仮面ライダーエグゼイド ウルトラガシャット (ぽかんむ)
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エグゼイドVSオーブ編 (エグゼイド本編16話~18話の間)
第1話 Amazingな変身


よろしくお願いします


 右も左もビルだらけ。人で溢れかえっていた。そんな都会の街中を、黎斗は歩いている。

 すると、彼の目の前に少年が現れた。彼の手にはガシャットが2つ、握られている。

 

 

「不正なゲームは私が削除する!」

 

 

 黎斗は腰に、バグスターバックルを巻き付けた。バグヴァイザーを取り付け、バグルドライバーとする。

 デンジャラスゾンビガシャットが斜めに挿入された。

 黎斗が赤いスイッチを押すと、彼の正面にパネルが現れる。さらに、黒いもやが彼を包んだ。

 

 

デンジャラスゾンビ! バグルアップ! デンジャーデンジャー! デスザクライシス! デンジャラスゾンビ!

 

 

 音声が鳴り終わった。黎斗の姿は、仮面ライダーゲンムゾンビゲーマーレベルXに変わる。パネルを突き破り、独特のフォームを構えた。

 一斉に悲鳴が上がる。辺りの人々が発したものだ。彼らは一目散に逃げていく。

 ゲンムが少年に右手を出した。ガシャットを渡すように促す。おとなしく聞き入れるだろうと、彼は甘く見ていた。

 少年はただ突っ立っている。痺れを切らしたゲンムは、少年へ一歩足を踏み出した。

 ゲンムの目的を、少年は理解する。彼は懐から、ゲーマドライバーを取り出した。腰にあてると、ベルトが巻かれる。

 

 

「な……なぜそれを!?」

 

「変身」

 

 

ウルトラマン! ウルトラマンティガ! ガシャット! レベルアップ!

 

 

 ガシャットを挿し、レバーを開いた。現れたパネルを通過すると、少年の姿が変わる。

 ゲーマドライバーがついているとはいえ、その姿はウルトラマンオーブスペシウムゼペリオンと酷似していた。

 別の宇宙に存在する光の巨人。この形態は特にバランスに優れ、多くの光線技を得意とする。

 背はゲンムとほぼ同じだ。

 

 

「俺の名はオーブ。仮面ライダーオーブ」

 

「くっ……宝生永夢といい君といい……この私に許可なくガシャットを生み出すとは!」

 

 

 ガシャコンスパローが召喚される。ゲンムはそれを両手に持った。

 オーブの左手に光が集まる。やがて光は円盤状と化した。スペリオン光輪をゲンムに投げる。

 ゲンムは左の鎌で弾き飛ばした。

 

 

「所詮私の敵ではない」

 

「それはどうかな」

 

 

 ゲンムが素早く走り、間合いをつめる。両手の鎌を振り上げた。

 オーブは隙をつき、ゲンムの胸を右手で殴る。

 恐ろしく力のこもった一撃。ゲンムは近くの信号機まで吹き飛ばされた。致死量のダメージを受け、アスファルトに横たわる。

 

 

「だが私は不死身だ!」

 

 

 ゲンムは黒い影のようなものを纏いながら、うねうねと起き上がった。意外に思ったのか、オーブが少し驚く。

 

 

「復活か。興味深いね。そのガシャットは」

 

「何を企んでいる?」

 

「俺はウルトラマンの力を、ガシャットを通じて得ることができた。それに仮面ライダーの力も合わさればまさに無敵! 俺が最強となれる! そうすれば俺は有名人だ!」

 

 

 いかにも子どもの発想。これには、神を自称するゲンムでさえも呆れ果てさせた。

 しかし今の彼には、それを実現させるだけの力がある。野望を実現させるためには邪魔だと、ゲンムは考えた。

 ゲンムはガシャコンスパローをくっつけた。鎌から弓になり、遠距離戦の適正が上がる。

 ゲンムが弓を射る。オーブは右手を突き出すと、虚空に円を描いた。放たれた矢は、オーブの生成した光の盾─スペリオンシールド─に防がれる。

 

 

「残念だよ。生みの親を自ら倒すのはね」

 

 

 オーブは左手で、ドライバーに挿さるガシャットを二本とも抜いた。左腰から新たなガシャット二本が取り出される。

 彼はドライバーにそれを挿し、レバーを開いた。

 

 

ガッシュート ウルトラマンメビウス! ウルトラマンタロウ! ガシャット! レベルアップ!

 

 

「紅に燃えるぜ!」

 

 

 オーブは新たな形態に変化した。その名もバーンマイト。炎を操る戦士で、パワーに優れる。

 ゲンムはスパローにドレミファビートを挿した。鏡飛彩から奪ったガシャットであり、モチーフは音ゲーである。

 

 

キメワザ! ドレミファ! クリティカルフィニッシュ!

 

 

「じゃあ俺も!」

 

 

 オーブはドライバーから、ガシャットを抜いた。腰のスロットにそれを差し込む。

 

 

キメワザ! メビウス! クリティカルストライク!

 

 

「ストビュームバースト!」

 

 

 オーブは身体から火の玉を放った。ゲンムは弓から、ポップな黄色い光線を撃ち出す。両者の攻撃が激突した。

 オーブの火の玉は、ゲンムの攻撃を徐々に飲み込んでいく。少しずつ肥大化し、勢いを増す火の玉。

 ゲンムは火炎に全身を覆われる。

 ライダーゲージが削られることはないが、熱さと傷みは大変な苦痛として現れた。ゲンムが地面をのたうち回る。

 ようやく鎮火した。強制的に、黎斗は変身解除される。黒いスーツはところどころ焦げており、ボロボロだ。

 

 

「おのれ……許さんぞ!」

 

「ガシャットを貰うよ」

 

 

 倒れている黎斗に、オーブが近づく。彼は徹底的に、黎斗の身体を触り始めた。手の感触で、ガシャットがどこにあるのかを探す。

 やがて、四つのガシャットが見つけられた。

 

 

「ゾンビにギリギリに……タドルクエストとドレミファビートも持っていたのか。サンキュー」

 

 

 ガシャットを両手に持ち、オーブは勝ち誇るように笑う。

 オーブの背中に痛みが走った。弾丸を受けたのだ。

 オーブが振り向く。そこには、仮面ライダースナイプシューティングゲーマーレベル2の姿があった。

 

 

「そのガシャットを俺によこせ」

 

「出たなスナイプ! お前のガシャットもコレクションに加えさせてもらうよ」

 

「させるか」

 

「ならば痛い目にあってもらおうか!」

 

 

 三組目のガシャットを使ったオーブが、再び姿を変える。

 

 

ウルトラマンジャック! ウルトラマンゼロ! ガシャット! レベルアップ! 

 

 

 今度はハリケーンスラッシュだ。非常に素早く、畳み掛けるような攻撃が得意である。

 オーブがガシャコンランスという名の槍を召喚した。形はオーブスラッガーランスと全く変わらない。

 スナイプはガシャコンマグナムを撃ちながら走る。オーブに近づくためだ。

 弾丸はすべてガシャコンランスによって弾かれた。しかし、スナイプは足を止めない。

 

 

「機動性重視のフォルムか。ならば……」

 

 

 二人の距離が狭まる。オーブがランスを横に薙ぎ払う。

 スナイプは重心を低くし、転がってかわした。それと平行して、ガシャットを起動させる。

 

 

ジェットコンバット! 

 

 

 振り向いたオーブが、スナイプを突き刺そうと槍を伸ばす。

 スナイプは槍の切っ先を足場にして、高くジャンプした。空中でガシャットをドライバーに装填し、レバーを開いた。

 

 

「第三戦術」

 

 

ガシャット! レベルアップ! ババンバン! バンババン! イェー バンバンシューティング! アガッチャ ジェットジェットインザスカイ! ジェットジェットジェット! ジェットコンバット!

 

 

 スナイプはコンバットシューティングゲーマーレベル3にレベルアップした。

 彼は上空からガトリング砲を乱射する。オーブが槍で弾こうとする。ところが、激しい銃撃はそれを許さない。スナイプは槍を吹き飛ばし、オーブをのけぞらせる。

 そのとき、オーブの姿がスナイプの視界から消えた。

 オーブは自分の周りを高速で動いている。そう考えたスナイプは、ガシャットを腰に挿した。

 

 

キメワザ! ジェット! クリティカルストライク!

 

 

「こいつを全弾逃れられるか?」

 

 

 四方八方から飛び出す弾丸やミサイル。しかし、スナイプは当たった手応えを感じなかった。彼は頭を振り、キョロキョロと辺りを見回す。

 

 

「後ろだよ」

 

 

キメワザ! ジャック! クリティカルフィニッシュ!

 

 

「オーブランサーシュート!」

 

 

 オーブはスナイプの背中に、槍を突きつけてきた。先端から光弾を発射し、スナイプを地面に落とす。

 オーブは瞬間移動で、スナイプの攻撃をすべて避けていたのだ。

 

 

「俺は英雄になるんだ!」

 

 

ウルトラマン! ウルトラマンティガ! ガシャット!

 

 

 オーブは再び、スペシウムゼペリオンになった。ガシャットをキメワザスロットホルダーに挿し、必殺技の準備を始める。

 

 

キメワザ! ティガ! クリティカルストライク!

 

 

「スペリオン光線!」

 

 

 オーブが腕を十字に組むと、光線が発射された。倒れているスナイプにクリーンヒットする。

 激しい爆発が起こった。砂煙によって、スナイプの姿が視認できなくなる。

 オーブが地面に着陸した。

 

 

ドラドラドラゴナイトハンターゼット!

 

 

 圧倒的な力の差を、まじまじと見せつけられたスナイプ。

 しかし彼はまだ、戦意を喪失してはいなかった。彼はドラゴナイトハンターZの力で、ハンターシューティングゲーマーレベル5フルドラゴンにレベルアップする。

 左腕のドラゴンガンから、ビームを発射した。オーブの胸に当たる。ほとんどダメージはないが、そのタフさはオーブを感心させた。

 スナイプは翼を羽ばたかせて煙を払う。多少ふらついてはいるが、彼はまだしっかりと構えていた。

 

 

「本当の戦いは……これからだ」

 

 

 そこに永夢とポッピーがやって来た。二人は付近の住民から通報を受け、駆けつけたのだ。

 ゲーマドライバーを腰に巻き付け、ガシャットを挿し、レバーを開く

 

 

「変身!」

 

 

マイティブラザーズダブルエックス! ダブルガシャット! レベルアップ! マイティブラザーズフタリデヒトリ! マイティブラザーズフタリデビクトリー! エックス!

 

 

「ノーコンテニューでクリアしてやるぜ!」

 

 

 仮面ライダーエグゼイドダブルアクションゲーマーレベルXが、オーブに立ち向かう。



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第2話 Genuine現る

仮面ライダーオーブ スペシウムゼペリオン

パンチ力 38t
キック力 45t
ジャンプ力 68m
走力 2秒

技  スペリオン光線
   スペリオン光輪
   スペリオンシールド


「仮面ライダー!?」

 

 

 正体不明の存在に、明日那も驚かされる。彼女は、瓦礫にもたれ掛かっている黎斗を見つけた。飛彩から奪ったガシャットを返すように迫る。黎斗は彼女を軽く小突き、乱れた服を正した、

 

 

「今は私に構っている暇などないはずだ」

 

「今だけはゲンムが正しい。それにあいつはゾンビのガシャットを持っている。それさえ奪えばゲンムなど恐れるに足らない」

 

「なるほど……わかったぜスナイプ!」

 

 

ウルトラマンタロウ! ウルトラマンメビウス! ガシャット! レベルアップ!

 

 

 スナイプが左腕のドラゴンガンを発射した。オーブはそれをジャンプして避けると、キックを繰り出す。

 彼はドラゴンブレードでそれに対抗しようとした。足と剣が激しく衝突する。

 打ち勝ったのはオーブ。スナイプは倒れてしまった。

 オーブの死角から、エグゼイドが飛びかかる。オーブは自身の腕を燃やすと、エグゼイドにパンチを喰らわせた。

 エグゼイドは吹っ飛ばされながらも、ドライバーのレバーを一度閉めて再度開く。

 

 

「だ~い変身!」

 

 

オレガオマエデオマエガオレデマイティマイティブラザーズダブルエックス

 

 

 エグゼイドはレベルXXとなり、二人に分裂した。

 

 

「「超協力プレイでクリアしてやるぜ!」」

 

 

 オーブは再び高く跳んだ。全身に炎を纏い、急降下してくる。スワローキックだ。

 オレンジ色のライトは、敢えてかわさない。キックが決まり、苦しむライト。ところが、熱さと傷みにたえて、オーブの足をしっかりと掴む。

 オーブの動きは封じられてしまう。

 

 

「離せ! おい!」

 

 

 緑色のレフトが、オーブの顔面に殴打を与える。ライトがオーブを、地面に何度も叩きつけた。

 二人のエグゼイドが、オーブを蹴り飛ばす。

 

 

「「フィニッシュは必殺技で決まりだ!」」

 

 

 ガシャコンキースラッシャーが召喚された。ライトはドライバーからガシャットを抜き、武器のスロットに挿す。

 ガシャットの効果により、ガシャコンキースラッシャーがもう一本現れた。レフトがそれを手にする。

 

 

キメワザ! マイティブラザーズ! クリティカルフィニッシュ!

 

 

 剣を構える2人のエグゼイド。刀身にはビビッドなエフェクトが流れる。

 

 

「てめえらはぜっていに許さねえ! 殺してやる!」

 

 

キメワザ! タロウ! クリティカルストライク!

 

 

 オーブの激昂に合わせて、全身が燃え上がる。両腕をがっしりと開いた。

 一呼吸おいた後、エグゼイド目掛けて勢いよく突撃する。

 

 

「ストビュームダイナマイト!」

 

 

 エグゼイドは待ち構える。彼らはオーブの接近に合わせて、刀を横薙ぎに払った。

 辺りが激しい爆発に包まれる。

 その衝撃でスナイプ、明日那、黎斗は弾き飛ばされた。

 

 

「少しは……やるね。みくびっていたよ……」

 

 

 視界が開け、三人の姿が見えるようになった。オーブとエグゼイドは、背中越しに立っている。

 体力を大きく消費して、傷ついていた。

 

 

「だが……俺の勝ちだ!」

 

 

 声高らかに、オーブが宣言する。

 エグゼイドのライダーゲージは、残り一メモリ。彼らは倒れて、変身も解除された。力尽きた永夢は動かない。

 

 

「さあ、ガシャットを渡してもらうよ」

 

 

 オーブが永夢に近づこうとする。スナイプがそれを妨げた。

 彼はドラゴンブレードで、オーブを下から縦に切り裂く。倒れた永夢の前を、スナイプが立ち塞がった。

 

 

「くっ……油断しちゃった……」

 

 

 炎を纏わせたオーブのパンチが、スナイプの頭に振り下ろされる。連続で殴られる中、スナイプは永夢に叫んだ。

 

 

「さっさと立て! ガシャットを奪われてもいいのか?」

 

 

 この叱責により、永夢は意識を取り戻した。しかし彼はまだ動けない。

 それほどまでに、先程のダメージが大きかったのだ。加えて、以前から悩まされていた激しい頭痛が、彼を襲っている。

 

 

ウルトラマンジャック! ウルトラマンゼロ! レベルアップ!

 

 

「お前のもあとで奪ってやるから、少し寝てて」

 

 

 オーブはハリケーンスラッシュになった。

 槍をもってスナイプに攻撃を加える。前後、左右、斜めから来る素早い連撃。

 スナイプはかわすことも、弾くこともできずにゲージを消耗していく。

 

 

「た……大我さん……!」

 

「自分の心配だけしていやがれ……」

 

 

 このままではスナイプが危ない。

 そう考えた永夢は、痛みを圧して立ち上がった。ふらふらとしながら、二本のガシャットをドライバーに挿す。

 

 

「大大大変身!」

 

 

ガシャット! レベルアップ! マイティジャンプ! マイティキック! マイティマイティアクションエックス! アガッチャ シャカリキシャカリキバッドバッド! シャカットリキットシャカリキスポーツ!

 

 

 オーブとスナイプの間に、エグゼイドが割って入る。彼は肩からタイヤを外した。オーブ目掛けて勢いよく、タイヤを叩きつける。

 スナイプも両手の装備を振るって、追い討ちを仕掛けた。しかし彼は、オーブの蹴りを腹部に喰らう。

 

 

「何度やっても無駄無駄!」

 

 

 横に払われるガシャコンランス。エグゼイドがタイヤで受け止めた。

 もっとも、衝撃まで殺せるわけではない。エグゼイドは後退り、両者の距離が開いた。

 

 

「やめろ!!」

 

 

 そこに一人の男が走ってやって来た。彼は二人のライダーの前に立ち塞がる。エグゼイドは足元のおぼつかず、スナイプは腹をおさえ仰向けにうずくまっている。

 

 

「ここまで追いかけてきたの? クレナイガイ!」

 

「そうだ。先輩方のカードを返せ!」




仮面ライダーオーブ バーンマイト

パンチ力 48t
キック力 55t
ジャンプ力 50m
走力 4秒

技  ストビュームダイナマイト
   ストビュームバースト
   ストビューム光線


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第3話 始まるmain

仮面ライダーオーブ ハリケーンスラッシュ

パンチ力 25t
キック力 32t
ジャンプ力 80m
走力 1.2秒

技  オーブランサーシュート
   ビッグバンスラスト
   トライデントスラッシュ
武装 ガシャコンランス


仮面ライダーオーブ サンダーブレスター

パンチ力 60t
キック力 75t
ジャンプ力 45m
走力 8秒

技  ゼットシウム光線
   ゼットシウム光輪
   サンダークロスガード


 睨み合うオーブとガイ。オーブが槍で突き刺そうとする。ガイはオーブリングでそれを受け止めた。

 

 

「これ以上好き勝手にはさせない!」

 

 

 ガイは受け止めたまま、カードを読み込ませる。出現したオーブカリバーを天高く掲げた。ガイの身体が光に包まれ始める。

 

 

カクセイセヨ オーブオリジン! 

 

 

「変身するのか?」

 

「新しい……仮面ライダー?」

 

 

 スナイプとエグゼイドは、状況の整理がついていない。それも無理はない。なぜなら、元々ガイはこの世界の者ではないからだ。

 

 

「俺の名はオーブ。ウルトラマンオーブ! 銀河の光が我を呼ぶ!」

 

 

 ガイの姿がオーブオリジンに変わる。とはいえ、普通の大きさになれば、人間大の敵と戦うことは難しい。

 そのため、彼はすぐに背を縮めさせた。

 

 

「まだ条件が同じになっただけのこと!」

 

 

 偽のオーブはまだ余裕の態度を崩さない。ガシャットをガシャコンランスを挿し込む。

 

 

キメワザ! ゼロ! クリティカルフィニッシュ!

 

 

「トライデントスラッシュ!」

 

 

 偽オーブが素早く槍を振り回す。本物はそれらをすべて、紙一重で避けた。

 自分がこれまで使ってきた武器と酷似するため、動きや使い方を読むことができるのだ。

 

 

「流石に強いや……こうなったら」

 

 

 正面からでは敵わないと、偽オーブは悟った。彼はまるで蜃気楼のように姿を消す。

 もちろん、実際に消えたわけではない。瞬間移動を使っているだけだ。

 偽者はオーブの真上に移動していた。槍の切っ先を下に向けて急降下を始める。

 

 

「そこだ! オーブウィンドカリバー!」

 

 

 ところが、偽オーブの奇襲は簡単に失敗した。

 オーブはオーブカリバーのダイヤルを回す。属性を選択すると、グリップ付近のトリガーを引いた。

 カリバーから放たれた緑色の竜巻。それを浴びた偽オーブは、地面に墜落する。

 

 

「うぐ……やるね! いいよ、本気を見せるよ」

 

 

 まだ全力ではなかった。その事実はエグゼイド、スナイプ、明日那、黎斗を大いに驚かせる。

 偽オーブはドライバーから、今までのガシャットを抜いた。そして代わりに、新たな2本のガシャットを入れる。

 

 

ウルトラマンベリアル! ゾフィー! ガシャット! レベルアップ!

 

 

 白と黒の閃光が偽オーブから発せられた。光は一度膨張し、再び彼の体内に戻っていく。

 そこには、新たな姿をした偽オーブが立っていた。

 光と闇の力を秘める黒き姿・サンダーブレスター。彼は力一杯に、オーブを殴りかかる。

 オーブもオーブカリバーを振り下ろした。カリバーはなんとか敵の拳を弾くが、威力は偽者の方が上だ。

 

 

「このままじゃオーブが負ける!」 

 

 

キメワザ! シャカリキ! クリティカルストライク!

 

 

「ふん……」

 

 

キメワザ! ドラゴナイト! クリティカルストライク! 

 

 

 オーブの苦戦を知るとすぐに、二人はガシャットを左腰に挿した。キメワザのチャージに取りかかる。

 エネルギーの詰まったタイヤを、エグゼイドが投げつける。

 スナイプは飛び上がり、上空から一斉砲火を浴びせた。

 二人の攻撃が偽オーブに襲いかかる。ところが、偽オーブが生成した光のバリアーによって、呆気なく防がれてしまった。

 

 

「オーブフレイムカリバー!」

 

 

 オーブも続けて必殺技を放つ。カリバーの刃に、赤く輝く球状のエネルギーを生み出した。彼はそれを敵に繰り出す。

 

 

キメワザ! ベリアル! クリティカルストライク!

 

 

「ゼットシウム光線!」

 

 

 偽者は腕を十字に組む。光と闇の力が込められた光線が放たれた。

 二人の技がぶつかる。当初、技の威力は互角に近かった。

 ゼットシウム光線は徐々に威力を増していく。オーブは、次第に追い詰められてしまう。

 

 

「どうやって攻略すれば……」

 

 

 自分達の持てる力をすべて出しきっても敵わない。

 エグゼイドはその事を痛感させられてしまった。そんな彼に、スナイプが再び発破をかける。

 

 

「なに弱気になってやがる。俺達は遊びでやってんじゃねぇんだよ。一つしかねえ命、賭けて戦ってんだ!」

 

「あぁ! やってやろうじゃねぇか!」

 

 

 エグゼイドが闘志を取り戻す。彼はマイティブラザーズXXを取り出した。ドライバーにそれを挿し込み、レバーを操作する。

 

 

マイティブラザーズダブルエックス!

 

ガシャット! ダブルアップ! オレガオマエデオマエガオレデマイティマイティブラザーズダブルエックス!

 

 

 パワーアップしたエグゼイド。

二人はガシャコンキースラッシャーと、ガシャコンブレイカーを召喚した。それを手に、偽オーブに立ち向かっていく。

 偽オーブは電柱を引き抜くと、それを振り回した。命中したエグゼイドがぶっ飛ばされる。

 

 

「オーブグランドカリバー!」

 

 

 オーブは剣を地面に突き刺す。円を描くように、光線が偽オーブに接近した。

 地面は危険。偽オーブはそう考えた。電柱を捨て、空へ飛び立つ。

 彼はこのまま逃げ延びるつもりだ。

 それを防いだのはスナイプだった。彼はドラゴンガンを発砲する。エネルギー弾が当たり、偽オーブが落ちていく。

 

 

「オーブスプリームカリバー!」

 

 

 重力に引っ張られて落ちていく偽オーブ。本物のオーブは、彼にカリバーの切っ先を向けた。放たれた光線は、偽オーブに綺麗に命中する。

 

 

「ぐあぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 激しい爆発と共に彼は落下した。力なく横たわり、ダメージに苦しむ。

 しかし、気力を振り絞って立ち上がった。それほどまでに彼は、ガシャットの欲望に枯渇しているのだろう。

 

 

「「今度こそ決める!」」

 

 

キメワザ! マイティ! ダブルクリティカルストライク!

 

 

 二人はまず、飛び蹴りを放つ。彼らは空中で回りながら、敵に何度も足をぶつけていった。

 疲労した偽オーブにはもう、為す術が無い。

 エグゼイドはLVXに戻った。偽オーブを両手で突き上げる。

 いつのまにか、エグゼイドは偽オーブよりも更に高い地点にいた。そこから放たれるライダーダブルキック。

 偽オーブは地面に強く叩きつけられた。

 少年は変身がとけて、横たわる。

 

 

「先輩方のカードを返すんだ」

 

 

 ガイは怒った形相で詰めかける。少年が恐れをなした。彼は計八枚のカードをガイに渡した。

 目的を果たしたガイは、すぐさま少年から離れる。

 

 

「さあ私のも返してもらおうか!」

 

 

 続いて黎斗も、ガシャットの返還を要求した。しかし先程とはうって変わり、少年は震えながら首を横に振る。

 少年はうずくまった。黎斗は足を高く振り上げ、勢いよく彼の背中にそれを落とした。かかと落としを受け、少年は嘔吐きそうになる。

 周りの制止の声など、黎斗はもちろん聞かない。止めようとする明日那を、彼は軽く受け流す。

 永夢と大我も動こうとするが、戦いの影響か身体が言うこということを聞かない。

 黎斗は四本のガシャットと、八本の不正なそれらを無理矢理奪った。

 

 

バグルアップ! デンジャラスゾンビ!

 

 

 黎斗は仮面ライダーゲンムレベルXに変身した。ドライバーの二つのボタンを押す。

 

 

「闇へ追放してやる」

 

 

クリティカルデッド!

 

 

「やめろゲンム!」

 

「黎斗さん……まさか!」

 

 

 少年の身に危険が迫っていることは、火を見るよりも明らかだった。二人はガシャットを起動する。地を這いつくばって、ゲンムに近づこうとした。

 

 

マイティーアクションエックス! バンバンシューティング!

 

 

「これは私自身の問題だ。口を挟むな」

 

 

 ゲンムを中心に、黒い塊が大量に出現した。それらはだんだんと少年に近づいていく。

 少年を助けるため、エグゼイドとスナイプが走り寄る。

 

 

「あっ……あああ……ああああああ!!!」

 

 

 しかし二人は間に合わなかった。少年の身体に多数の塊が触れた瞬間、それらは爆発を起こす。 

 爆風が晴れたとき、既に黎斗の姿はなかった。

 

 

「何なんだ……あいつは……」

 

 

 事情を知らないガイは、目の前で起きたことを理解できずに呆然としていた

 そんな彼に永夢が話しかける。

 

 

「協力ありがとうございました! ところであなたはなんですか?」

 

「俺はクレナイガイ。各地をさすらう風来坊だ。さっきの少年に盗まれたものを取り戻すため、この世界に来た」

 

「ガイ……さん。あなたも仮面ライダーなんですか?」

 

「俺はウルトラマンだ。やってることはお前達と変わらないけどな。この世界の人類は任せた。じゃあな」

 

「はい! またどこかで会いましょう!」

 

 

 気がつくと、辺りは夕焼けに包まれていた。

 彼は周りへ挨拶を済ますと、どこかへ去っていった。

 

 

────────────────────

 

 

 黎斗の潜んでいる隠れ家。部屋は暗く、様々な物が乱雑に積まれている。

 黎斗がウルトラマンガシャットを何気無く眺めていると、そこにパラドがやって来た。

 

 

「しっかり回収していたのか。それにしても無様だったな」

 

「だが死のデータの蓄積には一役かった。というか、見ていたのか!」

 

「まあな。それで? そのガシャットはどうするつもりだ?」

 

「これにはウルトラマンと呼ばれる、未知の力が宿っているようだ。それを解析すれば仮面ライダークロニクルの完成も近づくだろう!」

 

 

 机に置かれていた7つのガシャット。パラドがその内のひとつである、ティガのガシャットを掴んだ。

 彼はガシャットのスイッチを押す。しかし音が鳴らない。

 

 

「どうやら壊れているな」

 

「なんだと!? 何が起きたんだ!?」

 

 

 黎斗はガシャットをじっくりと観察した。すぐに彼は、原因を突き止める。

 

 

「なるほど……誰かの手によって、遠くから意図的に壊されたようだな」

 

「やけにあっさりとしてるな」

 

「どうせ私以外が作ったゲームなどクズみたいな出来だからな!!」

 

 

────────────────────

 

 

 その日の夜。破壊された街に、少年の屍が残されていた。

 その周りに男が二人。彼らはどちらも、同じ白いスーツを着用している。

 

 

「ガシャットを壊してよかったのか?」

 

「利用されるよりはましだ。それにデータは残ってある」

 

「どこに?」

 

「この中だ」

 

 

 片方の男が、死体からゲーマドライバーを外した。死体を回収する気は無いようだ。

 

 

「これに少し細工を施した。ところで一つ、雑用を頼んでいいか?」

 

「なんだ?」

 

「私がドライバーからデータを抜き取ったら、これを元の場所に戻しておいてくれ」

 

「わかった」

 

 

 このゲーマドライバーは後に、復活した黎斗がマイティーアクションXオリジンと共に、使用することになるものだ。

 

 

「奴等は間違いなく、今後邪魔になるな」

 

「だろうな。いつかは倒さなくてはならん」

 

「ウルトラマンガシャットが完成したら、性能実験も兼ねて、奴等を排除だ」

 

 

 二人は死体を置き去りにして、夜の闇と共にどこかへ消えていった。




これらの不正なガシャットは実は単品で使うことも出来ます


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VS財団Xのウルトラガシャット編
第4話 Xの謎を追え


タドルレガシーと爆走バイクは正宗が作ったんですかね?


 数ヶ月が過ぎた。

 世間ではその間、幻夢コーポレーションに社長が帰ってきたり、新社長が就任したり、仮面ライダークロニクルが発売されたり、初代の社長が戻ってきたり、パンデミックが起こったりしていた。

 

 

「ようやくだ……」

 

 

 薄暗い部屋。その中で、二人の男が机の前に立っていた。一人はやせ形、もう一人はやや太り気味だ。

 身長はほぼ同じで、お揃いの白いスーツを着ている。

机の上には、沢山のガシャットが乱雑に置かれていた。

 

 

「これがウルトラマンガシャットか。なんと素晴らしい出来映えなんだ」

 

 

 痩せている方が感想を漏らした。太り気味の男は、それに同意するようにうなずく。

 痩せ形の男が机にジュラルミンケースを置く。彼がそれを開くと、太り気味の男がガシャットを、その中に入れ始めた。

 その作業が終わると太り気味の男は、ケースを閉めて鍵をかける。

 ケースを持ち上げた痩せ形の男。そして二人は、部屋をあとにした。

 

─────────────────

 

 それからさらに数日が経過する。バグスター出現の通報を受け、永夢はとある公園にやって来ていた。

 だがそこにバグスターはいない。代わりにいたのは、特徴的な白いスーツを着た男だ。

 

 

「待っていたよ。君は宝生永夢君だね?」

 

「そうですけど……通報したのはあなたですか?」

 

「そうだ。君を……いや、仮面ライダーを呼ぶためにね」

 

 

 男は胸ポケットから、ガシャットを取り出した。スイッチを押して起動させる。

 

 

ウルトラマンギンガ!

 

 

 ベルトを使わずに、ライドプレイヤーのように男の姿が変わった。

 その容姿は、ウルトラマンギンガそのものになっている。唯一違うところは身長のみ。

 永夢はその姿にどこか見覚えがあった。しかしそれを思い出すのはもう少しあとになる。

 

 

マイティーアクションエックス!

 

 

「大変身!」

 

 

ガシャット! レベルアップ! マイティーアクションエックス!

 

 

 走って間合いを詰める、エグゼイドとギンガ。二人が回し蹴りを放つ。

 お互いのキックが、それぞれの足に当たった。

 エグゼイドはガシャコンブレイカー(ハンマー)を手にする。ギンガの顔面目掛けて、それを振り下ろした。

 ギンガはその攻撃を、両手を交差させて防ぐ。

 

 

「やるね」

 

「何が目的なんだ?」

 

「邪魔な仮面ライダーを排除する。それが僕に与えられた任務」

 

 

 そのとき、エグゼイドの身体からパラドが現れた。

 彼はギンガをタックルで投げ飛ばす。

 

 

「何! どうして他の仲間が!? まさかバレていたのか!」

 

 

 ギンガは突然パニックに陥る。彼は今までの振る舞いとは正反対に、やかましく騒ぎ始めた。

 

 

「もう終わりだ! 殺されちゃうよ! 財団Xももうおしまいだ!」

 

「どうしてパラドもいるんだよ!? エグゼイドだけならともかく、パラドクスまでは無理だよ!」

 

 

 男は元の姿に戻る。それから彼は悲鳴をあげ、一目散に逃げていった。

 

 

「しらけることすんなよ……」

 

「財団X?」

 

 

───────────────────

  

 

 永夢はCRに戻る。彼はポッピーと飛彩に、行き先で起こったことについて話した。

 その後永夢は"財団X"について二人に聞く。しかし求める答えは返ってこなかった。

 

 

「財団X……聞いたことがある」

 

 

 ゲームの中から聞いていた黎斗神が、その事について話し始めた。

 なんでも財団Xは、檀正宗が幻夢コーポレーションを起業したとき、莫大な資金提供を行ったらしい。

 財団Xはこのときには既に先のこと─仮面ライダークロニクル─を予測していたのかもしれない。

 彼はそういった推測も交えつつ、財団Xについて自分の知っていることを語った。

 

 

「それにしても意外ね。いつもの黎斗なら『私の許可なくガシャットを生み出すことは許さない!』って怒るのに」

 

「温情などはないが、あそこには利用価値がある。私が消滅されたあとにも幻夢コーポレーションが維持できたのは、財団Xが裏で働きかけていたかららしい」

 

「奴等は私を掌で転がしているつもりなのだろうが、それは違う! 奴等はすべて、私のこの手の上で転がされていたんだよ!」

 

 

 貴利矢は黎斗神を無視して、疑問に思ったことと、気づいたことを喋り始める。

 

 

「相手の目的がさっぱり見えねぇな。一つ言えるとすれば、財団Xについて自分達に知らせる必要があったということくらいかな」

 

「どういうことだ? 監察医。組織の名称を口にしたのは、冷静さを欠いていただけではないのか?」

 

「そうだよ! 例えば永夢だけなら倒せたけど、パラドもいたから諦めたーとか」

 

「どうだろーな。財団Xのネットワークはとてつもなく凄まじい。だからパラドのことを知らないとは考えにくい。仮にそうだったとしても、ハイパームテキのことまで知らないのはあり得ないしな」

 

 

 敵の行動の意図がさっぱり読めず、困り果ててしまうドクター達、看護師、ゲームクリエイター。

 それを書き消すように、緊急通報の電話が鳴り響いた。明日那がそれに出る。

 

 

「はい、こちら電脳救命センターです。……わかりました」

 

「永夢! 飛彩! バグスターが!」

 

 

 二人と明日那は現場に急行する。そこで暴れていたのは、一体のウルトラマンだった。

 身長は一般人と変わらないが、強大な力で町の破壊にいそしんでいる。

 

 

「来たか。仮面ライダー」

 

 

 そこにいたのはタロウ。

 赤い身体と頭の二本の角が特徴的だ。



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第5話 破滅のEVE

「研修医、あれがさっきの奴か?」

 

「違いますが、恐らく仲間です。行きましょう!」

 

 

 二人は腰にゲーマドライバーを取りつけた。起動したガシャットをスロットに挿し、レバーを開く。

 

 

マキシマムマイティーエックス!

 

タドルレガシー!

 

 

「術式レベル100」

 

「MAX大」

 

「「変身!」」

 

 

ガシャット! ガッチャーン! レベルマックス! アップ!

 

 

タドルレキシ メザメルキシ タドルレガシー!

 

サイダイキュウノパワフルボディー! ダリラガーン! ダゴスバーン!

 

マキシマームパワーエックス!

 

 

 永夢は仮面ライダーエグゼイドマキシマムゲーマーレベル99、飛彩は仮面ライダーブレイブレガシーゲーマーレベル100に変身した。

 

 

「私に勝てるかな?」

 

「ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!」

 

 

 先に飛び出したエグゼイドが、タロウにジャンプパンチを与える。タロウは両手をクロスさせることで、受けきる。

 エグゼイドは彼の足に、自分の足を引っ掻けた。足を内側に折り曲げ、タロウを転ばす。

 一方、ブレイブは空中に光の剣を多数生み出した。タロウ目掛けて飛ばされる。倒れたタロウに突き刺さった。

 

 

「ぐおぉぉぉぉ!! はぁ……噂通りの強さだな……」

 

「いっきに決めるぞ、研修医」

 

「フィニッシュは必殺技で決まりだ!」

 

 

キメワザ! マキシマム! クリティカルブレイク!

 

    タドル! クリティカルストライク! 

 

 

 予想外のダメージを受け、タロウは避けられない。

 エグゼイドが地面を、屈強な腕で叩きつける。反動で宙に浮かせられるタロウ。

 そこに二人のライダーキックが決まった。

 かつてない激しい爆発が起こる。それは二人のキックが引き起こす爆発の規模を、遥かに越えていた。

 どうやらキックが命中する直前、タロウは自身の寿命を対価に、全身を爆破させる大技─ウルトラダイナマイト─を使っていたようだ。

 エグゼイドとブレイブは吹き飛ばされる。あまりの威力からか、永夢と飛彩は変身が解けてしまった。

 

 

「あんな秘密兵器を隠し持っていたなんて」

 

「自爆したということなのか……?」

 

 

 煙が晴れる。そこには、アスファルトがえぐれることで出来たクレーター以外は、何も残っていなかった。

 

 

「なんだったのでしょうね」

 

「知るか。ひとまずCRに戻るぞ」

 

 

──────────

 

 

 財団Xの基地の一室。その中に太りぎみ、痩せ形の二人の男がいた。

 そこに、もう一人の同じ格好をした男が入ってくる。

 

 

「行ってきたぞ……奴等の強さは我々の想像以上だ。俺はもう休ませてもらう……」

 

「お疲れさま」

 

「仮面ライダーはこの先、確実に邪魔になる。よって、今すぐ倒すべきだ」

 

「そうだな。っとなると、いくつか、ウルトラガシャットを残しておくべきだろ」

 

「あぁ。ギンガは確定として、あと七つほどは本部に送らないことにしよう」

 

 

 その後、二人は丸一日を費やして、作戦に使うガシャットを選んだ。

 

 

──────────

 

 

 CRに戻った永夢は、あることを聞き回る。まずは黎斗神が反応した。

 

 

「ウルトラマンオーブ? どこかで聞き覚えがあるな……あれだ! 不正なガシャットを八つも生み出した子どもだろ? それがどうしたんだ?」

 

「僕たちが近ごろ見た不審な人たちがそれに似ていたんです」

 

 

 とはいえ、実際にオーブを見たことがある者はごく僅か。今この場にいるのは永夢、明日那、黎斗神のみだ。

 その頃、飛彩はオペが入っており不在、貴利矢は消滅中だった。

 パラドは一応その場にはいたが、遠く離れていたためよく聞こえていなかったようだ。

 

 

「一刻も早くクズみたいなゲームを壊さないと気がすまない! 今すぐ対財団Xの作戦をたてる!」

 

 

 黎斗神が牢獄から叫ぶ。いつもであれば適当に聞き流す一同だが、今回ばかりは事情が違う。

 明日那をはじめとしたその場の全員が、準備に入った。

 

 

──────

 

 

 一時間後。CRでは黎斗神を中心に、財団Xと戦うための作戦がたてられていた。花家ゲーム病クリニックから、大我とニコもテレビ電話越しに参加している。

 永夢は書記を務めることになった。みんなの意見を要約して、ホワイトボードに書き留めている。

 貴利矢の活躍により、敵の居場所はすでに割れていた。そこは、公に財団Xの関連施設ということが知れ渡っている高層ビルである。

 

 

「敵の本拠地に全員で乗り込んで切除を行う、と考えているのは研修医、パラド、女子ゲーマー、檀黎斗。方法はどうあれ、それに反対なのが俺を含めた残りの奴等だ」

 

 

 司会の飛彩が、これまでに出た意見を纏めた。彼がさらに続ける。

 

 

「これから討論を行う。そして三十分後にもう一度、どちらに賛成するかを聞く」

 

 

 永夢と飛彩も椅子に座る。これから激しい舌戦が繰り広げられるのだ。

 

 

ゲームスタート!

 

 

パラド「敵のアジトに乗り込むのはRPGの基本だろ。よってこんな下らない会議は必要ない」

 

大我『説得できそうにないからって逃げるつもりか?』

 

パラド「なら反対側も反対の理由を言え」

 

貴利矢「戦いの基本はいかに自分のペースで展開できるかだ。罠があるかもしれない場所に赴くなんて論外だ」

 

ニコ『それじゃあ、むこうが出てくるまで待つってわけ!? そんな悠長なことしてやれるかって!』

 

黎斗神「その通りだ。不正なガシャットを削除するのはそれが一番早い!」

 

飛彩「監察医の推理が正しいとしたら、敵はわざわざ自分達の正体を明かしている。罠だと考えるのが普通だろ」

 

永夢「逆ですよ。そうやって僕らが手をこまねいているうちに、奴等はみんなの笑顔を奪っていくんです!」

 

貴利矢「根拠がない。でたらめを言って惑わせようとするな」

 

明日那「それに私達が不在のときに患者が運ばれてきたらどうするの?」

 

ニコ『それは……でも!』

 

大我『俺のところなら少し空けても問題ないが、CRはそうするわけにはいかねぇんじゃねぇか?』

 

パラド「よかったじゃんブレイブ。行けない理由が出来たぜ?」

 

飛彩「……俺は世界一のドクターだ。どんなにリスクの高いオペでも必ず成功させる」

 

永夢「じゃあ飛彩さんはこっち側ということで」

 

飛彩「だが……ポッピーピポパポの言ったことは無視できないぞ」

 

ニコ『それなら私がいるじゃん!』

 

大我『ニコ、お前!』

 

ニコ『なんか文句あるわけ!? もう私は大我の患者じゃ無いんだからいいでしょ!』

 

大我『これ以上何を言っても無駄か。ならせめて、こいつを預けておく』

 

ニコ『バンバンシューティング! 本当にいいの?』

 

明日那「私も賛成するね」

 

貴利矢「全滅する可能性についてはどう考えてんの?」

 

黎斗神「ハイパームテキは主人公最強の無双ゲーム! 永夢が負けんなどあり得ない!」

 

貴利矢「相手がハイパームテキの対策を仕込んでいる可能性はないのか?」

 

黎斗神「パラドの問題やリセット問題はすでに解決されている。ゲムデウスのようなものには苦戦するかもしれないが、あれは私にしか作れない! つまり正真正銘、弱点はない! 対策のしようがない!」

 

貴利矢「それなら自分は異論はないぜ」

 

 

ポーズ

 

 

「ちょうど時間になったから改めて問う。敵のアジトに乗り込もうとする者は挙手しろ」

 

 

 飛彩がそう言うと、話に参加していた全員の手が挙げられた。

 

 

ゲームクリア!

 

 

「ところで私をここから出してもらえるというのは本当か?」

 

 

 黎斗神が明日那に尋ねる。

 

 

「今衛生省に申請を出したところよ。事態が事態だから恐らく許可が出ると思うけど……」

 

 

 その後、彼らは細かい準備に入った。集合時間や侵入後の手筈の確認などだ。

 話し合いの結果、基本的に二人一組で行動することになった。飛彩は大我、貴利矢は黎斗神、ポッピーはパラド。永夢は斬り込み隊長として、最速クリアを目指す。

 それから、一日空けることへの院長への説明もあった。そのために片付けなくてはならない仕事を終わらせ、その日は解散する。

 

 

───────────────────────

 

 

 翌日の午前9時。永夢が集合場所に着いたとき、すでに他のみんなは到着していた。

 財団Xの前線基地は、高さ二百メートルの高層ビル。表向きはどこにでもありそうな普通の建物だ。

 その前に集結した仮面ライダー達。彼等はベルトとガシャットを手に持った。

 

 

「術式レベル100」

 

「第伍拾戦術」

 

「グレードX-0」

 

「MAX大」

 

「ハイパー大」

 

「「「「「「「変身!」」」」」」」

 

 

ガシャット! 

 

ハイパームテキエグゼイド!

 

タドルレガシー!

 

バンバンシミュレーション! ハッシン!

 

シャカリキスポーツ!

 

デンジャラスゾンビ!

 

パーフェクトノックアウト!

 

トキメキクライシス!



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第6話 洗われたbrain

 監視カメラ越しに、白スーツの二人は一連の流れを見ている。

 仮面ライダー達の声は彼らに聞こえているが、彼らの声は仮面ライダーには聞こえない。

 

 

『おい! 早く兵を出せ! 奴等がすぐそこまで来てんぞ!』

 

『安心しろ。手は打ってある』

 

 

 小太りの男が、胸ポケットから直方体を取り出した。大きさは10cmほどで、青く塗装されている。つまんでONとOFFを切り替えるスイッチが、取り付けられていた。

 

 

『なんだそれは?』

 

『これを作動させると、私が改造したバグスターウイルスが活性化される』

 

『改造バグスターウイルス? それを使うとどうなるんだ?』

 

『まあ見ていろ』

 

 

 変身を完了させた一同。突然ブレイブが、スナイプに斬りかかった。

 ゲンムとレーザーターボも、見境をなくして暴れ始める。

 

 

『そういうことか。財団X製のタドルレガシー、二本目の爆走バイクには例の改造バグスターウイルスがつまっていたのか』

 

 

 事実を唯一知っていた檀正宗が死亡したために、あやふやになっていた二本のガシャットの出所。

 なんとそれらは、財団Xが正宗に提供した物だったのだ。

 なぜ彼らが、ガシャット開発のノウハウを手に入れられたのか。その答えは過去に幻夢コーポレーションから盗まれた"ナイトオブサファリ"にある。

 彼らはこのガシャットを徹底的に分析した。その結果、外側を作る技術を得ることは出来た。

 しかし、ガシャットの肝となる要素。つまり、中のデータを一から作ることは出来なかったのだ。

 タドルレガシーと爆走バイクはそれぞれ、タドルファンタジーや一本目の爆走バイクのデータを、改造して作られた。

 ウルトラガシャットはデータとして、ウルトラフュージョンカードが使われている。

 数ヵ月前に事件を起こしたあの少年。彼に与えられた任務は、ガシャットとウルトラフュージョンカードを奪うことだったのだ。

 

 

『いつか、こんなこともあるかもと思ってな』

 

『ゲンムはどうしてだ?』

 

『忘れたか? 少し前に、奴のドライバーに細工を施しただろ』

 

『あのガキにウルトラマンのデータを盗ませたときのことか!』

 

 

──────────

 

 

「なんだ!?」

 

 

 思いがけない事態が起こったことに、頭の整理が追い付かないエグゼイド。

 そんなエグゼイドに、冷静さを取り戻させたのはスナイプ、ポッピー、パラドクスだった。

 自我を失ったブレイブ達をおとなしくさせるため、その三人がこの場に残る。彼らはエグゼイドに、先に行くよう伝えた。

 エグゼイドはその場を仲間達に任せると、敵のアジトへ乗り込む。

 

 

「ブレイブ! お前がなぜ操られているのか、俺にはわからない。だがそんなもの断ち斬れ!」

 

 

 スナイプが説得を試みる。しかしブレイブはまったく反応しない。

 ブレイブの斬撃を、避けたり両手の砲台で受けるスナイプ。

 彼は必死に訴えるが、効果はなかった。

 スナイプは、ブレイブを倒す覚悟を決める。彼はすべての砲台から、光線を発射した。それらは的確に、ブレイブの身体に命中する。

 しかし、ブレイブは無傷だ。ブレイブが接近してくる。それを防ぐ手段を、スナイプは持ち合わせていない。

 ブレイブの斬撃が、スナイプを襲う。ガシャコンソードによって、投げ飛ばされたスナイプ。変身も解除されてしまった。

 

 

「レベル差がありすぎる……それならば」

 

 

 大我は白衣のポケットから、二本のガシャットを取り出す。それらは仮面ライダークロニクルだった。

 以前ゲムデウスクロノスと戦ったとき、大我はクロノスの力を使いこなせず、敗北してしまった。

 それ以来彼は、クロノスの抗体を手に入れるため、何度もそのガシャットを起動している。しかしまだ、抗体の獲得には至っていない。

 

 

「スナイプ! それを使うのはやめとけ」

 

「そのガシャットは危ないよ!」

 

 

 パラドクスとポッピーは、大我に注意を促す。

 

 

「黙れ。お前達は目の前の敵だけを見ていやがれ」

 

 

 だが、大我は聞き入れない。彼は銃を構えるように、ガシャットを構えた。起動し、ゲーマドライバーに挿し込み、レバーを開く。

 

 

「変身」

 

 

ガシャット! ガッチャーン! レベルアップ! ライダークロニクル アガッチャ テンヲツカメライダー! キザメクロニクル! イマコソトキハキワマレリ!

 

 

 大我は仮面ライダークロノスに変身した。ゲーマドライバーでの変身のため、ポーズを使うことはできない。それから身体にかかる負担も大きい。

 しかし大我がブレイブを倒す術は、もはやこれしか残っていなかった。

 クロノスは二振りの剣─ガシャコンブレイカーとガシャコンソード─を召喚した。二刀流を巧みに操り、ブレイブと互角に渡り合う。

 互いの得物が、火花を散らしてぶつかった。衝撃の余波で二人の身体が吹き飛ぶ。

 間合いが空いた隙に、彼らはベルトからガシャットを抜いた。

 

 

ライダークリティカルフィニッシュ! ライダークリティカルフィニッシュ!

 

 

 ブレイカーとソードにクロニクルガシャットが装填される。

 

 

タドルクリティカルフィニッシュ!

 

 

ブレイブも必殺技を発動した。

 

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 クロノスはジャンプして、二本の剣を振り下ろす。ブレイブは、それの接近をギリギリまで待った。左から右へと剣を横に振るう。

 背中合わせに、向かい合う両者。数秒の沈黙のあと、クロノスはその場に倒れる。

 その手にはタドルレガシーと、ドライバーが握られていた。

 

 

「俺はなにを?」

 

 

 変身が解け、飛彩は正気に戻った。彼が振り向く。そこには安堵の表情を浮かべた大我が、白衣に手を突っ込んでいた。

 大我は飛彩に、次のことを話した。飛彩が操られていたこと。しばらくの間、タドルレガシーを使わないこと。

 大我の活躍によって、ポッピーとパラドクスも攻略の鍵を掴む。二人も彼と同じ方法を使った。

 それによって、貴利矢と黎斗神を元に戻すことにも成功した。



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第7話 Reflecterと最上級

 その頃、エグゼイドはひたすら階段を走って、登っていた。

 回りは一面、剥き出しのコンクリート。階段は12段ごとに折り返すようになっていた。そのため彼はその度に、敵が潜んでいないかどうか、神経をすり減らす。

 途中、何度か踊り場もあった。彼は時折、そこになにかがいる気配を感じていたが、敵は現れない。

 今までよりも広い踊り場に、エグゼイドは辿り着いた。そこであるものを発見する。

 

 

「お前はこの前の!」

 

 

 そこに待ち受けていたのはギンガた。待ち受けるといっても、威風堂々に佇んでいたわけではない。

彼は奥の冷たい階段に、ちょこんと座っていた。

 

 

「うわっ!? またでた!」

 

「道を開けな。そうすれば、痛い目を見なくてすむぜ」

 

「逃げない! 怖いけど……僕は戦う!」

 

 

 声高らかにギンガが宣言した。しかし言葉とは裏腹に、その足下は震えている。

 エグゼイドは一瞬でギンガとの間合いを詰め、パンチを繰り出す。その結果、エグゼイドは吹っ飛ばされた。彼は勢いそのままに、壁にのめり込む。

 

 

「あれあれ? どうしたの?」

 

「どういうことだ?」

 

 

 エグゼイドは壁を壊して脱出した。

 ガシャコンキースラッシャーを召喚すると、スロットにマキシマムマイティXを挿し込む。

 

 

キメワザ! マキシマムマイティー! クリティカルフィニッシュ!

 

 

「リプログラミングしてやるぜ」

 

 

 キースラッシャーから光線が放たれる。それがギンガに直撃した。そしてエグゼイドがダメージを受ける。

 

 

「なんで?」

 

「これで僕の勝ちが確定した」

 

 

 ギンガはエグゼイドに近づくと、回し蹴りを仕掛けた。まるでリンボーダンスのように、エグゼイドはかわす。

 天井まで飛び上がったギンガ。彼のクリスタルが青く発光を始める。ギンガが腕をL字に組むと、ギンガクロスシュートが発射された。

 撃たれたエグゼイドは傷つき、その場に座り込む。

 

 

「ハイパームテキ攻略にあたって、一番ネックになったこと。それが"どんな攻撃も効かない"ことだった。そこで僕は考えた。それをリプログラミングすれば良いと」

 

「そういうことか……でもそんな能力があるのならば、あのときに倒せば良かったんじゃないのか?」

 

「確かにそれも出来た。だけど、どうしてもここに来て欲しかったんだ。仲間と一緒にね」

 

「まさか、何か罠でもあるのか!?」

 

「そこから先は自分で見つけな。天才ゲーマーさん」

 

 

 エグゼイドが今、疑問に思っていることは二つ。

 何故最初に出会ったときに戦わなかったのか。どうやって攻撃を反射させているのか。

 しかし、その謎を落ち着いて解く時間は与えられない。

 ギンガの徒手空拳での攻撃をいなしながら、エグゼイドは思考を巡らす。

 そのとき、パラドクスが現れた。彼はギンガの拳を、エグゼイドの代わりに受ける。

 

 

「大丈夫か? らしくねぇぜ、永夢」

 

「パラド……」

 

 

 エグゼイドとブレイブ達の距離は、大きく離れていた。だが、パラドクスは永夢に感染するバグスター。エグゼイドの身体を乗っとる要領で、今のような登場を可能にした。

 

 

「そういうことか! わかったぞ、お前の攻略法が!」

 

 

 突破手段を閃くエグゼイド。彼はパラドクスのゲーマドライバーから、ガシャットギアデュアルを奪った。

 そしてそれを、ガシャコンキースラッシャーに差し込む。

 

 

キメワザ! パズルファイター! クリティカルフィニッシュ!

 

 

「やめろ!」

 

 

 ギンガが明らかに困り果てている。足下はガタガタと震え、腰も曲がっている。

 そんなギンガ目掛けて、エグゼイドは走り出す。その刀身で敵を斬り捨てた。

 エグゼイドもいくらかのダメージを負ったが、ギンガのダメージ量はそれ以上。男は元の姿に戻され、彼のガシャットも壊された。

 

 

「お前の跳ね返せる攻撃は一種類のみ。つまり、二種類以上の異なる攻撃を同時に与えれば、お前は完全には跳ね返しきれない!」

 

「見事だ……」

 

 

 ギンガに変身していた男は、それを最後に目を閉じた。気を失い、全身の力が抜けた。

 

 

「なるほど……だからこいつはあのとき、俺とのバトルを恐れたのか」

 

「あぁ。かなり一か八かの賭けだったけどな。ところでパラド、皆は無事か?」

 

「ゲンムが使い物にならなくなった」

 

「えっ!?」

 

「操られた原因は一部のガシャットにあるみたいなんだ。タドルレガシーと二本目の爆走バイク、ゲンムのドライバーは使えない」

 

「そんな……それじゃあ、さっさと俺たちでクリアしてやるぜ!」

 

 

 一方、こちらはブレイブ達。彼らも一向に景色の変わらない階段を、ひたすら登っていた。

 現在、彼らは一部のガシャットが使えない。そのため、ブレイブはレベル50、レーザーはレベル3、黎斗神に至っては生身だ。

 ここに乗り込む前、彼らは二人一組で行動するとこを決めていた。ところが、ガシャットに制限がかかったため、戦力的に不安はペアが現れる。

 そのため、パラドは永夢と一緒に行動させ、残りは全員で固まることになった。

 

 

「自分だけレベル低くない? ねえ、低いよね」

 

「私は変身すらできないんだぞ!」

 

「仕方ないでしょ。黎斗はどのガシャットを試しても暴れちゃうんだから! ゲーマドライバーが原因としか思えないよ」

 

「監察医、これを使うか? 今よりは多少ましになるだろう」

 

 

 ブレイブはレーザーに、ドラゴナイトハンターZを手渡した。

 

 

「これ使って暴走しない?」

 

 

 貴利矢がフルドラゴンを見たのは、永夢が使った時のみ。その後は消滅してしまっていた。復活後にはもはや誰も使っていない。

 そのため貴利矢にとって、ドラゴナイトハンターZを一人で扱うということは、見境もなく暴れまわる危険性を考えずにはいられなかった。

 

 

「嫌なら返せ」

 

「使う! 使うから! 5速!」

 

 

ガシャット! レベルアップ! バクソウドクソウゲキソウボウソウバクソウバイク! アガッチャ! ドドドラゴナーナナナー! ドラドラドラゴナイトハンターゼット!

 

 

「案外良い乗り心地じゃん」

 

 

 その後も階段をひたすらに登り続けていた一行。

 数十分が経った頃、新たな敵が彼等の視界に入り込んだ。

 

 

「来たか仮面ライダーども」

 

 

 踊り場に待ち受けていたのはウルトラマンマックス。

 最強最速の戦士の力が宿ったガシャットによって、変身した姿だ。

 

 

「ここは自分が引き受ける。試し乗りも兼ねて、こいつは自分が倒す」

 

「いいだろう。他の奴等は先に行け」

 

 

 マックスが道を開ける。ブレイブ達は、罠があるかもしれないと疑ったが、そんなものはなかった。レーザーを除いた一行は、そのエリアを楽に突破する。

 

 

「永夢はここを通らなかったのか?」

 

「エグゼイド攻略には他に適任がいる。だから彼に任せて、俺は隠れていた」

 

「なるほど。つまり確実に戦力を減らすために、仲間は先にいかせたってこと?」

 

「そういうことだ。さあ、そろそろ始めよう」

 

 

 その瞬間、レーザーの視界からマックスが消えた。

 レーザーはあちこちと、辺りを見回す。右後方から気配を感じた彼は、そこに向かって、ドラゴンの脚で蹴りこんだ。

 しかしそれは残像だった。

 

 

「なに!? 本体はどこだ?」

 

 

 レーザーは辺り一面にドラゴンガンを連射し始めた。一見すると宛もなくやっているように見えるが、敵の動きに見当をつけるという意味では、効果的だ。

 マックスはレーザーの首下を目掛けて、飛び蹴りを放つ。彼はドラゴンブレードでそれに応戦した。二つの攻撃は正面衝突する。

 速度と破壊力はマックスが上回る。レーザーは吹き飛ばされた。

 

 

「何て強さだ」

 

「レベル5で挑むのは悪手だったな」

 

「それならこれだ!」

 

 

ブンシン!

 

 

 レーザーがエナジーアイテム・分身を使用する。彼の体は八人に増えた。

 レーザーは数で対抗しようと考えたのだ。ところがマックスも分身し、同じ数になる。

 一対一で勝てないのだから、それは八対八でも同じこと。分身はすべて、あっけなくやられてしまった。

 

 

「これで終わりだ」

 

 

 マックスの下にマックスギャラクシーが飛んで来た。色は黄色で、姿は鳥のようである。圧倒的な攻撃力を持ち、遠距離も近距離も可能な万能武器だ

 レーザーは咄嗟に、混乱のエナジーアイテムを投げつけた。

 

 

「そんなの当たらねえよ」

 

「目的はあんたじゃない。その武器だ」

 

 

 マックスギャラクシーはアイテムの効果を受けた。ふらふらと、酔っぱらいのような動きをしている。

 マックスはエリア内のエナジーアイテムを眺めた。あったのは透明化、高速化、ジャンプ強化、暗闇。

 いずれもマックスの武器を、レーザーが奪うために使えそうなものばかり。

 レーザーは高速化を使った。彼は猛スピードで、マックスギャラクシーとの距離を詰めていく。盗られるのを防ぐため、マックスは間に割って入った。

 

 

キメワザ! ドラゴナイト! クリティカルストライク!

 

 

 レーザーは思いっきり、マックスを蹴り飛ばした。

 

 

「なんだと!?」

 

 

 マックスのガシャットが破壊され、人間の姿に戻る。

 

 

「あれ? のせられちゃった?」

 

「くっ……なるほど。マックスギャラクシーを奪おうとしていると俺に勘違いさせ、がら空きの俺を倒したのか」

 

「そういうこと。じゃあね」



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第8話 反撃のDouble Fantasy

 スナイプ達の目の前にウルトラマンヒカリが現れた。

 踊り場ではなく狭い階段に陣取り、行く手を阻んでいる。

 

 

「これでは必然的に一対一を強いられるな」

 

 

 スナイプは偶然にも一団の先頭にいた。彼はこう言うと、ヒカリを砲撃した。

 

 

「最初に脱落するのはお前か。そうだ、いいことを教えてやるよ」

 

「ご託はいい。お前をぶっ潰すだけだ」

 

「まあ聞きなさい。こいつを破壊すれば、使えなくなったツールが再び使えるようになる」

 

 

 ヒカリによって取り出された、手のひらサイズの直方体。

 彼はそれをフルボトルのように揺らして、スナイプ達を挑発した。

 

 

「てめえら! 何が目的なんだ」

 

「邪魔者の排除だ」

 

 

 スナイプに向かって、ヒカリが駆け出した。彼はスナイプの砲撃にも怯まない。

 ヒカリはキック繰り出した。スナイプは左の大砲で、なんとか受け止める。

 ヒカリは右腕のナイトブレスから、輝く光の剣─ナイトブレード─を伸ばした。

 剣を振り下ろすヒカリ。スナイプは避けられず、もろに斬られてしまった。

 

 

「終わりだ。花家大我」

 

 

 ヒカリが左腕を掲げた。ナイトブレスもエネルギーが溜まる。ヒカリば両腕を体の前で交差させた後、腕を十字に組んだ。

 必殺光線─ナイトシュート─が放出される。

 

 

「俺は倒される訳にはいかねえんだよ!」

 

 

キメワザ! バンバン! クリティカルファイア!

 

 

 スナイプはドライバーのレバーを開閉した。全身にみなぎるエネルギーを、全砲門から放出する。

 必殺技を放つスナイプとヒカリ。技の威力はヒカリに軍配が上がった。

 大我は変身が解けて倒れた。

 

 

「そんな……大我!」

 

 

 ポッピーの悲痛な叫びが、殺風景な空間に響き渡る。

 

 

「勝負あったな。次は誰がこうなりたい?」

 

 

 ヒカリはナイトブレードを再び伸ばす。先端を黎斗神たちに向けながら、問いかけた。

 

 

「お前を切除する」

 

 

 名乗りをあげたのはブレイブだった。彼は大我から、ギアデュアルβを取り上げる。

 

 

「レベル50のスナイプが敵わなかったのに、お前に勝ち目があるわけないだろ」

 

「俺は世界一のドクターだ」

 

 

 パラドのホルダーを、ブレイブは右腰に装着する。以前パラドクスと対峙したとき、彼の落としたホルダーを回収していたのだ。

 それから二本目のタドルファンタジーを起動した。

 

 

タドルファンタジー!

 

レッツゴーイング! キングオブファンタジー!

 

 

 現れるファンタジーゲーマー。ヒカリのナイトブレードより繰り出されたビームから、ブレイブを守った。

 

 

デュアルアップ!

 

サタンアピアードセイ マオウ! タドルファンタジー!

 

 

 ゲーマはブレイブに合体された。右腰のガシャットギアデュアルβ以外、これまでと姿は変わらない。

 しかし負担は増している。ブレイブは苦しみだした。

 胸を押さえてのたうち回る。目もいつもの黄色から、赤色へと変わった。

 それを見逃すヒカリではない。彼はブレイブに近づくために走り出した。光の剣が振り下ろされる。

 

 

「はぁぁぁ!」

 

 

 ガシャコンソードにより、ナイトブレードは真っ二つに折られた。

 ブレイブはようやく、二体の魔王を制御することができた。目の色も黄色に戻る。

 ドクターが持ち得る強い意思。かつてタドルレガシーを使用可能にした強い覚悟。

 これらがあったからこそ、これほどの短時間で力を自分自身のものへと変えられたのだろう。

 

 

「面白い。剣士どうし、自慢の剣で決着をつけようか」

 

「違うな、これはメスだ」

 

 

 再び伸ばされたナイトブレード。それとガシャコンソードが、何度も何度も打ち付けられる。

 ヒカリは、ブレイブの喉元を突こうとした。ブレイブはその攻撃を、マントをはためかせて防ぐ。

 ブレイブはマントに腕を絡めた。それがドリルのように回転する。

 ブレイブのドリル攻撃が、ヒカリの脇腹を掠めた。ようやく、ヒカリに一太刀浴びせることを成し遂げる。

 

 

「即席の変身にしては上出来だ......」

 

 

 ヒカリが構え直す。その目は先程までとはうって代わり、ブレイブの挙動を少しも逃さずに見ている。

 ヒカリが素早く、ナイトブレードを振り払った。その早さに、ブレイブは追い付けない。刃が彼を切り裂こうとする。

 そのとき、光の剣が突然消失した。さらに、ナイトブレスが粉々に砕け散る。

 

 

「その籠手はすでに破壊されていた。無免許医によってな」

 

「なんだと!?」

 

 

 スナイプは、自分に勝ち目が無いことを悟っていた。

 そのため、彼は後続に繋ぐために、ナイトブレスの破壊を画策する。

 ナイトシュートとバンバンクリティカルファイアが激突したとき、スナイプの標準はナイトブレスのみに向けられていたのだ。

 

 

「剣士としては俺の負けか。だが、このエリアを死守する者として、引くわけにはいかない!」

 

 

 ヒカリが右足から、回し蹴りを放つ。ブレイブは左腕の盾で、蹴りを受けきった。

 ブレイブはヒカリの足を斬った。切断こそされなかったが、ヒカリはもう自力で歩くことすらできなくなった。

 ヒカリは肩で息をしている。彼は膝立で、その場に座った。

 

 

「オペを完了させる」

 

 

 ブレイブがドライバーのレバーを開閉した。

 

 

キメワザ! タドル! クリティカルスラッシュ!

 

 

 また、腰からギアデュアルβを取り出した。ダイヤルを回し、再びホルダーにそれをしまう。身体中に紫のオーラが現れた。

 

 

キメワザ! タドル! クリティカルスラッシュ!

 

 

 ガシャコンソードを2回、虚空に×を書くように斬り払う。生み出された紫の衝撃波が放たれた。

 それを喰らったヒカリが元の姿に戻る。ガシャットとスイッチも壊された。

 ブレイブは敵の無力化を、しっかり確かめる。安心したのもつかの間、突然彼は膝から崩れ落ちた。変身も解かれる。

 見ると、ドライバーに挿していたギアデュアルβが粉々に砕け散っていた。想定外の負荷にガシャットが、耐えられなかったのだろう。

 

 

「やったー! これでガシャットが復活したよ!」

 

 

 スイッチが壊されたとはいえ、始め一同は安易に信用できない。しかし、黎斗神が試しにレベル1へと変身したところ、暴走する様子は見られなかった。

 

 

「あの男の言っていたことは、本当だったのか」

 

 

 嘘をつかなかったヒカリに、感心したブレイブ。彼はレガシーゲーマーになった。黎斗神も、ゲンムレベルX-0へと姿を変える。

 

 

「待たせたな」

 

 

 ブレイブ達が歩いていると、彼らの後ろから足跡が聞こえた。その音を発していたのはレーザーだった。

 彼は一行にようやく合流する。

 

 

「貴利矢! もうレベル0になっても平気だよ」

 

「了解、そんじゃ0速変身」

 

 

 

 貴利矢は、レーザーターボスポーツゲーマーに。

 なんの前触れもなく、彼がこんなことを言ってきた。

 

 

「さっきまで使えなかったガシャットやゲーマドライバーを、自分にいったん預けてくれない?」 

 

 

────────────────

 

 

 エグゼイドとパラドクスの前に立ち塞がる新たな刺客。その名はウルトラマンコスモス。いきなりエクリプスモードだ。

 パラドクスがエグゼイドに、ここは自分が引き受ける旨を伝える。彼はエナジーアイテム・暗黒を使った。

 コスモスは上へと続く唯一の通路を死守している。彼は視界を奪われたこともあり、エグゼイドのパンチを胸に喰らった。

 コスモスがよろけている隙に、エグゼイドがさらに上へと登っていく。

 

 

「俺と遊ぼうぜ」

 

「お前が消滅すれば、エグゼイドの息の根も止まる」

 

「それは俺を倒してから言ってみろよ」

 

 

 パラドクスが、ガシャコンパラブレイガンを撃ち放った。

弾はコスモスにすべて命中する。致命傷には至らないものの、幸先のいいスタートをきることができた。

 

 

─────────────────

 

 

 ブレイブ、スナイプ、ポッピー、レーザー、ゲンムが一列に並んで、狭い階段を登っている。

 レーザーに預けられたツール類は、いずれもすぐに返された。そのため、今はみんな最強形態だ。

 突然、階段に大穴が開いた。前にいたブレイブ、スナイプ、ポッピーは助かる。しかし、その中にレーザーとゲンムが落ちてしまった。

 鈍い音と共に、二人は地面に激突する。レーザーは上に乗っていたゲンムをどかすと、辺りを見回し始めた。

しかし、暗いため何も見えない。

 二人にはかすかに、ポッピーの声が聞こえた。

 

 

「大丈夫!? 黎斗! 貴利矢!」

 

「自分達はなんともない! 先に行ってくれ!」

 

「うん。気を付けてね!」

 

「なんも見えねぇなて随分下まで来ちまったみたいだ」

 

「何かがいるぞ……」

 

 

 暗闇に目が馴れてきた黎斗が、人影のようなものを発見する。

 

 

「引っ掛かった。お前らはここで終わりだ」

 

 

 穴を作り、ここに引きずりおとしたのはタロウだった。彼は不意打ちを仕掛けるつもりだったが、ゲンムに気配を気づかれてしまう。

 そのため、正面から仕留める作戦に切り替えた。

 

 

「行くぜ! 神」

 

「よくいった」

 

「はっ! ちょろいな」




ギンガ× マックス× ヒカリ× コスモス○ 

タロウ○ ????○ ???○ ??○





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第9話 At the topのお兄さん

 コスモスとパラドクスの戦闘が、そろそろ二十分を経とうとしていた。

 パラドクスはAボタンを押し、武器を斧に変えた。さらに、エナジーアイテム・高速化を出現させる。

 彼はそれを自分に使おうとした。ところが、エナジーアイテムは何故かコスモスの能力を上げた。

 

 

「俺は対パラドクス用の人員。パズルは通用しない」

 

 

 コスモスが自慢気に話す。パラドクスはエナジーアイテム・縮小化を虚空より取り出した。それに触れようとする。

 先程同様、コスモスは効果を横取った。その結果コスモスの身長は極端に縮む。

 

 

「一定の範囲内で使われたエナジーアイテムの効果をすべて得られるチート……ってところか」

 

 

 パラドクスはギアデュアルを、ガシャコンパラブレイガンのスロットに挿し込んだ。

 

 

キメワザ! パーフェクト! クリティカルフィニッシュ!

 

 

 パラドクスが引き金を引いた。そのとき、彼の背中に光線が当たる。彼がよろけたことにより、弾道は大きく逸れた。

 

 

「だらしないぞ、コスモス」

 

 

 パラドクスが振り返る。そこにいたのはゾフィー。彼は絶えず隠れていて、攻撃の機会をうかがっていたのだ。

 ゾフィーが巨大化のエナジーアイテムに触れる。コスモスは能力のお陰で、元の身長を取り戻すことができた。

 パラドクスを中心として見たとき、コスモスは右、ゾフィーは左に位置している。その二人が同時に、パラドクスに向かって走り出した。

 勝ちを確信するゾフィーとコスモス。一方でパラドクスも、余裕を崩してはいなかった。

 

 

「とっておきを見せてやるぜ」

 

 

 パラドクスはマイティブラザーズXXを、ガシャコンパラブレイガンに挿し込む。

 武器を変形させると、彼はパズルゲーマーとファイターゲーマーに分裂した。

 パズルゲーマーはコスモスの、ファイターゲーマーはゾフィーの相手を行う。

 パズルをする暇はないため、青いパラドクスは足止めに専念。まずはゾフィーから仕留める作戦だ。

 ゾフィーは左腕を横に曲げ、右腕を正面に突き出した。そこから放たれたのはM87光線。ウルトラマンでも随一の威力を誇る技だ。

 赤いパラドクスはそれの下を掻い潜りながら、距離を狭める。

 両者の拳が激突した。次いで、二人は乱打を繰り出す。しかし拳と拳がぶつかるばかりで、次に繋げることは出来ない。

 

 

「だぁぁぁ!」

 

 

 ゾフィーのハイキック。顎に当たったファイターゲーマーは、吹き飛ばされた。

 

 

「これで終わりだ。くらえ! M87光線!」

 

 

キメッワザ! ノックアウト! クリティカルスマッシュ!

 

 

 コスモスがパズルゲーマーに蹴り飛ばされる。彼が飛んだ先には、ゾフィーの光線が待ち受けていた。

 既に放たれた光線をキャンセルさせることは、使用者であっても出来ない。

 光線はコスモスを貫いた。コスモスのガシャットは壊される。

 

 

「しまった……」

 

「次はお前だ」

 

 

 その隙に、ファイターゲーマーは接近した。ゾフィーを連続で、左右に殴りまくる。

 グロッキーのゾフィー。赤いパラドクスは、それを拳で突き上げる。

 

 

キメッワザ! パーフェクト! クリティカルコンボ!

 

 

「「敗者らしいエンディングを迎えろ」」

 

 

 重力により落ちてくるゾフィー。パズルゲーマーは右足を高く上げたキック、ファイターゲーマーはアッパーパンチを放つ。ゾフィーはそれらの必殺技を受けた。

 彼は再び打ち上げられ、重力によって落ちる。その衝撃でガシャットは破壊された。

 パラドクスはその事を確かめると、一人のパーフェクトノックアウトゲーマーに戻った。

 

 

──────────

 

 

「こんなのどうやって倒すんだよ……」

 

 

 一方、レーザーとゲンムはタロウに苦戦を強いられていた。

 マキシマムゲーマーやレガシーゲーマーとの戦闘を通じて、タロウはさらなる強さを手に入れていたのだ。

 二人のあらゆる攻撃は効かず、もはや勝機はないと思われていた。そのとき

 

 

「……神の才能が必要になったか」

 

 

 そう呟くと、黎斗神は空のガシャットを出した。色が黒くなってはいるが、外側はマキシマムマイティXに似ている。

 

 

「永夢に出来て、私に出来ないものなどない!」

 

 

 彼が叫び出す。途端に、新たなガシャットが生み出された。

 タイトルには"ゴッドマキシマムマイティX"の文字が写し出されている。

 

 

「グレードビリオン、変身!」

 

 

ゴッドマキシマムマイティエックス!

 

ガシャット! ガッチャーン! フーメーツ! サイジョウキュウノカミノサイノウ クロトダーン! クロトダーン! サイジョウキュウノカミノサイノウ クロトダーン! クロトダーン!

 

ゴッドマキシマム エックス!

 

 

 仮面ライダーゲンム ゴッドマキシマムゲーマーレベルビリオン。

 シルエットはエグゼイドマキシマムゲーマーと同じだが、細部の色が異なる。暗闇の中なので、詳しい姿はわからない。

 

 

「で……でかい……」

 

 

ゲーマドライバーのレバーが閉められる。

 

 

ゲットオン キメワザ!

 

ガッチャーン! ゴッドマキシマム! クリティカルブレッシング!

 

 

 巨体が飛び上がる。ゲンムは空中で一回転すると、キックの体勢に移行した。

 

 

「ストリウム光線!」

 

 

 タロウの身体が虹色に一瞬輝く。彼は腕をT字に組む。ゲンムを撃ち落とすために、構えた腕から光線を放った。

 

 

「神の恵みを受けとれぇ!」

 

 

 光線をものともせずに進むゲンム。彼の足が、タロウの胸にぶつかる。

 タロウは勢いよく倒れた。そのまま、彼は後頭部を地面に強く叩きつけられて気絶する。ガシャットも壊された。

 

 

「神……どうしてこんなものを隠していたんだ」

 

「はぁ……はぁ……未知のガシャットは危険すぎるか……」

 

 

 黎斗神が元の姿に戻る。ドライバーの中の黒いガシャットは粉々に破壊されていた。

 

 

「自分でも予想外だったということか」

 

 

 レーザーは黎斗神を肩に担ぐと、落ちた穴から飛び立った。




ギンガ× マックス× ヒカリ× コスモス×

タロウ× ゾフィー× ???○ ??○

今回出てきたゴッドマキシマムマイティXはVシネのネタですが、細かい設定はオリジナルです。ご注意ください


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第10話 てっぺんのRing Leader

 エグゼイドは長い階段を登り詰めていた。最上階の部屋は丸く、周りは鉄筋コンクリートの壁。中央にはキャスター付きの椅子が八つと、長方形の机が二つ。

 待ち構えていたのは、白服の二人の男。彼らは真ん中でオセロに興じていた。

 彼等は立ち上がると、それぞれのガシャットを懐から取り出して起動する。

 痩せ形の男はウルトラマンティガに、小太りの男はウルトラマンゼロに変身した。

 飛びかかる二人。エグゼイドはガシャコンキースラッシャーを召喚すると、横にして二人の拳を受け止めた。

 パンチが強まる。初めは立っていたエグゼイドも、衝撃で押されていった。終いには立て膝の姿勢で、なんとか踏み留まるまでになる。

 二人は力を抜いた。ゼロは上に、ティガは後方に、ジャンプして逃れる。

 ティガは体色を紫にすると、右手から"ティガフリーザー"を繰り出した。他方でゼロは、頭の二つの"ゼロスラッガー"を飛ばす。

 二人の攻撃を受けたエグゼイドは、もうふらふらだ。

 

 

「限界のようだな」

 

「奴を殺すのは俺にやらせろ」

 

 

 絶対に勝てると踏んだのか、ティガは一人で戦うと言い出した。

 彼は赤い体色の"パワータイプ"になる。エグゼイドの顔を何度も殴った。

 倒れるエグゼイド。ティガはそれを蹴り上げて、宙に浮かべた。

 彼は"ゼペリオン光線"で追い討ちをかける。

 

 

「はぁ……まだ続けるのか。いい加減にくたばれよ」

 

 

 再三の攻撃にも関わらず、エグゼイドは立ち上がった。

 

 

「俺はみんなの思いを背負ってここまで来たんだ……絶対に全クリしてやるぜ」

 

 

 とはいえ虫の息に変わりはない。ここまでの連戦は確実に永夢の体力を奪っていたからだ。

 

 

「時間がかかりそうだな。どれ、私も手伝おう」

 

「すまねぇ。やっぱ頼む」

 

「そうはさせないぜ」

 

 

 パラドクスが駆け付ける。彼はゼロに弾丸を浴びせて、注意を引いた。

 ゼロが左腕のブレスレットを、鎧に変形させる。

彼はそれを身に纏い、ウルティメイトゼロとなった。

 ブレードの付いた右腕を前にだし、前進してくるゼロ。パラドクスは得物を斧に変える。降り下ろされる刃を受け止めた。

 

 

「今だ! 永夢、やれ!」

 

「あぁ!」

 

「そんなボロボロな身体で何が出来る。これで決める!」

 

 

 手刀を浴びさせようと、ティガが飛びかかる。当たればひどたまりもないだろう。

 エグゼイドは立ち上がると、ガシャコンキースラッシャーを左手に。そしてティガの胸を突き刺した。

 

 

ハイパークリティカルスパーキング!

 

 

 エグゼイドはドライバー上部のボタンを押す。剣にすべてのエネルギーが集まった。刃は神々しい黄金に輝く。

 ティガの絶叫の中、激しく爆発を起こした。

 

 

「よっしゃあ! これで残りはお前だけだ!」

 

 

 エグゼイドが切っ先を向けながら振り返る。ゼロはパラドの首を左手で掴み、右手で彼の顔面を何度も殴っていた。

 腕をだらんと下げ、抵抗する気力すら失うパラド。もう充分と考えたゼロは、彼を投げ捨てた。

 

 

「パラド……」

 

「次は貴様だ」

 

 

 エグゼイドがキースラッシャーで打ち込む。ゼロは斬撃をウルティメイトブレードで弾いた。流れるように、エグゼイドに斬り込んでいった。

 少しずつではあるが、エグゼイドはダメージを受けていく。

 

 

「お前に勝ち目はない!」

 

 

タドル! クリティカルストライク!

 

バンバン! クリティカルファイア!

 

クリティカルクルセイド!

 

 

 駆けつけたブレイブ、スナイプ、ポッピーのトリプルライダーキックがゼロに炸裂した。

 奇襲攻撃を浴びせられたゼロ。彼はなんとか両手で受け止めたが、その威力は決してバカに出来ない。

 さらにエグゼイドは、反撃の隙を得ることが出来た。

 エグゼイド渾身のパンチが、ゼロの頬に当たる。その勢いは凄まじく、彼は壁まで飛ばされた。

 

 

「みんな!」

 

「集中を絶やすな研修医。オペはまだ完了していない!」

 

「そうかよ。相変わらずブレイブは厳しいな」

 

 

 仲間との再会は、傷ついたエグゼイドには充分すぎる励ましになった。

 

 

「小癪な……こうなったら、奥の手を見せてやる」

 

 ゼロの身体か眩く輝きだす。その光は急激に膨張し、やがて彼はその中に消えた。



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第11話 Shiningの出発点

「今のうちにとどめを刺すぞ」

 

 

 スナイプが呼び掛けると、四人は必殺技の準備を始めた。

 

 

マキシマムガシャット! キメワザ! マキシマムマイティ! クリティカルフィニッシュ!

 

       キメワザ! タドル! クリティカルフィニッシュ!

           

           バンバン! クリティカルファイア!

 

           クリティカルクルセイド!

 

 

 ガシャコンキースラッシャーから放たれる光線。

 逆手に持たれたガシャコンソードより、繰り出される氷の塊。

 すべての砲台から撃ち込まれるエネルギー弾。

 全身から出される数々の旋律。

 しかし光が消え失せることはなかった。やがて光は収縮を始める。中から現れたのは銀と金のゼロ─シャイニングウルトラマンゼロ─

 

 

「くたばれ!」

 

 

 スナイプが砲撃を仕掛ける。だが、シャイニングゼロは怯む様子を見せなかった。それどころか彼は、ガードせずにスナイプに近づく。

 

 

「はぁぁ!」

 

 

 ブレイブは両手でガシャコンソードを握り、ゼロ目掛けて縦に振る。だが、これもまったく通用しなかった。その斬撃は、敵を切り裂くことができない。

 ポッピーもガシャコンバグバイザーⅡからビームを放って攻撃するが、やはり現状を変えることはできない。

 

 

「シャイニングエメリウムスラッシュ!」

 

 

 ゼロの額から、極太のビームが放たれた。それを受けて、壁まで吹き飛ばされるブレイブ、スナイプ、ポッピー。さらに彼らは、変身も解かれてしまった。

 

 

「残るはお前だな。エグゼイド」

 

 

 エグゼイドが何度も剣を打ち付けるが、効果はない。ゼロのパンチが、エグゼイドの胸部に入る。エグゼイドに大ダメージを与えた。

 

 

「この力……まさかハイパームテキのか?」

 

「御名答。その通りだ。まあわかった所で、対処法など無いがな」

 

 

 作戦会議の際、黎斗神が発言したことを思い出すエグゼイド。加えて先程の攻撃で、リプログラミングが通用しないことも確認済みだ。

 ハイパームテキが敵に回ることなど、彼は少しも考えていなかった。味方としては頼れるが、対峙するとなるとこれほど厄介なことはない。

 

 

ハイパークリティカルスパーキング!

 

 

 エグゼイドは剣を構える。一瞬で間合いを詰め、それを横凪ぎに払った。

 さらに振り向き様、圧倒的な素早さで剣を上下左右斜めに振り回す。

 

 

「威力の問題じゃ無いんだよ」

 

 

 攻撃は依然として効かない。そればかりか、ゼロはエグゼイドの首を左手で掴んだ。そして腕を上げる。

 

 

「絶望にうちひしがれろ」

 

「研修医!」

 

……

 ゼロが徐々に力をかけていく。初めのうち、エグゼイドは足をじたばたと動かして、抵抗していた。けれども次第にその動きは小さくなっていく。

 遂には完全に動かなくなってしまった。

 

 

「エグゼイド……」

 

「永夢……そんな……嫌だよ……」

 

「息絶えたか。残るは雑魚のみ」

 

 

 ゼロはエグゼイドを投げ捨てた。

 

 

「誰か忘れてないか?」

 

 

 力を振り絞り、パラドが立ち上がる。彼はゼロを後ろから羽交い締めにした。

 それに呼応するように、エグゼイドはガシャットをキースラッシャーに挿し込む。

 

 

ダブルガシャット!

 

キメワザ! ドクターマイティ! クリティカルフィニッシュ!

 

 

 エグゼイドが回りながら、横に斬りつける。遠心力を味方につけた一撃は、ゼロに膝をつかさせた。

 

 

「あれはゲムデウスの抗体。つまりゲムデウス以外には効果がないはずだ。まさか、奴の力の源は……」

 

 

 大我の推測は的を射ていた。ゼロガシャットには、ハイパームテキとゲムデウスの強大な力が詰められている。

 ハイパームテキの使用にはバグスターの協力が不可欠。そこで彼は、密かに入手していたゲムデウスウイルスを利用し、その条件をクリアさせていたのだ。

 ゲムデウスの力が封じ込められたため、ゼロはムテキの力を使えなくなる。

 

 

「貴様ら……どうやって息を合わせた……」

 

「俺とパラドの心は繋がっている! もうお前の好きにはさせない!」

 

 

 勝機を見出だしたパラド、飛彩、大我、明日那が再び変身した。

 さらにレーザーとゲンムも、ようやくその場に辿り着く。ここにすべての仮面ライダーが集まった。

 

 

「だが、シャイニングウルトラマンゼロの力を完全に失った訳ではない!」

 

「だとしても俺達の超超超協力プレイで、クリアしてやるぜ!」

 

「くらえ……シャイニングスタードライヴ!」

 

 

 シャイニングゼロが、頭上に光の珠を生み出す。すると、空間が乱れ始めた。

 この技は時間を巻戻すことができる。それが成されてしまえば、ここまでの戦いがすべて無駄になってしまう。

 

 

「これでゲムデウスのウィルスも、破壊されたガシャットも元に戻る。ゲームは振り出しに戻る!」

 

 

 しかしそれは失敗した。

 元はクロノスのリセットに対抗するために、組み込まれたセーブ機能。それがゼロの技の発動を無効化したのだ。

 

 

「私は負けない。まだ策はある!」

 

 

 そう言うと、ゼロは青い直方体のスイッチを取り出した。

 それは改造バグスターウィルスを、活性化させる為の物。ヒカリの持っていたスイッチは偽物だったのだ。

 当初の計画では入り口での戦闘で、仮面ライダーを減らす予定だった。しかし、大きな損失を与えることはできなかった。

 そこで、ブレイブ達を再び暴れさせるため、わざと一度解除していたわけだ。

 

 

「ゲンム……なぜ君が暴走したのか、その理由はただ一つ……」

 

「以前に私のドライバーを勝手に使用したからだろ?」

 

「どうしてその事を!?」

 

「簡単なことだ。ゲーマドライバーを作れるのは私だけだからな!」

 

 

 思惑を見透かされ、ゼロは大いに焦った。彼は力に任せてボタンを押す。けれども、ゲンム達が暴れることはなかった。

 

 

「改造バグスターウイルスとやらは、自分が抑制したんで」

 

 

 レーザーが飛彩達から、一部のガシャットやドライバーを預かったのはこのためだった。

 かつてゲムデウスウィルスの抑制まで可能にしたレベル0の力は、今もなお健在だ。



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第12話 よみがえるsunlight

「永夢! やっちゃって!」

 

「フィニッシュは必殺技で決まりだ!」

 

 

ハイパークリティカルスパーキング!

 

 

 飛び上がり、キックの体勢を作るエグゼイド。

 

 

「シャイニングワイルドゼロショット!」

 

 

 ゼロが腕をL字に組むと、そこから金色の光線が放たれた。

 エグゼイドは瞬間移動でゼロの背後に回り、それをかわす。それから、ゼロの背中に一撃目をいれた。

 その後も彼は、ゼロを翻弄しながらキックを打ち込む。

 最後の一発─合計して100発目─が入ったとき、ゼロに無数のヒットが浮かび上がった。

 

 

キュウキョクノ....イッパッ! カンゼンショウリ!!

 

 

 激しいダメージに苦しむなか、ゼロは元の人間の姿に戻る。

 

 

「これで終わったと思うなよ……仮面ライダー。我々はお前達を倒すために、お前達をここに誘き寄せていたのだ」

 

「この事は誰にも話していなかったのだが、私のガシャットが壊されると、自動的に建物内の爆破システムが作動される」

 

「傷ついた貴様らを殺すくらいは出来るだろう……」

 

 

 それを最後に、彼は言葉を発しなくなった。体力の限界を迎え、力尽きたようだ。

 

 

「なるほどね。それで自分達をここに誘きだしたわけか」

 

「壁をぶち破ってここをあとにする。お前達は俺とレーザーに掴まれ」

 

 

 スナイプはジェットコンバットを起動。そのとき彼は、バンバンシューティングをニコに預けていたことを思い出した。

 そこで彼はガシャットをキメワザスロットに挿し込み、ゲーマを呼び出す。これに乗って帰るつもりだ。

 ブレイブ、ゲンム、ポッピー、パラドクスはキメワザによって、壁を破壊した。

 彼らはそこから吹き荒れる風に、若干姿勢を崩されるが、特に何も起こらない。

 

 

「人数が多いからな……神とポッピーはガシャコンバグバイザーⅡに、パラドは永夢の中に入ってくれ」

 

 

 レーザーが指示を出す。彼はポッピーからバグバイザーを預かり、彼女とゲンムをその中に入れた。

 パラドクスも、エグゼイドの中に。

 飛び立つ準備が完了する。そのとき唐突に、エグゼイドがこんなことを言い出した。

 

 

「皆さんは先に行っていてください。僕は後から行きます」

 

「何を考えている? 研修医」

 

「ここには患者さんが残されています」

 

 

 ここで言う"患者さん"とは、永夢達と戦った白スーツの男達を指す。彼らは今も傷ついたまま、階段や踊り場に倒れている。

 

 

「永夢らしいな。いいぜ、そこの二人は自分達が運んどいてやるよ」

 

 

 レーザーはそう言うと、太り気味の男と痩せ形の男を回収する。彼らはそのまま、地上へ向かった。

 エグゼイドは猛スピードで、来た道を戻る。

 爆発は少しずつ起こるように調整されていた。そのため、至るところで道が塞がれていたり、足場がなくなったりしている。

 彼はそれを乗り越え、どんどん奥へと進む。

 幸いにも道は一本だったので、すんなりと敵を回収することができた。

 

 

────────────

 

 

 黎斗達は、ビルから少し離れたところに降り立った。ビルが壊れゆく様を眺めている。

 時刻はすでに午後七時。辺りはもう真っ暗だ。彼らが脱出してから既に七分が経っている。

 

 

「建物はもうもたない……何をしている! 研修医!」

 

「自分は永夢を信じる」

 

「永夢……早く来て!」

 

「まずい! 伏せろ!」

 

 

 大我が叫んだ次の瞬間、建物から大量の炎が吹き出す。轟音が鳴り響き、ビルは木っ端微塵に粉砕された。

 

 

「永夢……私に許可なく消滅することは許さない……」

 

「すみません。遅くなりました」

 

 

 彼らが諦めかけたそのとき、永夢とパラドは患者を連れて跡地から歩いてくる。

 二人は、レーザーとゲンムが戦った男を助けるために、下へ下へ向かっていた。最下層に辿り着いたとき、ようやくその男を見つけることができた。

 そこは地下だったので、爆発の影響を受けない。そのため、彼らは爆発が治まるまで、そこに身を隠していたのだ。

 

 

「ここがあの世なのか……? 違うまだ生きてる」

 

 

 太りぎみで白スーツの男が、意識を取り戻す。辺りを見回しだ彼は、状況を理解できずに悩み始めた。

 

 

「なぜ俺がまだ生きている?」

 

「お前達に聞きたいことがある。どうしてこんなことをした?」

 

 

 飛彩が尋ねた。すると男が、口元をにやけさせながら話始める。

 

 

「貴様らを誘き出した理由は二点。一つめは貴様らの抹殺、もう一つめは……」

 

「もう一つめは、本部に大量のウルトラガシャットを届けるまでの時間稼ぎだ!」

 

「不正なガシャットが他にもあるというのか!?」

 

 

 バグバイザーⅡの中にいた黎斗神が激昂。

 やや高くなったその声は、周りに騒音として受け取られた。

 

 

「その力を使って、自分たちにリベンジってわけ?」

 

「自惚れるな。そのガシャットはもっと壮大な計画のために使われるのさ」

 

 

 言い終わると、彼は再び口を閉じた。

 

 

「本部ってのはどこだ? 答えろ!」

 

 

 大我の訴えもむなしく、男は喋ろうとしない。

 

 

「早くなんとかしないと……」

 

 

 言いかけたとき、永夢は倒れた。体力の限界に達していたからだ。

 明日那は救急車の手配を始める。しばらくすると到着した。彼らはその中に、財団Xのメンバー八人と永夢をいれる。

 言葉には表していないが、大我にニコを心配していた。彼は飛彩の機転もあり、一足先に根城に戻る。

 貴利矢と明日那はバグスターであるため、CRまでワープした。

 残された飛彩はタクシーを呼ぶと、それに乗って聖都大学附属病院に向かう。

 永夢を含む患者の手当ては、総出で対処がなされた。何時間もの間一切気を抜くことなく、激しい戦いに身を投じた後にも関わらずだ。重傷者が一人もいなかったのが唯一の救いか。

 処置を終わらせた後、ドクター達はしばし休憩を取っていた。顔には疲れがはっきりと見られる。

 彼らは出前でケーキとロコモコを頼んだ。それが届けられるやいなや、彼らは一斉にがつがつと食べ始める。

 大我もクリニックに帰ってきた。だが電気はすべて消えている。彼はスマホを取り出すと、その光を頼りに院内を進んだ。

 

 

「ニコはもう寝たか……」

 

「お帰り! 大我!」

 

「うわぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 大我は廃病院を根城にしているにも関わらず、幽霊の類いが苦手だ。

 それが発覚したのは、ニコと二人で遊園地に遊びに行ったとき。なので当然ニコもその事を知っている。

 

 

「お帰り、大我。驚かせてごめんね」

 

「あ……あぁ、怪我はないか?」

 

「はぁ? 私が雑魚相手に傷つけられるわけないじゃん!」

 

 

 再び平穏な日々に戻る。

 しかしこれは、一時的なものに過ぎなかった。まもなく、別世界からの来訪者がやって来るのだから。



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番外編 クレナイ ガイの旅立ち
第13話 盗まれたFusion Card


 話は遡る。ちょうど永夢達の世界では、ブレイブ・スナイプVSグラファイトの決戦が行われていた頃。

 これは別の世界のお話だ。

 河川敷を歩くコート姿の男。彼の名はクレナイガイ。風来坊として、各地をさすらっている。

 彼の住む場所は永夢達がいる世界とは別の世界である。言わば平行世界というものだろうか。

 

 

「とっくに気付いてんだろ?」

 

 

 カラフルなパーカーを着た男が、ガイの後ろから声をかけてくる。それに気がついた彼は、振り向くとこう言った。

 

 

「お前はコレクターのシュウシュウ! 久しぶりだな。今は何を集めているんだ?」

 

 

 ギャザー星人シュウシュウ。一度興味の持った物はすべて集めようとするが、それが成された途端に、その事への興味を失ってしまう性格な宇宙人だ。

 だが、これまでに集めた物は大切に保管しているという少し矛盾した行動を起こしたりもする。

 かつては泥棒として暗躍していたこともあったが、ガイに犯行を止められたことで改心。罪を償ったあとにコレクターとして、第二の人生を歩んでいた。

 

 

「最近はカードだな。こんなの見たことない?」

 

 

 彼はウルトラマンエースの絵が描かれたカードを取り出すと、それをガイに見せた。言うまでもなくこれはウルトラフュージョンカードだ。

 

 

「それなら俺も持っている。欲しいと言わないと約束できるなら見せてやる」

 

「見たいみたい!」

 

 

 ガイはウルトラマン、ティガ、タロウ、メビウス、ジャック、ゼロ、ゾフィー、べリアル、ギンガ、ビクトリー、エックス、セブン、そして自分自身のカード─オーブオリジン─を見せた。

 

 

「おぉー! これは凄い。その手のマニアが高値で買い取ってきてもおかしくない」

 

「どれだけ積まれても俺は先輩方のカードを手放したりはしない」

 

「ちぇっ、残念だな。ならせめて写真だけでも撮らせてくれないか?」

 

「それくらいならお安いご用だ」

 

 

 シュウシュウは背負っていたリュックから、デジタルカメラを取り出した。

 ガイの手の上のカードを、一つ一つ丁寧に撮影する。

 そのとき、シュウシュウが突然倒れる。ガイはしゃがんで声をかけるが、すでに事切れていた。

 彼は辺りを見回す。視界に子供が映った。彼にとって見覚えのある、そして意外な人物だ。

 

 

「お前は!?」

 

「久しぶり。調子はどうだい?」

 

「生きていたのか。それより早く本題に入れ」

 

「そのカードをくれないか? 言っておくが僕は手段を選ばん」

 

 

 ガイは毅然とした態度を見せつける。説得不可能と悟った少年は、真の姿を現して巨大化。

 

 

「俺の名はガラ。冥土の土産に持っていけ」

 

 

 ガイは懐からオーブリングを取り出す。それから二枚のカードをかざした。

 

 

「ウルトラマンさん! ティガさん! 光の力お借りします!」

 

 

フュージョンアップ! ウルトラマンオーブ! スペシウムゼペリオン!

 

 

 ガイの姿が変わる。現れたウルトラマンオーブは、敵にスペリオン光輪を投げつける。

 

 

「効かないな」

 

 

 だがそれは、呆気なく手で弾かれる。大振りのパンチを打とうとするガラ。

 スペリオンシールドを貼って、防ごうとするオーブだったが、それは貫かれてしまう。

 彼は左頬の辺りを思いっきり殴られた。

 オーブが飛び立つ。敵との距離がある程度離れた。彼は右腕を真上に、左腕を真横に構える。

 

 

「スペリオン光線!」

 

 

 十字に組まれた腕から、光線が放たれる。ガラは両手をクロスさせて防ぐも、ダメージが残る。

 

 

「そんな調子では僕を倒すことはできない」

 

「それならこれだ!」

 

「ジャックさん。ゼロさん。キレノいいやつ頼みます!」

 

 

フュージョンアップ! ウルトラマンオーブ ハリケーンスラッシュ!

 

 

 オーブはハリケーンスラッシュに変身した。オーブスラッガーランスを召喚して、先端を敵に向けて急降下する。

 動きの読みやすい直進的な攻撃だったため、ガラは難なくかわす。ところが、オーブはそれを予想していた。

 彼は着地すると、振り向かずにランスの後ろで突く。意外な一撃を背中に受けたガラは、動揺させられる。

 オーブはランスのレバーを三回引く。必殺技のトライデントスラッシュを発動したのだ。素早く振り返ると、超高速の乱打を繰り出す。

 

 

「甘いな」

 

 

 ガラは攻撃をすべて、紙一重で避けきった。

 ガラは両手に紫のエネルギーを貯め、それを放出する。オーブが吹き飛ばされた。胸のカラータイマーが鳴り響く。

 

 

「とどめだ」

 

 

 右腕を伸ばし、指を広げて、手の平をオーブに向ける。銀と紫の光線が撃ち出される。

 

 

「ゾフィーさん。ベリアルさん。光と闇の力、お借りします!」

 

「ゼットシウム光線!」

 

 

 オーブはサンダーブレスターにフュージョンアップすると、光と闇の光線を発射。二つの禍々しい光線が、激しくぶつかり合う。

 技の威力は互角。しばらく硬直状態が続く。さらに威力を強める両者。

 

 

「うわぁぁぁぁ!!」

 

「ぐおぉぉぉぉぉ!!」

 

 

 圧縮された光線が、爆発を起こした。

 

 

「貴様のカードはもらった!」

 

 

 ガラは爆煙の中、平然とオーブに近づく。彼の胸に手を当てると、そこからカードが流出した。

 オーブは腹部を殴られ、元の姿に戻ってしまう。

 地面に落ち、うずくまるガイ。ほとんどのカードを奪ったガラは飛び去る。



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第14話 今、Arriveの刻

「どこに行ったんだ?」

 

 

 ガイは残された最後のカードを使って、オーブオリジンに変身した。逃げ出した敵を探すため、宇宙を飛び回っている。

 彼の眼前に三体の怪獣が見られた。ブルトン、ベムスター、キングジョーだ。

 これらの怪獣はいずれもガラのしもべである。

 キングジョーがブルトンの中に入った。キングジョーはそのままどこかへと去ってしまった。

 

 

「別空間に逃げたか……いやわかったぞ。奴の逃げ場所を!」

 

 

 ブルトンは物体を別空間に転送する能力を有する。これを使って逃げ延びたと考えたオーブが、突入を試みた。

 しかしそれは、割って入ってきたベムスターによって妨げれる。

 オーブカリバーが右斜め上から、敵に打ち付ける。ベムスターが斬撃を、両翼の先の爪で受け止める。

 次にオーブは、ベムスターの腹にキック。だが攻撃が当たる一瞬前に、腹部の口が開いた。彼の右足はその中に飲み込まれてしまう。

 

 

「離せ!」

 

 

 足を抜こうとするオーブだが、裏腹にどんどん吸われていく。ベムスターのくちばし連打の攻撃は、彼の頭や胸を傷つける。

 一打一打は大した威力ではない。けれども徐々に体力を消耗していく。

 

 

「なにをてこずっている? ガイ?」

 

 

 オーブにとって聞き馴染みのある声が聞こえた。どうやら声の主は、ベムスターの後ろにいるようだ。

 その男は蛇心剣を、左から横に素早く斬り払った。ベムスターの首が切り落とされる。視界の開けたオーブはようやく、ジャグラスジャグラーの姿を視認した。

 

 

「どうしてお前がここに?」

 

「知ってるかい? ガイ。別世界にあると言われるライダーガシャットを」

 

「ガシャット……仮面ライダーがいた世界のか」

 

「知ってたか。俺はその世界に行くためにブルトンの力を利用したが無理だった。どうやら強く頭に思い浮かべないと駄目らしい。それで俺は異世界に迷い混んだ」

 

 

 この場合、ガシャットを強くイメージしなければならない。しかしジャグラーはまったくの無知、実在を疑っている節まである。だから行けなかったのだろう。

 

 

「どうやって帰ったんだ?」

 

「お前を強く想像した。だから俺は今ここにいる。それでおま……」

 

「そうか、ありがとう」

 

 

 思いがけないヒントをもらったオーブ。彼は先程まで対峙していたガラを強く浮かべながら、ブルトンに飛び込んだ。

 

 

「あっおい待て! お前には聞きたいことがあったんだよ! あとライダーガシャットについて教えろよ!」

 

 

──────────

 

 

 オーブはブルトンを通り、青空の中の雲へワープした。そこが目当ての場所かは不明。しかし、時空移動することは出来たようだ。

 

 

「ここは……別世界の地球なのか? 風景が似ている」

 

 

 突然、彼の右横から巨体が突っ込んでくる。オーブは慌てて高度を上げる。そのお陰でなんとか、紙一重で避けることができた。

 

 

「キングジョー! やはりここが奴の逃げ場所か」

 

 

 キングジョーとオーブオリジンの、激しい空中戦の火蓋が切って落とされる。

 

 

「オーブウィンドカリバー!」

 

 

 オーブがカリバーから、緑色の風を飛ばす。キングジョーには効かない。平然と、オーブに近づいてくる。

 彼は剣を左斜め上から、振り下ろした。右手で掴むキングジョー。それからキングジョーは左拳で、彼の顔を何発も殴る。

 彼は剣から手を離すと、一度距離を取る。さらに上空に移動した。

 勢いをつけたキックを繰り出す。

 その攻撃がキングジョーの右腕に当たった。力が緩んだ隙に、オーブは剣を取り戻す。

 彼は至近距離からの、オーブフレイムカリバーをお見舞いした。熱く燃える刀身が、キングジョーに斬りかかられる。

 それでもまだ、傷をつけることさえ出来ない。だけど彼にとって、それは想定の範囲内である。キングジョーを高温に晒すことが出来れば、それで充分だった。

 キングジョーの右ストレートが炸裂した。腕をクロスさせて防ぐオーブだが、衝撃から彼は吹っ飛ばされる。

 キングジョーが高速で突っ込む。頭突きを狙っているようだ。

 

 

「オーブウォーターカリバー!」

 

 

 彼も猛スピードで直進を始める。すれ違い様に、キングジョーを切り裂いた。キングジョーは一瞬の内に、温度を急激に下げられた。それによって、各部位がひび割れていく。

 

 

「オーブスプリームカリバー!」

 

 

 零距離から放たれた光線は、脆くなったキングジョーを粉々に打ち砕いた。

 

 

「大分時間をロスしてしまった。奴はどこだ?」

 

 

 オーブは地上に降り立つと、ガイの姿に戻る。彼がたどり着いたのはアメリカのニューヨークだった。

 彼は縦横無尽に走りまくって、見失ったガラを探す。敵は少年以外の人間の姿にも化けているかもしれない。それでも彼は、見つけられる自信があった。

 一週間後、彼は分厚く白い布製の袋を、肩にかけた少年を見つける。どう見てもガラに違いない。隠そうという気がまるで見られない。

 

 

「重そうだな。手伝ってやろうか?」

 

「Who are you?」

 

 

 言葉が通じない。ガイは地球の特性─一つの星内で違う言語がいくつも使われていること─を思い出した。

 

 

「I am Gai. May I help you?」

 

「しつこいね君も。とっくにご存じなんだろ? 僕がガラだと」

 

「あぁ。俺の目は誤魔化せないからな。その袋はなんだ?」

 

「君から奪ったウルトラフュージョンカード。この中に入っているのは、それをもとに改造したガシャットだ」

 

 

 ガイのガシャットに関しての知識はごくわずか。

 仮面ライダーが変身に使うこと。別の宇宙にも噂が流れていること。この二つだけだ。

 

 

「それを渡せ。どうせそれをよからぬことに使う気だろ?」

 

「僕に勝ったらいいよ。残り一枚でなおも立ち上がる気があるならね」

 

 

 少年が異形の姿に変貌する。それに対して、ガイもオーブリングにカードを読み込ませた。

 

 

カクセイセヨ! オーブオリジン!

 

 

 ニューヨークの市街地を舞台に、二人の巨人の戦いが始まる。

 

 

「何度繰り返そうとも、結果は変わらない」

 

「変えてみせる。それがウルトラマンだ!」

 

 

 ガラは腕を突っ張りのように動かし、光弾を連発する。オーブが刃で受けた。剣を大きく振り上げて高く跳ぶ。

 彼は敵の頭上目掛けて、いっきに振り下ろした。

 一歩引くことで、ガラはかわす。けれども、そうなることはオーブの想定内だ。彼は正面に、剣を突き刺した。

 

 

「なに!? それに前回よりも、格段に威力が上がっている!」

 

 

 オーブカリバーはガラの光弾を受けて、破壊力を増していたのだ。わずか一太刀ではあるが、その一撃は戦況をひっくり返す。

 オーブは剣を引っこ抜く。それから、トライデントスラッシュのような、素早い滅多斬りを繰り出した。

 だが、突如としてガラが消える。彼は子どもの姿に再度化けたようだ。そう考えたオーブも、ガイに戻る。

 

 

「降参……ってことだな」

 

「悔しいが僕の負けだ……これは君に渡すよ」

 

 

 ガイが袋を受けとる。しっかりと、中にはガシャットが詰められてある。

 ガイはその場から立ち去る。彼の次なる行き場所は仮面ライダーのいる所。ガシャットについて、彼らより詳しい者などいないと、彼は考えたからだ。

 一月後。彼は日本に辿り着き、仮面ライダーの居場所を探し、ようやく聖都大学附属病院を突き止めた。

 

 

「絶対に許さんぞ、ウルトラマンオーブ。それから財団Xを潰した仮面ライダー! どっちも仕留めてやる……」



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完結編
第15話 Visitorは異次元から


 財団Xとの戦いから一週間が経つ。

 通報を受け、大我とニコは山奥にやって来ていた。そこには患者と、分離したバグスター─リボルバグスター─の姿が。

 大我はスナイプシミュレーションゲーマーレベル50に変身した。遠距離から高火力な砲撃を繰り返して、敵を圧倒する。

 

 

キメワザ! バンバン! クリティカルファイア!

 

 

「はぁぁぁ!!」

 

 

 すべての砲門から繰り出される強烈な一撃。リボルがやられ、患者の容態も良くなる。

 

 

「やったね!」

 

「掴むな!」

 

 

 大我が変身を解除、彼らはそのまま帰ろうとする。そのとき、大我にとって見覚えのある少年が、二人の行く手を阻んだ。

 

 

「久しぶり。覚えてる?」

 

「お前はあのときの奴か? てっきりゲンムの野郎に殺されたとばかり」

 

「あの程度じゃ死ねないね。もっとも、しばらくは気を失ってたけどさ」

 

「俺に何の用がある?」

 

「お前たちを人質にする」

 

 

 少年がニコ目掛けて走り出した。大我は変身すると、それを防ごうとする。

 

 

「邪魔だよ。はぁ!」

 

 

 少年は走って近づくと、スナイプにパンチ。スナイプが両腕で受け止める。

 スナイプは首の横の四門から、ビームを放った。少年はそれを、後ろに何度もバク転することで避ける。

 

 

「ただの人間じゃねぇようだな」

 

 

キメワザ! バンバン! クリティカルファイア!

 

 

 ゲーマドライバーのレバーは一度閉められ、再び開かれた。スナイプが一斉砲火を繰り出す。少年はまともに喰らった。

 

 

「ミッションコンプリート」

 

「本当にそうかな?」

 

 

 少年は刹那でスナイプの真ん前に。それから、右手を彼に添えた。

 至近距離から、光線が撃ち出される。スナイプは木々を薙ぎ倒し、岩を粉砕しながら、遥か遠くまで飛ばされた。

 少年は、怯えるニコを強引に連れ去る。

 

 

「何者なんだ……奴は……」

 

 

 変身のとけた大我。彼は弱りながらも、少年を追いかける。自分の注意不足に対する憤りに、思考を乗っ取られながら。

 

 

────────────

 

 

 CRにて、貴利矢と黎斗神が話している。永夢は静養中、飛彩は手術、明日那は永夢や他の患者の看病のため、パラドは永夢に頼まれた仕事を果たすために不在。なので今ここには二人しかいない。

 

 

「あの男の発言が気になるよな」

 

「すべて壊すまで私の戦いは終わらない」

 

「その必要はないぜ」  

 

 

 黒い革のコートと、黒い帽子を身に纏う男が入ってきた。肩には中身のつまった、大きい袋がかけられている。

 

 

「部外者が勝手に来るな。それにあんた誰?」

 

「彼の名はクレナイガイ。昨日の話で少し出てきた、ウルトラマンオーブの正体だ」

 

 

 初見の貴利矢に説明する黎斗神。彼が促すと、ガイは話を続けた。

 

 

「ガシャットとやらはすべてここにある」

 

 

 ガイは肩に背負っていた袋を降ろした。次に袋の口を広げて、中が良く見えるようにする。確かに、大量のガシャットが乱雑にしまわれていた。

 

 

「本物にしか見えねぇな。嘘はついてないみたいだな」

 

 

 貴利矢は、手当たり次第に取ったガシャットを眺める。ウルトラマンの力が内包されており、幻夢製に勝るとも劣らない性能を持つ。

 

 

「お互いに情報交換といかないか?」

 

 

 貴利矢が提案する。そこでガイは初めて、ウルトラガシャットを作ったのは財団Xであること、その組織の基地はすでに永夢達によって壊滅させられたことを知った。

 

 

「次はあんたの番だな」

 

 

 ガイは、自分がここに来るまでの経緯を語る。ブルトンやキングジョーなどの固有名詞について、いちいち質問しながらそれを聞く貴利矢。

 

 

「なるほどね。にわかには信じがたいが、嘘ではないみたいだな」

 

「嘘をつくのは君だけだ。九条貴利矢」

 

「そんなことよりも早くガシャットを調べろ」

 

「もうやっている!」

 

 

 黎斗神はすでにガシャットの分析を始めていた。すると彼はとあることを突き止める。

 

 

「九条貴利矢、適当なガシャットをハンマーかなにかで壊してくれ」

 

 

 そうは言われても、病院にハンマーなど普通はない。そこで彼は、ガシャコンバグヴァイザーⅡのチェーンソーモードでの破壊を試みた。

 外側を切ると、中からカードのようなものが見えてくる。もちろんそれはガイのカードだ。

 

 

「わざわざパソコンを立ち上げるほどのものじゃない。それはただの手抜き! 所詮人は神にかなわ......」

 

 

 貴利矢は、持っていたバグヴァイザーⅡの中に、黎斗神を吸収。

 CRの日常は、ガイをひどく驚かせる。

 

 

「ガイ、そういうわけで。あんたはカードの取り出し作業を続けてくれ」

 

「貴利矢はどこに行くんだ?」

 

「自分に出来ることをしに行く。じゃあな! しばらく待っててくれ」

 

 

 言い終わると、貴利矢の姿が消えた。バグスター特有のワープによるものだ。とはいえ一瞬でどこまでも行けるわけではない。

 彼は外に出ると、ゲーマドライバーを巻き、キメワザスロットホルダーに爆走バイクを差し込んだ。

現れたバイクゲーマに乗って、彼はどこかへ走っていく。

 

 

「誰だお前は?」

 

「部外者の方は退出願います」

 

 

 ガイが作業を続けている途中、飛彩と明日那が入ってくる。弁明するガイだが、追い出されそうになる。

 だが、黎斗神のフォローもあってそれは防がれた。

そのあとに彼は、事の経緯を二人にも説明する。

 

 

「この度の協力、心から御礼申し上げます」

 

 

 かしこまる飛彩。普段は尊大な態度を取る彼だが、礼儀を知らないわけではない。使う相手が少ないだけだ。

 

 

「それにしても、貴利矢は何をしに行ったのかな?」

 

 

 鏡灰馬がやって来る。彼は三人に、あることを伝える。

 

 

「近くで花家君がバグスターらしき人物と戦っている。飛彩、助けてやってくれないか?」

 

「無免許医が!? わかったすぐに行く!」

 

「俺も行く。お前達の戦力になれるはずだ」

 

「私も行くね!」

 

 

 三人が病院の外へ出る。

 スナイプレベル50と、ニコを掴む子どもが戦っていた。優勢なのは少年。先程の疲労も残るスナイプはもうヘロヘロだ。

 

 

「ニコちゃんを離しなさい!」

 

 

 明日那が怒る。すると少年がこう切り返す。

 

 

「条件を飲んでくれれば、こいつはすぐに返すよ」

 

「条件……?」

 

「それは君が一番よく知ってるんじゃないか? ガイ。ガシャットを渡せ!」

 

 

 オーブに敗北を喫して以来、ずっとガイを付け狙っていたガラ。彼をここまで駆り立てたのは、他でもないウルトラガシャットだ。

 だが、不正なそれはすでに破壊済み。

 

 

「ガシャットは院内にて厳重に管理されてある。取りに行くからそこで待っていろ! 花家先生も来てください」

 

 

 バグヴァイザーの中から、黎斗神がそう伝える。ガラはそれを承諾した。明日那とガイと大我は一度CRに向かう。

 飛彩が、敵をしばし見張る役目を負った。しばらくの間、ガラを見続けていた飛彩。やがて彼は口を開く。

 

 

「何が目的だ?」

 

「カードをガシャットに改造して出力を上げ、それを吸収して最強の存在になるためだ」

 

「最強の存在となった先にあるものはなんだ?」

 

「全時空を支配する。すべての反対勢力をぶちのめしてな!」

 

「力での統治は長くもたない」

 

「それはそいつらが弱かっただけだ。同じ轍は踏まん!」

 

「説得の余地は残されていないか。お前と財団Xの関係はなんだ? 一団員とは思えないが」

 

「ウルトラフュージョンカードの情報や実物を貸し与えることを条件に、奴等にガシャットを作らせるという協定を結んだだけだ。仲間ではない」

 

「もっとも、奴等は隙あれば俺を殺そうとしていたらしいがな。ところでエグゼイドの姿が見えないな」

 

「研修医は……お前を切除するのに研修医では役不足だ!」

 

 

 飛彩は、永夢が負傷中であることを隠しつつ、このように言い切った。これ以上永夢に負担をかけられないと、躍起になっている。

 

 

「たいした自信だな。まずはそれを折るか」

 

 

 そこに三人が戻ってくる。彼らはいずれもドライバーを巻いており、片手にはガシャットも握られていた。

 大我の右手には、白い大きな袋が掴まれている。

 

 

「来たか」

 

 

 ニコにはガシャコンマグナムの銃口が向けられている。財団Xと戦ったあと、ガシャットはニコが持っていたままだったのだ。

 大我はガシャットの入った袋を高く上げる。交渉の意思があることを知らせるためだ。

 

 

「先に彼女の身柄を返せ」

 

 

 飛彩はニコの身の安全を第一に考え、このようにしらせる。ガラはその要求を受け入れたのか、ニコを解放した。彼女はそのまま、大我のもとに駆け出す。

 もっとも彼女は変わらずに、標準を向けられ続けているが。

 

 

「さあ、次はガシャットだ。速やかに返してもらおうか」

 

 

 大我は袋を片手に、一歩ずつゆっくり歩む。ガラとの距離が極めて近づくと、彼は押し付けるようにそれを渡した。

 偽物でないか中身を覗くガラ。パッと見た感じでは、怪しい箇所は見受けられない。

 彼がガシャットのスイッチを押す。すると突然、彼の手の中でそれが爆発した。

 さらに袋の中の他のガシャットも、続々と誘爆していく。

 

 

「やはり偽物か……だがこんなもので俺を倒せるとでも?」

 

「その爆弾はてめぇをぶっ潰すためのものじゃねえ。ニコを逃がすための時間稼ぎだ!」

 

 

 ガラがふと目をやる。ニコはすでに視界から外れていた。彼女は無事、聖都大学附属病院内へと逃げることに成功する。

 ドクターたちは犠牲を出すことなく、ガラを出し抜くことができた。

 

 

「許さんぞ!」

 

 

 怒りに満ちたガラが、銃をぶっぱなす。ライダー達は各々、ガシャットを起動した。その際に現れるタイトルによって、弾丸を防ぐ。

 

 

「「「変身!」」」

 

 

ガシャット! ガッチャーン! レベルアップ! タドルレキシ メザメルキシ タドールレガシ!

 

レベルアップ! マイティジャンプ! マイティキック! マーイティアクショーン アガッチャ デンジャ デンジャ デスザクライシス デンジャラスゾンビ!

 

バグルアップ! ドリーミングガール! コイノシミュレーション オトメハイツーモ トキメキクライシス!

 

デュアルアップ! スクランブルダ シュツゲキハッシン バンバンシミュレーション ハッシン!

 

 

 ガラが本来の姿を露にしたのだ。仮面ライダー達とオーブオリジンも、変身を完了させる。

 仮面ライダー達では体格の差があるため、まともな勝負にならない。

 そのため彼らは、オーブの援護に切り換える。巨大化のエナジーアイテムがあれば良いのだが、それを探す時間を、敵は与えてくれないだろう。

 

 

「オーブ! 受けとれ!」

 

 

 レーザーターボコンバットバイクゲーマーが、飛んで駆け付ける。彼はオーブに、七枚のカードを投げ渡した。

 

 

「それは財団Xアジトの跡地から見つけたやつだ! 使え!」

 

 

 オーブがうなずく。中のガイは、早速そのカードを手に取った。オーブリングにかざす。

 

 

「タロウさん。メビウスさん。熱いやつ、頼みます!」

 

 

フュージョンアップ! ウルトラマンオーブ バーンマイト

 

 

 紅に燃える戦士・オーブバーンマイト。彼の飛び蹴りが、ガラの首に当たる。

 オーブは次に、目にも止まらぬ速さで腹を何度も殴った。

 怯むガラ。オーブは全身を発火させた。敵に抱きついた途端に爆発する。

 彼の必殺技である"ストビュームダイナマイト"が綺麗に決まった。

 ブレイブは無数の光の剣を飛ばし、スナイプとレーザーは砲撃、ポッピーはガシャコンバクヴァイザーⅡビームガンモードで撃ち、オーブを援護する。

 ガラが飛び立った。オーブに光弾を連射する。ガラは腕を前にして突っ込み、オーブを吹っ飛ばした。

 

 

「ストビュームバースト!」

 

 

 オーブはガラに、巨大な火の玉をぶつける。だがそれは、簡単に左腕で振り払われた。

 ガイは別の形態になるため、新たなカードをリロードする。

 

 

「ギンガさん。エックスさん。ビクトリーさん」

 

 

トリニティーフュージョン!

 

 

「三つの光の力、お借りします!」

 

 

オーブトリニティー!

 

 

 オーブトリニティーにフュージョンアップした。これまでよりも出力が上がり、より強力になる。

 彼は右肩からオーブスラッシャーを取り外した。ガラに斬りかかる。

 

 

「こいつは厄介だ……こうなったら!」

 

 

 ガラが勢いよく、その場でジャンプした。地震のような揺れがライダー達を襲う。

 ガラはオーブの斬撃をいなしながら、地面に右手を這わせる。

 彼の手は、あるライダーを掴んだ。

 

 

「トリニティウム光……」

 

「待て、こいつが握り潰されてもいいのか?」

 

 

 ガラの右手にはポッピーが。再び人質をとられてしまう。一同はむやみに攻撃できない。




次回最終回(予定)です


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最終話 闇を飾るNIGHT GAME

 とある病室に、数人の患者が眠っている。その中には永夢と、先の戦いでゼロになった男もいる。

 男は、外で繰り広げられている激戦の音によって、目を覚ました。彼は懐からゼロガシャットを取り出す。それから、ガシャットのスイッチを起動させようとする。

 

 

「何してるんですか?」

 

 

 同じく起きた永夢が問いかける。

 

 

「外が騒がしいだろ? 恐らく戦っているのは君の仲間と、我々をそそのかした元凶だろう」

 

「元凶? どういうことですか?」

 

 

 男の説明が始まる。

 

 

「そもそも、ウルトラガシャットを作ったのは、奴に唆されたからなんだ。我々はそれを本部に贈るつもりだったが、奴はそれを自分のためのみに使うと言い出した」

 

「その後、奴は試作品のガシャットを使って君達と交戦。生き残ったあいつは一度自分の世界に戻ると、奪ったカードを我々に改造させてガシャットとした」

 

「我々は本部にガシャットを贈ろうとした。だがその途中で奴に大半を奪われたようだ」

 

「君でなければ、ガラを倒すことはできない。ゼロガシャットを使い、君がもう一度戦えるようにする」

 

「どうやるつもりですか?」

 

「私がシャイニングゼロになり、シャイニングフィールドを展開する。それの内部は外界と時間の進みが違う。だから仮に君がフィールド内で一週間過ごそうと、本来の世界ではほんの数秒にしかならないということだ」

 

「やめてください。そんなことをしたら、あなたの体がもたないかもしれません!」

 

「だがこのままでは……私達は全員奴に殺されてしまう!」

 

「僕はもう大丈夫なのでいきます。あなたはそこで休んでいてください。あとそれを僕に渡してください」

 

 

 永夢は男から、ゼロガシャットを受け取った。傷ついた体をおして病室を出る。

 彼が男に伝えた自身の体調はもちろん、すべて嘘だ。

 

 

「あれ? ハイパームテキはどこだ?」

 

 

──────────

 

 

 巨大な手に、握りつぶされそうになるポッピー。ガラは徐々に力を強めていく。じわじわとなぶり殺すつもりだ。

 ブレイブとスナイプはそれぞれ、無数の光の剣と砲撃で相手の右肩を狙う。だが、ポッピーが解放されることはなかった。

 

 

「ポッピーを放せ! ドドドドド!」

 

 

キメワザ! ドラゴナイト! クリティカルストライク!

 

 

「紅蓮爆龍剣!!」

 

 

 赤と白の長い双刃、グラファイトファング。駆け付けたパラドクスはそれを振るい、ガラの手首に打ち込む。その威力は非常に高く、ガラは思わず手を放した。

 落ちたポッピーは無事に、パラドクスによって助けられる。役目を終えたグラファイトファングは、すぐに消えた。

 

 

「ありがとな……グラファイト」

 

「ありがとうパラド! 永夢に頼まれた仕事は終わったの?」

 

 

 パラドの仕事とは、永夢が患者の子どもと交わした、"一緒にゲームをする"という約束のことだ。

 

 

「あぁ! あのゲームは初見だったが、ぼこぼこにしてやったぜ!」

 

 

 その場の仮面ライダー達が一斉に巨大化する。パラドクスの"エナジーアイテムを自在に操る能力"で全員に巨大化を与えたからだ。

 

 

「これなら対等にやりあえる!」

 

 

 そう言うと、スナイプは砲撃を繰り出す。先程までとはうって代わり、ガラを怯ませた。

 

 

「俺に切れないものはない」

 

 

 ガラが砲撃に浴びせられていた間に、ブレイブが近づく。彼のガシャコンソードが、ガラを縦に斬り裂いた。

 

 

ハイパームテキ!

 

 

 ゲンムがハイパームテキを起動する。

 戦闘不能の永夢が持っていても宝の持ち腐れだと考えた彼が、こっそり奪っていたのだ。彼はそれをドライバーに挿す。ムテキモードになった。

 

 

「ハイパームテキは主人公最強の無双ゲーム!」

 

 

 ゲンムは飛びかかり、ガシャコンブレイカーを振り下ろす。ガラがそれをかわした。ゲンムに背を見せながら、走って逃走を図る。ゲンムがあとから追いかけた。

 

 

「まずい神! 奴の攻撃に備えろ!」

 

 

 レーザーは空から唯一、ガラを追跡していた。彼がゲンムに忠告を与える。しかし、ゲンムの足は止まらない。

 

 

タイムアップ!

 

 

「まずは貴様からだ!」

 

 

 ムテキモードの制限時間が過ぎる。ガラは振り向くと、ゲンムにパンチした。ゲンムは胸を貫かれる。

 ゲンムの姿は消えた。彼の残りライフは1のため、ゲームオーバーになればもう復活できない。

 

 

「やってくれたな!」

 

 

 レーザーは左腰にプロトジェットコンバットを入れる。ボタンを二回押し、キメワザを発動させた。

 

 

キメワザ! ジェット! クリティカルストライク!

 

 

 レーザーは上空から一斉砲火を浴びせる。ガラは煙の中から勢いよく飛び出した。

 レーザーに頭突きが与えられる。彼の攻撃はほとんど効いていなかったのだ。

 彼は墜落し、アイテムの効果も切れ、変身も解かれた。

 

 

「てめえは俺がぶっ潰す!」

 

 

キメワザ! バンバン! クリティカルファイア!

 

 

 スナイプの、一点に集中された光線が敵に炸裂する。

 

 

「もっと頭を使え。こんな攻撃、俺にはのーぷろぶれむ」

 

「頭を使うべきはお前だ」

 

 

 スナイプの必殺技は、敵を欺くための囮だったのだ。本命は二筋の斬撃。スナイプの砲撃に身を隠し、ブレイブとパラドクスが接近する。

 ブレイブが左の方から、炎を纏わせたガシャコンソードを斜め下に切り下ろす。

 パラドクスは右側から、地面と平行にガシャコンパラブレイガンを斬り払った。

 

 

「オペを完了させる!」

 

 

キメワザ! タドル! クリティカルフィニッシュ!

 

 

「俺の心をたぎらせるな」

 

 

キメワザ! ノックアウト! クリティカルフィニッシュ!

 

 

 二人の必殺技が、ガラを縦に切り裂く。その直後、アイテムの効果がきれる。仮面ライダー達は元の身長に戻る。

 

 

「生きてやがったか、ゲンム……」

 

「私は決められたライフ数すらも超越する! 神は不滅だからな……」

 

 

 こう叫ぶ彼だが、それは事実でない。咄嗟にブレイブレガシーゲーマーが、ゲンムのライダーゲージを回復していたに過ぎない。

 もしもこれがなければ、彼は今度こそ完全に消滅していたかもしれない。

 

 

「パラド、もう一度だ……」

 

 

 再び巨大化させるよう、促す貴利矢。だがパラドは体力を酷く消耗していた。

 パラドだけではなく、他のライダー達も同様である。これらはいずれも、巨大化による影響だ。

 

 

「トリニティウム光輪!」

 

 

 先程は出し損ねた、オーブトリニティの必殺技。彼がオーブスラッシャーを高く上げる。武器を中心とした、大きな円盤が現れた。

 オーブはそれを、敵目掛けて投げつける。その攻撃は、ガラに深い傷を作った。

 

 

「調子に乗るな!」

 

 

 ガラは両手を十字に構える。そこからまるでスペシウム光線のように、光の粒子を発射された。色は禍々しい紫に染まっている。

 

 

「標的はお前じゃない」

 

 

 ガラが急に方向を左に変える。そこにいるのは仮面ライダー達。先に彼等を倒すことで、オーブに精神的なダメージを与えること。それが彼の作戦だ。

 変身を保てない彼らに、耐えきる事は出来ない。

 

 

「ん? どうやってやがる……あっ!」

 

 

 大我を含めた全員が、自分達の敗北を覚悟していた。しかしそれは防がれる。

 オーブが彼らを庇ったのだ。彼は両手を大きく広げて自らのみに当たるようにしていた。

 力尽きた彼は、ガイの姿に戻る。

 

 

「残りのカードも貰ったぞ。これで俺は更なる高みへ!」

 

 

 折角回収したカードも、再び奪われてしまう。

 彼はそれにより、より凶悪な姿へ進化した。ガラがガイに話しかける。

 

 

「馬鹿な奴だ。そんなゴミを守る理由があるか?」

 

「別に理由なんてない……ずっと昔から先輩達がそうやってきたことを俺もする! ただ、それだけの事だ!」

 

 

 ガイが倒れそうになるのを、ポッピーが支える。彼女はそのまま、ガイをゆっくりと座らせだ。

 

 

「俺達にはもう、奴の治療法は残されていないのか?」

 

「みんな!」

 

 

 外の様子に気付いた永夢がやって来た。もちろん体力は回復していないため、少し動いただけでもう息切れを起こしている。

 

 

「休んでろ永夢! お前はまだ戦える状態じゃない」

 

「それは貴利矢さんだって……皆さんも同じじゃないですか!」

 

 

 彼はゲーマドライバーを取り出す。しかし無理が祟り、倒れ込んでしまった。とても戦える状態にない。

 そのとき彼は、全身の妙な温もりを感じた。というよりも、何かが熱を持っているようだ。

 

 

「マイティアクションXが光っている?」

 

 

 それに気付いた永夢が、ガシャットを取り出す。

 絵柄がそれまでのマイティから、仮面ライダーエグゼイドレベル2に変わった。

 同じことがタドルクエスト、爆走バイク、プロトマイティアクションXにも起こる。それらのガシャットは持ち主の手を離れると、ガイのもとに送られた。

 同様の現象を受け、ガラの下から去るバンバンシューティング。

 ガイは集まった5つのガシャットを、次々とオーブリングにかざしていく。

 

 

「永夢!」

 

 

カメンライダーエグゼイド! ノーコンティニューデクリアシテヤルゼ!

 

 

「飛彩!」

 

 

カメンライダーブレイブ! コレヨリセツジョシジュツヲカイシスル

 

 

「大我!」

 

 

カメンライダースナイプ! ミッション カイシ!

 

 

「貴利矢!」

 

 

カメンライダーレーザー! ノリノリデイッチャウゼ!

 

 

「黎斗!」

 

 

カメンライダーゲンム! コンティニューシテデモクリアスル

 

 

「ゲームの力、お借りします!」

 

 

ネオフュージョンアップ! ウルトラマンオーブ! エクストリームエイド!

 

 

 超絶進化を遂げるオーブ。

 顔とアンダースーツはオーブオリジン、胸はエグゼイドライダー共通のもの、右肩はスナイプの黄色いマント、左肩はブレイブ、両腕はエグゼイドで、右足はゲンム、左足はレーザーターボだ。

 

【挿絵表示】

 

「なに!? カードをすべて失ったというのにまだ立ち上がるのか!」

 

「俺はウルトラマンオーブ ライダーゲーマー。五つの光と絆を結び、今、立ち上がる!」

 

 

 オーブはガシャコンマグナムを召喚した。両手で構え、撃ちながら近づく。

 

 

「大我達の武器が使えるの!?」

 

 

 接近したオーブが、銃から左手を放す。代わりに彼は、その手にガシャコンソードを握った。斜め上に斬り払う。

あまりの素早さに、ガラは対応できない。

 ガラが遥か上空に投げ飛ばされる。オーブはガシャコンマグナムをライフルモードに変形させると、それを狙い撃った。

 落下するガラ。オーブは両手を空けると、ジャンプした。ガシャコンブレイカーハンマーモードを右手に持ち、ガラに強く叩きつける。ガラは打ち落とされて、地面にクレーターが作られた。

 

 

「なんて強さだ……すべてのウルトラフュージョンカードを吸収した俺をまるで赤子のように......」

 

「当然だ。先輩方がお前のような奴に、力を貸し与えてくれるわけがない!」

 

 

 オーブはガシャコンスパロー鎌モードを、両手で構える。疲労した敵を何度も斬りつけた。

 

 

「ガシャコンスパローは爆走バイク由来じゃない。なのに何であいつは使えるんだ?」

 

「オーブは単に、私達のガシャットによって強化されているわけではない」

 

「どういうことだ? 神」

 

「私達のこれまでの戦闘データと、本来はあり得ない異世界からの異物混入。それらが合わさり、何らかのバグを生み出しているのだろう」

 

「よくわからないってわけか。まぁ今は細かいことを四の五の言ってる時じゃない。頑張れオーブ!」

 

 

 貴利矢の叫びを皮切りに、応援を始める永夢達。 

 オーブはガシャコンブレイカーブレードモードと、オーブカリバーを召喚。

 

 

ガシャット! キメワザ! マイティ! クリティカルフィニッシュ!

 

 

 ガイはブレイカーにガシャットを挿入。

 

 

トキハナテオーブノチカラ

 

 

 さらにオーブリングの中に、カリバーをかざす。

 

 

「オーブスプリームカリバー!」

 

 

 両方の剣を天に掲げ、回転させる。いつもであればこのまま発射するのだが、今回は違った。

 オーブは両腕を後ろに下げて疾走する。二本の武器で挟み込むように、剣を横に払った。

 斬撃によるダメージと、傷口から入り込む膨大なエネルギー。

 

 

「諦めきれるかぁぁぁ!!」

 

 

 ガラは断末魔をあげながら、爆死した。

 結末を確かめたニコが、院内から出てくる。永夢もなんとかして近づいてきた。

 オーブがガイの姿に戻る。それと同時にガシャットの絵柄は戻り、持ち主のもとにふわふわと帰っていく。

 

 

「厄介なものを持ってきて悪かったな、おつかれさんです」

 

「まったくだ」

 

 

 ガイの発したことに対して、こう返す飛彩。

 

 

「でもガイさんがいなかったら、僕達は勝てませんでした。ありがとうございます」

 

 

 永夢がガイにお礼を言う。そして次にゼロガシャットを手渡した。

 

 

「そうか、じゃあな。悪いが、いつまでもここにいるわけにはいかないからな」

 

 

 ここに来る前に、ジャグラーから教えられたことを思い出すガイ。彼はガイに、強く念じさえすれば元の世界に帰れる、と言っていた。 

 彼はその言葉を信じ、実行に移す。すると彼の姿が瞬時に消える。

 

 

「それじゃ自分達も帰るとするか」 

 

 

 今回の事件を起こした財団Xの団員は末端でしかない。彼らは衛生省経由で逮捕され、しかるべき処置を受けた。当分の間、彼等が刑務所から出てくることはできないだろう。

 当然ながら、中央は彼等を見捨てた。なので結局財団Xについての、更なる詳しい情報を得ることは叶わなかった。

 

 

 一方で永夢達は、今日も終わりなきゲームに挑んでいく。患者の笑顔を取り戻すために。

 

 

「ノーコンティニューでクリアしてやるぜ!」




ここまで駄文に付き合っていただきありがとうございました


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