Re.ゼロから始める武偵生活 (家畜)
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武偵校試験

 

 

朝目が覚めた。

 

いや覚めてしまったと言うべきかもしれない。

なんせ今日は高校の入学試験当日の日だ。

 

夜の眷属だった俺がこんな日に限って朝に起きるなんて卑屈なもんだ、遅刻して受からなければ受からないでもいいし、ここは二度寝、いやむしろ諦めて三度寝と洒落混むべきか。

 

一度起きかけた体を布団の中に戻し目を閉じるとバァンと乾いた音が部屋に響き部屋のドアノブがごとりと落ちた。

 

「おいこらスバル起きろ。絶対起きないと思ったから起こしにきてやったぞ!」

 

「親父.....あのさ、起こしに来てくれるのは良いんだけどさドアノブを実弾で壊してから入ってくるの止めてくれないですか!?」

 

「何を言うか!ドアノブを壊して部屋に入る!これぞ男のロマンだ!」

 

腰に手を当ててどや顔を決めている目の前のおっさんは、残念なことに俺の父親だ。

筋肉質で元武偵強襲科(アサルト)のBランクらしい。

体術は得意だったものの銃の扱いが下手すぎてAランクにはなれなかったと聞いている。

ただ体術は突出しておりSランク武偵にもCQCのみなら勝ったことがあるらしい。

 

「なんなんだ、そのズレにズレたロマンは。修理費だってバカにならないんだろ?」

 

「はっははは。気にするな!ロマンに使っているのだ!これくらいのこと!」

 

「あーじゃあ。母さんに言いつけてやろ」

 

「ま、待つんだ!スバル!落ち着け!お前は今寝起きで正常の状態じゃないんだ!」

 

どや顔から一気に血の気が抜けたおっさんの顔に急降下した俺の父親は息子の俺に懇願してくるが時すでに遅しである。

 

「てか、母さんなら親父の後ろにいるけどな」

 

「は?......」

 

「あなた、さっき銃声が聞こえたからもしかしてと思って上がってきたんですけど何故スバル君の部屋のドアノブが壊れているんですか?」

 

因みに母さんは尋問科(ダギュラ)の元Sランクだ。見た目は容姿端麗、出るところは出ており引っ込むところは引っ込んでいる。なぜ俺の父親を選んだのか謎なほどの美人だ。

 

その見た目から騙された犯人達は口を簡単に割ってしまうと聞いたことがある。が母さんが元Sランクなのは伊達ではない。

武術では父親に軍配が上がるだろうが、話術、銃撃、そして人望が圧倒的に母さんの方が上である。

 

母さんの尋問は、母さんの見た目が効かない相手に対して初めて尋問になるとも聞いたことがある。

その時の父親の顔は、青ざめ額から汗を流して震えていた。

 

つまり母さんに勝てる者はこの家にはいない。

 

「そ、その....」

 

「ああ、そういうことですか。スバル君が起きずに仕方なく銃を乱射してしまい誤射ってしまった。と?」

 

あ、あれ?おかしいな....何故俺の方の雲行きが怪しく?

 

「は、はい!その通りでございます!」

 

て、おい親父!何土下座してるの!?あんたにはプライドはねーのか!!

 

「さてそれではスバル君?」

 

「は....はい」

 

「今すぐ支度して試験に受けに行き合格してきてくださいね?受からなかったら分かっていますね?」

 

「はい......」

 

俺が不合格になり武偵高から一般高校に進学する道は無くなった。

 

そもそも何故俺がここまで武偵校に受かりたくないか、だが。

まず武偵とは何かという疑問が一般中学に通っていた者なら言うだろう。

 

 

武偵とは、凶悪化する犯罪に対抗するために新設された国家資格であり武偵探偵の略なのだ。

 

武偵免許を持つ者は武装を許可され、逮捕権を有するなど警察に準ずる活動が可能になる。しかしあくまで武偵は金で動き、金さえ貰えれば武偵法の許す限りどんな仕事でも請け負うので常に死と隣り合わせ。

 

武偵法というのは武偵として守らなければいけないルールのことだ。

 

 

 

1仲間を信じ、仲間を助けよ。

2依頼人との契約は絶対守れ。

3強くあれ。ただし、その前に正しくあれ。

4武偵は自立せよ。要請なき手出しは無用のこと。

5行動に疾くあれ。先手必勝を旨とすべし。

6自ら考え、自ら行動せよ。

7悲観論で備え、楽観論で行動せよ。

8任務は、その裏の裏まで完遂すべし。

9世界に雄飛せよ。人種、国籍の別なく共闘すべし。

10諦めるな、武偵は決して諦めるな。

 

この10個のルールが武偵法だ。

 

そして武偵は殺人を禁止されている。これは自分が死にそうになったとしてもだ。

 

こんな危ない学校入りたいってやつの方がおかしいだろう。

それに俺が入るのは武偵校の中で最も死ぬ可能性が高いと言われている。

強襲科(アサルト)だ。

卒業式の時の生存率が97.1%と3%の人は死んでしまう確率になる。確かに子供の頃から親父や母さんに鍛えられていた俺は普通の高校生よりは強いだろう。そこそこ自信もある。だが犯罪者相手にするとか絶対に無理な話だ。

 

武偵校には他にも学科が幾つかあり、狙撃科(スナイプ)諜報科(レザド)尋問科(ダギュラ)探偵学部(インケスタ)鑑識科(レピア)装備科(アムド)車輌科(ロジ)通信科(コネクト)情報科(インフォルマ)衛生科(メディカ)救護科(アンビュラス)超能力捜査研究科(SSR)特殊捜査研究科(CVR)と様々な種類の学科があるのにも関わらず俺は父親が元強襲科(アサルト)という理由で勝手に強襲科(アサルト)に進学志望を出されたのだ。

 

それに強襲科には、父親と母さんの知り合いが先生をやっているらしい。

 

そんなこんなで受かりたくなった分けだが考え事してたらあっという間に着いてしまった東京武偵高校。

 

「はぁ....いや考えても見ろナツキ・スバル!ここは武偵高校って言っても所詮は高校で通うのは俺と同じ学生だ!つまりそこまで悲観的に考えなくても可愛い生徒と恋に落ちたり、ロマンチックな展開に発展する可能性だってあるじゃないか!よし!希望が見えてきたぁああ!!」

 

俺は少し軽くなった足で受験を受けるために強襲科(アサルト)の教室まで来たが、何故か強襲科(アサルト)の教室では探偵学部(インケスタ)が試験を受けており、強襲科(アサルト)志望の生徒はグラウンドに集合と書かれた紙が壁に貼られていた。

 

「受ける場所アサルトの教室って書いてあったよな?つーか受験する場所変更するなら一言連絡とかあっても良いんじゃないですかね」

 

愚痴を溢しながらグラウンドに向けて歩き出そうとすると一人同い年くらいの恐らく受験生だろう、男性が歩いてきた。

 

探偵学部(インケスタ)の受験は、他の試験よりも30分ほど早く始まるため恐らくは俺と同じ強襲科志望なのだろう。

 

「初めまして!もしかしてアサルト志望だったりする?」

 

「ん?あ、ああ。そうだけど」

 

「ああ、悪い悪い。俺の名前はナツキ・スバル!俺もアサルト志望でこの教室に来たんだけどグラウンドに変更になってたんだよ」

 

「へえ、そうなのか。俺は遠山キンジだ」

 

遠山と二人でグラウンドに向かっていた時ふとした疑問を聞いてみた。

 

「なあ、遠山ってどうして武偵高校に入ろうと思ったんだ?」

 

「俺は正義の味方に憧れてるんだ」

 

「.....」

 

「おい、そんな人を哀れむような目で見るなよ」

 

「い、いやぁ。悪い悪い。想像以上の返答で意識が飛んでたんだよ」

 

「たく....それでスバルはどうして武偵校に?」

 

「ん?俺は両親に無理矢理な。一般中学に通ってたのに意味わからないだろ?」

 

「ぱんちゅう?ぱんちゅうからアサルトってマジか?」

 

「ああ、そうなんだよ。世の中の理不尽を呪いたくて仕方ねえよ」

 

「でも、ぱんちゅうなら試験内容は俺とは違うだろうし、ある意味良かっただろうな」

 

「ん?試験内容に違いがあるのか?」

 

「ああ。ぱんちゅうから入ってきた奴は、射撃試験の後に筆記だけど、武偵中からきたやつは、実践的に試験をするって聞いてるぜ」

 

「へえ...俺そんなの知らなかったんだけど....もしかして武偵中って優遇されてんの?」

 

「どうだろうな。ここは実力主義ってとこあるし」

 

「はあ.....実践的じゃなくて喜ぶべきか。それとも期待されていないと悲しむべきか」

 

「ははは....あ、もう皆集まってるみたいだな。それじゃあ、スバル。受かることを祈ってるよ」

 

「あ、ああ。遠山もな」

 

俺は一度遠山と別れ担当の先生らしき人のもとに向かう。

 

あきらかに高校生っぽくない女の人がいたので直ぐに分かった。

 

(てか教師が煙草吸ってるってどーなのよ。ここ学校じゃないの?)

 

「あのー」

 

「ああ?なんや」

 

やたら喧嘩腰で返されて一歩後ろに下がってしまうが母さんの尋問から受けないという選択肢が無くなったため俺には逃げるという選択肢がない。

 

「.....俺の名前はナツキ・スバル。アサルトの入試を受けに来たn「ああ?ナツキ?」」

 

「今ナツキ言うたか?」

 

「え?あ、はい」

 

「そうか....お前の母親の名前はなんていうねん?」

 

「えーと....ナツキ・ワカナですけど」

 

ズガァン。

 

.............。

 

「は?」

 

母さんの名前を口にした瞬間足元の地面に小さなクレーターが出来ており煙草をくわえた教師の手にはS&W M500、象殺しとも言われている拳銃が握られていた。

 

「成る程な。おもろいやんけ。ワカナんとこの餓鬼か.....おいこらナツキ・スバルとか言ったな」

 

「.......え、えーと」

 

「質問には直ぐに答えろや。殺すぞ?」

 

拳銃を俺の額に当てて言ってくる。

拳銃の重みとひんやりとした生々しい感触に全身の毛が総毛立つ。

 

「そ、そうです...」

 

「うちがお前をこれから痛め....しごいてやるアサルト担当の蘭豹や」

 

今完全に痛め付けるって言わなかった?

 

「それでお前はどこの武偵中から来たんや?」

 

「いえ...俺は一般中学からですけど.....」

 

「はあ?ぱんちゅうやと?....まあええやろ。こっち来いや」

 

俺は蘭豹先生に着いていくことになった。襟首を掴まれて引き摺られながらというなんともカオスな状況でだが。

 

拒否すれば未だに右手で持っているS&W M500が容赦なく俺を襲う気がした。

 

暫く引き摺られていると半分崩れかけている元々はマンションだったような場所に連れてこられた。

 

 

「ここで暫く待てや。こっちの試験は後30分くらいで始まるからな」

 

それだけ言って蘭豹先生は何処かに行ってしまった。

 

「はぁ....俺の高校生活どうなるんだ....」

 

「その声はスバルか?」

 

俺がこれからの事で膨らんだ夢がゲシュタルト崩壊していると後ろから話しかけられた。

 

「ん?遠山か?」

 

「ああ。でもぱんちゅうのスバルがどうしてここに?」

 

「えーと...俺もいまいち自分の現状を把握できて無いんだけど。蘭豹先生って人に連れてこられて」

 

「....そうか。まぁお互い頑張ろうぜ」

 

「え、おい。何が始まるんだ?」

 

「あの時言ったろ?実践的な試験だよ」

 

「実践的?」

 

「ああ。ゴム弾の銃とサバイバルナイフ。あとは閃光弾と威力の抑えられた地雷が支給されて戦うんだよ。相手の意識を刈り取るか敗けを認めさせるんだ」

 

「は、はぁ!?ちょ、ちょっと待ってくれ!俺は銃に触ったことすらないんだぜ?」

 

てか周りの奴等どう考えても普通じゃないだろう....見た感じ訓練積んできましたって奴ばかりだし...!あれは、改造制服にツインテールの女の子!!あんな子も受けに来てるんだな..これは少し希望が見えてきた!

 

「おいおい今から戦う相手だからって嘘はいけないぜ...いくらなんでも銃を使ったことない奴がこっちの試験に来るはずないだろ」

 

「いやいやいや、マジなんだって!」

 

「それに結構鍛えてありそうじゃないか」

 

「それは親父に無理矢理だな!」

 

「まあ情報を誤認させるのも武偵には必要な事だしな。戦闘中出くわしたら容赦なく潰すからな。お互い遺恨が残らないようにしようぜ」

 

遠山は澄まし顔で俺から離れて行ってしまった。

 

「いやいやいやいや......何俺今からいきなりバトルロワイヤル突入なの?ゴム弾って言ってたし死ぬことはないだろうけど意識刈り取るって事はそうとう痛いってことだよな....」

 

 

 

「さてと。ぱんちゅうの試験ようやく終わったし次はお前らの試験や」

 

俺が現実逃避を始めていると蘭豹先生がいつの間にか戻ってきていた。

 

 

「ちょ、俺は一般中学出身なんですけど!?」

 

「ああん?お前が一般中学出身でも家に元Sランクの頭狂ってる奴がおるやろ」

 

おかしい....母さん、あんたほんとに何してきたんだよ!

 

「うちの母さんを基準にするの止めてくれませんかね!俺は普通、ノーマル!一般人なんだから!」

 

「その情報操作。流石悪魔の誘惑の息子やないか」

 

「はあ!?悪魔の誘惑?」

 

「なんや知らんのか?お前の母親の2つ名やないか」

 

母さん...。

 

「それに父親は無知な剛力やろ。そないなバケモン二人の子供が普通なわけないやろ」

 

なんだ無知な剛力って誉めてるのか貶してるのか...分かる気もするのが悲しいところだが。

 

「皆もきいつけや」

 

周りにいた、ゴツい連中や、やたら可愛いロリ顔のことか全員が俺に視線をうつしている。

 

てか遠山が首をさっきから腕組んで上下にしてるのが殺意がわいてくる。

 

よしこうなったら遠山から狙おう。

他のゴツいやつより弱そうだし可愛い女の子に銃口向けたくないし。

 

 

 

 

 

と思っていた時期が俺にもありました。

 

 

 

現在始まって20分程が経過して何人かリタイヤしている。

 

俺は何してるかって遠山を最初狙っていたが、遠山が急に豹変。次々に屈強な男達、そして何故か教師まで倒していたのだ。

 

そして現在、逃げてます。

 

あれ無理だ。いくら鍛えてたって言っても限度がある。

 

「はぁはぁ....」

 

「あれ~?誰かと思ったら最初に紹介されてた人だぁー」

 

俺の目の前にはロリ顔の美少女がいた。

服装は一般的な防弾制服を改造してフリルがやたらと付いている。そう!最初に見かけた可愛い女の子だ!

 

「その服装100万ボルト!」

 

「えーと。服装を誉めてくれるのはー理子的には嬉しいんだけど隙だらけだよ?」

 

「ん?あ、いや。違うんだよ、男の子にはやらなければいけないという使命感があるんだよ」

 

「ふーん。まっ、ありがとね」

 

「一応名乗っとくぜ!俺の名前はナツキ・スバル!現在彼女募集中!」

 

「ぷっははは。面白~い。戦闘中でそんなこと言ってくる人なんて本当にいるんだ~」

 

「意外性にとんだっていうのが中学の時の印象でね」

 

「ふーん。じゃあ、そろそろ」

 

「おう!」

 

理子からは先程までとは比べものにならないくらいの殺気が溢れだして銃を構えてくる。

俺も銃を構えるがやばい、何がヤバイって推定50メートル程の距離で俺が当てられる筈がない。

 

いや撃ったことなんてないからもしかしたら俺にはとんでもない才能があってその才能に目覚めちゃったりしちゃう熱い展開になるかもしれないが。

 

「.....ふ。女の子に手を上げる気はないさ」

 

俺はそう言い真後ろに拳銃を向けて2回引き金を引く。

 

理子はびくっと体を一時的に震わしたが俺の意図を確認するためなのか動こうとしない。

 

ズガァン、ズガァン、ズガァン。と?どうして三発の銃弾の音が?

 

と気付いた時には理子が倒れており後ろからバタ、バタと物音が聞こえ振り向くと教師らしき人とゴツい生徒が倒れていた。

 

「は?はぁああああ!?」

 

「凄いね。今の全部見させて貰ったけど、ヤッパリ君が一番の強敵らしい」

 

若干ナルシストっぽいがこの声は......。

 

「遠山....」

 

はっ!まさかと思い遠山にはなしかける。

 

「まさか遠山が助けてくれたのか!?いやぁ本当助かったよ!まじで危なかったからな」

 

「......そうか、どうやら君は本当に気を付けなければならない相手のようだ」

 

そう言うと遠山は右手にバタフライナイフを持って此方に走ってくる。

 

「え、いやちょっと待てよ!」

 

俺は恐怖心から銃口を遠山に向けて撃った。

 

だが球は遠山より30センチほどズレて後ろのマンションの柱に当たった。

 

急に遠山は立ち止まり訝しげな顔をしながら話しかけてくる。

 

「今更虚勢なんてする必要ないよ。本気でかかってきなよ」

 

「ちょ、待ってくれ!俺はこれが本気でこれが実力だ!」

 

「はぁ.....最後まで虚勢を張り続けて弱者を演じるんだね。いやあまりにはりぼての弱者像だけどね」

 

「くそっ!」

 

確かに奥の手はある。だけど......出来ればこれは使いたくなかった。

 

「これ使うと次の日筋肉痛で動けなくなるんだよな......」

 

「此方は銃弾が残っていない。残りはこのバタフライナイフのみ。君の優位は変わらない、もういいだろ?」

 

「だから!何が良いってんだよ!」

 

銃口を遠山に向けて連射した。

 

最初の弾は遠山には向かわずその手前で落ち、落ちていた石に当たり跳弾し次に撃った弾に当たり遠山目掛けて飛んでいった。残りの3発は遠山の周りを囲むように飛んでいき避けることは不可能だろう。ぶっちゃけ顔には出してないがよっしゃ!俺マジ天才!奇跡の男!とか叫んでいる。

 

 

「よし!いけぇええ!!」

 

「ようやく本性をだしたね。まさかもう一度“ビリヤード”を使ってくるなんてね」

 

そう言うと遠山はバタフライナイフを構え逃げる仕草もせずに真っ直ぐ銃弾を見て、銃弾は遠山に当たることなく二つに別れ飛んでいった。

 

目で見ても何が起きたのか分からず言葉が出てしまう。

 

「何が....」

 

「切ったんだよ」

 

「切った?」

 

「ああ。銃弾切り(スプリット)とでも言っておこうか」

 

「あ、あり得ねえだろ!」

 

「さあ、これで終わりだ!」

 

「くそっ!」

 

あれだけは使いたくなかったけど....しょうがねえな!

 

 

「はぁあああ!!シャマッッック!!!」

 

俺を中心に黒い霧が一斉に出てきて遠山を包み込む。

 

「何!?何も見えないし聞こえない?」

 

遠山はその場で立ち尽くし現状の恐怖心からかナイフをひたすら振り回している。

 

俺は遠山のナイフが当たらない距離まで近付きラスト一発となった拳銃の引き金を引いた。

 

渇いた音と共に遠山が持っていたバタフライナイフにゴム弾が当たり遠山の手から銃が弾き飛ぶ。そして何故か俺の頭部を痛みが襲い俺はその場に倒れた。

 

 

 

 

ヤバイ!本当にこれはヤバイだろ!!

 

俺は心の中で叫んでいた。あの時何故か痛みに襲われた俺は目が覚めると見知らぬベットの上で寝かされていた。途中までは良く分からないが行けそうな気がした。だが最後遠山のバタフライナイフに銃弾を確実に当てるために近付いた。恐らくこれがいけなかった。あの痛みは恐らくゴム弾の痛み。未だに眉間辺りがヒリヒリと痺れるがそんなこと気にしちゃいられねぇ!!俺殆ど何も出来てないし挙げ句自滅してるし受かる筈がない。ここで俺が一番に考えなくてはいけないことは落ちていた場合あの母さんからどうやって逃げるかだ。ダギュラの元Sランクのお叱りとかお前らが考えているよりずっと悲惨だからな?あの人はこと尋問とお叱りの時だけは容赦ということをしない。それが例え血が繋がっている親子であってもだ。

 

だが逃げると言っても正直逃げ切れる気がしない。人脈やパイプが色々とあるあの人からは逃げれない。なんせ一度親父と喧嘩したときなんて力で勝る親父を圧倒し逃げる親父を知り合いのSランク4人に連絡して捕まえて自白剤を飲ませた。逃げ切れる気がしない。

 

ベットの上で頭を抱えているとコンコンと壁を叩き遠山が部屋に入ってきた。

 

「よ。どうしてわざと自分に跳弾するように撃ったんだ?」

 

何を言ってるんだ?わざと自分に跳弾するように撃った?いやいやいやそんなことしても俺になんの特も無いしあの時は人に直接銃当てるのが怖かったから素人の俺でも当たるように近付いてナイフを弾いて遠山に負けを認めさせようとしただけだったんだが、どうしてそんな勘違いをしてるんだ?

 

「おいこらワカナんとこの餓鬼」

 

煙草をくわえたままの蘭豹先生が近付いてくる。どっから見ても怒ってるんだが俺が何かしたか?

 

「え、えーと蘭豹先生何かありましたか?」

 

「何かあったか、やと?ほー良い度胸やな。ぱんちゅうから受かった生徒は基本を学ぶために武偵校の寮に入り入学までレッスンや。スバル」

 

「は、はい?」

 

「明日からが楽しみやな?」

 

蘭豹先生はそれだけ言って出ていった。怖ええ...遠山も途中から姿勢正してたし。ん?受かった生徒はって事は俺合格なのか?

 

「なあ、遠山」

 

「ああ、どうした?」

 

「俺って受かったのか?」

 

「なんだそんなことを気にしてたのか?」

 

「そんなことって俺にとっては命がかかってるんだぞ!」

 

これは比喩ではない。まじなのだ。受からなければ死ぬ思いが待っている。

 

「お、おお。そんなになのか....お前が倒した人数。4人だろ?参加者は21人。その全員が武偵中出身。俺は10人倒したけどぱんちゅうからの入学者で武偵中出身を倒すことさえ余程の才能がないと不可能って言われてるんだぜ?それに隠れていた先生も倒したし....俺も本来なら倒されていた筈だしな。多分良くてSランク。悪くてAランクだと思うぞ?Aランクなのは最後の自滅が原因だと思うが...どうしてあそこで俺を撃たなかったんだ?武偵は殺しをしてはいけないから狙ってはいけない急所がある。でもスバルの腕なら急所を外して俺を戦闘不能にすることくらい出来ただろ?」

 

...なんか分からないけど遠山の俺に対しての印象滅茶苦茶高いんですけどぉぉ。

 

「いやいや出来る筈ないだろ?だからナイフを狙ったわけだし」

 

「....なあ。確かに武偵は実力を隠すやつが大勢いるよ。でもスバルはどうしてそこまで自分の実力を隠してるんだ?」

 

「はあ?実力を隠す?俺が?ないない、そんなの無いって遠山。確かに実力を隠してるとかなんかカッコイイとは思うけど俺にはそもそもその隠すだけの力がないんだって」

 

「はぁ...分かったよ。もうなにも聞かない、これからは同じ武偵になる仲間だ」

 

そう言って手を差し出してくる遠山。強さといいかなり良い奴なんじゃないか?俺に対して誤解してるみたいだけど。

 

「これからよろしくな。スバル」

 

でも仲間になるんだし別にいいか。

 

「ああよろしくな!遠山」



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