

 

 華の言葉にガッシュは前の戦いでリィエンら呪いをかけられたパートナーを犠牲にするか、世界を犠牲にするかという選択肢を突きつけられた事を思い出した。その時は誰も犠牲にしないという第3の選択をとったが、今回は第3の選択肢自体、存在しないため、恋の事はよくわからないものの、悩んでいる清麿の姿がかつての自分と重なり、ガッシュは痛々しい思いでいっぱいだった。

 

 

 

サーカス会場

 二日後、呼んでいたティオ達が待ち合わせのサーカス会場に来た。この時間はまだ開演時間から2時間ほど前であり、人もほとんどいなかった。

 

ティオ「やっほー!チェリッシュからサーカスの事は聞いたわ!」

 

恵「私も休みだから、息抜きにサーカスを見ようと思ってたの」

 

清麿「恵さんやみんなが来てくれてよかった」

 

恵「私も清麿君と一緒にサーカスを見るのを楽しみにしてたのよ」

 

ガッシュ「チェリッシュからもらったチケットはここにあるのだ」

 

 ガッシュの手にはチェリッシュから渡されたチケットがあった。

 

コルル「9枚しかないよ」

 

パティ「ウマゴンはペット扱いだから入れないのよ。だから、これで合ってるわ」

 

サンビーム「さ、受付を済ませてから会場に入ろう」

 

???「久しいのう、皆の者」

 

 声がしてその方を向くと、そこにはマリル王女がいた。

 

しおり「マリル王女!」

 

カラオム「マリル様は日本政府との会談が終わってサーカスを見たいという事でここに来られたのです。何ともここでお会いするとは奇遇ですね」

 

マリル「ちゃんと私とカラオムらもチケットは持っておる。一緒にサーカスを見ようではないか」

 

ウルル「まだ始まるのに2時間ほどありますよ」

 

パティ「特等席を今の内にとっておきましょうよ。さ、みんな行くわよ!」

 

マリル「清麿、何か悩み事でもあるのか?」

 

清麿「い、いや、別に…」

 

マリル「(何か清麿には悩みがあるようじゃな……)」

 

 悩みの内容はわからないものの、清麿が悩んでいる事はマリルは察した。そして、一同はサーカス会場に入ったが、その姿を黒ずくめの男達が見つめていた。その頃、鈴芽とマリ子が来たが、途中でマリ子は鈴芽と逸れてしまった。

 

マリ子「鈴芽ちゃんったら、どこに行ったの…?」

 

 鈴芽は会場の近くで迷子になっていた。

 

鈴芽「ねえ、マリ子ちゃん、どこにいるの!?どの道へ行けば会場に着くの?」

 

 ふと、鈴芽は黒ずくめの男達を見かけた。

 

鈴芽「すみません、どこへ行けばサーカスの会場に」

 

 男達は何も答えず、鈴芽を気絶させた後、拘束した。

 

 

 

 一方、ガッシュ達はサーカスが始まるのを楽しみにしていた。

 

ガッシュ「ウヌゥ、チェリッシュの空中ブランコを生で見るのは楽しみだのう…!」

 

ティオ「ウマゴンにも見せてあげたかったけどね」

 

コルル「仕方ないよ。ウマゴンはペット扱いで会場に入れないし…」

 

恵「みんなも喉が渇いたなら、私が飲み物を買ってきてあげるわ」

 

 恵はみんなの飲み物を買いに席を離れた。そんな中、カラオムの携帯電話に着信が入り、カラオムが出た。

 

カラオム「はい。……なんですと!?」

 

 本国からの電話にカラオムは驚いた。

 

 

 

一方、みんなの飲み物を買いに行った恵は何を選ぶか考えていた。

 

恵「さて、ガッシュ君達は何が」

 

???「女よ、お前は人質になってもらおうか」

 

 恵を複数の黒ずくめの男達が取り囲んだ。

 

恵「どういう事?」

 

暗殺者「我々は女性であるマリル王女が王位を継ぐ事など認めん。そんな王女への見せしめにしてやろう」

 

恵「私はこう見えても」

 

 しかし、恵の背後にマッチョな男が不意打ちで恵を取り押さえてしまった。

 

恵「は、放して!」

 

暗殺者「よし、次はマリル王女へ王位継承を放棄させるぞ。放棄しないなら、殺す!」

 

恵「(この人達、遊園地の時のマリル王女暗殺をもくろんでいた人達の仲間ね…)」

 

 恵の後を追っていたウマゴンは恵が捕まった現場を目撃し、それをガッシュ達に知らせるためにサーカス会場へ向かった。

 

 

 

 

その頃、ガッシュ達は恵の帰りが遅い事に気にしていた。

 

ティオ「恵ったら、やけに遅いわね」

 

コルル「何かあったのかな?」

 

???「ねえ、高嶺君、鈴芽ちゃんは見なかった?」

 

 マリ子がサーカス会場に来た。

 

清麿「別に見てないが……」

 

マリ子「変ね…、もしかして、迷子になったんじゃ…」

 

???「メルメルメ~~!」

 

 慌てて会場にウマゴンが来た。

 

清麿「ウマゴン、こんなに慌ててどうしたんだ!?」

 

ウマゴン「メルメルメ、メルメル、メルメルメ!」

 

サンビーム「何だって!?恵が黒ずくめの男達に攫われただと!?」

 

ガッシュ「本当なのだな?ウマゴン!」

 

ウマゴン「メルメル」

 

ティオ「だったら、すぐに恵を助けに行かないと!」

 

 そんな時、また電話が鳴った。

 

マリル「カラオム、また本国から私の暗殺を目論む連中の事を伝える電話か?」

 

カラオム「いえ!マリル様、この前のマリル様暗殺を目論んだ連中の仲間からの電話です!」

 

マリル「何?」

 

 その電話にマリルが出た。

 

暗殺者『マリル王女に告ぐ。我々は2人の人質を取ってこのサーカス会場の近くの建物にいる。人質を返してほしければ我々の元に来て王位継承権を放棄せよ。そうしないのであれば、人質の命はないと思え!』

 

 そう伝えた後、通話は切れた。

 

清麿「(もしや、人質は恵さんと水野…?)」

 

ティオ「人質の内の1人はきっと恵よ!すぐに恵を助けに行かないと!」

 

サンビーム「焦る気持ちはわかるが、何の考えもなしに行くのは危険すぎる」

 

ウルル「それに、マリル王女が王位継承権を放棄したとしても、必ず約束を守るとは限りませんよ」

 

ティオ「だけど……」

 

清麿「とにかく、今の状況で焦っても仕方ない。敵の様子を見てから対策を立てよう。それと、今回はチェリッシュの協力も必要だと思う」

 

 清麿はオロロンサーカスの団長に人質救出にチェリッシュを協力させる事を頼んだ。

 

団長「まだ公演に時間はある。用を直ちに済ませて戻ってくるんだ」

 

チェリッシュ「はい」

 

 一同は指定された場所へ向かった。

 

マリル「清麿、人質の救出に私も向かわせてもらうぞ」

 

カラオム「いけません!敵の狙いは恐らく、マリル王女の命!闇雲にマリル王女が動けば」

 

マリル「私は恵達にはお世話になった。私も彼等の作戦を手伝わねばまたしても我が国の問題に巻き込まれてしまった恵達に申し訳ないのじゃ!」

 

ティオ「随分変わったわね、マリル」

 

マリル「今の私には頼もしい味方がおる。清麿、そなたが作戦を立てるのだぞ」

 

清麿「はい」

 

 

 

 

建物

 ガッシュ達が指定の建物に来ると、その場所はコンサートホールだった。そこには、離れた所でそれぞれ腕を掴まれて拘束され、銃を突きつけられている恵と鈴芽の姿があった。

 

清麿「(やっぱり人質は恵さんと水野だったのか…。まさか、先生の言った質問が現実になってしまうとは……)」

 

サンビーム「離れた所にいるから救出はどちらかを先にしなければならないようだ……」

 

ニコル「しかも、敵の人数は結構多いわよ」

 

コルル「清麿お兄ちゃんは恵お姉ちゃんと鈴芽お姉ちゃんのどっちを先に助けるの?」

 

清麿「俺は……」

 

 中田の質問に答えられず、今でもどちらを先に助けるのかという答えが出せない清麿は答えようがなかった。

 

ティオ「どうしたの?清麿」

 

ウルル「どちらを先に助けるのかで悩んでいるようですよ」

 

しおり「清麿君、早く決めないと恵と鈴芽ちゃんが2人共殺される可能性だってあるのよ。早く決めて!」

 

清麿「俺は……」

 

マリル「清麿、自分の気持ちに正直になって決めるのじゃ。そうすれば、どちらを先に助けるのかを決められるはず。正直な自分の気持ちではどちらを助けたいのか?」

 

 マリルの言葉に清麿は自分は本当はどちらを先に助けたいのか正直に考えた。その答えは……。それから、一同は作戦を立てた。

 

清麿「みんな、以下の通りに行うんだ!」

 

 指示の後、マリルが部屋に入った。

 

暗殺者「マリル王女、王位継承権を放棄しに来られたのですか?」

 

マリル「私が王位を継ぐ事に不満があるのであれば、国政の場でそれを言えばよかろう!なぜ人質をとる!?」

 

恵「(マリル王女……)」

 

鈴芽「(高嶺君、早く助けに来て!)」

 

暗殺者「そんな事はどうでもいいだろ!?とにかく、王位を放棄しろ!さもなくば、人質と王女の命はないぞ!」

 

マリル「この愚か者め!人質をとるという事は私に恐れをなしているのと同じだ!そんな臆病者達にこの私は臆せぬ!痛い目に遭いたくなければ人質を解放しろ!」

 

暗殺者「言わせておけば言いたい放題言いやがって……!王女を撃ち殺せ!!」

 

 暗殺者達が銃を構えようとした瞬間、グラード・マ・コファルの銃弾が次々と暗殺者に撃ち込まれた。

 

暗殺者A「ぐあっ!」

 

暗殺者B「何だ!?どこから撃ってきやがった!?」

 

暗殺者C「これは凄腕のスナイパーの仕業だ!王女め、俺達の意識を向けさせてスナイパーに狙撃させるとは……!」

 

暗殺者A「だが、別の方向からも撃ってきたぞ!複数のスナイパーがいるのか!?」

 

 これは、ミラーサイトを利用してスナイパーが複数いると見せかける罠であった。

 

ニコル「練習しててよかったわね」

 

チェリッシュ「さぁ、私が連中をかく乱させるから人質を救出するのよ!」

 

サンビーム「ディオエムル・シュドルク!」

 

 ウマゴンにガッシュペアとサンビームは乗り、人質の救出に向かった。

 

暗殺者D「奴等め、いつの間にこんな作戦を!こうなれば、王女をぶっ殺してやる!」

 

 銃を弾かれた暗殺者はナイフを手にマリルに斬りかかった。

 

マリル「ふん!」

 

 しかし、マリルは素手で襲ってきた暗殺者達をなぎ倒した。

 

暗殺者C「何っ!?」

 

マリル「私とて護身術ぐらいは身に付けておる。何もできぬと思うとは浅はかであったな」

 

暗殺者B「くそっ…」

 

暗殺者A「おい、それよりもあの馬を止めろ!人質の方へ向かってくるぞ!」

 

ウマゴン「メルメルメ~!」

 

 人間の銃ではウマゴンに当てる事はできなかった。ウマゴンが通るのに邪魔な暗殺者達はウマゴンの炎で熱がっていた。

 

鈴芽「(凄い……まるで高嶺君は白馬の王子様みたい……)高嶺君、私を」

 

清麿「恵さん!手を!」

 

恵「清麿君!」

 

 恵を取り押さえていた暗殺者達はウマゴンが来る直前にチェリッシュが狙撃して気絶させ、無事に清麿は恵を救出した。

 

恵「清麿君、今の清麿君は白馬の王子様だったわ…。それに…私を助けてくれるって信じてた…」

 

清麿「俺も無事に助け出せて嬉しいよ、恵さん」

 

鈴芽「そんな…、高嶺君が恵ちゃんの方を先に助けるなんて……」

 

 自分の方を先に助けてくれると思っていた鈴芽は恵を先に助けた清麿の姿にショックを受けていた。

 

暗殺者「こ、この女の命は」

 

清麿「ラウザルク!」

 

 ラウザルクがかかったガッシュはすぐに鈴芽に銃を突き付けていた暗殺者を殴り飛ばし、鈴芽を救出した。

 

ガッシュ「もう大丈夫なのだ、鈴芽」

 

鈴芽「高嶺君が……」

 

パティ「さて、人質救出も終わったから次は派手に暴れるわよ、コルル!」

 

コルル「うん!」

 

ウルル「オルダ・アクロン!」

 

しおり「ゼルク!」

 

 その後、ガッシュ達によって暗殺者達はあっけなく全滅した。

 

恵「ごめんね、清麿君。またしても悪い人に捕まってしまって」

 

清麿「いや、恵さんが無事だったからいいよ」

 

しおり「これにて一件落着ね」

 

鈴芽「高嶺君、どうして私を先に助けてくれなかったの?銀行強盗の時は必死で助けてくれたのに…。私の事が嫌いなの?」

 

清麿「……今まで躊躇していたがはっきり言う。俺は……恵さんが好きだ」

 

 デュフォーの言った事を否定し続けていた鈴芽だったが、清麿の口から『恵が好き』という事を聞いてショックを受けていた。

 

鈴芽「どうして?どうして高嶺君は私より恵ちゃんの事が好きなの?私だって中学に入ってから高嶺君の事が好きだったのに…!」

 

清麿「……俺が不登校の時もお前だけ普通に接してくれたことは感謝している。だが、俺にとって胸がドキドキするほど好きになった女の人は恵さんなんだ。初めて恵さんに会った時から、恵さんが命の危険に晒されたりしたら居ても立っても居られないほどになるぐらい好きになった。だから水野、お前の想いには応えられない」

 

鈴芽「そんな…、高嶺君は恵ちゃんの事が好きって言ったあの男の人の言った事が本当だったなんて…、そんな~~!!」

 

 デュフォーが出した答え通り、清麿は自分よりも恵の方が好きとわかった鈴芽は大泣きし、逃げて行った。

 

コルル「鈴芽お姉ちゃん、可愛そう…」

 

清麿「(水野に俺は恵さんの事が好きだと言った男って何者なんだ?もしかすると……)」

 

 そういった事がわかる男は清麿の知ってる人物の中では同じアンサー・トーカーのデュフォーしか思い浮かばなかった。

 

マリル「これは避けて通れぬ道…、どちらかを選ばねばならぬ時。清麿はその時が早く訪れたのじゃ…。ガッシュやその友達もその時がいずれ訪れようぞ」

 

 清麿が悩んだ末、自分の正直な気持ちに従って恵を選んだ事にガッシュはその悩んでから出した答えの重さを感じ取った。

 

マリル「カラオム、私の護衛の者達と共にこ奴等を警察に引き渡すのだぞ」

 

カラオム「はっ」

 

マリル「ではそなた達、いつまでも沈んだ気分でいないで気持ちを切り替え、サーカスを見に行こうではないか」

 

チェリッシュ「いけない!後、1時間で始まるわ!急いで戻らないと!」

 

 犯人を警察に引き渡した後、一同は急いでサーカス会場に向かった。

 

 

 

 

サーカス会場

 ガッシュ達は無事に会場に到着し、準備が終わってからサーカスも始まった。

 

団長「レディース&ジェントルメン!本日は我がオロロンサーカスにようこそおいでくださいました!それでは、我がサーカスの妖精、チェリッシュの曲芸をご覧ください!」

 

 まずは、チェリッシュの空中ブランコから始まった。チェリッシュの華麗なる芸にガッシュ達は大喜びした。

 

ガッシュ「おお!直接見ると迫力が違うのだ!!」

 

 生で見た事にガッシュ達は大いに喜んでおり、パートナー達も喜んでいた。

 

恵「清麿君、一緒にサーカスを見る事ができて嬉しいわ。それに、私の事をはっきり好きって言ってくれたわね。私も清麿君の事が好きよ」

 

清麿「恵さん……。何だか、はっきり好きと言えて気分がすっきりしたよ」

 

 前の戦いの時と違い、意図しなかったガッシュの干渉によって清麿と恵はよりお互いを意識し合い、そして恋人同士になったのであった。

 

サンビーム「マリル王女はどのような話で日本政府との会談をしたのですか?」

 

マリル「1か月ほど前に出現した巨大な建造物についてじゃ。あれはカラオムらは建造物だと言っておるが、私からすればまるで檻に閉じ込められた巨人のようにも見える。そなた達は何か知っておるか?」

 

清麿「あれは魔界から来た魔界の脅威、魔導巨兵ファウード。超巨大な魔物です」

 

ウルル「まだファウードは封印されている状態で動けないのですが、ファウードを目覚めさせて人間界諸共残りの魔物達を一掃する魔物達がいるのです」

 

マリル「そうであったか……」

 

カラオム「まさか、このような……」

 

マリル「このまま放っておけば我が国はおろか、全ての国が滅びる…。よかろう、2度も私はそなた達に助けられた。今度は私達がそなた達を助けようではないか」

 

ティオ「助けるって…」

 

マリル「恵達をファウードへ送るのじゃ。どの道、そなた達は誰かにファウードまで送ってもらう予定であろう。私達にできる恵達への手助けはこれくらいであるがな」

 

清麿「いえ、マリル王女の心遣いには感謝しています」

 

 サーカスが終わり、外へ出てみると報道陣に囲まれていた。

 

清麿「げっ!こんな時に……」

 

恵「これはチャンスかも知れないわ」

 

 恵は報道陣の前に出てきた。

 

リポーター「恵さん、人質にされたというのは」

 

恵「皆さん、この場をお借りして話したい事があります。この私大海恵は…2歳年下の男性、高嶺清麿君と交際しています!」

 

 恵の発表に報道陣は質問した。

 

リポーター「では、恋人との出会いはいつごろだったのでしょうか?」

 

 それから、恵や清麿への質問攻めは続いた。

 

 

 

 

モチノキ町

 清麿に振られて鈴芽は泣きながら途方に暮れていた。

 

マリ子「鈴芽ちゃん、どうして泣いてるの?」

 

鈴芽「うぅっ…、高嶺君に振られちゃったの…。恵ちゃんの方が好きだって……」

 

 そこへ、中田夫婦が来た。

 

中田「水野、どうしたのかね?」

 

ワイフ「いつもの元気がないわよ」

 

鈴芽「先生、高嶺君に恵ちゃんの方が好きだって振られちゃって……」

 

中田「失恋したというのか……」

 

ワイフ「私も夫に出会うまでは色々と失恋したのよ…。その時の気持ちが蘇ってくるようだわ……」

 

中田「失恋は悲しくて辛いだろう…。だが、それを理由に悪い事をしてはいけない。今はしっかりと悲しみ、気持ちを切り替えなさい」

 

鈴芽「先生!!」

 

 鈴芽は大泣きしながら中田に泣きついた。マリ子と中田夫婦も鈴芽を慰めるのであった。

 

 

 

ファウード

 その頃、ファウードではゴームが小さな子供二人を連れてきていた。

 

リオウ「これで力が一つ増えた。残る力は二つ、その力でファウードの封印を壊し、解放するまでもう少しだ」

 

 ファウードの封印が解けるのがもう少しである事にリオウは笑みを浮かべていた。ゼオンに誘導され、まんまと利用されているとも知らずに。

 

 

 

 

某国

 一方のゼオンはリオウ達の動向を見張っていた。

 

ゼオン「ふふふ、今はファウードの封印を解く力が集まってるので浮かれているがいい、リオウ。そもそも、お前達の行動は俺に誘導されているのだからな…。そして、ファウードはこの俺が手に入れる。それまで頑張ってもらうぞ…」

 

 邪悪な笑みを浮かべ、ゼオンはリオウ一味の動きを見張り、ファウードの奪取の機会を伺っていた。

 

 

 

高嶺家

 その夜は恵はティオと共に清麿の家に泊まる事になった。

 

華「清麿ったら、遂に恵さんと付き合う決心をしたのね」

 

清麿「バレたらまずいとか思ってたけど、どっちにしろバレるから恵さんが公表するって」

 

恵「でも、隠す必要もなくなって安心したでしょ?」

 

ティオ「サーカスの公演が終わって外に出たらマスコミに囲まれて取材攻めだったしね」

 

華「私も見たわ。ニュースの名前も『大スクープ、大海恵に恋人発覚!!』って大々的に放送されていたのよ」

 

ガッシュ「私達も映っておったか?」

 

華「勿論映っていたわよ」

 

ガッシュ「嬉しいのだ!」

 

恵「清麿君、頼みがあるんだけど…」

 

清麿「頼み?」

 

 清麿は自分の部屋で恵を待っていた。

 

ガッシュ「母上殿、私はどうして来てはならぬのだ?」

 

華「恵さんは仕事でこういった日は少ないのよ。たまには清麿と一緒にさせてあげようね」

 

 清麿はカメラを準備していた。

 

清麿「(急にカメラを渡して恵さんは何をするつもりなんだ…?)」

 

 すると、恵がバスタオルを巻いた状態で来た。デボロ遺跡での戦いの時、事故ではあったものの、清麿は恵の裸を見てしまったため、あの時と同じではと思い込んだ。

 

恵「清麿君、私を撮影してね」

 

清麿「め、恵さんの裸を撮るんですか!?は、裸はちょっと…」

 

 バスタオルをとるのをやめさせようとする清麿だったが、恵はバスタオルをとった。バスタオルの下は裸ではなく、清麿からお土産としてもらったハイビスカス柄のビキニだった。

 

清麿「(これは…レインの所に行った時に恵さんへのお土産として送った水着だ…)」

 

恵「私は裸を撮ってとは一言も言ってないのよ。バスタオルを見て早とちりしちゃったわね。それじゃあ、私が色々ポーズをとるから撮影してね」

 

清麿「は、はい」

 

 恋人の水着姿に清麿は見とれながら写真を撮った。

 

恵「ありがとう。こうやって独占撮影できるのは私の恋人の清麿君だけの特権なのよ」

 

清麿「め、恵さんの水着姿は美しかった……」

 

恵「うふふっ、私が清麿君に頼み事をしたから、今度は清麿君の頼み事を聞くわ」

 

清麿「た、頼み事は……」

 

 思わず清麿は恵の胸に視線が行った。

 

恵「もしかして、私の胸を触りたいんでしょ?」

 

清麿「そ、そんな事は…」

 

恵「前にも言った通り、清麿君が触りたいのなら、触っていいのよ。さ、触りたいのなら躊躇しない!」

 

 清麿の頼みが自分の胸を触る事だと見抜いた恵は清麿の手を掴んで胸を触らせた。清麿も恵の好意に従って振り払おうとせずに両手で恵の胸を触って柔らかさなどを満喫した。

 

恵「(ここまで胸が大きい事が嬉しいのは初めてかしら…?)」

 

清麿「(恵さんの胸は触り心地が最高だなぁ…。程良い大きさだし、柔らかいし……)」

 

恵「やっぱり私の胸は清麿君にとって触り心地がいいのね。清麿君になら触られても怒らないから、触りたい時は遠慮しなくていいのよ」

 

清麿「そ、そうですか…」

 

恵「ほんとは私のブラをとってから触りたかった?」

 

清麿「は、裸は流石に…」

 

 まだ胸を触られるのは恥ずかしいものの、恋人に触られる事に恵は嬉しい様子だった。

 

 それから、恵はパジャマに着替えて清麿と一緒に寝る事にした。

 

清麿「近いうちにファウードへ行くしかなさそうだ…」

 

恵「明日から忙しくなるわね。清麿君、大好きよ」

 

清麿「俺も恵さんの事が大好きだ」

 

 愛し合う2人は次の戦いが始まる予感を感じて寝るのであった。

 

 

 

 

事務所

 翌日、恵はいつものように仕事に取り込んでいた。

 

マネージャー「社長、恵ちゃんは何だか今までより輝いてますね」

 

社長「その理由は至って簡単、恋してるからさ。恋をしてる女の子は輝くものだよ。宝石よりもね。昨日、清麿という恋人との交際を世間に発表したから、隠す必要もなくなってより生き生きとできるようになってるね」

 

マネージャー「はい。仕事をびっしり詰めているのは恋人の清麿君と旅行を予定しているそうで…」

 

社長「ま、本当は別の理由なのかもしれないけどね」

 

 実際はファウードへ行くための準備ではあったが、恋人である清麿と一緒に行くという事だけは共通していた。恵の所属してる事務所の社長も詳細はわからないものの、それは見抜いていた。

 

 

 

モチノキ中学校

 翌日、恵が清麿と恋人関係にある事を公に明かした事は学校中でも話題になり、金山達は清麿に猛烈な敵意を向けた。

 

金山「高嶺~~、俺達に隠れて恵ちゃんと恋に現をぬかしやがって!」

 

マリ子「恵ちゃんを独り占めするなんてどういう事よ!」

 

清麿「(やっぱり、俺の予想通りになった。こんな時に限ってどうしてアンサー・トーカーでも答えが出せないんだよ…!)」

 

山中「絶対に恵ちゃんとベットで一緒に寝たりしただろ!?」

 

岩島「高嶺君は日本中の男を。いや、世界中の男を敵に回したんだぞ!」

 

金山「俺達に黙って恵ちゃんを独占した高嶺を許すな!」

 

清麿「や、やめろ!俺は」

 

???「静かに!」

 

 そんな清麿の危機を救うかの如く、中田が来た。

 

山中「先生、高嶺は俺達に黙って人気アイドルの恵ちゃんと付き合ってたんですよ!」

 

中田「お前達、人はルールを守り、周りに迷惑をかけないのであれば誰にでも異性と付き合っていい権利はあるんだ。お前達が女性と付き合ってその女性と付き合う事に他の人から文句を言われたらどんな気分だ?」

 

金山「そ、それは……」

 

中田「お前達が責めている高嶺と同じ気分だろう。自分がされて嫌な事を他人にするな!」

 

清麿「先生……」

 

 その後、中田は清麿と話をしていた。

 

中田「高嶺、お前は大海恵と付き合う事を決めたのか」

 

清麿「はい」

 

中田「誰にも迷惑をかけてないのであれば私は何も言わん。これからも幸せにな」

 

 励ましの言葉を言って中田はその場を去った。

 

清麿「ありがとな、先生…」

 

 鈴芽はまだ失恋のショックは抜けていなかった。そこへ、マリ子が来た。

 

マリ子「どうしたの?鈴芽ちゃん」

 

鈴芽「…何だか、高嶺君はどこかへ行っちゃうような気がするの…。(高嶺君、恵ちゃんと幸せにね…)」

 

 その鈴芽の予想は当たっていた。そして、鈴芽は身を引いて清麿と恵の仲を認めたのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回は清麿の恋愛事情に決着を着ける話でしたが、自分は清恵派なので、清麿がもし恵と本格的に恋人同士になったとしたら、というのを描きました。鈴芽が好きな人にはすみません…。
今小説の邂逅編だけでなく、石版編にも登場したマリル王女ですが、小説を書いてる際にガッシュ達をファウードへ送迎するという役ができるのではないかと考え、ファウード編でも再登場させる事にしました。なお、原作で送迎を担当したアポロはレイラ達を連れて来るので遅れて来ます。
次の話はゼオンの使い魔からのメッセージがガッシュペアに送られます。


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LEVEL55 ゼオンからのメッセージ

イタリア

 それから、清麿は仲間達と連絡をとった。

 

フォルゴレ「キャンチョメは行くんだな」

 

キャンチョメ「うん。僕は大好きなお菓子を食べられなくなるのもフォルゴレが出ている映画が見られなくなるもの嫌なんだ!そのために、僕は清麿の提示した特訓を毎日欠かさずこなして臆病を直すためにホラー映画を見続けて強くなったんだ!すぐにでも行く心の準備は整っているよ」

 

フォルゴレ「頼もしいな。ところで、何の絵を描いているんだ?」

 

キャンチョメ「うん、色々考えたんだけど、やっぱり僕の一番好きな動物、ライオンを描いてるんだ。かっこいいし、強いし、まさに動物の王様さ。デボロ遺跡でのガッシュも敵の魔物を寄せ付けない強さはまさにライオンのような感じだったよ。フォルゴレもライオンは好きだろ?」

 

 キャンチョメの問いにはフォルゴレはあまり嬉しそうではなかった。

 

フォルゴレ「……いや、私の一番好きな動物は……カバさんだ…」

 

キャンチョメ「……カバ?あの口が大きくて太ってる…カバさん?」

 

フォルゴレ「…ああ」

 

キャンチョメ「フフフ、フォルゴレらしくないよ。カバさん、カッコ悪いぜ。強さもかっこよさもライオンとは比べ物にならないよ」

 

フォルゴレ「知ってるかい?キャンチョメ。カバさんは……」

 

 それから、次の日になった。

 

キャンチョメ「今日もお仕事を頑張らないとね」

 

フォルゴレ「そうだな」

 

???「そのキャンチョメという魔物のパートナー、少し私と話をしてほしいのだが…」

 

 声の主はグスタフだった。

 

フォルゴレ「構わないが…」

 

 フォルゴレはグスタフと話していた。

 

グスタフ「君のそのキャンチョメという魔物、前の日に私のパートナーと共に偶然見たのだが、私が見た限りではその魔物の目は若干だが曇っているように見える。気付いていたか?」

 

フォルゴレ「ああ」

 

グスタフ「これは私の予想だが、キャンチョメはまだ本当の強さを身に付けていない。それ故、今よりもさらに大きな力を得ると思わぬ行動を起こすかも知れんぞ。そうなった時はどうする?」

 

フォルゴレ「…私の命をかけてでもキャンチョメを止める。ただ、それだけだ」

 

グスタフ「……どうやら、いらん心配だったようだ。仕事へ行く所を引き留めて済まなかった」

 

 グスタフは去って行った。その後、グスタフはバリーを見つけた。

 

バリー「グスタフ、あのキャンチョメとかいう魔物のパートナーと話をしていたのか?」

 

グスタフ「少しな」

 

バリー「俺も感じてたぜ、キャンチョメの目が曇っている。何があったのかは知らんが、あいつはただ、がむしゃらに力を求めているようだな」

 

グスタフ「ああ。力を得るだけなら簡単なものだ。だが、本当の強さを持つ者にはでかいだけの力で勝つ事はできん。それはバリーがその身を以てよく知っているだろう?」

 

バリー「ああ。あの時、ガッシュに完敗したのも理解できる。あいつはあの時の俺よりも力も心もでかかった。そして、チェリッシュやエルザドルもな…」

 

 

 

 

中国

 レインが魔界に帰らなかったため、リオウ一味はウォンレイを引き込もうとせずにほったらかしにしており、リィエンは呪いにかかっていなかった。

 

リィエン「ウォンレイ、旅費の事はどうするある?」

 

ウォンレイ「とりあえず、ナゾナゾ博士に頼んで…」

 

???「お金の事で困っているのか?」

 

 旅費の事で悩むウォンレイペアに声をかけたのはパクロンだった。

 

リィエン「お父さん!」

 

パクロン「どこへ行くのかは私は知らんが、旅費の事で困っているのなら、私が出そう。だが、これだけは覚えておくんだ。2人共必ず生きて帰ってこい!私から言えるのはこれだけだ」

 

ウォンレイ「はい…、リィエンと共に必ず生きて帰ります!」

 

リィエン「ありがとうある、お父さん!」

 

 ウォンレイペアの旅費はパクロンが負担してくれたのであった。

 

 

 

高嶺家

 仲間達に連絡をとった清麿はいつも通りの日々を過ごしていた。

 

清麿「(仲間には全て連絡をとったし、恵さんは休みを作るために頑張っている。後は、残りの仲間の返事を待つだけか…)」

 

配達員「高嶺さん、エアメールの速達です」

 

清麿「はい、今行きます!(前の戦いではウォンレイはリィエンが呪いにかけられたせいでリオウに従わざるを得なかったそうだが、今回もそうなのだろうか…?)」

 

 エアメールを清麿は受け取った。

 

ガッシュ「清麿、みんなの返事はどうなのだ?」

 

清麿「フォルゴレは来てくれるそうだ。それに、キャンチョメも行く気満々らしい」

 

ガッシュ「よかったのう」

 

清麿「ウォンレイ達も来れるらしい。リィエンも元気だとさ。パムーンやレイラ、ビクトリームはパートナーが休暇をとるのに手間取ってるから遅れるらしい」

 

ガッシュ「返事が来たのであれば、呪いにはかかっておらぬのう」

 

清麿「だが、レインから来た手紙には『カイルが呪いにかかってしまった!すぐにファウードに来てカイルを助け、ファウードを止めてくれ!』と書かれてあった」

 

ガッシュ「……困難ではあるが、どっちもやらねばならぬ…」

 

清麿「そうだな…」

 

 そんな時、電話があった。

 

華「はい。清麿、ナゾナゾ博士から電話よ」

 

清麿「今、行く」

 

 清麿は電話に出た。

 

ガッシュ「どうしたのだ?」

 

清麿「ちょっと少し前に気になってナゾナゾ博士に動いてもらったんだ…」

 

 

 

 

回想

 それは、数日前ほど前の出来事だった。清太郎から電話が来た。

 

清麿「親父、急に何だ?」

 

清太郎『清麿の知り合いのジェムがヨポポと共に姿を消したんだ』

 

清麿「何だって!?ジェムとヨポポが!?」

 

清太郎『ジェムの家族や近所の人達に警察がジェムとヨポポの居場所を探しているんだが、まだ見つかっていない。清麿の所にジェムとヨポポはいるか?』

 

清麿「いないが…」

 

清太郎『そうか…』

 

清麿「それなら、ナゾナゾ博士に頼んで調査をさせてほしい。そうすれば、ジェムとヨポポの行方の手掛かりも掴めると思う」

 

清太郎『わかった。ナゾナゾ博士に頼んでみる』

 

 

 

 

ガッシュ「まさか…、ジェムが…!」

 

清麿「その可能性は十分にある…」

 

ナゾナゾ博士『清麿君かね?』

 

清麿「はい。どうでしたか?」

 

 

イギリス

 ナゾナゾ博士はイギリスのジェムの住んでいる周辺を調べていた。

 

ナゾナゾ博士「今、一通り見てきたのじゃが、この辺りにヨポポ君とジェム君はいない。数日前から行方不明となっておる。ジェム君の通う学校の同級生や近所の人達にもどこへ行ったのかわからないそうだ。しかも、余所者さえ来なかったらしい。行方を突き止められずに済まなかった…。私はこれからブラゴなどに協力を要請する。何かあったら連絡するのじゃぞ」

 

 

 

高嶺家

 ナゾナゾ博士からの情報に清麿は極力誰にも見つからずに移動できる魔物に心当たりがあった。

 

ガッシュ「清麿、どうだったのだ?」

 

清麿「ジェムとヨポポが行方不明だ」

 

ガッシュ「なぬ!?」

 

清麿「しかも、余所者さえ来ていないのに姿を消したらしい。誰にも見つからずに長距離移動ができるのはゴームしかいない。恐らくジェムも……」

 

 そんな時、窓から白銀の髪の毛が入り、リオウ達の前に現れた何者かになった。

 

???「ヨポポは、そいつらの仲間になった」

 

清麿「何者だ!?」

 

ガッシュ「清麿、あの者はゼオンが作り出した使い魔なのだ!」

 

清麿「これは罠だろうが、ここは敢えて乗るしかない」

 

使い魔「お前達も知っていると思うが、魔界の建造物の名はファウードだ。そこにヨポポはいる。ファウード復活をかけて、リオウという魔物が力を集めている。ファウードを封印している鍵を壊すために、ヨポポは力に加わり、その力は徐々に揃いつつある。ファウードを人間界に呼び寄せた張本人、リオウは呪いをかける事ができる。呪いをかけられし者はあと四日で死ぬ。しかも、その呪いはリオウを殺しても解けず、ファウードの封印を解かねばならない。あと四日で全てが終わる」

 

 そう言って使い魔は消えてしまった。

 

ガッシュ「いよいよ来たのか…。清麿、ファウードの位置は?変わっている可能性もある」

 

清麿「それならさっき答えが出た。ファウードのある場所は……ニュージーランドだ!」

 

ガッシュ「よし、皆の者に」

 

???「ガッシュ、貴様らだけはこの場で始末してくれる!」

 

 外へ出てみると、リオウが来ていた。しかも、リスクを考慮の上でパートナーのバニキスを最初から外に出していた。

 

ガッシュ「リオウ!」

 

清麿「あいつがリオウか…。なぜ、俺達を潰す!?ガッシュの力を利用する方が効果的だろう!」

 

リオウ「バカめ、俺がシン級の呪文を持つ魔物を味方になど引き込むか。俺達の手におえない上、放っておけば俺達の脅威になるからここで潰す!」

 

バニキス「ギガノ・ファノン!」

 

 獅子のような形のエネルギー弾が発射された。

 

清麿「ザケルガ!」

 

 前の戦いのゼオンがリオウを子供扱いしたように今のガッシュの前ではリオウは子供同然であり、ザケルガたった1発でギガノ・ファノンは粉砕され、リオウに直撃した。

 

リオウ「ぐあっ!(俺のギガノ級の術が粉砕されただと!?)」

 

清麿「テオザケル!」

 

 続けて放たれるテオザケルにリオウは何もできずに直撃してしまった。

 

バニキス「(な、なんて強さだ…。リオウが全く歯が立たない……!)」

 

リオウ「バニキス、こうなったら最大呪文で一気にカタをつけろ!そうすれば倒せるはずだ!」

 

バニキス「あ、ああ。ファノン・リオウ・ディオウ!」

 

 焦ったリオウは最大呪文を放った。

 

ガッシュ「私達に対して何の考えもなく最大呪文を放ったのが運の尽きなのだ!」

 

清麿「ブレールド・ディラス・ザケルガ!」

 

 電撃の剣一閃でファノン・リオウ・ディオウは豆腐のようにスパッと斬られて粉砕された。

 

リオウ「お、俺の最大呪文が……!」

 

バニキス「(つ、強すぎる……もうダメだ…、おしまいだ…。こんな奴に勝てるわけがない……)」

 

リオウ「何をしているバニキス、早くファウードの回復液を飲んでもう一度最大呪文だ!」

 

 すぐにバニキスはファウードの回復液を飲んだ。

 

バニキス「ファノン・リオウ・ディオウ!」

 

清麿「自分の攻撃で自分がやられろ!リバース!」

 

 再びファノン・リオウ・ディオウを放ったが、今度はリバースで術の進む向きを変えられてしまい、ファノン・リオウ・ディオウはリオウの方へ向かった。

 

リオウ「バカな、俺の最大呪文を剣の一振りで跳ね返しただと!?」

 

 ガッシュとリオウの戦いをゼオンペアは見ていた。

 

ゼオン「まさか、俺のソルド・ザケルガに似た術をガッシュが覚えるとはな」

 

デュフォー「(リオウの奴、頭が悪いな。あれは剣の一振りで術を跳ね返しているのではない、敵の術を剣を振るった時に発する強力な電磁波の嵐に巻き込んで逆流させ、術の進む方向を変えているだけだ。だから、攻撃を跳ね返す防御術と違って術の威力が高すぎて跳ね返せなくても逸らしたりする事は可能だ)」

 

ゼオン「ふっ、この勝負はガッシュが勝ったな」

 

 ガッシュの勝利を確信したゼオンはデュフォーと共に瞬間移動した。リオウペアは向きを変えられたファノン・リオウ・ディオウの直撃を受けてしまった。

 

リオウ「ぐあああっ!!」

 

 リオウはまともに立てないほどボロボロになってしまい、バニキスに至っては意識を失ってしまった。

 

リオウ「ふ、ふざけるな……お前のような奴を…」

 

清麿「後は本を」

 

???「オルシド・シャロン!」

 

 突然、ガッシュと清麿は影の触手に動きを封じられてしまった。

 

清麿「新手か!」

 

ガッシュ「これはザルチムの術なのだ!」

 

 ザルチムはパートナーのラウシンと共にリオウとバニキスを抱えてゴームと共に撤退しようとしていた。

 

ラウシン「撤退するぞ、ザルチム!」

 

ザルチム「貴様ら、この場は退いてやるが、必ず叩き潰してやるからな!」

 

 リオウ達はゴームの力でワープし、撤退した。それと同時にガッシュペアの拘束も解けた。

 

ガッシュ「まさか、リオウが直接潰しにかかるとは…」

 

清麿「とにかく、みんなに連絡をしよう」

 

 

 

 

アメリカ

 その後、清麿はアポロに連絡をとっていた。

 

清麿『アポロは遅れて来るアルベールさん達を迎えに行ってくれないか?俺達の送迎はマリル王女がしてくれるそうだ』

 

アポロ「あのカルノア王国のマリル王女が?」

 

清麿『ある事件で知り合ってな。カルノア王国の性能が高い飛行機でファウードへ向かう予定だ』

 

アポロ「わかった。レイラ達は僕が連れて来るよ。先に行く清麿達も気を付けるんだ」

ロップス「かう!」

 

 

 

カルノア王国

 マリルの元へも連絡が来ていた。

 

マリル「そうか。遂にファウードへ行く時が来たのか」

 

カラオム「マリル様、既に高性能の大型輸送機と腕利きのパイロットを揃えました。いつでも日本へ出発する事は可能です」

 

マリル「よし、ガッシュ達をファウードへ送り、世界の滅亡を阻止するためにも私達も日本に向かうぞ!」

 

カラオム「はっ!直ちに出発の準備をいたします!」

 

 ファウードは対岸の火事ではないとマリルは考え、出発の時が来たために早速、日本へ向かう事にした。

 

 

 

ホテル

 ビジネスホテルでは、エルがモモンにファウードのある場所を探らせていたが、モモンは特定しようとしなかった。

 

エル「さぁ、モモン。ファウードのある場所を教えてちょうだい!」

 

 しかし、モモンは教えなかった。

 

エル「モモン、教えて」

 

 仕方なく、モモンはオーストラリアの辺りを示した。

 

エル「そこ、そこね!オーストラリアの辺りなのね!?」

 

 汗をかいたモモンは下着で汗を拭った。

 

エル「およよ、私のブラジャー!いつの間に!こら、離しなさい、モモン!」

 

 モモンと下着の取り合いになった。

 

エル「こら、いい加減にしなさい!もう、あなたって子は!」

 

 

 

 

某国

 テッドはマジョスティック12から事情を聞いていた。

 

ジード「そうか。テッド、ファウードを止めるのにチェリッシュも行くそうだ」

 

テッド「チェリッシュが!?今まで見つからなかったあいつが、俺より先にファウードを止めるために向かうのか!」

 

ジード「行くか?」

 

テッド「ああ!」

 

 

 

ニュージーランド

 リオウはファウードをニュージーランドに移動させたが、ガッシュへの伝達などを済ませたゼオンは直ちにデュフォーの力でファウードの所在地を突き止め、ニュージーランドに来た。

 

ゼオン「ふふふ。リオウ、一度デュフォーがファウードの映像を見た上、この俺はファウードの力を感じる事ができる。どこへ逃げても俺達からは逃れられんぞ」

 

 ガッシュ達は使い魔がゼオンの罠だと知りつつも行動を起こしたが、リオウはゼオンの罠に気付いていなかった。

 

 

 

 

空港

 そして次の日、マリルは空港で待っていた。

 

マリル「出発の準備はできておるから、いつでも出発できる。仲間達と共に来るのじゃ」

 

 ガッシュ達も空港に来ていた。

 

ガッシュ「ティオ達も来ておるのだ!」

 

清麿「みんな、来てくれたか!」

 

恵「当然じゃない。大好きな清麿君と一緒ならどんなに危険な所だって怖くないわ!」

 

清麿「俺も恵さんがいれば常に100%以上の力が出せるよ」

 

 早速、恵は清麿と手を繋いだ。

 

しおり「清麿君と恵は愛の炎に燃えてるわねえ」

 

ティオ「私達も負けてられないわ」

 

コルル「パティやチェリッシュも来てくれて嬉しいよ」

 

パティ「当然じゃない!」

 

チェリッシュ「あんな巨大な魔物を放っておけるわけがないしね」

 

ウマゴン「メルメルメ~!」

 

清麿「空いたペットボトルは持ってきたか?俺は6本持ってきた」

 

恵「私は4本よ」

 

しおり「3本」

 

ウルル「私は25本持ってきました」

 

清麿「(25本…?やけに多いな。まぁ、パティは大食いだからたくさんジュースを飲んでいても違和感はないのだが…)」

 

ニコル「私は7本よ」

 

サンビーム「私は5本持ってきた。後はフォルゴレ達の到着を待つだけか」

 

ニコル「そのようね」

 

 日本に滞在している魔物達はこれで全員集まった。世界の命運をかけた戦いが今、始まろうとしているのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回はゼオンが送った使い魔により、ガッシュ達はジェムが呪いをかけられてしまったせいでヨポポがリオウ側についた事を知る話ですが、今小説のウォンレイは最初から味方にするため、誰を原作のファウード編のウォンレイの代役にしようか考えた所、ヨポポが最適だと考えてヨポポを原作のウォンレイの代役にしました。
ゼオンがメッセージを伝えてからのリオウとの戦いは原作のゼオンvsリオウの時のようにあまりにも圧倒的な差でガッシュが勝利するという内容にしました。
次の話はウォンレイペアとキャンチョメペアが空港に到着し、一同がニュージーランドに行ってからいよいよファウードへ突入します。


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LEVEL56 ファウード突入

空港

 ガッシュ達は空港に着いた後、マリル王女と会っていた。

 

恵「マリル王女、お忙しい中、私達を送迎を引き受けてくれてありがとうございます」

 

マリル「ファウードの問題は既に対岸の火事ではない。ファウードが動き出せばいずれはカルノア王国も滅ぼされてしまう。カルノア王国を、そして世界を守るためにそなた達に力を貸す事は王女として、人として当然の事であろう」

 

ガッシュ「頼もしいのだ、マリル殿!」

 

カラオム「それで、ファウードの場所はどこにあるのですか?」

 

清麿「一応、俺の力で場所は突き止めています。場所は……ここです!」

 

 地図を広げて清麿が指差したのは前の戦いでモモンが教えてくれた場所と同じだった。

 

マリル「ここにファウードがあるのだな」

 

清麿「しかも、ファウードは外から見えなくする装置によって目視ができない。それ故、気配を感じる力が強い魔物が必要で、俺達はその魔物を発見したのですが……」

 

カラオム「何か問題でも?」

 

ティオ「それが、モモンは臆病で同行を嫌がっているの。今、コルル達がファウードの位置を知らないふりをしてモモンにファウードの位置を教えて一緒に来るように説得しているわ」

 

 別の部屋ではコルル達がモモンを説得していた。

 

パティ「このエロ猿が、とっととファウードの位置を教えて私達と一緒に来なさいよ!!」

 

 パンツを見られた事もあってパティはモモンをボコボコにしていた。

 

コルル「やり過ぎだよ、パティ…」

 

チェリッシュ「その通りよ。それぐらいにしなさい」

 

しおり「ウルルさん、ニコルさん、こんな調子でファウードでの戦いは大丈夫なのでしょうか?」

 

ウルル「パティがあんなのはいつもの事ですよ…」

 

ニコル「モモンは全然説得に応じそうにないわね」

 

エル「皆さん、モモンが力を貸そうとせずに大変申し訳ありません!」

 

サンビーム「出発はいつになるんだ?」

 

ウルル「ウォンレイとリィエン、フォルゴレとキャンチョメが来てからだそうです」

 

 そう言っていると、2機の飛行機が到着し、キャンチョメペアとウォンレイペアが来た。

 

清麿「フォルゴレ、キャンチョメ!」

 

恵「リィエン、ウォンレイ!来てくれたのね!」

 

リィエン「世界の危機を見過ごせないある!」

 

清麿「リィエンは元気か?」

 

ウォンレイ「言われるまでもなく、リィエンは元気だ」

 

ティオ「キャンチョメ、あの時ツボを押してもらって少しは強くなったの?」

 

キャンチョメ「ふっ、デボロ遺跡での僕だと思ったら大間違いだ!僕は強くなったんだぞ!」

 

ティオ「(何?今までのキャンチョメと少し違う…。今までのキャンチョメはただ強がっていただけなのに、今は変わってなさそうに見えるけど、確かな自信を持っている…)」

 

フォルゴレ「ティオ、キャンチョメが変わった事が気になるのかい?」

 

ティオ「何だか、少し今までと違って…」

 

フォルゴレ「キャンチョメは猛特訓を重ねて強くなった。そして、新しい呪文を3つも覚えたんだ」

 

ティオ「3つも!?」

 

ウォンレイ「凄いな…、こんな短期間に3つも覚えるとは…」

 

キャンチョメ「それも、今までの奴じゃないんだぞ。見れば驚く呪文ばかりだ!」

 

ガッシュ「キャンチョメ、早速なのだが、怖いのをよく知っておるお主に説得を頼みたい者がおるのだ」

 

キャンチョメ「説得してほしい者…?」

 

 ガッシュ達はキャンチョメをモモンがいる場所へ案内した。

 

パティ「早くファウードがある場所を言いなさいよ!!」

 

 モモンが本当の場所を言わないため、パティから制裁を受けていた。

 

ガッシュ「モモンにファウードの位置を教えるように説得してほしいのだ。怖いのを誰よりも知っておるお主ならできるであろう」

 

キャンチョメ「あの猿みたいな魔物がモモンだね。わかった、やってみるよ」

 

 キャンチョメはモモンの説得を行った。

 

キャンチョメ「モモン、正直にファウードの位置を言うんだ!」

 

 しかし、モモンは聞いてなかった。ガッシュはキャンチョメの声が聞こえるようにモモンの耳を上げた。

 

キャンチョメ「ファウードの位置がわかるのは君だけなんだ!もし、ファウードが動き出してしまったら大切な人達も、お気に入りの場所も、全て吹っ飛ばされてしまうんだよ!君が怖いというのは同じ臆病な僕にもよくわかるよ!でも、僕や他のみんなだって本当は怖いと思っているんだ!それでも、守りたい人達を守るためにここに来たんだよ!さぁ、モモン、ファウードの位置を教えてくれ!」

 

 自分の気持ちをわかった上で頼むキャンチョメにモモンは親しみを感じたのか、怯えながらもファウードの位置を教えた。

 

エル「どうやら、本当の事を言っているわ」

 

コルル「モモンも一緒に行くよ」

 

 一緒に来いというのにモモンは逃げようとした。

 

キャンチョメ「モモン、さっきも言ったけど、怖い気持ちは僕には嫌というほどわかるよ。僕達がついてるから、一緒に行こう!」

 

 少し怖がりながらも、モモンはついて行く事にした。

 

チェリッシュ「ようやく出発の準備は整ったわね」

 

 そこへ、マリルらが来た。

 

マリル「私はそなた達をファウードへ連れて行くカルノア王国の王女、マリル・カルノアである」

 

フォルゴレ「マリル王女!?あの、マリル王女が!」

 

マリル「これからの旅は命を落とすかも知れぬ危険なものになると私は思っておる。それでもそなた達はファウードへ行く心の準備はできておるか?」

 

 やや震えてるモモン以外は無言且つ、強い視線でマリルを見つめていた。

 

カラオム「どうやら、約1名を除いて心の準備はできているようです」

 

マリル「よかろう。直ちに乗り込むのだ!」

 

 

 

 

某国

 アポロはアルベールらと連絡をとっていた。

 

アルベール「悪い、休暇をとれるのは2日後になりそうなんだ」

 

アポロ『わかった、2日後に来るよ』

 

 その後、アポロは電話を切った。

 

レイラ「私達は遅れそうね」

 

アルベール「だが、遅れるからには着いた後でもっと頑張らないとな!」

 

 

 

飛行機

 前の戦いの時と違い、ファウードの詳細を早い段階で知ったため、モモンペア以外の意志は固かった。

 

エル「私はまだ怖いのに他のみんなはとても勇敢すぎますわ……」

 

 エルもモモンと一緒に震えていた。

 

サンビーム「私や他のみんなだって本当は怖いさ。でも、私達が行かなければならない」

 

ウマゴン「メル……」

 

ガッシュ「いよいよなのだ…」

 

ティオ「ガッシュ、ファウードでの戦いが待っているのに私、ちょっと怖いの。隣に座っていい?」

 

ガッシュ「ウヌ?」

 

パティ「ちょっと、隣は私よ!勝手に座らないで!」

 

ティオ「だまらっしゃい!」

 

 さっきまで少し怯えていたティオはパティとの喧嘩でいつもの調子に戻ってしまった。

 

コルル「また始まっちゃった…」

 

ウルル「こんな時もですか…」

 

清麿「恵さんは?」

 

恵「流石に私もティオと同じで少し怖いわ…」

 

清麿「怖いのは俺も同じだ。あんな化け物が動き回ったりするのを想像しただけで恐ろしく思う…。でも、俺達には心から信じあえる仲間がいる。俺達は1人じゃないんだ」

 

恵「そうね。大好きな清麿君がいれば勇気が出てくるわ」

 

 恵は隣に座っている清麿と手を繋いだ。

 

リィエン「清麿と恵、本格的に恋人同士になったみたいある」

 

しおり「その通りよ。少し前に恵は清麿君との交際を公に明かしたの」

 

リィエン「そうだったあるか」

 

チェリッシュ「この戦いは今までとは比にならないとてつもない戦いになりそうね…」

 

ウォンレイ「全ての者を守れる王になるために、この人間界を守ってみせる!」

 

ニコル「これからの予定はどうなんですか?」

 

カラオム「今日は準備などの都合でニュージーランドのホテルで一夜過ごし、早朝に高性能の飛行機でファウードへ向かう予定です」

 

チェリッシュ「何だか、今夜は眠れない夜になりそうね…」

 

 

 

 

某国

 同じ頃、ナゾナゾ博士は協力してくれる魔物を探していた。

 

ナゾナゾ博士「では、協力してくれるというのだね?」

 

バリー「勿論だ。ファウードなんかがあったら王を決める戦いどころじゃないからな」

 

ナゾナゾ博士「ガッシュ君との決着はどうしたのかね?」

 

バリー「あいつとの決着よりもファウードを止めるのが先だ。それが終わればいつでも決着は着けられる」

 

 

 

ホテル

 その晩はファウードから一番近いホテルで宿泊する事となり、作戦を立てていた。

 

マリル「清麿よ、どのようにしてファウードへ乗り込む?」

 

清麿「何の準備もなく乗り込んでも敵の待ち伏せにあって全滅する可能性もある。まず、飛行機でファウードの上に接近し、それからウマゴンのゴウ・シュドルクでサンビームさんとキャンチョメ、フォルゴレ、モモン、エルさんを乗せて囮として先に降り、敵の注意を引きつけた後で残りのメンバーが降下してファウードに乗り込む。俺達を降ろした後、飛行機は直ちにその場から離れる。これが、俺の考えた突入作戦だ」

 

ティオ「でも、キャンチョメを先に乗り込ませて大丈夫なの?」

 

キャンチョメ「何を言ってるんだ、僕は強くなったんだぞ!」

 

パティ「あの自信なら、キャンチョメは本当に強くなったようだけど、問題はあのエロ猿よ。ろくな事しかできない術ばかりだから大した戦力にならないじゃない」

 

コルル「でも、モモンの術もキャンチョメの術のように使い方次第だと凄い術も多いよ」

 

ウルル「敵の動きを遅くしたり、地中に潜ったりできるので、サポートとしてなら優秀だと思いますよ」

 

パティ「どんなに凄い術を持ってても肝心のエロ猿があんな調子じゃ宛てにならないわよ。デボロ遺跡の時のキャンチョメの方がマシだわ」

 

エル「すみません!モモンが臆病でなければ皆さんの期待に応える事ができるというのに…!」

 

サンビーム「モモンの臆病は相当深刻なようだな…。千年前の魔物との戦いと違って今回はあまり猶予もない。モモンに少々無理をさせてでも臆病を克服しなければならない」

 

恵「清麿君、今日の作戦会議はこれで終わりにする?」

 

清麿「ああ。各自、十分な休養をとり、次の日から始まる戦いに備えるんだ」

 

 その後、自由時間となった。

 

ガッシュ「フォルゴレはカバさんが一番好きだと言ったのか?」

 

キャンチョメ「そうなんだ。ライオンの方がかっこいいのに…」

 

コルル「でも、フォルゴレは親しみやすいからある意味カバさんっぽいと思うよ。だから、カバさんが好きじゃないかな?」

 

パティ「あり得るわよ。かっこいいライオンよりも親しみやすいカバさんみたいだから女の人が寄ってたかるのよ」

 

ウマゴン「メルメル」

 

キャンチョメ「だけど、かっこいいフォルゴレはライオンの方が似合うんだ」

 

ティオ「似合わないわよ。寧ろ、性格とかも考えればカバさんの方がお似合いって感じよ」

 

キャンチョメ「でも…」

 

 ガッシュ達の中の年長者のウォンレイとチェリッシュはパートナーと共に夜空を眺めていた。

 

リィエン「確か、清麿の話ではジェムが呪いをかけられてしまったせいでヨポポはリオウの仲間になってしまったあるね?」

 

ウォンレイ「そうだが…」

 

リィエン「…もし、ウォンレイは私が呪いをかけられてしまったらヨポポと同じ事をするあるか?」

 

ウォンレイ「……多分、同じ事をすると思う…」

 

チェリッシュ「私達魔物にとってパートナーはかけがえのない存在だから、そう考えてしまうのもわかるわ」

 

ニコル「私達が呪いをかけられなかったのは本当に時の運によるものだったのかも知れないわね…」

 

チェリッシュ「もしもの事を考える事よりも、今はゆっくり休んで坊や達と一緒に明日の戦いに備えましょう」

 

ウォンレイ「そうだな…」

 

 前の戦いでは実際にリィエンとニコルは呪いをかけられたが、今回はかけられなかった。しかし、時の運で自分達もかけられる可能性はあったのではないかとは思っていたのであった。それから、一同は2人部屋で寝ている清麿と恵、ウォンレイペア、モモンペアを覗き、一同は男女に分かれて寝た。

 

恵「マリル王女、私達を一緒の部屋で寝せてあげるなんて気を利かせているわね」

 

清麿「お、俺も恵さんと一緒に寝る事ができて嬉しいよ」

 

恵「清麿君と一緒なら、世界の命運がかかっている戦いが明日でも安眠できるわ。おやすみ、清麿君」

 

清麿「恵さんもおやすみ」

 

 次の戦いに備え、2人は寝たのであった。

 

 

 

 

飛行機

 翌日の太陽が昇る前の早朝、ガッシュ達はファウードへ乗り込むための高性能輸送機に乗り込んでいた。

 

清麿「これが俺達が乗り込む飛行機か」

 

マリル「これは我が国が開発したものでな、急加速などの機能も備えておる。いざとなれば、それを使ってそなた達を降ろした後にすぐにファウードから離れようぞ」

 

カラオム「マリル王女まで乗り込むのは…」

 

マリル「私はこれまで危険な目に遭ってきた。自分だけ安全な所におるのは性に合わんのでのう…」

 

恵「操縦士さん、私達の送迎をお願いします」

 

パイロット「わかりました。マリル王女の命により、必ずや我々がファウードへお送りいたします」

 

 一同は全員乗り込んだ。

 

ティオ「遂にこの日がやってきたわね…」

 

パティ「流石に緊張するわ…」

 

キャンチョメ「でも、僕達がやらなきゃ誰がやるんだ!?」

 

ウマゴン「メルメル!」

 

チェリッシュ「私達はこの戦いに負けるわけにはいかない!」

 

ウォンレイ「世界や人々を守るためにも!」

 

ガッシュ「皆の者、ファウードへ出発なのだ!」

 

 飛行機はファウードへ飛び立った。

 

 

 

ニュージーランド

 その頃、ゼオンペアも動き出していた。

 

ゼオン「ガッシュ達が動き出したようだ」

 

デュフォー「俺達はどうする?」

 

ゼオン「俺達はまだ出しゃばる段階ではない。あいつらに大暴れしてもらわないとな…。ふふふ、ガッシュ、すぐにでも消したくなるぐらい憎たらしいが、もっと俺の役に立ってもらうぞ…」

 

 

 

ファウード

 一方、リオウはザルチムからある報告を聞いていた。

 

リオウ「何だと?どういう事だ?ザルチム」

 

ザルチム「ヒヒヒッ、言った通りだぜ。感じられるだけで12体、この国に俺達以外の魔物が来ている。まずはファウードの間近に迫ってきているのが9体、それから少し離れた所に1体、また、その反対の位置に1体、それよりも離れた所にも1体いるぜ」

 

 

 

 

ニュージーランド

 ザルチムの言っていたもっと離れた所にいる魔物はカルディオだった。

 

サウザー「カルディオ、どうだ?」

 

カルディオ「パルパルモーン」

 

サウザー「そうか。やはり、あの馬の魔物の匂いか。こんな所で会えるとは…ここで修行をしててラッキーだったな。追うぞ、カルディオ。今度こそ、奴と決着を着ける!」

 

カルディオ「パルパルモーン!」

 

 カルディオは降りた。

 

 

 

ファウード

 ガッシュ達がファウードに来ている事にリオウは苛立っていた。

 

リオウ「くそう、ファウードの復活まであと2日と迫ったこの時になぜ12体もの魔物がここへやってくる?偶然にしては」

 

ザルチム「お前もそう思ったか?リオウ。誰だか知らんが、俺達の動きを見張ってる奴がいるんだよ。きっと、そいつが情報を流し、魔物をここに集めている。前に俺達にシン級の呪文を持つ魔物、ガッシュや竜族の神童などの情報を提供した奴と何か関わりがあるかも知れんぞ」

 

リオウ「ここに集めた魔物の中に裏切者が?」

 

ザルチム「それも考えられるが、俺の目で見る限りここの連中はおかしな動きはしていないな。ファウードに来たのに未だに協力しようとしない奴でさえ誰かを待っているようにおとなしくしている。我々以外で外から見ている者、もしくは、我々の仲間で俺の目を欺き、動ける者。どちらにしても単なるハエじゃねえ。気をつけな」

 

リオウ「(あの俺でも全く手におえないガッシュが仲間と共に迫っているのか…!)…こうなれば、奴等を迎え撃つ。ブザライ、キース、ファンゴ、ジェデュン、ギャロン、ロデュウ!」

 

???「呼んだか?」

 

 すぐに呼んだキース達は来た。

 

リオウ「お前達、暴れたかったはずだな。間近に9体、魔物が迫ってきている。そいつらの始末をしてこい!」

 

キース「珍しいな、お前が我々を外に出すとは。俺達の力が一つでも欠ければまずいんじゃないか?」

 

リオウ「お前達は全員戦闘慣れしているからな。この中に戦闘慣れしていない奴などいない」

 

ザルチム「だが、やられそうになったらすぐに逃げろ。気配の大きさから推測したが、

ガッシュとその仲間達はお前達の予想以上に強いぞ」

 

ジェデュン「ヤンコヤンコ!」

 

ファンゴ「ちょうどいい運動にはなりそうだぜ」

 

ギャロン「どんな奴でも、戦うまで」

 

ロデュウ「それじゃあ、行くぜ」

 

 キース達はガッシュ達の迎撃の準備に向かった。

 

リオウ「ガッシュめ…、ここをお前達の墓場にしてやる…!」

 

 

 

 

飛行機

 ファウードへ向かう飛行機の計器に異常が出ていた。

 

カラオム「どうなっておる?」

 

パイロット「高度計、速度計、方位計、全てが異常を示しています。まるで、雷雲の中に入ったような感じですよ」

 

マリル「見えないようだが、何か仕掛けでもあるようじゃ…。清麿達と話をしてくる」

 

 マリルは清麿達と話をした。

 

清麿「この辺りにファウードがあるんだな?」

 

マリル「計器が異常を示しておった。恐らく、この辺りにある。それに…モモンの怯えようやガッシュ達の様子もそれを証明しておる」

 

 その通り、モモンは怯え、

 

ガッシュ「私も感じるのだ…、ファウードの異様な気配を…」

 

 前の戦いでのデュフォーの特訓により、魔物の気配を探れるガッシュは再びファウードの異様な気配を感じ取って気を引き締め、他の仲間も突入のための心構えをしていた。

 

チェリッシュ「モモンや坊やほど私は敏感じゃないけど…確かにファウードの気配を感じるわ…」

 

ウォンレイ「今まで感じた事もない気配だ…」

 

清麿「ガッシュ、顔を外へ」

 

ガッシュ「ウヌ」

 

清麿「ザケル!」

 

 一旦、飛行機のドアを開けてからザケルを放った。すると、ファウードが見えるようになった。

 

ガッシュ「(ファウード…ここへ来るのは久しぶりなのだ…)」

 

清麿「マリル王女、昨日の作戦通りに飛行機をファウードの上に!」

 

マリル「わかった」

 

 事前に清麿はガッシュから前の戦いではどうやってファウードに侵入したかを聞いたため、今回は前の戦いの自分が考えた侵入作戦にいくつかの修正を加え、先に3体を囮も兼ねてファウードに降ろし、残りのメンバーはその後に降下するという作戦にしたのであった。

 

パイロット「計器が正常に戻りました」

 

カラオム「どうやら、ファウードの上空には結界がないようです」

 

マリル「清麿の言った通りであったな」

 

清麿「よし、サンビームさん達は先に降下をお願いします!」

 

サンビーム「わかった。ゴウ・シュドルク!」

 

 ウマゴンにサンビーム、フォルゴレペア、モモンペアが乗った。

 

しおり「重量の方は大丈夫なの?」

 

サンビーム「重量の方は問題ない。4、5人分乗れるように特訓した結果、ゴウ・シュドルクで空中浮遊が可能になった。これなら、敵の空中への攻撃にも対応できる」

 

ガッシュ「ウマゴン、キャンチョメ達の命はお主に預けたのだ!」

 

ウマゴン「メルメル!」

 

モモン「キキッ…」

 

エル「モモン、怯えてはいけません!」

 

キャンチョメ「それじゃあ、先に行くよ!」

 

 ウマゴンは5人を乗せて飛行機を降りた。

 

 

 

 

ファウード

 そのウマゴンの動きはファンゴたちも目撃していた。

 

ロデュウ「あいつら、馬とそいつに乗っている奴等しか来てねえぞ」

 

キース「リオウの話では全部で9体だそうだが、せいぜい3体程度しかいない」

 

ファンゴ「敵は俺達が待ち伏せしているのを知ってるだろうな」

 

ギャロン「ならば、挨拶でもするか?」

 

ジェデュン「ヤンコヤンコ!」

 

 キース達のパートナーも来た。

 

ベルン「行くか?」

 

カーズ「そうするわ。ガズロン!」

 

 鎖斧がウマゴンに迫った。

 

サンビーム「ウマゴン!」

 

 すかさずウマゴンはよけ、無事に着地した。

 

フォルゴレ「やっと着地した…」

 

サンビーム「気を抜くのはまだ早い!私達は敵の注意を引きつけ、清麿達の降下を邪魔されないようにするんだ!」

 

 そう言っていると、ファンゴ、ロデュウ、ジェデュン、ギャロンが来た。

 

ギャロン「ようこそ、ファウードへ」

 

ロデュウ「てめえら、ぶっ潰してやるから覚悟しな!」

 

ジェデュン「ヤンコヤンコ!」

 

 ファンゴたちは襲い掛かった。

 

サンビーム「ウマゴン!」

 

 ウマゴンは彼等から逃げた。

 

 

 

飛行機

 その頃、清麿達は降下の準備を始めていた。

 

恵「いよいよね…」

 

清麿「みんな、準備はいいか!?」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

恵「勿論よ!」

 

ティオ「バッチリよ!」

 

しおり「いいわ!」

 

コルル「大丈夫よ!」

 

ウルル「こっちもです!」

 

パティ「いつでもいいわ!」

 

リィエン「オッケーある!」

 

ウォンレイ「勿論だ」

 

ニコル「万全よ」

 

チェリッシュ「いいわよ!」

 

マリル「では、降下開始!」

 

 ガッシュ達はファウードへ降下した。今回はあらかじめ敵の注意を先に降りたウマゴン達に引きつけておき、降下を邪魔されないようにしたため、無事に降下に成功した。

 

カラオム「ではマリル様、我々は直ちにこの場を離れますぞ」

 

マリル「(皆の者、絶対に生きて帰るのじゃぞ…!)」

 

 マリルらが乗った飛行機はその場を直ちに離脱した。

 

 

 

ファウード

 前の戦いの時と違い、邪魔されることなくガッシュ達は降下できた。

 

コルル「何とかファウードに乗り込めたね」

 

チェリッシュ「安心するのはまだ早いわ。ここからが本番よ」

 

恵「先に降りたサンビームさん達とも合流しないと」

 

ガッシュ「皆の者、敵が来たようなのだ!」

 

 その予測通り、ファンゴ達とそのパートナー達が来た。

 

ファンゴ「お前達、なかなか手の込んだ侵入を考えたな。さっき、降りた馬達は囮で俺達の注意を引きつけ、その間にお前達が降下する。そういう作戦だったんだろ?」

 

清麿「よくわかったな」

 

ギャロン「俺達には居場所を正確に探知できる奴がいるんでな」

 

ロデュウ「てめえらの総人数が9体だというのもわかってる」

 

パティ「あ~~っ、ガッシュちゃんの偽者め!こんな所で会うなんて思ってなかったわ!」

 

ファンゴ「俺がガッシュに似てるのは元からだ!そんな事もわからないのか!?このもののけ女が!」

 

しおり「ウルルさん、パティはあの赤い魔物と面識があるの?」

 

ウルル「はい。私と会う前にお互いにパートナーが見つかっていない状態で会った事があるそうで…」

 

パティ「ここで会ったが100年目、決着を着けてあげるわ!」

 

ファンゴ「それはこっちも同じだ!」

 

清麿「おい、パティは7歳だろ?」

 

パティ「そんな細かい事はどうでもいいの!」

 

ロデュウ「つまらん漫才はここまでだ。とっとと行くぞ!」

 

 ファンゴ達は襲い掛かってきた。

 

ガッシュ「私達も行くぞ!」

 

一同「おう(ええ)!!」

 

 ガッシュ達も向かっていった。ファウードでの戦いの火ぶたが切って落とされた。




これで今回の話は終わりです。
今回はファウード突入を描きました。
感想のサイトでもあったのですが、原作の清麿が考えた突入作戦は無謀だったため、今小説の清麿が考えた作戦はウマゴン達を囮にして先に降下させ、後でガッシュ達が降下するという原作よりも安全な降下作戦にしました。
原作で突入時に刺客としてガッシュ達を襲ったのはブザライとキースでしたが、今小説ではファンゴやロデュウ、ジェデュン、ギャロンも加えました。
次はファンゴ達との戦いになります。



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LEVEL57 立ち上がれ、モモン!

ファウード

 囮も兼ねて先に降下し、ファンゴ達の注意を引きつけていたサンビーム達だが、ファンゴ達が追ってこない事に気付いた。

 

エル「敵が追ってきませんね…」

 

サンビーム「恐らく、清麿達が来た事に気付いたのだろう」

 

キャンチョメ「あれっ?歌声が聞こえてくるよ」

 

 歌声がする方にはキースがいた。

 

キース「ウェーヘン、ヒョーンフェン、ヒョンロンペンチョン、フェンヨンペンチャン、ピョ~~ロフッ!」

 

ウマゴン「メル……」

 

サンビーム「歌っているみたいだが……」

 

キャンチョメ「この曲、ベートーベンの曲じゃない?」

 

フォルゴレ「確かにそうだ」

 

エル「でも、歌詞が……」

 

キース「コラぁっ!誰か突っ込めよ!!」

 

フォルゴレ「そ、そんな事言われても……」

 

キース「ふん、もっと突っ込みのセンスがある奴に来てほしかったな。後で降下した連中の方が突っ込んでくれるはずだ!」

 

 そう言ってキースは腕を伸ばした。

 

サンビーム「腕が…」

 

エル「伸びましたわ!」

 

ベルン「アクション!」

 

 近くの岩を握って固定した後、キースはスプリング状の腕の反動を利用して突撃し、フォルゴレにタックルした。

 

サンビーム「フォルゴレ!」

 

 それから、カーズとブザライも来た。

 

カーズ「こいつら、大した事なさそうね。3体とも片付けてから残りの連中を始末しましょう」

 

キャンチョメ「ふざけるな!僕達やフォルゴレだって強いんだぞ!」

 

 鉄のフォルゴレを歌い出した途端、フォルゴレは復活した。

 

キース「おのれ、負けるか!」

 

 キースも負けじとベートーベンの交響曲第9番、歓喜の替え歌を歌った。

 

サンビーム「互いに歌で戦っているようだ…」

 

エル「どうなるのでしょうか…?」

 

キース「おのれ!お前達も少しは突っ込めよ!」

 

カーズ「歌はそれぐらいにして、さっさとあの雑魚を蹴散らすわよ!」

 

キャンチョメ「何を言うか!僕達を舐めていたら痛い目に遭うぞ!」

 

ウマゴン「メルメル!」

 

キース「どうやら、奴等は本気のようだな。1体を除いて」

 

 その1体とは、モモンの事であった。モモンは戦いに怯えて逃げ出そうとしたが、エルに腕を掴まれた。

 

エル「モモン、逃げてはいけません!もうここへ来てしまった以上、戦う以外に道はないのです!」

 

サンビーム「エルはモモンを説得して戦うように頼んでくれ。私達でどこまで戦えるかわからないが、やってみる」

 

キャンチョメ「行くよ、ウマゴン!」

 

ウマゴン「メルメルメ!」

 

サンビーム「ディオエムル・シュドルク!」

 

フォルゴレ「ディマ・ブルク!」

 

 ウマゴンは炎の鎧を纏って敵に向かい、キャンチョメの分身たちも向かっていった。

 

カーズ「キースはどっちをやる?」

 

キース「私は馬の方をやる。だから、アヒルは任せるぞ」

 

ベルン「だが、まずいと思ったらすぐにコンビネーションだ」

 

カーズ「ええ。ゴウ・ガズルク!」

 

 ブザライは斧を装備して襲い掛かったが、キャンチョメの分身のコンビネーションには押され気味だした。

 

キャンチョメ「へへーんだ!僕達を倒したかったら最大呪文を撃ってみろ!」

 

カーズ「ええい、こうなったら!」

 

ベルン「落ち着け!あのアヒルが最大呪文を撃ってみろとか何かの罠かも知れんぞ」

 

フォルゴレ「(やはり、敵に最大呪文を撃たせてフォウ・スプポルクで発動を止め、ミリアラル・ポルクでその最大呪文を返すというのはそう簡単にはいかないか…)」

 

 一方のウマゴンとキースは割と互角だった。

 

ベルン「アム・ガルギニス!」

 

サンビーム「ウマゴン!」

 

 キースの攻撃をウマゴンはかわした。

 

キース「ちょこまかと!」

 

 今度はウマゴンはキースの周囲を回り始めた。

 

キース「ベルン、あの馬が私の周りをうろちょろしてるのが気に食わん!とっとと仕留めろ!」

 

ベルン「ガンズ・ギニス!」

 

 小回りの利く術でキースは応戦したが、当たらなかった。

 

キース「おのれ!こうなったら、私も奴を追うぞ!」

 

ベルン「ゴウ・ガルギニス!」

 

 今度は高速回転してウマゴンとぶつかろうとしていた。

 

サンビーム「ならば、こっちも突撃だ!」

 

ウマゴン「メル!」

 

 ウマゴンとキースはぶつかり合った後、距離をとった。

 

ベルン「ギガノ・ギニス!」

 

ウマゴン「メル!」

 

 光線と炎はぶつかり合い、相殺された。

 

キース「意外とやるな、馬」

 

サンビーム「ウマゴンを舐めるなよ」

 

 

 

 その頃、ガッシュ達はファンゴ達と戦いを繰り広げていた。前の戦いではファウードでの戦いにおいて、初めはパートナー等の事情でウォンレイとチェリッシュは敵だったが、今回は互いのパートナーは呪いをかけられておらず、最初からガッシュ達の頼もしい味方だった。

 

ウォンレイ「鎧の魔物よ、貴様の相手はこの私だ!」

 

ギャロン「よかろう。お前は強敵のようだな。ジェット、行くぞ!」

 

ジェット「ああ。アム・バスカルグ!レイ・バスカルグ!」

 

 一気にギャロンは足と腕を強化した。

 

リィエン「レドルク!」

 

 ウォンレイも足を強化し、互いに一気に迫ったが、ウォンレイの方が素早く動き、攻撃できた。そして、互いに格闘戦になった。

 

チータ「ガンズ・ラギュウル!」

 

 ロデュウの攻撃をチェリッシュはサーカスで培われた華麗なるステップでかわしていた。

 

チェリッシュ「ニコル!」

 

ニコル「ガンズ・ゴウ・コファル!」

 

 ステップに組み合わせてガンズ・ゴウ・コファルを放ち、ロデュウに当てた。

 

ロデュウ「ちっ、妙な動きをしやがって!」

 

ティオ「凄い…、サーカスの舞台で芸をしているみたい…」

 

チェリッシュ「ティオ、私の動きに見とれていないでサポートをお願い!」

 

ティオ「え、ええ!」

 

ニコル「ギガノ・コファル!」

 

 空中にいるロデュウ目掛けて宝石を放った。

 

ロデュウ「そんな攻撃ぐらい簡単にかわ」

 

恵「ギガ・ラ・セウシル!」

 

 ギガノ・コファルをロデュウはよけようとしたが、ティオのギガ・ラ・セウシルが張られてしまい、宝石が跳ね返りまくってかわす事ができずにまともに受けてしまった。

 

チータ「(やるわね、ロデュウが避けられないようにあのバリアを反射板として使うなんて…)」

 

 ガッシュ、パティ、コルルはジェデュン、ファンゴと対峙していた。

 

しおり「ゼルク!」

 

 コルルはジェデュンに向かっていき、爪で斬りつけたが、ジェデュンには傷をつける事ができなかった。

 

コルル「かなり頑丈だ…!」

 

ルン「当然よ。この程度の攻撃でジェデュンはやられたりしないわ」

 

 パティはファンゴと水と炎の戦いを繰り広げていた。

 

ウルル「テオアクル!」

 

アドラー「ガデュウセン!」

 

 水と炎がぶつかったが、相殺された。

 

ファンゴ「ちっ、生意気な女だ!」

 

パティ「これははどうかしら?」

 

ウルル「オルダ・アクロン!」

 

ファンゴ「鞭なら、こっちも鞭だ!」

 

アドラー「ロンド・ガデュウ!」

 

 水の鞭と炎の鞭がぶつかり合ったため、凄まじい水蒸気が発生した。

 

ウルル「アクロウク!」

 

 今度はパティが水の爪を装備して来たため、慌ててファンゴは避けた。

 

ファンゴ「くそっ、なんて変則的な攻撃ばかりだ!」

 

パティ「私の水は自由自在なのよ!それに比べ、ガッシュちゃんの偽者はただ、火炎放射をぶっ放す事しか能がないのかしら?」

 

ファンゴ「だから、俺をガッシュの偽者と言うんじゃねえ!連携だ、ジェデュン!」

 

ジェデュン「ヤンコ~!」

 

ルン「グノビオン!」

 

アドラー「ロンド・ガデュウ!」

 

 炎と蛇が合わさり、炎のヘビとなってガッシュ達に襲い掛かった。

 

ガッシュ「ふんっ!」

 

 しかし、ガッシュはマントであっさり防いだ。

 

ファンゴ「何だ!?あのマントは!」

 

パティ「今度は私達も同じような連携で行くわよ!」

 

ウルル「オルダ・スオウ・ギアクル!」

 

清麿「ザグルゼム!ザケル!」

 

 水の龍は電撃を吸収し、パティの操作でファンゴとジェデュンの背後に迫った。

 

ファンゴ「ふん、水など炎で一気に蒸発させてやる!」

 

アドラー「カービング・ガデュウ!」

 

 炎と電撃を吸収した水の龍がぶつかり合ったが、水の龍は蒸発するどころか大爆発を起こし、爆発に近かったファンゴとジェデュンは吹っ飛ばされた

 

ジェデュン「ヤンコ~~!」

 

しおり「ディゴウ・ガル・ゼルセン」

 

 回転ロケットパンチでさらに吹っ飛ばされた。

 

ファンゴ「ぐあああっ!なぜ、炎をぶつけたら水が爆発したんだ…?」

 

しおり「清麿君の作戦、見事に嵌ったわね!」

 

清麿「あいつら、水の電気分解と水素爆発を知らんようだ」

 

パティ「どうかしら?ガッシュちゃんの偽者。私達の連携の凄さは」

 

ファンゴ「だから、俺をガッシュの偽者と言うな!!」

 

ガッシュ「(言われてみればファンゴと私は親戚でもないのに顔が似ておるのう……)」

 

清麿「(パティがガッシュの偽者だと思い込んでも不思議ではないな……)」

 

 

 

 

 一方、ウマゴン達の戦いは一進一退の戦いとなっていた。キースとブザライは最大呪文で決めたいと思っているものの、キャンチョメの言葉が気になって出したくても出せなかった。

 

キース「やるではないか、馬。だが、ディオガ級の術を温存しているぞ!」

 

サンビーム「(あのキースという魔物、かなり強い上にタフだ…。できれば、ディオウ・エムリオ・シュドルクは使いたくないが…、場合によってはやむを得ないか…)」

 

カーズ「ギガノ・ガズロン!」

 

 巨大な斧がついたコマをキャンチョメの分身たちは受け止めた。

 

カーズ「あのチビ、ちょろちょろと……!でも、敵に最大呪文を使えと言われて迂闊に使えば何が起こるのかわからないから腹立たしいわ!!」

 

 カーズと同じく、ブザライも苛立っていた。

 

フォルゴレ「ギガノ級の術ではダメだ!早くディオガ級の術を……!」

 

キャンチョメ「やっぱり、敵が最大呪文を出してくれないと奴を倒せない!」

 

 キャンチョメ達の戦いにモモンは怯えていた。

 

キャンチョメ「モモン、君も戦うんだ!怖いのはわかるけど、戦わないといけないんだ!」

 

ウマゴン「メルメルメ!」

 

 しかし、モモンは戦おうとしなかった。それに業を煮やしたエルは遂にモモンにビンタした。

 

エル「いい加減にしなさい!あなたはどうしてそこまで臆病なのです!?わかってるんでしょ?戦わないでいても何も変わらない事を!無駄だとわかっているから戦いたくない、そうでしょ!?なぜ勇気を出せないのです!?キャンチョメ君達が必死の思いで戦っているのが見えてないのですか!?」

 

 

 

 

回想

 それは出発の前日のホテルでの出来事だった。

 

サンビーム「どうした?エル」

 

エル「…あなた達の魔物の子はとても勇敢ですね…。明日は生きて帰れるかどうかわからない戦いだというのに…」

 

サンビーム「実は、ウマゴンやキャンチョメも初めはモモン程ではなかったが、臆病だったよ」

 

エル「そうだったのですか?でも、そうは見えなかったのですが…」

 

フォルゴレ「キャンチョメもウマゴンも仲間との出会いや様々な出来事などを通して強くなった。何より、キャンチョメが勇敢になったのはデボロ遺跡での戦いの際、自分が弱かったせいで仲間を守れなかった事で弱くて臆病な自分を変えなければならないと毎日欠かさず特訓を重ねたからなんだ」

 

エル「そんな出来事がキャンチョメ君を変えたのですか…」

 

サンビーム「モモンも何かきっかけがあれば変われる。そのきっかけを作るのは主にパートナーの仕事なんだ。エルの行動次第でモモンは変われる。だから、モモンの臆病は君が直すんだ」

 

 

 

エル「キャンチョメ君はデボロ遺跡での戦いで仲間を守れなかったから強く勇敢になるために特訓を重ねて強くなったのです!怖いのはキャンチョメ君達や私も同じです!でも、世界を守るため、呪いをかけられた人達を救うために戦わなければならないのです!それができるのは、私達しかいないから!怖い、怖くないなんて関係ないの!戦うのよ、モモン…!」

 

モモン「わ、わかったよ…エル……」

 

 キャンチョメ達の戦いは膠着状態になっていた。

 

キャンチョメ「どうすれば最大呪文を出させる事ができるんだ…?」

 

???「キャンチョメ、僕も戦うよ!」

 

 声の主はモモンだった。

 

フォルゴレ「モモンが……」

 

サンビーム「喋った?」

 

カーズ「ふん、あんな弱そうな猿が加わった所でどうにかなるとでも思ってるの?」

 

エル「やっぱり戦いは怖い…。あの…、何か打開策はないでしょうか?」

 

フォルゴレ「敵に最大呪文を出させればキャンチョメのとっておきの術が出せるのだが…」

 

モモン「最大呪文?」

 

 カーズを見て、モモンはある事に気付いた。

 

モモン「(あの人は女の人だ。とすれば…)僕が敵に最大呪文を撃たせるために怒らせてみるよ。エル、アグラルクを!」

 

エル「は、はい。アグラルク!」

 

 モモンは地中に消えた。

 

キース「地中に消えた?」

 

カーズ「私達に恐れをなして逃げ出したようね」

 

 しかし、カーズはブザライ共々気づいていなかった。モモンが後ろに現れた事を。カーズの後ろに現れたモモンはカーズのズボンをずりおろして、カーズの履いているパンツを眺めていた。それに一同は驚いてしまった。

 

エル「モ、モモン、女の人になんてことを……!」

 

 それを見たブザライも思わず顔を赤くしてニヤけていた。

 

カーズ「ブザライ、何をニヤけて…あ~~っ!!このエロ猿が!!」

 

 自分のズボンがおろされてパンツが露わになっている事に気付いたカーズは蒸気が出る程顔を真っ赤にし、ズボンを履いてからモモンをボコボコにしてキャンチョメ達の方へ蹴り飛ばした。

 

エル「コラ、モモン!敵とは言え、女の人のズボンをずりおろしてパンツを見てはいけません!!」

 

カーズ「ちょっとあんたまで何やってるのよ、ブザライ!」

 

 カーズに叱られてブザライは自分の顔を叩き、正気に戻った。

 

カーズ「もう頭にきたわ!あのエロ猿諸共最大呪文で叩き潰す!」

 

ベルン「待て!最大呪文は」

 

カーズ「あんな事されて怒りは静まらないわよ!お望み通り最大呪文を撃つわよ、ディオガ・ガズロン!」

 

 激怒したカーズはベルンの制止を振り切ってディオガ・ガズロンを発動させた。

 

モモン「キャンチョメ、君が言った通り、敵を怒らせて最大呪文を出させたよ!」

 

エル「およよよ!敵を怒らせてどうするのですか!?」

 

フォルゴレ「だが、モモンのお陰で敵に最大呪文を出させる事ができた!行くぞ、キャンチョメ!お前の新しい術の威力を見せてやれ!」

 

キャンチョメ「うん!」

 

フォルゴレ「フォウ・スプポルク!」

 

 キャンチョメが手を組むと光と音が発せられ、ディオガ・ガズロンが消えてしまった。

 

カーズ「術が…」

 

ベルン「消えた……?」

 

キース「こ、これ程の術があったとは……」

 

キャンチョメ「ふはははっ!僕に最大呪文を見せたからにはブザライ、お前は終わりだ!」

 

フォルゴレ「ミリアラル・ポルク!」

 

キャンチョメ「ディオガ・ガズロン!」

 

 キャンチョメはブザライと全く同じサイズ、同じ形の回転する刃の塊を放った。

 

カーズ「そんな!奴はブザライの術をコピーしたとでもいうのか!?」

 

 自分と全く同じ術にブザライは吹っ飛ばされてしまった。

 

キース「まさか、奴等の『最大呪文を撃ってみろ』がこの事だったとは…」

 

ベルン「(あの馬との戦闘で心の力ももう残り少ない。仕方ないか…)」

 

キース「ベルン、いも天が食いたくなった」

 

ベルン「ああ、全くだ」

 

キース「ブザライやカーズも一緒にいも天を食いに帰るぞ」

 

カーズ「ブザライがあの様子じゃ仕方ないわね。あんた達、今回はいも天を食べに退かせてもらうわ。でも、次こそは必ず仕留めてやるわよ!」

 

 今回はブザライを仕留め損ねたため、キースはブザライを抱えてパートナー達と一緒に逃げて行った。

 

サンビーム「まさか、いも天を食べに撤退するとは……」

 

エル「とりあえず、戦いが終わりましたね」

 

キャンチョメ「モモン、僕達が勝てたのは君のお陰だよ!」

 

モモン「ありがとう、キャンチョメ。戦いはまだ怖いけど、僕も戦うよ」

 

ウマゴン「メルメルメ」

 

キャンチョメ「(バーゴの時と違ってガッシュ達のように攻撃してちゃんと敵を倒せた…。やっと僕もみんなと肩を並べて戦えるぐらいに強くなったんだ…!)」

 

 モモンのサポート有りではあるものの、ブザライに勝利した事で、ようやくキャンチョメは自分が強くなれた事を実感したのであった。

 

サンビーム「さて、少し休憩して体力を回復させてから清麿達と合流しよう」

 

 サンビーム達は少し休憩した後、清麿達と合流するために動いた。

 

 

 

 

 その頃、ガッシュ達の方はガッシュ達の強さと空いた時間に心の力を高める特訓を重ねた結果、ほぼ全員デボロ遺跡でのシェリー並になったパートナーの心の力、そして消耗を抑えるための連携の差にファンゴ達は押されていた。

 

ジェット「ギャン・バスカード!」

 

リィエン「レドルク!」

 

 ギャロンの攻撃をウォンレイはあっさりかわして懐に潜り込んだ。

 

リィエン「ゴウ・バウレン!」

 

ジェット「アム・バスカルグ!」

 

 ウォンレイとギャロンの拳がぶつかり合った。

 

ギャロン「私がここまで追い詰められるとは…」

 

清麿「ガンレイズ・ザケル!」

 

ニコル「ガンズ・ゴウ・コファル!」

 

 ガッシュとチェリッシュのガンズ系の攻撃がロデュウに迫った。

 

ロデュウ「こんな攻撃」

 

恵「ギガ・ラ・セウシル!」

 

 ガンズ系の術とギガ・ラ・セウシルの回避不能の連携攻撃をロデュウはまともに受けた。

 

アドラー「アルセム・ガデュウドン!」

 

ウルル「スオウ・マーレ・ギアクル!」

 

 ファンゴの最大術とパティの最大術がぶつかり合った。しかし、水の龍が炎を押してファンゴを吹っ飛ばした。

 

ファンゴ「ぐあああっ!」

 

ギャロン「まさか、ファンゴの術が破られるとは…」

 

ファンゴ「あいつら、なんて強さだ…。パートナーはディオガ級の術を使ってもまるで心の力を半分も使ってないかのようにピンピンしている。ここまで追い詰められるとは…」

 

パティ「当然じゃない。あんた達が物凄く強いガッシュちゃんとその親衛隊ともいえる私達に勝てるわけがないのよ」

 

ロデュウ「あの女、言いたい放題言いやがって!ムカつくんだよ!」

 

 パティの言葉にキレたロデュウは向かっていった。

 

ウルル「テオアクル!」

 

 テオアクルでロデュウを吹っ飛ばそうとしたが、何者かが盾になって吹っ飛ばされた。

 

パティ「もう、誰が邪魔したのよ!」

 

ティオ「パティ、あれって……」

 

 邪魔したのはヨポポだった。

 

コルル「ヨポポ!?」

 

チェリッシュ「やっぱり、坊やの言っていた事は本当だったのね!」

 

ウォンレイ「ヨポポ、今からでも遅くはない!すぐにリオウに従うのをやめるんだ!」

 

 ガッシュ達の説得も届かず、パティのテオアクルを受けてふらふらながらもヨポポは立ちはだかるのをやめようとしなかった。

 

ファンゴ「お前ら、かなり実力があるようだな。俺達はこの場で退く。お前達もお前達なりにリオウと戦え!リオウを倒した暁には、ファウードを巡って決着をつけるぞ!」

 

清麿「待て!ファンゴ達はリオウの手下じゃないのか?」

 

ファンゴ「俺達はあいつの下についたつもりはない。そもそも俺達がファウードに来たのは、このファウードの力がとんでもないものだからだ。それはお前達もよくわかるだろう?」

 

ガッシュ「ウヌ…」

 

チェリッシュ「確かにファンゴの言う通り、私達もファウードの封印が解けて暴れ出したらどうにもならないからリオウを倒すために来たわ」

 

ファンゴ「話の理解が早くて助かるぞ、お前ら」

 

ギャロン「我々はリオウの隙を伺い、ファウードを奪取する」

 

ロデュウ「お前らは今からでもぶっ飛ばしてやりたい所だが、それをやるのはリオウをぶっ飛ばしてからだ」

 

ジェデュン「ヤンコヤンコ!」

 

ファンゴ「それじゃあお前達、絶対にリオウにやられるなよ!」

 

 ファンゴ達は去って行った。

 

ヨポポ「ヨポポイ……」

 

 そんなファンゴ達の後を追ってヨポポも退いた。

 

しおり「ファンゴ達が退いてくれたから助かったわね」

 

リィエン「他の魔物はともかく、ファンゴは話が通じる割といい魔物だったある」

 

コルル「でも、ヨポポは……」

 

チェリッシュ「それだけ、パートナーの事が大事だからそうせざるを得なかったのね……」

 

ガッシュ「(ヨポポ、お主ジェムが無事ならそれでよいのか?ジェムが死なないようにするためには、悪事に加担しようが、世界が滅ぼうが、ジェムのために…行動しておるのだな…)」

 

 前の戦いでもヨポポはジェムが無事なら自分が消えても構わなかったが、今回はジェムの命を救うためにリオウの手下になってしまった。そんなヨポポの姿が前の戦いの時のウォンレイと重なってガッシュには見えていた。

 

恵「清麿君、サンビームさん達と合流しましょう」

 

清麿「ああ」

 

 ガッシュ達も先に降下したサンビーム達の所へ向かった。




これで今回の話は終わりです。
今回は原作のキース&ブザライ戦ですが、ガッシュ達とファンゴ達の戦いと原作より早くモモンの臆病がある程度直るのと、実戦でキャンチョメの新しい呪文3つが使われるという内容になりました。
モモンを戦いに参加させるなら、何かしらの形で勝利に貢献させたいという事で、ブザライのパートナーのカーズのズボンをずりおろして怒らせ、最大呪文を出させるというモモンのエロが勝利に貢献するという形で活躍させました。ブザライがカーズのパンツを見てニヤけていたのは何かしらの伏線かも知れません。
次の話はアリシエの登場とウンコティンティンの話になります。


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LEVEL58 知の番人の試練

ファウード

 前の戦いの時と違い、ブザライは魔界送りにされなかったものの、ファンゴ達が全員やられて撤退した事にリオウは激怒していた。

 

リオウ「何っ!?ファンゴ達が全員侵入者に返り討ちに遭っただと!?」

 

ザルチム「侵入者はガッシュとその仲間達だ。しかも、仲間達も一部を除けばディオガ級の威力の術を持つ相当な実力者揃いだぞ。まぁ、誰も魔界送りにされなかったのが不幸中の幸いだがな」

 

リオウ「くそう!ただでさえガッシュは手におえないのに仲間も実力者ばかりとは!レインが協力しない以上、今の集まっている力ではファウードの封印が解けるのかどうかの保証さえないのだぞ!おのれ、おのれ!」

 

ザルチム「ヨポポもせいぜい奴等を惑わすか盾ぐらいしか役に立つ道がない。全く、他の強い魔物を引き込むべきだったな」

 

 ガッシュは凄まじく強いのに、仲間もかなり強い事にリオウは苛立ちがますます増すばかりであった。

 

 

 

 同じ頃、ガッシュを待つレインはある人物と会っていた。

 

レイン「ガッシュに会いに行くのか?」

 

???「ああ。君の言うような魔物かどうか僕の目で確かめてみたい」

 

レイン「だが、あまり無理はするな。倒れそうになったらガッシュの仲間達に抱えてもらうんだ。お前の悪い癖はこういったものだとリーヤから聞いているからな。俺は少し前にファウードをある程度探索したから、心臓で待っているとガッシュに伝えてくれ」

 

???「わかってる。リーヤ、ガッシュに会いに行くぞ」

 

リーヤ「うん」

 

 その人物はリーヤというカブトムシと羊を足したような魔物を連れてガッシュの方へ向かった。

 

レイン「(早く来てくれ、ガッシュ。お前との約束を果たすために俺はカイルが呪いをかけられても奴等には一切手を貸していないんだ…。カイルを助け、ファウードを止めるという矛盾した二つの事をこなせるのはお前しかいないんだ…)」 

 

 レインは寝かせているカイルを見て、ガッシュが早く来てほしいと思いながらカイルを連れてファウードの心臓へ行き、待つのであった。

 

 

 

 

 その頃、ガッシュ達は合流してから休息をとっていた。

 

ガッシュ「モモンが活躍したというのか?」

 

フォルゴレ「そうだ。臆病が直った上、敵を怒らせて最大呪文を出させた後、私達がそれを返して倒す事に成功したんだ!」

 

キャンチョメ「敵の本を燃やす事はできなかったけど、僕の活躍をみんなにも見せたかったよ」

 

清麿「いや、まだ敵の本は燃やさなくていい。それより、どうやって敵を怒らせたんだ…?」

 

エル「それが……」

 

 カーズのズボンをずりおろしたというのは声高に言えなかったため、エルは小声で清麿達に話した。その内容には女性陣はやはり怒っていた。

 

しおり「女の人のズボンをずりおろしたの!?」

 

パティ「全く、あのエロ猿は臆病は直ってもエロは全然直ってないわね!」

 

恵「でも、そのおかげでキャンチョメ君達は勝てたから複雑だわ…」

 

サンビーム「それで、君達の方はどうだったんだ?」

 

ニコル「それが…私達の前にヨポポが現れたの」

 

キャンチョメ「ヨポポが!?」

 

ウマゴン「メルメルメ!?」

 

サンビーム「やはり、ジェムは呪いをかけられていたのか…」

 

リィエン「ヨポポ、何だか目が辛そうだったある…」

 

ニコル「それも当然よ。ヨポポはガッシュ達とは仲がいいし、特にキッドと一緒にチェリッシュに懐いていたの」

 

チェリッシュ「…あの子は本当は私達と戦いたくなくてもジェムを死なせないために戦わなければならないのが辛いのでしょうね……」

 

ウォンレイ「ジェムを助けるには……」

 

清麿「ファウードの封印を解くしかない。幸い、ファンゴ達は全員生き残っている。ファウードを復活させる力は多分」

 

???「足りていると思う、か。だが、実際には少し足りないぞ、清麿、ガッシュ」

 

 その人物はガッシュ達の前に姿を現した。

 

ガッシュ「お、お主達…!」

 

清麿「(あいつが……アリシエ……!)」

 

ティオ「あんた、どうしてガッシュや清麿の事を!?」

 

アリシエ「その前に自己紹介といこう。僕の名前はアリシエ。そして…」

 

リーヤ「魔物のリーヤだ」

 

コルル「アリシエ、どうしてガッシュや清麿の事を知ってるの?」

 

アリシエ「ちょっとガッシュの友達の魔物、レインと会ってね。彼等の事はレインから聞いている。君達の敵ではないから、攻撃しないでもらいたい」

 

清麿「(確か、ガッシュの話ではアリシエも呪いをかけられていると言ってたな。本当なのか?)」

 

 念のため、アンサー・トーカーでアリシエに呪いがかけられているのか確かめたが、その通りだった。

 

清麿「(やはりか…。そんな体で俺達に会いに来てくれたのか…)」

 

恵「さっき、アリシエはファウードの封印を解く力が少し足りないと言っていたけど、どういう事なの?」

 

アリシエ「実は、リオウが集めた魔物の中ではヨポポは最大呪文の威力が他の魔物より低く、今のメンバーで力が足りない時のための保険だったんだ。だが、ファウードを解くために集めた魔物の中でレインが協力を拒んでいるから、保険のヨポポを使わざるを得なくなり、ファウードが復活するかどうかわからなくなってしまった。もしも、ファウードが復活しなかった場合、2日後にジェムは確実に死ぬ」

 

ガッシュ「(レイン、お主は私との約束を果たすためにリオウの仲間にならずに私を待ってくれておるのだな…)」

 

アリシエ「だが、ファウードを復活させるための手はある。それは…」

 

清麿「ああ、俺達のうちの誰か1人だな。この中でディオガ級以上の威力の術を持っているのはガッシュ、コルル、パティ、ウマゴン、ウォンレイ、チェリッシュの6体だ」

 

アリシエ「そう、君達の中のディオガ級以上の術が使える誰か1人が足りない力を補えばいい」

 

パティ「冗談じゃないわよ!あんな奴になんて力は貸さないわ!」

 

アリシエ「だが、そうしたらジェムは死ぬ」

 

清麿「(そして、カイルとお前もな…)」

 

チェリッシュ「とてつもなく難しい選択ね…」

 

ウォンレイ「私もどうすればいいか……」

 

アリシエ「ガッシュ、究極の選択をリーダー的存在の君が決めなくてはならないのだ。ジェムの死か、全世界の人の死か、どちらかを」

 

 前の戦いでも究極の選択を迫られ、今回も同じ選択を迫られたガッシュだったが、前の戦いの時と違い、その選択に迷いはなかった。

 

ガッシュ「私はどちらも選ばぬ。ジェムを助け、ファウードを止める!誰も犠牲にしない茨の道を突き進む、それがファウードへ行く前から考えた私の選択だ!」

 

リーヤ「その言葉に偽りはないな!?」

 

ガッシュ「ない!リーヤの言う通り、私の言葉に偽りなどない!!」

 

 ガッシュの強い決意の目にアリシエは安心した様子になった。

 

アリシエ「……やはり、レインが言ったような魔物だ。困難であっても、最善の道に突き進む覚悟を持っている。僕も君に会えてよかった!」

 

 そんなガッシュをリーヤはつついた。

 

リーヤ「お前、甘ったれだがかなり見込みがある。協力してやるぞ」

 

リィエン「どうしたある?」

 

アリシエ「リーヤが角をつつくのは、友好の印だ。余程気に入られたものだな」

 

チェリッシュ「可愛らしいのに随分厳しい事を言うわね、坊や」

 

リーヤ「僕は可愛い坊やなんかじゃないぞ、勇敢な戦士だ!」

 

チェリッシュ「可愛いと言ってごめんなさい、勇敢な戦士君」

 

 チェリッシュもガッシュと同じようにリーヤにつつかれた。

 

ウォンレイ「チェリッシュもリーヤに気に入られたのか」

 

ティオ「チェリッシュってキッドやヨポポのような小さい子供に好かれるわね」

 

フォルゴレ「彼女の母性に小さい子達が惹かれるのだろう」

 

恵「チェリッシュは大人になったらいいお母さんになれると思うわよ」

 

ニコル「あら?恵もいいお母さんになれる上に清麿といい家庭を築けるんじゃないかしら?」

 

 ニコルのからかいに清麿と恵は思わず顔を赤くした。

 

清麿「ニコルさん、まだ俺達は未成年で……」

 

アリシエ「割り込む形で済まないが、本題に入ろう」

 

清麿「まずはファウードを魔界に帰す方法を探すんだろう?」

 

アリシエ「先を読まれたようだな。実は、僕も君達のような魔物を探していたんだ。正しい心を持ち、一緒に行動してくれる魔物を」

 

コルル「やっぱりアリシエは味方だったのね」

 

エル「でも、ファウードを魔界に帰す事は可能なのでしょうか?」

 

清麿「ファウードはもともと魔界から来たんだ。だから、逆に魔界に帰す事だってできる。それに、ガッシュは割とファウードの内部についても詳しいそうだからな」

 

しおり「ただでさえファウードをよく知ってるのに、内部の事まで結構詳しいなんて」

 

アリシエ「頼もしいな。まずは、レインが待っている心臓の辺りを目指そう」

 

ガッシュ「ウヌ。待っておるのだ、レイン」

 

 アリシエの案内に従い、ガッシュ達はファウードの口に来た。

 

アリシエ「ここが、ファウードの口。我々がファウードへ入る、唯一の侵入口だ!」

 

ガッシュ「(もう一度ここへ来る事になろうとは…)」

 

アリシエ「確か、ガッシュはファウードの内部の事については僕より詳しかったそうだね。清麿と一緒に先頭を頼むよ」

 

ガッシュ「ウヌ」

 

清麿「ああ(いざとなれば、アンサー・トーカーがある。ガッシュの記憶と合わせれば迷う事はない!)」

 

 ファウードの地図がある場所へ来た。

 

リィエン「これ、ファウードの地図じゃないある?」

 

キャンチョメ「確かにそうだね」

 

アリシエ「これは恐らく、ファウードの地図だ。コントロールルームは脳にあると思うが…」

 

恵「清麿君、アンサー・トーカーでコントロールルームがある場所はどこかわかる?」

 

アリシエ「アンサー・トーカー?」

 

リーヤ「それって何だ?」

 

しおり「簡単に言えば、基本的にあらゆる問題の答えがわかる能力の事よ。清麿君、どこにコントロールルームがあるの?」

 

清麿「それだが、コントロールルームの位置は脳だ。だが、今はコントロールルームよりもファウードを魔界に帰す装置がある場所へ行くのが先だ」

 

キャンチョメ「そこはファウードの内部に詳しいガッシュの出番だね。ガッシュ、どこにあるんだい?」

 

ガッシュ「心臓にある。だが、心臓へ行く前に胃を通り、肝臓へファウードの回復液を取りに行かねばならぬ」

 

サンビーム「ファウードの回復液?」

 

フォルゴレ「それって何だい?」

 

清麿「俺達の体力や心の力を回復させる液体の事だ。それを水筒や空いたペットボトルに入れておけば心の力がなくなった時に飲んで心の力を回復させる事ができる」

 

ティオ「だから、空いたペットボトルを持ってきてって言ったのね」

 

パティ「さ、突き進むわよ!」

 

 ガッシュ達はまず、胃の中へ突き進んだ。

 

ガッシュ「(ここはウンコティンティンがおったな……)」

 

ウルル「何ですか?これは……」

 

パティ「ガッシュちゃん、ここって…」

 

ガッシュ「ファウードの胃の中なのだ」

 

リィエン「という事は……」

 

ウォンレイ「マグマのようなものは胃液なのか……」

 

キャンチョメ「フォ、フォルゴレ、あの中に落ちたくないよ!」

 

フォルゴレ「私もだ~!」

 

???「お前達はご主人の使いか?それとも敵か?答えよ、お前達はご主人の使いか?それとも敵か?」

 

 オブジェのようなもの、ウンコティンティンが喋り出した。

 

エル「あれは何ですか?」

 

ガッシュ「あれはウンコティンティン。ファウードの守護者なのだ」

 

パティ「随分下品な名前ね」

 

コルル「言いたくないよ」

 

ウンコティンティン「お前ら、まさか敵ではあるまいな?」

 

アリシエ「いいえ、敵ではない!僕らはファウードの主人より、ファウードの探索を命ぜられた者!どうか、その道を案内されたし!」

 

ウンコティンティン「よかろう、わがファウードを作りし主人は知に長けた者。その使いならば、わが質問に答えられて当然だ。我が質問に答えてもらうぞ」

 

清麿「質問?(ガッシュの言った通り、こいつの質問に答えなければならないようだな…)」

 

ウンコティンティン「そうだ。逆に我が主人の使いでもバカがこの中を通る事は許されん。わかったか!?」

 

フォルゴレ「清麿、私はバカだから帰るよ。じゃあな~!」

 

 そんなフォルゴレの行動にリィエンが先回りして仲間達の方へ蹴り飛ばした。

 

リィエン「そんな事をしてる場合じゃないある!」

 

ウンコティンティン「その女の言う通りだ!」

 

 リィエンの前の道が崩れて胃液に落とされた。

 

ウンコティンティン「バカはどちらにしろ生かしては帰さん。お前ら全員、我が質問に答えるべし。1人でも間違えれば全員ファウードの胃液へと落とされよう。ではフォルゴレ君に第1問、あなたの一番好きな動物は何?」

 

ガッシュ「(なぬっ、初めて入った時と違うのだ…!)」

 

清麿「(それに、魔界が絡んでないな…)」

 

フォルゴレ「カバさん!」

 

ウンコティンティン「正解!」

 

しおり「フォルゴレさんって、カバが好きだったのね」

 

エル「意外ですわ…」

 

ウンコティンティン「賢者よ、こちらへ。我が命の紐に掴まるがよい」

 

 ウンコティンティンはフォルゴレをロープに掴まらせた。すると、ロープを降ろしてフォルゴレは胃液が間近に迫る場所に降りた。

 

フォルゴレ「あの、出口が見えませんが!」

 

ウンコティンティン「みんな正解したら現れる。言ったはずだ、全員答えられねばここは通さんと」

 

フォルゴレ「うへへ、胃液の蒸気でズボンが溶けている…みんな、みんな私を救っておくれ!」

 

キャンチョメ「うわあん、フォルゴレ!」

 

ウンコティンティン「では次の問題だ。上は大水、下は大火事、これは何?」

 

清麿「(気のせいか?また魔界が全く関係しない問題は)」

 

キャンチョメ「う~ん、う~~ん……」

 

清麿「キャンチョメ、答えを教えてやる」

 

キャンチョメ「すげえ!清麿わかるのかい!?」

 

 早速、キャンチョメは答えた。

 

キャンチョメ「答えは、お風呂」

 

ウンコティンティン「ティンティン、正解!」

 

 次はチェリッシュが答える番になった。

 

ウンコティンティン「地球上で最も硬い宝石は何?」

 

チェリッシュ「ダイヤモンド」

 

 チェリッシュは正解し、次はニコルの番になった。

 

ウンコティンティン「飛べないけど走るのが得意な鳥は何?」

 

ニコル「ダチョウ」

 

ウンコティンティン「正解」

 

清麿「おい、お前」

 

ウンコティンティン「何だ?」

 

清麿「何の捻りもないが、それでいいのか?」

 

ウンコティンティン「黙れ、ゴミムシが!私が神だ!」

 

 次はリィエンの番になった。

 

ウンコティンティン「肉などの具を皮に包んで焼くなどして食べる料理は何?」

 

リィエン「餃子ある」

 

 次はウォンレイの番になった。

 

ウンコティンティン「四神のモチーフとなっている動物を全て答えよ」

 

ウォンレイ「龍、鳥、亀、虎」

 

 こうして、清麿とウマゴン以外は全員正解した。

 

ウンコティンティン「はん、お前が残っていたか、ゴミムシめ。気に食わないお前にはこの問題だ。829735×961527は?」

 

清麿「は?」

 

ウンコティンティン「ふはははっ!ゴミムシが!どうだ、答えられまい!みんな揃って死ぬがよい!」

 

清麿「797812605345だ」

 

ウンコティンティン「……ふはははっ!ははっ、ははっ……。ふははははっ!もう1回言ってみろ、ゴミムシよ!適当に言っても2回同じ答えが」

 

清麿「797812605345だ」

 

 清麿の答えにウンコティンティンは何も答えられなかった。

 

清麿「どうした?俺が正解かも計算もできんのか!?さぁ、どうなんだ!?何とか言ってみろ!」

 

ウンコティンティン「掴まるがよい、賢者よ!はん、今のが正解かは一瞬でわかったわ!この私がゴミに負けてたまるか!」

 

恵「流石ね、清麿君」

 

しおり「アンサー・トーカーでも使ったの?」

 

清麿「いや、使ってないけど単純な掛け算で助かったよ」

 

ウンコティンティン「では、最後の者よ、前に出よ。最後の問題だ」

 

清麿「ああ、そうか。俺が最後じゃなかった。後は誰が…」

 

ウマゴン「メル」

 

ガッシュ「しまった~~!!」

 

ウンコティンティン「我が質問に答えるがよい」

 

ウマゴン「メルメルメ」

 

一同「ウマゴン!」

 

ウンコティンティン「最後の者よ、お前が正しい答えを出せばファウードの奥へと進め、間違った答えを出せばこの命の紐に繋がれし者達がファウードの胃液へと落とされ、その栄養となろう」

 

清麿「待て!」

 

ウンコティンティン「何だ?ゴミムシが」

 

清麿「そいつはウマゴンと言って、メルメルメとしかしゃべれない!どんな質問をしても答える事は無理なんだ!」

 

ウンコティンティン「へん、知った事か!答えられなければお前達全員がファウードの栄養となるだけだ」

 

パティ「冗談じゃないわよ!」

 

チェリッシュ「質問をするのなら、馬の坊やにもわかる問題を出しなさいよ!」

 

サンビーム「ウマゴン、今だけでもしゃべるんだ!」

 

ウマゴン「メ、メル、メルメル!」

 

 まだ幼いウマゴンはまだパパゴンやママゴンのように喋る事はできなかった。

 

ウンコティンティン「ふはははっ、いいぞ、ゴミムシ共が!その絶望の顔を私は見たかったのだ!行くぞ、ウマゴン!」

 

清麿「(もうダメだ…もう俺達は終わりだ…)」

 

ウンコティンティン「3以上の自然数nに対して、xのn乗+yのn乗=zのn乗を満たすような自然数、xyzは存在しない。これを証明せよ」

 

清麿「ま、まさか、フェルマーの最終定理!?」

 

恵「それはどんな問題なの?」

 

清麿「17世紀に投げかけられ、20世紀になるまで誰にも解けなかった数学界の超難問」

 

ウォンレイ「そんな問題、ウマゴンはおろか、私達に解けるはずがない!」

 

清麿「その通りだ。天才数学者、ワイルズの証明までに8年かかった。もちろん、メルメルメだけで証明なんて、バカにするのにも程がある!」

 

ウンコティンティン「これでゴミムシがくたばるわ、ふはははっ!」

 

コルル「理不尽すぎるよ!」

 

チェリッシュ「そんなの不公平よ!きちんと馬の坊やにわかる問題にしなさい!」

 

 理不尽なウンコティンティンへの怒りで清麿は鬼と化した。

 

鬼麿「勿論、6ケタの単純な掛け算ができなかったお前にも解ける問題じゃねえ!おい、コラ、お前もこの問題解けねえだろ!?コンチクショー!」

 

 鬼麿にウンコティンティンは怯えた。

 

鬼麿「さぁ、答えてみろ!答えてみろってんだ、このウンコ野郎!」

 

ウンコティンティン「第、2問」

 

鬼麿「おい…」

 

ウンコティンティン「第、2問」

 

鬼麿「何が第2問だ!?さっきのフェルマーの定理を答えろって言ってんだろ!?」

 

ウンコティンティン「ティンティンチャーンス!」

 

パティ「ティンティンチャンス?」

 

ウルル「何でしょうか?」

 

ウンコティンティン「いや、確かに大人気なかった。馬相手にあの問題はやり過ぎた。だから、お前達にチャンスをやろう」

 

清麿「チャンスだと?」

 

ガッシュ「(恵にするのか?)」

 

ウンコティンティン「ティンティンチャンスを使えば次の問題がとても易しくなる。どうする?ティンティンチャンスを使うか?使わないか?」

 

清麿「使わせてもらう」

 

ウンコティンティン「うひっ、よかろう。お前、確か清麿とか言ったな」

 

清麿「ああ」

 

ウンコティンティン「では清麿君、私に向かって心の底から謝りなさい」

 

ガッシュ「(前の戦いの時と違うのだ!)」

 

ウンコティンティン「さあ言え、どうした?ウマゴンでも答えられる問題を出してやろうと言ってるのになぁ」

 

しおり「(大人気ないと言った先からこれなの?)」

 

恵「(何て理不尽なの?清麿君は何も悪い事してないのに)」

 

ウンコティンティン「何も無理にとは言ってないんだ。お前がどうしても謝りたいって言うんなら、謝らせてやろうと言ってんだぞ」

 

アリシエ「(こんなバカげたことがあるか!しかし、清麿が謝らなければ我々は)」

 

ウンコティンティン「謝れないのであれば、代わりに大きな女の子5人の内、誰か1人が私の名前を言うっていうのでもいいんだよ」

 

ガッシュ「(やはり、根っこは私が経験した戦いの時のウンコティンティンと変わらぬのか…)」

 

サンビーム「(ニコルは男だと思い込んでいるのか…)その大きな女の子5人は恵、しおり、リィエン、チェリッシュ、エルなのか?」

 

ウンコティンティン「いかにも。さぁ、どっちにするのかな?」

 

リィエン「(言わなければいけなくても言いたくないある…)」

 

チェリッシュ「(でも、そうしないと……)」

 

フォルゴレ「頼むからどっちかにしてくれ!ケツが、ケツがなくなってしまう!」

 

恵「…清麿君、私が代わりに…」

 

清麿「恵さんがそんな事をしなくていいよ」

 

恵「清麿君?」

 

清麿「ごめんなさい……と言うのは簡単だ」

 

 ウンコティンティンの理不尽な要求に激怒した清麿は再び鬼となった。

 

鬼麿「しかし、なぜ俺は貴様に謝ったり恵さん達が貴様の名前を言わなきゃならんのだ!!?」

 

 鬼麿はロープを登り、ウンコティンティンの前に現れた。

 

鬼麿「俺が貴様に謝ったり、恵さん達がてめえの名前を言う時は貴様がフェルマーの定理を説明した時だけだ!」

 

コルル「(凄い迫力だね…)」

 

ウンコティンティン「うわああん、怖いよ~!」

 

鬼麿「泣いたって許さんぞ!さぁ、今すぐに説明しろ!そうすりゃすぐにでも土下座でも何でもやってやらあ!さぁ、さぁ!さぁ!!」

 

 鬼麿の恐ろしさに遂にウンコティンティンは観念した。

 

ウンコティンティン「うわああん、私が悪ぅございました!ティンティンチャンスは成功という事で勘弁してください!!」

 

清麿「わかりゃいいんだよ」

 

 もとに戻った清麿は降りて行った。

 

チェリッシュ「私が言おうとしたのに先を越されたわね」

 

清麿「いや、恵さんにそんな事を言わせたくなくて…」

 

恵「ありがとう、清麿君」

 

ティオ「勢いで押し切ったわね…」

 

ウンコティンティン「では行きますよ、ウマゴンさん」

 

ウマゴン「メル」

 

ウンコティンティン「注射のための道具になり、泳ぐための道具にもなり、逃げる時には生贄にもなる。人間が絵を描く時の道具にもしている。ほとんどの動物が持っているこれは何?」

 

ガッシュ「(ウマゴン、それはお主も持っておるものなのだ…)」

 

 

 

 

 その頃、ザルチムは複数ある目でガッシュ達を発見した。

 

ザルチム「ファウードの体内にガッシュ達が入ったぞ」

 

リオウ「ガッシュ達がだと!?」

 

ザルチム「しかも、リーヤ達も一緒だ。ファウードの中を嗅ぎまわられる前にとっ捕まえるとするか」

 

リオウ「だが、それはできるのか?」

 

ザルチム「俺が敵わない時はゴームでも来させればいい。あいつなら、ワープしてすぐに行けるからな」

 

リオウ「しかし、あいつらがそれにすんなりと応じるか?あいつは俺とザルチムの2人がかりでも手におえず、パートナーを人質にし、呪いをちらちかせる事でどうにか仲間にした奴だ」

 

ザルチム「チビ、お前も行くぞ」

 

ヨポポ「ヨポポイ……」

 

 ヨポポはとてもつらそうな様子でザルチムと同行した。

 

 

 

 

 ガッシュ達は無事に突破する事に成功した。

 

ウンコティンティン「バカな奴め、この地の番人、ウンコティンティンに楯突くとは。どうせここを抜けようが抜けまいがファウードの栄養となる運命なのだ。くそっ、あんな奴等に私の試練を突破されるとは、うわああん!」

 

 ウンコティンティンの試練を乗り越えたガッシュ達は先へ進んでいた。

 

フォルゴレ「さっきの問題の正解は何だ?」

 

清麿「答えは尻尾だ。注射の道具はサソリの尻尾、泳ぐための道具は魚の尻尾、逃げるための生贄はトカゲの尻尾、そして、人間が絵を描く筆の材料として尻尾の毛がよく使われる」

 

コルル「じゃあ、ウマゴンが尻尾を突き出せば正解になるんだね?」

 

清麿「その通りだ」

 

パティ「じゃあ、先へ進みましょ」

 

ガッシュ「ここから先は小腸になるのだが、仕掛けに注意するのだ!」

 

 ガッシュの言う通り、小腸の仕掛けのドリルがガッシュ達を待っていた。

 

ティオ「みんな、ドリルが迫っているわよ!」

 

清麿「ここは俺とガッシュに任せろ!SET!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

清麿「エクセレス・ザケルガ!!」

 

 エクセレス・ザケルガ1発でドリルは壊された。ちょうどドリルが通ろうとしている所には穴が開いていた。

 

ウォンレイ「ガッシュの呪文は相変わらず凄い威力だ…」

 

恵「これで後ろを気にする事なく進めるわね」

 

 恵は清麿の手を繋いだ。

 

清麿「恵さん?」

 

恵「手を繋いで進むの、いいでしょ?」

 

清麿「いいよ。でも、ドリルを壊した所に下へ行く穴が開いてるんだ。戻ろうか」

 

恵「そうね」

 

 清麿と恵は微笑み合って穴の方へ進んでいった。

 

パティ「ガッシュちゃんも私と手を繋ごう」

 

ティオ「いいや、私とよ!」

 

パティ「何ですって!?」

 

ティオ「そっちこそ何よ!」

 

 パティとティオの喧嘩に一同はいつも通り呆れていた。

 

アリシエ「止めなくていいのか?」

 

チェリッシュ「あの子達は喧嘩するほど仲がいいから無理に止める必要はないのよ」

 

リーヤ「不思議だなぁ、あれ程怖い顔で言い争ってるのに仲が悪くないなんて」

 

 喧嘩する程仲がいいパティとティオをアリシエとリーヤは不思議に思うのであった。

 




これで今回の話は終わりです。
今回はアリシエが初登場する話とウンコティンティンの話を合わせた話です。
究極の選択の方については、既にガッシュは前の戦いで経験してるのと、すぐにウンコティンティンの方をやりたかったため、すぐに終わらせました。
ウンコティンティンのティンティンチャンスに関してはアニメ寄りにしてますが、原作の要素も入れて、清麿が謝るか、恵かしおりかリィエンかチェリッシュかエルがウンコティンティンと言わなければならないという内容にしています。ちなみに、ウンコティンティンがニコルが女だとわからないのはバカだからです。
次の話はザルチムがガッシュ達の前に現れますが、前の戦いの時と違って某王子のように瞬殺されてしまうかも知れません。


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LEVEL59 心臓を目指せ

ファウード

 ファウードのある部屋ではゴームペアはボーッとしていた。そこへリオウが来た。

 

リオウ「何をだらけている、ゴーム、ミール!」

 

ミール「あんた、私達をこき使っているから少しぐらい怠けてたっていいじゃない!」

 

リオウ「使命は果たしてもらうと言ったはずだ!このバカ魔物が!」

 

ミール「バカですって!?あんたこそゴームより弱い癖に私達をこき使うのが相当気に食わないのよ!」

 

ゴーム「ゴォ!!」

 

リオウ「だったら、お前にも呪いをかけてやろうか?」

 

ミール「その呪いはあんたもただじゃすまないんでしょ?もし、私にかけたら今度こそ死ぬんじゃない?」

 

リオウ「そんな事を言う暇があるのなら、ファウードの体内の見回りでもしてこい!」

 

 リオウとの言い合いの後、ミールはゴームと共に渋々ファウードの体内の見回りに行った。

 

リオウ「全く、ゴームの空間移動は便利だが、俺とザルチムでも手におえない上、あんなにもいう事を聞かない奴なのが最大の難点だ」

 

 ガッシュ達の侵入とゴームの不真面目ぶりにリオウのストレスは溜まる一方だった。

 

 

 

 

ファウード 小腸

 その頃、ガッシュ達はガッシュペアがドリルを壊して進まなくさせた後、ガッシュからトラップに注意するように言われて触れたら溶かす触手に気を付け、栄養を吸収する穴の前で降りる準備をしていた。

 

ウルル「ガッシュがトラップの事を言ってくれて助かりますよ」

 

ティオ「ガッシュってどうしてファウードの体内の事に詳しいの?」

 

ガッシュ「そ、それは魔界にいた頃にファウードを探検したからなのだ」

 

ティオ「だから詳しいんだ」

 

 実際は前の戦いでファウードを探索したからである。

 

清麿「モモン、この穴の下に魔物の気配はするか?」

 

モモン「2体いるよ」

 

清麿「(恐らく、ザルチムが待ち構えている…)俺とガッシュから先に降りる。みんなは5分経過したら降りてくれ」

 

コルル「2体いるけど、ガッシュと清麿お兄ちゃんだけで大丈夫なの?」

 

ガッシュ「心配はいらぬ。下にいる魔物はテオザケルでイチコロなのだ」

 

清麿「それじゃあ、先に降りるぞ」

 

アリシエ「待ってくれ、僕も」

 

 アリシエは息が乱れており、ふらついたため、サンビームが支えた。

 

清麿「アリシエは休んでてくれ。お前、呪いがかかった状態でよくここまで頑張ってくれた。だから、休むんだ」

 

しおり「アリシエが呪いにかかってるって本当なの?」

 

ガッシュ「アンサー・トーカーで実際にそう言った答えが出たそうなのだ」

 

リーヤ「凄いな、そのアンサー・トーカーって」

 

アリシエ「大丈夫だ。僕は」

 

チェリッシュ「アリシエ、清麿が呪いがかかった状態で無理をしているあなたの事を気遣ってくれてるのよ!5分経つまで休んでなさい!」

 

 チェリッシュの説教には流石のアリシエも逆らえず、言葉に甘えてアリシエは休む事にし、ガッシュペアは先に降りた。

 

 

 

ファウード 肝臓

 ザルチムペアとヨポポは待ち構えていた。

 

ザルチム「ヒヒッ、さぁ、降りてこい。そうしたら」

 

???「お望み通り降りてきたぜ」

 

 声と共にガッシュペアが降りてきた。

 

ザルチム「よく待ち伏せしてるのがわかったな」

 

清麿「こっちには探知に優れた魔物がいるんでな」

 

ザルチム「お前達にとっておきの事を教えてやろう。アリシエは」

 

清麿「最初から俺達の敵だとでも言いたいのか?だが残念だったな、アリシエはれっきとした俺達の味方だ!」

 

ザルチム「な、何っ!?」

 

清麿「呪いがかかった状態なのに無理して来るような奴が俺達を欺く奴なんかじゃない!本当にアリシエが俺達の敵なら、もっと賢く俺達を騙す工夫をしていたはずだ!」

 

 前の戦いの清麿は当初はアリシエを疑っており、ザルチムの言葉に惑わされてしまったが、今回はガッシュから事前にアリシエの事を聞かされ、アンサー・トーカーでアリシエが無理をしている事を知った為、ガッシュと同じように最初からアリシエを信用した。

 

ガッシュ「私達を騙そうとしても無駄だ、ザルチム!」

 

ザルチム「くそっ…!」

 

清麿「どうした?アリシエは俺達の敵だと言える自信でもなくしたのか?それとお前、アリシエと何かあったのか?」

 

 前の戦いとは逆に清麿に言葉で追い詰められていったザルチムは余裕をなくして逆上した。

 

ザルチム「くそったれ……くそったれが!!」

 

ラウシン「ザルチム、落ち着け!」

 

ザルチム「もう頭に来たぞ!ラウシン、こいつを捕らえてリオウの元へ連行するぞ!」

 

ラウシン「わかった」

 

ザルチム「ヨポポ、お前も働いてもらうぞ!」

 

ヨポポ「ヨポ……ヨポポイ!」

 

ラウシン「オルシド」

 

ガッシュ「ふんっ!」

 

 ラウシンが呪文を唱えようとした途端、ガッシュはマントを伸ばしてザルチムの頭をグルグル巻きにしてザルチムの目が全部見えないようにした。

 

ザルチム「くそっ、これでは俺の術が使えない!」

 

 マントで目を塞がれたザルチムは焦ったが、マントが緩んでから周りが見えるようになって安心したものの、その時には、ガッシュが目の前にいた。

 

ザルチム「いつの間に!?」

 

清麿「テオザケル!」

 

 至近距離からザルチムはテオザケルをまともに受けた。

 

ザルチム「ふおおおっ!!」

 

 テオザケルをまともに受けたザルチムは大きく吹っ飛ばされ、立つ事さえままならなかった。

 

ザルチム「くそったれ……中級呪文でディオガ級の威力だと……!?」

 

ラウシン「ヨポポ、パートナーの方を取り押さえるぞ!」

 

ヨポポ「ヨポポイ!」

 

 ラウシンとヨポポは清麿に向かっていったが、その際に清麿の言ってた5分後になり、先にウォンレイペアが降りてきた。

 

リィエン「ハイ~~ッ!!」

 

 リィエンのパンチとキックを受けてラウシンは気絶した。

 

ウォンレイ「(ヨポポ、ジェムは必ず私達が救う!だから…、私達が君を退けなければならない事を許してくれ…)」

 

 ウォンレイは少し躊躇した後、ヨポポを手刀で気絶させた。その後、残りの仲間達も降りてきた。

 

ティオ「私達を下で待ち伏せしていたのはあいつだったのね!」

 

パティ「でも、ガッシュちゃんの手にかかればイチコロね!」

 

ガッシュ「ウヌ…」

 

恵「でも、ヨポポに気の毒な事をしたわね…」

 

ニコル「だけど、私達は進まなくてはならないわ」

 

キャンチョメ「ガッシュ、これからどこに行くんだい?」

 

ガッシュ「とっておきの物がある場所なのだ」

 

 ガッシュが案内した場所は前の戦いでファウードの回復液がある場所だった。

 

サンビーム「この液体は何だ?」

 

ガッシュ「これはファウードの回復液なのだ。これを飲めば疲れも吹っ飛ぶし、心の力も元通りになるぞ」

 

恵「じゃあ、水筒やペットボトルに入れましょう」

 

エル「回復液を飲んだら元気が出てきますわ!」

 

 一同はファウードの回復液を飲んで全快状態になり、その後に水筒とペットボトルにも詰めた。

 

アリシエ「回復液を飲んだら少しは楽になったよ」

 

清麿「みんな、出発だ!」

 

 出発しようとしたが、モモンは震えていた。

 

エル「どうしたの?モモン」

 

モモン「……今、ファウードの中にいる魔物の中で最も強い魔物が来るよ……!」

 

ティオ「何を言ってるのよ、そんな魔物が来る気配なんて…」

 

 モモンの言った通り、空間に穴が開いてゴームが来た。

 

ゴーム「ゴォ~~ッ!」

 

パティ「な、何なのよ…、あの魔物…」

 

清麿「モモンの言ってた魔物はゴームだったのか!」

 

恵「あの魔物を知ってるの?」

 

ガッシュ「レインの所に行ってる時に戦った事があるのだ」

 

ミール「あら、あの時の奴等じゃない。リオウに言われて渋々見回りをしてたけど、ここで会うなんて奇遇ね。全員ぶっ飛ばしてやろうっと」

 

パティ「冗談じゃないわよ!こんな所でやられてたまるものですか!」

 

チェリッシュ「こっちもぶっ飛ばしてやるわよ!」

 

清麿「みんな、ゴームはモモンが言った通り、強さはファンゴ達やザルチムとは比べ物にならん!気を引き締めてかかるんだ!」

 

アリシエ「待った!清麿は何人か連れて先に行くんだ!」

 

ガッシュ「だが…」

 

リーヤ「ゴームは空間移動してどこへでも行けるんだ!それで、リオウはその能力に目を付けてゴームを自分達の所に引き込んだんだよ」

 

アリシエ「だから、いくら逃げてもゴームは空間を移動して追いかける事ができる。ゴームから逃げるには誰かが足止めをしなきゃいけないんだ!それに、今はゴームと戦う事よりもファウードを魔界に帰す方法を見つけるのだ先だ!だから清麿、何人かを連れて早く逃げるんだ!ファウードに詳しいガッシュがいれば探索はそう難しくないはずだ!」

 

 悩んだ後、清麿はすぐに決断した。

 

清麿「俺とガッシュ一緒に行くのはティオ、コルル、パティ、チェリッシュの4組にする」

 

恵「私達を?」

 

フォルゴレ「私は残る事にするよ。女を守るのが男の使命だし、キャンチョメは以前よりも強くなったからね。清麿、ガッシュ、バンビーナ達を頼むよ」

 

清麿「ああ!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

モモン「僕も残るよ!」

 

ウォンレイ「私も」

 

サンビーム「私とウマゴンも残る。だが、いざとなれば何人かを乗せて清麿の元へ急ぐからな」

 

清麿「みんな、死ぬなよ!」

 

 ティオ達と一緒にガッシュ達は進んでいった。

 

ミール「あんた達だけでゴームに勝つつもり?大した事なさそうな魔物ばっかりね」

 

リーヤ「見た目で判断するなよ、じゃじゃ馬娘が!」

 

ミール「あんた、可愛いマスコットの癖に私をじゃじゃ馬呼ばわり!?ふざけるんじゃないわよ!!」

 

リーヤ「僕は可愛いマスコットじゃない、勇敢な戦士だ!」

 

ウォンレイ「(何だか、大人げない言い争いだな…)」

 

 ミールとリーヤの言葉のぶつけ合いに一同は呆れていた。

 

 

 

 

 ティオ、コルル、パティ、チェリッシュペアの4組と一緒にガッシュペアは進んでいた。

 

清麿「咄嗟に考えたが、一緒に行くメンバーはガッシュ以外は全員女の子になっちまったな」

 

恵「でも、清麿君はどんな事があっても私を絶対に置いていかずに連れて行きたかったでしょ?」

 

清麿「まあな」

 

 清麿と恵は手を繋ぎながら進んでいた。それをしおり達は微笑ましく見つめながら進んでいた。すると、何かの声がした。

 

コルル「何か声がするよ」

 

 先の方には三つ首の化け物がいた。

 

ティオ「へ、変な化け物がいるわ……」

 

ガッシュ「あれはデゴスミアというファウードの体内にいる魔物なのだ」

 

恵「とりあえず、気付かれないように静かに移動しましょう」

 

 静かに移動しようとすると、ティオが引っかかって転んでしまった。

 

ティオ「きゃっ!」

 

ガッシュ「ティオ、だいじょう」

 

???「ウホホホーン!」

 

 転んだ時に思わずティオが大声を出してしまったせいでデゴスに気付かれてしまい、デゴスが迫ってきた。

 

パティ「こんな時に見つかっちゃうなんて~!!」

 

清麿「みんな、大急ぎで逃げるぞ!!」

 

 ガッシュ達はデゴスから慌てて逃げた。

 

パティ「ちょっと、こいつ足が速いわよ!」

 

チェリッシュ「こうなったら戦うしかないようね!」

 

ニコル「ギガノ・コファル!」

 

 チェリッシュのギガノ・コファルを受けてもデゴスはダメージもなく、進んでいた。

 

チェリッシュ「ギガノ・コファルが効いてない…?」

 

しおり「頑丈すぎるわよ!こんな敵、どうやって倒すの!?」

 

清麿「こいつをすぐに倒すには俺が今から指差す体の位置にギガノ級以上の術をぶつけるんだ、チェリッシュ!」

 

 前の戦いでバリーがデゴスを倒した時のように清麿は頑丈なデゴスの弱いポイントを見つけた。

 

清麿「あそこだ!」

 

ニコル「ギガノ・コファル!」

 

 指定したポイントにチェリッシュはギガノ・コファルをぶつけ、デゴスを倒す事に成功した。

 

ティオ「やっと倒せたわね…」

 

ウルル「追いかけられたり頑丈だったりで苦労しましたからね…」

 

 そう言っていると、今度は別のデゴスが2体も出てきた。

 

コルル「またデゴスが出たよ!」

 

清麿「いちいち相手にしてる時間はない!パティ、ウルルさん!」

 

ウルル「ばい!オルダ・アクロン!」

 

 水の鞭をぶつけ続けてデゴスの目を眩ませた後、ガッシュ達は先へ進んだ。

 

パティ「また追ってこないでしょうね…?」

 

ガッシュ「デゴスは頭が悪いから一度目を眩ませてから逃げてしまえばもう追ってこないのだ」

 

ティオ「ねえ、ガッシュはこれからどこへ向かうの?」

 

ガッシュ「アリシエが私の親友、レインは心臓の辺りで待っておると言ってたから心臓に行くのだ」

 

コルル「そのガッシュの友達のレインってどんな魔物?」

 

ガッシュ「簡単に言うと、強くて大きな魔物なのだ」

 

パティ「少なくとも女の子じゃないわよね?」

 

ガッシュ「そうなのだが…」

 

パティ「それを聞いて安心したわ」

 

チェリッシュ「レインって言ったら、あのだいぶ前に大暴れしていた魔物?」

 

ニコル「チェリッシュは知ってるの?」

 

チェリッシュ「会った事はないけど名前は聞いた事があるわ。大人でも手におえない強さと体の大きさを持つ魔物だって」

 

コルル「大人でも手におえない強さと体の大きさ……」

 

 ティオ達の想像したレインの姿は自分達の3倍以上の大きさとムキムキマッチョの魔物だった。

 

ガッシュ「ウヌ?レインが近くにおるぞ!」

 

しおり「どの辺り?」

 

ガッシュ「あっちからなのだ!」

 

 レインの魔力をガッシュは感じ取り、魔力を感じる方向へ進んだ。

 

ウルル「どこにレインがいるのですか?」

 

ガッシュ「この辺りからなのだ」

 

しおり「この辺りって……」

 

???「ここはファウードの心臓だ」

 

 声と共にレインが現れた。

 

ティオ「うわっ!清麿、恵、新手の敵よ!」

 

コルル「おまけにザルチムやファンゴ達よりも強そうだよ……!」

 

 レインの姿に清麿以外のパートナーとチェリッシュは警戒し、ティオとパティはガッシュの後ろに隠れ、コルルはチェリッシュの後ろに隠れた。

 

ガッシュ「探していたのだ、レイン」

 

レイン「よく来てくれた、ガッシュ」

 

コルル「ガッシュ…、あの魔物が……レイン…?」

 

ガッシュ「そうなのだ」

 

ティオ「あの怖い顔をした魔物がガッシュの友達?」

 

パティ「何かの間違いじゃないの?」

 

レイン「はははっ、俺がガッシュの友達のレインだ。怖がることはない」

 

 獣のような顔が嘘みたいに穏やかになった。

 

しおり「あ~、びっくりしちゃった」

 

恵「私達のイメージと違ってたから驚いたわ」

 

ウルル「(普通、あんな魔物を見たら誰でも敵だと思い込みますからね…)」

 

ティオ「ガッシュも初対面の頃のレインは怖くなかった?」

 

ガッシュ「ウヌ、初めて会った頃のレインよりもティオの方が怖いからのう」

 

 素直に言ってしまうガッシュの言葉にティオは激怒した。

 

ティオ「私の方がレインより怖い!?何ですって、ガッシュ!!」

 

ガッシュ「ぐあああっ!!」

 

 激怒したティオによってガッシュは首を絞められた。

 

パティ「ガッシュちゃんに何するのよ!」

 

レイン「(凄い迫力だな…)ところで、君達がガッシュの友達か?」

 

ティオ「そうよ。私はティオ。パートナーは大海恵よ」

 

パティ「パティで、私のパートナーはウルル」

 

コルル「コルルだよ。パートナーの名前はしおりねーちゃん」

 

チェリッシュ「私の名前はチェリッシュ。パートナーはニコルよ」

 

レイン「ティオにパティ、コルルにチェリッシュか。他にもガッシュには友達がいると聞いているが、その友達はどうしたんだ?」

 

清麿「それが、ゴームを足止めするために…」

 

レイン「そうだったのか…」

 

ニコル「レインのパートナーは?」

 

レイン「俺のパートナーはカイル。だが、カイルは呪いのせいで容態が悪くなってて、安静にしているんだ」

 

 レインの傍に寝かせているカイルの姿があった。

 

しおり「ひどい、こんな子にまでリオウは呪いをかけたというの?」

 

チェリッシュ「あんな事をしたからには、リオウの体のあちこちに風穴を空ける必要があるわね…」

 

恵「でも、ヨポポと違ってリオウに手を貸さなかったのはどうして?」

 

レイン「決まってるだろ?ファウードを止めるというガッシュとの約束を破れないからさ。リオウに手を貸したらカイルだって怒る。カイルを助け、ファウードを止めるためにも俺はずっとガッシュを待っていたんだ」

 

ガッシュ「レイン、ずっと私を待ってくれてありがとうなのだ!」

 

清麿「よし、レインも加えてモニターのある部屋へ行こう。ガッシュ、案内を頼むぞ」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

 ガッシュの案内に従い、一同は心臓のモニターのある場所に来た。

 

ウルル「ここの地図、ファウードの口の所にあったのよりも詳しく道が記されていますよ」

 

清麿「ガッシュ、ファウードを魔界に帰す装置はどこにあるんだ?」

 

ガッシュ「モニターを操作してくれぬか、清麿」

 

 清麿がモニターを操作すると、見覚えのある場所が出た。

 

ガッシュ「あそこなのだ!」

 

 そう、その場所は前の戦いでもファウードを魔界に帰す装置があった場所だった。

 

清麿「だったら、すぐに……」

 

 行こうとした途端、清麿達パートナー一同はふらついていた。

 

ティオ「どうしたの?」

 

恵「魔物との戦いの後にもう14時間以上も歩き続けたもの。途中でファウードの回復液は飲んだけど、何だか、疲れてめまいがするわ…」

 

しおり「念のため、腕時計を付けてきたけど、もう深夜の0時よ」

 

ニコル「もう深夜とはね…。気持ち的に疲れた気分になるのも無理はないわ…」

 

ウルル「どうしますか?ここで寝ましょうか…?」

 

清麿「だが、急がないと…」

 

???「みんな大丈夫か?」

 

 そこへ、ウマゴンペアとモモンペアが来た。

 

コルル「ウマゴン、モモン、無事だったのね!」

 

ウマゴン「メル!」

 

サンビーム「アリシエから清麿達と合流してくれと言われて私とウマゴンはエルとモモンと一緒に清麿達を追って来たんだ」

 

エル「モモンのお陰で道に迷わずに済みましたわ」

 

パティ「他のみんなはどうなったの?」

 

サンビーム「それが…」

 

 

 

 

回想

サンビーム『ゴームとの戦いの最中にアリシエが呪いによる衰弱で倒れてしまったが、何とかキャンチョメのお陰で勝負は私達が優勢だった』

 

ミール「もう、こんなに厄介な魔物がいたなんてむっかつく~!!」

 

キャンチョメ「はははっ!鉄のフォルゴレと無敵のキャンチョメ様がいればお前なんか簡単にやっつけられるんだぞ!」

 

ウォンレイ「まさか、キャンチョメが今の私達の要になるとは…」

 

リィエン「デボロ遺跡の時には想像もつかなかったある」

 

フォルゴレ「キャンチョメ、もう一度ゴームの術をぶつけてやるぞ!」

 

キャンチョメ「うん!」

 

???「オルシド・シャロン!」

 

 突然の不意討ちによって放たれた光の外にいたウマゴンペアとモモンペア以外は拘束されてしまった。

 

サンビーム「何っ!?」

 

ウォンレイ「この術は…!」

 

 ウォンレイ達を拘束する術を使っていたのはザルチムだった。ガッシュのテオザケルをまともに喰らって既にボロボロではあったものの、まだ動けた。

 

エル「まだ動けたんですか!?」

 

ザルチム「くそったれ…、この俺がこんな醜態を晒す羽目になるとはな…。ミール、こいつらをひっ捕らえてリオウの元へ連れて行くぞ…」

 

ミール「あいつらをひっ捕らえるの?」

 

ザルチム「俺はボロボロだからな…お前がやれ」

 

ミール「わかったわよ…」

 

ゴーム「ゴォ…」

 

アリシエ「ウマゴン、モモン、清麿達の元へ行くんだ!君達だけでもここから逃げろ!」

 

ウマゴン「メル…」

 

サンビーム「…この場は止むを得ないか……。エル、モモン、清麿達の元へ行くぞ!」

 

エル「はい!」

 

モモン「うん!絶対にガッシュの所へ行って呪いをかけられたパートナーと世界中の人々をどっちも救う方法を見つけてから助けに来るよ!」

 

サンビーム「ゴウ・シュドルク」

 

 サンビーム、エル、モモンを乗せたウマゴンはその場を去って行った。

 

 

 

 

サンビーム「という感じで私達は何とかゴームから逃げてここまで来たんだ」

 

しおり「そうだったのね…」

 

チェリッシュ「モモン、馬の坊や、よくここまで来たわね」

 

モモン「ありがとう」

 

ウマゴン「メル!」

 

清麿「モモン、早速だが、ファウードを魔界に帰す装置がある場所の位置は記憶できるか?」

 

モモン「あそこだけファウードと違う感じがする。だから、案内もできる」

 

清麿「そうか。俺達は寝るから、道を覚えたら起こしてくれないか?」

 

ウルル「もう寝なければいけない時間ですからね…」

 

ティオ「それじゃあ恵、寝るわね。おやすみ」

 

恵「おやすみなさい、ティオ、清麿君」

 

 精神的疲労がたまった一同は寝る事にした。

 

レイン「モモンは寝ないのか?」

 

モモン「レインこそ寝ないの?」

 

レイン「俺はガッシュを待っている間に十分な睡眠をとったからな」

 

モモン「じゃあレイン、僕と分担して寝ているガッシュ達をファウードを魔界に帰す装置のある部屋まで運ばない?僕が案内するから」

 

レイン「そうだな。大半は俺が抱えるとしよう」

 

 モモンとレインは寝ているガッシュ達を抱えてファウードを魔界に帰す装置がある部屋まで向かった。

 

モモン「みんなスヤスヤ寝てるね」

 

レイン「それだけ疲れがたまっていた証拠だ。俺達も運び終わったら寝て疲れをとろう」

 

 そして、その部屋に着いた後、モモンとレインも寝た。

 

 

 

 ガッシュ達がいなくなった後、ゼオンペアがモニターがある部屋に入り込んだ。

 

ゼオン「なるほど、ファウードの構造はこうなっているのか…。幸い、連中はガッシュ達の方に視線が釘付けになっているから俺達は自由行動し放題だ」

 

デュフォー「これからどうする?」

 

ゼオン「ガッシュ達の後を追う。面白い物が見つかるかも知れんぞ…」

 

デュフォー「もし、ファウードを移動させる装置でもあったらどうする?」

 

ゼオン「もし、魔界に帰すためのタイマーが設定されているのであれば、デュフォー、お前の力でロックを解除して再度設定し直せばいい。例えば…数百分単位でセットするとかな。それと、エネルギー供給がカットされないようにするっていうのもリオウ達を困らせる上で面白そうじゃないのか?」

 

デュフォー「ああ。そうすればガッシュ達も、リオウ達も必死になって戦い合うだろうな」

 

ゼオン「どっちも俺達のためにもっと働いてもらうぞ……」

 

 様々な裏工作を行うため、ファウードを魔界に帰す装置がある部屋へ向かうガッシュ達をゼオンが追っていた。




これで今回の話は終わりです。
今回はザルチムやゴームの襲撃と清麿達のファウード探索、そしてファウードを魔界に帰す装置がある部屋を特定するという話です。
ザルチムがあっさりやられたのは相手が悪かったためで、決してザルチムが弱い訳ではありません。
話の最後に出てきたゼオンペアはこれからガッシュ達に気付かれないように後を追ってとんでもない事をします。
次の話はアースとカルディオの仲間入りとファウードを魔界に帰す装置のタイマーをセットとファウードの封印を解きますが、ゼオンの暗躍も描かれます。


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LEVEL60 ファウードの封印を解け!

某国

 そして翌朝、アポロはアルベールらを迎えに行っていた。

 

アルベール「休暇をとるのが遅くなって済まない!」

 

アポロ「すぐにニュージーランドへ向かうぞ!ニュージーランドに着いた後、マリル王女達と一緒にファウードが復活した際の対策を考えよう!」

 

レイラ「ええ。アル、行くわよ!」

 

アルベール「おう!」

 

 

 

 

ファウード

 一方、ファウードの封印が解けるかどうかわからないのと、ガッシュ達の侵入等が重なり、リオウは苛立ちが募る一方だった。

 

リオウ「くそう、何たる様だ!ガッシュ達には逃げられ、おまけにファウードの封印が解けるかどうかわからんとは!」

 

ザルチム「リオウ、ウォンレイをひっ捕らえてきたぞ。これで足りるか?」

 

リオウ「いや、足りるかどうかわからん。アースが協力しないのなら、ウォンレイがいても足りん可能性が高い」

 

ザルチム「とすると、ディオガ級の術を持つ魔物の大半がいるガッシュ達をどうにかするしかないようだな」

 

 

 

 捕らえられたウォンレイ達は牢に入れられていた。

 

リィエン「清麿達、大丈夫あるか…?」

 

ウォンレイ「私達にできる事は清麿達を待つ事だけだ」

 

フォルゴレ「そう言えば、牢に入れられる時に『ウォンレイがいても力が足りない』とかの声が聞こえたよ」

 

キャンチョメ「もし、そうだったら、ジェムの命は…」

 

ウォンレイ「(みんな、準備を終えたら早く来てくれ。遅れたら取り返しがつかなくなってしまう…)」

 

 

 

 

ファウード 魔界に帰す装置がある部屋

 同じ頃、ファウードを魔界に帰す装置がある部屋の前では、ガッシュ達は夢を見ながらスヤスヤ眠っていた。

 

 

 清麿と恵は互いに夢の中では新婚生活を送っていた。

 

清麿「メグ、あと数か月したら赤ちゃんが生まれるな」

 

恵「そうね。マロ、私は赤ちゃんの名前は何にするか迷ってるの。マロはどういった名前にするの?」

 

清麿「う~ん……男の子の場合とか女の子の場合を考えると、正直どういった名前にするのか悩むなぁ…」

 

恵「よく考えてから決めましょう」

 

清麿「そうだな」

 

 

 

恵「清麿君、私は清麿君の事がとっても大好き……」

 

清麿「俺も大好きだよ、恵さん……」

 

 寝言でもお互いの事を言い合う2人であった。そんな中、モモンが起きた。

 

モモン「この感じは……みんな、みんな起きて!」

 

 モモンは慌ててガッシュ達を起こした。パートナー達は精神的疲労のせいでなかなか起きなかったが、魔物の方はすぐに起きた。

 

ティオ「どうしたの?」

 

モモン「こっちに来ているんだ。強い魔物が2体」

 

パティ「強い魔物って…」

 

ガッシュ「(この魔力はアースとカルディオだな……)」

 

???「そこにいる者は何奴?」

 

 今回は最短距離で先にガッシュ達がファウードを魔界に帰す装置がある部屋に来たため、アース達は後から来た。アースの放つ殺気で清麿達も起きた。

 

ガッシュ「清麿!」

 

清麿「殺気で目が覚めた。しっかり寝たから体力も心の力も満タンだ!」

 

しおり「それに、誰かが私達が寝ている間に運んでくれたのね」

 

レイン「大半は俺が運んだけどな」

 

サンビーム「まさか、カルディオが来るとはな…」

 

アース「ふん、よもや貴公らに先を越されていたとはな。バオウの使い手とその仲間達」

 

サウザー「カルディオ、お前の言った通りだったな」

 

カルディオ「パル」

 

サウザー「まさかとは思ったが、あの馬がこんな所にいたとはな」

 

アース「貴公ら、何の用かは知らんが、我が目的が達成が目前まできたこの時、何人たりとも邪魔はさせん!消えてもらうぞ」

 

サウザー「アース、他の魔物に存在がバレねえようにあんたに教えてもらった気配を消すって技をやってきたが…、もういいよな?」

 

モモン「(気配を?それで、僕も気付かなかったのか)」

 

サウザー「気を放ち、全力でこいつらと戦うぜ!」

 

 カルディオとアースは気配を消すのをやめた。

 

恵「待って、私達はあなた達と戦いに来たんじゃないの!」

 

清麿「俺達はファウードを止めるために来たんだ!」

 

アース「ならば、扉の向こうの装置をなぜすぐに起動させん!?今すぐに起動させなければチャンスはもう訪れないのだぞ!」

 

しおり「それって、リオウの呪いをかけられた人達に死ねと言ってるのと同じじゃない!」

 

コルル「アースとカルディオはそんなひどい事をして平気なの!?」

 

アース「某とて好きでやってる訳ではない!だが、この人間界を守るにはそれ以外に方法はない!」

 

サウザー「邪魔するんだったら容赦しねえぞ!例え何人束になって邪魔して来ようともぶっ飛ばしてやる!ディオギコル・ギドルク!」

 

 早速、サウザーはディオギコル・ギドルクを発動させた。

 

サンビーム「この場はやむを得ないか…。ディオエムル・シュドルク!」

 

 ウマゴンは炎の鎧を纏い、カルディオとの炎と冷気のぶつけ合いになった。

 

カルディオ「(ウマゴン、あの時、俺達は仲間達がいる事による底力を侮っていたからお前に負けた。だが、今の俺にもその思いはわかる。いや、それ以上の思いがある。そんな思いになれたのも…、お前のお陰さ!)」

 

 カルディオの冷気がウマゴンの炎を押した。

 

サンビーム「(あいつら、以前戦った時より強くなっている!一体、あれから何があったんだ?そもそもあいつらは他の魔物と手を組む事を嫌っていたはず。それがなぜ…?)」

 

サウザー「アース!」

 

アース「承知!」

 

 アースはガッシュ達に襲い掛かった。

 

パティ「来るわよ!」

 

ガッシュ「アース、聞いてほしいのだ!」

 

アース「問答無用!」

 

チェリッシュ「こうなったら、戦うしかないわね。ニコル!」

 

ニコル「ガンズ・ゴウ・コファル!」

 

 連射される宝石をアースは全て剣で弾いた。そして、ガッシュ達に振り下ろそうとした。

 

恵「セウシル!」

 

 ティオの盾でアースの剣は防がれた。

 

ティオ「そう言えば、あのアースって魔物は術を使ってこないわね」

 

ウルル「もしかすると、アースのパートナーも…」

 

アース「察しがついているようだな。その通り、我が本の使い手も呪いをかけられている!そして、封印を解かず、今すぐファウードを魔界に帰す事、それがこの子の意思だ!」

 

 エリーも呪いがかけられている事に既にその事を知っているガッシュペア以外は衝撃を受けた。

 

恵「じ、自分の命を捨ててでもファウードの封印を解かないの…?」

 

ニコル「そんな事って…」

 

ガッシュ「アース、お主は本当にエリーが死んでもいいと思っておるのか!?」

 

アース「それは…」

 

エリー「これで世界が救われるのだ…。ならば…、俺の命一つくらい…」

 

清麿「ふざけんじゃねえ!!どうして自分の命の価値を軽く考える!?」

 

エリー「何だと…!?」

 

恵「あなたが死んだら悲しむ人達だって多いのよ!今すぐに思い直して!」

 

清麿「…俺はな、ある男に会った事がある。そいつは今のお前のように『自分はいつ死んでもいい』とか言っていたんだ。お前を見てるとそいつを思い出すんだよ!世界が救われるために命を捨てるとか、いつ死んでもいいとか考えるんじゃねえ!俺達が何としても命を救うぞ!」

 

ガッシュ「(清麿の言う男はデュフォーの事だな…)」

 

レイン「アース、お前だって本当はパートナーを助けたいはずだ!それに、お前達の目的もファウードを止める事だろう。ガッシュに力を貸してくれ!」

 

 ガッシュ達がエリーを救おうとしている姿にアースは剣を下げた。

 

エリー「どうした?アース!」

 

アース「……貴公らの協力を認めよう。だが、装置の動かし方はわかるのか?」

 

ティオ「清麿を甘く見てもらっては困るわよ。清麿はアンサー・トーカーだから動かし方もわかるのよ」

 

アース「アンサー・トーカー?」

 

ニコル「『どうすればいいのか』という疑問に関して瞬時に最適な答えが出せる人の事よ。戦闘はもちろん、こういった未知の文字の解読とかにも使えるの」

 

アース「そうか!だから、某の剣の特性もすぐにわかったというのか!」

 

清麿「ああ。それと、エリー達にかけられている呪いのタイムリミットは?」

 

アース「後、20時間だ。ここの次の日の日の出と共にリミットが来る」

 

清麿「次の日の夜明けか…」

 

エリー「アース、何をしている…」

 

エル「無茶をしてはいけません!」

 

チェリッシュ「あなたのような子を私達は放っておけないの。安静にしてなさい」

 

 エリーをカイルと一緒に安静にした。

 

サンビーム「清麿、ここからファウードの封印の場所までどれぐらいかかる?」

 

清麿「みんなをウマゴンで運ぶ事ができないから徒歩で行けば……最短距離だと最低でも2時間ぐらいはかかる」

 

パティ「かなり大変ね…」

 

ウルル「でも、そうしないとみんなを救う事はできませんよ」

 

 前の戦いの時と違い、清麿はアンサー・トーカーで機械の操作やタイマーのセット、ロックの解除などを行った。途中、休憩や食事、万一、アンサー・トーカーが使えなくなった時のための保険として魔界の文字の学習、次の夜明けに備えるための睡眠等を挟みながら行った結果、残り5時間となった。

 

アース「これが、アンサー・トーカーの力か……」

 

清麿「これで何とかなりそうだ(後は、ゼオンとデュフォーがここへ来ない事を祈るだけだ。このロックは同じアンサー・トーカーだとすぐに外されてしまう…。一応はタイマーを変えられた時の事を想定して色々な仕掛けをしておいたんだがな…)」

 

恵「とすると…、これでファウードはすぐに魔界に帰ってジェム達を救えるのね!」

 

ニコル「でも、ゲルマディック海溝に沈めるなどの仕掛けをどうしてしたの?」

 

清麿「もし、タイマーが故障したり何者かに変更されてファウードを魔界に帰す装置が作動しなかった時の保険さ。それに、ファウードは泳げるらしいから沈める事はできなくても少しは時間を稼ぐ事はできるだろう」

 

サウザー「本当にどうにかなっちまったな……」

 

カルディオ「パルパルモーン(サウザーも本当は嬉しいんだろ。仲間のエリーの命を救える上、故郷の妹も守られるからな)」

 

しおり「今から出発する?」

 

清麿「ああ。途中で休憩をとったりしながらファウードの封印を壊しに行こう!」

 

ガッシュ「よかったのう、アース!」

 

アース「清麿、本当にかたじけない…」

 

レイン「流石はガッシュとそのパートナーだ。相反する事を同時にこなすとは」

 

 エリーが助かるのにアースは涙を流していた。そして、一同は部屋を出た。その時、チェリッシュの足が止まった。

 

ティオ「どうしたの?チェリッシュ」

 

チェリッシュ「デボロ遺跡の時の悪寒がまたしたのよ」

 

モモン「後、僕が半年以上も前に感じたような強大な魔物の気配を一瞬だけど感じたんだ…」

 

コルル「どんな気配だったの?」

 

モモン「それが……ガッシュよりも強大な気配だったんだ……」

 

ガッシュ「(私より強大な気配……。もしや、ゼオン!)」

 

ニコル「とりあえず、今は行きましょう」

 

 ガッシュ達が部屋から出た後、入れ替わるようにゼオンペアが来た。アースが扉の鍵穴に貼っていた魔法の紙を丁寧に剥がし、マントを合い鍵代わりにして扉を開け、部屋に入った。

 

ゼオン「ガッシュの奴、仲間と共にこの部屋で何をしていたんだ?」

 

 辺りを見回すと、コンピュータなどがあった。

 

ゼオン「これは?」

 

デュフォー「ファウードを魔界に帰す装置だ。まぁ、逆にファウードを人間界に送る事も可能だがな」

 

ゼオン「デュフォー、このコンピュータを調べてくれ」

 

 アンサー・トーカーの力を使い、デュフォーが操作すると、タイマーなどの情報が出た。

 

デュフォー「このタイマー、ファウードの封印が解けるとすぐに魔界に帰されるようにセットされている」

 

ゼオン「こんなものを魔界に帰すだと?舐めた事をしてくれるな、清麿、ガッシュ」

 

 ふと、ゼオンはある事が思い浮かんだ。

 

ゼオン「そうだ、このタイマーを利用してやろう」

 

デュフォー「タイマーの機能をだと?」

 

ゼオン「魔界に帰る時間をファウードの封印が解けてから数百分単位で経過しないと作動しないようにセットし直すんだよ。そうすれば、ガッシュ達は焦るぞ。そして、念のためにエネルギーカットができないようにすればリオウ達は大慌てになるし、この装置を止めるためには部屋に来てぶっ壊すなりするしかなくなる。やれるな?デュフォー」

 

デュフォー「ああ。俺のアンサー・トーカーを以てすれば簡単な事だ」

 

 デュフォーはコンピュータを操作し、タイマーをファウードの封印が解けてから410分後に魔界に帰るようにセットし、さらにはエネルギー系統のシステムに細工をしてファウードを魔界に帰す装置へのエネルギーカットができないようにした。

 

デュフォー「他の機能はどうする?」

 

ゼオン「今は放っておけ。この部屋を出る前に清麿がかけたのと同じロックをかけるぞ」

 

 清麿がしたのと同じロックをデュフォーはかけた後、ゼオンに部屋の扉に鍵をしてもらってから魔法の紙を再び貼り、ゼオンと共にその部屋を去って行った。

 

 

 

 

ホテル

 時は遡って清麿がタイマーのセットなどを行っていた頃、アポロ達はニュージーランドのホテルで今後の対策会議をしていた。

 

パムーン「つまり、明日の夜明けにファウードの封印を解かなければジェムは死ぬという事だな?」

 

マリル「その通りじゃ」

 

レイラ「となれば、ガッシュ達はファウードの封印を解くというのね」

 

アポロ「問題はその封印が解けた後だ。ファウードの封印が解けたら彼等の命が危なくなる。それをどうにかするためにも、朝早くに僕達はファウードへ行き、封印が解けた直後に清麿達を助けなければいけない」

 

マリル「カラオム、明日の夜明けは何時ごろか?」

 

カラオム「現地のニュース番組によれば、次の日の夜明けは5時40分頃です」

 

マリル「よし、ファウードへの出発は午前3時頃とする。皆の者達は早く睡眠をとり、次の日に備えるのじゃ」

 

 各自、次の日に備えて早く寝る事にした。

 

パムーン「(次の日は長い一日になりそうだな…)」

 

 

 

ファウード

 前の戦いの時と違い、時間の余裕もあるため、体力の消耗を抑えるためにガッシュ達はゆっくり移動していた。安静にしているエリーとカイルをサウザーは見つめていた。

 

恵「大丈夫よ、サウザー君。エリーちゃんとカイル君は助かるわ」

 

サウザー「う、うるせえ!気安くオイラを君付けするなよ!それに、オイラには関係ねえ」

 

サンビーム「関係ない?そんな事ないだろ?私達と戦った時、お前は魔物同士と手を組んで戦う事が大嫌いだったぞ。それがなぜ、アース達と一緒に行動してたんだ?」

 

しおり「どうしてなの?教えてくれたっていいじゃない」

 

サウザー「…アース達とはここに来る途中で会ったんだ。ウマゴンの臭いを追いかけて偶然にな」

 

 

 

回想

 それは、アース達がファウードに潜入する前に事だった。アースと遭遇したカルディオは戦闘に突入した。

 

サウザー「カルディオ!」

 

カルディオ「パルパルモーン!」

 

 カルディオの冷気を受けてアースは膝を付いた。

 

サウザー「てめえ、オイラ達の事を舐めてるのか!?なぜ術を使わねえ?そのまま倒されたいのか!?」

 

アース「黙れ…!その台詞は某を倒してから言ってもらおう…!」

 

サウザー「強がってる口聞いてんじゃねえや。望み通り、倒してやらぁ!」

 

???「ジャン・ジ・ソルド」

 

 カルディオが突撃しようとした所、剣が落ちてきた。

 

サウザー「やっぱり術を使えるじゃねえか。あ!?」

 

 エリーの様子には流石のサウザーも驚きを隠せなかった。

 

サウザー「な、何だ…?どうなってやがるんだ…?」

 

アース「エリー、いけませぬ!呪文を唱えては体力が奪われます!」

 

エリー「だま…れ…」

 

 呪いと病によってエリーは倒れてしまった。

 

エリー「今、こいつに倒されては…世界が…滅ぶ…のだ……」

 

 

 

 

サウザー「オイラには、あいつと同じぐらいの妹がいるんだ。そんな奴が死にかけているのを見て、戦えるかよ」

 

恵「サウザー君はとても優しいのね」

 

サウザー「だから、オイラを君付けすんじゃねえ!」

 

ティオ「少しは素直になりなさいよ!」

 

パティ「あら、ティオは人の事を言えるのかしら?」

 

ティオ「何ですって!?パティ!!」

 

 こんな状況でもパティとティオの喧嘩は始まった。

 

アース「あの娘達の喧嘩を止めなくてよいのか?」

 

清麿「いや、止めない方がいいぞ……」

 

チェリッシュ「あの子達の喧嘩は仲がいい証なのよ。気のすむまでやらせてあげればいいわ」

 

 そんなこんなでファウードの封印の場所へ向かう一方、ウォンレイはリィエンと共に牢から出された。

 

ザルチム「出ろ。お前にも封印を解くのを手伝ってもらうぞ」

 

ウォンレイ「私が加われば足りるのか?」

 

ザルチム「アースが来ないのなら、足りるかどうかはやってみなければわからん」

 

フォルゴレ「じゃ、じゃあジェムは……」

 

リィエン「そんな事ないある!きっと、清麿達は何とかする方法を見つけるに決まってるある!」

 

キャンチョメ「そうだぞ!ガッシュが来ればお前達の悪事なんか!」

 

ザルチム「黙りやがれ、アヒルが!」

 

 キャンチョメを殴ろうとしたザルチムだったが、ウォンレイに止められた。

 

ウォンレイ「この2人に危害を加えると私は一切協力しないぞ。それでもいいのか?」

 

ザルチム「(ちっ、あのアヒルは力はないが、下手をするとガッシュ並に厄介な奴だ。術を消したりコピーしたり、本当はこの場で消しておきたかったがな…)」

 

 キャンチョメの厄介さに着目し、ザルチムはすぐに消そうとしたが、ウォンレイに邪魔されてザルチムはキャンチョメを消すのを諦め、ウォンレイペアを連れて行った。

 

 

 

飛行機

 そして、アポロ達はファウードに向かっていた。

 

アポロ「わかってるかい?ファウードの封印が解かれて清麿達が攻撃されそうになった場合はビクトリームが攻撃して少しでも怯ませ、僕がロップスの術でファウードの手を止める。その隙にレイラとパムーンは術で足場を作り、清麿達を飛行機に逃げ込ませるんだ。ファウードが攻撃に移る前に来れたらビクトリームと僕の番は省略する」

 

ビクトリーム「ぶるぁああっ!私の出番を潰すのか!?」

 

アポロ「だから、さっき言ったのはファウードの封印が解かれてから清麿達が攻撃されそうになった時だよ」

 

アルベール「だが、ファウードを止められる時間はどれぐらいだ?」

 

アポロ「新しく覚えたディオガ・ディノ・リグノオンだと……せいぜい数分程度といった所だ。下手をすると1分未満かも知れない」

 

ランス「厳しいな……」

 

パムーン「だが、やるしかない」

 

レイラ「ファウードを止めるためにもね」

 

ロップス「かう!」

 

 

 

ファウード

 リオウ達は最大呪文を放つ準備をしていた。

 

リオウ「さぁ、一斉に術を放て!」

 

アドラー「アルセム・ガデュウドン!」

 

ルン「バビオウ・グノービオ!」

 

チータ「ディオガ・ラギュウル!」

 

ジェット「エマリオン・バスカード!」

 

 まずは4体の術がファウードの鍵の方へ放たれた。

 

カーズ「ディオガ・ガズロン!」

 

ベルン「ディオガ・ギニスドン!」

 

アリシエ「シャオウ・ニオドルク!」

 

ジェム「ディオガ・ドレミケル!」

 

リィエン「ゴライオウ・ディバウレン!」

 

 次に5体の術が放たれた。

 

バニキス「ファノン・リオウ・ディオウ!」

 

ラウシン「ジボルオウ・シードン!」

 

ミール「ディオボロス・ザ・ランダミート!」

 

 最後に3体の術が放たれた。しかし、ファウードの封印は解かれなかった。

 

リィエン「封印が解けないある!」

 

キャンチョメ「やっぱり、力が足りなかったんだよ!」

 

フォルゴレ「そうしたら、ジェムとアリシエは……」

 

???A「グラード・マ・コファル!」

 

???B「ジオウ・レンズ・ザケルガ!」

 

 誰もが諦めかけたその時、上空からガッシュの術が放たれてファウードの封印が解かれ、アリシエ達の呪いも解けた。それと同時に数発の銃弾がリオウを貫いた。

 

リオウ「ぐあああっ!!な、何だ!?」

 

???「これは呪いをかけて坊やの友達のパートナーを殺そうとしたお前への怒りの銃弾だよ!」

 

 銃弾を撃ったのはウマゴンに乗ってリオウを狙撃したチェリッシュだった。

 

リオウ「お、おのれ……!」

 

チェリッシュ「最後に1発、受け取りな!」

 

 今度はリオウの肩を銃弾が貫通した。それと同時にガッシュ達も来た。

 

フォルゴレ「チェリッシュじゃないか!」

 

キャンチョメ「さっきの狙撃は凄かったぞ!」

 

ウォンレイ「よし、今から出すぞ!」

 

 ウォンレイは手刀で牢を破壊し、キャンチョメペアを出した。

 

キャンチョメ「やったぁ!」

 

ジェム「やっと体が動くようになったわ!」

 

ウォンレイ「よかったな、ヨポポ」

 

ヨポポ「ヨポポイ!」

 

清麿「いや、浮かれるのは早いぞ!本当に大変なのはこれからだ!」

 

ガッシュ「(また、あの動くファウードを見る事になろうとは…。過去に戻った以上、こういった光景を見るのはいずれ来ると思ってはいたが……)」

 

 封印が解かれるのと同時にファウードの封印を果たすための建造物が破壊され、ファウードがその姿を現した。

 

 

 

飛行機

 その光景を飛行機で向かっていたマリル達は驚きを隠せなかった。

 

マリル「あれがファウード……」

 

カラオム「何という大きさだ!高さだけでもエベレストの半分近くはあるぞ!!」

 

マリル「いよいよ動き出したか…」

 

パムーン「こいつを止めるのは骨が折れそうだな…」

 

レイラ「でも、やるしかないわよ」

 

アルベール「こんな化け物にはとっとと退治しないとな」

 

 

 

飛行機

 同じ頃、バリー、ブラゴ、テッドを連れてきているナゾナゾ博士もファウードの封印が解かれた事をアポロから聞いた。

 

ナゾナゾ博士「何じゃと!?ファウードが動き出した!?」

 

テッド「博士、ガッシュ達は大丈夫なのか!?チェリッシュは」

 

バリー「わめくな、テッド。それぐらいでガッシュ達はくたばりはしない」

 

ブラゴ「どういった連中がいるのだろうな?ファウードには」

 

 

 

オーストラリア

 オーストラリアにいたアシュロンは何かに気付いた。

 

リーン「ダンナ、奴がいるんですか?」

 

アシュロン「ああ。抑えているようだが、確かに奴の気配がする」

 

リーン「俺達も向かうしかないようですね。ファウードに」

 

 

 

ファウード 体内

 ファウードが目覚めたのはリオウに気付かれないように潜入していたゼオンペアも察知した。

 

ゼオン「いよいよ動き出したか、ファウードが」

 

デュフォー「もうすぐ俺達は違う景色を見られるのだな?」

 

ゼオン「ああ。リオウ、今はファウードが目覚めたのに浮かれているがいい。ファウードを手に入れ、最後の勝者になるのは…この俺になるのだからな。俺達がセットしたタイムリミットは6時間50分、清麿以外ではエネルギーカットも含め、途中で解除する事は一切不可能。さぁ、この状況でどうする?リオウ、ガッシュ」

 

 ファウードが目覚めた事に浮かれるリオウを嘲笑うようにゼオンの邪悪な野望が動き出し始めるのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回は清麿がファウードを魔界に帰す装置のタイマーをセットし、様々なロックをかけてからファウードの封印を解く話ですが、アニメ寄りにしてるものの、アニメ展開をやりつつ、原作の装置の防衛も両立させるために清麿達が去った後、ゼオンとデュフォーが装置がある部屋に来て、タイマーをいじってファウードが魔界に帰る時間が封印が解けてから6時間50分後にしまうという展開にしました。ちなみに、誰が装置の防衛をするのかはまだ秘密です。
次の話はガッシュ達が再びファウードに突入します。


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LEVEL61 二つの道

ファウード

 遂にファウードの封印が解かれた。

 

清麿「大変なのはここからだ……」

 

???「皆の者、早く飛行機に飛び移るのだ!」

 

 声がした方を向くと、そこにはマリル王女らを乗せた飛行機が浮かんでいた。

 

恵「マリル王女!」

 

アルベール「今から足場を作る!その足場に乗って飛行機に飛び移るんだ!」

 

ガッシュ「パムーンとレイラも来てくれたのか!」

 

ビクトリーム「ぶるぁああっ!!この私も忘れるな!」

 

清麿「今はそんな事してる場合じゃないだろ!」

 

アルベール「ミベルナ・マ・ミグロン!」

 

ランス「ファルセーゼ・バーロン!」

 

 月と大量の星が出てきた。

 

レイラ「オール!」

 

アルベール「ロール!コネクト!」

 

 レイラとパムーンはそれぞれが操作する月と星を動かし、清麿達がいる足場と飛行機の間に足場を作った。

 

パムーン「足場ができたぞ、急げ!」

 

ガッシュ「みんな、飛行機に移るのだ!」

 

ティオ「だけど、レインは大きすぎて!」

 

カイル「心配ないよ、レインは人の姿にもなれるんだ」

 

サンビーム「そんな事はいいから、急いで移るぞ!ディオエムル・シュドルク!」

 

サウザー「ディオギコル・ギドルク!」

 

清麿「ラウザルク!」

 

リィエン「レドルク!」

 

 それぞれの肉体強化の術である程度人数がまとまった状態で急いでガッシュ達は飛行機に乗り込み、10秒にも満たないうちに全員が移る事に成功した。

 

マリル「これより、この場を離脱せよ!」

 

 全員が移った所で飛行機はその場を離脱した。それと同時にファウードも動き出した。

 

リオウ「くそう、俺に銃弾を撃ち込んだからにはこの場で始末してやろうと思ったのに奴等に援軍がいたとは……!」

 

 

 

飛行機

 ファウードの様子を飛行機から清麿達は見ていた。

 

コルル「ファウード、本当に動いたよ!」

 

しおり「巨大な魔物とは聞かされてたけど…、実際に動く所を見ると恐ろしいわ……」

 

 ファウードはクジラを手で追った際に近くの島を破壊した。その光景にはティオ達はもちろん、その光景を一度見たガッシュでさえ再び見ても驚きを隠せなかった。

 

清麿「島が……」

 

ガッシュ「消えたのだ…」

 

恵「清麿君、見て!」

 

 今度はファウードがクジラを丸のみにしてしまった光景にまたしてもガッシュ達やまだ足場にいるロデュウ達も驚きを隠せなかった。

 

アリシエ「クジラを丸のみにしただと…!」

 

パティ「スケールが大きすぎるわよ!!」

 

ウルル「こんな怪物が本気で暴れたら下手をすると地球そのものがなくなるかも知れませんよ!」

 

清麿「いや、タイマーが故障したりしなければもうすぐファウードは魔界に帰るはずだ」

 

キャンチョメ「すげえ!ジェム達の命を救い、ファウードを止めるのを両立させちまうなんてよ!」

 

フォルゴレ「で、後どれぐらいでファウードは魔界に帰るんだ?」

 

清麿「あと5、4、3、2、1!」

 

 しかし、ファウードに何の変化もなかった。

 

ウォンレイ「清麿の仕掛けが作動しないぞ!」

 

チェリッシュ「故障でもしたの?」

 

清麿「待ってろ。今、ファウードを魔界に帰す装置がどうなのか確かめてみる」

 

 清麿は今のファウードを魔界に帰す装置がどうなっているのかアンサー・トーカーで調べてみた。すると、とんでもない答えが出た。

 

サンビーム「驚いているようだが、何か悪い答えでも出たのか?」

 

清麿「…俺の悪い予想が的中してしまった…。ファウードを魔界に帰す装置のタイマーが何者かの手でファウードの封印が解けてから410分後に魔界に帰るように変更されていた…」

ティオ「そんな!410分後って言ったら、6時間50分後よ!」

 

恵「その犯人はリオウなの?」

 

清麿「犯人はリオウじゃない。リオウやリオウのパートナー、それにリオウに従っている魔物達に俺のかけたロックを解除した上で変更する事なんてできやしない。俺のかけたロックを解除した上で変更できるのは…ゼオンのパートナーで俺と同じアンサー・トーカーの力を持つ男、デュフォーしかいない!」

 

レイン「ゼオンのパートナーがタイマーを変更したというのか!?」

 

コルル「確か、デュフォーは」

 

清麿「デュフォーはサンビームさんの引っ越しの時に俺達と会っている!」

 

恵「デュフォーが私達と…?」

 

 ゼオンのパートナーが自分達と既に会っているのが信じられなかった恵としおり、ウルル、サンビームだったが、引っ越しを手伝ってくれた無愛想な男の事を思い出した。

 

恵「まさか、あの人がデュフォー!?」

 

清麿「そうだ。俺もまさかあいつがデュフォーだとは思わなかった……」

 

 

 

 

ファウード

 ロデュウ達も驚き一色だった。

 

チータ「こんなのが操れるの…?」

 

キース「はっはっはっ!この力がキース様の物になるのだ!あっ、そ、そうだった!リオウはどこだ!?」

 

ファンゴ「確か、銃弾を撃ち込まれてからどこへ行ったのか…?」

 

リオウ『ファウードよ、勝手に暴れるのは許さん!お前の主はこのリオウだ!命令を待て!』

 

 動こうとしていたファウードはリオウの命令で大人しくなった。

 

ロデュウ「ファウードが大人しくなりやがった……」

 

 そこへ、リオウの立体映像が映った。しかし、所々にチェリッシュによって撃ち込まれた銃弾の傷が残っていた。

 

リオウ『その通り、この俺様はファウードを自由に操る事ができる』

 

ベルン「ギガノ・ギニス!」

 

チータ「ギガノ・ラギュウル!」

 

 キースとロデュウは攻撃したが、浮かんでいるリオウは立体映像なため、

 

リオウ『はははっ、貴様らなどの魂胆などわかっているさ』

 

ロデュウ「すり抜けた?」

 

キース「くそう!勝負しろ、リオウ!」

 

リオウ『バカ共よのう。俺だけがファウードを操れると知っておきながら、わずかながらこの俺からファウードを奪えると思っている。ファウードの力を舐めるなよ!ファウードよ、主砲放て!』

 

 ファウードは清麿がかけたロック通り、照準を海に向けて主砲を発射した。

 

 

 

飛行機

 ファウードの主砲の威力は飛行機で離れた場所から見ていたガッシュ達も驚いていた。

 

サウザー「なんじゃこりゃ~~~っ!!」

 

エル「凄まじい威力ですわ……」

 

ジェム「ちょ、こんなのと直接やりあうの!?」

 

清麿「(あ~、死ぬかと思った…。主砲の照準のロックが解除されてなくてよかった…)心配はいらない。後、10秒で第2の罠が作動する。マリル王女、飛行機をケルマディック海溝へ!」

 

マリル「ケルマディック海溝?わかった、そこへ向かうとしよう」

 

 清麿達を乗せた飛行機は清麿が仕掛けた第2の罠、瞬間移動装置によるファウードの転送先、ケルマディック海溝へ向かった。

 

 

 

ファウード

 リオウはロデュウ達を従わせた後、清麿達が乗せた飛行機を追っていた。

 

リオウ『奴等め…、この俺にここまで恥をかかせたからには生かしては帰さ』

 

 瞬間移動装置が作動し、ファウードはケルマディック海溝へ飛ばされた。

 

リオウ『な、何だと!?』

 

 ファウードはケルマディック海溝へ転送された。しかし、ファウードが泳ぐ事はガッシュから話を聞いた清麿の想定の範囲内で、ファウードは泳いだ。

 

 

 

ファウード コントロールルーム

 ファウードがケルマディック海溝に瞬間移動した後、回復液で傷を癒したリオウはある事で困っていた。そこへ、コントロールルームに転送されたザルチムが来た。

 

リオウ「何でロックが解除されない!?その上、ファウードを魔界に帰す装置のエネルギー供給も止められない!どうなっているんだ!?」

 

ザルチム「やられたな。他にも様々な機能にロックがかけられている。ファウードの武器を撃っても照準を空や海へ向けるようになっているぞ」

 

リオウ「くそう!奴等の中に知将がいたとは…。ロックが外せない上にエネルギー供給も止められないのでは、ファウードは後6時間47分後に魔界に帰されることになる……!」

 

ザルチム「奴等がそんな時間にセットしてファウードを魔界に帰すと思うのか?」

 

リオウ「何だと?」

 

ザルチム「奴等なら、すぐにファウードが魔界に帰るようにセットするはずだ。これは俺の想像なのだが、奴等がファウードのタイマーをセットした後、何者かがそのタイマーにかけられたロックを外し、俺達と奴等が焦るように時間をセットし直した上でエネルギー供給が止められないようにしてからロックをまたかけたのだろう」

 

リオウ「バカな!俺達に知られないようにした上で行動し、俺達では外せない奴等のロックを解除してから様々な細工をした奴がいるだと!?」

 

ザルチム「俺はそうとしか考えられん。それに、ずっと悪い予感もしてるからな…」

 

リオウ「頭に来たぞ…!こうなったら、最初の攻撃目標は日本にしてやる…!」

 

 

 

 

飛行機 

 飛行機の中ではこれからどうするかが話し合われていた。そんな中、リオウの立体映像が出た。

 

リオウ『貴様ら、俺を散々邪魔してくれた挙句、6時間50分後にファウードを魔界に帰すようにしたからには日本を攻撃してやる!覚悟しろ!』

 

パティ「何が邪魔ですって!?あんたなんかギタギタのボロボロにしてやるわよ!!」

 

清麿「攻撃目標が日本か…!」

 

 別の飛行機に乗っているアポロは通信で話し合いに参加していた。

 

アポロ『清麿、ファウードが魔界に帰るのが封印が解けてから6時間50分後というのなら、これからどうするんだい?』

 

清麿「方法は一つ、再びファウードの体内に行き、脳のコントロールルームを押さえるしかない!だが、同時にファウードを魔界に帰す装置も守らなくてはならない。その二つを両立させなければ、ファウードを止める事はできない」

 

アース「しかも、リオウは体内の魔物を使い、ファウードを魔界に帰す装置を破壊しに来るだろう。装置を守るメンバーは」

 

パムーン「その役目、俺達に任せてもらおうか」

 

 装置を守るメンバーを決めようとした途端、パムーンが名乗りをあげた。

 

ガッシュ「パムーン、お主が引き受けるのだな?」

 

パムーン「ああ。装置を守るなら、実力者でなくてはならんだろ?そこは千年前の魔物の生き残りである俺とレイラ、ビクトリームに任せてくれないか?」

 

アリシエ「千年前の魔物?」

 

アース「某も風の噂で聞いた事がある。ゾフィスが目覚めさせたという魔物の生き残りが貴公らであるか?」

 

パムーン「そうだ」

 

レイラ「こう見えても私達、新しい呪文も習得してデボロ遺跡の時よりも強くなってるのよ」

 

ビクトリーム「だから、私達に任せるがいい」

 

エリー「そのYの者は信頼できるのか?」

 

ビクトリーム「ベリーシット!!Vだ!」

 

アルベール「騒ぐな!騒ぐだけで無駄な体力を消費するぞ!」

 

清麿「とりあえず、ファウードの回復液を持ってくれ」

 

 清麿はファウードの回復液を詰めたペットボトルをアルベール達に渡した。

 

ランス「これは?」

 

清麿「このファウードの回復液は俺達がファウードの体内を捜索していた時にペットボトルに詰めたものだ。これを飲めば心の力が回復する」

 

恵「全部で60本あるから、3本ずつあなた達にあげるわ」

 

ランス「ありがとう」

 

アルベール「清麿、恵は既に君の婦人も同然の状態じゃないか?俺から見ても羨ましいぞ」

 

 アルベールのからかいに清麿と恵は顔を赤くした。

 

レイラ「アル、緊張をほぐすためとはいえ、ちょっとからかいすぎじゃない?」

 

アルベール「でも、2人は夫婦同然の仲のようにしか見えなかったから、そういった緊張をほぐすのをしたんだけどな」

 

ランス「地図はあるのかい?」

 

清麿「俺が口から最短距離でファウードを魔界に帰す装置へ行ける道を書いた」

 

 その地図を清麿はアルベールに渡した。

 

パムーン「この通りに行けばいいのだな?」

 

ガッシュ「ウヌ」

 

チェリッシュ「さ、ファウードのコントロールルームを目指すのと、装置の防衛で話がまとまった所で、行きましょう!」

 

ガッシュ「チェリッシュの言う通りなのだ!」

 

清麿「みんな、ファウードを止めるためにも行くぞ!」

 

 ガッシュ達が一致団結する中、ヨポポペアは暗い様子だった。

 

ウォンレイ「ヨポポ、君は私達を裏切ってしまったのを悔やんでいるのかい?」

 

ヨポポ「ヨポポイ……」

 

ジェム「ごめんなさい、私が呪いをかけられたせいで…」

 

リィエン「そんな事より、今はファウードを止めるのが先ある」

 

ガッシュ「マリル殿、ファウードに近づいてくれぬか?私達は飛び降りてファウードに再び入り込む!」

 

マリル「よかろう」

 

カラオム「では、全速前進!」

 

 パイロットはファウードの正面に向かった。

 

 

 

 

ファウード コントロールルーム

 ガッシュ達の動きをリオウとザルチムは見ていた。

 

リオウ「奴等め、とことん俺達の邪魔をする気のようだな。ザルチム、この海溝を抜けるのは後、どれぐらいだ?」

 

ザルチム「このスピードだとしばらくかかるな」

 

リオウ「ふん、来るなら来い。覚醒したファウードは要塞と何ら変わりないのだからな」

 

 

 

 

ケルマディック海溝

 ケルマディック海溝の海上では、飛行機から飛び降りたガッシュ達はカルディオの術で作り出した足場の上にいた。

 

ガッシュ「レインが肉体強化の術を持ってて助かったのだ」

 

カイル「ギガノ・アボルクは凄かったよ」

 

レイン「俺もこういった術が使えるようになって嬉しいぞ」

 

アース「お陰で全員を突入させる事ができるぞ!」

 

しおり「どうやって体内に侵入するの?」

 

清麿「奴は息継ぎの時、口を大きく開ける!その時、一瞬でいい!一瞬だけ、奴の動きを止めるんだ!その隙に、一気に口の中に転がり込む!」

 

フォルゴレ「よし、清麿!隙は私達が作るぞ!」

 

キャンチョメ「任せなよ!」

 

フォルゴレ「ディカ・ポルク!」

 

 キャンチョメの幻影にファウードは反応した。

 

清麿「今だ!」

 

 仲間達の運搬を担当しているカルディオ、ウマゴン、レインは運んでいる仲間と共に一気にファウードに入り込む事に成功した。

 

 

 

 

ファウード

 無事にガッシュ達は全員侵入する事に成功した。

 

清麿「何とか入れたな。パムーン達は俺が渡した地図通りに装置がある部屋に向かってくれ!」

 

アース「それと、装置がある部屋の鍵を渡す!鍵をかければファウード体内の魔物はすぐには突破はできぬはず!」

 

パムーン「わかった!」

 

レイラ「装置は私達が6時間50分間も死守するわ。だから、ガッシュ達はコントロールルームへ行ってリオウを倒すのよ!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

 パムーン達は装置のある部屋に向かい、ガッシュ達はコントロールルームへ向かった。

 

ニコル「清麿、道はわかるの?」

 

清麿「ああ、大丈夫だ!喉の奥のモニタールームから道があるのは確認している!ここからは俺のアンサー・トーカーで脳へ行ける道を探す!みんなはその後について来てくれ!」

 

 

 

ファウード コントロールルーム

 リオウとザルチムはガッシュ達の動きを伺っていた。

 

ザルチム「リオウの一族がファウードを人間界に送る前に改装したが、あいつら、迷わずに進んでやがる」

 

リオウ「あの清麿の指示の正確さの秘密は何だ?」

 

ザルチム「奴は超能力の一種でも持ってるんじゃないか?」

 

リオウ「超能力だと!?」

 

ザルチム「人間の中にはごく一部だが、不思議な能力を持った人間が生まれたり、事故などを経て、後天的に能力を得たりする奴がいるとラウシンから聞いた」

 

ラウシン「これは噂なんだが、超能力の一種ではないかというものに学問などのあらゆる問題の答えを瞬時に出せる力を持った人間がいるそうだ」

 

リオウ「あらゆる問題の答えをすぐに出せるだと!?そんなバカな話があるか!」

 

ラウシン「もっとも、これはあくまで噂でしかない。本当かどうかはわからんがな…」

 

 ラウシンが噂で聞いた能力こそ、アンサー・トーカーであった。

 

 

 

 

ファウード

 ガッシュ達は進んでいったが、ガッシュは違和感を感じていた。

 

ガッシュ「(脳へ行く道の構造が私が経験した戦いの時と違うのだ…)」

 

 清麿が操作すると、エレベーターが起動した。

 

サンビーム「これは、エレベーター」

 

清麿「ああ。これに乗れば、脊髄の上部まで一気に移動できる」

 

パティ「だったら、すぐに全員乗って行くわよ!」

 

アース「しかし、罠や奇襲を仕掛けるのにはもってこいの場所では?」

 

清麿「俺の出した答えではエレベーターに罠は仕掛けられていない」

 

アース「だが、出口に敵が待ち受けている危険性もある」

 

恵「でも、他に道はないのよ」

 

アリシエ「やるしかない。そうだろう?清麿」

 

清麿「みんな…」

 

 ガッシュ達はエレベーターに入った。

 

ガッシュ「皆の者、一気に行くぞ!」

 

 エレベーターが起動し、上に上がっていった。

 

 

 

 

ファウード コントロールルーム

 ザルチムはガッシュ達の様子を探っていた。

 

リオウ「どこまで入り込んで来た?」

 

ザルチム「今、奴等は……第6脊髄のホール」

 

リオウ「ほう、なかなか早いな。一度、侵入しているだけの事はある」

 

ザルチム「いいのか?リオウ。何もしないでこんなところまで奴等を引き入れて」

 

リオウ「それが狙いだ。ここまで入り込めば逃す心配もない。奴等の目的もわかっていればそれに備えるのも容易い。第6脊髄のホールにはロデュウが待ち構えているからな。他の連中と違って契約はしていないが」

 

ザルチム「そうだな。さっき調べて見たが、ガッシュ達と別れて装置の方へ向かう魔物が3体いる」

 

リオウ「あの装置を守るつもりだな……。どこまでも小賢しい連中だ…!」

 

 それに加え、ザルチムは浮かない様子だった。

 

リオウ「どうした?心配事でもあるのか?」

 

ザルチム「いや…、何でもない」

 

リオウ「そうか……」

 

ザルチム「(ガッシュ達は脅威だが、封印を解く以前から感じ続けている嫌な予感の正体が気になる。恐らく、ガッシュ以上の脅威だ…。そいつがタイマーをいじったのだろう…)」

 

 

 

ファウード

 エレベーターを抜けた先にはたくさんの道がある部屋に来た。

 

コルル「穴がたくさんあるよ」

 

清麿「ガッシュ、この部屋を知ってるか?」

 

ガッシュ「私が前に探検した時とは構造が違っておる」

 

しおり「ガッシュ君でもわからない道なんて……」

 

ウォンレイ「困ったな…」

 

ニコル「どこが正解なのかわからないわ」

 

アース「かと言って、通路の一つ一つを確認している時間はない」

 

清麿「モモン、コントロールルームへと続く道はわかるか?」

 

モモン「あっち」

 

パティ「モモンの指差した方へ」

 

モモン「それと、あっち」

 

 モモンが二つの道を指差した事で一同は困惑した。

 

ティオ「何それ、どういう事!?」

 

モモン「二つの道が上へと続いているのはわかる。でも、どっちが正しい道なのかわからない」

 

サンビーム「なら、どっちが正しいのか清麿に答えを出してもらおう。清麿、どっちが正しいんだ?」

 

清麿「俺の出した答えはどっちもコントロールルームへ行ける道だ。だが、どっちも色々な敵や罠があるとも出ている」

 

アース「となれば、全員で一つの道を進むと罠で全滅する事もあり得る…」

 

チェリッシュ「どう進むの?」

 

清麿「俺達には時間がない。一つの道を全員で進んで全滅するというリスクを避けるために俺とアースを中心に二つのチームに分かれて進む」

 

アース「うむ、ファウードのコンピュータを扱えるのは某と清麿だけだからな」

 

 早速、チーム編成をした。

 

清麿「まず、俺のチームは俺とガッシュ、恵さん、ティオ、しおりさん、コルル、ウルルさん、パティ、ニコルさん、チェリッシュ、リィエン、ウォンレイ、アリシエ、リーヤ、ジェムにヨポポとする」

 

アース「某の方は某とエリー、キャンチョメ、フォルゴレ、ウマゴン、サンビーム、カルディオ、サウザー、モモン、エル、レイン、カイルだ」

 

エリー「(清麿の方は戦闘力重視で私達は機動性と柔軟性重視か)」

 

ガッシュ「レイン、アース達の事を頼むぞ」

 

レイン「ああ。邪魔をする魔物達はこの俺とカイルがぶっ飛ばしてやる!」

 

キャンチョメ「僕も忘れてもらったら困るよ!」

 

清麿「だが、キャンチョメは体内魔物との戦いでは相性が悪い。体内魔物はレインとかに任せるんだ」

 

キャンチョメ「…強くなれたけど、特定の状況でないと僕は活躍できないんだね…」

 

フォルゴレ「だが、かなり進歩した事に変わりないじゃないか、キャンチョメ!」

 

キャンチョメ「そうだね」

 

アリシエ「僕達のやるべき事は、清麿とアースを無事にメインコントロールルームへ連れて行く事」

 

サンビーム「ああ、それが最優先だ」

 

ニコル「清麿とアースを必ずメインコントロールルームへ送りましょう!」

 

清麿「行こう、時間がない!」

 

ガッシュ「みんな、みんなの力でファウードを、誰一人死なせずにファウードを止めるのだ!」

 

???「おっと、誰か忘れてねえか?」

 

 声と共にロデュウペアが現れた。

 

ガッシュ「ロデュウ!(ウヌ?ゴデュファの契約をした後の姿ではないのう…)」

 

ウォンレイ「私達を邪魔しに来たのか!」

 

ロデュウ「当たり前だ。てめえらはムカつくんだからな。そして、リオウもだ!てめえらをぶっとばしてからリオウをぶっ飛ばす!」

 

恵「こんな時に敵が現れるなんて!」

 

 そんな中、ジェムとヨポポが前に出た。

 

ジェム「みんな、先へ行って!こいつはヨポポと私が倒すわ!」

 

コルル「でも、ヨポポ1人じゃ…」

 

ジェム「時間がないんでしょ?だったら、先に行って!私達もすぐに追いかけるから!」

 

清麿「…みんな、先へ進むんだ!」

 

ロデュウ「てめえら、先へ進む前に待ちな」

 

 先へ進もうとしたガッシュ達をロデュウは止めた。

 

アース「何か用でもあるのか?」

 

ロデュウ「1つ忠告する。お前達が進む先の魔物はファウードと契約して以前戦った時よりもパワーアップしている。それに、もうゴーム以外は完全にリオウの手下と化しているから話なんか通じない。躊躇せずに全力でぶちのめせ!」

 

しおり「リオウの手下なのにどうしてこの事を?」

 

ロデュウ「何を勘違いしてやがる?俺はリオウの手下になった覚えはねえ。リオウの方がてめえらより気に入らねえから情報を流してるんだよ!あのチビをぶちのめしたら今度はてめえらだ!それまで首を洗って待ってろよ!」

 

パティ「もう、敵か味方かわからない言い方じゃない!」

 

ウルル「人それぞれという奴ですよ」

 

ガッシュ「とりあえず、急ぐのだ!」

 

 双方とも急いだ。

 

ウォンレイ「(ヨポポ、やむを得なかったとはいえ、君は私達を裏切ったから自分を犠牲にしないといけないと謝罪ができないと思っているのかい?)」

 

 何となくウォンレイには自分達を裏切ってしまった罪悪感故にヨポポが捨て石になってみんなを行かせた事がわかっていた。

 

 

 

ファウード コントロールルーム

 ロデュウがゴデュファの契約の事をガッシュ達に話した事にリオウは激怒していた。

 

リオウ「ロデュウめ、ガッシュ達にゴデュファの契約の事を話したり、俺の手下になった覚えはないとかやりたい放題やりやがって!」

 

ザルチム「ま、ロデュウが反逆した所でファンゴ達が潰しにかかるだろう」

 

リオウ「もうファンゴ達は俺の忠実な手下だ。罠とも知らずに俺に対抗するために契約したバカな連中だ」

 

ザルチム「ロデュウとゴームは契約しなかったが、奴等はこのゴデュファの契約の危険性を直感で感じたのだろうな」

 

 

 

 

ファウード ???

 ある場所でゼオンはデュフォーと共に隠れていた。

 

ゼオン「どうやら、始まったようだな」

 

デュフォー「どうする?俺達もそろそろ動くか?」

 

ゼオン「いや、まだだ。しばらく様子を見る」

 

デュフォー「タイマーの書き換えが終わった後は退屈だな」

 

ゼオン「そう言うな。これも全てを手に入れるためだ」

 

デュフォー「新しい景色をみるため、か」

 

ゼオン「ああ、そうだ」

 

デュフォー「ザケル」

 

 ゼオンが手を出したのを見たデュフォーはザケルを発動させた。電撃により機械が起動し、モニターが映った。

 

ゼオン「踊れ、ゴミ共よ!ふふふ、はははははっ!!」

 

 リオウ一味やガッシュ達の様子を見て、ゼオンは邪悪に笑った。




これで今回の話は終わりです。
今回はファウードの突入とアニメの二手に分かれる話です。
今小説ではアニメの展開をやりつつ、原作のファウードを魔界に帰す装置の防衛を両立させるためにはどうすればいいのか考えた結果、タイマーが改ざんされ、更にエネルギーカットもできなくされたという展開が思いつきました。
アニメ寄りですが、ゴデュファの契約も登場します。
次はロデュウとヨポポの戦いです。


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LEVEL62 緑の戦士と翼の不良の最後

ファウード ???

 ある部屋でゼオンは考え事をしていた。

 

デュフォー「ゼオン、どうした?」

 

ゼオン「ああ、ちょっとクリアと戦った時の事を思い出してな」

 

デュフォー「クリアか…」

 

 

 

 

回想

 それは、イギリスでガッシュが見つからずにゼオンが苛立ってガッシュを探していた時の事だった。

 

ゼオン「くそっ、ガッシュはどこにいる!?」

 

デュフォー「焦るな。焦っても何も始まらないぞ」

 

ゼオン「どこだ!ガッシュ、どこにいる!?」

 

 そんな時、ゼオンはある力に気付いた。

 

ゼオン「強い魔物の気配だ。そいつをぶっ飛ばして気晴らしでもするぞ!」

 

 その強い魔物こそ、クリアであった。

 

クリア「随分気が立っているようだね、雷帝ゼオン。何かあったのかい?」

 

ゼオン「やかましい!俺は今、かなり機嫌が悪いんだ!お前をぶっ潰してやる!」

 

クリア「全く、雷帝がここまで短気な性格だったとはね。ヴィノーも発音ができないのに雷帝と遭遇するとは…。仕方ない、魔界を滅ぼす使命を邪魔されなくないから、ここで消すとするか。本当なら、呪文を使いたかったけど、ヴィノーがあれじゃあ使えないし、本気になれば呪文抜きでも倒せそうだ」

 

ゼオン「魔界を滅ぼすだと!?ここまで聞いたからには俺もお前を生かしては帰さん!!」

 

 ゼオンはクリアに向かっていったが、クリアはゼオンのパンチを軽くいなしていった。

 

クリア「かなりのスピードとパワーだね。でも…僕には勝てないよ!」

 

ゼオン「やかましいと言ってるだろ!!」

 

 ただでさえガッシュが見つからずに頭に血が上っていたゼオンはさらに激怒し、クリアに連続でパンチを仕掛けたが、クリアに全ていなされた。

 

デュフォー「(ゼオン、冷静になれ。クリアはゼオンの動きについていくので精一杯だ。だから、後はお前が使うなと言っているあの術を使えば…)」

 

ゼオン「この野郎が…!」

 

デュフォー「ゼオン、頭を冷やせ!腹が立つのはわかるが、頭を冷やさないと見えるものも見えなくなるぞ!」

 

ゼオン「それぐらいわかってる!こいつ、かなりやるぞ。デュフォー、ラウザルクとザグルゼムも使っていい」

 

デュフォー「珍しいな。俺に使うなと言っていた二つの呪文の使用を許可するとは…。(それだけ、クリアが強いという証拠か…)」

 

クリア「その二つの呪文を使えば君は僕に勝てるというのかい?」

 

ゼオン「ああ。その面をグチャグチャにできる程にな。やれ、デュフォー!」

 

デュフォー「ラウザルク!」

 

 ガッシュのラウザルクと同じようにゼオンに雷が落ち、ゼオンの身体能力が強化された。

 

クリア「それは肉体強化の術かい?それを使った所で」

 

 再びゼオンの所を見ると、ゼオンはいなかった。

 

クリア「どこだ!?」

 

ゼオン「ここだ!」

 

 クリアが声に反応した途端、ゼオンのパンチがクリアの顔面に直撃した。その直後にゼオンはクリアの脇腹を思いっきり蹴った。

 

クリア「ぐほっ!」

 

ゼオン「一発でやられんとはな。気晴らしに何度も殴る事ができるからちょうどいい」

 

クリア「この程度じゃ僕には…」

 

 クリアはゼオンにパンチを打ち込もうとしたが、ラウザルクで強化されたゼオンには攻撃は一切当たらず、逆にゼオンの攻撃を受け続ける事になった。ゼオンのラウザルクの持続時間が切れる頃には、クリアはあちこちに殴られた跡ができ、血も吐いていた。

 

クリア「まさか…僕は術を使えないとはいえ、ここまで追い詰められるとは…」

 

ゼオン「お前、確か魔界を滅ぼすのが使命とか言ってたな。なぜ滅ぼそうとする?」

 

クリア「それは簡単さ、僕は魔物を滅ぼすために生まれてきたからさ」

 

ゼオン「それは違うだろ?魔界を滅ぼしたいのには何か理由があるはず。例えば…、辛い境遇だったから、その仕打ちを自分にした奴等への復讐とか、世の中が腐りきってるからだとか、そういうのじゃないのか?」

 

クリア「だから言ってるだろう?僕は魔物を滅ぼすために生まれ、それが使命だと」

 

ゼオン「そんな理由はあり得ない。そもそも、お前はどうして自分が魔界を滅ぼしたいのか考えた事はあるのか?」

 

クリア「そ、それは…」

 

ゼオン「考えた事がないようだな。お前の話を聞いてて思ったが、お前からお前自身の魔界を滅ぼしたいという情熱を感じないぞ。まるで…お前は何かに操られていて、それをお前は自分の使命と勘違いしているようだ」

 

 ゼオンの言葉で追い詰められ、自分のアイデンティティを揺るがされたクリアは余裕を失い、激怒した。

 

クリア「ふざけるな!!僕が操られているだと!?それは何かの間違いだ!僕は…僕は魔界を滅ぼすために生まれてきたんだ!操られてて僕がそれを使命と勘違いしてるだと…?そんな事があってたまるか!!」

 

 激怒したクリアはゼオンに殴りかかったが、ゼオンは当初より頭が冷えて、デュフォーの指示を聞き、クリアのパンチを冷静にかわしていた。

 

ゼオン「どうした?本気になれば術なしでも俺を倒せるんじゃなかったのか?」

 

クリア「黙れ!」

 

 余裕のないクリアの隙を突いてゼオンは手を向けた。

 

デュフォー「ザグルゼム!ザグルゼム!」

 

 ザグルゼムはクリアの両腕に当たった。

 

クリア「こんな攻撃、全然痛く」

 

デュフォー「ソルド・ザケルガ!」

 

 ゼオンは電撃の剣でクリアに斬りかかった。クリアは白羽取りで受け止めようとしたが、ザグルゼムの効果を知らずにそうしたため、クリアの両腕に蓄積されているザグルゼムの連鎖反応でソルド・ザケルガの刀身が巨大化し、それをクリアは受け止め切れずにまともに受けてしまった。

 

クリア「ぐああっ!!な、何だ…?」

 

ゼオン「それをお前が知る必要はない」

 

デュフォー「ディオガ・アーロ・ザケルガ!」

 

 ゼオンの両手から発射された電撃の矢がクリア目掛けて飛んでいった。発射する際にデュフォーの指示通り、ゼオンはクリアの急所目掛けて電撃の矢を放ち、電撃の矢がクリアの急所に当たると、矢はクリアの体に刺さり、クリアは血を吐いた。

 

クリア「ごほっ…!」

 

デュフォー「ザグルゼム!ザグルゼム!」

 

 ザグルゼムがクリアと近くの木に当たった。

 

クリア「やはり…、滅びが必要だ…。ヴィノーが喋れるようになったら…」

 

ゼオン「違うな、滅ぶべきはクリア、お前の方だ!お前は魔物全てを皆殺しにするのを考えていたという大罪を犯した。これは王族の俺からの裁きだと思え!」

 

デュフォー「ジガディラス・ウル・ザケルガ!」

 

 破壊の雷神が姿を現した。それを見たクリアは横に逃げた。

 

クリア「横へ逃げれば…」

 

デュフォー「(あいつ、頭が悪いな。ザグルゼムのもう1つの効果を知らずにいるから、横によければジガディラスに当たらないと思い込んでいる…)」

 

 雷神から発射された電撃はザグルゼムの電気が蓄積されている木にぶつかり、ザグルゼムの連鎖により、その電撃はザグルゼムが撃ち込まれたクリアの方へ向かっていった。

 

クリア「そんな、電撃が僕を追いかけるなんて!ぐあああっ!!!」

 

 本来、ジガディラスはシン級に満たない術なのだが、ザグルゼムの連鎖反応によって威力はシン級クラスに上がり、その威力にクリアは耐えられなかった。

 

 

 

ゼオン「今思えば、あのバカをあそこで見つける事ができてラッキーだったな」

 

デュフォー「ゼオンが王になったらクリアはどうする?」

 

ゼオン「今、検討している所だ。公開処刑にするなり、狭間の世界に追い出すなり、色々考えている。少なくとも、さらに苦しめるために王の特権で消すつもりはない」

 

 

 

ファウード 魔界に帰す装置がある部屋

 清麿からもらった地図を頼りにパムーン達は体内魔物を蹴散らしながら進み、遂に部屋に到着した。

 

パムーン「これがファウードを魔界に帰す装置……」

 

レイラ「これをタイムリミットまで守り抜くのが私達の仕事よ」

 

ランス「これを7時間近くも守り抜くのか……」

 

アルベール「気が遠くなるほど長い時間だが、こいつを守り切れなかったら清麿の苦労がパァになる。だからやるしかないな!」

 

ビクトリーム「色々言ってたら私に倒されに来た雑魚が湧いてきたぞ」

 

 そう言っていると、体内魔物がやってきた。

 

パムーン「みんな、雑魚との戦闘では交代で戦いながら回復液を温存するんだ!」

 

レイラ「ええ!」

 

ビクトリーム「まずは私からだ。行くぞ、モヒカン・エース!」

 

モヒカン・エース「ラージア・マグルガ!」

 

 巨大なVのビームが体内魔物を一掃した。

 

ビクトリーム「ほう…、私の新しい呪文もなかなか美しいVを描いておる……」

 

パムーン「自分の術に見とれる暇があるなら、戦いに集中しろ!」

 

 体内魔物がビクトリームに襲い掛かった。

 

ビクトリーム「私の頭を狙っても無駄だ!分離!」

 

 体内魔物の攻撃をビクトリームは頭を分離させてかわし、照準を体内魔物に向けた。

 

モヒカン・エース「マグルガ!」

 

 マグルガ1発で体内魔物は消滅した。

 

ビクトリーム「貴様ら雑魚が私に挑むだけ無駄無駄無駄、ぶるぁあああっ!!」

 

 体を分離している間に体が体内魔物に袋叩きにされていた。

 

パムーン「あのバカ!調子に乗ってるからこうなるんだ。ランス!」

 

ランス「ファルガ!」

 

 ビクトリームを攻撃している体内魔物をファルガで一掃した。

 

パムーン「ビクトリーム、今から俺が奴等を一掃する。モヒカン・エースも心の力を可能な限り溜めるんだ」

 

 

 

ファウード 通路

 ガッシュ達はロデュウの相手をヨポポに任せ、先へ進んでいた。

 

ティオ「ヨポポ、大丈夫かな?」

 

パティ「案外大丈夫じゃない?」

 

コルル「でも、ヨポポは何だか思い詰めていたような様子だったよ。おいて行くのは…」

 

アリシエ「いいんだ、これで」

 

コルル「アリシエ…」

 

アリシエ「考えてみてほしい。これから先、どんな罠が待ち構えているのかも、何体の敵に遭遇するかもわからないんだ。みんなもこの際だからはっきりと理解してほしい。僕達の目的は、時間内にファウードを止めて魔界に帰す事だ!ガッシュと清麿を無事にメインコントロールルームへ送り届ける必要がある。それが僕とヨポポ、そしてみんなの義務なんだ!」

 

コルル「だけど…」

 

ウォンレイ「コルル、ヨポポの気持ちもわかってくれないか?ヨポポは一度挫けてしまった心を取り戻すために残ったんだ…」

 

チェリッシュ「だから、ヨポポのためにも私達は急ぎましょう!」

 

コルル「うん……」

 

しおり「(やっぱり、コルルにはヨポポの様子がおかしい事がわかってたのね…)」

 

ウォンレイ「(ヨポポ、君は王になれないと思って私達を行かせたというのか…。ジェムと世界を天秤にかけてジェムの方をとったが故に自分に王の資格がないと思って……)」

 

 そんな中、体内魔物が湧いてきた。

 

清麿「こいつらがガッシュの言ってた体内魔物か…」

 

ガッシュ「みんな、気を付けるのだぞ…」

 

ウォンレイ「私から行くぞ、とぁあ~~~っ!!」

 

 ウォンレイは素手で体内魔物をあっさりと蹴散らしていった。

 

ティオ「やるじゃない、ウォンレイ!」

 

恵「ガッシュ君が言うほど体内魔物は強くないみたいよ」

 

ガッシュ「(おかしいのだ、体内魔物はもっと強かったはずなのだが…)」

 

 そう言っていると、赤い体内魔物が現れた。

 

リィエン「ウォンレイで楽勝なら、私でも勝てるある!ハイ~~ッ!!」

 

 リィエンは赤い体内魔物に攻撃を仕掛けたが、ビクともしなかった。

 

リィエン「あの赤い奴、青い奴に比べて強いある!」

 

パティ「だったら、私達も呪文を」

 

清麿「赤い奴は俺とガッシュが一掃する。ウォンレイとリィエンは青い奴を一掃してくれ!」

 

ウォンレイ「わかった」

 

リィエン「行くあるよ!」

 

 青い体内魔物はウォンレイペアが呪文抜きで一掃した。

 

清麿「よし、みんな俺の後ろへ!奴等は直線のように集まった!ザケル!」

 

 消耗を抑えるため、ザケルで赤い体内魔物を一掃した。

 

清麿「どうやら、ガッシュの言ってた強さを持っているのは赤い奴のようだな」

 

ガッシュ「先へ進むのだ!」

 

 先へ進む際、恵が清麿と手を繋いだ。

 

恵「清麿君、こうやって手を繋げば少し幸せな気分になって移動中でも心の力が回復するでしょ?」

 

清麿「あ、ありがとう…」

 

 そのまま清麿は恵と手を繋いだまま走った。

 

 

 

 

ファウード 第6脊髄ホール

 ヨポポとロデュウは戦いを繰り広げていた。

 

ジェム「ギガノ・ミケル!」

 

チータ「ギガノ・ラギュウル!」

 

 ギガノ級同士のぶつかり合いだが、少し威力が弱いヨポポの方が押されていた。

 

ヨポポ「ヨポポイ!」

 

ジェム「ヨポポ!」

 

ロデュウ「大した奴じゃねえな。とっととぶっ潰して他の奴等をぶっ飛ばしてやる!」

 

チータ「油断は禁物よ、ロデュウ。そういった油断こそが足元をすくわれるのだから」

 

ロデュウ「そんな事ぐらいわかってる」

 

ジェム「私達は負けられないのよ!あんたを倒して清麿達に追いつかないと!行くわよ、ヨポポ!」

 

ヨポポ「ヨポポイ!」

 

ジェム「キロロ・ミケルガ!」

 

 超音波メスがロデュウに迫り、ロデュウは慌ててかわした。

 

ロデュウ「何なんだ?今の攻撃は…」

 

 かわした後、ロデュウの方にほんの少し切り傷ができていた。

 

ロデュウ「チビ助、まさかこんな技を持っていたとはな!」

 

チータ「だから言ったでしょ、油断してると足元をすくわれるって」

 

ロデュウ「ちっ、なら、とっととぶっ飛ばすぞ!」

 

 再びヨポポとロデュウのぶつかり合いが始まった。

 

 

 

ファウード コントロールルーム

 ロデュウとヨポポの戦いをリオウとザルチムは見ていた。

 

リオウ「ロデュウめ、ゴデュファの契約をしていればあんなチビなど一捻りで倒せるものを」

 

ザルチム「聞こえるか、ロデュウ。お前はさっさとゴデュファの契約を行ってあのチビを倒し、ガッシュ達を消すんだ」

 

ロデュウ『余計なお世話だ!俺はてめえらの手下じゃねえ!それよりザルチム、お前は人にゴデュファの契約をしろとかいう癖にどうしててめえはしねえんだ?』

 

ザルチム「そんなのはこの俺が契約する必要がないぐらい強いからだ」

 

ロデュウ『嘘だな。お前、自分が自分でなくなるのが嫌で契約しねえんだろ?情けねえよな、アリシエとかいう人間にビビった奴に契約をする根性なんざねえ!悔しかったら自分が契約して手本を見せてみろよ!』

 

 ロデュウに煽られてザルチムの怒りが溜まっていた。

 

ザルチム「くそったれが……くそったれが!リオウ、もうロデュウはいらん!あのチビ諸共デゴスミアで捻り潰せ!」

 

リオウ「俺もそう思っていた所だ。デゴスミアはかなりの強さの体内魔物だ。デゴスミアを送るぞ!」

 

 

 

ファウード 第6脊髄ホール

 ヨポポとロデュウの戦いはロデュウの方が優勢だった。

 

ロデュウ「力の差はこんなもんだぜ、チビ」

 

ジェム「これくらいで諦めないわよ……」

 

チータ「ロデュウ、最大呪文で決めるわよ」

 

ロデュウ「待ってたぜ!」

 

チータ「ディオガ」

 

???「ウホホホーン!」

 

 突如、声がしたためにチータは呪文を唱えるのをやめた。

 

ロデュウ「チータ、なぜ呪文を唱えない!?」

 

チータ「あれ……」

 

 現れたのは2体のデゴスだった。

 

ジェム「何なのよ、あれ!」

 

ロデュウ「リオウ、どういう事だ!?」

 

リオウ『ロデュウ、お前は俺の指示を無視しすぎた上、ザルチムをバカにした。よって、お前もヨポポ共々デゴスミアで始末する事にした。デゴスミア、その場にいる奴全員を始末しろ!』

 

デゴス「ルホホホーン!」

 

 デゴスはロデュウとヨポポに襲い掛かった。

 

チータ「ロデュウ、こいつが襲ってきた以上、ヨポポとは一時休戦してデゴスと戦うわよ!あなた達もいい?」

 

ジェム「もう、仕方ないわね…!」

 

ロデュウ「あんなふざけた野郎に邪魔されてたまるかよ!」

 

チータ「ギガノ・ラギュウル!」

 

 ロデュウのギガノ級の術をぶつけたが、デゴスには全く効いてなかった。

 

ロデュウ「ど、どうなってやがる!?こいつ、全然効いてねえぞ!」

 

ジェム「だったら、こっちの番よ!キロロ・ミケルガ!」

 

 キロロ・ミケルガも多少の切り傷がデゴスにできただけで大して効いてなかった。

 

デゴス「ルホホホーン!」

 

 デゴスは凄いスピードでロデュウとヨポポに迫り、2人を薙ぎ払った。

 

ジェム「ヨポポ!」

 

チータ「(まずいわね…。あのデゴスとかいう体内魔物に効きそうなロデュウの攻撃はディオガ・ラギュウルぐらいしかない…。でも、弱点があれば……)」

 

 

 

ファウード コントロールルーム

 デゴスに苦戦するロデュウとヨポポをリオウとザルチムは見物していた。

 

ザルチム「あのデゴスとかいう体内魔物は俺の予想よりもかなり強力だな。ヨポポはおろか、ロデュウのギガノ級の術さえ全く効いていない」

 

リオウ「あの魔物にはギガノ級以下の威力の術は通用せんからな。倒すにはディオガ級以上の術でなくてはならん。それに、ロデュウとヨポポが苦労して倒しても詰むようにデゴスの群れを送った。奴等が苦労してデゴスを倒す頃にはその群れが到着するだろう。その時こそ、本当の地獄の始まりだ…」

 

 

 

飛行機

 その頃、遂にテッド達を連れてきたナゾナゾ博士が到着し、マリルを乗せてホバリングしている飛行機にテッド達と一緒に移った。

 

ナゾナゾ博士「マリル王女、魔物達を連れて来たから遅れて済まない」

 

マリル「それで、誰が集まったのじゃ?」

 

テッド「俺達だぜ」

 

バリー「腕には自信がある」

 

ブラゴ「で、ファウードは今どこだ?」

 

カラオム「あそこです」

 

 指差した方に泳いているファウードの姿があった。

 

ナゾナゾ博士「あの巨体で泳ぐのか!?あれは!」

 

 そこへ、ある国の軍用機がファウードの迎撃に向かった。

 

ナゾナゾ博士「どこかの国の軍隊が出撃したようじゃ」

 

カラオム「あの巨体です。見つからない方がおかしいです!」

 

マリル「直ちに攻撃をやめさせるのじゃ!ファウードに攻撃したはならぬと!」

 

 マリルの指示も虚しく、軍用機はファウードの水鉄砲で撃ち落とされてしまった。

 

ナゾナゾ博士「正面から回り込むのは危険か…」

 

アポロ『それでしたら、僕とロップスがディオガ・ディノ・リグノオンでファウードの口を固定し、その隙にテッド達を送るのでどうでしょうか?』

 

マリル「そのディオガ・ディノ・リグノオンではどのぐらいファウードの口を固定できる?」

 

アポロ『計算では数分間程度です。ですが、実際は1分未満しか固定できないかも知れません』

 

バリー「1分程度あれば十分だ」

 

ナゾナゾ博士「今はそうするしかなさそうだ……。君達、準備はいいかい?」

 

ジード「俺もテッドもできてるぜ」

 

グスタフ「私とバリーもだ」

 

シェリー「私達も万全よ。ブラゴの新しい術を本格的に試すのには絶好の状況よ」

 

ナゾナゾ博士「私はかつて魔物のパートナーだった。だが、キッドが帰ってしまった以上、清麿君達を助けるのを君達に託すしかない」

 

アポロ『僕とロップスも君達をファウードの体内に入れるために行く事ができない。頼んだよ』

 

ロップス『かう!』

 

テッド「ああ、任せな!」

 

 

 

ケルマディック海溝

 アポロが乗っている飛行機はファウードの近くに来た。

 

アポロ「行くぞ、ロップス!」

 

ロップス「かう!」

 

アポロ「ディオガ・ディノ・リグノオン!」

 

 ディノ・リグノオンよりもかなり太い上、鋭利な刃物もついた複数のワイヤーが出現し、ファウードの口に引っかけて固定した。

 

アポロ「今だ!」

 

 テッドはジードのバイクに乗せてもらい、グスタフはバリーに器具類を付けてしっかり固定した上でバリーと共に降り、シェリーはフレイルと魔本だけを持ち、ブラゴと共に降りた。

 

ジード「行くぜ!」

 

グスタフ「ギガノ・ゾニス!」

 

シェリー「ディゴウ・グラビルク!」

 

 テッドペアはバイクで、バリーペアはバリーの術で、ブラゴペアは呪文でブラゴの身体能力を向上させた後、ブラゴはシェリーの持っているフルーレの鎖の部分を腕に巻き付けてからシェリーをディオガ・ディノ・リグノオンのワイヤーの部分目掛けて投げ飛ばし、ワイヤーに掴まる事ができたシェリーはそのまま鎖を収納してブラゴを引き寄せてからブラゴに肩車してもらい、ワイヤーの上を走らせてもらってファウードの口へ侵入する事に成功した。

 

マリル「頼むぞ、皆の者達よ…」

 

 

 

ファウード 第6脊髄ホール

 デゴスの猛攻にロデュウとヨポポは追い詰められていた。

 

ロデュウ「くそったれ……!ふざけた面をしてるのにあんなにタフでパワーもスピードもあるなんて信じられねえぜ!」

 

ヨポポ「ヨポポイ…」

 

ロデュウ「チータ、どれぐらい心の力は残っている!?」

 

チータ「ディオガ・ラギュウルは1発撃てるけど、それを使ってしまうともうギガノ級の術が1発しか撃てないわ」

 

ジェム「ヨポポ、まずは隙を作ってからディオガ・ドレミケルで一気に決めるわよ!」

 

ヨポポ「ヨポポイ!」

 

ジェム「キロロ・ミケルガ!」

 

 キロロ・ミケルガでも大したダメージにはならなかった。

 

ジェム「もう、これじゃあ隙が作れないじゃない!」

 

デゴス「ルホホホーン!」

 

 デゴスのタックルでヨポポはジェム共々弾き飛ばされた。

 

ヨポポ「ヨポポイ!」

 

 ロデュウの方もデゴスのパワーに押されていた。

 

ロデュウ「ぐあああっ!」

 

チータ「(あの怪物、私達の予想以上にパワーもスピードもタフさもすさまじい!このままだと……)」

 

ザルチム『ははははっ!ざまあないな、ロデュウ。これも俺をバカにした罰が当たったからだ。デゴス、ロデュウとチビをもっと痛ぶってやれ!』

 

 デゴスの猛攻は止まらず、ロデュウもヨポポもボロボロになった。そして、1体のデゴスがロデュウに向けて爪を振り下ろそうとし、もう1体はジェムに振り下ろそうとした。

 

チータ「(このままだとロデュウの顔が……)ロデュウ!」

 

ヨポポ「ヨポポイ!」

 

 ヨポポが体当たりした事でデゴスの爪はジェムには当たらずにヨポポの本を貫き、チータはいつもの冷静さをかなぐり捨ててロデュウを突き飛ばしてデゴスの爪から外させた際に本を貫かれてしまった。

 

ジェム「(私が呪いをかけられたせいでヨポポがリオウに従わなければならなかったし、今度も私のせいでヨポポが…!)ああ、ヨポポが消えちゃう!ヨポポ、ごめん!」

 

ヨポポ「……ヨポポイ……」

 

 しかし、前の戦いの時のようにヨポポは笑った。

 

ロデュウ「チータ、なぜこんなマネをした!?」

 

チータ「私、ロデュウが……」

 

ロデュウ「まさかお前、自分と同じ顔の傷を俺に負ってほしくないからこんな事をしたのか?てめえは全く進歩って奴がねえもんだな!」

 

チータ「だけど……」

 

ロデュウ「チータよ、俺はてめえが大っ嫌えなんだ、出会った時からずっとよ」

 

チータ「……」

 

ロデュウ「薄暗え部屋の中で小さく背中丸めて暮らしやがってよ…。目に傷を負ってるから外に出ると街の奴等に変な目で見られるだの、昔付き合ってた男にひどい事言われただの…くだらねえ事グダグダ言いやがってよ!てめえにお似合いのマスクを与えたら今度はこうだ!」

 

チータ『ありがとう。このマスクが怖いのか、誰も私に近づかなくなったわ…』

 

ロデュウ「その一言を言って、相変わらず独りで暗え部屋に座ってやがる。辛気くせえ沈んだ顔を続けてよぉ!そんな傷1つで、てめえの人生を支配されやがってよぉ!」

 

 再びロデュウはデゴスに向かっていったが、デゴスに吹っ飛ばされた。

 

チータ「ロデュウ……」

 

ロデュウ「なぁ…、何でマスクをかぶった時に強くならなかった?変な目で見た奴等がビビってただろう?俺もいる。そいつらに仕返ししてゲラゲラ笑えばいいじゃねえか。俺が笑うぜ。お前みたいな傷が顔に付こうとも、どんな状態になろうと『俺の体』なんだからよ!てめえやファンゴ達みたいに一つや二つの障害で奴隷みたいに支配されてたまるかぁ!」

 

 またデゴスに向かったが、またしてもデゴスに吹っ飛ばされた。

 

ロデュウ「よぉ、チータ…。俺の戦いはこのふざけた連中との戦いで終わりだ。だけどよ、お前の人生という名の戦いはまだ終わっちゃいねえだろ?強く…生きろ。てめえ自身が強けりゃよぉ、傷なんて何でもねえ。もっと笑えるし、まっすぐ立てるし、惚れる男もでてくらぁ」

 

チータ「ロデュウ……」

 

ロデュウ「さぁ、俺が魔界に帰る前にふざけた化け物をぶっ飛ばしてやろうぜ!」

 

チータ「ええ!ジェム、あなたもパートナーが魔界に帰る前にデゴスを倒すわよ!」

 

ジェム「ええ!」

 

 チータとジェムは残り全ての心の力を込めた。

 

ジェム「ディオガ・ドレミケル!」

 

チータ「ディオガ・ラギュウル!」

 

 ヨポポとロデュウの渾身の最大呪文はそれぞれのデゴスを容易く貫き、デゴスは2体とも消滅した。

 

ロデュウ「強く生きろよ…、チータ……」

 

ヨポポ「ジェム……」

 

チータ「ロデュウ……」

 

ジェム「ヨポポ……、私の名前を…。今まで一緒にいてくれてありがとう……。あなたのお陰でへそ曲がりも少しだけ直ったわ…。そして…、あなたの事が大好きよ……」

 

 お互いのパートナーの本は燃え尽き、涙を流すパートナー達に見送られながらロデュウとヨポポは魔界へ帰った。

 

 

 

ファウード 通路

 コントロールルームへ急ぐガッシュ達は何かを感じたのであった。

 

しおり「どうしたの?コルル」

 

コルル「キッドが魔界に帰った時と同じ感じがしたわ。もしかしたらヨポポは……」

 

アリシエ「仮に魔界に帰ったとしても今は悲しんでいる暇はない。ヨポポの遺志を無駄にしないためにも、僕達はコントロールルームを目指すんだ!」

 

パティ「コルルは優しいから誰よりも悲しむ気持ちはわかるわ。でも、今はそれをこらえるのよ」

 

コルル「うん…」

 

 悲しい気持ちを押さえてコルルは気持ちを切り替えた。

 

ガッシュ「(済まぬのだ、ヨポポ…。デボロ遺跡での戦いでも、そしてファウードでの戦いでもお主はジェムのために戦い続けた立派な戦士なのだ……)」

 

ウォンレイ「(ヨポポ、君は私達をコントロールルームへ行かせるために魔界に帰ったのか…。もし、リィエンが呪いをかけられていたらあの場で魔界に帰っていたのは私になっていたかも知れない…。ファウードは必ず私達が止める。だから、君は魔界で私達を見守ってくれ…)」

 

 ヨポポに済まないと思いつつ、一同は先を急いだ。




これで今回の話は終わりです。
今回はロデュウとヨポポの退場とテッド達のファウード突入、ゼオンがクリアと戦った時の回想などを描きました。
ゼオンvsクリアの回想はもともとは描く予定はなかったのですが、文庫版の15巻を見て、ゼオンがどうやってクリアに勝ったのかを描きたくなり、描きました。今小説のクリアがゼオンに負けたのは、術が使えない事と慢心、アイデンティティを揺るがされた事による冷静な判断力の喪失です。作者発言でゼオンはガッシュと同様にラウザルクとザグルゼムも使用可能なため、回想シーンで解禁しました。
ロデュウの退場は原作の方が印象深かったので、シチュエーションは違うものの、原作寄りにしました。
次の話はアニメであったウマゴンとカルディオがファンゴとジェデュンのコンビと戦う話です。


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LEVEL63 炎と氷で切り抜けろ!

ファウード

 それは、ロデュウとヨポポが魔界に帰る前の事だった。テッドペア、バリーペア、ブラゴペアは何とかファウードに侵入する事に成功した。

 

ジード「何とか中に入れたな…」

 

バリー「大変なのはこれからだ。奴等の話じゃ、ファウードの体内は体内魔物がウヨウヨ湧いて来るそうだからな」

 

ブラゴ「だったら、全部ぶっ飛ばすだけだ」

 

シェリー「先へ進むわよ!」

 

 

 

 

ファウード 胃

 ファウードの胃の中でブラゴ達を待ち受けていたのはハイパワーウンコティンティンだった。

 

テッド「何だ?こいつ」

 

ウンコティンティン「ふははははっ!飛んで火にいる夏の虫共め、今に驚くがいい!我が名はハイパワー」

 

 しかし、ウンコティンティンは名乗っている最中にバリーの貫手で悶絶してしまった。

 

ウンコティンティン「ぐはっ!」

 

バリー「そんなつまらん事を俺達に言う暇があるのか?」

 

グスタフ「ゾニス!」

 

 前の戦いの時と違い、ウンコティンティンはパワーアップしたものの、あっけなくバリーに瞬殺され、吹っ飛ばされてしまった。

 

ウンコティンティン「せっかくパワーアップしたのに~!」

 

 そのままウンコティンティンは胃液の中に落ちた。

 

ウンコティンティン「うわははっ、あち、あちいっ!!」

 

テッド「あっけなかったな……」

 

バリー「バカが、戦いの途中で無駄に喋るとこうなるぞ…」

 

シェリー「(あの魔物の名前がウンコティンティンだなんて、絶対に口に出したくない名前ね…)」

 

ブラゴ「(俺もあいつの名前だけは言いたくない…)」

 

テッド「これからどうするんだ?」

 

ブラゴ「脳にあるコントロールルームを目指す。そこを押さえればファウードは止まる。だいたい進む道も気配を辿って行けばわかる」

 

グスタフ「なら、すぐに進むぞ。我々に残された時間は数時間程度しかないのだからな」

 

 

 

ファウード コントロールルーム

 リオウとザルチムはガッシュ達の様子を見ていた。

 

ザルチム「ようやくロデュウとチビはくたばったようだな」

 

リオウ「アリシエ達はどこにいる?」

 

ザルチム「第4脊髄に向かっている。それと、アース達は第5脊髄に来たぞ」

 

リオウ「ゴデュファの契約をしたファンゴとジェデュンがいる所か。奴等もゴデュファの契約の恐ろしさを思い知るだろう…」

 

 

 

ファウード 第5脊髄

 アースチームは道中の体内魔物を退け、第5脊髄を通ろうとしていた。

 

アース「ふんっ!」

 

レイン「とぁああっ!!」

 

 レインとアースによって体内魔物は一掃され、次の部屋に来た。

 

サンビーム「追手が来るぞ!」

 

エリー「アース、扉を!」

 

アース「御意!」

 

 部屋に来てからアースは扉を閉ざして体内魔物が入れないようにした。

 

フォルゴレ「やれやれ、これで一息つけるな…」

 

???「一息つくにはまだ早いぜ…」

 

レイン「(この声…)」

 

 声と共にファンゴとジェデュンが現れた。

 

レイン「(ファンゴとジェデュンだと?だが、最初に会った時と外見が違う…)」

 

サンビーム「レイン、奴等に会った事があるのか?」

 

レイン「ああ、ファウードに来た時にな。だが、外見が変わっている」

 

アース「とすれば、ロデュウが言っていたゴデュファの契約をしている可能性は高い」

 

ファンゴ「俺の名はファンゴ、そしてこいつはジェデュン。ファウードとリオウを守る忠実な兵士だ」

 

レイン「ファンゴ、お前はリオウに従うのが嫌じゃなかったのか!?」

 

ファンゴ「もうそんなのはゴデュファと言った時に忘れたよ。俺が命令を聞くとしたら、リオウの命令だけだ!」

 

レイン「(やはり、ロデュウが言った通り、もう話が通じないのか…)」

 

エル「レインさん、カイル君、ファンゴはもともとはこんな魔物じゃなかったのですか?」

 

カイル「そうだよ。ファンゴ達はリオウの事が嫌いだったんだ」

 

サンビーム「となれば、ファンゴ達はリオウを倒すためにファウードの力を得たのだが、その代償としてファウードの忠実な兵士に変わってしまったという事か…」

 

モモン「みんな、気を付けて。あいつらは最初にファウードに入り込んだ時よりも強くなってる…」

 

アース「それは承知の上だ。我らは先を急いでいる。そこを通してもらおう」

 

ファンゴ「通さないと言ったら?」

 

アース「力づくでも通してもらうまでだ!」

 

サンビーム「待つんだ、アース」

 

サウザー「お前達はファウードを止めるために必要なんだろ?」

 

サンビーム「2人の相手に対してこちらは6人いる。アースやこちらの最高戦力のレインが出るまでもない」

 

サンビーム&サウザー「この場は私(オイラ)とウマゴン(カルディオ)に任せてもらおう!」

 

ウマゴン&カルディオ「メルメルメ~(パルパルモーン)!」

 

サウザー「何言ってんだよ!ここはオイラとカルディオが」

 

サンビーム「いやいや、ここは間違いなくウマゴンの出番だ」

 

ファンゴ「漫才なんてどうでもいいからどっちもさっさとかかってこいよ!」

 

サウザー「臨む所だ!ギドルク!」

 

 カルディオは突っ込んでいった。

 

サンビーム「待て、迂闊に突っ込むな!」

 

ルン「グノビオン!」

 

 そのままカルディオは反撃を受けて吹っ飛ばされた。

 

サンビーム「いかん!ウマゴン、援護だ!」

 

ウマゴン「メル!」

 

サンビーム「シュドルク!」

 

 次はウマゴンが突っ込んでいった。

 

アドラー「カービング・ガデュウ!」

 

 ファンゴの火炎放射でウマゴンは吹っ飛ばされ、カルディオとぶつかった。

 

ファンゴ「ああ、この感じは何だ?今まで感じた事もない最高の感覚だ。これがファウードの力なのか?」

 

ジェデュン「俺も体中に力が漲ってくるようだ」

 

 ゴデュファの契約により、ファウードの力に酔いしれるファンゴとジェデュンの姿に一同は異様さを感じていた。

 

アース「ファウードと契約するとここまで人格などが変わってしまうとは……」

 

レイン「ファンゴ達のパートナー、ファンゴ達はゴデュファの契約のせいでおかしくなっているんだぞ!それがわからないのか!?」

 

アドラー「別にいいよ。むしろ、前よりも気が合うからね」

 

ルン「やっとジェデュンが喋れるようになったからこっちの方がいいわ」

 

アース「奴等め…、自分のかけがえのないパートナーがどうなってもいいというのか…!」

 

 アドラーとルンの様子に戦っていない一同は憤りを感じていた。

 

サンビーム「あの魔物も炎を操るのか?」

 

サウザー「この!俺達の邪魔をしといて冷静に悟ってんじゃねえ!」

 

サンビーム「我々には時間がない、一気にカタをつけるぞ!ディオエムル・シュドルク!」

 

 ウマゴンは炎の鎧を纏った。

 

ファンゴ「ほう、貴様も炎を操るのか。だが、ファウードの力を得た俺には及ばねえな!」

 

サウザー「勝手に仕切ってんじゃねえぞ、オヤジ!ディオギコル・ギドルク!」

 

 カルディオは冷気の鎧を纏った。

 

ジェデュン「こっちは冷気か」

 

サンビーム「おい、魔物のパートナー!ファウードをこのままにしといたら世界が滅んじまうんだぞ!お前ら、それでもいいのかよ!?」

 

ルン「今の世界なんて、一度滅ぶぐらいがちょうどいいのよ」

 

サウザー「何だと…?」

 

アドラー「守るべき価値などないくだらない世界だ」

 

サウザー「お前ら…」

 

エル「何という人達でしょう…!」

 

サンビーム「ファウードの復活に手を貸した魔物のパートナーとは、そういう奴等か…」

 

ルン「日本を滅ぼしたら次はどうするの?」

 

アドラー「そうだな、そのまま北上してユーラシア大陸か」

 

 その言葉を聞いたサウザーは故郷とそこにいる妹がファウードによって消し飛ぶのを想像してしまった。

 

サウザー「そんなマネさせるか!行けっ、カルディオ!」

 

カルディオ「パルパルモーン!」

 

 憤ったサウザーはカルディオに突撃を命じ、カルディオは突っ込んだ。

 

サンビーム「いかん、1人で飛び出すな!」

 

 カルディオは冷気を放った。

 

ファンゴ「そんな冷気、俺の炎で掻き消してやるぜ!」

 

アドラー「ウォル・ガデュウ!」

 

 ファンゴの炎はカルディオの冷気を少しずつ押していた。

 

ルン「ガルバビオン!」

 

 ジェデュンは浮いてから回転し、カルディオに体当たりしてカルディオを吹っ飛ばした。

 

サンビーム「ウマゴン、炎だ!」

 

ウマゴン「メル!」

 

サウザー「くそう、カルディオ!」

 

カルディオ「パルパルモーン!」

 

 ウマゴンは炎、カルディオは冷気を出したが、炎と冷気はぶつかって打ち消し合ってしまった。

 

アドラー「ふはははっ、こいつはいい!とんだ仲良しさんだ!」

 

ファンゴ「炎と氷の相性がいいわけねえだろ?とんだバカだな!」

 

 ウマゴンとカルディオの連携のなさは敵に笑われていた。

 

サウザー「てめえ、オイラの邪魔すんじゃねえよ、引っ込んでろ!」

 

サンビーム「んんんっ!お前が1人で勝手に突っ込んでいくからだろ!?」

 

エル「あの…何だか足並みがそろわないまま戦っているようですけど、大丈夫でしょうか?」

 

アース「……大丈夫ではないようだな…」

 

レイン「仕方がない、俺達も行くとするか」

 

 足並みがそろわないウマゴンとカルディオを見ていられず、アース達も加勢しようとした。

 

ファンゴ「ほう、残りの魔物達も出てくるようだな」

 

アドラー「どうする?」

 

ルン「確実に2体仕留めましょう」

 

ジェデュン「そうだな。ルンの言う事にも一理ある」

 

ファンゴ「俺としては全員かかってきてもいいが、そうするとするか」

 

ジェデュン「リオウ、サポートシステムを!確実に2体仕留めるぞ」

 

 

 

 

ファウード コントロールルーム

 その事はリオウにも伝わっていた。

 

リオウ「よかろう。さぁ、思う存分に戦え!」

 

 

 

ファウード 第5脊髄

 リオウがサポートシステムを作動させたため、壁で遮られてしまい、アース達は加勢できなくなってしまった。

 

アース「しまった!」

 

キャンチョメ「フォルゴレ、中に入れないよ!」

 

 アースが剣で斬ってみたがヒビは入らず、レインがパンチしても同様の結果になった。

 

ルン「ギガノ・グノビオン!」

 

アドラー「リオル・ガデュウガ!」

 

 二つの術を組み合わせた連携技にウマゴンペアは吹っ飛ばされた。

 

ファンゴ「ふはははっ!!ファウードの力は最高だ、もっともっと術を出せ、アドラー!」

 

ジェデュン「ルンももっと術を出すんだ!」

 

アドラー「ディオ・ガデュウガ!」

 

ルン「バーガス・グノビオン!」

 

 ファウードの力を得たファンゴ達の猛攻にただでさえ足並みがそろわないウマゴン&カルディオは追い詰められていた。

 

キャンチョメ「ウマゴン!」

 

アース「くっ!某、もはや黙ってみておれぬ!」

 

レイン「カイル、この壁をブチ破って加勢するぞ!」

 

カイル「うん!」

 

サンビーム「よせ!アースもレインも無駄に力を使うんじゃない!ここは私達に任せて」

 

サウザー「いっけ~っ!」

 

 またしてもカルディオは単身突っ込んでいった。

 

アドラー「ロンド・ガデュウ!」

 

 カルディオの冷気とファンゴの炎がまたぶつかった。

 

サウザー「負けるな、カルディオ!」

 

カルディオ「パル…!」

 

ファンゴ「へっ、そんな冷気で俺の炎を押せると思ったら大間違いだ」

 

アドラー「ふん、冷気を操る癖に何を熱くなってるんだ?」

 

サウザー「うるせえ!」

 

アドラー「この下らぬ世界を作り変える、その事をどうして阻む?」

 

サウザー「うるせえんだよ!」

 

アドラー「ふふふ」

 

ルン「ガルバビオン!」

 

 ファンゴの炎がカルディオの冷気を少しずつ押しているその隙を突いてジェデュンの攻撃がカルディオに迫った。

 

サウザー「あっ!」

 

サンビーム「いかん!ウマゴン!」

 

ウマゴン「メル!」

 

 ウマゴンが援護に行ったが、炎と冷気がぶつかってしまい、ウマゴンとカルディオは吹っ飛ばされた。

 

カイル「このままだとやられちゃうよ!」

 

レイン「(どうする?奴等に勝つには足並みを揃えるしかないんだぞ…!)」

 

サンビーム「ウマゴン!」

 

サウザー「お前ら、余計なマネすんじゃねえよ!」

 

サンビーム「ウマゴンが防がなかったら直撃を受ける所だったんだぞ!」

 

 ウマゴンペアとカルディオペアの仲間割れを一同は見てられなかった。

 

エル「炎と氷、相反する力の持ち主達ですから…」

 

フォルゴレ「よりによって、相性最悪の2人を選んでしまったのか、私達は…」

 

レイン「(これ以上、こんな事が続くなら、俺が喝を入れるしかない…!)」

 

アドラー「実に他愛ない奴等だ」

 

ファンゴ「遊ぶのもバカらしくなってきた。一気に丸焼きにしてやるぞ」

 

キャンチョメ「うわぁ、ウマゴン達はもうダメだ~!」

 

エリー「落ち着け。たとえ相反する力を持っていたとしても、心は共鳴する事ができるはず。仲間の力を信じるのだ」

 

 しかし、いまだに二組は足並みが揃わず、劣勢だった。カルディオの攻撃はジェデュンに全く効いてなかった。

 

ジェデュン「ふははっ、効かんな」

 

サウザー「くそっ、なんてかてえ野郎だ!」

 

ジェデュン「ファウードの力を得てからもっと硬くなってるぞ」

 

アドラー「オルディ・ガデュウ!」

 

 ファンゴの術が来たため、ジェデュンはその場を離れた。

 

サウザー「逃げるか!」

 

 まんまとひっかかったカルディオは攻撃を受けてしまった。

 

サウザー「くそっ、やりやがったな!」

 

サンビーム「待て、無暗に突っ込むんじゃない!」

 

サウザー「うるせえ!行けっ、カルディオ!」

 

 またカルディオは単身突っ込んでいった。

 

ルン「ギガノ・グノビオン!」

 

アドラー「ロンド・ガデュウ!」

 

 再びファンゴとジェデュンは連携技を繰り出した。

 

サンビーム「ウマゴン!」

 

サウザー「カルディオ!」

 

 ウマゴンとカルディオは連携ができず、敵の攻撃を受けてしまった。

 

フォルゴレ「敵は連携技まで繰り出してきたというのに…」

 

キャンチョメ「こっちは連携どころじゃないよ!」

 

サウザー「くそっ…」

 

サンビーム「待て、サウザー!我々も連携しなければ勝てない!」

 

サウザー「うるせえ、引っ込んでろ!」

 

 またしても単身突っ込んでいった。

 

アドラー「ウォル・ガデュウ!」

 

ルン「ギガノ・グノビオン!」

 

 またカルディオは攻撃を受けてしまった。

 

サウザー「くそっ!こうなったら、ディオウ・ギコリオ・ギドルクを使うのもやむを得ないか…」

 

 いつまでたっても連携がままならない事に遂にレインは業を煮やした。

 

レイン「カイル、みんな、少し耳を塞いでろ」

 

カイル「うん…」

 

 フォルゴレ達は耳を塞いだ。そして、レインは息を大きく吸い込んだ。

 

レイン「……いつまでも勝手なマネしてんじゃねえぞ、このバカ共が!!!」

 

 凄まじいレインの大声にサンビーム達はおろか、ファンゴ達まで怯んでしまった。

 

アドラー「な、何だ!?この鼓膜が破けそうな大声は!?」

 

レイン「てめえら、下らん言い争いをする暇があるのなら、連携して奴等をぶっ飛ばせ!!それができないのなら、今からこの壁をブチ破っててめえらをタコ殴りにしてやるぞ!!」

 

 レインの一喝に流石のサウザーも完全に怯んでしまった。

 

エリー「レインの一喝で少しは頭が冷えたか?サウザー、お前は俺を助けてくれたではないか。ならば今、ウマゴンと協力する事もできるはず。俺達はここから動けぬ!世界の命運は、お前達にかかっているのだぞ!」

 

 レインの一喝で怯んだサウザーは少し頭が冷えたためか、エリーの言葉も届いた。

 

サンビーム「サウザー、世界を守りたいという気持ちは、皆同じだ!だから…」

 

サウザー「うるせえんだよ!オヤジ、何か作戦があるのなら、さっさと言え」

 

サンビーム「…ああ、私達はコンビだ。お互いのよい所を生かし、息を合わせて行こう」

 

サウザー「……うん」

 

 自分の意見を聞いてくれたサウザーにサンビームは少し笑った。

 

ファンゴ「さっきの大声はとんでもなかったが、今更連携したって無駄だ」

 

ジェデュン「所詮、付け焼刃だ」

 

サンビーム「それは、お前達のゴデュファの契約も同じではないのか?」

 

ファンゴ「何っ!?」

 

サンビーム「行くぞ!」

 

サウザー「おう!」

 

 ウマゴンとカルディオは突っ込んでいった。

 

ルン「グノビオン!」

 

アドラー「ウォル・ガデュウ!」

 

 ジェデュンの攻撃をかわした後、カルディオの冷気とファンゴの炎がぶつかった。その後、ウマゴンは炎を放出したが、ジェデュンにはノーダメージだった。

 

ジェデュン「これしきの炎、どうという事もない」

 

ファンゴ「ジェデュンの体の硬さは特別だ。しかも、ファウードの力で更に硬くなっている」

 

 サンビームとサウザーはアイコンタクトをとった後、カルディオがジェデュンの注意を引きつけ、ウマゴンがジェデュンに炎を長時間当てた。

 

ジェデュン「ほ~っ、効かんというのにまだわからんとはな」

 

サンビーム「シフトチェンジ!」

 

 再びサンビームとサウザーがアイコンタクトをとった後、ウマゴンは炎の放出をやめて今度はカルディオがジェデュンに冷気を長時間当てた。

 

ジェデュン「はははっ、無駄だ無駄だ!炎だろうが冷気だろうが」

 

 しかし、ジェデュンの体にヒビが入った。

 

ジェデュン「うおおおっ!お、俺の体にヒビが!うおおおおっ!!」

 

 ジェデュンの腹が破裂し、ジェデュンはダウンした。その際に何かが外れた。

 

サンビーム「どんなに硬い物質だろうと、熱した箇所を急激に冷やすと脆くなるものだ」

 

ファンゴ「俺はそんなもんじゃねえぞ!」

 

アドラー「カービング・ガデュウ!」

 

 サンビームとサウザーがアイコンタクトをした後、ファンゴの炎の攻撃をよけ、辺り一面を動き回った。

 

ファンゴ「くそっ、ちょこまかと動きやがって…!」

 

カルディオ「パルパルモーン!」

 

 不意を突かれてファンゴはカルディオの攻撃を受けた。

 

ウマゴン「メルメルメ~!」

 

 今度はウマゴンの攻撃を受けてしまった。

 

ファンゴ「アドラー、こうなったら辺り一帯を焼き尽くすぞ!」

 

アドラー「ディオ・ガ」

 

サンビーム「そんな暇はないぞ!」

 

 呪文を言い終わる前にファンゴは攻撃を受けた。

 

ファンゴ「そんな!ファウードの力を得た俺が何で押されてやがる!?」

 

サウザー「力ってのは訓練や様々な経験を通して付くものだ。お前らのように楽して強くなったってろくな事になりはしないんだぜ」

 

サンビーム「お前が私達の連携を付け焼刃というのなら、ゴデュファの契約も立派な付け焼刃の力だ!そんな力に酔いしれているお前達は私達に勝てはしない」

 

ファンゴ「調子に乗るんじゃねえ!こうなったら、てめえらまとめて焼き尽くす!アドラー、最大呪文だ!」

 

ジェデュン「ルン、こっちも最大呪文で蹴散らすんだ!」

 

アドラー「アルセム・ガデュウドン!」

 

ルン「(さっきまでのジェデュンと声が違う?)バビオウ・グノービオ!」

 

 ファンゴとジェデュンは最大呪文を放った。

 

サンビーム「ウマゴン!」

 

サウザー「カルディオ!」

 

 またアイコンタクトをとった後、ウマゴンとカルディオはそれぞれ炎と冷気を纏ってファンゴとジェデュンの最大呪文に突っ込んでいった。

 

ファンゴ「ふん、わざわざ自殺しに来たのか?」

 

ジェデュン「身の程知らずという奴だな」

 

 炎がファンゴの術と、冷気がジェデュンの術とぶつかった後、爆発した。

 

ファンゴ「ふはははっ!やった、やったぞ!」

 

ジェデュン「これで奴等は消し飛んだ!」

 

 自分達が勝利したと思い、ファンゴとジェデュンは喜んだ。しかし、それも束の間、今度は自分達の後ろに炎と氷の盾が迫ってきていた。

 

ファンゴ「アドラー、次の術だ!」

 

ジェデュン「ルン!」

 

 しかし、パートナーの反応はなかった。

 

ファンゴ「どうした?アドラー!?ぐあああっ!」

 

 吹っ飛ばされる際、ある姿を見てファンゴとジェデュンは驚いた。それは、それぞれのパートナーを捕まえたウマゴンペアとカルディオペアの姿だった。

 

サンビーム「チェックメイトだ!」

 

ファンゴ「そんな、いつの間に…」

 

サンビーム「ウマゴンの力は炎だけではない。本来の力はこのスピードなんでね」

 

サウザー「カルディオも同様に本来の力はスピードなんだよ。お前達の負けだ」

 

サンビーム「ウマゴン!」

 

サウザー「カルディオ!」

 

ウマゴン「メル!」

 

カルディオ「パル!」

 

 ファンゴとジェデュンの本は燃やされた。

 

ジェデュン「うぅ…お別れね、ルン…」

 

ルン「あなた、急に女の子っぽい声を出したから気になったけど、女の子だったの!?せっかくゴデュファの契約をして会話ができるようになったのに、こんな所で…」

 

ジェデュン「実はね、私は元から普通に喋れたのよ。契約する際にもゴデュファって言ったじゃん」

 

ルン「う、確かに…。でも、だったら何でもっと前に喋ってくれなかったの?どうして男の子っぽく喋ってたの!?あなたの名前すら他の名前に聞いたのよ!色々話したかったじゃない!ずっと一緒だったのよ!あなたの事ももっと知りたかったわ!」

 

ジェデュン「…だって…、恥ずかしかったんだもん……。契約した後に普通に男の子っぽく喋ってたのは、契約をした途端、急に喋るのが恥ずかしくなくなった上、男の子っぽく喋りたくなってボイスチェンジャーで声を変えていたの。ほんとは契約する前にも会話したかったけど、できなくてごめんね、ルン…」

 

 そう言ってジェデュンはファンゴと共に魔界に送還された。

 

 

 

ファウード コントロールルーム

 戦いが終わったのをリオウはザルチムと共に見ていた。

 

リオウ「全く、ゴデュファの契約をしたのに負けるとは。使えない奴等だ…!」

 

ザルチム「所詮はそこまでだったという訳だ。リオウ、奴等を消しに行ってくる」

 

 ザルチムはラウシンと共にどこかへ行った。

 

 

 

ファウード 第5脊髄

 ファンゴとジェデュンを倒した後、アドラーとルンを壁に置いた。

 

サンビーム「よし、先を急ごう」

 

 その途端、サンビームがよろけた。

 

エル「大丈夫ですか?少し休んだ方が…」

 

サンビーム「平気だ。なぁ?」

 

ウマゴン「メル」

 

カルディオ「パル」

 

エル「清麿さん達のチームはどうしてるかしら?」

 

レイン「心配するな。ガッシュ達のチームは中核戦力の大半が集まった戦闘力重視のチームだ。それに、罠があっても清麿には筒抜けだ」

 

 

 

ファウード 第4脊髄

 ガッシュ達は第4脊髄に来ていた。

 

清麿「ガッシュ、あの部屋からいくつ魔力を感じる?」

 

ガッシュ「二つ。ギャロンとザルチムの魔力を感じるのだ」

 

清麿「それに、ファウードのサポートシステムという罠もある。全員で行くと罠にかかって全滅する危険性もある」

 

ガッシュ「(サポートシステム…前の戦いでは使われなかったファウードの機能…。どんなものであろうか…)」

 

アリシエ「だが、僕達は急がなければならない」

 

恵「どうするの?清麿君」

 

清麿「みんな、俺にいい考えがある。聞いてくれないか?」

 

 清麿は罠で全滅も考慮し、それを防ぐための作戦を立てた。

 

アリシエ「わかった。僕達3組が先にあの部屋に行く」

 

リーヤ「指定の時間になったらガッシュ達も突撃するんだよ」

 

ガッシュ「ウヌ」

 

ウォンレイ「でも、無理をしてはいけない」

 

チェリッシュ「まずくなったら攻撃をかわし続けたりして私達が来るまで粘るのよ」

 

アリシエ「じゃあ、まずは僕達が突撃だ!」

 

 コルルペア、パティペアを連れてアリシエとリーヤはギャロンとザルチムが待つ部屋へ突撃した。




これで今回の話は終わりです。
今回はアニメのウマゴンペアとカルディオペアのコンビがファンゴとジェデュンのコンビと戦う話です。
大まかな所はアニメと同様ですが、原作のゴデュファの契約も出ているため、アニメと違ってファンゴとジェデュンは契約後の姿となり、話す言葉もファウードの力に酔いしれたものとなっています。
ちなみに、ジェデュンの性別は原作では女で、アニメでは男であったため、今小説ではその折衷案として、ジェデュンの性別は原作同様女だが、契約後の影響で男の子のように喋りたくなったため、ボイスチェンジャーで声を変えていたという事にしました。それと、ジェデュンの術の名前は原作のものに統一しています。
次は清麿チームがザルチム、ギャロンと戦う話ですが、ファウードに入り込んだ助っ人が到着します。


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LEVEL64 ザルチムの罠を打ち砕け!

ファウード 第4脊髄

 清麿の作戦で先に部屋に入り込んだアリシエ達を待っていたのはガッシュが感じた通り、ギャロンとザルチムが待ち構えていた。

 

ザルチム「(くそう、胸騒ぎが収まらん。俺は何かを見落としているのか?)」

 

 

 

 

ファウード 第6脊髄

 ファウードに侵入したブラゴ達は第6脊髄にまで来ていた。

 

シェリー「バベルガ・グラビドン!」

 

 バベルガ・グラビドンでその場にいたデゴスの群れは一掃された。

 

テッド「ブラゴってすげえな、あんなデカイ奴の群れを一瞬でペチャンコにしやがったぜ…」

 

ブラゴ「こんなふざけた顔の雑魚なんか見たくもない」

 

バリー「分かれ道があるな。その場にいる奴からの話ではどっちへ行ってもコントロールルームへは行けるそうだ。どっちを進む?」

 

テッド「俺とバリーはこっちで、ブラゴはあっち。これでいいか?」

 

シェリー「別に構わないわ」

 

ジェム「ちょっとテッド、チェリッシュは」

 

 テッドとバリーはアースチームが行った道を、ブラゴは清麿チームが行った道を選び、進んだ。

 

ジェム「あ~あ、話を聞かずに進んじゃった…」

 

チータ「それよりも急ぎましょう!」

 

シェリー「これからは体内魔物が襲い掛かってくるわ。あなた達は絶対に私やブラゴの傍からから離れないで!」

 

 そう言っていると、体内魔物が現れた。

 

ジェム「げっ!こいつが体内魔物!?」

 

 シェリーは怯まず、体内魔物を蹴りやパンチ、フレイルで一掃し、ブラゴもパンチや体内魔物を他の個体に投げ飛ばすなりして応戦した。

 

ブラゴ「所詮は雑魚か」

 

 そう言ってると、赤い体内魔物が現れた。ブラゴはパンチして吹っ飛ばしたが、赤い体内魔物は少しして起き上がった。

 

ブラゴ「なるほど。青い奴に比べれば骨があるようだな」

 

シェリー「オルガ・レイス!」

 

 ブラゴの術1発で赤い体内魔物は消滅した。

 

シェリー「今の内に一気に行くわよ!ディゴウ・グラビルク!」

 

 自身とジェム、チータをブラゴに掴まらせてからシェリーはブラゴが習得した新しい肉体強化術、ディゴウ・グラビルクを発動させて一気に進むスピードを上げた。

 

 

 

ファウード 第4脊髄

 アリシエ達はザルチムとギャロンの2体と対峙していた。

 

ザルチム「わかってるな。アリシエとリーヤは俺の獲物だ」

 

ギャロン「無論、これはリオウからの命令で聞いている。リオウの命令通り、お前の指示があるまで私は手出しはしない」

 

パティ「じゃあ、私とコルルはあの鎧を」

 

ラウシン「オルシド・シャロン!」

 

パティ「何をやってるの?ザルチムの目は開いてい」

 

 ところが、パティペアとコルルペアは影に拘束されてしまった。

 

ザルチム「俺はアリシエとリーヤをぶっ飛ばさないといけねえんだ。お前達はその後に仕留める」

 

パティ「ちょ、ちょっとどうなってるのよ!?」

 

しおり「清麿君の話ではザルチムは目から光を出さないと術を発動できないはず。それなのに…」

 

ウルル「!?後ろです!」

 

 後ろを見ると、そこにはザルチムがもう1人いた。

 

コルル「どうしてもう1人のザルチムが?」

 

ザルチム「こいつがファウードのサポートシステムさ。ラウシンの消耗もいつもより激しいが、これならお前達を拘束しつつ、アリシエとの戦いに専念できる」

 

パティ「キザな雰囲気だしてんじゃないわよ!私達も」

 

ウルル「今は指定の時間になるまで大人しくしましょう」

 

ザルチム「(指定の時間?何の事だ?そう言えば、アリシエ達は7組で進んでいるはず。残りの4組が来ていないぞ)」

 

アリシエ「ザルチム、僕達はファウードを止めなければならない。立ちはだかるのなら、10分で倒して進ませてもらうぞ!」

 

ザルチム「俺もお前に屈辱を味わったんだ!こっちも10分でお前を倒させてもらうぞ!」

 

 アリシエとリーヤはザルチムに向かっていった。

 

 

 

 一方、ガッシュ達は扉の傍で待機していた。

 

ティオ「やっぱり、清麿の言う通りの仕掛けがあったのね」

 

ニコル「だから、全滅のリスクを避けるために全員で突入を避けた。そうなのね?」

 

清麿「ああ。アンサー・トーカーの出した答えは絶対。だからこそ、こういった罠の有無なども調べられる」

 

恵「でも、サポートシステムがあるのなら、私達も」

 

清麿「恵さんの行きたい気持ちもわかる。だが、指定の時間になるまでは待つんだ」

 

チェリッシュ「指定の時間になったら一気に突入して鎧の奴とザルチムを一緒に叩きのめすわよ」

 

ウォンレイ「ギャロンは私が倒す。だから、チェリッシュはザルチムを頼む」

 

チェリッシュ「わかってるわ」

 

ティオ「私とガッシュは?」

 

ウォンレイ「ガッシュとティオは待機だ」

 

リィエン「ティオは回復の術と強力な盾の術があるから、今はそれを使う時じゃないある」

 

恵「リィエンの言う通りね」

 

ガッシュ「私はゼオンとの戦いに備えねばならぬから、体力と清麿の心の力を温存しろ、と言って居るのだろう?」

 

ウォンレイ「その通りだ」

 

清麿「俺達が本当に警戒すべき敵はリオウではない、この戦いを裏から操り、ファウードを手に入れようとする黒幕、ゼオンだ!」

 

 

 

ファウード ???

 当のゼオンは清麿チームやアースチームとは別のルートからコントロールルームを目指していた。そこへ、赤い体内魔物の群れがやってきた。

 

デュフォー「ザケル」

 

 ザケル1発で赤い体内魔物の群れは全滅した。

 

ゼオン「他のエリアには青い体内魔物10匹の中に1、2匹ぐらいの割合しかいない赤い体内魔物がこうもいるとはな」

 

デュフォー「ここはコントロールルームへ最短距離で行くための秘密の通路だからな。敵に入られたのを想定してこんなにたくさんの赤い体内魔物がいるのだろう」

 

ゼオン「そんな奴等など、所詮は俺からすれば雑魚に過ぎん。もっと進むぞ」

 

 更に先へ進んでいると、今度はデゴスの群れと遭遇した。

 

デュフォー「テオザケル」

 

 テオザケルがデゴスを襲い、デゴスの群れはあっという間に全滅した。

 

ゼオン「行くぞ」

 

 そのままゼオンはデュフォーと共に進んでいった。

 

 

 

 

モチノキ町

 その頃、モチノキ町ではファウード接近に伴い、住人は避難しようとしていた。

 

船長「無理だ、これ以上は乗せられない」

 

警官「後、500人の人間がいるんです。何とかなりませんか?」

 

船長「救助船が全部出払っている。乗せてやりたいのはやまやまだが…」

 

 そんな時、より大きな船が来た。その船には清麿の父親、清太郎と清太郎の隣に研究室を持っている科学者、プロフェッサー・ダルタニアンがいた。

 

清太郎「モチノキ町の皆さん!この船にのしてください!」

 

華「あなた~!」

 

清太郎「お、お前か。プロフェッサー・ダルタニアンのご好意で船を提供してもらった!みんなを誘導するのを手伝ってくれ!」

 

華「はい、あなた!」

 

 一方、鈴芽は迷子になって彷徨っていた。

 

鈴芽「みんなどこに行っちゃったの…?高嶺君、ガッシュ君、早く帰ってきてよ~!」

 

 

 

ファウード 第4脊髄

 リーヤペアとザルチムペアの攻防は続いていて、4分経過しようとしていた。

 

コルル「凄い…、パートナーが自ら攻撃に行くなんて……」

 

しおり「まるで、デボロ遺跡で戦った玄宗みたいね…」

 

ザルチム「(くそったれ…まるであの時と同じじゃないか…!)」

 

リーヤ「行くぞ、アリシエ。奴等から受けた傷で僕の血も騒いできた。戦人だ、アリシエも変わる。村を…敵から守る時の姿に!」

 

アリシエ「…ああ、一切の甘さを捨て、戦人となる!」

 

ザルチム「さぁ、来い!(俺の全ての能力を研ぎ澄ませろ!奴の動きの全てを見落とすな。そうだ、あの時の姿だ…あの生意気でくそったれな姿に本当の敗北と屈辱を叩き込んでやる!)」

 

 

 

回想

 ザルチムはリーヤペアを連れて来る時の事を思い出していた。

 

ザルチム『あれは、俺がお前の村に迎えに行った時だ…』

 

 アリシエは呪いをかけられた身でありながら、リーヤと共にザルチムと戦っていた。そして、ザルチムの首を掴んだ。

 

ザルチム「(こ、こいつ、リオウの呪いを受けていてなぜここまで力を…!)ラウシン、影を短刀に変えろ!」

 

ラウシン「シドナ・ディップ!」

 

 すぐに呪文を唱えたものの、ラウシンもアリシエの気迫に押されていた。しかも、アリシエは自ら短刀に刺さろうとした。

 

ザルチム「(こいつ、死ぬ気か!?くそう、こいつはファウードの封印を解く力の一つ!殺しては…)」

 

アリシエ「リーヤ!」

 

 すぐにリーヤは構えた。

 

ラウシン「離れろ、ザルチム!」

 

アリシエ「ピック・ガルニオ!」

 

 リーヤの攻撃が来たが、すぐにザルチムは直撃を避けた。

 

ザルチム「てめえ、本気で俺と刺し違える気か!?」

 

アリシエ「当たり前だ。僕の命一つで村のみんなが助かるならば本望!お前の下らないファウード復活なんかに誰が手を貸すか!僕の力とお前の力が消えれば、バカな目論見も消えよう!」

 

リーヤ「(やだ、アリシエ!僕はアリシエが死ぬなんて……)」

 

アリシエ「リーヤ、最強呪文だ!」

 

 アリシエはシャオウ・ニオドルクを放つ準備をした。

 

ザルチム「(リオウ…こいつの力は諦めな。こいつは正気じゃ)」

 

 凄まじいアリシエの気迫にザルチムは恐怖していた。

 

ザルチム「(おい、何をやっている?早く止めを!いや、こいつが呪文を唱える前に喉元を、口を……ええい!何でも言いから動け!震えてないでこいつを止めろ!)」

 

アリシエ「シャオウ」

 

???「アリシエ兄ちゃん!」

 

 誰かの声がしたため、アリシエがその方向を見ると、ラウシンが子供を人質にとっていた。

 

ラウシン「こっちを見ろ、アリシエ!お前の村の子供だ。いう事を聞かなければこいつの命はないぞ!こいつだけじゃない。お前が協力しなければ、お前同様に呪いをかけられた人間が何人も死ぬ事になる!それでもいいのか!?」

 

子供「ごめん、アリシエ兄ちゃん…」

 

 子供が人質にされているのを見て、アリシエはザルチムの首を掴むのをやめた。

 

アリシエ「連れていけ、ファウードという所へ」

 

ザルチム「へ、へへ…さ、最初からそう言えばよかったんだ…。命拾いしたな…弱え奴がバカやりやがって…」

 

 

 

ザルチム「(くそう、くそう!あんなくそったれな思いを後にも先にもあの時だけだ!)」

 

ラウシン「シドナ・ディ・シザルク!」

 

 ザルチムの両手に鋏の影が実体化した。

 

ザルチム「(弱えくせに、俺に恐怖ってものを味あわせやがった。弱えくせに……!)もうあの時みたいな遠慮はいらねえ!てめえら、五分刻みにしてやるぜ!」

 

 再びザルチムペアとリーヤペアの攻防が続き、戦闘開始から9分が経過しようとしていた。

 

アリシエ「シャオウ・ニオドルク!」

 

 ザルチムはリーヤの最大呪文を喰らった。

 

パティ「やった!」

 

 しかし、自分達の拘束は解けなかった。

 

パティ「あ、あれ?どうしてあのザルチムは消えてないの?」

 

しおり「もしかしてあのザルチムは偽物だったんじゃ…?」

 

ウルル「まさか、本物のザルチムは…!?」

 

???「ふふふ、さすがに心の力はもう残ってねえだろ?」

 

 コルルペアの不安通り、最大呪文を当てた方のザルチムは偽者であり、本物は健在だった。

 

ザルチム「ふふふ、この時を待っていたぜ」

 

アリシエ「バ、バカな…!」

 

リーヤ「そんな、確かに僕の攻撃は」

 

ザルチム「ああ、見事命中さ。この分身にな」

 

 ザルチムが分身を放り投げた後、分身は消滅した。

 

 

ティオ「あいつ、卑怯よ!自分だけ安全な所に隠れて消耗を狙うなんて!」

 

ウォンレイ「許せん…!」

 

チェリッシュ「あいつの顔をコブまみれにしてやるわ!」

 

清麿「後少しで10分経過する。一気に決めるぞ!」

 

???「あなた達、そのザルチムという魔物は私達に任せてくれないかしら?」

 

 声がした方を向くと、そこにはある人物の姿があった。

 

 

 一方、ザルチムは勝利を確信していた。

 

ザルチム「後少しで10分経過する。どうやら、10分後に勝つのは俺のようだな」

 

アリシエ「でや~~っ!」

 

 アリシエはザルチムに突っ込んでいった。

 

ザルチム「(予定通りだ。バカなお前はこういうピンチの時こそ命を捨てて突っ込んでくる。他の奴ならその行動に驚き、攻撃のチャンスを逃すが、俺は違う。貴様のバカな行動に合わせて最大呪文をぶち込んでやる!今度こそお前は本当の敗北と屈辱を味わうんだ!)いいぜ、ラウシン」

 

 そんな時、リーヤが立ちはだかった。

 

アリシエ「リーヤ!?」

 

ザルチム「何!?」

 

リーヤ「(死なせるもんか!僕はアリシエが大好きなんだ!長い間一緒に居た僕はこういう時、アリシエが命を捨てる行動をするのはすぐにわかった。だから…だから僕はアリシエを死なせない!)」

 

ザルチム「くそったれ!てめえが出てきた所で何ができる!?アリシエの心の力はもうほとんど残ってねえんだ!どの道、これで終わりよ!」

 

ラウシン「ジボルオウ・シードン!」

 

 ザルチムの最大呪文が放たれた。

 

アリシエ「リーヤ!」

 

リーヤ「(ダメだ、これじゃあ攻撃を止められない!奴の力の元を閉ざすんだ!あの光っている目を!)」

 

アリシエ「(くそっ!何でもいい、リーヤを守る術を!少しでもリーヤの肉体を強くして)」

 

???「ディオガ・グラビドン!」

 

 突如割り込んだディオガ級の術がジボルオウ・シードンにぶつかり、ジボルオウ・シードンは消滅した。

 

ザルチム「な、何だ!?俺達の最大呪文が!一体何が!?」

 

???「ザケル!」

 

 今度はコルル達を拘束していたザルチムの分身が倒された。

 

パティ「ガッシュちゃん、みんな!」

 

アリシエ「もう10分経過したのか…」

 

 10分経過した事により、ガッシュ達が突撃してきた。

 

清麿「ザルチム、お前の姑息な罠は見させてもらったぞ。手の内がわかったからにはもうお前の負けだ!」

 

ザルチム「(そうか!全員で来なかったのはアリシエ達を先に行かせて俺達の出方を伺うためだったのか!それに、10分で倒すは奴等の作戦開始の合図だったんだ!)ギャロン、お前も戦いに加われ!」

 

ギャロン「わかった」

 

ジェット「後から来た奴等は骨のある奴等ばかりだな。相手次第では最初から飛ばすぞ!」

 

ギャロン「そうしてくれるとありがたい」

 

アリシエ「清麿、あの2人は?」

 

清麿「あの2人はシェリーとブラゴ。何回か俺達と一緒に戦った魔物とそのパートナーだ」

 

シェリー「ファウードを止めるために一緒に戦うわ」

 

ザルチム「くそったれ…次から次へと…」

 

チータ「みっともないわね、ザルチム。ロデュウと違って小細工に頼るなんて」

 

ザルチム「俺がロデュウよりみっともないだと!?デゴスにやられた弱い奴にか!?」

 

チータ「ロデュウはあなたより強いのよ。どんなにボロボロになっても、傷だらけになっても挫けず、魔界に帰る際にも私に強く生きろと言ってくれた。そんなロデュウに比べればあなたの方がよっぽど弱いわ」

 

ザルチム「黙りやがれ!俺をあんな雑魚より下にするな!こうなったらお前達まとめてぶっ飛ばしてやる!デゴス、来やがれ!」

 

 扉が開き、デゴスの群れが来た。

 

ザルチム「こいつは体内魔物の中でも力が凄まじい奴だ。お前らなどあっという間に蹴散らすぞ!」

 

ブラゴ「ふん、小細工に頼る軟弱な奴はよく吠えるな。ウォンレイ、ザルチムは俺がやる。お前は鎧の奴をぶっ飛ばせ!」

 

ウォンレイ「わかった」

 

清麿「残りのみんなはデゴスの群れと戦うぞ!」

 

パティ「オッケー!私も暴れたかったのよ!」

 

チェリッシュ「悪趣味な体内魔物には退場願おうかしら!」

 

 ブラゴはザルチムに、ウォンレイはギャロンに、残りのメンバーはデゴスの群れに向かっていった。

 

ジェット「あいつは2日前にお前を苦戦させた。一気に最強の肉体強化術を使うぞ!」

 

ギャロン「待っていたぞ!」

 

ジェット「ディオ・マ・バスカルグ!」

 

 前の戦いの時のようにギャロンは禍々しい巨体となった。

 

ギャロン「ははははっ、力が漲ってくるぞ!」

 

ジェット「(ギャロン、ゴデュファの契約をしてからおかしくなったのか?外見はおろか、ディオ・マ・バスカルグを使ってこんなにはならなかったぞ…)」

 

 ギャロンは拳を振り下ろした。

 

リィエン「ゴウ・レドルク!」

 

 ウォンレイはリィエンを抱えてギャロンの攻撃をかわし続けた。

 

ギャロン「ふはははっ!フルパワーで殴りかかってもダメージがねえ!ファウードの力は最高だ!これならウォンレイはおろか、他の連中も一捻りだ、ふはははっ!」

 

ウォンレイ「ギャロン、力に溺れた貴様では私には勝てない!私の最強の肉体強化の術を味わうがいい!」

 

リィエン「ディオウ・バウルク!」

 

 今までなかったウォンレイの全身強化の術により、ウォンレイの脚力、腕力などが今までの呪文を大幅に超える強化を果たした。

 

コルル「凄い、ウォンレイはこんな術も習得してたなんて…!」

 

ガッシュ「凄いのう!」

 

 ウォンレイはギャロンが全く反応できない速度でギャロンを殴り飛ばした。

 

ギャロン「ぐあああっ!!全く見えない…!」

 

ウォンレイ「図体が大きくなりすぎて小回りが利かなくなっているぞ!それに、まだ私の攻撃は終わっていない!」

 

 そのままウォンレイは連続でギャロンを殴り続けた。1発1発がギャロンの一撃を超えているため、ギャロンは一気にボロボロになってしまった。

 

ウォンレイ「これで100発目だ!」

 

ギャロン「ぐあああっ!!」

 

 100発目の鉄拳を受けてギャロンは吹っ飛ばされた。

 

ジェット「(そんな…ファウードの力を得たギャロンが手も足も出ずに負けるなんて…)」

 

 一方、ブラゴペアはザルチムの方に向かっていた。

 

ザルチム「優勝候補のブラゴが俺の邪魔をしやがって…!」

 

ラウシン「オルシド・シャロン!」

 

 ザルチムの分身によってブラゴとシェリーは影に拘束された。

 

ザルチム「どうだ!優勝候補のブラゴといえど、弱っちい人間の方を拘束すれば何もできまい!」

 

ブラゴ「ふっ、バカめ。自分で自分の墓穴を掘ったようだな」

 

ザルチム「墓穴だと?」

 

シェリー「……ザルチム、あなた、人間を相当甘く見ているようね…。自分達が強いからといって人間を…あまり人間を舐めるんじゃないわよ!!」

 

 思わずザルチムが『弱っちい人間』と言ったのがシェリーの逆鱗に触れる事となり、シェリーは怒りに任せて拘束を引きちぎった。

 

ザルチム「な、何だと!?人間がオルシド・シャロンを破った!?」

 

ブラゴ「シェリーをそんじょそこらの人間と一緒にするな。こいつは俺のパートナーに相応しい強い女だ。しかも、シェリーの強さはお前のパートナーよりも数段上だからな!」

 

 ブラゴも容易く拘束を引きちぎった。そして、シェリーは素早く接近し、ザルチムを殴り飛ばした。

 

ザルチム「(くそったれ!俺の拘束を自力で引きちぎりやがった上、俺を殴り飛ばしやがって…!またしても俺は人間に恐怖を味わうとでもいうのか…!?)」

 

シェリー「ディゴウ・グラビルク!」

 

 肉体強化されたブラゴは一気にザルチムに接近し、連続でパンチを喰らわせた。

 

ブラゴ「ザルチム、お前はゾフィスと同じ臆病者なんだよ!お前はアリシエが怖いからサポートシステムとかいう小細工を使って消耗を狙い、叩きのめそうとした。それはお前が臆病者だと言っている証拠だ!真向から戦う勇気のない臆病者のてめえが俺達に勝てるとでも思っているのか!?」

 

シェリー「これは私とブラゴの1発よ!」

 ザルチムに100発パンチを打ち込んだ後、シェリーとブラゴは同時にパンチを打ち込み、ザルチムを殴り飛ばした。

 

ザルチム「ぐあああっ!!」

 

ラウシン「ザルチム!」

 

ガッシュ「(まさか、シェリーが自力でオルシド・シャロンを破るなんて思わなかったのだ…)」

 

恵「(あの人、もう人間をやめてるのかしら…?)」

 

ウォンレイ「ブラゴ、一気に勝負を決めるぞ!」

 

ブラゴ「ああ!」

 

ジェット「エマリオン・バスカード!」

 

 ギャロンの最強呪文が迫った。

 

ギャロン「ふはははっ、俺を忘れたようだな!」

 

ブラゴ「シェリー、こいつに俺達の新しい最強呪文を喰らわせてやるぞ」

 

シェリー「ええ。ニューボルツ・マ・グラビレイ!」

 

 ニューボルツ・マ・グラビレイにより、ギャロンの術は粉砕されてギャロンはボロボロになってしまった。その余波でギャロンの本に火が付いてしまった。

 

ギャロン「ぐあああっ!!そ、そんな!ファウードの力を得たこの私が~~!!!」

 

 そのままギャロンは倒れた。そして本が燃え尽きた後、魔界に送還された。

 

アリシエ「た、助かった。感謝する」

 

シェリー「気にする事はないわ。私達もファウードを止めるために来たの」

 

アリシエ「という事は、君達は味方なんだね」

 

シェリー「そういう事よ」

 

ウォンレイ「ところで、残るザルチムは?」

 

ブラゴ「どうやら、逃げられたようだ」

 

 

 

ファウード 通路

 ブラゴが言った通り、ボロボロのザルチムはラウシンと共にどさくさに紛れて撤退した。

 

ザルチム「俺とした事が…強敵ぞろいのガッシュ達が相手とはいえ、ムキになりすぎた…。今、俺達が意識しなければならなかったのはあいつらじゃない…、もっと気を付けなければならない強敵が…早くリオウに、リオウにこの事を……」

 

 ブラゴから受けたダメージは凄まじく、途中でザルチムは倒れてしまった。

 

ラウシン「ザルチム、しっかりしろ、ザルチム!」

 

 ラウシンはザルチムを運んだ。しばらくすると、ゼオンペアがザルチムとラウシンが通ったのと同じ道を通ろうとしていた。

 

 

 

ファウード 第4脊髄

 

 ガッシュ達は残るデゴスと戦っていた。

 

ニコル「ギガノ・コファル!」

 

ウルル「スオウ・ギアクル!」

 

しおり「ディゴウ・ガル・ゼルセン!」

 

 次々とデゴスは倒されて全滅した。

 

ティオ「これでデゴスは全滅したわね」

 

しおり「シェリーもよくここがわかったわね」

 

シェリー「この子達に案内してもらったの」

 

 シェリーの後ろにジェムとチータがいた。

 

清麿「ジェムとロデュウのパートナーか。ヨポポとロデュウはまさか…」

 

チータ「2人ともデゴスと刺し違えて魔界に帰ったわ…」

 

シェリー「その直後に私達は2人と遭遇したの。このまま置いておくと危険だから私達と同行させたわ」

 

ジェム「ごめんね、みんな。私のせいでヨポポが苦しんだ挙句、魔界に帰る事になって…」

 

チェリッシュ「あなたが気にする事じゃないわ。ヨポポは勇敢に戦って魔界に帰った。それだったら、その子の遺志を無駄にしないためにも、私達は前に進まなくてはならないわ」

 

ウォンレイ「ジェムとロデュウのパートナーもこの場に留まると危険だから私達と同行した方がいい」

 

チータ「わかったわ」

 

 そんな中、リーヤがシェリーを角でつついた。

 

シェリー「どうしたの?」

 

リーヤ「こんなに強い人間を見たのはアリシエ以来だ。凄いな、お前」

 

シェリー「どういたしまして」

 

ブラゴ「こんな毛玉チビが役に立つのか?とっととマスコットらしくしてればいいんじゃないのか?」

 

リーヤ「何だと!?ブラゴ!僕はマスコットなんかじゃない、勇敢な戦士だ!優勝候補のお前だって恐ろしくも何ともないぞ!」

 

ティオ「凄いわね…初対面なのにブラゴに堂々と言い返すなんて…」

 

ガッシュ「と、とりあえず行くのだ、みんな!」

 

 ガッシュ達は先へ進んだ。

 

 

 

ファウード コントロールルーム

 その様子はリオウも見ていた。

 

リオウ「おのれ…、まさか優勝候補のブラゴまでガッシュに味方するとは…!おのれ…!」

 

 次から次へと邪魔者が来る事にリオウは苛立ちが募る一方だった。

 

リオウ「だが、次からは簡単に通れると思ったら大間違いだぞ…!」

 




これで今回の話は終わりです。
今回はアニメのザルチム戦にテッドペアの代わりにブラゴペアが乱入するという話に仕上げました。
ザルチムと一緒に出てきたギャロンは原作のような役回りをさせる事はできないため、一応は最大呪文や最強の肉体強化術は出たものの、ウォンレイやブラゴの噛ませになるというアニメのような扱いになっています。
アリシエに続いてシェリーに恐怖したザルチムですが、しばらくしてからまたしても人間に恐怖する事となります。
次はキース戦ですが、前編後編に分けており、前編はアニメよりのギャグ満載の戦いになります。


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LEVEL65 僕達は王様

ファウード 通路

 ガッシュ達は体内魔物を蹴散らしながら進んでいた。

 

ウォンレイ「ふんっ!」

 

ブラゴ「でりゃあっ!」

 

 ウォンレイとブラゴのパンチとキックによって青い体内魔物は一掃された。

 

ニコル「ゴウ・コファル!」

 

 赤い体内魔物はチェリッシュの術で倒された。

 

清麿「体内魔物の数が増えている上に赤い体内魔物の割合も多くなってきたな」

 

恵「それだけ、警備が厳しくなってるんじゃないかしら?」

 

パティ「だったら、その警備ごと倒していくまでよ!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

 

 

 

ファウード コントロールルーム

 ブラゴにボコボコにやられたザルチムはファウードの回復液に浸っていた。

 

リオウ「調子に乗りやがって…!未だにファウードを魔界に帰す装置のある部屋は制圧できてないのか?」

 

ラウシン「援軍の魔物達の強さが予想以上で制圧に送られた体内魔物は全滅した」

 

リオウ「おのれ…、どうしてガッシュの元にこんなにも強い魔物達が集まるんだ…!?」

 

ラウシン「もう一組が第3脊髄ホールに入るぞ」

 

リオウ「ふっ、これからはそう簡単に突破できると思うなよ」

 

 

 

ファウード 第3脊髄

 ファウード日本上陸まで後4時間、ファンゴとジェデュンを撃破したアースチームは第3脊髄を通っていた。

 

キャンチョメ「空耳だよね……」

 

フォルゴレ「勿論だ、キャンチョメ。我々には何にも聞こえないぞ…」

 

サンビーム「だが、聞こえるぞ…」

 

エル「あの曲が…」

 

 扉を開けると、契約後のキースが1人でベートーベンの交響曲、歓喜を歌っていた。

 

キース「ウェーヘン、ヒョーンフェン、ヒョンロンペンチョン、フェンヨンペンチャン、ピョ~~ロフッ!」

 

アース「何だ、あれは…?」

 

サウザー「バカか?」

 

エル「あの魔物って…」

 

フォルゴレ「ああ、間違いなく…」

 

キャンチョメ「キース!」

 

エリー「何っ!?あのバカと知り合いなのか!?」

 

レイン「キャンチョメ達はファウードに突入した際に戦った事があるらしい…。バカだがかなり強い…」

 

エリー「あのバカと知り合いだったのか…」

 

サウザー「短い付き合いだった…」

 

 キースに引いているエリー達やもう関わりたくないサンビームとエルはその場を離れた。

 

フォルゴレ「滅茶苦茶強いんだってば!」

 

エリー「入るぞ」

 

アース「御意」

 

キャンチョメ「無視しないでよ!」

 

 アースチームは第3脊髄ホールに入った。

 

キース「ようこそ、諸君!私のコンサートホールへ!」

 

サンビーム「(ん?2日前に戦った時より手足が長くなっている。やはり、キースもゴデュファの契約を行った後か…)」

 

キース「コントロールルーム、低音の響きが悪いぞ!」

 

 

 

ファウード コントロールルーム

 

 リオウ達はキースに振り回されていた。

 

ラウシン「どうする?」

 

リオウ「やってやれ」

 

 

 

ファウード 第3脊髄

 キースの注文通り、低音の響きをよくした。

 

キース「えっへん。ブラボ~~!」

 

 キースの声が響いた。

 

キース「よかろう。これで思う存分虫けら共の相手をしてやれる!」

 

 そんな中、キャンチョメが前に出てきた。

 

キャンチョメ「鉄のフォルゴ~~レ!」

 

フォルゴレ「うわああっ!!待ってくれ、キャンチョメ!奴を刺激するな!」

 

キャンチョメ「何でだよ、フォルゴレ!僕は強くなったし、みんなでかかれば」

 

フォルゴレ「ああ!だが、私達はアースの力を温存しなくてはならないし、次の所を突破するためにもレインの力も温存しなきゃらない!それに、前の戦いでウマゴンとカルディオは疲れ切っている!となると、今、キースと戦えるのは…」

 

 フォルゴレの言う通り、アースは力を温存しなくてはならず、レインも念のために力を温存しており、戦えるのはキャンチョメとモモンしかいなかった。

 

キャンチョメ「僕とモモンだけ…」

 

フォルゴレ「ああ。幸い、奴は1人だ。我々にもディマ・ブルクやフォウ・スプポルク、ミリアラル・ポルクといった強力な術があるにはあるのだが……」

 

 ブザライと戦っている側でキースの強さをキャンチョメ達は目の当たりにしていた。

 

フォルゴレ「(強かったよなぁ、あいつ。おまけにゴデュファの契約でパワーアップしてるようだし、まともに戦ったら…)」

 

キース「さぁ、どうする?一人ずつ来るか?まとめて来るか?」

 

フォルゴレ「いや、その前に…その前に…もう一度、あなたの歌をお聞かせください!」

 

 フォルゴレの発言にキャンチョメ以外は引いた。

 

エリー「やはりバカの知り合いか…」

 

サウザー「最低だ…」

 

レイン「短い付き合いだった…」

 

キャンチョメ「フォルゴレ、みんな引いちゃったよ!」

 

フォルゴレ「是非もう一度、あなた様の歓喜の歌を!」

 

キース「ふん。この芸術に魂が震えたか。ミュージック!」

 

 ラウシンはミュージックを流し、またキースは歌い出した。

 

キース「ウェーヘン、ヒョーンフェン、ヒョンロンペンチョン、フェンヨンペンチャン、ピョ~~ロフッ!」

 

 その隙にアースチームは通ろうとしたが、足場に隠れていたベルンがその動きを見ていた。

 

ベルン「(キースの奴、契約したのに変わらんなぁ…)キース!」

 

キース「何だ?ベルン。今、いい所なのだ」

 

ベルン「あいつら行っちまうぞ」

 

キース「な、何っ!?おい、待て、お前ら!!」

 

フォルゴレ「い、いやぁ、こちらちょっとトイレだそうで…」

 

エリー「いや、俺達は」

 

フォルゴレ「アースとレインだけでも先に行け。トイレもファウードも時間に間に合わなければ大変な事になるんだぞ。それに、先にはもっと強い魔物がいるかも知れない。行ってくれ」

 

アース「…わかった、頼む」

 

カイル「無理はしないでね」

 

 アースとレインは先に向かった。

 

フォルゴレ「さぁ、じきに戻りますので少しお話しでも」

 

キース「話だと?」

 

フォルゴレ「いやぁ、素晴らしい歌声ですが、魔物のあなた様がなぜベートーベンを?」

 

エル「あの歌、やっぱりベートーベンでしたの?」

 

フォルゴレ「(しっ!)さぁさぁ、お聞かせください、どうやってその歌声を得たのか」

 

キース「ふん、いいだろう。ここに座れ」

 

 座る所が出てきた。

 

キース「早く」

 

フォルゴレ「はい…」

 

サンビーム「エル…」

 

 フォルゴレとエルは座った。

 

キース「私達の出会いはボンだった」

 

フォルゴレ「ボン?」

 

エル「ベートーベン生誕の地ですね」

 

 フォルゴレ達へいも天が出された。

 

エル「これは?」

 

キース「いも天だ」

 

キャンチョメ「わーい!」

 

 キャンチョメとモモンはいも天を食べた。

 

キース「スクリーン!」

 

 キースの指示に従い、ラウシンはスクリーンを出した。

 

キャンチョメ「こりゃうまいや!」

 

キース「どんどん食え」

 

ベルン「アクション!」

 

 スクリーンに映像が映された。

 

キース「ルードディッヒ・ヴァン・ベートーベン。1770年、ドイツのボンに生まれた」

 

フォルゴレ「そこから始まるのか」

 

キース「さて、私がドイツの日本料理店でバイトしていた時の事だ」

 

フォルゴレ「そこまで飛ぶのか…?」

 

 映像では、ベルンと会う前のキースは日本料理店でバイトしていた。

 

キース「慣れぬ作業に私は苦労していた」

 

ベルン『まずい…』

 

キース『あちちちっ!!』

 

キース「そこへ流れてきたのが…」

 

 歓喜の歌が流れた。

 

キース『ウェーヘン、ヒョーンフェン、ヒョンロンペンチョン、フェンヨンペンチャン、ピョ~~ロフッ!』

 

 曲に合わせて油で揚げたいも天をベルンは食べた。すると、ピエロみたいな鼻が花のように咲いた。

 

ベルン『カーット!うまかった』

 

キース「交響曲第9番、苦労を経て、歓喜に至れるこの歌が、私の魂を震わしたのだ!」

 

フォルゴレ「うおおっ、何と素晴らしい!」

 

キース「ところで、トイレに行った奴等はどうした?なぜ戻って来ない?」

 

フォルゴレ「大きい方ですよ」

 

キース「そもそも向こうにトイレはあったのか?」

 

エル「あの…」

 

フォルゴレ「(よーし、いいぞ、エル。時間を稼いでくれ…)」

 

エル「ベートーベンに感激したのですよね?」

 

キース「そうだ」

 

エル「そこまで感銘を受けていながら、どうして歌詞が出鱈目なのですか?」

 

 その言葉にキースとフォルゴレは衝撃を受けた。

 

フォルゴレ「(エ、エル!何という事を!)」

 

キース「おのれ、私のどこが出鱈目なのだ!?」

 

 またキースは歌い出した。

 

キース「ウェーヘン、ヒョーンフェン、ヒョンロンペンチョン、フェンヨンペンチャン、ピョ~~ロフッ!」

 

エル「フロイデ、シューナー、グェッターフンッケン、トフターアオス、エリュイジウム」

 

 エルの歌声は聞いているサンビーム達をも驚かせた。

 

キース「ウェ――ディンロンフォン、 パンチョンペンチャン、ポイノイロンロン、ピーペプ!」

 

エル「ヴィア、ベットヘイトゥン、ファウアートウンケン、ヒンムルーシェ、ダインハイリキトゥム!」

 

キース「ビーディルボーディル、ヘェンディンフォンデン!」

 

エル「ダイネ、ツァオベル、ビンデン、ヴィーデル、ヴァスディーモゥデ、シュトルェンゲッタイルト、アッレメンシェン、ヴェールデン、ブリューダー、ヴォーダイン、ザンフタル、フリューゲル、ヴァイレット」

 

 エルが歓喜の歌を正しく歌った事にキースは怒り心頭だった。

 

キース「あああっ!!歌は……歌は心だ!よくも我が芸術を愚弄してくれたな!!生かしては帰さん!!」

 

フォルゴレ達「ひぃ~~っ!!」

 

フォルゴレ「サンビーム、調子はどうだ!?」

 

サンビーム「正直、心の力が半分程度しか溜まってない…」

 

サウザー「オイラも…」

 

フォルゴレ「そうか…やはり私達がやるしかないか…」

 

キャンチョメ「そうだね。僕達がやらなきゃいけないんだ!」

 

キース「まぁいい、虫けら共、ブラボー!」

 

 キースは腕を伸ばし、ロケットパンチを仕掛けてきた。

 

エル「アムロン!」

 

 咄嗟にモモンはアムロンでキースのロケットパンチを受け止めた。

 

キース「こ、こいつ…」

 

 そのまま両者とも腕を振り回し、キャンチョメ達は縄跳びの要領でジャンプし続けた。

 

キース「ベルン、お前も負けるな!」

 

ベルン「ああ!」

 

 ベルンも縄跳びに加わった。しばらく敵味方関係なく楽しそうにしていたが、キースが痺れを切らした。

 

キース「早く誰か突っ込めよ!虫けらが、今度こそ本当に容赦せんぞ!」

 

フォルゴレ「サンビーム、サウザー、少しは回復したか?」

 

 2人は首を横に振った。

 

フォルゴレ「やはり、私達がやるしかないか…」

 

ベルン「アム・ガルギニス!」

 

エル「アグラルク!」

 

 腕力強化のロケットパンチが飛んできたが、モモンはアグラルクでかわした。

 

キース「何っ!?」

 

 その後、モモンはキースの背後に現れた。

 

キース「甘いわぁ!」

 

 左腕を伸ばしてキースはモモンを吹っ飛ばした。

 

フォルゴレ「(まずはこれで行くしかない!)ディマ・ブルク!」

 

 8体のキャンチョメの分身が現れた。

 

キース「出たな」

 

キャンチョメ「行けっ、みんな!」

 

 分身は突っ込んでいった。

 

ベルン「ギガノ・ギニス!」

 

 3体の分身が消滅した。

 

キャンチョメ「ええっ!」

 

ベルン「アム・ガルギニス!」

 

 今度はアム・ガルギニスで2体消滅した。

 

キャンチョメ「そんな…僕の分身があっという間に5体も!」

 

フォルゴレ「これも、ゴデュファの契約によるものか…」

 

キース「その分身たちは集結すれば強いが、1体ずつでは私には勝てん」

 

ベルン「ゴウ・ガルギニス!」

 

 分身も立ち向かったが、あっという間に全滅した。

 

キース「ふん、これで」

 

キャンチョメ「キース、お前の最大呪文はファウードの封印を解く時に見ていたからもう使えるんだぞ!」

 

フォルゴレ「ミリアラル・ポルク!」

 

キャンチョメ「ディオガ・ギニスドン!」

 

 キースはキャンチョメがディオガ・ギニスドンを放ったのに驚いた。

 

キース「な、何っ!?ディオガ・ギニスドンだと!?」

 

 驚いたキースはよけられずにディオガ・ギニスドンをまともに受けた。

 

キャンチョメ「やったぁ!」

 

フォルゴレ「流石にディオガ級の術を喰らえば…」

 

 ところが、キースは起き上がった。

 

キャンチョメ「そ、そんな!」

 

エル「ディオガ級の術を受けても立ち上がれるなんて…」

 

キース「ふん、このディオガ・ギニスドンはパワーアップ前の威力だな。だが、今の私のディオガ・ギニスドンは今までとは比べ物にならないのだぞ。これでお前の術は見切った。そして、お前には攻撃呪文がないようだな。だが、私にはパワーアップしたディオガ級の術が温存されている」

 

フォルゴレ「やばい、やばいぞ…。ディオガ級の術はフォウ・スプポルクでどうにかなるが…」

 

キース「終わりだよ、お前ら」

 

サウザー「心の力は半分しか溜まってねえし、ファウードの回復液もとっとかなきゃならねえが…」

 

サンビーム「やるしかない!」

 

サウザー「ゴウ・ギドルク!」

 

サンビーム「ゴウ・シュドルク!」

 

 ウマゴンとカルディオは向かっていった。

 

フォルゴレ「今のウマゴン達では長くは持たないぞ…」

 

モモン「僕が……僕が囮になってキースを引きつける…。その隙にキャンチョメがキースの本を…」

 

エル「モモン、そんな…」

 

モモン「いいんだ。僕に魔界の王になれる力はないんだって。だからずっと逃げてたんだ。でも、ガッシュ達と会ってわかったんだ。僕でも、誰かのために戦えるって。王様になれなくったって、誰かのために戦えるって!みんなのために!」

 

エル「…モモン、あなたは立派になりましたわね」

 

フォルゴレ「エル?」

 

モモン「キャンチョメ、後は頼むよ」

 

エル「ではモモン、行きますよ」

 

 しかし、キャンチョメはモモンを止めた。

 

キャンチョメ「ダメだ~っ!」

 

エル「およよ…」

 

キャンチョメ「ダメだ!ダメだよ、モモン!僕も最初はそう思ってた。魔界の王になるのは無理だろうって。でも、戦ってて気づいたんだ!僕も、僕もやればできるんだって!弱かった僕でも特訓を重ねてから、みんなと肩を並べて戦えるぐらい強くなれたんだ!なら、僕でも王様になれるんだって!君だってそうだろう、モモン!戦いが嫌なら、本を燃やして魔界に帰ればいいのにそうしなかった!それは君も王様になりたかったからだろう?なら、頑張ろうよ。諦めずにさ!」

 

モモン「僕が…王様に…?」

 

キャンチョメ「ああ」

 

モモン「そうだ、僕も本当は王様になりたかったんだ…!」

 

キャンチョメ「僕は王様になったら魔界をお菓子の国にするんだ。ほら、最後のお菓子だ。半分こだよ、友達だから」

 

 キャンチョメはポケットに入れている最後のお菓子を半分モモンにあげた。

 

キャンチョメ「僕が王様になってお菓子の国を作ったらモモン、君はチョコ大臣だよ」

 

モモン「うん!」

 

 キャンチョメのイメージするお菓子の国の姿はフォルゴレとエルにも容易に想像できた。

 

フォルゴレ「おお、見えるぞ、キャンチョメ!お前のお菓子の国が!」

 

エル「ええ!」

 

モモン「僕、諦めてた。でも、また王様目指して頑張るよ」

 

キャンチョメ「その意気だよ」

 

モモン「僕、もう逃げない!キャンチョメ、手を出して」

 

キャンチョメ「えっ、何だい?」

 

モモン「これ、半分こできない。だから、キャンチョメにあげる。友達だから」

 

 それは、ティオのパンツだった。

 

キャンチョメ「えっ?いいよ…」

 

モモン「ファウードを止められたらまた手に入れられる。だから」

 

キャンチョメ「ありがとう…」

 

モモン「僕が王様になったら君を大臣にするよ」

 

キャンチョメ「何大臣?」

 

 モモンは内緒にした。そして、モモンのイメージする国の姿はフォルゴレには見えていたが、エルには見えなかった。

 

エル「モモン、見えません!私には見えません!」

 

キャンチョメ「2人で生き残ろう!」

 

モモン「うん!」

 

 一方、ウマゴンとカルディオはキースに追い詰められていた。

 

ウマゴン「メル!」

 

サンビーム「ウマゴン!」

 

サウザー「ちくしょう、全快ならあんな奴!」

 

カルディオ「パルパルモーン…」

 

キース「これまでだな」

 

 そこへキャンチョメ達が来た。

 

キース「またお前らか!」

 

エル「オラ・ノロジオ!」

 

 キースは殴りかかろうとしたが、オラ・ノロジオで動きを遅くされた。

 

キース「何っ!?何だ、動きが…!」

 

 その隙にベルンはキャンチョメとモモンに追いかけられていた。

 

キース「動け、我が腕よ…!」

 

 すると、8秒経ってオラ・ノロジオの効果が切れ、キースの時間の流れが元に戻り、キャンチョメとモモンは殴られた。

 

キャンチョメ「僕達は…」

 

モモン「諦めない…」

 

 しばらく攻防が続き、遂にキースは業を煮やした。

 

キース「おのれ!もうお前達を前進などさせんぞ!」

 

 キースは腕を伸ばし、スイッチを押した。すると、先へ向かうための扉が閉まった。

 

フォルゴレ「扉が!」

 

キース「こうならば、お前達を確実に全滅させてやる。いでよ、デゴス!」

 

 指を鳴らすと、上からデゴスが2体落ちてきた。

 

サウザー「な、何だ!?あの化け物は!」

 

キース「こいつは体内魔物のデゴスミア。頭は悪いが力は凄まじくてな、非力なお前達などあっという間に倒すだろうよ」

 

サンビーム「まずいぞ、私とサウザーは全快でない上、パワー担当のレインを先に行かせたせいであの体内魔物を倒せそうな手段がない!」

 

フォルゴレ「(サンビームの言う通り、本当にまずい!キャンチョメのフォウ・スプポルクとミリアラル・ポルクは体内魔物には効果がない!どうすれば…)」

 

エル「ど、どうしましょう…?」

 

キャンチョメ「(新しく覚えた術はデゴスには効かない。ここはどうすれば…)」

 

 考えを巡らせている最中、モモンが何かに反応した?

 

エル「モモン?」

 

モモン「大きな力を持った魔物2体がこっちに来ている!」

 

キース「大きな力を持った魔物?そんな奴が」

 

???「ゾニス!」

 

 壁を壊して出てきたのは、バリーとテッドだった。

 

テッド「あれっ?チェリッシュがいねえじゃねえか!」

 

バリー「お前、ちゃんと話を聞いてなかったのか?チェリッシュはガッシュと行動を共にしている」

 

テッド「だあ~~っ、ちくしょ~~~っ!!チェリッシュと会えるから先走ってしまった~~!!」

 

ジード「やっちまったもんはもうしょうがねえだろ?」

 

 バリーとテッドの登場に一同は驚いた。

 

キース「(おお、まさかバリーが来るとは…)」

 

サンビーム「(青い体、角…もしや、ガッシュの言ってた魔物のバリーか?)お前、確か名前はバリー…だったか?」

 

バリー「ああ、そうだ」

 

サンビーム「それで、リーゼントの君がガッシュの家に泊まった事があるテッドだな?」

 

テッド「ああ、そうだぜ」

 

グスタフ「我らはナゾナゾ博士の要請により、ここへ来た」

 

 バリーの威圧感溢れる姿にモモンペアとキャンチョメペアは震えていた。

 

エル「あの魔物、とても怖いですわ…」

 

モモン「それだけじゃないよ。力もとても強い…」

 

 

 

飛行機

 テッド達を送り届けた後、マリル達は話をしていた。

 

マリル「Drナゾナゾ、そなたが連れてきたバリーとやらは信頼できるのか?」

 

ナゾナゾ博士「うむ…私はゾフィスらとの戦いで一度協力を頼んだ事がある。その時は『次にガッシュと会う時は修行が終わり、決着を着ける時だ』と、私の頼みを断った」

 

カラオム「そのような者に再び協力を頼むべきではないのでは…?」

 

ナゾナゾ博士「確かに、再び彼等に協力を求めるのは賭となるようなところもあった。だが…少し前、私が彼と会った時には何かが違っていた」

 

マリル「何か?」

 

ナゾナゾ博士「姿も傷だらけになっていたが、それ以上に彼の持つ雰囲気が違っていた…。前に会った時よりももっと強く、恐ろしく、威圧的な感じを受けた。しかし、そこには前とは違う大人の静けさも感じた。託してみようじゃないか、彼に」

 

 そんな中、飛行している何かが近づいてきた。

 

カラオム「あれは何なのだ?」

 

 飛行しているのはアシュロンであった。

 

ナゾナゾ博士「おお、君はアシュロン君ではないか!救援に来てくれたか!」

 

リーン「ダンナの探している魔物がファウードにいるんで、俺ら、助太刀に来ました!」

 

アシュロン「早速、ファウードへ行ってくる!」

 

リーン「フェイウルク!」

 

 シン・フェイウルクと違い、負担も少なくて小回りも効くフェイウルクでアシュロンはファウードに侵入した。

 

ナゾナゾ博士「頼むぞ、君達(だが、前から気になってたが、アシュロン君のあの焼け焦げたような傷跡は何だ?一体、誰からつけられたというのかね…?)」

 

 アシュロンの傷をナゾナゾ博士は怪しんでいた。

 

 

 

ファウード 通路

 清麿チームはブラゴを加えてから先へ進んでいた。

清麿「何だって!?バリーとテッドが!」

 

シェリー「私達と一緒にファウードに乗り込んだの。二組なら、アースとかいう魔物がリーダーのチームの方へ行ったわ」

 

チェリッシュ「テッドも来てるの!?」

 

ブラゴ「おい、お前はそのテッドとかいう奴を知ってるのか?」

 

チェリッシュ「知ってるも何も、魔界にいた頃に一緒に暮らしていた家族なのよ!どうしてテッドは私のいる所へ行かなかったの!?」

 

シェリー「それが、チェリッシュがどのチームにいるのかを聞かないでバリーと一緒に行ってしまったのよ」

 

チェリッシュ「…テッドったら、私の事になると周りが全然見えてないじゃない…」

 

 先走っているテッドにチェリッシュは呆れていた。

 

アリシエ「だが、両方のチームがコントロールルームに着けば会える事に変わりはない」

 

ニコル「私達は前に進みましょう」

 

チェリッシュ「…そうね」

 

恵「さぁ、行きましょう、清麿君、みんな!」

 

清麿「ああ!」

 

 清麿と恵は手を繋いで進んでいた。それをブラゴはじっと見ていた。

 

リィエン「どうしたあるか?ブラゴ」

 

ブラゴ「……別に」

 

ウォンレイ「(もしかすると、恋に興味を持ったのか?)」

 

シェリー「(とりあえず、この場は黙っておきましょうか)」

 

???「待ってたぜ」

 

 進んでいる最中に出会ったのは、パピプリオペアだった。

 

パピプリオ「はっはっは~っ!ここがお前らの墓場だ」

 

ルーパー「覚悟をし!」

 

パティ「…あんたら、いたの?」

 

パピプリオ「そこの怖い女、俺はちゃんとファウードにいたぞ!」

 

パティ「そうだったの」

 

ティオ「あいつはほっときましょう、パティ」

 

コルル「先を急がなきゃ!」

 

パピプリオ「何で俺の事を無視するんだよ!!」

 

チェリッシュ「1人で私達の相手をするの?」

 

ウォンレイ「何だか、君が相手だと気が進まないなぁ…」

 

パピプリオ「全員気の毒そうな顔すんな~~!」

 

ブラゴ「そこをどけ、雑魚とゾなんとか病を撒き散らす人形のオートなんとかが」

 

ルーパー「に、人形!?私はれっきとした人間よ!あなた達、イケメン5人と美女5人、美少女3人とマスコット2人、怖い男の顔のいい連中の集まりで私の事を人形だとバカにしているの!?ブスは聞き逃しても人形は聞き逃せないわよ!」

 

ガッシュ「(マスコットは私とリーヤなのか?)」

 

シェリー「(こういったメンバーになったのもたまたまなのだけどね…)」

 

しおり「(あの人、ニコルさんを完全に男だと思い込んでいるようね…)」

 

恵「(ニコルさんは男装してるけど、れっきとした女の人なのに…)」

 

リーヤ「僕はマスコットなんかじゃないぞ、勇敢な戦士だと訂正しろ!」

 

ブラゴ「お前、人形みたいな面をしてるから噂に聞いた自動で動く人形のオートなんとかだと思ったぞ」

 

パピプリオ「ルーパーをバカに…ぎょえええっ、ブラゴじゃねえか!!」

 

 ようやく目の前にいたのが優勝候補、ブラゴである事に気付き、ブラゴの恐ろしい顔にパピプリオペアは怯えていた。

 

シェリー「済まないけど、私達は急いでいるの。あなた達に付き合っている暇はないわ。レイス!」

 

 レイスたった1発でパピプリオペアは一気に吹っ飛んでいった。

 

パピプリオ「何でブラゴがこんな所に来るんだよ~~!」

 

シェリー「何だったの?あの人達」

 

ウルル「とりあえず、気にしない方がいいですよ…」

 

清麿「気を取り直して行くぞ、みんな!」

 

 気を取り直し、清麿チームは先を急いだ。




これで今回の話は終わりです。
今回はキース戦の前編を描きました。前編はアニメ寄りでキャンチョメとモモンの活躍とギャグを多めに描きました。話の最後であったゾなんとか病やオートなんとかは最近、文庫版が発売されているからくりサーカスのネタで、実際にゾナハ病やオートマータは出てくる事はありません。
次はキース戦の後編となるバリーvsキースを描きますが、アニメ寄りでギャグ多めの前編とは違い、後編は原作寄りのシリアスな戦いになります。


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LEVEL66 ライオンの目

ファウード 第3脊髄

 テッドとバリーの登場にその場の雰囲気が変わった。

 

サウザー「おい、バリーとか言ってたな。お前の目的は何だ!?」

 

バリー「目的か?」

 

サンビーム「確か、バリーはナゾナゾ博士から聞いた話では、香港でガッシュに負けてから修行を重ねていたそうだな。ガッシュを倒しに来たのか?」

 

バリー「…確かに俺は香港での戦いでガッシュに負けた後、あいつに勝つために更に強くなり、強き王になろうと修行や戦いを繰り返した。中には俺が死にかける戦いもあった。だがよ…そうやって強くなればなるほど…、ガッシュに拘っていた自分が小せえ事に気付いたのよ…。それに、今、俺がやる事はガッシュを倒す事じゃねえ、このファウードを止める事だ。それが終わればガッシュと戦う機会はいつでも作れる」

 

キャンチョメ「(何だかバリーはとても強そうな上に恐ろしく感じるけど…)」

 

エル「(その後ろ姿がとても大きく見えますわ…)」

 

 バリーの後ろ姿は一同にはとても大きく見えていた。

 

キース「ふっ、バリーよ。久しぶりに会ったと思ったら、下らん事を言ってるじゃねえか。やはり、俺とお前は戦う運命にあるようだな。魔界時代のライバル同士、サシで決着を着けようではないか。その際にデゴス、残りの連中を倒してこい!」

 

デゴス「ウホホホーン!」

 

 デゴスはキャンチョメ達に迫ってきた。

 

フォルゴレ「わ、私達に迫ってきたぞ!」

 

テッド「あの怪獣は俺に任せろ!ジード!」

 

ジード「ドラグナー・ナグル!」

 

 テッドはデゴスに向かっていった。

 

キース「我々も行くぞ、ベルン!ファウードの力を得てパワーアップした今の私なら、バリーなどギガノ・ギニスで吹っ飛ばせる!」

 

ベルン「ギガノ・ギニス!」

 

 ギガノ・ギニスが放たれたが、その方向にはデゴスが通り過ぎようとしていた。

 

キース「このバカ!お前は奴等をぶっ飛ばせと言ったはずだ!バリーの方に走っては私の術が当た」

 

 結局、デゴスにギガノ・ギニスが当たった。

 

キース「デゴスのバカ~~!!私の術で死んでしまっては何の意味も…」

 

 しかし、ロデュウのギガノ・ラギュウルを受けた時と同様、デゴスにはほとんど効いてなかった。

 

エル「キースの攻撃が全然効いてませんわ!」

 

キース「ははははっ!流石デゴスだ!私の術を受けてもケロッとしている。体の頑丈さもすさまじいな。よーし、デゴス!今度こそあいつらを」

 

 しかし、バリーの貫手でデゴスは悶絶してしまった。

 

サンビーム「キースの術を喰らっても平気だった奴を…」

 

サウザー「素手で悶絶させやがった…」

 

グスタフ「アラドム・ゴウゾニス!」

 

 バリーの術がさく裂し、デゴスは倒されてしまった。

 

ジード「セカン・ナグル!」

 

 一方、テッドの方はデゴスを順調に追い詰めていた。

 

ジード「サーズ・ナグル」

 

グスタフ「テッド、バリーがデゴスに拳を打ち込んだのと同じ位置に拳を叩き込め!」

 

テッド「おう!」

 

 テッドも同じように拳を打ち込むと、デゴスは悶絶した。

 

テッド「まだ終わりじゃねえ!」

 

 連続でテッドが同じ位置にパンチを打ち込みまくった結果、デゴスは倒れ、消滅した。

 

キース「ふ、2人共デゴスをあっという間に!?」

 

テッド「見たか?」

 

キース「流石は私の魔界時代のライバル。面白い。本気を出してかかろうではないか!」

 

バリー「ふん、ライバルか…。よぉ、キース…久しぶりに会って何だが、貴様の姿、昔の俺を見てるみたいでイライラするぜ…。テッド、この戦いに手を出すな。いいな?」

 

テッド「勿論だぜ。男のサシの戦いには口は挟まねえ」

 

キース「ふん…相変わらず生意気な野郎だ。だが、前とは違うところがあるな、バリー。やけに体がボロボロになってるじゃねえか」

 

バリー「しばらく前に強い奴と戦ってな」

 

キース「それで、自慢の角も1本失うほどボロボロに…?ふははっ…バリー、それはお前が弱いからだよ。ふっ、デゴスを一撃で倒したと思ったら…なんだ、そんな怪我を負うほど、お前は弱かったのか?がっかりだな…あれ程までに倒したかったバリーが…戦いでボロボロにされる程、弱い奴だったとはな!!」

 

ベルン「ドルギニス!」

 

グスタフ「ドルゾニス!」

 

 いままでのおちゃらけた態度をかなぐり捨てて、キースはバリーへの怒りを露わにし、向かっていった。対するバリーも向かっていき、ドリルの術同士のぶつかり合いとなった。

 

キース「魔界時代、私は西の地で無敵の子だった…」

 

 

 

回想

 王を決める戦いが始まる前の事だった。キースの通う学校にバリーが転校してきた。

 

キース『ところが、そこにお前が転校してきた…』

 

バリー「ヴィンセント・バリーだ」

 

キース「ふん…、生意気な面だ」

 

バリー「んだと!?コラ!」

 

 転校当日からバリーはキースに悪口を言われて喧嘩に発展したが、バリーが勝利した。

 

キース『初めてだったよ…。大人以外に初めて負けた…』

 

 

 

キース「それまで俺を倒せる魔物の子は王族などの位の高い奴で特別な教育を受けた奴等や…大人をも大きく上回る体格と力の持ち主のレイン、噂に聞いた竜族の2体の神童、エルザドルとアシュロン、こいつらのように大人でも手におえぬ数名だけだと思っていた…。その自信や誇りを…、お前は一瞬にして砕いたんだよ!!」

 

 昔の事を語りながらキースはバリーと渡り合い続けた。

 

キース「その時から俺には目標ができた。王となる他にお前を倒すという目標がな!お前にあの時負けたのは、お前が『私にはない何か』を持っていたからだ!」

 

グスタフ『そんなチンピラ同然の考えしか持たんお前に、この者の志ある本物の目は殴れんよ』

 

キース「お前に勝てばその『何か』が手に入る!敗北という汚点も消える!」

 

バリー『優しい…王様…だと…!俺は…、こんな甘っちょろい奴を殴れずに…負けたのかよ…。ちくしょう…!』

 

キース「その『何か』が手に入らずとも、お前に勝てば私とお前、どちらが本物の『強さ』を持っているのかがわかる!」

 

バリー『ガッシュ、次に会う時には絶対にお前を殴り、叩きのめせるぐらいにまで強くなるからな!』

 

キース「その決着を今、着ける事ができる!よくぞこの時まで生き残ってくれた。バリーよ!お前を倒す事でやっと前に進める!お前を倒さねば、私は次の一歩は踏み出せぬと思っていたのだ!」

 

バリー『奴とは修行が終わってからいずれ決着を着けねばならねえ』

 

 キースの言葉に今までの事を思い出した後、バリーは口を開いた。

 

バリー「…くだらねえ…」

 

キース「何!?」

 

 口を開いた途端、バリーはキースの体勢を崩し、わざと攻撃を外してみせた。

 

バリー「キースよ、いつまで一人の敵にこだわってんだ?」

 

キース「ぐおおおっ!!」

 

バリー「俺を倒さねえと前に進めねえってのは…キース、お前がまだ弱いからだ」

 

キース「何!?なんだと…貴様!!」

 

バリー「それにお前は昔の俺に拘っているようだが、昔の俺と戦っても何も手に入らないぜ。あの時の俺はただのチンピラだったからな…。『何か』が手に入る、『何か』が変わるきっかけをくれるのは腕っぷしだけが強い奴じゃねえ、心に力がある奴だ」

 

 これまでバリーが戦った心が強い魔物のガッシュ、チェリッシュ、エルザドルの事を思い出しながらバリーの言った事はキースにはわからなかった。

 

グスタフ「ゾニス!」

 

 ゾニスの推進力でバリーは突進し、キースに突きを入れた。

 

キース「オギャン!」

 

グスタフ「ゾニス!ゾニス!ゾニス!ゾニス!」

 

 キースは連続でゾニスを受けた。

 

キース「ぐ…ああっ、ベルン!」

 

ベルン「ゴウ・ガルギニス!」

 

 バリーから距離を取ろうとしたキースだったが、バリーに足を掴まれた。

 

キース「何っ!?」

 

グスタフ「ゾニス!ゾニス!ゾニス!ゾニス!ゾニス!うわぁああぉっ!!ゾニス!」

 

キース「オギャーン!!」

 

 そのままキースはゾニスを連続で喰らい続けて吹っ飛ばされた。

 

キース「くそう!!ベルン!」

 

ベルン「バーガス・ギニスガン!」

 

 たくさんの光線が壁で跳ね返り、四方八方からバリーを襲った。当然、フォルゴレ達は巻き添えを食った。

 

エル「およよよ!!こっちにも来ましたわ!!」

 

フォルゴレ「どわああっ!!」

 

 フォルゴレはキャンチョメ達の盾になって流れ弾を受け続けた。

 

キャンチョメ「フォルゴレ!」

 

フォルゴレ「流石にファウードの力でパワーアップしてると流れ弾でもきつい…」

 

エル「ミミルオ・ミファノン!」

 

 エルの方も可能な限り流れ弾が来ないようにモモンの術で軌道を変えていた。

 

サウザー「あの攻撃、どうするんだよ…」

 

グスタフ「腕の見せ所だ、バリー!アム・ラ・ゾルク!」

 

バリー「ハァアアアアアッ!!」

 

 バリーは自分の方に来たバーガス・ギニスガンを全弾受け止めた。

 

キース「ぜ、全部…受け止め…」

 

バリー「バアアアア!!」

 

 今度は受け止めた弾全てを跳ね返した。

 

キース「跳ね返してきた~~!?オギャーン!!」

 

サウザー「す、すげえ…」

 

カルディオ「パル…」

 

キース「くそぉおおっ!!ベ…ルン、最…大…術だぁああっ!!」

 

バリー「大きな隙も作ってないのに最大術か?」

 

 キースの後ろにはもうバリーが回り込んでいた。

 

バリー「弱い術の連発を喰らい自分の攻撃を跳ね返されて、冷静さを失ったか?」

 

 それから、バリーはキースに突きを入れた。

 

バリー「言ったろ?お前が弱いだけだと…」

 

グスタフ「アラドム・ゴウゾニス!」

 

キース「オギャーーン!!」

 

 バリーに一方的に叩きのめされ、キースは倒れた。

 

キャンチョメ「やったぁ!」

 

モモン「ディオガ級の術を受けてもすぐに立ち上がったキースをバリーがあっさり倒したよ!!」

 

 キャンチョメ達が喜ぶのも束の間、キースはまだ意識があった。

 

グスタフ「(……まだ意識があるのか?思った以上にファウードの力は魔物をタフにしているようだな…)」

 

ウマゴン「メル…」

 

サンビーム「あれ程の攻撃を受けてまだ意識があるとは…」

 

キース「お前…強い魔物と…戦ったと言ったな…。それは…一体…?」

 

バリー「お前がさっき言った竜族の神童だ。2体のうちの1体、エルザドルを倒した。それからしばらくしてアシュロンともお互いの実力を確かめ合う程度ではあったが、戦った」

 

キース「まさか…あの…大人の戦士でも敵わぬ奴等のうちの1体を倒し、もう1体とも渡り合えただと…?私も…手が出せなかった奴を…?」

 

バリー「なぜ手が出せなかった?力の差が歴然で負けるとわかっていたからだろ?それはお前の強くなる意志が薄く、覚悟もできてなかったからだ。心の強い奴や自分よりも一回りも二回りも強い奴と戦い、得るものはでかいぞ!たとえ血みどろになり、死にかけようとな…そいつの持つ力、戦い方、心の持ち方、全てが身に染みて手に入る。吸収すればするほど高い所が見えてくる。昔敗れた1人に拘るなど小さな事だ。俺はもっと高い所に行く。ガッシュとの出会いをきっかけにどんどん自分を高めていく。ただそれだけだ…」

 

キース「う…おお、くそぉ…高みへ行く…だと…?一度敗れた奴に拘るのは小さい…だと…?ふざ…けるな。憎い奴を倒すのの何が悪い!?憎いバリーを私は倒し隊のだ!ファウードよぉ!もっと力を、力をくれ!!必要ならばこの体も、いも天も、我がパートナーベルンも生贄として捧げよう!」

 

ベルン「ファウードよ、いも天はうまいが、おれはまずいぞ!やめておけ!!」

 

サンビーム「何っ!?まだパワーアップできるのか!?」

 

キャンチョメ「更にパワーアップしたら大変な事になるよ!」

 

キース「うおおおー、ベルン!いいじゃないか、ちょっとぐらい生贄になっても!」

 

 キースの頼みには逆らえず、ベルンは鼻毛を少しむしって生贄にした。すると、それが効いたのか、キースの体に異変が起こった。

 

キース「おおおー、きたきたー!!ありがとう、ファウード!あんた私の父さんだ!ブラボオオ~~ッ!!」

 

 変化が終わると、キースの体は厚切りのナルトの断面の模様に似た体に変化し、しかも、それに似た二つの宙に浮いている星のような武器が現れた。

 

キース「どおだぁ、バリー!これでお前ももう終わりだな~!」

 

 しかし、バリーは動じなかった。

 

バリー「キース、てめえ、目がくもってるぜ…」

 

キース「この姿を見て、言うのはそれだけかー!?ベルン!」

 

ベルン「おお!(すげえ姿になったなぁ…)ギガノ・ギニス!」

 

 キースの姿に驚きつつも、ベルンはギガノ・ギニスを発動させたが、光線と同時に星のような武器も光線を放った。

 

エル「星みたいなものも術を出しましたよ!」

 

グスタフ「ゴウ・ゾルシルド!」

 

 キースのギガノ・ギニスはバリーの盾の呪文もあっけなく砕いた。

 

キース「ははっ、そんな盾、役にも立たねえ!」

 

ベルン「アム・ガルギニス!」

 

 キースの強化ロケットパンチと共に星も突撃した。バリーはパンチの方はかわせたが、星の方はかわせなかった。

 

サウザー「数が多くてよけられねえぞ!」

 

フォルゴレ「このままではいくらバリーでも…」

 

テッド「手を出したくても絶対に手を出すんじゃねえぞ。バリーはあんな野郎に負けはしねえ」

 

キャンチョメ「でも…」

 

ジード「助けたいってのはわかるが、テッドの言う通りにしろ」

 

グスタフ「力を得るだけならクソガキでもできる。ナイフでも、銃でも、ミサイルでも…得るだけならな…」

 

 キースの猛攻の前でもバリーは怯まなかった。

 

キース「はははっ、バカが!私の力の大きさもわからず、まだ突っ込んでくるのか!?」

 

グスタフ「(あんなでかいだけで隙だらけの力などに負けはせん。『本物の強さ』を持ったエルザドル…奴との死闘を乗り越えた今のバリーならばな!)」

 

 

 

 

回想

 それは、バリーがナゾナゾ博士から千年前の魔物との戦いに協力してほしい頼みを断ってから後の事だった。バリーは竜族の神童、エルザドルと戦っていた。

 

アビーラ「ディガル・クロウ!」

 

 しかし、バリーとエルザドルとの力の差は歴然であり、バリーは一方的にやられていた。

 

バリー「ぐあああっ!!(なぜだ…こいつの攻撃、見えぬ、よけられぬ!?)」

 

アビーラ「アギオ・ディスグルグ!」

 

 エルザドルの口に鋭い牙が増加された。

 

グスタフ「バリーよ、奴から目を逸らすな!ゴウ・ゾルシルド!」

 

 エルザドルの攻撃はゴウ・ゾルシルドを簡単に砕き、バリーは角を一本失った。しかも、その際にエルザドルの姿がかつてガッシュが放った最強呪文、バオウ・ザケルガと重なって恐怖していた。

 

バリー「うおおおおっ!!(ダ…ダメだ…やられる!!あの時、ガッシュの最大呪文にやられた時みたいに…!格が違い過ぎた。強すぎる、こんな奴に適うわけ…)」

 

グスタフ「バリーよ、お前が奴の攻撃をよけられないのは能力の差だけではない!奴に「のまれている」からだ!本当の強さに!奴の目を見ろ!そして、それを乗り越えろ!!そこにお前の探しているものがある!!」

 

 怯えながらもバリーはエルザドルの瞳を見た。すると、グスタフが言った通り『探しているもの』があった。

 

バリー「(絶対的な威圧感…俺に『死』を与える目…。だが…それよりも何だ…!?この目の中にある『気高さ』は…?恐ろしいだけではない。こいつは…ガッシュとチェリッシュの目の中に見た『志ある光』。それに似た大きな力を感じる!!)」

 

 バリーにとって、エルザドルの目はかつて自分が殴れなかったガッシュとチェリッシュの目に似た大きな力を感じた。

 

バリー「お…おお…おおお!!(ふざけるな…もう二度と負けるか…あいつには負けねえ…俺はガッシュを、チェリッシュを、あいつらの目を超えるんだ!!)」

 

グスタフ「(そうだ、バリーよ。逃げずに前へと進め!奴の目は『ライオンの目』。野性の中で生き、食うか食われるかの世界を生き抜いてきた豪傑の目。目の前の死に怯えながらも、その牙で精を勝ち取ってきた者が得られる目!日々絶対的な恐怖、日々絶対的な絶望、それに勝ち続けた者のみが手に入れられる、その牙、爪、己の全てに誇りを持つ、野性の王の目!お前はこの限界を超えた戦いでもはや半分意識がないだろう。だが、この戦いを乗り越え、再び意識が戻った時、お前は…お前は…)」

 

 激しい戦いの末、遂にバリーはエルザドルを倒した。

 

アビーラ「ま…まさかエルザドルが負けるとは…」

 

エルザドル「よお…バリーって言ったな…。よく…やったじゃねえか…」

 

 戦いに敗北し、本が燃えて魔界に帰るエルザドルだったが、その顔と目は戦っている時と違い、穏やかで悔いのないものだった。そのエルザドルの賞賛にバリーは思わず涙を流した。

 

バリー「(よく…やっただと…?自分を倒した奴に何を言ってやがる…。何を……)」

 

 

 

ベルン「キロン・ギニス!」

 

 キースは攻め続けたが、バリーの威圧感に押されていた。

 

キース「う…おおお…!?なぜだ、なぜ倒せん!?力では私が勝っているのだぞ!!奴はボロボロじゃねえか!なぜ…立っている!?なぜ勝ってる気がしない!?」

 

 バリーの目をキースは直視できなかった。

 

キース「なぜそんな勝ち誇った目で俺を見ていられる!?まぶしい!見るな、怯えろ、私の最大術で負けろ~~!!」

 

ベルン「ディオガ・ギニスドン!」

 

 バリーの姿に怯えたキースは遂に最大呪文を放った。

 

バリー「キースよ、くもった目で術を放っても力の焦点が合わず、隙だらけだぞ。どんなでかいちからでも、その隙が『弱所』となり、その『弱所』を突かれれば、その力は半分も発揮できん」

 

グスタフ「(バリーはエルザドルを倒した時、確かに自分が大きくなるのを感じた。エルザドルは己の力に誇りを持ち、例え強い敵に負けようと、その敵の力を認め、吸収し、己を高める…。『よくやった…』敵を認め、己に誇りを持つ者の、最高の言葉ではないか…バリーはそれを理屈ではなく、肌で感じた。大きな心に触れ、己の小ささを知った。その時から、バリーの目はエルザドルと同じ輝きを持つ事ができた…。キースよ、お前のように曇り切った目でバリーの目を砕く事はできん!!)ディオガ・ゾニスドン!」

 

 エルザドルとの死闘を乗り越えたバリーのディオガ・ゾニスドンはガッシュとの戦いの時より威力が上がっている他、ディオガ・ギニスドンの弱所に撃ち込んだため一方的にディオガ・ギニスドンを破ってキースに直撃した。

 

キース「な…なぜ…ファウードの力を得た私の術が…ファウードの力を得ていないバリーの術に敗れ…」

 

サウザー「す、すげえ…」

 

サンビーム「パワーアップしたキースを一方的に倒した…」

 

フォルゴレ「あれが…バリー…」

 

 キースがディオガ・ゾニスドンの直撃を受けた際、本にも引火した。

 

グスタフ「キースのパートナー、ベルンと言ったな。勝負はついた。本を私に」

 

 そんな時、キースは腕を伸ばしてスイッチがある装置を殴り、スイッチを破壊した。

 

キャンチョメ「ああっ、扉を開けるスイッチが!」

 

キース「これでお前達は先へは進めない…。この扉はディオガ級の術でも壊せないからな…」

 

エル「何ですって!?」

 

キース「バリー、お別れだな…。なぜかな、バリー?本当は…ガッシュの仲間達は私の力のみで倒したかった…。扉を開けるスイッチを壊したくはなかったんだ…。だがよ…結局は壊しちまった上にお前達を全滅させる罠を作動させようと考えもした。。やっぱり、ファウードの力を得て、おかしくなっちまったのかね…?でもよ…最後にお前と戦えてよかった。…それは…ちょっと思ってるぜ…。一応よ…なんつうか…、ライバル…だったから…な…」

 

 ゴデュファの契約のせいで自分がおかしくなった事を話しながらキースは魔界に帰った。

 

バリー「…キースの奴、なぜ俺達を全滅させる罠を作動させなかった?」

 

グスタフ「そうしなかったのは、奴がファウードの力を得ておかしくなっても、最後の良心がそれを止めていたのだろう…」

 

ウマゴン「メルメル、メルメルメ」

 

サンビーム「う~む…どうやってこの扉を壊すか…?」

 

テッド「だったら、俺のトップギアでぶっ壊してやる!」

 

バリー「やめとけ。トップギアは後にとっておけ」

 

サウザー「ジェデュンを倒した時のように急激に熱してから冷ますというやり方で突破できないか?俺とオッサンの心の力ももう7~8割ぐらいは溜まってるぜ」

 

サンビーム「そうするか…」

 

バリー「いや、この扉は俺が最大呪文で壊す」

 

フォルゴレ「最大呪文?」

 

キャンチョメ「ディオガ・ゾニスドンで壊すのかい?」

 

バリー「お前ら、俺の最大呪文をディオガ・ゾニスドンと勘違いしているようだな。ディオガ・ゾニスドンは最大呪文ではない」

 

グスタフ「今から使う呪文が最大呪文だ。バリー、この扉に弱所はあるか?」

 

バリー「あるぞ。そこを突けば、俺の最大呪文で簡単に壊せる!」

 

グスタフ「行くぞ、ディオウ・ドルゾニス!」

 

 バリーの手に特大のドルゾニスが出た。

 

バリー「行くぞ!」

 

 扉の弱所にディオウ・ドルゾニスをぶつけると、扉はあっけなく壊れた。

 

モモン「凄い…ディオガ級の術でも壊せない扉を壊した…」

 

フォルゴレ「グスタフはさっきので心の力を使い果たしたっぽいから、扉を壊してくれたお礼としてファウードの回復液を分けるよ」

 

 フォルゴレはファウードの回復液が入ったペットボトルをグスタフに渡した。

 

グスタフ「済まないな」

 

サウザー「バリー、オッサン、道を開けてくれた礼だ。カルディオに乗って行け!ゴウ・ギドルク!」

 

サンビーム「ゴウ・シュドルク!」

 

 テッドペアはバイクで移動し、バリーペアはカルディオに、キャンチョメペアとモモンペアはウマゴンに乗って先へ進んだ。

 

ジード「早くしねえとファウードが日本に着いちまうな」

 

フォルゴレ「先に行かせたアースとレインはどうしてるのか?」

 

 

 

ファウード 第1脊髄

 先に行っていたレインとアースは第1脊髄のホールでゴームと鉢合わせしていた。

 

エリー「アース、この魔物を知っているか?」

 

アース「いえ、某は知識が広い方ですが、あのような魔物は見た事がありませぬ」

 

レイン「あのゴームという魔物はかなり強いぞ。力だけなら、リオウより上だ」

 

アース「リオウより上?」

 

 

 

ファウード コントロールルーム

 キースが倒された事にリオウは焦っていた。

 

リオウ「くそっ…、キースが倒されるとは…」

 

ラウシン「ザルチム以外で残っているのは、契約してないし、かなり気が立ってていう事を聞かないゴームとエロ本ばかり要求するブザライだけだ」

 

リオウ「ブザライめ…、ゴデュファの契約をした途端、こんなになってしまうとは…」

 

ラウシン「リオウの命令にもエロ本を見返りにしなければ聞かない」

 

リオウ「全く、奴にとっては俺の命令よりエロが優先なのか…?」

 

 

 

ファウード 第2脊髄

 第2脊髄のホールではブザライがエロ本を読んでいた。

 

ブザライ「ぐへへへっ……、もっとエロ本を読みたいなぁ…」

 

カーズ「ブザライ、侵入者が来るのに備えなさいよ!」

 

ブザライ「うるさいなぁ、カーズ。もっとエロ本を読ませてくれよ…」

 

カーズ「(全く、どうしちまったんだよ、ブザライ…)」

 

 

 

ファウード 通路

 その頃、清麿チームは第2脊髄ホールに到着しようとしていた。

 

ガッシュ「(そう言えば、ブザライが生き残っておった。もし、ゴデュファの契約をしておったらどんな姿になっておったのだろうか…?)」

 

恵「清麿君…」

 

清麿「恵さん、急にどうしたんだ?」

 

恵「なんか…嫌な寒気がして……」

 

ティオ「寒気?」

 

しおり「どんな寒気がしようとも、突破するまでよ!」

 

シェリー「私達には時間がないわ!」

 

 ガッシュ達はブザライが待つ第2脊髄ホールに突入しようとしているのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回はキース戦の後編、バリーvsキースを描きました。そのまますぐにバリーとキースの戦いを描いてもなんか物足りない上、アニメのキース戦の話も気に入っていたので、アニメのキャンチョメとモモンがキースと戦う話を前編、原作のバリーvsキースを後編として描きました。
状況は違うものの、原作のようにゴームと鉢合わせしたアースですが、どうなるかは秘密です。
次はファウードを魔界に帰す装置を守っているパムーン達が心臓魔物と戦う他、清麿チームがブザライと鉢合わせして戦う事になります。


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LEVEL67 魔界に帰す装置を守りぬけ!

ファウード コントロールルーム

 いつまでたっても魔界に帰す装置がある部屋を攻め落とせない事にリオウの苛立ちは増す一方だった。そこへ、傷が癒えたザルチムが来た。

 

リオウ「おのれ…!なぜ数時間も経っているのにあの部屋の防衛をしている魔物を倒せないばかりか、制圧に向かった体内魔物が全滅したんだ!?」

 

ザルチム「そこを守っている魔物はよほどの実力者なのだろう。それにリオウ、千年前の魔物の話を聞いた事はあるか?」

 

リオウ「千年前の魔物?」

 

ザルチム「ブラゴにボコボコにされた時にゾフィスの名を聞いて思い出してな」

 

リオウ「俺も聞いた事がある。他の魔物を叩き潰すためにゾフィスがゴーレンによって石にされた魔物を目覚めさせたと」

 

ザルチム「だが、ゾフィスは保険で目覚めさせたゴーレンによって石にされ、その恐怖でゴーレンの手下にされた挙句、ガッシュ達によって千年前の魔物の大半はゴーレンも含めて魔界に帰る事になった」

 

リオウ「所詮は小心者の愚かな行いだ。だが、急にどうしてそんな話を?」

 

ザルチム「石にされた千年前の魔物の中にはそれ相応の実力者もいてな、もし、ガッシュの仲間に千年前の魔物の生き残りがいたとしたら、そいつらがあの部屋を守っているんじゃないか?」

 

リオウ「……そうだとしたら、数時間経っても攻め落とせないのも納得がいく」

 

ザルチム「あの体内魔物を向かわせているか?」

 

リオウ「ああ。あいつを向かわせれば、奴等も片付くだろう…」

 

 

 

ファウード 体内

 ファウードを魔界に帰す装置がある部屋へある体内魔物が向かっていた。

 

???「あの装置があるという部屋に向かった体内魔物が全滅したか…。ちょっとは骨のあるバイキンのようだな。どれ、ワシが軽く捻ってやらねば…」

 

 

 

ファウード 魔界に帰す装置がある部屋

 パムーン達は度々、襲い掛かる体内魔物を交代で殲滅していた。

 

レイラ「最後に全滅させてから1時間ぐらいは経つわね」

 

アルベール「お陰でファウードの回復液を使う事なくこの部屋を防衛できたな」

 

ビクトリーム「俺達がいれば、この装置を守り切る事など容易いものだ」

 

パムーン「だが、油断は禁物だぞ。もっと強い体内魔物が来るかも知れん。ランス達はそれに備え、休んで心の力を溜めるんだ」

 

ランス「ああ!」

 

 慎重なパムーンの言う通り、強力な体内魔物が迫っていた。それから10分後、その魔物は姿を現した。

 

パムーン「ほう、お前が新手か」

 

心臓魔物「いかにも。ワシはお前達のようなバイキンを駆除しに来た。覚悟するがいい!」

 

ビクトリーム「ふん、この華麗なるビクトリーム様に貴様は跪くがいい!」

 

モヒカン・エース「ラージア・マグルガ!」

 

 早速、巨大なVのビームが心臓魔物に命中し、心臓魔物はそれなりのダメージを受けた。

 

ビクトリーム「ふはははっ!ファウードの体内魔物は大した事ないな!」

 

心臓魔物「ふん、千年前の魔物とやらはその程度か!」

 

 心臓魔物はすぐに立ち上がり、ビクトリームを棒で殴り飛ばした。

 

ビクトリーム「ぶるぁああああっ!!」

 

パムーン「ビクトリーム!」

 

レイラ「見て、あの魔物の傷が!」

 

 心臓魔物の傷がみるみる治っている様子にパムーン達は驚いていた。

 

ランス「どういう事だ?」

 

アルベール「あれを見ろ!」

 

 心臓魔物の体にパイプがある事にアルベールは気づいた。

 

アルベール「もしかしたら、あの魔物がすぐに傷が治る秘密は、あのパイプから回復する何かを吸収しているんじゃないか?」

 

心臓魔物「ふはははっ!!効かん、効かんぞ!」

 

 いくら攻撃してもパイプでファウードの栄養や血を吸収してすぐに回復する心臓魔物にはパムーンとレイラも苦戦した。

 

パムーン「何て奴だ…、こんな奴がファウードの体内にいたとは…」

 

レイラ「あの魔物を倒す方法はあるの?」

 

パムーン「ある。俺のファルセーゼ・バーロンを使えばな。そして、3人で連携すれば勝てる!」

 

ビクトリーム「止めは私だな?」

 

レイラ「そうよ」

 

パムーン「行くぞ、連携だ!」

 

 パムーン達はパートナーと共に向かっていった。

 

心臓魔物「ふん、貴様らバイキンがわしに勝つ事など」

 

モヒカン・エース「ラージア・マグルガ!」

 

アルベール「ディオガ・ミグルドン!」

 

 心臓魔物はラージア・マグルガとレイラが円を描くようにスティックを動かしてからできた月から発射される強烈なビームを受けた。ディオガ級をまともに受けたためか、少し回復に時間がかかっていた。。

 

心臓魔物「だから言っただろう。わしには勝てんと」

 

アルベール「オル・ミグルガ!」

 

ランス「ファルセーゼ・バーロン!オルゴ・ファルゼルク!」

 

 ランスはファルセーゼ・バーロンを発動させた後、すぐにオルゴ・ファルゼルクを発動させて一部の星がパムーンにくっついた。そして、レイラはオル・ミグルガで心臓魔物のパイプを根本から切断した。

 

心臓魔物「いくら切った所で」

 

 パイプが再生する前にパムーンは星を動かして心臓魔物のパイプがあった所を中心に締め付け、再生しないようにした。

 

心臓魔物「な、何っ!?パイプが再生しないようにしただと!?」

 

パムーン「お前のようなバカには理解できん戦法だろう?」

 

レイラ「速攻で勝負を決めるわよ!」

 

アルベール「ミベルナ・マ・ミグロン!」

 

 次はたくさんの月が出た。

 

心臓魔物「ええい、こうなれば星の奴から片付けてくれるっ!」

 

レイラ「そうはいかないわよ!オール!」

 

アルベール「ロール!コネクト!&ハーベスト!」

 

 パムーンの星とレイラの月で心臓魔物は動けなくなった。

 

パムーン「よーし、ビクトリーム、一気に決めるぞ!」

 

ビクトリーム「待たせたな。行くぞ、モヒカン・エース!」

 

モヒカン・エース「フル・チャーグル!」

 

 ビクトリームの新呪文、フル・チャーグルで一気に最大までチャージされた。

 

心臓魔物「こうなれば、奥の手で」

 

モヒカン・エース「チャーグル・イミスドン!」

 

ランス「ペンダラム・ファルガ!」

 

 今回の心臓魔物は最後の手段の全身を炎の鞭にする間もなく、拘束された状態でパムーンとビクトリームの最大呪文を受け、倒されたのであった。

 

心臓魔物「おのれ~~!!このワシが奥の手を披露するぐらいさせてもよいではないか~~!!!」

 

パムーン「バカジジイが、そんな事をさせてもらえる程、戦いは甘くはないんだ…!」

 

 心臓魔物との戦いはかなり熾烈を極めたため、パムーン達は疲れて座り込んだ。

 

アルベール「ふぅ~~っ…、流石にあいつとの戦いはかなり疲れたぞ…」

 

ランス「度々ファウードの回復液を飲みながら戦ってたし、一気に2本も飲み干したからなぁ…」

 

レイラ「でも、あの魔物のパイプを切った時にファウードの回復液を補給できたじゃない」

 

アルベール「確かにそうだな」

 

パムーン「またローテーションでこの部屋にある装置を守るぞ。敵が来るまで休憩だ」

 

 体内魔物の襲撃に備え、パムーン達は休息をとった。

 

 

 

ファウード 第2脊髄

 清麿チームが第2脊髄ホールに来ると、そこにはエロ本の山とそれを読むブザライとそれに憤るカーズの姿があった。ブザライはゴデュファの契約により、契約前に比べてマッシブな姿になっていた。

 

清麿「(恵さんの悪い寒気がすると言ったのはこの事だったのか…?)」

 

カーズ「侵入者がここまで来るとはね。でも、何人来ようとここまでよ!ブザライ、戦いの準備よ!」

 

ブザライ「戦いか…。ん?」

 

 ブザライが清麿チームをよく見ると、女の比率が高い事に気付いた。

 

ブザライ「うおおおっ!!女がいっぱいいるぞ!幼女からおっきい女まで選り取り見取りだ!」

 

ガッシュ「(ブザライが喋るのは初めてみたのだ…!)」

 

恵「あ、あの魔物…何だか変よ…」

 

しおり「エロ本がたくさんあるし…」

 

リィエン「何だか、近寄りたくないある…」

 

ブザライ「そこのちっこい子3人、この俺にパンツ見せろや!」

 

カーズ「ブザライ、こいつらを倒すのがあたし達の仕事よ!エロを優先させてる場合じゃないでしょ!?」

 

 カーズの言う事を聞かず、ブザライはティオ達幼女に迫った。

 

ティオ「って、何で私達が先に狙われるのよ~~!」

 

 ティオとパティとコルルのパンツを見ようと、ブザライは3人を追いかけ回した。

 

ティオ「もう、こいつはモモン以上にとんでもないわよ~~!!」

 

パティ「私達のパンツを見て何が楽しいのよ~~!」

 

コルル「とにかく、こっちに来ないで!!」

 

 緊張感のない戦いに男性陣は呆れるなりしていた。

 

ガッシュ「私には女の子がパンツを見られるのがどうして恥ずかしいのかわからぬのだ…」

 

清麿「ガッシュも俺ぐらいになればわかるさ」

 

ブラゴ「(ガッシュがあの性格じゃ、下手をすれば大人になってもあのままかも知れんぞ…)」

 

 エロを優先して言う事を聞かないブザライにカーズは怒ると共にある後悔もしていた。

 

カーズ「(ファウードの力を得たブザライがあそこまでなってしまうなんて…。今まではそんな風じゃなかったのに…)」

 

 

 

回想

 これは、まだファウードへ行く前の事だった。ブザライはこっそりエロ本を読んでいた。そこへ、カーズが来た。

 

カーズ「ブザライ、何をしてたんだい?」

 

ブザライ「べべべ、別にエロ本なんか読んでないぞ!ただ、精神統一をしてただけだ」

 

カーズ「そう。偉いわね、ブザライ」

 

 本当はエロ本を読んでいたと見抜いていたが、こっそりエロ本を楽しむブザライの性格を知っているため、見抜いていないふりをしていた。

 

カーズ「(ブザライったら、誰もいない所でこっそりエロ本を読んだりするのが楽しみなのね。でも、そこが結構かわいいわよ…)」

 

 

 

カーズ「(以前のブザライはスケベだけど覗きはしないし、戦いの時は女が相手でもちゃんと戦えたのに、ゴデュファの契約をしてからは堂々とエロ本を読むようになった上、エロ本をよこさないとリオウの命令さえ聞かなくなった。軽い気持ちで契約を促した私がバカだった…)」

 

 カーズがそう考えている間にブザライはティオ達を捕まえて吊るし、パンツを眺めた。

 

ブザライ「おお!可愛いパンツだ…!」

 

ティオ「ちょっと、私達のパンツを見ないでよ!!」

 

ニコル「ゴウ・コファル!」

 

 ティオのパンツをつつこうとしたが、チェリッシュが攻撃してきた。

 

チェリッシュ「モモン以上のスケベ魔物がいたなんて!」

 

ブザライ「お前のパンツも見たい!見させろ!」

 

カーズ「だから、戦うのを先にしなさい!ゴウ・ガズルク!」

 

 一応、カーズは呪文を唱えたが、ブザライは戦おうともせず、今度はチェリッシュの足を掴んで吊るし、パンツを眺めた。

 

カーズ「ちょっと、何でパートナーを狙って本を燃やさないのよ!!」

 

ブザライ「だって…本を燃やしちゃったらもうそいつのパンツが見れなくなるんだもん」

 

チェリッシュ「ちょ、どこを見てるのよ!!」

 

ブザライ「さっきの幼女とは全く違ったタイプのパンツでいいなぁ…!」

 

 今度はチェリッシュのパンツを触った。

 

チェリッシュ「何を私のパンツに触っているのよ、変態!!」

 

 ブザライの猛烈なエロには女性陣の怒りが溜まっていた。

 

リィエン「あのエロ魔物は許せないある…!」

 

シェリー「私達もぶっ飛ばしてやりたい所だわ…」

 

ウォンレイ「(何だかリィエンがいつもより怖い…)」

 

清麿「(ブザライの奴、モモンやフォルゴレがマシに見えるぐらいのスケベだな……)」

 

 ティオ達やチェリッシュのパンツを眺めて満足しているブザライだったが、たまたま恵の方に視線が行った。

 

ブザライ「お~、そこの女は乳もでけえじゃねえか!揉ませろや!!」

 

 今度は恵の胸を揉もうとブザライは恵に迫った。

 

恵「今度は私が狙われるの~!?」

 

清麿「恵さん、とにかくあいつに捕まらないようにしないと!」

 

 清麿は恵の手を引いて必死に走り、ブザライも恵の後を追った。

 

ブザライ「余計なマネすんじゃねえ、男が!俺はその女の乳を揉みたいんだよ!」

 

ティオ「あのエロ鎧が…!恵の胸を揉んでいいのは清麿だけなのよ!」

 

 モモンの時と同様、ティオの怒りと憎しみが溜まっていた。

 

清麿「全く、冗談じゃねえぞ!モモンのエロっぷりとフォルゴレの乳もげ魔ぶりが合わさったみたいで最悪だ!!おまけに、モモンやフォルゴレと違って力も強いからますます手におえねえ!」

 

 必死に走っている最中、ブザライは大ジャンプして清麿と恵の前に来た。急にブザライが目の前に来たため、清麿と恵は転んでしまった。

 

ブザライ「追いついたぞ!男の方を投げ飛ばしてから、その女のおっぱいを揉みしだいてやらぁ!!」

 

ニコル「危ない!」

 

 ブザライは恵を掴もうとしたが、ニコルが身代わりになって掴まれてしまった。

 

恵「ニコルさん!」

 

ブザライ「男が邪魔すんじゃ」

 

 たまたま帽子がとれてしまい、ニコルの長い髪が露わになった。その事でブザライはようやくニコルが女である事に気付いた。

 

ブザライ「おお、男だと思ったら男装した女か!ほんとはあの乳がでかい女の乳を揉みたかったけど、まぁ、せっかくだからこの女の乳でも揉むとするか」

 

ブラゴ「(あいつ、女だったのか?)」

 

シェリー「(女だとは気づかなかった…。完全に男だと思い込んでいたわ…)」

 

カーズ「いい加減にしなさいよ、ブザライ!早くあいつらを…」

 

 カーズは嫌な寒気がしたため、そこを向くと、そこには怒りと憎しみが最高潮に達した鬼麿とティオ達の姿があった。

 

カーズ「(何なの…?物凄くやばい予感がする…)」

 

ウルル「アクルガ!」

 

 ブザライとカーズが固まっている隙にパティはアクルガをブザライの手に当ててニコルを解放した。

 

ニコル「ありがとう」

 

ウルル「それよりも、大変な事になりそうですよ…!」

 

鬼麿「このエロ鎧が、てめえのような変態野郎はただで魔界に帰れると思うなよ…!」

 

シェリー「性根が腐りきっているようね…」

 

リィエン「徹底的に…」

 

チェリッシュ「あんたのような奴は…」

 

パティ「ギタギタのボロボロにしてやるわよ!!」

 

カーズ「やられはしないわよ!ディオガ・ガズロン!」

 

鬼麿「マーズ・ジケルドン!」

 

 ディオガ・ガズロンはマーズ・ジケルドンで弾かれ、ブザライはマーズ・ジケルドンに吸い込まれた。

 

カーズ「そんな…ブザライの最大呪文が弾かれて…」

 

ブザライ「ぐああああっ!!」

 

 何も知らずに動こうとしたため、ブザライに電撃が流れたが、しばらくしてマーズ・ジケルドンが消えた。

 

カーズ「終わったの…?」

 

 しかし、それは本当の地獄の始まりに過ぎなかった。

 

鬼麿「ザケル!ザケル!ザケル!ザケルガ!ザケル!ザケル!ザケルガ!」

 

 連続でブザライはガッシュの術を受けてしまった。

 

カーズ「ど、どうなってるのよ…!」

 

ブザライ「し、痺れる…!」

 

シェリー「今度は私達よ!」

 

リィエン「ウォンレイも攻撃するある!」

 

ウォンレイ「(いつもよりリィエンが怖いよ…!)」

 

 ブザライに対して怒り狂うリィエンにウォンレイは怯え、同じく怒り狂うシェリーにブラゴも冷や汗をかいていた。

 

シェリー「レイス!リオル・レイス!レイス!リオル・レイス!レイス!レイス!リオル・レイス!オルガ・レイス!」

 

リィエン「バウレン!ゴウ・バウレン!バウレン!ゴウ・バウレン!バウレン!バウレン!ゴウ・バウレン!ゴウ・バウレン!」

 

 再びブザライは拷問を受けた。ブザライにパンツを見られた事にコルルは怒っていたものの、怒りようが凄まじいティオとパティに引いていたためか、怒りが沈静化していた。

 

コルル「ティオとパティの怒り方、普通じゃないね…」

 

しおり「そうね…」

 

パティ「今度は私達よ、ウルル!」

 

チェリッシュ「私のパンツを見た挙句、触ったからにはもっと攻撃してあげるわよ!」

 

ウルル「(もうダメだ、こりゃ…)」

 

ニコル「(止められそうにない…)」

 

カーズ「いつになったらこの攻撃は終わるのよ…!」

 

ウルル「アクル!アクルガ!アクル!アクルガ!アクル!アクルガ!アクルガ!テオアクル!」

 

ニコル「コファル!ゴウ・コファル!コファル!ゴウ・コファル!コファル!ゴウ・コファル!ゴウ・コファル!ギガノ・コファル!」

 

 徹底的な拷問でブザライはもう立てなかった。

 

ティオ「うあああっ!!あの鎧が憎い、憎い!!恵、チャージル・サイフォドンを使うのよ!!」

 

恵「(あの術を…!?でも、ブザライを放っておくと私やしおり達の胸まで揉んでくるから倒さないと…!)チャージル・サイフォドン!」

 

 チャージル・サイフォドンの発動に恵は少し躊躇ったものの、ブザライを放っておくわけにもいかないため、発動させた。再びチャージル・サイフォドンを拝む事になったガッシュ達は怯えていた。

 

ガッシュ「ま、まさかまた見るとは…」

 

 水晶にティオがブザライにパンツを見られる映像が映った。それに反応して顔もおぞましくなり、その姿にリーヤペアは唖然となり、ウォンレイに至っては怯え、ブラゴも冷や汗を流していた。

 

リーヤ「アリシエ、何だかあの術は恐ろしいね…」

 

アリシエ「僕の村でも女の人は怒らせると怖いって教えられたよ…」

 

ウォンレイ「リ、リィエン…、あのティオの術、とても怖いよ……!!」

 

リィエン「わ、私も怖いある…」

 

 ブザライへの怒りはあったものの、今はチャージル・サイフォドンに怯えていたウォンレイペアだった。

 

ブラゴ「(正直言って、あの術は怖いな…!)」

 

シェリー「やっぱりブラゴも本当はあの術が怖いのね…」

 

 表情を崩さないものの、冷や汗をかいているブラゴの様子をシェリーは察した。その間にもチャージル・サイフォドンの女神の部分はさらに凶悪になる一方だった。

 

ティオ「吹っ飛べ~~~っ!!」

 

 チャージル・サイフォドンはブザライに向けて放たれ、ブザライに直撃した。

 

ブザライ「ふべ~~~っ!!」

 

カーズ「もうほんと最悪~~!!」

 

 そのままブザライの本に引火してしまった。

 

カーズ「色々やらかしたとはいえ、ブザライがやられるなんて…」

 

ブザライ「カ、カーズ…。俺…、ファウードの力を得てからおかしくなったのかな…?前は誰かにエロ本を読むのを見られるのが嫌だったのに、契約してからはエロ本を読む時も周りの視線がどうでもよくなったし、乳のでかい女を見るとすぐに乳を揉みたくなるし、パンツもすぐに見たくなってしまうなんて…」

 

カーズ「ブザライ、ごめんよ…!ゴデュファの契約の代償を全く知らなかった上に軽く考えていたからこんな事態を招いてしまって…。いい加減な事ばかりしたからあんたに怒ったけど、そもそもこんな風にお前をさせてしまったのは私なんだよ。だから…ごめんよ…」

 

 ブザライの豹変の原因は自分のせいだと言うカーズの姿勢にブザライは一切反論はしなかった。そして、本は燃え尽き、ブザライは魔界に帰った。

 

清麿「よし、行くぞ!」

 

カーズ「ここから先をずっと進めばコントロールルームへ着く。あんた達、頑張りな」

 

 ブザライの凄まじいエロに調子を狂わされたものの、ちゃんと倒してから清麿チームは前進した。

 

 

 

 

ファウード コントロールルーム

 ブザライの敗北とガッシュ達が来ている事にリオウの苛立ちは増すばかりであった。

 

リオウ「おのれ…、清麿達の行く手を阻む魔物が全滅するとは…!」

 

ザルチム「……それよりリオウ、あの清麿の面、ものすごく怖かったな……」

 

リオウ「そうだな…。あんな事をされたら……」

 

 鬼麿の姿はコントロールルームで見ていたリオウとザルチムを恐怖させ、ラウシンやリオウの腹に隠れているバニキスさえも怯えていた。

 

ザルチム「幸いなのは、まだもう一組は第1脊髄に来ていない事だ。あそこにはリオウより強い魔物、ゴームがいるのだからな…」

 

リオウ「ゴームか…。奴は言う事を聞かないが、もう一組は絶対に生きてあそこを通る事はできないだろう…」

 

 

 

ファウード 第1脊髄

 第1脊髄のホールでゴームとレイン、アースは睨み合っていた。

 

アース「貴公らよ、今は構っている暇などない!ここを通してもらうぞ!」

 

ミール「ここを通してもらう?今のゴームはリオウにこき使われたストレスで物凄く機嫌が悪いのよ。誰かを叩きのめさないと気が済まない程にね!」

 

レイン「お前達はリオウの手先になったのか?」

 

ミール「リオウの手先ですって?冗談じゃないわよ!あいつの命令なんか絶対に聞かないわ!」

 

アース「ならば某らと戦う理由はないはず!ここを通るぞ!」

 

ミール「だから言ったでしょ?リオウの手先じゃないけど、こき使われたストレスでゴームは機嫌が悪いって。悪いけど、ゴームのストレス発散のためにここでくたばってもらうわよ!」

 

ゴーム「ゴォオオッ!」

 

アース「聞く耳持たずか…」

 

エリー「止むを得ん。アース、戦うぞ!」

 

レイン「いや、アースは先へ行くんだ!」

 

アース「だが…」

 

レイン「アースはファウードを止めるというのがあるだろ?それに、アースではゴームに勝てない!だから、ここは俺に任せて早くコントロールルームへ行くんだ!」

 

エリー「……そう言うのならば、仕方ない。アース、コントロールルームへ向かうぞ!」

 

アース「御意!」

 

 ゴームの相手をレインに任せ、アースはコントロールルームへ向かった。

 

レイン「邪魔をしないのか?」

 

ミール「言ったでしょ?私達はリオウの手先じゃないって。リオウがどうなろうが知った事ではないわ。もうゴームも戦いたがっているのよ。さっさとくたばりな!」

 

カイル「僕達を舐めるなよ!」

 

レイン「カイル、ゴームを倒してコントロールルームへ行くぞ!」

 

 レインとゴームは飛び出して行った。




これで今回の話は終わりです。
今回はファウードを魔界に帰す装置がある部屋での攻防戦とブザライとの戦闘を描きました。
心臓魔物戦で出たビクトリームの新呪文、フル・チャーグルは1回唱えただけでチャージが5回分できますが、一応は心の力の消耗がチャーグルを5回唱えた時よりも激しい事にしています。
また、ブザライは原作やアニメではまともなセリフが全くないため、普通に生き残らせても原作の状態だと面白くないため、契約後は普通に喋る事にしました。
ブザライのスケベはオリジナルですが、普通に堅物とか戦闘狂にするより、スケベな魔物は他にはモモンしかいなかった上、スケベな方が台詞が思いつきやすかったのでそうしました。
次はネタバレになるので詳しくは言えないものの、今小説では原作よりも早いタイミングでやる、読者からの評判も高いあの話になります。


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LEVEL68 カバさんとライオン

ファウード 第1脊髄

 アースを先に行かせたレインはゴームと戦っていた。レインとゴームの戦いはややレインが優勢であり、取っ組み合いもレインが少し押していた。

 

ミール「まさか、リオウさえ足元にも及ばない強さのゴームとここまで戦える魔物がいたとはね。」

 

レイン「俺は昔、大暴れしていた時は大人さえ押さえようがなかったほど体もデカイし、力も強かったからな」

 

ミール「だいたいゴームも似たような生い立ちよ。ま、すぐにやられちゃってね!」

 

 取っ組み合いからレインとゴームは距離をとった。

 

カイル「アボロディオ!」

 

ミール「ディオボロス!」

 

 アボロディオとディオボロスがぶつかったが、アボロディオがぶつかり合いに勝利し、ゴームに直撃した。

 

ゴーム「ゴォオオッ!!」

 

ミール「何よ、あれ!かなり強いじゃない!」

 

レイン「言っただろ?俺はかなり強いって」

 

カイル「僕とレインと仲間達は世界を、そして大切な人達を守るために強い力を振るって戦っているんだ!お前達やリオウのような自分勝手な悪い奴には絶対に負けないぞ!」

 

ミール「あのチビ、随分態度がでかいわね!!むっかつく~~!!ギガノ・ディオボロス!」

 

カイル「アボロディオ!」

 

 ギガノ・ディオボロスもアボロディオには勝てず、またしてもアボロディオがゴームに命中した。

 

ゴーム「ゴォ…」

 

カイル「ギガノ・アボルク!」

 

 レインの身体能力が向上し、ゴームに一気に迫った。ゴームは応戦しようとしたものの、肉体強化の術で強化されたレインには歯が立たず、一方的に殴られる始末だった。

 

ミール「くぅ~~っ、あいつの術は強力すぎるじゃない!こうなったら、大技よ!ウィ~~・ム~~・ウォ~~・ジンガムル・ディオボロス!」

 

 独特のポージングをとった後、ウィー・ムー・ウォー・ジンガムル・ディオボロスを発動させた。

 

カイル「ガルバドス・アボロディオ!」

 

 ガルバドス・アボロディオとウィー・ムー・ウォー・ジンガムル・ディオボロスがぶつかったが、ガルバドス・アボロディオがあっさりせめぎ合いに勝利し、ゴームに直撃した。

 

ゴーム「ゴォオオッ!!」

 

ミール「あのチビの心の力はどうなってるのよ!!」

 

 清麿達は数か月以上にも及ぶ特訓を積んでディオガ級の術を数発ほど連射できるようになったが、カイルはもともとの素質が高かったためか、数週間程度の期間の特訓でディオガ級やそれに近い威力の術の連射ができるようになっていた。

 

 

 

ファウード コントロールルーム前

 先に行ったアースはコントロールルームの前に来ようとしていた。

 

アース「エリー、出口です!」

 

エリー「いよいよだな、アース」

 

 ようやくアースはコントロールルームの前に来た。

 

エリー「ここが…コントロールルームか?」

 

アース「いえ…ここは恐らく、手前の部屋…。きっと、あの扉の向こうがリオウのいるメインコントロールルーム」

 

 すると、扉が開いた。扉から出てきたのはリオウだった。

 

リオウ「アースよ、よくも楯突いたな!」

 

アース「黙れ!魔界の二つの脅威、ファウードとバオウの監視こそが我が魔界の法を守る一族の使命!魔界よりファウードを持ち出した貴公ら一族の罪、見逃すわけにはいかぬ!リオウ!」

 

リオウ「以前、会った時もファウードとバオウの監視だの、法を守るだのうるさいんだよ!次期魔界の王たるこの俺が直々に声をかけてやったんだぞ!」

 

アース「リオウ、貴様は次の王になるのはおろか、王の素質そのものもない!ガッシュを見ろ!ガッシュは貴様のようにファウードのような餌や呪いといった手法を一切使わずにその人柄で多くの魔物を仲間にしてきたのだぞ!その姿は某も感心したほどだ。貴様とは雲泥の差だ!」

 

リオウ「何だと…!?」

 

アース「それに、貴様はこの戦いを裏で操り、我らの動きを見張っている者の存在についても知らんようだな」

 

リオウ「この戦いを裏で操り、俺達の動きを見張っている奴だと?そんな奴がいるか!いたのなら、すぐにザルチムが見つけているはずだ!」

 

アース「やはり、その者の存在に気付いていないのなら、王の素質は全くないようだな」

 

リオウ「ええい、こうなったら先に向かっている連中の足止めをしてやる!」

 

 リオウが機械を操作すると、ガッシュ達が進む方の通路が閉鎖された。

 

アース「何っ!?」

 

リオウ「これなら連中も」

 

アース「世の中は事が全て上手く行くとは限らんぞ。それに、消耗も想定して我らはファウードの回復液も持ってきている。詰めが甘いな、リオウ!」

 

リオウ「くそぅ…こうなったらアース、貴様を捻り潰してやる!」

 

エリー「アース、わかっているな」

 

アース「無論です。清麿の話では、リオウのパートナーのいる所は…」

 

 アースはリオウの腹を凝視した。

 

エリー「わかっているようだ。行くぞ、ゴウ・ソルド!」

 

 剣を強化してアースは突っ込んで来た。

 

バニキス「ゴウ・ファノン!」

 

 アースは剣でリオウの術を砕き、リオウに迫った。

 

エリー「ウルソルト!」

 

 今度は高速の突きでリオウを連続攻撃した。

 

リオウ「お前の剣、力を吸い取るか!」

 

エリー「ゴウ・ソルド!ジャン・ジ・ソルド!」

 

 一気に畳みかけてリオウをダウンさせた後、アースはリオウの腹に手を突っ込ませた。

 

アース「既に清麿から貴様はパートナーをどこに隠しているのか聞いているぞ。今から引きずり出してやる!」

 

 アースはリオウの腹の中に隠れているバニキスの髪を引っ張って外に引きずり出した。そして、剣でリオウを吹っ飛ばした。

 

リオウ「くそっ!バニキスが隠れている場所が清麿にはなぜわかったのだ!?」

 

バニキス「そんな事を考えるのはどうでもいいだろう?それよりも、俺を外に出させた以上、奴等に俺達の強さを思い知らせてやろう」

 

リオウ「ああ、そうだな」

 

エリー「アース、パートナーは引きずり出せたが、ここからは厳しくなるぞ!」

 

アース「それは承知の上です。敵はファウードの回復液を持ってるやもしれません。それに、サポートシステムもあります」

 

エリー「行くぞ、アース!ファウードを止めるためにも!」

 

 お互いにパートナーが外に出ている状態で再びリオウとアースはぶつかり合った。

 

 

 

 

ファウード 第1脊髄

 レインとゴームのぶつかり合いは続いていた。

 

ミール「もう、倒すメドさえ立たないなんて最悪よ!」

 

カイル「レイン、後、もう一息で倒せそうだね!」

 

レイン「最後の最後まで気を抜くな、カイル!」

 

カイル「うん!」

 

???「レイン、俺達の仲間にならなかった事を後悔させてやるぞ!」

 

 声がした方を向くと、そこにはパピプリオペアがいた。

 

レイン「お前ら…いたのか…?」

 

パピプリオ「何だよ、レインまでそんな顔をするのかよ!」

 

ルーパー「私達が来たからにはもうレインは終わりよ!」

 

パピプリオ「ゴーム、俺達が援護するぜ。俺の術で動きを止めてから」

 

ミール「……ギガノ・ディオボロス!」

 

 ゴームは味方のはずのパピプリオとルーパーを攻撃した。

 

パピプリオ「な、何をするんだよ!?俺達は味方だぞ!」

 

レイン「味方を攻撃した?」

 

ミール「言ったでしょ?私達はリオウの手先になった覚えはないって。それに…ゴームはとてもむしゃくしゃしてるのよ。何の役にも立たない非力なチビとブスおばさん、あんたら、私達のうっぷん晴らしにやられるぴょん!」

 

 最早、八つ当たりしたくてたまらないゴームはレインでは苦戦してストレス発散ができないため、パピプリオペアに攻撃を向けた。

 

レイン「おい、お前達は俺と戦うんじゃなかったのか!?」

 

ミール「まずはこのクソガキとババアから始末するのよ。あんた達の始末はその後よ!」

 

カイル「許せない…!」

 

 八つ当たりしたくて見境がなくなっているゴームペアにレインペアは怒りで震えていた。

 

 

 

ファウード 通路

 移動しているアースチームだったが、移動中にバリーは何かに気付いた。

 

グスタフ「どうした?バリー」

 

バリー「でかい力二つと小さい力1つを感じる」

 

モモン「おまけに、小さい力が弱くなっていきているよ」

 

サウザー「バリーも魔物の力を感じる事ができるのか?」

 

バリー「流石にモモン程ではないがな」

 

キャンチョメ「でも、その小さい力って何なのかな?」

 

モモン「大きい力はレインとゴームだとわかるけど、小さい力はどういった魔物なのかはわからない。でも、体内魔物じゃない事は確かだよ」

 

エル「もしかしたら、誤ってファウードに迷い込んだ魔物かもしれません!」

 

サンビーム「とにかく急いでレインやアースと合流しよう!」

 

テッド「スピードを上げてくれよ、ジード!」

 

ジード「任せな!」

 

 ウマゴンとカルディオはスピードを上げ、ジードもバイクのスピードを上げて急いだ。

 

 

 

ファウード 第1脊髄

 苛立って八つ当たりがしたくてたまらないゴームの猛攻にパピプリオはどうしようもなかった。

 

パピプリオ「ルーパー…、もうルーパーはボロボロだぜ…。もう敵いっこないから奴等に本を燃やさせようよ…」

 

ルーパー「何…言ってるの…?パピプリオ…。今度そんな事を言ったら…ひっぱたくわよ…!」

 

 いつもとは違う厳しい態度のルーパーにパピプリオはわがままを言えなかった。

 

ルーパー「パピー、あなたは本を持ってレインと一緒に逃げるのよ。あいつらに本を燃やさせたってどの道、私に八つ当たりを続けるわ!だから…あなただけでも逃げるのよ!」

 

パピプリオ「そ、そんなの嫌だよ!このままルーパーがゴームの攻撃を受け続けたら死んじゃうじゃないか!」

 

ルーパー「パピーだって噂を聞いたでしょ?もし、悪い奴が魔界の王様になったら魔界にとんでもない事が起こるって!あなたが生きてくれれば、私なんてどうでもいいのよ!」

 

パピプリオ「何でだよ!ルーパー、何でそこまで俺にしてくれるんだよ!」

 

ルーパー「私はあなたの…お母さんだから…」

 

 ルーパーに優しくなでられた際にパピプリオはルーパーと会ったばかりのころを思い出していた。

 

 

 

回想

パピプリオ「全くよ…こんなブスが俺のパートナーなんてな。俺も運が悪いぜ」

 

ルーパー「うふふ。でもね、ブスでも料理はうまいのよ。お腹減ってるでしょ?たくさん食べてゆっくり寝なさい」

 

 それから、しばらく経った後の事だった。

 

パピプリオ「この街のガキ共よー!俺が余所者だって言って野球に混ぜてくれねえんだぜー!」

 

ルーパー「じゃあ私が野球の相手をするわ。私がピッチャー、あなたがバッターよ」

 

 話をしてる最中、パピプリオは写真を見つけた。

 

パピプリオ「おい、ルーパー。この子供の写真は誰なんだ?」

 

ルーパー「私の…子よ…。7歳だったわ…。心臓の病気でね…死んじゃったの…。私…何もできなかったわ…何も…」

 

 

 

ミール「もう今度は本当に消すわよ」

 

ルーパー「パピー、早く逃げるのよ!」

 

パピプリオ「ルーパー…」

 

ルーパー「レイン、早くパピーを!」

 

カイル「レイン、僕はあの人を置いてパピプリオを連れて行くなんてできないよ!」

 

レイン「俺もだ!ゴーム、お前のような奴は俺がとっちめてやるぞ!」

 

ミール「結局あんたもあのチビを庇うのね。だったら、全員まとめて消えな!ギガノ・ディオボロス」

 

???「ミミルオ・ミファノン!」

 

 ギガノ・ディオボロスが放たれたが、咄嗟にウマゴンが来て、乗っていたモモンのミミルオ・ミファノンでギガノ・ディオボロスの軌道が曲げられてしまった。

 

ミール「ギガノ・ディオボロスの軌道が曲がった!?」

 

ゴーム「ゴォ?」

 

 ようやくアースチームが到着したのだった。

 

エル「小さい力の魔物はあなたなのですか?」

 

パピプリオ「それよりも、ルーパーが!」

 

 限界が来たのか、ルーパーは倒れた。その怪我の生々しさにエルは衝撃を受けていた。

 

エル「ひどい怪我…。なんと惨い事を…」

 

キャンチョメ「あいつら……!」

 

 今までのキャンチョメは弱くて臆病だったため、殺意というものが全くなかったが、清麿の特訓をこなして新しい術を覚えて強くなってからこれまでなかった殺意という感情が芽生えていた。そして、仕事先で友達になったパピプリオとルーパーが傷つけられた姿を見て、それは一気に増幅されていった。

 

サンビーム「エルはその人にファウードの回復液を飲ませるんだ!奴は私達が相手をする!」

 

エル「モモン、手伝いを!」

 

モモン「うん!」

 

 エルはルーパーにファウードの回復液を飲ませるためにモモンにその手伝いをさせた。

 

ミール「まさか、邪魔が入るとはね」

 

テッド「てめえ、仲間をなぜ攻撃してるんだ!?」

 

ミール「あんなチビは仲間じゃないわよ。というか、リオウも私達の敵よ。だから、隙を見てリオウも始末するの。幸い、リオウはゴームより弱いから徹底的に痛めつけてね!」

 

グスタフ「あの魔物とパートナーは筋金入りのひねくれ者のようだな」

 

バリー「向かってくるのなら、倒すまでだ」

 

キャンチョメ「みんなは手を出さないでよ…!」

 

ウマゴン「メル?メルメルメ」

 

カルディオ「パルパルモーン」

 

キャンチョメ「あいつらは僕の友達のパピプリオをあんな目に遭わせたんだ…。だから…僕の手でけちょんけちょんにやっつけないと気が済まないんだよ…!」

 

 殺意と怒りを剥き出しにしてキャンチョメはゆっくり進んでいった。

 

サンビーム「キャンチョメ、いくら何でも危険すぎる!」

 

フォルゴレ「サンビーム、キャンチョメは以前よりも強くなったんだ。いざとなれば私が止めるから、任せてくれないか?」

 

ミール「あんた、随分舐めた口を利くわね。私達もあんたを叩きのめしてやろうと思ってた所よ。ウィ~~・ム~~・ウォ~~・ジンガムル・ディオボロス!」

 

フォルゴレ「フォウ・スプポルク!」

 

 ウィー・ムー・ウォー・ジンガムル・ディオボロスはあっけなくキャンチョメのフォウ・スプポルクに掻き消された。

 

ミール「またあの術なの!?」

 

フォルゴレ「ミリアラル・ポルク!」

 

キャンチョメ「ウィ~~・ム~~・ウォ~~・ジンガムル・ディオボロス!」

 

 ミリアラル・ポルクでウィー・ムー・ウォー・ジンガムル・ディオボロスを返した。

 

ゴーム「ゴォオオッ!!」

 

ミール「また!?」

 

キャンチョメ「これで終わりじゃないぞ…。僕の…僕の友達をあんな目に遭わせたお前達を許すもんか……!絶対に…、許すもんか!!」

 

 殺意と怒りが頂点に達したのと同時にキャンチョメの本が光った。

 

フォルゴレ「新しい呪文?」

 

 何を習得したのか見てみると、新しい呪文の名前は手帳で見たのと同じシン・ポルクだった。

 

フォルゴレ「まさか、この呪文が出たとは…!」

 

 

 

回想

 出発前、ホテルでフォルゴレはシン・ポルクの事を清麿に聞いていた。

 

清麿「まさか、あの時、キャンチョメとお前はこの手帳に書かれてあったシン・ポルクのページを見たのか?」

 

フォルゴレ「ああ。だから、清麿に聞いてみようと思って」

 

清麿「俺も実際に見た事はないが、シン・ポルクはガッシュの知る限りでは消滅の術と並んでトップクラスの危険な術だそうだ。何しろ、変化させた姿と声を通して相手の脳に命令を送り、精神を攻撃する術だからな。下手な攻撃呪文よりもよっぽど強力だ」

 

フォルゴレ「確かに、体の傷より心の傷の方が治すのが難しいと言われているぐらいだからな…」

 

清麿「それと、シン・ポルクの対処法は実質、効果の範囲外からの攻撃だけだ。それができるのは…」

 

フォルゴレ「私達の仲間ではチェリッシュだけか」

 

清麿「万一、キャンチョメがシン・ポルクを習得してから暴走した際はフォルゴレが何とかするんだ。チェリッシュのグラード・マ・コファルで狙撃して気絶させたって一時しのぎにしかならない。頼むぞ」

 

 

 

キャンチョメ「フォルゴレ、新しい呪文は何だい?」

 

フォルゴレ「…シン・ポルクだ…」

 

キャンチョメ「だったら、すぐに使って!僕はシン・ポルクを使いこなすイメージトレーニングはもうやったんだ!僕達にはあまり時間が残されていないんだ!」

 

フォルゴレ「……ああ、シン・ポルク!」

 

 シン・ポルクの発動と共にキャンチョメの姿がライオンの絵柄が入った服になった。

 

ゴーム「ゴォ?」

 

ミール「何かと思えばただ、姿が変わっただけじゃない。でも、一気に決めさせてもらうわよ!ディオボロス・ザ・ランダミート!」

 

 黒い物体がキャンチョメ目掛けて襲い掛かった。

 

サンビーム「いかん!キャンチョメ、フォウ・スプポルクを使うかよけろ!」

 

キャンチョメ「大丈夫だよ。シン・ポルクさえ唱えていればよける必要も術を消す呪文も必要ないんだよ」

 

 キャンチョメの体から口が生えた触手が出てきて、黒い物体を全部触手が食べてしまった。

 

ミール「え!?」

 

グスタフ「触手が全て術を食べただと?」

 

キャンチョメ「(やっぱり、僕の思った通りになった…)」

 

 ファウードに行く前までにキャンチョメはシン・ポルクが使えるようになった時に備えたイメージトレーニングをしていた。それをやったため、すぐにシン・ポルクが使いこなせたのであった。

 

ミール「なん…で…?術を消す呪文もなしでゴームの術を全て消した…!?そんな…はずはない!」

 

キャンチョメ「これは夢でも何でもないんだよ!」

 

 今度は触手を拳に変えてミールの足にぶつけた。拳をぶつけられたミールの足にはしっかり傷ができていた。

 

ミール「きゃあああっ!!うそ…何…で…?」

 

 シン・ポルクの異様さには一同も驚いていた。

 

サウザー「おい、あの術は何だかおかしいぞ!キャンチョメの体から触手が出たり、あんな四方八方から来る術を全て触手で食べたり、いくら何でも魔物の術にしてはおかしすぎるぞ!」

 

エル「フォルゴレさんはあの術は何かわかりますか!?」

 

フォルゴレ「…シン・ポルクはキャンチョメの化けた姿や声を通して熱いとか、硬い拳に殴られたとかの命令を脳に送り、相手の精神に直接ダメージを与える危険な術だ…!」

 

エル「何ですって!?そんな危険な術をキャンチョメ君が!?」

 

モモン「僕でもフォルゴレが言ったような感じの術だとわかるよ!もし、このままキャンチョメがゴームとミールに攻撃を続けたら…!」

 

 その間にもキャンチョメの攻撃は続いていた。

 

ミール「ゴーム、飛ぶのよ!飛びさえすれば」

 

ゴーム「ゴォ!」

 

 ミールを乗せてゴームは空を飛んだ。

 

キャンチョメ「その羽は邪魔だね!」

 

 キャンチョメは腹から刃物を飛ばし、ゴームの羽を切り刻んだ。

 

キャンチョメ「落ちな!」

 

 今度は触手の一撃でゴームは地面に落ちた。

 

サンビーム「圧倒的だ…。バリーを超えているかも知れん…」

 

バリー「(力だけならな。だが、あいつの目はさっき戦ったキースと同じ目をしている…)」

 

ミール「この…このぉおおっ……!」

 

 キャンチョメはみるみる巨大化し、凶悪な獣人の姿となった。

 

キャンチョメ「さぁ…次はどこをぶん殴られたい?」

 

 凶悪なキャンチョメの姿にゴームペアとパピプリオペアは震えていた。

 

パピプリオ「お、おい…キャンチョメ…、もう…やめろよ…。相手もよぉ、震えてるぜ…」

 

キャンチョメ「何言ってんだい?パピプリオ、こいつは八つ当たりで君を苦しめたんだろう?ルーパーだってボロボロじゃないか。ちゃんと罪は償わせないと…同じか、それ以上の痛みを与えてね…。こいつらを痛めつけた後はジェム達を呪いで命の危機に晒したリオウの番だ」

 

 デボロ遺跡での戦いが終わってから抱いていた清麿の悪い予感が遂に的中した瞬間だった。

 

キャンチョメ「さぁ、ミール、ゴーム!まだまだ痛め足りないぞ…本当の地獄はこれからだ!」

 

 そんな時、フォルゴレ達が立ちはだかった。

 

フォルゴレ「そこまでだ、キャンチョメ!もうやめろ!」

 

キャンチョメ「何のつもりだい?フォルゴレ、みんな」

 

フォルゴレ「キャンチョメ、もう勝負はついた」

 

エル「もうこれ以上あの人達を痛めつける必要はありません。本を燃やしてゴームを魔界に帰してからコントロールルームへ急ぎましょう」

 

キャンチョメ「ダメだよ、こいつらはパピプリオとルーパーにひどい事をしたんだ。本を燃やす前にたっぷりと反省させないと…」

 

ミール「ギガノ・ディオボロス!」

 

 フォルゴレ達がキャンチョメを止めようとしていると、ミールが呪文を発動させた。

 

ミール「はっ、間抜けめ!パートナーや仲間達がわざわざ目の前に出てくるなんて本当に」

 

 しかし、フォルゴレ達目掛けて放たれたギガノ・ディオボロスはキャンチョメの触手に食われた。

 

キャンチョメ「だから言っただろ?こいつらには反省が必要だって…。ボロボロになるまで痛めつけなきゃダメなんだ!」

 

 再びキャンチョメの攻撃が始まった。

 

テッド「おい、もうそんな事しなくったっていいだろ!?」

 

キャンチョメ「悪い事をしたらどうなるか…僕に逆らったらどうなるかを…」

 

 あまりにも凄惨な光景にパピプリオペアは怯え、エルは目を向ける事さえできなかった。

 

キャンチョメ「ふふふ…まだ眠るのは早いよ」

 

サンビーム「フォルゴレ、早く本を離すんだ!」

 

フォルゴレ「さっきからやってるんだが…!」

 

 本を離そうとしたが、フォルゴレは離したくても手から離れなかった。

 

キャンチョメ「本を捨てようとしても無駄だよ。フォルゴレの手には僕の髪の毛が絡みついている。その髪の毛からフォルゴレの脳に『本を離さない』『心の力を出し続ける』と命令がいっているからね」

 

サンビーム「こうなれば私達が止めるしかない!ゴウ・シュドルク!」

 

 しかし、本は光らず、ウマゴンには何の変化もなかった。

 

ウマゴン「メル?」

 

サンビーム「術が発動しない?」

 

サウザー「何やってんだよ、オヤジ!ゴウ・ギドルク!」

 

 カルディオの方も同様に変化がなかった。

 

サウザー「何で術が発動しねえんだよ!」

 

 不審に思ったグスタフが手を見ると、そのからくりが明らかになった。

 

グスタフ「私達の手にもキャンチョメの髪の毛が絡みついているぞ!」

 

ジード「何だと!?」

 

カイル「本当だ!」

 

エル「どういうつもりなんですか?キャンチョメ君!」

 

キャンチョメ「みんなが邪魔したりしないように、みんなの手に絡みついている髪の毛から『心の力を出さない』という命令を脳に送っているんだ。フォルゴレやみんなは僕がゴーム達にするお仕置きを黙って見てればいいんだ!」

 

 攻撃をやめないキャンチョメに対し、フォルゴレはキャンチョメの攻撃からゴーム達を庇った。

 

フォルゴレ「やめろと言ってるんだ…キャンチョメ…」

 

モモン「もうやめてよ、キャンチョメ!これ以上攻撃したらゴーム達の精神が壊れて死んじゃうよ!だから…やめてよ!!」

 

キャンチョメ「フォルゴレ…なぜそこまでそいつらを庇うんだい?この攻撃はフォルゴレが受けても同じようにダメージをくらうんだよ。それに、何でみんなまで止めようとするんだい?」

 

フォルゴレ「私やみんながそうするのは、キャンチョメが間違った方向へ行かないためだ」

 

キャンチョメ「今の僕が間違ってるって!?なぜだ!?僕はやっと『力』を手に入れたんだよ!悪い奴等をやっつける力を!そうさ、僕はライオンになれたのさ!ガッシュのようにどんな敵をもやっつける強くてかっこいいライオンに!僕は…僕は今まで本当に弱かった…。千年前の魔物との戦いでは、僕が弱いからキッドを守れなかった…。それに、僕が弱いせいでしょっちゅうフォルゴレも死にかけていたんだ。でも、ガッシュは魔界では同じ落ちこぼれだったのに人間界で再会した時には僕の遥かに上を行く強さを得ていた…。そんなガッシュを見て、僕はもっと力があればと思って毎日欠かさずに清麿から出された特訓のメニューをこなしていたんだ!」

 

フォルゴレ「ああ、キャンチョメは確かに強くなった。でも、ライオンになってはいけないんだ」

 

キャンチョメ「なぜだい!?ライオンはみんなの憧れだよ!ガッシュもライオンそのものの強さを持ってたじゃないか!」

 

バリー「…キャンチョメ、お前はガッシュがどういった奴なのか全く理解してないようだな」

 

グスタフ「ガッシュはお前のように恐れられているライオンだったのか?」

 

キャンチョメ「…それってどういう意味なんだよ…?」

 

バリー「それは、あいつらが物語っているぞ」

 

 バリーが指差した方には震えているパピプリオペアがいた。

 

キャンチョメ「パピプリオ、ルーパー、どうしたんだ!?何か話せよ!」

 

 パピプリオペアは怯えてレインの後ろに隠れた。

 

フォルゴレ「キャンチョメ…私も昔はライオンだったんだよ…。どこか勘違いした、バカなライオンさ…」

 

 

 

回想

 フォルゴレは昔を思い出しながら過去を語った。それは、モーリスが暴露したものと同じものだった。

 

フォルゴレ『イタリアの田舎町で、体が大きいのと、力があったのとで暴れまわっていた…。私の事を少しでもバカにする奴はぶっ倒してきた。悪い奴も、いい奴も全て私に逆らう奴は1人もいなかった。髪も服装もハードに決めて、かっこよさと強さを求めた、まさにライオンさ…。だがな…そのうちおかしくなってきたんだ。私から人が離れていったのさ…。人を助けたって変わらない…』

 

 悪人に絡まれている人をフォルゴレは助けたものの、助けた人は怯えて逃げた。

 

フォルゴレ「…おい…助けてやったんだぞ!礼ぐらい言ったらどうだ!?」

 

フォルゴレ『そして最後は、私の両親すら私から離れていった…』

 

 

 

フォルゴレ「わかるか?キャンチョメ…。ライオンの牙に小鳥は止まらないのさ…」

 

キャンチョメ「そんな…ゴーレンのパートナーが言った事が本当だったなんて…。それに、ファウードへ行く前の夜に言った言葉は…」

 

フォルゴレ『知ってるかい?キャンチョメ、カバさんは…カバさんの牙には小鳥が止まるんだぜ…』

 

フォルゴレ「ああ…故郷を追い出された私が偶然TVでカバさんの牙に小鳥が止まってる映像を見たのさ。私はその時、『こっちの方がいい』と思ったんだ。不格好でもなんでも私はそのカバの姿になりたいと思った。愉快なスターとなった今でも私の両親は怖がって私に近づかない…。キャンチョメ、そうなっちまったらもう終わりなのさ…」

 

キャンチョメ「…でも…でも…僕は…僕は強くなりたかったんだ…。こいつらを徹底的に倒せばきっと変われる!もう弱い自分には戻りたくないんだ~!!」

 

 フォルゴレの言葉を聞いてパニックになったキャンチョメは拳を振り下ろした。

 

エル「フォルゴレさん!」

 

サンビーム「何だ…?」

 

 なんと、フォルゴレはキャンチョメの拳を受け止め、持ち上げていた。

 

フォルゴレ「キャンチョメ…あの夜は言わなかったが、カバさんは強いんだぜ…子供を守る時は特に強い!ライオンだって倒しちまうんだぜ!」

 

サウザー「なぁ、オヤジ。カバって本当にライオンより強いのか?」

 

サンビーム「そうらしい。何でも、カバはライオンですら容易く手出しできない動物だそうだ」

 

キャンチョメ「う…」

 

フォルゴレ「キャンチョメ…私はいつだってカバさんだ。私の姿はキャンチョメの目にはカッコ悪く映っていたかい…?」

 

 今までの事を思い出したキャンチョメは変化を解いて元の姿に戻った。

 

キャンチョメ「うわあああん!ずるい、ずるいよ、フォルゴレ~!フォルゴレよりかっこいい動物なんているもんか~~!ごめんよ、フォルゴレ、みんな…!」

 

 この光景にみんなは微笑み、エルはうれし涙を流していた。

 

エル「何だか嬉しくて涙が出てきますわ…」

 

サンビーム「念のため、ゴームの本は持っておいた」

 

フォルゴレ「もうゴーム達もボロボロで戦う事はおろか、ろくに動けない」

 

キャンチョメ「じゃあ、シン・ポルクを解くよ」

 

 シン・ポルクを解くと、ゴームの羽が元に戻り、ゴームとミールの傷もあまりなかった。

 

サウザー「おい、ゴームの羽が元通りになってるぞ!」

 

レイン「本当だ」

 

フォルゴレ「シン・ポルクは主に精神を攻撃する術だ。だから、そこまで肉体へのダメージも少なかったのだろう」

 

キャンチョメ「みんなが止めなかったらゴーム達の精神が壊れてとんでもない事になってたと思うよ。ごめんね、モモン、みんな…」

 

モモン「でも、何とかなってよかったよ」

 

サンビーム「それよりも、なぜゴーム達はリオウに加担していたんだ?」

 

ミール「…実を言うとね、リオウはゴームの空間移動に目を付けて味方に引き入れたの。でも、ゴームが言う事を聞かないから私に呪いをかけるぞって脅しをかけて無理矢理従わせていたのよ」

 

カイル「ヨポポと同じ事をゴームにもしていたなんて許せないよ」

 

ミール「おまけにリオウは私達をこき使っていたから、ストレスが溜まりに溜まりまくっちゃってさっきみたいにかなり攻撃的になってたわけ。まぁ、八つ当たりした私達も悪いからそこは謝るわ」

 

キャンチョメ「さっきはごめんね、ゴーム」

 

ゴーム「ゴォ…」

 

キャンチョメ「ゴームって友達がほしいの?」

 

ゴーム「ゴオッ!」

 

 キャンチョメの質問にゴームは嬉しそうに答えた。

 

キャンチョメ「だったら、僕達がゴームの友達になるよ。リオウに従うより、僕達の友達になった方が何百倍も楽しくていいよ」

 

ゴーム「ゴォ、ゴオッ!」

 

ミール「あんなにはしゃぐゴームは久しぶりぴょん」

 

パピプリオ「俺も忘れるなよ~~!」

 

 一同は明るく笑ったのであった。

 

バリー「まさか、この一件を通して友達になるとはな」

 

レイン「まぁ、味方も増えてよかっただろうしな」

 

キャンチョメ「バリー、グスタフ、ガッシュがライオンじゃないなら、どういった動物だい?」

 

グスタフ「そうだな…。龍とでも言っておこうか?」

 

キャンチョメ「龍?ドラゴンの事かい?」

 

グスタフ「実を言うとな、龍とドラゴンは人間界ではもともと別の想像上の生き物だ。龍は東洋の神聖なる生き物として、ドラゴンは西洋の邪悪な生き物としてな」

 

キャンチョメ「ガッシュのどこが龍なんだい?」

 

グスタフ「その優しさと強さだ。龍と同じようにガッシュは普段はとても穏やかだが、何かのきっかけで怒りだすと凄まじい力を発揮して敵をなぎ倒す。そこがガッシュが龍だと言っている理由だ」

 

キャンチョメ「そうだね。僕はキッドを助けられなかったせいでガッシュの上辺の強さしか見えてなかった…」

 

バリー「それよりも、あいつらはどうしてるのだろうな?」

 

 そんな中、デゴスの大群が現れた。

 

キャンチョメ「げええっ、デゴスの大群だぁ!!」

 

フォルゴレ「どうするんだい?」

 

テッド「どうするも何も決まってるだろ?」

 

 テッドとレインとバリーが前に出た。

 

レイン「この場は俺達に任せろ」

 

バリー「その間にてめえらはコントロールルームへ行け!」

 

サンビーム「ゴームはどうするんだ?」

 

ミール「私達は肝臓へワープしてから、空になったあんた達のペットボトルに回復液を詰めてから戻ってくるわ。先に行って!」

 

パピプリオ「後、俺達もゴームの手伝いをするからな!」

 

 デゴスの大群の相手をバリー達に任せ、空のペットボトルをゴーム達に預けてからサンビーム達は先へ進んだ。

 

 

ファウード 通路

 清麿チームはコントロールルームの前の部屋まで目前に来ていたが、再び扉に阻まれてしまった。

 

清麿「くそっ、塞がれてしまうとは!」

 

ティオ「体内魔物が湧いてきたわよ!」

 

 ティオの言う通り、体内魔物が湧いてきた。

 

 

 

ファウード コントロールルーム前

 その頃、コントロールルームの前では、アースとリオウの戦いが続いていた。

 

エリー「ギャン・バギャム・ソルドン!」

 

バニキス「ファノン・リオウ・ディオウ!」

 

 二つの術は相殺された。

 

リオウ「ふん、お前達がいくら攻撃しようとも、俺達はサポートシステムでいくらでも回復できる上、バニキスは回復液も持っているんだぞ!もう奴は終わりだ!」

 

アース「それはどうかな?」

 

 映像には、ゴームがキャンチョメ達と和解した様子が映っていた。

 

リオウ「な、何っ!?俺でも手懐けられなかったゴームが奴等の仲間になっただと!?」

 

アース「それが貴様の器の小ささというものだ!もう手下の大半を失った貴様は裸の王様も同然だ!」

 

リオウ「おのれ…おのれおのれ!!アース、俺を侮辱した貴様だけは生かしては帰さん!!バニキス、フルパワーで最大呪文だ!」

 

エリー「俺達もフルパワーで行くぞ!ギャン・バギャム・ソルドン」

 

バニキス「ファノン・リオウ・ディオウ!」

 

 再び二つの呪文がぶつかり合った。しかし、その余波でエリーが吹っ飛び、アースの本に火が付いてしまった。

 

リオウ「手古摺らせやがって…!」

 

エリー「アース、すまん!」

 

アース「エリー、今となってはファウードを止める唯一の希望はガッシュの持つバオウ、そして、それを支える仲間達です。それならば…!」

 

エリー「よい、それが魔界に帰る前にやらなければならないお前の決意ならば…」

 

アース「では、本が尽きるまで呪文を!」

 

エリー「ウルソルト!」

 

 ウルソルトによる高速移動でアースは端末の方へ向かった。

 

リオウ「な、何っ!?」

 

バニキス「一体、何を…?」

 

 リオウ達が怯んでいる間にアースは端末を操作した。そして、ある程度操作が終わってからパネルの色が変わった。そして、それを押した。

 

 

 

ファウード 通路

 扉を閉ざされて通せんぼを喰らった清麿チームはブラゴペアとウォンレイペアが体内魔物と交戦していた。

 

恵「何とかならないの?」

 

清麿「今、そうしてるのだが…」

 

 すると、扉が開いた。

 

コルル「扉が開いたよ!」

 

ガッシュ「急ぐのだ!」

 

ブラゴ「その前に、こいつらを吹っ飛ばす!」

 

シェリー「ギガノ・レイス!」

 

 ギガノ・レイスで体内魔物は一掃された。

 

チェリッシュ「みんな、いよいよリオウの待つ所へ着くわよ!」

 

 清麿チームは一気に進んだ。

 

 

 

ファウード コントロールルーム前

 アースの行動にリオウは驚いていた。

 

リオウ「アース、まさか…!」

 

アース「もうじきガッシュ達はここへ来る。その前に、これは某からの最後の一撃だ!ヴァルセーレの剣に吸い込みし、よろず魔物の魔力を放ち、万物を砂塵へと変える千手剛剣とならん!」

 

エリー「ヴァルセレ・オズ・マール・ソルドン!」

 

 アースの最大呪文、ヴァルセレ・オズ・マール・ソルドンがリオウに迫った。

 

リオウ「ぐあああっ!!」

 

 リオウは吹っ飛ばされた。

 

アース「エリー…、どうか、ご無事で…」

 

 本が燃え尽き、アースは魔界に帰った。魔界に帰るアースの姿をエリーは涙を流しながら見ていた。

 

エリー「アース…お前の頑張りのお陰でガッシュ達が来たぞ…!」

 

 その言葉通り、清麿チームが到着した。リオウはサポートシステムで回復したが、ガッシュ達の登場に驚いていた。

 

リオウ「そ、そんな…!ガッシュ達が……!」

 

しおり「アースがいないわ!」

 

ウォンレイ「もしかすると、アースは私達をここに来させるために……」

 

リィエン「アースの頑張りを無駄にしないためにも、リオウを倒すある!」

 

清麿「だが、俺達が倒すべき敵はリオウだけではない。黒幕も倒さなくてはならない!」

 

ガッシュ「ゆくぞ、みんな!」

 

 ガッシュ達はリオウと対峙したのであった。




これで今回の話は終わりです。
今回はキャンチョメのシン・ポルク習得と今小説ではファウード編で終わるため、原作から前倒しする形でカバさんの話をしました。
石版編での戦いが終わった後に嫌な予感がした人もいたように、キャンチョメの暴走も描きました。カバさんの話でのフォルゴレはいつもと違って純粋にかっこいいと思えた上、読んでてかなり心に沁みたので、シン・ポルク習得とキャンチョメの暴走をやる上で外せないと思い、執筆しました。
ゴームも仲間入りしましたが、後で重要な役割を担います。
次の話はリオウ戦ですが、満を持して黒幕のゼオンが姿を現します。


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LEVEL69 雷帝降臨

ファウード コントロールルーム前

 清麿チームはリオウと対峙していた。

 

リオウ「ふん、アースのようにファウードを支配する最強の魔物の俺に楯突く気か?」

 

パティ「あら?どうせあんたの事だから単純な実力では倒せないから、卑怯な手を使ってアースを倒したんでしょ?」

 

リオウ「ほざけ!虫けら如きが偉そうな口を叩くんじゃねえ!」

 

ブラゴ「ファウードを支配する奴だからどういった強い奴かと思えば、所詮はこんなつまらん物に頼る雑魚か」

 

リオウ「ブラゴ!この俺を雑魚呼ばわりしたな!俺だって一族の代表として期待を背負っているんだ!」

 

ブラゴ「そのファウードなんてものを人間界に送ったお前の一族もたかが知れてるな。俺が王になったら、お前ら一族をその件で処罰してやる」

 

リオウ「お、おのれ…!!」

 

シェリー「ブラゴ、話はここまでにして早くリオウを倒すわよ!」

 

清麿「行くぞ!」

 

 しかし、女の子達が前に出た。

 

パティ「あんな奴如きにガッシュちゃんが出るまでもないわ。ここは私達に任せて、ガッシュちゃんは黒幕との戦いに備えて体力を温存するのよ」

 

ガッシュ「だが…」

 

清麿「大丈夫だ。ティオ達はとても強い。だから、リオウとの戦いは任せて俺達は体力を温存しよう」

 

ブラゴ「俺もあいつらに任せるとしよう。ファウードを操る奴がとんだバカだったからがっかりした」

 

 ガッシュ達は座って一休みした。

 

リオウ「な!てめえら、女共だけで俺を倒すだと?舐めてやがるのか!?」

 

ティオ「私達はとっても強いのよ!」

 

コルル「こんな物に頼って魔界の王様になろうとするリオウは許さない!」

 

チェリッシュ「女の子を舐めてると痛い目に遭うわよ!みんな、行くわよ!」

 

ティオ達「ええ!」

 

 ティオ達はリオウに向かっていった。

 

バニキス「リオウ、女共を徹底的に叩きのめしてやろうか」

 

リオウ「ああ。女共だけで俺に勝つなんてふざけた考えがもうできないようにしてやる!」

 

バニキス「ファノン!」

 

 リオウの攻撃をティオ達はかわした。

 

しおり「コルル、まずは私達が行くわよ!」

 

コルル「うん!」

 

しおり「ゼルク!」

 

 豹変したコルルはリオウに向かっていった。

 

リオウ「バカめ!」

 

バニキス「ゴウファ」

 

ウルル「アク・スプレイド!」

 

 突っ込んでくるコルル目掛けてリオウは攻撃しようとしたが、パティの術で足元がふらついて体勢を崩してしまい、狙いを外してしまった。

 

リオウ「み、水だと!?」

 

コルル「ぜえええいっ!!」

 

 コルルの鋭い爪をまともに受けてしまい、吹っ飛ばされてしまった。

 

しおり「ラージア・ゼルセン!」

 

 巨大ロケットパンチがリオウに迫った。

 

バニキス「アーガス・ファノン!」

 

 獅子がリオウとバニキスを覆うようにしてラージア・ゼルセンを防いだ。

 

リオウ「ふん、大した威力じゃ」

 

 アーガス・ファノンを解くと、左右にギガノ・コファルとスオウ・ギアクルが飛んできた。

 

リオウ「な、何っ!?ぐあああっ!!」

 

 ギガノ・コファルとスオウ・ギアクルを同時に受けたが、すぐにサポートシステムで回復した。

 

ウルル「あのシステムが厄介ですね…」

 

パティ「だったら、もっとタコ殴りにしてやるまでよ!」

 

チェリッシュ「体は回復しても、連続で攻撃を受け続けたら心の方はどうかしら?」

 

リオウ「虫けら共が!強気な口もここまでだ!」

 

バニキス「ギガノ・ファノン!」

 

 ギガノ級の術を見たティオは笑みを浮かべた。

 

ティオ「何の考えもなくこんな威力の術を撃ったら…」

 

恵「命取りよ!ギガ・ラ・セウシル!」

 

 ギガノ・ファノンはギガ・ラ・セウシルで跳ね返されてリオウに襲い掛かった。

 

バニキス「リオウのギガノ級の術が跳ね返され…」

 

リオウ「ぐあああっ!!」

 

 リオウは跳ね返されたギガノ・ファノンの餌食となった。

 

ウルル「アクロウク!」

 

 水の爪で武装したパティは突っ込んで来た。

 

リオウ「調子に乗るんじゃねえ、虫けらが!」

 

バニキス「ファノン・ドロン!」

 

 獅子の鬣でパティは拘束されてしまった。

 

ウルル「パティ!」

 

パティ「コルル!」

 

コルル「うん!」

 

しおり「ゼルク!」

 

 しかし、コルルの鋭い爪で鬣は切り裂かれた。

 

パティ「サンキュー、コルル!」

 

リオウ「この野郎が!!」

 

 リオウは杖で殴りかかった。

 

ニコル「ガンズ・ゴウ・コファル!」

 

 パティとコルルに注意がいっていたリオウはチェリッシュの攻撃に気付かず、まともに受けてしまった。

 

リオウ「ぐあっ!」

 

恵「ナイスよ、チェリッシュ!」

 

リオウ「(くそう!接近戦に注意すれば、遠距離から狙撃され、遠距離の方を注意すれば接近戦を挑まれる!しかも、連携までしている…!なんて女共だ…!)」

 

チェリッシュ「どうかしら?私達虫けらに手も足も出ない気分は」

 

パティ「虫けら相手にどうにもならないようじゃ、あんたはウジ虫といった所ね」

 

リオウ「ウジ虫……?虫けら風情が俺をウジ虫呼ばわりしやがったな!!一族の代表として出ている俺が金持ちと一般人と孤児にウジ虫呼ばわりされる筋合いはねえんだよ!!」

 

ティオ「王になるためでもやっていい事と悪い事があるでしょ!?」

 

パティ「一族の代表だとか言っても、汚いマネをした時点であんたはウジ虫なのよ!」

 

チェリッシュ「その曲がった根性をもっと叩き直してやろうかしら!?」

 

リオウ「女風情がいい気になりやがって……!バニキス、一瞬でカタを着けるぞ!」

 

バニキス「ファノン・リオウ・ディオウ!」

 

 リオウの最大呪文が迫った。

 

リオウ「ふはははっ!お前ら如きがこの俺の最大呪文を」

 

コルル「出番だよ、ティオ!」

 

ティオ「ええ!」

 

恵「チャージル・セシルドン!」

 

 チャージル・セシルドンでファノン・リオウ・ディオウはあっけなく防がれてしまった。

 

バニキス「そんな…、リオウの最大呪文がこうもあっさりと……!」

 

ウルル「スオウ・マーレ・ギアクル!」

 

 バニキスとリオウが唖然としている隙を突いて水の龍が襲い掛かった。

 

バニキス「いつの間に!?」

 

リオウ「ぐあああっ!!」

 

 リオウは水の龍の直撃を受けた。

 

ティオ「私達の盾はとっても強いのよ!」

 

恵「そんな攻撃では傷1つ付かないわ!」

 

リオウ「くそう!コントロールルーム!」

 

 すぐにサポートシステムでリオウの傷とバニキスの心の力は回復した。

 

リオウ「てめえらは心の力は限りがあるが、俺達には限りがねえんだ!いずれはお前達がスタミナ切れするんだよ!」

 

バニキス「もうあの盾は出せないはずだ。ファノン・リオウ・ディオウ!」

 

 またファノン・リオウ・ディオウが放たれた。

 

恵「今度はニコルさんとチェリッシュの番よ!」

 

ニコル「わかったわ。グラード・マ・コファル!」

 

 チェリッシュはファノン・リオウ・ディオウとリオウが一直線になるようにスナイパーライフルの向きを調節した。

 

チェリッシュ「シュート!」

 

 スナイパーライフルから放たれた銃弾はファノン・リオウ・ディオウを貫通し、リオウの体を貫いた。

 

リオウ「ぐあああっ!!またあの銃弾か!」

 

 更に3発銃弾がリオウを貫通した。しかし、サポートシステムで回復した。

 

チェリッシュ「これで嫌という程わかったでしょ?女の子を舐めてたら痛い目に遭うと」

 

恵「降参してファウードの鍵を渡すなら今の内よ!」

 

リオウ「だ、誰が降参なんかするものか!」

 

チェリッシュ「(変ね…。ファウードを魔界に帰す装置がある部屋を出る時と同じ悪寒を感じた…。もしかして…!)」

 

 扉の向こうからチェリッシュは前にも感じた悪寒がした。ティオ達の戦いぶりをガッシュ達は見ていた。

 

リーヤ「ティオ達は凄いぞ、アリシエ!」

 

アリシエ「ああ。それぞれの長所を生かし合った連携は見事なものだ」

 

シェリー「あの子達もやるわね」

 

リィエン「これなら、私達の出番はないあるね」

 

清麿「ああ。しっかりあいつとの戦いに備えて体力とかを温存できる」

 

ガッシュ「ウヌ(この妙な感じは何なのだ?もしや…、あの扉の向こうには…)」

 

 

 

 

ファウード コントロールルーム

 ザルチムはラウシンと共にリオウとティオ達の戦いを見ていた。

 

ザルチム「あの女共、かなり強い上に連携してリオウを追い詰めているとは……!それに…、あのクソ野郎が…!」

 

ラウシン「このままだとサポートシステムがあってもリオウは負けるぞ」

 

ザルチム「なら、俺達も行くぞ。今度こそ奴等と決着を着ける!」

 

???「そいつはちょっと無理そうだぜ」

 

ザルチム「誰だ!?」

 

 声がした方にはゼオンペアがいた。

 

ゼオン「お前がここから出る時は、魔界に帰る時だ」

 

ザルチム「(くっ、ずっと感じていた悪い予感はこいつらの事だったのか…!)」

 

デュフォー「ゼオン、俺達はここで今までと違う景色を見れるのか?」

 

ゼオン「ああ、そうだ。デュフォー」

 

ザルチム「くそったれが…!お前らの思い通りになると思ったら大間違いだ!行くぞ、ラウシン!」

 

ラウシン「ガンズ・シドセン!」

 

 連射攻撃をしたが、ゼオンは容易く避け、デュフォーもアンサー・トーカーで最小限の動きでかわせる答えを出し、かわしていた。

 

ザルチム「(な、何だ!?あいつのパートナーは自分から突っ込んでいるのにどうして俺の攻撃があいつに当たらないんだ!?)」

 

ラウシン「お前、自分から攻撃に突っ込んで行って命が惜しくないのか!?」

 

デュフォー「……ああ。俺はいつ死んでもいいのだからな」

 

ザルチム「(な、何っ!?こいつはまるでアリシエと…いや、アリシエとは根本的に違う!アリシエは守りたいもののためなら命を捨てる覚悟で行くが、こいつは生きる事への執着心そのものがない!くそったれ…、二度ならず、三度までも俺が人間に恐怖するとは…!)」

 

ゼオン「デュフォー、一気に中級呪文で決めるぞ」

 

デュフォー「ああ」

 

 ゼオンは一気にザルチムとラウシンに迫った。

 

ザルチム「何っ!?この手の動きから逃げられ…」

 

デュフォー「テオザケル!」

 

 テオザケル1発でザルチムは大ダメージを受けて吹っ飛んだ上、本に火が付いてしまった。

 

ザルチム「(くそったれ…リオウは友達とは思ってねえのに、ファウードを復活させるのになぜか協力したくなって一緒にここまでやってきたのによ、こんなチビに俺達が積み上げた苦労が一瞬で水の泡にされるなんてみっともないぜ…!リオウ…俺はここまでだ…。ファウードの鍵を持って逃げろ…!)ラウシン、こんなバカがお前を振り回しちまってよ、最後にリオウに伝えてくれ、逃げろと…」

 

ラウシン「ザルチム…」

 

 

 

ファウード コントロールルーム前

 ティオ達の実力と連携にリオウはどうしようもなかった。

 

リオウ「(くそう…!ガッシュの取り巻き相手に手も足も出ないとは…こうなったら、ザルチムを呼んで連携を崩すしかない…!)ザルチム、すぐに来い!」

 

しおり「そう言えば、まだザルチムが残っていたわね!」

 

パティ「でも、ガッシュちゃんを守る親衛隊とも言える私達が相手なら、1人や2人ぐらい来ても返り討ちよ!」

 

 しかし、返事はなかった。

 

恵「来ないわね…」

 

リオウ「どうしたザルチム、聞こえないのか!?」

 

ラウシン『リオウ、すぐにファウードの鍵を持って逃げろ!うわああっ!!』

 

 返事が途切れてしまった。

 

リオウ「ラウシン、ザルチムに何があった!?それに、逃げろとはどういう事だ!?応答しろ!」

 

???「ザルチムなら、とっくの昔に魔界へ帰っていったぜ…」

 

チェリッシュ「(この声…!)」

 

リオウ「何だと…?」

 

 声にチェリッシュは反応した。コントロールルームの扉が開いて見えた光景は、倒れているラウシンと二つの人影だった。

 

???「初めまして、になるかな?リオウ。いや、俺のこの目と髪には見覚えがあるか」

 

 その二つの影こそ、ゼオンとデュフォーだった。

 

リオウ「(うおっ!紫電の眼光、白銀の髪、まさか…王族に生まれし雷…)雷帝…ゼオン…!」

 

 ゼオンのその姿にはガッシュ以外は驚いていた。

 

恵「白い…ガッシュ君…!?それに…、引っ越しを手伝ってくれた人まで…!」

 

清麿「(あいつが…水野に暴行し、チェリッシュを傷つけた…、ゼオンなんだ…!)」

 

パティ「どどど、どういう事!?ガッシュちゃんが2人いるわよ…!」

 

チェリッシュ「…あの白い方がゼオンよ…!」

 

ティオ「あいつが…ゼオン!?似てるって聞いたけど、どう見たって色以外はガッシュと瓜二つじゃない!」

 

チェリッシュ「そうよ。だから、私は坊やと初めて会った時に勘違いしたの…!」

 

パティ「そもそもどうしてガッシュちゃんと瓜二つなのよ!ガッシュちゃんは知ってるの?」

 

ガッシュ「……ゼオンは……私の兄なのだ…!」

 

 ゼオンがガッシュと似てる理由が兄弟である事に一同は衝撃を受けた。

 

恵「ゼオンが……ガッシュ君のお兄さん…?」

 

ニコル「それだったら、瓜二つなのも納得できる…!」

 

ティオ「だったら、何でゼオンはガッシュのお兄さんなのにチェリッシュとかにあんなひどい事を平気でできるのよ!」

 

コルル「…怖いよ…、ガッシュがいてもどうにもならないぐらい怖い…!」

 

しおり「そんな事ないわ、コルル。きっとガッシュ君がゼオンをやっつけてくれるわよ」

 

パティ「そそそ、そうよ…。ガッシュちゃんはゼオンに勝てるかどうかわからないと言っただけで、勝てないとは一言も言ってないのよ…!」

 

 術の効果が切れて元に戻ったコルルはゼオンに怯えていたため、何とかしおりとパティが勇気づけようとしたが、しおりとパティも本当は不安でしょうがなかった。

 

ティオ「(何…?ゼオンはガッシュの兄さんなのに今までの魔物とは比べ物にならないぐらい怖い…!ガッシュがいても安心できない…!)」

 

シェリー「赤い本の子と兄弟なのに、凄まじい殺気を放っているわ…」

 

ブラゴ「あいつが…噂に聞いた雷帝か…。まさか、ガッシュの兄だったとは…」

 

 ゼオンの凄まじい威圧感に一同は身構えていた。

 

ゼオン「ガッシュ、こうやって面を合わせるのは初めてだな」

 

ガッシュ「お主は私達がファウードに来た時から見張っておったな?」

 

ゼオン「ああ。だが、お前達を見張っていたのは今回だけじゃない。デボロ遺跡の戦いの時も俺はお前達を見張っていたぞ」

 

チェリッシュ「(あの時の悪寒はゼオンに見られていたからなのね…!)」

 

清麿「何だと!?お前はデボロ遺跡にも来ていたのか!?」

 

ゼオン「ああ、そうだ。少し千年前の魔物の襲撃に遭ってな、何かないか来たのさ。ガッシュ、落ちこぼれのお前がどうやってファウードの情報を得たのかは知らんが、お前のお陰で俺達はいち早く正体を知る事ができた。これはその礼だ!」

 

デュフォー「ザケル」

 

 ゼオンのザケルをガッシュはマントでガードした。

 

ゼオン「ほう、独学でマントの扱いも覚えたのか」

 

リオウ「(雷帝ゼオン…。王族の中で最も強い雷を受け継ぎ、生まれし者。王族の厳しい英才教育を受け、育てられた才能は王宮の騎士達にさえ恐れられるほどの存在…!)なぜ、お前のような者がここにいる!今になっていきなり、なぜこんな場所に!?」

 

ゼオン「今になってだと?あのザルチムって奴とガッシュ達は随分前から俺の存在に気付いてたぜ」

 

 ゼオンの言葉を聞いたリオウはザルチムの『見張ってる奴』の事、アースの言っていた『黒幕』の事を思い出した。

 

リオウ「(お前が、ザルチムの言ってた俺達を見張ってる存在で、アースの言ってた黒幕なのか!)」

 

ゼオン「ガッシュをここに誘導したのも俺なのだからな。まぁ、ガッシュ達は以前からファウードへ行く予定ではあったがな」

 

リオウ「そんな…!」

 

ゼオン「それに、清麿が仕掛けたタイマーをいじり、エネルギーカットができないようにしたのも俺達だ。そして、この部屋に辿りつけたのは…デュフォーの力で最短で行ける道を見つけ、ザルチムが入ったのと同時にコントロールルームへ入り込めたんだよ」

 

リオウ「バカな!人間がそんな力を持つはずがない!それに、お前がここへ来れたのも偶然が重なっただけだ!第一、お前のような奴が誰にも気付かれずに行動できるわけがない!最初から俺がお前に利用されていたなんて嘘だ!」

 

デュフォー「(あいつ、頭が悪いな。人間の中には俺のような力を持つ奴や超能力者もわずかだが、生まれてくるというのに)」

 

ゼオン「バカめ、英才教育の一環で力と気配を隠して隠密行動をとるぐらいできる。ファウードが復活した今、お前はもう用済みだ。ファウードを操るそのファウードの鍵を置いてとっとと消えろ!」

 

 ゼオンは抑えている力を解放した。

 

ガッシュ「(いよいよどのようにしてリオウがやられたのかが明らかになるのか…)」

 

リオウ「(何という力だ!)」

 

 そのままゼオンは突っ込んで来た後、手をリオウの方に向けた。

 

リオウ「(この手の動きから逃れ…!)」

 

デュフォー「ザケル」

 

 ザケル1発でリオウはバニキス諸共吹っ飛ばされた。

 

清麿「(ガッシュと同じ技?だが、さっきもそうだったが、明らかにゼオンの方が威力が高い!)」

 

 そのままゼオンは追い討ちをかけた。

 

リオウ「(来る!)バニキス!」

 

バニキス「ギガノ・ファノン!」

 

 リオウのギガノ級の術をゼオンは片手で止めた。

 

ウォンレイ「肉体強化の術なしでギガノ級の術を片手で止めた!?」

 

デュフォー「ザケルガ」

 

 ゼオンのザケルガでギガノ・ファノンは粉砕された。

 

リオウ「(俺のギガノ級の術が、中級レベルの呪文で…!)」

 

デュフォー「(あいつ、頭が悪いな。相殺したと思い込んでいる。俺はまだ、術を出し続けているというのに)」

 

 そのままザケルガはリオウに直撃して吹っ飛ばされ、更にリオウはゼオンの追い討ちを受けた。

 

ゼオン「どうした?弱い術たった2発でグロッキーか?」

 

 ゼオンは攻撃をやめてリオウから離れた。その後、リオウはふらふらながらも立ち上がった。

 

リオウ「舐めるなよ…、俺は…ファウードを支配する最強の魔物だぞ!」

 

ゼオン「ふん、最強だと?サポートシステムを使ってもガッシュの取り巻きの女達にすら勝てなかったお前がか?面白いジョークだな。おい、貴様の減らず口を聞いてるとほんとに笑えるぜ」

 

バニキス「言わせてみろ、リオウ!バーガス・ファノン!」

 

 しかし、ゼオンは涼しげな顔で軽くかわした。

 

リオウ「くそったれが!!」

 

 今度は杖で攻撃したものの、ゼオンに軽く掴まれて振り落とされた挙句、ゼオンに頭を踏まれた。

 

ゼオン「まるで素人だな。お前の一族は杖の使い方も教えてくれなかったのか?」

 

 そう言ってゼオンはリオウの杖をへし折った。

 

ゼオン「ほら、待っててやるから早く起きな。それでも力を入れているのか?」

 

 リオウは起き上がろうとしたが、踏みつけているゼオンの力が強くて起き上がれなかった。

 

バニキス「(バカな…、あのリオウがまるで子供扱いだと…?)」

 

恵「そんな…、ティオ達でも連携しないと簡単にリオウを追い詰められないのに、たった一人であんなにリオウを圧倒するなんて…」

 

チェリッシュ「あれが、ゼオンの力なのよ…。私でも初めて戦った時はギガノ・コファルがザケルだけで破られたのを見た時は衝撃を受けたわ…」

 

ニコル「おまけに本気じゃないみたいよ…」

 

 ガッシュからゼオンはとんでもなく強いと聞かされていたものの、その強さを目の当たりにしたティオ達は衝撃を受けていた。

 

ゼオン「弱いな、お前」

 

リオウ「くそう…、貴様のような奴がいたとは…。貴様の存在に気付いていれば、むざむざファウードの封印を解くなどしなかったのに…」

 

ゼオン「ふん、だからこそ姿を隠していたのさ。お前がファウードの封印を解くのを躊躇わないようにな。もう一つ、力を隠して他の魔物と同じように、お前に従うふりをするって手もあったが…お前みたいなバカの下につくってのは、例え演技でも俺のプライドが許さねえ!」

 

リオウ「くそう…。バニキス、バニキス!」

 

バニキス「ガルファノン!」

 

ゼオン「おっと」

 

 ガルファノンを軽くかわした後、ゼオンはキックだけでリオウの鎧を破壊し、吹っ飛ばしてしまった。

 

リオウ「うわあっ!」

 

バニキス「リオウ!」

 

ゼオン「ふはははっ!よかったな、やっと起き上がれたぞ!」

 

デュフォー「機嫌がいいな、ゼオン。お前が戦闘で遊ぶとは」

 

ゼオン「こうも上手くファウードが手に入った事を思うと楽しくてな」

 

リオウ「(ガードした、腕の鎧が砕かれて…。ただの蹴りでだぞ…!)」

 

 ゼオンの圧倒的な強さは一同も驚くものだった。

 

清麿「とんでもなく強い…」

 

恵「だけど清麿君、ゼオンはガッシュ君のお兄さんなのに戦い方も性格も正反対の邪悪そのものよ…」

 

清麿「こいつにファウードを乗っ取られたら大変な事になる…」

 

ゼオン「おっと、どさくさに紛れて俺とやりあおうなんて思うなよ。そうしたら…」

 

 ゼオンが行動する前に清麿はアンサー・トーカーでどうすればいいのかの答えを出した。

 

清麿「みんな、パティとティオの後ろに!」

 

 一同は清麿の指示に従い、パティとティオの後ろに来た。

 

清麿「恵さん、ウルルさん、頼みます!」

 

恵「ええ!」

 

ウルル「はい!」

 

デュフォー「テオザケル」

 

 ガッシュ達目掛けてテオザケルが放たれた。

 

ウルル「ゴウ・アシルド!」

 

恵「マ・セシルド!」

 

 ゼオンのテオザケルは『電気は水との相性は最悪』というのを利用してゴウ・アシルドでは吸収しきれなかったものの、威力が大幅に弱まってしまい、それからマ・セシルドで防がれた。

 

ゼオン「ちっ、ガッシュの仲間に水使いの魔物がいたか…」

 

デュフォー「いくらゼオンの電撃の力が強くても相性は無視する事はできんぞ」

 

ゼオン「まぁいい、お前達の始末は後の楽しみにとっておいてやる。少しでも長生きしたいなら、お前達は俺がリオウを始末するのを見物しておくんだな」

 

 ゼオンはガッシュ達の始末を後にし、リオウの始末を優先させた。

 

ゼオン「まずはリオウ、お前からだ」

 

リオウ「舐めるなよ…。てめえみたいなチビに、いつまでも一方的にやられると思うな!!」

 

 しかし、再びゼオンの方を見た時にはゼオンはその場にいなかった。その時にはゼオンはリオウの頭上にいた。

 

ゼオン「黙れ…!お前の減らず口はもう聞き飽きた」

 

デュフォー「ザケル」

 

 またリオウはザケルをまともに受けた。

 

ゼオン「もうちょっと必死になれ。そうすれば、無駄口も減る」

 

リオウ「ううっ…、バニキス、禁呪だ!」

 

バニキス「何だと…?あれを使うのか…?しかし…あれを使ったら…」

 

リオウ「もう、あれしかない!」

 

バニキス「……わかった」

 

リオウ「呪文を唱えたら、すぐに離れろよ。お前まで攻撃しかねん」

 

バニキス「ああ」

 

リオウ「やれっ、バニキス!」

 

バニキス「おう。ギルファドム・バルスルク!」

 

 リオウは禁呪で理性を失い、その代償として大幅なパワーアップを果たした。

 

シェリー「あの魔物は禁呪という呪文の使い手だったの?」

 

ブラゴ「だが、雷帝相手に禁呪を使うのは迂闊だったな」

 

 ブラゴの言う通り、ゼオンはデモルトの時と同様、大して驚きもしなかった。

 

ゼオン「ふん、禁呪か…」

 

デュフォー「どうする?ゼオン」

 

ゼオン「そうだな…。やはり…」

 

 そのままゼオンは突っ込んでいき、リオウを蹴り飛ばして。

 

パティ「ぎょえええっ!!ガッシュちゃんと違って術なしであんな奴を蹴り飛ばしたわよ!」

 

ゼオン「この程度の相手に上級呪文はいらん。せいぜい使っても…中級呪文1発だ!」

 

 ゼオンは肉弾戦でリオウを圧倒した。

 

バニキス「(そんな…バーサーカー状態のリオウが一方的にやられている…!?)」

 

 一方的にゼオンに攻撃を受け続けたリオウは遂にダウンした。

 

デュフォー「ゼオン、そろそろ遊びは終わりだ」

 

 勝負を決める事にしたゼオンはリオウに飛び乗った。

 

デュフォー「テオザケル」

 

 テオザケル1発でリオウはボロボロになり、禁呪の状態は解除された。

 

恵「あの状態の敵を素手と呪文1発で…」

 

清麿「あっけなく倒しただと…?」

 

リオウ「ふ…ふざけるな…。ここまでくるのに…、どれだけ苦労したと思っている……?」

 

 

 

回想

 それは、王を決める戦いが始まる前の事だった。リオウの一族の長はリオウを呼び出していた。

 

長「このタイマーの働きでファウードは人間界に転送される。ファウードさえあれば、お前は確実に王になれる。我が一族が守り続けたファウードをお前に託すのだ。ぬかるなよ、お前は我が一族の代表なのだ。まずは、封印を解くための力を集めろ。巨大なファウードの力をちらつかせれば、数々の魔物が寄ってくるはずだ。その力を横取りしようとしてな」

 

 こうして、魔界の王を決める戦いが始まり、デボロ遺跡での戦いが終わってしばらくしてからファウードは魔界に転送された。だが、力が思ったよりも集まらなかった。

 

ザルチム「どうする?リオウ。封印を解くにはまだ力が足りねえ」

 

リオウ「くそう…(我が一族に伝わる呪いを使うか…。だが、これを使えば俺の命も危険に…)」

 

 結局、リオウは呪いを使う事にした。呪いの代償として、リオウも苦しんでいた。その姿はバニキスも見ていられなかった。

 

バニキス「おい、リオウ。その呪い、お前の体にもヤバイんじゃないのか?」

 

リオウ「やかましい!もうすぐなんだよ…、俺は…王になるんだ…」

 

 

 

リオウ「必ずどんな事をしても…俺は…、王になるんだよ!!」

 

バニキス「ファノン・リオウ・ディオウ!」

 

 リオウの最大呪文がゼオンに迫った。

 

デュフォー「ジャウロ・ザケルガ!」

 

 しかし、ファノン・リオウ・ディオウはジャウロ・ザケルガであっけなく破られてしまった。

 

リオウ「王に…魔界の王に…!!」

 

 そのままリオウはジャウロ・ザケルガの直撃を受けた。その際にリオウの本に引火して燃え尽き、リオウは魔界に送還された。そして、ファウードの鍵はゼオンの手に渡った。

 

ガッシュ「(こんな事が起こっておったのか…!)」

 

リィエン「ファウードの主がゼオンになったある…」

 

ゼオン「そうだ。これからは俺がファウードの主人だ。このファウードの鍵がある限り、ファウードは俺の意のままだ。人間界など一瞬で叩き潰せる!」

 

清麿「そんな事をさせてたまるか!行くぞ、ガッシュ!何としてもゼオンを止めるぞ!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

ゼオン「ガッシュ、お前がイギリスから去ってから、俺はずっと憎いお前を叩き潰したくてしょうがなかったんだ。日本に着く前にお前とのケリを着けてやる」

 

 指を鳴らすと、ゼオンペアとガッシュペアの体が半透明になった。そして、消えてしまった。

 

 

 

コントロールルーム

 コントロールルームに転送されたゼオンペアとガッシュペアは対峙していた。

 

清麿「ここが…コントロールルーム…。デュフォー、お前はなぜゼオンをとめようとしない!」

 

デュフォー「なぜかだと?お前の問いへの答えはこうだ。人間は特別に大切にされるべき命ではない。それは俺自身の命も同じ。いつ死んでもいいものと思っている」

 

清麿「それが…、それがモチノキ町で会った時にお前がいつ死んでもいいと言った理由だったのか!?」

 

デュフォー「そうだ。だが、ファウードは特別だ。こいつは俺に今まで見た事がない景色を見せてくれる。初めてだ。他の者の力を見てみたいと思ったのは…。ファウードの力を見られるのなら、人や地球がどれだけ壊れようが構わない」

 

清麿「何だと…!?」

 

デュフォー「多分、俺の考え方は…お前達とは根本的にズレているのだろうな…」

 

ゼオン「話はここまでだ。さぁ、行くぞ!」

 

 ガッシュとゼオン、因縁の対決が今、始まろうとしていた。

 




これで今回の話は終わりです。
今回はティオ達女の子の魔物だけでリオウと戦った他、ゼオンがガッシュ達の前に姿を現し、リオウをフルボッコにするというのを描きました。
リオウがティオ達にフルボッコにされたのはリオウが弱いからではなく、ゼオン戦に備えてティオ達がリオウより強くなってしまったせいです。
ゼオンのリオウフルボッコは原作でもアニメでもかなり気に入ってるので、細部の変更をしつつ、きっちり再現しました。
次はガッシュとゼオンの戦いです。


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LEVEL70 宿命の兄弟対決

ファウード コントロールルーム

 ガッシュとゼオンは睨み合っていた。そして、先に動いたのはゼオンだった。

 

清麿「SET!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

デュフォー「テオザケル!」

 

清麿「テオザケル!」

 

 ガッシュのテオザケルとゼオンのテオザケルがぶつかり合った。そして、爆発して相殺された。

 

 

 

ファウード コントロールルーム前

 ガッシュペアとゼオンペアがコントロールルームへ転送された後、コントロールルームへ続く扉の前のモニターでティオ達は戦いの様子を見ていた。

 

ティオ「どうなったのよ…!」

 

 煙が晴れると、ガッシュもゼオンも健在だった。

 

恵「清麿君もガッシュ君も無事だったのね!」

 

パティ「やっぱりすごいじゃない、ガッシュちゃん!」

 

シェリー「でも、赤い本の子の方が余裕がないわ」

 

ブラゴ「それだけ、雷帝の実力が凄まじい証拠だ」

 

 

 

ファウード コントロールルーム

清麿「(危なかった…。ガッシュからゼオンはガッシュが知る魔物の中ではクリア以外では最強と言っていたが…、まさか、これほどの実力差があったとは…!)」

 

ゼオン「ほう、あのスピードの中でよく俺の動きを見て、テオザケルの弱所を見切ったな。そこに撃ち込んだから何とか相殺に持ち込めた。憎たらしいが、少しはお前達の実力は認めてやろう」

 

清麿「(やはり、今までの魔物とは実力の次元そのものが違う…!おまけに、まだデュフォーが控えている。デュフォーが動き出せば、勝てる見込みは薄くなってしまう…!)」

 

ゼオン「ガッシュ、リオウを叩き潰す時に仲間に俺がお前の兄と言ってたが、遊び惚けていた癖によく俺や本当の家族の存在を知る事ができたな」

 

デュフォー「ザケルガ」

 

 ゼオンのザケルガをガッシュはマントで弾いた。

 

ガッシュ「ゼオン、話したい事がある!バオウは」

 

ゼオン「黙りやがれ…、俺はお前に父上の最強呪文、バオウを奪われたせいで…凄まじい苦しみを受ける事になったんだぞ!!」

 

 ガッシュへの憎しみを露わにしたゼオンは猛スピードで迫った。

 

清麿「ラウザルク!」

 

 ラウザルクを発動させてから、ガッシュは清麿を抱えてその場を離れたものの、ゼオンにすぐ追いつかれてしまった。

 

清麿「(嘘だろ…?肉体強化の術もなしでラウザルクがかかっている状態のガッシュに追いつけるなんて…!)」

 

 追いつかれてしまったガッシュは咄嗟に清麿を放したが、その直後にゼオンからパンチやキックを受けた。

 

ゼオン「お前は何の努力もなしに『バオウ』という力を手に入れた!その後お前は我が家を離れ、遊ぶために遠くの学校へ行き、その地の家に預けられた!そして、『バオウ』という力をお前に奪われた俺は厳しい教育や訓練によって、自らの力を強くせねばならなかった!普通の子のように遊ぶことを許されず、大人の戦士達との厳しい特訓の日々。だが、それはまだ我慢できた!つらい日々の中でも自分の力が強くなることが実感できたからな!だが、どうしても我慢ならんことは…『バオウ』の力以外は全く落ちこぼれのお前がこの魔界の王を決める戦いに参加している事だ!民間の学校で間抜けに遊び、せっかく受け継いだ『バオウ』の力も人間界に行く前はまともに使えぬお前が…厳しい特訓を経てやっとこの王を決める戦いに参加できた俺と同等の権利を得る!これが憎まずにいられるか!!」

 

デュフォー「ソルド・ザケルガ!」

 

 ゼオンは電撃の剣で斬りかかった。

 

清麿「ブレールド・ディラス・ザケルガ!」

 

 ラウザルクを解除した後、ガッシュも電撃の剣でゼオンの剣を受け止めた。

 

ゼオン「剣術も何もなっちゃいねえのに俺のソルド・ザケルガと似た術まで覚えやがって…!腹立たしい野郎だ…!」

 

ガッシュ「ゼオン、話を聞いてくれ!父上がゼオンにバオウを継がせなかったのはゼオンが嫌いだったからではない!ゼオンのためだったのだ!!」

 

ゼオン「何っ…?」

 

ガッシュ「バオウ・ザケルガは術者の憎しみ諸共、全てを食いつくす恐ろしい術なのだ!もし、ゼオンにバオウを継がせたら父上の修羅の心を受け継ぐゼオンはバオウに食われてしまうと考えた父上は、苦渋の決断でバオウを暴走させる危険性の少ない私にバオウを眠らせて私の素性を隠した上で民間人に預ける事にしたのだ!これは本当の事だから信じてほしいのだ、ゼオン!」

 

ゼオン「何だと…?俺にバオウを継がせなかったのが俺のためだと…?」

 

 

 

回想

 それは、まだ王を決める戦いが始まる前の事だった。その日の訓練が終了した。

ラジン「よーし、今日の訓練はここまで」

 

 過酷な訓練にゼオンは息を切らしていた上、血まで吐いた。

 

ゼオン「がはっ、ぐ…げぉお!」

 

魔界王『どうした、ゼオン…?』

 

ゼオン「その声は父上!?見ておられるのですか!?」

 

魔界王『ずいぶんとへばってるようだな?』

 

ゼオン「父上、なぜ!?なぜ私に『バオウ』をくれなかったのですか!?」

 

魔界王『前にも言ったはずだ…。バオウは持ってはならぬ力、大きすぎる力は滅びしかもたらさん』

 

ゼオン「しかし、父上は『バオウ』の力を使って王になったと聞きました!ならば、『バオウ』は偉大な力です。そうではありませんか!?」

 

魔界王『偉大ではない。恐ろしい力だ。お前に使いこなす事はできん』

 

ゼオン「な、ならば…なぜ『バオウ』をガッシュに与えたのですか!?」

 

魔界王『……ゼオン、ガッシュの事を誰から聞いた!?』

 

ゼオン「1年前、私の乳母に聞きました。ガッシュという弟がいると。それ以上は教えてくれなかったので、私が自分で調べました。物心つく前に王宮を離れた弟、ガッシュ。今は民間の学校で間抜けに遊んでいると聞きます。その…ガッシュに、父上は『バオウ』を受け継がせたと…。ガッシュには『バオウ』という大きな力と自由を与え、なぜ私には厳しい教育と訓練の日々しかくださらないのですか!?なぜ!?」

 

魔界王「ゼオン……ガッシュの話はするなぁあああっ!!」

 

ゼオン「ぐあああっ!」

 

 ガッシュの話をしたゼオンに魔界王は激怒し、ゼオンに雷を落した。

 

魔界王「下らん話をする暇があるなら、腕を磨け!力を使うお前の心を鍛えろ!!ラジン中将、今日は朝まで訓練を続けさせろ!一時も休ませるでないぞ!明日からの訓練の時間も倍に増やせ!ゼオン、二度とガッシュの話はするな!二度とだ!」

 

ラジン「ゼオン様…」

 

ゼオン「触るな、1人で立てる」

 

ラジン「王はあなたに次の王になってほしいと思っての事です。そうでなければ、これほど厳しい特訓はしません」

 

ゼオン「やかましい。知った口を利くな、中将如きが…。俺が次の王になるなど、当たり前の事だ…。こんな訓練などせずとも、俺が王になるのは当たり前なんだ…。おのれ…おのれ…」

 

 それから3年経過し、ゼオンは王を決める戦いに参加する100人の子供に選ばれた。

 

ラジン「ゼオン様!おめでとうございます!見事、魔界の王を決める戦いの100人に選ばれましたな!」

 

 しかし、ゼオンは名簿を見て激怒していた。

 

ゼオン「なぜだ…!?どういう事だ…!?」

 

ラジン「どうされました、ゼオン様?」

 

ゼオン「なぜ、この100人の魔界の王の候補者の中にガッシュの名がある!?父上は俺を王にするために厳しい特訓をしたのではないのか?」

 

ラジン「ゼオン様…」

 

ゼオン「なぜガッシュをこの戦いに参加させる!?やはり父上は、『バオウ』を持つガッシュを王にしたかったのか?」

 

ラジン「ゼオン様、この100人の子達は王独りの意志で決める訳ではありません。色々な魔物の声で…」

 

ゼオン「やかましい!!ならばなぜ『バオウ』しか取り柄のない落ちこぼれが選ばれる!?おのれ!おのれ!やはり俺は憎まれているだけの子だったのか!?父上よ!そこまで俺が憎かったのか!?『バオウ』を受け継いだガッシュがそこまで大切か?」

 

 ガッシュが魔界の王を決める戦いに参加する100人に選ばれていた事にゼオンは今までの苦労を否定された気分になり、凄まじい怒りと憎しみを抱いた。

 

ゼオン「くそったれが…、ガッシュめ…消してやる…。痛めつけて、俺と同じ苦しみを味わわせてやる!たとえ『バオウ』を使えたとしても、その『バオウ』ごと消してやる!!」

 

 

 

ゼオン「ふざけるな……、ふざけるな!!そんなお前の話が信じられるか!!ガッシュ、遊び惚けていたばかりか、こんなボラ話まで考え付くいらん知恵まで付けやがって!!」

 

 ガッシュの言った真実が受け入れられないゼオンは激怒し、ガッシュを弾き飛ばした。そして、斬りかかろうとした。

 

清麿「右を斬れ!」

 

 指示通りにガッシュが剣を振るうと、ゼオンの剣とぶつかり合った。その後も清麿の指示で剣のぶつかり合いは続いた。

 

清麿「ストーム!」

 

 電撃の衝撃波を飛ばしたが、ゼオンはかろうじてかわし、マントでかすらないようにした。

 

ゼオン「くそっ!!ガッシュのパートナーがデュフォーと同じ力を持っているとは!デュフォー、お前も動け!」

 

 ずっと術を出すだけだったデュフォーが動き出した。

 

デュフォー「見た限りでは、アンサー・トーカーが使えるようになってからそれなりに鍛錬を積んで安定しているようだな。だが、それでも俺に比べれば未熟だ」

 

清麿「(遂に本当の地獄が始まるか…!)」

 

ゼオン「デュフォー、俺は今、無性に腹立たしい!ガッシュを徹底的に叩き潰す指示を出し続けろ!ラウザルクとザグルゼムの使用も許可する!」

 

清麿「(ラウザルクとザグルゼムだと!?ゼオンも使えるのか…?)」

 

ゼオン「驚いた顔をしてるな、清麿。ガッシュにできる事は大概俺でもできる。それは、ラウザルクやザグルゼムとて例外ではない」

 

デュフォー「(ラウザルクとザグルゼムの使用を許可したのはクリアやアシュロンとの戦い以来だな。それ程までにゼオンは頭にきているのか…?)」

 

ガッシュ「清麿…、本当の地獄の始まりなのだ…!」

 

清麿「ああ…!」

 

デュフォー「ゼオン、俺が指示を出す。お前の望み通り、ガッシュを徹底的に叩きのめす答えを出し続けるぞ」

 

ゼオン「やれっ!」

 

デュフォー「ジャウロ・ザケルガ!」

 

 いきなりデュフォーはジャウロ・ザケルガを出した。

 

清麿「ブレールド・ディラス・ザケルガ!リバース!」

 

 対する清麿はガッシュのブレールド・ディラス・ザケルガの追加攻撃、リバースでジャウロ・ザケルガを全て逆流させた。

 

ゼオン「まさか、全て逆流させるとはな!」

 

清麿「ラウザルク!」

 

 ゼオンのマント攻撃をガッシュはマントで防いだ後、ラウザルクで一気に距離をとった。

 

デュフォー「ゼオン、清麿に答えを出す暇も与えないほどの攻撃をするぞ」

 

ゼオン「ああ」

 

デュフォー「ラウザルク!」

 

 遂にゼオンはラウザルクを使った。

 

清麿「(遂にラウザルクを使ったか…!)」

 

 答えを出そうとしたが、その時にはもうゼオンが目の前にいた。

 

清麿「もうここまで…!?」

 

ゼオン「ガッシュ、これが遊び惚けていたお前と俺の差だ!」

 

ガッシュ「ぐああっ!!」

 

 ゼオンのパンチでガッシュは大きく吹っ飛ばされた。

 

清麿「ガッシュ、すぐに」

 

 清麿の答えが出た時にはもうゼオンがガッシュに迫っており、ゼオンはガッシュを殴り飛ばしてはすぐに追いつき、追い討ちを連続でかけていた。しかも、デュフォーの指示でパンチやキックは全てガッシュの急所を狙ったものだった。

 

清麿「(くそっ、答えが出てもその時にはゼオンがもう攻撃を仕掛けている…!)」

 

デュフォー「清麿、答えが出ても反応速度を上回る速さで攻撃を仕掛けられたら、どうにもならないよな」

 

 30秒経過してガッシュのラウザルクは解除されたが、ゼオンのラウザルクはまだ続いていた。そして、1分後にゼオンのラウザルクは解除された。

 

清麿「(バカな、ゼオンのラウザルクの持続時間はガッシュの倍だと!?)」

 

 

 

ファウード コントロールルーム前

 これまで多くの魔物を圧倒的な力で倒してきたガッシュがゼオンに何もできないままやられる姿はティオ達に衝撃を与えていた。

 

ティオ「そんな…、ガッシュが手も足も出ないなんて…!」

 

パティ「き、ききき、きっと後で大逆転するわよ、きっと…!」

 

ティオ「気安く言わないでよ!ゼオンはガッシュが言った通り、これまでの魔物とは強さの次元が違うのよ!ガッシュだって今のままじゃ…」

 

パティ「だから、ティオは諦めるというの?ガッシュちゃんはボロボロになっても絶対にあきらめないわよ!」

 

 戦いの時は息の合った連携を見せたパティとティオだったが、ガッシュが手も足もでない光景に真面目な状況で衝突していた。

 

恵「(ガッシュ君がバリーと戦った時も負けそうになったけど、ゼオンはバリーの時とは比べ物にならないぐらい絶望的な状況だわ…。ティオがああ言うにも無理はないわね…)」

 

ウルル「(パティ…、本当はお前だってガッシュが負けるのではないかと不安になってるのに、無理をしてガッシュの勝利を信じているのか…)」

 

リィエン「今は言い争っている場合じゃないある!私達も助けに行くある!」

 

コルル「でも、あの扉は私達がリオウと戦っている時に流れ弾が当たったけど、傷1つ付かなかったんだよ」

 

ウォンレイ「それでも、やるしかない!早くしないと、ガッシュが危ないんだ!」

 

ティオ「ガッシュ…」

 

 ゼオンの猛攻でピンチになっているガッシュが不安でしょうがないティオをリーヤはつついた。

 

ティオ「何?」

 

リーヤ「お前、ガッシュが好きか?」

 

ティオ「な、何よ、こんな時に」

 

リーヤ「好きなんだろ?」

 

ティオ「な、何なのよ!」

 

リーヤ「僕もガッシュが好きだ!」

 

パティ「あんた、同性愛に目覚めたとでもいうの!?」

 

 リーヤの言葉に激怒したパティはウルルとチェリッシュに取り押さえられた。

 

パティ「放しなさいよ!」

 

ウルル「パティ、リーヤの言ってるのは恋愛の好きじゃないんだ」

 

チェリッシュ「それをわかってあげるのよ」

 

リーヤ「あいつは凄い奴だ、やる奴だ。僕達がガッシュの力にならなくてどうする?」

 

ティオ「……うん!」

 

 リーヤの言葉でティオ達の不安はとりあえず払拭された。

 

アリシエ「みんな、このままだとガッシュはやられてしまう!回復を待っている場合じゃない、出せる限りの攻撃を扉に叩き込むんだ!」

 

ブラゴ「ならば、俺達が扉を破壊する。行くぞ、シェリー!」

 

シェリー「ええ」

 

???「みんな、凄い助っ人が来るよ!」

 

 声と共にサンビーム達がやってきた。

 

しおり「随分遅くなったわね」

 

フォルゴレ「色々と敵に遭遇してね」

 

チェリッシュ「レインはどうしたの?」

 

モモン「レインは助っ人に来たバリーやテッドと一緒に僕達を先に行かせた後、デゴスの群れと戦っているよ」

 

チェリッシュ「テッド…」

 

ニコル「それで、その助っ人は?」

 

エル「その助っ人はゴームなんです。今、ファウードの回復液を汲みに行ってますけど、汲み終わったらここにワープして来るそうです」

 

恵「よかったわね、ティオ。ゴームが味方になれば、ゴームのワープでガッシュ君と清麿君を助けられるわよ!」

 

ティオ「あんた達、いい仕事したじゃない!」

 

キャンチョメ「えへへ、ゴームが僕達の友達になってくれたら心強いだろう?」

 

ウォンレイ「あのゴームと友達になったのかい?」

 

キャンチョメ「そうだよ」

 

サンビーム「私達はゴームが来るまで、あとから来るバリー達のためにも扉を脆くしよう!行くぞ、サウザー!」

 

サウザー「準備はできてるぜ、オヤジ!」

 

サンビーム「ディオエムル・シュドルク!」

 

サウザー「ディオギコル・ギドルク!」

 

 ジェデュンを倒した時の要領でウマゴンとカルディオは扉を熱してから急激に冷やすを繰り返した。

 

 

 

ファウード コントロールルーム

 その頃、ガッシュはゼオンの猛攻でボロボロだった。

 

デュフォー「マーキュリー・ジケルドン!」

 

清麿「マーズ・ジケルドン!」

 

 色が青である事以外はマーズ・ジケルドンとそっくりなマーキュリー・ジケルドンとマーズ・ジケルドンがぶつかり、マーキュリー・ジケルドンが弾かれたが、すぐに磁石に引き寄せられるかのようにガッシュを追跡した。

 

清麿「マントで掻き消せ!」

 

 ガッシュはマントでマーキュリー・ジケルドンを掻き消した。しかし、既にゼオンが背後をとっていた。

 

デュフォー「マーキュリー・ジケルドン!」

 

 至近距離からのマーキュリー・ジケルドンは回避できず、ガッシュは青い球体に吸い込まれ、動いてもいないのにすさまじい電撃が流れた。

 

ガッシュ「ぐあああっ!!!」

 

ゼオン「このマーキュリー・ジケルドンはお前のマーズ・ジケルドンと違い、攻撃を弾く事はできないが、敵を吸い込むまで追い続け、吸い込まれた時点ですさまじい電撃が流れる。どうだ?気絶する事も許されない地獄の拷問の感想はどうだ?」

 

清麿「ガッシュ!!」

 

 地獄の拷問は続き、しばらくしてから術を解くと、ガッシュは倒れた。

 

 

 

ファウード コントロールルーム前

 ゼオンのマーキュリー・ジケルドンにチェリッシュは見覚えがあった。

 

ティオ「どうしたの?チェリッシュ」

 

チェリッシュ「あの術、私が受けたバルギルド・ザケルガという術に似た感じよ…。私はそのバルギルド・ザケルガで心を壊されて坊や達と初めて会った風になったの…」

 

コルル「じゃあ、ガッシュは…」

 

チェリッシュ「多分、心を壊されるかも知れないわ…」

 

ティオ「そんな…早く助けないといけないのに…!」

 

 

 

ファウード コントロールルーム

 ゼオンとガッシュの実力差は前の戦いの時と同様、かなり大きなものだった。

 

ゼオン「これでガッシュは俺に怯えるだろうな」

 

デュフォー「今までバルギルド・ザケルガやマーキュリー・ジケルドンを受けて怯えなかった奴はいなかったからな」

 

 そう言ってると、ガッシュは立ち上がろうとした。しかし、怯えた様子はなかった。

 

ゼオン「あの野郎、マーキュリー・ジケルドンを受けても怯えずに立ち上がったとはな」

 

ガッシュ「ウヌ……ゼオン、私は…優しい王様になるためにも…負けるわけには…いかぬ……!」

 

ゼオン「優しい王様だと?甘すぎて反吐が出る!そんな優しい王様で魔界を統治しても、クリアのような考えを持つバカをのさばらせてしまうだけだ!そんなバカをのさばらせないためにも、王たる者は非情になり、反逆者は徹底的に弾圧しなければならん!」

 

清麿「徹底的に弾圧したっていつかは反乱で滅ぼされるだけだ!」

 

ゼオン「だったら、その反乱も弾圧するまでだ!一気に最大呪文で勝負を決めるぞ。やれ、デュフォー!」

 

デュフォー「ジガディラス・ウル・ザケルガ!」

 

 全てを破壊する雷神が姿を現した。

 

清麿「ガッシュ、俺達も最大呪文で行くぞ!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

清麿「バオウ・ザケルガァ~~~ッ!!」

 

 そして、全てを食いつくす雷の龍も姿を現した。

 

ゼオン「バオウを出したか。さぁ、我が力の結晶、破壊の雷神、ジガディラスよ!バオウを打ち砕け!」

 

 チャージの後、ジガディラスはすさまじい電撃を放ったが、バオウは電撃を喰らいながら進んでいった。

 

清麿「バオウ、ゼオンの雷を食い尽くせ!!」

 

 バオウの勢いは凄まじく、どんどんジガディラスを押していた。

 

ゼオン「何っ!?真のバオウの威力がこんなものとは…!(それに…この違和感は何だ…?)」

 

 バオウの邪悪な力にゼオンは違和感を覚えていた。そして、ガッシュや父親の魔界王の言葉を思い出した。

 

ゼオン「(何だ…?この邪悪な力は…?まさか…ガッシュはこんな力を制御しているとでもいうのか…!?もし、父上が俺にバオウを継がせていたら俺は…)」

 

 そんな中、ゼオンに見覚えのない映像が映った。

 

ゼオン「(何だ?この記憶の映像は…。これは…俺のものではない…。もしかすると…ガッシュの…?)」

 

 今回の戦いではガッシュの記憶を奪っていないのにも関わらず、ゼオンはバオウとジガディラスのぶつかり合いの際にガッシュの過去の記憶の映像を見てしまった。

 

ゼオン「やめろぉ!こんなものを見せるな!ガッシュは憎むべき存在なんだ!バオウと一緒に消し去る相手だぁあっ!!」

 

 しかし、バオウはどんどんジガディラスを押していた。

 

デュフォー「!!あそこだ。あそこを狙え」

 

ゼオン「ジガディラス、あそこを撃ち抜け!」

 

 デュフォーの指示でゼオンはバオウの弱所を撃ち抜いたが、同時にジガディラスはバオウに噛み砕かれてしまい、結果は相殺に終わった。

 

ゼオン「俺の力の結晶が…力では負けていただと…?」

 

デュフォー「俺がバオウの弱所を見つけるのが少しでも遅れていたら俺達がやられていたな」

 

清麿「(威力の劣るジガディラスでバオウと相殺に持ち込むとは…)」

 

 バオウを撃ち終わった後、ガッシュは倒れた。

 

清麿「ガッシュ、どうしたんだ!?ガッシュ!」

 

ゼオン「ようやくくたばったか…。忌々しい上にしぶとい奴め…!」

 

 そんな中、大きく揺れた。

 

デュフォー「何だ?」

 

ゼオン「海溝を抜けたのさ。これでファウードは高速移動ができるようになる。日本に着くまで1時間。いや、50分だ。さぁ、ファウードよ、高速移動開始だ!高速移動開始5秒前、5、4、3、2、1、いけえっ!!」

 

 

 

ケルマディック海溝

 ファウードは高速移動を開始するのをマリルらは見ていた。

 

ナゾナゾ博士「いかん!ファウードは高速移動を始めたぞ!」

 

カラオム「我々もジェット機で追いましょう!」

 

マリル「そうじゃな!」

 

 マリルらもジェット機に乗り、ファウードを追いかけた。

 

 

 

ファウード コントロールルーム

 遂にファウードは高速移動を開始し、50分で日本に到着しようとしていた。

 

ゼオン「デュフォー、今度こそ奴等を仕留めるぞ」

 

デュフォー「ジガディラス・ウル・ザケルガ!」

 

 再びデュフォーはジガディラスを発動させた。

 

清麿「(何だと!?まだデュフォーはジガディラスを撃てるのか!?俺はさっきのバオウで心の力を使い果たしてしまったというのに…!)」

 

デュフォー「清麿、ガッシュが倒れ、心の力も残ってない状況じゃ、生き残るための答えなんて出せないだろう?」

 

 

 

ファウード コントロールルーム前

 ガッシュの敗北にティオ達は衝撃を受けていた。

 

パティ「嘘でしょ…?」

 

ティオ「ガッシュが……負けた…?」

 

コルル「ゼオンに勝てっこないよ…」

 

アリシエ「諦めてはいけない!今度は僕達がガッシュを助け、ガッシュが回復するまでゼオンと戦うんだ!そうしなければ、世界はファウードによって滅ぼされてしまう!」

 

恵「サンビームさん、サウザー君、まだ扉は脆くならないの!?このままだとガッシュ君と清麿君が!」

 

サンビーム「さっきからやってるのだが…」

 

サウザー「ちくしょう!こんなに頑丈だったなんてよ!」

 

 そんな中、空間に穴が開き、ゴームペアとパピプリオペアが姿を現した。

 

ミール「待たせたわね。私達も体内魔物の襲われたりして遅くなったけど、ちゃんとファウードの回復液は汲んで来たわ」

 

パピプリオ「俺も手伝ったぞ!」

 

フォルゴレ「来たばかりで済まないがゴーム、すぐに私達をコントロールルームまでワープさせてくれ!そうしないと、ガッシュが!」

 

ゴーム「ゴォ、ゴオ!」

 

 ゴームは嫌な素振りはせずにすぐに空間に穴を開けた。

 

フォルゴレ「一番手は恵とティオに任せるよ」

 

恵「私達に?」

 

フォルゴレ「君達が一番ガッシュと清麿を助けたいだろう?レディーファーストも兼ねて、君達から先に行かせよう」

 

恵「ありがとう、フォルゴレさん!」

 

ティオ「私達から先に行くわ!」

 

 ガッシュと清麿を守るため、ティオと恵を先に行かせ、残りのメンバーも後に続いた。

 

ミール「あんた達はここでお留守番してその子達を守るぴょん」

 

 パートナーを失ったエリー達の護衛とお留守番をパピプリオに任せ、最後にミールはゴームと共に空間の穴に入った。

 

パピプリオ「みんな…気を付けろよ…。ピンチになったら、俺も駆け付けるからな…」

 

 

 

ファウード コントロールルーム

 今にもジガディラスの最終チャージが終わろうとしていた。

 

ゼオン「ガッシュ、今度こそお前は終わりだ。この一撃で消し飛びやがれ!」

 

清麿「(もう…終わりなのか…?)」

 

 いくら考えても答えを求めてもどうにもならない状況に清麿の心が折れかかった時、空間に穴が開いて恵とティオが出てきた。

 

ティオ「ゼオン、これで終わりじゃないわ!」

 

恵「チャージル・セシルドン!!」

 

 ジガディラスが放たれた瞬間に恵はチャージル・セシルドンを発動させてジガディラスを防いだ。これまでヒビ一つ入らずにディオガ級の術を防ぎ続けたチャージル・セシルドンだが、前の戦いの時のようにゼオンのジガディラスを受けとめた時はヒビが入った。

 

ティオ「恵、心の力を全部使いきってでもガッシュと清麿を守るわよ!」

 

恵「2人を失うのに比べれば私の心の力を全部使い切る事ぐらい怖くないわ!」

 

 恵は心の力を込め続けた。恵達に続いて、キャンチョメペアとモモンペアが来た。

 

モモン「あの盾、何だか壊れそうだよ…」

 

ティオ「ジガディラスは私達が受け止めるから、その間にモモンとキャンチョメはジガディラスを消して!」

 

キャンチョメ「うん!」

 

ゼオン「そんな盾で俺のジガディラスを防げると思ったら」

 

エル「フェイ・ミウルク!」

 

 モモンはキャンチョメを抱えてゼオンペアの近くまで飛んだ。

 

ゼオン「これから何をする?」

 

フォルゴレ「フォウ・スプポルク!」

 

 キャンチョメの術でデュフォーは無意識に心の力を出すのを止められてしまい、ジガディラスは消えてしまった。

 

ゼオン「ジガディラスを消しただと!?」

 

デュフォー「(あの術はあの魔物の手から発せられる光と音を通して、俺の脳に心の力を出すのを止めるという命令を送ったのか…)」

 

エル「フェイ・ミウルク!」

 

 すぐにモモンはゼオンから離れた。そして、空間の穴から残りの仲間達が姿を現した。

 

ゼオン「お前らを招いた覚えはないぞ」

 

ミール「あ~ら、ゴームがいればこんな密室にも簡単に侵入できるのよ」

 

ゴーム「ゴォ!」

 

キャンチョメ「ふはははっ!鉄のフォルゴレと無敵のキャンチョメ様がいればお前なんか怖くないんだぞ!」

 

清麿「みんな!」

 

アリシエ「済まない。到着が遅れたばかりにガッシュが倒れてしまう状況になってしまって」

 

ウォンレイ「だが、私達が来たからにはもう安心だ!」

 

 ガッシュを守るために仲間達が集まったのであった。

 

 

 

ファウード 通路

 その頃、ファウードに入り込んだアシュロンはコントロールルームを目指していた。

 

リーン「ダンナ、こんな所では小回りの利くフェイウルクで我慢してくださいよ」

 

アシュロン「急ぎたい所だが、シン・フェイウルクは小回りが効かんから止むをえないか…!」

 

 体内魔物を退け、アシュロンはコントロールルームへ急ぐのだった。




これで今回の話は終わりです。
今回はガッシュとゼオンの戦いでしたが、今までの安心感を吹き飛ばしてしまうゼオンの圧倒的な強さとガッシュの敗北を描きました。
作者発言でゼオンはラウザルクとザグルゼムも使用可能なため、原作以上に容赦のない仕様になっています。マーキュリー・ジケルドンはガッシュがゼオンのソルド・ザケルガと似たような術を覚える可能性もあるなら、ゼオンもガッシュと似たような術を覚えても不思議ではないと考えたために思いついた術です。
次はガッシュの仲間達がゼオンに挑みますが、仲間のうち、誰か1人が脱落してしまいます。しかも、その際にゼオンは新しい術を覚えて更なる絶望が待ち受けています。


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LEVEL71 雷帝の猛威

ファウード コントロールルーム

 ティオ達はゼオンと対峙していた。

 

清麿「ありがとう、恵さん、ティオ」

 

恵「いつも清麿君に助けられてばかりだったから、やっと助ける事ができたわね」

 

ゼオン「ちっ、余計な連中まで来やがって…」

 

パティ「ゼオン、優しくてたくましいガッシュちゃんになんてことをしたのよ!」

 

チェリッシュ「坊やをこんなになるまで痛めつけたからには、倍以上にして返してあげるわよ!」

 

ゼオン「とことんおめでたい連中だぜ。なぜそうまでしてガッシュを庇う?」

 

コルル「ガッシュは…私達にかけがえのないものをくれたの!」

 

ティオ「誰も信じられなくなった私に救いの手を差し伸べてくれた…」

 

チェリッシュ「心を壊された私に再び強さを取り戻させてくれた…」

 

ウマゴン「メルメルメ!」

 

ウォンレイ「だから、今度は私達がガッシュを守る!」

 

ゼオン「お前らにとってガッシュがかけがえのないものをくれた存在だが、俺にとってはかけがえのないものを奪っていった忌まわしい存在なんだよ!」

 

パティ「さっきも映像や音声で見てたけど、たかが術を一つもらえなかったぐらいでガッシュちゃんを恨むあんたこそどうかしてるわよ!」

 

ゼオン「お前らはバオウを知らんようだな」

 

ウルル「バオウを知らない?」

 

キャンチョメ「どういう意味なんだい!?」

 

ゼオン「教えてやる。バオウ・ザケルガはな…俺とガッシュの父親が編み出した最強の術なんだよ!」

 

ブラゴ「(バオウはガッシュの術にしては色々と気になる所があったが、まさか父親から授けられた術だったとはな…)」

 

しおり「ガッシュ君とゼオンのお父さんが…、編み出した術…?」

 

ゼオン「父上はバオウを使って王となった。そんな術を父上は俺に授けず、ガッシュに授けた。だから、俺は自分の力を高めなければならず、厳しい英才教育を受けてようやく王を決める戦いに参加できたというのに、何の努力もせずにバオウを授かって王を決める戦いに参加したガッシュが腹立たしいんだよ!!」

 

コルル「ガッシュがバオウは危険な術だから、ガッシュのお父さんはゼオンに受け継がせなかった事がどうして信じられないの!?ガッシュはそんな嘘なんてつかないよ!」

 

ゼオン「やかましい!そんな根拠もない話が信じられるか!お前らもまとめて叩き潰す!」

 

サンビーム「私達はかなり強いぞ」

 

サウザー「お前なんかあっという間にやっつけてやるぜ!」

 

 意気込む中、ブラゴが前に出た。

 

ブラゴ「ゼオン、ガッシュは俺達の獲物だ。横取りするな!」

 

ゼオン「ほう、優勝候補と言われているお前が俺に挑むのか?」

 

ウォンレイ「ブラゴ、君だけでは危険すぎる!」

 

シェリー「相手が誰であれ、私達が倒す予定の赤い本の子を消そうなら、あなたから魔界送りにしてあげるわ!」

 

ゼオン「来てみろよ…」

 

ブラゴ「臨む所だ!」

 

シェリー「ギガノ・レイス!」

 

 しかし、ブラゴのギガノ・レイスをゼオンは片手で止めた。

 

シェリー「(ギガノ・レイスを片手で!?)」

 

デュフォー「ザケル」

 

ブラゴ「ぐあっ!!」

 

 驚きで動きが止まったブラゴをゼオンはザケルで吹っ飛ばした。

 

ブラゴ「この野郎が!」

 

 すぐにブラゴは突っ込もうとしたが、ゼオンは既に目の前に迫っていた。ゼオンの動きの速さはシェリーでもまともに反応できなかった。

 

シェリー「(何て速さなの!?赤い本の子のパートナーはこんな化け物の動きにしっかり反応できてたなんて…!)」

 

 ブラゴとゼオンは格闘戦に突入したが、ブラゴのパンチは簡単にゼオンに受け流された。

 

ゼオン「この程度、よそ見しててもかわせるぞ」

 

ブラゴ「このガキが…、俺を舐めるな!!」

 

 ブラゴはその後もパンチを繰り出し続けたがゼオンには当たらず、逆にゼオンのパンチは全てブラゴに当たった。そして、ブラゴを吹っ飛ばした後にブラゴの頭を踏みつけた。

 

シェリー「(そんな!ブルドーザーをも吹っ飛ばすブラゴのパンチを全て受け流したどころか、逆にパンチで吹っ飛ばすなんて!)」

 

ゼオン「ざまぁないな。ブラゴ、お前はそれでも8割の魔物から恐れられた優勝候補なのか?」

 

ブラゴ「(このガキが!俺を見下した目で見ながら踏みつけやがって……!!)」

 

 見下した態度で頭を踏みつけるゼオンにブラゴは怒り、立ち上がろうとした。

 

ゼオン「リオウよりは力はあるようだな」

 

ブラゴ「シェリー!」

 

シェリー「ディゴウ・グラビルク!」

 

 肉体強化の術を使ったものの、結果はガッシュのようにゼオンには全く歯が立たなかった。

 

ブラゴ「くそっ!肉体強化の術を使ってもあいつは術なしであの実力だと!?」

 

ゼオン「当たり前だ。ガッシュの時は腹が立ったからラウザルクを使ったが、本来はお前のような奴如きにラウザルクなどいらん」

 

 そのままゼオンはブラゴを殴り飛ばした。

 

ブラゴ「シェリー、こいつに力を惜しむな!全力で行け!」

 

シェリー「そう思っていた所よ!ディオガ・グラビドン!」

 

 ゼオンに向けてディオガ・グラビドンが放たれた。

 

デュフォー「ゼオン…。ザケルガ」

 

 デュフォーはゼオンに発射する方向を指示し、ザケルガを放った。ザケルガはディオガ・グラビドンを貫通した。

 

ブラゴ「バカな!中級呪文でディオガ級の呪文を貫通しただと!!」

 

デュフォー「(あいつら、頭が悪いな。俺達は術の威力だけで破ったのではない。ディオガ・グラビドンの弱所を見つけ、そこにザケルガを撃ち込んで貫通させたというのに)」

 

 ディオガ級の術が中級呪文に貫通された事にブラゴとシェリーは驚愕し、そのままブラゴはザケルガをまともに受けてしまった。

 

キャンチョメ「あのブラゴが手も足も出ないなんて…」

 

シェリー「ディボルド・ジー・グラビドン!」

 

 ディボルド・ジー・グラビドンもアンサー・トーカーのデュフォーがパートナーのゼオンには通じずにあっさり破られた。

 

シェリー「ならば、私達の最大呪文よ!ニューボルツ・マ・グラビレイ!!」

 

 ニューボルツ・マ・グラビレイを放ったが、デュフォーの指示ですぐにゼオンは重力場から離れた。

 

ゼオン「なかなかの威力の術だな。褒美に俺のディオガを見せてやろう」

 

デュフォー「ディオガ・アーロ・ザケルガ!」

 

 ゼオンが両手を向けると、凄まじい電撃が矢のような形になって放たれ、放つ際にデュフォーの指示でニューボルツ・マ・グラビレイの弱所を貫き、破った。

 

シェリー「私達の最大呪文が!」

 

ブラゴ「ぐあああっ!!」

 

 電撃の矢はブラゴに直撃し、凄まじいダメージを受けてブラゴは倒れた。

 

シェリー「ブラゴが…何もできずに負けた…?」

 

ティオ「あれが…ゼオンのディオガ…」

 

サンビーム「ゼオンの圧倒的な力にデュフォーのアンサー・トーカーによる的確な指示。全く隙のないコンビだ…」

 

ゼオン「デュフォー、ブラゴの本を燃やすぞ」

 

デュフォー「悪いな、ゼオン。さっきの術で心の力が切れた。バオウと相殺させるので予想以上に心の力を使った上、ガッシュに止めを刺そうとした時にもジガディラスを使ったから、あまり残っていなかったんだ。心の力を回復させるから、少し時間をくれ。それまでは素手とマントで何とかしろ」

 

ゼオン「ふん、奴等はデュフォーの心の力切れで命拾いしたな」

 

 デュフォーは心の力の回復に集中した。

 

清麿「どうやら、デュフォーは心の力が切れたようだ」

 

サンビーム「ならば、今がチャンスだ!恵とティオはガッシュの回復に専念してくれ!私達は今の内にゼオンを倒す!」

 

ティオ「ええ!」

 

恵「清麿君もボロボロだから、サイフォジオで傷を治すわよ!」

 

清麿「頼む!」

 

 清麿は倒れているガッシュをティオペアの元に連れていき、残りのメンバーはゼオンと対峙した。

 

シェリー「ブラゴも」

 

ブラゴ「自分で立てる…」

 

 ふらふらながらも、ブラゴは立ってから、柱まで歩き、柱に寄り添ってから座った。

 

ブラゴ「雷帝の力がこれほどのものだったとは…!」

 

シェリー「それだけじゃないわ、パートナーの実力でも私達は負けていた」

 

 キャンチョメ達はゼオンと対峙した。

 

ゼオン「お前ら、まさか俺に勝つつもりか?」

 

サウザー「ああ、そうだぜ」

 

サンビーム「みんなでガッシュの仇をとるぞ!」

 

ウマゴン「メルメルメ!」

 

ミール「これだけいればゼオンでもやっつけられるわ!」

 

チェリッシュ「今度は私達がゼオンをコテンパンに叩きのめしてやるわよ!」

 

ゼオン「なら、かかってこいよ…!」

 

リィエン「ウォンレイ、ゼオンは今までの魔物より強いから、一気に飛ばしていくある!」

 

ウォンレイ「おう!」

 

リィエン「ディオウ・バウルク!」

 

 ディオウ・バウルクで身体能力が大幅に強化されたウォンレイはゼオンに突っ込んでいった。

 

しおり「私達も行くわよ!」

 

コルル「うん!」

 

しおり「ギルゼドム・バルスルク!」

 

 コルルも禁呪で強化され、突っ込んでいった。ウォンレイはゼオンとの格闘戦では劣勢ではあったが、ガッシュやブラゴよりも善戦していた。

 

ゼオン「ほう、ガッシュやブラゴよりも格闘戦はやるじゃねえか」

 

ウォンレイ「私達は負けるわけにはいかない!」

 

 ウォンレイだけでなく、コルルもゼオンに格闘戦を挑んだ。

 

コルル「ガッシュは私達が守る!」

 

ゼオン「珍しいな、理性を失わない上にちゃんと敵味方の識別ができる禁呪があるとは」

 

アリシエ「ガルドルク・ニオルク」

 

 今度はリーヤが高速回転して突っ込んで来たが、ゼオンは片手で受け止めた。

 

ゼオン「この程度の攻撃で俺を倒せると思ったら大間違いだ!」

 

 そのままリーヤを柱に叩きつけようとしたが、銃弾が飛んできてゼオンの腕が弾かれた。

 

ゼオン「この銃弾は…チェリッシュか!」

 

 銃弾が飛んできた方向には、グラード・マ・コファルでゼオンに狙いを定めているチェリッシュペアがいた。

 

サンビーム「ディオエムル・シュドルク!」

 

サウザー「ディオギコル・ギドルク!」

 

 今度はウマゴンとカルディオがゼオンを襲った。

 

ウルル「オルダ・スオウ・ギアクル!」

 

ミール「ウィ~~・ム~~・ウォ~~・ジンガムル・ディオボロス!」

 

サンビーム「ウマゴン!」

 

サウザー「カルディオ!」

 

 次はパティとゴームの攻撃とウマゴンの炎とカルディオの冷気が来たが、ゼオンはマントで防いだ。

 

ゼオン「術が使えんとあいつらにここまで苦戦するとは…!」

 

キャンチョメ「ふはははっ、僕達の恐ろしさを思い知ったか!」

 

 声がした方をゼオンが向くと、そこにはシン・ポルクを発動させてカバのマークがある服装をしたキャンチョメがいた。

 

フォルゴレ「ゼオン、お前は恐ろしいライオンだが、私達はそれよりも強いカバさんなんだ!」

 

キャンチョメ「ライオンのお前はカバさんの僕達には勝てないんだぞ!」

 

 キャンチョメはカバの口がある触手を伸ばし、それを全てゼオンに向けた。

 

ゼオン「ふざけた事をぬかしやがって!」

 

 ゼオンは攻撃を仕掛ける事ができず、ウォンレイとコルルの攻撃と触手をかわし続けるしかなかった。そして、その背後にモモンがいる事も知らなかった。

 

モモン「僕を忘れていたようだね!」

 

エル「オラ・ノロジオ!」

 

 モモンに気付いていなかったゼオンはオラ・ノロジオを受けて動きが遅くなった。

 

ゼオン「しまった!」

 

ウォンレイ「今だ!」

 

 動きを遅くされたゼオンはウォンレイとコルルのパンチと、キャンチョメの触手のパンチを受け、吹っ飛ばされた。ティオと恵はサイフォジオでガッシュの傷を治していたが、ガッシュはかなりの傷を負っていたためにサイフォジオでは治せず、ギガノ・サイフォジオでもあまり治らなかった。

 

ティオ「いける…これならいけるわ!」

 

恵「清麿君、これならゼオンを倒せるかも知れないわよ!」

 

清麿「……いや、もう時間切れだ…。デュフォーの心の力は満タンになった…」

 

 吹っ飛ばされたゼオンは倒れておらず、平然とした様子だった。

 

パティ「あれだけ喰らっても平然としてるなんて!」

 

ゼオン「さっきのは少し効いたぞ。俺はお前らをガッシュのおまけだと侮っていたようだ。それと術が使えないから、こんな無様な姿をさらしている…。デュフォー、心の力の方はどうだ?」

 

デュフォー「フルに溜まった。ゼオンも術が使えないから歯がゆい思いをしただろ?」

 

ゼオン「ああ。一気にラウザルクでカタをつけるぞ」

 

 デュフォーが動き出した事に一同は衝撃が走った。

 

チェリッシュ「まさか、ゼオンのパートナーが心の力をもう溜め終わってしまうとはね…」

 

ニコル「大変な事になるわ…」

 

ゼオン「行くぞ…!」

 

デュフォー「まずはあの厄介なアヒルからやるぞ。ラウザルク!」

 

 ラウザルクでゼオンの身体能力が強化された後、デュフォーをマントに乗せて一気にキャンチョメまで近づいた。

 

キャンチョメ「えっ?」

 

ゼオン「アヒル、俺はライオンじゃない。ライオンはおろか、カバさえ食う恐竜だ」

 

 急にゼオンに近づかれたキャンチョメは反応する間もなく、パンチ1発で吹っ飛ばされた。

 

キャンチョメ「ぐあああっ!」

 

フォルゴレ「キャンチョメ!」

 

 続いてフォルゴレもゼオンに腹パンされて吹っ飛ばされた。

 

フォルゴレ「(何だ…?このパンチの威力は…。今まで受けた攻撃とは比べ物にならん…!鉄のフォルゴレを歌っても立てそうにない…!)」

 

デュフォー「お前達のシン・ポルクという視覚、聴覚、触覚から脳へ命令を送り込み、精神を攻撃する術は最大限に力を発揮するには、どうしてもイメージが必要になる。イメージする前に攻撃されたらひとたまりもないだろう?」

 

リィエン「動きが全く見えなかったある…」

 

 次の攻撃対象はウォンレイとコルルになった。ウォンレイとコルルはゼオンのパンチとキック数発で吹っ飛ばされてパートナーとぶつかった。

 

ウォンレイ「ぐあああっ!!」

 

リィエン「あああっ!!」

 

コルル「がああっ!!」

 

しおり「きゃああっ!!」

 

ティオ「コルル、ウォンレイ!」

 

チェリッシュ「(何て速さなの!?早く狙撃しないと…!)」

 

 スコープを覗くチェリッシュだが、もうゼオンはその場にはいなかった。

 

チェリッシュ「まさか…」

 

 チェリッシュとニコルの嫌な予感は的中し、ゼオンはもう目の前にいた。そして、ゼオンはチェリッシュペアを蹴り飛ばして柱に叩き付けた。

 

チェリッシュ「きゃあっ!」

 

パティ「チェリッシュ!」

 

ゼオン「他人の心配をしている場合か!?」

 

 今度はパティとゴームを吹っ飛ばし、ウマゴンとカルディオもラリアットでダウンさせた。

 

パティ「きゃああっ!」

 

ゴーム「ゴオオッ!!」

 

ウマゴン「メルァ~~ッ!」

 

カルディオ「パルァ~~ッ!」

 

モモン「そんな…」

 

エル「フェイ・ミウルク!」

 

 モモンはリーヤを抱えて距離を取ろうとしたが、すぐにゼオンに追いつかれた。

 

ゼオン「俺から逃げられると思うなよ、猿が!」

 

 そのままモモンはリーヤと共にゼオンに殴られ、エルとアリシエの方へ吹っ飛ばされた。

 

モモン「うわああっ!」

 

リーヤ「ぐあああっ!」

 

ティオ「そんな……」

 

恵「1分でみんなゼオンに倒されるなんて……」

 

 ゼオンのラウザルクの持続時間の1分が過ぎる頃には、ティオ以外の魔物は全員ラウザルクがかかったゼオンの攻撃でダウンした。

 

ゼオン「全く、どいつもこいつも手間とらせやがって…!」

 

ウマゴン「メル…」

 

 ふらふらながらもウマゴンは立ち上がった。

 

サンビーム「こうなればウマゴン、奥の手を使うぞ!」

 

ウマゴン「メル!」

 

サンビーム「シン・シュドルク!」

 

 前の戦いでも到達したウマゴンのシンが発動した。

 

ゼオン「ほう、そこの馬もシンを習得したのか」

 

サウザー「ずりぃぞ、オヤジ!こんな術を隠し持っていたなんて!」

 

サンビーム「切り札は最後までとっておくものだ。それに、今のウマゴンのスピードはかなり速いぞ!ウマゴン!」

 

ウマゴン「メル!」

 

 音速を超えたスピードの突撃にゼオンはまともに反応できずに吹っ飛ばされた。

 

ゼオン「ぐあっ!」

 

サンビーム「(この術はウマゴンの負担が大きい。すぐに決着を着けてくれ…!)」

 

デュフォー「ゼオン、あの手を使うぞ」

 

ゼオン「ああ」

 

デュフォー「ザグルゼム!ザグルゼム!ザグルゼム!ザグルゼム!」

 

 音速の攻撃に晒されながらもゼオンはザグルゼムを自分に4発当てた。

 

恵「自分にザグルゼムを当てて何をする気なの?」

 

デュフォー「ラウザルク!」

 

 自分の体に撃ち込んだザグルゼムとラウザルクの連鎖反応により、ゼオンの身体能力が更に爆発的に跳ね上がった。そして、突撃を仕掛けたウマゴンを軽々と受けとめた。

 

サンビーム「ウマゴンを受けとめた?」

 

ゼオン「ふん、こうされては自慢のスピードは何の役にも立たんだろう?それに…シン級の術があれば俺に勝てると思ったら大間違いだ!!」

 

 ゼオンのパンチでウマゴンの鎧は砕かれ、ウマゴンは吹っ飛ばされた。

 

ウマゴン「メルァッ!!」

 

サンビーム「ウマゴン!」

 

 ゼオンの攻撃とシン・シュドルクの反動でウマゴンは動けなくなった。

 

デュフォー「残るは、ジガディラスを防いだ盾の女だけだ」

 

 不気味に近づくゼオンとデュフォーにティオと恵は身構えた。

 

ティオ「(怖い…。今まで見た魔物よりゼオンは怖い…。だけど…、ガッシュを守らなきゃ…!)」

 

ゼオン「ガッシュ、俺はお前の事が憎いが、せめてもの俺の情けだ。パートナーや女2人諸共、一緒に地獄へ送ってやるとしよう」

 

???「ゼオン、絶対に最後の希望を消させはしないぞ!」

 

 声がした方には、アリシエとリーヤがいた。

 

ゼオン「まだくたばってなかったか」

 

アリシエ「当たり前だ!僕達は守るべきもののために命をかけて戦う!」

 

リーヤ「それが戦人なんだ!」

 

 アリシエはリーヤと共に突っ込んで来た。

 

ゼオン「パートナーが自ら魔物と一緒に突っ込んでくるとはな」

 

デュフォー「頭が悪いとしか言いようがないな。ガンレイズ・ザケル」

 

 ガンレイズ・ザケルを受けながらも、アリシエはリーヤと共に近づいてゼオンと組み合おうとした。

 

清麿「よせ、アリシエ!ゼオンと組み合うのは危険すぎる!」

 

アリシエ「ゼオン!」

 

ゼオン「バカめ、ザルチムぐらいならともかく、この俺とやりあおうなんざ、身の程知らずにも程があるぞ!」

 

 しかし、ザルチムの時と違ってアリシエは簡単にゼオンに殴り飛ばされてしまった。

 

デュフォー「お前、死を恐れていないようだな。まるで、いつ死んでもいいと考えている俺と同じだ」

 

アリシエ「デュフォー、僕とお前は違うぞ!」

 

 立ち上がりながら、アリシエはデュフォーの目を見ていた。

 

アリシエ「お前は生きるための執着心も、守るべきものもなく、ただ、いつ死んでもいいと思っているだけだ!だけど僕は違う!僕が命を捨てる時は、村のみんななどの守りたいもののために戦う時だ!決していつ死んでもいいなどと思ってはいない!!」

 

デュフォー「(何だ…?この感じは…?)」

 

 戦人と化したアリシエの姿にデュフォーは思わず怯んでしまった。

 

リーヤ「僕はガッシュが大好きなんだ!ガッシュを消そうとするお前達は許さないぞ!」

 

アリシエ「僕達の渾身の一撃を受けてみろ!シャオウ・ニオドルク!」

 

 今までシャオウ・ニオドルクを放つ時よりも本の輝きが大きくなり、その姿もより大きなものとなった。

 

デュフォー「テオザケル」

 

 テオザケルとシャオウ・ニオドルクがぶつかったが、シャオウ・ニオドルクが押していた。

 

ゼオン「俺のテオザケルを押しているだと!?あの術になぜこれほどの力が?」

 

アリシエ「人は心から守りたいもののためなら、いつもの限界を超えた力を出す事ができるんだ!それは心の力とて例外ではない!!」

 

 いつもの限界以上の力を出すアリシエの気迫にデュフォーは怯んでしまった。

 

ゼオン「何をしている、デュフォー!この程度の術はお前が少し力を入れれば押し返せるはずだ!」

 

デュフォー「…あ、ああ」

 

 デュフォーがテオザケルに込める心の力を増やした途端、テオザケルがシャオウ・ニオドルクを押し返した。

 

リーヤ「そんな、うわああっ!!」

 

アリシエ「ぐあああっ!!」

 

 そのままアリシエとリーヤはテオザケルを受けて吹っ飛ばされた。その際にリーヤの本に引火してしまった。

 

清麿「アリシエ!」

 

恵「リーヤ!」

 

 清麿と恵はアリシエとリーヤに駆け寄った。

 

清麿「アリシエ、しっかりしろ、アリシエ!」

 

リーヤ「清麿、アリシエは?」

 

清麿「意識はないが、まだ生きている」

 

リーヤ「よかった…。ごめんよ、アリシエ、みんな。僕はここまでだ。ガッシュを守らなきゃいけないのに…」

 

恵「もういいのよ。あなたはよく頑張ったわ…」

 

リーヤ「清麿、ガッシュはやる奴だ。何としてもガッシュと一緒にゼオンに絶対に勝つんだ。もうゼオンに勝てるのはガッシュしかいないから…!」

 

清麿「わかった。必ずゼオンを倒して、世界を救ってみせる!」

 

リーヤ「みんなも、ガッシュを守るんだぞ!」

 

 そう言って、リーヤは魔界に送還された。

 

ティオ「リーヤ!」

 

 

 

 

ファウード コントロールルーム前

 キャンチョメ達の危機にパピプリオはギガノ・ジョボイドで扉を壊そうとした。

 

パピプリオ「待ってろよ、キャンチョメ…。俺が助けに行くからな…!」

 

 ギガノ・ジョボイドを長く扉に当てたが、扉の一部が溶け、ヒビが入った所でルーパーの心の力が切れてしまった。

 

パピプリオ「長く出してようやく扉が少し溶けてヒビも入っただけなのかよ…」

 

ルーパー「もうどうにもならないわよ…」

 

パピプリオ「あ~、これじゃあ友達を助けに行けないじゃねえか!俺の力はここまでしかないのかよ~~!」

 

???「いや、お前は持てる限りの力でよくやったじゃねえか」

 

パピプリオ「えっ?」

 

 声の主をパピプリオが見ると、その声の主はアシュロンだった。

 

 

 

ファウード コントロールルーム

 どこまでもガッシュの仲間達が邪魔をする事にゼオンは苛立っていた。

 

ゼオン「ガッシュを消そうとしたらどいつもこいつも邪魔ばかりしやがって…!」

 

 苛立つゼオンだが、そんな時にゼオンの本が光った。

 

ゼオン「何だ?」

 

デュフォー「新しい呪文だ」

 

清麿「(この状況でゼオンに新しい呪文だと!?)」

 

ゼオン「名は?」

 

デュフォー「シン・ジガディラス・ウル・ザケルガだ」

 

清麿「(ゼオンのシンだと!?)」

 

恵「(ジガディラス・ウル・ザケルガでさえ全力でないと防げないのに、それを上回る攻撃が来たら…!)」

 

ゼオン「残念だったな。まだ威力は試していないが、新しく習得した俺のシンの前ではお前の盾など、一瞬で木っ端微塵に粉砕できる!それでも俺の攻撃を防ぐつもりなのか?」

 

 ゼオンのシンという新たな絶望をティオは突きつけられてしまった。

 

ティオ「……恵、行くわよ…」

 

恵「ティオ…」

 

 ティオの覚悟を知った恵は前に出た。

 

清麿「恵さんもティオも危険すぎる!ゼオンのシンは威力がまだ未知数なんだ!」

 

ティオ「それでも、私は命をかけてガッシュを守る!」

 

恵「清麿君、私はあなたと会う事ができて…、愛し合う事ができて本当によかった…。私の大好きな清麿君とガッシュ君は私とティオが守るわ。たとえ、死ぬ事になっても!」

 

ゼオン「どうやら、その身を犠牲にしてでもガッシュを守る気だな。ちょうどいい、今からお前達を消してやろう!」

 

デュフォー「シン・ジガ…」

 

 シン・ジガディラス・ウル・ザケルガを放とうとした途端、扉が壊れた。

 

ティオ「何!?」

 

ゼオン「扉が壊れただと!?」

 

清麿「あいつは…!」

 

 その扉を壊した魔物こそ、アシュロンであった。

 

清麿「アシュロン、やっぱり来てくれたのか!」

 

恵「あのドラゴンは味方なの?」

 

清麿「ああ、そうだ!しかも、アシュロンは竜族の神童と言われるほどの強力な魔物だ!」

 

アシュロン「そこの魔物は回復の術は使えるのか?」

 

ティオ「そうだけど…」

 

リーン「急いでお嬢ちゃんはガッシュを回復させるんだ。その間、俺らはゼオンと戦う」

 

 清麿とティオペアはガッシュの元へ駆け寄った。

 

ゼオン「久しぶりだな、アシュロン。まさか、お前がファウードに来るとは」

 

アシュロン「王になったら魔界に苛烈な圧政を敷く上、ファウードで人間界を破壊しようとするお前を見過ごしておけるか!」

 

ゼオン「その甘い考えも相変わらずだな。反吐が出る」

 

アシュロン「言っておくがゼオン、以前の俺だと思ったら大間違いだからな…!」

 

ゼオン「御託はいいから、さっさとかかってこいよ…!」

 

 竜族の神童、アシュロンが遂にコントロールルームに到着した。今、雷帝と竜族の神童がぶつかり合おうとしていた。

 




これで今回の話は終わりです。
今回はガッシュの仲間達とゼオンの戦いでしたが、ガッシュを回復させているティオ以外は全員ゼオンによってダウンし、リーヤが魔界送りになってしまうという流れになっています。
ゼオンとブラゴの戦いは原作の初期クリアとブラゴの戦いを参考にし、ゼオンペアにしかできない事を加えた上で描きました。
ゼオンがザケルガでブラゴのディオガ・グラビドンを破る描写は原作のデュフォーの指示ありでゼオンがザケルでガッシュのテオザケルを少し突き破った描写を参考にし、ゼオンのザケルガはデュフォーの指示があればディオガ級の術を貫通できるのではと思ったためです。
ゼオンがザグルゼムとラウザルクでウマゴンのシンを破ったのは、あるガッシュの二次小説にザグルゼムでラウザルクを強化するというのがあったため、それをこっちでも取り入れました。
次の話はゼオンとアシュロンの戦いです。


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LEVEL72 神童vs雷帝

ファウード 通路

 まだバリー、レイン、テッドはデゴスの群れと戦っていた。

テッド「くそっ、こんなに多かったら大変だぜ!」

 

レイン「だが、数もだいぶ減ってきた」

 

バリー「テッド、もう後は俺達で片付くから、お前は先に行ってチェリッシュに会いに行け!」

 

テッド「だけどよ…」

 

バリー「キャンチョメ達が向かった先からとてつもなくでかい力を感じる!その力を持つ魔物にチェリッシュが魔界送りにされる前に行け!」

 

テッド「…わかった。行ってくるぜ。ジード!」

 

ジード「ああ、任せろ!」

 

 テッドはジードと共にバイクに乗り、ジードはバイクを走らせた。

 

 

 

ファウード コントロールルーム

 ゼオンとアシュロンは睨み合っていた。その光景を清麿とティオペア、ゼオンの攻撃を受けて倒れていたパティとコルル、ウォンレイは意識が戻って見ていた。

 

パティ「あのドラゴンは何なの…?」

 

ウルル「どうやら、味方のようです」

 

 先に動いたのはゼオンの方だった。

 

デュフォー「テオザケル」

 

リーン「テオブロア!」

 

 テオザケルとテオブロアがぶつかり、相殺された。

 

サンビーム「ゼオンの攻撃が相殺された?」

 

サウザー「よくわからねえが、あいつはかなり強いみたいだぞ!」

 

デュフォー「テオザケル」

 

 テオザケルが放たれたが、アシュロンはそのまま突っ込んでいったのにも関わらず、無傷だった。

 

アシュロン「ゼオン、この程度の術を使うとは何様のつもりだ?」

 

ゼオン「やはり、お前を叩き潰すのは手間がかかるな。その頑丈な鱗のせいで」

 

 拳を叩き込もうとするアシュロンに対応する形でゼオンも拳を向け、2人の拳はぶつかり合った。

 

アシュロン「うおおおおっ!!」

 

ゼオン「はあああっ!!」

 

 アシュロンは格闘戦でもゼオン相手に一歩も退かなかった。それどころか、パワーではゼオンより上のようだった。

 

ゼオン「とんでもないパワーも相変わらずだな」

 

ブラゴ「竜族の神童アシュロン…、伝説の朱色の鱗を持って生まれた竜」

 

シェリー「あいつを知ってるの?ブラゴ」

 

ブラゴ「目を離すなよ、シェリー。こいつらの戦いを…しっかりと見ておけ…」

 

リーン「ディオガ・ブロア!」

 

デュフォー「ジャウロ・ザケルガ!」

 

 ディオガ・ブロアとジャウロ・ザケルガがぶつかって相殺された。

 

リーン「テイル・ディスグルグ!」

 

アシュロン「バラけろ!」

 

 尻尾を強化した上、分離させてゼオン目掛けて伸ばした。

 

デュフォー「バック、右斜め上、左、ジャンプ!」

 

 アシュロンの尻尾が向かってくる順番や方向などの答えを出し、デュフォーはゼオンのマントに乗ったままで避ける指示を出した。

 

リーン「ディガル・クロウ!」

 

 尻尾を戻した後、今度はアシュロンの腕力を向上させたが、難なくデュフォーの指示でゼオンはかわした。

 

リーン「ディオガ・アムギルク!」

 

デュフォー「ソルド・ザケルガ!」

 

 ゼオンの剣とアシュロンの腕に装備された刃物がぶつかり合った。激しいぶつかり合いの後、互いに距離をとった。

 

ゼオン「アシュロン、お前のパートナーはアンサー・トーカーでない癖によく俺とデュフォーのコンビネーションに食いつけるな」

 

リーン「ダンナ、あのデュフォーの予知能力染みた力が厄介ですね」

 

アシュロン「だが、あいつの力は本当に予知能力なのか?あの時もそうだったが、予知能力にしては不自然な部分も多いぞ」

 

ゼオン「その通り、デュフォーは予知能力を持っていない。だが、それにも勝る力を持っているぞ」

 

デュフォー「ガンレイズ・ザケル」

 

 ガンレイズ・ザケルの中をアシュロンは突っ込んでいった。

 

アシュロン「こんな術では通じんぞ!」

 

 そのままゼオンにパンチを打ち込もうとしたが、既にゼオンは狙いを定めていた。

 

デュフォー「ザケルガ」

 

 ゼオンはアシュロンの脇腹の部分にザケルガを当てた。さっきまではゼオンの攻撃をものともしなかったアシュロンが少し痛そうな顔をしたのを離れた所で見ていた清麿は見逃さなかった。

 

アシュロン「だから、そんな術は効かんと言っているだろ!」

 

 再びアシュロンはゼオンにパンチを打ち込もうとしたが、またしてもかわされた。

 

デュフォー「ザケルガ、ザケルガ、ザケルガ」

 

 またゼオンはさっき攻撃した箇所に連続でザケルガを撃ち込んだ。この攻撃の意図は清麿にはわかったが、恵とティオにはわからなかった。

 

恵「凄いわ!アシュロンにはゼオンの攻撃が全く効いてない!」

 

ティオ「テオブロアもゼオンのテオザケルと互角だったし、ゼオンの攻撃は効いてないし、アシュロンが有利よ!」

 

清麿「……いや、逆だ。アシュロンの方が不利だ」

 

ティオ「どういう事?どう見たってアシュロンが優勢じゃない!」

 

清麿「アシュロンの鱗はとても頑丈だ。だからこそ、ゼオンは力技でいきなり破らずにデュフォーの指示でアシュロンの鱗の弱い部分を集中的に攻撃してダメージを少しずつ与え、動きが鈍くなった所で一気にザグルゼムや大技を決めるつもりだ!」

 

恵「じゃあ、アシュロンはやせ我慢して…」

 

 その通り、アシュロンは鱗の弱い部分を攻撃されてダメージが少しずつだが、蓄積されていた。

 

リーン「(やはりそうだ。デュフォーは予知能力者ではない。きっと、どうすれば攻撃をかわせるのか、ダンナの体のどこを攻撃すれば効率的にダメージを与えられるのかがわかるんだ!)」

 

 ダメージの蓄積が現れ始めたのか、アシュロンの動きのキレが少し悪くなった。

 

ゼオン「やはり、頑丈な鱗に覆われているお前でも鱗の弱い部分を攻撃され続けたらダメージを受けるよな」

 

アシュロン「それがどうした!」

 

リーン「ディガル・クロウ!」

 

 腕力を強化し、ゼオンにパンチを打ち込もうとした。

 

デュフォー「ラウザルク!」

 

 ゼオンもラウザルクで身体能力を強化し、ディガル・クロウでの強化込みのアシュロンのパンチを片手で止めた。

 

ゼオン「アシュロン、俺はその場に本がなかったから仕留められなかった魔物を除けば、これまで2体魔物を仕留めそこなった。1体目がチェリッシュ、そして2体目がお前だ。俺はクリアのような下らんセンチメンタリズムは持っていない。あの時は逃げられたが、今度こそお前を消す!」

 

 そのままゼオンはアシュロンを投げ飛ばした。

 

コルル「あのドラゴンを振り回せるなんて!」

 

しおり「小さいのに何て馬鹿力の持ち主なの!?」

 

ゼオン「この俺の動きを見切れるか?アシュロン!」

 

 ラウザルクでゼオンの動きは更に速くなったため、アシュロンでも捉えきれずに次々とゼオンの攻撃を受けた。

 

リーン「(あの時と同じ状況になってしまった…。ダンナ、1分持ち堪えてくれ…!)」

 

 何とかゼオンの猛攻をアシュロンは1分持ち堪えて、ゼオンのラウザルクの持続時間が切れた。

 

デュフォー「ジャウロ・ザケルガ!」

 

リーン「(前の戦いの時にもした回避不能の攻撃だ!)ダンナ、一点集中を避けてください!」

 

 アシュロンは自らジャウロ・ザケルガに突っ込んでいき、一点に集中しないように受けて全弾防御した。

 

ゼオン「ほう、一点集中しないように全弾防ぐとはな」

 

デュフォー「ディオガ・アーロ・ザケルガ!」

 

リーン「(ダンナにザグルゼム込みであの傷をつけたのと同じ術!)ディシルド・ドラゴルク!」

 

 電撃の矢をディシルド・ドラゴルクで防御した。

 

ゼオン「俺のディオガを防いだ?」

 

アシュロン「はっ、あの時とは違う!だからこそ戦いを挑んだのだ!」

 

ゼオン「だからと言って、俺に勝てると思ったら大間違いだ!」

 

 すぐにゼオンはアシュロンに接近した。

 

リーン「(この手の動きから逃げられない!)」

 

デュフォー「ザグルゼム」

 

 ゼオンはザグルゼムをアシュロンに当てた。

 

リーン「(まずい!あれを受けてから強烈な一撃を受けたら…)ガンズ・ブロア!」

 

 アシュロンは連続でエネルギー弾を放ったため、ゼオンはバックした。

 

ゼオン「その術で俺達から距離をとるつもりだろうが、その程度の術は起点にしてやる!」

 

デュフォー「ザグルゼム」

 

 バックしつつ、ゼオンはザグルゼムを自分に向けて飛んでくる1発に向けて放った。ガッシュのザグルゼムは赤かったが、ゼオンのザグルゼムは青だった。

 

デュフォー「ディオガ・アーロ・ザケルガ!」

 

 ゼオンはザグルゼムが当たった1発目掛けてディオガ・アーロ・ザケルガを放った。

 

アシュロン「どこを狙っている」

 

デュフォー「(あいつ、頭が悪いな。ザグルゼムのもう一つの力を知らんとは…)」

 

 ザグルゼムがぶつかったガンズ・ブロアの1発に電撃の矢が命中すると、進む向きが変わってアシュロンの方へと進んでいった。

 

アシュロン「向きが変わった!?」

 

ゼオン「バカめ、お前は以前、ザグルゼムを受けたから後で放つ電撃の威力を上げる術だと思っているようだが、電撃誘導の力もある事は全く知らなかったようだな」

 

清麿「(ゼオンはガッシュと違って術を放っても気絶しない上、手から出す事ができる。動きながらザグルゼムを撃ち込む事ができるとは…。ガッシュ以上にザグルゼムを使いこなしている!)」

 

リーン「ディシルド・ドラゴルク!」

 

 ディオガ・アーロ・ザケルガの向きが変わってからすぐにリーンはディシルド・ドラゴルクを発動させたが、ザグルゼムで威力が上がっているディオガ・アーロ・ザケルガは盾を破壊し、そのままアシュロンに直撃した。

 

リーン「お、おい…」

 

アシュロン「ぐっ!!」

 

 アシュロンはディオガ・アーロ・ザケルガをまともに受けてしまった他、ザグルゼムの連鎖反応も組み合わさって電撃の矢を受けた箇所の鱗が焼け焦げた上、ヒビが入った。

 

ゼオン「(あの盾のせいで威力が落ちたか…)どうだ?俺のディオガをまた受けた感想は。だが、まだ終わらんぞ!」

 

デュフォー「レード・ディラス・ザケルガ!」

 

 休む間もなく、今度は雷のヨーヨーが現れた。

 

リーン「ダンナ、あの術は俺も初めて見ますぜ!」

 

アシュロン「あれは歯車か!?ノコギリか!?」

 

デュフォー「(ヨーヨーだ)」

 

リーン「ディオガ・アムギルク!」

 

 ディオガ・アムギルクでレード・ディラス・ザケルガを弾いた。

 

ゼオン「そんな術で粘れると思っているのか!?」

 

 アシュロンはディオガ・アムギルクでレード・ディラス・ザケルガを弾き続けたものの、やがてデュフォーの指示でゼオンが操作しているヨーヨーの動きに追いつけなくなっていき、ディオガ・アムギルクが破壊された後、鱗にヒビが入り、焼け焦げている所へ容赦なく雷のヨーヨーが直撃した、鱗にヒビが入った箇所に雷のヨーヨーが直撃した事で、それまでゼオンの術が効かなかったアシュロンの鱗はバラバラになり、アシュロンは大きな切り傷を負って出血した。

 

アシュロン「おお…うおぉおおっ!!」

 

ティオ「アシュロン!」

 

恵「何て強さなの…。今までゼオンの攻撃を防いでいたアシュロンの鱗を破るなんて…」

 

清麿「(ゼオンがあんなにアシュロンを追い詰める事ができるのはゼオンの強さだけじゃない。デュフォーの指示があってこそだ…)」

 

ウォンレイ「まさか、あのドラゴンでさえゼオンに及ばないとは…」

 

 鱗の弱い所を攻撃され続け、ディオガ・アーロ・ザケルガ、レード・ディラス・ザケルガを受けてアシュロンはボロボロになったため、戦いの流れは完全にゼオンのペースとなった。

 

ゼオン「どうした?これでもお前は大人でさえ手におえない竜族の神童なのか!?」

 

 そのままアシュロンはゼオンに蹴り飛ばされ続けた。

 

ゼオン「これでアシュロンはまともに戦う事さえできんな。今度こそガッシュを仕留めてやる…!」

 

 ゼオンは倒れているガッシュの始末を優先する事にした。

 

アシュロン「ここで終わるわけにはいかない…!」

 

リーン「ガンズ・ブロア!」

 

 アシュロンは立ち上がり、ゼオンに向けてガンズ・ブロアを放った。

 

ゼオン「しぶとい野郎だ…!」

 

アシュロン「言ったはずだ…。お前は俺が倒すと…!」

 

 ゼオンはガンズ・ブロアをマントで防いだ。

 

リーン「ダンナ、もう奴に勝つ手段は…」

 

アシュロン「ああ、シン・フェイウルクを使う」

 

ゼオン「おい、お前はシンが使えるようになったのか?それなのに、使ってこないとはな」

 

アシュロン「今からお前を倒すために使うぞ!」

 

リーン「テオブロア!」

 

 アシュロンはテオブロアを放ったが、ゼオンはデュフォーをマントに乗せたままジャンプした。

 

アシュロン「今から俺のシンを味あわせてやる!」

 

リーン「(宙に浮いていれば奴はろくな動きができない、今だ!)シン・フェイウルク!」

 

 

 

回想

 アシュロンは今までの事を思い出していた。

 

アシュロン「どうだ?これが俺の本当の姿だ。信じたか?魔物の存在とその王を決める戦いを」

 

リーン「へぇ…へへへ…、こいつは驚きですな…」

 

 リーンはアシュロンに立ち向かったが、結局、ボコボコにされた。

 

リーン「あっしはほら、『何もない』奴でね…、こういうスリルさえあればこう…ドキドキと生きてる感じがもらえるんで…」

 

アシュロン「そうか…それでも一緒に戦ってくれて嬉しい。俺には魔界の王となり、みんなを幸せにするという夢がある」

 

 その後、クリアと会ったアシュロンはクリアの行方を追っていたが、その最中に出会ったのはゼオンとデュフォーだった。

 

ゼオン「アシュロン、お探しのクリアなら、俺が始末した」

 

アシュロン「お前は…、雷帝ゼオン!」

 

 ゼオンとの戦いの最中、アシュロンはゼオンと目指す理想の魔界についてお互いの信念をぶつけ合っていた。

 

ゼオン「差別のないみんなが仲良く暮らせる魔界だと?そんな夢が実現できるわけねえだろ!種族や価値観が違うからこそ、差別が生まれる。才能の差があるからこそ、天才は落ちこぼれを見下し、落ちこぼれは天才を恨み、妬む。そしてそれらが肥大化した先にあるのが争いだ。争いやクリアみたいなバカがもたらす悲劇を避けるためには、そういった奴等を徹底的に弾圧しなければならん!」

 

アシュロン「そんな事を続けてもいずれは反乱で滅びるだけだ!違う種族が手を取り合い、困難に立ち向かわなければ争いはなくならないぞ!」

 

 結局、ゼオンに勝てず、アシュロンは退かなければならなかった。

 

リーン「ダンナはゼオンを倒すつもりですかい?」

 

アシュロン「そうだ。ゼオンがこのまま王になれば、奴は苛烈な圧政を敷くだろう。そうすれば、魔界はあちこちで反乱が勃発して大混乱に陥る。そのような事態を回避するためにも、何としてもゼオンを倒さなければならん!」

 

 

 

 音速を超えた速度でアシュロンは突撃をかけたが、アシュロンが突撃をかける前にデュフォーは呪文を口にした。

 

デュフォー「シン・ジガディラス・ウル・ザケルガ!」

 

 音速以上の速度で飛ぶアシュロンは角を突き出し、その角は何かを貫いた。

 

アシュロン「やったか!?」

 

リーン「!?ダンナ、ダンナが貫いたのはゼオンじゃない!」

 

 リーンの言葉に嫌な予感がしたアシュロンがその貫いたものを見ると、それはゼオンではなく、何かの手だった。もう片方の手にゼオンとデュフォーは乗っていた。

 

ティオ「あれが…ゼオンのシン…?」

 

清麿「(あれはジガディラス?だが、さっきのジガディラスと比べたら、二回り以上もでかい上に手まである!)」

 

ゼオン「これが進化した新たなる破壊の雷神の姿だ」

 

 そのまま雷神の手はアシュロンを掴んだ。

 

アシュロン「何だ!?振りほどけない!」

 

デュフォー「当然だ。この手はお前のパワーで振りほどく事はできん」

 

サウザー「あの手は飾りじゃないのかよ!」

 

サンビーム「さっき、ドラゴンの高速体当たりを防いだんだ。恐らく、シン・ジガディラス・ウル・ザケルガはあの手による防御なども可能な攻防一体のかなり強力な術だろう…!」

 

恵「清麿君、あのままだとアシュロンは…」

 

清麿「ああ、確実にシン・ジガディラスの餌食となる…!」

 

 話している間にもチャージは終わった。

 

ゼオン「いけええっ!!」

 

 雷神からジガディラスを遥かに超える電撃が発射され、腕に掴まれてて逃げられないアシュロンはまともに受けてしまった上、電撃が着弾した地点の近くにいたリーンは衝撃で吹っ飛ばされ、その際に電撃がかすり、本に火が付いてしまった。

 

アシュロン「ぐあああっ!!」

 

 前の戦いではアシュロンは魔界に帰る前にシン・フェイウルクでクリアの体を貫く事に成功したが、今回の戦いはゼオンはクリアのような慢心がないため、アシュロンはゼオンに一矢報いる事もできずに全身黒焦げになって倒されてしまった。

 

ゼオン「これであいつも終わりだな」

 

 黒焦げになったアシュロンにティオと恵と清麿は駆け寄った。

 

ティオ「アシュロン…まさか…、死んじゃったの…?」

 

 アシュロンが死んだと思い込んで涙を流すティオの言葉に反応するかの如く、アシュロンは少し動いた。

 

アシュロン「俺はまだ死んでねえぞ…。それに…、俺は頭さえあれば生きていられる上、本に火が付いた以上、魔界に帰るんだ。今の魔界に帰れば体を失うから、傷を治さなくていい…。ゼオンを倒してお前達の誰かが王様になって再び体を与えてくれ…」

 

ティオ「だけど…、王の特権の事を知っててもそんな痛々しい姿は見てて辛いわよ…!」

 

アシュロン「王の特権…どうして知ってるんだ?」

 

恵「ガッシュ君から聞いたの」

 

アシュロン「そうか…。やはり、ガッシュは俺の夢を託せるのに相応しい奴だ。清麿…、ガッシュが起きたら、こう伝えてくれ…。俺が作ろうと思っていた差別のない誰もが仲良く暮らせる魔界を作ってくれって…」

 

清麿「わかった。お前の伝えたい事は必ず伝える!」

 

アシュロン「ありがとう…。リーン、最後の一げ。ごふっ!」

 

 立ち上がろうとしたアシュロンだったが、シン・ジガディラス・ウル・ザケルガをまともに受けたダメージは大きく、立てなかった。

 

リーン「ダンナ!」

 

ゼオン「アシュロンめ…、まだ生きている上にあんな姿でまだ立ち向かおうとするのには腹が立ってくる…!」

 

デュフォー「どうする?ゼオン」

 

ゼオン「…決まってるだろ?今度こそアシュロンの息の根を止める」

 

デュフォー「シン・ジガディラス・ウル・ザケルガ!」

 

 再び進化した雷神が姿を現した。

 

清麿「またゼオンのシンか…!」

 

アシュロン「お前達…、俺を置いて早く逃げろ…!」

 

ティオ「(今、逃げたらガッシュは助かってもアシュロンが…アシュロンが死んじゃう…!)嫌だ…、アシュロンを置いて逃げない!」

 

リーン「何を言ってるんですか!?今のままだと確実に」

 

ティオ「アシュロンはあんなになってまで私達を守るために戦ってくれたのよ!それに、魔界に帰る前に死んじゃったら元も子もないじゃない!だから、今度は私がアシュロンを守る!」

 

 ティオは恵と共にアシュロンを守るために前に出た。

 

ゼオン「何のつもりだ?まさか、俺のシンを受け止めようとでもいうのか?」

 

ティオ「そうよ!私達は誰一人死なせずにファウードを止めるの!だから、アシュロンを死なせない!」

 

恵「私達は愛する人を、大切な仲間を守るためなら、例えこの命を失う事になってでも守り通してみせる!」

 

 デボロ遺跡の時以上の『命をかけてでも大切な人達を守る』という強い思いに反応し、ティオの本が光った。

 

清麿「新しい呪文?」

 

ゼオン「お前の盾では俺のシン・ジガディラスを防ぐ事はできんぞ!これで終わりだ!」

 

 チャージが終わり、雷神から凄まじい電撃が放たれた。

 

恵「シン・チャージル・セシルドン!」

 

 チャージル・セシルドンよりも一回り大きく、装飾も増えた女神の盾が姿を現した。

 

リーン「でかい…!」

 

清麿「(確か、ガッシュから聞いた話では、前の戦いでティオが習得したシン級の術はシン・サイフォジオだった。まさか、チャージル・セシルドンのシンを習得するとは…)」

 

ゼオン「シン・ジガディラスは盾封じも使えるぞ!」

 

 シン・ジガディラスの電撃と同時に手もロケットパンチのように飛ばして盾の後ろから攻撃しようとしたが、ティオの意思に反応して女神の盾の後ろから光のバリアが発生し、近くにいるアシュロン達を覆い、シン・ジガディラスの手から守った。そして、女神の盾と破壊の雷神の電撃がぶつかり合った。

 

ゼオン「俺のシンと競り合い続けられるほどの強力な盾だと!?」

 

 新たなる女神の盾は進化した雷神の電撃と競り合い続けた。競り合いが続いてヒビが入っていったが、チャージル・セシルドンと同様にティオの守りたい心に反応してヒビが直っていった。

 

ティオ「ガッシュを、アシュロンを、みんなを…、守る!!」

 

ゼオン「舐めるな!そんな盾など、デュフォーが本気を出せば」

 

 しかし、デュフォーの心の力が尽きてしまい、雷神は電撃を出し終わってしまった。女神の盾の方は電撃を防ぎながら吸収しており、これまで防いだ電撃が溜められていた。

 

ティオ「いっけ~~っ!!」

 

デュフォー「ゼオン、すぐによけろ!」

 

 女神の盾から吸収した電撃が放たれ、デュフォーの指示に従ってゼオンはよけた。

 

サウザー「あの盾、ゼオンのシンを防ぎやがったぞ…!」

 

サンビーム「それどころか、吸収してから再び発射するとは…!」

 

清麿「(ティオのシン・チャージル・セシルドンはかなり強力な防御術だ…。セウシルの全方位防御、マ・セシルドのような元から高い強度、ギガ・ラ・セウシルの攻撃を跳ね返す力、そしてチャージル・セシルドンのティオの守りたい思いに反応して防御力が高くなる特徴、まさにティオの防御術の集大成ともいえる特徴を備えている…!)」

 

恵「(まさに、防御は最大の攻撃を極めた術よ…!)」

 

 ゼオンのシンを防ぎ終わった後、ティオはふらついた。

 

恵「ティオ、大丈夫?」

 

ティオ「ちょっと疲れたわ…。少し休んだら、すぐにガッシュを回復させないと…」

 

アシュロン「悪いな…、俺を守ってくれて…。ゼオン、魔界に帰る前に一つ言っておく。次の魔界の王になるのは…お前ではなく、ガッシュだ!お前は絶対に王にはなれん!」

 

ゼオン「何?」

 

アシュロン「希望の光は守られた。後はお前はガッシュという希望の光に負けるだけだ!」

 

 そう言ってアシュロンは魔界に帰った。

 

ティオ「アシュロン、あなたが命をかけて守ったガッシュを絶対に私達が目覚めさせるわ」

 

恵「だから、魔界で休んでてね…」

 

清麿「恵さん、俺が持ってるファウードの回復液を飲んでくれ」

 

恵「ありがとう、清麿君。それと、シン・チャージル・セシルドンが出た際にディオガ・サイフォジオも出たわ。ティオ、ディオガ・サイフォジオを使ってガッシュ君を回復させるわよ!」

 

ティオ「ええ!」

 

恵「清麿君は私と手を繋いで。そうしたら、普通に心の力を回復させるよりも早く回復できるんじゃないかしら?」

 

清麿「やってみるよ」

 

 アシュロンの頑張りを無駄にしないためにも、ティオと恵はガッシュを回復させる事に専念し、清麿は恵と手を繋いで恵との愛によって早く心の力を回復させる事にした。

 

ゼオン「デュフォー、また心の力が切れたのか?」

 

デュフォー「ああ。アシュロンを倒した際に上級呪文も連発した上、シン・ジガディラスを2回も使ったからな。シン級の呪文は思ったよりも心の力を使う。また少し時間をくれ。心の力を回復させる」

 

 心の力を回復させる前にデュフォーは清麿の様子を見た。

 

デュフォー「(清麿の奴、なぜ女と手を繋いでいるんだ?)」

 

 デュフォーが憎しみで心の力を回復させるのとは逆に、清麿は恵への愛で心の力を回復させるというのがデュフォーには理解できなかった。

 

ゼオン「これで俺が今まで仕留め損ねた魔物の1体、アシュロンを始末する事に成功した。次は…、チェリッシュを始末する」

 

 ちょうどゼオンがいる所の真下には気を失っているチェリッシュペアがいた。ちょうどチェリッシュもニコルと一緒に意識が戻った。

 

チェリッシュ「何が…起こってるの…?」

 

ゼオン「チェリッシュ、次はお前から始末する」

 

 ゼオンが降りてきて近づく姿にチェリッシュは克服したはずのトラウマが蘇った。

 

チェリッシュ「(何で…、何で今になってあの時の恐怖が蘇るのよ…!お願い、私の体…、動いて…!)」

 

 チェリッシュの危機にティオ達の所に来ていたコルル達はゼオンから受けたダメージが大きく、駆け付けられなかった。

 

パティ「まずいわ!ゼオンはチェリッシュを始末する気よ!」

 

コルル「それに、チェリッシュはトラウマが蘇っているみたいだよ!」

 

ウォンレイ「この状況はどうすれば…」

 

 その間にもゼオンはチェリッシュを蹴り飛ばしてからマントでチェリッシュの本を切り刻もうとした。しかし、ある乱入者が現れた。

 

???「チェリッシュ!!」

 

チェリッシュ「この声…!」

 

 その声はチェリッシュには聞き覚えのある懐かしい声だった。その声の主はバイクを走らせるパートナーと一緒に来た。

 

しおり「ねえ、あの子って…」

 

ウルル「リーゼントヘアで間違いないですよ!」

 

清麿「テッド、テッドじゃないか!」

 

 その主こそ、テッドであった。




これで今回の話は終わりです。
今回はゼオンとアシュロンの戦いとティオのシン習得を描きました。
ゼオンとアシュロンの戦いは原作の初期クリアとアシュロンの戦いを参考にし、さらにゼオンペアにしかできないような戦い方も加えて描きました。
シン・ジガディラス・ウル・ザケルガがジガディラスと違って手が追加されているのは、ただジガディラスを強化するだけでは物足りないと判断し、ジガディラスに攻撃にも防御にも使える手を追加しました。手は本体と離れて宙に浮いている感じです。
今回、ティオが習得したシンが原作のシン・サイフォジオではなく、シン・チャージル・セシルドンなのは、ブラゴがシンを二つ習得できたように、ティオでもシン・サイフォジオのほかにシン・チャージル・セシルドンも習得できるのではと思ったのと、ゼオンのシンを防ぐには、チャージル・セシルドンのシン強化版じゃないとダメだろうと判断したためです。
ちなみに、シン・チャージル・セシルドンはゴジラvsメカゴジラのメカゴジラのプラズマグレネイドが元ネタで、形としては、原作版とアニメ版を合体させたような感じです。シン・ポルクがキャンチョメの今までの術の集大成ともいうべき術だったので、シン・チャージル・セシルドンもティオの防御術の集大成ともいうべき術にすれば、キャンチョメやウマゴンのシンに引けをとらなくなるのではと思ったので、そうしました。
次はテッドがゼオンと戦う話です。


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LEVEL73 テッド、最後の鉄拳

ファウード コントロールルーム

 お互いに探していてもなかなか巡り会う事ができなかったテッドとチェリッシュは遂に再会の時を迎えた。

 

テッド「チェリッシュ…、やっと会えたな…」

 

チェリッシュ「テッド…」

 

ゼオン「ふん、感動の再会といった所か?」

 

テッド「てめえがゼオンか…、俺の女を…、大切な家族を傷つけた奴は!」

 

ゼオン「家族だと?そんなものは俺にとっては憎むべき存在だ」

 

テッド「何だと!?」

 

 そんな時、テッドは倒れているガッシュを見て、ゼオンとガッシュの関係に気付いた。

 

テッド「まさかお前、ガッシュの家族なのか!?」

 

ゼオン「そうだ」

 

テッド「だったら、なぜガッシュをあそこまで傷つけた!?お前とガッシュは血の繋がった家族なんだろ!?お前は家族にどうしてあんな事ができるんだよ!?」

 

ゼオン「お前、何か勘違いしているようだな。血の繋がった家族がいるからと言って必ずしも幸福であるとは限らない。親が平気で子供を虐待したり、子供が親を殺したり、血の繋がった家族でもそういった事はあるんだよ。そして、俺はガッシュが憎い!俺は物心ついた頃から厳しい訓練と教育の苦しい日々を過ごし、苦労を経てこの戦いに参加したのに、ガッシュは大きな力と自由を与えられた上、何の努力もせずに戦いに参加した!それが許せるかよ!」

 

テッド「それでも…それでも自分が辛いからって他人に、それも血の繋がった弟に八つ当たりするんじゃねえ!みっともないと思った事はないのか!?」

 

ゼオン「テッドと言ったな。お前の面を見てると本当に腹が立ってくる。お前も完膚無きにまで叩きのめしてやる!」

 

テッド「臨む所だ!お前がチェリッシュとガッシュを傷つけたからには、その落とし前として顔面をぶん殴ってやる!!」

 

チェリッシュ「テッド…」

 

テッド「チェリッシュ、具体的にどういった事をゼオンにされたのかはわからねえが、とにかく強いお前が怯えるほどの事をされたんだろ?だったら、その落とし前は俺がつけてやる。だから、お前は俺の戦いを見てるんだ。チェリッシュのパートナー、チェリッシュを頼む」

 

 チェリッシュの事をニコルに任せ、テッドはゼオンの方を向いた。

 

ジード「テッド、あいつはガッシュを完膚無きにまで叩きのめした奴だ!気を引き締めて行け!」

 

テッド「ああ!」

 

ジード「ドラグナー・ナグル!」

 

 テッドはゼオンに向かっていった。その間にサンビームとサウザー、ウルルはボロボロの仲間と意識が戻ったアリシエを連れてティオ達の所に来た。

 

キャンチョメ「いてて…ガッシュはどうなんだい?」

 

恵「ディオガ・サイフォジオで傷の方はだいぶ治ったわ。だけど…一向に意識が戻らないの」

 

パティ「お願い、ガッシュちゃん!目を覚まして!」

 

コルル「ガッシュ!」

 

ウマゴン「メルメルメ!」

 

リーン「目を覚ましてくれ、ガッシュ!あんたはダンナが夢を託せると見込んだ男なんだ!だから、魔界に帰ったダンナのためにも目を覚ましてくだせえ!」

 

アリシエ「ガッシュ、最後の希望は君しかいないんだ!」

 

清麿「(頼む、ガッシュ。目を覚ましてくれ。お前のために、リーヤが、アシュロンがその身を犠牲にして守ってくれたんだ!)」

 

 一同はガッシュの目が覚めてほしいと思うのだった。

 

 

 

ファウード 通路

 デゴスの大群と戦っていたバリーとレインはデゴスを全滅させた。

 

バリー「ようやく全滅したな」

 

レイン「急いでコントロールルームへ行くぞ!」

 

バリー「ああ!」

 

 バリーとレインはパートナーと共にコントロールルームへ向かった。

 

 

 

ファウード コントロールルーム

 テッドとゼオンの戦いが繰り広げられていた。

 

ジード「セカン・ナグル!」

 

 テッドの強化は第2段階になったが、ゼオンにパンチを打ち込んでもかわされたり受け流されたりして全く攻撃が当たらなかった。

 

ゼオン「体術も何もなっちゃいねえ。それでパンチのつもりか?」

 

テッド「黙りやがれ!俺は絶対にてめえの顔面にパンチを打ち込んでやる!」

 

ゼオン「顔面にパンチを打ち込むって…こういう事か!?」

 

 ゼオンはテッドでは捉えられない速さで動き、テッドの顔面にパンチを打ち込んで殴り飛ばした。

 

ゼオン「どうした?俺はデュフォーがまだ心の力を回復させている最中で術を使ってないんだぞ。術を使ってお前はこのザマか?」

 

テッド「まだだ!剛腕テッド様は、まだピンピンしてるぜ!」

 

ジード「サーズ・ナグル」

 

 第3段階に突入したが、まだゼオンには当たらなかった。

 

ジード「(あいつ、テッドのパンチを慌てる事なく、涼し気な様子でかわしてやがる…。術なしでテッドとこれ程の力の差があるとは…)」

 

ゼオン「それがパンチのつもりか?」

 

テッド「この野郎!絶対に…絶対にてめえの顔面にパンチを打ち込んでやる!!」

 

 テッドはゼオンの顔にパンチを打ち込もうとしたが、その度にゼオンに反撃される一方だった。

 

テッド「ギアを上げろ、ジード!」

 

ジード「心の力も溜まったぜ!フォルス・ナグル!」

 

 ギアを上げても結果は同じで、ゼオンには全くパンチが当たらなかった。

 

ゼオン「どうした?この程度、よそ見しててもかわせるぞ」

 

テッド「絶対にゼオンを…ゼオンの顔面を殴るまでは倒れたって何度でも立ち上がってやらぁ!」

 

 一方的にゼオンに叩きのめされるテッドをチェリッシュは見ていられなかった。

 

チェリッシュ「テッド、私が助けるわよ」

 

 ニコルにファウードの回復液を飲ませてもらった後、グラード・マ・コファルでゼオンを狙撃してテッドを助けようとした。しかし、トラウマが再燃したせいで狙いが定まらなかった。

 

チェリッシュ「(どうして?どうして震えが止まらないのよ…)」

 

ニコル「(やっぱり、ゼオンから受けたトラウマが再燃している…)」

 

ゼオン「チェリッシュ、テッドに気を取られている隙に俺を狙撃しようというのか?だが、今のお前の様子じゃ、俺の雷でボロボロになった心は治りきっていなかったようだな。安心しな、テッドを始末したら次はお前だ。それまで恐怖に震え、テッドがボロボロになりながらやられる様を見物しておくんだな」

 

 チェリッシュの行動はゼオンに見抜かれていた。その後、ゼオンはテッドへの攻撃を再開した。

 

テッド「ぐおっ!」

 

 ゼオンとの格闘戦でゼオンに一方的に蹴られ、殴られてテッドは倒れた。

 

ゼオン「もう終わりか?口ほどにもないぞ」

 

ジード「何て野郎だ…!フォルスでも全く歯が立たねえとは…、下手すればトップギアでもどうにもならないかもしれねえ…。(まだ溜まらねえか、心の力!)」

 

テッド「まだこれからだ…。お前の顔面を殴るまでは…俺は何度でも立ち上がるって言ってるだろ!?」

 

ゼオン「どいつもこいつも腹が立ってくる…!」

 

 再びテッドは立ち上がってゼオンに向かっていったが、ゼオンは全く歯が立たないのにも関わらず、顔面を殴ろうとするテッドに苛立ちが増すばかりであった。

 

キャンチョメ「やばいよ…、ゼオンは術なしで術を使ってるテッドを一方的に叩きのめしているよ…!」

 

ウマゴン「メルメルメ…」

 

カルディオ「パルパルモーン…」

 

サウザー「リーヤでも、アシュロンとかいうドラゴンでも、テッドでもゼオン相手だとどうにもならねえのか…?」

 

サンビーム「まさに、化け物だ…」

 

 テッドはフォルスでも一方的にゼオンに押されていた。

 

ジード「心の力が溜まったぞ、テッド!」

 

テッド「よし、トップギアだ!」

 

ジード「フィフス・ナグル!」

 

 遂にテッドはトップギアを発動させた。

 

ゼオン「これがお前の本気か」

 

テッド「行くぞ!」

 

 テッドはゼオンに殴りかかった。しかし、パンチは簡単にゼオンに受け止められ、しかもゼオンに受け止められた際に腕が出血した。

 

テッド「ぐあっ!ゼオンにはトップギアでも通じねえのか…!?」

 

ゼオン「その程度では俺には勝てん。それに、術の力にお前の体が負けているようだな。むやみに攻撃してもお前は術の負担でどんどん寿命を縮めるだけだぞ。俺を殴るとかいう下らん事は絶対にできん!俺に本を燃やされろ!」

 

 トップギア状態でもテッドは一方的にゼオンにやられていた。

 

ジード「(トップギアでもどうにもならねえというのか…!?)」

 

テッド「…言っただろ?俺はお前をぶん殴るまでは何度でも立ち上がってやるって!!」

 

ゼオン「お前が俺を殴る事自体、不可能だ!」

 

 テッドが一方的にゼオンにやられている姿にチェリッシュはいてもたってもいられなかったが、蘇った恐怖でどうにもならなかった。

 

???「何をやっている、チェリッシュ!」

 

 声が届いた先には、レインとバリーがいた。

 

清麿「レイン!それに、バリーじゃないか!」

 

レイン「悪いな、デゴスの大群やらで手間取って遅れてしまった」

 

バリー「チェリッシュ、テッドは…あいつはお前のために命をかけてゼオンをぶん殴ろうとしてるんだ!お前もあいつのために何かしろ!」

 

チェリッシュ「バリー、テッドに会ったの?」

 

バリー「ああ。あいつとは一緒にファウードへ向かう際にお前の事を語ったぜ」

 

 

 

回想

 それは、飛行機で移動中の事だった。

 

テッド「なぁ、バリーはチェリッシュといつ会ったんだ?」

 

バリー「だいぶ前にな。チンピラの頃の俺が子供に頭の事をバカにされたと誤解して殴ろうとした時に会ったんだ。それで、イライラした俺はあいつと戦った」

 

テッド「チェリッシュは強い女だっただろ?」

 

バリー「ああ。あの時の俺は腕っぷしはチェリッシュより上だったが、ガッシュを殴れなかった時のようにチェリッシュを殴れなかった。お前の言う通り、強い女だったぞ。ところで、チェリッシュはお前を家族と言っていたが、どういう事なんだ?」

 

テッド「実を言うとよ、俺やチェリッシュは親父やお袋の顔も知らねえで生きてきた。そんな俺達のようなガキ達をチェリッシュは引き取って一緒に暮らしてたんだ。チェリッシュは酔っ払いの雇い主に殴られようが、俺達が力を合わせて作った家をすぐにぶっ壊されようが、泥まみれのパンを食べようが、悪人にも負けずに弱い所を見せねえあいつが輝いていたから、俺達は希望を持って生きる事ができたんだ」

 

バリー「(そうだったのか…。だから、あいつの心は強かったのか…)」

 

 チェリッシュの強さの秘密を聞けたバリーは嬉しそうだった。

 

 

 

 同じ頃、テッドはゼオンに相変わらず一方的にやられていた。

 

ゼオン「もう終わりだな。一気に勝負を終わらせてやる」

 

テッド「ゼオン…、いつまでも俺を舐めてるんじゃねえぞ!」

 

 テッドの雰囲気が変わった事にゼオンは気づいた。

 

ゼオン「(テッドの雰囲気が変わった?)」

 

テッド「てめえに親父やお袋はいるか?」

 

ゼオン「ああ、いるぞ。今の魔界の王と王妃が俺とガッシュの両親だ」

 

テッド「お袋に飯は作ってもらってたか?」

 

ゼオン「ないな。飯を作ってくれたのは乳母だ」

 

テッド「おかしいな…、てめえには親父とお袋がいるのに、何で親のいねえガキ達と同じ目をしてるのか気になってな」

 

ゼオン「お前、ろくな教育も受けてないのになぜそうだと言い切れる?」

 

テッド「確かにてめえの言う通り、俺達みてえな親のいないガキはろくな教育を受けてねえ。けどな、何となくわかっちまうんだよ…。てめえのガッシュを恨み、憎んでいる目。それが親のいねえガキ達の大人を恨み続けて真っ黒になっちまった目と重なって見えちまうんだよ。俺ももし、チェリッシュに会えなかったらてめえみたいになっちまってたのだろうってな」

 

ゼオン「俺が…孤児と同じ目をしてるだと?」

 

テッド「てめえは親父やお袋に弟がいるのに何がきっかけでこんな目をしてるのかはわからねえ。けどな…大人を恨み続けたガキ達にも、飢えきって真っ赤に血走った目をしたガキ達にもチェリッシュはキラキラした輝きを与えてくれたんだ。悪人に負けず、楽しそうな未来を語ってくれてよ、俺達を支えてくれたんだ…。俺の目の奥にあの姿がある限り、てめえをぶん殴るまでは何度でも立ち上がってやらぁ!!」

 

 再びテッドはゼオンに向かっていった。流石のゼオンもいくら攻撃を受けても、術の反動でダメージがさらに蓄積しても立ち上がるテッドには違和感を感じていた。

 

ジード「(まだファイナルギアが残っているが…、こいつは最後の最後に決めねえと、大変な事になる代物だ…)」

 

ゼオン「(こいつの体は俺の攻撃を受けている上、術の反動でもダメージを受けていて相当ボロボロのはずだ。なのに…チェリッシュのために俺の顔面を殴る、ただそれだけのために立ち上がっているとでもいうのか…)」

 

デュフォー「ゼオン、心の力がフルに溜まったぞ」

 

ゼオン「ちょうど殴る蹴るも飽きてきた所だ。術を使って一気にカタをつけてやる!」

 

デュフォー「テオザケル!」

 

 向かってきたテッドはテオザケルで吹っ飛ばされ、それにジードも巻き込まれた。

 

テッド「ぐあああっ!!」

 

ジード「ぐおおっ!!」

 

 テオザケルに巻き込まれた際、ジードの持ってた本に火が付いた。

 

ゼオン「次で一気に燃やし尽くす!」

 

 燃えてる本に攻撃し、一気に燃やし尽くそうとするゼオンにチェリッシュはテッドの危機と恐怖で焦った。

 

チェリッシュ「(お願い…、震えよ、止まって…!テッドに…テッドにゼオンの顔面を殴らせるために…!!)」

 

 そんな中、ガッシュを回復させている最中のティオ以外の動ける魔物達がスナイパーライフルを支えてくれた。

 

チェリッシュ「みんな…」

 

バリー「チェリッシュ、お前は1人で戦ってるんじゃねえぜ」

 

キャンチョメ「チェリッシュの震えが止まらないなら、僕達が支えるよ!」

 

コルル「挫けそうになったら、何度でも」

 

パティ「だから、ゼオンに1発ぶち込んでやるのよ!」

 

ウマゴン「メルメルメ!」

 

 支えてくれるコルル達以外にも、魔界で一緒に暮らしていた子供達の幻影も見つけた。

 

子供A『頑張れ、チェリッシュ母さん』

 

子供B『頑張れ、姉ちゃん』

 

 コルル達と一緒に暮らしていた孤児達の幻影の励ましにより、チェリッシュの震えは止まった。

 

ゼオン「これで終わりだ、テッド!」

 

デュフォー「ザケルガ」

 

 テッドの本目掛けてザケルガが放たれた。

 

チェリッシュ「(みんな…、ありがとう…)テッドーーーーッ!!」

 

 震えが止まったチェリッシュはゼオン目掛けて銃弾を放った。放たれた銃弾はザケルガを貫通し、ゼオンの腕に直撃した。

 

ゼオン「何!?まさか…!」

 

 ゼオンの視線の先に震えの止まったチェリッシュの姿があった。

 

ゼオン「(何があった!?なぜ、恐怖から逃れた…?)」

 

チェリッシュ「テッド、今よ!」

 

テッド「チェーーリーーーーッシュ!!お前の作ってくれたチャンス、無駄にはしねえ!ジード、ファイナルギアだ!」

 

 立ち上がったテッドはゼオンに迫った。

 

ジード「ドラグノン・ディオナグル!!」

 

 ファイナルギアが発動し、テッドは遂にゼオンの顔面を殴った。殴られたゼオンは吹っ飛び、ゼオンを殴ったテッドは術の反動に体が耐えきれず、遂に倒れた。

 

テッド「やっと…やっとゼオンの顔面を殴れたぞ…!」

 

 そう言ってテッドは意識を失った。

 

サンビーム「エル、モモンの意識は戻ったか?」

 

エル「はい!」

 

モモン「結構痛いけど、もう動けるよ!」

 

清麿「急いでテッドを連れて来るんだ!ゼオンの追撃を受ける前に!」

 

エル「フェイ・ミウルク!」

 

 急いでモモンはテッドを抱えてティオの元に連れてきた。テッドの渾身のパンチを受けたゼオンの方は倒れておらず、顔に大した傷はなかった。

 

デュフォー「ゼオン、なぜよけなかった?あの一撃はお前がよけられない事はないだろう?」

 

ゼオン「ああ。テッドの今の一撃を、『よけてはいかん』と思ったまでだ」

 

デュフォー「まぁいい、中級呪文を2回使った程度なら、すぐに回復させる事はできる」

 

 テッドは急いでティオのギガノ・サイフォジオで治療を受けた。

 

チェリッシュ「ごめんね、ティオ。ガッシュの坊やを回復させてる途中に私のわがままを聞いてもらって…」

 

ティオ「もう傷の方は治ったけど、困ってるのは意識が戻らない事なのよ」

 

 そんな中、テッドの意識が戻った。

 

テッド「…チェリッシュ…」

 

チェリッシュ「意識が戻ったのね、テッド」

 

テッド「どうやら、もうゼオンに怯えてねえようだな」

 

チェリッシュ「私が恐怖を振り切れたのはみんなと…テッドのお陰よ」

 

テッド「そっか…。ジード、今まで本当に」

 

ジード「俺と話す時間じゃねえよ。お前とは山ほど語り合ったぜ!」

 

グスタフ「魔界に帰る前に大切な家族としっかり話しておくんだ」

 

テッド「ところでお前、ニコルとか言ってたな。まさか、チェリッシュに手を出してねえだろうな?」

 

チェリッシュ「バカね、ニコルは女よ」

 

 チェリッシュの言葉通り、ニコルは帽子をとって長い髪を露わにした。

 

ニコル「チェリッシュの事になれば話を聞かないぐらい、本当にあの子はチェリッシュしか見えてないわね」

 

ジード「まぁな。千年前の魔物との戦いへの協力を断ってしまったせいでチェリッシュの手掛かりを自分で捨てちまったとか後悔してたぐらいだからな」 

 

 そんなテッドにチェリッシュはキスした。

 

テッド「へ…へへ…嬉しいねえ…」

 

チェリッシュ「安心して魔界で待ってて。ゼオンのような奴は絶対に王にさせない」

 

テッド「ああ、任せたぜ。親のいねえ俺達でも幸せになれる国に…。それと、ガッシュにもよろしくと言ってくれよ…」

 

 そう言ってテッドは魔界に帰った。

 

パティ「ガッシュちゃん、お願い、起きて!もうゼオンを倒せるのはあなたしかいないのよ!」

 

ティオ「リーヤやアシュロンにテッドはガッシュや私達を守るためにその身を犠牲にしたのよ!」

 

コルル「だから、お願い!起きて、ガッシュ!」

 

清麿「ガッシュ、もう最後の希望はお前しかいないんだ!その希望を守るために戦ってくれた奴のためにも、起きるんだ、ガッシュ!」

 

 

 

???

 ゼオンからの苛烈な攻撃を受け続けて倒れてしまい、傷が治ってもガッシュの精神は意識が戻らなかった。苛烈な攻撃を受け続けて深い眠りについていたガッシュの精神に清麿達の声が響いた。

 

清麿『ガッシュ、もうゼオンを倒せるのはお前しかいないんだ!』

 

恵『ガッシュ君を守るためにリーヤもアシュロンもテッドもゼオンと戦って魔界に帰ってしまったのよ!』

 

パティ『だから、起きるのよ、ガッシュちゃん!』

 

ティオ『最後の希望はガッシュだけなのよ!』

 

コルル『だから起きて、ガッシュ!』

 

清麿『起きろ、起きるんだ、ガッシュ!!』

 

ガッシュ「清…麿……みんな…!そうだ、私は……!!」

 

 ガッシュは前の戦いの時のようにこれまで魔界に帰った魔物達を思い出していた。

 

ガッシュ「私は優しい王様にならねばならぬ!母上殿達を守るためにも…魔界に帰ったアシュロン達のためにも……私は…、負けるわけにはいかぬ!!」

 

 

 

 ゼオンが攻撃してこない事に清麿は違和感を覚えていた。

 

清麿「(おかしいな。なぜ、ゼオンは攻めてこない?)」

 

ウォンレイ「みんな、ガッシュが起きるまで私達が時間を稼ぐ!」

 

 ウォンレイ、チェリッシュ、バリー、レインがゼオンの方を向いた。

 

フォルゴレ「いてててっ…。だが…」

 

チェリッシュ「テッドがボロボロになってでも戦ったのよ。今度は私達が坊やを守る番!」

 

バリー「例えどんな奴が相手だろうと…」

 

レイン「戦うまでだ!」

 

 一方のゼオンはガッシュを見ていた。

 

ゼオン「すまんな、デュフォー。俺のやり方に付き合え」

 

デュフォー「なぜそうする?だが、お前は『何か』がかわったな。それはわかる」

 

ゼオン「ああ。だからこそ、ガッシュが立ち上がるのを待っている」

 

デュフォー「立ち上がったら全力で戦って倒す。お前はそういう『答え』を出している。だが、その答えに辿りついた『過程』がわからん。何かあったのか?」

 

ゼオン「ふん…俺の今までのやり方で気に食わない事が続いたまでだ。そういうデュフォーもアリシエに怯んでしまった事が引っかかってるんじゃないか?」

 

デュフォー「そうだな。これまで俺は魔物同士の戦いでも怯んだ事がないのに、あの男に怯んでしまった」

 

ゼオン「その理由を知るために俺のやり方に付き合う事にしたって訳か」

 

デュフォー「そうだな」

 

 清麿達はガッシュに呼びかけ続けた。

 

清麿「ガッシュ、起きろ、ガッシュ!!」

 

 ガッシュの指が動いたのと同時にガッシュの本とガッシュが光り出した。

 

清麿「本が……」

 

 その光は次第に色を変えていき、金色の輝きを放った。

 

ブラゴ「あの光は…!」

 

恵「ガッシュ君の本が…」

 

ティオ「金色に…」

 

 その光はゼオンとデュフォーにも見えていた。

 

ゼオン「あの光は何だ…?」

 

清麿「(これが……ガッシュが言っていた前の戦いでクリアとの戦いの時に出た金色の本…!)」

 

 ガッシュの本が金色に光輝くと共に、ガッシュが立ち上がった。

 

パティ「ガッシュちゃんが…」

 

コルル「起き上がった!」

 

ウマゴン「メルメルメ!」

 

キャンチョメ「やっと起き上がったんだね、ガッシュ!」

 

ティオ「ガッシュ!!」

 

 立ち上がったガッシュに一同は喜んだ。

 

バリー「起きるのが遅せえじゃねえか、ガッシュ」

 

ガッシュ「バリー、みんな…」

 

チェリッシュ「最後の希望を守るためにテッドはゼオンと戦い、ボロボロになって魔界に帰ったのよ」

 

モモン「リーヤとアシュロンというドラゴンも帰ったんだ」

 

ガッシュ「(リーヤ、アシュロン…、テッド…。お主達…!)」

 

ゼオン「ようやく立ち上がったか、ガッシュ!その金色の本とお前の輝きが何を意味するのかは知らんが、俺は本気で行くぞ!」

 

ガッシュ「清麿、この戦いは絶対に負けられぬ!」

 

清麿「ああ!俺達の全ての力で、絶対にゼオンに勝つ!」

 

 最後の希望のガッシュが立ち上がった。ガッシュとゼオンの最後の戦いが今、幕を開けようとしていた。




これで今回の話は終わりです。
今回はテッドとゼオンの戦いを描きました。
原作の話では、テッドとギャロンの戦いとチェリッシュとゼオンの戦いが元ネタです。
アニメではチェリッシュが退場してテッドが生き残りましたが、今小説ではアニメとは逆にテッドが退場してチェリッシュが生き残る展開にしました。
チェリッシュが恐怖を振り切る展開はせっかく仲間が大勢いるので、魔界で一緒に暮らしていた子供の幻影以外にも仲間達が支えるというのも挿入しました。
次の話はガッシュとゼオンの戦いで、次の話で因縁の戦いに決着が着きます。


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LEVEL74 最後の戦い

ファウード コントロールルーム

 ガッシュとゼオンの最後の戦いが始まり、最初に動いたのはゼオンだった。

 

デュフォー「ザケル!」

 

清麿「ザケル!」

 

 ガッシュとゼオンは同じ術ではゼオンの方が威力は上だった。しかし、本が金色になってからのガッシュのザケルはゼオンのザケルと同等の威力になり、相殺された。

 

ゼオン「何!?俺と同等のザケルだと!?」

 

デュフォー「ゼオン、落ち着け!例えガッシュの術の威力がゼオンと同等になったとしても、俺が清麿より優れた答えを出し続ければ勝負は着く!ゼオン、ダッシュ!」

 

 ザケルが同等になってゼオンは驚いたが、すぐに落ち着いてガッシュに迫った。

 

ゼオン「行くぞ、ガッシュ!」

 

 ガッシュもゼオンと同等のスピードでゼオンに迫った。

 

ゼオン「(速い!)ぐおっ!」

 

 そのままゼオンはガッシュに殴り飛ばされた。

 

シェリー「ガッシュがゼオンを…」

 

ブラゴ「殴り飛ばしただと…?」

 

ゼオン「お、俺がガッシュにパンチを打ち込まれるとは…。」

 

 再びガッシュが向かってきたため、ゼオンは向かっていき、2人は格闘戦に突入した。

 

ガッシュ「ぬおおおっ!!」

 

ゼオン「はあああっ!!(本が金色になってからのガッシュのスピードやパワーが俺と互角とは…!)」

 

 ガッシュとゼオンの格闘戦は一進一退の互角の戦いとなった。そして、2人は距離をとった。

 

デュフォー「ディオガ・アーロ・ザケルガ!」

 

清麿「エクセレス・ザケルガ!」

 

 本が金色になってさらに威力が上がったエクセレス・ザケルガはディオガ・アーロ・ザケルガとぶつかり、相殺された。

 

デュフォー「ソルド・ザケルガ!」

 

清麿「ブレールド・ディラス・ザケルガ!」

 

 今度は電撃の剣同士のぶつかり合いとなった。このぶつかり合いも、金色の魔本でガッシュの術の威力が上がった上、身体能力もゼオンと互角になってソルド・ザケルガとブレールド・ディラス・ザケルガの本来の威力の差が現れたものの、ゼオンはガッシュと違って剣術を身に付けていたため、剣のぶつかり合いは互角だった。

 

ガッシュ「私は負けられぬ…、優しい王様になるためにも…!」

 

ゼオン「それはこっちも同じだ!俺は父上の志を継いで立派な王となる!」

 

 剣のぶつかり合いの後、ガッシュとゼオンは互いに距離をとった。それからゼオンはガッシュにパンチしようとしたが、ガッシュと清麿、そしてチェリッシュにはガッシュの傍に先程魔界に帰ったテッドの姿が映っていた。

 

テッド『チェリッシュや友達を守れよ、ガッシュ!』

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

清麿「ドラグナー・ナグル!」

 

 そのままゼオンがガッシュを殴ろうとした時、清麿はテッドの呪文を唱えた。すると、テッドと同じようにガッシュのスピードやパワーが上がり、ゼオンのパンチをよけた。

 

ゼオン「ガッシュが…、テッドの呪文を…?」

 

 金色の魔本、それは前の戦いのクリア戦に出たものであった。今回は前の戦いの時のクリア戦に比べるとシン級の術が使えないために力が落ちているようだが、それでもガッシュがゼオンと互角に戦えるようになったのは事実だった。

 

チェリッシュ「テッド……、ガッシュの坊やを守ってくれているのね…」

 

 大切な家族がガッシュを守ってくれている事にチェリッシュは涙を流していた。

 

清麿「セカン・ナグル!サーズ・ナグル!フォルス・ナグル!フィフス・ナグル!」

 

 前の戦いの時と同様、金色の魔本は清麿の心の力を使う必要もないため、心の力を溜めずにギアを上げる事が可能であった。しかも、テッドが使った時の反動さえなかった。身体能力がさらに上がったガッシュにゼオンは押されていた。

 

ゼオン「(何だ?明らかにテッドが使った時よりもパワーアップしている!)」

 

デュフォー「ラウザルク!」

 

 対するゼオンもラウザルクで身体能力を上げ、一気に身体能力は逆転した。

 

清麿「ガッシュ、テッドのもう一つのファイナルギアを使うぞ!」

 

ガッシュ「(もう一つのファイナルギア?)おう!」

 

清麿「マキシマム・ナグル!」

 

 テッドを巨大化させたようなエネルギー体が現れた。

 

ジード「あれは…テッドの術みてえだが、俺もあんなのは見た事がねえぞ!」

 

チェリッシュ「まるで…あの術はテッドの魂そのものみたい…」

 

デュフォー「ラウザルク!」

 

 エネルギー体の拳とラウザルクで強化されたゼオンの拳がぶつかり合った。ぶつかり合いが続いた後、ガッシュとゼオンは相殺された時の勢いで互いに吹っ飛ばされた。

 

ガッシュ「ぐあっ!」

 

ゼオン「ぐおっ!」

 

デュフォー「ゼオン、体勢を立て直してダッシュ!」

 

 指示通り、ゼオンはすぐに体勢を立て直してダッシュし、ガッシュに接近戦を仕掛けようとした。ところが、今度はギャロンの姿がガッシュペアに見えていた。

 

ギャロン『私の力を使うのだ』

 

清麿「ディオ・マ・バスカルグ!」

 

 ギャロンの術を使うと、ガッシュはギャロンの鎧を装備した。そして、ゼオンの拳を受けとめた後、ガッシュはパンチを入れようとしたが、咄嗟にゼオンは回避した。そして、今度はザルチムの姿が見えた。

 

ザルチム『あのクソッたれのチビがのさばるのは気に食わねえ!』

 

清麿「ジボルオウ・シードン!」

 

 ガッシュの目が光り、そこから死神のようなものが出現した。

 

デュフォー「テオザケル!」

 

 ジボルオウ・シードンの弱所にテオザケルをぶつけて相殺させた。

 

デュフォー「(このまま他の魔物の術を使われ続けるととまずい!)ジャウロ・ザケルガ!」

 

 長引かせると自分達が不利になるという答えが出たため、デュフォーは回避不能に近い術、ジャウロ・ザケルガを放ち、ゼオンは操作した。そこへ、今度はリオウの姿が見えた。

 

リオウ『ガッシュ、もう王になれなくなった俺に代わり、お前が王になれ!』

 

清麿「ファノン・リオウ・ディオウ!」

 

 今度はファノン・リオウ・ディオウを放った。リオウが使った時はジャウロ・ザケルガに一方的に負けていたが、金色の魔本で放ったファノン・リオウ・ディオウはジャウロ・ザケルガと互角で、相殺された。

 

ゼオン「あいつらが撃ったリオウの最大術がジャウロ・ザケルガと互角だと!?」

 

 次はファンゴの姿がガッシュペアに見えていた。

 

ファンゴ『ゼオンに一泡吹かせてやれ!』

 

清麿「アルセム・ガデュウドン!」

 

デュフォー「ザケルガ!」

 

 アルセム・ガデュウドンが放たれたため、デュフォーは心の力の消耗を最小限に抑える答えを出し、ザケルガでアルセム・ガデュウドンの弱所にぶつけて威力を弱め、ゼオンはマントで防いだ。それらが終わった時には、ガッシュが接近していた。

 

清麿「パンチ!」

 

デュフォー「バック!」

 

 ガッシュのパンチをゼオンはかわした。

 

デュフォー「マーキュリー・ジケルドン!」

 

 マーキュリー・ジケルドンを撃ち込もうとしたが、今度はガッシュ達にはコーラルQの姿が見えた。

 

コーラルQ『さぁ、変形体操だ!』

 

清麿「今はそんな時間はない!ムロム・ロボルク!」

 

コーラルQ『ノリが悪いぞ、ピヨ麿!』

 

 コーラルQの態度に文句を言いつつも、清麿はムロム・ロボルクを発動させた。コーラルQの時と違い、変形ではなく変身という形でガッシュの体はゴムになり、マーキュリー・ジケルドンに吸い込まれてもダメージを一切受けなかった。

 

ゼオン「ゴムの体になっただと!?」

 

デュフォー「(ゴムは電気が通らないからな。あの状態でマーキュリー・ジケルドンに吸い込まれてもダメージは全くない)」

 

 ガッシュの状態を理解したデュフォーはすぐにマーキュリー・ジケルドンを解除した。

 

ベルギム『ガッシュよ、椅子に座ってあいつをお仕置きだ!』

 

ガッシュ「ウ、ウヌ…」

 

 今度はベルギムの姿がガッシュペアとなぜかキャンチョメペアにも見えた。

 

キャンチョメ「フォルゴレ、ベルギムが見えるよ!」

 

フォルゴレ「あ、あのベルギムが?」

 

 コントロールルームの椅子がある柱にガッシュは飛び移って座った。

 

清麿「ディオガ・リュウスドン!」

 

 ガッシュの口からディオガ・リュウスドンが発射された。

 

デュフォー「ジャンプ!!」

 

 指示に従い、ゼオンは飛び上がってディオガ・リュウスドンをかわした。

 

キース『ガッシュよ、このキース様の力を使う事をありがたく思うのだ!』

 

バリー「(キース…!)」

 

清麿「(これで変な奴の力を借りるのは3回目か…)ディオガ・ギニスドン!」

 

 次はキースの姿が見え、ガッシュはディオガ・ギニスドンを放った。ゼオンはディオガ・ギニスドンをマントでガードした。

 

キース『ガッシュ、バリー、どっちかが魔界に帰る時には人間界のとびっきりうまい芋を持ってこい!そうしたら、その芋を栽培していも天を作ってお前達に食べさせてやるぞ!』

 

バリー「い、いも天……?」

 

グスタフ「(キースはいも天が余程好きなようだな…)」

 

ジェデュン『ヤンコヤンコ!』

 

 次はジェデュンの姿がガッシュペアに見えた。

 

ガッシュ「(何と言っているのだ?)」

 

清麿「バビオウ・グノービオ!」

 

 多くの巨大なヘビが出現した。

 

デュフォー「ソルド・ザケルガ!」

 

 対するゼオンはソルド・ザケルガでヘビを次々と切り刻んだ。その後に見えたのはアースだった。

 

アース『何としてゼオンを倒し、ファウードを止めるのだ!』

 

清麿「ヴァルセレ・オズ・マール・ソルドン!」

 

デュフォー「ジャウロ・ザケルガ!」

 

 ヴァルセレ・オズ・マール・ソルドンが放たれたが、ゼオンはジャウロ・ザケルガを放ち、デュフォーの指示で操作して全て相殺に持ち込んだ。今度はツァオロンの姿が見えた。

 

ウォンレイ「あの魔物はツァオロン!」

 

ティオ「あいつも力を貸すの?」

 

ツァオロン『あの気に入らねえ野郎を王にするな!』

 

清麿「ザークオウ・ギルエルド!」

 

 ガッシュの手に棍が出現してから、シュモクザメが出現した。

 

デュフォー「テオザケル!」

 

 ザオウ・ギルエルドの強化版、ザークオウ・ギルエルドが放たれたが、ゼオンはデュフォーの指示通りにテオザケルを撃ち込んで相殺させた。ガッシュとゼオンは互角であったが、デュフォーは清麿に違和感を感じていた。

 

デュフォー「(なぜだ?なぜ清麿は俺と同等の答えを出し続ける事ができる?清麿のアンサー・トーカーは俺より未熟なはずなのに…?)」

 

清麿「デュフォー、アンサー・トーカーが俺より優れているのなら、お前と同等の答えを出し続けられるのかがわかるんじゃないのか!?」

 

 その答えをデュフォーは求めたが、答えは出てもデュフォーには理解できるものではなかった。

 

デュフォー「(愛?絆?守りたい物?生きようとする意志?それがなぜ清麿にあの力を?)」

 

清麿「アリシエも言ってたがな、人は本当に心から守りたいものがあれば限界を超えた力を出せるんだ!」

 

デュフォー「なぜだ?俺とお前は似ている。能力があったばかりに他者に排除され、貶められてきた。それなのに、なぜお前は世界を守ろうとする?」

 

清麿「…確かに、昔の俺は世界なんてどうでもいいと思っていたからな。だが、ガッシュと会ってからは色んな人と会って来た。仲間となった魔物やそのパートナー、そして最愛の恵さんといった大切な存在ができた!俺の家族や恵さん、そして大切な人達を守るためにも、お前達には絶対に負けられないんだ!!」

 

 清麿の気迫にデュフォーは怯んでしまった。そして、ロデュウの姿が見えた。

 

ロデュウ『ゼオンをぶっ潰してやれ!』

 

清麿「ディオガ・ラギュウル!」

 

 ガッシュのマントが変形し、ゼオンに襲い掛かった。清麿に怯んだデュフォーは思考が停止し、答えを出せなかった。

 

ゼオン「何をしている!?デュフォー!」

 

 ディオガ・ラギュウルはゼオンがマントでガードしたが、デュフォーの最適な指示がなかったためにダメージを少し受けてしまった。

 

清麿「デュフォー!なぜ、俺が限界を超えた力を出せるかの答えを出せても、頭の中で理解できないようじゃ、どうにもならないよな!」

 

 清麿の言った事は的中していた。

 

ゼオン「デュフォー、お前の憎しみは清麿やアリシエに怯んでしまうほどヤワなものだったのか!?今までと違う景色を見るためにも、あいつらに怯むな!」

 

 怯んでしまったデュフォーだったが、すぐにいつもの様子に戻った。次はブザライの姿が見えた。

 

清麿「ディオガ・ガズロン!」

 

デュフォー「ラウザルク!」

 

 次はブザライの術を使ったが、ゼオンはラウザルクで強化された後、ディオガ・ガズロンを受け止めて破壊した後、ガッシュに迫った。

 

清麿「ガッシュ、この金色の本は魔界に帰った魔物だけでなく、まだ残っている俺達の味方の魔物の術も使えるようだ。ウォンレイ、お前の術も使うぞ!」

 

ウォンレイ「みんなを守るためにも、私の術を使ってくれ!」

 

清麿「ディオウ・バウルク!」

 

 ウォンレイの術でガッシュの身体能力は向上し、ゼオンと互角の肉弾戦を繰り広げた。その後、ゼオンは距離をとった。

 

デュフォー「レード・ディラス・ザケルガ!」

 

 雷のヨーヨーがガッシュに迫った。

 

バリー「ゼオンの野望を打ち砕いてやれ!」

 

清麿「ディオウ・ドルゾニス!」

 

 右手に竜巻のドリルを装備し、清麿の指示でガッシュは雷のヨーヨーの弱所にドリルをぶつけ、ヨーヨーを破壊した。

 

デュフォー「ジャウロ・ザケルガ!」

 

 ジャウロ・ザケルガがガッシュに迫った。

 

レイン「世界をあいつらの好きにさせるな!」

 

清麿「ガルバドス・アボロディオ!」

 

 ガルバドス・アボロディオはジャウロ・ザケルガを全弾掻き消してしまった。すぐにゼオンはそれを回避した。それから、一進一退の攻防は続き、ガッシュもゼオンも息が上がっていた。

 

清麿「ジオウ・レンズ・ザケルガ!」

 

デュフォー「ジガディラス・ウル・ザケルガ!」

 

 ガッシュの力の結晶の術とゼオンの力の結晶の術がぶつかり合い、相殺された。

 

ゼオン「デュフォー、これ以上やっても埒があかん!一気に最大呪文で勝負を決めるぞ!」

 

 デュフォーはシン・ジガディラスを放つために心の力を最大まで溜めていた。清麿の方もデュフォーが最大呪文を撃つという答えが出たために、シン・ジガディラスを破る方法を見出した。

 

清麿「ガッシュ、今の状態だとバオウとシン・ジガディラスは互角だが、シン・ジガディラスを打ち破る答えは出ている。一気に行くぞ!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

 そう言っていると、ファウードを魔界に帰す装置を守っているレイラとパムーンの姿が映った。

 

パムーン『俺達の出番のようだな』

 

レイラ『必ず勝つのよ、ガッシュ!』

 

清麿「ミベルナ・マ・ミグロン!」

 

 たくさんの月が現れた。

 

ゼオン「何をする気だ?」

 

清麿「ファイア!」

 

 月は爆発した。

 

ゼオン「何をするかと思えば」

 

デュフォー「いや、これは…!」

 

 清麿が何をしようとしているのかはデュフォーにはわかっていた。煙が晴れると、そこにはファルセーゼ・バーロンで呼び出した星があった。

 

ゼオン「あの星は何だ?」

 

ガッシュ「行くぞ、ゼオン!」

 

清麿「俺はガッシュや恵さんにみんなと一緒に必ず生きて帰る!バオウ・ザケルガ~~ッ!!!」

 

 バオウが再び姿を現した。

 

ゼオン「やはり、最後はバオウで決めるのか。こっちも行くぞ、デュフォー!」

 

デュフォー「シン・ジガディラス・ウル・ザケルガ!!」

 

 進化した雷神も姿を現し、バオウへ向けて電撃を放つチャージを始めた。

 

ゼオン「ガッシュ、俺のシンで今度こそバオウを打ち砕いてやる!」

 

デュフォー「ゼオン、どうやら清麿はどうすれば確実にシン・ジガディラスを破る答えを出したようだ」

 

ゼオン「何!?」

 

 バオウは途中にあった星を食べた。すると、その巨大な姿が更に巨大化して進んでいった。

 

ゼオン「星を食べたらバオウが巨大化しただと!?」

 

デュフォー「あの星はザグルゼムでバオウを強化するために出したものだ」

 

ゼオン「ザグルゼムで…?そうか!」

 

 月を爆発させたのが、ファルセーゼ・バーロンの星にザグルゼムを当てるのを邪魔されないようにするというのがゼオンにも理解できた。

 

清麿「バオウ、ゼオンの雷を食い尽くせ!!」

 

バオウ「バオオオオオッ!!!」

 

ジガディラス「ジガアアアアッ!!!」

 

 シン・ジガディラスから強烈な電撃が発射されたが、バオウはそれを喰らいながら進んでいき、シン・ジガディラスに迫り、シン・ジガディラスも手を使ってバオウとの取っ組み合いを行った。

 

バリー「すげえ力のぶつかり合いだ…!」

 

パティ「その調子よ、ガッシュちゃん!とっととあの雷神を食い尽くしなさい!!」

 

 取っ組み合いでも少しずつバオウが押していった。

 

ゼオン「まさか、シン・ジガディラスをここまで押すとは…上等だ、ガッシュ。さぁデュフォー、俺達も負けるわけにはいかんぞ!出してみろ、お前の憎しみの全てを!あんなバオウに負けるようなものではないだろう!?俺達の持つ力に答えを出そうじゃないか!!」

 

 デュフォーは憎しみを全開にした。

 

ティオ「いける…いけるわよ!」

 

チェリッシュ「これなら、ゼオンのシン・ジガディラスに打ち勝てるわ!」

 

サンビーム「あのゼオンの本の輝きは何だ?」

 

サウザー「どういう事だよ、オヤジ。本の輝きがどうか」

 

 一同も遠くからでもデュフォーが持つ本の輝きに気付いた。それと同時にシン・ジガディラスはバオウを押し返した。

 

ウォンレイ「何っ!?バオウを押し返しただと!?」

 

レイン「あのバオウはさっきまでシン・ジガディラスを押していたはず!一体、何が起こったんだ!?」

 

清麿「(デュフォーの心の力だ!奴の本が一気にドス黒い光を放った!ザグルゼムで強化したバオウを押し返すほどの力…ガッシュが前に言った通り、奴の凄まじい憎しみによるものか!)」

 

ゼオン「そうだデュフォー、俺達の力はこんなもんじゃない!お前の全てを吐き出すんだ!」

 

 憎しみを最大に引き出しながらデュフォーは過去の出来事を思い出していた。

 

 

 

回想

 それは、デュフォーが幼い頃の事だった。

 

研究者「彼かね、例の少年は?」

 

グレース「はい。学会の権威が数日を要する難問でも数十秒で答えを出します。まだ『ムラ』がありますが、調子のよい時は一瞬で答えを出すほどです」

 

デュフォー「お母さんはどこ?何で家に帰してくれないの?」

 

研究者「我々の研究に付き合ってくれれば帰してあげるよ、少年D」

 

 しばらくした後、

 

デュフォー「ミス・グレース、なぜ僕が餌をあげてたネズミを殺した?」

 

グレース「朝に出した問題を全て正解したら教えるとの事です」

 

デュフォー「こんなものはもうできている。早く僕の問いに答えろ!」

 

 それに応えるかの如く、研究者が入ってきた。

 

研究者「はっはは!どうだ?見事なものだろう?彼の持つ『ムラ』は私の分析通り感情によるものだ。怒った時、憎しみを持った時に彼の力は一番発揮される。少年D、ネズミを殺したのは私だ。殺した理由は『君を怒らせるため』だよ!」

 

 それから後…

 

研究者「ほう…テスト用紙を破り棄てたか…。もう我々の言いなりにはならんという事か?よかろう。では、次の実験だ。君の脳の活動をそのものを研究させてもらう。君が怒った時、君の脳で一体何が起きてるかをな。どのみち我々に協力せねば、君はお家に帰れないんだよ…」

 

 さらにそれから後…

 

研究者「君の母親からの手紙だが…内容が陳腐で品性のかけらもないね。君に同情し、話し相手になってたミス・グレースはいなくなったよ。もう君と会う事もない」

 

 その後…

 

研究者「君の研究が何に使われてるかって?戦争さ、人殺しの道具だよ。君が今までに解いてくれた難問の答えでどれだけ素晴らしい人殺しの道具ができたと思う?君のお母さんももう死んでるかもね」

 

 そして、年月が過ぎ…

 

研究者『さぁ、D、お前の持つ才能も円熟期を迎えた。これより君をこの施設から出す事にする。外に出るまでの扉は7つ。それぞれの扉を開けるには扉のコンピュータに出された問題を解く事。回答の正否はこちらでモニターしている何十名の学者で判断する。世界最大の難問と呼ばれるものばかりだが、君なら解けるだろう』

 

 デュフォーは容易く問題を解き、扉を開けていった。

 

研究者『なにせ、ここから出られたら憎い私を殺す事ができるのだからね。君のアンサー・トーカーの才能が発揮されるのは学問に限らない。危険回避、難病の治療、憎い人間の殺し方、その全てに「答え」を出す事ができる。まさにスーパーマンだ!君を敵に回したらこれほど怖い存在はないだろう。そこで我々は…君を研究施設ごと北極の地にて破棄することに決めた』

 

 扉を出た先に広がるのは北極の氷の大地だった。

 

研究者『君の頭でなら、もう答えは出ているはずだ。じきに爆発を起こす施設、大自然の前での人間の無力さ。君がここで生き残れる可能性は0だよ。君が扉を開けるために解いた難問の答えには感謝している。本土で見ていた学者達もみな満足するものだ。これでまた、画期的な人殺しの道具ができよう。そう…最後に教えてあげよう。君のお母さんだがね…彼女はお金ほしさに君を我々に売ったんだよ。1万ドルというはしたかねでね。死の前に君の最大の謎が解けたね。おめでとう…D…』

 

 その直後、施設は爆発した。だが、その爆発の前にデュフォーはある人物の命を救われた。

 

ゼオン「お前、その本を読んでみろ」

 

 その人物こそ、ゼオンであった。

 

 

 

 バオウはシン・ジガディラスに一気に押された。

 

キャンチョメ「まずいよ!このままじゃ…」

 

ティオ「恵、ガッシュが!」

 

 バリー戦でガッシュと清麿がバオウに食われる所を見たティオと恵は再びガッシュが黒くなっている事に気付いた。バオウがシン・ジガディラスに押されている姿を見て、先に動き出した仲間達はティオペアであった。

 

恵「…行くわよ、ティオ…!」

 

ティオ「ええ!」

 

 恵は清麿へ、ティオはガッシュの方へ向かった。

 

清麿「くそっ、デュフォーの力がこれほどのものだったとは…!」

 

 そんな清麿を恵が支え、ガッシュをティオが支えた。

 

清麿「恵さん!」

 

恵「清麿君は私が支えるわ!ガッシュ君を支える清麿君を支えるのが、恋人である私の役目!」

 

ティオ「ガッシュは私が支えるわよ!」

 

 続いて、コルルペア、パティペア、チェリッシュペアもガッシュを支えた。

 

コルル「私達も支えるよ、ガッシュ!」

 

しおり「いつもガッシュ君は太陽のように輝いていたから」

 

ウルル「私達は絶望の中でも希望を持ち続ける事ができます!」

 

パティ「だから、ゼオンのシン・ジガディラスを打ち破るのよ、ガッシュちゃん!」

 

ニコル「負けないで!」

 

チェリッシュ「私は坊やとその友達に支えられたからゼオンから受けた恐怖を振り切る事ができた。だから、今度は私が坊やを支える番!」

 

 他の魔物達とパートナー達もガッシュを支えてくれた。

 

アリシエ「僕も支えるぞ!」

 

リーン「ダンナが命をかけて守ったガッシュのために、あっしも支えますぜ!」

 

キャンチョメ「負けるな、ガッシュ!お前はかっこよくて強い奴なんだぞ!」

 

フォルゴレ「強くて優しいガッシュはカバさんなんだ!」

 

サンビーム「ウマゴン、友を支えるぞ!」

 

ウマゴン「メルメルメ~!」

 

サウザー「俺達も遅れるなよ、カルディオ!」

 

カルディオ「パルパルモーン!」

 

ミール「ここまで来たからには、私達も最後まで付き合うわ!」

 

ゴーム「ゴォオオッ!!」

 

グスタフ「私達も支えるぞ!」

 

バリー「俺はお前に会った事で更なる高みを目指す事ができたんだ!」

 

レイン「ガッシュのお陰で変わる事ができた!」

 

カイル「今度は僕達が支えるよ!」

 

リィエン「絶対に」

 

シェリー「世界を」

 

エル「救ってください!」

 

モモン「僕達も支えるから」

 

ウォンレイ「ゼオンを…」

 

ブラゴ「ぶっ飛ばせ!」

 

 シン・ジガディラスはバオウを押し続けていた。

 

ゼオン「そうだ、デュフォー!お前がその本を読めば壊せぬものはない!俺とお前の力があれば勝てないものはない。俺達を苦しめてきた者達…全てぶち壊すんだよ!!」

 

 しかし、バオウは押されてはいても、壊れなかった。

 

ゼオン「何…?壊れんだと!?なぜだ、この力に勝てるものなど…」

 

デュフォー「(何だ…?あの力は…!?何だ…あの強い光は…?それに、既に魔界に帰った魔物やその場にいない魔物とそのパートナーもうっすらとした姿だが、いる…)」

 

 デュフォーやゼオンにはガッシュを支えているティオ達以外にも、既に魔界に帰った魔物達やその魔物のパートナー、今もファウードを魔界に帰す装置の防衛をしていてその場にいないパムーン達の姿も幻影ではあったが、ガッシュを支えていた。

 

ゼオン「(なぜ魔界送りになった奴等まで…?)」

 

 疑問に思ったゼオンだったが、ガッシュが魔界送りになった魔物や、仲間の術を使った事にある答えを見出した。

 

ゼオン「(そうか…アシュロンの言っていた事はこれだったのか…)」

 

 清麿を支えている恵とガッシュを支えているティオ達もバオウに食われて体が黒くなっていた。

 

ティオ「痛い…、ガッシュと清麿はバリーとの戦いではこんな痛みの中でバオウを撃ってたのね…!」

 

恵「でも、清麿君やみんなと一緒にガッシュ君を支えるわ!」

 

デュフォー「(奴等の合わせた力がガッシュとバオウを支えてる。いや、それだけではない。ガッシュは俺の憎しみを…)」

 

 デュフォーにはガッシュは気絶していながらも、涙を流しているのを見つけた。

 

ガッシュ「(ゼオン、デュフォーよ!お主達の憎しみは強い!だが、それは己の恨みを晴らすためだけのもの!己のためだけの悲しい力だ!そしてデュフォーよ!お主のこの憎しみは…、私が感じるこの辛き思いは…)」

 

デュフォー「(泣いている…。俺の憎しみや怒りを受けて…あいつは悲しんで…泣いている…。なぜ…)」

 

 ガッシュの姿を見て、デュフォーの目に涙が流れた。

 

ガッシュ「(バオウよ!この悲しき力を…全て食べ尽すのだ!!)」

 

バオウ「バオオオオッ!!!」

 

 仲間に支えられたガッシュに応えたバオウは一気にシン・ジガディラスを押し返し、シン・ジガディラスの手を握りつぶして一気に食い尽くそうとした。

 

清麿「よしいけ、バオウ!そのままシン・ジガディラスを打ち破れ~~!!」

 

ゼオン「負けるな、シン・ジガディラス!デュフォー、何をやっている!?お前の憎しみはまだ…」

 

 ゼオンは涙を流しているデュフォーの姿を見た。

 

ゼオン「そうか、デュフォー…お前も…」

 

 それと同時にシン・ジガディラスはバオウに食い破られた。

 

ゼオン「そうだ、デュフォー。これが答えだ。これが俺達の力の…だが…、お前だけは絶対にしなさんぞ、デュフォー!」

 

 デュフォーをマントに来るんだ後、ゼオンはデュフォーを引き離した。

 

デュフォー「ゼオン…」

 

ゼオン「俺はもう満足している。だが、お前はこれからだ…」

 

 その瞬間、ゼオンはバオウに食われた。激しい兄弟同士の対決が終わった瞬間であった。




これで今回の話は終わりです。
今回はガッシュとゼオンの最後の戦いを描きました。
金色の本はアニメ版の能力向上と原作の他の魔物の術も使えるというのが合わさっていますが、他の魔物の術も使えるという効果が弱体化しているのはシンの連発でゼオンに勝っても何の面白みもないため、ゼオンとは接戦の末に勝つ方がいいと判断したためです。
最後のザグルゼムで強化した強化真バオウとシン・ジガディラスのぶつかり合いは最大まで手を尽くした上で絆の力で勝利するという流れになっています。
次の話でファウードを止めます。


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LEVEL75 ゼオンの願い

回想

 前の戦いの時と同じようにゼオンはガッシュの記憶の映像を見ていた。

魔界王「ガッシュ…ガッシュ…ガッシュ…」

 

ガッシュ「う…お~~、う~~~」

 

魔界王妃「起きましたわ…あなた…」

 

魔界王「うむ、ガッシュよ…これからいう父の言葉をよく聞くのだ。お前をこの王城から民間の町へと移す。父と母と一緒に暮らせなくなるのだ。理由は我が体に宿る術、『バオウ・ザケルガ』をお前の体の中へと受け継がせたからだ。厳しき宿命を背負わせることを許してくれ。双子の兄、ゼオンは私の心の修羅な部分を多く受け継いでしまった。怒りや憎しみを持ちやすい子だ。きっとゼオンがバオウを使えばたちまち悪い心をバオウに支配され、そのすべてをバオウに食われてしまう。お前しかいないのだ。バオウを目覚めさせぬ可能性を持つ者は…。ガッシュの中にバオウがあると知られれば、バオウの真の恐ろしさに気付かず、無理矢理バオウを目覚めさせようとする者も出てこよう。だからガッシュ、お前を生まれなかった事にしてバオウを隠す。許せ、バオウは年老いた私では手に負えぬ術となった。お前達どちからの体に眠らせなければ、バオウは魔界の全てを滅ぼしにかかる。ゼオン、ガッシュ、そして我が魔界、全てが無事であったほしい。そのための苦渋の決断だ」

 

 ガッシュはユノという老婆に引き取られ、王城から移された。

 

ユノ「さぁ、ガッシュ。今日からここがお前の家だよ」

 

 ここまでは前の戦いの時と同様だった。しかし、ゼオンには王になった後に過去の体に魂が移ったガッシュの記憶と、王になった後のガッシュの魂の移り先となった過去のガッシュの記憶の映像が見えていた。

 

ゼオン『(どういう事だ?二つのガッシュの記憶の映像がある…)』

 

 過去のガッシュの記憶の映像では、ユノからの虐待でガッシュの心は未来のガッシュ以上にすり減っていた。

 

ガッシュ「ユノさん…、どうして僕に本当の家族がいる事を教えてくれなかったの…?」

 

ユノ「あんたに家族なんかいるものか」

 

ガッシュ「嘘だ!僕は聞いていたんだ!家族がいるって!」

 

ユノ「だから、そんなものはいないと言ってるだろ!」

 

ガッシュ「ユノさんは最初から僕をお金を受け取るための道具としか見ていないんだ!ユノなんて…ユノなんて大っ嫌いだ!!!」

 

 虐待に耐えられなくなったガッシュは遂に怒りと憎しみを爆発させてしまい、封印されていたバオウを目覚めさせてしまった。

 

ユノ「ひ、ひぃいいいいっ!!!!」

 

 直後、大きな爆発があった。ユノの家の近所にいた優しくて若い女がユノの家に来ると、そこには意識不明の重体となったユノと、意識を失ったガッシュがいた。

 

若い女「ガッシュ君、何があったの?しっかりして!」

 

 優しい声に反応し、ガッシュは目が覚めた。

 

ガッシュ「……僕はどうしたの…?」

 

若い女「何も覚えてなくてもいいの。今まで私が色々と相談に乗ってたけど、辛かったでしょう。だから、今日から私がガッシュ君を育てるわ」

 

 若い女は魔界王の使いと話をしていた。

 

使い「では、王妃様の妹であるあなたが今日からガッシュを育てるというのですね」

 

ガッシュの叔母「はい。あの爆発は恐らく、ガッシュ君がユノからの虐待に耐えられなくなったせいで強大な力を暴走させてしまった事が原因だと推測しています」

 

使い「わかりました。王と王妃の子供のガッシュをあなたに預けます。なお、ユノは怪我が治り次第、処罰します」

 

 これまでの虐待が明るみになったため、回復した後に処罰を受ける事が決まったユノは病院へ運ばれ、ガッシュの叔母がガッシュを引き取る事となった。

 

ガッシュ「僕には本当にお父さんとお母さんがいるんだね?」

 

ガッシュの叔母「そうよ。私の姉さんはガッシュのお母さんなの。今はお父さんと一緒に事情があって会えないけど、いつもあなたの事を心配しているのよ。それに、ガッシュにはお兄ちゃんもいるのよ」

 

ガッシュ「お兄ちゃんも…。私には…お父さんがいる…。お母さんがいる…。お兄ちゃんが…欲しかったお兄ちゃんまでいるのだ…」

 

ガッシュの叔母「そうよ、あなたは独りぼっちなんかじゃないわ」

 

ガッシュ「ううっ、うううううっ!!」

 

 ガッシュの叔母の温かさと本当の家族がいる喜びにガッシュは涙を流し、ガッシュの叔母に抱き付いた。そしてガッシュが寝た後…。

 

ガッシュの叔母「(やはり、噂に聞いたガッシュの中に眠るバオウの力が目覚めたまま学校に行ったら、力加減ができないガッシュは知らずに他の子を傷つけるかも知れない…。力を抑えなければ…)」

 

 寝ているガッシュに気付かれないようにガッシュの叔母はガッシュの力を抑える封印術を施し、誤って強大な力が使えないようにした。

 

 

 そして翌日…

教師「では次のこの問題…。ガッシュ、やってみろ」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

教師「ウヌ!?」

 

ガッシュ「私がその問題を解いてみせるのだ!みなもよく見ておるがいいぞ!」

 

 ガッシュの話し方にコルルやティオを含む子供達は驚いていた。

 

子供A「何だよガッシュ、その話し方!」

 

子供B「王様みたい!」

 

子供C「バカじゃねーの?」

 

子供D「そうそう、昨日、ガッシュの家が爆発したんだぜ。原因はわかってないけど、ガッシュに呪文1発で家を壊す力とかねえだろうけどな」

 

 ユノの家の爆発の本当の原因はガッシュが怒りと憎しみを爆発させた事によるバオウの暴走であった。この事はこの場にいる誰もが知らなかった。無論、ガッシュ本人さえも。

 

ガッシュ「(こういう喋り方をしていれば王であるお父さんもお母さんも私に気付きやすいのだ…。叔母さんの言った通り事情があって会えないけど、いつも心配してくれてるのだ!だから私も元気な所を見せねばいかんのだ!こういう喋り方をしてれば私を忘れないでいてくれる…)」

 

 叔母に引き取られた後、虐待で心がすり減った挙句、怒りと憎しみを爆発させたユノの時とは違い、多少の寂しさはあったものの、叔母にたくさんの愛情を注がれてガッシュはゼオンのように歪む事なく、すくすくと育っていった。

 

ガッシュ「行ってきますなのだ!」

 

ガッシュの叔母「いってらっしゃい!(姉さん、ガッシュはすくすくと育っています。心の中では本当の親と暮らせないが故の寂しさもありますが、お父さんとお母さん、そしてお兄さんのゼオンと家族一緒に暮らせる日が来る事を信じて明るく振る舞っています)」

 

 

 

???「ゼオン…ゼオン…」

 

 二つのガッシュの記憶の映像を見てる中、声がしてゼオンが目を開けると、そこにはガッシュがいた。本の色は戦いが終わり、元の赤に戻っていた。

 

ガッシュ「ゼオン!」

 

ゼオン「許せ、ガッシュ…兄が愚かだった…」

 

コルル「生きてるみたいだよ!ティオ、サイフォジオで」

 

ゼオン「大丈夫だ。余計な事をするな」

 

ティオ「何ですって!?私の力がよけいだなんて」

 

チェリッシュ「待つのよ、ティオ。ゼオンの本に火が…」

 

 ゼオンがサイフォジオが余計だと言った理由が、既に本に火が付いたためだったため、ティオも納得した。

 

ゼオン「ガッシュ、残った時間で俺のわがままを聞いてくれ。俺はどうしてもお前の記憶が見たい。お前の記憶にはどうしても不可解な所がある。それに、バオウの事を最初から知っていたりするのも不自然だ。見せてくれないか?」

 

パティ「ガッシュちゃんの記憶に不可解な所?」

 

ガッシュ「ウヌ、いいのだ」

 

 ゼオンはガッシュの頭に手を当ててみて、ガッシュの記憶を見た。

 

ゼオン「(何だ?この記憶は…?)」

 

 ガッシュの記憶を見ていたゼオンには、ガッシュが前の戦いで経験した出来事などが見えていた。

 

ゼオン「(さっきのぶつかり合いと同じような光景だ。それに…クリアとどうして戦っているんだ…?)」

 

 ますます疑問に思うゼオンだったが、最後にガッシュが王となるのを見て、全ての真実に気付いた。

 

ゼオン「(そうか…。だから、バオウやファウードの事も…)」

 

しおり「さっきからどうしてるのかしら?」

 

ゼオン「ガッシュ、知らなかったとはいえ、テッドの言った通りお前を憎む兄が情けなくてバカだった。真実から目を背け、未熟な心で力を求めた兄が愚かだった。俺は…具体的ではなかったが、バオウがどういった術か聞いても、バオウの真の姿を目の当たりにし、お前の記憶の断片が少しだけ見えても、俺はその事実を受け止め、認める勇気がなかった…。それを認めてしまったら今までの事を全て否定してしまうから、全てを知ろうとせず、意固地に自分が正しいと言い聞かせた…。空しさが増すだけなのにな…。だから、最後に本気で勝負をしかけた。俺の過ちを確かめるため、そして父が俺達のためを思ってくれたかを確かめるために。ガッシュに不幸を与え、俺に過ちを犯させただけか?それとも、俺達2人を正しい道へ歩ませてくれるものか?心の奥では負ける事を望んでいた…。こんな憎しみの力だど、俺事すべてを壊してくれと思っていた…。そしてお前は既にバオウを使いこなしたばかりか、仲間や魔界に帰ったアシュロン達の力を借りて俺の力、シン・ジガディラスを打ち破った。父よ、喜べ。父の苦悩は晴らされたぞ。俺はガッシュを、父を恨む事はなくなり、ガッシュはバオウを使いこなすばかりか、王に相応しい姿を見せつけた。これで…、これで…」

 

ガッシュ「ウヌ、私とゼオン、一緒に…家族一緒に暮らせるのだ…」

 

 分かり合えた兄弟の姿に女子のほとんどが泣いていた。

 

パティ「うわあああん!涙が止まらないわよ~~!!」

 

恵「やっとお兄さんと分かり合えたのね…」

 

チェリッシュ「ゼオンに痛めつけられたのに、涙が止まらないわ…!」

 

ティオ「チェリッシュったら、家族の事には涙脆いのね…」

 

 男達も一部泣いていた。

 

バリー「エルザドルとの戦い以来だ…、涙が止まらねえのは…」

 

ゼオン「デュフォー、お前は生きろ。最後のバオウとの戦いでお前は憎しみや怒りを全てぶつけた。そして、ガッシュに何かを見たな?」

 

デュフォー「(ああ…ガッシュは俺の憎しみや怒りを全て受け、涙を流した…。そして俺は…これがなんなのか、清麿が自分の力の限界を超え、俺と同等の答えを出し続けられたのが何なのか、答えは出ない。だが…)」

 

ゼオン「生きてくれ、デュフォー。俺の願いだ。お前のように凄い奴がこのまま過去に縛られ、消えていくのは耐えられん。お前も感じたはずだ。憎しみや怒りの力がどれだけ空しいかを…。そしてガッシュとの戦いで『何か』が生まれた。まだそれが何なのか、お前はわからんかも知れん。だが、どんな手を使ってもその答えを探せ。きっとその先に違う景色がある。もう『いつ死んでもいい』などという考えを持ったら、許さんからな!!」

 

デュフォー「……わかった。約束しよう」

 

 しかし、そんなムードを壊すかのようにファウードの鍵が壊れてしまった。

 

アナウンス『警告します。コントロールキーが壊されました。これよりファウードの行動は制御不能になります。後、10分で日本に到着します』

 

シェリー「鍵が壊されたら…」

 

リィエン「ファウードは止められないある!」

 

フォルゴレ「清麿、なぜあの鍵まで壊した!?」

 

清麿「知らん、ゼオンがバオウで死なないよう手加減する事で精一杯だったんだ!!」

 

キャンチョメ「あんなでかい奴、シン・ポルクを使ってもどうにもならないよ!!」

 

清麿「そうだ!ファウードを魔界に帰す装置がある!」

 

サンビーム「だが、パムーン達が生き残っているかどうか…」

 

ゼオン「ガッシュ、手を…」

 

ガッシュ「ウヌ」

 

 前の戦いの時のようにゼオンはガッシュに自身の雷の力を全て渡した。

 

ゼオン「俺の雷の力を全てお前に渡す。これで一度きりだが、バオウはもっと強くなる。父が使っていた頃のバオウは千年近く鍛え上げられ、究極の強さを持っていた。その力にどれだけ近づけるかわからんが…我ら双子に二分された力を一度元に戻すんだ。そうすればファウードを止められる可能性は0ではない。俺の力が+されるのは一度きりだ。必ず当てろ。デュフォー、外へ出る手伝いをしてやってくれ。お前と清麿の力なら、できるはずだ。ファウードやバオウの事を知ってるのなら、もう一つの地獄もガッシュは知っているはずだ。ガッシュ、王になれ。きっと父上や魔界に帰った仲間達もこの上なく喜ぶ。デュフォー、お前といた時間、楽しかったぞ。お別れだ…(デュフォーもガッシュの正体に気付いてるはず。じゃあな、未来のガッシュ…)」

 

 記憶を見た事で目の前にいるガッシュが体は現代のガッシュでも、魂は未来のガッシュである事に気付いたゼオンは心の中で別れを告げ、魔界に送還された。

 

清麿「よし、バオウでファウードを倒す前にファウードの中にいるみんなを外へ」

 

サウザー「だが、話を聞いてくれるかどうかわかんねぞ」

 

清麿「緊急事態なんだ!中にいる人間を集めるのはゴーム、お前に任せるぞ」

 

ゴーム「ゴォ!」

 

ミール「まっかせなさい!私達があちこちの脊髄ホールにワープして集めて来るわ!」

 

デュフォー「その前に俺をファウードを魔界に帰す装置がある部屋まで送ってくれ。再びタイマーをセットする」

 

ミール「行くわよ、ゴーム!」

 

ゴーム「ゴォ!」

 

 ゴームはワープでデュフォーをファウードを魔界に帰す装置がある部屋まで送迎した。

 

 

 

ファウード ファウードを魔界に帰す装置がある部屋

 パムーン達はずっと守り続けていた。

 

レイラ「まずいわよ、アナウンスではあと数分で日本に到着するって」

 

パムーン「日本に着いたら1時間近くも暴れまわるのか…」

 

 そんな中、ゴームがワープでデュフォーを送迎してきた。

 

ミール「送ったわ。私達はみんなを集めなきゃいけないから、終わらせるのよ」

 

デュフォー「ああ。1分程度で再度セットできる」

 

 そのままミールはゴームと共に格脊髄ホールにいる人間を迎えに行った。

 

パムーン「お前、機械の扱い方がわかるのか?」

 

デュフォー「そうだ。初めて見る機械でも扱い方がわかる」

 

 デュフォーは再度タイマーをセットした。

 

 

 

ファウード コントロールルーム

 ゴームによって次々とコントロールルームに集まってきた。デュフォーもタイマーの再セットが終わってから、ゴームに送迎してもらった。

 

ミール「これで全員よ」

 

デュフォー「タイマーもセットし直した。これで1時間近く待たずとも、ファウードを魔界に帰す事ができる」

 

グスタフ「ファウードを止めるのはバオウでやるのか?」

 

清麿「ああ。ファウードは魔界の脅威。それを止められるのは、同じ魔界の脅威のバオウしかない!」

 

エリー「このままファウードが進むと日本のどこに着く?」

 

清麿「そういえば…」

 

デュフォー「モチノキ町だ」

 

サンビーム「モチノキ町だって!?」

 

 そうしている間にも、遂にファウードはモチノキ町に到着した。

 

 

 

モチノキ町

 ジェット機で追っていたアポロ達も同じくしてモチノキ町に到着した。

 

アポロ「遂に日本に来てしまったか…」

 

ナゾナゾ博士「住民の避難は終わっているようだ」

 

カラオム「どうやってファウードを止めるのか…」

 

???「高嶺君~~!」

 

 どうしようか考えていた途端、涙声がして声が聞こえた方を向くと、そこには鈴芽がいた。

 

ナゾナゾ博士「まさか、逃げ遅れた子か!?」

 

カラオム「危ないからジェット機に乗ってなさい!」

 

鈴芽「ちょっと待ってよ~~!」

 

 問答無用で鈴芽はジェット機に乗せられたのであった。それと同時にファウードの装置でガッシュ達もファウードの外に出た。

 

マリル「清麿とその仲間達ではないか!」

 

恵「マリル王女もファウードを追ってここまで来たのですね」

 

マリル「そうじゃ」

 

鈴芽「高嶺君だ…!」

 

 ジェット機の窓越しに鈴芽は清麿達の姿を見た。

 

清麿「よし、これで全員ファウードから出たな」

 

しおり「ええ、これで全員よ」

 

清麿「行くぞ、ガッシュ!ファウードがこの街を壊す前に止める!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

清麿「必ず当てる!必ず止めるぞ!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

清麿「ゼオンからもらった雷を無駄にするな!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

 ガッシュの本の輝きがとてつもないものになっていた。なお、、ファウードから出る前に清麿はティオの術で心の力をフルに回復させてもらっていた。

 

エリー「アース、俺はいよいよガッシュの父親が使っていた頃のバオウを拝む事になったぞ…」

 

パティ「ガッシュちゃんには勝利の女神がついているのよ!」

 

コルル「だからファウードを」

 

ティオ「確実に止めるのよ!」

 

ガッシュ「ウヌ!ゼオン、力を借りるのだ!」

 

清麿「うおおおっ!!ファウードを打ち砕け~!バオウ・ザケルガ~~!!!」

 

 ゼオンの力を借り、ガッシュはバオウを放った。その放たれたバオウの大きさは前の戦いの時と同様、とてつもない大きさになっていた。

 

キャンチョメ「で、でで…」

 

フォルゴレ「でかすぎる~~!!」

 

エリー「前に見た時とは比較にならんぞ!!」

 

恵「ガッシュ君のお父さんが使っていた頃のバオウってこんなに大きかったの!!?」

 

 バオウの大きさにはアポロ達もびっくりしていた。

 

カラオム「規格外ですぞぉ!!」

 

マリル「こんなものを見るとは…!」

 

バオウ「バオオオオオッ!!」

 

 バオウはそのままファウードと取っ組み合い、ファウードを押していった。

 

清麿「いっけ~~~っ!!」

 

ゼオン『さ…もう一息だ、ガッシュ!』

 

ガッシュ『ウヌ、ありがとうなのだ…ゼオン…』

 

 バオウはそのままファウードを押し、一気にファウードに食いついた。

 

ウォンレイ「やった…やったぞ!!」

 

リィエン「ファウードが動かなくなったある!」

 

 それと同時にファウードを魔界に帰す装置が作動し、ファウードは魔界に帰された。

 

清麿「やった……、やったぞ!!」

 

恵「これで一件落着ね、清麿君!」

 

 ようやくファウードが魔界に帰されたため、恵は嬉しくて清麿に抱き付いた。

 

清麿「め、恵さん!?」

 

恵「生きて帰れたから、これは私からのプレゼントよ」

 恵は清麿にキスした。

 

フォルゴレ「おお!バラ色のシーンを見せてくれるとは…」

 

サンビーム「グルービーだ!」

 

清麿「え…?」

 

恵「そ、その…」

 

コルル「恵お姉ちゃんも清麿お兄ちゃんも顔が赤いよ」

 

しおり「恵ったら、勢いで清麿君にキスしたから、恥ずかしいの?」

 

チェリッシュ「でも、お似合いのカップルである事に変わりないわ」

 

パティ「ねえ、ガッシュちゃん。私達もキスしましょ」

 

ガッシュ「えっと…」

 

ティオ「そんな事させないわよ、パティ!」

 

 またパティとティオの喧嘩が始まった。

 

ウルル「(またか…)」

 

アリシエ「この場にいる君達の中の誰かが絶対に魔界の王様になってほしい」

 

ジード「それが俺達の願いだぜ」

 

パピプリオ「俺も入ってるよな」

 

ブラゴ「……お前のような雑魚は王になるのなんか、1万年かかっても無理だ」

 

パピプリオ「そんな事言わなくても~~」

 

レイン「ガッシュ、約束通り俺を魔界に帰してくれ」

 

カイル「お別れだね、レイン」

 

レイン「なぁに、カイルが勇敢になった上、一緒に戦う事もできて嬉しいさ」

 

 ファウードを止めたため、約束通りレインは本を燃やしてもらい、魔界に帰った。

 

ブラゴ「シェリー、あいつらの戦いぶりを見た以上、もっと強くなるぞ」

 

シェリー「ええ。ガッシュを倒すのは、私達なんだから。あら?そう言えば、デュフォーはどこなのかしら?」

 

 一同が見回したが、デュフォーは見当たらなかった。

 

清麿「(デュフォー、お前は答えを探すための旅に行ったのか…)」

 

 清麿の思った通り、デュフォーは『答え』を探すため、静かに一同の前から去って行った。

 

 

 

 

アフリカ

 それから1か月後、デュフォーはアフリカのある村に来ていた。すると、何やら悲しむ声が響き渡っていた。

 

デュフォー「おい、ここに宿はあるか?」

 

男「お前…薬は持ってるのか?薬をくれたら家に泊めてもいい」

 

デュフォー「薬はない。金ならある」

 

男「そうか…いや、いい。どのみち旅の人が持ってる薬ではあの子の病気は治らない。この近くの医者も治せなかった難しい病気だ。あの子はもう…死ぬ」

 

デュフォー「……一晩泊めてくれ。金は払う」

 

 しかし、夜になっても悲しむ声が静まらず、デュフォーは眠れなかった。

 

デュフォー「おい、あの子供の病気が治ればこの耳障りな喚き声がなくなるのか?」

 

男「何!?」

 

デュフォー「これに書いたコウモリと虫、植物を採ってこい。ここら辺にいる。種類を間違えるな。あと、注射はないだろうから針を、なければ鋭いナイフを用意しろ」

 

 デュフォーの指示通りのものを村人たちが用意した後、デュフォーは子供に処置を施した。

 

デュフォー「これでいい。後は騒ぐな。朝にはよくなる」

 

村人「ほ、本当か?」

 

デュフォー「静かにしてればな。二度とわめくなよ」

 

 そして早朝、デュフォーは日が昇る前に村を出ていった。

 

デュフォー「(これくらい早く出れば日が暮れる前に次の村に着く)」

 

男「おい、お~~い!!」

 

 しかし、村人の1人が来た。

 

男「治った!あの子の病気が治った!」

 

デュフォー「そうか…。だが、人は寿命でいずれ死ぬ。俺が救った事も意味のない事だ」

 

男「なぜそんな事を言う?生きていればあの子も大人となり、異性と結ばれて子供を授かる!何よりお前の行いは偉大だ!生きる事に意味がないというのなら、なぜおまえは生きている?」

 

デュフォー「ゼオンという昔の知り合いとの約束だ。ただ、それだけだ」

 

男「なら、私とも約束してほしい!生きてくれ!あんたは生きなきゃいかん!死んではならん!」

 

デュフォー「なぜだ?」

 

男「あんたはあの子に、我ら村の者達に愛を与えた」

 

デュフォー「愛なんかない。ただ、治しただけだ」

 

男「だが、あの子は愛を感じている。村の者達もお前のやったことに愛を感じている。生きて、また村に来てくれ。私はまだまだお礼を言いたい。何度でも…何度でも!!」

 

 男の流す温かい涙にデュフォーは見覚えがあった。

 

デュフォー「(…この涙は知っている…。ガッシュが俺の憎しみや怒りを全て受け、そして悲しみの涙を流した…。その時の…俺が流した涙…)」

 

男「見ろ…お前は…あれだ!」

 

 村人が指差した方には、太陽が昇っていた。

 

デュフォー「そうか…俺はあいつらに愛を受けていた…。今なら、あの時、清麿が恵を助けるために頭より先に体が動いたのも、恵とティオが命をかけてでも清麿とガッシュを守ろうとしたのも、清麿が限界を超えて俺と同等の答えを出し続けられたのもわかる…。ありがとう、ガッシュ…。そして俺の家族、ゼオン…」

 

 その後、村を去って行くデュフォーだったが、その目の前に見覚えのある人物がいた。

 

グレース「デュフォー、デュフォーなのね!」

 

 デュフォーとの再会を喜ぶグレースはデュフォーを抱きしめた。

 

デュフォー「ミス・グレース…」

 

グレース「デュフォー、あなたに辛い思いをさせてごめんなさい…。あれからあなたに会えなかったのはあの人は私の元を去って行ったと言っていたけど、本当はあの人にクビにされてしまったからなの。私はもっとあなたの傍にいてあげたかったのに…」

 

デュフォー「その答えは既に出している」

 

グレース「もうわかってたのね。デュフォー、私はあなたを養子として引き取ろうと思ってるの。家族がいた方が」

 

デュフォー「気持ちはありがたいが、俺を養子に引き取るというのは断らせてもらう」

 

 グレースの養子になるのを断ったデュフォーは去って行った。そこへ、グレースの夫が来た。

 

研究員「グレース、あの子には既に家族がいたんだよ…」

 

グレース「家族…。あなたから聞いた、銀色の子なのね…」

 




これで今回の話は終わりです。
今回はファウードを止めるのと、原作のファウード戦後のデュフォーのその後を描きました。
どうして逆行したガッシュが早い段階から王族の力が目覚めていたのかは、未来のガッシュの魂が入り込む先となった過去のガッシュが原作と違って過去にユノからの虐待に耐えられなくなり、バオウを暴走させたためという描写にしました。また、ガッシュの叔母は映画第1作の101番目の魔物でガッシュが母親と過ごした記憶の補完描写として出しました。
最後のデュフォーのは原作のシーンに加え、サービスとしてミス・グレースとの再会も描きました。
次の話がラストで、ガッシュは元の時代に帰ってしまいます。それと同時にどうしてガッシュが逆行してしまったのか、ガッシュが逆行した先の過去の世界の魔界の王を決める戦いがどうしてガッシュが経験した戦いと違う所が多いのかも明らかになります。もしかすると、映画のネタもまた出てくるかも知れません。


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LEVEL76 エピローグ

高嶺家

 ファウードでの戦いから、1か月近く経過した。

 

清麿「(あれからもう1か月経つのか…)ガッシュ、朝だぞ!」

 

ガッシュ「ウゥヌ……。清麿、おはようなのだ」

 

清麿「おはよう」

 

ガッシュ「清麿、気になる事があるのだ」

 

清麿「気になる事?」

 

ガッシュ「私に経験した覚えのない記憶があるのだ」

 

清麿「覚えのない記憶?未来の事とかは覚えてるのか?」

 

ガッシュ「未来?」

 

 未来の事を知らないガッシュに清麿はある事に気付いた。

 

清麿「(そっか…。いつの間にか、未来のガッシュは未来に帰ってしまったのか…。だけど、お前と一緒に過ごした日々は決して忘れない。もう会えないかも知れないけど…)」

 

ガッシュ「どうしたのだ?清麿」

 

清麿「いや、何でもない。それより、今日はウォンレイとリィエンの結婚式があるそうだから、中国へ行くぞ!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

 

 

空き地

 ウォンレイとリィエンの結婚式から数か月後、魔物の方は邪悪な魔物は全て魔界に帰ったため、パムーン達は魔界に帰り、残るはガッシュ達だけとなったので、王になるのは誰なのかを決めるべく、集まった。

 

清麿「みんな集まったか」

 

ティオ「恵のマネージャーにも故郷へ帰ると言って別れを済ませたわ」

 

シェリー「当然よ。どの道、魔物とは別れる事になるのだから」

 

ブラゴ「俺達を雷帝にあっけなく負けた時と同じだと思うなよ」

 

シェリー「あなた達を倒すのは、私達よ」

 

バリー「おっと、ガッシュを倒すのは俺だぜ、ブラゴ」

 

グスタフ「バリー、いつまでもこだわるのは小さな事ではなかったのか?」

 

バリー「確かに小さい事さ。けどな、あいつのお陰で俺は更なる高みを目指せた。あいつとは、その高みでもう一度全力で戦いたいと思っていたのさ」

 

グスタフ「ふっ、それもよかろう」

 

サンビーム「まさか、まだこんなに残っていたとはな」

 

ティオ「ガッシュ、約束通り残りは私達だけになったから誰が王様か勝負よ!誰が勝っても恨みっこなし!」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

恵「いくら清麿君の頼みでも、ティオを王様にする事だけは譲れないわよ!どうしてもガッシュ君を王様にしたいのなら、私達に勝つ事ね!」

 

清麿「ああ!」

 

恵「それと、清麿君が勝ったら、頼みを聞いてあげるわ!でも、私が勝ったら清麿君が私の頼みを聞くのよ!」

 

キャンチョメ「僕は今までの落ちこぼれじゃないんだぞ!ブラゴだって怖くないやい!」

 

ウマゴン「メルメルメ!」

 

カルディオ「パルパルモーン!」

 

サウザー「カルディオ、ようやくウマゴンと決着を着けられるな!言っとくけどオヤジ、音速越えはウマゴンの専売特許じゃねえぜ。こっちだってシン・ギドルクを習得したから、スピードでは負けねえぞ!」

 

サンビーム「負けられないのはこっちも同じだ!」

 

ウォンレイ「誰が王になるのかをかけて、行くぞ!」

 

 早速、誰が王に相応しいかを決めるべく、ガッシュ達の戦いが始まった。

 

 

 

 

魔界 王城

 魔界の王城の一室でガッシュは寝ていたが、目が覚めた。

 

ガッシュ「ウヌ?ここは……」

 

 辺りを見回すと、そこは王になった自分が暮らしている城だった。窓を見ると、そこは魔界であった。

 

ガッシュ「どうして私は魔界に帰ってしまったのか?そもそも、今の魔界に帰れば魂だけになるはずなのに…」

 

 そこへ、たまたまラジンが通りかかった。

 

ラジン「ガッシュ様、お目覚めになったのですね!1週間も目を覚まさなかったので、ゼオン様や私達も心配していました!」

 

ガッシュ「ラジン、私はどうして魔界におるのだ?」

 

ラジン「何の事をおっしゃっているのですか?ガッシュ様。まだ夢でも見てるのですか?」

 

ガッシュ「(夢だったのか…?)ブレールド・ディラス・ザケルガ!」

 

 自分が習得した剣の術を発動させると、ちゃんと術が発動した。

 

ラジン「ガッシュ様が新しい術を…!」

 

ガッシュ「おお!これまでの出来事は夢ではないのだ!ところでラジン、私はどうして1週間も目を覚まさなかったと言って居るのだ?」

 

ラジン「ガッシュ様は1週間前にドクターM1の発明したタイムマシンの実験の際の爆発事故で意識を失っていたのです。ガッシュ様がお目覚めにならないため、ゼオン様の怒りはとんでもない事になっています」

 

ガッシュ「(タイムマシン……。そうだ!私は過去に来てしまう前にタイムマシンに乗っていたのだ!)」

 

 どうして自分が過去へ逆行してしまったのかをガッシュは思い出した。

 

ラジン「さ、ゼオン様と両親に元気だと言いましょうか」

 

ガッシュ「ウヌ!」

 

 とある部屋では、ゼオンの怒鳴り声が響いていた。

 

ゼオン「このバカ共が!まだガッシュを目覚めさせる事ができないのか!?」

 

医者「しかしゼオン様、このような事は今まで一度もなかったのです」

 

ドクターM1「もうちょっと時間をいただければ、王様を目覚めさせる発明を…」

 

ゼオン「その言葉はもう聞き飽きた!お前ら全員、バルギルド・ザケルガを受けてみたいのか!!?」

 

前魔界王妃「ゼオン、落ち着くのよ!」

 

前魔界王「苛立つのはわかるが、こうやって怒鳴りつけても何の解決にもならんぞ!」

 

 ガッシュが目覚めないまま1週間経過した事でゼオンの怒りはすさまじくなっており、手が付けられなかった。そこへ、ガッシュとラジンが来た。

 

ラジン「ゼオン様、ガッシュ様がお目覚めになりました!」

 

ゼオン「何っ!?ガッシュが目覚めただと!?」

 

 ガッシュが目覚めた事でゼオンの怒りは静まった。

 

ラジン「きちんとお目覚めになりましたが、何やらどうして魔界におるのかとかよくわからない事を言うのです」

 

ガッシュ「ゼオン、シン・ジガディラスは使えるのか?」

 

ゼオン「シン・ジガディラス?何の事だ?」

 

ガッシュ「わ、私は過去の世界に行って過去を変えたのにどうして未来が変わっておらぬのだ」

 

ゼオン「過去?ガッシュ、何を訳のわからない事を言ってるんだ?そもそもタイムマシンは爆発事故で壊れてしまったんだぞ。過去へ行く事が」

 

ドクターM1「そうか、そういう事か!だから、王様は目覚めなかった上、過去とか言ったか!」

 

 過去などの言葉を聞いたドクターM1は納得した様子になった。

 

ガッシュ「どうしたのだ?」

 

ドクターM1「王様がこれまで目覚めなかった原因や目覚めた王様が過去とか言い出した理由がわかったのです!」

 

前魔界王「本当なのか?」

 

ドクターM1「はい。これは私の推測なんですが、王様は私が発明したタイムマシンの実験の時に起こった爆発事故に巻き込まれた際、肉体と魂が分離し、魂だけが過去の世界へ行ってしまったのです」

 

前魔界王妃「だから、ガッシュは過去とか言い出したのね」

 

ガッシュ「だが、私は色々と過去を変えてしまったのに、どうして未来が変わっておらぬのだ?」

 

ドクターM1「未来が変わっていない原因は、王様の魂が飛ばされたのは我々の世界の時間軸の過去の世界ではなく、別の時間軸の過去の世界。要するにパラレルワールドの過去の世界なのでしょう。そこに飛ばされたのなら、そこでいくら過去を変えてもこの世界の未来は変わらないんです」

 

ゼオン「なるほど。自称魔界一の科学者とだけあって、こういった話には強いな。って事は、ガッシュは実質的に魔界の王を決める戦いをまた経験した事になるな。土産話として、過去の世界の事を俺に聞かせてくれ」

 

 ガッシュはパラレルワールドの過去の世界でこれまで経験した事をゼオン達に話した。

 

前魔界王「向こうの世界では全くといっていい程、多くの者達の性格は変わっていないのか」

 

ガッシュ「ウヌ」

 

前魔界王妃「でも、向こうの世界からよく戻って来れたわね」

 

ガッシュ「その原因は私にはさっぱりわからぬのだ」

 

ドクターM1「何か心当たりはないのですか?」

 

ガッシュ「ウヌゥ……」

 

 ふと、ガッシュは向こうの世界でのゼオンの戦いの時を思い出した。

 

ガッシュ「(もしや、向こうのゼオンとの戦いの凄まじいダメージで……)」

 

 そこへ、騎士が来た。

 

騎士「ガッシュ様、お友達がお見舞いに来ましたよ」

 

ガッシュ「目覚めた事を言いに行くのだ!」

 

 ガッシュはゼオンと共にお見舞いに来たティオ達に会いに来た。

 

ティオ「ガッシュ、やっと起きたのね!」

 

パティ「急に起きなくなったから私、一週間も眠れなかったの!」

 

ウマゴン「メルメルメ!」

 

チェリッシュ「私はテッドと交代でお見舞いに来たのよ」

 

ガッシュ「ティオ達に土産話をしたいのだ」

 

ティオ「土産話?」

 

 ガッシュはタイムマシンの爆発事故のせいで魂だけがこれまで経験した過去の世界に似てるが違うパラレルワールドの過去の世界に行ってしまい、そこでの自分の体に入り込んだ形で再び魔界の王を決める戦いを経験した事をティオ達に話した。

 

ウォンレイ「過去の世界か…」

 

コルル「話が難しいよ」

 

キャンチョメ「ガッシュは爆発事故のせいで僕達の世界と似てるけど違う過去の世界に行ったんだよね?だったら、過去へタイムスリップしたのも同然じゃないか」

 

ガッシュ「その通りなのだ」

 

ティオ「あっちの私達ってどうだったの!?」

 

ガッシュ「全くといっていい程、性格も同じだったのだ。ただ、あっちの清麿は元の世界の清麿よりも恵の事を気にしておった上、恵と恋人とやらになったのだ」

 

ティオ「あっちの清麿はあっちの恵と恋人同士になったの!?嬉しいわ!!」

 

パティ「それで、私達は?」

 

ガッシュ「コルルは魔界に帰らずに戦う決心を固めて私達の仲間になった他、パティとチェリッシュは元の世界の時に比べて早く出会い、仲間になったのだ」

 

パティ「って事は、あっちの私はずっとガッシュちゃんと一緒に戦う事ができたのね!嬉しいわ!!」

 

チェリッシュ「あっちの私は早い段階で坊や達の仲間になったのね」

 

ガッシュ「あっちのチェリッシュはキッドやヨポポに懐かれておったぞ」

 

チェリッシュ「私もあっちの私のようにもっと早く坊や達に会えてたら、懐かれてたでしょうね」

 

コルル「あっちの私が魔界に帰らなかったって事は、あっちの私は長くしおりねーちゃんと一緒にいられたって事だよね?あの時、私が戦いから逃げなかったら、あっちの私のようにしおりねーちゃんと長くいられたのかな……?」

 

 向こうのコルルが戦いから逃げなかったためにしおりと長くいられた事にコルルは落ち込んでいた。

 

パティ「もう過ぎた事をいつまでも悔やんだってしょうがないわよ。前向きに行きましょ」

 

キャンチョメ「そう言えば、あっちの僕達の術はこっちの僕達の同じなのかい?」

 

ガッシュ「同じなのだが…、こっちの私達が習得していない術を習得したり、習得する順番が変わったり、早くなったりしておったのだ」

 

ウマゴン「メルメルメ」

 

キャンチョメ「じゃあ、あっちの僕も同じシン級の術が使えるのかい?」

 

ガッシュ「あっちのキャンチョメとウマゴンはこっちと同じシン級の術を習得したのだ。ただ、あっちのティオはシン・サイフォジオを習得せずにシン・チャージル・セシルドンを習得したのだ」

 

ティオ「シン・チャージル・セシルドン?それって、チャージル・セシルドンよりも凄い盾なの!?」

 

ガッシュ「その時の私は意識を失ってみておらぬが、あっちの清麿の話では、チャージル・セシルドンを超える防御力を持つ上、全方位防御もできるし、攻撃を吸収して跳ね返したりと、ティオの防御術の集大成ともいえるとても強力な防御呪文なのだ」

 

ティオ「凄いじゃない!私がシン・チャージル・セシルドンを習得してれば、クリアの術を跳ね返してガリガリにできたのに~~!!」

 

キャンチョメ「クリア……。ああっ!!」

 

ゼオン「急に騒いでどうしたんだ?」

 

キャンチョメ「あっちの僕達がこっちの僕達と性格の違いがないのなら、あっちのクリアも魔界を滅ぼす気満々だよ!!このままだと、あっちの僕達は…!」

 

ウマゴン「メルメルメ!!」

 

ガッシュ「安心するのだ、キャンチョメ。あっちのクリアは早い段階でゼオンが倒したから、あっちの魔界が滅ぼされるという危機はとっくに去ったのだ」

 

キャンチョメ「な~んだ、早い段階であっちのクリアは脱落したんだ…。これなら、一安心だよ」

 

ウォンレイ「他にも色々聞かせてほしい」

 

ガッシュ「えっと…」

 

 そんな空気を壊すかのように、ある騎士が報告に来た。

 

騎士「大変です!狭間の世界と魔界が繋がろうとしています!」

 

ゼオン「何!?」

 

騎士「このままでは、多くの罪人達が押し寄せてきます!王様、我らに出撃の命令を!」

 

ガッシュ「その罪人達を倒すのは魔界の王を決める戦いの参加者の中の実力者たちに任せてもらえぬか?お主達大人の戦士は待機してほしいのだ」

 

騎士「しかし…」

 

ラジン「ガッシュ様達を信じてみようじゃないか。彼等は魔界の王を決める戦いを通して強者達は大人の戦士にもひけをとらないほど成長した。我々はどうにもならない時だけ出撃しよう」

 

 

 

魔界

 ブラゴやバリーを始めとした魔界の王を決める戦いの実力者達が招集され、狭間の世界と魔界を繋ぐ扉が完全に開くのを待っていた。

 

ガッシュ「(あっちの世界にいた頃にマエストロが狭間の世界に飛ばされたのなら、いまだに行方がわからないこっちの世界のマエストロも恐らく…)」

 

バリー「まさか、俺達が招集されるとはな」

 

ブラゴ「狭間の世界とかいう所の罪人共が来るのか。どれぐらいの奴等だろうな」

 

キャンチョメ「ま、まさか狭間の世界に送られた魔物って、クリア並の強さの奴等ばかりじゃないよね…?」

 

ゼオン「バカか?そんな奴はそうそう生まれてくるもんじゃない」

 

ティオ「ガッシュ、狭間の世界って何なの?」

 

ガッシュ「狭間の世界は悪い事をした魔物が送られる流刑の地だと聞いておる。あっちの世界に行った時に私もあっちのティオ達と共に事故で飛ばされてしまった事があるのだ」

 

ティオ「ガッシュの行った狭間の世界って、何にもないの?」

 

ガッシュ「鉄とかばっかりでほとんど何もないのだ」

 

パティ「つまらない場所ね」

 

アース「そもそも派手な場所は流刑地にはならん」

 

バリー「無駄口はここまでだ。そろそろ来るぞ…!」

 

 狭間の世界と魔界を繋ぐ扉が完全に開き、マエストロと狭間の世界に送られた罪人達が現れた。

 

マエストロ「ふははははっ!!時は満ちた!さぁ、立て!狭間に堕とされし魔物達よ!魔界への扉が開く!私と共に魔界への復讐を果たすのだ!さぁ、私に続け!魔界に攻め込むのだ!」

 

狭間の兵士達「マエストロ!マエストロ!」

 

 マエストロの演説に兵士達はコールを送った。

 

ゼオン「マエストロ!?魔界の王を決める戦いが終わっても行方がわかっていなかったマエストロだと!?」

 

ガッシュ「あっちの世界にいた時に知ったのだが、マエストロは私達と共に人間界に送られる際、誤って狭間の世界に送られてしまったのだ」

 

ゼオン「なるほど、だからあいつは今でも本を持っているのか」

 

マエストロ「貴様ら、まさか大人の戦士の手を借りずに魔界の王を決める戦いに参加した魔物だけで我らに挑むというのか?なんと浅はかな考えよ」

 

ガッシュ「マエストロ!いくら狭間の世界に堕とされたからと言って、復讐に無関係な者達まで巻き込むでない!考えを改めぬのであれば、私達は断固とした措置をとる!」

 

マエストロ「新たなる魔界の王は随分と甘い事を言うな。我らの怒りを思い知れ!」

 

キース「ふん、貴様らはこのキース様達にやられる運命にあるのだ」

 

バリー「ゴチャゴチャ言ってねえで、とっととかかってこい!」

 

マエストロ「さぁ、行くのだ!」

 

狭間の兵士達「おう!!」

 

 狭間の世界に堕とされた魔物達が襲い掛かってきた。

 

狭間の兵士「俺達は百戦錬磨の戦士だ!ガキ共なんかに」

 

キース「シン・ギニスドン!」

 

狭間の兵士達「うわあああっ!!」

 

 シン・ギニスドンで多くの狭間の兵士が吹っ飛ばされた。

 

ベルギム「シン・リュウスドン!」

 

 特大の怨霊のエネルギー弾でまたしても狭間の兵士が多く吹っ飛ばされた。

 

ビクトリーム「シン・チャーグル・イミスドン!」

 

 ビクトリームの術でまた多くの兵士が吹っ飛ばされた。そして、吹っ飛ばした後にキースはタバコを吸った。

 

キース「口の割には大した事ないな」

 

バリー「油断してると足元をすくわれるぞ」

 

キース「あんな雑魚如き、赤子の手を捻るようなものだ。足元をすくわれるなど」

 

???「どあああっ!!」

 

キース「ぎょええ~~っ!!」

 

 あまりの狭間の兵士達の弱さに油断していたキース、ベルギム、ビクトリームは巨漢の兵士に吹っ飛ばされてしまった。

 

バリー「あのバカ、油断してるからこうなるんだ!」

 

巨漢兵士「てめえのようなガキ共が俺達に適うとでも思っているのか?」

 

バリー「見た目で判断すると痛い目に遭うぜ」

 

巨漢兵士「舐めやがって!ディオ・アムルク!」

 

 腕を巨大化させ、バリー目掛けて振り下ろした。しかし、バリーは簡単によけた。

 

バリー「バカめ、隙も作らずに大技を繰り出したって当たるものか!ディガル・ドルゾニス!」

 

 よけてからすぐにディガル・ドルゾニスで巨漢兵士の足元を攻撃して体勢を崩した。

 

バリー「大技を撃つにはな、大きな隙を作って撃たないと当たらねえんだよ!ディオガ・ゾニスドン!」

 

巨漢兵士「うぎゃ~~っ!!」

 

 ディオガ・ゾニスドンで巨漢兵士はあっさりやられた。

 

キース「バリー、ケチ臭い事なんかせずにシンを撃ったらどうだったんだ?」

 

バリー「あんな奴等にシンなどいらん。ディオガで十分だ」

 

狭間の兵士「ガキ共がいい気になりやがって!!」

 

パムーン「ファルセーゼ・バーロン!」

 

 大量の星は集まり、五芒星の形となった。

 

パムーン「シン・ペンタグラム・ファリスドン!」

 

狭間の兵士「うわああっ!!」

 

 五芒星から星の形をした巨大なレーザーが発射され、兵士達は一掃された。

 

チェリッシュ「シン・グラード・ガンズ・コファル!」

 

狭間の兵士「うわあああっ!!」

 

 あっという間に狭間の兵士達は全滅した。

 

マエストロ「まさか、狭間に堕とされた魔物達が全滅するとは…」

 

バリー「てめえらがその程度だったってだけだ」

 

ブラゴ「ガッシュ、ゼオン、お前達王族の出番はない。マエストロは俺が片付ける」

 

マエストロ「王の出番はないというのか?ならば、お前の力を見せてみろ!ディオ・マグネルガ!」

 

 向こうの世界のマエストロと違い、ずっと狭間の世界にいたために多少は力をつけたのか、マエストロはマグネルガの強化版を放った。一方のブラゴは突き進んでいた。

 

ブラゴ「その程度の術で俺を止められると思うな!ディゴウ・グラビルク!」

 

 肉体強化の術を使った後にディオ・マグネルガをパンチで掻き消し、一気にマエストロに接近してマエストロを殴り飛ばした。

 

マエストロ「ぐはっ!」

 

ブラゴ「一気にカタを着ける!シン・バベルガ・グラビドン!」

 

 一気に勝負を決めるため、シン級の術を使った。

 

マエストロ「まだだ!シン・マグネシド・デュランガ!」

 

 マエストロもシン級の術を使ったが、ブラゴの術に押されていた。

 

マエストロ「そんなバカな!私が、私が敗れるとでもいうのか!?」

 

ブラゴ「狭間の世界という温室で過ごしたてめえらが俺達に勝てるわけねえだろ!」

 

マエストロ「ぐあああっ!!」

 

 一気にマエストロの術は押されてマエストロは敗北した。

 

騎士「何という強さだ…」

 

ラジン「だから行ったであろう、彼等は私達の予想以上に強くなったと」

 

 ブラゴ達の戦いは離れた所で待機していた大人の戦士達にも見えていた。

 

 

 

 

空き地

 向こうの世界での戦いは激しい戦いの末、本が燃えていないのはガッシュとティオだけになり、それぞれ勝負を決めようとしていた。

 

清麿「(もう残る手段はバオウのみ!シン・チャージル・セシルドンとどちらが上か勝負だ!)」

 

恵「(バオウも跳ね返すわよ!)」

 

清麿「バオウ・ザケルガァ~~ッ!!」

 

恵「シン・チャージル・セシルドン!」

 

 バオウとシン・チャージル・セシルドンのぶつかり合いとなり、互いに一歩も退かなかった。

 

清麿「くぅぅっ!!」

 

恵「負けないわよ…!!」

 

 競り合いは本に火が付いて負けが決まった魔物達も見ていた。

 

ブラゴ「凄まじい力のぶつかり合いだ…」

 

チェリッシュ「あの子がまさか、坊やとここまで戦えるほど成長したとはね…」

 

 激しい競り合いの末、バオウが女神の盾を食い破り、ティオペアは吹っ飛んだ。その際にティオの本に火が付いた。

 

バリー「王はガッシュに決まったか…。わりぃな、グスタフ。負けちまって…」

 

グスタフ「確かに負けたな。だが、バリーよ、お前は王にはなれなかったが、王をも殴れる男になったぞ。いくら王でも完璧ではない。間違いを起こす事もあるだろう。その時にお前は王を殴ってやれる。その鍛えた体で、強き目で、拳で王を殴ってやれ。それがガッシュであってもな。王を殴れるんだ。でかく、いい男になったじゃねえか…」

 

バリー「へへっ、今回の敗北は全力で戦った上での負けだからエルザドルみたいな気分だ…。じゃあな、グスタフ…」

 

リィエン「ウォンレイ、もうお別れあるね…。私のお腹の中にいる子供とももう会えないある…」

 

ウォンレイ「いいんだ…。私達は心だけでなく、愛の結晶ともいうべきものを残せたんだ…」

 

リィエン「いつか…、いつか子供にも会いに来るあるよ…」

 

 戦いが終わり、それぞれのパートナーは魔物と別れを交わしていた。

 

キャンチョメ「うわああん、フォルゴレ!せっかくここまで頑張ったのに王様になれなかったなんて~~!」

 

フォルゴレ「でも、落ちこぼれのお前がこんなにも強くなれたんだ。魔界に帰っても元気でな、キャンチョメ~~!」

 

 前の戦いの時と違い、フォルゴレとキャンチョメの別れはいつものようなどこか笑えるものだった。

 

ティオ「ガッシュ、魔界にいた頃からあんなにも強くなるなんて思ってなかったわ」

 

恵「ごめんね、ティオ。王様にできなくて…」

 

ティオ「いいのよ、恵。恵や清麿達と一緒に過ごせて楽しかったわ。清麿、私が帰った後は恵の事をよろしくね」

 

清麿「ああ」

 

ティオ「ガッシュ、私と…結婚してくれる?」

 

ガッシュ「結婚?何の事なのだ?私にはさっぱりわからぬのだ」

 

ティオ「ガッシュ、あんたってどうしていつも女の子の気持ちに鈍いのよ!!」

 

ガッシュ「ぐあああっ!!」

 

 またいつものように首を絞められたガッシュであった。

 

グスタフ「(あの女は王の首を絞めれる女になったな…)」

 

 前の戦いと同じように、ガッシュが王となったのであった。ガッシュ達が魔界に帰った後、一同はそれぞれの故郷へ帰った。

 

清麿「恵さん…、ティオがいなくなって寂しい…?」

 

恵「……本当は寂しいの…。いつか別れるとわかってるのに…、おかしいよね…?」

 

清麿「おかしくなんかないさ…。俺もガッシュがいなくなって寂しい…」

 

恵「…気持ちは一緒なのね、清麿君。約束通り、頼みを聞くわ…」

 

清麿「……いつか恵さんと結婚したい…」

 

恵「け、結婚…?」

 

 結婚したいと清麿に言われ、恵は清麿に抱き付いた。

 

清麿「恵さん?」

 

恵「実は私も清麿君と結婚したかったの!いつか結婚しましょ!」

 

清麿「ああ!」

 

しおり「2人は今日はどうするの?」

 

恵「今日は清麿君の家に泊まろうと思ってるわ。私の手料理を食べさせてあげる!」

 

しおり「その意気よ、恵!」

 

 

 

魔界 王城

 元々の世界の魔界では、戦いに敗れたマエストロは牢に入れられ、兵士達は全員狭間の世界に送り返された。

 

マエストロ「何の真似だ?」

 

ブラゴ「これがお前の処分だ」

 

ゼオン「お前は誤って狭間の世界に送られてしまったのだからな。ガッシュはそれを考慮し、色々話し合った結果が今回の処罰だ」

 

マエストロ「新しい王のガッシュは随分と甘いものだな」

 

ゼオン「じきにお前もそのありがたさがわかる」

 

 ブラゴとゼオンはその場を後にした。ブラゴとゼオンがいなくなった後、人知れずマエストロは涙を流していた。

 

 

 一方、マエストロの反乱を見た際にドクターM1はある事を閃いていた。

 

ドクターM1「王様、あの光景を見て、新しい事を閃きましたぞ!」

 

ガッシュ「何なのだ?」

 

ドクターM1「魔界と人間界を行き来するマシンの発明が閃いたんですよ!以前はなかなか閃かなかったんですが、王様があっちの世界で狭間の世界に行った話を聞き、マエストロの反乱を見て、狭間の世界経由なら、人間界と魔界を行き来するマシンが作れそうだと閃いたんです!」

 

ガッシュ「おお、それは嬉しいのだ!」

 

前魔界王「よかったな、ガッシュ」

 

前魔界王妃「パートナーと再会できる日ももう間近になってきたわね」

 

ゼオン「ところで、またあの時のタイムマシンのような爆発事故は起こさないだろうな?もし、同じような事が起こってガッシュに何かあったら…、今度こそ命はないと思え…!」

 

ドクターM1「も、もうそんな事は起こしません!必ずや、完成させてみせます!」

 

 ゼオンの怒気に怯えながらも、ドクターM1は魔界と人間界を行き来するマシンの開発にとりかかった。

 

ゼオン「ガッシュがあっちの世界で経験した事がまさか、こんな結果につながるとはな…」

 

ガッシュ「あっちの清麿にはもう会えぬかも知れぬが、こっちの清麿と会える日が近いとわかれば、楽しみでしょうがないのだ…!」

 

???「王様」

 

 部屋に来たのはアースであった。

 

アース「王様、早速仕事に取り掛かっていただきます!」

 

ガッシュ「ウヌ、そうであったな!」

 

 早速、ガッシュは仕事にとりかかった。人間界と魔界を行き来できる日も、1年や半年程度で来るのかも知れない。




これで今小説は終わりです。
今回はガッシュが元の時代に帰るのと、ガッシュが逆行した先の過去の世界での決着を描きました。
ガッシュが元々いた世界と逆行した先の世界の出来事が違うのは、簡単に言えばドラゴンボールの未来と現代の関係のような感じで、ガッシュが逆行した過去の世界はもともといた世界と似てるけど違う上、いくら過去を変えてももともとの世界の未来は変わらないパラレルワールドにしました。
タイムマシンの爆発事故により、ガッシュが逆行する原因を作ったドクターM1は映画のドクターM2の祖先にあたります。
今まで読んでくれて本当にありがとうございました。
今小説はこれで終わりですが、気が向いたらまたガッシュの小説を書きたいと思います。


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