ギルベルト・ハーヴェスの王道 (ゼウス)
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黎明
「私はな、正しき世を作りたいのだ」
ふと、同僚にそんな言葉をもらしていた。
「この世に闇や腐敗や悪といった負の要素が存在するのは認めるが、推奨されるのは偏に光や進歩や善といった概念でありそれらは素晴らしいという考えに誰も異議は唱えない。つまりこの世は万人が進むべき方向があらかじめ確定している」
なんとわかりやすく、完成された美しい世界であることだろう。何を為せばいいのか、どちらへ進めばいいのかを誰もが迷わず理解できるのだから――しかし・・・・・・
「それが、誇大妄想じみた考えだと言う事も重々理解している」
無能者や悪人が上に立ったり得をしたりということも現実としては存在するのだから仕方ないと、優れた社会性や知性からそういった矛盾も認めることができた。
また、怠惰や腐敗や堕落に溺れる人間は家柄が良く才能もある人間には敵わないと思うからこそ堕落していくという悲しい現実も存在する。
個人としてどれだけそういった負の要素を忌み嫌おうが、それはもうどうしようもなくこの世の一部であり、
ゆえに改善するのは世界を丸ごと叩き壊して法則を書き換える・・・・・・ぐらいのことをしないと無理だろうと認識していた。
「綺麗なもの、理路整然としたものが好きでもすべてがすべてそうはいかない。これもまた現実ならばせめてせめて社会の上に立った暁には、今より間違いの少ない公正な評価を人に与えるシステムを作りたいのだ」
そうして士官学校を主席で卒業し、軍事帝国アドラーにおいて権力を握る最短ルートである軍人としての出世街道を歩んでいた。
「ほう・・・・・しかし、無能者や悪人が上に立つ事や得をする事も自らの生きる道を見つけたとも言えるのではないですか」
「なに・・・・・・?」
「世の中には出来る事と出来ない事・・・・・・向き不向きがある。怠惰や腐敗や堕落に溺れる者は逆説的に生きる道を見出せないからそうしているのでは?」
「ならば・・・・・・埋もれた才能を見出せる環境を作る事が肝要だと?」
「ええ。まあそういうやり方もあるのでしょうが・・・・・・」
「ん? どうした」
確かにそれなら自分の理想実現に一歩近づいた感じがする。しかし・・・・・・この後、彼の語る事に私は絶句した。
「貴方もまた自らの生きる道を見出していない」
「・・・・・・何を言っている?・・・・・・先ほど、言ったばかりではないか。公正な評価を与えるシステムを作ると」
「それは、すべてを弁えるが如く振る舞い、その通りに結果を出す賢者の資質が求められるが・・・・・・貴方は己が在り方に疑問を持った事はおありかな?」
「・・・・・・何・・・・・・?」
「社会の一員であることを弁え為すべき事を為す事を要求するその在り方・・・・・・まさに王者の様ではありませんか」
「私が王だと・・・・・・ハハ、馬鹿な」
「それではその社会は・・・・・・システムは誰の為のシステムなのでしょうか」
「我がアドラーの為だと思っているが」
「国の為ならば・・・・・・それを重んじる貴方は王者の在り方の様にも見えますが・・・・・・」
私が王者・・・・・・そんな事、一度も考えた事無かったが・・・・・・何故か、この時私は動揺していた。
さて、眼鏡隊長の赤裸々な極楽浄土の道程はどうなっていくのでしょうか。実現可能か不可能か・・・・・・出来る者は当たり前に出来てしまい、出来ない者は当たり前に出来ない・・・・・・そんな不条理を撥ね退け実現できるのか・・・・・・
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