第6艦隊 〜チート艦隊のイレギュラーの物語〜 【投稿休止中】 (ティルピッツ)
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世界観設定

2030年

 

 

 中国軍が突如として日本への侵攻を開始。与那国島や尖閣諸島への侵攻・制圧を許し、自衛隊初の戦死者を出した。

当然、日本政府は中国政府に対して重大抗議をした。それと同時に国連安保理に訴えた。だが、中国に話し合いの意思が無いと見た日本政府は海上警備行動に続き、史上初の防衛出動を発令した。

 

 

 

 

 

 

 

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6月某日

 

 

『第二次日中戦争』と呼ばれた日本と中国の武力衝突事件は、アメリカの介入もあり、日本と中国の講和による集結した。

最終的に日本側は被害を出しつつも、尖閣諸島・宮古島・多良間島を見事奪還し、島民の救助にも成功した。

 

 

 

自衛隊の被害は以下の通りである。

 

 

 

 

海上自衛隊

 

 

 

第5護衛艦隊

・汎用護衛艦 DD-156『せとぎり』 大破 死傷者7名

 

・汎用護衛艦 DD-153『ゆうぎり』 中破 死傷者13名

 

・航空機搭載型護衛艦 DDV-193 『いこま』 小破 死傷者4名

 

 

第4護衛艦隊

・汎用護衛艦 DD-106『さみだれ』 大破沈没 死傷者120名

 

・汎用護衛艦 DD-113『さざなみ』 大破 死傷者29名

 

・汎用護衛艦 DD-104『きりさめ』 大破沈没 死傷者102名

 

 

陸上自衛隊

 

 

水陸機動団 死傷者 192名

 

特殊作戦群 死傷者 242名

 

第一空挺団 死傷者 88名

 

 

 

 

 また、途中から介入し、自衛隊と共同作戦をとった米軍も少なくない被害を受けた。

 

 

米軍の被害は以下の通りである。

 

 

 

 

・ミサイル駆逐艦『ヘイワード』 中破 死傷者18名

 

・ミサイル駆逐艦『シャクルトン』 大破 死傷者22名

 

・ミサイル駆逐艦『カーティス・ウィルバー』中破 死傷者14名

 

・ミサイル駆逐艦『フィッツジェラルド』 大破 死傷者30名

 

・ミサイル駆逐艦『ジョン・S・マケイン』 大破 死傷者37名

 

・イージス艦『シャイロー』 小破 死傷者8名

 

・イージス艦『チャンセラーズヴィル』 小破 死傷者13名

 

 

 

 

 

 

一方の中国側の被害は以下の通りである。

 

 

・052A型駆逐艦『哈爾浜(ハルビン)』 中破 死傷者1名

 

・053H3型駆逐艦『洛陽(ルオヤン)』 中破 死傷者2名

 

・元級潜水艦『遠征(ユアンヂョン)102』中破 死傷者2名

 

・元級潜水艦『遠征(ユアンヂョン)103』大破沈没 死傷者150名

 

・元級潜水艦『遠征(ユアンヂョン)110』大破沈没 死傷者150名

 

・蘭州級駆逐艦『西安(シーアン)』 中破 死傷者21名

 

・昆明級駆逐艦『銀川(インチュアン)』大破沈没 死傷者203名

 

・昆明級駆逐艦『南京(ナンジン)』 中破 死傷者54名

 

・昆明級駆逐艦『太原(タイユァン)』 大破沈没 死傷者 183名

 

・江凱Ⅱ型フリゲート艦『揚州(ヤンチョウ)』中破 死傷者11名

 

・江凱Ⅱ型フリゲート艦『黄岡(ファンガン)』大破沈没 死傷者89名

 

・広東型航空母艦『広東(カントン)』中破 死傷者101名

 

 

 

 

海兵部隊 死傷者 1607名

 

空挺部隊 死傷者 1338名

 

工兵部隊 821名

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

日本政府はこの日中紛争を受けて防衛力の無さを実感し国民投票を実施、憲法9条を改正し自衛隊の大規模改変を行う事を決定した。まず憲法9条の改正内容だが以下の通りである

 

 

 

・自国からの宣戦布告を禁止する。

 

・戦闘に繋がりかねない軍事的挑発/戦闘行為を禁止する。

 

・戦力を持つことが出来る。

 

・他国から攻撃、宣戦布告などを受けた際の戦闘を許可する。

 

 

 

 

 

自国から戦争につながりかねないような行為は禁止しつつ自衛戦闘をやりやすくしたのである。前憲法下では、攻撃などを受けた際の自衛が非常にやりにくかったからである。

 

 

 

 

 

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自衛隊の改変だが、まず名称を『自衛隊』から『国防軍』に変更した(防衛省は防衛省のままで変更無し)。

 

この為、陸上自衛隊は国防陸軍、海上自衛隊は国防海軍、航空自衛隊は国防空軍に名称を変更。また、新設組織として海兵隊も新設された(勿論米国の海兵隊を参考にした)。

 

 

 

 

またその他の面でも改変が行われた。それは以下の通りである。

 

 

 

 

 

 

・固定翼機運用可能の航空母艦の配備。

 

・配備にあたって、米軍から運用ノウハウなどを教わる。

 

 

・長距離巡航ミサイルの配備。これは米国からトマホークを買うが将来的に自国での生産も目指す

 

 

・強襲揚陸艦の増強/配備

 

・通常動力潜水艦の増加。

 

・艦艇、航空機、車両の増加。

 

 

 

などである。また階級の一等陸尉等と言うのをやめ少尉、中佐と呼ぶようにした。階級は以下の通りとする。

 

 

大将→中将→少将→准将→大佐→中佐→少佐→大尉→中尉→少尉→准尉→曹長→上級○曹→○曹→兵長→上等兵→一等兵→二等兵

 

 

 

 

また、艦種の変更も行われた。

 

 

【 汎用護衛艦 】

 

・あさぎり型護衛艦(DD) → あさぎり型汎用駆逐艦(DD)

 

・むらさめ型護衛艦(DD) → むらさめ型汎用駆逐艦(DD)

 

・たかなみ型護衛艦(DD) → たかなみ型汎用駆逐艦(DD)

 

・あきづき型護衛艦(DD) → *あきづき型ミサイル駆逐艦(DDG)

 

・あさひ型護衛艦(DD) → *あさひ型ミサイル駆逐艦(DDG)

 

 

* 2隻はイージス艦に匹敵する性能を持つ為に、汎用駆逐艦ではなくミサイル駆逐艦へと艦種変更。 *

 

 

 

 

 

【 ミサイル護衛艦 】

 

・こんごう型ミサイル護衛艦 → こんごう型ミサイル巡洋艦(CG)

 

・あたご型ミサイル護衛艦 → あたご型ミサイル巡洋艦(CG)

 

・まや型ミサイル護衛艦 → まや型ミサイル巡洋艦(CG)

 

 

 

【 ヘリコプター搭載型護衛艦 】

 

 

・(2代目)しらね型護衛艦 → しらね型ヘリコプター搭載型巡洋艦

 

・ひゅうが型護衛艦 → ひゅうが型ヘリコプター搭載型航空母艦(CVHE)

 

・いずも型護衛艦 → いずも型ヘリコプター搭載型航空母艦(CVHE)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 非核三原則がある日本は配備する大型空母は通常動力型で建造する予定であった。アメリカから旧式化しつつあったニミッツ級を供与してもらう計画も考えられたが、同級は原子力による稼働する空母だった為に反対意見が多く断念するしか無かった。

 

 

 だが、中国の核武装に対抗する為には今までの対抗手段では不足であるという意見も多く、憲法9条改正の際に、非核三原則は撤廃された。その結果、日本は原子力機関を持つ艦艇の保有が可能となり、戦後初の本格的な超大型空母…………そして、アメリカ、フランスに次ぐ原子力空母を建造する事が可能となったのである。

 

 だが、それまでの護衛艦よりも遥かに大型の空母を建造するのは容易ではなく、また原子力機関を持つ艦艇の建造も経験がない日本単独で行える筈が無かった。そこで、日本は原子力機関を持つ艦艇を保有する国家·····アメリカとロシアに協力を要請。

 

 協力要請を受けた両国は原子力機関を持つ艦艇の建造ノウハウ等を日本側に提供。それだけでなく、ロシアからは原子力機関を持つ艦艇を1隻日本に供与した。アメリカは原子力機関を持つ艦艇では無いが、イージス艦を1隻日本に供与した。

 

ロシアが供与した原子力機関搭載艦は、ゴタゴタにより建造が8割弱で止まっていた艦で、完成する見込みも無かった。

 

 

 

兎も角、アメリカとロシアの協力により日本は戦後初の超大型空母を建造。そのデータを生かし、通常動力型の大型空母も相次いで建造。同時に、潜水艦や強襲揚陸艦等の艦艇、車両・航空機も大幅に増強。

 

アメリカには劣るものの、以前の日本とは比べ物にならない程の強力な軍事力を手にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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艦艇の増強により、5個あった護衛艦隊の再編成が行われた。艦隊の名称も『護衛艦隊』から『第○艦隊』と言う様な順序艦隊(ナンバー・フリート)に変更。それに従い、第一艦隊から第八艦隊まで8個艦隊が編成/配属された。

 

 

 

• 第一艦隊

 

• 第二艦隊

 

• 第三艦隊

 

• 第四艦隊

 

• 第五艦隊

 

• 第六艦隊

 

• 第七艦隊

 

• 第八艦隊

 

 

 

 

 

 

 

 

 

横須賀基地

・首都東京に近く、国防艦隊司令部・艦隊司令部が存在する国防海軍の中枢基地。第1艦隊が定係港としている基地で、国防海軍が持つ基地としては最大規模を誇る。

 

 

 

 

呉基地

・東の横須賀と並ぶ国防海軍の主要基地で、横須賀にも匹敵する大規模な基地である。第2艦隊が定係港としており、6大基地中最大の係留能力を持つ。

 

 

 

佐世保基地

・国防海軍西の拠点として重要な役割を担う基地。第5艦隊が定係港としている。以前は米第7艦隊の艦艇の一部が定係港としていたが、現在は撤収している。第5艦隊が母港にするにあたり、大規模な港湾施設の整備を行い現在に至る。

 

 

 

舞鶴基地

・日本海側における最重要防衛拠点。すぐ近くに航空隊の基地が整備され、中国や北朝鮮に睨みをきかせている。第3艦隊が定係港としている。

 

 

 

大湊基地

・北方方面の防衛拠点となる基地。本州最北端に一応する事から、猛烈な風雪に晒され艦艇も凍りつくという過酷な自然状況に晒される基地でもある。第4艦隊が定係港としている。

 

 

 

 

 

那覇基地

・沖縄方面の防衛拠点となる基地。第6艦隊が定係港としているが、6大基地中最小の規模である。

 

 

 

 

 




以下補足説明です。 というより、私が勝手に自問自答したのを載せているだけです。
『こんな事……こういう所が気になるかな』と思った事です。










Q.あさぎり型は2030年も現役なのか?

A.はい、現役です。勿論、そのままという訳ではなく、数度の近代化改修を受けています。新世代艦である『あさひ型』『あきづき型』などには劣りますが、駆逐艦としては十分な性能を有しています。







まぁ、ぶっちゃけますと、個人的に『あさぎり型』が好きなのでそう簡単に退役させたくなかった、と言うのが本音です。




Q.『あさぎり型』以外の護衛艦はどうなったのか?

A.名称が巡洋艦や駆逐艦に変わりましたが、基本的にはそのまま国防海軍で運用されています。ただ、『はつゆき型』などの一部艦艇は、現役を退き、退役か、練習艦として運用されています。




Q.架空の同型艦はあるのか?

A.あります。例を挙げますと、『あきづき型ミサイル駆逐艦』と『あさひ型ミサイル駆逐艦』です。
まず、『あきづき型』。実際ですと『てるづき』『すずつき』『ふゆづき』の3隻ですが、国防海軍に改名後の『あきづき型』は、上記の3隻に加え、『はつづき』『にいづき』『わかつき』『しもつき』『はるつき』『よいづき』『なつづき』『みちつき』『はなづき』『はづき』『おおつき』が在籍しています。

続いて、『あさひ型』。実際では『しらぬい』のみですが、国防海軍に改名後の『あさひ型』は、『かげろう』『はつかぜ』『あまつかぜ』『ときつかぜ』『のわき』『あらし』『ながなみ』『あさしも』『きよしも』『あさしも』『やまさめ』『あきさめ』『なつさめ』『ながら』『なとり』『ゆら』『あがの』『のしろ』『やはぎ』『さかわ』『くまの』『すずや』『ふるたか』『かこ』『あおば』『きぬがさ』が在籍しています。


『あきづき型』は、ネームシップの『あきづき』を含め15隻。
『あさひ型』は、ネームシップの『あさひ』を含め28隻が、建造されています。







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エピローグ 艦隊、出航。

初めまして、皆様。処女作にて文面不明瞭な所があるかもしれないですが、お付き合いしていただけると幸いです。



2033年 1月某日

 

 

 

国防海軍 佐世保基地

 

 

『基地司令、今回の演習派遣艦隊…………本当に良かったのですか?』

『良かった………とは?』

 

 

埠頭で、たった今出航した艦隊を見送る人々の中、中佐の階級章をつけた女性が基地司令と呼んだ横の女性に問いかけた。

 

 

『演習に参加する艦隊にしては少し物騒ではありませんか?全艦が燃料・実弾、備品もほぼ満載。空母1、ミサイル巡洋艦1、イージス艦2、駆逐艦4、工作補給艦1………それに強襲揚陸艦まで。今回のリムパック演習に強襲揚陸艦は不要かと思いますが…………。』

 

 

と、タブレットを取り出し、搭載品・艦艇のリストを見ながら話したが………

 

『今回のリムパック派遣艦隊の編成は上層部が決めた事です。基地司令の私は指示通りに動くだけです。』

『はぁ…………。』

『私も強襲揚陸艦を艦隊に編入したのは驚きましたが、上には上の考えがあるのでしょう。』

『…………………。』

『心配いりませんよ、艦隊を率いるのはあの人です。貴女の妹も私の妹もいます。』

『……そうですね。あの人が指揮するなら安心です。なにろり、自慢の妹がいますしね。』

『ふふっ、さて、残った書類を片付けしまいましょうか、白露中佐。』

『はい、大和司令。』

 

 

 

2人はその会話を最後に基地内に戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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青い海を切り裂き、ゆっくりと進む複数の艦艇。

単縦陣で湾外に向かって進む艦隊の先頭を行くのは、巨大な艦橋を持ち、単装砲を前後に1基ずつ計2基、その他に垂直発射機……VLSを装備していた。その次に進む艦艇も同様の形状を持っていた。

 

先頭を進むのは、九頭龍型イージス巡洋艦『九頭龍』。次に進むのは姉妹艦『綾瀬』である。

 

2隻のイージス艦に続くのは、単装砲を甲板に1門、その後方に垂直発射装置……VLSを備える艦艇。神無月型ミサイル駆逐艦『神無月』『師走』の2隻である。

 

最後に続くのは、4隻よりも小さい単装砲を1門、その後方にVLS………後部にヘリコプター格納庫とVLSを設ける軍艦…………あさぎり型汎用駆逐艦『せとぎり』『ゆうぎり』の2隻。

 

 

以上6隻が、リムパック派遣艦隊……………もとい、国防海軍 第6艦隊 の護衛艦である。

『九頭龍』を率いられた護衛艦6隻は、先に抜錨として待機していた艦隊旗艦『 信濃』、『土佐』、『明石』、『大湊』と合流。隊列を組み、湾外へと出ようとしていた。

 

 

 

 

『司令、間もなく佐世保湾を抜けます。』

『ふむ………このまま湾外に出るぞ。速力そのまま、民間船に注意せよ』

『了解。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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佐世保湾を無事抜けたリムパック演習派遣艦隊…………もとい、第6艦隊は、太平洋に向けて順調に航行していた。

 

 

第6艦隊旗艦 及びリムパック艦隊旗艦を兼任せる空母『信濃』の艦橋では、2人の女性が話をしていた。

今1人は、当艦隊司令官。もう1人は艦娘 信濃。

 

身長170センチ前後。腰のあたりまで伸びる長い銀髪を持ち、姉であり佐世保基地 司令官 の大和とよく似ていた。

 

 

 

 

司令官は、

 

『信濃、艦載機の搭載状況は?』と信濃に聞くと

『はい司令。予定通り68機収容し、既に艦内係留を終えています。』

 

と答えた。

日本初の原子力空母である『信濃』は、米国の『ニミッツ級』を参考にして建造された戦後初の超大型空母である。国防海軍最大の艦艇でもあり、68機のヘリコプター/艦載機を搭載・運用する事が可能である。姉妹艦の建造が予定されていたが、予想以上に建造費が掛かってしまった為、建造は中止となってしまった。

 

因みに、原子力空母は『信濃』のみだが、国防海軍は通常動力型の大型空母『蒼龍型航空母艦』を建造し、ネームシップの『蒼龍』、2番艦『飛龍』、3番艦『翔鶴』、4番艦『瑞鶴』の計4隻を保有している。

 

 

 

 

 

 

 

 

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艦隊はその後、無事太平洋に到達。同時に艦隊陣形を『信濃』を中心とした輪形陣とすると、再びハワイを目指して航行していた。

 

 

 

 

 

 

 

『信濃、悪いが各艦の位置確認をお願い。』

『はい、分かりました。』

 

 

 

信濃は、タブレットを操作して各艦の現在位置の確認を行い、司令官に報告した。

 

 

『本艦の右舷にイージス艦『九頭龍』、左舷に同『綾瀬』。右舷前方にミサイル駆逐艦『神無月』、左舷前方同『師走』……』

 

 

 

 

現在の艦隊位置は、

 

中央に空母『信濃』

 

『信濃』前方に、ミサイル駆逐艦『神無月』『師走』の2隻。

『信濃』後方に、イージス艦『九頭龍』『綾瀬』の2隻。

 

以上、第1群。

 

以下、第2群として、

 

 

中央に原子力ミサイル巡洋艦『土佐』

 

『土佐』後方に、工作補給艦『明石』と強襲揚陸艦『大湊』の2隻。

『土佐』前方に、汎用駆逐艦『せとぎり』『ゆうぎり』の2隻。

 

 

 

 

 

 

『うむ…………信濃。私は少し仮眠をとる。あとは任せるわ。』

『分かりました、司令官。』

 

 

 

 

艦隊は順調にハワイに向かって航行していた。




こんにちは、ティルピッツです。前々から艦これを舞台にしたものを書いてみたいと思っていましたが、ようやく実現しました。
なるべく艦これのイメージを壊さないように心がけていきますので、よろしくお願いいたします。


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第0話

無事佐世保基地を出発した第6艦隊は、ハワイ諸島を目指し太平洋を航行していた。


第6艦隊 旗艦 『信濃』

 

 

訓練を終えた直後の『信濃』艦橋では、司令官が天候を怪しんでいた。

 

 

 

『この空…………妙だな…………』

 

 

 

そこに、艦長の信濃が報告にやって来た。

 

 

 

『訓練終了しました、司令官。』

 

『うむ。』

 

 

 

報告した彼女は腕時計を確認する。

 

 

 

『未だ、5分遅れです』

『まぁ、良かろう。一ヶ月前の10分から見れば、練度は上がってる。』

『はっ』

『張り切り過ぎては先が持たない。緊張も程々にな。』

 

 

 

司令官は張りつめ過ぎないように信濃に注意を促す。

それと同時に気になっていた天候を気象庁に問い合わせるべく、航海長に声を掛けた。

 

 

 

『ところで航海長、気象情報について問い合わせてくれるか?』

『はっ』

 

 

 

そして十数分後、気象庁からの報告を待っている間に荒れてしまった海を『信濃』以下第6艦隊は航海している。

 

雲はむせるような禍々しい赤色となっており、遠くでは時折落雷が発生している。

 

大きな波に8万トン級の大型空母は揺さぶられながらも航海を続ける。

 

 

 

『艦長、気象庁から報告です。』

 

 

 

その中でようやく気象庁から連絡が届き、航海長がそれを持ってきた。

そして彼は早速、気象庁からの報告を読み上げた。

 

 

 

『ミッドウェー島北西に低気圧あり、気圧965ヘクトパスカル、風速40メートル、なお勢いを増しているとのことです。』

『事前の予報には無かったが……………。シケに備えよう、荒天準備となせ。』

『了解。』

 

 

 

 

司令官は今後、更に海が荒れると考えて事前に準備するように指示を出した。

 

 

 

 

 

司令官が命令を下すと同時に『信濃』の艦内放送が流れる。

 

 

 

『"荒天準備、移動物の固縛を厳となせ"』

 

 

 

放送を聞いた乗員達は装備を整え、持ち場に向かった。

 

 

 

 

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『艦載機の固定は大丈夫?』

『はっ。既に全機拘束チェーンで固定済みです。』

『海に出て23年と2ヶ月、こんな雲は見たことがない。』

 

 

信濃は、艦内状況を確認を念入りに行う。

その横で司令官は初めて見る現象を不思議そうに見る。

 

 

 

ーーーーーー その時、突如として『信濃』に雷が落ちた。

 

 

 

『な、なんだ?落雷か!?』

 

 

突然の落雷に乗員達が動揺する中、艦長である信濃が、即座に艦内電話を手に取った。

 

 

『応急指揮所!艦内各部の損傷を報告!』

『"電気系統、機能正常、艦内各部、異常なし!"』

 

 

彼女が応急指揮所に損害状況を聞いていると、艦橋に*CDCから連絡が入った。

 

 

 

『"艦長!水上レーダー、僚艦を捉えられません、僚艦をロスト!"』

『何?!通信は!』

『"『土佐』との交信不能!『九頭龍』、『綾瀬』、『師走』、『神無月』、『せとぎり』、『ゆうぎり』返信ありません!全交信周波数、完全に沈黙!"』

『有り得ない!5分前まで全艦の位置を確認している!もう一度試しなさい!』

『"故障ではありません、依然全艦から応答ありません!」

『一体どういう事……なの………』

『各種計器に以上発生、制御不能です!』

『強力な磁気嵐に入ったか…………?CDCはどうなっている?』

『CDC、艦橋、状況を報告せよ。』

 

 

報告を聞いた司令官は磁気嵐に入ったと考え、確認を急いだ。

指示を受けた信濃は艦内電話を使ってCDCに確認する。

 

 

『"全ての探知システム、管制システムが障害を起こし、機能しません、艦内電話もノイズが酷く聞き取れません!"』

『次から次へと………一体何が………………』

 

 

連続して起こった不可解な出来事に混乱する信濃達。

 

対して、司令官は冷静に対応策を彼女達に示した。

 

 

 

 

 

『信濃。概念通信を試しなさい。沈んでないのなら、応答がある筈よ。』

『! りょ了解です!』

『CDC、ロストした僚艦を全力で捜索。近くにいる筈よ。』

『"はっ!"』

 

 

 

司令官は、冷静に信濃に艦娘間でしか使えない特殊通信である『概念通信』で再度確認する様に指示すると、CDCにもロストした僚艦の再度の捜索を命じた。

 

 

『(こちら信濃!応答せよ!こちら信濃!)』

『( ーーーー こちら ーーーーーーーー 繰り返す ーーーーーーーーーー こちら、土佐。信濃聞こえるか?)』

 

 

信濃が『概念通信』で呼び掛けると、原子力ミサイル重巡洋艦『土佐』艦長の土佐から返答があった。

 

 

『(土佐!無事だったのね!)』

『(あぁ。ただ、レーダーが機能しなくなって僚艦の位置を把握出来ない。通信も同じくだ。)』

『(そっちもなの?)』

『(そっちもという事は『信濃』も同じ状況なのか?)』

『(ええ。レーダーであなた達の位置を把握出来ないの。)』

『(そうだったのか……………。)』

 

 

土佐が信濃と概念通話をしていた時、外にある物が現れた。それに最初に気づいたのは原子力ミサイル重巡洋艦『土佐』の見張り員だった。

 

 

 

『ふっ副長…………これは…………』

『そんな馬鹿な…………ここはハワイ沖だぞ…………!』

『でもこれは………紛れも無くオーロラに雪です!』

 

 

 

突然の事に、副長と見張り員は驚愕する。何故なら赤道より下のハワイ沖でオーロラが現れる筈など無い。それに雪も降ったりはしない。

だが、第6艦隊は何とかオーロラと雪が発生している所から脱出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『"各種計器、通信機器回復しました!"』

 

 

計器や通信機器が正常になった事を聞き、信濃と司令官は安堵のため息をついた。

 

 

 

『抜けたようね。ダメージがないかチェックを急げ。』

『はっ!』

 

 

 

異常気象地帯を抜けた影響からか、CDCではモニターや対水上レーダーが正常に作動し始める。

 

だが映し出された画面は先程とは違う状態だった。

 

 

 

『うぉ!』

 

 

 

突然、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*CDC………『Combat Direction Center』の略称。航空母艦におけるCICに相当する部署の事。戦闘指揮センター。



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第1話 異常事態発生

第6艦隊 原子力ミサイル重巡洋艦『土佐』

 

 

 

 

 

 

『………………うっ…………………………うーん……………』

 

 

 

 

『土佐』の艦橋で最初に意識を取り戻したのは、艦長である土佐であった。彼女は、痛みが残る身体を無理やり起こすと、まずは艦橋要員に声を掛けた。

 

 

 

『………艦橋……要員………全員……無事か?』

 

 

最初の呼び掛けには誰も応答しなかったが、数度呼びかけると反応があった。最初に反応したのは航海長、次に副長である。それから約1分ほどで艦橋要員全員の確認がとれた。 航海長だけは踏みとどまり、負傷なしであった。

 

 

 

 

 

 

『艦長、お怪我は?』

『身体を打ったらしいが、問題ない。負傷者はいるか?』

『艦橋要員は2名が打撲です。それ以外はいません。』

『他の部署はどうか?』

『現在、確認中です。』

 

 

 

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『艦長、報告します。負傷者は全部署合計で8名。重傷者は無く、軽傷者のみです。機関については、点検を行いましたが異常はありませんでした。各種兵装も同様です。』

 

 

土佐は報告を聞き、一安心した。『土佐』は原子炉を搭載する原子力推進艦である。機関にもし何かあれば、最優先でそれに当たらなければならないが、幸いにも機関には損傷も異常も無かった。

負傷者も重傷者は居らず、軽傷者のみであるからそれ程深刻ではない。

 

 

 

 

『ふむ……………副長、本艦の現在位置は分かるか?』

『現在航海班で、天測中ですがまだ分かっておりません。』

『そうか…………………僚艦の位置は?『信濃』は近くにいるか?』

『先程『信濃』と連絡を取り、命令を受託しました。『全艦集結セヨ』です。』

『『信濃』の位置は分かっているのだな?』

『はい。』

『よろしい、今は『信濃』と合流するのが最優先だ。』

『はっ!了解しました!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第6艦隊 旗艦 原子力航空母艦『信濃』

 

 

 

 

『艦長。全艦集結したか?』

『はい、司令。ミサイル駆逐艦『神無月』『師走』。汎用駆逐艦『せとぎり』『ゆうぎり』。イージス艦『九頭龍』『綾瀬』。原子力ミサイル重巡洋艦『土佐』。工作補給艦『明石』。強襲揚陸艦『大湊』………計9隻、全艦集結完了しました。』

 

 

 

信濃の言う通り、第6艦隊は『信濃』を中心に輪形陣を形成しつつあった。と、言っても現在潜航モードである為陣形の構築には時間が掛かった。いや、潜航している状態で陣形を組めているだけマシであろう。

 

 

 

 

 

 

『各艦の被害は?』

『各艦大きな損害はありません。軽傷者が出ていますが、打撲程度との事です。』

 

 

 

艦隊司令官は、全艦の被害が特になく軽傷者が出ただけという報告に安堵した。それと同時に何か違和感を覚えた。意識が途絶える前、30メートル以上はあったであろう高波に襲われたのに被害を受けた艦はゼロ。急速潜航したとはいえ、被害は無いのは少し気になる……あれ程の大波だったのにだ。

 

一方、信濃は現在位置の確認を行っていた。だが…………

 

 

 

『現在位置が分からない?どういう事?』

『"そ、それが*GPSで現在位置を確認しようとしたのですが、GPS衛星その物の反応がありません…………"』

『GPS衛星の反応が無い?!』

『"勿論、何度も確認しました!ですが、何度やっても反応が無いんです…………"』

『………………………………。』

『"他艦にも問い合わせましたが、本艦と同じく衛星その物を発見出来ないと……………。"』

『そんな……………』

 

 

 

唖然とする信濃を他所に、艦隊司令官は落ち着いて、

『信濃、今は何時?』と質問した。

 

 

司令官の意外な質問に驚きつつも、艦長席にある戦術情報ディスプレイを画面を見て

『えっと………午前10時半ですね……………えっ?午前10時半?』

 

 

時刻を確認した信濃は目を疑った。自分達が台風に突入したのは午後1時半。余りにも時間が経ちすぎている。

 

 

司令官は、続けて

『何年の何月何日になってる?』

 

 

『えっと……1942年2月3日?システムタイマーの故障??』

 

 

信濃は直ぐに横にいる副長に他のシステムの時刻を確認させた。

艦橋要員は自分達が担当するシステムの確認を行った。そして、副長を含む皆青ざめた。

 

 

『艦長!間違いありません!どのシステムも1942年2月3日です!』

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

『まず、これだけは言っておくわ。量子理論を採用したシステムタイマーが狂ったと言う可能性は極めて低い。なにより、『信濃』を含む全艦のシステムタイマーが同じ時刻…………1942年2月3日を示している。』

『"そんな馬鹿な………………"』

『"ハワイの米軍司令部には連絡出来ないのですか?"』

 

 

ミサイル駆逐艦『神無月』艦長の神無月が、そう問いただしたが、

 

 

 

 

『先程から試しているけど、反応が無いわ。』

『うんともすんとも言わない状態だ。』

『"………司令官、どうするんだ?GPSが使えないのでは、現在位置の把握のしようがない。"』

 

 

 

若干困った様な表情で意見を述べたのは、土佐である。いや、彼女だけではない。艦隊全員が同様だった。

 

 

『何も把握出来ない状況で不用意に動くは危険だ。』

『では?』

『暫くこの場で待機。空中・海中・水上警戒を厳にせよ。』

 

 

艦隊司令官はそう命令を下すと、後の指揮を信濃に任せると司令官室に戻った。

指揮権を引き継いだ、信濃は艦隊をそれまでの陣形から変更し、『信濃』『明石』『大湊』を中央に配し、周りをミサイル重巡洋艦、ミサイル駆逐艦、汎用駆逐艦、イージス艦で固めた。同時に、流木に偽装した偵察ブイ・通信ブイを上げさせた。潜航した状態でも、海上の確認を行う為である。元々、潜航を想定していなかったのだから潜望鏡などあるわけが無いのだ。

 

 

 

日付が変わった頃、信濃は司令官に許可を貰った上で艦隊を浮上させ再度各艦の点検を行わせた。各艦に以上がない事を確認すると艦内の換気を済ませ、再び潜航した。

 

 

世界最強と呼ばれた第7艦隊に並ぶ空母打撃艦隊であるが、状況がよく分からない状態でうろつけば、最悪『国籍所属不明の不審艦隊』として攻撃される恐れがあるからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

*GPS………『Global Positioning System』。グローバル・ポジショニング・システムの事。地球上の現在位置を人工衛星からの電波で測り知る装置。全地球測位システム。




さて、この後どうなるのでしょうか?続きをお楽しみに。


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第2話

原子力航空母艦『信濃』 艦橋

 

 

司令官は、各艦の艦長達を招集していた。招集と言っても、直線艦に来ている訳では無く、通信画面越しである。画面越しであっても全身が映るほどの大きな画面である。

実は、これは艦娘運用の艦艇のみで可能な物である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『全員まず状況確認だが、昨日からの状況を鑑みても分かると思うが、艦隊は現在どことも通信が出来ない。正確に言えば通信相手が居ないという方が正しい。信濃の司令部で色々と状況を整理しているが、受信した電波などからほぼ1942年当時、約80年も前にタイムスリップしたと考えられる』

 

 

 

意外とあっさり司令官は言った。

と言うより、司令官は昔から冷静な人物であり、少々の事では動じなかった。とはいえ、今回の出来事には僅かに動揺したのは確かである(表情には出していなかったが、付き合いの長く常に傍にいる信濃は分かっていた)。

 

 

 

 

 

『状況確認の為、午前中にパラオ、出来ればチューク諸島、当時のトラック泊地まで偵察機を飛ばす。艦隊は微速で航行を再開する。』

『"司令官、仮に1942年だとして、我々のとるべき行動は?"』

『今のところはなるべく息を潜める。下手に動いて、国籍不明艦隊として攻撃されたくはない。昨晩 信濃と話したが、この世界が我々と同じ次元であるとは限らないしね。』

『"時代では無く、次元ですか?"』

 

 

そう聞き返したのは、あさぎり型汎用駆逐艦『せとぎり』艦長 せとぎりである。

 

 

すると 信濃が、

 

『そうです、せとぎりさん。て非なる全く異なる歩みを進む時代かもしれません』

『"はぁ…。よく分かりませんが…"』

『この時代の日本は、我々の日本では無いという事よ。ともかく私から指示は以上。何かに質問は?』

 

 

質問がある者は居なかった。それを確認した司令官は、『各自のやるべきをやるように。』と言うと、艦橋を後にした。各艦の艦長は、画面越しに敬礼してから通信を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

第6艦隊は、イージス艦『九頭龍』『綾瀬』の2隻と、原子力ミサイル重重巡洋艦『土佐』を浮上させ周辺の警戒に当たっていた。もし、何かを探知すれば必要に応じて哨戒ヘリを飛ばす事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

第6艦隊 イージス艦『九頭龍』 CIC

 

 

 

 

 

『ん?これは……………』

『どうした?』

『レーダーコンタクト!、水上目標探知!』

『距離と数は?』

『数は5。距離は約100マイル(161km)です。』

 

 

 

イージス艦である『九頭龍』CICの電測員妖精が、水上目標をレーダーで捉えた。

 

 

 

『艦種は分かるか?』

『大型艦…1、中型艦1…ですね。』

『大型は戦艦が空母、中型は巡洋艦か。*IFFに応答は?』

『ありません。』

『ひとまず、艦長に報告だな。』

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

数分後、報告を受けた艦長 九頭龍は、CICで詳細を聞くと直ぐに『土佐』に報告。『土佐』から艦隊総旗艦『信濃』へと伝えられた。

既に、『信濃』を含め第6艦隊の全艦が浮上していた。

 

 

 

 

 

 

 

『100マイル先に水上艦艇か…………………。』

『"編成は、戦艦ないし空母1、巡洋艦1です。"』

『艦名は分からないか?』

『"流石に艦名は分かりません。レーダーで発見しただけですから。"』

『うむ……………。』

『"艦名まではもっと接近しないと分かりません。ヘリか哨戒機を飛ばせば分かるかも知れませんが。"』

『レーダーだけでは、確認も出来ない。目標との距離を縮める。もう少し近付いてから、哨戒ヘリによる目視確認を行う。』

『了解しました。艦隊、不明艦へ向け転進。第3戦速。』

『よーそろ、面舵、第3せんそ~く!!』

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

それから約30分後、第6艦隊は目標後方22マイル(35km)まで接近していた。目標は依然IFFに応答が無かった。

 

 

 

 

『司令、22マイル(35km)まで接近しましたが、対象はIFFに応答なし。通信もありません。』

『予定通り、哨戒ヘリによる確認を行う。『土佐』に哨戒ヘリの発艦要請を。』

『はっ!』

 

 

 

 

 

 

 

第6艦隊 原子力ミサイル重巡洋艦『土佐』艦橋

 

 

 

『艦長、『信濃』より哨戒ヘリの発艦要請です。』

『うむ………準備出来次第発艦だ。』

『了解。…航空機、即時待機。準備出来次第発艦!』

 

 

 

 

 

 

それから1分後、『土佐』後部ヘリコプター離着艦用甲板では1機のヘリコプターが格納庫から出され、発艦準備を行なっていた。『土佐型』には4機のヘリコプターが搭載されている。

今甲板に出されているのはKa-27 という機体だ。これは国防海軍では、『土佐型』以外には運用されていない機体で、ロシアン・ヘリコプターズ製の哨戒ヘリコプターだ。

 

 

 

 

 

 

作業を始めてから暫くして、3人の航空機要員がヘリックスに乗り込んだ。乗り込んだ3人は機内の機器をチェックし、異常が無いことを確認する。 機外では、点検していた整備士妖精が機付長に報告する。

 

 

 

 

 

 

 

『機付長、点検完了しました!』

『各部異常はないか?』

『各部異状なし!燃料も給油済みです!』

『了解!誘導員以外は退避しろ!!』

 

 

 

 

 

機付長は矢継ぎ早に指示をだすと、ハンドサインで“エンジン始動”の合図を機長に送った。

 

 

 

 

 

 

 

ハンドサインを確認した機長は、副操縦士と連携してエンジンスタートに入る。

 

 

 

 

 

 

 

『各部計器異状なし。』

『よし、メインローター展開。』

『メインローター、展開。』

『展開完了。メインローター、結合良し。』

『エンジン始動。』

『エンジン、始動。』

 

 

 

 

 

 

 

折り畳まれていたメインローターが展開され、エンジンが始動し、ゆっくりと回転を始める。やがて、エンジン出力が上がる。充分に暖機運転を行い、発艦が可能な状態になった。それを確認した、機長妖精は航空管制担当の妖精に報告する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『こちら、"ヴォルク1" 発艦準備完了。』

『"ヴォルク1"、発艦を許可します。』

『了解、"ヴォルク1" 発艦。』

 

 

 

 

 

機体を固定してきた拘束装置が外され、"ヴォルク1"が発艦した。

 

 

 

 

 

 

 

『"ヴォルク1"、対象艦までの飛行コースを指示する。』

『"ヴォルク1"、 了解。』

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

『土佐』から発艦した哨戒ヘリコプター ……コールサイン『 ヴォルク1』は、管制官からの誘導に従い、目標海域に到達しようとしていた。

 

 

 

 

『こちらヴォルク1。間もなく、目標海域に到達。』

『"了解。対象に接近し、確認を行って下さい。"』

『了解。』

 

 

 

管制官妖精からの通信を終えた機長妖精は、隣に座る副操縦士妖精に話しかけてきた。

 

 

 

『報告だとそろそろだが…………何か見えるか?』

『まだ何も……………いや……………正面に艦影!』

『正面か。間違いないか?』

『………………はい、間違いないです。』

『ここからじゃまだ遠いな。もう少し近付くぞ。』

『了解!』

 

 

機長が機体を操作し、艦影が見えた2時の方向に転進する。

今度は、搭乗員妖精が双眼鏡を覗き込む。

 

『1…2…………報告通りですね。』

『艦名は分かるか?』

『識別表で確認します。』

 

 

搭乗員妖精は、識別表を使って艦名の割り出しに掛かった。程なく、艦名が分かった。

 

 

 

『先頭の大型艦は、金剛型高速戦艦…中型艦は、長良型軽巡ですね。』

『艦名は分かるか?』

『金剛型は、『比叡』……長良型は、『阿武隈』ですね。』

『よし、そのまま『土佐』に報告だ。』

『了解!』

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

原子力ミサイル重巡洋艦『土佐』 CIC

 

 

 

 

『ほう、旧日本海軍の艦艇か。』

『こちらでも照合を行いました。間違いなく、旧日本海軍の艦艇でした。』

『旗艦は恐らく金剛型だな………艦名も分かっているのだな?』

『はっ。金剛型2番艦『比叡』です。』

『データは全て『信濃』に送っているな?』

『はい。』

『ならば、司令官の判断を待とうではないか。』

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

第6艦隊 旗艦 原子力航空母艦『信濃』

 

 

 

 

『『比叡』…………………か。』

『金剛型高速戦艦の2番艦ですね。』

『もしかして………この艦隊はパラオに向かう艦隊か?』

『その可能性はあります。』

『……出来れば、接触を試みたいが………………。』

『接触ですか?何かお考えが?』

『少しね。でも、護衛の駆逐艦がいない。』

『そうですね……軽巡が1隻付いてるだけの様です。』

『護衛が軽巡1隻だけでは、はぼ丸裸の状態だ。潜水艦に襲われたら一溜りもないぞ。』

『しかし、何故駆逐艦がいないのでしょうか?』

 

 

 

 

信濃が、司令官にそう問い掛けた時。半ば通信に割り込む形で『土佐』から通信が入った。

 

 

『"割り込む形になって申し訳ない。司令官、ヴォルク1より報告だ。『比叡』が敵潜水艦による雷撃を受け、損傷。被害は軽微ではない………との事だ。"』

 

 

 

その瞬間、その場にいた全員が沈黙した。

 

 

 

 

 

 

 

*IFF……『Identification Friend or Foe』。敵味方識別装置。戦闘時に同士討ちを防ぐ為、電波を用いて敵と味方を識別する装置。



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第3話

事態が急変したのは、遡る事5分前の事

 

 

 

 

 

 

 

 

『副長、阿武隈さんは付いてきますか?』

『はい、比叡艦長。遅れること無く付いてきます。』

 

 

比叡は、それを聞くと艦長席を立つと艦橋横の見張り所に出た。見張妖精と共に双眼鏡を持つと、妖精達と共に水面の監視を始めた。

 

 

 

元々、『比叡』と『阿武隈』は、姉妹艦の『金剛』、長門型戦艦の『長門』。最新鋭艦大和型戦艦の『大和』。護衛の駆逐艦『吹雪』『白雪』『初雪』『磯波』で呉鎮守府を出航した。

 

 

だが、途中のルソン島付近で『比叡』の機関が故障を起こしてしまった。一刻も早くトラックへ向かいたい艦隊は、『金剛』『長門』『大和』を護衛の駆逐艦4隻と共に先にトラックへ向かわせる事とし、『比叡』の護衛に軽巡『阿武隈』が残った。

 

 

本来なら、1隻ではなくもう少し着くべきであろうが最新鋭艦である『大和』を少しでも傷付けたくないと考えた比叡は、自身は機関の修理が終わり次第、全速でパラオに向かってから、トラックに向かうと告げた。

彼女の姉である金剛は、自分も残ると言っても中々聞かなかった。

 

 

 

 

『お姉様、心配いりません。パラオで機関の修理を終えてからあとを追います。』

『なら私も一緒に行きマース!』

『それはダメです。お姉様は長門さんと大和さんと一緒に行ってください。』

『何故ですカ?』

『いいですか、お姉様。私と金剛お姉様の役目は、長門さんと大和さんをトラックまで無事に向かわせる事です。お姉様まで離れたら、誰が先導するんですか?』

『そ、それハ………』

『そういう事です。安心して下さい、私も直ぐにトラックに行きます。』

『……分かりマシタ。約束ですからね!』

『はい!金剛お姉様!』

 

 

結局、護衛無しというは流石にいかんという事で、阿武隈さんが付いてくれました。

機関の修理も終わり、今はパラオに向けて航行中。今は、阿武隈さんが居るとはいえ、ほぼ丸裸の状態です。最近パラオ近海での深海棲艦の潜水部隊が遊弋しているという情報を事前に聞きました。

 

 

ですが、パラオの哨戒圏内に入れば心配入らないでしょう。

艦橋内に戻ろうとしたその時…………

 

 

 

『左舷、雷跡!!』

 

 

熟練見張り員妖精が叫んだ。

同時に、『阿武隈』が雷跡発見を知らせる警笛を鳴らした。

 

 

 

『取舵いっぱい!機関全速!!』

副長が咄嗟にそう叫ぶが、それでは間に合わないと判断した比叡は、素早く自らの力で艦を操作した。

 

 

『取舵!間に合って!!』

 

 

だが、排水量3万トンを超える巨体はそう簡単には曲がらない。最初僅か横に滑る。徐々に艦が傾斜して、ようやく舵が効き始める。

 

 

 

『大丈夫!!躱せる!!』

 

 

そう思った瞬間、凄まじい爆音と艦橋を超える水柱が上がる。『比叡』の艦首左舷と2番煙突下に被弾したのだ。被弾の衝撃で船体の部品が飛び散る。被弾箇所付近にいた数名の兵員妖精の姿が見えない。

 

 

 

『くっ!』

 

 

左足と脇腹に赤く血が染みる。痛みのあまり、比叡はその場に座り込んだ。

直ぐに副長や、航海長が駆け寄ってくる。

 

 

 

 

『艦長!』

『大丈夫ですか?!』

 

 

比叡は、襲い来る痛みに耐えながら副長達の手を借りて、艦長席に辿り着いた。

 

 

『艦長!手当を!軍医だ!軍医を呼べ!』

 

 

そう叫ぶ副長を、比叡は止めた。

 

 

『私は大丈夫…………私より被弾箇所付近の……負傷者の手当を…優先!それから……被害報告!』

『しかし艦長!』

『この程度で……戦艦が沈むもんですか……!』

 

 

心配する副長を、比叡は鋭い目で睨んだ。

 

と、その時艦橋に応急修理妖精が飛び込んで来た。

 

『報告します!左舷艦首及び2番煙突下に被弾!艦首破孔、防水隔壁の一部に破損あり!浸水止まりません!』

『缶室の一部に浸水あり!』

『(バイタルパートを抜かれたか………。)班長に、全力で浸水を止めるように伝えて!』

『はい!艦長!』

『"比叡さん!大丈夫ですか?!"』

 

 

いつの間にか、後ろにいた筈の『阿武隈』が左舷に並走している。

 

 

 

『2本貰ったわ………………しかもバイタルパートを抜かれた。』

『"!それじゃあ!"』

『大丈夫………仮にも超ド級戦艦………魚雷の2本程度で沈んだりしない………。』

 

 

 

 

内心、比叡は焦っていた。

 

 

破損した艦首部分と第2煙突下の破孔は、走行の水圧で徐々に広がっていた。それに伴い、比叡自身の肉体的な傷も少しずつ増えていたのだ。

ここで砲戦、対空戦のどれをとっても致命傷になりかねない。

 

いや、1番怖いのは浸水が止まらない事だ。

戦艦といっても、『金剛型』は元は装甲の薄い巡洋戦艦。改修で戦艦並みの装甲になったとはいえ、他の戦艦に比べれば厚くはない。

 

だが、もっと悪い知らせが続く。

 

 

 

『"艦長、電探妖精です。21号電探に反応。距離約100、方位080に反応ありです"』

『数は!』

『"多数としか…………"』

『…………………………………。』

『艦長、恐らく敵通商破壊艦隊に配備されている軽空母ヌ級からと思われます。』

『……………そうでしょうね。先程雷撃してきた潜水艦が通報したんでしょう。』

『艦長………………。』

『……総員対空戦闘用意!』

『総員対空戦闘よーい!』

 

 

副長が凛と命じ、艦内に対空戦闘の号令ラッパが響いた。

ラッパが鳴り止むと、砲術長は艦長席に座る比叡に

 

 

『艦長。艦内に浸水している今主砲を撃つのは危険です。三式弾が使えないのは痛いですが、これ以上船体にダメージを与える訳には……………。』

『………………使えるのは高角砲と機銃だけですか……。』

『はい。』

 

 

 

 

 

正直、三式弾が使えないのは痛い。だが、比叡は知っていた。対空戦の要である三式弾が本当はあまり役に立たない事を。

対象の敵航空機が集団で纏まってくるならば効果はあるだろう。だが、最近は敵が三式弾を警戒してか分散して攻撃してくる。散開して来られると、効果が薄いのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第4話 遭遇Ⅱ

識別表にて確認した結果、5隻の駆逐艦の正体が判明した。それは扶桑皇国の白露型駆逐艦。大戦時の日本の駆逐艦だった。


『白露型駆逐艦?!それは本当なの?』

『間違いありません。何度も確認しましたが、白露型駆逐艦で間違いありません。』

『白露型駆逐艦、、、、、。』

 

 

 

CICからの報告を受けた はつせ はそう呟くだけだった。何故、彼女は5隻の駆逐艦が白露型と言うことに驚いたのか?それは単純な理由だからだ。

 

 

 

 

『あり得ない。白露型駆逐艦は全て、オラーシャ方面に展開していて、太平洋にはいない。それ以前に、太平洋に大戦型駆逐艦はいない。知らないうちに配置転換があったとか?』

『それは無いと思います。白露型駆逐艦は1番艦 白露 から10番艦 涼風 までの全艦がオラーシャ方面に展開している事が確認されてます。太平洋にはいないはずです。』

『、、、、、艦名は分かったの?』

『はい。『白露』『村雨』『夕立』『春雨』『五月雨』です。』

『そう、、、、、。』

『しかし、変ですね。白露型ならIFFに反応があるはずなんですが、、、、、』

『そう言えば、、、、、なんで反応がなかったんだろう?』

 

 

 

IFF:Identification Friend or Foeとは、敵味方識別装置の事で、双方からの特定周波数による送受信電波によって敵か味方かを識別する。現代の艦艇は当然、大戦型駆逐艦でも搭載している。当然反応があるはずなのだが、、、、、

 

と、CICから新たな報告がもたらされた。

 

 

 

『レーダーコンタクト。新たな反応を捉えました。』

『新たな反応?』

『はい、艦長。距離27マイル(43km)、艦艇と思われますが、詳しくは分かりません。』

『分からない?どう言う事?』

『詳細なデータが得られません。IFF及びレーダーでの国籍、艦艇の識別が困難です。』

『艦長、了解。指示を待て。』

『CIC、了解。』

『副長、レーダーが新たな反応を探知したわ。でも、詳細な艦艇と国籍の識別が困難との報告よ。』

『国籍と艦艇の識別が困難?』

『レーダーで識別出来ないとなると、、、、、。』

『目視での確認ですか?』

『そうなるね、、、、、、、、、。』

『ヘリを飛ばしますか?』

『そうしよう。直接確かめようにも距離があり過ぎる。』

『了解です、1機出しましょう。機体はあれでよろしいですか?』

『それでいい。準備出来次第発艦。』

『了解。…航空機、即時待機。準備出来次第発艦!』

 

 

 

 

それから1分後、はつせ後部ヘリコプター離着艦用甲板では1機のヘリコプターが格納庫から出され、発艦準備を行なっていた。はつせ型には4機のヘリコプターが搭載されている。

今甲板に出されているのはKa-27 という機体だ。これは扶桑皇国 国防海軍でははつせ型以外には運用されていない機体で、ロシアン・ヘリコプターズ製の哨戒ヘリコプターだ。

 

 

作業を始めてから暫くして、3人の航空機要員がヘリックスに乗り込んだ。乗り込んだ3人は機内の機器をチェックし、異常が無いことを確認する。 機外では、点検していた整備士妖精が機付長に報告する。

 

 

 

『機付長、点検完了しました!』

『各部異常はないか?』

『各部異状なし!燃料も給油済みです!』

『了解!誘導員以外は退避しろ!!』

 

 

機付長は矢継ぎ早に指示をだすと、ハンドサインで“エンジン始動”の合図を機長に送った。

 

 

 

ハンドサインを確認した機長は、副操縦士と連携してエンジンスタートに入る。

 

 

 

『各部計器異状なし。』

『よし、メインローター展開。』

『メインローター、展開。』

『展開完了。メインローター、結合良し。』

『エンジン始動。』

『エンジン、始動。』

 

 

 

折り畳まれていたメインローターが展開され、エンジンが始動し、ゆっくりと回転を始める。やがて、エンジン出力が上がる。充分に暖機運転を行い、発艦が可能な状態になった。それを確認した、機長妖精は航空管制担当の妖精に報告する。

 

 

 

 

『こちら、"ヴォルク1" 発艦準備完了。』

『"ヴォルク1"、発艦を許可します。』

『了解、"ヴォルク1" 発艦。』

 

 

機体を固定してきた拘束装置が外され、"ヴォルク1"が発艦した。

 

 

 

『"ヴォルク1"、対象艦までの飛行コースを指示する。』

『"ヴォルク1"、 了解。』

 

 

 

 

 

 

 

 

『航空機、発艦しました。』

『今度は何が出てくるかな、、、、、』

 

 

副長の報告にはつせは そう呟くだけだった。




時代背景や各国については解説しますが、それは後々に。
さて、はつせのヘリ搭載機数ですが、本文でも書いているとおり4機を搭載出来ます。4機は多過ぎじゃないか と、思われた方もいると思いますが、艦艇の解説の時に詳しく書くつもりですが、これでも少ないです。
詳しい事は解説の際に。


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第5話 遭遇Ⅲ

白露型5隻をレーダーで探知したはつせ。だが、別の艦影をレーダーが捉えた。新たに捉えた艦影を確認する為、はつせは搭載する哨戒ヘリコプター Ka-27 を出撃させた。



はつせ から飛び立った 哨戒ヘリ コールサイン"ヴォルク1"は管制官の誘導に従い、目標海域に到達しようとしていた。

 

 

 

 

『こちら"ヴォルク1" 間も無く、目標海域に到達。』

『了解。交戦はせず、確認のみを行なってください。』

『"ヴォルク1" 了解。』

 

 

 

管制官妖精からの通信を終えた機長妖精に、隣に座る副操縦士妖精が話しかけてきた。

 

 

『交戦はするな、ですか。この機体で交戦なんか出来ないのに、、、、、。』

『そうだな、コイツはせいぜい魚雷とソノブイが装備できるだけだしな。あとは機関銃だが、そんな物で交戦なんかしないぞ、普通は。』

『しかも対潜用の魚雷ですしね。使えなくはないと言っても、本機1機だけで対艦戦なんて無理ですよ。』

『そりゃそうだ。さて、、報告だとここら辺なんだが、、、、、』

『機長!正面艦影!』

『正面か、、確認出来るか?』

『、、、、、、、、、はい。確認しました。』

『ここからじゃまだ遠いな。もう少し近づくぞ。』

『了解。』

 

 

 

機長が機体を操作し、艦影が見えた2時の方向に転進する。再び、搭乗員妖精が双眼鏡を覗き込む。

 

 

 

『1.2、、、、、10隻?全部で10隻ですね。』

『10隻?多いな、何処の国の艦が調べてくれ。』

『は、艦艇データで識別します。』

 

 

 

 

艦艇を識別すべく、副操縦士妖精が機器を操作していた。が、突然、、、、、

 

 

 

『な、なにっ?!』

『どうした?』

『き、機長、これを見てください!』

『こ、これは、、、、、!』

 

 

機長が機器を覗き込むと、そこには

 

 

 

 

艦艇識別結果

 

国籍 不明

艦級 不明

 

データに無し

 

 

 

 

 

『データに無しだと?!』

『一体どういう事なんでしょうか?』

『分からん、、、、、。』

『しかし、データに無いとは、、、、、。』

『仕方ない。危険だが、もう少し接近で目視で確認するぞ。』

『さらに接近するんですか?!』

『まさか、分かりませんでした と報告する訳にはいかん。艦名は分からなくとも艦級くらいは分かる。そうだろ?』

『そ、そうかもしれませんが、危険ではないですか?』

『責任は俺が取る。それにこの距離ならとっくに対空ミサイルの射程内だ。撃ってこないという事は気づいてないか、攻撃する武器が無いか、そのどちらかだ。』

『気づいてないというのは流石に無いのでは?』

『それも調べるさ、よし、接近するぞ。』

『りょ、了解。』

 

 

 

 

機長妖精の判断で、"ヴォルク1" は更に所属不明の艦艇に接近した。"ヴォルク1" の搭乗員妖精 が 目視で艦影を視認する。その艦影を見た機長妖精達は驚愕した。

 

 

 

『なっ?!こ、この艦艇は!』

『こ、これは見間違いなんでしょうか?』

『それは、、、、、無い。』

『なら なんでここにあの艦がいるんです?!』

『落ち着け!落ち着いて、報告をしろ!』

『は、はい。はつせ との通信、開きます。』

 

 

 

 

 

艦影を視認した機長達は すぐさま はつせ に通信を繋いだ。

この時、はつせ はCICにいた。通信が入ったと聞いたはつせは"海鳥"からの映像をCICのパネルに写すように指示した。

 

 

 

『こちら、"ヴォルク1"!艦影を視認!数は全部で10隻!』

『こちら、艦長。"ヴォルク1" 10隻の艦の国籍と艦名と艦級は?』

『国籍、艦名は不明!艦級も、、、、、不明です!』

『は?不明?どういう事?、詳細を報告して。』

『データベースにて照合を行いましたが、合致する艦艇は無し!データにありません!』

『データにない?どういう事?』

『とにかく、これを見て下さい!』

 

 

すると画面が切り替わった。それは10隻の艦艇が写っていた。が、それらは見たことがある艦だったのだが、それは見た はつせ は

 

 

 

『なっ?!こ、これは、、、、、!』

『なんだこの艦は?!』

 

 

 

隣で見ていた副長も驚きの声を上げた。

機長は驚きながらも2人に詳細を報告する。

 

 

 

 

 

『か、艦影は、、、、、ニューヨーク級戦艦2、ポートランド級重巡2、オマハ級軽巡洋艦2、フレッチャー級駆逐艦4!いずれも艦名不明!』

 

 

そこに写っていたのはリベリオン海軍所属の艦艇だったのだが、それらは黒に赤の不気味な模様が入っていたのだ。しかも、それらはデータとは異なる箇所が多くあったのだ。



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第6話 戦闘

哨戒ヘリからの映像に映ったのは不気味な塗装のアメリカ艦艇だった。しかし、それらは何故かIFFに応答しなかった。


『ニューヨーク級にポートランド級?!なんでこんなにところに?!』

『落ち着いて下さい、副長。』

『すまない、砲術長…。しかし、何故ニューヨーク級やポートランド級がこんなところに、、、、、。それにあの塗装は一体?』

『それに、ニューヨーク級のニューヨーク及びテキサスは大西洋に派遣されている筈です。また、ポートランド級は2隻とも戦没しています。』

『砲雷長の言う通り、、、、、ニューヨーク級もポートランド級もここにはいない筈、、、、、』

 

 

 

 

 

副長達は何故、ニューヨーク級やポートランド級がここにいるのか、疑問に思った。ニューヨーク級はニューヨークとテキサスの2艦とも大西洋方面軍として、ブリタニアのスカパフロー泊地に駐屯していた筈だ。それにポートランド級は1番艦ポートランド、2番艦インディアナポリスの2隻とも撃沈されている。つまり、太平洋にいるはずがない。

 

 

 

 

『しかし、なんですかね。この不気味な塗装は。リベリオン海軍の軍艦色じゃないですよ。』

『んー、この塗装どっかで見た事があるような、、、、、、、、、。』

『リベリオンの艦艇ならIFFに応答があるはずだけど、、、、、、、』

 

 

 

 

はつせ が そう考えた時だった。

 

 

 

『艦長!救援要請です!救援要請の通信が!』

『救援要請?一体何処から?』

『こ、これは、、、、、白露型駆逐艦からです!』

『内容は?』

『は、『我、日本海軍駆逐艦白露。現在敵の追撃を受けつつあり。救援を求む。繰り返す救援を求む。』です!』

『敵の追撃?敵ってまさか、ニューヨーク級以下の10隻か?』

『そう考えるしかないでしょう、副長。』

『しかし、リベリオンの艦艇ですよ?扶桑皇国の艦艇を攻撃するなんて、、、、、』

 

 

 

副長がそう言いかけた時、"ヴォルク1"からの通信が声を遮った。

 

 

 

 

『こちら"ヴォルク1"、ニューヨーク級の主砲が旋回しています!』

『主砲を撃つ気です!』

 

 

 

 

 

 

 

 

『機長、本当に撃つつもりなんですか?!』

『旋回して砲にも仰角がかかってる!撃つ気満々たぞ!』

 

 

 

次の瞬間、ニューヨーク級戦艦の連装砲2基4門が轟音と共に砲撃を開始した。

 

 

 

『くそっ!本当に撃ちやがった!』

『機長、危険です!退避しましょう!』

『分かってる!こちら、"ヴォルク1"現空域に留まるのは危険と判断!帰還する!』

『こちら、艦長。了解。速やかに帰還せよ。』

『"ヴォルク1"了解!』

 

 

 

 

 

『艦長、砲撃目標は白露型駆逐艦だと思われます!』

『そうだろうね、5隻の動きは?』

『ジグザグに航行してます。回避運動を取ってる模様です。』

『よし、白露型駆逐艦に通信を送れ。』

『しかし、それでは砲撃中のニューヨークに傍受されます。』

『それでもいい。こちらの艦名と所属を伝えて。』

『は、はい。』

『こちら、扶桑皇国国防海軍ミサイル巡洋艦 はつせ 。繰り返す、こちらは扶桑皇国国防海軍ミサイル巡洋艦 はつせ。』

 

 

 

 

数回呼びかけると、返事があった。

 

 

『こちら日本海軍所属駆逐艦白露!敵の攻撃を受けつつあり、救援をこう!』

『こちら、扶桑皇国国防海軍ミサイル巡洋艦はつせ。応答せよ。』

『救援を!敵の追撃を振り切れない!救援を、、!』

『こちら巡洋艦はつせ。白露聞こえるか?白露。』

『ダメです、通信切れました。』

 

 

 

 

そこで通信は切れてしまった。先の緊縛した話し方からすると、白露以下の5隻はニューヨーク級10隻から追撃を受け、砲撃されているようだ。ともかく、救援を要請する艦艇を見捨てるわけにはいかない。

 

 

 

『通信士、砲撃中の艦隊に警告をする。砲撃を中止するように伝えよ。中止しなければこちらも応戦すると。』

『了解!』

『警告を聞きますか?私は聞いて大人しく従うとは思いません。』

『大人しく従って欲しいけどね。』

 

 

 

2人がそのように話している間、通信長は砲撃中の艦隊に警告の通信を送っていた。内容は以下の通りだ。

 

 

 

 

警告する。

貴艦隊は扶桑皇国の所属艦艇を攻撃している。扶桑皇国は貴国の交戦相手に非ず。速やかに攻撃を中止されたし。攻撃が中止されない場合、我が艦隊は貴艦隊に対して、応戦する。繰り返す、攻撃を中止されたし。

 

 

 

 

 

 

 

はつせ としてはこの警告を聞いて攻撃を止めて欲しかった。だが、その願いは叶わなかった。

 

 

 

 

『敵艦隊が進路変更!こちらに向かってきます!』

『どうやら、こちらの警告には従ってくれなさそうですね。』

『はぁ、、、、、なんでこうなるかな、本当に。』

『ぼやいてる場合じゃありませんよ、このままじゃ砲撃されてしまいます。』

『分かってる。全艦、対水上戦闘用意!配置につけ!』

『全艦、対水上戦闘よーい!』

『副長も早く着て。』

 

 

 

ヘルメットとグレーのライフベストを着用した はつせ が 副長用のライフベストとヘルメットを渡す。

 

 

 

 

『ありがとうございます、艦長。』

『さて、戦艦2隻を含む10隻と戦闘か、、、、、。まぁ、やるしかないか。』

 

 

 

 

 

ヘルメットとグレーのライフベストを着用した はつせ はCICのパネルを見つめながらそう呟いた。




はい。まさかの戦闘に突入です。まぁ、今までの流れで察してた方もいると思います。
さて、次回から 最新鋭ミサイル巡洋艦 はつせ 率いる艦隊とニューヨーク級戦艦の艦隊 との戦闘です。ご期待下さい。


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第7話 戦闘Ⅱ

白露からの救援要請を受けた、はつせ以下第十三艦隊はニューヨーク級戦艦を含む10隻の所属不明艦隊との戦闘に踏み切る。


『全艦、対水上戦闘用意よし!各科、人員配置完了。"ヴォルク1"の収容も完了しました。』

『報告、ありがとう。』

 

 

CICから艦橋に上がった はつせ は副長からの報告にそう言うと、次の指示を出した。

 

 

 

『通信士、敵艦隊に向けて再度警告。』

『了解!』

『副長、各艦に伝達。指示があるまで全火器の使用を禁じる。』

『は、各艦に伝達します。』

 

 

 

各艦にその命令が伝達される間にも はつせ から敵艦隊に向かって警告が続けて発信されていた。

すると、敵の旗艦と思われる艦から通信が入った。

 

 

 

 

『敵艦より入電。『我の行動を妨害するならば、全力をもって貴艦隊を排除する。この場から立ち去れ。』

『重ねて、警告を。』

 

 

するとCICから新たな報告が

 

 

 

『艦橋CIC。敵艦隊陣形に変化あり!フレッチャー級2隻、突出してきます!ニューヨーク級とポートランド級は位置変わらず!』

『艦長、了解。引き続き、敵艦隊の動きに注意せよ。』

『了解!』

 

 

 

と、その時だった。轟音と共に艦が大きく揺れた。

 

 

 

『っ!状況報告!』

『至近に着弾!敵からの砲撃を受けたと思われます!』

 

 

 

どうやら今の衝撃は敵戦艦からの砲撃を受け、近くに砲弾が着弾した為らしい。すると、僚艦の1隻から通信が入った。

 

 

 

 

『こちら、"あさぎり" 本艦至近に着弾!』

『こちら、はつせ。 被害は?』

『艦に損傷認められず!ただし、乗員数名が負傷!』

『はつせ、了解。負傷した乗員の手当に当たれ。』

 

 

 

敵の砲弾は至近弾となって、護衛艦"あさぎり"の至近距離に落ちていた。幸い、艦に被害は無いものの、乗員数名が負傷したらしい

 

 

 

『艦長、このままだと全艦に被害が出ます。決断を!』

『、、、、、、、、警告に応じない以上、敵と判断するしかない。副長。』

『は、艦長。』

『僚艦に打電!接近中の艦隊を敵と見なし、応戦を許可する!』

『は!通信士!僚艦に打電せよ!』

『了解!』

 

 

副長が指示を出す間、はつせ は CICに指示を出した。

 

 

 

『CIC艦橋、TAO、オーニクス発射用意。発射弾数4発。目標、敵戦艦。各艦に2発ずつ。』

『了解。』

 

 

 

 

 

『敵戦艦との距離17マイル!』

『敵艦、速力変わらず。距離を詰めてきます!』

『対水上戦闘~、CIC指示の目標!敵戦艦、2艦。攻撃始め、オーニクス4発攻撃始め!!』

今回の対水上戦は砲雷長が戦術を担当する。砲雷長は目標を指示し、VLS員に逓伝する。

『オーニクス、諸元入力よし。』

『艦長、TAO。オーニクス4発、発射用意よし!』

 

 

 

 

 

 

『了解。オーニクス、発射始め!』

『了解!!オーニクス用~意…』

『用意良し!!』

『…打てーー!!!!』

 

 

 

その直後、艦の前甲板のVLS から煙と轟音と共に4発のオーニクス が発射された。発射されたオーニクスは垂直に飛翔し、スラスターで姿勢制御が行われ、敵戦艦に向かって飛翔する。オーニクスは基本、3機一組の編隊で敵艦船に向かっていくが、今回は相手が戦艦のため、一つの目標に2機のミサイルを命中させる必要があった。そのため1機は、レーダーを起動し誘導担当のリーダー機として高空へ、残りの3機は中空を飛んでいた。

 

 

P-800 オーニクス はオラーシャがそれまで使用していた P-700 "グラニート" 超長距離ミサイルの後継として開発した新型の超音速対艦ミサイルは 大型だった"グラニート"よりも小型されており、"グラニート"が重量6.980kg、全長10mだったのに対して、"オーニクス"は重量3,900kg、全長8.9mと小型されている。

はつせ型は当初"グラニート"を搭載する予定だったのだが、大き過ぎて搭載出来ないことが判明。代わりに"オーニクス"が搭載されたのだ。

 

 

 

発射された4発の"オーニクス"はリーダー機の誘導の元、敵戦艦に向けて順調に飛行していた。その動きをCICの電測員妖精が見守る。

 

 

 

 

 

『オーニクス、着弾まで、、、、、あと30秒。』

『オーニクス、アクティブ・レーダー・シーカー 誘導に入りました。』

 

 

オーニクスは終末時のアクティブ・レーダー・シーカー誘導に入り、全機がシースキミング飛行に移る。間も無くそれぞれの目標に着弾する。

 

 

 

『命中まで5秒、、、4秒、、、3秒、、、、、スタンバイ。』

 

 

 

沈黙が艦を支配する。1時間にも感じられた沈黙の時間を破ったのはレーダー担当の電測員妖精とVLS 員妖精の声だった。

 

 

 

『マーク・インターセプト!』

『敵戦艦の反応、、、、、消失!撃沈です!敵戦艦を撃沈しました!』

 

 

それを聞いた瞬間、艦内は歓声が飛び交った。

 

 

 

はつせから発射された4発の"オーニクス " は外れることなく、ニューヨーク級2隻に2発ずつ命中した。命中した"オーニクス"はニューヨーク級の2番砲塔と艦橋に吸い込まれるように着弾。2番砲塔の装甲を突き破ったミサイルは弾薬庫で爆発。弾薬庫から砲塔へ、次々と誘爆し、艦橋は突入時の衝撃で横殴りに吹き飛ぶ。ニューヨーク級は2隻とも呆気なく爆沈してしまった。




本当は"グラニート"を出そうかと思いましたが、本文中でも書きました通り、大き過ぎて、はつせ型には積めないので、やや小型の"オーニクス"に変更しました。
もちろん、"オーニクス"以外にもミサイルは搭載してるので、それらも出していきます。


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第8話 戦闘Ⅲ

はつせ は砲撃したニューヨーク級戦艦に対し、"オーニクス"超音速ミサイルを発射し、これを撃沈した。


『敵戦艦の反応、完全に消失。』

『敵ポートランド級2隻、フレッチャー級4隻、さらに接近してきます。距離18マイル(29km)。』

 

 

 

CICの電測員妖精が情報を集め、報告してくる。残存する敵艦隊は約29kmの位置。魚雷や砲熕兵器は射程外のはずだ。

未だ充分ミサイルの射程内だが、ミサイルは一発一発が高コストなので、頻繁には使えない。となると使う武器は限られてくる。

一呼吸おいて、艦長である はつせ は戦術を担当する砲雷長へ指示を飛ばす。

 

 

 

『対潜魚雷の応用か主砲を使いましょう。駆逐艦相手にミサイルは費用対効果が大きすぎます。』

『了解しました。…主砲、攻撃始め。』

CICで戦術を担当する砲雷長から了解の返事が返ると同時に、彼は はつせ の指示を主砲の発射管制を担当する砲術長へと伝える。

 

 

『了解、主砲発射始め。』

 

 

砲術長から返事が届き、主砲の発射準備に取り掛かる。

CICではレーダーからの情報を主砲に送っていた。

 

 

 

 

はつせ 前甲板 主砲塔 下部 弾倉操作室

 

 

『操作室、砲術長。砲撃準備。目標、敵駆逐艦。ラック2番の調整破片弾を半徹甲へ変更、送れ。』

『了!フタ番ラックVTから半徹甲!!』

『フタ番砲弾変更!』

『急げ急げ!訓練の成果を見せろ!!』

 

 

 

砲雷科の妖精が続々と2番ラックに装填されている対空用の砲弾を取り出し、そこへ弾薬庫から機械で運ばれてきた対地・対艦用の砲弾を装填する。バケツリレーのような手際の良い仕事ぶりにより、装填は3分で完了した。

 

 

 

 

『砲術長、装填完了。フタ番ラック、半徹甲切り替え良し!!』

『了解。……TAO、Surface。主砲、発射用意良し!!』

 

 

操作室から準備良しの返答を確認した砲術長は、射撃準備完了の報告を即座に戦術長である砲雷長へ伝えた。

 

 

『了解。左対水上戦闘、CIC指示の目標!敵残存艦隊、先頭艦!!……打ち~方、はじめ!!!!』

『打ち~方はじめ!!……発砲!!!』

『発砲!!!!』

『主砲発砲!』

 

 

 

独特の号令が砲雷長・砲術長・砲術士へと矢継ぎ早に発せられると共に、砲術士妖精が卓上横に備えられたトリガーを取り出し引き金を引く。砲術士の“発砲”という発声を聞くと、他の科員もそれを逓伝していく。引き金を引いたことにより、連装主砲から砲弾が連続的に発射された。発射と同時に砲身下部から空薬莢が次々に排出される。

 

 

発射された砲弾は、先頭に位置していたフレッチャー級に着弾し、第1、第2主砲を吹き飛ばした。続けて発射された砲弾はレーダー、魚雷発射管を次々と破壊。装填されていた魚雷に誘爆し、そのフレッチャー級は船体が真っ二つに折れて、撃沈した。

 

 

 

『第1目標、撃沈。目標変え、続けて撃て!!』

『旋回完了。主砲目標良し、砲口監視員、砲口良し射撃用意良し!』

『再発射、急げ!!!!』

 

 

 

残ったフレッチャー級も降り注ぐ砲弾で主砲、魚雷発射管、レーダー、煙突 が破壊され、浮かぶ鉄くずに変わり果てた。

戦闘開始から僅か2分程でニューヨーク級2隻、フレッチャー級1隻が撃沈、一隻が大破して沈黙した。

 

 

 

『敵駆逐艦1隻撃沈、1隻大破。』

『残るはポートランド級2隻とフレッチャー級2隻か、、、、、』

『艦橋CIC、敵艦隊に変化。進路を反転。この海域からの離脱コースを取っています。』

『自分達が不利だと判断しての離脱ですかね。』

『そう、思おう。』

 

 

 

 

そう言うと 彼女はため息をついた。

 

 

 

『対水上戦闘用具収め。』

『対水上戦闘用具収め!』

『戦闘配置解除、警戒配置に。』

『戦闘配置解除。警戒配置へ。』

 

 

ヘルメットとライフベストを外しながら、指示を出し、副長が復唱する。

 

 

『これより白露、村雨、夕立、春雨、五月雨の5隻に接近する。針路、白露型艦隊方向。』

『はい、艦長。』

『艦隊陣形を変更する。艦隊複縦陣、艦幅300。』

『艦隊複縦陣、艦幅300。』

『"あさぎり"の方は?』

『航行には支障ありません。負傷した乗員の処置も完了したと連絡がありました。』

『まぁ、被弾してないのは幸いだったね。』

『そうですな。、、、、それよりも艦長。』

『何?副長。』

『あの不気味な米艦艇といい、白露型駆逐艦といい、、、、、一体何が起こっているんでしょうか?』

『それを聞かれても分からないよ、、、、、、、、。』

 

 

 

そう言うと はつせ は前方の海面を見つめた。




初めはミサイルでは全艦沈めようかと思ってましたが、いきなりミサイルを大量に使うとはどうかと思い直し、駆逐艦には速射砲で対処させました。


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第9話 合流

オーニクスと主砲で敵艦隊を退けた艦隊は救援要請を出した白露以下駆逐艦5隻と合流しようとしていた。


戦闘を終え、艦隊陣形を2列縦隊に変更した艦隊は救援要請を出した白露以下5隻の駆逐艦に接近していた。

艦長である、はつせ はヘルメットとライフベストを脱ぎ、いつも通りの格好で艦橋の艦長席に座っていた。

すると、見張り員の1人が5隻の艦影を見つけた。

 

 

 

『艦長、前方に艦影。5隻、駆逐艦クラスです。』

『先頭の駆逐艦から発光信号。『我駆逐艦白露。救援に感謝する。貴艦隊への接近を許可されたし。』

『発光信号で返信。『了解。接近を許可する。』と。』

『は。』

 

 

 

 

発光信号で返答すると、先頭の駆逐艦が増速。後続の4隻もそれに続く。 だが、5隻の駆逐艦からは薄っすらと黒煙が上がっていた。

増速した5隻は艦隊の左を通り過ぎる進路を取った。

 

 

 

『なぜ、艦隊の左側を通過する進路を、、、、、』

『左側からこちらの後ろに回るつもりなんだ。』

 

 

 

航海長の言った通り、5隻の駆逐艦はこちらの左側を通り過ぎ、そのまま艦隊の後方に回った。すると、先頭の駆逐艦が2列縦隊の真ん中を進み、はつせ の横に並んだ。

 

 

 

『よくも、まぁ、あの狭い隙間を通ったな。』

『駆逐艦より発光信号。『貴艦への接舷許可を願う。』

 

 

 

航海長が動きについて感想を述べていると、駆逐艦からこちらに接舷したいとの要請が

 

 

 

 

『艦隊、速度落とせ。両舷微速。』

『了解、両舷微速。速度おとせ』

『返信、『接舷を許可する。』

『は。』

『甲板要員、舷梯の用意を。』

『は!』

 

 

要請を聞いた はつせ は艦隊の速度を落とさせた。艦隊が速度を落とすと、その駆逐艦はゆっくりと はつせ に接舷してきた。

はつせ は接舷した駆逐艦を見た。舷側には し ら つ ゆ と白で大きく書かれていた。

 

 

 

程なく、白露とはつせの間に舷梯形が掛けられ、2人の人物が登ってきた。2人は、甲板で待機していた はつせ に姿勢を正し、敬礼した。はつせ も2人に返礼する。

すると、2人の内の1人が先に口を開いた。

 

 

 

『救援に感謝します。本当に助かりました。ありがとうございます。』

『いえ、当然の事をしたまでですよ。』

『申し遅れました。私は駆逐艦白露 の副長です。よろしくお願いします。そしてこちらが、、、、、』

 

 

白露の副長が隣の少女の方に目線を向ける。

少女は黒を基調とし、所々に赤いパーツをちりばめた半袖のセーラー服に、赤い茶髪に黄色いカチューシャを付けていた。

 

 

『初めまして。駆逐艦白露艦長の 白露 です。よろしくね。』

 

 

その少女 白露 は微笑みながら、そう言った。

 

 

『ミサイル巡洋艦 はつせ 艦長のはつせです。こちらこそよろしく。』

『よろしくおねがいします。はつせさん。白露って呼んでね。』

 

 

はつせ はそう言いながら、彼女の姿を見た。黒のセーラー服は所々が焼けた後があり、腕や足には擦り傷や出血した跡が残っていた。

 

 

 

『その怪我は?』

『あ、この怪我ですか。いやぁ、敵に追いかけ回された時にこけちゃったり、頭を打ち付けちゃったりしちゃって、、、、、』

『艦長、嘘はいかんですよ。と言うか、こけただけでそんな怪我にならないでしょう。』

『それ言っちゃダメだよ副長!』

『その怪我をそのままにしておくはダメ。付いてきて。医務室で診てもらおう。。』

『え、でも私大丈夫ですけど、、、、、、』

『とても大丈夫そうには見えないけど?』

『うっ、、、、、』

『心配しないで。この艦の医者は優秀だから。大丈夫だから、ね?』

『え、あ、はい。』

『艦長、私は艦に戻っておきますので。後ほど。』

『えっ?あ、いや、副長?』

『いいから、付いてきなって。あ、甲板長、白露の副長さんが戻ったら舷梯を収納しておいて。』

『了解です。』

『さっ、行こう。』

 

 

 

 

 

白露は、はつせに手を引かれて、艦内に入って行った。白露副長ははつせの副長と何やら話し込んでいた。

時刻は0700。

月明かりが13隻を海面に照らしだしていた。




新たな登場人物として白露を出しました。艦娘としては3人目です。これからも艦娘意外にも登場人物は増やして行くつもりです。


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第10話 救護班長

はつせ と対面した駆逐艦白露艦長の白露は、彼女の怪我を見かねた
はつせに連れられ、艦内の医務室に向かっていた。


艦内に入った白露 は はつせと2人で医務室に向かって廊下を歩いていた。

はつせの後ろを歩く白露は目の前を歩く少女について考えていた。

身長は自分よりも高く、巡洋艦娘と同じくらい。銀髪の長髪、白を基調とした制服を着ている。何より気になったのが、彼女の名前だ。

 

 

 

『ついたよ、ここが医務室。』

 

 

気がつくと2人は医務室と書かれたプレートのある部屋の前に来ていた。彼女が扉を軽くノックしすると、中から どうぞ という男性の声が聞こえた。

 

 

 

 

『調子はどう?救護班長。』

『いつも通りですよ、艦長殿。』

 

 

 

そこに居たのは白衣を着た1人の初老の男性だった。彼はこの艦の救護班長を務める人物で艦医を40年勤めていた。彼ははつせとの会話を中断すると、白露の方を向いた。

 

 

『艦長、そのお嬢さんは?』

『駆逐艦白露 艦長の白露さんよ。』

『白露艦長の白露です。』

『始めました、白露さん。私はこの艦の救護班長をしています、よろしくお願いします。』

 

 

 

 

そう言うと彼は深々と頭を下げた。白露も頭を下げる。彼は頭を上げると、再びはつせの方を向き

 

 

 

『それで、私に何かご用でも?』

 

 

と、用件を尋ねた。

 

 

 

 

 

『怪我してるみたいでね。手当てしてあげてくれない?』

『そう言うことなら、任せて下さい。』

『じゃあ、外で待ってるね。』

 

 

 

 

そう言うとはつせは 医務室から出ていった。医務室には救護班長と白露の2人だけが残った。

 

 

 

 

『じゃあ、さっさとやって終わらせようか。』

『あ、は、はい。』

 

 

 

彼はそう言うと、治療をする為に準備を始めた。それを黙って見ていた白露だったが、準備をする救護班長に話しかけた。

 

 

 

 

『あ、あの、、、、』

『なんだい?』

『はつせさんって、、、、、、』

『艦長がどうしたんだい?』

『はつせさんって初瀬様、、、、、じゃないですよね?』

『初瀬様、、、、、あぁ、敷島型戦艦の方か。艦長は初瀬様じゃないよ。』

『初瀬様を知ってるんですか?』

『知ってるさ。艦長は、はつせ型ミサイル巡洋艦のネームシップだ。』

『みさいる巡洋艦?何ですかそれ?』

『ん?ミサイルを知らないのか。ミサイル艦と言うのはミサイルと呼ばれる兵器を搭載した巡洋艦の事だ。』

 

 

 

 

白露の腕の擦り傷を処置しながら、彼は会話を続けた。

 

 

 

 

『みさいるって何ですか??』

『あー、それも知らないか、、、、』

 

 

 

 

治療をしていた彼は頭を抱えた。ミサイルはこのはつせ以外にも搭載されており、一般人でも名前やどんな兵器知は大まかに知ってるはずなんだが、、、、、、、、、、。

 

 

 

『まぁ、詳しい事は艦長に聞くといいさ。なんせそのミサイルを搭載した艦の艦長なんだからね。よし、治療終わり。』

『ありがとうございました。』

『じゃあ、お大事にね。』

 

 

 

 

救護班長に礼を言いい、医務室を出ると廊下では はつせ が待っていた。

 

 

 

 

『包帯でぐるぐる巻きだね。』

 

 

 

白露の姿を見て、はつせはそう言った。彼女の腕や足は至る所包帯で巻かれていた。

すると、はつせのポケットに入っていた携帯端末が鳴った。

 

 

 

『こちら、はつせ。副長、どうかしたの?そう、分かった。報告ありがとう。』

 

 

 

携帯端末を仕舞うと、白露の方を向いた。

 

 

 

『事後報告になっちゃうけど、あなたの艦は損害が大きかったから、特務艦"あかし"で応急処置をさせてる。応急処置をする間は曳航する形になるんだけど、、、、、』

『その間私は、、、、、』

『副長さん達と一緒にこの艦にいてもらう事になるかな。』

『分かりました。暫く、お世話になります。はつせさん。』

『よろしくね、白露さん。』

 

 

 

 

こうして白露の船体の応急処置が終わるまでの間、白露達は はつせ で待機することとなった。




今回は 白露の怪我の処置の話でした。次回は、再び戦闘の回です。


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第11話 白露の疑問 はつせの答え

護衛艦隊司令官のはつせ は駆逐艦白露の船体の応急処置を施す為に艦隊を停止させた。


艦隊の中の一隻、特務艦"あかし"では現在作業に追われていた。右舷では駆逐艦白露が接舷し、応急処置を施す作業を行っていた。その為、"あかし"は停止しなくてはならず、艦隊の動きも止まっており、各艦への補給作業が行われていた。

 

 

 

はつせ は僚艦の"せとぎり" "しらね"の2隻と共に周囲の警戒に当たっていた。はつせ が艦隊の前方を。"せとぎり"と"しらね"は左右に展開していた。

 

 

 

その頃、はつせ は白露と共に艦長室にいた。白露から2人だけで話がしたいと言われた彼女は自室でもある艦長室で話そうと提案した。

 

 

 

『さて、私に話したい事って?』

『私、、、、、ずっと気になってたんです。』

 

 

 

そういうと顔を俯けていた白露は顔を上げ、はつせの顔を見た。

 

 

 

『はつせさん、あなた達は一体何者なんですか?』

 

 

白露は はつせの顔を見つめ、そう言った。彼女は言葉を続けた。

 

 

 

 

『私の知る限り、日本は国防海軍とは言わずに、日本海軍と名乗っています。なのにあなた達は国防海軍と名乗った。それにミサイル巡洋艦と言う艦は聞いた事がありません。はつせさん、あなた達は本当に私達の味方なんですか?いや……あなた達は一体?』

 

 

 

はつせは白露の言葉を黙って聞いていた。が、顔を彼女の方に向け言った。

 

 

 

『私達は敵ではない。これだけは断言できる。そこは信じて欲しい。』

『なら、何故日本海軍では無く、国防海軍と名乗ったんですか?それにミサイル巡洋艦とは?そんな艦は聞いたことないです』

『、、、、、、、、、、今から言うことは推測なんだけど、聞いてくれる?』

 

 

白露は黙って頷いた。それを確認したはつせは 言葉を続けた。

 

 

 

 

『私達は、、、、、、、別世界から来た艦隊、、、、、』

『別世界から、、、、、来た艦隊、、、、、』

『あくまで推測だけどね。』

『じょ、冗談はやめて下さい。自分達は別世界から来た だなんて、、、、、』

『なら確認してみよう。今の時代とあなたの正式な所属部隊は?』

『1939年の1月9日、、、、、私の所属は日本海軍トラック島駐留部隊第二十七駆逐隊。それがどうかしたんですか?』

『それを聞いて確信した。私達は別世界から来た艦隊だ。』

『まだそんな事を言うんですか、、、、、』

『今から言うことは嘘じゃない。いい?』

『はい、、、、、』

『私は扶桑皇国 国防海軍佐世保基地所属 第十三艦隊旗艦 兼 同艦隊 司令官。そして私が建造されたのは2030年の1月9日。』

『えっ、、、、、』

『2030年生まれの艦が1939年にいるなんて、おかしいと思わない?それに私達の国籍は扶桑皇国。日本じゃない。でも、あなたは日本海軍と言った。嘘はついてないでしょ?』

『はい。』

『なら、答えは簡単だ。私達第十三艦隊は別世界から来た。まぁ、私自身も信じられない。けど、そうと考えるしかない。あなたが嘘をついてるようには見えないからね。』

『、、、、、、、、、、。』

 

 

 

 

白露は信じられないという気持ちだった。自分が言ったことは嘘ではない。そして彼女が嘘をついてるようには見えない。だが、それでも 自分達は別世界から来た艦隊だ というはつせの意見には驚き、信じることが出来なかった。

 

 

 

『分からない………訳が分かりません……一体何がどうなってるの、…………』

『落ちついて。混乱するのは当然。』

 

 

はつせ がさらに言葉を掛けようとした時だった。艦長室にCICからの報告の声が響いた。

 

 

 

 

『各部、ソーナー。魚雷音探知!』




はつせ が白露に 自分達が何なのかを話しましたね。やや無理やりだった感があるかもしれないです、、、、、。
次回は対潜水艦戦です。


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第12話 対潜水艦戦闘

"あかし"の作業のため、行動を停止した護衛艦隊。旗艦はつせ は僚艦しらね、せとぎり と共に警戒に当たっていた。そんな中、彼女たちに向かって海中の刺客から魚雷が放たれた。


『魚雷音探知!Bearing 0-8-0(迎え角80度)、本艦に向かって高速接近!』

 

 

艦長室にいた はつせ と白露は、ソナー室からの報告に耳を傾けていたが、はつせ は、直ぐさま壁に掛けかけてあったマイクを手に取り、ソナー室にいる水測員に連絡を取る。

 

 

 

『こちら艦長。ソーナー、詳細知らせ。』

『こちらソーナー。80度方向より雷速40ノットで本艦に向けて高速接近!距離3200!!』

『了解、探知を続けて』

『ソーナー、了解!』

『副長、最大戦速。全力即時退避。他艦は位置そのまま、対潜戦闘用意!急げ!』

『副長、了解!』

 

 

 

そこまで言うと、マイクを元あった場所に戻す。

はつせ 机の上に置いてあったヘルメットを手に取り、頭に被る。

 

 

 

『悪いけど、続きは後で。今は対潜戦闘に備えないと。一緒に艦橋に来て。』

『分かりました。』

『予備で悪いけどこれを。』

 

 

そう言うとはつせは 自分用の予備のヘルメットとライフベストを差し出した。白露はそれを受け取り、身につける。

それを確認すると、はつせ は白露と共に艦橋に向かった。

 

 

 

 

 

『対潜戦闘よーい!』

 

 

副長の号令と共に艦内に戦闘配置を知らせるアラームが鳴り響く。CICで指揮をとっている砲雷長は、対潜戦闘区画の妖精に指示を出す。

 

 

 

 

『ソーナー、TAO!絶対に敵艦をロストするな!』

『了解!』

『ソーナー、何故この距離まで探知出来なかった!』

『突然現れました!敵潜はエンジンを止めて、攻撃のタイミングを伺っていた模様です!』

『馬鹿者!そうだとしても探知してから報告するのが遅過ぎる!リムパックの時よりも腕が落ちてるぞ!』

『申し訳ありません!』

『距離は!』

『距離2000!』

 

 

 

 

同じ頃、艦橋では 白露とはつせが既にその場に着いていた。艦長席に座るはつせは忙しなく指示を出していた。

 

 

 

 

 

『各フロアの隔壁のチェック!応急班は即応体制!』

『こちら機関室!機関に異状なし!いつでも全開で回せます!』

 

 

 

機関室の機関長からの報告を聞いた はつせ は、艦長席から航海長妖精に大声で指示を飛ばした。

 

 

 

『軸ブレーキ脱、最大戦速!!』

『最大戦速!』

 

 

 

 

航海士妖精が復唱し、コンソールのレバーを前に倒すと、"はつせ"はガスタービンを唸らせながら航行速度を上げた。

 

 

 

『躱せ!!』

『総員、衝撃に備え!!』

 

 

"はつせ"がそう叫び、その場にいた全員が対ショック姿勢をとった。だが、魚雷は"はつせ"後部を通過していった。

 

 

 

 

 

『か、躱した!』

『ソーナー、敵潜はまだ捉えてるな?』

『こちらソーナー、バッチリ捉えています。』

『TAO、攻撃始め。目標に対し短魚雷攻撃行え。』

『了解、実施します!』

『しらね、せとぎりに伝達。『我敵潜を攻撃す。しらね、せとぎりはあかし、信濃の護衛にあたれ。』

『了解。』

『逃しはしないわよ、"白狼"は一度捉えたら離さない。』

 

 

 

 

 

艦長席に座る"はつせ"はそう呟いた。それを聞いたのは隣にいた白露と副長だけだった。




今回は対潜水艦戦闘です。元ネタは分かる方もいらっしゃると思います。次回も引き続き対潜戦闘です。


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第13話 対潜水艦戦闘Ⅱ

敵潜水艦の魚雷攻撃を躱した"はつせ"。艦長はつせ は短魚雷の発射準備を下令した。


『短魚雷。両舷1番、4番発射管用意。』

『了解。』

『速度落とせ、第3戦速。』

『速度落とせ、第3戦速。』

 

 

 

はつせが艦橋で指示を出していた時、海中では、、、、、

 

 

 

深海棲艦 カ971潜

 

 

 

『チッ、躱サレタカ。』

『敵ノ加速スピードハコレマデノ敵艦トハ比ベ物ニナラナイ程、速カッタデス。』

『見タ所、日本軍ノ新鋭艦ノ様ダ。潜望鏡下ロセ。』

『潜望鏡、下ロシマス。』

『水雷長、3、4、5、6番発射管用意。魚雷装填。』

『了解シマシタ。』

『何方ニ舵ヲ切ッテモ当タル、放射状ニ撃テ。』

『了解。』

『3、4番発射管、装填完了。諸元入力ヨシ。発射管開キマス。』

『発射準備ヨシ。』

『ファイア!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はつせ CIC

 

 

『発射管注水音探知!!再攻撃……来ます!!』

『ソーナー探知。210度より魚雷2本接近!距離3700!』

 

 

 

はつせ 艦橋

 

 

 

『操舵手、面舵いっぱい!』

『面舵いっぱい!…面舵30!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『敵艦、面舵ヲ取リマシタ。』

『ヨシ、5番、6番用意。』

『用意ヨシ。』

『ファイア!』

 

 

 

 

 

 

 

 

はつせ CIC

 

『新たな魚雷音!2本です!計4本!』

『艦長、ソーナー。新たに魚雷2本!右に広がってきます!!』

 

 

 

 

 

はつせ 艦橋

 

 

『やってくれるじゃない。』

『どうします?』

『慌てないで。10度に戻す!当て舵5!!』

『とぉーりかぁーじ!!…当て舵5!……舵中央。10度、ようそろ!!』

『魚雷4本の内2本、本艦との距離910!』

『見張り員!この魚雷は敵味方、どっちの魚雷だ!』

『魚雷は深海棲艦、敵の魚雷です!私達が使うのは酸素魚雷ですから、航跡は殆ど見えません!先ほどの魚雷は航跡が見えました!』

 

 

はつせの問いに白露が答える。それを聞いたはつせは頷くと、デッキにいる見張り員妖精に向かって叫んだ。

 

 

 

『航跡は見えるわよね?角度は!』

『左130度!相対速度約5ノット!』

『面舵いっぱーい!!』

『距離50、、、、30、、、、20!』

 

 

 

魚雷2本は"はつせ"の左舷すれすれを通過していった。

 

 

『躱した!』

『まだだ!残り2本! コース知らせ!』

『雷跡、真艦尾!広がりつつ接近!!』

『距離300!』

『もどーせー!!』

 

 

 

"はつせ"の号令に従い、操舵手が舵を切る。

 

 

 

『距離137メートル!接触します!後5秒、、、4秒、、、3秒、、、2秒、、、1秒!』

 

 

 

魚雷2本は"はつせ"の艦尾をVの字に別れて遠ざかっていった。

 

 

 

『ぎょ、魚雷全弾躱しました。遠ざかります。』

 

 

 

 

CICからその報告を聞いた はつせ はマイクを握り、思いっきり叫んだ。

 

 

 

『短魚雷発射始め!!』

 

 

 

 

 

『了解!短魚雷発射、急げ!!』

 

 

 

 

 

"はつせ"の4基搭載されている魚雷発射管の内、1基が短魚雷を発射した。その数2本。

発射された魚雷は海中に突入すると、猛スピードで敵潜水艦に向かって突き進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『海面ニ着水音!』

『スクリュー音探知!ギョ、魚雷?!』

『面舵イッパイ。モーター全速。艦尾7番、8番、デコイ装填!』

『7番、8番発射管。デコイ装填ヨシ。』

『ファイア!』

 

 

 

 

敵カ971潜艦尾発射管からデコイが発射され、2本の短魚雷がそれにつられてコースを変える。だが、残りの1本はそのまま敵潜に向かってきた。

 

 

 

 

『アップトリム最大!全速浮上!』

『カ、艦長?!』

『コノ魚雷ハ追尾式ダ、デコイニ食イツカナカッタ1本ガ来ル。全速浮上ダ!』

『ハ、ハイ!全速浮上!』

『艦尾ノ人員 ハ退避!急ゲ!』

『艦尾発射管!デコイ装填!装填完了次第撃テ!』

『了解!』

 

 

 

敵潜水艦の艦首が海面に出ると同時に艦尾発射管からデコイが発射され、デコイに突っ込んだ魚雷が爆発し、艦尾で大きな水柱が上がる。

 

 

 

『スクリュー破損!』

『機関室浸水!』

『隔壁閉鎖!漏水ヲ防ゲ!他ニ浸水箇所ハ!』

『有リマセン!』

『ラッキーデス!本艦ノ防御強化ノオ陰デス!』

『全力デ浸水ヲ防止シロ。』

『ハ!』

 

 

 

 

敵潜水艦が浮上した事は"はつせ"の方でも捉えていた。

 

 

 

 

『発射したのは2本。でも当たったのは1本。いや、正確にはダメージを与えたのは1本だけ。もう1本は躱されたか。』

『しかし、誘導魚雷を躱すとは』

『デコイを使ったんでしょう。』

『どうします?攻撃しますか?』

『いや、あの様子じゃもう攻撃はして来ないでしょう。無視していい。』

『は、了解しました。』

『こちらの攻撃を耐えるとは、、、。次は逃さない。』

 

 

 

 

 

遥か彼方に見える敵潜水艦に向かって、はつせはそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『艦長、応急処置完了。デスガ、航行ニ支障ガアリマス。』

『司令部ニ救難艦ヲ寄越ス様ニ言エ。』

『ハ。シカシ、アノ艦ハドウシマスカ?』

『ホッテオキナサイ。モウ攻撃シテコナイワ。』

『シカシ、、、』

『此方ノ戦闘能力ハ失ッタニ等シイ。モウ攻撃シテコナイト判断シタンデショウ。』

『成ル程。』

『ナカナカ賢イ敵艦ダッタ。"狼"ガ狩ルニハピッタリノ獲物ダ。次会ッタ時ハ必ズ仕留メテヤル。』

 

 

 

カ971潜艦長はそう言って遠ざかっていく、艦影を睨んだ。




如何だったでしょうか?今回は対潜水艦戦でしたが。今後ともよろしくお願いします。


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第14話 自己紹介と方針決定

襲撃してきた敵潜水艦を撃退した"はつせ"。作業を完了した護衛艦隊は、再び航行を再開しようとしていた。


敵潜水艦を撃退してから1時間後、"あかし"から応急処置が完了したと連絡が入った

 

 

 

 

はつせ は自艦に各艦の艦長を呼んだ。

 

 

 

『皆んな、集まってくれてありがとう。』

『はつせさん、その人達は?』

 

 

 

銀髪ショートヘアの幹部常装第三種夏服を着た少女、護衛艦"あさぎり"艦長のあさぎりがそう言った。

 

 

 

 

『紹介するね、彼女達は私達が救援した駆逐艦の艦長さん達だよ。』

『初めまして。駆逐艦白露艦長の白露です。よろしくお願いします。』

『村雨艦長の村雨です。』

『夕立艦長の夕立です。よろしく。』

『春雨艦長、春雨です。よろしくお願いします。』

『五月雨です。よろしくお願いします。』

『次は私達ね。まず、私から。ミサイル巡洋艦"はつせ"艦長のはつせです。よろしくね。はい、次。』

『汎用護衛艦"あさぎり"艦長のあさぎりです。こっちは妹の、』

『汎用護衛艦"せとぎり"艦長のせとぎりです。姉共々よろしくお願いします。』

 

 

 

銀髪セミショートの せとぎりがそう言って頭を下げた。

 

 

 

『次は私ね。汎用護衛艦"むらさめ"艦長のむらさめです。よろしくね。』

『同じく、汎用護衛艦"はるさめ"艦長のはるさめです。よろしくお願いします。』

 

 

むらさめとはるさめはそう言って頭を下げたが、白露達は2人をじっと見つめたままだった。

 

 

 

『あのー、私たちに何か?』

『あ、いや、その、、、、、』

『あまりにも似ていたので、、、』

 

 

 

白露と五月雨はそう言った。

むらさめとはるさめの2人は村雨と春雨とそっくりなのだ。服装以外は全く同じと言っていいほど、良く似ている。髪型や髪の毛の色まで同じだ。

 

 

 

 

『確かに、似てるよね。もしかして双子?』

『『『『違います。』』』』

『おお、見事にハモッた。』

『えっと、自己紹介しても?』

『ああ、ごめん。いいわよ。』

『ヘリコプター搭載護衛艦"しらね"艦長のしらねだ。よろしく頼む。』

『特務艦"あかし"艦長のあかし。よろしく。』

『航空母艦"信濃"艦長の信濃です。どうぞよろしくお願いします。』

 

 

 

ひとまずその場にいた全員の自己紹介が終わった。

 

 

 

 

『さて、自己紹介が終わったところで、本題に入るよ。』

 

 

 

 

 

 

はつせがそう言うと全員の視線がはつせ に向く

 

 

 

 

 

『白露さん達からの情報提供によって現在位置はここ。』

 

 

 

 

そう言って はつせ は地図を指した。

 

 

 

『 白露さん達と話し合い、確認した結果……我々第十三艦隊は別世界……つまり、扶桑皇国ではなく、日本という国名で存在する別世界に来てしまったと推測します。』

『 『 『 『 べ、別世界?!』』』』

 

 

その場にいた者が驚きのあまり、大声をあげる。

そんな中1人冷静であるしらねが発言の許可を求めた

 

 

『質問してもいいか?』

『どうぞ、しらねさん。』

『その推測だと、合流予定のリベリオン第3、第7艦隊は存在しないという事だな。』

『そうなりますね。』

『では、我々はこれからどうする?』

 

 

 

 

しらねがそう問いかけた。

 

 

 

『我々はこれからこの白露さん達をトラック島まで送り届ける。それが第一よ。』

『その次は?』

『出来れば、日本海軍の上層部と接触したい。補給の問題もあるから。』

『確かに。私の搭載してる物資だけでは持ちません。』

 

 

 

あかしは はつせの意見に同意する。

 

 

 

 

『それに深海棲艦の事もある。』

『深海棲艦ですって?!』

『そんな奴らはとっくの昔に!』

『そう、私達のいた世界ではとっくの昔に深海棲艦は一部を除き、全滅した。でも、ここは私達のいた世界ではない。』

『そんな、』

『あ、あの…はつせさん。深海棲艦を知ってるんですか?』

 

 

 

 

白露がそうはつせに聞いた。

 

 

 

 

『知ってるよ、私達の世界にも深海棲艦はいた。でも、私が建造されるより前に一部を除いて全滅したと聞いてる。』

『私が強襲揚陸艦に改造されてから程なく、全滅しましたからね。その後は確認されてません。』

『はつせさん。深海棲艦がいるなら私達厳しいですよ?』

『汎用護衛艦だしね』

『私は接近戦は無理だ。』

『『それは私達も無理です。』』

 

 

 

しらねの言ったことにあさぎりとせとぎりがそう言った。

 

 

 

『まぁ、接近戦になる事はそんなにないとは思うけど。とにかく、今はトラック島を目指します。以上、各艦の乗員に伝達!』

『了解!』

 

 

 

その場にいた全員はそう返事をし、各艦に戻っていった。白露達5人については艦の損傷が激しく、"あかし"と"信濃"が曳航する事になった。応急処置をしたが、航行をするのは危険とあかしが言った為だ。

 

 

 

『そういう事だから、しばらくはこの艦にいてもらうね。』

『『『『よろしくお願いします』』』』

『艦内の案内を副長。お願い出来る?』

『は。勿論です。』

『じゃあ、おねがいね。』

『はい。』

 

 

副長はそう言うと村雨達4人と共に艦橋を出て行った。

 

『はつせさん、私はここにいても良いですか?』

『構わないよ、さてと。航海長。』

『は。』

『第1戦速。進路をトラック島へ。』

『第1戦速。進路、トラック島!』

 

 

操舵手が復唱し、舵を握る。艦隊はトラック島を目指して航行を再開した。




護衛艦むらさめ、はるさめの2人についてですが、艦これの村雨と春雨と容姿はほぼ同じです。身長と服装が違うくらいです。それ以外の人物についても解説しますので、ご安心を。
次回もお楽しみに。


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第15話 発見

今後の行動方針を決定し、航行を再開した護衛艦隊。
同じ頃、新たな動きを見せる者達がいた。


太平洋 チューク諸島 トラック島

 

太平洋の中央部に当たるこの島は日本海軍の一大拠点となっており、数の多くの、日本海軍の艦艇が停泊していた。

 

連合艦隊司令部の置かれている建物の一室では、2人の人物が分厚い書類の束を処理していた。そんな中、扉がノックされる音が部屋に響いた。

 

 

 

『誰だ?』

『私です。宇垣です、長官。』

『宇垣か、入れ。』

『失礼します。』

 

 

入って来たのは連合艦隊参謀長 兼 第1艦隊参謀長を務める 宇垣 纏 中将と、もう1人。

 

 

『黒島先任も一緒だったか。』

『はい、長官。』

 

 

 

連合艦隊出席参謀を務める 黒島 亀人 少将 は そう答えた。

 

 

 

 

『相変わらず凄い量ですな、、、、、』

『今にも崩れそうです。』

『この立場だと色々やる事が多くてな。誰かに代わってほしいよ。』

『滅多な事を言うな、山本よ。貴様以外には務まらぬ。』

『俺以外には務まらぬ、ね、、、、』

 

 

隣に座る少女にそう言われ、連合艦隊司令長官 山本 五十六 大将は苦笑いするしかなかった。

 

 

 

『長官、お話があります。』

 

 

 

宇垣中将はそう言い、山本の顔を見る。

 

 

 

『白露達が行方不明になっている件だな?』

『はい。』

『捜索の状況はどうなっている?』

『南雲中将の航空部隊からも捜索の為の航空機を出しています。捜索の艦隊と共に捜索の範囲を広げています。』

 

 

 

山本の問いに、黒島参謀が答える。

 

日本海軍は行方不明になった白露達5隻を必死に捜索していた。捜索の為に南雲 忠一 中将 の機動部隊まで動員していた。動員と言っても、艦載機だけだが。

 

 

 

 

 

 

『連絡が途絶えてから8日か、、、、、、。』

『生きていてくれると良いのですが、、、、。』

 

 

 

山本と黒島参謀がそう呟いた。白露達からの連絡が途絶えてから8日経っていた。連合艦隊司令部は軽巡を旗艦とした捜索艦隊と機動部隊の艦載機を捜索に当たらせていたが、未だ発見の報は無かった。

 

 

 

 

『大丈夫です。白露達は生きています。あのソロモン海の激戦を生き抜いたのですから。』

『彼女達を信頼しているのだな、宇垣参謀長。』

『私にとって彼女達は可愛い娘のようなものです。信頼しない訳がないでしょう。』

『宇垣中将の言う通りだ。白露達を信じよう、山本。』

『そうだな。』

 

 

 

 

山本大将らが、その様に思っていた頃、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トラック島の近海を進む艦隊がいた。2隻の空母に護衛の駆逐艦4隻。

 

第1航空艦隊所属 第五航空戦隊 通称"五航戦"と呼ばれる空母部隊である。

艦隊旗艦である翔鶴型航空母艦"翔鶴"の艦橋では、艦長の翔鶴が隣に立つ男性と共に発艦する艦載機を眺めていた。

 

 

 

『空母の艦載機まで動員する事になるとはな。確かに航空機を使えば見つかる可能性は上がるが、、、、』

『不安ですか?長官。』

『いや、そうではない。』

 

 

翔鶴の問いに 第五航空戦隊 司令官 原 忠一 少将 はそう答えた。

 

 

『私たちの他にも一航戦と二航戦の先輩方からも発艦しています。捜索範囲は大幅に広がりますから、見つかる可能性はあるかと。』

『その点は分かっている。だが、白露達が行方不明になってから8日だ。勿論、生きていてほしいが、、、、最悪の場合も考えねばならん。まぁ、生きていることを祈ろう。』

『はい。』

 

 

 

原少将の言葉に翔鶴は頷くと、視線を発艦中の艦載機に戻した。

その時だった、2人の元に通信妖精が駆け込んで来たのだ。

 

 

 

 

 

『第1小隊3号機から入電です!『我艦影を見ゆ。艦影は行方不明の白露と確認。他の4隻も確認した』との事です!』

『見つけたか!』

『長官!』

『あぁ。通信士官、赤城の南雲中将に連絡しろ!』

『は!』

『原司令、電文には続きが、、、、』

『続き?』

『はい。』

『読んでくれ。』

『は。『なお、白露以下5隻は8隻の不明艦と共にあり。内2隻は空母と認む。』、です。』

『不明艦?』

『はい。電文にはそう書かれています。』

『友軍ではないのか?いや、白露達が一緒にいるなら敵ではないはず。しかし、不明艦とは一体、、、、、』

『この電文だけでは分かりかねますね。』

『ともかく、その点も含めて、南雲司令に連絡だ。』

『了解しました、長官。』

 

 

翔鶴からの報告は第一航空戦隊旗艦 兼 第1航空艦隊 旗艦 "赤城"に座乗していた南雲中将に伝わり、すぐさま連合艦隊司令長官山本五十六大将にも報告された。

 

報を受け、山本五十六大将は宇垣中将に確認のために艦隊を派遣するように命令。宇垣中将は湾内に停泊していた駆逐艦"海風" "江風" を出港させた。

出港した2隻は第五航空戦隊に合流。艦隊は白露達が発見された海域に進路を向けた。

 

 

 

『転針、第3戦速。』

宜候(ようそろ)、第3戦速。』

『しかし、不明艦とは一体、、、、、この目で確かめるしかないか。だが、今は白露達の確認が最優先だ。』

 

 

司令官席に座る原少将はそう言うと、前方の海域を見つめた。




新たな登場人物として山本五十六大将、宇垣 纏 中将、 黒島亀人少将、原 忠一 少将 を登場させました。有名人ですね。次回をお楽しみに。


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第16話 接触

白露達を発見した第五航空戦隊。だが、所属不明の8隻と共にいると言う報告に五航戦司令官 原少将は困惑したが、合流した2隻の駆逐艦と共に発見された海域に向かっていた。


翔鶴偵察機が白露達を発見する 少し前

 

 

 

 

 

 

第十三艦隊 旗艦 ミサイル巡洋艦 "はつせ" CIC

 

 

 

 

ポリメント(対空レーダー)目標探知。120度、1機、245マイル、真っ直ぐ近づく。』

『IFFに応答なし。国籍不明機。』

『各部、TAO。近態勢の国籍不明機を探知した。数1、距離245マイル、120度より接近中。合戦(かっせん)準備!!』

 

 

 

 

"はつせ" 艦橋

 

 

『TAO、はつせ です。目標は偵察機の可能性が高い。ですが念のため、あさぎり、せとぎり、むらさめ、はるさめ に対し僚艦防空を下令。その他は合戦準備。本艦の対空レーダーと各艦の目視確認で判断します。』

『各部、合戦準備!』

 

 

はつせ が砲雷長に指示をする最中、副長はマイク放送で艦内に戦闘準備を取らせた。艦長席に座る はつせ に副長が話しかける。

 

 

 

『やはり、偵察機が濃厚でしょうか?』

『多分ね、攻撃機なら単機では来ない。』

『全艦、合戦準備および対空戦闘用意よし。』

『了解。…通信士、僚艦防空担当艦に通達。旗艦の指示があるまで、対空火器の使用を禁止する。』

『了解。』

 

 

はつせが通信士に指示を出し、再び前を向く。すると、席の反対側にいた白露が話しかけてきた。

 

 

『あの…この距離でもう探知出来るんですか?』

『ええ、そうよ。』

『でも、まだかなり離れていますよ?』

『この艦のレーダーは対水上用なら350キロ、対空用でも500キロまで探知出来るのよ。』

『350キロ?!そんなに遠くまで探知出来るんですか!』

『それくらい探知出来ないとミサイル巡洋艦の名が泣くよ。』

 

 

 

 

驚く白露にはつせは笑いながらそう返した。暫くして、国籍不明機は目視可能な距離まで近づいて来た。見張り妖精が双眼鏡で機種と国籍を確かめる。

 

 

 

 

『見えた。あの機体は、、、、、九七式艦攻か?』

『魚雷も爆弾も抱えてない。偵察機だな。』

『見張りより、艦長。国籍不明機は旧扶桑海軍の九七式艦攻です。何も抱えてません。』

『九七式艦攻、、、、、近くに空母がいるのか。』

『トラック島には赤城さん達がいます。』

『空母赤城、、、空母は全部で6隻?』

『はい。赤城さん、加賀さんの一航戦、飛龍さん、蒼龍さんの二航戦、翔鶴さん、瑞鶴さんの五航戦の6隻です。』

『南雲機動部隊勢揃いか。なら、その誰かの搭載機でしょう。』

『いかが致しますか、艦長。』

『丁度いい。白露さん達の身柄を渡せるし、接触出来る。願っても無い機会だ。』

『では?』

『偵察機の方向へ追随する。全艦第3戦速。』

『了、第3戦速。進路、120。』

 

 

"はつせ"の転進に従い、他の7隻も進路を変え、九七式艦攻が飛んで来た方向に向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方の五航戦は旗艦である"翔鶴"と"瑞鶴"を艦隊の後方に、陽炎、秋雲、朧の3隻を前衛に、残りの霰、海風、江風は"翔鶴"と"瑞鶴"の護衛に付いた。

 

 

 

陣形を変更してから、3分ほど経った頃。遠くに複数の艦影を発見した。

 

 

 

航空母艦 翔鶴 艦橋

 

 

『艦影見ゆ!巡洋艦級6、空母級2。その後方に、、、駆逐艦級5!』

『駆逐艦級、、、、長官。』

『間違いない。白露達だ。』

『しかし、前方の8隻は何処の艦なんでしょう?見たことがない艦です。』

『俺も始めて見る艦影だ。先頭の巡洋艦は大きいな、高雄型クラスか?』

 

 

 

 

 

原少将の言う先頭の巡洋艦とは、"はつせ"の事だ。因みに、巡洋艦級とされたのは"はつせを含む"しらね" "むらさめ" "はるさめ" "あさぎり" "せとぎり"で、空母級とされたのは"信濃と"あかし"だ。

 

 

 

 

互いにそのまま進んでいたが、前方の巡洋艦、"はつせ"から発光信号が"翔鶴"に向けて発せられた。

 

 

 

『前方の巡洋艦より発光信号。『我扶桑皇国 国防海軍 所属巡洋艦はつせ。戦闘の意志なし。貴艦隊への接近を許可されたし。追伸、白露、村雨、夕立、春雨、五月雨は我が艦隊と共に有り。』です。』

『巡洋艦はつせ、、、、、そんな名前の巡洋艦は居ないはずだが…………それに扶桑皇国? 国防海軍? …………まぁいい。接近を許可すると伝えよ。』

『は。』

『長官、危険ではありませんか?』

 

 

隣に立つ翔鶴がそう聞いてきた。

 

 

『なぁに、敵ならとっくに撃ってる筈だ。それに白露達を助ける理由がない。だが、あの艦隊は白露達と共にいる。少なくとも敵ではないだろう。』

 

 

と、返した。

 

 

『長官がそう言われるなら、私は構いません。』

『ただ、全く警戒しない訳には行かん。我が艦隊の前方に移動するように伝えよ。陽炎、朧、秋雲、霰にあの8隻に付けてくれ。』

『では、私と瑞鶴は今の位置でよろしいですか?』

『うむ。』

『了解しました、直ぐに伝達します。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『成る程、こちらの主砲の死角に空母を置くか。』

『まぁ、当然の判断ですな。』

『空母にはこちらの主砲は十分脅威だしね。まぁ、戦うつもりはないけど。』

『警戒されていますな。』

『しない方が可笑しいよ。』

 

 

はつせの言う通り、いきなり現れた所属不明の艦隊が『味方だから、撃たないで』と言っても、直ぐに信じてくれる訳がない。警戒されるのは当然だ。

 

 

 

『さて、これからが正念場だ。』

 

 

 

はつせ は前方で転舵する空母翔鶴を眺めながら、1人、そう呟いた。




少しだけ、はつせについて触れる部分が出てきましたね。全長は後々詳しく書きますが、高雄型クラスです。かなり大きいですね。
さて、次回も楽しみに。


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第17話 提案

翔鶴率いる第五航空戦隊と合流した護衛艦隊。周囲を駆逐艦に囲まれながらも、艦隊は航行を続けていた。


無事、第五航空戦隊に合流した護衛艦隊だったが、左右を駆逐艦に囲まれていた。その様子は艦橋から白露と共に眺めていた。

 

 

 

『陽炎型駆逐艦か。』

『多分、陽炎ちゃんと秋雲ちゃんですね。』

『しかしまぁ、今の私たちは展示品みたいな状況ね。』

『はつせさん達は私達から見たら特異な艦ですよ。皆んな気になってるんです。』

『特異な艦ね、、、。』

 

 

 

はつせはそう呟くだけだった。

 

艦隊は共に航行する第五航空戦隊の各艦から多くの視線を浴びていた。その中には下士官は勿論、艦長や副長クラスの幹部まで含まれていた。

五航戦司令官 原少将 はその中の1人だ。

 

 

『随分大きなマストだ。回っているのは電探か?』

『やっぱり、気になりますか 長官。』

『君はどうなんだい?』

『私も気になっていますよ。見たことがない艦ばかりですから。』

『そうだな。』

 

 

翔鶴と原少将 はそう言うと 視線を前に戻した。

 

 

 

 

 

それから艦隊は何事も無く進み、南雲中将の第一航空戦隊と合流。それから更に1時間、監視役の駆逐艦を除く、全艦がトラック泊地に入った。

 

 

 

『翔鶴、私は南雲司令官に報告をしてくる。暫く、頼むぞ。』

『了解しました、長官。』

 

 

 

艦の指揮を翔鶴に任せ、原少将 は報告の為、南雲中将が座乗する 第一航空戦隊旗艦 赤城 に向かい、南雲中将に一覧の出来事を報告していた。

 

 

 

 

 

 

 

『以上が私からの報告です。』

『ふむ、報告ご苦労。わざわざ来てもらってすまないな。』

『いえ。』

 

 

報告を聞いていた南雲 忠一 中将 は原少将にそう言った。隣には空母"赤城"艦長 赤城がいる。

 

 

 

『ところで、例の不明艦だが、、、、、』

『白露達を保護していた8隻ですね?』

『君と同じく、私も赤城も初めて見る艦影だった。』

『あの艦隊について君はどう思うかね?』

 

 

南雲中将は原少将にそう尋ねた。

 

 

『馬鹿な事を言うな、と言われるかもしれませんが、この時代の艦ではないと私は思います。』

『ほう?何故そう思う?』

『旗艦と思われる巡洋艦は船体の割に武装が少なく、代わりに電探などのが多く搭載されていました。我が軍の艦艇設計思想とは異なっています。』

『ふむ、なるほど。』

 

 

南雲中将は原少将の意見に頷いた。彼の言う通り、"はつせ"には目立つ武装が少ない。

 

 

 

『私と君と同じ事を考えていた。まずは山本長官に報告だ。君も一緒に来てくれ。』

『は。了解です。』

『赤城。俺は原少将と司令部に行ってくる。その間、乗組員に休息を取らせてくれ。』

『了解しました。』

『頼む。』

 

 

南雲中将はそう言うと、原少将と共に赤城を離れ、司令部に向かった。

司令部に到着した2人は、そのまま山本長官がいる長官室に通された。

 

 

 

『第一航空艦隊司令官 南雲忠一 中将、報告の為参りました。』

『同じく第五航空戦隊司令官 原 忠一 少将、参りました。』

『まぁ、2人共座ってくれ。』

『は、失礼します。』

 

 

 

山本は2人に椅子に座る様促すと、自分も向かい合う椅子に座った。山本が座ったのを確認してから、2人は白露達発見について、詳細に報告した。

 

 

 

 

『ふむ、白露達はその不明艦に救援してもらったと言う事だな。』

『そう言う事になります。』

『ふむ、、、。』

 

 

報告を聞いた 山本 は ふと、考え込む様な仕草を見せた。

 

 

 

『あの、長官?』

『どうかされましたか?』

 

 

 

共に報告を聞いていた宇垣中将と黒島先任はそう山本に聞いた。すると、山本は

 

 

 

 

 

 

『その艦隊の司令官に会えないだろうか?』

『は?』

『えっ』

 

 

山本の発言にその場にいた全員が驚いた表情を見せた。

 

 

『えっと、長官。今なんと?』

『その白露達を助けた艦隊の司令官に会えないだろうか、と言ったんだ。』

 

 

山本は全員に聞こえる様にはっきりと、そう言った。

 

 

 

『長官!それは危険です!』

『どこの所属かも分からない者に会うなど!』

 

 

 

宇垣中将と黒島先任に山本の意見に反対した。 だが

 

 

 

『白露達を助けてくれたのだ。敵ではあるまい。それに日本国の所属だと言ったのだろう?』

『いえ、扶桑皇国所属とと言っておりましたが、、、、、』

『ん?日本語じゃないのか?』

『い、いえ、言語は日本語でしたが、、、』

『なら、同じ日本人だろう。なら、話せば分かるだろう。』

『し、しかし』

『無駄じゃよ、宇垣、黒島よ。こやつは一度やると言ったら聞かん男だ。』

 

 

山本の隣に座る少女は諦め顔でそう言った。

 

 

『ただ、山本よ。会うのは大和にしろ。』

『大和に?』

『大和ならここよりも警備がしっかりしている。』

『なるほど。』

『それを了承するなら会ってもいいぞ。』

『分かった大和で会おう。大淀』

『は。』

『すまんが、大和に今の旨を伝えてくれるか?』

『分かりました。』

 

 

 

山本は部屋の隅にいた 艦娘 大淀にそう言った。

 

 

 

『宇垣中将。』

『は。』

『今の旨、あちらさんにも伝えてくれ。』

『了解しました。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミサイル巡洋艦 "はつせ"艦橋

 

 

 

『なるほど、連合艦隊のど真ん中に来いと言う事か。』

『しかも、艦長お一人とは。』

『白露さん達がいるから1人じゃないけどね。』

『 艦長、幾ら何でも危険ではありませんか?』

『 私もです。せめて護衛を連れていかれては?』

『 その必要は無いよ。相手は あの連合艦隊だ。私の命を狙う様な馬鹿な真似はしない。』

『 ですが、可能性は0ではありません。』

『 まっ、もし私のみに何かあれば ミサイルを打ち込めばいい。幾ら大和型戦艦といえど、オーニクスを受ければ被害は甚大のはずだよ………と、まぁ冗談はさておき。呼ばれた以上行かないとね。』

『ヘリで行きますか?』

『いや、あれで行く。』

 

 

はつせ はそう言い、艦橋脇を指した。

 

 

『久しぶりに乗りたくなってね。』




遂にトラック泊地に到着しました。次回は はつせ と山本連合艦隊司令長官との会談です。


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第18話 会談

連合艦隊司令長官 山本五十六大将 より 会談の提案を受けたはつせ。彼女は白露ら5人と共に会談に臨むことを決断した。会談が行われるのは連合艦隊旗艦"大和" 。だが、"大和"は連合艦隊の中央におり、敵地に来いと言っている様なものだった。
だが、はつせ は単身で大和に乗り込む事を決断。そして、ヘリではない あるものに乗ろうとしていた。


ミサイル巡洋艦 "はつせ" 前部デッキ

 

 

『ヘリじゃなくて良かったのですか?艦長。』

『いいんだよ、これで行くから。』

 

 

心配する副長に対し、はつせ は心配ないと答える。

 

 

『艦長!拘束機解除完了しました!』

『ありがとう!』

 

 

 

 

甲板妖精から報告を受けたはつせ は礼を言うと、副長に向かって叫んだ。

 

 

『それじゃあ言ってくる!副長!後はお願い!』

『了解です!』

 

 

 

 

 

 

『それじゃ行くよ。しっかりつかまっててね。』

『は、はい。お願いします。』

 

 

 

後ろに座る白露に言うと、はつせ はハンドルを握り、エンジンを始動させた。

はつせと白露が乗っているのは中型艦載水上オートバイ"スキッパー"という物だ。これは護衛艦を含む多くの艦艇に搭載されており、"はつせ"には4艇搭載されている。

スキッパーは2人乗り(無理をすれば4人乗れるが、危険なので通常は2人乗り)なので、はつせと白露が乗っている。

 

 

 

『結構速いんですね!この内火艇!』

 

 

後ろに座る白露がそう言ってきた。

 

 

 

『最大で40ノット出るよ、滅多に出さないけどね。』

『40ノット?!島風ちゃん並みですね!』

『さて、少し急ぐよ。しっかりつかまって!』

『きゃっ!』

 

 

 

 

2人の乗るスキッパーは速度を上げた。

 

その様子は 連合艦隊旗艦 戦艦"大和"からも見えていた。

 

 

 

 

 

日本海軍 連合艦隊旗艦 大和型戦艦1番艦"大和" 艦橋 展望デッキ

 

 

 

『本艦に向かってくる小型艇らしき物を確認!』

『速いです!40ノット近くは出ています!』

『例の会談相手がこちらに向かって来ているようですね。』

 

 

双眼鏡を手に持った少女 戦艦"大和"艦長 艦娘大和はそう呟いた。

 

 

 

『その様だな。』

 

 

隣で双眼鏡を覗いていた山本はそう言った。

 

 

 

『副長、舷梯の準備を。』

『はい、艦長。』

『しかし、内火艇でこちらに向かってくる事は予想していたが、あの内火艇……かなり速い。』

『 そうですね………20ノット以上は出ています。』

『 30ノットは出てるかもしれんな。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『大きい、、、、これが世界最大の戦艦』

 

 

はつせは、スキッパーを操縦しながら、そう呟いた。

 

 

 

『はつせさん、舷梯があります。』

『なるほど、そこから上がって来いと言う事か。』

 

 

 

 

はつせはスキッパーを慎重に操縦し、ゆっくりと下ろされた舷梯に接近し、スキッパーを横付けした。

 

 

二人が舷梯上がり、甲板に出ると数名が二人を待っていた。

 

 

 

 

『お待ちしておりました。私は戦艦大和の副長です。』

『出迎えありがとうございます。山本司令長官にお会いしたいのですが、、』

『艦内でお待ちです。ご案内します。』

『お願いします。』

 

 

 

 

2人は大和副長に連れられ、大和艦内に入った。

 

 

 

 

『とても広いですね、、、、道に迷いそうです。』

『はは、初めて乗る方はそう言われます。我々も初めの頃は良く艦内で迷子になりました。』

 

 

 

はつせの感想に大和副長は笑いながら応じる。大和型戦艦は巨大である為、初めて乗る者は必ず迷子になった。それ程、大和型は大きいのである。

やがて、はつせ達ははある部屋の前にたどり着いた。

 

 

 

『こちらに山本司令長官らがおられます。』

 

 

そう言うと、大和副長は扉を軽く叩く

 

 

 

『大和副長であります。お連れいたしました。』

『入りなさい。』

『はっ。失礼します。どうぞ、中へ。』

 

 

 

大和副長に勧められ、2人が中に入ると戦艦"大和"艦長の艦娘大和と宇垣中将、黒島先任そして山本五十六大将が待っていた。

はつせ は山本司令長官らの前に行くと、敬礼をした。山本らも返礼する。

 

 

『初めまして。私が当艦の艦長。大和です。よろしくお願いします。』

『連合艦隊参謀長の宇垣纒だ。階級は中将。よろしくお願いする。』

『連合艦隊首席参謀の黒島亀人です。少将です。よろしく。』

『初めましてだね。私は日本海軍連合艦隊司令長官 山本五十六だ。階級は大将だ。よろしく。』

 

 

山本らが自分達について名乗ると、山本が言葉を続けた。

 

 

 

『この度は、白露達5人を救援していもらい感謝している。本当にありがとう。』

『いえ、当然の事をしたまでです。』

『私からも礼を言わせて欲しい。本当にありがとう。』

 

 

 

そう言うと宇垣中将は深々と頭を下げた。そしてはつせの隣に立つ、白露に声をかけた。

 

 

 

 

『白露、村雨達は元気か?』

『はい、宇垣参謀長。私を含めて、全員元気です。』

『そうか、それは良かった、、、、、。』

『はつせさん達のおかげです。』

『そうか、、、、、。』

 

 

すると、山本の隣に座る少女がはつせに話しかけた。

 

 

 

 

『さて、君の所属と名前を名乗ってもらおうか。』

『おい、それは、、、、、』

『はい、勿論です。』

 

 

 

 

そう言うとはつせは姿勢を正し、自らの名前と所属を名乗った。

 

 

『私は扶桑皇国 国防海軍 佐世保基地所属 第十三艦隊旗艦。はつせ型ミサイル巡洋艦"はつせ"艦長のはつせ。階級は大佐です。山本長官。そして、、、、、』

 

 

 

はつせはそこで言葉を区切ると、山本の隣に座る少女に身体を向けた。

 

 

 

 

 

『ご無沙汰しています、三笠様。』

『ほう?私を知っていたか。』

 

 

その少女 敷島型戦艦"三笠"艦長の 三笠 はそう言った。




重鎮の登場です。次回から本格的な会談です。はつせがいた世界背景と山本達の世界背景について書きます。お楽しみに。


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第19話 会談Ⅱ

遂に山本五十六大将と対面したはつせ。さらにそばにいたのは日本海海戦で旗艦として参加した伝説の戦艦 三笠 艦娘三笠がいた。


『私の事を知っていたとは驚いたぞ。』

『私たちの世界でも三笠様はいらっしゃいます。』

『そうだったか。まぁいい。私の事などどうでも良い。そちらの事を聞こうか。』

『はい、三笠様。』

 

 

そう言うとはつせ は三笠に勧められた席に座る。

 

 

 

『先ほどミサイル巡洋艦と言っていたな?そのみさいる巡洋艦とはなんだ?』

 

 

 

三笠がはつせ以外の全員が気になってる事を質問した。

 

 

『ミサイル巡洋艦とはミサイル兵装を搭載した巡洋艦の事です。』

『そのみさいるとは?』

『まぁ、待て三笠。後ほど詳しく聞けばいいだろう。』

『、、それもそうだな。』

 

 

山本がそう言うと、三笠は渋々と言った感じで質問を止めた。

 

 

 

『まぁ、座って下さい、はつせさん。』

『はい、失礼します。』

 

 

はつせはそう言い、席についた。

彼女が席に着いたのを確認した山本は気になっていた事を聞いた。

 

 

 

『初めに聞いておきたいのだが、何故白露達を助けたのかな?』

『それは彼女達が救援を求めていたからです。』

『なるほど。改めて、彼女達を助けてもらい感謝している。ありがとう。』

『いえ、当然の事をしたまでです。』

『そろそろ聞いてもいいか?』

『あぁ、すまん。いいぞ。』

『で、みさいるとはなんだ?』

 

 

三笠がずっと気になっていたらしい ミサイルについて、はつせに聞いた。

 

 

『用途によって異なりますが、目標に向かって誘導を受けるか自律誘導によって進路を変えながら、搭載された推進装置によって飛翔する噴進弾と言ったところです。』

『誘導式の噴進弾だと?その様な物があるのか?』

『あると思います』

 

 

 

そう言ったのは、背後で話を聞いていた白露だった。

 

 

『白露、何故そう思う?』

『はつせさんは私達5隻を追撃していた深海棲艦艦隊を攻撃し、敵戦艦2隻を沈めていました。その際、噴進弾のような物が飛んでいました。』

『もしかして、ニューヨーク級を攻撃した時の、、、、、』

『はい、はつせさん。ハッキリ見えたわけでは無いですが、それらしきものを見ました。』

 

 

 

はつせ は白露達を追撃していた敵戦艦を攻撃するためにミサイルを使用した。白露はその時のミサイルを偶然見たらしい

 

 

 

『私も見て見たいな。なぁ、三笠。』

『そうだな、五十六よ。』

『次の質問をしてもよいかな、はつせさん。』

『どうぞ。』

『 ここにある報告書によると、貴女方の艦艇は船体の割に武装が少ないと書いてあるのだが………それは事実かな?』

 

 

 

 

なるほど、武装が船体の割に少ないと思ったのか……まぁ、目立つ武装は比較的少ないから当然だけど…………

 

 

 

 

 

 

 

『 確かに我々の艦艇は船体の割には武装が少ない様に見えますが、それは砲塔など目立ちやすい物があまり無いだけで、武装はかなり充実しています。』

『 そうなのかね?』

『 報告書では、数基の対空砲と主砲らしきものしか確認出来なかったと………』

『 私達の艦艇は、先程お話したミサイルと呼ばれる武器が主兵器です。』

『 たが、その発射機があればこちらも気付く。』

『 ミサイルの発射機は、初期はボックス型が主流でしたが、現在では垂直式の発射機が主流です。』

『 垂直式……とな?』

『 はい。VLSと呼ばれるものですが……』

 

 

 

 

 

 

VLS………Vertical Launching System(ヴァーティカル ローンチング システム)とは、はつせ達の世界で主流となっているミサイル発射システムで、垂直発射装置とも呼ばれる。

 

 

保管容器と発射筒を兼ねる複数のケースで構成されている。

ミサイルは弾頭を上にした保管状態から直接、垂直方向に向けて発射され、空中で向きを変えて目標に向かう。

弾薬庫と1基の発射機で構成されるミサイル発射装置で発生する、再装填や発射機を目標へ旋回させる時間を削減する目的で開発された。

 

VLSは、以下の利点があるのが特徴である。

①搭載するミサイルと同数の発射筒を備える事になり、従来の発射装置では最速でも4秒に1発程度とされる発射速度を1秒1発程度に短縮でき、個々の発射筒が独立している為1基が故障しても他に影響が無い。

②発射機本体の汎用性が高く、新たなミサイルが開発されても継続的に使用出来る。

③ケースごとに異なった種類のミサイルの装填が可能な物もあり、対空・対地・対艦・対潜・対弾道・巡航の各種ミサイルを1隻の艦船に混載する事で、柔軟な運用が可能になる。

④従来の発射機が露天甲板上に露出していたのに比べて、メンテナンスを含めた耐候性に優れる。また、甲板上に露出する部位が減る為、レーダー反射面積が低下し、ステルス性向上に繋がる。重心も低下する為、船体の安定性を崩しにくい。

 

 

 

もちろん、欠点もあり

 

 

・セルの数を減らしてもあまり値段が下がらず、小型艦にとっては費用面での負担が大きい。

・空中でミサイルの姿勢を変更する為、近距離に飛来した物体への迎撃に向かない。

・クレーン等でミサイル等を装填する都合上、鉛直方向にランチャーを装填する事が普通で、鉛直上方への発射直後にミサイルが推量を失うと自艦に落下してくる事がある(特に空中点火するコールド・ローンチの場合)。

 

 

それでも、利点が多いので各国で広く採用されている。

代表的な物を挙げると………

 

 

リベリオン合衆国のMK,41、MK,48,

帝政オラーシャの 3S14 UKSK 、3S95

扶桑皇国の76式垂直発射装置

 

 

などがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『………軍事技術の発展は凄まじい物だな。艦艇の方も同様に発展しているのかね?』

 

 

 

 

 

次に質問をしたのは山本五十六大将である。

確かに、ミサイルと呼ばれる兵器があるのだから、艦艇も同様に発展しているのでは、と考えた様だ。

 

 

 

 

 

『 私のいた世界では、私が艦長を務める『 ミサイル巡洋艦』の他に、『 ミサイル駆逐艦』『 ミサイルフリゲート艦』『 イージス艦』が主流となっています。』

『 うむ…………巡洋艦と駆逐艦は分かるがフリゲート艦とイージス艦?はどんな艦分からんな………』

『どの様な艦なのだ?』

『 詳しくご説明します。』

 

 

 

 

 

 

『ミサイル巡洋艦』はミサイルを搭載・運用する巡洋艦の事である。初期のミサイル巡洋艦は軽巡洋艦・重巡洋艦を改造した艦であったが、それ以降は本格的なミサイルを搭載・運用する巡洋艦が生まれた。

代表的な物は、リベリオン合衆国の『タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦』。帝政オラーシャの『 スラヴァ級ミサイル巡洋艦』『クレスタⅠ型ミサイル巡洋艦』などがある。

 

 

『ミサイル駆逐艦』は、ミサイル巡洋艦と同じくミサイルを搭載・運用する駆逐艦の事である。

代表的な物は、リベリオン合衆国の『スプルーアンス級ミサイル駆逐艦』。帝政オラーシャの『カシン級駆逐艦』『ソヴレメンヌイ級駆逐艦』などだ。

 

 

 

『ミサイルフリゲート艦』とは、ミサイルを主兵装とするフリゲート艦のことを指す。

 

では、フリゲート艦とは何か?

駆逐艦と巡洋艦の中間クラスであり、比較的小型・高速の哨戒や偵察などの任務を主とする艦艇の事だ。単に『フリゲート』『フリゲイト』と呼ばれる場合もあるが、『フリゲート艦』と呼ばれる事が多い。

一般的に『フリゲート艦』よりも大きい艦は『駆逐艦』、小さい艦は『コルベット艦』と呼ばれる………………のだが、国ごとに区別が曖昧なのが事実である。

代表的なのは、リベリオン合衆国の『オリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲート艦』だ。

 

 

最後に『イージス艦』とは、イージスシステムを搭載した艦艇の総称である。通常、高度なシステム艦として構築されている。

 

"イージス"……とは、ギリシャ神話の中で最高神ゼウスが娘アテナに与えたという、あらゆる邪気を払う盾(胸当)アイギス(Aigis)の事である。

 

 

 

フェーズドアレイレーダーと高度な情報処理・射撃管制システムにより200を超える目標を追尾し、その中の10個以上の目標(従来のターターシステム搭載艦は2〜3目標)を同時攻撃する能力を持つ。

非常に高い戦闘能力を持つ艦である『イージス艦』であるが、決して無敵という訳では無い。まず、『イージス艦』1隻の建造費や運用コストが高い。そして核となる『イージスシステム』は極めて高価である上に機密性が高く、開発元であるリベリオン合衆国の提供認可審査が極めて厳しい。

イージス艦を保有できる国家は、相応の経済力とリベリオン合衆国からの信頼を持つ国に限定される。

 

 

あと、イージス艦に類似した『ミニ・イージス艦』と呼ばれる艦があり、よくイージス艦と混同されがちだが、『ミニ・イージス艦』とはイージスシステムに類似又は同等の機能を持つ防空システム(PAAMSやNAAWSなど)を搭載した艦であり、イージス艦とは違う艦である。

『イージス艦』よりも低コスト(イージス艦に比べて)な為、イージス艦は保有せずこちらのタイプの艦を保有する国家が多い。

 

 

 

 

『ふむ…………完全ではないが、理解した。』

『(全然何言ってるのか分からなかった……………。)』

 

 

山本達は何となく理解したみたいだが、白露はあまり理解出来ていない様子だった。

 



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第20話 会談Ⅲ

山本らにミサイル、海上自衛隊と海上自衛軍について語ったはつせ。会談は次の段階に移ろうとしていた。


1分ほどの休憩を挟み、はつせと山本達の会談は再開された。

まず、口を開いたのは 三笠 であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そちらの世界でも深海棲艦はいたのか?』

『はい。私達の世界にも深海棲艦は存在し、猛威を奮っていました。最も、私が艦長になった時にはほぼ全滅していました。』

『ほぼ?』

『完全に全滅した訳では無いのか?』

『極小数ですが、生き残った深海棲艦がいました。名前を変えて人類と共存しています。』

『ふむ…………深海棲艦でも交戦派ばかりではないと言う事か……』

『大半の深海棲艦は問答無用で攻撃してきますからなぁ………』

『意思疎通が出来る事は分かっている……だが……』

『大半は応じず、攻撃してくる…………ですね。』

『うむ…………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深海棲艦が初めて確認されたのは1920年の事である。

太平洋上で演習中のリベリオン海軍所属の駆逐艦が突如、国籍不明の艦艇が攻撃を受け、撃沈されたのだ。近くの海域に展開していたリベリオン艦隊と扶桑艦隊がその場に駆けつけると、そこには真っ黒な船体に赤の不気味な塗装が施された艦がいた。それも1隻や2隻ではなく、艦隊規模で。

 

扶桑・リベリオン艦隊は通信や発光信号で意思の疎通を図ったが、相手の返答は砲撃と雷撃だった。これに対し扶桑・リベリオン両艦隊が応戦、後に【第一次ハワイ諸島沖海戦】と呼ばれる大海戦に発展した。

結果は両艦隊は勿論、正体不明の大艦隊も大損害を受け、撤退した。

 

 

 

この開戦を皮切りに世界中の大洋で国籍不明艦隊との戦闘が勃発。この国籍不明艦隊をいつしか【深海棲艦】と呼ぶようになった。

深海棲艦は第1ハワイ諸島沖海戦の直後、人類に対して宣戦布告した。

深海棲艦の出現に呼応するかのように先の第一次ハワイ諸島沖海戦の最中、扶桑・リベリオン両艦隊に10代から20代ほどの少女が現れ、艦艇を操り、深海棲艦と戦った。彼女達は自らを【艦娘】と名乗り、人類側として深海棲艦と戦う事を約束した。

その後も各国に艦娘が現れ、人類は彼女達を中心とした対深海棲艦戦の軍を編成する事になる。

 

 

 

 

 

 

『また、陸にも艦娘も同じ様に戦車や自走砲を操る少女達が現れます。』

『陸にもか。』

『彼女達は 陸娘 または 鋼舞姫 と呼ばれました。』

『それでそのあとはどうなるのかね?』

 

 

山本が続きを聞いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

対深海棲艦戦に動き出したのは、海軍力のある扶桑皇国、リベリオン、オラーシャ、カールスラント、ロマーニャ、ガリア、ブリタニアの7カ国。まず、最初に動いたのは扶桑皇国とリベリオンだった。

 

1930年3月24日。扶桑皇国とリベリオンは再編した艦隊をハワイ諸島に集結させ、【第二次ハワイ諸島沖海戦】と呼ばれる。深海棲艦との2度目の戦闘を開始した。この海戦を合図に太平洋上で扶桑・リベリオン各部隊が一斉に行動を開始。それに対応すべく、各地の深海棲艦も動き、各地で戦闘が勃発。

【第1次深海棲艦大戦大戦】と呼ばれる人類と深海棲艦との戦争の開始である。

 

 

 

海戦での日米の参加兵力は

扶桑海軍

・戦艦4隻 ・空母6隻 ・重巡6隻

・軽巡12隻 ・駆逐艦20隻

 

リベリオン海軍

・戦艦8隻 ・空母6隻 ・重巡8隻

・軽巡10隻 ・駆逐艦26隻

 

戦艦12隻、空母12隻、重巡14隻、軽巡22隻、駆逐艦46隻の兵力だった。

だが、対する深海棲艦隊は

 

・戦艦28隻 ・空母22隻 ・軽空母32隻 ・重巡40隻

・軽巡48隻 ・駆逐艦58隻 ・潜水艦31隻

 

 

の兵力を持っていた。

両艦隊は奮闘したものの、戦艦1隻、空母1隻、重巡3隻、軽巡2隻、駆逐艦27隻が撃沈され、残りの艦も大破してしまった。

 

 

 

その後両国は6回に渡り、ハワイ諸島沖で海戦を繰り広げたが、最終的にはハワイ諸島は占領されてしまった。両国の中間地点であるハワイ諸島が陥落した為、扶桑皇国とリベリオンは共同作戦が取れなくなってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『6回に渡る大海戦か。』

『それでもハワイは堕ちてしまったのか。』

『はい、残念ながら。しかも、占領されたのはハワイ諸島だけではありません。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハワイ諸島の占領を発端とし、世界中の海上交通の要所が深海棲艦によって次々と奪われて行った。

ジブラルタル海峡……スエズ運河……インド洋……大西洋……太平洋……黒海……バルト海……北極海

 

さらに欧州の各国は、深海棲艦の上陸部隊の猛攻を受けた。各国は必死に抵抗したが、ロマーニャ、カールスラント、ガリアが陥落した。ブリタニアは甚大な被害を被りつつも、辛うじて本土上陸だけは防いでいた。

スオムスは、オラーシャからの支援を受けつつ勇敢にも反抗を試みたが、戦況を巻き返すことは出来ず辛うじて戦線を維持出来ている状態だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アメリカと日本はどうだったのか?』

『リベリオン合衆国と扶桑皇国はハワイ諸島をめぐる攻防戦で戦力を消耗しましたが、すぐに戦力の増強を行いました。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハワイ諸島での攻防戦で多数の艦艇と人員を失ったリベリオン合衆国と扶桑皇国は、すぐさま戦力増強に踏み切った。

主力艦である戦艦、空母。護衛の巡洋艦、駆逐艦。これらを大量に建造する必要があった。

そこで、両国とも一気に戦力を回復する為、大規模な艦隊増強計画を立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『八八艦隊計画か………』

『はい。』

『長門と陸奥で打ち切りになった建造計画ですな………』

『私達の世界では、打ち切りにはならず当初の計画通り全艦が建造されます。』

 

 

 

 

 

 

 

八八艦隊計画……………

 

 

史実では、日本が対米戦を考慮して計画した戦艦8隻、巡洋戦艦8隻の建造計画だった。が、ワシントン海軍軍縮条約の煽りを受けて、長門と陸奥以外は建造中止になってしまった。

 

 

はつせ達の世界では、そもそもワシントン海軍軍縮条約が無かった為、扶桑皇国は八八艦隊を予定通り進めることが出来た。

その結果生まれたのが、

『長門型戦艦』2隻、『紀伊型戦艦』4隻、『天城型巡洋戦艦』4隻、『土佐型戦艦』2隻、『伊吹型巡洋戦艦』4隻 である。

 

 

 

 

 

 

 

『土佐型?加賀型ではないのか?』

『いえ、土佐型です。加賀は土佐型の2番艦です。』

『所々我々の知ってる八八艦隊とは違う様だ。伊吹型という巡洋戦艦は初めて聞いた………』

 

 

戦艦加賀は本来、『加賀型戦艦』のネームシップとして、建造される予定だったが、2番艦として建造された。

『伊吹型巡洋戦艦』は、史実で『第十三号巡洋戦艦』として計画された艦艇であり、八八艦隊計画艦の中で最大口径の18インチ(46センチ)砲を搭載する艦である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『因みにだが、他国はどうだったのかね?ワシントン海軍軍縮条約が無いなら、他国も建造に制限がかかっていない筈………』

『仰る通り、他国でも八八艦隊計画と同等、又はそれに匹敵する艦隊増強計画があり、それに沿って多くの艦艇が建造されました。』

 

 

 

 

 

扶桑皇国が八八艦隊計画を推し進めていた頃、リベリオン合衆国では"ダニエルズ・プラン"と呼ばれる艦隊増強計画が進められていた。

それによって建造されたのが、

『コロラド級戦艦』4隻、『サウスダコタ級戦艦』6隻、『レキシントン級巡洋戦艦』6隻である。

 

 

ブリタニアでも、16インチ砲搭載の最新鋭戦艦『セント・パトリック級戦艦』4隻、『インフレキシブル級巡洋戦艦』4隻が建造されていた。『セント・パトリック級戦艦』は、史実で『N3級戦艦』として計画された『ネルソン級戦艦』に次ぐ、16インチ砲搭載戦艦である。

『インフレキシブル級巡洋戦艦』は、『アドミラル級巡洋戦艦』をベースに16インチ砲を搭載した巡洋戦艦だ。

 

 

 

 

 

 

『帝政カールスラントでも、『ビスマルク級』『シャルンホルスト級』などが。ロマーニャ公国では『ヴィットリオ・ヴェネト級』などの大型戦艦が建造されました。』

『カールスラント………ドイツの事か………』

『ロマーニャ公国はイタリア………でしょうか?』

『ふむ……我が日本だけではなく、ドイツ、イタリア、アメリカ、イギリスも戦力の増強に乗り出したわけだな。』

『はい。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

各国は、初期に失われた多くの艦艇の代わりとなる艦艇を急ピッチで建造していた。その結果、世界の列強各国の海軍力は一気に増加した。

そして、扶桑皇国とリベリオン合衆国は再びハワイ諸島の奪還に動く事となる。



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第21話 会談Ⅳ

大規模な艦隊増強計画により、戦力を一気に増強させた扶桑皇国とリベリオン合衆国は再び、占領されたハワイ諸島の奪還作戦を決意する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『7度目のハワイ諸島奪還作戦か………』

『後に『第7次ハワイ諸島攻防戦』と呼ばれる大作戦です。この作戦は、過去に6回行われた攻防戦よりも大規模な戦力を動員しました。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第7次ハワイ諸島攻防戦に参加した兵力は扶桑皇国・リベリオン合衆国 とも過去最大の物であった。

 

 

 

扶桑皇国 海軍

 

 

艦隊総司令官……嶋田 繁太郎 大将

 

 

戦艦………12隻 重巡洋艦……6隻 補給艦……8隻

空母………6隻 軽巡洋艦……8隻 輸送艦……10隻

軽空母……4隻 駆逐艦……28隻 潜水艦……14隻

 

 

 

リベリオン合衆国 海軍

 

艦隊総司令官……ジョン・O・リチャードソン大将

 

戦艦……18隻 重巡洋艦…8隻 補給艦……16隻

空母……12隻 軽巡洋艦…12隻 輸送艦……10隻

軽空母…9隻 駆逐艦……46隻 潜水艦……20隻

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『両国合わせて、参加艦艇は約200隻。』

『さっ!200?!!』

『この数は………幾ら戦力増強をしたとはいえ………1方面に投入過ぎでは……』

『恐らく、保有していた全兵力の半数以上を動員したのだろうな……。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

扶桑皇国海軍とリベリオン合衆国海軍は、両国合わせて約300隻もの艦艇を投入した。

 

 

 

 

ー対する深海棲艦は…………

 

 

戦艦……16隻 重巡洋艦……18隻 海防艦……42隻

空母……7隻 軽巡洋艦…26隻

軽空母…18隻 駆逐艦………84隻

 

 

 

 

 

『深海棲艦は太平洋上に展開していた全水上艦艇、約200隻で迎え撃ちました。』

『200 対 200 か…………』

『それで、戦いの結果は?』

『…………結果だけを言いますと、『扶桑・リベリオン艦隊の全面撤退』………です。』

『『!!』』

『全面撤退………とな?』

『そ、それって……………攻略に失敗したって事ですか?』

『はい。主目的である『敵深海棲艦を撃破し、ハワイ諸島を奪還する。』事は出来ませんでした。ただ、成果はありました。』

『成果?』

『今回の大海戦で、扶桑皇国・リベリオン合衆国海軍ともに少なくない損害を出しましたが、深海棲艦はそれを上回る損害を出しました。』

 

 

 

 

 

 

 

 

第7次ハワイ諸島攻防戦で、扶桑・リベリオン艦隊はハワイ諸島を奪還出来ずに撤退した。両艦隊ともに2割から3割の損失艦を出した。

 

だが、迎撃に当たった深海棲艦の被害は予想以上のものだった。

開戦から、ハワイ諸島を占拠し根拠地としていた 深海棲艦太平洋艦隊は、今回の大海戦で所属艦艇6割を失った。これは深海棲艦 過去最大の被害であった。

 

その理由は、今回の大海戦に扶桑・リベリオン海軍が潜水艦を動員した事にある。

今回の大海戦では、両国合わせて34隻の潜水艦が動員された。

 

深海棲艦太平洋艦隊 主力部隊は、扶桑・リベリオン艦隊と戦っていた最中、潜水艦隊からの奇襲を受けた。最終的に撃退したものの主力である戦艦・空母はおろか、護衛の巡洋艦や駆逐艦も大損害を受けた。特に42隻いた海防艦は、40隻が撃沈されていた。

 

 

 

 

 

 

『とはいえ、深海棲艦も簡単には降伏せずハワイ諸島は『第8次ハワイ諸島攻防戦』でやっと、奪還に成功します。』

『8回目でやっとか…………』

『もちろん、ハワイ諸島以外の場所でも激戦は行われました。』

 

 

 

 

 

ハワイ諸島攻防戦以外で、太平洋上で行われた主要な海戦は以下のものである。

 

 

 

 

 

 

第一次 〜 第二次ミッドウェー海戦

クリスマス島沖海戦

タスマン海海戦

第一次 〜 第六次ダッチハーバー沖海戦

第一次 〜 第八次ソロモン海戦

第一次 〜 第四次珊瑚海海戦

第一次 〜 第五次トラック沖海戦

第一次 〜 第三次マリアナ沖海戦

第一次 〜 第二次レイテ島沖海戦

第一次 〜 第二次小笠原諸島沖海戦

第一次 〜 第七次沖縄諸島沖海戦

 

 

 

 

『沖縄沖や小笠原諸島沖でも大規模な海戦が起きるのか、、、、、、。』

『太平洋の各地で戦闘が起きているな。』

『これらは太平洋で起きた海戦で、他にも大西洋、インド洋でも大規模な海戦が起きています。』

『世界の大洋で海戦が起きたのか、、』

『特に欧州戦線では、地上戦も発生し歴史上に残る激戦となりました。』

『欧州の各国は、陸軍力が強いからな………』

 

 

 

 

宇垣の言う通り、欧州には陸軍力が強い国が多く、はつせ達の世界では海でも陸でも大激戦が繰り広げられた。

特に大戦末期になると、複数の国家が絡む事態となった。

中でも、カールスラント奪還戦、スオムス・オラーシャ攻防戦は歴史上に残る大激戦だった。

欧州以外の国家も参戦した為、大激戦となったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふむ………………そろそろ本題に入ろうか………はつせ殿?』

 

 

 

 

 

 

 

三笠はそう言い、真剣な眼差しではつせを見つめた

部屋の空気が一気に張り詰めた。

 

 

 

 

 

 

『三笠様……………』

『処遇は早く決めねばならぬ。陸軍馬鹿共が嗅ぎ付けると色々と厄介になる。特にはつせ殿の艦隊はな。』

『……………。』

『味方にも敵にもバレてはならぬのだ。』

 

 

 

 

 

三笠は、そこまで言うと彼女は山本達に顔を向けた。

 

 

 

 

 

 

『私としては、艦隊を直接ここトラック泊地に入れるのは許可出来ぬ。理由は………ここに居る者なら言わずとも分かるだろう。』

『しかし三笠様。彼女達は白露達を救ってくれた恩人です。如何に秘匿しなければならないと言えども………』

 

 

 

三笠の意見に宇垣が意見を述べる。

宇垣にとって、艦娘は娘のような存在であり常に寄り添って接してきた。艦娘達も彼を深く信頼していた。

 

 

 

 

 

 

 

『宇垣よ、気持ちは儂も良くわかる。だが、こればかりはどうしようもないのだ。口の堅い者は兎も角、先の見えない馬鹿共が嗅ぎつけたら何を言ってくるか………』

『軍令部の連中ですな…………』

『うむ…………取り敢えず、はつせ殿の艦隊には泊地の裏の岩礁地帯に仮停泊してもらいたい。』

『死角になり、人目に付きにくい所ですね?』

『そうだ。もちろん、燃料武器弾薬の補給は行わせていただく。白露を助けて貰った、礼をしたいのでな。』

『ありがとうございます。ですが、我々の武器は特殊な物ばかりで………』

 

 

はつせの言う特殊な物とは、ミサイルの事である。

当然だが、この時代にミサイルなどある訳が無い。せいぜい、噴進弾があるくらいだ。

ミサイルは電子機器の塊である。単純な構造の砲弾や魚雷とは違い、簡単には作れない。この時代なら尚更である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふむ…………兎も角、できる限りの事はやってみよう。』

『ご気遣いありがとうございます。私としては異論はありません。』

『ありがとうはつせ殿。交渉成立だな。』

『はい、三笠様。』

『まずは、会談に応じてくれてありがとう。そして白露達を助けれくれてありがとう。直ぐにでも補給を手配する事にする。』

 

『ありがとうございます、山本長官。』

『では副長、あとはお願い。』

『はい、大和艦長。』

 

 

 

はつせ は山本らに礼を言いつつ、大和副長に連れられ、会議室をあとにした。その後はつせと白露は、大和副長に礼を言い、スキッパーに乗り、大和を離れた。

 

 

 

 

『ひとまず、補給が受けられるのは良かった、補給なしでは戦えないから。』

『一安心ですね。』

『それだね、、、、それよりも疲れたよ、堅苦しい喋り方は苦手だ、、、、。』

『そうなんですか?』

『目上の人と話すのは苦手なんだよ、緊張しちゃうから。』

『なるほど、、、。』

『それじゃ、艦に戻ろうか。』

『はい。』

 

 

 

 

 

艦に戻ったはつせは、各艦に交渉の結果を伝え、休息を取るように伝えた。白露は艦の様子を見るため、工作艦"あかし"に向かった。

 

 

 

『うーん。取り敢えず、一休みしよっと。』

 

 

彼女は艦の指揮を一旦副長に任せ、自身は艦長室で休息を取ることにした。




海戦の話ばかりだとかなり長くなるので今回で終了させました。
次回をお楽しみに。


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登場人物紹介

主要人物についの解説回です。
今回は主要キャラである護衛艦隊の8名について解説します。


はつせ

 

艦種:ミサイル巡洋艦

身長:160センチ

服装: 上 海上自衛隊幹部常装第三種夏服 黒のグローブ

下 白のスカート 黒のニーハイソックス

容姿: 銀髪

出身 扶桑皇国 大分県 大分市

好きな物 とり天、うどん

嫌いな物 わさび、梅干し

趣味 読書

特技 早撃ち

所属 扶桑皇国 国防海軍 佐世保基地 第13艦隊

役職

ミサイル巡洋艦"はつせ" 艦長

扶桑皇国 国防海軍 大佐

第13艦隊司令官

備考

・本作の主人公。国防海軍最強の巡洋艦と呼ばれ、リムパック演習では米軍の原潜と空母相手に1度も負けたことがなく、本人の容姿と対潜、対空戦での強さから"White Wolf" ""白狼"" の異名で恐れられた。

・""はつせ"""の名を持つのは彼女で2代目で、母は敷島型戦艦 はつせ艦長の はつせ大将。

・2人の親友がおり、1人はリベリオン海軍で "鉄の爪"の異名をもつ、艦娘 ヴェラ・ガルフ。もう1人はオラーシャ太平洋艦隊 副司令官 の艦娘 ピョートル・ヴェリーキイ。ヴェラ・ガルフは"ヴェラ"、ヴェリーキイは"ヴェリー"と呼んで慕っている。

✳︎容姿はフェイトのアストルフォをイメージして下さい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しらね

 

艦種:ヘリコプター搭載型護衛艦

身長:160センチ

服装: 上 海上自衛隊幹部常装第三種夏服

下 白のスカート 黒のハイソックス

容姿: 銀髪 アクアブルーの瞳

出身 扶桑皇国 京都府 舞鶴市

好きな物 一銭洋食、くずきり

嫌いな物 特になし

趣味 読書 運動

特技 暗記

所属 扶桑皇国 国防海軍 舞鶴基地 第1護衛艦隊

役職:

ヘリコプター搭載型護衛艦"しらね(2代目)" 艦長

第1護衛艦隊 司令官

扶桑皇国 国防海軍 大佐

備考

・護衛艦"しらね(2代目)"艦長を務める艦娘で、第1護衛艦隊の司令官を務めた他、護衛艦隊の旗艦を多く務めた。1度、艦の退役に伴い、現役を退くが、2代目"しらね"の建造に従い、現役に復帰。今回の演習艦隊派遣にあたり、司令官である、はつせ のサポートを行っていた。

・護衛艦娘としては古参であり、護衛艦勤務経験は、はつせよりも長い。また、護衛艦勤務になる前は旧扶桑皇国海軍の駆逐艦・巡洋艦に護衛艦娘候補訓練生として乗り込んでおり、艦娘歴もかなり長い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あさぎり

せとぎり

 

艦種:汎用護衛艦

身長:(2人共)159センチ

服装: 上 海上自衛隊幹部常装第三種夏服

下 白のスカート 白のハイソックス

容姿: ダークブラウンの瞳 銀髪

出身 扶桑皇国 京都府 舞鶴市

好きな物 くずきり、千枚漬

嫌いな物 なし

趣味 運動

特技 徒競走 懸垂

所属 国防海軍 舞鶴基地 第4護衛艦隊

役職:

汎用護衛艦"あさぎり(改)"艦長

汎用護衛艦"せとぎり(改)"艦長

扶桑皇国 国防海軍 中佐

国防海軍 指導担当教官

備考

・改あさぎり型護衛艦"あさぎり"と"せとぎり"の艦長を務める護衛艦娘で、しらねとは同期にあたる。艦が練習艦に変更された際、新人の護衛艦娘の指導担当教官として、多くの護衛艦娘を指導した。その中には、はつせもおり、彼女は"せとぎり"が担当した。

・二人とも体力に自信があり、体力勝負なら誰にも負けない。事実、護衛艦娘内での力比べでは周りの予想を上回る成績を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

むらさめ

はるさめ

 

艦種"汎用護衛艦

身長:(2人共)159センチ

服装: 上 海上自衛隊幹部常装第三種夏服

下 白のスカート 白のハイソックス

容姿 左の瞳のみ赤(むらさめ)

出身 扶桑皇国 神奈川県 横須賀市

好きな物 けんちん汁 横須賀カレー

嫌いな物 抹茶

趣味 料理

特技 料理

所属 国防海軍 横須賀基地 第1護衛艦隊

役職:

汎用護衛艦"むらさめ" 艦長

汎用護衛艦"はるさめ" 艦長

扶桑皇国 国防海軍 中佐

備考

・むらさめ型護衛艦"むらさめ"と"はるさめ"の艦長を務める護衛艦娘で、あさぎり達の1つ後輩。彼女たちもあさぎり達から指導を受けた。何度かリムパック演習にも参加し、また、海賊対策でソマリアに派遣された事があり、その時に他国の艦娘の親しくなった。後に、はつせと共にオラーシャ海軍の艦娘達の元をを訪ねている。

✳︎容姿は艦これの村雨と春雨とほぼ同じで、服装が違うくらいです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

信濃

 

艦種:航空母艦(強襲揚陸艦型航空母艦)

身長: 165センチ

服装: 上 海上自衛軍幹部常装第三種夏服

下 白のスカート 白のサイハイソックス

容姿:銀髪

出身 扶桑皇国 長崎県 佐世保市

好きな物 ちゃんぽん カステラ

嫌いな物 なし

趣味 航空機の操縦

特技 アクロバット飛行

所属 国防海軍 佐世保基地

役職:

強襲型航空母艦"信濃"艦長

第201強襲作戦群 第3任務部隊 司令官

国防海軍 准将

備考

・空母"信濃"艦長を務める艦娘で、強襲作戦群に所属している。過去に派遣部隊としてオラーシャに駐屯した事があり、その際第6航空部隊の司令官を務めていた。以前は旧扶桑海軍の第6航空戦隊に所属していた。実は、以前に戦艦の艦長を務めたことがある。パイロットの資格も持っており、あらかたの航空機は操縦でき、駐屯地のオラーシャでは、オラーシャ海軍の機体を乗りこなし、アクロバット飛行を行い、オラーシャ海軍の艦娘達を驚かせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あかし

 

 

艦種: ドック型強襲揚陸艦

身長:158センチ

服装: 上 海上自衛隊幹部常装第三種夏服

下 白のスカート 白のクルーソックス

容姿" ?

出身 扶桑皇国 長崎県 佐世保市

好きな物 ミルクセーキ

嫌いな物 なし

趣味 整備 開発

特技 整備 開発

所属 国防海軍 佐世保基地 第3補給隊

役職:

特務艦"あかし"艦長

国防海軍 第3補給隊 副司令官

扶桑皇国 国防海軍 中佐

備考

・海上自衛隊の特務艦"あかし"の艦長を務める艦娘。護衛艦隊の後方支援を担当する。趣味は装備開発で、たまに自艦内で開発をしている。護衛艦娘達からはとても慕われている。

・"あかし"の名を持つのは彼女で2代目、海上自衛隊では初めて。

✳︎こちらも艦これの明石とほぼ同じ。制服が異なるだけ。




主要となる8人の解説でした。ネタバレ防止の為、まだ書いてない事もあります。ストーリーが進むにつれ、書き足していきます。
次回をお楽しみに。


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第22話 仮停泊地

連合艦隊司令長官山本五十六大将らとの会談を終えたはつせ。一度艦に戻った彼女は艦長室で仮眠を取っていた。
一方の白露は自艦に戻っていた。


『副長、指定ポイントに到達しました。』

『よし、投錨!』

『は!投錨!!』

 

 

 

 

 

三笠らが指定したポイントに到着したはつせ以下第十三艦隊は錨を下ろし、停泊作業に入った。

艦長であるはつせが休息中なので、作業の指揮は副長が取っていた。

 

 

 

 

『しかし、我が艦隊の機密の為とは言え、ここは狭い。』

『仕方ないですよ、副長。』

 

 

 

指定されたポイントはトラック島の金曜島と呼ばれた島付近に停泊していた。日本海軍の停泊地や飛行場からは死角となる位置だ。ひとまず、ここに艦隊を隠す必要がある。

 

 

 

 

『仕方ないとは言え、早くマシな停泊地を用意してほしい。本艦やしらねの巡洋艦クラスならまだしも、"しなの"や"あかし"を隠し通すには無理がある。』

『それはどうしようもないですね。』

 

 

 

"あかし"と"信濃"は艦隊の中でも目立つ大型艦だ("信濃"が一番大きく、次に大きいのが"あかし")

"信濃'は扶桑海軍が建造した空母としては2番目に大きく、"あかし"もはつせに比べればかなり大型艦の為、ここでは隠し通すには少々無理があるのだ。

 

 

 

 

 

 

『さて、艦長がお戻りになるでは我々も休息を取ろう。各部署、交代で休息を取れ。』

『了解です、副長。』

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、特務艦"あかし"では

 

 

 

 

 

 

 

 

『作業の方はどうなってますか?あかしさん。』

『あ、白露さん。作業は順調です。あと20分ほどで終わりますよ。』

『ありがとうございます、あかしさん。』

『いえいえ、それが私の仕事ですから。』

 

 

 

現在"あかし"では損傷していた白露、村雨、夕立、春雨、五月雨の5隻の船体の修理作業が行われていた。

 

 

『本当ならレーダーや武装も改造したかったんですけどね。』

『そんな事出来るんですか?』

『この艦なら出来ますよ。多少時間はかかりますけどね。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから20分後、修理作業が終わり、白露は はつせに戻っていた。

 

 

 

 

 

 

 

『失礼します。』

『こんにちは、白露艦長。』

『こんにちは、副長さん。はつせはいますか?』

『艦長なら艦長室におられます。』

『艦長室に?』

『はい。』

『今すぐ会えたりするかな?』

『そうですね、、、、一度訪ねてみてはどうでしょうか?』

『いいんですか?』

『大丈夫だと思いますよ。』

『なら、行ってみます。』

 

 

 

 

"はつせ" 艦長室

 

 

 

コンコン

 

 

『白露です。はつせさん。今大丈夫ですか?』

 

 

白露が扉を叩き、そう言うとやや遅れてから反応があった。

 

 

 

『うーん、入っていいよ。』

『失礼します。』

 

 

 

中に入ると はつせ はベットに座り目をこすっていた。今起きたばかりのようだ。

 

 

『白露さんか。』

『突然、すいません。』

『ごめん、少し待ってくれるかな。』

『は、はい。』

 

 

 

 

彼女はそう言うとカップにコーヒーを注ぎ、それを飲む。

 

 

 

『うー、やっぱりコーヒーは苦手だ。』

 

 

そう言いつつ彼女はカップに注いだコーヒーは飲み、カップを置いた。

 

 

 

『コーヒー、嫌いなんですか?』

『苦いから好きじゃない。眠気覚ましに飲む程度だよ。さて、私に何か用事かな?』

『"あかし"さんの修理作業が終わったので、その事を伝えに来ました。』

『なるほどね。これからどうするの?』

『自力航行が可能になったので、報告のため、泊地に戻ります。』

『そう。報告なら仕方ないね。』

『短い間でしたが、お世話になりました。』

『別にいいよ。それにもっと楽にしていいんだよ?口調もね。』

『ですが、階級的にははつせさんの方が上です。』

『階級のことなんて気にしなくていいんだよ。口調くらい楽にしていいよ、堅苦しいのは好きじゃないんだ。』

『はぁ、、、。はつせさんがいいなら私はいいですけど。』

『何か飲む?と言ってもコーヒーしかないけど。』

『私もコーヒーは苦手です。』

『なら、こうしよう。』

 

 

 

そう言うと彼女は自分ともう1つのカップにコーヒーとミルクを注いだ。

 

 

『これなら飲めるでしょ?』

『確かに、これなら。』

 

 

白露はカップを受け取り、それを飲む。

ふと、壁の数枚の写真が目に入った。その中の1枚には異なる制服の少女が写っていた。

 

 

 

 

『この写真は?』

『それはリムパック演習が終わってから撮った写真だよ。』

『はつせさんの横にいるのはしらねさん?』

『そうだよ。』

『でも、反対側にいるのは誰です?服装が違います。』

『彼女はリベリオン海軍最強のイージス艦"鉄の爪"と呼ばれた艦娘だよ。』

『"鉄の爪"?』

『タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦の艦長だよ。ヴェラ・ガルフって言うんだけどね、私のライバルでもある人だよ。』

『異名ですか、、、。はつせさんにもあるんですか?』

『あるよ、"白狼" White Wolf って呼ばれてたよ。』

『"白狼"ですか。カッコいいですね。』

『そう?リベリオン海軍の子達に付けられたんだよ。気に入ってるけどね。』

『私も欲しいなぁ、、、、』

『そのうち誰から言われるようになるよ。』

『えー、それはそれで嫌だなぁ。』

『異名ってのはそう言うものだよ。まぁ、私の場合もヴェラに言われるまで知らなかったし。』

『出来ればかっこいいのがいいなぁ。』

 

 

2人はそのまま会話を楽しんだ。それから暫くして

 

 

 

 

 

 

『では、お世話になりました!』

『元気でね!』

『また会いましょう!』

 

 

はつせ は甲板から白露を見送った。



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第23話

はつせらと別れた白露達。同じ頃、戦艦大和艦内では各艦隊司令官達を集めていた。


連合艦隊旗艦 戦艦 "大和" 大会議室

 

 

 

『諸君、集まってもらったのは他でもない。これからの我が軍の作戦行動について話し合う為だ。』

『まず、現在の状況について確認する。宇垣中将。』

『は。』

 

 

三笠に指名された宇垣中将は席を立ち、報告を始める。

 

 

 

『現在 我々は太平洋上の各島に基地を設け、制海権の奪還の為、戦力の増強に努めています。』

 

 

 

そう言うと彼は、ボードに貼られた地図を使って、説明を続ける。

 

 

 

『現在の最前線はソロモン、サモア諸島です。これまでは2回にわたり、攻撃を行いましたが、海域の確保にはいたりませんでした。』

『ふむ、戦力が足りないか。』

『はい、やはり重巡や軽巡では不足かと。』

『戦艦を数隻出すのはどうでしょうか?』

『それは出来ぬ。』

 

 

 

参謀の1人の意見を三笠が即座に否定する。

 

 

 

『数隻と言うが、どの艦を出すのだ?ここにいる戦艦も数が少ない。むやみに出すことは出来ない。』

『確かにな。』

 

 

 

現在日本海軍が保有している戦艦は大和型2隻、長門型2隻、金剛型4隻、伊勢型2隻、扶桑型2隻の12隻。その内、ここトラック島にいるのは戦艦大和、金剛、比叡、榛名、霧島の5隻のみ。

長門と陸奥は本土防衛の為、日本近海に。伊勢と日向は定期点検の為、本土におり、扶桑型の2隻は戦闘の損傷修理の為、本土のドックに入っている。

 

 

 

『長官、空母部隊を出してみるのは?』

『戦艦群が動かぬのなら空母群が動きます。』

 

 

次に意見を出したのは空母部隊司令官の南雲中将だ。

 

 

『だが、赤城達6隻は貴重な空母だぞ。』

『それは自分もよく分かっています。実は軍令部から近々増援の空母部隊を派遣すると連絡がありました。』

『それは本当か?私と五十六は初めて聞いたぞ?』

『自分も先程知りました。』

『まぁいい。増援の空母部隊の陣容は?』

『は。連絡では 千歳、千代田、龍驤の3艦と護衛の重巡2、駆逐艦8隻の13隻です。』

『やはり、正規空母はまだ出せんか。』

『仕方ない、山口少将。』

 

 

そうぼやいたのは第二航空戦隊司令官の山口多聞少将だ。

 

 

『空母の建造には約4年、航空搭乗員の育成も含めると実戦に出せるのは6年近くかかる。』

『戦艦も4年はかかる。』

『どちらも大型艦だからな。それはどうしようもあるまい。』

 

 

 

現在、日本海軍は空母と戦艦の建造を急ピッチで進めている。

だが、計画の進み具合はあまり進んでいない。現在、建造が完了したのは正規空母1隻、軽空母3隻。航空機搭乗員の育成が済み次第、実戦配備の予定だが、まだ時間がかかる。

 

 

 

 

『もう少し、航空戦力が欲しいのですが、、。』

『戦力の増強も急いで欲しいが、人員の増強もな。』

『無能な者はお断りだからな。』

『それはそうだな。』

 

 

 

 

会議は休憩を入れつつ、3時間ほど続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、太平洋上 某島

 

 

 

 

 

 

 

『シカシ、信ジラレン。コレハ事実ナノカ?』

『ハイ、事実デス。』

『フム、、、、、、。』

 

 

 

その報告書には戦艦ル級2隻とリ級2隻が噴進弾の様な物で撃沈された事が書かれていた。はつせがニューヨーク級戦艦を沈めた時の物だ。

 

 

 

 

『戦艦ヲ一撃デ沈メル噴進弾トハ、、、、、』

『重巡2隻ト駆逐艦2隻モ殺ラレテイマス。』

『兎ニ角、司令官ニ報告ダ。』

『ハ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同島 潜水艦部隊 司令部

 

 

『誘導式ノ魚雷?ソンナ馬鹿ナ。ソンナ物ヲ日本海軍ガ作ッタトデモ言ウノカ?』

『私モ信ジ難イノデスガ………』

『司令官、コレハ事実デス。私ガ証人デス。』

『………………貴様ノ証言ダケデハ信頼性ガ無イ。』

『デスガ私ハ見タノデス。』

『分カッタ分カッタ、モウイイ。報告御苦労。戻ッテイイ。』

『…………………ハ、失礼シマス。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『チッ、少シ位信ジテモ良イダロウニ。』

『聞ク耳ヲ持ッテクレマセンデシタカ?』

『アア。』

 

 

 

彼女は はつせと戦闘を行なった潜水艦カ級flagshipの艦長のカ級だった。修理と補給の為、基地に戻り、先程司令官に報告をしてきたのだ。

 

 

 

『マタ司令官ト揉メタノカ、"狼"サンヨ』

『居タノカ、元気ソウダナ。』

『オ前モナ、最近配置変更ニナッタンダ。』

 

 

話しかけてきたのは彼女が戦友と慕うカ級だった。彼女もまたflagshipだ。

彼女は誘導式の魚雷で攻撃された事、敵の新型艦と戦闘した事を話した。

 

 

 

『ホウ、ソンナ艦ガイルトハナ。』

『今度会ッタラ必ズ仕留メテヤル。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

白露が去った後、はつせ は艦橋で副長から報告を受け、再び艦長室に戻り、書類の整理をしていた。整理自体は1時間半程で終わってしまった。

 

 

 

 

『書類の整理も終わっちゃったし、何をしようかなぁ、、、、、あ、そうだ。』

 

 

 

暫く考えた後、彼女は2つある内の1つのロッカーを開けた。

そこには数丁の銃が入っていた。

 

 

『これの整備と点検でもしてよっと。』

 

 

 

 

 

彼女は、そこからある一丁の自動小銃を取り出した。

 

 

 

 

 

AK-30 アサルトライフル

 

オラーシャ製の新型アサルトライフルで、"はつせ"が建造された2030年にオラーシャ陸軍で制式採用された。

AKシリーズの最新型であり、5.56mm×45mmNATO弾を使用する。

 

この銃は、" はつせ"型のネームシップ……つまり、1番艦" はつせ"が完成した際に扶桑皇国に数丁が輸入され、扶桑独自の改良を受け『AK-30J』として一部の部隊や艦艇で使用された。

彼女が今整備している AK-30Jは 、"リサー"と名前が付けられた物で、" リサー"とはオラーシャ語で"狐"という意味である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『うわぁ、結構汚れてるな…………他のも汚れてるかもしれないから、整備と点検しとくか。終わったらお風呂に入ろっと。』

 

 

 

作業をしながら彼女はそう呟いた。

結局、ロッカーに入っていた銃全ての整備と点検をする事になった。

 

 




今回は少しですが、深海棲艦について書きました。
次回も楽しみに。


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第24話 宇垣と白露

自室である物を整備していたはつせ。作業が終わり、風呂に入り、ゆっくりしていた。
同じ頃、護衛艦隊を離れた白露らは停泊地にいた。


トラック島 駆逐艦群専用停泊地

 

 

 

駆逐艦 白露

 

 

『投錨、完了!』

『ラッタル準備よし!』

『艦長、停泊作業終了しました。』

『ご苦労様。副長、あとはよろしくね。』

『は。』

 

 

 

副長に後の作業を任せ、白露はラッタルを降りた。

既に村雨、春雨、夕立、五月雨の4名はその場で待機していた。

 

 

 

 

『よし、じゃあ行こうか。』

『はい。』

 

 

 

 

 

 

連合艦隊司令部 参謀長室

 

 

『白露以下5名、参りました。』

『ふむ。取り敢えず座ってくれ。』

 

 

 

その部屋の主 宇垣中将はそう促した。彼が座ると白露達も席に着いた。

 

 

 

『まず、無事で良かった。必死に捜索した甲斐があった。』

『ご心配をおかけしてお申し訳ありません。』

『謝る必要はない。頭を上げてくれ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふむ、彼女達がそこまでしてくれたとは、、、、、改めて礼を言わんとな。船体の方はどうだ?』

『そちらも特に心配いらないと思います。』

『そうか。だが、念のためだ。本土で見てもらった方が良かろう。』

 

 

彼は一旦そこで区切り、話を再開した。

 

 

『だが、本土に戻るのは無理だ。』

『え、何故ですか?』

『潜水艦だ。』

『『潜水艦?』』

『敵の潜水艦がうろついていてな。昨日も輸送船団が被害にあった。』

 

 

 

宇垣中将によると、トラック島と本土の間の海域で、深海棲艦の潜水艦が頻繁に現れては輸送船団や艦艇を襲ってるらしく、本土に戻るのが難しくなっているのだ。

 

 

 

『幸いと言うべきか、パラオ方面は問題ないからパラオ経由で物資輸送を行なっている。だが、このままではいかん。』

『私達駆逐艦で潜水艦を追い出しに行くのはダメなんですか?』

『単艦ならそれでもいいのだが敵は複数だ。撃退の為に出撃させた黒潮達が返り討ちにあった。無論、沈んではいないが暫くはドック入りだ。』

 

 

 

 

撃退の為に何度か駆逐艦を中心とした対潜艦隊を出撃させたそうだが、ことごとく返り討ちにあい、被害を増やすだけだった。

 

 

 

 

『このままでは被害が増えるだけだ。なんとかせねばならんが、、、、、』

 

 

現時点での被害は

 

輸送船 18隻撃沈 2隻大破(現在修理中)

海防艦 8隻撃沈 8隻大破 2隻中破

重巡洋艦 2隻大破 1隻中破

軽巡洋艦 4隻中破

駆逐艦 16隻大破 12隻中破

 

 

 

 

『うーん、それは大変ですね。』

『なにか良い手はないものか、、、』

『うーん、、、、、あ、そうだ。』

『ん?何か思いついたのか?』

 

 

何かを考えていた白露は何か思いついたようだった。

 

 

 

『はつせさん達に頼むのはどうですか?』

『彼女達にか?』

『はい。はつせさんはここに来るまでに敵の潜水艦と戦闘をしていて、私はそれを間近で見ていましたけど、私達と対潜戦闘能力は桁違いです。』

『そんなにか?』

『はい。』

『だが、頼んで了承するとは限らんぞ。』

『私が頼んできましょうか?』

『そう簡単に言うものじゃない。せめて三笠様か長官を通さないとダメだ。』

『えーー、、』

『えーじゃない。とにかく、三笠様と長官には話してみるか。白露以外は戻ってよし。』

『え、なんで私だけ?』

『提案者だからだ。一緒に来て説明するんだ。』

『そう言うことか。』

『あと、喋り方に気をつけろ。仮にも上官と話しているんだからな。』

『了解です、参謀長殿。』

『はぁ、もういい。行くぞ。』

 

 

 

 

宇垣中将は白露と共に参謀長室を後にし、三笠と山本長官のいる、大和に向かった。



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第25話 対潜水艦掃討作戦

白露の提案を聞いた宇垣中将は判断を仰ぐべく、山本連合艦隊司令長官と三笠の座乗する戦艦大和に白露と共に移乗した。


連合艦隊 旗艦 "大和 " 長官室

 

 

 

 

 

『と、言うわけなのですが、、、、、、』

『しかし、彼女達がそう簡単に受けてくれるとは思えぬ。』

『何か見返りを求めてくるとでも言うのか、三笠。』

『私だったらそうする。』

 

 

 

宇垣中将が白露の提案を2人に話すと、三笠は、はつせ達が何か見返りを求めてくるのではないかと 考えた。

 

 

 

『では、その見返りとはなんでしょうか?』

『そうだな、、、、、、今彼女達には拠点がない。正確にはきちんと停泊する場所がない。』

『つまり、停泊場所を見返りとして求めてくると?』

『現時点ではその可能性が高い。』

『しかし、停泊場所と言われましても8隻の艦を全て隠せて停泊できる場所などそうそう無いです。』

『それもあるから今の場所にいてもらっているのだが、、、、、』

『兎も角、まずは彼女達に聞くのが先だ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『敵潜水艦の撃退ですか、、、、、』

『被害も急増してきており、このままにしておくわけにはいかないのだ。』

 

 

 

急遽、大和に呼ばれたはつせは山本長官から直に先の提案を聞いた。

 

 

 

 

 

 

『事情は分かりました。是非、参加させて頂きます。』

『やってくれるかね。』

『もちろんです、山本長官。それに対潜戦は私の得意とする所です。』

『ほう?対潜戦闘が得意とな。』

『潜水艦相手に負けたりはしないですよ、返り討ちにしてやります。』

『頼もしい限りだな。』

『山本長官。1つよろしいでしょうか?』

『何かな?』

『山本長官にお願いがあるのです。』

 

 

 

はつせの言葉を聞いた三笠達は やはり、そう来るか。 という表情を浮かべた。

 

 

 

『お願いか。私にできることなら。』

『我々、護衛艦隊が停泊できる泊地が欲しいのです。』

『泊地か、、、、、』

『残念だが、それは難しい。ここには貴艦ら8隻全てを停泊させる場所はない。』

『それに機匿出来る場所も。』

『その点は承知しています。その上での提案なのですが、、、、』

 

 

 

そう言うと彼女は持参した一枚の地図を取り出した。

 

 

『地図?』

『ここ、チューク諸島の他にも諸島があります。そのどれかを基地化出来ないかと。』

『新しく泊地を作ると言うのか?』

『はい。』

『しかしなぁ、基地を作るにも場所も決めてないし、そもそもその為の資材もない。』

『敵潜水艦隊のせいですね。』

『、、、、、、基地を作る事を約束するなら敵潜水艦隊を撃退してくれるのだな?』

 

 

 

三笠はそう言い、はつせの方を向いた。

全員の視線が集中する中、はつせは口を開いた。

 

 

 

『確約していただけるのであれば、必ず一隻残らず殲滅しましょう。』

『出来なければ、基地を作る話も無しだが、それでも良いか?』

『心配いりませんよ、三笠様。私は潜水艦相手には負けませんから。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『しかし、本当に出来るのか?』

『いくらなんでも全てを撃退するのは、、、、』

『それはまだ分からん。でも、彼女はやると言ったのだ。』

 

 

三笠は大和の展望デッキから艦に戻るはつせを見送っていた。

 

 

 

 

『しかし、思い切った事を言いましたね。』

『んー?何が?』

『潜水艦全部倒すから基地作ってくれって、提案ですよ。』

『ああ、それね。今の場所は不便過ぎるし、目立つのもいけない。なら新しく泊地を作ってしまえと言う訳だ。』

『でも、そんな都合よく基地を作れる島なんてありますか?』

『それがあるんだなー、これが。でも、まずは【サメ狩り】をしないとね。』

 

 

 

 

それから艦に戻ったはつせ は各艦の艦長を招集し、作戦の事を伝え、参加する艦と戦術を考えた。

その後、解散となり、自艦に戻った艦長達は準備を行うのだった

準備は深夜まで続いた




投稿遅れて申し訳ありません。
色々予定があり、バタバタしておりました。
次回も楽しみに。


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第26話 対潜護衛群、出撃

準備を終えた翌日の早朝。
対潜水艦掃討の任務を帯びた部隊が出撃した。


『各艦、出港準備よし!』

『対潜護衛群、出港!』

『は!錨上げ!機関始動!』

 

 

 

 

早朝05 00 はつせ以下対潜護衛群は暗闇に紛れて仮停泊地を出発した。

編成は

・ミサイル巡洋艦"はつせ" 旗艦

・ヘリコプター搭載型護衛艦"しらね"

・汎用護衛艦"せとぎり"

 

 

の3隻だ。他の5隻は引き続き、仮停泊地で待機となる。

 

3隻は"はつせ"を先頭に"しらね" "せとぎり"の順で単縦陣を組んだ。

 

 

 

 

 

『航海長、進路このままで岩礁を出る。そしたら第二戦速に加速。』

『了解です、艦長。』

『僚艦に信号。『我ニ続ケ。』』

 

 

 

 

 

微速で航行する3隻は無事岩礁を抜けると、第二戦速に加速。チューク諸島から離れていった。

それから約20分後、対潜護衛群の前に数隻の艦影が現れた

 

 

 

 

『前方に艦影。』

『隻数は?』

『4隻です。いずれも駆逐艦級です。』

『多分、連絡のあった艦隊だ。』

『駆逐艦の1隻から発光信号。『我、艦隊旗艦白露。コレヨリ貴艦隊ニ合流スル。』』

『了解と伝えて。』

『は。』

 

 

 

この艦隊は事前に宇垣中将と三笠が手配しもので、編成は旗艦である"白露"に"夕雲" "長波" "朝霜"の4隻。

合流した4隻は対潜護衛群の後方についた。

 

 

 

『よし、作戦内容の再確認を行う。各艦の艦長を収集。増援の4隻の艦長達もね。』

『は。了解しました。』

 

 

 

 

 

 

 

 

それから暫くして、"はつせ"の会議室には各艦の艦長が集まっていた。

 

 

 

 

『作戦内容の再確認をする前に各自の自己紹介をしておこう。私はミサイル巡洋艦"はつせ"艦長兼護衛艦隊司令官のはつせです。よろしくね。』

『護衛艦"しらね"艦長のしらねだ。よろしく。』

『同じく護衛艦"せとぎり"艦長のせとぎり。よろしく。』

『白露型駆逐艦"白露"艦長の白露です。どうぞよろしくお願いします。』

『夕雲型駆逐艦の"夕雲"艦長の夕雲です。よろしくお願いします。』

『同じく夕雲型駆逐艦"長波"艦長の長波だ。よろしく。』

『駆逐艦"朝霜"艦長の朝霜だ。よろしく。』

『では、作戦内容の再確認をするよ。』

 

 

 

 

 

 

作戦内容はまず、艦隊を二手に分け、一つは敵潜水艦の索敵に当たる。もう一つは発見した敵潜水艦を攻撃する。つまり、索敵班と遊撃班に分かれて、行動するのだ。

 

 

 

『索敵には私としらねさん、せとぎりさんが当たります。白露さん達には遊撃隊として動いてもらいます。』

『索敵にはヘリを使うか?』

『はい、私達が搭載するヘリとソナーで敵潜水艦を見つけ出します。』

『見つけ出した敵の潜水艦を私達が叩くという事ですね。』

『そういう事です。』

『あのー?ヘリってなんですか?』

『私達が搭載するオートジャイロの事ですよ。』

『オートジャイロ、、、ですか。』

『私は5機、しらねさんは6機、せとぎりさんは2機搭載してます。』

『そんなに積んでるんですか?』

『ヘリは哨戒に必要な物ですから。特にしらねさんはヘリコプター搭載型護衛艦ですから、それくらい積めないと。』

『それって私達も積めたりするのか?』

 

 

はつせ達の会話を聞いていた朝霜がそう聞いた。

 

 

 

『んー、飛行甲板を設けないとヘリは積めないですから、、、、、』

『後部の主砲を外すとかですか?』

 

 

気になっていたのか夕雲もその様に聞いてきた。

 

 

『この艦みたいに後部は完全に武装を取り払わないと、無理ですね。』

『完全にか、、、、うーん、、、、、』

『まぁ、夕雲さん達は艦隊型駆逐艦ですから。』

『はつせさん、私たちは爆雷を用意しておけばいいんですか?』

『ええ、沢山ね。』

『分かりました。沢山準備しておきますね。』

『よろしくね。それじゃ、ひとまず解散!準備にかかれ!』

『『『了解!!』』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"はつせ" 艦橋

 

 

『久しぶりの""鮫狩り""ですな。』

『艦長、ミサイルは使いますか?』

『今回はなるべく使わないようにする。短魚雷と対潜ロケット弾で攻撃する。』

『ヘリには対潜魚雷は搭載しますか?』

『一応、しておいて。』

『分かりました。』

『今回の任務は敵潜水艦の掃討だよ、一隻も残さずに撃沈する。各員の努力に期待する。』

『はい艦長!』

『副長、少し部屋に戻る。その間の指揮を任せる。』

『了解です、艦長。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同艦 艦長室

 

 

『、、、、、、、久しぶりの対潜戦闘、、、か、、、リムパック以来だなぁ、、、、、』

 

 

 

備え付けられたベットに横たわりながら、そう呟いた。

そして、一枚の写真を手に取った

 

 

 

『懐かしいなぁ、2人で競い合ったよね、、、、、また、いつか会いましょう、、、"鉄の爪""、、、、、』

 

 

 

そう言うと彼女は写真を元あった場所に戻し、瞳を閉じた

目を覚ましたのはそれから25分経った後だった。




投稿遅くなり、申し訳ありません。
次回も楽しみに。


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第27話 対潜水艦掃討作戦開始

仮眠を取ったはつせは艦橋に戻り、戦闘配置を下令した。
対潜戦闘に備える対潜護衛群。
それを密かに捉える艦影がいた。


対潜護衛群より後方の海域

 

 

 

 

 

深海棲艦 カ号型潜水艦 カ-333潜

 

 

『フッ、獲物ガ居タゾ。副長。

『居マシタカ。』

『見テミロ。』

『、、、、7隻、、、デスカネ。』

 

 

 

潜望鏡を覗いた副長はそう呟いた

 

 

 

『巡洋艦級ガ3隻、駆逐艦級ガ4隻ダ。シカモ巡洋艦級ハ見タ事ガ無イ艦影ダ。』

『新型艦デショウカ?』

『多分ナ。』

『ドウシマスカ?』

『敵ノ新型艦ヲ仕留メタトナレバ昇進ダ。』

『デハ、攻撃シマスカ?』

『当タリ前ダ!戦闘配置ニ付ケ!』

『了解! 』

『絶好ノ攻撃位置ニ付イタラ魚雷全門発射ダ!』

『ハ!』

 

 

 

 

だが、カ333潜の艦長は知らなかった。自分達が既に探知されていた事に。

 

 

 

 

 

 

遡る事、5分前

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミサイル巡洋艦"はつせ" CIC

 

 

『ん?』

『どうした?』

『本艦より後方1400メートルの地点に反応。』

『敵潜か?』

『分かりません。国籍不明』

『まずは艦長に報告だ。』

『はっ。』

 

 

聴音妖精は艦内電話の受話器を手に取り、艦橋にいるはつせに報告を入れた。

 

 

 

『それは確かなのかい?』

『間違いありません。バッチリ捉えています。』

『艦級は分かる?』

『艦級は、、、、米海軍のガトー級潜水艦に類似しています。』

『ですが、米海軍のデータに該当する艦ではありません。』

『君の判断は?』

『敵潜水艦だと思います。米海軍の潜水艦なら本艦の対潜能力を知っていますから、こんなに分かり易く出て来たりしません。』

『なるほど。私も同じ考えだ。私の対潜能力を知ってて堂々と出て来るのはロス級位だからね。ガトー級で挑んで来たりはしない。』

『同感です。』

『敵潜がこれだけ堂々と出て来るとなると、攻撃態勢をとってる可能性がある。』

『その前にやりますか?』

『そうだね。白露さん達にやらせる。"ヴォルク1"をその地点まで誘導して。』

『了解です、艦長。』

 

 

 

 

 

 

『副長、"ヴォルク1"を発艦させて。それと、白露さん達に連絡を。』

『は。』

 

 

 

 

それから僅か3分後、"はつせ"から艦載ヘリが1機飛び立った。

発艦した哨戒ヘリ "ヴォルク1" はCICの誘導を受けながら、敵潜水艦が探知された海域に向かって行った。

 

 

 

 

 

『"ヴォルク1"、そろそろ敵潜水艦を探知した場所だ。そちらでもソナーによる捜索を開始してくれ。』

『"ヴォルク1"了解。』

『ディッピングソナーよる敵潜水艦捜索を開始します。』

 

 

 

"ヴォルク1"は探知されたポイントに到着すると搭載するディッピングソナーを下ろし、敵潜水艦の捜索を開始した。

 

 

 

 

すると、敵潜水艦は直ぐに見つかった。

敵潜水艦を捉えた"ヴォルク1"は"はつせ"に通信を入れる。

 

 

 

 

『こちら"ヴォルク1"。敵潜水艦を発見した。艦隊より後方1400メートルのポイント、深度は、、、、推定ですが100メートルと思われます。』

『こちら"はつせ"、駆逐艦がそちらに向かう。駆逐艦を誘導せよ。』

『"ヴォルク1"了解。』

 

 

 

 

 

 

『駆逐艦"長波"、"朝霜"に信号!敵潜水艦の攻撃に向かえ!』

『は!』

 

 

"はつせ"から2隻に向けて、発光信号が出され、2隻は艦隊を離れ、敵潜水艦が探知されたポイントに向かった。

 

 

 

 

 

 

駆逐艦"長波"

 

『しかしこんなに早く敵潜水艦を見つけるとは、、』

『優秀なソナーを持ってる様ですね。しかし、本艦でも探知出来なかったのに。』

『まぁ、初めて見る巡洋艦だったし、新型の高性能ソナーを持ってても不思議じゃないな、それより攻撃の準備をしとかないと。』

『ありたっけの爆雷を叩き込んでやりますよ。』

『程々にな、まだ他にもいるかもしれないからな。』

『分かってますよ、艦長。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方の発見されているとは思っていないカ333潜の方では2隻の推進器音を捉えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『艦長、推進器音接近。』

『ナニ。』

『二軸推進、、、、、2隻、、』

『艦種ハ?』

『速力30ノット、、、、護衛駆逐艦デハアリマセン、艦隊型駆逐艦カト思ワレマス。』

『艦隊型駆逐艦トナルト、、、、』

『"雪風"級カ"満潮"級、、"夕雲"級カ。』

 

 

 

 

雪風級とは陽炎型の事であり、満潮級は朝潮級の事である。

 

 

 

 

『2隻ノ動キハ?』

『速度変ワラズ、此方ニ向カッテ来マス!』

『何故ダ?マサカ、発見サレタノカ?イヤ、ソンナ訳ハ無イ。日本ノ貧弱ナ対潜装置デ、、、、』

『艦長、指示ヲオ願イシマス。』

『速度落トセ、深度コノママダ。』

『了解。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、2隻は"ヴォルク1"からの指示を受け取っていた

 

 

 

『こちら"ヴォルク1"、朝霜、長波聞こえるか?』

『こちら"長波"感度良好。良く聞こえてるよ』

『こっちもだ。』

『了解。敵潜水艦の位置を伝える。良く聞いておいてくれ』

『任せなよ』

『ばっちり仕留めてやるよ。』

『頼もしいな。っと、敵潜水艦は右舷方向、距離30、深度は変わらず100。位置も変わらずだ。』

『了解。攻撃方法は?』

『まずは動きを見る。直撃はさせなくてもいいから派手にやってくれ。探知はこちらでやる。』

『了解。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『副長、爆雷投下用意。深度100に設定』

『了解!』

 

 

 

こうして対潜護衛群と敵潜水艦との初戦が始まろうとしていた。



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第28話

敵潜水艦カ333潜を捕捉した"はつせ"は艦載ヘリ"ヴォルク1"を発艦させ、敵潜水艦捜索に向かわせ、同時に駆逐艦"長波"、"朝霜"の2隻に敵潜水艦への攻撃を下令した。
発見ポイントで敵潜水艦を再度捕捉した"ヴォルク1"は情報を2隻に伝達。2隻は受け取った情報を元に敵潜水艦に攻撃を開始使用としていた。


駆逐艦"長波"

 

 

『艦長より爆雷班。準備は?』

『こちら爆雷班。爆雷の用意完了。投下用意よし。』

『了解、そのまま待機。』

『了解。』

『通信士官、上空の友軍機に通信できる?』

『は。可能です。』

『私が直接話す。変わって。』

『はっ。』

 

 

 

通信士官からマイクを受け取った彼女は、上空の友軍機"ヴォルク1"に通信を入れた。

 

 

 

 

『こちら、"長波"』

『こちら、"ヴォルク1""長波" どうぞ。』

『爆雷の投下用意完了。攻撃準備完了。』

『了解した。"朝霜"からも準備完了の連絡を受けている。準備は良いか?』

『いつでもいけるぞ。』

『了解した。敵潜水艦の位置はこちらが把握している。』

『了解。すれ違いざまに爆雷を投下する。爆雷爆裂後の敵潜水艦の捜索をお願いする。』

『"ヴォルク1"、了解。任せてくれ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

『爆雷班。』

『は。』

『すれ違いざまに爆雷を投下する。投下用意!』

『は!投下よーい!』

『"朝霜"、本艦と同航。』

『投下用意、、、、、、』

 

 

 

暫く間を置いて、長波はマイクに向かって思っきり叫んだ。

 

 

『爆雷投下ぁ!!』

『投下!投下!』

 

 

 

 

 

 

 

 

ほぼ同時に2隻から爆雷が投下された。

投下された爆雷はゆっくりと沈降していき、、、、、、

 

 

カ333潜の周りで炸裂。爆雷は水中に衝撃波を生み、その衝撃波が襲いかかり、海面には大きな水柱が立つ

 

 

 

『被害報告!』

『前部兵員室ニ浸水!』

『3番電池室ニ浸水!シカシ、応急修理済ミ!』

『ディーゼル室、閉鎖完了!』

『微速前進、取リ舵40。深度50!』

『微速前進、深度50!了解!』

 

 

 

 

 

 

『敵潜、移動開始しました。深度50!』

『"長波"、"朝霜"に打電せよ!』

『は!』

 

 

 

 

 

 

 

 

敵潜の動きを捉えた"ヴォルク1"はすぐさま情報を2隻に打電する。

 

 

 

 

 

『進路変更!取り舵いっぱい!爆雷投下用意!深度50に設定!』

『よーそろ!取り舵いっぱーい!』

 

 

 

 

 

 

 

 

情報を受けった2隻はそれに従いコースを変え、再びカ333潜に向けて、爆雷を投下する。

爆雷の衝撃波はカ333潜をひっぱたく。

 

 

 

 

 

 

『ダ、駄目デス。我々ノ姿ガ透ケテ見エル様ニ追尾サレテマス。』

『ソンナ馬鹿ナ、、、、』

『敵艦、爆雷投下!』

 

 

 

 

 

『投下!投下!』

『投下用意!投下!』

 

 

 

 

 

『何故ダ、、、、何故コンナ事ニ、、、、』

『艦長、落チ着イテ下サイ。』

『マタ来マス!至近!』

 

 

 

次の瞬間、カ333潜の至近距離で1発の爆雷が炸裂した。生み出された衝撃波はこれまでよりも遥かに強い衝撃でカ333潜に襲いかかった。

 

 

 

 

 

『ウワァッ?!』

『被害報告!』

『後部兵員室ニ浸水!』

『ディーゼル室、浸水!』

『コチラ後部魚雷発射管室!浸水ニヨリ発射管使用不能!』

『浸水ノスピードガ早過ギル!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ん?この音は、、、、』

『何か捉えたか?』

『敵潜に異常音、、いや、これは、、、、、、船体に亀裂が入ったか?』

『少しでも亀裂が入れば潜水艦には致命的な被害だ。もう潜る事は出来まい。』

『"長波"、"朝霜" コースそのまま!続けて攻撃!』

『"長波"、了解。』

『"朝霜"、了解!』

 

 

 

 

 

 

 

 

『各所デ浸水!』

『浸水ノスピードガ早過ギマス!コノママデハ沈ミマス!』

『ガスモ発生シテイマス!艦長!』

『ソンナ、、、、、、ソンナ馬鹿ナ、、、、、、』

『艦長!シッカリシテ下サイ!艦長!』

 

 

 

 

だが、次の瞬間彼らはそこで意識が途絶えた。

投下された爆雷3発が超至近距離で炸裂したのだ。衝撃波は先に生じた亀裂から艦内にも襲いかかった。

隔壁を吹き飛ばし、乗員たちを大量の海水が襲いかかった。

直後、カ333潜は大量の気泡と重油を放出しながら、海底に沈んでいった。

海面には大きな水柱が上がり、大量の気泡と重油などが浮いてきた。

 

 

 

『重油と気泡の流出を確認!』

『敵潜の反応、急速に低下しつつあり。』

『こちら"ヴォルク1"、大量の気泡と重油の流出を確認した。撃沈と認む!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やったぁぁ!!』

『やりましたよ!艦長!』

『ああ、これで少しは無念を張らせただろう』

『艦長!"はつせ"より通信です!』

『繋いでくれ。』

『は!』

『こちら"はつせ"。こちらでも敵潜水艦の撃沈を確認しました。良くやってくれました。2隻は艦隊に帰還して下さい。』

『了解!』

『了解!』

 

 

 

 

 

こうして駆逐艦"長波"と"朝霜"は2隻共同でカ333潜を見事、撃沈せしめた。2隻は撃沈を完全に確認した後に艦隊に戻るコースを取り、"ヴォルク1"も帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

対潜護衛群 旗艦 ミサイル巡洋艦"はつせ"

 

 

 

『早々に敵潜水艦1隻を撃沈。幸先は良いかな。』

『しかし、敵潜水艦は1隻だけでは無いでしょう。』

『だろうね。単艦ならそこまで被害は出ないけど、複数で群狼戦術を行っているとすれば被害は大きい。』

『先の敵潜は単独行動でした。他は複数で行動していると思われます。』

『心配いらないよ、副長。私に群狼戦術なんて通用しないよ。通常動力の潜水艦なら特にね。』

『ですな。』

『さて、、、、敵さんはどう出るかな?』

 

 

 

 

はつせは不敵な笑みを浮かべながら、敵潜水艦の潜む海面を眺めた




敵潜水艦1隻目撃沈です。
もちろん、敵潜水艦は1隻だけではありません。何隻いるかはネタバレ防止の為、お教え出来ません。
さて、次回もお楽しみに。


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第29話

敵潜水艦1隻を撃沈した対潜護衛群。
その後、"はつせ"ソナー班、及び"ヴォルク"、"リシッツァ"小隊の索敵により敵潜水艦隊の陣容が判明した。


マルロクサンマル

夕方 06 30

 

 

対潜護衛群旗艦"はつせ" CIC

 

 

 

『これが"ヴォルク"、"リシッツァ"が収集したデータです。』

『この不自然な海底が敵潜か。』

『そうなります。』

 

 

 

はつせ はCICで、聴音班の聴音妖精達と副長、そして"ヴォルク"、"リシッツァ"小隊の機長達を集め、資料を見ていた。

 

 

『これを見る限り、あと11隻いる。』

『撃沈した1隻を含め、12隻いた事になりますね。』

『この展開位置、、、、よく考えたものだな』

『2隻が他よりも離れた位置にいます。恐らく情報収集及び偵察の艦でしょう。』

『沈めた1隻はその偵察の艦だったんだろう。』

『本来偵察担当の艦は姿を見せずに偵察に徹するのが普通だけど、あの敵潜は不用意に自らの位置を露呈させた。』

 

 

 

 

彼女達の考えは当たっていた。

撃沈したカ333潜は偵察担当の3隻のカ級潜水艦の内の1隻だった。が、カ333潜は不用意に潜望鏡深度に浮上し、探知され撃沈されたのだ。

 

 

 

『他の2隻は動きませんね。』

『あくまで偵察に徹してるんだろう。』

『攻撃しますか?』

『いや、このまま。ただし、ソナーで監視を続けて。』

『了解しました。』

『それに偵察に徹してるなら、こちらの位置を本隊に連絡してるはず。』

『では?』

『こちらを仕留めようと本隊が罠を張る筈だよ。そこを一気に叩く。』

『ミサイルを使いますか?』

『いや、ミサイルは出来れば使いたくない。ロケット弾と短魚雷で仕留めよう。』

『了解です、艦長。』

『それと副長。哨戒ヘリを出そう。』

『分かりました。交代でヴォルク小隊とリシッツァ小隊を出します。』

『"しらね"、"せとぎり"からも出そう。2隻に連絡して。』

『は、直ちに。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、護衛群前方の海域の海底

 

 

 

 

 

 

 

深海棲艦 カ972潜

 

 

 

『スクリュー音探知。』

『詳細ヲ報告。』

『2軸推進器音、、、、小型艦4、、、、中型艦3、、、』

『艦種ハ分カル?』

『小型艦ハ駆逐艦、中型艦ハ巡洋艦カト。接近シテ来マス。』

『探知サレタ可能性ハ?』

『ソノ可能性ハ低イデス。接近ハシテマスガ、此方ニハ向カッテハ来マセン。』

『ソウ、、、、副長、333潜トハマダ連絡ハ取レナイノ?』

『依然、連絡ハアリマセン。』

 

 

 

カ972潜の艦長は副長にそう聞いた。

カ972潜は他の2隻と共に偵察情報収集任務に当たっていた。だが、僚艦であるカ333潜からの連絡が無かったため、捜索に当たっていた。

だが、推進器音を探知した為、捜索を一旦止め、海底に身を潜めていたのだ。

 

 

 

 

『カ973潜ノ所在ハ分カッテルケド、333潜ハ連絡取レズ、カ。』

『撃沈サレタノカモシレマセンネ。』

『ソノ可能性ハアルワ。ソナーデ圧壊音ヲ捉エテル。』

『333潜ハ功ヲ焦ッタノカモシレマセン。』

『私達ノ任務ハ偵察ト情報収集ダ。攻撃スルノハ愚策ヨ。』

『ソモソモ我々マデ作戦ニ駆リ出ストハ、、、、』

『上ノ命令ニハ逆ラエナイワ。』

『デスガ艦長。我々ハ北方方面軍デス。中央軍ノ指図ヲ受ケル筋合イハアリマセン。』

『マァ、ソウ言ワナイノ。楽ナ任務ダカラ。』

『シカシ、攻撃出来ナイノハ辛イデス。』

『、、、、今回ハ攻撃シナイ方ガイイ気ガスルハ。』

『エ?何故デス?』

『何トナク、アノ敵ニハ手ヲ出スベキデハナイト思ッタダケヨ。』

『勘、、デスカ?』

『多分ネ。』

『艦長ノ勘ノオ陰デ、何回モ危機ヲ切リ抜ケマシタカラネ。』

『タマタマヨ。副長、深度コノママ。ソナーハ引キ続キ敵艦隊ノ監視ヲ続ケテ。』

『了解デス、艦長。』

 

 

 

カ972潜はそのままじっと海底に潜む事にした。

 

 

 

 

旗艦"はつせ" CIC ソナールーム

 

 

 

『敵潜動きませんね。』

『やはり、偵察に徹してるな。』

『この2隻は隠密性が高いですね。我々じゃなければ見逃してましたよ。』

『音紋もガトー級とはやや異なります。』

『敵の新型潜とでも言うべきか。』

『しかし、新型の潜水艦が偵察に徹するだけとは、、、、』

『潜水艦は隠密性が必要だ。この敵潜はその隠密性を生かして偵察に徹しているんだ。』

『乗員も優秀なんでしょうかね?』

『新型艦だからな。ボンクラではなかろう。』

 

 

聴音妖精達はその様な事を話しながら、引き続き、ソナーによる探知と捜索を行っていた



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第30話

敵潜水艦隊の位置を把握した対潜護衛群。
偵察に徹している2隻を除く8隻に対し、ロケット弾及び短魚雷による攻撃を下令した。


対潜護衛群 旗艦 "はつせ" CIC

 

 

 

 

『まずは司令艦を潰す。』

『親玉を潰す訳ですね。』

 

 

 

CICで指揮を執る はつせ は、しらね、せとぎりの2艦と通信を行っていた。

 

 

 

『攻撃は、、、、、、せとぎりさん。お願いできる?』

『え?私?』

 

 

まさか自分が指名されるとは思ってなかったのか、せとぎりは驚いたようだ。

 

 

 

『最初はRBU-6000かRBU-1000を使おうと思ったんだけどね、、、、、』

『?』

『ま、作戦を説明するよ。通信士、他の艦にも繋いでくれるかい?』

『了解です。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから程なく、"白露"、"夕雲"、"長波"、"朝霜"との通信が繋がった。

それを確認してからはつせは、作戦を説明し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『成程。そういう事か。』

『でも、そう上手くいくんですか?』

『各艦が上手く連携すれば成功する。敵潜の位置はソナーで監視しているから、それを元に指示を出す。』

『成程。』

『質問いい?』

『どうぞ。』

『攻撃はアスロック?それとも短魚雷?』

『短魚雷でお願いする。ミサイルはなるべく使いたくない。』

『了解。』

『でも、なんでせとぎりなんだ?はつせの方が対潜能力も勝るだろうに。』

『それ私も思った。どうしてなの?』

 

 

 

二人が思った疑問。それは 何故 敵指令潜水艦への攻撃をせとぎりに任せるのか? である。

 

"はつせ"、"しらね"、"せとぎり"の3隻で比べると対潜能力は"はつせ"が2隻に勝る。それもそのはず、"はつせ"はオラーシャのある艦をベースに設計された最新鋭ミサイル巡洋艦で、対空・対潜・対艦戦闘能力も桁違いなのだ。

となると、"はつせ"が攻撃するのが良い筈なのだが、何故か彼女は せとぎり に攻撃を任せた。

 

 

 

 

 

 

『簡単な理由さ。"優秀だから"だよ。"せとぎり教官"』

『へ?』

『教官だったのは昔よ。はつせさん。』

『最近でも教官役だったでしょ。』

『今は護衛艦の艦長です。』

『あの、教官というのは?』

 

 

 

話についていけない白露が聞いた。

 

 

 

『せとぎりさんはね、昔教官をしてたんだよ。』

『せとぎりさんが教官、、ですか?』

『詳しく話すと、、、、』

 

 

 

 

せとぎりは、かつて一旦現役を退き、訓練艦艦長 及び 指導教官を務めていた事がある。彼女は多くの護衛艦の指導に当たり、護衛艦娘から教官と呼ばれていた。

 

 

 

 

 

『実は、はつせも指導を受けたんだよな。』

『そうだよ。結構しごかれたねー。』

『いろいろ大変だったわよ。』

『とまぁ、話はズレたけど、、、、攻撃はせとぎりさんに任せる。しっかり頼むよ?』

『任せなさい。旧式化したとはいえ、まだまだやれるわ。』

『頼りにしてるよ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

汎用護衛艦 "せとぎり"

 

 

『さて、、、、、、教官として生徒にカッコいい姿見せないとね。』

『腕がなりますな。』

『第三戦速に増速。』

『よーそろ、第三戦速。』

『操舵手、取舵20。"はつせ"を追い越して前に出る。』

『よーそろ、取舵20度。』

 

 

 

 

 

 

 

ミサイル巡洋艦 "はつせ""

 

 

『"せとぎり"が本艦左舷を通過します。』

『速度落とせ。』

『第二戦速に減速。』

『よーそろ。』

『CIC艦橋、RBU-6000、RBU-1000及び短魚雷発射用意。』

『了解。』

 

 

 

"せとぎり"を横に見ながら はつせ はCICに指示を出す。

 

 

はつせには RBU-6000 12連装対潜ロケット砲、RBU-1000 6連装対潜ロケット砲が2基ずつ搭載されている。これは口径212ミリ、300ミリの対潜ロケット弾を発射するオラーシャ製の対潜兵器だ。

オラーシャでは多くの艦艇が搭載されているが、日本で搭載されているのは、はつせ型だけである。

因みに、対潜ミサイルも搭載しており、大半はそちらの方を使う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さて、、、、鮫狩りの始まりだ。』

 

 

 

 

 

前方の海域を見つめながら、彼女はそう呟いた。



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第31話 決戦 深海棲艦 潜水艦隊 ①

敵潜水艦隊との決戦に臨む対潜護衛群。
その先陣を任されたのは護衛艦"せとぎり"だった。


対潜護衛群 汎用護衛艦"せとぎり"

 

 

 

『ソナー、反応は?』

『今の所ありません。』

『警戒を怠るな。』

『了解。』

『まだ動きませんな』

 

 

 

艦長席に座る せとぎりに副長はそう呟いた。

 

 

 

 

『敵は必ず食い付く。そこを叩くだけよ。』

『は。』

『操舵手、速力、進路このまま。』

『了解。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深海棲艦 第315潜水艦隊 司令潜 カ3333

 

 

『推進器音探知。ソノ後方ニモ複数ノ推進器音。』

『来タカ。連絡通リダ。』

『恰好ノ獲物デス。』

『フフ、1隻残ラズ沈メテヤル。』

『敵艦、本艦頭上ヲ通過中。』

『気付カレテイナイカ?』

『本艦ハ最新鋭艦デス。日本如キノソナーデハ探知サレマセン。』

『ヨシ、機関始動。微速前進、追跡ヲ開始シロ。』

『ハッ。』

 

 

カ3333潜の艦長は内心喜んでいた。この敵艦隊を全て沈めれば戦果は大きい。そして昇進の可能性も出てくる。

日本艦の対潜能力は大体分かっている。そこまで高性能ではないはずだ。現に自分たちは発見されていない。余裕で勝てる相手だ。

そう、思っていた。

 

 

 

 

が、カ3333潜の艦長は知らなかった。自分達が全てに探知され、攻撃される運命にある事に。

更にカ3333潜はミスを犯してしまったのだ。

 

 

 

 

 

『馬鹿野郎!出力ヲ上ゲ過ギダ!』

『ス、スイマセン。』

『マァ、上ゲ過ギト言ッテモ探知ハサレテナイダロウガ。』

 

 

 

それは小さなミスだった。が、そのミスがカ3333潜の命運を決めてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『艦長、微弱なのですが、ソナーに反応がありました。』

『何処?』

『本艦の真下です。』

『真下?本当?』

『間違いありません。かなり微弱でしたが、捉えました。』

『お手柄よ、深度は分かる?』

『いえ、深度は不明です。ですが、大まかな位置は。』

『分かったわ。』

『いましたな。』

『ええ、副長攻撃準備。』

 

 

 

ソナーからの報告を聞いた せとぎり はすぐさま、副長を攻撃準備命令を下す。

 

 

 

『了解。短魚雷ですか?』

『いや、88式を使う。』

『88式ですか?』

『ええ、そうよ。』

『了解です、艦長。』

 

 

 

 

 

 

 

 

『艦長、88式発射準備完了。』

『諸元は入力済みです。』

『88式発射用意〜‥‥撃てっ!!』

 

 

 

直後、"せとぎり"の中央部に備えられた筒状の四連装発射機からロケット弾の様な物が放たれた。その数、全部で4発。

4発のロケット弾は僅かに飛翔し、弾頭部が外れ、中から複数の爆弾の様な物が飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

『操舵手!最大戦速!急げ!』

『了!最大戦速!!』

『総員対ショック態勢!』

 

 

 

 

 

88式を発射してから直ぐに彼女は加速するように命令。"せとぎり"は一気に増速し、その場を離れた。

直後、複数の爆弾の様な物が"せとぎり"がいた場所に落下した。

 

 

 

 

 

 

カ3333潜

 

 

 

『敵艦加速!速イ!』

『頭上ニ着水音!』

『何ッ!』

 

 

 

直後、カン という音の直後、カ3333潜を凄まじい衝撃が襲った。

 

 

 

『ウワッ?!!』

『ナ、ナンダ?!!』

『機関室浸水!応答アリマセン!』

『後部発射管室、浸水!!』

 

 

 

各所から被害の報告が挙がるが、直後、艦長達がいる場所にも大量の海水が流れ込んできた。

 

 

 

 

 

『浸水止マリマセン!!』

『モウ持チマセン!!艦長!!!!』

『!!!!!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

『こちらソナー。艦長やりました。大量の浸水音と船殻が押しつぶされる音を捉えました。』

『了解。報告ありがとう。』

『引き続き探知を続けます。』

『通信士、"はつせ"に報告。』

『は。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

対潜護衛群 旗艦 "はつせ"

 

 

『これで、敵艦隊は要を失ったね。』

『しかし、せとぎり二等佐も無茶をします。』

『まさか、88式を使うとは思わなかったよ。』

 

 

 

 

彼女達の言う 88式とは何か?

 

 

正式名称 “88式対雷潜迎撃用重爆雷弾“

日本が開発した対魚雷戦、対潜水艦戦用の新兵器である

構造は母体となるロケット弾の内部に12発の重爆雷弾(爆雷と言うより簡易誘導式の魚雷の様な物。)が内蔵されており、目標至近まで飛翔、爆雷弾を切り離し、目標の近くに着水させ、爆発の衝撃波で損害を与える。

 

爆雷弾は簡易式の磁気音響探知装置を搭載でき(搭載せずに使用する事も出来る)、目標の至近距離で炸裂させる事が可能となっている

欠点として、威力が大きい為、安全距離を取らずに使用すると自艦も甚大な被害を受けてしまう所である。

 

 

 

 

 

 

『しかし、腕は衰えてはいませんでしたな。』

『そうだね。流石はせとぎり教官という所かな。』

『次はどうしますか、艦長。』

『次はこっちの番だ。操舵手、第三戦速。』

『よーそろ、第三戦速。』

 

 

 

こうして、はつせ率いる対潜護衛群と 深海棲艦 潜水艦隊との決戦が開始されたのである。



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第32話 決戦 深海棲艦 潜水艦隊 ②

敵潜水艦隊の司令艦 カ3333潜を撃沈した対潜護衛群。



対潜護衛群 旗艦 "はつせ" CIC

 

 

『聴音、敵潜水艦隊の動きはどうか?』

『先に探知した2隻は以前沈黙したまま。残りの8隻も動きはありません。』

 

 

 

既に対潜護衛群は敵潜水艦2隻を沈めている。残るは10隻だが、偵察に徹する2隻は依然沈黙したままだ。

CICで敵潜の位置がマークされた海図を見つめる はつせ に副長が話しかける。

 

 

 

 

『偵察に徹している2隻はどうしますか?』

『攻撃してくるなら応戦。このまま動かないなら、ほっておこう。』

『それでいいんですか?』

『既にこっちの位置は敵にバレてる。これ以上の偵察は無意味な

筈。でもこの2隻は全く動かない。』

『戦闘に参加するつもりが無いのでしょうか?』

『その可能性もあるね。ともかく、この2隻は攻撃対象から外す。残りの8隻は仕留める。』

『はっ。』

『TAO、RBU-6000、RBU-1000、発射用意。』

『了解。』

『操舵手、最大戦速。』

『よーそろ、最大戦速。』

『副長、各艦にも伝達。最大戦速で走るよ。』

『は、了解しました。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深海棲艦 カ424潜

 

 

『艦長、推進器音デス。』

『何?推進器音ダト?間違イナイノカ?』

『間違イアリマセン。』

『オカシイデス、予定ヨリ早イデス。』

『潜望鏡、上ゲ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"はつせ" 搭載 哨戒ヘリ "リシッツァ1"

 

 

『機長!潜望鏡発見!』

『何処だ?』

『4時の方向です。』

『分かった。確認する。』

 

 

 

程なく、機長も潜望鏡を発見した。

 

 

 

『直ちに"はつせ"に連絡しろ!』

『は!』

 

 

 

 

 

 

 

 

『"リシッツァ1"より報告!潜望鏡発見!艦隊前方距離300!深度18!』

『RBU-6000、発射用意。弾数4。』

『了解、RBU-6000、発射用意。』

 

 

 

 

 

RBU-6000は口径212ミリの対潜ロケット弾を発射できる対潜兵器で、最大で1度に12発を発射できる。更に装填も自動化されている。

 

 

 

 

『RBU-6000、諸元入力よし。』

『"リシッツァ1"はその場から離れよ。』

『了解。』

『"リシッツァ1"の退避確認。』

『RBU-6000、諸元入力よし。』

『艦長、発射用意よし。』

『発射用〜意、、、、撃てー!!』

 

 

 

 

 

"はつせ"から対潜ロケット弾が発射される様子はカ424潜からも見えていた

 

 

 

 

 

 

『セ、潜航!急ゲ!』

『艦長!』

『急ゲ!早ク!』

『頭上ニ着水音!』

『!!』

 

 

 

 

カ424潜は慌てて潜航しようとしたが、"はつせ"から放たれた4発のRGB-60無誘導爆雷が炸裂。

カ424は衝撃に耐えられず、大量の気泡を出しながら沈降していった。

 

 

 

 

同じ頃、"せとぎり"と"しらね"の2艦も敵潜に攻撃を開始していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

汎用護衛艦"せとぎり"

 

 

『こちら、ソナー。艦長敵潜を捉えました。距離430』

『右舷発射管、20式短魚雷発射用意。本数3。』

『了解!』

『20式短魚雷、諸元入力よし!』

『用意〜…、撃て!』

 

 

 

 

"せとぎり"右舷の68式三連装魚雷発射管から、3本の20式短魚雷がバシュッ! という音と共に発射され、海中のカ444潜に向かって猛スピードで、進んでいった。

 

 

 

カ444潜

 

 

『高速推進器音!』

『何!』

『魚雷デス!』

『回避!』

 

 

 

 

 

 

艦長はそう命じたが、誘導式の魚雷を躱すことは出来ず、3本全て命中し、カ444潜は撃沈された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヘリコプター搭載型搭載護衛艦"しらね"

 

 

『敵潜捕捉。左舷方向、距離800。』

『別の敵潜捕捉!正面、距離520!』

『2隻とも仕留める。主砲用意。』

『主砲射撃用意!』

『1番は正面、2番は左舷を狙え』

『は!』

『11式対潜弾を使うぞ。』

『は!』

 

 

 

11式対潜攻撃弾とは砲弾でありながら、海中の敵潜水艦を攻撃可能な特殊な砲弾で、海上自衛軍の巡洋艦、戦艦で使用されていた

海上自衛隊では "しらね"型2隻と"はるな"型2隻、"しきしま"型4隻だけが使用している

 

 

 

『諸元入力よし』

『信管調節よし。』

『艦長、主砲、攻撃用意よし!』

『主砲撃ち〜方始め!』

 

 

 

 

しらねの号令と共に2基の5インチ砲から対潜攻撃弾が発射され、敵潜の潜む地点に向かい、着水。砲弾はそのまま海中を進み、敵潜水艦に突き刺さった。

直後、敵潜水艦2隻とも大量の気泡と重油を撒き散らしながら、艦尾から沈んでいった。

海面には2隻から溢れ出た浮遊物が漂っていた。

 

 

 

 

 

 

『浮遊物を確認。撃沈です、艦長。』

『2隻共か?』

『はい、2隻共です。』

『よし、"はつせ"に連絡しろ。』

『は。』

 

 

 

 

 

 

 

 

『"せとぎり"は1隻、"しらね"は2隻。本艦が1隻仕留めました』

『4隻は仕留めたか』

『残り4隻ですね』

『敵潜の位置は変わらない?』

『特に変化ありません』

『そう』

 

 

 

 

 

対潜護衛群の攻撃により敵潜水艦隊は6隻を失い、残るは4隻だけだ(偵察の2隻を除く)。

だが、反撃を試みる敵潜もいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カ481潜

 

『何トイウ事ダ。僚艦ガコウモ簡単ニヤラレルトハ』

『ドウシマスカ?』

『少シデモ損害ヲ与エテヤル。魚雷発射用意!全門ダ!』

『ハ、魚雷発射用意』

『装填ヨシ、諸元入力済ミ』

『撃テ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はつせ搭載ヘリ "ヴォルク2"

 

 

 

 

『雷跡発見!6線!"せとぎり"に向かう!』

『"せとぎり"に連絡だ!!』

『はっ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

護衛艦 "せとぎり"

 

 

『"ヴォルク2より報告!本艦に向けて敵魚雷6本が接近中!』

『88式、正面に向けて発射!数4、対魚雷モード!』

『了解!』

『操舵手、第一戦速!』

『よーそろ!第一戦速!』

『88式、次弾装填終わり!』

『モード切り替えよし!対魚雷戦!』

『撃て!』

 

 

 

 

 

 

"せとぎり"から放たれた88式は敵魚雷の頭上で爆雷弾をばら撒き、爆雷弾は敵魚雷を巻き込む形で爆発した。

 

 

 

『敵魚雷の反応消失!』

『再度、次弾装填!今度は対潜モード。4発!急げ!』

『装填終わり!』

『諸元入力よし!』

『撃て!』

 

 

 

"せとぎり"から再び4発の88式が放たれた。



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第33話 決戦 深海棲艦 潜水艦隊 ③

敵潜水艦隊との戦いは、対潜護衛群が敵潜水艦を次々と撃沈せしめた。


『諸元入力よし!』

『撃て!』

 

 

 

 

 

 

直後、"せとぎり"から複数の88式がカ481潜が潜む地点に向かって発射された。

 

 

 

 

 

 

 

 

『急速潜航!潜レ!』

『着水音!多数!』

『ナッ!』

 

 

 

 

直後、カ481潜は88式が生み出した衝撃波をモロに喰らい、撃沈された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カ972潜

 

 

『圧壊音、、、、5ツ目デス。』

『艦長ノ予感ガ当タリマシタ。本艦モ攻撃ヲシテイタラ今頃、、、、』

『私達ハ日本海軍ノ対潜能力ヲ侮リ過ギテイタ様ネ。』

『ソノ様デス。』

『副長、敵艦隊ガ完全ニ居ナクナルマデ現状維持。』

『ハッ、了解シマシタ。』

『シカシ、、予想以上ノ対潜能力ダ、、、、』

 

 

 

カ972潜の艦長が見つめるメモには僚艦の艦名が書かれており、隣には×印と△印が付いていた

△印はカ-972潜とカ-973潜のみ。他の5隻の×印は撃沈された事を示している

 

 

『コレデ何度目ノ命拾イカシラネ、、、、』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

対潜護衛群 旗艦 "はつせ"

 

 

『5隻目の撃沈を確認しました』

『うーん、、、、3隻だけで鮫退治するのは勿体無い。白露さん達にもやってもらおう』

『は。直ちに連絡します』

『お願いね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はつせの命令は 白露、朝霜、夕雲、長波の4隻にすぐさま伝わり、哨戒ヘリの指示の元、敵潜水艦に対し、爆雷攻撃を開始した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"はつせ"搭載 ヘリ "リシッツァ2"

 

 

 

『"夕雲"、進路そのまま。敵潜前方20、深度30』

『"夕雲"、了解』

『しかし、久しぶりの鮫退治だが、鮫共がうじゃうじゃいるな』

 

 

 

機長がそう呟く中、"夕雲"は爆雷攻撃を開始した

 

 

 

 

駆逐艦"夕雲"

 

 

『艦長!投下用意よぉし!』

『爆雷、投下始め!』

『了解!爆雷投下ぁ!!』

『投下!投下!』

 

 

 

夕雲が爆雷投下を命じ、副長が大声で復唱する。

それを聞いた爆雷班は投射機の安全装置を外し、爆雷を海に落としていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カ365潜

 

 

『頭上ニ着水音!爆雷デス!』

『何故ダ!何故日本海軍ノ奴ラニ追ワレナキャナランノダ!』

『爆雷来マス!』

『艦長!指示ヲ!!』

『潜航!深度50!』

 

 

 

 

 

 

『敵潜、潜ります。深度50。』

『こちら、"リシッツァ2"。敵潜水艦が深度を50に変えた。爆雷の炸裂深度の変更を要請する。』

『"夕雲"了解。』

 

 

 

 

 

 

 

 

『爆雷炸裂深度再調節。深度50!』

『了解!炸裂深度調節!深度50!急げ!』

『了解!!』

 

 

 

 

 

 

 

"リシッツァ2"からの要請を受けた夕雲はすぐさま、爆雷の炸裂深度を50に設定させ、再度爆雷を投下させた。

 

 

 

 

 

『調節終わり!』

『よし!投下!投下!』

 

 

 

 

 

 

 

『爆雷、マタ来マス!』

『何故ダ!何故位置ガ分カルンダ!』

『艦長、落チ着イテ下サイ!』

『爆雷超至近!』

『!!』

 

 

 

 

ドカァーーーーン!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『撃沈確認しました。』

『これで6隻目ね』

『そうですね。しかし、こうもあっさりと敵潜を見つけられるとは、、、、』

『大淀さんからは機密だからあまり深く聞くな、とは言われたけど、、気になるわ』

 

 

 

 

夕雲はそう言うと、艦長席を立ち、外を見つめた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから約30分。対潜護衛群各艦は敵潜水艦への攻撃を続けた結果

敵潜水艦3隻を沈めた

敵潜は果敢に魚雷で反撃して来たが、回避されるか迎撃され、逆に返り討ちにあった

12隻中、9隻が沈められ、残りは3隻だけとなった

すると、予想外の事が起きた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

対潜護衛群 旗艦 "はつせ" ソナールーム

 

 

『ん?この音は、、』

『空気の排出音、、、浮上する気か?』

『どういう事何でしょうか?』

『さぁな?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同艦 艦橋

 

 

『敵潜が浮上中?』

『聴音からの報告です』

『位置は?』

『本艦の左舷30です』

『近いな。TAO、主砲用意』

『了解』

『ただし、命令あるまで発砲するな』

『了解、発射体制のまま待機します』

 

 

 

彼女は敵潜水艦が浮上し、至近距離から砲撃してくる事を警戒し、主砲に射撃体制を取る様に命令した

 

 

 

 

『降伏ならいいんだけどなー』

『その可能性も無いとは言いきれませんが』

『そうである事を祈るよ』

『敵潜水艦、海面に出ます』

『操舵手、注意しろ。近いぞ』

『了解』

 

 

 

程なく、敵潜水艦が海上に姿を現した

深海棲艦独特の赤と黒の塗装だが、艦影は米国のガトー級に似ていた

 

 

 

 

『主砲、CIWS、敵潜水艦に向けろ』

『発砲はダメだよ』

『分かっています』

 

 

 

浮上した敵潜水艦に対し、主砲とCIWSが向けられる。CIWSは対空用なので、本来艦に撃つものでは無いが、万が一に備えてである

 

 

 

が、その心配は杞憂に終わった。敵潜から乗員らしき人影が数人現れると、白の服やタオルを大きく振り始めた。また、平文で、(我降伏ス)と送ってきた

 

 

 

 

『降伏を受託すると伝えて』

『は』

 

 

 

 

 

 

それから1時間、降伏した敵潜水艦隊 カ-222 潜 は少数の魚雷と砲弾を放棄し、こちらが把握している間は浮上航行(ただし、緊急時に限り潜航)する事をカ222潜の艦長に約束させた

また、はつせ は負傷していた カ222潜の乗員の治療を行いたいと申し出た

 

 

 

 

『何故ソンナ事ヲスルンダ?』

『何故って、、、怪我してる人を治療するのはダメなのかい?』

『駄目デハナイ。ダガ、我々ハ敵ダゾ』

『でも、もう戦う気はないんでしょ?』

『無イ。無駄ニ部下ヲ死ナセル訳ニハイカン』

『なら、尚更治療はする』

『、、、、、、、ハァ、拘束サレテル立場ダカラ反対スル権限ハ無イ。治療シタケレバスレバイイ』

『なら、すぐにでも』

 

 

 

それから約20分、はつせはカ222潜の乗員の治療を行い、乗員の治療が完了すると、カ222潜は対潜護衛群と別れた。

 

 

 

 

 

 

 

『変ワッタ奴ダ。捕虜ニ取ルドコロカ、治療スルト言イ出ストハ、、』

『拍子抜ケシマシタ。』

『マァ、乗員達ガ無事ダッタカラヨシトシヨウ。』

『艦長、司令部ガ報告ヲ求メテ来テイマスガ。』

『帰投シテカラ言ウト言ッテオケ。』

『ソレデ良イノデスカ?』

『構ワン。私ガ直接言ウトモ伝エロ。』

『分カリマシタ。』

『第2戦速ニ増速。帰投スルゾ。』

『了解デス、艦長。』

『モウ会ウ事ガ無イ事ヲ祈ロウ。』

 

 

艦長は背後に見える一隻の巡洋艦を眺め、そう呟いた。



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第34話 決戦 深海棲艦 潜水艦隊 ④

降伏したカ222潜と別れた対潜護衛群は、各艦の被害の確認を行っていた。同じ頃、複数の潜水艦と一隻の空母を伴う艦隊がいた。


はつせ達対潜護衛群から離れた海上に複数の艦影があった

艦隊中央に空母、その周りには十数隻の潜水艦と2隻の駆逐艦。旗艦である空母"ヲ"級では、、、、

 

 

 

 

 

『何ヲヤッテルンダ!コノ役立タズ共メ!』

『落チ着イテ下サイ、艦長』

『大シタ戦果モ出セズニ全滅トハナ、コノクズ共ガ』

『、、、、、、』

 

 

指揮官も兼任する"ヲ"級艦長は副長とカ515潜 艦長にそう言った

 

 

 

『折角、補給ヲシテヤッタトイウノニ、、、』

『申シ訳アリマセン』

『申シ訳ナイダト?ソレダケカ!言ウ事ハ!』

『、、、、、、、、』

『ソモソモ何故コノ私ガ貴様ラ潜水艦隊ノ補給艦ヲシナイトイケナイノダ!』

 

 

 

この空母"ヲ"級は通商破壊戦を行う潜水艦隊の補給艦隊の旗艦を務めていた。補給艦隊と言っても、この"ヲ"級と護衛の駆逐艦"イ"級2隻だけであるが

 

 

 

 

『言葉ヨリ実力デ示セ。出撃シロ』

『マダ補給ガ済ンデマセン』

『黙レ!命令ダ!出撃シロ!』

『補給ガ完了シナイト艦ハ動カセマセン』

『チッ!クズ共ガ!』

『、、、、、、』

 

 

 

現在補給を受けてるのは全部で18隻。どの艦も補給を始めたばかりで、直ぐには動けない状況だった

指揮官の"ヲ"級は先程から暴言ばかり吐いていた。彼女は潜水艦隊の補給などという地味で、本来潜水母艦や軽巡の仕事を自分がやっている事が不満だったのだ

 

 

 

『失礼シマス』

『ナンダ!用件ヲ言エ!』

 

 

 

艦橋に入ってきたのは"イ"級の艦長だった。彼女に対し、"ヲ"級は用件を言う様に言った

 

 

 

『カ972潜カラデス。補給ヲ受ケタイノデ、合流シタイトノ事デス』

『断レ』

『シカシ、補給ヲシナケレバ基地ニ帰投出来ナクナリマス』

『聞コエナカッタノカ!断レト言ッテルノダ!』

『シカシ、、、、』

『モウイイ!オ前ガ行ケ!』

『エ、私ガデスカ?』

『補給位貴様デモ出来ルダロウ、早ク行ケ』

『シカシ、私ガ行クト護衛艦ガ1隻ダケニナッテシマイマス』

『ウルサイ!早ク行ケ!』

『分カリマシタ』

 

 

 

 

 

 

 

程なく、補給物資を載せた"イ級"は艦隊から離れ、カ972潜との合流地点に向かった

 

 

 

 

 

 

それから1時間後、"イ級"は無事、カ972潜以下3隻と合流した

 

 

 

 

『御苦労。補給感謝スル』

『気ニナサラズニ。任務デスカラ』

『悪イナ』

『残ッタノハ3隻ダケデスカ』

『残念ナガラナ』

 

 

 

"イ級"艦長はカ972潜の艦長とそのような会話をしていた。すると、通信士官が二人の元に慌てた様子で飛び込んで来た

 

 

 

『カ、艦長!大変デス!』

『ドウシタ?』

『カ、艦隊ガ、、、、全滅、、シマシタ』

『ナッ?!』

『攻撃ヲ受ケタノカ?』

『分カリマセン』

 

 

 

 

 

 

彼女達が艦隊の全滅を知る 40分前

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

"ヲ"級 艦橋

 

 

『チッ、、早クコンナ任務、終ワラセタイ』

『、、、、ン?』

『ドウシタ?』

『アレハ、ナンダ?』

『ナンダ、オ前達、、』

 

 

 

"ヲ"級がそう聞こうとしたその時

 

 

 

『サ、左舷ヨリ魚雷!!』

『!』

『ナ、何?!』

 

 

 

直後、"ヲ"級左舷に大きな水柱が立ち、艦が大きく揺れた

艦橋に居た者は衝撃で床に叩きつけられた

 

 

 

『ウッ、、、、ナ、何ガ起コッタンダ、、』

『一体何処カラ、、、』

 

 

 

見張り員達がそう呟いたと同時に再び、艦が大きく揺さぶられた

 

 

 

『カ、格納庫火災!!!』

『機関室火炎!ウワァァァ!!』

『機関室!応答シロ!機関室!』

『飛行甲板ニモ火災!』

『ナ、何ガ、、、』

『艦長!潜水艦隊ニモ誘爆シテイマス!』

 

 

 

被雷の影響か、格納庫と機関室は火災が発生し、機関室とは連絡が取れなくなった

更に火は補給中だった潜水艦にも引火、潜水艦隊にも火災が発生した

 

 

 

 

『被害ヲ食イ止メロ!』

『更ニ左舷ヨリ魚雷!』

『!』

 

 

 

 

直後、"ヲ"級には4本の魚雷が命中、大きな水柱を上げた

 

 

 

 

『被害甚大!モウ持チマセン!』

『何故ダ!何故コンナ事ガ!』

 

 

 

それから僅か2分後、"ヲ"級は大火災を起こしながら沈没した。補給を受けていた潜水艦も引火により発生した火災を鎮火出来ず、全艦が沈没した

護衛の駆逐艦も魚雷2本を喰らい、轟沈した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『魚雷攻撃?敵潜水艦カ?』

『シカシ、何処カラ。イヤ、敵潜ナラ何時カラ艦隊ヲ見ツケテイタンダ?』

 

 

 

二人は魚雷攻撃という事から敵潜水艦の攻撃ではないかと思っていた。が、攻撃したのは潜水艦では無かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全滅の報告を受ける20分前

 

 

 

 

 

対潜護衛群 旗艦 "はつせ" CIC

 

 

 

『レーダーに反応。大型艦1、小型1、その他艦艇らしきものを探知。』

『確か?』

『IFFに応答なし。』

『敵艦かい?』

『艦長。』

『報告ではこの辺りで活動中の友軍艦隊はいないそうだ。』

『では、敵艦ですか?』

『多分、そうだろうね。距離は?』

『約13マイル(22km)です。』

『意外と近いな、敵艦に気付いた様子はある?』

『いえ、我々に気付いた様子はありません。』

『よし、気付いてないなら好都合だ。気付いかれる前に攻撃して、撃破しよう。』

『は。オーニクスを使いますか?』

『いや、使うには近過ぎるし、オーニクスはなるべく使いたくない。今回はしらねさんとせとぎりさんに任せる。』

『分かりました、2隻に伝達します。』

『待って、私が直接言う。』

 

 

 

 

 

 

 

対潜護衛群 汎用護衛艦"せとぎり" 艦橋

 

 

『了解したわ。噴進魚雷で仕留めるわ。』

『お願いするね。』

『任せなさい。』

 

 

 

はつせ からの通信を切ると、せとぎり は指示を出した。

 

 

 

『対水上戦闘用意!』

『対水上戦闘よーい!!』

 

 

副長が復唱し、戦闘配置を知らせるアラームが鳴り響く。せとぎりは、艦内マイクを手に取ると、CICに指示を出した。

 

 

 

『CIC艦橋、噴進魚雷発射用意、弾数4。目標、敵空母。』

『了解。』

 

 

 

彼女の命令を受け、CICでは噴進魚雷の発射準備を行っていた。

 

 

 

 

 

 

『敵空母との距離13マイル!』

『対水上戦闘〜、CIC指示の目標!敵空母。攻撃始め、噴進魚雷4発攻撃はじめ!』

『噴進魚雷、諸元入力よし。』

『艦長、噴進魚雷4発、発射用意よし!』

『対水上戦闘、CIC指示の目標!攻撃始め!』

『攻撃始め!てー!』

 

 

 

CICの砲雷長の報告を受け、せとぎりは発射の号令を下した。

すると、前甲板の76式垂直発射装置から8発の01式噴進魚雷が轟音と共に発射された。

発射された噴進魚雷は目標に向かって飛翔していき、ロケットブースターが切り離され、弾頭部の魚雷が着水し、敵艦に向かって、猛スピードで突き進んでいった。

 

"せとぎり"が放った4発は敵空母に命中、空母には大きな水柱が立ち、その中から火炎と黒煙が飛び出した。一方の"しらね"が放った噴進魚雷2発は護衛の駆逐艦に命中し、駆逐艦は轟沈してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『敵艦に全弾命中。』

『敵大型艦大破の模様です、艦長。』

『トドメを刺す。砲雷長、追加で4発、』

『了解。』

 

 

 

 

 

その後、再び"せとぎり"から放たれた4発の噴進魚雷は被弾し、大火災が発生似ていた敵空母に命中。火災の勢いが激しくなり、周囲にいた敵潜水艦にも火が広がっていった。

 

 

 

 

 

 

 

対潜護衛群 旗艦 "はつせ"

 

 

 

『"しらね"、"せとぎり"の噴進魚雷、全弾命中。敵空母大破。敵駆逐艦撃沈。』

『空母の方も永くは持たない筈です。』

『敵潜水艦の方は?』

『そちらも火災が発生しています。もう、持たないでしょう』

『この艦にも噴進魚雷を積めたらなぁ』

『発射する装置が無いですよ、76式垂直発射装置でも載せますか?』

『やっぱいいや』

 

 

 

 

補給艦隊を攻撃したのは はつせ率いる対潜護衛群だった

攻撃に使用したのは対艦ミサイルでは無く、噴進魚雷と呼ばれるロケット推進魚雷で、"しらね"と"せとぎり"から発射された物だ。

 

 

 

 

 

『これで敵潜水艦による被害は減るだろうね』

『では、任務完了ですか?』

『そうだね。各艦に連絡、帰投する』

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして対潜護衛群は潜水艦20隻、空母1隻、駆逐艦1隻を撃破。全艦、帰路に付いた。



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第35話

敵潜水艦隊と補給艦隊を撃破した対潜護衛群は無事、トラック諸島に帰投した。
はつせ は白露らと共に山本長官に報告する為、戦艦"大和"を訪れていた。






連合艦隊 旗艦 戦艦 "大和" 長官室

 

 

 

 

 

『ほう、20隻狩ったか』

『大量だな。通りで被害が大きい訳だ。』

 

 

 

 

報告を受けた山本と三笠は報告書を見ながら、そう呟いた。

 

 

 

 

『しかし、"ヲ"級が補給艦の役割を果たしていたとは、、』

『本来は潜水母艦か給油艦の仕事だからな』

『それ自体は珍しくありませんよ。実際米国では潜水艦に空母が随伴していた事があるみたいですから』

 

 

 

 

はつせの言う事は嘘ではない。

実際、第二時世界大戦の際に、大西洋で活動中の潜水艦"アーチャーフィッシュ"と"バラクーダ"が同海域で活動中だった軽空母"インディペンデンス"から補給を受けてる。

因みに、リベリオン海軍の護衛空母は給油艦を改造した艦が多く、護衛空母に改造された後でもその機能を持ったままなので、潜水艦部隊に随伴するのには最適だったのだ。

 

 

 

 

 

 

『三笠様、任務は充分果たせたと思っていますが、どうでしょう?』

『ふむ、、、、確かに充分な鮫退治は出来たな』

『では』

『良いだろう。約束通り、基地建設を許可する。五十六、良いか?』

『構わんぞ、約束は約束だしな。』

『ありがとうございます。』

『ところで、鮫退治には夕雲達も一役買ったようだな』

『はい、彼女達も少なからず戦果をあげています。』

『はつせさん達には及びませんが』

 

 

 

夕雲はその様に言った。

 

 

 

 

『ははっ、宇垣が喜ぶぞ。』

『直接伝えるといい。』

『分かりました。伝えてきます。』

『失礼します。』

 

 

 

長官室には、山本と三笠、はつせ の3人だけが残った。

 

 

 

 

『ところで、基地は何処に作る気だ?』

『幾つか候補があります。』

『何処だ?』

 

 

三笠がそう問いかけると、はつせ はマークが付けられた地図を二人に見せた。

 

 

『赤で囲まれた所が候補か?』

『はい。』

『マーシャル、、、、樺太、、、、硫黄島、、、、か。』

『何故これらを選んだんだ?』

 

 

はつせ が候補としてマークしていたのは、

 

マーシャル諸島

樺太

硫黄島

 

 

の3箇所だった。

そして、三笠は何故この3つを選んだのかを聞いた。

 

 

 

 

『我々は全艦を秘匿しなければなりません。つまり、人目に触れてはいけません』

『そうだな』

『その点を考慮して、次の条件を出しました』

『条件?』

『こちらです。』

 

 

1.全艦を収容でき、かつ秘匿出来る事

2.機密性に優れ、人目に触れる可能性が低い事

3.補給整備、点検が出来る事

 

 

 

『この候補の3つなら条件に合うと言う事か』

『はい。』

『ふむ、、、、、、五十六はどう思う?』

『実際に作るとしても色々問題がある。今すぐには無理だな』

『そうだな』

『では、それまで我々はどうすれば?』

 

 

 

はつせの疑問はそれである。基地を作るとしても時間はかかる。流石に今の場所はキツい。

 

 

 

『ふむ、、、、、、』

『ひとまず、艦を我々に預けてもらう』

『なっ!』

『何を言い出すんだ、三笠!』

 

 

 

三笠の衝撃の発言にはつせ と山本は驚いた

当然だろう。いきなり、艦を預けろと言ったのだから

 

 

 

『言い方が悪かったな。こういう事だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なるほど、彼女達を頼る訳か』

『分かりにくい言い方をして悪かった』

『びっくりしましたよ、本当に』

 

 

 

 

三笠の提案は ある人物に艦隊を秘匿出来る場所で預かってもらうと言う事だった。

預かると言っても、艦自体の指揮管理は はつせ達が行い、乗員も同様であるとの事だ。

 

 

 

 

『つまり、秘匿出来る場所と補給をしてくれると言う事ですね』

『そうだ』

『しかし、その人物とは誰なんですか?』

『直接会えば分かる』

『?』

『彼女には私から連絡しておく。直ぐに返事が来る筈だ』

『分かりました。では、直ぐに仕事に掛かります。』

『仕事?』

『はい、私の艦は秘匿ですが、一隻だけ秘匿しなくても良い艦があります』

『例の大型空母の事か?』

『そうです、三笠様』

『良いのか?』

『指揮官は私ですので』

『そうか、とにかく御苦労だった』

『はい。では、失礼します』

 

 

 

 

 

 

 

 

大和を辞した彼女はスキッパーで自艦に戻ると、通信で各艦の艦長を呼んだ。

そして、先程の三笠の提案を説明した

 

 

 

 

 

『皆んな、依存は無いかな?』

『ありません』

『私もありません』

『ない』

『そして、今後の艦隊行動方針だけど、、』

『?』

 

 

 

 

 

はつせ以外の者は行動方針は決まっていると考えていた。

何故なら、艦隊はその秘匿出来る場所に停泊されるからである。

が、予想外の言葉が 彼女の口から飛び出した

 

 

 

 

『艦隊旗艦を信濃に変え、引き続き、日本海軍との共同作戦に参加する』

『!』

『待て、何故旗艦を変えるんだ?艦隊行動は出来ないだろう?』

 

 

 

しらねの言う事は正しく、旗艦を信濃に変えたところで、他の7隻は秘匿の為に動かせない。1隻だけでは艦隊とは言えない。

 

 

 

『しらねさんの言う通りだよ。でも、その点は心配いらないよ。あてがあるからね』

『?』

『とにかく、今後の行動方針は以上だよ』

『了解!』

『信濃さん』

『はい』

『戦車隊と自走砲隊を"あかし"に移動させておいて下さい』

『分かりました』

『あかしさんは予備機体を信濃に移動させてください』

『了解です』

 

 

 

 

こうして護衛艦隊の行動方針が決まり、各艦はそれぞれ与えられ任務に当たることになった。

が、はつせ は自艦を離れていた。彼女の姿は戦艦"大和"の艦内にあった。

 

 

 

 

 

 

連合艦隊旗艦 "大和" 大会議室

 

 

 

『お手数おかけします、三笠様。』

『構わんさ。な、宇垣よ。』

『はい、私からも感謝の言葉をかけたいと思っていましたので、丁度良かったです。』

『夕雲さんたちの件ですか?』

『そうです。夕雲達から直接聞きました。彼女達は言っておりました。(これで敵討ちが出来た)と。』

『敵討ち?』

『実は彼女の姉妹艦が魚雷攻撃を受け、沈没寸前の損害を受けたのです。』

『それは、、、』

『幸い、なんとか敵を振り切り、ドック入り出来ました。現在は修理も完了し、復帰しています。』

『そうですか、、、、敵討ちが出来た、ですか、、、、』

『それはそうと、新たな用件はなんだ?』

 

 

 

二人の会話を止めるように三笠がそう聞いた。

 

 

 

『実は宇垣中将に、、』

『宇垣にか?』

『私に?』

『はい。』

『宇垣にどのような用事があるんだ?』

『宇垣中将は艦隊編成の権限をもっておられますか?』

『艦隊編成の権限ですか?』

『持ってはいるが、全艦では無いぞ。全体の指揮は五十六が執るし、最終的な編成決定は私がしている。』

『それなら話は早いです。お二人にお願いがあります。』

『?』

『お願い、か?』

『はい。』

 

 

 

はつせの用件とはある願いをする為だった。それには艦隊編成に関係するものの為、艦隊編成の権限を持つ、宇垣中将を訪ねたのだ。

 

 

 

 

『実は、何隻か艦を一時的にお貸ししたいんです。』

『艦を借りたい、ですか?』

『先の艦隊旗艦変更と関係あるのだな?』

『はい、三笠様。』

『ふむ、、、、確かに空母1隻だけとは、、』

『ですので、、』

『護衛の艦が欲しい、という事だな?』

『はい。』

『三笠様、空母とは?』

『ん?聞いてないか?彼女たちの艦隊には大型の空母が1隻いるのだ。』

『もしや、五航戦が報告した2隻の大型艦の内の1隻ですか?』

『ふむ、宇垣よ。貴様ならどの艦を付けるか?』

『空母の護衛艦となると、、、秋月型辺りか、、陽炎型、、でしょうか?』

『ふむ、秋月達か陽炎達か、、、、』

『ですが、問題があります。』

『問題とはなんだ?』

 

 

 

 

三笠は彼の言った問題とは何かを聞いた。

 

 

 

 

『秋月型は"秋月"、"照月"、"初月"の3隻しかいません。他の同型艦はまだ建造中です。』

『それは知っている。それが何か?』

『3隻は全艦、南雲機動部隊に所属しています。』

『そうだったな、、、』

『南雲中将が配属変更に納得するかどうか、、、』

『機動部隊には少しでも防空艦が必要ですからね。』

 

 

 

宇垣の意見に はつせ もそのように発言した。

確かに、秋月型は貴重な防空艦であり、南雲中将にとって喉から手が出る程必要な艦なのだ。それをいきなり配属変更すると言われたら、納得するだろうか?

 

 

 

『私でも拒否するかもしれないですね。』

『そうか?』

『貴重な防空艦ですからね。それをいきなり、見ず知らずの空母の護衛に必要だからと言われても簡単には納得しませんよ。』

『ふむ、、、、、、』

『秋月型以外の艦でもいいですけど、、、』

『とにかく、まずは南雲達に聞かんことにはな。』

『そうですね。』

『宇垣、すまぬが、秋月型以外の艦も候補に入れておいてくれるか?』

『分かりました。』

『では、私は艦に戻ります。やる事がありますので、、、、』

『ふむ、編成の件は私からも連絡する。』

『お手数おかけします。』

『気にするな。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さぁて、南雲達がなんと言うか。』

『南雲中将よりも山口少将で苦労しそうです。』

『あ奴の事だから、直接目で見るとか言い出しそうだな、、』

『有り得ますね。』

『全く、、、難しい宿題を出してくれたな』

 

 

"大和"から離れていく、スキッパーを見ながら宇垣と三笠はそう呟いた



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登場艦艇紹介② ヘリコプター搭載型護衛艦 しらね

2回目 はヘリコプター搭載型護衛艦しらね です。
余談ですが、私が好きな護衛艦の一つでもあります。
では、本編をどうぞ


ヘリコプター搭載型護衛艦 しらね(2代目)

 

クラス:DDH(ヘリコプター搭載型護衛艦)

艦級:しらね型(2代目)

同型艦:くらま(2代目)

全長:170m

全幅:20m

基準排水量:5,600トン

満載排水量:7,200トン

機関: LM2500IEC ガスタービンエンジン 2機

最大速力:30ノット

FCS

・FCS-3A 多機能型(捜索用、FC用アンテナ各4面) 1基

C4I

・GCCS-M

・MOFシステム

・NTDS(リンク 11/14/16)

・OYQ-10 戦術情報処理装置

レーダー

・FCS-3A 多機能型(捜索用、FC用アンテナ各4面) 1基

・OPS-20C 対水上捜索用 1基

・OPS-20E 航海用 1基

ソナー

・OQQ-22 統合ソナー・システム(バウ・ソナー+OQR-3 TACTASS)

電子戦・対抗手段

・NOLQ-3D-1 電波探知妨害装置

・MK.137 6連装デコイ発射機 4基

・AN/SLQ-25 曳航式音響デコイ

・61式マスカー発生装置

武装

・Mk.45 Mod4 62口径5インチ単装砲 2基

・76式垂直発射装置(前甲板2番5インチ砲後ろ) 16セル(対空、対潜用)

・88式対雷潜迎撃用重爆雷弾四連装発射機 1基(ヘリ格納庫上部)

・68式3連装短魚雷発射管HOS-301 2基

・高性能20ミリ機関砲(CIWS Mk.15 mod.12 ) 2基

搭載機

・SH-60J/K 哨戒ヘリコプター 4機

or

・UH-60J/JA 多機能ヘリコプター 3機

・多目的オートジャイロ 海兎 3機

搭載艇

・中型スキッパー 2艇

 

備考

・しらねが艦長を務める、2代目しらね型ヘリコプター搭載型護衛艦。はつせ型よりも全長や排水量は小さいが、ヘリコプター4機を搭載可能な大型格納庫を備えており、ヘリ甲板に係留ワイヤーで1機を駐機すれば、最大5機の回転翼機を搭載出来る。運用方法としては、1個護衛隊規模の艦隊における戦闘指揮・哨戒機を使用した広域対潜戦闘を主体とするも、艦首に搭載されている2基の5インチ砲による対地戦闘能力も保有している。

・初代しらね型は、XASM-3(ASM-3)の実爆試験用実艦標的により損傷。その後、艦型標的艦として売り払われた。本型は、昨今の情勢により次期防衛計画の仮案として提唱されていた新造艦である。艦形は初代しらね型を元に、その特徴的な鋭い艦首を再現しつつ、初代しらね型では船底ソナーのみで実現出来なかったバウ・ソナーを装備。ヘリ格納庫は艦尾方向へ延長。上部には新型の88式発射機を搭載、ひゅうが型・いずも型のコンセプトを盛り込みつつ、艦中央には旗艦用司令部作戦室(FIC)を完備し、作戦能力の向上が図られた。爆雷発射機である88式発射機および76式垂直発射装置は、DDHとしては珍しい搭載武装であり、艤装に当たって一部世論の反発があったものの、ヘリコプター搭載型護衛艦の制式装備として採用された。因みに、上記の装備を搭載したヘリコプター搭載型護衛艦としては、2代目しらね型が初である。

・2回の大規模改修により、新装備として88式発射機と76式垂直発射装置が搭載された。因みに海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦で上記の装備を搭載したのはしらね型が初である。…なお、本艦艤装品の一部(救命浮環、艦歴銘板)は、舞鶴地方総監部内の委託食堂店内に展示されていた物をそのまま転用しており、本艦の司令公室、士官室、先任海曹室にて実際に初代しらねで使用されていた椅子をそのまま使用している。

 

 

 

 

 

『2代目なんですね。』

『初代しらね型は標的艦として使われてしまったからな。』

『初代と違って5機搭載出来るんですね。』

『因みに、私以外にも姉妹艦のくらま、2代目はるな型など一部の護衛艦は初代を元に新造され、全長、排水量が増加し・最新の装備が艤装されている。』

『あと、私や姉妹艦のくらま、はるな型以外の護衛艦も大規模改修が行われている。一部の艦だけだがな。』

『まぁ、アップグレードが可能なように設計されているから、全長や排水量を増加させる必要が無い等の理由がありますからね。』

『にしても、しらねさんは主砲は2基あるんですね』

『護衛艦で背負い式で装備してるのは、私とくらま、はるな型のはるなとひえい、後は、はるゆき型だけだな。』

『主砲はあたご型でお馴染みのMK.45 5インチ単装砲だね。毎分16-20発の発射速度で、連射力は同じ5インチ(127mm)の54口径127mm単装速射砲より低いけど、そこは砲口初速でカバーしてるし、対空戦闘だって出来る。はるゆき型も同じ物を搭載してるよ。』

『主砲2基搭載の護衛艦は他にもいるぞ、数が多いからこの場では省かせてもらう。』

『あと、76式垂直発射装置は 作中で使用した 01式噴進魚雷 の発射機だ。見た目はMK.41 VLS だが』

『因みに、01式噴進魚雷 の元ネタ は、アニメ"ハイスクール・フリート"に登場した東舞高の"あおつき型"教官艦が使用していた物だよ。』

『あれ、見た目アスロックそっくりなのよね。』

『アスロックの対艦バージョンみたいな感じでしたよね。』

『それと搭載ヘリの1つ、海兎についてだけど。』

『この機体は 破壊神クルル様の作品"ハイスクール・フリート 旭日のマーメイド"に登場している機体です。』

『筆者が登場させたいなぁ、と思い 破壊神クルル様に問い合わせ、ご許可を頂いたので、登場させたそうです。』

『勝手に出すのは駄目だからねー』

『因みに私がネームシップのしらね型以外にも以下のヘリコプター搭載型護衛艦がいる。』

 

 

・はるな型ヘリコプター搭載型護衛艦 2隻

・はるゆき型ヘリコプター搭載型護衛艦 6隻

・ひゅうが型ヘリコプター搭載型護衛艦 2隻

・いずも型ヘリコプター搭載型護衛艦 2隻

 

 

 

『ひゅうが型といずも型は全通式飛行甲板を持ってるが、はるゆき型は、私と同じタイプだ。』

『搭載機数はいずも型が1番多いわね。』

『実はいずも型の改良型艦がいるんだけど、ヘリコプター搭載型護衛艦じゃないから今回は省くわ。』

『次回は護衛艦あさぎりとせとぎりね。』




多目的オートジャイロ 海兎 については、本編に書いているとおり、 破壊神クルル様に問い合わせたところ、 是非とも出させて上げて との事でした。
破壊神クルル様、ありがとうございます。
では、次回は あさぎり型護衛艦の2隻です。お楽しみに。


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登場艦艇紹介④ 護衛艦 むらさめ はるさめ

汎用護衛艦 むらさめ はるさめ

 

クラス:DD(汎用護衛艦)

艦級:むらさめ型

同型艦:DD-103 ゆうだち

DD-104 きりさめ

DD-105 いなづま

DD-106 さみだれ

DD-107 いかづち

DD-108 あけぼの

DD-109 ありあけ

全長:151m

全幅:17.4m

基準排水量:4,550トン

満載排水量:6,200トン

機関:LM2500ガスタービンエンジン 2機

SM1Cガスタービンエンジン 2機

最大速力:30ノット

FCS

・FCS-2-40B 主砲・短SAM用 2基

C4I

・SUPERBIRD B2 衛星通信装置

・海軍戦術情報システム

(OYQ-9 CDS+リンク11/14)

・OYQ-103 ASWCS

レーダー

・OPS-24B 3次元式 1基

・OPS-28D 対水上捜索用 1基

・OPS-20 航海用 1基

ソナー

・OQS-5 艦首装備式 1基

・OQR-2 曳航式 1基

電子戦・対抗手段

・NOLQ-3 電波探知妨害装置

・MK.137 6連装デコイ発射機 4基

・AN/SLQ-25 対魚雷デコイ装置

・61式マスカー発生装置

武装

・オート・メラーラ 62口径76ミリ単装速射砲 1基

・Mk.41 mod.9 VLS(16セルx1≒16発;VLA SUM用)

・Mk.48 DP-48(16セルx2≒32発:ESSM短SAM用) 1基

・SSM 4連装発射筒 2基

・68式324ミリ三連装短魚雷発射管 2基

・高性能20ミリ機関砲(CIWS Mk.15 mod.12) 2基

搭載機

・SH-60K 哨戒ヘリコプター 1機

or

・UH-60J/JA 多機能型ヘリコプター 1機

・SH-60J/K 哨戒ヘリコプター 1機

搭載艇

・中型スキッパー 2艇

 

 

 

・むらさめ、はるさめが艦長を務める汎用護衛艦で、第3世代型に当たる。前級のあさぎり型に比べ、排水量が大幅に増加。船体もステルス性を考慮したものとなっている。本型は一部のみの改修を行い、Mk.41は、VLAの運用に特化したモデル9を継続して搭載。Mk.48の発展型シースパロー(ESSM)は、日本独自の改良を重ねた射程延長型のRIM-162J(81km≒50mile)を配備。当初はモデル0をESSM改修したモデル4で、1セルに1発しか装填されていなかったが、改修によりデュアルパック式のDP-48をMk.48に初めて導入した。これにより、一つのセルに2発のESSMが配備され、僚艦防空能力が付与されている。射撃指揮装置は、射撃指揮装置2型-31を改良したFCS-2-40Bを搭載。改良点としては、対空ミサイルの発射管制時、同時対処数が2機4発(対空戦闘における、未撃墜を防ぐための応急射を含めた1機2発の対処能力)であったのに対し、改良型は同時対処数が3機6発に向上している。これは音速機に対するものであるため、それ以外の航空目標に対しては、中間誘導を併用したESSMの同時対処能力である3発を駆使し、最大9機の航空目標へ同時に対処することが可能となった。これはあきづき型護衛艦と同等の能力である。右側に付けられていた複合センサー(TVカメラ、IRカメラ、レーザー測距儀)は本型でも健在で有り、大規模改修は行われておらず、元来からの対地戦闘は得意としないものの、対空・対潜・対水上戦闘においては、汎用護衛艦としての機能をバランスよく保持している。

・主砲はあさぎり型と同じく62口径76ミリ速射砲を搭載している。あさぎり型やしらね型とは違い、76式垂直発射装置や88式発射機は搭載しておらず、全長や排水量も変わっていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

『同型艦見ると、夕立ちゃんもいるんですね。』

『曙ちゃん、電ちゃん、雷ちゃん、五月雨ちゃんもいるぞ』

『護衛艦には同じ艦名を受け継いでいる艦が多いんだ。』

『そうなんですか?』

『しらねさんの言う通りだよ。私の姉妹艦には、はつづき、はつかぜ、はつしもがいるよ。』

『初月ちゃん、初風ちゃん、初霜ちゃんと同じ艦名ですね。』

『あと、気になったんですけど、、、、』

『なにかな、夕雲さん。』

『第1世代とか第2世代ってどういう事なんですか?』

『ああ、それね。』

『私達、護衛艦は建造された時期によって分類される事があるの。』

『分類、、、、ですか?』

『そう、私達あさぎり型の1つ前の護衛艦。つまり、第1世代護衛艦のはつゆき型。』

『で、私達第2世代護衛艦のあさぎり型。』

『私とむらさめ姉さんの第3世代護衛艦のむらさめ型。』

『各世代の護衛艦は以下の艦があるよ。』

 

 

第1世代護衛艦 ・はつゆき型護衛艦 12隻

・すずか型護衛艦 5隻

 

第2世代護衛艦 ・あさぎり型護衛艦 8隻

・あざみ型護衛艦 6隻

 

第3世代護衛艦 ・むらさめ型護衛艦 9隻

 

第4世代護衛艦 ・ たかなみ型護衛艦 5隻

 

第5世代護衛艦 ・あきづき型護衛艦 11隻

・ゆきなみ型護衛艦 10隻

 

第6世代護衛艦 ・あさひ型護衛艦 8隻

・はるかぜ型護衛艦 21隻

 

 

 

 

 

 

『改めて見ると凄い、建造数ね、、、』

『これ全部、汎用護衛艦ですからね。』

『何隻かは退役又は供与されてはいるが、こんなに建造していたとは、、』

『この他にもミサイル護衛艦、ヘリコプター搭載型護衛艦、沿岸用護衛艦がいるからな。』

『まだいるんですか、、、、』

『さてと、次回特務艦あかし だね。』

『あ、あかしさんも紹介するのね。』

『あかしさんはちょっと特殊な艦だからね。』



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登場艦艇紹介⑤ 特務艦 あかし

ドック型揚陸艦級特務艦あかし

 

クラス:ドック型揚陸艦級特務艦

艦級:あかし型

同型艦:LHD-002 かんとう

LHD-003 しんよう

LHM-004 かむい

LHM-005 あきつしま

LHM-006 ねむろ

LHM-007 むろと

LHM-008 おおみなと

LHM-009 おおとまり

LHM-010 はしだて

LHM-011 つがる

LHM-012 はまな

全長:228m

全幅:36.4m

基準排水量:19,980トン

満載排水量:21,050トン

機関: (高速航行時)LM2500ガスタービンエンジン 2機

(低速航行時)ディーゼル発電機 6機

電動機 2機

最大速力:28ノット

C4I

・AN/USQ-119(v)14 GCCS-M

・ITAWDS (TDS+リンク11/14)

・SSDS MK.2 mod.3

・MK.91 GMFCS

レーダー

・AN/SPS-48 3次元式 1基

・AN/SPS-49 対空捜索用 1基

・MK.23 TAS 低空警戒用 1基

・AN/SPS-67 対水上捜索用 1基

・AN/SPN-43 着艦管制用 1基

・AN/SPN-35 管制用 1基

・AN/URN-25 TACAN 1基

・AN/UPX-24 敵味方識別装置 1基

電子戦・対抗手段

・AN/SLQ-32(V)3 電波探知妨害装置

・MK.137 6連装デコイ発射機 6基

・AN/SLQ-25 対魚雷デコイ装置

・AN/SLQ-49 対レーダーデコイ装置

・61式マスカー発生装置

武装

・高性能20mm機関砲(CIWS Mk.15 mod.12) 4基

・12.7mm重機関銃M2 16基

・Mk.15 Mod.31 SeaRAM 近SAMシステム 11連装発射機 2基

搭載艇

・LCACエアクッション揚陸艇 2艇

・07式小型工作作業艇 4艇

・中型スキッパー 6艇

搭載機(標準的混成:最大搭載数)

・SH-60J/K 対潜ヘリコプター 6:12機

・UH-60J/JA 多機能型ヘリコプター 4:8機

・MCH-101 掃海・輸送ヘリコプター 6:9機

・多目的オートジャイロ 海兎 6:8機

・AV-8B/J ハリアーⅡ 6:18機

・対戦車ヘリコプター AH-1S コブラ 4:24機

収容能力(航空運用を含めた編制時:輸送のみ)

・陸上自衛隊員 360名(* 1個大隊規模)

・10式 or 90式戦車 6:18両

・99式自走155mmりゅう弾砲  4:10両

・16式機動戦闘車 4:15両

・96式装輪装甲車 6:10両

・ソフトスキン(各種人員輸送車)及び支援車両 8:40両

 

 

・あかしが艦長を務める特務艦で、他国からは【ドック型揚陸艦】と識別されている。上記の諸元表を見ると分かる通り、揚陸艦としての能力を備えているが、主に輸送等の後方支援に当たる艦である。が、艦のベースは米国のワスプ級強襲揚陸艦の為、建造当初は多くの波紋を呼んだ。

・ワスプ級と比べると、一回りほど船体が小さく能力も劣るが、揚陸艦としての能力(* 防衛省 自衛隊における1個作戦群規模の展開力)は十分にある。また、本作中でも行っているが、工作機械を艦内に搭載しており、他艦の修理を行う事も可能(ただし、大型艦の大破の場合は対応不可)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『え、あかしさんって強襲揚陸艦だったの?』

『本人に聞くのが早いよ。と、言う訳であかしさん。』

『はいはい。』

『強襲揚陸艦だったの?というか問いに対して、どうぞ。』

『意外かもしれないけど、分類的にはドック型強襲揚陸艦なのよね、、』

『建造当初はさんざん酷いこと言われてたわよね。』

『今は言われなくなったけどね。』

『というか、ベース艦はおおすみ型だと思ってた。』

『私もあさぎり姉さんと同じく。』

『でも、よく考えれば、輸送艦らしからぬ所があるんだよな。』

『しかも何気に姉妹艦多い。』

『ところで、はつせ。』

『ん?』

『これで私達は戦車とかも持ってる事が分かった訳だけど、使う機会あるの?』

『さぁ?』

『さぁって。』

『ま、私にも分からないって事だよ。』

『んー?』

『最後は空母信濃だよ。』

『オーバースペックじゃない事を祈る。』



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第36話

はつせが行動方針を伝達した翌日。各艦は移動の準備を行っていた。
"あかし"と"信濃"の2隻は他艦よりも作業に追われていた。


強襲揚陸艦級装甲空母 "信濃" 甲板

 

 

『これで何両目?』

『輸送車系は今ので最後です。』

『そう、次は戦車か、、、、』

『少々時間が掛かりますね。』

『"虎狼"も"白狐"も大きいし重いものね、、、』

 

 

 

 

現在、"信濃"と"あかし"は互いに艦を寄せ、搭載している車両の移動作業を行っていた。輸送系の車両の移動作業は終わったものの、まだ自走砲と戦車が残っている。

 

 

 

『重過ぎてクレーンは使えませんよ、艦長。』

『分かってる。』

『輸送車はクレーンでも充分運べますが、戦車ともなると、、、』

 

 

 

彼の言う通り、戦車は重すぎて"信濃"のクレーンでは運べない。

"信濃"に搭載されている戦車は2両ある。

96式重戦車改 "虎狼" と 97式重戦車 "白狐" である。どちらも陸上自衛軍用の新型戦車で、2両とも約64トンもある。とても、クレーンでは運べないのだ。

 

 

『サイド・エレベーターを使いましょう。あれなら運べる筈。』

『でも、それだと時間が掛かりますが、、』

『別に構わないわ。幸い、サイド・エレベーター分のスペースはあるから、使うのに支障はない。』

『分かりました。"あかし"にも連絡しておきます。』

『お願いね。』

『は。』

『これは予想よりも掛かりそうね、、、、、』

 

 

作業の様子を見ながら、信濃はそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

南雲機動部隊 旗艦 航空母艦 "赤城"

 

 

『事情は分かりました。ですが、秋月達の配属変更には同意しかねる。』

『南雲中将。』

『私も同意見ですな。』

『山口少将まで、、、』

『、、、どうやら他の者も同じ意見の様だな。』

 

 

三笠はそう言うと、他の者を見た。

現在、この部屋には 宇垣中将、三笠。第1航空艦隊司令官南雲中将、二航戦司令官山口少将、五航戦司令官原少将。そして、赤城、加賀、蒼龍、飛龍、翔鶴、瑞鶴の各艦長6名。

 

 

 

 

『三笠様、私としてはその空母の詳細が知りたい。詳細不明の空母の護衛の為と言われても我々は納得出来ません。』

『原少将の言う通りです、三笠様。』

『ふむ、、、、、確かにその通りだな。』

 

 

 

 

二人の発言を聞いた三笠は、ある提案をした。

 

 

 

『ならば、この提案をして来た人物に聞くか?』

『三笠様!』

『人物?』

『その人物は現在連合艦隊の最高機密だ。私と宇垣、黒島、そして五十六と他数名しか知らぬ人物だ。』

『三笠様、その様な人物とは一体誰なのです?』

『お前達と同じ艦娘だ、赤城よ。』

『艦娘がこのような提案をして来たのですか?』

『そうだ。』

『それって、あの時の艦隊の、、、』

『おい、瑞鶴。』

『あの時?』

『どういう事?瑞鶴、説明しなさい。』

『あっ、いや、その、、、、』

『あれ程、言うなと言ったのに、、、』

『まぁ待て加賀よ、私から説明する。』

『分かりました。』

『瑞鶴、お前の言う通り、あの艦隊の司令官を務める艦娘だ。』

『艦娘が艦隊司令官を?』

『そうだ。それもこの時代最強の艦隊のな。』

『ほう、その様な者がおるとは、、是非会ってみたいな』

『私も会いたいです。』

『私も』

 

 

三笠の説明を聞いた赤城達は、山口少将の一言を皮切りに自分達も会ってみたいと言い始めた。

 

 

 

『落ち着け。この場に呼べば皆会える。』

『しかし、良いのですか?三笠様。』

『なぁに、彼女なら引き受けてくれる。』

『ですが、、、』

『私が直接呼びに行く。』

『三笠様直々にですか!』

『それほど重要な人物という事だ。そう理由だから、暫し待っておれ。』

 

 

 

そう言うと、三笠は部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『瑞鶴、お前口が軽すぎるぞ。』

『そうよ、瑞鶴。』

『ごめん、翔鶴姉。』

 

 

原少将と翔鶴は瑞鶴にその様に言った。

 

 

 

『しかし、3人のうちの誰か1人を配属変更するとは』

『秋月ちゃん達の対空火力は頼りになりますからね。』

『扱く艦が減るではないか。』

『そこなんですか、山口司令官。』

『相変わらず、鬼だね。』

『鬼で結構だ。』

 

 

 

 

 

 

 

『南雲中将、どうするおつもりですか?』

『正直、秋月達は手離したくない。現在の艦隊防空艦は彼女達だけなのだ。』

『代わりの防空艦がいませんので。』

『秋月ちゃん達の姉妹艦がまだ建造中ですからね。』

『私は、三笠様が直々に呼びに行かれた人物が気になります。』

『やはり、加賀さんもですか。』

『赤城さんもですか。』

『あの三笠様が直々に呼びに行くなど、初めてです。』

『確かに。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤城達がその様な会話をしていた頃、三笠は駆逐艦白露に乗り込み、"はつせ"を訪ねていた。

だが、はつせは艦にはいなかった。作業の進展具合を見るために"信濃"にいたのだ。

が、副長からの連絡を受け、すぐに自艦に戻って来た。

 

 

 

 

 

 

『私をお呼びですか?』

『急に呼び立ててすまない。』

『構いませんよ。それで、なにか?』

『実は、、、、』

 

 

 

 

三笠は、はつせ に事情を説明し、共に赤城に行き、南雲中将達と話をして欲しいと頼んだ。

 

 

 

 

『私なんかが、話して納得しますかね?』

『それは私にも分からぬ。だが、私と宇垣だけでは無理なのでな。』

『つまり、私が説明すればいいんですね?』

『そうだ。』

『分かりました。少しだけ待っててください。準備する物があるので。』

『分かった。』

 

 

 

はつせ は同行を了承すると、一旦艦長室に戻り、ある物を持ってきた。彼女はそれを持って、三笠と共に"白露"に乗り込み、護衛艦隊を離れ、"赤城"に向かった。

 

 

 

 

 

 

三笠達は"白露"艦橋にいた。

と、三笠は何故か、はつせ の顔をじっと見つめていた。

 

 

 

 

 

『、、、、、、、、』

『何か顔に付いてますか?』

『いや、すまん。似てるなと、思ってな。』

『母、、いや、初瀬様にですか?』

『やはり、母は初瀬か。』

『厳密には少し違いますが。』

『違うとは?』

『私の母は しきしま型護衛艦"はつせ"艦長のはつせ海将補です。初瀬様は祖母に当たります。』

『ほう、母も護衛艦の艦長なのか。』

『艦長どころか、護衛艦隊の司令官ですよ。』

『母にはしごかれたか?』

『そりゃしごかれましたよ。まぁ、母のおかげで艦長としてやっていけてるんですけど。』

『装備の使い方もか?』

『いえ、装備の方はヴェリーから教えてもらいました。』

『ヴェリーって誰ですか?』

 

 

二人の会話を聞いていた白露も気になったのが、はつせにそう聞いてきた。

 

 

『ピョートル・ヴェリーキイ。私のベースになった"キーロフ級"の人だよ。元の名前はユーリイ・アンドローポフって言うんだけどね。』

『海外の方ですか?』

『オラーシャの人だよ。』

『友達なんですか?』

『友達と言えば、友達かな。よく一緒にご飯食べに行ったりしたしね。あ、役職は私なんかよりも上だけど。』

『艦隊司令官なのか?』

『オラーシャ 太平洋艦隊の旗艦 兼 副司令官 で、階級は准将だよ。』

『メチャメチャ偉い人じゃないですか!』

『前は北方艦隊の旗艦 兼 司令官代理だったよ。』

『何処でそんな人と知り合うんですか、、、、』

『オラーシャに立ち寄った時にね。』

『もう少し詳しくお願いします!』

『私も興味がある、頼む。』

『三笠様も興味津々ですね。分かりました、お話します。』

 

 

 

 

 

はつせが、ヴェリー、もとい、ピョートル・ヴェリーキイと初めて出会ったのは 2027年の1月8日 、オラーシャ帝国 太平洋艦隊の本拠地、ウラジオストク基地だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オラーシャ帝国領 ウラジオストク基地

 

 

 

『うわー、辺り一面銀世界だ。』

『風景を見るのもいいけど、用事があるんだからね。』

『それは母さんだけでしょ。』

『あなたも関係あるのよ。』

『私も?』

 

 

 

当時まだ、艦長では無かった はつせ は三等海佐として、母で、海将補の'はつせ'と共にオラーシャ海軍 ウラジオストク基地を訪れていた。

 

 

 

『例の新型ミサイル艦の事よ。』

『確か、オラーシャ海軍の艦をベースにするんだっけ?』

『そうよ。今回はそのベースになる艦を見せてもらいに来たの。』

『ここ、ウラジオストクにいるの?』

『いるわよ。』

『ズトラーストヴィチェ(こんにちは)。お尋ねしますが、はつせ少将殿でありますか?』

 

 

 

基地の門の前で話していた二人に、基地から出てきた少女が話しかけてきた。オラーシャ語で挨拶してきたので、オラーシャ人のようだ。

 

 

 

 

『ズトラーストヴィチェ(こんにちは)、私がそうです。この子は、、』

『はつせ三等海佐です。』

『少佐です。挨拶くらいしなさい。』

『ズトラーストヴィチェ(こんちには)。』

『ズトラーストヴィチェ。はつせ少将、はつせ少佐。ご案内します。』

 

 

 

そう言うと、彼女は基地に向かって歩き出した。ふと、はつせは、彼女の名前を聞いてないことに気づき、名前を尋ねた。

 

 

 

『あの、あなたの名前は?』

『イズヴィニーチェ(ごめんなさい)。申し遅れました。ベルクート級ミサイル巡洋艦"アドミラル・ゾズーリャ"艦長、アドミラル・ゾズーリャです。階級は大佐です。よろしくお願いします』

 

 

名前を聞かれた少女、艦娘 アドミラル・ゾズーリャ は、はっきりとした声でそう、二人に自己紹介をした。

 

 

 

『こちらこそ、よろしくね。』

『ベルクート級、、、そんな艦あったかな、、、』

『ベルクート、オラーシャ語で"イヌワシ"って意味。ベルクート級は扶桑だと"クレスタⅠ型"巡洋艦って言われてるわよ。』

『ベルクートは計画名なんですよ。』

『そうなんだ、、、、』

『さ、付いてきてください。司令官室で司令官がお待ちです。』

 

 

 

 

それから二人は基地内の司令部に入り、艦隊司令官の待つ、司令官室に向かった。

 

 

 

『私はここまでです。中に入る事は許可されてないので。』

『バリショーェ スパスィーバ(どうも ありがとう)。じゃあ、ここで待っててね。』

『え?』

『言ってなかった?最初は私が司令官と話すからその間は待っておいてって。』

『あー、言われたような気がする、、、、』

『そういう事だから、話が終わるまで待ってて。』

 

 

 

司令官室前の廊下まで来ると、"はつせ"海将補はそう言うと、司令官室に入ってしまった。

 

 

 

『うーん、、、、どうしたものか、、、』

『基地内でも見てますか?』

『そうしよっかなぁ、、、、でも、勝手にうろうろするのは、、、、』

『私と一緒なら問題ないですよ、案内します。』

『いいの?』

『カニェーシナ(もちろん)。構いませんよ。』

『スパスィーバ(ありがとう)。』

『ニィエー ザ シタ (どういたしまして)。さ、行きましょう。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『その後にヴェリーキイって人とあったんですか?』

『そうだよ、丁度ドックにいてね。』

『というか、はつせさん。オラーシャ語話せるんですね。』

『話せるよ。オラーシャ艦をベースにしてるんだから、オラーシャ語は読めるし、喋れるよ』

『あ、それもそうですね。』

『それはおいといて。ゾズーリャと一緒にドックに行ったんだよ。』

 

 

 

 

ウラジオストク基地 艦艇停泊ドック

 

 

『ここが、艦艇停泊ドックです。』

『うわぁ、、、、、、、』

『どうですか?』

『凄く広いし、、設備も充実してる、、、』

『ゾーリャ、どうかした?』

 

 

 

停泊ドックを見ていた時、二人は背後から声をかけられた。声のした方を振り向くと、白の軍用コートを着た背の高い女性が立っていた。

 

 

 

『ズトラーストヴィチェ、ヴェリー。』

『ズトラーストヴィチェ、ゾズーリャ。』

『定期点検ですか?ヴェリー。』

『そうよ、あなたは?』

『彼女に基地を案内してたんです。』

『ア ヴィ(あなたは)?』

『はつせと言います。扶桑皇国から来ました。階級は少佐です。』

『ズトラーストヴィチェ、はつせ。私はオルラン級重原子力ミサイル巡洋艦"ピョートル・ヴェリーキイ"艦長のピョートル・ヴェリーキイよ。よろしくね。』

『こちらこそ、よろしくお願いします。』

 

 

 

これがはつせと、ピョートル・ヴェリーキイの初めての出会いである。

 

 

 

 

 

『初めてあった時の印象はどんな感じでした?』

『印象?そうだなぁ、、、、、』

 

 

 

艦娘 ピョートル・ヴェリーキイとの出会いを聞いた 白露がそう聞いた。

 

 

 

 

『いかにもオラーシャ軍人って感じだなぁ、だったかな。』

『え、そんな印象なんですか?』

『だってさ、階級章が付いた軍用の白いコート着てて、グローブまでしてたし、何より、頬に大きな傷跡があったんだよ。』

『頬に大きな傷跡?』

『右頬にね。』

『そこから仲良くなったんですか?』

『そうだね、、、2年くらいオラーシャにいたんだけど、扶桑に戻る時はかなり親しくなってたね。手料理も食べさせてもらったしなぁ』

『2年で、かなり仲良くなってますね、、、』

『艦長、間もなく、水道入口に到着します。』

『分かった。』

『"赤城"の近くまで、この艦で行き、そこから内火艇で"赤城"に乗り込むぞ。』

『分かりました、三笠様。』




ほんの少しだけ、はつせの過去編でした。
二人だけですが、オラーシャ海軍の艦娘、アドミラル・ゾズーリャとピョートル・ヴェリーキイを登場させました。
それと、はつせ達の世界の戦史解説の回を設けるつもりです。
お楽しみに。


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第37話

駆逐艦"白露"に乗り込み、南雲忠一中将達が待つ 空母"赤城"に向かった三笠達。
果たして、はつせ は南雲達を説得できるのか

*注意
空母の全長、排水量、竣工時期等に若干の独自設定が入っています。そのため、忠実とは異なる全長、排水量になっております。


駆逐艦"白露"

 

 

『艦長、水道入口に到達しました。一旦艦を停止させます。』

『ん、分かった。』

『速度落とせ!機関停止!』

『機関停止、よーそろ』

『何故こんな所で止まるの?』

『ここから先は許可を得た艦以外は通行出来ない決まりなんですよ。』

『なんせ、この先には連合艦隊の主力艦が多くいるからな。』

『たとえ、許可を得ていてもここで一旦止まる事になっているんです。』

『成程。』

 

 

 

第一航空艦隊旗艦である 空母"赤城"はこの水道の先に停泊しているのだが、これ以上先には許可を得た艦しか通行できないらしく、許可を受けた艦でも水道の入口で一旦止まる事になってるそうだ。

 

三笠様に詳しく聞くと、この水道の入口と中間地点、そして出口には警戒の部隊がいるとの事で、駆逐艦が3隻ずつ 計9隻。そして、出口と中間地点に軽巡が1隻ずつ 計2隻。 つまり、11隻がこの水道の警戒に当たっている。

 

 

 

と、"白露"に接近してくる1隻の駆逐艦が見えた。見た感じは、"白露"と似たような艦型で、恐らく同型艦だろう。

 

 

 

 

 

『前方に友軍艦艇。"海風"です。』

『警戒艦の1隻です。』

『連絡通りだ。橋本少将麾下の艦だ。』

 

 

 

接近してきたのは "白露"型駆逐艦 "海風"だった。この水道の警戒艦の1隻らしい。

橋本少将というのは、この水道の警戒担当の人物で、水雷戦隊の司令官でもあるそうだ。

 

 

 

 

『"海風"より通信。(我"海風" 貴艦ノ艦名ヲ教エヨ。)』

 

 

 

"海風"はこちら 艦名を名乗る様に言ってきた。直ぐに白露が返信する様に伝える。

 

 

 

『返信。(我"白露" 水道通過ノ許可願ウ。)』

 

 

 

すると、再び"海風"から通信が入った。

 

 

 

『更に"海風"より通信。(確認ノ為、貴艦ニ接近ス。ソノママデ待機セヨ。)』

『かなり警戒してますね。』

『この先には連合艦隊主力がいますから。万が一、敵艦に侵入されると大変ですから。』

『"海風" 本艦の左舷を通過します。4ノット。』

 

 

"海風"は4ノットというかなり遅い速度で、"白露"の左舷を通過していた。

すると、確認を終えたらしく、"海風"から通信が入ってきた。

 

 

 

 

『(確認シタ。通行ヲ許可スル。無事ノ航行ヲ祈ル。 海軍中佐 島田 清次。)』

『島田中佐が乗っていたのか。』

『島田中佐?』

『橋本少将 麾下の駆逐隊司令官です。本来は大佐がするんですけど』

『かなり優秀な人物でな。橋本少将推薦で、駆逐隊司令官になったのだ。』

『へぇ、、、』

『機関始動、微速前進。』

『よーそろ!』

 

 

 

 

 

 

 

"海風"の横を通り過ぎた "白露"は微速で、水道の奥に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『水道を抜けます。』

『おお、、、、、これは、、、』

『驚いたか?』

『はい、、、、』

 

 

水道を抜けると、そこには多数の艦艇がいた。それも大型艦ばかりだ。金剛型、長門型、伊勢型の戦艦郡、そして 空母郡だ。

はつせ はこれらの艦は資料で見た事はあったが、実際に見るのは初めてである。

 

 

 

『白露。"赤城"の近くまで接近しろ。接近したら機関停止だ。』

『分かりました。』

 

 

 

 

 

三笠の指示通り、"白露"は"赤城"の近くまで接近し、機関を停止させた。

 

 

 

 

『機関停止。』

『内火艇用意!』

『内火艇よーい!』

 

 

 

程なく、搭載する内火艇が降ろされ、三笠達は内火艇に乗り移った。

 

 

 

『副長!あとはよろしく!』

『分かりました!』

『じゃあ、行きますね。』

『ん、頼む。』

 

 

 

白露は艦の指揮を副長に任せ、自身は内火艇を操縦していた。

 

 

 

『白露ちゃんって内火艇操作できたんだね?』

『私だけじゃないです、大半の人は操作出来ますよ。』

 

 

白露曰く、自分だけじゃなく、他の艦長や艦娘も内火艇の操縦くらいは出来るとの事だ。

因みにはつせ達の場合はたとえ、艦長でもスキッパーの操縦は必ず出来るように訓練されている。

 

 

 

"白露"と"赤城"の距離は差ほど遠くなく、数分で到着した。

"赤城"の舷側にはタラップが降ろされており、三笠達はそれを登っていった。

 

 

『お帰りなさい、三笠様。』

『出迎えご苦労。"赤城"副長。』

『は。会議室までご案内します。』

『頼む。』

 

 

三笠達を待っていた "赤城"副長に続く形三笠達 は艦内に入っていった。

 

 

 

 

『ここです。皆様、お待ちしております。』

『案内ご苦労だった。』

『は。では、私はこれで失礼します。』

 

 

 

副長がその場に後にすると、三笠 は、はつせの方を向いて言った。

 

 

『私が先に入る。はつせ殿は白露と共に入ってきて欲しい。』

『分かりました。』

 

 

 

 

 

 

 

『今戻った。』

『お帰りなさい、三笠様。』

『三笠様、例の人物は?』

『まぁ待て。ちゃんと連れてきている。焦らんでもいい加賀。』

『は。』

 

 

三笠 が会議室に入ると、赤城達が出迎えた。

加賀は 呼んでくるといった人物は何処か と聞いた。

 

 

 

『先程言ったとおり、皆が気になっている人物は連れてきている。今は廊下で待ってもらっている。』

 

 

三笠はその場の者の反応を見ながら、話を続ける。

 

 

『長く廊下で待たせるのは失礼だから、早速紹介する。入ってきてくれ。』

 

 

三笠がそう言うと、廊下で待機していた はつせ と白露 が会議室に入ってきた。

その場にいた赤城達は少しザワつく。

 

 

 

 

『初めまして。皆さん。はつせ と言います。よろしくお願いします。』

『!』

『はつせ、、、!』

『皆察したと思うが、彼女は私の姉、初瀬と同じ名を持つ艦娘だ。詳しくいうと、孫だ。』

『ま、孫?』

『どういう事ですか!』

『三笠様、いきなり過ぎますよ。皆さん混乱してますよ。』

『うむ、、、、、』

 

 

 

 

その後、はつせ が補足説明を加えつつ、三笠が詳しく説明した。

はつせ の紹介が終わったところで、本題にはいることになった。

 

 

 

 

 

 

 

『はつせさん。その空母は一体どのような艦なのか、説明していただきたい。我々としてはどの様な艦が分からぬのに貴重な護衛艦を渡すわけには行かないのだ。』

『私も山口少将と同意見です。』

 

 

 

 

確かにそうだ。 とはつせ は心の中で思った。自分も同じ立場なら得体の知れない艦の護衛に貴重な護衛艦を渡したりしないだろう。

 

 

 

 

『あのー、、』

『何か、蒼龍?』

『はつせさんの世界では私達はいたんですか?そこら辺が気になって、、、』

『私も気になる。』

 

 

蒼龍の意見に瑞鶴がそう言った。

 

 

 

『その辺も踏まえて、ご説明いたします。三笠様、よろしいですか?』

『構わんよ。』

『では、早速。あ、白露ちゃん、少し手伝ってくれる?』

『は、はい。』

 

 

はつせ は白露の手助けを借りながら、鞄の中の道具、、パソコンとプロジェクターを取り出し、準備をしていった。

赤城達は何事かと興味津々である。

と、準備ができたらしく、彼女は 赤城達の方に身体を向けた。

 

 

 

『では、私のいた世界での扶桑海軍、、、日本海軍が保有していた空母についてですが、、、』

 

 

 

 

はつせ はそう言うと、スライドを使って南雲達に映像を見せ始めた。

 

 

 

 

 

 

扶桑海軍が建造・運用していた空母は以下の通り。

 

 

 

 

大型航空母艦(大型空母)

・建御雷型航空母艦(6万1500トン) "建御雷" 、 "建御名方"

正規航空母艦(正規空母)

・天城型航空母艦(3万6500トン) "天城" 、 "赤城" 、 "愛宕" 、 "愛鷹"

・翔鶴型航空母艦(3万2400トン) "翔鶴" 、 "瑞鶴"

・雲鶴型航空母艦(3万2000トン) "雲鶴" 、"遠鶴" 、 "豊鶴"

中型航空母艦

・蒼龍型航空母艦(2万8600トン) "蒼龍" 、 "飛龍"

・紅鶴型航空母艦(2万5000トン) "紅鶴" 、 "白鶴"

・瑞鷹型航空母艦(2万9800トン) "瑞鷹" 、 "海鷹" 、 "神鷹"

・飛鷹型航空母艦(2万7500トン) "飛鷹" 、 "隼鷹"

・雲龍型航空母艦(2万6500トン) "雲龍" 、"天城" 、"葛城" 、笠置" 、"生駒"

装甲航空母艦(装甲空母)

・大鳳型装甲航空母艦(3万4500トン) "大鳳"

・白龍型装甲航空母艦(3万5200トン) "白龍" 、 "瑞龍" 、 "黒龍" 、"赤龍"

・信濃型航空母艦(7万980トン) "信濃"

軽航空母艦(軽空母)

・鳳翔型航空母艦(9,800トン) "鳳翔"

・祥鳳型航空母艦(1万1200トン) "祥鳳" 、 "瑞鳳"

・千歳型航空母艦(1万3600トン) "千歳" 、 "千代田"

・龍驤型航空母艦(1万1700トン)

護衛小型航空母艦(護衛空母)

・大鷹型航空母艦(9,500トン) "大鷹" 、 "雲鷹" 、 "冲鷹" 、"海鳳" 、 "白鷹" 、 "龍鳳"

 

 

 

 

 

"建御雷"級は6万トン級の超大型空母で、空母としては初めて竣工時から蒸気射出機(カタパルト)を装備していた。また、アングルド・デッキを装備していたのも特徴である。

この"建御雷"級以降の空母、"白龍"型、"雲龍"型、"雲鶴"型からは蒸気射出機が竣工時から装備される様になった。艦載機がそれまでのレプシロ機から、新型の噴進機に更新されたからである。

噴進機は大型で重く、発艦にはカタパルトが必須なのだ。また、甲板も鋼板製に変わった。噴射の熱に木製甲板では耐えられないからだ。

最終的にカタパルトは全空母に装備された。勿論飛行甲板も鋼板製造 に改装された。

 

 

因みにリベリオン海軍の場合は、扶桑海軍よりもかなり早い時期からカタパルトを実用化していた。それは油圧式のカタパルトだったが、正規空母は勿論、巡洋艦改造の軽空母インディペンデンス級、商船改造の護衛空母カサブランカ級、ボーグ級等にまで装備していた。その為、甲板が短い小型空母でも新型の大型機を運用する事が出来た。流石に、蒸気式は正規空母に限られ、装備されたが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『すごい建造数です。』

『赤城クラスいや、それ以上の大型空母がこれ程建造されていたとは、、、』

『扶桑海軍ではこれが限界ですが、リベリオン合衆国は比べる事も出来ないくらいもっと建造されてますよ。特に護衛空母にいたっては、50隻を優に超えますから。』

『ご、50隻?!』

『とてつもない数だ、、、』

『私は蒼龍と姉妹艦になってるんですね。』

『まぁ、ほぼ同型の艦だからな。』

『それにしても、小型の空母とはいえ50隻も、、、、、、』

 

 

 

 

 

 

彼女達の反応は当然だろう。扶桑海軍でもかなり無理をして建造して、これだけの空母を揃えていたのに、リベリオンはそれよりも多いのだから。

まぁ、リベリオン合衆国は資源が豊富で、複数の大型造船所を持っていので、大型空母を建造するのに苦労はさほどしなかった。因みこ護衛空母は軍属の造船所ではなく、民間の造船所が建造していた。その為、凄まじいスピードで次々と竣工していた。

大型艦である空母が早く建造出来るのだから、駆逐艦などの小型はもっと建造スピードが早く、数も多い。流石、リベリオン合衆国、、、

 

 

 

 

と、黙って話を聞いていた南雲忠一中将が口を開いた。

 

 

 

 

 

 

『今回の空母はどの空母なのかね?』

 

 

 

南雲忠一中将がそう聞いた。

 

 

 

 

『今回の護衛対象は、、、扶桑海軍が建造した超大型重装甲空母、、、、、、信濃 です。』

 

 

はつせの発した 信濃 という名前の空母に その場にいた全員が視線を彼女に集中させた。




投稿遅れて申し訳ありません。
車校が忙しい上に、テスト期間に入るのでテスト勉強と大忙しでしたので、、、、、、、
今回はオリジナルの空母も出てきましたし、紺碧の艦隊に登場する大型空母"建御雷"型も登場させました。

飛龍を蒼龍型と分類しているのは、ストライクウィッチーズの世界では蒼龍型の同型艦となっているからです。実は、翔鶴と瑞鶴も蒼龍型に分類されているのですが、2隻は翔鶴型航空母艦として別にしました。



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国家解説

投稿ペースが大幅に低下して、大変申し訳ありません。

今回は国家解説です。
*注意* 後半はかなり、雑です。





扶桑皇国

 

 

・はつせ達の母国で、旧大日本帝国、日本国に相当する国家。天皇を国家元首とした国。戦国時代に織田信長が本能寺の変で討ち死にしていなかった事から、鎖国も行われていない。この為、西のブリタニア連邦王国、東の扶桑皇国と並び称される程の海運・工業国家となっている。17世紀には、ネーデルラントに傭兵を出していた為、ブリタニアとは戦争状態になった事もあるが、17世紀末に至って扶武同盟が結ばれ、現在まで続く同盟関係となった。

・パシフィス島(南洋島)という島を現在のミクロネシア付近に領有している。日本列島よりも面積が広く地下資源が豊富で、かつ、原住民も少なかったという誠に好都合な島で、17世紀初頭に有力大名が入植して開発を続けていた為、現実の歴史の様に東南アジアや中国大陸に版図を広げる事はしていない。

 

・軍事力については、その地理的特徴から強力な海軍力を有し、特に航空戦力を多数有している。また、現実では途中で建造中止となった天城型巡洋戦艦が4隻建造され、内2隻がカールスラントに譲渡されていたり、航空母艦に改造されている他、八八艦隊計画に沿って、*紀伊型戦艦や長門型戦艦、*剱型戦艦が建造されていたりと、航空戦力以外もかなり豊富。実はリベリオン合衆国に劣らず、多数の軍艦を保有していた国家だったりする。

 

*紀伊型戦艦 史実の八八艦隊計画で計画された新型戦艦で、41センチ砲5基10門を搭載予定だった。本作品中では43.7センチ砲5基12門搭載艦。

 

*剱型戦艦 史実の八八艦隊計画で計画された新型戦艦で、第十三号戦艦と呼ばれていた艦。46センチ砲4基8門搭載。

 

 

 

 

 

 

 

 

リベリオン合衆国

 

 

・北リベリオン大陸中央に位置する大国家で、アメリカ合衆国に相当する国家。諸民族の融合国家であり、世界の縮図とも言える社会を築いている。工業化が進んでおり、巨大な生産力を誇り、世界一の軍事・生産国家である。広大な国土を生かしての自給自足が可能であり、過去の大戦中の戦場からは遠い事もあって、軍事物資の供給源となっていた。

 

・軍事力については、他国の追随を許さないほど強力で、陸・海・空戦力を多数有している。とにかく、生産力が桁外れである為か、大量の兵力による、物量戦に頼る傾向がある。

これは余談だが、リベリオン海軍の艦艇は同名の艦が複数存在する場合があり、他国が識別に苦労する珍事が起きた事がある(例 *空母ホーネット、*レキシントンなど)。*あとは艦が多過ぎる。

 

*空母ホーネット ヨークタウン級3番艦、エセックス級4番艦の2隻が存在する。エセックス級の方はホーネットⅡと呼ばれる場合が多い。

 

*空母レキシントン レキシントン級1番艦とエセックス級8番艦の2隻が存在する。エセックス級の方はレキシントンⅡと呼ばれる。

 

 

*リベリオン海軍はとにかく各艦の建造数が異常に多い。大型空母のエセックス級は26隻(改良型のサクラメント級も合わせると31隻)、巡洋艦クラスもかなり多い。ダントツで多いのが駆逐艦で、フレッチャー級に至っては(改良型も合わせて)170隻近く建造されている。また、駆逐艦も同名の艦が複数存在する。

 

 

 

 

オラーシャ帝国

 

 

・欧州最大の国土を持つ巨大国家。ロシア帝国、ソビエト連邦に相当する国家。国土の大半は凍土で覆われており、国土面積に比して人口は少ない。過去の大戦では幾度も侵略や壊滅的な被害を受けているが、その度に尽く復興している。リベリオン合衆国と扶桑皇国とは友好関係にあり、特に扶桑皇国とは強い同盟関係にある。はつせ型が共同設計出来たのも、この同盟関係の為。

 

・軍事力についてはリベリオン合衆国や扶桑皇国に引けを取らず、両国に次いでの軍事強国である。特に守りに入ると例え、リベリオン合衆国と扶桑皇国が攻め込んで来ても(実際には有り得ないことだが)返り討ちに出来る程、強い。実際に過去の大戦で首都を含め、国土面積の半分が奪われても粘り強く抵抗した為、遂に返り討ちにしてしまった。

 

 

 

 

 

 

スオムス共和国

 

 

・フィンランド共和国に相当する国家。池と森の国と賞される美しき酷寒の地。大戦中欧州北部における激戦区のひとつ。人口も少なく、国力もそれほど高くはないが、優秀な人材を多く輩出している。大戦中は他国(主にオラーシャ、リベリオン、扶桑など)の支援を受け、大戦を生き抜いた。

 

・軍事力はそれほど高くないが、他国が一目置く一面もあり、侮ると痛い目に遭う。僅かだが、軍艦も保有している。それらの軍艦はリベリオン合衆国や扶桑皇国から供与された艦である。

 

 

 

 

 

 

 

帝政カールスラント

 

 

・欧州中央の大国で、ドイツ帝国に相当する国家。大変優れた技術力を誇るが、過去の大戦では、国土が占領されてしまい、厳しい撤退戦等の末、南リベリオン大陸に政治中枢の移行に成功し、ノイエ・カールスラントを建国。他国と協力しながら祖国の奪還を目指して戦い、遂に奪還に成功した。

 

・軍事力はかなり高く、欧州一とも言われた。他国に多大な影響を及ぼした兵器(例 V2ロケット ミサイルの元になった。)を多数有している。特に陸軍力が高く、有名な兵器が多い(ティーガー戦車、パンター戦車、8.8センチ高射砲など)。海軍力もあり、ガリア、ロマーニャ、ブリタニア等と比較しても劣らない程。

 

 

 

 

 

ロマーニャ公国

 

・アドリア海に面した歴史と伝統の国。イタリア王国に相当する国で、イタリア南部。軍の練度の低さに定評があり、一方で「土木にて戦を勝つ」と賞される程、高いインフラ整備力を持つ。また、料理も美味い。

 

・軍事力はお世辞にも高いとは言えないが、やる時はやるので、そこそある。何方かと言えば、前線で戦うより後方で戦いタイプ。ただ、兵器の質も兵士も悪くはない。

 

 

 

ヴェネツィア公国

 

 

・こちらもイタリア王国に相当する国家。こちらはイタリア北部。

 

 

 

 

 

 

 

 

ガリア共和国

 

 

・欧州西部の佳温和な農業国。フランス共和国に相当する国家。大戦中は亡命政府が乱立してしまう。

 

 

・軍事力は、優れており、ブリタニアやカールスラントと肩を並べる程。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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第38話

更新遅れて大変申し訳ありません。
自動車学校も一段落しましたので、投稿を再開します。





*艦隊編成等に史実と異なる点があります。


『信濃?』

『扶桑海軍が建造した超大型空母です。』

 

 

 

はつせはそう言うと、信濃のスペックを説明し始めた。その際、三笠がこの事は最高機密である為、他言しないように釘を刺した。

 

 

 

 

 

 

 

『"信濃"は当初は"大和,型戦艦3番艦として建造されましたが、戦況の変化により大型空母が必要となった為、空母に改造されました。』

 

 

 

 

 

"信濃"は大和型戦艦3番艦として、建造され姉妹艦の"大和"と"武蔵"と共に前線で活動していた。そんな時、戦況の変化により航空戦力の増強が必要であると考えた海軍上層部はそれまでよりも大型の空母を建造する計画を立てた。

"信濃"は作戦中に損傷し、ドック入りしていた所空母に改造される事に決まった。最終的に"信濃"を含む数隻を大型空母に改造する事が決まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『信濃は元々大和型戦艦である為、船体が大きく大型の格納庫を設けることが出来ました。』

『確かに大和型戦艦は他の戦艦に比べてもかなり大きいな。』

『また、飛行甲板、舷側に重装甲を施した装甲空母として改造する事になりました。』

 

 

 

 

 

 

 

装甲空母となった"信濃"は、公試を行い、特に大きな不具合も見つからなかった為、扶桑海軍に引き渡された。

完成した"信濃"は、角田覚治中将の第六艦隊第三航空機動艦隊に配属された。

第三航空機動艦隊は"信濃"を含めた艦艇の補充等を終えてすぐに、大西洋に派遣され、リベリオン艦隊とブリタニア艦隊との共同作戦に参加した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『角田司令官って確か、、、、、、』

『隼鷹と飛鷹の2隻を指揮してる人ね。』

『昇進してるな、、、』

『山口多聞司令官も昇進して中将になれていますよ。』

『俺がか?』

『はい。』

『それで、共同作戦とはどのような物だったのか?』

 

 

 

作戦の内容が気になったのか、三笠が聞いてきた。他の者も興味があるようだ。

 

 

 

 

 

 

『続きを話しますね。』

 

 

 

 

 

 

 

 

第三航空機動艦隊は他の艦隊とともに扶桑海軍大西洋派遣艦隊として参加した。第三航空機機艦隊の他には、豊田副武中将直属の第六艦隊 第六戦隊等が参加していた。詳細は以下の通りだ。

 

 

 

扶桑艦隊

 

第六艦隊 第六戦隊 司令官 豊田副武中将(第六艦隊司令官兼任)

旗艦 戦艦 紀伊

兵力

・戦艦6隻

・重巡洋艦5隻

・軽巡洋艦2隻

・駆逐艦12隻

 

 

同艦隊 第三航空機動艦隊 司令官 角田 覚治中将

旗艦 空母 信濃

兵力

・空母6隻

・重巡洋艦2隻

・防空巡洋艦4隻

・防空駆逐艦4隻

・駆逐艦10隻

 

 

第六艦隊 第八水雷戦隊 司令官 西村 祥治少将

旗艦 防空装甲巡洋艦 九頭龍

兵力

・防空装甲巡洋艦2隻

・軽巡洋艦6隻

・駆逐艦18隻

 

 

 

 

 

 

 

 

『かなりの兵力だな、、、、、、』

『あの、装甲巡洋艦ってなんですか?』

『装甲巡洋艦とは、巡洋艦の一種で船体を防御する装甲帯と装甲板で覆われている事で他の巡洋艦と区別している。まぁ、現在はそのような艦は存在しないがな。』

 

 

蒼龍の質問は、はつせが答える前に三笠によって説明された。彼女の言う通り、現在装甲巡洋艦という艦種は存在しない。ただ、装甲巡洋艦に戦艦に匹敵する攻撃力を持たせた巡洋戦艦は今でも存在する。

 

装甲巡洋艦という区別が無くなった理由は、①装甲巡洋艦は装甲と砲力においてはどうしても戦艦には及ばない事。②水雷兵装の進歩に伴って巡洋艦にそれほど砲力が必要とされなくなった事。③ワシントン海軍軍縮条約によって巡洋艦の排水量と兵装に制限が加えられた事。④ロンドン海軍軍縮条約において、軽巡洋艦・重巡洋艦という新しい定義が生まれた事。 等が原因である。

 

 

 

 

『でも、はつせさんの世界では装甲巡洋艦は存在するんですよね?』

『はい。』

『だが、装甲巡洋艦と言う概念自体が消滅した筈だが?』

『確かに他国では装甲巡洋艦は消えました。ですが、扶桑海軍は装甲巡洋艦を建造しました。』

 

 

 

 

 

扶桑海軍が装甲巡洋艦を引き続き、建造したのには理由があった。

 

扶桑海軍では、戦艦と空母が急ピッチで建造されていた。それに伴い護衛艦の役割を担う駆逐艦と巡洋艦の建造も進められていた。その際、現場から防空に特価した巡洋艦・駆逐艦の建造が求められた。いわゆる、防空巡洋艦と防空駆逐艦である。

 

防空巡洋艦は他国で既に建造されていた。ブリタニア海軍のダイドー級巡洋艦。リベリオン海軍のアトランタ級巡洋艦等である。対して、扶桑海軍は防空駆逐艦は秋月型が建造されていたが、防空巡洋艦はまだ無かった。扶桑海軍の巡洋艦は砲力と水雷兵装を併せ持った艦隊決戦型の巡洋艦の建造が優先されていたからである。

 

 

そこで、それまでの概念を捨て、防空に特価した新型巡洋艦を設計・建造する事となった。

まず、水雷兵装は一切装備せず、対空兵装のみを装備する。それに伴い主砲は対空戦も可能な両用砲を装備する事。

そして、余力のある重量分を船体の防御力の強化に回す事。

 

それまでの巡洋艦とは違い、防空専門の防空巡洋艦として設計された新型巡洋艦は、幾度かの変更が行われ、最終的に2種の防空巡洋艦が建造された。それが九頭龍型防空装甲巡洋艦と、鞍馬型防空装甲巡洋艦である。どちらも全長は高雄型クラスで主砲は涼式72口径15センチ成層圏高角砲。砲力は軽巡洋艦並だが、防御力は重巡洋艦に匹敵するか、それ以上だった。

扶桑海軍では、防空装甲巡洋艦という分類だが、他国では巡洋艦又は防空巡洋艦と分類されている。重巡・軽巡に区別出来ないからである。

 

 

 

 

 

 

 

『実際、軽巡級の火力なら充分耐えられますし、重巡級でも重要防御区画なら耐えられます。』

『つまり、巡洋艦同士の戦闘にも十分対処出来るという事か?』

『そうなります。』

『流石に戦艦級のは耐えられませんよね?』

『それは流石に耐えれません。装甲化されていても所詮は巡洋艦ですから。』

『そりゃそうだな、、、、、、』

『それと、九頭龍型と鞍馬型にはある欠点があります。』

『欠点?』

『遅いんです。』

『遅い?』

 

 

彼女の言う遅いとは速力が他の巡洋艦に比べて、遅いと言う事である。高雄型重巡洋艦が最大35.8ノット(近代化改修後)なのに対し、九頭龍型は最大31.4ノット、鞍馬型は30.5ノット。重巡である高雄型よりも遅い。高速の空母部隊に随伴する防空艦としては致命的な欠点だった。速力が遅い理由は防御力を向上させる為重装甲になり、排水量が増加したからである。勿論、設計の時点でこの問題は明らかになっていたので、高出力の機関にしていたのだが、それでも巡洋艦としては遅い艦になってしまった。後により高出力の機関に換装し、九頭龍型33.2ノット、鞍馬型32.8ノットに向上した(これでもまだ遅いのだが)。

 

 

 

 

『やはり、装甲化の影響が出たんですね。』

『装甲を厚くすれば重くなるからな。』

『さて、話を戻します。一方のリベリオン、ブリタニア艦隊の編成は、、、』

 

 

 

 

 

扶桑海軍と共同作戦を取るリベリオン艦隊とブリタニア艦隊の編成は以下の通り

 

 

リベリオン海軍

 

 

第五艦隊 第33任務部隊 司令官 レイモンド・スプルーアンス中将(第五艦隊司令官兼任)

旗艦 空母バンカー・ヒル

兵力

・空母4隻

・軽空母3隻

・重巡洋艦2隻

・軽巡洋艦4隻

・駆逐艦10隻

 

同任務部隊 第五一砲撃支援部隊 司令官ウィリス・リー中将

旗艦 戦艦 ノース・カロライナ

兵力

・戦艦6隻

・重巡洋艦4隻

・軽巡洋艦2隻

・駆逐艦8隻

 

 

第五四砲撃支援部隊 司令官 モートン・デヨ少将

旗艦 戦艦 ミシシッピ

兵力

・戦艦4隻

・重巡洋艦2隻

・軽巡洋艦2隻

・駆逐艦6隻

 

 

 

 

ブリタニア艦隊

 

Z部隊 司令官 サイフリート中将

旗艦 巡洋戦艦 フッド

兵力

・巡洋戦艦1隻

・戦艦2隻

・空母2隻

・重巡洋艦2隻

・軽巡洋艦3隻

・駆逐艦8隻

 

 

X部隊 司令官 バロー少将

旗艦 重巡洋艦 ケント

兵力

・重巡洋艦6隻

・軽巡洋艦8隻

・駆逐艦14隻

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なんというか、、、かなり多いですね。』

『特に戦艦が多いな。』

 

 

艦隊編成を見た一同がまず思ったのはその点である。3カ国とも戦艦を含む艦隊であり、戦艦だけでも10隻を超える。この艦隊編成はある大規模作戦に参加する為の編成だった。

 

 

 

 

 

『と、話が逸れてしました。信濃はこの作戦が初陣となり、その後も大西洋で活動を続けます。』

『質問いいですか?』

『はい、どうぞ。』

『装甲空母とおっしゃいましたが、大鳳さんと同じくらいなのですか?』

『いえ、信濃は大鳳型よりもより重装甲です。船体に至っては大和型戦艦並ですよ。』

 

 

 

 

信濃の最大の特徴はその防御力の高さにあった。船体は勿論、貧弱である筈の飛行甲板も重装甲化されており、多少の雷爆撃ではビクともしない構造になっている。

 

 

 

 

 

『ふむ、、、実物を見てみたいものだな、、、』

 

 

 

話を聞いていた山口少将は実際に信濃を見てみたいと呟いた。すると、それを聞いていたはつせがある提案をした。

 

 

 

『三笠様、もし良ければ南雲中将達を信濃に案内しても宜しいでしょうか?』

『いいのか?』

『信濃は他の艦に比べれば機密性は低いです。それにこれから共同作戦に参加すれば見られます。』

『ふむ、、、、、』

『ただ、艦長の信濃さんに確認を取らないといけませんが、、、』

『少し考えさせてほしい。流石に全員で行くわけにはいかないからな。』

『分かりました。』

 

 

 

 

 

ひとまず、はつせのその言葉を最後に南雲中将達への説明会は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『この艦を見せるんですか?』

『あ、いや、信濃さんが嫌なら断りますけど。』

 

 

 

 

"赤城"から戻ったはつせ は、"信濃"を訪れていた。目的は勿論、先の提案の事を艦長である信濃に確認をとる為である。信濃は甲板であかしと作業内容の確認をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『いえ、そうじゃなくて、見せるって全て見せるんですか?』

『あー、そういう事か。』

『艦自体は特に問題ないと思いますが、艦載機はどうします?』

『海兎はともかく、噴進機はなぁ、、、、、、どうしようか。』

『私としては見せるのはやめた方がいいんじゃないかと、、、』

『なら、格納庫は見せないって事で。』

『納得しますか?』

『三笠様に事情を話せば大丈夫だよ。』

『成程。』

『はつせさん、車両全て移譲完了しました。』

『ご苦労さま、あかしさん。』

『いえいえ。私はまだやる事があるので、失礼します。』

 

 

あかしはやる事があるらしく、艦に戻って行った。

 

 

 

 

『取り敢えず、予定表でも作りますか?』

『そうだね。』

『では、艦内で。』

 

 

 

二人は艦内の艦長室で、予定表などを作成する作業を行う事にした。作業は30分程度で終わり、はつせ は自艦に戻った。

 




オリジナル艦の"九頭龍"型防空装甲巡洋艦と"鞍馬"型防空装甲巡洋艦が登場しました。防空駆逐艦の秋月型があるのだから、アトランタ級みたいな防空巡洋艦がいても不自然ではないだろうと思い、思い付いたのが上記の2隻です。他にもオリジナル艦は多数あります。勿論、海外艦にも。
では、次回をお楽しみに。


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第39話

『おぉ、、、あれが、、、信濃か。』

『大きいです、、、。』

『大和型戦艦を改造した艦ですからね。竣工直後は扶桑最大の航空母艦でした。』

 

 

 

 

あの後、"信濃"の艦内視察が問題ない事を三笠に伝え、次の日に他の数人と共に訪ねる事となり、三笠を含めた5名は駆逐艦"白露"に乗り込み、"信濃"が仮停泊中の場所へと来ていた。

白露と三笠は見た事があったので、大して驚いてはいないが、他の4人はそうではないようだ。

 

 

 

 

『実際に見てみるとデカいな、、、、、、。』

『そうですね。私や飛龍なんかよりも。』

 

 

 

そう述べたのは二航戦司令官山口少将と艦娘蒼龍である。彼女の言う通り、"蒼龍"や"飛龍"の様な中型空母と大型空母である"信濃"は全長も全幅もかなりの差があった。

 

今回、"信濃"艦内視察に参加したのは二航戦司令官山口多聞少将、二航戦から 艦娘蒼龍、五航戦 からは艦娘翔鶴、一航戦からは艦娘加賀が参加していた。

南雲中将は一航艦(第一航空艦隊の略)の総司令官である為今回は来れず、艦娘赤城は旗艦としての雑務があり参加出来なかったので、二人の代わりに加賀が参加していた。

 

 

 

 

 

『ここからは内火艇に乗り換えます。両舷停止!』

『両舷停止!』

 

 

 

三笠達は"白露"の内火艇に乗り換え、"信濃"に向かった。白露は艦の方は副長に任せて、同行する事となっているので共に内火艇に乗り込んだ。

程なく、内火艇は"信濃"舷側に設けられたタラップを伝い、"信濃"に乗り込んだ。

 

 

 

 

 

『お待ちしておりました。当艦の艦長、信濃です。今回は私が艦内をご案内致します。』

 

 

 

 

 

三笠らを待っていたのは艦長である信濃だった。今回の案内役は艦長の信濃が行う事になっていた。最初は、他の者か、はつせに任せようかと思っていたのだが、艦内の立ち入り禁止場所(主に格納庫など)に入られては困るので、艦を把握している自分自身が安易した方が良いだろうと考えたのだ。

 

 

 

 

 

『まずは、飛行甲板に行きましょう。』

 

 

 

 

 

まず最初に案内したのは装甲化された大型の飛行甲板だ。"信濃"の飛行甲板は"建御雷"型には劣るものの、十分な幅と全長を持っている。

 

 

 

 

 

 

『鋼板か、、、これは。』

 

 

 

飛行甲板を軽く触った山口多聞少将が呟いた。

 

 

『はい、その通りです。この飛行甲板は特殊加工された鋼板によって装甲化されており、厚さは約500ミリ。500キロ爆弾にも耐える事が出来ます。』

『500ミリ!』

『戦艦並みの重装甲だな、、、。』

 

 

"信濃"の飛行甲板は厚さ500ミリの重装甲を施されており、装甲空母としてもダントツで分厚い。多くの装甲空母を有しているブリタニア海軍の艦でさえ、これ程の重装甲では無い。

 

一般的に空母は飛行甲板を装甲化すると、搭載機数が低下する。理由は至って簡単。そうならざるを得ないのだ。飛行甲板を装甲化すると、重心が高くなり安定性が悪くなる。安定性が悪いと、最悪転覆する恐れがある。空母は元々重心が高い艦なので、重装甲を飛行甲板に施すと、どうしても安定性が悪くなった。それを防ぐ方法はただ1つ。飛行甲板すぐ下の格納庫を縮小、つまり、小型化する事である。

たが、それだと格納庫が小さくなるので、搭載できる機体の数が減る。装甲空母の搭載機数が船体の割に少ないのはその為である。

 

ただ、何事も例外があり、リベリオン海軍の空母"ミッドウェー"級では十分な装甲が飛行甲板に施されつつも搭載機数100機とかなり多い。これは艦自体が大きい為とも言われている。

"信濃"は元々が"大和"型戦艦だったので、船体が大きく飛行甲板に分厚く装甲を施す事が出来た。

 

因みに、世界で初めて装甲空母を作ったブリタニア海軍の場合は、格納庫が小さくなり搭載機数が少なくなるという点に目を瞑り、装甲空母を多数建造した。いかにもブリタニア人らしい考え方と言える。その為、ブリタニア海軍の装甲空母はガチガチの重装甲となっており、防御力はかなり高かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あれは何ですか?』

『どれですか?』

『艦首の方にある細長い溝です。』

 

 

 

 

翔鶴が言う細長い溝に全員が注目する。

その質問に信濃が答える。

 

 

 

『あぁ、蒸気射出機ですね。』

『蒸気射出機?』

『もしや、、、、、、カタパルトか?』

『ええ、蒸気式の艦載機発艦用カタパルトです。』

 

 

翔鶴が気になった細長い溝は、艦載機発艦用の蒸気式カタパルトだった。"信濃"には全部で4基装備されており、全て艦前部に集中している。また、カタパルトのある場所には噴射後留熱防壁と呼ばれる物が装備されていた。これも全部で4基装備されている。

 

 

 

 

『カタパルトか、、、、。しかし、何故蒸気式なのかね?油圧式じゃダメなのか?』

『確かにカタパルトは油圧式でも構いませんが、油圧式カタパルトは軽空母や護衛空母などの比較的小型の空母で装備される事が多いです。正規空母は専ら蒸気式カタパルトですね。』

 

 

 

 

 

空母用のカタパルトを開発したのはブリタニア海軍で、空母"アーク・ロイヤル"(初代)やイラストリアス級空母に装備された。方式は蒸気式では無く油圧式であった。

その後、リベリオン海軍にカタパルトの技術が供与されている。

リベリオン海軍は空母"ラングレー"に試作型の火薬式カタパルトが装備され、世界で初めて空母からカタパルトで発艦する事に成功した。ただし、空母用カタパルトとしては実用的な物では無かった為、同艦からは撤去されてしまっている。

実用的な空母用カタパルトが装備されたのはブリタニアから油圧式カタパルトの技術供与を受けてからで、新鋭空母"エセックス"級から改良型のカタパルトが装備された。

正式採用されたカタパルトはリベリオン海軍の全ての正規空母に装備され、"インディペンデンス"級軽空母や"ボーグ"級護衛空母、"サンガモン"級護衛空母等の小型空母の全艦にも装備された。その結果、正規空母に比べ遥かに小型の空母でも大型の新型機を扱えた。

 

 

扶桑海軍の場合は欧州に派遣されてきた軽空母"鳳翔"がブリタニア製の油圧式カタパルトを装備した。同艦が扶桑本国に戻った際に、ブリタニア製カタパルトを参考にした空母用カタパルトの開発が始まり、試作型のカタパルトが同艦に装備され、試験が行われた。

試験の結果、更に改良が加えられ、ようやく扶桑製空母用油圧式カタパルトが開発された。最初はカタパルトを装備したのは"天城"型空母のネームシップ"天城"である。

"天城"で問題なく扱えた為、姉妹艦の"赤城"、"愛宕"、"愛鷹"。"蒼龍"型、"翔鶴"型と扶桑海軍の全空母に装備される事になった。

 

油圧式カタパルトを開発したのはブリタニア海軍だったが、蒸気式カタパルトを開発したのはリベリオン海軍である。世界初の蒸気式カタパルトは最新鋭大型空母"ミッドウェー"に装備され、姉妹艦にも装備された。後に、扶桑海軍も開発し、"信濃"に装備された。

 

 

 

話が逸れたので戻そう。山口少将の抱いた疑問、何故油圧式カタパルトではダメなのか?

 

別に油圧式でも悪くは無いのだが、蒸気式の方が使い易いのである。

蒸気式カタパルトは油圧式より高速で作動し、遥かに重い航空機も運用できる等の利点がある。ただ、配管が複雑になる等の欠点もある。

つまり、油圧式よりも蒸気式の方が使い易く、空母での運用に向いているのである。

では、蒸気式が軽空母などに装備されていない理由だが、、、、、

 

軽空母や護衛空母は正規空母よりも小型で、運用できる航空機は30〜40機程度である。正規空母が80〜100機ほど運用出来るので、それに比べるとかなり少ない。これは船体が小さく、飛行甲板や格納庫が小さく狭い為だ。蒸気式カタパルトを必要とする航空機はかなりの大型機であり、軽空母等では運用出来ない。それに蒸気式カタパルトは専用の装備を持たないと、満足に運用が出来ない。

 

正規空母ならば十分可能だが、小型空母では難しい。それに軽空母は正規空母の補助的な役割であるし、護衛空母は船団護衛用である。大型機を運用する必要が無い。油圧式カタパルトで十分である為、蒸気式を装備しないのだ。

 

 

 

 

『ふむ、、、、、、。』

『対空火器はどの程度あるのかしら?』

 

 

 

次の質問は一航戦所属の空母艦娘加賀からだった。これだけの巨艦なのだから、対空火器も多いのではないかと思ったようだ。

 

 

 

 

 

『では、兵装を見て頂きましょう。』

 

 

 

 

 

 

信濃はそう言うと、山口達を次の場所に案内した。

 

 

 

 

 

『これは、、、主砲、、、ですか?』

『5インチ、、、いや、6インチ砲か?』

『本艦の主砲 15センチ成層圏高角砲です。』

 

 

 

まず、信濃が見せた兵装は艦橋の前後に背負い式で2基ずつ装備されている涼式72口径15センチ成層圏連装高角砲である。

 

 

 

『これで高角砲?』

『どう見ても高角砲の大きさじゃないだろう、、、。』

 

 

 

 

二人の言う通り、15センチ成層圏高角砲は 高角砲とは言っているが、見た目は15センチ砲そのままで、とても高角砲には見えない。とはいえ、仰角はそれなりにあり、75度まで砲身を上げることが出来る。また、発射速度にも優れ、対空砲としてはかなり優秀である。

扶桑皇国海軍では、10センチ、12.7センチ両高角砲と共に主力防空砲として多くの艦艇に搭載された。

 

 

 

 

『これは先程私がお話した防空巡"鞍馬"型、"九頭龍"型の主砲としても搭載されています。』

『空母だから不自然だけど、巡洋艦級の主砲なら自然かもね。』

 

 

 

はつせの言う通り、15センチ成層圏高角砲は"鞍馬"型、"九頭龍"型防空巡洋艦の主砲としても採用されている。その他には、戦艦級が多数搭載している。

 

 

 

 

『こちらの主砲群は射撃管制レーダーによって集中統制される為、効果的な弾幕を張ることが可能です。』

『使用する砲弾は対空用か?』

『はい。扶桑海軍独自の対空用砲弾"五式弾"を使用します。』

『五式弾?』

 

 

 

 

 

 

五式弾とは扶桑海軍が開発した対空弾で、FS信管装備の砲弾である。これは後にリベリオン海軍が実用化するVT信管と同じ原理を利用しており、効果的な対空弾幕を張ることが出来る。扶桑海軍では、空母や戦艦などの大型艦は勿論、巡洋艦や駆逐艦などにも広く使用されていた。

因みに"FS"とは、開発者である2人のある人物の頭文字をとっている。

 

 

 

 

 

『次は、これとは別の高角砲ですね。』

 

 

 

次に案内したのは、主に使用される高角砲で、飛行甲板脇に装備されている冬式甲型70口径10センチ高角砲だ。こちらは元々"秋月"型防空駆逐艦用に開発された新型高角砲で、口径は10センチだが、砲身長が70口径と大幅に強化されている。

 

 

 

 

『砲身が長い、、、、、、。』

『長10センチ高角砲だな。』

『本艦には8基16門を装備しております。こちらも五式弾を使用可能です。』

『機銃はどの様な物が?』

『対空機銃は、40ミリ、25ミリ、20ミリの三種類を装備しています。』

『三種類か、、、。25ミリは我が軍でも多く使用されているが、40ミリと20ミリはあまり無いな。』

『40ミリは私達白露型駆逐艦が使ってます。』

『そうでしたね。ただ、私の艦の40ミリ機銃は白露さん達の40ミリとは違うものです。』

『え、そうなんですか?』

『ええ。白露さん達のはQF2ポンド砲のライセンス生産品ですね。』

 

 

 

 

"信濃"が装備する機銃は冬1型40ミリ対空機銃、涼1型25ミリ対空機銃、冬涼式乙型20ミリ対空機銃の3種類である。

冬1型は、リベリオン海軍が運用していた ボフォース40ミリ対空機銃のライセンス生産品の改良型。冬涼式はエリコン20ミリ対空機銃のライセンス生産品の改良型である。涼1型は既に運用されていた25ミリ対空機銃の改良型だ。

 

"白露"型駆逐艦が装備している40ミリ対空機銃は QF2ポンド砲 通称ポンポン砲のライセンス生産品だ。はつせ達の世界でも威力が中途半端な25ミリの代わりとして装備されかけていたが、故障が多く、使い勝手が悪かった上にボフォース40ミリの方が使い易かった為、"白露"型駆逐艦からも全て撤去されている。

 

 

因みにポンポン砲は開発した張本人たるブリタニア海軍でもあまり評判は良くなかったりする。口径40ミリとそこそこなのだが、構造上の問題なのか頻繁に故障するのだ。具体例を挙げると、ブリタニア海軍の高速戦艦"インフレキシブル"に搭載されていた八連装ポンポン砲2基が、射撃を初めて数分足らずで2基とも故障してしまい、結局使えなくなってしまったという事があったらしい。

 

余談だが、地上配備型のポンポン砲は対空よりも対戦車戦で多く使用されたとか。下手な戦車砲よりは強いからだそうだ。

 

 

 

 

 

『対空機銃の総数は?』

『そうですね、、、、、、ざっと100門は超えますかね。』

『100門以上?!!』

『別にそれくらいは珍しくないですよ。他の国の艦は最も多かったりしますから。』

 

 

これは主にリベリオン海軍の艦艇の事を言っている。戦艦や空母クラスの大型艦では簡単に100門を越す。どちらも船体が大きく対空火器を増強するスペースが広く取れる為でもある。

また、対ネウロイ戦闘を考慮しての結果でもあり、より濃密で強力な弾幕が張れるように機銃等が増強されたのだ。

 

 

 

 

 

『電探系はどうなってる?』

『電探系は対空、対水上、射撃管制、航空管制などを搭載しております。』

『航空管制用のがあるんですか?』

『はい。本艦以外の空母にも装備されていました。』

『へぇ、、、、、、。』

『格納庫は見れないのか?』

『申し訳ありません。航空機格納庫は機密保持の為、お見せすることは出来ません。』

『機密保持?』

『はい。』

『ふむ、、、それならば仕方無いな。』

 

 

信濃が機密保持の為、格納庫は見せる事が出来ないと言うと、山口少将は納得したのか、それ以上は言わなかった。

はつせ達が機密保持の為と航空機格納庫を見せないのは、搭載している機体が関係する。

 

 

"信濃"が搭載している艦載機はほぼ全機が噴進機で、どれもこの時代では桁外れの性能を持つ機体である。無闇矢鱈に見せて、技術が漏れては大変困るし、量産化されるのも宜しくない。最も、量産化以前に全く同じ性能の機体を作れるかどうか怪しいが、、、。

 

 

 

 

『もしかして、艦橋とかも見れませんか?』

『残念ですが、そちらも、、、。』

『そうですか、、、。』

 

 

艦橋も同じ理由で見せる事は出来ない。

 

 

 

『本艦の案内はこれで以上となります。』

『ふむ‥‥良いものを見せてもらったよ、ありがとう。』

 

 

 

 

 

山口少将は信濃にそう礼を言った。

そして続けてこうも言った。

 

 

 

『いつかこの艦と共同作戦をしてみたいものだ。もっとも‥叶わない夢かもしれないがな。』

 

 

 

 

彼はそう言うと、飛龍らと共に内火挺に戻っていった。



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