悠久の旅人の終着点 (きんにく同盟)
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プロローグ
どうか読んでください。
お願いします。
八雲紫は物思いに耽る。「もしあの時・・・」と呟きながら、寂しげに雰囲気を漂わせる。それはほのかに広がる微かな匂いの花の様に可憐でいて、尚且つ儚い。
そんな主人が珍しく、彼女の式、八雲蘭は声を掛ける。
「意味のない仮定ですよ、紫様」
もしあの時、など過去を振り返る事は妖怪である彼女にとって全くもって無意味であるが、長い悠久の時を生きる大妖怪の紫ならばこそ必要であろう。
このマヒヨガの低い窓に足を掛けながら、頭だけを蘭に向けて言う。
「まあいいじゃない。こんな人間っぽい事も・・・」
頬が少し紅色がかっている。先ほどまで友人である西園寺幽々子と呑んでいた為だ。少し酔いが回っていたからだろうか、紫は逡巡の後に蘭に話し出す。
それは彼女の面白可笑しく、奇妙な経験談。
「蘭、私はね・・・未来人と旅をしたの」
冥界
ここでは四季映姫が外界の閻魔と珍しく談笑をしていた。
普段から執務ばかりの生活のちょっとした息抜きなのだ。
「ええ、こんな仕事をしていると様々な者が来ますね」
その映姫の言葉を聞き、外界(人間界)の閻魔は重々しく頷く。その姿に違和感を感じた彼女は「どうかしたのですか?」と聞く。
そもそも、閻魔同士で交友はしない。
閻魔が彼女の元に突然来たのだ。
「なあ、今日大閻魔様から勅令が届いたんだ・・・」
「大閻魔様から?」
大閻魔とは様々な世界の冥界を統括する閻魔直属の上司。その大閻魔の姿を見た者はいない位のシークレット級である。
その秘密のヴェールに包まれた上司からの勅令に映姫は興味を持つ。
「一体、どんな勅令なんですか?」
いつもの彼女ならそんな情報漏洩を促す行為はしない。それだけに大閻魔という者が謎だと言える。
閻魔は恐る恐る語った。
「実は、人間界に地獄門を展開させる・・・」
地獄門の展開、それが示唆する意味は簡単だ。死期がこない大犯罪者や世界を変えてしまう程の者を強制的に地獄に引きづり込む為。
「なんと・・・その対象者とは?」
「へぇ・・・それは凄い人間ですね紫様!」
「フフフ・・・そうでしょう?彼は物凄く聡明だったんだから!」
嬉しそうに話す主人はまるで、恋する乙女だ。
結構聞いた時に蘭はふと思い出した。
「ああ!そういえば名前を聞いていませんでしたね。何というのですか?」
「彼の名前はね・・・」
「藤村朔太郎っていうのよ」
「藤村朔太郎だ」
この矛盾を生む一致は大きな渦を生む。それは人間界はおろか幻想郷をも巻き込むだけの規模になるだろう。
どうでしたか?
感想をくれましたら幸いです。
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