やはりぼっちとコミュ障のボーダーは間違っていない (癒しを求めるもの)
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プロローグ


○人物紹介

 

比企谷 八幡

 

総武高2年生

 

A級9位 比企谷隊隊長

 

オールラウンダーNo.1

 

総合4位

 

 

家族構成

父(死去)、母(死去)、妹

 

 

好きなもの

妹、金、MAXコーヒー、比企谷隊

 

嫌いなもの

うるさい奴、馬鹿にする奴、トマト

 

 

 

メイントリガー

孤月 旋空 バイパー グラスホッパー

 

サブトリガー

アステロイド ハウンド メテオラ シールド

 

 

サイドエフェクト

気配察知

 

 

 

 

四年前の大規模侵攻により両親が死去したことで妹と二人暮らし。親がいないため金を稼ぐためにボーダーに入隊。最初は個人での予定だったが志神 十和との出会いでオペレーターを篠崎 優菜と隊をつくる。

A級暫定1位に登りつめるが八幡の事故と十和の修行のためランク戦は行わず最下位に。

射手としては二宮に、攻撃者としては太刀川の弟子として指導を求め、現在はNo.1万能手になる。

ディフォルトで目が濁っているため当時は怖がられたが十和の相棒ということで正隊員だけからではなく、C級隊員からの信頼もある。

トリオンコントロールに長けており、師匠の二宮や同期の出水より上。

総武高在籍で同じ部隊の十和や優菜だけでなく、幼馴染の綾辻、奈良坂、宇佐美と知り合いがいるがボーダーだと知っているのは校長とボーダー組のみ。

綾辻家とは八幡の両親が健在の時からの縁で仲が良いが生徒会副会長の綾辻と行動すると目立つため基本、学校では話さないようにしている。

 

 

 

 

 

 

 

志神 十和

 

比企谷隊所属

 

パーフェクトオールラウンダー

 

総合8位

 

 

家族構成

父(死去)、母(死去)

 

 

好きなもの

アニメ、甘い物、マスク、比企谷隊

 

嫌いなもの

初対面で印象最悪な人、掃除

 

 

 

メイントリガー

スコーピオン ライトニング バイパー シールド

 

サブトリガー

アステロイド スコーピオン バックワーム カメレオン

 

 

サイドエフェクト

空間把握

 

 

 

 

オリキャラ

四年前の大規模侵攻で両親をなくし、一人暮らしをしているなかボーダーの入隊を決意。八幡とはすぐに意気投合して隊をつくる。

かなりのコミュ障で学校ではマスクは常備装着でメガネの影響で目立たずに過ごしている。しかし、ボーダーでは平気などころか誰にでも優しく、あの菊地原からも慕われている。

色々あって人が苦手になり二次元の世界に入り、一人暮らしの部屋はフィギュアなどでいっぱいだが掃除が大の苦手なため散らかっている。幼馴染の三上 歌歩のおかげでゴミ屋敷にはなっていないためか頭が上がらない。

パーフェクトオールラウンダーの先輩である玉狛のレイジさんの弟子でもあり、風間からスコーピオンを教わるがしっくりこないため基本スナイパー、シューターとして戦う。

 

 

 

 

 

 

 

篠崎 優菜

 

比企谷隊オペレーター

 

 

家族構成

父、母、祖父、祖母

好きなもの

甘い物、本、比企谷隊

 

嫌いなもの

上から目線な奴、ブラックコーヒー

 

 

 

オリキャラ

文武両道の美少女だが喧嘩っぱやい。総武高では三浦や同じクラスの雪ノ下あたりを嫌っている。

ボーダーにオペレーターとして入り、八幡からの誘いを受けて比企谷隊オペレーターに。

ボーダー女子組と仲が良い。性格が強いため自身の恋愛には興味ないが他人の恋愛ごと、特に綾辻、三上の恋愛事情を知ってどうにかくっつけようとするが朴念仁コンビは全く気づいておらず悩んでいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本編

 

八幡side

 

 

四年前の大規模侵攻により突如現れた異世界からの侵略者、ネイバーからの進行で廃墟と化した三門市の一部、警戒区域に二人の人影があった。

 

 

「暇だなー」

 

「そだね~」

 

 

俺、比企谷八幡は廃墟の家の屋根上に座りこみ、隣にいるメガネをかけた同年代の少年、志神十和に声をかけた。

全身黒に統一された隊服は場のアウェー感を醸し出しているがここは戦場でもある。しかし、今の二人には緊張感は全くと言っていいほどない。

 

 

「こんなことならマッ缶持ってくりゃよかった……」

 

「確かにね~」

 

『いやいや、今は任務中だから無理でしょ』

 

 

耳からはウチのオペレーター、篠崎優菜の声が聞こえる。

 

いや、わかってるからね?

流石に金が入る仕事の最中に怒られそうなことはしないよ?

 

 

「でも平和すぎだもんね」

 

『平和が何よりでしょ?大量にトリオン兵出てきて報告書書くの面倒じゃない』

 

「そっちが理由か……」

 

 

美少女の優菜がサボり発言。

慣れてるけど別の隊と合同の時はやめてよ?俺が隊長なんだから

 

 

『ん?………ハチ、トワ、仕事だよ』

 

「座標は?」

 

『いう必要ある?』

 

「ないけど……俺がいうのもアレだが働け」

 

「あはは……」

 

 

社畜という言葉が嫌いな俺だが優菜は特に必要最低限しか仕事しないのだ。

 

自隊のオペレーターに溜息を吐きながらも隣の十和と一緒に立ち上がり、お互い一瞬、動きを止めてから目標の場所へと移動する。

 

 

 

 

 

気配察知、空間把握

 

 

 

 

 

それが俺と十和のサイドエフェクトだ。

優菜の言う通りトリオン兵の位置などすぐにわかるし数、種類もだ。

今回はモールモッド8体。楽勝だな。

 

 

「んじゃ、俺が左の4体すっから十和は右の4体よろしく」

 

「了解」

 

 

そう言って俺と十和はトリオン兵に近づく。

メガネをかけて俺の指示に従う十和だが、パーフェクトオールラウンダーと言って玉狛のレイジさんの次になった化物だ。

 

「褒めてくれるのはありがたいけど八幡も十分化物だからね」

 

「……え?声出したっけ?」

 

「いんや。感」

 

 

感で人の思考読まないで。何?新しいサイドエフェクトなの?

でも俺の思考読むやつって結構多いよな、優菜もだし、遥もだし……

解せぬ。

 

っとまぁ、無駄話はここまでにして。

パーフェクトオールラウンダーの十和が近づくって言うことはシューターとしてだろう。あいつ、あまりスコーピオン使わないし。

ということで俺も腰にある孤月を抜かずに手にキューブを出現される。

隣を見ると十和も準備していた。

 

 

すると、射程圏内にトリオン兵が全部入ったため俺たちは一斉に3×3

×3にしたキューブを放出した。

 

 

「……自転、アステロイド!」

 

「……ギムレット!」

 

 

俺と十和の掛け声とともに27の弾丸は全て、4体のモールモッドに命中し、貫通した。

 

 

「うん、普通のアステロイドでギムレットと同じ威力なのは間違いなく化物だね!」

 

「いや、お前も出来るだろ?」

 

「時間かかるから僕には無理だね」

 

 

俺がしたのは回転を加えるだけだ。

実弾のライフリングと同じように回転させることで威力に速度、命中率が上がるのだ。

だかこれかなりのトリオンコントロールが必要だ。出水や二宮さんも出来るが十和と同じく時間がかかり練習中だそうだ。

でも、いずれ誰か出来るはずだから化物ではない。

 

 

『二人とも、時間だよ』

 

「ああ。次はどこだ?」

 

「確か風間隊でしょ?」

『お、トワよく知ってたね。歌歩ちゃんがいるからかい?』

 

「?確かに歌歩さんからも聞いたけどただ覚えていただけだよ?」

 

「『………はぁ』」

 

「え?八幡に優菜さん?どうしたの?」

 

「『いや、何でもない』」

 

 

風間隊オペレーターである三上と十和は幼馴染だ。

三上は十和に好意を抱いているが十和が鈍感なために気づいていない。

普段、リア充爆ぜろと思う俺だが十和と三上なら大丈夫だ。むしろ早くにくっついて欲しいくらいなのだが……

 

 

『いや、ハチは私と同じこと思う立場じゃないからね?遥ちゃんのこと忘れてない?』

 

「なんで遥?」

「『はぁ…………』」

 

 

次は優菜と十和が溜息を吐いた。

何で遥が関係あるんだ?ただの幼馴染だろ?

 

 

「朴念仁だねー」

 

「お前がだろ?」

 

「「……ん?」」

 

『二人ともでしょ』

 

 

ちょっと待て

十和はわかるが俺は違うぞ?

 

疑問符を頭に浮かべるが

 

 

「久しぶりだな、比企谷」

 

「げっ、比企谷先輩だ」

 

「菊地原!……すみません、比企谷先輩」

 

 

どうやら交代らしい。

A級3位の風間隊が到着した。

風間さんとは久しぶりだが菊地原はいつも同じだな。歌川、今度なんか奢ってやる。

 

 

「お久しぶりです」

 

「お久しぶりです、師匠。菊地原くんに歌川くんも」

 

「ああ。任務ご苦労」

 

「お久しぶりです、十和先輩」

 

「お久しぶりです、志神先輩」

 

おい、菊地原。なんで十和には90度お辞儀して名前呼びしている。俺相手だとdisる癖に………

 

まぁ、十和はボーダーでは人気度高いからな。

 

 

「三上、取られないよう頑張れ」

 

『ひ、比企谷くん!?なにいってるの!?』

 

 

風間隊オペレーターであり、十和に恋している同年代、三上の裏返った声がした。

大丈夫だ。どうせ気づいていないから。今も「ん?」って訳が分からない顔してるぞ。

 

 

「あ、風間さん。この後ご飯一緒しませんか?久しぶりに話したいことがあるので」

 

「わかった」

 

「あの……俺もいいですか?」

 

「勿論。歌川くんと歌歩さんもどう?」

 

「菊地原が行くなら自分も」

 

『……わかった』

 

「八幡と優菜さんは?」

 

『私はパスで』

 

「あー俺も宿題あるから無理だわ」

 

 

十和は風間隊と仲がいい。本来は三上と二人にさせたいがしょうがないだろう。

どうせ歌川あたりが気を利かせるし、発展しないと思うが三上のための時間は作れるだろう。

肝心の三上はついでみたいだったから嫌なんだろう。間があったし。

ってか菊地原。面倒くさがりのお前が自分から飯を同伴しようなんてどんだけ十和慕ってんだよ。

 

 

そう思いながら風間隊と交代し、俺は天使、小町が待つ家に帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の宿題である作文がこれからの運命を決めると知らずに




一話目を読んでくださりありがとうございます!

文才なくて投稿日も遅くなる場合がありますがよろしくお願いします!


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奉仕部
雪ノ下雪乃は篠崎優菜に沈められる


俺ガイル編スタート!…………ですがアンチ入ります。

もう一度、原作が好みの方は読まない方がいいですができれば呼んでください!




八幡side

 

本日の防衛任務は夕方から。

俺と十和が学校の一部教師にしかボーダーだと知られていないため学校の時間帯にはシフトを入れていなかった。

時間も時間なため本部に向かおうとしたその時だった。

 

俺は今、現国で生徒指導の平塚先生に職員室に呼び出されていた。

 

 

「比企谷……これはいったいなんだ?」

 

 

作文用紙を俺へと見せながら、自分はイラついていますよ、と言いたそうな雰囲気を醸し出している平塚先生。

 

 

「作文用紙ですよね。見ればそんなのわかりますよ。それで、なんですか?」

 

「はぁ……。私が言っているのは作文の内容だ。何だ? 君はリア充に何か怨みでもあるのか?」

 

「そうですね。数に物を言わせて、悪ですら正義に変えてしまう。彼らのやり方はとても嫌いですね」

 

「……あれだな。君は性格は捻くれているし、目も魚のように腐っているな」

 

 

何をいきなり失礼なことを言っているんだ、この先生は。それでもあんた教育者かよ。

菊地原でもここまで率直に言わないぞ。

 

 

「それ、とても栄養がありそうですね」

 

「小僧、屁理屈を言っているんじゃない。真面目に聞いているのか?」

 

「小僧って……それは先生の年齢から「黙れ」で?気に入らないと殴りつけるんですか?」

 

 

 

いきなり平塚先生から拳がとんできた。無論、この程度裁けない訳ない。ボーダーでレイジさんや風間さんとトレーニングをしているので余裕で対処できる。

特に十和なんてレイジさんと風間さんの弟子だからもっとレベルアップしている。

それに便乗してあの地獄の体力作りに巻き込まれた俺が対処できないはずがない。

 

 

「生徒に暴力とか、教師としてどうなんですか?」

 

「うっ。……それより君は友達はいるのか?」

 

「いますよ。それなりにたくさん。親友も」

 

 

事実、十和や出水は親友と言ってもいいくらい仲が良いだろう。

えっ?似合わないセリフだって?ほっとけ。

 

 

「比企谷、嘘を吐くな。お前みたいに目の腐った奴に友達がいる訳がない」

 

「平塚先生は彼――やっぱりいいです」

 

「なんだ?中途半端に言うな。……それで、彼女はいるのか?」

 

「いえ、いません。あ、でも幼馴染はいます」

 

「比企谷……。そんな嘘を吐かなくてもいいんだぞ。いくらいないからといって、そんな嘘を吐くとは先生悲しいぞ」

 

ウゼェー。何なんだ。この教師は失礼にもほどがあるだろ。そう言う自分には彼氏がいるのかよ」

 

「比企谷、聞こえているぞ。……よし、君は私を傷付けた。そこで奉仕活動を言い渡す。異論、反論などは一切受け付けない」

 

 

あ、結局言っちゃった。

でもそれくらいで傷つくなよ。俺も似たようなこと言われたんだが…

 

 

「いや。そんな勝手が許される訳ないですよ。あんたそれでも教師かよ」

 

「いいのか三年で卒業できなくても、いいんだな?」

 

「したければどうぞ。それで教師人生を終わらせたいのなら。一応、学年3位なのでそんな俺をどうにか出来るならやってみて下さい」

 

「うっ……。と、とにかく、ついてきたまえ」

 

仕方ない。黙って付いていくしかないか。今日は、材木座に呼ばれて十和の新型の試作トリガーの実験に付き合うことになっているが……これは少し遅れるな。一応、電話いれておくか。

 

「……材木座、比企谷だ。今日の実験なんだが、少し遅れるかもしれない」

 

『うむ、どうしたのだ、八幡よ?』

 

「学校の教師に捕まって、一時間ほど遅れる」

 

『うむ。承知したぞ、八幡。出来るだけ早めに来てくれ。八幡にも説明しておきたいのだ』

 

「わかった。出来るかぎり、早めに向かう。遅くなったら十和と二人で確認しといてくれ」

 

 

十和には……大丈夫だろう。

一応メールしておけば問題ない。ってかあいつ、学校だと電話でないし。

メールを送ってケータイを仕舞い平塚先生を見てみると、俺を睨みつけていた。

大方、さっさとついて来いとか思っているのだろう。

俺が黙ってついて行くと、しばらくして目的の場所に着いたようだ。 連れてこられたのは特別棟にある一つの教室だった。

そこで止まり、そのまま無造作に扉を開けた。

 

 

「邪魔するぞ雪ノ下」

 

 

中にいたのは長い黒髪の少女だった。本を読んでいてその顔立ちと読む姿勢の良さからまるで一つの芸術品のように見える。それが客観的に見た感想だが俺は違う。

その少女は平塚先生の姿を見ると

 

2年J組 雪ノ下雪乃

 

優菜と同じくJ組であり、優菜が嫌う性格の持ち主。

 

 

「先生、入る時はノックをお願いしているはずです」

 

「ノックをしても君は返事をしないじゃないか」

 

「返事をする前に先生が入ってくるんですよ… それで、そちらの人は?」

 

「ん、ああ。いつまでそこにいる?入ってきたまえ」

 

 

そう呼ばれて俺は教室に入る。

 

 

「今日からこの部に入部する比企谷だ。ほら、自己紹介したまえ」

 

「あ、えーと、2年F組所属比企谷八幡です。えーと、それで、ってかなんだよ入部って… 聞いてねぇぞ…」

 

「これから君には舐めた作文を書いた罰としてここでの部活動を命じる。異論、反論抗議口答えは一切受け付けない」

 

「お断りします。放課後は忙しいので部活動をやる暇はありません」

 

 

俺の言葉に平塚先生は睨みつける。なんで俺が睨まれるんだ?

 

 

「とにかく!君にはここで奉仕活動をしろ!これは命令だ!拒否権はない!」

 

えー………

 

「全く……。まぁ雪ノ下、こいつはこの腐った目、腐った神経のせいで孤独で憐れむべき生活を送っている。私からの依頼はこの性格の矯正だ。受けてくれるな?」

 

「お断りします。そこの人の下心に満ちた下卑たる目を見ていると身の危険を感じます」

 

「安心したまえ。確かにいろいろ終わってる目をしているがこの男のリスクリターンと損得勘定と自己保身にの計算についてはなかなかのものだ。刑事罰に問われるようなことは決してしない。この男の小悪党ぶりは信用してくれていい」

 

 

「常識的な判断が出来るだけですよ」

 

「小悪党。なるほど…」

 

 

聞いてないし納得したぞこいつ…

 

 

「まぁ、先生から依頼となれば無下にはできませんね。承ります」

 

「そうか、じゃあ頼んだぞ雪ノ下!」

 

 

そう言うと平塚先生はさっさと出て行ってしまった。

おい、俺は部活に入るとは言ってないぞ。

ボーダーの仕事もあるのにこんなよくわからんてか何するのかもわからん部活に入れられなきゃいけないんだ!

まあ、いいか どうでも。

 

呆然としてると冷ややかな声をかけられる。

 

 

「いつまでも突っ立ってないで座ったら?」

 

「…………」

 

 

そう言われておれは適当にひっつかんだ椅子に無言で座る。

 

 

「さて、あなたここは何部が知ってる?」

 

「平塚先生からは何も聞いてねぇよ」

 

「…そう。ならゲームをしましょう。ここがなんの部活か当ててみなさい?」

 

 

何上から目線で言ってんだ、この女?そりゃ優菜が警戒する訳だ。おかげで俺も知りたくない情報が愚痴として聞かされているためそれなりに知っている。

 

 

「奉仕部、だろ?」

 

「⁉︎…何故しっているのかしら?」

 

「知り合いから聞いたんだよ」

 

「知り合い?嘘はよしなさい。目が腐ってるあなたが知り合いなんていないでしょ?ところで比企谷くん、女の子と話したのは何年ぶり?」

 

 

あ?何言ってんだこいつ。

人を見た目で決めつけんなよ。

 

内心、イライラが溜まっていたがここは素直に答えることにする。

女子との会話となると……

 

 

「今朝ぶりだな」

 

 

朝に遥と優菜と話した。いや、優菜はニヤニヤしてただけで話したのは遥だけか。

 

 

「家族はカウントしないわよ?」

 

「いやちげーし。ちゃんとした知り合いだよ」

 

「あらそう。あなたみたいな人にも話せる知り合いがいるとは驚きね。その人に同情するわ」

 

 

このクソアマ。好き勝手言いやがって。

 

そう言うと雪ノ下は本を閉じ、立ち上がって腕を組む,

 

 

「ここは持たざるものに自立を促す部活。ホームレスには炊き出しを、途上国にはODAを、モテない男子には女子との会話を。

ようこそ奉仕部へ。歓迎するわ」

 

 

改めて説明されるが歓迎されてる気配がしない。社交辞令みたいなもんだろ。ってか最後は俺に対して言ったつもりか?

 

 

「頼まれた以上力になるわ。あなたの問題を解決してあげる。感謝なさい」

 

「何言ってんだか、俺の事を何も知らないくせに上から目線で俺に問題があるかのように言いやがる、お前の方が問題有るんじゃないか?」

 

 

そう言うと雪ノ下はこちらを睨んでくる。が、二宮さんや景浦さんとかの方が100倍怖いので平気だ。

 

「とにかく、俺はこんな部活に入る気はない。わかりましたか?平塚先生」

 

 

そう言うと前のドアが開き平塚先生が入ってくる。

 

 

「まさか気づいていたとはな。それより雪ノ下、どうやら比企谷の更正に手間取っているようだな」

 

「本人が問題を自覚していないせいです」

 

 

本当に好き勝手言いやがるなこいつ。

ならこっちにだって言い分はちゃんとある。

 

 

「ちげぇよ。その、なんだ?変わるだの変われだの、他人におれの自分のことを語られたくないんだっつの!」

 

「あなたのそれは逃げでしょ?」

 

「逃げて何が悪いんだよ、みんながみんな真正面から向き合えるほど強かねーんだよ」

 

 

それに

 

 

「変わるつっーのも現状からの逃げだ。どうして過去や今の自分を肯定してやれないんだよ。」

 

「……それじゃあ悩みは解決しないし、誰も救われないじゃない!」

 

「俺がいつ悩んでるって言ったよ、それに仮に悩んでてもお前みたいに初対面の奴に上から目線でモノを言う奴には何も頼まねえよ。せめて小学校の道徳くらい理解してから救うだのの文句を言え」

 

 

ホントそう思う。実際悩んだら十和や優菜、東さんに木崎さん、風間に二宮さんと相談する相手はたくさんいる。

こんな女に相談することなんてあり得ないな。いや、その前に優菜から殴られるな。

 

 

「其処までだ、二人とも落ち着け」

 

 

此処で平塚先生の制止が入る。

 

 

「いいぞ、いいぞ。 私の好みの展開になって来たぞ」

 

 

どんどん平塚先生が興奮してきている。何で生徒の口論聞いて喜んでんだ?

 

 

「それではこうしよう。これから君達は自らの主義主張を賭けて戦ってもらう。そして私はこれから君達へ悩める生徒を連れて来るので、彼ら彼女らを自分のやり方で救ってみたまえ。そして自らの手で自分の正義を示したまえ!!レディー、ファイt「……八幡」

 

 

平塚先生の言葉はドアが開く音と一人の少年によって遮られた。

 

 

「なんで十和がいるんだ?」

 

「あ、え、えーっと、八幡も一緒じゃない、と、練習相手いないから、意味、ないし……」

 

 

扉から顔を出したのは長い前髪でメガネと目を隠し、マスクを装着して顔を見られないようにしていた。

そう、学校バージョンの十和だった。

 

 

「そうか、わかった。じゃあ平塚先生、俺は用事があるので行きますね」

 

 

丁度よかった。これで勝手に部活に入れられる心配はない。

すると平塚先生は驚いて放心していた状態から元に戻り、俺の腕を引っ張った。

 

 

「ま、待て比企谷!なんで志神と君が話している!?」

 

「さっき言いましたよね?親友がいるって。彼ですよ?」

 

 

なんか恥ずかしい台詞だが学校バージョンの十和はからかってこない。故に堂々と親友と言ったがいいよね?

 

呆気にとられる平塚先生を置いて、今度は雪ノ下が口を開けた。

 

 

「待ちなさい。嘘はいけないわよ比企谷君。大方、同じ一人の志神君と体育のペアで一緒になったぐらいでしょ?そんなことだけで親友扱いはないんじゃないかしら?」

 

 

あ?それはどこの材木座だよ。

何自分の先入観だけで言ってんだ?この女。

 

「何言ってるんですか、雪ノ下さん。僕と八幡は親友ですよ?勝手に決めつけないでください」

 

 

次は十和がオドオド言わずにハッキリと答えた。

どうやら十和からして雪ノ下の第一印象は最悪らしい。ま、誰でもそう思うわな。

 

 

「何言ってるの?それより、あなたもよ、志神君。そのマスクと髪、どうにかしないの?コミュニケーションが苦手なのはわかるけどそれは社会からの逃げだわ」

 

「それの何が駄目なの?逃げも立派な戦術。社会を生きるために誰もが経験するはずでしょ。雪ノ下さんは逃げたことがないって言えるのかい?」

 

 

すると雪ノ下は鋭く睨みつける。

つまり肯定でいいんだな。

 

全く、俺を救う、だ。むしろストレスの原因を作られた。後で米屋あたりで鬱憤をはらそ。

 

しかし、あの十和から若干殺気がもれている。

ここに優菜がいなくてたすかったな。

 

 

「……わかったわ。あなたたち二人は問題だわ。私が絶対に更生してみせ「誰が誰を更生するの?」!?」

 

 

雪ノ下の声を遮り、聞いたことがある声がしたため十和のいる扉の方に再度、見た。

いや、サイドエフェクトで何となくわかっていたがフラグになっていたとは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……篠崎優菜さん、何か用事かしら?」

 

 

 

 

 

 

そこには冷たい目で雪ノ下を見る優菜が立っていた。

 

 

「いやー、私の親友が遅いからどこにいるか探していたらここだって目撃情報が入ってきてね。それで?誰が誰を救うの?」

 

 

優菜の親友という言葉に驚いた雪ノ下だがすぐに優菜を睨みつけた。

 

 

「あら?そこの二人は篠崎さんの親友なの?問題二人の親友のあなたも問題あるんじゃないかしら?」

 

「へー、ロクに友達がいない雪ノ下さんが私の親友をを馬鹿にする理由はあるのかな?」

 

「別に馬鹿にした訳じゃないわよ」

 

「ふーん。あ、じゃあ仕返し?自分から学年次席と3位を奪ったトワとハチの」

 

 

すると雪ノ下の目付きが鋭くなった。

 

なるほど

優菜は勿論、学年主席だが十和は次席、俺は3位だ。

優菜は完璧超人だから主席は当たり前。十和も英語のスピーキングが苦手ではなく出来ないがテストには関係ない。

俺も数学が酷かったが優菜や遥などが教えてくれたためこの順位だ。

ちなみに奈良坂が5位、遥が6位だ。

 

 

 

「勉強で負けて腹いせに俺を罵倒で潰そうとでもしたのか?」

 

「ヒキガエル君は黙ってな「黙るのはあなたの方よ」!?」

 

 

瞬間、優菜から殺気がもれだす。

 

 

「毎度毎度、テスト前にクラスのみんなに私の変な噂を流して集中力をなくそうとしている雪ノ下さん。私、いや私達より劣っているのに努力せずに逃げた雪ノ下さん」

 

「……っ!」

 

「あなたは誰かを変えることは出来ないわ。いや、そもそも本質を理解していないだけの箱入り娘。せめて自分を変えてから奉仕部なんて言う部活に参加した方がいいわよ」

 

 

そう言って優菜は「行こう」といって校門に向かっていった。

未だに睨みつけるが結局は反論しなかった。逃げる以前に進もうとしない。

そんな奴を優菜が嫌うのは当たり前だ。

 

キレる寸前だった十和も廊下で待っているとだけ伝えて姿を消した。

 

 

「それじゃあ平塚先生。俺は用事があるので失礼します」

 

「あ、ああ……」

 

 

もう二度と関わりたくない。

 

雪ノ下雪乃の本性を知った俺と十和は後ろを振り向かず、ボーダー本部へと向った。

 

 

 

 

 




如何でしょうか?

感想などもよろしくお願いします。できれば評価の方も……


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志神十和は死神として恐れられる

平日は時間がとれない場合があるので遅れます。


八幡side

 

 

「「「「………………………」」」」ガクブル

 

「おい!誰か三上を読んでこい!」

 

「志神が!志神がキレたぞ!!」

 

「十和先輩!?」

 

「あのバカ共が……っ!」

 

「おお……すげぇな、十和のやつ」

 

「感心してないで三上を探すぞ」

 

「C級隊員の皆も至急、三上を探してきてくれ!」

 

「「「「り、了解!!」」」」

 

「……………なんだこれ?」

 

 

 

ここはボーダー本部

普段は個人ランク戦で賑わっているこの場所だが今日は違う。確かに賑やかだが別の意味で賑やかだ。

 

先輩、後輩関係なく大慌てでその場をあとにし、忍田本部長はC級隊員に指示をだしている。その前に忍田本部長がいること事態が異常なのだが場は完全にカオスだった。

 

『や、やめてくれ十和!?』

 

『悪かった十和のすけ!!弁償するから、謝るから!?』

 

『十和先輩……っ!?』

 

 

異常なほどカオスな現場に隣の遥と優菜も唖然とするしかない。二人の目線は巨大モニター、つまり試合を見ていた。

悲鳴に似た声がしたため恐る恐る俺もモニターを見た。そこにはA級隊員3人が固まっていた。

 

 

A級1位太刀川隊 出水公平

 

A級7位三輪隊 米屋陽介

 

A級4位草壁隊 緑川駿

 

 

各A級部隊の中でもエース級であり、上から弾バカ、槍バカ、迅バカというボーダーの三バカだが完全に怯えている。

戦意喪失している3人だがいきなり、首が飛んだ。

最後まで怯えた目を宿していた3人だったが同時に光に包まれてベイルアウトした。

そのタイミングでカメラアングルが変わる。

 

 

そこに映っていたのは俺と同じ黒い隊服に身を包み、メガネ、そして光のない真っ黒な瞳と同様に黒く染まった大鎌を持った少年、十和だった。

 

 

「し、【死神】がまたしても降臨してしまった………っ!」

 

 

何か喚いている白衣を着たデブも含めてもう一度言おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんだこの状況?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~一時間前~

 

 

雪ノ下とのいざこざがあったあと、比企谷隊はボーダー本部に到着した。

中に入って真っ先に向かう場所は開発室、材木座のところだ。

 

 

「にしても二人には助かった。ありがとな」

 

「おお……ハチが珍しく素直だ」

 

「うっせぇ」

 

「あはは……まぁ気にしないでいいよ。僕も雪ノ下さんはキレそうになったし」

 

 

マスクを外し、イケメンメガネ状態の十和が言う。それに優菜も同意したのか頷いている。

……お前はキレていたろ

 

乙女の文字が外見しかない優菜の将来と若干、怒りが残っている十和を心配しながらも奉仕部云々のことは忘れて目的の場所に到着した。

 

 

「入るぞ、材木座」

 

「ふむ、来たか八幡に十和、それに篠崎殿よ」

 

 

 

材木座義輝

俺や十和などと同期でボーダーの試験を受けるがただの中二病患者なだけで戦闘の才能が全く無かったがために開発室でエンジニアとして働いている。

俺のぼっちと十和のコミュ障の半分が合成した中途半端なぼっちなコミュ障で中二なブタだ。

 

 

「……何か我、disられた気がする」

 

「気のせいだろ。それより新しいトリガーどうした?」

 

「けぷこんっ!勿論完成あるぞ!十和の希望も兼ねてオプショントリガーもできてある!」

 

「流石ね」

 

 

優菜が褒めるが同感だ。

確かにコイツには戦闘の才能がないがエンジニアとしての才能はずば抜けている。鬼怒田さんも目をつける人材なだけはある。韋駄天やテレポーター作ったのもコイツだし。

 

原作のただの中二じゃないんだよな。ん?原作?まぁいっか

 

 

「このトリガーは孤月を改造したもの……米屋殿の孤月(槍)と似ているが調節が必要でな。八幡よ。主には相手をしてもらいたいが時間がかかるためランク戦でもしてきてはどうだ?」

 

「あ!じゃあ嵐山隊の作戦室に行こ!遥ちゃんの手伝いに!」

 

「そうか。じゃあ優菜は行っといてくれ。俺は此処にのこ「ハチも行くよね?」……らずに嵐山隊の所に行こうと思う。うん」

 

 

断ろうとしたら優菜の殺気に負けて頷いてしまった。

別に遥の手伝いはいいが戦闘員の俺って必要なくね?

 

 

「必要に決まってるじゃない。その方が遥ちゃんが喜ぶし」

 

「人の思考を読むなよ……後、なんで俺がいると遥が喜ぶんだ?むしろ邪魔じゃね?」

 

「「「……はぁ」」」

 

 

3人の溜息が重なった。材木座までなんだ?

 

 

「綾辻さんも大変だねぇ」

 

「トワも人のこと言えないから……ま、いっか。行くよハチ」

 

「わかったから押すなよ」

 

 

ボソッと材木座の奴が「リア充爆発しろ」と言ったが完全に無視して嵐山隊の作戦室へと向った。

 

 

***

 

 

「どうも~遥ちゃんいる~?」

 

「……お邪魔します」

 

 

嵐山隊の作戦室は何度も入ったことがあるがキレイだ。

ウチの作戦室も優菜が掃除してくれているため俺の本、十和のDVD、優菜のお菓子で溢れかえっているが太刀川隊の作戦室のように散らかってはいない。

 

しかし、十和のやつ、アニメ好きだからと言ってもDVD多くね?いくらかかってるのか知らんが家にも大量にある。

幼馴染の三上が掃除しているらしいが完璧に夫婦だ。特に三上なんて十和の家なのに十和以上に物の場所を知っている。

十和の欠点ってコミュ障と家事ぐらいだろ?それを補う三上とはよくっつけ。

そう思いながら部屋を見ているとすぐに奥から人が出てきた。

 

 

「あ、優菜ちゃん。どう、し……は、八幡君!?」

 

 

出てきたのは俺の幼馴染である嵐山隊オペレーターの綾辻遥だった。遥は俺の顔を見た途端、顔を赤くしながら身だしなみを整えていた。

 

 

「なぁ、やっぱり俺、いない方が「うんうん!大丈夫だよ!ゆっくりしていって!」……お、おう」

 

 

そう言って俺と優菜は遥の勧めで椅子に座り、お茶を出してもらった。

おい、優菜は何故ニヤニヤしている?

 

 

「最近の遥ちゃんはわかりやすいねぇ~」

 

「優菜ちゃん!?」

 

 

優菜の言葉がスタートを合図して女子トークが始まった。たまに遥がこっち見てくるがやっぱり俺がいない方が女子同士で楽しいんじゃないか?

 

 

「じゃあハチは遥ちゃんの手伝いね。私は1人用の書類を仕上げるから」

 

 

言葉を発する前に優菜は仕事に取り掛かり、黙々と書類の束を片付けていく。

嵐山隊は広報の担当でもあるため仕事が多いな。

俺も手伝おうと遥に話しかけようとした時、遥の方から話しかけられた。

 

 

「ごめんね、八幡君にも手伝って貰って」

 

「気にするな。それより最近、顔が赤いが大丈夫か?風邪か?」

 

「風邪じゃないから平気だよ。それより手伝いよろしくね?」

 

そう言って遥は密着ギリギリにまで近づいてきて隣に座る。

ヤバイ。女子特有のいい匂いがしてきた。

しかし遥さんや。いくら幼馴染だからって言って無防備すぎじゃね?俺じゃなかったら大変だよ?可愛いんだから」

 

「は、八幡君!?」

「お~大胆だね~」

 

 

………出たよ、俺の悪い癖

そう言えば前に独り言いってから遥の様子がおかしかったな。怒ってる、よな。

 

 

「あー、すまん遥。気にしないでくれ」

 

「う、うん………よかった……」

 

 

書類に目を通し始めた事で意識が書類に向いたため遥の最後の言葉が聞こえなかったが更に近づく幼馴染を意識しないよう、仕事を始めたのであった。

 

 

 

 

***

 

 

その頃

 

十和side

 

こんにちは。比企谷隊の志神十和です。

 

隊長である八幡とオペレーターの優菜さんが部屋からでて数十分が経過していた。

材木座くんの指示に従って僕は新トリガーの孤月(鎌)の調整が完了した。

 

 

「どうであるか?なにか不満があるなら今のうちである!」

 

「うーん。大丈夫かな。むしろ扱い易い」

 

 

孤月を改造したこの武器だが、他の孤月とは色が違って真っ黒だ。材木座くんの趣味らしいが目立つなぁ。

外で目立つのは嫌だけどボーダーでは何故か目立っちゃってるしコミュ障も発動しないから色は気にしなくていいや。

 

 

「耐久性は通常の孤月と同じ。重みが大きさに合わせて重くなっているがレイガスト程ではない。攻撃力も使い方次第で強力になるぞ」

 

 

僕は玉狛のレイジさんの次にパーフェクトオールラウンダーになった。しかし風間さんや八幡からアタッカーとして教わったがどれもしっくりくる武器がなくて狙撃と射手で戦闘してきた。

でもパーフェクトオールラウンダーとしてアタッカーもする必要があるとレイジさんに教わって話し合いの結果、新トリガーを作ってもらったのだ。

 

 

「オプショントリガーは絶空孤月。旋空弧月は距離を重視しているがこの絶空孤月は威力重視であるため距離は少しである。だがシールドも破壊出来るほどの威力のためトリオンの消費が旋空よりちょっとだけ多いのでな、気をつけよ」

 

「了解。ありがとね。じゃあ八幡呼んでランク戦してくるよ」

 

「うむ!……あ、我も呼びに行こう。データを得るため二人のバトルは見るつもりであるからな!ついでに今期アニメの感想でも語り合おうではないか」

 

「………いいね」

 

 

アニメ好きな僕の話し相手はボーダーだと材木座くんぐらいだ。八幡はプリキュアが好きらしいがジャンルが違うから語れない。

これから白熱する議論のため、僕は材木座くんと同じく腕を伸ばした。

 

 

***

 

 

 

「……ふむ。やはり『妹○え』は八幡に見せてもいいと思う。シスコンだし」

 

「でも一話終わったからね~。録画してないからブルーレイ買うしかないけど下ネタ多いのダメなんだよ」

 

「……三上殿が?」

 

「うん。前に小説の方を読まれて上目遣いでこういうのはダメって言われちゃって……」

 

「……それ、もう夫婦ではないか」

 

 

ん?材木座くん今なんて言った?

ボソッと何を呟いたが気になったため質問しようとした時、比企谷隊の作戦室に誰か3人いることがわかった。

 

 

空間把握

 

 

 

名前の通りに空間にある物や人を知ることが出来る。

普段は一定の範囲だけど頑張れば広げられるし、狭くしてより詳しく知ることも出来る。

たまたま範囲が広かったのでシュルエットみたいにしかわからないけど八幡はいないな。アホ毛ないし。

 

気になった僕は材木座くんに声をかけて自分の作戦室に入った。

 

 

「誰かいる、の………」

 

「「「…………あっ」」」

 

 

そこには確かに3人いた。

出水くん、米屋くん、緑川くんだった。しかし、僕が反応したのはそこではない。3人の足元には僕のDVDがあった。初回限定版の。

 

でも状態が最悪だった。

ウチのオペレーターの優菜さんは甘党なので僕達の分もとお菓子が大量に常備されている。その中でも優菜さんの大好物でもあり今日のおやつのために買っていたショートケーキが落ちていたのだ。

 

僕のDVDの上に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブチッ

 

 

 

「……3人とも」

 

「「「は、はいっ!」」」

 

「ランク戦、100……殺ろ?」

 

いつも見ているはずの十和の笑顔ではないかことに3人はとっくに気づいている。

後に材木座が命名した孤月(鎌)【ファルクス】は3人の死刑を言い渡すが如く、幾度も3人を切り裂いていった。

 

 

 

 

 

 




オリキャラである二人の紹介を込めて前回と今回を書きました。

おそらくオリキャラはもう出さないと思いますが出したい時には募集しようと思うので意見よろしくお願いします!


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かくして比企谷隊の火力は上がったのであった

4話目です!


「………と、いう訳で出水殿達は処刑中なのである」

 

 

「……ーーーー」

 

 

 

 

 

 

八幡side

 

………なるほど

 

 

「つまり出水たちが十和のDVDをダメにしてキレたってことでいいか?」

 

「うむ。最初から最後まで見ていた我だが十和のあのキレ具合は初めて見るぞ」

 

 

材木座が言うのも頷ける。何故なら十和の性格でキレることは少ないのだ。

コミュ障だから学校は論外にしろ、ボーダーでは接しやすくて頼りになると正隊員は勿論、上層部や訓練生であるC級隊員も承知の事実だ。

 

仏のような人格者の十和だがキレると材木座が言ったように【死神】だ。

現にキレた十和は米屋を笑顔で材木座命名の【ファルクス】で真っ二つにした。騙されて怒る小南よりも鮮やかに決まった。

 

にしてもあの三バカは学習しないのか?

過去に一度、ボーダー内でキレた十和を見たことあるはずだぞ?そして瀕死になったエリートを忘れたのか?おっと、殆ど答え言っちゃった。

 

 

「………あの3人。後でオハナシしなきゃね」

 

「優菜ちゃん、落ち着いて。ね?」

 

 

死亡けってー

十和の迫力がありすぎて有耶無耶になっているが十和のDVDをダメにしたのは優菜のおやつであるショートケーキだ。

優菜の事だから後で高いケーキ要求して帰らせるが精神的に死んだ3人は安易に想像できる。

 

 

学習しない三バカに呆れながらも俺はモニターを見た。

3人は恐怖でいつもの元気はなくなり、好調とは言えない状態であるが腐っても鯛。バカでもA級だ。

 

 

青ざめた出水のバイパーを1部切って道を作り、

 

謝りながらも槍でつく米屋の槍は胴体と一緒に切断され、

 

震えながらもグラスホッパーですきを伺う緑川をシールドごと破壊する。

 

 

「……材木座。あの大鎌って攻撃力高ぇのか?」

 

「けぷこんっ!ファルクスは元が孤月故に斬撃に関しては孤月と同様である。耐久性も同じであるが重さは大きさに比例してあるが確実に重くはなっている」

 

「じゃああの威力はーーー」

 

「十和の実力で間違いないだろう。大鎌は非常に扱いが困難である。重心の移動に柄の位置、そして刃の向きを合わせてやっと一撃を振れる。レイガスト以上に使い手はいないと十和と興味本位で作ったのだが十和にとって大鎌は天性の武器だったらしい。鬼に金棒というが死神に大鎌ということわざを作ってもいいのではないか?」

 

 

風間さんの弟子である十和だがスコーピオンが合わないと言った理由がよくわかった。それでもスコーピオンでマスタークラスになった十和の才能は恐ろしいが大鎌だとそれ以上を発揮できるらしい。

 

殺気立つ優菜を遥に任せて材木座と解説していたその時だった。

 

 

「確かに凄いな。私や慶も弾を切るが最低限度の数を切って避ける。ファルクスだったか?その特性を理解した上で連続技に発展させる志神の技術には驚かされるな」

 

「ーーー忍田本部長……」

 

 

材木座との会話に入ってきたのはボーダー本部長でありながらもノーマルトリガー最強の男、忍田本部長だった。

いつから?と思ったが確かC級隊員に指示だしてたな。場のカオスに頭がショートして忘れてた。

 

 

「すみません。ウチの隊員が迷惑かけて」

 

「別に迷惑ではないぞ。3対1で1人が3人を圧倒しているランク戦があっているだけだ」

 

 

ストッパーである三上を探す指示をさせてしまったのだが……この人、やっぱいい人だ。

 

忍田本部長は『市民の安全が一番!』の派閥の筆頭の人でA級1位太刀川隊隊長の太刀川さんの師匠だ。

 

ちなみに比企谷隊はどこにも属していない。俺たちの履歴上、『ネイバー絶対許さない』の木戸司令の派閥だと思われるが俺は妹の小町に金の面で苦労させないようにボーダーに入った。親父やお袋の死も気にしているが今は復讐より守ることが優先だ。

十和は家族がいなくなったが幼馴染の三上や仲がいい人達のためにボーダーに入った。だから復讐はそこまで考えてないらしい。

 

おかげで当時は三輪隊隊長の三輪に嫌われていたが十和が何か言ってからというもの落ち着いた。今は普通に飯くいに行くし、十和とは親友レベルだ。

 

おっと、長くなってしまったが結論。忍田本部長はいい人。以上。

 

 

「でも何で今日は此処に?仕事で忙しい筈っすよね?」

 

「ああ、それだが「俺が呼んだんだよ」」

 

 

ノーマルトリガー最強の男であるが役職は本部長。本来ならいるはずもない人がいるというボーダー隊員なら誰もが思う疑問に答えたのは後ろからの声だった。

 

 

「迅さんですか」

 

「おう、今日ランク戦見に来ると面白いものが見られるって俺のサイドエフェクトが言ったんで教えたんだ。しかし案の定、ボコボコにやられてんな、あの3人」

 

迅悠一

玉狛支部所属のS級隊員だ。

サイドエフェクトは未来予知というチートを持っているが豚箱行きにならないようにボーダー女子組にセクハラをしているセクハラエリートだ。

 

 

「こうなることがわかってたなら三バカとめといて下さいよ……」

 

「いや、俺のトラウマを共有する連中が現れる絶好の機会だったもんでな………」

 

「じゃあ三上にセクハラはしないで下さいよ……後、遥と優菜も。特に優菜!」

 

 

先程、十和が過去にキレたと言ったが元凶はこの人だ。

何でも未来があまり見ない日、サイドエフェクトが働かなかった日に偶然通りかかった三上の尻を触ったのだ。ここで三上は軽く悲鳴をあげて迅さんは説教されるだけですむと思った瞬間、突然未来が見えたらしい。

 

 

 

自分が多くの隊員の前で倒れている姿が

 

 

 

 

焦った迅さんは後ろを振り向くと紙袋のなかから割れたアニソンCDを落として笑顔でトリガーを起動させた十和がいたらしい。

幼馴染がセクハラされている現場にあい、その幼馴染の悲鳴にビクって大量のCDを落としてしまった十和は迅さんをランク戦まで連れて行ってボコボコにしたのだ。

 

結果は100戦で十和が87勝3引き分けだ。

最後の10戦は迅さんがブラックトリガーの【風刃】を使ったらしいが十和が6勝3敗1引き分けだったらしい。

コレがC級隊員も見ていたらしく、尊敬の眼差しで十和を敬う理由になったのだ。

俺が高校入学の日に馬鹿な飼い主が犬のリードを手放して車に轢かれ、入院していた時期で詳しくは知らんが後で見舞いに来てくれた玉狛メンバーにきいた。

ん?なんでボーダーの俺が車に轢かれたかって?犬に噛まれて避けられなかったからだよ。

 

 

「まぁ、仲間が欲しかったのともう一つ重要なことがあるんだがな」

 

「そっちを言ってくださいよ……」

 

「まあまあーーーで、重要な事についてだな。志神、いや比企谷隊は目指すべき隊であるが怒らせるとヤバイことをC級隊員に改めて知覚してもらうためだ」

 

 

え?何で?

 

 

「まあ、疑問に思うだろうが俺も詳しくは分からない。だがC級隊員が最低でも志神を怒らせてはならないという意識を持ってもらうだけで大きく変わるんだよ。今ので確実に安定した未来になった」

 

「それだけですか?」

 

「実は、出水たちが志神を怒らせなかった時の未来の一つに何人かの正隊員ーーー三輪や小南、影浦、黒江、木虎そして風間さんに二宮さんあたりが上層部からポイントを没収されている未来でな」

 

「はぁ!?」

 

 

迅さんの言葉を聞いた瞬間、俺だけではなく材木座や忍田本部長、殺気が若干薄まった優菜に遥までも驚いていた。

 

三輪と小南と影さんは危なっかしいから有り得なくもないが黒江や木虎は真面目な後輩だし、風間さんと二宮さんは絶対に規定違反などしないはずだ。

 

 

「理由は俺にもわからないが流石にそれは不味いから今回は見逃した。あ、でも三上はもうすぐ来るから安心しろ」

 

「あ、比企谷君!」

 

 

迅さんの予知通りに三上がやってきた。

他の隊員もぞろぞろと戻って来たが表情から察するに必死だったのだろう。

 

 

「よう、三上。悪いが十和を落ち着かせて貰えないか?」

 

「それは勿論だよ。それで?今は何を、して……」

 

「ん?どうし………」

 

 

三上の様子と他の隊員がモニターを凝視していたため俺もそっちを見るとそこには『志神十和 98勝1敗』という文字が書いてあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

出水side

 

 

よう、俺は出水公平。太刀川隊所属のシューターだ。

 

呑気に自己紹介したいところだが現実はそう甘くない。理由は簡単だ。

現在、迅さんの時と同様にキレた比企谷隊の十和が目の前で新しいトリガーなのか知らんが大鎌を構えているからだ。

既に何十とベイルアウトした俺と槍バカ、迅バカだが1回も勝ていない。

説教が含まれた試合であるが流石に全敗は避けたい。一応、やらかして十和を怒らせた自覚はあるがA級としては勝ちに行きたい。

 

 

「おい槍バカ、迅バカ、聞こえてるか?」

 

『槍バカじゃねぇよ!』

 

『よねやん先輩。そういうのは後にして!』

 

後輩の意見の方が正しいぞ、槍バカ。

え?俺は弾バカだって?

槍バカより学力上だよ。つーか同学年で槍バカ以下はいないだろ。

 

 

「十和には後で謝る。だから残り二試合は勝つぞ」

 

『『了解!!』』

 

目の前には先程までの畏怖の対象がいるが色々と後回しだ!試合に集中しろ!

 

 

「槍バカは十和と相手してくれて!スキができたら逃げて俺と交代。迅バカは自分でタイミングを見つけてくれ!後、大鎌には注意しろ!」

 

 

内部通信を閉じると早速槍バカが動き出した。

 

 

「いくぞ十和の助!幻踊弧月!」

 

「…………」

 

 

槍バカの槍を十和は無言で捌いていく。しかし全ては無理らしく所々に傷がついた。

そして俺も合成弾を作り出し、4×4×4の64にわかれた弾を作り出す。それが完成したと同時に槍バカが大鎌の軌道をズラして大振りな攻撃をした後の体勢にさせた。

 

 

「ギムレット!」

 

「…………っ!」

 

 

俺の声とともに槍バカは十和を真っ直ぐな射程に位置づけるために横へ大きくズレた。

十和はサイドエフェクトの空間把握ですぐさま弾に気づき、無理な体勢から地面を蹴って後ろへと飛んだ。

 

十和がいた場所で爆発が起こるがこれで十和は動けない!

 

 

「ハウンド!」

 

 

同じく64の弾が片方ずつ、計128のハウンドの嵐が十和に待っていたが空中にいるため十和は逃げれない。

トリオン器官と手足にはなるべく重症を負わないように捌いている。

 

おいおい、この状況で捌けるのかよ?

太刀川さんにも切られるがA級1位のメンバーとしては泣けてくる。比企谷の奴も化物だしハッキリ言って強すぎだ!!

 

しかし、3対1で0勝はマジで勘弁!

 

結局、ハウンドはほぼ切られたがまだ問題ない!

 

 

「グラスホッパー!」

 

「………………」

 

 

居場所はわかっていたと思うがトリオンが漏れている状態では迅バカの攻撃を避けれずに、グラスホッパーで加速した迅バカはスコーピオンで上半身と下半身を分離させた。

 

 

「やったな!」

 

「とったぞーっ!」

 

 

バカ二人は喜んでいるが今回、十和はあの新トリガーしか使ってない。

パーフェクトオールラウンダーの十和はシューターとしても戦えるため本来だったら上手くいかなかった作戦に俺は頬を叩いて残りの1戦に向けて意識を高めた。

 

十和はすぐに戻ってきて同じ笑を浮かべていたが構えの大勢に入る。

 

 

「次は二人で攻めてくれ。俺は囮として撃つからスキを狙えっ!」

 

「「了解!」」

 

 

そう言って二人は勢いよく飛び出した。がーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………絶空孤月」

 

 

ボソリと十和が呟いた瞬間、先程まで以上の速さで振られた大鎌はすぐさま反応して二人と、二人の二重のシールドを切り裂き、光へと変えさせた。

 

 

「チッ……アステロイド!」

 

 

二人がベイルアウトするもすぐに攻撃を始める。

しかし、弾を切りながら突っ込んでくる十和を止められずに俺は光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡side

 

 

「もう……いくら怒ったからだって言ってもやり過ぎだよ」

 

「ごめんなさい。自重します」

 

 

現在、十和は三上に説教されている。正座で。

結果99勝1敗で十和が勝利したランク戦だが十和がまだ殺ろうとしていたため三上が抱きついてそれを阻止し、落ち着いたところで説教し始めた。

正気を取り戻した十和と三上を見ると、飲み会に行って帰ってきた夫を叱る妻の印象が強くて周りは暖かい目で見ていた。

普通だったら殺気を出す奴がいるはずだがボーダーでは十和と三上の仲の良さは知れ渡っているため、誰も憎んではいない。嫉妬している奴はいるかもしれんが。

 

ん?三バカ?奴らは死んだ。優菜の手によって。

 

 

お騒がせした十和の罰は迅さんの提案で三上に一日中、荷物持ちとして出かけることに決まった。迅さんナイスと思いながらも、隊長である俺も遥の荷物持ちを押し付けられた。

 

断ろうとしたら周りからの断らないよね?っと言う視線に、優菜の握りこぶし。そして潤んだ瞳で上目遣いで頼んでくる遥に負けて出かけることになった。

まぁ遥の買い物に付き合うのは昔からだったため今更気にしないが優菜にも罰はないかときいたら連帯責任は俺だけだと言われた。

解せぬ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして比企谷隊に新しい火力が加わったのであった。

 

 

 




一応、毎日更新していますがそれは無理だと思うので時間がかかるかも知れませんが極力頑張ります!

皆さんもどうか評価していって下さい!お願いします!


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比企谷八幡は師匠に初めて礼を言われる

お願い!

パロキャラをだしたいんですが意見ください

金持ち、権力がある人でいい人いたら教えてください!


八幡side

 

 

日曜

本来は学生だけでなく、社会人にとっても至福の時間である。

空は薄暗い雲に覆われ、雨も大量に降っている。

これで誰かにレインコート取られて自転車に乗ったら目もさらに腐るし髪の毛がダラ下がって警察に尋問されちゃいそう。

いや、されそうじゃなくてされるのか。実体験だがみんなもそうだろ?

え、俺だけ?

 

…………まぁ、過去の話などは重要な伏線の時にしか必要ない。

黒歴史にうっかりため息が出るが雨に打たれる音によってかき消された。

 

 

「暇だなー」

 

「暇だねー」

 

『………デジャブじゃん』

 

 

優菜がツッコミを入れて返すが事実だからしょうがない。

 

昔の俺なら家で朝番組を楽しんでいる時間帯だが湿った外に傘を刺さずに廃墟の民家の屋根に座っている。つまり防衛任務中なのだ。

幸い、トリオン体だと雨に濡れても風邪ひかないから今は雨のかなで充分に任務は可能だ。

 

 

「しかし、十和はその大鎌常備装備って固定概念出来ちまったな。なんかすんげぇ似合ってる」

 

「八幡まで僕を死神扱いするの?あれからC級隊員のみんなから志神じゃなくて死神って言われてるんだよ。まあ、悪意ないから良いけど」

 

 

十和はコミュ障

故にぼっちの俺と同様に視線には敏感だ。悲しい理由だがこれはボーダーに入ってサイドエフェクトだと知った今は違和感無いが、それまではこれが理由だと思っていた。

しかし、あながち間違っておらず影浦隊の影さんまではいかないが悪意のある視線には敏感だ。

 

この視線には俺も、十和も良い思い出はないからな………

 

 

『ハチも悪意の視線は敏感だし、ウチの隊ってとことんスナイパー殺しだよね〜。サイドエフェクトで場所が特定、視線でスナイパーらしき人物の特定。荒船さんが狙撃手になったから全員狙撃手の荒船隊と戦ったらフルボッコじゃん』

 

「優菜さん、も少し口調はお淑やかに。女子がフルボッコだと違和感あるよ?それに、荒船さんは元アタッカーだし対応出来るとおもうよ」

 

「いやいや、優菜にお淑やかなんて求めたらアイデンティティのぼうり『ハチ?』……いえ、優菜はもとからお淑やかです。はい」

 

 

まぁ、学校ではお淑やかに生活してるもんな。仮面がお厚い事で。

 

 

『あ、話戻すけどぼっちとコミュ障って似た者同士だね。いつも落ち着いてるのに馬鹿ども相手に処刑してるトワ見ると、ハチもキレたら似たようになるのかなぁって思ったし』

 

 

似た者同士、ねぇ

 

優菜の言葉に俺と十和は互いに顔を見合わせた。

 

ぼっちとコミュ障。互いに人との交流を避けている点では同じだ。

でもそれだけじゃない。原点が同じだからだ。

 

腐った目の俺がぼっちなのは必然的。だがメガネイケメン、りゃくしてメガネンの十和がコミュ障になったのは過去の教訓だ。

 

 

 

本当は力などないのに足掻き、勘違いし

 

欲しい物には手が届かず

 

絶望を経験した………

 

 

 

それが俺と十和の原点にしてもっとも脅威な存在。

 

 

力がないが故に自らを犠牲にして理念を掴み取った俺の理性

 

求めすぎたが故に下へ落とされ、分析した事で得た十和の知性

 

 

その最頂点にいると自負しているため理性の化け物と知性の化け物は同じなのだろう。

 

同じく野性という、過去を全て無かったことにする化け物の存在がある限りは……

 

 

『………あれ?私、シリアスな雰囲気にした?』

 

「いんや、別に問題ないぞ。むしろシリアスをぶち壊してくれて助かった」

 

『……なんか私が暴力女っていってるみたいな言葉ね?』

 

「違うから安心して、ね?」

 

 

優菜を十和が抑えたことでまた任務に戻った。

しかし雑談してても余裕だなんて今日は本当にトリオン兵来ないな。

A級には固定給料あるから問題ないが。

 

 

『あ、そうだ。ハチ、あれから奉し『比企谷隊、緊急任務だ』………えっ?緊急?』

 

 

優菜の言葉を遮って忍田本部長からの連絡が入った。

 

 

「こちら比企谷隊。任務って何ですか?」

 

『規律違反者だ。ボーダーのトリガーを一般人に受け渡しをしている事が判明した。比企谷隊は風間隊とその者を捉えてくれ』

 

「わかりました………それで、誰がそんな事を?」

 

『二宮隊の鳩原未来だ』

 

「「『……はっ?』」」

 

 

忍田本部長の指示に従って、俺と十和はグラスホッパーを起動させて全速力で送られてきた地図に従い、現場に向かうも意外な人の名前が出たことで止まりそうになった。

 

鳩原さんはA級2位の二宮隊の狙撃手だ。

人を撃てないためポイントを獲得できないが武器破壊により二宮隊を支えてきた。

俺は二宮さんの弟子だから鳩原さんとはちょくちょく会ったがあの人がそんな事をするはずが無い。

 

疑問に思いながら現場へと急ぐと俺のサイドエフェクトが反応した。

 

 

「十和!」

 

「分かってる。4人のうち1人が鳩原さんで間違いない……っ!」

 

「ちっ………!」

 

 

十和もサイドエフェクトで人数は確認出来た。

さらに距離をつめてやっと肉眼で見えたと思ったその時には遅かった。

 

ゲートが開き、鳩原さん含む4人は雨の中、真っ黒な穴の中へと消えていった。

 

 

「……すみません、捉えることが出来ませんでした」

 

『……了解した。風間隊ももうすぐ到着する筈だから合同で場の検索を頼む』

 

「「……了解」」

 

 

ゲートが閉じてすぐに、忍田本部長が言った通りに3人の姿が現れた。

 

 

「比企谷に志神か。遅れてすまなかった」

 

「……いえ、俺たちも何も出来なくてすみません」

 

「こればかりはしょうがない。では現場の探索をするぞ」

 

「十和先輩、お久しぶりです」

 

「おい菊地原!比企谷先輩にも挨拶を!……すみません比企谷先輩。後、お久しぶりです志神先輩」

 

「……うん。久しぶりだね」

 

『十和君、大丈夫?』

 

「うん、平気だから歌歩さんは心配しないでいいよ」

 

 

菊地原はいつも通りだが少しいつもより暗かった。まあ、尊敬する十和が元気がないのだ。無理もない。

 

 

 

結局、何も鳩原さんがこんなことをしたのかは分からなかったが俺たちが確認した鳩原さん以外の男3名が上層部で特定することとなった。

 

 

 

***

 

 

 

比企谷隊作戦室にて

 

 

「鳩原さんは規律違反でボーダーをクビ、ってことになる訳か」

 

「……ユヅルくん、大丈夫かな」

 

 

今日の出来事は上層部によって誰にも話すなと言われた。模範者が出ないためらしいが鳩原さんの弟子であるユヅルにも黙秘する必要があった。心苦しいが仕方がない。

これを知ったユヅルが鳩原さんを探すために同じことをする恐れもある。

 

 

「お前がユヅルを心配しているのはわかった。だからこそ、このことは絶対に言うなよ。わかったか?」

 

「……そうだね。ありがとう八幡」

 

「ああ………よし、じゃあ明日は学校だし帰え『piriri……』もしもし」

 

『比企谷。この後暇か?』

 

 

突然の電話だが俺は誰だかわかっていた。

 

二宮匡貴

俺の師匠にして、さっきクビになった鳩原さんの隊の隊長だ。

 

そんな人が急に電話して会えないかと言ってきたのだ。十中八九

 

 

「鳩原さんのこと、ですよね?」

 

『そうだ。話を聞きたい。エンジェル・ラダーって言う店に来い。志神と一緒にな。ドレスコードあるからその準備も』

 

 

手短に要件だけ伝えて二宮さんは電話を切った。

そして俺は十和の父親が使っていた服を拝借して夜、指定された店へと向かった。

 

 

 

 

 

「すまないな。ウチのバカが迷惑をかけてしまった」

 

「いえ、問題ないです」

 

「僕もです」

 

 

店はビルの上にあり、俺と十和は下で待っていた二宮さんに連れられドレスコードは問題なく通過し、二宮さんがジンジャエール、俺と十和がMAXコーヒーを頼んだ。

俺が興味本位で青髪の店員に注文したらあるとの事なので甘党の十和もMAXコーヒーを注文した。

 

 

「それで、鳩原さんのことはどれくらい聞きました?」

 

「風間隊と比企谷隊の報告書の内容は全て知っている」

 

「じゃあ僕達が言えることってないですよ?」

 

「わかっている。俺が聞きたいのは何故アイツがこんな馬鹿なことをしたのかお前達の考えを聞きたくてな」

 

 

普段、稽古の時も無愛想な二宮さんだが思いやりのある人だ。鳩原さんのことを相当、心配しているらしい。

 

 

「……僕は、鳩原さんが自分からトリガーを盗んだ、ってことはないと思ってます。」

 

「つまり?」

 

「鳩原さんと一緒にゲートを渡った3人の誰かが提案したのでしょう。あの時の鳩原さんの表情から脅迫されてる訳ではなかったのでおそらく、何か同じ理念があったのでしょう。ネイバーフッドに行く理由が」

 

十和の意見に考え込む二宮さんだが俺も同感だ。

 

 

「鳩原さんが弟子のユヅルを置いてまで行ったってことはよっぽど重要だったと思います。何か以前から聞いてはいなかったんですよね?」

 

「……何も」

 

 

そう言って二宮さんはまた黙ってしまった。

落ち着かせるためにも何を言おうか迷っていた時だった。

 

 

「……人を撃てないアイツがいきていられるのか?」

 

 

と、呟いた。

仲間が生きているかわからない。最悪、鳩原さんは死んでいるかもしれないと思っているのだろう。でも

 

 

「それは大丈夫っすよ」

 

「……どういう事だ?」

 

 

二宮さんが俺の方を見て尋ねてくる。

チラッと十和の方を見るとどうやら十和も俺と同じで理由はわかっているらしい。

 

 

「鳩原さんは元になってしまいましたがボーダー隊員です。そして今回の件を知っているのは二宮隊と風間隊、比企谷隊、そして上層部に鳩原さんの師匠と兄弟子の東さんとレイジさんだけ。でも、ネイバーフッドに密入しようとする隊員がいて、さらにさっき言った人以外でこのことがわかったはずの人が1人いるじゃないですか」

 

「………!?……迅か」

 

 

そう、迅さんだ。

あの人はサイドエフェクトでこの未来になることがわかっていた筈だ。真相はわからないにしろ、鳩原さんを止めなかった。

 

鳩原さんを止めなかった迅さんに二宮さんが怒りの矛先を向けようとする前に言っておこう。

 

 

「別に迅さんが悪いって言うわけではありませんよ。あの人、セクハラしている割には裏で動いてますし。今回の件も最悪の未来にならないためでしょう」

それに、と俺は付け足してさらに続ける。

「鳩原さんが死なない未来が見えたからこそ見逃したんじゃないんすか?もしも鳩原さんが死ぬことで最悪の未来が回避させられるのなら二宮さんには絶対に相談するはずです。それが無かったということは心配しなくても鳩原さんは生きているということです」

 

 

俺の言葉に二宮さんは不安な表情から一転して何か覚悟した顔になった。

 

 

「……そうだな。バカを心配する前に自分の事を考えないとな」

 

「B級になったことですか?」

 

「ああ。俺、いや俺たちは正式な方法でアイツを探し出して連れ戻す」

 

 

鳩原さんの任務規定違反で二宮隊はB級からのスタートだ。しかし、遠征に選ばれるのはA級の上位のみ。俺たちは行ったことない、っていうか興味ないが二宮さんはA級に上がることを決めたのだろう。

 

 

「わかりました。じゃあA級に戻ったら俺たちと戦いましょう」

 

「ああ。弟子だからと言って手加減はしない」

 

 

そう言って二宮さんはお代を3人分払って、場をあとにした。

帰りが遅くなるため二宮さんが車で送ってくれた。十和の家とは近いため同じ場所で降りる。

車内では無言の状態が続いたがすぐに降りる場所に着いた。

 

お礼を言って、ドアを閉めようとした時だった。

 

 

「比企谷」

 

「はい?」

 

「………ありがとな」

 

 

え?

 

「え?」

 

 

思わず心の声と口にしたことが同じになった。

だ、だってあの二宮さんが弟子の俺にありがとうって……!

 

 

「あの……」

 

「なんだ?」

 

「もう一度言ってもらえます?」

 

「…………………………死ね」

 

 

そう言って二宮さんは車を動かした。

 

初めて二宮さんにお礼を言われたこと嬉しくもありながら、いつか二宮隊と戦う日までに強くなると俺と十和は心に誓うのであった。

 

 

 

 




読んでくださりありがとうございます!

次は俺ガイルの内容になりますんでこれからも宜しくお願いします!


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やはり奉仕部は居場所ではない

も少し金持ちキャラを教えてください!


八幡side

 

月曜

それは多くの学生の天敵と言われる日だ。休日により訛った身体を無理矢理動かして学校へ向かうもリア充グループに一瞬、睨まれると空気の如く無視される。

目立たない窓際の席に着座すると中身が少ない鞄から音楽プレーヤーを取り出してマイナーソング、もしくは誰かさんのオススメアニソンを聞きながら腕を組んでホームルームまで目をつぶる。あ、最初以外は俺だ。

 

昨日は日曜だが防衛任務、さらに報告書を書かされてまさに社畜だった。優菜は優秀だから分かるが、十和は家事スキル皆無なため将来は三上が支えて立派な社畜になる事だろう。まあ、俺も何だかんだで働いてるわけだが社畜だけは勘弁だ。

俺は専業主夫になるのだからな!

 

ーーーと、月曜朝からテンションが高いのは疲労のせいだ。

 

鳩原さんめ、帰ってきたら何か奢ってもらわなければ示しがつかん。

 

昨日は二宮さんに送ってもらったからといっても夜の2時で日付が変わっていた。

俺、いや俺たち比企谷隊は学校にボーダー隊員であることを一部の教師、つーか校長にしか言ってない。だから遅刻するのは内申が落ちるので軽く寝てから自転車で通学中だがヤバイ。

いつもより自転車がブレる。

 

 

「お兄ちゃん!揺れてる揺れてる!もっと安全運転しなきゃ!」

 

 

まあ、無理もない。

寝不足な上に妹、小町が荷台に乗っているのだから。

おい、安全運転して欲しけりゃちゃんと座りなさい。お兄ちゃん転んじゃうよ?

 

にしても朝から俺とは違った意味でテンションが高い。ま、可愛いからいいけど」

 

 

「お兄ちゃん…………流石にシスコン過ぎるよ。あ、でも小町的にはポイント高いよ!」

 

 

おおぅ、また声に出していたらしい。

もうこの癖直すの諦めよっかな。だって無意識に言っちゃうんだもん!

…………キモいな

 

 

「はいはい、いいから座っとけ。また事故るぞ?」

 

「それは小町がいない時にしてよ」

 

「おい、直接1人の時に事故れって言うんじゃねぇよ。そこはお兄ちゃん、怪我しちゃダメだよって可愛く言うんじゃねぇのか?」

 

 

前に少し話したが俺は高校の入学式の時に事故をおこした。

学校の集合時間を間違えたから早朝の犬の散歩に行く誰かの犬を助けて3週間の間入院生活だった。

まぁ、入院費は車に乗ってた人が全額負担してくれた。

なんかえらい人みたいで公にしないのが条件だったため二つ返事でオーケーした。もともとはこっちの責任だが入院費が浮いてほんとたすかった。

でもボーダーのメンバーにはめっちゃ心配されたなぁ。柄にもないが今度なんか奢ってやろう。

 

 

「犬の飼い主さんから謝られた?お菓子もらった時に総武高の女子の制服だったけど」

 

「スルーか……ま、いいけど。しかし小町さんや?俺はお菓子など食べていないんだが?」

 

「あ…………ま、まあ!お菓子の人が女の人だからって浮気はダメだよ、お兄ちゃん!」

 

 

軽く睨むと小町は間が空いたが笑顔を向けて話題を変えてきた。

まあ、事実お菓子などどうだっていい。隊室に優菜所持の貰っていい菓子の山が積んであるしな。しかし問題はここじゃない

 

 

「おいおい、誰が浮気するのか?俺は誰かと付き合う前に避けられる男だぜ?」

 

 

ボーダーではオペレーターも含めて女子とは話す。それも普通に。

しかし学校の奴らは避けられ、そして無視されるのが当たり前だ。

 

そう考えるとボーダー組は良い奴ばっかだな。ほんと、俺がボーダーに所属していて良かった。

 

俺が改めてボーダーについてを振り返っていると後ろからため息が聞こえた。

 

 

「はぁ………これだからゴミぃちゃんは。遥お姉ちゃんが可哀想」

 

「何で遥が出てくるんだ?関係ないだろ」

 

「………十和さんも歌歩さんに似たような感じだって茜ちゃんから聞いたしーーー比企谷隊の男って大丈夫?でもここは小町がどうにかしなければいけませんなぁ」

 

 

何ブツブツ独り言言ってんだ?

俺が映るぞ。あ、小町はハイブリットぼっちだから受け継いでいるのか。すまん

 

 

「……まずは情報をーーーあっもう大丈夫。ありがとうお兄ちゃん!」

 

 

小町は基本、ボーダー隊員と仲がいい。特に那須隊との親睦が深く、那須隊スナイパーの日浦とは親友同士で同じクラスらしい。

自転車から降りた小町は中学校の門を潜り、姿を消した。

しかし何だったんだ?さっきの言葉は

 

考えながらも俺は自転車をこいで総武高へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

授業が終わった

 

え?早いって?わざわざ高校の授業風景を知る必要があるか?ないな。休み時間はぼっちだしなんにもトラブルは起きていない。

 

授業が終わり、今から何をするかとがやがやしている教室から早く出るため俺は手短に鞄に筆記用具をしまって密かにドアを開けるが、その向こうには誰かが待っていると俺のサイドエフェクトが反応した。

 

 

「比企谷、部室はそっちじゃないぞ」

 

「別に俺は部活に入るとは言ってませんよ?それにこれからバイトがあるか「ボーダー」………」

 

 

廊下には現国教師であり、奉仕部を担当している平塚先生の姿があった。

逃げ出そうと論破しようとしたが気になるワードが出てきたため押し黙った。

 

 

「ボーダー所属のA級部隊比企谷隊隊長比企谷八幡は君のことだろ?」

 

「……確かにそうですが。それで?俺を脅しでもするんですか?」

 

 

少し強めの声を出した。もし、言いふらされたくなければ奉仕部に!とでも言われようものなら俺も無理矢理だが逃げようと思った、が

 

 

「別に脅迫するつもりは無い。ただ、取り引きをしようと思ってな」

 

「取り引き?」

 

「そうだ。君たち比企谷隊の志神と篠崎はボーダー隊員だと校長にしか説明していなかっただろ?だからと言って任務で疲れて遅刻したとしても事情を言えない君たちの内申は下がっていく。だから君が奉仕部に入部したら君だけでなく、志神たちの分の評価の低下を阻止しよう」

 

なるほど、ギブアンドテイクか。

俺たちは今まで成績はとれたが内申が響いていた。

俺はボーダーの推薦は使わずに大学目指しているため内申が下がらないこの案は魅力的だ。

 

 

「わかりました。しかし、いくつかお願いしてもいいですか?」

 

「何だね?」

 

「まずは俺の矯正をなしにして下さい。ボーダーにいるため社交性は充分ですし、友人がいることも昨日、わかったでしょう?」

 

「それは勿論だ。むしろこの前は悪かった」

 

 

そう言って平塚先生は頭を下げた。

ただの独身だと思っていたがいい先生だった。

 

 

「……何か失礼なことを思われたような気がするが。それで、お願いは終わりか?」

 

 

「い、いえ。最後に一つ、俺がやめたいって言った時は必ず奉仕部とは関わらせないでください」

 

「………わかった」

 

 

おそらく平塚先生は俺の矯正を、望んでるのではない。部長であり、簡単に毒舌を吐く雪ノ下雪乃を変えたかったのだろう。

捻くれた俺がいることで場の雰囲気を良くし、活動に取り組めるよう思っていたらしいが俺には無理だ。

 

アイツがまともな思考を持つにはかけているものが多すぎる

 

 

 

 

 

一先ず、平塚先生の了承は得たため俺は一つの部屋へと向かった。

 

 

「邪魔するぞ」

 

「!?………あら、逃げがや君じゃない。昨日は逃げたくせにのこのこととまた来たの?マゾなの?」

 

「ちげーよ。平塚先生に頼まれたからだ。後、昨日は優菜を睨みつけるだけで言い返さなかった卑怯者がよく言えるな?」

 

そう返すと部室にいた雪ノ下雪乃は睨みつけてきた。

おい、今注意したばっかだぞ。三バカじゃあるまいし学習しろよ。あ、でも人間性だったら3人の方が圧倒的に上だな。

 

そして俺は雪ノ下の視線を無視して離れた場所に椅子を置き、鞄から小説を取り出して読み始めた。

 

 

いつの間にか視線は消えていったので、俺は読書に集中しようとしたその時だった。

サイドエフェクトに反応があり1人が向かってきているらしい。

ま、俺は参加しているだけであるため担当の雪ノ下に任せて俺は読書を続けた。

 

 

「し、失礼しま……ってヒッキー!?」

 

 

ドアを開ける音がすると、女の驚いた声が聞こえた。

誰だよヒッキー。最悪の渾名?だな

 

 

「ちょっと!聞いてるのヒッキー!」

 

「あら、目だけではなくて耳も腐ったのかしら?病院に行ったら?」

 

「じゃあお前は精神科行け。学年4位のクセに頭悪いとか病だろ。そしてヒッキーって俺のことか?誰か知らんが変な渾名で呼ぶな」

「はぁ!?ヒッキー知らないの!?同じクラスなのに!?由比ヶ浜結衣だよ!」

 

 

はぁ、その渾名は変えないつもりなのか。

しかしどっかでみたことあると思って思い出すと確かにいた。後ろの方の席に集まるリア充グループの内1人だったはずだ。

 

てか雪ノ下。お前は本当に挑発と睨みつけることしか出来んのか?

ポ○モンでも後2つは技を覚えられるぞ

 

 

「いいからその渾名はやめろ」

 

「はぁ?ヒッキーはヒッキーじゃん!何言ってんの!?キモい!」

 

 

この女ぁ。キモいしか言えんのか?バカだろ。ほんとに

 

俺はわざとらしく舌打ちをし、不満気な2人を放って読書に戻った。

 

 

「そこのゾンビがや君は無視して結構よ、由比ヶ浜さん。それで?依頼は何かしら?」

 

「あ、うん。平塚先生から聞いたんだけど……あの…その………」

 

 

依頼を尋ねた雪ノ下に、由比ヶ浜はこっちをチラチラとみて答えを渋った。

 

 

「……紐がや君。出て行ってくれ「piririri」……」

 

「あ、悪い」

 

 

なんか俺と名前が似た奴が雪ノ下から呼ばれたみたいだが着信音が聞こえたため廊下にでた。

しかし雪ノ下はほんと罵倒しかしてないな。ストレス溜まる。

 

イラつきが収まらないまま、俺は着信にでた。

 

 

「なんだ、米屋か」

 

『なんだとはなんだよ。それよりランク戦しようぜハッチ!弾バカと迅バカもいるからよ!』

 

「そうか。わかった。今から学校を出るから少し待っててくれ。何なら先にしといてくれ」

 

『わかった。早く来いよ!』

 

 

電話の相手は三バカの1人、米屋陽介だった。

十和に殺られたことを忘れ、すっかり戦闘狂の米屋の申し出を断る理由がないため、俺は電話を切り、もう一度中に入った。

 

 

「比企谷君。今から調理室に行くからあなたも来なさい」

 

「悪いが無理だ。用事ができたから帰る」

「待ちなさい!平塚先生から頼まれたのでしょ?」

 

「お生憎様、平塚先生からは用事があるなら帰っていいとの許可は貰ってる。信じないなら後で聞け。俺は帰る」

 

 

そう言って、後ろから騒ぐ声を無視して俺は本来の居場所であるボーダー本部へと向かっていった。

 

 




評価をぜひお願いします!

次もなるべく早く投稿する予定です!


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比企谷八幡は戸塚彩加と出会う

八幡と綾辻シーンです!

由比ヶ浜にアンチかかりますので嫌な人は注意して下さい。


八幡side

 

昨日、米屋に誘われてランク戦をした俺だが、早めに帰って寝たため体調はいい方だ。

三バカに十和と10本勝負を総当たりでした結果、俺が1位で十和が2位、その後は出水、米屋、緑川といつもの順で終わった。

なんかその後、C級隊員からは「死神に勝った!?」とか言われて俺も注目されちまった。どれほど十和が怖かったんだよ……

 

以前の十和暴走事件では十和の野性が出てきたから、というかキレたから出水達もいつも通りできなくてあそこまでの戦果になったが昨日は違った。

全員がいつものようにしての真剣勝負だった。

 

しかし、十和の奴は孤月の大鎌ことファルクスでの戦いのバリエーションが増えて攻撃がメインになった。

前は平均で6対4で俺が勝っていたが5対5で引き分けとなった。

強くなったな、十和よ。

 

ーーーと、父親視点で十和を見ているが実際そうだ。

今回の部隊でのランク戦は戦術を変える必要があるな。

 

 

次の日の学校ではその事ばかり考えてた。休み時間も俺に話しかけてくる奴いないからじっくり考えられたぜ!いや、ぼっちだからだけどね………

 

しかし今日はいつもはない筈の視線を感じてチラッとその方向を見ると明るい茶髪のビッチっとぽい女、えーっと、由比ヶ浜?がいた。

目が会った瞬間、何か言いたげに立ち上がったがクラスの女王ことえーっと……あ、名前知らないか。まぁ縦巻金髪ロールのお声がかかり余儀なくされた。

奉仕部関係か?なら俺は関わらないぞ。昨日のアイツの依頼が何であれ、俺は奉仕部には必要最低限しか関わりたくない。面倒な予感しかしない。迅さんならなんか知ってるか?

 

 

そしていつも通りの昼食の時間となり、俺はベストプレイスに向かおうとしたその時だった。

 

 

「……あ。は、八幡。え、えーっと。お、お昼ご飯一緒にた、食べない?」

 

 

いつもの学校バージョンよりぎこちない声で十和が俺を飯に誘ってきた。

なんか後ろで鼻血が大量に放出された音と、それを止めようとする連中の騒ぎ声が聞こえたため、目立たないためにも一度、廊下に出た。

 

 

「で?なんで十和が飯に?」

 

「え、えーっと。ま、まぁアレだよアレ。ほ、ほら!昨日のランク戦のアドバイスーみ、みたいな?」

 

「………学校じゃ目立つじゃねぇか」

 

「!……そ、そうだね!だから八幡がいつもご飯食べてる場所に今すぐ行って!僕はパンを買って行くよ!」

 

 

そう言って十和は冷や汗をかきながらどこかへ言ってしまった。

たまに学校でも話すが、いくら学校ではコミュ障だからと言ってもあそこまで言葉はつまられせないはずなんだが……

 

まぁ、もとからベストプレイスには行く予定だったし問題ないと判断して俺はそこへ向かった。

 

 

昼飯持った

 

途中でマッ缶買った

 

着いた

 

遥がいた

 

 

……… what?

 

 

「あ!八幡君!こっちこっち」

 

「……何で遥がいるんだ?俺は十和と食べる予定だったんだが?」

 

「あはは……実は志神君にお願いして2人にさせてもらったんだ」

 

 

え?俺と2人っきりになりたかったの?

やめてくれよ。いくら幼馴染だからと言っても勘違いして告白してふられるだろ?………やっぱりふられるのが前提だよなぁ

 

 

「何で俺なんかと?三上とか優菜とか、宇佐美だっているだろ?」

 

「……………鈍感」

 

「何で鈍感?逆に俺は敏感だぞ?特に悪意のこもった視線には」

 

 

そう言うと遥はまたしてもため息をついて少し怒った顔でこっちを見てきた。

 

 

「歌歩ちゃんは志神君と一緒だし、優菜ちゃんと栞ちゃんは同じクラスの人と食べてるよ」

 

 

え?遥ってぼっち………な訳ないか。

千葉県三門市に住んでいる人はボーダーの顔と言われる嵐山隊については全員知っている。その嵐山隊のオペレーターである遥がぼっちな訳ない。

総武高だけでも何100人ものファンクラブ会員がいるのに1人にさられるのはおかしい。

 

その前に十和よ。お前は呼び出しだけに使われたのか?俺が逃げることを予知して十和を使うなんてことをするのは優菜か宇佐美当たりだろう。

後で説教だな。

 

しかし、今は説教だの無視すべきレベルで不味い。

遥の顔がどんどん悲しげな表情になっていくのだ。

 

 

「……あのね、八幡君。私は八幡君とお昼を食べたかったから2人になったの。だから自分を低くしないでよ……」

 

 

そう言って遥は若干涙目になったため、俺は有名人とご飯食べてるよ目立つから逃げるという選択肢を排除して遥の頭の上に手を置いていた。

 

 

「あー、その。なんだ?悪かった。もう言わないから飯にしよ。な?」

 

「………うん」

 

 

顔が何故か赤いが、もっと撫でてと目で訴えてきたため目線をずらしてサラサラの遥の髪の感触を味わいながらゆっくり撫で続けた。

今更だが俺の幼馴染は可愛すぎる。

気持ち良さそうに目を細められたら直視出来ん。

 

 

 

「あ、ありがと。撫でてくれて」

 

「あ?別にいいぞ。ってか撫でて良かったのか?高校生で頭撫でられるのは嫌じゃねぇか?」

 

「うんうん。八幡君は上手だし、何だか落ち着くからもっと撫でて欲しいな」

 

 

万遍の笑顔で返してきた遥に「気が向いたら」とだけ答えて俺はマッ缶を開けて座った。

小学、中学と同じだった遥とは小学校の頃までは頭を撫でてとたのまれて撫でていたが俺のいじめが始まると遥も危険だと思った俺は中学では完全に他人のフリをしていた。

親の付き合いでたまに話したがほんの少しだけだ。

しかし、大規模侵攻が起こった後は、俺と小町は遥の両親にお世話になった。ボーダーに入隊し、高校に上がった時にボーダー内では前のような関係に戻すことが出来た。

だから遥の頭を触ったのは久しぶりになるが、もっとするのは俺の理性がもたない可能性があるため極力避けたい。

 

 

「遥の弁当は手製か?」

 

「うん。バランス悪い、かな?」

 

当たり前の如く隣に座ってきた遥に一言言おうとしたが楽しそうだったため聞けなかった。

逆に目に入ったのは野菜や肉が色鮮やかに飾られた弁当だった。

 

 

「いや、美味そうだなぁって思っただけだ。……専業主夫志望としては見習わなければ」

 

「その夢は諦めないの?」

 

「悪いが俺は社会にでて働くのはゴメンだ。ボーダーならいいがサラリーマンの俺って想像つかないだろ」

 

残業と明日の大量の書類の山をみて目が腐る俺なんて………アレ?似合って、る?

 

 

「遥は専業主夫志望の男を呆れるか?この前二宮さんにも聞かれたが睨みつけられて現実見ろって言われた」

 

「うーん。私はいいと思うよ。だって八幡君はほんとうに専業主夫になりたいんでしょ?だったら私は応援するよ!」

 

「……遥。お前、良い奴だな。絶対に将来はいいお嫁さんになるぞ」

 

 

遥の優しさに触れて本音を言った俺だが、遥はまたしても顔を真っ赤にして俯いてしまった。

なんか怒らせること言ったか?

 

 

「あー、なんか変なこと言ったな。すまん」

 

「ふぇっ!?あ、大丈夫大丈夫!………私が八幡君のお嫁さん……」

 

可愛らしい声が出ると大慌てで手を振り、大丈夫だと言ってるが最後は聞き取れなかった。やっぱり怒ってないか?

もう一度謝るべきと思った時だった。

 

 

「あれ……ヒッキー?」

 

 

と、後ろから由比ヶ浜の声が聞こえてきたので、振り返るとジュースを二つ持った由比ヶ浜がそこにはいた。

渾名はそのままか………

 

 

「由比ヶ浜か。何でここにいるんだ?」

 

「ジャンケンで負けたら買いに行くをって勝負をゆきのんとしたんだ。最初は、ゆきのん乗り気じゃなかったんだけど『負けるのが怖いの?』って言ったら乗ってきて、ジャンケンに勝ったとき、小さくガッツポーズして喜んでた。ちょっと可愛かったよ」

 

「ふーん」

 

 

なんか雪ノ下のことを渾名で呼び始めたから余程仲良くなったのだろう。

その前に雪ノ下だが簡単過ぎじゃねぇのか?そんだけで勝負にのるとかすぐに騙される小南レベルで社会に出たら失敗するぞ。

 

 

「ヒッキーは何でここに………って!綾辻さん!?」

 

「こんにちは。由比ヶ浜結衣さんだよね?」

 

 

なんだ?

コイツ、遥より影が薄い俺の方しか認知出来ていなかったのか?

 

 

「ヒッキー!?なんで綾辻さんと2人なの!?何したし!」

 

「……別に。私と八幡君は幼馴染なの。だから一緒に食べてるだけだよ」

 

 

俺がdisられて遥は機嫌を悪くしていつもより強い口調で由比ヶ浜に反論した。

反論してくれるのはありがたいが近づきすぎませんかね?

 

今、俺と遥は肩がギリギリ当たっているほど近い。

女子特有の匂いが鼻を刺激してきてヤバいんですが……!

 

 

「うっ……だ、だからって近すぎだよ!」

 

「八幡君は嫌がってないから良いでしょ?ね?」

 

「あ?ま、まあそうだな」

 

 

ほんとは離れてくれないとまた理性の壁が崩壊しそうだから離れてくれると助かるが流れに乗ってうんと答えてしまった。確かに嫌じゃない。むしろ嬉しいが恥ずかしいし、遥に気持ち悪がられたくないから言わない。

そうすると由比ヶ浜は黙って俺と遥を睨みつけてきた。

結局コイツは何がしたいんだ?

 

いい加減、飯の邪魔だから雪ノ下の所に帰れと言いたかったがその前に間が入った。さっきから多くね?

 

 

「あれ?由比ヶ浜さん……?」

 

 

と見覚えのある女子生徒が話しかけてきた。

 

 

「あ、さいちゃん。やっはろー」

 

 

と由比ヶ浜が訳のわからん挨拶で返した。

その挨拶はかなりバカっぽい。

 

 

「あ、比企谷君も綾辻さん、こんにちわ。」

 

 

と俺に話しかけてきたが、女子の知り合いにはいなかった気がする。

そもそも学校で知り合った女子は誠に遺憾であるが雪ノ下と由比ヶ浜だけだ。

 

 

「えっと……どちら様ですか?」

 

 

「はぁー!!ヒッキー、さいちゃんのこと知らないなんて、キモい」

 

 

と俺の言葉に由比ヶ浜がいきなり罵倒して来た。

雪ノ下とは違って直接的だな、おい。

 

流石にイライラしてきたので文句を言おうとしたその時だった

 

 

「由比ヶ浜さん。知らなかっただけでキモいって言うのはどうかと思うよ?」

 

「でも!さいちゃんを知らなかったヒッキーが悪いじゃん!キモいのはしょうがないよ!」

 

「もう一度言います。由比ヶ浜さん。人を罵倒するのはやめて下さい」

 

 

強く返された由比ヶ浜は黙って俯いてしまった。

なんか由比ヶ浜は雪ノ下に似てるな。つまり俺が嫌ってる部類に入る。

 

本来は俺が文句をいう立場だが、遥が代わりに怒ってくれたため、話をジャージを着た女子に戻す。

 

 

「すまんな。何分、女子の知り合いは少なくて知らなかった。で、誰だ?」

 

「「…………」」

 

「あ、あはは………」

 

 

と二人の沈黙と女子の乾いた笑いが返ってきた。

 

「………八幡君。彼は戸塚彩加君って言って八幡君と同じクラスの男子テニス部部長だよ」

 

「…………………は?」

 

と遥がとんでもない事を言ってきた。

 

何?!この容姿で男子だと?この見た目なら男子より女子と言った方が納得出来ると思う。

少なくとも俺は女だと思っていた。

 

 

「うん。僕、男子生徒なんだ……」

 

「……すまん。ジャージで判別つかなかったといえ、間違ってすまん」

 

 

と俺は戸塚に対して謝罪した。

すると彼じ…いや、彼は光のような笑顔で言ってきた。

 

 

「ううん。でも次は間違えないでね」

 

 

と。

なんて心が広いんだ。どこかの毒舌部長とビッチとは、ちがうな。

 

その後、戸塚は練習があるからとテニスコートに戻った。それに由比ヶ浜も納得のいかない表情だがパシリの最中なので教室に帰っていった。

 

 

「……飯、食べるか」

 

「うん!」

 

 

そう言って幼馴染との久しぶりの飯は最高でいつもより美味しく感じられた。

 

 

 

昼休みが終わり、午後の授業が終わると、昨日の条件のために奉仕部に向かった。

やっと学習したのか、雪ノ下は黙って睨みつけるだけですんだ。

俺は無言で奉仕部の部室でラノベを読んでいる時だった。部屋の扉が勢いよく開いて、由比ヶ浜が入ってきた。

 

 

「やっはろー。依頼人を連れてきたよ」

 

 

 

と言うが由比ヶ浜、拉致してきたんじゃないよな?などと考えていると雪ノ下が、由比ヶ浜に呆れながらも由比ヶ浜の立場を言った。

 

 

「由比ヶ浜さん……「あ、お礼とかいいから。私も奉仕部の一員だしね」……残念だけど、あなたは奉仕部の部員ではないわ。入部届けを貰ってないもの」

 

「え?そうなの。だったら書くよ、何枚でも」

 

 

と由比ヶ浜はカバンからルーズリーフを取り出し書き始めた。てか由比ヶ浜、入部届くらい漢字で書けよ。それでよく総武に入学できたな。まさかの裏口入学か?と考えていると由比ヶ浜が部屋の外にいる人物に中へ入るように促していた。

 

 

「あ、そうだ。さいちゃん、さあ、入って入って」

 

 

と入ってきたのは、戸塚だった。戸塚は入るなり周りを見渡し俺と目が合ってほっとしていた。

ヤバい、可愛いなおい

 

 

「あ、比企谷君って、奉仕部の部員だったんだね。知らなかったよ」

 

「まぁ、仮入部みたいなものだけどな。で、戸塚の依頼って何なんだ?」

 

「うん。実は僕がいるテニス部、他の人があまり練習に来ないんだ。だから、部長の僕が強くならない他の人も積極的に参加してくれないと思うんだ。それで、僕を強くしてほしいんだ」

 

 

と戸塚が言うと雪ノ下が由比ヶ浜に少し怒った口調で言った。

 

 

「由比ヶ浜さん。奉仕部の理念は、釣った魚を与えるのではなく釣り方を教えて自立を促すというものなのよ。貴女がしっかりと説明しないから、戸塚さんをがっかりさせるのよ」

 

「うっ……で、でもゆきのんなら出来ると思って、やっぱり出来ないよね……」

 

 

とテンションを下げてまるで雪ノ下を挑発しているかのようだった。

 

ってか雪ノ下よ。最初は俺の矯正とか言ってたくせに罵倒してきたじゃねぇか。そんな奴が釣りの仕方を教える訳がないだろ。

 

 

「あなたもそんなことを言うのね。……いいわ。その依頼を受けましょう」

 

 

とそれに対して雪ノ下は依頼を受けた。

馬鹿なのか?この自称救世主は。

 

完全に由比ヶ浜に乗せられたな。……由比ヶ浜は実は策士なのか?……いや、ないな。

 

 

「で、トレーニングメニューとか、どうすんだ?やっぱり初めは身体強化だよな?」

 

「とにかく、死ぬまで走って、死ぬまで素振りね。これに限るわ」

 

 

と俺の質問に雪ノ下は、おキレを通り越したことを言ってきた。流石に由比ヶ浜と戸塚も唖然としていた。

 

 

「……メニューは俺が考えておく。雪ノ下のでやったら戸塚や他の部員が練習できなくなる。もう少し、堅実的なメニューを考えろよ。それでほんとうに学年4位か?」

 

 

と雪ノ下は納得してない顔を俺に向けて睨みつけてきた。

そんな顔を向けるくらいなら、もっと真面目な練習メニュー考えろよ。スポーツしたことないのか?コイツ

 

 

 

こうして、奉仕部は戸塚のテニス強化依頼をやっていくことになった。

 

 

 

 

 



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何故か比企谷八幡は葉山隼人と三浦優美子とテニスをする

葉山と三浦のアンチです。


もう一度………
原作好きな人は注意して下さい!!


八幡side

 

 

そして翌日の昼休み。戸塚の依頼を達成するために俺はテニスコートを借りる許可を得るために生徒会室に来ていた。

 

 

「失礼します」

 

「はーい………八幡君?」

 

 

デスクの上にはパソコンやら書類が積まれた生徒会室には1人、遥がいた。

俺が扉を開けると驚いた顔でこっちを見てきた。

 

 

「珍しいね。八幡君がここに来るなんて。何か用?」

 

「ん?あ、そうだ。ちょっとテニスコートの使用許可くれないか?三人分」

 

「誰かとテニスするの?」

 

「ああ。戸塚の練習に手伝おうと思ってな」

 

「………ふーん。戸塚君のためか」

 

 

一瞬、悲しい顔をした遥だが「わかった」といって1枚の紙を取ってきて使用許可書を書き始めた。

 

 

「……はい。これで大丈夫?」

 

「ありがとな。時間割いて悪かった。今度なんか奢る」

 

「いいよ、別に。私は生徒会としての仕事をしただけだから」

 

 

遥はそう言うがさっきの悲しい顔をされたらなぁ………

 

 

「じゃあ何かして欲しい事があったら何でもいえ。俺に可能なことならしてやるぞ」

 

「えっ!ほんとに!?じ、じゃあ……今度の休みに何処か出かけない?久しぶりに……」

 

 

荷物持ちか?

別に構わないがアレは十和の暴走に巻き込まれて俺も遥に付き添うとボーダー隊員の前で決定したからなぁ。

 

 

「買い物は前に約束したからそこでなんか奢る。それならいいか?」

 

「じゃあそれでお願いね?」

 

 

先程とは打って変わって満面の笑みで遥が返してきた。

やっぱりコイツは笑顔の方がいいな。うん。

 

その後も軽く雑談して、遥も時間が空いたら見に来るとの事なのでまた後で、と挨拶してから生徒会室を後にした。

 

***

 

 

ジャージに着替え終わりテニスコートに入ると早速雪ノ下の指導が始まった。俺に反論されて真面目にメニューを考えてきた雪ノ下だが、もし俺が何も言わなかったらほんとに死ぬまで走らせる気だったのか?

 

毒舌女にため息をついて、雪ノ下の指示に従ってやった。

始めに基礎能力を高めると言う事で腕立て伏せや腹筋、軽いマラソンを中心に戸塚を鍛える。何故か由比ヶ浜は自分から参加している。しかし俺もやらされている。

 

まあ生身を鍛えるとトリオン体の動きも高まりやすくなるから修行と思えばそこまで面倒とは思わない。

前に十和のパーフェクトオールラウンダーの先輩であるレイジさんから聞いたメニューを今でも繰り返しているしな。

ただ、最初からあの内容はヤバい。翌日、全身筋肉痛で小町に呆れられたからな。

 

ちなみに雪ノ下にお前はやらないのかと聞いたら、さりげなく目を逸らしながら、指導役が必要だとか言って戸塚の元へ向かった。

お前絶対体力ないだろ………

昨日散々逃げるのが情けないとか言ってた癖に自分は体力のない事実から逃げてるだろうが。ほんとに頭が痛い。

 

 

とまぁ、雪ノ下の愚痴は置いといて

戸塚の様子を見る限り、本気でテニスに取り組もうとしているのが見て取れる。先は長いかもしれないがこれからしっかりと鍛えれば強くなれるだろう。

素振りにしろ何にしろ、一つ一つを丁寧にこなしていっている。

 

 

基礎練を多少終えて、次はラケットを使って実践練習が始まる。

 

基本は壁打ちを中心に行い、偶に俺がボールは決められた所に打ち戸塚がそれを打ち返すというメニューだ。実戦的でかなり良いメニューだ。

 

始め俺はそこそこ雪ノ下の指示通りのコースに打ち込む。

雪ノ下の指示したコースは嫌らしいが対処が不可能ではないコースだ。これならきついが実戦的で試合の役に立つ。

 

 

 

 

……………何度も見たが本当に戸塚は男なのか?

 

汗を拭く仕草にしろ、ガッツポーズの仕方にしろ可愛すぎだろ。

これで戸塚が男だったら真っ先に告白してふられてるぞ。まぁ、戸塚が女だったら誰かと付き合ってる可能性の方がでかいからな。

 

あー、戸塚と結婚したいなぁーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾクッ!

 

 

 

瞬間、物凄い殺気が校舎の方から感じられた。

振り返るも誰もいない。戸塚と由比ヶ浜は普通に練習してるし俺だけ狙われたのか?

一体、誰が………

 

1人頭を悩ますせていると問題が起こった。

 

 

「うわっ、さいちゃん、大丈夫?!」

 

 

見ると戸塚は膝を擦りむき血が出ていた。

何て事だ!天使、戸塚の脚に傷が付いただと!?

 

 

「うん、僕は大丈夫だから、続けて」

 

 

俺が内心焦っている中、戸塚がそう返した。

 

 

「無理はするな。俺が保健室に行って救急セットを借りてくるからその間休んでろ」

 

 

俺はそう言って戸塚の返事を聞かずに保健室へ向かった。戸塚の努力は凄いと思う。が、努力しすぎるといつか身を滅ぼす。俺と同じで。

 

休憩として戸塚には休んでもらい、俺は急いで走った。

 

 

***

 

 

保健室で救急セットを借りた俺はテニスコートへ走っている。

本来ならとっくに治療を終えて練習を再開している筈だったが、養護教諭が席を外していて10分ちょい待ってしまった。

戸塚の脚、怪我が残らないよな?

 

内心、戸塚のことが心配過ぎて、鍛えた体力をフルに使って戸塚の元に戻った。俺、戸塚好きすぎじゃ………やめよう。これ以上考えるのは。

また殺気が襲ってきそうで怖い

 

 

何故か流れる冷や汗を拭ってテニスコートへ走っていると、テニスコートから騒ぎ声が聞こえてきた。

 

不審に思い急いで近づくとテニスコートの周辺には大量の生徒会が何やら誰かの名前を叫んでいた。

集まった生徒を押しのけテニスコートに入ると俺は目を疑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テニスコートの中で雪ノ下が疲労困憊になっていて由比ヶ浜がその横で悔しそうな顔をしているからだ。

 

 

反対のコートには同じクラスのスクールカースト上位グループの縦巻金髪ロールと嵐山さんの劣化版に見えるイケメンが涼しい顔をして立っていた。

 

 

 

……何だこの状況?

 

 

 

とりあえず事情を聞く為に審判をしている戸塚の元へ歩き出す。すると戸塚は悲しそうな顔をして見てくる。

 

 

「戸塚、何だこの状況は?」

 

「あ、比企谷君。実は……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほどな……」

 

先程擦りむいた箇所の手当をしながら戸塚に聞いた所、

 

 

戸塚休憩中

クラスのリア充グループが来てコート使わせろと要求

雪ノ下の毒舌発動

縦巻金髪ロールキレる

劣化嵐山さんがコートを賭けて勝負と意味不明なことを提案

雪ノ下拒否

縦巻金髪ロールが仕返しの挑発を発動

雪ノ下、挑発に乗る

ダブルスの試合開始

雪ノ下、強い

縦巻金髪ロール、下手な由比ヶ浜を狙う

互角の試合

雪ノ下体力切れ

由比ヶ浜、論外

大ピンチ!

 

 

 

という状況らしい。

 

 

俺は呆れて雪ノ下達を見た。

昨日の由比ヶ浜からの挑発に乗った時点で分かっていたことだがコイツは社会を見れていない。

自分は優秀、誰にも劣っていないと間違った自覚をしているようならばそれを上手く使われるだけだ。

 

由比ヶ浜は何故、雪ノ下を止めなかった?戸塚の迷惑になると分からなかったのか?

 

 

「比企谷君、どうにか出来ないかな?」

 

 

不安そうな顔の戸塚が申し訳なさそうに言ってきた。

本来はアイツらのせいだ。しかしそれで戸塚に迷惑だ。俺のエンジェルの邪魔はさせん!

 

 

「わかった。俺が出る。但し一つだけ約束しろ」

 

「何?」

 

「あの2人は顧問や生徒会から許可を貰ってない筈だ。まずは許可証があるか聞いてあったら勝負なんてせずに貸して、無かったら今後ははっきりと断れ。でないと向こうもつけあがるぞ」

 

 

あの類の連中は上からの権力を使わないと黙らせられないからな。確かあの劣化嵐山さんはサッカー部部長だったな。

無断でテニス部の所持品使ったと知られれば確実に不利になる。その事も分からない奴が部長なのもどうかと思うがな。

 

 

「う、うん。わかった」

 

「ならいい。ところで試合のルールは?」

 

「あ、先に11ポイント決めた方の勝ちだよ」

 

「なら卓球と同じになるのか。それで、今のポイント差は?」

 

「7ー5で雪ノ下さん達が負けてるよ。始めはリードしてたんだけど雪ノ下さんが体力切れしてから……」

 

 

一気に詰められた訳だな。つーか約20分で体力切れとかどんだけ体力ないんだよ?

体力から逃げただけで次に生かそうとしなかったからこのザマなんだ。そこら辺をちゃんと自覚しろ、クズ女が

 

 

「わかった。とりあえず俺が出るから安心しろ」

 

 

テニスコート中央に行くと全員の視線が襲いかかる。大方、あの目が腐ったやつ誰?だろうが今はどうだっていい。戸塚の練習がかかっているんだからな。

様々な視線を無視して雪ノ下と由比ヶ浜に話しかける。

 

 

 

「事情は聞いた。後は俺がやるからお前らはさっさとどけ」

 

「あなたが勝てる筈ないじゃない。本気で言ってるの?」

 

 

随分偉そうだな。この女は。

もしかして自分のせいだと分かってないのか?

 

 

「少なくともお前よりマシだ。大体お前何で試合を受けたんだ?生徒会の許可を貰っている俺達にあるんだぞ。わざわざ試合するとか戸塚の練習を害してるだけだろ」

 

 

そう返すと雪ノ下は苦い顔をして俯く。

 

 

「話は戸塚から聞いた。お前が挑発に乗るのは自由だが今回は戸塚のテニスコートがかかってんだぞ?お前のプライドなんかの為に他人に迷惑をかけるな。奉仕部の理念じゃ魚を取る方法を教えると言ったがお前の行動は釣竿の糸を切っているのと同じだ。それが分かったらコートから出ろ。邪魔だ」

 

「ちょっと、ヒッキー!ゆきのんが可哀想だよ!」

 

「じゃあ可哀想になる前にお前が止めろよ。それが出来ないならお前も雪ノ下と同じで迷惑だ」

 

 

そう言って雪ノ下と由比ヶ浜は俺を睨みつけるが無視だ無視。

 

 

「選手交代だ。それでいいか?」

 

「別にいいけど………あんた、ユイになんてこといったし?」

 

「正論を言っただけだが?」

 

「なっ!?よくもユイを……っ!」

 

「何言ってんだ?俺が由比ヶ浜をコケにするのはダメだがお前らはいいのか?雪ノ下が強いってわかった瞬間、雑魚の由比ヶ浜を標的にした癖に。友達ごっこなら他所でやれ。反吐が出る」

 

 

そう言うと縦巻金髪ロールは睨みつける。なんだ?頭が悪い奴はすぐに睨んでくるのか?

いくら何でも沸点低すぎんだろ………

 

 

「確かサーブは毎回交代だったな。次は俺か?」

 

「そうだし。だから早くするし!中学に県大会に出場したことがあるあーしが叩き潰してやる!」

 

 

頭痛い

さっきの説明でもまだ理解していないのはおかしいだろ。

しかも挑発のつもりで自分の過去を言ったが過去は過去だ。今、放課後に教室やらファミレスやらでワイワイ騒いでいるやつが今も以前と同じように動ける訳ないだろ。

縦巻金髪ロール俺にボールを投げてきたので受け取り後ろに下がる。

 

俺も少しキレたから全力でさせて貰うぞ

 

 

「おい。そろそろ始めていいか?」

 

「あ、ああ、すまないえーっと、ヒキタニ君」

 

 

流石劣化版。わかりやすい間違いをしてきやがった。

まぁ俺も劣化嵐山さんの名前知らないし文句言える立場じゃねぇ。

そのまま無視して俺はサーブラインに移動した。

 

完全に油断しているリア充共をみてボールを上げて

 

 

 

「フッ!!」

 

 

力の限りラケットに当てた。打ったボールは対応しようとして間に合わなかった劣化嵐山さんの足元で跳ねてそのままフェンスに引っかかる。

 

すると観客の周りに沈黙が漂う。大方目の腐った奴がリア充にサーブを決めれて驚いているのだろう。とりあえずこれで7-6だ。

 

前を見ると2人がポカンとしている。

 

 

「おい。次はお前らのサーブだろ?」

 

 

放心状態の2人に何事も無かったかのようにさらっと言うと劣化嵐山さんがボールを手に取りサーブをしてくる。

だが見切れる速さだな。

 

俺は全力で前に走り、バウンドしたボールを打ち返す。狙いは2人の中間地点だ。すると2人が同時に走り打とうとするがどっちが打つか悩んだのか両者とも止まり、慌ててうち返そうとした縦巻金髪ロールの横をボールが通り抜ける。これで7ー7で同点だ。

 

 

次は俺がサーブの番だ。

本来、俺は最初の方はわざと点を取らせた後に全力を見せる。そこに挑発を含めてキレた相手を簡単に潰していくという、初めて緑川とランク戦した時にやった方法を使おうとしたが途中からなのでそれは出来ない。

 

俺は再び全力で金髪の足元を狙う。しかし劣化嵐山さんも一度失敗したことを学習したした、後ろに跳んで打ち返そうとする。

 

返されたボールに俺は劣化嵐山さんが打ち返す前にネットに張り付くために走り出す。それと同時に劣化嵐山さんが打ち返す。ナイスショットだ。俺の真正面に来たし。

 

俺はそれをドロップショットで打ち返す。軽く跳ねたボールはネットを軽く越えて相手コートに入る。

気づいた2人はボールを取ろうとするがラケットは空振りで、2人は盛大に転んだ。7-8で勝ち越しだ。

 

周りを見るとザワザワしている。

まぁ、俺は普段からトレーニングしてるし、体育の授業では体育教師の厚木に「今日は体調が良くないのでみんなの邪魔にならないよう、向こうで壁あてしてます」と言って壁相手に相当、色んなショットをしたため、ドロップショットなどを決められたのだ。

 

するとポーンポーンと音がしたので音源の方向を向くと縦ロールがボールを地面についている。

 

気を引き締めて構えると縦ロールはボールを上げて

 

 

「今なら謝るだけで許してやるし!!」

 

 

そう言ってサーブを打ってきた。その速さには俺も驚いた。

しかし、結局は運動していない奴のサーブだ。

 

俺のサイドエフェクトは気配察知。これは人だけでなく物でも場所を特定することが出来る。その方向に、風間さんのスコーピオンや、二宮さんのバイパーによって鍛えられた俺の身体能力がボールについて行き、余裕で打ち返す。

 

まさか自分のサーブが返されることはないだろうとドヤ顔していた縦巻金髪ロールの顔は俺が打ち返した途端、苦い顔をしたがボールを取ろうとした。実際に触れたが体勢が悪く、観客席の方にボールが飛んでいった。

 

 

「どうした?今なら逃げられるぞ。お前には不名誉な称号がつくが」

 

「………ふざけるなしっ!!」

 

 

どこぞのゆるキャラと被るぞ?と冗談を考えて後ろを向いた途端、

 

俺は驚いた声を出した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………お前ら、何でここに居るんだ?」

 

「比企谷がテニスしてるって聞いてな」

 

「ハチくん、頑張るのだぞー」

 

「何でテニスしてんの?」

 

「おい菊地原!」

 

「……………八幡、後で話は聞くけど今は頑張って」

 

「あはは………頑張ってね、比企谷君」

 

「………………(ゴゴゴッ)」

 

 

上から順に奈良坂、宇佐美、菊地原、歌川、十和、三上、優菜が観戦していたのだ。

 

菊地原は無視して十和と優菜以外は頑張れと声をかけてくれるが2人は何故、俺が雪ノ下と一緒にいるのか聞きたいのだろう。

俺が奉仕部に入部したって言ってなかったからな。優菜とか後ろで般若が見える。

 

 

「いやー、本当は遥っちも見たかったろうけど生徒会行ってるしね〜」

 

「何で遥がテニス見たいん…………あ」

 

そう言えば遥は………

 

 

「ナイスだ宇佐美。十和と優菜は後で事情を説明するからまた後ででいいか?」

 

「……………僕たちはそれでいいよ」

 

 

お怒りの優菜の代わりに十和が答える。ボーダー組が揃っているからマシだが、学校だとまだ会話に間があるな。

 

ともかく、俺は視線を2人に向けた。

 

縦巻金髪ロールは相変わらずのがんを飛ばす表情だったが、劣化嵐山さんも軽く睨んでいた。

 

 

「……ヒキタニくん。流石に言い過ぎじゃないかな?」

 

「じゃあ先にそっちの奴を止めろよ………」

 

「確かにそうだ……でも、優美子は悪気があって言ったんじゃないんだ。だから謝ってくれ」

 

「隼人………」

 

 

コイツも由比ヶ浜と一緒で自己中だ。

縦巻金髪ロールは確実に悪意あったろうし、縦巻金髪ロールはいいのに何で俺だけ謝らせるんだ?

 

しかし、これで2人の未来は決定した。

今回は雪ノ下が絡んだから試合する始末になったため、リア充とはいえ軽い罰で済むようにしようとしたが無しだ。

 

サーブ権は俺なのでまだごちゃごちゃ言っている奴らを無視して準備した。

縦巻金髪ロールと劣化嵐山さんは睨みつけて警戒するがその警戒心は仇となるぞ?

 

 

「そらよっと」

 

 

今までのサーブとは違う、やる気のまったくないサーブを俺は打った。

さっきまで睨んでいた2人も呆気に取られて上を通ろうとするボールを目で追っていた。

 

大方アウトになると思ったんだろう。だがな

 

 

俺がそんな無駄なことはしないぞ。

 

 

 

サイドエフェクトの気配察知でコートの面積を正確に調べ、どのくらいの強さ、角度で打てばラインギリギリにバウンドさせられるか考えられて放たれたボールは予想通りに相手コートの角に落ちた。

 

 

「な!?い、今のはまぐれだし!」

 

「じゃあもう一回してやろうか?俺はテニスの腕の差で負けるお前達を配慮してまぐれで勝ったようにセッティングしようとしたんだがな」

 

「………ぼっちのクセにっ!!」

 

 

完全にキレた縦巻金髪ロールは持っているラケットを強く握る。

やっぱり挑発に弱すぎだ。このまま生徒会副会長の遥が来るまで粘ろうとして、後ろを向いたその時だった。ーーー

 

 

ガンっ!

 

 

縦巻金髪ロールはおれに向かってラケットを投げたのだ。

本当はサイドエフェクトで簡単に避けられたがわざと当たった。縦巻金髪ロールにはしっかり罰を受けてもらうために

頭に直撃した途端、息を呑む声と俺の名前を呼ぶ声が聞こえたが問題ない。急所は外した。

それでも頭から血が流れている。

 

 

「八幡!頭から血が出てるよ!大丈夫!?」

 

「戸塚か。大丈夫だ。ちょっと血を押えるもんあるか?」

 

「わかったから待っていて!」

 

 

ん?頭打ったからか分からんが戸塚が俺を名前で言ったよな?

幻聴では……ないな。ヤバい、嬉しすぎてニヤけそう。

 

と、幸せな事を考えながらも俺は最大限の殺気を込めて縦巻金髪ロールを睨みつける。

 

 

「おい、人に物を投げつけるなよ。どういう神経してんだ?」

 

「…………すまなかった!謝るから優美子を許してくれ!」

 

 

流石劣化嵐山さんだ。全然、誠意が感じられない。

 

 

「俺はお前には言ってないぞ。なのに縦巻金髪ロールの方は謝りもしない………もう一度言う。どんな神経してんだ?」

 

 

そう言うと劣化嵐山さんまで黙った。周りの生徒も縦巻金髪ロールを罵っている。

そんな中、必死で俺を心配する声が聞こえた。

 

 

「八幡君!大丈夫なの!?」

 

 

やってきたのは生徒会副会長の遥である。遥の登場で縦巻金髪ロールと劣化嵐山さんは顔を青くする。

 

 

「問題ない。ちょっと切れただけだ」

 

「よかった………ほんとよかったよぅ……」

 

 

そう言って遥は今にも泣き出しそうだった。

あー、いくらわざと当たったとしても心配かけたな。ボーダー組も心配してるし。

 

 

「………三浦さんと葉山君。生徒会室で事情を聞きますからついてきて下さい」

 

 

戸塚と遥に手当された後、最大限の怒りを込めて遥は周りの生徒を解散させて、名前が三浦と葉山というらしい2人を連れて生徒会室へ向かった。

雪ノ下たち?アイツらは知らん。

 

 

誰か知らんが教師を呼んだらしく、念の為に休めとのことで俺は保健室に向かった。

 

 




文字数が多くなってしまいました……


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比企谷八幡は綾辻遥とデートする~その1~

UAが10,000突破してました!

これからも精進しますのでよろしくお願いします!


八幡side

 

 

テニス部の一件から何日か経過した。

縦巻金髪ロールこと三浦は、俺に怪我を負わせた責任で2週間の停学に、劣化嵐山さんこと葉山はテニス部の所持品を勝手に使用し厳重注意となり部活動を同じく2週間中止された。

 

本来は遥が試合中にやって来て2人の説教を目的としていたが三浦の暴走で事件が悪化してしまった。悪いのは三浦と雪ノ下だ。

あの後、戸塚に聞いたが雪ノ下と由比ヶ浜は先に帰っていたらしい。俺は戸塚の依頼に最後まで動いたのにアイツらはすっぽ抜けやがった。平塚先生との協力関係はもう破綻しそうだが仕方がない。俺も基本的に奉仕部には行っていない。と言うか優菜にこのことを説明したら行くなと言われた。

その後の優菜さんの何か思いついた笑顔を見て十和と冷や汗をかいたが何も無いよね?

 

と、まあ、これが一週間の出来事だ。悪い思い出になってしまったが戸塚と出会えたのは本当によかった。毎朝、教室に来ると「八幡!おはよう!」って元気に挨拶してくるんだぜ?朝から昇天しそうな天使の微笑みにもうメロメロだ。

 

 

ムギュッ!

 

 

「………遥さんや、腕が痛いんですが?」

 

「………八幡君、今誰のこと考えてたの?」

 

「と、戸塚です」

 

「………今日は私と出かけてくれるんでしょ?別の子のことは考えないでよ」

 

 

現在、俺は小町チョイスの私服を着て、さらに腐った目を誤魔化せる俺得なアイテム、伊達メガネを装着して千葉駅のホームに並んでいる。いや、俺だけではないな。隣にはジト目で俺を睨む幼馴染の遥がいる。

 

以前から約束していた荷物持ちのため比企谷隊と嵐山隊両方が休みの日曜、つまり今日、出かけることになったのだ。

 

俺と小町は綾辻家の近くのアパートで二人暮らしだ。収入はいくらA級隊員の固定給料があれど高校生のためいい物件ではないがそこそこ広い。

遥はボーダーの顔である嵐山隊オペレーターのためそれなりに顔が広まっている。よって返送としてアクセサリーに深めの帽子に俺と同じメガネを付けていた。

そんな遥を迎えに行ってそのまま千葉駅から数分のショッピングモールに向かっているのだが………

 

 

「俺が悪かった。戸塚のことは今日は考えないから機嫌直してくれ。な?」

 

「……戸塚君は私より可愛いもんね。女の子だったら結婚したいって前に思ったでしょ?」

 

 

…………あります。

テニスの時にそう思った瞬間、背筋が凍ったような感じになったためよく覚えている。

もしかして遥が嫉妬した?

 

ないない。ボーダーのマドンナの遥が俺なんかに嫉妬、てか恋心なんてあるはずがない。よく話すのも俺がぼっちマスターになる前から話していたからであって、単純に幼馴染だ。

 

そして遥より戸塚が可愛い?確かに戸塚は可愛いが遥もかなり可愛い。ってかどストライクなんだけどなぁ」

 

 

「え!?は、はちみゃん君!?」

 

「……あ、声出してたか?」

 

「う、うん………」

 

「すまんな、変な事言って」

 

「へ、変なことはいってないよ!………むしろ嬉しい(ボソッ)」

 

「ん?最後なんか言ったか?」

 

「うんうん。何でもないよ♪」

 

丁度電車が来たようなので、いきなり調子が良くなった遥に腕を引っ張られながら電車に乗り込んだ。

顔が赤いが……やっぱりさっきの発言、怒ってるんじゃねぇか?

 

不安なので聞いてみようと思ったが遥がやけに嬉しそうな様子なので聞けない。

 

電車内では静かにするのが常識のため、席が空いていなく満員に近かったため俺は扉付近に遥を移動させて痴漢予防をした。小町と電車に乗るといつもしている行動で、もし小町に痴漢しようものならトリガーを使って切り刻むって小町に言ったら呆れられた。

遥にも同じ行動を無意識にしていたが、人は各駅に停車するごとに多くなっていく。終いにはーーー

 

 

「…………//」

 

「……近いがすまん」

 

「だ、大丈夫!八幡君なら平気だよ!//」

 

 

遥が顔を真っ赤にして怒るのも無理ない。立ち位置的に壁ドンに近い状態になっているのだ。

昼食とかも奢る決意をして「もう少しだけ我慢してくれ」と、冷静に言ったが遥の上目遣いと匂いで理性の壁がまたしても崩れそうだ……

 

 

***

 

 

その後、俺の理性の壁は壊れることなく電車から降りてショッピングモールに到着した。

 

 

「それで、何処を見て回る?こんだけ広いと全部は無理だろ」

 

「うーん。八幡君は行きたい所ある?」

 

「そもそも何の店があるか知らねぇしなぁ。防衛任務がない時の休日は家でゴロゴロするかランク戦してるし」

 

 

後、出水たちとメシ食いに行ったり二宮さんとの新技の練習だったり、弟子の指導だ。え、弟子がいたのかって?一応いるぞ。これでも総合4位だし。

まぁ、こんな感じで、店に行くとしても本屋だけだから大型のショッピングモールは久しぶりで何がどこにあるかさっぱりだ。

 

 

「じゃあ小物と服を見に行っていい?」

 

「構わないぞ。ちゃんと荷物持ちとしての責務は全うする」

 

「もう……私は八幡君と出かけたかっただけだから荷物は持たなくていいよ」

 

 

なんかさり気なく恥ずかしことを言ってきたが本人は気づいていないようなのでそっぽを向いて歩き出した遥について行った。

 

 

 

 

 

 

 

「あっ!これ可愛い!」

 

「ぬいぐるみか。前からこんなの好きだったな」

 

「うん。今も部屋に飾ってるよ」

 

「へー。で?それ買うの?」

 

「うーん。買わない、かな」

 

「……前から思っていたが、女子って見るだけが多いな」

 

「まあね。選んでいる時も楽しいし」

 

 

そう言って遥はペンギンがモチーフのぬいぐるみを元の位置に戻した。確かペンギンってラテン語で………やめよう、怒られそうだ。

 

そんな感じで遥は気になった店に入っては品を見ての繰り返しである。俺も付き添いで女子ばかりのショップに入るが店員さんからは何も言われない。

 

流石メガネ。以前、小町と来た時はメガネなくて怪しい人を見ている目付きで店員さんから見られたもんな。

小町に選んでもらってほんとに助かった。

 

 

「あっ」

 

「ん?どうかしたか?」

 

「いや、何でもないよ」

 

 

気になって遥の目線に入っていたものを見た。

そこにはシンプルなデザインのブレスレットがあった。欲しいのか?と聞こうとしたが「次行こ?」といわれ、移動することにした。

 

 

 

 

 

その後もいくつかの店に回って、今は服を見ている。

遥の服装は頭より下だと、白いシャツに黄色の薄いカーディガン、そして長めのスカートを履いていてお淑やかな遥にはぴったりだった。

 

それだけで十分だと男の俺は思うが女は違うらしい。服のセンス0の俺だからよく分からん。

 

 

「八幡君、どっちがいいと思う?」

 

 

そんな俺に遥は持っている赤色か水色を基準としたニットを交互に服に当てて意見を求めてきた。

 

 

「……俺の服のセンスが酷いこと知ってるよな?だから俺に聞かずに店員に聞けよ」

 

「別にいいよ。私は八幡君の意見が欲しいから」

 

 

参ったな。テキトーに答えられない。

別に俺が選んだ方を買うってわけじゃないし、本音を言うのがここはベストだろう。

 

 

「そうだな……水色も落ち着いた感じがあっていいが赤が俺はいいと思う。遥、嵐山隊だしイメージが赤だしな。それに持っていないだろ?赤色系統は」

 

「そっか。じゃあ赤色を買おっと」

 

「……一応聞くが俺が選んだからじゃないよな?」

 

「八幡君が選んでくれたし、私はどっちでも良かったから」

 

 

まあ、遥は基本的に何着ても似合うから大丈夫だよな?

遥は早速、レジに並んでニットを袋に入れてもらい、俺はそれを持った。

 

 

「本当に大丈夫なのに……」

 

「大丈夫だ。むしろ遥が荷物持って男の俺が手ぶらだった方が問題ありだから持たせてくれ」

 

「……じゃあ、お願いね?」

 

「あ、ああ……………………って、は?」

 

「ん?どうしたの?……………あれ?」

 

 

遥の笑顔にドキッとしたため反対側を反射的に見た。するとそこには男1人が女3人に囲まれていた。

 

 

「よかったらあたし達とゲーセンいかね?」

 

「い、いやぁー、僕、待っている人、が、いる、か、ら」

 

「あはは!キンチョーしてる?」

 

「ヤダ、カワイー!」

 

 

状況から察するに逆ナンだろ。しかし、男の方が問題だった。

そう、同じ隊の仲間にして相棒の十和(マスクなし)だったのだ。

 

逆ナンされてもおかしくない。十和は基本イケメンだ。

普通、アニメキャラの私服を手本にしたら痛いだけなのに十和はそれをクールに着こなす。いつものジーパンに、上は黒のロンティーを着て腕を捲っていた。

マスク付けていないから根暗に見える要素が消えて逆ナンされたのだろう。

 

 

「おい、どうした十和」

 

「は、八幡に綾辻さん!」

 

コミュ障の十和は俺の姿を見るなりすきを見て3人の女子から逃れた。

3人は面白くない顔をしたがすぐにどこか別の場所に行ったようだ。

 

 

「助かったよ、ありがとう」

 

「気にすんな。それよりお前が1人でこんな人が多い所に来るなんて珍し「あれ?比企谷君に遥ちゃん?」……なんだ、三上と一緒か」

 

 

ナイスタイミングで、三上が近くの店から出てきた。

手に持っている袋から察するに三上が会計中に十和は逆ナンされたのだろう。

 

 

「歌歩ちゃん、久しぶり。今日は志神君とデートなの?」

 

「い、いゃあ、その………あっ!遥ちゃんは比企谷君とデート?」

 

「ふぇっ!?い、いや、私達は、そのぉ……」

 

 

三上に質問したことがブーメランとして返ってきた。

なんでそんなにあたふたしてんだ?

 

 

「別に俺は遥の荷物持ちだぞ?」

 

 

そう事実を言ったが3人はため息を吐いた。

 

 

「相変わらずだね、八幡は」

 

「そうだね。遥ちゃん、頑張って!」

 

「うん、わかった」

 

 

俺を除け者にして十和と三上が遥を励ましてる。一体何のことだ?

話を聞くと、十和も三上の荷物持ちとして出かけている途中らしい。三上がいるから安心してマスクを外していた、との事だ。

 

 

「で、どうする?何なら一緒に行くか?」

 

「うーん。悪いけど別々にしよっか。綾辻さんに悪いし」

 

「何で遥に悪いんだ?」

 

「「自分で考えなよ」」

 

 

と、十和と三上の夫婦コンビの声がハモった。

しかし自分で考えろ?うむ、意味がわからん。

 

 

「わからないか……じゃあ僕達はこれで。いこ、歌歩さん」

 

「あ、ちょっと待ってて、十和君。遥ちゃん、またね!」

 

「うん、バイバイ」

 

 

そう言って十和はさり気なく三上から袋を取って歩いていった。

笑顔で話し合う2人は傍から見たら恋人なのだが十和の奴が気づいてないからなぁ……

 

 

「そう言えばーーー」

 

「どうした?」

 

「うん。志神君って八幡君と三輪君は名前で呼び捨てなのに幼馴染の歌歩ちゃんに何で名前にさんを付けるのかなぁって」

 

 

十和は年上は勿論だが後輩にも君かさんをつける。男で呼び捨てにするのは俺と三輪ぐらいだ。

何故三輪かというと、詳しいことは知らんが前まで互いに思想が違ったらしく、十和と三輪が口論になったらしい。どっちが勝ったかわからんがその翌日から三輪は金目当てでボーダーに入った俺の思いを理解したとかいって仲良くなり、十和とは互いに呼び捨てで呼び合う仲になっていた。

しかし、三上をさん付けで呼ぶのは本当にわからん。

優菜も名前だがさん付けする。しかし幼馴染に名前で呼ぶのにさんを付けるか?今度理由を聞いておこう。

 

 

「仲いいね。あの2人」

 

「そうだな」

 

「…………よし!じゃあ私達も行こ?」

 

 

深呼吸した遥は俺の手を握って引っ張っていった。

何してるの遥さん!?あ、手、柔けぇ……じゃなくて!

 

 

「あの、手が繋がって………」

 

「………前に」

 

「前?」

 

「出来ることなら何でもするって言ったかでしょ?」

 

 

あー、確かにテニスコートの使用許可貰う時に言ったなぁ。

いくら遥公認だからって後ろからファンクラブの奴に刺されないよな?俺?

 

「………わかった。じゃあ、このまま移動するか?」

 

「うん!」

 

 

更に一段、手を握る力が強まった遥に合わせて俺も痛くないように握り返す。

何気ない会話をしながら、俺はこの状態を楽しんでいた。

 

 

 




デート編前半終〜了!

次回はブラックコーヒーが欲しくなる甘さになるよう頑張ります!


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比企谷八幡は綾辻遥とデートする~その2~

最初に一言

コーヒーにはミルク入れてください

ラブコメほんとムズい………


 

八幡side

 

 

「ふふっ♪」

 

「…………はぁ」

 

 

現在、俺と遥はとある千葉のショッピングモールに来ている。

 

何か科学と魔術の世界のアレに似てしまったが今は深く語れる余裕がない。

何故ならーーー

 

 

「「「………チッ」」」

 

 

男数人で遊びに来ていた団体にすれ違うたびに舌打ちは勿論、陰口を叩かれているため落ち着かん。

まぁ、その理由は嬉しそうにしている遥を見て目で追うと近くにいる冴えない俺に視線が移るからだ。

 

 

「懐かしいね。八幡君と手を繋ぐなんて」

 

「当たり前だろ。俺が覚えてるので小1の最初と自然体験の時だぞ」

 

 

遥とは肩がぶつかり、手はしっかり握られた状態なのだ。

 

それに懐かしいと言っても昔すぎるだろ。

小1の時は無心で、ただ指示に従って何かのペアだった遥と手を繋いで、小5?くらいの時の自然体験としてキャンプをしたが夜のダンスで唯一手を繋いだのが遥だ。それ以外の女子とはエアダンス。

 

小5の俺、可哀想すぎるだろ。そうなると遥は救世主だった。

 

……これ以上は本気で涙でそうだから忘れよう。

 

 

で、今の状況をもう一度整理しよう。

そりゃあ、変装しているがボーダーのマドンナ遥がメガネつけて腐った目が隠れているが普通の男と手を繋いでいるのだ。嫉妬するのは仕方ない。

ってか俺もいつもそっち側だから気持ちはわかる。

 

だから、まぁその……落ち着かん。以上。

 

 

「はぁ………ん?遥、時間もアレだし昼飯にしないか?腹減ったし」

 

「そうだね。私もお腹すいたなぁ」

 

 

よし!

これで店を出たら手を繋がなくてすむ。

別に嫌じゃない。寧ろもっと繋いでいたいがこれ以上は恥ずい。

 

俺がリア充みたいなことをするのは間違っているのだ。

 

 

***

 

 

そこそこ大きいショッピングモールの中には飲食店があるため、俺たちはテキトーに選んで内装がカフェの店に入った。

 

本当はサイゼがよかったが………ここは千葉なのにサイゼがないとは思わなかった。八幡、一生の不覚っ!

 

 

「俺は……ハンバーグ定食とデザートにコーヒーゼリーだな。遥は決まったか?」

 

「うーん。ちょっと待っててね」

 

「お水です」

 

 

二人席に座った俺は早速メニューを決めたが遥はまだのようだ。

 

ん?何か聞いたことある声がしたが……気のせいか。

 

 

「……よし。私はグラタンとショートケーキにするよ。優菜ちゃん、よく食べてるし」

 

 

そして注文した俺たちは雑談を始めた。

 

 

「まぁ、優菜の好物だしな。俺も十和がよくコーヒーゼリー食ってるから頼んだし」

 

「八幡君達ってみんな甘党だよね。体は大丈夫?」

 

「特に病気らしい病院にはかかってないな」

 

「ならよかったよ。でも気をつけてね?」

 

 

比企谷隊のメンバーは全員化け物であり、変わり者

 

それが正隊員の比企谷隊に対する意見らしい。

俺は理性、十和は知性、優菜は智力の化け物らしい。

俺と十和は前に言ったが優菜の智力はアイツのオペレーターとしての実力だ。自称完璧の毒舌女と違って本当の完璧が篠崎優菜なのだ。

 

化け物扱いなのは癪に障るがまだマシだ。

変人じゃないだろ?

十和は……コミュ障

 

優菜は……暴力女

 

俺は……あ、ぼっちで確かに、一般的には全員変だった。

 

後は3人がマッ缶をよく飲む程の甘党だ。ボーダーでマッ缶を飲める人数は少ない。

千葉県民なのに何故だ?解せぬ。

 

その後もたわいもない会話が続きいつの間にか注文していたハンバーグ定食が運ばれてきていた。

腹が減っていたしすぐに一口頬張る。うん、普通に美味いな。

 

でもなぁー

 

出来立てなため俺には丁度いい温度だが猫舌気味の遥には少々熱いらしく目の前でーーー

 

「ふー、ふー………はむっ!……ん、美味しい」

 

と、声を出して熱そうに口元を押さえて食べいる。そう、なんかエロくなってしまっているのだ。

おかげで精神が少しずつ削られながら急いで食べる始末になった。

 

デザートは俺より遅く食べ終わった遥が完食してすぐに運ばれてきた。俺はコーヒーゼリーが入った器に手をつける。

うん、これも美味い。

十和がコーヒーゼリーを食べると必ずコーヒーゼリーにハズレはないって言うが俺も同感だ。

 

半分くらい食べ進んだ頃ぐらいだろうか?

遥が爆弾発言を落としたのは

 

 

「ねぇ八幡君」

 

「なんだ?」

 

「よかったらデザートシェアしない?私もケーキあげるから」

 

 

アレだ。女子がよく弁当の中身を交換しているようなやつだ。

いや、男同士でもあるな。三輪が米屋によく食いかけのパンを横から貰っていた。でもあれはシェアじゃなくて餌付けだな。

俺は「わかった」と言って別のスプーンと器を貰ってよそおうとした時だった。

 

 

「あ、あーん……//」

 

「…………………は?」

 

 

と、上半身を前にして目を瞑り、口を開けてきた。

そんな遥の行動に俺の頭はフリーズして固まってしまう。

 

 

「………八幡君?」

 

「……何で口を開ける。わけるからちょっと待ってろ。店員からスプーンと器をもら「ま、待って!」……なんだ?」

 

「そ、その……あーんって、して?//」

 

 

顔を真っ赤にしてチラチラと潤んだ瞳で俺を見てきて、遥はまた口を開けた。怒って………はないな。これは恥ずかしから顔が赤いのだろうーーー

 

って、恥ずかしいならするなよ!

俺も恥ずい。だから断ろうとした時だ

 

 

「は、八幡君……その、はやく…して?//」

 

頭が真っ白になった。

遥の恥じらいの顔は凄まじい破壊力だった。頭が真っ白った俺は自然と遥の口にコーヒーゼリーを入れた。俺の使っていたスプーンで。

 

 

「んっ………くちゅっ…美味しい。あ、ありがとう//」

 

「お、おう//」

 

関節キスになってしまい、謝ろうとしたが顔を見れない。

しばらくしてやっと落ち着いてきた。俺は遥が使ってしまったスプーンで食べるべきか迷っていた。そしてーーー

 

 

「八幡君。お礼に……はい、どうぞ」

 

 

その言葉と同時に遥は今度は逆に俺にあーんをしてきた。

やめろ!上目遣いで差し出してくるな!可愛すぎだろ全く」

 

 

「か、かわい!?//………と、とにかくはやくして//」

 

 

………また、声に出した。さらに顔を真っ赤にしてフォークを近づけてくる。

これは避けられない。満を持して覚悟を決め、素早く差し出されたケーキを食べた。

 

 

パシャリ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん?パシャ?

 

モグモグと味がわからないケーキを食べる俺は音がした方に目を向ける。

 

 

「あっ………音消してなかった………」

 

その方向にはウェイトレスの格好をした宇佐美曰く、もさもさしたイケメンこと烏丸がスマホをこっちに向けて変なことをほざいていた。

 

 

「…………バイトか?烏丸」

 

「はい」

「…………今、何してた」

 

「何も」

 

 

平然を装いながら無表情でスマホをポケットにしまい込む烏丸を見て俺は軽く殺気を放つ。

 

 

「…………写真、撮ったよな」

 

「………俺のフォルダーからは消します」

 

 

そしていくつかの操作を終えた烏丸は写真フォルダーをスライドさせてさっきの写真がないことを表して何事もなかったかのように近づいては挨拶をしてくる。

 

 

「こんにちは、比企谷先輩に綾辻先輩。お二人もデートですか?」

 

「デートじゃねぇよ……ん?”も”ってなんだ?」

 

「志神先輩と三上先輩がさっき来ましたので。これが証拠です」

 

 

そして烏丸は三上が真っ赤になってあーんされている写真を見せてきた。十和は手しか写っていない。

 

 

「志神先輩はサイドエフェクトで俺に気づいていたらしくてメールで自分は写さずに恥ずかしがる三上先輩だけを写真で撮ってくれと言われまして。比企谷先輩も来たので同じことをしようとしたんですが……俺に気づいてませんでしたか?」

 

 

………俺、気配察知で会ったことあるやつの気配わかるんだったわ

 

ヤベぇ。意識が遥に移っていたから完全に気づかなかった。

 

 

「志神先輩は平然とあーんしたりされていましたが比企谷先輩は真っ赤ですね。小南先輩たちの反応が楽しみです」

 

 

十和の奴、なんで平然に出来るんだ?俺はもうしないぞ、こんな恥ずかしいことはリア充だけすればいいんだよ。

 

 

「あはは……それにしても歌歩ちゃん、顔真っ赤だね」

 

「そうだな。俺のヤツは小南に見られたらぜってーからかわれ……ん?おい、烏丸。写真消したよな?」

 

「………消しました。送りはしましたけど」

 

 

おい、最後は小声で言ったが俺は聞き取ったぞ。

会話の内容的に送ったのは小南か?

 

…………拡散されるな

 

 

「烏丸。今度100本しようぜ。ガイスト使っていいから」

 

「………俺、一時本部にはいきま「玉狛に今度行くから」……分かりました。本当にすみません」

 

 

今の俺ならガイストで強化された烏丸にかなりの差で勝ち越せる自信がある。

 

こうして烏丸の死刑は決定したのだった。

 

 

***

 

 

烏丸がバイトしている店から出たが………

 

 

「結局、手は繋ぐんですね……」

 

「ダメ、かな?」

 

 

当初の目的だった手を離すのは失敗し、遥に手を握られた俺は何も言わずにそのまま歩く。

あーんで耐久性が大幅にアップし、余裕ができている。

つまり慣れだ。慣れって怖いよなぁ……

 

 

「で?昼から何する。買い物は終わったんだろ?」

 

「そうだね………あっ!じゃあゲームセンター行こ」

 

「意外だな。国近先輩ならわかるが遥がゲーセン選ぶなんて」

 

「それこそ柚宇先輩と行くよ?」

 

 

つまり巻き込まれた、と。

 

あの人、3食よりゲームを優先する人だからな。

俺も前、太刀川隊の作戦室で国近先輩に掴まり徹夜でス○ブラをさせられた。途中から眠気でほとんど負けたがあの人はいつも徹夜なのに寝不足にならないよな。

 

そして俺たちはゲーセンに着いたのだが

 

 

「シューティングゲームはなしで。前に十和と三輪にボコられてトラウマがある」

 

「三輪君は流石ガンナーだね。志神君はシューターだけどガンナーとしても使えるんだっけ?」

 

 

シューターとガンナーは使うトリガーは同じだが感覚が全然違う。ガンナーの三輪は的確に敵を駆除し、十和はパーフェクトオールラウンダーのシューターだがガンナーとしても他には劣らない。同じく敵を駆除する。

対する俺はシューターのため普段とは全然感覚が違う銃の扱いに困らせていた。

ガンナーとパーフェクトオールラウンダーの二人の激戦に巻き込まれた俺は邪魔者扱いされて睨まれた。故に軽いトラウマなのだ。

 

 

「でも意外。三輪君ってゲームするんだ」

 

「米屋当たりに連れていかれているが正解だな」

 

そして米屋がバカ騒ぎをして三輪に絞められるのがいつものパターンだ。大変だな。アイツも。

 

 

「何かいいのは…………お、太鼓の○人しようぜ」

 

「いいよ。曲は?」

 

「………う○るちゃん、って言ってもわからないよな」

 

「あ、それは知ってるよ。前に志神君が八幡君が好きそうだから見ておいた方がいいって言っていたからマンガも歌歩ちゃんから借りて見たよ」

 

 

…………妹でるからな。まぁ、基本的に妹キャラは好きだ。

 

でも、俺が妹もののアニメチェックしてるんじゃないぞ?勝手に十和が妹ものを教えてくるから見ているだけだ。うん。二期も現在楽しんでいるが………でも三上もマンガで買っているんだな。

 

 

その後も音ゲーを中心に回っていた。ふと思って時計を見ると3時を越えていた。

用事でボーダーに6時に集合予定なため後1プレイだけだろう。

 

 

「時間だし次で最後にするか。何する?」

 

「あ……じ、じゃあアレ、しない?」

 

 

そう言って遥が指を指す方向を見ると大きな箱、プリクラを指していた。

プリクラかぁ………

 

 

「八幡君が写真苦手だって知ってるけど……お願い!1回だけ!」

 

「……わかった」

 

 

俺の幼馴染のお願いは毎回、上目遣いだから断れん。小町や年下にも甘い俺はちょろいのか?

一先ず、金を入れて箱の中に入った。

 

 

『いくよ〜!ハイっチー………』

 

 

ムカつく音声と共にフラッシュが放たれるため俺は目を瞑らないよう意識したその時だ。

 

不意に遥が腕に抱きついてきた。

 

 

『………ズ!』

 

 

すぐにフラッシュと同時に写真が撮られ、そのままの状態で保存された。

 

 

「いきなりなんだ?」

 

「ごめんね、勝手にして。でも、このままでいい?」

 

 

少し前の俺へ。

やっぱり俺はちょろい奴です。幼馴染には逆らえません。

 

何度聞いてもムカつく音声に従いながら遥が近い状態での写真撮影が続いていった。

 

 

***

 

 

理性の化け物で本当によかった。

撮影が終わり、ラクガキ?かなんかは遥に任せた俺はそう思った。

 

いくら慣れていると言っても相手は美少女だ。

狭い空間で柔らかい肌の感触と女の子独特の匂い危険な状態だったがなんとか持ちこたえた。

 

遥から貰った写真は一言、目がでかい。

メガネなくても俺の目がキレイになるかならないか悲しいことを考えながらも、この一日で完全に慣れたことで手を自然に繋いで帰っている。

 

 

行きとは違い、人が少ない電車内でトラブルはなく到着した。

 

俺はボーダー本部に、遥は任務がないため家に帰るらしい。つまり進行方向は逆になるからこれで解散だ。

 

 

「今日はありがとう。楽しかったよ」

 

「まぁ、俺も楽しかったぞ」

 

「珍しいね。八幡君が素直だなんて」

 

「ばっかお前、俺は基本的に素直だぞ?」

 

 

何故そこで笑う。え?俺って素直じゃないの?

策士の十和や優菜と違っていつも素直にランク戦では動いているのだが……

 

「じゃあ、私は帰る「ちょっと待て」どうしたの?」

 

 

遥が帰るタイミングで、俺はトイレと言って買いに行ったものを遥に渡した。

 

 

「!?これって……」

 

「お前、これ見てたろ?お礼だよお礼」

 

 

遥が手に持っているのは遥が見ていたブレスレットだ。

そこそこの値段だったがために遥は躊躇っていたらしいがA級隊員の俺が払えない金額じゃないため、日頃の感謝として買ったのだ。

 

 

「ほんとにいいの?」

 

「お前が気に入ってくれるならな」

 

「勿論っ。ありがとう八幡君!」

 

 

真っ直ぐな笑みで遥は礼を言ってくる。

本当に礼を言いたいのはこっちだ。十和や優菜もだがボーダーのみんなには感謝しているのだ。今の俺がいるのはボーダーのおかげだ。

特に遥は親父とお袋が死んだ時も小町の面倒を見てくれ、そしてボーダー入隊のチラシを持ってきてくれた。

幼馴染だからじゃない。

単純に俺は綾辻遥に救われ、返しきれない恩があるのだ。

 

 

互いに「また明日」とだけ言うと背を向けて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

遥や小町、大切な人のためにも俺はもっと強くなる

 

 

そのための一つである弟子の育成のために俺はボーダー本部に向かって行った。

 

 

 




難しかった………

デート回はこれで終わり、次は弟子との訓練です。
投稿が遅れるかも知れませんがよろしくお願いします!



そして、以前からお尋ねしていたパロキャラの件ですが以下の二つのどちらかが候補です。

落第騎士の英雄譚…東京に住む一輝が八幡の剣の指導者に。
ステラの家がボーダーのスポンサー

魔法科高校の劣等生…東京に住む達也が八幡の格闘術の指導者にして
臨時エンジニア。
四葉家がボーダーのスポンサー


それぞれの主人公の設定はこんな感じです。
意見があるなら是非お願いします!



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師匠の比企谷八幡は弟子に指導する

八幡の弟子、それは………


八幡side

 

 

おかしい

 

それがボーダー本部にやって来て最初に俺が感じた違和感だ。

週末の夕方という時間帯は学生が大半を占めるボーダー隊員にとってポイントを稼ぐにうってつけの時間だ。

 

故に正隊員のみならず、多くの訓練生であるC級隊員がいる訳だがーー

 

 

「………俺に何かようか?」

 

「っ!い、いいえ、何もないです!あ、今日はお疲れ様でした」

 

「俺も比企谷先輩みたいに頑張りまずっ!だがら、だがら……っ!」

 

 

と、質問した見知らぬ隊員に聞くと女子は何もないと言っては労ってき、男子は何故か血の涙を流して希望に溢れた目をしていた。

ランク戦のブースに着くまでに同じようなことを何度も言われたが俺、なんかしたか?

 

多くの隊員が集まるブースに入ると全員の視線が集まった。

一応、A級隊員だから珍しがられることは多い。だが今日は視線の意味が違うらしくて落ち着かん。

 

 

「お!ハッチじゃねぇか!」

 

「米屋か。残りのバカはどうした?」

 

「酷くね!?俺はあの二人と違ってバカじゃねぇだろ!」

 

「「「一番のバカはお前(よねやん先輩)だろ(でしょ)!」」」

 

 

話を聞いていたらしい出水と緑川が俺としっかりハモって米屋の言葉を完全否定した。

学校のテストでアレな米屋の将来が本当に心配だ。

 

 

「まぁ、バカが喚くのは無視して「せめて槍はつけろよ!」だから黙れやオラ!」

 

「……十和の時もだが学習しろよ」

 

 

出水が米屋の首をヘッドロックしている光景をみ、隊長である三輪の苦労を改めて理解し、変人扱いされてる比企谷隊だがバカじゃなくてよかったと本気で思っている時だった。

 

 

「そう言えばハッチ先輩。今日は楽しかった?」

 

「さっきから今日の話題ばっかり言われるんだが……俺って何もしていないよな?」

 

「何もしてないって……これ見ても?」

 

 

二人の争いに巻き込まれないように避難していた緑川はポケットからスマホを取り出して操作すると、2枚の写真を見せてきた。

 

 

俺が遥にあーんしている写真

 

遥が俺にあーんしている写真

 

 

「…………………………………」

 

「それだよそれ!俺も聞きたかったんだよ。で?綾辻との食べさせ合いの感想はどうだった?嬉しかったか?」

 

「いや〜あのハッチが人前でイチャつくなんて思ってなかったぜ!」

 

 

考え事をしている俺に出水と米屋はここぞとばかりに茶化している。

 

ちょっと待て。拡散するの早すぎだろ。

そしてボーダー隊員の殆どがいつもと違った視線を送ったのはこの写真をみたからか?つまりほぼ全員があの写真を………

 

 

「はやく吐いちゃえよ比企が「……おい」!?」

 

 

どす黒い気が辺りに充満した。俺の殺気はこの場にいる全員の動きを止めさせ、そして声がよく届くように静かにさせた。

 

 

「お前ら二人と烏丸はさらに100戦追加にして………写真残ってるやつは消せ」

 

「「「「は、はいっ!」」」」

 

「この場にいない写真持ってる奴にも連絡して消させろ。消したがデータは移しているとかはなしだぞ?」

 

 

先輩隊員がここにいたら怒られそうだが俺が見る限りA級隊員は三バカのみだ。

腐った目を最大限に有効活用した睨みによって震える手を使い写真を消去したC級隊員たちはネイバー以上の化け物を見ている顔だった。

 

 

「………よし、じゃあ後は記憶を消せ。お前らは何も見ていなかった。いいな?」

 

「「「「………はい」」」」

 

 

これでからかわれる心配はない。

1歩でも動かさないように見張られていた槍バカと弾バカを哀れに思いながらC級隊員は半径5メートルは離れて様子を見ていた。

 

 

「で?お前らは何か言いたい事はあるか?」

 

「な、ないっす」

 

「………嬉し「なんだ?槍フェチ」くないな、説教は………」

 

「それは無理な提案だな。緑川は学習したようだが、お前らは十和を怒らせた時から変わってないようで何よりだ。蜂の巣にされて大量に穴が開くかだるま状態で地面に埋められるか、何がいい?嫌な奴をしてやるよ」

 

((コイツ鬼だ………))

 

 

十和の怒りを買って、恐怖の耐性が少しできていた出水と米屋だがトラウマを植え付けた十和と、その相棒の八幡には薄い壁など貫通される。

他の隊員にも、八幡の後ろに鬼が見えたそうだ。

 

 

「はやく答えろよ。死刑の執行を始めるからよ」

 

「死刑ってなんだよ!?悪かった!もうからかわないから!」

 

「俺たち、友達だよな?喧嘩したら仲直りするのが普通だと思う。そうだよな?」

 

「………時間だ。二つを合計100回だ」

 

「「ぎゃあああっ!」」

 

「ギルティ」

 

 

理不尽だとほざく二人の頭を鷲掴みにして力を少しずつ加えていく。

え、俺の握力?

少なくともリンゴは握りつぶしたぞ。その時、せっかく買ったリンゴをダメにしたと小町に怒られてしまったが………

 

あ、握る力上がっちゃった。

出水と米屋の叫び声がコダマする。トリオン体じゃない2人にとって最悪な状況といえるだろうが俺はまだ本気を出していない。いや、マジで。喚くバカ二人をさらに痛めつけようとした時だった。

 

 

「………何してるんですか」

 

 

そろそろ二人の頭からメキメキと音がでる出水たちは涙目で何か訴えようとした時、不意に後ろから声がした。

 

 

「おう、黒江。すまんが訓練はコイツらシメテてからでいいか?オハナシとセッキョウが必要らしいから」

 

「………状況を見る限り100戦とかするんですよね?出来れば明日までの宿題が残っているので早くしたいんですが」

 

 

黒江双葉

加古隊のエースにしてボーダー最年少のA級隊員、そして俺の弟子でもある。

え?理由?

加古さんの炒飯食べて意識が朦朧とする中で加古さんが黒江の師匠になってくれと言われたらしく頷いたらしい。確定な文になっていないのは仕方ない。本当に記憶ないもん。

なんだよ……海鮮カスタード炒飯って。そもそも米にカスタードでアウトなのにそこに新鮮な魚介類の味が広がってカオスだった。医務室まで耐えた俺を褒めて欲しい。

 

ちょくちょくC級隊員に指導している十和と違って教えるのは苦手だ。いや、十和もボーダーじゃなかったら俺より苦手なはずだが教えるのは戦闘だ。

黒江はアタッカーだからオールラウンダーの俺も教えられないことは無いが最初は心配だったが黒江の真面目で生意気じゃないから俺も真剣に指導しているのだ。

 

 

「そう言えばもうすぐテストあるって言ってたな。米屋を反面教師にして頑張れよ」

 

「はんめん……?何だそれ?ってか俺が先生でいいのか?バカになるぞ」

 

「………説教はなしだ。やる気失せた。……出水。バカに辞書を持たせろ。後、今度何か奢ったら今回は見逃してやる」

 

「わかったよ。ポイント減らない分、そっちが楽だ……問題は槍バカだな……」

 

 

自分がバカだと自覚しているだけはマシだったな。

すっかり説教する気がなくなった俺と、米屋の頭に呆れる出水であった。

 

 

「今年の夏も早めに宿題片すか」

 

「俺もそうするわ」

 

「俺もした方がいい?」

 

「俺は後からするのが面倒なタイプだからいいが忘れるのが嫌なら早めの方がいいな。あ、それと米屋から課題の手伝い頼まれたら俺か三輪に報告しろよ。次は本気で潰すから」

 

「流石に年下には頼らねぇよ!」

 

「そうですよ。いくら米屋先輩でもそんなことはしないと思います」

 

 

カバーのつもりかも知れないが米屋の傷を広げた黒江に、米屋の認識がここまで酷いとは知らず呆れた顔を見せると同時に出水と苦笑いをする。

自分の課題を年下に手伝わせる人に心当たりありな俺と比べ、その本人が隊長である出水には同情する。

太刀川さんはまず自分の隊のメンバー、そして俺と十和に手伝いを求めてくる。十和が社畜同然の仕事っぷりを見せていると「適材適所」と、自分はソファーで堕落して噂を聞いた風間さんか月見さんがシバキに来るのもいつものことだ。

 

 

「米屋、これに懲りたら少しはまともに行動しろ。じゃあ俺はランク戦してくっから。行くぞ黒江」

 

「分かりました」

 

「俺は帰るよ。ハッチ先輩に双葉、じゃあね〜」

 

 

緑川の退席とともに俺たちのやり取りを見ていた隊員たちもそれぞれ解散していった。

 

 

十和だけでなく八幡、つまり比企谷隊は絶対に怒らせてはいけない

ーーーそんな暗黙のルールの成立と共に

 

 

 

***

 

 

 

「じゃあ始めるぞ。10本でいいか?」

 

『はい、お願いします』

 

 

それぞれ個室に入った俺はステージ選択を慣れた手つきでランダムになるよう設定してトリガーを起動させた。

 

すると場所は変わり、腰にささった孤月に手を当てゆっくり目を開けると市街地Aの天候は晴天。普通だな。

 

 

「黒江はっと………少し近いな。じゃあその前に……メテオラ!」

 

 

俺の頭上に浮かび上がったいくつかのキューブがいっせいに同じ場所へ飛んでいく。

俺の目では黒江の姿は見えていない。じゃあ何をしたか?

それはサイドエフェクトの使用だ。

俺は気配察知で人や動くものの座標を知ることが出来る。影浦隊のゾエさんが使う『適当メテオラ』はレーダー反応を頼りにして撃っているが俺の『超ウザメテオラ』は名前の通り俺のサイドエフェクトをフルに使用した正確に狙って落ちてくる爆弾のようなものだ。

誰が言い始めたか知らんが『超ウザメテオラ』は似たサイドエフェクトをもつ十和にも可能だ。つーかアイツはスナイパーでもあるから同じスナイパーの天敵なのだ。場所一瞬でわかるから。

 

 

少し遠くで爆発音が聞こえるが………黒江は動いている。

スピードが急に加速したから韋駄天で逃げたのだろう。

 

本来の戦いなら更に追加のメテオラを喰らわせるがこれは訓練だ。剣術を指導するため横に出した右手で柄を握り、孤月を抜刀した。

 

 

「よく逃げられたな」

 

「八幡先輩が手加減したからでは?」

 

「一応、仕留めるつもりで標準合わせていたからそれを避けたってことは成長したって言うことだ。違うか?」

 

 

実際、黒江の成長速度は早い。

最初はあのメテオラだけでベイルアウトしていたが今は無傷である。

 

「話は後だ。何処からでもこい!」

 

「では………行きます!」

 

 

速い

それがある黒江の剣に対する評価だ。

俺に攻撃をさせないよう、連続して孤月を振るう。

一つ一つの動きが丁寧でありながらもその間に油断は決してない。

 

いくらトリオン体でも中学の女子とは思えない身のこなし方に驚く俺だが同じ孤月で黒江の攻撃を流していく。

 

 

「くっ………はあっ!」

 

「どうした?押しているだけで俺は倒せんぞ」

 

その後も孤月によるぶつかりは続くがどうしても後1回のトドメを刺せない状態の黒江は焦りを覚えていた。

客観的に見たら黒江が俺を押しているように見えるが黒江は全力で攻撃し、俺も守りに徹するが攻撃手段は別にある。

 

 

「……ハウンド!」

 

「!?シールド!」

 

 

剣ばかりに集中していた黒江は咄嗟の俺のハウンドを避けられないと判断して即席でシールドをはる。

なんとかシールドで追尾弾から逃れた黒江に向かってーーー

 

 

「……自転ーーアステロイド!」

 

「……ぐっ!」

 

 

即席したシールドは回転するアステロイドを受け止めることが出来ず、黒江の左腕と横腹を貫通させた。

 

 

「孤月ばかりに集中するな。これがランク戦で相手にスナイパーがいたらお前はいい点数源だぞ」

 

「わかりました……次、行きます!」

 

 

右手だけで孤月を操り、先程とは違って周りを見始めた黒江は韋駄天で俺の後ろをとる。

目で追えない速さで移動した黒江だが、サイドエフェクトによって直感的に場所が察知できたため背中に孤月をかざして黒江の横薙ぎを受け止める。

しかし、黒江は事前に建物の一部を破壊しており、瓦礫が落ちてくることを悟った俺は後ろに回避を試みるもその方向まで移動していた黒江に邪魔され進路を防がれた。

 

 

「……ちっ、バイパー!」

 

「今です!……旋空弧月!」

 

 

リアルタイムで弾道をひくボーダーでも数人しか使えない芸当で大きめの瓦礫を破壊した俺に、黒江は体勢を整える前の俺に旋空弧月をかましてきた。

拡張された斬撃は俺を真っ二つにするため襲って来るがグラスホッパーを展開させてなんとか逃げーーー

 

 

「メテオラ!」

 

 

アタッカーの黒江が使わない射手のトリガー、メテオラを至近距離から放って、旋空弧月で右肩を失くした俺は対応出来ずにそのままベイルアウトした。

 

 

 

***

 

 

 

『個人ランク戦1─8、一引き分け。勝者比企谷八幡』

 

 

ランク戦10本が終わり、モニターに堂々と示された数字が今回の結果だ。俺が調子がよかったからとはいえ、最初は少し油断していた。しかしそれ以来は黒江はなかなか決定打を掴めずに終わった。

 

 

「八幡先輩は体術って使っていたんですか?」

 

「ん?ああ、知り合いから教わった。接近戦の時は重宝していくわ」

 

 

殆ど、俺は黒江の突きを体術で支援して倒した。

手首を少しひねって孤月を落とさせ、軽く引いて前のめりになった所を投げ飛ばして地面に仰向けに倒れさせた。

しかし、欠点として黒江の上に固定のために跨ると豚箱行きになりそうなビジュアルだったため腕を押さえた。だからーーー

 

 

「自爆メテオラか。益々俺に似てきたな」

 

「皆さんアレがウザイと言っていますが使う側からするといいですね。トリガーセットしておいて正解でした」

 

 

最初にやられたメテオラに5本目の勝負で引き分けにさせられたのだ。仰向けの状態でいきなり爆弾ぶち込んできた黒江は一見、命知らずであるが考えは俺と一緒だ。

基本的に、俺はアタッカーとチームランク戦する時、負けそうになるとメテオラで相手ともども自爆する。だってこっちは1点とれて負けないから点は取られない。素晴らしい作戦なのに解説では必ず「いやらしい」との声が聞こえる、が、弟子の黒江も気に入ったのだ。これでいやらしいとは言わせんぞ。

 

俺を罵倒するなら”腐ってる”が相場だからこれでいやらしいとは言われないはずだぜ!

 

 

 

 

 

 

 

マッ缶買お。腐ってると言われる方が酷いことに対して目から汗が出ないように。

 

黒江から礼を言われて自販機に直行した俺は自信の目をガラス越しから見ながら更に目を濁し、これからもずっと一緒だと悲しい結論を出したのだった。

 

 




次回は俺ガイル編!

職場体験が迫ってくる中、比企谷隊は面倒事に巻き込まれるのか!?


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比企谷八幡は川崎沙希に道を示す

お気に入り200突破〜!
これからも是非!よろしくお願いします!

そしてパロキャラにだす作品は……!


八幡side

 

 

休日が終わり、小町を中学校まで送った俺は一人で自転車を漕ぐ。たまに同じ制服を着た生徒の横を通過するがボーダー組はいないためスルー。基本ぼっちなのが俺なのだ。故に一人でいることを不快に思わない。

誰にも見られないようにして欠伸をしながら俺はアホ毛をピンピンさせながら静かに教室のドアを開けた。

俺が入ってきたことに気づかない、もしくはすぐに視線を戻すかのどちらかを選択するクラスメイトだが今日に至っては全員が俺に視線を向けて離さない。

理由は簡単、停学から復帰した縦巻金髪ロールこと三浦が戻っていたからだ。三浦は俺の姿を確認すると睨みつけてきたが全然怖くないんでいつも通り猫背で自分の席に移動して仮眠の体勢をとると徐々に視線が外れていった。

葉山からも悪意の視線を感じたがそれだけ、由比ヶ浜は何か話したげだったが今頃だ。先週はチラチラとこちらを見てきただけで何もしてこなかったから無害。同じく無視した。

 

俺が仮眠をして少し経つと三大天使の一柱、戸塚がおはようの挨拶をしてくるため対応する、それだけで心満たされた俺はなんとかだるい授業を今日もまた乗り越えるのだった。

 

 

 

 

「待て、比企谷」

 

「何ですか、平塚先生?」

 

 

授業が終わり、十和と三上に勉強しないかと誘われたので無理矢理参加するため帰ろうとした時、平塚先生にまたも引き止められた。

 

え、何故無理矢理かって?

二人きりの勉強会の方がいいかと気を使い断ったからだ。あの二人はもう少し話すべきだと思ったんだが………

 

 

「何か知らんがラブコメ臭が……」

 

「先生には縁がないこ「何だって?」……何もないっす」

 

「まあ、いずれ私にも相応しい相手が現れるだろう。いずれ……」

 

「先生……俺からは頑張って、としか……」

 

「何でだろうな……独身貴族って言葉は違和感ないのに独身女になると心が、こう、どす黒い何かに埋もれそうになるのは……」

 

ヤバい、早く帰ろうとしたが自虐し始めたぞこの先生。どんだけ結婚したいんだよ!

 

「はぁ……結婚したい………んんっ!所で比企谷、奉仕部はどうした」

 

「無理矢理ですね……奉仕部は行きません、逆に止められたんで」

 

「それは篠崎と志神にか?二人が君の部活参加に賛成しないのはわかったが君自身はどうなんだ?」

 

「何で罵倒されるために時間使うの?って感じですね」

 

 

この前のテニスの件でハッキリした。あの毒舌女は人を知らない。

 

自分が優秀だと間違った認識の結果、周りを見れず救われない相手に勝手に悲願する。

十和曰く「彼女はいずれ崩壊した大人になる」らしい。十和が言うならそうなんだろう。しかし雪ノ下は当事者の話だとしても聞かないだろう。

 

 

「前に言ったこと、覚えてますよね?」

 

「……君が願ったら奉仕部から退部することか?」

 

「はい。先生だってテニスの件、聞いたでしょう。それなら雪ノ下の間違いだらけの性格を治すのは俺には不可能です」

 

「……わかった。君はもう奉仕部の部員ではない。時間を取らせてすまなかった」

 

 

失礼します、と軽く礼をしてその場をあとにした。もし雪ノ下と次あった時、彼女は自分が言ったように変われるのだろうか?

 

答えは否、アイツは変わることが出来ない。いや、変わる条件が足りない。

 

 

ストレスの原因の一部が無くなった俺は背が軽くなった足取りで自転車を取りに駐輪場に向かった。

さっさとサイゼでゆっくりべんきょーしよ「八幡君!」ん?

 

俺の名を下で呼ぶのは少ない。そして声の高さから女子、そして俺がよく知っている声故に溜息を履いてその人物の名前を呼ぶ

 

 

「何で遥がいるんだ?」

 

「志神君と歌歩ちゃんが八幡君も来るから勉強しないかって。だから一緒に行こ?」

 

「はぁ……後ろ乗れ」

 

「うん!」

 

 

送れってだけ言えばいいものを……一緒だなんて言葉使うとうっかり告白して振られるぞ?

まあ、今のこの関係が好きな俺は自分で関係を壊す訳がないがな。

 

嬉しそうに後ろに座った遥を見て安全運転と心に刻んでサイゼに向かっていった。

 

 

***

 

 

「……で、ここが公式に当てはまるから……そうそう。そのまま文字を入れ替えて完成だよ」

 

「おう、サンキュー」

 

「八幡君、ここの古文何だけど……」

「えーっと……ごめん十和君、もう一度いい?」

 

 

とりあえずドリンクバーだけを注文した俺たちは十和の「あ、えー、その、あ、よ、4人……です」と、絶賛コミュ障発動により確保した4人席に座って勉強中だ。

俺は苦手な数学を十和に教えてもらい、国語は俺が教えるというシステムでテスト範囲を確認していた。全員、覚えがいい方なので勉強は進んでいく、進んでいくのだが………

 

 

「……十和、いつから女慣れした」

 

「いや、この前歌歩さんの頭を撫でたら嬉しそうにしてたからそれ以来癖で」

 

「うぅ〜//」

 

「歌歩ちゃん、可愛かったよ」

 

少し前、三上が応用問題が解けたからと十和が三上の頭を数分撫でた事で俺と遥は驚いた。

今も三上は顔真っ赤だが十和は平然。何者だこいつ、いやホントに。

 

 

「何か砂糖を吐きそうだ………マッ缶もどき作ってくる」

 

「それって砂糖取り込んでるよ!?」

 

「ばっかお前、砂糖足りなくなるから補給するんだよ」

 

「だからって糖分多いとダメだよ?」

 

 

了解と呟くと俺は席を立ってコーヒーをつぎに……

 

 

「あれ、お兄ちゃん?」

 

「おう、小町じゃな、い…………か」

 

 

席を立つと俺と同じアホ毛をもつ妹、小町がいた。そしてーーー

 

 

「あ、あの!自分、川崎大志っす!はじめましてお兄さん!」

 

「お兄さんと呼ぶな。で、小町、この男とはどんな関係だ?」

 

「お、落ち着いて八幡君!」

 

「そうだよお兄ちゃん。大志くんはただの友達だから!あ、遥お姉ちゃんに十和さんと歌歩さんお久しぶりです!」

 

 

俺以外に挨拶する小町だがその横のたい、太子くん?は燃え尽きていた。まぁ、女子から”ただの友達”と強調されて言われたらそうなるわな。ソースは俺。だが同情はせん。

 

 

「で、小町はなんでそこの大地くんと一緒にいるんだ?あと次にお兄さんつったら殺すぞ」

 

「大志くんだよお兄ちゃん……実は大志くんから相談されて……」

 

 

ほー。相談事を女子の小町に頼むとは……

軽い殺気をだして気絶させたかったが十和によって止められた。

 

 

「で?相談って何なんだよ」

 

「は、はい!実は姉が家に帰ってくるのが遅くて……」

 

「お姉さんはどれくらい遅いの?」

 

「五時っす」

 

「つまり毎朝バイトでもしているのかな?」

 

 

珍しくコミュ障を発動しない十和の質問にたい、大士は何度も頷いて肯定した。

 

 

「姉は川崎沙希って言ってお兄さんと同じクラスのはずっすけど」

 

「お兄さん言うな………あ、もしかして青髪の不良みたいな奴か?」

 

「そうっす」

 

 

………おう

俺、川崎沙希っていう奴に会ってる。しかもバイト先で。

前に二宮さんに鳩原さんの件で使った所にいた。

 

どうする?働いている店の場所は知っている。しかし今はーーー

 

 

「話は聞かせてもらったわ」

 

「………何でいるんだ雪ノ下」

 

 

俺が改めて大志に質問しようとした時、そこには雪ノ下と由比ヶ浜の姿があった。

 

 

「私は由比ヶ浜の勉強の手伝いよ。それより逃げが谷くんは綾辻さんと三上さんと他校の生徒を脅してなにがしたいの?」

 

「勉強会だよゆきのん!それよりヒッキー!なんで綾辻さんと一緒だし!前もだったよね!?」

 

「由比ヶ浜には前に言ったよね?それに雪ノ下さんはなんで八幡君が私たちを脅したって決めつけるの?」

 

「あら、そんなダメ男があなたと相席だなんて脅す以外ないと思うのだけど?」

 

「八幡君は私の幼馴染なの。だから普通に勉強会しているだけよ?」

 

 

遥に返り討ちにされる雪ノ下を見ていると頭が痛い。コイツは考えること出来ねぇのかよ。普通しないだろ脅迫とか。

あと、十和なんかマスクなしだからと言って気づかれていない。

 

 

「……この際、比企谷君のことはどうでもいいわ。それより川崎さんのことよ。川崎大志くんよね。少し話してくれないかしら」

 

 

雪ノ下が偉そうに大志に質問した瞬間、俺の怒りが一定ラインを越えた。

 

 

「おい雪ノ下。お前はその事を聞いてどうすんだ?」

「どうにもこうにも、川崎さんを見つけてバイトを辞めさせるわ」

 

「やめておけ。これは家族の問題だ。部外者が割り込んで言い訳ないだろ」

 

「しかし彼女は総武高の生徒よ。だったら”私”が問題を解決するだけよ」

 

「じゃあお前は出来るのか?」

 

「当たり前じゃない」

 

「テニスで余計なことしといて、か?」

 

「ヒッキー!その事は今は関係ないでしょ!」

 

 

バツの悪い顔をする雪ノ下をフォローするべく由比ヶ浜が止めに入る、が

 

 

「同じだろ。出来ないことを責任取らずに逃げ出す、こんな奴に家族のデリケートな問題を解決出来るとでも?戸塚に迷惑かけて俺が尻拭いした前とは違って今回はお前の勝手な我儘で崩壊することがある。それをお前はわかってるのか?」

 

「………っ!」

 

「ま、待ってよゆきのん!」

 

 

反論出来ずに雪ノ下は自分が否定した逃げを使ってどこかへと行ってしまった。

溜息を吐いて視線を戻すと清々しい顔の十和以外、怖がっていた。

謝り、二人を席につかせると俺は大志から家族事情、川崎がバイトをし始めた時期などを聞いた。

雪ノ下には関わるなと言ったがバイトをしていると言うことは金が欲しいのだろう。金にうるさい俺は大志からの話をまとめて一つの結論を出し、依頼を受けることになった。

 

 

 

***

 

 

 

時刻は夜の10時

 

十和と三上と別れ、遥と小町を送った俺は、最後にまた「ありがとうございます、お兄さん!」と言われて内心怒り爆発寸前なのだが小町の”友達”なので受けた依頼は最後まで遂行する。

俺は以前と変わらない服装でドレスコードを難なくすり抜けて川崎のバイト先へと向かった。

 

 

(何でいるんだよアイツら………)

 

 

しかし、そこには雪ノ下と由比ヶ浜の二人がバーテンダー姿の川崎と何やら話していた。

会話は途切れ途切れのため聞こえないが俺は念の為に川崎の姿は見えずに二人だけを動画でとれる席に座り動画を取り始めた。

 

別のバーテンダーにMAXコーヒーを注文してそれを一口飲んだ時だった。

 

 

「今はゆきのんの家は関係ないでしょ!」

 

「………川崎さん、覚悟することね」

 

 

そう捨て台詞を吐いて二人は店から出ていったので俺は動画を停止させて席を移動させた。

 

 

「よう、川崎。次は俺と話そうぜ」

 

「……誰?」

 

「同じクラスの比企谷だ。それより川崎、お前の弟が心配してたぞ」

 

「……あんたも雪ノ下さんたちと同じ?」

 

「いや違う。アイツらはどうせ何も考えずに突っ込んだだけだろ。俺はお前に提案しに来た」

 

「提案?」

 

「そうだ。お前、自分の学費払うためにバイトしてんだろ?」

 

「……っ!?」

 

「当たりだな。大志が塾に通い始めたが両親はそれで手一杯。自分は迷惑かけたくないから自分の分は自分で出す。それがお前の考えだろ」

 

「……そうだけど。あんたに私の何がわかるの」

 

「わかるぞ。俺の親は大規模侵攻の時に死んでるからな」

 

 

すると川崎は驚いた顔で黙った。

話を続けよう。

 

 

「あー、これは内緒だが俺、ボーダー隊員なんだわ、A級の」

 

「………本物のトリガー」

 

 

俺はポケットに突っ込んでいたトリガーを川崎だけに見えるようにして見せた後にまた元に戻す。

 

「親が死んでも金は必要。俺と妹の生活に金は必須だったから俺はボーダーで固定給料が出るA級まで上がったんだがそのための訓練で帰りは遅くなっていた。そしていつものように深夜に家に戻ると妹が部屋で泣いていてな。『一人にしないで』って。だから俺はその日以来、できるだけ早くに帰るように訓練の内容を変えたんだが、お前には意味わかるよな」

 

 

川崎は無言で頷いた。

 

 

「大志も同じだ。姉のお前が弟心配させてどうする?」

 

「……でも」

 

「金がない、だろ?なあ川崎、スカラシップって知ってるか?」

 

 

おそらく塾にいった事がないであろう川崎に俺は予備校の資料を何枚か渡す。

ざっと目を通した川崎は信じられない顔をして内容に釘付けになっていた。

 

 

「要は勉強して成績よかったら代わりに学費は出すっつー制度だ。これなら夜遅くまでバイトする必要はないだろ」

 

「………ありがとう……でも」

 

 

そう言って川崎は素直に俺に対して礼をした。

しかし最後の「でも」って何だ?

 

 

「明日、多分雪ノ下さんが学校に私のバイトのことを話すと思う」

 

「何でだ?」

 

「雪ノ下さんの家は雪ノ下建設だから私の気持ちわからないだろって論破したらキレたから」

 

 

………本当に余計なことしかしないな。

 

確かにこれで学校側に川崎のバイトの事がバレたらスカラシップを狙えるか不安定だ。仕方ない

 

 

「川崎、お前は明日からバイトに来なくていいぞ」

 

「無理。1ヶ月くらい前に辞めるって言わないと………」

 

「問題ない」

 

 

俺はそう言い張るとスマホを取り出してとある電話番号を入力した。

 

 

『はい、司波深雪です』

 

「比企谷だ。すまん、司波妹の方だったか」

 

『八幡さんですか。いい加減私を名前で呼んでくださいませんこと?』

 

「いや無理。急にお前を名前で呼んだらシスコンのお前の兄に殺させる」

 

 

電話の先から聞こえる声は声優顔負けの声を持つ女の声だ。

しかし、今、この電話を通して話している女は笑っているが目で氷漬けにさせてくるだろう。ハッキリ言って怖い。

 

 

『………まあ、今更なのでいいです。それより、八幡さんはお兄様に要件なのですよね?』

 

「ああ、頼めるか?」

 

 

廊下を歩く音が聞こえた後、次は別の人物の声が聞こえた。

 

 

『比企谷か。久しぶりだな。要件はなんだ』

 

「おう、久しぶり。それで司波、いや”達也”。頼み事がある」

 

『………それは四葉家に、か』

 

「そうだ」

 

『………わかった。内容と事情の説明を頼む』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………わかった。俺が頼んでおこう』

 

「すまんな、迷惑かけて」

 

『問題ない。それより、今度深雪とそちらへ向かう。その時にボーダーに寄るからその時にまた会おう』

 

「わかった。助かった」

 

 

そう言って互いに通話をオフにした。

 

「これでお前が働いていたという記録はなくなる。だから川崎、明日、先生に呼ばれてバイトの話になっても自分は知らないと言っておけ。わかったな」

 

「それでいいなら願ったり叶ったりだけど……さっき、誰と電話したの?」

 

「内緒だ」

 

 

 

司波達也

母親は他界し、父親は研究所に泊まりこみのため実質妹と東京で二人暮らし。

しかし、本来は日本でも権力が高い四葉家の人間でもあり、ボーダーの臨時開発者であり、同じ師匠をもつ兄弟子でもある。

 

そんな彼に頼んだこと、それは川崎沙希という人間が働いていたというデータを全て消去することだ。

これで川崎がバイトをしていた事実は消える。

 

 

店を出た俺は他所の家族を壊さなかったことに安心しながらも明日見られるであろう絶望の顔をした雪ノ下を思い浮かべ、スマホを持った手をブンブン振りながら帰っていった。




原作とは全く違う達也さんがこれから登場です!


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職場見学
比企谷八幡は上司に逆らえない


今回、ノーゲーム・ノーライフとのクロスオーバー作品を新しく投稿しました!
時間があるなら是非呼んでください!


八幡side

 

川崎のバイトの件から一夜明けた。

充分に睡眠出来ていないが小町をおいて俺は一軒の家の前に来ていた。

 

 

「はーい、あら八幡君じゃない!久しぶりね」

 

「お久しぶりです、おばさん。遥居ますか?」

 

 

チャイムを鳴らすとすぐにドアが開いてエプロンを付けた状態の若い女の人が中から出てきた。この女性は遥の母親である。

 

綾辻家とは両親の影響でよく出入りしていた。親父とお袋が他界した今も、二人暮らしの俺と小町を気にかけてくれ、晩御飯をいただいている。

 

 

「遥なら二階の部屋にいるから八幡君が呼んできてくれる?」

 

「時間帯的に着替え中っすよね?また死にますよ、俺が」

 

 

遥の着替え中に部屋に訪れてビンタをくらった前科持ちの俺が次、同じことをしたら絶対にビンタじゃすまない。小町の部屋に行く時、ノックしないのがあざとなってしまっていたのだ。

しかし、おばさんはニヤニヤとした笑みで見ているが娘の着替え中を男が見てきて怒らないのか?

もし小町の着替えを除く奴がいたら俺ならトリガー使って引き裂く積もりなのだがーーー

 

 

「八幡君なら大丈夫よ。むしろ早く貰ってくれないかしら?」

 

「さり気なく思考読まないでくださいよ………」

 

「八幡君はわかりやすいからね。でも貰ってあげてよ?遥ったら昨日の勉強会で八幡君と一緒だったことを嬉し「お母さん!何言ってるの!?」あら、遥が来ちゃったわね」

 

 

おばさんから視線を顔を真っ赤にして階段から降りてきた遥に向ける。

俺、昨日何も悪いことしていないよな?遥が何故怒っているか疑問に思っていると二つの溜息が聞こえた。

 

 

「これはお父さん以上に難敵ね……遥、頑張りなさい」

 

「………頑張るけどお母さんは放って置いてよ……」

 

 

言っている意味がわからないまま、遥に腕を掴まれてそのまま学校まで歩き始めた。

そんな光景を暖かい目で見守っているおばさんを見ると若干イラってきたが引きずられるように歩いている俺は体勢を前にして車道側の道を遥の隣になるように歩く。

 

 

「今日のお母さんの言った内容は無視してね?」

 

「あ、ああ、わかった。それよりすまんな、一緒にいこうだなんて」

 

「謝らないでよ。むしろ私は八幡君と久しぶりに一緒に登校できて嬉しいよ?」

 

 

それが当然の如く返してきた遥はチョンと首を傾げて俺の目を浄化させるような天使のスマイルを見せた。

うん、俺の三大天使決定だな。小町に戸塚、そして遥。最強の軍団だな。囲まれたら本当に俺の目が浄化するぞ。

 

しかし、いくら天使だろうとその発言は控えてほしい。毎度だが俺が好きなのって勘違いするぞ?

 

 

「それで、今日は頼みがあるんだがいいか?」

 

「………それって昨日言ってた川崎さんのこと?」

 

 

流石は幼馴染。頭脳優秀でもあるから理解が早くて助かる。

俺は昨日の出来事を大まかに説明しながら歩くが雪ノ下の話になると急に遥の顔がムスっとなった。

 

 

「………テニスの時もだけど雪ノ下さんって八幡君に依頼を押し付けてるよね?」

 

「そうだな。今回も私情挟んだ八つ当たりだ。このままじゃ間違いなく学校側から罰せられる。だからコレを生徒会の担当教師に渡してくれないか?」

 

「これは?」

 

 

ポケットから取り出したのは市販のUSB。しかし、その中のデータにはーーー

 

 

「雪ノ下及び由比ヶ浜が夜中にバーへ行った証拠だ。バイト先の事は俺の知り合いに任せたから川崎の無罪は確定だが流石の俺もキレそうだからアイツら、特に無能な雪ノ下にはいい薬になるだろう」

 

 

と言う俺に苦笑いしながらも遥はそのUSBを預かった。

 

 

「バーに行ったのって八幡君もでしょ?」

 

「俺が行ったっていうデータもない。川崎も写ってないから丁度いいだろう」

 

「はぁ……本当は生徒会としては八幡君も注意しないといけないの。だからこれからは駄目よ?」

 

「大丈夫だ。お前には迷惑かけないようにする」

 

「お前にじゃなくて自分もだよ?」

 

「別に俺は……いや、わかった。でも今回は見逃してくれ」

 

「なら宜しい!」

 

 

遥は幼馴染故に俺の過去を知っている。

自分に迷惑をかけない、つまり自己犠牲で解決するなと言いたいのだろう。俺が小学五年生の時のあの「八幡君」

 

俺の思考を遮って遥は自身の左手で俺の右手を握ってきた。恥ずかし前に、彼女の手の温もりを感じて歩むのを中断させて向かい合うような位置に立った。

 

 

「私は八幡君の味方だよ?前みたいに自分で全部抱え込むんじゃなくて今日みたいに私を頼ってね?私はもう……八幡君に悲しい思いはして欲しくない…………」

 

 

本心で語る遥の言葉を俺は一字一句全てを覚えた。それ程遥の思いは支えになるのだ。それは以前も同様だった。

 

「ひゃっ!は、八幡君!?」

 

「ん?あっ、すまん。小町にしている癖がでた」

 

 

受け入れてくれる嬉しさに実感しているといつの間にかおれのお兄ちゃんスキルが発動して遥の頭を撫でていた。真っ赤な遥に謝罪して手を離すも「き、気持ちよかったから……あと少しだけ撫でて?」と、いつものウルウル上目遣いのコンボに負けてほんの数分だけだが優しく頭を撫でてたわいもない会話をしながら自然と繋がれていた手に気にせずに学校へと向かった。

 

雑談の内容でもうすぐある職場見学のレポートがあるのを思い出した。遥は嵐山隊としてボーダーに行くことになるらしいが俺は勘弁だ。比企谷隊は全員がボーダー隊員だと言うことを隠している。だから無難に編集部とかその辺にーーー

 

 

「あ、そう言えばボーダー本部に見学が多くなるから全員がボーダーに行くことになるかもって先生言っていたよ?」

 

 

遥のその一言が俺を、いや比企谷隊を絶望に追い込んだ。

 

 

 

***

 

 

「………ホームルームの最後に、来週の職場見学だが職員会議の結果、今年も多くがボーダー本部に向かうと予想されたため全員ボーダーに行くことになった」

 

 

朝のホームルームにて担任の最後の一言で確定したボーダー行きを聞かされた俺は軽く絶望しながら、先生に呼ばれて教室を出た川崎を見た後、机にうつむせになった。

周りでは歓声が起きて「葉山くんならA級になれるよ!」と、多くの女子が湧き立てる状況だ。

お前ら、嵐山さんがイケメンだからA級だって言ってるようなもんだぞ?

前のテニスの時にわかったがおそらく葉山は戦闘に向いていない。トリオン量によって変わるかもしれないがそんな簡単に誰もがA級に上がれるわけないだろう。

毒付きながらも数学の教師がやってきたため、俺は安眠状態へと脳と体勢を準備させた。

 

 

そして昼休み。

いつもの場所で優雅にぼっち飯を味わうためベストプレイスに向かった俺なのだがーーー

 

 

「どうした。何の用だ川崎」

 

「礼を言おうと思ってね」

 

 

そう言って川崎はマッ缶を投げてきた。俺は絶対に落とすまいと瞬時に片手でマッ缶を受け取りサンキューとだけいってプルタブを開いた。

 

 

「大志とはちゃんと話して親には私がスカラシップをとるまでの学費をお願いした」

 

「そうか、ならよかった。スカラシップとれなかったらボーダーにでも入るか?これでもA級だから推薦とかは無理だが教えることは出来るぞ」

 

「………考えておく」

 

 

俺の冗談混じりの言葉に川崎は真剣に考え出した。

冗談で言ったが川崎がボーダーに入るなら別に教えてやってもいい。金が必要だという境遇が似ているせいかコイツには手助けしたくなる。

 

「………川崎さん」

 

「どうしたの?雪ノ下さん」

 

 

段差に座ってゆっくりマッ缶を飲んで、静かなひとときを過ごしていた俺に侵略者が現れた。

雪ノ下はまるで親が殺されたかのような目付きで川崎を睨んでくる。

 

 

「今朝、あなたのバイトの実態を報告したけど川崎沙希という人物はいないって確認した先生が言ったわ。あなた、一体何したの?」

 

「何って………別に私は何もしてないよ。そもそもバイトなんてしてないし」

 

「嘘よ!確かに昨日、あなたは夜にバーのお店に居たじゃない!」

 

「じゃあ雪ノ下さんはその店に行ったんだ。未成年なのに?」

 

やはり突っ込んできた雪ノ下を予め用意させておいた言葉で撃沈させる。またしても論破、更に自分に都合が悪い発言に黙ってしまった。

 

 

「あなたが何をしたのか、絶対に暴いてあげるわ」

 

クールを装いて雪ノ下は最後に俺を睨んで場を後にした。

遥に渡したデータが教師に知られて注意された雪ノ下はいつも以上に頭を働かせていない。

あいつが暴こうとしているのは簡単に自分の家を潰せる程の権力だと知らずに負けぜりふを吐く雪ノ下に呆れながら、買ってきていたサンドウィッチを咀嚼していった。

 

 

昼が終わり、教室に戻ると由比ヶ浜がバツが悪そうな顔をしていた。耳を傾けると、夜にバーに行ったことが親に連絡されて由比ヶ浜はまだしも、雪ノ下建設の家の娘の雪ノ下は一人暮らしをしていたマンションから実家に戻るよう強制されたらしい。

 

 

誰にも聞こえないように鼻で笑った俺は目を閉じた。

 

これで川崎の問題は終わった。後は自分の問題だ。

 

 

***

 

 

放課後となり、俺は真っ先にボーダー本部に向かって木戸司令ら上層部数名と交渉していた。

 

 

「お願いします。どうか職場見学の時に比企谷隊に防衛任務を入れて下さい!」

 

「却下だ」

 

はい、一撃ゲームオーバー

俺の囁かな願望を一刀両断した木戸司令は手を交差させて目元より下を隠すようにして机に頬づいた。

 

 

「君たちは素直に職場体験を受けようとは思わないのか」

 

「学校でぼっちとコミュ障の俺たちがボーダーだって知ったらイチャモン付けてくる奴らがいるんですよ、絶対に」

 

「その場合はこちらが対応しよう。だから君たちは他の隊員同様に見学しに来た総武高の生徒として参加しなさい」

 

「……………うっす」

 

 

ボーダーでも部下と上司の関係は外と何も変わりはない。上司の命令には反論出来ない。

更に目を濁らせた俺は途中で何度も溜息を吐きながら自身が隊長を務める隊の作戦室に向かった。

 

 

「それで、木戸司令はなんて?」

 

「参加しろだとよ」

 

「……はぁ、僕も話しかけられそうだなぁ」

 

 

同じくホームルームで今回の職場見学の行先を聞いていた十和も、俺の報告を聞いて希望を失った目になった。

 

 

「別にいいんじゃない?いくらなんでもハチとトワがA級だとわかったら難癖つけないと思うよ?」

 

「でもねぇ〜………」

 

「優菜は平気だろうが俺たちはコミュニケーションがアレでアレだから無理なんだよ」

 

「はぁ………これだから問題児は……」

 

 

言っておくがすぐに拳で語ろうとする優菜も充分、問題児だと思うとは口が裂けても言えない。

ソファに座り込む優菜は片手に皿、反対にスプーンを持ってプリンを食べている。今はプリンを前に笑顔を向けているがこの前、またセクハラしてきた迅さん殴ってたろ。トリオン体からトリオンが少し漏れていたし。

前に忠告してこの結果な迅さんにも呆れるがオーバーキル状態にする優菜も末恐ろしいぞ。

 

 

「それで?二人はどうするの?大人しく参加する?」

 

「俺は多分、熱が出ると思う」

 

「僕は多分、お腹の調子が」

 

「………ぼっちとコミュ障が」

 

 

勝手に言ってろ

そしてお前は問題児の担任みたいに脚を組んで上から目線するな。なんか腹立つ。

 

 

「仕方ない。ハチは嵐山隊、トワは風間隊の作戦室にいって書類貰って来てくれる?」

 

「それはオペレーターの優菜さんの仕事じゃーーー」

 

「行ク、ヨネ?」

 

「「は、はい………」」

 

 

行きますから手を鳴らすのはマジでやめて!

無残な姿の迅さん思い出しちゃうから!

 

***

 

 

「失礼しまーす」

 

比較的にウチの隊室から近い嵐山隊の作戦室にノックして入る。

 

 

「あれ?どうしましたか比企谷先輩」

 

「木虎か。書類を貰いに来るというパシリをさせられてるんだ……」

 

「優菜先輩、ですよね?」

 

 

哀れな目で見るなよ。俺、一応先輩だよ?

俺が扉を開けると嵐山隊のエースである木虎がお茶を飲んでいた。

 

 

「綾辻先輩なら奥の方の部屋にいるので」

 

「わかった」

 

 

軽く礼を言って木虎の言うように奥の部屋に入るとパソコンを操作する遥がいた。

 

 

「あ、八幡君」

 

「おう、今朝ぶりだな。すまんが優菜に渡す書類くれないか?」

 

「うん、はい。確かに渡したよ」

 

「サンキューな。じゃあ俺は帰「あっ!お茶飲んでいかない?」………わかった」

 

ファイルに閉じられた書類を受け取った俺は退出しようとするも遥に待ったをかけられお茶を貰うことになった。

出されたどら焼きを木虎と食べながら待つとお茶を二つ入れてきた遥が正面に座る。

 

 

「さっき通信で優菜ちゃんから聞いたんだけど、八幡君、職場見学休むの?」

 

「絡んできそうな奴らがいるからな。俺がボーダーなんて信じられないだの言って馬鹿にしそうだ」

 

「………それは先輩方の学校生活が此処と違うからでは?」

 

 

木虎の指摘は間違いではない。しかしーーー

 

 

「人は簡単には変わらねぇんだよ。逆に俺と十和が学校で普通に話すなんて気持ち悪くねぇか?」

 

「気持ち悪くはないけど変に感じる、ね」

 

「私は先輩方の学校での様子を知らないので何も言えないですが似合わないでしょうね」

 

 

俺も二人の返答に強く肯定する。

此処ではぼっちとコミュ障なのか怪しい俺たちだが、学校ではそのアイデンティティが全開だ。

 

 

「まぁ、つまるところ、俺は皆のために職場見学に行かない。ぼっちがA級だなんて知ったら嫌じゃね?」

 

「………生徒会としてはサボるのは駄目だと思うけど、八幡君が行きたくないなら私はそれでもいいよ。だけど最近、八幡君は雪ノ下さんたちから下に見られてるんでしょ?だからーーー」

 

 

あ、ヤバい遥の奴、上目遣いになりやがった。

 

 

「私は八幡君がこれから馬鹿にされないように職場見学に参加して欲しかったな………」

 

 

顔を少し下に向けて残念な顔をする遥を無視できる程の鬼畜な心を所持していない俺は颯爽と職場見学の参加を幼馴染と後輩の前で宣言した。

 

十和も風間さんと三上から説得させられて比企谷隊は自身の職場であるボーダーに職場見学に行くことが決定したのだった。

 

 

 

 




次回は職場見学!


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比企谷隊は職場見学にて仕事場にいる

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八幡side

 

 

ボーダー本部大広間に、総武高の二年生が集まっている。

ボーダー隊員以外は入れないこの場所だが今日は職場見学のためいつも以上の人数がボーダー本部に集まったのだ。

 

誰が好き好んで自分の職場にわざわざ見学しに来るのだろうか?

遥は嵐山隊として案内の係を担当するためここに来ているが、他の隊員も総武高に通っているため、今更だが全員がボーダーに行くだなんて決断を反対しときゃよかった。

 

俺は溜息を吐いて辺りを見回すと、ボーダー組は平然としていて、クラスメイトだろう生徒に囲まれて質問されたりしている。

しかし、比企谷隊のメンバーだけが生徒に囲まれず普通にしていた。いや、十和はマスクを着用した状態でキョロキョロと他の生徒を見ていた。十和のその姿に通りかかったC級隊員たちが驚いていたが話しかける者はいない。

 

 

早く帰りたい

何度も何度も頭の中でリピートされるその言葉を口に漏れそうになった時だった。

嵐山隊が出てくる。その瞬間に一部。女子が色めき立った。

流石ナイスガイ。

 

 

「総武高校のみんな、今日はよく来てくれた。君たちの職場見学を案内する嵐山隊隊長の嵐山准だ!今日はよろしくな!」

 

 

流石は嵐山さん。何度も見ているが俺とは真逆目の輝きただ。

入隊当初はあの爽やかさが苦手だったなぁ……。

今は嵐山隊はよく出入りしていて嵐山さんとも会うから慣れたけど。

 

 

「じゃあ早速初めていこう。まず、ボーダーという職種についてだが……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……といった感じだ。ボーダーの職種については以上だ。それでここからは入隊したばかりの訓練生がうけるオリエンテーションをしていく予定だ」

 

 

プレゼン的な何かが終わったようだ。俺がぼーっとしている間に終わった説明に生徒一同が拍手する。

 

隣にいるマイエンジェルの戸塚はキラキラした笑顔でそのプレゼンを見ていた。………男じゃなくね?

 

俺が永遠に解決出来ないであろう問を見つけてしまうが見学はまだまだ前半だ。

 

 

「じゃあ次に、どうやったら訓練生が正隊員になれるかを説明して行こう」

 

 

 

嵐山さんが近くの生徒にトリガーを渡し、起動させる。

同じく遥、時枝、木虎、佐鳥が全員にトリガーが行き渡るようにして配っていった。

他のボーダー隊員はオペレーターを含め受け取らなかったが俺はちゃっかり受け取った。

 

 

「この手の甲の数字が見えるかな?この数字を4000まで上げること。それがB級昇格の条件だ」

 

 

俺は仮入隊知らなかったから普通に初めてポイント1000スタートだったな〜。その後、同期の奴らからどんどんポイン奪っていって苦労したぜ、全く。

 

 

「攻撃手と銃手の昇格条件はさっき言った通りだが、狙撃手は少し違う。それをこれから説明するから、みんなついてきてくれ」

 

 

そうして嵐山隊を先頭にして狙撃手訓練場へと向かった。

比企谷八幡、未だにステルスヒッキーを使用してボーダー組からも声はかけられていません!

 

 

***

 

 

狙撃手のとこでは佐鳥がいろいろやってツインスナイプとかドヤ顔で見せびらかしてて、その顔がムカついた。以上。

 

そして現在は個人ランク戦のある訓練場に向かっている。俺は最後尾で目を腐らせながらダラダラ歩いていた。

 

 

「大丈夫かい?ハチ」

 

 

声をかけられたので前を見ると後ろに来ていた優菜が話しかけてきた。

 

 

「大丈夫に見えるか?今もビクついて歩いてんだよ」

 

「私はバレても問題ないけどトワも冷や汗かいてたよ。それ見た訓練生の顔が面白かった」

 

「悪魔………」

 

 

優菜が言ったように、十和は髪をボサボサにしてマスクにメガネを装した状態であるが、汗をかいているのがわかる。

コミュ障でも気が合うオタク友達はいるらしくてその数名に大丈夫かと声をかけられている状態だった。

 

ぼっちの俺が女子と話しているとステルスが効果しなくなる恐れがあるため念の為、優菜にお前がバラすなよとだけ言った俺にわかったと返事を返した優菜は元の位置に戻る。

 

まあ、そんなこんなで訓練場到着。

 

 

「訓練生には、まず最初に大型ネイバーとの戦闘訓練を行ってもらう。仮想戦闘モードで、ボーダーの集積したデータから再現されたネイバーと戦う訓練だ。今日も何人か体験してもらうが、さすがに全員はできない。だからこれから体験してもらう人を決めよう。誰かやりたい人はいないか?」

 

 

すると予想通りほぼ全員が立候補するのだった。

 

 

 

選ばれたのは、葉山、三浦、由比ヶ浜、川崎、雪ノ下の5人で、この順で行われた。戸塚の戦闘服見たかったが仕方ない。

 

 

「八幡、もっと近くでみない?」

 

「いや、俺はここでいい」

 

 

せっかくの戸塚の頼みだが俺は拒否をする。

だって、あんま近くいくと嵐山さんにバレるし………

 

 

「そう?じゃあ僕は見てくるね」

 

「おお」

 

 

そうして戸塚は訓練室の近くへ行った。

ちなみに今俺がいるのは最前列の一番端っこで、下手に後ろいくと視界に入りやすいから此処にいるのだ。

すると、一人の隊員がさりげなく近づいてきて話しかけてきた。

 

 

「比企谷先輩、やっぱり来たんですね」

 

「よお、木虎か。久しぶり」

 

 

話しかけてきたのは木虎である。

俺が職場見学に参加することになった理由を知っている木虎はなるべく目立たないように小さな声で話しかける。

 

 

「出来れば別の場移動してくれる方かがが助かるんだが……」

 

「いいじゃないですか。私は此処で少し様子を見ています」

 

 

で、そんなこんだで葉山が終わる。記録は51秒。そこそこだな。

汎用性の高い孤月を選ぶのはいい判断だが使い方が上手くない。やはり戦闘には向いていないようだった。

 

 

「51秒、まあまあですね」

 

「まぁ、9秒のお前から見りゃそうだろうな」

 

「それを比企谷先輩が言います?」

 

 

ジト目で見るな。怖いから。

葉山が終わるとすぐに三浦の出番になったが時間は2分半。

スコーピオンでこの遅さは才能ないな。

同様に、バイパーを選んだ由比ヶ浜は一発を当てられずに時間オーバーだ。てか初心者にバイパーなんて難しいもん使わすなよ。

 

次に川崎だがーーー

 

 

「孤月で1分五秒。一見、時間だと葉山には劣って見えるが………」

 

「動きが丁寧でしたね。慣れたら普通にボーダーに入っても大丈夫なレベルだと思います」

 

 

確実に足を狙って動きが鈍った所を、弱点の目を狙っていた。

前は冗談で誘った入団試験はトリオン量さえ問題なければ合格するだろう。

 

 

 

お、次は雪ノ下か。

自称、何でもできる毒舌はどこまでが嘘なのか見極めてやる。

 

 

「すみません、私は戻ります。後で綾辻先輩に挨拶しておいて下さい。今日は綾辻先輩が計画立てたので」

 

「ああ、わかった。じゃあな」

 

 

 

そう言って木虎は定位置に戻っていった。

 

そこで雪ノ下が終わる。記録は21秒か。この中では確かに速いな。

しかし、ただ仮想の敵相手に速く倒せるだけ。

当然の結果だと思って満足しているようだが井の中の蛙。傲慢なだけだ。

 

雪ノ下がでてくると、軽く歓声が上がるが、誰近づこうとはしない。

あいつ本当はぼっちじゃないんじゃね?

歓声上がるだけで誰も近づいて来ない。やはりぼっちか。由比ヶ浜は三浦のグループの所にいるし。

と、そこで雪ノ下と目が合うがドヤ顔をして元の場所に戻っていった。ウゼー。

 

すると嵐山さんは笑顔を浮かべて雪ノ下に近づいて行った。

 

 

「君、すごいじゃないか!21秒なんて訓練生はそうそうできるものじゃない」

 

「ありがとうございます。それで、参考までに聞きたいのですが、ボーダーでの最高記録は何秒なのでしょうか」

 

 

こいつ、どんだけ自信あんだ?

参考にとか言ってるが敵意むき出しだぞ。

 

しかし不味いぞ。雪ノ下の質問に嵐山さんは答えるだろう。そうしたら俺はーーー

 

 

「今の所ボーダートップは比企谷隊の比企谷と志神が共に2秒なのが最高記録だな」

 

 

アウトォォォっ!

 

ヤバい!嵐山さん名前出しやがった!

静寂が広がった訓練場に他の生徒は誰それ?と言っているが戸塚とか由比ヶ浜が驚いた顔をしている。そして雪ノ下なんかこっちみて睨んできやがったため自然と俺に視線が降り注ぐ。

嵐山さんの横にいた遥は慌てて嵐山さんを止めようとするが無理のようで、手を合わせて謝ってきた。

 

「あの、嵐山さん」

 

「ん?どうしたんだい?」

 

「比企谷とは、比企谷八幡のことですか?」

 

「そうだ。A級部隊の比企谷隊の隊長だ。ん?確か総武高の生徒だったよな。おーい!比企谷隊は前に出てきてくれ!」

 

 

ヤバい、一刻も早くこの場所から逃げなければーーー

 

 

「逃げちゃダメだよ、ハチ」

 

「優菜、後世だ。今度、デザートの食べ放題奢るから」

 

「うっ!……いい提案だけど意味無いわよ」

 

 

突如現れた優菜によって逃げ道を寸断された俺だったが優菜が示す方向をみて諦めた。

 

 

「ひっ!歌歩さんに宇佐美さん!?」

 

「すまんね十和くん。優菜からの司令だから君を強制的に連れてくぞ?」

 

「ごめんね十和君」

 

「や、やめて!ま、マスクだけはーっ!?」

 

 

三上に抱きつかれる形で動けなくされ、宇佐美に引っ張られていく相棒の姿をみて、俺は優菜と一緒に嵐山さんの所まで行った。

 

 

「ごめんね八幡君。結局、こうなっちゃった………」

 

「大丈夫大丈夫。遥ちゃんは悪くない」

 

「それ、俺が言うセリフだろ………まあ、俺も怒ってないから安心しろ」

 

マスクを取られまいと必死で抵抗する十和を片目に俺は怒ってなかったがーーー

 

 

「2秒??こんなのが?」

 

「おい、そりゃどういう意味だ」

 

「言葉通りよ。あなたみたいなぬぼーっとした人が私より記録がいいなんてありえないわ。何か卑怯なことでもしたのかしら?A級に上がったのも、同じチームの人と共同でズルしたんでしょ?」

 

「へ〜ヒキオ、ずるしたんだー。そんなことしてA級になるとかキモいんですけどー」

 

 

雪ノ下の罵倒に、更に三浦が便乗してきて周りに知らしつけるような声でわざとらしくボヤいた。

雪ノ下は単純に俺が気に食わないらしく、三浦はこの前の件の仕返しのつもりだろう。

クラストップの三浦の意見に周りからはボツボツと賛同する声が聞こえた。

 

「おい、流石にキレ「あなたこそどういう意味なの?雪ノ下さん」……る、ぞ……」

 

 

雪ノ下の言葉に呆れ半分、怒り半分になった俺の話を無視して優菜、いや悪魔が冷たい目で雪ノ下を見ていた。

しかし冷たい目で見るのは優菜だけではない。雪ノ下の発言は静寂していた訓練場全体に響き渡っており、ここにいたC級隊員、総武高のボーダー組、そして嵐山隊全員が反応していた。

その異常な様子に、先程まで賛同していた三浦のクラスメイトも、訳が分からないようで、一先ず三浦から距離をとって、本人は周りをみてあたふたすることしかできない。

 

 

「篠崎さん、何故その男を前から庇うのかしら?」

 

「自称頭がいい雪ノ下さんは気づかないの?私は呼ばれたから来たんだけど」

 

「!?まさか………」

 

「そ、私は比企谷隊のオペレーターなのよ。で?誰がズルしてA級まで上がったって?」

 

 

どうやら周りの視線を知らない雪ノ下は優菜の言葉に睨んでくる。

対する優菜は冷めたような表情でそんな雪ノ下を見ていた。

 

 

「雪ノ下さん、だったかな?俺も君の考えは訂正しておくよ。比企谷たちは実力でA級まで上がった。それは紛れもない事実だ」

 

「で、でも!ヒキオは前にズルしてテニスに勝ったし!」

 

「っ……!……そうです、それは彼は卑怯者ですよ?そんなのがA級だなんて何かしたに違ーーー」

 

 

珍しく怒りの様子の嵐山さんに反論しようと、ただ喚く三浦と、一旦冷静になった雪ノ下の言葉は、

 

 

 

 

 

 

 

 

一発の銃声と

 

その攻撃を斬る

 

 

二つの音によってかき消された。

雪ノ下は膝から床に座り込むがどうだっていい。俺は武器を持つ二人をみた。

 

 

「………十和、何をする」

 

「ダメだよ秀次。トリオン体でも攻撃しちゃポイント没収されるよ?」

 

 

銃声がした方向には、見学に来ている奈良坂を除いた3人で防衛任務があった筈の三輪隊隊長の三輪が雪ノ下に銃口を向けて立っており、そのトリオンの弾丸を斬ったのはいつの間にかトリガーを起動させてマスクを外し、大鎌【ファルクス】を持った十和だった。

 

 

「わかってる。だがその女はお前達を馬鹿にしたんだぞ」

 

「知ってるよ。そもそも僕と八幡はこうなるだろうって思って此処に来たからね。簡単にはキレないよ」

 

十和の話を聞いた三輪は銃型トリガーを腰に戻して雪ノ下を遥かに凌駕する睨みを雪ノ下と三浦に浴びせた。

それに含まれる殺気にやられて三浦は葉山と由比ヶ浜に支えられながら崩れ落ちた。

 

 

「比企谷。お前は何も思わないのか」

 

「あ?別に何とも。だってなぁ、十和」

 

「そうだね。二人は下手したら退学になるんだし」

 

 

十和の一言に全員が騒ぎ出した。

大半の生徒が何故そうなるのかわかってないようだ。

 

 

「な、何であーしが退学になるし!」

 

「簡単だろ?お前たちは正隊員の俺たちを否定した、つまりそれは俺たちを採用したボーダーを否定していることと同じだ。当然、ボーダー側が学校側にお前たちの言動を報告するだろう。学校としてはボーダーとの連携を崩す訳にはいなねぇから何らかの罰が与えられるだろう」

 

「………っ!お願いだ。どうか優美子と雪ノ下さんを見逃してくれ!」

 

「隼人………」

 

苛立たしい

三浦と雪ノ下を庇う葉山だが、ただいつも一緒にいる三浦が罰を受けると自分まで影響が及ぼされると思っての謝罪だろう。

本当に謝るなら最初の方で言ってる筈だ。

そんなことを知らない三浦は、葉山を自分を救ってくれる王子様のように見えているのだろう。

 

 

 

 

 

 

本当に反吐が出る。

 

「諦めろ。三浦と雪ノ下は今回の件を報告される。だからお前は退学じゃなくて停学になるよう願っとけ」

 

「………そんな……」

 

「最初にお前がせめて三浦だけでも止めようとすればよかったことをしなかった。自分の行動を悔い改めろ」

 

「………どうか、どうか許してください、()()()()くん!」

 

 

ブチっ

 

 

葉山が最後まで言葉を口にした瞬間、近くで二つほど完璧にブチ切れた音が聞こえた。いや、俺自身もキレたから三つだ。

 

 

「葉山、だったよね。あんたは今、誰の名前を言った?」

 

「ひ、()()()くんだけど」

 

「ふーん。じゃあさっきのはわざとか………面白い挑発だね」

 

 

優菜から、いや三輪たちも含めたここにいるボーダー隊員の怒りをぶつけられた葉山は怯えて困惑するのみ。

理性を保って完全な野性の支配からは逃れた俺は十和の方を見ると光のない目であったがこっちを見て頷いてきた。

 

すると、優菜は今にも殴りに行かんとする様子だったので十和が押さえつける。

 

 

「どいてトワ。あいつ殴れない」

 

「優菜さん、ちょっと落ち着いていて。後は僕たちがどうにかするよ」

 

 

握った拳を解いた優菜を確認して俺に近づいてきた十和と一緒をみて、大きめの声で言う。

 

 

「葉山、お前、いやお前らに一回だけチャンスをやる」

 

「……チャンス?」

 

「ああ。葉山、三浦、雪ノ下の3人で俺と戦って勝ったら今回の見学は何も無かったことにしてやる。どうした、受けるか?」

 

「……それは本当か?」

 

「ああ。そして俺はハンデでお前たちが選んだ武器一種類のみで相手してやる」

 

「……わかった。その勝負、受けるよ」

 

 

主人公風にキメてきた葉山だが寧ろ悪役だ。

何人かのボーダー隊員は俺の提案に納得しないようだが黙っている。

だって正隊員なら誰でも勝てる、ましてやA級の俺が負けるはずがないとの考えだろう。

 

葉山と三浦は希望を見出してやる気を見せ、雪ノ下は潰すき満々の状態だが、俺からしたら馬鹿な行動だ。

 

そして、ふと、いいことを思いついた俺は嵐山さんの方に向かった。

 

 

「すみません、嵐山さん。勝手に決めてしまって」

 

「大丈夫だ。今回の件は無視出来ない内容だからな。それで、用があるんだろ?」

 

「ええ。遥、模擬訓練を俺にさせてくれないか?」

 

「………わかった。……八幡君は、平気なの?」

 

「当たり前だ。俺は遥や十和、優菜たちを信頼している。だからあれ如きで本気にキレん」

 

 

そう言って俺はトリオン兵が設置された部屋に入っていった。

 

 

 

 

 

 

相手はバムスター。捕獲用のデカいトリオン兵で動きは鈍い。

だからまずは足を狙ってーーーなどとは考えない。

孤月を抜いた俺はただ、戦闘開始の合図が来るまで普通に立っている。そしてーーー

 

 

『仮想訓練、開始!』

「旋空弧月」

 

 

四文字を言い終える前に放たれた斬撃はバムスターの硬い構造を無視して縦に真っ二つに斬ったのだった。

 

 

『記録0.4秒』

 

 

いくらトリガーを使ったとしても速すぎるその結果に、見ていた生徒は唖然として、3人の相手は絶望するしかなかった。

 

 

 



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比企谷八幡は化け物である

サブタイトル考えるの辛いっす………
後、次のデート回はどうしよう


現在、個人ランク戦が行われる訓練場では隊員と総武高の生徒が大勢集まっていたが誰も口を開けない、いや開けられないのだ。

理由は二つ

 

先ずは葉山、三浦、雪ノ下の3人の言動だ。

殆どの総武高生徒は比企谷という名前を聞いても誰?っという反応とあの腐り目がA級(笑)だった。しかし、クラスカーストトップの二人に成績優秀な雪ノ下がA級の比企谷と今後の立場を揺るがしかねない勝負を行おうとしているのだ。

ボーダー隊員は比企谷八幡の実力を知っているため初心者三人に負けるような人ではないと思っているが、実力を知らない総武高生徒先程の訓練で1分をきった二人がいるからいくらA級でも一人だと勝てないだろう、そう思っていたがーーー

 

 

『0.4秒』

 

恐るべき記録を見て、改めてボーダーのA級隊員の実力を知ってしまった。これが二つ目の理由だった。

 

部屋から出てきた比企谷八幡はその記録に満足することなく、ただ当たり前の結果だとただ寄せる雰囲気で歩いて戻ってくる。

三浦はただ絶望し、葉山は策を考え、雪ノ下はイカサマがあると確信し見破ろうとしていた。

そんな三人に近づいてくる比企谷、いや、理性を保ちながらも内心ブチ切れていた《鬼》は

 

 

「さっさと選べ。時間の無駄だ」

 

 

そんな三人は眼中に無いように、溜息を吐きながら呟いた。

 

 

 

 

 

 

八幡side

 

 

「さっさと選べ。時間の無駄だ」

 

 

本当に無駄だ。武器を選ばせることをハンデにしたがそれだけで俺がネイバーや戦闘狂共と戦ってきた年月に叶うわけないだろう。

ましてやコイツらには黒江みたいに特化した才能はない。努力すればいずれ俺を超えられるかもしれんが無理だ。こんな奴らに負ける俺ではない。

 

………にしても、コイツら本気で勝つつもりなのか?

三浦は戦意喪失してるが残り二人は少しの希望を掴もうとしているようだが無意味なのにな。自分を主人公だと思ってんのか?

性格クズとか鬼畜……同じか。まぁ、そんな奴が主人公のラノベあるが劣化版と毒舌が主人公の物語を見てみたい。

 

……………え、ない、よね?

 

 

葉山グループは誰も助けようとはせず、由比ヶ浜もただあたふたしているだけ、そして何か「っべーわー。隼人くんべーわー」と訳分からん言語使っているやつは煩い。とにかく煩い。

 

つまるところ、まぐれで俺に勝ってもコイツらの華やかな高校生活はここで終わりだ。

 

 

「決まったよ」

 

「そうか。で?俺は何を使うんだ?」

 

「ヒキタ、…比企谷くんにはバイパーを使ってもらう」

 

 

また名前間違えかけたな。途中で戻したがあと一文字いってたら俺じゃあ抑えられない怪物が襲いかかる所だったぞ。

まぁ、いい。

しかしバイパーか。どうせ由比ヶ浜がバイパー使って失敗しまくってたし俺はさっき孤月でトリオン兵真っ二つにしたからアタッカーだと思ったんだろう。

 

「もう一度聞く。本当にバイパーでいいんだな?」

 

「そうよ。あなたがカッコつけてだしたハンデだから守りなさいよ卑怯がやくん」

 

 

勇気あるなー雪ノ下。

俺以外のボーダー隊員の殺気をわざわざ集めるなんて。本人はそれどころじゃないため気づいていない。

俺は嵐山隊の元へ行き場所の確保を求めた。

 

 

「すみません。迷惑かけます」

 

「何れにせよ俺たちが報告することになるんだがな。頑張ってくれ」

 

「頑張って下さい」

 

「見学に来た学生をボコボコにして下さい比企谷先輩!」

 

「佐鳥、言い方が悪い。後でランク戦な」

 

 

佐鳥は「俺スナイパー!」と喚くが無視だ無視。

純粋に応援してくれる時枝は人気なのはわかるが佐鳥の奴も人気な理由がマジでわからん。

 

そして俺は遥の前に来る。

 

 

「八幡君。大丈夫だと信じてるけど……気をつけてね」

 

「ああ。ありがとな」

 

「八幡君………」

 

「遥………」

 

「………何してるんですか先輩方」

 

 

木虎に指摘されて遥から目を離した。

いけん、前に遥と手を繋いでから周りの視線気にしなくなっていたが今は総武高の生徒もいるため殺気が襲ってくる。何人か「ジャッチメントですの!」とか言いたげな格好をして集まって話しかけていたがハチマンナニモミテイナイ。

すまない、と遥の頭に手を乗せて俺は先導して部屋に入った。

 

しかしまぁ、佐鳥が言ったようにボコボコにするのは賛成だ。

ウチの隊員馬鹿にした罪と偽の正義感をもつ罪を償ってもらう。

 

これはゲームであって遊びではない。

 

さあ、死刑(ゲーム)をはじめよう!

 

 

………妹キャラ、出てくるなこの二作品

 

 

 

***

 

 

 

「場所は……妥当に市街地A、普通の住宅街だ。天候も晴れにして置く。位置設定はランダムでいいか?」

 

『それでいいよ』

 

「もう一度確認だ。俺に勝ったら学校側に今回の件を知らせない。上層部にも言っておこう。で、俺は指定されたバイパーのみ。先に倒された方が負けでいいな」

 

『勿論だ。俺たちが三人でかかってきてもいいんだね?』

 

 

それで勝てると思ってんのか?

口にしないが呆れる俺をよそに、葉山は通信をきった。準備は大丈夫なようだ。

 

俺はトリガーにバイパーのみになるよう優菜に頼んで改造してもらったトリガーを再起動させて場所が市街地に移る。

 

 

『対戦開始』

 

 

機械音と共に俺は目を瞑って三人の居場所を確認する。

一番近いのは……三浦だ。

 

近いっていうか肉眼で見える位置だった。俺に気づいた三浦はスコーピオンを発動させて睨みつけていた。

 

 

「あーしをコケにして隼人まで!ヒキオ潰す!」

 

「威勢はいいが喋る余裕があるとは驚きだ。当たってないから黙れば?」

 

「うっさい!ぼっちの分際でこのあーしに楯突くなし!」

 

 

うわあぉ。()()って言っちゃってるよ。自意識過剰過ぎじゃね?多分、明日から俺と仲間のぼっちになるのに。

 

更に挑発するのもいいが既に話は聞かないと思うため俺は二宮さんスタイルでポケットに手を突っ込んで遅い斬撃を避ける。

考えなしにただ俺を斬ろうとするだけじゃ当てられるわけないだろ。

 

 

「何で当たらないし!動くなし!」

 

「それで止まると思ってんのか?………はぁ、もういい。飽きた」

 

 

前に突っ込んで腹を貫こうとする三浦の攻撃とも言えない動作を横にズレることで回避し、足をかけると盛大に転んだ。

そして俺が後ろを向くタイミングを探っていたであろう葉山が素早く腕を振るうも

 

 

「なっ!?」

 

「奇襲はいいが俺にはきかん」

 

 

上からの斜め切りをバク転をして避けた俺に葉山は唖然とする。

………これくらいで驚くなよ。

トリオン体だから出来るだろう。まぁ、生身でもできるけど。

すると一番遠くにいた雪ノ下も屋根の上から降りてきて葉山の横に立つ。

三浦が立ち上がる姿をみて疑問に思っている。

 

 

「これで全員揃ったな」

 

「何のつもりかしら?」

 

「あ?お前たちは三人で襲ってくるんだろ?だったらそうしろよ。その状態で勝ってやるから」

 

「……随分余裕ね」

 

「そりゃ、実際余裕だからな」

 

俺の言葉が合図となり雪ノ下が襲いかかる。

確かに速いがそれだけだ。反応出来ない速度ではない、つーか遅い。

ポケットからだした右手で両手で孤月を持つ雪ノ下の両手首を捻って宙に舞った雪ノ下を蹴って三浦とぶつける。

痛みはないが蹴られた屈辱を味わってる雪ノ下を横目で見ながら、二人を助けようとする葉山に、正確には葉山の周りをギリギリに囲って通過するようにバイパーを瞬時に引いた。

 

「よかった。君はバイパーがにが「言っておくが葉山。今のはお前に当たらないようにわざと合わせたものだ」な、何を冗談をっ!」

 

 

勘違い野郎の葉山の手首を通過した筈のバイパーが撃ち抜く。

雪ノ下たちを無視して先にこっちの始末だ。

 

 

「あと一言。お前らは俺を剣しか使えないアタッカーだと思っているようだが本当は違うぞ」

 

「………!……まさか君は!?」

 

「俺はオールラウンダー……それも、嵐山さんとは違ってアタッカーとシューターを主流にしたタイプだからバイパー、得意中の得意なんだわ」

 

 

それも出水の座右の銘である百発百中が妥当比企谷に変わるほどに。

 

 

「そんなの卑怯だし!」

「俺は何度も確認したぞ?バイパーでいいのかって。潔く俺の使うトリガーを嵐山さんとかに聞いてればいいものをお前達はしなかった。自分たちのミスだ」

 

三浦に答えた俺は膝をついている葉山に目をやってバイパーの軌道を設定する。

 

 

「先ずはお前だ葉山。偽の正義を語るなら正義なんて捨てろ」

 

 

全方向からのバイパーによる鳥籠をつかって為す術もない葉山は大量の風穴を開けてベイルアウトした。

 

 

「先ずは一人。呆気なかったな。言葉と違って」

 

「よくも隼人をっ!!」

 

「くっ……!」

 

 

同時に攻めてくる三浦と雪ノ下だが連携のレの時もない。

コイツら相手にすると俺が鈍りそうだから顔面にパンチと蹴りをかまして一箇所に集める。

女子を蹴るのは普段の俺は絶対にないがこの縦巻金髪ロールと毒舌には同情の欠けらも無い。どうせ痛くないし、これは訓練だから思いっきりぶつけた。

 

 

「これがお前らが馬鹿にした紛れもない俺の実力だ」

 

「嘘よ!私があなたなんかに劣ってるわけないじゃない!」

 

「……呆れた。少なくとも勉強、運動でお前は負けてんだろ」

 

 

米屋ですら自分がバカだとわかっているが毒舌はわかっていない。明らかに後者の方が馬鹿だ。

 

冷たい目で雪ノ下を見た、いや見下した俺は、頭上に大きめのキューブをだして細かく分けていく。ざっと10×10×10のため1000に分かれたキューブを待機させ二人の方を見るも動かない。

 

 

「最後は俺の新技でも見てもらうぞ。卑怯なことなど一切ない。逃げたきゃ逃げろ」

 

 

逃げろ、とは言ったもののキューブは二人をドーム状に囲いながらゆっくり動いているため出られない。

 

タイミングを見計らって俺は

 

 

「じゃあな。”暴龍”」

 

 

この技の完成を手伝ってくれた十和が銘々したその技は、先程の鳥籠とは違い全方位だけではなく、上や斜め下からもキューブが一斉に襲っていく。

 

大きな爆発と共に二つの光りが飛び出る瞬間を見た俺は溜息を吐いて自分の勝利を告げる機械音を聞いていた。

 

 

***

 

 

準備運動にもならない戦いを終えた俺はボーダー組からお疲れ様と労われ、そして監視として付いてきていた先生にめっちゃ謝られた。

 

そう言えば三人の教師がついていってたな。

とうやら上層部と話していたらしいが、C級隊員が上層部にここまでの出来事を報告したためダッシュで向かって来たらしい。

 

どっちにしろ逃げ場がなかった三人は残り二人の教師から事情を尋ねられている。

謝ってくる教師は何も悪くないためあとの判断は学校側に任せますとだけ言って十和たちの方に向かった。

 

 

「………お、お疲れ、様。八幡」

 

「……マスク、付けたのか」

 

十和はトリガーを解除して総武高の制服状態にマスクを付けて声をかける。

 

 

「あ、あはは……学校の生徒、が多い、と…無理」

 

「情けないなー全く」

 

「でも最初はちゃんと頑張ってたよ?」

 

「まぁそうだね」

 

 

優菜はジト目で十和を見るも三上が十和をフォローして優菜が元の目に戻す。

絵面が完璧に旦那を慕う嫁だと思ったのは俺だけではないはずだ。

 

 

「あーあ。結局バレちまったし目立ち過ぎたな」

 

「八幡、注目され、て僕は忘れられる。……完璧だ、ね」

 

「言っておくけどC級が何人かの生徒にトワのボーダーのこと話してたから注目されるよ」

 

「それにマスク外したし、ファンクラブでも出来るんじゃねぇか?」

 

 

俺の冗談に十和は大事なものを失くしたような顔をしたが、いくら十和がメガネイケメンだとしてもファンクラブは流石に……出来ないよな?

十和のイケメン性より先に、コミュ障の十和のファンが十和をみてキャーキャーいうのを十和は気持ち悪がられてると勘違いして心に傷を負う姿が明確に想像出来てしまった。

え、俺って未来予知のサイドエフェクトに目覚めたの?セクハラエリート要らなくね?と思うが冗談だ冗談。

 

 

 

 

 

 

十和のこれからが心配になるが休憩の時間になったため俺は一人で自販機に向かった。

 

途中、怖がられて道からどいてくれる生徒に感謝しながら向かっていたが、戸塚だけは堕ちた俺の目を輝かせるような笑で俺がA級だということを凄いと褒めてくれた。

流石はマイエンジェル。動画にとって毎晩耳元で堪能したい声だったが無理なため、俺の脳内にその記憶を忘れないようインプットした。

 

 

 

 

 

自販機にいってマッ缶を選ぶ。

以前に鬼怒田さんにお願いしたら許可をくれたためボーダーの自販機には全てマッ缶が売られている。その頃から鬼怒田そんが糖尿病になったと愚痴っていたがあれはマッ缶が悪いんじゃない。鬼怒田さんの体調管理が出来ていないからだ。

マッ缶を開けようとプルタブを人差し指をかけた瞬間、誰か、いや、知っている人物が近づいてきているとわかったためマッ缶は開けずにそっちの方角をみた。

 

 

「ヒッキー。話があるの」

 

 

そこには如何にも自分、怒っているとアピールしている由比ヶ浜がいた。

 

 

「何のようだ」

 

「どうしてゆきのんや優美子と隼人くんを悪者にしちゃうの!三人ともヒッキーのせいでみんなから避けられちゃってるよ!」

 

 

………何言ってんだコイツ?

 

 

「俺が何をして悪者にしたんだ?」

 

「だって戦ったからゆきのんたちが先生に怒られてーーー」

 

「それは俺は悪くないぞ。しかも俺はあいつらにチャンスをやった結果があの勝負だ。それに悪者にした?俺と俺の仲間を卑怯者扱いしたあいつらの方が悪者にしようとしてたじゃねぇか。お前は近くで見てたからわかってんだろ?」

 

「そ、そうだけど……でも!」

 

「でもってなんだ?自分の友達を止めることすら出来ない奴が言いたいことでもあるのか?」

 

 

結局は由比ヶ浜も葉山と同じだ。

 

自分勝手、自己中、理不尽

 

周りよければすべて良し!の自分大好き人間なのだ。

勝手に善と悪を決めつける最悪なリア充共の手本そのものだ。

 

 

「あとその渾名はやめろ。俺に親しくしようとしているのは犬を助けた恩返しかもしれんがそんな同情はいらん」

 

「し、知ってたんだ……」

 

 

いや、正確には小町が思い出して聞いたのだ。

大志とあった時に由比ヶ浜とあったが、それから数日後の朝飯の時に突如カミングアウトしてきたのだ。可愛かったから許したけど。

 

 

「俺はお前たちみたいな偽物の関係が大っ嫌いなんだ。上辺っつらだけの関係なんて欲しくない。ましてや同情なんてもっといらん。雪ノ下を止められなかったお前と雪ノ下の関係も結局はそんな脆いものだ。理由は自分のせい。わかったんならさっさと戻れ」

 

「………ばか」

 

 

そう呟いて由比ヶ浜は走って去っていった。

誰がバカだ。勝手に自分を押し付けようとするお前が言うな。

 

 

これで奉仕部との関係性がなくなった俺は軽くなった気分を実感しつつマッ缶を味わうのであった。

 

 

 




今更ですがチェーンメールの話はなしにしました。
葉山グループは解散したので意味がないと思っていたんですが報告するの忘れていました。すみません。

次は千葉村ですがいくつかの話を間に入れるので楽しみにしていて下さい!頑張ります!


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比企谷八幡は自分を見直し自重を考える

遅れてすみません……
感想で葉山、三浦、雪ノ下をどうしようと悩んでいたんですが次のストーリーに続けるための決断をしました!

納得いかない展開かもしれませんが最後までよろしくお願いします!
そして、今回はパロキャラが関わってくる回です!



では!


八幡side

 

 

頭が痛い

 

それが職場見学いや、仕事場から帰ってきた次の日のホームルームで感じたことだった。

 

最初に語ろう。

 

 

 

 

 

三浦→奉仕部に入部(強制)

 

葉山→サッカー部部長候補から落選

 

雪ノ下→厳重注意

 

 

 

これが学校側から三人に与えられた罰だった。

 

三浦は前科持ち故に退学になるだろうと哀れむなど怪訝もない俺はいつも通りに学校に来た。しかし、教室の一角に一人でいる三浦を確認して疑問を応じた。

 

葉山はまだわかる。あんな場面で名前をわざと間違えるだけなら退学にはならない。信用が失われるのは現状を見ると理解させられるが三浦の罰が甘いのでは?と内心言葉に出かけたがホームルームが始まったことで阻止された。

 

そこで聞いたのがこの処罰についてだ。

担任は俺に頭を下げてきたが肝心の理由は教えなかった。が、大体は想像がつく。

 

雪ノ下雪乃、いや雪ノ下建設が関わっているのだろう。

 

 

雪ノ下建設はそこそこの権力をもつ企業であり、その関係者が高校退部などの履歴があると不味い。故に学校側に罰が軽くなるよう仕向けたのだろう。それと同様に、三浦の罰も軽くなったという事だ。

 

まぁ、罰が軽くなっても精神は限界だろう。少し前までクラスの女王だった自分が、今ではぼっちなのだから。いずれ不登校になるおそれがあるが俺は知らん。

由比ヶ浜は俺をちょくちょく見てくるが視線を合わせようとしない。現在は確か……海老名さん?と二人で三浦から離れた場所にいる。結局はコイツらの関係は偽物だったという事だ。

せっかくこっちは正論を言っているのに自分勝手に解釈するアホの事を考えてもわからん。

そんなことより俺はまた疑問を浮かべた。

 

それはボーダーの上層部が黙っているはずがないと言うことだ。

木戸司令が以前、問題があったら上層部が対処すると言った。学校側に報告したボーダー本部は三浦と葉山と雪ノ下の対応も考えるよう促したはず。

 

放課後にでもボーダーに行って、話を聞こうと予定を決定させると、図ったタイミングで携帯電話がバイブした。

 

”セクハラエリート”の文字と共に。

 

 

 

『比企谷が疑問に思っているであろうことについて話そうと思ってな。今、時間空いてるか?』

 

 

丁度ホームルームが終わったから電話にでれているんっすよ。後、サイドエフェクトでわかっていたでしょ?

 

 

『お前は今、学校側の対処とボーダーの考えがわからない筈だが、ありゃ俺が仕向けた。理由はまぁ、色々あるがそれが最善だったから、と言っておくぞ。雪ノ下さんだっけか?その娘が総武高に残るか残らないかでお前と志神のアレがアレでなくなるからな』

 

 

人のネタ使わないでくれます?

セクハラエリートをネタに自分で考えて!

しかし、これで謎は解けた。

癪に障るが此処は素直に迅さんに従っとこう。

 

 

『それと、前に志神が暴走した時に俺が言った事覚えてるか?何人かの隊員が規定違反くらう理由だが、どうやら雪ノ下さんがボーダーに入隊して比企谷を強く否定したのにキレた奴らがトリオン体の雪ノ下さんの首を飛ばしまくったからだった。でもC級隊員も雪ノ下さんに苦情言いつけたから雪ノ下さんの入隊は完全にない。よかったな、慕われてして』

 

迅さんの予知の結果に呆れながらも、やはり雪ノ下は変わらない、いや変えられないのだと知った俺は溜息を吐いて電話を切った。

 

その日の教室はやけに寒かった。

俺は相変わらずのぼっち、つーかボーダーで三人ボコったことで恐れられたために話しかけてこない。いつも通りでよろしい。

ホームルームの後は移動教室だ。

今日のクラスの様子に青ざめた二人以外は退出し、俺は戸塚の可憐な声を聞くべく音楽室に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と、言うのが事件の真相だ」

 

「……何ですか?それは。処罰に関してはギリギリですがあの人がおっしゃるのであればそうかもしれません。しかし、三人に至っては謝りもせず、何も知らないで人を見ただけで判断するなんて……!」

 

「落ち着け深雪。感想は俺も同感だが怒っていいのは当事者の比企谷だけだ。比企谷が問題を深くしていないということは考えがあるからだろう。それに、こればかりは俺達が下手に干渉できない」

 

「お兄様………」

 

「……………あのぅ、俺の話聞いた後でイチャつくのやめてくんない?」

 

 

俺が職場見学での出来事を話したってのに、この兄妹は他のカップル顔負けの甘ったるい雰囲気を作り出していた。

マッ缶ラブの俺でも砂糖が出そうだぞ。

 

────兄妹だよな?

 

 

「兄妹だよな?」

 

 

おっと。ついつい思っていることを口に出してしまった。

しかし、俺の心からの質問にこのシスコンとブラコンはーーー

 

 

「何を当たり前なことを言っている」

 

「そうですよ。私はお兄様の妹ですよ?」

 

 

シスコンである兄はブラコンである妹の頭をさっきから撫でていた手でテーブルに置かれたカップを持って、いつもの無表情で返してくる。妹の方も同じく。

 

 

「……千葉県の兄でもそこまで妹に動けんぞ。つーか俺が小町にやったら説教される事を平然と………司波家ではこれが当たり前なのか?」

 

「千葉県の兄は全員がシスコンであるデータはないぞ。お前が重度のシスコンなだけだ」

 

「どの口が言ってんだよ!」

 

 

柄にでもない大声でツッコんだ俺をスルーする男、司波達也は本能的に無視を選んだらしく、飲み物を飲んでいる。

その妹である司波深雪もまた、兄と同じく飲み物に手を出した。

 

 

「……お前たちの甘い空気はもういい。んで?いつまでこっちいんだ?」

 

 

この兄妹は東京に住む高校二年だ。

え?なんでぼっちの俺が別の県に住むコイツらと接点があるかって?

 

「明日は俺がボーダー本部に、深雪はオペレーター組に混ざって遊びに行くそうだ」

 

「小町ちゃんとも行くのですが、聞いていません?」

 

 

はい、聞いてません。

小町よ、お兄ちゃんに報告してくれ。寂しくて泣いちゃうぞ?

 

ってか、何気に小町はボーダー隊員に知り合い多いよな。俺以上に多くね?

まぁ、俺ってぼっちだし。普段は。

 

 

「師匠はどんな様子だ?」

 

「いつも通りだ。比企谷もたまには顔をだしてやれ。千葉なら東京まで時間はかからないだろ」

 

「まぁ、夏休みに入ったらそっちに行く予定だ」

 

「そう何ですか?では是非、家にいらして下さいね」

 

「……気がむいたらな」

 

 

砂糖とミルクでマッ缶もどきと化したコーヒーを飲み、そっぽを向く俺に二人の兄妹はふっと笑った。

 

 

「でもなぁ………西城とか千葉も来そうだからなぁ〜」

 

「かなりの割合で来るだろうな」

 

「マジか……まぁ、七草さんじゃない分まだマシか」

 

「八幡さん、言い過ぎですよ?」

 

 

西城と千葉は司波の紹介で出会ったがあのフレンドリーさにはついていけん。

更に、七草家長女のあの人はもっと苦手だ。グイグイくるの対処出来ねぇんだよ、初心者なので。

 

 

「あ、でもさっきの事はアイツらに言うなよ?何気に殆どが権力者一家の人間だし」

 

「………わかりました。ですが何かあったら私たちを頼ってくださいね?」

 

「充分頼りにしている。つーか前の件はありがとな」

 

「問題ない。叔母上も雪ノ下建設はちょこまか動いていて邪魔だったからからかいのネタになったと言っていた」

 

「………あの人も変わってんな」

 

 

前にあったが、四葉さんこえーよ!

てか雪ノ下建設はアレだな。四葉家にとっては虫みたいな存在なのか。権力は怖いね〜

 

 

「それで話は変わるが、比企谷。明日にお前のトリガーの調整をするんだが新しいトリガーの試作を頼めないか」

 

「勿論いいぞ。どんなんだ?」

 

「名前は決めていないが、簡単に言うとトリオン体を元の状態……つまりトリオンの塊に戻す弾丸だ。鉛弾(レッドバレット)と似ているがコントロールが難しい。条件がいくつかあるため知っておきたい」

 

「ふーん。別にいいが俺は使わねぇぞ。相手がシューターなら撃ち落とせばいいし、スナイパーならすぐに落とす」

 

 

これでもオールラウンダーとしてはNo.1の実力だ。

俺のサイドエフェクトと合わせればその分解みたいなトリガーは使わないだろう。

 

 

「流石だな」

 

「トリオン兵を生身で倒せる奴に言われたかねぇよ」

 

「倒したことはないが?」

 

「可能だろ?」

 

 

事実、司波の武術の能力は同じ師匠に教えを受けているが月とスッポン。実力の差が大きい。

おまけにコイツはサイドエフェクトを持っているときた。

 

 

五感超強化

 

 

簡単にいうと五感が研ぎ澄ますことが出来る。第六感を持っているとも表現出来るが、俺の気配察知や十和の空間把握みたいな能力でもある。

この化物は常時、このサイドエフェクトを使っていても脳に負荷がかからない。トリオン体ならまだしも、生身では人類最強クラスだろう。

 

 

「技術を学びにエンジニアしてるが戦闘員になんねぇのか?」

 

「ん?一応、戦闘員だぞ」

 

「…………は?」

 

 

今、コイツ何つった?

 

 

「………すまん、目だけじゃなくて耳まで腐ったかもしれん。だからもう一度プリーズ」

 

「その自虐ネタは笑えんぞ……まぁ、いい。もう一度だったな。俺は一応、戦闘員だ」

 

「………really?」

 

「ああ。()()が付くがな」

 

 

俺はたまに上層部の手伝いで入隊する隊員の名簿を管理しているが司波の名前は見ていないぞ。

べ、べつに俺が仕事してるってのは金が出るからだぞ!

 

………キモイな

 

閑話休題

つまり俺は司波の入隊は何にも知らない。つまり上層部の推薦みたいなものでなったのだろう。臨時つったし。

 

 

「聞いてなかったのか?篠崎には報告したのだが」

 

「隊長の俺にも連絡くれよ……」

 

「比企谷隊に入るのにオペレーターの印だけが必要だったから効率的にことが進むようしただけだ」

 

「それでも、仮に俺の隊に来るなら隊長の俺、に……待て、今なんつった?」

 

「比企谷隊に入るということか?」

 

 

ヤベぇ、頭痛い。

なんで化物が入ってくるんだよ。や、別に問題ないんだが……これで比企谷隊の化物率が安定して百パーセントだな。

 

 

「言っておくが一応、つまり臨時だ。俺が家でもトリガーの開発をするために、戦闘員としてトリガーを持つためだ。ランク戦だったか?ボーダーにいる時にあるなら手伝うが基本、幽霊部員みたいなものだと考えてくれ」

 

「じゃあ、その分解のトリガーはお前が使うのか?」

 

「ああ」

 

 

俺が知らないうちにとんでもない状況になっていた。

 

今回のランク戦は比企谷隊も参加する。

 

前回は俺が由比ヶ浜の犬を助けて入院。

次は十和がパーフェクトオールラウンダーとしての修行。

その次は優菜が留学。

 

かれこれA級最下位になっていたため本気で相手する。

司波がいるなら楽でき……選択肢が増えるから大丈夫だ。

連携も実力が化物だから申し分ない。

 

 

「おっと、すまん比企谷。俺と深雪はこれで失礼する」

 

「わかった。またな司波兄妹」

 

「失礼しました。それでは御機嫌よう」

 

 

店を出た司波兄妹を見送った俺は優菜に事情聴取して家に帰った。




いつもより短くなりましたが本格的に魔法科高校の劣等生のキャラを登場させました。

評価の方もよろしくです!


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比企谷隊の新たな門出である

お気に入り数300突破しました!

これからもよろしくです!


 

八幡side

 

 

「うーし。最初に1体まで減らすぞー」

 

「了解だよ」

 

40体くらいの数のトリオン兵がゲートから溢れるように出てくる。

そんな光景を遠目に、俺は()()に指示をだした。

 

 

「司波も俺と近くまで接近して実験する。十和は遠距離からトリオン兵が逃げないように阻止してくれ。行くぞ司波」

 

「了解した」

 

「頑張ってね〜」

 

 

比企谷隊の隊服である黒の姿をした三人がそれぞれの役割を果たすべく行動に移る。

十和はライトニングを構え、俺達に弾丸が当たらないように、つーかわざとギリギリに横切る弾丸が前のトリオン兵を撃ち抜く姿を見ながら、俺は手にキューブを出現させ、新人の司波は両手に銃を構えてハーゲットに向けた。

 

 

「自転、バイバー」

 

「アステロイド」

 

 

俺は3×3×3に分割したキューブに回転をかけて俺は相手の構造をぶち抜く。

司波は建物の上から飛び降りて落下しながらも、ほんの少しの隙間から弱点を撃ち抜く。トリオン兵が最後の力を振り絞って撃ってきた砲撃も、空中で体を捻って受け流した。

 

人間技じゃねぇよ……

 

トリガー使って本物の怪物になりやがった。

 

 

「うえー。なんであの角度で打ち込めんだよ」

 

「サイドエフェクトで限界まで感覚を上げた。直感に近くなったがな」

 

「全く……十和、実験するから戻ってこい」

 

「戻ってるよー」

 

「うおっ!カメレオン使うなよ」

 

「あはは、ごめんごめん」

 

 

職権乱用して脅かすなよ。

入隊当時に風間さんからカメレオンでボコられたから軽くトラウマなんだよ……

だから俺は人間が突然脅かすタイプのお化け屋敷が苦手なんだ。

べ、別に人間が怖いってわけじゃないぞ!十和じゃあるまい!

 

 

「………なんか馬鹿にされた感じがする」

 

「気のせいだろ。それより司波、早くしろ。優菜は録画しとけよ」

 

『準備できてるよ』

 

「こちらも準備完了だ」

 

 

あらやだ。この隊員みんな優秀だから指示が必要ないなんて!

隊長としての役割は何だろうと一人思考を巡らせようとする俺は頭を振って視線をモールモッドと対峙する司波の方向に向けた。

 

 

「ふぅ………」

 

 

司波は目を瞑りながら銃を静かに前にだす。

トリオン兵は三人の人間の中で一番近くにいた司波が動かないことを確認すると急に司波に向かって走ってくる。生身では追いつかれる速度だ。トリオン体である司波なら逃げる事も避けることも出来るだろうが今は1ミリも動かない。

 

そんな様子の司波を助ける……こともなく、ただ見守っているだけの俺と十和は一瞬を見るべく目ばたきをしないよう注意だけしていた。

 

そしてーーー

 

 

「…………………解体(デモリッション)

 

 

目を開けると同時に呟いた一言

 

その一言が引き金となり銃から放出された見えない波がトリオン兵を包み込み、その目の前のトリオン兵は姿を消す、否、消滅した。

 

大きく溜息を吐いた司波は頭を抑えながらこちらに戻ってくる。

 

 

『おーすげー。必殺技じゃん』

 

「確かに凄いけど、何回使える?」

 

「今は5回が限界だな。トリオンは問題ないが()()()

 

 

十和はやっぱりって顔をしているが優菜は『ん?』と声をだす。

 

『”壊れる”って?』

 

「そのまんまの意味だろ。()()()()()。トリオン体が解除されるんじゃなくて肉体が耐えられない」

『マジ?』

 

「ああ。弾丸ならまだしもトリオン兵だと情報量が多すぎて処理するのに脳の負担が大きい」

 

『うへ〜何か怖い』

 

 

防衛任務前の実験で十和のアステロイドにこの技試した俺が本気で殴られたような痛みを受けたのにそれ以上の苦痛でまだ余裕がある司波の方がこえーよ。

 

解体(デモリッション)

司波が開発したこのトリガーは簡単に説明すると、ターゲットの情報を読み取ってトリオン兵などのトリオンでできた物質を元のトリオンに戻すように解体する。また、その原理はーーーーだそうだが意味わからん。

長いし知らん単語が出てきて俺は司波の話を聞くことをリタイアした。天才は違うらしい。十和も???だった。

 

情報を読み取ると簡単にいうがバイパーを即席で引く以上に頭の中で処理するため俺が試すも無理だった。

 

マッ缶飲んで回復したが。マッ缶すげー

 

 

「慣れてないのもあるがトリオン量、重層などその他諸々を一瞬で把握して解体する周波をだすのは時間がかかるな。射程が短い。改良が必要だな」

 

「……実践で使うつもりかよ」

 

 

なんか将来、トリオンでできた物質じゃなくて本当の物質も解体、いや分解してそうだな。

 

ぼっち独特の独り言を呟く司波の肩に手を置いて帰ってにしろと忠告して、新生比企谷隊初の防衛任務を終えた。

 

 

 

***

 

 

 

「お疲れさん。はいMAXコーヒー」

 

 

作戦室に戻ってきた俺達三人は自然とマッ缶を受け取り一腹する。

司波も甘党という訳ではないが糖分補給に、と飲んでいる。

 

「ありがとう。俺は開発室で改良を「待て待て」」

 

 

どんだけ解体したいんだよ。

作戦室から出ていこうとする司波を抑えてソファーに座らせる。

 

 

「お前が改良バカだってのは後だ後。一応、お前も比企谷隊に入ったんなら他の隊員に紹介しておくぞ」

 

「………改良バカとは余計だがコミュニケーションが大切なのはわかる」

 

「じゃあ皆で歓迎会でもする?司波くん知ってる人って少ないし」

 

「つーか比企谷隊と開発室の人間ぐらいだろ。歓迎会はそうだな、カゲさんの所でいいか?」

 

「影浦隊隊長の名前か」

 

「ああ。家がお好み焼き屋だからな。それでいいか?」

 

「歓迎される側としてこちらは文句は言えない。寧ろありがたいくらいだ」

 

「わかった。メンバーは……」

 

「同じ年のメンバーがいいんじゃないかな?全員は多いし、先輩方はかげ、いや忙しいだろうし」

 

 

今、絶対過激って言おうとしたな。確かに太刀川さんとか過激だもんな。人数多いと止め役の皆が大変だから高二と

 

 

「深雪も一緒でいいだろうか」

 

「勿論だ。俺も小町を連れていくぞ」

 

「じゃあ隊長、連絡宜しくね」

 

「あいあい」

 

 

そして俺はスマホを取り出してLINEを開いた。

 

 

 

 

~ボーダー高二組~

 

比企谷:おーい。今大丈夫か?

 

出水:俺は大丈夫だぜ!

 

三輪:問題ないが比企谷が連絡するのは珍しいな

 

米屋:確かにな!

 

比企谷:うっせぇ

 

出水:w w

 

出水:で?要件はなんだ?

 

比企谷:あぁ、合わせたい奴がいるから今日の夕方空いていないか?

 

奈良坂:俺は大丈夫だ

 

三輪:三輪隊は防衛任務がない

 

三輪:俺もいいぞ

 

出水:太刀川隊もないぜ

 

宇佐美:男子会じゃないよね?

 

比企谷:ああ

 

宇佐美:じゃあ私も空いてるよ〜

 

宇佐美:桐絵ちゃんは出かけているからわからないけど

 

比企谷:わかった

 

那須:私たちは防衛任務があるから

 

熊谷:あたし達は却下で

 

米屋:にしてもハッチが合わせたい人か〜

 

米屋:女か?

 

出水:マジか!?

 

宇佐美:何だと!

 

─比企谷が米屋を退室させました─

 

比企谷:何だって?

 

出水:じ、冗談です

 

宇佐美:私もー

 

比企谷:全く……

 

志神:でも女の子も紹介するよね?

 

篠崎:うんうん

 

出水:やっぱり───

 

比企谷:あん?

 

出水:何もないです

 

比企谷:ならいい

 

比企谷:お前達は言葉に気をつけろよ

 

志神:あはは、ごめんね

 

篠崎:確かに、ハチには遥ちゃんいるもんね〜

 

宇佐美:確かにw

 

那須:そうだね

 

比企谷:おい、何で遥になんだよ

 

比企谷:遥が可哀想だろ

 

出水:俺は何も言えないから誰かツッコんでくれ

 

三輪:俺も遠慮しておく

 

宇佐美:私も〜

 

比企谷:何なんだよお前ら……

 

比企谷:それより、今既読してないのは誰だ?

 

志神:うーん、歌歩さんと綾辻さんと小南さんだね

 

小町:後、小町もですよー!

 

比企谷:……おい、なんでお前が入ってんだ?

 

小町:誘われたんで

 

綾辻:ごめんね、私が誘ったの

 

比企谷:ならいいが……

 

小南:そんなことより比企谷!

 

小南:紹介したいのって深雪のお兄さんでしょ!

 

比企谷:そうだ。よく分かったな

 

三上:私たち、今、深雪ちゃんと一緒なんだ

 

志神:綾辻さんと小町ちゃんもだね

 

小町:はい!

 

比企谷:よかった。じゃあ夕方6時にカゲさんの店に来てくれ

 

出水:それはいいんだけどよ

 

出水:深雪ちゃんって誰だ?その兄も

 

綾辻:ボーダーの女子は知ってるけどボーダーの開発室にいるお兄さんの妹さんだよ

 

三輪:兄は誰だ

 

志神:うーん。東京に住んでる臨時開発者かな?

 

篠崎:そしてハチと同類

 

出水:シスコンか

 

小町:お兄ちゃん……

 

比企谷:おい、確かにアイツはシスコンだが俺は違うぞ

 

小南:あんたはシスコンでしょ!

 

奈良坂:落ち着け

 

奈良坂:比企谷、それだけか?

 

比企谷:無視か……

 

比企谷:そいつは司波達也つって比企谷隊の臨時メンバーだ

 

出水:!?

 

熊谷:それって本当?

 

比企谷:ああ

 

篠崎:臨時だけどね

 

比企谷:詳しい事は後で会って話す

 

比企谷:他に何かないか?

 

出水:米屋は?

 

比企谷:あ、忘れてた

 

出水:www

 

宇佐美:戻してあげたら?

 

比企谷:そうだな

 

─比企谷が米屋を招待しました─

 

米屋:酷いぜハッチ!

 

比企谷:自業自得だ

 

三輪:すまんな、ウチの馬鹿が

 

米屋:秀次!?

 

比企谷:問題ない

 

比企谷:とにかく、来れる奴は6時にカゲさんの店な

 

志神:了解

 

篠崎:あーい

 

三輪:わかった

 

奈良坂:了解だ

 

宇佐美:はいよー

 

小南:私も行くわ!

 

小町:小町も深雪さんと一緒に行くね!

 

綾辻:私もお願いね

 

三上:私も

 

米屋:ハッチと十和の助はイチャつくなよ?

 

出水:写真欲しい!

 

綾辻:米屋くん!?出水くん!?

 

三上:何言ってるの!?

 

出水:おー自覚あるのか!

 

米屋:次はビラにして配r

 

─比企谷が米屋を退室させました─

 

─志神が出水を退室させました─

 

比企谷:三輪、米屋借りるぞ

 

志神:出水くんもね?

 

三輪:馬鹿が迷惑かけて本当にすまん

 

宇佐美:成長しないねあの二人は……

 

小南:全くね!

 

比企谷:そうだな

 

比企谷:じゃあ、6時に集合な

 

小町:お二人は放置!?

 

 

 

 

LINEを画面から消した俺は顔を上げると十和と目が合った。

 

 

「十和」

 

「わかってるよ」

 

「「殺るぞ(よ)」」

 

 

呆れる比企谷隊残り二人を横目に俺と十和は処刑方法を考えるのであった。




短くなりましたがすみません


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比企谷隊の未来は怖い

書き方変えます

久しぶりの投稿でおかしい所があったら教えてください!


「司波達也です。よろしく」

 

「妹の深雪です。私はボーダーにあまり関わりませんがよろしくお願いします」

 

「「…………よぼじく……」」

 

「「「「………………」」」」

 

「……ごみいちゃん、十和さん、やりすぎ」

 

「「むしゃくしゃしてやった。反省していない」」

 

 

ここは影浦隊隊長ことカゲさんの実家だ。

二階をボーダー二年組が集まるべく貸切状態となっている。

時間帯は夕方であるため仕事帰りのサラリーマンの集まりによってバカ騒ぎにも発展するこの場だが、今は葬式なみの静かさだ。

 

────騒がしい三バカのうちの二人は特に

 

 

「アンタたち、そろそろ学習したら?」

 

「「からかうターゲットがいないと……」」

 

「じゃあ僕もストレス発散のサンドバッグ誰かに頼もうかな〜」

 

「「すんませんでした!」」

 

 

ボロボロの状態で床に正座する出水と米屋は十和の笑顔(怒)を見てすぐさま土下座状態に移行する。息ぴったりの二人を見て残念な思いをするのは仕方がない。ここに別客がいなくて本当に良かった。

 

 

「………いつもこれか?」

 

「安心しろ。偶にだ。今日は特に暴れていたが」

 

「あぁー、まぁ日常茶飯事だな」

 

 

達也の呆れを帯びた呟きに隣に座った三輪がカゲさんから一言礼を述べて受け取った烏龍茶を一口飲んで返す。

カゲさんも下手に面倒事に巻き込まれぬよう大人しくしていた。

 

 

「八幡くん、今日は司波くんと深雪ちゃんの紹介でしょ?」

 

「あんまり暴れないでね?」

 

 

誰もが手の施しようがなかった状況を打破した二人を女神だと思っただろう。

怒りがなくなった俺と十和を挟むように遥と三上が隣に座った。いや、小町が「お兄ちゃんたちはそこで反省!」とニコニコ顔で言っていのが原因だが………

お兄ちゃん、小町のその笑顔はすきじゃない…くないな。

 

 

「うへー。お兄ちゃん、ここにきてシスコンはないから……」

 

「ちょっと小町ちゃん。心読まないでくれる?」

 

「顔に出てるよ、顔に」

 

 

俺、そこまでポーカーフェイス下手か?

 

 

「「「「…………」」」」

 

「あ、ハチそこのソースとってー」

 

「了解」

 

 

俺は遥の近くにあるはずのソースを膝立ちして取り優菜に渡す。気が利く遥だが何故か動かないな〜

 

 

「八幡、現実逃避はダメだよ?」

 

「偶に二次元に現実逃避するやつに言われたくないが仕方なくね?」

 

「まー仕方ない、かな?」

 

 

あざとく首を傾げる小町の横にいる三上も声を発しない、いや箸を持ったままある一点に釘づけになっていた。

 

「「…………」」

 

 

前に座る三輪隊の堅物二人の視線が凄い。

いや、あれから何もやってないよ?八幡嘘つかない。

じゃあ三輪たちが俺を睨んでる理由は何だってか?それは

 

 

「どうぞ、お兄様」

 

「ありがとう深雪。深雪はいただかないのか?」

 

「私はお兄様のために……」

 

「深雪も食べなさい。今回は深雪も歓迎されているんだ。ほら」

 

「お、お兄様//じ、自分で食べられますよっ//」

 

「いいから」

 

「お兄様//」

 

 

社会……じゃなくて、目の前でイチャコラしている兄妹が悪い。

 

現状報告だ。

比企谷隊の俺、十和、優菜は何度かこの状況に遭遇したため慣れてセーフ。慣れって怖いね。小町も深雪の惚気を聞き慣れているから問題ない。

堅物二人は興味ないだろう。バカ二人は燃え尽きているためツッコミが不能だ。

 

故に深雪は何故か知っていたがこの兄妹のシスコン、ブラコン度を知らない小南と宇佐美は唖然とし、遥と三上は顔を真っ赤にしてあたふたしている。

 

 

「比企谷……二人って兄妹よね?」

 

「そうだ。これがシスコン、ブラコンだ。俺がこんなことしてるか?違うだろ。だから俺はシスコンじゃない。小町を愛してるだけだ」

 

「うん、それも立派なシスコンだよ?」

 

「うわぁーお兄ちゃん、そのシスコンぶりはないわー」

 

 

やめろ、司波兄妹をみて濁らせた目で俺を見るな。

それは俺のアイディンティティだぞ?

 

………つまり、俺は他人を見るべきじゃないのか

 

 

「…………何故落ち込んだのかは知らないが……比企谷、司波をお前の隊に入れた理由はなんだ?」

 

 

おぉ、流石三輪だ。甘ったるい雰囲気を眼力で潰して話題変えてきやがった。

三輪の一言でトリップ仕掛けた司波妹は顔が赤いものの司波兄のようにこちらをまっすぐ見てきた。

 

 

「まぁ、部隊に入ったことになってるが臨時みたいなもんだ。こいつら東京にいるからこっちに来た時だけ戦闘員。大体は技術者だ」

 

「あの中二よりすごい?」

 

「アレよりすごいよ〜」

 

 

コラコラ。小南、中二はやめなさい。俺もグサって来るものがあるから。そして優菜、お前は酷い。アレ扱いかよ……まぁ、俺も雪ノ下からはこれ扱いだが。

 

 

「新しいトリガーも作ったけど……あれはみんなには無理かな」

 

「改良はしたが脳に負担がな」

 

「どういったものだ?」

 

「分解」

 

「…………マジ?」

 

 

お、最後のマジは米屋か。復活してやがる。

 

しかし、声を出したのは米屋だけだ。あとは全員固まってしまった。唯一、比企谷隊は知っていて驚かないが深雪はお怒りのようだった。

 

 

「お兄様!危険なトリガーの開発はやめてくださいとあれ程……」

 

「……すまない。これからは気をつける」

 

「……わかって下さるのなら良かったです」

 

 

その後、軽く解体についての説明をした。

達也の戦闘能力を含めて。

 

 

「………なぁ、お前、人間か?」

 

「人外扱いか……」

 

「比企谷隊の化物率は変化しないわね、これじゃあ……」

 

 

俺らも人外ってことになってね?

 

 

「でも達也はチームランク戦は無理かー」

 

「戦いたかったがA級一位取られそうだなぁ」

 

「まあ、太刀川さんを二人で相手して出水と合流させないようもう一人が動いてくれたらチャンスはあるよな」

 

「それって唯我くん忘れてない?」

 

「大丈夫だ。戦闘の時は最初に片付けてポイントとる」

 

「……本格的に負けるな」

 

 

荷物(唯我)がついて一位の座を渡さない太刀川隊もすごいんだがな。

まあ、比企谷隊は遠征とか興味ない。ランク戦は全力で行っているが二人だけだしなぁ……

 

 

「やっぱりもう一人増やすべきかな?」

 

「そこん所は後で話すか」

 

「すまんな。俺も事情がなければ正式に入るんだが……」

 

「大丈夫だ。わかっている」

 

 

一息ついて、やっと全員が食事を始めた。

しかし、最近ボーダーでのことばかり考えてんだよなー。忘れていたがボーダー隊員であることは職場についていることでもある。つまり俺は立派な社畜脳なのだった。

認めたくねぇ……

 

 

「八幡くん。変なこと考えないの。はい、これ」

 

「なんでわか……何でもない。サンキューな」

 

 

皆が俺の心を読んでくる説は無限ループなため諦めた。

遥がよそってくれたカゲさん特性のスペシャルお好み焼きをいざ口に……

 

 

「あっ!」

 

「ん?どうした?」

 

「えっと、……あの…そのお箸、私のだった……」

 

「 」

 

 

体温が急上昇した遥の頬は赤く染まり、俯きながら俺がお好み焼きを口に運んだ箸を指す。

壊れた機械のごとく歯ぎしりのような音がでそうな程、体を震わせながら八幡はテーブルをみる。

今、八幡が持っているのは遥が渡した皿にあったもので自分が使っていた箸はちゃんと綺麗に箸置きの上に置いてある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

問題 八幡はどうする!

→土下座

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「申し訳ございませんでしたあああぁぁっ!!」

 

 

先程の米屋と出水による土下座とは違い、腐った目の男の土下座はまるで社畜の道を歩むために生まれ持った才能だった。

 

自らが一番苦しむ体勢、

相手に不快だと思わせないスムーズさ、

崩れることのない完璧な手足の位置。

 

 

テストで0点をとり青だぬきに助けを求める少年がすぐに、いかなる場所でも昼寝に付けるのなら、

 

比企谷八幡は一秒にも満たない時間で、ここが一応店だろうと土下座を決めるのであった。

 

──────────────

 

───────────

 

───────

 

────

 

 

 

 

「だ、大丈夫っ!は、八幡くんならだ、大丈夫だか、ら//」

 

 

何言ってるのこの娘!?

 

 

「は、遥?俺、お前の箸を使ったんだぞ?警察につれて……」

 

「そんな事しないよ!?それに、私が悪かったから八幡くんは謝らなくていいよ」

 

 

うそ、だろ?

中学時代、廊下ですれ違っただけで通報する?って女子がマジトーンで言っていた俺だぞ?犯罪レベルの案件でしょ?

 

 

「遥……俺、刑務所行かなくて本当にいいのか?」

 

「心配しすぎだよ。ちょっと恥ずかしかっただけだから」

 

 

………女神様だ

 

 

「本当にありがとな……今度お詫びになんか奢る。後、箸は新しく貰ってくるからちょっと待ってろ」

 

「あっ」

 

 

俺がか、間接キスした箸を遥からとってカゲさんに新しいのを貰いに行く。幼馴染の優しさに触れて。

 

 

***

 

 

八幡が席を立って厨房に向かう中、遥は名残惜しい気持ちを捨てて視線を前に戻した。

何故、静寂が訪れたのかも理解せずに

 

 

「あれ?皆どうしたの?」

 

「なんでって……」

 

「いや〜、遥お姉ちゃん大胆ですね!」

 

 

遥が全員の目を見ると全員が暖かい目で遥を見ていた。

理由に心当たりがある遥は直ちに赤面してしまう。

 

 

「あぅ〜……や、やっちゃった………」

 

「間接キスは無理でしたけど好感度上がりましたね!」

 

「い、言わないで〜っ!」

 

 

先程の様子を思い出させる小町に対し、遥は顔を手で覆ってしまった。優菜はさらなる追撃を落とすべくニヤニヤとしながら遥の背中をつつく。

 

 

「さり気なーく間接キスをしようとした遥ちゃん、気持ちは?」

 

「もう忘れてー!」

 

 

ポカポカと優菜を叩く遥を見て達也はやっと状況を理解した。

 

司波達也もまた比企谷隊の化物だ。鈍感に決まっている。

 

 

「「八幡は鈍いね(んだな)」」

 

「「「二人は言っちゃダメ(です)!」」」

 

 

比企谷隊は各々個性的だが特徴は似ている。

 

彼らへ想いを告げることが少女たちはできるのだろうか




ひっさしぶりの投稿でした。

司波兄妹が出てくるのは今回はここまでのつもりです。
オチが酷いですが許して下さい……


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千葉村編
比企谷八幡が金に目がないのは間違ってない


二日連続更新………




司波兄妹の歓迎会が終わり数週間が経過した。

 

東京への新幹線に乗る二人を俺、十和、優菜、小町で見送った後、何故か小町が東京行きのチケットを買っていたのは何故だろうか?

本人に確認すると「え?だってあのお兄ちゃんに会いたがっている人がいるって深雪お姉ちゃん言ってたよ?」と首を傾げて人差し指を口元に当てる天使が降臨していた。

あれでおねだりされたら昔、親父が生きていたら速攻で服でもアクセサリーでもほぼないに等しい小遣いで買ってあげたことであろう。

 

まあ、そんなことがあって俺の重要な夏休みの後半は潰れてしまったのだった。

会いたがってる人って誰だよ………七草さんじゃなければいいなぁ………

 

 

 

終業式が終わり、学校の生徒にボーダーでの様子を見せてファンクラブが創立した相棒(十和)はコミュ障を発動しながらも迫ってくる女子生徒の対応をし、ウチの裏のボスであるオペレーター(優菜)は玉狛支部へいって宇佐美の手伝いをしている。

 

え、俺?

俺は現在、ボーダー本部の司令室にて学生のための休みを潰し、書類の整理という名の雑務をこなしていた。

一応、A級部隊の隊長やってるから司令室にはお世話になるハメになる。ぶっちゃけ、木戸司令怖いから来たくないんだが………

 

 

「比企谷、こっちも頼む」

 

「うっす」

 

 

忍田さんの頼みは中々断れん。

忍田本部長は俺が入隊した当時からぼっちな俺を気にしていためっちゃいい人だ。

この人の下なら社畜にならずにすむと思う。超ホワイト会社作れますよ忍田さん!

 

 

「本当に助かった。風間なら大丈夫だろうがこういった仕事は太刀川にさせられないからな」

 

「まぁ、大学のレポートを高校生に頼む程っすからね」

 

「全くだ。ボーダーがなかったら食っていけないぞ」

 

 

あるからボーダーに頼ってるんだけどな。

あの人はボーダー内で師匠の忍田さんを除けばNo.1の実力者だ。しかし、勉強は米屋以上に問題児かもしれない。ボーダーからの推薦なかったらどうなっていたことか………

 

 

「そういえば………比企谷、バイト受ける気はないか?」

 

「バイト……ですか?」

 

「そうだ。といっても小学生の体験学習の付き添いなんだがな」

 

「なんでボーダー隊員を?」

 

「ボーダーのスポンサーがそこの小学校の校長と知り合いでな。ちょうど宣伝にもなるため数名をバイトとして送ることになった」

 

「バイトってことは……」

 

「もちろん、バイト代はだす。2泊3日で一人五万だ」

 

「行きます」

 

 

即答した俺は悪くない。

3日で五万だぞ。小学生の体験学習について行くだけということは仕事も限られている。楽をして稼ぐ……めっちゃ最高やないですか

 

 

「人数は何人までですか?」

 

「十人くらい欲しい。防衛任務と重なるならこちらで合わせよう」

 

「太っ腹っすね」

 

「宣伝も重要な仕事だからな。それで、誰を連れていく」

 

「………妹連れてっていいっすか?」

 

「構わんよ」

 

「ちょっと待ってて下さい」

 

 

そう言って俺は時間を見る。

………任務はこの時間帯に入ってないな。

 

ジーパンのポケットからスマホを取り出していつものLINEグループに連絡を入れる。

 

 

 

 

~ボーダー高二組~

 

八幡:おーい

 

八幡:忍田本部長からバイトに勧誘された

 

八幡:一緒にしないか?

 

三輪:内容は

 

八幡:体験学習に行く小学生の手伝いだ

 

出水:えっ!?

 

米屋:ハッチそれ受けるのか!?

 

八幡:そのつもりだが?

 

小南:あの比企谷がバイト!?

 

十和:それって報酬は?

 

八幡:2泊3日で一人五万だ

 

奈良坂:それが理由か

 

出水:八幡が自主的にバイトするわけないもんな!

 

八幡:うっせ

 

八幡:それで、どうする?

 

優菜:それってオペレーターも可?

 

八幡:大丈夫だ

 

優菜:そんじゃ、私と栞ちゃんと桐絵ちゃんは参加〜

 

十和:僕も

 

出水:俺も槍バカも参加だ

 

米屋:うるせー誰が槍バカだ玉バカ!

 

出水:んだとゴラ!

 

三輪:そこまでにしておけ

 

奈良坂:米屋と出水が行くなら俺たちも行こう

 

十和:ストッパーお願いね

 

米屋:えーストッパーなのー?

 

十和:じゃあ僕が代わる?

 

出水:…………大人しくします

 

那須:そんなに怖いんだ

 

熊谷:私と玲はその日防衛任務があるんだけど

 

八幡:そっちは忍田さんがシフトを変えてくれるらしい

 

小南:随分太っ腹ね

 

八幡:同感だ。だから小町も連れていく

 

遥:許可は?

 

八幡:小町の事だから来るだろ

 

那須:それなら私と熊ちゃんは参加するよ

 

三上:私も

 

遥:皆行くなら私も

 

八幡:じゃあ高二組全員だな

 

八幡:必要なものとかは後で連絡する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スマホの画面を消す。

人数は……14人か。少し多いが大丈夫だろう。

 

 

「すみません、14人ですが大丈夫っすか?」

 

「そのくらいが丁度いい。助かった」

 

 

良かった。

東京行くのは面倒だがこれなら楽しめるな。

 

 

「それと、今回の体験学習はボランティアとして何人か来るらしい。トリガーの保有は許可するが争いごとにならないよう十分注意してくれ」

 

「何処のボランティア活動の人っすか?」

 

「そこまではわからない」

 

「わかりました。といっても争い事にならないメンバーなんで大丈夫だと思いますよ」

 

「それはわかっている。念の為だ」

 

 

書類の山も片付き、コーヒーを左手に、右手で持ったマッ缶を俺に渡して一息つく。

 

ま、ぼっちの俺が他人と無益な争いになることはないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの時の言葉はフラグだったと後に八幡は後悔した。

 

甘いマッ缶を味わう俺の夏休みは間違っていないはずだ




俺ガイルでの千葉村編です。

その後は番外編で東京での八幡となるのでご了承ください


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比企谷八幡の外出は間違っていた

お気に入り増えてて感激です!


みーんみーん

蝉とは楽な存在なのだろうか。残り僅かな命を子孫の繁栄をすべく炎天夏の中で鳴く。

別にその行為が悪いとは言わない。寧ろ自らの使命を全うするその有志は尊敬に値する。故に比企谷八幡は考えた、

 

「小学生の楽しい楽しい体験学習を俺みたいな腐り目が邪魔をしてはいけない。短い夏だ。日曜の朝から始まるアニメの視聴率を少しでもあげるべく家にいた方がいい気がしてきた……」

 

「もう、何言ってるのごみぃちゃんは………そんなことより、早く荷物持って!遅れちゃうよ?」

 

「小町ちゃん?さりげなくお兄ちゃんに荷物を預けるのやめてくれる?」

 

「だってお兄ちゃんボーダー隊員でしょ?それに木崎さんとかとトレーニングしてるから余裕じゃん!」

 

「そうだがなぁ……」

 

 

駄々をこねる八幡だが左右にボストンバッグを二種類持って家の鍵をかけた。

兄としての宿命故、妹の命令は絶対なのだ。

 

 

「はあーーーっ、あっちーなぁ」

 

「もう、お兄ちゃん!これからバイトなんだからしっかり!」

 

「………まぁ、そうだな。五万入るんだ。夜とか肝試ししてみろよ。俺と三輪の目で世界一の怪奇スポットになるぜ?」

 

「そこで三輪さんをいれる?」

 

「だってアイツの目、怖くね?たまに俺も冷や汗でるぞ?」

 

「じゃあお兄ちゃんの目は皆のやる気を腐らせるのかな?」

 

「……………否定できん」

 

「まぁ、お兄ちゃんだからねぇー………およ?あれはもしかして遥お姉ちゃんでは!?」

 

 

夏の暑さ+妹の冷たさという爆発をおこす真逆の現象がぶつかり合い、八幡の目は更に濁る。

そんな兄の様子を見慣れた小町は先の方に見えた人影を凝視し、大声でその人物の名前を呼んだ。

 

 

「おい、やめろ小町。近所迷惑だろ?」

 

「あっ、そうか。ごめんごめん。それよりも遥お姉ちゃん、今日からよろしくお願いします!」

 

「うん、楽しみだね、小町ちゃん」

 

 

小町の声に反応した幼馴染の遥は八幡たちを見かけると歩く足を止め、静かに挨拶をした。

体験学習のための動きやすい服装だが清潔感があり、日除けの大きめの帽子は彼女の魅力をより増していた。そして腕には八幡が渡したブレスレットが付けられていた。

 

 

「遥お姉ちゃんの私服久しぶりにみたなぁ!ね、お兄ちゃんどう思う?」

 

「……………別に」

 

「むー、その回答は望んでないんだけどなぁ。私には可愛いって言ったのに」

 

「あはは……私、あんまりセンスないから」

 

 

そう言って遥は帽子をより深く被った。

 

────そうだろうか?いつも大人っぽい遥だから夏だということで開放感ある服で似合っていると思う。寧ろ綺麗だと思うが」

 

 

「へっ!?……あ、あの…えーっと………//」

 

「おー!それだよお兄ちゃん!小町が求めていたのはそんな感想だよ!」

 

 

────感想?俺は言ったつもりないんだが………あっ

 

 

「………もしかして声に出てたか?」

 

「う、うん……あ、ありがとう、綺麗だって//」

 

「………す、すまん」

 

”やってしまったああぁぁっ!”と心ではそのまま地面に数十メートルの高さからダイブしてゴロゴロと地面に転がりたかった八幡だが必死で顔の赤みを隠す。

 

「いや〜朝からおもし……じゃない、微笑ましい光景を見れて良かったよ!」

 

「いや、今面白いって言おうと「おっと!時間がないし行きましょう!遥お姉ちゃん!」…………お兄ちゃんは無視ですか」

 

「こ、小町ちゃん?わかったからあんまり押さないでね?」

 

 

先に歩いていったmyシスターは遥を連れて先に言ってしまった。

溜息を吐きながらも八幡はその後にしっかりついて行くのだった。

 

 

 

***

 

 

 

集合場所に到着すると一台の大型車が2台止まっていた。人数が人数だ。車が2台は必要だろうと思っていたのだが………

 

 

「に、二宮さん、東さんよろしくお願いします」

 

「…………」

 

「あぁ、行きだけは任務が入っていないから安心してくれ。帰りは別の人がくるかもしれないが」

 

 

それぞれの車の前には不機嫌ではないはずだが静かに目をつぶっている二宮さんと、爽やかなノリで場を悪くしないよう話しかけてくる東さんがいた。

東さんさんはわかる。しかし、二宮さんが来るか普通?

 

ボーダー隊員ではない小町が俺が持ち合わせていないコミュ力を使って東さんと二宮さんに挨拶をしている間、八幡はずっと考え込んでいた。

 

 

「二宮さんが来るなんて意外だったね、八幡君」

 

「あ、ああ。てっきり暇そうな諏訪さんあたりがただ働きで来るかと思ってた」

 

「あ、あはは」

 

 

遥は苦笑いしているが小町の挨拶を返した二宮さんがずっと睨んできて怖いんだよ!ってか誰か他にいないのかよ!?

睨まれてなにかに取りつかれたように動かなくなった八幡の代わりに意図を理解した遥が二人に質問する。

 

 

「他の皆はどうしたんですか?」

 

「ああ、三輪に奈良坂、米屋、出水は来ていないが小南に宇佐美、那須、熊谷、篠崎はコンビニでお菓子を買っている」

 

「最初の四人は米屋の寝坊を起こしに行っている筈だな」

 

「全く、遅いヤツらだ」

 

 

────いや、多分、二宮さんが送るなんて知ってたら1時間前には来ていたと思います。

後でどういう意味なのか問われそうだったため絶対に口に出さない八幡であった。

つまり今後は九人………いや、あと二人聞いていない。

 

 

「すみません、十和と三上は………」

 

「…………アイツらは奥だ」

 

「え、奥ですか?」

 

 

ムスッとして答えた二宮さんが指で指した方向は車によって分からない。遥と一緒に後ろを見ると………

 

 

「あのー、歌歩さん?僕、そろそろコンクリートの上での正座はきついんだけど……」

 

「じゃあなんでさっき同じクラスの女の子から話しかけられてデレデレしていたの?」

 

「い、いや、その子とはオタ友で頼んでいた限定のフィギュアを高めの値段だけど売ってくれるって………あっ」

 

「ふーん、またフィギュア買うんだ」

 

「ま、まだ買ってない!フィギュアは買わないから!」

 

「別に私は十和君がフィギュアをいくつ持っていたってもいいと思うよ?」

 

「目、目のハイライトが………」

 

 

 

 

 

 

──────スッ

 

 

無言で修羅場をみた八幡は静かにその様子を車で見えなくした。

 

 

「………なんだか夫の隠していた他の女性の名刺を妻が見つけて事実確認をしている現場にしか見えなかった……」

 

「………奇遇だな、俺もだ」

 

何故、三上が十和のフィギュアの所持を許さないのかというと以前、コミュ障の十和が大量に買わされたフィギュアの山が部屋に散乱していたのを見て激怒したかららしい。

多少のフィギュアに対する嫉妬もあるだろうが好意を向けている相手が騙されて買わされた物をまだ集めようとすることに反対なのだろう。

 

「ふぁ〜、ハッチおはー……って、二宮さん!?」

 

「………遅い。米屋、寝坊か?」

 

「す、すみませんしたァっ!!」

 

「………気をつけろ」

 

 

十和を哀れに思っていると横から一人のうるさい声と一人の殺気が伝わった。寝癖がついた状態の米屋が九十度腰を曲げて謝り、残り三人と女子組も合流したようだった。

 

 

「あ、皆さん、今日は小町も一緒によろしくお願いします!」

 

「おう!楽しみだな!」

 

「宜しくね、小町ちゃん」

 

「よろしく」

 

 

出水、那須、熊谷と小町は全員に挨拶をし終えるとこちらに近づいてきた。

 

 

「お兄ちゃん、十和さんと歌歩さんはどうしよう?」

 

「大丈夫でしょ、トワがどうせ機嫌とるから」

 

「同感だ」

 

 

俺の代わりに答えた優菜に頷く。

三上の怒りがピークだったようだし、もうすぐ顔を真っ赤にした三上が戻ってくるだろう。

 

「ご、ごめんなさい。遅れました//」

 

「ほ、本当に怒ってない?顔まだ赤いけど………」

 

 

ほらな、どうせ十和に無意識にされた行為が恥ずかしくて許したのだろう。

勘違いをしているだろう十和は顔を青くしていたが三上は若干嬉しそうである。

 

 

「…………ったく、リア充め」

 

「「「「「「比企谷(くん)が言うな(わない)!」」」」」」

 

 

何故かぼっち特有の独り言に十和と三上、遥、二宮さん、東さんを除いた全員からダメ出しをくらった。

 

どういう意味だよ、解せぬ。

 

 

 

***

 

 

 

目的地である千葉村まで数時間の道のりだった。

 

俺は窓際で遥の隣に座っていた。朝からの疲れで寝てしまった俺を遥が起こしたのだが

 

 

「おい十和、なにやってんの?」

 

「え?アニメ鑑賞だけど?マンガ原作の」

 

「あ、際ですか………」

 

 

 

俺が乗っていた車には比企谷隊に那須隊の二人、そして遥と奈良坂と静かなメンバーだった。静かだと思っていたが十和はスマホにイヤホンをつけて片方を自分に、そしてもう片方は三上がつけていた。

真剣にアニメを鑑賞なされていた。

 

 

「仲直り早すぎだろ………」

 

「………でも、なんで志神君は歌歩ちゃんのことをさん付けで呼ぶのかな?」

 

「ああ、それは………」

 

 

俺の言葉を遮るかのように一台の車が同じ駐車場に停められた。

普通の車だ。しかし、八幡の動体視力は一番会いたくない人を見つけてしまった。

 

 

「…………最悪だ」

 

「どうしたの?八幡君?」

 

 

遥が心配してくれるが問題ない。寧ろ問題なのはその車から出てくる俺がよく知る人達だ。

 

 

「あら、にげが谷くんじゃない」

 

「ヒッキー!?」

 

 

冷たい目でこちらを見る雪ノ下とただ純粋に驚く由比ヶ浜を見て八幡は気づかれないように溜息を吐いたのだった。

 

 

 

 



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ボーダー組は現状を良しとしない

完璧なアンチ作品です。

前々からお知らせしているように原作を大切にしている人は見ないことをオススメします。

しかし!個人的にいろはすは好きなのでどうすればいいでしょうか?意見お願いします!


広大な自然が広がる千葉村、そこに新たに入ってきた車から出てきた雪ノ下と由比ヶ浜は俺を見つけると過剰に反応した。

 

 

「ヒッキー、なんでいるの?」

 

「あ?ボーダーでのバイトだが?」

 

「バイトってことは給料あるの?」

 

「2泊3日で五万」

 

「え!?多っ!」

 

 

すぐさま由比ヶ浜がこちらに走ってきて話し始めるが俺とて、あまりコイツらと話したくない。

 

 

「あら、金がや君はそんなにお金が欲しいのかしら?」

 

「ウチは両親がいないんでな。どこかのお嬢様と違って働かなきゃならねぇんだよ。それにこれはボーダーの依頼だ。仕事してんだよこっちは」

 

「そうだ。だから雪ノ下。出発前に確認したようにボーダーの皆に迷惑をかけないよう心構えてくれ」

 

「…………平塚先生」

 

「先生が同伴だったんすか」

 

「奉仕部の顧問としてな」

 

 

いつもの白衣にタバコをくわえた平塚先生はクールに佇んでいた。その様にあった姿に相変わらずモテそうだと思った。女性に。

 

平塚先生の登場で虫が悪い雪ノ下は由比ヶ浜を連れて離れていく。一瞬、睨まれたがもう今日は二宮さんに睨まれているため効果は薄い。二宮さんの睨み舐めるなよ!

…………これ以上考えるのはやめよう、少し離れたところから強い視線と殺気を感じる。

 

 

「い、意外っすね。先生なら俺を無理にでも奉仕部としてボランティア活動させようと思ったんですが」

 

「君は自分で言った約束を忘れたのかね?」

 

「いや、覚えてますが………」

 

「安心しろ。私も教師だ。生徒との約束は守る」

 

 

やべぇ、先生イケメンだ。

でもなぁ、男より男っぽいからやっぱりモテないだろうな。だから婚期逃して………

 

メキっ!

 

「何か言いたいことがあるのか?比企谷」

 

「な、何もないっす………」

 

 

何故、バレたし!

平塚先生は俺の肩に手をおいて優しい笑顔で尋ねてくる。目は優しくなかったが。

また口にしたのか?………いや、先生が敏感なだけだな、これは

 

平塚先生は引率故に東さんと二宮さんの所へ向かい挨拶をしている。先生なら二宮さん相手でも大丈夫か。すると車の中からもう一つの人影が現れた。

 

 

「あ!八幡も来てたんだ!」

 

「戸塚!」

 

俺の存在に気づいて走ってきて来たのは天使、もとい戸塚だ。夏なので少し暑いからだろう、首筋に浮かぶ汗とカジュアルで涼しい服装から目を離せないな!

 

 

「……………八幡君?」

 

「な、何でしょうか?」

 

 

隣の遥の目のハイライトが先程の三上に似ている。戸塚から目を離して顔を近づけてくる遥から逃げようとする。

ヤバい、近い近いいい匂い!

 

 

「八幡と綾辻さんって仲いいね」

 

「まあ、幼馴染だしな」

 

「そんなんだ、知らなかったよ」

 

「学校は一人でいたいって八幡君が言うからあんまり教えてないんだ」

 

 

今思うと遥は幼馴染ってだけでよく俺に構ってくれる。何故だろうか?

あ、幼馴染と言えば…………

 

 

「ねえ八幡。志神くんと三上さんは……恋人?」

 

「いや、まだ恋人じゃなくて幼馴染のまま……だよな?」

 

「うーん、私もあの様子見たらわからないな」

 

 

よく見ると他のボーダー組も十和と三上を見て呆れていた。

車から降りてすぐの場所に一人座るスペースがあり、そこに十和が座りその上に三上が座ってスマホの画面を集中してみている。

どんだけアニメ好きだよ。あ、三上はマンガか

 

平塚先生が一人血の涙を流している中、もう一台の車が入ってきた。

 

 

「やあ、ヒキタニ君」

 

そこにはいつもより優れない笑顔をする葉山、睨みつける三浦、「っべー!山の中とかべーわー!」と謎の言語を作っている戸部、そして普通にしている海老名さんがいた。

 

 

「………金に目が眩んだ罰かなんかだな、うん」

 

「あ、あはは……」

 

 

俺と葉山グルーブの状態を知っている遥は苦笑い。ボーダー組も職場体験のことを知っているためいい顔をしない。やめろ三輪、睨みつけるな。怖いから。

 

 

「んー!面白かった!アニメ版も良かったけど原作の方が良かったかな」

 

「そうなの?じゃあ僕も買おっかなぁ」

 

「あ、じゃあ私も行くよ。アニメ化決定したオススメ教えてあげる!」

 

「流石歌歩さん、わかっているね!…………で、この雰囲気は何?」

 

 

ちゃっかりデートの約束をしている三上にほっこりして俺らは小学生が待機する部屋に向かった。

 

 

***

 

 

「………はい、皆さんが静かになるまで三分かかりました」

 

 

東さんと二宮さんにお礼を言った後、俺らが部屋に入ると多くの小学生がザワザワと話していた。

高校生の登場のせいでもあるが普段と違った場所であることに興奮気味の小学生は元気なことだ。

俺なんか小学生の時、めっちゃ静かに行動してたぞ?え、友達がいないから?ほっとけ

 

引率の先生が小学生を注意すると、軽く今回の体験学習の説明をする。それが終わると俺たちの紹介だ。

 

 

「それではこれから三日間皆さんの手伝いをしてくれるボランティアのお兄さんとボーダーの人に挨拶をしてもらうから……ではお願します」

 

「初めまして。高校二年生の葉山隼人です。皆さん気軽に声を掛けてください。3日間と短い間ですが、仲良くしてください」

 

 

雪ノ下たちは前に出ない。故に葉山が率先して挨拶をした。まあ、妥当な判断だろう。小学生の女子が葉山の挨拶にキャーキャー言っている。

ふと、隣から服を引かれた。横にいるのは小南だよな。ってか、何気に近い気がするんだが……

 

 

「なんだ?」

 

「ねえ、葉山?だっけ。彼、准に似てない?なんか准の方が凄そうだけど」

 

「確かにな。劣化嵐山さんだと覚えとけ」

 

 

嵐山さんは葉山のようなクズではない。寧ろ輝きすぎている。

小南が声を抑えて笑っていると反対側から少し不機嫌な遥がいた。なんで不機嫌?

 

「八幡君、ボーダーの挨拶あるけど誰が言う?」

 

「ああ、そうだったな………十和、やれ」

 

「ええー、僕、コミュ障だよ?」

 

「マスクしてないから大丈夫なんだろ?」

 

「ぐっ……でもここは隊長の八幡が」

 

「………………比企谷隊の隊室にあるフィ「よし!僕頑張るよ」」

 

 

そう言うと十和は自己紹介を始めた。

 

 

「こんにちは。ボーダーに所属している比企谷隊の志神十和です。僕達も気軽に接してください。ボーダーについての質問も可能な限り答えますから」

 

 

流石メガネイケメン。大切な物を失いたくない十和はコミュ障を発揮せずに切り抜けた。

 

 

「…………優菜ちゃん、今度そっちにお邪魔していい?」

 

「いいよ〜、寧ろ場所、教えよっか?」

 

「ありがとう。探す時間がお説教にできるよ」

 

 

物凄く目が怖い幼馴染と簡単に仲間を裏切ったオペレーターに絶望している十和は葉山の時と同様、小学生がはしゃいでいることより三上の威圧に冷や汗をかいている。

ご愁傷様です。

すると横から遥に話しかけられた。

 

 

「それで、さっき桐絵ちゃんにニヤニヤしていた理由は?」

 

おぅ、俺も冷や汗が出てきたぜ……何にも悪いことしてない、よな?

 

 

 

***

 

 

『君たちはオリエンテーションの手伝いをしたまえ』

 

平塚先生の指示をうけ、何人かにわかれて山を登る。

 

 

「こうして小学生達と関わるなんて高校入って初めてかもな。みんな若く、いやこの場合幼いっていうのかな」

 

「ちょーやめてよ隼人。あーしらが老けてるみたいじゃん」

 

 

別に老けてるとはいってないだろ。そして三浦、変わらないなお前。そしてなんでもいいから静かにしてくれると八幡的にポイント高い!おっと、キモいな。

 

 

「でも僕が小学生の頃は高校生ってすごく大人に見えたなー」

 

「小町からみても高校生って大人ーって感じしますよ!………兄を除いて」

 

「おい、俺超大人っぽいだろ。常に金を効率よく稼ぐことばっか考えてるんだから」

 

「比企谷の大人のイメージ荒みすぎよ……」

 

 

いや熊谷、大人なんてそんなもんだ。みんな金欲しいんだよ。そして何気に俺は社畜になっている。うん、昔の両親だな。つまり俺、大人。

 

 

「ねぇ、あの子達は何をしてるのかしら」

 

 

雪ノ下の視線の先には、小学生数名がなんか溜まってる。

 

 

「ちょっと見てくる」

 

 

葉山は走って小学生達に向かった。そこで雪ノ下が溜息を吐いた。

 

 

「お兄さん!チェックポイントってどこにあるの?」

 

「うーん何処だろう」

 

「じゃあお兄さん手伝ってよ!」

 

「仕方ないな、ここだけ手伝うけど皆には秘密な」

 

 

さすがリア充。コミュ力ありまくりだな。十和も見習えよ。えっ?俺も?安心しろ、そもそも人と関わるのがボーダー以外いないから。

 

と、そこで一つおかしなことに気づいた。基本このオリエンテーリングは5人一組の班で行動する。しかし葉山を囲んでいる小学生は四人。もう一人は、少し離れてデジカメを握っていた。

 

すると葉山がそのぼっち気味になってる小学生に声をかけ、グループのメンバーの方に連れて行く。そしてその小学生がそのグループに戻った途端、ほんの一瞬だけグループの空気が静かとなった。そしてその一瞬が過ぎ去ると他の四人は何事も無かったように会話を続けながら歩いていく。その一人を除いて。

 

 

「あまりいい手には思えないが」

 

「全くだ。……しかし、小学生にもああいうのやっぱあるんだな」

 

「小学生も高校生も関係ないだろ。迅さんと三輪を見ろよ。仲がいい二人想像出来るか?」

 

「「「「「無理だな(ね)(かな)」」」」」

 

 

ユニゾンでボーダー組は即答した。

俺も同意見だが三輪もその事はよく理解しているのだろう。

 

俺も小学生の頃は同じような体験をした。だが俺の考えとは違う考えをあの小学生は持っているかもしれない。

 

故に比企谷八幡は動かない。何もしないことが一番の改善策なのだから

 

 




ハーメルンにも投稿しましたが小説家になろうでも新しいオリジナル作品を書きました!

「イフな異世界を求めない理由」

https://ncode.syosetu.com/n4633ep/

是非読んでください!


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甘々な雰囲気は無意識で

お気に入り500超えてました!

別の作品ではこう上手くいかないんですがね…………
時間があるなら読んでください、お願いします


小学生がワイワイしながらチェックポイントを回っている中、高校生組はバイトとボランティアの仕事である自炊のための準備をしていた。

 

 

「では料理ができるものとできないものに別れてくれ!その後指示を出す」

 

 

男気溢れる平塚先生の指示に従い、俺、遥、小町、優菜、三上、那須、熊谷、宇佐美、三輪、奈良坂、雪ノ下、由比ヶ浜が料理できる組に。十和、出水、米屋、小南、戸塚、葉山グループができないと答えた。

 

ーーーあ?由比ヶ浜って料理できたっけ?

 

 

「由比ヶ浜さん。あなた料理できるのかしら?」

 

「任せて!ちゃんと勉強してきたから!」

 

 

物凄い不安だが俺の責任じゃない。

向こうもだが極力関わらないようにしよう。

 

 

 

仕事の内容は帰ってきた小学生のための梨を切ることらしい。ダンボールに箱詰めされているいくつもの梨を洗って切るという簡単な作業なのだが………

 

ざくざく、ぎしゅ。

 

 

「由比ヶ浜さん。皮むきの持ち方が違うわ」

 

「なんで〜!?ママのをみて勉強したのに!?」

 

 

見ただけかよ!

この調子だったら夕飯は料理できない組にシフトチェンジさせよう。下手したら明日の自由時間が山奥のトイレで過ごすことになりそうだ。

 

奉仕部としてきていない俺は遥の横でスルスルと皮を剥いていく。

 

 

「わ、皮むき上手だね八幡君」

 

「まぁな。家でも何度も作るし専業主夫志望としては当たり前だ」

 

「こらハチ!専業主夫は諦めろといったでしょ!」

 

「フッ!俺が専業主夫志望を諦めるのはこの性格か目が綺麗になる時だけだぞ?」

 

「くっ………じゃあ無理なのか……!」

 

 

これを優菜に言うのは何度目だろうかと思いながらも、わざとらしく悔しげな顔をして遥の肩にぽんっと手を置いた。優菜の対応に遥は苦笑いで返した。

なんだ、女子同士でアイコンタクトできるのか?

 

仕事に戻ろうとすると切った梨を置く皿が不足しているのに気づき、料理できる組の手伝いをしている料理できない組のボーダー組である十和を探すと奥の方にいるのが見えた。

 

 

「おーい。十和、皿のじゅ「八幡ごめん!別の人に頼んで!」んびを……何やってんの?」

 

 

見ると十和はダンボールを抱え込んできたあとすぐに皿の準備をして、梨の盛り付けをすると指定された場所に運んでとしっかり働いているのだが……

 

 

「か、歌歩ちゃん。前より料理の腕上がってるね」

 

「あ、あははは。十和くんの料理を作っていたら慣れちゃって」

 

 

宇佐美の質問に答えながらもその手にはしっかり包丁が握られていた。

 

 

「家事ができないトワの代わりに歌歩ちゃんがやって雑務を押し付ける………尻に敷かれるな、トワは」

 

「今も完全に敷かれているじゃない」

 

 

小南の意見に全員賛成なため誰もが十和を暖かい目で見守る。

もう結婚しろよお前ら。三上が通い妻そのものだ。

 

その後は三輪と奈良坂の二人を習って多少、静かになった。

 

 

「そういえばハッチ」

 

「なんだ米屋。仕事が飽きたなら小学生に混ざってきたらどうだ。違和感無いからサボれるぜ?」

 

「おい!それは俺の精神年齢が低いって言いたいのか!」

 

「いや、どっちかっていうと学力的な問題だろ」

 

「出水に同感」

 

「………否定できん」

 

 

否定して欲しかったチームメイトの三輪と奈良坂は大きなため息を吐いた。

苦労してんだな。バカがチームにいると。

 

 

「夏の課題は早く終わらせろよ。去年みたいにほかの隊員に手伝ってもらおうと思わないことだ」

 

「なんだよ秀次〜。俺が一人で課題終わらせられないって知ってるだろ?」

 

「はあーっ。太刀川さんみたいになるなよ」

 

 

三輪も太刀川さんに容赦ねぇなと思いつつも梨を一つ掴み、捌いていく。

三輪と米屋は平塚先生に呼ばれ持ち場を移動する。

 

 

「んで、要件はなんだ」

 

「おう、そうだった。今度ランク戦しようって誘ってきたろ?なんかあるのかなって思っただけだ」

 

「まぁな。上手くいったら攻撃手がめちゃくちゃ嫌がるような方法でな。トリオンのコントロールが難しすぎるから練習に手伝ってもらおうと思って」

 

「あー八幡は手先器用だからな」

 

「だからって前みたいに超防御型トリガーとかいって大量のトリオンつぎ込んだシールドをぶつけるつもりが自分でぶつかったみたいになるなよ」

 

「お前それは内緒だって痛って!」

 

 

米屋による黒歴史暴露によって慎重に扱っていた筈の包丁で指を切ったようだった。

 

 

「八幡君大丈夫!?」

 

「あぁ、遥か。スマンが絆創膏持ってないか?」

 

「ごめん、今は持っていなくて。何か止血するものは………あっ、そうだ。ちょっと怪我見せて」

 

 

横にいた遥が切傷であるが過剰に反応する。

この状態での料理はまずいので絆創膏を貰うつもりだったが何故か怪我を見せろと言った。

何する気だ?と恐る恐る左手の人差し指を差し出すと、

 

 

「じゃあ………はむっ!」

 

「!?は、遥?何やってんだお前?」

 

 

両手で俺の左手を掴むと怪我した指を遥自身の口の中にパクッと加えた。

なにやってんの?え、マジでなにやってんの!?

 

 

「………ん、ちゅ……んむ、ちゅんんっ、…んはぁむ……」

 

 

目を閉じろ、耳を傾けるな。なんかエロいぞこの状況!

いかん、理性を保て。煩悩摘出煩悩摘出煩悩摘出!

 

 

「………ん、ふぁっ。終わったよ」

 

「……………何が終わったよ、だ。なにやってんの?」

 

「え?子供のとき八幡君が怪我した時にやったなぁって思い出して」

 

「………昔じゃないんだ。周り見ろ」

 

「えっ?…………あっ//」

 

 

そこにはニヤニヤしながらこちらを見ている米屋に出水、小町、優菜、小南、宇佐美と暖かい目で見ている十和と三上。そして汚物を見る目で見ている雪ノ下に何故か怒っている様子の由比ヶ浜がいた。

 

 

「いや〜なるねぇ遥ちゃん!」

 

「ナイスです遥お姉ちゃん!」

 

「あ、ち、違うの!これは!その……あうぅ//」

 

 

顔を真っ赤にしてうずくまった遥を見て冷静さを取り戻した俺は話しかけて来ようとしたバカ二人に今までにない睨みを行いそっとその場を後にした。

 

 

「……………指、どうしよう」

 

 

ほんのり温かさをまだ感じる人差し指をどうすればいいか必死に考える八幡であった。

 

 

 



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比企谷八幡は応援したい

ひっさしぶりの投稿です!

別の作品に忙しすぎました………是非そちらの方も読んでくださいね!


遥の暴走?によりボーダー組からニヤニヤされつつの作業となったが無事に終わって今はカレー作りだ。

それで、あー、うん。空気が重たい。

 

葉山グループはもう解放状態で葉山と三浦が主に二人で行動し、海老名さんは由比ヶ浜たちと、戸部は米屋とバカ騒ぎだ。

 

………最初の二人は以前の罰として、後者の二人が来る理由がわからなかったが二人のボランティアが決まった時に戸部のノリで海老名さんを誘ったらしい。

 

お前、案外良い奴なのな………

 

しかし似たもの同士仲が良い。すっかり戸部が米屋たちと意気投合していた。三輪隊入るか?三輪と奈良坂の疲労姿が目に浮かぶ。

 

 

「………あっちぃ」

 

 

いや、今は汗しか流れない。小学生の代わりに火を付けているが中々上手くできたと思ったらこの熱さだ。

 

 

「おっ、比企谷は上手いな」

 

「そう言う先生も手慣れてますね」

 

「まぁ、昔、登山部だったからキャンプはお手の物だ。その時は周りのカップルを無視して必死に火を見てたからな………気分が悪くなってきた。準備が終わった者は男子は付けた火の調整、女子は食材を切るんだ!」

 

 

腹いせなのが丸わかりの指令だな。

残念ながらついた火は火事になるほどの爆発はおこらないから泣く泣く友人の結婚式に行くのだろう。誰かマジで貰ってやれよ!

 

 

「ヒキタニ君交代するよ」

 

「………そうか、じゃあ頼むわ」

 

 

以前のスマイルよりやつれた感のある笑顔で交代を促す葉山に任せて俺はその場をあとにした。

煙が目に入って痛い。

 

 

「流石はやと〜どこかの誰かとは違うね〜」

 

 

おいおい退学の危機がある縦巻きロールさん、まだ俺に怒りでもあんの?

相変わらずの様子にため息を吐いて目をこすっていると後から人の気配がした。

 

 

「あ、八幡君。その……これ//」

 

「ん?ああ手拭きか。すまん、助かった」

 

 

指を舐めたことをまだ気にしているのか顔を真っ赤にしている遥がそっと手拭きを渡す。俺?ポーカーフェイスですよ。内心は叫びたがってる。

 

 

「さ、さっきはごめんね?その……慌ててつい」

 

「いや、わざわざすまんな。でも高校生でもうやめろよ?幼馴染だからってガードが甘くないか?」

 

「………八幡君にとって私って何?」

 

「………いきなりなんだ?……昔からの付き合いの幼馴染だろ?」

 

「………やっぱりそうだよね……でもね、八幡君」

 

 

すると遥は真っ直ぐ目を見て話しかけた。

 

 

「ただの幼馴染だったら私、あんなことしないよ?」

 

 

俺の腐った目とは真逆の透き通った目は嘘偽りのない言葉だと俺に訴えたような気がした。

 

 

「…………まさか、なんてないよな」

 

 

尻に敷かれている十和と指示を出す三上を見て考え至った内容を脳から綺麗に消しとった。

 

遥が俺に好意を向けている。

 

そんなわけはない。

 

 

***

 

 

仕事がなくなったため「俺、働いてますよ」アピールをするべくうろちょろと動き回る。

そしてちゃんとぶつからないように細心の注意を払うのも忘れない。ぶつかった小学生に「何この腐った高校生?」とか言われたら明日の一日を山奥のトイレで過ごす自信がある。

 

絡まれないよう、人に迷惑をかけないよう進むその技術はボーダーで更に回避率が上がったため、最悪のエンディングは迎えていない。

 

 

「ありゃ、みごとにサボってるねハチくん」

 

「しかも無駄に避けてるし」

 

「無駄にってなんだよ……ぼっちスキル舐めんなよ?視線に敏感だからたまにサイドエフェクト使わなくてもスナイパーの居場所特定できるし、バックワーム使わなくても気付かれずに接近出来るぞ」

 

「………嘘じゃなさそうなのが可哀想」

 

「え?あの小南が信じた?」

 

「じゃあ嘘なの?」

 

「…………ほんとです」

 

 

マジでなんなの?前者はサイドエフェクトの効果で自分を誤魔化せるが後者は目から汗が出たぞ緑川。オペレーターなしの個人戦だったからでもあるがそんなに心理戦で俺の精神をボロボロにして倒す気か。

あ、あいつ米屋たちと同類だから自然体か。余計タチ悪いが。

 

 

「それにしてもさっきは面白かったよ〜。あそこまで想われてるなんてやるねハチくん!」

 

「………うっせ」

 

「いいじゃない。あたしは遥ちゃんと比企谷はお似合いだと思うわよ」

 

「煩いぞ自分の勘が全く当たらない小南さん。アイスの当たり棒をゲットするとか言って全く当たらずに何本も買って腹壊したやつの勘は信じられん」

 

「なんであんたが知ってんのよ!」

 

「鳥丸から聞いた」

 

「とりまるぅっ!」

 

 

前に遥との写真を暴露されてからの腹いせのための個人戦の代わりに使えそうなネタを教えて貰った。主に小南の騙された話しかなかったが騙される小南が悪い。

 

 

「まぁ、でも私も二人はお似合いだと思うぞ?」

 

「はぁ……俺みたいな奴と遥が釣り合う訳ねぇだろ?この腐り目だぞ?俺の性格が相棒な目だぞ?」

 

「それじゃあその性格は治らないのね」

 

「………それは俺の目が治らないとディスってんだな?」

 

小南にゾンビの目を向けていると宇佐美がいつの間にかどこかへ行ってるのに気がついた。いや、その時にはどこからか帰ってきた宇佐美がいた。手にメガネを持って。

 

 

「ハチくんよ。これをかけてみなさい」

 

「なんだこのメガネ?」

 

「私の配布用のメガネ。度は入ってないから安心だぜ!」

 

「金の無駄じゃね?」

 

「いやーボーダー入ってるとお金入るじゃん?だけど使い道がないから配布用買ってメガネ人口増やすのが最近の趣味!」

 

 

贅沢だなとツッコミながらメガネをかける。

うん、十和のメガネイケメンとは違うな。ただ目の濁りが隠れたぐらいだ。はっ!

 

 

「ふふ。気づいたかいハチくん。君のその目、私が除去した!」

 

「いや、治ってねーから」

 

「でもそっちの方がいいわよ………性格はともかく」

 

 

お前の騙される性格よりましだとは言えない。言ったら小学生の前でヘッドロック確定だ。ボーダーはヘッドロックする人が多すぎる。

広めすぎですよ荒船さん………

 

 

「実はね、ハチくん。さっきの写真が私のスマホに保存されているのだよ」

 

「…………俺に何を要求する」

 

「ばらされたくなかったらキャンプの間はこれ付けててね?あげるから」

 

「は?」

 

 

あまりの簡単な命令に思わず変な声が出てしまった。自然とポケットに詰めていた財布を取り出そうとした俺の忌々しい右手に封印をしながら再度確認した。

 

 

「ほんとにそれで写真消すか?」

 

「もちだよ!いやー頬を赤らめる遥ちゃんが想像できるね〜」

 

「何言ってんだ?」

 

 

意味のわからない答えに疑問を持ちながら人の少ない場所に移動する。教師も今はいないから説教はないだろう。

 

 

しばらく一人でほうけていると俺のサイドエフェクトが発動した。

 

 

「何してる。隠れてないで出てきたらどうだ」

 

「あら、どうして私がいるのがわかったのかしら?まさかストーカー?こんな山奥だし警察を呼んだ方がいいわね」

 

「そうすればいいだろ。勝手にストーカーだと押し付けたってわかるとさぞ迷惑がかかるだろうな、お前の家に」

 

「………弱みを握ったつもりかしら」

 

 

恨めしい思いを孕んだその視線により隠れてもわかった俺は無視してほうけるのをやめない。

無意味な罵倒を返すよりぼーっとした方がいい。

 

すると小学生にキャーキャー言われていた葉山が一人の少女に話しかける光景が見て取れた。

 

 

「君は確か留美ちゃんだね。カレー、好き?」

 

「…………別に、どっちでもない」

 

 

見ていて分かっていたが彼女も俺と同類だ。

しかしいい判断だ。ここで好きと答えたら葉山に対して媚を売ったと言われ、逆に嫌いと答えると何様かと言われる。

 

何故か空気を無理に読もうとした由比ヶ浜だったが馬鹿丸出しだった。

 

 

「子供か」

 

「ほんっと、みんな子供みたい」

 

「ん?いたのか」

 

 

横を見ると先程の小学生がひっそりと木に寄りかかっていた。

ここはぼっちの先輩として言っておくか。

 

 

「でも、まぁ、おまえはよかったな。遅かれ早かれ人の闇をいずれは知るんだ。早めにわかれば対策ができる」

 

「………名前」

 

「あ?」

 

「名前なにか聞いてるでしょ?わからない?」

 

「あら?そんなの自分から名乗るのが先よ」

 

 

まだ居たのね雪ノ下さん。ってかお前に自己紹介は必要じゃないと思うぞ。すぐに間違えるし。

 

 

「…………鶴見留美」

 

「比企谷八幡だ。鶴見。残念ながらさっきこのねーちゃんが言ったことは本当だ。年上相手には対応を気をつけとけ」

 

「あら、随分と私を見下すのね。それにあなたに会話で対応する程の人物なんているのかしら?」

 

「言っとくけどブーメランだからな。それに俺はボーダーで顔がしれてるって知ってるだろ」

 

 

苦い顔をしてどこかへ移動した雪ノ下を見てため息を吐くも、鶴見はある一部に耳を傾けていた。

 

 

「八幡ってボーダーの人なの?」

 

「いきなり名前で呼び捨てかよ……まぁ、いいが。そうだ。最初の自己紹介したメガネをしたイケメンの兄ちゃんの部隊の隊長だ」

 

「……八幡もメガネでそこそこいいと思うけど?」

 

「あぁ、こりゃ罰ゲームみたいなもんだ。それよりボーダーに興味あるのか?」

 

 

するとこくりと頷いた。やはりボーダーは小学生にとっては憧れだろう。しかし小学生での入隊は弟子の双葉みたいに才能ないと難しいが、…………こいつの状況の打破のためなら使えるな。

 

 

「………なぁ鶴見。よかったらボーダーの試験受けてみないか?」

 

「私が?」

 

「そうだ。別に小学生だからってのは考えない方がいいぞ。小学生でA級になったやつが俺の弟子でいるから」

 

「…………八幡って凄い人?」

 

「別に凄かねぇよ。ただこれでもA級部隊隊長だから顔が広いんだよ。ぼっちだが」

 

「なにそれ」

 

 

ようやく笑った鶴見を見ながらその笑顔が曇ったのを見逃さなかった。

 

 

「でも……私がもしボーダーに入ったら、気に食わないって」

 

「そんなやつはねじ伏せればいい。俺だってボーダーで鍛えてもらったからお前に話しかけてきた兄ちゃんボコったぞ。試合で」

 

 

それに、

 

 

「お前よりぼっちの俺でも仲間ができたんだ。なんでお前がハブられるようになったのかは知らんが大方、イジメの対象が自分に回ってきたんだろ?無理に変わろうとしなくてもいい。それは強者の考え方だ。俺らみたいなのは逃げていい。逃げて新しい場所で本物を見つければいい。そしたらお前の勝ちだ」

 

 

柄にもなく長話をしたようだ。

こいつを見ているとボーダーがなかった時の俺を想像させる。奉仕部はやめたがもし、依頼をだしてきたら全力で答えてやろう。

 

ぼっち(比企谷八幡)コミュ障(志神十和)との出会いのように彼女なら本物を見つけ出せるだろう。

 

 

 

 




明るい八幡でした!

このままボーダー入りする予定のルミルミはやはり比企谷隊に入れるべきか………

ご意見よろしくです!


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比企谷八幡の答え

お久しぶりです!

最近は別のを書いていたため何ヶ月?ぶりになります。書き方がおかしいかも知れませんが大目に見てください………

では!


あれからぼーっと小学生達を眺め………はっ!俺がこんなセリフを冒頭でも流したらただの犯罪者だな。表現を変えよう。柄にもなく手伝いを求める小学生達を探していたが結局、有能なボーダー組が対処したため仕事が全くなかったまま夕飯の時間帯となった。

いや、確かに仕事ないのは嬉しいがアウェー感がすごくて慌てちゃったんだけどね?

 

閑話休題

 

現在、総武高とボーダー組で古くから使われ、あまり手入れされていないであろう微妙な汚れ具合のテーブルとイスに座り、無言の状態を貫いていた。いや、一部、3分の2の馬鹿である出水と米屋、そして戸部が何やらうぇ〜いと騒いでいた。

 

それ以外に気になることはーーー

 

 

「………あー、お疲れさん」

 

「随分と歌歩ちゃんにしごかれたねトワ」

 

「しごかれた?いえ、あれは今までの行いが悪かった僕の責任です……」

 

「………なぁ三上。十和に何させた?」

 

「そ、そこまで大変なことしてないはずなんだけどなぁ」

 

 

あたふたとしながら十和の様子を伺う三上を横目に、俺はため息を吐いた。

 

 

「演技はそこまでにしとけよ?」

 

「あ、やっぱりわかる?」

 

「普段のお前が手伝いで取り乱すわけないだろ」

 

 

ケロッとして机に顔がつかないギリギリの位置を固定していた十和が起き上がる。ここは六人席で、俺が遥の隣で奥に小町。正面に十和で横に三上、そして小町の前には優菜がいた。

 

 

「いや〜相変わらず二人は仲がいいねぇ。小町嫉妬するかも。あ!今の小町的にポイント高い!」

 

「昔はもっと凄かったよ〜。雰囲気似すぎて以心伝心してた」

 

「………まあ、俺はそこまで変わらんが十和は変わったな」

 

「………そだね」

 

 

過去の十和を知っている比企谷隊に三上は暗い顔をしてしまった。それを良しとしない自慢の妹はすぐに話題を逸らした。

 

 

「そ、そうだった!お兄ちゃん、小学生誘惑したってホント?」

 

「いやいやいやそれどこ情報だよ」

 

「八幡君………」

 

「いや、遥違うからな?だからゴミを見る目はやめてくれ」

 

 

俺に害のある方向へ話題を変えた小町を睨むが舌を軽くだしてコツンと頭に手を置いて小町風ごめんを炸裂し八幡に効果抜群。八幡の怒りは0になった。じゃないな。

遥は小町のことを信じてしまい、俺を見る目が人様に見られてはいけないものになっていた。俺以上じゃね?

 

 

「それで何したの?」

 

「いや、それがーーー」

 

「あなたでは無理よ。そうだったでしょう?」

 

 

俺の疑いを晴らす権利は冷めきった瞳で葉山を見る雪ノ下によって遮られた。

ただ雪ノ下にとってはいつものボリュームだろうがここには日頃から戦闘訓練をして、その上位にいる人間が多数いる。少しの殺気を込めた雪ノ下の一言は全員の注目を集めるには十分なものだった。

 

といっても、話の内容はとある人物が関わるため俺も聞いていたのだが。そのせいでか余計に頭が痛くなった。

 

 

「はぁ………」

 

「どうしたの?」

 

「いや、面倒事に巻き込まれるって思うとな」

 

 

先程とは打って変わって俺を心配する優しい声が隣からした。どうやら遥も本気で俺が小学生を誘惑……俺の場合は誘拐か?と自分で思って悲しくなったのは完璧な余談だ。

 

教室でのおれの行動であるうつ伏せとして視線を下に向けたが刺さる一つの視線に腹を括った。

 

 

「比企谷、お前も話は聞いていただろう。お前の意見をくれないか?」

 

「………俺、何も聞いてーーー」

 

「先程までの会話、お前がイラついているのを確認したぞ」

 

「はぁ………わざわざ巻き込まないでくださいよ」

 

「あなたこそ勝手に盗み聞きしないでほしいわ。ストーカー?」

 

「そっちこそ何よ。アンタいい加減に比企谷のこと侮辱しすぎよ」

 

 

案の定、雪ノ下とボーダー組の対立がおこり、小南に睨まれた雪ノ下は僅かだが下がった。

 

 

「雪ノ下、今回は私が比企谷に聞いたんだ。大人しくしてくれ」

 

「…………はい」

 

「頼むぞ、それで嫌そうにしている比企谷は何か言いたいことはないか?」

 

「じゃあ端的に一つだけ。無駄なことはしなくていい」

 

 

おそらく、俺だけしか先程からの話に載っている鶴見留美のための解決の糸口として俺が与えた切り札を知らないだろう。

喚いていた三人はわからない表情をし、雪ノ下、葉山、三浦は睨みをきかせ、それ以外は俺の言葉を待った。

 

 

「君は話を聞いていたんだろ?俺たちは彼女のために話をしているのに無駄だなんてーーー」

 

「だから無駄なことなんだよ。葉山、お前が問題を解決したいなら前からいがみ合ってた雪ノ下と三浦を仲良くさせてみろよ」

 

「なっ!?それは関係ーーー」

 

「あるに決まってんだろ。なんだ、高校生の、それもお前がよく知る二人の仲直りすら促せない奴があって間もない小学生の仲を修復できると本気で思ってんのか?」

 

 

全て言いくるめた俺は少し長めの息を吐き、悔しがる葉山をみた。その表情は何も出来ない自分にか、それとも俺に言いくるめられたことに悔しがっているかは知らないが興味がない。

 

 

「………随分と上からね」

 

「逆に聞くがお前は上から言える立場なのか?俺が見た限りでは何一つ依頼を達成していない、ただ勉強だけができる雪ノ下よ?」

 

「ヒッキー!ゆきのんに言いすぎ!」

 

「言いすぎじゃない。理解してないコイツが悪い」

 

「比企谷、すまんが話がずれている。戻してくれないか?」

 

 

収取がつかないと踏んだ平塚先生の発言に雪ノ下も由比ヶ浜も睨みながらだが大人しくなったようだ。

 

 

「それでは比企谷。無駄の意味を教えてくれないか」

 

「簡単ですよ。鶴見には俺がもう助言をしたんで」

 

 

俺の一言に全員が驚いていた。

おそらくもう助言をしたことにか、それか俺が誰かに助言をしたからかだろう。

いや、俺がそんなキャラじゃないってわかっているが後者酷くね?多分ボーダー組がほとんどだろうが。

 

 

「何を言ったんだ?」

 

「ボーダーに来ないか、と」

 

「「「「え?」」」」

 

 

これは遥、優奈、三上、宇佐美のオペレーターだ。

 

 

「なんだ、やっぱり俺がスカウトしちゃ不味かったか?」

 

「いや、一応私達A級部隊だしハチに至ってはボーダートップレベルだし上層部も実力があれば許可するとも思うよ」

 

「もしかしてウチの隊に?」

 

「ああ。達也は毎回いるわけじゃないからあと一人欲しかったしな。鶴見なら多分素質あるぞ?」

 

「お!じゃあ俺がーーー」

 

「アタッカーじゃなくてスナイパーに」

 

 

盛り上がった馬鹿を遮って正直に言った。

 

 

「珍しいね。アンタが言うなんて」

 

「くまちゃん………でも、確かに珍しいね。比企谷君がそんなこというなんて」

 

「私もびっくりです」

 

 

那須隊二人は理解できるが小町よ、俺が人を評価しない人間だと思っていたのか?お兄ちゃん悲しい。

 

 

「俺だってそこらへんは見るぞ。集中力に移動法をみて思っただけだ」

 

「ほう。気になるな」

 

「それは試験の時にな」

 

 

奈良坂が笑みを浮かべたためそう言ったがまだ鶴見が試験をうけるか決まってないが言ってよかったのだろうかと内心ビクビクしていると平塚先生が声をかけた。

 

 

「ボーダーでの話はあとにしてくれ。それで、問題の解決になるのか?」

 

「解決じゃなくて助言、つまり提案ですよ。バラバラになった場所に戻れないのなら戻らなくていい。押してだめなら引くが俺のスタンスですからね。そして俺がそうしたようにボーダーという新しい場所に来ればいい」

 

「それはーーー」

 

「逃げじゃない。新しい道を進むだけだ。それと雪ノ下、お前にずっと言いたいことがあったんだわ」

 

 

そういいながら殺気をたたせて雪ノ下の前に移動する。

伊達に命懸けで任務はしていない。殺気に耐性がないやつらはかなり怯えてるが気にしたことか。

 

 

「お前に何があって逃げるのを嫌うか知らんがそれを赤の他人に当てはめるな。勝手に俺と十和の場所を否定すんな」

 

 

本当に今日の俺は性に合わない。

もう寝ますとだけ伝えて俺はその場を後にした。

 

 

誰にだって黒歴史はあるものだ。しかし、それに触れていい人もいれば、踏み入れない方がいい人もいる。

俺は、いや、十和は確実に後者だ。

 

俺も十和も、今は変わっているように見えるがその根元は変わらない。特に十和は三上をさん付けでまだ呼ぶあたり、俺以上に変わっていない。

 

 

「人間、変われないなぁ」

 

 

ふと空を見上げれば、都会では見られない星々がその大きさ関係なく光り輝き、何を見ればいいかわからなくする。

しかし、その中に隙間があり、そこにはほかと比べ薄らと自己主張をする星があればその星に目が行ってしまう。

 

少し瞬きをすると、消えない星の輝きによりいつしか場所がわからなくなってしまったあの星を俺は見つける気にはいられなかった。

 



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比企谷八幡はジョーカーを伏せる

最近調子がいい癒しを求めるものです。
しかしッ!恋愛描写はマジでムズい。理由は………なんででしょう、察してくださいと言えばいいのだろうか?

そんな自分ですが今後もよろしくお願いします。
では!


「おうおうハッチ、かっこよく決めてたな!」

 

「黙れ槍バカ。串刺しにするぞ?今」

 

「ちょっ!?トリガーないから今はやめて!?」

 

「じゃあ帰ったら串刺しの刑を100いくか」

 

「ぎゃあああッ!」

 

 

煩い馬鹿を置いて、俺はボーダーのバイトで男子に与えられた大部屋に寝転んでいた状態から起き上がった。

 

 

「しっかしキレなかったよな。なんで?」

 

「お前らならまだしも、アイツらにキレるのは時間の無駄だ。それにキレるを通り越して呆れている」

 

「確かにあの女は酷いな。やはり撃っておいたほうがよかったか」

 

「駄目だよ?それこそ秀次が損するだけで無駄なことだよ」

 

 

俺と十和は吹っ切れている方だが三輪は気に食わない様子だ。その辺は馬鹿を見習って割り切った方がいいと思うが。

 

 

「あの後どうしてた?」

 

「沈黙だ。葉山とか言う奴は戸塚が。雪ノ下と三浦だったな、アイツらは海老名に連れられて戻ったぞ」

 

 

奈良坂の言うことが本当だと戸塚には迷惑かけるな。戸部の奴は………大丈夫だろう。いや!戸塚と寝れるんだ!やっぱりアイツ許せん!

 

 

「なんでトリガー持ってんだよハチ!」

 

「いや、戸塚に這い寄る害虫を除去しようと」

 

「どんだけ戸塚が好きなんだよ!」

 

 

馬鹿二人にとめられ俺は大人しくトリガーをしまった。無断使用して罰せられるのは厄介だな。

 

 

「………戸部なら素で十分、か?」

 

「十分じゃないからね?確かに一発KOしそうだけどアウトだから」

 

 

俺の正拳突きを受けて吹っ飛ぶ戸部がだべ〜!、と言いながらギャグ漫画の如く復活する戸部を想像できたのは俺だけじゃないだろう。

大人しく座った俺を十和がホッとしていた。

 

 

「あーそれと奈良坂。もし話題にでてた鶴見って言う奴がボーダーに入ったらたまにでいいから教えてやってくれないか?」

 

「それは構わない。なんだ、まだ入るとは言ってなかったのか?」

 

「意外と乗り気だったし、後は親の了承だが………」

 

「虐めのことを知っているなら話が早いかもね」

 

「それが駄目ならオペレーターでもいいからって直接頼みにでも行くわ」

 

「そこまでして何故あの少女に構うんだ?」

 

 

素朴な三輪の疑問だが俺と十和はよくわかる。

 

 

「…………あいつは俺と十和みたいなんだよ。勝手なお節介で自己満足する、あながち葉山と似ていたな」

 

 

荒んだ表情の俺にしんみりとした雰囲気となってしまった。

 

 

「お前らはちゃんと道を知っている。なら教師の真似事で指導した、それでいいだろ」

 

「そう、かな。ありがとうね秀次」

 

「お!久しぶりに秀次がデレたァいッ!?」

 

「また余計な一言を………はぁ、時間だし風呂いくか」

 

 

珍しい三輪のサポートを弄った米屋に関節技がかかったのを見届けて俺は風呂に行くことを促した。

 

 

***

 

 

そして風呂上がり。

え?風呂の描写はないのかって?男の風呂様子に需要あるのか?それ以前に詳しく伝えたら俺が危ないヤツ認定されるじゃないか。

 

しかし戸塚と入りたかったなぁ。戸塚なら需要あるだろ。俺なら金払ってでも戸塚の一日を書き留めた本を買うぞ?

 

閑話休題

 

風呂場では馬鹿が煩かったとだけ伝えて、現在は部屋に戻ってきていた。

 

 

「いや〜ハッチの筋肉凄いな。俺もトレーニング始めようかな」

 

「射手に筋力いらねぇから俺はパスだな」

 

「お?負けを認めるか?」

 

「あ?逆に蜂の巣にするぞ?」

 

「いい加減にしろ。もう寝るぞ」

 

 

意地の張り合いに発展した出水と米屋を止める三輪は誰よりも早く隅に布団を敷いてもう中に潜っている。

そんな三輪につまらないだの言ってトランプを取り出した米屋。

 

 

「寝坊したのに遊びの準備は出来てるのな」

 

「いいじゃねぇか。せっかくだし罰ゲーム付きでババ抜きしようぜ!」

 

 

ほう。ババ抜きか。

 

 

「いいぜ。じゃあ一抜けの奴が最下位に命令な」

 

「八幡………得意分野だからってゲス顔はちょっと………」

 

 

ポーカーフェイスは得意分野だ。普段使うことのない表情筋を揺るがすまでに俺の理性の化物がその道を塞ぐ。

正に魔王様を倒したいのなら俺を倒していけ状態の頑丈さだ。

 

え?負けないのかだって?

逆に此処には勇者の役割がいないだろ?だからフラグにはならん。

 

 

結局、叩き起された三輪を含んだ全員でババ抜きを開始したのだが、

 

 

「やっほーい!俺一位!」

 

「最初から残り一枚だなんて。運が良すぎるよ。はい、上がり」

 

 

腕を組んでまだトランプを手に持つ三人、いや、十和が涼しい顔で抜けたため二人、俺と出水を見た。

まさか運勢により劣勢になるとは思わなかった。

今、俺のカードは一枚。そして出水は二枚。次は俺が引くので天国か地獄かは2分の1の確率だ。

 

ここで負けたら面倒な要求を馬鹿はするだろう。それだけは阻止しなければならない。

 

 

「…………こっちか?」

 

「さあな?」

 

「…………こっち」

 

「いいのかそれで?」

 

 

ボーダーでの洞察力をここで生かそうとする愚行だがそれは出水も同様でシューターとしての賭けを仕掛けてきている。

 

ほんの少しだけの情報で積みかけられる。もう一枚のカードに手を付けたその時だった。

 

 

「そう言えば八幡。綾辻から指舐められてたな」

 

「グハッ!」

 

 

唐突の、来ないだろうと予測していた精神攻撃により俺は確かめようとしたカードを出水の手から取ってしまった。

 

 

「………おい出水。今その話をするんじゃねぇ」

 

「え?なんでだ?今日の思い出を友人と語り合おうとしただけだぜ?」

 

 

動揺を見せてしまったのが不味かったか。

絆創膏が貼ってある右手を震えさせながら睨みつけ、二枚のカードを前にだす俺をニヤニヤしながら何も取ろうとしない出水がいた。

 

 

「そう言えばそこんところどうなんだよ。この前デートして、進展あったか?」

 

「なんで俺のプライバシーを公開しなきゃいけないんだよ。国が守ってるから個人に聞こうだなんて甘い考えは通じんぞ」

 

「いいじゃんか。俺らはハラハラしながら見守ってんだぜ?」

 

 

米屋の答えに三輪や奈良坂を含めて全員が頷いた。

 

 

「白状しろ比企谷」

 

「お前もか奈良坂……!いや、そうじゃねぇ。なんで勝手にそっちの話にしてんだよ」

 

「そろそろ綾辻さんが待ってられないと思うしね。八幡は結論出した方がいいと思うよ?」

 

 

どの口が言ってんのかと今度は十和を除いて思ったはずだ。

 

その後は十和に矛先が向かったので俺はぼーっと今日のことを考えていた。

 

 

『ただの幼馴染だったら私、あんなことしないよ?』

 

 

別に自己評価が低いわけじゃない。他人の観察した結果から妥当な数値を自己評価としている俺だ。

昔と違ってボーダーがある俺はぼっちとは名ばかりの、A級部隊の隊長であると実感する。

 

では、俺にとって遥はなんなのだろうか?

 

思春期という中二病を拗らせる時期を迎え、考えがガラリと変わった今でも側にいてくれた大切な幼馴染、そう、幼馴染────

 

いや違う

 

 

俺は道を進もうとせずに逃げているだけのようだ。今のような、最高の状態を失いたくなくて。より高みという壊れやすく、壊されやすい場をつくりたくなくて、安全な領域にいるだけだ。

 

つまり、俺、比企谷八幡は────

 

 

「はい、俺の勝ちだな」

 

「は?」

 

 

思考を止めて前を見ると同じ数字のカードが散らばったトランプの上に置かれた瞬間だった。

俺の手には今の弱気な俺を嘲笑っているカードのみ。

 

 

「負け、か………」

 

「あれだけ余裕だったのに残念だったなハッチよ!ってことで飲み物買ってきてくれ。勿論ハッチの奢りで全員分な!」

 

「自販機は駐車場だったな………はぁ、ダルい」

 

 

ジョーカーを伏せて置いた俺は夏だというのにクーラーで少し寒気を催す室内からでて、その気温と湿度の差により汗をかきながら外へでた。

 

 

「………今日も星か」

 

 

何故か、ぼーっとして見る方が星はきれいに見える。一点だけをみて周りを見ない、木を見て森を見ずだったのだろうか。

 

心に余裕があるうちに早く任務を終えて帰還しよう。そう思った矢先だった。

 

 

「八幡君?」

 

「…………遥か」

 

 

俺が新世界の神になるなら、こんな偶然のシチュエーションを立てるのだろうか?

そんな無駄話を脳内で討論していながらも、いつも見ている幼馴染の顔を、俺は瞬きをせずに見つめ続けていた。

 

 




次回、ついに結ばれる!?

(個人的には早くくっつけたい。でも!描くのきついなぁ………)


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こうして比企谷八幡と綾辻遥は

 

 

山の中は星による明かりが灯る、ロマンチックなテイストを味わえる。故に虫とか虫とか虫を嫌う女子も山登りに来る登山ガールがいるのかもしれない。え?虫が多くないかって?トリオン兵とかどう見ても虫がモチーフだから嫌いなんだよ。俺が。

 

閑話休題

 

つまるところ、俺には似合わないロマンチックな雰囲気だからか、あるいは出水の弄りの効果が持続して先程まで遥のことを考えていたからか知らないが、光が少ないことで見えずらいはずの遥の顔は何故かくっきりわかる。

 

前者か後者か、その理由は、

 

 

「………どっちも、だな」

 

「どうしたの?顔に何かついてるかな?」

 

 

何でもないと素っ気なく答える。

首を傾げる仕草はたまに見るが今以上に魅力的に見えた日はない。小町のあざと可愛いものではなく、純粋に可愛いと思ってしまった。

 

 

「八幡君はどうして外に?」

 

「罰ゲームでジュース買いに行くんだよ。遥はどうした?」

 

「星が綺麗だから涼みに来たんだけど……邪魔したかな?」

 

「別に邪魔じゃないぞ。寧ろこっちが邪魔したな」

 

「そんなことないよ。私は八幡君と話せて良かったよ」

 

 

純粋。

 

それが俺が持つ遥の第一印象だ。よく捻デレというよくわからん辞書にない言葉で称されているが、デレは認めんが捻くれている自信がある。寧ろ捻くれていない俺は比企谷八幡ではない。

そう断言している時点で、俺は彼女と違うと思わされる。いや、わかっていたことを受動態にするのは可笑しいか。

 

 

「全く………そんなキラキラした目で見られたら俺の濁ったアイデンティティが浄化されそうだ。だからそんなことはちゃんとした相手に言わないと俺以外だと勘違いするぞ」

 

「私は八幡君の目を濁ってるとは思わないけどなぁ。ずっと見てるからちゃんと八幡君の優しさとかわかっているつもりだけど」

 

 

優しさ、これは達也含めた比企谷隊のメンバーに言われた。こんな俺の何処が優しいのーーー

 

 

「むー、今、”俺の何処が優しいのやら”って思ったでしょ?自分を低評価しすぎ」

 

「………だからってデコピンかよ。全く痛くないし」

 

「八幡君は怒っても考え変えないでしょ?前もそういったじゃん」

 

 

俺は前にも言われてたのか。すっかり忘れていたが。

そのままちょっと休憩のつもりで大きな岩に腰を下ろした。自然と遥も横に座る。肩が当たらないギリギリの距離だが、嫌な気はしない。寧ろーーー

 

 

「もう少し近づいていい?」

 

「へ?あ、ああ」

 

 

つい肯定していまった。しかし、この結果は俺が望んだ……いや、違う。

 

 

「あのな、俺が幼馴染だからってガードが緩すぎるぞ。それこそ前から言ってるだろ?」

 

「………幼馴染だから、か」

 

「そうだろ?それに俺は理性の化物の称号を貰うほどの精神がいつもの弱いガラスのハートより遥かに頑丈なんだよ。じゃなきゃ俺が

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勘違いしそうになるだろ」

 

「それこそ!」

 

 

珍しい遥の大声にビクリと肩を上げてしまった。膝を組んでいる彼女の表情は見えない。何をミスしたかわからないことに不安を募らせ、逆に理由を問えない状況になってしまった。

そんな中、遥は先程とは真逆の、か細い声で、

 

 

「………それこそ、毎回言ってる。でも私はずっと同じことを続けたよ?」

 

「だから注意を」

 

「ごめん、前に言ったのを取り消すよ。八幡君は全然優しくないよ。自分にだけ」

 

 

その答えに俺は返答できなかった。

 

 

「理性の化物って、結局は自分を押し殺してるんでしょ?昔から八幡君は自分より、私や小町ちゃんを優先してくれた。でも!それは八幡君がいつも身代わりになることと同じだった」

 

「………小学生の頃の話を蒸し返すなよ」

 

 

小学生とは、思春期間近で色々ある。特に好きな女子に対するイタズラは全国共通のことだろう。

当時から遥は人気者だった。自然と好意を募らせ、そして悪戯という結果を生み出す。当時の俺はそれを知らないわけで、それこそ幼馴染だからという理由で矛先を俺に向けさせたのだった。

 

それから、ボーダーに入るまでは自称ではない、誰から見てもぼっちの俺が出来上がったのだ。

 

 

「私ね。複雑だったんだよ?八幡君に守られて嬉しいって。でもね、それと同時に嫌だったよ。私なんかのために身代わりになって」

 

「私なんかってなんだよ。お前は無下な扱いじゃーーー」

 

「私も八幡君を無下な扱いじゃないと思ってるよ」

 

 

弱々しい声から一転した、俺を肯定してくれるその言葉に、俺は何も言えない。

 

 

「何時からかわからないけど、八幡君が自己犠牲する前から八幡君は優しかった。それ以外にも八幡君には素敵なところを知ってたよ。だから、私は………」

 

 

ずっと思っていた。俺が欲しい”本物”は手に入るのかと。

 

両親を失う代わりに得た場所(ボーダー)で、こんな俺でも肯定してくれる仲間(比企谷隊)や信じてくれる友人がいて。それで満足して、失いたくなくて。

またしても絶望の時期(大規模進行)の惨めな自分を味わいたくなて。

 

逃げて逃げて逃げた先の今の俺が歩む道が正しいと思い、本物を知らない俺は何時しか思い込みをしていたのかもしれない。

 

 

「………ねぇ八幡君、私はーーー」

 

「俺は────」

 

 

怖い。もし、俺の一言で全てが偽りだったとわかってしまったら。

そして涙目ながらも、決心を固めた遥の顔をもう見ることが出来なくなるのが怖くて仕方ない。

 

 

─────偽りがいいかもしれないがら

 

「俺、比企谷八幡は」

 

─────やはり俺は、

 

「綾辻遥が好きだ」

 

─────本物(綾辻遥)が欲しい

 

 

理性で抑えなかった言葉が口から出た。

自然とでた、という表現が正しいはずなのに、その言葉は澄んだ空気を読む渡り、俺の頭の中に何度も響き渡った。

 

言ってしまったといえ後悔はない。

トリオン兵相手の時すら震えなかった手が小刻みに動くのを自分の発言のリピートを延々と流し続けながら、それをとめようとしなかった。

 

 

 

夏なのに、据わった岩が冷たく感じた。事故直前の記憶ですら味わったことのない寒さに、触れ合う温もりもない自分に口元が笑の形へと変形する。哀れな、そして俺は間違いをーーー

 

 

───温かい

 

 

眺めていた不思議と動く手は見えず、前面に伝わる温もりを感じた俺は動かず、否、動けなかった。

 

 

「私はね、八幡君」

 

 

─────人は求めるものが目の前にあると感動により時が止まる。ならば俺のその瞬間は、

 

 

「綾辻遥は、比企谷八幡をずっと愛しています」

 

 

─────俺の本物を見つけた、今なのであろう。

 

 

先程までの冷たさが温もりに変換されていく。

身体が、心が、全てを満たす温もりを俺は求めて、忘れたと隠し、そして強くもう一度求めた。

 

 

「…………はる、か?」

 

「嬉しいなぁ。ずっと私からだと思ってた。言っても八幡君は断ると思ってた」

 

「それは…………」

 

 

耳の近くに遥の顔があるせいか、何故か泣いている彼女の声が間違えることなく、真実だと俺に告げる。

 

 

「いつも不安だった。幼馴染って説明すると、いつもボーダーとかで一緒なのに離れるかもしれないって思って。でもね、八幡君」

 

 

肌から伝わる熱は少しだけ薄れた。

それ以外に、目で確認しなくとも彼女の手により治まっていた震えを理解出来たが、それ以上に、少し上を見れば楽しめる幻想的な星々より、何よりも、

 

 

「これからは安心して八幡君と一緒にいれるんだよね?」

 

 

遥の本物の笑顔をずっと見たくて仕方がなかった。

 

純粋故に強い彼女により、本当に俺は浄化されたのかもしれない。

 

 

「これから、いや、これからも一緒にいてくれ」

 

「うん!こちらこそ宜しくね!」

 

 

俺が積極的になるのは俺の気持ちも本物だからだろう。

二度と離さない決心を抱きながら、目を閉じた遥を唇が接触するくらい近づけて永遠と感じていたいその時間を確かめていたのであった。




ムズい。以上


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比企谷八幡と綾辻遥は離れたくない

人は何故、本を読んだら涙が出るのだろうか。

A.───────


 

 

全く冷めよくとしない火照った顔を夜風により冷めたところで、俺は缶を持ちながら溜息を吐いた。

 

 

「…………あー、言っちまったなぁ」

 

 

あんなの俺であって俺じゃない。本心であることに代わりないが別人格の………いや、これ以上は昔の痛い俺を思い出させてしまう。

あの時も遥にって、

 

 

「意外と前から何気に遥を基準にしてたな。小町は勿論だったけど」

 

 

誰にも聞かれていないはずの呟きだがまたしても熱が貯まるのを感じる始末だ。真っ暗な夜道であるが止まることなく、躓くことなくなるべく急いで俺は戻った。

 

部屋に戻ると何やら騒ぎ声が聞こえた。その影響あってか別のことを考えられる機会を与えられ、今の俺は普段通りの顔をしているはずだ。確認することなく扉を開けてーーー

 

 

「……………いや、部屋間違えたか?」

 

「おお八幡!助けてくれ!」

 

「ジュース代は払うから罰ゲームを俺らの解放にしてくれ!」

 

 

誰が持ってきたかわからない頑丈な紐に毛布ごと括りつけられ、宙吊りされたミノムシがいた。

 

いや、何処のヤクザの息子の友人だよ。女子部屋覗こうとしたのか?

 

 

「女子部屋じゃなくて僕の裸を撮ろうとしてたんだけどね」

 

「米屋、出水お前ら………」

 

「違うからな!?十和が着替えてるのを写真にとって三上がどんな反応するかって気になっただけだから!!」

 

「なんで十和は着替えてんだ?」

 

「水鉄砲でかけられただけだ」

 

 

突如背後から声が………!?

なんてことは俺のサイドエフェクトでわかっていたため心の中にだけ止めているが、三輪は濡れた髪の毛を乾かすべくタオルを首にかけていた。それは奈良坂も同様のあたり、馬鹿二人の被害者なのだろう。

 

 

「なんで水鉄砲なんか持ってきてんだよ」

 

「明日は川行くじゃん?だから持ってきたんだけどよ、槍バカが『俺が全部撃ち落とすぜ!』とか言って争っていたらバトルになって………」

 

「十和のすけ達に水がかかってその時は謝ったんだけどよ、弾バカが十和の上半身裸写真を三上がみたらどう反応するか見てみようってなって………」

 

「絞られていると?馬鹿だろ?いや、わかってたけどさ」

 

 

俺の一言で奴らは屍と化したようだ。初めて静かになった気がする。

 

 

「お疲れさんだったな。ほら、奢りだ」

 

「…………比企谷からその言葉が出るとはな」

 

「脅しでもするのか?」

 

「いやしねぇから。いずれミノムシ二匹から分捕るからいいんだよ」

 

 

あ、ホントに白目になった。つーか逆さになって血が上って普通にヤバい状態なのな。

それでも二人を無視して缶を渡す。

 

 

「全部ジンジャエール?」

 

「二宮さんの影響でマッ缶の次に求める飲み物になったんだよ。ちょうど安かったし」

 

「後者の方がどちらかと言うと本音か。まあ、ありがたくいただくが」

 

 

昔を知ってる俺としてはお前が素直に礼を言うことに驚きなのだが………ひっ!?めっちゃ睨まれた!?

何なの、テレパシーなの?Ψ難ばかりなの?

 

決して缶のタブがなかなか開かないから手が震えるえているのではないと信じつつ、冷たい炭酸を一気に喉に流し込んだ。

 

 

「………あれ?ジュース冷たいね」

 

「だからどうしたんだ?自販機のだから当たり前だろ?」

 

 

何故かわかりきった質問をしてきた十和にそう返すが、

 

 

「いや、僕達は着替えてたりして結構時間過ぎてるんだよ。この暑さで冷たい状態を保っていたってことは早く戻ってきた。じゃあ最初、自販機で買うまで時間あったはずなんだけど何してたの?」

 

「…………………」

 

 

その推理に内心驚き半分、そして後悔半分となっていた。

最初の空白の時間なんて新しい俺の黒歴史だ。いや、遥に思いを言えたのだ。それはいい。いいんだが、

 

 

コイツらにはバレたくない。

 

 

「暑かったから途中休みながら行ってたんだよ。意外と森の中の方が涼しかったし」

 

「へーそうなんだ。僕はてっきり偶然綾辻さんと合流していい流れになったんじゃないかなぁって思ってたけど。そっか、違ったか」

 

 

………………………三輪以上にエスパーがいた。

 

ここで八幡、ババ抜きで発揮できなかったポーカーフェイス発動!

 

 

「いや違うからな」

 

「冷や汗でてるよ?」

 

「歩いてる時はいいが止まると急に暑くなるよな」

 

「十和。あの比企谷のことだ。お前が考えているような展開にするような度胸あると思うか?」

 

「いや、ないね。あははは!」

 

 

ナイス三輪!愛して急に寒気が三方向からやって来た。

一つ目は三輪。すっげー引いた目をしている。そしてあと二つは………遥と海老名さんだろう。最後の寒気は本能的に理由を考える思考を停止させたからそうであるはずだ。

遥は………明日謝ってみよう。

しかし、十和の奴、まだこっち見てニヤニヤしてやがる。

 

疑問に思いながらもその後、汗を拭いた俺は布団に入りすぐに寝た。馬鹿二人がもうおやすみなのですぐに意識がこと切れた。

 

 

***

 

 

朝目覚めても、誰かの足が乗っかってた、なんてことはなかった。寝相の悪い米屋は縛られているため、就寝同様にすぐに起きれた俺はいち早く起き上がり、外で体操をしていた。

 

 

「早いな」

 

「おう、奈良坂か。お前も早いな」

 

「家じゃない場所で寝ると仮眠だと思ってしまうから早かった」

 

 

ボーダー隊員あるあるだ。本部での作戦室では仮眠が殆どなため、そういう癖がついてしまう。

 

 

「走らないのか?」

 

「流石に風呂も入れないとなると汗かいた状態で朝食とったら遥と小町に嫌われる」

 

「ほう。綾辻にもか」

 

 

はっとなった時は遅かった。

顔には出ていないが興味深いと言ってそうだ。

 

 

「奈良坂、今のは忘れてくれ」

 

「わかっている。他言無用だな。しかし」

 

 

いずれ、すぐにバレるぞ。

そう言われて話す時は細心の注意をしようと思った。

 

 

場所は変わって食堂っぽい場所へ。

遅刻ギリギリだった馬鹿を紐を解いて落下させて起こし終えたあと、朝から元気な小学生たちを横目に席についた。

 

 

「あ!おはよう八幡!」

「お、おう。おはよう戸塚」

 

 

天使が降臨なさった。

朝からなんて幸運なんだと実感させられる戸塚スマイルに心奪われていた俺は「どうしたの?」と首を傾げる仕草をして心を惑わす癒しを記憶のフォルダーに永遠に保管してーーー

 

 

「八幡君?」

 

「ひっ!?は、遥?」

 

「ずっと戸塚くんの顔みてどうしたの?心做しか顔が歪んでたよ?」

 

 

誤って削除のボタンを押した。

 

後から放たれる昨日も感じたプレッシャーに寒気を感じていると、死んだ親父の血が影響したのか、ペコペコと頭を下げていた。

 

 

「す、すみません」

 

「何が、なのかは後でお話しよっか。ね?八幡君」

 

「は、はい………」

 

 

ジュースを持って歩いた夜道、明日どう声をかければ良いか考えていた俺が馬鹿みたいだ。思ってみなかった方向でことが進んだのに安堵していいか脳内で議論しながら戸塚の横の席にそのまま座った。遥は目の前に、そして後に付いてきていた小町は戸塚の正面に座った。

 

 

「いや〜!朝から仲良くて小町感激だよ!」

 

「え?八幡震えてたよ?」

 

 

急にわけのわからんことを言いだした小町に戸塚が反論する。

チッチッチッとあざとく指を横に振る小町は語った。

 

 

「見る目がマッ缶より甘いですよ戸塚さん!例えばそうですね。十和さんと歌歩さんを見てどう思いましたか?」

 

「息ピッタリだったね」

 

「いや、でも十和が尻にひかれてーーー」

 

「あっ!!」

 

 

いきなり大声をだした戸塚に驚いているも、当の本人は俺と遥の顔を交互に見ていた。

そして、

 

 

「おめでとう、二人とも」

 

 

何故わかったし。

 

今日、誕生日でも何でもない日におめでとうと言われたが、それ以外におめでとうと言われる原因は一つしか思い浮かばない。

ニヤニヤする小町と顔を赤らめて俯いた遥を見てそれが正解だと確信する。

 

 

「いや〜これで今日から遥お義姉ちゃんだね!」

 

「小町ちゃん!」

 

「おい遥、もしかしなくてもばらしたのか?」

 

 

小声で尋ねる今の俺には焦って近づく人物が誰かわからなかった。

 

 

「えーっと、実はねーーー」

 

「僕が八幡が外に行ったのを知らせたんだよ。二人にできるようにね?」

 

 

小町同様のニヤけた顔をして見下ろす十和にここまで殺意を向けたのは初めてだろう。

 

 

「…………どういうことだ?」

 

「僕のサイドエフェクトで八幡の進むルートを確保。そして電話でそれを伝えて絶好のシチュエーションをつくりました!」

 

「男性陣で知ってるのは十和さんだけだけど、女性陣は全員ことの筋を知ってるよ。お兄ちゃんがなんて言ったかは教えてくれなかったけど」

 

「ごめんね、八幡君。二人きりを作って欲しいってお願いしてて………」

 

「あー、いや、こっちも悪い。早くわかってれば良かったものを」

 

 

ぎこちない雰囲気が二人の関係を物語っていたと後で十和から聞いた。十和には口止めをしつつ、よくやったというお褒めの言葉を次々にいただいた俺は料理の味を忘れてすぐに外にでた。

 

 

「あっ!待って八幡君!」

 

 

俺一人ではないが。

 

 

「さっきも言ったけどごめんなさい。八幡君が流されるのは好きじゃないって知ってたけどどうしてもあそこで告白したいと思って……」

 

「告白のこの字も考えてなかった俺の方が謝りたいんだが………」

 

「ふふっ。でも、予定とは違ったけど八幡君から最初に告白してきてくれて、本当に嬉しかったよ」

 

 

軽い散歩をしていた。

小学生の声が聞こえないほどいつの間にか奥に進んでいたとわかったのは握られた手を握り返す前だった。

 

 

「…………昔は全然平気だったけど、今はちょっと、うんうん、結構恥ずかしいかな」

 

「俺も手汗がヤバい気がするんだが………」

 

「大丈夫だよ。それに、手汗がでても離さないでよ?私は少しでも八幡君と繋がっていたいから。昔からの夢がやっと叶ったし」

 

 

痛くない程度に強く握られた細い手を離すことは決してないだろう。そうであるため、遥の前なら、恋人の前なら素直に言おうと決心し、

 

 

「ありがとな遥。愛してる」

 

「私も。大好きだよ八幡君」

 

 

微笑みかける少女の顔を見て逸らすことなく、まっすぐに受け止める。それ即ち、正面に彼女がいることを意味する。

離したくない欲求は理性の壁を抜けて行動にだす。

 

片手は繋がったまま、もう一方の空いた手で遥を抱き寄せる。遥もがっしりと離さないよう背中に手を回していることに更に愛おしさを感じた。

流れに任せた行動は嫌いだが、これは自分で選んだ答えだ。

ゆっくりと近づく顔に目を離さないで軽く顎を下にすると、顔を上に向けた遥の唇とちょうど交わった。

 

 

「……ん………ん、はぁ。八幡君…………」

 

「……遥……………」

 

「……もっと頂だっ…んんっ………」

 

 

重なる箇所が互いの唇だと、人は何故頭が真っ白になるのだろうか。

もう遥のことしか考えていない状態だ。触れ合うだけのキスだが、時間を忘れてしまう。

 

 

「んっ………ぷはぁ………私、キス好き」

 

「俺も、だな」

 

「良かったぁ………じゃあ、もう一度………」

 

 

その後、サイドエフェクトで人が近くに来たことを確認するまで唇は重なり続けた。それ以上の時間繋がってい手は自然と指の間に絡まっていたことも気づかぬままに。

 

 

 

 

 

 





────畜生ー!でも良かったぁー!

※尊敬する八幡だから許せるのです。泣きたくなるのは察してください。



自分の話はどうでもいいとして、R-18になりませんよね?


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比企谷八幡と志神十和は本気を戦う(水中で)

数ヶ月ぶりの更新で感覚が掴めない………。

今回は次に繋げるための巻なので。

では!


あれから数十分後。

 

俺と遥は互いに顔を赤くして宿泊場所に戻って行った。

先程までの時間は嬉しい反面、後から恥ずかしさで死にそうだった。

 

しかし、俺は過去に黒歴史を増産させた男。

この程度では死なん!と、当たり前のことを考えて煩悩と羞恥心を忘れさせようとして───

 

 

「じゃじゃあ、また後でね八幡君。その……キスも、また…今度、ね?」

 

 

目的地に着く前に遥が俺の真正面に来て、煩悩を増幅させるセリフを残して即座に顔を隠して走っていった。

 

俺はまた赤面しそうになったが、第三者から見たら振られたような状況だったため、振られてないか必死になって考えていた。

 

 

「あれ?どうしたの八幡?顔色悪いよ」

 

「お、おう。戸塚か。どうし………その前に後ろの二名はなんで赤面してんだ?」

 

 

やって来たのは此処にバイトで来たボーダーの男子全員と戸塚だった。

とてとてとやって来た戸塚を見て落ち着いた俺だったが、顔を赤くする米屋と出水を見て冷静になった。

いや、寧ろ男の赤面する様子にゾッとした。

 

 

「八幡、僕達の格好は?」

 

「格好?水着だな。それがどうした?」

 

「そう、僕達は水着に着替えた。男子更衣室で。勿論、戸塚君もね」

 

 

十和の言葉で察した。

どうやら原因は俺の前にいる男?のせいらしい。

 

男なのかクエスチョンマークがつく戸塚の着替えの様子を見て赤面したのだろう。

 

 

「初だな」

 

「いやいやいやいや。お前もあの場にいろよ!恥ずかしいっちゃあらしないぞ!」

 

「何言ってんだよ?俺が戸塚の着替え見てたら大量出血でそれ以前の問題になるぞ?」

 

「どんだけ戸塚が好きなんだよ!?」

 

 

米屋のツッコミが聞こえたようで、戸塚がほんのり頬を染めて照れる仕草をする。

 

かわいい

 

 

「あはは……僕、男の子なんだけどなぁ」

 

「でも見た目がね………。パーカー着てると余計女の子に見えるよ?」

 

「でも僕、肌が弱いから」

 

 

なるほど。ちゃんと肌を気にしているのか。だから可愛いのか。

 

 

「余計に性別がわからなくなるな」

 

「おっ!?珍しく秀次が賛成した!」

 

 

三輪も認めたんじゃあ、戸塚は男ではない。

うん、戸塚の性別は戸塚だ。それ以上も以下もない。

 

 

「絶対変な事考えてるよね、八幡」

 

「………何故バレた」

 

「顔に出てるよ。それよりか早く水着に着替えたら?さっき綾辻さんも行ってたし」

 

 

俺のポーカーフェイスが、とショックを受けているのも束の間、茶化すような視線を送る十和に睨みつける。

 

 

「遥と途中会ったのか?」

 

 

だとしたら不味い。

もしそうだとしたら赤面した状態の遥と出くわし、俺が何かしたと余計に質問攻めにされる。

しかし、十和は首を横に振る。

 

 

「いや?僕のサイドエフェクトで」

 

「…………お前、ストーカーに向いてるな」

 

「ん?何って言ったかな?米屋君?」

 

「ひいっ!?な、なんでもねぇでございます!!」

 

 

文がおかしいぞー、米屋ー。

元々成績が悪いのもあるが、十和から睨まれた米屋は敬礼を向けた。

 

 

「全く………そんなことした瞬間、僕は歌歩さんから消されるから冗談でも言わないでくれ」

 

 

鬼の形相から一転して小鹿のように震えている十和に、過去何をやらかしたか聞けなかった。

 

 

─────セイユウサン、マチカマエル、ゼッタイダメ。セイユウサン、マチカマエル、ゼッタイダメ…………──────

 

 

ブツブツと自分の過ちを口にする十和を三輪に任せて俺は着替えに向かった。

 

 

 

***

 

 

 

──川辺ではしゃぐのは危険だ──

 

水辺の事故はよく起こり、最悪のケースは命を落とすことさえあり得る。

しかし、もう一つ危険な理由があったと、この時、俺と十和は理解した。

 

 

「八幡君。子供でも走っちゃ危ないって分かるよ?なのになんではしゃぐのかな?」

 

「十和君、節度を守って遊ぶ。違う?」

 

「「ご最もです。すみません」」

 

 

保護者から怒られるのが怖い

 

 

 

 

 

数分前

 

 

水着に着替えた俺はあいつらが向かった川に向かっていた。

十和がスケープゴートになってくれたので遥でのことで茶化されなかったことに一安心していた。

 

しかし、それがフラグだった。

 

 

─────パチパチパチ

 

「おいハッチ!やっと綾辻に告ったのか!」

 

「やるな八幡!やっとか!」

 

 

何故、この二人がいきなり俺と遥の関係を知った。

 

盛大な拍手出迎えられた俺だったが、視界に入る一人の男が苦笑いしているのに気づき、殺気を向けた。

 

 

「─────おい十和」

 

「あ、あははは………ごめんつい滑った」

 

 

どういう流れで口が滑ったか知らんが、

 

 

有罪(ギルティ)

 

「うわあっ!?」

 

「は、八幡!?」

 

 

勢いよく俺は十和に蹴りを行った。

水中にいる十和は思うように動けないためトリオン体ではない生身では回避は不可。

戸塚が驚いているが、ここで止まらねぇ。

 

それより、

 

 

「よっ、と!!」

 

 

十和なら普通に跳ね返す。

 

足を掴まれた俺はそのまま上に振り上げられる。

しかし、空中で一回転して俺はダメージなく水中に潜り込んだ。

 

 

「ね、ねぇ。ボーダーの人はみんなあんな動きできるのかな?」

 

「いや、生身では無理だ。アイツらがおかしいだけだ」

 

 

奈良坂の発言に異議を唱えたいが今は水中。

川の穏やかな流れに抗って俺は十和の元まで潜っていく。

 

正面から引き下げようと思ったが、

 

 

「あははっ!甘い甘い!」

 

 

俺の頭を台にして反対側に移動する十和。

息を止めた状態で瞬時に後ろに振り向く。着地した十和の背後をとって腕を固める。

 

 

「お、怒った?」

 

「怒ってないよ……とでも言うと思うか?」

 

「デスヨネー」

 

 

横から殴られたわけでもないため怒ったと言っていいはずだ。

 

十和の背中から腕を固定して膝を軽く蹴って水中に落とす。

この時、抵抗されなかったことに違和感があったがそれが凶器となる。

 

水中故に横に一回転した十和は拘束から逃れて今度は俺の足を掴んできた。

頭を更に沈めようとしたらしいがそうは行かない。

岩に手を置いてバク転の用量で十和を一気に反対側に吹き飛ばした。

 

そのままの勢いで陸上に上がった十和を追って俺も水中から出る。

 

 

「ふっふっふ。残念だったね。僕を溺れさせるには修行が足りないよ」

 

「…………押入れ、天井」

 

 

得意げに陸に戻った俺を見る十和だったが次の瞬間にはその表情が固まる。

 

 

「…………何処でその場所を……?」

 

「俺のサイドエフェクト優秀」

 

 

ホント。十和が隠しているフィギュアの場所なんて楽に見つかる。

 

 

「────あははははっ!」

 

「────はははっ!」

 

 

「「その口に大量の水をプレゼントしてやる(あげる)よ」」

 

 

互いに相手を押すために両手を付ける。

 

俺は珍しく笑い声を出しているが、その時の様子を見ていた戸塚たちは龍と虎が見えたらしい。

 

 

「「何してるの?」」

 

 

そして、遥と三上に正座させられる俺達は借りてきた猫というより酒を飲みすぎて妻に叱られる夫だと言われた。

 

 

 




最近、別の小説を書いています。

『バカとバンドと召喚獣~仮面を付けた人の高校生活~』

『魔弾の姫の護衛のヒーローじゃないアカデミア』


時間があれば読んでみてください。


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