落第騎士と幻影騎士の英雄譚 (またたび猫)
しおりを挟む

解放軍デパート襲撃編
怠惰な騎士




皆様どうもです‼︎
頑張って【リメイク版】として書き直してみました。
理由は昔の一話は見ていて納得いかなかったので
見直しながら更に書き直してみました。



皆様の『感想』、『評価』、『お気に入り』、
『投票』などの応援をよろしくお願いします‼︎
それが豆腐の様な僕の脆い心の支えになります。


誰が言ったかは忘れたが世界は何よりも

『素晴らしくて平和な世界』だと誰もが勘違い

している様だが、世間が言う程に素晴らしくて

平和な世界だろうか?

 

 

 

 

もし、『そうだ。』と言う人間がもし、

いるのならそれは『詭弁』…いや、『偽善者』

や相当な『大馬鹿者』の類いの人種だろう。

 

 

 

 

おっと、長々と話し過ぎた。僕の回答は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この世に平和なんてない。『矛盾』で『虚構』

だらけの『残酷で最も愚か過ぎた世界』だと

僕は断言しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぁ〜〜…朝の7時か…怠いな…相変わらず

この世界の人間達は奴隷の様にセコセコと会社の

為に体力や時間を費やして犬の様に企業に尻尾を

振り続けて愛想を振りまいて『世界の歯車』として

適合していく……つまらないな…」

 

 

 

 

少年は時計を見ながらつまらないなそうに学園の

寮の部屋でいつもと変わらず授業をサボりながら

ごろ寝をしていた。

 

 

 

「あ〜‼︎しかし、ごろ寝は最高‼︎

もう何もしたくないし、何も考えたくないよ‼︎」

 

 

 

少年はそんな怠惰な事を考えていると一人だけの

部屋に女性の声が部屋に聞こえてきた。

 

 

「ほ〜う……そんなにも良いのか?」

 

 

「……もちろんですよ?というか折角、僕が

エアコンキンキンにきかせてぐったりと満喫を

していたのに勝手に入って来ないでくださいよ…

『黒乃理事長』?」

 

 

「残念だが、それは聞けそうにないな」

 

 

『黒乃』と言う女性の理事長は部屋の椅子に座り

《クッ、クッ、クッ》と笑いながら不機嫌な少年を

見て面白そうに話す。

 

 

「…そうですか…じゃあ、黒乃理事長、さっさと

今すぐ要件を言ってください。僕も貴方みたいに

暇ではないですから」

 

 

「まぁまぁ…そう邪険にするな…と、

言いたいところだが……私も忙しい身だからな…

では、要件を伝えよう…近いうちに貴様には

『七星剣武祭』に嫌でも出てもらう事になった。

もちろん、これは理事長命令だ。」

 

 

「えっ? ちょ、ちょっと‼︎ どうしてですか⁉︎

『破軍学園』には《雷切》や《紅の淑女》など

他の奴等が沢山いるじゃないですか⁉︎」

 

 

「確かにいるな…だが、貴様も聞いて知ってると

思うが私が理事長に就任した理由はもちろんお前も

知っているな?」

 

 

「はぁー……はい…だいたいは知っていますよ?」

 

 

破軍学園の前理事の能力とランクの基準で

『七星剣武祭』の選抜戦をしていたが今、目の前に

いる今の理事長、『黒乃理事長』の方針で色々

変わりそして今の『七星剣武祭』の選抜戦では

実力主義の1対1の真剣勝負で10回勝負で3日に1回

あるのだ。

 

 

「だったら、話しが早い。それに、今まで貴様の

サボりを見逃してきたがこれ以上のサボりは私は

許さんからな。良いな?ちなみに適当な返答は

決しても許さんからな?」

 

 

すると少年は深い溜息をして冷めた死んだような

瞳で黒乃に質問していた。

 

 

「黒乃理事長。お言葉ですが『前理事長』から

事前に『基準法』を聞いてると思いますが…

僕は魔力が少ない蟻以下の『最弱のランクF』の

伐刀者ですよ?」

 

 

「問題無い。過去の基準法はすでに廃止させた。

だから貴様も早いうちに参加するかは

どうか決めとけよ?」

 

 

「ちょ⁉︎ それって職権乱用じゃ…ってどんなに

言っても無駄ですよね……分かりましたよ……

出来るだけ前向きに考えてみますよ〜……」

 

 

「お前は全く…私の苦労も考えろ? たくっ…

あ、そうだ『黒鉄』も近いうちに『七星剣武祭』

に参加するらしいぞ?」

 

 

黒鉄? 何故、黒鉄の名前が出てくる?

黒乃理事長の表情は見ていて嫌でも分かる…

黒乃理事長は黒鉄にかなりの評価と期待している

のかは全く分からないし理解出来ない。

 

 

「……そうですか僕には何も関係ないですし、

要件はもう無いですよね?貴方が僕に一体、

何を求めているのか分からないですがこれ以上、

何をしても無駄ですから……では、僕はこれで

失礼します。」

 

 

「ああ…貴様が『七星剣武祭』に参加する事を

心の奥底から願っているぞ。因幡?」

 

 

その後、因幡と言われた少年は黒乃理事長を

背にして寮の部屋の扉を開けて出て行くと

隣の部屋からある叫び声が聞こえてきた。

 

 

「いやぁああ‼︎‼︎ケダモノぉおお‼︎‼︎」

 

 

「な、何だ‼︎ 一体何だ⁉︎」

 

 

「あぁ、そう言えば言い忘れていたが……

今日からヴァーミリオン皇国から第二皇女の

『ステラ、ヴァーミリオン』がこの破軍学園に

留学生として来る予定だったな?」

 

 

「なんでそんな大事な事を簡単に忘れてそんなに

落ち着い表情しているんですか‼︎ せめてその事を

『一輝』に伝えといてやれよ‼︎」

 

 

「いや〜どうせだったらそっちの方がとっても

面白そうだと思ったからさ?」

 

 

「そんな面白さはいりませんから‼︎早く一輝を

助けてやってください‼︎あぁ‼︎ もう、これだから

あんたと言う人は‼︎」

 

 

因幡は煙草を吸う黒乃理事長にそう言った後、

ステラと一輝が理事長室に呼ばれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(何で関係のない僕も此処にいるんだ…?)

 

 

因幡が理事長室でそう考えている間にも

気づけばいつの間にか話しが進んでいた。

 

 

「なりほど、下着を見てしまった事故を自分が

脱ぐくことによって自分も脱いで相殺しようと

したと…アホだろお前」

 

 

「ヒフティヒフティで紳士的なアイデアだと

思ったんですけどね」

 

 

「確かに紳士的ではあるな」

 

 

「いや変態紳士という意味ではなく……まぁ、

今思えば突然のことで僕も混乱してたんだなぁ」

 

 

「ふむ。つまり、彼女の魅力的な裸体を見て

我を失い、思わず服を脱いでしまったと」

 

 

「こいつ最低ですね理事長? もうお前さぁ…

『黒鉄一輝』じゃなくて『変態一輝』って改名を

した方が良いのでは?後、黒乃理事長。今すぐ

110番に電話してさっさとこの変態を警察に

突き出しましょう。日本とヴァーミリオン皇国の

関係が悪くなる前にこいつの身柄渡して彼女の

故郷であるヴァーミリオンの貴族の方々に説明

すれば今よりは状態よりは少しぐらいはマシに

なるじゃないですか? と言うか明らかにそれしか

ないんじゃないですか?」

 

 

 

 

「……確かにそうなんだけど…それに二人で

辛辣過ぎるその言い回しやめてくれません?

僕がすんごい危ない人みたいじゃないですか…

それにさっきから『変態一輝』って何ですか‼︎

やめてください⁉︎ 警察に捕まったら全くもって

洒落にならないですよ‼︎」

 

 

「落ち着け因幡。とは言ってもな黒鉄。彼女の

立場を考えてみろ。春休みで人が少ない学生寮で

着替えしていたら、偶然見知らぬ男が入ってきて、

おもむろに衣服をキャストオフ。どうだ?」

 

 

 

「それに『みたい』とかじゃなくて実際、本当に

やった事だろ一輝?そうやって犯罪者は自分の

やった事を言い逃れる為に『違うんだ‼︎』とか

『そんなつもりでは…』などのお決まりの台詞を

吐き捨てて絶対に己の犯行を認めないんだよ?

しかし、まさか一輝が自分の体を露出して興奮する

性的犯罪な行動をするとはな……」

 

 

一輝は二人の確信をついた言葉に追い詰められる。

因幡に至っては一輝をまるでゴミを見る様な目を

して少しドン引きして更には右手にはスマホを

しっかりと持っていた。それを見た一輝はすぐに

直感した。この人は冗談抜きで本気で警察に通報

する気だと、そんなやばい状態の中、額に大量の

冷や汗をまるで滝の様に汗をかきながら自分の行い

を思い出していく

 

 

「すんごい危ない人でしたね……それに僕は

犯罪者でもなければ露出狂じゃありませんから⁉︎」

 

 

 

「でも、それを決めるのは君や僕達じゃなくて

彼女、ヴァーミリオンの皇女様だよ?」

 

 

 

「う"…」

 

 

一輝は自分でやった事を認めながら自分がした

行いを悔やんでいた。

 

 

「……はぁ。ステラさんには留学初日に

申し訳ないことしてしまったなぁ。この日本を

嫌いにならないでくれればいいんだけど」

 

 

 

「なんだ。黒鉄はヴァーミリオンを

知っているのか」

 

 

 

「ついさっき思い出しました。鉢合わせしたときは

気が動転して忘れていましたけど」

 

 

そう、ステラヴァーミリオンはヨーロッパの小国

ヴァーミリオン皇国第二皇女。彼女が日本の

破軍学園に入学したことはそこそこニュースに

なっていた。

 

 

 

『十年に一人の天才騎士! ヴァーミリオン皇国

第二皇女ステラ・ヴァーミリオン(15)

破軍学園に歴代最高成績で首席入学!』という

見出しの新聞記事はまだ記憶に新しい。

 

 

 

(第二皇女で天才騎士か……また随分とご立派な

世間からの肩書きをお持ちな事で……)

 

 

「本当のお姫様で首席入学なんて、

すごいですよねぇ」

 

 

「それもぶっちぎりのナンバーワンだぞ。すべての

能力が平均値を大幅に上回り、伐刀者にとって一番

大切な能力である《総魔力量》に至っては新入生

平均値の三十倍という正真正銘のAランクだ。

……能力値低すぎて留年してもう一回一年生をやる

Fランクとはえらい違いだな。なあそう思うだろ

《落第騎士》(ワーストワン)」

 

「ほっといてください」

 

 

何しろ黒鉄一輝の《総魔力量》は平均の十分の一

しかないのだから。

 

 

「それにこの学園にはもう一人、留年してた

『Fランク』がいたな?」

 

 

黒乃は因幡の顔を見ながらニヤニヤと笑いながら

話していると因幡の機嫌が悪くなり嫌な顔に

なっていた。

 

 

「黒乃理事長、嫌味は程々に…それに大事な事から

かなり脱線しているぞ?良いのか?それだけなら

僕は帰りますよ?」

 

 

「ああ、そうだったな。じゃあ紳士らしく責任を

取ってもらおうか」

 

 

「………失礼します」

 

 

理事長室の扉が開き件の少女、

ステラ・ヴァーミリオンが入室してきた。

 

 

「ステラ・ヴァーミリオンさんごめんさっきのは

決してわざとじゃないでも、君を驚かせたのは

事実だ男としてのけじめは着ける煮るなり焼くなり

好きにしてくれ」

 

 

「……貴方…名前は」

 

 

「…黒鉄一輝」

 

 

「いさぎいいのね、イッキ。正直国際問題に

してやろうかと思ったけど、その心意気に免じて

私も寛大に応じるわ」

 

 

ステラがそう笑顔で言い一輝も安堵の溜息を

して雪は欠伸をしていると次の瞬間、ステラは

 

 

「腹切りで許してあげる」

 

 

「え?」

 

 

「…………」

 

 

「えーと、冗談だよね?」

 

 

「冗談でここまで譲歩しないわ!」

 

 

「おおまけて、『腹切り』ってこと⁉︎」

 

 

一輝は顔を青ざめながらも彼女、

ステラ・ヴァーミリオンに聞いていた。

 

 

「あ、あのさぁステラさん。もう少し他の

解決方法はないのかな?」

 

 

「む、何が不服なのよ。『日本男子とってハラキリ

は名誉なことでしょう?』」

 

 

《パリーーン‼︎》

 

 

「えっ……?」 【全員】

 

 

ステラ達は音がする方を見ると理事長室の花瓶が

粉々に割れていた。

 

 

「ステラ・ヴァーミリオン……貴様は今、

『切腹を名誉な事』だと…そんなふざけた事を

言ったのか?」

 

ステラにとって因幡は怠惰な男に見えていたが

今の因幡は怠惰な男ではなく、とても冷たく

虚ろな瞳と今迄にない殺気をステラに向けていた。

 

 

「あ、あんた、誰よ⁉︎ あんたには

関係ないでしょ?」

 

 

「あぁ、確かに僕は関係ないがなぁ…それに

貴様と一輝がどうしようが僕は何も言わない…

二人の問題だからな…だがな……貴様の『切腹』

が『名誉』 だってふざけた御託については

言わせてもらう」

 

 

因幡はステラが先程言った『切腹は名誉』の

言葉にとても苛立っていた。

 

 

 

 

切腹が名誉な事だと…? この箱入り娘の皇女様は

何も知らないくせに何をもって切腹を名誉だと

言うのだ?

 

 

 

 

「そもそも、切腹はな…貴様が思っている程、

全部が全部名誉だけじゃない。影では無実で罪人

の様な扱いをされてその無念の中で死んだ奴等

だって数えきれないくらい多くの歴史の中で人間達

が死んでいる。それに貴様みたいな貴族の小娘には

全く知らんだろうがな…『介錯人も大事な人間が

苦しまない様にこの手で一瞬で殺さないといけない

時だってある。』だからヴァーミリオン…

『切腹と名誉』を取り違えて何も知らない奴が

これ以上、『切腹を名誉』だとかこの国の歴史を

二度と軽々しく言うな……」

 

 

 

 

その時の因幡は何故かとても悲しみが虚ろな瞳に

写ってグルグルと混ざりあっていた。

 

 

(これだから、世間知らずの皇女様は…勝手に

色々と自分中心に傲慢に決めつけやがって……)

 

 

因幡はステラに苛立っていると黒乃達の

驚いた顔を見てますます気分が悪くなり

 

 

「ちぃ……気分が悪くなった。

すまないが僕はこれで失礼する……」

 

 

「因幡、貴様何処に行く⁉︎」

 

 

黒乃は因幡の予想外の行動に唖然としていたが

因幡がこの部屋から出て行こうとするのに

気づいて必死に止めていた。

 

 

「何処に行こうが僕の勝手だろ? それとも…

黒乃理事長…貴方に毎度毎度行き先も報告させて

更には僕を管理しようとなんて貴方は一体、何様

のつもりなんですか?」

 

 

 

 

因幡はそう黒乃に言い放ち冷たく虚ろで氷のような

冷めた瞳を向けながら因幡は理事長室を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

因幡は理事長室を出た後、ステラ・ヴァーミリオン

の話してた腹切りや名誉の話しを思い出しながら

イライラしながら廊下を歩いていた。

 

 

 

 

「あの箱入り娘の皇女様が余計な事を言うから

嫌な事を思い出しちゃたじゃないか…しかも

いつもの癖が出ちゃうし……あぁ、もう考えるのは

もうめんどくさいから寮に今から戻ってさっさと

寝ようかな…まあ、それに退学になった時は……

その時になって考えよう‼︎」

 

 

因幡はそう怠惰な願望を先に優先して言いながら

自分の寮の部屋に戻り二度寝をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして黒乃達は因幡が出て行った後、ステラと

一輝にこれからの部屋の事やルームメイトについて

説明していた。

 

 

「ど、どういうことですか理事長先生!」

 

 

「そのままの意味だぞ、ステラ・ヴァーミリオン。

何か疑問が?」

 

 

「大ありですッ‼︎‼︎」

 

 

「僕もです。確かに破軍学園の寮は二人一部屋

だけど、男女が一緒なんて聞いたことない」

 

 

「それは私が理事長に就任する前だった去年の話だ。

黒鉄。お前にはすでに話しただろう。私の方針を」

 

 

「……完全な実利主義。徹底した実力主義

…………でしたっけ」

 

 

「そう。それが私の方針だ。

破軍学園は近年、日本にある他の騎士学校六校と

比べていいとこがない。年に一度。七校合同で

主催し、一番強い学生騎士を決める武の祭典

『七剣武祭』でも負け続きだ。

私はそんな破軍学園を立て直すために理事長に

呼ばれた。この部屋割りはその第一歩。出席番号

も性別も関係ない。力の近い者同士を同じ部屋に

している。互いに切磋琢磨させ合うためにな。

同等の存在が近くにいれば、そこには競争が

生じるのが道理。この部屋割りはその競争を

意図的に誘発するための工夫というわけだ」

 

 

 

 

どうだすごいだろうと言わんばかりの不貞不貞しく

己の思惑を明かす黒乃。しかしその理屈に一輝は

疑問を持つ。

 

 

「だったらなおのこと変じゃないですか?

ステラさんはぶっちぎりのナンバーワンでしょ?

それがなんで学年最下位で留年した僕と

同じ部屋なんですか?」

 

 

「りゅ、留年⁉︎ あ、アンタ留年生なの」

 

 

「お恥ずかしいながら。……総合ランクもFだよ」

 

 

 

「F……。Fランクとアタシが、 実力が

近い者って……、ど、どういうことですか!」

 

 

「くく、まあ……なんだ。君たちは特例でな。

ぶっちゃけた話、ヴァーミリオンほど優れた者も、

黒鉄ほど劣った者も他にいないんだ。つまりーー

君達は二人とも、それぞれ全く正反対の理由で

ペアになれる生徒がいなかった余り者なんだよ。

だから余り者同士でペアになるしかなかったと

いうわけだ。納得してくれたか?」

 

 

「納得できるわけないでしょう⁉︎」

 

 

とステラは執務机を《バンッ!》と叩きつけて

抗議していた。そして話し合いで行き着いた結果は

『模擬試合をする』と言う結果になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…じゃ……兄…兄者…‼︎」

 

 

少年の全身には血に染まった刀を持ちながら虚ろな

瞳から涙を流して地に倒れている一つの骸を幼子の

ように抱きしめて泣き続けた。子供のように涙が

枯れるまでただひたすらに寒空の中、化物はただ

ひたすら泣き続けていた。

 

 

「⁉︎ 夢……か…」

 

 

少年は大量の汗をかきながら部屋の周りを見渡して

落ち着いていると因幡はベッドの横に何かいるのに

気が付いた。

 

 

「だいぶ、うなされていたみたいだね?」

 

 

「……今日に限ってお客が多いな……大体、

職権乱用だと言いたいところだが…あんたが

いるなんてな…んで、なんのようだ…

『西京寧々先生?』」

 

 

 

 

因幡はわざとらしく言うと寧々は笑顔で

 

 

 

「相変わらず冷たいね〜?そんなんだから

友達の一人もできねーんだよ?それになぁ、

いつも言ってるけど私にはそんな他人行儀

みたいな敬語をしなくてもいいんだぜ?」

 

 

そう言って天狗下駄をカツカツと音立てながら

因幡に近くに行く。すると因幡は身を起こして

溜息をつきながら寧々を見る。

 

 

「そうですか……では、お言葉に甘えて……

『ロリ先生』、僕はお昼寝をしたいので

さっさと出て行ってくれ……それに僕は

『ロリ』に起こされる趣味は全く無いので

じゃあ、おやすみ……」

 

 

因幡は寧々にそう言うと寧々は因幡の言葉が

どうしても許せなかったのか拳を握りしめて

我慢しながらプルプル震わせていたが因幡の

怠惰な態度と侮辱する返答によりついに我慢が

出来なくなって爆発した。

 

 

「テメェ‼︎ 誰がロリだ‼︎ 確かに良いとは

言ったけどよ調子に乗ってると本気で…」

 

 

「お前は何をしているんだ…寧々?」

 

 

寧々が怒っていると黒乃が背後から寧々の着物の

襟を掴み持ち上げると寧々の顔は真っ青になって

いていた。

 

 

「く、くーちゃん……こ、これには……

じ、事情があって…」

 

 

「ほーう…そうか、では後でその事情を

じっくりと詳しく聞かせて貰おうか……」

 

 

「は、はい……」

 

 

寧々は黒乃の威圧に負けてがっくしとしながら

力無き声を出して返事をしていた。

 

 

「黒乃理事長…やはり……貴方がこの『ロリっ子』

を差し向けていましたか…んで、ここまでして

一体、何が目的ですか?」

 

 

「テメェ‼︎ またロリって言いやがったな‼︎

更にはロリっ子って言いやがって‼︎」

 

 

「寧々……いい加減にしろ……これ以上、

事を大きくするなら貴様の給料値下げするぞ?」

 

 

「すみません‼︎ それだけは勘弁してください‼︎

お願いします‼︎」

 

 

寧々は黒乃に綺麗フォームで頭を下げていた。

 

 

(この人達は人の部屋で一体、何してるんだか…

もしかして…漫才か何かかな……?)

 

 

それを見ていた因幡はそう思いながら

そんな二人の会話をつまらなそうに見ていた。

 

 

「んで……なんですか? 早速、無能で怠惰な

Fランク騎士は今すぐ破軍学園をやめろとか

言いに来たんですか?」

 

 

「違う…全く、貴様は…まぁ、いい…

お前には、連れて行きたい場所がある…

だから寧々に頼んだら……」

 

 

「なるほど……そして、この目の前にいる

ロリっ子先生に頼んだと……」

 

 

「そうだ……後、寧々の事はちゃんと呼んでやれ…

また、揉めるだろうが……」

 

 

黒乃は因幡にそう言うと因幡は寧々を見ると

寧々は因幡に物凄い顔で睨んでいた。

 

 

「すみません……寧々先生……

寂しさのあまり……本当にすみませんでした…

そして、僕の為にありがとうございます。」

 

 

因幡は寧々に悲しそうな表情で言う、

もちろん因幡の演技で心にも無い迫真の

演技をするとと機嫌が悪かった寧々は

 

 

「わ、分かればいいんだ…お前にも

や、やっと私の偉大さが分かったか‼︎」

 

 

寧々は機嫌が良くなり、さっきの態度が嘘の様な

笑顔だった。

 

 

(ちょろいな…このロリっ子は……)

 

 

 

因幡は寧々を見てそう思ってると黒乃が因幡に

話しかけてきた。

 

 

「話しは済んだか? 問題も解決したみたいだな?

話しは移動しながらするとしよう……ちなみに、

今の貴様に拒否権はないからな?」

 

 

「わかりましたよ……行きますよ…全く……」

 

 

 

因幡は逃げられないと悟ったのか黒乃達と一緒に

目的地に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで…一応、聞きますけど、僕は一体、どこに

連れて行かれるのかぐらいは知る権利はあると

思うのですが? 黒乃理事長?」

 

 

「来れば分かる、黙ってついて来い。後、

逃げる真似したら…分かっているな?」

 

 

 

 

「全く…はいはい、分かりましたよ…

逃げませんよ、黒乃理事長?」

 

 

「ふん…流石の良い潔さだな〜」

 

 

 

「褒められても全く嬉しくありませんけどね?」

 

 

 

因幡は溜息をつきながら両手を上げて黒乃の

指示通りに黒乃についていくと黒乃が止まった。

 

 

「……ここですか? 黒乃理事長が必死になって

僕を連れてきたい場所ってのは?」

 

 

「ああ…そうだ、今から貴様には『あるもの』を

見てもらう」

 

 

黒乃がそう言って着いた場所は『第三訓練場』と

書いてあった。黒乃は第三訓練場の扉を開けると

黒鉄一輝とステラヴァーミリオンがお互いの刃を

ぶつけ合い火花散らせながら試合を行なっていた。

 

 

「どうやら、間に合ったみたいだな」

 

 

(この人は僕をこんな所にいきなり連れて来て

一体、どういうつもりだ…?)

 

 

因幡は疑問に思っていた事を黒乃に投げかけた。

 

 

「黒乃理事長…この模擬試合、貴方が審判を

しなくていいのですか?」

 

 

当然である。黒乃は規則には誰よりも一番、

とても厳しい人間だと因幡は誰よりも知っている

からだ。だが、しかし黒乃が何故しなかったのか

全く分からなかった。

 

 

「大丈夫だ手は打ってあるそれに貴様は私でないと

無理だと思ってな…」

 

 

「そこまでしなくていいですよ……」

 

 

因幡は困った顔してると因幡は一輝とステラの

試合を見て黒乃が自分に何を見せたかったのか

一瞬にして理解した。

 

 

「これが黒乃理事長がわざわざ必死になって

僕に見せたかった物ですか?『Aランクの騎士と

Fランクの騎士』の前代未聞の試合をわざわざ

見せる為に?」

 

 

因幡は黒乃に聞くと黒乃はニヤリと嬉しそうに

笑っていた。

 

 

「そうだ。、このよう試合は他の国ではなかなか

お目にかかれないぞ?」

 

 

「まあ……そうでしょうね……」

 

 

因幡も本当にそう思う。普通ではあり得ない

『Aランクの騎士とFランクの騎士』が試合を

しているのだから驚かない人間はなかなかいない

だろう。そして因幡はある異変に気が付いた。

それは…先程まで受け身だった一輝がステラに

攻撃している時だった。

 

 

(これは…まさか‼︎)

 

 

因幡はすぐに分かった。何故なら一輝のその

『剣の構え』や『剣の振り具合』などが先程の

ヴァーミリオンの構えや振り具合が似ている。

それどころかかなり酷似してる。それどころか

使い手であるヴァーミリオンよりもかなり洗礼

されていて良くなっているのが分かった。

 

 

『どうだ、黒鉄の模造剣技は?』

 

 

『……模造剣技…?』

 

 

「そうだ。黒鉄は相手の思考を掌握して『相手の

理を暴き出し互角の剣技を生み出す』剣技だ」

 

 

因幡は黒乃の言葉を聞いて理解した。目の前の

黒鉄と剣技とヴァーミリオンの剣技にかなり酷く

似ているのにも納得した。 いつもの因幡なら

【そうですか〜】とか、【へぇ〜凄い、凄い〜】

と適当に話しを合わせて聞いているだけなのだ。

 

 

だが……

 

 

 

「……愚かだ」

 

 

 

「なんだと……?」

 

 

黒乃は驚いている中、因幡は今、リングにいる

一輝のそんな『模造剣技』を許せなかった。

 

 

『あいつの努力を否定するつもりはない……

ただ、言える事はあれは愚策すぎる…あれは

剣客ではない…子供騙しもいい所だ…あんな

ペテン師を評価するとは貴方の見る目も随分

曇りましたね…黒乃理事長?』

 

 

 

「貴様…それは一体、どういう事だ?」

 

 

「『一刀修羅!!』」

 

 

「『焼き尽くせ! 天壌焼き焦がす竜王の焔‼︎』」

 

 

因幡と黒乃が話しているとステラが放った技の

紅蓮の竜が因幡に物凄いスピードで向かって

来たのが分かった。黒乃が因幡に質問する中、

観客席から生徒達の叫び声が第三訓練所に響いた。

もちろん因幡の背後から紅蓮の竜が来るので

因幡本人にはわからない状態だった。

 

 

「危ない‼︎ 避けろ‼︎」

 

 

黒乃は自分の霊装の二丁拳銃「エンノイア」を

顕現させて急いで紅蓮の竜に向けてトリガーに

指をかけて使おうとすると因幡は

 

 

 

「必要ないですよ…黒乃理事長?」

 

 

 

因幡がそう言って【カチン】と鳴った瞬間、

紅蓮の竜は一瞬にして真っ二つに斬られて

紅蓮の竜は消えていった。

 

 

「これがヴァーミリオン皇国最強のAランク騎士、

《紅蓮の皇女》ステラ・ヴァーミリオンの力か…」

 

 

(この程度か…思ったより大した事はないな……)

 

 

因幡は黒乃を無視して考え込んでいた。

それと同時に黒乃も驚きを隠せなかった。

 

 

(こいつ‼︎今、Aランクの騎士の技をあっさりと

一瞬にして斬り伏せただと‼︎ありえない‼︎

それにそれだけじゃない‼︎)

 

 

 

 

黒乃が驚いたのはそれだけではない。更に因幡の

伐刀者としての武器がそして振るったであろう

『一瞬すら見えなかったのだ』その事実を

目の当たりにした黒乃は更に深く考え込んでいると

 

 

「理事長……理事長? 黒乃理事長‼︎」

 

 

「あ、ああ、すまん……んで、なんだ?」

 

 

黒乃は因幡の声で我に戻ると因幡は背伸びして

大きな欠伸をして黒乃につまらそうに

 

 

「もう試合終わりましたよね?

でしたら…僕はもう帰りますね?」

 

 

「……は?」

 

黒乃は因幡の言葉が全く理解出来ていなかった。

それ以前に、あの二人の試合を見て奴は心の底から

何も感じなかったのか? 熱くならなかったのか?

その疑問が大きくなっていた。

 

 

「もう試合は終わったみたいですね…

早く向かった方がいいですよ?『黒乃理事長?』」

 

 

「ああ…そうだな…」

 

黒乃が試合を終えた二人を見て視線を因幡が

いた方を見ると因幡は煙のように消えていた。

 

 

「き、消えてるだと⁉︎」

 

 

黒乃は周りを何度も見回したが結局、因幡は

見つからず、額に冷や汗をかいていた。

 

 

「『因幡 雪』…少し、調べてみるか……」

 

 

黒乃はそう感じながらも試合を終えて倒れている

二人のいるリングの元に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ〜、つまんない試合だったな〜」

 

 

その後、因幡はレストランで食事して寝ていたら

知らないうちに外はすっかり真っ暗になっていた。

 

 

「はあ〜、寝すぎたな〜」

 

 

そう言いながらも暗い道の中、先程の試合の

感想を愚痴を口してこぼしていた。

 

 

「一刀修羅……」

 

 

『一刀修羅』、それはFランク騎士、黒鉄一輝が

必死になって編み出した技である。しかしその

『一刀修羅』は一日一回きりのかなりの欠陥が

ある技である。

 

 

「あの程度なら『彼女』の方が……」

 

 

因幡はそう考えていると

 

 

(……誰かいる)

 

 

因幡は気配を素早く感じ取りめんどくさそうに

溜息をつきながら大きな声で

 

 

 

「おい、さっきから僕をつけてる奴等、

いい加減に隠れていないで出でこいよ?

そこに隠れているのバレバレなんだけど…?」

 

 

因幡がそう言うと近くの電柱から『複数の男達』が

因幡の前に現れた。

 




『落第騎士の怠惰な騎士』【リメイク版】をここまで
読んでいただき本当にありがとうございます‼︎



これからも『感想』、『評価』、『投票』、
『お気に入り』などよろしくお願いします‼︎



これからもこのような豆腐の様な脆くて繊細な心
ですが必死で新しい作品や続きを書いていこうと
思います。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

招かれざる者

みなさんお久しぶりです‼︎


落第騎士を書いてみました。上手く書けてるかは
分かりませんが頑張って書きましたので、よろしく
お願います。更にオリジナルの敵キャラなどを
入れました。不安で仕方ありません‼︎
なので『感想』などあればよろしくお願いします。



『評価』や『お気に入り』が欲しいでござる‼︎
欲しいでござる‼︎欲しいでござる‼︎


電柱から出てきた5人の男達は因幡を睨み

つけてきた。

 

 

「おっさん達は何者だよ? 早く急いで

帰らないといけないんだけど?」

 

 

因幡は男達に声をかけると男達は表情を変えずに

淡々と話し始めた。

 

 

「貴様が裏世界の最凶災厄の暗殺者、

『辺獄』だな?」

 

 

「⁉︎」

 

 

因幡は驚きを隠せなかった。何故なら彼が裏の世界

で暗殺者として活躍したのは4年前の事で誰も自分

の正体、『裏の通り名』を知る者はごく僅かであり

ほんの一握りの人間しか全く知らないはずだった

からだ。

 

 

「……誰から聞いた…?」

 

 

「貴様のその反応、その態度はつまり当たりって

事で良いか『辺獄』よ?」

 

 

「だから『その名』を誰から聞いた‼︎」

 

 

因幡は男達に声を荒げて男達に殺意を向けると

男達は雪の質問に答えず剣や刀の《固有礼装》を

顕現させて因幡に武器を向けて構えていた。

 

 

「貴様に答える義務なし‼︎ さぁ‼︎『辺獄』よ‼︎

我らと尋常に命のやり取りの勝負をいざ‼︎

しようではないか‼︎」

 

 

「お前を倒せば我らの名が上がっていき更に

俺たちも『暴君』にも認められるってもんよ‼︎」

 

 

「だからお前はここで死ね‼︎」

 

 

 

 

男達は因幡にそう言って5人のうち3人の男達は

剣を振りかぶって斬りかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

残りの2人は電柱の近くで体がゴツい男と眼鏡を

掛けた細い男が様子を伺っていた。

 

 

 

「おいおい…あいつらだけでよかったのか?

相手はあの『黄泉送りの辺獄』だぜ? 下手すりゃ、

俺達が死ぬんじゃねぇか?」

 

 

 

「ええ、ですが『あの方』が言ってた通り彼の力、

そして抜刀者としての力を僕達には見極める必要が

あります」

 

 

「あいつ等はその為の捨て駒ってか?」

 

 

ゴツい男が眼鏡をかけた男に聞くと眼鏡をかけた

男は狂気じみた笑顔をしながら楽しそうに話す

 

 

『そうですね…確かにそうです。しかし、彼等の

犠牲はとてもとても必要な犠牲なのです』

 

 

「そうかい…俺はやっぱりお前が嫌いだ…」

 

 

「そうですか? 僕は貴方の事は意外と嫌いでは

ないのですがねぇ?」

 

 

「それは貴様にとって我らはは都合のいい時に

蜥蜴の尻尾みたいにいつでも捨てられる最高の

捨て駒としての意味じゃないのか?

いい加減にしろよ‼︎」

 

 

ゴツい男は眼鏡をかけた男の胸ぐら掴んで今にも

殴り掛かろうとしていた。

 

 

「……この手を離してくれないかな? それとも

僕と本気で殺り合うつもりなのかな?

『百人殺しの甚八』さん?」

 

 

「貴様こそそこまで分かっているのなら

いい加減に黙っていろ‼︎『首切りの与一』‼︎」

 

 

お互いが通り名を言って甚八が今でも与一に

刺し殺そうとすると与一は慌てずにただ単に

笑みを浮かべて甚八をただ見ているだけだった。

甚八は与一と初めて任務を共にした時から人の心を

逆なでするようなそんなやり方が何よりも一番

嫌いだった。

 

 

 

「ふ、ふふ…ふふふふ……」

 

 

「貴様…何がおかしいんだ…」

 

 

 

不愉快だ。こいつの『性格』や『笑み』そして

自分が助かる為なら利用出来るものは全てを

利用する戦闘スタイルなどの全てが気に入らない。

 

 

 

「僕もそんなつもりはなかったんですけどね?

ただ、今、僕達がピンチなのによくこんなにも

くだらない事をするな〜って思っていただけさ?」

 

 

「なんだと‼︎」

 

 

甚八は顔を真っ赤にして我を忘れて顕現した槍を

構えて与一に向けて今にも刺し殺さんとしてると

 

 

「⁉︎ これは‼︎」

 

 

何本かの苦無が甚八に向かって飛んできて甚八は

難なく槍で何本か弾き落とすが

 

 

「ぐっ⁉︎ な、なんだ…この痛みは?」

 

 

背後の右肩から痛みが走った。甚八は自分の身に

何が起きたのか全く分からずただ背後の右肩を

ゆっくり見てみると右肩には一本の苦無が

刺さっていた。

 

 

「魔力が無いただの苦無だと…くだらぬ…ッ‼︎

こんなくだらぬ小細工して…舐めた真似を‼︎」

 

 

甚八は怒りを抑え切れず自分の背後を振り返ると

暗殺対象の雪の全身は血塗れで彼の服や顔にも

べったりと白い肌に血が付着していた

 

 

「へーえ、あの裏世界で有名な伐刀者の傭兵、

『百人殺しの甚八』と『首切りの与一』か

誰の依頼で僕の事を知ったかは知らないけど、

お前達は知りすぎた…故に、死んでもらう…」

 

 

雪はそう言って光無き虚な目で甚八達を見て

一歩、また一歩とゆっくりと向かって歩んでくる。

そんな雪を見た二人は背筋に物凄い寒気を

感じていた。

 

 

「くっ‼︎ 与一‼︎

てめぇは手を出すんじゃねーぞ‼︎」

 

 

「はいはい…わかりましたよ〜」

 

 

(三人の手練れを相手したから…今なら…

俺でも確実に殺せる筈だ‼︎)

 

 

与一は溜息つきながら呆れたやれやれとした

顔で甚八の話を適当に返事していく。

 

 

「というわけで、お前の相手は俺だ。あの三人の

様に簡単にはいかないぜ? そして貴様の命は

俺が頂く‼︎」

 

 

甚八はそう叫びながら槍を構えて雪に敵意を

向けたが雪は何も構えずにただ立っている。

 

 

「おい…何故構えない…」

 

 

「何故、と言われても…」

 

 

「おい‼︎ 貴様‼︎この俺を軽んじているのか‼︎」

 

 

甚八は今の雪の何も構えず立っている。そんな

ふざけた少年を甚八は許せず、見るに耐えぬ

若者様だった。

 

 

「…構えたりしても疲れるだけじゃないか?」

 

 

「……は?」

 

 

雪は首を傾げながら甚八に答えた。

 

 

「それに、弱い奴がそうやって構えて手の内を

ただ単に明かすだけじゃないのか?次の手を

読まれてしまうし、先読みも出来る。それに案外、

分かればたいしたことはないな……」

 

 

「‼︎ そうかよ…だったら、今ここで後悔しながら

無様に死体を晒して死ね‼︎ 『辺獄‼︎』」

 

 

 

 

甚八は雪に向けて槍を突いてくる。だか、

雪は右左と交互に槍を避けて甚八を翻弄していく

 

 

「逃げるなこの臆病者‼︎」

 

 

甚八は槍を何度も雪に突いてきたがそれでも雪は

戦おうとはせずにただそれでも軽々と避け続ける。

 

 

「おいおい‼︎ お遊びはやめろよ甚八さん‼︎

いくらなんでもはしゃぎ過ぎだろ⁉︎」

 

 

「うるせえ‼︎ てめぇは黙ってろ与一‼︎

こいつは俺の獲物だ手を出したら後でてめぇも

この槍で刺し殺すぞ‼︎」

 

 

甚八は与一に声を荒げて言うと雪は溜息つきながら

甚八に声をかける。

 

 

「これが最後の警告です。これ以上するなら

貴方を殺さなければならなくなります……」

 

 

「黙れ‼︎ 情けや施しは要らぬ‼︎」

 

 

甚八は槍で雪に打ち続けるが槍は全くかすらず

見切られ紙一重に避けてそして次の瞬間、

甚八は自分の体がおかしいのがわかった。

 

 

「ぐ⁉︎ な、何だこれは⁉︎ く、苦し……

苦しくなって……」

 

 

最初は呼吸が少し苦しくなって更に手が震えて

視界もぼやけてきて甚八は倒れて最後は自分の

足では立てなくなっていた。

 

 

「…だから言ったのに…貴方って

本当に馬鹿なのですね?」

 

 

「う、うるさい‼︎ それより貴様‼︎

お、俺の体に何をした‼︎ さっさと教えろ‼︎」

 

 

「うるさいなぁ…しょうがない。馬鹿でも

簡単に分かりやすいようにそれだけは

教えてあげようかな…?」

 

 

雪は甚八に分かりやすいように説明した。

 

 

「実は簡単な種明かしですよ? 先程の何本かの

苦無に数本の苦無には色々な 種類の猛毒を塗って

そして貴方の視界に一本に見えるように数本の

苦無を投げて偶然にその一本が貴方の背後の右肩

に刺さっただけです。ね? 分かりやすくて簡単な

話でしょ?でも、苦無を計算して投げるのはコツが

あってかなり面倒だったけどね?」

 

 

雪は欠伸をしながら人間離れした神のような投擲

の技術を大した事がないように怠惰で無気力に

答える。

 

 

「ふ、ふざけんな! 簡単に言っているが普通の

人間にそんな事が出来るわけがないだろ⁉︎

それに、毒如きにやられる俺ではないわ‼︎」

 

 

甚八は毒に抗おうと必死になったが手足には

全く力が入らずそして息が荒くなる。

 

 

 

(この程度で根を上げる俺では……)

 

 

 

「あっ…後、無理しない方がいいですよ?

毒は『ヤマビル』や『トリカブト』などの大量

の種類を沢山混ぜて使ってますから?」

 

 

「ーーッ⁉︎」

 

 

「更に、動物の糞なども塗ってありますから?」

 

 

 

甚八はそれを聞いた途端、先程の傷口を見ながら

顔色が真っ青で容体が悪くなってそして胃から

嗚咽感を感じて

 

 

 

「う‼︎ うおぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ‼︎」

 

 

 

そして遂に吐いてしまっていた。

 

 

 

 

「吐いてしまったか…汚いな……しかし、先程は

違いみっともなくてなんとも醜い姿だな……」

 

 

雪はそう言っていると雪の足に縋りながら

涙を流してみっともなく命乞いをしていた。

 

 

「お、俺が悪かった‼︎だから許してくれ‼︎

頼む‼︎助けてくれ‼︎お願いだ‼︎俺はまだ

死にたくない‼︎ まだ、死ねないんだー‼︎」

 

 

だが雪は縋りついてくる甚八を冷たい目で見て

甚八の体を思いっきり蹴り上げ足蹴にする。

 

 

「貴方方は悪党でも(伐刀者)を名乗って人を

殺そうとして自分が死にそうな時には『嫌だ、

死にたくない』などと童の様にただみっとも

なく叫び散らしているのだから見ていて不愉快だ。

……それに先程言っていたじゃないか?

『施しは要らぬ』と」

 

 

 

「あぁ…あああああ……」

 

 

甚八は雪の言葉を聞いた瞬間、顔を更に歪めた。

甚八は自分自身が言った言葉意識が薄れていく中

薄っすらと思い出し自分自身愚かさを責める事しか

出来なかった。甚八が考えている中、雪はまるで

蛇のように物凄い速さで甚八の体にまたがり首に

苦無を当てていた。

 

 

「さてと……おそらく、このままでも毒で虫の様

に簡単に死ぬと思うけど…貴方にはどちらか選んで

もらえると助かる」

 

 

「え…選ぶ…だと…?」

 

 

甚八は必死にギリギリの意識を維持しようと

唇を噛み締めて血をポタポタと地面に落としていく

 

 

「このまま『醜く毒で死ぬか』それともこの『苦無

で潔く自殺して死ぬか』と言う事ですよ?それとも

どちらとも選べないなら僕があんたを一番苦しく

酷い殺し方で殺してやるよ…」

 

 

その瞬間、甚八の精神がプツリと糸のように心が

切れたかのように壊れて壊れた機械のように

もう話しは通じなかった。

 

 

「う、嘘だ……嘘だ‼︎嘘だ‼︎嘘だ‼︎ 嘘だ‼︎

嫌だ…嫌だ‼︎ 俺は死にたくない‼︎死にたくない‼︎

死にたくない‼︎死にたくない‼︎死にたくない‼︎

死にたくない‼︎死にたくない‼︎死にたくない‼︎

死にたくない‼︎死にたくない‼︎死にたくない‼︎

死にたくない‼︎死にたくない‼︎死にたくない‼︎

死にたくない‼︎死にたくない‼︎死にたくない‼︎

死にたくない‼︎死にたくない‼︎死にたくない‼︎

死にたくない‼︎死にたくない‼︎死にたくない‼︎

死にたくない‼︎死にたくない‼︎死にたくない‼︎

死にたくない‼︎あ…あ…ああぁぁーーーーー

が⁉︎がぁぁ‼︎ご、ごふっ‼︎ ごふぁぁぁーー‼︎‼︎」

 

 

「……精神は死んだか…」

 

 

(こいつはもういいか……)

 

 

雪は甚八にはもう興味はなくなり甚八を放り捨て、

立ち上がりながら与一の方を向き歩いて行った。

そして、甚八はヒステリックになって喉元を爪で

ガリガリと掻きむしりながら沢山の傷を作って

いくつかの爪が剥がれていきそして引っ掻いた

傷口から大量の血が流れて口元にはポタポタと

涎を流しながら暴れて毒がじわじわと回っていき

顔色は 額に大量の脂汗が滝のようにだらだらと

流しながら真っ青になって呼吸困難になった後、

白目を向いて口から涎から泡を吹きはじめて

もがきながら最後に 『ごめんなさい』と何度も

うわごとのように呟き続けて死んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふざけんな……あんな化物に絶対に

勝てるはずがないだろ…」

 

 

甚八が死ぬ瞬間を見た与一は顔色が真っ青に

なって手が震えて今、考えられるのはどうやって

この場を逃げ切るかだけだった。

 

 

「次はお前だ……『首狩りの与一』」

 

 

「ひぃ‼︎」

 

 

もう完全に繊維喪失していた与一は情け無い声を

上げて一歩、また一歩と後ずさりしていた。

 

 

「任務などもう知るか‼︎命が大事だ‼︎」

 

 

与一は屋根をつたって逃げた。そして全速力で

走り逃げ続けた。逃げて逃げて息が切れるまで

走った。そして、与一は山奥まで逃げ続けた。

 

 

「ここまで来れば……

『逃げられると思ったか?』」

 

 

与一が安心していると後ろから雪の声が聞こえた。

 

 

「ひ、ひぃ‼︎ ど、どうして⁉︎」

 

 

「別にどうでもいいだろ?

今、分かっているのは……ただ、貴様がここで

無様に死ぬ事だけだ……」

 

 

雪がそう死の宣告を告げる死神のように言うと

宣告すると与一は顔を青ざめて自分の手に最も

馴染んだ武器である鎌を大量に顕現させて雪に

必死に投げつける。

 

 

「き、貴様がし、死ね‼︎死ね‼︎死ね‼︎死ね‼︎死ね‼︎

死ね‼︎死ね‼︎死ね‼︎死ね‼︎死ね‼︎死ね‼︎死ね‼︎

死ね‼︎死ね‼︎死ね‼︎そして切り刻まれろーー‼︎」

 

 

与一の頭の中に浮かんだのは『恐怖』だった。

今、まさに背水の陣、この『雪』と言う男を

殺せなければ間違いなく『自分が殺される』

それだけは絶対に避けねばならない

 

 

(いくら《辺獄》でもこんな大量の鎌の刃を

防ぎきれまい‼︎ 《辺獄》の首は僕が貰った‼︎)

 

 

与一は雪にそんな甘い考えをしているとーー

 

 

「うるさい…耳障りでその声は非常に

不愉快だ……」

 

 

雪はそう言うと【カチン】と音が響き次の瞬間、

与一の大量の鎌は粉々になって崩れ落ちた。

 

 

 

「ば、馬鹿な…何故‼︎ 何故なんだ⁉︎」

 

 

「貴様と対話することは二度とないだろう…

そして、貴様が死ね…」

 

 

雪が与一にそう言うと与一の首から一筋の血が

【ドクドク】と流れ落ちていきそして身体中に

沢山の傷が出来てドバッと大量の血液がまるで

噴水のように吹き出していた。

 

 

「く、くはっ‼︎ ば、馬鹿な……

あ、あり得ない‼︎こ、こんなはずでは…」

 

 

与一は体を引きずりながら最後の力を振り絞って

逃げる。

 

 

 

「お、俺は…まだ…「いや、お前は終わりだ。」」

 

 

 

雪がそう言うと与一は大量の出血で雪の声は

すでに聞こえず二度と動く事は無かった。

 

 

「さてと…これで全員か…寮に帰ろうかな……」

 

 

雪はそう言って置いておいたコンビニ袋を

持ちながらそう言っていると

 

 

「いや〜流石の手際だったね? 昔と変わらず

衰えていないようだ。それに久々に見るが

いつ見てもね…『君の霊装』は相変わらず

惚れ惚れする素晴らしき研鑽された技術と

一言しかないな……」

 

 

「……随分とお褒め頂きありがとうございます。

ですが、そんな言葉だけで全てをチャラにしよう

としても無理ですよ?最悪の場合はあなたを

斬りますから?」

 

 

雪はそう言って声がする大きな木の方を向くと

コツコツと足音がしてそして、一人の男が雪の

前に現れた。そして男は与一の死体を見ながら

『なるほど』と呟いていた。しかし、雪は警戒を

緩めずに殺気を放っている。

 

 

 

 

「…それでこの国を担う大物である貴方が一体

何の用ですか?『月影獏牙内閣総理』?」

 

 

 

雪は月影にそう言うと月影は苦笑いで

雪に話し続ける。

 

 

「おいおい、総理だなんてそんなに堅苦しく

言わないでくれよ?昔みたいに月影さんと

言ってくれないかな?って言っても…

こんな後に言われても無理か……」

 

 

「当たり前です。命を狙われたばかりなのに

すぐに信用しろと言われても流石に無理です。」

 

 

 

雪は月影総理にそう言って警戒していると

月影総理は雪に頭を深々と下げて謝っていた。

 

 

「それに関しては本当にすまなかった…私が彼等

に依頼したのは君の偵察と追跡、更には君の力量

の確認だけだったのだが……どうやら彼等は私

との契約を破ってしまったみたいだがね…」

 

 

月影総理は悲しそうに言って目を伏せて申し訳

なさそうにしていた。雪はそんな月影総理を見て

「はぁ……」と溜息をつきながら月影総理に

近づいた。

 

 

「…分かりました。 今回の件は水に流します…

んで、月影さんは僕に用があるんですよね?

でなきゃこんな無意味で無為意味な事を貴方

なら絶対にしない筈だ…」

 

 

雪が月影総理の考えを言い当てると月影総理は

困った顔しながら両手を上げた。

 

 

「いや〜…流石は雪君だね。

何もかもがお見通しって事かな?」

 

 

「あんたと何年の付き合いだと思ってんだ?

そんなの嫌でも分かる…」

 

 

雪は月影総理にそう言うと月影総理は真剣な

表情になって雪の顔を見ながら話しを続けた。

 

 

「では、まずは話し合いをする為に場所を移す

事にしよう。この先には私の行きつけの店がある

からそこに行こう」

 

 

「月影総理…分かりました…因みに

もし、変な事したら……」

 

 

 

「大丈夫だ。なんなら今、ここで誓おう。」

 

 

月影総理は真剣な表情で雪に言うと雪は少し

困った表情して月影総理に視線を向けて

苦笑いをした。

 

 

「冗談ですよ…? 月影さん、僕の言葉をあんまり

本気にしないで下さい…」

 

 

「全く…君の冗談は冗談に聞こえない事が

あるから困るよ…」

 

 

雪と月影総理の二人はそんなやり取りをしながら

高級車に乗せてもらいながら月影総理の行きつけの

店に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間くらい車で乗り続けていると車は目的地の

旅館に着いた。しかもその旅館は沢山の竹林に

囲まれており、和風でとても綺麗で大きな豪華な

旅館だった。

 

 

「ここが貴方の言っていた

行きつけのお店ですか…?」

 

 

「ああ、そうだ、ここは中々知る者はいなくて

知る者のみぞ知る秘境で更にこの旅館はかなりの

金持ちの者や大御所しか来ないんだよ?」

 

 

月影総理は雪にそう言うと雪は困った顔を

しながら月影総理に

 

 

「有り難いのですが僕は明日も学校があるので

無理ですよ?」

 

 

「いや、大丈夫だよ? 今日は君ととても大事な

話しがしたくてこの場を設けただけだから

安心してくれ?それに君もその血塗れの姿じゃ

帰れないしね? そうだろ?」

 

 

雪は月影総理の用意周到な手際と言葉に

観念したのか、溜息をつきながらだるそうに

諦めていた。

 

 

「……はぁ…分かりました…分かりましたよ…

聞きますよ…それでいいですか? 月影さん?」

 

 

「あぁ‼︎ 本当にありがとう!」

 

 

月影総理はスーツの上着を脱いでネクタイを緩め

「温泉に入って体を綺麗にしてくるといいよ?」

と雪に言った。そして、雪は月影総理に言われた

通り温泉に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「服は大丈夫だったかな?」

 

 

雪が部屋に戻ると浴衣を着た月影総理は座布団の

上に座って雪を待っていた。

 

 

「ああ、サイズはピッタリだ。借りた服は

ちゃんとクリーニングに出して返す」

 

 

「別にいいんだがね? まぁ、料理も用意が

出来ているから早速、食べようか。」

 

 

月影総理は平然とそう言って箸を持っていると

雪はとうとう痺れを切らしたか、両手で旅館の

テーブルを【バン】と思いっきり叩きつけて

物凄く殺気立っていた。

 

 

「これ以上、僕を馬鹿にするならこのまま

帰らせてもらう…」

 

 

「いや…すまんすまん…私も悪ふざけが過ぎた…

では、小細工はやめて単刀直入に言うよ…君には

是非とも『私が新設する暁学園の生徒に

なってもらいたい』」

 

 

「……一応、理由を聞いても?」

 

 

「君は私の能力について知っているよね?」

 

 

「たしか…過去視が出来るんでしたよね?」

 

 

「あぁその通りだ。だが、最近はごく稀に過去

ではなく未来を視ることがあってね。その内容

がいくら私でも絶対に許容することの出来ない

内容だったんだ」

 

 

「んで、その内容ってのは?」

 

 

『東京、いや日本の壊滅だよ』

 

 

「……そんな馬鹿があるはずないだろ?月影さん、

馬鹿も休み休み言え?第三次世界大戦すら勝利して

生き残った日本がなんだって滅びるんだ?」

 

 

「そうだね……まずは順を追って説明しよう。

《暴君》を知っているね?」

 

 

「ああ、《解放軍》のリーダーだろ?

昔、一度だけ会ったことがあるぞ?」

 

 

「言うまでもないだろうが……《解放軍》とは

《伐刀者》とよばれる千人に一人しか生まれない

特異存在を普通の人間よりも上位の存在だと

主張し、平気でテロや殺しをやるような外道集団だ」

 

 

「それは知ってるよ…んで、どうして今、

あいつの名前が出てくんだ?」

 

 

「《解放軍》はいわば《暴君》のカリスマ性によって

成り立っている組織だ。だが、その《暴君》が

死ねばどうなると思う?」

 

 

「それはまあ、《解放軍》は解散、もしくは

他の組織に吸収されるってところがいい所だな…

そもそも解放軍は、『暴君』一人のカリスマ性で

集まった集団だからなぁ?そのカリスマ性が

無くなれば間違い無く『同盟』は吸収を

始めるだろう…?」

 

 

「その通りだ。そして《解放軍》を吸収するのは

十中八九《同盟》だろう」

 

 

「そりゃ、まぁ…真っ向から《解放軍》のこと

否定してる《連盟》の連中は間違い無く

引き込めないだろうな」

 

 

《大国同盟》通称《同盟》その名の通り

アメリカなどの大国が数国集まってできた

伐刀者の組織だ。そして《国際魔導騎士連盟》

通称《連盟》こっちは世界中の国が集まって

できた《同盟》とは違った伐刀者の組織。

 

 

《解放軍》

 

《同盟》

 

《連盟》

 

 

この三つの組織は今戦力が拮抗していて三竦みの

状況を作り出している。ではその中の

《解放軍》が解散したらどうなるか。

簡単な話しだ、《同盟》と《連盟》の真っ向勝負。

有り体に言えば『戦争』だ。そして戦力の拮抗

している二つの組織は解散した《解放軍》を

引き込んで戦力アップをしようとする。

だが《解放軍》についてノータッチだった

《同盟》と比べ《連盟》は真正面から《解放軍》

を悪であると言ってきたため、表立って引き込む

ことができない。つまりほとんど二対一の状況。

勝てる訳がない。

 

 

「なるほどねぇ…話が見えて来たよ……

それなら日本か滅ぶなんて世迷言も信憑性が

でてくる訳だ。 んで?、結局、月影さんは

僕に依頼して一体、何をしてほしいんだ?」

 

 

「私は日本を《連盟》から脱退させ、《同盟》

入りをするように仕向けるのが目的だ。

だがそれをするためには圧倒的に支持者が

足りないんだよ」

 

 

「まあ、全員が貴方の言った未来を知ってる

訳じゃないし、それに、そうおいそれと簡単に

信じる筈ない……」

 

 

「そこでだ。《連盟》公認である伐刀者育成学校の

学生騎士達、それを私の組織した非公認の

学生騎士が倒す、そうすることで《連盟》が

大したことの無い組織であると思わせ連盟脱退の

支持者を増やす事にした」

 

 

伐刀者育成学校は全部で7つあり、そこに所属する

伐刀者は学生騎士とよばれているらしい。

 

 

「倒すと言う事は…要は、他校への闇討ちか?」

 

 

「まぁね、それに、学生騎士ならば年に1回戦いの

祭典があるだろう?」

 

 

「…その為の《七星剣武祭》か…」

 

 

「その通りだ。誰もが夢を見る年に一度の祭典だ」

 

 

「なるほど……つまり、あんたの先程、言ってた

非公認の学生騎士になれって事か…そして僕に

表の舞台に出てもらいたいってことか?」

 

 

「あぁ、その通りだよ‼︎ 君は本当に話が早くて

助かるよ‼︎」

 

 

 

月影総理は雪の理解力に喜んでいた。そして雪は

このまま暁学園に入ってくれると思っていた。

 

 

 

だが、

 

 

 

 

「断る……」

 

 

 

「な‼︎ 何故だい⁉︎」

 

 

「そもそも、僕は《七星剣武祭》には元々、

全く興味がない…それに……僕は随分前に

自分の武器を手放した……だから僕にはもう

武器を握る理由もない…だからすまないが断る…」

 

 

 

雪は月影総理にそう言って席を立って襖に手を

かけていた。

 

 

「ご馳走さま…まぁ、頑張ってください…僕も

陰ながら応援していますから、すまないですが…

他を渡ってください…」

 

 

雪が出て行こうとすると、月影総理はカバンから

『ある封筒』を取り出しテーブルの上に出した。

 

 

「武器を握る理由か……ならば、これを見れば

もしかしたら君のその武器を握る理由が簡単に

出来るかもしれないよ?」

 

 

「何だと……?」

 

 

雪は月影総理の言葉にピクリと体が反応して

月影総理の方に視線を向ける。

 

 

「…それは…どう言う事です?」

 

 

「それは、この封筒の中を見て貰えば分かる筈だ…

そして『君の知りたがっていた真実』がそこに

事細かく全て書いてある……」

 

 

雪は訝しげに頭を傾げて月影総理の言う通りに

封筒の封を破って封筒の口を開けて中身を見る。

そして、雪は封筒の中身の資料を見ていると

徐々に冷たい表情と怒りが見えていた。

 

 

『……ここに書いてある事は

本当なんですか、月影さん?』

 

 

「あぁ、嘘偽りなく間違い無くそこに書いてある

事は本当の事、真実だよ…」

 

 

「そうですか……」

 

 

月影総理は真面目な表情をして言うと雪は俯いて

先程の封筒に入っていた中身の資料を【ぐしゃり】

と握りつぶした。そして何かを決心したのか雪は

顔を上げるて真剣な表情で今にも心に湧き上がる

憤りを必死に抑え込み月影総理の顔を見据えて

いた。

 

 

「月影さん……気が変わったよ…先程の件、

引き受けさせてもらうよ…別に構わないだろ?」

 

 

「ああ、もちろんだよ!」

 

 

そしてその日、雪と月影総理の月夜の密会の

交渉は成立した。

 

 

「後、君が気になっている『彼女』も近いうちに

会えるだろうね?」

 

 

「‼︎ 彼女…まさか⁉︎本当に『彼女』が来るのか⁉︎」

 

 

「本当だとも‼︎ それに…彼女とも近い内に

会えるだろうね?」

 

 

雪は月影総理からその名前を聞いた瞬間、

雪は子供のように無邪気な笑顔で笑っていた。

 

 

「どうだい?これで武器を握る理由は

十分なくらいに出来ただろう?」

 

 

「もちろん‼︎ もちろんだよ月影さん‼︎

月影さんのおかげで武器を握る理由や表の舞台に

出る理由が出来た。月影さんには感謝の言葉しか

出て来ないよ‼︎十分過ぎる報酬だよ‼︎」

 

 

雪はこれまで無表情とは異なり、生き生きとして

まるで水を得た魚のようだった。

 

 

「さてと、じゃあ…ん? どうしましたか

月影さん? 僕の顔に何か付いていますか?」

 

 

「いや…君も笑ったりする事があるんだなと

驚いていたんだ…」

 

 

月影総理が驚くのは当然である。雪はどんな事が

あっても感情を表に出す事は月影総理が雪と一緒に

いて滅多にない。だから、月影総理は先程の雪の

笑顔に驚きを隠せなかったのだ。

 

「僕が…笑顔に…? そんな馬鹿な……?」

 

 

 

本人の雪も無意識に笑顔の表情だったみたいで

自分でも信じられないといった表情だった。

 

 

「そんな事よりも月影総理の話しを聞いて

その話しの流れからいくと僕は暁学園の生徒に

なるのに編入しないといけないといけないの

ですか?」

 

 

「いやそれは《七星剣武祭》開催直前に世間に

公表することになっている。だから今まで通り

に学校生活を楽しんでくれたまえ」

 

 

「貴方にに誘われた時点で全くもって学園生活を

楽しめる気がしないんですがね?」

 

 

「相変わらず手厳しいね…」

 

 

「事実を言ったまでです」

 

 

「フフッ、違いない」

 

 

「んじゃ、僕は帰りますね? 明日学校なんで…」

 

 

「そうか…今年からは滝沢君……いや、今は

神宮寺君だったかな?彼女が理事長になったと

聞いているから去年程酷い有様にはならないと

思うよ?」

 

 

「それだといいのですが……では、失礼します」

 

 

雪は襖を開けて今度こそその部屋を出る。

 

 

「じゃあ、月影さん。 作戦が決まったら

呼んでください」

 

 

「あぁ、分かった。決まったら連絡するよ。」

 

 

月影総理はそう言うと雪はその言葉を聞いた瞬間、

襖を閉めた。月影総理はその襖を確認する様に

開けると雪の姿はどこにもなかった。

 

 

『やれやれ、流石だな……敵にならなくて本当に

良かったよ…彼の『家系』はあれだからねぇ……』

 

 

月影総理はそう呟いた後、部屋に戻り座りながら

テーブルの上ある旅館の料理を堪能した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁー…やっぱり月影さん凄いなぁ…」

 

 

雪は旅館を出た後、先程の話を考えていた。

 

 

「しかしこんな所でまた彼女と勝負が出来る。

そしてまた刃を交える事が出来るなんて

これほどの幸せはないよ…」

 

 

雪は赤く染まって光輝く満月の光を浴びながら

そう呟き、その喜びを抑える事が出来なかった。

 

 

「楽しみだね…ねぇ、『■■』……いや、

『■■■■■■■』……」

 

 

その時、真っ赤に染まった月を眺めながら幼い

子供のように無邪気な笑顔で笑っていた事を

本人の雪は知らなかった。




読んでいただきありがとうございます‼︎
これからも書いていきますのでどうか暖かい目で
見守ってくださるとありがたいです。



後、【ロクでなし魔術講師と死神魔術師】
と【白き大罪の魔術師】も頑張って書いて
盛り上げていきますのでよろしくお願いします‼︎


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

交わらぬ水と油

皆さん遅くなってすみません……そして遅い
あけましてです。それぞれに1話ずつ作りました。
楽しんだり読んで『お気に入り』や『評価』更に
『栞』をしてもらったら有り難いです。


ロクでなし魔術講師は今頑張って書いてます。
期待してもらっていたら有り難いです‼︎


次の日、雪は理事長室で黒乃理事長と話していた。

 

 

「黒乃理事、忙しい中時間を

作ってくださり誠に有難うございます。」

 

 

「そんな御託はいい…それで

昨日の返事を聞かせてもらおうか?」

 

 

黒乃理事は煙草を口にくわえながら訝しげな

顔をしながら雪に質問していた。

 

 

「はいはい…では、僕も七星剣武祭に是非とも

参加させていただきます」

 

 

「そうか…って、貴様…今何て言ったのだ…?」

 

 

「聞こえませんでしたか?『今回の七星剣武祭』に

参加すると言っているのですが何か問題でも?」

 

 

「当たり前だ…馬鹿者が……それにしても貴様、

一体、どういう風の吹き回しだ?」

 

 

黒乃が驚いて口にくわえていた煙草を落として

思考が止まりながらもそう思うのも無理もない。

雪は基本的にめんどくさい事は嫌いな人間だ。

黒乃はそれを知っている。更には決して試合を

絶対にしたがらないし、他人任せの他力本願だ。

ましてや、七星剣武祭などの大舞台に自分から

参加したいなど今ままでの雪からしては決して

言わない言葉だと分かっているだからこそ

想像できなかった。

 

 

「相変わらず黒乃理事長は疑い深いですね〜…僕は

ただ久しぶりの知り合いに会えるかもと思って参加

したいと思っただけですよ?」

 

 

雪はダルそうにそう言いながら黒乃がくわえていた

煙草を拾って【はい、どうぞ】と机の上に置いた。

 

 

「ああ…すまんな…だが…貴様も参加する気に

なってもらえて本当によかったよ…」

 

 

 

黒乃理事長は少し安心した表情で話していると

雪はやれやれとした表情していた。

 

 

「やれやれ……今を思えば黒乃理事長も本当に

大人気ないですよね?元kok3位の実力者がまさか

こんな一般の生徒一人を追い回すなんてねぇ?」

 

 

「馬鹿者…あれは貴様が授業をサボるからだ。

それに私をストーカーみたいに言うな」

 

 

黒乃はそう言いながら煙草手に取って火をつけて

煙草を口にくわえて煙を吐いていた。

 

 

「分かりましたよでは僕はこれで失礼します。」

 

 

雪は扉のドアノブを回して扉を開けてそして

何かを思い出したかの様に黒乃の方に視線を

向ける

 

 

「あ…そうだ!理事長、この部屋はかなりですが

煙草臭いですので少しは煙草は控えた方がいいと

思いますがそれにその量は…かなりの極度の

ヘビースモーカーでは?」

 

 

「ふん、大きなお世話だ用が済んだなら

さっさと行け…」

 

 

「はいはい…では黒乃理事長の為にもう一つ

おっせかいしときますね?」

 

 

「何だと…?」

 

 

「僕、煙草は嫌いなんですよね…次からは

控えてもらえると有り難いですね?」

 

 

雪は黒乃にそう言いながら理事長室を後にした。

 

 

「あいつは一体なんなんだ…」

 

 

黒乃はそう言いながら煙草を吸おうとすると

黒乃はある違和感に気づいた。

 

 

「……ん?」

 

 

(おかしいな……さっき煙草に火をつけた

ばかりなんだが…)

 

 

黒乃はくわえていた煙草を見ると『ある異変』

に気がついた。

 

 

「ば、馬鹿な⁉︎」

 

 

黒乃が驚くのは無理もない。何故なら黒乃が咥えて

いた煙草の火は一瞬にして消えていた。正しくは

切り取られていた。そして煙草についていた火は

いつの間にか灰皿の中に入っていた。

そんなあっさりと切り取られた煙草を眺めながら

考えていた。

 

 

「これをやったのは間違いなく奴だろう……だが、

奴は間違いなく『Fランクの騎士』…いや!

そもそも奴は本当に『Fランクの騎士なのか…?

それに、ヴァーミリオンの技を一瞬にして……』」

 

 

 

黒乃は考えれば考える程、思い当たる節があった。

それは一輝とヴァーミリオンを理事長室に呼ばれた

時がまさにそうだ。

 

 

 

 

「『切腹を名誉』だとかこの国の歴史を

軽々しく言うな……」

 

 

あの言葉と暗くて冷たい瞳は忘れられなかった。

 

 

「あいつは一体…何者なんだ…?」

 

 

黒乃はそう呟きながら頭を抱えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、黒乃理事長にちゃんと報告したし、

その間、どうするかな……」

 

 

 

 

雪が黒乃理事長と別れた後考えていると奥から

「早く‼︎早く‼︎」とか「邪魔だ‼︎ 退け‼︎」など

騒がしい声が聞こえた。

 

 

「逃げろーー‼︎」

 

 

「巻き添えくらうぞーー‼︎」

 

 

 

「ん? なんだ…?」

 

 

雪は声がする方を見ると学園の生徒達が必死に

なって廊下を走り出してそんな中、眼鏡の女の子

がいた。

 

 

「すまないが、少しいいだろうか?」

 

 

 

「ひ、ひゃい‼︎ わ、私ですか…?」

 

 

 

情け無い声を出している眼鏡をかけた彼女の名前

は『日下部加々美』と言う女性だった。破軍学園

の生徒であり、新聞部の人物である。

 

 

「この馬鹿騒ぎは一体、なんだ?」

 

 

「え、えーとですね…実は…」

 

 

加々美は説明してくれた。一輝とヴァーミリオンは

試合の前にあるくだらない契約をしていた。

それは、『負けた方が生涯一生服従』、その事で

黒鉄の妹とヴァーミリオンが揉めて最終的に霊装

を顕現させて今、一輝を賭けて教室はピリピリと

した空気になり一触即発の修羅場となってしまい

そのせいでそこにいた他の生徒達がその場所から

必死になって逃げているらしい。

 

 

「なるほど…くだらんな……では、僕がなんとか

するから君はすぐに黒乃理事長にこの事を言って

来てくれないか?」

 

 

 

「わ、分かりました…ステラさん達は奥の部屋に

いますのでよろしくお願いします‼︎」

 

 

「分かった…」

 

 

雪は加々美にそう言うとその場を後にした。

 

 

「ふぅ〜……さてと…」

 

 

雪はそう呟きながら加々美に教えてもらった

教室の前について扉の前に立っていた。

 

 

「めんどくさいけど行くか…」

 

 

雪はそう言って教室の扉を開ける。すると

ステラ・ヴァーミリオンと白い髪の女の子が

一輝の間で睨み合い、そして一輝本人は二人の

気迫に押されていた。

 

 

「だ、誰⁉︎」

 

 

「あなたは……」

 

 

一輝達は驚いた顔して雪を見ていた。だが雪は

そんな驚いた二人の反応など全く御構い無しに

めんどくさそうな表情をしてやる事をしようと

思いながら淡々と喋り出す。

 

 

まあ、一応、建前を言っておいとかないと後々

あの口喧しい厄介な理事長が口を酸っぱくして

自分に「何故、勝手なことをしたんだ‼︎」とか

「周りが見えんのか‼︎ この大馬鹿者がぁ‼︎」と

耳元で口煩くガミガミと大きな声で説教という名

の小言を言われる展開になるのは嫌でも予想が

ついてしまう……

 

「はあぁ…おい、そこの二人に警告する。今すぐ

この馬鹿馬鹿しい茶番はやめて貴様等がその手に

握ってるその武器、霊装を収めろ…でなければ

ただでは済まんぞ?」

 

 

雪は『ステラ』と『珠雫』にそう警告するが

ステラと珠雫は雪の警告を聞く事は無かった。

 

 

「どこの馬の骨か知らない騎士である貴方に

とやかく言われる筋合いはありません‼︎

とにかく私達の邪魔しないでください‼︎」

 

 

「そうよ‼︎ あまり面白半分で入るとアンタも

痛い目に合うわよ‼︎」

 

 

「はぁ〜…一応、警告はしたからな?」

 

 

珠雫とステラは雪にそう言うと雪は溜息つきながら

ステラと珠雫の間合いを詰め一瞬にして無理矢理に

入り込んでいた。

 

 

(いつの間に‼︎)

 

 

(この人‼︎ 一体、どうやって⁉︎)

 

 

ステラ達は冷静を欠いた思考で一生懸命に

そう考えているともうすでに手遅れだった。

 

 

「遅い……」

 

 

「がはぁ‼︎」

 

 

雪はそう呟くとステラの不意を突いて一瞬にして

お腹に回し蹴りして苦しそうな声を出して教室の

壁に当たる。

 

 

 

(この人…霊装もなしにAランクの騎士である

ステラさんを一瞬にして瞬殺するなんて……)

 

 

「よそ見とはいい度胸だな…?」

 

 

「‼︎ しまっーー⁉︎」

 

 

それに驚いている珠雫に対して雪はそう言うと

珠雫には持っていた霊装の小太刀の『宵時雨』を

空に蹴り上げてくるくると綺麗に円を描くように

勢いよく宙に浮いて回る宵時雨をタイミングよく

手に取って珠雫の首筋に当てて傷一つ無く更に

霊装すら出さず二人を無効化していた。

 

 

「さてと…まだやるか……二人共?」

 

 

 

雪が二人に問うと二人は観念したのか

 

 

「す、すみませんでした……」

 

 

「すみません、反省します…」

 

 

二人が申し訳なさそうな表情でそう言うと雪は

ステラ達を見てそして『宵時雨』を【くるっと】

手慣れた手つきで回しながら珠雫に返す。

 

 

「時と場合を考えろ…実際にこの場で実害が

出てからでは遅いぞ…」

 

 

「は、はい……」 【ステラ、珠雫】

 

 

 

二人がそう返事をすると「はあ…全く……」と雪は

溜息つきながら頭をかいていた。

 

 

「……まぁいい、この事は黒乃理事長の耳に届いて

おって沙汰が下されるだろう…それでも不服である

なら訓練場でやれ、いいな?」

 

 

「は、はい…すみません……」

 

 

「もう二度としません……」

 

 

二人がそう言うのを聞くと雪はやれやれという顔を

しながら教室から出て行こうとすると

 

 

「あ、あの…」

 

 

「ん? なんだ…」

 

 

雪が振り返ってみると一輝が雪に声を掛けていた。

 

 

「収めていただき、ありがとうございます‼︎」

 

 

一輝が雪にそう言うと雪は一輝に視線を向けて

鋭い眼光で睨みつけた。

 

 

「な、何ですか…?」

 

 

「黒鉄一輝だな? 一つ、聞かせてほしい……

お前は今まで何の為に『その刃を握る?』そして

何の為に『その刃を振るい、剣客にこだわってあり

続けようとする?』」

 

 

雪は一輝にそう聞くと一輝はなんの迷いも無く

 

 

「それはもちろん、自分のような境遇の人たちに

『君は諦めなくていいんだ』と才能がなくても

諦めるなと僕に言ってくれたあの人の言葉を僕から

まだ見ぬ人に贈るためにだから僕は『この刃』、

『陰鉄』を振るうんです。」

 

 

 

と一輝は雪に言うと雪の瞳は更に淀んでいった。

 

 

 

「…それだけか? それだけの為にお前はその刀を

握り戦い続けるのか?」

 

 

「そうですけど……」

 

 

一輝が雪にそう言うと

 

 

「それだけの為に刀を握っているのか…?

だとしたら貴様が振るうは刃ではなく錆びれた

ただの鈍の棒切れに過ぎないのではないのか?」

 

 

 

無意識に言った雪は一輝の言葉を聞いた瞬間、

雪はある確信が持てた。

 

 

それはーー

 

 

『黒鉄一輝と自分は『水』と『油』だと、この男

とだけは絶対に分かり合う事出来ないと』それだけ

は分かった。すると一輝は雪の一言が許せなかった

のかピクリと反応して雪の言葉が感に触ったのか

噛み付く。

 

 

「それは一体どう言う意味ですか?」

 

 

 

一輝にとって騎士、伐刀者になることは人生の全て

であり、そして自分と同じように人生に絶望する

人たち(Fランク伐刀者)にあの時、『あの人』が

自分に言ってくれた『あの言葉』を贈るに相応しい

伐刀者なろうと思い日々努力しているというのに

なのにこの人は想いを『それだけの為?』と言って

そして更には僕の剣を『錆びれた鈍の棒切れ』と

僕の『剣』と『騎士としての誇り』を目の前で侮辱

しているのを絶対に看過など出来ないし許せるはず

がない‼︎

 

 

 

 

「そのままの意味だよ。黒鉄一輝?その意味も理解

出来ず気づけないとはだからお前はどこまでも剣客

でもなければ剣士でもない…ただの紛い物の道化の

ペテン師だよ…お前は…」

 

 

雪は一輝にそう言うとステラと珠雫は先程の攻撃で

全く動けずにただ雪を睨みつけているが雪はそんな

二人を無視して更に一輝との話しを続ける。

 

 

「そして時をかけて考えた末にたどり着いた

答えがあのつまらない模造か? 笑わせるなよ?」

 

 

すると一輝は雪の言葉に痺れを切らしたか

雪を睨みつけて

 

 

「言いたい事があるならちゃんとここではっきり

と言ってくれませんか?」

 

 

一輝がそう言うと雪は一輝のそんな言葉を聞いて

 

 

「なるほど…出来れば穏便にそして平和的交渉で

済ませたかったのだが…それもそうだな…

この際だ、遠回しに言わずにはっきり言おう……

黒鉄一輝、僕は君を一人の『剣客』として『剣士』

としてそして『伐刀者』として君みたいな紛い物

で半端者の『贋作』を認められないし、認める事

は出来ない」

 

 

「随分と辛辣に言ってきますね……?」

 

 

「だが、事実だろう?」

 

 

「そうですね……ですが、どんなに言われても

それが『僕のスタイル』なんで貴方が僕の剣術に

どんなに言われても変える事は出来ません」

 

 

一輝は堂々と雪に言うと雪はそんな一輝をとても

面倒くさそうに見て呆れながら溜息ついて更に瞳は

死んだ魚のような目になって一輝達を見る。そして

教室の扉の前に立って扉を開けながら一輝に視線を

向ける。

 

 

「お前がどう鍛錬して努力しようが僕には

どうでもいい……だが、君がもし、そのまま

そのふざけた贋作の模造を続けるなら僕は君を絶対

に容赦しないし『君の存在』と『その刃』ごと

斬り落とすから……」

 

 

 

雪は一輝にそう言うと教室から出て扉を閉めて

出て行った。

 

 

「アイツなんなのよ‼︎」

 

 

「そうですよ! 私とステラさんが注意を受けるのは

分かりますが、何故、お兄様の剣術や努力や鍛錬を

あんな人にお兄様の事をあんなにも言われなくては

いけないのですか‼︎あの人はお兄様が騎士になる

為に今までどれだけ必死になって努力したのか全く

知らないくせに‼︎」

 

 

 

ステラ達が憤りを感じてる中、一輝は雪が出て

行った扉をただ眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんな贋作の模造を許せる筈がない…」

 

 

 

 

雪は一輝に生まれて初めてのやり場の無い憤り

を感じていた。

 

 

 

 

黒鉄一輝の『戦闘スタイル』や『刃を握る理由』、

その『全て』が許せなかった。

 

 

 

 

黒鉄一輝の『模造剣技』『相手の思考を掌握して

相手の理を一瞬で暴き出し互角の剣技を生み出す』

確かに凄い剣技だと思う。一輝がどれだけ血が滲む

努力や鍛錬を彼がしてきた事も分かる。しかし雪は

思う、彼は努力の仕方を間違えた。しかも変える

気は全くないと言うので更に厄介だと改めて思う。

 

 

 

「技を使う者として、そして剣客として奴は絶対に

許せない…あれが『鈍の棒切れ』だったならまだ

マシだろう…だが、黒鉄一輝、彼が振るう刀の刃は

そんな物よりも危険だ…」

 

 

雪の自分自身の本能がそう告げてる気がした。

 

 

「そういえば…あいつの苗字は『黒鉄』だったな…

黒鉄と言えば…日本を救った誰もが憧れて尊敬する

『第三次世界対戦の英雄』だったな…」

 

 

(確か…黒鉄龍馬の筈だ…)

 

 

雪は溜息をつきながら廊下を歩いて考えていると

 

 

「因幡君。」

 

 

「ん…?」

 

 

雪は声がする方に視線を前に向けると目の前には

『ある人物』が立っていた。

 

 

「お久しぶりです……」

 

 

「あぁ、そうだな…随分と久しぶりだな『雷切』…

んで、生徒や先生達みんなから頼りにされている

『破軍学園、序列1位優等生』の『生徒会長様』が

どうして此処にいるんだ?それに『落ちこぼれ』で

『劣等生』の『僕』(Fランク)に一体、どの様な

用事なんだ…?」

 

 

雪がさめざめした表情であくびしながら棘がある

言葉が気に障ったのか刀華は【ムッ…】した表情を

している。

 

 

「なんだ?破軍学園序列1位の優等生は落ちこぼれ

のFランクの騎士である取るに足らない弱者である

僕に言われたさっきの言葉が気に障ってしまって

不愉快にでもなってしまったのか?」

 

 

「違います。それよりも……」

 

 

雪は溜息をつきながらも口元を少しニヤリとせて

刀華にそう言うと刀華は拳をぎゅっと握りしめ

ながら更に話しを続けた。

 

 

「前に試合した時はあんな結果になりましたが…

次はちゃんとした試合が出来る事を願っています」

 

 

「あー…そういえば、そうだな…東堂の言う通り

もし、予選か決勝戦で当たって決着をつけられれば

の場合だがな…まあ、雷切様にかかれば『無価値で

無能なFランク』の僕なんて瞬殺だろうけどね?」

 

 

雪はやれやれといった表情をした後、口元が戯ける

様に口元をニヤリと口角を上げてケタケタと笑う。

そんな雪の表情を見た刀華はイラッとしたが怒り

を抑えながら視線を雪に向けて予想外の事を

言い始める。

 

 

「そうですね…だったらもし、私が勝ったら貴方の

その情け無く腑抜けてだらしない怠惰な姿を絶対に

この手で全て矯正してみせます‼︎」

 

 

「…は?」

 

 

雪が理解出来ないという表情してるが刀華は

気にせずに更に話しを続ける。

 

 

「大体、前々からから思っていましたが貴方の姿や

態度などは特にだらしないと思ってたんですよ‼︎」

 

 

「は、はぁ……」

 

 

(なんで破軍学園、序列1位の優等生様は

こんなにも僕に暑苦しく熱弁して語るのだろう…?

優等生だから故にだろうか…?)

 

 

雪は刀華に質問しようとするがやめた。

それはまさに火に油を注ぐような自殺行為で刀華の

怒りの炎の苛烈さを増してしまいただではすまない

のが目に見えていた。

 

 

「なのでもし今回の試合で私が勝ったら真面目に

なって学園生活してください。」

 

 

刀華が真剣な表情で雪に言うと雪はつまらなそうに

欠伸をしながら刀華を見ながら淡々と答える。

 

 

「いいだろう…もし、勝てたらお前の言う通りに

真面目で規律を守る良い子ちゃんになってやるよ?

これで満足か? 破軍学園の誇り高き生徒長さん?」

 

 

「……約束ですからね…?」

 

 

「はいはい…分かりましたよ。破軍学園、

生徒会長殿?」

 

 

二人はそう言い合った後、一触即発の空気が何事も

なかったかの様に二人はすれ違って別れて行った。

その瞬間、彼の七星剣武祭への戦いが始まった。

 

 




読んでいただきありがとうございます。
それでは皆さん。今年もよろしくお願いします‼︎



『意見』、『感想』などのあれば是非、
沢山いただけると嬉しいです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

破軍学園代表選抜編
刃の重みと一刀の価値


皆さんお久しぶりです‼︎
やっと修正や続きが書き終わりましたので
投稿しました。


是非、『評価』や『栞』更には『お気に入り』や
『投票』などの応援、よろしくお願いします‼︎



【お知らせ】
近いうちに『リメイク版』と『旧作』を合併して
『リメイク版』が消えるので気をつけてください。

いきなりで本当にすみません……



「今日は気分転換するにはいい気分だな…」

 

 

僕はそう年寄り臭く呟きながら

ショッピングモールの中を歩いていた。

 

 

「しかし、次から次へとめんどくさくなって

来たな……」

 

 

雪の瞳は死んだ魚のような目で昨日起きた出来事

を思い出していた。

 

 

『黒鉄一輝達の件』や破軍学園を代表する雷切、

『東堂刀華からの決闘の申し込み』などの出来事を

思い出せば思い出す程に嫌になる程の散々な昨日

だったのでいつもなら部屋でネットでFPSなどを

するのだが今日はいつもと違って気分転換に外に

出てショッピングモールに来ていた。

 

 

「まぁ、今日は沢山遊んで嫌な事忘れるぞ‼︎」

 

 

雪はまるで運動会の選手代表の宣言するように

拳を突き上げてやる気を出しながらウキウキと

ゲームセンターへ行った。

 

 

 

 

それが不幸の始まりだと知らずに、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、今日もクレーンゲームで沢山の景品を

ゲットするぞ!」

 

 

雪はそう言ってカチャカチャとゲーム機を何時間

も操作したりクレーンゲームで景品を沢山ゲット

していると

 

 

 

「動くな‼︎手を上げろ‼︎」

 

 

武装した謎の集団達がM4のマガジンをいきなり

持って一般人に向けていた。だが、雪はそんな

解放軍に気付かずにまだクレーンゲームなどを

して集中している。

 

 

「おい‼︎ 動くなって言葉が聞こえてないのか‼︎」

 

 

「すみません。赤ん坊みたいにギャーギャーと

うるさいですよ?せっかくのゲームに集中が

出来ないじゃないですか?」

 

 

雪はそう平然とゲーム操作して言いながら

男に見向きもせずゲームを操作していると

男はゲームの機械をM4のマガジンで射撃した。

そうせいかゲームは壊れて全く動かなくなった。

 

 

「カカカ…どうだ?

これで自分の立場が分かっただろ?」

 

 

男がそう言うと雪の瞳には光は全く無くなり男達を

見る目はまるで愚かなゴミを見る様な軽蔑の目に

なって溜息をついていた。

 

 

「なんだ、その不満そうな顔は? 豚の分際で

《新世界》(ユートピア)の《名誉市民》の

この俺に…「黙れ…下衆風情が…」」

 

 

雪がそう声を冷たくして言うと男はキレたのか

雪に睨みつけながら『M4のマガジン』を向けて

トリガーに指を入れていた。

 

 

「カカカっ、良いぜ……そんなに死にたいなら

今すぐにでも殺してやるよ‼︎」

 

 

男が背後にいる5、6人の仲間達に聞こえるように

言っていると

 

 

「殺すとか言うのは別にいいけどさぁ…今の

あんたのその腕でマガジンを持ってトリガーを

引く事が出来るのかな?」

 

 

雪が男に冷たい声でそう言って【カチン】と静寂に

包まれたゲームセンターに音が鳴り響くが男は馬鹿

にしたように言おうとするが

 

 

「何を言ってやが……へ? う、嘘…だろ?

う、腕…? 両腕が…ない?」

 

 

男は両腕が無くなった事に今になって気付いた。

そして足元には男の両腕が地面に落ちて生々しく

【ピクピクっ】とさせて大量の血を流して

ただ醜く動くだけだった。

 

 

「う、腕が⁉︎ 俺の両腕が‼︎嘘だ‼︎嘘だ‼︎嘘だーー‼︎

こんなふざけたの間違いにきま…『黙れ…童みたい

に騒いで実に耳障りだ…』」

 

 

雪がそう言ってまた【カチン】とまた鳴らすと男の

首はゆっくりと落ちてそして首が無くなった血塗れ

の体は【ゆらり、ゆらり】と揺れて【ぐちゃり】と

鈍い音を立ててその場で倒れた。

 

 

 

「お、おい⁉︎一瞬にしてあいつの首が⁉︎

あいつ、まさか…伐刀者なのか?」

 

 

 

「って事は今のは…あいつの固有霊装なのか…?」

 

 

「しかし、見えなかったぞ⁉︎」

 

 

 

武装した解放軍達は怯えそして警戒しながら雪に

ただマガジンを向けていた。

 

 

「し、しかし…‼︎人間が銃に勝てるはずがない⁉︎

こちらが有利のはずだ‼︎」

 

 

 

男達はマガジンを雪に連発して一分一秒でも

撃ち殺さんと何発かの弾を放っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、黒の高級車の中では月影総理は冷静に国会

などの資料や暁学園の資料を作成【パラパラ】と

一枚一枚確認するように見ていた。

 

 

 

「そ、総理…」

 

 

「なんだね?」

 

 

月影総理は秘書に目もくれずに返事をしながら淡々

と書類に目を向けていた。

 

 

「あの伐刀者は危険です‼︎総理が暁学園へと誘って

依頼した解放軍達に比べ物にはならず、どの伐刀者

達よりも危険です‼︎今からでも遅くはありません‼︎

縁を切ってください‼︎あいつは明らかに『異常』

です‼︎ 未来予知が出来る貴方なら分かっている

はずです⁉︎」

 

 

秘書はそう言うと月影総理は秘書の一言で秘書が

自分に一体、何を言いたいのか月影総理には

はっきり分かった。

 

 

「……君にはそう見えたんだね?」

 

 

「はい。ですから……」

 

 

秘書は月影総理に申し訳なさそうに言うと

月影総理は書類を鞄の中に入れて秘書の顔を真剣に

見ていた。

 

 

 

「君はあの【第三次世界大戦】の内容を

どれだけ知ってるかな?」

 

 

 

「たしか…『黒鉄龍馬』と『南郷寅次郎』…

この『二人の英雄』のお陰で日本を勝利へと

導けたんでしたよね…?」

 

 

秘書が自分が知ってる【第三次世界大戦】の内容を

ゆっくりとそう言うと月影総理は一呼吸して秘書に

「表向きはね…」と言って言葉を紡ぐ。

 

 

「実はあの大戦で『もう一人の英雄』が

いたんだよ…」

 

 

「あ、あり得ません‼︎どの記録にだってそんな記述

はありませんでしたよ⁉︎」

 

 

秘書は月影総理の言った言葉を信じられないと

言う表情を浮かべていると月影総理は顔色を

変えずに更に話しを続ける。

 

 

「君は『因幡 家』を知っているかね?」

 

 

「い、いえ…私も詳しくは知りません…」

 

 

秘書はそう言うと「まあ、そうだろうねえ…」と

月影総理はそう言って更に話しを続ける。

 

 

 

 

「だったら『韋駄天流』という名前の流派なら君も

聞いた事があるんじゃないかな?」

 

 

 

月影総理が秘書にそう言うと

 

 

 

「い、韋駄天流って…あの韋駄天流ですか⁉︎

ですが、月影総理…その流派は……」

 

 

 

「あぁ、君が驚くのは無理はないだろう。

その流派は『暗殺』に特化した歴史の闇に葬られた

流派だからね?」

 

 

「ま、まさか…あの男が⁉︎」

 

 

秘書は何かを理解したのか青ざめた表情で

月影総理を見ると月影総理は薄く微笑みながら

 

 

「彼の家系は代々『忍』の家系でね?更に彼と

昔に彼と『契約』して私の警護をしてもらって

いてね?」

 

 

「だ、だったら尚更ですよ‼︎ 総理‼︎ そして

更にはあの様な者とけ、契約ですか⁉︎一体、

どんな契約をしたのですか‼︎」

 

 

秘書は不安そうに月影総理を見ながら聞くと

月影総理は笑いながらこめかみをポリポリと

かきながら申し訳なさそうな表情で

 

 

「すまないが…『契約の内容』は残念ながら

秘書である君でも明かせないんだ…」

 

 

「な、何故なんですか⁉︎

まさか…脅されているんですか⁉︎」

 

 

「私は脅されていないよ…そして君に言わない

理由は彼の許可なしに言う事ではない事と

思うからだよ…だから今の私から言える事は

全くないんだ…」

 

 

「そんな事が…無神経に聞いてすみません…」

 

 

「良いよ、こちらこそすまないね…だけど私は

君の事も信用しているよ……あっ!どうやら

着いたようだね? 今日も頼むよ?」

 

 

「は、はい‼︎ 分かりました‼︎

全力で頑張ります。月影総理‼︎」

 

 

 

月影総理と秘書はそう言って車から降りて暁学園

の中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで終わりか?」

 

 

「ば、馬鹿な‼︎ な、何故‼︎ どうして銃弾が全く

当たらないんだ‼︎」

 

 

「と、とにかく撃て‼︎」

 

 

傷のある隊長みたいな男が残っている少数の

解放軍達に「構えよ‼︎」と急いだ口調でマガジンを

構えるように叫ぶとを構えて雪に放つと

 

 

 

「やれやれ…懲りない連中だな…」

 

 

雪はそう言って大量銃弾の中に突っ込んでいく。

 

 

 

そして、雪に向かってくる大量の銃弾はかすりも

せず全く当たらなかった。

 

 

 

「なんで…なんで当たらないんだー⁉︎」

 

 

 

顔に傷がある男は顔を歪めながらそう叫んでいる中

何のお構いなく雪は解放軍達との距離を一瞬にして

近づいて

 

 

 

「うるさい…逝ねーー」

 

 

「ぐ、ぐはぁ‼︎」

 

 

「く、来るな‼︎ や、やめてくれ‼︎」

 

 

「ど、どうして……有り得ない‼︎」

 

 

雪がそう一言言うと武装した解放軍の男達全員の

体はまるで豆腐でも斬るが如くあっさりとそして

滑らかに一瞬にしてバラバラに解体されてもう

誰が誰なのか分からないくらい醜い肉塊に

成り果てた。

 

 

 

「そ、そんな…い、一瞬にして全滅だ、と…」

 

 

 

それを目の前で見ていた傷のある男は次は自分が

あの目の前にある醜い肉塊になると想像した途端、

顔が真っ青な表情で尻もちをつきながらまるで人

ならざる化物見るかのような怯えた表情で雪を見て

いた。

 

 

「て、てめぇ…何をしやがった‼︎」

 

 

「何をって別に何もしてけど…?」

 

 

「嘘つくんじゃねぇ‼︎」

 

 

雪は頭傾げながらそう答えると男は苛立った表情で

声を荒げると雪は溜息をつく。

 

 

「そもそも…小細工でもしない限り人間が…刃物が

銃に勝てる訳がねぇだろうが‼︎」

 

 

傷のある男が額から汗を流しながら声を荒げて言う

が雪は能面のような涼しい顔をしながら首を傾げて

 

 

『だが、人間が…いや、刀や剣が銃に絶対勝てない

なんて理屈や道理や理屈はないだろ?』

 

 

雪は冷めた表情で男にそう言うと男は雪を見て

自分自身の体が震えて無意識に言葉を言っていた。

 

 

「た、頼む…た、助けてくれ‼︎もう二度と悪い事は

絶対にしない‼︎今すぐに解放軍や組織を抜ける‼︎

今、ここで神様や仏様に誓うから‼︎」

 

 

男が泣いて鼻水を出しながら神や仏に縋るような

言葉を雪に言うと雪は呆れた顔しながら後ろを

向いて

 

 

「……失せろ…目障りだ…」

 

 

雪が男にそう言うと男は背後に落ちている

サバイバルナイフをゆっくりと拾い上げて両手で

握りしめて背後を向いた雪に向けて感情や力任せで

振りかざした。

 

 

 

「てめぇが失せろ‼︎この馬鹿野郎が‼︎」

 

 

男がそう言うと雪は男を見て慌てる表情もなく

溜息をつきながら淡々と話し始める。

 

 

「お前…さっきから何か変に解釈して更に勘違い

しているみたいだけど…さっきの言葉は見逃す意味

で言った訳じゃない…もう、『お前を見る価値が

ないって意味だ…』それに…僕は神や仏など全く

信じてなどいなくてね…?」

 

 

「がっ‼︎ そ、そんな…馬鹿な‼︎」

 

 

 

雪は男にそう言うと男は苦痛と絶望感が混ざった

表情を浮かべてそう言うと【カチン】と音が鳴った

瞬間、男は一瞬にして肉塊の残骸に成り果て雪は

ちらりとその肉塊を見た後、その場を後にした。

 

 

 

雪は今、思い出したと言う表情でポケットから

携帯を取り出して黒乃理事長に連絡していた。

 

 

 

「黒乃理事長…もう使ったんですけど…

《固有霊装》を使う許可を大至急ください…

ふぁ〜〜〜……」

 

 

 

雪は携帯を耳につけて怠惰に欠伸をしながら学園に

いる黒乃との会話を続ける。

 

 

 

『報告が遅過ぎだ…馬鹿者…それに最近は緊張感が

まったくもって無さ過ぎだぞ… 全く……だが、

了解した…無理はするなよ?』

 

 

 

「もちろん、分かってますよ?

僕も簡単にこんな所で死にたくないですしね?」

 

 

『…そうか……』

 

 

 

黒乃理事長はそう言って『では、健闘を祈る‼︎』

と言うと通話が切れた。

 

 

 

「全く…解放軍の奴らは時と場合を考えろよ…」

 

 

 

雪は悪態をつきながら音を立てずに近づくと

ある人物の人影が見えた。

 

 

 

「くそ…せっかくの僕の彼女達とデート中だった

のに一体何があったんだよ…」

 

 

その人物は『桐原静矢』だった。

 

 

 

「よう‼︎ 久しぶり‼︎ クズ矢君…?」

 

 

 

「‼︎ おい…僕の名前はクズ矢じゃない…静矢だ‼︎

桐原静矢‼︎」

 

 

「はいはい…分かりましたよ…」

 

 

「なんでそんなにも僕の顔を見て嫌そうな表情を

するんだよ‼︎」

 

 

今の雪の表情は今まで見た事のない程の嫌そうな

表情を桐原静矢に向けていた。

 

 

「騒ぐなよ…空気読めよ…クズ矢君? 女の心を

もてあそぶ雰囲気は読めるのに…本当マジ空気

読めよな…?」

 

 

「お前…後で覚えとけよ…」

 

 

桐原は雪を睨みつけてそう言うと雪は桐原の

そんな言葉と態度を無視して話しを続ける。

 

 

「ところでクズやん…今の状況分かるか?」

 

 

「おい‼︎とうとう『クズ矢』から『クズやん』に

成り果てたぞ‼︎『才能のないFランクの騎士』が

調子乗るなよ‼︎」

 

 

 

「いいから…さっさと答えろ…?」

 

 

雪が桐原静矢にそう言うとその場の雰囲気が一気に

寒気に一瞬にして覆われて雪を見ると雪の瞳には

『返答の答えしか認めない』と言っている様な

気がして気づいたら桐原静矢の手が無意識に

【ガタガタ】と震えていた。

 

 

「い、今ショッピングモールの中では

ショッピングモールのフードコートの近くで二十四

から三十人の規模でいろんな全員銃器などを武装

しているよ…これでいいだろ⁉︎」

 

 

桐原静矢は額に脂汗を流しながら雪にそう言うと

雪は淡々と何事もなかったかのように桐原に

 

 

「まぁ…よく出来た…及第点と言った所か?」

 

 

雪が桐原静矢にそう言うと静矢が舌打ちしながら

雪に睨みつけると

 

 

「じゃあ、自称天才騎士(笑)のクズやん君、

君にはデパートのこのフロアにいる解放軍はお前に

任せるよ?」

 

 

「……は?」

 

 

静矢は雪の言っている意味が全く分からず、

ただ思考が真っ白になって停止していた。

 

 

「おーい? 聞こえてる…? えっ? もしかして…

クズ矢君。まさか…ビビって君の大事な大事な

女の子達を見捨てて自分だけでもこの場所から

逃げようとしてないだろうなぁ? ねぇ…天才騎士

のクズ矢君?」

 

 

「‼︎」

 

 

静矢は雪にそう指摘されると図星だったのか額から

大量の脂汗や冷や汗を流しながら雪の瞳から視線を

逸らしてかなりの動揺していた。

 

 

 

「な、なんで…ど、どうして、天才の騎士たる僕が

に、逃げないといけないんだ‼︎騎士にもなれない

無能な君達、『Fランクの騎士』達とは住む世界が

根本的に違うんだよ‼︎」

 

 

 

動揺して表情で桐原は雪に言うと雪は静矢を

まるでゴミを見るような光なき目で

 

 

 

「お前…つまらない奴だな……」

 

 

 

雪はそう静矢に言うとフロアの手摺に視線を向き

一歩、また一歩と歩みを進める。

 

 

 

「まぁ、せいぜい自称天才騎士君の実力を思う

存分と発揮してくれ…後、もし、逃げたりしたら

そうだなぁ……お前の名誉や名声の全てを消す

からな?」

 

 

 

雪はそう言って最上階のフロアの手摺の上に

ゆらりと乗って仰向けの状態で勢いよく落下して

落ちていった。

 

 

「お、おい‼︎ 待てよ‼︎」

 

 

桐原静矢は落下していった雪に必死になって声を

かけると

 

 

「おい‼︎誰かいるぞ‼︎」

 

 

 

「捕まえろ‼︎ 最悪の場合は生死は構わん‼︎

構わず撃ち殺せ‼︎」

 

 

「くそ‼︎ あいつ覚えてろよ……」

 

 

桐原静矢は顔を歪めながら解放軍と対峙していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「確か、フードコートはここか…」

 

 

 

雪はそう呟きながらフードコート付近の様子を

お店のカウンターの中で様子を見ていた。

 

 

 

解放軍の部隊はショッピングモールを占拠し大勢の

人質を捕えることに成功していた。人質は非力な女

子供に限定し、周りの見通しの良いフードコートに

集められている。窓はバリケードで固めて外からの

情報をシャットアウト、制御室は敵の手に落ちて

警察が侵入しやすい通路にシャッターを下ろして

ある。

 

 

 

人質を見張る者、外からの突入に対処する者と

分かれてショッピングモール内を広く防衛を

している。人質がいる以上、警察もおいそれと

突入が出来ない。出来たとしても解放軍は戦場で

腕を慣らしている、苛烈な銃撃戦が起きるのは

確定的だ。そうなれば民間人への被害も大いに

あり得た。

 

 

 

「今はまだ大丈夫そうだな…」

 

 

 

雪が安心した表情でそう言っていると事態は

雪が予想しなかった思わぬ方向へ進行していた。

 

 

 

 

『お母さんをいじめるなぁ!』

 

 

 

「‼︎」

 

 

 

一人の少年が若い母を乱暴に扱っているのを見て

飛び出し、手に持っていたソフトクリームを兵士

に投げつけた。

 

 

『このガキがぁぁああああああ‼︎‼︎』

 

 

『あぐっ』

 

 

『シンジッ!』

 

 

ヤキンという開放軍の兵士が怒りに任せて年端も

いかぬ少年を蹴り飛ばした。泣き出す少年に母が

駆け寄り抱きしめ、許しを乞うている。

 

 

『おいどけよ女ァ!邪魔だろうが!』

 

 

『オイてめぇ何してやがるッッ‼︎』

 

 

『このクソガキが俺の服にこのアイスを

ぶつけやがったんだよォ!ぶっ殺してやるッ!』

 

 

『そんなことでキレてんじゃねえよボケッ!

人質に手ェ出すなっていやわかるんだ!

テメェがビショウさんにぶっ殺されるなァ

勝手だが、あの人がマジでキレっと二桁以上、

マジで殺さねぇとヤバイくらい収まねぇんだよ!

俺らにまでお前のとばっちりが来るだろうがッ!』

 

 

 

 

『うっせえよッ!こんだけいるんだから

一人二人ぶっ殺そうがわかんねっーのッ!』

 

 

制止を振り切り、キレたヤキンはライフルの銃口を

親子に向ける。

 

 

『ひっ!、お願いですっ! 命だけは……ッッ!』

 

 

「ダメだねェ! 豚の分際で来たる《新世界》の

《名誉市民》である俺様のズボンを汚したんだァ!

死んで償えやァッ‼︎」

 

 

 

なんのちゅうちょも容赦もなく絞られる引き金。

瞬きの間に吐き出される鉛の暴力。

 

 

 

 

それらの襲来にせめてもの抵抗か、慎重な母は

子供を自分の身体で庇うように覆い被さる。

 

 

だがそれは無意味だ。

 

 

 

鉛の弾頭は彼女の肉を容易く貫き、その下にいる

子供を穿つ。

 

 

 

そうなるはずだった。

 

 

 

 

 

しかしーー鉛の弾頭は母親に到達すらなかった。

なぜなら、親子と銃弾の間に割り込んだステラの

炎が、煤すら残さずに消し飛ばしたからだ。

 

 

 

 

 

 

「待ちなさい!」

 

 

 

引き金を絞る寸前、人質の中からステラは

立ち上がると帽子を捨てた。

 

 

 

「あぁん? なんだぁ? てめぇ」

 

 

 

「ヴァーミリオン皇国第二皇女、

ステラ・ヴァーミリオン。人質を代表して、

アンタ達の親玉と交渉させなさい」

 

 

 

「ヴァーミリオン……? まさか……」

 

 

学のないヤキンでもその名くらいは知っている。

 

 

「オイオイオイ、まさかこんなところに皇女サマ

がいるたぁな」

 

 

驚きはしたが自分達が有利な立場にいるには

変わりない、すぐに自信を取り戻してヤキンは

下卑た笑みを浮かべた。

 

 そこへ――。

 

 

「おやおやおや〜? これはこれはとんでもない

お方が紛れ込んでたもんだぁ」

 

 

外套に金刺繍、解放軍リベリオンの使徒の証だ。

 

 

「あんたが連中の親玉?」

 

 

「ヒヒヒ、よくご存じで。ええ。その通りです。

私は開放軍の使徒で名はビショウと申します。

お見知りおきを、お姫様」

 

 

 

男ーービショウは恭しく頭を垂れて名を名乗り、

そして人質を囲む部下達にステラに向けたものとは

違う、攻撃的な眼光を向ける。

 

 

「おい。何をガタガタやってんだ。

てめぇらぁお留守番もまともにできねえのかよぉ」

 

 

「ひっ」

 

 

 

「俺ァ大人しく待ってろつったよなぁ?

大切な人質に手を出すなつったよなぁ俺?」

 

 

 

「お、俺たちぁ止めたんスよ!

でもヤキンの奴が言うこと聞かなくって!」

 

 

 

 

「ヤぁキン……。この騒ぎの原因はテメェか?」

 

 

 

「ヒッ……す、すんません…ビショウさん。

で、でもあのガキがオレのズボンにアイスを!」

 

 

 

 

 

「アァ⁉︎ たかがそんなことでガタガターー

……いや」

 

 

 

 

 

 

ふと、ビショウは何を思ったのか、思案顔をして

黙り込むと、

 

 

 

 

「……ヒヒヒ」

 

 

 

 

「び、ビショウさん?」

 

 

 

「……アァ、ヤキン。そりゃ災難だったなァ。

同情するぜ俺ァ」

 

 

 

 

 

急に先ほどまでと態度を豹変させ、ズボンを

汚された部下の肩を叩きーー

 

 

 

 

「だが安心しろ。てめぇら《名誉市民》の名誉は

俺たちが守ってやるからな」

 

 

 

 

 

懐から拳銃を取り出すと、その銃口を母親に

庇われている子供へ向けた。

 

 

 

 

 

「な、なにをするつもり⁉︎」

 

 

 

 

 

「何って、そりゃ決まってまさァお姫様。

《名誉》である俺達に逆らってアイスで汚した。

このガキに自分のやったことの当たり前のケジメを

分かるまでしっかりとつけさせるんですよォ。

…大事な事でしょう?人として」

 

 

 

 

「人質には手を出さないんじゃないの⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

「そりゃ大人しくしていれば……の話でさァ。

なのにこのガキは大人しくしていなかった。

まあ大人じゃないから仕方ないかもしれませんが…

それでもガキがやったことは間違いなく罪だ。

《名誉市民》であるこいつらの名誉を傷つけた罪。

命をもって贖われる必要がある。罪には罰を。

罰には許しをーーソレは俺のモットーでしてね…ッ。」

 

 

 

トリガーに掛けられたビショウの指に力がこもる。

 

 

 

 

「ーーーーーッッ‼︎‼︎」

 

 

 

 

 

 

瞬間、ステラは躊躇わなかった。この男が本気で

引き金を引くと確信したから。ステラは即座に

《妃竜の罪剣》を顕現させ、

 

 

 

 

「はぁああああああああああああああ!」

 

 

 

 

 

 

床を蹴り、ビショウに斬りかかった。

ーーーそれを見て、ビショウは薄笑う。

 

 

 

 

(誘われたッ⁉︎)

 

 

 

 

 

だが構うもんか。固有霊装を展開する余裕なんて

与えない。ビショウの武装は拳銃一つ。

 

 

 

 

そんなもので私の《妃竜の罪剣》の渾身の

打ち下ろしが簡単に防げるものかーー!

拳銃ごと断ち切る。その気概をもってステラは

《妃竜の罪剣》を振り下ろし、しかしその刀身は

ビショウの左手の差し出し人と中指にすんなりと

受け止められた。

 

 

 

 

 

「なっ⁉︎」

 

 

 

 

 

 

 

「ヒヒヒ、ざーんねん。速い。それに強い。

さすがは噂のAランク。だが悲しきかな、

世界の広さと怖さを知らない」

 

 

 

 

 

 

ステラは驚愕を隠せない。自分の渾身の一撃を、

素手で、指の力だけで受け止めるなんて、人間業

じゃない。 そんなことをすれば指が剣の重さを

受けきれずに腕が縦に裂ける。もし、受け止め

きれたとしても、《妃竜の息吹》の炎熱が腕を

焼き潰すはずだ。なのに、ビショウは重さも炎も

ものともせずに、軽々と《妃竜の罪剣》を

受け止めた。

 

 

 

どうして?

 

 

 

 

 

 

だが答えよりも速く、ビショウの右拳が、

ステラの腹部を打ち抜いた。

 

 

 

 

 

 

「が、は……っ」

 

 

 

 

突き抜ける衝撃にステラの膝が一撃で落ちる。

《妃竜の羽衣》越しですら一撃で自分の体力を

根こそぎ持って行く攻撃力。

 

 

 

 

(どうして、あいつを見た見た目は…そんな力の

ある伐刀者には見えなかったのにッ)

 

 

 

 

 

 

なんだこのふざけた攻撃力は、ステラは悶絶

しながらビショウを見上げ、

 

 

 

 

「その……指、輪!」

 

 

 

 

ビショウの攻防のからくりに気づいた。

 

 

 

彼の両手中指から禍々しい赤光を放つ指輪。

一見するとただのファションにしか見えないが、

これこそがビショウの固有霊装ーーーー

 

 

 

 

 

「二つで一構えの固有霊装《大法官の指輪》。

その特性は『罪』と『罰』。左の指輪は俺に対する

ありとあらゆる危害を『罪』として力を吸収し、

右の指輪はその力を『罰』という魔力に変えて敵に

撃ち返すことができる。……ヒヒヒ、つまり相手が

強ければ強いほど強くなるってワケでさぁ」

 

 

 

「……なるほど、アタシは自分の全力で

殴られたわけね」

 

 

 

 

どうりで立てないはずだと納得する。

 

 

 

 

 

 

「相手がどんな力を持っているかわからないのに

闇雲に飛び込むもんじゃないんですよォ。

お姫様。ヒヒヒ」

 

 

 

 

 

 

「……そう、させたのは、アンタじゃないの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヒヒヒ、いやいや、すみませんねぇ。

何しろ相手があの《紅蓮の皇女》ともなれば、

手段を選んでいられる場合じゃァないですわ。

……しかしまあ、感心しましたぜェ、お姫様。

息を潜めて大人しく隠れていれば良いものを、

一個の国皇女である御身を、警備も付けずに

ガキ一匹のために盾にするとは…。いやいやァ、

実にヴァーミリオン家らしいご立派な考えだ。

素晴らしい皇族の鑑とでもいうべきですかねェ。

そこでこのビショウ、ステラ姫のその勇気に敬意

を表し、あのガキを救う提案を致しましょう」

 

 

 

 

「どういう、こと?」

 

 

 

 

 

「ごくごく簡単なことでさァ。

誰もが知っている簡単な贖罪の方法。

悪いことしたたら謝る。それだけのこと。

お姫様があのガキの代わりに謝るのですよ。

ーーーー全裸で、土下座してねぇ。カカカカ!」

 

 

 

 

 

 

ビショウはステラにそれができないことを

わかって、あえて選ばせている。

 

 

ただ、彼女を辱めるためだけに。

 

 

 

そして、……ステラの回答はやはり一輝が予想した

通りのものだった。

 

 

 

 

 

「………わかったわ」

 

 

 

 

悔しさを押し殺す声で《妃竜の罪剣》をしまい、

了解の意を示すステラ。

 

 

 

 

 

「その代わり、約束しなさい。人質には金輪際

危害を加えないって」

 

 

 

 

「もちろん。このビショウ、

約束は守る男で通ってますんで、ご安心を……。

まあ身代金と俺たちの逃走が成功することが

一番の条件ですがねェ」

 

 

 

 

 

「………約束、したわよ」

 

 

 

念押しするように確認してから……ステラは

立ち上がる。膝が笑っているのは、先ほどの

打撃のダメージが抜けていない空だろう。だが

…ゆっくりと人が見てる前で衣服を解いていく

両手が震えているのは、悔しさに違いない。

 

 

 

 

 

「うはは! こりゃすげえ、皇女様の

ストリップだ!」

 

 

 

 

「イカスアイデアだ!さすがビショウさんだぜ!」

 

 

 

 

「おら脱ェ!はははっ!」

 

 

 

こんなゲスどもの前で素肌を晒さなければならない

恥辱に頬を真っ赤に染めながら、ステラは一枚、

また一枚と衣服をはだけていく。

 

 

 

 

 

カーディガンがはだけ、美しいなで肩が露わに

なる。スカートが足元に滑り落ち、魅惑の脚線

がゆっくりと観衆に晒される。ブラウスのボタン

が一つずつ外されて、揺れる布の隙間から小さな

臍の穴が覗く。そしてついには、彼女の肌を包む

ものは白いレースの下着だけになった。

 

 

 

 

「うはー。すっげえ胸だ。ホントウに学生かよ〜」

 

 

 

 

「たまんね〜」

 

 

 

 

 

「ビショウさん! 写メいいっすかッ⁉︎」

 

 

 

 

「ガタガタうるせェよ早漏野郎がァ。

メインはここからだろうがよォ。ヒヒヒ」

 

 

 

 

 

 

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ」

 

 

 

 

聞くに堪えないよな薄汚い声。それを直に受け、

ステラの身体が大きく震えた。そのとき、一輝

はステラの頬に光なにかを見る。

 

 

涙。

 

 

 

 

 

その瞬間、一輝は『ブチ!』と何かが千切れる

音を聞いた。それは一輝の噛みしめた唇の肉が

ちぎれた音だったが、同時に彼の中にある、

彼をその場に止めていた『理性』の網もまた

千切れた。

 

 

 

 

(ーーーステラッッ‼︎ ‼︎)

 

 

 

 

「落ち着きなさい」

 

 

 

だが、一輝の衝動に行動はついてこなかった。

ついて行けなかった。

 

 

 

 

「ぐっ」

 

 

 

身体が動かない。何かに縫い付けられたように。

見れば、有栖院は自らの固有霊装《黒き隠者》の

刃を、一輝の影に突き立てていた。

 

 

 

 

 

《黒き隠者》相手の影を介して動きを封じる

有栖院の伐刀絶技が、一輝の行動を封じた

のだ。

 

 

 

 

 

「……冷静になりなさい。今出て行って

どうするの」

 

 

 

 

「だけど……ッ、今出て行かないとステラが

……ッ!」

 

 

 

 

「大丈夫。あたしに策がある」

 

 

 

信じられない言葉に一輝が目をむく。

 

 

 

 

「……今、珠雫が動いている。だからあと少し

待ちなさい」

 

 

 

「珠雫が…………?」

 

 

 

「ええ。魔力を隠しながら人質全員を守れる

水の結界の準備しているわ」

 

 

 

 

言われ、一輝はもう一度ホールを見下ろし、

魔力の気配を探ろうと目をこらすが、

 

 

 

 

「………そんなの、どこにも見えないけど」

 

 

 

 

「そりゃそうよ。珠雫はBランク騎士で全体的な

能力値はステラに劣るけど『魔力制御』だけは

今年度ぶっちぎりナンバーワンなんだから。

その一点に限って言えば珠雫はAランク相当の

力を持っている」

 

 

「!」

 

 

有栖院の言葉に、一輝の表情が驚きに染まる。

『魔力制御』とは、早い話、魔力の扱いの巧さを

示すステイタスだ。このステイタスに秀でている

者は、普通の伐刀者が10の魔力を必要とする

行動を、2や3の魔力で行うことができたり、敵

に気づかれないように魔力を用いる『迷彩』と

いう技術を駆使することができる。そして黒鉄珠雫

は取り分けこの技能に秀でた伐刀者なのだ。

 

 

 

「珠雫クラスの業師が本気で迷彩かけたら、誰にも

見破れやしないわよ」

 

 

 

 

「じゃあなんで動いているって言い切れる

のさ…………!」

 

 

 

問いかけに、有栖院は生徒手帳を見せた。どうやら

マナーモードにはしたものの、電源を落として

いなかったらしい。そしてディスプレイに映って

いるのはーー珠雫からのメール。

 

 

 

『今決壊はってる できたら合図出す』

 

 

 

端的な、誤字だらけのメールだ。たぶん周囲を警戒

しながら、ろくに画面も見ないで打ったのだろう。

 

 

 

だが意味は伝わる、はずだった…

 

 

 

「貴様‼︎ 一体、何者だ‼︎」

 

 

(この声は⁉︎)

 

 

(一体、何が起きたというの…?)

 

 

 

一輝と有栖院は声が聞こえる方に視線を向けると

 

 

 

 

「貴様等か…? デパートを占拠や一般人を人質して

《名誉市民》だとか《新世界》とほざいてこんな

ふざけた茶番劇をしている阿保共は?」

 

 

 

 

暗くてよく見えなかったが二人は目をよく凝らして

見て見ると一輝達が『よく知っている人物』の姿

だった。

 

 

 

 

「あの人は…確か……」

 

 

 

 

有栖院はそう言って訝しげな表情でいると

 

 

 

 

「せ、因幡先輩‼︎ ど、どうし…ふっぐッ‼︎」

 

 

 

一輝は驚いた表情でそう言うと有栖院が自らの手で

一輝の口を抑えた。

 

 

 

「落ち着きなさい‼︎ 一輝‼︎」

 

 

 

有栖院がそう言って一輝を落ち着かせると一輝も

いつものように冷静さを取り戻した。

 

 

 

「ご、ごめん…アリス…」

 

 

 

一輝は申し訳なさそうに言うと有栖院は身を

潜めて冷静な表情で

 

 

 

「んで、一輝、さっきあの人のことを…因幡先輩

って言っていたけど…」

 

 

 

有栖院がそう質問すると一輝はゆっくりと答えた。

 

 

 

 

「彼は…因幡 雪先輩……破軍学園二年のFランク

の騎士の生徒だよ……」

 

 

 

一輝がそう言うと有栖院は一輝の今の話しを聞いて

ある疑問が浮かんだ。

 

 

 

「あの人…あなたと同じFランクなの…?

あなた以外のFランクの騎士がいたなんて……

初めて知ったわ……」

 

 

有栖院は驚きを隠せずにいると一輝は更に話しを

続ける。

 

 

 

「それは間違いないみたいだよ…前理事長も

そう言っていたからね……」

 

 

 

一輝達がそう話しているとフードコート広場は

更に状況が悪化していた。

 

 

 

「テメェ…さっきから茶番劇とか阿保とか

もしかして…俺達に言ってるのかァ?」

 

 

ビショウはこめかみの辺りには青い筋がビキッと

なって雪を睨んでいると

 

 

 

「馬鹿なのか?貴様は? 周りをよく見てみろ。

貴様等以外にこの言葉が一番相応しい奴等が

この場にいると思うのか?子供でも当たり前の

ように分かっている事を聞くなんて貴様、随分と

阿保だな。阿保にも程があるぞ?」

 

 

 

 

 

雪はビショウ達にそう言うとビショウは俯いて

小声で何かをぶつぶつと呟いた後、

 

 

 

 

「そうか…そうか…………ヒ、ヒヒヒ…ヒヒヒ‼︎」

 

 

 

「び、ビショウ……さん…?」

 

 

 

ビショウはいきなり大笑いをし始めているのを

他の下っ端の解放軍達は心配そうにしていた。

 

 

 

すると、

 

 

「ヤァーーキン……」

 

 

「は、はい‼︎」

 

 

 

ビショウがヤキンの名前を呼ぶ。

 

 

 

「あのガキを撃ち殺す前にこの《名誉市民》である

この俺を侮辱した愚かで醜いあの豚を撃ち殺せ‼︎」

 

 

 

「わ、分かりました‼︎」

 

 

ビショウは雪の言葉にかなり激怒する姿を見て

解放軍の下っ端達はビショウの怒りに歪んだ表情

を見て【びくり‼︎】と肩を震わせて怯えながら

慌てて雪に銃口を向けていた。

 

 

 

「……それは、戦線布告と取っていいんだな…?」

 

 

 

雪はビショウにそう質問するとビショウは人を

馬鹿にして見下すような悪魔染みた満面の笑みを

浮かべて

 

 

 

「ヒヒヒ‼︎ バーーカ‼︎ 見て分からねぇのかよ‼︎」

 

 

 

ビショウはそう言って上げていた右腕を下ろすと

沢山の銃弾の雨がものすごい勢い速さで雪に目掛け

て飛んでくる。

 

 

 

(む、無理よ…あんなに沢山の銃弾の数‼︎)

 

 

 

(ひ、一人であんな数を相手するなんて‼︎ あの人、

無謀にも程があるわ‼︎死にに行くようなものよ‼︎)

 

 

 

ステラや珠雫が雪を見てそう思っていると

 

 

 

「そうか………」

 

 

 

雪がそう言った瞬間、

 

 

 

 

【カチン】

 

 

 

 

そう鳴った瞬間、周りから【カランカラン】と

何かが地面に落ちた複数の音が周りからした。

 

 

 

 

「……は?」

 

 

「う、嘘でしょ…?」

 

 

「あ、あり得ない…ふざけてる……」

 

 

 

珠雫やステラ、ビショウなどが言葉に

出来ないでいるは無理もない、何故なら…

 

 

 

 

「ま、真っ二つになってる…しかも、全部…」

 

 

 

その音の正体は至極単純だった。それは先程、

ビショウ達解放軍が放った銃弾が全部綺麗に

真っ二つになって地面に落ちた音だった。

 

 

 

 

「銃弾を斬るのも案外難しくないな……」

 

 

 

雪は平然と先程の銃弾の雨を対したことはないと

言って溜息つきながら先程真っ二つに斬り捨てた

大量の銃弾をつまらなそうに見てそう言うと

 

 

 

 

 

 

「あの避けるのも不可能に近い銃弾の雨の中、

全部、撃ち落としたって言うのか? あり得ない…

しかも今の一瞬にしてか…?」

 

 

 

「ば、化物かよ…あいつ⁉︎」

 

 

 

解放軍の下っ端達が少し後退りながら怯えて

慌てていると

 

 

 

『我が一刀の刃の錆びになれ………』

 

 

 

雪がそう言って右手には『灰色一色の刀』が

あった。

 

 

 

「そ、それが…テメェの固有霊装なのか…?」

 

 

 

思考が追いつかなくなったビショウはとても

焦った表情で言うと

 

 

 

「えっ? あぁ……まぁね…ていうか見れば

分かるでしょ?」

 

 

 

雪は面倒くさいと言った表情でビショウの質問

に答えると

 

 

 

(あれがアイツの固有霊装…初めて見た…)

 

 

 

ステラが雪を見ていた。それに固有霊装を

『出すところすら全く見えなかった。』と

そう思っていると

 

 

 

「殺せ‼︎殺せ‼︎殺せ‼︎ そいつを《名誉市民》で

あるオレ達を貶すその愚かな豚を今すぐ殺せ‼︎」

 

 

 

ビショウは慌てて下っ端の部下達にそう指示を

出して銃を構えて銃口を雪に向いて発砲しようと

するが

 

 

「あんた等…目障りだな……」

 

 

 

雪がそう言って刀を鞘から抜いて銃を構えた

ビショウの部下達に向かって一直線に走っていく。

 

 

 

 

「あ、アイツ…ま、真っ向から‼︎」

 

 

 

「あれでは、間違いなく…格好の的じゃないか…」

 

 

 

 

ビショウの部下達そう思いながら一瞬、

戸惑いながらも銃を構えようとするが……

 

 

 

「遅い…そして邪魔……」

 

 

 

 

雪はそう言ってビショウの部下達と構えていた

銃を一瞬にして斬り捨てていった。

 

 

 

「ぐ、ぐはぁ‼︎」

 

 

「そ、そんな…馬鹿な⁉︎」

 

 

「や、やめ……がぁ‼︎」

 

 

 

男達は雪にあっさりと全員が斬られた瞬間、

とても悲痛な表情を浮かべて倒れた。

 

 

 

 

 

「アンタ等さあ、さっきから演説みたいに御大層

な下らない言葉をベラベラと並べるな僕達は今、

『命を奪い合う殺し合い』をしているんだぞ?

それに躊躇うぐらいなら最初から武器を取るな」

 

 

 

 

雪は斬り捨てたビショウやその部下達に氷の様な

冷たく更に光がない瞳を向けて呆れた声を出して

いた。

 

 

 

 

 

「そ、そんな馬鹿な事があってたまるか‼︎

だ、だって…少なかったが、マシンガンを持った

部下達が千人以上はいたんだぞ‼︎ テメェはそれを

あっさりと‼︎」

 

 

 

 

 

「えーっと…確かビショウだっけ……?

そんなつまらぬ戯言をほざいたり動揺して更には

自分の伐刀者の能力に愚かにも溺れている時点で

お前は伐刀者としては三流だよ…でも、さっきの

無能な烏合の集のリーダーとしては一流だ……

間違いなくな…」

 

 

 

 

「んだと‼︎ テメェ‼︎ガキのくせに運良く全員を

倒したからって図に乗るなよ‼︎」

 

 

 

 

その時のビショウは冷静な判断は全く取れずに

ただ、今の彼の心を動かしてるのは雪への怒りの

感情だった。

 

 

 

だが、しかし…

 

 

 

 

(大丈夫だァ……落ち着け……オレには、

《大法官の指輪》がある…『罪』と『罰』。

左の指輪は俺に対するありとあらゆる危害を『罪』

として力を吸収し、右の指輪はその力を『罰』と

いう魔力に変えて敵に撃ち返すことができる。……

ヒヒヒ、つまり、あのガキが強ければ強いほど…

強くなるってワケだぁ…ヒ、ヒヒヒ…それに拳銃も

手元にある。)

 

 

 

 

ビショウは自分の固有霊装の『罪』と『罰』を

思い出した瞬間、ニヤリと笑いながら余裕がある

表情で雪を見ていた。

 

 

 

 

「そちらがこないなら、こちらから行くぞ…」

 

 

 

 

 

「ひ、ヒヒヒ…アァ…別に構わねェぜ?」

 

 

 

 

「後悔するなよ……」

 

 

 

ビショウはそう言って勝ちを疑わない考えを

していたがその誤った選択がビショウの運命を

かなり左右する。

 

 

 

 

(さぁ来い‼︎ 貴様が来た瞬間に確実に俺の

『固有礼装』か『拳銃』で後ろにいる人質の

目の前で確実に殺してやる‼︎)

 

 

 

 

ビショウは雪を見てそう思ってる中、ビショウ

が一瞬だけ瞬きをした瞬間、

 

 

 

 

 

『き、消えただと‼︎ 何処だ‼︎ 何処にいる‼︎

姿を現せ‼︎この卑怯者‼︎ 臆病者‼︎』

 

 

 

 

ビショウが驚きながら叫んで雪を必死になって

フードコート周囲や人質達の顔を確認しながら

探していると

 

 

 

 

 

「こっちだ…鈍間。」

 

 

 

 

「ーーッ!」

 

 

 

 

 

ビショウは背後から聞こえる声に反応して振り返る

と雪の持っていた刀の刃が刺突となってビショウの

喉を刺し貫き【ぐしゃり】とトマトが潰れたような

生々しく鈍い音を立てながら血が飛び散って壁に

貼り付けの様になっていた。

 

 

 

 

 

 

「が、がふっ‼︎ があぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 

 

「ひ、ひぃ‼︎」

 

 

「う、嘘…‼︎」

 

 

 

喉を刺し貫かれたビショウは苦しみの声を上げて

ステラは生々しい状況を見て青ざめた表情をして

珠雫は両手で胃から込み上げて来る感覚が来て

必死に口元を抑えていた。

 

 

 

 

 

「どうやらここまでのようだな……」

 

 

 

 

雪は死んだ魚のような光無き瞳でビショウの喉に

突き刺さった刀を容赦なく引き抜くとビショウは

その場に倒れて今にも息の虫である血塗れの

ビショウを見下ろすとビショウは力を振り絞って

雪を睨みつけながらも必死になって逃げようと

まるで芋虫のように這いつくばっていた。

 

 

 

 

「な、な…ぜ…どう…して…だ…よ…‼︎」

 

 

 

ビショウが苦しそうに掠れた声でデパートの

出口に向かって這いずりながら言うと雪は

 

 

 

 

「あんたは僕を舐めてたみたいだからなぁ…

それにこの愚かで最悪の事態を招いたのは

間違いなく貴様の傲慢さが生んだんだ…」

 

 

 

 

雪がそう言って地面を這い蹲るビショウをまるで

ゴミ屑を見るが如き瞳をして一歩、また一歩と

ゆっくりとビショウを追いかけていく

 

 

 

「お前もこいつ等によく言っていただろ?

『罪には罰を。罰に許しをーー』それがお前の

信条であり一番のモットーなんだろ?」

 

 

 

 

「や、や……め、ろ‼︎ く……るな‼︎」

 

 

 

ビショウは必死になって地面を這い蹲ってると

 

 

 

 

「逃げるな…ゴミ屑…」

 

 

「がっ‼︎ があぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎

い、イテ…イテェよ‼︎ やめてくれ‼︎ 頼む‼︎

た、タのムから…‼︎ 許してくれ‼︎」

 

 

 

 

ビショウは弱々しく掠れた声で雪に泣きながら

懺悔をする。だが、怯えるビショウの姿から見て

ビショウの瞳に写る雪はまるで人間ではなく

化物でも見ているような怯え方だった。

 

 

 

だが、雪はそんなビショウの『身勝手な懺悔』を

決して許さない。

 

 

 

「駄目だ。因果応報……今迄自分が犯した己が

醜くて罪深い行いを悔い改めろ…」

 

 

 

 

「い、イヤだ…! 死にたくない…死ぬのは…

死ぬのはイヤだああああぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 

 

 

ビショウは掠れた声で必死になって叫び続ける。

その姿はまさにワガママを言って駄々をごねる

幼き童の様に喚き散らしながら右手に持っていた

拳銃を雪に向ける。だが、雪はそれを予知していた

かのように当然であるかのように灰色一色の直刀で

平然と切り落とした。

 

 

 

 

「う、腕が…ない? 腕が‼︎ 腕がああああぁぁ‼︎」

 

 

 

ビショウは最初は理解出来なかったが腕がない感覚

と目の前でボトッと鈍い音がした方へ恐る恐る視線

を向けて見てみると自分の腕らしき物体が転がって

おり更には大量の血がじわじわと目の前で流れ出て

いて転がっていた。

 

 

 

 

「せめて最後ぐらいは『上に立つ者』として、

そして…『隊を率いる者』としての己が務めを

潔く果たせ…」

 

 

 

 

「ぐっ‼︎ ぐがあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 

 

 

雪が冷たい声でそう言ってビショウの腹部を

容赦なく踏んでビショウの髪を掴み持ち上げて蔑み

の目で見ているとビショウはとても怯えて苦しそう

な顔と朦朧とする意識と掠れた声で悶えて必死に

足掻くが雪はビショウをその場に座らせるのを見て

ステラが慌てながら

 

 

 

「ち、ちょっとアンタ‼︎ 一体、何をする気なの⁉︎」

 

 

 

ステラは雪にそう聞くと雪はステラをつまらない物

を見るかの様に見ながら

 

 

 

「何をって…今からこいつの首をはねる…」

 

 

 

 

「ア、アンタ‼︎何、バカな事を言ってるの⁉︎

別に殺すまでの必要はないじゃないの‼︎」

 

 

 

ステラが雪に声を荒げてそう言うと

 

 

 

「貴様…まさか、こいつに今更、変な温情や

情けをかけているのではないだろうな…?」

 

 

 

「違うわよ‼︎ 私が言ってるのは殺す必要がない

って言っているのよ‼︎」

 

 

 

ステラがその言葉を言った瞬間、一瞬にして雪の

殺気でフードコートの周りの空気が重たくなって

変わっていく。それは人質達と紛れて一緒にいた

『Bランク』の騎士の珠雫すら雪の異常の殺意に

当てられて耐え切れずに嘔吐していた。

 

 

 

 

「………貴様、それを本気で言っているのか?」

 

 

 

「あ、当たり前じゃない‼︎」

 

 

 

ステラが雪の殺気に当てられて怯えて今にも

この場で嘔吐をしそうにながらも必死に雪に

反論していた。

 

 

だが、

 

 

「……緩い」

 

 

「…は?」

 

 

 

「だから緩いって言ってるんだよ……」

 

 

 

雪はそう言ってフードコートに集められた

人質達の方へゆっくりと向かっていく。

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

「おい…そこの女…」

 

 

 

「わ、私…ですか…?」

 

 

 

雪に言われた瞬間、人質の中にいた女性はビクリ

と肩を震わせていた。

 

 

 

「こっちにきて立て……」

 

 

「…えっ?」

 

 

「いいから立て…二度は言わない。」

 

 

「は、はい…」

 

 

女性は雪に言われた通りに指示された場所に

立っていた。

 

 

 

 

「立ちましたけど……一体…「逝ね」」

 

 

 

女性が全てを語って雪に振り返る前に雪は背後から

忍びより灰色の刀で逆袈裟で女性の首の顎動脈に

当たって更に右肩から左脇腹までばっさりと躊躇い

や容赦など雪には一欠片も一切なく斬り捨てた。

 

 

「がっ‼︎ がっふ‼︎ な、なんで…⁉︎」

 

 

「理由は…貴様が誰よりも知っているはずだ…

この三流が」

 

 

 

「く‼︎ クソォ…‼︎こ…こんなはずじゃ……

「うるさい…さっさと逝け…」くそがあぁぁ‼︎」

 

 

 

女性が悪態を吐くと雪は最後に自分の固有霊装の

灰色の刀の刃を女性の心臓部に突き立てた瞬間、

大量の血飛沫が飛び散り女性は叫び声を上げて

フードコート中に響き渡りそして生き絶えた。

 

 

 

「さてと…いるんだろ? 黒鉄一輝?」

 

 

 

雪は溜息つきながら女の死体から刀を荒く抜いて

刀を鞘に滑らせるように収めようとしてると雪は

一輝が近くにいる事に気付いて溜息をつきながら

そう言うと

 

 

「……気づいていたんですね?」

 

 

「当たり前だ…全然、自分自身の感情と気配を

全くもって隠しきれてなかったぞ…お前?」

 

 

雪と一輝が話してると

 

 

 

「アンタ‼︎ 何を平然と言っているのよ‼︎

何の罪のない人質を殺したのよ⁉︎」

 

 

 

ステラは雪の平然とした態度に激怒していると

 

 

「…何の罪のないだと……?」

 

 

 

 

 

雪がステラの言葉を聞いた瞬間、ピクリと身体が

反応して視界をステラに向ける。

 

 

 

本気で言っているのかこの皇女様は…?

この皇女様といい…そしてこの黒鉄兄妹は本当に

理解しているのか?破軍学園みたいにいつもお優し

過ぎる『生徒』や『生徒会長』や『先生』、そして

『理事長』達みたいに甘やかしてくれると思って

いるのか…?

 

 

そう思っていたならなんと的外れ過ぎて最も

愚かな回答だろう…

 

 

 

呆れた表情をそう思っていると

 

 

 

「だ、だってそうでしょ…? ねぇ、イッキ?」

 

 

 

「そうだね…確かにステラの言う通りだ…雪先輩…

僕も貴方のやり方は少しやりすぎだと思います…」

 

 

「私もお兄様と同じ意見です‼︎それにその人は

なんの躊躇いもなく解放軍の使徒の喉を刺し貫く

人なんですよ‼︎」

 

 

一輝がそう言うと俯いて膝ついてふらふらな状態

だったステラと珠雫が雪にそう言うと

 

 

 

「…はぁー…お前等…本当にお人好しの阿保か?

今、僕が斬りつけたこの女が何の罪のない一般人

だと本当に思っているのか…?」

 

 

 

雪は光なき瞳で一輝達をギロリと睨みつける。

 

 

「だ、だって実際、そうでしょ⁉︎」

 

 

 

ステラが雪に苛立ちながら言うと雪はさっき

心臓を一差しした女性の死体に近づいて

 

 

 

「だったら、お前等はこれを見ても言えるのか?」

 

 

 

雪がそう言って女性の死体を足で蹴って退かして

女性の所持品の鞄を拾って血塗れの鞄の中に手を

躊躇いなく突っ込むと中には普通の女性が絶対に

持っている筈のない。むしろ軍人などが携帯して

持っていそうな『拳銃』や『サバイバルナイフ』、

更にはトランシーバーに近い『通信機』などが

入っていた。

 

 

 

「あ、あれって⁉︎ まさか‼︎」

 

 

「け、拳銃ですよね…?」

 

 

「それにナイフや通信機だなんて‼︎」

 

 

一輝達が驚いている中、雪は更に話しを続ける。

 

 

「恐らくだが……この女も解放軍の手先で更に

保険も兼ねて人質の中に紛れて最悪の場合には

ビショウって奴のタイミングに応じて何人かの

人質を使って盾にでも使ってこの場を逃げる気

だったのだろうと周りの誰もが見ても分かると

思うんだが?それでも貴様等は今、倒れている

この女は本当に罪がない人間だったと言えるか?」

 

 

「で、でも‼︎ 仮に仮説が合ってとしても‼︎

別に殺すまでの必要はないでしょ⁉︎」

 

 

 

ステラは納得がいかないと雪に言うと今のステラ

の言葉に不満だったのか雪は視線をステラに

向けて

 

 

 

 

「だったら何か?人質の誰かが殺されるまでの間、

ただ指を咥えて人が死ぬのを見て眺めていろと…?

それは随分と薄情で他人事過ぎる最悪の愚策の考え

の事だな?更には『世間を全く知らず、更には鶏

以下の記憶力の箱入り娘 のようだったな…案外

対した事ないな…噂に聞いていたヴァーミリオン

皇国の第二皇女様の騎士としての力は対した事

無さ過ぎるぞ?』」

 

 

 

「何ですって‼︎」

 

 

 

ステラは雪の言葉に癪に触ったのか何の合図も

なしにいきなり炎を纏った《妃竜の罪剣》を顕現

させて剣先を雪に向いていた。

 

 

 

「落ち着いて‼︎ステラ‼︎」

 

 

「退いて‼︎ イッキ‼︎」

 

 

それを誰よりも早く気付いた一輝がステラを

必死になって宥めて説得をしていると雪は

そんな状態を無視して更に話しを続ける。

 

 

 

「己の身を守れずにこのような醜態を晒す行為、

まるで痴女のように自分自身の身体を晒していた

貴様などにとやかくと言われる筋合いはないと

思うのだが、違うか?ステラ ヴァーミリオン殿?」

 

 

 

雪はステラに棘があり含みがある言い方をすると

 

 

 

 

「アンタ‼︎ 言いたい事ばかり言って‼︎」

 

 

 

「だが、事実だろ?」

 

 

 

雪のその一言がステラの心の炎に言葉という

油がドボドボと勢いよく注がれて更にステラの

怒りの炎の火力がますます増していく。

 

 

 

「それと黒鉄一輝、

僕は二度言うのは好きではないがもう一度言う。

己の友や妹、更には周りにいる目の前の人質に

なった人間達すら守れないのならば今すぐその

鈍の剣を捨てて伐刀者を剣客やめてしまえ…

その方が貴様の身の為だ…」

 

 

 

「貴方にお兄様の何が分かるんですか‼︎」

 

 

 

珠雫は雪の言葉に怒りを含ませ、更に敬愛する兄、

一輝を雪という男に侮辱されて怒りが増していた。

 

 

 

 

「僕がこのペテン師の事なぞ知るわけないだろう

それに実際、今の状況を見ればわかるだろ?

こいつの鈍の猿真似模造の剣を振るっているから

そうやって誰も守れないんだと思うが違うか

黒鉄一輝?」

 

 

 

「………」

 

 

 

「お兄様をペテン師などと言うなんて貴方だけは

絶対に許しません‼︎」

 

 

 

「珠雫も落ち着いて‼︎」

 

 

珠雫は怒りに身を任せて自分の固有霊装の

【宵時雨】を顕現させる。そんな中一輝は必死に

なって珠雫を収めようとしている時、一輝は雪の

言葉を思い出し返す事が出来ずにいた。

 

 

 

 

「別に許して欲しいなんて思わん……それに結局

の所…そうやって剣客紛いの事をするからお前は

大事部分を何度も見逃して今のように愚かな過ち

を犯すんだ……」

 

 

 

雪は一輝を見ながら悪態つきながら

 

 

 

 

「…ちぃ…興が削がれた……じゃあな……」

 

 

 

 

そう言った後、雪は灰色の刀を一振りして刃に

付いた大量の血を払って刀を鞘に収めた後、

刀の顕現を解除してその場を後にしようとした時、

 

 

「待ちなさい‼︎」

 

 

雪の背後から声が聞こえて振り返ると

 

 

 

「…何だ…『ヴァーミリオン?』」

 

 

 

雪が面倒いといった表情していると

 

 

 

「予選で覚えておきなさいよ‼︎」

 

 

 

「まぁ、覚えていたらな 後、お前との試合は

期待しないで待っておくよ。」

 

 

 

「絶対にアンタのその減らず口を黙らせて

やるんだから‼︎」

 

 

 

ステラが雪に大きな声で言うが雪は興味がないと

言った表情をしながらデパートを出ると警察達が

入ってきて

 

 

「おい‼︎貴様‼︎」

 

 

 

 

警察官の一人が雪の存在に気づいて振り向いた

瞬間、

 

 

 

「い、いない…だと…?」

 

 

 

 

あり得ない…確かにいたはずだ…それに人質に

されて解放されてすぐに隠れられる時間は

なかったはずだ…

 

 

 

警察官の青年がいくら周りを探してみても

見付けられずにいると

 

 

 

 

「おい貴様‼︎ 何をしている‼︎」

 

 

 

 

「す、すみません‼︎」

 

 

 

 

 

警察官の青年は上司に怒られながらも後ろを

振り返って

 

 

 

(さっきのは…見間違いだったのか……?)

 

 

 

警察官の青年は頭を傾げながらさっきの気配は

気の所為だったんだと思ってその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「危なかった…警察の取り調べってとても長いし

自分のことも話さないといけないから本当に

面倒いから嫌なんだよな……」

 

 

 

気怠そうに文句を言いながら雪は帰り道を一人で

歩いていると

 

 

 

「ヴゥーヴゥーヴゥー……」

 

 

 

雪のズボンの中に入っていた携帯が鳴って手を

ズボンに荒く突っ込んで携帯を取り出して画面を

起動させて画面を確認すると

 

 

 

『因幡 雪様の選抜戦第一試合の相手は、

二年一組・出雲 咲夜様に決定しました』

 

 

 

「やっと、来たか……」

 

 

 

雪はそう呟いた後、血のように染まる真っ赤な

夕陽を眺めながら携帯を握りしめていた。




読んでいただきありがとうございます‼︎
これからも書いていきますのでぜひ、
ロクでなしシリーズも応援よろしくお願いします‼︎


楽しんで読んで頂けたら有り難いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

■■の心

どうも皆様お久しぶりです。


『お気に入りを96人』、『しおり28人』更に
『投票者11人』も登録していただき本当に
ありがとうございます。本当に感謝感激です。
他の作品にも『お気に入り』や『しおり』、
『投票』など更には『意見』や『感想』などの
応援をしてもらえると心や精神の支えになります。



後、2018年が終わり、2019年になって『平成』が
終わり『新しい元号』なっていきますがこれからも
頑張って『落第騎士』や更にロクでなし魔術講師と
『死神魔術師』や『白き大罪の魔術師』などの作品
をどうかよろしくお願します‼︎



「貴様‼︎ 一体、どういうつもりだ‼︎」

 

 

 

今、雪がいる場所は破軍学園の理事長室であった。

そして黒乃は声を荒げて雪に憤っていた。

 

 

 

「どうしたんですか…黒乃理事長? どうして

そんなに声を荒げているんですか?」

 

 

 

そんな中、雪は平然とした表情して頭を傾げる。

 

 

わざとボケたりしてるのではなく本当に黒乃の言葉

や理事長室に呼ばれた意味が分からないといった

表情を目の前で浮かべているのだ。

 

 

そんな雪の反応と態度を見て更に声を荒げる。

 

 

 

『何がだと……? 巫山戯るな‼︎

解放軍デパート立て篭もりについての件だ‼︎』

 

 

 

何故、黒乃理事長が激怒しているかと言うと

『解放軍のデパート立て篭もり事件』についてに

雪に怒っていた。特に一番許せなかったのは

『解放軍惨殺事件』についてだった。

 

 

「ああ、そんなことで声を荒げているんですか?

全く……何がいけないんですか? 僕はただ人質を

助けただけですよ? 」

 

 

「決まっているだろ‼︎ 貴様はデパートを占拠して

いた1万近くいた解放軍を全員を皆殺ししただろ‼︎

何で皆殺しにしたんだと聞いている‼︎」

 

 

黒乃は事件後、一輝達から事件についての話の内容

を聞いて事件の真相を問い質す黒乃は雪を理事長室

に呼び出した目の前にいる雪に事件の真相について

問いただしていた。

 

 

 

 

「そんなつまらぬ内容で黒乃理事長は僕を理事長室

に呼び出したんですか? はあ…まったく…理由は

とても単純にして明快な回答です。あいつらは人を

痛ぶり傷つけ悦に浸り楽しむ様な屑共だったから

あの場で犯罪者の屑共を皆殺しにした。

これが理由です。皆殺しにしなければ全員死んで

しまっていたのでやも得ないく皆殺しにしました。

満足でしょうか? 黒乃理事長?」

 

 

 

 

雪は溜息をつきながら頭をガリガリとかきながら

そう言っていると黒乃は机の上にあった大量の

吸った後の煙草が溢れている灰皿に【グリグリ】と

灰皿に押し付け火を消した後、椅子から立ち上がり

【カツカツ】とヒールの音を立てながら視線を雪に

向けて近づいていく

 

 

 

「満足か? だと……? 巫山戯るな‼︎ 貴様は…

貴様は一体、人の命を何だと思っているんだ‼︎」

 

 

雪の態度を見て黒乃は更に激怒した。目の前にいる

『雪』という男は私に平然とこう言っているのだ。

『生きる価値のない愚か物共だったから殺した。』

そして『そんな屑共は死んで当然だと』そんな理由

で人を殺したと一輝達から聞いた瞬間、この雪の

『今回の件』の行いを許せなかった。

 

 

 

こいつは人を殺してなんとも感じないのか?

 

 

そして今、私が一番気になったのはこいつは

どうしてそんなに平然としていられるのだと、

いくら考えても全く分からなかった。

 

 

 

「人の命を何だと思っている、だと…?」

 

 

 

雪はそう言うと視線を黒乃に向ける。

だが、それはーー

 

 

 

「だったら、黒乃理事長。貴方に問います。もし、

『罪人の命』と『善人の命』、どちらかを天秤に

かけて一人分の命しか救えず、更にはもう片方は

見捨てなければならない…そんな状態だったら

貴方はどちらの選択をして命を助けますか?

まさか、善人悪人、どちらの命も関係なく助ける

なんてそんな『愚かである偽善者のような選択』

を元KOK・A級リーグ選手で元世界ランキング3位

の『世界時計(ワールドクロック)』と呼ばれた

貴方がそんな甘ちょろいことを言いませんよね?」

 

 

 

「‼︎ ッ…そ、それは………」

 

 

 

冷たくて硝子玉のような冷たくて暗い瞳で黒乃を

見る。それはこの世界に役に立って社会に貢献を

している『善人の命』と人の人生を害する事しか

考える出来ない世界の膿みたいな『悪人の命』だ。

どちらの命を救い、そして切り捨てるべきか

誰が見ても一目瞭然で分かる筈だろうと黒乃本人

に訴えられている気がする…いや…間違いなく

訴えているのだろう。

 

 

そして『曖昧な答えは決して許さない』と

言っている気がした。

 

 

 

雪の質問に対して答えれず黒乃の目が泳いで更に顔

を歪ませて額から汗をダラダラとまるで滝のように

流れていくら拭いても吹いたも止まらない。そして

何か反論しようと口にするが答えられなかった。

何故なら随分と昔、戦場に向かった事がある黒乃は

知っている。『戦場』や『今回の様な人質事件』

などでは口先だけの綺麗事や軽はずみな言葉で解決

して済むはずがない。それを知っている黒乃だから

こそ何も言えない。

 

 

 

だが、これだけは言える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『無為意味な畜生の如き殺戮など『一人の人間』

としてそして『一人の伐刀者』としてその行いを

認められないし決して許して良いという通りなど

あるはずがない…ッ‼︎』

 

 

 

黒乃が握り拳を作りギュッ‼︎と力を入れる。

 

 

 

 

 

 

「それが答えですよ。 どんなに『父親』や『母親』

更には『教師の先生』などが『教科書』や『言葉』

で周囲の人間達に人の命を奪っては駄目だと綺麗事

を言って促がしても全てが腐り切っている悪人達

には何十何百の悪行を行いそして『善人の命』を

『家畜』の様に見下す様に弄び奪ってしまっても

反省をするどころか 『己の娯楽』と『愉悦』の為

に平然と楽しんでいる。それどころか犯罪を嬉々と

してそしてその犯罪のスリルを味わいたいと言って

面白半分の犯罪者達が増え続けている。それこそ

解放軍みたいな犯罪者達なら尚更ですよ?」

 

 

 

雪はゆっくりの口調で黒乃に丁寧に説明する。

だが、黒乃には納得できなかったのかギリッ…と

歯軋りの音をさせる。

 

 

 

「だからって…「彼等だって僕達と同じ命がある

人間なんだから殲滅させる必要がないだろうって

言いたいですか? だったら黒乃理事長、貴方は

甘すぎる……」」

 

 

「‼︎」

 

 

「それに僕がやった事はただどちらの人間が良い

かを天秤にかけただけに過ぎないですのでその結果

とやかく文句を言われる筋合いはない筈ですが?」

 

 

黒乃が言おうとした瞬間、雪は黒乃が言おうとした

事を簡単にあっさりと言い当ててみせて更に人質を

助けたのだから言われる筋合いは全くもってないと

言ったのだ。だからこそ何故かは分からないが黒乃

は本能的にかつてないほどの胸騒ぎをこの目の前に

いる雪というこの学生騎士から感じた。

 

 

 

(まさか…ここまでとは予想していなかった…

だが、こいつは今、ここでどうにかしなければ‼︎)

 

 

 

 

黒乃は視線を雪から逸らさない様にしながら霊装

の二丁拳銃『エンノイア』を顕現させようとすると

 

 

 

『まもなく黒鉄一輝選手と桐原静矢選手の試合開始

の時間になります。選手の方は試合会場に集まって

ください。繰り返します……』

 

 

 

 

「もう、そんな時間か……」

 

 

 

試合開始のアナウンスが流れると雪はつまらなそう

にそう言って懐から懐中時計を取り出して確認する

と黒乃に背を向けて理事長室を出て行こうと

していた。

 

 

 

 

「おい‼︎ 待て‼︎ 話しは…「貴方に話があっても

僕には話す事は何も無い…」」

 

 

 

黒乃は出て行こうとする雪を必死に引き止めるが

雪はそんな黒乃に暗くて冷たい瞳を見て黒乃は

理解した。そして自分自身向けて語っている

気がした。

 

 

 

『もう何も語るな。』とそう言っている様な

気がした。

 

 

 

 

「では、黒乃理事長。僕はこれで失礼します。」

 

 

 

 

雪は黒乃に冷たくそう言い放ちながら黒乃に背を

向けて理事長室から出て行った。

 

 

 

「やれやれ……黒鉄やヴァーミリオンなどの問題児

を見てきたが『因幡 』と言う騎士はかなりの

問題児だな…」

 

 

 

黒乃はそう呟いた後、先程の張り詰めた空気に解放

されたからだろうか懐から煙草とライターを取り出

して煙草に火をつけて吸って吐くと空中に大量の煙

を出していた。

 

 

 

「そう言えば…最近色々と忙しくて忘れていたが

私が理事長に就任する前も前理事長も様子が

おかしかったな……」

 

 

 

 

黒乃は自分が初めてこの破軍学園に来た時の事を

思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、今から破軍学園理事長は私がしても

構わないですね?」

 

 

 

「あぁ…構わない。」

 

 

 

 

黒乃は前理事長に質問すると前理事長は黒乃の

質問に答えるが顔色がとても良くなく真っ青で

目元には濃いクマがあって調子が悪いのは誰が

見たって誰でも分かるぐらいの症状だった。

 

 

 

「じゃあ、早く理事長申請の書の書類を用意を…」

 

 

 

「お、おい‼︎ 無理するな‼︎ あんた、

ふらふらで今にも倒れそうじゃないか‼︎」

 

 

 

前理事長はそう言ってフラフラしながらも

理事長室の机の上に置いてある申請書の書類を

取ろうとした瞬間、前理事長は転びそうになり

ながらも膝をついてそして左手で机を支えにして

「はぁ、はぁ…」と息を荒げながら右手で頭を

抑えるのを黒乃は見て必死になって前理事長を

止めていた。

 

 

 

「だ、大丈夫だ…気にするな…ほら、

受け取りたまえ……滝川君」

 

 

 

前理事長が黒乃にそう言って机の上に乗っていた

申請書の書類を手にとって黒乃に渡す。

 

 

 

「ありがとうございます…後、私の今の名前は

滝川ではなく神宮寺ですって…ん? なんだ……

これは…?」

 

 

 

黒乃は申請書を見て『ある文章の内容』が

気になり目に入った。

 

 

 

その文章の内容はーーー

 

 

 

『一番端の部屋に手を出してはいけない。』

 

 

 

とその文字は赤い文字の注意事項で書いてあった。

 

 

 

これは一体、どういう事なんだ…?

 

 

更にこの文章の内容は? しかも赤い文字で

『手を出すな』だと? 幾ら何でも前理事長が

先程渡したこの文章の内容は大袈裟過ぎるだろ…

 

 

 

 

「すまないが…これは一体…?」

 

 

 

黒乃は赤い文字の注意事項の印に指差して

前理事長に質問すると

 

 

 

「あ、あ…ああぁぁ…ああああああああぁぁぁ‼︎」

 

 

 

「⁉︎」

 

 

前理事長は更に真っ青な表情をして両手を頭に

抑えながら狂ったような叫び声を錯乱に近い声を

上げていた。

 

 

 

「お、おい…一体、どうしたんだ…?」

 

 

 

 

「うるさい‼︎ 私に触るな‼︎ 黙ってろ‼︎」

 

 

 

 

 

黒乃がフラフラになった前理事長を心配なって

ビックリしながらも恐る恐ると近づいて質問を

するといきなり叫び出して

 

 

 

「止めろ‼︎ 止めろ‼︎ 止めろ‼︎ 何も聞くな‼︎

私は何も悪くない‼︎ 私は…私は……私は‼︎」

 

 

 

「お、おい…落ち着けよ…」

 

 

 

 

「落ち着いてなんていられるか‼︎ 嫌だ‼︎ 嫌だ‼︎

助けてくれ‼︎ 私は 『あの時の交わした約束』は

絶対に違えないと誓うから…だから‼︎ だから‼︎」

 

 

 

 

(あの時の約束……? なんだ、それは…? )

 

 

 

言っている意味が分からなかったが黒乃はとにかく

前理事長を宥めるが冷静な判断が出来ない状態で

暴れている前理事長は頭を掻き毟りながら涙を

流して醜い声で叫んでいる。

 

 

 

「がっ‼︎ がぁ…がああああああぁぁぁぁぁぁ‼︎」

 

 

 

更には前理事長は首元を爪でガリガリと何度も

掻き毟って更には口元から涎をダラダラと垂らして

過呼吸状態なっていきはぁ、はぁ…呼吸が荒くなり

大量の血がポタポタと雫なって地面に流れ出た後、

その場所で倒れた。

 

 

 

 

「お、おい‼︎ 大丈夫か⁉︎ 返事をしろ‼︎」

 

 

 

黒乃は倒れた前理事長に声を掛けるが

 

 

 

「…私は……私は…悪くない……」

 

 

 

まるで悪夢にうなされるように何度もうわごとを

言っていた。そして黒乃はそれを見て『ある疑問』

が浮かんだ。

 

 

 

それは何故、前理事長がこんなにも怯えて

更には精神は完全に崩壊しているのだ?

 

 

 

黒乃は少しの間、右手の人差し指を顎に当てて

考えてそして何かを理解したのか急いで前理事に

渡された散乱した破軍学園の書類を全部拾い上げて

ペラペラと音を立てて再度見返す。

 

 

 

そう黒乃は思い出したのだ。

 

 

 

先程、前理事長と会話をした時に手渡された

破軍学園の申請書や配置などの見取り図などの

資料の中に『赤い文字で書かれた印の場所』の

話しをした瞬間に前理事長は異常な発狂をして

ガクガクと体を怯えて良い大人なのに本当に

泣き叫んでいるのが分かった。

 

 

 

(そう言えば…先程、渡された資料の中に赤い文字

と印で書かれている場所があったな…一度、自分の

目で確かめに行ってみるか……)

 

 

 

 

黒乃は思考を巡らせながらも理事長室の電話を

使って医療班を呼んだ後、前理事長は救急車に

運ばれてサイレンや野次馬達などの騒ぎ出す声が

混ざり合っても出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー…面倒い……」

 

 

 

寝癖ついた少年は死んだ目をしながら部屋で

ダラダラとしながらも箸でポテトチップスを

パリパリと食べてメロンソーダを飲んでゴクゴクと

渇いていた喉に流し込んで怠惰に過ごしていた。

 

 

 

 

「何もする事もないし……暇だ……」

 

 

 

 

少年がそう言っていると

 

 

 

 

《ピンポーン》

 

 

 

「んぁ…?」

 

 

 

ブザーが鳴ると少年はやる気の無い声を出して

視線を玄関に向ける。だが、少年は起きて出る

様子はない。

 

 

 

 

(誰だろう…? まぁ、別にどうでも良いか……

僕には関係ないし…)

 

 

 

少年はそう考えごろ寝しながらパソコンを起動

させてユーチューブやスマホのアプリゲームガチャ

をしていると

 

 

 

《ガチャリ》

 

 

 

「えっ…?」

 

 

 

少年は《ガチャリ》と音がした瞬間、少年は

情け無い声で声を出すと同時に《テッテテーン‼︎》

と最高ランクのSランクが出た音楽演出が部屋の

中で鳴り響いていた。

 

 

 

「暗いな…それに誰かいるみたいだな…」

 

 

 

黒乃はそう愚痴をこぼしながらも真っ黒な部屋の

奥に進むと寝転がっている少年がいた。更に服装

の姿はだらしなく黒の半袖のシャツと白の半ズボン

を履いていた。

 

 

 

「あ、あの…どちら様でしょうか…?」

 

 

 

「ん…? 私はこの破軍学園の新理事長として

新しく就任した神宮寺 黒乃だ。貴様こそ名前を

教えて貰おうか?」

 

 

 

黒乃は怠惰でだらしないかっこをした少年に目を

離さず警戒しながらも質問をする。

 

 

 

 

「僕の名前は『因幡 』と言いますけど…?」

 

 

 

雪は溜息をつきながら自分の名前を名乗ったのが

神宮寺 黒乃と因幡の初めての出会いだった。

 

 

 

「その時に因幡と初めて会ったのがあの時

だったな…」

 

 

 

 

 

黒乃が因幡を見て最初に感じた第一印象はただの

睡眠ばかりでゴロゴロして自堕落でやる気の無い

死んだ魚の目をした落ちこぼれでFランクの怠惰な

騎士という印象しかなかった。

 

 

 

だが、

 

 

 

(ステラ・ヴァーミリオン…今、『切腹を名誉な事』

だと…貴様はそんなふざけた事を言ったのか?)

 

 

 

 

(だからヴァーミリオン…『切腹と名誉』を

取り違えて何も知らない奴がこれ以上、

『切腹を名誉』だとかこの国の歴史を

二度と軽々しく言うな……)

 

 

 

 

その時、黒乃は因幡の瞳を見て思った事は因幡は

歪であり、異常過ぎる男だと思った。更には何故か

分からないがとても悲しみなどが虚ろな瞳に写って

グルグルと混ざりあって視線を向けている様な

気がした事を鮮明に思い出していた。

 

 

 

 

それだけならまだどれだけ良かった事か

だが、そんな黒乃の思いを裏切っていく。

 

 

 

 

それが解放軍の使徒の一人のビショウが率いる

解放軍がデパートを占拠してデパートの中にいた

一般人を人質にしていた最近の事件だ。

 

 

 

 

昨日、一輝達の話によれば因幡はデパートで人質と

共に立て籠もっていたビショウの喉を自分の霊装の

刀を使って刺して更には解放軍の部下達と武装して

いた銃を容赦や躊躇いなどなく片っ端から

切り捨てて皆殺しにして鎮圧たらしい。

 

 

 

 

そして一番驚いたのは『最弱のFランク』である

雪がビショウ達などのデパートの解放軍達を

たった一人であっさりと制圧した事だ。

 

 

 

だが、制圧と言う生半可な甘い言葉ではなく何十体

の酷い死体が転がっており、奇跡的に生き残りは

一人二人はいたがもはや精神すら保てずに壊れて

言葉すら話せない者や呆然として「あー…あー…」

ともはや言葉が話せるかどうか分からない状態の

者などいてもはや同情せざる得ない程でまさに

見るも無残な地獄絵図に近い惨状だった。

 

 

 

そんな中、ビショウだけが魔導騎士連盟日本支部

に保護されてこの硝子越しの真っ白なベッドの部屋

で奇跡的に命を取り留めた。そしてビショウは

解放軍の使徒だからなのか両手はベッドの手摺りに

などに括り付けて厳重に拘束されているが喋る事は

おろか瞳に光は全く無くなって口を開けて廃人の

様な虚ろな瞳をして施設の天井を眺めていた。

 

 

 

黒乃や魔導騎士連盟日本支部の人間達がビショウに

どれだけ質問をしてもビショウは黒乃達に視線を

向ける事はなくただ遠い目をしていた。

 

 

 

 

「駄目ですね…完全に精神が喪失しています。」

 

 

 

「……………………………」

 

 

 

「クソが‼︎」

 

 

 

「解放軍の使徒が生きていると聞いて来てみれば

心ここにあらずって言うところだな…これでは

使い物にはならんぞ‼︎ どうするのかね⁉︎」

 

 

 

「それはこちらが聞きたいくらいだ‼︎ そもそも、

貴方方がもっと早く行動していればこの様な失態を

晒さずに済んだ筈だ‼︎」

 

 

 

 

「貴様にだけには言われたくない‼︎そもそも貴様は

前回の解放軍の捕獲作戦で情け無い失態を晒して

いたではないか‼︎」

 

 

 

「何だと‼︎」

 

 

 

 

黒乃は硝子越しからではあるが精神喪失して意識を

失っているビショウを見て黙って静寂な空間の中、

他の魔導騎士連盟日本支部の幹部の人間達は悪態を

つきながら自分の失態を棚に上げて他の幹部達の

他人の過去の失態を醜く言い合って押し付け合う。

 

 

 

すると、

 

 

 

「静かにして下さい‼︎ ここは医療機関の施設内

ですよ。他の人に迷惑がかかります。騒ぐなら

今すぐ出て行って下さい‼︎」

 

 

 

ここの医療機関の医者らしい人物が出て来て怒り

のこもった声で魔導騎士連盟日本支部の幹部達に

言う。すると機関の医者に言われた魔導騎士連盟

日本支部達の幹部達は

 

 

 

「貴様‼︎ 一体、何様のつもりだ‼︎

貴様こそ身の程を弁えろ‼︎」

 

 

 

「そもそも、我々は魔導騎士連盟日本支部の

者だぞ。医者の分際で私達に指図をするな‼︎」

 

 

 

 

医者の態度が癪に触ったからなのか自分達に

言ってくる医者の言葉に対して魔導騎士連盟

日本支部の幹部達は矛先を医者に向ける。

 

 

 

(くだらん……これだから頭の固い老人共は…

此処まで来て権利や振りかざして自分の保身に

拘るのか?)

 

 

 

黒乃はちらっと視線を向けて言い争いをしている

魔導騎士連盟日本支部の幹部達に小さな溜息を

ついて看護師に近づいて看護師に聞く。

 

 

 

「すまないが、こいつに用事があるんだが、

構わないだろうか…?」

 

 

 

「えぇ……構いませんが……出来れば患者の負担に

ならないようにしてくださいね……?」

 

 

「分かっている。元からそのつもりだ……」

 

 

 

黒乃は看護師とそう話すと一人で再度、

奥の硝子越しの部屋に急いで入った。

 

 

 

その時、私は焦っていたのかもしれない。

デパートで一体、どのようなやり取りがあったのか

をどうしても知りたかった。何故か分からないが

その事件の内容を知っておかなければならないと

私の本能が言っている様な気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

黒乃が入ると真っ白な部屋でビショウはベッドに

横たわって両手両足はベッドに固定されてモニター

の電子音の音が部屋に響いて消毒液や薬品の匂い

などがした。

 

 

 

(こいつが…黒鉄達が言っていた解放軍の使徒か…)

 

 

 

黒乃はベッドに横たわっているビショウを見ると

虚ろな瞳で黒乃を見ていた。

 

 

 

 

「今から質問するが構わないな?」

 

 

 

 

「構いませんが…患者の負担にならない様に

して下さい……」

 

 

 

 

「あぁ…」

 

 

 

 

 

黒乃は看護師そう言われて返事をすると黒乃は

ビショウに質問をしていた。

 

 

 

「何故、デパートを占拠した?」

 

 

 

 

黒乃がそう言うとビショウはゆっくりとだが、

右腕が上がる。すると黒乃はもちろん看護師も

びっくりしながらも急いであ行からわ行まで書いて

あるプレートを持って来てビショウの手元に立てて

一個ずつ指でゆっくりとであるがなぞっていく。

 

 

そして

 

 

 

「か、つ、ど、う、し、き、ん、の、た、め」

 

 

 

黒乃がそう読み上げると予想通りの答えだった。

活動資金の為にビショウは今回のデパートの

占拠事件したらしい。黒乃は更に質問を続ける。

 

 

 

 

「次の質問だ。貴様はデパートで一体、

何を見た?」

 

 

 

 

 

黒乃がビショウに更に質問すると

 

 

 

(なにを……?)

 

 

 

 

ビショウはプレートでそう言うとビショウの顔色

が真っ青に変わる。

 

 

 

(あ、アイツ…アイツがアイツがアイツがアイツが

あいツがアいツがあイツが人の姿ヲシた化物…

いヤ…ヒとのカわを被ッた悪魔‼︎あく魔‼︎アクマ‼︎)

 

 

 

 

ビショウがプレートでそう言うとビショウは

いきなりヒステリックになってしまいベッドの上で

暴れ出す。

 

 

 

「なっ⁉︎」

 

 

 

 

黒乃は驚く。何故ならビショウは黒乃の目の前で

暴れて刺さっていた点滴の針を無理矢理に抜き取り

爪で自分の身体を掻き毟り傷つけていく。

 

 

 

「先生‼︎ 大変です。患者さんの容体が‼︎」

 

 

 

看護師が叫びながら近くにあるナースコールを

押しながらビショウを必死になって抑えていた。

 

 

「急いで麻酔の用意を‼︎」

 

 

「はい‼︎」

 

 

医者と看護師は急いでやり取りしてる中、

魔導騎士連盟日本支部の幹部達も硝子越しの

部屋に入ってきた。

 

 

 

 

 

「これは一体、どう言う事かね。神宮寺君‼︎」

 

 

 

「それはですね……」

 

 

 

 

 

黒乃は全てを魔導騎士連盟日本支部の幹部達にも

話した。『何故、デパートを占拠したのか』、

そして『デパートで一体、何を見たのか』を

聞いた瞬間、ビショウが暴れ出した事を

 

 

 

 

 

「なるほど……そう言う事だったのだな、

だが、これは良くない傾向だな…神宮寺君。」

 

 

 

魔導騎士連盟日本支部の幹部の一人で誰よりも

白髪で老けた男が笑顔で黒乃に言うと黒乃は

 

 

 

「私の判断ミスです……すみませんでした。」

 

 

 

黒乃がそう言った後、魔導騎士連盟日本支部の

老けた老人の幹部は黒乃にはっきりとではあるが

遠回しに「この部屋から出て行け」と言うと

黒乃は何も言わずその指示に従って出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私とした事が…焦ってしまい今回はらしくない

失敗をしてしまったな…」

 

 

 

 

 

黒乃は後悔の言葉を呟きながら懐から煙草を

取り出して火をつけて「ふぅーー」と煙草を

吸って空を見上げながら空中に大量の煙を出して

自分の先程の失敗を思い出していた。

 

 

 

 

そう、先程の黒乃らしくない間違った判断をした

理由は言うまでもなく『因幡』だ。黒鉄達の話を

聞いた瞬間、いてもたってもいられなかった。

 

 

 

確かに伐刀者の最低ランクの(Fランク)の騎士の

黒鉄でも『一刀修羅』や『模倣剣技』、更には

『完全掌握』などがあるがしかし、因幡にはそんな

話しなどを聞いた事がない。なのにその因幡が

一万人以上の解放軍達を一人で一瞬にして皆殺し

にしたのだ。

 

 

 

そんな事件を一人で解決した奴が最弱で恥晒しの

伐刀者の筈がない。しかも因幡は無傷で全員を

自分の霊装の刀で顔色変えずに平然と殺したんだ。

 

 

 

そこまで来ると一つだけ疑問が浮かぶ。それは

デパートの人質立て篭もり事件で解放軍の使徒すら

斬り捨てた因幡はそれだけの力を持っていながら

何故、『最弱で怠惰の騎士なのだろう…?』

黒乃はいくら考えても分からなかった。

 

 

 

 

(ごちゃごちゃと頭で考えるのは止めだ…私とした

事がさっきかららしくない…明日にでも因幡を

呼ぶか……)

 

 

 

黒乃はそう考えながら学園に向かって行って更に

情報収集の為に一輝達にデパートの事件についての

事情聴取などをこまめにしてそして次の日になって

そして現在に至る。

 

 

 

 

「やれやれ……今度こそと思っていたんだが……」

 

 

 

 

黒乃は雪がいなくなった後、理事長室で懐から

煙草を取り出してライターで煙草に火をつけて

一服する。

 

 

 

 

 

「しかし、そうなると……ますます因幡の事が

分からなくなってきたな……」

 

 

 

 

黒乃は手元にあった七星剣武祭の書類を纏めて

横に置きながら溜息をついて因幡の個人情報の

書類を眺めながら座っていた理事長室の椅子に

立って理事長室の窓を眺めながらも自然と口で

呟いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ〜〜…疲れた……」

 

 

 

雪は理事長室を出た後、つまらなそうに廊下を

一人でブラブラと歩いていた。

 

 

「それにしても……」

 

 

黒乃理事長は霊装を顕現させていたなぁ……

机で見えないようにしていたけどあまり良い

気分はいえない……はぁ…本当に面倒事は

勘弁してほしい……

 

 

 

雪がそう感じながら溜息を吐いていると

 

 

 

「貴方は……」

 

 

 

「おぉ、因坊じゃねぇか?」

 

 

 

雪は声がする方へ視線を向けると常に着崩した

着物を纏う飄々とした黒髪の小柄な女性。

西京 寧音だった。

 

 

 

「えぇ…そうですね。んで、僕引き止めて

一体、何か用事ですか? 西京寧々先生?」

 

 

 

 

雪は気怠げに欠伸しながらも硝子玉のような

死んだ魚の様な冷たい瞳を寧々に向ける。

 

 

 

「別に用はねぇよ? ただ、最近噂になっている

因坊に興味が湧いた。それだけの事だよ。」

 

 

 

「そうですか……流石ですね。

んで、どんな噂があるんですか?」

 

 

 

寧々とそんなやり取りをしながらも雪は呆れた

表情をしながらも寧々の話しに適当に相槌を打つ。

 

 

 

雪は分かっていながらもわざとらしく聞くと寧々

は「そうだねぇ……」と言いながらも扇で口元を

隠しながら

 

 

 

「例えば……『解放軍デパート惨殺事件』……

とか、どうだ?」

 

 

 

 

「…………………」

 

 

 

寧々は意図して言っているのかそれとも何も

知らずに言っているのか分からない……いや、

恐らくわざと言っているのだろう。雪はその話し

を聞いた瞬間、怠惰で怠そうな表情だったのが

一瞬にして消えて虚ろで光なき瞳で寧々を訝しむ

様に見る。

 

 

 

 

黒乃理事長といい、この目の前にいる(ロリっ子)

……じゃなかった、西京先生も一体、何が目的で

僕をどうしたいんだろう……? そしてどうして

ほっといてくれないんだろう…

 

 

 

 

雪は深刻そうな表情して寧々に警戒していると

 

 

 

 

「おいおい、そんなに警戒するなよ。私は別に

くーちゃんみたいにガミガミとああだこうだと

口うるさく口出して言うつもりはねぇから

安心しなよ?」

 

 

 

「……だったら、一体、なんだと言うですか?

寧々先生…僕に何か言いたい事があるならこんな

回りくどく焦らさずに今、ここで言いたい事を

はっきりと言ったらどうですか?」

 

 

 

寧々は雪そう言ってニヤリと口元を上げるのを

見て雪は寧々の回りくどさに呆れていると

 

 

 

「あぁ、そうだったなぁ…まぁ、そうだねぇ……

私が言いたい事はたった一つだけだ。」

 

 

 

寧々はそう言って扇で口元を隠して雪と話して

いると寧々の姿が一瞬にして消えていた。

 

 

 

 

(これは……!)

 

 

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

「テメェが何を考え行動しようと構わねぇーが

これ以上、くーちゃんを困らせるならテメェを

許さねぇーからな……」

 

 

 

 

雪が気づいた時には先程少し離れた場所にいた筈の

寧々はいつの間にか目の前にいて鉄扇型の固有霊装

の鉄扇型の紅色鳳を広げて雪の首元に突きつけて

先程の笑顔が嘘の様に敵意の瞳を向けていた。

 

 

 

なるほど……警告か、変な事をしたらお前を

容赦しないと……だが、そんなの僕には関係ない

 

 

 

 

「これは『抜き足』ですか?」

 

 

 

 

「⁉︎ て、テメェ……何故、それを…?」

 

 

 

 

 

雪が技の名前を躊躇いなく淡々と言うと寧々は

目を見開き驚いて信じられないと言わんばかりの

表情を浮かべながら雪から視線を外さずに警戒を

しながらも恐る恐ると質問していた。

 

 

 

何故ならこの男は自分の技の一つである『抜き足』

を何の躊躇いもなく一瞬にして看破して見せたの

だから…

 

 

 

 

 

『抜き足』とは特殊な呼吸法と歩法によって相手に

自身の存在を認識させなくする技の一つである。

寧々が『抜き足』をこの学園で使ったのは一輝と

ステラが試合する時、一輝に一度見せたあの時だけ

のはずである。

 

 

 

 

なのに雪は寧々に紅色鳳を突きつけられている

と言うのに雪は何事もなかったかの様に平然と

涼しい表情をして虚ろな瞳で寧々を見ていた。

 

 

 

(こいつは一体…一体なんなんだ……なんで……

どうして、平然としていられるんだ…?)

 

 

 

 

寧々は『夜叉姫』の異名を持つ現役のKOK選手で

あり、現世界ランキング3位という功績を残して

いる超一流の騎士で『魔人の1人』だと言うのに

(Fランク)である雪は(魔人)寧々の威圧に

怖気つどこか平然とした表情で今目の前に立って

いるのを見て一瞬だが、寧々の背筋から一瞬で

あるが寒気が気がしたのだ。

 

 

 

 

 

「この際です。はっきりと言っておきます。」

 

 

 

 

 

雪はいつもの怠惰な表情ではなく能面のような

無表情そう言うと驚いた表情をした寧々を無視

して 更に話しを続ける。

 

 

 

「僕の本音を今、言わせてもらうならば…貴方達

が何をどう思ってどう行動するかは僕から すれば

どうでも良いし貴方達の自由だ。だが、貴方方の

身勝手な考えを他人に無理矢理に押し付けるな。

全くもって聞いていて非常に不愉快極まりない…」

 

 

 

この時、雪は寧々に本音と言っているが内心では

ほんの少ししか本音は言っていなかった。だって

いくら話し合っても全くもって無為意味で時間の

無駄とやってみても無駄だと目に見える。ならば、

そんな無駄は省くべきだと思ったからだ。

 

 

「テメェは一体……」

 

 

寧々は今の予測不能な状態に納得出来なかった

のか小声で雪に何かを言おうとしてるのを雪は

決して見逃さなかった。

 

 

そして寧々は恐らくこう言いたかったのだろう。

『テメェは一体、何者なんだ。』とだが、その発言

を許すほど雪は甘くなかった。

 

 

 

 

「これ以上、対話をするつもりはありません。

では、試合があるので失礼します。西京先生」

 

 

 

雪は寧々にそう言って何事もなかったかの様に

寧々の横を通って『落第騎士』の黒鉄一輝と

『狩人』こと桐原静矢の試合がある試合会場に

欠伸をしながら向かって行った。




読んでいただきありがとうございます‼︎
心より感謝します。これからも読んでもらえると
ありがたいです‼︎


【報告】

最近は新しい作品を書いているので少し遅れますが
これからも頑張って投稿していきますのでよろしく
お願います‼︎


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

伐刀者の価値と其々の価値観

皆さん‼︎ お久しぶりです‼︎
久しぶりに投稿させて頂きました‼︎
気に入らないので『リメイク』しました‼︎

これからも作品投稿を頑張っていきたいと思います
ので『他の作品』なども試聴をして頂いたら本当に
ありがたいです‼︎


豆腐なメンタルな自分がここまで作れて
本当に良かったと思う……(;ω;)


『感想』などありましたらよろしくお願いします‼︎



【注意】

今回のお話は『ヘイトの内容』がかなりの確率で
積み込まれます。それでも読むのが大丈夫って言う
方だけオススメをさせてもらいます。
どうぞこれからもよろしくお願いします‼︎








第七修練場ーー

 

 

そこには今迄に見たことのないほどの観客が

集まっていた。当然と言えば当然。

 

 

何故ならばこの第七修練場では、ーー十年に一度の

逸材と呼ばれる異国の少女、一年生にしてすでに

『二つ名』を有する今年の首席入学者、

ステラ・ヴァーミリオンの公式戦初戦が

行われているのだから。

 

 

 

「いけー! 桃谷ィ!」

 

 

「長距離戦でお前に勝てる奴なんていねえぞ!」

 

 

「最上級生の意地を見せてやれぇぇ!」

 

 

『応援席からの声援がすごい!

《重戦車》桃谷選手!学内序列一桁の人気は伊達

じゃないッ! さあ今日も出るか⁉︎ 数多の騎士を

場外まで吹き飛ばしてきた桃谷選手の得意技!

希少な甲冑型の固有霊装《ゴリアテ》から放たれる

ヘヴィチャージが!』

 

 

応援席から声援。

 

 

それらを一身に背負うのは、身長百九十センチは

あろうという巌が如き巨漢。

 

 

ステラの初戦の相手、桃谷武士だ。

 

 

分厚い装甲が幾重なった甲冑に身を包んだ桃谷は、

開始線で身体の視線を低くし、肩から相手に

ぶつかっていく構えを取りーーーしかしとったまま

ぴくりとも動かない。

 

 

「どうした桃谷! 

いつも通り吹き飛ばしてくれ!」

 

 

「そいつはFランクにも負けてるんだ!

オマエなら余裕だせ!」

 

 

囃し立てる友人、クラスメイトたち。

 

 

 

しかし桃谷はーーー

 

 

(………こんなのに、どうやって勝てって

いうんだ……)

 

 

目の前に広がる、炎の海を見て……すくみ

上がっていた。

 

 

燃えさかる火炎をドレスのように見に纏うステラ。

 

 

そんな彼女を中心にリングに広がる炎の海。 

 

 

燐光を散らし、大気を燃やす《妃竜の息吹》の

熱は、十メートル以上離れているにもかかわらず、

甲冑の中を焼く。

 

 

目の前に対峙して初めてわかる、ステラの持つ

桁外れの存在感。

 

 

それを目に、桃谷は思った。

 

 

こんな相手と戦うなんて、自分から火口に身投げ

するようなものだと。

 

 

「アンタは後ろで騒いでいる連中と違って

弁えているみたいね」

 

 

立ち止まったまま動かない桃谷に、ステラが

話しかける。

 

 

 

「……この試合は『実戦』。

当然飛び込めば、《幻想形態》のように

『痛いだけじゃ済まないわ。』そのあたり、

よぉく考えて決断することね」

 

 

自分の臆した心も、その理由も、すべて悟られて

いる。

 

 

それを知り、桃谷はーーー

 

 

 

 

「………まいったっ」

 

 

『な、なななんと〜! 桃谷選手、開始線から

一歩も動かないままギブアップを宣言ッ!』

 

 

『うはは! なっさけねー! だけど賢け〜!』

 

 

桃谷の判断に、解説席に座る赤い着物を着た小柄な

教師がゲラゲラ品のない笑い声を上げ、けなして

いるのか褒めているのかわからないことを言う。

 

 

『賢い、とはどういうことでしょうか西京先生?』

 

 

『だってあんな化け物に勝てる訳ないじゃん!

オマエ今から焼身自殺しろって言われてできる?

できね〜っての! だけど一歩も動かないまま

ギブアップとか超だっせー! あはははっ!』

 

 

『あ、あの、西京先生、少し言葉は選んだ

方が……』

 

 

少し見かねて、実況の女子生徒が引きつった顔で

注意するとーーー

 

 

『まあ、あの化け物を止められる可能性がある

人物ならいるかもしれないがねぇ……?』

 

 

『さ、西京先生‼︎ それは 一体、誰でしょうか⁉︎』

 

 

『さあ、一体、誰だろうねぇ?』

 

 

西京寧音がそう言った瞬間、観客席がザワザワと

騒ぎ始める。

 

 

それもそのはず、『KOK世界ランキング3位』の

超一流の現役騎士であり『夜叉姫』という二つ名で

呼ばれた『魔人の一人』である彼女にそう言わせる

ほどの人物だ。騒ぐなと言う方が無理があるのだ。

 

 

その後、寧音は試合解説をしていた放送部の生徒

に笑顔ではぐらかしながら

 

 

『ただ、今回選抜戦は『予想外の伏兵』が現れる

かもなってな?』

 

 

寧音は口元をニヤリと悪そうな笑顔をさせながら

そう言って視線をある方向へと向けていた。

 

 

 

その視線の先にはーー

 

 

 

 

(僕か……)

 

 

第七訓練場の入り口付近で立ったまま緑茶を

立ち飲みしながら試合を見ていた雪がいた。

 

 

「それにしてもあのちびっ子め……ぬるい解説

だったなあ……」

 

 

雪は寧音の解説に呆れた表情をしながら溜息を

ついていた。

 

 

そもそもだ、寧音はステラ・ヴァーミリオンが

圧倒的な魔力の量で桃谷に勝ったと試合の実況で

そう言っていたがーー

 

 

 

 

要はこの試合でステラ・ヴァーミリオンが勝てた

のは『温室育ちで恵まれた貴族様様の血筋や血統』

や『ただの運の良さ』で勝てたに過ぎないだろう。

 

 

 

もし、試合開始の合図の瞬間、ヴァーミリオンの

不意をついて桃谷の鎧の霊装である《ゴリアテ》の

突進力を利用すれば一撃で仕留められなくても少し

の間怯ませて意識を奪うことが出来るはずだ。

 

 

だが、桃谷は《ゴリアテ》でそれをしなかった。

楽勝に勝てると対戦相手を舐めてかかった結果、

負けに繋がった。ただそれだけのことだ……

 

 

 

ヴゥーー‼︎ ヴゥーー‼︎ ヴゥーー‼︎

 

 

ん…? 携帯が鳴っている? 

一体、誰からだろう……?

 

 

もしかして…あのちびっ子か…?

それとも…黒乃理事長からの電話だろうか…?

 

 

恐らくあの二人は僕のことをかなり警戒して

危険人物対象として見ているだろう……

 

 

まあ、警戒しておくに越したことはない……

 

雪は携帯の電源を入れて確認すると

 

 

「……チッ」

 

 

雪は舌打ちして機嫌が悪そうな表情をながら

第七訓練所を後にしてした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おめでとうステラ」

 

 

選抜戦一日目が終了し、寮室に戻ってきたステラ

に、一輝が祝辞を述べた。

 

 

「………ふ、ふん。まあアタシにかかれば

このくらい当然よっ」

 

 

相変わらずの口調だが、鼻がヒクヒクしている

あたり、まんざらでもないらしい。

 

 

「戦いにすらならなかったらしいね」

 

 

「いつも以上に燃やしてやったからね」

 

 

「僕も見に行きたかったんだけど、残念だよ」

 

 

 

「…………………アタシだって残念よ」

 

 

「え? なんだって?」

 

 

「な、なんでもない! 仕方ないじゃない、

今回はシズクと時間が重なっちゃたんだから。

でも、次はちゃんと見にきなさいよね!」

 

 

「うん。それはもちろん。……それにしても

帰りが少し遅かったね?」

 

 

「あまりにも拍子抜けで、力を持てあましたから。

ジムの方で汗をかいてきたの」

 

 

「そうなんだ。……でも本当によかった。

珠雫もステラもアリスもみんな勝てて」

 

珠雫の試合が行われたすぐ後、有栖院の試合も

同じ第十五訓練所で行われ、有栖院はEランクの

二年を相手に試合時間十秒で圧勝した。

 

 

対戦に不利な能力とはいえ、さすがに次席新入生

である珠雫のルームメイトに選ばれるだけのこと

はある。

 

 

「アリスの力は僕も解放軍の一件で見たけど、

能力に攻撃力がないぶん、攻め方がいやらしい。

ああいうトリックスター系は案外ステラとは相性が

悪いかもね」

 

 

「誰が相手でもアタシは負けないわよ。

あのーー『ピピッ‼︎ ピピッ‼︎ ピピッ‼︎』」

 

 

「あ、ステラ…ちょっとごめん……」

 

 

一輝がステラにそう言ってポケットから携帯を

取り出してスラスラと指で軽々と操作する。

 

 

「どうしたの? イッキ…?」

 

 

ステラが一輝を心配そうな表情をしていた。

 

 

どうやら思い悩んだ表情していたようだ……

 

 

「いや、なんでもないよ。 それよりも……」

 

 

一輝立ち上がってステラに笑顔で

 

 

 

「ちょっと用事が出来たから外に出て来るね」

 

 

 

「そう、分かったわ」

 

 

そう答えるとステラが一輝のに返事して一輝を

見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピンポーン、ピンポーン、ピンポーンーーー

 

 

一輝がファミレスに入ると店内には明るい音楽

が流れてくる。

 

 

 

「たしか…この辺りだったと思うけど………」

 

 

 

一輝はファミレスの周囲の席を左右に見渡すと

見つけたのか『ある人物が座っている席』に

視線を向けて一歩、また一歩と近づいて行った。

 

 

「遅くなってすみません……」

 

 

 

一輝が『その人物』軽く頭を下げて

 

 

 

 

 

『因幡 先輩』

 

 

 

一輝がそう言うと雪は待ちくたびれての溜息

なのかそれとも一輝の顔を見ての溜息なのか

全く分からない

 

 

「そんな御託はいい…案山子みたいにじぃーと

突っ立ってないでさっさと座れよ、黒鉄一輝」

 

 

 

雪は死んだような光のない魚の目でそう言うと

「そうですね…分かりました……」と一輝が雪に

そう言ってとりあえず席に座った。

 

 

「長居をするつもりはない。用件は何だ?」

 

 

雪が一輝にそう言うと一輝は覚悟を決めたのか

真剣な表情で雪を見て

 

 

「次の試合について話しです……」

 

 

一輝は一言言って更に話しを続ける。

 

 

「もし、試合に勝てたら…以前、教室で言った

『あの時の言葉』を撤回してください……」

 

 

 

『あの言葉』とは一体…? ああ、もしかしてーー

 

 

 

雪は一瞬にして一輝が何を言いたいのか理解した。

あの時、自分自身のことを『ペテン師』と呼んだ

からだろうか? それとも『剣客の紛い物』と

言ったことを言って根に持っていたのだろうか?

 

 

「もしかして以前、お前たちが言い争っていた時

にお前のことを『ペテン師』と言ったことか?

それともーーー」

 

 

雪はつまらなそうに淡々と一人で話しを続ける。

そんな中、一輝は黙り込んでいるが更に続ける。

 

 

 

「それとも、自分自身が剣客にすらなれない

鈍の棒切れを持った『哀れな剣客の紛い物』と

言われたことか?」

 

 

「ッ‼︎」

 

 

雪がそう言った瞬間、ピクリとだが一輝は反応

した。

 

 

どうやら雪の言葉が図星だったのだろうか額には

分かりやすいぐらい大量の冷や汗が滝のように

ダラダラと流していた。

 

 

 

なるほど…これだけの内容を言うためだけにここに

呼んだのか……黒鉄一輝といい、《雷切》生徒会長

東堂刀華といい本当に騎士や剣客という生き物は

呆れてしまうほど愚かな生き物だと思ってしまう…

 

 

 

「なるほどな、どうやらそのことを気にしていた

ようだな。んで、何故、僕が言った言葉を撤回

しなければならない?」

 

 

「え…?」

 

「紛い物であるのは実際事実だろう?しかも、

本気で戦ったことすらないこともなければ

やり合ったことすらない。そんな鈍な刃で

『黒鉄 龍馬』のような『この国一の剣豪』

なると戯言を豪語して言っているのだろう?」

 

 

一輝は雪の言葉に戸惑っていた。

 

 

「断言してやる。あんな紛い物の猿真似の我流の

剣技レベルではあの人『黒鉄 龍馬』のような剣豪

になれるはずがないしその頂に辿り着けるはずが

ない…デパートの立て篭り事件だってそうだ…

目の前の現実を見ろ」

 

 

「そ、そんなことーー「そんなことないわ‼︎」」

 

 

「えっ…?」

 

 

一輝が間抜けな声を出しながら後ろを

振り向こうとすると

 

 

 

「まさか『予想外の招かれざる客』がやってきた

ようだな『ステラ・ヴァーミリオン』皇女殿下様」

 

 

雪がそう言ったのと一輝の間抜けな声と同時に

背後から別の人物の声が聞こえた。

 

 

そして一輝が声が聞こえる背後に視線に向けると

『ヴァーミリオン皇国の第二皇女である彼女』

『ステラ・ヴァーミリオン』が立っていた。

 

 

「ステラ…どうして、此処に……」

 

 

 

一輝がステラの姿を見て驚きながらもそう聞くと

ステラはポケットから『ある物』を取り出した。

 

 

「それは……」

 

 

その『ある物』は『一輝の携帯の端末』だった。

 

 

 

「アタシもイッキの端末のメッセージの内容を

見るまで分からなかったわよ」

 

 

ステラは一輝にそう言って『一輝と雪の会話の

内容』を見せた後、視線を雪に向けた。

 

 

 

「人の携帯端末の内容を盗み見るどころか…今僕達

がファミレスで話していた内容さえも盗み聞くとは

……皇族、ましてやヴァーミリオン皇国第二皇女様

がするような行いは如何なものかと思うのだが?」

 

 

雪がステラにそう言うとステラは溜息を一回して

「そうね……」と言って口を開いて更に言葉を

紡ぐ。

 

 

「アンタはさっきイッキのことを聞いていたけど

ペテン師や剣客の紛い物など言ってくれたみたい

だけど次の試合でイッキが勝つわ‼︎ そして私達は

全員で選抜戦を勝ち上がってみせるわ‼︎」

 

 

ステラは雪にそう言う。ステラの表情は怒っている

のだろう。顔を真っ赤にして今にも自身の霊装を

取り出そうと感情を露わにしているのは誰がみても

分かる。

 

 

 

それに対して雪は冷静に淡々と言葉を紡ぐ。

 

 

 

 

「ヴァーミリオン。今、そんな『夢物語』を語って

一体、何の意味がある?」

 

 

 

とても冷静だった。まるで氷のように冷たく機械の

ような無機質な瞳でヴァーミリオンを冷めるように

横目で見ていた。

 

 

「夢、物語……?」

 

 

「そうだヴァーミリオン。この際だからはっきり

言ってやる。お前達のレベルでは選抜戦の代表に

選ばれることはない。それどころか選ばれるかすら

あやしく思えてならない」

 

 

「何ですって‼︎」

 

 

 

「それに選抜代表になって選ばれる人数は6名の

少数で更にはそんな僅かな可能性の中なんだぞ?

それとも何か? お前達はみんなで仲良く友達

ごっこしたくてこの破軍学園に遊びに来たのか?」

 

 

「そ、それは……」

 

 

「それともこの男に惚れたか?」

 

 

「なっ‼︎ そ、そんなことは……‼︎」

 

 

ステラ・ヴァーミリオンがこんなに分かりやすく

動揺するのを見て本当にこの男に惚れたのだろう

と理解出来た。

 

 

「ああ‼︎ もう、とにかく‼︎ 私達の全員で

選抜代表選を勝ち取ってアンタを見返してやる‼︎ 」

 

 

 

「『口だけなら』いくらでも言える。それにーー」

 

 

 

雪に読心術じみた的確な内容を散々言われたから

だろうかステラがそう言って雪を睨みつける。

 

 

 

だが、雪はそんな騒いでいるステラを無視して

席から立ち上がって一輝を見ながら

 

 

『結果を出してから言え』

 

 

 

そもそも黒鉄一輝の初戦の対戦相手は胸糞悪い

あの不愉快な《狩人》桐原静矢だ。コソコソと

絶対的安全な場所でほくそ笑みながら『相手(獲物)

という名の弱者』を痛ぶり射抜くことを楽しむ

しかも自分の能力で勝てないと分かった途端、

棄権して逃げる臆病者で騎士と呼ぶには相応しく

ないと言える屑ような騎士だ。

 

 

 

そして『黒鉄一輝にとって桐原静矢は最悪の天敵』

であり、因縁がある相手なのだと理解しているから

だからこそ

 

 

 

『結果を出してから言え』

 

 

 

と一輝に言ったのだ。

 

 

 

そして雪は席を立って一輝とステラを見向きも

せずにその場を後にしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イッキ、大丈夫…?」

 

 

 

「ああ、心配されてすまないステラ……」

 

 

 

「うぅ……だって……イッキがバカにされて、

くやしかったんだもん」

 

 

「え? だって、……なに?」

 

 

 

「な、なんでもないっ!」

 

 

 

雪がファミレスを去った後、ステラと一輝は

二人きりになって少し話していた。

 

 

 

「それで…イッキは何でアイツ…イナバ先輩と

会っていたの?」

 

 

ステラは真剣な表情で一輝に聞くと

 

 

「認めてもらおうと思ったんだ…」

 

 

「認めてもらうため? どう言うこと…?」

 

 

ステラは一輝の言葉に頭を傾げていると

 

 

 

「以前、ステラと珠雫が争っていた時、因幡先輩

に言われた内容が気になっていたんだ…」

 

 

 

「そ、それは……」

 

 

 

ステラは一輝の言葉理解してその時のことを

思い出していた。

 

 

 

『お前がどう鍛錬して努力しようが僕には

どうでもいい……だが、君がもし、そのまま

そのふざけた贋作の模造を続けるなら僕は君を

絶対に容赦しないし『君の存在』と『その刃』ごと

斬り落とすから……』

 

 

と言う言葉を思い出していた。

 

 

その言葉を聞いていてステラでも分かる。

『因幡雪は黒鉄一輝の騎士としての存在と騎士と

して振るう刃を許さないどころか黒鉄一輝の騎士の

プライドと刃(陰鉄)を切り捨てると、つまりは

『因幡雪』という騎士は躊躇いや躊躇などの感情は

一切なく容姿なく切り捨てると言う警告しているの

だと、だから今回の選抜代表選ばれたら認めさせて

ことが出来るんじゃないかと一輝は僅かな可能性を

思って言ったのだろう…

 

 

 

「でも、今日因幡先輩と話してみて因幡先輩の

言う通りだと思ったよ……」

 

 

 

「えっ?」

 

 

えっ…? イナバ先輩の内容を肯定するの?

それってつまり…以前、一輝がアタシに言っていた

『黒鉄龍馬のような騎士になりたい』という夢を

諦めるというの……?

 

 

ステラは一輝の言葉を聞いて内心慌てていると

 

 

 

「まだ、結果を出していないのに勝った前提の

話しをしていたんだ……因幡先輩に言われた通り

結果を出してからじゃないと……」

 

 

そうだ…自分の対戦相手は《狩人》桐原君だ。

それに『桐原君の能力は自分にとっては天敵』

であり一輝たちの世代には『首席新入生』と

呼ばれて一年生にして七星剣武祭の代表選手に

選ばれた猛者だ。

 

 

 

(もしかしたら…雪先輩は気付いていたかも

しれない……)

 

 

『桐原君の能力は僕にとって最大の天敵』で

あるとそして彼は二回戦止まりの人間に躓いて

負けているようでは騎士の高みもクソもないと

言うことに……

 

 

それに……勝たなくては意味がないのだ。

 

 

だからこそ一敗することなく無敗を貫かなければ

ならない。一敗でもすれば、おそらくチャンスは

ないのだから

 

 

 

(ああ…そうか……)

 

 

因幡先輩が先程自分に『結果を出してから言え』と

言っていたあの言葉の意味は『この試合の勝利』

ではなく『選抜代表の一人として選ばれる結果』を

出してから言えと言っていたのか……

 

 

 

確かにそうだたった一回戦勝ったぐらいで選抜代表

になれるはずがないし実力がない者が選抜代表の席

を掴めるほど七星剣武祭の選抜代表の席は容易く

などないし安くもない…

 

 

 

むしろ、ステラ、珠雫、アリス……そしてこの学園

のみんな…だって選抜代表の席を掴もうと今でも

努力を重ねている……なんで自分はこんな単純な

ことを忘れていたんだろう……

 

 

鍛えた分だけ刀や刃重みもそして……

 

 

一輝が更に考えていると

 

 

「イッキ…大丈夫…?」

 

 

「えっ? あ、す、ステラ……」

 

 

そうだ…僕は負けるわけにはいかない。

負けてしまえば、耐えに耐えた今までが無位意味

になってしまう。だから、誓う。

 

 

「ステラ……」

 

 

「なに、イッキ…?」

 

 

「僕は、必ず勝つよ」

 

 

誰にでもなく、自分自身に。普段の一輝とは

少し違う、強い言葉で。

 

 

そう、誰にも負けない‼︎

 

 

勝って、勝ち続けていつか黒鉄龍馬様な剣豪に

伐刀者になってみせる‼︎

 

 

「策でもあるの?」

 

「ある」

 

一輝は迷うことなく断言した。

 

 

「攻略法はもう見えている」

 

 

「そう…」

 

 

ステラはそう言って俯いていた顔を上に上げて

 

 

「イッキ」

 

 

「ん? どうしたのステラ?」

 

 

「絶対、全員で選抜戦の代表になって七星剣武祭

に出るわよ……」

 

 

「ああ、もちろんだ。

全員で選抜戦の代表になろう‼︎」

 

 

 

「選抜戦の代表になってアイツの度肝を抜いて

やるんだから‼︎」

 

 

 

二人はこの日を境に改めて誓い合った。

お互いが選抜戦の代表なって『剣の頂』を目指す

『好敵手』として大勢が注目する大舞台である

七星剣武祭で決着をつける覚悟を決める。

 

 




ここまで読んで頂きありがとうございました‼︎

これからも作品投稿を頑張っていきたいと
思いますので『投票』や『お気に入り』、
そして『しおり』などの応援したいただけたら
『豆腐のようなメンタル』な自分も頑張れます‼︎

更に続けていける様に頑張っていきたいと
思います‼︎


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
一言
0文字 ~500文字
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。