淀んで染まるシリーズ (RASN_Pixiv1本になります)
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カスミ編

(こちらは2016年9/7に投稿です、当日は佐久間まゆの誕生日なのです。)


ここは茶熊学園…少し前まで茶熊学園は夏休みであり皆が苦労して夏休みの宿題と戦ったり、皆で海やお化け屋敷やコミケに行ったりなどして楽しんでいた。そしてそんな時期が終わって登校日となった。

 

「全く登校初日から業務なんてね…」

 

「いいじゃないですか、皆の為になりますし。」

 

早朝の茶熊学園校舎廊下にはカスミとフローリアが歩いていた。

 

「それよりも早く生徒会室に戻りましょう?RASNさんも待ってますしね?」

 

「なっ…何でそこでRASNが出てくるのよ?!」

 

RASNとは…もうこれの注釈とかいいよね…?

 

「またまた…カスミったら、夏休みの間RASNさんに中々会えなくて寂しかったくせに…」

 

「そんな事は無いわ!…ほら、さっさと戻るわよ!」

 

するとカスミはフローリアを追い越してズガスガと進んで行った。

 

「あぁ、待ってくださいよー?」

 

そして二人はとある部屋の前を過ぎようとしていた、するとカスミの目の前で扉が吹き飛んで色んな物が飛び出したのであった。

 

「…っ?!なっ…何なの?!」

 

「おっ…おっほー…久々に爆発薬作ったら途中で爆発しちゃったわー。」

 

飛び出した物の下からムクリと起き上がったのは科学担当の先生のカティアであり、紫色の髪が少し黒ずんでいた。

 

「もしかしてカティア先生ですか…?大丈夫ですか?」

 

「おほっ?これはこれは生徒会のカスミにフローリアね?」

 

「…ええそうだけど?」

 

カティアが煤とかを振り払って二人を視線に定め、カスミは一歩後ろに下がっていた。

 

「こんな朝早く何してるのかしらん?」

 

「生徒会の活動ですね、中庭の清掃と花壇の手入れを…」

 

「ふーん…ところで、今あなた達は暇かしら?」

 

「…別に暇じゃありませんけど…」

 

「えぇ、カスミは生徒会室に戻ってRASNさんに甘えるんですよね?」

 

「違うわよ?!」

 

「ふむ…ということは暇ね…だったら…」

 

するとカティアは懐をまさぐり両手にアンプルシューターを構えたのであった。

 

「夏休みろくに生徒と会えなかったから投薬させなさーいー!」

 

そしてそれに謎の薬を詰めるとカスミとフローリアに向けて撃ち放って追いかけていた。

 

「おっほー!逃がさないわよー!?おっほー!」

 

「あんな訳の分からないのに当たるわけにはいかないわよ!?」

 

「とりあえず早朝ですから被害は無さそうですね、でもどうしましょう…?」

 

「…仕方ないわね…こうなったらあの曲がり角で鳴弦をして姿を眩ますわよ!」

 

「分かりました。」

 

カスミがそう言うと二人は色違いで付いてる花も違うが、お揃いの弓を取り出して速度を上げたのであった。

 

「ムムっ…当たらないわね…だったら…!」

 

一方カティアは別のシューターを1本取り出してSKM-MYと書かれている小型のアンプルを一本はめ込み針を先に付けるとカスミに狙いをつけた。

 

「考えてみたら被検体は少数…だったらね…こうねぇ!」

 

カティアが放った小さな針は物凄い速度でカスミの首元に刺さった、だがカスミはそれに気づかずに曲がり角を曲がった。

 

「行くわよ…!祓いたまえ…」

 

「清めたまえ…!」

 

そして二人は弓の弦を鳴らし始めた。

 

「おっほー!逃がさないわよ…って…あら?」

 

カティアも二人と同様に曲がり角を曲がるとそこには逃げていたはずのカスミとフローリアがいなかった。

 

「おっほ…?おかしいわね…?まぁいいわ、適当に探して手当たり次第試そうかしらん…おっほー!」

 

そしてカティアは雄叫びならぬ雌叫びを上げて走っていった、その後そこにはカスミとフローリアがスッと姿を現した。

 

「ふぅー…何とかやり過ごしましたね…」

 

「えぇ、何とか誤魔化せたわね…早いところ生徒会室に戻りましょう…」

 

「はい、誰か先に部屋にいたらいいんですけどね。」

 

「…そうね…」

 

そうして二人は生徒会室へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

一方生徒会室にはすでに先客がおり、そこには生徒会長のシャルロットとその友人のメグとマリがいたのであった。なおこの二人はゼロキス同様に正式な生徒会メンバーではない。

 

「はぁ~学校かよ…かったりぃ~」

 

「シャル…朝のHRまであと15分だから早くいこうよ?」

 

「んぁ~…代返してくれるー?」

 

「それは無理だお、だってオウガ先生はシャルたんを気に入ってるからいなかったらすぐ気づくお。」

 

「そうだね、ほらシャル行こ?」

 

「嫌だー!私は行きたくなーい!」

 

マリとメグはシャルロットをどうにか生徒会室から連れ出そうとしていた、だがシャルロットは意地でも出ようとはしなかった。

 

「どうしてこんなにも意固地なんだお…もしかしてまだ夏休みの宿題終わってないとか…?」

 

「いや、宿題は夏休みが始まってから私がシャルを缶詰めして終わらせたから大丈夫だけど…?」

 

「むー…だったらなんだお?」

 

「いやさ…もっと夏休みを味わいたいんだよー?ねぇ?」

 

「えぇ…でもプールにも行ったし海でスイカ割りもしたじゃない?」

 

「そうだお、それに花火大会もお祭りにも行ったお?」

 

「そうだけどさー?けどもっと欲しくね…?あと…5日…いや2週間ぐらいはさ?」

 

「ダメだお。」

 

「そうよ、ほら?行くわよ!」

 

「いーやだー!はなーせ!?」

 

二人は持ち上げて連れ出そうとしたがシャルロットは自分の机にへばりついて抵抗していた。

 

「何やら騒がしいですね…?どうしたんですか?」

 

すると生徒会室の扉がガラリと開きそこにはカスミとフローリアがいた。

 

「おっ!フロたんにカスミたん!ちょっと手助けしてほしいお!」

 

「手助けって…またあの癖ね…?」

 

「とりあえずどうすれば…?」

 

「えっーと…とりあえずシャルの掴んでる手を緩めてくれる?そうすれば行けると思うから。」

 

「分かりました…ちょっと待ってくださいね…?」

 

するとフローリアは学生服のスカートのポケットをまさぐると先程カティアが撃ち放ってたアンプルを取り出した。

 

「フ…フローリアさん?」

 

「おー?!何かヤバそうな薬だお?!」

 

「ふぎぎぎ…」

 

シャルロットは踏ん張ってアンプルには気付かないがマリとメグはそのアンプルに驚いていた。

 

「では少し失礼しますね…?…ぷすり…」

 

「ふぎぎぎぎぎ…ぎぃぃ……ぃ…」

 

そしてフローリアはシャルロットの首元にぷすりとアンプルを打ち込み、打ち込まれたシャルロットは徐々に力が抜けていったのであった。

 

「おっー!すごいおー!?」

 

「でもこれ大丈夫なの?!」

 

「大丈夫よ、多分。カティア先生は変な薬は作りはするけどそれで命を落とすようなものは作らないわ。」

 

「そうですよ、それより早くシャルロットさんを運びださないと…?」

 

「はっ…!そうだお!マリたん頼むお!」

 

「分かってるわ!」

 

マリはダランと垂れているシャルロットを抱えると生徒会室を立ち去ったのであった。

 

「ふぃー…二人とも助かったおー、感謝するお!」

 

そしてメグは息を吐くと机に腰を着けたのであった。

 

「…。」

 

「ふふ…大変ですね?」

 

「でも大切な友達だから、大変と言うより楽しいお。」

 

「そうね、でも…机に座ってるのはいただけないわね。さっさと降りなさい。」

 

「お?これはすまないお…」

 

メグはカスミの指摘を受けて申し訳なさそうに机から降りた。

 

「あっ、そろそろHRですね…私達も教室に戻りましょう?」

 

「そうだお、シャルを行かせたのにメグ達が遅れたらカッコ悪いお!」

 

「そうね…あっ…ごめんなさい、私ちょっとまだ用があるから先に行ってくれる?」

 

「そうですか…、では遅れないようにしてくださいね?」

 

「おっおー!」

 

そうしてメグとフローリアは生徒会室から立ち去ったのであった。

 

「それにしても休み明けなのにカスミたん相変わらずツンツンだお…」

 

「…。」

 

「おりょ?フロたん?」

 

「あっ…、すみません。」

 

「どうしたお?考え事かお?」

 

「いや…何かおかしくて…」

 

「おかしいって…なにがだお?カスミたんはいつも通りなツンケンさだお?」

 

「…いえ…私の気のせいですね、何でもありません。」

 

「んー?そうかお。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-茶熊学園 タラコ組の教室-

 

タラコ組の教室はHR開始前で慌ただしく生徒のほとんどは席に着いてなかった。

 

「オーララ?シショー達は学長殿と一緒に旅行でござったか?!」

 

「…!」

 

「えぇ?!あの人気アイドルのモノクロームさんやアーモンドピークさんとも会ったんですか?!」

 

「羨ましいです!私達も行きたかったです!」

 

RASNらが夏休みの事を話しており、回りにはスイカやカモメやメア等が囲っていた。

 

そしてRASNはカムイ学長に連れられて南の島にバカンスに行っていた事を話していた。

 

「でも私達運動部は一斉合宿で行けなかったじゃない?仕方ないわよ。」

 

「でも楽しかったねぇ?肝試しじゃあたしが逆に化かしてやったしね?」

 

「そうだね~?アマタ君ったら花火玉がないからって分裂して花火になっちゃったりしてたね~。」

 

「あぁ!でもスッゲー楽しかったぜワッショーイ!」

 

「…というか分裂ってなんだよ…?おっと、先生がやって来たぜ?」

 

ソウマがそう言うと教室の戸が開いて担任のエドガルド先生が入っていった。そしてそれと同時に学校内にチャイムが鳴り響き生徒達は席に着いた。

 

「よォ!お前ら、久し振りだなァ、宿題はちゃんと終わらしたかァ?」

 

座る生徒の数名は少し冷や汗を垂らした。

 

「まァ…明日の授業開始から提出だからなァ…今日必死に頑張れば良いんじゃねぇか?まァそれはともかく…新学期にもなるし、席替えでもすっかァ!」

 

すると静かだった教室が沸き上がった。

 

「よし、席はお前らに任せるぜェ?帰りのHRまでに替えとけよ、そんじゃァ始業式に向かうかァ。」

 

こうしてタラコ組の面々は始業式へと向かった、道中マスコ組の教室から轟音とシャルロットの叫びが木霊した。

 

 

 

 

 

 

そして体育館で行われた始業式ではカムイ学長の長々とした話があった。

 

「うぅ…キツいぜ…!」

 

「どうしたザックもうへばってんのか?」

 

「これぐれー余裕だ…こっちとら最近テニスを…うぁ…」

 

「へっ…テニスなんぞ俺も…ぐぁ…」

 

その長々とした話で次々と脱落者が続出していった。

 

「…!」

 

「シショー?大丈夫でござるか?」

 

そしてRASNも目眩がするのか頭に手を当てていた。

 

「…!」

 

「平気だって…でも半目じゃない?!無理しない方が…?」

 

「…!」

 

「オララ?!シショー大丈夫でござるか?!」

 

するとRASNは糸が切れたかのように崩れ落ちたのであった。

 

「おっ…おい?!早くRASNを保健室につれていった方が…!」

 

「そうね…私が保健室に連れていくわ。」

 

そしてカスミがRASNの腕に組みつくと引っ張るように体育館から抜け出した。

 

「およ?RASNも脱落かお?マリっちにフロたんは大丈夫かお?」

 

「私は平気だけど…?フローリアさん?」

 

マリがそう答えるとフローリアは先程出ていったカスミとRASNの方に顔を向けていた。

 

「フローリアさん…?」

 

「あっ、すみません。私は…いえ少し気分が優れないみたいですね…下がらせていただきますね…」

 

「大丈夫かお?メグたんが付き添いするお?」

 

「大丈夫です、一人で大丈夫ですよ…?」

 

そう言ってフローリアはカスミの後を追った。

 

そしてカムイ学長の長々しい話はお昼頃まで続き、本日の学校は始業式だけで終わったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-茶熊学園 第二保健室-

 

「…?…?!」

 

「あら…起きたのRASN?」

 

RASNが目を覚ますとベッドの上であり目の前にはカスミがおりRASNの赤い髪を撫でながら見下ろしていたのであった。

 

少し当惑しつつもRASNは辺りを見渡し保健室である事は分かったが、何故か照明が消されており明かりは窓からの光だけであった。

 

「大丈夫?倒れちゃったから心配したけど…ちょっと見るわね…?」

 

するとカスミは自分の顔をRASNの顔に近づけてデコを当てた。

当てられるRASNは驚いていた。

 

「………そんなに熱くないわね…?……………。」

 

「……。」

 

そして暫くカスミはそのままデコを当て続けていた。

 

「…!」

 

「あっ…ごめんなさい、でもね…」

 

するとカスミは頭を下げてデコをRASNの胸へと動かして目を閉じて顔を埋めた。

 

「こうやってRASNと距離を縮めてるののが心地いいの…」

 

「…?!…!?」

 

そしてそうされているRASNは目を白黒させて困惑していた。

 

「えっ…何かおかしい?そんなことは無いわよ。それよりRASNお腹空いてない?…ちょっと待っててね…」

 

そう言うとカスミはベッドから席を外して保健室の出入口にある鞄をまさぐっており、それを見ていたRASNは何か奇妙さを感じていた。

 

そしてカスミはタッパーを取り出したのであった、中は唐揚げや卵焼きやらと弁当と変わりない内容であった。

 

「これね、さっき寮に戻って作ってきたの…食べてくれる?」

 

「……!?…。」

 

RASNは差し出されたそれに少し迷いつつもタッパーに乗ってる箸を取った。

 

RASNはとりあえず近場の唐揚げから箸で 取り口へと運んだ、そしてその間カスミはその様子をじっと見ていた。

 

「…どう?美味しい?美味しい?」

 

「…!!」

 

RASNは穴でも空きそうな視線を突きつけながらそう問うカスミの声に頭を横には振れなかった。

 

「そう…良かったわ、ふふっ…隠し味が良かったのかしら?」

 

「……。」

 

「あら、箸が止まってるわね?…貸して?」

 

RASNが唖然としていると止まっていた箸をカスミに取られた、そしてカスミは箸で卵焼きを摘まんだ。

 

「ほら、あーん?」

 

「…?!」

 

カスミはベッドに座りかかると卵焼きを摘まんだ箸をRASNの口へと運ぼうとしていた、そして運ばれて半ば無理矢理口にねじ込められRASNの目線はこちらを見つめるカスミと箸を持つ手の首に巻かれている包帯ぐらいであった。

 

「どう?甘くしてみたけど…口に合ったかしら?」

 

「…!」

 

「良かったわ…それじゃそれじゃ次はねお料理の本で習ったんだけどね八宝菜っていうのかしら?食べてみる?」

 

次にカスミは野菜が多めな八宝菜を箸で摘まむとRASNの答えを待たずに口へと運ばれ、RASNは八宝菜を食べさせられた。

 

「どうかしら…?美味しい?美味しくできてるよね…?」

 

RASNは突っ込まれた八宝菜を咀嚼しながら、首を縦に振ったのであった。

 

「そうよね。ふふっ…それじゃもっと食べてね?あっいや食べさせてあげるね?あーん…」

 

「……(汗)」

 

そうしてRASNはカスミよってタッパーに入ってた料理を食べ切ったのであった。

 

「どう?お腹いっぱい?」

 

「…!」

 

RASNは少し苦しそうに頷いた。

 

「ふふっ御粗末様。…あら?ちょっと動かないでね…」

 

「…?!」

 

カスミはそう言うとRASNの顔に自身の顔を寄せた、RASNは無論驚き退こうとしたがカスミの手によって動けなかった。

 

「ぺろり…頬に八宝菜のソース付いてたわよ、どうしたのRASN?顔が青いわね…?」

 

「……」

 

RASNはカスミの言うとおりに顔を真っ青にしていた。

 

「まさかまだ体調が悪いのかしら…?…そうだ良くなるように添い寝してあげるわ…」

 

そう言うとカスミはシーツをめくるとRASNのいるベッドへと侵入してきた、RASNは驚きながらベッドから離れようとしていたがカスミの腕から逃れられなかった。

 

「駄目よ…行っちゃ、夏休みの間いなくて寂しかったんだからね…」

 

「…?!」

 

そしてカスミはRASNの体に乗っかかって見下ろす形になった。

 

「そういえばRASN、夏休みの間カムイ学長達とバカンス行ってたのよね?…楽しかった?」

 

「…!」

 

RASNは頷いた。

 

「…そう、それでね一年の子達に聞いたんだけど…随分その時エスメラルダさんと仲良かったそうね?」

 

「…!」

 

「色んな事やったんじゃない…?…だったら…」

 

するとカスミはスルッと胸元のリボンをほどいて上着のボタンを外し始め、RASNは焦りながらそれを止めようとしていたが止めきれずにカスミの上半身は脱ぎかかったブラウスだけになった。

 

「止めないで…!」

 

「…!?」

 

「…どうしてって…?…こうでもしないと先に越されちゃうのよ…!」

 

そうしてカスミは涙を溢しながらRASNに抱きついた。

 

「だから…こうするの…カモメやフラン達に先を越される前に刻みつけなきゃいけないの…」

 

今度は髪を結ぶリボンもカスミはほどいてRASNの顔前に顔を寄せた。

 

「…?!」

 

「RASN…す…す…きゅぅ…」

 

そしてカスミは淀んだ目をしながら顔の距離を狭めていった。

 

だがその距離が目と鼻の先なった時ガラリと保健室の扉が開いて急にカスミはフラりと倒れてRASNの胸に顔を突っ伏した。

 

「間に合いましたか…!」

 

「…!?」

 

扉の先にはアンプルシューターを構えたフローリアがいたのであった。

 

「…!」

 

「RASNさん…すみませんが貴方も眠って下さい…!」

 

「…?!」

 

するとフローリアはシューターを一発撃ち放ってRASNもカスミ同様に寝かせたのであった。

 

「ザザッ…もしもしー?ターゲットは確保出来たのかしらん?」

 

「はい、ねむねむ草を調合した睡眠薬は効果抜群ですから。」

 

そしてフローリアは耳に取り付けてる無線に耳を傾けていた。

 

「そうよね、なんたってこの私が直々に調合した睡眠薬よ?効果が無いのは有り得ないもの!」

 

「そ…そうですね…」

 

「そんじゃさっさと寝かした二人を運搬用ルーちゃん量産型に乗せて早く研究室に来なさい。」

 

「はい、分かりました。」

 

すると保健室に二機のルーちゃんがやって来てフローリアは二人をそれに乗せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-茶熊学園 カティアの実験室-

 

ここはカティアの実験室であり朝方爆発によって入り口の方は簡易的に直されている。そして室内は様々な実験器具に溢れかえっているがその中にカティアとフローリアがおりベッドにはカスミが寝ており、ソファーの方にはRASNが寝ていた。

 

「どうでしょうか先生?」

 

「大丈夫よん、カスミに投薬してあったSKM-MYは中和してあるわん。」

 

「それにしてもそのSKM-MYって何なんですか…?」

 

「これ?まぁアナタには試料の提供を十二分に手伝ってもらったし教えてあげても良いわよ。」

 

そう言うと椅子に座るカティアはSKM-MYと書かれてあるアンプルを取り出した。

 

「これはね、パルメって子いるじゃない?その子の血液を検査してた時に発見したのよね。」

 

「それで効力は?」

 

「効力ねぇ…まぁ一口で言えば執心っていったところね、今回の実験で確証したわ。」

 

「執心ですか…そうなると一種の惚れ薬みたいなものですか?」

 

「それは前の実験のデータから違うと思うわよ?ちょっとこれをご覧なさ…ってアナタは目がアレだったわ。」

 

そうするとカティアはモニターを取り出そうとしたがすぐにしまった。

 

「すみません。」

 

「いいのよ、まぁとりあえず口頭で説明してあげるわん。まずは結果からで言うと一回目は失敗して二回目は成功したのよねん。」

 

「そうですか…」

 

「そうよ、それで学校にいたネモに二回目の実験に手伝ってもらったわん。」

 

そうしながら机上の紙の束をぺらぺらとめくっていた、そこには様々な観察の経緯やら結果が書かれており付箋のように貼られてる写真しにはネモがクラゲの入った水槽を愛おしくじっと見つめてる姿が撮られていた。

 

「そっ…そうなんですか…そうなると一回目はどうなんですか?」

 

「あっ、そうね。一回目はーどれかしらん?」

 

カティアが我に返るとめくった紙を戻して紙束の頭の方まで戻った、そこには大量の生徒の名前が書かれていたがどれも斜線が架かっていた。

 

「一回目の方は夏休み前にまぁとりあえずそこら辺にいた生徒が対象ね、とりあえず手当たり次第に投薬していったわ。でもねーどれもこれもほぼ無反応でお手上げに近かったのよねん。」

 

そう言ってカティアはボンと紙束を机の上に放り投げた。

 

「でも今回のカスミとRASNさんとの実験の結果で分かったんですよね?」

 

「そうよ、でもまぁ正直なとこ二回目が終わって色々探りを入れたら執心ってのは分かっちゃっているのよね…まぁ確証が欲しかったのよ。」

 

「確証ですか…一体どんな…」

 

「まぁまずね、ネモはあんなだけど自分の部屋にクラゲのアクアリウムの部屋を作るぐらいクラゲ好きなのよね。」

 

「そっ…そうなんですか…。」

 

「それでこれが今のネモよん。」

 

そう言うと先程しまったモニターを取り出してリモコンで操作をした。

 

そして映し出されたのは右下にLIVEと書かれて暗く部屋でアクアリウムの光で照らされて踞るネモがいた、そしてそのネモの手には『のあ』と書かれた紙が貼ってある金魚鉢があり中にはクラゲが1杯ぷかぷか浮いていた。

 

『ふふ…可愛い…可愛いよノア…ふふふ…』

 

「この声はネモさん…?!」

 

「そうよ、多分もうこんな感じなのが一週間ぐらいは続いてるわね。」

 

「いっ…一週間ですか…恐ろしいですね、ところでそのネモさんは何に執心を…?」

 

「クラゲよ他のクラゲより何かと彩り鮮やかな感じのクラゲにご執心なのよねん、しかもノアって名前まで付けてるしね。」

 

「……。」

 

(この頃にはノアは居ませんでした、夏で結構狙いましたが中々…)

 

「更にね ネモはそのクラゲのノアってのに首ったけで投薬してから二・三分姿を眩ませただけでヒステリー起こしてちょっと大変だったのよねん。」

 

「…。」

 

「それじゃフローリア、詳しい薬の効能は何でしょう?」

 

「ネモさんがクラゲが好きで投薬されたらそのようになり、そしてカスミはRASNさんに迫るように距離を縮めてきた…つまり執心と言うより執心の強化という所ですか?」

 

「んーそうなるわね、あたしの考えでは効果効くのは被験者が心の奥底で思ってる異性の相手だけだと思うのよね。まぁ後はこれを元にルーン化するのを試みるのみね。」

 

「そうですか頑張ってくださいね。」

 

「ありがとねん、そういえばもうその二人は良いわよさっさと持ち帰んなさい。」

 

「あっ、はい。二人とも起きて下さい?」

 

そうしてフローリアは二人を起こして研究室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-茶熊学園 テニスコート-

 

始業式から数日後学園の生徒皆で体育をする日であり各生徒様々な場所に散らばっていた、そしてここテニスコートではダブルスでRASNとバイパーがオズマとヨシュアで試合をしていた。

 

「どうしたオズマ、あと一点で俺達の勝ちだぜ?」

 

「…!」

 

「チッ…舐められたもんだぜ、でもタイブレークだからこっちにも勝ち筋はあるはずだぜ。」

 

「はいっ!オズマさんのマグナムサーブは誰も返せませんしね!」 

 

試合はタイブレーク中でありアドバンテージはRASNとバイパー側であり、サーブ権はオズマが握っていてレシーバーはバイパーであった。

 

「おう!何たって…貯めに貯めて今は絶好調なんだぜっ!!」

 

そしてオズマが打った玉はまた電撃を纏ってネットを越えてRASN達のコートに素早く入るとそのまま抜けようとしていた。

 

「よしっ!貰ったぜ!」

 

「…遅いっ…!」

 

ボールがバイパーの後を過ぎようとしていたがバイパーはボールより素早く動くと捻りを入れながら打ち返した。

 

「なっ…何ぃ?!今まで打ち返せなかったのに打ち返しやがった?!オラッ!」

 

「フッ…打ち返せなかったんじゃない、あえて打ち返さず最後の最後で打ち返すのさ!」

 

「やってくれますね…!でも負けませんよ!」

 

「…!」

 

そして暫くラリーが続いたが最終的にはバイパーがネットの横をすり抜けるような打球をして勝利を収めた。

 

「正に…蛇の横牙だ…!」

 

「…!」

 

「そんな技ありですか…?」

 

「まぁアリなんだよな、歴とした技でボール回しって言うんだぜ?」

 

「そうなんですか…勉強になります!」

 

「ヨシュア、後で教えてやろうか?」

 

「はいっ!是非とも!」

 

「はは…俺は勘弁するぜ?」

 

「…遠慮するなよ?」

 

試合が終わりオズマとヨシュアは負けたのに明るく笑っていた。

 

「それにしてと汗がすげぇな…ちょっと浴びてくるか?」

 

「そうだな、次は泳ぎにでも行くか?」

 

「いいですね!RASNさんはどうしますか?」

 

「…!」

 

そしてオズマらは汗を流すためにも屋内プールに行こうとしたがRASNはもう少しここにいる事になった。

 

「そうですか、では僕たちは行きますので頑張ってくださいね!」

 

「疲れたと思ったらちゃんと休めよ、でねーと倒れるからな?」

 

「済まないな。」

 

そうしてオズマらとバイパーはテニスコートを後にして、残ったRASNは散らかったボールを籠に入れてドリンク片手にベンチで一息付いていた。

 

「あら?RASNじゃないどうしたの一人で?」

 

するとテニスコートに入ってきたのはカスミとフローリアとメアであり、三人共に髪が濡れていたのであった。

 

「まさか一人で練習していたんですか?言ってくれればカスミを貸し出しの致したんですが…」

 

「私はレンタル品じゃないわよ?!」

 

「…!」

 

「あっ、そうなんですかバイパーさん達とダブルスしていたんですかそれはお疲れ様でした。」

 

「そうなると…ダブルスは少し無理そうね、メア私とシングルで…」

 

「メアさん!私と試合しませんか?というかしましょう!やりましょう!」

 

カスミがメアに試合を申し込もうとしたがフローリアが割り込んでメアに試合を申し込んだ。

 

「えっ…でもフローリアさんボールの位置とか分かるんですか?」

 

「大丈夫です、むしろ音や感覚で丸見えですから。」

 

「だったら別にいいけど…手加減しないわよ?」

 

「はい、手加減なしでお願いしますね。」

 

こうしてフローリアとメアはラケットを手にコートに入って試合を始めた。

 

「…私が先だったのに…まぁ良いわ、隣良い?」

 

「…!」

 

そして試合出来なかったカスミはRASNの座るベンチに座ってメアとフローリアの試合を見ていた。

 

「フローリアやるわね…テニス部員のメアを相手に一歩も引いてないわ…!」

 

「…!」

 

「あら、RASNすごい汗じゃない?汗拭いてなかったの?」

 

「…?!」

 

カスミがRASNの額やらについてる汗に気づくとタオルで拭い始めた。

 

「はい、これで終わり。ちゃんと水分補給はしてるみたいだけどちゃんと塩分も取りなさい?はいこれ。」

 

「…!」

 

そして拭い終わるとカスミはポケットから塩キャラメルを取り出すとRASNに渡し、受け取ったRASNはそれを受け取って舐めた。

 

「あんまり甘くはないけど倒れるよりかはましでしょ?」

 

「…!」

 

するとRASNはお返しのようにドリンクをカスミに渡した。

 

「あっ、まぁ丁度喉乾いてたしね…ありがとう。」

 

ドリンク受け取ったカスミは少し照れながらもそのドリンクに口をつけた。

 

「………、…間接キスとか…期待してたのにな……」

 

そしてカスミは飲みながら小声で目を淀ませながらそう呟いていた。

 

 



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フラン編

2016年の11月30日に書かれたものです、フランス語のお勉強してればよかったと思う頃でした。


ここはアラマキ島の茶熊学園。

 

早朝、校舎へと向かう生徒が少ない中、昇降口に生徒会のソウマにRASN(赤髪)がいた。

 

「よう、早いなRASN。今日もいい天気だな。」

 

「…!」

 

RASNは赤と黒の配色のマフラーと手袋を外して鞄にしまうとソウマに挨拶した。

 

「へぇ…それちゃんと使ってんだな、それじゃ早いとこ教室へ向かおうぜ?」

 

「…!」

 

二人が靴を脱ぎ下駄箱を開けたらRASNの下駄箱からポタポタと何かが落ちてきた。

 

「…またか…?今度は…2、4…8通か。」

 

ソウマは落ちたそれらを拾い上げて数えていた、それは封蝋で閉じられていた手紙でありまとめてRASNへと手渡した。

 

「…?」

 

「よせ、どうせ中身は前と同じだろ?それより試験前に予習しようぜ。」

 

「…!」

 

ソウマは封を開こうとしたRASNを止めて一緒に教室へと向かった、そしてそんな二人しかいなかった昇降口にコツンと音がしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

学園では全学年一斉テストが行われていた、教室内はペンの書く音と試験監督の先生の足音も聞こえていた。そして生徒らは机上のテスト用紙に対しすらすらと答案を書いたり、頭を抱えたり、寝たり、白目で口から煙を出していたりしていた。

 

そうして全て試験が終わった、そして結果発表を聞き肩を伸ばす者、頭を抱える者が続出特に後者が多い模様。

 

 

 

 

 

 

そして試験が終わりいつもよりも早めな放課後が始まり生徒会メンバーは生徒会にいた、だが部屋にいたのタラコ組の五人しかいなかった。

 

-茶熊学園 生徒会室-

 

「ふぅぅ…試験疲れたー…」

 

「そうだねー…せんべーいるかいセツナ?」

 

「あ、貰いますねー…ぽりぽり…」

 

生徒会室に設置されている堀炬燵にはセツナとコリンが茶に煎餅で暖をとっていた。

 

「二人とも…試験終わりで怠けたいのは分かるが、やることはまだまだあるんだぞ…?」

 

そう言ってソウマは二人が和んでる堀炬燵に山のような書類と判子を置いた。

 

「おうおうソウマっち…今はゆっくり休ましてよー?おはぎいるー?」

 

「でも仕事はしてくれよ…RASNやフランさんもやってんだしさ…」

 

ソウマはコリンから差し出された何故か小さな鳥の形をしたおはぎを貰いながら二人にデスクで黙々と書類などを片付けているRASNとフランを指差した。

 

「でもさーここ五日は届け出にも目安箱も投書はあんまなかったじゃーん?」

 

「それは先生やゲオルグ副会長が試験前とかを考慮して生徒会活動を遠慮して、投書を無くしてもらってたんだぞ。」

 

「へー…それでその分が今日に…ですか?」

 

「そうだ。だから頼むぞ…?」

 

そう言ってソウマはデスクに戻ってRASN達と同じ作業を始めた。

 

「とりあえずはこれかな…えっと…生徒の転入要望書?意味わかんないよ…」

 

セツナはそう言ってRASN達と同様に作業を始めたが、コリンだけは中々作業をしていなかった。

 

「はぁ…つまんないなー…シャルとかいないからかなー?」

 

なお他の生徒会のメンバーは勉強が苦手そうな三人は再試験を通知され、ゲオルグを筆頭としたメンバーが勉強を見るため図書室で閉じ籠られている。

 

「…いや、多分通ってもこれを知ったら来なさそうだが。」

 

「そりゃ言えてるねー、あたしゃ炬燵でまったりするために来たけどねー?」

 

「私もかなー。あ、でも私は友達からもらったおはぎをみんなにもあげたくて…そうだRASNさんとフランさんにもあげますね。」

 

セツナは鞄の横の風呂敷を解き中の重箱を取り出した、中には先程ソウマに渡されたおはぎが沢山あったのであった。

 

そして二つ取り出し懐紙に乗せてRASNとフランの前に置いたのであった。

 

「メルシーでござる!」

 

「…!」

 

RASNとフランは作業の手を止めて貰ったおはぎに舌鼓を打った。

 

「ん?あれ?RASNさんこれなんですか?」

 

するとセツナはRASNのデスクの上に置いてあった手紙を一枚取っていた。

 

「…?!」

 

「ははぁん…副会長様はモテますなー?ではでは不肖このセツナが…あれ開かない?」

 

RASNは手紙を取られて驚いていたが、セツナはニタニタ笑いながら手紙を読み上げようとしたが封蝋が中々取れずに苦戦していた。

 

「…!」

 

「あ、ありがとうございますえっーと…えっ。」

 

見かねたRASNは文具入れからカッターを取り出すと手紙の封を切ってセツナに渡した、そして渡されたセツナは中身を取り出して読み上げようとしていたが次の声が出そうとした途端に声を出すのを止めた。

 

「な…なんですか…これ…?怖いです…」

 

「…。(汗)」

 

「あーセツナも見ちゃったかそれ。」

 

「も、って事はこれだけじゃないんですか?」

 

「そーだね、確か今月入ってからだっけ?RASN?」

 

「…!」

 

RASNはコクりと頷いた。

 

「そういや今朝もあったぞ手紙、しかも過去最多の数だ。」

 

「うぇぇ…マジかよー?お祓いとかした方がいいんじゃね?」

 

「だったら…てぇーい!巫女パンチ!」

 

「ふげっ!?」

 

セツナはそう言うと不意に手紙を空に放ち正拳突きで殴るとソウマの顔に手紙を張り付かせた。

 

「んぐぅ…んはっ!いきなり何を!?」

 

「何って?一応巫女やってるからお祓いをしてみたけど…?」

 

「今のがお祓いかよ?!普通のお祓いは無いのか!?」

 

「普通って…普通にお祓いしたんだけどなー?」

 

「んぐぐ…」

 

「あー、あたしも一応巫女やってんけどこちとら滾々と祈るぐらいしかできないんでねー?」

 

「…お祓いの話は取り合えず置いて…それより…」

 

ソウマは溜め息を吸うと手の中の手紙を見た。

 

「んーと…それって一応ラブレターってことで良いんですかね、チラッとしか見てなかったですけど。」

 

「…まぁそうだな、それに沢山あるがどれもこれも中身は違う内容でな…」

 

「…そーいやこんなのもあったけなー、シンプルだけど中々ね…」

 

するとコリンはRASNのデスクの引き出しを引き出した、そこには大量の手紙がありコリンはある一枚を取り出してセツナに見せた。そこには先程セツナが見た手紙とは違い『ずっと見ています。』と小さく真ん中に書いてあったのであった。

 

「……そんなのもあったんですね…さっきの手紙は事細やかに書かれてましたけどね…」

 

「そうなのか…でも流石にこれはもうどうにかした方がいいよな…」

 

「そーだね、この感じだとRASNが監視されてるみたいだしね。」

 

「…!」

 

「でも誰だかってのは見当は…ついてないですよね?」

 

「あぁ、シャナオウやヨシナカに筆跡鑑定を頼んでみたが…結果は一つずつ違う筆跡で書かれてて癖も変わってるから誰だか分からないと。」

 

「そうなんだよね、どうしたもんかね。」

 

「…それだったからセッシャに妙案があるでござる!」

 

するとここでフランが口を開いたのであった。

 

「妙案…?一体何なんですか?」

 

「ストラテジィ デコイでござるよ!」

 

フランの発した言葉に訳の分からない顔をしたセツナであったが、ソウマは棚からフランス語辞書を引き出した。

 

「えっと…囮作戦ってことか?」

 

「ウィ、そうでござる。誰かがシショーとアンティミティする姿を見せればノンパシオンスした相手が飛び出してくれるかもでござる!」

 

「成る程…そしてそこを俺達が抑えるのか、だが親密をしている姿は誰とやるんだ…?」

 

「…そんならフランがやっちゃえば?発案者だしさ?」

 

「フェ?!セッシャでござるか!?」

 

「まーそうだね、言い出しっぺの法則ってのもあるしね…」

 

「…えっと…シショーはどうでござるか?」

 

「…!」

 

フランはRASNに視線をやるとRASNは快く頷いたのであった。

 

「そんじゃ承諾も得たしどうすっかなー」

 

「あ、そういえばセッシャこういうのを持ってるでござるよ!」

 

フランはそう言うと鞄から少し大きめな一枚の紙を出したそこには遊園地特別招待券でありしかも20名様まで御招待と書かれていた。

 

「20名って…こんなの何時の間に…」

 

「前に商店街の福引きで引けたでござる、いつか皆と一緒に行こうと仕込んでいたでござるよ。」

 

「でもこんなことに使っていいんでしょうか…?」

 

「まぁ、仕方ないんじゃない?今他のメンバーは再試験とその準備で手一杯だし、それに都合よく明日は土曜日だしね。」

 

「それじゃストラテジィは明日でござるな。」

 

「…!」

 

「あぁ、だがまずは済ませることを済ませるぞ。」

 

そうして五人はまた席に着いて書類を相手にし始めた。

 

 

 

 

 

そして時間は過ぎて下校時間の少し前になり生徒会室にも夕日が差し込んできた。

 

「…よ…ようやく終わった…。」

 

「おう、お疲れさーん?」

 

炬燵組のセツナは自身の課された書類を片付け終わり炬燵に倒れ込んだ、そしてデスク組の方もようやく終わっていた。

 

「なんとか終わったな…数が少なめで助かったな。」

 

「…!」

 

「そうでござるな、明日にお仕事を持ち越したらストラテジィに響くでござる。」

 

「そうですね…それじゃ私は明日に備えてもう寮に帰りますね…」

 

「そんじゃあたしも戻ろうかね、明日は頼むぜー?」

 

そしてセツナとコリンは自身の鞄を持って生徒会室を後にした。

 

「…俺達もそろそろお開きにするか。」

 

「…!」

 

残っていた三人は戸締まりを確認してから生徒会室を後にした。

 

「そういやさっきゲオルグ副会長の方もお開きにしたって連絡あったぞ。」

 

そう言いながらソウマはスニャホをいじっていた。

 

「それにさっきの事を話したがやっぱ再試験準備で手が離せないらしい。」

 

「…!」

 

「オーララ、そうでござったか…」

 

「あぁ、それと明日についての詳しいことは今夜連絡を記しとくからな。」

 

「ダコール!」

 

「…!」

 

「よし、それじゃまた明日だな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-アラマキ島 遊園地-

 

翌日、遊園地の前には制服姿ではなく私服姿のRASNがいた。

 

「…。…!」

 

「シショー!お待たせたでござる!」

 

するとRASN同様に制服姿ではなく私服でセーター姿のフランがやって来たのであった。

 

「…!」

 

「丁度でござったか?それはイレティボンでござる…」

 

「…?」

 

「そうでござるな、それじゃディパーでござる!」

 

「…!」

 

そうして二人はゲートを通って遊園地へと入っていった。

 

「…よし、あたし達も行くかー?」

 

「楽しみですね!」

 

「…それより何だその格好は…?」

 

RASN達が入っていってからそこにソウマら三人がやってきた、だがソウマ以外はスーツでシルクハットにサングラスと異様な格好をしていた。

 

「何だって、こういうのはこういう姿が似合うんだぜ?」

 

「似合うって…逆に怪しまれるんじゃ…?」

 

「大丈夫ですって、ソウマさんの分も用意してますよ?」

 

そう言ってセツナは紙袋をソウマに差し出した、中には二人が着ているスーツが入っていた。

 

「いや…俺は着ないからな?」

 

「えー?ノリ悪いなー?」

 

「そうですよ、こういう時は雰囲気が大事なんですよ?」

 

「仮装パーティじゃあるまいし…」

 

「まーいいや、早くいこうぜ?早くしないと見失っちまうしなー?」

 

「…そうだなそれじゃ行くか…」

 

そうしてソウマ達もゲートを通って遊園地へと入っていった。

 

 

 

 

 

そしてすでに遊園地に歩を進めていた二人は入り口近くの案内板の前にいた。

 

「シショーとりあえずどうするでござるか?」

 

「…、…?」

 

RASNは少し悩んでからある場所へと指差したそこにはホラーハウスと書かれていた。

 

「いいでござるな!それじゃそこにヴィザージュでござる!」

 

「…!?」

 

フランは嬉しそうにRASNの手を引っ張っていった。

 

 

 

 

 

 

-遊園地 ホラーハウス-

 

「オーララ…物々しい雰囲気でござるな…?」

 

「…?」

 

「タハハ…少し苦手でござるが行くでござるか…?」

 

「…!」

 

そうして二人はホラーハウスへと入っていった、そしてそれに遅れて三人もやって来た。

 

「ここに入ったか…」

 

「ホ…ホラーハウスですか…?」

 

「そうだねー、怖さにこだわっているって書いてあるしね…はむはむ。」

 

コリンはパンフレット片手にもう片方をチョロスで手を塞いでいた。

 

「だがあいつらもそこに入っていったからな、俺達も行くぞ。」

 

「え…入るんですか?」

 

セツナはプルプルと震えていた。

 

「そうだよ、でなきゃ私ら来た意味無いじゃん?」

 

「そ…そうですけど…わ、私は皆さんが入ってる間にこのホラーハウスの回りを…」

 

「…泣き言は言うな、早く行かないと見失うしな。」

 

セツナが言い終わる前にソウマはセツナの腕を引いてホラーハウスへと入っていった。

 

「やっ…やめてー?!私は勘弁したいですー?!」

 

そうして三人も入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ホラーハウス内-

 

「中々の出来映えで…ござるな…?」

 

ホラーハウスの中ではフランとRASNが人魂が漂う暗い中を歩いていた。

 

「…?」

 

「だ…大丈夫でござる!セッシャはリタイアなんてしないでござるよ…」

 

そう言いながらフランは震える手をRASNの腕に掴ませていた。

 

 

「うぅぅぅ…大丈夫ですか何も無いですか…?」

 

一方その二人の後方の三人はコリンの腰にセツナが前が見えないように抱き着いており、ここに入ってからずっとこの体勢である。

 

「ここまで怖がるのか…いくら怖いものが苦手だっていってもな…」

 

「だって!怖いものは怖いんですもん!!」

 

「大丈夫だ今のところ人魂が漂っていて…おっそこにミイラおと…」

 

「えぎゃー!?」

 

「のわっ?!」

 

ソウマは言い切る前にセツナに拳を入れられかけた、だが寸での所で回避したのであった。

 

「脅かさないで下さいよ?!」

 

「脅してない?!それに前に何も無いですかって…」

 

「あったら言わないで下さいよ!無いなら言って下さい!!」

 

セツナは涙目で拳を構えながらそう言っていた。

 

「あー…セツナ…?」

 

「今度は何ですか?!」

 

「後ろ…てか肩…」

 

「えっ? ……いっ……!?」

 

コリン言う通りにセツナが自身の肩を見るとそこには細長く爪のように鋭い指が置かれていた。

 

「…っ?!」

 

そして恐る恐る振り返るとそこには紫色のマントを頭から被り、その合間から眼光を赤く光らせ指をくしりくしりと動かして揺れてる人形があった。

 

「でっ…ででで…ででっで…でた……。」

 

「おっと?!」

 

セツナがそれを見ると消え入る声でそう言って後方へと倒れ、ソウマはそれを察知してすかさず受け止めた。

 

「…てかこれってもしかして…?」

 

「あら?あなた達もいたのね…?」

 

コリンがその正体を見定めようとチラリとマントを捲るとそれの背後から水色と一本の紫のメッシュが入った髪でナースハットを被った女性が姿を現した。

 

「おっ、やっぱハーブ先生かーってことはこの中はミントちゃんだなー?」

 

「わっー剥がさないでよー」

 

そう言うとコリンがミントちゃんのマントを引っぺがそうとすると、ハーブはミントちゃんにマントを取らせまいと指を動かしていた。

 

「どうしてこんなとこに先生が?」

 

「…その質問はこっちがしたいけど…まぁいいわ、私はスカウトされてここにいるわね。」

 

「スカウト…ですか。」

 

「そうよ、それで貴方達は?もしかして両手に花デートかしら、ソウマ君?」

 

「そっ…そんなわけありません!」

 

「それじゃ何かしら?」

 

「…実は…」

 

ソウマはハーブに昨日の事と現在進行している作戦を話した。

 

「…と言うことなんです。」

 

「大変ねRASN君も、そんな事になって。」

 

「ま、半分は遊園地楽しみながらやってんけどね。」

 

「…ところでその二人は今どこなのかしら?」

 

「あっ…。」

 

「あ…。」

 

コリンとソウマは唖然としてから前を見た、そこには少し前まで見えていたRASNとフランの姿は消えていたのであった。

 

「足を止めさせた私だけど…追跡するならちゃんとした方がいいわよ?」

 

「おいおい…どーすんのソウマっち?」

 

「…手当たり次第に探すしかないな…発信器とか付けてないしな…」

 

「連絡してみたら?彼らもスニャホとか持ってるでしょ?」

 

「いやー…実はここに。」

 

そう言うとコリンはスーツの内ポケットから二個のスニャホを取り出した。一つは白く洋梨のストラップを付けており、もう一つは青く星たぬきのストラップが付いていた。

 

「そうなの…困ったわね。」

 

「…仕方ない、取りあえず手分けして探すか…。」

 

そうして今だ気を失ってるセツナをコリンがおんぶして二人を探し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-遊園地 喫食エリア-

 

ソウマらがハーブと合流し探し始めた頃二人は既にホラーハウスから抜け出して様々な物が食べれる喫食エリアへと足を踏み入れていた。

 

「シショー!これも美味しそうでござるよー?」

 

「…!」

 

二人はそれぞれトレイに好きな物を乗せていたがフランが取るのはどれもRASNが取った物と同じであった、そして取り終わって二人は席に着いた。

 

「それにしてもさっきのホラーハウスは中々イフレイオンで…思わず抱き着いて…」

 

「…?」

 

「アハハ…何でもないでござる…。それよりもシショー、次はどこに…」

 

フランが赤い頬を指で掻いてからパンフレットで地図のページを開こうとした、だが二人の座る席に近づく三つの影がやって来た。

 

「それにしても触れ合いエリアのブラッド中々可愛かったわよ?」

 

「いっ…その事は忘れてくれよ…」

 

「駄目だぜー?んな事もあろうかと用意してたカメラにバッチリおさえてんだよなー?」

 

「んなっ?!ニイさんそれはカンベンしてくれ!?」

 

三人は茶熊学園で先生をしている三人であった。

 

ブラッドはRASNらのクラスの副担任でヴィンセントはシャルロットやシャナオウらのクラスの副担任である、そしてファルファラは美術担任の先生である。

 

「あら?そこにいるのって…あなたの受け持ってるクラスの子じゃない?」

 

「お?本当だな、おーい!」

 

「…?!」

 

「フェ?!これは…プロフェッサーの方々でござるか?」

 

「おう、悪いが邪魔するぜぇ?」

 

声をかけられた二人はビックリし、先生らは二人の座る席にへと腰を着けた。

 

そして流れで五人で食事を食べていた。

 

「そういえば二人で遊園地って…そういう事かしら?」

 

「へぇー…中々隅に置けねぇなー?このこのー?」

 

「そっ…それよりプロフェッサー方はどうしてここに…?」

 

「俺達か?まぁ学長からチケット貰ってな、羽休めに来てるって訳だな。」

 

「羽休めね…そういえばブラッドがさっきまでね…」

 

「だぁー?!ファルファラ先生それは言わないでくれ?!」

 

ファルファラがなにか言おうとしたがブラッドが差し止めたのであった。

 

「えー、面白いのに?」

 

「そっちが面白くても話されると恥ずかしいんだよ!」

 

「そんじゃ…ホレホレこれ見な二人とも。」

 

「何でござるか…?」

 

「…?」

 

立ち向かい合う二人を余所にルーンカメラをフランとRASNに見せた、そこにはブラッドが映っていたが猫やらウサギやらモルモット可愛がってる姿であった。

 

「わぁー?!見せんなってニイさん!?」

 

「別に良いじゃない?減るもんじゃ無いんだし。」

 

「そんな問題じゃねーだろが?!それよりニイさんそれをよこせ!」

 

するとブラッドはヴィンセントに飛びかかったがヴィンセントはそれをいなしてかわしたのであった。

 

「おっと、危ねェなぁ…渡すわけねーだろ?あばーよっと、帰って現像しねーとなぁ…」

 

そしてヴィンセントはルーンカメラを持って逃げ出したのであった。

 

「痛ぇ…待ちやがれぇ!」

 

立ち上がったブラッドはヴィンセントを追って喫食エリアを出たのであった。

 

「あらあら…ごめんなさいね騒がせちゃって、あとは…ね?」

 

ファルファラはウインクして飛び出した二人を追っていった。

 

「…ムッ…」

 

「…?」

 

「…フェ?どうしたでござるかシショー?」

 

「…。(フルフル) …?」

 

RASN首を横に振るとフランの持ってるパンフレットの地図を指さした。

 

「…そうでござるな、次を楽しむでござるよ!」

 

「…!」

 

そうして二人は席を立った。

 

「えっと…シショー?」

 

「…?」

 

喫食エリアからでようとすると急にフランは立ち止まったのであった、そしてそんなフランの顔は少し赤くなっていた。

 

「…次のアトラクションまで…手を繋いでリードしてほしい…でござる。」

 

フランはそう言って手持ち無沙汰なRASNの手に手のひらを差し出したのだった。

 

「…!」

 

「ジェイユ…メルシーでござる…。」

 

そうして二人は手を繋いで再び歩きだしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その二人を探しているソウマ達は中々見つけられずにいたのであった。

 

「いやー…見つかんないねー?」

 

「そうね、こんなに探しても見つからないなんてね…。」

 

四人はベンチに座って息を調えており、セツナの肩には白く丸い鳥が乗っていた。

 

「ふんふん…空から探しても見当たらない…ありがとダイフク。」

 

「そうなると…アトラクションとか施設の中か…?厄介だな…」

 

「まぁそうさね…でも厄介でも調べないとね…?」

 

「あっ、私は怖い系のモノはスルーしたいです…」

 

「そうなったら手分けした方がいいわね…それじゃコリンは私と来なさい?」

 

「えぇー…?」

 

「何でそんな残念そうな声を…」

 

「だってさー、ハーブ先生だとふざけられないんだもんー」

 

「…先生コリンをお願いしますね?」

 

「分かってるわ、さぁ行くわよ。」

 

「こんっ?!」

 

そうしてコリンはハーブに掴まれてソウマとセツナの元を離れていった。

 

「それじゃ俺達も行くか…」

 

「はいよー、あっまず喫食エリア行きましょうよ!」

 

「……あぁ…分かった…。」

 

そしてソウマもセツナに連れられてベンチから離れた。

 

 

 

そして時は過ぎていき遊園地は夕刻となって陽の影が延び始めていた、探されている二人は未だに遊園地内を歩き回っていた。

 

「ムムッ…随分とソリィになってきたでござるなシショー?」

 

「…!」

 

二人が手を繋いでた手は掴んでいるのではなく組んで歩いていたのであった。

 

「そうなると次行けるので終わりでござるな…」

 

「…。」

 

「それじゃ…あそこはどうでござろうか?」

 

フランが指差す先には大きな観覧車がそびえ立っていたのであった。

 

「…!」

 

「良かったでござる、それじゃ…行くてござるよ?」

 

そう言ってフランはRASNの腕を組んだのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-遊園地 観覧車内-

 

「ふぉおおー!すごい景色でござるぅ!」

 

「…!」

 

観覧車に入っていった二人は徐々に上がり広がる景色に見とれていた。

 

「あっ!あそこにセッシャ達が通ってるイコールが見えるでござるよ!」

 

「…!」

 

「フェ!?」

 

「…?!」

 

そうして二人を乗せてるゴンドラは観覧車の天辺まで行こうとしていた、だが天辺まで行った途端にゴンドラはガタンと揺れたのであった。

 

「…?」

 

「セッシャは大丈夫でござる…それより…止まっているで…ござるか?」

 

揺れた拍子によろけたフランをRASNは体を使って受け止めていたが、フランの言う通りに観覧車は止まっていたのであった。

 

「…!」

 

「…そうでござるか………。」

 

「…?」

 

状況を確認したフランは暫くRASNに受け止められていた、受け止めているRASNは少し首をかしげながらもそのままにしていた。

 

「…?」

 

「…大丈夫で…ノン、もう少しこのままがいいでござる…高くて揺れてるでござるから…」

 

RASNはフランの事を気にかけたがフランはそのままRASNの体に身を預けていた。

 

「……。」

 

「……。」

 

そうして暫く観覧車は止まり続けていてフランもRASNの体に預け続けていた。二人の間には沈黙が続いていたがRASNが口を開いたのであった。

 

「…。」

 

「ん?ソウマ殿達でござるか?…あぁ…そういえばそうでござった…連絡も通達もないでござるな…」

 

「?」

 

「『そういえば』って?それはそのままのソーンでござるよシショー…」

 

「…!?」

 

フランはそう言うとギュッとRASNを抱きしめその胸に顔を寄せたのであった。

 

「こうなるのに随分とイタープを踏んだでござる…」

 

「…?!」

 

「どういうことって…色々したでござるよ…朝早く起きて出来たばかりの手紙を下駄箱にオシニィしたり、シショーの部屋にシュビリオンス用のルーンカメラを仕掛けたりしたでござるよ…」

 

「…!?」

 

RASNはフランの言ったことが信じられずに目を見開いていた。

 

「それにこの観覧車も…今はセッシャの分身が止めているでござる。」

 

「?!」

 

「…セッシャらの後や前にも乗ってる人がいるでござるな…まぁ迷惑してるでござろうな…?」

 

「…!」

 

「…駄目でござるよ、セッシャとシショー…いやRASN殿とのムーモントは邪魔されたくないでござる…!」

 

フランは熱っぽい顔と潤みと淀みのある目でRASNの顔を見上げてそう言ったのであった。

 

「…!!」

 

「…どうしてもでござるか?やっぱりRASN殿はアニカルでござる…だったら…それをセッシャだけに向けて欲しいでござる。」

 

「…?!」

 

「…プロメィスしてほしいでござる…そのブーシュとレェブで…」

 

そしてフランは目を閉じると頬に光を一筋走らせてRASNへと顔を近づけた、RASNはそれに対してただただ困惑していた。

 

「RASN殿…アムゥでござる…イラヴでござる…ビジィしてほしいでござる…シャクタアムゥしたいでござる…ジュフルフレクションでござる…!」

 

「…………。…!」

 

RASNはそう言うフランを苦しげな表情見せていた、だが何か覚悟を決めた様に表情を引き締めるとフランの後頭部に手を当て引き寄せた。

 

「アッ……RASN…」

 

「……。」

 

二人の距離は徐々に近づいた、そして今まさにくっつきそうな時ガタンと二人の乗るゴンドラが揺れたのであった。

 

「フェ?!」

 

「…!?」

 

そしてその揺れの衝撃でフランはRASNの方へと倒れゴツンと鈍い音と共に二人は気を失っていたのであった。

 

「うーん…」

 

「……、…?!」

 

ゴンドラが残り四分の一に差し掛かった頃二人は目を覚ましたのであった。

 

「オララ…?シショーで…ござるか?」

 

「…?」

 

「フェ…セッシャは大丈夫でござるが…どうしてシショーと…?」

 

「…、…?」

 

フランは心配するRASNに少し困惑していたが辺りの事を確認すると顔を赤らめていた、そしてRASNはフランに先程までの事をある程度聞こうとした。

 

「セッシャが観覧車を…?そんなヴィノンズになりそうな事はしないでござるよ…?」

 

「…?」

 

「覚えていることでござるか…?ビィアンシュウ…今月の頭辺りの生徒会での勉強会で…化学で分からないことがあったでござったからカティア先生に聞きに行ったのは覚えているでござるな…」

 

「…?」

 

「そこから先は覚えないでござる…これはラフティブリメモアでござるか?」

 

「…。」

 

RASNは首をかしげたのであった。

 

「でもラプリィしてないのは大変でござる…大変と言えば…この体勢も中々大変でござる…。」

 

「…!」

 

フランが言う通りに二人の体勢はRASNにフランが覆い被さっている状況であった。

 

「こっ…こんな姿見られたら…恥ずかしいでござるな…?」

 

「……///」

 

そして二人はお互いに顔を赤くしていたのであった。

 

「あー…ゴホンゴホン…大変申し訳にくいが…見られてるぞ…?」

 

「フェッ…?!」

 

「…!?」

 

たが途端にソウマの声が聞こえたのであった、そして驚く二人は辺りを見て今自分達が乗ってたゴンドラはもう下に着いていたのであった。

 

「ソ…ソウマ殿?!何故ここに!?」

 

「何故って…作戦を提案してチケットも提供したのはフランさんだろ?」

 

「…!」

 

するとRASNはソウマに先程フランと頭をぶつけた事を話したのであった。

 

「…そうだったのか…それは大変だな… お前は大丈夫なのか?」

 

「…!」

 

「そうか…それより早く出た方がいいぞ、まだ残されている人もいるからな。 」

 

「…!」

 

「コンプラーションでござる!」

 

そうしてソウマに連れられて二人は腕を組ながら観覧車を後にした。





-茶熊学園 カティアの実験室-

RASNらが観覧車を離れた頃の同時刻…ここはカティアが勝手に校内に作った実験室である、そして部屋の主あるカティアは不満そうな顔で手元のキーボードを操作しつつモニターを見ていた。

「うむむ…効果を遅延性にしてみたけど…意外なものに弱いわのねん…」

そうカティアは呟きモニターの映像を操作していた、モニターにはRASNとフランが映っており先程二人がゴンドラ内で頭をぶつけ合った姿が映し出されていた。

「これは改良の余地があるわね、今度できるのは誰が犠せ…じゃなくて被検体にしようかしらん?」

そう言ってカティアは手元にあるSKM-MYーⅡとラベルが書かれてるアンプルをくるくると回していた。

「んふふ…思うだけでも興奮するわ…おっほー!!」

「やはりお主であったか…」

すると実験室の扉が水飛沫と共に弾け飛んだ、そして扉の先には数学を受け持ってる人魚のユーリエが半目でカティアを見ていた。

「せっ…先生?!」

「ほっほっほ…そうじゃな、ところで一つ聞きたいことがあるが…よいか?」

ユーリエはカティアの返事を待たずにズイズイと部屋に押し入ってモニターを見始めた。

「ふんふん…カティアよこれは一体なんじゃ?」

「えっと…観察です、被検体の。」

「ふーん…それで?何を調べてるんじゃ?」

「こっ…これです…。」

カティアはユーリエにアンプルを見せた、ユーリエはひょいとアンプルを取るとをじっくり観察していた。

「SKM-MY…これは未だ未解明なものじゃな…」

「そうですね、ですが二回の実験を通して効果の現れ方を変える事ができました。」

「ほほー、中々やるではないか…先生が花丸をあげようか。」

そう言ってユーリエはカティアに指を指して花丸を空に描いた。

「ありがとうございま…って!そうじゃなくって!何故先生がここに?!」

「おっと、忘れるところであった…まぁなんというかお主が何か良からぬ事でも考えてないかと思ったら…まぁ案の定であったから灸を添えにな…」

「良からぬ事って…悪いことはしてま…おほっ?!」

カティアが言い切る前にユーリエは首根っこを掴むとずるずると引きずり始めた。

「何するんですかぁ?!」

「んー?昔のようにな少しお説教を…じゃな?」

「ムキッィィ!先生のアレは説教じゃありませんってば!?」

カティアは雄叫びならぬ雌叫びを上げるとユーリエに連れられて何処かへと消えたのであった。


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フラン編 Not goodルート

1/17日にツキミ編の半分と一緒に上がっていたものです。
※ソレを漂わせる感じの表現有りかもなので一応R-15かもで途中から始まります、詳しくは前のお話を見ていただけると良きです。
それと話の中のRASNは赤髪君です、それにで出演可能キャラは現行プレイ中の白猫の飛行島事情です。


-遊園地 観覧車内-

 

「ふぉおおー!すごい景色でござるぅ!」

 

「…!」

 

観覧車に入っていった二人は徐々に上がり広がる景色に見とれていた。

 

「あっ!あそこにセッシャ達が通ってるイコールが見えるでござるよ!」

 

「…!」

 

「フェ!?」

 

「…?!」

 

そうして二人を乗せてるゴンドラは観覧車の天辺まで行こうとしていた、だが天辺まで行った途端にゴンドラはガタンと揺れたのであった。

 

「…?」

 

「セッシャは大丈夫でござる…それより…止まっているで…ござるか?」

 

揺れた拍子によろけたフランをRASNは体を使って受け止めていたが、フランの言う通りに観覧車は止まっていたのであった。

 

「…!」

 

「…そうでござるか………。」

 

「…?」

 

状況を確認したフランは暫くRASNに受け止められていた、受け止めているRASNは少し首をかしげながらもそのままにしていた。

 

「…?」

 

「…大丈夫で…ノン、もう少しこのままがいいでござる…高くて揺れてるでござるから…」

 

RASNはフランの事を気にかけたがフランはそのままRASNの体に身を預けていた。

 

「……。」

 

「……。」

 

そうして暫く観覧車は止まり続けていてフランもRASNの体に預け続けていた。二人の間には沈黙が続いていたがRASNが口を開いたのであった。

 

「…。」

 

「ん?ソウマ殿達でござるか?…あぁ…そういえばそうでござった…連絡も通達もないでござるな…」

 

「?」

 

「『そういえば』って?それはそのままのソーンでござるよシショー…」

 

「…!?」

 

フランはそう言うとギュッとRASNを抱きしめその胸に顔を寄せたのであった。

 

「こうなるのに随分とイタープを踏んだでござる…」

 

「…?!」

 

「どういうことって…色々したでござるよ…朝早く起きて出来たばかりの手紙を下駄箱にオシニィしたり、シショーの部屋にシュビリオンス用のルーンカメラを仕掛けたりしたでござるよ…」

 

「…!?」

 

RASNはフランの言ったことが信じられずに目を見開いていた。

 

「それにこの観覧車も…今はセッシャの分身が止めているでござる。」

 

「?!」

 

「…セッシャらの後や前にも乗ってる人がいるでござるな…まぁ迷惑してるでござろうな…?」

 

「…!」

 

「…駄目でござるよ、セッシャとシショー…いやRASNとのムーモントは邪魔されたくないでござる…!」

 

フランは熱っぽい顔と潤みと淀みのある目でRASNの顔を見上げてそう言ったのであった。

 

「…!!」

 

「…どうしてもでござるか?やっぱりRASNはアニカルでござる…だったら…それをセッシャだけに向けて欲しいでござる。」

 

「…?!」

 

「…プロメィスしてほしいでござる…そのブーシュとレェブで…」

 

そしてフランは目を閉じると頬に光を一筋走らせてRASNへと顔を近づけた、RASNはそれに対してただただ困惑していた。

 

「RASN…アムゥでござる…イラヴでござる…ビジィしてほしいでござる…シャクタアムゥしたいでござる…ジュフルフレクションでござる…!」

 

「…………。…!」

 

RASNはそう言うフランを苦しげな表情で見せていた、だが何か覚悟を決めた様に表情を引き締めるとフランの後頭部に手を当て引き寄せた。

 

「アッ……RASN…」

 

「……。」

 

二人の距離は徐々に近づいた。

そして二人の口は同時に塞がれたのであった。

 

そして長くそれが続きようやく離れた時フランの方から雫が滴ったのであった。

 

「んむぅ…RASN…ブナゥでござる…。」

 

「…。」

 

フランは更に熱っぽい顔をするとRASNへとぎゅっと抱き付き、RASNは複雑な顔をしながらも抱き付くフランを受け止めたのであった。

 

そして止まってたゴンドラもガタリと動き始めたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ー♪」

 

「…。」

 

観覧車から出たフランとRASNは腕を組んで歩き出していた、だが観覧車へと向かう前より深く腕を組んでいたのであった。 そして時刻は夕刻を過ぎて夜となり様々なアトラクションはライトアップされてきらびやかとなっていた。

 

「…随分と遅くなってしまったでござるな…、これではイコールドフターの門限を破ってしまったでござるな…」

 

「…。(コクリ)」

 

「…でも大丈夫でござるよ…セッシャ良いところ知ってるでござるから…付いて来て欲しいでござる。」

 

そう言われRASNは引っ張られる形でフランに付いて行った。

 

「ここでござるよ…?」

 

「…?!」

 

二人の歩が止まったのはホテルであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-ホテル-

 

「…。」

 

「…美味しかったでござるな?」

 

「…。(コクリ)」

 

夕食を済まし腕を組んでまた客室へと戻ってきたフランとRASN、二人とも笑ってはいたがフランはニコニコとしてRASNは少し陰を落として笑っていた。

 

「…すりすりー…すりすりでござる…」

 

「…。」

 

そして部屋に一つしか無かったベッドへと二人は腰を掛けた。

フランは目を閉じて頭をRASNの体に擦り付け、RASNはこんな状況とされてる事に落ち着かずそわそわしていた。

 

なお星たぬきになるような兆候は見られない。

 

「すり…すり…くぅ…」

 

「…?」

 

何度もすりすりとされるうちにフランは心地好さのせいか頭が船を漕いでいたのであった。

 

「…んむぅ…そうでござるな、ちゃんとソメィルする前に湯浴びするでござるよ…」

 

「…。」

 

フランは目を擦りながらも部屋つきの浴場へと姿を消し、RASNはほっと一息ついたのであった。

 

「アッ…RASN、良かったら一緒にどうでござるか…?」

 

「…!?」

 

そして二息つこうと思ったら浴場からフランが顔を出し、RASNは驚き首を横に振ったのであった。

 

「オーララ…まぁいいでござる、ちゃんと待ってるでござるよ?」

 

「…。」

 

フランは少し残念そうな顔をしつつも顔を引っ込めてシャワーを浴び始めた、そしてベッドで浴場からの水の音を聞きながらRASNはただ座っていた。

 

 

 

 

 

 

「ふぃー…中々アグリアブルでござった…!」

 

「…!?」

 

そうして暫くして水音も鳴り止むと浴場の扉が開かれそこからはタオルを体に巻いたフランが姿を表し、RASNはそれに驚き顔を下に向けた。

 

「んー?どうしたでござるかRASN?」

 

「…!」

 

フランはベッドに座ると不思議そうに肩を抱き寄せ、RASNは顔を赤くさせていた。

 

「…ミニョンでござるな…んむぅ…」

 

「…!…。」

 

今度はフランの方から顔を近づけたのであった、RASNは驚きはしたがそれを受けていた。

 

そして先程よりかは短い時間で離れたのであった。

 

「…やっぱいいでござるな…、………でも…。」

 

「…?」

 

「でも…やっぱ不安でござる…だから…!」

 

「…?!」

 

するとフランはRASNを押し倒しジッと見下ろしていたのであった。

 

「…口やビジィだけではとても不安で…そのセッシャと…」

 

「…!…?!」

 

RASNは首を振っていたがフランは顔を抑えるとそのまま身を預け、身に付けていたタオルを落としたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして夜は更り、RASNらのいるホテルの一室は朝を迎えたのであった。ベッドにはフランがRASNに寄り添う形で寝ていたのであった。

 

「んぅ…ふぁぁ…ボンジュールでござる…RASN?」

 

先に起きたのはフランであり欠伸をしながら目を擦っていた。

 

「ぐっすりでござるな…昨夜は随分とアンタセクティして…イストマックがチュドでござる…」

 

そして熱っぽい視線を熟睡しているRASNに浴びせながらフランは腹をさすっていた。

 

「…でも…まだ怖いでござる…RASN少しアトンディでござるよ?」

 

フランは着替えると寝ているRASNの額を撫でると客室を出たのであった。

 

 

 

 

 

 

「…?…?」

 

フランが出てから暫くしてRASNが目覚めた、RASNは一端辺りを見渡してからフランがいないことに気づいたのであった。

 

「…!」

 

RASNはベッドから出るととりあえず服を着替えて部屋から出ようとした。

 

「…!?オーララ?!もう起きたでござるか?!」

 

「…?!」

 

だが扉が開こうとノブに手をかけようとしたら扉は開かれてそこにはフランがいてのであった。

 

「RASN、昨晩はメルシーでござったよ…」

 

「…。…?」

 

フランは赤面しつつ黙りこくるRASNの手を握ったのであった、一方RASNはもう片方の手の方を見たのであった。

 

「あっ、そういえばお腹が空いてくると思って近くのストアで色々買ってきたでござる。…本当は手作りの方がよかったでござるが…。」

 

そう言って『エキドナDストア』と書かれていた袋を机の上で広げた、そこにはいくつものインスタント食品等が並んでいた。

 

「好きなものを選んできたでござるが…どうでござろうか?」

 

「…。」

 

並ばれたインスタント食品にはRASNが好きなアストラパイ味のカップ麺や中辛カレー等があったのであった。

 

「アッ…セッシャ少し用があるでござるから先に準備してほしいでござる、セッシャは…これでいいでござるから。」

 

そんな時フランは広げた袋からガサゴソと錠剤の入ったシートを取り出すと懐にしまい、適当なカップ麺を取り出して置くと部屋つきの浴場へ姿を消した。

 

「…?…。」

 

RASNは疑問に思いつつもアストラパイ味のカップ麺と先程フランの置いたカップ麺持ってポッドの湯を注いでいた。

 

 

そしてカップ麺が出来上がる頃フランは戻ってきたのであった。

 

「お待たせでござる!良い香りでござるな?」

 

「…、…?」

 

「何をしていたかって?それは…シークレットでござる、それより麺がのびてしまうでござるよ?」

 

「…。」

 

RASNは疑問を抱えながらもカップ麺を食したのであった。

 

 

「ふぃー…美味しかったでござるな?」

 

「…。」

 

カップ麺を食べ終え片付けを終えるとフランはRASNの肩に抱きついていていた。

 

「…RASN、少しデマンドがあるでござるが…いいでござるか?」

 

「……?」

 

「えっと…実は昨晩と同じ様な事をしてほしいでござるが…駄目でござるか?」

 

フランはそう言うと掴んでるRASNの腕を更に強く胸に引き寄せて熱い視線を浴びせたのであった。

 

「……、…。」

 

RASNは少し考えるように頭を抱えてから溜め息をつくと渋々と頷いた。

 

「メルシーでござる!それじゃこっちでござるよ…!」

 

フランは嬉々となるとベッドに座り、RASNも嬉々とはしなかったがベッドへと座ったのであった。

 

「アッ…あと出来たら今度はRASNから…して欲しいでござる…。」

 

「……。」

 

そしてフランは顔を赤らめRASNの耳元でそう囁いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-茶熊学園 生徒会室-

 

RASNらが遊園地へ向かってから二日経ち月曜となっていた。

 

そんな早朝の生徒会室には二日前に遊園地でRASNとフランを追っていたソウマとコリンとセツナにお茶を沸かしているチェルシーが集っていた。

 

「はぁぁ…炬燵暖けーなー…」

 

「そーですねー…眠たくなってきますよー…」

 

「そのまま寝てもらっちゃ困るんだがな…ほら今日分だぞ。」

 

ソウマはドサッと書類の山を炬燵の上に置いたのであった。

 

「うげー…こんなにあんのー?増員ないんですかー?」

 

「ただ今再試の真っ最中ですし…それに試験監督と監査員何名かは行かれておりますし…あと何人かは部活ですね。」

 

「ふーん、まぁシャルとかは油断したら抜け出しちゃうからねー。」

 

「そうですなー…そういや結局RASNさんとフランさんとは連絡取れてないんですか?」

 

「…そうだな、寮にも帰ってきたってシャナオウやゼロキスからも言われてないからな…。」

 

「不安ですね…無事であるといいですぅ…」

 

そう言ってチェルシーは炬燵のコリンとセツナにお茶を渡したのであった。

 

「おっ、サンキュー…ぷはーうめー…」

 

「いやー…おはぎが進みますなー…」

 

「…頼むからやってくれ…飲んでもいいから…」

 

ソウマが頭を抱えると生徒会室の扉がガラッと開き、フランとRASNが入ってきたのであった。

 

「皆のものボンジュールでごさる!」

 

「…。」

 

「あぁ…ボンジュール…って、RASNにフラン!?大丈夫だったのか?!」

 

「大丈夫って…あぁ、そういえばストラテジィでござったな…大丈夫でござるよRASNのストーカーはセッシャがセイバイしたでござるよ?」

 

「へぇー…ってか、ありゃ?何時もの様にシショーって呼ばないのかい?」

 

「…何ででござるか?RASNはRASNでござるけど?」

 

コリンがそう訊ねるとフランはジッとコリンに視線を差したのであった。

 

「……ま、そうさね…」

 

「…ともかくそのストーカーはどうしたんだ?」

 

「……ストーカーなら……まぁ心配要らぬでござるよ、徹底的にセイバイしてるからもうあの手紙は来ないでござるよ?」

 

フランはそう言いながら自分の席へと座り、RASNも自分の席へと座わったのであった。

 

「…そうなのか…ともかく良かった、みんな心配してたからな…」

 

「そうですね、特にカモメさんとかメアさんとかカスミさんが心配してましたねー。」

 

「そうでござるか…メルシーセツナ殿…」

 

「えっ…あっ、はい…」

 

セツナにそう言われたフランは眼を細めてセツナに礼を言ったのであった。

 

「何はともあれお疲れ様ですぅ、フラン様お茶をどうぞー。」

 

「メルシーでござる。アッ、RASNのはセッシャが淹れるでござるよ。」

 

「えっ、ですがもう…」

 

「…それならそれはセッシャが頂くでござるよ。」

 

フランはチェルシーの持ってるお盆の上の湯のみを自分の席へと置くとお茶を沸かし始めたのであった。

 

「……。」

 

「なんというか…フラン様変わられましたね…呼び方もですが…」

 

「んー…でもこれでRASNへの特殊呼称メンバーが一人減っちまったかー」

 

「…ともかく目の前の事をさっさとやるか…な?」

 

「「へいへいー…っと。」」

 

コリンとセツナは返事を合わせると目の前の書類に手をかけ始めたのであった。

 

「RASNー、お茶が湧いたでござるよーボナペティでござる!」

 

「…。」

 

そしてお茶を持ったフランは笑顔でRASNへと湯のみを渡し、受けとるRASNは少しぎこちなかった様に見えた。

 








そして時は過ぎ…

夕方の茶熊学園の屋上にフランがいたのであった。

フランの片手にはすにゃほがあり画面にはカスミとカモメとメア宛に宛てたメッセージがあったのであった。

「これで…送信でござる。」

送信ボタンを押すとフランは画面を切り替えて電話を掛けようとスニャホを耳に当てた。

「……ボンジュールでござるRASN、少しお話しがあるでござる屋上に来てほしいでござる。…ウィ少し遅れても良いでござるよ、セッシャは何時までも待ってるでござる。」

そうしてフランはスニャホをポケットへとしまったのであった

「あとはあの三人とレギュモンドを着けるでござる…大丈夫でござる…セッシャにはRASNとのセフィシキットがあるでござる…」

フランは屋上の金網に背を預け空を見上げながらお腹に手を当てたのであった。





そして暫くしてガチャリと音がして扉が開くとカスミが姿を現したのであった。

「大至急来てほしいって来たけど…何の用かしら?」

「あ、カスミ殿。…もう少し待って欲しいでござるよ。」

「もう少しって…?」

カスミが首を傾げると足音が屋上へとかけ上がってきて、ジャージ姿で髪が少し濡れていたカモメがやって来たのであった。

「着きました!…あれ?カスミさんも呼ばれていたんですか?」

「カモメ?貴女も呼ばれてたの?」

「はい、大至急来てほしいってありまして!」

「そう…それほど大事な用なの?」

「そうでござるな…でももうちょっとだけ待ってほしいでござる。」

「ちょっととは…?」

今度はカモメがそう言って首を傾げるとまた足音がかけ上がって来て、テニスウェア姿のメアがやって来たのであった。

「お待たせ!大至急って…あれ?カスミにカモメ?何で?」

「えっとフラン…また少し待たないといけない?」

「いや…これで全員でござるよ。」

「そう、それでなにかしら?」

「……。」

フランは揃った三人を一瞥し背を向けたのであった。

「…実は話したいことは…RASNの事でござる。」

そしてフランはポケットの中の黒い写真のようなものと白く測定と書かれてもいる棒状の物のうち白い方を掴んだのであった。

「RASNの事?どうしたの?」

「まずはこれを見て欲しいでござる…。」

フランはそうして掴んだものを三人の前に見せたのであった。

「何ですかそれ?」

「…フラン…まさかそれって…しかも反応は…」

メアが目を疑うように近づき判定と書かれた横にある円の中の線を見ていた、そして線は太くあったのであった。

「そうでござる…セッシャはグーセスしたでござるよ…」

「…待って下さい…RASN君の事で話がって事は…まさか…」

「そうでござる…。」

フランは口に手を当てて青ざめているカモメを見てそう言った。

「……!」

「どうしたでござるかカスミ殿?そんなに目を広げて…。」

「こっ…こんな事急に言われて信じられないわよ…!こんな…!」

「…信じられないでござるか…そう言うと思ってこっちも用意したでござるよ?」

フランは手にある検査薬をしまうと替える様に黒い写真の様な紙を見せたのであった。

「…!?」

それを見たカスミは膝から崩れ落ち口を手で塞いでいたのであった。

「…これで分かったでござるか?セッシャの中にはRASNとの愛のセフィシキットがあるでござる…。」

「それを言うために私達を…」

「ウィ、そうでござるが…?」

「どうして…どうしてそんなことを…?!」

そしてそんな空気が張り詰める中ガチャリと扉が開きそこにはRASNが姿を現したのであった。

「…。」

「あっ、RASN!来たでござるか…!」

フランはやって来たRASNを見ると失意の顔をした三人を追い抜いてRASNの抱きついたのであった。

「RASN…フランと本当に…?!」

「…、…!」

RASNはメアからの問いかけに少し申し訳なさそうな顔をしながらもコクりと頷きながらもフランの手を握ったのであった。

「…RASN君…本当になんだ…うっ…本当にそうなんですか…?!」

するとカモメは口だけでなく眼まで隠して地に膝を着けたのであった。

「ずっと…ずっと傍にいてたのに…幼馴染みたいな感じだったのに…うっ…」

「…でもカモメ殿はそんな幼馴染みたいなと言う関係に甘んじて、思いも告げることなく今に至ってるでござるが。」

「そっ…それは…!うっ…ううっ…」

「フラン!幾らなんでも言い過ぎよ!!」

カスミは泣き崩れたカスミの傍に寄り添いフランに向かって声を上げたのであった。

「…それはエクスキューズでござった、でもカスミ殿は正直になれずツンケンとして今に至ってるでござるよ…?」

「…くっ…!」

「それにヒナ殿からママと呼ばれいい気になっていたのもあるでござるな…でもセッシャがRASNとこうなったらママは誰になるでござるかな…?」

「…!」

「大丈夫でござるよカスミ殿…ヒナ殿…ヒナはセッシャらがこの子と共に大事に育てるでござるよ…。」

フランはカスミにお腹を擦りながらそう言ったのであった。

「……。」

「…わっ…私は…!」

「メア殿は甘いでござるよ…仕事では隣にいれて甘んじられるでござるが、それだけでござる。たったそれだけでござるよ。」 

「……。」

メアはガックリとしてから膝を抱えて落ち込んだのであった。

「…?」

「あっ、そういえばお話でござったな。これからでござるが…この子の為のベビーファニチャを買いに行かないでござろうか?」

「…!」

「ウィ!それじゃ行くでござるよ!」

そうして二人は失意の三人が座る屋上を後にしたのであった。
しかしフランだけはあと一歩で入口に足を入れるときに止まり首だけを振り返らせた。

「それと…RASNはとても優しいでござるから…これからRASNを誘惑するようならセッシャは許さないでござるよ?」


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ツキミ編

2017年の1/17と6/6に書いたもので、後者はアフターみたくを後に追加した感じです。
この回はツキミちゃんです、食べ物は恐ろしいですよー。


ここは茶熊学園。

 

そんな学園のお昼時に茶熊学園食堂 紅鮭亭では席に着いてランチや定食を食べてたり、パンの販売コーナーでは焼きそばパンの争奪戦やコッペパンを要求していたり、ザックがパンの耳を袋で貰っていたりしていた。

 

そしてそんな中に生徒会の副会長の一人である赤髪のRASNが購買部コーナーへと足を運んでいた。

 

「…!」

 

「あっ!RASNさんいらっしゃいませー!」

 

RASNがその後向かったのはツキミのお団子屋であり店頭ではポンが店番をしていたのであった。

 

「…!」

 

「はい!ご予約のお団子ですね!少々お待ちくださいー!」

 

ポンはRASNが渡した重箱を受け取りそう言うと奥へと姿を消し、その代わりにツキミが姿を現したのであった。

 

「あ~、RASN君おいでませ~。」

 

「…!」

 

「儲かってるかって?儲かってるよ~生徒会は順調かな~?」

 

「…。」

 

「ん~、相変わらず会長さんが抜け出したりして大変なんだ~大変だね~?」

 

「…!」

 

出てきたツキミはRASNと楽しく談笑していた、そして奥からポンが重箱と共に姿を現したのであった。

 

「ご予約のお団子詰め合わせお待たせしましたー!」

 

「お~?ポンちゃんどんどん詰め込むの早くなったね~?」

 

「はいっ!毎週注文されてると慣れてきますからね!」

 

「そっかー、それじゃいつも通りにお代は後からね~。」

 

「…!」

 

ツキミはポンから重箱を受け取ってからRASNへと渡した。

 

「あっ、そーだ…これまた新しい試作なんだー放課後待ってるからね~。」

 

そしてツキミは渡した後小さなお団子が入ったタッパーとウサギの模様が入ったノートを上に乗せて小声でRASNに囁いたのであった。

 

「…!」

 

RASNは重箱とタッパーを受け取るとツキミに礼をしてその場を去ったのであった。

 

「またおいでね~。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして放課後になりRASNは購買部へと向かった、そこにはせっせと一人でお団子を作るツキミの姿があった。

 

「…!」

 

「いらっしゃーい~そこで少し待っててね~?」

 

RASNが来たことに気付くとこねていた団子をボウルに入れラップしてからエプロンを外し、やって来たのであった。

 

「…!」

 

「ありがとね~、んー…やっぱあれはいい感じなんだね~?」

 

そしてツキミはRASNに渡したノートを開いていた。

 

「…!」

 

「RASN君は星たぬきお団子が気に入ってくれんだ~?他の皆も可愛いって書いてくれてるねー?」

 

「…!」

 

「他も良いって?RASN君はお上手だね~、それじゃ少しお構いしてあげるね~?」

 

「…!」

 

そう言うとツキミはRASNにお茶とお団子を振る舞った、お団子は色とりどりの星たぬきを形取ったものであった。

 

「…?」

 

「私もー?いいよ~丁度休憩を挟みたかったからね~。」

 

そうしてツキミはRASNと辺りが暗くなるまで談笑にお団子とお茶を楽しんだのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-茶熊学園 購買部コーナー-

 

そして幾日が過ぎてRASNは再び重箱を持ってツキミのお団子屋へと足を運んでいた。

 

「…!」

 

「RASNさんいらっしゃいませー!何時ものですか?!」

 

「…!」

 

RASNは頷くと重箱をポンへと手渡した。

 

「では少々お待ちを!先週から追加した星たぬきお団子も詰めておきま…えっ?」

 

ポンが元気よくそう言いながら奥に入ろうとしたがその手にあった重箱は姿を消していた。

 

「あ~RASN君いらっしゃ~い、いつものだよね~?」

 

そしてその重箱は何処からともなく現れたツキミの腕の中にあったのだった。

 

「えっとツキミさん注文は承ってるので私が詰めますけど…」

 

「駄目だよーポンちゃんは他の人の注文を受けてねー?それじゃ少し待っててね~?」

 

ポンとRASNにそう言うとツキミは奥へと姿を消し、残された二人は唖然としてその場に残された。

 

「…?」

 

「…そうですよね、今RASNさん以外に注文してくれる人なんかいませんのに…」

 

「…。」

 

そうして暫く待っていると奥からツキミが戻ってきたのであった。

 

「お待ちどう様、それじゃご注文のお団子詰め合わせだよ~。」

 

「?」

 

RASNはツキミから渡していた重箱を受け取っていたがその上には見慣れぬ重箱が重なっていた。

 

「…?」

 

「ん~?試作品じゃないよ~、いつも来てくれてるRASN君の為のお得意様サービスだよ~。」

 

「そんなのあったんですか…?」

 

「あるんだよー?それじゃRASN君その重箱はまた明日にでも返しに来てね~?」

 

「…!」

 

RASNはツキミとポンに礼をすると二個の重箱を持って購買部を去り、ツキミはRASNが視界から見えなくなるまで手を振っていたのであった。

 

「…明日ちゃんとまた来てくれるかな~?」

 

ツキミがそう呟きながら奥へと入っていったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-茶熊学園 タラコ組-

 

翌日の朝RASNはツキミから貰っていた重箱をツキミの席へと持っていっていた。

 

「…!」

 

「おはよ~RASN君~。」

 

「…。」

 

「あ…昨日のあれだね~?でもね~…今は少し駄目なんだ~だからお昼休みに購買部で返しに来てくれるかな~?」

 

「…、…!」

 

「ありがとね~、あっ先生来ちゃったね~?早く席に戻った方がいいと思うよ~?」

 

「…!」

 

ツキミにそう言われRASNは重箱をしまって自分の席へと戻っていった、そして授業は進んでお昼休みにとなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-茶熊学園 購買部コーナー-

 

RASNは言われた通りに重箱を持ってツキミの団子屋に来ていた、店頭にはポンはおらずにツキミが待っていたのであった。

 

「…?」

 

「やっと来たね~?中のお団子は美味しかったかな~?」

 

「…!」

 

「え?みんなも?…どういうことかな?あれはRASN君の為のサービスなんだよー?」

 

「…?!」

 

ツキミはRASNの返答を聞くと少し頬を膨らませてそう言い、RASNはそれに少し驚いていた。

 

「あっ…ごめんね~?…それより少し待ってくれるかな~渡したいのがあるんだ~。」

 

「…!」

 

RASNは快諾すると少し待った、そうするとツキミはRASNの所に月やウサギ模様のバンダナに包んだ物を持ってやって来ていた。

 

「お待たせ~、これを貰ってくれるかな~?」

 

「…?」

 

「何かって?特製手作りお弁当だよ~?特々々別サービスだよ~。」

 

「…?」

 

「大丈夫かって~?大丈夫だよ~お団子まみれじゃなくてRASN君の好物がいっぱいだから安心だよ~?」

 

「…!?」

 

「え~?何で知ってるかって…?知っているからだよ~、ささっ早く食べてみて~。」

 

そうはぐらかされたRASNはツキミに背中を押され近くの席にへと座らされていた。

 

「はい、お箸だよ~たーんと召し上がって~?」

 

「…。」

 

バンダナの中の弁当箱は確かにRASNの好物で散りばめられていたがあまり箸は進んでいなかった。

 

「どうしたのかな~?お口に合わないのかな~…」

 

「…!」

 

心配するツキミにRASNは横に首を振っていた。

 

「だったら食べれるよね~?…あっ、そっか~こうしたいんだね~?はいっ、あ~ん。」

 

「…?!……。」

 

ツキミはRASNの箸を取ると近くにあった出汁巻き卵を摘まんで満面の笑みでRASNの口元へと近付けており、RASNは困惑しつつもそれを口の中へと滑り込ませていた。

 

「どうかな~?美味しいでしょ~?」

 

「…………!」

 

「えへへ…それじゃもっと食べさせてあげるね~」

 

「…。」

 

そうして昼休みの間RASNはツキミの弁当を食べさせられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうしてツキミは翌日もそのまた翌日もRASNを購買部へと呼んで弁当を食べさせていた、だが日を追う毎に朝食や夕食まで作ってきたのであった。

 

そしてそんな事もありながら数週間が過ぎたある日のお昼、アラマキ島の外にて。

 

「いやー…すみませんねーRASNさん、他校交流会で生徒会会長代行で来てもらえて。」

 

「…!」

 

RASNと共にいたのは茶熊学園の校長のカムイであり熊である。そしてその二人の後ろにはゼロキスが歩いていたのであった。

 

「…でも何で会員でも庶務でもないボクも付いてきてるんですか?!」

 

「あー…それは…流れですね?」

 

「流れってなんですか?!そもそも午前の最後の授業中に急に連れ出されてビックリしましたって!」

 

「まぁまぁ…何はともあれ成功でしたし、次の飛空挺まで時間もありますから…あそこでもどうですか?」

 

カムイは叫ぶゼロキスをたしなめると近くにあるラーメン屋に指というより爪を指したのであった。

 

「…!」

 

「…そういやお昼とかまだ食べてなかったですね…急に連れてかれましたからね…」

 

「そんなに根を持たないで下さいってー…一人一杯なら奢りますからー?」

 

「…仕方ないですねー…」

 

「そうですか!んじゃ入りましょ!」

 

「…!」

 

そうして三人はラーメン屋の暖簾を潜りカウンター席に着いたのであった。

 

「それじゃお好きなのを一つだけ!頼んでくださいね、私は焼き鮭ラーメンお願いしまーす!」

 

「ウチにそんなメニューはねーよ!?」

 

「アウチ!(´Д`)それじゃ海鮮ラーメンで!勿論鮭スープで!」

 

「んなスープねーぞ?!」

 

「ノォ?!」

 

「ははは…それじゃRASN、僕達はどうしよっかな?」

 

「…!」

 

RASNとゼロキスは各々トンコツラーメンを頼んだのであった。

 

「それじゃお先に頂きますよー?」

 

「えぇ、どうぞ!オプションに鮭蒲鉾はないんですか?!」

 

「だからねーってば!?」

 

「だってさ…それじゃいただきますか。」

 

「…!」

 

ゼロキスとRASNは割り箸を割ると目の前のラーメンを食べ始めた、だがRASNだけは何故か不思議そうな顔をしながら食べていた。

 

「ん?どうしたの?」

 

「…!」

 

「何でもない?そう…。」

 

そうしてカムイが海鮮ラーメンで手を打ち食べたのであった、そして食べきると三人はラーメン屋の暖簾から出てきたのであった。

 

「ふぅー…鮭はありませんでしたが中々美味しかったですねー。」

 

「えぇ、トンコツラーメンも学食にあるのとは違う味わいで中々美味しかったー…ん?RASN?」

 

「…?」

 

ゼロキスがRASNに問いかけるとRASNは腹に手を当てて首を傾げていた。

 

「大丈夫?具合は…悪そうじゃないかな?」

 

「…!」

 

「お二人ともー早くしないと飛空挺に乗り遅れますよー?」

 

「…ともかく学園に戻ったら保健室かな…校長呼んでるし早くいこうか?」

 

「…!」

 

そうして三人は飛空挺に乗り茶熊学園へと帰ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-茶熊学園 校門-

 

「着きましたねー、まだお昼休みが20分ぐらいありますねー?」

 

黒塗りの車から出てきたのは何故かサングラスを掛けたカムイであり、後部座席からはゼロキスとRASNも出てきた。

 

「ウチの学校ってそんなに休み時間長いんですか…?」

 

「まぁ休み時間にしか活動がままならない部活とか出そうですからその配慮ですね!ハッハッハッ!」

 

「…そうですか…RASN早く行こうか?」

 

「…!」

 

そうして二人は車から離れて校舎へと向かったのであった。

 

「捕まえた~!」

 

「…!?」

 

「んなっ?!ってツッッツキミひゃあゎん?!」

 

だが校門をくぐるとRASNの背後に手を回された、そしてゼロキスは突如近くに現れたツキミに驚きパニクっていた。

 

「も~…急に連れていかれちゃったから昼休みずっーと探してたんだよ~このこの~」

 

ツキミは背後からいじいじとRASNのほっぺを軽くつねったりしていて、つねられているRASNは身動きが出来ないでいた。

 

「ま、いいや~それよりお腹減ってるでしょ~お昼にしよ~?」

 

「ええっととと!?ツキミさぁん?!じじっ実はもうお昼はラーメン食べてってて…!それに体調も…」

 

「そんなことはないよー?だってお腹が減ってる事なんて分かっているんだもんねー?さっ~てこっちにおいでませ~。」

 

ツキミは上手く口が動かないゼロキスをあしらうとRASNを連れて校舎へと駆けていったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-茶熊学園 購買部コーナー-

 

ツキミらがやってきたのは購買部コーナーであったが人がもういなくガラガラであった。

 

「さっ、席に座って座って~?それとも私のお膝がいいかな~?」

 

「…!」

 

ツキミは自分の膝をポンポンと叩いたがRASNは素早く首を振ってから席に着いたのであった。

 

「残念だな~?それじゃ今日はこれだよ~…はい、あーん~。」

 

ツキミはカクっと肩を落とすとお弁当箱を開くとおかずの一つを箸で摘まんでRASNの口元へと近付けた。

 

「…!」

 

「あれ~?…食べないのかな~?…お腹が減ってもうフラフラじゃないの~?」

 

「…。」

 

RASNは静かに頷いたのであった。

 

「…そうだよね~?だってもうRASN君は私のお料理しか食べられないんだよね~…」

 

「…?!」

 

「…RASN君には教えてあげようかな~?これはね特殊なお薬でね~作った人の一部を混ぜ合わせたのをお料理に入れると、食べた人は作った人以外のお料理を食べてもお腹が一杯にならないんだよ~?」

 

ツキミは懐から薬瓶を取り出すと机上でクルクルと回していたのであった、よく見ると瓶の中の液体は少し紅かった。

 

「…?!」

 

「…そうすれば私のお料理しか食べれないって事になるよね~?そうなれば私がいないといけないって事だよ~?」

 

「…!」

 

RASNはツキミの発言に驚き後退りをしていた、だがツキミは追いかけずに座ってRASNを淀みのある目で追っていた。

 

「…逃げてもRASN君は帰ってくるよね~?だって私のでしかお腹が一杯になれないんだよ~…でも必要なら私を食べたって…良いんだよ?」

 

「…!!」

 

RASNは音が出るぐらいに首を横に振ったのであった。

 

「…冗談だよ~?でもね、そうして良いぐらいにRASN君の事は好きだよ~」

 

「…?!」

 

「どうしてって?そうだね~いつも楽しく談笑してくれてるし…RASN君に食べさせてあげていた試作品の感想を見るとね…ドキドキになっちゃうんだよね~」

 

「…!?」

 

「…でもそんな風に感じるようなったのは数週間前ぐらいで…カティア先生に会ってからかな~?」

 

「…?」

 

「そういえばどうするのかな~?食べないのかな~RASN君?」

 

ツキミは箸を持ちRASNにそう言ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それ以降ツキミはRASNの側をあまり離れることなく朝昼晩とツキミの手料理を御馳走になっていた…。

 

 

-学生寮こぐま館 RASNの部屋-

 

「………。」

 

「RASNく~ん?朝だよ~?起きて起きて~?」

 

「……、…!」

 

RASNが目を覚ますと目の前ではツキミの顔がこちらを見下ろしていた、RASNは伸びをしながら起きるとツキミに挨拶したのであった。

 

「うん、おはよ~。朝御飯用意してあるから降りて来てね~?あっ、それとも着替え手伝おっか?」

 

「…!」

 

RASNはフルフルと首を横に振ったのであった。

 

「そっか~…それじゃ待って…あれれ~…?」

 

「…?!…!!」

 

ツキミは残念そうに部屋から出ようとした、だがその途中足がもつれ体勢を崩しとっさに飛び出したRASNによって受け止めたのであった。

 

「…!?」

 

「うーん…あっ、RASN君…?ごめんね~…心配かけちゃったかな~…?」

 

「…!…?」

 

「ん~…私は大丈夫だよ~……それより早く着替えおいでね~?」

 

ツキミは立ち上がると少し心許ない足つきで部屋から出て、RASNは心配そうにしつつも着替え始めたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

-学生食堂こぐま館 紅鮭亭-

 

着替え終わりRASNは食堂へと入った、中にはプレートの上の料理を食べている人が何十人もいたのであった。

 

「………!」

 

「……くぅ………くぅ…。」

 

RASNはその中からツキミを探した、そして見つけた時には前のめりで寝息をたてていたのであった。

 

「…?」

 

「ん…あっ、RASNく~んおはよ~…今持ってくるから少し待っててね~?」

 

「………!」

 

RASNは寝ているツキミを軽く揺すって起こした、そしてツキミRASNを席に座らせると自身は席を立ったのであった。

 

そして程なくして料理を二つ持って戻ってきたのであった。

 

「おまちどうさま~。」

 

「…。…?」

 

「ん~?大丈夫だよ~、それよりほら…?早く食べよ?」

 

「………!」

 

RASNはツキミの体調について聞いたがツキミは平気そうにしていて食べる事を奨めた為ツキミの持ってきた料理を食べたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてそれからも変わらずに朝昼晩とRASNはツキミの手作り料理の世話になっていた…、そんな事が日常になりかけた頃…。

 

 

 

 

-学生寮こぐま館 RASNの部屋-

 

「………。」

 

「…!………?」

 

RASNは目を覚ますと毎朝見ていたツキミがいないであった。

 

「…?」

 

RASNは首を傾げつつも着替えて部屋を出た。

 

「………、…!」

 

そして少し悩んでからRASNは腹を鳴らしながらツキミの部屋にへと歩を進め始めた。

 

 

 

 

 

 

-学生寮こぐま館 ツキミの部屋-

 

「…。」

 

RASNはツキミの部屋に到達するとコンコンと扉をノックしていたのであった。

 

「…?…!」

 

何十回もノックしたところで扉のノブに手をかけて回し、部屋の中に入ったのであった。

 

「…?…!?」

 

そして中を見渡しRASNは机に制服姿のまま突っ伏してるツキミを見て直ぐ様駆け寄ったのであった。

 

「…!?……!!」

 

「んっ……あれ~?RASNくん~…おはよう~…?」

 

軽く揺すったりしてツキミが目を覚ますと目をこすってRASNを見上げたのであった。

 

「ごめんね~…起こしにいくはずが起こされちゃったね~?」

 

「…?」

 

「え~大丈夫だよ~…?…それよりお腹空いてるよね…今作ってあげるからね~?んっしょっと………あれ…?」

 

「…!?」

 

ツキミはそう言って立ち上がり部屋の備え付けキッチンへと向かおうとしたが二・三歩歩いてからフラりと倒れそうになりRASNは即座に飛び出してツキミを受け止めた。

 

「…?!」

 

「………あ~…ごめんね~…何だが眠くなっちゃって…でも心配しないでね~RASNくんの為にも頑張らないと~…」

 

「…!」

 

ツキミは起き上がるとキッチンにへと立ったがRASNも心配そうにそれに付き添った。

 

「大丈夫だよ…RASNくんは座って待っててね~?すぐに出来るからね~…」

 

だがツキミはRASNを席にへと座らせるとフランパンを手に取って朝御飯を作り始めた。

 

「ん~…うん、オッケーだねあとは…あれ~?もうないみたいだね~?」

 

「…?」

 

そうして待っているとツキミは小瓶と出来た料理を手にしていていた、だが料理を一旦置いて小瓶を凝視したのであった。

 

「…もう切れてたんだね~?…あれ…作り置きも無いんだ…だったら作らないとね~…」

 

「…??」

 

するとツキミは棚から謎の液体が入った瓶と漏斗を取り出してまな板の前にへと立っていた。

そしてツキミの部屋には袖を捲る音と何かを外す音がかすかに響いた。

 

「んっ…んんっ…いたっ…」

 

「…?」

 

RASNは先程からのツキミの独り言も気になって立ち上がるとひっそりとツキミへと近寄り覗き込んだ。

 

「…!?」

 

そしてハッと目を見開くと瓶の口に填まってる漏斗の上で腕を差し出してるツキミの腕を引っ張ったのであった。

 

「…んんっ…って?!RASNくん!?ごはんはまだ…」

 

「…!!」

 

ツキミは驚いてRASNにへと話しかけていたがRASNはそれを耳に入れずに救急箱を探し出したのであった。

 

「ちょっと…RASNくん…?!…いたた……。」

 

「……。…。……!」

 

そしてRASNはツキミの腕に包帯を巻き古くなった絆創膏や包帯を一纏めにしていた。

 

「…駄目だよ…」

 

「…?」

 

「…駄目だよ…あれを作らないと…」

 

「…!?」

 

座り込んでいたツキミはほろりとしながらも巻かれた包帯をほどき始めたがRASNはそれを止めようとしていた。

 

「止めないで…!」

 

「…!!」

 

RASNはツキミの抵抗に対し腕に手が届かせないようにツキミに抱きつき包帯を巻いた腕を握ったのであった。

 

「あっ…RASNくん…?」

 

「…!」

 

そうして驚く最中空いた手でツキミの頭を撫でたのであった。

 

「………。」

 

「…、…?」

 

「うん…ごめんね…まただね…?」

 

「…?」

 

「あの瓶…?あれは前に教えたお薬の原液…あれに私のモノを入れたら完成するの…。」

 

「…?!」

 

「何でって……………怖いの…私のお料理食べなくなって…私から離れちゃうのが…怖いの…」

 

「…。」

 

そう言ってツキミはギュッとRASNの服を掴んで顎を肩にへと乗せたのであった。

 

「…RASNくんの体…お日様みたい…RASNく…ん…私…ね…………」

 

「……?…!?」

 

だが次の瞬間肩に乗っていた重みが軽くなるのを感じツキミを見ると気を失っていたのであった。

 

「…?!………。…!」

 

RASNは体を揺すったり背中を軽く叩いたりとして反応を見てみたが返事がなくツキミを抱えた、そしてまるで眠っているようなツキミの体を持った時とても軽く感じながらも走ったのであった。

 

 

 

 

 

 

-茶熊学園 保健室-

 

「…!」

 

「どうしたの?騒がしいわ…って、どうしたの!?」

 

「…!」

 

保健室にへと駆け込んだRASNは中にいたハーブにへと事情を説明した。

 

「…分かったわ。まずその薬というのが気になるわね…とりあえずRASN君はその娘をベッドに寝かして看てあげて、先生には言っておくから安心しなさい。」

 

「…!」

 

そう言われRASNはベッドにへとツキミを運び込んだ。

 

「それとその娘の部屋は何処かしら?原液とやらも一応調べておいた方がいいと思うから。」

 

「…!」

 

「そう、分かったわすぐに戻ってくるから待ってなさい…!」

 

「…!」

 

ハーブはそう言って保健室から足早に出た、そして残されたRASNは心配そうに目を閉じてるツキミを見たのであった。

 

「……。」

 

ふとRASNはベッドからはみ出て垂れ下がっていたツキミの腕に気付くと、手を掴みベッドの上にと置き軽く握りしめたのであった。

 

「…ん…RASN…く…ん?」

 

「……!」

 

暫くそのままにしていると優しく握り返しが手に広がりツキミは目を開けたのであった。

 

「…!?」

 

「大丈夫だよ~……うん…大…丈夫だ…よ~…?」

 

「…!!(フルフル!)」

 

「…やっぱり暖かくて優しいね…ぬくもりが手からも伝わるよ…。」

 

横になっていたツキミはむくりと上体を起こすと握られていた手にもう片方の手を乗せたのであった。

 

「…。」

 

「…でもやっぱり手だけじゃ…寂しいね…。」

 

「…?!」

 

するとツキミはその手と共にRASNを引き寄せたのであった。

 

「RASN君…多分ね…あたしは先がもう長くないかもしれないの、だから…だからせめて…」

 

「………。」

 

そう言いながらツキミ涙ぐみながらも制服のボタンを一つ一つ外していた、そして引き寄せられ覆い被さるようになっているRASNはただそれを止めようともせずに見ているだけであった。

 

「…最後の…最後の思い出はせめて気持ちよく終わりたいの…。」

 

「……。」

 

「…RASNく…ん…す…きだ…ゴホッ!ゴホッ!」

 

「…!……?!」

 

だがツキミはその最中苦しそうに咳き込んだのであった。

 

「……、…!」

 

そしてRASNはそれを見る祈るように目を閉じた、するとRASNが発光しだしたのであった。

 

「ゴホッ…この光…RASN君の…」

 

RASNから出てくる光はツキミに浴びせられ、ツキミの顔色は心なしか良くなり目を閉じたのであった。

 

「……、…。」

 

そしてふぅと息をつくと脱ぎかけであったツキミの服と乱れたベッドを整えるとそのまま前のめりで眠りについたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ…んー?」

 

まずベッドの上にて先に起きたのはツキミであった、そして辺りをキョロキョロと不思議そうに見ていた。

 

「んんー?んんっー??あれ?ここって…あたしの部屋じゃないみたいだねー?」

 

「そうよ、ここは保健室よ。」

 

そんなツキミの疑問に答えたのは机にて茶をストローで啜りながら何かの書類を書いているハーブであった。

 

「あっ、先生おはようございます。」

 

「おはよう…って言えるほど早くはないわね?」

 

ハーブはコンコンと机にある置き時計をペンで叩いたのであった。

 

「…あのー…先生ー私どうしてここに?」

 

「……まぁ、それなら彼に聞くのが良いとは思うけどね。」

 

ハーブはそう言って立ち上がりツキミの寝ていたベッドの隣のカーテンを開けた、するとそこにはRASNが寝ていたのであった。

 

「あれー?RASN君?どうしたのかなー?」

 

「どうしたもこうしたも…貴女をここに運び込んでくれたのはRASN君だけど覚えてないの?」

 

「んー…?あれれ…?何だかぽっかりと記憶が無いようなー…?」

 

ツキミはゆっくりとカーテンを閉めてからハーブへと体を向けた。

 

「まぁ記憶に関してはともかく…貴女にはこれについて聞きたいことがあるのだけれど?」

 

ハーブはそう言ってツキミの部屋にあった謎の液体の瓶をツキミへと見せたのであった。

 

「あっ…!それって嫦娥の願いの薬…!?」

 

「願いの薬…?願い事でも叶うのかしら?どんなものか見せてくれる?」

 

「かしこまりー…えっーと…。」

 

瓶を渡されたツキミはきょろきょろと何かを探し近くにあったペン立ての鉛筆を一本取った。

 

「これをこーして…これで…ねむなむねむ…」

 

瓶の中の液体を鉛筆に垂らして塗り込み呟きながら目を閉じて祈ったのであった、すると鉛筆がむくむくとしだしてお団子にへと変わったのであった。

 

「…?!…お団子に…!?感触もそれだわ…!」

 

ハーブは信じられない顔をして変化したお団子を見たり触ったりしていた、そしてそれを口へと運ぼうとしたらツキミが止めたのであった。

 

「流石に鉛筆を食べるのは駄目ですよ~?」

 

「鉛筆って…これは…!?」

 

するとハーブの手にあったお団子は鉛筆にへと戻っていたのであった。

 

「一体これは…?」

 

「これが効能なんですよ、大体なんでも願いが叶っちゃうっていう…でも使えるのは嫦蛾の一族だけなんですよー?」

 

「そうなの、でもこの鉛筆は…。」

 

「このお薬はそれだけでも願いを叶えられるけどそれだけじゃ効果は薄いんだー…でもそれに嫦蛾の一族の一部が入ってる物を組み込めば効力は強くなるんだってねー?」

 

「…手っ取り早いのは血液かしら?」

 

「んー…そうかもしれませんねーでも使い方や作り方はは教えてもらったけど…使った事はないんだよね~?」

 

「…そうなの、…あら?」

 

ふとハーブが隣のベッドに視線をやるとRASNが目を擦りながらもカーテンを開き顔を出したのであった。

 

「あっ!おはよ~RASN君ー。」

 

「……!」

 

ツキミはにっこりと微笑みながらRASNへと挨拶をして、RASNは少し溜めてから挨拶を返したのであった。

 

「そういえばRASN君が運んでくれたんだよね~?どうもありがとうねー。」

 

「………。」

 

「それでね…RASN君が私をここに運んできてくれた理由とか教えてくれるかな~?」

 

「………………。……!」

 

RASNは口をつぐんで視線を逸らした、だが少し悩んでから向き合うと口を開いた。

 

「うんうん…そーなんだ~…階段で転げちゃったんだね~?」

 

「………!(コクコク)」

 

「ありがとね~、今度お礼にお団子をご馳走するね?」

 

「…!」

 

「…ご馳走するのはいいのだけれど、そろそろ行った方が言いと思うわよ?……ちょっとRASN君はこっちに来なさい。」

 

「……?」

 

そう言われRASNはハーブの元に向かった、そして小さな声で囁いた。

 

「とりあえずあの薬の効果に関してはユーリエ先生達と協力して打ち消したから安心しなさい。」

 

「…!」

 

「…それとちゃんと朝食食べてる?一応点滴で入れてはおいたけどしっかりなさい?」

 

そう言ってハーブはRASNをツキミの所へと戻したのであった。

 

「それじゃ先生ありがとうございましたー。」

 

そうしてRASNとツキミはしっかりとハーブにお辞儀をしてから教室にへと歩を進め始めた。

 

そしてどうにかして二人は教室にたどり着き授業を受けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-茶熊学園 購買部コーナー-

 

「いらっしゃいませー!あっ!RASNさんこんにちはー!」

 

「…!」

 

昼休みとなりRASNは購買部のツキミのお団子屋にへと足を運んでいた、店頭にはあの時と同じくポンが元気よく店番をしていた。

 

「ツキミさーん!RASNさん来ましたよー!」

 

「はーい、それじゃ中に入れてね~。」

 

「分かりましたー!それじゃRASNさんこっちです!」

 

「…!」

 

奥の方にてツキミの声が響いてくるとポンはRASNを奥の方に案内した、奥の方はキッチン一式と机に椅子がありキッチンではツキミがお団子をこねていた。

 

「いらっしゃい~、そこにかけてねー?」

 

「…!」

 

RASNは少し回りを気にしにがらも席へと着いた、そして少し待ってツキミが手を拭きながらやって来た。

 

「お待ちどうさま~、それじゃご馳走するねー?」

 

そうしてツキミはRASNの対面側へと座るとその間に置いてあった皿に被せられていたウサギ柄のバンダナを取ったのであった、するとそこには星たぬき団子が山の様に積まれていたのであった。

 

「…!?」

 

「驚いた~?いっぱい作ったからたーんと食べてねー。あっ、お茶も用意してあるよ~。」

 

「…………。」

 

そう言ってツキミは星たぬき湯呑みにお茶を注いでおりRASNへと渡した、だがRASNは渡された湯呑みをまじまじと見ていた。

 

「どーしたのかな?食べてくれないのかな~?RASN君が好きそうなのを集めてみたんだけどなー?」

 

ツキミはそう言ってペラペラと見たことのあるウサギの模様のノートを捲っていた。

 

「……?」

 

「えっ?見せてほしいって?いいよー。」

 

RASNはそう言ってノートを受け取り開いた、ノートは以前よりも薄くあるページを開くとそこは所々が黒く塗り潰されており塗り潰されていないのはRASNが書いたとされる文字ぐらいであったのであった。

 

「…。」

 

息を呑んでページを捲るとそこは先程のように黒々としてはいなかったが文字がびっしりと並んでおり大体は自身がしていた行動をまとめた日記のようなものであった。

 

「……………。」

 

RASNは静かにノートの最後まで目を通して閉じるとツキミにへと返したのであった。

 

「どうだったー?何か不気味だよね~?」

 

「……。(コクン)」

 

「でもねー…読んでいたら何かきゅうきゅうするんだよね~あの人って誰なんだろうね~?」

 

「………………。」

 

「まぁ、分からないよね~…それより食べてくれないのー…?」

 

「……、…!!」

 

ツキミはそうしてうるつかせた視線を浴びせてRASNは少し躊躇ってはいたがお団子を口にへと運んだのであった。

 

そして暫くして皿の上のお団子は一つ残らずとなった。

 

「どう?美味しかったかな?」

 

「……!」

 

「そーなんだ~、ありがと~でもねー…。」

 

「……?!」

 

するとツキミは身を乗り出してRASNの口元に指を立ててクイっと横にへと広げたのであった。

 

「うんうん…笑っているのがいいね~、そしたらもっと美味しく食べれるよー?」

 

「…!?」

 

「ツキミさーん、そろそろお時間なので交代を…って何やってるんですか?!」

 

するとポンがやって来て二人を見ると驚いていた。

 

「おー、ポンちゃん丁度良いところに来たね~?今RASN君を笑わせようとしてるから手伝ってね~?」

 

「えぇ?!分かりましたー?!」

 

困惑しつつもとりあえずポンは机上にある皿と湯呑みを遠ざけてから口を曲げられているRASNの隣に近寄った。

 

「RASNさんすみません!えっーい!」

 

「私もやるよ~こちょこちょ~。」

 

「…!?!?」

 

ポンは脇腹をくすぐり始めてツキミもそれに参加したのであった。

 

そして両脇腹をくすぐられるRASNは吹き出すのを必死にこらえて目に涙を溜めていたが堪えきれず笑い転げたのであった。

 

「おっーようやく笑ったね~?良い笑顔だよ~。」

 

「でもこれ無理矢理笑わせたんじゃ…?」

 

「でも笑顔は良いことだよ~?」

 

「まぁそうかもしれませんけど…。」

 

「……。」

 

二人がそう談笑してる中でRASNは脇腹を抱えてよろよろと立ち上がった。

 

「RASNさん大丈夫ですか…?」

 

「…、……!」

 

「少しくすぐりすぎちゃったかな~?大丈夫?」

 

「……。」

 

二人の手助けで立ち上がり席に着いた、そして二人も席に着いたのであった。

 

「はーい、お茶だよ~。どうぞ~。」

 

「ありがとうございます!温かいですねー。」

 

「……。」

 

ポンはツキミが出してくれたお茶を啜っているがRASNはまた湯呑みをまじまじと見ていたのであった。

 

「どうしたの~?まだお腹痛いのかな?」

 

「…………。」

 

「むっー…答えないとまたくすぐっちゃうよ~?」

 

「…!?」

 

ツキミはにたにた笑いながらわきわきと指を動かして近寄ろうとした、そしてRASNはそれに一歩退いたがツキミは一向に近寄ろうとはしなかった。

 

「えへへ、冗談だよ~。ゆっくり飲んでねー?それじゃ店番行ってくるね~。」

 

ツキミそう言い残してその場を離れたのであった。

 

「…。」

 

「…。」

 

「……。」

 

「……。」

 

「………。」

 

「…あのRASNさん…。」

 

互いに暫く静かにお茶を飲んでいたがポンが口火を切ったのであった。

 

「…?」

 

「その…ツキミさんと喧嘩したんですか…?」

 

「…!?」

 

ポンの発言に含んだお茶を吹き出しそうになったがRASNはそれを堪えたのであった。

 

「…あわわ?!すみません!大丈夫ですか!?」

 

「…!……?」

 

「えっ?どうしてって…何か今日のRASNさんはツキミさんに少し余所余所しくて…何時もは一緒にお弁当を食べたりとかしてましたよね…?」

 

「…。」

 

「それに他にも色々とありますけど…どうしたんですか?付き合っているんじゃ…?」

 

「…?!……!」

 

「違うんですか?それに付き合っているんじゃないんですかー…。」

 

「…!」

 

「そうでしたか、でもなんかツキミさんもなんというか…前というか前々のツキミさん?に戻ったような…あれ…?」

 

「…?」

 

そうしているとお団子屋の方が騒がしくなってきなのであった。

 

「…どうしたんでしょうか…?もしかして客足が多くなって…?」

 

「…!?」

 

「流石にツキミさん一人では…切り上げて行かないと…!」

 

「…!!」

 

RASNはポンが立ち上がろうとするのを制すると自身が立ち上がったのであった。

 

「RASNさん…?」

 

「…!」

 

そしてにこりと笑うと店先の方にへと足を向けた、店先は長い行列がありツキミが注文を聞きつつお団子を詰めていたのであった。

 

「あっー、RASN君。ちょっとごめんね~少し忙しいからもうちょっと待っててね~。」

 

「…、……!」

 

「おっー?手を貸してくれるのー?ありがたいね~、それじゃ…注文を聞いてくれるかな~私が詰めるよー。」

 

「…!!」

 

「頑張ろーね~?」

 

そうしてRASNが押し寄せてつけくる注文を受け止めツキミに伝え、それを元にツキミが団子を詰めて渡していった。

 

 

 

 

 

暫くしてから休憩から上がってきたポンも接客へと回り行列はどんどんと消化して本日分売り切れまで持ち込んだのであった。

 

「売り切れちゃったね~?二人ともありがとねー。」

 

「…!」

 

「お疲れ様です!」

 

三人はまた店の奥にある机を囲んでお茶を啜っていたのであった。

 

「それにしてもRASN君良い手際だったねー?」

 

「そうですね!たまにでもよろしいですからお手伝いに来てほしいですね!」

 

「…!?」

 

「ん~…でもRASN君は生徒会で副会長さんだから忙しいと思うけどなー?おっとそろそろ準備しないとかな~?」

 

「そうですね!それじゃ準備しておきますね!」

 

そう言うと二人は立ち上がりエプロンを締め直してポンはキッチンの方に向かった。

 

「…?」

 

RASNはどうしたのかと自分も立ち上がりポンに尋ねようとしたが行き先をツキミに阻まれたのであった。

 

「おっとRASN君~、ここから先はお手伝いさんであっても立ち入り禁止で企業秘密なんだよねー。」

 

「…?」

 

「何って?明日の仕込みだよ~、残ってるお昼休みで明日の準備なんだー。」

 

「…!…!!」

 

「応援ありがとね~、それじゃそろそろお引き取りお願いできるかなー?」

 

「…!」

 

そうしてRASNはお団子屋を後にしたのであった。



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エシリア編

2017年の3/6に二つ書いた物の一つです。ちっちゃい娘を淀染まさせるのは少し抵抗がありますがまた何時かやりたいかなって。
(当時はオズワルドは飛行島に来てませんです。)


ここは茶熊学園。 

 

 

そんな学園の放課後、外も暗く灯りの付く生徒会室には生徒会メンバーとそうではないのが数名炬燵を囲んでボードゲームを遊んでいたのであった。 

 

 

「やったー!エシリアあっがりー!」 

 

 

「やっぱ今日はダメだっー!」 

 

 

「…ピョ…。」 

 

 

「まーたエシリアかー…つえーなー!」 

 

 

「えっへー、それじゃ終わるまで待ってるねー?どーん!」 

 

 

「…?!」 

 

 

エシリアは炬燵から抜け出すと机の方にへと向かいRASNの座る席に飛び座り、その下にて書類などを片付けていたRASNは突然のエシリアになんとか反応し受け止めたのであった。 

 

 

「ないすきゃっちーにぃちゃん!エシリアまた勝ったよー誉めて誉めてー!」 

 

 

「…!」 

 

 

RASNは膝の上でバタバタと頭を差し出すエシリアに苦笑いしつつも頭を撫でたのであった。 

 

 

「んー…もっと撫でてー…」 

 

 

「ピィ…?!…ヒナも…!」 

 

 

するとそれを見ていたヒナはに炬燵から這い出てにじにじと二人に近寄ったのであった。 

 

 

「だめだよー?まだ上がってないからにぃちゃんは渡さないよー!」 

 

 

「ピィ……」 

 

 

「……!」 

 

 

「…ピッ…!…パパ…!ヒナ頑張るね…!」 

 

 

ヒナはエシリアにそう言われ落ち込んだ、だがRASNに空いていたもう片方の手で頭を撫でられにぱっと笑うと炬燵の方に戻ってゲームを続けたのであった。 

 

 

「ぶー!にぃちゃん!」 

 

 

「…?!」 

 

 

「にぃちゃん!今はにぃちゃんはエシリアのだからエシリアだけを撫でてー!!」 

 

 

エシリアはRASNの両手を掴んで自分の頭に乗せたのであった。 

 

 

「あー…でもこっちがいいかなー…よいしょっと!」 

 

 

「…!?」 

 

 

だが少し考えてからエシリアはクルリと膝上で回って向かい合うと顔をRASNの胸に沈めたのであった。 

 

 

「こっちの手はこっちでーそっちの手はそっちを撫でてー!」 

 

 

「………!」 

 

 

RASNは少し戸惑いつつも右手でエシリアの背中を支えながら撫で、左手で頭を撫でいるのであった。 

 

 

「ふぃー…落ち着くー…ふぁぁ…」 

 

 

エシリアは撫でられながら大きく欠伸をしたのであった。 

 

 

「…?」 

 

 

「んー…そだねー…にぃちゃんおねがーい…むにゃ…」 

 

 

「……!」 

 

 

RASNはやれやれとエシリアを抱えて立ったのであった。 

 

 

「…?」 

 

 

「あぁ、分かったぜ。また明日な。」 

 

 

「…!」 

 

 

ソウマの見送りにコクりと頷き生徒会室を出たのであった。 

 

 

「あっ…パパ…でも約束守らないと…。」 

 

 

そして出ていくRASNの背中にヒナは手を伸ばそうとしたが途中でその手を引っ込めたのであった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んんー…にぃちゃん…」 

 

「…!」 

 

RASNは道中抱えていたエシリアを背負って廊下を歩きこぐま館に入り、そしてエシリアとマールの部屋の前へとたどり着いた。 

 

「…?」 

 

「んにゅ?もう着いたのー?中までおねがーい…。」 

 

「……!」 

 

RASNは仕方無さげにドアに手をかけ中に入り灯りを付けた、部屋の中は可愛らしい小物が散りばめられていたのであった。そしてそんな部屋にエシリアを降ろしたのであった。 

 

「ありがとにぃちゃん!あっ!そーだお茶をごちそになるー?」 

 

「…!」 

 

「えー?にぃちゃんノリ悪いよー?」 

 

「…?」 

 

「マールちゃん?大丈夫だよー今日はガレアせんせーのとこらしいから今日はエシリア一人なんだー。」 

 

「…、…!」 

 

「やったぁ!それじゃちょっと待っててねーにぃちゃん!」 

 

そう言われRASNは部屋の真ん中付近のクッションに座らされ、エシリアはせっせと台所にてお茶を淹れていた。 

 

「…。…?」 

 

手持ち無沙汰なRASNは暇そうに色んな物が散らばる机の上を整理し始めた、机上には空のお菓子の袋やノートや空でラベルのないアンプル二本や真っ赤なテスト用紙など様々であった。 

 

「…?!…?……?」 

 

RASNは驚いたり首を傾げたりしながらも整理を続けて机上は粗方綺麗になっていた。 

 

「お待たせー紅茶しかなかったけどー…あー!机綺麗になってるー!」 

 

するとエシリアがトレイに紅茶の入ったカップ二つを乗せてやって来たのであった。 

 

「…!」 

 

「にぃちゃんがやったのー?あんがとー!それじゃねー…」 

 

エシリアは喜びトレイを置いてまた台所に行ったのであった。 

 

「…?」 

 

「おっ待たせっー!そんなにぃちゃんにはご褒美あげるねー?」 

 

そう言ってトレイの横にリスの様なプリンとうさぎの様なショートケーキを乗せた皿を一つずつ置いたのであった。 

 

「…?」 

 

「そーだよ!エシリアが作ったのー!すごいでしょー?」 

 

「…!…?」 

 

「えっ?エシリアにも?でもにぃちゃんへのご褒美だから食べていいよー。」 

 

「…、…!」 

 

エシリアがカップに口を付けるとRASNはショートケーキの方から口を付けたのであった。 

 

「…………じー…。」 

 

「……、…。」 

 

そして暫くケーキを食べ進めていたがエシリアのカップ越しの目線が刺さってるのに気付きRASNはそーっとエシリアの前にプリンの乗る皿を移動させたのであった。 

 

「……?」 

 

「…いいのにぃちゃん?でも…。」 

 

「……?」 

 

「そうだね一緒に食べた方が楽しいもんね!」 

 

するとエシリアはプリンを移動させてからRASNの膝上に座ったのであった。 

 

「…それじゃ…あーん。」 

 

「…?!…!」 

 

そしてエシリアは口を開きRASNは最初驚いたがエシリアが移動させたプリンを一掬いして開いた口へと運んだのであった。 

 

「んむんむ…おいしー!それじゃにぃちゃんにも…あーん!」 

 

「…!」 

 

今度はエシリアがショートケーキを少し取ってRASNの前に持っていきRASNはそれを頬張ったのであった。 

 

「どお?おいしー?」 

 

「…!」 

 

RASNは頷いてエシリアの頭を撫でたのであった。 

 

「えへへー、あっプリンもあーん!」 

 

「…!」 

 

そうして二人は互いに食べさせあったのであった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふー、ごちそーさま!」 

 

「…!」 

 

二人が食べ終わるとRASNは立ち上がり食器をまとめて台所に運ぼうとしていた。 

 

「あ!エシリアもするよー!」 

 

「…!」 

 

エシリアはRASNの後を追いかけ食器洗いを手伝ったのであった、そして助力もあってか素早く洗い物も終わったのであった。 

 

「これで全部だねー?」 

 

「……!」 

 

「…あっ……。」 

 

RASNがエシリアの頭に手を乗せようとしたがエシリアはそっと頭を動かして手を回避したのであった。 

 

「…?」 

 

「えっとね…撫でられるのは嬉しいけど…撫でる代わりにおねがいがあるの…。」 

 

「…?」 

 

「…一緒にお風呂入ろ…?」 

 

「…!?…?!」 

 

エシリアの提案にRASNは雷に打たれたように驚いたのであった。 

 

「駄目かな…にぃちゃん…?」 

 

「………………、……!」 

 

「やった…!それじゃこっちこっち!」 

 

「…?!」 

 

エシリアは喜ぶながらRASNの腕を引っ張ると脱衣室に連れ込んだのであった。 

 

「……。」 

 

連れ込まれたRASNは複雑そうな顔で佇み、エシリアは脱衣室の外にて何かを探していたのであった。 

 

「お待たせー。サイズは多分合ってるから大丈夫なはずだよー!」 

 

「…?……?!」 

 

エシリアから渡されたのは水着であったのだった。 

 

「それじゃエシリアはお部屋で着替えるねー!にぃちゃん先に入ってていいよー!」 

 

「…!?……、………。」 

 

そうしてエシリアは脱衣室から去り、残されたRASNは渡された水着を見て不思議に思いつつもそれに着替え浴室へと入っていった。 

 

「……。………!」 

 

室内でのRASNは並んでいるシャンプーやらボディソープや自分たちの部屋の浴室より大きいと思いつつ眺めながらもシャワーのヘッドを手にし、二つ蛇口を捻って出る水を適温にしていたのであった。そしてウンと頷き水を止めるとガラりと浴室のドアが開いたのであった。 

 

「にぃちゃんー着替え終わったよー!」 

 

「…、…?!」 

 

RASNが声に対して振り返るとそこにはスクール水着ではなくフリフリが付けられた薄めなピンク色の三角ビキニの水着を着たエシリアが立っていたのであった。 

 

「どうかなこれ?似合ってるかなー?」 

 

「………、…。」 

 

エシリアはくるくるとその場で回りRASNはそれをまじまじと見つめて頷いたのであった。 

 

「ありがとにぃちゃん!それじゃまずエシリアからだよー!」 

 

そしてニコニコ笑うエシリアはRASNの前に回り込んでバスチェアに座り、RASNはボディソープを付けた濡れタオルでエシリアの背中を洗い始めたのであった。 

 

「………、…!」 

 

「わーい!わしゃわしゃー!」 

 

RASNは体を洗い終えると次はエシリアの髪を洗い始め、エシリアは楽しそうにしていた。 

 

「…!……?」 

 

「ぶるぶる…!大丈夫だよにぃちゃん、そんじゃ今度はエシリアの番!」 

 

髪を洗い終えエシリアが犬の様に体を震わすとエシリアはRASNの後に行って背中を洗い始めたのであった。 

 

「どーですかー?痛いところはないですかー?」 

 

「……!」 

 

「そっかー、それじゃえいっ!えいっ!」 

 

するとエシリアは自身の体にボディソープを塗って泡立てるとその状態でRASNの背中に小さな体を擦り付けたのであった。 

 

「…!?!?」 

 

「にぃちゃん!暴れないでよー!?上手く洗えないよー?!」 

 

「…!……。」 

 

RASNはほんの少し戸惑ったが大人しくそれを受け入れた、そしてRASNの体も髪も洗い終わったのであった。 

 

「……。」 

 

「それじゃ!にぃちゃん次はこっちー!一緒に入ろー!」 

 

エシリアはそう言い風呂蓋を取っ払い浴槽に飛び込み、RASNはやれやれと思いながらも浴槽にお邪魔したのであった。 

 

「ぽっかぽっかおっ風呂~にぃちゃんとお風呂ーごっくらくごっくらくー…ばばんばばーんー…」 

 

「………。」 

 

浴槽に入りピンク色の髪を湯に浮かべるエシリアはRASNの膝の上で楽しそうに歌のようなものを歌いながら浸かっていた。 

 

「えへへー、にぃちゃんと一緒だから何時もより心地よくて蕩けちゃうよー…」 

 

「…?」 

 

「あっ大丈夫だよー、にぃちゃんも平気ー?」 

 

「…!」 

 

RASNはエシリアにのぼせていないか聞いたが聞き返されコクりと頷いたのであった。 

 

「そっかー。」 

 

そしてのぼせないうちに二人は風呂を上がったのであった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶわーん、暖かーい!」 

 

「…!」 

 

風呂から上がり着替えたRASNはエシリアのベッドの上に座っており、エシリアはパジャマに着替えて相変わらずRASNの膝上に乗っておりRASNにドライヤーをかけられていて濡れた髪を乾かしていた。 

 

「……、…!」 

 

「終わったー?ありがとにぃちゃん!」 

 

「…?!」 

 

するとエシリアはRASNに向き直るとぎゅっと抱き付いたのであった。 

 

「ん~すんすん…にぃちゃんの今の香りエシリアと同じだねー?」 

 

「…!」 

 

「そうだね…でも元のにぃちゃんの香りもエシリア好きだなー…」 

 

「…?」 

 

「えっ?何でもないよー、それより早く寝よ!?」 

 

「…?!」 

 

「えー…一緒にお風呂入ったんだし一緒にベッドで寝よーよ?」 

 

「……。」 

 

RASNは少し悩んでから首を縦に降り同衾したのであった。 

 

「ぬっくぬっくー…」 

 

「…。」 

 

消灯され暗い中エシリアはベッドに入り足をもぞもぞと動かしていた、だがRASNはエシリアとは向き合わずに寝転がっていたのであった。 

 

「にぃちゃーん…こっち向いてよー?エシリア寂しいよー…?」 

 

「………。」 

 

「にぃちゃーんー…?あれー?寝ちゃった…?」 

 

エシリアはRASNの背中を軽くトントンと叩いたりして確認していたがRASNは寝息を立てていたのであった。 

 

「…んしょっと……ぷはぁ!」 

 

そして確認をするとエシリアは潜り込んでRASNの正面に行ったのであった 

 

「…本当に寝てる…にぃちゃんの寝顔可愛いー…ぷにぷにー」 

 

「……、…。」 

 

「……そういやにぃちゃん結局お風呂でエシリアのこと…」 

 

エシリアは寝ているRASNの頬っぺたを突ついていたが口元へと指を運ぶとそこで突つくのを止めたのであった。 

 

「別にエシリアは良かったんだよあの時に…その為にあんなことしたのに…」 

 

「……。」 

 

「にぃちゃん…エシリアのにぃちゃんはにぃちゃんしかいないの…でもエシリアは嫌なの…」 

 

するとエシリアの眼からホロリと雫が垂れたのであった。 

 

「エシリア…にぃちゃんがコヨミちゃんやヒナちゃんとかエクルちゃんとかからにーにとかパパとか呼ばれているのを見るとチクチクするの…」 

 

「…。」 

 

「にぃちゃん…エシリアのにぃちゃんだけでいて…そのためならエシリア良い子になるしにぃちゃんの生徒会も手伝うし何でもするよ…!」 

 

「……。」 

 

「…にぃちゃん…。」 

 

エシリアは悲しそうな淀みのある目にRASNがめいいっぱい映せるように近寄ったのであった。 

 

「エシリア…我慢してたけどもう…!にぃちゃん…!」 

 

「…。」 

 

「ふぇっ?!にっ…にぃちゃん…!?」 

 

そしてエシリアが身を乗り出してRASNに近づいた、だが触れる前にエシリアの顔はRASNの胸にと軌道を変更させられた。 

 

「にぃちゃん…?もしかして…起きてるの…?」 

 

「…。」 

 

「やっぱ寝てるの…にぃちゃん?」 

 

エシリアは不思議そうに肩をトントンと叩いた、すると寝ているRASNはそんなエシリアの頭に手を置かれそのままエシリアの頭を撫で始めたのであった。 

 

「にぃちゃん…?やっぱり…?…んむゅ…」 

 

頭を撫でられるエシリアは特に抵抗する事もなく目蓋を閉じたのであった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明朝となりエシリアの部屋には窓から日射しが入り、二人の顔を照らしたのであった。 

 

「…んん…むにゃ…。」 

 

「……!」 

 

エシリアは受けた光に対し体を縮み込ませ逃げ、対してRASNはパチクリと目を覚ましたのであった。 

 

「…?…!」 

 

「んにゃぁ…あと五…いや十五分ー…」 

 

「…!!」 

 

そして起きれたRASNは何故か後ろではなく前にいたエシリアに首を傾げつつもエシリアを起こしたのであった。 

 

「んんー…あー、にぃちゃんおはよー…すやぁ…」 

 

「…?!…!!」 

 

「そんなに揺らさないでよー今起きるよー…」 

 

「…!」 

 

RASNはエシリアがそう言ったのを聞き洗面台のある脱衣室へと足を運び顔を洗ったのであった。 

 

「ふぁぁ…ってあれ?何でにぃちゃんエシリアの部屋にいんだろー?ふぁぁ…」 

 

ムクリと起き上がったエシリアはそう呟きバタリとベッドに倒れ、またRASNに起こされるのであった。 

 

 





-茶熊学園 カティアの実験室- 


一方その頃…カティアの実験室ではカティアが五つのモニターを見ておりその一つにはエシリアが映されていたのであった。 


「…何か微妙ね、数ヵ月前から仕込んでおいたけどそれっぽいのはやってくれたけど昨日ぐらいじゃない…それによく分からないうちに効果切れじゃないの?!…むっきぃ…!」 


カティアはモニター横にある心電図の様なものを見ながらそうぶつぶつとぼやきながらカリカリと手元の書類に書かれていたSKM-MYⅢの文字に斜線を引いたのであった。 


「まぁ改良の余地はまだあるから少し安心もしたわん…楽に出来ても面白くないものね、おっほっー!!」 


妙な雌叫びを上げたカティアはエシリアが映されていたモニターのスイッチを消した、そして残されて映ってるモニターにはカスミやフランの顔写真と心電図の様なものが映されていた。 


「それにしても再投薬してみたけど…免疫でもできたのかしらん?これは何時か新しい実験体も探さないとねん…。」


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続・カスミ編

カスミ編の続きみたくな感じです。


-茶熊学園 カティアの実験室- 

 

 

「おっほぉ?どうしたのかしらん…?」 

 

 

ここはある日の茶熊学園の化学の教科担当をしているカティアの実験室であった。 

 

 

そんな彼女は机の上のモニターを見て怪訝そうな顔をしたのであった。モニターにはカスミの顔写真とピコンと波が立っている心電図が映されていたのであった。 

 

 

「おかしいわねぇん…カスミから反応…?この前ちゃんと中和したはず…残ってたのかしらん?まぁ良いわ…それなら…」 

 

 

カティアは手前の端末を操作するとカスミの顔写真が映されていたモニターの映像を変えてインカムを装着したのであった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-茶熊学園 タラコ組の教室- 

 

 

「ほっほっほっ、午前中はこれで終わりじゃのそれじゃしっかりと宿題はやっておくのじゃよ。」 

 

 

教壇に立っていたユーリエは席に座る生徒らにそう告げると教室から去り、ピシャンと閉じる音が響くと丁度チャイムが鳴り生徒らの大半は席を立ち教室を出たりしたのであった。 

 

 

「……。」 

 

 

その中でRASN(最近黒くなれた主人公君)はふぅと息を吐いてノートや教科書をしまっていたのであった。 

 

 

「シショー!セッシャとディジュニィを一緒にしてほしいでござるー!」 

 

 

「フランさん!私もRASNさんと一緒にしてもいいですか?」 

 

 

「…!?」 

 

 

「ダコール!スイカも一緒にディジュニィでござる!」 

 

 

そして片付けた矢先にスイカとフランが弁当箱を乗せた机を引いてやって来てRASNの机の両脇にくっ付けたのであった。 

 

 

「オーララ?カモメ殿も一緒にするでござるかー?」 

 

 

「えっ…私はべっ別に…」 

 

 

「あっ!メアさんも一緒にですか?!」 

 

 

「えっ?!私も?!」 

 

 

するとこそこそRASNの席へと近寄ってくるカモメとメアをスイカとフランが声をかけ、二人は驚き手元ある何かを背中等に隠していた。 

 

 

「オッドウンスールはいかんでござる!一緒に楽しむでござる!」 

 

 

「はい!よいしょっと!」 

 

 

「あっ!ちょっと?!」 

 

 

そしてスイカとフランはカモメとメアの机を持ってきた自分の机の前に置いたのであった。 

 

 

「これで大丈夫でござる!」 

 

 

「はいっ!」 

 

 

「…はぁ…でもなんかこうだと形が悪いわね…?」 

 

 

「そうですね…五人だとなんか不揃いですね…。」 

 

 

カモメの言う通り五つの机の並びは凹型に並べられていたのであった。 

 

 

「オーララ!そうでござるな…どうしようでござろうか…。」 

 

 

「そうですね…カスミさんは…いませんね?」 

 

 

スイカは教室を見渡してカスミを探したがその姿は影も形も無かったのであった。 

 

 

「ウィ…授業中はいたはずでござるが…今はいないでござるな。」 

 

 

「何処に行ったのかしら…?」 

 

 

「はい…隅々探しても中々…あっ…!」 

 

 

「キキッ…!?」 

 

 

スイカは更に針に糸を通すような目でもっと辺りを見渡していた、するとこっそりと身を屈めながらRASNの席へから遠退くアピュトの姿を見て見渡すのを止めたのであった。 

 

 

「あっ!アピュトさんもRASNさんとですか!?」 

 

 

「ええっ?!私はそんなキッ…気はないわよ…?!RASN君と二人きりでお昼をしようと思ったら続々と来るから諦めようとした訳じゃ…」 

 

 

「大丈夫でござるよ、皆で一緒でござるから寂しくはないでござるよー。」 

 

 

「いや…私はRASN君と二人きりで…!」 

 

 

「アピュトさんの机ってこれですか?」 

 

 

「そうだけど…って?!なにしてんのー!?」 

 

 

アピュトがスイカの声に対して振り返るとそこには机と椅子抱えていたスイカが歩いてきたのであった。 

 

 

「何とは…アピュトさんも一緒にお昼を…よいしょっと!」 

 

 

「えっ…そこってRASN君の真ん前…!」 

 

 

そしてスイカは机をメアとカモメの間に置き、アピュトは口を塞いで小声でそう呟いたのであった。 

 

 

「…プルクワ?アピュト殿どうしたでござるか?」 

 

 

「いっ…いいえ!何でもないわよ?!ほら早く食べましょうよ!ほらほらほら!」 

 

 

アピュトは早口でそう言って置かれた席に着き可愛らしいバンダナで包まれた弁当箱を置いたのであった。 

 

 

「そうでござるな!」 

 

 

「はい!カモメさんもメアさんもどうぞ!」 

 

 

「わっ…分かったわよ…。」 

 

 

「は…はいっ…。」 

 

 

そうして四人も続々と席に座り弁当も出した、そしてRASNも弁当箱を取り出そうとした。 

 

 

「…!」 

 

 

「あら、こんなとこにいたのね?」 

 

 

「…?!」 

 

 

RASNが弁当箱の包みを取ろうとするとその手が不意に風呂敷で包んだ何かを持って現れたカスミによって掴まれたのであった。 

 

 

「オーララ?!カスミ殿いつの間にいたでござるか?!」 

 

 

「…ついさっきよ…それより早く行くわよ、待たせてるんだから。」 

 

 

「…?」 

 

 

「あれ?今日生徒会の集まりとかあったっけ…?」 

 

 

「そんなのは無いわよメア、ほら早く…!」 

 

 

カスミはメアの問いかけを軽くあしらってRASNの手を強く引くと教室を二人で後にしたのであった。 

 

 

「あっ…行ってしまいましたね?」 

 

 

「先約があったでござるか…なら仕方ないでござるな、セッシャらでディジュニィを食べるでござる!」 

 

 

「まぁ…そうね、お腹減っちゃったしね。」 

 

 

「はい、でもRASN君がいないのは少し寂しいですね。」 

 

 

「…………。」 

 

 

「あれ?どうしたんですかアピュトさん…?」 

 

 

取り残された面々は仕方なさそうに弁当箱の蓋を開いたりしていた、だがアピュトだけは蓋以前に包んでいたバンダナを開こうともしなかったのであった。 

 

 

「どうしたのアピュト…?何か具合でも悪いの?」 

 

 

「…いや…ゴメン!私も少し用事!」 

 

 

アピュトはそう言って立ち上がると弁当を携えて教室を出たのであった。 

 

 

「オーララ…アピュト殿もでござったか…?」 

 

 

そうして残った四人はぼーっとそれを見送るしかなかった。 

 

 

「まだそんなに遠くには行ってないはず…こっちかしら…?」 

 

 

廊下に出たアピュトは左右を確認しカスミとRASNが歩いていった方にへと駆け出したのであった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

RASNはカスミに手を引かれ続け中庭にへと連れてかれていたのであった。 

 

 

「…?!」 

 

 

「大丈夫よ、それにもうすぐよ…」 

 

 

カスミは問いかけには答えているが歩みを止めなかった、そして中庭の中央付近にある噴水のある所に着くとカスミは歩みを止めた、そこにあるベンチにはヒナが待っていたのであった。 

 

 

「あっ…!ママ…!パパ…!」 

 

 

「ヒナちゃんお待たせ、見つけるのに少し手間取っちゃって…」 

 

 

「大丈夫だよ…それより早く…?」 

 

 

「そうね、ほらあなたはこっちよ。」 

 

 

「…………!」 

 

 

そうしてRASNはカスミに背を押されヒナの隣に座らされたのであった。 

 

 

「よいしょ…ピヨ…パパ…」 

 

 

RASNが座るのを見るとヒナはすかさずRASNの膝の上にへと移動し、空いたところにカスミが座ったのであった。 

 

 

「ふふっ…それじゃお待ちかねのお昼ね、はい…。」 

 

 

カスミは微笑みながら持ってきていた何かの風呂敷をベンチの前の机でほどくとそこには重箱が一つに紙皿と箸がそれぞれ三つがあった、そしてカスミは二人に箸と皿を渡すと蓋を開いて計三段の箱を展開したのであった。 

 

 

「ピヨ…!美味しそう…!」 

 

 

「…!」 

 

 

「丹精込めて作ったから自信作よ、それじゃいただきましょ?」 

 

 

「…うん!いただきピヨ!」 

 

 

「…?…!」 

 

 

RASNは何かを不思議に思いつつヒナはとても嬉しそうに箸を取り重箱の中を食べ始めたのであった。 

 

 

「もきゅもきゅ…美味しいね?パパ?」 

 

 

「…!」 

 

 

「ありがとう、嬉しいわ。」 

 

 

そうして三人は楽しそうに昼飯を食べていたのであった。 

 

 

 

「…………。」 

 

 

一方そんな三人の傍にある樹の後ろにはアピュトがその光景をまじまじと見つめていた。 

 

 

「もー…見せ付けてくれちゃって…。」 

 

 

「でも…何かおかしいですよね…?」 

 

 

「そうよねー…」 

 

 

「あー…ヒナちゃんの位置が羨ましい…」 

 

 

「そうねー…?」 

 

 

「というか…お姉ちゃんを差し置いて羨ましい…」 

 

 

「そうよねー…てっ?…お姉ちゃん…?」 

 

 

アピュトは二回返事を返し三回目にて声の方を見るととそこにはエスメラルダ・オスクロル・フローリアが自身と同様に樹の後ろに隠れて観察していたのであった。 

 

 

「あー…えっーと御三人方々は何を…?」 

 

 

「私ですか…?私はカスミの様子見をしに…」 

 

 

「フローリアは相変わらずなのね…えっと、オスクロル先生は…?」 

 

 

「私はRASN君にまた癒されようかなって…」 

 

 

「…えっ?!」 

 

 

「あら…」 

 

 

「ええっ…?」 

 

 

オスクロルが恥ずかしそうに頬を掻きながらそう言うと三人は各々違う反応でオスクロルを見たのであった。 

 

 

「お恥ずかしながら先程の一年生の授業で失態をしてしまい…それで…頭を撫でて貰えれば立ち直れるかなって…」 

 

 

「…お姉ちゃんに内緒でそんな事を…後でしてもらおうかしらね…」 

 

 

「それはそうとエスメラルダさんはどうして?」 

 

 

「私?私はRASNと一緒にお昼をしようと思ってたのよ。」 

 

 

「そうなんですか…あっと…」 

 

 

「そうよ、これはRASNに頭撫で撫でで癒されようかしらねー?」 

 

 

「あっ、RASN君に撫で撫でされるのは私が先でいいですかー?」 

 

 

「アタシも…あれ?!」 

 

 

アピュトがそう言いながらベンチの方を見るとそこにカスミら三人はいなかったのであった。 

 

 

「あら…いつの間に…?」 

 

 

「話してる間にどこかに…?!って、フローリアもいないわ!?」 

 

 

「キキィ!?ほんとだわ?!」 

 

 

エスメラルダの言う通りに木陰に隠れていたフローリアも三人と同様に姿を消していたのであった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方そうしてる中カスミら三人は屋上にと上がっており、RASNは寝てしまってるヒナを膝に置いていたのであった。 

 

 

「くぅ…ピョ…むにゅ……」 

 

 

「ふふっ、心地よさそうに寝てるわね?」 

 

 

カスミはそんなRASNの隣で寝ているヒナを眺めたり頬をぷにぷにと突々いたりしていた。 

 

 

「……!」 

 

 

「そうね、可愛いわね…あら?あなたもしてほしい?」 

 

 

「…?!」 

 

 

そう言いカスミは返答を待たずにRASNの頬を突々き、RASNはそれに驚いていた。 

 

 

「やっぱ柔らかいわね、ふふっ…こっちでも味わおうかしら…?」 

 

 

「…!?」 

 

 

そして今度は頬を近づけ頬擦りをし、顔を赤くしていたのであった。 

 

 

「………。」 

 

 

「…?」 

 

 

だが少しして頬擦りは止まりカスミは頬を合わせたままじっとRASNの目を見つめていた。 

 

 

「……?」 

 

 

「ん~…?何でもないわただ見てるだけよ、あなたをね?」 

 

 

「……。」 

 

 

RASNは困惑しながらも膝上のヒナを無理に起こすまいとじっとしていた。 

 

 

 

「………………。」 

 

 

そしてそんな三人をじっと扉の裏からインカムを付けていたフローリアが見ていた。目は閉じてはいるが。 

 

 

「あー…あー…もしもしー?フローリア?現場はどうかしらーん?」 

 

 

「あっ、はい。カティア先生三人は先程の報告同様に和やかムードですね…」 

 

 

するとインカムの耳からカティアの声が流れはじめてフローリアはそれに答えていた。 

 

 

「ふ~ん…あの薬の効果は執心って決めてたけど…これは撤回しないといけないかしらねん?」 

 

 

インカム越しのカティアは悔しそうな声を出していたのであった。 

 

 

「…やっぱり何か納得いきませんね…」 

 

 

「そうよねー…この天才が薬の効力を間違えたなんて納得いかないわー…」 

 

 

「あっ、いえ…そっちではないです。」 

 

 

「…じゃ何かしら?」 

 

 

今度は不服そうな声をカティアは出していたのであった。 

 

 

「…あの雰囲気が何だか…」 

 

 

「雰囲気?あの和やかムードでしょ?良いじゃないの、アンタが望んだ事と違うのかしらん?」 

 

 

「…いえ、何かおかしいですよね…?」 

 

 

「おかしい…?まぁアタシに投薬されたんだしおかしくならないのは…」 

 

 

「そうなんですけど…違うんですよ…!」 

 

 

「…。」 

 

 

「私は…!あっ…!?」 

 

 

「…!?どうしたのフローリア?!」 

 

 

「すみません後で話します!」 

 

 

そう言うとフローリアはインカムを懐にしまった、すると覗いていた扉が開いてカスミが出てきたのであった。 

 

 

「あら?誰かと思えばフローリアじゃない?」 

 

 

「カ…カスミでしたか、急に扉が開いてビックリしましたよ…」 

 

 

「そう、ビックリさせてごめんなさいね。」 

 

 

「いえいえ、それよりカスミはここで何を…?」 

 

 

「何って営みね、何時もヒナちゃんが寝ちゃったらここに連れてるのよ。」 

 

 

「えっ…?何時も…」 

 

 

「…まぁフローリアならいいかしら、入ってきて良いわよヒナちゃんも喜ぶかもしれないし。」 

 

 

カスミはそう言って扉を開け放ちRASN達の元に向かい、フローリアは懐にしまっていたインカムを取り出したのであった。 

 

 

「…もしもし、聞こえてましたか…?」 

 

 

「パーペキよん、それにしても家族ね…まるでパン焼き人みたいな感じね?」 

 

 

「…?何を言ってるんですか…?」 

 

 

「…まぁいいわん…それより早く行きなさい、怪しまれるわよん?」 

 

 

「……はい…。」 

 

 

そうしてフローリアはインカムをまたしまうとカスミの後を着いていった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…!」 

 

 

「…ピヨ…?…あっ、フローリアねーね!」 

 

 

「あらヒナちゃんおはようございます。」 

 

 

フローリアが屋上に入るとRASNの上のヒナは目を覚ましたのであった。 

 

 

「ピヨ…?あれ?…ここ屋上?」 

 

 

「そうよ、風が気持ちいいでしょ?」 

 

 

「うん…」 

 

 

ヒナは目を閉じて風に気持ち良さそうに髪を靡かせていたのであった。 

 

 

「ふふっ…あっ、フローリアこっちに座ってね。」 

 

 

「…はい、わかりました。」 

 

 

カスミはそう言いながらRASNの隣にへと座りフローリアを自分の隣に座らせたのであった。 

 

 

「…あっ、RASNさんよろしければですけどヒナちゃんをお借りしてもよろしいでしょうか?」 

 

 

「…?」 

 

 

「うん…いいよ?よいしょっと…」 

 

 

フローリアにそう尋ねられたRASNはヒナに尋ね、ヒナはコクりと頷くとカスミの膝を経由してフローリアの膝上に座ったのであった。 

 

 

「はい、いらっしゃいヒナちゃん?」 

 

 

「うん…、…フローリアねーねいい香りだね…?」 

 

 

「園芸部ですからね、そういえば最近綺麗な花が咲いたんですよあとで見に行きますか?」 

 

 

「うん…!」 

 

 

「…。」 

 

 

「……。」 

 

 

ヒナとフローリアが話してる姿をRASNは静かに見ていて、その間にいるカスミはまじまじと見詰めていたのであった。 

 

 

「…?」 

 

 

「んー…あなたの顔を見ているだけよ?」 

 

 

「………。」 

 

 

RASNはそう言われ少し困っていた。 

 

 

「…そう言えば今なら空いてるわね…よいしょ…。」 

 

 

「…!?」 

 

 

そしてカスミは空いているRASNの膝を見るとそこに頭を置いたのであった。 

 

 

「ふー…心地良いわ、眠くなっちゃいそうね…?」 

 

 

「………。」 

 

 

「…まだ時間もありますし寝てしまっても大丈夫ですよ?」 

 

 

「そうね…それじゃ少しそうしようかしらね…でもこっちがいいかしらね?」 

 

 

カスミはむくりと体を上げるとRASNの体に寄っ掛かる様にして目を閉じたのであった。 

 

 

「ピヨ…?ママ寝ちゃった?」 

 

 

「そうですね…あっ、そういえばRASNさん。」 

 

 

「…?」 

 

 

フローリアはカスミに寄りかかられているRASNに声をかけたのであった。 

 

 

「お聞きしたいことがあるのですがこの様な事をなされるのは何時もですか?」 

 

 

「…?…!」 

 

 

RASNは首を傾げてから横へと振ったのであった。 

 

 

「そうですか、ヒナちゃんは?三人だけでお弁当とか何時もしているかな?」 

 

 

「…ヒナ、パパとママだけでお弁当は今日が初めてだよ…?」 

 

 

「やはりですか…ありがとうございますね。」 

 

 

「ピヨォ…」 

 

 

フローリアは今度はヒナに聞き、聞き終わると頭を撫でたのであった。 

 

 

「………。」 

 

 

そしてフローリアは隣で寝息をたてるカスミを見て閉じてる瞳を強く細めたのであった。 

 

 

 

暫くしてリンゴンと校内にチャイムが鳴り響いたのであった。 

 

 

「…!」 

 

 

「あっ、起こさないとですね…カスミー時間ですよー?」 

 

 

そしてフローリアはカスミを揺すり起こしたのであった。 

 

 

「んん…もう時間なのね、ありがとフローリア。」 

 

 

「いえいえ、親友ですからね?」 

 

 

「…そうね。さてとまずはヒナちゃんを送り届けようかしら?」 

 

 

「…………。」 

 

 

カスミにそう言われたRASNは少し間を入れてからコクりと頷いた。 

 

 

「それじゃ行こうかしら?」 

 

 

「うん…!」 

 

 

そしてヒナはフローリアの膝から降りて手を伸ばしていた二人の間に入り手を繋ぎ階段を降り始めたのであった。 

 

 

「……あー…もしもし、カティア先生ー?」 

 

 

「何かしらー?次はアタシの授業なんだし早く来なさいよー?」 

 

 

だがフローリアは階段を降りずにしまっていたインカムをまた出して話し始めたのであった。 

 

 

「はい、それは大丈夫ですが聞いてましたか?」 

 

 

「大丈夫よん、それにしても家族ねー…執心どころかこれじゃ錯覚ね…パンチでもされるんじゃないかしらん?」 

 

 

「何でパンチなんですか…?」 

 

 

「でもまぁ近くに寄ってくれて助かったわよん。お陰で研究が進めれるわ、ありがとねん。」 

 

 

「はい、カスミがバラされるのは勘弁ですからね…。それともう一つお願いがあるですが…?」 

 

 

「んん?まぁ良いけど?何かしら?」 

 

 

「はい…カスミの中にあの薬を完全に消すことは出来るでしょうか?」 

 

 

「…出来なくはないけど…いいのかしら?」 

 

 

「…はい、お二人があーなるのは少し望んだ事ではあるんですが…やっぱりしっかりと築き上げてほしいんです…!」 

 

 

フローリアはそう言いインカムを強く握りしめたのであった。 

 

 

「…分かったわ…作っておいてあげるから早く教室来なさいよ、また鳴るわよ?」 

 

 

「…はい!直ちに!」 

 

 

そうしてフローリアは階段を急いで降りたのであった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-茶熊学園 カティアの研究室- 

 

 

「……。」 

 

 

放課後になってからカティアの研究室にてフローリアは待っていた、ソファに座っていたりお掃除にやって来たミレイユとヨシュアのお手伝いをしたりカティアにハーブティーを振る舞ったりしていた。 

 

 

そして夜にもなり廊下も静かになった頃、ずっと試験管やビーカーと座りながらにらめっこしていたカティアが立ち上がりフローリアに近寄ったのであった。 

 

 

「お待たせしたわね。はい、これでSKM-MYは完全に無くせるわよ。」 

 

 

「…!ありがとうございます…!」 

 

 

フローリアはカティアから渡されたアンプルを受け取ったのであった。 

 

 

「取り合えずそれは飲ませるタイプじゃなくて注入タイプだからこれを忘れないでよ?」 

 

 

するとカティアはアンプルを持つフローリアの手にアンプルシューターも置いたのであった。 

 

 

「何から何まで…!では…いって参ります!」 

 

 

そうしてフローリアは踵を返すとカティアの研究室から出たのであった。 

 

 

 

-学生寮こぐま館 カスミの部屋- 

 

 

「…よし…侵入完了ですね…。」 

 

 

学生寮に入ったフローリアは足音を立てずにカスミの部屋に侵入した、部屋は廊下同様に暗くあった。 

 

 

「………寝てます…よね?」 

 

 

フローリアはそろりそろりとベッド歩み寄り顔を覗かせた、そしてフローリアは自分の前に三つ寝息が吹いているのを感じたのであった。 

 

 

「……右のはカスミで…もう二人は…ヒナちゃんにRASNさん…!?」 

 

 

予想通りにベッドにはカスミとヒナとRASNが川の字で寝ており、ヒナはRASNにカスミは二人に寄り添う様に寝ていたのであった。 

 

 

「……。」 

 

 

フローリアは唇を噛みながらも懐にしまっていたアンプルシューターを取り出してアンプルを装填したのであった。 

 

 

「…すみません…。」 

 

 

そしてカスミの首元にシューターを突き付け引き金を引いたのであった。 

 

 

「ん…RASN…ヒナちゃん…」 

 

 

撃ち込まれたアンプルはカスミの体内に注入され、カスミは寝言みたいな事呻いたのであった。 

 

 

「………。」 

 

 

そしてフローリアは去る間際カスミの頬を軽く拭ったのであった。 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝、窓から陽光が差し込みまず目を覚ましたのはRASNであった。 

 

 

「…、……。」 

 

 

「……んん…あっ、おはようパパ…。」 

 

 

「…!」 

 

 

RASNは寄り添っていたヒナの頭を擦り、ヒナは目を擦りながら目を覚ましたのであった。 

 

 

「ん…ふぁぁ…」 

 

 

「あっ…!ママおはよう…!」 

 

 

「…おはよう?えっ…?!ヒナちゃん!?」 

 

 

すると少し崩れ気味にパジャマを着ているカスミも目を覚ましたが挨拶してきたヒナに驚きを隠せていなかった。 

 

 

「ピヨ?…どうしたのママ?」 

 

 

「いや…って?!何でRASNが私の部屋に…!?」 

 

 

カスミはヒナの向こう側で観ているRASNを見ると顔を赤らめて毛布を引き寄せて体を隠したのであった。 

 

 

「…?!……?」 

 

 

「えっ…?私が誘った?じょ…冗談言わないで…!」 

 

 

「…ピヨ、ヒナ…パパと一緒にママに誘われたんだよ…?」 

 

 

「……!」 

 

 

ヒナは控えめにそう言いRASNはコクりと頷いたのであった。 

 

 

「…そうなの…?」 

 

 

「ピヨ…!」 

 

 

「RASNが嘘つく訳ないし…ヒナちゃんがそう言うなら本当なのかしら…」 

 

 

カスミは顎に手を添えてそう言った。 

 

 

「…ともかく!この様子を誰かに見られでもしたら…!」 

 

 

「もうバッチリですよー?」 

 

 

そう言いながらシャッター音を切っていたのはカメラを持ったフローリアであり扉を半開きにして見ていたのであった。 

 

 

「フッ…?!フフ…フローリア…!?」 

 

 

「朝から良いものを見させてもらいましたよー…この写真はちゃんと現像してシェアしないと…」 

 

 

「ちょっ…?!待ちなさい…!」 

 

 

「おっと…?」 

 

 

カスミはパジャマのボタンを絞めるとフローリアに向かって行った、だがフローリアは突撃してくるカスミをコロリンと回避したのであった。 

 

 

「駄目ですよ、貴重な家族の思い出をみんなに知らしめることが出来るんですよ…?」 

 

 

「思い出はともかく撒くのだけはやめなさいって…?!恥ずかしいじゃない!」 

 

 

「………ふふっ。」 

 

 

カスミにそう言われたフローリアはカスミをじっと見つめてクスッと笑ったのであった。 

 

 

「な…何よ?何か可笑しいわけ…?」 

 

 

「いえいえ…それより取らなくて良いんですか?このままだと掲示板に貼っちゃいますよー?ではではー」 

 

 

「だからそれはやめなさいってー!?」 

 

 

そうしてカスミは逃げ出したフローリア を追いかけたのであった。 

 

 

「………?」 

 

 

「…ピヨォ…?」 

 

 

そしてカスミの部屋に取り残された二人はそれを唖然として見るしかなかったのであった。

 

 



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