《魔導剣士》の日常譚。 (ありぺい)
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【第1部】出会いと始まり。
プロローグ


「PS4戦記」を執筆しているのにも関わらず、つい載せちゃいました。

交互に更新していくので、毎日更新出来なかったらごめんなさい。


私は《王国剣士》。

聖剣に認められた、王国最強の《剣士》。

その一撃は岩をも砕き、その一太刀で大樹を倒す。

 

自分で言うのもなんだけど、大人の身長を遥かに上回る聖剣を軽々振り回す姿は、可憐でおしとやかな私には到底似合わない。

 

誰もが賛美し、祝福する《王国剣士》という職業だが、私だけはそれを良しとしなかった。

私は人々を癒したり、冷静に魔物を倒す方が似合っているはずだ。

そう…私は…私は…!!

 

「私は《魔導師》になりたかったんだぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

俺は《王国魔導師》。

聖杖に認められた、王国最強の《魔導師》。

その光で夜を照らし、奇跡を以て人々を癒す。

 

自分で言うのもなんだけど、ちまちま魔法陣を書き発動させるその姿は、剛健で力強い俺には到底似合わない。

 

誰もが賛美し、祝福する《魔導師》という職業だが、俺だけはそれを良しとしなかった。

俺は力で敵を打ち砕き、刀で魔物を薙ぎ払う方が似合っているはずだ。

そう…俺は… 俺は…!!

 

「俺は《剣士》になりたかったんだぁぁぁぁ!!!!」

これはそんな二人のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつもと変わらない、俺の日常。

 

サンドレス王国の端の端にある小さな田舎町に住んでいる俺は、決して豊かではなかったが、それなりに毎日を楽しんでいた。

 

「356…357…356…」

 

人の腕程太く、大人の身長より長い棒が、俺の手によって上下に振られている。

 

剣の修行は毎日欠かさない。

親父に、『お前は将来《剣士》にならねばならない、何日いかなる時も修行を怠るな』と言われてから俺は努力を続けてきた。

親父曰く、俺には剣の才能があるらしい。

 

「700...701...702...」

 

だからこうしていつも山の中で丸太を振っているという訳だ。

金も、親父の仕送りのお陰で、特に不自由なく暮らしてきたから困ってもいないので、毎日の大半を剣の修練に注いでいる。

 

素振りの回数が1000回を超える頃、お袋が遠くから声を掛けてきた。

 

「ロガー!食料減ってきたから山の奥で熊か猪でも狩ってきてちょうだい!」

「おーう、任せろ!」

 

俺の名前はロガー・スラッシュ。

いつか王国一の《剣士》になる男だ。

 

さて、それじゃあいっちょ狩りの時間といきますか。

 

 

 

 

 

「おっ、やっと見つけた」

 

山を歩くこと約1時間。

俺の目に入ってきたのは、獣道とその足跡。見た感じ、熊の足跡だろう。

通った時期を確認する為、足跡を軽く指先で触ってみる。

 

「まだ完全に乾燥してない…多分近くにいるな」

 

俺は忍び足で足跡を辿り、山の奥へと進んでいく。

熊を仕留める時は、熊に見つかるより先に熊を見つけ、落とし穴を仕掛けて、更には頭蓋骨を砕く勢いで上から石を音すトラップを仕掛ける必要がある。

しかし、腹も減っているのでぱっぱと獲物を仕留め、帰って飯が食べたい。

そんな気持ちもあり、警戒心をゆるめ、集中力を切らせてしまった。

その所為か、足跡を進み、熊を見つけるより先に辿りついた場所は……底に霧がかかるほど深い崖だった。

 

「なんで足跡がこんな所で途切れてんだ?」

 

足跡は間違いなく崖に向かっている。

どういう事だ?崖から熊が飛び降りたのか?

いやそんなはずはない。

この高さを落ちるなど、死ぬor死ぬのルーレットを引くようなものだ。

じゃあ一体なんだ…?

 

俺があれこれ思考を巡らせていると、後ろから低い獣声が聞こえてきた。

 

「ヴアアァァァッ!!」

「うわっ?!」

 

慌てて剣を抜いて声の主に向ける。

するとそいつは、剣というのがなにか分かっているかのように一歩下がった。

俺は落ち着いて相手を見据えた。

そこに立っていたのは熊…全長3m程ある巨大な熊だった。

 

「なんで熊さんが後ろから出てくるんですかね。俺、お前の足跡辿ってきた筈なんですけど」

「ヴアァァッ!」

「く、熊さーん。俺なんか食っても美味しくないぞー?」

「ヴアァァァァッ!」

 

あー、この熊さん完全に俺を襲う気ですね。間違いない。

 

まずいな…これは非常にまずい。

俺が背にしているのは底の見えない崖だ、走って逃げようにも逃げれない。

木に登ろうにも、あのサイズの熊だと木くらいなら倒してしまいそうに思える。

運の悪い事に、熊の攻撃に耐えうる木が近くに無かった。

さぁどうする。今持っているのは剣だけ、対する相手は腕一振りで俺を絶命させるだけのパワーを持っている。

 

「ふっ、悩むまでもねぇな!最強の《剣士》になるなら熊の一体や二体は倒さねぇと話にならねぇ!welcome熊!遊んでやるぜ!!」

 

少し腰を落とし、体の前に剣を構える。

俺と熊との距離は大体3m。

後ろにある崖との距離は大体5m。

前も後ろも、距離感を誤れば即死だ。

 

先に動いたのは熊だった。

 

「ヴアアアァァッ!!」

 

一歩足を出し、右腕を俺の頭に向かって振りかぶって来た。

が、俺はそれをしゃがんで避け、片手に持ち替えた剣で熊の左足を刺す。

伊達に剣の腕を鍛えてきたわけじゃない、予備動作の多い熊の腕なんて、ノロすぎて相手にならなかった。

 

「ヴアアァッ…」

 

足を刺したのが効いたのか、襲ってきた熊が再び距離を取った。

これならいける!

いつもは罠とかで弱らせて仕留めてたけど、今日なら真正面から倒せる気がする。

 

俺はもう一度腰を落とし、体の目の前で剣を構えた。

さぁ来い、次は右足だ。

 

再び熊が仕掛ける。

 

本来なら、もう一度頭を狙ってきた熊の左足を刺し、動きが鈍ったところを仕留める筈だった。

しかし、熊が狙ったのは頭ではなく、まさかの足。

 

「くっ…!」

 

俺は一歩下がってギリギリでそれを躱し、間合いを詰めさせないように剣を前に出した。

熊に動きが読まれてる気がして、気持ち悪い事この上ない。

 

ふと気になって後ろを振り返ると、崖はもうそこまで来ていて、文字通り後戻り出来ない状況になっていた。

 

どうする、一か八かで懐に潜り込んで急所に攻撃でもするか?

危険な賭けだけど、何もしなきゃどっちにしたって死ぬんだ、構うもんか。

 

俺は両手で剣を握り、駆けっこのスタートの様な体勢から熊に突っ込んだ。

いきなりの急発進に驚いたのか、熊は慌てて腕を大振りで繰り出す。

 

「当たるかぁっ!」

 

俺はしゃがんで腕を躱したが、決して突っ込む速度は落とさず、剣の先端を熊の腹に突き刺した。

 

………………。

 

おかしい。

間違いなく剣は熊の腹に刺さっている。

にも関わらず、熊は両手を俺に抱きつくかのように広げ、最後の力で俺に一矢報いろうとしてるではないか。

 

これは死にましたかね。

熊の抱きつきとか耐えれませんよ?俺。

 

俺が死を覚悟して目を瞑ったその時の事だった。

 

「『衝撃術式』っ!」

 

熊の向こう側で誰かの叫び声が聞こえ、それと同時に、低姿勢だった俺の頭上を、 熊が吹き飛んでいった。

そしてそのまま熊の姿は、後ろにある谷の中に消えてしまった。

 

そして恐る恐る閉じていた目を開き、あの巨体を吹き飛ばした相手を見る。

 

あぁ、やっぱりか。

 

「久しぶりだな、エナ」

「久しぶり。剣一つで熊に挑むとか頭悪いんじゃないの?」

 

俺が声を掛けると、彼女は呆れたようにため息をついた。

それは、幼馴染みのエナ・ミラック。

自称『未来の大魔導師』との1ヶ月ぶりの再開だった。

 

 




同時掲載している「PS4戦記」の方で戦闘シーンが少なくて消化不良だったので書き始めました(嘘です)

交互に更新していくので、毎日更新はまず無理ですが、出来る限り定期的に更新できるよう頑張ります。



後、「お気に入り登録してっ☆」って言うとお気に入り登録して貰えると聞きましたので言ってみます。

………嘘です、読んでいただけるだけで満足でございます。


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戻り熊の足跡

 

 

 

 

「馬鹿じゃないの?!剣一本で熊に挑むって……馬鹿じゃないの?!」

 

エナの暴言が止まらない。

そんなに言われると流石に俺だって傷つくよ?

 

「ロガーのお母さんが様子を見てきてって私に言わなかったら、あんた今頃死んでたわよ?!」

「何故か今日は正面からでも勝てるような気がして…」

「馬鹿っ!」

 

正論なので言い返す事も出来ない。

とりあえず、激怒しているエナをなだめ、落ち着かせた。

 

こいつは幼馴染のエナ・エリック。

先日まで王都で『魔導学』とかいうモノについて学んでいたのだとか。

俺が《剣士》を目指してるのと同じく、エナも《魔導師》なるために人生を注いでいるらしい。

口癖は「私は未来の大魔導師」だ。

これだけは耳にタコが出来るほど聞かされた。

 

ちなみに、ここから王都まで片道一週間はゆうにかかるので、エナがこんなド田舎の地元に帰ってくるのは半年に一回程度だが、今日がその日だったようだ。

そんなエナが、俺が死にそうなタイミングで丁度よく帰ってくるとは…

 

「俺は運がいいなぁ」

「熊に襲われてたのに?」

 

何言ってるんだこいつは、みたいな目でエナがこっちを見てくるが気にしない。

それより、俺はさっきから気になっていることを聞いた。

 

「そういえば、エナはなんで俺のいる場所分かったんだ?」

「『戻り熊』の足跡を辿ったらあんたが居ただけよ」

「『戻り熊』?」

「えっ、まさかとは思うけど『戻り熊』も知らないで山に入ってたの?!」

「そんな熊いるんだな」

「はぁ……まぁロガーだしね、知ってる方がおかしいか」

「なんか今馬鹿にされた気がするんだけど」

「『戻り熊』っていうのは、他の熊に比べて凶暴な上に、知能も高い熊の事よ。

わざと後ろ向きに歩いて足跡を残して、その足跡を辿った人間を自分のテリトリーに誘い込んで、後ろから襲う狡猾さからこんな呼び名がついてるの。

普通は足跡を確認して、カカトの部分が異様に凹んでたら『戻り熊』が後ろ向きに歩いた足跡だから、深追いはしないのがセオリーなんだけど……」

「足跡の話も初めて聞いた」

「……今度森の危険について色々教えてあげる」

「助かる」

 

やっぱり大切なのは知識のある友人だなぁ、と心から思う。

次からはちゃんと対策して森に入るとしよう。

 

「次からは危ない事は控えなさいよ、分かった?」

「分かった、安全第一を肝に銘じるよ」

「本当ね?」

「本当本当、約束するよ。あ、そうだ。今から夕食の熊さんを狩りに行くってお袋に伝えといて」

「馬鹿っ!舌の根も乾かないうちに!」

 

エナは、右手に持っている魔導師用のロッドで俺のみぞおちを突いてきた。

 

「うっ……」

 

ロッドの先端が丸いとはいえ、俺はもろに急所をつかれ腹を抱えた。

本気で今から熊を狩るつもりなんて無かったし、ちょっと冗談を言っただけだってのに。

優しくねぇなぁ、エナは。

 

エナは、俺の言葉に呆れたような顔を見せ、「ほんと馬鹿っ!」とだけ言い残して一人でスタスタ街に戻っていってしまった。

俺も熊の足跡を逆に辿り、今まで来た道を戻っていく。

 

 

街に着くと大した人数ではないが、村人が広場に勢揃いしていた。

もしかして何か大変な事でも起きたのか…?!

慌てて俺が駆けつけると、一人の男が村人に囲まれていた。

 

「パストさん!おかえりなさい!」

「お怪我はありませんか?!」

「さぁさぁ今日はゆっくりしてって下さい!そうだ、せっかくならパストさんの為に宴会でも開きましょう!」

 

なんだよあいつかよ。

 

村人に囲われ歓迎されているその男だが、俺にとっては正直会いたくない相手だった。

見つからないうちにこっそり退散してしまおう。

そう思っていたが、向こうが俺に気づき、こっちに向かってきた。

 

「ロガーよ、久しぶりだな。修行は続けていたか?」

「あぁ、毎日必死にやってたぜ。親父」

 

こいつは王国務めの最強剣士、パスト・スラッシュ。

そして俺の親父だ。

 

エナと同じで、親父は王都に住んでいる。

詳しくはしらないが、なにやら凄い名誉ある仕事をしているのだと、お袋から聞いたことがある。

最後に帰ってきたのは1年前くらいだ。

 

親父の事は尊敬してるし、別に嫌いじゃないんだけど、不自然に堅苦しいから苦手だ。

背が高く、ゴツゴツと凹凸のあるその容姿に、刺すように鋭い視線で周りを見ている。

初めて会う人なら間違いなく、怒っていると勘違いするだろう。

しかし、街の人からの信頼は高く、今もこうして、村の英雄として称えられている。

そんな親父が、いつもの数倍険しい表情で話し掛けてきた。

 

「今日は大事な話をする為に帰ってきた。エリックの所の子にも来るように伝えろ」

「エナも?なんで?」

「今は人が多いからな、後で話す」

 

親父は辺りの村人達に目をやってそう言った。

 

エナと俺の両方に話さなきゃいけない事ってなんだろう。

思い当たる節は特に無いが、親父がこんな事を言い出すのは初めてな気がする。

なにか重要な案件なんだろうと思い、急いでエナを呼びに行く。

 

エナを連れて広場に来ると、さっきまで居た大勢の村人は何処かへ消え、木の幹に腰を掛ける親父の姿だけがあった。

 

「こんにちは、パストさん」

 

エナがペコリと頭を下げる。

スラッシュ家とエリック家は昔から仲が良く、親同士の交流も深い。

更に、エナは親父と王都で会えるため、親父と顔を合わせる回数は実の息子である俺より多い。

別に親父とほとんど会えないのは構わないが、親父が幼なじみと自分より会っていて、自分より話しているというのは少し妬ける。

 

そんな事を考えていたら、親父が突然珍しい事を言い出した。

 

「少し遅れたが、ロガー。今年で17だったな。おめでとう」

「親父に誕生日を祝われたの初めてな気がする」

「たまには父親らしい事をしなければと思ってな」

 

俺は、いきなり出てきた祝いの言葉に、思わず驚いた。

普段こんな事言う奴じゃないんだけどな…

俺が驚いてるのをよそに、親父は表情一つ変えず、そのまま話を続けた。

 

「これで、お前達は2人とも17になった。今まではそれぞれ自分なりに修行を積んできたと思うが、今年からは王国で《王国剣士》《王国魔導師》になる為の訓練や勉学に励め。エリックの奴にも許可は取ってある」

 

親父が「エリックの奴」という言い方をする時は、エナのお母さんの事を指す。

2人は幼なじみだったそうだ。

そんな事より今、親父がおかしな事言ったな。

 

「俺が《王国剣士》だって?冗談だろ?」

「冗談ではない。お前は、私の《王国剣士》の座を引き継ぎ、サンドレス王国の為に働くのだ」

 

《王国剣士》とは、王から聖剣を受け取り、聖剣の圧倒的な力をもって国を守る役職だ。

小さい頃から、剣士になる為の修行を欠かすなとは言われていたが、まさか俺が王国最強の剣士の座につく事になるとは思わなかった。

 

「でもなんで俺なんだ?《王国剣士》みたいな重要な約束、王国お抱えの精鋭騎士から一番強いのを適当に選べばいいじゃんか。確かに俺はいつか最強の剣士になる男だが、まだ無名のこの時期に白羽の矢が立つ理由が分からないんだけど?」

「それはね、ロガー。あんたが聖剣に選ばれてるからよ」

「聖剣に選ばれてる?どうゆうこと?」

「ミラック家が聖杖に代々選ばれてるように、スラッシュ家も聖剣に代々選ばれてんのよ。理由は分からないけど、他の人には使えないから使える私達に渡されるって訳」

「へぇ〜」

 

俺の疑問を、エナが丁寧に解説してくれた。

 

「というか、なんで今までそんな事も知らなかったのよ」

「だってそんな話、一度も聞かされた事なかったんだもん。なぁ親父?」

 

俺が親父を見ると、だからどうしたと言いたげな顔をしていた。

 

「努力しなくても最強になれると分かったら、修行の手を抜く可能性があったからな。当然の判断だ」

 

手を抜く…かぁ。

自分ではそんな事はしないと思うが、他人から見たら不安になるというのは珍しくもないので、特に追求はしない。

それよりも、喜びの方が遥かに上回っていた。

 

「じゃあ、伝える事はそれだけだ。明日、朝一の馬車に乗って王都を目指せ。私はもう引退するから、次の世代はお前達に託す。これから王国を守っていくのはお前達だ、分かったな?」

 

俺達2人は、強く頷いた。

その様子に満足したのか、滅多に表情を変えない親父が、微かだが笑った気がした。

 

 

翌日、馬車に乗り込もうとすると、親父とお袋が見送りに来ていた。

 

「ロガー、向こうではしっかりやるのよ」

「分かってるよ」

「変な人について行かないようにね」

「俺はガキかっ!」

 

心配性のお袋に、俺は大丈夫だから、と言い聞かせる。

 

「気を付けて行ってこい」

「おう、親父」

「にしても、エリックの奴…こういう時位は見送りに来るべきではないのか…?」

 

親父が怪訝そうな顔をする。

いつも怪訝そうに見えるから大差はないが。

 

最後に、親父はエナの肩を掴み「ロガーは知ってる通り、田舎生まれの田舎育ちだ。王都では無知故に困る事も多いと思う。すまないが、こいつの事をサポートしてやってくれないか?」とだけ言った。

 

「大丈夫です、元からそのつもりですから

 

そうエナが返すと、安心したように俺達を馬車に乗せた。

 

「出発しますよ〜!」

 

馬車の前に座り、鞭を持っている馬車乗りのおじさんがそう叫ぶと同時に、蹄の音だけをそこに残し、俺達は王都目指して走り出した。






勢い余って第2話投稿しました。

毎日更新が目標って言ってるのにも関わらずストックを消費していくのは、自分への挑戦であって、決して書き上げたやつをどうしても投稿したくなったとかそういった理由ではございません。
いやマジで。


明日は第3話となります!
次話は戦闘シーンが入ります。

あれっ。このロガーとかいうやつ、2話に1回は戦闘してますね。
……戦闘狂かな?


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おっちゃんと道中

「兄ちゃん、姉ちゃん。アンタら戦えるかい?」

 

それは王都へ向かう途中、馬車乗りのおっちゃんから唐突に出てきた言葉だった。

馬車は寝泊まりができるように、個室の様な造りになっているが、前方の窓からおっちゃんと会話をする事が出来る。

ニコニコと気さくな雰囲気で話しかけてくるので、一瞬、物騒な事を言っていると気づかなかった程だ。

 

「戦う?何と?」

 

俺が問うと、おっちゃんは不思議そうな顔をした。

 

「兄ちゃん、知らないのかい?この付近は魔物やモンスターが出るんだよ」

「すいません、田舎育ちなもんで」

 

俺が謝ると、おっちゃんは「あぁ〜、なるほどなぁ」と納得していた。

 

「じゃあ兄ちゃん。町や村、王国などに張られている結界は知ってるかい?」

 

町や村の結界…恐らく村の人達が言ってた魔物よけの事だろう。

戦えない一般市民を守るために村の中心に術式が組まれていると聞いたことがある。

 

「知ってます…多分」

「知ってるなら説明が楽だな。結界と言っても、村全体を覆えるほどの大きさがある訳じゃない。村からある程度離れると、その効力は消え、魔物やモンスターと出会う事があるんだ。本当だったら傭兵や騎士を雇うんだが…」

 

窓越しに、おっちゃんが頭をポリポリ掻く姿が見えた。

 

「パストさんが

『こいつらなら別に心配は要らない。護衛を雇うなど金の無駄だ』

なーんて言い出すからよぉ。あの人が言うからには大丈夫だとは思うけど、やっぱし少し心配で聞いてみたんだよ、戦えるのか?って」

 

金の無駄…か。いかにも親父が言いそうな事だ。

魔物とモンスターが出る道を、おっちゃんと俺達2人だけでって事は…

 

「つまり倒して進めって事だよな?俺はいいけど、エナは平気なのか?」

「私は余裕よ。少なくともロガーより強い自身はあるわ。あんたこそ熊に襲われて死にそうになってたじゃない。うっかり死なれても困るから、怖かったら馬車で待っててもいいわよ?」

「はぁ?俺は素早い立ち回りが売りなんだよ。あんな不安定な足場じゃなかったらお前よりよっぽど俺の方が強いっての」

 

俺とエナが言い争いをしてると、おっちゃんが「熊と戦おうとしてる時点で相当人間離れしてると思うけどねぇ」と、ケラケラ笑っていた。

 

それから暫く草原を走った。

初めのうちは、魔物やモンスターが出るかもしれないと気を張り詰めていたのだが、待っても待っても出てこないので、いっそ仮眠でも取ってしまいたい気分だ。

それでも何かあっては大変だろうと、窓から外の様子をうかがう。

 

今まで俺は森しかない、なんとなくどこか薄暗い村で過ごしていた。

だから、草原や高原、巨大な湖や山脈などを見ただけで素直に興奮してしまう。

村の外に、こんなにも清々しい景色があるとは知らなかった。

 

俺が初めて見る景色を堪能していると、馬車が突然急停止した。

 

「や、やべぇぞ…こりゃあ」

 

おっちゃんがあまりにも悲惨な声を出すので、慌てて馬車を降りて前方を確認すると、そこには緑色のモンスターらしき生物がいた。

身長は低く、関節は歪な形をしており、顔は醜悪。

村の書物で見た事があるが、きっとこれがゴブリンという奴なのだろう。

 

「兄ちゃん、なんで降りてるんだ!逃げるぞ!早く馬車に乗れ!」

「いや、あれくらいなら倒せばいいじゃないですか。見るからに弱そうだし」

「何馬鹿なこと言ってんだよぉ!あぁ…囲まれちまった!」

 

俺とおっちゃんが喋ってる間に回り込んだのか、馬車を囲う様にゴブリンが並んでいた。

ゴブリン達は両手を俺達に向け、キャッキャと喚いでいる。

その直後、ゴブリン達の手から青白い球体が俺達目掛けて放たれた。

 

「『【反射】結界術式』っ!」

 

そう叫んだのはエナだ。

エナはいつの間にか馬車の上に乗っており、そこから何かを発動させている。

右手にはいつもエナが持ち歩いている、術式用のロッドが握られていた。

 

エナの結界のお陰か、まっすぐ飛んできた青白い球体が、俺に当たる前にゴブリン達に向かって軌道を変える。

そのうちの何個かが、ゴブリンへと命中した。

 

「ロガー!ゴブリンが出たのに何をぼーっとしてるの。早く片付けるわよ」

 

エナに急かされ、俺は馬車の中から大慌てで武器を取り出した。

 

今日使う獲物は『両手剣』。

といっても、1m以上ある一般的な両手剣ではなく、ダガーをただ二本持っただけのものなのだが、それでも、俺の最も得意とする武器だ。

 

「ロガー!青白い球体は多分、魔力で出来た高エネルギー弾だから当たったら死ぬわよ、ちゃんと避けなさいね!」

「任せろ!」

 

右手のダガーは普通に持ち、左手のダガーは逆手に持つ。

後ろからの奇襲を警戒しての構えだ。

 

ゴブリン達は先程からエネルギー弾を数秒間隔で打ってくるが、エナの術式によって跳ね返っているようだ。

俺は目測で術式の効果範囲を見定めながら、正面の奴がエネルギー弾を放った直後にその境界を飛び出した。

 

「はあぁぁっ!」

 

ダガーでゴブリンの首元をかっさらう。

人間の血とはまた違う、緑がかった血を吹き出した。

ゴブリンは確か亜人族のモンスターだ。基本的な構造は人間とほぼ同じはずなので、頸動脈を切り裂いたら倒す事が出来る。

 

仲間を殺されて怒っているのか、悲しんでいるのか、ゴブリン達の攻撃先が馬車から俺に変わった。

 

エネルギー弾が再び俺を襲う。

 

「兄ちゃん、危ない!」

 

おっちゃんが叫ぶ。

エネルギー弾の事を言ってるのだろうが、俺はそれをひょいひょいと躱し、一体…また一体と倒していく。

やはりダガーは使いやすい。

斬撃を繰り出せる範囲が狭いとはいえ、無駄な攻撃を減らし、致命傷に至るものに攻撃を絞れば、小型の敵なら大剣などより討伐数は上がる。

そしてなんといっても軽い。

俊敏な動きで戦うのがメインの俺にとって、これほど重要なメリットはない。

 

エネルギー弾の大きさは、人の頭くらいの大きさなので、避けようと思えば一発も当たらないように動く事なども容易い。

 

口を開けたまま驚くおっちゃんを横目に、俺はあっという間にゴブリンを半数近く蹴散らした。

 

「ロガー、援護するわ!

ーーーーーー跳ねろ体、大地を駆けろ『【付与】強化術式』っ!」

 

俺の体の周りに光輪が現れ、体に吸い込まれるようにして消えた。

それと同時に、体が急に軽なったような気がした。

よく分からないが、おそらくエナの術式だろう。

ありがたい事に移動速度も斬撃の重さも桁違いに上がっていたので、ゴブリンなんて止まって見える。

 

数分後には、大量のゴブリンが全て死体となって草原に横たわっていた。




はいっ!戦闘回でございますっ!

次回は区切りの都合上、量が減る事が予想されますがご了承ください。


何だかんだで毎日更新できている事に我ながら驚いております(今のところは)


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《王国剣士》になるんです

 

 

「あっははは!!いやいや、見事だったよ!」

 

馬乗りのおっちゃんが笑いながら、拍手代わりに馬をムチで打つ。

 

「まさか子供2人であの数のゴブリンを対処するなんて……流石にあのパストさんが認めただけはあるな!!」

 

おっちゃんはまだヒイヒイ笑いながら、ベチベチと馬を叩いている。

馬が可哀想だからそろそろやめてあげて欲しい。

 

俺達はゴブリンの群れを討伐した後、順調に歩みを進めていた。

歩いてるのは馬だけど。

エナは疲れたのか、目の前の座席に横になって寝ている。

 

「兄ちゃんの身のこなし、ありゃあとんでもないね、うん。並の人間が訓練したからといって、普通はあんな風には動けないよ」

「生まれてからずっと修行してきたんで、あれくらいはまぁ余裕ですよ」

「剣士目指してる人が聞いたら泣くだろうねぇ、その言葉。兄ちゃんは間違いなく強いよ、将来は剣士を目指してるのかな?」

「目指してるというか、これから《王国剣士》になる予定です」

 

「《王国剣士》……?」

 

おっちゃんの言葉から一瞬冷たい空気を感じた。

おっちゃんの飛び出んばかりの目玉が、馬車の窓からギョロリとこちらを見つめている。

驚く事に、俺は無意識でダガーに手をかけていた。

 

「そうかぁ、王国剣士になるのかぁ…」

 

おっちゃんは前に向き直ると、「うーむ」とか、「王国剣士かぁ」とか言いながらブツブツ何か喋っていたが、数秒で嘘のようにコロリと笑顔になり

「兄ちゃん、これから頑張れよ!」

と、再びケラケラ笑い出した。

 

何だったんだろう。

一瞬…たった一瞬だが、背中に蛇が這うようなおぞましい感覚に襲われた気がした。

でも今はなんともないし、目の前のおっちゃんは明るく笑っている。

まぁ、気のせいか。

ゴブリンと戦って疲れてるんだろう。

俺はこれ以上考えないことにした。

 

そうだ、ゴブリンと言えば気になる事があったのを忘れていた。

 

「一つ聞きたいんですけど、ゴブリンってそんなに強いモンスターなんですか?」

「強いもなにも、モンスターの中じゃ最強クラスだよ?」

 

意外だった。

言い方は悪いが、あんな薄汚いモンスターが最強クラスだなんて。

正直なところ信じられない。

 

「ゴブリンは人間や魔物、モンスター含め全種族の中で唯一、制限なしに魔法を発動させれる種族なんだ」

「制限なし?」

「そう、無制限。そこで寝てる姉ちゃんが使ってたのは、『術式魔道』って言って、魔法陣と杖がなきゃ発動できないタイプの魔法なんだ。大気中の魔力を消費するから、自分の魔力量に左右されないが、魔法陣に杖を当てて使わないといけない。

にもかかわらず、ゴブリンは無条件、且つ本能でバシバシ魔法が打てる。

兄ちゃんは知らなかったかもしれないが、ゴブリンってのは大の大人が1 on 1で戦っても負けるくらい強いんだぜ?」

 

おっちゃんが丁寧に説明してくれたが、ゴブリンは強いモンスター…って事しか分からなかった。

ド田舎暮らしをしていた俺に魔道だなんだと言われても、正直ちんぷんかんぷんだ。

 

でも、魔道なんて学ぶ機会も理由もないし、別に気にしないでもいいな。

それより大事なのは、もっと常識的な事を知ることだ。

今回の事ではっきりしたが、俺は自分で思っていた以上に一般的な知識が足りてない。

田舎育ちだからしょうがないだろ! と、言いたいが、王都に行く以上仕方ないでは済まない。

 

知識は貪欲に集めていこう、俺はそう肝に銘じた。

 

「そうだ、兄ちゃん。一応聞いておくが、魔物とモンスターの違いって知ってるか?」

「魔物とモンスターって同じなんじゃないですか?」

「バカ言っちゃいけねぇ。魔物とモンスターなんて比べるのもアホらしいぜ」

 

知識を集めようとした矢先、都合の良いタイミングでおっちゃんは教えてくれた。

 

「結論から言っちゃうと、魔物とモンスターだったら圧倒的に魔物の方が強い。理由は簡単で、大気中の魔力が集まって出来ているからだ。個々の戦闘能力もめちゃくちゃ高い。程度の差で言うと、ゴブリンを倒せる奴が100人中5人いたら、魔物を倒せる奴は100人中1人いるかいないかだ。一般市民も含めて言えば、100万人に1人いるかいないかってとこだろ」

 

今まで聞いたり見たりした敵を強さ順に並べるとしたら

魔物>モンスター(ゴブリン)>モンスター(その他)

といった感じだろうか。

 

「魔物はやばい。モンスターなら走って逃げれば何とかなるが、魔物相手じゃそうはいかない、なんせ足は馬より早いからな。兄ちゃんも魔物を見つけたら逃げるんだぜ?」

「魔物ってどんな姿なんですか?」

 

逃げろと言われても、逃げる相手の特徴がわからなければ逃げようがない。

 

「どんな姿…えぇ?」

 

なんだその反応。

 

「…うーん、見れば一発でわかると思うよ。『THE・魔物』みたいな見た目だから」

 

どんな見た目だよ。

 

このおっちゃんの語彙力が足りてないせいで説明できてないだけかもしれないので、魔物に関しては王都で誰かに聞くとしよう。

 

実物を見るのがいちばん手っ取り早いので、道中で魔物と出会ってくれたりしないかとも思ったが、ゴブリンの一件以降魔物はおろか、モンスターと出会う事すらなく数日間の短い旅路を経て、王都の門を抜けた。

 

王都の中心部に馬を入れるのは手続きが必要らしく、一般人が馬車で都心を移動することは出来ない。

なので、郊外で馬車から降り、おっちゃんに別れを告げる。

 

「「ありがとうございました」」

 

俺とエナがぺこりと頭を下げると、

 

「よせやい。頭なんか下げられちゃ居心地が悪いったらありゃしない。ゴブリンの件といい、礼を言いたいのはむしろこっちさ。ありがとな、兄ちゃん、姉ちゃん」

 

おっちゃんはいつものように笑顔で言った。

 

「王都で過ごすとなると、色々厄介事も多いと思う。だから今回助けられた分は借りとくから、いつか助けが必要になったらこのおっちゃんを頼ってくれ。貸し1だと思って貰って構わない。それじゃ、二人とも達者でな」

 

そう言うと、おっちゃんは馬に馬車を引かせ、どこかへ消えた。

 

馬車もないので、俺とエナは歩きながら王都を目指す。

降りた場所は、畑と民家がポツポツあるような場所で、遠くに巨大な塔の様なものが見える場所だった。

 

「んんー!あぁ、腰痛いっ!たまには馬車でのんびり長旅もいいけど、何日も乗ってると大変ね」

「そうだな。ところで、あの巨大な塔がこれから行く場所なのか?」

「そうよ〜」

 

エナは天突きの形で思い切り伸びをした。

俺もつられて両手を天に向ける。

 

「王都に着いたらどうするんだ?」

「宮殿に行けばいいのよ。パストさんが話を通してくれてるから、そこで国王直々に話があるって聞いたわ」

「そうか、楽しみだな」

 

王都に行く。

モンスターと戦う。

剣士になる。

王と会う。

 

村を出てから今まであった事、そしてこれからある事のどれもが新鮮で、期待が胸に広がる。

俺は馬乗りのおっちゃんに負けないくらいの笑顔で、エナの隣を歩いて進んだ。





題名詐欺じゃないかっ!
《魔導剣士》なんて全然出てこないじゃないかっ!

そう思うでしょ?
私もそう思ってるんですよ(おい)

予定では、10話までには《魔導剣士》の下りに入れるんですが…
そもそもこの小説書くこと自体が予定外なんでどうなるかは分かりませんね、はい。


さてさて今回は説明回となりましたが、次回は新キャラを出します!
お楽しみに!


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サンドレス王国

郊外からおよそ半日程歩き通し、ようやく見えてきた王都。

 

宮殿だろうか。

民家の頭を超えた向こう側に、高く聳え立つ塔が見える。

塔は先端に近づくにつれて段々太く、逆三角形の様な形をしている。

よくあれで倒れないものだ。

 

「それにしても、でっけぇ国だな」

「そりゃそうよ。なんたって二大国家の内の一つ『サンドレス王国』なんだから」

「二大国家って事はこんなにでかい国が他にもあるのか?」

「うん…『帝国』って呼ばれてる国があるんだけど、サンドレス王国と違って、悪い噂が絶えない国よ」

「ふーん」

 

俺の少し後ろを歩くエナが教えてくれる。

先程、俺は道を知らないからエナに前を歩くように言ったのだが、「もう王国見えてるんだからいいでしょ」と言って頑なに後ろを歩いている。

まぁそんな事はどうでもよくて、この口ぶりだとサンドレス王国は『帝国』という国よりは平和な様で安心した。

良かった、面倒ごとに巻き込まれるのは勘弁願いたいからな。

 

俺がホッとしながら歩いていると、早速面倒な事が起きた。

 

「痛ってぇ!なんだこれ!」

 

街のすぐ側まで近づくと、目の前は普通に道が続いてるのにも関わらず、体の前面に謎の衝撃を受けて後ろに弾き飛ばされた。

 

…そう。まるで壁に当たったみたいに。

 

訳が分からない。

衝撃を受けた場所に恐る恐る指先を伸ばすと、パチンと弾かれる。

例えるなら静電気を強くしたような感じだ。

 

「あはははっ!引っかかった!」

 

エナは俺の後ろで腹を抱えて笑っている。

この野郎。なんで俺の後ろを歩いてるのかと思ったらこういう事か。

 

「ふざけんなよお前?!というか、なんだよこれ!」

「それは人間用の結界よ。

ほら、ゴブリンに襲われた時に私が使った術式あったでしょ?あれは魔物用の術式なんだけど、今ここに張られてるのは人間と魔物両用の術式なの。

これがサンドレス王国を丸々覆ってるって訳。

にしても見事に吹き飛んだわね〜」

 

俺が問い詰めると、エナは悪びれる様子もなく笑いながら言った。

悪い子はお仕置きされる、これは世の鉄則だ。

俺は笑顔でエナと肩を組んだ。

 

「え、何?急に肩なんか組んできて。プロポーズでもするつもり?」

 

阿呆な言葉は無視し、方を掴んだまま見えない壁に歩み寄る。

 

「待って待って!ちょっと何するつもり?!そこ結界あるから危ないわよ?!」

 

そのまま、結界の境界面にエナを押し付けた。

 

「いやぁぁぁぁぁああああ!!!!」

 

柔軟の時に限界っぽいところのもう少し奥に押すような感じで背中を押してやると、エナは悶えながら手足を震わせた。

 

俺が手を離すと、その場にストンと座り込み、惚けた様な顔でこちらを見てくる。

 

「はぁ…はぁ……ロ、ロガー…?あんた本物のド阿呆なの?普通の人間ならし、死ぬわよ…?」

 

お前は普通の人間じゃないのかよ?!

ってツッコミを入れたくなるが、エナが尋常ならざる様子だったので、呼吸が整うのを待って、黙って肩を貸した。

 

「いや、その。こんなに強力な結界だとは思わなくて……ほんとごめん」

「もういいわよ。今回のは私も悪いし。でも王都って、案外コロッと死んじゃうような危険がゴロゴロしてるから本当に気をつけてよね」

 

俺が謝ると、エナは思ったよりあっさり許してくれた。

 

そういえば、さっき『帝国』はサンドレス王国とは「違って」悪い噂が絶えない……とか言ってなかったっけ。

「違って」ないのではないか…?

むしろ今のところサンドレス王国の悪い噂しか聞いてないんだけど。

なんて事を言うと怒られそうなので、黙っておく。今はタイミングが悪い。

 

「結界を迂回しながら関所まで行くわよ。誰かさんのせいで腰が抜けたからこのまま肩を貸し続けてちょうだい」

 

そうエナが言ってくる。

別に肩を貸すのはいいのだが、支えても尚足を引きずって歩いているのを見ると、恐らくまだ辛いのだろう。

エナの悪戯がトリガーとはいえ、今回の件は俺も悪いので、背に乗せておんぶの格好で進んだ。

 

「乗せてくれるの?ありがと。でもいいの?重いかもよ?」

「別に重くねぇよ、むしろ羽根みたいに軽いだろ……って痛い痛い!」

 

俺がそう言うと、エナはおんぶされた状態で太ももをゲシゲシ蹴ってきた。しかも踵でだ。

 

なんで?!軽いって言われるの嫌なの?

というか、怒ってるの?

確認するために軽く振り返ってみたが、俺の首に顔を埋めていて表情が分からない。

ただ、真っ赤な耳だけがチラリと見えた。

 

もしかしてエナは自分の体重にコンプレックスでもあるのかもしれない。

 

確かに軽すぎると戦闘能力は落ちる。

《魔導師》はそこまでフィジカルを必要としてなさそうなイメージがあったけど、戦闘となったら高いに越したことはない。

そう考えれば軽いと言われたら気分が悪くなるのも頷ける。

熊や猪に比べたらよっぽど軽いと思うけど、人間の中で比較したら充分体重はあると思うんだけどな……

一応フォローしておくか。

 

「体重の事なら気にしないでいいと思うぞ。やっぱりお前、全然重かったから」

「死ねっ!」

 

また耳を真っ赤にして太ももゲシゲシを繰り返してきたが、今度はどこか蹴り方が優しくない。

蹴ってる時点で充分優しくないのだが、なんというか、明確に怒気が伝わってくる蹴り方なのだ。

 

その後は口も聞いてもらえず、そのまま関所に辿り着いた。

大国の関所というから、もっと大きいものを想像していたが、思ったよりこじんまりした関所で驚く。

レンガ造りの一戸建てをくり抜いたような構造になっていて、中を除くとぽつりと受付があるばかりだった。

 

「もう下ろしていいわよ。私みたいな重いのが乗ってたら辛いでしょうしね!」

 

エナは頬を膨らませてそんな言葉を吐いて背中から降りていった。

足もふらついてないし、見た感じもう大丈夫そうだ。

 

「入国の方ですか?」

 

関所の窓口から、軽く髭を伸ばしたお兄さんが聞いてきた。

 

「はい、特別入国のエナ・ミラックとロガー・スラッシュです」

 

俺がなんて答えたらいいか分からずオドオドしていると、エナが手際良く手続きを進めてくれた。

 

「滞在でしょうか?」

「いえ、私は王国暮らしです。ロガーの方は住民票を王都に移すので滞在証はいりません」

「分かりました、それでは情報カードだけご提示ください」

 

窓口のお兄さんは右手をエナに、そして左手を俺に向けて出してくる。

 

……えっ、情報カードって何?

 

そんなもの持ってないし、そもそも初めて聞いた。

まぁ、なんとなく察していたが、エナがお兄さんの右手に2枚のカードを置いた。

 

あまりの手際の良さに俺が目を丸くしていると、窓口のお兄さんから意外な言葉が出てきた。

 

「スラッシュ様。良かったら私が王都を案内いたしましょうか?スラッシュ様は入国回数が0回となっている様なのでまだ慣れてない事も多いでしょうし、私なら王都を詳しく案内出来ますからーーーーーー」

「結構です、私が直接教えますので。行くわよ、ロガー」

 

お兄さんの提案を遮り、エナは俺の手を掴んで関所を抜けていった。

 

「何すんだよ、せっかくお兄さんが好意で言ってくれてるのに、なんであんな素っ気ない態度なんだよ」

 

失礼なんじゃないのか? と、エナに注意しようとするが、エナは不機嫌そうな顔で言った。

 

「好意?馬鹿な事いってんじゃないわよ。あんな露骨にすり寄ってくる奴は全員疑ってかかるべきなの。

私達が《王国魔導師》《王国剣士》になる事はこの国では結構話題になってるんだけど、私達が子供だから今のうちに取り入っておこうって考える奴がこの国には山ほどいるわ」

「ひとついいか?《王国剣士》ってさ、そんなに偉い立場なのか?俺はてっきり強者の称号だと思ってたんだけど」

「強者の称号……それはそんなに間違ってはないわよ。聖剣を扱えれば強さで右に出る者はそうそういないはずだから。

問題はそこじゃなくて、持ってる権力の方よ。国王に次ぐ立場になんだから、はっきり言えば貴族より偉いし、私はそんな事するつもりはないけど町民が無礼を働いたらその場で見せしめで殺しても罪に問われないのよ」

 

なんて物騒な話だ。

つまり俺達は、特に俺なんかは騙し易そうなカモが知識無しで歩いてるようなものじゃないか。

エナがそばに居てくれるうちはいいが、俺一人ならあっさり騙される自信がある。

 

それに、俺を傀儡にした者は確固たる地位を手に入れる事が出来るというわけだ。

魔法とやらがどれ位便利なものかは知らないが、人を操る魔法なんかもあるかもしれない。

 

警戒しなければならないことは決して少なくない。

 

「どうしたの?そんな険しい顔して。

みんながみんなそういう下衆って訳じゃないからそんなに気負う必要は無いわよ?」

「あ、あぁ…」

 

そうはいっても不安なものは不安なのだ。

 

「ほら、そんな顔しないの。

はいこれ、あんたの情報カード。魔力で個人情報を書き込んであるカードだから、なくしたりするんじゃないわよ?」

 

渡されたカードを見ると、筆記体で『ロガー・スラッシュ』とだけ書かれていて、他には何も書かれていない。

魔法ってこんな事も出来るのか。

俺の住んでた村では、記録なんてものは岩を削って文字を掘ったりするのが普通なので、こういうのは見たことがない。

 

「すごいなぁ」

「情報カード位でいちいち驚いてたらきりないわよ?今から王都に入るんだから、そんな田舎者丸出しで歩いてたらこっちまで恥ずかしいんだけど」

 

怒られてしまった。

どうやらこれは王国住まいの人達からすれば常識の範疇らしい。

 

「もうそろそろ宮殿ね」

「宮殿かぁ、王様ってどんな人なんだ?」

「凄い人よ。小さな小国だったサンドレス国をたったの五代で『王国』と言われるまでに成長させたカリスマで、今は少し前まで皇太子だったルーマント・ルールが継いだはずよ。年齢は私達と大差ないわ」

「ルーマント・ルールか…

その人に今から俺達は会いに行くんだよな」

「そうよ。お願いだから失言とか零すのはやめてよね、斬首の刑に処されたくなかったら」

「流石にそれ位分かってるよ」

 

王都の中心に向かって歩いているので当然だが、すれ違う人が増えていく。

凄まじい活気だ。

狂気じみていると言ってもいい。

逆三角の巨大な塔もだんだん近づい来る。

俺が塔の方に向かってる道を進もうとすると、エナに腕を掴んで止められる。

 

「一体どこに行こうとしているの?」

「えっ、あの塔が宮殿じゃないのか?」

「違うわよ。あれは王国図書館で、宮殿はこっち」

「図書館とは思えない存在感だな」

「ふふっ、図書館はすごいわよ。今度連れてって上げるから楽しみにしときなさい」

 

あの大きな塔は図書館だったのか。

堂々と間違えたので少し恥ずかしい。

 

図書館に行くという楽しみが一つ増えたが、その前に宮殿に辿り着いた。

宮殿は思ったより質素だったが、白を基調とした威厳のある外装につい目を奪われる。

 

馬車でエナに聞いた話だが、宮殿は王の住処になっている場所と、貴族による議会などが行われる場所に分かれているという。

故に、その規模はなかなかのものだった。

 

俺とエナが宮殿に近づくと、中から知らない女性が駆け寄ってきた。

誰だろうと思って見ていると、その人は勢いよくすっ転んだ。しかも、何もないところでだ。

 

「だ、大丈夫ですか?!」

 

逆に俺達が駆け寄って声をかけると、その女性はヒョイとはね起き、服に付いた砂を払った。

 

「エナ様にロガー様ですね?長旅お疲れ様でした!」

 

女性は何事もなかったかのように笑顔で答える。

あんなに思い切り転んだというのに、実にしたたかなものだ。

 

「私は国王の護衛兼、補佐をしておりますセーラ・ディアと申します。今後もお会いすることになると思うので、以後お見知り置きを。では、国王が中で待っております。どうぞこちらへ」

 

セーラと名乗った女性は一方的に名乗った後、俺とエナの背中を押しながら「さぁさぁ中へどうぞ」と言ってくる。

 

俺達はそのまま宮殿の中に押し込まれた。




はいっ!王都回ですっ!

本格的に王都を探索するのは別でやるので、今回はこの辺でご勘弁を。今は王に会いにいくのが先なので。


ところで、今朝PVを見ようとハーメルンを開いたら、しおりとお気に入りが付いていました。
マジでありがとマジ泣きそう(語彙力の喪失)

ここまで読んでくれた方も本当にありがとうございます!
こんな稚拙な文章に5話も付き合って下さるとは……
期待を裏切らないようこれからも頑張ります!


次の更新は明日になります。


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トラブルはいつも突然に

 

 

セーラという人に連れられて宮殿の中に入ると、外側とは一風変わった色調になった。

外装は質素だったが、内装はさすが宮殿と言わざるを得ない。

豪華絢爛な装飾に、きらびやかな雰囲気。

村では高価な貨幣として扱われていた金や銀がいたるところに壁紙のようなノリで使われているのにはさすがに身分の違いを感じた。

 

宮殿は広かったが迷子になる程でもなく、部屋も少なく作りも複雑ではなかった。

どの扉も豪華なのだが、その中でも一際豪華な扉の前でセーラさんは立ち止まった。

王の個室だろうか。

3メートル…4メートル程の高さの扉を開くと、きちっとした服装で椅子にかける人影が見えた。

 

「いらっしゃい!いや、よく来てくれた。君達2人がエナさんとロガーくんだね」

 

爽やかな笑顔で出迎えてくれたその人こそが、恐らくルーマント王だろう。

 

「えっと…あなたがルーマント王ですか?」

「うん、一応サンドレス王国のをやってるんだ。だけど僕が国政に関わることなんてほとんどないから、王なんて肩書きだけだけどね」

 

初めて会った王は、あまりに物腰が低く、とてもじゃないが一国の主といった風には見えない。

エナの言っていた通り、年齢はおそらく俺たちとほぼ同じだろう。

少し話しただけで人の良さが伝わってくるが、その雰囲気は身分の高い人たちによく見られるそれとはどこか違う。

俺たちみたいな相手にも同じ目線まで降りてきて話してくれてる。

 

「侍女に何か飲み物でも用意させようか。あ、食事の方がいいかな?馬車旅じゃたらふく食べるというわけにはいかなかっただろうしね。セーラ、この2人の食事を用意を…」

「!?」

 

ルーマント王に言葉を向けられたセーラは驚きと期待が混ざったような顔をしたが、次の王の一言でその笑顔はどこかに消えた。

 

「させるように他の侍女に伝えて」

「うぅっ。今日こそ私に作るよう命じていただけると思ったのですが…。分かりましたよ、伝えてきますよっと」

 

頬を膨らませ、セーラは侍女を呼びに言った。

 

「どうしてセーラさんに頼まなかったんですか?国王補佐って聞いたんですけど」

「護衛兼、補佐…ね。セーラの補佐は自称みたいなものだから基本的な業務は護衛だけなんだ。腕はたつけど、頭のネジが数本抜けてるから雑務を任せると大変なことになるんだ」

「大変なこと?」

「国宝級の皿をかたっぱしから割ったり、火力が弱いって理由で『炎熱術式』を料理に使って厨房を爆破したり…」

 

思い出せば出会い頭も何もないところで転んだりしていた。

 

「やることなすこと裏目に出てるから、護衛以外の事はしないで欲しいって言ってるんだけど、なかなか聞いてもらえなくて。そもそも国王補佐って政治とかの話で、侍女の仕事を奪うのとは違うと思うんだけど…」

 

ルーマント王がそこまで言ったところで、セーラさんが部屋に入ってきた。

 

「どうもすいませんでした。料理の一つもまともにできない私のせいでご迷惑をおかけしてしまって!」

 

セーラさんは持ってきた料理を、力を入れてテーブルに叩きつけた。綺麗に整っていた料理が少し崩れる。

ルーマント王は顔を真っ青にして弁明しようとするが、セーラさんは話を聞く前にさっさとどこかへ行ってしまった。

 

「聞かれちゃいましたね」

「…」

 

ルーマント王は残念そうな顔を見せたが、一つ咳払いをして、話を変えた。

 

「では、そろそろ呼び出した目的を話そう。食事を続けながら聞いてくれて構わない。《王国剣士》《王国魔導師》の件はどこまで聞いているかい?」

「私が《王国魔導師》、ロガーが《王国剣士》になって国に仕えるって事までは聞きました」

 

肉を頬張っている俺の代わりにエナが答えた。

 

「その通り。今日はそれをもう少し詳しく話そうと思ってね。先に聞いとくけど、聖剣・聖杖の能力とか使い方については知ってる?」

 

俺がそんな事を知る訳がない。

エナに目線を投げると、エナはこっちを向いて小さく首を振った。

こいつも知らないのか。

俺達が王の方を向き直ると、説明を続けてくれた。

 

「能力って言っても、聖杖はそこまで特殊じゃない。能力の効果が強化されるだけだからね。例えば、五秒継続する効果が五分になるとかかな」

 

今とんでもない事言わなかったか?

単純計算にして60倍だ。

聞き直したいが、王の言葉を遮る訳にもいかない。

 

「問題は聖剣で、聖剣は使い方が非常に難しい。剣は本来物理攻撃の為にあるものだけど、聖剣は言ってしまえば魔剣なんだ。魔法とセットで使わなければ普通の剣と変わらない。でも変な話だよね、物理攻撃の為の武器で魔法が必要なんて」

 

そう言ってルーマント王は小さく笑った。

笑い事じゃない。

だって俺はーーーーーー

 

「俺は魔法なんて一切使えないんですが?」

 

自分の周りで魔法を使えるの人間なんてエナしかいなかったし、エナだって王都暮らしで殆ど村にはいなかった。

魔法なんて使える訳がないのだ。

 

「えっ…使えないのかい?」

 

ルーマント王は不思議そうな顔をした。

何処で認識の差異が生まれたのかは知らないが、使えるのが前提で話をしていたのだとしたら、面倒な事になるかもしれない。

 

「使えないと…まずいですか?」

「うーん。結構まずいなぁ…民衆にロガーくんが《王国剣士》になるのは知れ渡ってるから任命式は済ませなきゃいけないけど、《王国剣士》が実は聖剣を使いこなせないなんて噂が広まったら『帝国』が調子付いて攻めてくるかもしれない。それを防ぐ為に、ロガーくんにはこれからの一生を地下室で過ごしてもらわないとね」

 

面倒どころの話じゃなかった。

自分でも血の気が引くのが分かる。

一生地下暮らしなんて真っ平御免だ。

 

パシィィィン!!

 

逃げ出すか、嘘をついて使えるフリをするかの二択で悩んでいると、セーラさんの掌とルーマント王の後頭部が綺麗な破裂音を奏でた。

何処から現れたのか、気づいたらセーラさんはルーマント王の背後に立っていた。

 

「国王、流石にご冗談が過ぎますよ?久々に同年代の方と話せたからって調子に乗りすぎです」

「いったた……だからってこんな勢い良く叩かなくても…」

 

俺とエナがポカーンとしてると、セーラさんが頭を下げながら

「ごめんなさい、国王って普段私以外の人とあまり話さないんですよ。常識不足で世間知らずな空気読めないコミュ障イキリ男ですが、大目に見てあげて下さい」

と、目の前で机に頭を伏せている王の代わりに謝った。

 

「セーラ…怒ってる?」

「怒ってません。真剣な雰囲気で馬鹿な事言い始めるような頭の悪い相手にいちいち怒ってたらきりがないので」

「ねぇ、やっぱり怒ってるでしょ!」

 

セーラさんは呆れたような顔で話を元に戻した。

「ロガーさんが魔法を使えないのは、こちらでもちゃんと把握しています。それも考慮して、対策も取ってあります」

「対策?」

「えぇ、エナさんとロガーさんには暫くの間、王国図書館付属騎士育成学校に通っていただきます。」

「え、なんて?」

「王国図書館付属騎士育成学校です。長いので『図書学』って呼び方が浸透してますが」

「図書学ねぇ…それって何する場所なんですか?」

「国に仕える魔導師や剣士を育成する機関です。生徒の枠は相当多いんですが、倍率も負けない位高くて……確か今年は20倍とかだったはずです。王国屈指の超名門校ですよ」

 

よく分からないが、相当凄い場所なのだろう。

何しろさっきからエナが目をキラッキラさせている。楽しみでしょうがないって顔だ。

 

「そしてこれは最後の話になるんだけど…」

 

後頭部の痛みが引いたのか、ルーマント王が話し出す。

にしても、どこか申し訳なさそうな顔をしている。まぁ、あんな洒落にならない冗談言ったんだから反省の一つくらいはして欲しいところだ。

 

「ロガーくんに……お客さん? が来てるんだよ」

 

なんだその不安を煽るような言い方は。なんで疑問形なんだよ。

ルーマント王のその言葉に反応するように、エナは少しため息をつき、セーラさんは天井を見上げ、扉の横に張り付いてる侍女は気まずそうな態度で目をそらした。

 

何なんだよお前ら。

俺が問い詰めようとしたその時だった。

 

「ロガー・スラッシュってのはどいつだ!」

 

けたたましい叫び声と共に現れたのは、己の背ほどの大太刀を担ぐ一人の少女だった。

ドアを思い切り蹴飛ばして開けるという豪快な登場に、その場にいた全員が気圧された。

同年代には見えないので、少し年上だろう。少女と言うよりかは、お姉さんと言った方が近いように思える。

 

「えっと……ロガー・スラッシュは俺ですが」

「お前がロガーか、ちょっと表出ろ」

「えっ」

 

トラブルというのは、常に突然やってくるものである。

俺はそう実感した。





はいっ!王様回(?)ですっ!

後書きで書くことが思いつかなかったので短く次回予告します。

ーーーーーー次回、ロガー殴られる。


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