いつかやりたいオリジナル聖杯戦争 (とぅりりりり)
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予告
これよりこの地は盃と化す。
跳梁跋扈、魑魅魍魎。
悪の栄えた試しなし。されど潰えぬ生者の悪意。傑物どもが刃を磨きここに勧善懲悪なし得ましょう。
さあて、英霊どもをくべましょう。
あれらは英雄にあらず。英雄どもの写し身――影法師故、敬う必要などありませぬ。
盃に注ぐ酒のようなもの。そう、この大地という盃――聖杯にくべるだけの御霊を揃えればよろしいのですから。
聖杯戦争。
それはかつて冬木の地で行われた魔術師たちによる儀式。
だが今は大聖杯は解体され、再び血生臭いその行いは二度と繰り返されることはない――はずだった。
何者かによって掠め取られた大聖杯のシステムが日本の地に再び舞い降り、改造された歪なシステム。その影響か、万能の願望器とまではいかぬ、未熟な器にしかなりえない有様。それでも浅ましい欲望を抱えた魔術師たちは願いを叶えるためにこの地に集う。
ただ大層な願いなどない。ただ自由に生きたいと、ささやかな祈りはあるが結局どうすればいいのかもわからない。
自分を普通などとは到底言えるはずもなく、だが取り立てて特別な存在かと問われても違うと断言できる。
とある魔術師の家系、秤屋家。
落ちぶれたとまでは言わないものの俺の代で断絶するだろう。
去年、唐突に父と母、そして兄が死んだ。
魔術刻印を一応は受け継いだが父のように熱心でも兄のように優秀でもない俺は漠然と魔術師としての宿業を持て余していた。
死因はわかっている。だからこそ、深入りしたくもないしこれ以上は知りたくない。
――聖杯戦争。
とある地で行われたその儀式はとうに潰えたと昔父はぼやいていた。本当は参加したかったと、二流であるにも関わらず色気を出した父。
しかし突然この地で聖杯戦争が始まり、父は兄をマスターとして参加させた。
結果は、ご覧の通り。母も後を追うように死に、一人残された半端者の俺だけが残った。
くだらない。死ぬかもしれないのに危険を冒してでも叶えたい願いなんて――
「まだいたんだ」
考え事をしていたせいか、背後に人がいることに気づかず思わずびくりとする。
振り返ると隣のクラスの少女がいた。
「なんだ、テイラーか」
紡・テイラー。目鼻立ちが整った顔立ちはハーフ故か日本人ぽさが薄いものの、親しみやすい雰囲気のお陰でそこまで緊張はしない。
すでに放課後。ぼーっとしていたせいか、何もしてないのに教室に残っているのは変だと思われたのだろう。
「もう帰るよ。じゃあな」
「まだこの地にいたんだ」
カバンを持って教室から出ようとした途端、テイラーの声が一段と低くなる。この地に、とはどういうことだろうか。
「早く逃げないと――巻き込まれても知らないよ」
ゆっくりと振り返る。可愛らしく微笑むテイラーはどこか中性的な色気があり、思わず見惚れてしまう。
「忠告はしたよ。秤屋」
テイラーはそれだけ言って俺より先に教室から出ていった。
これが、聖杯戦争の始まりを予兆するものだと、気づかないまま、俺は帰路についた。
「俺は死にたくない。そもそも聖杯戦争なんて巻き込まれただけで……」
「俺のマスターはどうしようもない軟弱者のようだ。呆れてものも言えん」
セイバー陣営
マスター/秤屋遥
サーヴァント/叛逆の騎士
「配られたカードに文句をつけてる暇があったら使い方を考えるまでのことよ! ライダー、来なさい!」
「やれやれ、ボクのご主人様はまるで暴君だ、ね」
ライダー陣営
マスター/紡・テイラー
サーヴァント/××の皇帝
ランサー陣営
マスター/夜に消える藍色の影
サーヴァント/×きらめく×××××
アーチャー陣営
マスター/掠め取るは勝利と手駒
サーヴァント/少年×××
キャスター陣営
マスター/質実剛健、豪傑乙女
サーヴァント/×××兄弟
アサシン陣営
マスター/骨抜き腑抜けの道化
サーヴァント/美しき×の頭目
バーサーカー陣営
マスター/余命数ヶ月の少女
サーヴァント/××の怪物
監督役のシスターは悲しげに、穏やかに微笑む。
「さあ、聖杯戦争を始めましょう」
たった数日の宴を。刹那に過ぎ去る魔術師たちの晩餐を。
Fate/Underworld
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