宇宙世紀と言う激動の中で。 (吹雪型)
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人物紹介(ネタバレ有り)

長田義家様からレイナ・ラングリッジの挿絵を頂きました。ありがとうございます!
更にルイス・エヴァンスの挿絵も頂きました!凄く可愛い(o^^o)
可愛らしい挿絵達でテンションアゲアゲ⤴︎


シュウ・コートニー(宇宙世紀0079.18歳)

 

親は居らずコロニー内の孤児院に居た。その後各コロニーの孤児院、果てには地球の方にも盥廻しにされ続けた。また孤児院も地球連邦が経営してる所に居た為、必然的に地球連邦軍に入隊する。借金等は無いが孤児院に匿名で密かにお金を入金してる。理由は同じ立場になって欲しく無いとの事。

G耐性が非常に高く宇宙軍、空軍に入る様勧められ宇宙軍に入る。

身体のG耐性が異常に強くなってしまった理由は定かでは無いが、宇宙、地球と行き来した事と環境に適応する為に身体が順応したのでは無いかと思われる。尚、この体質が後々の悲劇を生み出す事になる。

 

レイナ・ラングリッジ(宇宙世紀0079.18歳)

 

第一印象はギャルっぽい人。士官学校を卒業し階級は少尉。銀髪で耳にピアスしてる。翡翠色の瞳でちょっとツリ目気味だがキツイ感じはしない。後はスタイルが無駄に良い所が挙げられる。

また性格も明るく小悪魔地味た所がある為、男性陣からの人気は高い。しかし同性からは若干嫌われ気味である。本人もその辺りは気にしてるが性格上修正は難しいと言える。

また名家で資産家であるラングリッジ家の長女である為、軍事での名家であるアルドリッジ家の長男であり幼馴染のアーヴィントと婚約関係に成っている。

家族は父のみ。ジオン公国軍のブリディッシュ作戦に於いて祖父母、母親、弟をシドニーと共に失った。

同部隊のある人物がちょっと気になる乙女なお年頃なのもある。

 

 

【挿絵表示】

 

 

アーヴィント・アルドリッジ(宇宙世紀0079.18歳)

 

爽やかな容姿に輝く様な金髪に少しキツめのツリ目。しかし、甘いマスクがそのキツさを取り除いている。正真正銘のイケメンである。軍族の名家であり士官学校を上位で卒業したエリート。また、若干ナルシスト気味な所も有る。レイナ・ラングリッジとは許嫁関係で有り、本人も満更では無い。

両親は共に健在で仲は良好である。

モビルスーツの適正は低い物のレイナ・ラングリッジの為に量産型ガンタンクに搭乗する等、何気に男気も有る。元々は後方から指揮をするのを得意としてる。

シュウ・コートニーを若干ライバル視してる所があるが、後々その辺りは緩和されて行く。

 

ルイス・エヴァンス(宇宙世紀0079.17歳)

第一印象は可憐な美少女と言った感じだ。髪は黒髪のロングヘアーでパッチリ目だが少しタレ目。スタイルはスレンダーと言えるが出てる所は出てる。

士官学校を若干の短期卒業後、戦略軍事オペレーターとしての道を歩む。地図から大凡の地形を把握する事が出来る。また、士官学校での成績は上位である。

戦略軍事オペレーターとして同小隊のモビルスーツ隊を的確に援護、指示を出して行く。初戦からその能力の高さを示しており、その後の戦闘でも戦略軍事オペレーターとしての役割を果たして行く。

また同小隊にちょっと気になる男性が居るが、その人が朴念仁と優柔不断な所がある為頭を悩ませてる。戦略軍事オペレーターとしての手腕は此処では発揮出来ないでいる。

実は家族をジオン公国軍の地球侵攻作戦に於いて失っており、表情には出さないがジオンを憎む気持ちは人一倍強い。

 

 

【挿絵表示】

 

 

モンド・クルッツ(宇宙世紀0079.45歳)

第一印象は頑固親父。元々戦闘機パイロットになりたかったが、適正が無かった為断念。しかし、諦めきれず軍事兵器の整備士になる。其処で様々な軍事兵器に関わる。その結果第一級品の腕前を持つ様になり、前線に於いてモビルスーツの整備を的確に行って行く。

シュウ・コートニーの無茶な操作方法にも苦言を言うが、多少の妥協案を出す等相手の事も考えてくれる。

家族は妻、娘、息子がおり全員健在である。ある意味一年戦争を運良く生き残れた人物である。戦後は退役するが後々ある組織に入る。

 

ベルガー・ディードリッヒ(宇宙世紀0079.24歳)

 

第一印象は武人と言えるだろう。少々冷たい印象は有るものの部下達からの信頼は高く、指揮官としての能力は非常に高い。また、それ以上にモビルスーツパイロットとしての技量は高く、【連邦軍の戦艦を沈めるより、Rタイプを手に入れる方が難しい】と言われている高機動型ザクを配備される程の技量を持つ。

一年戦争開戦よりジオン公国軍のモビルスーツパイロットとして様々な戦場に出撃する。そして多数の戦果を挙げた結果少佐の階級なる程のエリートの道を歩み出す。しかし最終決戦であるア・バオア・クー攻防戦に於いてシュウ・コートニー少尉の操る試作ジム改に敗北。その後は反地球連邦としてゲリラ活動に参加し、幾つかの輸送船や連邦艦艇を撃沈させている。デラーズ・フリートが地球連邦軍に対し宣戦布告をするのと同時にデラーズ・フリートに参加。その後、因縁とも言えるシュウ・コートニーと何度も戦場で出会う事になる。

しかし最後のコロニー落としを巡る戦場に於いてシュウ・コートニーと激戦を繰り広げる物の、自身が死に場所を求めてる所を指摘される。その後、「生きて最後まで見届けて欲しい」との説得に対する返答を出す直前にソーラー・システムⅡが再起動する。そして光の濁流が2人を飲み込む前に呆然としているシュウ・コートニーの乗るジム・カスタムFbを押し出す。しかし間に合わず2人共光に飲み込まれるが、咄嗟にジム・カスタムFbを蹴り飛ばす事により運良くシュウ・コートニーを生かす結果となる。

尚、最後の通信内容は解析の結果『この戦いの、真実を見届けれる』となっている。しかし、この記録データもデラーズ紛争に関わるとして公式記録から消去された。

 

アモス・ベアリー(宇宙世紀0079.26歳)

 

浅黒い肌に鷹の様な鋭い視線。がっしりとした体格に茶髪の髪をしっかりと整えた軍人然とした人物である。

一年戦争時は地球での戦いで戦車兵として従事していた。しかし上官に恵まれる事は無く、使い捨ての駒として彼の部隊は生贄となる筈だった。だが、同部隊と共に捨て駒にされた別部隊のある人物の機転により生還。更に敵を上官の居る本隊に当てがい、敵を挟撃する形で勝利する。また、この時に彼女に一目惚れをしたとか。

その後モビルスーツ転換訓練を受け、地球でのジオン残党軍の追撃戦に参加。其処で多数の戦果を挙げ続けた。

ティターンズに入隊したのも自身の為と彼女に認めて貰う為と中々一途な所がある。その後特殊部隊の隊長として裏の戦場を駆けるのである。

 

ロイ・ブラックモア博士(宇宙世紀●●)

 

閲覧規制により参照不可。



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オリジナル兵器(ネタバレ有り)

【宇宙世紀0079】

 

90㎜ガトリングガン

 

NT専用機体であるRX-78(ガンダム)NT-1アレックスに搭載されてる90㎜ガトリング砲を再設計して作り直した。砲身を延長させ命中精度の向上に成功。弾種は90㎜ブルパップ・マシンガンと同じであり、地球連邦軍の標準弾となる為兵站面では苦労はしない。

本来なら極秘計画の機体の武器が流用される事は無いが、コネには勝てなかった模様。

 

RGM-79CRP 試作高機動型ジム改

 

本機は高機動型ザクに対抗する為に製作された機体である。カラーリングは試作の意味も有り白とオレンジのツートンカラー。機体のバックパック、肩部、脚部にはこの機体専用の高出力ブースターエンジンを搭載。またバックパック等の専用のブースター関係は、高機動型ザクを意識した形になっている。更に前作機であるRGM-79RP(試作高機動型ジム)の継戦能力の問題点もプロペラントタンクを増設する事で解消した。

機動性、運動性は数値上では高機動型ザクを上回りRGM-79Lジム・ライトアーマーをも凌駕している。また、ジム・ライトアーマーの欠点である防御力の低下も無く、通常のジム改と同じ装甲厚である。

但し操縦性等の改善はされておらず、扱うには人を選ぶ機体となってしまった。

武装は通常のジム、ジム改と共通で使用する。

 

尚、本機の生産数は前作機を含め製作数は2機だけである。

 

RGM-79RP 試作高機動型ジム

 

本機は高機動型ザクに対抗する為に試作された機体である。宇宙戦に於いて高機動型ザクの機動性は高く、通常のジムでは追い付く事は事実上不可能であった。其処でRGM-79ジムをベースに高機動型仕様に変更を行う事にした。

高機動型ザクをモデルに専用のバックパック等を作成。更に肩部、脚部等にも高出力ブースターを取り付ける。これにより高機動型ザクを上回る機動性と運動性を実現した。

但し機動性と運動性が高くなった分、操縦性には難が有り。またパイロットに対する安全性は考慮されておらず機動試験中にテストパイロットの意識が喪失し機体は隕石に激突。幸いにも燃料搭載量が少なかった為パイロットは無事に救助された。

 

尚、両機共にコストはRX-78-2ガンダムの1/2であった。

 

……

 

RGM-79RP、RGM-79CRPの性能は良好であった。しかし、地球連邦軍は早急にRGM-79ジムを必要としていた。更に高機動型ザクの遭遇率は特別高い訳では無い。一年戦争末期と言えどもジオン公国軍はMS-06ザクが主力。ならMS-06ザクより強い機体で充分であった。

そして本機の開発の遅れとRGM-79Lジム・ライトアーマーの登場により元戦闘機パイロット達は其方に向かい存在価値が薄くなる。また開発当時の主戦場は地球であり、宇宙専用機であるRGM-79RPでは地上での運用は出来なかった。更にコストはRX-78-2ガンダムの1/2と言うが普通に高い。RGM-79ジムが10機分作れるのだ。然もその高価なコストの原因となっている専用のバックパック等の生産性が非常に悪かった事だ。何故なら専用のバックパックとして生産していた為だ。通常のジムのバックパックのパーツ共通性は実に25%と低かった。更に地球連邦軍が行う集団戦法とは非常に相性が悪い事。パイロットに対する安全性は多少は改善した物の依然負荷が高い事。操縦性の改善は殆どされてなかった事。これらの要因により後発機体であるRGM-79CRP試作高機動型ジム改は遂に試作の文字が取れる事無く開発中止となった。

しかし、ニュータイプと言われてるアムロ・レイに搭乗させる案が出た物のRX-78-2ガンダムにマグネットコーティング等を行い必要無し。他のエースパイロットと呼ばれてる物達も特殊なシステム搭載ガンダムやビックガトリングガン持ちとかジムスナイパーⅡや量産型ガンキャノンやジム・コマンド等に搭乗してる等で必要が無かった。そんな中、通常のジムに搭乗しつつ、唯一耐Gがトップクラスでそこそこの戦果持ちだったシュウ・コートニー少尉に白羽の矢が立ったのだった。

シュウ・コートニー少尉に配備されたのと同時にRX計画の高出力ジェネレーターも換装されじゃじゃ馬っぷりを発揮する。しかし意外な事に本人と本機の相性は非常に良く、味方の代わりに囮役を行う事により味方の生存率を高くした。また巨大空母ドロワの撃沈にも貢献。更に機体の軽量化を行なっていなかった事が幸いした為、被弾した際も戦闘を続行。そのまま無事終戦を迎える。

尚RGM-79CRP試作高機動ジム改は一年戦争終戦後には解体、撤去が行われている。しかし本人はRGM-79CRPを非常に気に入っており、後々の搭乗機も高機動型に設定が成される事になる。彼の戦闘スタイルの確立に貢献した機体でもあった。

 

【宇宙世紀0083】

 

サラミス改級ロイヤル(改修仕様)

 

本級はモビルスーツ搭載能力を向上させる為に改修された艦である。

地球連邦軍の主力艦であるサラミス改級は宇宙世紀0083年になっても生産、運用を継続する程の優秀な艦艇である。しかし、未だにサラミス改級にはモビルスーツ搭載能力が付いては無かった。無論上層部はモビルスーツ搭載に付いては理解していたものの、大艦巨砲主義が根強かったのも影響していた。

其処でジム・カスタムFbの運用テストを行うのと併用も兼ねてサラミス改級の改修を行う事になった。艦底に有る主砲を撤去し、モビルスーツハンガーとカタパルトを設置。更にハンガーには対空レーザー砲2連装6基設置しており対空防御は向上している。又、各4箇所に追加でブースターを設置。運動性の向上を果たした。

モビルスーツ搭載能力は4機で決して多くは無い。そして試験機であるジム・カスタムFbには少々整備にスペースを使う為、尚更モビルスーツ搭載には限界が有った。それでも単艦でのモビルスーツ搭載能力は使い勝手が良く評価は良かった。しかしハンガーとカタパルトの増設により被弾面積と重量増加と言うデメリットも有る。また追加ブースターはハンガーと一体型となっており、被弾した際の危険度は高い。

尚サラミス級をベースにした軽空母ネルソン級も存在するが砲戦能力低下を懸念した為、参考にはされ無かった。

 

MS-06R-1A 高機動型ザクⅡ改ベルガー・ディートリッヒ少佐専用機

 

本機はジオン公国残党軍ベルガー・ディートリッヒ少佐専用機である。【黒の閃光】と呼ばれる黒と赤のツートンカラーで塗装される。だが【黒衣の狩人】とも誤認される事も有った。

本機の改修は限られた資源の中、如何に高性能な状態にさせるかだった。デラーズ・フリートは懐事情は決して良いとは言えない。其処で宇宙に放置されたゲルググの残骸を使用して改修された。

ジェネレーターは元の1012kwから1300kwに改修。本来なら1400kw出せるが継戦能力を高める為抑えている。又ビーム兵器はビームナギナタを使用。他は全てザクⅡ、ドム共通の実弾兵器を使用する。更に前衛を務める本機の被弾率の懸念が有る為、ザクⅡが使用しているシールド、又はゲルググのシールドを左手にも装備する。尚、本人はシールド装備を良く思って無く敵に突撃後は直ぐに放棄する為部下が心配していた。コンセプトとしてはMS-18Eケンプファーに近い。

大型のプロテクタントの追加により継戦能力向上。又、動力パイプの一部大型化により出力及び整備性向上に成功した。見た目からは然程変更点は無いが、腰や足の動力パイプの大型やビームナギナタ装備により僅かに違うと分かる。

本機はデラーズ・フリート決起以前から地球連邦宇宙軍に対してゲリラ戦闘を行なっていた。地球連邦宇宙軍パトロール艦隊、補給部隊に対し少なくない損害を与えている。尚、この時に【黒衣の狩人】と誤認されていたが、後の戦闘により【黒の閃光】と訂正される事になる。

 

高機動型ザクⅡ改はコロニー落としの際にシュウ・コートニー中尉が搭乗するジム・カスタムFbと機動戦を行う。性能的にジム・カスタムFbに劣るがパイロットの技量により対等以上の戦いを行う。

しかし、最終的に機体性能の差と一瞬の隙により敗北。その後シュウ・コートニー中尉の説得に対する返答直前にソーラーシステムⅡの第二射が開始。それにより硬直していたシュウ・コートニー中尉を逃す為にリミッターを解除しジム・カスタムFbを押し出す。だがこのままではソーラーシステムⅡの第二射の範囲から逃げるのが無理と判断したベルガー・ディートリッヒ少佐は、ジム・カスタムFbを蹴り飛ばす。その結果機体は慣性の法則により取り残され光の中に消えて行った。

 

ZEシステム

 

【Zeit Erweiterung】の略。ドイツ語を使用し【時間拡張機能】を有している。

オーガスタ関連施設では【EAXMシステム】【HADES】と言った特殊なシステムを搭載した機体を生み出した。パイロットの命や記憶を犠牲に多大な戦果を出したシステムは【ZEシステム】にも少なくない影響を与えた。

ロイ・ブラックモア博士はオーガスタ関連施設の関係者であり多少なりとも研究に関わっていた。しかし二つのシステムに中途半端に関わった結果、運良く監視の目から外れた存在となっていた。そしてブラックモア博士は二つのシステムに関わった結果ある結論に至る。【人を殺すのに複雑な物は要らない。単純でかつ高性能で良い】と。

ZEシステムの土台となるのはHADESになる。無論EAXMシステムの基礎理論を元にした結果である。ZEシステムは脳に直接干渉させ時間軸を延長させる形にしている。つまり【スローモーションの世界】である。EAXMシステムの様に殺気に影響は受けない事、HADESの様に廃人化にならない事。この二つはクリアする事が出来ていた。

しかしスローモーションの世界になる物の、身体が付いて行かなくてはならない。また長時間の使用は脳に多大な負荷を掛ける事になる為、リミッター設置は必須となった。その結果ある程度のパイロットの強化は必須であり反応速度に追従出来る機体とOSが必要となっていた。

其処で目を付けたのがRX-78NT-1アレックスである。元々ニュータイプのアムロ・レイの為に制作されていたアレックスは実に相性の良い機体だったと言えるだろう。結果ZEシステムに適応した機体はアッサリと用意出来たのであった。

 

RGM-79Q-NT ジム・アルトver.1

 

本機は強化人間専用機として開発された機体である。機体はRGM-79Qジム・クゥエルをベースとしRX-78NT-1アレックスを参考に再設計されている。

元々両機はオーガスタ系列の機体であり改修作業は比較的順調に進んだ。アレックスに搭載されていた高性能学習コンピューターと当時最新のリニアシートを採用。アポジモーターを一部オミットするもののベース機より効率化に成功。脚部はアレックスの設計を殆ど流用している。更に各関節部にはマグネットコーティングを施しており、機体の反応速度を上げている。頭部にはZEシステムを搭載する事により副次的では有るが学習コンピューターの処理能力向上を果たした。但し60㎜バルカンはオミット。代わりに外付のバルカン・ポット・システムを一門搭載している。

ジェネレーター出力は1420kwとジム・クゥエルと同じだがビーム・ライフルを装備しない分、機動性は向上している。尚ビーム・ライフルを装備しない理由は強化人間の不安定による錯乱時での味方に対する危険度を下げる為である。基本兵装は90㎜ジム・ライフル、ロング・ライフル、ハイパー・バズーカ、ビームサーベル×2本である。

上記の理由により理論上第3世代MSクラスの性能を有する事になった。但し機体の性能に比例した結果、一般パイロットでは扱えない機体となっている。よって操作する為には強化人間が必須となる。尚ver.1はバージョン1の意味が有り、強化人間に合わせて機体強化される予定である。

名称の由来は一年戦争末期の古い設計思想故の皮肉を込めて名付けられている。



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開戦の序章

別の小説が詰まったので書きました。機動戦士ガンダムは大好きです。特にジム改とジムカスタムが好きです。
後この年式や時期が違うとか、矛盾点が有れば報告お願いします。


「君達が地球連邦軍に配属される事を心より歓迎しよう」

 

宇宙世紀0078.3月。この日地球連邦軍の軍学校で、俺達卒業生は晴れて地球連邦軍の兵士になった。

先ずは自分の自己紹介からしよう。名前はシュウ・コートニー、年齢17歳。地球連邦軍が運営していた孤児院を中卒で出て軍学校に入る。しかし、佐官になる気は無い為士官学校には行かなかった。

元々コロニー出の孤児院に居場所は無かった。正直邪魔者扱いだったが、今では如何でも良い事だ。大半の孤児院の者達は地球連邦関係の仕事に身を置く。理由は孤児院での養育費、学費が免除されるからだ。それでも別の就職に付く物好きもいるが、最初に待っているのはローン地獄だがな。

そして、俺の配属先も決まった。地球連邦宇宙軍になる。理由は身体の耐Gが異常に強かったから、宇宙か空の何方かに勧められたのだ。

 

自分の自己紹介はこんな感じで良いだろう。しかし、現在の情勢は悪化の一途を辿っていた。そんな中で地球連邦宇宙軍に入るのは自殺行為だな。

 

「なあ、シュウ。お前の配属先は何処だ?俺は陸軍所属になるぜ」

 

話し掛けて来たのは、この3年間同室であり、仲間でもあるアーク・ローダーだ。悪い奴では無いが、偶に調子に乗る奴だから教官に怒られるのもしばしばだ。

 

「俺は宇宙軍だよ。全く、こんな事なら空軍にしとけば良かったよ」

 

「運の無い奴。まあ、戦争なんて早々起きないさ。現に今迄起きて無いんだからさ」

 

「だと良いけどな」

 

アークは気楽に言うが、そんな風に考えれるアークが羨ましい限りだ。唯、アークの言う通り今迄戦争は起きなかったのだ。例え、仮初めの平和だとしても。

こうして、俺達卒業生は地球連邦軍軍学校を卒業した。そして、誰もが様々な場所に配属されて行く。この卒業式が最後の別れになる者達が出てくる等、微塵も思わないままで。

 

宇宙世紀0078.10月、ジオン公国は国家総動員法を発令。ジオン公国と地球連邦の開戦は目前に迫る。

宇宙世紀0079.1月3日、7時20分地球から最も離れている宇宙コロニー、サイド3ジオン公国が地球連邦軍に対し宣戦を布告。その直後に地球連邦軍傘下の宇宙コロニー、サイド1に攻撃。そして月面都市グラナダを制圧する。更にサイド2.4の奇襲を敢行したのだった。

宇宙世紀0079.1月4日、サイド2のコロニーの一つが地球に向けて移動しはじめる、後に言うコロニー落としが開始された。ジオン公国軍は己の故郷と同じ物であるコロニーを武器とするためサイド2を奪取したのである。

宇宙世紀0079.1月7日。地球連邦軍第8艦隊がサイド2迎撃の為地球軌道上に到着。更に北極、南極のミサイル基地から迎撃ミサイルを大量射出。

宇宙世紀0079.1月8日。地球連邦軍マクファティ・ティアンム提督指揮下の第4戦隊も参戦するも70%以上の損害を受け後退。

宇宙世紀0079.1月10日。コロニー、サイド2は地球に落下。しかし、地球連邦軍の必死の抵抗によりコロニーが空中分離。コロニーの一部がオーストラリア大陸シドニーに直撃。シドニーが地図上から姿を消したのだった。

この戦いを後に一週間戦争と呼んだのだ。

 

宇宙世紀0079.1月13日。ジオン公国軍、第1連合艦隊がサイド5に向け発進。対する地球連邦軍はレビル提督の第3艦隊を中核とした第1連合艦隊がルナツーより発進。

宇宙世紀0079.1月15日。ジオン公国軍はサイド5であるルウムを攻撃する。

 俺はこの戦いに参加する事になった。そう、後にルウム戦役と呼ばれる戦いに身を投じる事になったのだった。

 

 



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ルウム戦役

アンティータム級空母

 

レビル中将率いる第1連合艦隊はサイド5であるルウムに向かっていた。

 

「よう、シュウ。調子は如何だ?」

 

「隊長、一応平気です。ただ、この一週間足らずで何十億人も死んでるなんて信じられません」

 

「そうだな。だが、これ以上の犠牲を出す訳には行かない。なら、俺達がジオンの暴走を止めるしか無い」

 

「そう…ですね」

 

「もう直ぐルウムに着く。その間に色々整理しておけよ」

 

隊長はそう言って他の隊員の所に向かう。隊長はベテランの人だ。現に宇宙に蔓延っている海賊なんかの戦闘機や艦と交戦した事もある人だ。他の隊員も実践経験はあるみたいだしな。俺は未だにシミュレーターの中でしか無いけど。

 

「しかし、連邦軍が敗戦続きなんだよなぁ」

 

ジオン軍には新兵器である人型兵器が有るとか無いとか。だからと言って戦力は連邦軍が圧倒的だ。にも関わらず敗戦続きなのが怖い。だが、人型兵器と聞くと不思議と胸が熱くなるのは気の所為だろうか?

 

「よう!チェリーボーイ?今日チェリー卒業に成るかもな」

 

「バックス軍曹。確かにチェリーボーイですが、このチェリーだけは卒業したく無かったです」

 

このチェリーとは人殺しをしたかどうかだ。無論あっちの方もチェリーだけど…。

 

「おいおい、ジオンと言う宇宙のゴミ掃除をするんだぜ?そんな染みったれな顔すんなよ。それに、ジオンを倒せば階級も上がる。良い事尽くしだぜ」

 

(死んで二階級特進とか笑えないんだけどな)

 

バックス軍曹はお気楽な人だ。いや、自分達が正しいと信じてるからだろう。出なければ簡単に人殺しを肯定なんて出来ない。

 

「自分も軍人です。戦えと言うなら戦うだけです」

 

「おっ?その意気だぜ。まあ、俺の撃墜スコアを奪ったら誤射が来るかも知れんから気を付けろよ?」

 

「笑えない冗談はやめて下さい」

 

本気が冗談か分からないまま、バックス軍曹は自分の機体に向かって行く。俺も自分の機体であるセイバーフィッシュの最終チェックを行う。そして、暫く機体内で待機していると遂に艦内アラートが鳴る。

 

『全戦闘員は直ちに戦闘態勢に移行。セイバーフィッシュ隊は直ちに発進準備に入って下さい』

 

俺達はセイバーフィッシュに火を入れる。

 

『おい、シュウ。聞こえるか?』

 

「バックス軍曹何ですか?」

 

『お前、幾つだったか?』

 

「18ですが、何か?」

 

『俺より若いお前が死ぬんじゃねえぞ。これは上官命令だ』

 

「バックス軍曹…了解です」

 

それから直ぐに隊長から全隊員に通信が来る。

 

『全隊員に通達する。ミノフスキー粒子が戦闘濃度になってる。よって、目視による戦闘が予想される。近接戦闘が行われる可能性が大だ。各員の連携を密にして全周警戒を厳とする!』

 

ミノフスキー粒子。レーダーや誘導兵器を殆ど無力化されてる。特にレーダーが無力化されたのは痛い。常に周囲を警戒しなければならないからだ。

 

『セイバーフィッシュ隊、直ちに発進して下さい。繰り返します、セイバーフィッシュ隊は直ちに発進して下さい』

 

『此方ガルム1了解。全機、発進する!』

 

隊長を始めとして次々と発進して行く。

 

『ガルム12、発進どうぞ』

 

「了解。ガルム12、シュウ・コートニー発進します!」

 

発進と同時に一気にGが身体を襲う。だが、俺は平気だった。特に気持ち悪くも無ければ酔う事も無い。この瞬間だけは、この身体に産んでくれた顔も名前も知らない両親に感謝した。

 

「此方ガルム12、発進完了しました」

 

『よし……れより、ジオン艦隊に対し……を行う』

 

ミノフスキー粒子の影響がこの距離でも出るなんて、距離が少しでも離れたら不味いぞ。その時、右下方に光が一瞬点滅した。その瞬間、マゼランが一隻被弾、そして爆沈した。

 

「隊長!右下方5時方向!敵です!あ、アレは…人型兵器です!ジオンの新型だ!」

 

『全機反転、艦隊を……攻撃開…』

 

ガルム全機は直ちに反転し人型兵器と戦闘を開始。しかし、人型兵器の一機に赤いのが居た。その動きは異常に速い!

 

「クソ!ロック出来ない!」

 

一瞬の判断が遅れた。その間に人型兵器の間合いに入ってしまう。人型兵器が巨大な斧を振り被る。

 

(あ……死んだ)

 

『シュウウウウ!!!』

 

バックス軍曹がバルカンを赤い人型に撃つ。そして、バックス軍曹の声を機にセイバーフィッシュを動かす。巨大な斧がセイバーフィッシュをギリギリを通り過ぎる。

 

「バックス軍曹!助かりま」

 

しかし、後方から爆発が起きたのと同時にバックス軍曹との通信は途絶した。だが、敵の攻撃は留まる事を知らない。

 

『全機………警戒を…うわああッザザザザブッ』

 

隊長との通信も途切れる。そうだ、コロンブスは?俺達の母艦は?コロンブスを見ると人型兵器から攻撃を受けている。

 

「や、やめろおおおお!」

 

セイバーフィッシュのミサイルを一斉に撃つ。勿論1発も当たら無い。だが、敵は此方を見る。

 

「うおおおお!セイバーフィッシュの奥の手を受け取れ!」

 

1機の人型兵器に肉薄する。敵も巨大なマシンガンで此方を撃つ。しかし、距離は充分詰めれた。

 

「対艦ミサイル発射!」

 

至近距離から対艦ミサイルを発射。対艦ミサイルは敵の人型兵器に直撃。そして、爆発。

 

「やったぞ、1機撃破。あっ…コロンブスが!」

 

人型兵器を1機倒した。だが、母艦であるコロンブスが撃沈されていた。更にサラミス級、マゼラン級も多数攻撃を受けて大破、爆沈していた。そう、この地球連邦軍第1連合艦隊の中に敵が大量に侵入していたのだ。勿論、俺達セイバーフィッシュ隊も攻撃をする。だが、セイバーフィッシュのバルカンの攻撃は殆ど効果は無い。しかもミサイルは回避されたり迎撃される始末。

 

「此方ガルム12!敵が食い付いている!赤い奴が!振り切れ無い!?」

 

機体に無理な機動をさせる。普通のパイロットがやったらブラックアウトするか血反吐を吐くだろう。この無理な機動をする事が出来るからこそシミュレーターでも優秀な成績を残せた。だが、此奴は俺の動きを予想している様な機動を取る。

 

「しまっ!?被弾した!被弾した!制御出来無い!?」

 

モニターを見ると右上と右下の第2、4エンジンを被弾。流石にこの状況で意識を持たせるのは無理があった。俺はそのまま意識を失ったのだった。




赤い奴…一体何者何だ?←


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MS-06CザクⅡ

「う……はっ!こ、此処は?」

 

目の前には漆黒の宇宙と煌めく多数の星が見えた。だが、其処には連邦軍はおろかジオン軍も居ない。

 

「かなり流されたみたいだな。機体の状況は」

 

モニターで確認すると第2.4エンジンが機能停止。目視で確認するとエンジンそのものが無い。多分エンジンが丸ごと無くなったお陰で誘爆しなかったのだろう。

 

「此方、地球連邦軍第1連合艦隊第27機動戦隊所属シュウ・コートニー一等兵!誰か応答願います!」

 

しかし、返信は無い。ミノフスキー粒子の影響も有るだろう。だが、目に見える範囲に味方の艦隊は見えない。それに、セイバーフィッシュも被弾した結果推進力を半分失った。更に燃料も第2.4エンジン分が無い。取り敢えず救難信号を出しておく。空気残量を確認すると3時間も無い。

 

「死ぬのか……俺は」

 

漆黒の宇宙を見る。正直恐怖しか湧かない。この宇宙の中で独立を宣言したジオン公国は怖く無いのだろうか?いや、その恐怖心より地球連邦から離れたかったのだろう。

 

「結局、自分達で蒔いた種なんだな」

 

暫く漆黒の宇宙を眺める。最早絶望感しか湧かない。何となくモニターを操作して周辺をチェックする。すると反応があった。

 

「っ!?何の反応だ!」

 

急いでチェックする。すると、何かの残骸を確認した。

 

「兎に角近付いて見るしか無いな」

 

そしてセイバーフィッシュを動かし近付く。そして、残骸が何なのか確認出来た。

 

「アレはジオン軍の輸送艦パプアか」

 

半壊したパプアを発見。しかし、贅沢言ってる余裕は無い。それどころか、敵が居る可能性だって有るんだ。そのままセイバーフィッシュを近付けて行く。パプアから攻撃は無く、無事に近付く事が出来た。

 

「戦闘機でも脱出艇でも有れば助かる」

 

そして、輸送艦パプアの格納庫に入る。

 

「コレは…まさか」

 

其処で忌まわしき兵器と出会う。仲間達を殺し、地球連邦艦隊を壊滅状態にまで持ち込んだ人型兵器。そしてこの人型兵器ザクⅡと呼ばれるモビルスーツとの出会いが、俺の人生を大きく揺るがす事になった。

この後、先ずは空気を確保する事にした。輸送艦パプアにはまだ、生きてる区画があった。其処で空気を確保。艦内は死体しか無かったが、生きてる人間より安心した。その感情が間違ってるのかは如何かは、この時は理解出来なかった。

 

「さて、この人型兵器…ザクⅡか。マニュアルとか無いのか?」

 

ザクⅡのコクピットを探すとメモ帳があった。其処には起動方法や操作方法、更にザクⅡの機動等も書かれていた。だが、このメモ帳はかなり奥に仕舞われていた。多分、このザクⅡは様々なパイロットを乗せて来たのだろう。その内の誰かが忘れいった物だろう。

 

「機体チェック。油圧、バッテリー、各部異常無し。操作方法も多分イケる筈だ」

 

ザクⅡを起動。モニターから外の状況を確認。武器もザクマシンガンを一挺確保。但し弾はザクマシンガンに付いてる分しか無い。セイバーフィッシュの戦場から流れて来た際のルートデータを、なんとかザクⅡにダウンロードするのに成功した。

 

「ありがとう」

 

俺はセイバーフィッシュに対して感謝と共に敬礼をする。あの機体が無ければ死んでただろう。そのままザクⅡを発進させる。ザクⅡの出力、推力はかなり高い。セイバーフィッシュなんかとは比べ物になら無い位高性能だ。

 

「然も装甲はセイバーフィッシュ以上か。確かに負ける要素が無いな」

 

ミノフスキー粒子戦闘を主眼としているモビルスーツと通常戦闘を主眼にしてる戦艦と戦闘機。最初から戦う土台が違い過ぎたんだ。

 

「兎に角、今は連邦艦隊を探さないと。先ずはルウム付近に行くしか無い」

 

そのままザクⅡを加速させる。ルウム付近に近付くが残骸しか見当たらない。しかし、何処に撤退したのかは予想出来る。と言うか、ルナツーしか無いのだ。他に撤退出来る場所なんて無いからな。そして、ルナツーに進路を向ける。この近辺もジオン軍の占領下になるだろう。

そして、ルナツーに向かう途中で閃光を確認した。更に味方の通信も傍受する。

 

『……ら……攻撃を…ザザ……救……』

 

「味方の通信!サラミスかマゼランからか!」

 

ザクⅡを加速させる。しかし、その間にサラミス級が一隻爆沈する。残りのサラミスとマゼランにも敵が纏わり付いてる。後方にはムサイ級が3隻いる。

 

「味方を見捨てる訳無いだろ!」

 

一気にザクⅡをサラミスとマゼランに近付ける。

 

『其処のザク!何処の……だ!答え…』

 

ムサイから通信が来るが無視する。そのまま敵のザクに照準を向ける。

 

(まだだ、まだ……まだ……)

 

確実に当てる距離まで近付くんだ。

 

side 地球連邦軍マゼラン級パラマウン バリス艦長

 

「ノリルバーゲン撃沈!」

「敵モビルスーツ振り切れません!」

「左舷銃座大破!後部メガ粒子砲大破!」

 

「くっ…まさか此処までやられるとは。急いで振り切るんだ!」

 

私はジオン軍の戦力を侮っていた。ミノフスキー粒子、そしてモビルスーツ。この二つによって我々地球連邦艦隊は大敗北を被った。我々も傷付いた艦隊を率いてルナツーに撤退する途中だった。だが、ジオン軍は見逃すつもりは無い様だ。

 

「艦長!上方より敵接近!来ます!更にうわあああ!」

 

「此処までか……ジオンめ」

 

上方と目の前にモビルスーツ。機銃座は殆どか機能停止状態。私はジオンに屈するつもりは無い。最後まで敵を睨み付ける。その時だった。

目の前のモビルスーツが被弾。そして爆発。

 

「何が起きた!」

 

「不明です!あっ、先程の上方のモビルスーツが!」

 

そう、1機のモビルスーツが艦隊の周りに居るモビルスーツに攻撃を仕掛けていたのだ。

 

『此方……連邦軍第……艦隊第27機動……所属シュウ・コートニー一等兵!応答願います!』

 

「アレは…味方なのか?っ!何を呆然としている!援護しろ!」

 

「り、了解!」

 

アレが味方は分からない。だが、今助かるにはあのモビルスーツを援護するしか無い。他のサラミスも援護射撃を開始する。

 

「生きてる機銃座は敵モビルスーツに攻撃!あのモビルスーツに当てるなよ!返信も急ぐんだ!」

 

私は1機のモビルスーツを見つめたのだった。

 

side out

 

side シュウ・コートニー

 

『此方第1連合艦隊所属マゼラン級パラマウンの艦長バリスだ』

 

漸く繋がった。良かった。

 

『御覧の通り、現在戦闘中だ。よって周辺の敵を排除してくれ』

 

「了解です」

 

周辺を見るが味方のセイバーフィッシュは居ない。居るのはサラミス級3隻、マゼラン級1隻だけだ。だが、機銃とミサイルの援護は有る。

 

「やるだけやるさ!」

 

ザクⅡを加速させる。

 

『この裏切り野郎!よくもジャックを!』

 

『許さねえぞ!覚悟しやがれ!』

 

4機のザクⅡが迫って来る。そのままムサイに向けて加速させる。ムサイも味方に向けて発砲は出来無いだろう。

 

「さあ、付いて来い。もっとだ、もっと加速して来い!」

 

このモビルスーツには戦闘機では無い。そう、戦闘機とは違う機動性が出来るのだ。

 

「行くぞ。AMBAC、そして一気に急停止!」

 

ザクⅡの脚部を前に出し、一気に全力噴射して停止する。途轍も無いGが掛かるが、視界は失わ無い。

 

『何!後ろだと!か、回避し』

 

「貰った!」

 

ザクマシンガンでザクⅡの背後のバックパックを撃ち抜く。一気に3機撃破する事に成功する。だが、弾切れになり1機を取り逃がす。

 

「さて、逃げるぞ。ムサイからの砲撃が!やっぱり来た!」

 

ザクⅡの近くに艦砲射撃が来る。しかし、連邦軍艦隊も負けてはいない。元々高い対艦能力があるのだから。ムサイ相手も充分対処出来る。そのまま味方の艦隊に近付く。

 

「何とかなったな。しかし、モビルスーツ。これ程の物なんてな」

 

特にAMBAC機動は凄いとしか思えない。確かにGはかなり掛かるが、耐えてしまえば背後を取れる。連邦軍のセイバーフィッシュなんて簡単に背後を取られてしまうだろう。そんな事を考えながらマゼラン級に近付くのだった。



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ルナツー入港

マゼラン級 パラマウン

この戦艦の上にザクⅡを着陸させようとしたが、上手く行かず激突してしまった。幸い速度は出ていなかったから良かったが、モビルスーツの動かし方がまだ完全とは言えない事が良く分かった。俺がザク3機撃破出来たのは運が良かっただけだったのだと。

そして、モビルスーツから降りると味方から銃を向けられた。まあ、気持ちは分からんでも無い。敵の兵器を扱ってた人間を信じる奴なんて居ないだろうし。この後直ぐに艦長の場所まで連れて行かれた。

 

「さて、シュウ・コートニー一等兵だったな。あのモビルスーツを何処で手に入れた?そして何故操縦出来た?」

 

「えっと、ルウムでの戦闘でセイバーフィッシュが被弾。その後気を失いました。しかし、ジオン軍の輸送艦を発見。これに乗り込むとモビルスーツが有りました」

 

「ほう、続けてくれ」

 

「コクピットの中にこのメモ帳が有りました。そこに操縦方法が記載されてます」

 

「ふむ。随分と上手い話だな。君の所属部隊も調べた。確かに地球連邦軍第1連合艦隊第27機動戦隊は記録上存在していた」

 

「存在していた?…まさか」

 

「残念ながら、君を残して全滅した。恐らく母艦のコロンブスも駄目だろう」

 

全滅…隊長と仲間達は死んだ。正直信じられない。これが戦争、これが…正義?

 

(戦争に正義なんて無い。有るのは悲しみと憎しみだけだ)

 

一年近く共にして来た部隊が無くなった。しかし、ショックを受けてる暇は無かった。

 

「君によって我々は助かった。だが、君の疑いは晴れた訳では無い」

 

「疑い?一体何の疑いが?」

 

「君がジオンのスパイの可能性があると言う事だ。敵の兵器を扱ってた時点で怪しいのだ。まあ、着艦は上手く出来て無かったみたいだが。それでも暫くは部屋の中で大人しくしておいて欲しい。無論、君に助けられた事は理解している」

 

反論する暇も無くMPが近寄って来る。唯、無理矢理な感じは無かった。まあ、優しい内に大人しくしておくのが利口だな。

 

「御飯はちゃんと来ますか?」

 

「勿論だとも。デザートも付けておこう」

 

「なら大人しくしてます」

 

正直一人になりたかったのはあった。仲間が死んで、所属艦隊の敗北。これから先の見通しが出来無い不安。そして、モビルスーツに乗った時の全能感。圧倒的な力を扱った高揚感。様々感情が渦巻いており整理したかったからだ。

 

(正義と言う言葉に素直に頷けば楽になるんだろうな)

 

そんな事を考えながらMPに連行されて行くのだった。

 

……

 

シュウが居なくなった艦橋で艦長のバリスは深く溜息を吐いた。

 

「艦長、コーヒー淹れましょうか?」

 

「ああ、頼む」

 

「艦長は彼が本当にジオンのスパイだとお考えで?」

 

副長がバリスに聞く。

 

「まさか。スパイにしては雑過ぎる。それに、こんな死に体の艦に乗り込むにはリスクが高過ぎる。彼が着艦する際手こずっていただろ。モビルスーツを操縦した事が無いのだろう」

 

「しかし、彼はモビルスーツに乗りザクを3機撃破してました」

 

「あの動きはセイバーフィッシュの機動とほぼ同じだった。つまり、彼はモビルスーツに乗りながらもセイバーフィッシュと同じ様に動かしていた。まあ、最後の反転攻撃は見事と言えるな」

 

バリスはメモ帳を見ながら呟く。

 

「AMBAC…か。モビルスーツだからこそ出来る機動だな」

 

「ですが、あの動きはかなり危険ですよ。私も昔は空軍にいましたから分かります」

 

「危険?」

 

「はい。身体に掛かるGによる負荷が大き過ぎます。あの高速機動から一転して反転するなど、自殺行為です」

 

副長は自身のパイロットとしての体験から答えを導き出した。

 

「だが、彼は平然としていたが?」

 

「それが分かりません。余程身体と内臓関係が強いとしか言えません」

 

副長は納得出来無い表情で首を傾げる。

 

「兎に角、彼の処遇はルナツーに着いてからだ」

 

バリスは緩くなったコーヒーを飲み顔を顰めるのだった。

 

……

 

艦隊がルナツーに向かう途中数回ジオンと遭遇したが、脇目も振らずにルナツーに向けて逃げていた。そして、遂にルナツーに到着した。ルナツー周辺にはマゼラン級やサラミス級が多数駐屯していたし、セイバーフィッシュやトリアーエズも周辺警戒の為多数出撃して行く。

 

「遂にルナツーに到着か。結局デザートも一日分しか来なかったし」

 

俺は一つの部屋に閉じ込められていた。しかし、この待ってる間暇だった為メモ帳を読んでいた。駄目元でメモ帳を読みたいと言ったら許可が降りたのだ。スパイ疑惑があるのに良いのかな?

ルナツーに着くと早速尋問を受ける事になった。

 

「さて、シュウ・コートニー一等兵。嘘を言えば君の為にはならん」

 

「分かりました」

 

この後尋問は続くが、スパイでは無いので素直に答える。ザクⅡは敵の輸送艦から手に入れた事。そこでメモ帳を見つけた事。ザクⅡに乗ったと言ってもセイバーフィッシュと同じ様に動かすしか無かった事。

 

「成る程な。君の経歴も調べさせて頂いた。だが、怪しい所は無かった。それに、バリス艦長以下数名の者達から署名も来ている」

 

「署名?」

 

どうやら、あの艦隊を助けたのは無駄では無かった様だ。まさかこんな形で助かるとは思わなかったけど。

こうして茶番の様な尋問は終了する。結局俺の処遇は無罪という形に収まった。因みにメモ帳は回収されてしまった。そして、ほんの僅かであるがひと時の安らぎを得る。

 

「これから先、どうなるんだろう?」

 

漆黒の宇宙に浮かぶ多数の戦艦や戦闘機を見ながら呟くのだった。

 



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地球降下阻止作戦

ルナツーに着いてから約一ヶ月が過ぎようとしていた。この間に戦局は、更に大きく動こうとしていた。

ルウム戦役にレビル中将が捕虜となる。そして、ジオン公国軍は地球連邦政府に対して停戦協定を提示する。内容はジオン公国優勢の内容だ。しかし、地球連邦軍にそれを止める力は無かった。だが、事態は此処で大きく揺らぐ。

レビル中将がジオン公国から脱出したのだ。そして、条約締結を行なってる最中にルナツーより全地球規模にて演説を行う。

 

『ジオンに兵無し』

 

ジオンの内情を世界中に伝えたこの演説を皮切りに、地球連邦政府は条約の見直しを決定。そして、大量破壊兵器である核やNBC等、コロニーや小惑星の使用禁止。特定地域の攻撃禁止。捕虜の取扱いについてのみ締結したのだった。

 

宇宙世紀0079.1月31日。この日よりルナツーでは待機命令が出される。ジオン軍に動きがあると情報が有ったからだ。

宇宙世紀0079.2月7日。ジオン軍が地球降下作戦を実施する。そして、この地球降下を阻止する為に地球連邦宇宙軍はルナツーより出撃するのだった。

 

……

 

ルナツー内の連邦軍は出撃態勢を整えていた。

今回の作戦は地球に降下するジオン軍に対し攻撃を仕掛け、地球降下を阻止する。その為、味方に多数の被害が出るのが予想されていた。だが、このままジオン軍を見逃せば地球侵攻を許してしまう。黙って見過ごす程、地球連邦宇宙軍は甘くは無いのだ。

 

「これより最終ブリーフィングを行う」

 

指揮官の言葉に全員が耳を傾ける。

 

「現在ジオン軍は地球降下の為、我々の故郷である地球に向け進行中である。しかしジオン軍にとって、その間は大きな隙となる」

 

モニターにジオン軍の布陣と連邦軍の布陣が出される。

 

「敵もモビルスーツを展開している筈だ。しかし、我々の全ての戦力の足止めは不可能である」

 

連邦軍の方からジオン軍に突っ込む様に矢印が出される。

 

「先ずはミノフスキー粒子を展開。その後艦隊の持つミサイルを全力射撃。それと同時にセイバーフィッシュ、トリアーエズ隊も突入。艦隊も戦闘機隊に対して援護射撃を継続する。何か質問はあるか?」

 

理論上では降下中のジオン軍に大打撃を与えている。だが、敢えて言わせて欲しい。

 

(無理だろコレ)

 

流石に発言するのは無理だが、こんな作戦無理です。絶対無理。圧倒的戦力を持ってても大敗北した連邦軍だ。にも関わらず、この戦力で攻めに行くとは……。

チラリと周りを見る。誰もが真剣な表情で説明を聞きモニターを見ていた。そして出撃準備に入る。機体はセイバーフィッシュだ。俺が確保したザクⅡは機体解析中だそうだ。

 

「コートニー伍長、指示通り機体の出力を限界まで上げて起きました」

 

「ありがとう。コレで少しはマシになるかな」

 

整備兵にお願いしてセイバーフィッシュの出力を上げて貰ったのだ。加速と最高速度は上がったが、代わりに継戦時間は減ったが。だが、モビルスーツに対して長期戦は厳しいから丁度良いだろう。因みに二階級昇進して伍長になった。理由はザク4機撃破とザクⅡの確保だ。

 

「あの、伍長。自分は整備兵です。ですが、この機体の出力で戦闘機動を行うと身体に掛かる負荷が大き過ぎます」

 

「大丈夫さ。多少の無茶は承知の上だ。それに、これぐらいやらないとモビルスーツと戦えない」

 

「伍長……了解です。自分も最終チェックします」

 

整備兵は敬礼をして俺のセイバーフィッシュのチェックに入る。

 

「助かる」

 

俺もセイバーフィッシュに乗り込み機体チェックをする。そして、遂に出撃の時間になった。

 

『全戦闘要員は直ちに戦闘配置について下さい。繰り返します。全戦闘要員は直ちに戦闘配置に』

 

警報と同時にアナウンスから出撃命令が下される。セイバーフィッシュとトリアーエズはマゼラン級やサラミス級に無理矢理取り付けて出撃する。

 

『総員に告ぐ。私はルナツー第2艦隊指揮官、ヴェルノ・ノリマー准将である。これより我々はジオン軍に対し地球降下阻止作戦を実施する。この作戦が成功する為には、諸君達の奮戦により一層期待する。以上である!ルナツー第2艦隊、出撃!!!』

 

それと同時に艦隊は発進する。俺はマゼラン級 パラマウンに運ばれてる。そう、パラマウンは以前助けた戦艦だ。そして近くにいるサラミス級も同じだった。

 

『コートニー伍長、今大丈夫かな?』

 

「バリス艦長。何でしょうか?」

 

『何、大した事では無い。この作戦が成功するかどうか、モビルスーツに乗った事のある君の考えを聞きたくてね。

 

「そうですね。多少のダメージを与える事は出来るでしょう。ですが、甚大な被害を受けるのは間違い無いかと」

 

俺達戦闘機隊も危険だが、艦隊の方も危険だろう。それに敵も降下中に攻撃が来るのは分かってる筈だ。

 

「厳しい戦いになりますね」

 

『そうか…。貴重な意見ありがとう』

 

バリス艦長はそう言って通信を切る。もしかしたら気休めの言葉が欲しかったのかも知れない。しかし、そんな嘘を言って何になる?

 

「俺に出来る事なんて、目の前の敵を倒すぐらいだし」

 

逆に殺される可能性の方が高いけど。俺はセイバーフィッシュのコクピットを眺める。この機体が俺の全てだ。なら、これで戦うしか無いんだ。

不安を押し殺す様に操縦レバーを握り締めるのだった。

 

……

 

間も無くジオン降下部隊と遭遇する。誰もがそう思っていた。だが、上方のサラミス級が突然爆発した。何事かと思うとザクが攻撃を仕掛けてきたのだ。

 

『対空監視!何をしていた!』

 

『敵が突然現れたんです!恐らく残骸に隠れていたかと!』

 

『言い訳は要らん!兎に角迎撃だ!』

 

更にザクだけでなく、ムサイ級巡洋艦も多数待ち構えていた。艦隊から多数のメガ粒子砲が射撃される。その御返しだと言わんばかりに反撃も来る。

 

『一部の艦隊は敵の足止めを行え!残りは降下部隊に攻撃だ!急げ!』

 

ヴェルノ・ノリマー准将から命令が来る。そして、マゼラン級パラマウンは前進する。他の戦艦、巡洋艦も更に続いて行く。しかし、ジオン軍の防衛網はかなり過激だ。絶対にこれ以上来させないと言わんばかりにミサイルやメガ粒子が飛んで来る。

 

『各艦に通達。間も無く敵の降下部隊が見える筈だ。ミサイルの発射準備を開始。それと同時に戦闘機隊を発進させる』

 

しかし、事は上手くいかない。そう、あの赤いザクが連邦軍艦隊の真正面に現れたのだ。

 

「バリス艦長!このままだと全滅する!今直ぐ戦闘機隊を発進を!」

 

『駄目だ!命令に従うんだ!』

 

(このままだと死ぬ。なら、命令違反でも構うもんか!)

 

セイバーフィッシュに火を入れてワイヤーをパージする。そして、一気に赤いザクに近付く。

 

(赤より紅だな…どっちも変わらんか)

 

小型ミサイルを発射する。だが、余裕で回避される。反撃がくるが此方も宙返りで回避する。そして、俺の背後に取り付く。

 

「想定通りだよ。このヤロー!」

 

そのまま地球の重力も利用して加速させる。そして目の前に多数の光を確認する。最初に見えたのはザクだ。向こうも此方に気付きマシンガンを撃ってくる。

 

「当てれるもんなら当ててみろ!」

 

更にセイバーフィッシュを加速させる。機体アラートが鳴るが無視する。ザクが斧を持って接近して来る。そして、腕を振り上げるのと同時に回避する。他のザクも迫って来るが1機のザクにメガ粒子砲が直撃して爆散する。その間に更にメガ粒子砲が飛んで来る。

 

「俺に当てるなよ!て、うわあっ!?」

 

セイバーフィッシュの真横をメガ粒子砲が通り過ぎる。この場に居るのは危険過ぎる。俺は更に危険な場所へ向かう。そう、ジオン軍地球降下部隊だ。

そして遂に見えたのだ。ジオン軍地球降下部隊だ。だが、ジオン軍のムサイ級巡洋艦がメガ粒子やミサイルを撃って来る。それを勘だけで避けて行く。背後にはザクは付いて来ていない。流石に味方艦隊の射線に入りたくは無いだろう。周辺の敵が慌ててるのが手に取るように分かる。

 

「これでチェックだ」

 

小型ミサイルを乱射する。更に対艦ミサイルを大気圏突入カプセルに撃ち込む。そのまま一気にUターンして追い掛けて来るザクにバルカンを撃ちながら突っ込む。

 

『何だこいつ。すばしっこい!』

 

『気持ち悪い動きをする』

 

『連邦の新型か!?』

 

いえ、唯のセイバーフィッシュです。そのまま上方に向けて逃げる。その時、背後で爆発が起きる。後ろを振り向くと、先程対艦ミサイルを撃ち込んだカプセルが爆発していた。恐らく弾薬等が沢山入っていたのだろう。だが、当たりどころが悪かったのか直ぐに大気圏に落ちていった。

 

「仕方無いか。うげ、燃料が少ない」

 

急いで連邦艦隊に向けて逃げる。一部の艦隊と飛行隊が被害を無視して突撃するが、ザクとムサイによって阻まれてしまう。

それでも攻撃を行なうが、殆どの攻撃は効果が無かった。地球と言う重力がメガ粒子砲やミサイル弾道に影響してしまったのだ。

そして降下阻止作戦は失敗に終わった。しかしルナツー第2艦隊の本当の戦いは此処から始まるのだった。



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V作戦、ビンソン計画

誤字報告ありがとうございます。

因みに、RGM-79ジムの先行量産型はいつ頃生産開始してるか分かります?10月頃とかオデッサ作戦とか色々あるみたいですが。


地球降下阻止作戦が失敗したのは誰の目に見ても理解出来た。無論ルナツー第2艦隊指揮官、ヴェルノ・ノリマー准将も戦況を理解して撤退命令を下す。

 

「全艦艇に通達だ。直ちにルナツーへ向かい撤退する」

 

「了解です。此方旗艦アルケーノより全艦艇に通達する。直ちにルナツーに撤退せよ。繰り返す、直ちにルナツーに撤退せよ」

 

ヴェルノ・ノリマー准将は艦橋から見る光景を見て口元を歪める。

 

「この戦力はジオンより圧倒的だと言うのに。モビルスーツ…アレは欠陥兵器では無かったのか?」

 

ジオン公国がモビルスーツの開発をしている事は以前より連邦軍は把握していた。しかし、その実用性は皆無であると結論付けていた。だが蓋を開ければ如何か?圧倒的戦力差があるにも関わらず地球連邦軍は敗戦続き。そして、今は母なる大地である地球に土足で入り込もうとするジオン。

 

「この借りは必ず返す。一部の艦隊に足止めを命じ「下方より多数のモビルスーツ接近!」何だと!対空砲、弾幕を張れ!」

 

旗艦アルケーノに続き他の艦艇も弾幕を張る。だが、気付くのが遅過ぎた。

 

「ナウマン攻撃を受けています!」

「サラタカ被弾!ダメです!沈みます!」

「弾幕を密にするんだ!」

「戦闘機隊交戦中。ですが、次々と撃破されて行きます!」

 

通信から入って来る情報は全て味方が被害を受けているのばかりだった。

 

「何をしている!撤退だ!兎に角ルナツーに撤退をっ!?」

 

それがヴェルノ・ノリマー准将の最後の言葉だった。何故なら真紅のザクがザクバズーカを艦橋に向けて撃ち込んでいたのだから。

 

……

 

旗艦アルケーノが撃沈した。それにより次の指揮はマゼラン級トリスタンになる。

 

『命令に変更は無くルナツー撤退を優先とする。戦闘機隊は敵モビルスーツの足止めを行え』

 

トリスタンから全艦艇に通達が出される。

 

『俺達は捨て駒扱いかよ』

 

『畜生!ジオンめ!』

 

『編隊を崩すな。孤立したらやられるぞ』

 

通信が多数入り乱れてる中、俺のセイバーフィッシュも燃料と弾薬を何とか補給する。しかし補給中は肝を冷やした。補給中に整備兵が数人爆発に巻き込まれてしまったからだ。飛ばされてしまった整備兵達は最早探す事は出来そうに無い。

 

「此方ガルム12、発進する!」

 

戦艦パラマウンからの返信を待つ事無く再出撃する。今回の作戦で臨時編成で構成された部隊に入ったのだが、もう全滅してしまったらしい。

 

「一人で勝てる戦いなら苦労はしないんだよなぁ」

 

最早遊撃ぐらいしか出来無い。セイバーフィッシュはほぼ唯一ザクに対抗出来る機動兵器だ。だが、圧倒的に戦力差があり過ぎる。

 

「取り敢えず艦隊の間に居るザク!お前らはどっかに行け!」

 

ミサイルとバルカンを撃つ。あっさり避けられるが構わない。狙われてると意識させるだけで充分だ。そして、あのザクが目の前に現れた。そう、紅い…真紅のザク。あの動き…そして、派手な真紅のカラーリングされたザク。

 

「畜生!エースパイロットとでも言うのか!」

 

その通りだと言わんばかりに味方のセイバーフィッシュを蹴り飛ばす。そのまま流れる様にマシンガンを撃ち更に撃破。

 

「これ以上やらせるか!ミサイル全弾発射!」

 

出し惜しみして勝てる相手じゃ無い。なら、最初から全弾プレゼントだ!しかし真紅のザクは避けてシールドでガードして、あっさり対処されてしまう。逆にマシンガンの反撃が来る。

 

「クソ!火力が足り無い。いや、運動性に違いが有り過ぎるんだ」

 

ザクとセイバーフィッシュ。最早比べるまでも無く違い過ぎるんだ。

 

(付け焼き刃程度のセイバーフィッシュなんて…相手にならないのか)

 

自分の乗るセイバーフィッシュは優秀な戦闘機なのは分かる。だが、モビルスーツ相手には勝て無い。

それでも…戦うしか無いんだ。戦うしか生き残れ無い!

 

「やるだけやってやる!このおおおお!!!」

 

俺は機体を加速させ敵に攻撃を再開する。先ずは真紅のザクにバルカンを撃ち込むのだった。

 

……

 

地球連邦宇宙軍、ルナツー第2艦隊は甚大な被害を受けてルナツーに帰港した。

ヴェルノ・ノリマー准将の戦死を始め、ルナツー第2艦隊は1/3を失った。戦闘機隊のセイバーフィッシュ、トリアエーズも半数以上を失った。これによりルナツー第2艦隊は再建する為に時間を要する事になった。

 

「死ぬかと思った」

 

俺は何とか生き残る事が出来た。所属していた部隊は俺を残して全滅した。だが、幸いな事にマゼラン級パラマウンとサラミス級3隻は被害を受けつつも帰港出来ていた。

 

『コートニー伍長、無事に生き残れたな』

 

「バリス艦長。其方も無事で良かったです」

 

『うむ。君の活躍には感謝している。兎に角、今はゆっくり休むと良い』

 

バリス艦長はそう言って通信を切る。それと同時に身体の力が一気に抜ける。

 

「はあ……本当、何でこんな戦争やってるんだろう?」

 

ふと今迄の人生を振り返る。地球で生まれて直ぐに孤児院に行く。そして、孤児院が潰れてサイド2やサイド6に転々とたらい回しにされる。コロニーでは地球人と差別されながら生活していた訳だ。

特に親しい人は居なかった。元々天涯孤独の身だ。だからだろか、他の人達より一歩引いた所から見てるのは。皮肉な事に今迄の人生がこんな形で役に立つとはな。

 

「本当、早く戦争終わら無いかな」

 

そう呟きながら俺は意識を手放したのだった。

 

……

 

地球降下阻止作戦の失敗の後、ジオン公国軍は更に地球に降下していった。勿論、ルナツーの宇宙軍も抵抗するが戦力が足り無い…足りなさ過ぎたのだ。

この2〜3月の間に地球侵攻を成功したジオン公国軍はバイコヌール宇宙基地、オデッサを制圧。更に北米、中米、東アジア、ヨーロッパの各都市に侵攻。戦場は地球全土に広がる。

宇宙世紀0079.3月後半には大陸の1/2がジオン公国軍により制圧。ジオン軍の地球侵攻の勢いは凄まじく、モビルスーツを持た無い地球連邦軍は為すすべが無かった。

宇宙世紀0079.4月1日。遂に大陸の2/3がジオン公国軍の物となった。だが、この時期からジオン軍の勢いは停滞し始める。そして地球連邦軍の反撃も開始されるのだった。

 

【V作戦】

 

この作戦は地球連邦軍がジオン軍と同じ土俵に立つ為の必勝の作戦であった。モビルスーツの開発を主とする【RX計画】と建艦計画である【ビンソン計画】も同時進行させた。

 

この日より地球連邦の反撃が始まるのだった。

 



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V作戦参加

アニメ版ではワッケイン少佐ですが、他の作品だと大佐とか他の階級ですよねー。一応大佐の階級にしてます。


宇宙世紀0079.5月1日

 

この日、ルナツーのワッケイン大佐に呼び出された。何かやったかと不安を感じつつ執務室に向かう。そして先の戦闘により俺は軍曹になった。

 

「失礼します。シュウ・コートニー軍曹です」

 

「入ってくれ」

 

失礼しますと一言言ってから入室する。ワッケイン大佐は仕事中なのか書類処理をしていた。

 

「さて、今日君を呼び出したのはある作戦の為に呼んだ」

 

「ある作戦ですか?」

 

その作戦は地球連邦軍がジオン軍と対等の立場で戦う為の作戦。そして、この戦いに勝つ為の作戦。それを【V作戦】と言う。

 

「君はこのV作戦をより早く成功させる為に、鹵獲したザクをジャブローに運んで貰う。そして、君が宇宙での戦闘を行なったデータも持って行って貰う」

 

「地球に降下…了解です」

 

「それと、君は重力下でのモビルスーツの動かし方は大丈夫かな?」

 

重力下での動かし方か。多分無理だな。

 

「無理です。一応動かし方は覚えてますが、実際動かした訳では有りませんので」

 

「成る程な。なら今から一週間以内に重力下でのモビルスーツの動かし方を覚えるんだ。ザクに乗る許可は出す」

 

「了解しました」

 

こうして、ルナツーの表面を歩く練習をする。地球の重力下とは違うが、何もし無いよりかはマシだろう。そして一週間後、俺は地球に降下する事になった。

 

……

 

宇宙世紀0079.5月8日。俺は大気圏突入カプセルの中に入ってるMS-06C通称ザクのコクピットの中に居た。因みにパイプの無いザクは旧ザクだ。最も地球連邦軍にとっては旧ザクもザクも脅威以外何物でも無いけど。

 

「まさか、このメモ帳も渡す事になるとはな」

 

何と無くメモ帳を読みながら思う。確かに色々為になる事が書かれてるからな。そしてザクの機体チェックと武器も確認する。

120㎜ザクマシンガンとザクの残骸から拾った接近用のヒートホークだ。更に手投げのグレネード5個装備している。これらの武器はもしもの為の物である。出来れば使いたく無い物だが。

 

『コートニー軍曹、これよりパラマウンにより地球まで運んで行く。その後ジャブロー上空に降下させる』

 

「了解しました」

 

『軍曹、君の乗っているモビルスーツを必ずジャブローに届けるんだ。頼んだぞ』

 

俺は頷く。そして、ザクを乗せた大気圏突入カプセルを搭載したマゼラン級パラマウンを中心としてサラミス級3隻で固める。今回の作戦はスピード重視になる。敵は無視して交戦は避ける。兎に角地球に向かう。

 

『しかし、君とは何かの縁があるのかもな。助けられた後も何度も戦場を共にして来た』

 

「そうですね。お互いこの戦争から生き残りましょう」

 

『うむ、その通りだな』

 

遂に地球に向けて発進する。現在地球の戦力図はジオン軍優勢だ。地球というホームグラウンドでありながら地球連邦軍は敗戦続き。ジオンに兵無し。今は言葉を信じる事が出来そうに無かった。

 

……

 

「間も無く地球軌道上に入る。対空監視を厳にせよ」

 

「了解しました」

 

マゼラン級パラマウンのバリス艦長は不安感に包まれていた。と言うのも宇宙はほぼジオン軍に制圧されている。そんな中、地球に向けて航行しなければならないのだから無理は無い。

 

「レーダーに感あり!ミサイル群来ます!」

 

「ミノフスキー粒子散布、艦隊迎撃用意。最大戦速で地球に向かうんだ」

 

ミノフスキー粒子を散布してミサイル群をやり過ごす。そして、メガ粒子砲も飛んで来る。勿論艦隊も撃ち返すが速力は落とさない。

 

「レーダーに更に熱源接近!モビルスーツです!艦長、このままではジャブロー降下は出来ません!」

 

通信兵から悲鳴の様な報告が上がる。

 

「降下ポイントを変更する。地図を出せ!」

 

地球連邦軍が維持している基地の場所がモニターに表示される。そして、一つの基地に目標を変える。

 

「ジャブロー降下は不可能と判断。よって、降下を早めてベルファスト基地に降下させろ」

 

艦隊が進路を変更。しかし、その間にもメガ粒子砲は飛んで来る。

 

「チェリオ機関部に被弾!誘爆します!」

 

「デミリア、ザクに囲まれてます!」

 

『此方デミリア、行ってくれ…故郷の…家族の仇をザザザザ』

 

通信が切れたのと同時に光が艦橋を照らす。

 

「クラスタから通信。『我、殿に就く。御武運を』」

 

「〜〜ッ!機関最大戦速!壊れても構わん!何としてでもカプセルを降下させるんだ!コートニー軍曹、予定より早いが降下開始だ。貴官の健闘を祈る」

 

『待って下さい!自分が出ればこの艦だけでも』

 

「駄目だ。君の任務はそのモビルスーツを…ザクをジャブローに届ける事だ』

 

『しかし!此の儘では!』

 

ドンッ!

 

バリス艦長は椅子の肘掛けを拳で叩く。

 

「戦局を見誤るな!今、目の前の犠牲と今後の犠牲を比べるのだ。今の君は大局を見て行動しなければならん!」

 

『大局…了解、しました。バリス艦長、御武運を』

 

「君もな。コートニー軍曹」

 

コートニー軍曹との通信を切る。

 

「大気圏突入カプセル、降下用意」

 

「降下用意…良し」

 

「降下開始!目標連邦軍海軍基地ベルファスト。艦の速力はそのまま。カプセルと並走させるんだ」

 

「クラスタと通信途絶。モビルスーツ接近!」

 

「……艦を反転。迎撃用意!死にたく無い者は脱出の許可を出す。安心しろ、罪には問わん」

 

艦内放送にて全乗組員に伝える。しかし、殆どの人間は逃げずにその場に残る」

 

「マリア…すまない」

「母さん、其方に行くよ」

「さて、最後の御奉仕と行きますか」

 

そんな乗組員を見てバリス艦長は目を瞑る。彼が何を思っているのかは誰にも分からない。

 

「総員、戦闘開始!ジオンの連中共に連邦の意地を見せろ!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

マゼラン級パラマウンは地球軌道上ギリギリで戦闘開始。モビルスーツも攻撃を開始するが、どうしても一歩引いた場所で攻撃をする。パラマウンはムサイ級3隻と砲戦を開始。

 

「第2、第3ブロック被弾!」

「ミサイル発射管大破!誘爆は有りません!」

「これ以上の降下は危険です」

「ダメコン急げ!艦を保たせるんだ!」

「敵艦1隻を撃破!やりました!」

 

ムサイ級を1隻撃破に成功。しかし、最早これまでだった。

パラマウンはゆっくりと地球の重力に引かれて行く。しかし、パラマウンが轟沈する最期まで攻撃は止まるは無かった。この奮戦はその場に居たジオン軍将兵に畏怖を与える結果となった。地球連邦軍の兵士は誰もがジオンを憎んでいるのだと痛感させたのだった。

 

……

 

大気圏カプセルのザクのコクピットで思う。何も出来ない無力感。しかし、今は耐えなければならない。でなければ、今日散って行った者達は何の為に死んで行ったのか。

 

「必ず、この機体をジャブローに届けます。必ず」

 

大気圏に突入して激しく揺れ動くザクの中で死んで行った者達に誓うのだった。

 



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ベルファスト基地

今回はあの機体に搭乗します。
え?あの機体て何か?アレですよアレ。

と言う訳でどうぞ。


地球連邦軍ベルファスト基地

 

「司令、レーダーに反応があります。上空から味方の大気圏突入カプセルが降りてきます」

 

「何?報告は聞いてないが?」

 

「自分も聞いてはおりません」

 

ベルファスト基地司令は眉を潜める。だが、無視する訳には行かないだろうと判断する。

 

「哨戒機を警戒に当たらせろ。それから歩兵部隊を展開させろ。積荷が何か確認するんだ」

 

ベルファスト基地から一部の部隊が出撃して確認に赴くのだった。

 

……

 

「う……あ、此処は。そうか、地球に降りたのか。やっぱり身体が重たいね」

 

俺は宇宙の無重力が結構好きだ。ザクを起動させカプセルから出る。そして近くに居るだろう連邦軍に通信を試みる。

 

「此方、地球連邦宇宙軍ルナツー第2艦隊第207戦闘機隊所属シュウ・コートニー軍曹。応答願います」

 

『此方ベルファスト基地の航空部隊だ。この基地に大気圏突入カプセルが来る予定は無かったが?』

 

「本来ならジャブローで降りる予定でした。しかし宇宙でジオン軍から襲撃を受けました。味方艦隊は自分を残して…」

 

『そうか、すまなかったな。それで積荷は何だ?必要ならトレーラーを用意するが』

 

「大丈夫です。歩行の練習も有りますので其方に直接向かいます」

 

『直接?一体何を持って…っ!司令部!敵だ!ザクが居るぞ!?』

 

通信からとんでもない情報が伝えられる。て、ちょっと待て。このままだと味方に殺されてしまう。この後何とか説得してベルファスト基地に入る事が出来た。

 

「両手を挙げて出て来い!」

 

「畜生、またこのパターンかよ。今から降りるから撃つなよ!」

 

この後、基地司令に連行される。確かに敵兵器であるザクを操縦していたが、味方と分かってくれたなら優しく扱って貰いたい物である。

 

「それで、シュウ・コートニー軍曹。君はV作戦とやらの為に態々地球に降りてきたと?」

 

「はい。後は宇宙での戦闘データと敵パイロットが所持していたメモ帳を提出します」

 

「成る程な。それで、君はこれからどうするのかね?本来とは違う場所に降りてきた訳だが」

 

基地司令が意地悪な質問をしてくる。

 

「出来ればザクを運んで貰いたいです。無理なら…自力で行きます。それが、俺を地球に降下させてくれた彼等に出来る唯一の葬いですから」

 

例え力を貸さなくても構わない。

 

「無謀だな。海はどうやって渡る?ジャブローまでの道程は楽では無いぞ?」

 

「無謀なのは百も承知です。ですが、止まる訳には行きません」

 

自分の掌を見つめる。何も出来なかった。大局を見据えて行動するのは難しく、とても辛い。

 

「はあ、気概だけで任務達成出来れば苦労はせんよ。幸いな事に一週間後にジャブローから補給部隊のミデア輸送機が来る。その時、ミデアに乗せて貰うと良い」

 

「司令…」

 

「君の気概は充分分かった。それに、友軍を見捨てる地球連邦軍兵士は居ない」

 

「ありがとうございます。あ、あの一つお願いが有ります」

 

「ん?何かね?」

 

「戦闘機を1機貸して下さい。ミディア輸送機の護衛をしたいので」

 

この時、ベルファスト基地司令はシュウを見捨てるつもりは無かった。基地司令もV作戦については多少聞き及んでいた。そして、シュウを助ければルナツーとレビル将軍に大きな借りが出来るのだ。つまり、シュウを助けるメリットは大きい。

 

「良かろう。フライアロー制空戦闘機を与えよう。操縦は出来るのかな?」

 

「セイバーフィッシュは操縦してました。ですので少しの転換訓練で大丈夫かと」

 

この後直ぐにフライアローの操縦を覚えるように命令が下る。そして一週間後、ジャブローから来た補給部隊のミデア輸送機が到着する。しかし、損傷機が多数居た。然もミデア輸送機は2機が撃墜されたらしい。一応ガンシップ仕様のミデアも居るからマシな損耗率なんだろう。

 

「では、ザクの輸送を頼んだぞ。レビル将軍に宜しく伝えておいてくれ」

 

「了解しました。ジャブローまでザクを運びます。それから護衛機の方ですが」

 

「途中までなら可能だ。それから1機のみジャブローまで護衛を継続してくれる」

 

「1機だけですか。了解しました。直ちにザクの搬入を開始します」

 

それからミデア輸送機隊は積荷を降ろした後、ザクを搬入して補給を済ませる。

 

「今回ジャブローまで護衛するシュウ・コートニー軍曹です。宜しくお願い致します」

 

「ああ、君が最後まで護衛をしてくれる人か。君の戦果は聞いてるよ。セイバーフィッシュでザク1機撃破したのだろう?心強いよ。私はミディア輸送隊の機長のルリス・カリアス中尉だ」

 

俺はルリス・カリアス中尉と握手する。

 

「しかし、よくザクを鹵獲したな」

 

「運が良かったんです。それと、ジャブローまでの道程の途中で空中補給は出来ますか?」

 

「ああ、ミデアのガンシップ仕様には通常のミデアより燃料が多く搭載されてる。其処から補給が可能だ」

 

「了解しました。それでは道中は宜しくお願いします」

 

「此方こそな。君の腕前には期待してるよ」

 

それから一時間後に補給が完了したミディア輸送隊は護衛機と共に発進準備に入る。

 

『此方、ミデア1番機から各機に通達。これよりジャブローに帰投する。我々は飛行ルートを遠回りで行く事になった。だが、敵との接敵の可能性は高い。全機、周辺警戒は常に厳とせよ』

 

そして、ミディア輸送隊はジャブローに向けて飛んで行く。そしてベルファスト所属の護衛機も後に続く。

 

『管制塔よりガルム12。滑走路に移動して下さい』

 

「ガルム12了解」

 

フライアローにを滑走路に移動させる。

 

『進路クリア、発進どうぞ』

 

「了解。ガルム12行きます!」

 

フライアローのアフターバーナーを全開にする。そして俺は地球の空を飛ぶのだった。

 

『よお、お前がザクに乗ってた奴か?』

 

「そうです。それが何か?」

 

『へ、お前が何者かは知らねえがジオンだったら容赦無く撃ち殺すからな。覚悟しとけよ』

 

そう言って通信は切れる。

 

「ザクを動かしただけで裏切り者扱いか。ジオンに対する憎しみは留まる所が無いな」

 

宇宙での大敗北、そしてコロニー落としによる被害。更に二次被害による犠牲者は未だに出ている。此れだけ見ればジオンを憎むなと言うのは無理がある。

 

「俺だって味方の艦隊や部隊を失った。恨む気持ちはあるしな」

 

ジオン軍に対して容赦をするつもりは無い。だが、俺はジオン軍の様に無抵抗の民間人や降伏する敵兵を殺すつもりは無いぞ。

それから暫くすると敵の偵察機を発見する。

 

『バルス1よりガルム12、敵偵察機を撃墜せよ。ザクを撃破の腕前を見せて貰おうか』

 

「ガルム12了解」

 

フライアローを全開で飛ばして行く。偵察機も此方に気付いて回避機動を取る。それと同時に機銃で攻撃をして来る。

 

「やっぱりジオンの戦闘機は好きになれんな」

 

なんか形が気に入らんのだ。偵察機を30㎜バルカン砲の射程に入れる。そして、トリガーを引く。30㎜弾は偵察機に吸い込まれる様に当たる。そして、爆散。

 

「此方ガルム12。敵機を撃墜」

 

『ほう、中々やるじゃ無いか。良し、編隊に戻れ』

『へっ、アレぐらいなら俺なら三秒で片付けれるぜ』

『何言ってやがる。逆に三秒で撃墜されるの間違いだろ?』

『それは皮肉としては笑えるぜ!』

『んだとゴラァ!お前ら後で覚えてろよ!』

 

どうやら漸く味方として迎えてくれそうだ。

 

『無駄話は此処までだ。偵察機を撃墜したとなれば次は敵戦闘機部隊が来る筈だ。警戒を厳とせよ』

 

『『『『『了解!』』』』』

 

そして、予想通り敵戦闘機ドップ隊が接近して来る。

 

『全機、戦闘態勢!ミサイル発射と同時に散開して敵を撃破せよ!』

 

『バルス3了解』

『バルス5了解!待ちくたびれたぜ』

『トマホーク1了解。全機行くぞ!』

 

「ガルム12了解。ミサイルロック…発射!」

 

各機からミサイルが発射される。それと同時に敵戦闘機ドップからも反撃のミサイルが来る。

 

『全機散開!此処の空は俺達のホームグランドだ!堕とされるなよ!』

 

ドップとフライ・マンタが入り混じる。序でに俺のフライアローも。と言うかフライアローは俺しか乗ってない悲しさ。

 

「て、無駄な事考えてる暇は無い。行くぞ!」

 

俺もドップと交戦を開始する。敵も味方も次々と堕ちていく。そんな中、ミデア輸送機に突撃して行くドップが3機いた。

 

「やらせるかよ。それに、俺達を無視して行くとはね」

 

フライアローは直ぐにドップに食い付く。

 

『敵に食いつかれた!畜生!』

 

敵は焦ったのだろう。フレアを射出する。だが、俺は冷静に30㎜バルカン砲を撃つ。

 

「次はお前だ」

 

今度はミサイルを撃つ。フレアを射出して回避する。その隙にもう1機に攻撃を仕掛ける。

 

『うわあああ!?死にたく』

 

ドップは30㎜弾が直撃して爆散する。

 

『よくも仲間を!貴様だけは仕留める!』

 

「来るか。格闘戦は得意だぜ」

 

お互い格闘戦入る。それは多大なGによる負荷が身体に押し掛かる。

 

『くっ…こ、これ以上は』

 

ドップは俺との格闘戦から離脱する。その隙に背後を取る。

 

「……すまんな」

 

最早抵抗の意思は無いだろう。だが、見逃す訳には行かない。何故なら、逃したらまた誰かを殺すだろうから。ミサイルをロックして発射。ミサイルはドップに直撃して爆散したのだった。

 

……

 

『我々はこれより離脱します。御武運を』

 

『其方もな』

 

ベルファスト所属の戦闘機隊は離脱して行く。

 

『コートニー軍曹、君の腕前は中々の物だった。ミデアを宜しく頼む』

 

「了解しました」

 

『頼んだぞ。そして死ぬんじゃ無いぞ』

 

そう言って戦闘機隊はベルファスト基地に帰還して行ったのだった。

 

「さて、此方ガルム12。燃料補給を頼めるか?」

 

『此方ミデア7号機了解した。後ろに来てくれ』

 

それから空中給油を行う。

 

『補給完了した。もはやガルム12だけが頼りだからな。しっかり護衛を頼むよ』

 

「最善は尽くします。ただ、敵の大群が来たら逃げて下さいよ。守りきるのは厳しいですから」

 

『分かってるさ。ただ、此方もガンシップだ。多少の援護は可能だからな』

 

フライアローが1機、ガンシップの数は3機、ミデア輸送機は4機。敵と接敵しない事を祈るしか無いな。

不安を抱きつつもミデア輸送機隊はジャブローに向かって行くのだった。

 




フライ・マンタでは無くフライアローでした。

でも、フライ・マンタよりフライアローの方が好きです。後、今回搭乗したフライアローは単座式です。


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ベルファスト基地→ジャブロー

感想ありがとうございます。続けて書けるよう頑張ります。


『各機に通達。ジャブローまで残り半分まで来た。しかし敵との遭遇戦との可能性は高い。各機周辺警戒を厳にせよ』

 

「言われなくてもやってるさ」

 

少し雲が出て来た。俺はフライアローを上昇させ警戒に当たる。眩い太陽、青い空、白い雲、前方に鳥の群れ…ん?

レーダーを確認すると反応がある。畜生!待ち伏せだ!

 

「ガルム12よりミデア隊。12時方向上空に敵機だ!数は20機以上だ!低空飛行で逃げろ!」

 

『な、なんだと!?コートニー軍曹、我々を守ってくれ!』

 

「やるだけやる。だが、大多数は其方に行くぞ!」

 

その直後ロックアラームが鳴り響く。そして多数のミサイルが飛んで来る。

 

「フレア射出!雲の中に回避する!」

 

ミサイルをフレアで何とか撒く。だが、ドップ6機が追って来る。

 

『たった1機で止められると思ってるのか?』

 

『ハハッ!これじゃあ戦闘じゃ無くて狩だぜ』

 

『ほらほら上手く逃げないと死んじゃうぞ?』

 

ドップ6機は瞬く間に俺の背後を取る。そして1機のドップが背後から更に接近して来る。

 

『連邦のクソ野郎が。此れで終わりだ!』

 

敵がロックして来る。ロックアラームが鳴り響く。だが俺はこの瞬間を待っていた。

 

「パラシュート射出!」

 

フライアローの後部からパラシュートを射出させる。本来なら緊急時に使う代物だが目くらましに使う。

 

『畜生!?パラシュートが絡まって前が見えない!』

 

『一度離脱しろ。最悪脱出するんだ』

 

ドップの隊列が崩れる。その隙に雲の中に入る。そして一気に旋回してドップの背後に付く。

 

「貰ったぞ」

 

ドップをロックしてミサイルを撃つ。ミサイルはドップに直撃して墜落して行く。そのまま30㎜バルカン砲で2機目を撃破。

 

『くそっ!2機やられたぞ』

 

『野郎、もう許さねえ!』

 

『落ち着け。囲んで行くんだ』

 

1機のドップが接近して来る。そのままドックファイトに縺れ込む。更に他のドップも来る。だが、ドックファイトは俺の十八番だぜ!

1機、また1機と撃墜して行く。

 

『クソ…何なんだ、此奴の…動きは』

 

「捉えたぞ」

 

5機目を撃墜。その時ミデア輸送隊から通信が入る。

 

『此方ミデア1番機、敵に囲まれてる!た、助けてくれ!』

 

「ガルム12了解。直ぐに其方に向かう」

 

パラシュートが絡まってるドップを無視する。そしてミデア輸送隊の方に急ぐ。

 

『ミデア3番機、第2エンジン被弾!速力低下!』

 

『密集して対処するんだ。弾幕をもっと張るんだ!』

 

『此方7番機被弾した!被弾した!ダメだ、墜ちる!脱出』

 

『ガンシップが墜ちた!残り4機しか残って無いぞ!』

 

『このままだと全機堕とされる。救援は来ないのか!』

 

急いでミデアの方に向かう。どのミデアも被弾してる。中には黒煙を上げてる機体もある。そして手近なドップをロックする。そして最後のミサイルを発射する。ミサイルはドップに直撃して爆散。そのままドップに突っ込み機銃を撃ち込む。

 

『護衛のフライアローか。叩き落とせ!』

 

今度はドップの群れが相手になる。だがミディアの護衛が最優先だ。ミディアに絡んでるドップに攻撃を仕掛ける。だがアッサリ回避される。勿論ミディアからも援護射撃は来る。しかし、戦力差が大き過ぎる。

 

「不味い!ミデア3番機!回避しろ!」

 

『無茶言うな!頼む、助けてくああああ!?!?』

 

ミデア3番機がミサイル3発直撃して爆散。残り3機。輸送機2機にガンシップ1機。

 

「クソ、ジャブローから援軍は来ないのかよ!そしてケツに食い付くな!」

 

機体をロールして振り切る。機体が悲鳴を上げてる気がするが無視する。

 

「後ろ取ったっ!ダメだ、捉えられ無い」

 

多勢に無勢。だが、前方から友軍の反応が有った。

 

『友軍だ!助かったぞ!』

 

『ジオンのクソ野郎どもを蹴散らしてくれ!』

 

漸くジャブローからの援軍が来たのだ。そして一気に形勢逆転する。流石に不利と判断したジオン軍は撤退して行く。漸く一安心と言った所かな。

 

『此方ジャブロー防空隊第37戦闘機隊のロータス1だ。良く耐えたな。もう安心してくれ』

 

『助かったぞ。ガルム12も奮戦感謝する。正直あんたが居なかったら全滅してたよ』

 

「役に立てたなら良いさ。はあ、疲れた」

 

『ガルム12大丈夫か?エスコートは必要か?』

 

「大丈夫です。ちょっと気が緩んだだけですから」

 

援軍のフライ・マンタに守られながらジャブローに向かう。

 

「漸くジャブローか。バリス艦長、それに皆さん。無事任務達成しました」

 

俺はあの空に散って逝った勇敢な戦友達に対し敬礼したのだった。

 



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前期生産型RGM-79ジム

主人公達にもモビルスーツが!一体どんなモビルスーツが配備されるんだ?←おい!サブタイトルに!「それ以上はいけない」ムグッ


ジャブロー。其処は地球連邦軍の本拠地である。そして、ジオン公国軍が最も潰したいと思ってる場所だ。

 

『此方ミディア補給隊。着陸許可を頼む』

 

『了解した。暫し待機されたし』

 

そして遂にジャブローの入り口が開く。地面の一部が移動して滑走路が現れる。

 

『ミディア補給隊、着陸せよ。続いて戦闘機隊着陸せよ』

 

「スゲー、地下基地だと聞いてはいたけど本当に地下にあるんだ。ヤバイ!テンション上がって来た!」

 

不謹慎ながら地下基地や秘密基地とか聞いただけで胸熱である。こうして俺の任務は達成したのだった。

 

……

 

ジャブローの士官に基地内の説明を受ける。そして、あるお偉い様と出会う事になる。

 

「失礼します。レビル将軍、コートニー軍曹を連れて参りました」

 

「うむ、御苦労。下がって良いぞ」

 

まさか地球連邦軍最高司令官であるレビル将軍であった。この時俺はガッチガチに固くなってしまう。考えてみて欲しい。地球連邦軍最高司令官だぞ?地球連邦軍のトップな人が目の前に居るのだ。緊張しない訳が無い。

 

「さて、コートニー軍曹。君の活躍は報告書で読ませて貰ったよ。セイバーフィッシュでザクを1機、そして鹵獲したザクでザク3機を撃破。更にV作戦の為に宇宙からジャブローまで運んで来た」

 

「はっ!恐縮であります!」

 

「そう硬くならなくて良い。もっとリラックスしたまえ。私も硬くなってしまうよ。コーヒーでも淹れようかね?」

 

「いえ、大丈夫です」

 

取り敢えずソファーに座る様言われる。一回落ち着く為にソファーに座り深呼吸する。するとドアが開いて女性士官が入って来る。コーヒーを持って来てだ。

 

「どうぞ」

 

「あ、どうもです」

 

あぁ〜、正に華であり癒しである。レビル将軍はこんな美人を側に置いてるのか?だったら羨ましい。コーヒーを飲みながら思う…うげ、砂糖とミルクが無いぞ。

 

「落ち着いたかね?報告書の内容にはモビルスーツで歩行訓練もしてたそうだね」

 

「はい。ルナツーの表面を歩いてました。何回か転びましたが、最終的には走ったり飛び跳ねたりしました」

 

「成る程な。なら君は多少なりともモビルスーツは操作可能な訳だな。ならコートニー軍曹、君にはV作戦の為に力を貸して欲しい」

 

「了解しました。それで一体自分は何をすれば?」

 

「うむ。先ずはモビルスーツの転換訓練を受けて貰う。我々地球連邦軍にはモビルスーツが必要だ。だが、それと同時にパイロットも必要不可欠なのだ」

 

この後ある書類を渡される。その書類には連邦製モビルスーツRRf-06ザニーと書かれていた。

 

「これは連邦軍のモビルスーツですか!いや、しかしV作戦はどうなるのですか?」

 

「勿論継続中だ。このモビルスーツは色々欠陥が多くてな。とてもでは無いが実戦運用は出来ないと判断した。だが我々地球連邦軍にとってモビルスーツのノウハウを手に入れる為に作ったのだ。それと同時に転換訓練用として運用してる訳だ」

 

成る程な。V作戦とは別物のモビルスーツなんだ。こうして俺は戦闘機パイロットからモビルスーツパイロットの転換訓練を受ける事になった。

 

……

 

RRf-06ザニー。この機体を一言で言うならザクの猿真似である。部品の一部にはザクと共通点が有る。更にV作戦と違い予算不足とモビルスーツのノウハウ不足が合わさり中途半端な出来になってる。

ジャブローに来て五日後。遂にモビルスーツ転換訓練に出る。その時、何とも場違いな人と会う事になる。ザニーの有る格納庫に着くと一人の女性パイロットが座っていた。しかし、何と言うか…ちょっとギャルっぽい人だ。銀髪で耳にピアスしてる。翡翠色の瞳でちょっとツリ目気味だがキツイ感じはしない。後はスタイルが無駄に良いのだ。ノーマルスーツ着てるからスタイルが良く分かるのだ。いやー、眼福です。特にその巨乳とくびれは素晴らしいです!

 

「ん?あ、どもっす」

 

「あ、どもです」

 

然も態度めっちゃ軽い!何か懐かしい気分になる。

 

「貴方初めて見る顔だね。ザニーの訓練を受けに来たの?」

 

「そうです。貴女もですか?」

 

「そうよ。あ、名乗って無かったわね。私はレイナ・ラングリッジ少尉よ」

 

「シュウ・コートニー軍曹です。宜しくお願いします」

 

多分ラングリッジ少尉は士官学校出身なんだろう。年齢は俺と同じぐらいだし。それから少し待つと他の人達も次々と到着した。教官が来る間に自己紹介は済ませておいた。

 

「良し!お前ら。これよりモビルスーツ転換訓練を行う。先ずは昨日の訓練の復習からだ。歩行した後走る、跳ぶ、そしてブーストジャンプだ。では、先ずは…お前からだ」

 

「了解です」

 

早速御指名を頂きました。サッサとザニーに乗り込み起動させる。モニターから外部の状況を確認した後、ザニーを動かす。

 

「っ!此奴…動きが悪い?」

 

ザクの感覚で動かしたらやり難いのだ。と言うか操作性が悪いのだ。慣れるのに少し時間が掛かりそうだが。

 

(兎に角、歩いて走ってジャンプしてさっさと終わらせよう)

 

ザニーで歩行、そして走行を行う。そして目の前の障害物を跳んで行く。最後にブーストジャンプを使い高く跳ぶ。

 

『よーし、戻って降りて来い。流石ザクを独学で操作しただけは有るな』

 

「いや、分かりやすいメモ帳のお陰です。教官殿」

 

『ほう、その割には手慣れた感じが有ったがな。所で身体に違和感は無いか?気持ち悪いとか酔ったとか』

 

「いえ、大丈夫です。問題は有りません」

 

『そうか。なら戻って来い。次!準備しておけよ!』

 

こいしてザニーによるモビルスーツ転換訓練は進んで行くのだった。

 

……

 

そして本日の訓練が終了する。

 

「ねね、コートニー軍曹。軍曹は宇宙軍に居たんだよね?」

 

ラングリッジ少尉が話しかけて来る。

 

「そうです。宇宙軍に居た時はセイバーフィッシュに乗ってました」

 

「へえ〜、なら敵のモビルスーツと戦ったんでしょう?」

 

「勿論です。セイバーフィッシュで1機とザクで3機撃破しました」

 

「えっ!ザクに乗ったの?」

 

「鹵獲した物ですけでね」

 

「ふーん、だからザニーにもあっさり乗りこなしたのね」

 

別に乗りこなしたつもりは無いけどな。ザクより操作性悪かったし。

 

「色々教えてくれてありがとね。それじゃあ」

 

ラングリッジ少尉はそう言って去って行った。

 

「ザニーか。こんなモビルスーツで連邦軍は大丈夫だろうか?」

 

V作戦とは別物だと言ってはいたが不安は残るばかりであった。

 

……

 

宇宙世紀0079.5月17日、宇宙要塞ソロモンが完成。総司令官ドズル中将。

宇宙世紀0079.5月22日、地球連邦宇宙軍【ヘリオン作戦】開始。地球軌道上にいるジオン軍に攻撃を仕掛ける。翌23日まで続くが地球連邦宇宙軍大敗。この作戦以降ジオン軍補給艦隊に攻撃を行う事を中止する。

宇宙世紀0079.6月、ジオン公国軍【赤作戦】開始。目標東南アジア制圧。地球連邦軍はミディアや攻撃機による航空攻撃を敢行。6〜7月に掛けて戦いは続くが赤作戦は失敗に終わる。

宇宙世紀0079.7月、ツィマッド社のMS-09ドムが正式採用され量産開始。

地球連邦軍エネルギーCAP技術確立。今迄戦艦にしか搭載出来なかったビーム兵器の小型化に成功。

宇宙世紀0079.7月7日、新造艦ペガサス級2番艦ホワイトベース完成。またプロトタイプガンダムRX-78-1が完成。

同時にRX-78陸戦型ガンダムの計画実行開始。先行量産型を重要拠点に配備。更にモビルスーツ用の武器開発開始。

宇宙世紀0079.8月、サイド7にてガンダムの最終テスト開始。同月オーガスタ基地でRX-78NT1アレックスの開発開始。

陸戦型ジムの試作機完成。

同月、地球連邦軍太平洋残存艦隊がハワイ奪還作戦を開始。しかしジオン公国軍の水陸両用モビルスーツの反撃に遭い壊滅的な被害を受ける。

 

宇宙世紀0079.10月、俺達はモビルスーツ転換訓練を終えてからシミュレーター訓練に勤しんでいた。そして、遂に地球連邦軍の先行量産型モビルスーツが配備されたのだった。

 

……

 

俺はジャブローにちょっかい掛けてくる敵の飛行隊を何度かフライ・マンタで迎撃に出撃していた結果、一階級昇進して曹長になった。

 

「曹長〜。ねね、知ってる?私達にもモビルスーツが配備されるかもよ?」

 

「本当ですか?正直信じられないのが本音ですよ」

 

ラングリッジ少尉と一緒に食事を摂りながら話す。

 

「嘘じゃ無いって。それに、近々大規模な反攻作戦も開始されるし」

 

「大規模な反攻作戦?どんな作戦ですか?」

 

「ふっふっふ〜、それを知るにはまだまだ君には早いのだよコートニー曹長〜」

 

「ラングリッジ少尉、それ言いたかっただけでしょう」

 

えへっと言いながら舌をチョロっと出すラングリッジ少尉。その仕草はあざとい。あざと過ぎるが良い物だ。

 

(同性の友達とかいなさそう」

 

「い、居るもん!唯、みんなオペレーターとかの方に行ったけど…」

 

「あれ?俺口に出てましたか?」

 

「うん。バッチリ聞こえたよ」

 

こりゃ失敬と舌をチョロっと出して誤魔化す。

 

「上官侮辱罪で投獄させるわよ?」

 

「真顔で怖い事言わないで下さい」

 

どうやら俺にはあざといしぐさは駄目らしい。この後俺達モビルスーツパイロット達は呼び出される。

 

「諸君、今迄の訓練ご苦労であった。遂に諸君達にもモビルスーツを配備する事が決定した」

 

それを聞いた俺達に動揺が走る。遂にこの時が来たと。ジオンに今迄の借りを返せると。

 

「ほら、嘘じゃ無かったでしょう」

 

「本当でしたね。でもドヤ顔はやめて下さい。無性にイラつきます」

 

「ふっふっふ〜、悔しかろう?」

 

そして渡された書類に目を通す。其処には前期生産型RGM-79ジムが俺達の搭乗機となる事が書かれていたのであった。

 




陸戦型ジムと迷いましたが前期生産型ジムにしました。
ほら、ビームスプレーガン持ってるし!
因みにRX-78-2ガンダムの戦闘データは入ってません。なので後期生産型ジムより性能は若干落ちます。
後、陸戦型ジムは他の部隊にも配備されてます。


まあ、白い悪魔のデータが流用されたら…そりゃ強いわな

後、ヒロインの登場回でした。


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パイロット候補生の日常

RGM-79ジム。この機体の一番の特徴と言ったらビーム兵器であるビームスプレーガンとビームサーベルが標準装備してる事だろう。

ビームスプレーガンはジェネレーター出力の関係上長距離は無理だが、中〜近距離は威力を発揮する。ザク相手なら充分な威力が有るとか。

ビームサーベルはグフやドム相手でも充分だとか。

他にも武装はある。90㎜ブルパップマシンガン、100㎜マシンガン、ハイパーバズーカ、60㎜バルカン、シールドがある。

 

「これが、俺のモビルスーツ…RGM-79ジムか」

 

シンプルなデザインだが、実に頼もしい。そして、各自ジムに乗り込み機体に慣れるように模擬戦が始まった。ルールは簡単、自分以外は全て敵。一度やられたら腕を十秒挙げた後、再度参加する。

使用する弾薬はペイント弾。今回はビーム兵器の使用は禁止。ビームサーベルの代わりに模擬刀を装備する。

 

『それでは、これが最後の訓練だ。この訓練が終わり次第、お前達は戦場に出る。そして、モビルスーツによる戦闘データを必ず持ち帰るのがお前達の最重要任務だ。また、絶対に我々のモビルスーツをジオンに渡す事はいけない。例え、お前達が死ぬ事になったとしてもだ』

 

全員が教官の言葉に耳を傾ける。

 

『それでも死ぬな。生きて…帰って来い。矛盾な事を言ってる事は分かってる。戦場に送る立場の人間が言う言葉では無い事も分かってる。だが、それでもだ』

 

(教官…あんたって人は)

 

厳しい人だった。十二時間モビルスーツに乗り続けるとか、一対全員とかいびりっぽい事もあったが。それでも、俺達の事を思っての事だろう。

 

『尚、この模擬戦では俺も参加する。今迄の鬱憤を此処で晴らしてみせろ!模擬戦開始だ!』

 

次の瞬間、模擬戦と言うバトルロワイヤルが始まった。

 

『貰った!』

 

「おっと!じゃあ、お返しな」

 

横から撃ってきたジムの攻撃をシールドで防御。代わりにシールドの横からペイント弾を撃つ。因みに武装は90㎜マシンガンだ。

 

『ほらほら!如何した!そんな攻撃じゃあジオンは倒せんぞ!』

 

『何で教官はザクに乗ってるんですかー!?うわああ!?』

 

マジかよ。教官はザクに乗ってるのか。あの機体は扱い易くて確かに良い機体だからな。勿論ジムも良い機体だけどな。

 

『シュウ!頂きよ!』

 

「ラングリッジ少尉か!だが、当たってやらん!」

 

ラングリッジ少尉のジムが背後から現れる。俺はジムのブースターを片方だけ全力で吹かす。そして、一瞬で180度ターンしてシールドで防御する。

 

『嘘!何今の動き!』

 

「それじゃあ、さよなら」

 

ペイント弾でラングリッジ少尉のジムを染め上げる。そして直ぐにその場を離れる。そして、更に2機のジムをペイント弾で染める。

 

『やはりな、コートニー曹長。お前は優秀なパイロットだ』

 

「教官…」

 

教官のザクは多少ペイント弾が被弾しているが、致命傷では無い。

 

『曹長、お前の機動は間違い無く他のパイロット候補達に良い刺激になっていた。人型兵器だからこそ出来る機動。お前はそれを我々に見せてきた』

 

「俺褒められてるんですか?」

 

『勿論だ。私も曹長の動きに関心する事が多々あったからな!』

 

それと同時にザクマシンガンからペイント弾が撃ち込まれる。勿論回避するが、追撃が来る。

 

『これが最後だ!コートニー曹長、俺を倒してみせろ!』

 

「やってやる!ジムを舐めるなよ!」

 

俺の90㎜マシンガンと教官のザクマシンガンが同時撃ち始める。そして一気に機動戦に突入する。

 

『やはり、曹長の機動戦は素晴らしいと言えるな!』

 

「お褒めに預かり光栄です!教官殿!」

 

お互い決定打が無いまま接近戦に入る。

 

『さあ、行くぞ!』

 

ザクがヒートホークを構えて突撃してくる。そして、俺は上にジャンプしながらジムの体勢を変える。

 

「うおりやああああ!!!」

 

『何!?宙返りだと!』

 

ジムのブースターを使い機体を無理矢理宙返りさせる。そして、ザクの背中のランドセルに60㎜バルカンを撃ち込む。

 

「流石にザクと言えども、この距離からランドセルを60㎜で撃たれたら動けないでしょう」

 

『曹長…見事だ。よく、此処まで成長したな』

 

「教官…教官の御指導の賜物です」

 

『そうか。ん?お前の機体は余り染まって無いな』

 

「それは、被弾しない様に戦いましたから」

 

すると教官はいやらしそうな表情をする。

 

『そうかそうか…。これより模擬戦の内容を変更する。敵はコートニー曹長の乗るジムだ。最初にコートニー曹長のジムを倒した者に私からボーナスを進呈しよう!』

 

「ちょっ!教官、何を!」

 

『『『『『くたばれー!!!曹長!!!』』』』』

 

「う、うわあああ!?!?」

 

この後逃げまくったがジムの推進剤が切れ全員のジムからペイント弾で滅茶苦茶に染められた。

 

……

 

「畜生、俺のジムがピンク一色になっちまった」

 

あの頼もしい姿だったジムは今やピンク一色の何かになってしまった。

 

「あっはっはっはー!全部ピンクになってるー!ちょーウケるんですけど!」

 

「ラングリッジ少尉!貴女が関節部やメインカメラにペイント弾を撃ち込んだのは知ってるんですからね!隙間を満遍なく染めてくれちゃって!もう!」

 

「あ、バレた?ゴメンね」

 

チロッと舌を出しながらウインクして謝るラングリッジ少尉。だが、あざといからと言って許すと思うなよ。

 

「まあまあ、落ち着けって曹長」

「そうだぜ。ラングリッジ少尉も謝ってる事だしよ」

「男ならドンと構えろって。な?」

 

こ、此奴ら…さてはラングリッジ少尉目当てだな?だが、そんなの関係無いわ!

 

「確かにラングリッジ少尉は美人でスタイル良いし性格も明るくてお茶目だから気を引きたい気持ちはよく分かるし、お近付きになりたい気持ちもよく分かる」

 

「ちょ!おま、何言ってんだよ。そ、そんな訳無いだろ?」

「別に、俺はそんなつもりは無い……ぜ?」

「へ、変な事いうなよ。ラングリッジ少尉が迷惑だろ?」

 

そして当の本人はと言うと。

 

「えっと…褒めてくれてありがとう?」

 

感謝してくれた。

 

「だがな!俺のジムを染め上げたのは許さんからな!絶対許さんからな!そして俺は落ちないからな!そんな性格だから同性から一歩引かれるんだ!」

 

「ひ、引かれてないし!全然引かれてないし!」

 

「どうせアレだろ。「ラングリッジ少尉には男が寄って来るから別に良いよねー」とか「女子会とか来ないでしょう?ほら男が放って置かないし」とか言われてたんだろ!」

 

「な、何でそんな事知ってるのよ!わ、私だって、女子会参加したかったわよ!」

 

ラングリッジ少尉は悲痛な叫びを上げる。当てずっぽうで言った事が全部当たってたとは。

 

「少尉……御免なさい」

 

「そんな丁寧に謝らないで!余計に惨めじゃない!」

 

何だか何方が被害者か分からなくなって来た。

 

「と、兎に角!少尉のあざとい攻撃は俺には効きませんからね!」

 

そう捨て台詞を吐いてピンクジムに向かう。

 

「俺の悲痛な叫びを聞いた整備班達ー!一緒にジム洗うの手伝ってー!」

 

整備班の人達が何人か此方に来てくれる。

 

「曹長、安心して下さい。我々が綺麗にしますから」

 

「俺も綺麗にするー!俺のジム〜俺のジムが〜」

 

「曹長、落ち着いて下さい。幼稚化してます。ほら、チョコ食べます?」

 

「うん、食べる」

 

この後整備班達と一緒にピンクジムをRGM-79ジムにしたのだった。序でに他の連中のジムも綺麗にしてやったよ!

 

「意外とアッサリ落ちるんですね」

 

「それはペイント弾ですからね。それに、簡単に落ちないと我々が死にます」

 

「それもそうだね」

 

何だかんだで整備班達と仲良くなりました。



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アグレッサー部隊

ジャブローに居るなら鉢合わせしても可笑しく無い…筈!


ジムを綺麗にした後、食事を取りに行く。その途中で模擬戦が行われていた。気になり様子を見に行くとザクとジムが模擬戦をしていた。ザクがジムの攻撃を避けて反撃をする。しかし、弾はあらぬ方向へ撃つ。その隙にジムがザクに接近して至近距離からペイント弾を撃つ。更にザクが倒れても撃ち続ける。

 

「やっぱりザクなんてジムに掛かれば弱いんだな!」

 

「ああ、連邦軍のモビルスーツの方が性能は良いみたいだしな」

 

「所詮スペースノイドが俺達地球連邦に反抗する事が間違いなのさ」

 

恐らく彼等は別のパイロット候補生達何だろう。彼等はザクを圧倒したジムの性能を信じているのだろう。だが、俺はジムの動きよりザクの方が気になっていた。あの流れる様な動きからの反撃。どう見てもザクの方が良かった。

 

「ジムの方が性能が劣っているのか?」

 

だが、操作した時は特に不満は無かった。なら一体何が違う?

 

「機体性能じゃ無くて…パイロットか?」

 

恐らくそうだろう。ザクのハッチが開きパイロットが出てくる。其処には若い青年がいた。正直驚きだった。だが、一番驚いたのは雰囲気だった。

 

(俺と同い年位か?なのに、何か貫禄出てるし)

 

間違い無い。あの青年はエースパイロットだ。そんな雰囲気が見て取れる。俺は近くにいる伍長の奴に話し掛ける。

 

「なあ、あのザクのパイロットは何処の部隊の人なんだ?」

 

「あ?…曹長ですか。彼はジオンからの亡命者です。確か、【アグレッサー部隊】だったかと」

 

「ジオンからの亡命者?アグレッサー部隊か…」

 

「アグレッサー部隊は基本ジオンからの亡命者で構成されてると聞いてます。まあ、好き好んで近付く奴は居ません。曹長も余り近寄らない方が良いですよ。いつ背中から撃たれるか分かりませんから」

 

伍長は声のボリュームを少し下げて忠告気味に話す。

 

「そうか。無理に聞き出して悪かったな」

 

「いえ、曹長殿の役に立てれれば良いです」

 

しかしアグレッサー部隊か。彼等は何を思って亡命したんだろうか。祖国を裏切る程の事をしたのだろか?そんな事を考えながら、俺は演習場を後にして食堂に向かうのだった。

 

……

 

食事を終えて訓練に行こうとしたら、先程のアグレッサー部隊のザクパイロットが食堂に来た。側には中年辺りの男性が居た。俺はそんな二人の側に行く。

 

「失礼、少し良いですか?」

 

「…何か我々に用ですかな曹長殿」

 

頬に傷がある軍曹が話しかけて来る。

 

「自分はシュウ・コートニー曹長です。実は伍長にお願いが有りまして」

 

「自分にですか?」

 

「単刀直入に言います。俺にモビルスーツの動かし方を教えてくれ」

 

軍曹と伍長は、その言葉を聞いた瞬間固まった。

 

「コートニー曹長、悪い事は言わない。俺達に関わらない方が良い」

 

「理解した上で言っています。貴方達がジオン軍からの亡命者である事を。アグレッサー部隊が元ジオン兵で構成されてる事も」

 

そう聞いた二人は目を合わせる。

 

「コートニー曹長。一つ聞いても宜しいですか?」

 

「構いません」

 

「コートニー曹長は自分達からモビルスーツの動かし方を教えて貰って何をするんですか?」

 

何をするか…簡単な事さ。

 

「生き残る為さ。それに、伍長の指導が有れば確実に生存率は上がると考えてます」

 

「あー、曹長。少し待ってて貰っても?」

 

「大丈夫です」

 

二人は少し離れて話し合う。そして暫く待つと戻って来た。

 

「コートニー曹長、自分達は三日後にはパトロール任務に戻ります。その間でしたら構いません」

 

「本当ですか!それは助かります!」

 

「ただ、一つだけ約束して下さい。決してジオン兵を殺すなとは言いません。ですが、戦う意思の無い者や投降者には適切な対応をお願いします。それを約束しなければ」

 

「言われるまでも無いですよ。俺は殺戮者として歴史に名を連ねたくは無いからな」

 

俺は伍長の言葉を遮る。確かにジオンは敵だ。だが、無抵抗な奴を殺す事に悦に浸り事は無いからな。暫く睨み合う形になる。

 

「…分かりました。曹長を信じます」

 

「信じて貰って損は無いさ。早速モビルスーツの操縦を教えてくれ。勿論スパルタで構わんさ」

 

「スパルタ…中尉、それで良いですか?」

 

「ん?まあ、本人が望んでるんだ。泣き始めても遠慮無くがっつりやってやれ。後、俺は中尉じゃねえ」

 

「いやいや、泣きませんよ。因みに伍長はいつ頃からモビルスーツの操縦を?」

 

「曹長、良い事教えてやるよ。このチェイス・スカルガード伍長は元ジオニックのテストパイロットさ。然もSランクだとよ」

 

………え?ジオニックのテストパイロット?Sランク……Aより上のパターンですか?

この時チェイス・スカルガード伍長の笑顔がとても怖かったのを覚えている。

そして三日間のチェイス・スカルガード伍長のスパルタ指導の結果、ギリギリ及第点を頂けました。

 

「教官殿!この三日間、御指導して頂き有難うございました!」

 

「うん。シュウ曹長も直ぐに覚えてくれたので教え甲斐が有りました」

 

「よく三日間耐えたな。ま、これならそうそう死にはしないだろう」

 

暫く談笑を交わす。

 

「チェイス伍長、ハインツ軍曹。色々御指導有難うございました。他の人達が何と言おうとも、俺は二人からの指導をして頂いた事を胸張って言います」

 

「シュウ曹長。これから厳しい戦いに行くと思います。ですか、どうか無事に帰って来て下さい」

 

「今度会ったら腕前を確認させて貰うからな」

 

そして、二人はアグレッサー部隊に戻って行く。アグレッサー部隊はそのままパトロール任務に行く。誰も見送る人は居ない。だが、俺は見送る。彼等だって理由があって連邦軍に亡命した。嘗ての仲間に銃を向ける。それはとても辛く悲しい事だと思う。

 

「チェイス伍長、ハインツ軍曹も…どうかご無事で」

 

俺はアグレッサー部隊に対して敬礼をしながら見送るのだった。

 



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欧州方面MS特殊部隊第27小隊

宇宙世紀0079.10月1日。遂に俺達に出撃命令が降る。各自配属先はバラバラだ。ただ、共通点は有る。基本的には敵を引き寄せる陽動作戦になる事だ。

因みにラングリッジ少尉達からアグレッサー部隊について色々聞かれたから模擬戦で教えてあげました。結果は勝ちました。

 

「ねね、コートニー曹長は私と同じ欧州方面で同じ部隊になるから宜しくね」

 

「何で知ってるんですか?」

 

部隊配属はまだ未定の筈だ。確かに今日で決まるけど。

 

「もう直ぐ分かるわよ。そして、部隊長は私よ!」

 

「えー…不安しか無いんですけど」

 

「ちょっと、私だって士官学校卒業してるのよ?」

 

「因みに下から何番でしたか?」

 

「勿論一番よ!」グッ!

 

ラングリッジ少尉はグッドサインを作りながらウインクする。だが俺には効かん。

 

「それを聞いて不安になりました。転属願い用意しときます」

 

「待って待って!此処までやるのに一生懸命頑張ったんだから!この頑張りを無駄にしないでよ〜」

 

一体どんな頑張り方をしたんだろう?気になる所だ。この後各自が各方面部隊に分けられる。アジア方面、北アメリカ方面、ジャブロー防衛、欧州方面。そして、俺とラングリッジ少尉は欧州方面MS特殊部隊第27小隊として配属が決まった。

 

「本当にヨーロッパ方面になったよ。然も同じ部隊だし。後一人は誰だろう」

 

「さあ?私も知らないわ」

 

「え?でも俺の配属先は知ってたじゃないですか」

 

「だって興味無いもん」

 

興味無いもんて……。この後来る人が可哀想な事言うなよ。そして暫く待つと同じ欧州方面の部隊の人達が集まって来る。その間にお互い自己紹介をしていく。

 

整備班長、モンド・クルッツ伍長

第一印象は頑固親父。元々戦闘機パイロットになりたかったが、適正が無かった為断念。しかし、諦めきれず軍事兵器の整備士になる。其処で様々な軍事兵器に関わる。

 

「兵器の声を聞く。それが出来れば一人前だ」

 

其処までの道程が果てしないと思うのは、俺の気の所為だろうか?

 

戦略軍事オペレーター、ルイス・エヴァンス伍長

士官学校を卒業後、オペレーターとしての道を歩む。地図から大凡の地形を把握する事が出来る。また、士官学校での成績は上位だった。

 

「オペレーターのルイス・エヴァンスです。宜しくお願いします」

 

第一印象は可憐な美少女と言った感じだ。髪は黒髪のロングヘアーでパッチリ目だが少しタレ目だ。スタイルはスレンダーと言えるが出てる所は出てる。

 

「シュウ・コートニー曹長だ。エヴァ…エヴァンス伍長のオペレーターに期待しますよ」

 

「そ、そんな。まだ実戦経験は有りませんから。でも、頑張ります!」

 

不安そうな表情が少し出るが直ぐに持ち直す。気持ちの切り替えは速そうだな。

 

「後、ルイスで構いませんよ。エヴァンスだと少し言い難いですからね」

 

「悪いね。俺もシュウで構わないよ」

 

何となく良さげな雰囲気になる。しかし、奴が現れた。

 

「ルイス伍長、私もレイナで良いわよ。勿論シュウ曹長もね」

 

「自分はラングリッジで慣れましたから大丈夫っ!」

 

何故か足を思いっ切り踏まれる。

 

「レイナで良いわよ」

 

「はい、分かりましたレイナ少尉殿」

 

「うん、宜しい」

 

暫く待つが結局もう一人のパイロットは来なかった。どうやら現地集合になるらしい。そして、全員の準備が整いミディア輸送機に乗り込む。

俺はジムと指揮車両のホバートラック、武器の積荷チェックを行う。

 

「90㎜ブルパップ・マシンガン、ビームスプレーガン、ハイパーバズーカ、シールドにビームサーベルと」

 

予備も含めてリスト数は合ってるな。唯、もう1機のジムの分を合わせると少し足り無いかもな。

 

「さて、これで全部…ん?何だ、あの積荷は」

 

リストと照らし合わせるが載っていない。間違いで搭載したのかな?しかし、そのコンテナを見ると…

 

レイナ・ラングリッジ少尉宛 追伸、パパはいつでもお前を見守ってるからな。

 

と書かれてる。

 

「いやー、家族愛ですかね?ラングリッジ少尉聞こえますか?」

 

『つーん』

 

つーんて、貴女ね。

 

「レイナ少尉聞こえますか?」

 

『はいはーい。何か用?』

 

「武器のリストチェックをしてましたらレイナ少尉宛の荷物が有りました。因みにお父さんからみたいです」

 

『え、本当?今其方に行くわ』

 

少し待つとレイナ少尉は来た。

 

「どれどれ?あ、あのコンテナかな」

 

「そうです。因みに電子ロックが掛かってました」

 

「ちょっと待ってね。今開けるから」

 

レイナ少尉が電子ロックのパスワードを打ち込む。そしてロックが解除されて中身を確認する。

其処には3連装のガトリングガンが一挺有った。

 

「何ですか?この武器は」

 

「えーと…何か試作機の武装を手持ちにしたみたい」

 

「レイナ少尉、説明がザックリ過ぎます」

 

どうやら、この武器は別のRX計画から流用された物らしい。然も極秘計画とされてる試作機の武器の一部だそうだ。

 

「おいおい、そんな大層な武器を持ち込んで大丈夫なのか?」

 

「大丈夫よ!だってパパは上層部に顔が効くんだから」

 

なら大丈夫…な訳無いでしょう!因みに武器の正式名称は無かった。なので代わりに名称を付けておく事にした。

 

【90㎜ガトリングガン】

 

試作機に使われてる弾は高価な為、90㎜ブルパップ・マシンガンと同じ弾を使用します。

 

「いやー、流石パパね。頼りになる〜♪」

 

「レイナ少尉のその性格を見習いたいですね」

 

ルンルン気分のレイナ少尉を尻目に90㎜ガトリングガンを見る。

 

(まあ、頼りにはなりそうだけどな)

 

極秘計画の試作機に使われてる武器なら期待は出来るだろうしな。そんな風に思いながら俺達は欧州方面に向かう。深夜帯にベルファスト基地に向かうのはジオンとの接触を避ける為だ。

 

……

 

宇宙世紀0079.10月4日。

地球連邦軍欧州方面軍。ジオン軍の侵攻を止める事が出来ずドーバー海峡まで追い詰められてしまった。そしてジオン軍に対して反攻作戦を行なったが、モビルスーツを持たない地球連邦欧州方面軍は大敗した。しかし、その後も地球連邦欧州方面軍はゲリラ戦を実行。後にベルファスト基地を中心にジオン軍と散発的に戦闘を行う。

 

『間も無くベルファスト基地に到着します』

 

MS特務部隊第27小隊を乗せたミディア輸送機は予定より多少遅れたが、無事にベルファスト基地まで来れた様だ。

 

「もう直ぐ実戦か」

 

「そうね。でもお互いカバーし合えば大丈夫よ。それに、戦術オペレーターのルイス伍長も居るもの」

 

「わ、私も頑張ります!」

 

「後一人の仲間も忘れるなよ」

 

ベルファスト基地。俺は再びこの基地に戻って来た。今度は此方が反撃をする立場として。

 




90㎜ガトリングガン
NT専用機体アレックスガンダムに搭載されてる90㎜ガトリング砲を再設計して作り直した。砲身を延長させ命中精度の向上に成功。弾種は90㎜ブルパップ・マシンガンと同じであり、地球連邦軍の標準弾となる為兵站面では苦労はしない。
本来なら極秘計画の機体の武器が流用される事は無いが、コネには勝てなかった模様。


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MS特殊部隊第27小隊 初陣

ベルファスト基地に到着してRGM-79ジムと武器を降ろす。其処でもう一人のモビルスーツパイロットを補充した後、海上から前線基地に行く手筈になっていた。

 

「全く、もう一人のパイロットは何処なの?」

 

「見当たりませんね」

 

確かに見当たらない。周りを見渡すと1機の大型の戦車が来る。戦車は俺達の前で止まる。そしてコクピットが開き誰かが出て来る。

 

「ふっ。やあレイナ。久し振りだね」

 

「げっ、何であんたが此処に?…まさか、もう一人のパイロットって」

 

其処には爽やかイケメンが出てきた。輝く様な金髪に少しキツめのツリ目。しかし、甘いマスクがそのキツさを取り除いている。正にイケメンだ。

 

「その通りさ。君の許嫁として心配でね。だから僕もレイナと共に戦う事にしたのさ」

 

「普通は徴兵される筈だけど?」

 

「それは下の者達の役割さ。僕達の様な存在はそんな事はしなくて良いのさ」

 

それから暫く話し合っていたが漸くこっちに来た。

 

「御免ね。待たせちゃったね」

 

「いえ、大丈夫ですよ。それで、其方の方は?」

 

「自分も気になりますね。知り合いと言うか、許嫁とか言ってましたし」

 

「許嫁の部分は忘れて頂戴。此奴は…」

 

「自己紹介は僕がやるさ。アーヴィント・アルドリッジ少尉だ。僕とレイナが君達と共に戦うのは短い期間になるだろうが宜しく頼むよ」

 

何だろう…凄く厄介な人が来たな。この部隊は大丈夫だろうか?

 

「短くないわよ。少なくとも貴方と一緒に抜ける事は無いわ」

 

「やれやれ、君と僕の父上は心配していると言うのに」

 

「ふん、パパは分かるけど貴方の父親に関しては知らないわ」

 

何だかこのままだと話が進まないな。仕方無いか。

 

「取り敢えずモビルスーツを空母に載せましょう。じゃないと先に進みませんし」

 

「それもそうね。所で、アーヴィントの戦車は何?」

 

「ふっ、あれはRX計画で作られたモビルスーツをより高性能にした物さ。本来なら東南アジア方面に配備されるモビルスーツだが、欧州での戦闘データ収集と言う理由で無理言って用意させたのさ」

 

(RX計画か。確かV作戦の肝の部分だったな)

 

「此奴の名前は【RX-75量産型ガンタンク】。本来の【RX-75ガンタンク】を超えた機体さ。正に僕に相応しい機体だよ」

 

フサァと前髪を撫でるアーヴィント少尉。序でにスペック表も見させて貰う。

120㎜低反動キャノン2門、4連装ガンランチャー2門だ。また120㎜低反動キャノンは砲身が延長され本家より射程が上がっている。更にセンサーも強化されており、より遠距離からの砲撃に磨きが掛かっている。

4連装ガンランチャーは別の武装である4連装ボップミサイルも有るみたい。だが、改装作業は必須だ。更にマニピュレーターが無い為近接戦は無理だ。

 

「それにRX-75ガンタンクは2人乗りだが、RX-75量産型ガンタンクは1人乗りに改修している。更に可動範囲も広がってるのさ。正に僕に打って付けの機体さ」

 

アーヴィント少尉は自信満々に言い放つ。本家RX-75は2人乗りらしい。でも61式戦車も2人乗りだから妥当だと思うけどな。戦車での戦闘は色々忙しいと思うし。それにしても量産型ガンタンクか。射撃特化のモビルスーツなのだろう。だが、此奴は……。

 

(何で脚部がキャタピラ何だよ。行軍行動に支障が出て来そうだな)

 

普通にRGM-79ジムを用意して欲しかったと思うのは我儘だろうか?この後モビルスーツをヒマラヤ級空母マルスに搭載させる。と言っても前線基地に渡す弾薬や車両、空母の艦載機も有る為モビルスーツを格納させるスペースは作られて無い。よって航空甲板の上に待機させる。

そして輸送船団の到着を数日間待ち、共に欧州前線基地に向かうのだった。

 

……

 

地球連邦海軍。地球の7割を占める海の王者と言える存在だ。海上戦力の乏しいジオン地球方面軍が地球連邦海軍に勝てる訳が…あった。

宇宙世紀0079.3月27日、ジオン公国軍は水陸両用モビルスーツの生産を開始した。ジオン地球方面軍は水陸両用モビルスーツを実戦に投入。その結果、地球連邦海軍は多大な被害を被る事になったのだった。

 

宇宙世紀0079.10月6日。ヒマラヤ級空母 マルス

 

現在ヒマラヤ級空母マルスを中心に輸送艦と護衛艦が艦隊を形成しながら欧州前線基地に向かっていた。

 

「ようこそ空母マルスへ。私は艦長のダラス・カスペルスキー大佐だ。諸君達を歓迎しよう」

 

「レイナ・ラングリッジ少尉です。宜しくお願いします」

 

「ふっ、アーヴィント・アルドリッジ少尉だ。宜しく」

 

「シュウ・コートニー曹長です。宜しくお願いします」

 

「ルイス・エヴァンス伍長です。宜しくお願いします」

 

この後、欧州前線基地についての説明をされる。俺達MS特殊部隊第27小隊は敵戦力に対する陽動、及び撃破を行う。欧州方面における今後の作戦は前線基地に着いた後に伝えられる手筈だ。

 

「近々欧州にて大規模作戦の為、君達モビルスーツ部隊にはジオンの戦力を少しでも裂く目的で戦闘命令が出ている。詳細については前線基地に着けば自ずと分かる」

 

「了解しました。では、短い航路になりますが宜しくお願いします」

 

最後はレイナ少尉が締めて終わる。空母マルスの甲板に出て海を眺める。しかし、MS特殊部隊か……。

 

「何だか戦争にどっぷり浸かってるな」

 

艦隊を眺めながら考える。結局、この戦争は他人事で終わらせる事なんて出来無い。戦争に参戦した時点でこうなる事は決まってたのかも知れない。

 

「はあ、早く戦争終わらないかなぁ」

 

空を見上げると輸送機が飛んでる。何処の部隊かは知らないが彼等も戦争してるんだよな。

 

「なーに黄昏てるのよ。らしくないわよ」

 

「レイナ少尉。別に黄昏てませんよ」

 

レイナ少尉が隣に来る。

 

「海かぁ。もう全然海に泳ぎに行ってないな」

 

「呑気ですね。今そんな事考えてるのはレイナ少尉ぐらいですよ」

 

「良いじゃない。今の御時世、大多数の人達が同じ事を考えてるわ。そんな中私が違う事考えても大丈夫よ」

 

「なんか無駄に説得力が有るんですけど」

 

「まあ、軍学校でこの言い訳言ったら怒られたけどね〜」

 

チロッと舌を出すレイナ少尉。可愛いから許す。

 

「それは先生がそのユニークな考え方に同意しなかったのは残念でしたね」

 

「でしょう?シュウは同意してくれる?」

 

そうだな……うん、良いんじゃないかな。

 

「面白そうですから同意しますよ」

 

「やった!仲間が増えたわ」

 

暫くレイナ少尉と談笑してるとルイス伍長も来た。

 

「お二人共随分と楽しそうに話してましたが、何を話されてたんですか?」

 

「うーん、普通の会話だな」

 

「普通…ですか?」

 

「そうよ。服とか欲しいし髪型も色々変えてみたいとかね」

 

「俺は車が欲しいかな。特にスポーツカーが良いな」

 

「あ、あはは…二人共肝が大きいんですね」

 

苦笑い気味になるルイス伍長。だが、肝が大きい訳じゃ無いんだよな。

 

「そんな事無いよ。唯の普通の会話だし」

 

「そうそう。今は難しい事は他の人達が率先してやってくれるんだから、私達が日常会話をしても大丈夫よ」

 

「そうでしょうか?」

 

「所でルイス伍長は何か欲しい服とか有るの?私はね」

 

女子トークに突っ込む程野暮な事はしないさ。暫く二人の会話を聞きながら艦隊を眺める。その時、1隻の護衛艦からミサイルが発射される。そして警報が鳴り響く。

 

『総員第一種戦闘配置。戦闘員は即時戦闘配置に着いて下さい。ドン・エスカルゴ隊、ファンファン攻撃隊、モビルスーツ部隊は即時出撃せよ。繰り返す』

 

「シュウ曹長!敵襲よ!急ぐわよ」

 

「了解!ルイス伍長も頼みます」

 

「了解しました!」

 

直ぐにアーヴィント少尉共合流する。そして俺とレイナ少尉はRGM-79ジムに乗り込み起動させる。アーヴィント少尉も量産型ガンタンクを起動させる。

 

「全く、初の実戦が海上とはね。囮にしかならない気がするな」

 

『ボヤかないの。囮なら囮で最善を尽くすだけよ』

 

『ま、僕の腕前を披露するにはこのぐらいのハンデは丁度良いさ』

 

そして、この海上戦がMS特殊部隊第27小隊の初陣になるのだった。

 



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ジムVS水陸両用モビルスーツ

ヤバい…ヤバい事に気付いてしまった。


序でに量産型ガンタンクは一人乗りなの?調べても何にも出て来なかったの。


ヒマラヤ級空母マルス

 

「ソナー、敵の位置は何処だ」

 

「現在6時の方向5kmです。しかし、今は見失っております」

 

「モビルスーツだけでこの海域には居ない。必ず母艦が居る。ドン・エスカルゴの出撃を最優先だ」

 

「了解しました」

 

ダラス大佐は他艦の状況を確認する。空母マルスを旗艦として周囲を10隻の輸送艦と8隻の護衛艦で固めている。普通なら此れだけの戦力で充分と言える。

 

「モビルスーツ…ジオンめ、厄介な兵器を作りおって。モビルスーツ部隊は如何なってる」

 

「現在起動中です。あ、12時よりミサイル群接近!」

 

「対空戦闘!迎撃ミサイル発射!」

 

各艦から迎撃ミサイルが発射される。それでも抜けて来るミサイルは有る。

 

「更に9時の方から魚雷群来ます!」

 

「デコイ魚雷用意。母艦はまだ見つからんのか!ドン・エスカルゴ隊から連絡はまだか!」

 

「現在索敵中との事」

 

ミサイル群は何とか全て迎撃出来た。だが、ミサイル群の中にミノフスキー粒子が入ってる物が有ったのだ。

 

「くっ、やはり奴等か。諸君!奴等にこれ以上好き勝手やらせるな!ソナー班、貴様らの耳が頼りだ。頼むぞ」

 

空母マルス内は正に正念場を迎えていた。

 

『此方………の方でモビル…………ゴックタイ……ザザザザ』

 

「艦長、ダメです。ドン・エスカルゴ隊のラルゴ小隊からの通信途絶。恐らく…」

 

「屈辱だな。全艦に通達。兎に角前線基地の港まで逃げるぞ。これ以上の戦闘は危険だ」

 

ダラス大佐は全艦に向けてレーザー通信で連絡を取る。戦闘海域を逃げる様に進む。しかし、それを捕食せんとする水陸両用モビルスーツが迫っていた。

 

……

 

空母マルスとその護衛艦隊を見つめる奴等が居た。

 

「フッフッフッ、情報通りだな。あの空母には間違い無く連邦のモビルスーツが有る筈だ」

 

『ボリス大尉、あの空母を沈めるのでありますか?なら自分にやらせて下さい!』

 

『いや、自分がやります!連邦なんぞ自分だけでやれます!』

 

ボリス大尉は若い優秀な部下を預かる立場だ。これまでに沈めた連邦艦艇は5隻以上だ。だが、少々若さ故の勢いが有るのが玉に傷だ。

 

「落ち着け。先ずは連邦軍モビルスーツの性能を知りたい。リック、マリオは左右から遊撃。私は連邦軍のモビルスーツを拝ませて貰う。このゴックでな」

 

『了解です』『太尉、お気を付けて』

 

もう直ぐで連邦軍の艦隊が上を通過する。しかし、連邦軍は他の部隊の仲間に気を引き付けられてる。さあ、始めようか。

 

「戦争と言う殺戮をな!」

 

ボリス大尉は顔を狂気に歪めつつも愉快に笑いながらMSM-03ゴッグを目覚めさせるのだった。

 

……

 

「ミノフスキー粒子戦闘濃度か。これはレーダーは使えんな」

 

『仕方無いわよ。ミノフスキー粒子がこんなに濃いなんて。アーヴィント少尉、貴方の方は何か反応は無いの?』

 

『残念ながら無い。だが、安心したまえ。この艦隊の戦力は並大抵では無い。そう簡単に敵が来る訳が無いさ』

 

「アーヴィント少尉、それ本気で言ってますか?地球連邦軍は常に戦力比では勝っていた。だが、結果はご覧の有様です」

 

『確かにな。だが、それは連邦軍がモビルスーツについて理解していなかったからだ。今や連邦軍は自力でモビルスーツを作り上げた。そう、この素晴らしいRX-75量産型ガンタンクを!』

 

アーヴィント少尉は前髪をフサァとやる仕草をする。ヘルメット被ってるから出来なかったみたいだけど。まあ仕方無いね。

 

『それより敵の索敵よ。あ…私達のコードネーム決めて無かった』

 

え、今そこ気にします?

 

「なら仮で01、02、03良いのでは?」

 

『それもそうね。私が01、シュウ曹長が02、アーヴィント少尉は03』

 

「了解」『君がそう言うなら従おう』

 

その時だった。空母マルスや他の艦から短距離魚雷が発射される。それと同時に空母マルスの左舷側からビームが海面から出て来た。

 

『三人共!海水から敵モビルスーツ浮上!来ます!』

 

ルイス伍長の警告と同時に俺の直ぐ近くの海水から何かが出て来る。そいつは俺のビームスプレーガンを吹き飛ばしながら空母マルスの航空甲板に土足で入り込む。

 

「こ、こいつは…ゴッグかよ!」

 

資料で見た事がある。MSM-03は兎に角硬い奴で、然も腹部にビーム兵器を搭載してる。

 

『う、うわああああ!?!?』

 

アーヴィント少尉から40㎜ガンランチャーが乱射される。

 

『03!味方に当たるわ!射撃をやめなさい!』

 

『く、来るなああああ!?!?』

 

敵モビルスーツ、ゴッグは40㎜ガンランチャーを物ともしない。

 

『ふん、そんな豆鉄砲がこのゴッグに効くとでも?連邦のモビルスーツ等脅威にならんわ!』

 

『このお〜、これでも食らいなさい!』

 

「畜生!90㎜で対処しろってか!」

 

レイナ少尉は90㎜ガトリングガンを乱射。俺は予備の90㎜マシンガンを撃つ。因みにビームスプレーガンはゴッグの足元に転がってる。

ゴッグは90㎜の弾を受けても物ともしない。多少はダメージを与えてるが致命傷にならない。然も腹部からビームが収縮される。

 

(不味い!狙いはアーヴィント少尉だ!)

 

自分が狙われてると理解したアーヴィント少尉は更に喚く。

 

『03!120㎜を使いなさい!』

 

それと同時に120㎜低反動キャノンが火を噴くが、あらぬ方向へ飛んで行く。

 

『終わりだ!連邦の雑魚め!』

 

俺は咄嗟にシールドをアーヴィント少尉の前方に投げる。それと同時にゴッグからビームが放たれる。ビームはシールドに直撃して、シールドごとアーヴィント少尉の量産型ガンタンクに直撃する。

 

『被弾した!もう駄目だ!脱出する!』

 

『02!ナイスよ!』

 

どうやらアーヴィント少尉は無事な様だ。俺は機体のリミッターを解除する。そしてビームサーベルを抜く。

 

「行くぞ!茶色達磨野郎!」

 

『ふん!連邦のモビルスーツが、このゴッグに接近戦で勝てると思ってかー!!!』

 

俺はゴッグの間合いに入る。ゴッグも腕を振り被る。だが、俺は真面目にチャンバラをするつもりは無い。モビルスーツにはバックパックが有るんだよ!

俺はバックパックを全開噴射させて一気に急上昇する。

 

『ぬう!?貴様!逃げる気っ!?』

 

ゴッグはモノアイを動かして俺の動きを見る。

 

「これでも喰らえ!」

 

俺はゴッグのモノアイ目掛けてビームサーベルを投げつける。そして、ビームサーベルはモノアイに突き刺さる。

 

『ぬおおお!?き、機体が!』

 

「これで、終わりだ!」

 

俺はゴッグに突き刺さってるビームサーベルを抜き、コクピット目掛けて突き出した。

そして、敵モビルスーツのゴッグは機能を停止させた。

 

「よし…敵ゴッグを撃破。二人共無事ですか?」

 

『大丈夫よ、02助かったわ。ありがとう』

 

『ふっ、僕が良い具合に囮になったのが良かったかな』フサァ

 

『あんた何もして無いでしょう!』

 

『01、02、03まだ敵は艦隊下に居ます。注意して下さい!』

 

ルイス伍長が警戒を促す。しかし、海中に対してどうするかだ。

 

「よし…やるか」

 

俺はゴッグを水中に落とす。きっと敵の仲間は仇を取ろうとする筈だ。俺はビームスプレーガンを拾い歩き出す。

 

「すう、はあ…02行きます!」

 

俺はジムをバックパックを再度一気に噴射させる。

 

「ルイス伍長!敵の位置は分かりますか!」

 

『は、はい。現在空母マルスを中心に二時方向に2機居ます!』

 

二時方向…見つけた。

 

「そこだ!」

 

ビームスプレーガンと90㎜マシンガンを敵が居る海中に向かい乱射させる。

 

『クソ!隊長を、よくも!』

 

『許さないぞ!絶対に!』

 

向こうも此方にビームを撃ち返してくる。だが、味方艦隊はただ見てるだけでは無い。

 

「手空きの者も攻撃に入れ!敵に反撃の隙を与えるな!」

 

勿論艦隊も無傷では無い。既に2隻の護衛艦が沈没してしまっているのだ。そして、俺は護衛艦の上に着艦する。護衛艦は激しく揺れる。再度一気に空に跳び上がる。

 

『あの野郎、調子に乗りやがって』

 

何度も跳び上がりビームスプレーガンと90㎜マシンガンを海中に撃ちまくる。唯、絶対に輸送艦と護衛艦の上では止まらない。止まったら艦が潰されるからだ。

 

『死ねえええ!!!』

 

遂に敵ズゴッグが顔を出す。

 

「01、行けます?」

 

『バッチシよ』

 

レイナ少尉からの通信を聞いた瞬間、顔を出した敵ズゴッグが爆発する。レイナ少尉のジムはハイパーバズーカを装備して貰っていたのだ。

この後敵モビルスーツ部隊は撤退する。しかし地球連邦海軍が簡単に見逃す程、甘い存在では無い。

 

『全艦に通達、対潜ミサイル発射用意。連中に此処まで手厚い歓迎を受けたのだ。タダで返すのは礼儀に反する。少し高価な対潜ミサイルをプレゼントしようでは無いか』

 

そして各艦艇が敵水陸両用モビルスーツにロックを完了する。

 

『では、フィナーレだ。全艦対潜ミサイル発射!!!』

 

空母マルス、護衛艦5隻から対潜ミサイルが一斉に発射される。対潜ミサイルは確実に目標に飛んで行く。そして…

 

ドオオオオオオン!!!!!!

 

大きな爆発が起こり海が荒れるのであった。

 

「なんだろう、オペラの曲が何となく流れてた気がする」

 

気の所為だと思うが、何となく場面に合うから不思議なものである。

 

『02、良くやったわ。シュウが囮にならなかったら私達は死んでたかもだし』

 

「何とかなって良かったよ。あぁ、死ぬかと思った」

 

身体の力が抜ける。生き残る事が出来て本当に良かった。

 

『シュウ、感謝してる。けど二度とあんな危険な事をしないで』

 

「勿論ですよ。唯、俺は死にたく無いから死なない様に戦うさ」

 

屁理屈みたいに成ったが、無理をするつもりは無い。まあ、今回の戦いは結構危険な綱渡りだったかもだけど。

 

『シュウ約束よ。無理はしないで…お願い』

 

「レイナ少尉…?了解です」

 

そんな時だった。突然通信から誰かの声が聞こえる。この時の演説がジオン公国軍ギレン・ザビ大将が全地球規模でガルマ・ザビ大佐の国葬演説を行ったのを後から知った。

 

『我々は一人の英雄を失った、しかしこれは敗北を意味するものか? 否!始まりなのだ。

地球連邦に比べ我がジオンの国力は30分の1以下である。にもかかわらず今日まで戦い抜いてこられたのはなぜか?諸君、我がジオン公国の戦争目的が正しいからだ』

 

『正しいですって?何万人…いえ、何十億人を殺した事が正しいですって!』

 

『この男がギレン・ザビ。地球連邦軍の敵』

 

レイナ少尉とアーヴィント少尉は怒りを露わにする。

 

『一握りのエリートが宇宙にまで膨れ上がった地球連邦を支配して50余年。宇宙に住む我々が自由を要求して何度連邦に踏みにじまれたかを思いおこすがいい。 ジオン公国の掲げる人類一人一人の自由の為の戦いを神が見捨てる訳はない』

 

『この通信は地球規模なのか?』

 

『はい、どのチャンネルもジャックされてます』

 

『おのれ…やってくれる』

 

空母マルス内も慌しくなっている。

 

『私の弟、諸君らが愛してくれたガルマ・ザビは死んだ。なぜだ!?戦いはやや落ち着いた。諸君らはこの戦争を対岸の火と見過ごしているのではないだろうか?だが、それは罪深い過ちである。地球連邦は聖なる唯一の地球をけがして生き残ろうとしている。我々はその愚かしさを地球連邦のエリートどもに教えねばならんのだ』

 

『ガルマ・ザビが死んだ?はっ!ザマァねえな。死んだ理由は地球連邦に楯突いたからだよ!』

 

『違い無い!正義はジオンに有らず。連邦に有り!』

 

他の兵士達はこの演説を不快感を露わにする。

 

『ガルマは、諸君らの甘い考えを目覚めさせる為に死んだ。戦いはこれからである。我々の軍備はますます整いつつある。地球連邦軍とてこのままではあるまい。 諸君の父も兄も、連邦の無思慮な抵抗の前に死んでいったのだ。この悲しみも怒りも忘れてはならない。 それをガルマは死をもって我々に示してくれたのだ。

我々は今、この怒りを結集し、連邦軍に叩きつけて真の勝利を得ることができる。この勝利こそ、戦死者全ての最大の慰めとなる』

 

「まるで演劇だな。身内の死を何とも思わないのか?」

 

血の繋がりがある弟をこんな晒し者扱いするとは。血も涙も無いのだろう。

 

(逆に考えると、味方の犠牲を省みない戦術を平気で使いそうだな)

 

『国民よ立て。悲しみを怒りに変えて、立てよ国民! ジオンは諸君らの力を欲しているのだ。 ジーーーク・ジオン!!』

 

この演説により、敵モビルスーツに対する追撃が遅れてしまい撃破出来ずに逃してしまう。更に母艦となる潜水艦の発見も出来なかったのであった。




ギレン・ザビ総帥の演説は胸熱ですな!ジーーーク・ジオン!?
そして主人公の容姿についてなーんにも考えて無いや(小声)









ま、いいか←


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救出作戦

ギレン・ザビ総帥による演説により多少の混乱は起きたが、艦隊は何とか前線基地の港に到着した。

 

「君達モビルスーツ部隊のお陰で何とか無事に前線基地に着けた。感謝しているよ」

 

「しかし、護衛艦2隻と輸送艦4隻を守れませんでした。それに、他の護衛艦と輸送艦の甲板を凹ませてしまって」

 

然も護衛艦の速射砲を踏み潰した時はヒヤッとしたけど、無人仕様で良かった。

 

「気にする事は無い。甲板や速射砲等は直せば良いだけだ。君は多くの仲間を救ったのだ」

 

俺達はダラス大佐と他の乗員から敬礼を受ける。それに対して答礼で返す。

 

「これから先は長い。死ぬんじゃ無いぞ」

 

艦隊は積荷を降ろし、艦隊は修理を行う為に簡易ドックに入る。其処で修理が終了しだいベルファスト基地に戻る事になる。そしてMS特殊部隊第27小隊も次の戦場に向かう。

 

「ようこそ地獄の三丁目の名前の無い欧州前線基地へ。君達MS特殊部隊第27小隊を歓迎しよう。早速だが、君達に任務を与える」

 

少し嫌味ったらしい言い方で歓迎されるが気にしない。恐らく演説により気が立ってるのだろう。それより任務内容の方が重要だ。

任務内容は味方歩兵、戦車部隊の救出任務。及び敵戦力の撃破。

現在、この前線基地より70km先の市街地に味方部隊が敵部隊により退路を断たれてしまった。よって、我々は損傷したモビルスーツの修理が完了次第出撃を開始。そして退路の確保を第一優先となる。味方戦力は歩兵300人、61式戦車5型4輌。軽車両数台。

 

「以上だ。では、君達の健闘を期待する」

 

そう言って基地司令は出て行った。

 

「ふっ、僕は後方から援護しよう。勿論護衛も必要だろう。レイナ、頼むよ」

 

「お断りするわ。寧ろ私達はルイス伍長と仲間達を守る立場なのよ。それが嫌なら部隊から抜けて頂戴」

 

「なら君も一緒に抜けるべきだ。そうすれば全て解決するんだ」

 

「それは貴方の中だけよ」

 

やれやれ、正直痴話喧嘩は他所でやって欲しいものだね。

 

「痴話喧嘩じゃ無いわよ!失礼ね!」

 

「俺一言も言ってませんでしたよね!?」

 

顔に書いてるのよ!と怒られてしまう。何この理不尽。

 

「あはは〜。シュウ曹長は考えが顔に凄く出ますからね。今迄賭け事には勝った事あります?」

 

「んー、言われてみれば無いかもな。それに賭け事自体勝てないからやらなくなったし」

 

この後レイナ少尉とアーヴィント少尉は暫く話し合いをする事になった。そして、俺は整備班長モンド伍長と話をしていた。

 

「コートニー曹長、単刀直入に聞きます。ジムの制御装置のリミッター外しましたね」

 

「えっと、はい外しました」

 

「成る程な。曹長、何故モビルスーツに制御装置が有るか知ってますか?」

 

「危ないからですか?」

 

モンド伍長は煙草を咥えて火を点ける。

 

「正確に言うならパイロットを守る為ですよ。勿論機体の各部の負荷、ジェネレーターの暴発から防ぐ訳ですからね」

 

一息付いて煙草の煙を出す。

 

「唯、やるなとは言いません。戦場に居る以上何が起こるか分かりません。しかし、リミッターを解除するなら長くて五分までです。それ以上はジェネレーターが耐えられない」

 

「五分ですか。長い様で短いですね」

 

「其処は諦めて下さい。ジムのジェネレーター自体が大した物では無いですからね。まあ、ザクよりかは高性能ですがね」

 

モンド伍長からの忠告を聞きながら俺はジムを見る。見た目は平気だが関節部やジェネレーター部分に整備兵が点検を行っていた。

 

「後は、曹長の機動は少々乱暴な所がありますからね。宇宙なら問題ありませんが。勿論地上でそれもやるなとは言いませんが程々でお願いします。関節部に負荷が掛かりますからね。戦闘中に機体が壊れましたなんて洒落にならんでしょう?」

 

「了解です。程々にしときます」

 

そう言うとモンド伍長も整備に向かう。俺は暫くジムを見つめる。色々負荷を掛けてしまった様だ。戦闘中に機体が壊れるのは勘弁して欲しいしな。

 

(それに、無茶な機動で機体を壊したなんて知られたらチェイス教官に怒られてしまう)

 

多分良い笑顔で特別鬼メニューの訓練が出されるだろうな。ジムと量産型ガンタンクの修理が完了してトレーラーに載せていく。そしてトレーラーを発進させる。

 

「頑張れよー!」

「ジオンの連中に目に物見せてやれ!」

「負けんなよー!お前らに賭けてんだからな!」

 

有難い声援を受けながらMS特殊部隊第27小隊は出撃する。

 

「ねね、そろそろ私達の部隊名とコードネーム決めましょう!」

 

「部隊名ですか?隊長の苗字を取ってラングリッジ小隊で良いのでは?」

 

「それで良いの?」

 

「ラングリッジ自体余り聞かない苗字ですし」

 

部隊名はあっさり決まる。分かり易い方が良いしね。しかし、コードネームか。

 

「ガルムを推薦します。以前はガルム12で通ってましたし」

 

「えー、可愛く無いから却下。マルポロにしましょう?私が昔飼ってた子犬の名前なの」

 

「なら僕からも。高潔からノーブルにしよう」

 

「コードネームですか。でしたらゴーストは如何ですか?私達は特殊部隊ですから絶対に敵に捕まる訳には行きませんから」

 

ルイス伍長…結構皮肉過ぎます。この後話し合いの結果あみだくじで決める事にした。神様頼むよ、マルポロだけは勘弁してくれ。

結果はガルムになった。聞き慣れたコードネームだから安心する。そして現在の味方の状況を確認する。

 

「現在味方残存部隊は市街地に籠城してます。敵戦力には旧ザク1機、ザク4機、そしてグフ1機確認してます。また後方に敵歩兵、戦車部隊も確認しています」

 

「此方の戦力は残存部隊とジム2機に量産型ガンタンク1機か」

 

「正面から戦うのは厳しいわね」

 

「ふっ、量産型ガンタンクが有れば火力では勝てるさ」

 

「その火力を活かせればでしょう」

 

レイナ少尉は容赦無くアーヴィント少尉を切り捨てる。

 

「そんな君も素敵さ」

 

しかし、効果は無い模様。

 

「敵の配置は退路を絶ってる方に旧ザク1機にザク2機になってます。後はマゼラ・アタック戦車が10輌以上です」

 

「ジオンに兵無しなんて嘘っぱちだな」

 

「こらこら、レビル将軍に文句言わないの。ルイス伍長、何か策は有る?」

 

「ジム2機が正面から敵を引き付けます。そしてアーヴィント少尉の量産型ガンタンクで狙撃です。後は戦線を後退させながら敵部隊を此方に引き付けます」

 

「籠城してる味方部隊と連絡が取れれば良いんだけどな」

 

あの市街地周辺にはミノフスキー粒子が出ていた為連絡が取れないのだ。そして暫く考える。すると良い事を思い付いた。

 

「発光信号を送りましょう。戦闘開始と同時に味方に伝える事が出来れば多少はマシです。勿論敵にも気付かれますが、もしかしたら反対側にいるグフとザクを此方に引き寄せれるかも知れません」

 

「却下だ却下!僕達が囮?君はナンセンスだよ。戦争をやり過ぎて気が狂ったのかな?」

 

「このままだと味方は全滅します。敵モビルスーツの相手をするだけでも味方の生存率は上がります」

 

「代わりに僕達の生存率は下がる訳だがな」

 

「この作戦の一番の肝はアーヴィント少尉の量産型ガンタンクによる狙撃です」

 

「っ!」

 

RX-75量産型ガンタンク。砲身が延長されてるし、索跡センサーも強化されてる。それがこの作戦の肝だ。

 

「ジムにはシールドが有ります。多少の被弾は何とかなります。中距離からのビームスプレーガンの威力は心許ないですが、ビーム兵器を使うのを見せれば敵は攻めるのに躊躇します」

 

「…リスクは高いわね」

 

この作戦はリスクが高い。だが、味方と連携が取れれば退路を絶ってる敵を一方的に叩ける。暫く考え込むレイナ少尉。

 

「賭け要素が大きいわ。でも、嵌れば此方の被害はかなり少なくなるわ」

 

「本気か!レイナ、考え直せ!」

 

「アーヴィント少尉、シュウ曹長が言った通り貴方の狙撃がこの作戦の肝よ。頼むわよ」

 

「っ!…ふっ、まあ君にそう言われたら仕方無いな」フサァ

 

(レイナ少尉は小悪魔系だな。こうやって惚れさせた男を手玉に取るんだな)

 

「シュウ軍曹、今はそんな事を考えてる場合じゃ無いですよ?」

 

ルイス伍長が小声で注意する。そんなに分かり易く顔に出てます?

 

「はい、バッチリと」

 

この後暫くトレーラーに揺られる。そして目的地の市街地まで10kmの所でモビルスーツを起動させる。

 

「システムチェック良し。武装も良しと。ガルム2よりガルム1へ、此方の出撃準備OKです」

 

『此方も準備OK。ガルム3は如何?』

 

『今起動完了したよ。いつでも行けるさ』

 

『ならラングリッジ小隊出るわよ!』

 

市街地に向かい前進する。ルイス伍長は指揮車両ホバートラックから通信にて戦況を教えて貰う。そんな時、レイナ少尉から秘匿通信が入る。

 

「如何しました?秘匿通信なんて使って。バレたら怒られますよ?」

 

『シュウにも一応教えておくわ。アーヴィント少尉の件についてよ』

 

「許嫁の件なら知ってますよ?」

 

『ちっがうわよ!て、其方じゃ無いの。アーヴィント少尉はね、モビルスーツ適性が低いのよ』

 

「え?低いんですか。それって大丈夫なんですか?」

 

『正直大丈夫じゃ無いわ。だから彼には量産型ガンタンクが配備されたのよ』

 

レイナ少尉は疲れた表情をしている。

 

「しかし、此処まで来たら後戻りは出来ないでしょう。アーヴィント少尉にはなるべく敵を引き付けない様にするしか無いですね。今此処で量産型ガンタンクが無くなれば火力が半減します」

 

『そうね。アーヴィントも悪い人では無いのよ。唯、ちょっとお馬鹿さんなのよ』

 

お馬鹿さんて…。秘匿通信を終える。そして、戦闘区域に入る。

 

『此処から先はレーザー通信のみよ。敵と接触する可能性は高いわ。充分に注意よ』

 

俺達は更に前進させる。ルイス伍長のブラッドハウンドは後方に待機。その場で索跡開始する。

 

『索跡出ました。11時の方向、距離3kmに震音確認。震音データ、旧ザクとザクです』

 

『なら早速信号弾を打ち上げるわ。景気付けに丁度良いわ!』

 

ジムから信号弾が打ち上げられる。戦闘開始だ。

 

「自分が前に出ます」

 

『了解よ。カバーするわ。ガルム3は所定位置で待機よ』

 

『分かった。敵が来たら直ぐに助けに来てくれ給えよ!』

 

量産型ガンタンクは少し離れた場所に移動する。そして俺達の戦いが今始まる。

 



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救出作戦2

同時刻 市街地 アーク・ローダ上等兵。

 

欧州方面軍歩兵部隊と61式戦車小隊は市街地に完全に閉じ込められてしまった。

 

「隊長、援軍は来ないのでしょうか?」

 

「来る、必ず援軍は来る。それまで堪えるんだ」

 

同期の奴が隊長に援軍を聞いてるが無駄な努力だろうに。

 

「宇宙も駄目、地上も駄目。俺達がジオンに勝てる訳が無いぜ」

 

「おいおい、噂を聞いた事無い訳じゃ無いだろ?連邦もモビルスーツを実戦投入してるってさ」

 

「噂は噂だぜ。一度も連邦のモビルスーツなんて見た事が無い。戦場に居るのはザクとグフだけだ」

 

諦め…だろうな。此処まで生き残れたのが不思議でなら無い。

 

「リジーナを家の屋根に設置するんだ。モビルスーツを此処で潰すぞ!」

 

「「「了解!」」」

 

別の場所には対MS特技兵がリジーナの設置に掛かる。あんな対戦車ミサイルをモビルスーツ様にアップグレードしただけで勝てるかよ。

 

「そう言えば、シュウの奴生きてんのかな?」

 

「シュウ、同期の奴か?」

 

「ああ、身体のG耐性が無駄に強い奴でな。生きてれば今でもセイバーフィッシュに乗ってると思うけど…」

 

「宇宙…厳しい所だよな」

 

宇宙でジオンを食い止める事が出来なかったから地球侵攻を許したのだ。生存は絶望的だろうと考える。その時だった。市街地に多数の爆発が起きる。

 

「敵襲!敵襲!ザク1機来るぞ!戦闘配置!」

 

「1機だけだと!舐めやがって、対戦車ミサイルを食らわせてやる!ジャン、ついて来い!」

 

「モビルスーツの相手は特技兵に任せれば!」

 

「その特技兵はたった今ミンチになったよ!畜生め!」

 

俺達はビルの中に入り登る。

 

『ランサー3待つんだ。歩兵と戦車を先に行かせるんだ』

 

『ふん、奴等の武器でザクは倒せるもんか。此処は自分だけでやれます!』

 

ザクは市街地に入る。しかし、反撃は無い。

 

《やはりな。連邦兵に告ぐ!今直ぐ降伏しろ!嫌なら全員死んで貰うぞ!》

 

ザクはスピーカーで連邦兵に警告を出す。

 

『此方第2分隊配置良し』

『第4分隊リジーナ設置完了』

『此方も足元に着いた。やれるぜ!』

 

通信機からザクを倒す為に配置に着く仲間の声が聞こえる。

 

「第8分隊ビルの上に来た。ザクの頭は任せろ」

 

「うへ、ザクを間近で見るとかヤバすぎだろ」

 

そして、通信機からの合図を待つ。

 

『よし、今だ!頭を潰せ!』

 

「了解!くたばれ一つ目野郎!」

 

此方に気付いたが最早手遅れだ。対戦車ミサイルは真っ直ぐに一つ目に向かって行く。そして、次々と対戦車ミサイルや対MSミサイルが飛んで行く。関節部を的確に破壊して行く。ザクはゆっくりと倒れる。

 

「よっしゃあ!ザクが何だってんだよ!」

 

「アーク!不味いぞ!歩兵と戦車が来るぞ!」

 

そして市街地戦が本格化する。61式戦車がマゼラ・アタック戦車を破壊。味方歩兵部隊が瓦礫の下敷きになる。ビルの上から敵歩兵部隊に対し手榴弾を投げ込む。

 

『モビルスーツ来るぞ!警戒!警か』

 

ビルの一角にザクマシンガンが撃ち込まれる。

 

「畜生!トーマス達が!」

 

「援軍は来ないのかよ!」

 

退路は無い。有るのは降伏か死だけだ。そして、反対側からも旧ザクとザクが来る。その時、旧ザクとザクの背後から戦闘開始の信号弾が打ち上げられる。旧ザクとザクはそちらを見る。

 

「赤い信号弾、戦闘開始?」

 

「あ、おい!見ろ!援軍だ!援軍が来たんだ!ザクじゃ無い味方のモビルスーツだ!」

 

ジャンが双眼鏡を覗きながら興奮する。俺も急いで双眼鏡を覗く。

 

「本当だ…ザクじゃ無い。シールド持ってる。連邦のマークも有る!」

 

俺は連邦のモビルスーツ2機がザク3機に突撃して行くのを見つめたのだった。

 

……

 

『もう戦闘が始まってるわ。急ぐわよ』

 

「了解」

 

ブースターを使いながら市街地に向かう。そして遂に市街地が見えた。旧ザク1機とザク2機、マゼラ・アタック戦車も市街地に入る途中だった。

 

「先ずは接近する!」

 

更にブースターを使い接近する。

 

『アレが噂の連邦のモビルスーツか!だが、突っ込むだけで勝てると思うなよ!』

 

『全機攻撃開始!』

 

ザクバズーカが最初に飛んで来る。

 

「くっ!良い狙いだ。当たったら一発で終わりだな」

 

兎に角動き続けるしか無い。行くぞ!

 

「ガルム1は援護を!」

 

『待って!一人で何て無茶よ!』

 

その間にザクマシンガンが撃ち込まれる。俺はシールドを構えながら突っ込む。

 

『撃ちまくれ!シールドを破壊してやれ!』

 

『『了解!』』

 

『シュウをやらせる訳無いでしょう!喰らいなさい!』

 

ガルム1から90㎜弾の嵐が敵に向かう。敵は動きを止める。お陰で此方も充分な距離は詰めれた。シールドの横からビームスプレーガンを出す。

 

「この距離なら行ける!」

 

先頭の旧ザクに対してビームスプレーガンを撃つ。ビームはコクピットに直撃する。そして旧ザクはゆっくりと倒れる。

 

『た、隊長!』

 

『ビ、ビーム兵器だと!』

 

更にビームスプレーガンを撃つ。ガルム1からも90㎜ガトリングガンがザクを撃ち抜いて行く。

 

『次はマゼラ・アタックよ!』

 

「了解!」

 

味方の2輌の61式戦車も此方の意図を理解してくれたのか、此方側のマゼラ・アタック戦車を攻撃開始する。挟撃の形に出来たのであっという間に敵を撃破して行く。

しかし、反対側からザクとグフが跳んで此方に来る。

 

『おのれ!よくも仲間達を!』

 

『ガルム3、準備は良い?』

 

『勿論さ。これが僕の初戦果だ!』

 

次の瞬間ザクは空中で爆散。

 

『狙撃だと!マゼラ隊はスモークを張れ!此奴らは私に任せろ!』

 

『了解です!』

 

スモークが張られる。

 

『くっ!狙撃出来ない。敵を見失った!』

 

『ガルム2下がるわよ!スモークから出ないと!』

 

急いで後退しようとする。だが、敵グフは逃がすつもりは無い。

 

『貴様ら!生きて帰れると思うな!』

 

「くっ!来るか!」

 

グフが左手のバルカンを撃ちながら接近して来る。シールドで防ぎビームスプレーガンを向ける。

 

『動きがパターンだ!撃たせんぞ!』

 

グフはシールドでビームを防ぐ。そして右腕からワイヤーが飛び出る。ワイヤーはビームスプレーガンに絡み付く。嫌な予感がしてビームスプレーガンを手放す。次の瞬間、ワイヤーから高電撃が来てビームスプレーガンが爆散する。

 

『この距離はグフの間合いなのだよ!』

 

グフはヒートサーベルを抜く。そしてシールドごとジムの左腕を斬り捨てる。

 

「くっ、強い」

 

『所詮、連邦のモビルスーツ等私の敵では無いわ!』

 

後退しようにも逃げ切る事が出来ない。俺はジムのリミッターを解除する。そしてブースターを前に向かって全力噴射させる。逃げれ無いなら突撃するのみ!

 

「うおおおお!!!」

 

『何!?このグフに接近戦を挑むか!無謀だな!』

 

グフがヒートサーベルを振り上げる。使えない左腕を前に突き出す。左腕はヒートサーベルを受け止めるのでは無く右腕を抑える。

 

『貴様!やるな!』

 

左腕のバルカンを此方に向ける。だが、それも予想済みだ。右手で抑える。そして至近距離で睨み合う。

 

「ジムのもう一つの武装を見せてやる!」

 

ジムに標準搭載されてる60㎜バルカン砲をグフの頭部に撃ちまくる。グフの頭部に次々と穴が空いて行く。そして、右手を離してコクピットに向けて拳を打ち込む。

 

『ぐおあ!?ば、馬鹿な…このグフが、連邦のモビルスーツ何ぞに!』

 

「沈めえええ!!!」

 

最後に膝蹴りでコクピットに直撃させる。そしてグフはゆっくりと倒れる。

この後は敵は撤退して行く。しかし、連邦軍は今迄の借りを返すと言わんばかりに追撃を行う。俺は追撃は味方に任せる事にする。代わりに倒したグフに近付く。そしてビームサーベルを抜く。

 

《グフのパイロット、聞こえてるなら出て来い。無駄な抵抗をするのはやめておけ。抵抗しなければ南極条約に沿った処置はしてやる》

 

《くっ…くくく、甘いな。その甘さが戦場では命取りだぞ》

 

《充分理解してる。それでも、俺は無抵抗の奴を殺す程落ちぶれてない!》

 

《精々生き残る事だな。だが、投降はしない……今、其方に行くぞ》

 

まさか、此奴!

 

《おい!止めろ!》

 

《ジオン公国に栄光あれ。ジーク・ジオン…》

 

 

 

パンッ

 

 

 

戦場に一発の銃声が響き渡る。だが、それは一瞬で他の銃声や爆発音により掻き消されるのだった。




60㎜バルカン砲が遂に火を吹いたぜ!


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山岳地帯補給物資破壊

救出作戦は多少の被害を出しながらも成功した。50名程が死傷、61式戦車2輌大破だ。それでも俺達ラングリッジ小隊は連邦兵達から感謝されていた。

 

『取り敢えずひと段落着いたみたいね。警戒も向こうがやってくれるみたいだし降りよっか。んー、疲れたー』

 

『レイナ、僕の狙撃を見たかい?どうだい、僕もやろうと思えばやれるのさ!』

 

『シュウ曹長、お疲れ様でした。敵モビルスーツ2機撃破は素晴らしい戦果です!』

 

「取り敢えず皆んな落ち着こうぜ」

 

俺達はコクピットから出る。すると連邦兵の人達が歓声を上げて俺達を迎えてくれる。

 

「助かったぜ!有難う!」

「ジオンに勝てたのはお前らのお陰だ!」

「うひょー!あの女パイロット凄く美人じゃねえかよ!」

「今から食事でもどうだい?俺らの奢りだぜ!」

 

歓声?を上げてる中に降りて行く。そんな中、かつての同期の声が聞こえた。

 

「シュウ?シュウなのか!おーい!俺だよ!」

 

「アーク?生きてたのか。無事生き残ってて良かった」

 

「それはこっちの台詞だぜ。てっきり宇宙の塵になってるかと思ってたぜ」

 

「そんな訳…いや、何度か塵になり掛けたけどさ」

 

思い返せば良く生き残れたもんだな。

 

「そんな事よりだ。お前モビルスーツに乗ってんのかよ?」

 

アークはジムを見ながら聞いてくる。

 

「そうだ。モビルスーツパイロットの転換訓練を受けてな」

 

「そっか…なあ、俺にも操縦出来るかな?」

 

相変わらずジムを見つめながら聞いてくる。アークが何を思ってるのか何となく理解出来る。この戦争が始まってからアークも何度も絶望を味わったのだろう。

 

「適正訓練を合格すれば多分な」

 

「なら、俺も受けてみるぜ。そうすればジオンをぶっ潰せるだろ?」

 

アークの目には憎悪が見え隠れする。やはりアークも戦争に染まってるな。いや、俺も染まってるんだろうな。自分が気付かないだけでさ。

この後市街地から撤退作業に入る。だが俺達ラングリッジ小隊は修理をした後、更に前進する。

 

「しかし、随分と派手に壊したな」

 

「いやー、敵が強すぎでした。正直死ぬかと」

 

「曹長が無事なら別に構わ無いさ。予備の部品は有るから直ぐに直せる」

 

モンド伍長はリミッターを外した事については言及しなかった。何だかんだで甘い人だよな。味方歩兵、戦車部隊は前線基地に後退して行く。

 

「ラングリッジ少尉!また会いましょう!」

「今度は俺が貴女を守ります!」

「好きだー!結婚してくブヘッ」

「裏切り者だ!粛清する!」

 

どいつもこいつもレイナ少尉にしか目が行ってない。

 

「みんなー!生きてまた会いましょうー!」

 

「「「「「了解です!ラングリッジ少尉!」」」」」

 

レイナ少尉の一言で言いなりになる野郎共。

 

「あんな性格だから同性から嫌われるんだな」

 

「シュウ曹長。それは絶対にレイナ少尉には言わない方が良いですよ?」

 

ルイス伍長が苦笑い気味に言う。しかし、俺はとうの昔に言ってるんだよな。

 

「ふっ、流石僕の許嫁だよ。実に素晴らしい!惚れ直したよ!」フサァ

 

アーヴィント少尉はレイナ少尉を再び惚れ直していた。いや、惚れ直したと言うよりゾッコンになったんじゃ無いか?

 

「こっちはこっちで面倒くさい常態になるし。本当にこの部隊は大丈夫かな?」

 

「だ、大丈夫ですよ。私もフォローしますから」

 

フォロー前提で話を進めるルイス伍長。

 

「お互い頑張りましょう」

 

「はい。宜しくお願いします」

 

俺とルイス伍長は握手する。何となく良い雰囲気になってるのは気の所為では無い筈。

俺達は味方部隊を見送った後、更に北東方面に進出する。其処で敵部隊を陽動、及び撹乱する事になる。

 

「さあ、ラングリッジ小隊!出撃よ!」

 

レイナ少尉の号令でトレーラーは動き出す。

 

「また戦場に行くのか」

 

ふと、あのグフのパイロットを思い出す。投降する事無く自決したパイロット。それ程までに強い意志を持ちながら戦っていたのだろうか?じゃあ俺は?其処まで強い意志なんて無い。

 

(考えても仕方無いのかもな。結局、俺は死にたく無いから戦場で戦うしか無いからな)

 

死にたく無いのに戦場に行く。この矛盾が今の世の中の常識の一つかもな。柄にも無い事を考えながら次なる戦場に向かうのだった。

 

……

 

市街地より更に北東に進む。この辺りはジオン軍の勢力圏内になる。しかし現在欧州前線基地に次々と戦力が集まってる為、警戒の穴は大きくなっていた。

 

「今回の目標はこの山岳地帯にあるジオン軍の補給物資の破壊に成ります」

 

俺達はホバートラックの中で作戦会議をしていた。そしてルイス伍長は地図を出しながら説明をする。

 

「我々の現在地は此方に成ります。そして敵の補給地点が山岳の頂上に一箇所、麓に二箇所有ります」

 

補給地点はバラバラだ。恐らく纏めて破壊されるのを警戒しての配置だろうな。

 

「敵の戦力はどの位なの?」

 

「はい。旧ザクが2機とザクキャノンが2機、更にトーチカが複数配置されてます。しかし、トーチカの位置は完全には解析されてません」

 

「因みにルイス伍長ならどの辺りにトーチカを設置します?戦術オペレーターとしての意見が欲しいです」

 

俺の意見に暫く考え込むルイス伍長。

 

「私でしたら最低でも此処と此処に設置します。残りはザクキャノンがカバーする形で出来ます」

 

ルイス伍長は理由も含めて意見を言ってくれる。

 

「なら、それに賭けましょう。私とシュウ曹長はハイパーバズーカ装備よ。後はビームスプレーガンか90㎜マシンガンね。アーヴィント少尉はトーチカを発見次第砲撃よ。トーチカを破壊したら次は敵モビルスーツに攻撃。最後に補給物資に攻撃よ。ルイス伍長は私達が逐一座標を送るから、それを整理してアーヴィント少尉に送って頂戴。残りの人達は量産型ガンタンクとホバートラックの隠蔽作業と周辺警戒よ。何か質問は?」

 

レイナ少尉は真面目な表情で聞く。しかし、レイナ少尉…貴女って人は。

 

(ちゃんと隊長出来たんだな。流石は下から一番と言えども士官学校出身は伊達では無いみたいだな)

 

俺は両手で顔を隠してそう思う。これならバレまい。

 

「シュウ曹長、今考えてる事を正直に言いなさい。上官命令よ」

 

「あ、汚ねえ。こんな時に上官振るのやめてくれません?」

 

「私はシュウの上官よ!」

 

豊かな胸を張りながら偉そうに言う。言われてみれば確かに俺の上官だったわ。

 

「レイナ少尉の真剣な表情も凛々しいなと思っただけですよ」

 

嘘は言ってない。ただ、全部言ってないだけさ。あー、でも逃れられそうに無いな。

 

「も、もう…馬鹿な事考えて無いで真面目にしなさいよ」

 

ちょっと頬を染めるレイナ少尉。あれ?怒られない?

 

「ゴホンッ!兎に角、作戦開始は明日明朝よ。それまでに準備を済ませるわよ。それからシュウは罰としてアーヴィント少尉の機体の擬態擬装作業を手伝う事!以上!」

 

レイナ少尉はそう言い残して出て言った。

 

「シュウ曹長…レイナは渡さんからな!」

 

アーヴィント少尉から人差し指をビシッと向けられる。そのまま出て行く。

 

「いや、意味分からないんですけど」

 

「シュウ曹長はもう少し女心を理解した方が良いですよ?私にとっても大事な事ですからね」

 

ルイス伍長も良い笑顔を向けながら言う。しかし、その笑顔が少し怖い。

 

「あ、はい。気を付けます」

 

「はあ、シュウ曹長には色々振り回されそうですね」

 

ルイス伍長もそのままホバートラックから出て行く。残された俺はと言うと。

 

「擬態作業手伝うか」

 

問題を先送りにしたのだった。

 

……

 

擬態作業が終了して夜になる。その間にジムを所定の位置に移動させる。俺のジムの装備はハイパーバズーカ、ビームスプレーガン、シールドだ。レイナ少尉はビームスプレーガンが90㎜マシンガンになっている。そしてレイナ少尉と二人っきりで行動しているが。

 

『………』

 

無言が続く。別に悪い事は言ってないんだけどな。

 

「そう言えばレイナ少尉は」

 

『私語は慎みなさい。今は作戦行動中よ』

 

すっごい真面目な返信が来たんですけど。いや、此れが本来軍人として正しい姿なんだろうけど。

 

(うわー、似合わねえ」

 

『ちょっと!真面目な私の方が良いんじゃ無いの!』

 

「うわ!吃驚した!だから心を読まないで下さい」

 

バッチリ口に出てたわよ!と怒られる。あれれ?可笑しいな。

 

「レイナ少尉、御免なさい」テヘペロ

 

前回はダメだったが、今回はテヘペロバージョンだ。これならイケる!

その時、機体からロックアラームが鳴る。目の前に居るジムがハイパーバズーカを此方に向けていたのだ。

 

「ねえ、シュウ曹長は知ってる?無能な部下は誤射に見せかけてヤるのよ?」

 

何をヤるんですかレイナ少尉殿。この後滅茶苦茶謝った。なあ、知ってるか?今作戦行動中なんだぜ?

 

『全くもう。はあー、肩が凝ったわよ』

 

どうやら真面目にやってたら疲れたらしい。

 

「でも真面目なレイナ少尉は綺麗でしたよ。普段は可愛い感じでしたが、綺麗なレイナ少尉は新鮮でしたし」

 

個人的には役得感が有ったな。

 

『……ふん。今度休暇が取れたら買い物に付き合って貰うからね。因みに拒否権は無いわよ』

 

少し不貞腐れた感じに言う。しかし怒っては無いみたいだ。

 

「了解です。お供させて頂きます」

 

そしてこの後は無言が続く。しかし、空気は悪く無かった。

 

(あれ?買い物に付き合うってさ、もしやデートになるの?)

 

この疑問に答えてくれる人は多分居ないだろうなと考えながら。

 



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番外編 あの名シーンを書いてみた。

本編とは全く関係ありません。


あの名シーンを再現してみた。

 

夜。ホワイトベース(笑)に高速で接近する熱源を感知した。そこでガンダム風ジムが出撃して迎撃に出る。ぶっちゃけVアンテナが付いたジムである。

 

「あのさ、普通のジムで良くない?」

 

『ダメですね。やはり名シーンですから』

 

ルイス伍長は妥協を許さない。

 

「だったらさ、あのホワイトベース(笑)を何とかしろよ!ミディアにダンボールくっ付けただけじゃん」

 

然もコンテナ部分とか見えてるし。

 

『予算不足で…皆んなで頑張って作ったんですけどね』

 

「因みに何に予算使ったのさ?」

 

『Vアンテナで予算の半分以上が無くなりましたから』

 

衝撃の事実。まさかのVアンテナである。

 

「えっ!?何でそんなに高いんですか!」

 

『そのVアンテナはRX-78ガンダムと同じ物なんですよ!私凄く感激しました!』

 

ルイス伍長はちょっとテンション高くなる。ガンダム好きなん?

 

「予算不足ならVアンテナをダンボールで作れよ。だからホワイトベース(笑)になってるんだよ」

 

『皆んなで頑張って作ったんです!』

 

「それは凄く伝わってるよ!」

 

だって凄い手作り感たっぷりなんだし。

 

『敵モビルスーツ隊が待ってます。迎撃に行って下さい。御武運を』

 

「待っててくれてるんだ。もうこの時点でグダグダだよ」

 

そして、遂にあの名シーンが来る。

 

『ガイア、オルデカ、マッシュ。ジェットストリームアタックを仕掛けるぞ!?』

 

「一人多ーーーい!?誰だよお前ーーー!!!」

 

4機いる!黒い四連星になってるー!

 

『敢えて言わせて貰おう。グラハ○・エー○ーであると!?』

 

「お前の出演作品は別シリーズだろうが!」

 

シュウ曹長のツッコミにキレが入る。

 

『敢えて言わせて貰おう。カスであると!?』

 

「シリーズは合ってるけど今出てきちゃダメだろ!?お前総帥だろ!?」

 

どうせ前半の台詞が同じだから出てきた口だろ!しかしドム4機は容赦無く襲って来る。それをジム1機で迎え撃つ。

 

「いや、俺ニュータイプじゃねえから!無理だから!」

 

そんは悲痛?な叫びを上げた時だった。

 

『待たせたわね。真打登場よ!』

 

『やはり君では荷が重過ぎたみたいだな』フサァ

 

其処には月をバックにレイナ少尉のジムとアーヴィント少尉の量産型ガンタンクがキメポーズを取っていた。お前ら暇人か!

 

「でも相手は最新鋭機のドムですよ。3機相手でも無理なのに、変なドムが1機が増えてるし」

 

『安心しなさい。私に策が有るわ』

 

ドヤ顔になるレイナ少尉。しかし、怪しい。

 

「因みにどんな策ですか?」

 

『簡単よ。相手がジェットストリームアタックをするなら私達もジェットストリームアタックをすれば良いじゃない!』

 

「アンタはマリーアントワネットかよ!処刑されんぞ!」

 

『じゃあ行くわよ?変身!あ、シュウ曹長もそこの黒と紫色のボタンを押してね』

 

ボタン?と思いながら探す。すると確かに黒と紫色のボタンが有った。

 

「これで何とかなります?」

 

『安心しなさい。ちゃんと保証するわよ』

 

チラリとドム4機を見る。律儀に待っててくれてるし。このまま待たせるのも悪いしな。意を決してボタンを押す。すると…

 

ウィーンガチャンガチャガチャガガガギュイーンガギゴキメキメキメキブチブチブチブチ

 

「ちょっとおおお!?俺のジムから出てはいけない音が!て、うわ……二人の機体もトンデモナイ事になってるーーー!?」

 

最早ジムの原型は無い状態になってる。もう、見せられないよのテロップが出てるし。て言うか、俺のジムもあんな感じなんか?

 

「レイナ少尉!アーヴィント少尉!生きてますかー!」

 

『平気よ平気。問題無いわ』

 

『大丈夫だ。問題ない』

 

問題有り過ぎだよ!そして、遂に変形が終わる。其処に現れた機体は。

 

『これぞ連邦製の熱核ジェットエンジン搭載型の……ドムよ!!!』

 

変形が終わって現れたのはMS-09ドムであった。

 

「連邦製関係無ーーーい!?唯のドムだよ!ジオン公国軍が作り上げた傑作機の一つMS-09ドムだよーーー!?」

 

大体こんな風にやる必要性は無いだろうに。

 

「予算不足の一番の原因は絶対にこのドムだろ!」

 

『違うわよ。一番予算掛かったのはシュウの機体に付いてるVアンテナよ』

 

ここに来てもまだVアンテナの方が高いのか!然もドムに変形してもVアンテナは健在だし。

 

『それに変形もジオンと連邦の変態技術者達にお願いしたら、二つ返事でOKしてくれたわ!』

 

パチンとウィンクするレイナ少尉。この、魔性の女め!

 

『じゃあ、そろそろ行くわよ。シュウ、アーヴィント、ジェットストリームアタックを仕掛けるわよ!』

 

「あ、このまま話を進めちゃうんだ」

 

もう、滅茶苦茶だよ。そしてドム4機とドム3機が互いに接近する。しかし悲劇は起きる。いや、起きて当然と言えるだろう。一人は総帥として活動してる立場。そして、もう三人はドムなんぞ操縦した事が無いど素人。

 

『『あっ』』

 

先頭に居る総帥とレイナ少尉のドムが何かに躓く。

 

「ちょっ!?待っ!!」

 

ドムの高機動は急には止まれない。

 

『ふっ、華麗に散るのもエリートたる所以さ』フサァ

 

アーヴィント少尉は諦めの境地に入ってた。そして。

 

ドンガラガッシャーン!!!

 

7機のドムが揉みくちゃになり重なる。そして、モニターの前にはドムのモノアイがどアップに見える。一体誰のドムだよ。どいつもこいつもドムだから見分けが付かなんだよ。

 

『っ!?ど、退きなさいよ!』

 

「うお!?何だ。レイナ少尉か」

 

しかし何故かレイナ少尉は頬が赤い。一体何故?

 

『うう…初めてだったのに。私の…ファーストキスが。シュウ!責任取りなさい!』

 

「ちょっと待てーーーい!ドムがくっ付いただけやん!ドムでファーストキス済ませちゃうの!?良いんですか!?」

 

この後更にグダグダになる。最早収集がつきそうになかった。

 

「畜生!これで終わりだ!もう俺は帰るからな!」

 

俺の叫び声が空に響いたのだった。

 

 

 

終わり

 




なんか妄想しちゃったんだ……後悔しか無い(キリッ)


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山岳地帯補給物資破壊2

AM4:00 ジオン山岳地帯補給物資保管場

 

「ふあ…、眠いぜ。全く見張なんて要らないだろうに」

 

「確かに。こんな辺鄙な場所に来る連邦が居るかよ」

 

「まあな。精々来たとしても航空機ぐらいだしな」

 

だが、ジオン兵達は平気だった。何故なら対空兵器は万全だったのだ。更に対空の要となっているモビルスーツが有ったのだ。

 

「ダメ元で現地改修したら結構良い感じになったしな」

 

其処には情報に無い機体が鎮座していた。

MS-06Vザクタンク。現地改修が多い機体の為、様々なパターンが存在する。そして、この山岳地帯補給物資保管場に有るザクタンクもその一つである。腕部を全て廃止して40㎜対空砲4門とシールドを搭載。更にグフカスタムに使用する75㎜ガトリング砲を右肩部に1門搭載している。左肩部にはザクのモノアイとレーダーを搭載しており対空能力及び索跡能力向上に成功した。又3連装ミサイルを2つシールドに装着していた。そして機動力が低い事を想定してグフのシールドを前面に装着。更に各部に追加装甲を取り付けている。

 

「へっ、連邦共がここに来たら後悔させてやるぜ」

 

旧ザク2機、ザクキャノン2機、現地改修ザクタンク1機、そして多数のトーチカ。この補給物資保管場に来る連邦軍をお出迎えする準備は完璧だった。

 

……

 

同時刻、山岳地帯麓より約3km。

 

俺達ラングリッジ小隊は最後の作戦会議をしている。

 

『ルイス伍長、敵の動きはどう?』

 

『依然沈黙しています。またミノフスキー粒子も他の地域より濃い様です』

 

『成る程ね。ならそろそろ行くわよ。ミノフスキー粒子が有るとは言え、これから先はバレる可能性が高くなるわ。先ずは敵モビルスーツを最優先で破壊よ』

 

「了解」

 

『ガルム3も準備は良い?モビルスーツが無理なら補給物資を砲撃して頂戴』

 

『任せ給え。僕の射撃の腕前をジオン共に見せ付けてやるさ』

 

各員の戦闘準備が整う。

 

『それじゃあ、戦闘開始!』

 

『『「了解」』』

 

俺とレイナ少尉は敵補給物資保管場に向かう。最初に攻撃を仕掛ける場所は山の麓に有る保管場だ。

 

『前方12時方向にある保管場には旧ザクが1機居ます。お気を付けて』

 

「分かりました。先ずは其奴からか」

 

ジムを加速させる。そして敵の保管場所からサイレンが鳴り響く。それと同時に照明弾も打ち上げられる。

 

「見えた。前方に旧ザク。更に奥の方から旧ザクが麓から降りて来る」

 

『ならこれでも食らいなさい!』

 

レイナ少尉はハイパーバズーカを撃つ。しかし距離が有った為、旧ザクには当たらず。更にトーチカから砲撃が来る。

 

「うへぇ。正確な射撃だ。シールドが無かったらキツイいな」

 

『全くよ。ルイス伍長、支援砲撃要請。ポイント座標送ったわ』

 

『了解しました。直ぐに砲撃開始します』

 

俺はそのまま山岳地帯を利用して敵からの射線を少なくする。まるで歩兵戦闘だな。

 

「モビルスーツ自体人型だから有ってるのか?うわ!?だから狙いが正確なんだよ!畜生!」

 

敵の攻撃をハイパーバズーカでお返しする。しかし旧ザクには当たら無い。そして遂にガルム3からの砲撃が来る。砲撃は敵のトーチカを次々と破壊して行く。更に物資保管場も巻き込み破壊する。

 

「これで残り保管場所は二箇所か。その前に前方の旧ザクだな。ガルム2からガルム1へ。今から前に出ます。生き残ってるトーチカにハイパーバズーカでお願いします」

 

『分かったわ。だけど無茶はし無いで』

 

「了解です。では、行きます」

 

俺はシールドを構えながらブースターを吹かす。旧ザクの前をブースターを使いながら移動する。すると生き残ってるトーチカからも砲撃が来る。

 

「先ずは其処だ!」

 

旧ザクのザクマシンガンからの攻撃をシールドで防ぎながら、ハイパーバズーカでトーチカを一つ吹き飛ばす。もう一つはレイナ少尉が破壊した。

 

「そもそも、お前らが麓から降りてきた時点で駄目なんだよな」

 

待ち伏せをし続ければよかった物を。恐らく連邦のモビルスーツを破壊して戦果が欲しかった口だろう。俺は旧ザクを狙い付けてハイパーバズーカを撃つ。そして腹部に直撃させる。旧ザクは一瞬止まり爆散した。

 

『ほらほら、こっちも居るわよ!』

 

レイナ少尉も90㎜マシンガンで旧ザクを倒す。

 

「残り二箇所ですね。これから先が大変だよな」

 

『そうね。ガルム1からガルム3へ。次の砲撃要請があるから準備はしておいてね』

 

『了解したよ。任せてくれ給え』

 

更に前進して次の補給物資保管場に行く。しかしザクキャノン2機とトーチカ群が待ち構えてる。そして砲撃が多数飛来して来る。

 

「畜生…あんなにバカスカ撃ちやがって。ポイント座標送ります。支援砲撃を!」

 

『了解しました』

 

量産型ガンタンクの砲撃がトーチカ群に対して猛威を振るう。しかし、其処には奴がいたのだ。

 

『砲撃ポイントの逆算に成功。ザクキャノン隊、反撃開始』

 

『『了解』』

 

ザクキャノンが在らぬ方向へ砲撃をする。

 

『不味いわ!ルイス!アーヴィント逃げて!』

 

『え?何できゃっ!?』

 

ルイス伍長との通信が切れる。まさか、彼奴ら量産型ガンタンクの砲撃から予測したのか!

 

『ルイス伍長!アーヴィント少尉!返事をしなさい!』

 

レイナ少尉が通信を試みる。だが目の前に突然ザクタンクが現れる。不味い!

 

「ガルム1!レイナ少尉逃げろ!」

 

それと同時にザクタンクの肩部の75㎜ガトリング砲が火を噴く。

 

『え?っ!?』

 

レイナ少尉は咄嗟にシールドを構えるがガトリングの75㎜弾の雨が降り注ぐ。レイナ少尉のジムの脚部と右腕が被弾損傷。更に山岳に居たので滑り落ちる。

 

「追撃何ぞさせるかよ!」

 

即座にジムのリミッターを解除して、シールドを構えてレイナ少尉のジムの前に行く。そしてハイパーバズーカを乱射する。兎に角ハイパーバズーカの爆発で少しでも目眩しになれば良い。

 

「ガルム1動けますか!敵は俺が引き付けますから!」

 

『くっ…ちょっと厳しいかな。さっきの衝撃でバックパックも壊れたみたい』

 

レイナ少尉のジムは行動不能。ルイス伍長達との通信も出来無い。考えろ…2秒だ。チェイス教官が言ってた。全てを2秒で決めろと。

 

「 ……ガルム2からガルム1へ。先に謝ります」

 

俺はレイナ少尉の返事を待たずにジムを蹴り落とす。兎に角敵の射線から隠せれば良い。レイナ少尉から悲鳴と文句が来るが平気そうで何よりだった。

 

「行くぞ!先ずはザクキャノンからだ!」

 

ハイパーバズーカを放棄してビームスプレーガンを構える。そしてバックパックのブースターを全開で吹かす。そのままザクキャノン2機に接近する。

 

『馬鹿か!態々空中に跳んでくるとはな!』

 

『鴨撃ちにしかならねえよ!』

 

ザクキャノン2機からの攻撃が来る。その瞬間シールドを手放しジムをブースターを使い右に傾ける。そして、再度一気にブースターを全開にする。

途轍もないGが身体に掛かる。だが、視界を失う事は無い。狙いをしっかり付けてトリガーのスイッチを押す。ビームはザクキャノンのコクピットに直撃する。そして次の瞬間爆散する。

 

『ジャクソン!野郎、やりやがったッ!?』

 

仲間が死んだ事に一瞬目を離した隙にザクキャノンに向かってブースターを全開にして接近。そしてビームサーベルを抜く。

 

「貰ったああああ!!!」

 

ザクキャノンから砲撃が来る。だが砲弾は左側を通り過ぎる。俺はそのままビームサーベルを振り下ろす。

ザクキャノンの左肩部からコクピットに掛けて斬りつけた。そしてザクキャノンは暫く棒立ちになりゆっくりと後ろに倒れる。

 

「後、1機は何処だ!」

 

目視で探そうとする。しかし次の瞬間、衝撃と共に左腕が被弾する。俺は急いでジムを山影に隠れさせる。如何やら待ち構えていたようだな。

 

『やってくれたな連邦め!生きて帰れると思うなよ!』

 

『今度はちゃんと当てろよ?仲間の仇だ。生かして返すなよ!』

 

ザクタンクから75㎜ガトリング砲と40㎜対空砲の攻撃が来る。ビームスプレーガンで反撃を試みるが前面に装着してるシールドに防がれる。

 

(ジリ貧だな。敵の歩兵が来る可能性が有るし。それに弾切れを狙うのは厳しいかな)

 

左腕は被弾した際に動か無くなった。ビームスプレーガンで応戦するが、ザクタンクは戦車ならではの横移動で避ける。然も脚部が全長の高さが低い為、直ぐに岩陰に隠れてしまう。

 

「くそ、ジェネレーターもこれ以上の負荷はダメか」

 

ジェネレーターや周辺機器に警告が出ていた。然もバックパックもオーバーヒート気味に成っていた。やはりリミッター解除と無理な機動がジムにダメージを与えていた。しかし、敵はこっちの事情何ぞ知った事がと言わんばかりにミサイルを撃って来る。

 

『おらおら!さっきまでの威勢は何処に行った?』

 

『所詮連邦がモビルスーツを使う事が生意気何だよ!』

 

(さっきから遠慮無く撃ちやがって。早く弾切れになってしまえ!コンチクショー!)

 

内心この状況に愚痴るしか無い。そんな時、ルイス伍長から通信が来る。

 

『ガルム2……えますか?…2!応答……います!』

 

「此方ガルム2!ルイス伍長無事でしたか!うわっ!?畜生!此れでも喰らえ!」

 

ビームスプレーガンで反撃するがエネルギーゲインから警告が鳴る。如何やら無駄撃ちし過ぎた様だ。

 

『此方は無事です。ガルム3からの支援砲撃も可能です!』

 

「本当か!今、座標ポイントを送ります!」

 

急いでルイス伍長に座標ポイントを送る。此方もザクタンクを足止めする為に60㎜バルカンを撃つ。

 

『そんな攻撃が効くかよ』

 

『そろそろ仕留めるぞ。奴はもう死に体だ』

 

ザクタンクがゆっくり近付く。だが、少し来るのが遅かったな。砲弾が来る独特の音が響き渡る。そして、ザクタンク周辺に着弾。

 

『ぐわっ!?まだ生きてたのか!』

 

『このままだと不味いぞ!急いで後退を!?』

 

ザクタンクが砲撃から逃げようとする。だが、逃してたまるか!

ビームサーベルを抜き、再度ブースターを全開にして敵に接近する。だが、回避するだけの余裕は無い。ザクタンクも馬鹿では無い。此方に照準を向ける。俺はビームサーベルを投げる。そして60㎜バルカンでビームサーベルを撃つ。

ビームサーベルに60㎜弾が当たる。それと同時にビームサーベルからエネルギーが放出される。

 

『一体何だよ!』『こ、これは!?』

 

よく聞く言葉だ。戦場での一瞬の隙は命取りになる。ザクタンクが止まった瞬間にビームスプレーガンを構える。それと同時にザクタンクの横にジムを移動させていた。

 

「終わりだ」

 

至近距離からビームスプレーガンでザクタンクの3連装ミサイルを撃ち抜く。そして爆発してザクタンクが横転する。するとザクタンクからパイロット2人が脱出して逃げようとする。

 

《其処のジオン兵に告ぐ。直ちに降伏しっ!?》

 

別の所から対MSロケット弾が飛んで来た。やはり歩兵が居たか!60㎜バルカンで反撃をするが弾切れになる。ビームスプレーガンも撃てそうに無い。

 

「……これ以上は無理か。ガルム1、これ以上の戦闘は困難です。自分のジムも各部に警告が出てます。一旦後退しましょう」

 

『そうね。私のジムも駄目みたいだし。前線基地まで後退するわ』

 

「ルイス伍長、聞いての通りこれ以上の戦闘は困難です。ガルム1を連れて撤退します。残りの補給場所に砲撃と撤収準備をお願いします」

 

『了解しました。敵モビルスーツ隊は如何なりましたか?撤退の支援砲撃は必要なら直ぐに砲撃出来ます』

 

「敵モビルスーツは全て撃破完了です。補給場所の破壊を最優先で」

 

『了解しました。此れより敵補給場所に面制圧砲撃を行います。その間に撤退して下さい。我々も撤収準備に入ります』

 

「了解。ガルム2撤退します。ガルム1行きますよ」

 

砲撃に巻き込まれる前に急いで撤退する。

 

『ええ、了解よ。シュウには助けられっぱなしね』

 

「そんな事無いですよ。機体動かせますか?」

 

『手を貸してくれれば大丈夫かな?』

 

レイナ少尉のジムに近付き手を貸す。脚部もやられてるから肩も貸す。

 

「兎に角この場所は危険です。何時敵の増援が来るか分かりません」

 

『そうね。なら急ぎましょう』

 

ガルム3の量産型ガンタンクから砲撃が開始される。轟音が鳴り響く中、俺達は撤退して行くのだった。

 



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欧州前線基地 帰還

ストックが無くなりつつあるので更新速度が落ちます。


ルイス伍長達と合流すると、やはり被害が出ていた。あの時のザクキャノンの砲撃は量産型ガンタンクを狙った物だった。整備兵が5名戦死、重軽傷10名以上も居る状況だった。

 

『お二人共ご無事で良かったです!』

 

『レイナ、生きて戻って来ると信じてたよ。これで僕と君の父上に無事を報告出来るよ』

 

『ルイス伍長達も無事で本当に良かったわ。アーヴィントは撤収準備を手伝いなさい。全く』

 

トレーラーにレイナ少尉のジムを乗せる。俺のジムもこれ以上の戦闘は困難の為、トレーラーに乗せる。俺は漸くジムのコクピット内で力を抜いた。

 

「生きて帰って来れて良かった」

 

仲間に死者が出てしまったのは残念だ。もっと上手く出来たのでは無いかと思う。だが、今更それを考えても遅いのだ。死んだ人間は生き返る事は無い。

 

「考えたら俺も恨まれてる立場なんだよな」

 

戦争は殺し殺されの繰り返し。こうやって憎しみの連鎖が大きくなる訳だ。そして俺もその片棒を担いでるのも事実な訳である。

トレーラーが動き出す。それでも暫くジムのコクピット内で考え込みながら身体を休めるのだった。

 

……

 

「あら?シュウ曹長は?」

 

「まだジムの中に入るみたいですね」

 

「そう。どうせ、また柄にも無い事かんがえてるんでしょう」

 

レイナ少尉はシュウ曹長の行動を予想する。

 

「しかし今は一人にさせて上げた方が良いかと。シュウ曹長も色々考えたい時もあるでしょうし」

 

「ダメよダメ。彼奴はそんなキャラじゃ無いのよ。それに、考えても仕方無い事よ。戦争に参加してる時点でね」

 

そのままレイナ少尉は表に出ようとする。

 

「レイナ少尉?何方に?」

 

「彼奴をジムから出して来る。せめてベットで横にさせて上げないとね」

 

そう言ってレイナ少尉はシュウ曹長のジムに向かう。

 

「あ、私も行きます。二人で行けば確実に出てきますから」

 

ルイス伍長もシュウ曹長をジムから出す為に着いて行く。こうしてシュウ曹長は二人から強制的にジムから出されて、考える事を中断したのだった。

 

……

 

宇宙世紀0079.10月8日。無事に欧州前線基地まで撤退出来た。しかし、俺達ラングリッジ小隊は直ぐに次の命令が下される。

 

「君達はモビルスーツの修理が完了次第、この前線基地防衛に着いて貰う。近々ドーヴァー海峡から来る大部隊の護衛の役割もある。以上だ」

 

基地司令は俺達に命令を降すと次の書類に目を通した。意外とやる事が多そうで大変そうだ。

 

「大部隊か。確かにこの前線基地にも戦力が集まってきてるよな」

 

「そうね。それに私達以外のモビルスーツ部隊も結構集められてるわね」

 

初めてこの基地に来た時より61式戦車やフライ・マンタ、ファンファンが増えてる。更に連邦製のモビルスーツも配備も増えていた。

 

「あのモビルスーツもジムなのかな?何か俺のジムより頑丈そうだけど」

 

「あのモビルスーツもジムですね。確か【陸戦型ジム】でしたね」

 

ルイス伍長が陸戦型ジムについて教えてくれた。

 

RGM-79[G]陸戦型ジム。RGM-79ジムよりも早くに先行量産されたのが陸戦型ジムだ。但し、V作戦のRX計画の技術が反映されて無い為RGM-79ジムとは事実上別の機体となる。機体のジェネレーターはRGM-79ジムより低いが装甲はルナチタニウム合金を採用。チタン合金のRGM-79ジムより生存率は高くなっている。

但し、機体の製造コストは高く量産性には向かない。つまり高級なジムである。

 

「そうやって聞くとちょっと羨ましいかも」

 

「それに上位機体のRX-79[G]陸戦型ガンダムも少数ですが生産されてますから」

 

陸戦型ガンダムか。ジムよりも間違い無く高性能だろう。俺達のジムの元の機体になってるRX-78ガンダムも超高性能だと聞いてるし。唯、高性能だからこそ気になる所がある。

 

「でも、お高いんでしょう?」

 

「ええ…まあ。ジムよりも高価なのは確かですね」

 

若干苦笑いになるルイス伍長。改めて陸戦型ジムを見る。こうして見ると連邦軍もモビルスーツを着々と配備して行ってるんだなと感慨深い物がある。この戦争が始まって十ヶ月余りが過ぎた。その間に戦術や兵器の見直しを余儀無くされた地球連邦軍。だが、漸く同じ土俵に立て始めて来た。

 

「これから先が正念場だな」

 

味方の陸戦型ジムを見ながら呟くのだった。

この後自身のジムを確認しに行く。先の戦いでかなりの無茶をしてしまったからだ。案の定俺のジムには複数の整備兵達が群がっていた。

 

「そっちの関節部は如何だ?」

「ダメです。こっちも交換です」

「ジェネレーターも結構やられてますね。交換します?」

「交換だ。このまま出したら爆発しちまうよ」

「しっかし、こんだけ交換するなら新しいジム用意した方が早いよな?」

 

整備兵の皆さん御免なさい。そしてモンド伍長と話をする。

 

「曹長のジムの部品は殆ど交換ですね」

 

「面目無い。上手く扱いきれないのが歯痒いです」

 

しかしモンド伍長は首を振るう。

 

「何方かと言うと、ジムが曹長の動きに対応出来て無いですな。まあ、今回の戦闘データは結構貴重な物ですよ。重力下に於けるジムの機動戦に於ける耐久性が解った訳ですからね」

 

「そう言う問題ですか?」

 

「仕方無いさ。まだ連邦軍はモビルスーツの運用については素人も良い所だ。取り敢えず曹長のジムの関節部は改修しておきますよ。その分少し硬くなりますから、慣らしはお願いします」

 

「了解しました」

 

レイナ少尉のジムも修理中だ。破損した部分を外して新しい部品を取り付けてる作業中だ。レイナ少尉のジムは今日中には修理が完了するだろう。

俺は暫くRGM-79ジムを見る。特に不満は無いが、せめてジェネレーター関係は何とかして欲しいと思ったのだった。

 



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オデッサ作戦 前哨戦

まだオデッサには行かんよ。


宇宙世紀0079.10月11日。地球連邦軍【オデッサ作戦】の準備の為、部隊収集を行う。同日、第3軍がドーヴァー海峡を横断。

宇宙世紀0079.10月20日。地球連邦軍はオデッサ作戦の為の各戦力を集結地点であるワルシャワに集める。

宇宙世紀0079.10月25日。地球連邦軍【オデッサ作戦陽動】開始。オデッサ作戦をジオンに悟られるのを防ぐ為、陽動部隊が多数各地に派遣される。

 

そしてMS特務部隊第27小隊であるラングリッジ小隊は敵戦力の偵察及び撃破の為に出撃する事になった。

 

……

 

宇宙世紀0079.10月26日。集結地点ワルシャワには地球連邦軍の大部隊が存在していた。そしてMS特務部隊第27小隊 ラングリッジ小隊は、かつての前線基地から北東に進軍開始。目標はジオン軍補給路破壊を行う事になった。それと同時に敵補給部隊とモビルスーツ部隊の破壊も行う事になる。

 

「しかし、今回は61式戦車5型と共同任務か」

 

トレーラーから61式戦車5型を見る。61式戦車5型は何度も改修、改良を受けた最終バージョンだ。二人乗りで不整地でも時速90kmを叩き出す高性能戦車で155㎜連装砲の威力は高い。又データリンクによる射撃も可能だが、ミノフスキー粒子により厳しい立場にある。

そんな優秀だが不遇な立場になってしまった61式戦車が合計8輌の二個小隊になるバンブル小隊だ。

 

「そうね。まあアーヴィントの量産型ガンタンクと一緒に後方から支援砲撃させるのが無難よね」

 

「それで納得してくれるとは思いませんが」

 

そう、このバンブル小隊は古参兵が居るのだ。更にザク6機を撃破して来た強者揃いだ。元バンブル小隊の生き残りも今や4名しか居ないが、それ故に生き残って来たプライドがあるだろう。

そして目的地まで到着した訳だが、案の定問題が発生する訳だ。

 

「それで、俺達が後方で砲撃しろと?はっ!其奴は自走砲に任せな。俺達は61式戦車乗りだぜ」

 

「バンブル少尉、貴方の気持ちはよく分かるわ。でも、今の戦場はモビルスーツがメインなのよ。それはバンブル少尉が良く解ってるはずよ」

 

「へっ…言ってくれるねぇ。確かラングリッジ少尉だったな。お前は俺より後任少尉だ。だったら、俺の、指示に、従え!それが嫌なら別行動を取る」

 

ラングリッジ少尉とバンブル少尉はお互い一歩も譲る気配は無い。

 

「まあ、待ちたまえ。此処は僕達にモビルスーツ乗りに任せ給え。そうすれば全てが上手く行く」

 

「お前は俺達と同じ後方支援になるんだろ。ガンタンクだったか?あんなモビルスーツ擬きに乗ってる癖に偉そうにほざくな。それにな、俺は最初見た時くらお前らが気に入らねえんだよ」

 

バンブル少尉は俺達ラングリッジ小隊を睨みつけながら言う。

 

「お前らの初戦は何時だ?俺達はな…あの巨人が地球に降りて来た時から戦ってる。あの巨人の化け物を見た時から絶望的な戦いをして来たんだよ!お前らの様な恵まれた連中とは潜って来た修羅場が違うんだよ!!!」

 

バンブル少尉は吼えた。その声は絶望的な戦場を生き抜いて来た兵士の声だった。その威圧にレイナ少尉、アーヴィント少尉、ルイス伍長は一歩引いてしまう。

 

(しかし、三人も少尉が居るのか。ちょっと面倒だな)

 

そんなどうでも良い事を考えてるとバンブル少尉が睨んで来た。ヤベっバレた。

 

「おい、お前は曹長だな。初陣は何時だ?」

 

バンブル小隊の全員が睨んで来る。

 

「ルウム戦役が初戦になります。その後は地球降下阻止作戦に参戦しました。尤も結果はご覧の有様ですが」

 

ルウムと聞いたバンブル小隊のメンバーは驚く。

 

「それに、バンブル少尉の言う事は良く理解出来ます。セイバーフィッシュのミサイルは全てロック出来無いんです。例え出来てもザクの回避能力はセイバーフィッシュより上ですし、あんな小型のミサイルが当たっても大したダメージにはなりません。唯一の対艦ミサイルは至近距離で直接照準で当てるしか無い」

 

ま、近付く前にやられるんですけどね。と最後に付け足す。

 

「その点61式戦車はまだ良い方です。装甲は有るし155㎜の砲弾を沢山撃てる。セイバーフィッシュは20㎜バルカンぐらいしか撃てるのは無いですからね」

 

何だか愚痴っぽくなって来たな。それに何だか雰囲気が暗くなって来たし。

 

「ミノフスキー粒子。コレがばら撒かなければ少しはマシな戦闘に成ったんでしょうけどね…」

 

俺はミノフスキー粒子が無ければ宇宙での戦闘で終わったと考えている。ザクは確かに強力な兵器だが、連邦軍の物量には勝て無い。だが、ミノフスキー粒子が連邦軍の攻撃システムを全て中世紀の時代に戻したんだ。

 

「そうか…だが、俺達は後方支援何ぞ御免だ」

 

バンブル少尉は直ぐに顰めっ面になりながら言う。暫くお互いが沈黙する。

 

「でしたら、モビルスーツ隊が囮になるのは如何でしょう?」

 

ルイス伍長から提案が出る。

 

「囮…ああ、成る程。確かに良いかも」

 

「ちょっと、私達が囮になるのに何でシュウは納得するのよ?」

 

「ジムにはシールドが有り機動力も61式戦車より上です。生存性ではジムの方が圧倒的です。それに俺達が囮になればバンブル小隊もやり易くなります」

 

「でも〜…」

 

レイナ少尉、でも〜じゃ無いよ〜。気が抜けるよ。

 

「他に案が有るなら良いですけど。それにルイス伍長なら俺達にとって有利な地形を見つけてくれる筈ですよ」

 

「はい。お任せ下さい」

 

こうしてラングリッジ小隊とバンブル小隊のメンバーはルイス伍長からの作戦を聞く。取り敢えずバンブル小隊も納得したので良しとするのだった。




主人公がガンダムに乗る?うーん…何か違和感しか無いなw


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オデッサ作戦 前哨戦2

重複投稿失礼しました。続きになります。


宇宙世紀0079.10月30日。AM11:00

 

俺達ラングリッジ小隊とバンブル小隊は待ち伏せを続くけて3日が過ぎた。そして遂にジオン補給部隊を確認した。トラックと軽車両の車列が多数並んでいる。更に旧ザク2機、ザク4機。マゼラ・アイン戦車、マゼラ・アタック戦車も多数居る。

 

『目標の敵補給部隊を確認しました。全機、出撃して下さい』

 

『了解よ。ラングリッジ小隊出撃よ!』

 

「了解です。さて、行きますか」

 

『全く、この僕をコクピット内に座らせ続けるとは。身体が軋むよ』

 

「アーヴィント少尉、我慢して下さい」

 

ラングリッジ小隊はガルム3を残して前進する。

 

『バンブル小隊、予定ポイントに移動する。精々生き延びてこっちに来いよ。野郎共!行くぞ!』

 

『『『『『了解!』』』』』

 

バンブル小隊の61式戦車5型とガルム3の量産型ガンタンクは移動開始する。

今回俺のジムの武装は90㎜マシンガンとビームスプレーガンだ。レイナ少尉は90㎜ガトリングガンを装備している。

ジムのブースターを使いながら素早く移動する。もう直ぐ敵と接触する。操縦レバーを握り締めながらモニターとレーダーを確認するのだった。

 

……

 

ジオン補給部隊 一般兵

 

俺達は元々武器、弾薬集積所に居た。戦力もマゼラ・アイン戦車とワッパ位だった。しかし昨日、突然司令部から無茶な命令が来た。

 

【欧州方面の各戦力は直ちにオデッサに集結せよ。また弾薬集積所の補給物資は全てオデッサに集結させよ】

 

オデッサ。それは一兵士である俺でも分かる。ジオン地上軍にとって重要な場所だと言う事だ。それから撤収作業に入り移動する。それと同時に他の部隊との合流したのだ。

 

「なあ、やっぱり連邦はオデッサに来るのかな?」

 

「あ?はっ!そうだとしても撃退出来るさ。考えて見ろよ。今まで俺達は勝ち続けて来ている。そして此れからもそれは変わらねえよ。何が【ジオンに兵無し】だよ。あの髭オヤジめ」

 

そう言うと隣の奴はタバコを吹かしながら言う。確かに俺達ジオンは今迄勝ち続けて来た。だが、この戦争はとてもでは無いがクリスマス迄には終わりそうに無い。

 

「安心しろよ。連邦が俺達に勝てる訳が無い。何故なら俺達はスペースノイド独立の為に戦ってるからな。連邦の横暴を止めれるのは俺達だけだ」

 

「そうだよな。俺達はスペースノイドの為に戦ってるもんな」

 

「そうさ。正義は俺達に有る。連邦は負けて、それで終戦になるさ」

 

そうだよな、と言おうとした時だった。前方のトラックが爆発する。それと同時に他の車両も爆発して行く。

 

「一体何だよ!?何処からの攻撃だ!?」

 

俺は車両の床に伏せながら吼える。そして旧ザクとザクが銃撃を開始する。その方向に目を向けると…。

 

「ま、まさか…連邦のモビルスーツか!噂は本当だったんだ」

 

連邦のモビルスーツは小高い丘の上から稜線を挟んで攻撃していたのだった。

 

……

 

「敵は慌ててる様ですね」

 

『そうね。このまま撃ちまくるわよ!』

 

90㎜マシンガンと90㎜ガトリングガンの弾幕が次々と敵の車両に当たって行く。

 

『モビルスーツ隊は補給部隊を守れ!敵を引き離すんだ!補給部隊は全速前進しろ!モビルスーツ隊の邪魔になる!』

 

ザク3機が此方に来る。旧ザク2機とザク1機はどうやら補給部隊を守る様だ。

 

『おい!連邦のモビルスーツは破壊して良いのか?まあ、捕獲しろと言われても無理だがな』

 

『破壊して構わん。我々の任務はオデッサに向かう事だ。捕獲に関しては別の部隊がやってるさ』

 

『了解。なら潰れろ!連邦のモビルスーツが!?』

 

ザク3機はザクマシンガンとザクバズーカを撃ちながら、ブースターを使い跳んで接近して来る。

 

『ガルム2、距離を取りながら予定通り後退よ』

 

「了解。後退します」

 

此方もブースターを使い跳んで後退する。勿論90㎜マシンガンを撃ちながら敵を引き寄せる。

 

『隊長!連中は逃げて行きます!連邦のモビルスーツは見掛け倒しですよ!』

 

『待て、罠の可能性も有る。慎重に行くんだ』

 

『しかし相手は2機だけです。仮に罠だとしても今直ぐに目の前のモビルスーツは破壊すべきです。自分もロッテル2に続きます』

 

『ロッテル3、話が分かるじゃないか。なら行くぞ!』

 

ザク2機が突っ込んで来る。

 

『待つんだ!ロッテル2、3!陣形を整えるんだ!』

 

もう1機のザクも後に続いて来る。

 

『このー!さっきから撃ち過ぎなのよ!』

 

レイナ少尉は90㎜ガトリングガンで反撃する。そっちの方が撃ち過ぎだと思います。

 

「ガルム1下がって。カバーします」

 

此方もシールドを構えながら90㎜マシンガンで応戦する。そうすると俺の被弾率が上がる訳だが。

 

『ガルム2、カバーするわ。あんまり無茶はしないで』

 

「無茶はしてませんよ!相手の火力が高いだけっ!?シールドが持つのかよ!?」

 

この時俺は知らなかったが、このシールドは所謂ガンダムシールドと同規格品だったのだ。恐らくRX計画の流用品が流れて来たのだろう。よって耐弾性は恐ろしく良いのだ。

 

『もう直ぐよ!後一回のブーストで行けるわ!ルイス伍長、《獲物が狩場に》よ』

 

『了解です。総員間も無くです』

 

そしてもう一度ブースターを全開にして丘を越える様に跳ぶ。

 

『敵が逃げるぞ!追え追えー!倒せば昇進間違い無しだ!』

 

『俺がお前の獲物を取っても恨むなよ!』

 

『周囲を警戒しつつ跳ぶぞ。ロッテル2、3続け!』

 

『『了解!』』

 

ザク3機も俺達を追って一斉に跳ぶ。俺達は丘の谷間に着地してシールドを構えて迎撃態勢を取る。ザク3機はザクマシンガンを撃ちながら降りて来る。

 

『スモーク散布!ジムを隠せ!』

 

俺達の後ろに居る61式戦車からスモークが放たれる。

 

『ぬっ!小賢しい真似を。ロッテル3、バズーカで吹き飛ばせ!』

 

『了解!』

 

ザク3機が一瞬止まる。そして遂に反撃が始まる。

 

『1〜4号車はバズ持ちをやれ。5〜8号車は右の奴をだ。残りは人型擬きがやってくれるさ!外すんじゃねえぞ!撃てええーーー!!!』

 

ザク3機の周りには61式戦車を配置していたのだ。ザクの正面に4輌、背後に4輌。つまり敵はモビルスーツの弱点とも言える背中を61式戦車に曝け出していたのだ。

61式戦車から155㎜の砲弾が次々と突き刺さる。更に量産型ガンタンクも擬態越しに120㎜の砲弾を撃つ。ザク2機は火花を出した瞬間爆散する。

 

『ゴハッ…は、嵌められたのか。おのれ…貴様等だけでも!!!』

 

ザク1機がザクマシンガンを撃ちながら走って来る。だがジムからの90㎜弾の弾幕が襲う。ザクは多数被弾してゆっくりと倒れる。爆発しなかったのが不思議な位の被弾だった。

 

『良し!作戦成功ね。このまま一気に敵補給部隊を叩くわよ!残ってるのは旧ザク2機とザク1機だけど気は緩めちゃ駄目よ。ガルム3も付いて来なさい』

 

『了解したよ。この量産型ガンタンクの真の力を見せてやろうじゃないか!』スカァ

 

『バンブル小隊も行くぞ。このまま一気に潰すぞ!』

 

俺達は再度前進する。今度はガルム3とバンブル小隊と共に前進する。そして武装をビームスプレーガンに切り替える。

 

「さて、第2ラウンド開始と行きますか」

 

敵も待ち構えてるのは間違い無い。そして此方も被害が出るのも覚悟した方が良いだろう。それでも少しでも敵の気を引ければ良いんだがな。そう考えながらジムのリミッターを解除するのだった。

 



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オデッサ作戦 前哨戦3

ストック切れの為更新速度が落ちます。


『おい!ロッテル隊のマーカーが消えたぞ!』

 

『畜生!やられたのか!なら敵がこっちに来るぞ!』

 

『落ち着け。こっちには戦車も居るんだ。補給部隊は先に行かせるぞ。俺達は戦車隊と共に敵を迎撃する』

 

旧ザク2機とザク1機は戦車隊と連携を組む。ザク3機は前衛になり戦車は後衛になる。そしてシールドを構えたジム2機を視認。更に量産型ガンタンクに61式戦車も確認する。

 

『あれが噂の連邦のモビルスーツか。奴等に本当のモビルスーツを見せてやるぞ!戦車隊、奴等の足を止めろ!』

 

この時、61式戦車隊も同時に砲口から火を噴く。お互いの戦車隊の砲撃の中モビルスーツは接近するのだった。

 

……

 

戦車隊の砲撃の中をシールドを構えながら前に進む。そしてブースターを使い跳びビームスプレーガンで旧ザクを狙う。

 

「先ずは1機目」

 

ビームスプレーガンを撃つ。旧ザクも慌てて回避するが右腕に被弾。更に左肩、頭部に直撃させる。

 

『動きが止まった!貰った!』

 

61式戦車からの砲撃がコクピットに直撃。そしてゆっくりと前に倒れる。しかし旧ザクとザクはザクマシンガンで61式戦車を攻撃。61式戦車3輌が爆散する。

 

『これ以上はやらせんよ!』

 

量産型ガンタンクの120㎜低反動キャノン砲がザクを狙い撃つ。ザクは咄嗟に左腕を前に出すが、砲弾は貫通してザクは倒れる。

 

『これで決めるわ!受け取りなさい!』

 

ガルム1の90㎜ガトリングガンが旧ザクを撃ち抜く。

 

『う…嘘だろ?こ、こんな…所で』

 

そして旧ザクは爆散。残ったのはマゼラ・アイン戦車とマゼラ・アタック戦車のみだ。

 

『バンブル1からガルム1へ。こっちの戦車隊は俺達に任せな。此処は本職の戦車乗りの出番だぜ』

 

『分かったわ。ガルム3はバンブル小隊と共に敵戦車隊を片付けて。ガルム2は私と一緒に補給部隊を叩くわよ』

 

『待ってくれレイナ。僕も一緒に行くよ!』

 

『おい人型擬き。お前の遅さじゃあ敵に逃げられちまうぜ。諦めな!』

 

バンブル小隊から笑い声が出て来る。

 

『くっ…僕だって、僕だって!』

 

『ガルム3、気持ちは嬉しいわ。でも冷静に状況を考えて頂戴。ガルム2行くわよ』

 

「了解です」

 

何だかちょっと気不味いな。でも量産型ガンタンクだと色々厳しいだろうしな。ジムのブースターを使い敵戦車隊に攻撃しながら敵補給部隊を追う。

 

『不味いぞ!2機抜けられた!』

 

敵戦車隊も急いでジムに攻撃しようとする。だが、そこに40㎜の弾の嵐が飛んで来る。

 

『レイナは僕が守る!お前達は僕が倒す!』

 

アーヴィント少尉の量産型ガンタンクが怒涛の勢いで攻撃する。それに続けと言わんばかりにバンブル小隊の61式戦車も追撃する。

 

『良いぞ!人型擬き!やっちまえ!』

 

『此奴は良いな。中々の弾幕じゃないか』

 

量産型ガンタンクを主軸に敵戦車隊を攻撃するのだった。

そして俺達も目標を発見する。

 

『見えたわ。絶対に逃さないわよ』

 

『了解です』

 

武器を90㎜マシンガンに切り替える。軽車両やトラック相手なら90㎜マシンガンでも充分だ。ガルム1も90㎜ガトリングガンで狙いを付ける。

そして90㎜ガトリングガンと90㎜マシンガンの弾が敵補給部隊に次々と当たり爆発する。

 

『この野郎!好きにやらせるかよ!』

 

その時、横合いからワッパが数台やって来る。そして対戦車バズーカやマシンガンを撃ち込んでくる。

 

『ちょっと!何よ此奴等!』

 

「ガルム1落ち着いて下さい。敵の歩兵です。まさかワッパで来るなんて」

 

最初はそんな武装でジムを倒せるかよと思っていた。だがウロチョロとジムの周りを飛行するし、マシンガンでメインモニターに攻撃して来る。更にバックパックに対戦車バズーカを撃ち込もうとする奴も居る。

 

『もう!何なのよ此奴等!本当に嫌!』

 

ガルム1はそう言うとブースターを使い跳んで逃げる。俺も前にブースターを使い高速で移動する。それと同時に何台かのワッパが吹き飛ぶ。

彼等の抵抗も虚しく、俺達は敵補給部隊を攻撃する。すると敵から通信が来る。

 

『こ、降伏する!だからこれ以上の攻撃をやめてくれ!』

 

これ以上の抵抗は無意味だと判断したのだろう。

 

「やれやれ、やっと終わりか」

 

俺は90㎜マシンガンを降ろす。そしてレイナ少尉のジムを見る。しかしレイナ少尉のジムは90㎜ガトリングガンを降ろしていなかった。

 

『私達は何も聞いていない。そうよね?ガルム2』

 

「何言ってるんですか。そんなの認められる訳無いでしょう」

 

しかし返信は沈黙する。レイナ少尉のジムはゆっくりと降伏したジオン兵に近付く。

 

『私はジオンを絶対に許さない。此奴等は死んで当然の事をし続けて来た。降伏?シュウ曹長、甘いわよ。そんな考えは捨てなさい。上官命令よ』

 

「拒否します。例え軍法会議に出る事になっても」

 

お互いのジムをモニター越しに睨み合う。因みに通信は音声のみになってしまってるからだ。

 

『私にはね、母と13歳になる筈だった弟が居たの』

 

(母と弟が居た…か、成る程な)

 

今時珍しく無い事だ。身内の誰かが死んだ事は探せば直ぐに見付かるぐらいだ。

 

『何となく予想は付くでしょう?私の弟はね、シドニーに居る母方のお爺ちゃんの家に行ってたの。あの子お爺ちゃん子だから、母と一緒に凄く楽しそうに出かけて行ったわ。その時私は丁度熱を出してたの。だから私と父は少ししたらシドニーに行く予定だったの』

 

そして、あの日…シドニーは地上から消えた。

 

『これは私の戦争よ。その邪魔はさせない。コートニー曹長、其処を退きなさい。退かないなら…』

 

90㎜ガトリングガンを俺に向ける。だが…退く訳には行かない。

 

「お断りします。俺達は戦争をやってるんです。殺戮をする為に戦争をしてる訳では無い!」

 

『ッ!?先に殺戮をしたのはジオンよ!!!何十億人を殺した連中なのよ!!!』

 

「それを知ってるなら同じ轍を踏む理由には成りません!」

 

『貴方は大切な家族を失った事が無いからそんな事を言えるのよ!知らないとでも思ってた?貴方は何時も一歩引いて観てるもんね!』

 

俺の機体からロックアラートが鳴る。レイナ少尉は俺のジムをロックしたのだ。

 

『何も失って無い奴が私に指図するな!!!』

 

何も失って無いか…。

 

「そうですね。俺には家族と呼べる存在は居ません。強いて言うなら部隊の仲間の敵討ちぐらいです。ですが、敢えて言わせて貰います。誰かを失う悲しみを知っているなら自分がしようとしている事も充分理解してる筈だ」

 

『煩い!知った風に言うな!!!』

 

「レイナ少尉の母親と弟はこんな虐殺行為を喜ぶのですか?父親はこんな事をする為に、その武器を渡したのですか?違うでしょう。レイナ少尉が生きてて欲しいが為にお父さんは無理をしたんでしょう?」

 

レイナ少尉からの返事は無い。それでも伝える。言わなければ、言葉にしなければ伝わらないから。

 

「この悲惨な戦争を生き残って、自分が体験して来た事を後世に伝えて下さい。そして、レイナ少尉の様な人をこれ以上増やさない様に。それが、戦争をしている者達の義務です」

 

『……ッ…ッ〜………でも……それでも……私は……私は!!!』

 

90㎜ガトリングガンの砲身が回転する。そして……

 

 

 

 

 

90㎜弾の銃声が戦場に響き渡るのだった。

 

 

 



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オデッサ攻防戦 1

RGM-79ジムはオデッサ攻防戦に30機しか出てないの!然もガンダムのデータがアップデートされたバージョンじゃ無いですかヤダー。

取り敢えず主人公達のジムにはアップデートされて無いバージョンなのでノーカンでお願いします。

でも撃破数は成るべく合わせます。


レイナ少尉は90㎜ガトリングガンを撃つ。しかし弾は敵に当たる事は無かった。代わりに逃げようとしたトラックの前に着弾させた。

 

『この後の処理は貴方がやりなさい。これは命令よ』

 

「レイナ少尉…了解しました」

 

『私は先に戻るわ。ルイス伍長に話は通しておきなさい。後処理について色々知ってる筈だから』

 

レイナ少尉はそう言ってブースターを使い離れて行く。この時俺は敢えて言わなかったが、俺も沢山の物を失ってる。何故なら第2の故郷と言えるサイド2コロニーはシドニーと一緒に消えたのだから。

元々苦い思い出が殆どだったので悲しい感情は少ない。だが、それと同時に胸の内にポッカリと穴が空いてしまった感は有るが。

 

「本当、儘ならないよな。何もかも上手く行く人生ならどれだけ楽な事やら」

 

俺は敵兵士に通信を繋げて改めて武装解除をさせる様に伝えるのだった。

 

……

 

あの後、ルイス伍長に話を通してバンブル小隊が捕虜を前線基地に運ぶ手筈になった。そして敵の補給物資は爆薬を仕掛けて爆破処理する事になる。

 

「じゃあな曹長。中々良い戦いっぷりだったぜ」

 

「バンブル少尉も援護感謝します。それでは捕虜をお願いします」

 

「へっ、任しとけよ。おし!お前ら大人しくしとけよ!そうすりゃあ面倒な事にならねえからな!」

 

バンブル小隊は捕虜を連れて行く。少々荒っぽかったが問題は無いだろう。良くも悪くも軍人だからな。

 

「ルイス伍長、此方の爆薬のセット完了しました」

 

整備兵の一人がルイス伍長に報告する。

 

「ご苦労様です。では我々もこの場を一時離れます。シュウ曹長、爆破音により敵が来る可能性はあります。状況を確認して戦闘を続行するか決めましょう」

 

「了解しました。所でアーヴィント少尉は?」

 

ルイス伍長は苦笑いになり明後日の方向に指を指す。其方を見るとレイナ少尉のジムのコクピットの前で何か喋ってた。

 

「自分が蒔いた種ですから申し訳無いと思うんですが…。何だかアーヴィント少尉が虚しく見えてしまうのは気の所為だろうか?」

 

ジムのコクピットに向かって一生懸命頑張ってる姿は涙を誘う物がある。アーヴィント少尉、御免なさい。

 

「あはは…。でも、私もレイナ少尉の気持ちは良く分かります。そんな時は一人になりたいんですけどね」

 

「ルイス伍長…」

 

ルイス伍長も少し遠い目になる。彼女の目には何が見えてるのだろうか。きっと、今見えている景色では無いのだろう。

 

「さて、アーヴィント少尉を連れてきますか。まだまだ仕事は有りますからな」

 

俺はルイス伍長に軽く手を振ってアーヴィント少尉の所に向かう。きっと色々面倒くさい事になるかも知れないが仕方無いだろう。

俺は一つ溜息を吐きながら歩くのだった。

 

……

 

宇宙世紀0079.11月1日。MS特務部隊第27小隊 ラングリッジ小隊に次の命令が伝わる。

 

【MS特務部隊第27小隊は遂行中の任務を中断し、機甲師団第4軍に臨時編入とする。以上】

 

機甲師団第4軍はラングリッジ小隊の丁度南に位置する場所だった。敵補給部隊を破壊した後、待伏せを継続していたがジオン軍が来る事は無かった。恐らく例の欧州反攻作戦の為に戦力を割けない状況なのだろう。俺達は素早く撤収作業に入り、機甲師団第4軍と合流するのだった。

 

……

 

宇宙世紀0079.11月3日。MS特務部隊第27小隊、61式戦車を主力とする機甲師団第4軍と合流。ラングリッジ小隊は後方に配置される。

 

俺達は機甲師団第4軍と合流を果たした。そして第4軍を見た最初の感想は61式戦車の群れだった。見渡す限り61式戦車ばかりだ。後は戦闘ヘリやホバートラックが沢山待機してる。更にビックトレーも1隻配備されており、後からもう1隻が追加される。

 

「しっかし、俺達の立場は肩身が狭いな」

 

この機甲師団第4軍に配置されてるモビルスーツはラングリッジ小隊のを合わせて合計12機だ。然も陸戦型ジムとホバートラックしか配備されて無い。赤と白のツートンカラーのジムが凄く目立つ。然も第4軍の指揮官アルバート・バライン大佐は根っからのモビルスーツ嫌いだった。

 

「MS特務部隊第27小隊は独立部隊として後方配備だ。以後は命令が有るまで待機せよ」

 

だってさ。然も態々独立部隊にしておきながら後方待機とは。そして自分達とは関係無い扱いにしてるし。まあ戦わなくて良いなら良いけどさ。それにしてもご飯が美味いな。

 

「やれやれ、君は相変わらず楽観的に考えてるみたいだね」フサァ

 

「アーヴィント少尉、お疲れ様です。そして何気に考えを読まないで下さい」

 

アーヴィント少尉が隣に座る。因みにこの間の件で少しだけ話をする位までの関係になった。

 

「それにしてもバライン大佐は何で俺達モビルスーツ隊を後方待機にさせたんでしょうか?」

 

「ふむ。まあ、これは噂に過ぎないが。この第4軍は捨て駒扱いされてるのも原因かも知れないな」

 

「捨て駒ですか。しかし第4軍は既存の兵器が主力と言え大部隊ですよ?」

 

「正確に言うなら既存兵器の一掃だよ。上層部はモビルスーツを主力にしたいのさ。僕達モビルスーツ部隊が各地で勝利を収めてるのも後押ししてるのさ」

 

「成る程。確かに61式戦車よりジムの方が良いですけどね」

 

ザクと同等以上の機動が出来るし、シールド持てるから生存性は有る。更にビーム兵器も扱える。コストは61式戦車より高いけど破壊されまくるよりはマシだろう。

 

「そういう事さ。そして何処にでも派閥と言う物は存在する。それだけは覚えておくと良い」

 

アーヴィント少尉はそう言って御飯を食べる。外を見ると61式戦車の上で笑いながら話してる戦車兵がいる。

地球連邦軍の陸上戦力の主力となっている61式戦車。最新モデルの5型に関しては初期モデルとは別物と言える高性能を獲得している。しかし、ジオン公国軍が作り上げたザクにより大損害を被る。地球連邦軍もモビルスーツを作りジオン軍に対抗する事を選んだ。

それでも、今迄地球連邦軍が戦い続けれたのは間違い無く61式戦車が戦い続けていたからに他ならない。オデッサでの戦いが最後の花になるとしても、彼等は前進するだろう。

 

「やっぱり、61式戦車は凄いな」

 

「ん?何か言ったかね?」

 

何でもありませんよと言いながら御飯をたべるのだった。

この後、ジムの最終調整を行う。調整と言っても精々関節部の慣らしとブースターの確認ぐらいだ。その時、レイナ少尉と出会う。あの戦い以来あまり話す事が無くなった訳だが。

 

「…何よ」

 

「何でも無いです」

 

御覧の有様である。しかし、レイナ少尉からしたら敵討ちの邪魔をされたんだから文句の一つぐらい言いたいのも有るだろう。結局、俺は今の問題を先送りにしてしまう。本来なら問題だらけだが。

 

宇宙世紀0079.11月7日。地球連邦軍【ホワイトベース隊】がジオン公国軍【黒い三連星】の異名を持つエース部隊と交戦。これを撃退するものの地球連邦軍マチルダ・アジャン中尉戦死。

 

宇宙世紀0079.11月7日。同日AM6:00【オデッサ作戦】開始。そして機甲師団第4軍もオデッサに向かい攻撃を開始するのだった。

 

……

 

AM6:00。各地に配置された25000門の火砲と2000基のミサイル、ロケットがオデッサの進撃路に向けて発射された。

 

『この戦いは地球に於ける勢力図を変える重大な戦局である。各員の奮戦に期待する!砲撃始め!!!』

 

バライン大佐からの通信と共にビックトレーからの砲撃も始まる。更に空を見上げれば航空機が多数オデッサに向かって行った。

 

「うわー、これだけの戦力を一気にオデッサに向けてるのか」

 

『それだけ連邦軍は本気と言う事よ。この戦いは絶対に勝たないと駄目なんだから』

 

『その通りさ。所で僕達は何時出撃するのかな?』

 

『まだよ。暫くは戦局を見守りましょう』

 

モニターを見るとジオン軍の火砲やモビルスーツの配置が分かる。ジオンに入り込んだスパイは優秀みたいだ。だが、ジオン軍も馬鹿では無い。地球連邦軍がオデッサを攻撃する事は理解してる筈だ。

 

『戦車、前へ!敵を圧倒するぞ!』

 

『俺達も戦車隊に続くぞ。各機、行くぞ』

 

61式戦車の大軍と攻撃ヘリは前進する。ジオン軍は応戦するが御返しだと言わんばかりに155㎜弾と対MSミサイルで反撃する。正に物量が違い過ぎるのだ。

そして、空の戦いも開始されていた。

 

『此方攻撃隊フライングアロー。これより戦車隊の支援に入る。行くぞ!』

 

『2時方向!ドップ接近!』

 

『俺達に任せな!野郎共、地球の空は俺達のホームグランドだと教えてやれ!』

 

オデッサの空が激しく爆発を繰り返す。地上からも対空砲が火を噴く。

 

『連邦め。そんな戦車で勝てると思うな』

 

『だが数が多いぞ!奴ら本気だ!』

 

『敵にモビルスーツ有らず!繰り返す、モビルスーツ有らず!勝てるぞ!』

 

しかし連邦の物量は圧倒的過ぎた。ザクが稜線から出て61式戦車や戦闘ヘリを数機破壊する。だが、その一瞬の隙が集中砲火を受けてしまう。そしてマゼラ・アタック戦車と61式戦車も互いに潰し合う。砲塔部分が高いマゼラ・アタック戦車は稜線からの砲撃が非常にし易い。しかし、そんなのは関係無いと言わんばかりに61式戦車は反撃する。

 

『チッ、支援砲撃要請!ポイント座標送ります!』

 

『此方司令部、了解した。40秒待機せよ』

 

『了解!派手に吹き飛ばしてやれ!』

 

ビックトレー2隻から艦砲射撃が開始される。そして、暫しの膠着になり着弾。更に対地攻撃機マングース隊もジオン地上軍に接近して行く。

 

『此方サンダー隊、ザクに対し攻撃を開始する。各機続け!』

 

攻撃機マングース隊は持てる爆弾をザクに対し撃ち込む。更にクラスター爆弾やロケット弾を施設やマゼラ・アタック戦車、歩兵に当てる。しかし、対空砲は彼等を逃して帰すつもりは無い。次々と攻撃機マングースは撃墜される。

戦場は膠着状態になりつつも連邦軍は前進する。

 

AM11:45。地球連邦軍機甲師団第4軍は最初のジオン前線基地を制圧に成功する。

 

『ビックトレー、前へ!戦線を押し上げる。モビルスーツ隊は護衛に付け!』

 

ビックトレーの前進と共に移動する。

 

『よう、ラングリッジ小隊。其方の調子は如何だ?』

 

『普通よ。それで何か用?』

 

『何、大した事じゃ無いさ。俺達の出番が未だに無いから暇してるんだよ。小隊メンバーだけだとネタが尽きちまうからよ。それに、出来ればアンタみたいな綺麗所と話がしたいしな』

 

『あら、口説いてるつもり?』

 

『まさか。俺には妻も子も居るんだぜ。そんな事した妻にモビルスーツごと破壊されるわ』

 

陸戦型ジムのパイロットは真顔で言う。恐妻家なのね。

 

確かにビックトレー周辺の防備は万全だ。対空砲は勿論の事、陸戦型ジムとジムの防備も有る。そして制空権は地球連邦軍優勢だ。

こうして俺達モビルスーツ隊はオデッサ攻防戦の一日を終える。

宇宙世紀0079.11月8日。遂にモビルスーツ隊に出撃命令が降る。この地球圏に於けるミリタリーバランスを賭けた戦いにMS特務部隊第27小隊ラングリッジ小隊も参戦する。

 




マチルダさーん!本当は何処かの補給場所で絡ませたかった。


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オデッサ攻防戦 2

宇宙世紀0079.11月8日AM10:00。遂に俺達モビルスーツ部隊にも出撃命令が降る。

 

『モビルスーツ隊は戦車部隊の援護せよ!貴様等は無闇に前線に出るな!戦車部隊の援護を最優先に行え!』

 

陸戦型ジム9機、ジム2機、量産型ガンタンク1機は前進する。俺のジムの武装は90㎜マシンガンとビームスプレーガン。レイナ少尉は90㎜ガトリングガンだけだが、予備弾倉を持っている。他の陸戦型ジムは100㎜マシンガン持ちが殆どだ。

だが、1機だけ浪漫溢れる武器を持っていた。棘の付いた鉄球を鎖で繋がってる武器だ。見たまんまの接近戦仕様だろう。

 

【ガンダムハンマー】

 

直ぐに武器に関して調べたら出てきた。何と素晴らしい響きだろう。あの武器…欲しい!

 

「あの、レイナ少尉」

 

『ダメよ。あんな武器接近戦以外使えないじゃ無い』

 

「まだ何も言って無いんですけど…」

 

『ずっと見てたからバレるわよ。本当、シュウ曹長は分かりやすいんだから』

 

『全くだね。君はもう少しポーカーフェイスを学び給え』

 

『シュウ曹長、頑張って下さい』

 

無駄話をしつつ前進する。そして、遂にオデッサ攻防戦で交戦を開始する。

 

「旧ザク3機、ザク5機確認!トーチカも多数確認!」

 

『行くぞ!野郎共!ジオンに引導を渡してやれ!』

 

『今迄の借りを返してやる。覚悟しろ!ジオンめ!』

 

61式戦車が先制攻撃をする。そしてモビルスーツ隊もそれに続く。だが、敵は俺達モビルスーツ隊に攻撃を集中させる。

 

『敵モビルスーツ確認!』

 

『トーチカは最優先で敵モビルスーツを狙え!モビルスーツ隊は戦車部隊を叩け!』

 

『ダブデ陸戦艇は現在敵航空部隊に足止めされてます。また陣地変更を行うと』

 

『今ダブデの火力が必要だろうが!喚び戻せ!?』

 

敵トーチカから多数の砲弾が飛んで来る。シールドで防ぎながらも回避行動を取る。此方も90㎜マシンガンで反撃を行い牽制する。

 

『ガルム3、あの周辺のトーチカを狙って頂戴。そうすれば進撃路が作れるわ』

 

『了解したよ。それ!受け取れ!』

 

アーヴィント少尉の量産型ガンタンクは後方から砲撃をする。更にビックトレーからの砲撃や他の部隊もトーチカを次々に破壊して行く。

 

『敵の進撃が止められん!戦線を後退させる!』

 

『爆薬セット完了しました!』

 

『急げ!敵が突っ込んで来るぞ!』

 

敵が勢い良く逃げて行く。それを見た地球連邦軍の兵士達は進撃して行く。

 

『敵は総崩れたぞ!突撃!突撃!モビルスーツ隊は戦車部隊に続け!』

 

61式戦車が次々に突撃して行く。更に航空隊も後退して行くジオン軍に対し攻撃を仕掛ける。しかし敵の置き土産が戦車部隊を直撃する。トーチカが次々と爆発して行く。爆発の勢いは凄まじく、トーチカの内部にも影響が出る。そしてジオン軍の防衛戦が物理的に崩れた。そして爆発と土砂崩れが戦車部隊に直撃。甚大な被害が出る。

 

『一部部隊は救出作業に掛かれ。残りは前進せよ!敵を徹底的に追い詰めろ!』

 

犠牲を無視してまで前進する事を選んだ機甲師団第4軍。仲間の屍を踏み越えて前進して行く。しかし、物事は上手く行かない。

 

『此方ダブデ陸戦艇、目標を射程に捉えた。此れより味方の後退を支援する。砲撃始めええーーー!?』

 

何処からともなくダブデ陸戦艇の艦砲射撃が来る。そして敵のトーチカ群付近に次々に着弾。爆発と爆風により戦車部隊は更に被害が出る。

 

『ダブデ陸戦艇を早く見つけろ!何故見失うんだ!』

 

『敵航空戦力の一部が未だに健在です』

 

『ならサッサと叩き落とせ!』

 

しかしダブデ陸戦艇の艦砲射撃により連邦軍の進撃が一時中断する事になった。またダブデ陸戦艇の陣地変換の移動速度は速く、中々位置を特定出来ずにいたのだった。

 

……

 

PM16:00

 

戦車部隊とモビルスーツ部隊は戦闘を一時中断して戦線を離脱する。モビルスーツ部隊の損害は0。しかし戦車部隊や航空隊は、かなりの被害が出ている様だ。

 

「戦車部隊の再編を急がせろ。明日も総攻撃を仕掛ける」

 

「敵の航空戦力は、かなり少なく成ってます。次の戦いでは制空権は我々に有ります」

 

「なら攻撃機でダブデ陸戦艇を落とせば良い。そうすれば勝てる」

 

士官が数人話し合ってるのが聞こえた。アレだけの被害が出ても攻撃を続行する。確かに戦車部隊や通常兵力の被害は大きかった。だが、まだまだ戦力は残っている。それに他のオデッサ攻撃部隊も多数の戦果を上げていた。その報告を受けて誰もが勝利の雄叫びを上げて喜びを露わにする。

 

「その戦果の為にどれだけの犠牲が出たのやら」

 

戦果とは犠牲の上に成り立つ物だと考えてる。だが、そんな事を気にしている奴は居ない。居たら正気でいられる訳がない。因みに俺は考えない様にしてる。何故なら、それが原因で仲間を見殺しにしてしまうかもしれない。

 

「それにしても連邦軍も遂に此処まで来たんだな」

 

開戦から11ヶ月以上が経過した。初戦は大敗を帰した地球連邦軍だったが、今では此処まで来た。そんな事を考えてると頭を誰かに上から抑えられる。

 

「全く、また黄昏てるし。アンタはそんな姿似合わないわよ」

 

「似合わないとは失礼な。俺だって思う事が有りますから」

 

レイナ少尉の腕が俺の頭の上に乗る。と言うか体重をかけて来る。

 

「ふっふっふ〜、軽かろう?」

 

「いえ、重いです」

 

「重くないし!羽毛布団の様に軽いから!」

 

何故羽毛布団なんだ。布団要らんだろ。然も余計に体重掛けて来るし。

 

「あのさ、そろそろ仲直りしようかな?と思ってるんだけど」

 

あの時の敵補給部隊攻撃の事だろう。

 

「そうですね。自分も気不味いままなのは嫌ですからね」

 

「じゃあこの前の事はこれで終わりね!んー、スッキリした〜」

 

「スッキリした〜なら体重掛けないで下さい」

 

と言うか終わるの早いな。まあ、レイナ少尉らしいと言えばらしいけど。

 

「でも、胸が当たってて嬉しいでしょう?」

 

悪戯っ子の様な表情をするレイナ少尉。まあ…否定はせんよ。役得だと思ってたし。

 

「ほんっと、シュウ曹長は分かりやすいんだから」

 

それから暫くレイナ少尉と戯れる事になったのだった。

 

……

 

「あの野郎…我等がアイドルのレイナ少尉といちゃつきやがって!!!」

 

「次の戦闘で誤射しても大丈夫かな?」

 

「俺もいちゃつきて〜。と言うか彼女欲しい…」

 

レイナ少尉とシュウ曹長のイチャつきを見ていた周りのモビルスーツパイロット達は、それはそれは大層羨ましそうだったそうな。

 

「レイナは…僕の許嫁なのに!なのに!」

 

アーヴィント少尉も悔しがる。

 

「………」

 

ルイス伍長は…無表情なのが怖いです。

 

「若いってのは良いもんだな。まあ、俺と妻の方が断然上だがな」

 

「お?自分の妻も中々ですよ。唯、怒らせるとヤバイんですけどね…」

 

モンド伍長と妻子持ちの陸戦型ジムの部隊長は温かい視線を向けるのだった。

 

……

 




実は主人公達をオデッサに配置させる事を結構迷った。だけどイグルー2とか陸戦型ジム結構出てたしな〜。


でもRGM-79ジムは出ていない…。本当に迷ったわ。
この辺りは適当に辻褄合わせするしか無い!←


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オデッサ攻防戦 3

宇宙世紀0079.11月9日AM8:00。再度オデッサに残存しているジオン軍に対し攻撃が開始される。敵の抵抗は激しい物で有るが、味方の犠牲を省みない戦法を取る地球連邦軍の攻撃に押されるジオン軍。

 

『敵の攻撃激しく、足止めが出来無い!増援を!』

 

『くそっ!くそっ!連邦のクソ野郎ガッ!?』

 

『ブラット3がやられた!穴を埋めろ!』

 

更にジオン軍に対しビックトレー2隻からの艦砲射撃や対地ミサイルが襲う。勿論ジオン軍側もやられっ放しでは無い。ダブデ陸戦艇の艦砲や野砲やトーチカ、更にザク、グフ等のモビルスーツで応戦する。

しかし、物量が違い過ぎた。次々に防衛線を放棄するジオン軍に対し、攻勢の手を緩める事の無い地球連邦軍。だが、ジオン軍とてこのままにして置く訳には行かない。

 

……

 

高速重モビルスーツ、通称MS-09ドム。遂にその脅威が地球連邦軍機甲師団第4軍に牙を剥く。

 

ジオン公国軍第77突撃機動部隊 アザル小隊

ザクが配備されてる他、新型モビルスーツMS-09ドムが6機配備されている。今回、味方の後退を支援する為ある作戦に参加する。

 

「君達アザル小隊は敵の右翼側から攻撃を行い、敵陣に侵入。敵の内部にて撹乱を行え」

 

「…敵陣のど真ん中に行けと?」

 

司令部に居る上級指揮官とアザル・マランダー大尉、他ドムのパイロット5名が居る。

 

「MS-09ドムの高速の機動性と重装甲が有れば可能な作戦だ。また味方の後退が完了次第任意で撤退せよ」

 

「後方からの支援と航空支援は?」

 

「勿論行う。砲撃後の爆煙に潜り込み、敵に肉薄して行け」

 

「了解致しました。おし、お前ら今の内に遺書書いとけよ」

 

「アザル隊長、それシャレになって無いです」

 

「シャレで言ってないからな」

 

アザルは部下達と辛辣な会話を上級指揮官の前で話す。彼等にはこれぐらいしか出来ないからだ。そして仲間達と格納庫に向かう。

 

「それと、ドムの装甲に追加装甲を付けてくれ。そんな確りとした物じゃ無くて良い。気休め程度だからな」

 

「なら在庫でザクとグフのシールドがあった筈です。後グフ用のヒートサーベルも数本有りました」

 

「武装は120㎜マシンガンとバズだ。それから敵にもモビルスーツが居るからMMP-80もだ。後は弾薬をたっぷりとな。敵陣のど真ん中で弾切れは御免だぜ」

 

アザル隊長は次々と仲間達に指示を出して行く。

 

「残りのザクの部隊はどうされます?」

 

「連れて行くのは無理だからな。ミッチェル中尉、もしもの時はお前が隊長になる。分かったな?」

 

「自分は全員が帰還するのを確信しております。ですが、もしもの時は了解です」

 

「フッ、それで良い。よーし、出撃準備に入れ!敵は目と鼻の先に居るぞ!」

 

「「「「「「「了解!!!」」」」」」」

 

急ピッチでドムに追加装甲を取り付ける整備兵達。追加装甲と言っても本当に気休め程度だろう。だが、無駄には成らない為にも整備兵達は急ピッチで作業を行う。

もう爆撃やら砲撃の振動が近い。この戦いはジオンが負ける。そう確信したアザル・マランダー大尉は拳を握り締める。

 

「タダでオデッサに行けると思うなよ。連邦め」

 

そう呟き、自身もドムの最終調整を行うのだった。

 

……

 

AM12:00。ジオン公国軍第77突撃機動部隊が順次出撃して行く。そして彼等を見送る為の砲撃が間も無く開始される。

 

「行ってこいよー!」

 

「連邦を蹴散らして来い!」

 

「ちゃんと帰って来いよ!借りた金が有るんだからよ!」

 

そして砲撃が開始される。

 

「砲撃用意!撃てええーーー!!!」

 

号令と共に多数の砲弾とロケットが発射される。機甲師団第4軍にジオンの反撃が始まる。

 

「あの稜線を越えれば敵が見えるぞ」

 

『アザル隊長、レーダーに多数の敵反応しか無いんですけど』

 

『うわー、マジかよ』

 

「案ずるな。連邦の兵力は殆どが61式だ。此方は重装甲のドムだから、相手の攻撃は効かん」

 

アザルは部下達を安心させる様に言う。

 

『間も無く砲撃が終わります。皆さん、御武運を』

 

「おう、其方も死ぬなよ」

 

司令部のオペレーターと最後の通信を終える。

 

「野郎共!行くぞ!連邦の雑魚共にこれ以上好きにやらせるな!」

 

アザル隊長の号令と共に、全員ドムのスピードを上げて稜線を越える。爆煙の中を突き進む。そして、遂に地球連邦軍機甲師団第4軍と接触した。

 

「攻撃開始!撃ちまくれ!!!」

 

ドム6機はホバー移動による高速移動で敵を翻弄する。

 

『一体何だ!敵が現れたぞ!』

 

『此方第38戦車グアッ!?』

 

『撃て撃て撃てー!敵はたった6機しか居ないんだぞ!』

 

61式戦車や戦闘ヘリから次々と攻撃が来る。だが、当たらない。ミノフスキー粒子が散布されてるのは勿論だが、それ以上に彼等の腕が良かったのだ。

 

『マーサー、お前は左をやれ。俺は中央を蹴散らす』

 

『了解。くたばりな』

 

カイル小隊の連携は凄まじく、次々と61式戦車を破壊して行く。

 

『畜生!飯時を狙いやがって!生きて帰すな!』

 

連邦軍は必死の抵抗をする。その弾幕は凄まじいもので有る。

 

『アツシ!無事か!』

 

『大丈夫です!ドムの装甲が少し凹んだぐらいです!』

 

ジオン公国軍第77突撃機動部隊アザル小隊は次々と敵を撃破して行き中央に向かって前進する。

 

「足を止めるな!やられるぞ!」

 

『互いにカバーするんだ!でないと厳しいぜ!』

 

『ほらよ!120㎜のプレゼントだぜ。序でにクラッカー!』

 

アザル小隊の快進撃は止まらない。いや、止まってはダメなのだ。止まってしまえば死有るのみ。しかしアザル小隊は次々と61式戦車を撃破して行く。殆どが通常兵力で編成されてる機甲師団第4軍に為すすべは無かったのだった。

 

……

 

機甲師団第4軍の右翼側で敵新型モビルスーツであるドムの奇襲により足止めを食らう事になる。

 

『モビルスーツ隊は直ちに敵モビルスーツを撃破せよ!味方をこれ以上やらせるな!』

 

バライン大佐から直ちに命令が下る。

 

『やれやれ、漸く俺達の出番か。良し!セロン小隊行くぞ!』

 

『マルダ小隊了解。モビルスーツの相手は任せな』

 

『ラングリッジ小隊了解。行くわよ』

 

『ヤッキム小隊も続くぞ!』

 

俺達モビルスーツ部隊は敵モビルスーツの方に向かう。

 

『皆さん、敵モビルスーツは新型のドム6機との事。充分に警戒をして下さい』

 

「ドムだって!?確か重装甲のヤツじゃないか」

 

この機甲師団第4軍に編入された時、資料にあった筈だ。ただ、詳細は載ってた訳では無い。精々重装甲で高速移動が可能なモビルスーツだとか。

 

『大丈夫よ。私達にはモビルスーツだけじゃ無い。戦車や航空戦力も圧倒してるんだから!』

 

『レイナの言う通りさ。此れだけの戦力の前に、たった6機のドムが来たとしても直ぐに撃破出来るさ』

 

そしてモビルスーツ部隊は敵ドムに向かって行く。他の味方部隊からは悲痛な通信しか来ない。

 

『畜生!速過ぎて敵を捉えられない!』

 

『こっちに来る!うわあああ!?』

 

『弾幕を密にするんだ!敵をぐわあッ!』

 

俺達モビルスーツ部隊は急いで敵ドム隊に向かう。そして遂に肉眼で捉えた。しかし、それは相手も同じ事が言える。

 

『アザル隊長、2時方向に敵が来ます。モビルスーツです!』

 

「ほう、遂に来たか。A小隊は俺に続け。B小隊はそのまま戦車を潰せ」

 

ドム3機が此方に接近して来る。

 

『全機!射程に入り次第攻撃開始!各小隊は敵ドムを倒せ!』

 

シールドを構え武器を構える。

 

「ふん、そんな在り来たりな動きでドムを倒せると思うなよ」

 

120㎜マシンガンとMMP-80を構えて接近して来るドム。それに続く2機のドム。

今ここにオデッサ攻防戦に於けるモビルスーツ戦が行われ様としていたのだった。




MMP-80のモデルはスマートの方で。
ほらザク改が持ってるゴツい方じゃ無い方で。


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オデッサ攻防戦 4

オデッサ作戦に於けるドムの配備数とか決まってます?
イグルー2とか2機出てましたし…。


最初の攻撃を仕掛けたのはドムのジャイアントバズーカからだった。俺達はシールドで防いだり、回避行動を取る。

 

『敵さんはやる気の様だ。各小隊、歓迎してやれ!』

 

此方も100㎜マシンガンや90㎜マシンガンで応戦する。しかし、ドムの機動性と装甲が凄過ぎた。此方の攻撃を避けるし、遠距離からの攻撃は効果が薄い。更にシールド持ちもいる事で撃たれ強くなっていた。

 

『流石新型だ。手強いぞ!味方との連携を密にぐあっ!?』

 

セロン小隊の隊長が被弾する。

 

『ふん!所詮連邦の雑魚が幾ら集まったとしても無駄だ!』

 

ドムは高速移動しながら更に攻撃を仕掛けてくる。

 

『このー!調子に乗らないでよね!?』

 

レイナ少尉は90㎜ガトリングガンで応戦する。

 

『ほう、中々の弾幕だ。だが、その程度!』

 

『自分も続きます!』

 

2機のドムがレイナ少尉に攻撃を集中する。

 

「ガルム1!回避を!」

 

『っ!?こ、こんなもので!』

 

レイナ少尉に向かい1機はジャイアントバズーカをもう1機は120㎜マシンガンとMMP-80を撃ち込みながら接近。レイナ少尉は回避が間に合わずシールドを構える。だが、ジャイアントバズーカの直撃によりシールドを手放す。そして120㎜マシンガンとMMP-80の90㎜弾が直撃する。

 

『終わりだ!』

 

弾切れになった120㎜マシンガンを放棄してヒートサーベルを抜き接近するドム。

 

「間に合ええええ!!!」

 

ジムのリミッターを解除してブースターを全開に吹かす。そのままビームサーベルを抜きレイナ少尉の前に出る。そしてドムのヒートサーベルとジムのビームサーベルがぶつかり合う。

 

『此奴っ!味方を守るか!』

 

「これ以上やらせるか!」

 

一瞬だけお互いの声が聞こえる。そして、直ぐにドムは離れて行く。

 

「ガルム1、無事ですか!」

 

『私は…平気よ。唯、機体が…』

 

どうやらレイナ少尉は無事な様だ。だが機体に多数被弾した為動けそうに無い。

 

『敵が手強い!こんな相手と戦うなんて聞いてないぞ!』

 

『ジャック!畜生、また1機やられた!』

 

ドム相手に翻弄される陸戦型ジム部隊。

 

『ガルム2!レイナを連れて逃げうわああ!?や、やられるー!?』

 

「ガルム3!」

 

アーヴィント少尉の量産型ガンタンクにジャイアントバズーカが直撃。だが誘爆はして無いし、アーヴィント少尉も無事だ。量産型ガンタンクのコクピットが頭部に有った事が幸いだった様だ。

 

『よし、お前ら。味方と合流する前に敵モビルスーツ隊を殲滅するぞ。その後後退して弾薬補給だ。ライズ、俺に続け』

 

『了解です!連邦に我等の力を見せ付けてやりましょう!』

 

『自分達も援護します』

 

再度あの2機のドムが接近して来る。更に1機のドムも射撃しながら接近して来る。生き残ってる陸戦型ジム6機の100㎜マシンガンと俺のジムのビームスプレーガンで応戦する。

 

『でりあああああ!!!』

 

『そんな大振りな攻撃が当たるか!馬鹿め!』

 

『ちくしょおおお!!!』

 

いや、1機の陸戦型ジムはガンダムハンマーだったわ。多分、敵からしたら戦力外だったから見逃されてたんだろうな。頑張れガンダムハンマー持ち!

5機の陸戦型ジムが弾幕を張る。だが、シールドやドムの装甲で防がれる。俺もビームスプレーガンを撃つがシールドで防がれる。

 

『終わりだ!ビーム持ち!』

 

「来るか!だが、舐めるな!」

 

ヒートサーベルを持ちながら接近する1機のドム。その左肩には連邦のマークに髑髏マークが上書きされていた。お互いの距離が縮まる。ビームスプレーガンで狙いを付けようとした時、ドムの胸の部分が強烈な光を出す。

 

「っ!?目潰しか!」

 

『貰ったぞ!』

 

咄嗟にシールドを構えながらバックステップをする。ドムのヒートサーベルがシールドを切断。そして、ジムの装甲も浅く削る。更にジムからロックアラートが鳴る。もう1機からドムが攻撃を仕掛けて来るのを肌で感じる。

しかし、最初の攻撃によりジムは態勢を維持出来ず倒れてしまう。俺は倒れた姿勢のままブースターを使い無理矢理動かして回避する。バックパックからアラートが鳴るが無視する。

 

『何!?今のを回避しただと!?奴は…エースなのか!』

 

『自分も隊長と同感です。味方を守る動きといい、先程の攻撃を凌ぐだけの能力。奴はエースで間違い有りません!』

 

視界が戻った時は2機のドムは離れて行く。だが、再度此方に接近して来る。

 

「しまった、ビームスプレーガンが」

 

先程の攻撃でビームスプレーガンが損傷。更に90㎜マシンガンも倒れた拍子に歪んでしまった。生き残ってる陸戦型ジムは他のドム相手に手一杯だ。だが、徐々にドムの動きに慣れつつ有る。

 

「他に、他に武器は…有った!ガルム1武器借ります!」

 

俺は急いでジムの体勢を戻し、レイナ少尉の90㎜ガトリングガンを借りる。ドム2機が再度接近してくる。MMP-80とジャイアントバズーカを撃ちながら接近して来る。それをブースターを使い避ける。しかし、ジムのブースターの出力系統に異常が有ると警告が出る。

 

『やはり良い動きだ。ライズ仕留めるぞ!』

 

『了解です!』

 

2機のドムが間合いを調整しながら接近してくる。俺は90㎜ガトリングガンで撃ち返…

 

「え?パスコード…レイナ少尉!パスコード教えて!大至急!」

 

『え?…あ、そ、そんなの…言える訳無いでしょう!恥ずかしい…』

 

「恥ずかしいって何!そんなのどうでもっ!?来てる来てる敵が来てるーーー!?」

 

咄嗟に60㎜バルカン砲で迎撃する。しかし、所詮牽制用の60㎜弾。そんな物何ぞ無視して突っ込んで来るドム2機。先頭のドムがMMP-80を撃ちながらヒートサーベルを抜く。後続のドムはジャイアントバズーカを撃ちながら先頭のドムの援護をする、

左手でビームサーベルを抜き1機目の攻撃を防ぐ。だが、その隙に2機目がジャイアントバズーカを此方に撃ち込む。

 

「これしか無い!」

 

またブースターを無理矢理使い姿勢を変える。ジャイアントバズーカの弾はジムの左腕に直撃。衝撃によりジムは倒れる。更にジャイアントバズーカにより左腕は吹き飛びビームサーベルが使えなくなる。

 

『何だ?奴の動きが変わった?』

 

『分かりません。ですが、これ以上我々が残り続けるのは流石に不味いです』

 

『うむ、なら最後にもう一度仕掛ける。全機に注ぐ。俺達を援護せよ。その後、直ぐに後退する。これ以上は厳しいからな』

 

ドム6機が集合する。そして再度モビルスーツ部隊に迫る。

 

『生き残ってる戦車隊は砲撃せよ!敵が一箇所に集まってる今がチャンスだ!』

 

『遅くなってすまない。此方攻撃機マングース隊だ。これより援護する』

 

味方部隊が次々に攻撃を開始する。だが、6機のドムは華麗に回避して行く。

 

「レイナ少尉!早くパスコード!もう時間無いのよ!」

 

何故かオネエ言葉になるシュウ曹長。

 

『もう…私のバカ。シュウ!アンタ、責任取りなさいよ!絶対よ!』

 

「分かったからあああ!早くううう!敵が来てるのよおおお!!!」

 

オネエ言葉継続中。

 

『い、言うわよ。92、56、84…よ』

 

急いで数字を入力する。そして遂にロック解除される。

 

「YOSHIKITAAAA!!!CAM ON BABY!!!」

 

そして90㎜弾の圧倒的弾幕がドムを襲う。

 

『くっ!やはり厄介な武器だ。だが、此れで終わりだ!!!』

 

あの2機のドムが更に接近して来る。

 

「ガルム3、行けます?」

 

『勿論さ。さっきの借りは此れでチャラにしよう』

 

量産型ガンタンクの120㎜キャノン砲から砲撃により1機のドムの脚部に直撃して転倒。更に。

 

『おりやああああ!!!』

 

『何!?ガアッ!!!』

 

多数の味方からの攻撃により動きが鈍くなったドムに1機の陸戦型ジムが接近。そしてガンダムハンマーがドムに直撃、そして爆散する。

 

『よっしゃああああ!!!初戦果だああああ!!!』

 

めっちゃ嬉しそうな声が聞こえる。どうやら初めて敵モビルスーツを撃破したらしい。しかし、普通の武器を使った方が戦い易いと思うけどな。

 

『アツシ!ライズ!おのれ、連邦の分際で!!!』

 

「髑髏マークのエンブレムマークなんざ珍しくも何とも無いんだよ!」

 

90㎜ガトリングガンを撃ちまくりドムを追い払う。更に味方の戦車部隊が倒れてるドムに留めをさす。更に空からの攻撃により連携か乱れる。

 

『隊長!これ以上は無理です!後退しましょう!』

 

『くっ…遺憾ながら後退する。全機!煙幕を張れ!』

 

ドムから煙幕が出る。そして味方戦車部隊や航空隊が追撃に入る。

 

「そう簡単に逃すか!」

 

逃げて行くドムを追いかける為ブースターを使う。しかし、一瞬出力が上がった後徐々に低下して行く。急いでモニターでバックパックの状態を確認するとバックパックの部分にレッドアラートが出ていた。リミッター解除していた状態でブースターが使えないと言うなら、余程ダメージがデカイのだろう。俺は逃げて行くドムに視線を向ける事しか出来なかった。

 

そして未だ戦いの音は聞こえる。だが、連邦軍の勢いは止まらずオデッサに進撃する。更に敵ダブデ陸戦艇が味方攻撃機マングース隊による集中攻撃により撃破された。これが合図となったかの様にオデッサへの攻撃がより一層強くなる。

 

宇宙世紀0079.11月9日。地球連邦軍機甲師団第4軍がジオン軍の包囲網を突破。その後の攻勢の勢いは止まらず前進する。

同日。ジオン公国軍のオデッサ総司令官マ・クベ大佐が宇宙に撤退。この時、マ・クベ大佐はこの様に述べた。

 

【ジオンは後10年戦える】

 

戦いはまだ続く。

 




パスコードの意味する数字とは…一体何なんだ

俺には分からんな〜♫


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一時の休息

更新が遅れます。


オデッサ攻防戦は地球連邦軍の勝利で終わった。

ジオン公国軍、オデッサ総司令官マ・クベ大佐が宇宙に撤退した。それを機にジオン公国軍はオデッサより各ジオン占領地域に撤退して行く。地球連邦軍は追撃戦を実施。ジオン公国軍に対し更なる攻撃を行なった。

そしてRGM-79ジムと量産型ガンタンクが損傷したラングリッジ小隊は追撃戦には参加出来無かった。

 

「代わりに休憩が出来るなら良いもんだな」

 

これは仕方無い事だ。ジムが中破レベルまで損傷してしまったのだから。

 

「全く、お気楽な物ね」

 

「まあまあ、シュウ曹長も戦い続けて来たのですから」

 

レイナ少尉とルイス伍長が此方に来る。

 

「何せ俺達のモビルスーツはボロボロだし、他のモビルスーツ部隊も追撃戦には参加して無いですし」

 

唯、1機だけ無傷の奴は居たがな。そうガンダムハンマー持ちの奴さ。因みに追撃戦には不参加だ。何故なら他の武器を使うつもりが無いかららしい。

 

「ガンダムハンマー以外の武器に興味は無い」

 

と彼はキッパリと言い放った。いや、俺達軍人なんだから我儘言うなよ。気持ちは分かるけど。

 

「ま、追撃は他の部隊に任せても良いかもね」

 

「寧ろ皆さんはゆっくり休んで下さい。後の処理は私達でやれますから」

 

ルイス伍長は俺達に休息を促す。確かに今日の一戦は冷や汗物が有ったな。特にドムが何度も接近して来るのは心臓に悪かったな。

 

「所でレイナ少尉、あのパスコードの意味は何ですか?責任を取る前に意味を教えて下さい」

 

「うえっ!?そ、そんなの言える訳無いでしょう!バカ!変態!」

 

「何で罵倒されるんですか!意味が分かりません。ルイス伍長は分かりま…ルイス伍長?」

 

ルイス伍長は自身の胸の辺りを見ていた。

 

「92…良いなぁ」

 

何故か羨ましそうにレイナ少尉を見る。一体何なんだ?

 

「まあ、何でも良いや。代わりに責任云々も勘弁して下さいよ」

 

「うっ…じゃあ、代わりに買い物には一日中付き合って貰うからね!」

 

ビシッと人差し指を俺に向けながら去って行くレイナ少尉。しかしこの辺りで買い物が出来る場所有ったっけ?

 

「シュウ曹長、今度は私とも買い物に付き合って頂けますか?特に…深い意味は無いんですけど」

 

「別に構いませんよ。買い物ぐらい大丈夫ですよ」

 

「本当ですか!良かった。じゃあ時間が出来た時にお願いしますね!」

 

ルイス伍長もそう言いながら去って行く。

 

「俺もゆっくり休むかな」

 

そう一言呟きながらホバートラックに向かうのだった。

 

……

 

宇宙世紀0079.11月10日。司令部よりMS特務部隊第27小隊に命令が降る。

 

【11月18日にジャブローに来られたし。RGM-79ジム、量産型ガンタンクの戦闘データの回収、及びアップグレード作業を行う】

 

ジャブローまで行く輸送機は4日後になっていた。つまり、3日間は自由な日が出来た訳だ。そんな事を考えていた時だった、巨大な白い戦艦が上空を通過して行く。

 

「あの戦艦は一体?」

 

随分と損傷していた様だが平気そうに飛んで行く。

 

「へぇ。連邦軍もあんな物作ってたのね」

 

「レイナ少尉なら色々知ってそうでしたけど」

 

「そんな事無いわよ。パパなら何か知ってるかもだけど、簡単に聞ける訳無いでしょう。一応軍事機密に入ってるだろうし」

 

その軍事機密を知ってる可能性が高いお父さんは何者ですか?

 

「それより、明日は街に買い物に行くわよ?ちゃんと準備して起きなさいよ」

 

「街?ああ、近くの中立街ですか。大丈夫なんですか?正直あまり近付かない方が良いと思いますが」

 

「だって、他に街無いもん」

 

無いもんて…子供ですか。

 

実はこの欧州には地球連邦軍、ジオン公国軍に協力しない街が有る。戦争に参加しないと公に宣言しているのだ。そうする事で街に被害を出さない様にしてる。尤も、大した経済力も無ければ重要な施設が有る訳でも無い小さな街が宣言した所で意味は無い事だが。

そして次の日になり、俺とレイナ少尉は中立街に出掛けるのだった。

 

……

 

中立街には地球連邦軍のラコタを一台借りて行く事になった。この時レイナ少尉の小悪魔っぷりが発揮されて、あっさりラコタは借りれた。

 

「本当にレイナ少尉は同性からハブられてたんですね」

 

「ちょっと!何でいきなりディスってんのよ!」

 

「いや、だってねぇ?」

 

あのやり取り見てた女性士官が軽く舌打ちしてたし。そう思うと少し涙が…出て来ないわ。

 

「やっぱり自業自得ですよ。諦めてハブられて下さい」

 

「ハブられて無いもん!ただ、皆とのタイミングが合わなかっただけだもん」

 

そんな下らない話をしながら中立街に行く。やはり戦争の痕跡は多数有る。建物が倒壊してたり、旧ザクが倒れ込んで居たり。野戦病院や避難民や家が無くなった人達がテントで暮らしていた。意外な事に物資等が地球連邦政府から配られてるみたいで、連邦軍のシンボルマークの付いた袋やら木箱が並べられている。そして被害を免れた建物や地区がある所ではそこそこ賑わいがある。恐らく欧州での戦いが一段落着いて、復興の兆しが見え隠れしてるからだろう。因みに裏路地に行けば闇市が普通に開かれてる。

中立街に着くと先ずは軍服を隠す為にフードを着る。欧州周辺は再び地球連邦軍の占領下になったものの、ジオン公国軍の残党が居る可能性は高い。よって無闇に刺激しない方向で行く事になった。それと武装もしっかりと準備はする。

 

「思ってた以上に被害が大きいですね。帰って基地の売店で買物しません?」

 

「それじゃあショッピングの意味が無いでしょう!気持ちはちょっと分かるけど。ほら、行くわよシュウ」

 

「了解です。レイナしょう、レイナ」

 

こうして俺達は中立街に入る。因みにお互い軍人だとバレない様に階級は言わない事にしている。

 

……

 

戦場の被害が無い場所は意外にも物が揃っていた。恐らく地球連邦政府が援助はしてるのだろう。だが、避難民や野戦病院などの状況を見るとこの街を全て救う分は無い。本当に必要最低限なのだろう。中立宣言をしてるとは言え、此処も地球連邦政府の所有地だ。変に援助とかを打ち切れば敵に寝返ってしまう可能性が高いだろう。そうなればゲリラ屋の巣窟に早変わりになるだろうな。

 

「あー!このイヤリング良いなぁ〜。それにコッチのネックレスも。ねね、どっちが似合うかな?」

 

そんな事を考えてると、いつの間にかレイナは二つのアクセサリーを此方に見せて来る。しかし、イヤリングとネックレスか。どっちも身に付ける場所が違うんですけど…。比べ様が無いんだけど。

 

「そうですね。イヤリングの方が似合ってますよ。何かレイナにぴったりな感じがしますし」

 

「ふ〜ん、そっか〜。ならイヤリングに決めた」

 

レイナはあっさりイヤリングに決めてお会計を済ます。それで良いんですか?

この後も服を見たり、試着したり、感想言ったり色々やった。因みに買う事はしなかった。だって基地の売店より3倍以上の値段だったし。そして漸く昼御飯になった。

 

(いやー、長い買い物だな。信じられるか?まだ午前中何だぜ?)

 

「シュウは何食べる?私はこの野菜パスタにしようかな」

 

「そうですね。自分はミートパスタにしますよ。しかし、まさかパスタ食べれるとはね」

 

オデッサ攻防戦は地球連邦軍の勝利に終わり、欧州周辺は地球連邦軍の占領下になった。その結果、欧州に於ける戦争は収束に向かって行った。この中立街も戦地に成ったのは一度や二度では無いだろう。それでも戦争が落ち着いたからか、街には随分と活気が有る。恐らく戦いに巻き込まれる心配が無くなったからだろう。

 

「私達が守った物が、今見ている光景よね」

 

レイナは外の景色を見ながら呟く。子供が母親と手を繋いで歩いていたり、老夫婦がベンチに座ってたり、壊れたザクの腕に登ってる奴とか、男同士手を繋いでたり…え?いや、その辺は人それぞれだしな。

俺達は暫くその光景を見てた。しかし、実はもう一つ見ていた者がある。嘗ては当たり前の光景を眩しそうに見ているレイナ・ラングリッジの姿はとても綺麗で正直見惚れてしまっていた。

 

……

 

この後も引き続きレイナの買い物に付き合う事になった。だがウィンドショッピングだけで、ただ街を見て回っていた。特別な事は無い。普通の買い物だった。と言っても闇市とかには行かず、表通りの場所だけだが。

 

「あ!ねね、彼処のアイス食べましょう!勿論シュウの奢りで!」

 

「別に構いませんよ。アイスぐらいどれでも好きなのを」

 

「本当?やった!何にしようかな〜♫」

 

レイナは嬉しそうにアイスを選ぶ。そんな姿を見てふと思った。戦争の傷跡以外は去年まではこんな風景は当たり前だった。だが、戦争が始まり11ヶ月が過ぎた。その間に数十億人が死んで、兵器群の技術は途轍も無い勢いで成長している。

この戦争はまだ続くだろう。その間にどれだけの人間が死ぬのか。その間にどれだけの技術が進歩するのか。その答えが出るのはずっと先になるのだろう。

だが何れ答えは出るだろう。唯、それがどんな答えになるかは誰にも分か無い。例え噂話の域にしか居ないニュータイプとやらでもさ。

 

「まーた小難しい事考えてる」

 

「ふがっ」

 

気がつくとレイナがアイスを片手に俺の鼻を摘む。勘弁して下さい。

 

「私にはシュウが何考えてるかは分からないわ。でも、結局自分の望む答えを出せる人なんてほんの一握りよ。例え戦争が始まって無かったとしてもね」

 

「レイナ…」

 

未だに俺の鼻を摘みながら真剣な表情で話す。

 

「だったらさ、望む答えに近づける様にやれば良いじゃ無い。それで得た物は間違い無く掛け替えの無い物になるわ」

 

言われてみればその通りだ。生きてる限り様々な事が有る。それに納得しようがしまいが、時間は戻ら無いし止まら無い。なら、今を精一杯生きるだけだ。

 

「正直、色々悩む事は有ります。ですが、今は目の前の事に全力を尽くします」

 

「それで良し!さーて、なら早速買い物の続きよ!シュウ、全力で行くわよ!」

 

レイナは手を差し出して来る。俺はその手を取る。

 

「勿論です。これから盛り上がって行きますからね!」

 

俺達は再び買い物に行く。戦争や情勢は一旦棚上げだ。俺は今目の前にいる人と買い物に来ているのだから

 

宇宙世紀0079.11月13日。MS特務部隊第27小隊ラングリッジ小隊は地球連邦軍本部、ジャブローに向かい移動を開始する。

しかし、彼等はまだ知ら無い。自分達が激戦区の中に足を踏み入れて行く事を。争いの渦は様々な人々を巻き込んで行く。その渦に巻き込まれたら逃れられる事は誰にも出来無い。



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地球連邦軍本部ジャブロー

キョロ(・ω・`三´・ω・)キョロ

(ノ・ω・)ノ⌒~【地球連邦軍本部ジャブロー】

|)彡 サッ 【地球連邦軍本部ジャブロー】


宇宙世紀0079.11月14日AM9:00

 

MS特務部隊第27小隊であるラングリッジ小隊はミディア輸送機に修理したジム、量産型ガンタンク、ホバートラック等を搭載させて行く。

 

「欧州とも暫くお別れだな。そう言えばレイナ少尉、アーヴィント少尉は次の配属場所は知ってますか?」

 

何気にこの二人の親は地球連邦軍の上層部と繋がりが有る。其処から何かしらの情報を知ってるかもだし。

 

「んー、私は分から無いわね。アーヴィントは如何なの?」

 

「流石に僕でも分からないさ。だが、暫くは実戦には参加し無いだろう。何せ地球連邦軍の本部ジャブローに行くのだからな」

 

如何やら二人は知ら無いらしい。だがアーヴィント少尉の言う通りだろう。オデッサ攻防戦に於いて地球連邦軍の勝利により、地球でのミリタリーバランスは地球連邦軍に傾いた。

これによりジオン公国軍はアフリカ、東南アジア、ユーラシア等に撤退せざるを得なかった。

 

「それにしてもミデア輸送機に乗るのか。護衛機は付くんですかね?」

 

「はい、勿論です。オデッサでは私達地球連邦軍が勝利しましたが、ジオン勢力が無くなった訳では有りませんから」

 

「そうか。なら少しはマシになるか」.

 

護衛として随行した事が有るが、何機も撃墜されてたからな。それにミデア輸送機自体も特別頑丈では無いし。それにジオン公国軍自体は未だに健在だ。

 

「さて、そろそろ時間よ。全員搭乗するわよ」

 

レイナ少尉の一言でミデア輸送機に乗り込む。そして機長と軽く挨拶をする。

 

「それと、此方を持ってて下さい」

 

機長達から渡されたのは携帯型対空ミサイルだった。

 

「それから此処にミサイルが有りますので。道中お願いします」

 

「「…………」」

 

「だろな。さて、確り見張りをやりますか。ルイス伍長もレーダーでの警戒をお願いします」

 

「了解です」

 

レイナ少尉とアーヴィント少尉は顰めっ面になりながら携帯型対空ミサイルを見つめていた。安全な空路だと思ってたんだろう。しかし現実は非情な物であった。

ミデア輸送機隊は数機の護衛機フライ・マンタと共に離陸する。俺達は安全では無い空路を飛行して行く。しかし、ジャブローに向かうには行くしか無い。不安を胸に抱えながら。

 

……

 

『各機に次ぐ。4時方向に偵察機ルッグンだ。ミデア輸送機隊は低空飛行に入る。護衛機は迎撃せよ』

 

ジャブローまでの道程が半分程来た所にジオンの偵察機を見つけた。フライ・マンタが迎撃に向かう。しかしルッグンの機動性は高く、フライ・マンタは中々ルッグンを捉える事が出来無い。

 

「此れは一戦やるな。ルイス伍長、警戒を厳にお願いします」

 

『了解しました』

 

機内に居る全員が警戒する。そしてジオン公国軍の戦闘機ドップが接近する。

 

『6時の方向から来るわよ!』

 

『ミデア各機は密集陣形を取れ!敵の数は多くないぞ!』

 

『俺達に任せな。全機行くぞ!』

 

護衛機隊のフライ・マンタは戦闘機ドップに攻撃を仕掛ける。それと同時に思ったのは敵の戦力が少なかった事だ。やはりオデッサ攻防戦にてジオン公国軍はかなりの戦力を損失したのだろう。無論地球連邦軍の損失は有るが余力は充分に有る。

結局、俺達の出番は無く戦闘は終わった。この後は順調にジャブローに向かう。夜になり警戒はするが、今はジャブロー上空に居る。この辺りになれば大分安心は出来るだろう。

そして、俺達は再び地球連邦軍本部ジャブローに戻ったのだった。

 

……

 

宇宙世紀0079.11月15日。

 

ジャブロー本部到着した俺達は何故かゴップ大将に呼ばれた。そしてゴップ大将の執務室まで出向いていた。

 

「失礼します。MS特務部隊第27小隊、只今参りました」

 

「うむ、入ってくれたまえ」

 

レイナ少尉から順に執務室に入って行く。其処には中々肥えたおっさんと美人秘書官が居た。

 

(あの人がゴップ大将か。大将だからもっとキリッとした人だと思ってけどな)

 

「先ずはオデッサ作戦於いての貢献ご苦労であった。君達モビルスーツ部隊の活躍が有ったからこそ第4軍の全滅は免れただろう」

 

因みにオデッサ作戦に於ける61式戦車の被害は8割を超えたそうだ。第4軍の主力は61式戦車だったから、かなりの損害が出てた筈だ。

 

「また、君達の戦闘データは非常に価値ある物だ。よって此れ迄の功績を鑑みてMS特務部隊第27小隊全員の階級を1つ上げる事を決定した。これからの更なる奮戦に期待する」

 

「「「「「ありがとうございます!」」」」」

 

遂に俺も少尉になった。だが素直に喜ぶ事は出来なかった。この階級も両軍の大量の血が流れた結果だと思っているからだ。

 

「さて、ラングリッジ中尉にアーヴィント中尉。私的な話になるが、君達はまだ軍に残り続けるのかね?君達のお父上は非常に心配しておられたよ」

 

「あはは〜、ゴップ大将申し訳有りません」

 

「両親のお恥ずかしい所をお見せしてしまって申し訳有りません」

 

「何、別に責めてる訳では無い。唯の確認だ。軍に残るか残らないか」

 

少しだけ沈黙にする。

 

「私は残ります。この戦いを一刻も早く終わらせたいですから」

 

「僕も残ります。レイナを守れるのは僕だけですからね」

 

「そうか。なら、私からはこれ以上は言うまい。では次の話を進めよう。シュウ・コートニー少尉」

 

「は、はい!」

 

いきなり呼ばれて少し吃驚した。特に呼ばれる事をした覚えは無い筈だけど。

 

「君はRGM-79ジムに対して不満はあるかね?」

 

「いえ、優秀な機体であると思います」

 

「私としては現場の素直な言葉が欲しいのだ。特に君は元戦闘機乗りだ。色々不満は有るのでは無いかね?」

 

不満か有るか無いかと言われれば有る。

 

「でしたら機動性とブースターの出力不足に不満が有ります」

 

「やはりな。君の様な戦闘機乗りは皆一様に同じ事を言っていた。ならこの機体なら如何かね?」

 

美人秘書官は俺にある機体のスペックデータを渡す。其処にはこう書かれていた。

 

【RGM-79Lジム・ライトアーマー】

 

装甲を極力薄くし各部の装甲もオミットした。また60㎜バルカン砲も廃止し徹底的な軽量化に成功した。これにより機動性が向上、一撃離脱戦法が非常に効果的である。また威力は高いが使用制限が有る専用のビームスプレーガンを装備。

しかし軽量化の結果、装甲が薄くなり各部の装甲もオミットした結果2〜3発の被弾により深刻なダメージを受ける結果となった。

 

「中々…極端な機体ですね」

 

しかし、そんな機体を扱える自信は正直無い。何故なら俺自身も良く被弾してる。シールドが無ければ死んでいた状況は沢山あった訳だし。

 

「安心したまえ。君の戦闘データによればジム・ライトアーマーとの相性は非常に良い。最初は不安が有るかも知れんが乗れば直ぐに分かる」

 

「分かりました。本機の受領をお願いします」

 

「うむ。だが、まだ機体は用意は出来ていない。元戦闘機乗り達からの要望が多くてね。だが直に用意出来るだろう」

 

改めてスペック表を見る。これが俺の新しい機体に成るのか。エース級のパイロットが扱う機体と言っても過言では無いジム・ライトアーマー。不安も有るが期待の方が高かったのは仕方無い事だった。



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地球連邦軍本部ジャブロー2

多数の感想、誤字報告、ご指摘等感謝します。
改めてお礼を言わせて頂きます。皆さんありがとうございます!


「すっごいじゃない!新鋭機を配備されるなんて滅多に無いわよ!」

 

「流石シュウ少尉だね。ふっ、僕が見込んだだけの男だね」フサァ

 

「おめでとうございます!シュウ少尉!」

 

ゴップ大将との面会を終えたら3人からRGM-79Lジム・ライトアーマーのスペック表を速攻で奪われる。極端な機体だが、それでも新鋭機に違いは無い。

 

「正直まさか自分が?と思いますけどね。他の人の方がいいんじゃ無いかと」

 

「何言ってるのよ!あんたは充分エース級の腕は有るわよ。私が保証するわ」

 

「悔しいが君の腕前は高い。だからそんなに不安に思う事は無い」

 

「今迄の功績を考えれば妥当ですよ。自信を持って下さい」

 

この後色々わちゃわちゃされながら一旦解散する事になる。俺は格納庫に向かう事にした。すると自分の乗機であるRGM-79ジムは現在本格的なメンテナンスを行っていた。と言うのもバックパックとジェネレーターの損傷具合が酷い為、最早交換する事にしたのだ。まだ予備のパーツは有るから問題は無いらしい。

更に間も無く【V作戦】の主軸となる【RX計画】の試験艦と試験機がジャブローに来るらしい。そして戦闘データをアップデートして真の意味で完成する。

 

「それでも俺にとってジムは良い機体だよ」

 

此奴には何度も命を救われたからな。それだけじゃ無い、味方を助ける事も何度も有った。暫くジムを見ていると声を掛けられた。

 

「コートニー…少尉どうかされましたか?」

 

「モンド伍長、いや軍曹になるんでしたね。お互い昇進おめでとうですね」

 

「ああ、漸く風がこっちに向いて来た感じはするな」

 

お互いジムを見る。ジムの修理は終わっており、整備兵が関節部分のチェックをしてる所だろう。

 

「自分はジムを見に来ただけですね。今迄共に戦って来た相棒ですからね」

 

「今迄?新しい機体を受領するんですか?」

 

俺はモンド軍曹にジム・ライトアーマーのスペック表を見せる。モンド軍曹は暫くスペック表を見て息を一つ吐く。

 

「また連邦は極端な機体を作りましたね。装甲は無いに等しいですが、それ以外は中々のスペックですがね」

 

「モンド軍曹もそう思います?自分も極端過ぎだなとは思いましたけど」

 

「しかし新しい機体が来るなら、もう此奴には乗らなくなるのか。まだ少尉と共に戦えると声は聞こえるんだがな」

 

モンド軍曹は俺のジムを見て呟く。俺もジムを見る。だけど俺には声は聞こえ無い。

 

「まあ少尉の腕前は高いですからね。通常のジムでは無理が有りますし。此奴のお役目も御免でしょうね」

 

「そう…ですかね。ですが感謝してますよ。それに此奴はまだ俺の機体です。だから最後まできっちり面倒みますよ」

 

ジムを見ながら言う。ジムは俺には何も語らない。けど、此奴は良い相棒だ。

 

「そうですか。なら最後まで少尉に合わせた調整にしときます」

 

「はい。お願いします」

 

一瞬ジムのバイザーが光ったが誰も気付く人は居なかった。

 

……

 

宇宙世紀0079.11月20日。

 

地球連邦軍本部ジャブローは平和そのものだ。時々ジオン軍からの定期便が来て、稀に対空砲とかが破壊されるが特に問題は無いらしい。そしてジャブローではジムの転換訓練を行なってるパイロット候補が多数居るのだ。彼等は間も無く実戦配備される。それにV作戦で得た戦闘データがジムにアップデートされればジムの戦闘力は大幅に上がると言われてる。

 

「レイナ中尉、パイロットの訓練期間が短縮されてると噂話が有ったんですが本当ですか?」

 

「私も聞いた事は有る話ね。多分、それ本当の事よ。少なくとも私達より大分訓練期間は短縮されてる筈よ。出なければ大量のモビルスーツの生産をする筈無いもの」

 

訓練期間の短縮。確かに俺達のモビルスーツでの運用などのノウハウは多少は出来つつ有るだろう。それで短縮してると聞けば多少は納得出来無い事も無いが。

 

「あ、彼処に居るの教官じゃ無い?ほら」

 

「本当だ。相変わらず怖い顔してるよな」

 

「そんな事言っちゃダメよ。確かに怖いけど」

 

結局怖い事に変わりは無いんだな。そしてパイロット候補生達を見ると同期の知り合いが居た。と言うか1ヶ月ぐらい前に欧州で味方の救助作戦以来だ。

 

「やっぱりアークもパイロットになったんだな」

 

「アーク?知り合い?」

 

「自分の同期の友人です。1ヶ月ぐらい前に欧州で救助作戦に居ました」

 

「ああ、あの時の作戦ね。皆んな元気にしてるかな?」

 

多分生きてれば元気にしてるだろうな。少なくとも大半の人達はオデッサ作戦に参加してる筈だ。アークの様な奴は運が良いのだろう。大規模な作戦中にパイロット候補生になれたんだから。

そんなパイロット候補生達を見ているとアークが此方に気付いた。

 

「シュウ!また会えたな!然も…ラ、ラングリッジ少尉、いや中尉になったんですね。昇進おめでとうございます」

 

「ありがとうね。貴方は確かシュウ少尉と知り合いだった人よね」

 

「はい!シュウとは大親友です!はい!」

 

レイナ中尉に対してすっごく緊張してるアーク。

 

「アーク君、僕も昇進したんだよー。アーク君聞いてる?」

 

俺の言葉を無視してレイナ中尉に話し掛けるアーク。更に他の候補生達もワラワラとやって来てあら不思議。あっという間にレイナ中尉は人気者になりました。

 

「コートニー少尉、久しぶりだな。昇進おめでとう。良く生きて帰って来たな」

 

「きょ、教官。あ、ありがどゔございまず〜」

 

様子を見に来た鬼教官が褒めに来てくれた。嬉しくて涙が〜。

 

「ほら男だろ?簡単に泣くんじゃ無い」

 

「はい、ずいまぜん。ズズッ」

 

この後教官と暫く話をする。特にオデッサ攻防戦の話は真剣に聞いていた。

 

「やはりジムではドムの相手は厳しいか」

 

「一対一ですと厳しいかと。相手はホバー移動での高機動に重装甲でしたからね。90㎜、100㎜マシンガンも距離が遠いと簡単に弾かれてましたから」

 

「かと言って接近戦も向こうが主導権を持ってるか」

 

「そうです。接近するタイミングは向こうに有りますから」

 

お互いMS-09ドムに対する対抗策を考えるが中々妙案は浮かばない。精々数を集めて磨り潰していくぐらいしか思い付かない。

 

「後は囮と本命を使うかですね。後はドムの機動を抑えてしまうか。オデッサ攻防戦の時にガンダムハンマー持ちの奴は其れでドムを破壊しましたから」

 

「成る程な。だが、囮役のリスクは高いな。特に新兵には厳しいだろう」

 

どうやら教官は敵の新型機であるドムに対する対抗策を新兵に教えたい様だ。だがドムの性能はかなり高い。実際戦ったから良く分かるが、RGM-79ジムの機動性では少々厳しいかも知れん。

そんな中、レイナ中尉の居る方が少々騒がしくなる。

 

「あんたみたいなチャラチャラした人が中尉とか信じられないわ。どうせ親の七光りでしょう?確かラングリッジの名前は連邦政府ではそこそこ名前が通ってるものね」

 

「へぇ、唯の候補生が上官に対して楯突くなんて良い度胸じゃ無い」

 

「何よ。階級が無ければ何も出来ない無能の癖に。あんたが士官学校ではダメダメだってパパから聞いて知ってるんだから!」

 

「貴女達パパラッチみたいね。あーやだやだ。人の弱みを粗探しする人とか年取った姑みたいで性格悪ーい」

 

何か女同士凄い言い争いになってる。雰囲気もかなり険悪だし…怖っ!

 

「なら模擬戦で勝負よ!どうせ私達に勝てないでしょうけどね!」

 

「親の七光りじゃ無いって言うなら証明して見なさいよ!」

 

「上等じゃ無い。アンタ達みたいな小生意気な連中は一度鍛え直した方が良いみたいね」

 

売り言葉に買い言葉。周りの男性候補生達も盛り上がる。しかしレイナ中尉はあんな簡単に挑発に乗る人だったかな?何故か違和感を感じてしまう。

 

「序でにアンタ達候補生全員で来なさい。実戦ってやつをアンタ達全員に教えてあげるわ!シュウ準備しなさい。行くわよ!」

 

「はえ?…え?え!あ、ちょっと!レイナ中尉放して!」

 

行成呼ばれた此方に走って来た挙句腕を掴まれる。だが、レイナ中尉の普段の事を考えていた為反応が遅れてしまう。

 

「断固拒否するわ!さあ出撃準備よ!」

 

あれよあれよと流されて気が付けばジムのコクピット内に居る訳でした。

 



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パイロット候補生VSラングリッジ小隊

沢山の感想、ご指摘等ありがとうございます。
中々返信が出来無い状況ですが、しっかり読ませて頂いてます。訂正すべき場所や特に問題無ければそのままにしてますのでご了承下さい。

因みにこの前ズゴック、ジムで検索したら案の定赤いズゴックにコクピットを貫かれたジムが出たんです。でも逆バージョンやジムの神様的な奴が出て来て笑った。


『作戦を説明します。場所はジャブロー演習場の市街地に成ります。市街地にはジムを隠せる大きさのビル群が多数有ります。不意打ちには充分に気をつけて下さい。また候補生の戦力はRGM-79ジム12機です。対して此方は2機のジムのみです』

 

『ふふん。候補生相手なら丁度良いハンデよ』

 

「いやいや、戦力比率は6対1ですから。ハンデに成りませんよ」

 

寧ろこっちがハンデ欲しいぐらいだ。

 

『また武装は90㎜マシンガンかハイパーバズーカ、それから模擬刀に成ります』

 

「そう言えば、何気にルイス軍曹も巻き込まれたんですね。ならアーヴィント中尉は?」

 

レイナ中尉の危機なら真っ先に来ると思ったんだけどな。

 

『アーヴィント中尉は士官の方と何かを話されてました。内容は分かりませんでしたが、何やら真剣な表情でしたけど』

 

どうやらタイミングが悪かった様だ。

 

『大丈夫よ。私とシュウのコンビネーションにルイス軍曹の的確なサポートが有れば余裕よ!』

 

『「は、ははは…はぁ」』

 

一体何処からそんな自信が出て来るのやら。お陰でルイス軍曹と苦笑いと溜息が一致しちゃったよ。お互い苦労してますからね。

 

『勝利条件は敵の殲滅に成ります。また、この模擬戦はレビル将軍とゴップ大将が観戦しています』

 

「ちょっと待てええーーーい!?何でレビル将軍とゴップ大将が観戦してんだよ!」

 

『この模擬戦を最終的に許可したのかレビル将軍でしたので』

 

アレだろ。オデッサ作戦が成功したから少しゆとりが出来たクチだろ。観戦席を見ると確かにレビル将軍とゴップ大将に他のお偉いさんがそこそこ観に来てた。あんたら他にやる事沢山有るだろ!

 

『ほらほら、レビル将軍達が観てる前でみっともない姿は見せれないでしょう?此処は真剣に頑張りましょうね』パチン

 

可愛くウィンクしながら言うレイナ中尉。畜生、やるしか無いよな。

 

「此処まで来たらやりますよ。それに、今更逃げるのもカッコ悪いし」

 

『うんうん。勝ったら頬っぺにチューぐらいなら良いわよ?』

 

『あ、あの、私も…大丈夫ですよ?』

 

「結構です。それからルイス軍曹も無理しなくて良いから」

 

そう軽く流してジムを立ち上げる。俺とレイナ中尉の武装は90㎜マシンガン、模擬刀、シールドになる。相手の武装には間違い無くハイパーバズーカ持ちは居るだろう。

 

「ま、やるだけやるさ。そうだ。ルイス軍曹、候補生達にオペレーターは居るんですか?」

 

『いえ、オペレーターは居ないです。全員パイロット候補生ですので』

 

「ならこの勝負はルイス軍曹に掛かってます。細かい戦況情報お願いします」

 

『了解しました。正確な戦況情報を伝えますね』

 

オペレーターが居ると居ないとでは戦い方は全然変わるからな。それに候補生に負けたと成ったら、ちょっとカッコ悪いしな。ジムのシステムが完全に立ち上がる。

 

「此方ガルム2、出撃準備良し。いつでも行けます」

 

『何よ。シュウもやる気になってるじゃ無い♫』

 

『シュウ少尉、所定の場所に移動お願いします』

 

「了解。シュウ・コートニー行きます」

 

俺はジムのブースターを使い素早く移動する。それに続いてレイナ中尉も付いて来る。

 

『ねえ、作戦はどうするの?』

 

「基本は自分が囮と撹乱をします。ガルム1は俺に気を取られた候補生をお願いします。それからルイス軍曹は敵の位置を正確に教えて下さい」

 

『オッケー。でも、無理なら直ぐに退きなさい。私達はコンビ何だからね』

 

『了解しました。後退する時の退路は此方で教えます』

 

「了解。さて、そろそろだな」

 

時間を見ると10秒を切っていた。そして遂に候補生達12機のジムとラングリッジ小隊の2機のジムとオペレーターによる模擬戦が始まる。

 

「そうだ。レイナ中尉、後で聞きたい事が有ります」

 

『聞きたい事?何よそれ』

 

「模擬戦が終わったら質問しますので絶対に答えて下さい」

 

レイナ中尉の返事を待つ事なく模擬戦が始まる。

 

『時間です。作戦開始します。御武運を』

 

「ガルム2了解。先行します」

 

『あ、ちょっと!もう。ガルム1行くわよ』

 

こうして俺達は市街地に侵入する。俺達が取れる手札は少ない。だが、市街地に入れば自然と視覚と射線は限られる。其処を最大限利用するだけだ。

 

……

 

side アーク・ローダー上等兵

 

「まさかシュウと戦う事になるなんてな」

 

『アークは相手のシュウとか言う奴と知り合いなのか?』

 

「知り合いも何も同期だよ。然もシュウの奴、ルウムでの戦いを生き延びた奴だからな」

 

正直セイバーフィッシュでザクと戦うとか俺には無理だな。それでもシュウは戦って生き残ったんだからな。

 

『それ本当かよ。まあ、ラングリッジ中尉もベタ褒めしたしな』

 

確かにな。あの時ラングリッジ中尉と話していた時に言っていた。

 

【シュウは強いわよ。間違い無くエースと言える存在よ。それにすっごく頼りになるんだから。何度か死に掛けた時に直ぐに助けに来てくれるもん。本当、ちょっとだけ格好良いかもね♫】

 

ラングリッジ中尉はそう言いながら少し気恥ずかしそうにしていた。俺達の間で少し沈黙する。

 

『なあ、もし俺達の誰かがシュウ少尉を倒したらどうなると思う?』

 

「どうなるって、嬉しいとか?」

 

『違うよ。ラングリッジ中尉は間違い無く俺達を褒めまくる筈だぜ。そして、その先はよ…』

 

……

 

以下男達の妄想

 

『ぐえー、やられたー』バタンキュー

 

ペイント弾塗れのジムが倒れる。

 

『きゃー!すっごーい!あんな簡単に少尉を倒しちゃうなんて!』

 

キラキラした目で此方を見るラングリッジ中尉。

 

「どうですラングリッジ中尉。そんな弱っちい奴より、俺とバディーを組まないか?」

 

『本当?でも、私で良いのかしら?』

 

ちょっと不安そうな表情をするラングリッジ中尉。此処で男を見せる時だ。

 

「大丈夫さ。俺が、レイナを守るさ」キラーン

 

『素敵♡抱いて♡』ガバッ

 

そして俺達は色々な波乱を2人で解決して行き、遂にゴールイン!

 

……

 

『みたいな感じにさなる訳よ!』

 

『成る程。さては、お前天才だな』

 

『よっしゃ!全然やる気無かったけど、今なら奴を倒せる!』

 

俺達男性陣はこれからの展開を想像してニヤケ顔になってしまう。だが、これは仕方無い事だ。

 

「悪いなシュウ。お前は此処で散ってもらうぜ」

 

それを面白く無い表情で見ている女性陣。

 

『やる気が出たのは結構。なら索敵に集中したら?』

 

『逆に返討ちに成らないと良いわね』

 

途轍もなく冷ややかな声を出しながら男性陣を現実に戻したのだった。

 

side out

 

12機のジムは周囲を警戒しながら前進する。しかし、何処か余裕は有る。圧倒的優位に居るのは自分達だと思ってるからだろう。

そして、遂に相手をレーダーに捉える。

 

『前方11時の方向に反応有り。やっちまうか?』

 

『当り前だろ。全員で掛かれば余裕だよ』

 

それは誰もが思っていた事だ。自分達のジムを前進させる。しかし、相手も中々の速度で近付いてくる。そして遂に相手を目視する。シールドを構えながら90㎜マシンガンで攻撃して来る。ジムの右肩には02の数字が記されていた。

 

『2番機か。て事はシュウ少尉だな』

 

アーク達もシールドを構えながら応戦する。シュウ少尉のジムは攻撃しつつ距離を置いている。だが、一箇所に留まらず色々動きながら攻撃をして来る。然も素早い動きで建物を利用して直ぐに射線を切る。

 

『アレ本当に同じ機体かよ。これが実戦経験者てか?』

 

『知ら無いわよ。そんな事より距離を詰めましょう。数で押せば勝てるわ』

 

候補生達はブースターを使い距離を詰める。だが、その動きに統一感は無い。一応小隊長は女性陣2人になっている。彼女達は士官学校を出ていた為少尉になっている。しかし今迄モビルスーツの操縦訓練を続けていた事が災いしてか、女性陣2人は中々上手く的確な指示を出せなかったのだ。

 

『うわ!?た、倒れる!』

 

1機のジムが僚機にぶつかり倒れる。そして巻き込まれた形でもう1機も倒れる。そして、その隙を見逃す程甘い相手では無い。

シュウ少尉のジムは、一瞬高く跳び的確に倒れた2機のジムを倒す。その勢いのまま直ぐに建物の陰に隠れる。

 

『あの野郎、卑怯だぞ!逃げてばっかでよ!』

 

『何やってるのよ。たった1機の相手にやられて』

 

『もっと追い込むのよ!そうすれば勝てるわ!』

 

その言葉に従い更に追い掛ける候補生達。しかし、彼等は冷静さを失っていた。そして自分達が狩人では無く、獲物になってる事に気付かぬままで。

 

『ガルム2よりガルム1へ。【獲物が狩場に】です。ルイス曹長、タイミングお願いします』

 

『了解しました。ガルム1間も無くです』

 

『ガルム1了解よ。さて、此処から本番よ』

 

そしてラングリッジ小隊(狩人)が候補生達(獲物)に牙を剥く。



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パイロット候補生VSラングリッジ小隊2

候補生のジム2機を倒せたとは言え、まだ10機のジムが健在だ。そして確実に此方を追い込んで来ていた。

 

「やっぱり戦力差が大きいとキツイな。シールドもそろそろ限界だしな」

 

だが、もう少しでルイス曹長の立案した作戦が始まる。それが決まれば直ぐに候補生達を制圧出来るだろう。

 

「中々エグい作戦だよな。候補生相手にやるとはな」

 

今回ばかりは候補生達に少し同情するよ。そしてルイス曹長から通信が来る。

 

『ガルム1、間も無く敵が近くに来ます。ガルム2はもう暫くの辛抱です』

 

『了解よ。システム立ち上げ準備開始』

 

「ガルム2了解。頼みますよ!」

 

最後の仕上げだと言わんばかりに建物の陰から跳び出し牽制する。俺の動きに釣られて10機のジムが射撃しながら接近して来る。

 

『ガルム1へ、システムを立ち上げて下さい』

 

『了解よ!さあ、反撃よ!』

 

レーダーに反応が一つ増える。位置は候補生達の背後からだ。

 

『あらあら〜後ろがガラ空きじゃ無い♫』

 

楽しそうな声と共に攻撃を始めるレイナ中尉。

 

『な、なんだ!何処からの攻撃だ!』

 

『此方3番機、やられた!』

 

『いきなり現れたのか!?何でだ!』

 

候補生達は慌てて背後を確認する。

 

「おいおい、俺はまだ生きてるぜ?」

 

俺も転身してブースターを使い一気に接近する。そして次々にペイント弾を当て行きながら模擬刀で接近戦をして行く。

 

『そらそらー!早く逃げないと全滅よ!最も、逃さないけどね!』

 

「ルイス曹長の作戦が上手く嵌りましたね。こうも簡単に行くとはね」

 

候補生達と接触する前にルイス曹長はある作戦を提案して来た。ルイス曹長が考えた作戦はレイナ中尉のジムを建物の陰に潜ませる。そして俺が囮になりつつ候補生達をレイナ中尉の近くまで誘導する。勿論レイナ中尉がバレないように気を付けながらだ。その際にルイス曹長からの的確なルート指示が有ったのは有り難かった。

やはり戦術オペレーターの存在は非常に大きい。特にルイス曹長の地形の把握能力は高い。何処にレイナ中尉のジムを隠すか、逃走ルートと攻撃するタイミングの場所を的確に教えてくれる。

 

「さて、後2機だな」

 

圧倒的な優位から劣勢になる候補生。

 

『ちょっと!貴方達何したのよ!』

 

『そうよ。何かズルしたんでしょう。じゃなかったらこんな簡単に』

 

そんな言い訳を聞く理由は無いので速攻で倒す。

 

『ふん、口だけなら誰でも言えるのよ』

 

大分スッキリした表情になるレイナ中尉。まさか最後の生き残りがレイナ中尉に喧嘩してた女性2人組だったとは。こうしてパイロット候補生VSラングリッジ小隊の模擬戦はラングリッジ小隊の勝利で幕を閉じたのだった。

 

……

 

模擬戦が終わり再度全員が集まる。しかし候補生達は全員不満気な顔をしてる。

 

「あんな戦い方は可笑しいです。教練にもあの様な戦い方は有りませんでした」

 

「そうですよ!それにコートニー少尉は殆ど逃げてたでは有りませんか」

 

「オペレーターが付いてる時点で狡いわよ。再戦お願いします!」

 

誰も彼も文句を言う。まあ模擬戦だし別に文句ぐらい聞いても良いさ。だがな、その考え方だと…死ぬぜ?

 

「なら開戦当初、地球連邦軍に無かったミノフスキー粒子とモビルスーツを使ったジオン公国軍は狡いと言うのか?戦場でオペレーターや味方との通信出来ない状況で敵に同じ言い訳をするのか?」

 

「それは…」

 

俺の言葉に沈黙する候補生達。中には俺より年上が居るが話を続ける。

 

「戦場はお前達の味方では無い。状況を的確に判断する事、態勢を立て直す為に後退する事、そしてチャンスを掴んだ奴が生き残るんだ。俺はルウムでの戦いでチャンスを掴み生き残る事が出来た」

 

俺の言葉に自然と静かになり話を聞く候補生達。

 

「お前達が戦う理由は色々あるだろう。復讐や敵討ちがしたいから。俺はそれを止めろとは言わ無いし言うつもりも無い。だが、それで仲間を見殺しにする状況にするな。自分が死ぬ状況にするな。周辺を常に警戒する事だ。それと模擬戦でお前達の背後から現れたレイナ中尉のジムの反応は、レーダーにはしっかりと出ていたからな」

 

俺の話は此処迄だ。教官に目配せをする。それを察してくれて候補生達に話し掛ける。

 

「お前達はまだまだ考えが甘い事が良く分かった模擬戦だ。戦力が圧倒的だったのを理由にして索敵を疎かにした。そして自分達が誘われてる事に気付かなかった。明日からの課題はその辺りを徹底的に修正するからな!ラングリッジ中尉、コートニー少尉、エヴァンス曹長、本日は模擬戦有難うございました。総員!敬礼!」

 

教官の号令に候補生達はしっかりと敬礼する。それに対して俺達も答礼する。

 

「さて、行きますか。じゃあなお前ら、死ぬんじゃ無いぞ」

 

こうして俺達は別れる。ふと振り返って見るとお互い話し合っていた。どうやら反省会をしてるみたいだ。

 

「良かったじゃない。私達が相手したのは無駄じゃなくて」

 

「そうですね。この模擬戦でオペレーターや仲間との連携が如何に大事なのか理解してくれれば良いですけど」

 

「大丈夫ですよ。それにシュウ少尉の話を真剣に聞いてましたから」

 

「柄にも無い事言ってると分かってたんですけど。あのまま戦場に行かせたく無かったから」

 

俺はルウムでの戦いは、唯単純に運が良かっただけだ。それ以降も良くもまあセイバーフィッシュで戦ったもんだよ。今やれと言われたら無理と断言出来るよ。

 

「そうだ。レイナ中尉、聞きたい事なんですけど」

 

「あら?何かしら。私のスリーサイズなら特別ご褒美に教えても良いわよ?」

 

「え?マジで?…て、違う違う」

 

一瞬其方でも良いかもと思ってしまった自分がいる。そんな俺をルイス軍曹は冷たい眼差しで見てくるのは辛い。でも、男なんだから許して欲しい。

 

「あの2人の女性少尉とレイナ中尉は知り合いなんですか?」

 

「あら?何でそう思うの?」

 

「何でと言われたら…何となくとしか言えませんが」

 

普通あんな風台詞を上官に対して言う事は無い。そもそも、そんな事をしたら間違い無く教官に怒られる。だが、あのやり取りを見ると違和感しか無い。教官は特に何も言わなかったし、レイナ中尉は気にしてる素振りは無かった。

 

「まあ、知り合いと言えば知り合いよ。よく社交パーティで合ってたし」

 

「社交…」「パーティですか?」

 

レイナ中尉の言葉に俺とルイス軍曹が呟く。て言うか、やっぱりこの人お金持ちなのね。そしてあの女性少尉2人も…。

 

「そう。あの子達が狙ってる男にちょこっとちょっかい掛けるとすっごい怒ってくるのよ?」

 

「そりゃ普通に怒りますし、嫌われますわ」

 

あの女性少尉2人には同情してしまう。ルイス軍曹も口元が引きつってるし。

 

「パイロット候補生になってるなんて今日初めて知ったわ。正直戦場に出る子達じゃ無いわ。多分戦場に出る理由は私と同じかアーヴィントの様に家柄上仕方無い所かな。尤もオペレーターに成ったとしても危険に変わり無いけどさ」

 

レイナ中尉はポツポツと話し始める。

 

「パイロットの訓練時間も短縮されて直ぐに戦場に出される。戦場では簡単に人が死ぬわ。其れこそ普段はティーパーティでお茶してる方が似合う子達でも」

 

「レイナ中尉。まさか、今回の模擬戦は」

 

「うん。本当は私の方から模擬戦を申請する予定だったわ。でも、彼女達から来てくれたからそれに乗っちゃった。巻き込んでゴメンね」

 

両手を合わせて首をコテンとさせて可愛らしく謝るレイナ中尉。

 

「だからレビル将軍も簡単に許可出したんですね」

 

「最初はゴップのオジ、大将にお願いしたの。そうしたら偶々レビル将軍も話を聞いてくれてね」

 

「因みにゴップ大将とも知り合い何ですか?」

 

と言うか最初会った時顔馴染みぽかったし。

 

「ええ。社交パーティで何度か会ってるわ」

 

「成る程、色々納得しましたよ。もう俺からは特に言う事は無いですよ」

 

「私も模擬戦とは言え戦術オペレーターとしての役割をもっと役立て無いといけませんね」

 

「2人共ありがとう。正直何も聞かずに協力してくれて助かったわ」

 

そんな俺達に感謝の言葉を口にするレイナ中尉。

 

「しかし、俺の言葉は届いてくれるかな?正直レイナ中尉の言葉を取ってしまった感が有るんですが」

 

「そんな事無いわよ。私が言うより確実にシュウが言った方が良かったわ。それにシュウも彼等を死なせたく無いんでしょう?ならシュウの言葉は彼等に届くわよ。それに稀に見る真面目な表情だったし」

 

「稀に見るとか関係無いですよね!寧ろ常に自分は真面目ですから!」

「「それは無いわね、です」」

 

俺達は話しながら歩いて行く。レイナ中尉の家柄とかが少し垣間見れた時だった。そんな中、自分の中に少しシコリが残っていた。今回の模擬戦でRGM-79ジムのリミッターを外さなかった。だが、物足り無かったのだ。出力、機動性に不満を感じたのだ。いや、正確に言うならリミッターを外してても物足り無いのを薄々感じてはいた。勿論RGM-79ジムが良い機体なのは分かるけど。

自分の中の問題点も少し考えながらレイナ中尉とルイス曹長と話をして行くのだった。

 

……

 

模擬戦を観戦していたレビル将軍とゴップ大将他の高官達は満足気な表情をしていた。

 

「如何でしたかな?彼等の戦い方は」

 

「うむ、中々優秀じゃ無いか。特に2番機のジムだったかな。中々良い動きをする」

 

そう、まだ完成とは言えないRGM-79ジムでもザク以上の戦いが出来てると判断したからだ。

 

「はい。それに間も無くホワイトベースもジャブローに着くと言います。そうすれば我が軍のモビルスーツもいよいよ完成しますな」

 

「その様だな。さて、我々も仕事に掛かるとしよう」

 

「それで一つ宜しいですかな?MS特務部隊第27小隊のラングリッジ中尉、アルドリッジ中尉ですが、本人の希望が有ればジャブローでの教官職に就かせたいと思うのですが」

 

「ゴップ大将、君も世話好きだな。親御さんなら何か言われたのかね?」

 

レビル将軍は少々呆れた表情をしつつゴップ大将に理由を聞く。ゴップ大将も少し苦笑いになりつつ答える。

 

「レビル将軍の仰る通りです。自分の可愛い息子娘が激戦区を渡り歩くなんてとんでも無いとね。尤も、本人達は残るつもりの様ですが」

 

「その辺りはもう一度本人達に聞けば良かろう。それで望めば後方配備も止む無しだ。代わりに成績優秀な2名を配属させる様にしなさい。彼、確かシュウ・コートニー少尉だったな。間も無く彼にジム・ライトアーマーが配備される。この意味が分かるな?」

 

レビル将軍はゴップ大将を静かに見る。ゴップ大将も目を逸らさずに頷く。

 

「勿論です。我が軍にもエースと呼ばれる存在は必要です。そして、そのエースの邪魔をさせない様にする事も」

 

「これから先、戦場は宇宙になる。元々彼は宇宙軍所属の者だ。そうすればジオンに対してより一層猛威を振るうだろう」

 

レビル将軍とゴップ大将はコクピットから降りているパイロット候補生達を見る。これから先の戦いのビジョンを考えながら。

 



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ジャブロー攻防戦1

哀戦士聞きながら書きました。


宇宙世紀0079.11月27日。地球連邦軍の新造艦【ホワイトベース】がジャブローに到着。

宇宙世紀0079.11月28日。MS特務部隊第27小隊のジム2機他各部隊のジムにRX-78-2ガンダムから抽出した戦闘データをアップデート及び各部の換装作業を行う。これにより※RGM-79B後期生産型ジムになる。

※名称はRGM-79ジムで統合します。

 

宇宙世紀0079.11月30日。

この日ジオン公国地上軍による地球連邦軍本部ジャブローに対する攻撃が行われた。俺達ラングリッジ小隊は否応無く戦いに巻き込まれるのだった。

 

……

 

その日はアップデートと各部の調整が完了したRGM-79ジムの乗り心地を試そうと格納庫に向かっていた。

 

「それにしてもサラミス級にマゼラン級が沢山浮いてるな。これ全部宇宙に行くのか」

 

「そうみたいね。これ全部が宇宙に上がれば連邦軍の反撃は凄まじい事になるわね」

 

「でも、今は何処の発射台も過密状態らしいですね。更にジオン軍の空爆も有りますから」

 

此れだけの戦艦を作ってるのは、やはり宇宙での戦いを想定してるのだろう。

 

「それに、連邦軍のモビルスーツも遂に本格化して来てるからね。連邦軍の勝利は間違いないさ」フサァ

 

「アーヴィント中尉、敵を侮る要素は何処にも有りませんよ。寧ろ追い込めば追い込む程抵抗は激しく成るでしょうし」

 

格納庫に向かってる途中で2人のパイロットスーツを着た人が1人の士官に詰め寄っていた。

 

「どの船を贔屓して補給作業をしているという事など無い」

 

「では、いつになったら出航出来るんです?」

 

パイロットスーツを見るに如何やら宇宙に行く部隊の人達の様だ。

 

「スケジュールとか考えてる人達も大変よね。ああやって来る人も相手にしないと行けないから」

 

「これからの主戦場は宇宙になりますからね。連邦軍も早急に戦力を宇宙に移す作業もしなければなりませんし」

 

「全く、彼等にも準備作業があると言うのに」

 

それでも仕方無い所は有るだろう。彼等は戦いたくて仕方無い顔してるし。尤も俺とは正反対な連中だけどな。

その時、振動がジャブローに響き渡る。如何やら何時もの定期便が来た様だ。

 

「また定期便か。相変わらず元気な事で」

 

「本当よね。そもそも、こんな空爆ぐらいでジャブローが落ちる訳無いのに」

 

「全くだよ。無駄な努力とは正にこの事だね」フサァ

 

しかし今回は随分と激しい攻撃だな。

 

「何時もより気合が入ってる感じがするな。もしかしてジャブローに攻めに来たりして」

 

何となくそんな考えが出て来て遂口に出してしまう。

 

「そんな事有る訳無いでしょう。此処は天下の地球連邦軍本部ジャブローよ?」

 

「そうですよ。オデッサで敗北したジオン軍にそんな余裕は有りませんよ」

 

「全くだよ。君の冗談のセンスの無さには呆れるね」

 

三人は俺の冗談に容赦無く突っ込みを入れる。

 

「ですよねー。変な事言ってごめんなさい」

 

「「「「あはははは!」」」」

 

今日もラングリッジ小隊は平和である。しかし、大きな振動は更に続いている。そして警報がジャブローに鳴り響く。

 

《第1戦闘配置発令!戦闘員は直ちに戦闘配置に付け!繰り返す、第1戦闘配置発令!敵本体接近、各員迎撃態勢に当たれ!》

 

その瞬間、俺達は格納庫に向かい走り出す。

 

「ちょっと!シュウがあんな事言うから敵が攻めて来たじゃ無い!」

 

「えっ!俺の所為ですか!」

 

当たり前でしょう!と怒られてしまう。理不尽である。

 

「皆さんは急いでモビルスーツに搭乗して下さい。私は情報収集を急ぎます」

 

格納庫に着くとルイス曹長はホバートラックに移動する。俺達も急いでモビルスーツに乗り込む。その時モンド曹長から通信が来る。

 

『ラングリッジ中尉、コートニー少尉。ジムのアップデートと各部の調整は完了している。だが今迄のジムとは機動性が違う事は理解してくれ』

 

「どの位違いが有るか分かります?」

 

『数値上では反応速度が段違いだ。恐らく本当の意味でパイロットと一体化した感じになるだろう。後は自分で判断してくれ』

 

『成る程ね。要は実戦で慣れろと言う訳ね。ならシュウ少尉、気合入れて行くわよ!』

 

レイナ中尉はそう言って出撃準備に入る。女は度胸が有ると言うが本当の様だな。

 

「了解です。まあ、此処まで来たらやりますよ」

 

此方もジムのシステムを起動させる。

 

「武器はビームスプレーガンを用意しろ!後は90㎜マシンガンもだ!」

 

「予備弾薬も急げよ!時間を掛けるな!」

 

「90㎜ガトリングガン準備完了しました!弾薬もOK!」

 

整備兵達も慌しく出撃準備を整えて行く。そして遂に出撃準備が整う。

 

『敵は大規模部隊になります。ガウ攻撃空母から敵モビルスーツ部隊が降下しています。また宇宙船ドックの有るAブロック周辺に降下しているとの事です。私達ラングリッジ小隊は貨物リフトから地上に出撃します。その後ガルム3を中心として敵を迎撃します』

 

貨物リフトに移動して行きながら状況説明を聞く。

 

(まさか適当に言った事が本当になるとはね。此れから気を付けよう)

 

そんな時、近くの格納庫に候補生達が教官に詰め寄っているのを目撃する。

 

「教官何故ですか!私達は戦えます!」

 

「そうです!俺達も戦わないと不味い状況では無いのですか!」

 

そんな彼等に教官の叱責が飛ぶ。

 

「貴様等の様なヒヨッコ以下の奴等が戦場に出た所で足手纏いになるだけだ!それに、最悪な状況になれば貴様等にも出撃命令は出る。その為の待機命令だ!」

 

「しかし!あ…ラングリッジ小隊」

 

此方に気付いた候補生達が見て来る。俺はスピーカーをオンにする。

 

《お前達、此処の防衛を任せたぞ。それで俺達は安心して戦える》

 

そう言ってスピーカーを切る。俺達を見送る彼等はゆっくりと敬礼して行く。

 

『シュウ。アンタ優しい所あるわね♫』

 

「別にそんなんじゃ無いですよ。唯、無闇に戦場に出て欲しく無いだけですよ」

 

『やはり君はそうでなくてはな』

 

『シュウ少尉はそのままで良いと思いますよ』

 

遂にラングリッジ小隊は戦場に出る。此処にジャブロー攻防戦が始まるのだった。

 

……

 

時間を少し遡る。場所はキャルフォルニアベース。其処には多数のガウ攻撃空母がモビルスーツを搭載していた。

 

「第1攻撃部隊、出撃準備完了しました」

 

「後続部隊も順次完了して行きます」

 

司令部の方も各攻撃部隊の状況を確認して行く。

 

「此方に司令部だ。第1攻撃部隊出撃せよ」

 

『了解。此方1号機出撃する』

 

ガウ攻撃空母が滑走路に入る。それを見送る兵士達。

 

「頼むぞ!連邦のモグラどもに目に物見せてやれ!」

 

「奴等の基地を粉々にしてやれ!オデッサの借りを返してやれよ!」

 

「無事に帰って来いよ!そして武勇伝を聞かせろ!」

 

第1攻撃部隊は順次出撃して行く。

 

『此方第1攻撃部隊、此れよりジャブローに向かいます。良い知らせを待っててくれ』

 

「此方司令部。戦果を期待してるぞ。武運を祈る」

 

そしてジャブローに向かうガウ攻撃空母部隊。ガウ攻撃部隊の護衛兼地上攻撃部隊としてドップ戦闘機隊が随伴する。彼等は自身の勝利を信じて疑わない。だが、ジャブローの防空網は高い事は誰もが知っている。しかし彼等は進む。主戦場は宇宙に向かってる。そして、ジャブローから打ち上げられる宇宙戦艦を食い止めなくてはならない。序でにジャブローの中枢を占領出来れば早期講和も夢では無い。

そして暫く周囲を警戒しつつジャブローに向かい飛行して行く。

 

「間も無くジャブロー上空です。目標となる宇宙船ドックももう少しで目視出来ます」

 

「よし、近くまで行けば先発隊から発光信号が来る筈だ。対地攻撃用意!対地ミサイルで弾幕を形成後、モビルスーツ部隊を降下させる。前部ハッチ解放」

 

そして発光信号が打ち出される。

 

「発光信号来ました!」

 

「対地ミサイル発射!続いてモビルスーツ部隊降下!」

 

ガウ攻撃空母から多数の対地ミサイルが発射される。ミサイルはジャブローに着弾して爆破により森や対空砲を吹き飛ばす。無論ジャブロー防衛部隊もやられっ放しでは無い。

 

「敵大規模部隊です!迎撃用意準備良し!」

 

「奴等め我慢出来ずに攻撃したな。それにモビルスーツを降下させる為に速度を落としてるぞ。今だ!迎撃開始!奴等を生かして帰すな!」

 

遂にジャブローの対空砲、対空ミサイルで迎撃開始する。

 

『ドップ隊散開せよ!対空砲を叩け!』

 

『モビルスーツ隊降下!降下!』

 

ドップ戦闘機は対地攻撃をしようとする。しかし連邦軍の防衛部隊のフライ・マンタ航空隊が迎撃に出る。

 

『降下中のモビルスーツを狙え。今なら狙い撃ちで仕留めれるぞ。ロータス隊攻撃開始!』

 

『ロータス隊に遅れるな。ライト隊も行くぞ』

 

そしてフライ・マンタとドップ戦闘機が入り交じる。そんな中モビルスーツに攻撃を敢行するフライ・マンタ航空隊。

 

『降下中のモビルスーツを優先目標だ!撃ち落とせええーーー!』

 

対空砲の弾幕がモビルスーツに移る。そして次々に撃破されるモビルスーツ部隊。

 

『畜生!やってやるよ!』

 

『お、降りられるのかよおおーーー!?』

 

『ドム隊降下開始。グフ隊に続け!』

 

ガウ攻撃空母も次々に火を噴き出しながら墜落して行く。

 

「第2エンジン被弾!出力低下してます!これ以上は持ちません!回避行動を取ります!」

 

「ならん!モビルスーツ部隊を全て降下させる迄回避は許さん!対地ミサイルを全弾撃ち尽くせ!」

 

最早飛行は出来ない状態に成ろうとも自らの任務を果たそうとする。その意思を引き継ぐ様にガウ攻撃空母から全モビルスーツ部隊が降下する。

 

「ジオン公国に勝利をッ!?!?」

 

その言葉と共に爆散するガウ攻撃空母。だが、ジオン公国軍の進撃は止まらない。そしてガウ攻撃空母が墜落する先にはラングリッジ小隊が丁度貨物リフトから出て来たのだった。



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ジャブロー攻防戦2

貨物リフトから出た瞬間、様々な対空兵器が上空にいるジオン軍に対して攻撃していた。そして、上空からガウ攻撃空母が火を噴き出しながら此方に迫って来ていた。

 

「あ、死んだこれ」

 

そう言った瞬間、ガウ攻撃空母は俺達の上空をギリギリに通って行き後方に墜落する。そして大爆発を起こし爆風が迫る。

 

「ホバートラックを守れ!」

 

シールドでホバートラックを隠す。レイナ中尉もシールドを構えて一緒にホバートラックを守る。アーヴィント中尉の量産型ガンタンクもホバートラックが吹き飛ばない様に俺達の後ろに移動する。

爆風と破片が沢山飛んで来る。それが収まるまで待つ。

 

「き、肝が冷えたよ。正直死ぬかと思った」

 

『ま、全くだよ。皆無事かね?』

 

『はい、此方は無事です。皆さんが守ってくれましたので』

 

『本当、一瞬走馬灯が見えたわ。今度誰かに教えよっと』

 

レイナ中尉は何処か違う感想を言う。

 

「誰に教えるんですか?教える友達は…あ、ごめんなさい」

 

『うっさいわね!友達は皆オペレーターになったわよ!だから簡単に会えないのよ』

 

良かった。どうやら友達は居るようだ。因みに俺にも何人か友達は居る。だが、何人生き残ってるのかは不明だが。

そんな時、ガウ攻撃空母の方で反応が有る。そして、火の海から半壊したザクが出て来る。ザクはヒートホークを持ちながら此方に来る。見るからに戦力は無いに等しい。だが投降する気配は無い。

 

「なら仕方ないよな」

 

仲間の命と敵の命。何方を優先するなんて考えるまでも無い。ビームスプレーガンでコクピットを狙い撃つ。ビームはザクのコクピットに直撃。そして、ゆっくりと後ろに倒れたのだった。

 

『さあ敵を迎撃しに行くわよ。まだジオンは攻めて来てるわ』

 

レイナ中尉の言う通りだ。今はジオン軍の侵攻を止めなくてはならない。俺達は味方と合流を急ぎつつ敵を迎撃するのだった。

 

……

 

俺達は味方のモビルスーツ部隊と戦車部隊と合流を果たした。しかし何方も戦闘中であった為、直ぐに援護する事になる。敵はザク1機とグフ1機だが、上手く連携しており此方側は苦戦してる状況だ。

俺はジムのリミッターを外しつつ戦闘態勢に入る。そして一気に敵に近づく為にブースターを使い加速させる。

 

「っ!?これは、中々良い感じじゃ無いか!」

 

俺の反応に確りと動いてくれる。それだけでは無く、機動性も間違い無く向上している。そして今迄のジムより格段にスムーズに動かしやすくなってるのだ。然もリミッターを解除した為、よりそれが顕著に表れていた。

 

「此れなら行ける。貰った!」

 

ザクとグフの右側に回り込む。ザクが俺に反応するが遅い。ビームスプレーガンを連射する。近距離によるビームスプレーガンの威力は高い。ザクの装甲をあっさり穴を開けてしまう。そしてグフが此方に気付き接近戦を仕掛けに来る。

 

『よくも仲間を!許さん!』

 

ヒートサーベルを抜きフィンガーバルカンを撃ちながら迫るグフ。此方もビームサーベルを抜きシールドを構え接近する。ヒートサーベルとビームサーベルが打つかる。お互い一歩も譲らない。だが、俺には味方がいる。

 

『ガルム2後退しなさい!』

 

「了解!此奴は駄賃だ!」

 

60㎜バルカン砲で牽制しながら後退する。グフは一瞬動きが止まってしまい、その隙に味方部隊とラングリッジ小隊からの弾幕がグフに襲い掛かる。幾ら重装甲と言えるグフと言えども耐える事は出来ず爆散する。

 

「援護感謝します」

 

『もう少し慎重に成りなさいよ。じゃないと危ないわよ』

 

確かにな。だが今のジムなら確実に戦える。そう、此れなら間違い無く勝てる。

 

(あれ?俺、何でこんな事考えてるんだ?今迄そんな事考えた事無いのに)

 

今迄のジムならもっと慎重に戦ってる筈だ。いや、それ以前に俺は戦闘狂では無い。何方かと言えば出来るなら戦いたくは無いし、死にたく無いと思う筈だ。

 

(ジムの性能に酔ったか?いや、それ以上に…)

 

『シュウ少尉、大丈夫ですか?何だか顔色が悪いですよ?』

 

ルイス曹長の言葉で考え事を止める。いや、戦場で考え事何て自殺行為以外何物でも無い。

 

「大丈夫です。ちょっとジムの性能に驚いただけです」

 

『あー、それ分かるわね。確かに今迄より反応速度が上がってるもんね』

 

『本当に大丈夫かね?無理は禁物だ。それで反応が遅れた何て笑えないぞ』

 

「大丈夫ですよ。それより俺達はこの辺りを防衛すれば良いんですよね?」

 

『はい。後は敵を発見次第撃破して行きます』

 

それから敵を索跡しながら前進する。相変わらず上空では戦闘機同士のドックファイトが続いている。だが数は友軍の方が圧倒している。しかし地上では周りはジャングル故に視界に限りがある。何時敵と遭遇するか分からない状況だ。

 

『9時方向で友軍が襲われています!場所は河川付近です!至急救援に向かって下さい!』

 

『ガルム1了解よ。皆行くわよ』

 

ラングリッジ小隊は友軍を救うべく河川付近に行く。

 

『う、うわあああーーー!?』

 

しかし友軍と合流する前に悲痛な叫びと共にレーダーから反応が消える。そして、目にしたのは水陸両用モビルスーツであるズゴックとゴックが味方のジム小隊を破壊した後だった。

 

『新手か。此奴等も潰すぞ』

 

『了解。へへ、逃がしゃしねえよ』

 

ズゴックとゴックはビームを撃ちまくる。此方もビームスプレーガンと90㎜ガトリングガンで反撃する。

 

『ガルム3!援護射撃して頂戴!座標送るわ!』

 

『了解したよ。そら!受け取れ!』

 

量産型ガンタンクからの援護射撃が来る。だが、敵はあっさりと避けてしまう。

 

『そんな砲撃が当たるかよ!ほら、此れでも喰らえ!』

 

ゴックの腹部メガ粒子砲がレイナ中尉を襲う。しかし、レイナ中尉も確りと回避する。

 

『そう簡単に当たるもんですか!』

 

レイナ中尉は敵のゴックを相手にする。俺はズゴックと対峙していた。

 

『さて、少しは楽しませて貰おうか!』

 

「来るか。ならやってやる!」

 

お互いビームを撃ち合う。しかし何方も決定打を出す事が無いまま機動戦に入る。

 

「ズゴックの癖に良く動くな。本当に水陸両用かよ!」

 

相手のズゴックの性能に文句を言いつつビームスプレーガンを撃つ。

 

『ジオンのモビルスーツが連邦のヒトモドキに負ける訳無かろうてな!』

 

ズゴックもビームを避けつつ反撃する。そんな2人が機動戦をしてる中、レイナ中尉とゴックは近接戦に入る。

 

「此奴ー!ちょっと硬いからって良い気にならないでよ!」

 

90㎜ガトリングガンから圧倒的弾幕がゴックに襲い掛かる。だが、ゴックは躊躇無く突っ込んで来る。

 

『装甲が段違いなんだよ!一気に近付けば終わりだ!』

 

ゴックは腹部メガ粒子を撃ちレイナ中尉のジムの態勢を崩す。そして両者はそのまま接近戦に入る。

 

「もう最悪!接近戦は苦手なのよ!」

 

90㎜ガトリングガンを放棄してビームサーベルを抜くレイナ中尉。ゴックは腕を振り上げて攻撃を仕掛ける。

レイナ中尉は咄嗟にシールドで防御するが、パワーの違いからかシールドと左腕が破壊される。

 

『その程度で戦場に出て来るか』

 

「このー!舐めないでよね!」

 

ビームサーベルでゴックを斬り付ける。だが、ゴックは左手でビームサーベルを受け止める。長時間受け止める事は出来無いのはゴックのパイロットは充分理解していた。なら、その前に仕留めるのみ。

 

『貰ったぞ。くたばれ連邦の屑が』

 

「っ!?」

 

ゴックの腹部メガ粒子砲が収縮される。レイナ中尉は咄嗟の反応でブースターを使い回避を試みる。

メガ粒子砲が躊躇無く発射される。メガ粒子はジムの脚部を吹き飛ばすに留まる。だが、最早レイナ中尉のジムは動く事が出来無い。

 

《今のを良く避けたな。だが、此れで終わりだ!!!》

 

動けないレイナ中尉のジムに再度メガ粒子砲が収縮される。

 

《そうね…もう、終わりよ》

 

《何?女だと…》

 

一瞬女だと思い躊躇したゴックのパイロット。だが、その隙が命取りだった。

 

『レイナはやらせるかああーーー!!!』

 

アーヴィント中尉が森を薙ぎ倒しながら接近。そして射線が通った瞬間4連装ガンランチャーと120㎜低反動キャノン砲を一気に発射する。

ゴックはそれらの弾を背後から直撃を受ける。幾ら重装甲と言えるゴックと言えども耐えれる物では無い。

 

『ぐああっ!?ば、馬鹿な…こんな連中に!!!』

 

その言葉を最後にゴックは爆散する。

 

「アーヴィント、助かったわ。ありがとう」

 

『此の位当たり前さ。それより、そのジムから降りた方が良い。もう動く事は出来無いだろう』

 

「そうみたいね。脚部やっちゃったもんね。今からルイス曹長、其方に合流するわ」

 

『了解です。直ぐに其方に向かい回収します』

 

此処に一つの戦いが終わる。だが、まだ戦いは続く。何方も自分達の勝利を信じて戦い続ける。



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ジャブロー攻防戦3

遂にアレが来ます。


レイナ中尉達がゴックとの戦いに勝利を収めた時、シュウ少尉はズゴックとの戦いを強いられていた。

 

「此奴、かなり強い」

 

『中々やるな。それなりの修羅場を潜って来たと見た』

 

お互い睨み合う。そして同時に動きビームを撃つ。それでも外してまた撃つ。

 

(やっぱりジムの機動性がかなり良くなってる。前までなら間違い無く後退してたな)

 

『小癪な。何時迄も貴様に構ってる暇は無いのだ!』

 

しかし、敵は新しい手を出す。此方に突っ込むのと同時にロケット弾を一気に撃ち出す。流石に避けるのは無理と判断してシールドで防ぐ。だが、敵はそれを待っていた。

 

『甘いな。貰ったぞ!』

 

シールドに向けてズゴック特有のアイアン・ネイルを振るう。シールドは耐える事が出来ず貫通する。

 

「くっ。だが、この距離に来たなら」

 

シールドを手放しビームサーベルを抜く。しかし相手は右腕に刺さったシールドを退かし左腕のビーム砲を此方に向ける。そしてビーム砲を向ける。

 

「そいつは予想出来たぞ!」

 

『何!近付くのか!』

 

一気に接近してズゴックの左腕を足で蹴り上げる。ビームは在らぬ方へ飛んで行く。そのままの勢いのままビームサーベルを振り下ろす。だが、ズゴックも刺さったままのシールドを盾にして防ぐ。

 

「此奴!」『やるな!』

 

お互い再度距離を取る。

 

『ええい、シールドが抜けん。これでは右腕のビームが使えんか』

 

ズゴックのパイロットが右のアイアン・ネイルに刺さったままのシールドを見ながら呟く。しかし、この戦いはあっさりと終わる事になる。

突如レーダー反応する機影を両者が確認する。それは高い機動性を持って此方に接近していた。

 

『新手か!』

 

ズゴックは咄嗟に後退しつつ左腕のビーム砲を向ける。だが、逆に高出力のビームに貫かれズゴックは爆散する。

 

「何だ!あ、あの機体は?」

 

白、赤、青のトリコロールカラーの機体はズゴックを撃破した後、直ぐに別の場所に跳んで移動しながらビームライフルを撃つ。そしてまた爆発が起きる。レーダーには味方の識別が出ておりRX-78-2と出ていた。

 

「アレがガンダムか。初めて見たな。アレの戦闘データがジムにアップロードされてるのか。そりゃ、強くなる訳だな」

 

さっきまでの高揚感はすっかり無くなってしまった。ジムの性能だけで無く戦争に酔ってた自分が居たのは確かだ。だが、あんな奴が居ると思うと馬鹿馬鹿しく思ってしまう。寧ろ酔いが一瞬で醒めてしまった事に感謝してるぐらいだ。

 

「あのガンダム1機だけで良いんじゃ無いかな?」

 

そう思える位強い奴だと理解してしまう。あの機動の中、的確にビームをズゴックのコクピットに直撃させるパイロットの技量の高さ。一瞬だけしかスレ違わなかったが技量の差が大きいと理解してしまった。いや、理解せざるを得なかったのだ。

俺は暫くガンダムが消えて行った方へ視線を向ける事しか出来なかったのであった。

 

……

 

ジャブローでの戦いは意外にも直ぐに終息に向かう。ズゴックとの戦いの後、レイナ中尉達と合流を果たした。その直後司令部から命令が下る。

 

【地上に降りた敵モビルスーツを排除、及び追撃せよ】

 

空を見上げればガウ攻撃空母は居ない。恐らく殆どが轟沈したのだろう。ガウ攻撃空母が無ければ敵は撤退する事が難しくなる。この戦いは間違い無く地球連邦軍の勝利で終わるだろう。

レイナ中尉の機体損傷が激しい為、追撃は俺とアーヴィント中尉だけとなる。だが、量産型ガンタンクでこのジャングルを移動するのは少々厳しい。

 

『ガルム2、また引っかかった。押してくれ』

 

「ガルム3、追撃やめません?俺帰りたい」

 

『何を言うか!敵を追い詰めなくてどうする!』

 

その前に俺達がジャングルの厳しい自然に追い詰められそうだよ。量産型ガンタンクのキャタピラも大分壊れ掛けてるし。然も量産型ガンタンクを押すたびに泥がジムに付きまくるし。格納庫に戻ったら掃除してやるからな。

 

「これ以上は量産型ガンタンクのキャタピラが持ちませんよ。それに泥とかも色々詰まってますし」

 

『ええい!此処は気合で乗り切れば良かろう!』

 

(あんたそんな気合とか言うキャラじゃ無いでしょうに)

 

結局量産型ガンタンクのキャタピラが壊れてラングリッジ小隊の追撃戦は断念する事になったのである。

 

……

 

「これで終わりですね。いやー、長かったな」

 

『まさか、またこの機体に乗る事になるなんて』

 

レイナ中尉のジムとアーヴィント中尉の量産型ガンタンクを運ぶ為に、整備兵達と協力してトレーラーに載せていく。そしてレイナ中尉は懐かしき機体RRf-06ザニーに搭乗していた。

 

「久々のザニーの乗り心地はどうです?」

 

『ちょっと懐かしくて感動してるわ。この機体から良くジムを生産出来たと思うと感心してるわ』

 

「確かに。だけどザニーのノウハウが無かったら、モビルスーツの生産や操縦訓練は遅れてたでしょうね」

 

『そうよね。それでもまたザニーに乗るとは思わなかったけどね』

 

しかしザニーを改めて見るが、何処と無くザクの印象も有るからな。正に連邦軍の最初期の機体だからだろう。

 

「俺達がザニーで訓練出来たのは結構希だと思いますけどね。モンド軍曹が言うにはザニーは徐々に破棄、解体されてるみたいです」

 

RGM-79ジムの量産が本格化された時点でザニーの御役目は御免になった訳だ。これからは通常のジムやジム・トレーナーが訓練機となるだろう。これも技術の進歩故の宿命だろう。

 

『そうなの?なら今の内に写真とか撮っちゃおうかな〜』

 

「相変わらずのレイナ中尉で安心しますよ」

 

この後は機体を格納庫に移動させる。そして漸く一息付けたのだった。コクピットから降りたら丁度技術士官の方が俺を呼んでいた。恐らくジム・ライトアーマーの件だろう。

 

「コートニー少尉ですね。防衛戦お疲れ様です。自分はダムナ技術中尉です」

 

「お疲れ様です。シュウ・コートニー少尉です」

 

「実は、少尉の新しい機体なんですが…その」

 

おっ!遂にこの時が来た様だな。

 

「用意出来たんですね!いやー、何かちょっと感動しますね。まさか自分に新型機を配備して貰えるなんて」

 

俺がダムナ技術中尉と話してると皆が寄って来た。

 

「何々、もしかして新しい機体がくるの?ならさ、最初にシートに乗らせてよ」

 

「嫌です。俺の機体なんですから絶対に譲りません」

 

「落ち着きたまえ。しかし遂に君にも新型機が来るのか。まあ、君なら直ぐに使いこなせるだろう」

 

「シュウ少尉は凄いですね。もう私達ラングリッジ小隊のエースですね」

 

他にも整備兵達からも色々褒められる。嬉しい事言ってくれるじゃ無いか。しかし、ダムナ技術中尉の様子が少し可笑しい。

 

「あのー、この状況で大変言い難いんですけど…。その、少尉の機体は」

 

その時、一台のトレーラーが走って来る。トレーラーの上には破壊されたジムが乗っていた。しかし、色合いは白とオレンジで通常のジムとは少々違う印象が有った。

 

「先程通って行ったのが少尉の機体になる予定でした」

 

「……ん?」

 

「「「「「「「???」」」」」」」

 

俺も含めて全員がクエスチョンマークが出て来る。

 

「ですから、そのー…先程のジオン軍の襲撃により輸送中だった少尉の機体が破壊されまして」

 

この瞬間、俺の目の前が真っ暗になった。

 

「な、なん…だと…。つまり、新型機の配備は?」

 

「その、無かった事でお願いします」

 

沈黙が場を支配する。気不味い空気なってしまい、誰も声を出す事が出来なかった。

 

「べ、別に良いし。ジムも良い機体だし。新型機とか興味無いし」

 

「シュウ、強がらなくて良いのよ?」

 

「強がって無いし!全然強がって無いし!」

 

しかし皆から慰められてしまう。

 

「少尉、機体の整備はお任せ下さい。今迄以上に動ける機体に仕上げますよ」

 

「モ、モンド軍曹まで」

 

この後色々元気付けられて何とか持ち直しました。

 

「えーっと、宜しいですか?」

 

「あ、ダムナ技術中尉。どうしました?自分は今迄のジムで大丈夫ですよ」

 

「ジム・ライトアーマーの代わりと言ってはアレですが、RX計画で作られた高出力ジェネレーターを用意しました。今有る物で高品質の部品で作られた物に成ります。此方が資料になります」

 

ダムナ技術中尉から資料を受け取り読む。其処にはRX計画で作られた高出力ジェネレーターで、出力でジムより上で1350Kwを叩き出す物だ。

 

「このジェネレーターを組み込む事でビーム兵器を使用し続けても継戦能力は高くなります。ただ、専用のビームライフルは用意出来ませんでした。代わりにビームスプレーガンとビームサーベルの強化作業を行えば威力の向上は見込まれます」

 

「成る程、今迄の威力でも充分高いと思いますけどね」

 

「それからパワーの方も上がります。ですので一旦少尉の機体の補強と再調整は必要になります」

 

しかしRX計画で作られた高出力ジェネレーターか。つまり、RX-78-2ガンダムと同じな訳だ。それに資料によると今迄のジムでもRX-78-2ガンダムより機動力は上だそうだ。つまり、より更に機動力が向上する訳だ。

 

(つまり、俺はまだジムを完全に扱いきれて無かった訳だな。ならこの処置は逆に有難いな)

 

こうして俺のジムのジェネレーターの載せ換えと強化作業に入るのだった。

 

宇宙世紀0079.11月30日。ジオン公国軍は地球攻撃部隊の撤退を正式に発表。

宇宙世紀0079.12月3日。MS特務部隊第27小隊も次の移動命令が降る。場所は地球連邦宇宙軍の最前線基地ルナツーである。

 




残念、新しいジェネレーターでした。でもパワーアップしてるから大丈夫さ。

ジム「俺の出番はまだまだ続くぜ」

ジム・ライトアーマー「解せぬ」


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宇宙要塞ルナツー再び

宇宙世紀0079.12月3〜7日。ジャブロー上空からジオン軍の奇襲攻撃を受ける。結果マゼラン級1隻、サラミス級4隻が打ち上げられてる途中で撃破される。

 

宇宙世紀0079.12月8日。

 

この日、MS特務部隊第27小隊ラングリッジ小隊にある出来事が起こる。

 

「アーヴィント中尉それは本当ですか?」

 

「そうだ。残念ながら僕はモビルスーツから降りるよ。だが、代わりの補充要員は今日付けに来るさ」

 

アーヴィント中尉はそう俺達に告げる。

 

「安心したまえ。僕は此れからも君達と共に戦う。其処に代わりは無いさ」フサァ

 

「仕方無いわよ。本人が選んだ事だもの」

 

「アーヴィント中尉。どうかお元気で」

 

レイナ中尉は予想済みだったのだろう。引き止める事は無かった。ルイス軍曹は少し哀しそうな表情になる物の直ぐに持ち直す。

それから直ぐに新しい補充要員が着任した。

 

「本日付けでMS特務部隊第27小隊に配属されます。アーク・ローダー上等兵であります!」

 

まさかの同期アーク・ローダーであった。

 

「アーク、お前もう実戦に出るのか?」

 

「そうです。この前のジャブロー攻防戦の後、正式に実戦配備になりました」

 

俺はレイナ中尉とアーヴィント中尉を見る。しかし2人共肩を竦めるだけだった。

 

「シュウ少尉も訓練時間が短縮されてるのは知ってるでしょう?」

 

「まあ、そうですけど」

 

「ならしっかりフォローすれば良いさ。君の腕前なら充分可能さ」フサァ

 

それから暫くして解散する事になる。多分皆気を利かせてくれたのだろう。

 

「よう、模擬戦以来だな」

 

「シュウ少尉、お疲れ様です」

 

「公の場所じゃ無ければ敬語は良いよ。寧ろアークの敬語は似合わ無いからな」

 

「おいおい、酷い言われようだな」

 

お互い肩を竦めながらも笑う。

 

「しかし、まさか俺達の所に配属されるとはな」

 

「ああ、それ志願したんだよ。実はお前達の所は結構志願者が多くてな。やっぱりあの模擬戦が効いてたぜ。その中で配属が決まったのは運が良かったぜ」

 

「運が良い訳無いだろ。次の戦場は宇宙に成るんだぜ?」

 

「覚悟の上さ。そう言えば、シュウは元々宇宙軍所属だったよな」

 

「ああ、漸く借りを返す時が来た訳だがな」

 

俺は空を見上げる。開戦時、地球連邦宇宙軍はジオン公国軍に惨敗する。そして地球にコロニーを落下させてしまう。更にジオン公国軍の地球侵攻の阻止すら出来ずに敗退した。結果、地球連邦宇宙軍はルナツー周辺に引き込むしか出来無い状況になってしまう。

 

「そうか。なら一緒に戦ってジオンをぶっ潰そうぜ!」

 

「まあ、その辺りは程々にな」

 

暫くお互いの近況を話したり、他の同期について話をしたのだった。特にアークは敵との戦闘については良く聞いて来たのだった。

 

……

 

宇宙世紀0079.12月9日。ジオン公国軍【サイクロプス隊】が地球連邦軍北極基地を襲撃。目標はニュータイプ用ガンダム【RX-78NT-1アレックス】の奪取。しかし、作戦は失敗に終わる。

宇宙世紀0079.12月10日。MS特務部隊第27小隊 ラングリッジ小隊は宇宙へと移動開始。

 

俺達は宇宙の地球連邦軍の前線基地になるルナツーに向かう。その為にサラミス級に乗り込む事になったのだが。

 

「諸君!僕の艦である【ロイヤル】へようこそ!歓迎しようじゃ無いか!」フッサァ

 

「アーヴィント何やってるのよ」

 

「ふっふっふ、元々僕はこっちが本職さ。君達の母艦となるのがこの美しいサラミス級宇宙巡洋艦であるロイヤルを見たまえ。正に僕に相応しい艦じゃ無いか!」フサァ

 

レイナ中尉の言葉にテンション高めに答えるアーヴィント中尉。

 

「なあ、あの人本当に大丈夫なのか?俺不安しか無いんだけど」

 

「大丈夫だよ。アーヴィント中尉も一緒に戦った中だし」

 

ただ、ちょっとナルシスト気味だけどさ。そして俺達は次の戦場になる宇宙に向かう。

地球連邦軍の戦力は間も無く再建を果たす。そして遂に地球連邦軍の反撃が本格化するのであった。

 

宇宙世紀0079.12月14日。地球連邦軍【星一号作戦】発動。地球連邦軍艦隊はソロモンへ向かう。更に大量の新造戦闘艦がジャブローより打ち上げられる。

宇宙世紀0079.12月16日。MS特務部隊第27小隊は地球連邦宇宙軍第2連合艦隊に編入される。その後チェンバロ作戦に参戦命令が降る。

 

ルナツーに到着した俺達に待っていたのは、次の戦場への参戦命令だった。目標はジオン公国軍の宇宙要塞ソロモン。其処にはザビ家の次男ドズル・ザビ中将が指揮を執っている。そしてドズル・ザビ中将の部下は歴戦揃いだと聞いている。

 

「そんな所に行くとはね。俺もそろそろ年貢の納め時かな?」

 

「少尉、そんな事言わんで下さい。周りが不安になります」

 

「そうは言いますけどね。モンド軍曹はどう思います?次の戦いについて」

 

俺は今ルナツーの格納庫で自身の機体であるRGM-79ジムの最終調整をしていた。RX計画で作られた高出力ジェネレーターを搭載した事によりビーム兵器の出力と機動性が向上した。今はそれに合わせた調整を行ってる所だ。

 

「かなり厳しい戦いになるでしょうな。ですが、俺に出来る事は機体を常に良好な状態にする事だけですがね。戦闘中に動かなくなったら目も当てられんからな」

 

「そう言って貰えれば幸いですよ。さて、もう少しで完了しますね」

 

「少尉、きっと大丈夫ですよ」

 

モンド軍曹は俺を見ながらそう言う。

 

「此奴(RGM-79ジム)がきっと少尉を生かしてくれます。俺には少尉と共に居る事を喜んでる声が聞こえますから」

 

モンド軍曹はRGM-79ジムを見上げる。俺も釣られてジムを見る。

 

「まあ、此奴には散々救われてますからね。次の戦いも頼むぜ相棒」

 

俺はRGM-79ジムの装甲を軽く叩きながら調整に専念するのだった。

 

……

 

RGM-79ジムの調整が済み小隊の所に向かう途中、ワッケイン大佐と出会った。

 

「ワッケイン大佐お久しぶりです」

 

「ん?君か。確かルナツーの地表をザクで歩き回ってたな」

 

お互い敬礼しつつ話をする。

 

「君もルナツーに来たと言う事は、次の作戦に参戦するのだな」

 

「はい。確かティアンム中将率いる第2連合艦隊に配属されます」

 

「そうか。あまり大きな声では言えんが、次の戦いは色々な思想が入り混じった戦いとなる。ジオン軍との戦いもそうだが、味方にも注意したまえ。では君の活躍を期待する」

 

「ワッケイン大佐、それは一体…?」

 

ワッケイン大佐は意味深な事を言って行ってしまう。俺はワッケイン大佐の様に大局を見て行動するのは出来無い。だが、今の言葉はとても重要な言葉なのだろう。

 

「敵だけで無く味方にも注意が必要か」

 

見ようによっては地球連邦軍も余裕を取り戻しつつあるのだろう。身内同士の権力争いをやる余裕がさ。

 

「だったらジム・ライトアーマー用意して欲しいな」

 

俺はそう呟きながら小隊の所に向かうのだった。序でにレイナ中尉達の宇宙での機動戦の訓練をするつもりだ。



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宇宙空間訓練

「お?ウチの期待のエース様のご登場だ」

 

「遅いわよ。良い女を待たせるのはダメよ?」

 

MS訓練用シミュレーター室に行くとレイナ中尉、アーク上等兵が待っていた。他のシミュレーターの操縦席にも何人かが訓練していた。

 

「俺はエースじゃ無いよ。それと待たせてすいません。じゃあ早速宇宙戦での訓練をやりましょう」

 

アーク上等兵を新しく仲間に加えた結果、小隊行動の見直しをする事になった。先ずアーク上等兵のモビルスーツはRGM-79ジムだ。今迄量産型ガンタンクを起点にしてたが、これからは小隊として行動が可能になった。つまり俺とレイナ中尉と常に行動する事になる。

レイナ中尉とアーク上等兵は宇宙での実戦は無い。その為宇宙での戦いを改めて覚えて貰う必要がある。其処で今回は俺が二人に教える立場になる事になった。

 

「状況はミノフスキー粒子が展開されてる宙域で敵の戦闘機ガトル20機の襲撃。勝利条件は敵の全滅。此方はサラミス級が母艦になりますから、撃沈されたら此方の負けです。サラミス級も砲撃はして貰う設定です。今回はシミュレーターとは言え久々の宇宙戦になるから気を引き締めましょう」

 

『了解。なら早速やりますか』

 

『私の宇宙での腕前を披露する時が来たわね!』

 

二人共気合充分な様だ。俺もシミュレーターに乗り込みシステムを起動させる。その際自分の今迄の戦闘データの入ったカードを挿す。このカードによってシミュレーター内でも自分が今迄培って来た戦闘データを反映してくれる。つまり自分の実機に近い状態でやれる訳だ。

そして画面が宇宙空間に変わる。後方にはレイナ中尉とアーク上等兵のジム。そしてサラミス級が待機している。カウントダウンが開始される。

 

「アークは宇宙での戦闘訓練はやってるよな?レイナ中尉は俺と同じくらいやってたし」

 

『一応な。だけど基本はモビルスーツの動かし方を重点的にやってたけどな』

 

「まあ、宇宙での戦闘は最終的には慣れるしか無いからな。ただ、慣れすぎると警戒が疎かになるけど」

 

『中々難しいわよね。特にレーダーが効かない宙域は常に気を張らないと危険だし』

 

そしてシミュレーター訓練が開始する。お互いに周辺警戒しながら前に進む。すると前方でレーダーに反応が有る。それと同時にサラミス級から砲撃が開始される。

 

「さて、周辺に警戒しながら防御体制」

 

『な、中々難しいな。こう上手く止まれ無い』

 

「余り吹かし過ぎるな。推進剤の無駄になる。無理と判断したら俺の後方に行けばいい」

 

『私は出来たわ。そろそろ来るわね』

 

サラミス級の砲撃とミサイルを掻い潜りながら接近してくる5機のガトル。

 

『何だよ、たったの5機か。なら直ぐに仕留めるぜ』

 

アークがブーストを使いガトルに接近する。だが迂闊過ぎる。

 

「待てアーク。まだ敵が全部居るか分からない。そんな中突っ込むのは危険だ」

 

『お、そうだな。なら索敵を…あ、サラミスの下に敵機だ!』

 

アークの言う通りガトル5機がサラミスの下方より接近。サラミスも対空弾幕を展開する。

 

「サラミスを軸に対処しよう。ジムにはシールドがある。多少の被弾は何とかなるさ」

 

俺達はお互いの位置を確認しつつガトルを迎撃する。サラミスの対空弾幕も有り直ぐに終わった。

 

「アーク、どうだったか?」

 

『中々難しいな。特にレーダーが効かないから敵が何処にいるか見当が付かない』

 

「その為の周辺警戒さ。俺はルウムでの戦いで有視戦闘を強いられた」

 

レーダーも誘導兵器も無力化された状況で頼りになるのは自身の目だけだ。今思えば西暦の時に起きた第二次世界大戦の時代の幕開けだったな。

 

『それでもシュウはセイバーフィッシュでザクと戦ったのね』

 

「殆ど逃げてばっかりでしたよ。適当に嫌がらせみたいな攻撃をするぐらいしか出来なかったし」

 

『いやいや、ザク相手にセイバーフィッシュは厳しいだろ』

 

「一応1機落としたけどな。後は連戦連敗だったけど」

 

この後何度かシミュレーター訓練をする。ある程度小隊として形は出来て来た所で休憩を取る事にした。しかし問題も起きてしまったが。

 

「中々上手く連携取れてるな。これなら俺も何とかなりそうだぜ」

 

「アークも訓練はしてたからな。最初から理解してる分、戦闘に集中できるし」

 

「そうだな。ラングリッジ中尉はどう思いますか?」

 

「……そうかしら?私はそうは思わないわ」

 

レイナ中尉はアークの言葉を否定する。

 

「シュウ少尉。次の戦いは貴方が前に出て好きに戦いなさい」

 

「ラングリッジ中尉、何言ってるんですか!シュウを見殺しにするんですか!」

 

「違うわ。私達がシュウ少尉にとって足手纏いだからよ。今迄少尉は前衛で戦って来たわ。それを活かさなければ、私達は少尉を殺す事になる」

 

「レイナ中尉…」

 

そう、小隊での連携行動が可能になった事で問題も起きた。それは機動戦が上手く出来無い事だ。宇宙空間は広い。だからこそ俺の得意分野である機動戦が可能だ。だが、小隊での連携を取ろうとすると上手く出来無い。

しかし連携を取る事で全体の戦闘力は上がるのは間違い無い。

 

「了解しました。次から囮になります。代わりに援護をお願いします」

 

「シュウ?お前死にたいのかよ!そんな無茶やれるのかよ!」

 

「勘違いすんな。お前らを信頼してるからやるんだよ。じゃなきゃ無茶なんてしないぜ」

 

俺達は再びシミュレーター訓練に入る。今度の難易度の設定は高い。ザク12機とムサイ級巡洋艦2隻を相手にする。此方はコロンブス級補給艦とラングリッジ小隊のジム3機のみ。

 

『本当にやるんですか?いくら少尉でも無茶ですよ』

 

『良いから。シュウ少尉、好きに戦いなさい。それが貴方にとって一番戦い易い筈でしょう?』

 

パチンとウィンクをするレイナ中尉。

 

「良く理解してますね」

 

『当たり前よ。伊達に今迄戦って来た訳じゃ無いでしょう?』

 

やれやれ、レイナ中尉には敵わないな。今回の武装はビームスプレーガンと対艦戦を考慮してハイパーバズーカだ。そして遂にシミュレーター訓練が始まる。

 

「ガルム2、行きます!」

 

ジムのブースターを強めにして敵に接近する。先ずはムサイ級巡洋艦からの艦砲が来る。だが回避機動を取れば、そう簡単に当たる訳では無い。

更にザク12機が接近して来る。それと同時にビームスプレーガンの射程に入る。

 

「行くぞ。着いて来れるか?」

 

ジムのブースターを全開にして機動戦に入る。ザクは俺の方に4機、残り8機はコロンブス級補給艦の方に向かう。だが、そう簡単に行かせるか!

 

「遅いぞ。貰った!」

 

ザクにビームスプレーガンを撃つ。高機動な中でもしっかりとコクピットに向けて狙い撃つ。ビームはコクピットと腕に直撃して爆散する。

 

「動きが遅いぞ!次!」

 

更に機動を続ける。今のジムのジェネレーターはRX計画で出来た高出力ジェネレーターだ。つまり。

 

「そこらのジムとは機動力が段違い何だよ!」

 

更にザクを3機撃破。そしてビームサーベルを抜き一瞬ザクと擦れ違う。それと同時にザクを斬り捨てる。一撃離脱も可能となってるから戦い易い。

 

『凄い。アレがシュウの戦い方なのか?』

 

『そうよ。ガルム3私達も援護に行くわよ。尤も、邪魔しないようにしないとね』

 

援護を受けてからザクの残りは2機になる。

 

「自分はムサイを潰します。残りの敵をお願いします!」

 

『ガルム1了解よ。此処は私達に任せて行きなさい』

 

『落とされんなよ?頼んだぜ』

 

武装をハイパーバズーカに切り替える。そのままムサイ級巡洋艦に接近する。ムサイも艦砲とミサイルの弾幕を展開する。

 

「その程度の弾幕で止められると思うな」

 

弾幕を掻い潜りムサイ級巡洋艦の下部に入る様に接近。ムサイの構造上、下方に対する艦砲の射角には限界が有る。その辺りはサラミス級やマゼラン級を見習うべきだな。

一気に弾幕が薄くなり接近してハイパーバズーカを撃つ。そしてそのまま上昇して艦橋に直撃させる。

 

「次!仕留める!」

 

護衛機も無く懐に入られたムサイには反撃する手立ては無い。そしてシミュレーター訓練は終了したのだった。

 

……

 

「ふう、かなり良い感じだったな」

 

ヘルメットを取り一息つくと二人がやって来た。

 

「やっぱり思った通りね。基本はシュウが前衛で機動戦をやって、私達は援護に徹した方が良いわね」

 

「そうですね。自分もそっちの方が戦い易かったです」

 

「本当か?まあ、シュウの機動について行ける気はし無いけど」

 

「何言ってんだよ。お前達の援護が有ればこその機動だぜ」

 

この後数日の間に今の形を基本にして煮詰めて行く。俺の機動に触発されてか二人共機動戦を覚えて行くのだった。

そして間も無く始まる次なる戦場に向かう為に最後までシミュレーター訓練をする。その戦いの先の平和を目指して。



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チェンバロ作戦1

宇宙世紀0079.12月24日。地球連邦軍【チェンバロ作戦】開始。今ここに地球連邦軍とジオン公国軍の熾烈な戦いが幕を開けるのだった。

 

遂に地球連邦軍の宇宙での反撃が開始される。俺達はティアンム中将率いる第2連合艦隊と共にサイド1の残骸に潜んでいた。そして今回対要塞兵器として【ソーラー・システム】を使用する。これは太陽光を一点に集中させて焼き尽くす代物らしい。

地球連邦軍第三艦隊もサイド4の残骸に隠れつつソロモンに出来るだけ接近。間も無く陽動作戦が開始される。

 

「アーク、実際の宇宙での乗り心地はどうだ?」

 

『何とかなってるよ。お前の教導のお陰だよ』

 

「まあ、俺は元々宇宙軍だからな。宇宙での機動は慣れてるからな」

 

俺達ラングリッジ小隊はソーラー・システムの防衛に廻るよう命令が来た。現在はアーヴィント艦長指揮のサラミス級ロイヤルにワイヤーで固定されつつ運搬されてる。更に他の小隊でジム2機とボール6機を搭載していた。

 

『それにしても無重力って何か不思議よね。この暗い宇宙を見てると吸い込まれそうだもの』

 

「そうですね。自分は時々この宇宙が怖いと感じる時は有りますが」

 

『うーん、俺は特に何も感じないな。ただ、この宇宙の中に放り出されたらヤバイよな』

 

「あ、俺一回撃墜されて漂流仕掛けた事有るから。あの時は絶望と諦めしか無かったよ」

 

確かルウムでの戦いの時だったかな。あの時は本当にどうしようも無かったからな。

 

『良く生きて帰って来たな』

 

「まあな。その時にザクを確保して操縦したしな。よくよく考えるとかなり運が良かったな」

 

『なら、その幸運にあやかろうかね?』

 

そう言ってアークは拝み始める。

 

「拝むなよ。俺は神でも仏でも無いんだからな」

 

『確かにシュウは運が良いわよね。ねね、後で頭触らせてよ』

 

「だから俺は仏像じゃ無いから!」

 

間も無くサイド1に到着するだろう。周辺警戒をしつつ味方艦隊とモビルスーツ部隊を見る。RGM-79ジムは良いとして、ボール型のモビルスーツ?は色々無理があるだろう。

 

「アレにだけは乗りたく無いな。確か【RB-79ボール】でしたっけ?」

 

別名【丸い棺桶】と言われてるがな。

 

『そうだよな。アレに乗って敵と戦うと思うと逃げたいぜ』

 

『でも、あの形可愛いわよね。ああいうの好きよ』

 

『俺今日からボール乗りになるわ』

 

レイナ中尉の可愛いと言う言葉に反応してボール乗りになると言い出すアーク。今迄の訓練を無駄にする気かこの野郎。

 

「馬鹿な事言うなよ。本当にボールが配備されたらどうすんだよ」

 

流石にボールに搭乗して突撃しろと言われたら勘弁して下さいと言って土下座する。しかし、そんなRB-79ボールだが配備数はジムより多い。見た限りボールは殆どの小隊に組み込まれてる。

 

『皆さん、間も無く戦闘エリアに到着します。ラングリッジ小隊は周辺警戒の為、指定エリアまで移動をして下さい』

 

『ガルム1了解。さあ、そろそろ無駄話は終わりよ』

 

『ようやくか。ジオン共に目に物見せてやるぜ』

 

「戦場か。気を引き締めないとな」

 

そして遂に出撃命令が出る。

 

『モビルスーツ隊出撃。各機、各艦との連絡を密にせよ』

 

『モビルスーツ隊出撃命令出ました』

 

『ガルム1了解よ。全機行くわよ』

 

「ガルム2了解。行きます」

 

『ガルム3、俺も行くぜ』

 

俺達はサイド1の残骸の中に突入する。ガルム1の武装は90㎜ガトリングガン、俺とガルム3はビールスプレーガンとハイパーバスーカを装備する。そしてモビルスーツ隊の出撃命令と同時に第3艦隊がソロモンに対して攻撃を開始する。囮として15分間の攻撃を行う第3艦隊。しかし第2連合艦隊のソーラー・システムの準備に予定時間より掛かってしまう。

 

宇宙世紀0079.12月24日18:50ソロモン要塞に向けてソーラー・システムを照射。目標ソロモン第6ゲート。

 

第2連合艦隊旗艦マゼラン級 タイタン

 

「ソーラー・システムが照射可能です。ソロモン要塞に照準を合わせます」

 

「ソーラー・システム照射開始」

 

ティアンム中将は遂にソーラー・システムを使用する。この瞬間ソロモン要塞から第2連合艦隊の居場所が発見された。ドズル中将はすぐさま衛星ミサイルを発射。更に攻撃艦隊を用意する様命令を降す。しかし、全てが遅過ぎた。

 

「5、4、3、2、1、照準入ります」

 

その瞬間、ソロモン要塞が光輝いた。

 

『な、なんだ!うわっ!?』

 

『光が!た、退避し!?』

 

『うわあああーーー!!!』

 

『第6ゲート消失!敵の新兵器か!?』

 

『第8ブロック被害甚大!救援を!』

 

『此方アハト艦隊被害多数、僚艦も沈んだ。航行不能』

 

『第24、28、34メガ粒子砲台沈黙。防衛網に穴が空きます!』

 

ソーラー・システムによりソロモン要塞の被害は甚大な物になる。

 

「あ、あれがソーラー・システム。何だよあの威力は」

 

『凄い。これなら勝てるわ。いえ、圧勝よ!』

 

『ザマァ見ろジオンのクソッタレ共め!気分爽快だぜ!』

 

他の部隊の人達もソーラー・システムにより士気は最高潮に達していた。

 

「人は…此処まで残酷になれるのかよ」

 

あの光によって何千人のジオン兵が死んだ。正直恐ろしさしか無かった。しかし連邦軍の攻勢は止まらない。

 

『司令部より攻撃命令が来ました。各機、各艦は攻撃を開始して下さい』

 

ルイス軍曹の言葉に我に帰る。悩むのは後だ。今は戦いに集中しないと。

 

『了解よ。ラングリッジ小隊行くわよ!』

 

「ガルム2了解」

 

『ガルム3了解!よっしゃあ、やってやるぜ!』

 

戦闘艇パプリグとセイバーフィッシュ部隊が突撃開始する。それに続きモビルスーツ部隊も突撃開始する。

しかしジオン軍の対応も早い。すぐさま残存艦隊を集結させ連邦軍に対して中央突破を仕掛ける。しかしソーラー・システムの第2射が発射される。

そして俺達の方にも敵が迎撃に来る。俺はシールドを構えてブースターを全開にして突撃する。

 

「此方ガルム2、これより突撃します!援護願います!」

 

返事を待たずに一気に前に出る。

 

『ガルム2を援護!絶対に死なせないでよ!』

 

『ほう!中々骨の図太い奴が居るな。パニエル小隊援護するぞ!』

 

『狙撃は任せな。ボールだってやれるんだよ!』

 

味方の援護を受けながら突撃する。ザク3機がザクマシンガンを撃ってくる。更にムサイ級、チベ級からも艦砲が僅かに来る。パプリグ戦闘艇のビーム撹乱幕が効いてる様だ。

 

「俺の十八番の機動戦に付いて来れるか?」

 

変則的な動きをしながら弾幕を掻い潜る。しかし視界はブラックアウトはしない。だから敵をしっかりと補足する。RX-78-2ガンダムの戦闘データがアップデートされたRGM-79ジム。更にジェネレーターはRX-78-2ガンダムとほぼ同じ物。これで負ける要素を見つける方が難しい。そして極め付けはビームスプレーガンの威力向上に機動力向上。

 

「動きが遅いぞ。それじゃあ宇宙はお前達の味方になら無いぞ」

 

ビームスプレーガンを撃つ。ビームはザクのコクピットや腕、手足に当たる。1機撃破と2機中破させて他の敵に向かう。接近警報アラームが鳴る。ドムやガトル戦闘機が上方より接近。バズーカやミサイルを撃ち込んで来る。

 

「ほらよっとな!」

 

AMBAC機動をしてからの急停止。そのままビームスプレーガンでガトル戦闘機を撃ち抜く。

 

『貴様!エースとでも言うのか!』

 

ジャイアントバズーカを撃ち切りヒートソードを抜き接近してくるドム。此方も接近する。

 

「馬鹿正直に戦うと思うなよ」

 

途中まで接近してドムから離れる様に機動を取る。

 

『逃げるか!臆病もっ!?しまっ!うがあああ!!!』

 

直後圧倒的弾幕がドムを襲い爆散。流石レイナ中尉だ。よく分かってる。

 

「これより敵艦に向かいます。さて、行くぞ!」

 

『あのジムに続け!ソロモンに取り付けば後はこっちの物だ!』

 

『へへ、あのジムが囮になってくれて助かっぐあああ!?』

 

『左から敵モビルスーツ12機接近!畜生、やってやらあ!』

 

味方モビルスーツ部隊、そして艦隊も更なる攻撃を開始する。

 

『衛星ミサイル準備出来次第発射!敵の侵攻を止めるんだ!』

 

『此方B14エリア!弾薬残り僅か!弾を持って来い!』

 

『連邦風情が。調子に乗りやがって!』

 

『動きは素人そのものだ。まだやれるぞ!』

 

『連邦の侵攻をこれ以上許すな!』

 

俺もハイパーバズーカを装備する。対艦戦の始まりだ。

 

『敵モビルスーツ接近!この速度は、速い…まさか、白い悪魔なのか!』

 

『敵は只のジムだ!白い悪魔では無い!迎撃開始!撃ち落とせ!』

 

ムサイ級とチベ級の艦砲、ミサイル群が来る。更に接近すれば護衛のザクとガトル戦闘機にチベ級からの対空砲が火を噴く。それらを全て回避して行く。

 

「くうううーーー!下部さえ取れればこっちのもんだ!」

 

決して機動を緩める訳には行かない。緩めた時は死あるのみ。敵は俺に釣られてムサイ級やチベ級の下部に一部が移動する。

 

『各砲座敵艦に照準合いました。何時でも行けます!』

 

『シュウ少尉の稼いだ時間を無駄にするな。砲撃開始!撃てえええーーー!!!』

 

サラミス級ロイヤルを筆頭に他のサラミス級から敵艦隊に向け砲撃が開始される。敵艦隊とモビルスーツ部隊も応戦する。だが、俺はまだ生きてるぞ?

 

「エンジンがガラ空きだぜ?」

 

ムサイ級のエンジン部にハイパーバズーカを撃つ。ムサイ級は慌てた様子でエンジン部分を切り捨てるが、もう手遅れだ。動きが遅くなったムサイ級を味方艦隊砲撃。次々に着弾して爆沈。

 

『僚艦マミヤ、アラサマ、轟沈!アイザスも被弾してます!』

 

『後続の援護は何をやっている!このままでは敵を抑えられんぞ!』

 

『下方よりモビルスーツ接近!う、うわあああ!!!』

 

『これが連邦のモビルスーツなのか…』

 

彼等が最後に見た光景は艦橋に向けてハイパーバズーカを向ける02と書かれたジムだった。

 



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チェンバロ作戦2

『良し!このままソロモンに取り付くぞ!マルダ中隊突撃!敵を内側から食い破るぞ!』

 

『おらおら!お前らジオンは俺達に勝てないんだよ!』

 

ジム、ボール部隊が次々に宇宙要塞ソロモンに取り付いて行く。俺達ラングリッジ小隊はサラミス級ロイヤルと他艦隊を防衛する事にした。何故なら艦隊が少々前に出過ぎているからだ。だが、彼等艦隊の対空弾幕と艦砲は非常に心強い物がある。

 

『左舷弾幕を密に!敵モビルスーツが来るぞ!』

 

『後方より敵モビルスーツ接近!』

 

『艦砲用意!照準合い次第砲撃開始!』

 

『此方ミデル左舷被弾。モビルスーツ隊は援護せよ』

 

艦隊は宇宙要塞ソロモンのメガ粒子砲台も潰して行く。戦いは地球連邦軍優勢になっていた。

 

「此方ガルム2よりガルム1へ。そろそろ機体の冷却と燃料、後弾薬の補給を行いたい」

 

『そうね。私達もそろそろ補給が必要ね。ロイヤル聞いての通りよ。最初にガルム2の収容準備をお願い』

 

『此方ロイヤル了解です。各機は護衛に回って下さい。その後に順次補給に入って下さい』

 

ロイヤルを筆頭に艦隊は一度後退してモビルスーツ部隊の補給に入る。それに入れ替わる様に別の味方艦隊とモビルスーツ部隊が前進する。

 

『ガルム2、補給準備完了しました。サラミスの下部に来て下さい』

 

「了解。着艦開始します」

 

ジムをロイヤルの下部に移動させる。そして振動と共にジムは止まる。無事に着艦出来た様だ。

 

「ぷはぁ、疲れた。少し一息出来るな」

 

ヘルメットを外して頭を振るう。レーダーや外の様子を見ると敵はソロモンに取り付いた味方に手一杯の様子だ。

 

『シュウ少尉大丈夫ですか?あの様な機動は中々辛いと思いますが』

 

「ん?いや別に平気ですよ。特に身体に違和感は無いですし」

 

『そうなんですか?ですが余り無理はしないで下さい』

 

「了解です。まあ、今は多少の無理は必要でしょうが」

 

そして補給が終わり再び光が瞬く宇宙に出撃する。あの光が瞬く時には誰かが死んでるのだ。そう思うと不思議でならない。沢山の光が瞬いてるのだ。それで死んでる人間が居るとはあまり想像出来無い。

それからレイナ中尉とアーク上等兵も補給に入る。その間に戦いは新たなる局面に入る。

 

……

 

時間を少し遡る。ソーラー・システムの第1射受けたジオン軍の戦力はズタズタになっていた。そしてドズル・ザビ中将は妻ゼナと娘ミネバ・ザビを脱出させる。その後ドズル・ザビ中将は陣頭指揮を取る。残存艦隊を集結させソーラー・システムと第2連合艦隊に攻撃を仕掛けるもソーラー・システムの第2射により甚大な被害を出す。

この一撃が決定打となり宇宙要塞ソロモンからの撤退を決断する。

 

「ソロモンがこうも簡単に落ちるとはな」

 

ドズル・ザビ中将は巨大モビルアーマーに乗り込む。そう、自らを盾にして味方の撤退を支援する為だ。そんな中、ソロモン内部に突入していたジムとボール部隊はドズル・ザビ中将の乗る巨大モビルアーマーと遭遇。ジムとボール部隊は攻撃を仕掛けるがビームを全て防がれてしまう。

 

『ビームを!?化け物だあああ!!!』

 

その通信を最後に彼等は巨大モビルアーマーから放たれたビームの渦に飲み込まれて行った。

 

宇宙世紀0079.12月24日20:55地球連邦軍作戦司令官 第2連合艦隊マクファティ・ティアンム中将、敵巨大モビルアーマー【ビグ・ザム】の攻撃を受け戦死。又、第2連合艦隊に甚大な被害が出る。

 

「はっはっはっ!このビグ・ザムが量産の暁には連邦など一捻りだわ!!!」

 

この時、ラングリッジ小隊とサラミス級ロイヤルと一部艦隊は再びソロモンへ接近していた。しかしビグ・ザムは第2連合艦隊本隊へ向かっていた為命拾いしたのだ。

 

「何だよアレ。第2連合艦隊が…消えて行く」

 

『嘘でしょう?あんなの相手にするの?』

 

『然もビームを防いでるぜ。どうなってんだよ!』

 

あの巨大モビルスーツがビームを多方向に撃ち出した瞬間、射線に入っていたサラミス級やマゼラン級は次々に爆散していった。あの中に突っ込むのは至難の技だ。更に遠距離からの艦砲のビームを全て防いでるのだ。

しかし、ソロモンの地表にも敵戦力は残っていた。だが敵艦隊は次々に撤退して行く。

 

『此方サラミス級ロイヤル、艦長アーヴィント・アルドリッチ中尉。これより第2連合艦隊を救出に向かう。ラングリッジ小隊は援護せよ』

 

「うへぇ、死にたく無いな」

 

『おいおい、味方を見捨てるのか?』

 

「見捨てるつもりは無いぜ。唯、ハイパーバズーカとか効果有ると思う?」

 

艦隊からミサイルとか放たれてるし、何発かは直撃してるけど効いてる様子が無い。アレ倒せるのか?

 

『それでもやるしか無いわよ。それに、あんなにデカイんだから隙も大きい筈よ。なら接近してビームサーベルでも出来る筈よ』

 

『確かに。ならやるしか無いよな!』

 

俺達モビルスーツ部隊はロイヤルや他の艦艇に着艦して巨大モビルスーツに向かう。そして巨大モビルスーツに向かい徐々に近付いて行く。しかし、俺達の不安は杞憂に終わる。巨大モビルスーツの下方からRX-78-2ガンダムとコア・ブースターが接近。コア・ブースターは爆散するも、ガンダムはそのまま巨大モビルスーツにビームサーベルを突き立てたのだ。そして巨大モビルスーツから火の手が上がった後、大爆発を起こしたのだった。

 

「やっぱりさ、ガンダム1機有れば勝てるんじゃね?」

 

ジャブロー攻防戦の時にも思ったが、ガンダムの動きは尋常じゃ無い。初めて見た時よりも動きにキレが有った。

敵巨大モビルスーツが撃破された後、宇宙要塞ソロモンからの撤退をするジオン軍に対して追撃戦を行う。俺達ラングリッジ小隊とサラミス級ロイヤルも其処に参加する。しかし、此処にとあるエースパイロットが居た。後に【ソロモンの悪夢】と呼ばれるこの追撃戦を身を持って体験するとは思わなかった。

 

……

 

宇宙世紀0079.12月25日。

 

追撃部隊のサラミス級とマゼラン級の艦隊より少し後方からロイヤルと3隻のサラミス級は敵の追撃をする。しかし追撃戦は余り乗り気にはなれんな。

 

『ガルム2どうした?追撃しないのか?』

 

「別に。追撃戦なら他の部隊で充分だろ。俺はその取り零しを攻撃するさ」

 

『取り零しって。俺達最後尾に居るんだぜ?取り零し何て無いだろ』

 

「それならそれで良いさ。しかし、相手の戦艦…いや空母か?随分デカイな」

 

あのデカイ空母が殿を務めてる結果、追撃部隊は思う様に出来ていない。

 

『全く、ジオンは巨大兵器に何を求めてるのかしら?』

 

「浪漫とかじゃ無いですか?ほら、大火力で敵を制圧するとか」

 

『でも実際第2連合艦隊はかなりの被害が出たんだよな?』

 

アーク上等兵の言う通り、マクファティ・ティアンム中将の戦死と第2連合艦隊の甚大な被害を受けた。チェンバロ作戦は一応の成功を収めた。だが、第2連合艦隊の被害を考えると痛み分けになるだろう。

 

「浪漫も馬鹿に出来んな。結果コレだもん」

 

ロイヤルとサラミス3隻と歩調を合わせて行く。しかし、味方の通信から悲鳴に近い救援を受信する。

 

『何してる!たった1機のドムにッ!』

 

『来るな!来るなあああ!!!』

 

『弾幕を張れ!敵の動きを抑えるんだ!?』

 

前方を見れば次々に爆発が続いていた。更に味方の艦隊も次々と爆発が起こっていた。

 

「何だ?一体何が起こってる?」

 

『現在敵モビルスーツと交戦中です。しかし、敵は数機のモビルスーツの様です』

 

『え?数機のモビルスーツに足止めされてるの?』

 

『いえ、味方部隊にかなりの被害が出ています。敵の中に圧倒的なドムが居るとの事です』

 

1機のドム?ガンダムでは無くドムなのか?

 

「此方ガルム2。これより突撃して味方の援護に向かいます」

 

ブースターを全開にして一気に加速させる。その間にも味方の艦隊が次々に撃沈されつ行く。

 

『弾幕を!奴を近付かせるな!急いで後退を!?』

 

更にデカイ爆発と同時に味方との通信が途切れる。

 

「此方ラングリッジ小隊ガルム2。生きてる奴は居るか?誰か応答してくれ!」

 

オープン通信で声を掛ける。しかし、返事は無い。

 

(待て待て、さっきまで俺達の前方居た追撃艦隊が消えたとでも言うのか?そんな馬鹿な事が有ってたまるか)

 

しかし現実には前方からの追撃艦隊からの通信は無い。そして、奴との初めての邂逅を果たす。

 

『貴様で最後か。なら、大人しく落ちるが良い!』

 

通信から声が聞こえる。咄嗟に回避機動を取る。先程まで居た場所にビームが走る。ビームが放たれた方を見ると、青の四肢に緑の胴体のパーソナルカラーのドムが居た。

 

「エースパイロットかよ。だがな、それが理由で引き下がるかよ!」

 

此方もビームスプレーガンで応戦する。しかし、此方の攻撃を紙一重で避けて行く。だが、機動戦なら負ける気はしない。

一気に加速させてランダム回避を行う。ドムの攻撃を回避しながら反撃する。

 

『中々良い動きをする。だが、これはどうだ!』

 

ドムは此方に向かいビームバズーカを放つ。その攻撃は俺の回避先に向かっていた。

 

「くうっ!?まだまだ!」

 

咄嗟にシールドを構えビームを防ぐ。だが、ビームはシールドを破壊して左腕を持って行く。

 

「何つう火力だよ!」

 

『甘いな。沈めえええ!!!』

 

ビームバズーカを撃ちながらヒートサーベルを抜き此方に接近して来る。此方もビームスプレーガンを撃つが当たらない。そして一気に奴の間合いに入ってしまう。

 

「この野郎!調子に乗んな!」

 

ビームスプレーガンを放棄してビームサーベルを抜く。一気に距離が縮み、ヒートサーベルとビームサーベルが打つかる。

 

『中々の動きだ。だが、私の相手は君には務まる技量は無い!』

 

「此奴何を!うわっ!?しまっ!」

 

ドムは一瞬だけ後退する。俺はビームサーベルを振り下ろす形になるが、それは大きな隙になった。ビームバズーカの銃口が俺のジムのコクピットに向けられる。

 

(あ、終わった)

 

その直後、圧倒的弾幕がドムを襲う。

 

『ガルム2!無事なの!?』

 

『むう、新手か。だがこれ以上は時間掛けれんか』

 

ドムは一気にレイナ中尉のジムに向かう。

 

「レイナ中尉上に逃げろ!!!其奴はエースだ!!!」

 

俺も慌てて追いかけるが遅かった。レイナ中尉は俺の言葉に反応して咄嗟に上に行く。その直後ドムのビームバズーカのビームはレイナ中尉の機体の脚部に直撃する。

此方もジムのリミッターを解除してドムに突っ込む。

 

「ガルム3!ガルム1を連れて逃げろ!此奴はかなり強い!」

 

アークとレイナが何かを言ってるが聞いてる暇は無い。再びヒートサーベルとビームサーベルが打つかる。そのまま機動戦に突入する。

 

『ええい!邪魔をするな!!!』

 

「仲間をやらせるかよ!!!」

 

しかし、何度か打つかり合いジムの左足が斬り飛ばされる。その隙にビームサーベルを突き出すが紙一重で回避される。更に突き出した右腕をヒートサーベルで斬り捨てられる。最後に用無しだと言わんばかりかりに横っ腹に蹴りが入る。

 

「グフッ!?これ以上は無理だ。撤退する!」

 

ガルム1とガルム3が後退してるのを確認して俺も撤退する。その際60㎜バルカン砲を撃ちながら撤退するのだった。

 

『ふむ。此方も時間か。私と対峙して生きて撤退するか。状況判断は良い様だな』

 

ドムのパイロット、アナベル・ガトー大尉はそう呟きながら後退するのだった。

 

……

 

「ガルム1、3生きてるか?」

 

『ええ、何とかね。と言うかシュウ少尉の方が心配よ』

 

『俺もそう思うぜ。しかし、あのドムのパイロットは一体何者だよ』

 

「分からん」

 

分からんが、奴は本物のエースパイロットだと理解出来た。この後追撃戦は中止。代わりに追撃部隊の生存者の救出活動に入る。そして生き残りで救出出来たのはたったの100人前後だった。

 

宇宙世紀0079.12月25日。チェンバロ作戦終了。地球連邦軍は宇宙要塞ソロモンをコンペイトウに変更する。

宇宙世紀0079.12月25日14:00。サイド6リボーコロニーでサイクロプス隊の生き残りであるバーナード・ワイズマン伍長【クリスマス作戦】開始。

宇宙世紀0079.12月25日14:10。MS-06FZザク改でRX-78NT-1アレックスに対しゲリラ戦を展開し交戦。その後RX-78NT-1ガンダムを破壊するもMS-06FZザク改は大破、バーナード・ワイズマン伍長生死不明。

これによりアムロ・レイ少尉に渡す筈だったRX-78NT-1アレックスは、そのまま終戦を迎える。

 




アナベル・ガトー大尉に勝てるパイロットはかなり限定されると思うんだ。

後バーナード・ワイズマン伍長には死亡説と生存説があるから生死不明にしました。でも量産機でガンダム倒すとか胸熱ですな。


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新型機と試作機

オリジナルMSが出ます。唯、この時期ならこんなMSが出ても良いかな?位の奴です。

決してGN粒子とかフェイズシフト装甲とかは出ないので悪しからず。後鉄人とかライディーンもなw


宇宙世紀0079.12月25日。

 

地球連邦軍は宇宙要塞ソロモンをコンペイトウに変更した後、コンペイトウでの機能を再稼働させていた。そしてコンペイトウ格納庫には俺達のジムの修理作業を行なっていた。

 

「あー、やっちまったな。俺のジムがまたボロボロだよ」

 

俺のジムの損傷具合は両腕と左足が無くなっているし、コクピット周辺部分もひしゃげていた。レイナ中尉の機体もビームバズーカの直撃を両足に受けて損傷。唯一損傷無しなのはアーク上等兵のジムとサラミス級ロイヤルだけだ。

 

「此奴はまた随分とやりましたな」

 

「今回は死ぬかと思いましたよ。緑と青のドムに終始圧倒され続けましたから」

 

「少尉が圧倒されたんですか?」

 

「そうです。別に俺はエースとかじゃ無いですからね」

 

現在俺のジムは待機状態だ。代わりにレイナ中尉の機体を優先して修理している。理由は部品の供給が追い付いてないからだ。予備部品は有るのだが、チェンバロ作戦で損傷した機体は多く部品の取り合いになってる状況だ。

 

「もし部品が来なかったら…」

 

同じ格納庫に鎮座してるRB-79ボールを見る。ボールのモノアイ?部分が光った気がする。いや、本当に勘弁して下さい。

 

「あ、いたいた。シュウー、頭撫でさせてよ!」

 

「有難や有難や。お前のお陰で生き残れたもんだからな」

 

「まだそのネタ引っ張るんですか?だから俺は仏像じゃ無いから頭撫でないで!序でに拝むのもやめい!」

 

結局レイナ中尉に頭を撫でられるし、アークからも拝まれる始末だ。もう、本当にどうでも良い事だよ。

 

「だってこんな状態になりながら生還して来たんだから。きっと御利益間違い無しよ!」

 

「そうだぜ。それにお前は運が良い奴だからな。間違い無いぜ。何たって敵に突っ込んで生きてるんだからな」

 

結局終始撫でられ拝まれるのだった。

それから次の日になったが、相変わらず何処の整備班は忙しそうだ。それもその筈、ルナツーやジャブローから供給部品が届く。多分俺のジムも修理されるだろう。

 

「悪いな。お前には乗らないよ」

 

RB-79ボールを見ながら呟く。しかし、現在コンペイトウ宙域では警戒態勢になっている。何故ならサラミス級やマゼラン級等の艦艇が次々と不可解な爆発していたからだ。

それとこの日レビル将軍がコンペイトウに来る。理由はティアンム中将の代わりに全体の指揮を取る為だ。

暫くコンペイトウ内を散策してるとルイス軍曹と会った。

 

「あ、シュウ少尉。こんな所で如何されました?」

 

「散策だよ。元はジオン軍の要塞だから今の内に見ておこうと思ってさ。もう改修工事してるし」

 

偶に通路の壁には連邦軍のマークにバツ印が有るし。多分あの辺りはまだ手が出せてないのだろう。

 

「言われてみれば確かに珍しいですよね。所でレイナ中尉は?」

 

「さあ?誰かと通信でやり取りはしてましたよ」

 

多分親辺りだろうな。連邦政府の上層部に顔が効く見たいだしね。色々融通が効くみたいだな。

 

「でしたら私も御一緒しても宜しいですか?ジオン軍の要塞を見る機会は多分今が最後でしょうから」

 

「別に良いですよ。因みにルイス軍曹は何かやる事とかあったのでは?」

 

「それは全て終わらせました」

 

気持ちの良い笑顔と共に言うのだった。流石ルイス軍曹だな。色々優秀なのが分かる瞬間だ。

コンペイトウ内部にはまだジオン兵の持ち物が多数残っていた。流石に機密情報とかは持ち出されたか処分されただろう。

 

「あ、彼処売店か?」

 

「本当ですね。こんな区画にも有るんですね」

 

売店は大分商品が残って無かった。だがキーホルダーとか小物系は残っていた。

 

「お?これジオン軍のマークのキーホルダーだ。他にもザクとドムの頭迄残ってるじゃん」

 

「ザクのキーホルダーは可愛いですね。ドムのキーホルダーも良いかも」

 

暫く2人で商品を物色する。本当は駄目な事だと理解してるが、ジオン軍の物資をそう簡単に持てる事は無いからな。

 

「俺はザクとドムとジオンのキーホルダーを買うかな」

 

「私はザクとドムので良いです」

 

俺は商品を物色した後、自分とルイス軍曹の分の商品のお金をレジに入れておく。幾らジオン軍の物資だとしても強奪はしません。尤も、お金置いても意味は無いだろうけどな。

この後もルイス軍曹と一緒に色々見て回る。しかし、流石は元ドズル・ザビ中将率いる場所なだけあって綺麗な場所だ。殆ど規律は守られてたのだろう。

 

「何かもっと珍しい物が有ると良かったな」

 

「ふふ。でも楽しかったですね。私はこういった探索とかはした事有りませんから」

 

如何やらルイス軍曹は楽しめた様だ。かく言う自分もワクワクしながら探索してたけどな。

 

「まあ戦利品も手に入れたしね。この事はお互い内緒ですよ」

 

「勿論です。2人だけの秘密です」

 

ルイス軍曹は人差し指を唇に当てながら可愛らしくウィンクする。多分レイナ中尉のやり方が移ったパターンだな。だが、それが良い。

この後は小隊の所に戻った訳だが、今考えればこれってデートと言っても良いのでは?ルイス軍曹を見るがドムのキーホルダーを眺めてる。まあ、どっちでも良いか。

 

この日の俺の日常はとても楽しく平和に過ぎたのだった。そして間も無く次なる戦場に向かうのだった。

 

……

 

宇宙世紀0079.12月27日。

 

漸くジムの修理部品が届いたそうだ。俺は格納庫に向かい様子を見に行く。格納庫には新型と思われるモビルスーツと武器が来ていた。そして整備兵達がモビルスーツに群がり各部の調整作業をしていた。しかし、一つだけ言える事が有る。

 

「俺のジム…何か解体されてるーーー!?」

 

俺のジムはジェネレーターが外されており、最早使い物になりそうになかった。更にジム自体も撤去作業に入っていたのだった。

 

「コートニー少尉、お疲れ様です。まあ、言いたい事は分かりますがね」

 

「モンド軍曹どうなってるんですか!俺のジムが!俺のジム〜!」

 

俺は自分の愛機だった残骸を指差し叫ぶ。俺の相棒が無残な姿に!

 

「落ち着いて下さい。少尉には新しい機体が配備されたんです。それが今我々が調整してるんです」

 

「ふえ?新しい機体?」

 

「ええ。ジムの予備部品を申請してたんですが、代わりに此奴等が来ましてね。彼処に技術士官が居るんで話を聞けば直ぐに分かるかと」

 

新しい機体?でも、あの機体ジム・ライトアーマーじゃ無いぞ。俺は技術士官の元に向かう。どっかで見た顔だな。

 

「あ、コートニー少尉お久しぶりです。ジャブローの時以来ですね」

 

思い出した。確か高出力ジェネレーターを渡してくれたダムナ技術中尉だ。

 

「お久しぶりですダムナ技術中尉。貴方も宇宙に来たんですね」

 

「ええ。今回は此方の機体の説明も兼ねて来ました」

 

ダムナ技術中尉の視線の先には2機の機体が鎮座していた。

 

「一つはRGM-79ジムの純粋な上位互換機である【RGM-79SCジム・スナイパーカスタム】と試作機である【RGM-79CRP試作高機動型ジム改】になります。コートニー少尉の戦闘記録データから試作機の方に割り当てられます」

 

「試作機ですか?という事は量産も視野に入れてるんですか?」

 

しかしダムナ技術中尉は首を横に振るう。

 

「いえ、量産に関しては有りません。高機動型に関しては、本来なら少尉が搭乗する機体だったRGM-79Lジム・ライトアーマーが有ります。この機体は高機動型ザクに対抗する為に作られたのです。取り敢えず資料をどうぞ」

 

俺はダムナ技術中尉から資料を受け取り中身を見る。

 

RGM-79CRP 試作高機動型ジム改

この機体を簡単に説明するなら高機動型ザクをモデルに制作された。コンセプトとしては高機動型ザクより更に高機動にする事で圧倒するだった。

 

「でも何で試作で終わったんですか?ジム・ライトアーマーが有ると言えども、こっちは装甲はそのままですよね」

 

なら防御面ではジム・ライトアーマーより優れてる訳だ。更にカタログスペックを見るに高機動型ザクより高い機動力があるらしい。

 

「そのー…コストが高い事と扱い難いんです。ですから量産機としては不合格になりまして」

 

「あ、成る程。確かに肩やら足やらにブースターが追加装備されてれば操作は格段に難しくなるわな」

 

通常のジムからの機種転換でも難しいだろう。特にブースターの出力は高機動型ザクを意識してか高い設定だし。

 

「更にですね。機動テストに於いてパイロットが気を失う事が有ったらしいので」

 

「それ唯の欠陥品じゃねーか」

 

機動戦で気を失うとか死にに行くようなもんじゃねえか。勘弁してくれや。

 

「しかしコートニー少尉ならきっと乗りこなせます。現にあの試作機には少尉の戦闘データがアップロードされてます。更に高出力ジェネレーターに換装してますから少尉なら行けます」

 

「俺の戦闘データはアップロード済みですか」

 

俺は嘗ての愛機であるRGM-79ジムを見る。

 

「俺のジムはどうなります?」

 

「損傷具合が激しいので解体されます。あ、少尉?」

 

俺は愛機の元に跳んで行く。そして頭部の所に行き手で触れる。バイザー部分は一部割れてしまっている状態だ。俺が上手く扱えなかったばっかりに壊れてしまった愛機。

 

「未熟な俺の所為でお前がボロボロになった。だけどそのお陰で俺は此処まで生き残れた。だから…ありがとう」

 

静かに感謝の言葉を口にして敬礼する。RGM-79ジムは俺にとって最高に良い機体だ。再びダムナ技術中尉の所に向かう。

 

「お待たせしました。ちょっとお別れを言いにね」

 

「コートニー少尉。まだ試作機は作業中です。ですので、もし良ければ少尉のRGM-79ジムのOSを移す事も可能です」

 

「ダムナ技術中尉?」

 

「元々の機体の素体は殆ど同じです。後は少しの手直しとアップグレードをすれば良いだけです」

 

「しかし、手間が掛かるのでは?」

 

俺の言葉にダムナ技術中尉は少し得意げな表情をする。

 

「私は技術中尉ですよ?特にプログラム関係は得意分野ですから」

 

俺は再び愛機を見る。愛機は何も言わ無いし語ら無い。だけど、俺はまだ相棒と戦いたい。

 

「ダムナ技術中尉、お願いします」

 

「お願いされました。少尉、死な無いで下さいね」

 

ダムナ技術中尉は手を差し出す。俺もその手を握り握手をするのだった。そんな2人を静かに見つめるシュウ少尉のRGM-79ジム。そのバイザーは少しだけ輝いていたのだった。

 

……

 

2人が握手してる時にレイナ中尉とアーク上等兵が格納庫に来た。

 

「あー!何よあの機体!まさか新型機が配備されたの!」

 

「うお!マジかよ!遂に俺にも新型機が来たのか!」

 

レイナ中尉とアーク上等兵は此方に来る。

 

「レイナ・ラングリッジ中尉ですね。お久しぶりです」

 

「ダムナ技術中尉でしたね。お久しぶりです。それであの機体が?」

 

レイナ中尉は緑と白のツートンカラーのRGM-79SCジム・スナイパーカスタムを指差す。

 

「はい。此方がラングリッジ中尉の機体の資料になります」

 

「はあ〜、これで私もシュウについて行けるかな?」

 

レイナ中尉はジム・スナイパーの資料を見ながら呟く。

 

「あ、あの。俺の機体はアレですか?何かブースターが沢山付いてる機体!」

 

アークは期待を表情に出しながらダムナ技術中尉に詰め寄る。だが、残念だったな。其奴は俺の機体だよ。

 

「いえ、貴方の機体は通常のジムのままになります。それではラングリッジ中尉とコートニー少尉には改めて機体に付いて説明させて頂きます」

 

「了解です」

 

「了解!ねね、シュウの機体資料も後で見せてよ」

 

「別に構いませんよ。代わりにジム・スナイパーカスタムの資料を見せて下さい」

 

「なら決まりね。ではダムナ技術中尉お願いします」

 

俺とレイナ中尉はダムナ技術中尉について行き機体の方に行く。

 

「……」

 

そのままの形で固まって1人取り残されたアークに声を掛ける勇気ある者は誰1人居なかったので有った。

 

宇宙世紀0079.12月29日。地球連邦軍【星1号作戦】の最終段階発令。目標ア・バオア・クー要塞に決定。レビル将軍率いる地球連邦軍第1連合艦隊はコンペイトウより出航。

同艦隊第3大隊にMS特務部隊第27小隊ラングリッジ小隊とサラミス級ロイヤルは配備される。また、ソロモン攻防戦で共闘したサラミス級3隻とモビルスーツ部隊が配備される。旗艦としてロイヤルが主導する。更にモビルスーツ部隊の整備、補給の為後方にコロンブス級補給艦2隻配備される。

 

地球連邦軍とジオン公国軍は最後の戦いに向けて戦力を揃える。そして誰もが様々な思いを胸に抱きながら戦いに赴く。

 

後に一年戦争と呼ばれる戦いの最終決戦が幕を開ける。誰もが自分達の正義と大義を信じ戦いに赴くのであった。




やべ…5000文字逝ってる。


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和平交渉…

宇宙世紀0079.12月29日。

 

「此方ガルム2準備良し。これより試作ジム改の機動テストを行います」

 

『了解しました。発進どうぞ』

 

「ガルム2、行きます!」

 

俺は今試作ジム改の機動訓練をしている。換装作業や調整は終了したが、機動テストは出来なかった。其処で宇宙要塞ア・バオア・クーに着く少しの間を使って行う事になった。

 

「テストは出来て2時間位だからな。集中してやら無いとな。頼むぜ相棒」

 

機体のコンソールをコツンと叩きブースターを加速させる。

 

「うおっ!?まだ全開じゃ無いぞ!」

 

全開にブースターを使用して無いのに関わらずジムの加速を軽く超えた。それだけで無く、高出力ジェネレーターの影響もあるのか加速に勢いがある。

 

「此奴を2時間で乗りこなせるか?いや、乗りこなさなきゃ駄目だ!」

 

ブースターを全開にする。凄まじい加速とGが俺を襲う。そのまま左右上下に機体を動かす。兎に角機体に振り回されっぱなしだった。機体の加速に付いて行くのが出来無いでいた。だが、徐々に目が慣れてくる。

 

「此処から本番だ。相棒、お前の力を全部見せろ。そして、俺に全てを委ねろ!」

 

更に機体を加速させランダム機動に入る。

 

『おい、見ろよアレ。スゲー下手糞な奴がまだやってるぜ』

 

『おいおい、燃料が勿体ねえだろうに』

 

『そう言うなよ。確か機体の慣らしだろ?まあ、あの調子なら弾除けにもならんがな』

 

他の哨戒任務中のジム部隊が鼻で笑っていた。彼等からしたら機体の加速に振り回されてる新兵に見えてるのだろう。だが、突然試作ジム改の動きが変わる。

 

「そうだ…この動き、この加速…お前は……やっぱり相棒だ!」

 

一気に機体のコツを掴んだ後は楽な物だった。加速に振り回される前に制御する。そしてまた加速させる。ブースターを全開にしても思った通りの機動が出来る。

 

「うはははーーー!!!此奴は最高かよ!!!」

 

機体のブースターを全開にして小惑星群に飛び込む。

 

『おい、彼奴小惑星群に突っ込んだぞ』

 

『え?なら事故る方に賭けるわ』

 

『じゃあ俺無事故な方な』

 

『お前、また分の悪い賭けすんのかよ。因みに俺も事故る方な』

 

他のジム部隊の連中も次々に賭けに参加して行く。但し、無事故派は1人だけだ。

 

「見えるから避けれる。機動が速かろうとも反応出来るから問題無い!さあ、行くぜ相棒!」

 

俺は複雑な小惑星群を駆け抜ける。操縦は慣れれば問題無い。これなら次の戦いでも生き残れる。そして何より嘗てのRGM-79ジムの似た感覚で操縦出来ている。

 

「共に生き残ろうぜ。なあ、相棒」

 

機体を加速させ小惑星群を突き進む。最早戸惑う事も無ければ梃子摺る事も無い。残り時間数分間の間、俺は試作ジム改と完全な一心同体になる為に操縦するのだった。

 

『え?…あの小惑星群をとんでもない機動で進んでんのか?』

 

『嘘だろ?あんなの出来んのかよ』

 

シュウ少尉の機体の動きを見ていた連中は唖然とする。最初は機体に振り回されていたにも関わらず、短期間で物にしたのだから。

 

『やった…賭けに勝ったあああーーー!!!』

 

蛇足だが1人だけ腕を上に突き出し喜びを全開に表してた奴が居たのだった。

 

……

 

試作ジム改をコロンブス級補給艦に着艦させる。試作なだけあって専用のパーツを使う為、整備には補給艦内部で行う事になる。因みについでと言わんばかりにレイナ中尉とアーク上等兵の機体も格納されていた。現在コロンブス級補給艦はサラミス級ロイヤルに接舷した状態だ。これなら直ぐに出撃体制が取れるからだ。

 

「ふう、最後は良い感じに仕上がったな。今日は良い夢見れそうだ」

 

機体から降りて試作ジム改を見上げる。最初は量産の見込みの無い試作機と言われて不安と不満は有った。だが今は違う。此奴は最高の機体だと。

暫く機体を見上げているとレイナ中尉とアーク上等兵が此方に来た。

 

「お疲れ様。機体の調子はどう?」

 

「最高ですよ。最後の方では自分の思い通りの機動が殆ど出来ましたからね」

 

「そっか。なら、これでよかったのかな?」

 

「まあ、そうだよな。シュウの機動は凄いもんな」

 

何やら2人の様子が可笑しい。何時もならもっとテンション高いのだかな。気になりアークを見る。するとアークは肩を竦めながら理由を教えてくれた。

 

「ほら、俺達小隊だろ?」

 

「そうだな。今更そんな事言ってどうすんだよ」

 

「俺達…お前の機動に付いて行くのが出来無いんだが」

 

アークの言葉を聞いて少し考える。そして2人を改めて見る。アークは仕方無いと言った表情をしていた。そしてレイナ中尉は少し剥れ気味である。

 

「私達がシュウに着いて行くだけの技量が無いのは理解してるわ。でも、足手纏いにだけはなりたく無かった」

 

「レイナ中尉。別に足手纏いなんかじゃ無いですよ」

 

「それでもよ」

 

そう言ってレイナ中尉は格納庫から出て行く。

 

「一応伝えとくわ。俺達はお前の援護が出来無いと判断したら徐々に後退して、旗艦のロイヤルと母艦のコロンブス級の護衛に廻る。まあ俺達の所為でお前の邪魔をする訳には行かないからさ」

 

アークは「お前も休めよ」と一言言い残し去って行く。俺は再び自分の機体を見る。これから先、小隊行動が出来無い状況になる可能性も有る。出来る事ならそんな状況にはしたくない。だが、最悪そうなる可能性も有るのだ。

 

「それでもやるさ。この戦争で死にたく無いしな」

 

俺も身体を休ませる為に自室に向かうのだった。

 

宇宙世紀0079.12月30日。レビル将軍率いる第1連合艦隊は宇宙要塞ア・バオア・クーに集結させる。星1号作戦は最終段階に入る。

艦隊を第3戦闘ライン集結させ決戦準備に入る。その時ジオン公国軍の戦艦【グレート・デキン】から和平交渉の連絡から来る。

 

……

 

サラミス級ロイヤル。

 

突然の警戒命令が来る。俺はすぐ様パイロットスーツに着替えてブリッジに向かう。

 

「一体何が起こったんだ?」

 

ブリッジに着くと全員がモニターを見ていた。其処にはジオン公国軍の旗艦役等に使われるグワジン級戦艦がレビル将軍の乗るマゼラン級【フェーベ】に近付いていた。

 

「きっと和平交渉の為に来たのよ」

 

レイナ中尉はモニターを見ながら誰にとも無く呟く。

 

「和平交渉?それは本当ですか!」

 

「間違い無いわ。だってジオン公国軍の象徴的とも言えるグワジン級が来たのよ」

 

「レイナ中尉の言う通りです。どうやらあのグワジン級戦艦には特使としてデキン公王が乗ってるとの事です」

 

「ほう。遂にジオンも落ちたか。まあ、この戦力を前に抵抗する自体間違ってる事だかね」フワァ

 

和平交渉に特使が来た。その時点で俺はモニターに釘付けだった。漸くこの長い戦争は終わる。誰もが願い続けて来た事だ。それが遂に叶う時が来た。

自然と口元が緩む。だが、こんな嬉しい知らせは最高に気分が良い。

 

地球連邦軍の兵士達は遂に戦争が終わると思っていた。この悲惨で残酷な争いに終止符が打たれる。何十億人の死が漸く報われる時が来たんだと。もう、誰かを殺す必要が無くなったと。

 

宇宙世紀0079.12月30日21:00。グレート・デキンはレビル将軍の乗るフェーベに接舷する。

 

終戦への第一歩が今正に始まろうとしていたのだった。

 

 

 

 

 

 

「老いたな…父上。時既に遅しなのだよ」

 

 

 

 

 

 

大きな悪意を残したままで。

 



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ソーラ・レイ

ソーラ・レイだけで簡単にこの後の流れが想像出来てしまうw


宇宙世紀0079.12月30日21:05。

 

宇宙要塞ア・バオア・クー司令部

 

「ア・バオア・クーのギレンである。敵のレビル艦隊の主力は3隊に別れて進行中であるが、ソーラ・レイ、ゲル・ドルバ照準でこの半分を壊滅出来る」

 

其処にはジオン公国軍の新兵器【ソーラ・レイ】が地球連邦軍本隊レビル艦隊に向けられていた。そして、発射命令がジオン公国軍総帥ギレン・ザビから降さる。

 

「ソーラ・レイ、スタンバイ」

 

『ソーラ・レイ、スタンバイ!』

 

【ソーラ・レイ】。それは彼等の故郷でも有り大切な場所でもあったコロニーの慣れ果て。ブリディッシュ作戦で自らの住処でもあったコロニーを再び兵器としてしまった。その犠牲となったサイド3のコロニー【マハル】だった。

 

『さあ、行ってくれ。お?825発電システムのムサイ、下がれ。影を落とすと出力が下がる!』

 

『アサクラ大佐。ソーラ・レイ稼働8秒前。7、6、5』

 

これから始まる光景に人は自らの行いに恐怖する。しかし、戦争がその感覚を鈍らせてしまう。

 

『4、3、2、1』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、宇宙に光が走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

……

 

サラミス級ロイヤル

 

「な、何だこの光は!!!」

 

「きゃあああ!?」

 

艦橋に居る者達は全員目を腕で隠す。圧倒的な光の何かが地球連邦軍第1連合艦隊の第1大隊とグワジン級を呑み込む。どの位の時間目を隠していたかだろうか。多分10秒か?1分位だろうか?光が収まった所を見る。

 

地球連邦軍第1連合艦隊の第1大隊は大半が消えていた。

そう、光の塊は地球連邦軍第1連合艦隊の多数の艦隊とレビル将軍の乗る旗艦マゼラン級フェーベとグワジン級グレートデキンをこの世から消したのだった。

 

『此方ナルナン!艦の被害甚大!救援を!』

 

『第1大隊は何処に消えた!?まさか消失したのか!』

 

『状況を確認し救助隊を編成しろ!』

 

『レビル将軍は?レビル将軍はどうなったんだ!』

 

『何が…何が起こったんだよおおお!!!』

 

通信には悲痛な通信しか傍受しない。俺は第1大隊が存在していた場所を見る。其処には沢山の残骸が浮かんでいた。

 

「艦隊が…消えたのか?」

 

自分の目の前の光景が信じられなかった。ほんの数分前まで存在していた大艦隊が消えた。そして、それを意味する事を理解する。いや、理解せざるを得ない。

 

「戦争は、終わるんじゃ無いのかよ!!!」

 

理解した瞬間我慢出来ずサラミス級のガラス部分を殴る。拳は痛むが気にしてる余裕が無かった。

 

「シュウ、嘆くのは後よ。今は機体に乗って警戒に入るわよ。アーク上等兵も聞いての通りよ」

 

「了解しました。シュウ少尉、これ以上の被害を出すのはな」

 

「分かってる。今、行くさ」

 

俺達モビルスーツパイロットは全員スクランブル出撃に入る。

 

「周辺警戒を厳にせよ!また救助隊の編成を行え。僚艦にも通達、第1大隊の救助を最優先とする!」

 

「了解しました。此方旗艦ロイヤル、これより救助隊を編成せよ。繰り返す救助隊を」

 

アーヴィント中尉は救助部隊を編成を急がせつつ僚艦にも打診する。俺達も急いで各自モビルスーツに搭乗して行く。

 

「コートニー少尉。一体あの光は何だったんです?」

 

整備兵の1人が聞いてくる。恐らく格納庫のモニター越しに見てたのだろう。

 

「あの光は…絶望の光さ」

 

皮肉も何もなく、唯そのままの意味を込めて教えた。多分この時の俺の顔色は優れなかっただろう。整備兵はそれ以上聞く事なく頷くだけだった。

 

「機体チェック。油圧、核融合、スラスター、OK。此方ガルム2、出撃準備よし」

 

『了解です。暫く待機していて下さい』

 

コクピットの中で考える。これから先どうなるのか。こんな状況でも戦いを続けるのか。考えても答えは出そうに無い。

 

『シュウ少尉、大丈夫?』

 

「レイナ中尉。大丈夫…とは言えませんね。後少しで停戦だったと思ってましたから」

 

『そうよね。でも、戦うしか無いわ。もし私達が戦わなかったら仲間が死ぬ』

 

「…そうですね。それだけは不味いですからね」

 

『その通りよ。それに、私達ラングリッジ小隊は仲間を見捨てないんだから!アーク上等兵も良いわね?』

 

レイナ中尉はアーク上等兵に対しても伝える。

 

『勿論です!シュウも周辺警戒をしっかりとな!』

 

「お前は相変わらずで安心したよ」

 

こんな状況下でもレイナ中尉とアーク上等兵は普段通りに振舞ってる。2人も色々不安があるだろうに。だが、そんな2人の姿を見て何となく落ち着く事が出来た。今は目の前の事に集中するしか無い。そして出撃命令が出る。

 

『艦隊の殆どは一時後退して部隊を再編成するとの事です。私達は周辺警戒と味方の救助を行います』

 

『了解よ。ラングリッジ小隊出撃用意。絶対に生存者を見つけるわよ』

 

「ガルム2了解」

 

『ガルム3了解です!』

 

『ラングリッジ小隊出撃願います』

 

コロンブス級の前方ハッチが開かれる。漆黒の宇宙は唯静かに有るのみ。

 

『ガルム1、出るわよ』

 

「ガルム2、行きます」

 

『ガルム3、出るぜ』

 

俺達は周辺警戒を主にして生存者を探す為に出撃するのだった。

 

……

 

ソーラ・レイの攻撃により地球連邦軍の30%の戦力が壊滅した。この結果を得たギレン・ザビ総帥はア・バオア・クーに居る全将兵に対し演説を布告する。

 

【敢えて言おう!カスで有ると!!!】

 

この演説によりジオン公国軍の士気は最高潮に達したのだった。

 

宇宙世紀0079.12月31日5:00。地球連邦軍残存艦隊の再編成完了。

宇宙世紀0079.12月31日8:10。地球連邦軍は宇宙要塞ア・バオア・クー攻略戦を開始する。

 

今此処に宇宙世紀最大と言われる戦いが行われる。それは地球連邦軍とジオン公国軍の最後の決戦。後に一年戦争と呼ばれる激戦と言える長い戦争が終焉に向かう。

例え、誰もが望む結果になる事が無くとも。

 

……

 

コロンブス級補給艦

 

地球連邦軍は艦隊の再編成を終わらせ、星1号作戦の強行を決めた。またあの攻撃を受けたら堪らないからな。それなら今の戦力でア・バオア・クーを攻略した方が良いだろう。

MS特殊部隊第27小隊ラングリッジ小隊は地球連邦軍第2、第3大隊と共にNフィールドに攻撃を仕掛ける事になる。

 

「そろそろ時間だな」

 

機体の状態を確認すると同時に武装も確認する。

BR-M-79C-3ビームスプレーガン。

今迄のBR-M-79C-1ビームスプレーガンより高性能化。更に射撃センサーも取り付けられている。前作のビームスプレーガンは全て頭部センサーに頼っていた。理由は量産性を重視していた為だ。しかし戦場に置いて頭部破損率は低くは無い。そして此処に至りRGM-79Cジム改に合わせて配備されている。

GR・MLR79-90㎜ロング・ライフル。

90㎜マシンガンの構造を利用して開発された。現在教導隊等の一部部隊で実戦運用試験が行われてる。今回試作ジム改に合わせて配備された。恐らく試作ジム改の序でに高機動戦闘時に於ける実戦データの収集が目的だろう。唯、マガジンは120発と多く90㎜マシンガンより継戦能力は高い。

R-4ビーム・ライフル。

RGM-79SCジム・スナイパーカスタムの専用武装と言っても過言では無い武装。ジム・スナイパーカスタムの頭部センサーに合わせたFCSになっており、基本他の機体での運用は想定されては無い。

 

RGM-79CRP試作ジム改にはビームスプレーガン、ロング・ライフル。

RGM-79SCジム・スナイパーカスタムにはビーム・ライフル、90㎜ガトリングガン。

RGM-79ジムにはビームスプレーガン、ハイパーバズーカ。

 

「しかしロング・ライフルか。見た感じは結構いい感じに仕上げられてるんじゃ無いか?」

 

本来の目的は支援分隊火器としての役割だ。命中率も高く装弾数も多いが、銃身は長く取り回しは良いとは言えない。しかし試作機と言い運用試験武器と言い、俺はいつテストパイロットになったんだろうか?

 

『皆、そろそろ出撃になるわ。これから先激戦区に入る。私から皆にに言う事は少ないわ。私達は生き残る。生きて帰るわよ。その為には仲間を絶対に見捨てない事』

 

レイナ中尉は静かな口調で俺達に語り掛ける。

 

「レイナ中尉、そんなの当たり前ですよ。この小隊だけじゃ無い。この艦隊とも生きて帰りたいですからね」

 

『シュウ少尉の言う通りですよ。俺達は生きて帰る。絶対に仲間は見捨てませんよ』

 

俺もアーク上等兵も充分に理解している。そして遂に出撃命令が下る。コロンブス級補給艦にはカタパルトが設置されており、其処に機体を設置させる。

 

「此方ガルム2。カタパルト接続良し。出撃準備完了」

 

『了解です。進路クリア、発進どうぞ』

 

ルイス軍曹の言葉を皮切りにブースターを吹かす。

 

『シュウ少尉、どうか御無事で』

 

モニター越しのルイス軍曹は不安そうな表情をしている。俺は右手でグッドサインを出しながらウィンクする。これはレイナ中尉の直伝の技である。

 

「ガルム2、シュウ・コートニー少尉…行きます!」

 

カウントダウンが終わり加速的なGが身体を襲う。そして漆黒の宇宙に大小様々な光が瞬いている中に向かって行く。目標は目の前の敵を倒し宇宙要塞ア・バオア・クーに取り付く事だ。

 

「さぁて、此処からが正念場だ!行くぞ!!!」

 

自身に気合を入れながら敵の弾幕の中を突き進んで行く。これから先の平和を勝ち取る為に。

 




今年は此処までです。またストック出来次第投稿して行きます。
それでは皆さん、良いお年を〜(・ω・)ノシ


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ア・バオア・クー攻防戦1

明けましておめでとう御座います。今年も宜しくお願いします。

そして誤字報告と修正ありがとうございます。


宇宙世紀0079.12月31日8:10。

 

地球連邦軍は最初にソロモン攻防戦と同じ戦法を取る。ミサイルの弾幕の中にビーム撹乱幕発生装置を積んだパブリク戦闘艇による先制攻撃を行い、戦艦やア・バオア・クーのビーム砲台を弱体化させる。

 

『各機!散開しろ!敵に此方の存在がバレてる!』

 

『食い付かれてる!誰か!誰かッ!?』

 

『後退だ!一度後退してわああああ!!!』

 

しかしギレン総帥は直ぐに作戦を見抜き、瞬く間にパブリク部隊は壊滅的打撃を受けてしまう。

 

宇宙世紀0079.12月31日8:40。第2、第3大隊からモビルスーツを出撃させる。その中にはMS特殊部隊第27小隊ラングリッジ小隊も居た。

 

『全艦載機出撃開始!敵要塞に取り付き制圧せよ!』

 

艦艇から次々とモビルスーツ部隊が出撃する。そしてコア・ブースターや他戦闘機も順次出撃して行く。そんななか地球連邦軍艦隊に向け衛星ミサイルが撃ち込まれる。

 

『か、回避だ!回避しろ!』

 

『左舷第3艦橋被弾!連絡が取れません!』

 

『直撃です!これ以上艦が保たない!』

 

何隻もの艦艇が爆沈して行く。だが地球連邦軍の攻勢は止まる事は無い。

 

『連邦のモビルスーツ部隊Nフィールドより接近!かなりの数だ!』

 

『迎撃だ!連邦軍を叩き潰せ!』

 

『敵戦力の詳細を報告しろ。曖昧な報告等役に立たんぞ!』

 

Nフィールドは地球連邦軍、ジオン公国軍の両陣営のモビルスーツ部隊が入り混じる。

 

「この、当てれるもんなら当ててみろ!」

 

試作ジム改で機動戦を仕掛ける。敵も此方を視界に捉え攻撃をして来る。ミサイルや弾丸の攻撃を回避して反撃をする。

 

「この機動なら、これで」

 

ランダム機動を行いながらザクに対しロング・ライフルを撃つ。集弾率が高いのか殆どの弾がザクに直撃。ザクは爆散する。

 

『上方に敵機よ!』

 

レイナ中尉からの警告に上方に視界を入れて回避する。其処にはドムやザクが次々と接近して来る。それに対し味方ジム、ボール部隊も突撃する。

 

『ジオンめ。散々仲間を焼き殺しやがって。生きて帰れると思うなよ!』

 

『此処が踏ん張り所だ!連邦の攻勢を叩き潰せ!』

 

『くたばれ!ジオンのクソ共が!』

 

『地球連邦の圧政を此処で終わらせるぞ!ジーク!ジオン!!!』

 

お互い殺し殺され一瞬の光となり宇宙の塵となって消えて行く。

 

「ガルム1、3援護頼むぞ。正面の敵を俺に引きつける。」

 

『分かったわ。ガルム2任せたわよ』

 

『マジかよ。ガルム2死ぬんじゃ無いぞ』

 

一気に敵に向けて突撃する。

 

『各艦ガルム2の援護!砲撃始め!』

 

サラミス級からの援護射撃を受けて囮になる。

 

『あのジム度胸があるじゃ無いか。トマホーク隊も続くぞ。奴だけに良い所を取られるなよ!』

 

味方のジム・コマンド隊が続き、更に味方のジム、ジム改の部隊も追従する。

 

『敵部隊正面より接近!迎撃始めえええ!!!』

 

『モビルスーツ隊は敵を本艦に近づかせるな!』

 

ムサイ級、チベ級からメガ粒子砲が撃ち込まれる。ザクやドムに新型機と思われる機体も来る。

 

「くっ、遂に敵さんもビームライフルを持ち始めたか。だが、負けんぞ」

 

ビームやミサイルの弾幕を回避しながら新型機に照準を合わせて撃つ。しかし新型機は回避行動を取るものの間に合わず撃破される。

 

『新兵は後方に退がらせろ!艦の防衛に回せ!』

 

『これ以上ガキ共を前線に出すんじゃねえ!見殺しにする気か!』

 

ザクとドムが此方に接近。俺もシールドを構えてロング・ライフルを撃つ。俺の動きにジム・コマンド隊も合わせる。

 

『ほら!ビームの味は美味いか?』

 

『連邦の数が多過ぎる!注意しろ!』

 

『うがああああ!?!?』

 

『此方の方が練度は高いぞ!恐れず叩き潰せ!』

 

最早敵も味方も関係無い位の乱戦になる。

 

『第2次戦力を前線に回せ。前線を抜ける為なら艦隊防衛部隊も前線に回す必要も有る』

 

更にジムやボール部隊が前線に出る。中にはジム・キャノンも少数確認する。しかし、地球連邦軍の侵攻を阻む存在がNフィールドに居た。其奴は両陣営のどの戦艦より大きく前線のモビルスーツ部隊の補給と修理を兼ねている。又艦砲もかなりの威力が有り地球連邦軍の艦艇にも被害が出ている。

 

「此方【空母ドロス】。敵の侵攻は食い止めれている。各部隊、此処が正念場だ」

 

空母ドロスの艦長は味方を鼓舞しつつ戦況を的確に把握していた。このままならNフィールドは維持出来ると。

 

「艦長。司令部より命令来ました。空母ドロスは前進して前線を押し返せ。との事です」

 

「そうか。なら決まりだ。各艦艇に通達。空母ドロス前進する。共に前進し援護されたし。このまま連邦軍を押し潰す」

 

味方に通知した後、空母ドロスは前線を押し上げる。それに追従する艦隊。

 

『畜生!あの馬鹿デカイ空母から次々とモビルスーツが出て来るぞ!何機搭載してんだよ!』

 

『艦砲!敵巨大空母を狙え!』

 

『無理です。射程が足りません。更にビーム撹乱幕が散布されており威力が落ちます』

 

『ミサイルだ!ミサイルを撃ちまくれ!』

 

『モビルスーツ隊は敵巨大空母を撃破せよ。そうすれば敵の防衛に穴が開くぞ』

 

地球連邦軍も空母ドロスに狙いを絞り始める。だが、敵は他にも居る。

 

「下方より高速で接近する機影確認!熱源急速に上昇!来ます!」

 

「左舷全力噴射!」

 

サラミス級ロイヤルは回避行動を取る。その直撃ビームが真横を通り過ぎる。結果ロイヤルは回避した物の別のサラミス級にビームが直撃してしまう。

 

「対空弾幕!敵を本艦に近寄らせるな!」

 

アーヴィント中尉は直ぐさま弾幕を展開する様に指示を出す。そして味方艦隊もそれに追従する。

 

『へへ、此奴は鴨だぜ。食い放題だ!』

 

『ドロスの連中ばかりに任せられっかよ。対艦攻撃は俺達の役目だぜ』

 

『今更そんな弾幕何ぞ意味が無いわ!』

 

その時、3機のMA-05ビグロが地球連邦軍艦隊に向け強襲を仕掛けたのであった。



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ア・バオア・クー攻防戦2

3機のビグロは地球連邦軍艦隊に向け突撃する。地球連邦軍も慌てて迎撃するが間に合わない。

 

『先ずは手前からだ!受け取れ!』

 

ビグロから放たれるビームはサラミス級の船体を真っ二つにする。更に近くに居るサラミス級にミサイルを撃ち込む。ミサイルを迎撃するが間に合わず被弾。更にビグロのクローが船体にダメージを与える。僚機のビグロも次々に連邦軍艦隊に攻撃を仕掛ける。この短い間に4隻のサラミス級が轟沈する。更にジムやボールをも撃破して行く。

 

『良し。一度離脱するぞ』

 

地球連邦軍艦隊に対する強襲に成功したビグロ隊は撤退する。しかし、簡単に逃がす程戦場は甘くは無い。

 

「狙いはバッチリ。喰らいなさい!」

 

ガルム1からの狙撃がビグロの後部エンジンに直撃する。ビグロのパイロットは何が有ったのか理解出来ず機体諸共爆散する。

 

『ジャック!隊長、ジャックが!』

 

『兎に角一度離脱だ。このまま居座れば嬲り殺されるぞ』

 

艦隊からの追撃を回避しつつ一度母艦であるドロスに戻ろうとする。

 

『一度態勢を立て直して再度攻撃を仕掛けるぞ』

 

『了解。クソ、ジャックの奴が…』

 

空母ドロスに向かう。しかし、この場所はNフィールド激戦区。そして、彼等の上方から高速で接近する機影が居た。

 

『ロックアラート!回避だ!』

 

『隊長、上に1機来ます!』

 

彼等が確認したのは高速で接近して来る機体。

 

「この距離なら!」

 

ビームスプレーガンで狙いを付けビグロに撃ち込む。ビームは何発かはビグロに当たる。だが致命傷には至らない。

 

「なら此奴で!」

 

『この野郎!来るなら潰してやるぜ!』

 

1機のビグロが此方に向かって来る。俺はビームスプレーガンを仕舞いビームサーベルを抜く。

 

『待て!無闇に行動はするな!』

 

『大尉、直ぐに片付けて戻りますよ!』

 

ビグロはメガ粒子砲を放ちながらクローを振り翳しながら接近。ビームを回避してビームサーベルを構える。そして、一気に回避機動を取る。

 

『此奴!何を!?』

 

「ガルム3、打ちかましてやれ』

 

『おうさ。受け取れ緑の蟹野郎!』

 

ガルム3からハイパーバズーカが数発撃ち込まれる。弾頭は真っ直ぐにビグロに向かって行き2発直撃する。

 

『うわあああ!?ま、まだ動ける!畜生めガッ!?!?』

 

そして追撃にガルム1からのビームスナイパーライフルが直撃。流石のビグロも耐え切る事が出来ず爆散する。

 

『ニック!貴様等、唯で済むと思ってるのかあああーーー!!!』

 

もう1機のビグロも反転してガルム1、3を狙う。その時、ビグロの機体に振動が走る。何事かとモニターで確認しようとすると。

 

「俺の機動力を把握してなかったのが運の尽きだ」

 

『なっ!?いつの間に!』

 

ビグロのパイロットが最後に見た光景はビームサーベルを自身の機体に突き立てられる瞬間だった。

 

……

 

ビームサーベルを突き立てると黒煙を上げ始める。そしてある程度ダメージを与えてビグロから離れる。暫くフラフラと飛び続けるが爆発して宇宙に散って行く。

 

「さて、一旦燃料を補給しないとな。これ以上は無理だな」

 

『そうね。私の方もエネルギーが大分危ないわ』

 

『こっちはまだ余裕有りだ。なら先に補給に行けよ。周辺警戒は任せな』

 

「おう頼むわ。またビグロが強襲して来たら最悪だからな」

 

俺達は一度母艦に帰還する。その僅かな一時だが休息を取る。

 

『ガルム1、2着艦して下さい』

 

『了解よ』

 

「了解です。ガルム1、レディーファーストでどうぞ」

 

『あら、ありがとう』パチリ

 

感謝しつつウィンクするレイナ中尉。ほんの僅かな補給と休息の後は、敵大型空母ドロスに攻撃を仕掛ける。あの空母ドロスが居る限り俺達は前に進めない。

 

『ガルム2、補給完了しました。いつでも発進可能です』

 

「了解。シュウ・コートニー、行きます!」

 

再び宇宙に飛び出す。そして遂に空母ドロスの撃破の為に向かう。

 

「うげ、次々とモビルスーツが出て来てる」

 

『それでもやるしか無いわ。でないと味方が前に進めないもの』

 

『やってやろうぜ!何たって俺達にはラッキー野郎が居るんだからさ。頼むぜ』

 

「全く、こんな時まで俺を頼んなよ!」

 

そう言いつつ機体を加速させ前に出す。そして近くでは仲間達が次々と空母ドロスに向かって攻撃を仕掛けて行く。

 

『あのデカブツさえ倒せば活路は開く!各員奮闘せよ!』

 

『言われるまでも無いんだよ!馬鹿かよ!』

 

『誰か!有りっ丈の弾持って来い!大至急だ!』

 

『畜生!護衛のザクが妙に強い!コッチはジム何だぞ!?』

 

空母ドロスからの艦砲や弾幕も凄まじいが、搭載機であるモビルスーツ部隊はかなりの手練れだ。更にガトル戦闘機も多数存在しており前線を乱している。

 

『連邦など恐るるに足らず。各機此処で全て終わらせるぞ』

 

『我々にはスペースノイドの独立と言う大義があるのだ。貴様等とは土台からして違うのだ!』

 

『突撃だ!打倒連邦を成して真の独立を勝ち取るのだ!』

 

地球連邦軍が浮き足立つのを感じてジオン公国軍は勝ちを確信した。地球連邦軍の主力であるNフィールドの防衛が出来ている。この時点で勝ちは決まったような物だと。

 

『このまま連邦を蹴散らすっ!?な、何だあああ!?!?』

 

突如前方に居たザクが爆発する。レーダーを確認すれば高速で接近する機体を確認する。

 

「これ以上仲間をやらせるかよ」

 

ロング・ライフルで次々と狙いを付けて撃ちまくる試作ジム改。しかし相手は激戦を生き抜いて来た猛者と言っても良い者達。直ぐに態勢を立て直して迎撃に入る。

 

『唯速いだけの機体だ。間合いに気を付けろ』

 

『スピード勝負なら俺等に任せな』

 

ガトル戦闘機隊が試作ジム改に殺到する。しかし、突如横からビームがガトル戦闘機を破壊する。

 

『貴様等の旧式機なんぞ大した事無いんだよ。トマホーク隊、奴の為に血路を開くぞ!』

 

「感謝するぞ!」

 

トマホーク隊の隊長は親指を立てて戦闘に入る。俺は敵モビルスーツ部隊に攻撃を仕掛ける。

 

『く、追撃は一時中止だ。あの機体から始末するんだ』

 

大小様々な弾幕が試作ジム改を狙う。だが当たらない。

 

「くううう!?こんな弾幕初めてだ!だが、引き退る理由には無らんぞ!」

 

回避機動を取りながら接近。更にロング・ライフルで反撃して行く。

 

『くそ、何で当たらないんだ!まさかニュータイプだと言うのわあああ!?火があああ!!!』

 

『ニュータイプが何故連邦に与するか!』

 

1機のドムがザクマシンガンを撃ちながらヒートサーベルを抜く。此方もシールドを構えながらビームサーベルを抜く。

 

「格闘戦は得意じゃ無いんだよ!」

 

更に試作ジム改を加速させる。俺は一撃離脱が得意なんだよ。両機が一瞬重なる。そして試作ジム改はそのままドムの横を通り過ぎる。

 

『は、速い…、あの速さの、中で!?』

 

ドムのパイロットはシュウの的確な攻撃に戦慄しながら機体と共に爆発。宇宙の塵になった。

 

『敵高速機、ドロスに接近!』

 

『ドロスに張り付かせるなど許さんぞ。各艦、各機は集中攻撃。敵を叩き潰せ!』

 

一時的に試作ジム改に攻撃が集中する。だが、そのお陰で他の部隊は少しの間だけ態勢を整える事になる。

 

「覚悟を決めろ!この戦争に参加した時点で逃げれないんだ!なら、前を向いて生き残るんだ!!!」

 

自身に声を掛けながら機体をランダム機動を取る。普通なら最早どんな風に機動してるかは分からない。だが、シュウ・コートニーはモニターと計器を見ながら操縦して行く。

 

『ほう、中々の腕前と見た。ならば私の相手をして貰おうか』

 

突如前方から急接近してくる機体があった。黒、灰色がベースになっておりコクピット部分は赤色で塗装されてる【高機動型ザク】が此方に向かって突っ込んで来た。

 

「こんな時にエース機かよ。そう言うのは他所に行ってくれ!」

 

ロング・ライフルで迎撃するがあっさり回避される。そのまま俺達は機動戦に入る。

 

『ドロス、此奴は俺に任せて貰おう』

 

『了解した。頼むぞ【黒き閃光】』

 

『任せておけ。二つ名に恥じぬ戦いを見せてやろう!』

 

黒い高機動型ザクと試作カラーの試作ジム改は高速機動の中でお互いに銃口を向けるのだった。何方も同じコンセプトの機体である以上、自身の技量だけが頼りになる。



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ア・バオア・クー攻防戦3

Nフィールドでの戦いはジオン公国軍の優勢になっていた。大型空母ドロスを中心として地球連邦軍に対して有利に進めていたからだ。しかし、この時Sフィールドからホワイトベースを中心に第1大隊の生き残りである25隻の艦隊が突入して来ていた。ジオン公国軍は脇腹を突かれた形になってしまう。

そんな戦闘中に宇宙要塞ア・バオア・クー司令部にてギレン・ザビ総帥には余裕の表情が出ていた。

 

「フフフフ、Nフィールドはドロスの隊で支えきれそうだ」

 

司令部にてギレン・ザビ総帥は勝ちを確信していた。何故なら地球連邦軍の主力部隊を抑え切れているのだ。そして司令部に居る者達も同じ気持ちであった。

 

「結構な事で」

 

「ん?」

 

そんな彼の背後にキシリア・ザビ少将が詰め寄る。

 

「グレート・デキン、父が乗っていた。その上で連邦軍と共に…何故です?」

 

「やむを得んだろう。タイミングずれの和平交渉が何になるか」

 

その言葉を聞いたキシリア・ザビ少将は自らの持つレーザーガンの銃口をギレン・ザビ総帥に向ける。

 

「死なす事は有りませんでしたな。総帥」

 

「ふ、冗談はよせ」

 

この瞬間、ギレン・ザビ総帥は冗談だと言い切った。何故なら今は地球連邦軍との戦闘中。更にSフィールドからも侵攻してると情報が来ていたのだ。しかし、運命は彼の予想を裏切る。

 

「意外と…兄上も甘い様で」

 

戦いは更なる混迷に突入する。それと同時にジオン公国軍に大きな混乱を招く事になる。その混乱は長きに渡る一年戦争の幕を降ろす結果になるとしても。

 

宇宙世紀0079.12月31日9:25。宇宙要塞ア・バオア・クー司令室にてキシリア・ザビ少将がギレン・ザビ総帥を【父殺し】と称して射殺。後に宇宙要塞ア・バオア・クーの指揮はキシリア・ザビ少将が引き継ぐ。

同時刻、Nフィールドでは未だ戦いは続いていた。

 

……

 

2機の機体はお互い一歩の退く事無く戦い続けていた。

 

「この、いい加減落ちろ!」

 

『く、何時迄も貴様に構ってる暇は無いのだ!』

 

試作ジム改と高機動型ザクはビームサーベルとヒートホークをぶつけ合いながらNフィールドを縦横無尽に移動しながら戦い続ける。

 

『敵ムサイ補足しました』

 

『良く狙え!確実に仕留めるんだ!』

 

サラミス級がムサイ級を補足。しかしムサイ級も同じ事。

 

『各砲座照準良し。いつでも行けます』

 

『良し、撃ち方始めええーーー!!!』

 

その瞬間同時にメガ粒子砲が発射される。しかしミノフスキー粒子とビーム撹乱幕が狙いを乱す。

 

『上空より熱源接近!コレは、友軍機と敵機です!』

 

『何?モニターに出せ!』

 

其処にはとんでもない機動で戦い続けてる2機が接近していた。

 

『対空砲!敵機を狙え!』

 

『ミサイル発射用意!ザクを援護しろ!』

 

サラミス級から対空砲、ムサイ級からミサイルが撃ち出される。しかし、そんな攻撃をアッサリ回避する2機。そのまま2隻の陰に隠れながら戦闘を継続する。

 

「これで、落ちろ!」

 

ロング・ライフルを撃ちながら高機動型ザクに接近。相手は最低限の回避で間合いを更に詰めながらザクマシンガンを撃つ。

 

『連邦の奴、中々良い腕だ。だが、これで終わらせる!』

 

お互いに銃弾の応酬をする。しかし、そんな戦闘の中に入ってしまってるサラミス級とムサイ級は堪ったものでは無い。

 

『右舷直撃!各部にも被害が出ています。このままでは戦闘に巻き込まれます!』

 

『回避だ!回避しろ!このままでは此方が沈む!』

 

サラミス級は回避機動を取ろうとする。

 

『敵艦移動してます』

 

『進路そのまま。敵艦の移動予測場所に砲撃開始!』

 

ムサイ級は退く事無く砲撃を開始する。そしてサラミス級の横っ腹にビームが直撃。更に機関部に命中して爆散する。

 

『敵艦やりましっ!あああ!?』

 

その直撃、ビームスプレーガンから放たれたビームが艦橋を直撃。ムサイ級は操縦と指揮が不能になる。

 

『貴様だけは仕留める!』

 

弾切れになったザクマシンガンを放棄してヒートホークを構えて接近する。そんな高機動型ザクにビームスプレーガンを撃つ。しかし命中する事は無い。

 

「くそ、こっちの機体の方が性能は上なんだぞ!」

 

技量の差だとは思いたく無い。しかし、現に高機動型ザクに押されてる。そのままビームサーベルを抜き再び接近戦に入る。

 

「この私相手に此処まで粘るとはな。だか、此処までだ!」

 

僅かに間合いが開く。その隙にビームスプレーガンに切り替えるシュウ。しかし、その隙にブースターを全開にして近づく。

 

『この距離なら当てれる!落ちろ!』

 

ビーム紙一重で避ける。

 

「ザクの肩は飾りじゃ無いのだ!!!」

 

ビームが左肩の棘付きに当たる。だが、そのまま突っ込む。試作ジム改はシールドを構えて防ぐ。

 

「くうう!このっ!?」

 

『終わりだ。沈めええええ!!!』

 

「しまっ!?」

 

シールドの陰からヒートホークを振るう。振るった先は試作ジム改のコクピット部分。しかし幸運の女神はシュウに微笑み掛ける。

 

『シュウ!1人で突っ込むな!』

 

『此奴、シュウから離れなさい!』

 

別方向からビームが高機動型ザクに迫る。しかし、直ぐに回避機動に入る。

 

『大尉、御無事ですか?敵に囲まれつつ有りますよ』

 

『ええい、後一歩の所で。ん?チッ、燃料切れだな。一旦ドロスに戻るぞ』

 

仲間のザクと共に退く高機動型ザク。しかしそんな2機に追撃をするガルム1、3。

 

『この逃がさないわよ!』

 

『俺だって、シュウばかりにカッコ付けさせられっかよ!』

 

高機動型ザクを狙うガルム1。そしてザクに向かってビームスプレーガンを乱射するガルム3。

 

『大尉!早く後退を!敵が追撃してっ!うわあああ!機体が!?』

 

ザクマシンガンで応戦していたザクにビームスプレーガンのビームが直撃。機体は少し動きを止めて爆発する。

 

『ヤークル!貴様等、この事は忘れんぞ!!!』

 

高機動型ザクはそのままドロスに向かい後退する。

 

「た、助かったよ。2人共ありがとう」

 

『へへ、まあな。それより見たか?ザク1機撃墜したぜ!』

 

『ほらほら一旦後退よ。私達も敵の空母に攻撃をしないと味方の艦隊が不味いわ』

 

俺達は再び弾薬と燃料を補給する為に一度コロンブス級に戻るのだった。



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ア・バオア・クー攻防戦4

弾薬と燃料を再び補給して直ぐに戦場に戻る。そして再び空母ドロスに向かい攻撃を仕掛ける。その頃空母ドロスはNフィールドでの防衛に奮戦していた。

 

「司令部との通信が取れんだと?連絡が取れるまで通信を続けるんだ」

 

「了解です」

 

通信兵は再度司令部との連絡を試みる。

 

「このまま前進し続けるのは不味い。幾らドロスが堅牢と言えども限界は有る。各艦に通達、本艦を中心に現宙域を死守する。この場を守り切れれば勝利は我々ジオンに有る!」

 

ドロスの艦長はNフィールドに居る艦隊に鼓舞する。しかし突如Sフィールドに現れた地球連邦軍第1大隊とホワイトベースが侵攻して来た事により後続に居る部隊がSフィールド防衛に行ってしまった事、そして司令部との連絡が途絶えた事がNフィールドでの戦闘に大きな変化を及ぼす。

 

……

 

Nフィールドには空母ドロスを中心に戦線を維持するジオン公国軍。しかし次々と轟沈して行く味方艦隊により、徐々に防衛網に穴が出来て来る。

 

「ガルム1、3。左翼の方がモビルスーツが少ない。これより吶喊して敵戦線を混乱させます。止めても無駄ですけど」

 

『分かってるわよ。止めるつもりは無いわ。唯、無茶はしないでよ』

 

そいつは無理な相談だなと内心思いながら敬礼する。そして試作ジム改のブースターを全開にして敵陣に突っ込む。今は他のモビルスーツ部隊が空母ドロスに向かい攻撃を仕掛けてる。しかし、周りのムサイ級が邪魔になってる状態だ。

 

「なら、その障害を取り除く迄」

 

ムサイ級の周りには護衛のゲルググやドムが居る。相手も此方に気付き迎撃に来る。

 

『く、来るのか?この!落ちろ!落ちろおお!』

 

2機のゲルググとドムからのビームやバズーカ弾を避けながらロング・ライフルで反撃。ロング・ライフルの命中率は非常に高い。正直ビームスプレーガンより使い勝手は良い。

そしてロング・ライフルから放たれた90㎜弾は吸い込まれる様にドムに命中。ドムは回避機動を取る間も無く爆散。その間にもゲルググとの間合いが詰まって行く。

 

「止まったら集中砲火だ。このまま突き進む!」

 

シールドを構えロング・ライフルを仕舞う。そしてビームサーベルを抜きゲルググに接近。

 

『此奴!来るな!来るなあああ!?』

 

「ッ!子供の声だと?」

 

恐らく俺より年下の声だろう。オープン通信から偶然聞こえた。しかし今更引き退るつもりは無い。ゲルググとの間合いを詰めビームサーベルを振るう。そして…ゲルググの両足を斬り割く。

 

『ジミー!ど、どうすれば!?』

 

更にもう1機のゲルググにも近付く。相手もビームライフルを撃つが最早ビームライフルを撃つ間合いでは無い。今度はビームライフルを持つ右腕を斬り飛ばす。そして序でにゲルググのコクピットに蹴りを入れておく。

 

「そのまま動かなければ死ぬ確率は減るぞ」

 

2機のゲルググに向かいオープン通信で伝える。伝わったか確認する事無く、そのままムサイ級に向かう。

 

『モビルスーツ隊やられました!』

 

『迎撃急げ。ミサイルと艦砲で敵を近寄らせるなよ』

 

ムサイ級から多数のミサイルと艦砲が放たれる。それを回避機動を行い避けて行く。その時、ムサイ級の艦橋に一筋のビームが貫く。どうやらレイナ中尉が上手く狙撃をした様だ。そして、そのビームに気付いた他の艦艇は慌てて艦砲の一部を向ける。しかし、それは悪手だ。

弾幕が薄くなった時点で一気に敵艦隊に近付く。そして艦橋やエンジン部分に次々と90㎜弾を撃ち込む。敵艦隊は完全に混乱してしまう。そして、その隙を見逃す程地球連邦軍は甘く無い。

防衛が薄くなった左翼側から次々とジム、ボール部隊が突入。更に後方の艦隊からメガ粒子砲が敵艦に次々に撃ち込まれる。

 

『敵の後続が少ないぞ!今がチャンスだ!ドロスに取り付け!』

 

『あのデカブツさえ落とせばコッチのもんだ!』

 

次々とドロスに近付き攻勢を強める地球連邦軍。更に前線を押し上げた結果、マゼラン級の艦砲射程内に入る。

 

『モビルスーツ隊順次ドロスに取り付きつつ有ります』

 

『味方に当てるなよ。砲撃始めええ!!!』

 

マゼラン級からの艦砲も次々と直撃し始めるドロス。

 

『第2ブロック被弾!』

 

『第2ブロック隔壁閉鎖。此方からも反撃するんだ!味方はどうなってるか!?』

 

『味方艦隊は尚も健在。しかし左翼側から連邦が侵入してます』

 

『モビルスーツ隊を左翼に廻せ!右翼は艦隊で対応しろ!それから格納庫に居るモビルスーツは全て出撃させろ!』

 

しかし右翼側のモビルスーツ部隊は泥沼に近い戦いを強いられており左翼側に行く事が出来無い。更に格納庫も最早修羅場で有り、これ以上速くする事が物理的に出来無い。

 

『左翼より高速で接近する機影!アレは、奴です!』

 

ドロスの艦橋モニターに映し出された機影は高機動型ザクに近いシルエットだが、決定的に違うのは味方では無い事。試作ジム改が真っ直ぐにドロスに向かっていた。

 

「悪いがお前には落ちて貰うぞ」

 

ドロスから次々とモビルスーツ隊が発進される。中には作業用だろうか旧ザクですら出撃して居る。

 

『この艦には若いモンが沢山居るんでな。悪いがこれ以上は』

 

「邪魔だ」

 

そのままビームスプレーガンで旧ザクを撃ち抜く。旧ザクは何も出来ずに爆散。そしてカタパルトから出撃しようとするザクを捉える。

 

『わあああ!?目の前に敵が!?』

 

「終わりだ」

 

ビームスプレーガンをザクに向けて乱射する。ザクは何発もビームを受けて格納庫付近で爆発。そのままビームスプレーガンで更に撃ちまくる。

 

『敵の攻撃だ!第4格納庫はもうダメだ!?』

 

『不味いぞ!弾薬庫に引火するぞ!全て宇宙に捨てるんだ!?』

 

それは艦橋内部にも直ぐに報告が行く。

 

『第4格納庫隔壁閉鎖。これ以上の被害は不味いぞ』

 

『しかし中には未だ整備兵とパイロットが』

 

『この空母ドロスを沈ませる訳にはいかん。数百の犠牲で済むなら問題無い。隔壁閉鎖しろ!』

 

更に他のジム部隊は空母ドロス付近で敵と交戦。その隙にボール部隊が空母ドロスのエンジン部分に取り付く。

 

『各機撃ちまくれ!此処をやればドロスは最早虫の息だ!』

 

ボールの180㎜程反動キャノンから放たれる砲弾が次々とエンジン部に直撃。そして遂にドロスのエンジンから悲鳴の様な爆発が起きる。しかし直後にボール部隊はドロス隊のモビルスーツ部隊により壊滅する。

 

『モビルスーツ隊は何をやってるか!司令部との通信はどうなってるか!?』

 

『現宙域を防衛せよとの事です!』

 

『これ以上の被害を受けてはドロスとて持たんぞ!後続の部隊はどうなってる!』

 

『第8セクション火災発生!消化剤を大量に持って来い!』

 

『この艦が落ちたら終わりなんだぞ!何としても守り切れ!』

 

ドロスから次々と爆発が起きる。特にエンジン部の燃焼と爆発が止まらず、更に被害は拡大する。

 

『私の母艦が…おのれ、連邦め!!!』

 

黒き閃光と呼ばれるジオンのエースパイロットは出撃して空母ドロスの現状を目の当たりにする。ドロスにはジムがハイパーバズーカで機銃座や砲台を破壊したり、ビームサーベルで艦艇に穴を開けていた。そこから漏れ出すのは空気だけでは無かった。

 

『貴様らあああーーー!!!』

 

黒き閃光は自身の機体である高機動型ザクのブースターを全開にして地球連邦軍に攻撃を仕掛ける。しかし、最早空母ドロスは限界だった。

 

「もうこの区画はダメだ!逃げるぞ!」

 

「ま、待ってくれ!わあああ!!!」

 

爆発に飲み込まれる乗員達。

 

「誰か!この扉を開けてくれ!頼む!火が!」

 

「嫌だ!こんな所で死にたく無い!助けてくれ!」

 

取り残された乗員は悲鳴を上げて死んで行く。

 

「艦長!機関室に被害が出てます!また各セクションにも被害多数!これ以上は艦が保ちません!」

 

「そうか……」

 

空母ドロスの艦長は静かに目を閉じる。艦の爆発は収まらず振動がドロス全体に響き渡る。そして艦長は最期の命令を降す。

 

「本艦はこれ以上の戦闘は不可能と判断。これより退艦命令を発令。脱出艇を用意して脱出せよ」

 

しかし、この退艦命令は遅過ぎた。最早空母ドロスには地球連邦軍の攻撃を耐え切る事は出来無かった。そして、退艦命令が出て僅か数分後には空母ドロスは各部で爆発の連鎖が起こる。それは乗員だけで無く、多くのパイロットやエースパイロットをも巻き込んで行く。

 

宇宙世紀0079.12月31日9:40。Nフィールドにて大型空母1番艦【ドロス】轟沈。乗員の生死不明。

 

ジオン公国軍はNフィールドの防衛網に大きな穴が空いてしまったのであった。



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ア・バオア・クー攻防戦5

ジオン公国軍のNフィールド防衛の要とも言える空母ドロスが大小様々な爆発を起こしながら轟沈する。

 

『何て事だ…Nフィールドは抜かれるぞ!』

 

『俺達の母艦が!畜生、この状況で戦えって言うのか!』

 

『連邦が流れ込んで来る!敵を抑えきれなッ!?』

 

空母ドロスが轟沈したのを境に第2、第3大隊はNフィールドに突入。そのまま宇宙要塞ア・バオア・クーに取り付く為に突き進む。

 

『最終防衛ラインに敵が侵入します』

 

『各砲座外すなよ。この距離ならビームの威力は大して落ちない。確実に敵を撃破して行け!』

 

宇宙要塞ア・バオア・クーからのビーム砲台から次々と攻撃が開始される。しかし、それは地球連邦軍艦隊のビームの射程にも入っているのと同じである。

 

『敵宇宙要塞の砲台座標確認。各砲座、艦隊にデータリンク良し』

 

『モビルスーツ隊の進行を援護。後に陸戦隊を射出だ。ア・バオア・クーの制圧に全力を注がせるんだ。砲撃開始』

 

マゼラン級とサラミス級からの砲撃の応酬をまともに受ける事になる。

 

『行け行け行けーーー!このままジオンを押し潰せ!』

 

『此方ジャロン中隊間も無くア・バオア・クーに取り付ける』

 

そしてNフィールドだけで無くSフィールドでもア・バオア・クーに取り付きつつある。

 

『全地球連邦軍将兵に通達する。ザビ家を打倒してスペースノイドを真の意味で解放するのだ。そう、これは聖戦なのだ。各員、これを最期の戦いにするのだ!』

 

今や地球連邦軍の士気は非常に高い。そしてSフィールドでの防衛を行なっていた要となる存在も遂に地球連邦軍の前に落ちる。

 

宇宙世紀0079.12月31日10:10。Sフィールドにて大型空母2番艦【ドロワ】撃沈。乗員の一部は生存確認。またドロワはアナベル・ガトー大尉の母艦でも有った。

 

それはジオン公国軍の将兵達に衝撃な報告で有った。しかし、宇宙要塞ア・バオア・クー司令部の指揮能力は最早絶望的と言っても良い状態だった。

ギレン・ザビ総帥を失ったショックは司令部に居た者達に衝撃が強過ぎたのだ。そしてギレン・ザビ総帥の戦死は前線に戦うジオン公国軍の将兵達にも徐々に伝わり動揺が走る。そんな中、状況を直ぐに理解する者が居た。

 

「何っ!?ギレン総帥が戦死されたと!?」

 

「はっ、ア・バオア・クー全権はキシリア閣下元に移行しました」

 

エギーユ・デラーズ大佐はギレン・ザビ総帥の戦死の報せを聞き椅子を強く握り締める。彼はその直後血反吐を吐くかの様に呟く。

 

「謀ったな…キシリア」

 

その直後デラーズ大佐は直ぐに判断を降す。

 

「全艦、及び全モビルスーツを集結させよ。我が隊はこの宙域より撤退する」

 

宇宙世紀0079.12月31日11:00。エギーユ・デラーズ大佐はギレン・ザビ総帥の戦死をキシリア・ザビ少将の暗殺と看破。自身の艦隊と周辺の艦隊を率いて戦線離脱。

 

そして宇宙要塞ア・バオア・クーでの戦闘は遂に要塞内部での戦いに移行して行く。

 

『白兵戦用意!連邦が来るぞ!』

 

『陸戦隊戦闘準備。敵を此処で食い止めるぞ』

 

『モビルスーツの相手はモビルスーツに任せろ。俺達は撤退するぞ!』

 

そして味方ジム、ボール部隊はア・バオア・クーに乗り込んで行く。しかしジオン公国軍も諦めた訳では無い。遮蔽物を利用して戦いを有利に運んで行く。しかし、そんな彼等には地球連邦艦隊からの艦砲が降り注ぐ。

 

「味方のジム中隊は順次ア・バオア・クーに取り付いてます」

 

「そうか。しかし先程から少し敵の圧力が弱まってたな」

 

サラミス級ロイヤル内でアーヴィント中尉は敵の防衛に違和感を感じていた。空母ドロスはジオンにとって重要な艦だった筈。にも関わらず後続の増援が少なく感じていた。

 

「Sフィールドの第1大隊が上手く行けたのか?まさか、噂に聞くニュータイプが此処までやったのか」

 

だからと言ってNフィールドの防衛を弱める理由にはならない筈だ。此方は第2、3大隊を持つ大艦隊だ。見逃される筈は無い。

 

「今は考えても仕方ないか。ラングリッジ小隊はどうなってる」

 

「現在ア・バオア・クー要塞付近で戦闘中の模様です」

 

「そうか。なら味方艦と連携しつつ砲撃は続行だ。ア・バオア・クーの砲台を全て破壊するんだ」

 

艦隊は今や宇宙要塞ア・バオア・クーに向けて攻撃を行なっている。そして要塞内部では徐々に爆発が起こり始めていた。そしてジオン公国軍の一部の部隊や艦隊はキシリア・ザビ少将の指揮下に入るのを拒否し戦域より離脱して行く。

そんな中ラングリッジ小隊は宇宙要塞ア・バオア・クーの地表の上を飛行して行く。

 

「良し、味方は取り付いてるな。これなら行けるか」

 

『そうね。私達はこのままこの宙域を制圧するわよ。これより前方の敵艦隊に攻撃をしている味方の援護をするわ。ガルム2は前衛、ガルム3は私と一緒に援護よ』

 

「了解。では行きます!」

 

『了解です。頼むぜシュウ少尉、こんな所まで来て落とされんなよ』

 

「当たり前だ。お前も周りの警戒を怠るなよ」

 

戦い続けている味方の援護をすべく敵艦隊に突撃するのだった。

 

……

 

未だにジオン艦隊は健在してる。しかし戦いは徐々に追撃戦に以降して行く。だが彼等は抵抗を止めるつもりは無い。いや、止める訳には行かないのだ。彼等の後ろにはサイド3が有る。それは彼等にとって故郷で有り守るべき者達が居る所。

 

『モビルスーツ隊は艦隊の護衛に回れ。接近する敵影に対し攻撃開始』

 

1隻のチベ級重巡洋艦と4隻のムサイ級巡洋艦は移動しながら攻撃をする。護衛のザク、ドムそして指揮官機のゲルググは前面に展開する。

 

『流石新型のゲルググだ。連邦のモビルスーツ何ぞ恐るに足らんな』

 

指揮官機のゲルググは次々とジム、ボールを撃破して行く。今迄のゲルググとは動きが全く違う。

 

『この機体がもっと早く配備されていれば良かった物の』

 

『少佐、仕方有りませんよ。機体もそうですが我々古参はザクやドムに慣れ過ぎましたから』

 

『時間が無さ過ぎたな。だが、此処で連邦を食い止めれれば勝機は有る』

 

ゲルググはザク、ドム隊を率いて再度ジム、ボール部隊と打つかる。

 

『この!何でこっちの攻撃が当たら無いんだ!?』

 

ジムがビームスプレーガンを乱射する。そんなビームの弾幕を物ともせず突っ込んで行くゲルググ。

 

『所詮、有象無象の連中にやられる物か』

 

ゲルググはジムに向けてビームライフルを向け射撃。更に続けてビームナギナタを使い接近。ジムはビームに貫かれ瞬く間に爆散して行く。その直後僚機もビームナギナタにより爆散して後を追う。指揮官機のゲルググに仲間達は続き次々とジム、ボールを撃破して行く。その動きは古参故の卓越した連携と機動だった。その時彼等の母艦であるチベ級から新手が来ると通信が来る。そして暫くするとレーダーに反応が出る。

 

『少佐、新手が来ます。連邦は数だけは一丁前ですね』

 

『おいおい、そう言ってやんなよ。まあ作ったモビルスーツは良かった物の、パイロットはイマイチな出来だったがな』

 

『そいつは傑作だな。やはり中身の出来は我々スペースノイドに分が有る様だしな』

 

彼等の言動は地球連邦軍と戦い続け、生き残って来た自信の結果だった。確かに地球連邦軍は強い。だが、勝てない相手では無いと考えているのだ。

 

『お前達、敵を侮るな。我々は孤立しつつ有るのだ。他の部隊や艦隊が撤退している。ならば我々も撤退するのは明白だ』

 

しかし、そんな彼等の気を引き締めてさせる。局地的には優勢だが大局的に見ればジオン公国軍は敗北している。そして、つい数分前にチベ級重巡洋艦から秘匿通信が来ていた。

 

【我、指揮能力無し。各自の判断にて行動せよ】

 

その通信は彼の部下達には伝えては無い。何故なら現時点での部下達の士気は高い。そんな中、辛い現実を伝える訳には行かないのだ。

そして再び彼等は戦いを始める。しかし彼等の上方から高速で接近する機影が居たのだった。




ストック切れたので止まります。


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ア・バオア・クー攻防戦6

皆さん風邪は大丈夫ですか?私は1週間ほど死にました…。


試作ジム改で敵艦隊に向かい突入する。今は味方部隊が敵モビルスーツ隊の大多数と交戦している。護衛のモビルスーツは多くは無いが間違いなく手練れだ。

 

「やっぱり敵さんの方が腕前は上だな」

 

嫌だ嫌だと思いつつ試作ジム改の加速を緩める訳には行かない。今しかチャンスは無いのだ。スコープを出してムサイ級に照準を合わせる。この機動の中で何発当てれるか。

 

『上方から高速で接近する機影を確認!』

 

『回避行動を取れ!そのまま反撃!』

 

敵艦隊も此方に気付いて回避行動を取る。

 

「気付くのが遅かったな」

 

そしてムサイ級の艦橋と砲塔に向け撃つ。敵も此方の存在に気付いて慌てて回避行動を取るが、全てが遅かったな。弾は艦橋に数発と砲塔2機を破壊。そのままの流れで敵のザク、ドムに銃口を向ける。

 

『タイラ被弾。艦橋に直撃してコントロールが効いてません』

 

『タイラの生き残りは急いで退艦させるんだ。対空砲、敵を叩き落とせ!』

 

チベ級は此方に向けて対空砲を撃ち始める。しかし、その弾幕密度は少ない。敵艦隊との間には味方モビルスーツ部隊がいる為、満足に反撃は出来そうに無い。

 

『おのれ、これ以上好きにさせっかよ。バリーは俺の援護だ』

 

『了解です。たった1機で何が出来るんだよ』

 

ドムのバズーカとザクのマシンガンが火を噴く。シールドを構えながら突っ込むが怖い物は怖い。シールドに何発か被弾するが無視する。此方もザクに照準を合わせて反撃する。ザクは回避機動を取りながら応戦する。

 

『敵ながら見事な機動だ。だが、お前は此処で死ぬ!』

 

バズーカを撃ちながらヒートサーベルを抜く。此方もビームサーベルを構えて突撃。

 

「ガルム1、ザクに攻撃を頼みます!」

 

『了解よ。さあ、落ちなさい!』

 

その言葉と同時に背後からビームが飛んで来る。ビームはザクの頭部を吹き飛ばし一時的に行動不能にする。

 

『うわっ!?何だこれは!?』

 

『後退しろバリー。敵は狙撃手と連携して来てる。その中では援護出来ん!』

 

そしてドムと接近戦になる。お互いのヒートサーベルとビームサーベルがぶつかり合う。その度に距離が開き、また距離を縮める。その間にも味方部隊は敵と混戦状態になる。

 

『各艦敵艦に照準合いました。いつでも行けます』

 

『敵戦力を此処で削り切るぞ。砲撃始めえええーーー!』

 

味方サラミス級と敵ムサイ級、チベ級は砲撃の応酬を行いながら味方のモビルスーツ隊を援護する。

 

『艦隊の護衛機は無事なのか?』

 

『現在敵と交戦中。しかし苦戦している模様です』

 

『ダガー、アハラムは艦隊の護衛に回れ。残りは正面の敵を潰すぞ。この攻勢を止めれば後退するぞ』

 

指揮官機のゲルググから指示が出される。そして戦いは再び混戦状態になる。試作ジム改はドムから離れて機動戦を仕掛け、敵を撹乱し続ける。

 

『何だあのジムは。唯のジムじゃ無いぞ』

 

『兎に角撃ちまくれ!敵を懐に入れさせなければ良い!』

 

しかしジオン艦隊は正面に居る地球連邦艦隊とも構えなければならない為、迎撃出来てるのは1隻のチベ級のみ。モビルスーツ隊も追撃を試みるも試作ジム改に追い付く事が出来ていない。

 

『しまった!其方にジムとボールが約10機抜けたぞ!』

 

正面での戦闘の隙を掻い潜り、ジオン艦隊に向かうジム、ボール部隊。

 

『間も無く敵艦隊を射程に捉えます!援護を!』

 

そんなジム、ボール部隊に護衛機のザク2機が立ち塞がる。

 

『連邦め、これ以上仲間をやらせるかよ!』

 

ジムはシールドを構えて攻撃を防ぐが、次々と撃破されて行くボール部隊。しかし、そんなザクにビームが貫かれる。

 

『良し、1機撃破。私達もそろそろ突っ込むわよ』

 

『了解です。良い加減、シュウばかりに頼るのも情け無いしな』

 

更に上方からジオン艦隊に向け突入するガルム1、3。それに続けと言わんばかりに地球連邦軍の攻勢が増して行く。

 

『しまっ!まだ上に敵が居るのか!?』

 

『正面からも抜けて来るぞ!』

 

『誰でも良い!あのジムを潰せ!』

 

更に試作ジム改と正面から抜けて来たジム、ボール部隊がジオン艦隊に向け攻撃を仕掛ける。

 

『射程に捉えた!攻撃開始!』

 

ジムはハイパーバズーカ、ボールは180㎜低反動キャノンを撃ち込む。その攻撃を受けながらもジオン艦隊は反撃する。メガ粒子砲がシールドごとジムを貫き破壊する。

 

『最早此処までだな。艦隊は後退しろ!殿は此方で行う!』

 

味方艦隊を逃すべく最後の攻撃に入る指揮官機のゲルググ。そのゲルググに追従するザク、ドム隊。しかし、そんな彼等の直ぐ側に高速で迫る試作ジム改。試作ジム改に反応して応戦するモビルスーツ部隊。しかし、そんな彼等を無視してジオン艦隊に向かう。その途中、先程撃破されたジムのハイパーバズーカを取る。

 

「残弾3発か。1隻なら行ける」

 

試作ジム改を敵艦隊に向け突撃する。

 

『く!奴め、良い気になりおって!追撃する!艦隊を守るんだ!』

 

しかし試作ジム改の加速に追い付く事が出来無い。

 

『馬鹿な。此方は新型機だぞ。ええい!艦隊は兎に角離脱しろ!』

 

試作ジム改に弾幕が迫る。それをシールドを構えながら回避する。そして1番後方に居るムサイ級に照準を合わせる。

 

『敵1機、本艦に接近!来ます!』

 

『護衛のモビルスーツは何をやってるか!迎撃しろ!』

 

ムサイ級、チベ級からミサイルとメガ粒子砲が飛んで来る。

 

「攻撃に焦りを感じるぞ!」

 

そしてムサイ級のエンジンに1発づつ当てる。そのまま艦橋に向かい加速する。

 

『ダメです!回避出来ませわあああ!?!?』

 

艦橋に向けハイパーバズーカを撃つ。そして弾は艦橋に当たり爆発。これでムサイ級の制御は効か無くなるだろう。

 

「おっと、新型か」

 

『貴様だけは生かしては帰さん。死んだ戦友達に詫びさせてくれるわ!』

 

ビームライフルとシールドを構えながら突撃するゲルググ。それに対してハイパーバズーカを放棄してビームスプレーガンで応戦する。

 

「この新型機、今迄の奴と全然違う」

 

此方との間合いを確実に詰めてビームライフルで反撃してくる。だが機動力なら負けては無い。

 

『中々の機動力だ。各機、援護出来る者が居ればやってくれ。此奴の動きを少しでも止めるぞ』

 

『了解!味方のムサイを潰した仇を取らせて貰うぞ』

 

ザクとドムからの緩和攻撃を受けながら回避機動を取る。その隙に更に接近するゲルググ。しかし、此処は戦場。いつ横槍が入るかは分からないのだ。

 

『此奴ら、シュウばかり狙ってんじゃ無いわよ!』

 

ガルム1からの90㎜ガトリングガンから大量の弾幕が降り注ぐ。

 

『しまっ!?うわ、うわあああ!!!』

 

その弾幕を回避し切れず爆散するザク。更にガルム3からの追撃も入る。

 

『この野郎おおおーーー!』

 

『く、よくもダガーを。貴様を手向けにしてやる!』

 

ガルム3とドムのビームサーベルとヒートサーベルが激突。お互い一歩も譲らず再度腕を振るう。

 

『うおおお!ジオン何ぞに負けられっかよ!』

 

『連邦の雑魚が。手間取らせるな!』

 

ドムは僅かに機体を後退させる。そして直ぐに対処出来ず前のめりになるガルム3。更にドムの目潰しが直撃。一瞬で視界不良になってしまう。

 

『ダガー、貴様への手向けだ。受け取れ!』

 

ドムはヒートサーベルを振りかぶる。最早此処まで。しかし、戦場故の隙は誰しもが持ち合わせていた。

 

『はあああーーー!!!』

 

ガルム1のジム・スナイパーカスタムがドムに直上から接近。左腕のビームサーベルを展開させて真っ直ぐに突っ込む。

 

『接近警報!?何処から!はっ!?』

 

ドムのパイロットが気付いた時にはモニター一杯にピンク色の光がが迫っていた。ビームサーベルはドムのモノアイを貫き、そのままコクピットの中まで貫通。ガルム1、3が離脱した後、ドムは宇宙の塵になって行く。

 

『ガルム3生きてるわね』

 

『れ、レイナ中尉。助かりました』

 

『気にしないで。私達は仲間なんだから。それよりガルム2の援護に行くわよ』

 

未だに戦い続けてる試作ジム改とゲルググ。その戦いは最早頭二つ分は飛び抜けた戦いになっていたのだった。



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ア・バオア・クー攻防戦7

試作ジム改とゲルググはお互いに決定打が出ないまま機動戦に突入していた。

 

「くそ、こっちは試作機と言え高機動ザクを超えてるんだぞ!なのに何故勝てない!」

 

ビームスプレーガンでゲルググを撃つ。だが回避され逆に反撃される。

 

『機体が良くてもパイロットはまだまだ未熟の様だな。だが、悔やむ事は無い。私と君とでは戦う土台からして違うのだからな』

 

「戦う土台だと?戦争に土台もへったくれも有るかよ!」

 

偶々敵の通信を傍受したのだろう。そのまま通信しながら戦う。

 

『ふん。我々はスペースノイドの独立の為に日夜戦い続けてるのだ。貴様等地球連邦の圧政に屈する事がない為に』

 

ゲルググのビームライフルが試作ジム改に放たれる。咄嗟にシールドで防御するが、シールドの限界が来てしまい完全に防ぐ事が出来ず左腕に直撃する。

 

「くっ!?確かに地球連邦がやって来た事は許される事では無い。だが、それで何十億人の人間を殺して良い理由にはならないぞ!」

 

『その圧政を終わらせる為には必要な犠牲なのだ。全ては地球連邦が己自身で招いた結果に過ぎん。貴様等はやり過ぎたのだ!!!』

 

ゲルググはビームライフルを捨てビームナギナタを構えて試作ジム改に突っ込む。それに対してビームスプレーガンを仕舞いビームサーベルを構える。

 

「やり過ぎたのは貴様等ジオンも同じだ!何故同じ轍を踏むんだ。そんな事をする連中が地球連邦を責める資格は無い!」

 

『っ!?言ってくれる。なら、死んであの世で同じ事を言ってみろ!言える筈も無かろうに!』

 

お互い一歩も譲らずビームサーベルとビームナギナタをぶつけ合う。

 

『残念だ。貴様の様な冷静な者が味方に居れば良かった物の』

 

「俺はそんな大した人間じゃ無い。今のこの状況を何とかするぐらいしか能が無いんだよ」

 

ビームサーベルを振るいながら60㎜バルカン砲を撃つ。しかし60㎜バルカン砲の攻撃を物ともせずビームナギナタを振るう。

 

「今だ!」

 

咄嗟に右脚のブースターを使いビームナギナタを受け止める。ビームナギナタは右脚のブースターを切り裂く。それと同時に燃料に引火して爆発する。

 

『ぬう!?貴様!』

 

「貰ったあああーーー!」

 

そのままビームサーベルを突き出す。ビームサーベルはゲルググの右腕を貫通する。しかしゲルググは左腕を振るい殴り掛かる。

 

『モビルスーツは人型故に格闘戦が可能なのだ!覚えておくと良い!』

 

「ぐあ!?この、うおわ!」

 

更にゲルググは蹴りを入れる。試作ジム改の装甲が凹み傷付く。だが、装甲を削らず通常のジム改と変わらない装甲が生死を分けた。僅かに距離が開いた瞬間ビームサーベルを放棄してビームスプレーガンを掴む。そして至近距離からビームスプレーガンを咄嗟に撃つ。ビームスプレーガンから放たれたビームはゲルググの左腕に直撃する。

 

『チッ、最早此処までだな。貴様との決着は預けよう』

 

「負け惜しみを言うな」

 

そのままビームスプレーガンで追撃するがゲルググは回避機動を取りながら逃げ去って行く。だが、今や周りには地球連邦軍しか居ない。

 

『敵が逃げるぞ!逃すな!』

 

『武装も無ければ怖くねえ。くたばれや!』

 

『此奴、さっきから避けんじゃねえ!』

 

戦闘力の無いゲルググに容赦無い追撃を行う地球連邦軍。そんな時通信が入る。

 

『良く見ておけ。これが、貴様等地球連邦軍の奢り故の結果なのだとな!!!』

 

突如ゲルググは向きを反転させ地球連邦艦隊に突撃する。

 

『貴様等の様な者を一人でも多く道連れにしてくれるわ!!!』

 

「不味い。奴はカミカゼをするつもりだ!止めるんだ!」

 

俺は慌ててゲルググを追い掛ける。だがゲルググは機体のリミッター解除して一隻のサラミス級に突っ込む。周辺のジムや艦も迎撃するが抑える事が出来ない。

 

『アリス…今、其方に行くぞ』

 

ゲルググがサラミス級に迫る。

 

『何をしている!落とせ!落とすんだ!何故落とせん!』

 

『ダメです!回避間に合いません!』

 

サラミス級の艦橋内で悲鳴が上がる。その直後ゲルググはサラミス級の艦橋部に激突。そして爆散。更に至近距離での爆発に巻き込まれたサラミス級も後を追う様に轟沈する。

 

「な、何で…こんな事に」

 

あの時、ゲルググを撃破出来なかったのが悪かったのか?それとも追撃をし過ぎたのがダメだったのか?

 

『……ム2!返事をしなさい!ガルム2!』

 

「あ、此方ガルム2。どうしましたか?」

 

『良かった。生きてたわね。全く、無事なら直ぐに返事をしなさい』

 

『まあ、ミノフスキー粒子で通信が繋がりにくかったんしょう。シュウ無事で良かったぜ』

 

この後レイナ中尉とアーク上等兵と合流しつつ味方と共に追撃戦に入る。機体の損傷は有るが、まだ戦える。これ以上味方の犠牲を出したくは無いのだ。

戦いは遂に終盤へと向かう。間も無く長く辛い戦争が終わりを告げようとしていた。

 

宇宙世紀0079.12月31日11:30。RX-78-2ガンダムは【MSM-02ジオング】と交戦の末、宇宙要塞ア・バオア・クー内部にて大破。

宇宙世紀0079.12月31日12:05。キシリア・ザビ少将は宇宙要塞ア・バオア・クーより脱出を図るも地球連邦軍サラミス級の艦砲射撃によりザンジバル級機動巡洋艦撃沈。キシリア・ザビ少将戦死。

宇宙世紀0079.12月31日12:15。宇宙要塞ア・バオア・クー内のミサイル工場や弾薬庫が戦火により誘爆。電力機能の喪失により陥落間近となる。

宇宙世紀0079.12月31日12:30。地球連邦軍ペガサス級ホワイトベースは宇宙要塞ア・バオア・クーにて撃沈。乗員は運良く脱出した。

 

……

 

宇宙世紀0079.12月31日13:00。

 

現在地球連邦軍は追撃戦を行なっていた。俺達ラングリッジ小隊も簡易的な修理と補給を行い味方部隊と共に追撃戦に参加している。地球連邦軍は未だに降伏勧告を行なっていない。ギリギリまで追撃を行うのだろう。

 

(気持ちは分からんでも無いけど)

 

初戦のコロニー落としにソーラ・レイによる第1大隊の喪失。これだけやられて復讐しない連邦兵は居ない。

 

(本当、どっちもどっちだ。自分達が蒔いた種から目を逸らし続けた結果だと気付かないなんて)

 

いや、気付か無い振りをしてるのかも知れないな。例え気付いてたとしても、どうしようもない状況だ。それに今此処で事実を言った所で無視されるのが目に見える。

 

「はあ…本当、戦争終わらないかな。ん?」

 

その時、前方で損傷してるザクを発見する。良く見ればザクのコクピットに損傷は見られない。

 

「此方は地球連邦軍だ。其処の壊れたザクのパイロット、生きてたら返事しろ」

 

暫く待つが返事は無い。その時、モノアイが一瞬動き此方を見る。

 

『こ、此方…ジオン公国軍第124突撃戦隊。ヤルク・ハーマス曹長です。此方は抵抗の意思は無い』

 

ザクの腕を上げて無抵抗を示す。なら別に大丈夫だろう。

 

「了解した。後方に居る艦隊まで送る。但し、少しでも怪しい動きが有れば撃墜する」

 

『了解した。寛大な処置に感謝する』

 

俺は後方に居るサラミス級ロイヤルに通信を繋げる。そして収容許可が降りた為ザクに近付く。

 

「良し、コクピットから出るんだ。武装は駄目だからな」

 

そして少し待ちザクのコクピットがゆっくりと開く。その直後、コクピットに向けて一筋のビームが貫く。

 

「なっ!?くそ!」

 

慌ててザクから離れる。その直後にザクは爆散する。そしてビームが放たれた方を見ながら言う。

 

「何故撃った…アーク・ローダー上等兵」

 

『……怪しい動きが有ったので撃った迄です』

 

其処にはビームスプレーガンを構えているガルム3のジムが居た。

 

「怪しい動きだと?コクピットから出るだけで怪しい動きな訳が無い。アーク、お前がやった事は唯の虐殺だぞ」

 

『何言ってるんですか?最初に虐殺したのはジオンだ。そして味方や民間人を大勢殺したのもジオン。なら、此処でジオンを始末する事は正しい事だ』

 

モニター越しに見るアークの表情。ヘルメットのバイザーにより見難くなってる。だが、その表情には狂気を感じた。俺はアークの表情を見て一瞬気圧される。いや、アークだけじゃ無い。この戦争に参加してる誰もが同じ感情を持ってるんだ。

 

「アーク、綺麗事を言わせて貰うが…死んだ連中は帰っては来ない。敵討ちをするなとは言わんが限度を守れ。じゃないと戦争は終わらんぞ」

 

アークの表情は見えない。だが、静かな笑い声が聞こえて来る。

 

『構わねえよ』

 

「何?お前、今何て言った?」

 

『戦争が終わら無くて構わねえよって言ったんだよ。そうすればジオンをもっと殺せるからな』

 

更にアークから笑い声が聞こえて来る。俺にはその笑い声には狂気と憎悪の声に聞こえた。

 

『2人共其処までよ。今は戦闘中よ。話し合いなら終わった後にしなさい』

 

その時レイナ中尉から通信が来る。だが、このまま放っておく訳には。

 

「しかし!」

 

『了解です。ほら、次行きますよ少尉殿』

 

アークはそのまま機体を前に出し追撃戦に向かう。

 

「レイナ中尉、貴女もアークの言い分に納得するんですか?」

 

『アーク上等兵の気持ちは痛い程分かるわ。私だって追撃戦で手を抜くつもりは無いもの』

 

「だからと言って無抵抗の兵士を殺すのを容認するんですか?それを許せば収集は付かなくなります」

 

レイナ中尉は俺の話を聞いて目を閉じる。そして。

 

『残念だけど、今の貴方の声はきっと誰にも通じないわ。アーク上等兵だけじゃ無い。他の人達も同じように思ってる筈よ』

 

「レイナ中尉…」

 

そしてレイナ中尉もアーク上等兵を追い掛けて行く。確かにジオンは多くの人達を殺した。現に俺の第2の故郷と言えるサイド2はシドニーと共に消えた。

 

「この戦争が、全てを変えてしまったのか…」

 

戦術、戦略、数々の兵器群。そして…人の心さえも。

俺は誰よりも運が良かっただけだ。自身の境遇は決して良かった訳では無い。だが、それ故に思入れも少なかった。唯、それだけだ。今や殆どの連邦兵はジオンを憎んでる。そんな中、一人常識を言った所で黙殺される。最悪誤射されかねん。

 

「今は無理でも落ち着いた時に後悔するのだろうか?」

 

俺には今後の展開が分からない。そして溜息を一つ吐いてから2人を追う為に機体を動かす。その時、モニターとレーダーに反応が有った。

 

「あ、あの機体は!」

 

モニター越しに確認する。それは間違い無くあの黒い高機動型ザクだった。黒い高機動型ザクはムサイの残骸に身を潜めていた。そして、奴が向かってる先は2人が居る場所。

 

「不味い。ガルム1、3!下方から敵が来てる!逃げろ!」

 

俺はブースターを全開にして追う。2人も高機動型ザクに気付いて応戦する。ガルム1のジム・スナイパーカスタムからビームが放たれる。だがそのビームをあっさり回避してしまう。ガルム3のジムも90㎜マシンガンで応戦する。

 

『此奴!あの時のザクか!』

 

『ガルム3回避しなさい!』

 

ガルム3も慌てて機体を動かす。だが、もうその間合いは高機動型ザクの間合いだった。高機動型ザクからマシンガンが放たれる。徐々に被弾するガルム3。ガルム1の援護射撃を物ともせず突っ込む。

 

『クソッ!こっちに来るのか。なら、やってやる!お前らジオンを全員潰してやるさ!』

 

ガルム3は90㎜マシンガンを撃ちながら高機動型ザクに迫る。高機動型ザクは90㎜の弾幕を掻い潜りヒートホークを構える。

 

『舐めるなあああ!!!ジオンの分際で!!!』

 

ガルム3は90㎜マシンガンを放棄してビームサーベルを抜き、そのままの勢いで高機動型ザクに斬り付ける。しかし、ビームサーベルを持つ右手だけをヒートホークで斬り飛ばされる。

 

『ヤークル…お前への手向けだ。受け取れ』

 

『なっ!?こんなのって!うわあああ!?』

 

その直後、ジムのコクピットにヒートホークが直撃。そのまま胴体から半分になりガルム3…アーク・ローダーの乗るジムは爆散した。

 

「アーク…嘘だろ?おい、おい!返事をしろ!」

 

『ガルム3!嘘…此処まで来て』

 

そして黒い高機動型ザクは此方を見る。

 

『また会ったなオレンジの奴。悪いが敵討ちはさせて貰ったがね』

 

突如通信から敵兵の声が聞こえる。その声は間違い無く目の前の黒い機体からだった。

 

「貴様が…貴様がアークを」

 

『ふん。貴様等とて私の仲間を殺して来たでは無いか。それに、今更後悔したとて無駄だ。お前達も直ぐに後を追わせてやろう』

 

黒い高機動型ザクはガルム1に向かう。だから、俺は試作ジム改のリミッターを解除した。

 

「これ以上!仲間をやらせるかあああーーー!!!」

 

アークが死んだ事が未だに信じられない。だが、それでレイナ中尉を見殺しにして良い訳が無い。俺はバランスの悪くなった機体を無理に動かして黒い高機動型ザクに突っ込む。

 

『そうだ!そのまま来い!貴様を殺し全てを終わらせる!』

 

「何が終わらせるだ!絶対に許さない!」

 

そのまま機動戦に突入する。その時ふと冷静な自分が呟いた。

 

ああ、この感情を持って誰もが戦争してるんだな…と。



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ア・バオア・クー攻防戦8

俺はリミッターを解除した試作ジム改で黒い高機動型ザクに突撃しながらロング・ライフルで射撃する。

 

「貴様…絶対に、絶対に許さない!!!」

 

だが、奴は90㎜弾をアッサリ避けてザクマシンガンで反撃してくる。

 

『ふん、今更嘆いた所で全て手遅れだ。だが安心しろ。貴様も直ぐに後を追うのだからな』

 

此方に向かって正確にザクマシンガンで攻撃して来る。機体は損傷している為、機動力は落ちてしまっている。だが、損傷してるお陰か変則的な回避機動が出来た。後はモニターと計器頼りだ。

 

『中々奇抜な機動を取る。だが、パイロットはそう長くは持つまい!』

 

お互い機動戦に突入して行く。

 

「お前だけは絶対に!許さない!」

 

ロング・ライフルの弾が切れた為放棄。そのままビームスプレーガンに切り替えて射撃して行く。だが全て回避されて行く。

 

『貴様の腕前が有れば多くの同胞を殺して此処まで来たのだろう。それに、今更自分だけ都合良く来れると思っていたのか?』

 

「黙れ!!!」

 

俺が叫ぶと相手は笑いながら喋り続ける。

 

『今の貴様は滑稽其の物だな。この戦争に参戦した時点でこうなる運命だ。誰もが涙を流し憎しみを抱く。そして!』

 

相手はザクマシンガンを放棄してヒートホークを掴む。

 

『その程度の感情に流される者に我々ジオンに敗北は無い!』

 

ヒートホークを構え此方に迫る。

 

「そ、その程度の感情だと?巫山戯るな!貴様には人の心が無いのか!」

 

ビームスプレーガンを仕舞いビームサーベルを抜く。そしてお互いの武器が打つかり合う。

 

『我々ジオンにはスペースノイドの独立と言う大義が有る。だが貴様等地球連邦は、我々の大義を常に踏み躙って来た』

 

お互い一歩も譲らず打つかりながら機動戦に入る。そのまま敵味方の残骸が多数漂っているデブリ帯に突入する。

 

『貴様には戦う理由は有るのか?仲間達の死を糧に戦い続けるだけの理由が』

 

戦い続ける理由。それを聞かれて一瞬考えてしまう。

 

『私には有る。いや、全てのジオン兵には持っている。貴様等には無い崇高たる使命がな』

 

使命。俺にはそれだけの物は無い。そもそも地球連邦軍に入隊した理由だって、その場の流れで入っただけに過ぎない。

 

「だからと言って!死んだら皆んな帰っては来ないんだぞ!何も、何も無くなっちまう!」

 

当たり前の事を声に出す。それは戦前なら誰もが持っていた普通の事。

 

『いや、無くなりはしない。私の中には死んだ戦友達が悠然と存在している』

 

ビームサーベルとヒートホークが打つかり合う。しかし機体は限界に近付いていた。小さな残骸やデブリに打つかり各部に損傷アラートが出ていた。

 

「そんな、そんな簡単に割り切れるかよ。死んだら戻って来ない事には変わりは無いんだぞ!」

 

『その程度の覚悟しか無いからこそ、我々ジオンは貴様等に敗北はしないのだ!!!』

 

黒い高機動ザクが迫る。その鬼気迫る姿に気持ちが押されて反射的に機体を後退させてしまう。

 

『うおおおおーーー!!!』

 

「こんな、所で!」

 

ヒートホークの攻撃ラッシュを捌ききれず装甲を幾つも削られて行く。

 

(俺は死ぬのか?こんな所で)

 

此奴の様に覚悟も無ければ仲間の死を受け入れる事も出来無い。だから死ぬしか無いのか?

 

(……は、今の俺は無様だな。だけどな)

 

黒い高機動ザクがヒートホークを振り上げる。

 

『これで終わりだ!!!覚悟!!!』

 

そしてヒートホークを振り下ろした瞬間、機体のブースターを全開にして前に出す。ヒートホークが左肩に直撃するも深くは無い。

 

「こんな、戦争で!死んでたまるかあああ!!!」

 

その場の流れで戦争に参戦した。そして様々な悲惨な死を見続けて来た。コロニー落としとシドニーの消滅。更に第1大隊の壊滅的な被害。それ以外にも沢山の人達が死んで行った。そして、目の前で散って逝った親友であるアーク・ローダー。その死を見続けて来たからこそ簡単に死ぬ訳には行かない。生きてる者としてそれを後世に伝える義務がある。

 

「うおおおおーーー!!!」

 

『貴様!無駄な足掻きを!?』

 

試作ジム改と高機動ザクがお互い押し合う。しかし試作ジム改は対高機動型ザクを念頭に設計されてる。更にジェネレーターはRX計画で設計された高出力ジェネレーター。機体に損傷が有るものの出力系統は此方が上。結果一時的に拮抗するも高機動型ザクは押し負ける。

そのままマゼラン級の残骸に向かって打つける。

 

「このまま!押し通す!」

 

『く、何故だ?何故、信念無くして戦える』

 

覚悟か。そんな物…持って無いから。持って無いが此処まで来た。唯運が良かっただけ。戦場に信念を持つ必要は無い。

 

「それより生き残る方が何倍も難しい。信念や覚悟何ぞ後から考えるだけでも充分だ!」

 

結局そんな物は自身を正当化するツールに過ぎんだろうよ。

 

『やはり、貴様とは相容れぬ様だ!』

 

「合わなくて結構だ!」

 

ビームサーベルで高機動型ザクを攻撃する。相手はマゼラン級を背にヒートホークで応戦する。だが、マゼラン級の機銃部分がヒートホークの動きを阻害してしまう。

 

「貰ったあああーーー!!!」

 

そのままビームサーベルを突き出し高機動型ザクの右腕を貫く。

 

『私の負けか。さあ、殺すが良い。だが覚えておけ。我々ジオンは決して負ける事は無い。何故なら使命、信念、覚悟。それら全てが貴様等無能なる連邦より上なのだからな』

 

「何が…上だよ。そんなんで死んだ連中が納得すんのかよ」

 

俺はビームサーベルを再び構える。そしてコクピットに向けてゆっくりと近付ける。

 

「アーク…俺は、俺は」

 

これで良いのだろうか?これでお前は満足するのか?それとも…。

ビームサーベルを高機動型ザクのコクピット手前で止める。手が震えてしまう。これ以上誰かを殺すのは…もう、嫌なんだ。

 

(畜生…俺は、意気地無しだ)

 

「此方、地球連邦軍MS特殊部隊第27小隊…シュウ・コートニー少尉。直ちに武装解除し投降せよ」

 

最後の言い訳。敵を捕虜にすると言う理由で相手を生かそうとする。だが、結果は非道な物だった。

 

『断る。投降はしない。さあ、やるがいい』

 

「くっ!?この、大馬鹿野郎があああ!!!」

 

どいつも此奴も狂ってる。戦争が全て変えた。結局、自身の無力を唯痛感するだけだった。個人が正しい事をやっても無視されるだけ。今、この場も同じ。

ビームサーベルを突き出す。狙うはコクピットのみ。もう、止まる事は無い。一瞬の動きがゆっくりと見える。ビームサーベルがコクピットに向かって…。

 

「な!?ビームサーベルが!」

 

その時、ビームサーベルの出力が一気に低下。その結果ビームサーベルが解除されてしまった。

そして、その隙を見逃す相手では無い。敵は此方に向かって足でコクピットに向かって蹴りを入れる。咄嗟の行動で反応が遅れてしまう。

 

「ぐあ!?に、逃すか!」

 

60㎜バルカン砲を高機動型ザクに向けて撃つ。だが、敵は此方を無視して逃げて行く。

 

『シュウ・コートニー、貴様との決着は必ずこの私ベルガー・ディートリッヒが着ける。其れ迄生きて待っていろ』

 

そのまま逃走して行く黒い高機動型ザク。此方も追い掛けるが各部に警告アラートが出ており追い付けない。モニターで確認すると機体内部もかなりの損傷を受けている。もう戦える状態では無い。

 

「く…畜生……っ」

 

この時、悔しいとか憎いと言った感情は有った。だが1番大きかった感情は安堵だった。

アークの仇より、これ以上誰かを殺す必要が無くなった事に安堵してしまったのだ。それに気付いた時、俺はアークを裏切ってしまった感情に苛まれてしまう。

 

「アーク…俺、俺は…どうしたら良かったんだ?お前の行動は…正しかったのか?」

 

あの時、投降を呼びかけなければ間違い無く奴は倒せた。だが僅かに残ってた感情が動きを鈍らせた。

 

「アーク、すまん。お前の仇を…取れなかった」

 

だから謝る事しか出来なかった。もう戦えない事に安堵してる自分が情けなく。親友の仇を取れなかった後悔。そして、もう会う事が出来無い哀しみ。様々な感情が混ざり合い混乱してしまう。だから泣くしか無かった。唯、泣いて涙を流す。そして意識が徐々に薄れて行く。

薄れて行く意識の中、誰かの声が聞こえた気がする。少しお茶目な所が有るけど頼りになる女性の声が。その声を聞いて安心してしまい意識を手放したのだった。

 

宇宙世紀0080.1月1日15:00。月面都市グラナダにて地球連邦政府とジオン共和国臨時政府にて終戦協定及び講和条約が結ばれた。

尚戦費保証、賠償等は棚上げになるのだった。



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一年戦争終結

目が覚めたら知らない天井が見えた。いや、多分一度位は見た事が有ると思う。独特の匂いに気付き、此処が医務室だと直ぐに理解した。

 

「俺は…そうだ、敵は?仲間は無事なのか!戦いはどうなってる!?」

 

「目が覚めた様だな。先ずは落ち着きたまえ、シュウ・コートニー少尉」

 

声のする方を見れば軍医が此方を見ながら他の怪我人を見ていた。軍医は他の者に患者を任せて此方に来る。

 

「さて、先ずは戦況を伝えよう。地球連邦とジオン公国…いや、ジオン共和国は終戦協定を結んだ。そして、我々地球連邦はジオン公国に勝利した」

 

勝利。そして終戦協定。遂に、長かった悲惨な戦争が終わったんだ。

 

「そして、此処はサラミス級ロイヤルの中だ。コートニー少尉の小隊は君とレイナ・ラングリッジ中尉が生き残った」

 

俺とレイナ中尉が生き残った。つまり、アークは。

 

「残念ながらアーク・ローダー上等兵はKIA(戦死)が確認された。コクピット直撃だったらしい」

 

「そう、ですか…」

 

分かっていた事だ。アークは俺の目の前で死んだ。俺がもっとしっかりしていれば。

俺は自身の手を握り締める。自分自身の中途半端な考え方の甘さがアークを殺した。もっと非道に成っていればアークはきっと…。

 

「君が何を思ってるかは分からない。だが、戦場は皆が平等になる場所だ。自分を責めても意味は無い」

 

「なら!アークは何で死んだ!俺が、俺が敵を殺してれば…」

 

俺は俯き嘆く。それ以外何も出来無いから。そんな俺に軍医は言う。

 

「君は神にでもなったつもりかね?残念ながら君は唯の人間であり唯の兵士に過ぎん。それに戦場はそんな甘い場所では無い。それは君自身が良く理解してる筈だ」

 

「っ……」

 

何も言えなかった。言葉が出てこなかった。そんな事は無いと言えなかった。いや、分かっていた。戦場は個人の力ではどうする事も出来無いと。

 

「今は何も考えずゆっくり休みやさい」

 

軍医は一言残して他の怪我人を見に行く。大切な親友を失った哀しみ。戦争が終結した喜び。これから先の見えない不安。だから目を閉じて涙を流す。安堵と哀しみの感情を抱きながら。そして、これ以上の犠牲者が出ない事を願いながら。

 

宇宙世紀0080.1月4日。シュウ・コートニー少尉原隊復帰。

 

あの後レイナ中尉、ルイス軍曹からは凄く心配され、アーヴィント中尉やモンド軍曹からも無茶をするなと言われる。他の仲間達からも沢山声を掛けられた。多分アークを失った事が表情に出てしまってたかも知れないな。

そんな中、俺は格納庫に来ていた。自分の機体を確認する為だ。

 

「うわー…これ、スクラップ一歩手前だよ」

 

其処には大破判定確実の試作ジム改が有った。左腕と右脚は無くなっており、左肩はヒートホークの傷跡が残っていた。他にも被弾した痕跡が有り、良くこの状態で戦ったと思ってしまった。

 

「本当よね。もうスクラップ行きは確実ね」

 

「いきなり出て来て悲しい事言わないで下さい。此奴は俺の愛機ですよ?」

 

「その愛機を大破にしたのは何処の誰かさんかしらね?」

 

何処からともなく現れたレイナ中尉と話をする。そしてレイナ中尉の言葉に対して反論は出来なかった。

 

「それでも、私はシュウに感謝してる。だってシュウが前線に出てなかったら私は生きて帰って来れる自信は無いわ」

 

「何言ってるんですか。レイナ中尉だって充分な腕前が有るでしょう。それに隊長だから指揮だってしてる訳ですし」

 

「私…殆ど指揮して無い」

 

「そ、そんな事は…」

 

無いとは言えないかなぁ?いや、でもレイナ中尉が隊長に就いてるのは納得してるし。

 

「良いじゃないですか。指揮いらずの優秀な部下が居ると思えば」

 

「自分で優秀とか言うなよな〜。このこの〜!」

 

レイナ中尉は俺の頭を腕に抱え込みホールドする。色々嬉しい展開だが、今はやめて欲しい。

 

「レイナ中尉、腕離して下さい」

 

「嫌よ。だってアンタの雰囲気暗いもの。それに、部下の面倒を見るのは隊長の役割でしょう?」

 

「レイナ中尉…やっぱりな」

 

(立派な隊長だよな)

 

間違い無くレイナ中尉は優秀な隊長だよ。本人は過小評価してるけど。

 

(まあ、口には出さないけどな!)

 

間違い無くレイナ中尉は調子に乗るからな。黙っておこう。

この後、モンド軍曹から試作ジム改の処遇を伝えられた。

 

「先ずは結論から言いましょう。試作ジム改は解体、撤去されます」

 

「やっぱりですか。何となく予想はしてましたけど」

 

試作ジム改は想定以上の機動戦を行った為、各部の関節部の損傷とフレームの歪みを発生させてしまったのだ。

 

「此奴は少尉と最後まで戦い続けました。試作機で有り、後継機の存在は無いと決定された機体です。少尉と共に戦い全てを出し切りました。コートニー少尉を護りきれたのです」

 

モンド軍曹の言葉を聞きながら試作ジム改を見続けだ。RGM-79ジムのOSを引き継ぎ、試作ジム改となった愛機。俺の無茶な機動に自身を壊してまで最後まで付き合ってくれた。なら、もう休ませてやるべきだろう。

 

「そうですね。なら、見送ります」

 

俺はモンド軍曹に伝える。そして試作ジム改を再び見る。満身創痍と言える状態まで付き合ってくれた。なら、俺がわがままを言う訳には行かない。最後までしっかりとした姿勢を示すべきだ。

 

「ありがとう。ゆっくり休んでくれ」

 

RGM-79CRP試作高機動型ジム改に対して感謝と敬意を込めて敬礼をする。俺は大丈夫だと安心させる為に。

 

「そうだ、俺の次の乗機は何になります?」

 

「あー、それが…アレですね」

 

モンド軍曹の視線の先を見るとRB-79ボールが鎮座していた。そのモノアイ?部分が確実に光ったのが見えたのだった。

 

「マジか…」

 

(試作ジム改の修理要請しようかな?)

 

割と本気で考えたのだった。因みにレイナ中尉は今まで空気を読んで黙っていたが、俺の乗機を知り声を殺して大爆笑してた。

 

「声漏れてるんだよ!笑うなら声出して笑えば良いじゃ無い!」

 

「アッハッハッハーーー!?アンタの乗機がボール?チョーウケるんですけどーーー!?」

 

本当に遠慮無く笑いやがって。いつか締めてやる!

この時、俺は多少なりとも気落ちしてた気分が戻っていた。何だかんだと色んな人達に気を使われていたと感じたのだった。

アークを失った哀しみは有る。だが、愛機に対してしっかりとした姿勢を示した。なら、親友に対しても示さないとな。

俺は空元気を振り絞りながら声を上げるのだった。空元気を出し続ければ、その内元気になると信じて。

 

 

 

宇宙世紀0079.1月3日。この日、ジオン公国が地球連邦に対する宣戦布告を行った。それから一年と言う長い間激しい戦いを続けて来た。

地球連邦政府は再び中央集権体制を確立し、地球圏に再び平和と安定を約束する。そしてザビ家の様な行いを再び起こさない為に。

しかし、それは地球連邦軍の武力をより強力な物にジオニズム自体を早期鎮圧する為に過ぎ無いのである。争いの火種は燻り続ける。暗礁宙域で再起を起こさんとする者達。スペースノイドの真の独立を目指す者達。地球連邦政府の横暴に反感を持つ者達。

だが、誰もが願うのは同じ。其処に立場など関係無い。戦いの先に有る平和な世界を求めて。

 

一年戦争で散って行った全ての英霊に対して哀悼を込めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宇宙世紀0083.10月。ジオン公国残党軍将校の通信記録。

 

【我々は、3年…待ったのだ】




改めて思った事。ア・バオア・クー戦長ーい!8話分有るじゃーん!

そう言えば高機動型ジムカスタムとか誰か乗ってたのかな?誰も居なかったら使おうかと思うんだ!


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一年戦争終結2

沢山の誤字報告ありがとうございます。色々助かります。

そして、今回はあの有名な機体に搭乗しますよ!もう、皆さんの期待してる機体さ!←寒い


宇宙世紀0080.1月1日。この日、一年戦争が終結した。この戦争により軍人、民間人合わせて約50億人の命が散って行った。正に悪夢が現実になったと言える程、人類史上最悪の犠牲者が出たのだ。

そして、ジオン公国はジオン共和国に変わり連邦体制に移行した。これによりザビ家主導のジオン公国は消滅したかに見えた。だが戦後もジオン公国残党軍は多数残存しており、様々な場所で武装蜂起を行い地球連邦軍に対し抵抗の意思を示し続けるのであった。

 

宇宙世紀0080.1月15日。ジオン公国軍、カラマポイントに集結。しかしNBC兵器使用の罪により【シーマ艦隊】はアサクラ大佐により離脱を命じられる。

 

決して小さくは無い怨恨がいずれ大きな禍と成るとは、誰も…まだ気付かない。

 

……

 

宇宙世紀0080.2月1日。

 

戦争終結。この言葉が偽りで有るのは明白だった。何故なら未だに抵抗を続けてるジオン公国残党軍が俺達パトロール艦隊を襲撃しているからだ。

 

「本当にボールで出るしか無いのかよ!」

 

「少尉、何と言えば良いのか。御武運を」

 

モンド軍曹から憐れみと敬礼を受けながら出撃準備に入る。

 

「漸く戦争は終わった筈なのに。これで戦死したら成仏出来ないよな。全く」

 

RB-79ボールの起動システムを立ち上げながら独り愚痴る。アークが死んだ事を哀しむ暇すら無いとはな。

 

『ほらほら、ボヤかないの。ボヤいても敵は止まらないわよ』

 

「そうですね。因みに自分の機体はボールですから後衛配置希望します。と言うかボールで前線は無理」

 

正直この機体で戦ってる連中は度胸が有るとしか思えない。まあ、ジムの配備が間に合わなかったのも大きな理由だろうけど。

 

『当たり前よ。私が前に出るから援護お願いね』

 

「了解。まあ、レイナ中尉を守らないと俺も死ぬのは決定的でしょうけどね」

 

前衛機の居なくなった後衛機なんて直ぐに落とされるのが目に見えるぜ。

 

『レイナ中尉、シュウ少尉。其方の状況は如何でしょうか?』

 

『もう直ぐシステムが立ち上がるわ』

 

「此方は大丈夫です。出撃準備完了しました」

 

『了解しました。敵はムサイ級巡洋艦3隻とザク、ドムの混戦部隊です。現在味方のジム部隊が戦闘に入ったとの事です』

 

ルイス軍曹から現在の状況が伝えられる。俺達ラングリッジ小隊も間も無く戦場に突入する。

 

『此方ガルム1、出撃準備完了』

 

『了解しました。ガルム1出撃して下さい。続いてガルム2もお願いします』

 

『了解よ。ガルム1出るわよ』

 

「ガルム2、行きます!」

 

そして、俺達は再び漆黒の宇宙に飛び立つ。其処でお互い殺し合う為に戦場に向かう。

 

『あの、シュウ少尉。戦争は何時になれば終わるのでしょうか』

 

「ルイス軍曹?何言ってるんですか。もう戦争は終わってますよ。今はまだ駄々捏ねて我儘な連中が居るだけさ。もう直ぐ静かな宇宙に戻りますよ」

 

『そう、ですよね。変な事聞いてすみません』

 

ルイス軍曹の表情は暗い。そう、俺だけが辛い訳では無い。誰もが辛く哀しい感情を抱いてる。だからこそ軽い感じに言うのだ。

 

「大丈夫ですよ。もう直ぐ全て終わりますよ。それまで死なない様に戦えば充分さ」

 

そしてモニターとレーダーを確認する。他の部隊のジムとボールも共に出撃している。

 

「アーヴィント艦長。味方モビルスーツ部隊出撃完了しました」

 

「うむ。これより艦隊は味方の援護の為距離を詰める。敵は烏合の衆に過ぎない。だが、あの戦力を放置する訳には行かない。艦隊前進!」

 

サラミス級ロイヤルを中心として6隻のサラミス級が前進する。艦数、モビルスーツ数共に此方が上だ。だが、決して油断出来る訳では無い。アーヴィント艦長は帽子のツバを掴み位置を直す。そして目の前の敵を見据えるのだった。

 

……

 

一瞬の光が瞬く。その光は人の命が散って行く光。時には何百人の命が一瞬の光となって消えて行く。その光の瞬く中に突入して行くモビルスーツ部隊。

 

「この、落ちなさい!」

 

ジム・スナイパーカスタムから90㎜ガトリングガンから多数の弾幕が展開される。その弾幕に飲み込まれるザクは装甲を削られながら爆散する。

 

「次『ガルム1上だ!回避しろ!』ッ!」

 

ドムがジャイアントバズを撃ちながら接近して来る。私はブースターを使い回避する。しかし敵にとって想定内だったのだろう。そのままヒートサーベルを構え更に接近。

 

「伊達に女パイロットやって無いんだから!舐めないで!」

 

左腕のビームサーベルを展開して近接戦に入る。ビームサーベルとヒートサーベルが打つかる。一瞬離れてまた斬り合う。何方も引くつもりは無い。

 

『ガルム1、そのままで』

 

シュウ少尉の声と同時にドムの脚部が吹き飛び体勢が崩れる。その隙にコクピットに向けてビームサーベルを突き付ける。

 

『チクショウ!!!ぐああああっ!?!?』

 

ドムのパイロットは爆発と共に散って行く。

 

『ガルム1、無事ですか?て、前々!敵が多数来てます!』

 

私はガルム2からの警告を聞いて前を見据える。ザク3機編成が接近して来る。味方モビルスーツ部隊も迎撃しているが逆に撃破されて状況。間違い無く手練れのパイロットなのだろう。

 

『誰か!あのザクを何とかしろ!艦隊に近付きつつ有り!』

 

『ミサイル発射!敵を近づかせるなど許さんぞ!』

 

サラミス級からミサイルの弾幕が形成される。しかし、1機のザクが3連ミサイルポッドからミサイルを発射。ミサイルは艦隊から発射されたミサイル手前で爆発。その瞬間ミノフスキー粒子濃度が更に上昇する。

 

「まさか、チャフのつもり?不味いわ。抜けられる!」

 

90㎜ガトリングガンで弾幕を展開。しかし、ザクはランダムな機動をして弾幕を潜り抜ける。

 

「其方はガルム2が居る!シュウ逃げなさい!」

 

しかしシュウの乗るボールはザクの正面に居ながら射撃している。ザクが反撃体勢を取った時だった。

 

『今だ!艦砲撃ちまくれ!』

 

その言葉と同時にガルム2のボールは急上昇。その直後艦隊から艦砲が射撃される。ガルム2のボールに気を取られたザク1機が艦砲の直撃を受けて爆散。しかし、味方の敵討ちだと言わんばかりにザク2機がガルム2のボールに接近。

 

『貴様!ボールの分際で!』

 

『馬鹿正直に真っ直ぐ来てくれてどうも』

 

180㎜低反動キャノン砲がザクマシンガン直撃。しかし、もう1機のザクがザクバズーカをシュウの乗るボールを狙う。

 

「シュウはやらせないわ。喰らいなさい!」

 

スナイパー・ビームライフルでザクバズーカ装備のザクの背中を狙い撃つ。ビームはザクのバックパックに直撃する。

 

『ジ、ジークッ!?』

 

ザクは爆散して行く。だが、最後のザクはそのままヒートホークを掴みボールに斬りかかる。しかし、ボールは逆にザクに接近する。

 

『何!?貴様、体当たりする気か!』

 

ザクは慌ててヒートホークを振るう。しかし、間合いが甘くボールの左腕を斬るに終わる。

 

『この距離なら外す事は無いぞ』

 

ザクのコクピットに向けて180㎜低反動キャノン砲を狙う。そして、その距離は零だ。容赦無く180㎜低反動キャノン砲が火を噴く。そしてザクのコクピットを貫通する。ボールは直ぐに離脱する。その直後ザクは仲間の後を追うのだった。

 

『此方ガルム2。機体損傷が激しい為、戦闘続行は困難です』

 

「それよりシュウ、貴方は無事なの?」

 

『何とか。正直死ぬかと』

 

シュウの雰囲気は何時も通りに見える。だが、何時も通りなのが違和感を感じてしまう。

 

「分かったわ。兎に角一度離脱しなさい。出撃出来る機体は…今は無いわね」

 

しかし、戦闘は今や地球連邦軍が優勢だ。恐らく間も無く降伏勧告が出されるだろう。だが、それに従う程敵は甘くは無い。恐らく殆どのジオン公国残党軍は降伏はしないだろう。

 

『ジオンは……』

 

「シュウ?今何て言ったの?」

 

『何も言って無いですよ。取り敢えず母艦に戻ります』

 

シュウはそう言って母艦に戻って行く。しかし、先程小さな声では有ったが確かに聞いた。決して気の所為では無い。

 

【許さない】と。

 

……

 

戦闘が終わりコロンブス級補給艦の窓から宇宙を見る。先程の戦闘が有った事が嘘の様に静寂な宇宙が広がってる。

 

「機体、また壊しちゃったな」

 

RB-79ボールの損傷は結構酷い状態だった。しかし、間も無く補給が来る。その時にRGM-79Cジム改を受領出来る手筈になっている。

 

「ニュータイプはこの宇宙をどう思うのだろうか?」

 

俺には星が適度に煌めく静かな宇宙にしか見えない。しかし、ニュータイプならどんな風に見えるのか。死んだ連中の魂がこの宇宙で漂ってるのが見えたりするのか?

 

「シュウ少尉、お疲れ」

 

「あ、レイナ中尉。お疲れ様です」

 

レイナ中尉から飲み物を渡される。有り難い頂こう。

 

「シュウ、さっきの戦闘は危なかったわよ。ボールで囮をやるなんて」

 

「二度としたくは無いですね。もう一度やれと言われたら敵前逃亡上等ですよ」

 

そう言ってストローに口を付ける。うん、イチゴミルクは美味しい。

 

「なら良いけど。あんまり無茶はしないでよね」

 

「少なくともジム改が来るまで無茶はしませんよ。まあ、乗機が壊れたから無茶出来ませんが」

 

それからお互い黙って宇宙を見る。

 

「宇宙は静かな物ね。私達が戦ってた事なんて無かったみたい」

 

「そうですね。案外、人間何てこんな物かも知れないですね」

 

宇宙の広さに比べたら人間何て小っぽけな存在だと言う事だ。

 

宇宙世紀0080年。地球連邦軍は軍備を増強させて行く。そして、徐々に地球連邦軍上層部での派閥争いが激しさを増す。その派閥争いは時に現場の兵士達や民間人をも巻き込んでしまう。

 

宇宙世紀0083年。この年、遂にジオンの亡霊が動き出す。漢達の熱き戦いが始まろうとしていたのだった。



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RGM-79N-Fbジム・カスタム高機動型

何が有ったのか分からない。たった1話しか投稿してないのに何故週間ユニークが7000近くあるのか?
何か、1話投稿で申し訳ない。

後、また誤字報告ありがとうございます。何時も助かります。


宇宙世紀0080.6月10日。地球連邦軍共同墓地

 

共同墓地は非常に殺風景な場所だ。墓標が沢山並べられている。それ以外には殆ど何も無い。その中で一際大きな石版が有った。大量の名前が刻まれた石版。それは一年戦争で戦死した者達。身寄りも無ければ死体をも回収出来無かった者達。だからこそ名前だけでもと刻まれた石版。

 

「よう、アーク。半年も待たせて悪かったな」

 

この日、宇宙での戦いが一段楽着いた。正確に言うなら地球連邦宇宙軍の戦力再編が順調に進んで少し余裕が出来たのだ。しかし、今でも宇宙ではジオン公国残党軍のゲリラ活動は多発している。

 

「まあ、宇宙も結構忙しくてな。漸く長期休暇の申請が通ったんだ」

 

石版には【アーク・ローダー軍曹】と刻まれていた。死んで二階級特進したのだ。だが、それを喜ぶ事は出来無い。

 

「お前の荷物な、殆ど連邦軍の事務の方に任せたよ。俺が持ってても…辛いからさ」

 

アークの両親に遺留品を渡す手続きをやる必要は無かった。アークの両親、故郷は戦火に消えていたからだ。結局、俺はアークの荷物を纏めておく位しか出来なかった。

 

「其方の居心地はどうだ?寂しい事は無いだろう。何せ50億人超えが其方に居るからな」

 

石版に触れアーク・ローダーの名前に触れる。

 

「アーク、戦争は終わったよ。だけどな、残った物は大き過ぎたよ」

 

地球連邦とジオン。アースノイドとスペースノイド。この両者の溝は深まる一方だった。地球連邦軍は軍備を増強させ、ジオン共和国の戦力保有を制限させる。つまり争う事すら出来無い状況になりつつ有るのだ。

 

「未だに地球の復興は進まずだ。コレが俺達が望んだ未来なのか?違うだろ」

 

確かに軍備増強は理解出来る。一年戦争の二の舞を起こす訳には行かない。だが、抑圧が強過ぎれば反発するのは必然だ。

 

「アーク、俺は軍に残るつもりだ。一年戦争の犠牲から目を背ける訳には行かないからな」

 

開戦時、俺は戦う理由が無かった。精々地球連邦政府に色々お世話になったから、その返済の為に軍に入隊したに過ぎない。だが、今は少し違う。

 

「この戦いから学んだ事を次に伝えて行こうと思う。正しいとか間違いとか関係無く、自分達が起こしてしまった犠牲を忘れさせ無い為に」

 

この悲惨な戦いを風化させない為に。地球連邦とジオン公国と戦いは起こるべくして起こったと理解させる為に。

 

「安心して良いから。俺は……もう、大丈夫だから」

 

石版に触れたまま目を閉じる。聞こえる音は風が微かに吹く音だけだ。ニュータイプは人の気配を感じる事が出来るとか言われてる。なら、死んだ者達の気配をも感じる事が出来るのだろうか?

暫くしてから石版から手を離す。若干目元が熱くなったのは仕方ない。

 

「そろそろ行くよ。其方で達者でな。後、強引なナンパは止めとけよ。またビンタ喰らうからな」

 

軍学校での出来事を思い出し、呟きながら石版に背を向けて歩く。しかし、一年戦争の痕跡は人々の心だけに留まらなかった。

ミノフスキー粒子、モビルスーツと言う強力で魅力的な兵器群は新しい産業分野となる。それにより経済の発展に繋がると同時に新たなる争いの引き金になるとは、この時はまだ誰も知らなかったのだった。

 

……

 

宇宙世紀0081.8月15日。ジオン公国残党軍【デラーズ・フリート】は組織再編が完了。地球連邦軍に対しゲリラ活動を開始。

 

宇宙世紀0081.10月20日。地球連邦軍ジョン・コーウェン中将の元、AE(アナハイム・エレクトロニクス)社との【ガンダム開発計画】が極秘裏に共同開発が開始される。

 

宇宙世紀0083.1月。デラーズ・フリートは極秘計画であるガンダム開発計画を察知。AE社に工作員を潜入させる。

 

……

 

宇宙世紀0083.6月10日。サラミス改級ロイヤルを旗艦とするサラミス改4隻、コロンブス級輸送艦1隻を構成とする地球連邦宇宙軍地球機動艦隊所属第217パトロール艦隊は月面都市フォン・ブラウンシティのAE本社に向かう。

 

サラミス改級ロイヤル。

 

「レイナ大尉、シュウ中尉、見て下さい。フォン・ブラウンですよ!自分初めて来ましたよ」

 

「落ち着けウィル・ルガード少尉。俺達はテスト機の受領とロイヤルの改修に来たんだぜ?」

 

ウィル・ルガード少尉。此奴は2年前に仕官学校を卒業して俺達、MS第217パトロール小隊ラングリッジ小隊に入隊して来た。しかし、戦時中では無い為に中々昇進には恵まれない奴だ。

 

「そうよ。でも、私達は基本自由になる筈よ。だから頑張りなさいシュウ・コートニー中尉殿」

 

「俺もフォン・ブラウン観光したい…」

 

そう、今回のテスト機には俺が搭乗する事になってる。しかし、一つ納得出来無い事が有る。

 

「と言うか、普通テストパイロットの仕事でしょう?」

 

今回搭乗する機体資料を見ながら呟く。するとレイナ大尉が理由を教えてくれた。

 

「あ、それね。私が社交パーティーでシュウ中尉の自慢をしたのよ。そうしたら是非お願いしますってコーウェン中将から依頼されたの」

 

ゴメンねーとウィンクかましながら言う。アンタが原因かコノヤロー。

 

「自慢て。別にエースパイロットとかじゃ無いんですけど?」

 

「いやいや、中尉がエースじゃ無かったら他の殆どのエースパイロットが自称に成りますから」

 

ジト目で突っ込んで来るウィル少尉。

 

「んな事知るか。まあ、機体は悪く無さそうだから良いか」

 

「そうよ。何時もジム改の出力不足に不満気だったでしょう?なら丁度良いじゃ無い」

 

「中尉の機体データ見ましたけど、アレで出力不足とかどんだけ身体が頑丈何ですか」

 

二人の言葉を聞きながら資料を見る。コーウェン中将の元で行われてるガンダム開発計画。その機体のテスト機。

RGM-79N-Fbジム・カスタム高機動型。嘗ての愛機とは似ても似つかない。しかし、期待する気持ちは充分に有ったのだった。




ジムカスタム高機動型の資料少ねえ…。てか、全然無い。多少独自解釈するので勘弁な!


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機動プログラム

ガンダム界の有名キャラが登場します。やったぜ!


月面都市フォン・ブラウン。この場所はAE本社が有る場所で有名だ。一年戦争時でモビルスーツ分野で急激な経済成長により発展を遂げた。その影響故にAE社に入社出来れば安泰とも言われている。しかし、裏では死の商人の巣窟とも比喩されてる。

サラミス改級ロイヤルはAE本社の演習場近くにある格納庫に停泊する。残りはフォン・ブラウンの宇宙港に向かう。

 

「さて、我々は数人を艦に残してフォン・ブラウンに向かう。シュウ中尉はアナハイムの人が迎えに来るそうだ」

 

「了解しました。アーヴィント艦長はどうするので?」

 

「無論、レイナと一緒にフォン・ブラウンに視察しに行くのさ」フサァ

 

(視察と言う名の観光巡りとデートだな。間違い無い)

 

そう内心思いつつ了解ですと返事をするのだった。

 

……

 

暫く格納庫で待機していると何故かレイナ大尉を筆頭にアーヴィント少佐、ルイス少尉も付いて行くと言って来た。因みに2人は階級試験を受けて合格した結果今の階級になってる。

 

「シュウ中尉があんまりにも寂しそうにしてるから。仕方無く付き添って上げるわ!」

 

豊かな胸を張りながら堂々と言い放つ。

 

「別に寂しく無いんですけど。まあ、飽きたら観光に行っても良いですからね」

 

「気にし無くていいさ。僕はレイナと共に居れば何処でも構わないからね」フサァ

 

「私はシュウ中尉とお話しがしたくて。最近余り話せて無いので…」

 

アーヴィント少佐は相変わらずで安心だ。そしてルイス少尉はちょっと頬を染めて胸にクル台詞を言う。正直、俺に脈あるんじゃ無い?と思ってしまう。

 

「ゴホン!安心しなさい。後で時間作って皆んなで観光に行くわ。その時はシュウ中尉の奢りだからねー」

 

「ねー、じゃ無いです」

 

可愛らしく上目遣いを使いながら言うもんだから一瞬同意仕掛けた。全く、この人は油断も隙も無いんだから。因みにウィル少尉は薄情にもフォン・ブラウンに行ってしまった。別に恨むつもりは無いさ。唯…今度の模擬戦は手加減無しで徹底的に鍛えます。ええ、私怨はこれっぽっちもございませんとも。

皆んなと話してると水色の制服を来た女性がやって来た。襟首にはアナハイムマークのバッチが付いてる。

 

「初めまして。シュウ・コートニー中尉でいらっしゃいますか?」

 

「はい。貴女が迎えの方で?」

 

何処か知的な雰囲気を出しながら、整った容姿に青い瞳で金髪をボブカットにしてる女性は笑顔で手を差し出す。

 

「ニナ・パープルトンです。どうぞ、宜しくお願いします」

 

「シュウ・コートニー中尉です。本日は宜しくお願いします」

 

握手をしながら感じた事。パープルトンさんの笑顔が無知の様に見えたのは気の所為だと思いながら。

 

……

 

格納庫に向かう為移動する。そして全員の動向の許可も下りた。

 

「コートニー中尉の戦歴を少し拝見させて頂きました。素晴らしい戦果ですね。特に高機動型のジム改での戦闘は群を抜いていました」

 

「そうですかね?結局、試作ジム改は壊してしまいましたけど」

 

「確かにそうです。しかし、機体のフレームが歪む程の機動が出来た事は素晴らしい事です。結果、今後のモビルスーツ開発に大きな貢献をしたのは間違い無いでしょう」

 

「大きな貢献?何故フレームが歪む事が貢献になるの?」

 

レイナ大尉が疑問に思った事を口にする。するとパープルトンさんは理由を教えてくれた。RGM-79Cジム改をベースに作られたRGM-79CRP試作高機動型ジム改の実戦データは貴重な物である。何故なら現行機でこれ以上の機動は出来無いと証明されたと言っても良い。無論量産される前に耐久テストはされてるだろう。しかし実戦に於ける耐久度の目安にはなるのだ。

 

「はあ。俺は唯、我武者羅に戦ってただけですけど」

 

「それでもです。寧ろその結果得られた物だと私はそう考えます」

 

そして格納庫に着く。其処には俺の乗機となるRGM-79N-Fbジム・カスタム高機動型が鎮座していた。

 

「此奴が俺の機体になるのか。因みに本来の機体はどんな機体なんですか?」

 

この機体がテスト機なら別の機体がある筈だ。資料を見た時には機体情報は無かった。唯、【ガンダム開発計画】の一環とだけ書かれていた。

 

「その機体はまだ組立て中なんです。一つはテスト機同様の高機動型。もう一つは…重装型ですね」

 

一瞬間が有った気がする。高機動型より重装型の方が難航してるのかも知れないな。

 

「まあ、高機動型なら問題無さそうだな」

 

「流石エースパイロット!その自信こそエースに相応しいわ」

 

「レイナの言う通りさ。君の実力なら問題無いさ」フサァ

 

「確かにそうですね。シュウ中尉の機動戦は他の人達より群を抜いてますから」

 

どうやら皆んなは俺の呟きを勘違いしたらしい。だが、別に訂正するつもりは無い。

 

「心強い言葉ですね。では、早速機動テストに入ります。この機体のデータは全て【ゼフィランサス】に反映されますから」

 

(ゼフィランサスね。確か花の名前だった気がするが)

 

記憶の中を検索しつつパイロットスーツに着替えに行くのだった。

 

……

 

「出撃準備急がせろ。もう出るぞ」

 

「武装はジム・ライフルだ。模擬弾用意忘れるなよ」

 

コクピットの中から整備スタッフ達が準備してる。しかし、一年戦争時とは違い切羽詰まる事は無い。

 

「はてさて、テスト機と言え手を抜くつもりは無いさ」

 

システムを起動させながら呟く。モビルスーツパイロットとして、新型の機体テストを行う事は一度はやってみたい事だろう。正にパイロット冥利に尽きる。

 

「しかし、機体のカラーリングは変更出来るのかな?」

 

恐らくテスト機だからだろう。白とオレンジのツートンカラーの機体だ。どうしても一年戦争の時に搭乗した試作ジム改と…奴を思い出す。

 

『コートニー中尉、出撃準備が出来次第カタパルトに向かって下さい』

 

「了解、なら出撃準備完了だ。これよりカタパルトに向かう」

 

頭の思考を切り替えてアナハイムのオペレーターの指示に従う。そしてカタパルトに機体を接続させる。操縦レバーを握る手に力が入る。

 

『進路クリア。発進どうぞ』

 

「シュウ・コートニー中尉、ジム・カスタムFb(フルバーニアン)出るぞ!」

 

カタパルトが加速する。そして重力が殆ど無い月の宇宙に出る。

 

『それでは先ずは巡航速度での機動を行なって機体に慣れて下さい。それから最高速度、急制動、ランダム機動のテストを行います』

 

「了解した。さあて、久々の高機動型だ。全開で行かせて貰うぞ!」

 

巡航速度を無視して一気にブースターを全開にする。ジム・カスタムFbのジェネレーターは通常のジム・カスタムと同じ高出力の1400kw。一年戦争時に使用したRX計画のジェネレーターとほぼ同じ出力だ。つまり、試作ジム改と殆ど同じなのだ。

加えて技術進歩により推力向上は勿論の事フレーム等の向上もされてる。

 

「良いぞ良いぞ!この感じ、懐かしい感じだ!」

 

月からある程度離れて急停止。そして月の重力を借りて一気に急降下。機体モニターから接触警報が出る。それをギリギリまで無視してAMBACを行う。

 

「Fbと言われる所以のバックパックの使い方は何も加速だけじゃ無いぞ」

 

バックパックの左右に取り付けてる追加ブースターを逆噴射させる。更に脚部のブースターも使い一気に急停止する。

 

「ふう、良い感じに慣れたかな。さて、テスト飛行やりましょう」

 

しかしオペレーターからの返事が無い。代わりに別の声が聞こえた。

 

『シュウ中尉!今のは慣らして無いじゃ無い!危ないでしょう!?』

 

「うわ!?レイナ大尉、びっくりした。大丈夫ですよ。本番は此処からです」

 

ウィンクしながらグッドサインする。

 

『後でお説教します。逃げたら減俸です。反論は聞きません』

 

「…はい」

 

どうやら余計に怒らせてしまったようだ。この後予定された機動プログラムを全て終わらせるのだった。




三大悪女に位置する女。通称【紫豚】ことニナ・パープルトンでした。でもあのキャラだからこそモビルスーツと言う狂気をより一層際立たせてるなと感じますね。また本人はそんなつもりが無いのがまた良い味出してる。

後、ジム・カスタム高機動型だと長いので暫定的にFbと略します。でも間違ってないよね?


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射撃プログラム

機動プログラムを終え、そのまま射撃テストに入る。高速機動の中、如何に的に命中できるかを確かめる訳だが。

 

「この辺りは弾幕張って誤魔化すのが1番楽なんだがな」

 

機動戦で的に命中させるのは難しい。特に相手も同じ高速機動を行えば尚更だ。しかし、今更武器を交換してくれと言うつもりは無い。戦場に出れば今有る武器で何とかするしか無いのだから。

 

「当たらない距離なら当たる距離で戦えば良いだけさ」

 

自分に言い聞かせる。そしてカウントダウンが始まる。モニターから見える的の位置を確認して機動ルートを計算する。

 

『3、2、1、射撃プログラム開始します』

 

オペレーターの言葉を聞いて機体を動かす。最初は地表スレスレを飛行して行く。

 

「先ずは確実に当てる」

 

そのまま想像通りのルートを通りながら的に当てて行く。そして最後2つを無視してリロードする。そして上に浮いてる的に狙いを絞る。途中幾つかの的を外しながら、他の的に狙いを絞る。

そして大体の的を撃破した後、残ってる的を確認する。残ってる的の位置は殆ど直線状になってる。

 

「残弾も丁度ぐらいだな。さて、終わらせるか!」

 

そしてブースターを全開にしながら残ってる的を撃破して行く。そして、そのまま月の重力に引かれながら一気に急降下。最後はビームサーベルを引き抜きながら2つ同時に破壊する。

 

「ふう、終わったか。あ、ビームサーベル使っちゃったな」

 

射撃プログラムなのにビームサーベルを使ってしまった訳だからな。

 

『全目標の撃破を確認しました。それとビームサーベルは問題有りません。射撃プログラムとしての目標は殆ど達成してますので』

 

「なら良かったですよ。次はどんな試験になるので?」

 

『本日は此処までです。この後は機体の各部チェック、及び調整に入ります。恐らく次回搭乗する際はより動かし易くなってます』

 

そして機体を格納庫に移動させる。格納庫に戻ると直ぐにアナハイムの整備スタッフ達がジム・カスタムFbに群がる。その直ぐ近くにニナ・パープルトンさんも居た。

 

「お疲れ様です、コートニー中尉。素晴らしい機動でした」

 

「どうも。それにしても中々良い機体だと思いますよ。これを完全に扱い切れれば相手から捕捉される可能性は少なくなると思いますよ」

 

ミノフスキー粒子下の元での戦闘なら間違い無く厄介な機体だろう。但し、この機動性に耐えれるだけの根性は必要だろうけど。

 

「はい。それに、コートニー中尉のデータを引き継ぐ事が出来れば次の調整も早く進む事は間違い無いでしょう」

 

「次の機体への足掛かりな訳ですか。つまり、ガンダムの高機動型の完成に一役買ってると?」

 

「はい。私のガンダム…ゼフィランサスの宇宙戦仕様の完成になります」

 

「宇宙戦仕様ですか。確かに、地上でこのバックパックを使用しても本領発揮は無理ですね」

 

俺とパープルトンさんはジム・カスタムFbを見上げる。いや、パープルトンさんはジム・カスタムFbを通してゼフィランサスを見てるのだろう。

 

(しかし【私のガンダム】ね。ちょっと近寄り難い美人な人だな)

 

兵器は何処まで行っても兵器に変わりは無い。勿論使い方次第で良い事にも出来る。だが、今の時代でそれは難しいと言わざるを得ない。それを理解して無いからこそ言えた言葉なのだろう。

俺はそんな事を考えながらジム・カスタムFbを黙って見続けるのだった。

 

……

 

ジム・カスタムFbのテストを一通り終えると良い時間になっていた。しかし現在ロイヤルの改修作業中と言う事も有り一時的にAE社が保有するホテルに泊まる許可が降りた。

 

「流石AE社の持つホテルなだけ有って立派だな。然もホテル代は経費で落ちると来たもんだ」

 

中々立派なビジネスホテルでの寝泊まりだから嬉しい物がある。

 

「テスト機の搭乗に立派なビジネスホテルでの宿泊。中々運が良いんじゃ無いかな」

 

明日もジム・カスタムFbの試験が幾つか有る。だが、これだけ良い待遇をされたら嫌でも気合が入るものだ。暫く部屋でのんびり寛いでいるとドアがノックされる。誰かと思いドアを開けると。

 

「あ、シュウ中尉。もう食事は済ませましたか?」

 

「ルイス少尉?いえ、まだ済ませて無いです」

 

「でしたら、その…もし良ければ一緒に外食しませんか?」

 

珍しい事にルイス少尉から食事のお誘いが来た。然もちょっと頬を染めながらのお誘いだ。これは絶対に断る訳には行かない。

 

「勿論構わないですよ。では今から行きますか」

 

「はい!では一緒に行きましょう」

 

俺達は2人並んでエントランスに向かう。考えてみたらルイス少尉と2人っきりで何処かに行く事は殆ど無かったな。有っても陥落した宇宙要塞ソロモンの探索をした時位だし。

 

「そう言えばシュウ中尉の機動は凄かったですね。あの機動に追従出来るパイロットは中々居ませんよ」

 

「それはそれで問題があるんですけどね」

 

「あ、言われてみればそうですね。味方との連携とかですよね」

 

流石ルイス少尉だ。話がスムーズに進むから良いね。

 

「レイナ大尉とウィル少尉の機体はジム改ですからね。もし大尉の機体がスナイパーカスタムだったらまだ良かったけどな」

 

一年戦争時、地球連邦軍には様々なモビルスーツが生産された。そのお陰でジムのバリエーションは豊富過ぎて前線では整備や部品調達に不備が生じてしまった。また一年戦争の終結後、戦後復興の為に軍事予算削減を決定。その結果様々なモビルスーツ開発計画が中止、また統合する形になる。

宇宙世紀0081.10月13日【連邦軍再建計画】が可決した事によりモビルスーツの部品の規格化が進む。その結果RGM-79ジムはC型系列に絞り込まれる事になる。そして、その余波は現場の俺達兵士にも来た訳だ。元々RGM-79SCジム・スナイパーカスタムの生産数は少ない。よって真っ先に回収されてしまった訳だ。現在レイナ大尉の搭乗機はRGM-79Cジム改で落ち着いてる。

勿論今でもC型系列以外の機体を使用してる部隊は有ると此処に記載しておく。

 

「そうですね。今の機体では狙撃は難しいですよね」

 

「その通り。OSもセンサー関係も通常機と同じ。更にジェネレーター関係も下がってますからね」

 

1250kwのジェネレーターだとビーム兵器の射程が短い。勿論中〜近距離なら問題無い。しかし、遠距離となるとジム・スナイパーカスタムの1400kwクラスのジェネレーターは欲しい。

 

「ま、無い物ねだりしても仕方ないですよ。それに、レイナ大尉には専用武器があるから問題無いですよ」

 

「確かに。未だにあの弾幕は驚異ですよね」

 

そう、レイナ専用武器【90㎜ガトリングガン】は未だに現役だったりする。確かにあの弾幕の援護射撃は有難いし、敵からしたら厄介極まり無いだろう。

 

「まあ、レイナ大尉の弾幕を抜く方法は無い訳では無いですけどね」

 

「そうなんですか?」

 

「今の機体とやり方次第で充分対処出来ますから」

 

そんな事を話しながら外に向かう。すると其処に人影が現れる。

 

「フッフッフッ、この私を差し置いて行こうなんて2年早いわ!」

 

「流石レイナだね。その洞察力に惚れ惚れするよ」フサァ

 

其処にはレイナ大尉とアーヴィント少佐が居た。

 

「いや、俺が報告しただけなんすけど」

 

序でにウィル少尉も居た。と言うかお前が犯人か。

 

「あらら。まあ、皆と外食に行くのも悪く無いか。そうですよね?」

 

「……チッ。そうですね」

 

今、ルイス少尉から舌打ちをした音が聞こえた様な?しかしルイス少尉を見るといつも通りの笑顔だ。

 

「気の所為か」

 

「何が気の所為ですか?」

 

何でもないよと言い歩き出す。こうして俺達の日常は過ぎて行く。当たり前の日常こそ守るべき物だと噛み締めながら。

 

……

 

「それで?俺を置いてフォン・ブラウンを満喫したウィル・ルガード少尉殿は、一体何故俺を此処に?」

 

食事を終えて後はゆっくり休む時間帯。そんな時間に俺はウィル少尉に呼び出され部屋に来ていた。

 

「そ、そんな言い方しないで下さいよ」

 

「気にし無くて良いんだよ。安心しろよ恨み言何て言わないさ」

 

代わりに模擬戦の時に徹底的に鍛えてやる。徹底的にだ!!!手は抜かないからな!!!

 

「うっ…今、凄い悪寒が。と、兎に角中尉の為に良い物買って来たんで。どうぞお納め下さい」

 

黒いビニール袋に包まれた何かを渡される。俺はそれを無造作に受け取り中身を見る。

 

「どうせ下らない物なんだ……こ、此れは」

 

「如何ですか?結構良い物でしょう。今の職場にピッタリのシチュエーションですよ」

 

ウィル・ルガード少尉は自信満々な表情で言う。それは確かに今の職場にピッタリの物だった。

 

【憧れの女性パイロットが、貴方の為に手取り足取り色んな事を教えてあ・げ・る♡】

 

【気になるあの子はオペレーター。二人っきりで戦術指南♡】

 

と言った感じのエ○DVDが5枚位あるじゃないですか!

 

「ウィル少尉、お前…」

 

「分かってますって。ちゃんと似た子を選択してますから」グッ

 

グッドサインをするウィル少尉。俺はウィル少尉の肩に手を乗せる。此処は上官としてしっかりと指導せねば。

 

「良くやった。流石俺の優秀な後輩なだけは有る。今度模擬訓練の時は操作方法を重点的に見てやろう」

(馬鹿野郎!こんな破廉恥な物を堂々と持ってくるんじゃない!然も何気に二人に似てる所が最高じゃないか!)

 

「はい!ご指導の程宜しくお願いします!」

 

「うむ。安心しろ、無理しない様に指導してやるさ」

 

言ってる事と思ってる事が逆になってる事に気付かないシュウ中尉。いや、思ってる事も結局同じだから問題無いのだろうか?

こうしてシュウ中尉とウィル少尉はお互いの信頼関係をより強固な物にしたのだった。




この間ジム・スナイパーカスタムのジェネレーター数値調べたら1390kwあると知った。ガンダム超えちゃってるじゃーん!でもコア・ブロックが無い分構造に余裕が有るのかな?


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AE社テストパイロットVSシュウ・コートニー

試験は順調に進んでいた。俺の機動、射撃データを元にジム・カスタムFbの動きは徐々にスムーズになって行く。そして、遂に最終試験に入るのだった。

 

宇宙世紀0083.8月5日。

 

ジム・カスタムFbの最終試験は模擬戦になる。先ずはAE社の3名のテストパイロットが相手になる。AE社側の機体はRGM-79Cジム改。地球連邦軍の主力機になる。

しかし本番は次の模擬戦だ。何故なら、次は仲間内での戦いになる。そして相手の戦力は公開されて無い。恐らく艦載機は殆ど出撃すると見て良いだろう。

 

『コートニー中尉、準備は宜しいでしょうか?』

 

「はい、問題ありません。唯一つ気になる事が有るんですが良いですか?」

 

『構いません。何でしょうか?』

 

「何故テストパイロット達は俺に対してあんなに好戦的何ですか?」

 

最初に顔合わせしたが凄く睨まれてしまったのだ。まあ、大体の予想は出来ない事は無いが。

 

『ああ、それは恐らくコートニー中尉の乗る機体を取られてしまったからだと思います」

 

簡単に言うと本来ならジム・カスタムFbはAE社のテストパイロットが行う予定だった。しかしコーウェン中将の鶴の一声で変わってしまった訳だ。

 

「成る程な。でもそれだけでは無いでしょう?」

 

『と仰いますと?』

 

「いや、だってさ。彼等はどう見ても前菜の立場じゃん。この後のメインの為の噛ませ犬じゃん」

 

彼等は曲がりなりにもAE社のテストパイロットだ。腕前は間違い無く高い連中ばかりだろう。そんな連中が前菜扱いされれば不機嫌になるのは道理だ。そしてオペレーターは苦笑いを浮かべるだけだ。

 

「そう考えるとテストパイロット達には同情するよ」

 

『コートニー中尉、その辺りはお気になさらずに。元はと言えば全ては此方のテストパイロットの技量不足が招いた結果に過ぎません。ですので遠慮無く模擬戦に挑んで下さい』

 

中々辛辣な事を言うオペレーターだ。だが、そう言われてしまったなら仕方無い。此方も意識を切り替える。

 

「了解した。なら此方は問題無しです。何時でも行けます」

 

オペレーターに伝えてモニター越しにテストパイロットが居る方向に視線を向ける。此方の武装はロング・ライフル。対して相手はジム・ライフルが2機、ビームスプレーガンが1機。模擬戦なだけ有って無難な武装だろう。

因みに武装に関しては特に縛りは無いとの事だった。

 

『それでは、模擬戦開始のカウントを始めます』

 

オペレーターの言葉を聞いて気持ちを切り替える。モニターとレーダーの再確認を直ぐに行う。

 

『カウント5、4』

 

操縦レバーを握る手に力が入る。

 

『3、2、1』

 

ペダルを軽く踏めば小気味良くバックパックからの振動が伝わる。

 

『模擬戦開始です。御武運を』

 

その瞬間、俺は月の宇宙へとジム・カスタムFbを駆け抜けるのだった。

 

……

 

「タンゴ1より各機、周辺警戒だ。相手は1機だが油断はするな」

 

AE社のテストパイロットであり隊長でもある彼は仲間達に警戒を促す。

 

『タンゴ2、了解』

 

『タンゴ3、了解』

 

彼等は無駄な動きをする事無く隊長の指示に従って行く。

 

『しかし、今回の模擬戦は気に入りませんね。まるで我々が噛ませ犬扱いとは』

 

『全くだよな。本社は何を考えてるやら』

 

部下達は現在の状況に不満がある様だった。だが、それは致し方無い所だろう。隊長自身も不満を抱いてるのは事実なのだ。

 

「なら本社と連邦の連中に一泡吹かせるぞ。このままタダで済ます訳には行かんからな」

 

『隊長…そうですね。本社に我々の実力の再確認させる良い機会ですよ』

 

『タンゴ2良い事言うじゃねえか。それに、あの機体は元々俺達の機体なんだ。返して貰わ無いとな』

 

やはり彼等もジム・カスタムFbに対して思う所が有る。自分達のお株を見ず知らずの奴に奪われてしまっては、プライドを大きく傷付けられたのも同然だ。

その時だった。レーダーに反応が有った。それは真っ直ぐに此方に接近して来ていた。

 

『おいおい、小細工無しで来るのか?随分と舐められた物だぜ』

 

『仕方無いでしょう。奴に出来る事など殆ど無いでしょうし』

 

そして彼等は目にする。ジム・カスタムFbが上から突っ込んで来る姿だ。

 

「各機散開するぞ。タンゴ2は右翼。タンゴ3は左翼に回り込め」

 

『タンゴ2了解』

 

『タンゴ3了解!堕とされんなよ』

 

そして遂に彼等の武器の射程内に入る。

 

「攻撃開始!!!」

 

テストパイロット達は躊躇無く引き金を引いたのだった。

 

……

 

ジム改を目視した時、ロング・ライフルで狙撃と言う手もあった。だが、それではジム・カスタムFbの性能テストにならない。

 

「なら、一撃離脱で仕留めるか。多分機動戦には乗って来ないだろうし」

 

戦力比は1対3。だが、機体性能に差が有るのは向こうも理解してる筈だ。だったら此方の土俵だけで戦えば良い。

 

「さて、行くぞ!」

 

俺はブースターを一気に全開にして彼等に向かって突っ込む。月の重力も借りる様に行けば、更に加速に拍車が掛かる。

相手は散開して攻撃をしてくる。だが、お陰で仕留め易くなった。先に左に居るジム改に狙いを絞る。ロング・ライフルで残り2機のジム改に牽制を掛け続ける。

 

『タンゴ2回避しろ!』

 

『大丈夫です。自分が仕留めます!』

 

タンゴ2は弾切れになった90㎜マシンガンを放棄して模擬刀を抜く。それと同時に此方も模擬刀を掴む。

 

『貰ったああああ!!!』

 

タンゴ2は模擬刀を振り下ろす。だが、模擬刀が振り下ろされる直前に肩部に有る追加ブースターと脚部のスラスターを使い機体を捻る。そして擦れ違う直前に模擬刀を抜く。

 

「先ずは1機目」

 

そのままコクピットを切り裂き離脱する。

 

『タンゴ2、コクピット直撃により大破。戦闘続行不能』

 

『嘘だろ…?こんな呆気なく』

 

オペレーターの言葉にタンゴ2は呆然としてしまう。

 

『クソ!何て推力だ。追い付けない。隊長、こうなったら自分が囮になります』

 

『…それしか無いか。タンゴ3頼むぞ』

 

『了解です!唯、仕留めてしまうかも知れませんけどね!』

 

タンゴ3は月の地表から離れる様にして行く。その下付近にタンゴ1は陣取る。

 

『さあ、来い!タンゴ2の仇を取ってやる!』

 

『焦るなよ。落ち着いてやれば良い』

 

ジム・カスタムFbを迎え撃つ為に構えるタンゴ1、3。

 

「良いね。なら、俺も正面から相手してやる」

 

再び月の宇宙に上がる。そして2機のジム改を見据え、ブースターを全開にして突撃する。

 

『隊長!奴が来ます!』

 

『この自信の表れ…間違いない、奴は本物のエースだ。タンゴ3、此方も行くぞ』

 

お互い再び射程内に入る。タンゴ1からビームスプレーガンからビームが放たれる。それと同時にタンゴ3からも90㎜マシンガンから弾幕が張られる。しかし、その弾幕を最低限の機動で回避する。

 

「その程度の弾幕は有って無い様な物だ!」

 

紙一重に近い回避をする姿を間近で見たタンゴ3は衝撃を受ける。自分はAE社のテストパイロットでエリートだと自負していた。例え正規兵だろうと負ける事は無いと。だが、それがたった今全て叩き潰された。

 

『だからと言って引き下がれるか!俺にもプライドがあんだよ!』

 

模擬刀を抜き接近戦を挑むタンゴ3。だが、その攻撃は空振りに終わる。シュウ中尉はそのままタンゴ1に対しロング・ライフルを撃つ。

 

『くっ!この弾幕は!?』

 

ロング・ライフルの装弾数は120発。その攻撃にシールドを構えて防ぐタンゴ1。しかし、そのまま硬直させてしまったのが駄目だった。その隙に側面に回り込まれてしまう。

 

『隊長!右です!』

 

『しまっ!?』

 

至近距離からロング・ライフルの攻撃を受け、タンゴ1は撃墜判定になる。

 

『隊長!貴様ーーー!?』

 

タンゴ3は勢い良く突っ込み模擬刀を振るう。

 

「悪いな。仕留めさせて貰うよ」

 

俺は最後のジム改に向かって行く。そして間合いが詰まりタンゴ3は模擬刀を振り下ろす。だが、その瞬間と合わせて左脚を上げる。

ジム改の右腕をジム・カスタムFbの左脚で止める。それと同時にロング・ライフルをタンゴ3のコクピットに合わせる。

 

「これで決まりだ」

 

『なっ!?何なんだよ、その動きは…』

 

こうしてAE社のテストパイロット達との模擬戦は終わったのだった。



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第217パトロール部隊VSシュウ・コートニー1

誤字報告ありがとうございます。何時も助かってます。
更にレビューも書かれてましてドギマギしました。本当にありがとうございます( ^ω^ )
時間があれば最初に投稿した物も直したいと思います。

後はオリジナル兵器に追加有ります。


「ふう、何とか勝てたな」

 

『お見事です、コートニー中尉。流石ベテランと言った所でしょうか』

 

「そんなんじゃ無いですよ。恐らくプライドが問題だったと思いますよ」

 

AE社のテストパイロット達の能力は高かった。だが、連中は連携を疎かにした感じが有った。恐らくテストパイロットとしてのプライドが仲間との連携を阻害した可能性が有る。

俺とて1対3で確実に勝てるとは思わない。だが、最初にバラバラに行動してくれたお陰で助かった訳だ。

 

『そうですか。それでは弾薬、推進剤の補給後に再度模擬戦を行います。それて宜しいでしょうか?』

 

「はい、構いません」

 

俺は次の模擬戦に備えて準備をする為に一度格納庫に向かうのだった。

 

……

 

弾薬、推進剤を補給した後再び宇宙に飛び出す。そして暫く待機してると、それはやって来た。

 

『フッフッフッ、待たせたわね!今回の模擬戦の相手はこの戦力よ!』

 

『さあ、シュウ中尉存分に楽しんでくれ給え』フワァ

 

ノリノリのレイナ大尉とアーヴィント少佐。

 

「おいおい、マジかよ。マジで…アレを相手にするのか?」

 

その正体はサラミス改級のロイヤルだった。しかし形状が多少変わっていた。先ず一番目を引いたのは艦底に増設されてるハンガーとカタパルトだ。下部主砲を撤去してモビルスーツ搭載能力を向上させたのだろう。そしてハンガーには対空砲も設置されていた。

 

『さあ、モビルスーツ隊出撃よ!』

 

『『『『『『『了解!』』』』』』』

 

更にロイヤルの上に搭乗していたウィスキー小隊、ロック小隊の6機のジム改が飛び立つ。更にカタパルトからある機体が2機発進する。

 

「なっ!?あの機体は新型じゃ無いか!」

 

ロイヤルから発艦したモビルスーツはジム・カスタムFbのベース機となってる物だった。何時の間にあんな物を配備したんだ。

 

『その通りよ!でも正直このジム・カスタムで貴方に追い付ける自信は無いけど』

 

『自分もしっかり援護出来るか自信無いです…』

 

レイナ大尉はジム・カスタム、ウィル少尉はジム・キャノンⅡに搭乗して出撃する。

 

「と言うかお前達ウィスキー、ロック小隊の連中はコロンブスの搭載機だろ!」

 

コロンブスの艦載機が出て来るのは理解していた。だが、ロイヤルまで相手をするなら話は別だ。そうそうに退場して欲しい所だ。

 

『そんな釣れない事言うなよな。お前さんの為に態々来てやったんだ』

 

『今迄の連戦連敗の借りを今日返してやるぜ。今此処に面子やプライド何ぞ要るかってんだ』

 

「そ、そこまでして俺に勝ちたいのか?」

 

『『勝ちたい!』』

 

小隊リーダー2人は気合充分と言わんばかりに返事をする。

 

『それに対シュウ・コートニー戦術を試す良い機会だぜ』

 

『楽しみにしてろよ?謝ったって容赦し無いがな!』

 

『『ワッハッハッハッ!!!』』

 

コイツら…何が対シュウ・コートニー戦術だよ。だが、ジム・カスタムFbをフルに扱い切れればそんな物何て関係無いさ。

 

『コートニー中尉、ラングリッジ、ウィスキー、ロック小隊及びロイヤルの準備完了しました。其方は如何でしょうか?』

 

「ハイパーバズーカを追加でお願いします。此処まで来たら引き下がるのも癪ですしね」

 

此方も首の凝り解して行く。そして暫くしてハイパーバズーカを装備。これで此方も準備完了だ。

 

『では模擬戦のルール説明を行います。状況はミノフスキー粒子散布後の戦闘になります。コートニー中尉の撃墜、もしくはロイヤルの撃墜の何方かで終了となります。又、艦載機は全て撃墜する必要は有りません』

 

「成る程ね。了解した。此方は何時でも大丈夫です」

 

機体を所定の位置に止めながら返事をする。そして、オペレーターからカウントダウンが始まる。それはジム・カスタムFbの最後の試験が始まる事だ。

 

「シュウ・コートニー、ジム・カスタムFb出るぞ!」

 

試験開始と同時にブースターを全開にして宇宙に飛び立つのだった。

 

……

 

「さて、シュウ中尉はどうやって来るかね」

 

アーヴィント少佐は艦橋から見える宇宙を見据えながら呟く。ジム・カスタムFbの性能表には一通り目を通してるだけで無く、シュウ中尉の操縦センスも充分理解していた。

 

「ルイス少尉、シュウ中尉はどの様に攻めて来ると思うかな?僕は上から来ると予想してるがね」

 

帽子の位置を直しながら意見を言う。それに対してルイス少尉は少し考えながら発言する。

 

「シュウ中尉の取れる選択は多く有りません。今回の模擬戦ではミノフスキー粒子が散布されてますが、レーダーやミサイル等は多少なりとも使用可能です」

 

「そうだね。正直、この模擬戦の勝敗は最初から決まってる物だからね」フワァ

 

サラミス改級は優秀な艦である事はアーヴィント少佐自身が良く理解していた。更に護衛となるモビルスーツは8機。其処に新型2機も付いてるのだから負ける要素がほぼ無いに等しい。だからこそシュウ中尉がどの様に攻めて来るか気になる訳だ。

 

「私は、シュウ中尉は正面から来ると思います」

 

「砲門数が若干減ったがロイヤルの正面火力は高いのだがな。それでも正面から来るのかね?」クルクル

 

自身の前髪を指で弄りながらアーヴィント少佐は問う。

 

「だからこそです。その火線の前では味方部隊は展開出来ません。それに、シュウ中尉自身の戦い方は一撃離脱です。恐らく向こうが捕捉されたと理解した瞬間…来ます」

 

それから直ぐにレーダーに反応が出た。

 

「レーダー反応…12時の方向。正面です」

 

「やれやれ、まさか本当に正面からとはね。ロイヤルを月の地表に近付ける。ロイヤルから攻撃はまだするな。ウィスキー、ロック隊は直ちに迎撃に当たれ」

 

アーヴィント少佐はウィスキー、ロック小隊に迎撃命令を降す。それと同時に彼等は動き出す。

 

『野郎共、遂に奴を叩き落とすチャンスが来た。今日この日を持ってコートニー中尉を潰すぞ!』

 

『今迄の訓練の成果を出して見せろ。そうすれば確実に勝てる!』

 

両小隊長は部下達を鼓舞する。

 

『そうだよな。このまま負けっ放しなのは頂け無いし』

 

『確かにな。大体、彼奴の機動が可笑しいんだよ。同じ機体と言われても信じられんもんな』

 

『中身が変なんだよ。中身がな。特にパイロットと言える場所が一番変なんだよ。多分何所かがバグってるぜ』

 

仲間達はシュウ中尉に対して言いたい放題だ。今迄負けっ放しで鬱憤が溜まってるのかも知れない。因みにこの時シュウ中尉はクシャミを一つしたとか。

 

『各員その意気だ。さて、そろそろ会敵するぞ。各機密集陣形を取れ』

 

ウィスキー、ロック小隊はシールドを構えながら各小隊で固まる。

 

『良いか?交互に撃ちリロード中はカバー。そしてお互いシールドで手堅く防ぐ。奴の土俵で戦うのは無理だからな』

 

彼等はシュウ中尉の高機動能力を認めていた。だからこそ同じ土俵で戦えば即敗北するのも理解してしまったのだ。

 

『隊長、12時の方向に反応出ました。ガルム2が此方に来てます!』

 

『おいおい、何て速度だよ。もう直ぐ其処まで来てるじゃねえか』

 

『各機迎撃用意!奴を見つけ次第攻撃開始だ!』

 

そして遂にシュウ中尉とウィスキー、ロック小隊との戦いが始まるのだった。

 

……

 

俺は地表スレスレで飛行しながらレーダーを確認。ミノフスキー粒子が散布されてる物の小細工等は意味が無い。

 

「クシュン!ズズ。まあ、小細工出来る装備は無いけど」

 

クシャミを一つしながら結論を出す。やる事は単純に正面から攻めるだけだ。リスクは高いが他の方法だとジリ貧になるだろう。丁度その時レーダーに反応が出た。

 

「前衛はウィスキーとロック小隊か」

 

この模擬戦の勝利条件はロイヤルの破壊だ。なら素直に相手をする必要は無いだろう。そもそも対シュウ・コートニー戦術とか意味分かんないのと素直に相手をする義理は無い。

 

「でも、それだと後々面倒だよな」

 

あの小隊には毎回勝たせて貰ってる。序でに食堂でのオカズを一品頂いてる。だけど、その分相手をしないと色々文句を言われる。いや、どちらにしろ文句は言われるか。

 

「仕方ないか。ある程度は相手をしてやるさ」

 

じゃないと実戦の時に不確定要素を持ち込む形になる。それにオカズを一品頂け無くなりそうだし。

 

「さて、行きますか」

 

躊躇無くブースターを全開にしてウィスキー、ロック小隊に襲い掛かる。相手は直ぐに反応して防御陣を築く。此方のロング・ライフルの射程に入り射撃を開始。

しかし、小隊は散開する事無く固まったまま回避行動を取る。そして90㎜マシンガンとビームスプレーガンで迎撃する。

 

『各機、味方との連携を崩すな。しっかり固めて行けば必ず勝てるぞ』

 

『この野郎!この前のハンバーグの恨みは忘れてねえぞ!』

 

『俺はチキンナゲットだ!』

 

『大好きなプリンちゃんをよくも…絶対に許さ無い!』

 

『これ以上の悲劇を起こす訳には行か無いんだ!』

 

この瞬間、彼等の思いは一つになった。必ずシュウ・コートニーを撃破し恨みを晴らして見せると。

 

「他の人から頂くオカズやデザートはどれもこれも美味かったよ。また今日も御馳走になるよ」

 

『『『『『『やらせるかあああ!!!』』』』』』

 

通信内容はとても幼稚だったが、その戦闘は侮れ無い物が有った。90㎜マシンガンとビームスプレーガンの弾幕は殆ど途切れる事は無く、お互いしっかりとカバーし合っていた。

更にシュウ中尉が上空に逃げようとすればロイヤルからの艦砲とミサイルが放たれる。しかし、艦砲を回避しながらミサイルをあっさり迎撃又は回避してしまう。

 

『良い感じだ。奴を追い詰めるぞ。この調子なら勝てるぞ!』

 

『攻め切るチャンスが無いって訳か。これは勝負有ったな』

 

ウィスキー、ロック小隊のメンバーは勝ちを確信する。しかし、彼等はシュウ・コートニーの事を全て理解していなかった。

 

「連携は中々良かったな。だけど、それ以上の弾幕と連携は散々体験して来たよ」

 

シュウ・コートニーは一年戦争を生き抜いて来た男。更にRGM-79CRP試作高機動型ジム改に搭乗してア・バオア・クー攻防戦を駆け抜けた。故にたった6機のジム改とサラミス改からの弾幕は…緩いと感じていた。

 

「じゃあ、そろそろ仕掛けるか」

 

ジム・カスタムFbをウィスキー、ロック小隊に向けて突撃させる。無論相手は迎撃する為に90㎜マシンガンとビームスプレーガンで弾幕を展開。しかし、殆どを回避され数発をシールドで防がれてしまう。

そしてロング・ライフルで反撃されシールドを構えるウィスキー小隊のメンバー達。その横を通り過ぎた瞬間だった。ジム・カスタムFbの追加ブースターとAMBACにより瞬時に反転。背中がガラ空きのウィスキー小隊がモニターに映し出される。

 

「チェックだ」

 

ロング・ライフルから放たれる90㎜弾が容赦無く襲い掛かる。そして瞬く間にウィスキー小隊は大破判定を受けてしまう。

 

『嘘だろ!?一瞬でウィスキー小隊をやりやがった!?』

 

『然も反転しながらの逃げ足が速いぜ』

 

『アレが試験機…いや、試験機とコートニー中尉の実力か』

 

ロック小隊は全滅したウィスキー小隊を見ながら呟く。

 

「さて、ロック小隊もやらせて貰うぞ」

 

ロイヤルからの砲撃を回避しながらロック小隊に襲い掛かる。

 

『もう来やがった!ヤバイぞ!?』

 

『兎に角撃て!俺達のオカズが、オカズが!』

 

ジム・カスタムFbをから身を守る為再びシールドを構えながら射撃するロック小隊。

 

「二度も三度も同じ手は悪手だぞ」

 

左手にハイパーバズーカを装備しながらロング・ライフルを撃つ。そして至近距離からハイパーバズーカを連射する。幾らシールドを構え様とも大破判定を受けて仕舞えばシールドは使え無い。そしてシールドの大破判定と共に2機のジム改が撃破される。

 

『こ、このまま…引き下がれるかあああ!!!』

 

最後のジム改は模擬刀を抜き接近戦を仕掛ける。だが此方は追加ブースターを反転させ後退している為、距離が中々詰まらない。その隙にハイパーバズーカで狙いを付ける。

 

「悪いな。これで終わりだ」

 

ハイパーバズーカから放たれた弾は真っ直ぐにジム改のコクピットに向かう。そして最後のジム改が大破判定を受けて動きが止まるので有った。



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第217パトロール部隊VSシュウ・コートニー2

0083のサラミス改とかカッコ良すぎて堪らん。
そして何時も誤字報告ありがとうございます。


「ふむ…これは、少々想定外だね」クルクル

 

アーヴィント少佐は状況を確認しながら呟く。最初はウィスキー、ロック両小隊が善戦していた。だがシュウ中尉が攻勢に出た瞬間、瞬く間に撃破されてしまったのだ。

しかし、彼等は決して弱い訳では無い。特に両小隊長は一年戦争初期から戦い続け、生き残って来たベテランだ。そんな彼等が指揮する小隊は、必然的に対モビルスーツ戦闘を行える位は指導される。

 

「それ以上にシュウ中尉が強かった訳か」

 

ジム・カスタムFbのカタログスペックは確かに高い。しかし性能が高い分扱い切るのは難しくなる。だが、シュウ中尉はそれを難無くクリアした訳だ。

恐らく…いや、彼等よりシュウ中尉の方が適性が有ったのだろう。モビルスーツと言う人型機動兵器を扱い切る適性が。

 

「さて、シュウ中尉の現在地はどうなっている?」

 

「現在稜線側の向こうに居ます」

 

「ミサイル装填はどうなってるか?」

 

「間も無く完了します」

 

アーヴィント少佐は考える。恐らくシュウ中尉は此方を待っているだろう。だが、今の場所に留まるのも良く無い。ならば此方からも攻めて反撃の隙を与えない様にするしか無い。

 

「ロイヤルは現在の高度を維持しながら微速前進。但し、これ以上高度を上げるな。シュウ中尉の攻める範囲を少しでも限定的にするんだ」

 

もし、ロイヤルの高度を上げればシュウ中尉は嬉々として突っ込んで来るだろう。仮に攻撃を失敗したとしても、そのまま駆け抜けれるからだ。

 

『ガルム1よりロイヤル。私達はロイヤルより先に前進するわ。正直言って今の状況は不味いの一言しか無いわ』

 

今後の展開を考えているとレイナ大尉から通信が入る。そして今の状況の考えが同じだと分かった瞬間だった。

 

「確かにね。だが、孤立するのはダメだ。ロイヤルからの砲撃が可能な距離と地形までなら前進を許可する」

 

『了解よ。でも、私は諦め無いわよ。こっちも新型機なんだから少し位なら足止め出来る筈よ』

 

『うへぇ、あのシュウ中尉相手に足止め出来る自信無いですよ〜』

 

『ガルム3、貴方男でしょう?もっと根性見せなさい!』

 

『んな無茶な事を…でも、了解です。やって見せます』

 

『その意気よ。しっかり援護お願いね』

 

レイナ大尉のジム・カスタムとウィル少尉のジム・キャノンⅡは前進する。それと同時にロイヤルも追従する。

 

「さて、此方の動き始めたのは理解してる筈。後はやれる事をやってくしか無いか」クルクル

 

アーヴィント少佐が呟くと同時に状況が変わり出す。

 

「ガルム2移動を開始。此方に迫って来てます」

 

「ギリギリまで稜線を越えないつもりか。なら、ミサイルで歓迎して上げよう。ミサイル全弾発射!」

 

右腕を前に突き出しながら攻撃命令を降す。その瞬間、ロイヤルから多数のミサイルが発射されるのだった。

 

……

 

コクピット内でロックアラートが鳴り響く。それと同時にレーダーに多数のミサイルを確認する。

 

「さて、此処からが正念場だ。行くぞ!」

 

機体を地表に沿って移動する。ミサイル群を回避する。そして遂に稜線を越える。

 

『捉えた。落ちなさい!』

 

『よーく狙って…今だ!』

 

その時、ジム・カスタムとジム・キャノンⅡからの90㎜弾とビームが迫って来る。それを回避しながらモニターで確認する。

 

「先読みされてたか。流石レイナ大尉だな」

 

お互い一年戦争から共に戦い続けて来た。だからこそ、どのタイミングで来るのか分かった訳か。更にロイヤルからの艦砲も容赦無く迫って来る。阿吽の呼吸で攻めて来るのは中々厳しい。

 

「先ずはモビルスーツからだな」

 

一言呟く。そしてガルム1、3に狙いを定める。彼等を盾にロイヤルからの射線を切る。

 

『その方向から来るのは最初からお見通しよ!』

 

『スゲー、流石レイナ大尉だ。狙いがドンピシャだ』

 

正面から90㎜ガトリングガンを乱射するガルム1。それに続く様にガルム3からのビームが放たれる。

その弾幕の中をギリギリ避けれる距離まで接近。そして、仕掛けるタイミングが来た。シールドを前面に構えて此方の姿を隠す様にする。

 

「シールドパージ!」

 

そしてシールドを解除した瞬間、追加ブースターとAMBACを使用してシールドを前方に蹴り出す。シールドはそのまま前に突っ込んで行く。しかし、シールドは直ぐに破壊されてしまうだろう。だが、それで良い。一瞬の判断を遅らせる事が出来れば良いのだ。

お互いの視界がシールドで防がれた瞬間、一気に急上昇。そして、シールドを越えた先にはジム・カスタムとジム・キャノンⅡがシールドに向かって射撃していた姿が見えた。

 

「この距離なら逃げれんぞ!」

 

右手のロング・ライフル、左手のハイパーバズーカを装備して射撃開始。

 

『っ!?回避!』

 

『なっ!しまった!?』

 

ガルム3はハイパーバズーカが直撃。そしてガルム1も回避仕切れずロング・ライフルの餌食になったのだった。

 

……

 

「ガルム1、3共に大破、ガルム2此方に急接近します」

 

「弾幕を張るんだ!ガルム2を近寄らせるな!」

 

ロイヤルから多数の弾幕が展開される。しかし、それを難無く回避して行くジム・カスタムFb。

 

『さて、色々楽しませて貰ったよ。これから暫くはご飯のメニューにオカズが一品増えると思うと胸の中がスゥとするよ。安心してくれ、全員…平等に逝くからな』

 

その時、シュウ中尉から通信が繋がる。間違い無い…奴は、僕達のオカズも狙ってる!?

 

「落とせ!アレは味方では無い!我々のオカズを狙う略奪者だ!正義は我らに有るのだ!」

 

しかし、当たらない。そして遂にガルム2がロイヤルの上を取る。

 

『これで終わりだ』

 

その一言は艦橋内に居る人達を絶望の中に落とした。そして一気に急降下で迫るガルム2。ジム・カスタムFbの機動性と運動性も相俟って距離が直ぐに縮まる。

ガルム2からの攻撃により次々と被弾するロイヤル。更に対空砲も潰されて弾幕が薄くなる。最早此処まで。そう誰もが思っていた。しかし、最後まで諦めない者が居た。

 

「左舷急速一杯!!!」

 

アーヴィント少佐は指揮を続ける。その声に操縦士は条件反射で行動する。艦橋ギリギリにハイパーバズーカの弾が通り過ぎ、直ぐ横で爆発する。

 

「続いて艦を90度横に向けるんだ!!!」

 

そしてロイヤルがガルム2に対して横っ腹を晒す。本来なら愚策、最後の悪足掻きと言えるだろう。だが、このサラミス改級ロイヤルのハンガーと共に設置された追加ブースターにより素早く行動が出来た。更にハンガーに設置された対空砲が射撃可能になった。

そして、その対空砲の弾幕を近距離から受ける事になるシュウ中尉。

 

「くそっ!やってくれる!」

 

弾幕により右腕と左脚が被弾し使用出来なくなる。だが、左手に持つハイパーバズーカの狙いはしっかりと艦橋を狙っていた。

 

「この距離なら外さない!」

 

そして最後の1発になっていたハイパーバズーカが放たれた。そして、その弾は艦橋に直撃したのだった。

 

……

 

『ロイヤル、艦橋被弾により大破。模擬戦を終了します』

 

急降下していた機体を地表スレスレに移動する様に飛行する。ロイヤルの改修が彼処までだったとは正直驚きだ。後はアーヴィント少佐の指揮にも意表を突かれた形になったのだろう。

機体を止める為に追加ブースターと各スラスターを使う。その時だった。警告アラートが鳴り響く。モニターを直ぐに確認すると左追加ブースターに異常が発生。その瞬間、機体がグラリと揺らぐ。

 

「くっ、この…これでどうだ」

 

機体の制御が難しい状態になるが、冷静に地表に着地させる。そのままスライディングする形になってしまったが、無事に着地出来たのは良かった。

 

「はあ、此方ガルム2。左追加ブースターに異常発生。後で確認されたし」

 

『了解しました。コートニー中尉は危険ですので直ちに脱出して下さい。直ぐに迎えを向かわせます』

 

「了解しました。ふう、しかし追加ブースターの異常ね」

 

原因はまだ分からないが、最後の最後に結構無理な機動させたから接続部分が歪んだのかも知れない。そんな事を考えながらジム・カスタムFbから離れるのだった。




最近RB-79ボールを適当に調べてたら、装甲が超鋼合金ルナ・チタニウムだったそうです。何処かで聞いた事あるなーと思ってたらガンダムと同じでした(^^)

嘘…だろ?と思った俺は悪くない( ・`ω・´)キリッ


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ジオンの亡霊が動き出す1

高評価有難うございます。励みになり嬉しく思います(^^)


ジム・カスタムFbが回収された後、ニナ・パープルトンさんと会った。

 

「コートニー中尉、お疲れ様でした。最後は機体トラブルが有りましたが、怪我も無く良かったですね。それに無事最後まで試験をクリアしたのですから次に活かせます」

 

「それは良かったです。唯、一つだけ機体について不満が出ましたね」

 

「不満ですか?耐久性は今後強化して行きますから問題は有りませんよ?」

 

パープルトンさんは分からないと言った表情になる。

 

「折角の自由の効く追加ブースターが有るのですから、後退速度をもう少し上げて欲しいですね。例えば機体前方にブースターを追加するとか」

 

「成る程。確かに模擬戦でジム改に追いかけられた時は少々危なかったですね」

 

俺の提案にパープルトンさんも思案顔になる。

 

「確か最初は地上での運用試験をするのですよね?でしたらその間に改修は出来ると思いますよ。少なくとも大幅に改修する必要は無いですし」

 

少なくとも他にはジム・カスタムFbに不満は無い。後退速度も決して遅い訳では無い。唯、俺だったらもう少し速くして欲しいと感じただけだ。

 

「はい。しかし今のは貴重な意見と成ります。それに宇宙戦仕様はまだ開発途中ですから修正は可能です」

 

「なら良かった。それにジム・カスタムFbでも充分高い戦闘力が有りますからね。そこに更に手が加えられるガンダムは、圧倒的な戦闘力が得られるんでしょうね」

 

その言葉にパープルトンさんは良い笑顔になる。その表情を見て今回の模擬戦は無駄にはならないと感じた。

 

「さて、では自分はこれで失礼します。パープルトンさんの手掛ける新型機の成功を祈ります」

 

手を差し出しながら彼女の無事を祈る。彼女もその手を取る。

 

「はい、コートニー中尉。今回の模擬戦有難う御座いました」

 

パープルトンさんは暫くしたら地球に降りるらしい。宇宙だけで無く、地球には未だにジオン公国残党軍が潜伏してる。その中で新型機の試験を行うのだ。正直不安しか無いが、俺には止める術は無い。

そしてお互い別れた後、ラングリッジ、ウィスキー、ロック隊が居る格納庫に向かう。

 

「やあやあ皆さん。本日はお疲れ様」

 

俺は良い笑顔で彼等に声を掛ける。すると全員ビクッとなる。分かり易い反応で助かるよ。

 

「あ、あら〜シュウ中尉じゃ無い。今日もイケメンでカッコいいわよ?」

 

「そうですよ!流石中尉の実力はトップクラスですよ!」

 

レイナ大尉とウィル少尉が俺を褒める。

 

「全くだぜ。いやー、俺達パトロール部隊のエースパイロット様は違うぜ」

 

「うんうん。こうオーラが違うよな」

 

「そうですよね。それに、俺達ももっと鍛えないと行けないですね!」

 

「確かにな!エース様ばかりに苦労させたら悪いしな!」

 

ウィスキー、ロック隊の連中も次々と褒め称える。よっ!大統領とか、アンタがエースだ!とか。まあ、言いたい事は分かる。

 

「今日からウィスキー隊の奴のを貰うわ。次はロック隊な。勿論ラングリッジ隊も仲間外れにはしないから安心してね」

 

この瞬間、彼等は悲鳴を上げる。

 

「私達仲間でしょう!ちょっとは大目に見てよ〜」

 

「だが断る。それにロイヤルの人員分も貰えると思うと気分は最高だぜ」

 

この瞬間、周りに居たロイヤルの乗組員が悲鳴を上げる。

 

「鬼!悪魔!畜生野郎!」

 

「アンタには血も涙も無いのかよ!」

 

様々な罵声を浴びるが、何と心地良いのだろう。今の俺は無敵だ。

 

「敗者の悲鳴は実に心地良いな。アッハッハッハッ!」

 

俺は久々に清々しい気分になりながら高笑いするのだった。この平和を謳歌しながら。しかし、この時は誰も気付いては居なかった。迫り来るジオンの亡霊が再び争いの引金を引く事になるとは。

 

宇宙世紀0083.8月11日。ジオン公国残党軍アクシズにてマハラジャ・カーンの死去。娘であるハマーン・カーンがミネバ・ラオ・ザビの摂政に就任。

宇宙世紀0083.10月13日。ジオン公国残党軍デラーズ・フリート【星の屑作戦】発動。オーストラリアに有るトリントン基地を強襲。そして【ガンダム試作2号機サイサリス】及び【Mk-82核弾頭】を強奪。

宇宙世紀0083.10月31日。ジオン公国残党軍デラーズ・フリートは地球連邦軍に対し宣戦布告。

 

新たな争いが始まる。そして、因縁とも言える存在と再び再開する事になる事になる。

 

……

 

宇宙世紀0083.11月1日。第217パトロール艦隊は地球連邦宇宙軍コンペイトウ所属第45機動艦隊と接触していた。

 

「アーヴィント艦長、旗艦【グレイト】と接舷完了しました」

 

「うむ、では僕は出迎えに行くとしよう。序でにレイナ大尉も呼んでおいてくれ給え」

 

アーヴィント少佐は地球連邦宇宙軍第45機動艦隊の旗艦マゼラン改級グレイトに向かう。何故なら其処にある人物が居るからだ。

そしてレイナ大尉率いるラングリッジ小隊も付いて行く事になった。

 

「僕はレイナ大尉だけを呼んだ筈だが?」

 

「いや、俺達は無理矢理連行されたんですが。なあ、ウィル少尉?」

 

「いや、自分はシュウ中尉に無理矢理連行されましたし。そうですよね、レイナ大尉?」

 

「そうねー。全く、勝手な事をしちゃダメよ?」

 

俺だけメッと言った感じに怒られる。解せぬ。

 

「はあ、まあ良いさ。君達は僕に恥を掛けない為に、粗相の無い様にしてくれ給え」

 

「所でアーヴィント少佐、誰と会うのですか?」

 

アーヴィント少佐が微妙にピリピリしてるので気になって聞いてみる。すると教えて貰う前にドアが開く。

現れたのは准将の階級を持つ人物だった。壮年であるが金髪で口髭を整えた紳士然とした人だ。だが、微妙にアーヴィント少佐に似ている気がする。

 

「スタンリー・アルドリッジ准将に対し敬礼!」

 

全員が敬礼をする。そしてアルドリッジ准将も答礼する。と言うかアルドリッジって、まさか。

 

「久しいなアーヴィント。随分と立派な軍人になった事を私は誇りに思うよ」

 

「はっ!父上を目標に日々精進しております!」

 

「ははは、そう硬くなる事は無い。その姿を見れただけで大満足さ」フサァ

 

アーヴィント少佐のあの癖はお父さん譲りだと分かった瞬間を見れた。そしてスタンリー准将はレイナ大尉に視線を向ける。

 

「レイナ嬢も久しいな。前回の社交界以来かな?」

 

「はい、スタンリー准将もお元気そうで何よりです」

 

「ふふふ、君は相変わらず変わら無い美しさで良かったよ。所で、アーヴィントとの関係もそろそろ進めても良いと思うのだがね」

 

スタンリー准将は流し目をレイナ大尉に送りながら呟く。

 

「まだジオン残党軍の存在が有ります。それについ昨日には宣戦布告が有りました」

 

それに対しレイナ大尉は悠然とした対応をする。しかし、スタンリー准将は困り顔になってしまう。

 

「確かにね。だが、それは対して脅威にはならんよ。戦力は圧倒的に我々地球連邦軍が上だ。それに、核弾頭を使用するタイミングは既に予想出来る。恐らく観艦式を狙ってるだろう」

 

だが、と言葉を切るスタンリー准将。

 

「核弾頭を使用する前に全てが終わる。何故なら観艦式には宇宙艦隊の殆どが参加する。奴等は観艦式に接近する事無く潰される訳さ」フサァ

 

そう断言するスタンリー准将。そして此方に視線を向ける。

 

「まあ、この話は後ほど行うとしよう。ではアーヴィント艦長、航路の護衛を宜しく頼むよ」

 

「はっ!お任せ下さい!」

 

そう言ってスタンリー准将は戻って行く。そして俺達は言葉少なくロイヤルに戻るのだった。

 

……

 

レイナ大尉とアーヴィント少佐の関係を一言で言うなら許嫁だ。更に両家共に名家で有る為、決められた関係と言える。

 

「はあ、凄かったですね。正直許嫁とか未知の領域ですよね」

 

「そうだな。だからこそ…だよな」

 

今時、戦略結婚などと前時代的とは言えない。寧ろこんな時代だからこそ血筋を残したいと思うのかも知れない。そして、その間に入る隙間は無い。

 

「中尉…そ、そうだ!今度休暇取れたら一緒にナンパに行きましょうよ!」

 

「突然だな。まあ、気が向いたらな」

 

この後もウィル少尉と話をする。その内容に許嫁の話はもう出なかった。多分気を使ってるのだろう。

 

「ウィル少尉、今日のオカズ一品やるよ」

 

「え!本当ですか?やった!」

 

そして、艦隊はコンペイトウに向け移動する。しかしジオン公国残党軍が其れを見逃す筈が無かったのだった。




はい、アーヴィントのお父さん登場。あの癖はお父さん譲りなのさ。
因みにレイナのお父さんは資産家かな。多分レイナパパは出てこない…。


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ジオンの亡霊が動き出す2

iPhone…冷水に落とした。






……(´;ω;`)ブワッ


彼等が合流を果たしていた時、その光景を見ている機体が居た。ジオン公国残党軍所属の偵察型モビルスーツ 【MS-06E-3ザクフリッパー】である。そして、ザクフリッパーは本隊にその情報を即座に伝える。

 

『ワレ、マゼラン改級ヲ旗艦トスル艦隊ヲ発見セリ』

 

その情報の元、1人のジオン公国残党軍将校は攻撃を決定したのだった。そして、この決断から始まる戦いにより様々な両軍の様々な人達の思いが入り乱れる事になる。

 

……

 

「少佐、ベルガー少佐!本当にこの戦力だけで攻撃をするのですか?」

 

部下からの言葉に振り返る男。ジオン公国残党軍所属ベルガー・ディートリッヒ少佐。かつて最終決戦であるア・バオア・クー攻防戦にてシュウ・コートニーと激戦を行った人物だ。

 

「ローマン軍曹か。無論そのつもりだ。星の屑作戦の成功率を少しでも上げる事。それが我々の役割だ」

 

「しかし、あの艦隊戦力は侮れません。現に我々の戦力は偵察機1機ムサイ3隻にザク、ドムが数機。後はベルガー少佐の高機動型ザクだけです」

 

「ふん。充分だな」

 

ローマン軍曹の戦力分析を聞いて一言言う。その言葉を聞いて部下は目を丸くする。

 

「私の機体はカスタムされた高性能機だ。故に私が先陣を切り戦闘を行えば問題無い」

 

「今迄は少数のパトロール艦隊に補給部隊です。ですが今回は相手の規模が違い過ぎます」

 

「腑抜けた連邦軍等、私の相手にならんよ。各モビルスーツ隊は出撃準備。艦隊は敵艦隊に対し攻撃を行う。また、敵艦隊の2割破壊で撤退だ。敵の目を此方に引き付ければ良い」

 

最後にローマン軍曹を納得させる様に肩を叩く。

 

「はあ、分かりました。但し、今回も絶対にシールドは装備して下さいね」

 

「分かった分かった。では頼んだぞ」

 

ベルガー少佐はローマン軍曹の言葉を一応聞いて格納庫に向かうのだった。

 

……

 

「【黒衣の狩人】ですか?」

 

「はい。この宙域には元ジオン公国軍のエースパイロットが居るらしいんです。これまでにパトロール艦隊や補給部隊が多数破壊されたとの事です」

 

俺はルイス少尉から現宙域の危険を伝えられていた。そして相手の機体を伝えられる。

 

「そして以前の搭乗機はMS-06SザクⅡでしたが、現在は此方の機体になります」

 

端末から画像を見せて貰う。其処にはMS-06R高機動型ザクⅡと表示されていた機体が写っていた。

 

「このカラーリングは…。本当にこの機体は黒衣の狩人何ですか?」

 

と言うか、この機体は間違い無く奴だと確信出来た。

 

「実は其処が曖昧何です。生き残った者達が言うには黒衣の狩人と証言してます。しかし、記録を調べれば黒衣の狩人は一年戦争時に戦死されてると言われてます。ですので、恐らくこの機体は…」

 

ルイス少尉は言葉を詰まらせる。しかし俺は画像を見続ける。あの時、ア・バオア・クー攻防戦を思い出す。俺の目の前で親友であるアーク・ローダーを手に掛けた機体。

 

「そうですか。ルイス少尉、情報有難う」

 

俺はそのまま格納庫に向かう。

 

「あ、シュウ中尉…」

 

ルイス少尉の言葉に振り向く事は無い。何故なら今の表情を見せたく無いから。きっと酷く醜い表情をしているだろうから。

 

……

 

格納庫でジム・カスタムFbの調整を整備兵達と一緒に行う。

 

「こんな時、モンド軍曹が居てくれたらな」

 

「仕方無いだろ?軍を抜けちゃったんだから文句は言うなよ」

 

シュウ中尉の危険な調整指示に整備兵達はモンド軍曹の話をしていた。彼は一年戦争終結後、地球連邦軍から退役。その後は地球連邦軍の傘下の下請け企業に入社したらしい。元々整備に関しての腕前は一級品の人だから、引く手は数多に有った。

 

「後は、もう少しリミッター解除時間を伸ばしてくれれば大丈夫だな」

 

「いやいや中尉、駄目ですからね。そんな調整したら機体と中尉が壊れますからね?」

 

「大丈夫だって。俺は身体だけは人一倍頑丈だからさ」

 

整備兵が何とか無茶な調整を止めようとするが、聴く耳を持たない。それどころか根拠無く大丈夫だと言いながら押し通そうとする。

 

「仕方無いか。おい、レイナ大尉を呼んで来てくれ。それで全て解決だ」

 

「了解です。直ぐに呼んで来ます」

 

そして暫くすると格納庫内で一人の哀れな男の悲鳴が響き渡る。

 

「アンタはまた無茶な事をして!お仕置きです!手加減はしません!」

 

「痛い痛い!頭が割れちゃうから!割れちゃうから!?」

 

伊達に軍人をやってないレイナ大尉のヘッドロックを受ける結果になったシュウ中尉だった。

 

……

 

「それで?何でまたあんな無茶な事を?」

 

「それは…まあ、理由はしっかり有りますよ」

 

レイナ大尉に理由を伝える事にする。するとレイナ大尉は目を瞑り上を向く。

 

「昔ね、誰かさんにこう言われたわ。【誰かを失う悲しみを知っているなら自分がしようとしている事も充分理解してる筈だ】て。その言葉には幾つか考えさせられたわ」

 

「それは…」

 

一年戦争中、俺がレイナ大尉に向けて言った言葉。だが親友を失ったあの時、その言葉の意味を無くしてしまった気がしたのだ。

 

「自分自身が言った言葉よ。なら、その言葉の責任は取りなさい。それに私に対して言ったんだから尚更ね」

 

「はい…すみません」

 

「シュウ中尉がやろうとする事を止める事はしないわ。けど、それで仲間達を無下にしちゃダメよ?整備兵達も貴方が心配だから無理だと言ってるんだから」

 

そう言って俺の頭をポンポンと叩く。もう子供では無いのだがな。

 

「分かりました。後で格納庫に行って謝って来ます」

 

「うん、宜しい。それじゃあ、この話はお終いお終い」

 

俺は再び考える事にした。確かに奴はアークを殺した仇だ。だが、其処に固着して仲間を無下にするのは間違ってる。しかし考えながら格納庫に向かう途中、ふと思ってしまう。

 

(俺達は…何時まで戦争をやれば良いんだろうか?)

 

それとも未だに誰もが囚われてるのかも知れない。そう、【一年戦争と言う魔物】に。

柄にも無い事を思いながら格納庫に向かう。しかし、その間にもジオン公国残党軍が遂に牙を剥く。

 

……

 

宇宙世紀0083.11月1日11:00。

 

地球連邦艦隊が暗礁宙域を避ける様に航行している。しかし、その暗礁宙域に獲物を狙う狩人が居た。

 

『此方スカウト1、連邦軍艦隊を確認。間も無く予定ポイントを通過する』

 

ザクフリッパーは暗礁宙域の奥からシュウ中尉達の乗る艦隊を遠距離から確認する。そして、ザクフリッパーの手には135㎜対艦ライフルを装備。その銃口を連邦軍艦隊に向けていた。

 

『了解した。そのまま予定通り攻撃を開始せよ。それと同時に我々も出る。貴官の戦果を期待する』

 

『了解しました。期待されたら応えるのがジオン軍人の務めです。必ず一撃で仕留めます』

 

ザクフリッパーのスコープは1隻のサラミス改に狙いを付ける。そして遂に予定ポイントを通過する。

 

『星の屑成就の為に、この一撃を捧げる』

 

そして暗礁宙域と地球連邦軍艦隊との間に射線が通った瞬間、トリガーのスイッチを押す。135㎜の弾丸は真っ直ぐに飛んで行く。そして、狙い通りサラミス改の機関部に命中するのだった。

 

……

 

それは突然だった。ロイヤルの後方に居るコンペイトウ所属第45艦隊の1隻のサラミス改が爆散したのだ。

 

「ヒューリ爆沈!続いてターナス被弾!」

 

「索敵!何をやっている!何処からの攻撃だ!」

 

アーヴィント艦長は檄を飛ばしながら敵の攻撃位置を確認させる。

 

「恐らく9時方向の暗礁宙域かと。ターナスが右に流れてますので」

 

ルイス少尉はターナスが右に傾きながら流れて行くのを確認しながら敵の存在場所を予測する

 

「ミノフスキー粒子散布後、左舷砲撃用意」

 

第217パトロール艦隊の動きは速かった。直ぐさまミノフスキー粒子を散布しながら照準を合わせて行く。しかし、敵はそんな単純な連中では無い。

 

「4時の方向に1機のモビルスーツ反応有り…続いて後方に多数です」

 

「やってくれるね。モビルスーツ隊の出撃準備はどうなってる?」

 

「現在準備中との事です」

 

「なら準備を急がせろ。後方の敵モビルスーツ隊にミサイルを。暗礁宙域には砲撃をさせろ。各艦、準備出来次第攻撃開始!」バッ

 

ロイヤルの艦橋内で敵の位置を確認してる中、格納庫内のモビルスーツもまた出撃準備を進めていた。

 

『モビルスーツ隊発進1分前。整備班は直ちに退避せよ』

 

艦内アナウンスから出撃を促さられる。それに従う様に準備を整えて行く。

 

「コートニー中尉、機体のリミッターは3分が限界ですからね?それ以上は機体だけで無く中尉自身が危ないですから」

 

「了解したよ。なるべくリミッター解除はやらない様にするよ」

 

整備兵の言葉に返事をしながらコクピットを閉じる。そしてシステムを立ち上げる途中、レイナ大尉から通信が入る。

 

『シュウ中尉、ウィル少尉。其方の準備はどう?』

 

「此方は間も無く準備完了します」

 

『此方も同じです』

 

しかし、その間にも敵は迫って来てる。だからこそ焦らず素早く出撃準備を進める。

 

『しかし残党軍は何を思って我々に攻撃をしたのでしょうか?確かに宣戦布告は有りました。だからと言って戦力差は圧倒的でしょうに』

 

「分からん。だが、連中が何かを企んでるのは間違い無いだろう。今の俺達には情報が少な過ぎる」

 

そして遂に出撃準備が完了する。

 

『ハッチ解放。ガルム1、カタパルトとの接続を確認。御武運を』

 

『了解よ。ガルム1、レイナ・ラングリッジ大尉、ジム・カスタム行くわよ!』

 

続いてジム・カスタムFbをカタパルトに機体を移動させる。

 

『ガルム2、カタパルトとの接続を確認。どうかご無事で』

 

ルイス少尉からの通信に対して親指を立てる。目の前の宇宙を見れば戦闘が始まり多数の光が瞬いている。

 

『進路クリア、発進どうぞ』

 

「ガルム2、シュウ・コートニー中尉、ジム・カスタムFb出るぞ!」

 

身体に掛かるGを受けながら宇宙に飛び出す。これ以上の被害を出す訳には行かない。そして、今度こそ戦争を必ず終わらせる為に。

 

……

 

「さて、スカウト1の陽動も順調だな。各機に告ぐ。私が先陣を切り旗艦を潰す。お前達は雑魚をやれ」

 

『了解です。少佐御武運を』

 

『敵が哀れだな。少佐に目を付けられた時点で奴等の敗北が決まってる様な物だしな』

 

『少佐だけに任せるな。我々は誇りあるジオン軍人だ。それを見せ付けなければ成らん』

 

黒い高機動型ザクが更に加速する。それに気付いてサラミス改級、マゼラン改級からの砲撃が展開される。しかし、それを華麗に無駄無く避けて行く。

 

「私とこの機体は最早一心同体。例え貴様等がどれ程の高性能な機体や戦艦を使おうとも、私が負ける要素は一つも無い!!!」

 

圧倒的な気迫と共に地球連邦艦隊に向け突入するのだった。

 

そして、再び戦場で出会う2人。戦場でしか出会う事が出来無い不幸を嘆くべきなのか、それとも仇同士に出会えた事に喜ぶべきなのか。

 

それは彼等にしか分からない。




しかし新しいiPhon買ったぜ( ^ω^ )


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番外編 色々滅茶苦茶です。

完全ネタです。通算ユニークが10万達成記念(^^)


このお話は本編とは無関係ですので、その辺りのご理解下さい〜。

 

ちぇんばろ作戦

 

うちゅうせいき0079.12月24日の18:50位かな?

ソロモン要塞に向けてソーラー・システムを照射の準備に入っていた。

 

第2連合艦隊旗艦マゼラン級 タイタン

 

「ソーラー・システムが照射可能です。ソロモン要塞に照準を合わせます」

 

「ソーラー・システム照射開始。カウントは省略してOK」

 

ティアンム中将は速攻で攻撃を命令する。そしてソーラー・システムが遂に照射された。

 

一方、宇宙要塞ソロモンでは来るべき戦いに備えジオン公国軍が着々と準備をしていた。その中に2機のザクとドムが並んでソロモンの地表から周辺警戒をしていた。

 

『ん?どうした。何かお前様子が可笑しいぞ』

 

『いや、実はさ…今この時言うのも何だが』

 

『先に言っておくが俺はノンケじゃ無いからな』

 

『ちげえよ!何でそうなるよ!』

 

どうやらドムのパイロットの不安は杞憂に終わった様だ。

 

『じゃあ、さっきからモゾモゾしてるけど何かあんのか?まさかチン○ジ調整してるのかよ』

 

『どうしてテメーは直ぐに下ネタに走るんだよ!』

 

『あ、お前そんなに大きく無いもんな。じゃあチン○ジが理由じゃ無いわな』

 

『あー!ズレてるわー!何かベ○ポジが合わないわー!』

 

『そう言うの良いから早く理由言えよ』

 

ザクのパイロットは内心涙を流す。

 

『いや、実はさ…寒いんだよ』

 

『は?寒いって、生命維持装置は機能して無いのか?』

 

『いや、機能してるけど不調みたいで…』

 

『お前さー、そう言う事は早く言えよ。此処は俺が見とくから早く直して貰えよ』

 

『そうする。じゃあ、悪いけど此処頼むわ』

 

何気に仲間思いのドムのパイロット。普段からもう少しその辺りを表に出してくれればと思うザクのパイロット。そして少し移動した時だった。突然の光がザクのパイロットを直撃する。そして…そして!

 

『あ…暖かい』

 

ザクのパイロットは機体を止めて光の中に佇む。そう全ての生命体には欠かせない太陽の暖かな光が彼を優しく包み込む。

突然動かなくなったザクを見てドムのパイロットは声を掛ける。

 

『おい、どうした?早く整備班に見せに行けよ』

 

『いや、此処暖かくてさー。何か、凄く落ち着くんだ』

 

ほんわかした状態になるザクのパイロット。そんな様子を見てドムのパイロットは機体を動かす。

 

『何馬鹿な事言ってるんだよ。早く機体を動かして…何だよこれ、あったけー』

 

ドムのパイロットも太陽の光に包み込まれしまう。そしてザクとドムが並んで日向ぼっこする。

 

『ん?貴様等、周辺警戒はしてるのか?そんな棒立ちでしてるとは言わせんぞ!』

 

同じ部隊の隊長機のザクが近付く。まさかこの忙しい時に棒立ちしてサボってる奴等が居るとは信じ難い事だと内心憤りを感じてしまう。

 

『あ、隊長ー。お疲れ様でーす』

 

『隊長ー、俺達何で戦ってるんでしたっけ?』

 

余りに腑抜けた返事をする2人のパイロット。その言葉を聞いた隊長は頭の中が一瞬で沸騰してしまう。

 

『貴様等!!!今が正念場だぞ!!!それなのに』

 

そして彼等に近付いて行く隊長機。ダメだ、それ以上近付いては行けない!

 

『我々は誇り高いジオン軍じ…何これー、あったかーい』

 

そして隊長の怒りは太陽の暖かくて優しい光により一瞬で溶けてしまう。

3機のモビルスーツが棒立ちになる。そしてそれを注意する為に近付く者達を次々と引き込んで行く。

 

『おい、お前ら何やって…暖かい』

 

『此奴等、遊んでるなら今すぐ…あー、良い』

 

『凄く…暖かいです』

 

光に群がるモビルスーツ群。どいつも此奴もモノアイだからちょっと怖い。そんな味方の様子が可笑しいと気付いたムサイ級が接近する。

 

『其処のモビルスーツ隊所属は何処だ。直ちに所定の位置に戻れ!』

 

しかし、帰って来た返答はこんな感じだ。

 

『あー、俺此処で周り見てるわー』

 

『そう言えば、最近婆ちゃん家に行ってなかったなぁ』

 

『戦う理由何だっけ?』

 

『えーと、アレじゃね?スペースノイド独立』

 

『『『それだ!』』』

 

何人かが戦う理由を本気で忘れてしまう。そんな連中に喝を入れるようにムサイが接近する。それが更なる犠牲者となるとは知らず。

 

『貴様等!一体何だその態度ッ…あぁ…光に包み込まれて行く』

 

そしてソーラー・システムにジオン軍の士気は思いっきり低下してしまう。そんな様子を見ていたティアンム中将は一言呟く。

 

「…よし!もう作戦成功で良いや!」

 

それは途轍も無く遠い目をしていたのだった。

 

……

 

あ、ばおあ、くー攻防戦の前

 

うちゅうせいき0079.12月27日。

 

以前、RGM-79ジムが何処ぞのパーソナルカラーのドムによってコテンパンにされてしまった。代わりに新しい新型機が来るらしい。やったぜ!

 

「ほほぉ〜、アレが新型…新型機?」

 

新型機?と思われる機体は2機並んでいた。1機はRGM-79ジムの上位互換に居るだろうと思われる緑を基調としたジム。そして、もう1機が…。

 

「あ、シュウ少尉ですね。此方が貴方の新しい機体になります」

 

見知らぬ技術士官に言われる。ダムナ技術中尉は何処に行った?

 

「彼は…出番が少ないからカットされました」

 

「メタ発言やめーや。悲しくなるやろ」

 

何だよ出番が少ないって。そう言いつつも新型機に視線を向ける。

 

「俺の機体はコッチの緑の新型機ですよね?」

 

頼む、そうですと言ってくれ。お願いします。

 

「いいえ?アッチの新型機ですね。我々地球連邦軍の最新鋭技術を使用した新型機です!」ドドン

 

「マジかー…勘弁してくれません?」

 

アッチの新型機は恐らく高機動型の機体なのだと分かる。唯、見た目が…その。

 

「ダメですよ!折角軍資金をこれでもかと言わんばかりに投入して作ったんですから!」

 

「その軍資金は国民の血税だぞ?俺等その内国民に殺されっぞ」

 

改めて新型機を見る。それは一言で言うならモビルスーツサイズの美少女フィギュアだ。もう一度言うがモビルスーツサイズの美少女フィギュアだ。白い髪のボブカットに翡翠色のパッチリ目の瞳。そして瑞々しいお肌と唇。服装も胴体か赤色で白の長袖。胸部装甲は大き目で更に装甲が追加されてる。そして白のハイヒールに白のニーソックスを装備。スカートは短くもう少し近付いたら間違い無く中が見えます。

後はブースターが適当に付いてます←おい

 

「RGM-79CRP試作高機動型ジム改。通称ジム子ちゃんです!!!」デデーン

 

何かポーズ決めながら新型機を紹介する技術士官。

 

「デデーンじゃねえよこの野郎。大体これ別作品の奴じゃないか」

 

「大丈夫ですよ。アッチはプラモデル、コッチは実機。これで万事解決です!」

 

「何処が解決だよ。完全にアウトだよ」

 

B○のスーパー○ミナじゃ有るまいし。然もスカート短いからバッチリ見えるだろうし。

 

「フッフッフッ、我々連邦軍が何時迄もジオンの技術に遅れを取る事は有りません!このジム子ちゃんには新しいシステムが搭載されてます!」

 

「新しいシステム?ま、まさか…」

 

対ニュータイプ用システムとか人の意思を集めて突撃しちゃうシステムとかなのか!?

 

「そうです。シュウ少尉の思ってる通りです」

 

真顔で言う技術士官。

 

「そ、そんな未来的なシステムを搭載してるんですか?このジム子ちゃんには!」

 

俺はふざけた事ばかり言う技術士官を見る。

 

「はい、そうです。ジム子ちゃんには【Zettai Ryouiki】通称ZRシステムが搭載されてます!!!」ドッカーン

 

「…………は?」

 

そしてZRシステムの説明が入る。

 

「ZRシステムはスカート、及び胸部にセンサーを搭載。そのセンサーで敵の位置情報を把握。そして相手の目線を瞬時に判断してスカートや胸部が大事な大事な場所をギリギリのラインで守ります!!!」

 

「守ります!!!じゃねえよ!今すぐ俺のジムを直せコノヤロー」

 

「え?嫌です。折角作ったんですから乗って下さい」

 

俺が見知らぬ技術士官と言い合ってるとレイナ中尉とアーク上等兵が来る。

 

「何アレー!超可愛いんですけど!」

 

「ヤベ…惚れたわ」

 

其処にはレイナ中尉と懐かしいアーク上等兵が居た。

 

「アーク懐かしいな。久々の登場だけど大丈夫か?」

 

「ちょっと緊張してる」

 

「ちょっと、メタ発言やめなさい。あんまりやり過ぎると怒られるわよ?」

 

「いやー、この話自体アウトな気が…」

 

下らないメタ発言をやりながら話を進める。

 

「所でレイナ中尉、アッチの可愛い新型機に乗ります?俺は緑の方で良いですよ」

 

「遠慮するわ。私達は戦争してるのよ。そんな所にあんな可愛い機体を持って行くなんて…ちょっと良いかも」

 

「良いんかい。で、アーク君はさっきからスカートの中を堂々と見てるのかな?」

 

「みみみ見てねえし!?全然見てねえし!?いやー、中々速そうな機体だなーと思ってるだけだし?」

 

「取り敢えずZRシステム起動」

 

するとジム子ちゃんのスカートが動き出す。

 

「あっ!?縞々が!あ…ち、ちゃうねん。ちゃうねんで?」

 

「安心しろよ。もう、みんな分かってるから」

 

誰もがアーク・ローダー上等兵に眼差し優しい眼差しを向ける。

 

「ち、違うんだ。俺は…俺は!」

 

そんな視線に居た堪れなくなりダッシュで逃げるアーク君であった。

 

「さて、問題は俺がこの機体に乗らないと行けないのかと言う事だ」

 

(頼む。誰も俺を導かないで下さい。お願いします)

 

内心そう思いつつ、可愛らしい表情のジム子ちゃんを見ながら溜息を一つ吐くのだった。

 

終わり。




RGM-79CRP試作高機動型ジム改 通称ジム子ちゃん

作者が試作ジム改の擬人化を妄想した結果出来た機体。各部のブースター、スラスターはそのままだが、完全に見た目は美少女になっている。また、作中には書いては無いが表情も変わる。敵を撃墜したりするとニッコリと笑い、被弾すると痛そうな表情をする。また、スカートの中を見られそうになると手で隠したりする。
【Zettai Ryouiki】通称ZRシステムにより敵の視線を一時的集め、大きな隙を作らせる。また、その美少女風な見た目から相手に攻撃を躊躇させる可能性がある。
更に何故か高性能学習機能が付いており、色々なポーズのバリエーションが存在する。尚、パターンは無限大である。


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仇と敵

沢山の高評価有難うございます(^^)


サラミス改、マゼラン改からの砲撃を確実に避けて行くジオン公国残党軍のモビルスーツ群。圧倒的な戦力差が有るにも関わらず迫る残党軍の技量の高さ、そして鬼気迫るものが有った。

 

「ほう、残党軍も中々粘るじゃ無いか。さて、我が方のモビルスーツ隊はどうなってる?」

 

「現在順次発艦中です」

 

「さて、連中は何を思って攻めて来たのかな?」クルクル

 

スタンリー・アルドリッジ准将は自身の前髪を弄りながら呟く。すると側に控えて居る副長が返事をする。

 

「恐らくですが、観艦式に向かう我々の足止めを行う為かと」

 

副長は今の状況を考えて返答をする。スタンリー准将は軽く頷きながら話を続ける。

 

「奴等の持つ戦力は少ない。そして、我々地球連邦軍に大きな一撃与える必要が有る。それが奴等の狙いだろう」

 

だが、とスタンリー准将は一言区切る。

 

「所詮は残党軍だ。どれだけ知恵を絞ろうとも、圧倒的な戦力差の前に磨り潰されるのは決まってる事だ。それよりだ、見た前。アーヴィントの指揮能力を」

 

スタンリー准将は話を変える様に前方に居る第217パトロール艦隊を見る。アーヴィント少佐率いる艦隊はサラミス改級2隻が暗礁宙域に砲撃を行い、残り2隻がジオン公国残党軍に砲撃を行なっている。

 

「数は少ない物の、無駄無く指揮出来てる。正直、此処まで成長してるのを見る事が出来た事を残党軍には感謝したい物だね」フワァ

 

「流石スタンリー准将の御子息になります。此れは将来大艦隊を指揮するのも夢では有りませんな」

 

「勿論さ。アーヴィントにはこれからの地球連邦軍を率いる立場になるのだからね」

 

しかし、そんな時だった。オペレーターが声を上げる。

 

「敵モビルスーツ1機接近。此方に迫って来ます!」

 

「モビルスーツ隊は直ちに迎撃せよ。対空防御は何をやってるか?」

 

しかしサラミス改級、マゼラン改級の弾幕を潜り抜け、更に迎撃して来るジム改をビームナギナタで斬り裂きながら接近する黒い高機動型ザク。

 

『先ずは旗艦からやらせて貰う』

 

そしてザクマシンガンの銃口がスタンリー准将の乗るマゼラン改級の艦橋に向けられた。その時、下方から弾幕が高機動型ザクを襲う。そして圧倒的なスピードで一気に間合いを詰める1機の機体。

シュウ・コートニー中尉の乗るジム・カスタムFbが黒い高機動型ザクに迫るのだった。

 

……

 

「黒いザク…間違い無い。ベルガー・ディートリッヒか」

 

『その色合い。まさか…貴様か、シュウ・コートニー』

 

お互い通信は繋がっては無い。だが、直ぐに理解し合う。そして、同時に動き出す。

 

「これ以上、味方をやらせるか!」

 

『来るか、なら相手になってやろう!』

 

ロング・ライフルとザクマシンガンが同時に発砲されながら機動戦に突入する。しかし、ジム・カスタムFbの機動にしっかりと付いて来る黒い高機動型ザク。

 

「旧式のザクの癖に良くやるよ」

 

『唯のザクでは無い。私の専用機を舐めて貰っては困るな』

 

ジム・カスタムFbと高機動型ザクはお互いビームサーベルとビームナギナタを持ち、加速しながら打つかり合う。

 

『ベルガー少佐、今援護します!』

 

『私に構うな!!!貴様等は目の前の敵を倒せ!!!』

 

それでも尚援護をするザクの攻撃を回避する様にジム・カスタムFbを操作する。そして追加ブースターを使い一瞬で反転した後、ロング・ライフルで狙い撃つ。

 

『なっ!速いガッ!?』

 

90㎜弾の弾幕をコクピットに受けてしまうザクは瞬く間に爆散してしまう。

 

『その動きは隙だらけだぞ!』

 

しかし、その間に間合いを詰める高機動型ザク。そしてビールナギナタを振るう。だが、ジム・カスタムFbの加速性能は段違いだ。一気にブースターを全開にして間合いを離す事に成功。そのまま反転して向かい合う。

 

『見事だ。まさか回避されるとはな』

 

「ふう…次は同じ事をすれば死ぬだろうな」

 

再び両者睨み合う。その時、ルイス少尉から通信が入る。

 

『ガルム2聞こえますか!此方の艦隊が敵の狙撃により被害が出ています。至急援護をお願いします!』

 

味方艦隊を見れば何隻かが小さくは無い被害を受けていた。

 

「此方ガルム2。現在敵エースと交戦中…援護は出来そうに無い」

 

そう、今背中を見せれば間違い無く堕とされる。しかし、このまま味方を見捨てる訳には行かない。だから俺はリミッターを解除しようとした時だった。

 

『此方ウィスキー小隊。其奴は俺達に任せな!』

 

『同じくロック小隊もだ。ガルム2、急いで敵のスナイパーを仕留めるんだ。このままでは艦隊と味方部隊の被害がデカくなる一方だ』

 

ジム改6機が90㎜弾の弾幕を高機動型ザクに撃ちながら接近して来る。

 

「しかし、奴はかなりの手練れです。そんな奴相手に」

 

『俺達はな、高機動型の相手には慣れてるんだよ。誰かさんのお陰でな!』

 

『そう言う事だ。だから倒せなくとも足止め位は出来る』

 

そして6機のジム改は黒い高機動型ザクに接近して行く。

 

『それにな、敵のスナイパーは暗礁や残骸を使って逃げながら反撃して来る。だが、あの暗礁の中を高速で移動出来るのはお前さんだけだ』

 

『頼む、此処は俺達に任せてくれ。そして、仲間を助けてくれ』

 

仲間…そうだ、俺には仲間が居る。今攻撃を受けてる艦隊。そして、陣形を組んでる6機のジム改。俺は少しだけ目を瞑る。

 

「ガルム2よりウィスキー、ロック小隊へ。此処はお任せします」

 

そう言い残し反転。そしてロイヤルの方へ向けて全力でブースターを使用する。

 

『ぬ!逃げるか。まあ、良い。今度は貴様等が相手か』

 

ザクマシンガンを構えながら呟くベルガー少佐。

 

『へっ!高機動型だか何だか知らねえが、俺達に出会った事を喜べよ?そう言う機体には慣れてる連中ばかりだからよ』

 

『全機フォーメーションを組め。間合いを詰めさせるな。必ず一定距離は離れる様にするぞ』

 

『『『『『了解!』』』』』

 

ウィスキー、ロック小隊はシールドを構えながら90㎜ブルパップマシンガンを黒い高機動型ザクに向ける。

 

『ふん、連邦の割には多少は腕が有りそうだな。だが、その程度で勝てると思うな!』

 

ザクマシンガンを撃ちながら接近戦を仕掛けるベルガー少佐。それをシールドで防ぎながら反撃するウィスキー、ロック小隊。

 

『絶対にこれ以上は行かせねえぞ!』

 

『弾幕を途切れさせるな。兎に角相手のペースを乱すんだ』

 

お互いの連携を密にして戦闘を行う。それを見て感嘆を漏らすベルガー少佐。

 

『ほう、少しは骨が有りそうだな。なら…遠慮は要らんな』

 

左手に持つシールドを放棄して再び突っ込んで行く黒い高機動型ザク。それを阻止せんとフォーメーションを組む6機のジム改。彼等の戦いが今始まったのだった。

 

……

 

ウィスキー、ロック小隊がベルガー少佐と戦闘を開始した時。シュウ中尉は暗礁宙域に突入する所だった。

 

「此方ガルム2よりロイヤル。これより暗礁宙域に突入する。敵の位置情報を求む」

 

『此方ロイヤル。敵は暗礁宙域の奥に居ます。大凡の位置情報を送ります』

 

ルイス少尉から通信が入りデータが送られる。しかし、随分奥の方に居るな。

 

『現在暗礁宙域内でガルム1、3、他の味方部隊が交戦中です。しかし、敵は暗礁宙域を利用しており捕捉し切れてません』

 

「艦砲は無理か」

 

味方が居る以上誤射し兼ねないだろう。

 

『はい。又、高濃度のミノフスキー粒子及びビーム撹乱幕を確認してます。恐らく砲撃が出来たとしても逃げられてしまうでしょう』

 

成る程な。此処まで用意周到だと言う事は、この暗礁宙域は敵のテリトリーな訳だ。

 

『また、ミノフスキー粒子の影響で現在味方モビルスーツ部隊との連絡がほぼ不可能な状況です』

 

「了解した。これより予測ポイントまで吶喊する」

 

俺はジム・カスタムFbを暗礁宙域に突入させる。暗礁宙域では未だに戦闘が行われている。敵は手練れで暗礁宙域を自由自在に移動出来る能力が有るのだろう。間違い無くこの宙域は敵のテリトリーなのだ。だが、それでも速度を緩める訳には行かない。

 

「レイナ大尉、ウィル少尉…無事で居てくれよ」

 

通信が繋がら無い2人の無事を祈りながら突入するのだった。




投稿が来週分までは出せますが、次からは未定になります。
一身上の都合ですのでお願いします。







地球防衛軍5のDLC2キター!やったぜ!←DLC2が来た時







うはっ!?何だよこれ!難しいぜ!だが、やり甲斐があるってもんよ!←プレイ中







…(´;ω;`)ブワッ←今此処


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仇と敵2

『8つ目…次は』

 

ザクフリッパーは8機目のジム改を撃破して直ぐに次の狙撃ポイントに移動する。ミノフスキー粒子、ビーム撹乱膜を大量に使用したお陰で、攻撃は殆ど来ない。更に此処の暗礁宙域のマップは完全に頭の中に入れている。最早レーダー等必要が無い位だ。更にザクフリッパーの目は非常に良く、敵の索跡には事欠かさない。

 

『此方スピッド1、敵を見失ってる。誰か索跡しろ』

 

『無茶言うな。こんだけミノフスキー粒子が濃いんだぞ。出来たらとっくにやってるよ!』

 

『たかが残党軍にこれ程の戦力を持ってる何て…』

 

地球連邦軍はたった1機のザクフリッパーに手玉に取られてしまってる状況に落ちてしまっていたのだった。

 

『ガルム1、今の状況は不味いですよ?援軍を呼びに戻りましょう』

 

『無理よ。それをやれば背後から狙撃されるわ。今の状況は我慢比べに近いわよ』

 

だが、我慢出来ず攻撃をする連中は居る。

 

『ええい、残党軍にビビるな!各機、俺に続け!』

 

1機のジム改に続き他のジム改も少数続いて行く。しかし次の瞬間。

 

『ぐわああっ!?』

 

あっという間に狙撃され撃破される。撃破されたジム改を間近で見てた連中も動きが一瞬止まってしまう。その隙を見逃す程、敵は甘くは無い。

 

『9つ…10!』

 

10機目のジム改が撃破され、慌てて身を隠す他のモビルスーツ隊。ザクフリッパーからの攻撃を逆算してガルム3のジム・キャノンⅡのビームキャノンからビームを放つが命中した気配は無い。寧ろ逆にカウンターの至近弾を受けてしまう。

 

『うわっ!やっぱりダメです。完全に身動きが取れませんよ』

 

直ぐに機体をデブリに隠すウィル少尉。

 

『参ったわね。このデブリと暗礁の中で機動戦何て出来無いし。艦隊との通信は?』

 

レイナ大尉の言葉に首を横に振るウィル少尉。

 

『手詰まりね。今は兎に角我慢よ。周辺への索跡を厳にして』

 

『了解です。こんな時、シュウ中尉が居てくれたら』

 

確かにとレイナ大尉は思う。一年戦争時、初めての操作で試作ジム改をデブリ内を縦横無尽に動かしていた。それだけでもシュウ中尉の操縦センスは他の誰よりもズバ抜けているだろう。

 

「本人はその辺りは気にして無いけど」

 

知らぬは本人ばかり。しかし、そんなシュウ中尉だからこそ皆んなに好かれてるのかも知れない。

暫く膠着状態が続いている時、1機の機体が暗礁宙域に突入して行く。かなりの速度で有りながらも速度を落とす事は無かった。

 

『レイナ大尉、アレって…まさか』

 

「漸く来たわね。ガルム2!良い女は待たせちゃダメって言ったでしょう?」

 

それに対し直ぐに返信が来る。

 

『此方ガルム2、申し訳ない。少々手間取りましてね。今度何かしら奢らせて頂きますよ』

 

「ふふ、期待して待ってる。ガルム1より生き残ってる各機に通達。これよりガルム2の援護を求めます。ガルム3、行くわよ」

 

『了解です!ガルム3、これよりガルム2に対し全力で援護します!』

 

その言葉を聞きながらレイナ大尉は機体を動かすのだった。

 

……

 

ザクフリッパーのパイロットは困惑していた。モニター越しに見えるのは暗礁宙域を高速で移動してる機体が、此方に徐々に接近しているのだ。だが、此方を発見した訳では無いのだろう。

 

『なら、一撃で仕留める』

 

アレは危険だと、今迄の経験から本能が警告を出す。故に一撃で仕留めなくてはならない。それに、間も無く味方との合流時間にもなる。それに遅れる訳には行かないのだ。

 

『貴様は…此処で死んで行け』

 

そう呟き135㎜対艦ライフルを撃つ。そして、弾は確かに命中した。だが、奴は咄嗟に此方に気付いた。それと同時にシールドを構えたのだ。弾はシールドに命中したが、それで終わる。

 

『奴め…化け物か』

 

恐ろしい程の反射神経だと。その時、背筋がゾッとした。間違い無い、奴は此方を見つけたのだと理解したのだった。

 

……

 

「そこか。場所が分かれば後は仕留めるだけだ」

 

一瞬光が瞬いた瞬間、反射的にシールドを構えた。次の瞬間にはシールドが吹き飛ばされた。だが、コレで敵の位置が分かった。

 

「此方ガルム2よりガルム1へ。これより敵に向かって突撃する」

 

『了解よ。ガルム3援護するわよ』

 

『了解です。敵を確認次第即時撃ちます』

 

ジム・カスタムFbを再び加速させる。また敵からの狙撃が来る。だが、当てるのは難しいだろう。此方もかなり変則的な動きだが、更に追加ブースターにより通常機より動きが違うのだから。

 

「スナイパーなら理解してる筈だ。自身の位置がバレた時、それは死を意味する物だと」

 

しかし、敵スナイパーは撤退する様子は無い。確かに後退はしてるが反撃は随時して来る。だが、反撃をすればするだけ距離が縮まる。

 

『馬鹿め。此方に誘われたと気付かないとは』

 

デブリに隠れたと思えばMMP-80を2丁持ちながら此方に射撃をして来るザクフリッパー。此方もデブリを使いながら回避機動を取りながらロング・ライフルで応戦する。

 

『中々やるじゃ無いか。だがっ!?チッ、臆病者共が意気がりやがって』

 

先程まで隠れてた味方がザクフリッパーに対し攻撃を仕掛ける。ジム改からの90㎜の弾幕とジム・キャノンⅡからのビームがザクフリッパーを襲う。だが、味方の攻撃をデブリ等を使い巧みに避けて行く。

 

『最早此処までか。撤退する』

 

ザクフリッパーが本格的に逃げようとする。だが、今奴を逃すと後々厄介な事になるのは明白だ。

 

「悪いが逃す訳には行かない」

 

再びザクフリッパーを追う。機体の性能差も有り徐々に追い付く。

 

『振り切れん。まさか、この宙域で俺が逃げ切れないとは』

 

MMP-80の銃口を再び此方に向ける。それと同時にロング・ライフルの銃口から90㎜弾が放たれる。ザクフリッパーからの攻撃を避けながら反撃を緩めず射撃する。そして90㎜弾が多数ザクフリッパーに命中して行く。

 

『こ、こんな場所で。おのれ…連邦め』

 

そして敵スナイパーであるザクフリッパーは爆散するのだった。

 

「ふう、スナイパーの相手は厳しかったな。ガルム2よりがガルム1へ、敵スナイパーを撃破。他にスナイパーは居るのか?」

 

『分からないわ。だけど警戒はしておいて』

 

周辺を確認する。味方艦隊は今でも戦闘を続行している。今彼処には奴が居る。ウィスキー、ロック小隊に任せてはいるが心配だ。

 

「ガルム2よりガルム1へ。これより味方艦隊に戻ります。なので此処の警戒をお願いします」

 

『ダメよ。まだ敵を完全に索跡出来て無いのよ。もし残存部隊が居たらどうするの?』

 

『そうですよ。それに此方の艦隊の方が戦力は圧倒的なんですよ?心配する事何て殆ど無い筈です』

 

ウィル少尉の楽観的な発言に対し良い事を教えて上げる事にする。

 

「ウィル少尉、お前は良く俺の事をエースパイロットと言ってるな」

 

『え?は、はい。実際シュウ中尉はエースパイロットと言えますし。それが何か?』

 

「敵には俺と同じ様な…いや、それ以上のエースパイロットがいる。そして、連中は1人1人が熟練兵と言っても良いんだぞ。それが何を意味してるか分かるか?」

 

先程のザクフリッパーの動きを見れば一目瞭然だ。この暗礁宙域を自由自在に移動していた。機体の性能差が有るとは言え中々追い付けなかったのだから。

 

『じゃ、じゃあ。今の艦隊は不味い状況なのでは?』

 

「だから俺が戻るんだ。ガルム1聞いての通りです。艦隊に戻る許可をお願いします」

 

『それは厄介ね。ガルム1よりスピッド1、聞こえる?』

 

『此方スピッド1。どうした?何かトラブルか?』

 

レイナ大尉が今の状況をスピッド1に伝える。

 

『成る程な。ガルム2以上の腕前を持つエースが居るとなると味方部隊に被害が出るな。了解した。この宙域の索跡には我々も協力しよう』

 

『感謝するわ。ガルム2大丈夫よ。さあ、行きなさい』

 

「了解です。スピッド1感謝します」

 

『おいおい、感謝するのはこっちの方だぜ。この宙域を狂った速度で突っ込んだ行った奴のお陰で生き残れたんだ。この位平気さ。今度飯でも奢らせてくれ』

 

スピッド1は敬礼しながら愉快そうに笑う。此方も答礼をして味方艦隊に向かう。

 

「それでは自分は先に艦隊に向かいます。ガルム3、レイナ大尉を頼むぞ」

 

『了解です。御武運を』

 

機体を加速させる。ウィスキー、ロック小隊が足止めしてくれてる。だからこそ早く艦隊に向かわなくてはならない。

 

「頼む…無事で居てくれ」

 

これ以上仲間を死なせたく無いから。しかしデブリを避ける様に機体を動かしてる中、ふと思う。いつから仲間だけ無事なら良いと思う様になったのだろうか?相手も同じ人間だと言うのに。

 

(多分…あの時だろうな)

 

嘗ての戦友で有り親友で有る存在。アーク・ローダーを目の前で失った瞬間からかも知れない。

 

「ダメだ。今は目の前の戦場に集中しろシュウ・コートニー」

 

自身に言い聞かせる様に言い放ち戦闘に集中するのだった。

 

……

 

ウィスキー、ロック小隊とベルガー・ディートリッヒ少佐との戦闘は続いていた。ウィスキー、ロック小隊を援護する様に艦隊からの対空砲が火を噴く。だが、その戦力差を物ともせず戦い続けるベルガー少佐。

 

『ぐわあああ!?畜生!右腕と右脚をやられた!』

 

『ロック3こっちに来て固まれ。離れたら即やられるぞ』

 

『何だよ此奴…弾が全然当たりゃしねえ』

 

『ボヤく前に弾幕を張れ!』

 

しかしジム改6機の内3機は損傷が大きく、まともに戦闘出来る状況では無い。然も離脱が出来ずジリ貧になっている。

 

「ふむ、中々粘る。それに孤立する事はしない辺り良い判断だ」

 

ベルガー少佐は逃れようとする奴を逃すつもりは無い。しかし、目の前の6機のジム改はシールドを構えながら味方を守る様にしている。

 

「だが、何時迄も貴様等の相手をするつもりは無い。そろそろ旗艦を仕留めさせて頂く」

 

黒い高機動型ザクのモノアイが白いマゼラン改級グレイトを見つめる。そして機体を再び加速させる。

 

「私の機体の燃費は少々悪いのでね。そろそろ終わらせる」

 

再び加速した黒い高機動型ザク。それに対してウィスキー、ロック小隊、更に艦隊と味方のジム改が迎撃する。

 

『うおおお!速えええ!?』

 

『駄目だ抜けられるぞ!』

 

ウィスキー、ロック小隊の戦術は基本防御に徹し、敵の攻撃の隙を見て一斉に反撃する。しかし今や火力は半減、更に損傷機を守る様にしてる為満足に戦え無い。

艦隊の弾幕をいとも容易く抜けて行くベルガー少佐。そして、そんな狂気の沙汰とも言える黒い高機動型ザクの戦い方に恐怖を覚えるスタンリー・アルドリッジ准将と乗組員達。

 

「な、何をやってる!?たかが残党軍の、旧式のザクに何を梃子摺る!?」

 

「対空弾幕何やってるか!奴を叩き落とせ!この艦には准将が乗っておられるのだぞ!」

 

若干髪を乱れさせながら吠えるスタンリー准将。副長も即時迎撃する命令を降すが黒い高機動型ザクは落ちない。

 

「さあ、仲間への手向けだ。逝くが良い」

 

ザクバズーカを左手に装備。その銃口がスタンリー准将の居る第1艦橋に向けられる。その時、ロックアラートが鳴り出す。

 

『ベルガー・ディートリッヒ!!!』

 

「っ!?貴様か、シュウ・コートニー!!!」

 

暗礁宙域を抜けた瞬間、リミッターを解除されたジム・カスタムFb。その圧倒的な速度によりベルガー少佐に接近。そしてジム・カスタムFbと高機動型ザクとの戦いが再び始まる。

 

「ほう、中々の性能じゃ無いか。だが、此方も性能差では負けては無いぞ」

 

ベルガー少佐は機体のリミッターを解除する。そして、遂に黒い高機動型ザクの本性が現れる。

 

「見た目はザクだが、中身はゲルググだと言っても良い。いや、機動力では此方が圧倒だ!!!」

 

『此奴、食い付いて来るのか!?』

 

お互い近接戦闘に入る。ビームナギナタを振るう高機動型ザク。それをビームサーベルで真っ向から受け止めるジム・カスタムFb。そして至近距離からのザクマシンガンとロング・ライフルの応酬。

 

「貴様が目障りなのだ。故に此処で死んで行けシュウ・コートニー!!!」

 

ビームナギナタを振るいジム・カスタムFbに迫る。それに対し60㎜バルカンを放つシュウ中尉。

 

『そう簡単に死ねるか!戦争は終わったんだぞ!もう、これ以上戦う意味は無いんだ!』

 

「意味は有る」

 

シュウ中尉の言葉を否定するベルガー少佐。

 

「多くの仲間達が思い描く、スペースノイドの真の独立。これを成就して漸く我々の戦いは終わる。其れ迄…戦いを止める訳には行かんのだ。でなければ死んだ者達は一体、何の為に…」

 

その時、ベルガー少佐に通信が入る。

 

『ベルガー少佐聞こえますか?もう、これ以上は限界です。それから、スカウト1からの通信が途切れました。恐らく…』

 

「そうか…了解した。これより撤退する」

 

少し間を開けた後帰投の返信をするベルガー少佐。

 

「シュウ・コートニー、貴様が何と言おうとも我々の戦いは止まら無い。そして、貴様の言葉は誰にも届きはしない」

 

そして、そのまま離脱するベルガー少佐。勿論簡単に帰す程連邦軍は甘くは無い。だが、ジオン公国残党軍のムサイ級3隻が牽制射撃を行い邪魔をする。

 

「ま、待て!逃す訳にはっ!く、3分過ぎてたのか」

 

機体の状況を示すモニターにはこれ以上のリミッター解除が不可能と表示されている。流石にそれを解除する訳には行かない。

 

「誰にも届かないか…。そんな事、言われるまでも無いさ」

 

一年戦争の時に充分理解した。誰もが深い哀しみ、憎しみ、怒りを抱いている。時間が解決する等と言う戯言を口にしてはいけない。例え何年経とうとも失った悲しみは癒える事は無いのだから。

この戦争も此処まで来たら、ジオン公国残党軍も地球連邦軍も引き下がれ無い。引き下がれる訳が無いんだ。そんな事を思いながら敵が撤退して行くのを見届けながら、此方もロイヤルに帰投するのだった。



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デラーズ・フリートの目的

ドラッツェ改と言うモビルスーツ、ヤバイくらいカッコ良すぎ!
あんなモビルスーツが居るなんて初めて知ったわ。


ジオン公国残党軍が撤退して行く中、俺達は味方の救助に移行して行く。しかし、この時残党軍の追撃をするか否かを士官達は決め兼ねていた。

 

「でしたら、僕達第217パトロール艦隊にお任せ下さい。必ずや敵を撃滅して見せます」フワァ

 

モニターを通して父親であるスタンリー准将に追撃をする事を伝えるアーヴィント少佐。しかし、話は上手く進まない。

 

『おお、アーヴィントよ。良く其処まで成長した。父さんは嬉しいよ』

 

スタンリー准将は満足そうな表情をする。例え今がまだ警戒中で有ろうとも、父親として唯一の後継者が立派になったのは嬉しい物が有る。しかし、スタンリー准将は直ぐに表情が硬くなる。

 

『先ずは結論から言おう。残党軍の追撃は我が艦隊の一部を差し向ける。第217パトロール艦隊はこのまま先導せよ』

 

「しかし、このまま敵を見逃す訳には。それに我艦隊にはエースが居ります。必ずや」

 

続きを言おうとする時、スタンリー准将は手を挙げて止める。

 

『それだよ。エースは敵にも居る。私はね、その危険極まりない所にお前を行かせるつもりは無い。よって第217パトロール艦隊は当初の任務に付く様に。これは…命令だ』

 

軍人より家族を取るスタンリー准将。それは軍人として間違っては居る。だが人として、家族として危険な場所に行かせたくは無いと思うのは間違いでは無い。

 

「父上…了解しました。これより当初の任務を遂行します」

 

『うむ。だが安心したまえアーヴィント少佐。観艦式が終われば残党軍の本格的な討伐がおこなわれる。その時は貴官の働きに期待する』

 

そして敬礼をした後、話は終わり通信が切れる。それと同時に溜息を一つ吐くアーヴィント少佐。

 

「やれやれ、父上の心配性には困った物だね。さて、それでは我々は任務を遂行するとしよう」

 

アーヴィント少佐は自身の艦隊に先導の指示を出す。考えてみれば観艦式が終わる時、それは残党軍の終わりを意味する。そんな中、今此処で戦力を分散する事も無い。

 

(しかし、残党軍は何を考えて攻撃を仕掛けたかだ。やはり2号機の核を観艦式に撃ち込むつもりか?しかし…)

 

若干の不安を覚えつつも艦隊に指示を出して行くのだった。

 

……

 

「そうか。追撃の連邦艦隊の一部のみか」

 

「はい。大多数はそのままソロモンに向かって行きます」

 

ベルガー少佐はムサイ級の艦橋から宇宙を見つめながら報告を聞く。

 

「だが、連邦に打撃を与える事は出来た。ならば我々の役目は星の屑作戦の成功に全てを尽くすのみ。各艦に通達しろ。我が艦隊は敵追撃艦隊を迎撃した後、本隊と合流する」

 

「了解。直ちに通達します」

 

通信兵が味方に通信を繋げる。しかし、ベルガー少佐は未だ別の事を考えたいた。

 

(星の屑成就の時、それは貴様も死ぬ時だ。覚悟しておく事だ…シュウ・コートニー)

 

ベルガー少佐は静かな宇宙を見続けながら内なる憎悪を燃やして行く。

 

……

 

「俺達は追撃は無しですか」

 

「はい、私達はこのままコンペイトウに向かいます」

 

ルイス少尉から今後の艦隊行動を聞く。てっきり追撃を行う物だと思っていた。

 

「なら私達は暫く休めるわね」

 

「そうですね。正直今回の相手はかなりの手練れでしたし。シュウ中尉が居なければどうなってた事やら」

 

「おいおい、そんなに煽てるなよな」

 

しかし、そんな中ルイス少尉の様子が少し可笑しい事に気付いた。何やら考え込んでる様に見える。

 

「ルイス少尉、何やら考えてますがどうしたんですか?」

 

「あ、いえ。唯…少し気になる事が有りまして」

 

「気になる事?それは一体」

 

レイナ大尉が理由を聞く。そして、ルイス少尉の気なる内容は決して小さくは無かった。

 

「現在ジオン公国残党軍の動きが活発化してます。そして先日のエギーユ・デラーズの宣戦布告。更にガンダム2号機の存在。残党軍の目的は間違い無く観艦式での核弾頭による攻撃です」

 

ルイス少尉の言う通りだろう。誰もが理解してる事だ。観艦式には地球連邦宇宙軍の大半が参加する。正に地球連邦軍の威信に掛けて必ず観艦式は行うだろう。

 

「しかし、それは誰でも予想が付きます。ですが、エギーユ・デラーズがそんな単純な事で宣戦布告をするなんて有り得ません」

 

「エギーユ・デラーズ…どんな人物何です?ルイス少尉が其処まで危険視するなんて余程の人物だと理解出来ますが」

 

「私も分からないわね。ほら、私士官学校で一番下だったし!」

 

「いや、胸張って自信満々に言わないで下さい」

 

そんな俺達にルイス少尉は嫌な顔せず説明してくれた。

エギーユ・デラーズ。元ジオン公国軍所属。階級は大佐。ア・バオア・クー攻防戦では統一軍総帥直属艦隊司令になっていた。優れた戦術家で有り軍政家でも有った。正に知将と評されても間違いは無い程の人物だ。

しかし、そんな彼には別の評価が有る。一部の連邦士官からは【ギレン・ザビの亡霊】と評される程、ギレン・ザビに絶対の忠誠を誓ってる程だ。又狂信的なジオニストで有り危険人物でも有る。

 

「まあ、狂信的な奴は大抵危険人物だって相場で決まってるよな」

 

行き過ぎた思想は周りに被害を出す。そして周りや身内から危険視され排除される。

 

「エギーユ・デラーズが危険人物だと分かりました。しかし、それがどうしたんですか?」

 

「ウィル少尉、少し考えてみろ。戦術家で軍政家、そんな人物が観艦式に核弾頭を使ってお終いな訳が無い。そうですよね?」

 

「はい。シュウ中尉の言う通りです。余りにも分かり易い流れに不安を覚えます。まるで、私達は誘導されてる様な気がしまして」

 

ルイス少尉は不安な表情になる。だからルイス少尉の肩に手を置き話す。

 

「ルイス少尉が不安なのは分かりました。なら、不安が解決するまで俺が皆んなを守ります」

 

「シュウ中尉…そ、その」

 

「だから安心して先の事を考えて下さい。その間必ず俺が守りきりますから」

 

ルイス少尉を安心させる為に言う。しかしルイス少尉は顔を伏せてしまう。そして、顔を上げると真っ赤になっていた。

 

「ふ、不束者ですが、よ、宜しくお、お願いしまゃふ!」

 

そう言って背を向けて何処かに行ってしまう。

 

「あれ?ルイス少尉…行っちゃった」

 

「うわー、流石シュウ中尉だ。口説き文句も決まってる」

 

「口説き文句?別に口説いては…」

 

しかし、よくよく先程の言い方を思い返すと口説いてる様にも思える。その時、俺の尻に衝撃が走る。其方を見るとレイナ大尉が蹴りを入れていた。

 

「痛!な、何するんですか!」

 

「ふん!何だかんだでシュウはルイス少尉に甘いんだから。私にも甘くしなさい!これは上官命令よ!」

 

「どんな上官命令ですか。それに、別に甘くしては無いですよ」

 

「ふ〜ん、どうだか。無自覚なら尚更達が悪いわね。やっぱり私にも甘さを提供しなさい!」

 

余りに理不尽な命令に反論するがムクれてしまう。

 

「レイナ大尉、貴女は子供ですか」

 

「ふふん。私の精神面の若さを舐めない事ね!」

 

「うわー、中尉の言葉が全くもって効果が無い」

 

俺達は何時もの日常に戻る。大切な仲間達との生活。それはとても心地良く安心する。しかし、それは不安を押し潰す為なのかも知れない。

ジオン公国残党軍はガンダム2号機と核弾頭を強奪した。そして、核弾頭の矛先は間違い無く観艦式だ。しかし、それ以外の目的が有るかも知れないと考えると不安を覚えるのだから。

 

宇宙世紀0083.11月4日。地球連邦宇宙軍第217パトロール艦隊、地球連邦宇宙軍コンペイトウ所属第45機動艦隊は宇宙要塞コンペイトウに到着。

 

「此方、地球連邦宇宙軍第217パトロール艦隊。旗艦ロイヤル。入港許可されたし」

 

『此方管制塔。第18番ゲートを解放します。無事の航路お疲れ様でした』

 

「うむ、有難う。艦を18番ゲートに」

 

「了解です」

 

アーヴィント少佐は艦橋から見える多数の地球連邦艦隊を見る。このコンペイトウ周辺に居る艦隊の殆どは観艦式に参加するのだ。正確に言うなら地球連邦宇宙軍の大半が参加する訳だ。だから、まだ後からコンペイトウに来る艦隊も含めれば途轍も無い数になる。

 

「アーヴィント艦長、一つ提案が有りますが宜しいでしょうか?」

 

「ん?ルイス少尉か。どうかしたかね?」

 

「はい、現在ジオン公国残党軍の動きはエギーユ・デラーズの戦線布告により活発しています。其処で私達は周辺警戒をするべきかと。また我々の殆どは実戦経験者です。臨機応変な対応は他の部隊より優れています」

 

ルイス少尉の提案に成る程と思うアーヴィント少佐。しかし、恐らくそれは叶わないだろうと考えていた。

 

「その事に関しては僕も考えなかった訳では無いさ。唯、許可は降りないだろうねぇ」クルクル

 

現在、第217パトロール艦隊はスタンリー准将の指揮下にいる。そして父でもある人が出撃許可を出すとは到底思え無いからだ。それより観艦式参加を言い渡されるだろう。

 

「大丈夫です。私の言う通りに言えばきっと許可は降ります」

 

この時のルイス少尉の笑顔は自信満々で有ったのは間違い無かった。

 

……

 

アーヴィント少佐は父親であるスタンリー准将の部屋で話をしていた。

 

「おぉ…そこまで私の事を思っているのか」

 

「はい。地球連邦軍を守る事、それは即ち父上を守る事になります」

 

スタンリー准将は感激の余り両手で目元を隠す。

 

「私の息子がこんなにも立派になって。うんうん、良かろう。観艦式中の警戒任務を与える。だが、今直ぐにとは行かない」

 

「それは何故ですか?」

 

「数日後にワイアット大将率いるルナツー方面軍第二守備隊が到着する。その時私と共に出迎えと挨拶に来て貰う」

 

「成る程。了解しました」

 

アーヴィント少佐は少し緊張した表情になる。そんな息子の姿を見て軽く笑みを浮かべるスタンリー准将。

 

「そう緊張する事は無い。お前の顔を覚えて頂く事が一番の目的だからな」フサァ

 

そしてアーヴィント少佐とスタンリー准将との会話は親子としての会話になって行く。そしてスタンリー准将はレイナ大尉との関係に付いて軽く聞くが、アーヴィント少佐は中々良い表情を示さない。

 

「成る程な。私も母さんとの恋物語も中々波乱万丈な物だった。そう、あれは初めて出会った時だった」

 

(不味いな。これは2時間コースに成りそうだ)

 

当初の目的を達成したが、まさか自身の親の恋愛話を聞かされるとは想定して無かった。アーヴィント少佐の戦術眼は中々の持ち主だが、父親に対する予想はダメだった様だ。こうして約2時間余りに渡るスケール感抜群の恋愛ストーリーを聞かされるのだった。



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ジオン公国残党軍の意地

宇宙世紀0083.11月8日。

 

暫くコンペイトウにて待機していたが遂に出撃命令が出る。唯、今回出撃するのは第217パトロール艦隊のみになる。

 

「しかし凄いな。コンペイトウ周辺の艦隊数は圧倒的だな」

 

「本当ですね。これだけの戦力が一気に残党軍に向けられたら一瞬で決着が付きますね」

 

「だな。多分艦砲だけで終わるんじゃ無いか?」

 

ロイヤルの艦橋から観艦式に参加する艦隊を見る。サラミス改級、マゼラン改級、更に準ペガサス級まで居る。

 

「あ、アレは準ペガサス級ですよ!自分初めて見ました」

 

「俺はペガサス級を見た事あるけど、随分と形が変わってるんだな」

 

多数の艦隊を見て、改めて地球連邦宇宙軍は復活したのだと感じる。一年戦争には大敗を期したが、その後の立て直しは凄まじいと言える。更にサラミス改級やマゼラン改級等火力増強も計られてるのだから総合火力は更に飛び抜けてるだろう。

 

「全く、味方の艦隊なんて散々見てるでしょう?私なんてもう見飽きたわよ」

 

「いやいや、この圧倒的な戦力はいつまで見ても見飽きませんよ。な、ウィル少尉」

 

「はい、ずっと見てても飽きませんよ」

 

そんな俺達をやれやれと言った雰囲気で見続けるレイナ大尉。そんな時、コンペイトウから1隻の白い戦艦が出て来る。多数の砲塔と対空砲を備え、悠然とした姿を現した。

 

「あれは新造艦?」

 

「あれは観艦式の観閲旗艦【バーミンガム】だよ。そしてグリーン・ワイアット大将が上座されてるのさ」フワァ

 

アーヴィント少佐がバーミンガムに付いて教えてくれる。

 

「しかし観艦式の観閲旗艦ですよね?今から何処に行くんでしょう?」

 

「どうやら周辺の巡察を行うみたいです」

 

「え?大将自らですか?今回の観艦式には随分と気合が入ってるんだな」

 

俺達はバーミンガムを見ながら敬礼をする。多分此方を確認したのか発光信号が送られる。

 

「『貴艦ラノ任務遂行ヲ期待スル』との事です」

 

「うむ、返信『観艦式ノ安全ヲ確保致シマス』とな」

 

そしてバーミンガムを見ながら目的地まで行く。場所はコンペイトウより離れた場所に当たるC区画になる。とは言うものの一年戦争時に出来た多数の残骸が浮遊してる場所でも有る。また、観艦式が近付くにつれジオン公国残党軍の動きが更に活発化してる。

つまり、どの宙域から敵が出て来ても可笑しくは無いのだから。

 

……

 

「それで、早速敵さんのお出ましかよこん畜生!」

 

「ボヤかないの。ほら、早く出撃するわよ」

 

警戒区域であるC区画に到着して数分後に艦隊のレーダーにより敵の接近を確認。その為モビルスーツ隊は出撃する事になる。

 

「此方ガルム2、出撃準備完了」

 

『了解しました。カタパルトへ移動お願いします』

 

ルイス少尉の言葉に従いカタパルトにジム・カスタムFbを移動させる。

 

『カタパルト接続を確認。ハッチ解放、進路クリア。発進どうぞ』

 

「了解。ガルム2、シュウ・コートニー中尉行きます」

 

そして周辺警戒の意味合いも有り、モビルスーツ隊は全機出撃になる。そして全機出撃した後、迎撃及び索跡に入る。

 

「ルイス少尉、敵の数は多いのか?」

 

『いえ、敵の総数は3機のみです。いずれもザクになります。また、周辺にはデブリが多数存在している為奇襲の危険性が有ります。注意して下さい 』

 

「了解した」

 

(相手はザク3機か。なら気を引き締めないとな)

 

そう思っているとウィル少尉が安堵の声を出す。

 

『良かった。敵が旧式機ならなんとかなりそうですね』

 

『コラコラ、旧式機だからと言って油断は厳禁よ』

 

「そうだぞ。寧ろ旧式機だからこそベテランが搭乗してるから危険なんだぞ」

 

旧式機に搭乗するパイロットはベテランが多い。それ故に旧式機とは思えない機敏な動きを見せて来る。

 

『りょ、了解です。気を付けます』

 

ウィル少尉も俺達の言葉を聞いて気を引き締め直す。

 

「ガルム2よりガルム1へ。これより敵の追撃に入ります」

 

『了解したわ。但し、無茶な追撃は厳禁よ。足止めに専念しなさい』

 

「了解です。ガルム2、行きます!」

 

ジム・カスタムFbをブースター全開にする。他のモビルスーツを圧倒する加速と最高速を出しながらザク3機を追い掛ける。距離は見る見る縮まる。

 

「捉えた」

 

それと同時にザク3機も反応する。そして此方を視認したのと同時に散開する。

 

『此奴は速いぞ。各機集中して素早く破壊するぞ。連邦の後続が来る前に殺っておきたい』

 

『了解』『了解です』

 

ザク3機は素早い動きでデブリを壁にしながら、此方の射線を上手く切りながら接近して来る。そしてほんの僅かな隙間を縫う様に攻撃を仕掛けて来る。

 

「中々良い動きをするな。だが、負けるつもりは無いぞ」

 

例えデブリにより機動戦に制限が有ろうとも、それは向こうも同じ事だ。デブリを踏み台にしてブースターを使って行く。その度に凄まじいGが身体を襲い掛かる。だが、この程度のG等に泣き事を言うつもりは無い。

 

『此奴は…かなりの手練れだぞ。この場で確実に仕留めるぞ』

 

1機のザクがザクマシンガンを撃ちながら接近して来る。それと同時にザク2機も援護の為、射撃を開始する。

 

「チッ、連携が上手い」

 

前衛のザクを主軸に援護に徹するザク2機。堅実だが隙が無い。なら、堅実な所を崩せば良い。ジム・カスタムFbの加速性は生半可な物では無いのだから。

ロング・ライフルを乱射しながら一気に前衛のザクに接近する。そして、そのまま素通りしながり援護をしているザク2機に対しても攻撃をする。

 

『此奴、無茶苦茶な機動を取りやがる』

 

『このままだと狙いが付けれんぞ』

 

『俺が足を止める。その隙に仕留めてくれ』

 

反転して再び攻撃をする。しかし、ザク3機のザクマシンガンの弾幕が此方を襲う。シールドを構えつつロング・ライフルで反撃をしながら接近。

 

『来たか。ならば!』

 

1機のザクがザクマシンガンを放棄してヒートホークを装備。そのまま接近戦を仕掛けて来る。それに応える様にロング・ライフルを仕舞いビームサーベルを抜く。

 

『良い度胸だ!だが、俺は負けん!!!』

 

そしてザクとジム・カスタムFbが一瞬の交差をする。そして…。

 

『ば、馬鹿な…くっ、すまん』

 

その通信を最後にザクは爆散する。

 

『あ、ああ…ダムの奴が』

 

『お前は先に行け。もう連邦が来てる』

 

デブリにより進行速度は遅いが、連邦軍モビルスーツ隊が徐々に迫って来る。

 

『待てよ!それじゃあ、お前はどうするんだ?』

 

『決まってるさ』

 

ザクマシンガンの弾倉を新しい物に変えながらジム・カスタムFbに接近する。

 

『連邦を1人でも道連れにする。さあ、行け』

 

『だ、だが…』

 

『問答してる暇は無いんだ!俺の…俺達の意地を無駄にするな!行けえええーーー!!!』

 

ザクはジム・カスタムFbに対しザクマシンガンを撃ちながら機動戦を仕掛ける。

 

『…待ってるからな。予定ポイントで待ってるからな!!!』

 

そしてザク1機は戦線を離脱する。

 

『さて、俺と楽しく戦おうじゃ無いか!』

 

「そこまでして戦う理由は何だ?一年戦争は終わってるんだぞ!」

 

デブリの中を機動戦を行いながら駆け抜ける。

 

『はっ、それはお前達連邦軍だけの話だ。俺達はずっと前から戦い続けてる。そう、3年間ずっとな!』

 

ザクマシンガンを撃ちながらデブリを使い機動戦を行う。それは、先程シュウ中尉が行った機動に似ている。

 

『くっ…こんな無茶な機動をしやがって。だがな、手前に出来て俺に出来無い訳が無いんだよ!』

 

「デブリが邪魔で捉え切れ無い。このままだと逃げられる」

 

ロング・ライフルで狙いを付けるがデブリを使い鋭い機動を取るザク。その時、味方が追い付いて来る。

 

『ガルム2、無事なの?』

 

「此方は平気です。しかし、ザク1機が戦線を離脱して行きます」

 

『了解したわ。此方で追撃をするわ。ガルム3はガルム2の援護よ』

 

『了解しました。中尉、今援護します』

 

そのままザクを無視して、もう1機のザクの追撃を開始する連邦軍。だが、それに待ったを掛ける奴が居た。

 

『手前ら…そう簡単に行かせる訳が無いんだよ!』

 

ザクはそのまま追撃を開始しようとする味方に対しザクマシンガンを撃ちまくる。

 

『此奴、オープン通信で挑発すんのか?』

 

『だったらお望み通りにしてやるぜ。ウィスキー小隊続け』

 

『ロック小隊も行くぞ。早死にしたいなら手伝ってやるよ』

 

しかしザクはデブリを使い巧みに回避、反撃をする。

 

「チッ、加速が出るから追撃し難い」

 

ジム・カスタムFbの性能は間違い無く目の前のザクを超えている。しかし、それ故に限定的な戦場では高性能なジム・カスタムFbを活かし切れない。

 

『俺達は負けない。貴様等傲慢な連邦軍に負けて堪るかよ!!!』

 

ザクはデブリを使い回避機動を取る。しかし、多勢に無勢。更に圧倒的な火力がザクを追い詰める。

 

『デブリごと撃ち抜く。喰らいなさい!』

 

『よし、これでも喰らえ!』

 

ガルム1の持つ90㎜ガトリングガンが火を噴く。更にガルム3からのビームキャノンからビームが放たれる。それに続けと言わんばかりにロック、ウィスキー小隊のジム改からの攻撃も続く。

 

『数で攻めるしか出来無い癖に。俺達は、そんな…貴様等の傲慢に俺達は潰されて来たんだ!!!』

 

多数被弾するザク。手持ちのザクマシンガンも大破、更に左腕も吹き飛ぶ。だが、止まらない。大破したザクマシンガンを放棄してヒートホークを構えガルム2に接近する。

 

『うおおお!!!ジーク・ジオン!!!』

 

だが、その勢いは潰される。いつの間にか上方を確保していたシュウ中尉の乗るジム・カスタムFbの持つロング・ライフルがザクのバックパックを撃ち貫く。ザクは瞬く間に爆散して行く。そしてヒートホークだけがガルム2に向かって行くが、そのままシールドに刺さって止まるのだった。



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観艦式1

手練れが操縦していたザクを撃破した後、逃走したザクを追跡する。しかし、ザクはレーダー外に離脱した為追跡が困難な状況だ。

 

『中尉、敵を見失いました。どうしましょう?』

 

「そうだな。追撃は厳しいな。それに、あんまりロイヤルから離れ過ぎるのも不味いしな。ガルム1、一旦帰還を進言します」

 

『そうね。それにまだこの辺りに残党軍が潜んでる可能性も有るしね。ガルム1より各機に通達。一旦帰還して再捜索を提案するわ』

 

他の連中も同じ事を思っていたのだろう。反論も無くアッサリ提案に乗る。こうして一時帰還をしてローテーションでC区画の索敵を行うのだった。

 

……

 

宇宙世紀0083.11月10日。地球連邦軍はコンペイ島宙域にて観艦式を行う。

 

遂に地球連邦軍による観艦式が開始される。それと同時に各防衛エリアでジオン公国残党軍の攻撃が活発化する。それは俺達第217パトロール艦隊も例外では無かった。ジオン公国残党軍は先日までの散発的な動きは無く、組織的に此方に攻勢を仕掛けて来る。其れ迄の嵐の静けさが嘘の様である。

 

『ロイヤルよりモビルスーツ隊に通達。2時方向に敵を確認。ザク6機、リックドム3機、それから高速で接近する未確認機を2機確認。直ちに迎撃に当たって下さい』

 

ジオン公国残党軍は今迄は此方を避ける様に行動していた。だが、今は明確な目的の元に此方に攻撃を仕掛けて来る。

 

『ま、また増援ですか?一体何機いるんですか!』

 

『こっちはまだ片付いてないわよ』

 

『此方ウィスキー小隊、現在ロック小隊と共に敵と交戦中。此奴等間違いない。正規軍だ!』

 

『クソッ!かなりの手練れだ。各機互いにフォローし合え。気を抜いたら殺られるぞ』

 

そしてウィスキー、ロック小隊も現在別の宙域で交戦中。

 

『此方も敵と交戦中。残党の割には手が込んでるじゃないか』

 

『ラルフ1よりロイヤル。此方も身動きが取れそうに無い。寧ろ増援を寄越してくれ』

 

更に他のモビルスーツ部隊も敵と交戦しており身動きが取れない。

 

「ルイス少尉、未確認機の位置は?」

 

『未確認機は間も無く艦隊の射程に入ります』

 

それと同時に第217パトロール艦隊と同宙域の防衛に当たってるサラミス改級6隻の砲塔が動き出す。そして躊躇無く砲撃が開始される。

 

『未確認機更に速度を上げて接近!』

 

『ミサイル発射!対空戦闘用意!』

 

ロイヤルを中心としてサラミス改級からミサイルが多数放たれる。だが、敵の進行は止まらない。

 

「ガルム2よりガルム1へ。俺が向こう側の敵の足止めを行います。今ならまだ間に合います」

 

『良いわ。行きなさい。こっちもサッサと片付けて合流する。ガルム3、行くわよ!』

 

『了解です。行くぞ残党軍め!』

 

残り3機のザクに対し攻撃を仕掛けるガルム1、3。そして此方もブースターを全開にして艦隊に向かう。

 

「ガルム2よりロイヤル!今から其方に向かう。だから沈むんじゃないぞ!」

 

『了解です。艦長、間も無く敵が対空砲の射程に入ります!』

 

『対空防御。敵を近づかせるな。意地でも叩き落とすんだ!』

 

そして未確認機がMS-21D1ドラッツェ改と言うジオン公国残党軍が作り上げたモビルスーツだと、この戦いの後から知ったのだ。

 

……

 

ドラッツェ改のパイロットは己の機体のメリットとデメリットをよく把握していた。この機体はAMBACが殆ど作動せずモビルアーマー寄りだと言う事。そして圧倒的な加速性と素性の良さを持ち合わせている事。

 

『マーク1よりマーク2。どうやら敵さんのモビルスーツ隊はお留守の様だな』

 

『味方の陽動が上手く行った様だな。なら、彼奴等は鴨同然だ。対艦戦なら此方に分が有るからな』

 

そう、彼等は対モビルスーツ戦より対艦戦に重視していた。確かにモビルスーツ相手には運動性が無い為分が悪い。ならば、いっその事対艦戦一択にしてしまえば良いのでと考えたのだ。

そして、自分達に与えられた機体がMS-21D1ドラッツェ改。MS-21Cドラッツェより性能向上を果たし、更に右腕は通常のマニュピュレーターに戻されている。その為武装はザク、リックドムとの共通で使用可能になったのだ。

自分達の機体に搭載してる武装はザクバズーカ、シールド、ビームサーベル、更にプロテクトタンク兼スラスターにはシュツルム・ファウスト4つ搭載。その火力は決して侮れる物では無い。

 

『敵艦を視認。突っ込みながら1隻は仕留めるぞ』

 

『マーク2了解。なら旗艦を潰す』

 

サラミス改級からのビームとミサイル群を回避して行く。そして、対空砲が火を噴くのと同時にザクバズーカが放たれる。

 

『ほら喰らいな。遠慮は要らんぞ』

 

2機のドラッツェ改は第217パトロール艦隊を中心とするサラミス改級に向けてザクバズーカを放ちながら接近するのだった。

 

……

 

「敵2機此方に向かってきます!」

 

「弾幕、敵2機に対し集中砲火しつつ上舵を取れ。回避任せる」

 

対空砲の弾幕が展開されたのと同時にザクバズーカからも火が吹く。

 

『モビルスーツも無い艦隊何ぞ、怖く無いんだよ!』

 

『このまま擦れ違いざまに1隻堕とす』

 

ザクバズーカの弾頭に混じる様にドラッツェ改は突っ込む。サラミス改級から放たれる弾幕に怖気る事無く的確に回避して行く。

 

「敵、弾幕を抜けてきます!」

 

「ミサイル発射!爆破設定1秒にし、艦を正面に向けるんだ!」

 

ロイヤルからミサイルが放たれる。ミサイルはドラッツェ改とロイヤルの間に爆煙が生じる。

 

『そんな子供騙し何ぞに引っかかるか。これで終わりだ!』

 

2機のドラッツェ改は躊躇無く爆煙に突っ込む。それと同時にアーヴィント少佐は指示を出す。

 

「急速前進!突撃だ!!!」

 

「り、了解」

 

そしてドラッツェ改のパイロットは信じられない物をみる。爆煙を抜けると旗艦の艦首部分がモニター一杯に映る。

 

『ッ!?』

 

余りに予想外な光景に思考が止まる。反射的に機体を動かすが最早間に合わない。ドラッツェ改の加速性の高さと運動性の低さが仇となり、コクピットに艦首の先端が突き刺さる。

 

『マーク1!貴様あああ!!!』

 

仲間の仇討ちだと言わんばかりにシュツルム・ファウストを2発発射。弾頭はロイヤルの艦橋下と右舷主砲に直撃。

そのまま通り過ぎ、後方に向けてシュツルム・ファウストを向ける。このギミックはMP-02Aオッゴの部品を流用している為、後方に向けて攻撃が可能となっている。

 

『これで堕ちろおおお!!!』

 

更にシュツルム・ファウストを発射。

 

「迎撃!撃ち落とせ!」

 

ロイヤルからの対空砲の弾幕がシュツルム・ファウストを狙う。しかし、近距離からの攻撃を迎撃するのは困難を極める。弾頭はロイヤルのエンジン部分に2発被弾。

 

「く、被害報告を知らせろ」

 

「右舷主砲大破。艦橋下、第2補助ノズル、エンジン部に被弾。更に被弾の衝撃により機関室にて火災発生。及び負傷者多数」

 

「メインエンジン停止。消火急げ。衛生班、ダメコン班も出動させるんだ」

 

「了解です」

 

ロイヤルは撃沈には至らなかったが、一時的に身動きが取れなくなる。

 

『チィ、次こそは…ッ!モビルスーツだと?』

 

マーク2がレーダー反応を確認する。それはジム・カスタムFbが高速で迫っていた。

 

『何だこの速度は?クソ、ここまでか。一度味方と合流する』

 

マーク2は冷静に状況を判断する。仲間を殺されたが、自身が死んでは仇討ちが取れなくなる。そして、何より作戦の成功を見届けなくては意味が無い。機体を回避機動を取る様に動かしながら味方の方に向かう。例えジム・カスタムFbが高機動と言え、ドラッツェ改の加速、高速性は群を抜いているのだった。



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観艦式2

「ガルム2よりロイヤル。其方は無事か?」

 

『此方ロイヤル。幾つか被弾した為、機関を一時停止してます。ですので此方は身動きが取れない状況になります』

 

「了解した。敵の足止めはする。其方も急いでくれよ」

 

ルイス少尉と通信してる間にも敵モビルスーツは迫って来る。

 

『護衛機は1機だけだ。マルク、俺に続け』

 

『了解。足が速い様だが、たった1機で来るなんて無謀な奴だ』

 

ドム2機が此方に迫って来る。お互いの武器の銃口が向かい合う。

 

「艦隊には近付かせ無い。絶対に」

 

『直ぐに片付ける!』

 

同時に銃口から火が噴く。

 

『味方機を援護。しっかり当てて行けよ。撃ち方始めえええ!』

 

味方艦隊からの艦砲、ミサイル群が敵に放たれる。多数のビームやミサイルからの弾幕を潜り抜け様とするジオン公国残党軍。そして、遂に観艦式が始まる。

地球連邦軍が威信を掛けた観艦式。そして戦いは終盤へと向かう。誰もが自身の思想を具現化させんが為に。

 

……

 

各防衛エリアにて地球連邦軍とデラーズ・フリートが交戦してる中、遂に地球連邦軍は観艦式を敢行する。最新鋭と呼べる準ペガサス級、近代化改修を施したサラミス改級、マゼラン改級。そして艦隊戦を重点に置かれて製造され、今回の観艦式にて観閲旗艦を務めるバーミンガム。そして、観艦式の中にはマゼラン改級グレイトも参加していた。

 

「間も無く観艦式が始まります」

 

「うむ。しかし残党軍が活発に動いてる様だね」クルクル

 

「はい。各防衛エリアで小規模ですが多数戦闘が勃発。また、Cエリアでも戦闘が起こってるとの事です」

 

「そうか。だが、アーヴィントなら無事だ。何故なら優秀な指揮官に成長したのだからね」フワァ

 

スタンリー・アルドリッジ准将は副長の言葉を聞きながら問題無いと言い切る。そして観艦式が始まるのと同時にグリーン・ワイアット大将の演説が始まるのだった。

 

《宇宙世紀0079、つまり先の大戦は人類にとって最悪の年であった。この困難を乗り越え、今また三年ぶりに宇宙の一大エージェント、観艦式を挙行できる事は地球圏の安定と平和を具現化したものとして慶びに堪えない》

 

演説は戦闘中の所にも伝わる。

 

「畜生!こちとら戦闘中なんだよ。呑気に演説なんてしやがって!」

 

ドムから放たれたバズーカを宙返りしながら回避。そしてそのままカウンターでロング・ライフルで反撃する。

 

『な、何ぃ!がっ!?』

 

此方の反撃に反応出来ずコクピットに直撃する。そしてパイロットはドムと共に爆散する。

 

「ガルム2よりガルム1。其方の状況は?」

 

『こっちは今艦隊と合流したわ。今から其方の援護に向かう』

 

「了解。こっちは敵さんが多いですからね。気を付けて下さいよっと!」

 

ザクの攻撃を回避しながら反撃する。しかし敵も手練ればかり。そう簡単に当たってはくれない。

 

『此方機関室。修理完了しました。但し、70%の出力で抑えて下さい』

 

「良くやった。機関始動、回避行動を取りつつ戦線に復帰せよ」

 

ロイヤルの機関も直り動き出す。しかし旗艦が動き出すのを黙って居る程ジオン公国残党軍の兵士達は甘くは無い。再び旗艦に狙いを付け始める。だが、そんな彼等にジム・カスタムFbが突っ込んで行く。

 

「俺の母艦に近づかせる訳には行かないんでな」

 

そう一言呟きながらロング・ライフルを撃つのだった。

 

……

 

《その観艦式は地球暦1341年、英仏戦争の折、英国のエドワードIII世が出撃の艦隊を自ら親閲したことに始まる》

 

『歴史ある艦隊と名を連なれるつもりか!』

 

『傲慢な連邦共め。間も無くガトー少佐が貴様等鉄槌を下す。その時迄の優越感に浸るが良い』

 

演説を聞き不快感を隠す事の無いジオン公国残党兵。その中には黒い高機動型ザクが居た。

 

「…不愉快だな」

 

ベルガー少佐は一言呟き通信を切る。そして目の前のジム改をザクマシンガンで破壊する。

 

『こ、こんな旧式にッ!?』

 

『たかがザク相手に何梃子摺ってんだよ!』

 

もう1機のジム改が90㎜ブルパップマシンガンで反撃する。しかし、その攻撃を全て紙一重で回避して行く。

 

『こ、此奴!何でこっちの攻撃が当たらないんだよ!?』

 

ジム改は後退しながらシールドを構えて防御姿勢を取る。しかし、ベルガー少佐は機体を加速させビームナギナタでシールドごとジム改を斬り裂く。ジム改のパイロットは悲鳴を上げる事なく散って行く。

ベルガー少佐はジム改を見向きもせず地球連邦艦隊に突っ込んで行く。

 

『敵1機、艦隊に近付きつつ有り』

 

『各艦、迎撃用意。砲撃で叩き潰せ』

 

サラミス改の砲塔がベルガー少佐に狙いを付ける。それに気付いたベルガー少佐はオープン通信に切り替える。

 

《来い!愚鈍なる連邦共め。この私ベルガー・ディートリッヒが相手になろう!!!》

 

更にこの通信を聞いたジオン公国残党軍の士気が盛り返す。戦いの中、グリーン・ワイアット大将の演説は続いて行くのだった。

 

……

 

スタンリー・アルドリッジ准将はグリーン・ワイアット大将の演説を聴きながら口元に笑みを浮かべていた。

 

「ふふん。観艦式が成功の暁には何が有るか判るかね?」

 

「は?そうですね。やはりジオン残党軍の殲滅が行われるかと」

 

副官の答えにやれやれと言った風な態度を取るスタンリー准将。

 

「その答えは正解では有るが少し足り無いね」クルクル

 

そしてスタンリー准将は語り出す。

 

「この観艦式には大局的な意味が有るのだよ。残党軍を殲滅した後、それは我々地球連邦軍が絶対の正義である事の証明になる」

 

艦橋から見える艦隊を見ながら語る。いや、彼の目には艦隊等は映っては居ないのだろう。

 

「残党軍は未だに過去の栄光に縋り続けてる連中に過ぎん。地球圏、引いては宇宙にとって悪となる者共に居場所等無いのだよ」フワァ

 

スタンリー准将は得意げな表情で自信溢れる言い方をする。

 

「そうですな。地球圏、引いては宇宙での秩序は我々が守る必要が有りますな」

 

「その通りさ。観艦式はジオン等と言う下らない思想に縋る連中には良い薬になる。現実を知り己の立場をしっかりと把握して貰いたいものだね」フワッサァ

 

副官、そして周りに居る士官達もスタンリー准将の言葉に頷く。地球連邦軍の将校達は今後の地球と宇宙の覇権に付いて様々な思想を持っていた。それらの殆どは傲慢とも言える物ばかり。だが、その傲慢と浅はかな思想を一瞬で消し炭にする存在が徐々に近付いていた。コンペイトウの周辺宙域の防衛網は完璧であった。しかし完璧では無かったのだ。それは現場に於けるパイロットの技量の差。数では勝ると言う油断。そして何より確固たる信念を持つ者達とそうで無い者達。これらの様々な要因が戦後最悪とも言える大惨事を迎える。

グリーン・ワイアット 大将の演説が終わり、観艦式は佳境に入って行く。そして地球連邦宇宙艦隊の各艦は自身の位置を確認して、より正確に整列して行く。その時だった。グレイトの艦内に警報が鳴る。

 

「何事かね?状況を報告せよ」

 

「はい、モビルスーツ接近。此れは…ガンダム試作2号機です!」

 

「何だと…?そんな馬鹿な!?何処からだ!!!」

 

スタンリー准将は信じられないと言う表情をしてオペレーターに怒鳴りながら問う。

 

「我が艦の正面!真っ直ぐ此方に来ます!」

 

「撃墜しろ!!!手順は全て無視して構わん!!!防衛部隊は何をしていたか!?」

 

スタンリー准将には最早形振り構う余裕は無くなっていた。そしてマゼラン改級グレイトから艦砲のビームが放たれる。

 

「ミサイルの発射はどうなってる!!!急がせろ!!!」

 

そして近辺に居る艦隊からも順次艦砲射撃が行われる。だが、ガンダム試作2号機には当たらない。

 

『この様なピケットなぞ!』

 

ガンダム試作2号機は艦砲による弾幕を抜け艦隊の間に侵入。

 

「対空砲撃てぇ!!!味方に当たっても構わん!!!」

 

だが、その間にガンダム試作2号機は艦隊の間を潜り抜けて行く。そして上昇する。ガンダム試作2号機が上昇した時、それは観艦式に参加している地球連邦宇宙艦隊の最後のチャンスでも有り最後の時でも有った。

 

『待ちに待った時が来たのだ。多くの英霊が、無駄死にで無かった事の証の為に…』

 

「落とせええぇ!!!早く落とすんだ!!!」

 

そしてガンダム試作2号機はアトミック・バズーカを展開。その間にも艦砲、対空砲が放たれる。

 

『再びジオンの理想を掲げる為に。星の屑成就の為に!』

 

ガンダム試作2号機…アナベル・ガトー少佐は観閲旗艦【バーミンガム】に照準を合わせる。

 

『ソロモンよ…私は帰って来たあああ!!!』

 

その瞬間、コンペイトウに居る地球連邦宇宙艦隊は光に照らされる。

 

「うわあああ!?!?」

 

「こ、この光はあああ!?!?」

 

グレイトの艦橋内は最早悲鳴しか無い。そんな中、スタンリー・アルドリッジ准将は呟く。

 

「アーヴィント…父を……許してくれ」

 

果たしてその呟きは油断をした結果に付いての謝罪か。それとも先に逝く事への謝罪なのか。だが、その呟きは決して息子には届く事は無かった。そして観艦式に参加して居る地球連邦宇宙艦隊は光に呑み込まれて行く。その光は各防衛エリアに展開している者達を照らして行く。

 

宇宙世紀0083.11月10日。観艦式に参加していた地球連邦宇宙艦隊は2/3以上が航行不能となる未曾有の大被害を被る。そして多数の戦死者の中にはスタンリー・アルドリッジ准将も居たのだった。




まだだ…俺は、まだ…終わる訳には( ゚∀゚)・∵. グハッ!


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エギーユ・デラーズの真の目的

俺達第217パトロール艦隊と味方艦隊はC区画での防衛戦を行なっていた。ジオン公国残党軍は手練れは多かった物の、戦力差は此方が圧倒していた。そのお陰か防衛戦は問題無く行えていた。

だが、それは突然だった。C区画に居た者達全てに対し光が照らしたのだ。その光はコンペイトウが有った場所。つまり、観艦式が行われている場所でも有る。

 

「あの光って…まさか」

 

モニター越しに見る光。誰もが戦闘を中断してその光を見る。

 

『そんな、防衛は失敗したんですか?』

 

『嘘…こんな事って』

 

俺達が核の光を見てる間に敵は撤退して行く。

 

『各機、作戦成功だ。これより帰投する』

 

『ガトー少佐はやってくれたんですね!』

 

『だから言っただろ。俺達は勝つってな』

 

意気揚々と撤退して行くジオン公国残党軍。だが彼等に対して追撃をすると言う選択肢は無かった。どの部隊も混乱が生じてしまっていた。そしてロイヤルの艦橋ではアーヴィント少佐が俯いていた。

 

「……父上」

 

誰も言葉を発する事は出来なかった。最早誰もが理解していた。スタンリー准将は観艦式に参加していた。しかし、彼に哀しみに嘆く時間は無かった。

 

『状況を!コンペイトウに居た艦隊はどうなってる!?』

 

『彼処には大量の艦隊が居たんだぞ!こ、こんな事が…』

 

『誰か指示を!俺達はどうすれば良いんだ!?』

 

地球連邦軍の将兵達は混乱の極みに陥ってしまっていた。その声はアーヴィント少佐の耳にも入って来る。そして彼は帽子のツバを掴み位置を整える。

 

「諸君!!落ち着き給え!!」

 

鶴の一声。厳格とした声が混乱して居る味方の思考を抑える。

 

「これより現宙域より離脱。コンペイトウに向かい状況の確認。及び防衛、救助に当たる。全艦コンペイトウに向け進路を取れ!」

 

その声に従う様に味方のサラミス改級がロイヤルを中心にして移動をして行く。アーヴィント少佐は機関室と連絡を取り状況を確認する。

 

「機関室、出力はどうなってる?」

 

『此方機関室。まだ70%が限界です。もう少し時間が有れば修理完了します』

 

「分かった。出来るだけ早く頼むよ」

 

落ち着いた声で言うアーヴィント少佐。だが、受話器を持つ手は震えていたのだった。

しかし、この時誰も予想して居なかったのだ。エギーユ・デラーズの真の目的を。観艦式襲撃とほぼ同じ頃、コロニー再生計画で移送中だった2基のコロニーがジオン公国残党軍シーマ艦隊により襲撃される。更に2基のコロニーを衝突させ、その反動により1基のコロニーが月への落下軌道に入って行く事になる。

 

……

 

コンペイトウの状況は最悪としか言えない状況だった。

 

『第18番ゲートは大破。及びBブロック損害大』

 

『損傷した艦はFブロックに移動せよ。繰り返すFブロックに移動せよ』

 

『此方ナルサス。死傷者多数、又艦の損傷が酷い。誰か救助を』

 

通信からは殆どの部隊は混乱が生じており、泣き声や悲鳴等も聴こえていた。俺達はコンペイトウ近く迄来たが、それ以上先に進む事が出来なかった。何故ならどの港ブロックも損傷した艦で一杯で有り、更に死傷者の数も多く混乱に拍車を掛けていた。

 

「此れが…現実なのか?」

 

この現実を受け入れられない自分が居た。何故ならモニターから見る光景は現実離れしていたのだ。マゼラン改級やサラミス改級は核の熱により溶けていたり、大量の味方艦の残骸が浮いていたからだ。

 

『中尉、俺達どうなるんですか?』

 

「今は警戒態勢を取るんだ。もし敵が此処に来たら更に味方の被害が出る。それを阻止するんだ」

 

『ですが、こんな事って…こんな事って有って良いんですか!?』

 

「落ち着けウィル少尉。お前が錯乱したら誰がこの場を守る」

 

『ッ…。だったら、中尉が守って下さいよ。中尉はエースじゃないですか!だったら中尉が守って下さいよ!?』

 

ウィル少尉は現実離れした光景に耐え切れず叫ぶ。

 

『落ち着きなさいウィル少尉!シュウ中尉だけに全てを任せるつもり?貴方も私達の仲間なのよ。私達は仲間を見捨てない』

 

『じゃあ何の為にエースが居るんですか!エースなら全部任せても良いでしょうに!』

 

その言葉を聞いてレイナ大尉は大声でウィル少尉を怒鳴る。

 

『馬鹿な事言うんじゃないわよ!!!共に戦場に居る以上絶対にそんな事は許さないわ。今貴方が混乱して現実逃避したい気持ちは分かる。だけどね、貴方以上に現実逃避したい人は居るのよ』

 

そう言うとレイナ大尉はロイヤルの方を見る。正確に言うなら艦橋の所だろう。

 

『それでも、仲間の為に現実を直視してるのよ』

 

『大尉…すみません。少し言い過ぎました』

 

『私にじゃなくてシュウ中尉に言いなさい』

 

『はい。シュウ中尉、すみませんでした』

 

「気にするな。お前の気持ちは良く分かってる」

 

ウィル少尉の気持ちは十二分に理解出来る。だから怒る気持ちは無い。俺だって今見てる光景が信じられないのだから。そして俺達パイロットは一度ロイヤルに帰還する事になる。もう何時間もコクピット内に居たと言う事をこの時知ったのだった。

俺達は一度正確な情報が知りたく、艦橋に向かう事にした。その道中、誰も喋る事は無かった。疲労、そして悪夢の様な光景。この状況下で楽しくお喋り出来る余裕は俺達には無かったのだ。艦橋に入室して状況を確認する。暫くするとコンペイトウ司令部より残存艦に対し命令が降る。それはデラーズ・フリートによる月へのコロニー落としの阻止で有った。その為、コンペイトウ司令官ステファン・ヘボン少将率いる艦隊に同行せよとの事だ。

コロニー落とし。これを聞いたアーヴィント少佐は度を超したデラーズ・フリートの所業に握り拳を作る。

 

「奴等は、一年戦争で何も学んでは無いのか。コロニー落としがどれ程罪深い悪行なのか」

 

「コロニー落としですって?そんな事許される訳無いじゃない。絶対に阻止しないと…また、あの悲劇が」

 

アーヴィント少佐は怒りで顔を歪め、レイナ大尉は嘆き悲しむ表情になる。

 

「コロニーが月に落ちたら何万人もの民間人が死んでしまいますよ!」

 

「それだけでは済まないだろうな。だがデラーズ・フリートは俺達地球連邦だけで無く、月に居る人々も敵に回す事になるんだぞ。奴等の目的が理解出来無いな。これじゃあ、唯の殺戮者だ」

 

ウィル少尉は月に居る民間人の安否を心配し、俺は今後の展開を予想するが理解出来ずにいた。

 

「全艦に通達せよ!我々第217パトロール艦隊はコロニー落とし阻止の為ステファン少将率いる艦隊に」

 

「待って下さい!これは罠の可能性が有ります!」

 

アーヴィント少佐はコロニー落とし阻止作戦に参加すると言おうとした時だった。その言葉に待ったの声を掛ける人物が居た。その人は戦術オペレーターであるルイス・エヴァンス少尉だった。

 

「罠?ルイス少尉、それはどう言う意味かね?」

 

「はい。エギーユ・デラーズがその様な単純な事をする筈が有りません」

 

「待って下さい。単純な事って言いましても、現にコンペイトウの被害は計り知れない程出てるんですよ?」

 

「まあ、待てよウィル少尉。先ずはルイス少尉の話を聞こうじゃないか。それから質問でも反論でも好きにすれば良い」

 

俺はルイス少尉の方を見て話を促す。そしてルイス少尉は自身の考察を話し始める。

 

「先ずデラーズ・フリートの目的…エギーユ・デラーズの目的と言っても良いでしょう。それは地球に対するコロニー落としだと推測出来ます」

 

地球へのコロニー落とし。この言葉を聞いた瞬間誰もが顔の表情が強張る。

 

「事の始まりはトリントン基地襲撃によりガンダム2号機と核弾頭の強奪でした。そして私達は誰もが想像し易い方に思考が向きます」

 

「それが観艦式襲撃の事か。だが連中は襲撃に成功し、更にコロニーを月に落とそうと画作している」

 

アーヴィント少佐はデラーズ・フリートの先の行動を予想して言う。だがルイス少尉は首を横に振る。

 

「コロニーは間違い無く月に向かいます。そして、そこから地球に向かうと推測出来ます。いえ、違いますね。地球への軌道進路を取ります」

 

ルイス少尉は確信した言い方だった。だが、それにレイナ大尉が待ったを掛ける。

 

「ちょっと待ちなさい。何故コロニーが地球への軌道進路になると確信出来るの?その根拠は何処に有るの?」

 

「有ります。シュウ中尉はジム・カスタムFbでの機動テストをした際に見えた筈です。私が最悪の状況に行き着いた理由を」

 

「俺が見た?機動テスト中にか?」

 

「はい。月から離れた時見えた筈です。ある装置が…」

 

俺はジム・カスタムFbの機動テスト中の事を思い出す。あの圧倒的な加速。その加速故に身体に掛かるGの重み。嘗ての愛機であった試作ジム改を思い起こす程の素晴らしい。

 

「違います。機体の性能では有りません。周りです。周りに有る施設です」

 

再び思い出す。機体では無く周辺の施設を。格納庫に隕石のクレーターが多数ある地表。そして…大きくて丸い円盤の物と付属している施設。俺もあの施設と装置が何かは知っている。地球連邦軍に所属してる以上重要施設はある程度頭の中には入れていた。だからだろう、ルイス少尉の言葉の意味を理解した瞬間…血の気が引いた。

 

「いや、そんな。だけど、月に内通者が居ると?けど…それ以外は辻褄は合うが」

 

「いえ、内通者は必要有りません。月への落下機動進路を変えるにはアレしか有りません。例え月にコロニーを落としたとしても、私達地球連邦には経済的ダメージを与えられますから」

 

それを聞いて俺は沈黙する。そんな俺に対し更に言葉を続ける。

 

「エギーユ・デラーズ。前にこの男に付いて話しましたよね。それを考えた上で何方にコロニーが行くか理解出来る筈です」

 

全てが理解した。観艦式襲撃も月へのコロニー落としも。全てフェイクだと言う事を。

 

「シュウ、月には何が有るの?教えて」

 

「レイナ大尉、月には…月には」

 

言葉が途切れてしまう。だが、何とか振り絞り言う

 

「推進用レーザー装置が…有ります」

 

その言葉を聞いた全員の表情が一瞬で変わる。そう、誰もが理解したのだ。最悪な状況に有るのだと言う事を。

 

戦いは新たな局面に入る。その戦いの果てに何が有るか。まだ、誰にも分からない。



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夢の中の贖罪

地球へのコロニー落とし。それは現時点では最悪の推測だった。だが、その可能性は非常に高いと言える状況だろう。

 

「ルイス少尉、ステファン少将に通信を繋げてくれ。至急報告したい事が有るとな」

 

「了解しました」

 

そしてステファン少将に通信を繋げる。しかし通信が繋がった時、ステファン少将では無かった。

 

『すまないがステファン少将は現在多忙な状況だ。よって私が話を聞こう』

 

通信に出たのはステファン少将の副官に当たる人物だった。しかしアーヴィント少佐は事の重大差を考え話を進める事にする。

ルイス少尉の推測である地球へのコロニー落とし。そして月と地球の間に艦隊を集結させる事。それらを全て伝える。だが、現実は非情な物で有った。

 

『はぁ、何を言うかと思えば。それは全て推測の域に過ぎん』

 

「しかしエギーユ・デラーズの事を考えれば自ずとこの答えに至ります。全艦隊とは言いません。半数、いえ、1/4の戦力を月と地球の間に配置するだけで構いません。どうかご再考をお願いします」

 

アーヴィント少佐は必至に説得を続ける。

 

『例え地球へのコロニー落としだとしてもだ。現にコロニーは月に向かってる。なら、コロニーが地球に向かう前に破壊すれば良いだけだ。今回のこの与太話は君の名前に免じて聞かなかった事にする。話は以上だ』

 

「お待ち下さ…くっ、これではコロニーを止められん」

 

通信を一方的に切られる。この危機感の違いにより地球へのコロニー落としの推測は俺達だけの話になってしまった。

 

「アーヴィント、此処で私達が止まる訳には行かないわ。私達に出来る事は有る筈よ。それに地球機動艦隊なら話を聞いてくれるかも知れない」

 

「レイナ大尉の言う通りです。今、私達は止まる訳には行きません」

 

「となると…独自の行動をすると言う訳か。それならそれで良いじゃないですか。俺達の命令違反と地球を救う事。何方を選ぶかは考えるまでも有りませんな」

 

俺達の言葉を聞きアーヴィント少佐は目を瞑る。そして数秒間沈黙した後、口を開く。

 

「確かに。シュウ中尉の言う通りだ。こんな時に僕達だけが命令違反するだけで救われる命が有るなら問題は無いか」

 

アーヴィント少佐はニヒルな笑みを浮かべる。

 

「だが、保険は必要だ。僕は全員を道連れにするつもりは無い。各艦に通達、これより第217パトロール艦隊は2つに分ける。ニコラス、アンザック、コロンブスはステファン少将の麾下の元に編入。ロイヤル、レオニードは地球への航路を取る。尚、本艦の機関が不調の為ステファン少将の艦隊に随行出来ないと一言伝えといてくれたまえ」

 

俺達はすぐさま行動を起こす。他の艦にも状況は伝わり命令違反をしたくない連中はニコラス、アンザック、コロンブスに移動する様に命令が伝わる。しかし、ロイヤルとレオニードから退艦する者は1人も出なかった。

 

「やれやれ、どいつもこいつも命令違反したいのかね?お人好しと言うか何と言うか」

 

「そう言うシュウ中尉はどうして退艦しないんですか?」

 

「そうよ。貴方もお人好しなんじゃ無い?」

 

俺の呟きにウィル少尉とレイナ大尉が笑みを浮かべながら聞いてくる。

 

「俺ぐらいのエースなら命令違反の1つや2つ有った方が格好が付くからな。それだけだよ」

 

「流石度胸はエースパイロットね。でもシュウにしては言う事がちょっとキザ臭いわよ?」

 

「これぐらいが丁度良いんですよ。それに命令違反が怖くて戦場に出れるかってんだ。どうせあの将官も後方で踏ん反り返ってただけだろうし」

 

先程のやり取りを思い出す。どう見ても目の前の状況しか見えてないのだろう。将校クラスの人間なら大局を見据える必要が有るだろうに。

 

「そうなんですか?」

 

「そうだよ。そもそも危機意識が違い過ぎる。と言うか、敵を侮り過ぎてるんだよ。観艦式襲撃を防げなかったと言うのに」

 

俺は艦内からコンペイトウの周辺を見る。未だに多数の艦隊の残骸が浮かんでる。この光景を忘れる訳には行かない。

 

「これ以上の悲劇を止める。絶対にだ」

 

俺は1人呟く。そして眼に浮かぶのは嘗ての親友である人物の姿。

 

(これ以上誰にも死んで欲しく無い。アーク…お前が居たら何と言うかな?甘いと言われるか。それとも)

 

「まーた、黄昏てる。シュウにはそう言うのは似合わないのよ!」

 

「ちょっと!人が真剣に考え事してると言うのに!貴女と言う人は!」

 

何故かレイナ大尉が無重力を利用して突っ込んでくる。アンタは子供か!

 

「流石ベテラン勢だ。自分も前を向いて行きます!」

 

そんな俺達の姿に触発されて気合いが入るウィル少尉だった。

 

……

 

『アーヴィント少佐以下乗組員に対し敬礼!どうか御武運を』

 

「其方もな。気を付けてくれたまえ」

 

俺達はお互い敬礼をする。そしてニコラス、アイザック、コロンブスはステファン少将の艦隊の後を追って行く。

 

「さて、艦の修理はどうかね?」

 

「機関の修理は完了しました。又、右舷主砲も間も無く修理完了する為航行可能との事です」

 

「そうか。整備班には無理をするなと連絡してくれ。止まって欲しい時は遠慮無く言いたまえとな」

 

「了解しました」

 

「では我々も行こうか。180度回頭、本艦はこれより地球と月の間に進路を取る」

 

ロイヤル、レオニードは地球への進路を取る為艦を動かす。この時、誰もが同じ事を思う。【コロニー落としの阻止】。例えその場に俺達しか居なくても止める。いや、止めてみせる。

そんな中、俺達パイロットは身体を休める為自室にて休息を取る。これから数時間後には戦闘になる可能性が高い。だから無理にでも休息を取る必要があるのだ。最初は寝れないと思っていた。何故ならコロニーが地球に落ちるかも知れない。そんな中で冷静に居られる筈が無いと思っていた。だが、自分の予想と違い身体は疲れており直ぐに寝入ってしまったのだった。

 

……

 

夢。今夢を見ている。とても懐かしい夢だ。

 

「おっ?どうやらアンタと同室の様だな。俺はアーク。アーク・ローダーだ。これから3年間宜しくな」

 

そう、初めてアークと会った時だ。お互い若干緊張しながらも挨拶をした。そして場面は変わる。

 

「それでさ、彼奴ナンパに成功したんだよ!然も俺を差し置いてよおおぉぉ…」

 

休みの日に別の奴とナンパしに行き失敗した時。この後アークは泣崩れ慰めるのが面倒だったのを覚えてる。

 

「じゃあな。宇宙に行っても元気でやれよ。1年後ぐらいには皆んなを呼んで同窓会でもやろうぜ!」

 

アークは地上、俺は宇宙。お互いの所属が違うから別れる。そして俺達は当時の情勢について楽観視していたのも事実だ。戦争なんて俺達には関わる事なんて無いって。だが、この1年後に戦争が起こった。

 

「此れで…俺もジオンをぶっ潰せる。仲間の仇を取れる。シュウ、やってやろうぜ!」

 

RGM-79ジムが配備された時。あの頃の陽気なアークは鳴りを潜めていた。だが、それは仕方が無い事だった。俺も自分自身の知らん間にアークみたいになっていただろう。

そして、あの場面に移る。俺がもっとしっかりしていればアークが死なずに済んだ筈だった。

 

『此奴!あの時のザクか!』

 

『ガルム3回避しなさい!』

 

黒い高機動型ザク。ベルガー・ディードリッヒが操る機体は瞬く間にアークのジムへ距離を詰めて行く。

 

「アーク…駄目だ。逃げろ、逃げるんだ!!!」

 

俺は声を出す。だが、その声は届かない。所詮は夢。俺は蚊帳の外の存在。

 

『クソッ!こっちに来るのか。なら、やってやる!お前らジオンを全員潰してやるさ!』

 

アークは逃げる事無く戦い続ける。そして相手がヒートホークを抜いた時、アークもビームサーベルを抜く。

 

『舐めるなあああ!!!ジオンの分際で!!!』

 

果敢にも立ち向かいビームサーベルを振るう。だがベルガー・ディードリッヒの方が何枚も上手だったのだ。奴はビームサーベルを持つ右手だけをヒートホークで斬り裂く。

 

『ヤークル…お前への手向けだ。受け取れ』

 

『なっ!?こんなのって!うわあああ!?』

 

アークの居るコクピットに向けてヒートホークが振るわれる。

 

「やめろおおおお!!!」

 

俺が叫んだ瞬間、場面は暗転する。暫く目を閉じてた俺は静かに目を開ける。其処には白い空間の中、地球連邦軍の制服姿の誰かが居た。その誰かは何かを言ってる。だが声は聞こえない。

 

「お前は…アークなのか?」

 

俺はその誰かに問い掛ける。だが返事は無く頷いたかどうかも分からない。それでも俺は言葉を続ける。

 

「許してくれとは言わない。だが、それでも見守っててくれ。俺達のやってる事が無駄にならない様見続けてくれ。例え…コロニーが地球に落ちようとも」

 

そして徐々に視界が歪み暗転して行く。その誰かは何も言わない。だが最後の最後に頷いた気がしたのだった。



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様々な想い

ざ…残業がヤバし…。

お前ら、止まるんじゃ…ねぇぐわっはっぷげらっぱあ!?←オーバーリアクション


宇宙世紀0083.11月11日。ロイヤル、レオニードは月と地球の間付近に到着。

同時刻、月に向かっていたコロニーはAE社との事前の裏取引により推進用レーザーがコロニーに向け照射。コロニーは推進剤点火により月の引力を抜け地球落下軌道に入る。また、ステンファン・ヘボン少将率いる艦隊の大半は推進剤不足となり追撃不可能になる。この時ステファン・ヘボン少将は自身の置かれた状況を見て「謀られた」と呟いた。

同日、地球連邦軍アルビオン隊はAE社の所有するラビアンローズと接触。ガンダム試作3号機を受領する。

宇宙世紀0083.11月12日。地球連邦軍アルビオン隊は単独行動を取り、ガンダム3号機単機にてデラーズ・フリートと交戦。コロニー落としの阻止を行うも、アクシズより譲渡されたノイエ・ジールと交戦し足止めを食らう。

同日、デラーズ・フリート所属シーマ・ガラハウ中佐が地球連邦軍上層部のコリニー派との裏取引に成功。星の屑の最終目標等を伝える。更にこの情報を元にコリニー派はジョン・コーウェン中将を更送。

地球連邦軍第1地球軌道艦隊、コロニー落下軌道上に展開開始。

 

様々な思惑、思想、そして憎悪が運命を大きく揺さぶる。その運命の荒波の中を兵士達は駆け抜ける。自分達の正義と信念を信じて。

 

宇宙世紀0083.11月12日。

ロイヤルとレオニードは月と地球の間の近くで待機していた。その間にも味方からの情報は逐一入って来くる。そして事態は最悪な状況に陥ってしまう。月へ向かっていたコロニーは突如進路を変更。月の引力を抜け地球への落下軌道へ入ったのだ。そんな中アーヴィント少佐は少しだけ物思いに耽っていた。

 

(父上。僕は必ずコロニー落としを止めてみせます。ですから、どうか僕達を見守って下さい)

 

アーヴィント少佐は目を開け目の前の状況を確認して行く。そして俺達モビルスーツパイロットはいつでも出撃出来る様にコクピット待機を命じられていた。

 

……

 

コクピットの中は静かな物だ。偶にモニターとかの機械が動く音が聞こえるくらいだ。そんな中、俺は目を瞑って考えていた。

 

(ベルガー・ディードリッヒ。奴もまた一年戦争の犠牲者なんだ。例えアークを殺した奴だとしても)

 

それと同時に思う。奴との決着の時は近いと。必ず奴は俺の前に現れる。その時、俺は戦う。そして俺は俺のやり方で戦う。

 

(アーク、見ててくれ。お前や他の人達の死を無駄にはしない。絶対にだ。だから…まだ成仏すんなよ)

 

俺は拳を握り締めながら意識を集中させるのだった。

 

……

 

(またコロニーを落とすなんて。それにアーヴィントのお父さんまで。信じられない)

 

レイナ・ラングリッジ大尉もまたコクピットの中で考えていた。

 

(シドニーの二の舞なんて絶対に許さない。それだけは阻止しないと…また、私やアーヴィントみたいな人が大勢出来てしまう)

 

彼女の母と弟は一年戦争時、ジオン公国軍が行ったブリディッシュ作戦によってオーストラリアの首都シドニーと共に消えた。突然の家族の死。自分達には関係が無いと思っていた。だが戦争は大勢の人々を巻き込んで行く。其処には慈悲も救いも無かった。

 

(絶対にコロニーを止める。同じ過ちは繰り返させない)

 

レイナ大尉は改めて決心する。コロニー落としを阻止してみせると。

 

……

 

「ベルガー少佐、遂にコロニーは地球への落下軌道へ入りました」

 

「そうか。流石はデラーズ閣下の戦術と言えよう。まさか、これ程まで連邦軍を掌で踊らさせるとは。見事としか言えんな」

 

ベルガー・ディードリッヒ少佐が率いる艦隊もデラーズ・フリートと合流を果たす。その時、彼等の近くを1機の大型のモビルアーマーが通る。

 

「あの機体は?」

 

「アクシズより譲渡された機体だと聞いてます。確かパイロットはアナベル・ガトー少佐です。ついさっき観艦式襲撃を成功させた英雄ですよ」

 

「アナベル・ガトーか。また懐かしい名だ。彼と通信を繋げれるか?」

 

「少しお待ち下さい」

 

暫く待つと通信が繋がる。

 

「久しいな、アナベル・ガトー。先ずは観艦式襲撃お見事だと言っておこう」

 

『ベルガー・ディードリッヒか。やはりお前なら我々と共に呼応してくれると信じていた』

 

「当たり前だ。例えデラーズ・フリートが無くとも私はジオン軍人としての誇りを貫かせて貰うさ」

 

ベルガーの言葉を聞きガトーは笑みを浮かべる。

 

『その言葉を聞けて安心した。これで心置き無く戦えると言えるもの』

 

だがベルガーはその言葉に待ったを掛ける。

 

「ガトー。済まないが私は別の戦いをしなければならない」

 

『別の?それは一体』

 

ガトーは少し眉を顰める。しかし、ベルガーは言葉を続ける。

 

「一年戦争の時からの因縁と言う奴だ。奴との決着を付ける事が出来るなら、私は…」

 

ベルガーの目にはガトーの姿を写しては無かった。そして独り言の様に呟く。

 

「この命散ろうとも悔いは無い」

 

そして静かに闘志を燃やす。その姿を見てガトーは静かに目を瞑る。そして一言伝える為口を開く。

 

『そうか。なら…思う存分に行くが良い。だが、死に急ぐ出ないぞ』

 

ガトーはそう言い残し通信を切る。

 

「無論だとも。このままでは死ぬに死に切れんからな」

 

ベルガー少佐は誰に言う事も無く一人呟く。そんな彼を周りの部下達は心配そうに見守るしか出来なかったのであった。

 

……

 

ロイヤルとレオニードがコロニーの地球落下軌道コースに居た頃、地球連邦軍第1地球軌道艦隊が地球上に展開しつつあった。そしてロイヤルとレオニードの位置は第1地球軌道艦隊臨時旗艦マダガスカルも把握していた。

 

「あの2隻は何処の所属の物だ?まさかコーウェンの部隊がまだ居たと言うのか。おい、あの艦と通信を繋げろ」

 

第1地球軌道艦隊司令代理のバスク・オム大佐はロイヤルとレオニードと通信を試みる。しかし同じ頃、第1地球軌道艦隊の展開を確認したアーヴィント少佐は旗艦との通信を試みていた。

 

「バスク大佐。先程の2隻のサラミス改から通信が来てます」

 

「ほう、対応は早い様だな。良いだろう。通信を繋げろ」

 

暫く待つと通信が繋がる。

 

『此方コンペイトウ所属第218パトロール艦隊旗艦ロイヤル。艦長のアーヴィント・アルドリッジ少佐です』

 

「第1地球軌道艦隊司令代理のバスク・オム大佐だ。して、要件は何だ?」

 

バスク大佐はアーヴィント少佐を見てまだ若いと感じた。それと同時に何故前以てその場所に居るのか気になっていた。何故ならデラーズ・フリートの狙いが地球へのコロニー落としだと言う情報は最新の情報だ。しかしコンペイトウ所属の連中がその情報を知ってるのは不可解なのだ。

 

『はっ。現在コロニーは地球への落下軌道に入っております。我々はコロニーへの接触を試み様としております。しかし、その為には第1地球軌道艦隊の戦力が必要です』

 

「成る程な。だが、貴様に一つ聞きたい。何故コロニーが地球へ向かうと知っていた。理由を言え」

 

『コロニーが月へ向かった時、地球への落下予測をした者がおりました。自分はその予測が非常に現実味が高い物だと考えた結果、第218パトロール艦隊を2つに分け月と地球に向かわせてました』

 

バスク大佐は手を顎に当て考える。

 

(つまり此奴等はコロニーが月へ落ちないと予測したのか?だとしたら多少は使える連中か)

 

「成る程な。貴様は随分と優秀な様だな」

 

『いえ、自分と言うより部下の戦術オペレーターの状況予測が的確で有った為です。私はその情報を元に行動を致しました。唯、此れは独自の行動になります。後で処罰は如何様に受けます』

 

アーヴィント少佐の真っ直ぐな目を見てバスク大佐は益々気を良くした。その為彼等をその場所から動かす必要が有った。

 

「そうか。だが貴様等の予測を我々も把握していたのだ。その為の秘密兵器も現在展開中だ」

 

『我々以外にも予測していた者が居たのですね。良かった』

 

その言葉を聞きアーヴィント少佐は一瞬驚いた表情をするが直ぐに安堵の表情を取る。だがそんな彼の表情を無視してバスク大佐は命令を下す。

 

「その通りだ。よって貴様等第218パトロール艦隊は第1地球軌道艦隊への臨時編入を命ずる。我々の手でコロニー落としを阻止するのだ」

 

『はっ!了解致しました。所で、秘密兵器とは一体』

 

「来れば分かる事だ。話は以上だ」

 

バスク大佐はアーヴィント少佐の話を敢えて無視する事で合流を急かすので有った。何故ならコロニーは徐々に此方に近付きつつあるからだ。

 

「【ソーラー・システムⅡ】の展開を急がせろ。コロニーの地球落下阻止は我々が行うのだ』

 

第1地球軌道艦隊の背後には多数のミラーが並べられていた。それは一年戦争時に使用されたソーラー・システムと同じ兵器が着々と準備がされていたのだった。




更新頻度落ちるかも。


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第1地球軌道艦隊の異物

3話投稿します。


ロイヤル、レオニードは第1地球軌道艦隊と合流すべく行動を開始。そして第1地球軌道艦隊が目視出来た頃、ソーラー・システムⅡがはっきりと見えたのだ。

 

「アレがソーラー・システムⅡか。確かにあの兵器ならコロニーを破壊出来るだろう」

 

アーヴィント少佐がソーラー・システムⅡを見ながら呟く。そして第1地球軌道艦隊旗艦マダガスカルから命令が下される。

 

「アーヴィント少佐、旗艦マダガスカルから通信です。ソーラー・システムⅡの防衛任務に就けとの事です」

 

「うむ。ではモビルスーツ隊出撃。これより我々はソーラー・システムⅡの防衛に専念する。ソーラー・システムⅡさえ守り切れれば我々の勝ちだ」

 

そしてラングリッジ小隊は出撃準備に入る。それと同時に格納庫内は慌ただしくなる。

 

「武装用意!急げよ!」

 

「ジム・カスタムが最初だ。次にFb行くぞ」

 

「発進5分前だ。最終チェック怠るなよ!」

 

俺も最終確認の為、整備兵と話をしていた。

 

「中尉、Fbの各関節部の強化はしてあります。それとリミッター解除は3分間のみにして下さい。この機体は元々高機動型ですので無理してリミッターを解除する必要は有りませんから」

 

「悪いな無理言って。でも全力で戦わないと行けない時は必ず来る。例え身体が壊れようともな」

 

俺は操縦レバーを握りながら言う。そんな姿を見た整備兵は何も言わなくなる。

 

「中尉…了解しました。御武運を」

 

整備兵は最後に一言言いながら敬礼する。それに対し此方も答礼する。コクピットハッチを閉めシステムを立ち上げる。徐々にコクピット内が明るくなりモニターから外の様子が見て取れる。

 

「さて、コロニー落としの阻止か。此処が正真正銘の正念場だ」

 

誰もが必死になって動いてる。コロニーを地球に落とす訳には行かない。観艦式での大被害を受け何人もの人間が死んだのだ。そこから更に大量の人々の命が脅かされ様としている。これ以上の犠牲者を出す訳には行かない。

 

『全員聞こえる?間も無く出撃よ』

 

「此方ガルム2、準備完了。いつでも行けます」

 

『ガルム3、此方も準備完了です』

 

レイナ大尉は最終確認の為通信を繋げる。

 

『コロニーを再び地球に落とす訳には行かない。これ以上の被害を私達で食い止めるのよ。そして、全員生きて祝杯を挙げましょうね』

 

「そうですね。その時は無礼講で宜しいですかね?」

 

『勿論よ。だから覚悟しときなさいよ?』

 

「だってさウィル少尉。覚悟しとけよ」

 

『ええ!自分ですか?』

 

『アンタの事に決まってるでしょう!』

 

何時ものやり取りに俺達は自然と笑顔になる。そして自分自身少し力んでいたのを自覚する。多分レイナ大尉はその辺りを気を使ってくれたのだろう。

 

(やはり隊長として尊敬しますよ)

 

絶対に口には出さない事を心の中で思う。でないとあの人調子に乗るからな。

 

『皆さん出撃準備は如何ですか?』

 

『此方ガルム1、準備良し』

 

「ガルム2、何時でもどうぞ」

 

『自分も行けます』

 

ルイス少尉から最終確認が来る。間も無く出撃だ。

 

『これより私達は第1地球軌道艦隊と共にソーラー・システムⅡの防衛に当たります。現在もコロニーは此方に接近しています。それと同時にコロニー周辺に敵艦隊を捕捉。恐らく此処が戦場となるでしょう』

 

どうやらデラーズ・フリートに取っては全て予定通りだったのだろう。だが、此方も第1地球軌道艦隊とソーラー・システムⅡで対抗策は出来ている。

 

『また、現在ソーラー・システムⅡの設置作業は進行中です。ですので敵を近寄らせない様にして下さい』

 

『了解よ。皆、聞いての通りよ。ソーラー・システムⅡを守り抜く。此れが出来なければコロニーは地球へ落ちる事になるわ』

 

『勿論です。絶対に守り切りましょう!』

 

「意地でも守って見せるさ。コロニー落としを阻止する為の最後の防波堤なんだからな」

 

俺達の後ろには地球が有る。コロニーを止めるには此処を守り切るのは絶対の条件。何が何でも守らなくてはならない。

 

「やってやるさ」

 

例え身体が壊れ様ともな。

 

『間も無く時間です。ガルム1、カタパルトへ』

 

『了解よ』

 

レイナ大尉のジム・カスタムは90㎜ガトリングガンとシールドを装備してカタパルトに立つ。

 

『進路クリア。発進どうぞ』

 

『ガルム1、レイナ・ラングリッジ大尉。ジム・カスタム出るわよ!』

 

レイナ大尉のジム・カスタムが戦場へと発進して行く。

 

『続いてガルム2、カタパルトへ』

 

「了解」

 

俺はカタパルトへジム・カスタムFbを移動させる。そしてロング・ライフルとシールドを装備する。

 

『シュウ中尉、どうかご無事で』

 

ルイス少尉の言葉にグッドサインで返事をする。するとルイス少尉は少しだけ笑顔になる。

 

『進路クリア、発進どうぞ』

 

「ガルム2、シュウ・コートニー中尉。ジム・カスタムFb行くぞ!」

 

カタパルトにより機体は漆黒の宇宙へと放り出される。それと同時にブースターを使いガルム1の後を追って行く。そして直ぐに追い付く事が出来た。

 

『相変わらずFbは速いわね。もう追い付いて来るなんて』

 

「良い機体ですよ。機動性は圧倒的ですからね。唯、此奴は一応テスト機ですけどね」

 

是非一度で良いからガンダムに乗ってみたい物だ。きっとジム・カスタムFbより更に高性能なのは間違い無いだろう。そして少し待つとウィル少尉のジム・キャノンⅡが追い付いて来た。

 

『お待たせしました。それで自分達は何処を防衛するんですか?』

 

『私達は第1地球軌道艦隊と共同して防衛をするわ。恐らく近くまで行けば指示が出される筈よ』

 

「成る程。なら自分は機体慣らしと身体を温めて起きたいので向こうまで全開で行かせて頂きます」

 

俺は機体のブースターを全開にして第1地球軌道艦隊に向かう事にしたのだった。

 

『ちょっと!もう、仕方ないな』

 

『良いんですか?』

 

『良いのよ。シュウ中尉は少しでも緊張を解して起きたいのよ。一年戦争の時も似た様な事してたし』

 

レイナ大尉は思い出す様に言う。それはかつて試作ジム改を暗礁宙域で縦横無尽に操作していたシュウの姿だった。

 

『はぁ、自分は一年戦争を経験してませんけど。シュウ中尉の機体はジムだったんですか?』

 

『違うわよ。シュウの機体は特別な機体だったんだから』

 

『特別ですか?』

 

ウィル少尉の疑問にレイナ大尉は答える。

 

『何と言ってもエースなんだからね』

 

それは我が事の様に嬉しそうに言うのだった。

 

……

 

俺は加速によるG身体で感じる瞬間が好きだ。身体が頑丈故に色々無茶な機動が出来る事に、顔も名前も知らない親に感謝している。

 

「もう少しで艦隊と接触出来るな…ん?あの機影は」

 

第1地球軌道艦隊とソーラー・システムⅡはもう目の前に居る。だがその中に場違いな機影を見つける事になる。機影の解析と識別を確認する。そして俺は驚愕してしまう。

 

「ゲルググだと?然も、ムサイまで居るじゃないか」

 

其処には第1地球軌道艦隊の中にMS-14MゲルググMとムサイ級巡洋艦が混ざっていたのだ。鹵獲したのを使用しているのだろうか?それともジオン共和国から接収したのか。

 

「何方にせよIFFは味方になってるか」

 

しかし鹵獲ならムサイ級巡洋艦にジオンのマークが有るのは可笑しな話だ。だがジオンのモビルスーツと言えども味方は味方だ。

 

「もしかしたら【アグレッサー部隊】みたいな連中かも知れんしな」

 

ふと一年戦争時にお世話になった人達を思い出す。チェイス・スカルガード教官とハインツ・ハイウェイ軍曹。当時彼等はジオン公国より地球連邦軍へ亡命した人達だ。そしてアグレッサー部隊は彼等の様に亡命して来た人達で構成されていた。

 

「いかんな。気持ちをしっかりと切り替えないと。じゃないと教官に特別メニューを貰いそうだ」

 

今はコロニー落としを阻止する事に意識を向け無くてはならない。俺は彼等を横目に見ながら第1地球軌道艦隊の間を高速で移動して行くのだった。それは彼等の様な存在を見て抱いた不信感を吹き飛ばす為に。



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蜉蝣

このシーンは書きたかった所♡


ジオン公国軍。それはスペースノイドに取って希望の光で有り、強大な力を持ち圧政をし続けて来た地球連邦軍に対し果敢に立ち向かい善戦を続けた栄光有る存在。

しかし一年戦争で地球連邦軍に敗戦。その後、地球圏でのゲリラ活動を行う組織とアクシズへ撤退をし機を熟すのを待つ組織と別れる。だが栄光あるジオン公国軍人としての強い意志と信念は簡単には揺るが無いので有る。

だが栄光と言う名の光の裏には屈辱と言う名な闇が存在していた。キシリア・ザビ少将配下、ジオン公国軍突撃機動軍海兵上陸部隊。通称【シーマ艦隊】で有る。彼女達は常に汚れ仕事をし続けていた。特に一年戦争時、ジオン公国軍が行ったブリディッシュ作戦に於いてサイド2の8バンチコロニー【アイランド・イフィッシュ】内に毒ガスで有る【G3ガス】を注入。これによりコロニー内の民間人2000万人に昇る大虐殺を行った。

 

そして栄光有るジオン公国軍に対する復讐と怨恨と言う名の牙が向けられる。

 

……

 

デラーズ・フリート旗艦グワデン

 

「ふふふ、良く此処まで来たものだ。嘗てジオン艦艇の半数を要した作戦を、儂は今此れだけの艦隊でやっておるのだ」

 

エギーユ・デラーズ中将は己の作戦が完璧と言える程に上手く行っているのに御満悦であった。地球連邦軍との圧倒的な戦力差が有るにも関わらず、自身の掌で操り続けて来れたのだ。そして星の屑は間も無く完了しようとしていた。

 

「しかし、柔らかい脇腹を突かれるとは…思いませなんだなぁ」

 

その時シーマ・ガラハウ中佐がグワデン内の艦橋に来ていた。

 

「予想外の事は起こるものだ。ガトーは良くやっている」

 

しかし、デラーズ中将は問題無いと言わんばかりで返事をする。その言葉を聞いてシーマ中佐の表情が一瞬歪む。だが、直ぐに余裕の有る表情になる。

 

「…予想外の事は起こるもの」

 

シーマは自身の持つ扇子を叩く。その瞬間、グワデンの艦橋内に銃声が響き渡る。そう、遂に栄光有るジオン公国軍に対し【蜉蝣】が羽ばたいた瞬間だった。

 

宇宙世紀0083.11月12日。コロニーは阻止限界を突破。同時にデラーズ・フリート軍、戦闘中止宣言。

 

グワデン内で起こった銃声は一瞬で止まったのである。そしてエギーユ・デラーズは己の見た物を疑う。

 

「ソーラー・システム…」

 

「そう言う訳だ。コロニー落としを防ぐ奥の手が有った訳だなぁ。ちょっと温めるだけで、ボン!ハハハハハハ!」

 

シーマ中佐はデラーズ中将の驚愕した表情を見て笑う。その態度にデラーズ中将は檄を飛ばす。

 

「貴様…それでもジオンの将か!?」

 

「あたしはこうして生きて来たんだ!!サイド3でぬくぬくと蹲る者達の顎で扱われ!!」

 

デラーズ中将の檄に対し、シーマ中佐は栄光有るジオン公国から受けた屈辱を持ってして返事をする。

 

「私は…故あれば、寝返るのさ!!!」

 

栄光、名誉、気高き。その美しい言葉とは裏腹とも言える存在が吼える。自分達が蒔いた種が復讐と怨恨が裏切りと言う形によって芽が出た瞬間で有ったのだ。

 

「哀れ…志を持たぬ者を導こうとした我が身の不覚であった」

 

「ハッ!アクシズ何て辺境に導かれた日にゃ、商売上がったりさ!」

 

デラーズ中将の言葉を鼻で笑うシーマ中佐。その時、異変を感じてグワデンまで来た存在が現れた。

 

『シーマ!?獅子身中の虫め!!!』

 

アナベル・ガトー少佐はノイエ・ジールをグワデンの艦橋前に止める。そしてエギーユ中将に対し銃口を向けるシーマ中佐を見て激昂する。だが、シーマ中佐は余裕有る態度で返事をする。

 

「ふふふ、動くなよガトー。敗軍の将は潔くな。連邦への土産を傷付けたく無いからなぁ」

 

そんな中、デラーズ中将は周りを見渡す。死んで行った戦友達。今尚戦場で戦ってる同士達。そして…目の前に居る託せる存在。デラーズ中将は口を開く。

 

「……征け、ガトーよ」

 

静かに。しかし、しっかりとした強い言葉でガトー少佐に託す。

 

『…はっ?』

 

「ガトーよ…意地を通せ。現にコロニーは有るのだ」

 

「狂ったか!何を!?」

 

デラーズ中将はガトー少佐に最後の命令を降す。唯、征けと。それに対しシーマ中佐は焦りの表情が出る。

 

「征け!儂の屍を踏み越えて!」

 

「黙れ!!!」

 

自身を顧みないデラーズ中将に対しシーマ中佐は殴る。だが、止まらない。そしてエギーユ・デラーズから徐々にオーラが出る。それは一年戦争で死んで行った同士達が集まってるかの様に。

 

「儂を宇宙の晒し者にするのか、ガトォォー!!!」

 

「馬鹿野郎!!ソーラー・システムが狙ってるんだよぉ!!じょ、冗談じゃ無いよ!?」

 

『…閣下!』

 

そのオーラに銃を向けながらも気圧されるシーマ中佐。そしてエギーユ・デラーズは言葉を口にする。誰もが口を揃え唱えた言葉。スペースノイドの為に戦い続ける事の出来る呪詛とも言える誓いの言葉。

 

【…ジーク・ジオ】

 

その瞬間、1発の銃声が艦橋に響き渡るので有った。

 

宇宙世紀0083.11月12日20時15分。シーマ・ガラハウ中佐によりエギーユ・デラーズ中将戦死。

 

名誉、栄光、憎悪、怨恨が様々な形で混ざり合う。それは人々の運命をも歪ませて行く。だが兵士達は止まる事は無い。唯、駆け抜けるのみである。

 

……

 

ロイヤル、レオニードは第1地球軌道艦隊と合流後、ソーラー・システムⅡの防衛に従事する。だが異物とも言えるシーマ艦隊が居るのは第218パトロール艦隊の中には納得出来る者は居なかった。

 

「バスク大佐、奴等は敵です!そんな連中と手を組めと言うので有りますか!」

 

アーヴィント・アルドリッジ少佐はバスク・オム大佐に通信を繋げ抗議をしていた。

 

『此れは命令だ。今やシーマ艦隊は我が軍の戦力だ。それとも…命令違反をして貴様の部隊諸共消えるか?』

 

「そ、それは…しかし!」

 

『アルドリッジ少佐。貴官等の部隊は優秀なのは理解している。私はそんな優秀な者達の将来を失わせたくは無いのだ。その事を理解した上で良く考える事だ。今はコロニー落としの阻止に全戦力が必要だと言う事もだ』

 

そして通信は切れる。アーヴィント少佐は己の無力を実感し強く握り拳を作る。

 

「…ッ!通信を送れ。レオニード、及びモビルスーツ隊に通達する。シーマ艦隊には手を出すな。此れは…命令で有る。反論は許さん…とな」

 

「艦長…了解です」

 

そして、その内容を聞いてレイナ大尉は反論をする。

 

『どう言う事なの!ちゃんと説明して!奴等は敵なのよ!此れじゃあ軍閥政治じゃない!』

 

『レイナ大尉。これはアーヴィント少佐も納得した上での命令になります』

 

『ならアーヴィント少佐に繋げて。今すぐよ』

 

レイナ大尉はルイス少尉では話にならないと判断しアーヴィント少佐に直接話しを付けようする。

 

『反論は許さないとの命令です。ですので繋げる訳には行きません』

 

『ルイス少尉!貴女だって』

 

『解ってます!此れが間違いだと言うのは!アーヴィント少佐も私達の事を思っての命令なんです。だがら…だがら!』

 

ルイス少尉も苦しい表情になる。何故ならバスク大佐とのやり取りを見聞きしてたのだから尚更だろう。

 

『…御免なさい。貴方達の事も考えてなかったわ。命令は了解よ』

 

『レイナ大尉…有難うございます。今はコロニー落としの阻止に意識を集中して下さい。私も気持ちを切り替えます』

 

『ええ。お互い頑張りましょう』

 

レイナ大尉は通信を切る。

 

『聞いての通りよ。彼等は味方として扱う事。これは命令よ』

 

『レイナ大尉はそれで良いんですか?』

 

「ウィル少尉、命令に従うんだ」

 

『シュウ中尉まで!こんなの納得出来ませんよ!』

 

ウィル少尉は敵と協力する事に納得出来ていなかった。だから心を鬼にして言い放つ。

 

「ウィル少尉、軍とはそう言うものだ。納得しないならハンガーに戻れ。中途半端な気持ちで戦場に出て来るのは迷惑だ。大人しく引っ込んでた方が助かる」

 

『…ッ……シュウ中尉。了解…しました。協力します』

 

ウィル少尉は項垂れながらも頷く。そして遂にコロニー落としの最後の攻防戦が開かれるので有った。



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決着

コロニーがかなり接近していた時、艦隊による砲撃戦とモビルスーツ隊による戦いが始まっていた。

 

「コロニーが目と鼻の先で戦う事になるなんてな!」

 

ジム・カスタムFbでザクやリック・ドムⅡに対し機動戦を仕掛けながら呟く。その機動戦に食い付き襲い掛かる2機のザクと1機リック・ドムⅡ。

 

『ガルム2援護します!』

 

ガルム3からのビームキャノンから放たれたビームはザクに直撃。ザクはビームに吹き飛ばされながら爆散して行く。そして此方も反転しながらロング・ライフルでリック・ドムⅡを狙う。リック・ドムⅡは此方の攻撃を避けながらもジャイアント・バズで反撃する。

 

「高機動型を舐めんなよ」

 

バズーカの弾頭を避ける。そんな中、もう1機のザクがリック・ドムⅡの援護に入ろうとする。だが次の瞬間90㎜弾の弾幕により爆散する。

仲間が立て続けに死んだのを見たリック・ドムⅡのパイロットは後退し様と試みる。しかしジム・カスタムFbを振り切る事が出来無い。逃げれないと悟ったのか反転してヒートサーベルを抜き此方に反転。しかしロング・ライフルの攻撃によりリック・ドムⅡは近づく事が出来ず撃墜された。

 

「ガルム1、援護感謝です」

 

『大丈夫よ。それより次来るわよ!』

 

敵のモビルスーツ隊とムサイ級巡洋艦が纏めて接近して来る。しかし此処は第1地球軌道艦隊が居る場所。彼等の上からジム改が襲い掛かる。

 

『各機、残党共をソーラー・システムに近付かせるな』

 

『了解です。残党共め。コンペイトウでは好きにやってくれたな。一人足りとも生かしては帰さんぞ!』

 

『所詮は旧式の集まりだ。纏めて殲滅するぞ!』

 

ジム改の部隊は次々とデラーズ・フリートに襲い掛かる。しかしデラーズ・フリートの部隊は歴戦の戦士が多数居る。

 

『新手が来たぞ。鏡何ぞにコロニーを止めさせるな!』

 

『後少し何だ。此処か死に場所だぞ!ジオンに栄光有れえええ!』

 

『数だけで我々を止められると思うな!』

 

味方と敵が入り混じる。そして幾つもの光が瞬く。その時、ルイス少尉から通信が来る。

 

『皆さん!前方より巨大モビルアーマー接近!かなりの速度で接近して来ます!』

 

そして奴は現れる。巨大な揚羽蝶の様な見た目。それはジオンの精神を具現化したかの様な存在。アナベル・ガトー少佐が操るノイエ・ジールは連邦軍の攻撃を物ともせず接近して来る。

 

『邪魔だああああああ!!!!!!』

 

サラミス改のメガ粒子砲をIフィールドで防ぎながら腹部のメガ・カノンを放つ。放たれたメガ粒子はサラミス改の正面を貫く。そしてサラミス改は内部で誘爆が発生して宇宙に散って行く。

 

「あの野郎!これ以上近付かせて堪るかよ!」

 

ジム・カスタムFbをノイエ・ジールの前に移動させ正面からロング・ライフルを撃ちまくる。だが、此方の攻撃を物ともせず接近して来る。

 

『私の邪魔をするなあああ!!!!!!』

 

ノイエ・ジール両肩のメガ粒子砲を放つ。其れを回避しながら攻撃を続ける。だがノイエ・ジールは此方を無視してソーラー・システムⅡに向かう。

 

「逃す訳無いだろうッ!?新手か!」

 

アラーム警報により機体を回避機動を取る。そして別方向からの攻撃を回避。其方に視線を向けると奴が此方に接近して来ていた。

 

『貴様の相手はこの私ベルガー・ディードリッヒだ!!!』

 

ザクマシンガンを放ちながら左手でビームナギナタを展開。此方もロング・ライフルを撃ちながらシールドをパージ。そしてビームサーベルを展開する。

 

「邪魔だあああ!!!」

 

『行かせん!!! 』

 

ビームサーベルとビームナギナタが打つかる。

 

「何でこんな事をする!これ以上地球に被害を出して何になる!」

 

『貴様等連邦軍がスペースノイドの完全なる独立を認めれば済む話だ!!!』

 

お互い一歩も譲らず打つかり合う。

 

「地球に居る人々は関係無いだろうが!民間人を虐殺して何になる!」

 

『地球に住む者達の欲によって私達は虐げられて来た!今更関係無い等と世迷言を言うとはな』

 

その言葉と同時に機体を押し返される。そしてザクマシンガンの銃口が此方に向く。

 

『笑止千万とはこの事だあああ!!!』

 

ザクマシンガンの攻撃を回避しながらロング・ライフルで反撃する。しかし、お互いの攻撃は当たらない。そして再び機動戦に入ろうとした時だった。光が宇宙を照らす。この時、第1地球軌道艦隊旗艦マダガスカル内ではバスク・オム大佐がソーラー・システムⅡの照射を命令していた。

 

「スペースコロニー距離4000!ソーラー・システムⅡ照射70秒前!」

 

「おおぉ…コロニーが肉眼で見えるぞ!もう良い!照射!」

 

コロニーは最早最後の防波堤の所まで来ていた。更にソーラー・システムⅡ周辺では戦闘が起こっており、バスク大佐の焦りを誘う。

 

「あ、後30秒」

 

「構わん!やれ!」

 

副官がもう少し待つ様に言うが、それを無視して照射を命令。そしてソーラー・システムⅡから光の濁流が放たれコロニーを包み込む。コロニー周辺に居たデラーズ・フリートの艦やモビルスーツが消えて行く。

誰もが戦闘を一時的に止めてコロニーを見つめる。大量の煙を上げてコロニーは光の中を突き進む。コロニーがソーラー・システムⅡの照射を浴びた時、バスク大佐は勝利を確信。口元に笑みを浮かる。

 

「大佐!コントロール艦が!」

 

「何っ!?」

 

それは最悪の知らせだった。そう、アナベル・ガトーはソーラー・システムⅡのコントロール艦の攻撃に成功。被弾しダメージを受けたコントロール艦はそれでも必死にソーラー・システムⅡを制御していた。

 

「これ以上艦が持ちません!」

 

「後少し保たせろ!」

 

「ダメです!誘爆止まりうわあああ!?!?」

 

コントロール艦の乗務員達は最後まで任務を遂行しようと戦い続けた。だが、保たなかった。コントロール艦の誘爆は止められず爆沈してしまう。それと同時にソーラー・システムⅡの制御不能になり光が止まる。そして大量の黒煙の中からスペースコロニーが姿を現わす。

 

「生きて…いたのか。ッ!何をしている!回避だ!緊急回避!」

 

バスク大佐は慌てて回避を命じる。そして第218パトロール艦隊も同じ状況に陥っていた。

 

「上に回避しろ!急げ!それから周辺の味方艦にも気を付けるんだ!対空監視を厳にせよ!」

 

ロイヤルとレオニードはまだ空間に余裕の有る上に回避して行く。しかし中央付近に居た艦隊は最悪だった。僚艦との接触が多発。それにより身動きが取れなくなる。そしてコロニーは勢いを止める事なく突っ込んで来る。

 

『コロニーが突っ込んで来るぞ!回避急げ!』

 

『クソクソ!?貴様等其処を退けえええ!!!』

 

『うわ、うわあああ!?!?』

 

何隻かのサラミス改とムサイ級巡洋艦がコロニーの接触に巻き込まれて爆沈。

 

「そんな…コロニーを止められなかったのか」

 

そしてコロニーはソーラー・システムⅡも破壊して行く。そしてコロニーの衝突により宇宙に散って行くソーラー・システムⅡの鏡。だが不思議とその光景は幻想的だった。散って行く鏡の中を突き進むコロニー。それは確固たる信念を持つ者達を象徴するかの様に見えたのだった。

 

……

 

「艦長、コロニーの地球落着時間が150分を切りました」

 

「そうか。僕達の負け…か」

 

ルイス少尉の言葉にアーヴィント少佐は帽子のツバを下げながら項垂れる。

 

「一度味方艦隊と合流する。レオニードとモビルスーツ隊にも伝えろ」

 

「了解です」

 

アーヴィント少佐はモニターで見るコロニーを見つめる。

 

「父上、申し訳有りません。ですが仇は必ず取ります」

 

誰に言うまでも無く呟く。そして戦況の確認を急ぐのだった。

 

宇宙世紀0083.11月12日22時41分。ガンダム試作3号機との戦闘によりシーマ・ガラハウ中佐戦死。また、シーマ艦隊も壊滅的な被害を受ける。

 

此処に一年戦争の呪縛から逃れられなかった者達が忌まわしき宇宙への中に散って行ったのであった。

 

……

 

コロニーがソーラー・システムⅡを破壊した時、俺達地球連邦軍の敗北が決定した。そしてロイヤルとレオニードは味方艦隊との合流をする為戦闘を行いながら航行していた。

ソーラー・システムⅡの照射が止まりコロニーが黒煙から現れた瞬間、ベルガー・ディードリッヒは用は済んだと言わんばかりに撤退して行った。俺は追撃をする暇も無く唯、呆然とコロニーと鏡を見続けていた。

 

「まだ戦い続けるのか。もう、これ以上戦い続ける理由は無いだろうに」

 

ジム・カスタムFbで機動戦を行い味方の囮になる。その隙にロイヤルとレオニードからの艦砲がデラーズ・フリートのモビルスーツを数機破壊する。

 

『私達を忘れては困るわよ!』

 

レイナ大尉の持つ90㎜ガトリングガンの弾幕は容赦無くリック・ドムⅡに襲い掛かりバラバラにして行く。

 

『ガルム2、良くやったわ。此れで味方艦隊と合流出来る。私達も撤退するわよ』

 

「了解です。ガルム3行くぞ」

 

『…了解です』

 

ウィル少尉はコロニー落としを阻止出来なかった事がショックだったのだろう。普段の明るさは鳴りを潜めてしまう。だが仕方無い事だろう。こんな状況で陽気な気分になれる訳が無い。

その時、味方部隊から救援要請が来る。ミノフスキー粒子の影響もあり通信が聞き取り難いが危機的な状況なのは理解出来た。

 

「ガルム2よりガルム1へ。味方部隊の救援に向かいます」

 

『了解よ。私達も追従するわ。ガルム3行くわよ』

 

『分かりました。これ以上犠牲者は出したく有りませんからね』

 

ジム・カスタムFbを味方部隊の居る方へ移動させる。そして徐々に通信が聞こえて来る。

 

『何故落とせん!たかがザク1機に何をしている!』

 

『此奴速いんだよ!何で旧式の癖に!来るなあああ!?』

 

『ダイム3がやられた!敵の間合いに入らせるな!落ち着いて対処がっ!?』

 

次々と状況の悪い通信が聞こえて来る。

 

『落とせ!何をしている!早く落とすんだ!』

 

その通信を最後に目の前で1つの大きな光が瞬く。恐らく味方のサラミス改が爆沈したのだろう。この時、予感はしていた。もしかしたら奴が居るのかと。レーダーに敵機を捉える。識別はMS-06Rと成っていた。

機体の加速をゆっくり止める。そして肉眼でも確認する事が出来た。黒と赤のツートンカラーの高機動型ザク。間違いなかった。ベルガー・ディードリッヒの乗る機体が此方を見ながら停止していた。

お互いに語る事は無かった。だが身体が強張るのは理解していた。その時、レイナ大尉とウィル少尉が此方に追い付く。

 

『ガルム3無事ですか!あ、あの機体は。よし、良く狙って…え?』

 

直ぐ近くに来たガルム1、3。そしてウィル少尉はビームキャノンで狙いを付けようとした時、俺は左腕に装備してるシールドで視界を防ぐ。

 

『シュウ、ダメよ。全員で掛かるのよ。貴方だけが戦ってる訳じゃ』

 

レイナ大尉は通信を繋げて来る。だが俺はその通信を途中で切る。

 

「……」

 

『……』

 

語る事は無い。だが、どちらとも無く機体を一気に加速させる。

 

「ベルガアアアアア!!!」

 

『シュウウウウウウ!!!』

 

お互いの名前を叫びながら突っ込む。そしてロング・ライフルとザクマシンガンの銃口から同時に火が噴く。そのまま接近して行き、左腕に装備してるシールドを突き出す。交差と同時に衝撃が伝わる。だが止まる事は無い。そしてAMBACとブースターを使い反転。そのまま射撃をしながら機動戦に突入して行く。

何方も相容れぬ存在。お互いが憎しみと復讐によって戦場を駆け抜ける。そして、その場に残されたのはジム・カスタムFbのシールドと高機動型ザクが装備していたゲルググのシールドが残されていた。お互いの存在を破壊するかの様に先端部分を抉り合いながら。

 

一年戦争からの因縁の戦いに間も無く決着が付こうとしていた。



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生きる者の義務

地球軌道上では幾つもの戦闘による光が瞬いていた。そして眼下にはコロニーが大気との摩擦により赤く染まって行く。そんな中、2機のモビルスーツは機動戦を行なっていた。

 

「まだ戦おうと言うのか!もうお前達は勝ったんだぞ!」

 

ロング・ライフルで狙いを付け様とする。だが、お互いに高い運動性と機動性を持つ為中々当たる事が無い。

 

『安心するが良い。私の目的は貴様だ。貴様との出会いによって私の運命は大きく変わった!』

 

ザクマシンガンを放棄してビームナギナタを展開し接近して来る高機動型ザク。それに対してビームサーベルを展開して迎え撃つ。

 

「私念とでも言うのか。だが、それはお互い様だ!俺も…親友を貴様に殺された!」

 

『私は仲間を失った!なら、この戦いには意味が有ると言える物!』

 

ビームサーベルとビームナギナタが打つかる。

 

『私の仲間に宜しく言っておいてくれ。直ぐに私も其方に向かうとな!!!』

 

ビームナギナタを回転させビームサーベルを弾き飛ばす。更にロング・ライフルの銃身も切断されてしまう。そのままビームナギナタを巧みに振るい此方に斬り掛かる。

 

『覚悟おおお!!!』

 

「やられて…堪るかあああ!!!」

 

追加ブースターを反転させ距離を取る。それでも追い縋って来る。その間にもう1本のビームサーベルを展開するが間に合わない。ビームナギナタが上段から振るわれた時、左脚を盾にする。そのままビームナギナタは左脚を切断するが、隙は出来た。頭部の60㎜バルカンでザクの頭部を狙う。モビルスーツ相手に威力は心許ないとは言え、至近距離での頭部を狙われれば破損は免れない。

 

『おのれ、やってくれるな』

 

戦いの中、ベルガーの言葉に違和感を感じていた。

 

(此奴、死ぬ気か)

 

恐らく生きて帰るつもりは無いのだろう。だが、其れだけは許す訳には行かない。死ぬ為に戦うなんて間違っている。

 

『どうした!先程から何を迷っている!私を見て戦え!!!』

 

「この…大馬鹿野郎がああああ!!!」

 

機体のリミッターを解除。そして一気に前に向かって加速させる。

 

「お前、何の為に此処まで戦って来た!何の為に仲間が死んだと思ってる!」

 

『何の為だと?それはスペースノイドの真の独立を勝ち取る為だ!』

 

「それが分かっていながら何故死のうとする!」

 

ビームサーベルを振るいベルガーに問い掛ける。

 

「お前が死んだら誰が今後を見届けるつもりだ。俺達は最後まで生きて、この戦いの結末を見届ける義務が有る!それを放棄するのは絶対に許さん!!!」

 

『何を!?世迷い言を言うな!!!』

 

ビームナギナタが右の追加ブースターを切断。それと同時にビームサーベルで高機動型ザクの右脚を斬り裂く。

 

「世迷い言では無い!死に場所求めてる奴より百万倍マシな言い分だ!」

 

『それは子供の理屈だ!』

 

「俺はその理屈は間違って無いと自信持って言える!なら問題無い!!!」

 

ジム・カスタムFbで高機動型ザクに対し体当たりをする。推力では此方が上なのか高機動型ザクを押して行く。

 

『私は仲間の為に此処まで来た。そんな私に生き恥を晒したのは貴様だ!シュウ・コートニー!!!』

 

ビームナギナタが右肩から右腕を破壊する。そのまま右脚まで一気に斬り裂かれる。

 

「生きる方が死ぬより何倍も難しいんだよ!!!死に場所に逃げようとする方が恥なんだ!!!それを理解しとけえええ!!!」

 

左手に持つビームサーベルを逆手に持ちビームナギナタを持つ右肩を貫く。そのままビームサーベルを離し奴の機体を掴む。そして至近距離から60㎜バルカンでザクの頭部を撃ちまくる。

 

「うおおおおお!!!此れで終わりだああああああ!!!」

 

『貴様ああああ!?!?』

 

そのまま高機動型ザクをムサイ級巡洋艦の残骸に打つける。そしてそのまま動きを抑える。

 

『クッ…私の負けか。なら仕留めるが良い』

 

「この頑固野郎が。言っただろうが。この戦いの最後を見届ける義務がお前には有る。例え…生き恥を晒そうともな」

 

アーク、許してくれとは言わんよ。これで良いと思ってる。例え甘い考えだとしても、地球連邦軍とジオン公国軍の立場の人達が見届ける必要が有るんだ。

 

「だから、生きてくれ。生きて…見届けてくれ。頼む」

 

今後の争いを無くす為に。奴からの返事は無い。だが、奴の息遣いは聞こえていた。

 

『…私は』

 

ベルガーが口を開いた時、再び宇宙が光に照らされる。何事かと思い其方に視線を向ける。それは半壊したソーラー・システムⅡが起動していたのだった。

 

……

 

ソーラー・システムⅡのコントロール艦が破壊され、代わりに旗艦マダガスカルが制御を行なっていた。そして、ソーラー・システムⅡの光は射線上に居る多数の敵残存艦隊が存在していた。だが同時に味方艦隊も存在していた。

 

「お待ち下さい!まだ我が艦隊の先鋒が焦点前に!」

 

副官がバスク・オム大佐の腕を掴み静止させようとする。だが、バスク大佐は目の前に居る敵を掃討する事しか頭になかった。

 

「大佐ぁ!」

 

ジオンに対する憎悪と嫌悪が光となって容赦無く放たれる。例え味方が存在しようとしても、ジオンに死あるのみと言わんばかりに。

 

……

 

ソーラー・システムⅡからの光を見た時、俺は状況が理解出来なかった。周りには味方艦隊は存在しているし撤退信号も出てはいなかったのだ。

 

「な、何で…?」

 

身体が動かなかった。此処には俺達が居る。味方が居るんだと言う考えが頭の中に一杯だった。だが光は此方に容赦無く迫る。

 

「ッ!?何だあああ!?」

 

突然機体が動き出す。いや奴が、ベルガー・ディードリッヒがジム・カスタムFbを押しながら動いていた。だが、間に合わない。

光の濁流は俺達を包み込む。モニターには黒い高機動型ザク以外白く映る。そして、更に衝撃が伝わる。それは黒い高機動型ザクはジム・カスタムFbを蹴り飛ばしたので有った。その結果、ジム・カスタムFbは光の濁流から幸運にも脱出出来た。

だが、慣性の法則によりベルガーの乗る黒い高機動型ザクは光の中に戻って行く。

 

『お前なら………の、真実を…』

 

その通信を最後にベルガー・ディードリッヒは光の中に消えて行ったので有った。

 

……

 

気が付けば周りは静かな状態だった。モニターは砂嵐状態が酷く外の様子は分からない。俺はコクピットハッチを開け外の様子を見てみる。

外に出ると周囲には敵も味方も居ない。そして、ベルガー・ディードリッヒの操る黒い高機動型ザクも居ない。そう、誰も居ないのだ。

 

「何だよ…コレ。一体どうして」

 

俺は一人呟く。余りにも理不尽な状況に声に出す。そして何より味方に殺されかけ、敵に命を救われた状況。余りに矛盾に満ちた状況に感情が纏まら無い。

 

「こんな…こんな事って……」

 

だから泣くしか出来なかった。恥も外聞も無く唯泣き叫ぶ。後少しで分かり合えると思っていた。お互いの思いを全てぶつけた。だからこそ、こんな形で終わってしまった事への虚しさが胸の中に残っていなかった。

 

宇宙世紀0083.11月13日0時34分。コロニーは北米大陸の穀倉地帯に落着。公式発表により事故による落下となる。

同日0時34分。地球連邦軍デラーズ・フリート追撃戦開始。

 

あの後、レイナ大尉とウィル少尉によって回収されロイヤルに戻る事になった。だがジム・カスタムFbは大破になってしまった為、元々搭乗していた予備機のジム改に乗る事になっていた。

 

『シュウ、貴方大丈夫なの?顔色かなり悪いわよ?』

 

『そうですよ。無理しない方が良いのでは?』

 

レイナ大尉とウィル少尉は心配そうに此方を見てくる。だが無理も無いだろう。機体は大破で俺の顔色も酷い物だ。だが、今は理由を説明する訳には行かない。

 

「心配してくれるのは有り難いけど大丈夫だよ。それより追撃戦とは言え気を抜くなよ。連中は背水の陣でやって来るからな」

 

ジム改を起動させながら返事をする。しかし未だに俺は戦闘になる事に集中出来ていなかった。それでも戦場に行こうとするのは何故だろうか。

 

「自暴自棄になってるのか?柄じゃ無いんだがな」

 

そして出撃準備が完了する。

 

『シュウ中尉、余り無理はしない様にお気を付け下さい』

 

「ああ、お互いにね」

 

『ガルム2、カタパルトへどうぞ』

 

機体をカタパルトへ移動させる。武装はジム・ライフルとシールドを装備する。しかし、ルイス少尉からも心配されてる所を見るとよっぽど酷いのだろう。だが、此処で逃げ出す訳には行かない。この戦いに参加した時点で逃げる訳には行かない。

 

『進路クリア。発進どうぞ』

 

「ガルム2、シュウ・コートニー中尉。ジム改出るぞ」

 

俺は再び宇宙と言う名の戦場へ飛び立つ。これ以上の争いを終わらせる為に。それでもふと思ってしまう。自分のやってる事に意味は有るのか?そして…地球連邦軍は信用出来るのかと。

 

(いかんな。集中しないと)

 

そして他の味方モビルスーツ部隊と共にデラーズ・フリート追撃戦を開始する。

 

《デラーズ・フリート残存の部隊に告ぐ。最早、君達に戻るべき場所は無い。速やかに降伏せよ。君達には既に戦闘力と呼べる物が無いと言う事を承知している。無駄死にはするな!》

 

地球連邦軍からデラーズ・フリート残存部隊に対して降伏勧告が出される。だが降伏勧告を受け入れる者は居なかった。

 

「アーヴィント少佐、攻撃命令来ました」

 

「うむ。では攻撃始め!敵を殲滅せよ!」バッ

 

右腕を前に突き出し攻撃命令を下すアーヴィント少佐。それに続く様に周りのサラミス改、マゼラン改が砲撃を開始する。

現在の地球連邦軍の戦力は第1地球軌道艦隊とコンペイトウ所属の艦隊で構成されている。それに対しデラーズ・フリート残存部隊は最早風前の灯火で有った。

地球連邦軍の圧倒的な艦砲により次々と落とされるデラーズ・フリート部隊。ムサイ級巡洋艦は集中砲撃を受け次々と爆沈して行く。

 

『おいおい、艦砲だけで終わらせんなよ!俺達の分も残しといてくれよな』

 

『ギャハハ!言えてるぜ。おっ?彼処の瀕死のザクをやろうぜ!集中攻撃だ!』

 

『最初の降伏勧告を無視したんだ。遠慮は要らんぞ。殲滅するぞ!1匹足りとも生かして帰すな!』

 

デラーズ・フリートのザクやリック・ドムⅡに次々と群がる地球連邦軍のジム改。それでも針の穴の隙間を縫って来る奴は居る。1機のザクが此方に接近して来る。

 

『ターゲットロック。発射!』

 

ガルム3のビームキャノンが放たれる。だがザクは回避し此方に接近。

 

『良くやるわね。なら此れで終わりよ!』

 

ガルム1からの90㎜ガトリングガンの弾幕も襲い掛かる。だが、その弾幕も味方のジム改を使い途切れさせる様に回避して行く。

 

『彼奴!味方を盾にしてるつもり?』

 

そんな中、俺はザクの進行上に待機する。そしてジム・ライフルを構えて狙う。だが引き金を引く指が重かった。

 

「此方は地球連邦軍だ。其処のザク降伏しろ」

 

咄嗟にオープン通信を繋げてザクに降伏勧告をする。だがザクはそんな物無用と言わんばかりにザクマシンガンを撃ってくる。それに対し回避しながら再び狙う。

 

(仕方ない。なら腕を落とす)

 

ジム・ライフルでザクマシンガンを持つ腕を狙い撃つ。狙い通り腕を破壊出来たが止まる事は無い。それどころか左手にヒートホークを装備し此方に突っ込んで来る。

 

『今更情けを掛けたつもりか!傲慢な連邦らしいやり方だな!』

 

「そんなつもりは無い!もう争う必要が無いだけだ!」

 

ヒートホークの攻撃をシールドで防ぐ。だがザクはヒートホークを手放し此方の右腕を掴み更に突っ込んで来る。

 

『巫山戯るな!貴様等との戦いが終わる訳が無いだろう!だが覚えておけ。我々の死は決して無駄死にはならないと言う事をな!!!』

 

「だから!簡単に死のうとするな!」

 

咄嗟に60㎜バルカンでザクの頭部を撃つ。そして右足をザクの股に入れて蹴り飛ばす。ザクはそのまま宇宙に舞う。

 

『貴様!クソッタレがあああ!?!?』

 

その瞬間、艦隊からの艦砲とミサイルがザクに襲い掛かりあっという間に爆散する。

 

「ま、まさか…俺は」

 

薄々勘付いていた。あの時、引き金を引くより降伏勧告をした。そして、コクピットより腕を狙った事。俺は、もう…。

 

(戦えない…のか)

 

ザクが爆散した場所を見続けて思う。もう、俺は戦場に出れないと言う事を。

 

宇宙世紀0083.1時5分。アクシズ先遣艦隊撤収。

同日1時19分。アナベル・ガトー少佐は味方の退路の確保の為奮戦するも、多数の攻撃を受け最後にサラミス改に体当たりを行い壮絶な戦死を遂げる。

 

ロイヤルの艦橋内では戦況が順調に進んでいる事が良く判っていた。先程巨大モビルアーマーが味方のサラミス改に体当たりした為、その穴埋めをする為にレオニードと共に移動させていた。

 

「艦長、更に敵モビルスーツが接近。此方に来ます」

 

「やはりこの場所に来るか。レオニード、モビルスーツ部隊に通達。この場所を徹底的に死守するとな。敵モビルスーツに対しミサイル発射!」

 

ロイヤル、レオニードからミサイルが大量に発射される。アナベル・ガトー少佐が開けた穴は地球連邦軍の圧倒的な戦力の前に徐々に埋められて行く。

ザク、リック・ドムⅡ、そしてドラッツェが果敢に弾幕を抜け様とするが次々と潰されて行く。だが、その中にある機体が居た。

 

『あの艦は!?彼奴の仇取らせて貰うぞ!』

 

其処にはMS-21D1ドラッツェ改が居た。それは観艦式防衛戦にて僚機をロイヤルの艦首により串刺しにされたのだ。

 

「敵モビルスーツ、スピードを上げて接近しつつ有ります!」

 

「集中攻撃!撃ち落とせ!」

 

ロイヤル、レオニードから艦砲が放たれる。また他のサラミス改からも次々と艦砲やミサイルが撃ち込まれる。だが止まらない。それらの攻撃を紙一重で回避しながらロイヤルに迫る。

 

『うおおおおお!!!!!!』

 

ドラッツェ改のパイロットは雄叫びを上げる。モビルスーツ隊も攻撃を仕掛けるが右腕を吹き飛ばすに止まってしまう。

 

「敵機更に接近!」

 

「回避機動を取り対空防御!」

 

ロイヤルから対空砲の弾幕がドラッツェ改に集中する。だが止まらない。その時だった。レオニードが突如ロイヤルとドラッツェ改の間に入る。レオニードは艦砲とミサイル、更に対空砲を全てドラッツェ改に向け放つ。

 

『ジイイイク・ジオオオオオン!!!!!!』

 

レオニードの単装砲がドラッツェ改のブースターを吹き飛ばす。だが、ドラッツェ改は止まる事無くレオニードに体当たりに成功。レオニードの右舷ブロックに被害が出てしまう。

 

「レオニード被弾!右舷ブロックに損傷を確認!」

 

「モビルスーツ隊はレオニードを援護!レオニード無事か!」

 

だが、まだ悲劇は止まらない。アナベル・ガトーが作った穴。そしてドラッツェ改の必死の体当たり。それに触発されたデラーズ・フリート残存部隊。レオニードに対し次々と敵モビルスーツが迫る。無論味方部隊も必死の迎撃を行う。

ガルム1の弾幕にガルム3のビームキャノン。だが、これらの攻撃を掻い潜り次々とレオニードに攻撃が着弾。そして、最悪な事にドラッツェ改の体当たりで出来た損壊部分にリック・ドムⅡが放ったジャイアントバズの攻撃が直撃。その攻撃は機関部にも被害が出てしまいレオニードの内部で爆発が起きる。

 

「レオニード内部にて誘爆多発!このままでは!」

 

『アーヴィント艦長、本艦はもう駄目です。どうか…ご健闘を』

 

「くっ!?まだ諦めるな!!」

 

だが、レオニードからの通信が途切れるのと同時にレオニードから爆発が多発。そして遂に爆沈してしまうのだった。



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逃げる者の代償

宇宙世紀0083.11月13日。

 

この日、デラーズ紛争と呼ばれる一連の戦いが一区切り付いた。俺は敵を1機も撃破する事なく帰還した。そして僚艦のレオニードが爆沈した事をこの時知ったのだった。

俺はコクピットの中で自身の手を見つめる。その手は震えており最早満足に戦える物とは言えなかった。その原因が何なのかは何と無く理解出来る。あの時、ベルガー・ディードリッヒと分かり合えたかも知れなかった事。味方から殺されかけ、敵に命を救われた事。この葛藤や矛盾が今の俺の状態なのだろう。

 

「俺は…一体どうすれば良いんだ?」

 

コクピットの中で誰に言うまでも無く口にする。答えなんて返ってこない。俺は暫く自身の手を見続けるしか出来なかったのだった。

 

宇宙世紀0083.11月23日。デラーズ紛争に絡んだ軍事裁判開廷。これによりアルビオン艦長エイパー・シナプス大佐は死刑。コウ・ウラキ少尉は懲役1年となる。

宇宙世紀0083.12月3日。AE社のオリハザン常務の変死体がフォン・ブラウン支社にて見つかる。

 

そして宇宙世紀0083.12月4日。この日、地球連邦軍とジオン残党軍にとって大きな出来事が起きる。俺達ラングリッジ小隊はロイヤルの艦橋に来ていた。何故なら地球連邦軍のバスク・オム大佐が地球連邦軍兵士達に対して演説を行うのだからだ。

 

「一体どんな演説をするんだろうな。やっぱりコロニー落としによる被害に関する事なのかな?」

 

「それは分からないわ。でも私達地球連邦軍全員に通達する程なんだから重大発表なのは間違いないわね」

 

「一体どんな内容になるか見当も付きませんよ」

 

「うーむ、ルイス少尉とアーヴィント少佐は予想出来ます?」

 

俺達の頭だけでは予想出来ないので、より賢いルイス少尉とアーヴィント少佐に聞いてみる。

 

「そうですね。恐らく組織改編の内容になるのでは無いでしょうか。今回の件で地球連邦軍の悪い部分は出て来たと思いますし」

 

「僕もルイス少尉に同意だね。それに今後同じ事を防ぐ必要も有るからね。その辺りの組織編成もされるかも知れないね」クルクル

 

流石頭の良い人達の見解は違う。もし2人の意見が当たっていた場合、地球連邦軍内部はかなり荒れるかも知れないな。それから暫く待つとモニターが変わる。そして遂にバスク・オム大佐が姿を現わし演説を始める。

 

《省みろ!今回の事件は地球圏の静謐を夢想した、一部の楽観論者が招いたのだ!》

 

それはデラーズ紛争を引き起こしたジオン残党軍と一部地球連邦軍上層部に対する宣言であった。

 

《デラーズフリートの決起などはその具体的一例にすぎぬ。また三日前、北米大陸の穀倉地帯に大打撃を与えたスペースコロニーの落下事故を見るまでも無く、我々の地球は絶えず様々な危機に晒されているのだ!》

 

誰もが真剣にバスク大佐の演説を聞いている。その表情に疑いの文字は無い。

 

《地球、この宇宙のシンボルを忽せにしない為にも我々は誕生した。

地球、真の力を再びこの手に取り戻す為ティターンズは立つのだ!》

 

それはジャミトフ・ハイマン准将の提唱により地球連邦軍ティターンズの結成の宣言だった。更にティターンズの主目的はジオン公国残党狩りを行うと言うのだ。

 

「素晴らしい。ティターンズ…この組織が有れば地球圏の平和を維持出来る。いや、それ以上の発展も可能な筈だ!」フワッサァ

 

アーヴィント少佐は興奮した様子でバスク大佐の演説を褒め称える。

 

「凄い。ティターンズが有ればジオン残党軍の暴走を止めれますね!」

 

「そうよ!これは私達がティターンズに入るのは決定ね!」

 

「レイナ大尉の言う通りですね。あ、自分転属願いの用意しときますね」

 

誰もがティターンズに対し好意的だった。だが、それは仕方ない事だろう。何故なら2度も地球にコロニー落としをされた上、コンペイトウでの核の使用。これにより多くの地球連邦軍将兵のジオン残党軍に対する憎悪は更に膨れ上がったのだ。

 

(何の為に俺達は戦ったんだ。死んだ連中は何の為に死んだ!彼奴は…何の為に死んだんだ!?)

 

だが、俺だけが違った。俺以外の連中はティターンズに入るのを決めていたのだ。

 

「ほら、シュウの分よ。アンタもティターンズに入るでしょう?」

 

レイナ大尉が俺に転属願いの用紙を渡して来る。

 

「シュウ中尉がティターンズに入ったらエリート街道は間違い有りませんね。何せエースパイロットであり高機動のジム・カスタムFbを自由自在に操作してましたし」

 

「それはそうだろう。一年戦争であんなピーキーな機体を操作してたのだからね」フサァ

 

「自分も中尉の様なエースパイロットに成りたいですよ!」

 

誰もが笑顔で俺を褒め称える。そしてレイナ大尉の持つ用紙に視線を向ける。

 

「俺、俺は…」

 

だが、俺は言葉が出なかった。この転属願いの用紙を受け取れば、それは地球連邦軍とジオン残党軍との争いの深みに嵌って行くだろう。

 

「……すまない。俺は無理だ」

 

そう呟いた瞬間、周りが一瞬で静かになる。

 

「え…シュウ?何で」

 

「俺は…もう、戦えないんだ。戦闘中で手の震えが止まらないんだ。だから、ごめん」

 

嘘は付いてない。実際戦えないのは事実だからだ。だが、根本の理由を言うのは駄目だ。それは地球連邦軍への不信感を暴露する事になる。

 

「なら、一度軍医に診て貰うと言いだろう。それと長期休暇も必要かも知れんな。恐らくシュウ中尉は疲れてしまってるのだろうな」クルクル

 

「確かに。シュウ中尉は私達の為に囮を何度もこなしてましたからね。一度ゆっくり休んだ方が良いですよ」

 

アーヴィント少佐とルイス少尉は此方を心配そうに見ながら言う。だが違うんだ。そうじゃないんだ。

 

「無理だ。本当に無理なんだ。だから、俺はティターンズには入らない。いや、入れない」

 

俺は静かに拒絶する。

 

「そんな。此処まで来て諦めないでよ。ほら、リハビリとかなら付き合うわよ?私達仲間じゃない!」

 

「今此処でシュウ中尉を見捨てる事なんて出来ませんよ!自分も付き合います!」

 

だが仲間達は諦めるなと言いながら励ます。そんな彼等を見て俺は僅かな恐怖を覚える。何故ならジオン残党軍と言え人間だ。同じ人間なのだ。それなのに、人間狩りを率先してやる組織に入ろうとしている。

 

(此れは罪だ。俺達が作り上げだ罪其の物なんだ。だから何時迄も戦いが終わらないんだ)

 

最初から間違ってたんだ。軍に入った事自体が間違いだったんだ。極め付きには味方に殺されかけ、敵に命を救われる。一体なんの冗談だよ。

俺は一歩後退りする。そして再度伝える。

 

「気持ちは有り難いけど。本当に無理なんだ。アーヴィント少佐、出来れば後方任務か辺境のパトロール任務が出来る部隊への転属をお願いします」

 

「シュウ中尉、今ティターンズには君の様なエースが必要だ。考え直すんだ」

 

「いえ、考えた結果です。それでは失礼します」

 

「あ、待って!」

 

俺はレイナ大尉の制止を振り切り自室に逃げ込む。戦場から逃げ、仲間達からも逃げる。挙句の果てに自身がベルガー・ディードリッヒに言った言葉からも逃げた。

 

(結末を見届ける度胸も無い奴がエースな訳無いな。全く、滑稽だよ)

 

自虐的になりながら自室に戻って行く。だが、突然腕を掴まれる。誰だと思い振り返るとレイナ大尉が居た。

 

「ねえ、本当にティターンズに入らないの?このままだと、私達離れ離れになるのよ?」

 

「レイナ大尉。仕方無いですよ。満足に戦えないんです。仲間にリスクを負わせたくは無い」

 

「そんな事無いわよ。仲間だからこそ見捨てる事なんて出来無いわよ」

 

レイナ大尉の真剣な眼差しを真正面から受ける。だが、俺はそれに耐え切れず視線を逸らす。

 

「それに未だに残党軍は存在している。然も一般市民を大勢巻き込む事を厭わない連中よ。だから私達で守りたいのよ。お願い、力を貸して」

 

そう言ってレイナ大尉は俺の手を握る。しかし、俺は首を横に振った。

 

「なら味方に殺されかけ、敵に救われた俺はどうすれば良いのですか?」

 

「…え?」

 

「鮮明に覚えてますよ。ソーラー・システムⅡが俺の居る場所に放たれたのを。退避命令は来てなかった事も。そして敵味方を関係無く消した事も」

 

俺はレイナ大尉に対し言う。尤も、こんな事を言っても意味は無いのは理解していた。

 

「それは、何かの間違いだったとか?それにミノフスキー粒子が濃かったと思うし」

 

「味方の艦隊と部隊を巻き込む程ジオンを憎みますか。ですけどね、その一度の攻撃で俺は死に掛けた。そんな中、俺は敵に命を救われたんだ」

 

それを言った瞬間、レイナ大尉の表情が硬くなる。だが思った通りだった。

 

「今、自分は味方を信じられません。ですので…すいません」

 

俺はレイナ大尉の手を振り解く。そのまま再び自室に逃げる。そして、レイナ大尉は追い掛けてこなかった。

 

……

 

宇宙世紀0084.1月15日。

 

俺はサラミス改級ロイヤルからルナツー行きのコロンブス輸送艦に乗り込もうとしていた。あの後何度か引き止められかけたが、遂に我慢出来ず味方に殺されかけた事による不信感を暴露。その結果、誰もが腫れ物扱いをする事になった。だが、それは仕方ない事だろう。何故ならジオン残党軍は仲間を大勢殺した悪だ。なら地球連邦軍と言う正義が悪党染みた事をする筈が無いと思う。それに自分達はこれからティターンズに入るのだから尚更だろう。

 

「しかし、寂しいく無いと言ったら嘘だがな」

 

手荷物を持ちながらコロンブス級輸送艦に向かう。序でにロイヤルから乗機であるRGM-79Cジム改も運び込まれる。何故ならこのジム改は俺用に関節部などを改修されている。そんな機体を残しても仕方無いと言う訳だ。

俺は後ろを振り返る事無くコロンブスに向かって行く。その時だった。

 

「ちょっと、背中が凄く寂れているわよ?」

 

「…実際寂れてるんですから仕方ないですよ。レイナ大尉」

 

俺は背後を振り返る。其処にはレイナ・ラングリッジ大尉が此方にゆっくりと近付いていた。

 

「全く、あんな事皆んなの前で言うから避けられちゃうのよ?」

 

「反省もしてますし後悔もしてますよ。正直言うつもりは無かったんですけどね」

 

下手に敵を作る必要は無い。だが、それでも我慢出来無かった。何方かが悪では無い。お互いに悪も正義も無い。だが、それを理解してる連中は殆ど居ない。

 

「それで、何処に行くの?」

 

「ルナツー方面軍に成ります。其処で後方任務かパトロール任務の何方かになるかと」

 

「そっか」

 

それからお互い静かになる。最初に口を開けたのはレイナ大尉だった。

 

「ねぇ、約束して。もう戦場に出ないって」

 

その言葉を言った時のレイナ大尉の表情はとても儚く、今にも泣き崩れそうな表情だった。だからだろう。俺は彼女が求める答えを言う事にした。

 

「大丈夫ですよ。自分の此れからの任務はコクピットシートを温める仕事になりますからね。戦場には出たくても出ませんよ」

 

明るく、陽気に答える。すると先程までの儚さは無くなり笑顔になる。

 

「ふふ、何よそれ。でも、それなら安心ね」

 

「何方かと言うとティターンズの方が危険は多いでしょうに」

 

暫く話をしているとルナツー行きの時間が来る。どうやら此処までの様だ。

 

「それじゃあ、元気でね。無茶しちゃ駄目よ?」

 

「そちらこそ、お気を付けて」

 

お互い敬礼をする。俺は敬礼をしながら思う。きっと俺達は会う事は無いだろうと。だが、最初に逃げたのは俺だ。自分で蒔いた種なら責任を持つべきだ。

何方とも言わず敬礼を止める。そして俺はコロンブス級輸送艦に向かう。背後からの視線を受けながらも振り返る事は無い。

 

(そう言えば、結局自分の思いを伝えて無かったなぁ。俺ってヘタレだなぁ)

 

内心自分のヘタレっぷりに呆れながらコロンブス級輸送艦に乗り込むのだった。

 

……

 

宇宙世紀0084.1月28日。地球連邦軍シュウ・コートニー中尉、ルナツー方面軍第031パトロール部隊に配属される。

宇宙世紀0084.3月10日。デラーズ・フリートによるコロニー落としの真相に関わる【ガンダム開発計画】が公式記録より抹消される。これによりコウ・ウラキ少尉の罪状も消える。

又、ガンダム開発計画に関わっていたRGM-79N-Fb高機動型ジム・カスタムの戦闘記録や搭乗者のデータ等も抹消。デラーズ紛争での戦闘データは全てRGM-79Cジム改に変更される。

 

デラーズ紛争。この一連の戦いでの結果はデラーズ・フリートの壊滅とティターンズ設立と言う形で幕を閉じる。皮肉にも彼等の願いは成就されず、地球連邦軍の一部上層部の手により歪められた形で利用される形になる。

コロニーが地球へと落ちる時、それは漢達の魂の輝きだった。様々な策略、謀略、信念、栄光、憎悪、屈辱の中を駆け抜けた者達。歴史に名が残らなくとも、我々の魂に刻み付けよう。

 

デラーズ紛争で散って行った全ての英霊達に対し敬意を持って。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

残る者、去る者と別れる。それは運命と言えるだろう。だが【一年戦争の魔物】は逃げる者を許しはしない。何故なら、人々がそれを願っているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宇宙世紀0085.2月11日。シュウ・コートニー大尉、戦死と断定。

 

戦いは終わらない。終わりを望む者達が現れない限り永遠に続くのだから。




区切りが良い為一度更新を止めます。理由は活動報告に有ります。まあ、またひょっこり現れるのでその時は温かく迎えて下さいw
それでは(´∀`)


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昇進の意味

ひょっこり出します(^^)


宇宙世紀0084.1月28日。

 

嘗ての仲間達と別れ、俺は地球連邦宇宙軍の宇宙要塞ルナツーに到着した。勿論後悔の感情が無いと言ったら嘘になる。だが、戦場と言う場所から離れる事が出来た事に安堵してるのも事実だった。

俺は挨拶の為ルナツーの司令室へと行く事にした。

 

「失礼します。シュウ・コートニー中尉です」

 

「来たか。入りたまえ」

 

司令官から許可が降りた為、入室する。すると早速盛大な歓迎を受ける事になる。司令官は徐に階級章を出し此方に渡す。

 

「シュウ・コートニー中尉。貴官は本日付で大尉になる」

 

「…は?」

 

その時、俺は理解出来なかった。何故昇進したのかを。だが直ぐに理解出来た。俺は司令官を睨みながら言う。

 

「口止めですか」

 

「君がどう思おうとも構わない。だが、今の地球連邦軍は非常に繊細な時期だ。そんな中、無闇に刺激を与えない事だ。それが君の為でもあるのだよ。それから所属部隊は第031パトロール部隊だ」

 

司令官の警告と素っ気なさ。恐らく厄介者には関わりたく無いのだろう。

 

「了解しました。それでは、失礼します」

 

俺は司令室を後にする。着任早々に素晴らしい歓迎に涙が出そうだ。

 

「はぁ、仕方無いか。自分で選んだ事だ」

 

溜息を一つ吐きながら与えられた部屋に向かうのだった。

 

宇宙世紀0084.3月1日。

 

宇宙要塞ルナツーに着任し1ヶ月程が経過した。そんな中、俺はルナツー方面軍第031パトロール部隊の配属になり任務をこなしていた。

パトロール部隊なだけ有って基本はコロニー間の経路やデブリ宙域の警戒等、所謂現場での任務が主となっている。そして時々海賊と化した武力勢力や反地球連邦勢力との小競り合いが起こる訳だ。以前所属して居た所では、デラーズ紛争が起こる前にも小規模ながらジオン残党軍との戦闘も有った。今思えば中々ハードなパトロール部隊だっただろう。そんな中、第031パトロール部隊は少々特殊なパトロール任務を遂行していた。

先ず敵性勢力との会敵は無い。いや、本当に無いのだ。理由としては別のパトロール部隊が通った経路を辿る様に行くのだ。そしてルナツーでの待機日時が異様に長い。これは第031パトロール部隊が重要な戦力だからでは無い。では何故第031パトロール部隊がこの様な扱いを受けるのか。

その理由は簡単だ。所謂厄介者、問題児、スパイ疑惑等と言った連中で構成されてるのだ。更にティターンズの入門試験に落ちた者も居るとか。因みにその中には心折れた者も付属さている。取り分けスパイ疑惑の影響が大きく、本当に仕事が与えられ無いのだ。然も最上階級者は大尉しかいない。つまり…俺しか居ない訳だ。

そして第031パトロール部隊は通称【掃溜部隊】とも呼ばれてる。因みに区別する方法が031の最初に有る0の数字が付いてるからだ。何故なら殆どの部隊には最初に0とは付かないからだ。

そんな中、俺は今日もパトロール任務を遂行するのだった。

 

……

 

サラミス級ポプキンス

 

第031パトロール部隊の旗艦で有りモビルスーツ部隊の母艦でも有るサラミス級だ。しかし、この艦は改修される以前の状態。つまり、一年戦争時と然程変わらない。

 

「ジム改の固定は済んでるのか?以前の様になったら厳罰所では済まさんぞ」

 

俺はやる気の無い整備兵に声を掛ける。以前ワイヤーの固定が甘く3番機のジム改が漂流したのだ。運良く回収出来た物の、無傷のジム改が敵性勢力の手に渡ったらと思うと肝が冷えたのを覚えている。

 

「あ、大丈夫です。問題有りません」

 

「後で確認するからな。それでダメだったら艦内の清掃をパトロール中ずっとやらせるからな。それが嫌なら自分の仕事には責任を持て」

 

俺は整備兵にキツい言い方で指示を出す。だがやる気が無い連中なので、此の位が丁度良いのが微妙な所でも有る。そしてポプキンスの艦橋に向かう。

 

「お疲れ様です。コートニー大尉」

 

「ああ、お疲れさん。出撃準備の状況は?」

 

彼は艦長兼副官に当たるシム・ラーモア少尉だ。落ち着きは有る物の気弱な所が目立ってしまっているが、この中では1番信頼は出来る人物だ。

 

「後1時間程で完了します」

 

「たった1隻の巡洋艦を動かすのに其所まで掛からんよ。逆に掛かったら練度の低さが露呈される所だよ。30分以内に終わらせる様通達してくれ」

 

「わ、分かりました。それはコートニー大尉の命令で宜しいので?」

 

「それで構わないよ」

 

と言った感じで自分からと言う命令がイマイチ出せないのだ。彼の階級は少尉な訳だから、もう少し胸張っても良いんだけどね。

そんな彼の態度を知ってるのか周りの雰囲気は緩くなる。その為俺が規律を守らせる様に厳しくする。だが、それ以前に自分を含め全員の中に諦めの感情が有るのだろう。それでも軍人としての責務は果たさせる。

 

「モタモタするな。これが実戦なら我々全員死んでるからな。誇張でも何でも無いぞ」

 

再び喝を入れる為厳しめに部下達を叱責する。正直言ってキャラでは無いんだかな。今思えばアーヴィント少佐は他の艦にも指示を出したりしていたし。俺には其所までの能力は無い。だが、手本としては充分だろう。

内心色々思い出しながらラーモア少尉の代わりに部下達に指示を出して行くのだった。

 

……

 

ポプキンスがルナツーより出航した後、目的地まで巡航速度で移動する。その間、観測班やレーダー班には少しでも異常が有れば直ぐに伝える様に指示を出して行く。

 

「あの、コートニー大尉は何時頃から実戦を?」

 

「ん?あぁ、ルウム戦役からだよ。あの頃は酷かったよ。地球連邦軍の艦隊が次々と轟沈して行くんだからな。正直、二度と見たくない光景だよ」

 

「一年戦争を経験なさってるんですか?自分より若いのに…」

 

ラーモア少尉は少し驚いた後複雑そうな表情をする。

 

「そうじゃないと大尉まで昇進しないよ。それにミノフスキー粒子下では観測班の目が重要だ。この辺りは安全とは言え、今は神経質な位が丁度良いさ。ほら、ティターンズが出来たばっかりだからさ」

 

「確かに。コートニー大尉の言う通りですね。ティターンズの設立と同時に残党軍も多少なりとも反応はするでしょうし」

 

「そう言う事だよ。さて、俺は彼奴らの様子でも見てくるよ」

 

そう言ってラーモア少尉に後を任せて部下の元に行く。そう第031パトロール部隊にも1小隊分のモビルスーツ部隊が有る。その隊長が俺で他2名が居る訳だ。だが、その2名が若干問題が有る連中なのだが。

俺はパイロットの詰所まで来て扉を開ける。中を見れば2人共ちゃんと待機している様で安心した。

 

「お疲れ様です。コートニー大尉」

 

「チッ、お疲れ様です」

 

「ああ、お疲れさん。それと舌打ちは聞えん様にやれ」

 

「…了解」

 

この反抗的な奴はジェフ・オールコック上等兵。デラーズ紛争でソーラー・システムⅡ防衛戦が初戦となる。撃墜スコアは無い為、戦果を欲しがる傾向が強い。また、俺をライバル視しており、偶に模擬訓練をお願いされる。反抗的だが向上心は高い為、教え甲斐は有る。

そして礼儀正しい奴がアーサー・ビューマン曹長。彼は一年戦争後に地球連邦軍に入隊。その後小規模な戦闘を何度か行う。デラーズ紛争時も残党軍殲滅戦に於いて2機撃墜している。彼自身の撃墜スコアは合計12機と決して悪い数字では無い。では何故問題児なのか。それは戦果の横取り、又は情報漏洩の疑惑を持っているのだ。彼が以前所属していた部隊は一度壊滅している。しかし、彼自身の機体の損傷は少なかった。また、戦闘レコーダーも何故か故障していた為真意は不明のままだ。

そんな彼等には共通点が有る。それはティターンズへの入隊に落ちた事だ。ティターンズと言えば今やエリートと言える存在だ。その組織に所属したいと思うのは当然と言えるだろう。

 

「隊長、また意味の無いパトロールに行くんですか?正直やる意味は無いでしょう」

 

「それでもやるのが俺達に与えられた任務だ。それを遂行して初めて軍人の端くれに名を連ねる事が出来る。ほら、無駄口叩いて無いでシャキッとしろ」

 

やる気の無い連中に問題だらけの部隊。そんな部隊だからこそ与えられる任務は限られた物ばかり。だが、それしか与えられない状況にしたのは自分達自身だと気付いてるのだろうか?いや、気付いてたら素直に命令には従ってるか。

以前の部隊とは真逆の状況。だが、それを望んだのは自分自身だ。だからだろうか、不思議と後悔の念は出てこなかった。



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仮初めの平和に潜む者達

最近色々なガンダムSSが増えてオラ嬉しいぞ!
ガンダムよ永遠に続け!!!


今回は暗礁宙域のパトロール任務になる。多数の岩石と一年戦争時の残骸で出来たデブリ群により出来た暗礁宙域は、地球連邦軍からの監視の目を擦り抜ける事が出来る良い隠れ蓑だ。勿論今回の様にパトロール任務によって索跡はされるが、こうも残骸が多いと限界は有るだろう。

 

「ヘイルズ1よりポプキンス。これより指定座標での索跡に入る」

 

『此方ポプキンス、了解しました』

 

「よし。各機、これより暗礁宙域での索跡に入る。戦闘になる可能性は低いが零では無いからな」

 

『了解しました』

 

『はいはい。隊長は心配性だよな。こんな場所に敵が居るとは思えませんがね』

 

『ヘイルズ3、駄目だよ。隊長は少し臆病な人なんだからさ』

 

やはりと言うべきだろう。オールコック上等兵とビューマン曹長の任務に対する姿勢は低い。そして、最近ではビューマン曹長も俺を舐め始めていた。

 

「無駄口は其処迄だ。各機、索跡開始」

 

俺は暗礁宙域に突入して行く。速度は巡航速度より速めにする。ジム改を操作してデブリを回避して行く。

 

「さぁて、お仕事お仕事ってな」

 

足に力が入る。それと同時にジム改の速度が徐々に速くなる。それでも問題は無い。この程度の速度ならデブリは回避出来る。しかし、デブリを回避しながらふと思った事を口にする。

 

「一年戦争が終わってもう5年が経ったのか」

 

マゼラン級やドムの残骸を見ながら呟く。地球連邦とジオン公国は総力戦を行った。そして何十億人もの人々が死んで行った。戦後の復興は順調とは言えなかった。嘗ては大都市だった場所も、今ではゴーストタウンと化してるのも珍しく無い。それに拍車を掛ける様にジオン公国残党軍がテロ活動を行なっていた。

そしてデラーズ紛争の勃発。この戦いにより更に復興作業は遅れて行くだろう。

 

(一番の被害者は俺達軍人では無く民間人だな。こう言う光景を見るのも、その場凌ぎで軍に入ったツケだな)

 

新兵だった頃、世界情勢は悪化の一途を辿っていた。だが、心の奥では戦争なんて起こる訳が無いと思っていた。結局、戦争は起こり今に至る訳だが。

内心色々思い出しているとレーダーに反応が出る。

 

「ん?あぁ、デブリの回収業の連中か」

 

其処には作業用ポットを使用しているリサイクル業者が居た。ボランティアと謳ってる連中も居るが、そう言う連中は基本的に金目当てのジャンク屋だ。この辺りは地球連邦軍の管轄だから許可は必要だ。唯、彼等は間違い無く正規のリサイクル業の人達だろう。

 

「よう、デブリ回収ご苦労様」

 

『ああ、連邦軍の方で。其方もお仕事ご苦労様です』

 

「いやいや、此方は唯デブリの中を飛んでるだけだからな。大した労力じゃ無いさ」

 

他愛無い話をしながら本題に入る。

 

「所で、この辺りは地球連邦軍の管轄宙域だ。許可証を提示してくれるか?」

 

『分かりました。此方です』

 

すると直ぐにデータが届く。中を見れば正規の許可証だ。

 

「問題は無いみたいだな。仕事の邪魔して悪かったな」

 

『いえいえ、お気になさらず』

 

デブリの回収業者と別れて再び索跡を開始する。しかし問題等は起こる事は無く索跡は終了する。何も無い事にブツクサ言う部下を無視してポプキンスに帰投するのだった。

そして、こんな何も無い日常が日々続いて行く。だが軍人として何も無いと言う事は平和とも言える。それが仮初めの平和であったとしても。

 

……

 

ニュータイプ。ジオン・ズム・ダイクンが提唱した新しい人類の形だ。それは宇宙に適応した者達を指している。そして一年戦争に於いてニュータイプと言える存在が徐々に明るみに出て行く。

アムロ・レイ、シャア・アズナブル、ララァ・スン等と言った名だたる人物達は一年戦争時に多数の戦果を挙げた。敵の位置が見え、弾道予測をして回避。更にニュータイプ同士での意識の疎通等も出来る。それはエスパーとも言えるのかも知れない。だが、ニュータイプが人を導く存在には至る事は無かった。両陣営の上層部はニュータイプを秘密兵器として扱い様々な戦場に出して行く。その中にはニュータイプとしての素質が有るだけで戦場に出される者も居た。

一年戦争終結後、ニュータイプ研究は更に進んで行く。その研究対象者は戦災孤児と言われる幼い子供達も多く含まれていた。決して表に出る事の無い非人道的な扱い。仮に表に出たとしてもクレームを出す大人は居ない。何故なら子を守る親は居ないのだから。

 

宇宙世紀0084.●月●日。地球連邦軍オーガスタ基地。

 

オーガスタ基地はニュータイプ研究所として最も古い分類に入る場所だ。一年戦争中にはアムロ・レイ専用機となるRX-78NT-1アレックスを開発。またRX-78-4ガンダム4号機、RX-78-5ガンダム5号機、更に【EAXMシステム】【ペイルライダー計画】の中心拠点でも有った。一年戦争後にはRGM-79Nジム・カスタムを開発。更にデラーズ紛争後にはRGM-79Qジム・クゥエルと言った新機体を開発していた。

 

オーガスタ基地のある一室に数人の研究者と軍人が1人居た。中にはモニターの明るさだけが彼等を照らす。

 

「孤児の者達を使った研究は他の部署でも継続して行きます。しかし我々のチームは別の観点から強化人間の研究を補佐をして行こうと思っております。ですので、其処でアモス・ベアリー中佐にはご協力をお願いしたいと思いまして」

 

「それで?私に何をさせようって言うのかな。ロイ・ブラックモア博士」

 

がっしりとし体格で鷹の目の様に鋭い視線でロイ班長を見ながら少し棘の有る言い方をするアモス・ベアリー中佐。小太り気味で頭が薄いロイ・ブラックモア班長は鋭い視線を受けても気にせず薄い笑みを浮かべながら頷く。

 

「我々は薬物での肉体強化や催眠によるマインドコントロールを行って来ました。しかし、如何してもパイロットとしての性能不足が出てきます。勿論訓練等は行いますが、エースとしての素質は運頼りになってしまいます」

 

「だが強化人間には子供が適任と聞いているが?」

 

「勿論それも有ります。付け加えるなら世間に対する問題が無いのも有りますね。勿論マインドコントロール等と言った精神面では比較的容易に出来ます。しかし、肉体強化の限界も出てくるのです」

 

アモス中佐はロイ班長の最後の言葉を聞いて理解した。

 

「つまりパイロットを捕まえて来いと言うのか。また、無茶な注文をする。敵の捕虜を使うのは駄目なのか?」

 

「敵の場合マインドコントロールが難しいのが有ります。また高確率で最後まで抵抗しますから死亡してしまうんですよ。それに捕虜の多くは凡人ですから強化の意味無いんですよ。ハハハ」

 

愛想笑いと共にロイ班長は軽く言う。

 

「もう実証済みだったか。まあ良い。それで、誰を誘拐すれば良い?」

 

「此方になります」

 

モニターに3名の人物がリストアップされる。

 

「この3名は全てエースパイロットです。ですので戦闘での鹵獲に関してはかなり梃子摺るかと」

 

「手段は問わんのだな?」

 

「勿論です。出来れば無傷な状態が理想ですがね」

 

「手段を問わなければ幾らでもやり様は有る。此方に勧誘するなりすれば良いだけの話だ」

 

アモス中佐はリストアップされたデータを回収して部屋から出て行く。

 

「アモス中佐、ご健闘をお祈りします」

 

「貴様等からのお祈りは要らんよ。逆に不安になるわ」

 

そして明るい廊下に出る。アモス・ベアリー中佐の制服はティターンズだと分かる 濃紺色の軍服に、烏と地球を象徴するエンブレムが付いていた。部屋に残っていた研究者達も部屋から出て行き研究に戻って行く。そんな中モニターに映る写真と名前の中にある人物が居た。

其処にはルナツー方面軍所属第031パトロール部隊隊長、シュウ・コートニー大尉と映し出されていたのだった。



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迫り来る狂気

宇宙世紀0085.2月6日。

 

現在第031パトロール部隊は通商ルートの警備を行なっていた。通商ルートなだけ安全性は常に高い状態を維持していた。

 

「ヘイルズ1よりポプキンス。今の所異常無しだ」

 

『此方ポプキンス、了解しました。引き続き任務遂行お願いします』

 

「了解した」

 

この部隊に配属して丁度一年位が過ぎただろう。相変わらず安全な任務を行なっていた。そんな中、そろそろ潮時な感じもしてるがな。

 

『隊長、この任務に意味はあるのでしょうか?自分には唯無駄に時間を潰してる様にしか思えませんよ。まあ、やる気の無い隊長には丁度良いのかも知れませんが』

 

『あーあ、こんな警備に何の意味が有るのやら。早く別の部隊に行きたいぜ』

 

「どんな任務にも意味は有る。例えつまらない任務でも遂行するのが軍人だ。それに、やる気の無いのはお前達もだろ?」

 

ビューマン曹長とオールコック上等兵の軽口に軽口で返す。どんな任務も遂行する姿勢を見せれば誰かが見ている。そんな中、常にやる気を見せて無い連中が転属したとしても居場所なんて無いだろう。

そしてオールコック上等兵に関しては悲しい知らせがある。以前まで模擬戦等やっていたが、最近ではやらなくなっていた。理由として俺との模擬戦で勝て無いだけでなく、内容が厳しいからだとか。

 

(あの程度で厳しいか。チェイス教官の内容に比べたら全然甘いんだがな)

 

一年戦争当時、たった3日間だけでは有ったが非常に為になった訓練だった。尤も、3日間に凝縮された訳だから超スパルタだったけど。

昔を思い出してると乗機から振動が走る。モニターを見るとバックパックに異常を検知していた。

 

「チッ、またか。最近よく咽やがる」

 

そう言ってペダルを2、3回踏み込む。するとバックパックは正常に稼働する。ここ数ヵ月前から何度もバックパックが咽せるのだ。今が平時だから良い物の、戦時だったら速攻で直させるんだがな。

 

『隊長、またバックパックの異常っスか?』

 

「まぁな。此奴には結構無理させてるからな」

 

ジム改は一年戦争末期の量産機だ。この機体も一年戦争終結後直ぐに配備された機体だ。それに各関節部の強化やブースターの出力強化もしている。それ故にバックパックは通常より負荷が掛かってしまう。整備班には何度も説明してるし、修理もして貰っている。だが2、3回出撃すると同じ様に咽るのだ。恐らく根本的に全体が劣化しているのだろう。此処まで来たらバックパックを丸ごと交換した方が早いだろう。

 

「やれやれ…ん?味方の反応だと」

 

レーダーを確認すると前方より反応がある。そして識別を確認する。

 

「アレキサンドリア級にサラミス改か。然も、ティターンズ所属艦とはね」

 

其処にはアレキサンドリア級1隻にサラミス改4隻が航路予定無い所に堂々と移動していた。本来なら注意の一つ位はすべきだろう。だが今のティターンズを無闇に刺激したいとは思わない。

ティターンズ。ジオン残党狩りを主とした精鋭特殊部隊だ。ジオン残党狩りを徹底的に行った結果、各地域での治安はかなり回復している。しかしジオン残党狩りと称して、スペースノイドへの弾圧等と言った事もしているとか。勿論やり過ぎの声も有るが表立って言う奴は居ない。反逆者として尋問されたいとは思わないからだ。

その時、アレキサンドリア級から通信が来る。

 

『此方、ティターンズ所属第25独立部隊のアモス・ベアリー中佐だ。貴官等の部隊は第031パトロール部隊で合っているな』

 

「そうです。此方は地球連邦軍ルナツー方面軍所属第031パトロール部隊。部隊長シュウ・コートニー大尉で有ります」

 

『そうか、君が。では早速で悪いがブリュッヒャーに着艦してくれるかな?』

 

「其方の旗艦にで有りますか?しかし、我々にはパトロール任務が有ります」

 

『その任務はたった今無効になったよ。兎に角艦橋で待っている。着艦後直ぐに来る様に。以上だ』

 

そして通信が切れる。

 

「…各機、これよりアレキサンドリア級のブリュッヒャーに着艦するぞ。上手く着艦しろよ」

 

『え!ティターンズの艦に着艦ですか?それにカタパルトに着艦ですか…』

 

「不安なら機体を外に待機させておけば良い。考えてみたら俺達はカタパルトでの離着陸は殆どやらなくなってるからな」

 

ビューマン曹長の不安そうな声に苦笑いしながら指示を出す。

 

(さて何が出て来るかな)

 

横暴なやり方に少々思う所は有る。だが、反抗して痛い目に遭いたいとは思わない。大人しくアモス中佐の指示に従ってブリュッヒャーに着艦するのだった。

 

……

 

ブリュッヒャーの格納庫にジム改を収容させる時、最新機とも言える機体が数機待機していた。

 

「確かハイザックだったか。見た目は殆どザクだな」

 

RMS-106ハイザックはルナツーへの配備は殆どされて無い筈だ。代わりにRGM-79Qジム・クゥエルが配備され始めている状態だ。元々ジム・クゥエルはティターンズ優先に配備されていた。そして次期主力機がハイザックに決まった為、機体更新の煽りを受けてティターンズから地球連邦軍へ払い下げされてるのが現状だ。

しかし、此処で面白い状況になる。ティターンズのパイロット達はハイザックの配備を手放しで喜ばなかったのだ。何故ならハイザックには致命的な欠陥が有るのだ。その結果ジム・クゥエルを使用続ける部隊も居る現状になっている。

 

「まあ、俺にはもう関係無くなる話だけどな」

 

独り言を呟きながらコクピットから出てアモス中佐の居る艦橋へ向かう。

 

「隊長、何故俺達はティターンズの艦に?」

 

「オールコックか。正直言って分からん」

 

俺と同じ様にカタパルトに着艦したので直ぐに追い付いて来たみたいだ。

 

「分からないのに俺達はティターンズの艦に乗ったんですか?」

 

「仕方無いだろ。ティターンズに反抗して良い事何て無いんだよ。嵐がサッサと過ぎ去るのを待つしか無いな」

 

暫くオールコック上等兵と話をしてるとビューマン曹長も追い付いて来た。因みにビューマン曹長も不慣れながらもカタパルトに着艦出来た様だ。

 

「よし、全員揃ったな。今から艦橋に向かうぞ。ちゃんと礼儀正しくしてろよ」

 

「勿論ですよ。しかし自分がティターンズの艦に乗る機会が有るなんて。運が向いて来たかも」

 

「あ、それは俺も思うわ。此処でしっかり俺の実力を示せればティターンズ入隊も夢じゃないぜ」

 

どうやら2人はティターンズへの入隊を諦めきれてない様だ。だが仕方無いだろう。確かに横暴な行為は目立つ。だが、それらの行為を黙認されるのが今のティターンズだ。それにジオン残党狩りも積極的に行ってるのも有る為、尚更強く言えないのだ。そして若干興奮している彼等を連れて行きながら艦橋へ向かうのだった。

 

……

 

俺達はブリュッヒャーの艦橋まで来た。するとアモス中佐が此方に視線を向ける。

 

「漸く来たか。さて、早速だがこの宙域マップを見て貰いたい」

 

モニターに映し出されるマップ。それはデブリや岩石が多数浮遊している宙域だった。

 

「我々はこの宙域にジオン残党軍が居るとの情報をキャッチした。その為、この宙域に詳しい部隊が必要になった」

 

「つまり、この宙域は我々のパトロール宙域なのですか?」

 

「その通りだ。勿論君達を責めるつもりは無い。特にコートニー大尉の任務に対する忠実な所は此方でも確認済みだ。これだけのデブリが浮遊しているのだ。鼠にとって住み易い環境なのだろう」

 

そんな中、アモス中佐は此方に近付いて来る。そして俺の目を真っ直ぐに見ながら言う。

 

「其処でだ、エースパイロットのシュウ・コートニー大尉には先陣を切って貰いたい。一年戦争、デラーズ紛争での戦果は目を見張る物が有る」

 

アモス中佐がそう言うとビューマン曹長とオールコック上等兵は驚いた表情になる。

 

「…お褒めに預かり光栄です」

 

「この作戦後にはティターンズへの入隊を推薦したい。正直言って君程のエースがこんな場所で腐ってるのは許し難い事だ」

 

褒められて悪い気はしなかった。だが俺はもう無理なのだ。

 

「申し訳有りません。自分は後1ヶ月程で軍を辞めますので」

 

「え、隊長は軍を辞めるのですか?」

 

「本当ならもう少し後で言うつもりだったんだがな」

 

そう、俺は軍を抜ける事にしたのだ。半年前にパトロール中に何度かデブリ回収業者とのやり取りをしていた時だった。偶々其処にいた社長から勧誘を受けたのだ。最初は拒否したのだが話が結構合ったのと、何度も勧誘を受け続けた結果軍を辞める事にしたのだ。

元々軍に居続ける事に意味を見出せなくなっていた。其処に再就職先の勧誘。モビルポット、モビルスーツ、戦闘機の操縦可能な人員は場所は選ぶが特定の所なら就職は出来る。

 

「そうか、それは残念だ。ならこれが最後の戦闘になるだろう。その時に君の実力を存分に発揮して貰う」

 

「了解しました。最後まで任務を全う致します」

 

「頼むぞ。それから、其処の2人に少し話がある。良いかな?」

 

アモス中佐は此方を見ながら言う。

 

「勿論です。それからジオン残党への攻撃は何時頃に?」

 

「5日後だ。其れ迄はこの艦に乗っていても構わんよ」

 

「いえ、自分は遠慮しておきます。何分抜ける身の上ですので。お前達は好きに選んで良いぞ。それでは自分は失礼致します」

 

最後に敬礼をして2人を残して行く。恐らく彼奴らはブリュッヒャーに残るだろう。何故なら憧れのティターンズとの交流も出来る訳だからな。その邪魔をする様な野暮な事はしないさ。そして俺はポプキンスに戻る為にジム改に向かうのだった。

 

……

 

アモス中佐はビューマン曹長とオールコック上等兵を連れて艦橋から別室へ移動していた。

 

「さて、君達2人を残したのは他でも無い。単刀直入に言おう。ティターンズに入隊したいか?」

 

アモス中佐は先程迄の軍人風然とした姿を消し、愉快そうな表情を浮かべながら問い掛ける。

 

「ティターンズに入れるんですか!」

 

「俺…自分も勿論入れるなら入りたいです!」

 

その言葉を聞きアモス中佐は小さく笑う。

 

「クックックッ…そうかそうか。誉高いティターンズに入隊したいか。なら私に協力しろ。それを今約束しろ」

 

「勿論約束します!自分は中佐の為なら何でもします!」

 

ビューマン曹長は間髪入れずに返事をする。それを見たオールコック上等兵も遅れまいと後に続く。

 

「自分もです。中佐に協力します」

 

「そうか。なら、貴様等に機体と武装を与える。それを使って、ある人物の機体を行動不能に陥らせろ」

 

「ある人物ですか?それは一体…」

 

ビューマン曹長の言葉を聞きアモス中佐は目標人物の名を口にする。

 

「貴様等の隊長、シュウ・コートニー大尉だ。絶対に殺すなよ。殺したら私が貴様等を殺すからな」

 

其処には狂気に満ちた瞳を抱きながら2人を睨むアモス・ベアリー中佐が居たのだった。




シュウ大尉「俺、この戦いが終わったら軍を抜けるんだ」

ガンダムの世界でフラグを立てるとは…\(^o^)/オワタ


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裏切りの時

仕組まれた罠が間も無く動き出す。それは力を持つ者故の宿命なのか。その宿命に対する疑問に意味は無い。何故なら喜劇を望む人々が沢山居るのだから。

 

宇宙世紀0085.2月11日。

 

現在ポプキンスはアモス中佐率いる艦隊と共に行動していた。そして先程ビューマン曹長とオールコック上等兵もポプキンスに戻ってきた。しかし搭乗していた機体はRGM-79Cジム改では無かった。

 

「RMS-179ジムⅡか。まさか新規生産された機体を渡されるとはね」

 

尤も渡されたのは2機のみであったが問題は無い。寧ろ彼奴らがジム改からジムⅡへの慣熟訓練をしてるのかが不安だ。

 

「まあ、いざとなれば俺が囮になれば良いだけか」

 

自分の愛機に近付きバイザー部分を撫でる。此奴とももう少しでお別れだ。そう思うと少し寂しい思いは有る。

 

「この戦いが最後になるだろう。今まで有難うな」

 

ジム改に語り掛ける。何だかんだで1番長く搭乗している機体だ。それ故に思入れは結構強い。ジム改は特別な機体と言う訳では無い。寧ろ誰でも扱える無難な量産機と言えるだろう。それ故に地球連邦軍の主力機として存在していた。

 

「さて、そろそろ出撃だな。最後まで頼むぜ相棒」

 

最後にそう言い残しコクピットに向かう。そして機体の起動シーケンスを行う。

 

「機体チェック。油圧、バッテリー、各部異常無し。武装はジム・ライフルに予備弾倉。後はビームサーベル2本とシールド固定も良しと。何時も通りだな」

 

唯一心配なのはバックパックの不調だろう。だが昨日整備兵と共にバックパックを重点的にチェックしから多分大丈夫だろう。

 

「ヘイルズ1より各機、機体状況を知らせよ」

 

『ヘイルズ2異常無し。いつでも行けます』

 

『ヘイルズ3。俺も大丈夫です』

 

久しぶりの実戦になるのか少々大人しい雰囲気を出している。

 

「お前達、ジムⅡの乗り心地は如何だ?」

 

『ええ、ジム改よりも出力が有りますしビームライフルも標準装備で付いてますから良いですよ』

 

『流石にジム改とは違いますよ。なんと言ってもパワーが違いますよ』

 

「そうか。なら機体慣らしは大丈夫なのか?」

 

『え?え、ええ。多少はやりました』

 

『俺もシュミレーターでやりました』

 

「基本的には実機でやるのが良いんだがな。まあ、時間が無かったから仕方無いか。俺が前衛で囮になる。お前達はビームライフルで敵機を発見次第攻撃をしろ。機体慣らしが出来て無いなら無闇に接近戦をする必要は無いからな」

 

『了解しました』

 

『了解です』

 

気を紛らわす為に話し掛けたが効果はイマイチだな。やはり実戦が不安なのだろう。

 

「安心しろ。お前達は訓練通りに戦えば良い。後は実戦の勘を思い出せば良い」

 

『あの、隊長はエースパイロットだったのですか?』

 

ビューマン曹長が質問して来る。恐らく俺がアモス中佐からティターンズに勧誘された時の話を信じて無いのだろう。

 

「昔の話だ。今はエースでも何でもない唯のパイロットだよ。さて、そろそろ作戦開始時間だ。無駄話なら後からしてやる」

 

『『了解』』

 

暫く待機してるとアモス中佐から通信が来る。

 

『諸君、これよりジオン残党狩りを行う。先ずはコートニー大尉率いるヘイルズ小隊が先遣隊として暗礁宙域に突入。それと同時に艦隊からミサイルを発射を行いミノフスキー粒子散布と爆煙を形成。それに紛れる様に突入し敵戦力の把握を行え。その後我々第25独立部隊が突撃する。各員の健闘を祈る』

 

アモス中佐から作戦概要が簡単に説明される。要は囮になり敵機を引き付けるだけだ。

 

(それくらい慣れてるからな。問題無いんだよ)

 

『ヘイルズ小隊発進準備お願いします』

 

「此方ヘイルズ1了解した。ワイヤー固定解除」

 

ジム改を固定しているワイヤーを解除する。

 

『ワイヤー固定解除確認。発進どうぞ』

 

「ヘイルズ1、シュウ・コートニー大尉、ジム改出るぞ!」

 

一気にブースターを吹かし宇宙へと飛び立つ。そして目標となるジオン残党勢力の強行偵察を行う為に突撃する。

 

『各艦、ミサイル発射用意』

 

『発射用意完了。何時でも行けます』

 

『宜しい。全艦ミサイル発射!』

 

艦隊からミサイルが放たれる。そして前方の暗礁宙域にミノフスキー粒子と爆煙が形成される。それに乗じる様にシールドを構え突入する。

 

「各機、デブリに気を付けろ。何時もの安全第一の速度で突っ込めば敵に狙い撃ちになるぞ。速度を落とさずデブリを避けろ」

 

『ヘイルズ2了解です』

 

『ヘイルズ3了解!』

 

そして高濃度ミノフスキー粒子と爆煙の中に突入して行く。それが罠に掛かる獲物だと気付かぬまま。

 

……

 

アレキサンドリア級重巡洋艦 ブリュッヒャー

 

アモス中佐はブリュッヒャーの艦橋から戦況を確認する。

 

「さて、保険は必要だな。第1小隊出撃用意。それから私の機体も用意しておけ』

 

「了解しました」

 

オペレーターは直ぐに格納庫に連絡を行う。

 

「アモス中佐、今回は上手く行きますかね。他2人は上手く勧誘と言う形で確保出来ましたが」

 

ブリュッヒャーの艦長がアモス中佐に質問する。

 

「完璧に任務をこなすのが私の主義だ。それに、彼女に近付くには多少の度胸は必要だ」

 

「彼女…左様ですか。では自分は艦隊の指揮に当たります」

 

(完璧と言いながら女を想うか。全く…)

 

艦長はアモス中佐の言葉に内心呆れながらも表には出さずに任務に戻る。

 

「頼んだぞ。尤も、不意をついた遠距離狙撃だ。幾らエースパイロットと言えども避けようが無いさ。何せ…」

 

アモス中佐は一息入れて次の言葉を口にする。

 

「味方から狙撃されるのだからな」

 

仕組まれた作戦が間も無く彼に襲い掛かろうとしていた。

 

……

 

ミノフスキー粒子の戦闘濃度とデブリや岩石の影響は凄まじい物だ。唯でさえ通信し難い状況に障害物により味方とのレーザー通信が困難な状況になる。

 

「ヘイルズ1よりヘイルズ2、3応答しろ。ビューマン曹長、オールコック上等兵!返事をしろ!」

 

更に悪い事にミサイルの爆煙を抜けたら2人が居なくなっていた。デブリにぶつかって損傷したならまだ良い。最悪戦死したなんて笑い話にもならない。

 

「隊長失格だな。無理にでも後方に待機させて置くべきだったか」

 

自分の判断ミスに嫌気を感じながら頭を切り替える。最悪作戦終了後に2人の探索をしなくてはならない。なら、やるべき事は一つだけだ。

 

「サッサと強行偵察を済ませさて貰うぞ。残党軍に構ってる余裕は無いからな!」

 

機体をデブリの陰から出し移動させる。勿論スピードは落とさずに突っ込んで行く。

 

「待ってろよ2人共。俺が任務を終わらせるまで死ぬんじゃ無いぞ」

 

意識を集中させてデブリの中を飛んで行く。部下達を死なせない為に、要らない思考を全て切り捨てて。

 

……

 

シュウ大尉が暗礁宙域の奥へ進んでいる時、ビューマン曹長とオールコック上等兵は予定通りの行動をしていた。

 

『此処だ。武器が設置されてる場所だ』

 

『早く準備するぞ。隊長にバレたらヤバいぜ』

 

彼等は機体をコンテナの近くに寄せる。そして暗唱コードを入力して目的の武器を手に入れる。コンテナから姿を現したのは、ジム・スナイパーカスタムの基本装備の一つ【BR-S-85-L3スナイパー・ビーム・ライフル】だった。

 

『OS、FCSの同期開始。シュミレーション通りだ。其方はどうだ?』

 

『こっちも今やってる。同期は直ぐ終わるぞ』

 

『なら隊長…いや、“元”隊長を探そうか。けどミノフスキー粒子が散布されてる所から出るなよ』

 

『そんなヘマはしねえよ。それよりサッサと終わらせようぜ』

 

2人は元隊長のシュウ・コートニーを探す為に機体を移動させる。

 

『でも、態々スナイパーライフルで狙撃するとはね。それだけコートニーの奴が強いって訳か。正直言って信じられ無いけど』

 

『言えてる。確かに機動戦は中々の物だとは思うけどな。でも任務中でエースらしい姿は見た事無いけどな』

 

シュウ大尉は真面目に任務を遂行していた。例え意味の無い事でも手順を守りやり続けていた。その姿は軍人として正しい姿なのだろう。だが、彼等にとっては滑稽其の物に見えていた。

だが、それは人として当然の感情だ。自分達に出世の機会は殆ど無い。そんな中で真面目にやった所で意味は無いのだから。

 

『でもさ、オールコックはコートニーから訓練受けてただろ?』

 

『あんな無茶なの訓練じゃねえよ!唯の嫌がらせかストレス発散してたに違いねえぜ。その分の借りもキチンと返さねえとな』

 

オールコック上等兵はシュウ大尉との模擬訓練を思い出す。機動戦は当たり前で、常に中〜近接戦を行っていた。然も理由がミノフスキー粒子内では接近戦が多数発生するからだと言う。

だが接近戦ではビームサーベルでの戦闘以外にも手足を使って来るからタチが悪い。更にデブリに隠れたと思えば背後からの奇襲は平然として来る。

 

『腕は確かかも知らねえけど。あの野郎、戦い方が一々卑怯臭えんだよ。もっと正々堂々と戦えっての』

 

『まあ、こっちはジム改なんて旧式よりずっと上の機体なんだからさ。例え狙撃に失敗しても正面から行けば機体性能の差でやれるよ』

 

『ふん。機体性能と俺の腕が有れば勝つのは俺だ。あんな卑怯者に負ける訳が無いね』

 

そんな彼等はシュウ大尉を探し続ける。彼等に与えられてる時間は多くは無い。そしてミノフスキー粒子の影響によりレーダーは使えない。そんな状況では自分自身の眼で探す事は至難の技だ。だが幸運の女神は彼等に微笑みかけた。何故ならシュウ大尉のジム改がデブリの陰に隠れながら止まっていたのだ。

 

『っ!…見つけた。前方2時方向、距離6000』

 

『こっちも確認した。狙撃態勢に入る』

 

ムサイ級巡洋艦の残骸の上に着地をしてスナイパービームライフルを構える。

 

『オールコック、手筈通りだ。同時攻撃で俺が右腕でお前が何方かの脚を狙う。殺すなよ』

 

『分かってる。動いて無いなら外しはしねえよ』

 

2人は照準をジム改に合わせる。

 

『隊長、アンタがティターンズに何をしたのかは知りません。けどね、俺達の踏み台になって頂きます。カウント、3、2、1』

 

トリガーを引く指に力が入る。そしてジム改が此方を振り向いた瞬間。

 

『撃て!』

 

ビューマン曹長は一言呟きながら攻撃命令を出す。そして二条のビームが宇宙に放たれたのだった。



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エースパイロットVS捕らえる者達

第六感と言うのは非常に大事な物だ。確かな確証も無ければ唯の勘に従う行為。だが戦場で嫌な予感がした時、それに従う方が吉と出る事が多い。

一年戦争から鍛えられた第六感。例え戦場から身を離れたとは言え、軍人である以上そう簡単に腐らせる物では無い。常に任務を遂行し、シュミレーターでの訓練。そして任務中でのブースト全開の機動を行い成るべく腐らせ無い様にしていた。そんな第六感が俺に告げていた。

 

「妙に静かだ。いや、静か過ぎる」

 

艦隊からのミサイル攻撃と同時のミノフスキー粒子の散布。更に1小隊のモビルスーツの投入。そして相手にも見える様な派手な機動。これだけやれば普通なら相手は嫌でも反撃するだろう。だが反撃は無く沈黙したまま。

 

「どうなってる?一度母艦に帰還するか?だが彼奴らも探さないと」

 

デブリに隠れて思考する。だが良い考えが浮かぶ気配は無い。それに妙に嫌な予感がする。なんだか落ち着かないのだ。

 

「仕方無い。一度母艦に戻って索跡班を編成して貰うか。それに此処に長居したくない」

 

そしてジム改を移動させようとした時、遠くで一瞬光った。その瞬間背筋が引いた。俺は反射的にペダルを踏む。機体が上に移動した時二条のビームが迫って来る。そして左脚部に直撃し吹き飛ばしたのだった。

 

「び、ビーム兵器だと!?残党軍にそんな戦力が有るなんて!」

 

急いで機体をデブリの陰に入る。だが漸く掴んだ尻尾でも有る。そう簡単に逃がしたくは無い。

 

「左脚部をやられたか。だが逃がしはしないぞ」

 

デブリや岩石の陰に隠れながら移動する。時々反撃は来るが当たりはしない。そんな奴らを挑発するようにオープン通信を繋げる。

 

「偏差射撃が単調なんだよ。一度訓練学校からやり直せ!」

 

それに反応する様にビームが乱射される。そんな時、違和感を覚える。それはビームの色だ。基本的に地球連邦軍はピンク色、ジオン公国軍は黄色が多い。そして今撃たれてるビーム色はピンク色だ。

 

「まあ、面さえ拝めれば答えは出るか」

 

スピードを落とさず移動して行く。そしてモニターとレーダーに反応が出る。敵機は2機、識別はRMS-179と表示される。RMS-179は彼奴らが搭乗していた機体だ。

 

「まさか、お前ら…なのか?」

 

俺は静かに問う。違うと言って欲しい。いや、違うと言わないと行けないんだ。だが返信が来た時、それはアッサリ打ち砕かれる。

 

『流石元隊長なだけあって、逃げるのだけは得意の様ですね』

 

『サッサと機体から降りろよ。死にたくなければな』

 

ビューマン曹長とオールコック上等兵がビームライフルに装備を変えて此方に接近して来る。

 

「お前ら、自分達が何してるのか分かっているのか!こんな馬鹿な事をすれば取り返しの付かない事になるんだぞ!」

 

『そうならない為にもアンタには大人しくして貰うよ』

 

ビームライフルの銃口が此方に向いたのと同時に距離を取る為にデブリ内に突入する。

 

『またそうやって逃げるのか!この臆病者が!テメェなんざ隊長でもエースでも無い。唯の雑魚なんだよ!』

 

『無駄な抵抗はやめて下さい。大人しくした方が利口ですよ』

 

彼奴らの言葉を無視してデブリ内を移動する。だがこの辺りはデブリが多い。不意を突くチャンスは山の様にある。

 

(何が目的かは後から聞けば良い。今は戦闘に集中だ)

 

そして機体の射撃管制装置(FCS)を解除する。これで彼奴らをジム・ライフルで撃つ事が出来る様になった。そのままデブリの陰に隠れる。

 

『クソ!デブリが多くて見失うぞ!細かいデブリは無視して追うぞ』

 

『分かってる。機体性能はこっちが上なのに何で追い付けないんだ』

 

焦ってるのかオープン通信を繋いだままだ。ならこのまま陰に隠れて待ち続ける。そしてジムⅡが前を通る。此方はデブリの陰に隠れて簡単には捕捉されない。

 

『見失った?探せ!まだ近くに居るはずだ!』

 

『出て来い!クソ野郎!』

 

そして丁度目の前で止まる。その間にも俺の事を好き放題馬鹿にして来る。

 

(さっきから臆病者とかクソ野郎だとか好き放題言いやがってよ。今から覚悟しておけよコノヤロー)

 

そして一気にブースターを全開にして近付く。無論相手も此方に気付きビームライフルを向け発砲する。だがその距離でのビームライフルは間違いだぞ。

 

「間合いが甘い」

 

そう言ってビームサーベルでオールコック上等兵のビームライフルを切断。そのまま真っ直ぐに逃走する。

 

『野郎!やりやがったな!』

 

『逃すな!オールコック接近して奴を抑えろ!』

 

背後からビームが来るが回避して行く。その間にジム・ライフルに切り替える。そして追い掛けて来たのと同時に反転してジム・ライフルを構える。

 

「先ずはお前からだビューマン曹長」

 

ジム・ライフルでビューマン曹長のジムⅡを撃つ。ビューマン曹長は慌ててシールドを構えて防ぐ。その間に再び接近する。

 

『野郎!やらせるかっ!?』

 

「踏み込みが甘い」

 

オールコック上等兵はビームサーベルを振るうが、此方が銃口を向けるとスピードを緩めてしまう。その隙にビューマン曹長のジムⅡに接近。

 

『何簡単に抜かれてるんだよ!使えない奴め!』

 

『んだとお!?』

 

戦闘中に口論するとは随分余裕がある様だ。それらの会話を無視してジム・ライフルを仕舞い再びビームサーベル構える。ビューマン曹長は後退しながらビームライフルを撃つが、此処には障害物が沢山有る事を知らない様だ。

 

『しまっ!?デブリが!』

 

「先ずは1機」

 

『あ、あああああ!?!?』

 

ジムⅡがデブリにより止まった瞬間、ビームサーベルを突き出す。そして頭部を貫く。そしてビームライフルを蹴り飛ばし脚部をビームサーベルで切断する。最後にバックパックに60㎜バルカンを撃ち込み行動不能にする。

 

「さて、オールコック上等兵。大人しく投降すれば多少の罪は軽くなるぞ」

 

『ざけんな!俺はティターンズに入るんだ!こんな所で!』

 

ビームサーベルを展開して此方に接近する。だから此方もビームサーベルを展開して突っ込む。そしてお互いの距離が零になった瞬間、ジムⅡの右腕が切断される。

 

『そんなバカな!?』

 

「訓練から逃げる奴に負ける程、腕は落ちて無い」

 

そしてジム・ライフルに切り替えてジムⅡの手足を撃ち抜く。無論回避機動はしているが回避予測して当てて行くのだった。

 

……

 

大破したジムⅡはこのまま放置すれば漂流するのは間違い無いだろう。無論彼等を見捨てるつもりは無い。

 

「さて、お前達には色々聞きたい事は有る」

 

『……』

 

『クソ、クソ…こんな筈じゃあ…』

 

ビューマン曹長は沈黙、オールコック上等兵は悪態を続けるばかり。そんな彼等に一言だけ言っておく。

 

「幸いにも一番知りたい事は知る事が出来た。お前らが黙り続けても意味は無いからな」

 

『っ!そ、そんな』

 

『ふざけんな!そんなの嘘だ!』

 

喚き続ける2人を無視して本命が来るであろう方へ視線を向ける。ジム・ライフルの弾をリロードして暫く待ち続けるとモニターに反応が出る。俺は其方に向かい近付く。すると向こうから通信が来る。

 

『ほう、これはこれは。コートニー大尉無事だったか』

 

「ええ、無事でしたよ。幸いにも残党軍は居ませんでしたからね。ティターンズの情報網も当てになりませんな」

 

俺はアモス中佐を挑発する様に言う。しかし、アモス中佐はそんな言葉を軽く流し平然としていた。

 

『フフフ、耳が痛い言葉だね。所で…君の僚機はどうなったのかな?』

 

やはりと言える。寧ろ意外にもストレートな言い方に関心すら覚える。

 

「唯の連邦兵を気遣うとはね。アモス中佐は懐が深いのですかな?」

 

『答えたまえシュウ・コートニー大尉。奴等はどうなったのかと聞いている』

 

「現在近場で待機中ですよ。序でに最低限必要な情報も言ってくれましたからね」

 

そう言った瞬間アモス中佐の雰囲気がガラリと変わる。そう例えるなら殺気立つ獣が一番近いだろう。

 

『ほう…それはどんな情報かな?』

 

「手前が俺の部下を先導した証拠だよ。これだけ言えば充分自分の立場が理解出来ただろ?」

 

アモス中佐はストレートな言い方をして来た。だから俺もストレートな答えを渡してやった。先程の戦闘でオールコック上等兵がティターンズへの入隊と言っていた。そしてそんな無茶が出来る人間は目の前に居るアモス・ベアリー中佐以外居ない。お互いの通信は痛い程沈黙している。すると小さく笑い声が聞こえる。この場ではとても不釣り合いな笑い声。それが通信から聞こえてくるのだ。

 

『そうかそうか。なら覚悟は出来てるのだな。シュウ・コートニー大尉?』

 

その言葉と同時にハイザック3機は銃口を此方に向ける。

 

「その言葉は鏡に向かって言うんだな。アモス・ベアリー中佐殿?」

 

そして次の瞬間ハイザックの銃口から火が吹くのだった。

 

……

 

再び戦闘が始まる。そして相手は優秀な連中が多く所属するティターンズ。更に新鋭機であるハイザック4機を相手にだ。

 

『各機、奴は手負いの機体だ。だが油断はするな。こんな場所で燻ってる奴だが歴戦のエースパイロットだ』

 

『『『了解!』』』

 

通信から聞こえる言葉は中々嬉しい事を言ってくれる。正直そう言って貰うのは嫌いじゃ無い。

 

「アモス中佐!中々気分の良い事言ってくれるじゃないか!ならエースの実力を存分に味わってくれよな!」

 

俺はジム改のリミッターを解除。更に加速をしてデブリの中を移動する。左脚部を損傷した為スピードは落ちる。だがデブリの中を移動するのはティターンズと言え苦戦していた。

 

『何て奴だ。中佐の言う通り奴はエースだ。ブラーサ1より各機、気を抜くな。手負いの奴程無駄に足掻くからな』

 

『ブラーサ2了解。俺は上から攻める』

 

『ブラーサ3了解。ならブラーサ1と共に奴を抑える』

 

『よし、行くぞ。多少のデブリ片は無視しろ。上手く追い詰めれば行ける。アモス中佐、此処は我々にお任せ下さい。中佐はあの2人の捜索をお願いします』

 

『なら此処は貴様等に任せる。頼んだぞ』

 

ブラーサ小隊は二手に別れて行動を開始。そしてアモス中佐はビューマン曹長とオールコック上等兵を探し始める。そんな中、俺は戦い易い場所を見つけて陣取る事にする。其処はマゼラン級、サラミス級等の艦の残骸が多数漂っている。

 

「さて、この辺りで良いだろう」

 

そして補足し易い様に仁王立ちになる。それに対し向こうも理解したのか攻撃を開始する。

 

『各機行くぞ。奴を捕獲する。攻撃開始!』

 

ビームライフルとザクマシンガン改からの攻撃が来る。それに対し回避しながら反撃する。

 

「そう言えば聞いた事あるよ。ハイザックてさビーム兵器同時使用出来ないんだっけ?お前ら下っ端にはお似合いの機体だな!流石ティターンズ様だよ!」

 

『貴様!調子に乗るな!』

 

更にミサイルポッドからミサイルが放たれる。それらの攻撃はマゼラン級に直撃し誘爆を発生。更に機関部に被弾し爆発を引き起こす。その爆発に紛れる様に機体を突入させる。

 

『来るぞ!野郎頭のネジが外れてるな』

 

『普通回避したりするだろうが!』

 

ビームライフルとザクマシンガン改を撃つ。その攻撃を最低限の動きで回避しながらシールドを前に構える。そしてシールドに多数被弾したのと同時にシールドをパージ。そのままAMBACを行いシールドを蹴り飛ばす。そしてシールドが吹き飛んだのと同時に上に移動しジム・ライフルを構える。

 

「補足した。受け取れ」

 

俺は躊躇無くトリガーを引く。弾はハイザックの頭部に命中。更にザクマシンガン改を破壊する。

 

『グワッ!?畜生!』

 

『ブラーサ3下がれ。これ以上近寄らせはしない』

 

仲間を庇う様に動きビームライフルを撃つブラーサ1。その時ブラーサ2が更に上から接近する。

 

『上を取ったぞ!』

 

ザクマシンガン改の弾幕が再び此方を襲う。俺はそのままの勢いのままサラミス級へと向かう。

 

『逃すかよ。俺達ティターンズを舐めた事を後悔させてやる!』

 

サラミス級の陰に隠れる。そして再びAMBACとブースターで反転。更にデブリを踏み台にして加速を付ける。そして左手にビームサーベルを展開して突っ込む。

 

『これで終わっ!?何っ!』

 

「予測が甘い」

 

そのままハイザックの両腕を切断。更にバックパックも斬り裂き動きを抑える。

 

『ブラーサ2!貴様、これ以上好きにさせるか!』

 

ビームライフルで追撃をするブラーサ1。だが俺は逃げる事なく突撃をして行く。

 

「もうビームライフルの間合いじゃ無いぞ!」

 

『舐めるなああああ!!!』

 

ビームライフルを放棄してヒートホークを構えて突撃をするブラーサ1。そして交差する直前に60㎜バルカンを頭部に向かって撃つ。一瞬動きが止まるブラーサ1。だがそれは最悪の選択だ。そのままハイザックの右腕を斬り裂く。そしてジム・ライフルで脚部を撃つ。それでも悪足掻きをする様にミサイルポッドからミサイルを放つ。それを回避しながら60㎜バルカンで迎撃する。

 

『中佐、申し訳有りません』

 

「後1機。何処だ、何処に居る?」

 

俺はアモス中佐を探す為機体を動かしながら再び弾倉を変える。予備弾倉はこれで終わりになるが充分だ。その時だった。4時方向で2つの爆発を確認する。だがあの場所にはビューマン曹長とオールコック上等兵が居た筈。

 

「まさか、口止めに殺したのか」

 

其処で爆発が起きたと言う事と現状を鑑みた結果の答えだった。




やっぱり戦闘描写は難しいね(小並感)


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シュウ・コートニー大尉と言う存在

俺は爆発した方へ向かう。其処にはアモス中佐が此方を見ながら待っていた。

 

『流石と言っておこうかな。まさか私の部隊が旧式で手負いの奴にアッサリやられるとはな。流石はエースとだけ言っておこうか』

 

アモス中佐は此方にザクマシンガン改を向けながら言う。それを無視して部下の安否を聞く。

 

「あの2人はどうした?」

 

『ああ、彼等はジオン残党にしてやられたよ。いやはや残念でならないよ。この作戦の後には名誉あるティターンズへの入隊が待っていたのだがね』

 

「そんな気は無い癖によく言う。それに彼奴らの腕じゃ無理だ。アンタら程の実力が無ければティターンズでやって行けないだろう」

 

アモス中佐の言葉で最初からティターンズに入れる気が無いのは充分理解出来た。そして彼奴らは口止めに殺された訳か。

 

『君に褒められて悪い気はせんよ』

 

「けどな…彼奴らは俺の部下だった。それも味方によって殺された。この代償は払って貰うぞ」

 

ジム・ライフルの銃口をアモス中佐に向ける。

 

『実力無き者にティターンズに入る資格無し。ほんの僅かとは言え夢を見せてやっただけ有難いと思って貰いたいものだね!』

 

「貴様の欲なんぞに夢なんてあるかあああ!!!」

 

ジム・ライフルとザクマシンガン改が同時に発砲。そのまま俺は奴に近付く様に機体を前に動かす。

 

「目的は何だ!味方を殺す程の事をしてやる程なのか!」

 

『全ては貴様が悪いのだ。シュウ・コートニー大尉』

 

「何?」

 

左手にビームサーベルを展開し振りかぶる。それに対しアモス中佐もビームサーベルを抜き対処する。

 

『貴様がエースパイロットで無ければ良かったのだ。そうすればあの2人は死なずに済んだ物をな』

 

「巫山戯るな!そんな理由で殺したのか!」

 

ビームサーベルを突き出す。しかしハイザックのミサイルポッドが此方を狙う。

 

『これも任務なのでね。それに君が知る必要は無いのだよ』

 

「チッ、付属品が多いな」

 

ビームサーベルを放棄しながら60㎜バルカンでビームサーベルを破壊する。そしてビームサーベル内のエネルギーが爆発しミサイルの狙いを撹乱させる。

 

『クッ、この距離で対処するか!』

 

そしてジム・ライフルでハイザックを狙う。同時にザクマシンガン改の銃口が此方に向く。

 

『中々上手く避けるじゃ無いか!旧式の割にな!』

 

お互い銃撃戦を行う。しかしジム・ライフルの残弾がゼロ。予備弾倉も使い切った為、最早使い物に成らなくなる。俺はジム・ライフルを放棄して、もう一本のビームサーベルを構える。

 

「コレで決める」

 

一言呟きジム改のブースターを全開にしてアモス中佐のハイザックに突っ込む。ハイザックからザクマシンガン改の弾幕が襲い掛かる。多少の被弾は覚悟の上だ。致命傷にさえ成らなければ問題は無い。

アモス中佐は後退しながらザクマシンガン改を乱射する。それに対しランダム機動を行い回避して行く。被弾はするものの大した損傷には至っては無い。

 

『クソ!弾切れか!』

 

ザクマシンガン改からの弾幕が途絶える。その隙を逃す事無くハイザックに突っ込む。ビームサーベルを振るうタイミングを確認。アモス中佐は後退しながらザクマシンガン改のリロードを試みる。だがデブリが邪魔で後退速度が出てはいない。

 

「終わりだ」

 

『っ!?』

 

俺の言葉にアモス中佐は息を飲む。その間にビームサーベルの間合いに入る。何時も通りに決める。そしてビームサーベルを振るう瞬間だった。それは運命だったのかも知れない。折れた心に整備不良の機体。この2つが合わされば当然の結果だったのだろう。

 

次の瞬間、機体に振動が走った。

 

「な、何だ!?」

 

モニターで機体状況をチェックする。そして原因が直ぐに分かった。それはバックパックが再び咽せてしまったのだ。

 

「こんな時に!?」

 

俺はペダルを踏み直す。しかしその隙は余りに大き過ぎた。急激に速度を落としたジム改に対しアモス中佐は冷静に後退を開始。その間にザクマシンガン改のリロードを済ませる。

 

『貴様…私を辱めた罪は重いぞ!!!』

 

ザクマシンガン改の弾がジム改に対し次々と着弾する。未だにバックパックが止まってしまい右脚部のスラスターで回避を試みるも吹き飛ばされる。

 

「ぐわあああ!?こ、この野郎!!!」

 

コクピット内にも被弾の影響により破片が左肩に突き刺さる。しかし気にしてる余裕は無く、60㎜バルカンをハイザックに向けて撃つ。しかし60㎜バルカンの攻撃を無視してハイザックは近寄って来る。

 

『手古摺らせおって。これで終わりだ!』

 

ハイザックの右腕からワイヤーが飛び出す。そしてジム改のコクピットに先端がくっ付く。次の瞬間、ジム改に対し電撃が走る。それはアモス中佐のハイザックには鹵獲用に追加装備されている【ヒート・ワイヤー】だった。

 

「ッッッ!?!?!?!?」

 

途轍も無い電撃が身体を襲う。そして一瞬にして意識を失って行く。

 

(そう、言えば…約束を……破って)

 

あの人と約束した事。もう二度と戦場には出ないと言う約束。それをすっかり忘れてしまっていた事。薄れ行く意識の中様々な後悔を思い出して行く。そして視界が徐々に徐々暗転して行く。

 

(最後……謝り、たか…な)

 

何に対しての謝罪なのか。最早思い出す事無く意識を手放したのだった。

 

……

 

「クソ。こんな…旧式に!」

 

アモス中佐は八つ当たりにジム改を何度も踏み付ける。するとブラーサ小隊のハイザックが近寄って来る。

 

『アモス中佐、申し訳有りません』

 

「貴様等!たかが1機相手に何をしていたか!然も手加減されてるでは無いか!」

 

ブラーサ小隊は損傷機こそあれど死者は居ない。その事に気付いたアモス中佐は更に怒りが増す。

 

『『『申し訳有りません!』』』

 

「ふう、ふう…まあ良い。この機体からパイロットだけ出しておけ。機体は破壊しろ。私は先に戻る』

 

『はっ!了解しました!』

 

アモス中佐は部下に後処理を任せて先に帰投する。そして自身の手を見つめる。その手は恐怖による物なのか震えていたのだった。

 

(死の恐怖か。だが勝ったのは私だ。それが全てだ)

 

そして操縦レバーを何時もより強く握る。自身の受けた恐怖を押し潰す為に。

 

宇宙世紀0085.2月11日。ルナツー方面軍第031パトロール部隊、ヘイルズ小隊はジオン残党軍との戦闘により全滅する。

 

運命は力有る者を決して逃がしはしない。




ジム改「力尽きてすまんな」
吹雪型「俺も力尽きてすまんな」


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ZEシステム

夢、記憶の中にある夢だろうか。家族と共に過ごし、将来を誓い合った女性と一緒に居る夢。この幸せが一生続くと信じていた。だが、あの日コロニーが全てを吹き飛ばした。家も家族も愛する人も。何もかも。

ジオンを憎め。ジオンを殺せ。ジオンに慈悲を与えるな。ジオンを生かせば同じ事をする。スペースノイドに自由を与えるな。奴等は悪だ。悪に自由を与えれば悲劇が起こる。

仇を取るのだ。愛する者達の為に武器を取るのだ。その為の器は用意している。さあ、己の正義を持ち悪に対し容赦無き鉄槌を降すのだ。

 

(違う…違う違う違う!こんな記憶は知らない!俺は…俺は……分からない。俺は一体誰なんだ!!!)

 

……

 

宇宙世紀0085.3月15日。オーガスタ基地

 

オーガスタ基地の地下研究室では捕獲した3人の調整が行われていた。彼等は頭に大型のフルフェイスヘルメットを被り座った状態になっていた。

 

「ブラックモア博士、2番目が再び拒絶反応を示してます。しかし前回より抵抗力は落ちています」

 

「ふぅむ。このままでは廃人確定だな。折角良い素体が手に入ったと言うのに」

 

ブラックモア博士はやれやれと言った雰囲気を出しながら指示を出す。

 

「再度マインドコントロールを行え。そうだな…マインドコントロール中に私が少し話し掛けよう」

 

「は?話し掛けるですか?それでは上手く出来なくなると思うのですが」

 

「確かにな。だが2番を簡単に死なせたくは無い。1番と3番も中々だが2番はそれ以上の身体能力を持っている。現にこの環境に身体は適応しつつ有る。後は理性の方を抑えれば行ける筈だ」

 

「分かりました。マインドコントロール再開します」

 

そして再び実験が再開される。それと同時にブラックモア博士は2番に話し掛ける。

 

「よく聞くんだ。お前は今日新しく生まれ変わるのだ。そしてその流れに身を任せれば良い。そうすればお前は死ぬ事は無い。お前は知っている筈だ。戦場で生き残る戦いをしていたお前なら」

 

ブラックモア博士の言葉に反応を示す2番。

 

「さあ、生き残れ。この環境で生き残る方法を選べ。そうする事が最良の方法だと言えよう」

 

そして2番のマインドコントロールは最終段階に入る。

 

「2番目の調整は今の所順調です。まさかこうも上手く行くとは思いませんでした。流石ブラットモア博士です」

 

助手の1人が博士を褒める。それに対しブラットモア博士は饒舌になる。

 

「2番の勘は鋭い。流石は一年戦争から生き残って来た者だ。それ故に死には敏感だ。極め付けに此奴は幾度となく死に掛けたのだ。人一倍死に対する恐怖心は強い」

 

それは戦士に対する皮肉だろうか。戦場で無い場所でも生き残ろうとする彼を嘲笑うかの様に言い放つ。

 

「生き汚いと言える存在だからこそ、この実験には丁度良い素体なのだよ」

 

その言葉に2番目は反応を示す事は無かった。

 

……

 

宇宙世紀0085.12月25日。

 

オーガスタ基地の研究者達は着々と強化人間の調整を済ませていた。そして彼等が搭乗する機体の完成も間近となっていた。そんな中、アモス・ベアリー中佐はブラックモア博士の元に赴いていた。

 

「失礼するよ。ブラックモア博士は居るかな?」

 

「これはベアリー中佐、如何されましたか?素体の調整はほぼ完成してますよ?」

 

「素体の調整は勿論だが、此奴らは何時になったら使える様になるのだ?」

 

アモス中佐はブラックモア博士をひと睨みしながら言う。

 

「勿論通常機での使用も可能です。しかし、もう少しお待ち下さい。そうすれば新しいシステムが完成します」

 

「その新しいシステムとやらは何時完成するのかと聞いているのだ!ロイ・ブラックモア博士!何も成果を出せぬ研究に何時までも上層部は黙ってはいないぞ!」

 

アモス中佐は血管を頭に浮かべながら叫ぶ。それは彼自身が多大な苦労をしているのに関わらず、何も成果を掲示しないブラックモア博士らに対する憤りだ。

 

「大丈夫です。基礎の部分は完成しています。此方をご覧下さい」

 

しかしブラックモア博士は動揺する事無くリモコンを弄る。そしてモニターに映し出されるのは新システムの理論値だった。

 

「このオーガスタ基地は一年戦争時に中々ユニークな研究をしていました。一つは【EXAMシステム】。そしてもう一つが【ペイルライダー計画】の【HADES】です」

 

そして同じ様に数値とグラフが並べられて行く。それを黙って見続けるアモス中佐。

 

「先ずEXAMシステムは決定的な欠点が有りました。それは戦場に於いての暴走により敵味方問わず攻撃をしてしまいました。まあ、最終的には適合者が居た為運用され続けましたが搭載機は戦闘により消失。更にEXAMシステムの再構築が不可能になってしまいました」

 

ブラックモア博士は手でグラフを弄り次の内容に移して行く。

 

「次にHADESですが、所謂人間型CPUと言えるでしょう。然も搭乗者は多大な負荷が掛かり、記憶障害を起こしてしまいました。更に悪い事に関連施設も何者かにより破壊されてしまい、殆どは残っておりません」

 

「ならどうやって新システムを作り出したのだ?二つ共消失してるでは無いか」

 

「ご安心下さい。初期理論に関しては私は熟知しております。何せ…私も少なからず関わっておりましたので。そして今回の新システムのベースになってるのはHADESになります」

 

ブラックモア博士の言葉にアモス中佐は驚きを隠せなかった。何故ならオーガスタ基地でのニュータイプ研究関係の資料は本当に限られた者のみにしか見る事が出来ないからだ。にも関わらず、その一部を知る人物が目の前に居る事に驚いたのだ。だが、その感情を抑え話を進める。

 

「HADESだと?それでは記憶障害が起こるのでは無いのか?私の部隊は素体の介護をするつもりは無いぞ」

 

「ご安心下さい。あくまでベースの部分のみです。そしてシステムは非常に単純な物になっております」

 

そしてグラフ、数値、映像を映し出して行く。

 

「今迄のシステムは無駄が多かったのです。ですが人を殺すのに複雑なシステムは必要有りません。それこそニュータイプ何て存在は必要無いのです。私は考えた結果、ある結論に至りました。要は相手の攻撃が見えれば良いのです。その為に多少の負荷は掛かりますが…まあ、理論上は問題有りませんので」

 

其処には映像が映し出される。その映像を見てアモス中佐も納得といった表情になる。

 

「成る程な。ん?このシステムの名前は何だ?」

 

「ああ、名前ですか。【Zeit Erweiterung】で【ZEシステム】になります。あ、因みにドイツ語から取りましたよ」

 

「何処の語源でも構わん。しかし【時間拡張機能】か。大方予想出来る名称だな」

 

「はい。相手の攻撃、動きを見える時間の中に居る。つまり、より正確で精密な攻撃が可能となっております。更にその時間軸が広がった世界を有効活用出来るのが歴戦のエースと言う訳です」

 

ブラックモア博士の目に狂気や憎悪は映し出されてはいなかった。寧ろ純粋に過程と結果を追い求める研究者其の物である。

 

「そして、それを可能とした機体も完成しております」

 

「何?機体は完成しているのか」

 

「はい。機体はRGM-79Qジム・クゥエルになります。あの機体は良好な状態が多いので入手するのに苦労はしませんでした。それに改修するのに一番適した機体でもあります」

 

そしてモニターにはジム・クゥエルに近いシルエットの機体が映し出される。だが所々改修されていた。

 

「そしてベース機はあの有名な最強のニュータイプと言われたアムロ・レイに渡される筈だった機体です」

 

「アムロ・レイ。最強のニュータイプと言われてる奴だな。そのニュータイプに渡される筈だった機体…まさか」

 

アモス中佐はブラックモア博士を見る。それに対しブラックモア博士は頷く。

 

「そうです。【RX-78NT-1】通称ガンダムアレックスになります」

 

一年戦争末期に開発された機体。ニュータイプ以外扱う事は困難だと言われてる機体。そのコンセプトを受け継ぐ機体が3機格納庫に鎮座されていた。




やったね!パイロットがパワーアップ出来るよ!(強制的に)
やったね!ジム・クゥエルがガンダム並のパワーを手に入れるぞ!(尚一年戦争末期の奴)
やったね!……特に無いや←

後更新は暫く止まります。


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アフリカ大陸前哨基地

宇宙世紀0085.7月31日。サイド1、30バンチコロニーにて反地球連邦政府デモが行われるも、ティターンズ司令官バスク・オム大佐は毒ガス【G3】をコロニー内に注入を指示。結果1500万人の民間人が犠牲となる。後に【30バンチ事件】と呼ばれる。

 

しかし、この情報はティターンズによる徹底した報道規制により真相は殆どの人達には伝わらなかった。だが、この事件はスペースノイド、地球連邦軍とティターンズとの間により深い確執を作る結果になる。元々ティターンズを危険視してる地球連邦軍将兵は多数居る。

ティターンズは確かに治安回復や戦果を挙げてきた。だがそれ故に増長し傲慢な態度を取り、スペースノイドを弾圧し続けた。

 

……

 

強化人間。その存在は人工的にニュータイプを作り出す事だ。身体を薬物による強化。催眠や強迫観念によるマインドコントロール。そして1番の目的は感応能力の獲得にあった。

しかしロイ・ブラックモア博士はニュータイプの存在を認めつつも新人類とは認めていなかった。彼にとってニュータイプとは兵器を効率良く動かし、敵を圧倒する存在だと考えていた。つまりオールドタイプのエースパイロットを強化すれば容易に効率の良い兵器が手に入ると。

勿論彼は研究者として被験体のデータを各施設に送る。そのデータは様々な形で強化人間研究に関わる事になるのであった。

 

宇宙世紀0085.11月1日。アフリカ大陸前哨基地。

 

アフリカ大陸は一年戦争で敗走したジオン残党軍が多数潜伏している場所だ。地球連邦軍もジオン残党軍の討伐作戦を何度も行なっていた。だが現地の住民に紛れたり、地球連邦軍に非協力的な住民がジオン残党軍に手を貸すなどで討伐作戦は順調には進む事は無かった。

更に宇宙世紀0081には連邦再建計画によりRGM-79Cジム改に統一される。しかし前線の兵士にとってジム改は到底満足出来る機体では無く、そのまま配備されてるモビルスーツを使用し続けるケースもある。

 

……

 

「ふあ〜、暇だなぁ。早いとこ交代来ねえかな」

 

前線で監視任務を受けてるRGM-79FD装甲強化型ジムのパイロットは欠伸をしながら任務に就いていた。とは言うもののジオン残党軍との本格的な戦闘は殆ど起きない。当初は討伐作戦を幾度となく行なっていたが、最近では監視任務のみである。

 

「これもティターンズ様々だな。彼奴らが出しゃばってるお陰で何もしなくても給料が出る。最高だな」

 

そう言ってウィスキーの入ったボトル缶の蓋を取り煽る。現にジオン残党狩りの仕事はティターンズが積極的に行なってる。なら彼等が暇してても誰も文句は言わない。

 

『おい、交代の時間だぜ』

 

「んお?やっと来たか。待ちくたびれたぜ」

 

暫くすると交代の連中が来る。機体はRGA-80ジム・キャノンだがビームライフルを装備してる辺り近代化改修済みなのが分かる。

 

『何言ってやがる。何もして無いだろうが』

 

「何もねえから暇なんだよ」

 

そんな時レーダーに反応が出る。識別を確認すると味方のミデア輸送機が2機此方に接近していた。彼等は何となくズーム機能を使いミデア輸送機を見る。そのミデア輸送機は紺色でティターンズのエンブレムが付けられていた。

 

「あれってティターンズの輸送機かよ」

 

『みたいだな。だけど俺達には関係無いさ』

 

しかしティターンズの輸送機を見ても自分達には関係無いと思ってる彼等は他人事である。

 

「そうだな。しっかし、随分低空で飛んでるな。給油しに来たか?」

 

『分かんねえな。案外この辺りを荒らしに来たりしてな』

 

「勘弁してくれよな。そんな事したらトバッチリを被るのは俺達だぜ」

 

『違いない。だが着陸態勢に入ってるな。やっぱり給油しに来たかもな』

 

彼等が話してる間にミデア輸送機は前哨基地へ着陸態勢に入る。そんなミデア輸送機を尻目に自分達の任務に戻るのだった。

 

……

 

ティターンズ所属のミデア輸送機は前哨基地に着陸する。そして積荷を外に出す準備をする。

 

「各自急ぎモビルスーツを搬出せよ。私はこの基地の司令官に話を通しておく」

 

其処にはアモス中佐が数人の部下に指示を出ている姿があった。

 

「中佐。連中はどうしますか?」

 

「彼奴らはミデアに待機させておけ。何かあれば私かブラックモア博士に連絡をするんだ」

 

「了解しました」

 

アモス中佐は司令官に会う為にビックトレーに向かう。そしてアモス中佐は慎重な対応をされながら司令室へ通される。

 

「突然の訪問失礼する。私はティターンズ第6独立戦隊所属アモス・ベアリー中佐だ」

 

「これはこれは。まさかティターンズの中佐殿がこんな僻地に来られるとは。あ、私は地球連邦軍」

 

「君の事は資料で読んだから名乗りは必要無いよ。例え裏でジオン残党から賄賂を受け取り仮初めの平和を作り上げ、更に軍費の一部を横領していてもだ」

 

自身に身に覚えがある司令官は一瞬で顔色を青を通り越して白くなる。更に脂汗が大量に出て最早全て当たってると自白しているものだ。

 

「だが私は寛大な心の持ち主だ。これから言う事に素直に頷けば良い。勿論拒否して貰っても構わない。その時は君の栄えある軍人人生が終わり、残りの人生を牢屋で過ごす事になるがね」

 

「あ、あぁ…わ、分かりました。全て…了承します」

 

「そうかそうか。ではこれより前線を上げる。君の持つ全ての部隊に通達せよ。ジオン残党狩りを開始するとな」

 

「りょ、了解しました!」

 

「期待してるよ。我々ティターンズへの積極的な協力をな」

 

アモス中佐は司令官の返事を聞き司令室を後にする。そしてアモス中佐はミデア輸送機に戻りブラックモア博士に会う。

 

「ブラックモア博士これより三日後此奴らの実践投入をする。構わんな」

 

「勿論です。では私は最後の調整を行なっておきますので」

 

ブラックモア博士は特に気負う事は無く何時もと全く変わりは無かった。

そんな彼等の背後にはブラックとダークブルーの色合いのRGM-79Q-NT ジム・アルトが鎮座していたのだった。



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アインス、ツヴァイ、ドライ

宇宙世紀0085.11月4日。

 

前哨基地では各部隊が慌しく出撃準備を整えていた。旧式と化した61式戦車や戦闘ヘリに装甲強化型ジムやジム・キャノン、更に数は少ないが量産型ガンタンクも出撃準備を行なっていた。

その中に最新鋭機のハイザック4機、ティターンズカラーのジム・クウェルに酷似した機体が3機が居た。

 

「ブラックモア博士、強化人間の調整はどうだ?」

 

『順調です。数値も規定内で安定してます。問題無く中佐の指示通りに動かせます』

 

「だと良いがな。間も無く出撃だ。アインス、ツヴァイ、ドライ、貴様等の存在価値を此処で示せ。でなければジオンはより多くの人々を殺すだろう。そう、お前達の家族や仲間が殺された様にな」

 

『ジオンは全て殺さないと。また沢山の人達が…』

 

『殺す殺すコロスコロス。ジオンは俺が全て潰す』

 

『……』

 

「ツヴァイ、返事はどうした?貴様は何も感じんのか?」

 

アモス中佐は返事のないツヴァイに問い掛ける。ツヴァイは少し間を置き答える。

 

『…ジオンは敵』

 

「ふん、まあ良い。ブラーサ小隊、ロックフォーゲル小隊間も無く出撃だ。表向きはジオン残党の殲滅だ。この意味を十二分に理解せよ」

 

それから15分後にアフリカ大陸前哨基地付近のジオン残党狩りが開始されるのだった。

 

……

 

地球連邦軍前哨基地から数十キロ離れた場所に廃墟と化した街があった。だが其処には活気があった。人々の生活の営みが有り子供や若い男女がチラホラいるのだ。

だが建物の影にはジオン残党軍のMSであるザクやドムが擬態された状態で鎮座している。建物の上には多数の対空砲、対空ミサイルが設置。更に自走砲やマゼラ・トップも存在している。

無論パッと見ではバレる状態ではない。遠目から見れば只の廃墟にしか見えない。そしてそんな廃墟に住み着く住人がいるくらいにしか見えないのだ。

廃墟から離れた森の中には大型のレーダーが周辺警戒を行なっていた。だが監視してる兵士は呑気に雑誌を読んでいる。何故なら今は平和な状態にしているのだ。自分達は生存し、地球連邦軍は軍費を常に国民から徴収出来る。更にお互いに被害が無ければ尚更良いだろう。

しかしレーダーを写すモニターに多数の反応が現れる。それと同時にアラームが鳴る。

 

「ん?何だ何だ?輸送機の大群か?いや…これは、そんな…まさか!」

 

監視員は直ぐに隊長に緊急で報告をする。

 

「どうした?何があった」

 

『はっ!レーダーに多数の感あり。後10分程で第一陣が来ます』

 

「何?見間違えでは無いのか?」

 

『間違いありません!確認出来てるだけでも1個大隊規模です。戦闘ヘリ、61式戦車、更にMSも多数接近中です』

 

「馬鹿な。ええい、全軍に緊急出撃!連邦め、何をトチ狂っているんだ。直ぐに連邦軍の司令官に連絡を繋げろ」

 

そして廃墟に警報が鳴り響く。それと同時にジオン残党兵は慌ててMSに乗り込むか戦闘配置に着く。そして僅かな兵士達が女子供などの民間人達を避難させる。

 

『連邦軍が攻めて来たって本当かよ』

 

『今更何しに来てんだよ。目的は何だ?』

 

『俺が知るかよ。まさかティターンズか?』

 

『それこそ無いだろ。こんな僻地に何の用が有るんだよ』

 

旧式とは言え現地改修済みのMSは非常に扱い易い機体となっている。例え数年間のブランクがあったとしてもそれは地球連邦軍も同じ事だ。

 

但しティターンズを除いて。

 

『間も無くミサイルの射程圏内です』

 

「向こうの司令官との連絡は?」

 

『ダメです。連絡取れません。尚ミノフスキー粒子は依然低いままです』

 

「チィ、仕方ない。此方も犬死するつもりは無い。ミサイルが射程に入り次第攻撃開始だ」

 

そして両軍の持つミサイルが同時に射程に入った瞬間火蓋が落とされる。仮初めの平和はアッサリと崩れる。

誰も望まぬ戦いは一部の者達による実験場へと変わったのだった。

 

……

 

地球連邦軍とジオン残党軍との戦いは徐々に過激化が増して行く。元々お互い憎しみ合った者同士。誰かが殺されれば仇撃ちする為に反撃する。その繰り返しにより被害が徐々に増えて行く。

ジム・キャノンの砲撃により砲台が吹き飛ぶ。ザクの持つザクマシンガンから放たれたの多数の弾丸が61式戦車を次々と破壊。戦闘ヘリのミサイルと機銃が建物に隠れてる兵士や民間人を潰す。対空砲が戦闘ヘリをはたき落すが爆発の衝撃で更なる被害が出る。ジム改がシールドを構えながらドムに向かって射撃をするが建物隠れられ当たらない。代わりにお返しだと言わんばかりにバズーカの弾が迫る。

最早何方も引くに引けない状況となる。そんな中地球連邦軍のビックトレーの艦橋内ではアモス中佐の副官が全体の流れを常に報告していた。

 

「そろそろだな。我々は右翼から攻める。ビックトレーの砲撃支援は10分後に行え」

 

『了解しました。直ぐに通達します』

 

「聞いての通りだ。これがロックフォーゲル部隊の初陣だ。無様な姿だけは晒すなよ」

 

『『了解』』『……』

 

一人分の返事は無かったが無視する。ツヴァイは安定してはいるが非常に無口だとブラックモア博士から言われているからだ。

そしてアモス中佐率いるブラーサ小隊とロックフォーゲル小隊はジオン残党の右翼側に付く。それと同時にビックトレーと量産型ガンタンクからの支援砲撃が開始される。

圧倒的な爆炎と爆風が全てを薙ぎ払う。其処にあった生活の営みも何もかもをだ。そして爆煙の濃い中でアモス中佐は命令を下す。

 

「ロックフォーゲル小隊攻撃開始。ジオン残党を殲滅しろ」

 

『『了解!』』『…了解』

 

3機のRGM-79Qジム・クウェルの改修機であり強化人間仕様でもある【RGM-79Q-NTジム・アルト】が遂に実戦に挑む。武装はシンプルにジム・ライフルを装備。腰にはハイパー・バズーカが懸架されている。

パイロットが催眠や薬物強化などの処置を施されていたとしても卓越した戦闘センスは簡単には腐る事は無い。更にジム・アルトにはZEシステムも搭載されている。またこの時代に於いては破格の機動性を実現しているモンスターマシンとも言えるのだ。

突然の砲撃と爆煙の中から突如現れたジム・アルトの姿にジオン残党兵の動きが一瞬止まる。だが直ぐさま迎撃を開始する。

ザクとマゼラ・トップが咄嗟に攻撃をするがアッサリ避けられる。代わりにジム・ライフルから放たれた弾が次々と被弾して爆散する。ザクタンクが両腕に持つザクマシンガンが弾幕を形成。しかしジム・アルトの異様な高さの機動性により距離を縮められビームサーベルでコクピットを貫かれる。

其処から先はジム・アルトの独壇場だった。ジオン残党軍の攻撃が見えてるかの様な動きで避けられ、的確な攻撃を受け次々とMSが撃破される。機動性の高いドムが果敢にも接近戦を挑む。

 

『その色合いとエンブレム。貴様等ティターンズか』

 

『自分達も続きます。コイツらはエースです』

 

『生き残ってる部隊はティターンズに攻撃を集中しろ!コイツらを見逃せば全てを失う!』

 

3機のドムがジャイアント・バズやザクマシンガンを撃ちながら距離を縮める。対してジム・アルトは散開してお互いの距離を取り始める。最初から連携を取るつもりは無いのか。

 

『馬鹿が。散開した時点で負けだ。各機左右の敵に牽制を!先ずは貴様からだ2番機!』

 

02と右肩に書かれた一番近くに居たジム・アルトに向けてザクマシンガンを撃ちながら距離を詰める。そして現地改修機故に背中に使い捨てのブースターが火を噴く。その瞬間ドムは更なる加速をして一気に距離を詰める。そしてドム特有の武装でもある拡散ビーム砲で目眩しをしようとした時だった。

ジム・アルトのバイザーが一瞬赤く光るのだった。

 

……

 

ツヴァイは特に何かを感じる事なく敵を撃破して行く。それが装甲車だろうとビルに隠れてゲリラ戦を仕掛ける兵士だろうと気にする素振りは無い。寧ろ僚機から入ってくる通信が少し煩いなと思うくらいだった。

 

『ハッハッハッ!死ねジオンが!お前らは地球に巣食ってる虫けらなんだよ!』

 

『死ね死ねシネシネ!家族の苦しみはこんなもんじゃないんだぞ!』

 

任務は順調に遂行出来ていた。機体の性能も非常に良い為旧式のMS相手では梃子摺る事が無いなとも思っていた。

そんな時だった。ロックアラームが鳴ったと同時に足元に爆発が起こる。見れば3機のドムが迫って来ていた。僚機はさっさと散開して距離を取る。ツヴァイ自身も直ぐに後退をして距離を取ろうとする。だが目の前のドムが急加速をした瞬間危機感を感じたのだ。

 

《ZEシステム 起動》

 

その瞬間ツヴァイの見る世界がゆっくりになる。それでもドムは徐々に距離を詰めてくる。ドムの持つ拡散ビーム砲が光り始める。其処に向けてジム・ライフルで照準を付ける。そして一発だけ発射。弾丸は吸い込まれる様に拡散ビーム砲に当たり機能を止める。だがドムは止まる事は無くヒートサーベルを振り被る。此方も左手にビームサーベルを抜き展開しながら振り被る。

2機が交差した瞬間、ヒートサーベルを持つドムの右腕が宙を舞う。その間に右手に持つジム・ライフルで後続のドムのモノアイに向けて狙い撃つ。モノアイが破壊されるが、そのまま突っ込んで来るドムに対してビームサーベルを突き立てる。1機はコクピットに直撃。最後のドムは通り過ぎた所を背後から撃つ。

そして動かなくなったドムから離れて少したって2機のドムが爆散する。最初のドムはそのまま通り走り去ってしまう。流石にあのスピードには追い付けれないなと思っていると世界が元に戻って行くのを感じるのだった。

 

……

 

ブラックモア博士と他の研究員はモニターに現れる情報を逐一纏めていた。まだ全てが決まった訳ではないがアインス、ツヴァイ、ドライがZEシステムの使用率はアインスとドライが高くツヴァイは低いものだった。

 

「やはり感情の欠落は痛かったかも知れんな。ツヴァイの使用頻度が低いままだ」

 

「仮想シュミレーターではそれなりの使用率を出してましたが。尤もツヴァイの適合率は一番低かったですが」

 

「適合率は此方で調整すれば良い。だが逆に使用頻度が高いのも問題だ」

 

「一番多いのがドライですね。続いてアインス。やはりアインスのデータを元に纏めた方が良いのでは?」

 

「まだ時間はある。もしかしたらツヴァイ、ドライが適合するかも知れん。アインスとて使用する度に脳にダメージを受けてるからな。それではダメなのだ。このシステムを量産化するにはパイロットの脳負荷をある程度抑える必要がある」

 

ZEシステムは相手より圧倒的に優位に立てる。だが代わりに脳へのダメージが深刻なのも事実だ。ブラックモア博士はまだまだ実戦データが必要だと感じながらもモニターを食い入る様に見つめるのだった。



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