グレイトな人に転生した (puni56)
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1話:SEED?何それ?

一般人がディアッカ・エルスマンに転生するという在り来たりな話です。
転生者はディアッカのみです。文章力等色々不足していることは自覚しています。自分の妄想を文章化したものなので、SEED知らない人には厳しいかも。それでもOK!という人は読んで下さい。
ちなみにアストレイの設定は基本的に無視。
というかフォローしていくのは厳しいので名称とか必要な場合のみ使用します

SEED本編で進めていきます。


 

 

P.L.A.N.T(プラント)

 

正式名称Productive Location Ally on Nexus Technology

 

《総合的テクノロジーによる生産的配列集合体》を意味する。

 

これらのコロニーは別名“宇宙に掲げられた大きな砂時計”

 

そのプラントの12ある市の1つ、フェブラリウス市のある病院で一人の男が誕生した。

これはその男の物語である。

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

ディアッカ Side

 

 

突然だが自己紹介をしよう俺の名前はディアッカ・エルスマン。

金髪に褐色肌で見た目はギャル男、

 

「グウレイトォ」

 

が口癖なナイスガイだ。

 

ん?古い?センスない?言うな、自覚はあるんだ。

目が覚めたら赤ん坊になっていた。

普通に学校に行って、士官アカデミーを無事卒業してクルーゼ隊に配属された、以上!

飛ばし過ぎ?細けぇことはいいんだよ!!

 

クルーゼ隊長と初顔合わせ時に“赤い彗星?”と呟いてしまった俺は悪くないと思う。

それより今はヘリオポリスとかいうコロニーを襲撃する準備中だから集中しなくては‥

さて、ヘリオポリスの潜入だが拍子抜けだった。

一般的な映画のように赤外線を張り巡らされたセキュリティーエリアも簡単に解除でき、

新造艦の格納庫まで警備の人間には会わなかったし。

まあ、だからこそ爆弾を用いての破壊工作ができるわけで俺達にとってはありがたかったのだが。

 

 

 

 

―――――時間が進み予定時間まで地球軍の新型MS通称Gを監視しているディアッカ達。

 

「フンッ、隊長の言う通りだ。突けば蟻のように出てくる」

 

イザークはそう言うが、俺は仕方ないと思う。

中立国なんだからいきなり攻撃されたら焦るどころの話じゃあない。

戦争とは無関係だと思っているのだからな。以前の俺もそうだったし仕方ないと思うぜ。

まあ口には出さないが。そんな事を考えつつスコープで移動中のトレーラーを確認すると‥

 

「2機足りないんじゃないか?イザーク」

 

疑問を口にする俺。そう、トレーラーに積んであるのは3機しか見当たらないのだ。

 

「確かに。報告では5機だったはずだな‥」

 

『それなら俺とラスティの班で行く』

 

「OK任せよう。各自搭乗したら直ぐに自爆装置解除!」

 

どうするかと思ったらどうやら格納庫の方にアスランとラスティ他数名が担当するようだ。

さすがアスラン、イレギュラーな事も積極的にやるなんて俺には無理だぜ。

で、作戦予定時間通りヘリオポリス各所で爆発が起きジン部隊が潜入を開始する。

俺達もイザークの号令の下、上空から銃でGのスタッフを倒しながら手榴弾でトレーラーを破壊する。

 

 

 

 

 

―――時間は飛んでバスターのコクピットにいるディアッカ。

キーボードとコンソールを操作し自爆装置の設定を解除し危なげながらシステムを立ち上げていく。

 

(運がいいことに砲撃用らしいな。

 ビビりな俺には格闘戦とか近距離戦なんて恐ろしくてできないからな‥)

 

立ち上がるデュエル、バスター、ブリッツ。しかし周りにはまだ2機の姿がない。

疑問に思ったディアッカがイザークに問いかける。

 

「ラスティとアスランは?」

 

『奴なら大丈夫さ。ともかくこの3機先に持ち帰る。クルーゼ隊長にお渡しするまで壊すなよ!』

 

スラスターを下に向け浮上しそのままコロニー内を飛翔するデュエル、ブリッツ、護衛のジン。

しかし1機足りない。そう、バスターである。何故かバスターは棒立ちのままだ。

一体何があったのであろうか。

 

―――――――――――――――

 

 

その頃ディアッカは。

 

(ついに専用機きたーとテンションを上げ、いざヴェサリウスに帰艦しようと思ったら

 バスターが動かないぜ‥‥‥えぇぇぇぇぇぇ!!!!!!ちょっとまてーぃ!!)

 

必死にレバーを動かすディアッカ、しかしバスターが飛翔する気配は無い。

 

「イザーク、助けてくれ動かないんだ!?」

 

持つべきものは友人だ、ということで親友に助けを求めた。

 

(最初からやり直せ?焦りすぎだって?

 無茶言うなよ、だって俺の目の前に知らない人が搭乗しているストライクが

 立っているんだもん。

 しかもこいつはたった今ジンを撃破したばかりなのだ‥

 何でこうなるの?バスターの立ち上げに時間が掛かったから?

 説明書無いからしょうがなくね?エザリアさん(イザークの母親)に求婚したから?

 だって美しいんだもん。現実逃避はここまでにして、どうするか考えよう)

 

①戦う:パスだって格闘用の武器バスターに無いし。

 

②逃げる:後ろからやられるぞ!

 

③会話する:これだ!!

 

通信は‥Gは共通のシステムだから使ってみるか。

チャンネルを合わせて‥よし、

 

「え~テステス、ストライクのパイロット聞こえますか?どうぞ」

 

呼びかけてみたがさて、どうなるか。

 

 

 

 

 

 

イザークSide

 

ディアッカの奴め、こんな時にまた妄想しているな‥作業しつつ横目で様子を窺う。俺は今アスラン・ニコル・ラスティ・ディアッカと共に連合が開発したGというMSを奪いに行く準備中だ。

クルーゼ隊長の話によるとヘリオポリスは連合及びザフトが攻撃を禁止している中立コロニーであるということを利用し連合とオーブが秘密裏にMSを開発したとのことだ。

ふざけた話があったものだ、我々の真似をするとはな。

このメンバーでは初任務だがナチュラル如きにやられる訳がない。

だが何事も準備はせねばならない。命令だしな。

ハッ、いかん話が逸れたな。

そう、ディアッカの話だ。

こいつとはアカデミーからの付き合いだが、同期の中では親友と呼べるのはこいつだけだな。

たまに妄想して意識が飛んだり、母上を紹介しろと言ってきたり、母上にアタックしたり、母上のファンクラブを作ったり(ちなみに俺は会員№2)、意味不明な発言をすることに目を瞑れば良いやつだ。そうやってディアッカを褒めて?いたらこれだ‥

 

「何をやっているんだ、馬鹿者!」

 

Gに乗り込み帰艦しようとしたところで急に入った連絡に、こう返答した俺は悪くないと思う。

どうやら機体が動かず、操作方法もわからないらしく、

 

「説明書はどこだ」

 

とか

 

「武器は無いのか」

 

とか

 

「俺がガンダムだ」

 

とかわけわからんことを言っている。相当錯乱しているようなので一言伝えてやった

 

「武器は背負ってるだろ」

 

と。冷たいようだが決して母上が最近あいつと仲が良い事とは関係がない、関係ないったらないんだ!!

 

 

 

 

 




最初なので短めです。その修正は活動報告にて


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2話:そういえば絆では軍曹止まりだった

読んで下さる皆さんに感謝を。


ディアッカSide

 

 

「え~テステス、ストライクのパイロット聞こえますか?どうぞ」

 

ピンチはチャンスということで、呼びかけたが相手は‥

 

逃げました(え~)

 

あ、映像OFFになってる。

音声通信だったから不審に思ったのか、まさか俺の声が変だったとか?泣くぞ。

ともかく事情は分からんが戦闘は避けられたようだ、ヨカッタネ!

安心していると

 

「武器は背負ってるだろ」

 

イザークから通信が入ったがはて、武器?

 

右腰に「350mmガンランチャー」

左腰に「94mm高エネルギー収束火線ライフル」

両肩に「220mm径6連装ミサイルポッド」

 

うん、それしかない。

何か他に有るのだろうか?

 

使えってことか?

確かにストライクはナイフみたいなものしか持ってないし射撃すれば当たるかもしれないが、というかバスターが動かないのを何とかして欲しいのだが‥

 

どうするかと考えていると

 

「ディッカ!」

 

通信してきたのはニコルだった。

どうやら動かない俺を心配してくれたらしい、さすがはクルーゼ隊の気配り名人だ。

そしてニコルのアドバイス通りにしたら動いたらヨ!

 

どうやら左のレバー?が出力を上昇させるやつらしく、俺はそれを操作せずにフットペダルだけを踏んでいたから動かなかったようだ。

この機体、Gはジンやアカデミーの訓練で使用したジン・トレーナーと比べるとモニター、グリップの位置にスロットル、フットペダルの数、計器類の配置等が異なる。

その為作戦前に操作マニュアルを頭に叩き込んだわけだが‥

で、いざ本番を迎えた俺はというと、俺の認識ではマニュアル通りの操作したはずがどうやら何個か抜けがあり正しい手順では無かった事で動かなかったのだ。

配属後初の生身での銃撃戦直後に搭乗した為に自覚はなかったが興奮状態だったようだ。

興奮状態に加えて焦っていた事で発生し初歩的なミスだ。

一言で表すと《ど忘れした》ということだ。

 

 

‥‥スイマセンでしたー!!

 

 

以後気を付けます。

ニコルにお礼を言うと

 

「わからないことがあれば何でも聞いて下さい」

 

と返答がきた、年下なのに凄いな。

これが若さか‥‥

物思いに耽っているとイザークが

 

「俺の言った通りだろう」

 

とドヤ顔で通信してきた。何が?

 

 

 

 

 

 

その後は残念ながら亡くなったラスティとモブの計2名以外は無事帰艦できた。

途中、ヘリオポリス内はMSが飛べたのでニコルに

 

「変形していないのに何故飛べるのか?」と尋ねると「変形?」と怪訝な顔をされたが

 

「コロニー内は重力が地球より少ないですからね、アカデミーで習いましたよ」

 

と笑顔で返答が。

 

「ど、ど忘れしただけだゼ」

 

と苦し紛れの言い訳とお礼を言ってニコルとの会話は終了。

 

俺は試験が終わったら勉強内容忘れるタイプだからさ、しょうがないよネ!

 

 

 

 

 

 

Intrude

 

 

 

さて、俺達が休憩しているうちにミゲルとアスランがストライクを倒しに行ったらしい。

奪ったばかりの機体を使いこなすなんてアカデミー主席は違うな~とボンヤリしていると

 

「俺達も行くぞ!」

 

何故かイザークがハッスルしていた。ん?オ・レ・タ・チ?

 

「俺はパスするぜ、イザーク」

 

そう発言すると凄い形相で睨まれた、怖ぇーよ。

イザークは何かとアスランに対抗しようとするからな、勘弁してもらいたいぜ。

‥仕方ない行くか。べ、別にイザークの為じゃないんだからね!!

そう行動しようとしたところヘリオポリスが崩壊した…え、何で?

 

 

 

 

 

さて、ヘリオポリスの崩壊だがストライクの太いビームが原因とのことだ。

パワーあり過ぎじゃネ?ついでにミゲルも死亡してしまったらしい。

Gというかストライクの性能はジンを上回っているが

〈黄昏の魔弾〉

と呼ばれていたほどの男があっさりと撃破されるとは‥

赤い人の名言は何だったのか、アニメと現実は違うということか?

帰艦したアスランは何故か悶々としていた。ハゲるぞ。

 

 

ともかく俺達に下された次の命令はストライクと足つきという戦艦 の追撃だった。

木馬じゃ無いのか‥

作戦はヴェサリウスとガモフで挟み撃ちにして撃破という単純なものだった。

隊長は何故場所を予測できたんだ?ニュータイプか?イノベイターか?

 

 

で、隊長の読み通り作戦が始まるわけだが、今回がGに乗って初の戦闘だし開始まで時間があるので皆の様子を観察してみる。

 

アスラン:まだ悶々としている。妄想中か?放っておこう。

 

ニコル:瞑想中、集中力を高めているのか?放っておこう。

 

イザーク:目が血走っていて鼻息が荒い。見なかったことにしよう。

 

俺:機体の調整&イメージトレーニング。

 

普通だって?俺は臆病者だからさ、事前に準備しておかないと不安なわけよ。

特にコイツ、バスターはシールドもビームサーベルも無く接近されたらヤバイ‥

それにミサイルとガンランチャーの弾は補充が出来ないのも致命的だ。

データは本国に送ったから直ぐに開発されるとは思うが(データがあれば何でも造れるこの世界の技術者は変態だと思う)‥

せめてビームピストルみたいな取り回しのいい武器が有れば良かったのだが、

無い物ねだりしても仕方ないしな。

 

 

 

と、そうこうしているうちに作戦開始だ。

 

「ディアッカ・エルスマン、バスター発進する!」

 

カタパルトからテンプレ通りに射出され、フェイズシフトをONにする。

グゥレイト!いいなこの感じ、これをやりたいが為にザフト入ったようなもんだからな。

だが誤解するなよ、それが全てじゃないからな!

 

 

 

 

 

 

こちらのMSが全機発進後まもなく足つきの後姿が確認できた、あとストライクも。

ストライクに前回は無かった翼がある。どうやら装備を換装できるらしい。

う、羨ましくなんてないからネ!

俺が思案していると直後、イージスが先行してストライクに攻撃を始めた。どういうこと?

 

疑問に思っていると突如機体の警報が鳴った。

モニターを確認すると、足つきがこちらを捉えたらしくミサイルとレールガンを発射してきたのだった。危ねぇ、集中しなければ。イザーク、ニコルと共に迎撃する。

ビームでなければ破壊されないとはいえ衝撃はあるし内部機器はどうなるかわからないから当たらないようにしなければな。とか余裕そうにしてるけどスイマセン、めちゃくちゃ必死です。

姿勢制御とかオートである程度調整してくれるものもあるが、初の実戦だからな、掌の汗が凄いぜ。

 

「ディアッカとニコルは艦を!俺はアスランとMSをやる」

 

いきなり通信がイザークから入ったが内容はとんでもないものだった。

えええぇぇ!!??

皆好き勝手し過ぎだろう、どうなっているんだうちの隊は。

とはいえ拠点攻撃なら得意だ、絆ではタンクばかり使用していたからな。

的が大きいから俺でもイケる!そして俺はバスターの有効射程距離に移動し

 

「94mm高エネルギー収束火線ライフル」を構え発射する。

 

掛け声はもちろんこれ

 

「バスター、目標を駆逐する!」

 

気合のわりに攻撃がショボイって?前述のとおり実弾系は控えておかなきゃいけないし、武器の威力も試したいから今回は勘弁して下さい。さて足つきはどうなったかって?

無傷だよチクショー‥

射撃に問題は無かった。問題があったのは足つきの装甲だ。

攻撃が当たった瞬間、何故かビームが弾かれた。

Iフィールドか?

原理はわからんがGの運用艦だから対策してあるのかもしれんね、

エクシアの実体剣みたいに裏切り対策とか?

 

 

 

色々な角度から攻撃してみたが成果は出ていない。

 

ニコルも攻撃が効かないことに加えて弾幕も厚いから手こずっているようだ。

アスランとイザークもストライクを倒せていない。

クソ、時間掛けていられないってのに。

 

「艦底部から仕掛けます、援護を!」

 

ニコルから通信がきた。どうやら仕掛けるらしい。

なるほど薄いのは左側じゃなくて下側だったのか。

 

「了解!」

 

援護なら俺の本領発揮だ、いつやるの?今でしょ!ということで

収束火線ライフルを前に、ガンランチャーを後に連結し、

「超高インパルス長射程狙撃ライフル」モードにする。

ここはあの名ゼリフをパクらせてもらうぜ。

 

「ディアッカ・エルスマン 目標を狙い撃つ!!!!」

 

発射されたビームは連結しただっけあって高威力であり、時間を置かず足つきの左側レールガンを捉えた。

 

 

 

「グウレイトォ!!!!」

 

 

さすがに武器までは謎の装甲を使用していなかったようだな。

ディアッカはレールガンを1つ破壊した。

 

 

 

 

 

????Side

 

 

 

 

 

そのMSパイロットは敵のビームを、ビームサーベルを避けながらも考える。

 

「キラ、話を聞け!」

 

イージスから通信が入るが相手にしていられない。

会話しながら戦闘をするということに慣れていないのもあるが、フラガが敵戦艦に攻撃するまで時間を稼がなければならないのが大きな理由だ。

艦を守りつつG4機も相手にしなければならない。

幸いと言っていいのかわからないがストライクと戦闘しているのは2機。

残りの2機はアークエンジェルを攻撃している為負担は軽減されている。

それでも厳しいことに変わりはない、相手は軍人で自分は争いが嫌いなただの学生なのだから‥

 

「アスラン‥」

 

口にした名前は久しぶりに会った友人の名前だった。

戦争が嫌いだったはずの幼馴染は軍人になりそして、現在自分の前に立ち塞がっている。

彼は何度もプラントに来いと、地球軍にいるのはオカシイと呼び掛けてきた。

いや、地球軍に入ったつもりはないけどね‥というか、やってる事(攻撃)と言ってる事が矛盾して

いるんだけど、ヤンデレというやつかな?怖いなぁ‥‥それにデュエルも攻撃してきてるし本当は、この機体が目当てなだけじゃないかな?

うん、そうかもしれない。軍人だから上官の命令は絶対だろうしね。

 

「お待たせぇ!」

 

フラガさんから通信が入る。

成功したようだ。安心して戻ろうとしたところ‥

 

突如警報音が鳴り響く。

 

「え?」

 

呟いたと同時に機体のパワーが切れ、フェイズシフトダウンする。

機体の色がトリコロールからグレーに変わりビームサーベルとビームライフルが使えなくなる。

辛うじてスラスターは短時間なら大丈夫みたいだけど。

 

「うわぁ!」

 

機体に衝撃が走る。どうやらイージスに捕獲されたらしい。

 

「そんな‥」

 

頭が真っ白になる。

そんな時アスランとその仲間の通信が聞こえてきた

 

「帰艦信号!?させるかよ、こいつだけでも」

 

「この機体は捕獲する」

 

「いやいや、捕獲なんてしなくていいから撤退しようゼ」

 

「命令は撃破です、勝手なことをしては」

 

「捕獲できるならそのほうがいい、撤退する」

 

「無視かコノヤロー!!」

 

ん?何か一人だけ違うことを言ってた人がいるよ?

もしかして、話が通じるかもしれない!呼び掛けようとしたら

 

「ランチャーパックに換装してこい!」

 

フラガさんが通信すると同時にアークエンジェルと共に相手MSに攻撃が加えられた‥

 

 

 




今回も読んで頂きありがとうございます。
相変わらず中途半端かつSEEDを見ていた人を前提にしているので戦闘描写などわかりずらいところも多々あると思いますがご了承下さい。アストレイは無視と書きながら黄昏の魔弾とか出しちゃいましたが名前だけなので勘弁して下さい。
ではまた次回に。


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3話:今更だけど

文章を書くのが難しい。妄想してアイディアはあるのに文章化が追いつかない。
そんな感じで3話です。読んでくれる人に感謝を。


ディアッカSide

 

 

 

 

 

ヴェサリウスが被弾したとの連絡が入ったのは俺が足つきの武器を破壊しこの調子で仕掛けるぜ、

と考えている時だった。

 

さすがに艦をやられるわけにはいかないので攻撃を中止し転進、ヴェサリウスの援護に向かう。

 

他のメンバーと合流しようとしたところアスランとイザークがストライクを巡り争っていた。

 

どんな状況だ、これは?撤退命令が下されたから急がねばならんのだが‥言い争いは収まる気配は無い。こうしている間にもヴェサリウスの被害が拡大しているかもしれないのに。これは俺が何とかせねばなるまい。

 

「いやいや、捕獲なんてしなくていいから撤退しようゼ」

 

会話に割り込んでみたものの無視された。

腹が立ったので「無視かコノヤロー」と言ってしまった俺は悪くない、だってそれどころじゃないからネ!宇宙で艦を失ったらお終いでしょう。

 

で、こんな具合な無駄に時間を使っていたらメビウスゼロが接近してきた。足つきとメビウスゼロからロックオンされた為、散開する。

 

メビウスゼロからはインコ‥じゃなかったガンバレルが射出されオールレンジ攻撃を繰り出してくる。実際に見ると凄いな、どうやって操作しているんだ?とはいえ実弾攻撃で威力も高くないからメビウスゼロは脅威ではない。足つきも味方が近くにいればビームもおいそれと撃てないだろうしな。

 

牽制しながら周りを確認するとストライクは離脱したみたいだ。さっさと撤退するか‥ってイザーク、お前は何でストライクを追いかけているんだよ!撤退命令が出ているだろうが!ええい、仕方がない。

 

「ニコル、お前はアスランを連れて先に戻れ。俺はイザークを連れ戻してくるぜ」

 

ニコルに指示を出してイザークを追いかける。

 

「ちょっと待って下さい、ディアッカ」ニコルから返信がきたがスマン、今は余裕がないのだ。

 

足つきからの弾幕を回避し続け

 

「当たらなければどうということはない」

 

と名言をパクる事に成功しテンションが鰻登りの俺がイザークに追いつくと‥何とストライクの装備が変わっているではないか。アレがヘリオポリスを破壊したという砲撃用武器か?

 

イザークに声をかけようとすると「うわっ!」「イザーク!?」

 

見るとデュエルの右腕が破壊されていた。何してんだよ。う~む、ハイメガランチャーみたいだな、他人事のようにちょっと感動していると

 

「おのれ、ナチュラルの分際で~」イザークはご立腹だった。うん、無事でなにより。

 

「イザーク、俺が援護するから撤退しろ!」と言ったのだが一切聞き入れてくれない。

 

このままじゃストライク、メビウスゼロ、足つきに囲まれてフルボッコの未来が訪れてしまう。どうする、どうする、どうする俺?‥ここは奥の手をを使うしかないようだゼ。使うまいと思っていたが状況が状況だ。

 

「イザァーーク!!」まずは呼び掛ける。

 

そして「なんだディアッカ、俺はストライクを「エザリアさんに‥言っちゃうゼ?」き、貴様!」

 

「フフン、どうするんだイザーク?」(ドヤ顔で)

 

「チッ、撤退だ!言っておくが命令に従っただけだ、母上は関係無いからな!?」

 

「ハイハイ(マザコン乙)」とにかくこれで撤退できる。

 

スラスターの出力を全開にしてイザークと共に離脱する。追撃がなかったので助かったぜ(ニコルも援護してくれたし)そして無事帰還できた。やれやれ、イザークのお守りは疲れたゼ。さっさと休むか~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今クルーゼ隊はガモフで足つきを追跡中だ。

 

隊長とアスランを除いて、だがな。どうやら隊長はに評議会から出頭命令がでたそうだ、ご愁傷様。

 

アスランはどうしたかって?タイミング良くプラントでは慰問団代表のラクス・クラインが出発前の休暇中とのことだ、わかるな‥?つまりそういうことだ‥妬ましい、羨ましい。

 

 

ラクス・クライン

 

プラント最高評議会議長の令嬢で愛くるしい顔と抜群の歌唱力を持つ我らがプラントの誇るアイドルで、その人気はプラントのみならず地球にまで及んでいるらしい(イザーク談)

 

「だが俺が注目しているのはそこじゃねぇ、何かって?決まっているだろう‥オッパイだよ、

 

オッパイ!バスト!胸!大切な事だからもっと言うゼ。皆は気付いてないようだが俺にはわかる、

 

ラクスがグレイトオッパイだということがな!

 

ラインの出にくい衣装を着ているがそれはカモフラージュだ!(なんだって~)

 

結局何を言いたいかというとアスランがあのグレイトオッパイを独占していることが悔しいのだ。

 

美少女婚約者がいるとか、リア充め‥‥」

 

 

 

こんなことイザークに聞かれたら怒りそうだから言わないけどネ。

 

 

「口に出ているわ、この馬鹿者め!!」ゴツッ「痛えー」 イキナリ誰かに頭をゲンコツされた。

 

「な、何をするだー」振り向くと、そこには‥鬼の形相のイザークがいた。

 

「ほう‥どうやらまだ足りないようだな?大事なブリーフィング中にトリップしていたことに加え、ラクス嬢まで汚すとは、その罪万死に値する!」

 

「ぐれいとぉ‥」イザーク、キャラ違くね?という言葉をなんとか飲み込む。

 

そしてニコル、何故落ち込んでいるんだ?やれやれだゼ‥‥‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

               ~しばらくお待ち下さい~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて残った俺たちはガモフを母艦に足つきを追跡中だ。

 

 

「しかし地球軍も姑息な物を造る」

 

 

イザークのいう姑息な物とは足つきが逃げ込んだ場所のことだ。

 

 

通称「アルテミスの傘」はレーザーも実体弾も通さない、完全無敵の要塞だそうな‥

 

 

「それなんて無理ゲー。出てくるのを待つか?」と言えば、

 

 

「ふざけるなよディアッカ。お前は戻られた隊長に何もできませんでしたと報告するのか!」

 

 

「いや‥だって、なぁ?」とイザークの矛先を変えるべくニコルに振ってみると

 

 

「傘はいつも展開させているわけではないんですよね?なら、私のブリッツでなんとかなるかもしれません」と言った。

 

 

「「え、マジで?」」

 

 

「ブリッツにはミラージュコロイドが搭載されています。試すにはちょうどいいかと。」

 

あなたが神か。いや、女神降臨!!

 

「よっしゃー!さすがニコル様だぜぇ、グウレイトオ!!」

 

嬉しさのあまりニコルに抱き付く。「あわわわわわわわぁ‥‥」ニコルが慌てているが気にしない。

 

何故そんなに嬉しいのか?今までの流れだと俺が特攻させられる可能性が高かったからだゼ。

 

気にし過ぎだって?いやいや、今の熱血状態のイザークなら平気でバスターで特攻とかありえるから。親友の俺にはお見通しです‥師匠~!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、手筈どおりに」そう言い残しニコルはブリッツのミラージュコロイドを展開させた。

 

「お、本当に消えたな」

 

コクピットのモニターを確認すると、先程までいたブリッツがカメラで映らなくなり、またレーダーにも反応しなくなっていた。

 

「これ、無敵じゃねーか」ステルスとかいいなぁ‥

 

「ちゃんと欠点もありますけどね」突如通信が入った。

 

「うお、ビックリした。行ったんじゃなかったのか。」ニコルからの通信だった。

 

「もともと少し動作確認をしてから向かう予定でしたから」

 

ニコルはそう言うが確かに、開始早々作動しませんでしたじゃ意味ないもんな。流石ニコルだぜ。

 

 

「話は戻しますけどミラージュコロイドは展開時間が90分ということに加えて、展開中はフェイズシフト装甲が展開できないという欠点があります。ですから今のブリッツはジンとあまり変わらない状態です。」

 

 

「う~む、それを考えると確かに微妙な‥」透明になって無双!というのは実現できないっぽいな。

 

 

「あれ、じゃあ、お前ヤバくね?アルテミスの中はメビウスとかいっぱいあるだろうし、フルボッコにされんじゃ‥」と言いかけてやめる。ニコルが真剣な顔でこちらを見つめていたからだ。そして

 

 

 

「ええ、ですから貴方にこの話をしたのです。なので‥‥もし危なくなったら援護お願いしますね、ディアッカ?」

 

そう、微笑みながらニコルは言った。若干顔が赤い気もするが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズキューーーン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、おう、任せとけ!」

 

照れと驚きのあまり噛んでしまったが許してほしい。だが、皆も想像してほしい。

 

緑髪ショートヘアの美少女が俺に笑顔見せたんだぜ?

 

制服は俺達と同じズボンタイプを着用しているからすっかり忘れていたが、ニコルは美少女なのだ。

 

オッパイは小さいが美少女なのだ。

 

年下だが美少女なのだ。

 

大事なので3回言いました。つまり、わかるな?単純に言えば今まであまり意識していなかったが、ニコルが美少女であるということを再認識した俺であった、マル。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死亡フラグじゃないよネ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論からいうと足つきには逃げられた。別にニコルが失敗したわけではない、逆に大成功であった。

 

が、俺とイザークが到着したころには足つきは出た後だった。向こうの方が一枚上手なだけだ。

 

先の戦闘といい今回といい、優秀な指揮官がいることは間違いないようだ。

 

油断できないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アルテミス攻略戦から少し経ち足つきを捕捉したのだが‥

 

 

 

 

 

「地球軍艦隊との合流まで10分しかありません。」

 

 

ニコルがいうには足つきが艦隊と合流するらしい。

 

 

「10分もだろう?10分しないのか、10分はあるのか?それは考え方の違いだ。臆病者は黙っていろ。」イザークは相変わらずの平常運転でニコルを馬鹿にしている。

 

物事を慎重に考えるニコルとは合わないのだろう。仲間なんだから仲良くすればいいのに‥

 

 

 

「ディアッカはどう考えますか?」気付いたらニコルが俺の前にいた。

 

 

 

 

身長の関係で上目使いで俺を見ている。俺を萌え殺す気かニコル!

 

なんかこの前の件以降「うちのニコルがこんなに可愛いわけがない」状態で、つい意識してしまうんだよな。

 

「ディアッカ?」

 

おっとイカン、またトンデいたようだ。

 

 

「俺はニコルに賛成だ。俺達3人だけで攻撃するのはリスクが高い。2回も失敗しているんだ、隊長とアスランを待つべきだ。」

 

 

 

「合流されたらそれこそ厄介だぞ!隊長はラクス嬢を置いたらすぐに戻る。それまでに俺達で足つきを鎮めるぞ、いいな!」

 

 

またイザークに押し切られた、やれやれだゼ‥

 

 

 

さてこうなったら腹を括るしかない。

 

 

 

 

「ディアッカ・エルスマン、バスター発進する!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦は俺とイザークがストライクとメビウスゼロを足つきから引き離しその隙にニコルが足つきを撃破するというものだ、単純だろ?今のところは順調だ。

 

 

 

 

 

 

ストライクはイザークが、メビウスゼロは俺が相手をしている。

 

 

 

 

 

しかし当たらない。何が?俺の攻撃が。相手の攻撃も当たらないが。戦闘は膠着状態に入っていた。

 

 

 

 

 

ガンバレルを回避しながら攻撃するのはシンドイから、マジで!まだか~ニコル、と考えていると。

 

 

 

 

 

 

「くうっ」イザークから声が漏れる。む、どうやらストライクの攻撃を受け機体が損傷したみたいだ。呼び掛けるが毎度のごとく無視される。援護に入ろうとするもストライクは既に足つきへ向かっていた。

 

 

 

 

「何!?」ブリッツ蹴り飛ばすとそのまま反転し追ってきたデュエルに再度攻撃を加えた。

 

 

 

 

 

「なんだあれは‥」ストライクの今までとは全然違う動きに俺は衝撃を受けた。

 

 

パイロットが変わったというのは考えにくい、実は機体のリミッター機能があってそれを解除したとか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛い!‥痛い!!‥‥痛い!!!」

 

 

 

「ディアッカ、イザークが!」

 

 

 

ハッ!イザークの呻き声とニコルからの通信で我に返る。

 

 

 

 

「OK!撤退す‥」言い終わる前にストライクが目の前に現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

ストライクは右手にビームサーベルを持ち、今まさにバスターに振り下ろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイ

 

 

 

マズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイマズイ

 

 

 

マズイマズイマズイ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この距離では回避が間に合わない。

 

 

 

 

攻撃は?

 

 

 

 

 

武器がない、ヤラレル。

 

 

 

 

本当に?こんなところで?

 

 

 

 

死ぬ、俺が?

 

 

 

 

何で?

 

 

 

 

 

ストライクの動きがスローモーションのように見え、走馬灯が駆け巡り自分に死が近づいていることが感じられる。後はそれを受け入れるだけ‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フザケルナ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンナコトデ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンナトコロデ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オレガ、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オレハ…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やられてたまるかー!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《ピキーン》

 

 

 

 

 

 

 

突如、何かが弾けたかのように頭の中がクリアになる。

 

 

 

 

すぐさまスラスターの出力を全開、ペダルを最奥まで踏み込みバスターをストライクに体当たりさせ、両肩の「220mm径6連装ミサイルポッド」発射する。

 

 

 

 

 

着弾し両機の視界を塞ぐ。

 

 

 

近距離で爆発したミサイルは当然、バスターにも衝撃を与える。

 

 

 

「ぐうぅっ」機体同士が衝突した衝撃とミサイルがストライクに着弾、爆発した衝撃がコクッピトに伝わってくるが何とか耐え、「うおおおおおぉ!」雄たけびをあげながら左足でストライクの右腕を蹴り上げ、その勢いのままストライクの上方向に移動する。

 

 

 

 

 

 

 

 

蹴られたことによりストライクの手からビームサーベルが離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「今の俺は!」

 

 

 

 

 

 

 

 

ビームサーベルの柄を右手でキャッチし、コネクタに接続、エネルギーを供給する。

 

 

 

 

 

「ヴンッ」と音を立てビームサーベルが作動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

そして‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「阿修羅すら超える存在だ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一気に振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハア、ハア、ハア、ハア、ハア、ハア、ハア、・……・…」

 

 

 

息があがり苦しい、体もだるい‥が何故か頭はクリアだ。

 

 

 

一体どうなったのか、機体をチェックする。

 

 

 

 

バスターは‥

 

 

バッテリー残量:レッドゾーン(危険域)

 

推進剤:残量わずか

 

220mm径6連装ミサイルポッド:弾切れ

 

損傷箇所:右腕部使用不可、左足関節部負荷大

 

装甲:損傷小

 

戦闘継続:不可

 

 

 

 

 

 

 

今すぐに撤退したいが「ストライクは‥」前方のストライクを確認する。

 

 

破壊できたのは右腕のみらしいな。そのうえ、足つきからもロックオンされた。

 

 

状況把握終了。

 

 

 

 

うん、ヤバイ。

 

 

 

 

 

 

「ディアッカ、敵艦隊がきます!早く撤退して下さい!!」

 

 

ニコルの通信と同時にガモフとブリッツから援護射撃がきた「ヨッシャー」反転し全速力でガモフに向かう。途中でフェイズシフトダウンしたがそんなの関係ねぇ、と一瞬某海パン芸人が頭をよぎったが脇目も振らず帰艦した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気が付いたらベッドの上だった。「知ってる天井だ」とお決まりのセリフを吐いてみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ディアッカ、気が付いたんですね!気分はどうですか?体は大丈夫ですか?」

 

 

 

 

入室してきたニコルは俺に抱き付き質問してきた。

 

 

うおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!

 

 

失礼、衝撃のあまり意識がトンデしまったぜ。

 

 

「ニ、ニコル苦しいので離れてくれないか?」

 

 

「ご、ごめんなさい!!」

 

 

顔を赤くしながら離れるニコルに対して

 

 

「いや、グウレイト!ありがとう!!」思わずお礼を言ってしまった。

 

 

 

 

何故かって?当たっていたからさ‥小さいのもいいものだ。人間の神秘だな。

 

 

 

とかなんとか二人で騒いでいると

 

 

 

「うるさいぞ、貴様等!ここ(医務室)ぐらい静かにできんのか。」

 

 

 

声のする方に振り向くと顔に包帯を巻いたイザークが不機嫌顔でいた。

 

 

「イザーク、いたのか」

 

 

「いて悪いかー!」いつも通りの反応で安心した。

 

 

あの後、戻ってきた軍医に異常がないことの確認をし3人でブリッジに移動し先程の戦闘記録を見る。ニコルの説明によるとイザークの怪我というか傷はプラントの技術力なら治せるのだが、イザークがそれを拒否した。ストライクを倒せるまでは、ということらしい。

 

俺の方はバスター着艦後に意識を失ったらしい。

 

医者の話では検査結果に異常が無いので戦闘での精神的な疲れではないか、とのことだ。

 

で、先程の戦闘だが

 

「覚えていない?」

 

「正確にはぼんやりとしか覚えていない、だけどな」

 

 

イザークの質問にそう答える。ストライクが迫った瞬間。あのあたりから断片的にしか思い出せない。もしかしてボケたか?この歳で!?そりゃヤバイぜ。

 

 

「本当に凄かったんですよ!あのMSと互角に戦っていたんですから!!」

 

 

ニコルが興奮しながら説明してくれた。

 

 

映像ではニコルが言うように俺はタックルにミサイル、蹴り、ビームサーベルと次々に攻撃を繰り出していた。

 

 

 

というかこれって、連撃じゃねーかヨ!

 

 

 

しかもセリフはフラッグファイターことグラハムのものだし。

 

 

 

 

絆の経験が無意識のうちに体を動かしたのか?

 

 

しかしその代償が右腕損傷とは‥バスターは砲撃専用機体だからビームサーベルの使用を想定していなかった。その為、過度の負荷が掛かり損傷したとそういうことか?

 

技術面は暇な時に整備班に聞いてみるか~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらくして隊長とアスランがヴェサリウスにて合流した。

 

 

 

「イザーク、負傷したとのことだが傷はもういいのかね?」

 

 

 

「はい、問題ありません!次こそは足つきを堕としてみせます!!」

 

 

 

「わかった、君の奮起に期待しよう。」

 

 

 

 

「ハッ!」

 

 

「さてディアッカ、君はストライクの右腕を切り落とした挙句にビームサーベルまで奪取したそうではないか。」

 

 

「はあ、まあ、そうですね。」

 

 

 

「貴様、何だその態度は!?」

 

 

 

「いや、構わんよイザーク。ここは公式の場でも無いことだしな。私なりにディアッカの性格も理解しているつもりだ。」

 

 

「ハッ」

 

 

 

隊長とイザークのやり取りを他人事のように聞く。久々に対面したわけだが相変わらず何を考えているかわからない人だ。

 

 

そもそもだ、仮面被っていること自体胡散クセー!あんなの許可していいのか?

 

 

 

誰かツッコめヨ!ガンダムシリーズでは仮面=正体隠し だからな。

 

 

 

その法則に当てはめればクルーゼ隊長も何らかの秘密を隠しているのだろう。

 

 

 

とある女王の付き人とか、とある指導者の遺児とか、ブシドーとか、忍者とか、彗星の再来とか

 

 

 

‥実は黒幕でしたーとかあり得そうで怖いな。うん、これ以上は考えるの止めよう寒気がしてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クルーゼSide

 

 

 

 

キラ・ヤマト。まさかアスランの口からその名を聞くとは思わなかった。

 

 

同姓同名の可能性もあるが、あのMSの動きは民間人が簡単に出来るものではない。

 

先程の戦闘ではより動きが良くなっていた。確率は高いだろう。

 

双子の片割れ、最高のコーディネーター。

 

死んだとばかり思っていたがまさか生き残っていたとはな‥

 

 

 

 

アスラン・ザラ、

イザーク・ジュール、

ニコル・アマルフィ、

彼らは良くも悪くも普通の赤服と変わりはない。

 

 

私の目論見通りに動いてくれるだろう。

 

 

 

 

そして問題は‥ディアッカ・エルスマン。

 

 

 

ダット・エルスマンの息子でアカデミーでの成績は射撃を除き他のはラスティ含む赤服の中で最下位。たいして注目もしていなかったが、初対面後はたまにだが私を警戒する素振りを見せている。

 

 

理由はわからないが注意していく必要はあるだろう。

 

 

そして先程の戦闘‥キラ・ヤマト(仮)と同じく動きが急に良くなりバスターで撃破直前まで追い詰めた。私であってもあれは無理であろう。

 

普通のコーディネーターの彼が一体どうしたというのか?これは調べる必要があるな。

 

私は端末から友人に連絡を入れる。

 

「やあ、久しぶりだね。君の方から連絡を寄越すとは。」

 

 

彼は相変わらずのようだ。

 

 

「フッ、私とて万能ではない。友人の力を借りる時もあるさ。」

 

 

「私の力などたかが知れているよ。だが、他ならぬ君の頼みだ、期待に応えて見せよう。」

 

 

「それは助かる。早速だがある人物を遺伝的に調べてもらいたい‥」

 

 

 

 

 

さてどんな結果がでるか。

 

 

 

 

 

 

 




疲れた‥


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4話:バスターはガンダム?

遅くなりましたがやっと投稿です。今回もツッコミどころがありますが「そんなの気にしないぜ」という方はどうぞお進みください。

読んで下さる皆さんに感謝を。


ディアッカSide

 

 

 

 

「グゥレィトォ!!!!!!」

 

 

 

 

 

叫びながら放たれたビームが、実弾が一機、また一機と次々にメビウスを撃破する。

いきなりどうしたって?現在、俺達は足つきと足付きが合流した地球軍第八艦隊と低軌道上で戦闘中だ。どういうわけか足つきは戦闘には参加していないので敵はメビウスと戦艦のみ。

とはいえ艦隊だけあって数は多い。

アガメムノン級宇宙母艦にネルソン級宇宙戦艦さらにドレイク級護衛艦までもいる。

ま、主砲に気を付けていれば問題ないがな。メビウスなどただの的だしな。

そう、まさに無双状態といっても過言ではないんだゼ!

 

バスターの実弾に関してはクルーゼ隊長が合流時に補給分を持ってきてくれたので今までのように制限しなくてもよくなった。もちろん、物資に限りはあるからある無制限ではないが。

どうして地球軍のMSの弾が完成しているのか?というツッコミはしてはいけないのだろう。

前にも言ったがザフトの技術者は変態だ。ザフトの技術は世界一~!!そういうことだ。

 

で、その時にデュエルの強化パーツとしてジン用のパーツを流用したアサルトシュラウドも補給されたのでデュエルがパワーアップしイザークも絶好調だ。フルアーマーなんてズルイぜ。バスターにもシールドぐらい欲しかったのだが無理だったゼ。しかも俺がついでに持って帰ったストライクのビームサーベルの柄は新型の開発に使用するとかで本国に送られてしまった。せっかくの近接装備が!!まあそんな事がどうでもいい。

 

そろそろこの戦闘にも飽きたのだが‥

 

 

「ええい、ストライクはどこだ!」

 

 

イザークは仇を討つつもりで張切っているが俺には負けフラグにしか思えないゼ。

 

俺?俺は‥

 

 

「グウレイト!」

 

こうやって超高インパルス長射程狙撃ライフルモードで戦艦を撃ち堕としてるゼ。

相変わらずメビウスが次々に発進される。

 

「グウレイッ、数だけは多いぜ」

 

ボヤキつつ94mm高エネルギー収束火線ライフルを撃つ。

考え事しながら戦闘するのに慣れたな、俺。

 

「出てこいストライク、でないと‥傷が疼くだろうがぁ!!!」

 

「いや、それなら治せよ!!」とツッコミたくなるが自重する。

 

馬鹿なことを考えていると突如足つきが降下を開始する。このタイミングでか?

何で今頃?と疑問に思っていたら‥

 

 

「追い込め!降下する前になんとしても仕留めるんだ!!」

 

 

「「「「ハッ!」」」

 

クルーゼ隊長から命令が出たので返答する。俺達クルーゼ隊4機で一気に攻める!!

 

「ええい、諦めの悪い!」

 

俺はというと超高インパルス長射程狙撃ライフルの前後を組み替え連結した《広域制圧モード》の「対装甲散弾砲」を撃つ!ちなみにこのモードは初披露だゼ!これはいわゆる《面》に対する攻撃なので大量の実弾が発射され戦艦を貫通していく。

 

「グウレイト!」

 

何回グレイトを言ったのかわからなくなってきた‥ほかのメンバーの様子をうかがうとイザークが前に出たので付き合う。デュエル、バスターが先陣を突破しイージス、ブリッツもそれに続く。

 

「くそぉ、時間が無いんだ、とっとと堕ちろ!」

 

戦艦1隻撃破し足つきに迫ったところでストライクとメビウスゼロが発進した。面倒だゼ。さっそくデュエルがストライクと交戦。もう一機、メビウスゼロはバスターを襲ってきた。

 

「また俺かよ!?いいかげんマズイぜ!毎回毎回しつこいんだよ、このストーカーヤローが!!」

 

何でコイツはいつも俺を狙うんだ?応戦したいが無視する。理由は重力に引かれ徐々に機体が落ちているからだ。このままじゃ戻れなくなるからな、イザークも回収しなくては‥

うん?

メビウスゼロからの攻撃を回避しつつイザークを探しているといつの間にか前に出過ぎているガモフを発見する。おいおい、母艦が前にでたらマズイでしょ。そう考えているうちにガモフが旗艦のアガメムノン級に向け進行し始めた。もしかして特攻かヨ!?しかし相手も阻止する為に当然反撃する。ガモフがメビウスゼロに攻撃されダメージを負う。

 

ガモフが!?

 

くそっ。ガモフの援護に向かおうとした時クルーゼ隊長よりアスランとニコルに帰艦命令が出た。

 

「俺とイザークには出ないのかよ!?」

 

そう叫び計器を確認すると‥

 

 

「何て事だ!?機体が重い、駄目だ!戻れない!!」

 

まだバスターは動くことは出来るが高度が下がった為かどんなにスラスターの出力を上げても帰艦できない。どうやらクルーゼ隊長の判断通り俺とイザークの位置からでは帰艦が困難のようだ。どうするか・・・・・・そんなの決まっているじゃないか。戻れないのは仕方がない、ならばせめてイザークだけでも戻す!!俺は通信を入れる。

 

「アスラン、ニコル、これより俺はイザークの救援に向かう。協力してくれ!」

 

「ディアッカ、何を‥」

 

「わかりました。私は何をすればいいですか?」

 

「ニコル!」

 

「アスラン、今は一刻を争います。」

 

「っ‥‥了解した。ディアッカ、俺達は何をすればいい?」

 

アスランとニコルが協力してくれるそうだ。グレイトなやつらだゼ、まったく‥

 

「これから指示を出すポイントへ向かってくれ。その後‥‥」

 

指示を出しつつ俺はイザークの元へ向かう。途中でガモフが撃沈。

直後アガメムノン級も撃沈したことを確認した。

ゼルマン艦長に敬礼しつつ到着すると、イザークはストライクと戦闘継続中だった。

無駄だとわかるが一応通信を入れる。

 

「イザーク、撤退だ、このままでは地球に落下するゼ!」

 

「うるさい、お前は黙っていろ!!」

 

うん、予想通りの反応。デジャヴだ。とはいえ今回はマジだ。引き下がるわけにはいかない。

なおもデュエル、バスターは重力に引かれて落下中。

 

「イザーク、ディアッカ!」

 

アスラン達は配置についたらしい。ちょうどその時デュエルがストライクの蹴りをくらい吹き飛ぶ。チャンス到来!

 

「アスラン、ニコル!!!!」

 

二人に指示を出し俺はストライクに向け一斉射撃をし牽制、距離を引き離す。

そして‥巡航形態になったイージスが高速で接近、砲撃形態になりデュエルを掴み離脱する。

 

「アスラン、貴様ぁ!」

 

この前のストライクのように捕獲されたデュエルは脱出を試みるが無駄な足掻きだ。俺もイージスの隣に付きデュエルを押し上げる。MA形態のイージスはスラスターを同一方向に向けている為、宇宙空間での効率が良く、また微力ながらバスターも押しているのでデュエルはどんどん帰艦可能な高度に近づいていく。

 

「邪魔をするな、貴様らぁ!」

 

ブチキレているイザークが煩い。ええい、少しは黙れ!突如、怒りがリミットブレイクしたからなのかはわからないが何と、イザークがいつの間にかいたシャトルをビームで撃沈した。

おいぃ、俺が危険だろうが!?シャトルの近くにいたストライクも吹き飛ばされていた。

一体何だったんだ、あのシャトルは?

 

「ディアッカ、マズイぞ!!」

 

アスランからの通信で状況を確認すると予定高度より僅かに下回っている。うん、マズな。

 

「イザーク、お前も協力しろ!」

 

「俺に指図するな!俺は「そんなこと言ってる場合か!死にたいのか!?」‥チッ!」

 

さすがに状況は把握しているらしく今回はすんなり言うことを聞いた。が、デュエルもスラスターを全開にしているにも関わらず、足りない。そしてバスターも・・・・・・・

 

 

「「ディアッカ!?」」

 

 

そう、イージス、デュエルを残しバスターは落下していた。元々バスターの出力では機体を少し動かすぐらいしか出来なかったからデュエルを少しでも押し上げられただけ良しとしよう。だがイージスもデュエルもこの高度ではバスターと同じく落下してしまうだろう。

万事休す、か?そう思っていると‥

 

「ディアッカ!」

 

 

モニターを見るとブリッツが降下してきている。

ニコル、何で?予定ではまだ上で待機のはずだったのだが‥いや、考えるのは後だ。

 

「ニコル、やれ!」

 

「はい!」

 

そう返事をしブリッツがグレイプニールをデュエル向けに射出する。射出されたグレイプニールは見事デュエルの右腕を掴んだ。「いきます!」ニコルの掛け声と同時にブリッツはグレイプニールを巻き上げながらスラスターを全開にしてヴェサリウスに向け上昇する。

 

 

 

「「「「いけえぇー!!!!」」」」

 

 

 

 

そして・・・・・・

 

 

 

 

 

「イージス、デュエル、ブリッツの帰艦可能高度への到達を確認」

 

ヴェサリウスのオペレーターから通信がきた。

 

「グゥレイト!!やったゼ!!!!」

 

そう、俺の考えた案は下からイージスが押し上げ、上からブリッツが引き上げる、という単純かつ場当たり的なことだった。成功する可能性は高くは無かったが成功してなによりだ。イザーク達から通信が入ってきてるがさて、もうゴールしてもいいよね‥・安心したせいか眠気からか目蓋が重く、意識が遠のいていく‥意識を失う前最後に見えたのはこちらに向かってくるブリッツの姿だった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

なんか暑い‥あまりの暑さに目が覚め、目蓋を開けるが視界が霞んでいてよく見えない。

頭がボーとする。体がダルイ。なん‥だ?ここは‥オレ‥は?意識がハッキリしない。ふと誰かの声が聞こえた気がした。

 

 

「‥‥‥カ、‥‥‥‥‥!」

 

 

 

 

 

気のせいじゃ、ない?

 

 

 

 

 

 

「‥‥‥カ、‥‥い‥‥」

 

 

 

 

 

 

やはり聞こえる。

 

ダレだ?

 

もっと‥声を‥‥

 

 

 

 

 

「デ‥・カ、聞‥‥‥‥イ‥!」

 

次第に声が大きくなり、俺の意識も覚醒してくる。

 

 

 

 

 

「デ・‥カ!聞・エ‥‥‥大丈‥‥!」

 

 

ああ、そうだ、この声は聞いたことがある。

 

 

違う、知っている。

 

 

いつも聞いている声だ‥

 

 

そう、そうだ‥この女の子の声は‥

 

 

 

 

「ディアッカ、ディアッカ!聞こえますか?大丈夫ですか、お願いだから返事をして!」

 

 

ハッキリと聞こえた。そして意識は覚醒する。

 

 

 

 

「グゥレイト!聞こえてるゼ、ニコル」

 

ニコルだ。間違えようもなく、な。

 

 

「ディアッカ!?本当に!?大丈夫?私がわかる?」

 

「もちろんだゼ!」

 

ヘルメットを取り顔の汗を拭い俺は返答する。

 

 

「よかった、本当に、無事でっ‥‥‥」

 

何と!?ニコルが泣き始めてしまったゼ‥え?俺ってそんなにヤバかったの?

状況を把握すべくモニターを見ると‥大気圏内を絶賛落下中だった。眼下には海が広がっている。

 

 

‥えええええぇ!?なんと俺が気絶中に大気圏突破していたとはな‥バリュートないのだが?

ニコルに聞くしかないな。

 

「ニコル、俺はどうなったんだ?」

 

「はっはい!ええと‥」

 

まだ涙ぐんでいるニコルの話によると、落下するバスターにブリッツが追いついたものの2機とも落下は止まらず、緊急措置として大気圏突破を実行することになったそうで。俺は気絶していたのでブリッツがバスターを左脇に抱え、右腕のシールドを盾にしてなんとか切り抜けたらしい。

 

で、その時ブリッツのコクピット内温度がとてつもなく高くなった為、バスターにも同様の事が発生していると思いずっと通信呼び掛けてくれたそうだ。つまり熱中症で死にかけたわけだ。

道理で喉が渇くと思ったゼ。

 

「サキュー、ニコル。お前は命の恩人だゼ!(キリッ)」というと

 

「いえ、そんな、あの‥」

 

とか照れた様子でモジモジしていた。ニコル、マジ天使!さて、どうするかな。

このままいけばジブラルタル基地周辺に落下しそうだが、問題はどうやって着地するか、だな。

ニコルいわく俺達の機体は宇宙用で飛行できないらしい。

バスターなんか如何にも陸戦型って感じだしな。

かといってこのまま激突すれば、機体は無事でも俺達が死んでしまう。

 

バスター、ブリッツの勢いは止まらず、ついにはジブラルタル基地の防空圏内に入ってしまった。

識別コードは出ているはずなのだが、ディン数機が飛行形態でスクランブル発進している。

ちょうどいい、手間が省けたぜ。俺は基地に通信を入れる。

 

「ジブラルタル・コントロール、こちらクルーゼ隊所属ディアッカ・エルスマン。緊急事態にて至急応答されたし」

 

「こちらジブラルタル・コントロール、貴官の照合を確認。どうぞ。」

 

「機体損傷の為、本機及び随伴機はこれより緊急着陸を試みる。協力を求む。」

 

「‥貴官の要請を受託した。ディン隊を送る、以後の対応は貴官に委ねるが不都合はあるか。」

 

「問題ありません。協力に感謝します。」

 

「貴官達の成功を祈る。以上。」

 

 

さて、協力を得られたし運に任せるしかないな。

 

 

「ニコル、しっかり掴まっていろよ」

 

「はい!」

 

うむ、いい返事だ。超高インパルス長射程狙撃ライフルモードに移行、銃口を真下に向ける。

海面まであと100メートル。するとディン4機が接近してくる。

 

「いくぜぇ~」

 

スラスターを最大出力で噴射し制動をかけると同時に海面に向かってビームを発射する。

ビームによって海底の岩盤が破壊されその衝撃で海水が間欠泉のように吹き上がり、バスターとブリッツに襲いかかる。スラスターによる制動と海水を勢いよく被ったことで両機が減速する。

俺はオープンチャンネルで呼び掛ける。

 

「今だ、お願いします!」

 

「「「「まかせろ!!」」」」(絆かよ!?)

 

ディンが2機2組に分かれ、バスターとブリッツをそれぞれ両側から抱える。

それにより両機はゆっくりと降下していく。

 

 

ザフト軍ジブラルタル基地にて。

 

 

あの後、回収された俺とニコルは当基地のお偉いさんへの報告と協力してくれた部隊、俺達の機体を整備してくれる人達へのお礼と挨拶回りを済ませ休憩所で小休止している。

 

「いや~、さすがに今回は疲れたゼ」

 

ソファーに寝そべり仮眠体勢になる俺。

 

「もう、一応待機中なのですからしっかりして下さい。」

 

そう言いながらもニコルも疲れているようでちょっと元気がない。

 

「ニコルは真面目だな~」

 

「私は当たり前の事を言っているだけです。」

 

むぅ、ニコルが厳しいぜ、大気圏突入時はあんなに‥‥

 

「それだ!」

 

俺はソファーから起き上がり前のソファーに座っているニコルに近づく。

 

「いきなり大声でどうかしたんですか?」

 

ニコルは俺の突拍子もない行動に驚いているようだ。だが、俺には言わねばならないことがある。

それは‥

 

「いや、ニコルも年相応で可愛いところがあるな~と思い出しただけだぜ」

 

とニヤニヤしながら言った。

キョトンとして首を傾げていたニコルだったが‥顔が見る見るうちに赤くなっていく。

 

 

 

 

 

「あ、あ、あ、あ、あ、あああああああああああああああ!!!!」

 

 

 

「ち、ちが、いや、あれは、その、ええと、だから、あうあうぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」

 

 

 

 

もはや何を言いたいのかわからない、もう少し見ていたいが涙目になっているのでやり過ぎたみたいだぜ。泣くのは勘弁な!

 

「落ち着け!深呼吸だニコル。吸って~、吐いて~、ほら一緒に!」

 

二人揃って深呼吸しなんとかニコルは落ち着いた。やれやれだぜ。

 

 

 

5分後

 

 

「ニコル、テンパリ過ぎだろ。」

 

「ディアッカのせいです。」

 

ムスッとした顔で私、怒ってます!という態度なニコル。

微笑ましい光景に口元がニヤケてしまう。

 

「何がおかしいんですか!?」

 

おっと、また怒らせてしまったらしい。だが、悪いのは俺だけじゃない。そう、

 

「ニコルが可愛いからだゼ」

 

「え?」

 

「あれ?」

 

無意識のうちに口に出していたらしい。ニコルはというとボンッと顔が真っ赤になった。またかヨ。

 

「い、イキナリ何を言うのです、ディアッカ」

 

「まあ、事実だしな。あとはついさっきみたいに敬語無しに話してくれればバッチリだゼ!」

 

「ええ!?」

 

ニコルは驚いているが当然だろう、仲間なのに敬語なんて他人行儀じゃないか。

 

ニコルを弄っていると、クルーゼ隊長より通信が入いった為ブリーフィングルームへ移動する。

 

「両名とも無事、ジブラルタルに入ったと聞き安堵している。先の戦闘ではごくろうだったな。」

 

「死にそうでしたよ。」

 

ディアッカを無視し話を続けるクルーゼ。

 

「残念ながら足つきとストライクを仕留めることは出来なかったが、不本意とはいえ共に降りたのは幸いだったかもしれん。今後足つきは地球駐留部隊の標的になるだろうが、君達もしばらくの間ジブラルタルに留まり共に奴等を追ってくれ。無論‥機会があれば撃ってくれてかまわんよ。」

 

通信が切れる。

 

「宙には戻ってくるなってこと?足つきは駐留部隊に任せて俺達はプラントに帰ることはできないのか?」

 

肩を竦めながらニコルに問いかける俺。

 

「我々のG強奪任務が継続中であると考えた場合、最後の1機は残っていますからそれを奪うまで帰還するのは難しいのではないでしょうか。」

 

「やれやれ、上司にこき使われる平隊員は辛いゼ。」

 

それに撃てたらってイヤミかよ。

 

「命令ですから仕方ありませんよ。」

 

ニコルの言うように愚痴っても意味がないのはわかってはいるが‥‥

 

「ニコルの言う通りだな。よ~し、じゃあ機体の調整でもしますかね!」

 

ニコルだってこの状況は不安なはずだ。年上として俺がフォローしなくてはな。

 

「ところでニコル、大変な事を思い出してしまったのだが」

 

「大変なこと?何でしょう?」

 

「この基地に滞在中、俺達は相部屋らしいのだが、これって同棲みたいじゃネ?」

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

「え?」

 

 

 

 

「‥ええ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後ひと悶着あったがそれは置いといて、俺達は砂漠に来ている。

機体から降りると砂と風が強い、帰りたい。

そこへバルトフェルド、ダコスタが現れる。

「クルーゼ隊、ニコル・アマルフィです」

 

「同じくディアッカ・エルスマンです」

 

敬礼する俺達。答礼する二人。

 

「砂漠へようこそ、歓迎するよ。」

 

「どうも。」

 

握手するバルトフェルドとディアッカ。

ブリッツ、バスターを見上げるバルトフェルド。

 

「なるほど、似ているな」

 

「隊長は既にストライクと交戦したと報告をうけていますが、どうでした?」

 

考え込むバルトフェルド。

 

「うーん、僕も君たちを笑えないな」

 

「‥(負けたのかよ)」

 

「詳細は中でするとしよう。ダコスタ君、案内よろしく」

 

「ハイ!」

 

ダコスタに案内されレセップスに入る俺達。すると管制官より連絡が入る。

レセップスのモニターを見ると足つきが映っていた。砂漠を抜けるつもりらしい。

 

「もう少し待って欲しかったが‥‥レセップス、発進する!各艦へ連絡を!」

「ハッ」

 

来て早々戦闘とは忙しいぜ。

 

 

 

 

戦闘ヘリのアジャイルやバクゥが次々に落とされていく。

俺達はというとレセップスの艦上にいる。何故か?隊長命令だからさ。

正直言うと助かったゼ。俺達の機体じゃあ飛べないから砂漠では足手まといになるだけだしな。

つまり、ただ砲撃していればいいのさ!拠点攻撃だな!

ちなみに隊長の専用機はラゴゥとかいうオレンジのバクゥだ。微妙だ。

ストライクが無双状態で怖い。気のせいかもしれないが戦闘するたびに動きが良くなってるような‥

 

しかしそれもここまで。ヘンリーカーターが足つきの後ろを取りレセップス、ピートリーと挟み撃ち状態にした。しかも足つきはトラブルが発生したのか動かない。ラゴゥもストライクと交戦しはじめた。

俺?艦上から砲撃してますがなにか?ニコルも一緒だ。というか迂闊に前に出れないのだよ!

 

謎の戦闘機がビーム撃ちながら飛んでいるんだから!

マジなんなの?機動力も攻撃力もバスターより上じゃねーかヨ!!ってもう一機増えたー!?

くそ~連邦の戦闘機はバケモノか!!?

こっちはジブラルタル基地で調整したのだがビーム減擦率が高くて射程は短くなるし、威力も下がるしで最悪のだぜ。

 

「いい加減に堕ちろー!」

 

イラッとしたので動かない足つきに向け対装甲散弾砲を放つが外れた。

が、下の施設が破壊され足つきが動くようになる。

「あ、あれ?俺、マズイことやっちゃった?」

 

「って、うお!?」

 

足つきの主砲がこちらに向いたので跳躍し回避する。

俺が回避したことによって主砲が破壊されるレセップス。

 

「危機一髪!」

 

着地するバスターにブリッツ。砂漠に足をとられる‥ということはない、事前に整備班にOSを調整してもらっていたからだ。

それでも機体の動きは重く機動力は大幅に落ちている。やはり宇宙用と陸戦型はちがうな。と改めて実感した。とはいえ飛べないから跳躍か歩くしかないわけだ。

レセップスの被害が半端ないし、レジスタンスはちょこまかとウザイ。

 

くっバスターにバルカンさえあればレジスタンスなど‥そうこうしているうちにバルトフェルド隊の被害は拡大していき遂に隊長より撤退命令が出た。

 

「潮時か‥了解、バスター撤退する!」

 

思うところはあるが俺とニコルはクルーゼ隊だ。

 

バルトフェルド隊には悪いがお言葉に甘えて撤退させてもらうぜ!ニコルと共に残存兵の援護をしつつ撤退をする俺達であった。

 

 

 

 

 




砂漠の戦闘が短いというか無いに等しいですが、原作においてもディアッカとバルトフェルドとの絡みが少ないのでこんな感じになりました。砂漠じゃあね?海‥そう海ならばいろんな妄想が!!

自分としてはTSニコルとの絡みをもっと書きたいのですがこの先はどうなることやら‥


お気に入り登録、感想及びご指摘の書き込みありがとうございます。勝手ながら後書きにて返信とさせていただきます。

次回まで間が空くと思いますが、そこはご容赦を。


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5話:落日

前回より間が空きましたがやっと投稿です。
2話連続投稿とかチャレンジしましたが私には厳しかったので今まで通り1話ずつでいきたいとおもいます。
さて気付いたらお気に入り登録件数が増えていて驚きました。
改めて原作の人気ぶりを実感しました。
今回の話を読む前に一つ注意事項を。「何が起きてもショックを受けるな」です。

読んで下さる皆さんに感謝を。


ディアッカSide

 

 

ザフト軍ジブラルタル基地にて。

 

バルトフェルド隊壊滅後、俺とニコルはジブラルタルへ戻り待機となった。

一週間が経ちアスランとイザーク、クルーゼ隊長、他数名が合流。ブリーフィングルームで

 

「アスラン、イザーク!」

 

「よ、お久しブリーフ!!」

 

「貴様、何だそれは!?」

 

再会を素直に喜ぶニコルに対し某芸人のギャグを真似た俺に怒り出すイザーク。滑ったらしいな。

クルーゼ隊長が話を切り出す。

隊長の話では今後の足つき追跡任務はカーペンタリアの部隊が管轄することになり、俺達にはオペレーションスピットブレイクの準備をしてもらいたいらしい。

当然、足つきにご執心のイザークが黙っているはずもなく

 

「足つきは自分達の手で!」

 

と直談判している。

俺を巻き込むなよイザーク。モラシム隊も失敗したとのことだし、ここまで来て撃破できない以上、ここが引き際だと俺は思うのだが‥

 

「そこでだ‥」

 

おっと隊長の話の途中だった。

 

「そうまで言うなら君達だけでやってみるかね?」

 

「ハイ!」

 

おい、勝手に決めんな!

 

「では君達4人で隊を結成してもらう。指揮はそうだな‥ディアッカ、君がやってみないかね?」

 

「「「「え?」」」」

 

驚く4人。そりゃそうだ。聞き間違いか?俺が隊長だと!?無茶振りが過ぎるゼ!

 

「隊長、何故自分を?」

 

「なに、今までの戦闘の記録を考慮してのことだ。それに指揮官として経験はいずれ役に立つ。

こう見えて私は君を買っているのだがね、ディアッカ‥」

 

「くっ」

 

おい、イザーク、悔しそうにするんじゃない、俺は承諾していないぞ。

 

「とは言え、決めるのは君達だ。私の言ったことは考慮しなくとも構わんよ」

 

よし、それならば

 

「アスランで良いと思います」

 

俺がそう言うと「何ィ!?」とイザークが驚いている。周りを見渡すと皆も驚いているようだ。

 

「ほう、アスランか。確かに悪くはないな」

 

よし、隊長のお墨付きも得た。

 

「ちょっと待てっ!さっきから聞いていれば好き勝手言いおって!どうして俺を推さない!!」

 

自分を指さしながら威張るイザーク。でもな、イザーク‥

 

「お前、すぐヤラレルぜ。指揮官に向いてねえヨ」

 

「き、貴様―!」

 

いかん、また口に出してしまったようだ。しかし、イザーク残念なことに事実なんだ。

お前が良いやつなのは誰よりも俺が知っている。が、それとこれとは別問題だ。

思い出せ、お前の指揮で成功した作戦が無いことを!俺はまだ死にたくはない。

結局アスランが指揮をとることになったのだがイザークは不満たらたらだった。

イザークが「お手並み拝見だな」とか強がっていたので思わず吹き出しそうになったゼ。

 

 

 

一週間後ザラ隊として足つきを攻撃することになった俺達。

この間、アスランが行方不明になってイザークが絶好調だったりもしたが大したことではないので省略する。

 

ドダイみたいなMS支援空中機動飛翔体グウルに乗り足つきを攻撃する4機。

煙を上げる足つき。

 

「何をやっている、ディアッカ!さっさと艦の足を止めろ!!」

 

「うるせー、わかってるって!」

 

攻撃するバスター。甲板上にはストライクが。戦闘機がバスターを狙ってくるが回避する。

ミサイルがデュエルを襲うがギリギリ迎撃する。

 

「くっ」

 

「イザーク、一人で前に出過ぎだぞ!」

 

「うるさい!」

 

指揮官のアスランの指示を無視するイザーク。さすがはイザークだぜ!

アスランの指示で回り込むブリッツ。足つきの武装を破壊しながら接近するイージス。

イージスに気付くストライク。バリアントの破壊に成功するブリッツ。猛攻を受ける足つき。

 

「下がれアスラン、こいつは俺が!」

 

「イザーク、迂闊に‥」

 

イザークがストライクを狙うも、ストライクのビームがデュエルのグウルを貫き破壊する。

跳躍し足つきに取り付こうとするデュエル。飛翔し応戦するストライク。交差する2機。

が、あっさりとビームサーベルを根本から切断されたデュエル。

 

「イザーク!」

 

接近するブリッツ。デュエルを踏み台にしてさらに飛び上がるストライク。海に落ちたデュエル。

ブリッツに接近するストライク。

 

「う、うわ~」

 

ブリッツを殴り飛ばしそのままグウルを破壊する。ブリッツは為す術無く落下する。

二人して水没とか笑えないぜ‥イージスとストライクが打ち合いになる。

被弾しダメージが蓄積していく足つき。

俺?戦闘機と足付きの2機を相手にして奮戦中だ。足つきも耐えるがもうそろそろだ、と考えていると、レーダーに反応があった。

なんとオーブ軍が展開しているではないか!!

大型水上戦闘艦のイージス艦にクラオカミ級護衛艦が展開している。結構な数だ。

 

「接近中の地球軍艦艇及びザフト軍に通告する。貴艦はオーブ首長国連邦の領海に接近しつつある。

速やかに進路を変更されたし。我が国は武装した船舶、航空機及びMSの事前協議なしの侵入を一切認めない速やかにに転進せよ!」

 

オーブよりオープンチャンネルで警告が発せられるが‥

 

「何を寝言を言っている‥」イザーク、言ったらだめだぜ。

 

「繰り返す‥すみやかに転進せよ!!この通告は最後通達である。

貴艦らがこのまま転進しない場合、貴艦らに対して発砲する権限を有している。」

 

どうするのかアスランは、と考えていると‥

 

「この状況でよくそんな事を言えるな!アークエンジェルはこのまま突っ込む。」

 

「な、何だお前は!」

 

「お前こそなんだ!お前で判断できないなら行政府に繋げ!父を‥ウズミ・ナラ・アスハを出せ!

私は、カガリ・ユラ・アスハだ!」

 

「「「「ええ!?」」」」

 

「何を馬鹿なことを。姫様がそんなところに乗っているわけなかろう!」

 

オープンチャンネルで子供の喧嘩のようなやり取りが続く。

オーブ代表の娘が地球軍の艦に乗っているだと?

事情は分からんがやはりオーブと連合は裏で繋がっていたのか?

だがまあ、

 

「ご心配なく、ってね!領海には入れないゼ!」

 

攻撃を続ける俺。ダメージを負う足つき。

そう、オーブなど知らん、要は領海に入らなければ文句も言われないさ!

相変わらずしつこく攻撃してくる戦闘機からのビームを回避し反撃する。

が、バスターの攻撃がオーブ軍に当たりそうになる。

 

「ディアッカ、オーブ軍に当たる、回り込め!」

 

「おっと、危ない危ない‥」

 

アスランから言われた通り外れた攻撃がオーブ軍に当たりそうになった。

向こうに反撃の口実を与えるところだったぜ‥

気を取られているとストライクのビームがバスターのグウルに被弾する。

 

「何とー!?」

 

出力が低下し降下していく。

その隙に戦闘機がビームを撃ってくるが回避し、足つきに超高インパルス長射程狙撃ライフルモードで足つきに攻撃する。スラスター部分に直撃したようだ。

 

「グウレイト!」

 

フッ、タダではやらせんよ!尚もストライクと交戦するイージス。

 

「警告通り、貴艦らに対し自衛権を行使する」

 

いきなり両軍に攻撃するオーブ軍。おいぃ、領海に入って無いだろうが!訴えるぞ、コラ!!

なおもオーブ軍が展開し攻撃が激しくなる。

 

「アスラン!」

 

「くっ、撤退する!」

 

不満は残るが仕方ない、2機も落とされたからな。

 

 

 

 

 

 

 

少し経ちボズゴロフ級潜水母艦クストーにて。

 

「こんな発表を信じろというのか!?」

 

机を叩き憤るイザーク。まあイザークが怒る気持ちもわかる。

何とオーブが足つきはオーブの領海を発進しもうオーブにはいません、と発表したのだ。

いやいや、そんなわけないだろう。

 

「そんなことはどうでもいい。オーブ正式に発表したものなら、ここで俺達が嘘だと喚いても仕方がない」

 

「何を!?」

 

「押し切って通れば本国を巻き込んだ外交問題だ」

 

「ほう、さすがは冷静だ。いや、ザ・ラ・隊長?」

 

アスランは冷静なようだがしかし、はい、そうですかと引き下がるわけにもいかないぜ。

 

「一応カーペンタリアから圧力は掛けてもらうがすぐに解決しないようなら潜入する」

 

「「「うん?」」」

 

「それでいいか?」

 

「…」黙るイザーク。

 

「仮にも相手は一国家なんだ。俺達の独断で確証もないまま行動するわけにはいかない」

 

アスランはそう言うが‥

 

「さっきのオーブ軍と足つきのオープンチャンネルでのやり取り。それを追及するのは無理なのか?中立を謳うオーブの姫が地球軍艦に乗っていたのはどういうことか!ってね」

 

俺はイケルと思ったのだが

 

「いや、おそらく無理だろう。あの場でオーブ軍も否定していたし、足つきが攻撃を逃れる為に一芝居うったのかもしれない。そもそも表向きは中立でも裏ではどうなっているか計り知れない、厄介な国なんだ」

 

まあ、そりゃそうか。

 

「ふん、OK従おう。俺なら突っ込んでますけどねぇ。さすがはザラ委員長閣下のご子息だ。ま、潜入っていうのも面白そうだし?あんがいやつの、ストライクのパイロットの顔を拝めるかもしれないな。」

 

部屋から出るイザーク。ツンデレ乙!

 

 

 

 

 

さて、オーブに潜入したものの一向に手掛かりが見つからない。

偽装IDじゃ入れる区画も決まっているし、何より広大だ。4人で調べるには無理があるぜ。

時刻は夕方。公園にて小休止しているところだ。

イザークも最初は誰よりも張り切ってノリノリだったのだが、今では疲れたのか大人しい。

皆が諦めかけたその時

 

「ん?」

 

謎の物体がモルゲンレーテの敷地内から飛んできてアスランの腕に止まる。

 

「あっ」

 

「トリィ!」

 

「うん?何だそりゃあ?」

 

「へえ、ロボット鳥だ」

 

変な鳴き声をする鳥だと思ったらロボットとはな。

MSが作れる世界だし野生のロボット鳥がいても可笑しくはない。可笑しくはない、のか?

俺が首を傾げていると‥

 

「おーい、トリィ!」

 

人が建物から出てくる。

 

「あれ、あの人のじゃないかな」

 

「あっ」

 

「もう、どこいっちゃったんだよ」

 

ニコルの言う通り持ち主らしき人がこちらに近づいてくる。

お互いに気付くモルゲンレーテ社員の人(推測)とアスラン。

フェンスに近づく両者。

見つめ合う二人。

 

「おい、行くぞ!」

 

車に乗りアスランを呼ぶイザーク。踵を返し戻ってくるアスラン。

 

「どうかしましたか、アスラン?」

 

「いや、何でもない」

 

ニコルの問いにそう答えるアスランだが‥

 

「わかる、俺にはわかるゼ、アスラン」

 

腕を組みうんうん、と頷く俺。そう、アスランの調子が変な理由が俺にはわかってしまったのだ。

 

「ディアッカには心当たりがあるのですか?」

 

「もちろんだぜ!アスラン、お前は‥‥‥あの娘に一目惚れしたんだろ?」

 

時が止まった。

 

「は?」

 

「えええー!?」

 

「何だと!?」

 

「どういうことですか、ディアッカ?」

 

「何故そうなる?」

 

イザークとニコルが質問に俺は答える。

 

「まあまあ、みんな落ち着け。いいか?さっきのロボット鳥の持ち主の娘の顔は見たか?」

 

「ええ」

 

「少しはな」

 

「俺はハッキリと見たのだが‥可愛かった!」

 

「は?」

 

「すごく可愛かったんだよ!!」

 

「おい、ディアッカお前が落ち着け」

 

イザークが俺を宥めるが‥

 

「馬鹿野郎!?これが落ち着いていられるか!

美少女だぞ!?

あの少し茶色がかかった黒髪にショートカット!

クリッとした大きい目!

桜色の唇!

白い肌!

そして何よりも…身長と顔に不釣り合いな服を押し上げるあの巨乳!!!!」

 

思わず大声が出てしまうが男として仕方がないことだろう。

イザークは下らん、とソッポを向いてしまったがまあいい、これだからお坊ちゃんは‥

 

「わかったか?アスランが一目惚れしたわけを。

許されるなら俺だってあの「許されるなら‥何ですか?」へ?」

 

ニコルの声がしたと同時に悪寒を感じ後ろを振り返るとそこには、光を感じない目をしたニコルが微笑んでいた。

 

「許されるなら‥ディアッカは、どうするつもりなんですか?」

 

ヤ、ヤベー!!!何だかわからないがニコルがヤバイと俺の本能が警告を鳴らす。

体の自由が利かずガタガタと震えだす。

くっ鎮まれ、俺の体よ!無意識のうちに体が白旗を揚げている。

 

「答えてください、ディアッカ。ナ・ニ・ををしようとするのですか?」

 

このプレッシャーは一体!?馬鹿な!!この俺が年下の少女に怖気づいているだと!!?

イザーク、イザーク!助けを求める視線を送るが逸らされてしまった。

この野郎!俺が無言でいると‥

 

「ねえ?どうして黙っているのですか?」

 

イカン、プレッシャーが増してきた!!

考えろ、考えるんだ俺!失敗すれば死が待っているぞ!!

 

「い、いや、あの‥そう、写真。写真だ!

可愛いからア、アスランの為に写真を撮りたいと思っただけだゼ!」

 

復活したアスランは「俺を巻き込むな!」という目をしていたがそんなこと知らんわ!

俺の命の方が重要だ!!ニコルの方をチラリと窺うと‥

 

「なあ~んだ、そうだったんですか。それならそうと言って下さいよ~」

 

いつものニコルに戻っていた。

 

「へ?」

 

どういうことだ?

 

「アスランの為、なんですよね。流石、ディアッカは仲間思いですね!」

 

「そ、そうかな?いや、な、なーに、アスランには世話になっているからな。偶には何かしなければと思ただけなんだゼ」

 

「そうですか優しいですね!」

 

「「アハ、アハハハハハ!!」

 

二人して笑い合う。

プレッシャーが消失した。

良かった、何とか切り抜けたゼ!!

やれやれ戦闘より疲れたぜ。

さーて夕飯は何かな?と安堵していると

 

「それで、本当は何をしたかったのですか?」

 

と不意に聞かれたので反射的に

 

「もちろん、おっぱいを揉むに決まってるゼ!」

 

と答えてしまった。そう、答えてしまったのだ‥

 

「あ、やっぱりそうなんですか~ウフフフ‥」

 

再びプレッシャーが俺に襲い掛かった。

こ、このプレッシャーは!?

発生源は‥わかるな?

 

「結局大きい方が好きなんですね、ディアッカは‥」

 

し、しまったー!!戦場では気を抜くなと教わっていたじゃないか。

 

「ニコル、聞いてくれ。確かに突然の事でテンションが上がってしまったが、大きさに拘らないのは本当だ!それにニコルはまだ成長期だ、心配しなくても大丈《ヒュッ》」夫?」

 

ハラリと金髪の髪が車内に落ちる。

 

「え?」

 

「知っていますかディアッカ。爪でも人を切ることは出来るんですよ?」

 

「OH‥」

 

その声を最後に俺の意識は暗転した。

 

 

 

 

 

 

「‥出てくれば北‥するはずだ。ここで‥‥る。」

 

うん?なんだ?

 

「ああ?ちょっと‥て、何を根拠に言って‥‥‥それは?」

 

「一度カ‥ンタリアに戻って情報‥‥直したほうがいいのではないですか?‥がないのでしたら‥」

 

目が覚めるそこはブリーフィングルームで、俺は椅子の上で寝ていた。体が痛い。

状況が把握できないのだが?ボーっとしていると

 

「あ、ディアッカ気が付いたんですね!」

 

ニコルが近づいてくる。

 

「何でおれはこんな所で寝ているんだ?」

 

と尋ねると

 

「いやだな~忘れてしまったのですか?オーブから戻ってきてからのブリーフィング中に

急に寝ちゃったんですよ、ね!」

 

ニコルがアスランとイザークに呼び掛けると二人とも微妙な顔をしていた。

はて?何か大事な事を忘れているような?

アスランから再度今後の方針を聞いた俺は暇なので甲板上に出ていた。

アスランの情報では足つきがオーブにいるらしい。

補給用潜水艦から物資の積み込み作業中なのはその為だ。

あれ、俺達が調べに行ったの何だったの?と思ったがまあ、いるのなら別にいいか。

イザークはご立腹だったがいつものことだしな、言っても無駄だろう。

寝そべりウトウトしていると

 

「ディアッカー!補給、終わりましたよ!」

 

ニコルが来た。

 

「向こうの海で飛び魚の群れが見えますよ」

 

海を指さしながらはしゃぐニコル。

 

「行きませんか?」

 

「行かない」

 

「えぇ!?行きましょうよ!」

 

「今は放課後ティータイムなんだゼ」

 

「意味わかんないですよ、それ」

 

溜息をつきながら俺の横に座るニコル。

 

「どうしたんだ?アスランなら仮眠室で悶々としていたぞ?」

 

「アスラン?いえ、私はディアッカに話しがあって‥」

 

「ふ~ん?」

 

話ねぇ。何だろうか?

ちょうどいい機会だし聞いてみるか。

 

「ニコルは何で軍に志願したんだ?」

 

「え?」

 

「ニコルはさ、ピアノが上手いだろ?それに女の子だ。可愛いし。別に戦場は男のものだ、とか考えは無いけど、態々こんな危険な職業に就かなくてもいいんじゃないの?」

 

「可愛いって‥」

 

顔が赤くなるニコル。

 

「コホン!‥戦わなきゃいけないな~私も、と思って。‥ユニウスセブンのニュースを見て。

ディアッカは?」

 

ユニウスセブン、血のバレンタインか。

 

「俺は‥MSに乗りたかったからだゼ!」

 

「は?」

 

ニコルが唖然としている。可愛いな、おい。

 

「ジンがTVに出ているのを見てこれだ!と思ったわけよ。男なら乗るしかない!ってね。」

 

「そんな理由で?」

 

「おいおい、そんなとか言わないでくれよ。

もちろん、プラントを守りたいという気持ちもあるゼ!

罪なき人達に核を撃ったあいつらは許せない!!だから俺はここにいるわけだしな。

それに‥ジンに乗って地球軍の奴ら相手に無双することを妄想していたぐらいさ!!」

 

「も、妄想‥」

 

ニコルが少し引いている。むぅ、男のロマンはわからないか。

 

「私からも質問良い?」

 

「うん?構わないゼ」

 

「ディアッカの好きな女性のタイプなんだけど‥」

 

「ほう‥」

 

ニコルは恥ずかしいのか俯いていて表情が窺えないが、なるほど、お年頃というわけか。

いつの間にか素の話し方に戻っているしな。ならば期待に応えようではないか!

 

「胸が大きくて「うっ」、クビレが凄くて‥「くぅっ」、料理が上手で「良し!」、

ぶっちゃけ年上だな!!」

 

「えええぇ!?」

 

ニコルの反応が面白かったので調子に乗っていたらニコルがorz状態になった。やり過ぎたゼ‥

 

「ニコル‥」

 

俺はニコルの肩に手を置きこう言った。

 

「スマン、冗談だ」

 

「え?」

 

ニコルが顔を上げる。

 

「ニコルの反応が面白かったからつい調子に乗ってしまったゼ。ハハハハ、本当スマン!!」

 

手を合わせて謝る。ニコルはというと

 

「この馬鹿ぁ!本気にしちゃったじゃない!」

 

ポカポカと俺の胸を叩くニコル。

何この可愛い生物。思わず手が伸びる。

右手でニコルの左頬を撫でる。

 

「え?え?え?」

 

ニコルは顔を赤くし、混乱しているのか変な声を出している。

だが手を休めない俺。

だってスベスベで気持ちいいんだもん。

 

「えっと‥ディアッカ?」

 

数分が経ち、落ち着いたのかニコルが声を掛けてくる。

 

「本当はさ」

 

「え?」

 

「可愛くて、家庭的な娘がタイプなんだゼ」

 

先程の問いに真面目に答える俺。

 

「あ、そ、そうなんですか‥」

 

再び俯くニコル。

 

「ニコルみたいな娘が、ね」

 

「えええええ!?」

 

勢いよく顔を上げるニコル。

 

「本当ですか!?」

 

真っ赤な顔をしながら聞いてくるニコル。

 

「ああ。俺の好みに照らし合わせると身近な人でいうとニコルぐらいしか思い当たらないゼ」

 

そう、軍人だから出会いが皆無なのだよ!

他の部隊には女性もいるらしいが機会がないからな~。

ニコルを見ると甲板上なのにクルクル回っていた。

危ないぞ?

わが世の春が来た~とか言っているが何の事だ?

どうした、陽気にあてられたか?

 

 

 

 

 

そんなこんなで足つきを捉えたので出撃する俺達。

攻撃する為射程圏内に近づくと足つきからミサイルが発射された。

かと思ったら煙幕が張られた。

レーダーにはストライクと足付きの反応があるが‥念のため散開し、俺は皆よりも後方に移動する。煙の中から戦闘機が二機飛び出してきた。イザークがビームを撃つが回避される。

突如ビームが俺達の間に打ち込まれた。

 

「「「「くっ」」」」

 

「散開!」

 

アスランが叫ぶ。このビームは砲撃仕様のやつか!?

ビームが連射され回避することしかできない俺達。飛翔するストライク。

 

「ストライク~!!」

 

攻撃するイザーク。

俺も援護するが回避されバルカンでグウルを破壊され後に蹴られて落下するイザーク。

俺?イザークがやられた時点で足つきの攻撃に移っていますが何か?

飛翔してこちらに接近できることが判明した以上、このままストライクを相手にするのは危険だからな。やつはアスラン達に任せて俺は足つきを墜とす!

砲撃用機体だからな、拠点(母艦)攻撃するしかないでしょ。

 

 

 

 

 

 

 

 

アスランSide

 

 

 

 

「こいつっ」

 

後退するストライクに攻撃するニコルとアスラン。

ストライクに接近したところで足つきに気付くアスラン。

主砲のビームが発射され回避を余儀なくされる。

 

「「くっ」」

 

続いてレールガン、ミサイルが次々に撃たれる。

 

「あいつ、空中で換装を!?」

 

そう、なんとストライクは空中で高機動タイプに換装したのだった。

ビームサーベルを起動しブリッツに突っ込んでくる。

 

「ハアァー!」

 

ブリッツがグレイプニールを放つが切断、破壊されてしまう。

ビームサーベルで切り結ぶブリッツとストライク。

決定打が出ない中、ブリッツがビームを撃とうとすると後ろからミサイルが。

直撃するがフェイズシフト装甲のためダメージはない。

 

「うわ、こいつ」

 

その隙を突き戦闘機の陰からストライクが切りかかりブリッツの左腕を肩から切断した。

蹴り飛ばされ落下するブリッツ。そのままブリッツのグウルを奪い使用するストライク。

イージスと打ち合いになる。ついにグウルを破壊されたイージス。

落下中にスキュラを撃つも回避される。足つきの甲板に戻るストライク。

ゴットフリートが掠りMS形態に戻り孤島に着地するイージス。

警報音が鳴りモニターを見るとエネルギーが危険域に‥なおも足つきの猛攻は続き防御するので手一杯。ふと上を見るとソードに換装したストライクが。

ビームを撃とうとするがビームライフルを切られるイージス。

 

「もう下がれ!君たちの負けだ!」

 

「何を!?」

 

キラから通信が入る。ビームサーベルで切りかかるイージス、それをかわして防御するストライク。

 

「やめろアスラン、君を撃ちたくない!」

 

「何を今更、撃てばいいだろう!お前もそう言ったはず!お前も俺を撃つと、言ったはずだ!」

 

そうだ、なのに今更撃ちたくないだって?くそっ!

切り合いの後、ストライクの右手で殴られ後ろに吹き飛ぶイージス。

スラスターで制動をかけるが間に合わず岩盤に叩きつけられるイージス。

それが止めとなったのかフェイズシフトダウンするイージス。

ソードを振りかぶるストライク。

 

「アスラン!」

 

キラから再度呼びかけがあるが‥動けないイージス。

 

「くっ」

 

このまま、やられるのか?そう考えていると

 

「アスラン下がって!!」

 

ミラージュコロイドを解除し左腕を失い右腕のトリケロスのビームサーベルを展開して突撃するブリッツの姿が!

 

「ハアアァ!」

 

右上から振り下ろされたそれをブリッツの左側に踏み込むことで回避しながら隙だらけの腹部へ右薙ぎにソードを振るストライク。

 

‥瞬間、世界から音が消えた。

その光景はスローモーション映像をみているかのようだった。

ほんの一瞬の事なのに俺にはとてつもなく長く感じた。

やめろ、キラ!ニコルは!

声に出したかったがそれは無理で、機体を動かそうにもイージスは動かなくて‥

そしてストライクのソードがブリッツを‥‥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ニコルー!!!!」

 

 

 

 

 

 

ただ、叫び声だけがハッキリと聞こえた。

 

 

 

 

 




敢えて何も言うまい…


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番外編:世界の破滅する日

この話は本編の結末とは無関係なIFの話です。
読まなくても支障はありません。

読んで下さる皆さんに感謝を。


選ばれなかった未来

 

 

ユニウスセブンの軌道変更。

そのニュースは瞬く間に世界に広がり地球に住む誰もがモニターを食い入るように見つめる。

 

 

その頃宇宙では…

 

ザフト軍の新造艦ミネルバはジュール隊と合流後ユニウスセブン破砕任務を実行していた。シンのインパルス、ルナのガナーザクウォーリア、アレックス‥もといアスランのザクファントム、レイのブレイズザクファントム、イザークのスラッシュザクファントムがカオス、ガイア、アビスの強奪機体及び今回の実行犯と思われるジン部隊と戦闘を行っていた。

ユニウスセブンが半分に割れあと少しというところで、それは起きた。

 

「ミネルバ、メインスラスター及び主砲に被弾、損傷拡大!!」

 

「「「「「何!?」」」」

 

突如ミネルバから告げられたその情報は驚愕すべきものであった。

一体どこから?

どうやって?

わからない事だらけだがミネルバに戻ろうとするシン、ルナマリア、レイ、アスラン。

だがしかし‥

 

「え?嘘‥」

 

その言葉を最後にルナマリア機は爆散した。

 

「「ルナマリア!?」」

 

馬鹿な、どこから?周囲を警戒するアスラン達。

 

「そこだ!」

 

前大戦の経験からかアスランが何も無い空間にビームを撃った。

すると‥突如MSのスラスター噴射特有の光が発生しビームは虚しく空を切る。

そしてそれが徐々に姿を現す。どうやらミラージュコロイドを使用しているようだ。

アスランには見覚えがあった。

前大戦に参加した者、正式なザフト軍人であるならば誰もが直接あるいは資料映像等で間接的に見たことがあった。いや、プラントの一般国民ですら知っている。

機体のみならずパイロットのことも。そう、誰もが知る機体、救国の英雄。

その姿は‥‥

 

「黒い、バスター?」

 

正確にいえば右腕のみはブリッツの物であるが。無言で佇む謎の機体。

その場の誰もが硬直している中。

 

「あんたがルナをー!!」

 

「待て、シン!」

 

アスランの制止を振り切り激高したシンがビームサーベルで斬りかかる!

バスターに当たると思われた瞬間‥

 

「フッ」

 

スピーカーから笑い声が聞こえた気がした。

インパルスをビームが貫く。

それも全方向から。

 

「クゥッ!」

 

シンは咄嗟に機体を動かした。

おかげでコクピットに直撃は免れたが中破し換装しなければ戦闘継続は難しい状態になった。

その時‥

 

「クククク、フハハハハハ、ハーハッハッハッハッハ!!!!」

 

オープンチャンネルを使用しているのか戦場に笑い声が響く。

気付くとバスターの隣にも見覚えのある機体があった。

そこには‥

 

「馬鹿な!ありえない!!」

 

「あの機体は!」

 

「…プロヴィデンスだと?」

 

アスランとイザーク、デュランダルが驚くのも無理はない。

何故ならプロヴィデンスは先の大戦でフリーダムに破壊されたのだから。

 

「ほう。その声、アスランにイザーク、それにギルバートかね?」

 

「「クルーゼ隊長!?」」

 

「その声!君はラウなのか!?」

 

3人に聞き覚えのある声。

 

「そうだ、ギルバート。君の友人のラウ・ル・クルーゼだ!」

 

アスランとイザークを無視しミネルバにいるデュランダル議長と話す謎の男。

 

「…俺はサトー達の援護に向かうゼ。強奪機体が邪魔をしているみたいだからな」

 

今まで沈黙していたパイロットが通信を開く。

 

「フッ、了解した。こちらの事は任せてくれたまえ」

 

「ああ…」

 

「だが‥手加減をするつもりはないのでね。構わないかね、ディアッカ・エルスマン?」

 

「「何!?」」

 

「しつこい!任せると言ったはずだゼ!!」

 

バスターのパイロットはプロヴィデンスのパイロットと会話を交わしたのちユニウスセブンに向かって行った。

 

「待て、貴様!」

 

「ディアッカ、本当に君なのか!?」

 

バスターを追うイザークとアスラン。

残ったプロヴィデンスとのやり取りは続く。

 

「何故君が、一体どうやって?」

 

デュランダル議長にとってはあってはならない事態なのだ。

ディステニープラン実行の為の準備をここで頓挫させるわけにはいかない。

何とかイレギュラーなこの事態を打開しようとするデュランダル議長であったが‥

 

「フッ、それはこれから死に逝く君達には関係ないことだろう!!」

 

言い終わるとプロヴィデンスからドラグーンが11基射出されミネルバを襲う。

先の攻撃でダメージを負ったミネルバには荷が重過ぎる相手だ。

ブリッジをビームで撃ち貫かれるミネルバ。

こうして為す術なくデュランダル議長もろともミネルバは撃沈した。

 

「ラウ!!」

 

レイのブレイズザクファントムがプロヴィデンスに攻撃を仕掛ける。

 

「おっと」

 

難なく回避するプロヴィデンス。

 

「何故ギルを撃った!?」

 

「邪魔だから撃っただけだが?」

 

「ラウ!!」

 

「私がいない間に随分とあの男に手懐けられたようだが、所詮あの男は君を駒としか思ってはおらんよ。私の事も含めてな‥」

 

「それでも!」

 

ビーム突撃銃で、ビームトマホークで、グレネイドで。

あらゆる武器、攻撃を仕掛けるもプロヴィデンスには一つも傷をつけられない。

 

「クッ」

 

「残念だよレイ。君ならば私の跡を継いでくれると期待したのだがな‥だが所詮はその程度、君もギルバートのところへ送ってやろう!!」

 

そう言い放ちドラグーンで攻撃するプロヴィデンス。

レイは呆気無く爆散した。

 

「さて、私は次の段階に移るとしよう」

 

クルーゼはそう呟きユニウスセブンとは逆方向に機体を進めた。

 

 

 

 

 

一方ユニウスセブンでは‥

 

「アハハハ!ごめんね、強くってさあ!!」

 

アビス、カオス、ガイアが次々とジンを破壊していく。

 

「クッ、ナチュラルどもがぁ!!」

 

サトー達の腕は決して悪くない、赤服に相当するほどだ。

しかし今回は相手が最新型機ということもあり旧式のジンハイマニューバーでは分が悪い。

次々に数が減らされるテロリスト達。

そこへ

 

「お待たせ!」

 

「何!?」

 

声がしたと同時にアビスがビームで撃ち貫かれる。

すぐさまカオスの方へアビスを蹴り飛ばすバスター。

 

「アウルっ!」

 

カオスの目前でアビスが爆散する。

 

「グウレイト!!」

 

「ディアッカ!!」

 

「何もんだ、てめぇ!!」

 

カオスが機動兵装ポッドを射出するが最小限の動きで回避しながらトリケロスでビームを撃ち破壊していく。

 

「サトー、こいつらは俺が引き受ける!お前たちはユニウスセブンを!!」

 

「いいのか?」

 

「ああ、俺達の怒りを‥憎しみを‥ナチュラル共に見せてやろうゼ!!」

 

「よく言った、その通りだ!行くぞ皆!では先に行っているぞ、ディアッカ。追いついて来いよ!」

 

「もちろんだゼ!!」

 

サトー達はメテオブレイカーの破壊に向かう。

 

「さて‥」

 

バスターの前には攻撃を繰り出すカオスとガイアがいる。

 

「くっ、押されている?この俺が!?」

 

「堕とす‥」

 

ハッキリ言ってこいつらは弱い。

今のままでも倒せるが‥

 

「時間が無い、本気でやらせてもらうゼー!!」

 

SEEDを発動させるディアッカ。

 

「何!?こいつ、動きが!」

 

対装甲散弾砲で視界を塞ぎミラージュコロイドを展開する。

カオスの右側面で解除しトリケロスを腹部に当てビームを連射する。

 

「お、俺がこんな‥」

 

カオスが爆散する。

 

「スティングー!!」

 

ガイアが突っ込んでくるが

 

「甘いんだよ!」

 

正面から来るので一斉射撃で仕留める。

 

「ネオ‥」

 

こうして強奪された3機は活躍することもなく破壊された。

ディアッカがサトー達に合流する為に移動しようとしたその時…

 

「「ディアッカー!!」」

 

アスランとイザークが追いついた。

 

「ディアッカ、本当にお前なのか?」

 

イザークが尋ねると

 

「ああ、エザリア・ジュール ファンクラブ名誉会長のディアッカ・エルスマンだゼ!」

 

「いや、その紹介はどうなんだ?」

 

「貴様、まだ母上の事を!?」

 

戦場だというのに相変わらずの3人であった。

 

「生きていてくれたことは嬉しい。が、何だこれは!どうして貴様がテロリスト共と行動している!?」

 

イザークが真偽を問いかける

 

「それは‥お!ミネルバは破壊できたみたいだな。さすが隊長だゼ!!」

 

「「何!?」」

 

イザークとアスランは慌てて確認するもミネルバの信号はLOSTの表示が‥

 

「ディアッカー!!」

 

アスランがビームトマホークで斬りかかる。

トリケロスのシールド部分で受け止めるバスター。

 

「ディアッカ、お前!あの艦にはカガリも乗っていたんだぞ!!」

 

「カガリ?‥ああ、あのオーブの」

 

「それなのにお前は!」

 

「それが何の関係がある?」

 

「何!?」

 

「誰が乗っていようが関係ない。ミネルバは邪魔だから破壊しただけだゼ。

それに、ナチュラルが死んだところでどうだっていうんだ?」

 

「ディアッカー!!」

 

SEEDを発動させるアスラン。

 

「俺が援護する!」

 

イザークも思うところがあるのか珍しくアスランと連携する。

 

「何故怒る、アスラン?あいつらは敵だゼ?」

 

「違う!彼女は平和望んでいた!」

 

「ザフト軍の艦に乗っているのに?」

 

「何だとっ」

 

「前回は地球軍の艦に乗り、しかも戦闘機を使用しバルトフェルド隊に損害を与えた。

ヤキンではMSに乗り前線で戦ってた。で、今回はザフトの最新鋭艦に乗っている。

相手に損害を与えておいて仲良くしましょうって、頭おかしいんじゃないの?」

 

「貴様!」

 

「ま、そんなことはどうだっていいんだ。ナチュラルさえ滅ぼせればなぁ!!」

 

「グッ」

 

アスランのザクがビームトマホークを持っていた右腕ごと破壊される。

 

「ディアッカ!」

 

スラッシュザクファントムのビームアックスを防御し両肩220mm径6連装ミサイルポッドを発射する。

 

「チィッ」

 

後方へ離脱するイザーク。

 

「どうやら腕は鈍っていないようだな‥」

 

強い!それがアスランとイザークが感じたことだった。

2人掛かりでも仕留められず、逆に圧倒されている。この強さの原因はなんだ?

 

「どうしてだ、ディッカ。ヤキンの戦いの後、お前が姿をくらましMIAと判断され、それでも俺達はお前の無事を案じていた。それが何故!?」

 

「イザーク、お前は変わらないな‥イザーク、この件から手を引け。

俺達のやろうとしていることはプラントにとっても悪くないことなんだ!」

 

「ふざけたことを言うな!」

 

アスランが攻撃してくる。

 

「カガリを殺したお前がー!」

 

「ミネルバは隊長なんだが‥まあ、いっか」

 

2機の連携攻撃を掻い潜りながら通信する。

 

「カガリってナチュラルだろ?別に俺達コーディネーターじゃないんだし、いいだろ?」

 

「ふざけるな!!」

 

「ふざけているのは貴様達だろうが!!」

 

ザクファントムのバックパックを破壊する。

 

「ニコルを殺したあいつ等と何故偽りの世界で笑うのか、貴様らは!!!」

 

「「えっ」」

 

「クライン派によってザフトは変わってしまった‥」

 

「何を!?」

 

「何故気付かんかー!!パトリック・ザラのとった道こそ唯一正しきものと!!!!」

 

一斉射撃によりザクファントムの四肢を破壊しダルマ状態にするバスター。

 

「ディアッカ、お前‥」

 

イザークはディアッカの咆哮を聞き納得がいった。

足つき戦、パナマ攻略戦での執拗なナチュラルへの攻撃、ヤキンでの前線勤務希望、大戦後の失踪‥そうだ、予兆はあったじゃないか。全てはニコルが亡くなった後の事だ。

 

「‥ニコルの仇、なのか?」

 

イザークが尋ねると

 

「その通りだ!ニコルを殺したナチュラル共を殺し俺の復讐は完成する。邪魔をするならばイザーク、お前も殺す!!」

 

イザークがモニター越しに見たのは髪もボサボサで無精ひげを生やし血走った目でこちらを睨む

復讐者の顔をしたディアッカだった。

ああ、どうしてこうなってしまったのかと、イザークは思いを巡らす。

昔‥アカデミーの卒業式で笑い合っていた俺達。ニコルと将来について語り合っていたディアッカ。確かに分かり合えていた俺達。けれど今はもう‥

 

「キラだって殺したくってニコルを殺したわけじゃない!」

 

空気を読めないアスランがキラを擁護するする発言をしてしまった。

アスランとしては殺し殺されるのはお互い様だと言いたいのだろうが‥

馬鹿め、この場では逆効果だぞ。

 

「‥‥」

 

ディアッカは無言でアスランを攻撃した。

今のアスランに防ぐ手立ては無い。

コクピットを破壊されたザクファントムは宇宙のチリと消えた。

 

「‥ディアッカ、ザフト軍人としてユニウスセブンの落下を見逃すわけにはいかない。

そして何よりも!友として俺はお前を止める!!」

 

「ならばかかってこい、イザークゥ!!」

 

「ディアッカァー!!」

 

両機が擦れ違う。そして‥火花が散るスラッシュザクファントム。

 

「哀しいな‥」

 

その言葉を最後にイザークは爆散した機体に呑まれた。

 

「‥‥‥」

 

その様子を見つめるディアッカに通信が入る。

 

「こちらの準備は完了した。後は君待ちといったところだ、ディアッカ」

 

「了解です、隊長」

 

スラスターを吹かしサトー達の下へ向かうディアッカ。

 

 

 

 

 

この数時間後ユニウスセブンは地球に落下し多くの命を奪った。

被害は甚大で開戦を企んでいたロゴスも諦めるしかなく一方、プラントではザラ派がクーデターにより政権を奪取、直後月の地球軍基地を占領。

レクイエムを使用し地球連邦に服従を迫った。

 

その後のディアッカやクルーゼの行方を知る者は誰もいない。

 

 

世界は暗黒の時代へと突き進む。

 

この世界を救う歌姫と騎士はユニウスセブンの落下で死亡してしまったのだから…

 

 

 

 

 

 




今回はIFの未来。逆を言えばこの結末にはならないということ。
つまり次話は‥わかりますね?


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6話:閃光の刻

毎度のことながら間が空きましたが投稿です。
書き方を試験的に変更しているので読みにくければ修正します。
あと、各話の修正等があれば活動報告にて報告します。

読んで下さる方々に感謝を。


アスランSide

 

 

――鈍い音がしたと同時に頬に衝撃を感じた。その直後、頭がぶれ、体が吹き飛び床に叩きつけられた。殴られたと認識できたのは遅れてきた痛みのせいか、それとも俺の目の前に立つ男の顔を見たからか‥。怒りは感じなかった。何故、とも思わなかった。それよりも殴られたことに対してどこか納得する自分が居た。

 

「フー、フー、フー」

 

怒りのせいか男は興奮していて息が荒い。俺は男の言葉を待つ。

 

「立て‥」

 

男が小さく呟いた。

 

「‥立てぇ!アスラン!!」

 

大声で怒鳴りながら制服の襟を掴まれ無理やり立たせられる。今度は壁に押し付けられ殴られた。だが抵抗する気は無い。何故なら男の、イザークの怒りの理由も、気持ちもわかっているのだから‥

 

「貴様が‥貴様がしっかりしていれば!!」

 

イザークは怒っていながら、しかし今にも泣きそうな顔で罵倒する。そうだ、イザークの言う通り俺の行動が招いた結果なのだ。上辺だけの覚悟で戦闘し挙句の果てがこれだ‥俺が黙っている間も罵倒は続く。いつもならこの辺で止められるのだが、仲裁に入るはずの人物がこの場にはもう‥いない。チラリと先程から沈黙している人物に目をやる。昨日までの明るい表情と一転し、体は小刻みに震え、泣き腫らしたのだろう赤い目をして声を押し殺し俯き沈黙している。イザークと同様にいや、それ以上に俺を攻め立てたいだろう。もしかしたら恨んでいるかもしれない。何故なら、3人の中で最も彼を慕っていたのだから‥‥あの時‥フェイズシフトダウンし動けなくなった俺はこのままキラに殺されるのだと、そう思っていた。しかし…

 

「アスラン下がって!!」

 

ニコルから通信が入り、モニターにはミラージュコロイドを解除し左腕を失い右腕のトリケロスのビームサーベルを展開して突撃するブリッツの姿が!

 

「ハアアァ!」

 

右上から振り下ろされたそれをブリッツの左側に踏み込むことで回避しがら隙だらけの腹部へ右薙ぎにソードを振るストライク。‥瞬間、世界から音が消えた。その光景はスローモーション映像をみているかのようだった。ほんの一瞬の事なのに俺にはとてつもなく長く感じた。やめろ、キラ!ニコルは!声に出したかったがそれは無理で、機体を動かそうにもイージスは動かなくて‥そしてストライクのソードがブリッツを‥‥諦めかけた俺はニコルが撃破される様を幻視した。そして‥

 

「ニコルー!!!!」

 

突如聞こえた叫び声で現実に引き戻される。モニターを見ると何と、ブリッツがグウルに体当たりされ、ソードとは逆方向つまり、イージス側に飛ばされてきた。だがストライクのソードは勢いが止まらず空振りしバランスを崩す。その隙突いていつの間にか上空から接近していたバスターが収束火線ライフルのビームでソードを破壊する。

 

「グゥレイト!」

 

バスターはイージスとブリッツを庇うようにストライクの射線上に着地する。

 

「「ディアッカ!!」」

 

「ニコル、アスラン、撤退しろ!!」

 

「何?」

 

「そんな!?」

 

「エネルギー切れが1機に中破が1機、小破が1機、水没が1機。

一方足つきはダメージこそ与えたものの小破だしストライクは武器を1つ破壊しただけ‥

俺達に勝ち目はない。撤退だ!」

 

「…」

 

悔しいがディアッカの言う通り今回はこちらの負けだ。だが足つきの主砲はロックオンされたままだ、どうする?俺が考えていると‥

 

「アスラァーン!!」

 

左肩からビーム兵器を外しこちらに突っ込んで来るストライク。最悪だ、どうすれば…

 

「やらせはせん、やらせはせんぞー!!」

 

ディアッカの気合と共にバスターの左手がストライクの武器を持っている右手首を、右手が左肩を抑え、動きを止める。拮抗するストライクとバスター。

 

「急げ!長くはもたないゼ!!」

 

「しかし『ディアッカだけ残して撤退なんて出来ません!!』…」

 

ニコルが会話に割り込んでくる。

 

「これは命令だ!アスランを連れて撤退しろ、ニコル!!」

 

「嫌です!!」

 

ディアッカの指示を頑なに拒否するニコル。いや、別にいいけどな。だが、そんなにハッキリと言わなくてもいいんじゃないか?一応、この隊の隊長なんだけど‥こんなアホなやり取りをしていた罰なのかバスターが左腕を肩から斬られてしまう。

 

「ぐぅっ」

 

続けざまに頭部を破壊され、胸部にビームが刺さる。火花が飛び散りフェイズシフトダウンするバスター。そして

 

「まだだ、まだ終わらんよ!!」

 

ディアッカが叫んだと思ったらバスターがストライクに組み付いた。次の瞬間。辺り一面に爆発音が響いた。‥あまりの事に理解が追いつかない。何が起こった?どうなった?何故、バスターが爆発した?俺が呆然としていると‥

 

「ディ‥アッカ?嘘、だよね?ねぇ、返事をしてよ!ディアッカ!!」

 

ニコルが呼びかけるが反応は無い。煙が晴れここで俺は始めて事態を認識する。ストライクはフェイズシフトを展開している為か目に見える損傷は視認できない。しかしバスターは‥見るも無残にバラバラになっていた。

 

「ディアッカ!ディアッカ!!」

 

‥ああ、そうか、ディアッカはもう。

 

「何をぼさっとしている、貴様ら!」

 

イザークから通信が入りストライクの後ろの海中からデュエルが姿を現す。

 

「いえぇーい!」

 

デュエルがビームサーベルを振りかぶる!不意を突かれたからなのか反応が遅れ右腕を切断されたストライク。

 

「俺が時間を稼ぐ。さっさとディアッカを回収して撤退しろ!!」

 

な・に?今、何と言った?

 

「‥イザーク、ディアッカは『馬鹿者!あいつがこんな事で死ぬようなタマか!!

あいつの事だ、どうせそこら辺に転がっている決まっている。つべこべ言わず、

あいつを探して撤退しろ!!』あ、ああ」

 

ディアッカが無事だって?半信半疑のままイザークに言われた通りセンサーの感度を上げ探すと‥

 

「発見しました!!」

 

ニコルからの通信に驚く。本当に発見できるなんて。ズームして見ると海岸の砂浜に上下逆さまの状態で上半身が埋まり、足はガニマタに開いているディアッカ姿が。

 

(グレイト!リアル犬神家だぜ!!)

 

という意味不明の言葉と右手親指をサムズアップするディアッカの姿が頭をよぎるが無視する。まだ混乱しているんだきっと‥無事なのか、あれは?ニコルがディアッカを引っこ抜き回収が完了すると俺たちは直ぐに撤退した。イザークの踏ん張りが功を奏したのか足つきからの追跡はなかった。母艦にて。帰艦してディアッカは直ぐに医務室に運ばれた。数十分が経ち医者から告げられたのは‥

 

「‥そんな、そんな事って。何かの間違いでしょ?」

 

『ニコル、落ち着け』

 

「だって!!」

 

イザークがニコルを宥めるが言うことを聞かない。軍医の診断によると簡易検査の為100%ではないが今後、ディアッカが意識を取り戻すことは無いとのことだ。MSの爆発を近距離で受けたこと、数十メートルもの高さから落下したこと、頭を強く打ったことが原因とのことだ。だが可能性はゼロではないということで緊急シャトルを出し、ディアッカをプラントの病院に入院させることになった。俺たちはそれを黙って見送ることしかできない。その後ブリーフィングルームに戻り今後のことを話し合おうとしたところで、冒頭の話に戻る。

 

「‥‥仕掛けましょう」

 

今まで沈黙を貫いてきたニコルが発言する。

 

「このまま言い争っていても、足つきはどんどん離れていきます。この前の戦闘で足つきにも少なからずダメージを与えられました。今がチャンスです。仕掛けましょう!」

 

驚いた。ニコルがこんなことを言うなんて。

 

「‥ふん、何を当たり前の事を言っている。そんな事は貴様に言われなくともわかっているわ!

そもそもストライクは俺の獲物だと言っているであろう!!」

 

『ですが、今回は私もストライクを狙わせてもらいます。ディッアッカの仇は私が晴らします!』

 

「待て待て待てぃ!勝手なことを抜かすな!!癪だがディアッカは俺の友である!

ここは俺の傷の恨みと友の分のダブルパンチで俺の方が貴様より優先度が高い。

俺に任せるんだな!!」

 

『いえいえいえ!ディアッカは将来、私の旦那様になる方ですからここは未来の妻である私の方が適任かと!旦那の敵を討つのも妻の務めです!!』

 

二人は次第にヒートアップしてゆく。

 

「な~にぃ!?旦那に妻、だと?そんな事は聞いてないぞ!ふざけたことを抜かすでないわ!!」

 

『本気ですぅ!もう決めたんです!』

 

「く~言わせておけば小娘がぁ!」

 

『ふふん、その小娘に魅力を感じる人もいるんですよ~』

 

イザークとニコルの不毛な争いは収まる気配が無い。だが、一つ言っていいか?お前たち、キャラ違うだろ!!誰だよ!?ディアッカの良い点を自慢し合う男女、髪を掻き毟り将来が心配な男。まさにカオス!足つきの追跡任務など頭の片隅にすら追いやられ、艦長から雷が落ちるまで続けていた3人であった。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

ニコルSide

 

出撃が決まってから少しの間、私は仮眠室で休憩を取っていた。

 

「ハァ~」

 

先程のイザークとのやり取りを思い出し落ち込む。

 

「どうしてあんなこと言っちゃったんだろう‥」

 

あんなこと、とは旦那云々の話のことである。

 

「確かに将来はディアッカと‥

とか考えたこともあるしそうなれたらいいな~とか思ったりもするけど‥」

 

恥ずかしさに顔を赤くする。

 

「いや、でも、そもそもまだ恋人にすらなっていないわけだし、そういうのは早いし、でも‥‥」

 

イヤンイヤンと赤い顔しながら頭を左右に振っている姿はとてもじゃないが他人に見せられるものではなかった。

 

「これはディアッカのせいだよね、うん。ディッカが心配させるから」

 

ディアッカよろしく妄想していると警報が鳴り響いた。ブリッジに着くと既にイザークとアスランが話し合っていた。どうやら足つきを捕捉したらしい。

 

「出撃だ!」

 

『了解!』

 

アスランの指示で作戦行動に移る。発進直後足つきを発見し攻撃を開始する。

 

「いくぞ!」

 

イザークが最初に仕掛ける。ストライクと戦闘機も発進し交戦状態に突入する。ブリッツとスカイグラスパー、イージスとストライク、デュエルと足つきがそれぞれ対峙する。戦いの結末を暗示しているかのように天候が悪化していく。

 

「ええぇい!」

 

足つきからターゲットを変えストライクにシヴァとビームを撃つデュエル。ストライクはそれを難なく躱し、左側面から接近してきたイージスとも交戦する。足つきから大量のミサイルが発射されるが‥

 

「そんなものでー!」

 

ブリッツは全てを落とさず隙間のミサイルに狙いをつける。すると‥そのミサイルが爆発し周りのミサイルが誘爆してゆく。ブリッツが迎撃している隙にスカイグラスパーがビームを撃つが

 

「そんなもんでー!!」

 

旋回し回避するブリッツ。スカイグラスパーを牽制しそのまま足つきの武装を破壊していく。被害が拡大する足つき。スカイグラスパーの攻撃をかわしながらストライクに仕掛ける3機。足つきの主砲がイージスとデュエルに発射されたが回避する。

 

「許せないんだよ!!」

 

イザークが叫びビームサーベルでストライクに切りかかるデュエル。ストライクもビームサーベルで応戦する。互いにシールドで防御する。

 

「お前ら~!!」

 

一方イージスはグウルから飛び降り変形しスキュラを足つきに放つ!!水平移動で回避されるが武装に当たりバリアントが破壊される。遠隔操作で戻したグウルに着地するイージス。火災が発生し燃える足つき。

 

「このー!」

 

ストライクを蹴り飛ばしたデュエルであったが、体勢を立て直したストライクによって右脚部をビームで撃たれグウルから落下してゆく。

 

「ちぃっ、くそー!」

 

落下しながらもシヴァを放つデュエル。連射されたシヴァの一発がストライクのビームライフルを破壊する。そこへ

 

「ヤー」

 

ブリッツが背後から斬り込む。シールドで防いだものの弾かれバランスを崩すストライク。続けてビームを連射してくる。

 

「「くっ、何で!?」

 

ブリッツは攻撃の手を緩めない。キラは警告音に気付きモニターを確認すると‥

 

「イヤー!」

 

ストライクの真下から跳躍し斬りこもうとするデュエルが。

 

「デュエル!?そんな!」

 

なんとか回避するもエールストライカーのスタビライザーを1つ破壊されてしまう。

 

「くっ、強い!」

 

なんとか着地するもデュエルとブリッツが連携して攻撃してくる。前回までのイザークであったなら、グウルを落とされた後は海に落下し戦闘不能に追い込まれていただろう。しかし今回は小島の上だ。水没する恐れも無い。いや、それは後付の理由に過ぎない。ただ単純に‥

 

「ディアッカの仇だ!討たせてもらうぞ、ストライクー!!」

 

友の為に戦っているだけ。今までは自分のプライドの為だけに戦ってきた。けれど今回は他人の‥ディアッカの為に戦っている。唯の精神論で非科学的だと論じてしまえばそれまでだが、しかし現実にイザークは今までよりも強くなっている。まあ、何だかんだ言いつつもディアッカを認めているイザークであった。

 

「イザーク!」

 

『わかっている、回り込め!』

 

2機で挟み撃ちにするニコルとイザーク。ビームサーベルで同時に斬りかかる2機。

 

「ええい!」

 

ストライクは損傷のあるデュエルに体当たりをする。

 

「なにぃ!?」

 

まさかこんな行動に出ると思わなかったイザークは攻撃態勢に入っていたのもあり、そのまま体当たりを受けてしまう。

 

「くそ~」

 

デュエルはアサルトシュラウドを装着している分重量がある。増加スラスターを付けてはいるが先程右脚部を破壊されたので姿勢制御が上手くいかず、数十メートル後方へ飛ばされてしまう。一方のブリッツはというとシールドで防がれ膠着状態だ。

 

「やはり、強い‥」

 

ニコルは呟く。そう、戦闘になる前からストライクが自分よりも強いのはわかっていた。以前ディアッカに言われて気付いたがストライクは信じがたいことに戦闘のたびに強くなっているのだ。ディアッカは

 

「経験値が溜まってレベルアップしたんだな。俺にはないのか?」

 

とか変なことを呟いていたが‥2機でも仕留められない。どうする?と考えていえると‥

 

「ニコル、イザーク!!」

 

アスランから通信が入り増援に喜ぶ2人。が、後にそれは驚愕に変わることになる。イージスが近づいてきた。‥それも足つきと戦闘機2機を引き連れて‥‥

 

「ええええぇ!?」

 

「何ぃー!?」

 

2人が驚くのは無理もない。確かにアスランは足つきの相手をしていて、撃沈はできなくとも航行不能ぐらいにはするのかと思っていたのだ。それがどうだ、足つきは航行しているし、主砲も健在だ。戦闘機も無傷のようだし。何これ?ディアッカがこの場に居たらボヤいていたことだろう。

 

「アスラン、貴様何をしている!?」

 

『説明は後でする。今はこの場を切り抜けることが先決だ!!』

 

文句の1つでも言いたいが‥

 

「チッ」

 

「仕方ないですね」

 

文句を言ったところでこの状況が変わるわけでもないし。警告音が鳴り足つきから主砲が発射される。

 

「「「くっ」」」

 

散開し回避するがブリッツはストライクと分断されてしまった。

 

「この、邪魔をして!」

 

足つきに向かって攻撃するもビームは装甲表面で弾かれてしまう。

 

「なら!」

 

跳躍し上空から主砲の1つにランサーダートを射出し破壊する。次も!と照準を合わすも戦闘機が妨害してくる。

 

「そういえばディアッカはいつも戦闘機に狙われていたな~」

 

攻撃を回避しながらニコルはディアッカが戦闘後に言っていた事を思い出す。まあディアッカは

 

「MAや戦闘機のストーカーなんてノーサンキューだゼ!追いかけてくるなら美人にしてもらいたいゼ!!」

 

とも言っていたが。その発言で一悶着あったのだがそれは別の機会にでも。

 

「フフフッ」

 

無意識の内に笑いが零れる。

 

「こんな、戦闘中だっていうのにディアッカの事を思い出すなんて。私って本当にディアッカのことを‥‥」

 

クルーゼ隊(今はザラ隊だが)のムードメーカー。普段はおちゃらけていてイザークをからかっていたり、時々私たちには意味のわからない事を口走ったり。でも作戦行動時は真面目で、何気に隊長からは高評価だったり。自分では臆病者だとか言いながら仲間のピンチには必ず助けに来るディアッカ。この前だって‥ツーッと無意識にでた涙が頬を伝う。いけない、今は戦闘中だ。散々泣いたのだ、これ以上は‥それにディアッカが目を覚ます可能性は残っているのだ。なら、ディアッカが戻ってこれるように頑張らなくっちゃ!気を入れなおして足つきの攻撃を再開する。いつの間にかストライクはイージスと共に離れた場所へ移動してしまったらしい。私もストライクを倒したいけど‥足つきを見る。損傷箇所は拡大しているのに攻撃は休まることは無い。さすがは新造艦ってところか。戦闘機からビームが撃たれる。跳躍と同時にビームを撃ち反撃する。今度は命中しエンジン部に被弾したのか煙を出しながら海へ落下していく。

 

「よし!!」

 

足つきに攻撃しようとするとロックオン警報が鳴る。慌てて防御するもバリアントの直撃を受けて地面に叩きつけられる。

 

「ぐっ、やってくれましたね‥」

 

落下の衝撃が大きくフェイズシフトに使用し過ぎたのか、バッテリー残量が大幅に減りフェイズシフトダウンしてしまう。しかも内部の伝送系等にも異常が出たのか、操作が利かない。

 

「くそ、動け!」

 

ガチャガチャと弄るがブリッツが動く様子は無い。警報が鳴りモニターを見ると足つきが正面で主砲をロックオンしている。

 

「くっ、どうして私はいつも‥」

 

自分の弱さに苛立ちが募る。

 

「抵抗は‥無理か。なら…」

 

コクピットハッチを開け外に出る。両手を挙げ投降の意思を見せる。連合の捕虜の扱いはどうなっているかわからない。でもここで死ぬよりはマシだと私は判断した。生きていればディアッカに会える可能性もゼロではないのだから‥

 

 

 

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

一方イザークはニコルと分断された後アスランと攻めるも効果的なダメージは与えられない。

 

「いい加減、堕ちろ!!」

 

また回避される。くそ、何なんだこいつは‥右脚部を損傷しているからかバッテリーの減りが速い。

 

「イザーク、撤退しろ!」

 

『ああ?』

 

「ストライクは俺とニコルで仕留める。お前は1度撤退するんだ!!」

 

『ふざけたことを言うな!ディアッカの仇も取らずして撤退など出来るわけないだろう!』

 

「そんな事を言っている場合か!?

ここでお前まで討たれたらどうするつもりだ!命令だ、撤退しろ!!」

 

『‥‥』

 

『ちっ、今回だけだぞ!』

 

こうして仕方なく、仕・方・な・く撤退した俺であったがこの決断を後悔することになるとは想像もしなかった‥

 

 

 

 




暴走しました。反省はしません。

なんとかパソコンを触れる時間が増えてきたので感想にも返信しようかと思います。
今まで感想下さった方々ありがとうございます。

すぐに、というのは難しいかもしれませんが極力、返信は書き込もうと思います。


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7話:暴走親父

初の1万字超え。戦闘よりも会話パート方が話が進む謎。

ツッコミ所があるのはいつも通りです。修正は活動報告にてします。


読者の皆さんに感謝を。


とあるレストランにて夜景を見ながら食事を楽しむ男女。

ショートヘアの女性の表情は明るくしかしオールバックの男性の方は緊張しているのか表情がぎこちない。

 

「聞いてる?ディアッカ‥」

 

『…』

 

女性の問いかけに無反応な男。

 

「ねえ、ディアッカってば!」

 

『お、おう。もちろん聞いてるゼ!』

 

「本当に?」

 

女性はジト目で男性を見る。すると男は‥ディアッカは観念したのか

 

「いや、すまん。聞いてなかったゼ」

 

と白状した。

 

「へ~私とのデートがそんなにツマラナイわけ?」

 

「そんなわけないって!ちょっと考え事してただけだゼ」

 

『ちょっとって何?』

 

「いや、あの、それは~」

 

言葉を濁すディアッカ。

 

「…そう、わかった。今日はもう帰るわね」

 

席を立つ女性。

 

『おい、待てよ!』

 

焦りながら女性の右腕を掴むディアッカ。

 

「離して!」

 

『いいや、離さない、ゼ!』

 

言いながら女性を引き寄せ女性を抱きしめるディアッカ。

 

「話を聞いてくれよ」

 

『…私の話は聞いてなかったのに?』

 

「スマン」

 

『謝れば済む問題ではないわ』

 

ツーンとソッポを向く女性。2人の関係は他人から見ればどう映るだろうか。

夫婦か恋人か、それとも親子か?

 

「本当にごめん。この後の事で頭がいっぱいだったんだ」

 

「この後?」

 

首を傾げる女性。

 

「いや、あーっと‥」

 

えーとかあーとか1人で苦悩するディアッカ。

 

「‥ヨシッ!!」

 

言う覚悟が決まったのか両手で頬を叩き気合を入れ、女性を見つめるディアッカ。

 

「‥」

 

『…』

 

ディアッカの雰囲気を感じ取ったのか見つめ返す女性。

 

「コホンッ。えーと、俺達ってさ、知り合って長いじゃないか?

喧嘩したりとかもあったけど楽しいこともそれ以上にあって‥かつて赤だった俺も今や白だ。

だから2人でやっていく分の収入はあるし、世界は平和だから家に帰れる日も多いし‥

だから、あ~…つまり何が言いたいかというと‥‥‥俺と結婚して下さい!!!!」

 

頭を下げるディアッカ。

 

『…』

 

事態が呑み込めないのか女性は固まっている。周囲の客も固唾を飲んで見守っている。

まるで時が止まったかのように静寂に包まれる店内。

 

『…本当に、私でいいの?』

 

女性がディアッカに返事をする。

 

「もちろんだゼ!貴女だから俺は結婚したいんだ!!」

 

力説するディアッカ。

 

『でも、周りが許さないわ‥』

 

「フッ俺達の周りにはそんな無粋な人間はいないゼ!そうだろう?みんな!!」

 

「「「「もちろんだ!!!!」」」」

 

周囲の客が某泥棒のように一斉に服を脱ぐとそこには‥

アスランにキラ、カガリ、ラクスイザーク、バルトフェルド、ダットの姿が。

 

『あ、貴方達、一体いつから!?』

 

「初めからおりましたよ?」

 

ラクスが代表して答える。

 

「ディアッカにプロポーズするからセッティングを手伝えと言われて‥」

 

アスランが答え、

 

「愚息がどうしても、というのでなお節介とは思ったがやらせてもらったが。フハハハハ、なかなかいいものだな!」

 

ディアッカ父はハイテンションで。

 

「こんな、みんなを巻き込んで‥」

 

『私が頼んだのです。今までの恩返しをしたいと』

 

『イザーク‥』

 

「私だって最初は反対しました。

 が、この通りふざけた奴ですが誰よりも貴女の事をを思っています。

 それは、あなたが一番ご存知でしょう?」

 

『でも、私は‥』

 

「もう、いいではありませんか!私は既に結婚し家を継ぎました。

 だから、今度は貴女が幸せにならなくては!!」

 

『…』

 

女性は俯き考え込んでいるようだ。

 

「‥ディアッカ」

 

『なんだ?』

 

「私で、いいの?」

 

『ああ、何回だって言ってやる。エザリア、俺はお前が欲しいぃ!!結婚してくれ!!!!』

 

再び結婚を申し込むディアッカに対しエザリアは…

 

「はい、喜んで」

 

満面の笑顔でそう、答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ」

 

ふとディアッカの目が覚める。何だかとても良い夢を見た気がする。

で、どこだここは?視線を落とせば左腕に点滴が刺さっている。

何事?身体を起こそうとすると‥

 

「アーウチッ!」

 

全身に痛みが走る。ベットに背中から倒れこむ。

 

「ど、どうしてこなった‥」

 

混乱していると扉が開く音がして数人分の足音が聞こえる。

 

『どうやら元気そうだな』

 

某師匠の声がした方を首を動かし見るディアッカ。そこにいたのは‥

 

「親父‥」

 

そう、ディアッカの父親ダット・エルスマンの姿だった。あと秘書2人。

 

「『‥‥』」

 

無言で睨み合う親子。(俺は正直言って親父が苦手だ。何故なら‥)

 

『ふははははは!

 二度と意識が戻らないと医者に言われて見に来てみれば元気ではないか!

 流石は儂の息子だ!!』

 

(‥そう、テンションやら性格が東方不敗なのだ。暑苦しいったらありゃしないぜ。)

 

「どうした?黙ってないで何か言わんかぁ!」

 

右頬を殴られる。

 

「イテッ!何しやがるこのクソ親父!!」

 

反撃したいが全身が痛いので断念するディアッカ。

 

『ふははははは!うむ、うむ!それでこそ我が息子だ!!』

 

相変わらずのハイテンションで付いて行けないディアッカ。

 

「委員、そろそろお時間が‥」

 

秘書が予定を気にして会話に割り込むが‥

 

『なぁにぃ!?この大馬鹿者めが!!親子の語らいを邪魔するでないわー!!』

 

「も、申し訳ございません!!」

 

『お前達は出て行け、いいな?』

 

「「は、はい!!」」

 

理不尽な理由で秘書2人を強制退出させるダット・エルスマン。

 

(ひでぇ‥)

 

心の中で秘書に同情する。

 

「で?ここはどこで、親父は何しにきたんだ?」

 

まず状況を把握するために親父に尋ねるが

 

『うむ!お前が自爆して意識不明の重体になったお前を見舞いに来た。以上である!!』

 

「は?」

 

『何だ?理解できなかったか?まったく‥なっちゃいない、なっちゃいないぞ、ディアッカ!!』

 

(馬鹿にしながら溜息をつく親父にイラっとしたがここは我慢する。)

 

『仕方が無い。二度は言わんぞ?』

 

親父の説明によると俺がストライクに組み付き自爆。

砂浜に犬神家誕生。

俺、全身打撲&意識不明。

クストーでは本格的な治療ができない。

本国に送還だぁ!俺、目が覚める。←今ここ。

そんなとこらしい。

そうだ、思い出した。あの時俺は――――

 

「くそ、またもやストーカーヤローに目を付けられてしまったぜ」

 

ボヤきつつも戦闘機からの回避足つきに攻撃を加えるディアッカ。

 

(厄介な奴らだよまったく)

 

距離をとれば足つきが、接近しようとすれば戦闘機が入れ替わり攻撃をしてくる。

 

(まずはうっとおしい戦闘機からだ)

 

「堕ちろー!!」

 

220mm径6連装ミサイルポッドで牽制し350mmガンランチャーと94mm高エネルギー収束火線ライフルを連射する。

 

「グゥレイト!」

 

今回は命中しスカイグラスパーは黒煙を上げながら高度を下げ足つきに緊急着艦していく。

 

「よし、チャンスだ。ハッチから侵入し内部から破壊してやるぜ!!」

 

と意気込んでいたら視界の隅に追い詰められているイージスの姿が。

 

「何やってんだよ、あいつは!」

 

流石に見過ごせないのでアスランの援護に向かう。

バスターの射程圏内に入り、ストライクを攻撃しようとしたところで視界の端にブリッツが映った。

 

「っヤバイ!!」

 

足止め具のロックを解除し、グウルをストライクに向け操作するディアッカ。

 

(間に合うか!?)

 

エネルギー残量を無視したスピードでグウルが降下していく中ストライクに94mm高エネルギー収束火線ライフルを向けるバスター。

ブリッツが斬られると思われた次の瞬間、グウルがブリッツに激突しブリッツが吹き飛ぶ。

ストライクが空振りした空振りしバランスを崩す。

その隙突いていつのビームでソードを破壊するバスター。

ストライクはソードが破壊され爆発したことで数歩後退した。

 

「グゥレイト!」

 

ストライクの前に着地するディアッカ。

 

(セーフ、何とかなったぜ‥)

 

内心焦りながらもストライクと対峙するディアッカ。

そう、ディアッカの考えではグウルをストライクに激突させてその隙に撃破するはずだったのだ。

だが実際は無理なスピードを出したからなのかグウルはブリッツに激突してしまい、ビームも狙いが逸れて武器破壊に留まった。

結果オーライだが少しでもタイミングが外れていたら‥と考えると焦らずにはいられない。

アスランとニコルに撤退するよう指示を出しているとストライクが左肩からビーム兵器を外しこちらに突っ込んで来る。

 

(チッ、まだこっちの準備が出来てないってのに)

 

「やらせはせん、やらせはせんぞー!!」

 

叫びながらバスターの左手でストライクの武器を持っている右手首を、右手で左肩を抑え、動きを止める。拮抗するストライクとバスター。

 

(同じGだからパワーに大差があるとは思いたくないが‥)

 

レバーを握る手にもいつも以上の力が入る。

近接武器を搭載しているストライクとは異なりバスターは搭載していない為、攻撃手段がない。

つまりディアッカは手詰まり状態なのだ。

 

(以前のように不意を突けば倒せる可能性もあるがこのパイロットに二度目が通用するとは思えな  い。ならば俺がやる事は一つだ)

 

「急げ!長くはもたないゼ!!」

 

ディアッカがアスランとニコルに撤退を急がせるも、指示を頑なに拒否するニコル。

 

(おいいぃ!?ニコル、ワガママ言ってないで早くしてくれ!

 機体が先程から軋む音がしているし、警報が鳴りっぱなしなんだからよ!!)

 

そしてついに拮抗は崩れた。

バスターの左肘がショートし拘束が弱まるとストライクは即座に左腕を肩から斬り落とす。

バランスを崩したところに続けざまに頭部を破壊されるバスター。

メインモニターが使用不能になり、サブモニターで外を確認するディアッカであったが次の瞬間、

胸部にビームが刺さる。

 

(ちょっ危ねえ、コクピットギリギリじゃないか!?)

 

そう、バスターの右胸部に刺さったビームは辛うじてコクピットを外れていたのだ。

しかし火花が飛び散りフェイズシフトダウンし武器も使用不能になりコクピット内は火花が出て

警報も出っ放しのバスター。だがディアッカは諦めない。

 

「まだだ、まだ終わらんよ!!」

 

なんとか生きている背部スラスターを全開にし体当たりするようにストライクに組み付いた。

すぐにコクピットシート腰付近にあるコンソールに自爆コードを入力しハッチを開放し脱出する。

 

(任務、了解)

 

心の中で某主人公をパクった罰なのか予定よりも早くバスターが爆発してしまった。

そこで俺の意識は途切れた。

 

――――

 

「なるほど、ね‥」

 

(しかしよく無事だったな、俺。これもコーディネーターだから助かったのか?)

 

「で?親父が居る理由にはならないと思うが」

 

『親が子を心配するのがそんなに不思議か?』

 

「‥‥」

 

押し黙る俺。俺が聞きたいのはそういうことじゃないのだが‥

しかしなるほど、それで親父が代表を務めるフェブラリウス市に運ばれたわけだ。

このコロニーは基礎医学・臨床医学専門のコロニーだしな。

 

『それに、だ‥』

 

言葉を切りディアッカを見詰めるダット。

 

「それに、なんだよ?」

 

『女子(おなご)を庇うとは天晴れだ!よくぞやった!!』

 

「うん?」

 

両手を胸の前で組み親父は言う。

 

『お前はブリッツという機体を庇ったのであろう?

 聞けばそれに搭乗していたのはアマルフィの奴めの一人娘だというではないか。

 いや、まさかお前がそんな行動をするとは思わなかったのでな‥』

 

(ああ~なるほどね。

 親父は昔から女性は人類の宝だ!とかいうぐらい女性を大事にしていたもんな。)

 

「別に特別ニコルだから助けたってわけじゃない。咄嗟に身体が動いただけだゼ」

 

『何と!?無意識下においても女子を守るとは、流石だなディアッカ!』

 

(親父に褒められるなんて何のフラグだ?)

 

『だが‥』

 

「うん?」

 

『自爆して負傷するとは情けない!気合が足りんぞ!!』

 

「無茶言うなよ!?」

 

『未熟!未熟!!未熟!!!それだからお前は馬鹿なのだぁ!!』

 

(駄目だコイツ、早く何とかしないと‥)

 

自爆しても無事ってどこかのヒイロじゃないんだから無理だろ。

こんなやり取りをしているとノックする音が聞こえ‥

 

「失礼する」

 

男性が1人入室した。そうして入ってきたのは‥

 

「誰?」

 

俺にはまったく見覚えが無い。

 

『おお!アマルフィの、よくぞ来たな!』

 

「アマルフィ?」

 

(ニコルのファミリーネーム、だよな?)

 

『ユーリ・アマルフィだ。君の同僚のニコルは私の娘だよ』

 

「はあ‥」

 

『気の抜けた返事をするでないわぁ!!』

 

今度は左頬を殴られる。痛い。

 

『何故私が?という顔をしているね。もちろん私が訪れたのには理由がある』

 

『娘を助けてくれてありがとう、ディアッカ君!!』

 

そう言うとユーリはディアッカの正面(ベット右側)に立ち頭を下げた。

 

(ええええ!?)

 

「いや、えーと。とりあえず頭を上げて下さい」

 

大人に頭を下げられるのは苦手だ。

 

『娘を助けてくれた恩人に対してこれだけではこちらの気が済まないのだが‥』

 

「いえ、もう結構です」

 

キッパリと断る。

 

「ニコルが無事だった。ならそれでいいじゃないですか」

 

(あの後どうなったか気になっていたがニコルは無事だった‥こんなに嬉しいことはない)

 

チラッとニコル父を見ると

 

『…』

 

無言で体をプルプルと震わせている。何か失礼があったかとディアッカは内心焦るが

 

『‥す』

 

(す?お酢か?)

 

『素晴らしい!!』

 

「うお!?」

 

(顔を上げたと思ったらガシッと両肩を掴まれる。痛えー!!)

 

『なんと素晴らしいんだ君は!!』

 

「ちょ、落ちつ、痛‥」

 

体を前後に揺すられるディアッカ。

 

(ギャー、体がー!!)

 

「自らの身を犠牲にして娘を守ったばかりか、自らの体より娘の安否を気遣うとは!!

 君は、最高だー!!」

 

ユーリさんにハグされる。

 

(勘弁してくれ!もうやめて!ディアッカのライフはゼロよ!!)

 

           

 

  ~しばらくお待ちください~

 

 

 

数分後。ベットで痙攣するディッカ。反応が無い、ただのディアッカの様だ。

 

「いや、すまないね。嬉しくてつい」

 

(つい、じゃねーよ。)

 

「コホン、だがディアッカ君。それほど君に感謝しているということは覚えておいてくれ」

 

「ええ、それはまあ‥」

 

(あれだけハイテンションじゃあな)

 

「今日対面して、短時間ながら君の人となりがわかったよディアッカ君。娘が入れ込むわけだ」

 

真面目な顔をしてそんなことを言うので俺の顔も引き締まる。

 

「ディアッカ君。いや、ディアッカ・エルスマン。君を男として見込んだ。

 君ならば‥いや、君しかいない!娘をどうかよろしく頼む!!」

 

立ち上がりお辞儀をするユーリ。

 

(助けたぐらいで大げさな人だぜ。だがまあ‥)

 

「お任せ下さい!!」

 

頼まれた以上、ニコルのフォローはするぜ。同じ隊に所属できるかわからないが。

 

「そうか、引き受けてくれるか!いや、言ってみるものだな。

 こういうのは本人から言った方がいいのだろうが今は戦時中だし妻も気にしていてね。

 親の私がお膳立てした事を知ればニコルは文句を言うかもしれないが、そのうち分かってくれる

 だろう。ありがとう、ディアッカ君!!」

 

先程の真面目さは吹き飛びハイテンションで喜ぶユーリ。

 

「で、いつ挙げるかね?」

 

「は?」

 

「式だよ、式!まさか君は式を挙げない派かね?」

 

「いや、えっと‥え?式?」

 

『儂は娘っ子がプラントに戻ってきた時点が良いと思うぞ』

 

「ほう、気が合いますなエルスマン議員」

 

『ダットと呼んで下され。今後は家族になるのですからな』

 

「では私の事はユーリと」

 

『うむ、よろしく頼むぞ、ユーリ!』

 

「こちらこそ、ダット!」

 

急に意気投合し握手する二人。気のせいか後光が見える。

 

「あの、式とは何のことですか?」

 

「何を言っているのかね、もちろん、ニコルと君の結婚式の事だよ!!」

 

‥‥‥

 

「な、何だって~!!?」

 

痛みを忘れ体を起こす俺。

 

「ど、どういうことですか!?」

 

「君の事は娘から聞いていると言ったろう?話の中で娘は大層君の事を気に入っていてね。

 親としては複雑だが状況が状況だ、お互いにいつどうなるかはわからない。

 ならば、できるうちにやった方が良いと思ってね。

 君も任せろと言ったではないか、あれは嘘だったのかね?」

 

殺気を感じるほど睨まれるディアッカ。

 

(いや、そういう意味で言ったんじゃないから!どうすればいいんだ俺は‥)

 

「いえ、嘘というわけではなくてですね‥」

 

(考えろ、考えるんだ!!)

 

『男らしく腹を決めんかあ!!』

 

(黙れクソ親父)

 

「それとも娘に不満があるのかね?

 親バカと思われるかもしれないが娘は容姿端麗で家事万能、性格も良しの3拍子揃っている。

 これ以上に何を望む?」

 

「それはわかっていますが‥」

 

ニコルが美少女なのはディアッカにも異論もないが。

 

「他に好きな女性でもいるのかね?」

 

「いません!」

 

ユーリの問いに即答する。

 

(まあ、エザリアさんは好きだけどな!高値の花というか憧れというか何というか。

 この場で言ったら殺されそうだが。さて、ここまで引き延ばしてきたが年貢の納め時らしい。

 誤魔化すわけにはいかないか)

 

出会ってから今日までのニコルとの思い出を振り返るディアッカ。

 

「ふうっ」

 

と一息つき覚悟を決めユーリに言う。

 

「仰る通り確かにニコルは素晴らしい女の子です。自分にはもったいないぐらいに。

 正直言って私もニコルに対して少なからず好意を持っています。

 またニコルからそういう態度を感じたこともあります。『ならば‥』ですが!

 結婚したいかと問われればNOと言わざるを得ません。

 私たちは出会って1年も経たないですし、何より今は戦時中です。

 ニコルも私も10代の若造。吊り橋効果や仲間意識の延長線上の感情である可能性を否定できま

 せん。お互いに面と向かって言葉で気持ちを伝えたこともありません。

 そんな曖昧な感情で結婚すればニコルにとってもマイナスにしかなりません。

 申し訳ないですが今すぐ結婚というわけには‥」

 

まあ、そういうことだ。ニコルは魅力的な少女であるが俺には勿体ないのだ。

怒ったか?とニコル父の様子を窺うと

 

「‥‥」

 

無言で涙を流していた。

 

「そんなに‥そんなにニコルのことを思っていたとは。感動した!!やはり、君しかいない!!」

 

そう言ってディアッカに詰め寄るユーリ。

 

(おい、話聞いてたか?)

 

「わかった、君の意思を尊重し式は延期だ」

 

ホッとしていると

 

「まずは婚約だな!」

 

「え?」

 

「そして終戦後結婚する。うむ、いい感じだ!!」

 

「ちょっと待て~!!何でそうなるんですか!?」

 

『うむ、仕方あるまいな』

 

「親父お前は黙ってろー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

――結局、看護師が駆けつけて来てその場はお開きになったのだが‥

 

「MSのテスト、ですか?」

 

『うん』

 

あれから数日経ち俺はユーリさんに呼ばれザフトがGのデータを基に作り上げた新型MSが保管されているコロニーに来ている。

 

「でも何で私に?」

 

『君は連合の最後の1機ストライクと互角の勝負を繰り広げたそうじゃないか。

 しかも砲撃戦用機体にもかかわらずね」

 

「確かにそうですけど‥」

 

「それに今はスピットブレイクの直前ということもあって優秀なパイロットにも限りがある。

 その点、君は復帰しているとはいえ一般的には療養扱いになっているからね。

 こちらの都合も良いのだよ」

 

「なるほど‥」

 

(歩きながら考える。赤服の人間もプラントに残ってはいるがプラント防衛とかで手が離せない。

 しかし新型は従来のMSの何倍も扱いが難しい為、通常のテストパイロットには務まらない。

 誰かいないかー!ここにいるぜー!!つまりこういうことだな。

 仕方がない、所詮俺は評議会の狗。やあーってやるぜ!!)

 

「任務、了解」

 

今回は声に出して言ってみた。

 

「おお!ありがとう。さすがは息子だ!!」

 

「…」

 

(いや、まだ結婚するとは言ってないぜ!だが口には出すまい。)

 

会話しながら歩いていると格納庫前に着いた。

さすが秘密裏に開発された新型機の格納庫だけあって警備も厳重だ。

ユーリさんに連れられて格納庫内に入るディアッカ。

 

「完成している物もあるが一応、一通り紹介しておくと左から

 ZGMF-X09A ジャスティス。 近~中距離戦用機だ。

 これはアスラン・ザラが搭乗予定だ」

 

(アスランかよ!?新型機が貰えるなんて羨ましい。)

 

「その右横にあるのがZGMF-X10Aフリーダム。

 中~遠距離戦用機だ。こちらはイザーク・ジュールが登場予定だ」

 

(今度はイザークかよ!?どんだけ~)

 

「地球軍のMSの技術を取り込みザラ新議長閣下の指示のもと極秘裏に造られた機体だ。

 この2機にはニュートロンジャマーキャンセラーを搭載している」

 

ニュートロンジャマーキャンセラー、つまり核エンジンか。

そりゃ~通常のバッテリー搭載機よりは高性能だよな。

常に発電するからバッテリー切れにならないし。

 

「この2機はテストも終了しあとは最終調整のみとなっている。

 まあ、参考程度に覚えておいてくれ」

 

「はい」

 

「君にテストしてもらいたい機体は別保管なんだ。着いてきてくれ」

 

ユーリの後をはぐれないよう着いていくディアッカ。

侵入防止の為か迷路のようになっているからだ。

 

(しかし核エンジンとはね。Iフィールドとか作られないかな?)

 

「ここだ」

 

着いた先はこれまた厳重な警備だった。だがディアッカには気になる点があった。

警備している者の1人が

 

「あ、あなたが噂の!?」

 

とか口走っていたのだ。

 

「で、これなんだが‥」

 

ライトに照らされ姿を現すMS。

 

「こ、これは!?」

 

「驚いたかね?君には馴染み深いとは思うが」

 

「ええ、それはもちろん‥」

 

そう、ディアッカが見間違えるはずがない。

起動していないので機体全体が灰色で頭部にアンテナ、ツインアイがあるこの機体は‥

 

「型式番号のYMFが示す通りザフト初のGタイプのMSでね。

 最初の1機は諸事情でここには無いがコイツは2号機でね。

 1号機で得られたデータを基にニュートロンジャマーキャンセラーの有効範囲と核エンジン出力

 の調整の為に造られた機体だ。しかし重大な欠点があってね‥」

 

「欠点、ですか?」

 

俺が眺めているとユーリさんによる機体説明が始まる。

 

「実は‥」

 

 

 

 

 

―――結局あのMSのテストは後日することになった。

 

 

なんでもフリーダムの最終調整が前倒しになってしまい、技術陣はそちらに掛かりっきりなってしまうそうだ。ユーリさんが申し訳なさそうにしていたが仕方あるまい。それよりもパイロットがいないのにフリーダムの最終調整を前倒しにした理由の方がディアッカには気になった。

 

『準備はいいかい?』

 

「はい」

 

『いつでも始めて構わないよ』

 

考え込んでいるディアッカに通信室より連絡が入る。

 

「OK.ディアッカ・エルスマン、ゲイツ発進する!!」

 

エアロックが解除されそのまま一気に機体を上昇させるディアッカ。

そのまま宇宙空間に飛び出すゲイツ。

 

「グレイト!これはすごいゼ!!」

 

そう、ジンなんて目じゃないほど凄いのだ。何故ディアッカがゲイツに搭乗しているのかというと

 

――――――

 

「ゲイツに?」

 

『ああ、先程ロールアウトしたばかりでね。

 アレの代わりと言ってはなんだがこちらは完成しているから動かすのに人もアレ程必要ではない

 しね』

 

「私は構いませんよ。量産機とはいわば誰でも乗れる専用機ですから。

 それに私はジン・シグーのファンでして、その系譜の機体であればなおの事

 乗ってみたいと思います」

 

『そうか、すまないね。

 赤服である君の操縦によってもしかしたら不具合を見つけ出せるかもしれないね』

 

「それは買被りかと‥」

 

『そうかな?まあいい、さっそく乗ってもらおう』

 

「了解しました!!」

 

というやり取りがあったのだ。

 

「うーむ」

 

(バスターとは随分違うな。あたり前っちゃあ、あたり前だが。

 ジンの系統だから機器類の配置も似通っている。しかし流石は新型。

 パワーはバスターと同等もしくはそれ以上ある。

 武器はMA-M21Gビームライフルにシールド、シールドと一体型のMA-MV03

 2連装ビームクローか。まあ、標準的だな。

 エクステンショナルアレスターEEQ7Rという変な武器も腰部に付いているが。

 さて、やるか!)

 

イヤッホーと縦横無尽に数分間コロニー周辺で機体を動かしていると突如警報がなる。

 

「何だ!?」

 

モニターを確認するとスクランブル表示になっている。

 

『ディアッカ君!!』

 

ユーリさんから通信が入る。

 

『フリーダムが何者かに奪取された!』

 

「何だってー!!?」

 

(冗談じゃないぜ)

 

『すでにジン部隊が撃退されてしまった。君の位置から近いはずだ。

 至急フリーダムを止めてくれ!!』

 

そんな無茶な、と思ったが警報が鳴りセンサーがフリーダムを捉えたことを知らせる。

 

「フリーダム、止まれ!!」

 

警告するが無視され突っ込んでくる。

 

「ええい!仕方がない!!」

 

前方から高速で向かってくるフリーダムにビームライフルでビームを撃つが躱されてしまう。

 

「チィッ、こんのー!誰なんだ、貴様!!」

 

さらにビームを連射するが先読みされているかのように全て回避されてしまう。

 

「くそっザフトの新型は化物か!?」

 

なおもフリーダムは接近してくる。

 

(ゲイツだって量産機とはいえ新型だぞ!それにも関わらずこの差‥誰が乗っているんだ?)

 

「射撃が回避される。なら!」

 

左腕に装備した2連装ビームクローを展開する。

フリーダムも腰にマウントされているビームサーベルを抜き接近してくる。

ゲイツは左腕、フリーダムは右手に装備している。こちらはシールド一体型だから防御は出来ない。

 

(先手必勝だぁ!)

 

「うおおおお!!!!」

 

フリーダムの右腕を破壊すべく左斜め上から斬りつける!!

‥‥がしかしフリーダムは回避することもなく、

ディアッカの想定以上のスピードでゲイツの左腕を肘から先を切断した。

 

 

「まだ!」

 

瞬時に両腰に装備している2つのエクステンショナルアレスターを放つゲイツ。

この装備、射程は短いが先端からビームも出せるし不意打ちにはもってこいの装備なのだが‥

フリーダムの胴体を捉えると思われたそれはしかし、またしてもこちらの予想を裏切りフリーダムはその機体を捻り回避してしまったのだった。

しかもその一連の動作の中でエクステンショナルアレスターも破壊されてしまった。

 

「は?」

 

こちらのゲイツに攻撃手段は残っておらず一方フリーダムは無傷。一体どうしろと?

フリーダムは俺の事なんか眼中にないようでそのまま戦闘中域から離脱してしまった。

 

(‥見逃された?」)

 

そう、フリーダムがやる気であったならば瞬殺されていただろう。

だがフリーダムは武器を破壊しただけ。

 

(ザフト本体の追撃を恐れて離脱を急いだ?

 いや、あの強さだ。守備隊なら簡単に全滅させられていただろう。ならば何故?

 急がなければならない理由はなんだ?そもそも何処へ向かった?)

 

『‥君!‥君!ディアッカ君!!』

 

「ハ、ハイ!!」

 

『無事かね?』

 

「ハ、武器は破壊されましたが問題有りません」

 

『そうか。すぐに帰投してくれ』

 

「了解しました」

 

(イカンイカン現実逃避していた)

 

「ディアッカ・エルスマン、これより帰投します」

 

――新型のテストがとんでもない事になってしまった。格納庫にて。

 

『ディアッカ君』

 

「ユーリさん‥」

 

「申し訳ありません、フリーダムを止められず‥」

 

『いや、君はよくやってくれた。相手はフリーダムだしね。

 少なくともジンでは敵わなかったがゲイツではやりようによっては戦えることも証明できた

 しね』

 

「そう言って頂けるのはありがたいですが‥」

 

『なに、そんなに気にする必要はない。

 悪いのはフリーダムを奪取した人物とそれを手引きした者だからね』

 

「我らザフトに裏切り者がいると?」

 

『そう考えるのが妥当だ。君も見たようにフリーダムは厳重な警備のもと保管されていた。

 にもかかわらず、その警備を掻い潜り、エアロックを開放し奪取した。

 これは間違いなく裏切り者がいる証拠だろう』

 

「確かに‥」

 

警備している者が負傷したという情報はない。

ということは犯人は堂々と格納庫に入ってきた可能性がある。

つまり、警備が通さざるを得ない人物、ということになる。そうなると‥

 

「何にせよ、防犯カメラの解析結果が少しすれば出る。

 追跡は専門部隊に任せ我々はこれ以上の奪取を防がねばならない」

 

(そりゃそうだ。これでジャスティスやアレまで奪われたらシャレにならないぜ)

 

「フリーダムの行先はわかったのですか?」

 

『うむ。先ほどカーペンタリアからのシャトルがすれ違ったとの報告を受けている。

 地球で間違いないだろう』

 

「地球‥連合だと思いますか?」

 

『そうは思いたくないけどね』

 

「『…』」

 

2人して沈黙する。

 

『‥さて』

 

先に沈黙を破ったのはユーリさんだった。

 

『今日はもう帰って休みなさい。病み上がりに付き合わせて悪かったね』

 

「いえ、ですが」

 

『休みなさい、そして回復した暁にはニコルを頼む』

 

頭を下げるユーリ。

 

「もちろんです、連合から奪還してみせますよ!!」

 

自らを鼓舞しそう宣言するディアッカ。

実は今回のMSのテストは表向きの理由で本当の目的はディアッカが新型機の慣熟訓練を行い、

それが終了次第、アークエンジェルの捕虜になったニコルを奪還する事だった。

 

『すまない。親バカと言われようが私達にはニコルが‥

 だからそのためにザラ議長へ特務隊転進を推薦したし、新型MSのテストパイロット扱いにもし

 たのだから。無論、君を信頼しているからこそだ』

 

「わかっています、お義父さん。ニコルは必ず俺が助けます」

 

『ありがとう』

 

 

 

――――こうしてディアッカは特務隊所属になりアークエンジェルを追うことになったのだが果たしてディアッカとニコルにどのような再開が待っているのか。

 

 

 

 

 

 




原作ではニコルの死をきっかけにNJC搭載を決めるユーリですが本作では捕虜になったことで搭載を決意します。原作よりも理由が軽いですがそれはアレです。

ご都合主義です。または話の都合上ともいう。

この作品はそんなノリですから仕方ないですよね。


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8話:出撃

今回は短いです。

読者の皆さんに感謝を。


 

 

背部及び脚部スラスターを噴かせて漆黒の空間を裂くMS。

そのコクピットには余裕など一切無く切迫した表情で汗を流す男が1人。

 

「‥ハア、ハア、ハアっ」

 

ギリッと歯を食いしばるパイロット。

 

『スピードを上げて下さい』

 

「っ了解!」

 

オペレーターの指示に従いペダルをさらに踏み込み機体を加速させる。

 

「‥‥」

 

先程の2倍以上のスピードを出した機体からはスラスター光が尾を引いている。

今まで体感したことのないGに押し付けられながら耐えるパイロット。

 

『そのままデブリの中へ』

 

「なん‥だと?」

 

『聞こえませんでしたか?デブリの中へ入って下さい』

 

「~っ了‥解!」

 

オペレーターの非情な命令に渋々従うパイロット。

さらに加速したMSがデブリ帯へ突入しその中をぶつかりそうになるも紙一重で躱しすり抜けて

ゆく。機体の性能に圧倒されながらも何とか縋るディアッカ。

 

「ぐっ、く、くぅ‥‥」

 

いつものような余裕は無く、ただ必死の形相でスロットルやレバーを握るディアッカの姿がそこ

にはあった。開始してからどのくらい経ったのだろうか。遂にと言うべきか、終了のアナウンス

がコクピット内に流れる。

 

『YMF-X001A フェイズ3、オールクリア。対G負荷想定内。パイロットの脈拍が想定

 より上回っていますが許容範囲内です。その他ライフサインに異常は認めず。これにて機体の

 機動試験を終了します。お疲れ様でした』

 

機械的な音声の終了連絡が流れたと同時にディアッカは機体に制動をかけ減速させた。

 

「……ふぅーっ」

 

ヘルメットを外し汗を振り払うとそのまま脱力する。格納庫の発進口に向け機体が流れてゆく

中でディアッカは呼吸を整えながらも脱力したままでいる。

 

(‥‥疲れた)

 

一体なぜこんな事になったのか。それは数日前に遡る。

 

フリーダム強奪事件から数日後、今日こそは新型機のテストだと意気込み格納庫へ向かった

ディアッカであったが突如父から連絡が入る。テストを中断し指令室へ向かい入室すると

モニターは父の姿が。敬礼し父に問いかける。

 

「一体どうされたのですか、ダット・エルスマン最高評議会議員殿?」

 

『…』

 

ディアッカの茶化しともとれる問いかけに無言のダット。

 

「要件が無いようでしたら『オペレーション・スピットブレイクが失敗した』‥は?」

 

突然の事に理解が追いつかないディアッカ。

 

「‥聞き間違いでしょうか。スピットブレイクが失敗したと?」

 

『ああ』

 

「どういうことだ、連合の新兵器でもあったのか!?」

 

『それはわからん。情報が錯綜していて儂らも報告待ちだ。重大な件だからな。

 取り敢えず一報だけでもと思って連絡したのだ』

 

父から告げられたオペレーション・スピットブレイクの失敗。

それはディアッカのみならず多くの軍関係者に衝撃を与えた。

何故なら本作戦は攻撃目標が直前でパナマからアラスカ・ジョシュアに変更されたことを知って

いるからだ。当初は戸惑いこそあったものの逆に連合の隙を突き圧勝できると、誰もが想像した。

ところが実際は投入戦力の8割を失うという予想もしない結果だった。

 

『情報が入れば軍の方から連絡が入るだろう。そして恐らくお前にも召集がかかる。

 それまではしっかり調整しておけ!良いな?』

 

親父からの通信が切れる。

 

「‥」

 

指令室が静まり返る。だが放心状態から復帰したディアッカがスピットブレイクの失敗を聞いて

頭に浮かんだ事はニコルの事だった。

そう、連合の捕虜になってるということはスピットブレイクに巻き込まれたかもしれないのだ。

 

「‥」

 

(きっと大丈夫だ。今はそう思い込むしかない‥)

 

確認する手段が無い現状に無力感に苛まれるディアッカ。

 

 

 

 

―――さらに1週間後。

 

「アスランが地球に?」

 

『ザラ議長がジャスティスを使用しフリーダムの奪還もしくは破壊を命じたそうだ。

 彼も今や君と同じく特務隊だからね』

 

「アスランが‥」

 

オペレーション・スピットブレイクの失敗後ザラ議長は追悼演説を行うと共に今回の失敗はクライン派にあるとして議会のクライン派を粛清。またラクス・クラインを国家反逆罪で指名手配した。彼女が何をしたのかといえばオペレーション・スピットブレイクの情報を連合に漏洩しフリーダム強奪に関与していたというのだ。突拍子も無い話で最初は半信半疑だった人々も公開された格納庫の映像を見て政府の発表を信じるようになった。無論、政府発表を信じる人もいれば政府の発表は捏造だと反対運動をしている人もいる。

まあ、クライン支持派は次々に拘束されてしまうわけだが‥そんな中ディアッカは何をしているかといえば新型機のテストである。

何故完成していないかというと実はフリーダム強奪事件後、新型機の運用に多くの手続きと承認が必要になってしまったからだ。

クライン派がどこに潜り込んでいるか、わからない為の処置との事だがしかし、再発防止の為には仕方ない事だと思う一方で新型機の調整が遅れるのはいかがなものか、とディアッカは思いながら起動試験を続ける。そして冒頭に戻る。

 

 

 

――――格納庫に機体を収容しコクピットから出てMSデッキに着地するディアッカであったが‥

 

「おっと」

 

疲れからか足がもつれ尻餅をついてしまう。

 

「痛ってぇ~」

 

そう呟きながら手を床につき立ち上がろうとするが体が動かない。見ると腕が痙攣し力が入らなくなっている。

 

「あ~、くそっ!」

 

立ち上がるのを諦め、後ろに背中から倒れ仰向けの状態になる。

 

(尋常じゃない疲れだぜ‥)

 

そんなディアッカの事情を察している整備班は邪魔しないよう配慮しながら作業をしている。

 

(しかし、試験運用でこの様じゃあ本当に使いこなせるのか?)

 

ディアッカの考えるように、たった数十分の操縦でここまでパイロットが疲弊するのは兵器として欠陥品として捉えられても仕方のないことである。

 

(お義父さん‥ユーリさんの言っていた通りアレはとんでもない欠点だな。今まで試験運用でき

 なかったのも納得だ。あんなの使いこなせる奴なんかいないだろう)

 

引き受けなければ良かったと軽く後悔し、腕の痙攣が治まったので立ち上がろうとするディアッカに手が差し伸べられる。

 

「おっ悪いね!」

 

差し出された手を握り立ち上がる。

 

『なに、困った時はお互い様だろう?』

 

聞き覚えのないハスキーボイスの主を見るとそこにはオレンジ色の髪をし前髪がモッサリしている赤服を着た見知らぬ男が一人立っていた。

 

「助かったゼ。えーと‥」

 

『ハイネ・ヴェステンフルスだ。初めましてだな』

 

ハイネが敬礼したのでディアッカも答礼し答える。

 

「俺は『ディアッカ・エルスマンだろう?』‥何故知っている?」

 

『そりゃ~知ってるよ。有名人だからな、お前』

 

「有名人?俺が?」

 

『そっ、一部の奴らの間ではな』

 

(何だ?)

 

心当たりが無いディアッカは頭を傾げる。

 

『ま、そのうちわかるさ』

 

「教えてくれないのか?」

 

『だって、その方がおもしろいだろう?』

 

(なるほど、ハイネの性格がなんとなく掴めたぜ)

 

『重要な事でも無いし、割り切れよ。じゃないと、死ぬぞ?』

 

「いや、なんか使いどころが違う気が‥」

 

ハイネと雑談をしながらローカールームに向かい着替えたディアッカは整備班や研究者の勧めもあってロビーで休んでいる。

 

『へえ。じゃあお前はずっとその艦を追跡してたのか、ディアッカ』

 

「したというか、させられたというか‥」

 

『クルーゼ隊だもんな、仕方ないさ。知ってるか?クルーゼ隊はエリート部隊って言われている

 んだぜ?』

 

「それは初耳だな」

 

『結構有名な話だぜこれ。クルーゼ隊に配属された赤服は皆、親が評議会議員のお坊ちゃん達、

 ってな』

 

「親は関係ないだろう」

 

思わずムッとするディアッカ。

 

『そういう風に勘ぐる奴もいるってことさ。俺はそんなの気にしないけどな。ミゲルだってそう

 だったろ?』

 

「ミゲルを知ってるのか?」

 

『あいつは俺の後輩でな随分と俺を慕ってくれたよ。あいつの機体がオレンジ色だったのもその

 せいだ』

 

「ハイネはオレンジがパーソナルカラーなのか?」

 

『そっ。だから今度配備されたゲイツも塗装中だ。

 それに加えて駆動系を弄りたいから今日ここを訪れたのさ』

 

「なるほどね」

 

ハイネと1時間程話し込んでいると‥

 

《業務連絡。X001Aのパイロットは1400に格納庫機体前に来て下さい。繰り返します‥》

 

「じゃ、呼ばれたから俺はこれで」

 

『ああ。死ぬなよ』

 

「そっちもな」

 

握手をして別れる2人。

 

(ハイネとはそのうち会えそうな気がするな‥)

 

果たして2人はまた会うことがあるのか。それは2年後に判明することになる。

 

 

―――さてハイネとの出会いから1か月が経過しその間ディアッカはグロッキーになりながらも新型機の試験を行っていた。ザフトはパナマ攻略戦を行ったり大西洋連邦がオーブ解放作戦を行ったりと世界は大きく変わりそれはディアッカ達にも影響を与えた。

それはある日の事。いつものように新型の調整をしているとユーリさんが訪ねてきた。

 

「お疲れ様です!」

 

『うん。君も元気そうだね』

 

互いに挨拶する2人。

 

「今日はどうしたのですか?」

 

『実は国防委員会の方で動きがあって、君達にも関係する事だから直接言おうと思ってね。

 整備を含めた全員を集めてくれないかな?』

 

「了解しました!」

 

すぐに全員を格納庫に集合させるディアッカ。

 

『ではこれより決定事項を伝えるので聞き漏らしの内容に。いいね?』

 

「「「はいっ」」」」

 

『では‥』

 

周りを見渡し話を始めるユーリ。決定は以下の通り。

 

 

①YMF-X001A 開発名称D2は本日付でザフト軍正式採用機に変更する。

 

②それに伴い型式番号をZGMF‐X14Aとする。

 

③機体名はジャッジメントとする。

 

④パイロットはディアッカ・エルスマンとする。

 

ユーリの話を聞きその場が騒がしくなる。

 

(ジャッジメントか‥ありだな!カッコイイじゃねーかヨ!!)

 

ディアッカは内心興奮していた。

 

『色々疑問に思うところがあると思うのでこの決定の背景を説明する。

 フリーダムが強奪され、それをジャスティスが追っているのは知っている事と思う。

 しかしここに来てそのジャスティスまで奪われたという情報が上がってきたのだ』

 

「「「「何だって~!!!!」」」」

 

(おいおい、マジかよ!?)

 

『静かに!!‥続けるよ。その情報はオーブを監視している隊から寄せられたものだ。

 説明しておくと地球では連合が中立国オーブを傘下に収める為に侵攻しているわけなんだが、

 フリーダムがオーブ軍に味方していたらしい。で、そこに現れたのがジャスティスだ。

 ジャスティスはフリーダムと共に連合の新型と戦っていたとのことだ』

 

『真相はわからないがもしジャスティスまで第三者の手に渡っていれば我々は核搭載MSを2機

 失った事になる。連合との決着も迫っている段階でこれはマズイ。故に国防本部はこの機体に

“思い上がったナチュラルに審判を下す”意味のジャッジメントと名付けた。

 まあ、プラント内外にアピールする意味もあるけどね』

 

「‥…」

 

沈黙が格納庫内を支配する中でユーリはディアッカに話しかける。

 

『何かあるかね?ディアッカ君』

 

「いえ、ありません。やることは変わりません。

 今まで通り機体を調整するだけです(そしてニコルを)」

 

『うむ』

 

ユーリはディアッカの言葉に満足したのかみんなを激励して帰っていた。さらに数週間が経ち。

 

 

 

――――――――――――

 

 

「完成だ!!」

 

「「「「うおおおおおお!!!!」」」」

 

格納庫に野太い声が響き渡る。肩を抱き合い喜んでいる者、感慨深そうに機体を眺めている者。

この機体の開発に携わった全員が喜びを噛みしめている。無論、この男も例外ではない。

 

「やっとか」

 

ポツリとそんな事を呟くディアッカ。

 

(長かったなぁ。毎日試験漬けだったからな。食事・睡眠・風呂・トイレ以外の時間は試験か

 肉体トレーニングだけしかできなかったし‥ヤバイ、思い出したら涙が)

 

『君が泣くとは意外だな。なんだかんだ言いつつもこの機体に愛着でも湧いたのかね?』

 

「ユーリさん!」

 

ディアッカが振り返るとユーリが経っていた。

 

「お疲れ様です!」

 

敬礼をするディアッカ。

 

『まあ、そんな畏まらなくてもいいよ。君と私の仲だろ?』

 

「そうですか‥」

 

敬礼を解くディアッカ。

 

『みんな、よくやってくれた。私はこの機体なら戦争の早期終結に一役かってくれるだろうと

 信じている。あとは我々に任せてみんなは少しの間休んでくれ!』

 

「わあああぁぁぁぁ!!!」

 

歓声が巻き起こる。

 

「さてディアッカ君、着いてきてくれ」

 

「はい」

 

格納庫をでて会議室に入る二人。

 

『さて、先程も言ったが君もよくやってくれたね。ありがとう』

 

「いえ、私なんかは‥」

 

『謙遜しなくてもいい。報告は受けているからね』

 

「そうですか」

 

『だが、ここからが勝負だ。この機体は使い方次第でフリーダム及びジャスティスを同時に

 相手取っても勝利することができる。それはテストパイロットを務めた君ならわかっている

 はずだ』

 

「…‥」

 

『だからこそ使う局面を誤ってはならないし、当然のことながら奪われるのはもっての外だ。

 故に君に問う。ディアッカ・エルスマン、この機体で君は何をする?』

 

真剣な眼差しでディアッカを見つめるユーリ。

 

「そんなの決まってますよ、ニコルを助けてプラントも守る。それだけです」

 

当然のように答えるディアッカ。

 

『フッ流石だね。そんな君に国防本部より特別任務だ』

 

「ハッ」

 

『略式だがディアッカ・エルスマン 本日1700を持ってジャッジメントを用いて強奪された

 エターナル及びフリーダム、ジャスティスの奪還または撃破を命ずる。

 なお、現地において可能であればクルーゼ隊と協力して任務に就くように、とのことだ』

 

「了解しました!」

 

ユーリに対し敬礼する。

 

 

 

 

 

 

数時間後――

 

 

《A‐55警報発令》

 

格納庫内にアナウンスが発せられた。

コクピットのディアッカは起動スイッチを押し各システムが立ち上がる。

Generation

Unsubdued

Nuclear

Drive

Assault

Module Complex

の文字がモニターに表示されるのを確認する。格納庫内に警報が鳴り響く。

 

《放射線量マイナス。異常なし》

 

《進路クリア。全ステーション発進を承認。カウントダウンはTマイナス200よりスタート‥》

 

発進のカウントダウンが始まりディアッカは計器類をチェックしフェイズシフトの起動スイッチ

を押す。

 

「ステータス、オールグリーンっと」

 

《Tマイナス50。A‐55進行中》

 

機体の色がグレーからドレッドノート同様のトリコロール色に変化し、機体に接続していた整備用

コード類がパージされる。

 

《ZGMF-X14A コンジット離脱を確認》

 

格納庫天井部のエアロックが機体に近い下部から順番に解放されていく。

 

《発進スタンバイ》

 

アナウンスと共に全エアロックの解除が確認される。

 

《Tマイナス5。我らの審判に星の加護を!!》

 

アナウンス直後スロットルレバーを最大まで奥に押す。するとスラスターから光が漏れる。

 

「ディアッカ・エルスマン、ジャッジメント発進する!!」

 

ペダルを踏み込む。

するとジャッジメントは両足を曲げ一瞬屈んで溜めをつくり直後、一気に上昇する。

従来機では考えられない程のスピードを出しコロニーから飛び出すジャッジメント。

 

「よし。行くぜ!」

 

エターナルを追いメンデルに向かうディアッカとジャッジメント。

再会の日は近い。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――

 

ZGMF-X14(YMF-X001A)JUDGEMENT 

 

武装

MMI-GAU1サジットゥス 20mm近接防御機関砲×4

MA-M01ラケルタ ビームサーベル×2

MA-M21ルプスビームライフルⅡ×1

120mmレールライフル×1

M100バラエーナ プラズマ収束ビーム砲×2

 

X000Aドレッドノートが核動力搭載MSの基礎データ収集を目的に創られたのに対して本機はドレッドノートの問題点、つまりNJC有効範囲の調整及び高機動能力の特化を目的に創られた機体である。開発期間の短縮の為か本体はドレッドノートがベースとなっている。

異なる点としてまず挙げられるのが本機最大の特徴であるバックパックの4枚の翼がある。翼は2枚ずつ2対からなり内側の1対は自在に開閉・移動が出来る可動式の主翼2枚、フレキシブルバインダーによって外側に配置されたもう1対は翼自体の面積が可変する副翼2枚で構成されている。

この翼にはラミネートアンチビームコーティングを施してあり盾を待たない本機のシールドの役割を果たす。それだけではなく宇宙空間ではAMBAC作動肢として機能し、機体に機動性・運動性を実現するため一役買っている。

そしてバックパック中央部にはスラスターが設置されており、フリーダム等と異なるジン系統のコーン型。ミーティアと同様の物を使用されている。

レールライフルはシヴァを改良し手持ち式にしたもの。

ルプスビームライフルはレールライフルと前後に連結することでバスターの超高インパルス長射程狙撃ライフル並みの威力と射程を実現している。ビームサーベル使用時はライフルがマウントできないのでこの形態にして空いたほうの手でビームサーベルを使用する。

腰部にはプリティスビームリーマーを廃止し代わりにフリーダムに搭載されているバラエーナプラズマ収束ビーム砲を装備し、使用時には前方に展開する。

ビームサーベルもフリーダム、ジャスティス同様腰部に装備されている。

 

 

 

 




やっと出せた新型。なのにヒロインは中々出ないという謎。
新型はドレッドノートにEWウイングゼロカスタムの翼を付けた状態をイメージしてもらえれば
と思います。

さて、最後に聞くが…ニコル分は足りているか?
いや、返答しなくてもいい。わかっている。番外編という手段がある。
つまり、そういうことだ。


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外伝:恋した人はグレイトな人①~ザフト編~

お気に入り登録が1000件を超えたそうですね、驚きました。
これも皆さんのおかげです。ありがとうございます。
今回の番外編は予告通り本編でカットした話を編集したものなのでもしかしたら齟齬があるかも
しれません。(チェックはしましたが所詮私のチェックなので…)
番外編なので読まなくても支障はありません。ニコルメインなので‥
長くなりそうなので分割しました。なので今回戦闘は一切ありません。
そんなに甘くはないです。相手がディアッカですからね。
読者の皆さんに感謝を。


 

 

 

 

ニコルが彼、ディアッカ・エルスマンに出会ったのはアカデミーに入る前、父、ユーリ・アマルフィに連れられて行った最高評議会議員のパーティだった。某旅行ガイドで三ツ星を取得したことのあるホテルの一室で行われたそれはどの議員も配偶者や子供を連れ、次から次へと他の人に紹介しまわっていた。

 

「嫌なら来なくても良いよ」

 

とニコルは父に言われたが少し興味があったので付いて来たのだが、来なければ良かったと後悔した。何故なら多くの人が家の息子はどうとか、将来はどうするのかとか、ストレートに息子と結婚しないかと言う人もいた(その人はユーリがOHANASHIしに連れて行ってしまったが)ともかく、そういう場だったのでニコルは退屈していた。父の隙を突いて近寄ってきた大人の話をかわし部屋の隅で休んでいたニコルであった。が、父が戻ってきてどうしても後1人挨拶しておきたいからついて来てくれと言われたので内心、父には悪いが断ろうと思った。けれど最後なら、と思ってついて行くことにした。そこで会ったのがエルスマン親子だった。

 

『おお、アマルフィの。相変わらずだな、ふははははは!』

 

父親の方は金色の長い髪を首の後ろで一つに束ねていて肌は色白く、鼻下にチョビヒゲ?とかいうのを生やしている凄く元気な、なんともパワフルな人だった。息子の方は逆に金髪なのは同じだけど髪型はオールバックで、肌は小麦色をしていて眉間にシワを寄せていてなんだか怖そうな人だった。

 

「そういう君こそ相変わらず暑苦しいな」

 

と父が返すと

 

『ふははははは!褒めるでないわー!!』

 

そう言って横にいた息子の頭を殴った。

 

「痛っ何すんだ!?このクソ親父」

 

『それが親に言うことかー!!』

 

イキナリ喧嘩を始める二人。

 

(え?え?え?何がどうなっているの!?)

 

ニコルは混乱した。

 

『先程の事といい、少しは大人しくせんかーっ!』

 

「仕方なく来てやったんだから別にいいだろうが!」

 

『この馬鹿め!初対面でプロポーズするヤツがいるか!!』

 

「馬鹿は親父の方だ!あんな美人の未亡人がいたらアタックするしかないだろうが!!」

 

『むう、確かに‥』

 

《確かに、じゃなーい!!》

 

あんまりなやり取りつい、ツッコミを入れてしまったニコル。

 

「「‥‥」」

 

掴みあっていた二人が動きを止め驚いた顔でニコルを凝視する。

 

「‥えーと、あの、スミマセン!!」

 

居た堪れなくなったニコルが頭を下げ謝罪する。すると

 

『いやいや娘っ子よ、お主が謝る必要はないぞ?悪いのは‥』

 

「そうだゼ!悪いのは‥」

 

《コイツだ!!》

 

ハモった。

 

《‥‥》

 

「大人気ないゼ、評議員さん?」

 

『やれやれ、これだから近頃の若者は‥』

 

一度収まったのにまた再開しそうな雰囲気になるが‥

 

「いい加減にしてもらおうか。娘も困っている」

 

ユーリが止めてくれた。《スミマセンでしたー》素直に謝る二人。ユーリの方を見るとニコルに向かって笑いかけていた。父として面目躍如といったところか。その後は時間になり解散になった。

 

(あの人の名前を聞き忘れて、というか結局名乗らなかったので聞いておけばよかったな)

 

とニコル思った。まさかアカデミーで再会するとは思わなかったが‥あのパーティから数ヵ月後、ニコルはアカデミーに入隊した。切欠はナチュラルによるユニウスセブンへの核攻撃だった。ユニウスセブンは120あるコロニーの中の一つ、食料生産専用のプラントで宇宙で暮らすコーディネーターにとって必要不可欠な場所だった。他にも食糧生産用の農業コロニーは複数あるけどユニウスセブンは地球に輸出しないプラントの為のコロニーだった。当然、みんな民間の人で軍人なんかいなかった。なのに‥その後の報道によれば犯人はブルーコスモスとかいう主義者の集まりだった。でも彼らは反省するどころかこう言ったそうだ

 

「青き清浄なる世界のために」と。

 

それを聞きニコルは初めて人を憎いと思った。そんな理由でたくさんの人を殺したのか、と。ニコルが父に聞くとプラントは核で応酬はせずに話し合いで解決しようとしたそうだ。その間、地球の非プラント理事国から食料を輸入しようとしたりした。しかし結果は誰もが知る通り失敗に終わる。更に悪いことは続くもので食料輸出を増やせと通告してきたのだ。流石にプラントも我慢の限界が来てあの作戦を実行する。そう、ニュートロンジャマーの撒布である。もちろん、地球にいるコーディネーターにはプラントに戻るように通告した。けれど皆が皆簡単に戻れるはずがない。仕事や住むところの問題もあったからだ。結局プラントは地球に残る数少ない同胞を見捨てる選択をした。もちろん反対派もいた。コーディネーター5億人中プラントに住んでいるのは6000万人で地球にいる人の方が多いからだ(軍関係者含む)。けれど、多くのプラント市民はそれで我慢できるはずがなかった。寧ろ、地球に残っているのは裏切り者とする風潮があった。その後は誰もが知っている通り地球では深刻なエネルギー不足に陥り反コーディネーターの動きが拡大していった。もちろんアフリカ共同体や太平洋連合のように親プラント国家はプラントを擁護していたけど大西洋連邦とユーラシア連邦を中心とした地球連合とプラント間の争いは激しさを増していた。宇宙と地球のGDPが拮抗しているとはいえ、全人口150億人中コーディネーターは約5億人。兵士の数では圧倒的に不利だ。だからこそMSを開発したわけだが。

 

(入隊してから気が付いたけど以前のパーティに出席していた人が多い。

 アスラン・ザラにイザーク・ジュール。そして‥ディアッカ・エルスマン。

 自分でもどうしてそうしたのかはわかならないが、彼を見つけた時思わず声を掛けた)

 

「こんにちは。久しぶりですね」

 

『うん?』

 

彼が首を傾げたので覚えていないのでは?と思いニコルは改めて自己紹介をした。

 

「ニコル・アマルフィです。この前の最高評議会議員のパーティで会いましたよね?」

 

『パーティ?』

 

何と彼は覚えていなかったのだ。

 

「えっ!?本当に覚えていないのですか?」

 

『すまん、あの時はエザリアさんの事しか眼中になかったからな。

 野郎の事なんてまったく覚えていないんだ』

 

エザリアさんというのはイザークの母親の事だろう。挨拶もしたから覚えている。それよりも重要な事は‥

 

「野郎って、私は女です!!」

 

大声を出してしまったが仕方ないと思う。彼も驚いてはいるが。

 

『俺の聞き間違えか?君が女の子だと?』

 

「そうです!!」

 

『男の娘じゃなくって?』

 

「‥ニュアンスが違って聞こえますが私は女です!

 パーティの時だってドレスを着ていたじゃないですか!?」

 

声を荒げる私。何をムキになっているんだろう。

 

『ふむ。ちょっと失礼‥』

 

そう言って彼は私の両肩を掴み顔を覗き込んだ。突き放さなければ!と思う暇もなくディアッカはそのまま抱き付いてきた。

 

「~っっっっ!!?」(ち、近い、顔が近すぎる!!)

 

男の子がこんな事してきたのは初めてだったので私は錯乱し硬直してしまった。

 

(だってこの距離じゃあキスができる距離でっいや、そもそも~△※◆■○▽◎□▲■○▽◎)

 

そこには顔を赤くし意識がどこかへ旅立ちそうな少女と、少女に抱き付いて顔を近づけ匂いを嗅ぐ変態がいた。数分か数十分かどのくらいそうしていたのか定かではないが動きを見せたのはディアッカの方だった。

 

「‥‥」

 

ディアッカは無言のままニコルから離れ両手で頭を抱えしゃがみこみこう叫んだ。

 

「女の子だとー!?」

 

『だから、そう言ってるじゃないですか!!』

 

「嘘だと思って‥」

 

『なんで嘘だと思ったのですか?』

 

立ち上がり俯きながら言い訳をするディアッカ。

 

「髪短いし‥」

 

『他の女性も短いじゃないですか!』

 

「それに‥」

 

『それに、なんですか?』

 

「それは聞かない方が良い。君の為だ」

 

『余計に気になりますよ!?』

 

驚くべきことにニコルはディアッカと平然と会話をしていた。休み時間で人があまり通らない通路とはいえ、少女に抱き付き匂いを嗅ぐ変態と2人きりでいるとはニコルの混乱ぶりがわかるというものだ。ディアッカが色々言い訳をするがニコルにはそれが本当の理由とは思えずに食い下がる。

 

『本当の事を言って下さい!』

 

「ふう‥」

 

先程からこのようなやり取りが続きディアッカの方は早く切り上げたい心境なのだが、ニコルは納得しないので仕方なく本音を伝える。

 

「‥無いからわからなかった」

 

『は?』

 

最初の単語が聞き取れず聞き直すニコル。聞き返さなければ良かったと後悔する羽目にニコルはなるのだがこの時点ではそんなこと知る由もなかった。

 

「だから!胸が無かったから女の子だとわからなかったんだよ!!」

 

『…‥』

 

「大きさに拘らない俺でも無いのはちょっとな‥

 だがニコル、お前は大きくは無いもののしっかりあったな!

 軍用ブラ?とかいうので小さく見えたんだな。俺とした事がウカッリしてたぜ!!」

 

何が嬉しいのかディアッカは興奮気味に語りだす。ニコルの目から光が失われているのも知らずに‥

 

「まあ、そんなわけでお前を誤解していたが大丈夫だ。感触も確認したし、もう間違わないゼ!!」

 

『ディアッカ』

 

「うん?」

 

ディアッカは振り返ろうとしたがそのまま意識を失い床に倒れた。

 

『…‥』

 

後にこの現場を目撃した人はこう語った。

 

「金輪際、女性は怒らせないよう心に誓います」

 

結局、入隊してからのファーストコンタクト以来ニコルとディアッカに特別な事は何もなかった。無かったが、唯一特筆する点を挙げるとするならばニコルの事をディアッカが女の子として接するようになったことだろうか。ディアッカとしては自分の勘違いがわかったので普通に接していただけだがニコルの方はそうではなかった。ディアッカの事を目で追うようになったし、声を掛けられれば顔が赤くなったりしていた。無論、そういうのに敏感な人は気付いた。さて、ここでディアッカの話をするのは大変恐縮だが少し触れさせてもらう。アカデミー内でのディアッカの評判はイザークの女房役、変人、変態、射撃だけ、MS操縦だけ、グレイト!などなど、あまり良くは無かった。(表立っての批判は無いが)そんなディアッカを美少女のニコルが好きになった?という噂が一時期あったのだが本人達の耳には入らなかった。名前に“ア”のつく人や“イ”のつく人が抑え込んだらしいが真相は定かではない。そして話はジブラルタル基地へと飛ぶ。…決して作者が面倒になったからではない。

 

 

 

―――ザフト軍ジブラルタル基地にて。

地球に何とか無事に降下し挨拶回りや報告を終わらせたニコルとディアッカであったが、重大な問題が持ち上がる。

 

「相部屋、でありますか?」

 

『うむ。君も知っているとは思うが我々はオペレーション・スピットブレイクの準備段階にある。

 当然、各地から部隊が集結しそれらの人員が宿舎に泊まっているわけだが‥

 生憎、宿舎の方はいっぱいでね。

 だが最高評議員のご子息で赤服の君達を野宿させるわけにもいかん。

 そこで何とか一部屋だけ空ける事が出来たのだがこれで限界でね、申し訳ないが2人1部屋で

 我慢してもらう』

 

「ハッ!お心遣い、ありがとうございます!!」

 

『うむ。君達には待機命令が出ているとは思うが、街への外出許可も1日だけだが出ている。

 有意義に使いたまえよ』

 

「ハッ!重ね重ねありがとうございます!!」

 

ニコルがお花摘みに出ている頃(ト○レに非ず)、ディアッカは呼び出しを受け宿泊に関する連絡事項の申送りを受けた。そしてそれをニコルに伝える。

 

「ところでニコル、大変なことに気付いてしまったのだが」

 

『大変なこと?何でしょう?』

 

「この基地に滞在中、俺達は相部屋らしいのだが、これって同棲みたいじゃネ?」

 

『え?』

 

『え?』

 

『‥ええ!?』

 

 

 

―――宿舎のある一室にて。

 

 

「いや~どうなることかと思ったが、何とかなってよかったゼ。な、ニコル?」

 

『ええ、そうですね‥』

 

ディアッカは饒舌だった。相部屋とはいえ6畳もの広さがありトイレ、シャワー付きの部屋に満足しているからだ。構造としては入室しすぐ左手にシャワー、部屋奥にベッドというものだ。だがディアッカに比べるとニコルの方は借りてきた猫のように大人しい。

 

『……』

 

「どうしたんだ、ニコル。元気が無いぜ?あっわかった!このパジャマが気に入らないんだな?

 確かに白色Tシャツに黒色短パンというのは俺もどうかと思うが。

 まっ支給品だから我慢するしかないな」

 

『いえ、パジャマはいいんですけど。いや良くは無いけど‥』

 

「うーむ?じゃあベッドか!心配するな。一つしか無いが大丈夫、俺は寝相良いんだぜ。

 イビキも問題ない。イザークが証人だ」

 

『え!い、一緒に寝るの!?』

 

「おいおい、俺に床で寝ろと言うのか?そりゃないぜ」

 

『で、でも!!そんなの、まだ早いよ‥』

 

ディアッカは意識していないのか平然とした態度で、ニコルは意識し過ぎて暴走気味であった。

 

「何が早いのかわからんが明日は街に出るんだ。さっさとシャワー浴びて寝ようぜ」

 

『‥‥』

 

ディアッカの普通過ぎる態度に腹が立ったニコルは少しディアッカを懲らしめてやろうと思いつきそれを実行する。後悔するのは自分だというのにディアッカに対しては冷静でいられないニコルであった。

 

『♪~♪~♪』

 

ディアッカの慌てる様子が目に浮かびご機嫌なニコル。

 

(そろそろかな‥)

 

シャワー室の扉を少し開け、聞こえるように声を出す。

 

『ディアッカ!聞こえますか?緊急事態です!!』

 

ニコルが考えた事はこうだ。

 

①ニコルがディアッカを呼ぶ。

②ディアッカが駆けつける

③ニコルはシャワー途中なので扉から顔を出している状態

④それを見て焦るディアッカ

⑤作戦成功! 

 

‥なんとも浅はかな考えである。ディアッカの今までの行動を思い返せばどうなるかわかるはずなのに。恋は盲目とはよく言ったものだ。果たしてニコルの声を聞き駆けつけたディアッカの行動は!?

 

「どうしたニコル!?」

 

『え?』

 

呆然とするニコル何故なら、ディアッカがシャワー室の扉を全開にしたからだ。

 

「『‥‥‥』」

 

無言で見つめ合う2人。何故こうなったかおわかりだろうか?答えは簡単。ニコルの演技が上手く出来過ぎたからだ。

 

ディアッカの行動はこうだ。

 

①ウトウトしていたらニコルの声が

②緊急事態。まさか侵入者か!?

③美少女のシャワーを覗くとは許さん!

④ニコルが扉から顔を出しているのに気付かない

⑤扉を開ける←今ここ 

 

「『‥‥‥』」

 

ニコルは予想外の事にフリーズし、ディアッカはニコルの裸を前にして動けずにいる。

 

「『‥‥‥』」

 

長い沈黙を破るのはこの男、ディアッカであった。

 

「‥ニコル」

 

『は、はい!』

 

「見てないからな!」

 

『え?』

 

「俺は見ていない。そう、何もなかった。OK?」

 

『えっと‥』

 

「OK?」

 

ニコルの両肩を掴み互いの唇が触れそうな距離まで顔を近づけ念押しするディアッカ。

 

『お、OK』

 

頷くニコル。

 

「よし、俺は仮眠してるからシャワー空いたら教えてくれ」

 

『うん、わかった‥』

 

そう言ってベッドに戻るディアッカ。ディアッカが立ち去った後でニコルは

 

(‥‥ハッ!?あれ?今のおかしくない?え?私、裸みられたよね?え?????)

 

錯乱状態になりながらもシャワーを浴びるのだった。はて?前にも同様なことがあったような‥一方のディアッカはというと

 

(ちっくしょー!!テンパってて肩から上しか見れなかった!!)

 

合法的?に美少女の裸を見るチャンスを逃したディアッカは大変悔しがった。ニコルにとっては幸いであったが。ディアッカが悶々としているとニコルがシャワー室から出てきてディアッカにシャワーを浴びるよう促す。ディアッカは素直に応じシャワーを浴びに行く。残されたニコルはというとショックを受けていた。

 

(私の裸を見たはずなのに無反応なんて‥やっぱり私には魅力が無いのかなぁ)

 

裸を見られたニコルにとってディアッカの態度は信じがたいものだった。まあ、勘違いであるのだがこの場には勘違いを正せる者がいないので結局、ニコルはディアッカが出てくるまでしばらくの間思考のループに嵌っていた。

 

 

―――その日の夜 就寝時間になり仲良くベッドに入り寝ている2人。‥いや、1人は起きていた。そう、ニコルだ。

 

(グッスリ寝てる‥何だか私一人だけが緊張していて馬鹿みたい)

 

ニコルはディアッカと一緒のベッドに寝るということでドキドキしていたのにディアッカはすぐに寝てしまったのだった。

 

(む~)

 

膨れてみるが相手は夢の中。気付くはずもない。ちなみに今の位置関係であるがベッドの窓際がニコルで入口側にディアッカがいる。ディアッカはニコルに背を向けた状態、入口側に体を向けておりニコルはディアッカの方に体を向けている。寝つけないニコルは最近の‥ヘリオポリス襲撃から今日までを振り返る。ディアッカと一緒の任務に就き、Gの操縦方法では頼りにされ、アルテミスでは危なくなったら一生守ってやると言われ(誇張)、ストライクにやられた時はやり返してくれ(妄想)、抱きしめられながら地球に降下し(MSが)、裸を見られ(勘違い)、そして今に至る、と。

 

(~っ!!)

 

身悶えるニコル。どうしたんだニコル、キャラが違うぞ!?どこからかツッコミが入りそうなほど今のニコルはおかしかった。理由は繰り返しになるので言うまい。ニコルがそんなことをしていると‥

 

「うーん」

 

ディアッカが寝言を言いながら寝返りをした。するとどうなるか。ニコルはディアッカの方を向いていたので

 

(~っ△※◆■○▽◎□▲■○▽◎!?)

 

当然、ディアッカと向き合うことになる。本日一体何度目だろうか?実は狙っているのか?しかし今回はそれで終わらない。寝相か?寝相なのか!?ディアッカはニコルを抱き寄せ、抱きしめたまま寝ている。ニコルは脱出を試みるがディアッカは離さない。恋する乙女ニコルには堪ったものじゃない。だが物事には限界がある。人もまた然り。許容値を天元突破したからだろうか、ニコルは意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでしょうか?皆様の期待通りとはいかないかもしれませんが‥
次も番外編の予定です。デートイベントですね。
相手がディアッカなので盛り上がらず終了するかもない。今はニコルの一人相撲状態ですからね。


いつものごとく修正するかもしれませんがそれは活動報告にて。


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外伝:恋した人はグレイトな人②~アークエンジェル編~

始めに謝罪します。すみません、予告詐欺です。
予告しておいて書くうちに内容が変わってしまった。慣れないことはするもんじゃない。
今回は一応ニコルサイドの話なので読まなくても本編には支障が出ないはずです‥たぶん。

お待ち頂いた読者の皆様に感謝を。


―――翌朝。先に起床したのはニコルの方だった。窓から入る朝日のせいか、ベッドが違うせいか早起きするニコル。習慣とは怖いものでいつものように寝ぼけ眼で正面を見ると‥

 

「グゥ‥レイトォォ」

 

何かが臀部に触れた感じがした。同時に自分ではない声が聞こえ、意識が覚醒するニコル。

 

「え?‥えええ?!?」

 

ニコルは目の前の光景に驚愕した。何故なら自分の目の前にはディアッカの顔があったからだ。

それも唇が触れそうなほどの距離で。

 

(ど、どうなっているの!?)

 

寝る前は確かに自分の右側にいたはずのディアッカが起きてみたら目の前にいる現状に動揺を隠せないニコル。ただ目の前にいるだけではない、もっと深刻な問題があった。それは――

 

(ディアッカのて、手が私のお尻に~!???)

 

そう、ディアッカは左腕でニコルに腕枕をし右手はでニコルの尻を触っているのだった。一体どうしたらこのような体勢になるのかわからないがニコルが錯乱するにはこれ以上のものは無いだろう。

 

(わ、私の‥え?何で??どうして????)

 

もしやディアッカは起きているのではないかと思われるかもしれないがこの時ディアッカは本当に寝ていた。だが更なるピンチがニコルを襲う。なんとディアッカがニコルに抱きついてきたのだ。

 

(っ~△※◆■○▽#◎□▲¥■○▽◎*!?)

 

ピンチがピンチを呼ぶというのか?次々とニコルへ問題が降りかかる。ニコルが脱出しようとすれば余計に拘束が強まる。ニコルにはなす術がなかった。

 

(もう、どうにでもなれ‥)

 

現状の打破を諦め脱力するニコル。起床してどのくらい経過したのだろうか、ニコルがウトウトし始めたその時ディアッカが目覚めた。

 

「「‥‥」」

 

ディアッカは寝起きだからかボーっとしている。

 

「おはようニコル」

 

ディアッカが挨拶するとニコルも挨拶を返してくる。

 

「お、おはようございます‥」

 

「‥何だ、先に起きてたのか?」

 

「うん‥」

 

「そうか‥‥うん?」

 

上半身を起こし目を擦りながらも何かに気が付いたディアッカが動きを止める。

 

「うおおおぉ!?」

 

某映画の主人公のように後ろに反りベットから落下するディアッカ。

 

「ぐはっ」

 

後頭部を強打し床に転がり悶絶するディアッカ。

 

「だ、大丈夫?」

 

流石に見過ごせないのかニコルが声をかける。

 

「‥ああ、なんとかな」

 

「すごいリアクションでしたね」

 

「俺は芸人じゃないっての。まったく‥」

 

後頭部の痛みで完全に目が覚めたディアッカはニコルに状況把握の為にニコルに問う。

 

「それで?どういう状況なんだこれは?」

 

「覚えてないのですか?」

 

「何が?」

 

「あの、色々と‥」

 

先程のことを思い出し恥ずかしくなったニコルは顔を赤くし俯いてしまう。

 

「色々ねぇ‥‥そうだな、夢は見たな」

 

ベットの上に腰掛けニコルに答える。

 

「夢、ですか?」

 

「ああ。よくは覚えてないが何か柔らかいものを揉んでいたような‥「忘れろー!!!!」ガッ」

 

反射的にディアッカの顎に一撃を入れてしまったニコル。予期せぬ攻撃を防ぐことはできずディアッカは再び眠りに就いた。一方ディアッカを倒してしまったニコルはというと

 

「また、やっちゃった‥‥」

 

落ち込んでいた。まさか好きな相手を気絶させるとは一体どこの暴力ヒロインなのだニコルよ‥

 

 

 

 

 

―――ディアッカが無事復活を遂げ食堂にて朝食をとる2人。いつもならディアッカが下らない話をするのだが今日は違った。2人とも無言で食べ続けているのだ。

 

「「‥‥‥」」

 

「あの~に、ニコルさん?」

 

この空気に耐えられなくなったディアッカがニコルに恐る恐る話しかける。

 

「何でしょう?」

 

「‥げ、元気ですかー!?」

 

「ええ、とっても。ディアッカはいつも元気ですね」

 

「もちろんだぜ!」

 

「ふふっ‥」

 

なんとか場の空気を和ませることに成功したディアッカは俺のターン!とばかりにギアを上げていく。

 

「しっかし、残念だったな。外出ができなくなるなんてなぁ~」

 

「はい?」

 

瞬間空気が凍った。アクセル全開で発進直後に地雷を踏んでしまったディアッカ。もはや自爆である。

 

「ど、どうした?」

 

「別に‥」

 

ディアッカからすれば何でも無い話題だったがニコルにとっては重要なイベントだったのだ。

 

(初デートができると思ったのに~)

 

せっかく訪れたチャンス。少しでも進展を!と意気込んでいたのに任務が入ってしまったのだ。

 

「そんなに買い物行きたかったのか?まあ、ニコルも女の子だしな」

 

鈍感なディアッカは置いといてニコルの気は晴れない。

 

「‥‥」

 

「‥買い物なら今度付き合ってやるよ」

 

「え?」

 

「だから、買い物。行きたいんだろ?」

 

「それは‥でもいいの?」

 

「ああ。それでニコルが機嫌を直してくれるならな」

 

見るからに落ち込んでいるニコルを励ますべくデートに誘うディアッカ。まあディアッカはデートと思っていないが。

 

「私とでいいの?」

 

「何が?」

 

「その、デ‥買い物」

 

デート、と言おうとしたが恥ずかしくて言えなかったニコル。

 

「もちろんだぜ!」

 

即答するディアッカ。

 

「じゃ、じゃあ、よろしくお願いします」

 

「おう!」

 

「よし、さっさと朝飯食べて仕事しますかぁ」

 

「うん!」

 

食堂に着いた時とは正反対のテンションのニコル。

 

「ところでさぁ‥」

 

「うん?」

 

「当然、買う予定の物は水着だよな?」

 

「何で!?」

 

「え、違うの?てっきり海で泳ぎたいのかと思って‥」

 

「違いますよ!」

 

「そうか、残念だなぁ、折角ニコルの水着姿が拝めると思ったのに‥」

 

「ええ!?」

 

ニコルの顔が見る見るうちに紅潮してゆく。

 

「何を言っているのですかディアッカは‥わ、私は水着なんて着ませんから!」

 

「そりゃ残念‥」

 

本当に残念そうに肩を落とし朝食を食べるディアッカ。

 

「ちなみに‥ディアッカはどんな水着が好きなの?」

 

「うん?」

 

「いや、あの、参考に。

 あくまで参考までに聞くんだけどディアッカはどんな水着が私に似合うと思うの?」

 

「うーん、そうだなぁ‥」

 

さて、こんなやり取りをしている2人だが、ここは食堂である。多くの兵士が利用する食堂である。大事な事だから2回書きました。つまり何が言いたいかと言えば

 

「あの野郎、イチャつきやがって!」「これだからエリートは」「男装の美少女キター!!」

「あら、イイオトコ♡」「あらあら、初々しいわね‥」

 

注目されまくりなのだ。当の本人達は気付いていないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――時間は一気に飛びニコルがアークエンジェルに投降した後の話。

 

 

「あのー先生、すみません‥」

 

「っ!」

 

アークエンジェル医務室に暫定処置として拘束されていたニコルは軍医が来たと思い声を掛けたのだが、そこにいたのはミリアリアだった。ナタルからトールがMIAと判定され悲しみに暮れるミリアリアはサイに付き添われ医務室にて休むことになったの。しかし間が悪くちょうど軍医は席を外していた。見つめ合2人。

 

「えーと、あの、すみません。先生だと思ったもので‥」

 

ニコルに驚き硬直するミリアリア。

 

「あ、繋がれているので大丈夫ですよ。危害を加えるつもりもありませんから。

 ですから、安心して下さい」

 

微笑みながら話しかけるニコル。

 

「‥‥」

 

なおも無言のミリアリア。

 

「うーん、困りましたね~。そうだ!何かお話しましょう。

 なんだか泣いていたようですので、困ったことがあれば相談に乗りますよ?

 まあ、こんな状態で言っても説得力ないですけど‥」

 

「…」

 

「本当に大丈夫ですか?」

 

心配し声を掛けるニコルであったが突如ミリアリアがナイフを持ち出しニコルに振り被った。

 

「っ!?」

 

筋トレの腹筋の要領で上半身を起こし、咄嗟に回避するニコル。

 

「一体何を!?」

 

息が荒く興奮状態のミリアリア。騒ぎを聞きつけ戻ってきたサイが慌ててミリアリアを羽交い絞めにする。

 

「何してるんだ、ミリィ!!」

 

「トールが‥トールがいないのに何でこんな奴がここにいるのよー!!」

 

絶叫するミリアリア。

 

「落ち着くんだミリィ!」

 

(トール?)

 

トールが誰だかわからないニコルは2人の様子を窺っていた。すると入口の方から銃を操作する音が聞こえたので振り向くとニコルに銃口を向けたフレイが立っていた。

 

「コーディネーターなんて‥みんな死んじゃえばいいのよ!!」

 

引き金を引き発砲するフレイ。

 

「っ駄目ー!!」

 

フレイに飛びかかり制止するミリアリア。しかし引き金は止まらず銃弾は発射され天井ライトを破壊する。ミリアリアは涙を流し嗚咽しながらもフレイを取り押さえる。呆然とするフレイからサイが銃を取り上げる。

 

「何で邪魔するの?自分だって殺そうとしたじゃない!?」

 

フレイがミリアリアを問い詰める。

 

「あんただって憎いんでしょう!?トールを殺したコーディネーターが!!

 あんただって、私と同じじゃない!?」

 

「…違う、違う!!」

 

自分は貴女は同じだと主張するフレイをミリアリアは否定する。

 

「おい、なんだこの騒ぎは!?」

 

この段階になってやっと2人のアークエンジェルクルーが対応の為入室してくる。

 

騒ぎの後、ニコルは部屋を捕虜用の場所へ移された。数時間後。ミリアリアとのやり取りを思い出し悩むニコル。

 

「憎しみの連鎖か‥‥」

 

ニコルの許へ、ミリアリアが訪れる。

 

「うん?」

 

「ッ」

 

ニコルが気付くとミリアリアが踵を返してしまう。

 

「待って下さい!」

 

ニコルに呼び止められ振り向くミリアリア。

 

「えっと、先程は何か気に障ることを言ってしまったようで。すみませんでした」

 

ニコルは頭を下げ謝罪する。

 

「スカイグラスパーのパイロット」

 

「スカイグラスパー?」

 

そんなニコルを見兼ねてかミリアリアが語りだす。

 

「戦闘機よ。青と白の。島であなた達が攻撃してきた時に‥」

 

「2機あったはずですが、どちらの?‥」

 

「何も付けていない方よ」

 

「‥‥それは私じゃない」

 

「えっ」

 

「私が攻撃したのは2機のうち1機でしたがストライクの換装パーツを付けていた方です。

 それに撃破まではしていません。だから私じゃない‥」

 

驚きニコルを見つめるミリアリア。視線に気づいたニコルが問う。

 

「どうしたのですか?私を殺しに来たのではないのですか?」

 

「…」

 

結局ミリアリアは何も答えず、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

―――連合がオーブに最後通牒を迫った後の事。ニコルの許へミリアリアが訪れる。手にはザフトのパイロットスーツが。

 

「こんにちは。今日はどうしたのですか?」

 

「‥‥」

 

「あっもしかして移送先でも決まったのですか?」

 

明るくニコルが尋ねる。

 

「戦闘になるの。この艦」

 

「え?」

 

「連合がオーブを攻めてくるんだって。だから、貴女はもう釈放していいんだって」

 

パイロットスーツを床に置き立ち去ろうとするミリアリア。

 

「ちょ、ちょっと待って下さい!」

 

ニコルはミリアリアを追いかける。廊下を歩くミリアリアの後に続くニコル。

 

「戦闘ってどういうことなんですか?」

 

「連合が攻めてくるからアークエンジェルは戦うの。

 だから捕虜の貴女をいつまでも乗せておいても仕方ないの」

 

「でも何故この艦がオーブの味方を?」

 

「オーブが連合に協力しないからよ」

 

「‥‥なるほど、中立だからですか。

 しかしそれではこの艦がオーブの味方をする理由になりませんよね?」

 

「言い忘れていたけどこの艦、脱走艦なの。だから世話にをしてくれたオーブに協力するの」

 

「そんなわけで、悪いんだけど後の事は自分でやってもらえる?」

 

「事情は理解しました。えーと、ブリッツは返してもらえ‥ないですよね、やっぱり」

 

「当然でしょ?元々は連合の物なんだから。モルゲンレーテが持って行っちゃったわよ」

 

「ですよね~」

 

困り果てるニコル。ニコルを見つめ

 

「こんな事になっちゃって、ごめんね」

 

そう言い進むミリアリア。

 

「ミリアリアも参加するのですか?」

 

「同然でしょ?私はCIC担当なんだから。それに‥オーブは私の国なんだから」

 

「ニコルが例の人と上手くいくことを祈っているわ」

 

そう言い残してミリアリアは去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――カズイ等の艦を降りる者達が退艦、避難が完了してからしばらくして、オーブ近海に展開していたブルーコスモス盟主のアズラエル率いる連合軍からミサイルが発射され戦端は開かれた。

 

対するオーブは海上にクラオカミ、イワサク、クラミツハ級護衛艦、ソコワダツミを筆頭にしたイージス艦を。海岸沿いにはリニアガンタンク、M1を展開し迎撃にあたる。アークエンジェルもオーブを援護する為にフリーダムとストライクを発進させ、自らも戦線に加わる。フリーダムは圧倒的な性能とパイロットの技量も相まって連合のMS、ストライクダガーをあっという間に撃破してゆく。一方のストライクは拙いながらもストライクダガー部隊をアグニで薙ぎ払っていた。そのストライクであるが、その姿は通常のエールストライカーでは無かった。ソード、ランチャー、エールと全てのストライカーを装備した状態、通称パーフェクトストライクと呼ばれる形態で出撃していたのだった。

 

この形態は以前キラから却下された案ではあったのだがパイロットのムウ・ラ・フラガの強い希望で実現した。フラガによればMSで今回が初陣だからどの距離でも対応できるようにしたかったと事だ。結局マードックら整備班とモルゲンレーテ技術員の協議によって予備バッテリーをストライカーパックの後部に複数取り付け稼働時間の延長を実現した事、OSをフラガ専用に調整した事で艦長のマリューから出撃の許可が出て今に至る。

 

戦闘の様子を見つめるニコル。連合の新型3機が攻めてくる。その内の1機、カラミティが山間部に着地する。ニコルが山に視線を移すと人影が見えた。

 

「えっ!?」

 

驚くニコル。

 

(逃げ遅れた人がいた?)

 

ニコルは近くに停めてあるバイクで山に向かう。スーツ姿の男女と私服の子供が山の中を走っていた。

 

「父さん、このままじゃあ‥」

 

「大丈夫だ、シン。もう少しで港に出るはずだ」

 

そう子供に言い聞かせながらも内心、現在地がわからず不安になっていた男性に突如声が掛けられる。

 

「ここは危険ですよ!避難して下さい!!」

 

突然声を掛けられ驚く親子。

 

「誰だね君は?」

 

男性が振り返ればモルゲンレーテの制服を着た少女がいた。

 

「そんなことより早く避難して下さい!ここは危険です!!」

 

「連合の目標は軍関連施設だろう?」

 

「そんなわけないでしょう!?現にここは戦闘地域になっているんですよ!!」

 

「そんなバカな‥」

 

ショックを受ける男性。

 

「とにかく、ここは危険なんです。私に付いて来てください、早く!」

 

「あ、ああ‥」

 

渡りに船とばかりにニコルに先導され移動を開始する親子。

 

「はあ、はあ、はあ‥」

 

「マユ、頑張って!」

 

息を切らす少女に母親が声を掛ける。幼い少女に山道を走らせることは体力的にも無理があったのだ。その時少女の足がもつれ、ポケットから携帯端末が落ちてしまう。

 

「あ~マユの携帯!」

 

「そんなの良いから!」

 

「いや~!!」

 

携帯端末は斜面下の方まで転がっていってしまった。取りに行こうとする少女を母親が諌めるが駄々をこね足を止めてしまう親子。

 

「私が取ってくる!」

 

「ちょっと、シン!」

 

母親の制止を振り切り斜面を滑り降りて樹の根元に引っかかった携帯を拾いに行く少女。

 

「1人では危険です!」

 

少女の後を追うニコル。携帯を拾い上げる少女にニコルは注意する。

 

「君は何をしているんですか!?」

 

「別にあんたも一緒に来てくれなんて言ってないだろ!」

 

ニコルに反発する少女。

 

「私は軍人です。一般人を見捨てるわけにはいきません」

 

「あんたには関係ないだろ!!」

 

ニコルと少女が言い合いになりかけた次の瞬間、山に砲撃が加えられた。

 

「っ!!!!!!!!?」

 

爆発音が聞こえ、ニコルは咄嗟に身を屈めるも爆風によって吹飛ばされ意識を失ってしまう。

 

 

 

――――「‥うっ」ニコルが意識を取り戻す。

 

「ここは‥痛っ」

 

痛みから意識が完全に覚醒し、身体を確認すると所々に擦り傷や切り傷、打撲の跡が見られた。

 

(一体、何が?)

 

ニコルが周りを見渡すと少し離れた所に船と避難民が確認できた。そして先程まで居たと思われる山は砲撃によって半分ほど抉られ樹木は倒れ、所々が燃えていた。

 

「これは‥」

 

酷いと呟きそうなところで、戦闘の音が聞こえ上空に目をやるとトリコロール色をした背部に青色の翼を持った機体が連合の機体と思われる翼を持った黒色の機体と鎌を持った緑色の機体と戦闘をしていた。

 

「なんてデタラメな‥」

 

空中で舞うように戦闘している3機を見て思わず声が出てしまうニコル。

 

「っそうだ、あの人達は!?」

 

先程出会った親子の事を思い出し捜索するニコル。最初に発見したのは少女の方だった。

 

「君、しっかりして!」

 

うつ伏せに倒意識を失っている少女を仰向けの体勢に変え肩を叩き呼びかける。

 

「‥‥ぅう」

 

何度かそうしていると少女が意識を取り戻す。

 

「気が付きましたか?私が分かりますか?」

 

「‥っくぅ」

 

「自分で歩けますか?」

 

「そ‥うだ、マユ‥‥マユは!?」

 

体を起こし視線が定まっていない状態で叫ぶ少女。

 

「え?」

 

「マユー!マユー!!」

 

「ちょ、ちょっと‥」ニ

 

コルを無視し家族を探し始める少女。

 

「マユー!!」

 

「ここは危険です、捜索は別の人に‥」

 

「っ!!?」

 

山の方へ走り出した少女が突然驚愕し棒立ちになる。

 

「何が?」

 

少女の見つめる先にニコルも視線を向けると――

 

「あ、ああ‥マユ‥‥父さん‥‥母さん‥」

 

そこには爆発を近距離で受けたのか、手足や首が通常ではありえない方向に折れ曲がり、または千切れ、全身から大量に血を流し倒れている親子の姿があった。

 

「そんなっ‥」

 

ニコルも絶句せざるを得ないほどの光景だった。

 

「大丈夫か!?」

 

こちらの様子に気付いたオーブ将兵2人が駆けつける。

 

「おい、君!おい!!」

 

1人の年配将兵が少年の身体を揺すり声を掛けるが、少女はそれに気付いていないようだった。

 

「っうぅ、くっうう‥」

 

少女はその場に蹲り、右手に持ったピンク色の携帯を握り締め声を押し殺し泣いていた。

 

 

「うわあああああああああああっ!!!!」

 

 

堰を切ったように少女の咆哮が木霊する。その場にいるニコルも将兵も誰も少女に声を掛けられなかった。

 

(‥‥‥)

 

ニコルもなんて声を掛けていいかわからなかった。だがニコルは自分がやるべき事が見つかった気がした。

 

「‥将兵さん、この子をお願いします」

 

「それは構わないが、君は?」

 

「私にはやるべき事が見つかりました。だから、行かなくちゃ!」

 

年配の将兵に少女を任せモルゲンレーテに戻ろうと走り出すニコル。

 

「待ちたまえ!」

 

「すみません、急がないと!」

 

「あれを使いたまえ」

 

「え?」

 

将兵が指し示した先にはゴムボートがあった。

 

「走って山を移動するよりも海岸沿いを突っ切った方が早い」

 

「よろしいのですか?」

 

「急ぐのだろう?」

 

「ありがとうございます!」

 

年配の将兵に礼を言ってモーターボートに乗り込みモルゲンレーテに向かうニコル。

 

「トダカ一佐、よろしかったのですか?」

 

若い将兵が問いかけるが

 

「フン、どうせ使わない物だ。それよりもこの少女を避難させるぞ」

 

「了解しました!」

 

将兵は少女の避難を優先させた。モルゲンレーテに戻ってきたニコルは格納庫に向かう。モルゲンレーテの制服のおかげか、戦闘中だからかブリッツの保管場所は簡単に教えてもらえた。

 

「よしっ」

 

ミリアリアや先程の少女とのやり取りが頭を過ぎる。

 

「今私にできる事を!」

 

ニコルはブリッツを起動しミラージュコロイドを展開させ発進した。

 

 

――――オーブ海岸ではアークエンジェルが奮戦していた。しかしアークエンジェルといえどもMSの援護無しでは全てに対抗できるわけもなく被弾してゆく。VTOL戦闘機スピアヘッドが隊列を組みミサイルを放つ。イーゲルシュテルンで迎撃するが弾幕を潜り抜けたミサイルがアークエンジェルへと向かう。被弾を覚悟するアークエンジェルクルーだがアークエンジェルの後方からビームが撃ち込まれミサイルを撃ち落とした。

 

「えっ」

 

驚く艦長のマリュー。モニターを確認するとそこにはミラージュコロイドを解除し佇むブリッツが。

 

「ブリッツ?」

 

サイが呟き通信が入る。

 

「援護します。アークエンジェルは下がってください!」

 

「あの子‥」

 

ミリアリアが呟く。――ブリッツ参戦後も戦闘は続く。

 

「こんの~」

 

ブリッツがビームでミサイルを撃ち落とす。

 

「ええーい!」

 

フラガがシュベルトゲベールでストライクダガー3機を撃破する。

 

「数だけいたって!」

 

ストライクの後ろから来た3機をブリッツが倒す。オーブのM1部隊も戦闘に慣れ始めた頃、優勢だった連合の部隊が撤退を始める。

 

(撤退?)

 

連合の行動に疑問を持ったがオーブ側も撤退命令が出たため、最低限の警備部隊を残し補給に戻る。

 

「ふう‥」

 

ヘルメットを外しコクピットハッチから出て外の空気にあたるニコル。スラスター音が聞こえた方向を見るとフリーダムと赤色の不明機が向かい合って着陸するところだった。ニコルも他のクルーに混じり駆けつける。MSから降りた2人は見つめ合う。

 

(あれは‥アスラン?)

 

ニコルや多くの人が見つめる中、何やら会話をしていたキラとアスランであったがカガリの乱入によってそれも中断されてしまった。

 

(今気付いたけど‥フリーダムのパイロットは前に見たモルゲンレーテの女の子じゃないかな?)

 

ディアッカ殴打事件の原因の為、良く覚えていたニコルはそんな事を考えながら3人を見つめていた。

 

 

 

 

―――MS格納庫内にて

 

「しかし、それはっ!」

 

「‥」

 

キラの覚悟を聞き驚くアスラン。ジャスティスの足元でアスランとキラの会話を盗み聞きするニコル。

 

「たとえ守るためでも、銃を撃ってしまった私だから‥」

 

「キラ‥」

 

(昔からの知り合いかな?)

 

そんな事を思っているとミリアリアが走っていくのが見えた。

 

(ミリアリア?)

 

一瞬ミリアリアを追いかけようと思ったが、アスラン達の話の方が気になった為その場に留まるニコルであった。

 

 

 

――各々が補給を済ませ休んでいると施設内に警報が鳴り響く。ニコルもパイロットスーツに着替え格納庫に向かうとキラとアスランが話し込んでいた。

 

「‥でも、勝ち目がないから戦うのをやめて、言いなりになるって、そんなことできないでしょ?」

 

「キラ‥」

 

「大切なのは何の為に戦うかで、だから私も行くんだ」

 

階段を上るキラ。

 

「本当は戦いたくなんかないけど、戦わなくちゃ守れないものもあるから‥」

 

「‥」

 

「ごめんね、アスラン。話せて嬉しかった」

 

そう言い残しフリーダムに搭乗するキラ。すぐに起動し歩行で格納庫から出てゆくフリーダム。残されたアスラン。

 

「‥」

 

「参りましたね‥」

 

悩んでいるアスランの後ろからニコルが声を掛ける。

 

「ニコル!?」

 

予期しない人物との再会に驚くアスラン。

 

「そんなに驚かなくてもいいんじゃないですか?」

 

「いや、しかし‥」

 

「まあ、アスランを弄るのはここまでにして‥「おい!?」どうするつもりですか、アスラン?」

 

アスランのツッコミを無視し話を続けるニコル。

 

「‥俺はアイツを!アイツ等を死なせたくない!!」

 

キラとカガリの様子を思い浮かべ答えるアスラン。

 

「まさかのハーレム宣言とは。流石です、アスラン」

 

「何でだよ!?」

 

「え、違うんですか?」

 

「違うに決まっているだろ!!」

 

身振り手振りで必死に否定するアスラン。

 

「でも‥カガリさんとキラさんと近寄り難い空気を出していたじゃないですか」

 

「出してないよ!?さっきからニコルどうしちゃったの?」

 

「あっ私、もう行きますね」

 

「おい!?」

 

投げっぱなしで会話を打ち切り出撃準備に向かったニコル。残されたアスランはというと

 

「あいつ、ディアッカに似てきたな‥」

 

新たな問題に頭を悩ませるのであった。

 

 

 

――その後アスランはキラを、ニコルはアークエンジェルを援護し戦闘するもまた連合側から撤退し、ウズミからアークエンジェルへカグヤ集結命令が出たため戦闘は中断された。

 

 

―――カグヤにて

 

「住民の避難は完了した。支援の手もある。後の責めは我々が負う」

 

「お父様!」

 

「このまま進めば世界はやがて、認めぬ者同士が際限なく争うことになる。

 そんなもので良いか?君達の未来は。

 別の未来を知る者ならば今ここにある小さな火を抱いて、そこへ向かえ‥」

 

ウズミはオーブが負ける事を覚悟し、同じ志を持ったアークエンジェルを宇宙に上げる事を決意したのだった。マスドライバーでの打ち上げ準備が進む中、MSパイロットのニコル、アスラン、キラの3人が自らの思いを伝える。最初に切り出したのはニコルだった。

 

「本来であれば私たちはこのままカーペンタリアに帰投した方が良いのでしょうが‥

 酷な言い方ですが戦っているのは連合とオーブですからね。

 でも私は「ザフトのアスラン・ザラか‥」うん?」

 

みんなと一緒に戦う、と言おうとしたニコルに割り込み呟くアスラン。ニコルとキラは何の事かわからず首を傾げる

 

「彼女にはわかっていたんだな‥」

 

「彼女?」

 

ニコルとキラを無視し自分の世界に入り語りだすアスラン。

 

「国、軍の命令で敵を撃つ。それでいいんだと思っていた。仕方の無いと。

 それでこんな戦争が1日でも早く終わるならと‥

 でも本当は、俺達は何とどう戦わなくちゃいけなかったんだ?」

 

「一緒に行こう、アスラン」

 

「え?」

 

アスランの問いかけに対しアスランを見詰めながら返答するキラ。

 

「皆で一緒に探せばいいよ、それもさ」

 

「キラ‥」

 

頷き手を取り合い自分達の世界へ旅立つ2人。そして残されたニコル。

 

(‥何これ?私への当て付け?)

 

ジト目でキラを睨むニコル。

 

(私だって、あれぐらい大きければディアッカと!)

 

持つ者と持たざる者、リア充とぼっち、これもまた戦争の一因かもしれない。あの後ニコルはブリッツは飛べないという理由でアークエンジェルに収容され、宇宙に上がってからも親しい相手がいない為1人だった。唯一ミリアリアなら話が合いそうなのだが彼女はサイといい雰囲気な為、近寄れなかった。アスランはカガリやキラとイチャイチャしているし、マリューもフラガとラブラブだし、どうなっているんだこの艦は、と憂鬱になるニコルだった。

 

 

 

―――「戻らなかったらジャスティスはニコルが使ってくれ」

 

とかフラグを立てプラントに戻ったアスランだが、あっさりと帰ってきた。それもジャスティス、フリーダム専用母艦のエターナルという物まで一緒に。しかもだ。死んだと思っていたバルトフェルド隊長を筆頭にしたバルトフェルド隊のメンバーも一緒に。さらに、さらにだ!ラクス・クラインという大物まで付いてきた。

 

「何これ?」

 

そう呟いたニコルは悪くない。ディアッカならよりオーバーリアクションをしていただろう。

 

「初めまして、ニコルさん」

 

「えっあっはい!」

 

ラクスが微笑みながら手を差し出してきたのでニコルも返す。そしてラクスのある部分を見つめる。視線に気付いたラクスが問いかける。

 

「どうかしましたか?」

 

「いえ‥」

 

(やはり大きい‥)

 

 

 

 

―――――メンデルにて

 

ストライクダガー部隊を相手にするニコル。

 

「確かに機体は強いですが、それだけでは!」

 

1機また1機とストライクダガーを撃破していく。配備されて間もないからなのか、宇宙空間での戦闘ということもあってなのかはわからないがストライクダガーではニコルの相手にならない。ブリッツが旧式であるにも関わらずだ。

問題は――

 

「おら~滅殺!!」

 

何故かオープンチャンネルで雄叫びを上げながら攻撃してくる連合の3機の新型の方だった。

 

「くっ」

 

鉄球―ミョルニルを放つレイダーに対してニコルはグレイプニールをぶつける事で相殺する。正面からぶつかり合ったミョルニルとグレイプニールは衝撃で弾かれる。グレイプニールを戻しつつ直ぐにビームを撃ち反撃に出るニコルであったがレイダーは右に少し移動するだけで回避する。

 

「うら~!!」

 

今度は後ろから誘導プラズマ砲―フレスベルクがブリッツに向け発射された。

 

「くぅっ」

 

なんとかトリケロスで防御するも衝撃でクサナギの方に飛ばされてしまうブリッツ。何故こんな事になっているかというとクサナギがワイヤーに絡まって身動きが取れなくなってしまったからだ。M1が作業中は無防備なので援護を申し出たのがニコルだった。最初はジャスティス、フリーダム、ブリッツ、ストライクといたのだが突然、フラガがクルーゼの存在を感じ取りメンデルの裏側に行ってしまった。ストライクはパーフェクトストライクの状態で出撃したがバッテリー容量に不安があった為、ニコルがついて行くことになった。だが新型―カラミティ、フォビドゥン、レイダーの3機はキラとアスランをもってしても倒せない程、手強い相手だった。それに加えてストライクダガーの部隊も相手にしなければならい。一方こちらはエターナルが調整中、クサナギは動けずM1部隊はルーキー。そんな状況でニコルはとてもじゃないがフラガを追うことは出来なかった。

 

「ニコル!」

 

フリーダムのバラーエナビーム砲がフォビドゥン目掛けて放たれるがそれをゲヒマイリッヒパンツァで弾くフォビドゥン。

 

「オラオラオラー!!」

 

今度はカラミティのスキュラがフリーダムを襲うがバク宙の要領で回避しビームサーベルでカラミティに斬りかかる。

 

「へっ」

 

しかしあと一歩というところでフォビドゥンが邪魔をし決めきれないフリーダム。それはブリッツも同様でいやむしろブリッツの方は押されている。

 

「撃滅!!」

 

ツォーンが放たれトリケロスで防御するブリッツであったが耐久力の限界を向かえトリケロスは右腕ごと破壊された。

 

「ああっ!」

 

武装の殆どを右腕に集約しているブリッツにとってそれは致命的なものだった。

 

「このままでは‥」

 

クサナギの様子を覗うが動き出す気配は無い。

 

「下がれ、ニコル!」

 

ジャスティスがビームブーメラン―バッセルを投擲しブリッツのカバーに入る。

 

「おいおいおい、隙だらけじゃねーか」

 

オルガはそう言って2連装高エネルギー長射程ビーム砲―シュラークを放つ。

 

「くっ」

 

ニコルは回避操作をするも完全には回避できずバックパックのスラスターに掠り、機動力が低下してしまう。

 

「ニコル!」

 

キラも援護しようとするが連携が取れていないが故の滅茶苦茶な3機の攻撃とドミニオンからの攻撃でそれが出来ない。そしてついにブリッツが囲まれロックされてしまう。

 

(ああ、私はここで死ぬんだ‥)

 

ブリッツの状態と周りの状況からそう判断するニコル。

 

(こんなことならディアッカに告白しておけば良かったな‥)

 

ディアッカとの思い出が走馬灯のように駆け巡る。

 

「抹殺!!」

 

レイダーがツォーンを放ちブリッツが撃破されると誰もが思った瞬間

 

 

 

 

―――レイダーの頭部はビームで貫かれ破壊された。

高エネルギーのツォーンの発射直前だったこともあり頭部へと繋がっている経路まで破壊され火花を散らすレイダー。

 

 

「無事か?ニコル」

 

 

「ディアッカ!!」

 

 

ついに戦場に審判者が現れた。

 

 




前回書き忘れたTSしたキャラ
ニコル、キラ、シンの3人です、今のところは。

次回からは本編に戻ります。今度は早めに投稿したいがどうなることやら‥



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9話:再会

予約したつもりがしていませんでしたね。申し訳ないです。
今回は長くなったので次話と分割しました。

読者の皆さんに感謝を。


 

L4宙域にて

 

「情報ではこの辺りにクルーゼ隊のナスカ級が停泊しているはずだが……」

 

呟くディアッカ。プラントを出発したディアッカはエターナルが逃げ込んだとされるL4宙域にあるコロニーメンデルへと向かっていた。コロニーメンデル――かつて遺伝子研究のメッカとも呼ばれていた場所だったがC.E.68に発生したバイオハザード以後は放棄されたままになっている。一説にはブルーコスモスのテロに遭い閉鎖されたとも言われていて過去、ザフトが調査に乗り出した事もあった。

 

「隠れ家にするにはちょうどいいかもしれないが……」

 

レーダーの索敵範囲を最大まで広げ計器を確認するディアッカ。しばらくするとレーダーが捉える。

 

「おっと」

 

機体に急制動をかけデブリの影に隠れる。

 

「よし、大型の熱量を感知。ビンゴだゼ!」

 

喜んだのも束の間。

 

「うん?ナスカ級じゃない?」

 

ジャッジメントのモニターを改めて確認するとそこにはザフトのナスカ級の姿は無くアークエンジェル、エターナル、クサナギ、ドミニオンの4隻が捉えられていた。

 

「ナスカ級が見当たらないということはクルーゼ隊はこいつらの反対側か」

 

そう、どこを間違ったのかクルーゼ隊と合流する前にアークエンジェル等が戦闘している場面に遭遇してしまったのだった。

 

「エターナルは港か?

 で、足つきの後方にある不明艦がオーブので、相対している不明艦は連合か?

 しかし状況がわからないぜ……」

 

ディアッカが受けた命令通りならばエターナル等を撃つのが優先されるのだろうがドミニオンがいる現状に躊躇してしまう。

 

「MSは……オーブ戦で報告のあった連合の新型3機に量産型が数機。

 オーブの機体にジャスティス、フリーダム。それとブリッツ、か……」

 

ブリッツの姿を見てディアッカはある少女を思い浮かべる。

 

「ニコルか?」

 

確証は無い。アークエンジェルの捕虜になったという情報から推測すればその可能性はあるだろうがそうではない。理由はわからないがディアッカにはブリッツのパイロットがニコルであると感じられたのだ。

 

「ま、何はともあれ、確かめてみますか!!」

 

ディアッカはジャッジメントの右手に装備しているルプスビームライフルⅡと左手の120mmレールライフルを前後に接続し狙撃モードにすると、デブリの影から出て戦場に向け一気に加速させた。宙域の機体のレーダーが感知可能距離まで接近した時にはブリッツが両腕を破壊されレイダーに攻撃を受ける直前だった。

 

「させるかー!!」

 

ディアッカはライフルをレイダーに向け発射する。発射されたビームは一寸の誤差もなく着弾しレイダーの頭部を破壊した。

 

「グウレイト!」

 

だがディアッカの攻撃はこれで終わりではない。スロットルとフットペダルを操作し機体の出力を最大まで上昇させた。機動力が増したジャッジメントはレイダーとの距離をあっという間に詰め、右腰のビームサーベルを左手で抜き一瞬でレイダーの四肢を切断した。そのままレイダーをドミニオンの方へ右足で蹴り飛ばした。

 

「てめ~!!」

 

反撃する間もなくやられたクロトは激怒するが機体は操作が利かず、ただ宙域を流れるだけだった。通信チャンネルをブリッツに合わせディアッカが呼び掛ける。

 

「無事か、ニコル?」

 

「ディアッカ!」

 

「ディアッカ、本当にディアッカなの?」

 

「ああ、エザリア・ジュール ファンクラブ名誉会長のディアッカ・エルスマンなら俺の事だゼ!

 そっちはニコルで間違いないか?」

 

「っ……!」

 

「おいおい泣いているのか?」

 

「だって~」

 

「やれやれだぜ」

 

ニコルが感極まって泣き出してしまった為に落ち着かせようとするディアッカだがここは戦場、黙って見ている人ばかりではない。

 

「おら、いくぜー!!」

 

「うら~!!」

 

カラミティとフォビドゥンがジッジメントとブリッツに攻撃をするがジャッジメントはすぐさま左手に持っていたビームサーベルを収納、左腕でブリッツを抱えるとその場を離脱、アークエンジェルへ向け移動した。2機の攻撃を回避しつつアークエンジェルの正面に着いたジャッジメントはブリッツを放り投げ、ディアッカはオープンチャンネルでアークエンジェルに向けこう言った。

 

「ブリッツお待ちっ!」

 

「え?ちょっ、うわぁ!?」

 

投げられたブリッツはそのままアークエンジェルへ進んでいく。

 

「ハッチ開放、急いで!!」

 

一方アークエンジェルのブリッジではマリューが慌てて指示していたり、サイやミリアリアが唖然としていたり、投げられたニコルは混乱したりと混沌としていた。

 

「悪いが相手をしてられないんでね、圧倒させてもらう!!」

 

ブリッツが無事?回収された事を確認したディアッカはカラミティのビームやバズーカ等の攻撃を掻い潜りライフルの連結を解除し近距離でビームライフルとレールライフル、バラエーナビーム砲を同時発射する。

 

「くっそ!」

 

左腕シールドで防ぐカラミティであったが全ての攻撃は防げずにバックパックに装備されている2連装高エネルギー超射程ビーム砲―シュラーク、右腕、両足を失う。

 

「はあぁー!!」

 

ジャッジメントがカラミティを相手にしている間にフォビドゥンが背後から誘導プラズマ砲フレスベルグを放ちジャッジメントに直撃する。しかしジャッジメントはシールドの機能も持つ翼を前面に展開し攻撃を防いだ為、損傷は無かった。

 

「何なんだよ、このMSは!?」

 

オルガは自分が歯が立たない相手に苛立つ。

 

「え‥」

 

シャニが呆けている間にフォビドゥンにもカラミティと同様に一斉射撃を与える。ゲシュマイリッヒ・パンツァーを展開して防御したフォビドゥンだが圧倒的火力の前にエネルギーが危険域に達し、ゲヒマイリッヒパンツァーを展開できなくなり攻撃をモロに食らうことになった。3機が戦闘不能になるのを見たナタルは帰艦信号を出し撤退する。当初嫌味を言っていたアズラエルもナタルから死にたいのかと言われ、渋々了承した。残されたのは後に3隻同盟と呼ばれるメンバーのみ。誰もがその光景に閉口するしかなかった。突如現れたザフトのMSが自分達が苦戦していた連合のMSを圧倒したのだから。

 

「「……」」

 

キラとアスランも例外ではなく沈黙しフリーダムとジャスティスは臨戦態勢でジャッジメントの前に構えている。口火を切ったのはディアッカだ。

 

「フリーダム及びジャスティスのパイロット、聞こえるか?」

 

MSのザフト用の通信回線から通信が入る。

 

「こちらはザフト軍特務隊ディアッカ・エルスマン。

 本機はフリーダム及びジャスティス、そしてエターナルの奪還を命じられている。

 武装を放棄し速やかに投降せよ。

 従わない場合は撃破する権限もこちらには与えられている」

 

ディアッカはマニュアル通り淡々と話す。そのディアッカの警告に対し彼らは――

 

「ディアッカ、俺だ。アスラン・ザラだ」

 

「アスラン……」

 

無意識の内にレバーを握る手に力が入るディアッカ。

 

「まさかディアッカとは思わなかった。

 久しぶりの再会を祝いたいがそういうわけにもいかないな……」

 

「……」

 

「そちらの言い分はわかった。だが投降はできない。

 俺もラクスも、みんな戦争を終わらせる為に行動しているんだ」

 

「……」

 

(つまりアスランは軍法会議に掛けられることを覚悟してるってことか?勘弁してくれよ)

 

半ば予想していた通りに投降を拒否するアスラン。それに対しディアッカは沈鬱な気持ちになった。

 

「……そちらの言い分はわかった」

 

「それなら!」

 

「よってこれよりフリーダム及びジャスティス、エターナルの破壊任務へ移行する」

 

「ディアッカ!!」

 

(仕方がないだろう、お前が投降しないのだから。

 このままプラントに帰ればそれこそ俺が反逆者扱いされてしまうんだぜ?

 そもそもだな……)

 

「お前が裏切るのが悪いんだろう、このムッツリ野郎が!!」

 

ルプスビームライフルⅡと120mmレールライフルを同時に放ち牽制する。

 

「「くっ」」

 

フリーダムは回避をジャスティスは防御を選択する。防御したことによりジャスティスが硬直した隙を突きバラエーナビーム砲も展開し集中砲火を浴びせる。

 

「ディアッカ、話を聞いてくれ!」

 

アスランはディアッカの説得を試みつつジャスティス背部のファトゥム‐00を分離操作する。遠隔操作されたファトゥムはジャッジメントにフォルティスビーム砲を向け発射した。

 

「ちっ」

 

攻撃を中断しビームを後方移動することで回避したジャッジメント。そこへ両肩に搭載されているパッセルビームブーメランを投げて牽制するジャスティス。

 

「ならば投降しろ、アスラン!」

 

反論しながら向かってくるそれをビームで撃ち落とすジャッジメント。

 

「アスラン!」

 

様子見をしていたキラであったが、ディアッカが本気だと感じフリーダムがウイングに搭載されたバラエーナビーム砲をジャッジメントに向かって撃つ。

 

「おっと!」

 

それを半身になり回避するディアッカ。硬直した瞬間を狙いアークエンジェルと動けるようになったクサナギのゴットフリートが撃ち込まれる。

 

「フッ」

 

それを難なく回避するジャッジメント。

 

(さて、どうしたものか‥)

 

破壊すると宣言したものの本音を言えば知り合いを討つ事なんてしたくないディアッカは悩む。武装だけを破壊し捕獲できればいいのだが流石にジャッジメント1機でこのメンツを相手にしてそれは難しい。

 

(最悪ニコルだけでも連れ帰るか……)

 

根本的な解決にはなっていないが捕虜を奪還することで今回は勘弁してもらえないだろうかと本気で考え始めるディアッカ。一方のアスラン達はというと――

 

「アスランどうする?」

 

「キラ……」

 

「あの機体のパイロットって知り合いでしょう?」

 

「ああ。同じ隊に所属していてバスターのパイロットだったやつだ」

 

「バスターの……なるほど、道理で強い訳だね」

 

「まったくな。まあ、やる時はやる男だからな」

 

対抗策も思い浮かばぬままディアッカが攻撃を停止したのであわせて2人も戦闘を中断する。

 

「でも、本当にどうする?

 あの機体の相手もそうだけどフラガさんが戻ってこないのも気になるし……」

 

「なら、俺がアイツの相手をする」

 

「え?」

 

「キラ、お前はフラガ少佐を見てくるんだ」

 

「でも、アスランが!」

 

「大丈夫だ。同じ仲間だったんだ。頼む、キラ!」

 

「アスラン……わかった。でも無理はしないでね?」

 

「ああ。わかっているさ」

 

そんなやり取りの後キラはフリーダムを反転させメンデル坑内へ向かった。それに焦ったのはディアッカだ。

 

「おい、ちょっ、待てって!」

 

「行かせるか!」

 

追いかけようとするジャッジメントをジャスティスが間に入り妨害する。

 

「アスラン!」

 

「悪いがお前の相手は俺だ、ディアッカ!」

 

シールドを前面に構え、右手で左腰から引き抜いたビームサーベルを右腰のビームサーベルと連結する。いわゆるハルバート形態にしてジャッジメントに突撃するジャスティス。

 

「くっ」

 

左翼を前面に展開しジャスティスの攻撃を防ぐジャッジメント。

 

「何すんだコラー!!」

 

「お前を通すわけにはいかないんだ!!」

 

「馬鹿なマネは止せ、アスラン。今ならまだ引き返せる。ニコルと一緒に戻って来い!!」

 

「お前の気持ちはありがたい。

 だが、断る!!むしろディアッカ、お前が俺達のところへ来い!!」

 

「はあ?何を言っているんだアスラン」

 

「ディアッカは今の世界がおかしいと思わないのか?

 このままでは連合もプラントもどちらかが滅ぶまで戦争は終わらない。

 そうなる前に誰かが止めなきゃならないんだ!!」

 

「それがお前達だと?」

 

「その通りだ。だからディアッカ、お前も来い!!」

 

互いに攻撃と反撃を繰り返しながら会話するディアッカとアスラン。

 

「プラントを裏切るつもりはないぜ!」

 

ジャスティスの右側面に回り込みファトゥムにビームを撃ち込む。

 

「くっ」

 

なんとか回避行動を取るもファトゥムのエンジン部に掠ってしまう。

 

「しまった!」

 

その隙を突きディアッカはメンデルへ向けジャッジメントを転進させた。

 

「待てディアッカ!」

 

「テンプレ乙!」

 

推力が低下したジャスティスでは機動力に特化したジャッジメントに追いつけず、気付いた時には既にジャッジメントがエターナルを射程に捉えていた。

 

「速い!?迎撃ー!!」

 

ジャッジメントの接近に気付いたバルトフェルドの声がブリッジに響き渡る。最終調整が済んでいない為に港から動けないエターナルは主砲やCIWSを可能なものだけ起動させ迎撃にあたる。だがジャッジメント持ち前の機動性で攻撃全てを回避してしまう。とはいえ流石にジャッジメントがエターナルの目前に迫った時には弾幕の密度も高くなりジャッジメントであっても回避は不可能だった。その為、ジャッジメントは主砲のビームのみを翼で防御しCIWSとミサイルは右手のビームライフルと左手のレールライフル、両腰のバラエーナビーム砲で撃ち落した。

 

「あの機体は……」

 

クライン派決起後に完成した核エンジン搭載MS。何の冗談なのか天使もモチーフにした白い翼を付けた機体。名称はジャッジメント、審判者を意味するその機体。なるほど、確かに名前負けしない性能だとラクスは思った。だからこそ――

 

(厄介ですわね……)

 

キラとアスランでさえ苦戦しているのだ。取れる手段が思いつかない。幸いなのがジャッジメントがエターナルを本気で撃破しようとしていない事だ。ラクスがジャッジメントを見て思考しているとジャッジメントから通信が入る。

 

「さて、先程も言ったが投降してもらいたいのだが?」

 

「それはできません」

 

エターナルから凛とした声が返ってきた。声の主はディアッカの投降を拒否するラクス・クラインだった。

 

「その声はラクス・クラインか?」

 

「ええ、初めまして。ディアッカさん」

 

エターナルが音声通信から映像通信に切り替えるとジャッジメントのモニターにラクス姿が映し出された。

 

「グゥレイト!生ラクスだぜ!!リアルは美しい……あっ、サイン貰っていいですか?」

 

「ええ、もちろんですわ」

 

「何でだよ!?」

 

ジャスティスがメンデルの港に着くとそこには何故か先程の会話をしているディアッカとラクスがいた。アスランは反射的にツッコミを入れてしまった。

 

「アスラン、うるさいぞ!」

 

「そうですわ、アスラン」

 

2人してアスランを非難する。なんという理不尽。気付けばエターナルもジャッジメントも攻撃を停止していた。自分の言い分には耳を貸さなかったのに、とアスランはやるせない気持ちになった。

 

「仕方がない。サインは諦めるぜ。まったく嫉妬深いなアスランは。

 婚約者とはいえサインぐらいは大目にみろよな……」

 

「それがアスランの良いところですわ。だてにハーレムを形成しているわけではありませんわ」

 

ディアッカのボヤキにラクスが惚気る。いや、衝撃発言をした。

 

「ハーレム!?アスランてめー、何という羨ま…けしからん事を!!」

 

ディアッカはアスランに激高する。

 

「ご、誤解だ!!キラとカガリは――「見苦しいですわ、アスラン」ラクス?」

 

「貴方が信じるものは何ですか。頂いた成人本ですか?世間の常識ですか?

 ではご自身が御覧になったものは?遺伝的に適合した者同士でしか婚姻を認めないプラント。

 一夫一妻制にこだわる地球連合上層部。

 それらがこの度の戦争をしているとあなたもご存知のはず。

 ハーレムが嫌と言うなら私を振りますか?ジゴロのアスラン・ザラ……」

 

「ラクス、俺は……」

 

突然始まったラクスの演説に耳を傾ける一同。無論、ディアッカもその1人だ。

 

(まさかラクスからハーレム容認発言が出るとは……もしかしてラクスは両方イケルのか!?

 うおおぉ漲ってキター!!)

 

ラクスが百合百合している姿を妄想しテンションを上げるバカ(ディアッカ)。他の人は皆唖然としていた。

 

「あらまあ…」

「ラクス様が……」

「ハーレムwww」

「ゴクリッ」

「キター!!」

 

一部ディアッカと同様に興奮している者や絶望している者もいるが。

 

「ハーレムなんて絶対に認めません!!」

 

突如少女の声が拡散し混沌としているこの戦場にさらなる火種が発生した。

 

「あら?ニコルさん。どうかしましたの?」

 

静観していたニコルがアークエンジェルから通信を割り込ませラクスに反論したのだ。

 

「どうかしました、じゃありません!何ですかハーレムって!?そんなの認められませんよ!!」

 

ニコルの言葉に多くのクルーが頷き同意を示した。まあ、中には

 

「私はハーレムの一員だったのか?」

 

と聞き廻り周囲の大人を困惑させていた獅子の娘がいたとかいないとか……

 

 

――閑話休題――ラクスとニコルの問答は続く。

 

「でも、困りましたわね……私もキラもカガリさんも、3人ともアスランが好きですの。

 ハーレムが認められないとすれば、どうすれば良いのでしょうか?」

 

「どうって……」

 

「だからこそのハーレムです」

 

「え?」

 

ラクスの真剣な眼差しにたじろくニコル。

 

「誰も不幸にならなくて済むのですよ?ニコルさんも同じ立場で考えて御覧なさいな」

 

「……」

 

ラクスに言われその場面を想像するニコル。――見覚えのあるショートカットの黒髪に色白の肌、少し吊り上った目の勝ち気な美少女に抱きつかれるディアッカ。改造軍服のミニスカートに黒いニーソックスを身に着けた赤髪の美少女に言い寄られるディアッカ。しかも皆が笑顔で――

 

「そ、そんな……」

 

あり得そうな不幸な未来を幻視したニコルが愕然とする。

 

「どうですか?そのような状況でもハーレムは駄目と?」

 

ラクスは自らの説得が成功したと確信を持ちニコルに語りかける。しかし――

 

「……ええ。それでも、ハーレムは認められません」

 

ニコルはハーレムを否定した。当たり前の話だがニコルのような一般的な価値観を持った少女にハーレムは無理だったのだ。

 

「そうですか。残念ですが仕方ありませんわね……」

 

(ですが、その内わかりますわ……)

 

残念そうにしながらも内心、楔を打ち込めたことにほくそ笑むラクスであった。話題に上ったアスランはというと――

 

(俺の立場って一体?)

 

しばらく会わない間に変わってしまった婚約者の態度に悩んでいた。

 

 

 

 

 

 




真面目な話になるはずがこんなオチに。
戦闘に関しては初回補正ということで勘弁して下さい。
そうでもしないとディッカが戦闘で輝けないので…
次話は修正すれば投稿できそうなので今週中にいけるかも?


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10話:不信

アスランハーレムには拒否反応も結構あるんですね。
原作もハーレム状態だったから嫌われているのでしょうか?

本作ではラクスが勝手にハーレムとか言っているだけですけどね。
どうなるかは種運命編になってからですね。

読者の皆様に感謝を。


 

 

「……」

 

イザークは怒っていた。少なくとも本人はそのつもりだったのだが……ディアッカはイザークの態度を見て笑いを堪えるのに必死だった。何故か?それは現在、頭部と右腕を破壊されたデュエルを抱えながらヴェサリウスに向け移動中であることに関係する。ほんの数分前、ディアッカは突如始まったラクスの話が長かったので離脱したのだ。何故か全員ラクスに夢中だったので追撃も無くあっさりとメンデル内に入れた。メンデル内部に侵入したディアッカが警戒したのはフリーダムの待ち伏せだった。ジャッジメントとの戦闘中にメンデル内に入って行ったフリーダムの意図はディアッカには分からない。クルーゼ隊に気付き戦闘しに行ったのかもしれないし、違うかもしれない。確実なのはメンデル内部にフリーダムがいるということだけ。そういうわけでディアッカが警戒しながら進んでいると小破したデュエルが膝立ち状態でいるのを発見した。久しぶりの友人の機体に嬉しくなり通信を入れる。

 

「イザークよ、私は帰ってきた!!」

 

するとイザークがディアッカのセリフをスルーし物凄い剣幕で怒ってきた。

 

「ディアッカか?貴様こんなところで何をやっている!!」

 

「久しぶり会ったのに相変わらずだな、イザーク」

 

懐かしい感覚だと思いながらイザークと会話するディアッカ。

 

「無事に意識を取り戻してくれたのは嬉しい。が、何なのだその機体は!?」

 

怒った素振りを見せながらも口元が緩んでいるイザーク。ディアッカはそれに気付きニヤニヤしてしまう。数ヶ月会わなかっただけではイザークは変わらないようだ。

 

「何を笑っているんだディアッカ!」

 

ディアッカの様子に気付いたイザークが反応する。

 

「いや~別に?何でもないぜ。

 それでこの機体はというと、特務隊に配属されたのに伴って受領したジャッジメントだ」

 

事前に情報伝達がされてなかったのか、と思いつつ、簡単な機体情報を送信するディアッカ。

 

「お前が特務隊だと?

 クッ、いつの間に。アスランといい、お前といい、自爆すれば特務隊に配属されるのか?」

 

「俺に聞くなよ」

 

イザークに言われたようにアスランとディアッカは共に機体を自爆させている。イザークの言うことが本当なら洒落にならない。フリーダムのパイロットはイザークを想定していたのだから……もしかしてイザークも自爆するのかもしれないと不吉なことをディアッカは考えてしまった。

 

「ちっ、まあいい。それで、お前は何しにこの場へ来たんだ?」

 

「もちろん、任務だぜ!ま、それは後で説明してやるよ。

 俺のことよりイザークこそこんな場所で何してるんだよ?」

 

「俺はクルーゼ隊長と一緒にストライクと戦っていたのだがな。

 あと一歩というところでフリーダムに乱入されてこの様だ」

 

戦闘を思い返し苛立ちながらも説明するイザーク。

 

――メンデル内

 

ストライクとゲイツが交差する。

 

「よもや貴様がその機体のパイロットとはな。だが、少々荷が重いのではないかな、ムウ?」

 

「だったら試してみろ!」

 

ストライクが右肩の120mm対艦バルカン砲を放ち、ゲイツはそれを回避する。

 

「ちっ」

 

「貴様に討たれるのもまた、と思ったのだがな。どうやら貴様はその器ではないようだ」

 

「ほざくな!!」

 

クルーゼの指揮官用ゲイツがビームを撃ち、それをギリギリで回避したフラガのパーフェクトストライクが左後背部に背負ったアグニを構えると即座にゲイツに向かってビームを放った。発射までの溜めがあるせいで、クルーゼはアグニの軌道を読み回避する。

 

「まだだ!」

 

アグニを戻し左肩のマイダスメッサーを右手で掴み投げようとした瞬間――

 

「おいおい、寝惚けているのか?」

 

ストライクの足元下方からビームが飛来しストライクの左腕を撃ち抜いた。

 

「くそ!」

 

直前の行動をキャンセルし回避行動をするも間に合わずに被弾したストライク。フラガは体勢を立て直すために一端後退した。

 

「ふん……」

 

ストライクの奇襲に成功したイザークはどこか不満そうな態度でそのままゲイツの横に並んだ。

 

「助かったよイザーク」

 

「いえ!」

 

援護をしたイザークに礼を述べるクルーゼ。クルーゼからすればイザークの援護が無くとも問題なかったのだが、そこは流石というべきか。自らの目的の為には部下を褒める言葉など自然と出る。

 

「さて、舞台の途中で退場させるのは私としても心苦しいのだがね。

 しかしこれも運命と思って諦めたまえ」

 

「ぬかせ!」

 

再びビームを撃ち牽制するゲイツに対してストライクは対艦刀―シュベルトゲベールを抜刀し突撃する。

 

「うおおぉぉ!!」

 

「やれやれ……イザーク、右側面に回れ!」

 

「ハッ!」

 

突撃とは言っても左腕を失い、右腕のみでシュベルトゲベールを保持し飛行している状態のストライクは機体がバランス制御処理に集中せねばならず、必然的に出せるスピードも落ちてしまう。故にクルーゼはストライクと一定距離を保ちながらビームを撃つ。そしてゲイツが気を引いている間にデュエルが何の武装の無い右側面―ストライクの左側に回り込み、ビームサーベルを展開し一気に距離を詰める。

 

「これで終わりだなぁ、ストライクゥ!!」

 

「しまっ!」

 

ディエルのビームサーベルがストライクの胸部を捉える――

 

「何!?」

 

しかし、横から飛来したビームによってビームサーベルを持っていた右腕が破壊された。と同時にゲイツとデュエルのコクピットに警報が鳴り響く。

 

「あれは!!」

 

フリーダム、と言い切る前にメインカメラのある頭部がビームによって破壊された。イザークがモニター映像をサブカメラに切替えるとフリーダムがビームサーベルを持った右手を振り下ろそうとしていた。

 

「ええい!」

 

アラスカでの経験からかフリーダムの攻撃をシールドの正面で防ぐデュエル。

 

「っ!?」

 

決まると思った攻撃を防御されたことに驚くキラであったが、即座に右腰のビームサーベルも展開しシールドに攻撃を加える。耐久力に限界がきていたデュエルのシールドは2本のビームサーベルによって呆気なく切断、破壊されてしまった。防御手段が無くなったデュエルはフリーダムの左回し蹴りよって地面まで落下し叩きつけられてしまう。駆動系を損傷したのかスラスターの出力が上がらず、動けなくなってまった。

 

「くっそ~!」

 

前回に続き今回も蹴られ見逃されたことに腹を立てるイザーク。一方、イザークの心情なんて知らないキラはストライクを確認する。

 

「ムウさん!」

 

ストライクはキラが気付いた時には既にゲイツのエクステンショナルアレイスターが腹部右肩とに撃ち込まれ落下していた。

 

「っ!!」

 

ゲイツがストライクに追撃を行う前にフリーダムはお得意の技でゲイツの四肢を切断する。姿勢制御ができなくなったゲイツはそのまま研究所方面へと落下していった。

 

 

 

――

 

 

「それで?結局クルーゼ隊長はどうしたんだよ?」

 

「わからん。落下位置は捕捉はしているが距離があってな。

 デュエルもこの状態だから変に動けなくてな……」

 

「なら俺がサポートしてやるから行こうぜ」

 

「ふん、お前の助けなんぞなくとも……と言いたいところだが、仕方あるまいな。

 だが帰投したら色々と聞かせてもらうぞ?」

 

「わかってるって。俺も相談したい事があるからな」

 

――こんな事やり取りがあって現在に至る。

 

「さてクルーゼ隊長はどっこかな~?」

 

デュエルを抱えながらクルーゼのゲイツを捜索しているとジャッジメントのレーダーがフリーダムを捉える。

 

「ちぃ、こんな時に!」

 

同じく気付いたイザークは焦るがフリーダムの方もストライクを抱えた状態で飛んでいた。

 

「「……」」

 

ディアッカとキラは無言のままそれぞれの機体の空いている手で敬礼した。まるで某バルキリーの如く完璧な敬礼だった。擦れ違うのは一瞬だったがこの瞬間、親近感が湧き2人の心は1つになった。貧乏クジ役の同士としてだが……その後、研究所から出てきたクルーゼとクルーゼのゲイツを回収しヴェサリウスに向かった。なお、その際にゲイツとデュエルを抱える事になったジャッジメントのライフルはデュエルが持つことになった。メンデルから脱出したディアッカは3隻あるヴェサリウスの内、中央の艦に通信を入れる。

 

「こちら特務隊ディアッカ・エルスマン。ヴェサリウス、着艦許可を!」

 

「ディアカ、君か!?」

 

「お久しぶりです、アデス艦長」

 

「ああ。無事で何より。着艦を認める」

 

「ありがとうございます!」

 

イザークが連絡を入れておいたお蔭で簡単な手続きで着艦することができた。さて、残されていたコロニーメンデルの港口。ディアッカが内部に侵入してからもラクス・クラインのハーレム演説は続いていた。さて、ここは戦場であり、また戦闘中でもあった。つまり何が言いたいかと言うと――

 

「あれ?ディアッカは?」

 

「うん?」

 

「え?」

 

「あっ」

 

ニコルの声にみんなが周囲を探すといつの間にかジャッジメントがこの宙域から消えていた。

 

「おい、ちゃんと監視をしていたのか!?」

 

バルトフェルドが声を荒げるが後の祭り。

 

「ディアッカ……」

 

アークエンジェルのブリッジではドミニオンの警戒やら索敵、MSの補給で大忙しなのだがニコルだけは床に座り込んだまま動かない。ニコルの様子に気付いたミリアリアが声を掛けると――

 

「ハーレムじゃなければ駄目なの?」

 

「え?」

 

「そうか。だから、いなくなっちゃったんだ……」

 

ディアッカが去ってしまった事によりショックを受けたニコルは落ち込みこんな事を言い出した。

 

「ニコル、落ち着いて!」

 

ミリアリアがニコルの両肩を掴み顔を見ると、口では言い表せない異性に見せてはならない顔をしていた。

 

「え、衛生兵~!!」

 

ミリアリアの声が虚しく木霊する。

 

 

 

 

 

――なんとか無事帰還したディアッカはアデスに挨拶をするためにブリッジを訪れた。

 

「失礼します!」

 

敬礼し入るとブリッジクルーが慌ただしく働いていた。

 

「アデス艦長!」

 

「ディアッカか。驚いたよ、まさか君が特務隊に配属とはな」

 

「色々ありまして……」

 

ディアッカがアデスに状況説明をしているとクルーゼが入室してきた。

 

「アデス、準備はできているな?」

 

「ハッ!」

 

クルーゼはそのまま艦長席の横まで移動するとパネルを操作し回線を開いた。

 

「地球連合軍アークエンジェル級に告げる。戦闘を開始する前に本艦で拘留中の捕虜を返還したい」

 

それだけ言ってクルーゼはMSデッキへ行ってしまった。

 

「捕虜とは何ですか?」

 

「ああ。クルーゼ隊長がアラスカで発見した少女でな。

 以降、隊長が自分の世話役として置いている」

 

「何か有益な情報を持っていたということですか?」

 

「アラスカで捕えた少女ということしかわからない。我々も詳しくは聞いていないのだ」

 

「……」

(少女だと?まさかクルーゼ隊長かロリコニアの住人だったとは驚きだぜ!)

 

ディアッカがクルーゼのロリコン疑惑に衝撃を受けているとシグーに乗ったクルーゼより連絡が入る。

 

「目標はあくまでエターナルだ。私が出た後に合図があったらポッドを射出しろ、いいな?」

 

「はっ!」

 

アデスとクルーゼの通信終了後、意味がわからないディアッカはアデスにポッドの事を尋ねる。

 

「ポッドとは?」

 

「捕虜を入れた救難ポッドの事だ」

 

「戦場にも関わらず何故射出をするんですか?」

 

「隊長には何か考えがあるのだろう。いつもの事だ」

 

クルーゼのおかしな行動に疑問を持つディアッカ。

 

(……確かに隊長の勘や思い付きは毎度の事だが今回はおかしな点が多い)

 

エターナルの強奪があったせいか、過敏になっているのか、一度疑ってしまえばキリがない。

 

「……アデス艦長」

 

「君の言いたいことはわかる。だが今はこの場を切り抜けるのが先だ。そうだろ?」

 

どうやらアデスも今回のクルーゼの命令と様子に疑問を持ったらしい。それでもクルーゼに何も言わないのは軍人としての規範意識の高さか、矜持か。

 

(別に隊長が裏切ったわけでもないし、考えても仕方ないか……よしっ)

 

「自分も出撃します」

 

「……わかった。だが君はどう動くのだ?」

 

「エターナルを、といきたいところですがまずは邪魔な連合艦を潰します。

 奪取されたとはいえアレ等はザフトの物。連合に鹵獲されてはマズイですから」

 

「了解した。ならばそちらは任せる。気を付けろよ?」

 

「ありがとうございます。では失礼します!」

 

アデスに敬礼しディアッカはブリッジを出ると急いでMSデッキへ向かう。

 

(さてどうするか……)

 

これからニコル達と戦闘することを考えながらディアッカはMSデッキへと向かう。

 

 

ヴェサリウスのMSデッキにはジャッジメント、シグー、デュエルが待機状態にあった。ディアッカがブリッジにいる間MSデッキでは初めて見るジャッジメントにみんな興味津々に見ていた。しかしコンディションレッドが発令された為、整備班は慌ただしく作業に移った。シグーはクルーゼがゲイツを受領してからも整備は行われていたので簡単な調整のみで出撃が可能だ。だが一方、イザークのデュエルは破損した部分、つまり右腕と頭部は予備部品を積んでいなかったので修理が出来なかった。このままでは戦闘に支障がでるのでメインカメラの付いている頭部のみ修理をすることになった。そう、ジンの頭部を取り付けたのだ。いわばザク頭ならぬジン頭といったところか。カメラやセンサー機能は元々の頭部に劣るが艦周辺で戦闘する分には問題が無いと判断されたそうだ。

 

「くっ、こんな状態で出撃せねばならないとは!」

 

自業自得だと理解しているイザークであったが性格から不満が口から出てしまう。確かに体はデュエルで頭はジン。右腕は肩から取り外され代わりに左腕に装備していたアンチビームシールドを取り付けている状態はひどく不格好にも見える。他に気になる事といえば何故か整備班の人間がハイテンションで作業していたことだろう。

 

「イザーク、君は艦を守ってくれたまえ。私はエターナルをやる」

 

「ハッ!しかしディアッカは?」

 

コクピット内で発進準備をしていたイザークにクルーゼから通信が入った。

 

「彼は特務隊だ。私に指揮する権限は無いよ。なに、彼ならうまくやるさ。

 我らは我らの仕事をするだけだ、いいな?」

 

「ハッ」

 

イザークに指示を出しリニアカタパルトにシグーを移動させるクルーゼ。

 

「よし。ラウ・ル・クルーゼ、シグー発進する!」

 

「イザーク・ジュール、デュエル出るぞ!」

 

ヴェサリウスのリニアカタパルトから発進したシグーは作戦通りジン12機と共にエターナルへ、デュエルはヴェサリウスを守るためブリッジ直上部についた。

 

「ディアッカ・エルスマン、ジャッジメント発進する!」

 

イザークに遅れること数分、ディアッカも戦場に立った。

 

「イザーク、言い忘れていたが赤い機体―ジャスティスに乗っているのはアスランだから」

 

「は?」

 

「それからブリッツに乗ってるのもニコルだから」

 

「は??」

 

「じゃ、そういうことで!以上通信終了」

 

「おい、待て!!」

 

ディアッカはイザークの制止を無視しドミニオンまで一気に移動し攻撃を開始する。

 

「拠点攻撃だ!!」

 

気合を入れてビームを連射するもアンチビーム爆雷やラミネート装甲があるためにドミニオンはダメージを負わない。

 

「見た目通り足つきと同等の性能ってわけか。それなら!」

 

ビームが効かない事を確認したディアッカは実体弾のレールライフルで攻撃を始める。当然ドミニオンもゴットフリートやバリアント等の強力な武装で反撃をしてくる。それをジャッジメントは持ち前の機動力で回避してゆく。

 

「この機体は機動力に特化しているんでね。簡単には当たらないぜ!!」

 

ディアッカはドミニオンの攻撃を回避しつつもミサイルを迎撃、右舷ローエングリンを破壊したりと大活躍であった。すると――

 

「おら~撃滅!!」

 

ドミニオンの援護に戻ってきたレイダーがジャッジメント背後からミョルニルを放った。レイダーの接近に気付いていたディアッカはすぐに反撃に移った。ジャッジメントは後ろに振り向き両腰のバラエーナビーム砲を展開、発射しミョルニルを破壊した。

 

「チイッ」

 

激高し執拗に攻撃するレイダーをジャッジメントは軽くあしらう。一方でそんな戦闘の様子をアークエンジェルのブリッジから見つめていた者がいる。そう、ニコルだ。ブリッツの修理が間に合わなかったニコルはCICを手伝っていた。ドミニオンはかつての副長であるナタルが艦長をしている為に苦戦していたアークエンジェルであったがそこにジャッジメントが現れたのだ。しかもドミニオンを攻撃し始め、まるでアークエンジェルを援護しているかのようだった。そんな状況にニコルは歓喜し終始笑顔だった。それはもう、ミリアリアがドン引きするほどに。

 

(ディアッカ、私の為に……)

 

先程も同じ状況になったからか、ニコルは自分の為にディアッカがアークエンジェルを守っていると勘違いしている。いや、確かに第三者から見ればジャッジメントがアークエンジェルを援護しているように見えなくもない。実際にマリューも援護してくれてるのか、と考えていたりする。ディアッカとすればアスラン達との戦闘後に疲弊したところを狙われる可能性があるから、ドミニオンを先に攻撃しただけのことで他意は無い。将来、まさかこの事が追及されるとはこの時点のディアッカが予想できなかったのも仕方がないのかもしれない。

 

「いい加減に!!」

 

レイダーは武装のほとんどを破壊され、レールライフルを浴び続けたせいでエネルギーも心許無い。それにも関わらず攻撃を繰り出すレイダーの攻撃をジャッジメントは回避する。

 

「……」

 

レイダーとドミニオンを相手にしながらもディアッカは冷静に対応しドミニオンにダメージを与えていく。

 

(そろそろ充分か?)

 

ディアッカが引き際を考えているとヴェサリウスより通信が入る。

 

「ディアッカ!」

 

「イザークか。どうした?」

 

「エターナルともう一隻がこちらに転進してきて攻撃が激しい。援護を頼む!」

 

ディアッカが確認するとクサナギとエターナルの集中砲火を浴びているヴェサリウスがあった。

 

「了解、すぐに向かう!」

 

ディアッカは即座に戦域を離脱、ヴェサリウスに向け発進した。残されたアークエンジェルはというと史実通りドミニオンとの戦闘を継続した。メンデル側では――

 

「レーダーに機影!これは……ジャッジメントです!は、速い!!」

 

エターナルのブリッジでダコスタが叫ぶ。

 

「ちぃ、ドミニオンを相手していればいいものを!迎撃、取り付かせるな!!」

 

バルトフェルドの指示でエターナルはヴェサリウスに向けていた砲門の半分をジャッジメントに向け発射する。エターナルの後ろから迫っていたジャッジメントであったが回避を余儀なくされる。「くっ」そのままエターナルの艦底部を通りアデスのヴェサリウスの前に到着する。無論、ディアッカはその過程でエターナルに攻撃することも忘れない。

 

「アデス艦長!」

 

「すまん、助かった!」

 

「ふん、ようやくお出ましか……」

 

アデスはディアッカに礼を言い、イザークはいつも通りだった。ディアッカがどうこの場を切り抜けるか考えていると国際救難チャンネルで通信が入った。

 

「アークエンジェル!私、ここ!」

 

「私です!フレイ・アルスターです!!」

 

「何だこれは?発信元はポッド……例の捕虜か!?」

 

ディアッカを含めた戦場にいる者が驚いている間も少女は話し続ける。

 

「か、鍵を持っているわ、私……戦争を終わらせる鍵。だから、だから、お願い!!」

 

 

 

戦闘宙域を漂う恐怖から助かりたい一心で言い放ったその言葉は新たな争いの幕開けとなった。

 

 

 




Q:主人公なのにヒロインと数カ月も会っていないなんて、一体どうなっているのでしょうか?
A:ディアッカが3隻同盟に入らなかったせいです。

Q:ニコルって本当にヒロインなの?
A:天使です。

Q:ディアッカの過去話とか無いの?
A:隠された秘密(笑)とか悲しい過去(笑)なんてありません。語るまでもない普通の人生です。


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