DATE・MADAO・LIVE (人鳥悪夢)
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プロローグ篇
第零訓『異世界に連れて行かれるのは何も主人公だけとは限らない』


初めまして、人鳥悪夢と申します。
銀魂とデート・ア・ライブを読んで描きたい衝動に押されて始めました。
何ぶんクロスオーバー小説を書くのは初めてでウケるかどうかは解りませんが
完結目指して頑張ろうと思います。



『侍の国』

 

この国がそう呼ばれたのは今は昔。江戸に舞い降りた異人『天人(あまんと)』の台頭によって、今では天人がふんぞり返って歩く国に変わり果ててしまった。

 

 

ここは江戸にある町『かぶき町』。そのかぶき町にて『万事屋(よろずや)銀ちゃん』と呼ばれる店の中でのこと。

 

 

「...はあ〜、銀さんまだ帰ってこないな」

 

 

事務所をモップ掛けで掃除する眼鏡をかけた地味な少年であり従業員の『志村新八』がため息をついていた。

ため息の理由は昨日から仕事に行ったきり帰ってこない社長についてである。

新八がため息をついていると玄関の引き戸がガラガラと音を立てて開いた。

 

 

「ただいまアルー」

「ワンワン!」

 

 

帰ってきたのは日傘を持ち、透けるように白い肌にオレンジの髪を頭の両サイドで三つ編みにしてぼんぼりで纏めて団子状にした少女『神楽』とヒグマ並の巨体を持つ、真っ白な毛並みが特徴の超巨大犬『定春』。

神楽も万事屋の従業員であり、宇宙最強の戦闘民族『夜兎族』の一人である。

定春は万事夜のマスコットにして神楽のペットだ。

 

 

「おかえり、神楽ちゃん。定春の散歩お疲れさん」

「新八、銀ちゃんまだ帰ってきてないアルか?」

「そうなんだよ。全く、何処でフラフラしてんだかあの人は」

「ホントアル、これだから頭も天パになってしまうネ」

「いや、それは関係ないと思うよ神楽ちゃん」

「...あ、そうだ」

 

 

未だ帰ってこない社長について話していると神楽が何かを思い出してポケットから手の平サイズで細長い体に二本の割り箸のような手をつけて、目には生気がない人形を新八に見せた。

 

 

「これ、定春との散歩で見つけてきたネ」

 

 

ヒョイと神楽が手に持っていたのはどこか見覚えのある生気のない表情をした手抜き感満載の人形だった。

それを見て新八は怪しむ様に目を細める。

 

 

「...神楽ちゃん、コレって……」

「『ジャスタウェイ』ネ」

「ああやっぱり……」

 

 

真顔で人形の名を答える神楽に新八は髪を掻きながら問いかけた。

 

 

「いや、でもジャスタウェイって爆弾じゃなかたっけ?」

「違うアル。コレ見つけた時、定春がガジガジしたけど何も起こらなかったし何ともなかったネ、だから爆弾じゃないヨ」

「そう、なら良いけど...でも神楽ちゃん、コレって何処で見つけてきたの?」

「源外のジジイの工房の近くで見つけたアル」

 

 

江戸一番の発明家でありとある事情で現在絶賛指名手配中の男『平賀源外』

彼の名、そしてその人物の工房の近くに落ちていたと聞かされ、新八はすぐに勘付いた。

 

 

「...ならこれ、完全に源外さんの発明品じゃないの? ヤバいって、ちゃんと返してあげた方がいいって絶対」

「はん、おいおいぱっつあんよ、悪いがこのジャスタウェイは私が拾った時点で所有権は私の物アル。私の物は私の物、源外のジジイの物は私の物ネ」

「いやそれどこのジャイアニズム!?」

 

 

どこぞの空き地を拠点にふんぞり返るガキ大将のような事を胸を張って言ってのける神楽

新八はツッコミを入れつつも、彼女が持つそのジャスタウェイを再度確認して見た。

 

 

「う〜ん、見たまんまじゃ危険かどうか判断できないな……ていうかホント見てるだけでこっちまでやる気なくすんだけどこの人形……製作者はどういった心境でコレを造ったんだよ……」

 

 

虚空を見つめる二つの目がこちらを見返してくるのに新八は少々恐怖を感じて目を逸らし、神楽の方へ顔を上げた。

 

 

「構造はわからないけど源外さんにやっぱ返しておいて方が良いかな……神楽ちゃんそれ貸してくれない? 僕が届けに行くから」

「寝言は寝て言えヨ、もうコイツは私のモンアル。今こうして私の手にフィットした時点で、コイツのこの先の人生は全て私の下で生き続けるという運命が決定したんだヨ、そう、まさにディスティニー……」

「なんで英語で言った!? つーかそれただネコババしたいだけだろうがおまえは! いいから返せジャスタウェイ! 見た目が不吉感漂ってて見てるこっちも不安になるんだよ! さっさと手放さないとその内髪の毛生えるよコレ!」

「イーヤーアール! 例えヅラみたいなロングヘアーになろうとジャスタウェイは私のジャスタウェイネ!」

「何それ気持ちワル!」

 

 

源外の発明品らしきジャスタウェイを返そうとする新八と返却を拒む神楽が

ジャスタウェイを巡って取り合いを始めてしまった。

だが、この取り合いが思わぬ事態を発展してしまう。

 

 

ポチ

 

 

「「ん?」」

 

 

取り合いの最中、何かボタンを押したような音がして止まる新八と神楽。

 

 

「...アレ? ウソ、今押した? 今押しちゃった?」

「ポチッといったネ、明らかにポチッと聞こえたネ、私もう何も知らないアル」

「はぁ!? 元よりテメェのせいだろうが!」

『装置ノ起動ヲ確認』

「「うわ!?」」

 

 

突如、無機質な音声に驚いた新八と神楽は思わずジャスタウェイから手を離す。

手の平サイズのマヌケな人形は床に落ちて転がるもその無機質な音声は止まずに部屋に鳴り響く。

 

 

『コレヨリジャスタウェイ座我阿琉怒(ザ・ワールド)ハ緊急モードニ移行』

「ジャスタウェイ座我阿琉怒(ザ・ワールド)!? 何こんなやる気をなくす人形にジョジョ第三部のラスボスのスタンド名付けちゃってんの!? 見た目とギャップ在り過ぎだろ!」

「アレだからヨ、作者がジョジョラーである作者に影響した結果アル」

「いや、そんなメタな発言しなくていいから神楽ちゃん!」

 

 

神楽にツッコみながらも新八はある危機感を感じていた。

先程、ジャスタウェイと思われる人形が出していた緊急モード。

このカラクリが源外の発明品であるならきっと良からぬ事が起こるのではっと予感を感じていた。

 

そしてその予感はすぐに来た。

 

 

『直チニコノ場カラ緊急転送ヲ開始シマス』

「「へ?」」

「zzz」

 

 

ジャスタウェイ座我阿琉怒(ザ・ワールド)からの音声の後、ジャスタウェイの無機質な目が光る。

すると、新八、神楽、眠っている定春の目の前の円状の空間が出現した。

そして円状の空間はブラックホールの様に吸い込み始める。

 

 

「「ギャァァァァァァァァァ!!!?」」

「ワフゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!?」

 

 

新八、神楽は突然の吸い込みにより宙に浮くも寸でで定春の背中に手を伸ばし捕まることに成功。

謎の空間に向かって吸い込まれながらも必死に耐える新八と神楽。

 

 

「ワンワン!」

「頑張れ定春お前だけが頼りネ!」

「何コレどうなってんの!? もしかして吸い込まれてるの僕等!?」

 

 

突然の事態に目を覚ました定春も床に這いつくばり吸い込みに耐える。

だが新八、神楽が背中に捕まえられた事により重りが増し、徐々に謎の空間に向かって吸い込まれていた。

 

 

「神楽ちゃぁぁぁぁぁぁぁん!! だから返そうって言ったじゃん! 源外さんの工房の近くで拾った時点で嫌な予感がしてたんだもの! あの人いつもはた迷惑な発明ばっかいるするし!」

「うっさいネ新八! んな過去のことより今を生きるのが大事アル! 前を歩け! 止まるんじゃねぇぞ!」

「いや、カッコいいこと言ってるけどアレ拾ってきた原因神楽ちゃんだからね!?」

「分かってるアル! だから今名案を思いついたところネ!」

「名案ッ!?」

 

 

正直、神楽の名案にいい思い出がない新八だがこの状況を打破するために耳を傾ける。

 

 

「神楽ちゃん! ちなみに聞くけどその名案って何!?」

「今、私たちは定春に捕まってるけどこのままじゃ定春ごと私達も道連れネ。だから何か重りを捨てるしかないネ」

「うん、それでッ!」

「そこで私が眼鏡(しんはち)を抱えて残ったツッコミしか能のない人間の方(いらないもの)謎の空間(あそこ)に捨てるネ! そうすれば後は定春の力で引っ張って脱出するというこの名案、どうアルカ!」

「おお! 凄いや神楽ちゃん! 確かにこの案ならいけ……!!......ってんな訳あるかァァァァァァァ!!」

 

 

神楽の名案にノリツッコミの如く怒鳴る新八。

 

 

「なんだよ新八、私の名案に異議ありアルカ?」

「異議ありも何も異議しかねぇよ!! 眼鏡と書いて新八ってどう言う事だコラッ!! なに眼鏡だけ救って本体見捨てようとしてんのッ!?」

「何言ってるアルカ、新八の存在意義なんて眼鏡だけアル。つまり眼鏡これが無事なら残りの眼鏡かけ機がどうなろうと問題無いネ。ノープロブレムアル」

「だから何で英語ッ!? 眼鏡も人間の方も二つ揃って志村新八だろうが! 僕を見捨てようとしてんじゃねぇ!」

 

 

徐々に体が引きずらながらも必死に耐え、もはやヤケクソ気味の神楽と口論を交わしながらも懸命に何か助けは無いかと待つ新八。

 

するとそこへ

 

 

「おーう、帰ったぞ」

「銀さん!」

「銀ちゃん!」

 

 

玄関から聞こえたのはけだるそうな声に二人はいち早く反応して顔を上げる。

銀髪の天然パーマ、死んだ魚のような目、着物を片側だけ着崩し、柄に『洞爺湖』と刻まれた木刀を腰に差した男。

かぶき町にて『万事屋(よろずや)銀ちゃん』という何でも屋の社長を務める『坂田銀時』。

 

 

「みんなの銀さんが帰ってきたよ〜っと。あ“〜、気持ちワル」

 

 

銀時は靴を脱いですぐに床にうつ伏せに倒れこむ。

どうやら昨日から朝まで酒を飲み続けていた為、二日酔いになっていた。

二日酔いの為か死んだ魚のような目はもっと死んでいるよう感じになっている。

 

 

「銀さぁああああああんッ!! 緊急事態なんです!! 早く来てくださぁあああい!!」

「銀ちゃぁあああああんッ!! ヘルペスッ!! ヘルペスミー!!」

「いや、ヘルプミーね神楽ちゃんッ!!!」

「ガンガンガンガンうるせーな、オエ。 こちとら二日酔いで気持ちワリーんだよ、うぷ」

 

 

二人からの叫び声に二日酔いの銀時は床にうつ伏せになりながらも

のそのそと移動し、新八と神楽、定春がいる居間の扉を開ける。

謎の空間に引きずり込まれそうになっている二人と一匹を見て銀時は二日酔いで頭を抱えながら言う。

 

 

「なんだァ? お前等いい年こいて星のカービィごっこか? んな事より新八、いちご牛乳持ってきてくれ。さっきから頭痛てーんだよ。神楽は風呂だ」

「何寝ボケた事抜かしてんすかァァ! 状況をよく見ろ状況をォォォ!! 現在進行形で吸い込まれそうになってんですよ僕達!!」

「何? そっちも吸い込まれてんの? 奇遇だな、俺も昨日パチンコで大負けして金吸い込まれるわ、一緒にいた長谷川さんと一緒にヤケ酒したりハシゴしたりで残りの金もみーんな吸い込まれちまってよ。昨日から吸い込まれ三昧なんだよ。いだだだだだ、やっぱ二軒目にハシゴするんじゃなかったわ」

「おい天パ! オメェがパチンコで負けようが酒で二日酔いになろうがどうでもいいネ!! さっさと助けろアル!」

 

 

二人と犬が髪の毛逆立ちにして今にも引きずり込まれそうな状況の中で、銀時は相も変わらず床にうつ伏せになりながら話を進める。

 

 

「助けてってお前よ、むしろこっちが助けて欲しいんだよコノヤロー。もう、本当気持ちワリーし、頭がガンガンいこうぜみたいに痛ーんだよ。」

「ちょっとォォォォォォ!! いい加減こっちの状況に気づけよ! 本当に星になりなりそうなんですよ僕達!! 今ならカービィに吸い込まれていた敵の気持ちが分かりそうなぐらいに!!」

「頑張れ、お前はスカーフィだ吸い込まれる前に爆発しろ」

「出来るかボケェ! いいからさっさと助けろ、デデデ大王みたいなマヌケ面しやがって!」

「あっそ、という事でデデデ大王はちょっくらトイレに行ってくるゾイ、あ、冷蔵庫の中に入れた無敵キャンディ食ったらハンマーでぶん殴るからな」

「わぁぁぁぁぁぁ! 待って! デデデ大王じゃなかった! よく見たらメタナイト卿だった! 助けてメタナイト卿! 哀れなワドルディをお救い下さい!」

 

 

うつ伏せになりながらトイレに向かって後退する銀時を慌てて引き止める新八。

ここで銀時を引き止めなければ新八も神楽も定春もあのブラックホールのような空間に吸い込まれてしまう。

他にこの状況を打破する手段がない以上、二日酔い状態の銀時に助けを乞うしかない。

そんな銀時はうんざりそうにうつ伏せだった上半身を起き上がらせる。

 

 

「何だよ、いい加減にしてくれよオイ、もうホントこっちもそろそろ限界で...うっ」

「...銀ちゃん? どうしたアルカ? 腎臓爆発したアルカ?」

「いや、何で腎臓爆発すんの神楽ちゃん。アレ? でも何だろ、もの凄く嫌な予感がするんだけど」

 

 

銀時が黙り込んだことに神楽はボケながら話しかけるも銀時は顔を下に向けて黙り込んでいた。

新八は神楽のボケにツッコミながらもまたもや嫌な予感を感じていた。

銀時の顔が徐々に青くなっていくと顔を新八、神楽、定春の方に向ける。

そして.....

 

 

「ゲボロシャァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

とうとうゲロるのであった。

今まで吐くのを我慢していた銀時だったが、その我慢も限界になり吐瀉物(モザイク付き)を吐いてしまった。

だが、被害はそれに止まらなかった。

銀時が吐いた吐瀉物は謎の空間による吸引力によって空間に向かって吸い上げられていく。

 

そう、新八と神楽、定春を巻き込む形で。

 

 

「「ギャアアアアアアアアアアアアア!!!!」」

「ワギャアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 

銀時が吐いた吐瀉物を浴びせられた新八と神楽、定春は叫び声をあげる。

吐瀉物を浴びせられただけでも不幸なのに更なる不幸がおきた。

 

 

ズル

 

 

「「あ」」

 

 

今まで必死に吸い上げられるのに耐えていた定春が銀時の吐瀉物をその身に浴びせられた為、滑りやすくなってしまった。

その結果、踏ん張る事が出来ずズルッと滑ってしまい、その結果......

 

 

「ああああああああァァァァァァァァァァ......」

「腐れ天パァァァァァァァァァァァァァァ......」

「ワオォォォォォォォォォォォォォォォォ......」

 

 

新八、神楽、定春は叫び声を上げながら謎の空間に吸い込まれてしまった。

新八、神楽、定春を吸い込んだ空間は徐々に小さくなり、やがて閉じる形で消えてしまった。

 

 

「あ“〜、気持ちわり〜。頭痛て〜。まだ吐き気する〜......あれ? 新八? 神楽? 定春?」

 

 

吐いても未だ体調が悪い銀時は新八と神楽と定春がいなくなっている事に気づく。

キョロキョロと居間を探すが新八と神楽、定春の姿は無かった。

 

 

「...え? これってもしかして置いてかれた? 主人公差し置いてみんな異世界に行っちゃた?......オイィィィィィ!!!まだ残ってるんだけどォォォォォォ!!?  すんませェェェェェん!!! もう一度開いてくれませんかァァァァァァ!!!? プリーズオープンダドアァァァァァァ!!!!」

 

 

まさかの取り残された事に叫ぶ銀時。

しかし叫んだところで謎の空間が現れるはずがない......ハズだった。

 

 

「ってうおぉ!」

 

 

なんと新八達を吸い込んだあの謎の空間がまた出現したのだ。

 

しかも今度は吸い込むことがなく、怪しく漂うだけ。

 

 

「んだよビックリさせんなよ……一体全体どうなってやがんだ? 仕方ねぇ、イマイチ気分悪りぃがまずはさっさと新八達の後を追わねぇと」

 

一瞬驚きはしたもののすぐに悪態を突きながら舌打ちし、空間の前に二日酔いではあるものの歩み寄りつつ乱れた着物の裾を直し、キチンと髪の毛を整えながら(彼の髪の毛の性質上意味がない行為なのだが……)意気揚々と空間へ入り込もうとする。

 

だがその時、空間の向こうから何やら不穏な気配が……

 

 

「.........ァァァァァァァァァァ」

「あん? なんか声が聞こえたような......」

 

 

空間の向こうから何やら声が聞こえてきた事に歩み止める銀時。

その声は空間の向こうから徐々に大きくなる。

 

 

「ァァァァァァああああああああああ!!!!」

 

 

ドゴッ!!!

 

 

「グボォッ!!!?」

 

 

なんと空間から赤毛に白いリボンで結んだツインテールの少女がドロップキックの体制で飛び出してきたのだ。

そのまま少女のドロップキックは見事に銀時の腹部に直撃。

ドロップキックの直撃を受けた銀時は見事に吹っ飛ばされ居間の扉にぶつかり気絶。(ちなみに居間の扉も壊れてしまう)

赤毛の少女の方はドロップキックが決まった反動により尻餅の形で居間に落ちた。

 

謎の空間は赤毛の少女が出てきてから再び閉じてしまった。

 

 

「いたたたた......な、何? 何がどうなってるの?」

 

 

赤毛の少女は辺りをキョロキョロと辺りを見渡す。

 

 

「ここは...家? どこかの家の中みたいだけど......! ちょっと! 大丈夫!?」

 

 

赤毛の少女は倒れていた銀時に近づき起こそうとする。

 

 

「もしかして打つかったのはあなた!? ねえ! 返事しなさい!!」

 

 

赤毛の少女は銀時を必死に呼びかける。

すると銀時に反応が返ってくる。

 

 

「......ぐッ」

「!...大丈夫!? 何か痛い所とか無い?」

 

 

目を覚ました銀時に赤毛の少女は無事かどうか確認する。

だが......

 

 

「.........」

「...? ねえ、ちょっと本当に大丈夫? もしかしてキックされたところがまだ痛いの?」

 

 

声をかけても反応がなく黙り込んでいる銀時に赤毛の少女は先のドロップキックのせいでまだ痛いのかと心配と不安、そして罪悪感を感じていた。

だがそんな気持ちもすぐに消えることになる。

それは.....

 

 

「......お」

「...お?」

「オボロシャァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

再び銀時が吐いたからであった。

先程のドロップキックが銀時の腹部に直撃したことで吐き気が再びやってきてしまったのだ。

そして我慢できずに嘔吐してしまったのであった。

 

それも赤毛の少女に降りかかる形で。

 

 

「...............」

 

 

赤毛の少女は銀時の嘔吐により吐瀉物(モザイク付き)まみれになってしまう。

 

 

「あ“〜......前よりも勢いよく吐いたから少しはスッキリしたぜ......あれ? 嬢ちゃん誰?」

 

 

二度目の嘔吐でスッキリした銀時がここで赤毛の少女の存在に気づいた。

嘔吐して吐瀉物まみれにしたくせに存在に気づいていなかったことに赤毛の少女の心境はいかに。

 

 

「.........」

 

 

吐瀉物まみれになった赤毛の少女に変化が起きる。

赤毛の少女は素早く自身のツインテールを結んでいた白いリボンを解き、今度は黒いリボンで結び直した。

そして.....

 

 

「天っ誅ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!」

「ぎゃあァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

直様、吐瀉物まみれにした銀時に天罰を下すのであった。

 

これが坂田銀時と謎の空間の向こうから来た赤毛のツインテールの少女『五河琴里』との最悪かつ最低な最初の出会いであった。




ちなみにタイトルは他の作者様と相談して決まったタイトルを英語に直しただけです。
英語にした理由は『英語にすればカッコよくなるんじゃね?』からです。
まあ、マダオと名付けてる時点でカッコイイから離れていますけどね。(笑)


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第一訓『ロリコン呼ばわりする奴のほうがロリコンって言っている奴のほうがロリコン』

お待たせしました。
デアラ三期が決定したり、FGOも11月下旬にセイレム配信が決まったりで
テンションが鰻登りですが、無事に更新できました。
それではどうぞ。


「腐ってるね」

 

 

ここは万事屋の下にあるスナックお登勢。

先ほどのセリフを言ったのはそのオーナーであり、万事屋銀ちゃんの大家でもある『お登勢』である。

 

 

「珍しく朝っぱらから来ればボロボロの姿で汚れた嬢ちゃん連れてくるとわ、そこまでアンタが腐ってるとは思わなかったよ」

「おいおい、バーさん。何勘違いしてんの? 婆さんが考える事なんかしてねーよ。この格好やガキんちょ汚したことは事故だからね事故」

「犯罪者ナンテミンナシテソウ言ウンデスヨ。ソノ死ンダ目デ私ノ事ヲエロク見テタナンテトンダケダモノデスネ坂田サン」

「誰がテメーみたいな妖怪をエロく見るんだよ。エロく見るんだったらむしろ結野アナの方を見た方が百倍いいわ」

 

 

スナックお登勢で働くオッサン面した猫耳女『キャサリン』からのカタゴトな言い分にツッコミを入れる銀時。

ちなみに銀時は顔にアザがあり、見た目もボロボロである。

もちろんボロボロになった原因は銀時が事故とはいえ赤毛の少女に向かって嘔吐してしまった事である。

赤髪の少女はキャサリンとは別の従業員と一緒に吐瀉物を落として綺麗にするため風呂を借りている。

 

 

「それで、あの嬢ちゃんといい、何があったんだい?」

 

 

お登勢が何があったのか銀時に問いただす。

銀時は面倒くさそうに頭を掻き、仕方なく事の顛末を話すことにした。

 

 

「実はよぉ......」

 

 

 

 

「新八と神楽と定春が吸い込まれて、それと入れ替わりにあの嬢ちゃんが出てきただぁ?」

 

 

銀時から一連の出来事を聞いて怪訝そうに言うお登勢。

お登勢と一緒に聞いていたキャサリンもまた同じ反応であった。

 

 

「ニワカニ信ジラレナイハナシデスネ、モウ少シマシナウソヲ言っタラドウデスカアホノ坂田」

「ウソじゃねーよ、ちゃんと証拠もあるんだからよ」

 

 

そう言って銀時は懐からある物をお登勢とキャサリンの前に出す。

それは手乗りサイズの生気のない表情をした手抜き感満載の人形。

新八、神楽、定春を吸い込み、赤髪の少女が出てきた空間を生み出す原因となったジャスタウェイ座我阿琉怒(ザ・ワールド)である。

 

 

「何なんだいそれ? その見てるだけでヤル気無くしそうな人形は?」

「ギャハハハハハ!! 見テ下サイヨオ登勢サン、コノ目辺リ坂田サンニソックリデスヨ!!」

「ふざけんじゃねーぞコノヤロー。銀さんはな、本気になったら目がキリッとなるんだよ......コイツはジャスタウェイ言って簡単に言えば機械(からくり)だよ機械(からくり)。コイツが居間に落ちてたんだよ。大方、神楽か定春が拾ってきたんだろ」

「それがどういった機械(からくり)か分からないのかい?」

「さっきから弄ってるんだけどよ、うんともすんとも動かねえんだよこの機械(からくり)

「ジャアモウオ手上ゲッテ事デスカ?」

「いや、アテならあるさ。機械(からくり)に一番詳しい江戸一番の機械技師(からくりぎし)にな」

 

 

銀時が言うアテにお登勢は気付いた。

 

 

「源外の爺さん所に行くってわけかい」

「ああ。機械(からくり)が絡んでるならあの爺さんの出番だ。まあ、あの爺さんならこんな変な機械(からくり)とか作ってそうだけどな」

 

 

銀時が何気に核心的なセリフを言うとお登勢が次の疑問を言う。

 

 

「なあ、銀時。アンタ新八、神楽、定春の心配とかしないのかい? 仮にもその空間?に吸い込まれちまったんだろ?」

「彼奴らなら心配ねーだろ。そう簡単にくたばるタマじゃねーし、向こうでも大丈夫だろ」

 

 

そう言う銀時の脳裏には砂漠のような場所で新八、神楽、定春の骨らしき物が転がっている絵が浮かべられていた。

 

 

「おいィィィィィ!!? 言ってる事と背景が全く逆じゃねーかァァァァ!? 完全に死んでるだろコレッ!!」

「おいおいバーさん。彼奴らのゴキブリ並みの生命力をナメるなよ。たとえ火星だろが何だろうが組織化し高度な文明築きながらきっとしぶとく生きてるさ」

「それどこのテラフォーマー!? 最終的にはゴキブリに退化してんじゃねーか!!」

 

 

銀時のボケにお登勢がツッコミを入れていると店内の裏側からある人物......否、機械人形(からくりにんぎょう)が出てきた。

 

 

「お登勢様、只今琴里様の清掃が終わりました」

 

 

同じくスナックお登勢の従業員であるからくり家政婦『たま』がお登勢に報告を入れてきた。

どうやら赤髪の少女のシャワーが終わったようである。

 

 

「着る物についてなのですが、勝手ながらお登勢さまが昔使っていた着物を貸すことにしましたがよろしかったでしょうか?」

「ああ、いいよ。どうせ物置に閉っているよりは使われた方がいいさね」

「わかりました。後、話を伺ったところ、吐瀉物をぶっ掛けられたことは本当に事故だったようで銀時様にR-18的な事はされていない様です」

「何、たまお前も疑ってたのか? 皆には銀さんどんなイメージで見てんだよ? 」

「私の中での銀時様のイメージはちゃらんぽらんで糖尿病寸前の犯罪者予備軍、爛れた恋愛しかできなさそうなまるでダメなオッサンな侍です」

「いやそれもう侍というかマダオだよね、完全にマダオって言ってるも同じだよねそれ......つうかたま、さっき琴里様って言ってなかったか? それって...」

「それが私の名前よ、マダオさん」

 

 

たまに続いて赤髪の少女が着替えの着物を着て出てきた。

しかも銀時をマダオ呼びで。

 

 

「ありがとうございます。風呂借りるだけじゃなく着る物まで用意してくれて」

「いいんだよ。うちの銀時(バカ)がやらかしちまった事だし」

「どうだガキんちょ、気分の方は?」

「ええ、アンタにゲロぶっ掛けられて気分最悪だったけど、風呂借りて着替えてからは幾分はマシになったわマダオさん」

「おい、そのマダオさんはやめろ。俺は長谷川さんと違ってちゃんと万事屋()う職に就いてるんだよ」

「万事屋? 万事屋ってつまり何でも屋さんて事?」

「そうです。ですが依頼など全く来ず、毎日をグータラに過ごしているのが現在の銀時様の状況です」

「それってつまりほとんど無職のオッサンと一緒って事じゃない」

「ちーがーいーまーす。銀さんは断じて無職のオッサンじゃありませーん。競馬(お馬さん)パチンコ(玉転がし)に忙しい毎日を送るお兄さーんでーす」

「馬さんや玉転がしって言ってる時点でもう典型的にダメな人でしょアンタ。まるでダメなお兄さん、略してマダオってことでしょ?」

「.........ところでよガキんちょ、名前は何て言うんだ?」

(逃げたね)

(逃ゲマシタネ)

(痛い所突かれて逃げましたね)

 

 

赤髪の少女に痛い所突かれた銀時は無理矢理話を変えて少女の名を聞こうとする。

赤髪の少女は意地悪そうに笑う。

 

 

「あら? 人に名前を尋ねる前に自分から名乗るのが礼儀じゃない? マダオさん?」

「だからマダオじゃねーって言ってんだろ......坂田、坂田銀時。さっきも言ったが万事屋を営んでる者だ。そんで着物貸したそこの妖怪ババアは大◯丸だ」

「誰が妖怪で大◯丸だっ! 肝臓吐き出させるぞコラッ!......お登勢だよ。このスナックのママでそこの銀時(天パ)の大家を勤めてる者さね。そこの二人はうちの従業員として働いているキャサリンとたまだよ」

「キャサリント言イマス。トリアエズ紹介料に30万ヨコセ小娘」

「何が紹介料だこのアホンダラ!」

「アダッ!」

「からくり家政婦のたまと申します」

 

 

銀時、お登勢、キャサリン、たまと自己紹介していく。

そしてとうとう赤髪の少女が名乗る。

 

 

「アタシの名前は五河琴里。天宮市に父と母、義理の兄と住んでるタダの中学生(・・・・・・)よ」

「天宮市?」

 

 

赤髪の少女『五河琴里』が名乗ると銀時は琴里が言ったある言葉に引っ掛かった。

 

 

「おい、婆さん。天宮市って聞いたことあるか? 俺全然知らねーんだけど」

「アタシも聞いたことが無いねそんな市の名前。たまは知ってるかい?」

「いえ、わたしも聞いた事がありません。それに今しがた天宮市と検索したところそのような市の情報はありませんでした」

「ハア? ソレッテツマリウソッテコトジャナイデスカ」

「ですが琴里様の様子から見てウソを言っている感じではないんです」

「.........」

 

 

銀時とお登勢達が琴里の住んでいる場所について話している一方で

琴里は銀時達を見ながらある事を考えていた。

 

 

(...あの『災害』に関して敏感で最新技術の実験都市として知られている天宮市を知らない...それにあのキャサリンやたまさんのあの姿...もしかしてここは...)

 

 

そう考えていた琴里に銀時が声をかける。

 

 

「五河って言ったか? 天宮市なんて街、聞いた事ねぇんだけどよ、本当にそこから来たのか?」

「ここでウソとか言って私に何の得があるのよ?...ねえ、少し聞きたい事があるんだけどいいかしら?」

「あ? 何だよ?」

「貴方達は『空間震』を知ってる?」

 

 

琴里から『空間震』について知っているかどうか聞くが銀時達にとっては聞いた事が無い言葉だった。

 

 

「空間震? それはアレか? 振動起こして何もかも破壊しちゃうアレの事か? 確かにすごかったよな。特に白ひげの時は」

「銀時様、それはグラグラの実です」

「違イマスヨ、坂田サン。ドコゾノSOS的ナ団体ノオンナガイライラシテイル時ニ出来チャウアレデスヨアレ」

「いや、それ閉鎖空間だから。ていうか今どきの若い連中にハルヒネタとか知ってるのかい?」

「大丈夫だろバーさん。これ読んでる連中は大抵のアニメやマンガ、ラノベばっか読んでる暇な連中ばかりだから。そういやハルヒに長門、小泉に朝比奈さん元気にしってかなぁ。ここの所、銀魂(こっち)が忙しくて会ってねえけどそろそろ顔出さないと完全にハルヒに怒なされるわ」

 

 

空間震と聞いて空間関連のネタや中の人的なネタで話している銀時達を見て琴里は自身が考えていた『ある予想』に近づいていることを感じていた。

 

 

(...空間震を知らない...あの反応が演技だったらノーベル賞ものだけど、あれは本当に空間震を知らない反応だわ。...)

「...ねえ、まだ聞きたい事があるんだけどいい?」

「なんだよさっきから。銀さんは何でも聞かれたら答えるド〇え〇んじゃねーんだよ。そろそろお前について聞きてえ事があるんだけどよ...」

「安心なさい、あと二つ質問するだけだから......ここは日の本の江戸っていう町でキャサリンとたまさんは天人っていう存在かしら?」

 

 

琴里は最後に江戸とキャサリンやたまについて尋ねた。

前の質問とは違いこの質問には銀時達は答えられた。

 

 

「確かにここは日の本の江戸で、キャサリンは天人だけどたまは違げえよ。たまは今は人型だが変形(トランスフォーム)すればガンタンクになれるすげー機械(からくり)なんだよ。デストロン相手に一騎当千だよ」

「銀時様、ガンタンクネタは劇場版完結篇限定で、何処ぞの機械生命体のごとく変形(トランスフォーム)も出来ませんしサイバトロンにも所属していません。...先ほどの紹介にも言いましたが私はからくり家政婦と言って簡単に言えば機械人形(からくりにんぎょう)です」

機械人形(からくりにんぎょう)...要はロボットみたいな感じでいいのかしら?」

「概ねその認識でよろしいかと」

「...分かったわ。これで最後の質問だけど、この日の本じゃあ天人によって宇宙へは簡単に行けるかしら?」

「宇宙だぁ? まあ、確かに天人の技術のおかげで『ターミナル』とか宇宙船とか使えれば宇宙なんざハワイに行くノリで行けるがそれがどうした?」

「......そう、それが分かれば十分よ」

 

 

銀時とたまとの質問のやりとりの中で琴里は自身の中で考えた『予想』が確信へと変わり内心驚愕した。

 

 

(江戸...天人...ターミナル...やっぱりここは『あの人』が言っていた世界...!...だとしたら、なんて事なの! 私は今...)

「おい、そろそろこっちの質問に答えてもらおうか」

「...!...ええ、そうね。答えれる範囲でなら答えるわ」

「...五河、お前は天人について尋ねてたみてぇだが、天人を見るのは初めてか?」

 

 

銀時から天人の質問をした時の事を質問されて、琴里は少し考えるそぶりを見せてから質問に答えた。

 

 

「...ええ、聞いた事はある(・・・・・・・)けど実際に見るのはこれが初めてよ」

「見るのは初めてって、どんだけ遠い田舎にいたんだいアンタ?」

「モシカシタラ鋲ノ付イタ服を着タモブ的ナモヒカン共ガ毎日汚物ヲ消毒シテイル場所カラ来タンデスヨオ登勢サン」

「あるいはV8を讃えながら死ぬ前に銀のスプレー吹きかけて死んでも永遠に輝き続けるイモータルな場所から来た可能性もございます」

「いやありえないから。つーかその二つ共通してんの世紀末だし、こっちと世界が全然違うから!」

「......世界が違う...ある意味正解かもね...」

「「「「は?」」」」

 

 

キャサリンとたまのボケにお登勢がツッコミする際に言ったある言葉に琴里が意味有りな正解を出した事に銀時達は凝視する。

 

 

「世界が違う...それはどういう意味なんですか?」

「何? もしかしてお前、チビに見えて高貴な身分なのか?」

「チビじゃなくて五河琴里って言ってるでしょ.....あ〜、何て言えばいいのかしら...」

 

 

琴里は頭を掻き、少し考え事をしてからは意を決して銀時達に言った。

 

 

「異世界から来たって言ったら信じる........?」

「「「「.........は?」」」」

 

 

銀時達は時が止まったこのように琴里をもう一度凝視するのであった。

 

 

 

 

「お〜い、爺さん居るか〜?」

 

 

ここは江戸一番の機械技師である源外がいる工房。

ここに銀時と琴里が訪れていた。

 

 

「ここに貴方が言った発明家が居るって言うけど大丈夫なの?」

「源外の爺さんは醤油やら卵かけご飯関連の変な発明品ばっか作るがアレでも江戸一番の機械技師だ。腕に関しては問題ねーよ」

「そう......って言うか、醤油やら卵かけご飯関連の発明品て何よソレ?」

「俺の木刀に醤油出す機能つけたり、『全自動卵かけごはん製造機』っ()うタダ美味い卵かけご飯作るだけのガラクタ作ったりとそんなカンジだ」

「......何その醤油と卵かけご飯に掛ける執着心? 醤油と卵かけご飯に呪いでも掛けられてんのその人?」

 

 

銀時と琴里が源外の工房に訪れたのには理由がある。

琴里がこの世界に来た原因であるジャスタウェイ座我阿琉怒(ザ・ワールド)について調べてもらう事である。

 

琴里の異世界から来ました発言に凝視していた銀時達だったが

琴里は自身の世界について説明した。

琴里のいた世界の歴史では来航してきたのは天人と言われている宇宙人ではなく海から来た黒船だったり、

宇宙開発もハワイに行くノリで旅行できるところまで進んでいない。

そして琴里のいた世界で起こっている現象『空間震』についても説明された。

 

『空間震』についてはまた別の機会にて説明されるが

琴里が説明を終えた時は銀時達は半信半疑であった。

異世界から来ましたっと言ってもそう信じられるハズが無い。

だがこの時点で今日がエイプリルフールでもなければ琴里がウソを言う意味もなく状況は膠着していく一方。

 

そこで銀時は壊れたジャスタウェイ座我阿琉怒(ザ・ワールド)を持って、琴里と一緒に源外が居る工房に行く事にした。

 

銀時達は壊れたジャスタウェイ座我阿琉怒(ザ・ワールド)が未だどのような機械なのか分からないが、

ただ知っている事と言えばこの機械によって新八、神楽、定春は吸い込まれ、琴里がこの世界に来てしまったという事実。

そこでこの機械を源外に調べてもらえば琴里がこの世界に来てしまった原因が分かるかもしれないので

琴里と共に源外がいる工房に訪れたのであった。

 

 

「なんだ、銀の字。こんな朝っぱらから珍しいじゃねーか」

 

 

工房からゴーグルをかけた老人『平賀源外』が出てきた。

源外は朝から工房に見慣れない娘連れてきた銀時を見て珍しそうに言う。

 

 

「しかも何時もの連中じゃなく見慣れね娘っ子連れてくるとわぁ......銀の字、一ついいか?」

「なんだよ爺さん、神妙な顔して」

 

 

源外が神妙そうな顔で銀時に尋ねた。

 

 

「銀の字.........お前さん、もしかしてロリコンか?」

「.........は?」

 

 

源外からまさかのロリコン宣言を受けて銀時は間抜けた声を出す。

源外はそんな銀時にかまわず話を進めていく。

 

 

「まさかお前さんにそんな趣味があろうとは......人の趣味にとやかく言う義理はねえが、中学生に手へ出すのは流石に拙いんじゃねーか銀の字?」

「おいィィィィィィ!! 違うっ()ってんだろうがァァァァァ!! ババアやジジイといい、なんでソッチに持っていくのかな!? 絶対ないからね!? こんなガキんちょ相手に絶対ないからね!? こんなちんちくりんなガキんちょよりも結野アナのケツの穴に手へ出すわ!!」

「だからガキんちょじゃなくって五河琴里って言ってんでしょうがこのアホ天パァァァァァァ!!! て言うか下ネタ言うァァァァァァ!!!」

 

 

ドゴッ!!

 

 

「ああああああッ!!」

 

 

勘違いをする源外に銀時は下ネタ的な事を言って誤解を解こうとするが、銀魂特有の下ネタに耐性がない琴里から腿にローキックを食らい悶絶。

銀時が悶絶している間、源外は琴里を尋ねる。

 

 

「ほほう、あの連中にも負けず劣らずの嬢ちゃんだな。嬢ちゃん、名前なんて言うんだ?」

「...私、五河琴里と言います。訳あってそこで悶絶している銀時(おとこ)と一緒に江戸一番の発明家である貴方に用があって来ました」

「俺に用だと? 何か作って欲しいものでもあんのか?」

「それなんですが......ほら、そこで悶絶してる腐れ天パ。さっさと例のもの出しなさい」

「いてててて、くそ。思いっきりやりやがって...」

 

 

銀時は腿をさすりながらも懐からジャスタウェイ座我阿琉怒(ザ・ワールド)を取り出し源外に見せる。

 

 

「爺さん、この機械についてなんだが......」

「おお! そいつはジャスタウェイ座我阿琉怒(ザ・ワールド)!! 何処にいったのか探していたんだが銀の字が持っていたのか!」

「ジャスタウェイ座我阿琉怒(ザ・ワールド)!? 何こんなやる気をなくす人形にジョジョ第三部のラスボスのスタンド名付けちゃってんの!? 見た目とギャップ在り過ぎでしょう!」

 

 

源外が手乗りサイズのマヌケな人形であるジャスタウェイの正式名を聞いて前回で新八と同じツッコミを入れる琴里。

さらに銀時は尋ねる。

 

 

「コレを知ってるって事は爺さんの発明品か?」

「そうだ。こいつは『全自動卵かけごはん製造機』の改良中によって生まれた発明品だ」

「『全自動卵かけごはん製造機』て......アンタまだあのゴミクズな機械作ってんのかよ」

「ゴミクズじゃねえ! 世紀の発明だバカヤロー! あれから『全自動卵かけごはん製造機』を改良してさらにすごい機能を搭載することに成功したんだぞ!」

(本当にそんな物発明してんのねこの人......。うちの連中といい勝負じゃないかしら?)

「すごい機能だぁ?......一応聞くがそりゃどんな機能なんだ?」

 

 

『全自動卵かけごはん製造機』の事を聞いてげんなり銀時に怒る源外。

銀時が言った通り変な発明をする源外に琴里は自身の部下(・・・・・)と比較する中、銀時は源外が言ったすごい機能について聞いた。

 

 

「聞いて驚けよ!! なんと改良したことにより完成した卵かけごはんがさらに絶妙な掻き混ぜ加減によりさらなる完成度へと高めることに成功したんだ! どうだ凄えだろ!!」

「「いや、ほぼほぼゴミクズな機能だろうが(でしょう)ソレ!!?」」

 

 

源外が搭載した機能についてツッコミを入れる銀時と琴里。

銀時はため息を吐きながらも気を取り直して源外が開発したジャスタウェイについて尋ねる。

 

 

「んで、このジャスタウェイ座我阿琉怒(ザ・ワールド)はどういった機械なんだ爺さん?」

「こいつか? こいつは簡単に言えば転送装置だ」

「「転送装置?」」

 

 

源外は銀時と琴里にジャスタウェイ座我阿琉怒(ザ・ワールド)について説明する。

 

 

「こいつはターミナルと同じ原理で単体での瞬間移動を可能にした装置だ」

「おいおい、『全自動卵かけごはん製造機』よりも全然使えるじゃねーか。むしろこっちが世紀の発明じゃね?」

「だが、移動できる距離が自宅から近所のコンビニぐらいまでしかねーんだよ」

「何その微妙な距離? せっかく第三部のラスボスのスタンド名が入ってるのに名前負けしてないソレ?」

「まあ、作者がジョジョラーである影響で決まった名前だからな......ところで銀の字、この座我阿琉怒(ザ・ワールド)がどうしたんだ?」

「実はよお......」

 

 

銀時は源外に万事屋での出来事と琴里について話すことにした。

 

 

 

 

「新の字達が吸い込まれて、代わりに異世界から来た琴の字......」

「でよ、爺さん。そいつ調べてみてなんか分かったか?」

「.........」

 

 

銀時と琴里は源外の背を見守る中、源外はジャスタウェイ座我阿琉怒(ザ・ワールド)をあっちこっち弄りながら調べていた。

 

 

「...この壊れ方...座我阿琉怒(ザ・ワールド)の緊急モードを起動させやがったな」

「緊急モード?」

「...それってどういう機能何ですか?」

 

 

源外が言った緊急モードに疑問を浮かべる銀時と質問する琴里。

源外は道具を取り出しながら解説する。

 

 

「緊急モードって言うのは何か危険が迫った時に大出力で遠い場所へ転送する機能だ。おそらくだが、これが琴里がこの世界に来ちまう原因になっちまったんだ」

「原因だぁ? でも座我阿琉怒(それ)は自宅から近所のコンビニまでしか飛ばせねって話だったろ?」

「それはあくまで距離の話だ銀の字。本来、座我阿琉怒(ザ・ワールド)は行きたい場所の座標を入力しそこまでのワームホールを形成、そのワームホールを通ることで転送を可能としてたんだ。だが、緊急モードになると何処か遠くの地に転送することになっちまうから見知らぬ遠い地までワームホールを形成することになる」

「遠い見知らぬ地って...それってもしかして...」

「そうだ。新八達が起動した座我阿琉怒(ザ・ワールド)の緊急モードは琴里がいる世界まで続くワームホールを形成しちまったんだ。そしてそのワームホールによって新八、神楽、定春は琴里がいる世界へ。そして入れ替わる形で琴里がこの世界に来ちまったって事だ」

「......ねえ、源外さん」

 

 

源外は解説する中で壊れたジャスタウェイ座我阿琉怒(ザ・ワールド)を修理しているとまたも琴里が話しかける。

黒いリボンを結んでいる琴里の性格上、表情に出さないようにしているがどこか焦りを覚えていた。

 

 

「そのジャスタウェイ座我阿琉怒(ザ・ワールド)、修理にどのくらい掛かるのかしら?」

「う~ん、そうだな......」

 

 

源外は一旦、ジャスタウェイ座我阿琉怒(ザ・ワールド)の修理を中断し銀時と琴里の方を向く。

 

 

「この機械(からくり)自体、『全自動卵かけごはん製造機』の改良中に出来た副産物で、言わば奇跡的に出来た機械(からくり)だ。此奴を修理するとなると最低でも一週間、最大でも一ヶ月は掛かっちまう。それに......」

 

 

 

 

「それで? 結局、どうする事にしたのさ?」

 

 

再びここはスナックお登勢。

カウンターにはお登勢、向かいのカウンター席には銀時と琴里が座っていた。

いつもならここでタバコを吸うお登勢だが未成年である琴里に気を遣って吸わないようにしている。

 

 

「とりあえずは爺さんからの報告待ちだ。座我阿琉怒(あれ)の修理が終わって次は新八達が飛ばされた琴里(コイツ)の世界の座標を探さなきゃいけねえからまだまだ時間が掛かるとよ」

「そうかい......」

 

 

銀時の報告を聞いてお登勢はチラリと琴里の方に目を向け、銀時もチラリと琴里の方を見る。

琴里の方は表情が暗く元気がなかった。

琴里は銀時が視た感じでは神楽に近い同年代で、その上、異世界に飛ばされて向こうの家族ともしばらくは会えないとなれば落ち込みもする。

元気がない琴里に店内の清掃をしていたたまが近づく。

 

 

 

「琴里様」

「...たまさん?」

「突然、このような事態に遭遇して落ち込むのも分かります。ですが、まだ元の世界に帰れない事が確定しているわけではありません。源外様なら必ず修理を完了させて琴里様を元の世界に帰します。だから琴里様もそう信じ万事屋(こっち)てください」

「たまさん......」

 

 

落ち込む琴里を元気づけようと励ますたま。

その様子を見ていた銀時とお登勢。

 

 

「....なあ、銀時」

「何だよ、バーさん?」

「アンタ、しばらく琴里(この子)の面倒を見てやんなよ」

「はぁ!?」

「!?」

 

 

お登勢からの突然の提案に銀時は声を上げる。

琴里もお登勢からの提案に驚いている様子であった。

 

 

「お登勢さん...どうして...」

「どうしてだって? そりゃあ身寄りない子を放置しちゃ江戸っ子が廃るってもんさね。それにこれも何かの縁。こういう時は大人に任せな、琴里」

「微量ながら私も出来る限り琴里様のお手伝いをさせていただきます」

「お登勢さん...たまさん...ありがとうございます!」

 

 

居場所を提供してくれたお登勢とたまにお礼を言う琴里。

しかし、琴里の面倒を見ることになっている銀時は不満を口にする。

 

 

「オイオイオイオイオイ、だからってよバーさん、何で俺が琴里(コイツ)の面倒を見なくちゃいけねーんだよ?」

「当たり前だろ? 原因がジジイの発明品だからだって琴里(この子)が来る切っ掛けになったのは新八達だろ? 部下の責任は上司の責任、つまりこいつはアンタの責任でもあるってわけさね。責任もって琴里(この子)の面倒を見るのが道理だろ?」

「いや、けどよぉ......」

「それに、このかぶき町で琴里(この子)一人で彷徨ってたらどんな目に合うか分かったもんじゃないだろ?」

「.......」

「後、もし面倒見るんだったら今月含めて溜まった家賃三ヶ月分チャラにするけど...どうなんだい? 引き受けてくれるかい?」

 

 

お登勢からの言い分と溜まった家賃の帳消しを聞いて銀時は溜息をし、頭を掻きながら「仕方ねえなぁ~」とぼやき琴里の方を向く。

 

 

「...聞いた通りだがよぉ、源外のジーさんからの連絡が来るまでの間、しばらくは万事屋(こっち)で面倒見てやるよ」

「アンタ......」

「まあ、あくまでバーさんからの依頼で面倒見るんだからな、ちゃんと言うこと聞けよ?......バーさん、ちょっと小便してえから厠借りるわ」

「借りるのは良いけどたまがせっかく綺麗にしてくれたから汚すんじゃないよ?」

「安心しろ、今日の天秤座の運勢三割大当たりらしいから大丈夫だ」

「おいそれ、後の七割ハズレって事じゃねーか! 汚したら承知しねーからな腐れ天パ!」

 

 

お登勢のツッコミを受けて銀時は厠に向かう。

琴里は銀時の背中じっと見ていた。

琴里にとっては見知らぬ世界で自分にゲロをぶっかけた銀時と生活するとなると色々と不安を感じていた。

不安を感じていた琴里にお登勢とたまが話す。

 

 

「安心しな。銀時(アイツ)は普段はだらしない奴だけど交わした依頼(やくそく)だけはちゃんと守る奴さ。そうだろたま?」

「はい。銀時様は確かに普段はちゃらんぽらんな方ですが交わした依頼(やくそく)は何が何でも守り通す侍でございます」

「侍……」

 

 

侍という言葉を口にする琴里。

それは自身が住んでいた世界に迷い込んだあの人(・・・・・・・・)から聞いた言葉。

すると厠から用を済ませた銀時が戻ってきた。

 

 

「う〜す、戻ってきたぞ〜...おい、“琴里”。これからかぶき町を回るから外に出んぞ」

「え...? あ、ちょっと、“銀さん”!?」

 

 

銀時から初めて名前で呼ばれて琴里は少しポカンとなるが、そんな琴里に構わず銀時はスナックお登勢から出て行く。

琴里も初めて銀時の名前を言って、後を追う形でスナックお登勢を後にする。

お登勢とたまは店の玄関から外に出て、出掛ける銀時と琴里を見送る。

 

 

「......銀時様に琴里様、お二人は無事にやっていけるのでしょうか?」

「さあね。けど新八と神楽とは別の意味で騒がしくなるのは間違い無いだろうね」

 

 

お登勢は懐からタバコを出し、火をつけてタバコを吸い始めた。

タバコの煙を吐き出してお登勢は呟く。

 

 

かぶき町(この町)はどんなヤツだろうと受け入れる。例え異世界の迷子だろうが世界を滅ぼす大魔王だろうが何だろうとね」

 

 

 




デアラ三期が決定しましたがやはり七罪篇から折紙篇までやる感じですかね?
七罪の声優さんは誰がやるのか気になりますが楽しみです。

後、12月に入ってから少し忙しくなり
更新に遅れが出ると思いますが、出来る限り12月中に更新できるように頑張る予定です。
それでは。


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第二訓『理由作りは計画的に』

なんとか投稿する事ができましたが
第一訓から半年以上も経ってしまって申し訳ありません。
大学生活も色々と忙しい感じですが
一ヶ月に一回投稿を目標に完結目指して頑張っていこうと思います。


「ったくよ、良いじゃねーか少しぐらいよぉ」

「だからってねぇ......」

 

 

ここはかぶき町のとある街中。

昼過ぎになり、かぶき町に住まう人々と天人が行き交う中、

銀時と琴里は歩いていた。

 

 

「...案内してくれているのはありがたいけど、まさかキャバクラやホストクラブ、色町の果てにはパチンコ屋まで案内するなんて...」

 

 

琴里は銀時が案内したかぶき町の名所に頭を痛めていた。

最初は銀時行き付けの食堂等、普通の案内であったが新八の姉が働くキャバクラにホストクラブ、オカマが働くお店に吉原桃源郷と言った色町と明らかに大人になってから入る場所、挙げ句の果てには銀時がよく行くパチンコ屋にまで案内せれたら頭が痛くなるのも無理はない。

ちなみに何故パチンコ屋まで案内されたかと言うと...

 

 

「今日のてんびん座の運勢が三割大当たりって言うからよ、もしかしたら昨日の負け分を取り返せる上に大儲けするんじゃねーかなっと思って行こうとしてる時にてめーはよ...」

「いやそれ後の七割はハズレって意味よねそれ? しかも昨日大負けしたのにも関わらずまたパチンコ行くなんてどんな神経してんのよアンタ?」

「俺の中の宇宙コスモが言ってんだよ。あの台で目閉じて座禅している乙女座の黄金聖闘士(ゴールドセイント)に今度こそは勝つぞってよ。だから宇宙(コスモ)を燃やすためにもちょっと金貸してくんね?」

「そんな汚れた欲で燃えた宇宙(コスモ)じゃ一生その乙女座の黄金聖闘士(ゴールドセイント)に勝てないわよ。というかあまつさえ金を貸してとかそろそろこっちも仏から鬼になって燃やすわよ!?」

 

 

銀時に何処ぞの帝王的な脅しをした琴里はため息をつく。

ため息の理由は銀時だけが原因ではないのだから。

 

 

「......猫の餌(・・・)食わせようとしたり金貸してくれと頼んできたりする貴方もそうだけどこのかぶき町の住民って色々と濃すぎない? 私の所の知り合いも色々濃かったけどこっちはその数十倍は濃かったわよ」

「そりゃそうだろ。こちとらジャンプに十年以上も連載して、下ネタやパロディーはもちろん、メタ発言上等で毎回PTAに苦情殺到して毎日修羅場ってたんだぜ? 六年続いているそっちのラノベとは格が違うんだよ、格が」

「いや、そんなメタ発言しなくてもいいから......」

 

 

銀時にツッコミを入れる琴里は出会ってきたかぶき町の住民について思い返していた。

 

琴里の知り合い達(・・・・・)もいろいろ濃かったが、まさか世界を超えて、その十数倍も濃い人達に出会うとは思わなかった。

だが、濃い人達ばかりでもあったが琴里の事を心配してくれたり助けてくれたりと良い人達でもあった。

琴里が知る連中(・・・・)(ただし議長は除く)に比べれば遥かに良い具合に。

 

 

「...んで、どうだった? しばらく暮らすこの町の連中に会ってみた感想は?」

「......そうね、めちゃくちゃ濃い人達でもあったけど、良い人達ばかりだし。それに濃い意味では私がいた世界で見覚えあったし、まあ暮らしていくうちに慣れるわ」

「は、随分とたくましい事言ってんじゃねーか。それならこの町でもやっていけるさ」

 

 

琴里からのたくましい発言に銀時は心配ないと思っていた。

琴里は街中を歩く中で、かぶき町を歩く人々と天人の様子を見ていた。

 

 

「......源外さんの工房に向かう途中でも見かけたけど、本当にこの世界には天人もとい宇宙人が存在してるのね」

「...なあ、少し気になってることがあるんだけどよ、いいか?」

「何かしら、銀さん?」

 

 

銀時は琴里の反応から疑問に思っていた事を口にする。

 

 

「お前、異世界から来た割りにはこの世界の事や天人の事を知ってる感じだったが、なんで知ってるんだ? 異世界から迷い込んで来ちまったお前が」

「...あ〜、その事? まあそれについては色々と理由があるんだけど......」

「理由? どういう意味だそりゃ?」

 

 

琴里は何処からかチュッパチャプスを取り出して口に加えながらその理由について説明する。

 

 

「私がこの世界に来てしまった様に、その逆の事があったのよ」

「逆だぁ?...まさか...」

「あなたが思っている通りよ」

 

 

琴里は口に加えていたチュッパチャプスで銀時を指す。

 

 

「私がいた世界にもあなたの世界出身の商人達が迷い込んで来ちゃったのよ」

「迷い込んだって、そいつらも爺さんの転送装置みたいな物で飛ばされて来ちまったって事か?」

「いや、なんか『アッハッハッハ、航海中に突然、空間に穴が現れて気がついたらこっちに来ていたぜよ』言ってたわね」

「......」

 

 

銀時は琴里の話を聞いていく中である予感が過った、悪い意味で。

自分がいる世界出身で、商人で、バカみたいに笑い声を上げる戦友を。

一応、確認のために銀時は琴里に質問した。

 

 

「....あのさぁ琴里、そいつってモジャモジャ頭のバカで、バカみたいに笑い声上げるバカで、船好きだけども船酔いする特殊体質なバカで、よく人の名前間違うバカかつフラフラしまくって副官によくシバかれてるバカか?」

「いや、バカバカ言いすぎじゃない? 確かにあの人バカのお見本みたいなバカだけれども......ええ、そうね。名前は『坂本辰馬』って言ってたけど...」

「やっぱりかァァァァァァァァァァ!!!!」

「キャッ!?」

 

 

銀時は頭抱えて叫び、琴里は銀時の突然の叫びに驚く。

だが、銀時が叫び声上げるのも無理からぬ事でもある。

何せ、もっとも当たってほしくない予感が当たってしまったのだから。

 

 

「あのバカ、宇宙どころか異世界にまで行っちまうとかどんな天文的確率なんだよ......」

「もしかして坂本さんと知り合い? そう言えば、坂本さん『金時』って言う友人がいるって言ってけど」

「しかも人の名前間違って教えたのかよあのバカ!!」

「ああ、やっぱりそうなのね」

 

 

銀時は人の名前をよく間違える坂本に怒りが込み上げ、琴里からは同情的な視線で見ていた。

だが同時に琴里が違う世界の人間なのに銀時達の世界について知っていたのかという疑問が解決した。

 

 

「......お前がこっちの世界を知っていた事に合点がいったぜ。辰馬から教えて貰ったって事か?」

「そうね。興味があってこの世界について聞いたら色々と教えて貰ったわ。...まあ、こっちの世界のキャバクラなんかに通って陸奥さんにシバかれてたけど」

「世界を超えてもあの坂本(バカ)は平常運転って事か......」

 

 

二人は坂本について話していく中で、琴里はふと空を見上げる。

空には数多くの宇宙船が飛び交っていた。

 

 

「......それにしても、坂本さん達の宇宙船を見た時も驚いたけど、こんなに空を飛ぶ船が飛び交ってるなんてこの世界の科学力はトンデモないわね」

「そりゃそうだろ。こっちじゃ天人襲来してからは船が飛ぶなんざ当たり前だけどよ、そっちじゃ宇宙旅行する技術もねーんじゃ驚くわな。......それにしてもそっちは突然、坂本バカの宇宙船が現れて大騒ぎになったりしたんじゃねーか?」

「そこは大丈夫よ。世間に見つかる前に私達の所で保護したから大騒ぎにはならなかったわ」

「...ちょっと待て、私達? それに保護だぁ? おい、それってどういう...」

「あれ? 銀さんじゃねーか」

「「ん?」」

 

 

銀時と琴里が話している途中で、二人の後方から声を掛けられる。

二人は近くにゴミ捨て用のポリバケツが置いてある所で止まり声を掛けられた方向に向くと、そこには公園を住処にしている無職のまるでダメなオッサン『長谷川泰三(マダオ)』がいた。

 

 

「なんだよ、長谷川さんじゃねーか」

「どうしたんだよ、その娘? このかぶき町じゃ見かけない顔だけど......まさか、銀さん。モテないからってその娘に...」

「ちげーよ! 俺はこんなガキんちょ相手に手へ出すかよ! なんで知り合いに会う度にロリコン扱いされん!? これもアレか? 銀魂SSクロスで銀さんがロリコンになるからか!?」

「いや、何メタ的なことを言ってんのよアンタ」

 

 

長谷川マダオだけでなく案内先であった友人達にロリコン疑惑を掛けられる事に対してメタ的な発言する銀時ににツッコむ琴里。

 

 

「...と言うか、誰? この公園に住んでそうな無職でまるでダメなオッサン、略してマダオの様なオジサンは?」

「ちょっと!? なんか初対面の人に向かってかなり失礼な事言ってんのこの嬢ちゃん!? しかも当たってる上にマダオって言われたんだけど!?」

「この全身からマダオ臭を放ってるオッサンは長谷川さんって言って、マダオ臭が付くとマダオになるから気を付けとけよ」

「何人を病原菌みたいな扱いしてんの!? 銀さんも俺と同じマダオだからね!? 同じマダオ臭放ってるから! というか俺が初登場した時の説明でもマダオって言われてるしこれ以上オジサンのハートを傷つけないで!!」

 

 

長谷川が涙目でツッコミを入れながらも銀時に疑問を言う。

 

 

「......オジサンのハートはボロボロになっちゃたけどさ、その娘どうしたんだよ? 銀さんが手へ出してねえなら何かの依頼ごととか?」

「まあ、そんなもんだな。新八と神楽がしばらく出張(・・)でいねぇ代わりに万事屋(うち)でしばらくは働く事になったあずにゃんだ。ほら、長谷川さんにいつも語尾ににゃん付けて紹介しろあずにゃん」

「いや、わたし軽音部に所属する高校一年生じゃないし、語尾ににゃんとか付けてないから! ......コホン...初めまして。事情でしばらくは万事屋で働くことになった五河琴里ですマダオさん」

「いや、マダオじゃなくて長谷川だからねお嬢ちゃん。ナチュラルにマダオ呼びも傷つくから。......俺は長谷川泰三。困ったことがあったら何でも聞いくれ琴里ちゃん」

 

 

長谷川が自己紹介する中で琴里は長谷川が言った『何でも』の部分に引っ掛かった。

 

 

「何でも? 今、何でもって言った?」

「おうよ。でもまあ、オジサン見ての通り無職だけどよ、それでも出来る事があるなら相談してくれ」

「そう。なら長谷川さん、今からその小汚いグラサン破壊してもいいかしら?」

「すみませーん! やっぱ今言ったことナシで! ていうか何でグラサン!? グラサンになんか恨みでもあんの!?」

「なんか長谷川さんの声を聞くとトゲトゲ帽子を冠った太ったオッサンみたいな仲間を思い出しちゃって。旅した仲としては今のその姿があまりにもヒドイから、まずはグラサン破壊して語尾に『でがす』とか『でげす』を付ける事から始めさせようかなっと...」

「遠回しに俺の存在全否定?! 語尾に『でがす』や『でげす』付けても銀魂ここじゃかぶとわりや蒼天魔斬とか出来ないから!!」

「あら、ならステテコダンスは? ステテコ持って踊るじゃもの足りないから、貴方自身がステテコしか履いてない姿になってステテコ持って踊りなさい」

「いや、それやったらもれなく警察にパクられちゃうから!! 琴里ちゃんは俺に何させたいの!? と言うか段々俺に対して敬語使わなくってるよね!?」

「...ちっ...こんな事も出来ないなんて神無月よりも使えないマダオね」

「ちょっとォォォォォォォォ!!? 舌打ちされた上にダメだしされたんだけど!? この子もしかしてSなの!?」

 

 

琴里からのSっぷりに長谷川はガックリと肩を落とす。

 

 

「...ったく、何つう嬢ちゃんなんだよ。何だかあの新八と神楽(ガキども)にも負けねえキャラだぜ」

「そうだろ? 数日も過ごせばすぐかぶき町このまち慣れるぜコイツ」

「そうかもな...そういや銀さん、新八君とチャイナ娘は出張ってるって言ってたけどさ、何処に行ったんだよ?」

 

 

長谷川は新八と神楽の行き先を尋ねると、銀時は頭を掻きながらめんどくさそうに言う。

 

 

「あ~...新八と神楽(アイツら)はアレだ。ちょっと混沌と化した大都市の治安維持の為にある組織に出張しててさ......」

「ウソつけぇ! ソレ明らかに中の人ネタだし、その組織に用があるとしたら新八君だけだろ! チャイナ娘はどっちかと言うと混沌を起こす側だし!」

「うっせーなぁ......こっちは色々とあってなんやかんやで新八と神楽(ガキども)は出張で、俺ぁ琴里(コイツ)の面倒を見ることになっちまったんだよ、以上説明終わり」

「いや、そのなんやかんやが気になるんだけど......」

(...異世界に行っちゃって行方不明です、なんて言っても信じてもらえなさそうだし、何か適当な理由を言わなきゃいけないのだけど...もう少しマシな理由とか思いつかなかったのかしら...)

 

 

銀時の適当そうな説明にハァ〜とため息を出す琴里。

ちなみに銀時の新八と神楽の不在についての理由は長谷川だけではなく

かぶき町に住む知り合いにもこのような理由で話してはいるが

新八の姉『志村妙』や一部の知り合いには本当のことを話している。

 

 

「......まあ、銀さんがそう言うならそういう事にするさ。...んじゃ、俺これから用事あるから...」

「用事? それっていつも自動販売機の下に落ちてるお金拾うやつの事か?」

「.........」

「いや、確かに何とか生きていくためにもそんなこともしてるけどさ...だから琴里ちゃん、そんなゴミを見るような目で見ないで!! これでもオジサン、毎日をギリギリで生きてんの!! それに今は飲食店関連の仕事見つけて、これからそこへ向かおうとしてんの!!」

「ほぉ〜、そいつはよかったじゃねーか。そんじゃ俺は店にあるデザート全品な。勿論、代金は長谷川さん払いで」

「あ、じゃあ私はデラックスウルトラプレート。デザートは高くて美味しいやつね。後、チュッパチャップス1000本をお土産に要求するわ」

「いや、何で注文する感じになってんだよ!? しかもどれもこれもメチャクチャな注文の上に俺が奢る感じになってるし!!......わりぃが今回生活掛かってんだから絶対に店に来るんじゃねーぞドS二人組!! じゃーな!!」

 

 

長谷川は銀時と琴里に捨て台詞吐いて早々に去っていた。

 

 

「......なんか捨て台詞吐いて行ったけど大丈夫かしら、あの長谷川(マダオ)?」

「まあ、長谷川さんだからなぁ、また段ボール生活に戻んだろ。......そんじゃあ、次『ガチャ』...は...?」

 

 

銀時が琴里を次の場所に案内しようとすると、突然何かを嵌めた音がした。

銀時は音がした方に目を向けると、銀時の両腕に手錠が嵌められていた。

 

何故、銀時は手錠を嵌められているのか?

その答えはすぐに分かった。

 

 

「あ~、俺だ。 今、幼女を引き連れてたロリコンヤローを捕まえたからパトカーを早急に用意しろ、10秒以内にな......何? そんなに早く出せねーだ? んなの、自力でどうにかしろ。もし遅れたらキャラメルクラッチの刑だからな」

 

 

銀時に手錠を掛けた栗色頭で刀を所持し、黒い制服を着た青年はケータイでドS的な事を吐きつつも連絡をしていた。

銀時に手錠をかけたのは武装警察真選組一番隊隊長でありサド星の王子とも呼ばれている『沖田総悟』である。

 

 

「オイィィィィィィ!!?? 何してんの総一郎クゥゥゥゥゥゥン!!??」

「総一郎じゃなくて総悟でさ。旦那、これから屯所にそのガキと一緒に来てくれやせんか? 旦那とそのガキの深~い関係について色々聞きてぇんで」

「おい、まさか俺が琴里(コイツ)相手に手へ出したと思ってんの!? ナイナイナイ、絶対ナイから!! お前が思ってることなんてしてナイからね!?」

「いや、でも最近の小説じゃあ、旦那ってそこのガキ位の子と一緒に○○○○(ドキューン)!や○○○○(バキューン)!みたいな事を......」

「いや、してねェェェェェェェェェ!! 琴里(そいつ)ぐらいのガキと一緒にいる事があっても、んなサドスティックな事しねーし、むしろお前の願望だろそれ!!?」

「俺ですかい? 俺だったらむしろ○○○○(ドキューン)!して○○○○(バキューン)!した後に○○○○(ズキューン)!で○○○○(ズキューン!ズキューン!)を......」

「琴里ィィィィィィ!!! 早く誤解解いてこのドSバカ止めてェェェェェェェェ!!!!」

「え~......」

 

 

沖田のR-18的なセリフに銀時は琴里に助けを求める。

琴里自身は銀時の誤解を解きたいと言えば解きたいのだが

会って数分でこの総悟という青年のドSっぷりに琴里の危険人物ランキング第一位に登録された。

向こうの世界で変人な部下・・・・・を率いる琴里でも正直関わるのは避けたいのだが、

このままだと銀時が連行されてしまいそうなので、仕方なく話し掛けることにした。

 

 

「あ~...総悟さん? ちょっ話が...」

「なんでぃ? もしかして本当に旦那と○○○○(ドキューン)な事を......」

「いや、本当にそんな事されていないんで黙ってちょうだい!! チュッパチャップス揚げるから!!」

「......その反応を見るに、どうやら本当にやってねーみたいだな」

「...なんで残念そうな顔して言ってんのよアンタ」

 

 

琴里の反応を見て残念そうな顔する沖田はケータイで「間違いだったからパトカー用意しなくてもいいぞ」と連絡し、連絡を切った後は銀時の両腕に嵌めていた手錠を外した。

 

 

「すいませんね、旦那。どうやら勘違いでした」

「ったくよ、なんでどいつもこいつも人をロリコン扱いすんだよ......やっぱアレだな、すべて天然パーマだからいけねーんだわ.。うん、絶対そうだわ、そうに違いない」

「いや、それ絶対関係ねー事だと思いますぜ......ところで、そこの琴里ガキ。俺ぁ沖田総悟っていう警察の者なんだけど、さっさと名前と旦那との関係について喋んねーと鼻フックすんぞ」

「なんで鼻フック? どんだけSなのよこの人。...五河琴里よ。銀さんとは...まあ、親戚みたいな感じよね、銀さん」

「親戚?...こいつが言ってる事はマジですかい旦那?」

 

 

琴里が銀時とは親戚であると言う事(もちろんウソであるが)に沖田は銀時に事実であるか確認する。

聞かれた銀時は鼻の穴を小指でほじりながら答える。

 

 

「まあ...そうだな。親戚って言っても遠い縁みたいなもんでよ、こいつは俺の親父の妹の旦那さんの従兄妹の叔母の祖父のはとこの姪の兄妹なんだよ」

「いやそれ遠すぎだし、そこまでいったら赤の他人じゃねえですかい」

 

 

沖田は銀時の琴里との関係についてツッコム中、やれやれとした表情になる。

 

 

「...わかりやした。どうやらこれ以上聞いても無駄そうなんでここらで切り上げて俺ぁ見回り名目のサボりに戻らせてもらいまさぁ」

「......警察官がサボりってそれ大丈夫なのかしら?」

「まあ実際、土方さんから桂の目撃情報が挙がったから見回りに行ってこいなんて命令されたが、土方の命令なんざどうでもいいんで適当に見回りながらサボってる訳なんでさぁ」

(...こんな部下なんて持ってその土方って人、大変なんででしょうね......)

 

 

沖田のサボり事情を聞いて琴里は沖田の上司である土方に同情した。

実際、沖田は隙あらば副長の座を奪おうと土方の命を狙っているわけで、琴里が思っている三倍ほど土方は苦労しているのである。

 

 

「そういえば、旦那。いつもの新八(メガネ)とチャイナとは一緒じゃないんですかい?」

「新八と神楽はな...ちょっとばっか遠出だよ遠出。しばらくは帰ってこねえよ」 

「へえ~、そうですかぃ。新八(メガネ)はともかくあのムカつくチャイナがいねぇなら今夜はゆっくり土方さんのお祝い(のろい)が出来そうですぜ」

「いや、今なんて言ったの!? お祝いと書いてのろいって読まなかった今!?」

「そんじゃ、俺はこれで。旦那もその琴里(ガキ)手駒にするの頑張ってくだせい」

「いや、手駒とかそんな趣味ねぇし、お前どんだけ俺をロリコン扱いしてんだよ!?」

「と言うか私の話を聞きなさいよォォォォォォ!!?」

 

 

銀時と琴里のツッコミを聞きながらも沖田は気にせず別れるのであった。

琴里は去って行く沖田の後ろ姿を見ながら深い溜息をつき、銀時に言う。

 

 

「......ねえ、あの沖田って人、何なのかしら。分かった事は警察官でドSて事しかわからなかったけど...」

「あのサド王子は真選組っつうチンピラ警察に所属していて、トップがストーカーゴリラで沖田あいつの上司はニコチンマヨラーだ」

「ストーカーゴリラって何? この世界の警察はゴリラがトップ張ってんの? まともな警察はいないの?」

「後はトップが携帯依存症エリートで副長がドーナツ好きの人斬りの見廻組しか知らねえな」

「...世も末ね、この世界は......」

 

 

銀時達の世界の警察の事を聞いた琴里は改めて深いため息を吐く。

一方、銀時は沖田との会話である事を思い出す。

 

 

「...そう言えや、此処らでヅラが目撃されたとか言ってたな沖田(アイツ)。会うと面倒だからさっさと万事屋(うち)に戻るか」

「ヅラ? それってあの沖田(ドS)が言っていた桂って人の事?」

「そうそう。ヅラ小太郎って言ってな...」

「いや、なんでヅラ呼び? 桂だから? 桂だからヅラ呼び?」

 

 

銀時のヅラ呼びに琴里がツッコミを入れていると...

 

 

「ヅラじゃない桂だァァァァァァ!!!」

「おぐぼッ!!」

「ええええええええええ!!?」

 

 

突如、銀時と琴里の近くにあったゴミ捨て用のポリバケツから長髪の男が現れ、銀時にアッパーを決めたのだ。

琴里は突然の事に驚きの声を上げ、アッパーを決められた銀時は「グヘッ!」っと地面に激突。

しかし、流石は攘夷戦争を戦い抜いた事もあってか直様起き上がり長髪の男に向けて叫ぶ。

 

 

「何しやがんだヅラッ!! 初登場から親友向けてアッパーとかそれはないんじゃないの!?」

「だからヅラじゃない桂だ! いい加減、俺をそのニックネームで呼ぶのをやめろと何度も言ったはずだ!!」

「.........」

 

 

突然の事に一時呆然とする琴里であったがハッと正気に戻り、恐る恐る長髪の男に話しかける。

 

 

「あの~...桂さん?っで合ってますか?」

「ん? なぜ俺の名を? それにその声...もしやお主...異世界で...」

(!? まさか...この男、一発で私を異世界の住民である事を見抜いた!?)

 

 

長髪の男『桂小太郎』が琴里を見て異世界と言う単語を呟いたのを聞いた琴里はまさか正体がバレてしまったのでないかと内心焦った。

しかし、琴里が思っていた答えとは斜め35度位に違っていた。

 

 

「異世界で究極のガンダムを操る真実の姫か!?」

「.........は?」

 

 

突然の〇ン〇ムネタに琴里は再び呆然とする。

だが桂はそんな呆然とする琴里に気づかず話を進める。

 

 

「まさかこんな所にまでマーズⅠの魔の手が迫っていたとは...なぜ気が付かなかったのだ!!」

「いや、ちょっと? 何言って......」

「だがしかし! ここで会ったが百年目! 俺とジャスティスがいる限り貴様の好きにはさせんぞ!!」

「ちょっとォォォォォォォォォ!!? あの沖田(ドSバカ)と言いこの長髪バカと言い、この世界は人の話を聞かないバカばっかなの!?」

「バカじゃないカツラン・ザラだ!」

 

 

琴里のツッコミに反応する桂だが、それで彼が止まることはない。

 

 

「では始めるぞ! ガンダムファイト!! レディィィィィィィ......!」

「いい加減にしろ」

「ごはぁ!」

 

 

そろそろ鬱陶しいかったのか、銀時が桂の後頭部にキックを決めて暴走を止めた。

桂は後頭部を押さえながらも銀得の方に振り向く。

 

 

「何をするんだ銀時!? 俺はこれから真実の姫とガンプラバトルでレディーゴーしにだな...!」

「うるせーんだよバカ。お前がこれ以上グダグダしてっと話が進まねーんだよ。後、ガンダムネタやるならせめてSEEDに統一させろよ。つうかヅラ、なんでゴミ箱の中に居たんだよ? 攘夷志士やめて長谷川さんと同じく無職に転職したのか?」

「ヅラじゃない桂だ。 真選組の目から逃れる事とこの小説での初登場に備えて今までゴミ箱の中でスタンバッテいたのだ」

「つまりこの話が始まっていた時点で居たのかよ...」

 

 

桂がゴミ箱の中に居た理由を知って銀時は面倒くさそうに呟く。

その様子を見ていた琴里は銀時に話しかける。

 

 

「...ねえ、この桂って人、警察に追われてるようだけど何したのよ?」

「ああ、ヅラはな、簡単に言えやテロリストだ」

「............はいィ!?」

 

 

銀時からのまさかの衝撃の一言にすっとんきょうな声を出す琴里。

そこへ桂が声をかける。

 

 

「そんな言い方は止せ銀時。我らは日の本に真の夜明け迎えるため、日夜活動する攘夷志士であるぞ。...紹介が遅れたな、俺の名は桂小太郎。好物は蕎麦だ」

「なんで蕎麦って言ったのよ。出せって事? 蕎麦出せって事?...五河琴里よ。ちょっと事情があって...」

「いや、言わなくていいぞ琴里殿。其方の事情については概ね聞いていたからな」

「え......?」

 

 

桂の紹介早々のボケにツッコム琴里は事情を説明しようとするが、どうやら桂は琴里の事情について知っている様子。

なぜ会ったばかりの桂が自分の事情を知っているのか、琴里は疑問に思っていると銀時がその答えを言った。

 

 

「...ヅラ、お前この話始まっていた時点でゴミ箱の中に隠れてたんだよね? その時に聞いてたのか?」

「あ!」

「ヅラじゃない桂だ。本当は長谷川さんが去ってから登場するつもりであったが、真選組(カス共)が出てきて更にスタンバイざるを得なかった。...それにしても坂本の奴め、まさか世界を超えて迷惑をかけるとは...奴の底なしのバカっぷりには呆れるな」

「おめえもそのバカの一人なんだけどなバカヅラ」

「バカヅラじゃない桂だ。...それと銀時、まさかお前にそんな趣味があったとは...」

「趣味?...おい、ヅラ。お前まさか...」

 

 

桂のある言葉に嫌な予感を感じた銀時。

そしてそれは現実になった。

 

 

「まさかお前がロリコンだったとは......。お主どのような方法で琴里殿とにゃんにゃん...」

「だから違うつってんだろ! 何? にゃんにゃんって? お前センス古ふりーんだよ! つうか未亡人好きのテメーに言われたくねぇ!」

「未亡人好きではない! 俺は武士らしく人妻あるいは寝取られが好きだ!」

「いや全然武士らしくないんだけどぉ!? むしろとんでもない性癖暴露してるから!!」

 

 

桂の性癖にツッコむ琴里に銀時はある事に気づく。

 

 

「...そういえばヅラ、お前一人か? あのバケモノとは一緒じゃねーのか?」

「バケモノじゃないエリザベスだ。エリザベスなら俺とは別の所に隠れている。今、琴里殿の後ろに...」

「後ろ...?」

 

 

桂が琴里の後方に指をさすと琴里も後ろを振り向く。

そこには......

 

アヒルの様な黄色いクチバシに真っ白な見た目、見たものを吸い込みそうな不思議な目をした、何処かのエジプトの神様か、あるいはオ〇Qに似た見た目をした謎の生物が琴里のすぐ後ろにいた。

 

 

「...ギャアアアアアアアアアアアアア!!? 何このオ〇Qモドキのバケモノォ!!?」

「オ〇Qでもバケモノでもない、エリザベスだ。こやつは坂本が送ってくれたペットで、今では俺の右腕的存在だ」

「ペットォ!? コレが!? 坂本さん何つうもん送ってんのよ!?」

 

 

すぐ後ろに謎の生物がいたことに絶叫して銀時の後ろに隠れる琴里に桂は謎の生物『エリザベス』を紹介する。

エリザベスが坂本が送ったペットであることにツッコミを入れる琴里。

 

 

「.........」

「どうだ、中々可愛らしいだろう? それに加えて...エリザベス?」

「.........」

 

 

エリザベスを紹介する桂であったが、エリザベスから何か異常を感じたのか止まってしまう。

一方エリザベスは吸い込まれそうな目でジッと銀時の後ろに隠れる琴里を見つめていた。

 

 

「...ねえ、なんかあの生き物? ジッとこっちを見てるんだけど何? ニュータイプ的コミュニケーションかなんかなの? 見てて吸い込まれそうなんだけど」

「いや、エリザベスコイツ普段はプラカードでしか会話しねーが、あんな風にガン見なんざしねーよ?...つうかアレ、お前のことを見てんじゃねーのか? なんかしたか?」

「私を? それに何をしたか以前にあんな生き物?とは今日が初対面よ? うちの兄がやってたゲームでアレと似た見た目をしたエジプトの神様なら見たことあるけど、それとは全然違うし...」

(というかあの視線......何かを確認(・・・・・)している?)

 

 

謎の視線を送るエリザベスに琴里と銀時はヒソヒソと話し合うが、桂がエリザベスに話しかける。

 

 

「どうしたエリザベス? 何やら様子がおかしかったが......」

『......! あ、すいません桂さん。ちょっと気になる事があって...』

「気になる事?」

『でも大丈夫です。気のせいでした』

「そうか? ならよいのだが...」

「...本当にプラカードで会話するのね...」

 

 

気に掛ける桂にエリザベスはプラカードで返事する。

その様子を訝しげに見つめる琴里。

琴里は先程のエリザベスの視線が気になり話しかける。

 

 

「ねえ、エリザベスって言ったかしら。さっきの...」

『! 危ない桂さん!!』

「!!」

「「へ?」」

 

 

ドッゴーン!!

 

 

「「ギャアアアアアアアアア!!!?」」

 

 

エリザベスが桂を引っ張り後退すると同時に爆破が起こった。

桂はエリザベスによって無事に済み、琴里は危ない所であったが間一髪で回避し無事であった。

 

 

「な...何よコレェェェェェ!? 一体何が...!」

「これは...」

「...チっ、間一髪で避けられちまったか」

「「『!』」」

 

 

爆破によって生じた爆煙から声が聞こえ、一同は爆煙に目を向ける。

爆煙から人影が現れ、徐々にその姿を表す。

それは先程銀時達と別れた沖田であった。

片手には真選組に支給されているバズーカを持っており、彼の他に真選組隊士らが複数人いた。

先程の爆破も沖田がバズーカで引き起こしたことである。

 

 

「貴様は沖田総悟!」

「旦那と別れて様子を見てりゃ、ノコノコやってくるとわ...飛んで火に入る夏の虫とはこの事だな桂ッ!」

「! エリザベス!」

『これを!』

 

 

沖田が再びバズーカを構えると桂はエリザベスからある物を受け取る。

それは桂が愛用する非常食『んまい棒混浦駄呪(コンポタージュ)』である。

 

 

「んまい棒混浦駄呪(コーンポタージュ)!!」

 

 

桂は直様袋の中のスナック菓子を地面に叩きつける。

叩きつけられたんまい坊は黄色の煙幕を発生させる。

 

 

「チィッ!」

「ちょっ何この煙幕なんか粉っぽい!? それとなんか美味しい匂いが...ゲホッゴホッ!? 変なとこ入ったッ!?」

 

 

んまい坊による煙幕によりバズーカを構えていた沖田は舌打ちをし、琴里はんまい坊の煙幕を吸って咳き込む。

 

 

「フハハハハハハ!! さらばだ幕府の犬共!!」

『あばよカス共!』

「待ちやがれ桂ァアアアアア!!!」

 

 

んまい坊の煙幕を発生させた桂とエリザベスは沖田たちとは反対方向に向けて逃走。

逃走する桂とエリザベスを沖田はたち数名の真選組隊士を率いて追いかける。

次第に煙幕が晴れ、残っているのは琴里一人であった。

 

 

「...あ~、もう最悪。まさかあんなドンパチに巻き込まれるなんて...あれ? そういえば銀さ...ん...は...」

 

 

琴里は桂と沖田のドンパチ騒ぎからいなくなっていた銀時を探すが、すぐさま見つけた。

 

 

上半身が自動販売機に思いっきり突っ込んでいる形で。

 

 

「ぎ、銀さァァァァァァァァァァん!!!?」

 

 

 

 

「あ~クソ、今日は厄日だぜ...」

 

 

現在は夜中になっており、かぶき町も夜の顔を見せている中で、万事屋では愚痴りながら厠から出る銀時。

 

 

「お~い、もう寝たかクソガキ~」

 

 

今日から万事屋で預かる事になった琴里の様子を確認するため銀時は押入れの扉を開ける。

ちなみに琴里が寝る場所は神楽が寝室として使っていた押入れである。

 

 

「...あり?」

 

 

しかし押入れの中には敷かれた布団しかなく琴里の姿は無い。

 

 

「あいつ...まさか...」

 

 

そう言って銀時は天井を見る。

琴里の行方に心当たりがあった。

 

 

「...ったく、しょうがねぇな」

 

 

銀時は軽く息を吐き、頭を掻きながら玄関に向かった。

 

 

 

 

「.........」

 

 

一方、万事屋の屋根上で琴里は一人体育座りをしながらかぶき町の夜景を見ていた。

 

 

「...おにーちゃん...」

 

 

夜景を見ながら琴里は自分がいる世界とは異なる世界にいる家族の名を呟く。

呟く彼女の目には涙が...

 

 

「...こんな所で何をやっているのかなぁ、ガキンチョ」

「!」

 

 

すると体育座りしている琴里の後ろから銀時が声をかける。

声をかけられた琴里はすぐさま目に浮かぶ涙を拭い、銀時の方へ顔を向けた。

 

 

「...別に...今日はただ寝つけが悪いから気分転換にこうして外を見ていただけよ」

「ほお? その割には目が真っ赤になってるが?」

「こ、これは...その...そ、そうよ! 私、ヒノキアレルギーだから、そのせいで目が真っ赤になってるのよ!」

「ヒノキのシーズン、6月でとっくに過ぎてるんだけど」

「...あ......」

 

 

琴里の苦しい理由にツッコム銀時はよっこらせと琴里の隣に座る。

 

 

「ガキンチョのクセしてたくましすぎるなぁっと思ってたら...ずっと我慢してたって訳か」

「.........」

「なあ、お前は家族とは仲は良い方か?」

 

 

銀時は琴里に家族について質問する。

 

 

「家族との仲? まあ、良い方よ。おとーさんやおかーさん、後おにーちゃんも...」

「なるほど、その仲の良いおにーちゃんをガキンチョ的にはもっと〇〇〇ピーな関係になりたいと」

「ぶッ!!」

 

 

銀時に自身の義兄との仲に核心的な発言(下ネタ込み)をされて咳き込む琴里。

琴里は赤面になりながらも銀時に問い詰める。

 

 

「な、なななな何を言って...!」

「いや〜、涙ぐみながらにーちゃんの事を呟いてたからまさかとは思ってたが...その様子だと当たりみてぇだな~ガキんちょ」

「な...! 〜〜〜!!」

 

 

ニヤニヤ顔をする銀時にしてやられた琴里は赤面になってわなわなと震える。

すると...

 

 

ガシ

 

 

「へ?」

 

 

ブゥオン!

 

 

「ギャアアアアアァァァァァァ!!!」

 

 

ゴッシャァァァァァン!!!

 

 

突如、銀時の手首を掴み背負い投げを決める琴里。

突然の事に最初は素っ頓狂な声を出していた銀時は叫びながら万事屋の屋根上から落ちていき、万事屋近くのゴミ捨て場に激突した。

 

 

「......あ」

 

 

羞恥心から一転、正気に戻った琴里は顔を青ざめる。

 

 

「ぎ...銀さァァァァァァァァァァん!!!」

「オイィィィィィィィィ!! 今何時だと思ってるんだ!! 静かにしねぇとケツにタバスコ突っ込ませるぞコラァァァァァァァァ!!

「す、すいません...」

 

 

青ざめた琴里は銀時が落ちていった場所に向けて、今日で何度目ぐらいになるのか叫びを上げていると、

今度は『スナックお登勢』の玄関からお登勢が怒鳴りこんで来た。

お登勢の怒る姿に琴里は叫び声を止め謝罪するのであった。

 

 

こうして琴里が銀時達が住む世界に来てしまった最初の1日は過ぎていくのであった。

 



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四糸乃ウェザーウォーズ篇
第三訓『鉄棒ニモ負ケズ』


今回から新章に入るDATE・MADAO・LIVE。
登場する精霊は一体誰なのか(章タイトルでバレてるけど)
そしてあのキャラもこの小説で登場します。
それではど~ぞ。




琴里が銀時達の世界に来て数日が過ぎた頃。

 

 

「お登勢さーん、こっちのお掃除終わりましたー」

「終わったのかい? そんじゃあ、次はかそこを頼むよ」

「分かりましたー」

 

 

最初は銀時達の世界に慣れるまで苦戦していた琴里だが、それも次第に慣れてきていた。

万事屋に居候の身でお世話になる事になった琴里だが終始お世話になるのも癪なので、

当初は万事屋の手伝いをしていた。

しかし、万事屋にはあまり依頼が来る事はなく、依頼が入るまでは住処を提供してくれたお登勢のお手伝いをしている。

 

 

「ウチの銀時(穀潰し)と違って、わざわざウチの店を手伝ってくれて有難いもんだよ」

「お登勢さんにはお世話になってますから。これはほんのお礼みたいなもんですよ」

「まったく、嬉しいこと言ってくれるもんだよ。あの銀時(バカ)に琴里の爪の垢でも飲ましてやりたいもんだよ」

「マッタクデスヨ。ソレハソウト小娘、ソコガ終ワッタラ今度ハ皿洗イヲヤルンダナ」

「テメェは琴里にばっか手伝わせてないで働けこのアホンダラ!」

「オグスッ!」

 

 

琴里に仕事を押し付けるキャサリンに後頭部を叩くお登勢。

その様子を見て琴里は苦笑をする。

キャサリンは渋々店の掃除する中で、お登勢は琴里にここ最近の事について話しかける

 

 

「そういえば琴里。ここいらの暮らしには慣れてきたかい?」

「まあ...最初は手間取りましたけど、今は慣れてきた感じですね」

「そうかい、そいつはよかったよ。...銀時とはどういった感じだい?」

「銀さんですか?」

 

 

銀時に関する質問をされた琴里は頭を少し掻いて答える。

 

 

「銀さんは...まあ、手の掛かる兄貴みたいな感じ...ですね」

「ほう、手の掛かる兄貴ね...」

「普段から仕事を探さずダラダラするわ、パチンコ行ってくるわ、セクハラ発言してくるわ、酒にあまり強くないクセに吐くまで飲んでくるわでお世話になるどころか逆にお世話するカンジになっちゃって...」

「なるほど。最近、銀時がここで琴里に関して愚痴ってくるのはそういう事だったんだね」

「銀さんが?...ちなみにどういった愚痴で?」

 

 

銀時がお登勢の店で愚痴ってることを聞いて琴里はその内容を聞くことにした。

 

 

「そうさね。やれガキんちょがうるさいだの、色気が無いだの、胸が無いだのって愚痴ってたね」

「ほ~う...あの腐れ天パ、帰ってきたらタワーブリッジの刑ね」

「琴里、アンタの背じゃあ厳しいから、逆エビ固めにしておきな」

 

 

愚痴の内容を聞いて琴里は銀時が帰ってきた際のお仕置きを執行することを決め、

お登勢も止めるどころか一緒にお仕置き内容を考える始末であった。

 

 

「まあでも、アイツも琴里を預かってからは珍しく働いているみたいだし、これも琴里のお陰さね」

「私の...?」

「帰る手段見つかるまではちっとばっかし手の掛かる銀時(アイツ)の事をよろしく頼むよ」

「......ええ、私の目が黒いうちはあのバカ兄貴をキッチリ見張っておきます」

「ふふ、そいつあ頼もしいねえ」

 

 

琴里の言葉にお登勢は笑みを浮かべる。

琴里自身も銀時のだらしなさには世話を掛けているが、なんやかんやで銀時もきちんと琴里を世話している。

この世界で数日過ごしている琴里のとっては銀時はこの世界の兄の様なカンジである。

 

 

ザアアアアアアアア

 

 

「この音...」

「ありゃ、今日もまた雨かい...」

 

 

琴里とお登勢の会話の途中で外から雨が降る音が聞こえてきた

 

 

「お登勢様、只今買い物から戻ってまいりました」

「おう、おかえりたま」

「たまさん、おかえりなさい」

 

 

ちょうどその時、たまが買い物袋を持って帰ってきた。

雨が降ったせいか、たまの頭や服装の肩口が濡れていた。

 

 

「今日もお天気外れて災難だったねたま」

「帰るまでは晴れていたのですが、突然降ってきまして...。ですが、ご安心を。頼まれてた物はちゃんと買ってまいりました」

 

 

たまは買い物袋からある物を取り出し、お登勢に見せた。

それは球体で上半分は赤、下半分は白で彩られており、その赤と白の境目部分に丸いボタンが付いている...

 

 

「この“モンスターボール”で合ってますよね?」

「いやちょっと待てェェェ!!」

 

 

たまが見せたモンスターボールにお登勢は叫んだ。

無論、お登勢はモンスターボールなど頼んでいない。

 

 

「アタシぁモンスターボールなんて頼んでないよォ!! つうかなんでモンスターボールが存在してんだァ!!」

「それはポケモンがこの世界にいるからではないでしょうか? ほら、街中にポケモンが歩いてますし」

「いや、それ天人ですたまさん!!」

 

 

お登勢と琴里のツッコミにたまはモンスターボールを買い物袋に戻した。

 

 

「どうやらまちがって違うものを買ってきてしまいました。申し訳ありませんお登勢様」

「おいおい、大丈夫かい? 頼んどいた傷薬とかはちゃんと買ってきたのかい?」

「傷薬については大丈夫です。ちゃんとこの通り...」

 

 

そう言ってたまは買い物袋からお登勢から頼まれた傷薬を取り出す。

それは紫色でスプレーを形状した...

 

 

「“キズぐすり”は買っておきました」

「いやそれもポケモン用の道具ゥゥゥ!! 何処のフレンドショップに行ってきたんだァァ!!」

「それと琴里様から頼まれたアメも買ってまいりました」

「おいごまかすんじゃねェェェ!!」

「え~と...たまさん、アメはアメでも私が頼んだのチュッパチャップスなんだけど」

「勿論です。ちゃんとチュッパチャップスも買ってまいりました」

 

 

たまは買い物袋から琴里が頼んだチュッパチャップスを取り出す。

それは琴里の好物であるチュッパチャップスであることに琴里も一瞬安堵したが

 

 

「チュッパチャップス“ふしぎなアメ味”です」

「いやそこもォォォォォォ!!? というかふしぎなアメ味って何ィ!?」

「レロレロするとレベルが上がる味です。琴里様が15回レロレロすればオニコドリルに進化出来ます」

「いやオニコドリルって何ィ?! 進化出来る以前にポケモンじゃないから私!! 後、何故にレロレロ?」

 

 

たまのポケモンボケに琴里がツッコミを入れる中、店の奥からキャサリンが顔を出す。

 

 

「お登勢サン、奥ノ掃除ヲ終ワラセテ『メリ』ニャーズ!!」

「...琴里様、たった今ニャースをゲットしました。」

「ニャースはニャースでもドっ汚いニャースだけど...ニックネームとかはどうする?」

「そうですね...では、『ドっ汚いまいどくん』というのはどうでしょうか?」

「『ドっ汚いまいどくん』...まあなんやかんやでスナックの売り上げに貢献している意味ではピッタリだし良いんじゃない?」

「ではこのドっ汚いニャースは『ドっ汚いまいどくん』と言うことで...」

「オイコラ!! ダレガドッ汚イニャースデ『ドっ汚イマイドクン』ダ!! イキナリナニスンダコムスメドモ!!」

「あら、ドっ汚いニャースではなくキャサリン様でしたか」

 

 

ポケモンと間違われてモンスターボールを顔面にぶつけられ、片目に青アザ残るキャサリンにたまは謝罪する。

 

 

「ニャースよりもドっ汚いニャースだったのでゲットしようとしたらまさかドっ汚いキャサリン様だったとは...申し訳ありませんドっ汚いキャサリン様

「オイ、謝ッテルヨウデ謝ッテネーダロコラ!」

「では早速、この買ったばかりのキズぐすりで治療しましょう」

「イヤソレ、ポケモン用ノダカラ効果ネ『プシュ』ギャアアアア!!! 目ガァ!! 目ガァァァァァ!!」

「たった一吹きでこんなに全快するとは、さすがはフレンドショップのキズぐすりは効き目が違いますね」

「いや全快どころか瀕死一歩手前に追い込まれてるし、今フレンドショップのキズぐすりって認めたわよね?」

 

 

琴里達が騒いでいる傍らお登勢は店のテレビに電源を入れていた。

テレビではちょうど昼の天気予報が放送されていた。

 

 

『お昼担当のアナウンサーが体調を崩してしまったので、代わりにお昼の天気予報をお伝えしたいと思いまーす』

「あ、結野アナだ」

 

 

お昼の天気予報の担当が結野アナに気づく琴里。

銀時がファンであり、結野アナが担当する朝の天気予報や占いを必ず視聴するほどである。

琴里も銀時と一緒に天気予報や占いを視聴しているため結野アナの事は知っている。

ちなみに結野アナが担当する『ブラック星座占い』の的中率に琴里は驚いていたが

結野アナのもう一つの顔(・・・・・・)を知るのはそう遅くはない。

 

 

「最近、予報はずれることが多いけど結野アナ調子悪いのかしら」

「はずれると言えば、前にも予報が外れていた頃があったわよね」

「ですが今回は結野アナだけでなく各放送局の予報がはずれ続いていますし、ここ最近の天気も雨続きで異常です」

「つまりアレかい? こいつは俗に言う温暖化の影響ってやつかい?」

「ナラ温暖化対策トシテ、お登勢サンノ出番ヲ減ラシテ代ワリニ私ノ出番ヲ増ヤスナンテドウデスカ?」

「オイ、そりゃあアタシの存在が温暖化って言いたいんかい。つうか何ちゃっかり出番増やそうとしてんだい」

 

 

琴里達が雑談を交わす中、結野アナの天気予報は続く。

 

 

『午後からの天気は晴れ。お出かけに最適な時間になりまーす』

「晴れっつうか今外じゃんじゃん雨降ってんだけど、今回は本当に晴れるんかね?」

「モシマタハズレタラ今度放送局行ッテ慰謝料トシテ一億請求シマショウ」

「いや、キャサリンが行ったら逆に顔面整形失敗罪に猫耳不法所持罪で逮捕されるわよ」

「オイ、ソレワタシノ存在ガ逮捕案件ダト言イテエノカ貧乳小娘」

「琴里様、それは違います。キャサリン様はむしろ伽等(キャラ)失敗罪が適用だと思います」

「ワタシノ存在自体、失敗ダッテカッ!!」

 

 

琴里達がボケやツッコミを交わす中、結野アナの天気予報は終わりが近づいていた。

 

 

『午後の天気は晴れになりますが』

「ハズレロォオオオ!! ハズレテワタシニ一億請求サセロォオオオ!!」

「オイコラ! 何不吉なことを願ってんだい! 本当になったらどうすんだこのバカタレ!」 

『ここで一つ注意がありまーす。それは...』

 

 

 

 

 

「鉄棒でござんす」

 

 

突如、テレビ画面から鉄棒が突き出てきた。

鉄棒はテレビ画面の真ん前に居たキャサリンの顔面に直撃。

 

 

「フォウウウウウウ!!!」

「「キャ、キャサリンンンンンン!?」」

「なんと! キャサリン様の顔面目掛けて鉄棒が...これが噂の3Dテレビっというものなのでしょうか?」

「いや、絶対違う! 鉄棒が突き出てくる3Dテレビなんてありえないから!」

「ありゃ? どうやら違う場所に出てしまったでござんすか?」

『!』

 

 

鉄棒によって画面が壊れたテレビから声が聞こえ一同(キャサリン除く)はテレビに目を向けるとテレビの画面から一人の少女が出てきた。

それは黒の和服を着た可憐な少女であったが一つ普通の人とは違うところがあった。

それは...

 

 

「すいません、銀時様を尋ねに来た“外道丸”ですが」

「お...鬼...?」

 

 

鬼のような角を生やしていることである。

 

 

 

 

「今日も昨日もその一昨日も雨、雨、雨...パンツにこびり付いたウ◯コですかコノヤロー」

 

 

一方、銀時は大江戸公園の休憩場で雨宿りしていた。

居候の身である琴里から買い物を頼まれ後でうるさく言われるのも面倒なので了承し、その帰り道に雨に見舞われた銀時は近くの雨宿りを探し大江戸公園に来ていた。

 

 

「琴里の奴、居候の身なのにすっかり万事屋(うち)を仕切りやがって。店長は俺なのによ...アイツに頼まれて買ったチュッパチャップス、ワサビ塗りたくって食わしてやろうか」

 

 

休憩場のベンチに座り込みながら銀時は未だ降り続く雨空を見上げる。

 

 

「あんなに晴れてやがったのに...結野アナ最近また天気予報調子ワリーけど...まさかまた喧嘩を始めやがったんじゃねーよなあのバカ陰陽師共(・・・・・・)

 

 

最近の雨降り続く天気に銀時は過去に関わったある事件の事を思い出す。

降り続く雨の中、空を見上げていた銀時であったが...

 

 

パシャ パシャ

 

 

「ん...?」

 

 

ふと銀時の背後から何やら水をはじく音が聞こえ振り向く。

 

そこには少女が一人、可愛らしい意匠が施されたレインコートを着て公園内を飛び跳ねていた。

ウサギの耳の様な飾りが付いたフードによって確認できないが、左手にはコミカルなウサギのパペットをはめている。

 

 

「...今時、こんな雨の中を飛び跳ねているなんざ珍しいな」

 

 

そう言う銀時は雨の中を踊る少女に奇妙な感覚を感じた。

奇妙な感覚を感じている銀時には降り続く雨の音もこの時だけは気にならなくなった。

そうして冷たい雨の中を踊る少女に注目していると...

 

 

ずるぺたァァァァァァァあ!

 

 

少女は壮大にコケた。

 

 

少女は最初は頭に、次は腹にと水しぶきを散らして倒れ、その態勢のまま動かなくなってしまった。

ついでに左手にはめていたパペットもコケた拍子に勢いよく飛んで行った。

 

 

「……アレ、頭からいってねぇかおい?」

 

 

怪我人?が目の前にいて、さすがのグータラ侍である銀時も見過ごせず、濡れるのを覚悟して少女の元へ向かう。

少女に近づいた銀時はフードで蔽われていた少女の全貌を見た。

 

年頃は別世界にいると思われる神楽と居候中の琴里と同じか少し下ぐらいで、髪はふわふわで今は拝めない青空の様な色。

精巧な人形と思わせるような美しい少女に銀時はとりあえず休憩場に連れていき、ベンチに仰向けにして様子を見る事にした。

ついでに遠く飛ばされたパペットも回収して。

 

 

「...まるで人形みてぇな子供だな。かぶき町に住んでるようなナリでもねえし、それどころか江戸の奴かどうかも怪しいし...」

「...ん...」

 

 

ベンチに仰向けになって気絶している少女を見て一言呟く銀時だが、そこで少女の瞼がピクリと動く。

気絶していた少女はぱちりと目を覚まし、蒼玉(サファイア)のような瞳を露わにした。

 

 

「お、大丈夫そうだな。怪我はねぇか?」

 

 

目を覚ました少女に声をかける銀時だが、少女は銀時を見るや顔が蒼白となり、小刻みに震えてベンチの後ろ側に隠れてしまった。

 

見ず知らずの大人が声を掛けてしまったのがいけなかったのか、ベンチの後ろに隠れる怯えた少女をどうしたものか考える銀時。

もしこの場面を知り合いや真選組(チンピラ警察)に見られたら通報、あるいは逮捕されるの間違いない。

 

 

「違うからね、銀さんは決してロリコンでもフェミニストでもなからね。これっぽちも...」

「こ、来ないで、くだ、さい...」

「は?」

 

 

何とか誤解を解こうとする銀時だが少女はベンチの後ろに隠れてより一層怯えた様子で言う。

 

 

「いたく、しないで、ください...」

 

 

痛くも何も少女に危害を加えるつもりも毛ほども無く銀時は対応に困っていたが、そこで何かに気づき懐からある物を取り出す。

それは少女が左手に嵌めていたウサギのパペットである。

 

 

「コレ、お前のだろ?」

 

 

パペットを見た少女は目を大きく見開き、取り返そうとするが銀時が怖いのかじりじりと距離を詰めるも中々縮まらない。

そんな少女の様子に銀時は頬を掻きながら、けだるそうにパペットを突き出す。

少女は驚いたように肩を震わせるが銀時の意図を知ったのか、パペットを取り返し同時に左手に装着し直した。

 

そして、少女が付けているパペットが口をパクパクと動き始めた。

 

 

『やっはー、悪いねおにーさん。おかげで助かったよ』

 

 

腹話術なのか、ウサギのパペットは甲高い声で銀時に話しかける。

目の前にいるのになぜ腹話術で話しかけるのか疑問に思った銀時だが、パペットは構わず喋りだす。

 

 

『けどさー、四糸乃をベンチに運ぶ時に、いろんなトコを触ったよね? ぶっちゃけどうだったー?』

「あ? どうだって何が?」

『またまた~とぼけちゃって~。よしのん、知ってんだよ~。おにいさんみたいな人をロリコンって言うんでしょ~? 何かロリコン臭が匂うんだよね~』

「ロリコン臭って何? 加齢臭みたいなもん? つうか銀さんロリコンでもフェミニストでもないからね。 確かに最近ハーメルン(ここ)じゃあ何処ぞの恋人の妹と一緒に居たり、何処ぞのチャイナとできちゃった婚やらかしてるけど、ここの銀さんはノーマルだから。古今万事屋(うち)に居候中の琴里(ガキんちょ)に店長の座を奪われつつあるお兄さんだから......あれ? これじゃあロリコンじゃなくてマダオか?」

 

 

パペットからのロリコン発言に否定する銀時だが、逆に自身がマダオ(既にマダオの様なものだが)と認めている事に疑問を思う。

そんな銀時を見てパペットはケラケラと笑う。

 

 

『あはははは! 面白いおにーさんだね! まあ、一応助けてくれたわけだし、特別にサービスしといてア・ゲ・ル』

「あぁ、そう...」

 

 

ロリコンの毛もない銀時にとってはどうでもいいが、とりあえず逮捕案件になる事はなさそうなので黙っておくことにした。

 

 

「...今度は転ばねえように気を付けておけよ」

『何々? 心配してくれてるの? こう見えて四糸乃()は丈夫だから大丈夫だけど...でも心配してくれてありがとうおにーさん。じゃね~』

 

 

終始ハイテンションなパペットは言いたい事を言うと、少女は踵を返して去って行った。

 

 

「妙なガキだったな...」

 

 

去って行った少女の方向を見て銀時が呟くと、降り続いていた雨が徐々に勢いをなくしやがて雨も止んだ。

 

 

 

 

「はぁ~...」

 

 

買い物袋を持ち万事屋に帰る道中でため息を漏らす銀時。

ため息の原因は居候の琴里に先程の少女のことである。

 

 

「なんか古今ところガキんちょに会う事があるんだけど何? 銀さんはロリホイホイなの? 全然うれしくもねぇよバカヤロー」

 

 

居候の琴里や公園で会った少女など変わった子供に出会うことに愚痴る銀時は万事屋にたどり着く。

 

 

「帰ったぞ~。シャンプーに頼まれたチュッパチャップス十種類、コイツで満足か琴里~」

 

 

玄関を開けて琴里を呼びかける銀時。

そんな銀時を出迎えてきたのは...

 

 

 

 

 

眼前に振り下ろされる鉄棒であった。

 

 

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!?」

 

 

ギリギリのところで後退し、鉄棒の直撃を躱す銀時。

振り下ろされた鉄棒はそのまま玄関床を破壊。

破壊された玄関床に青ざめる銀時はそのまま鉄棒を振り下ろした持ち主を見る。

 

 

「チッ! 躱されたでござんすか」

 

 

鉄棒の持ち主はあからさまに舌打ちをする。

そんな持ち主に銀時は叫ぶ。

 

 

「オイイイイイイイ!! いきなり何しやがるんだ外道丸!?」

「これはこれは、惚けたことを抜かしますか銀時様」

 

 

金棒の持ち主、ある人物の式神でもあり銀時を主と認めている『外道丸』は鉄棒を肩に担ぐ。

 

 

「神楽殿の事からもしやロリコンではっと疑っていましたがまさか本当になってしまうとは...これはクリステル様の為、そして銀時様の式神として主の性癖を修正しなくてはいけやせん」

「いや、修正も何も銀さんロリコンでもねえしつうか修正どころか殺る気(しゅうせい)だったよね!?」

「やれやれ、ご自身がどれだけ罪深いお人なのか自覚してないと...とりあえず四分の三殺しでいかがでしょうか?」

「いかがでしょうか?じゃねぇ!! それほとんど殺されてるし、そんなに銀さん罪深い存在だったの!?」

「何やってるの外道丸さん!?」

 

 

銀時を修正(物理)する気満々の外道丸に後ろから呼び止める琴里。

琴里の呼び止めに外道丸は銀時に鉄棒を構えながら言う。

 

 

「ご安心くだせい。今からこのロリコンに走った主を修正(物理)する所なので」

「イヤだから、私はただ色々あって居候する事になって、別にいやらしい事なんてされてないから!」

「そうそう、銀さん何もいやらしい事なんてしてないから!! こんなチンチクリンでツルペタな魅力もクソもねえチュッパチャップス小娘に手なんか出さないから!!」

「.........外道丸さん、さっきの発言撤回するわ。そこの腐れロリコン天パを殺っちゃって」

「えッ...ちょ、琴里!?」

「はいどーん」

「ギャアアアアアアアアアア!!!!」

 

 

 

 

「なるほど、そんな事情だったんでござんすか」

 

 

万事屋の居間にてソファーに座り客用に出されたせんべいを齧る外道丸は琴里の事情を聞いていた。

 

 

「そうそう。...ところで外道丸さんはどういった事情で万事屋(うち)に? というか外道丸さんって天人?」

「そこらへんは追々説明しやすが...銀時様?」

 

 

外道丸は琴里の隣に座っている銀時の方を向き、チュッパチャップスを口に加えている琴里も銀時の方に向く。

 

 

「.........」

 

 

琴里の隣に座っている銀時はボロボロの姿で白目をむいて気絶している。

 

 

「あら、まだ気絶してるの?」

「たかが鉄棒十発で気絶とはだらしない主でござんす。どうします五河?」

「そうね。目覚め代わりに一発いっとく?」

「あっし的には一発だけじゃなく百発の方がいいと思うでござんす」

「いいわねそれ、採用」

「了解でござんす五河。そんじゃあ...」

「いや鬼かてめぇらァァァァァァァ!!?」

「鬼でござんすが?」

 

 

危うく鉄棒百発の刑が執行されるところで銀時が意識を取り戻した。

意識を取り戻した銀時に琴里が話しかける。

 

 

「目が覚めたようね。いい夢でも見れたかしら銀さん?」

「夢も何も三途の川で溺れかけてたわ!! 小舟漕いでる死神が助けてくれなかったらホント危なかったわ!!」

「残念、そのまま溺れ死ねばよかったのに。というか死神が小舟漕ぐって何処の世界よそれ」

「真顔で言うんじゃねぇよ、本気にしちまうだろうが」

「......」

「...え、何その無言でこっちジッと見つめるの、止めてくんない? ねぇちょっと! 本気じゃないよね!?」

 

 

銀時と琴里が会話を交わす中、その様子を見ながらせんべいを齧る外道丸は呟く。

 

 

「……つかぬ事を申しやすが、お二人はアレですか? 一見仲悪そうに反発し合ってるけど、ちょっとしたシチュエーションに流されてイチャ付き合うお約束的な主人公とヒロインを狙ってるんでござんすか?」

「「狙ってるかぁ!」」

「そこでハモって反発するのもお約束でござんす」

 

 

ハモる銀時と琴里に外道丸が指摘すると、埒があかないので仕方なく銀時は頭を掻いてドカッとソファーに座りなおす。

琴里も仕切り直しとしてソファーに座る。

 

 

「んで、一体何しに来やがったんだ外道丸?」

「その前に...初対面の方もいるので自己紹介させてもらいましょう」

 

 

外道丸は出されたせんべいを食べ終え茶を飲み、一区切りつけて言う。

 

 

「あらためて、幕府に仕える陰陽師一族『結野衆』、その一人である結野クリステル様に仕える式神、外道丸でござんす」

「結野アナが陰陽師っ!?...それに式神って...」

「まあ、信じられねぇが内容だが全部ホントだ」

 

 

外道丸の自己紹介に驚く琴里に銀時が軽く解説する。

 

 

「幕府から江戸守護の任を任されてる陰陽師一族のひとり『結野衆』。そして結野アナはその陰陽師の一人でしかもエリートってわけだ。どうだ結野アナはすごいんだろ? 敬えよ?」

「いや、何で銀さんが威張ってるのよ」

「ちなみにクリステル様が担当している天気予報と占いは全てクリステル様自身が陰陽術を行なっているからござんす」

「......ホント、この世界が何でもアリって事を思い知ったわ...」

 

 

琴里は頭に手を当てて仰ぐ。

仰いでいても何も始まらないのですぐさま琴里は舐め切ったチュッパチャップスの棒を近くのごみ箱に捨て、新たなチュッパチャップスを口に加えて意識を切り替える。

 

 

「...それで外道丸さんが万事屋に来た理由は何?」

万事屋(ウチ)に来たって事は依頼と考えていいのか? また結野アナに送るプレゼント選び? それとも...」

 

 

銀時は懐からある紙きれを差し出す。

それは自身の名前が書かれている結婚届。

 

 

「結野アナから銀さんに送る愛のプレゼント選び? ならこの俺の名前がサインしてる結婚届にしとけ。コレに結野アナがサインすれば俺と言う最高のプレゼントが手に入って、結野アナも俺も名実ともにウィンウィンな関係になってみんなハッピーエンド間違いなぶべぇ!」

「ンな不幸な手紙渡せるわけないでしょ。渡しても誰もハッピーにならないし、ハッピーになってるの貴方の頭の中だけよ」

「そんな物渡すぐらいならゴ〇ブ〇が入ったホイホイを渡した方がまだ良いでござんす」

 

 

アホなことを抜かす銀時を琴里と外道丸がそれぞれの片足で銀時の頭を踏み黙らせる。

踏まれた銀時はそのまま居間のテーブルにメリ込む形で沈黙。

 

 

銀時(バカ)は黙らせたし、改めて本題に入りましょう。」

「では...」

 

 

琴里に催促され外道丸が依頼を告げる。

 

 

「クリステル様を救ってくれた万事屋に晴明様直々の依頼でござんす。もしかしたら江戸滅亡に関わる事になると」

 




明けましておめでとうございます。
デアラ三期も放送を開始し、銀魂もGIGAで連載開始し
執筆がノリノリで進みました。
七罪がアニメで早速登場していますが
こちらの七罪は何時頃に登場するのやら。
出来る限り更新を続け、完結を目指していきますので
どうか応援よろしくお願いします。


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第四訓『陰陽師ニモ負ケズ』

外道丸に続き、あのキャラたちの登場です。


「江戸滅亡に関わるねぇ....」

 

 

外道丸の訪問から翌日の曇天の空の元。

外道丸が依頼の内容はある場所である方から話してくれると言って帰ってしまった為、

銀時と琴里は外出である場所に向かっていた。

 

 

「滅亡も何もウチは毎月赤字続きに滞納しまくりでいつも滅亡の危機だっつぅのに」

「その滅亡って主にどこかの天パが賭け事やたいして飲めないくせに大酒飲みしたりするのが原因だけど...ねえ」

「あ? 何だよ琴里?」

 

 

銀時が愚痴る中、琴里はある事を訪ねる。

 

 

「結野アナに外道丸さん、それに結野衆っていう陰陽師の方々とも知り合いみたいだけど、何のきっかけでそんな人達と知り合ったのよ?」

「あ~、その事?」

 

 

琴里から結野アナとその式神である外道丸、そして結野衆と知り合った経緯を尋ねられ銀時はめんどくさそうに頭を掻きながら答える。

 

 

「まあ、あれだ。実はこんなことがあってだな。サラサラペラペラ」

「サラサラペラペラって言っても何言ってんのか分かんないんだけど」

「何だよ、そこは空気読んで分かった風にしとけよ。そんなんだからおめぇは何時まで経ってもツルペタなんだよ琴里」

「絶対関係ないわよね胸の話は!? それにまだまだ成長期なんだからこれからボッキュボーンになっていくのよ!」

「いやいや、現実を見ようぜ琴里。お前んとこのゲームじゃ大人の琴里(おまえ)が出てきてたがそれでもツルペタだったろ? もう未来は確定したも同然だろ?」

「ツルペタじゃなくて少し位大きさはあったわよ!......いいや、まだよ! ここから先も牛乳を飲み続けていけばいずれ...」

「そ~かい、期待してねぇけど頑張れよ~」

「あ、でも銀さん。 これからいちご牛乳じゃなくて普通の牛乳も用意してくれない? いちご牛乳じゃあ甘過ぎるのよ」

「オマッ!? 最近いちご牛乳の減りが早いなぁと思ってたらお前が飲んでやがったのか!!」

 

 

琴里が好物でもあるいちご牛乳を勝手に飲まれてたことに銀時は問い詰める。

 

 

「テメェ、居候の身でなに人ん家のいちご牛乳飲んでんだ! 返せ! 俺のいちご牛乳返せコラ!」

「いちご牛乳位で騒ぐんじゃないわよ。それに私の成長(主に胸)の糧になってるんだから問題ないでしょ?」

「問題ないでしょ?じゃねぇ! お前にいちご牛乳飲ませるって事はコンクリートにぶち撒けてると同じ意味なんだよ!」

「それ私の胸はコンクリートって言いたいの!? いい加減張った押すわよ腐れロリコン天パ!!」

「アンだとツルペタチュッパチャップス小娘!!」

 

 

仲良く喧嘩?する銀時と琴里。

しかし二人の喧嘩を聞きつけ、周囲にいた人々の視線が集まる。

 

 

「やだなにかしら?」

「見て、あの男あんな女の子を連れてるわ」

「喧嘩みたいだけど...まさか襲う気か?」

「もしかしてロリコン?」

 

 

人々からのな視線や小声にさすがの銀時もやばいと思い焦る。

その隙を琴里が見逃すことなくニヤリと笑い実行する。

 

 

「そういえば、私の清い体をよくも(ゲロで)汚してくれたよね~」

「ブッ!?」

 

 

突如、最悪な出会い(第零訓)をした事について話を振る琴里。

その発言も今の状況では誤解する事間違いなしである。

琴里の発言を聞き周囲から軽蔑な視線が銀時により一層深く刺さる。

冷や汗をダラダラ流す銀時はすぐさま周囲にいる人々の誤解を解こうとする。

 

 

「いやいやいやいや!! 違う違う違うんですぅ!! こいつが言ってる汚したって言うのは...!」

「違うって何よ? あの時、思いっきり私の顔に臭い(ゲロ)のをぶっ掛けてきたクセむぐ」

「これ以上何も言うんじゃねぇッ!! いや言わないでください琴里様ッ!! 三百円挙げるからァァァァァァァァァァ!!」

 

 

琴里の口を塞ぐ銀時であったが時すでに遅し。

周囲からの小声や軽蔑な視線が先程よりも一層深く銀時に突き刺さる。

ついには電話を取り出す人も出てきた。

 

この状況に銀時が出した行動は......

 

 

「マサラタウンにさよならバイバイィィィィィィィィィィ!!!!」

 

 

そのまま琴里を連れ出し超特急でこの場を離れる事であった。

 

 

 

 

「ハァ......ハァ......」

「ここが外道丸さんが言ってた結野衆のお屋敷...幕府からの守護の任をまかされてるみたいだから大きいだろうと予想してたけど...」

 

 

呼吸が荒く両膝に手に当てて前かがみな銀時を他所に

琴里は目的地である結野衆の屋敷である立派な門を見上げていた。

 

 

「...ねえ、門を開けたいんだけど、これってインターホンとか何処に設置されているのかしら銀さん?」

「......いやインターホンどころじゃねぇだろォォォォォォォォ!!! 何てことしてくれてんだデビルチュッパチャップス小娘!!!」

 

 

門を開けようインターホンを探す琴里に銀時は大声でツッコむ。

ツッコまれた琴里は首を傾げながら銀時の方を向く。

 

 

「あら、何を言ってるのかしら。汚した件については間違ったことは言ってないでしょ?」

「イヤ確かに吐いて汚したのは認めるが、あの人だかりであんなこと言われれば確実に俺ぁ幼女を穢したロリコンヤローだって思われちまうじゃねぇかぁッ!!」

「思われるも何も間違っていないでしょ腐れロリコン天パの銀さん」

「誰が腐れロリコン天パだコノヤロー!!」

 

 

先程の公衆でのやり取りで間違いなくロリコン認定されたことに銀時は膝から崩れ落ち地面に手を当てて落ち込んでいた。

 

 

「どーすんだよオイィィ!! 明日から間違いなく周囲に蔑まれた目を向けられるの山の如しだよ!!?」

「ならその状況を解決できる案ならもってるけど、聞きたい?」

「.........とりあえず聞くが、どんな案だよ?」

 

 

琴里からの解決案に不安を覚えながらも一応聞く銀時。

 

 

「要はロリコンだと思われるのが嫌なんでしょ? なら逆に『俺は新社長:五河琴里の万事屋で働くヒラ社員:坂田銀時だ』って宣伝すれば、あくまで私と銀さんは社長と社員の関係って事で落ち着かせれば問題ないでしょ?」

「なるほど! これなら周りからロリコンだと思われず万事解決だな!......ってんなわけねぇだろォォォォォォォォ!!!!」

 

 

琴里からの提案に異議を唱える銀時。

その案は完全に万事屋を乗っ取られる上に社員に降格されてしまうので銀時としてはたまったものではなかった。

 

 

「何よ? 私の案が不服なの?」

「不服も何も不服しかねぇんだけどッ!! なに万事屋(ウチ)を乗っ取てる上になんで居候の身であるお前が社長で俺がヒラ社員になってんだよッ!! どう考えてもおかしいだろッ!!?」

「ふん、いつもグータラで過ごしているマダオな元社長をクビにしないだけでもありがたいと思ってほしいわね。アタシが社長になった暁には今までのグータラで過ごしてた分馬車馬の如く働いてもらうわよ? そうすればその死んだ魚の様な目もマシになるでしょ?」

「ざけんなゴラァッ!! そうなったら俺ぁ別の意味で過労死(死んだ魚の様な目)になること間違えナシじゃねぇか!! 俺ぁ認めねぇぞ!!!」

「...言っとくけど、アタシが社長になる事はお登勢さんも反対しないわよ? 何せお登勢さんから銀さんの事を頼まれたからね」

 

 

琴里の口からお登勢が琴里側に味方していることを聞いて銀時は舌打ちする。

 

 

「チィッ! ババアを味方に付けやがったのか......けどな、俺ぁ連載始まってから長年万事屋銀ちゃんの看板を背負ってるんだ。異世界から迷い込んで来たチュッパチャップス小娘に易々と奪わせねぇよ!」

「はッ! 威張ってられるのも今のうちよ。ここからはアタシが社長のニュー万事屋で天下を取っていくんだから!!」

 

 

万事屋を賭けてのバトルを始めようとしている銀時と琴里。

最早、別のバトルが始まろうとしている両者であったが......

 

 

「......人の屋敷前で何を騒いでいるのでござんすか?」

「「うおッ!?/キャア!?」」

 

 

両者の後ろから声を掛ける外道丸によって中断される。

二人が驚いて後ろを振り向くと外道丸の後方にある屋敷の門はいつの間にか開いていた。

 

 

「門前でギャーギャー騒いでるから開けて見れば......随分と仲がよろしい様で。やっぱり狙っているのでござんすか?」

「「だから狙ってねぇ!!/ない!!」」

「.........さて、仲睦まじい喧嘩は置いといてご案内するので付いて来てくれでござんす」

「おい、何だよ今の間は? 全然違うから。ただ琴里(コイツ)と万事屋を掛けてプロレスかます所だったから。48の技をかます所だったからね?」

「外道丸さん、勘違いしてるけど全然違うから。 これから銀さんにパロ・スペシャル掛ける所だったから。 ジ・エンドで決めるつもりだったからね?」

「はいはい、キン肉マンもウォーズマンも友情が深まっている様なんで、サッサと付いて来てくだせい」

「「だから違うって言ってんだろがァ!!/言ってんでしょうがァ!!」」

 

 

外道丸から仲睦まじい様子だと勘違いされて不服な二人であったが

仕方なく渋々と外道丸の後を追って屋敷の門を通る。

 

屋敷の門を通過すると石造りの道が長く続いていて、その先には大きな屋敷がある。

おそらくあの屋敷が結野衆の本拠地なのであろう。

 

外道丸の案内の元、結野衆の屋敷に向かう二人。

しかし外道丸が「あッ」と何かを思い出すように立ち止まり、後方にいる銀時と琴里に振り向く。

 

 

「そういえば言い忘れていやしたが...」

「何だよ、言い忘れたって? 結野アナのスリーサイズ? 安心しろ、例えスリーサイズが変わろうが俺ぁ未来永劫結野アナのケツの穴を追いか『ドゴォ!!』げぇてぃあ!!」

「何でここでスリーサイズ?...穴を追いかけるってバカなの? 死ぬの?」

 

 

銀時の下ネタに琴里がローキックを右太ももに炸裂し、痛みで右太ももを抱えてうずくまる形で銀時は撃沈した。

痛みでうずくまる銀時に代わって琴里が外道丸に問う。

 

 

「それで言い忘れたって何、外道丸さん?」

「琴里GJっと言いたいところでござんすが...どうやら遅かったでござんす」

 

 

ボフォ!!

 

 

「......へ?」

 

 

外道丸の左右後方に謎の煙が発生した。

突然の事に琴里は呆けた声を上げる中、次第に煙が晴れていくと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには明らかに強面な大鬼達が銀時と琴里を歓迎する様に左右向かい合い形で並んでいた。

 

 

「キャアアアアアアアアアアアアアアア?!!!」

 

 

突然の大鬼達の出現に悲鳴を上げて銀時にしがみ付く琴里。

 

 

「両家を救ってくださった銀時様を結野衆総出で歓迎する予定だったんでござんすが......」

「げげげげげ外道丸さんッ!! あ、アレって......!!」

「ええ、あれらはあっしと同じ結野衆に仕える式神でござんす」

 

 

外道丸の説明に青い顔をする琴里。

ある事情により肝が据わっている琴里でもまだまだ少女でもある。

お化け屋敷に出てくる作り物ではなく本物の物の怪では迫力と怖さも段違いである。

 

怖がる琴里であったが、そこへヤラレっぱなしであった銀時が黙っているはずがなく

 

 

「おやおや~? 何をそんなに怖がっちゃてるのかな琴里~?」

「ぎ、銀さん......」

 

 

黒い笑みを浮かべる銀時に琴里は別の意味で危機感を持つ。

同じドSな所を持つが故の危機感なのか、それは的中し...

 

 

「そんなに怖がるなんてオメェ......もしかしてお化けとか苦手?」

「ンなぁッ!!?」

 

 

自身の苦手なモノを当てられ変な声を出す琴里。

その反応が図星だと気づき、路上での仕返しに銀時は口を開く。

 

 

「まあ、そーだよなぁ~。所詮はツルペタなチュッパチャップス小娘。苦手なモノとか一つや二つもあるもんだよなぁ~」

「だ、誰が苦手ですってぇ!!?」

「ほ~う、じゃあ苦手じゃないと? そんじゃあいっちょ行ってみよーか」

 

 

否定する琴里にドSな笑みを浮かべる銀時はグイグイと背中押して大鬼達に近付けていく。

 

 

「ちょ...待った待った待った! まだ心の準備が出来てなっていうかグイグイ押すのやめなさい! 好きなチュッパチャップスあげるから!!」

「いやいやいや、苦手じゃねぇならイケるだろ? 大丈夫だってほら、夢の島とかに居そうじゃんあの鬼達。主に絶叫系アトラクションとかに」

「居るかァァァァァァァァァァ!! 居たとしても別の意味で子供が絶叫してぬ~べ~先生飛んで来そうだわ! いい加減これ以上近付けると燃やすわよ腐れロリコン天パ!!」

「誰がロリコンだコラ!」

「............やっぱり狙ってるではござんすか」

「「だから狙ってねぇ!!/ない!!」」

 

 

外道丸の呟きに反論する二人であったが仲良く喧嘩?している上か見事にはハモっているため説得力がない。

するとそこへ...

 

 

『儂らなりの歓迎でもてなそうとしたのだが、どうやら怖がらせてしまったようだな』

「「!」」

 

 

突如、男性らしき声が響いた事に喧嘩?していた銀時と琴里も一時中断する。

何やら複数の足音が聞こえそちらの方を向くと

左右に並ぶ鬼達の間から栗色髪の美青年を先頭に複数人の着物を着た如何にも陰陽術らしき集団が現れた。

 

 

「外道丸さん、もしかしてあの先頭に立ってる人が...」

「ええ、あの方が結野衆の頭目にしてクリステル様の兄君『結野清明』様でござんす」

「......」

 

 

外道丸の紹介に先頭に立つ清明が前に出る。

 

 

「何やら初顔の者もいるので改めて名乗ろう...儂は清明。江戸守護の任就く結野衆の頭目じゃ」

「...訳あって今は万事屋の元で働いている五河琴里です」

「お~す、お久しぶりですねお義兄たま。」

 

 

清明が頭目らしく挨拶と紹介をする中、琴里も自己紹介を返し、反対に銀時は気だるそうな声で返事する。

 

 

「誰がお義兄たまじゃ。それにしても...五河っと言ったか。そちの事は外道丸から聞いている。先の歓迎で怖がらせてしまい申し訳ない」

「いえいえ、私もまさかあんな大鬼が出てくるとは思わなくて......でも今はそんなに怖がっていないんで大丈夫です」

「そうか。そう言ってくれるとありがたいが......」

「晴明さん?」

 

 

会話を交わす中、清明がジッとこちらを見てくる事に首を傾げる琴里。

しかしその視線に最近何処か似ていると感じた。

それはこの世界に来てしまった日に桂のペットであるエリザベスから感じた......

 

 

「オイオイ、お義兄たま。ジッと琴里の事を見てるけどよぉ......まさか、そういった趣味(ロリコン)をお持ちで?」

「「ぶっ」」

 

 

答えに行きつく前に銀時からの発言に思わず吹く琴里と清明。

晴明は銀時の発言を即座に否定し弁明する。

 

 

「バっ、バカ者がッ! 貴様ならいざ知らず儂にその様な趣味(ロリコン)を持ち合わせておらぬ! むしろ儂はに妹クリステルを式神通して陰から見守り写真に収める健全な兄じゃ!」

「いや、それ何処が健全な兄ぃ!? 思いっきり式神使って盗撮してますよね!!」

 

 

清明の弁明に余罪が出てきてツッコミを入れる琴里。

銀時はやれやれとした表情を浮かべる。

 

 

「おいおいお義兄たま、まさかロリコンだけじゃなく式神使って盗撮しちゃってたんですかぁ~。結野衆の頭目も堕ちたもんですね~......ところで写真(それ)っていくらっすか? とりあえず貰える分だけ現金でばらん!」

「貴方も堕ちる所まで堕ちてるでござんすよ銀時様。......まさか主だけでなく晴明様もロリコンだったとは、これはクリステル様の式神としてあっしが調きょ...もとい躾けする必要でござんすね」

「いや今、調教と言いかけていなかったか!? それに外道丸、主も気づいている筈じゃ! 五河の...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーははははははは!!!」

 

『!』

 

 

突如、高笑いが響き会話を中断する琴里達。(銀時は外道丸に鉄棒で沈められている)

その高笑いの主に晴明すぐに勘付く。

 

 

「この高笑い、まさか...!」

「そう!! そのまさかよ清明!!」

 

 

今度は声が聞こえた方に一同が振り向くと、結野衆の屋敷に位置する右側の塀の屋根に一人の男性が立っていた。

長い黒髪で左目を隠し、結野衆とは対照的に黒い着物を着て右手に扇子を持つ男性に晴明は叫ぶ。

 

 

「道満!!」

「くくく、堕ちたものよなぁ清明」

 

 

扇子で口を隠しながら清明を嘲笑う『道満』の様子を見て琴里は少し困惑した表情を浮かべながら外道丸に尋ねる。

 

 

「外道丸さん、あの如何にも悪者な人って誰?」

「あのお方は『巳厘野道満』様。結野衆と同じく江戸の守護を任せれている陰陽師一族『巳厘野衆』の頭目でクリステル様の元旦那でござんす」

「元旦那!? え、結野アナって結婚してたの?」

 

 

新たな事実、特に結野アナが結婚してたことに驚いていた琴里に外道丸は説明を続ける。

 

 

「結野衆と巳厘野衆は今はお隣さんでございますが、昔は平安の頃から犬猿の仲でして......色々あってクリステル様と道満様は結婚しやしたが離婚して、その後も色々ありましたが銀時様たちのお陰で和解したのでござんす」

「いや、色々と端折りすぎでしょ!! むしろその色々が気になるんだけど!!」

「そこらへんは面倒なので詳しく知りたかったら原作32巻と33巻を読むでござんす」

「ここでまさかの原作宣伝!? どんだけやる気なのよ!!」

 

 

外道丸の宣伝にツッコミを入れる琴里に構わず晴明と道満の会話は続いていた。

 

 

「まさかお主が盗撮だけでなくロリコンにまで成り下がりその上、両家を救った者達を満足に歓迎できてないとは......情けないものだなぁ晴明」

「何だと、道満!」

「巳厘野家なら、客人を怖がらせることなく満足度満点間違えナシの歓迎をする事が出来る!! 見るがよい晴明!! これが巳厘野家の華麗なる歓迎だァあああああ!!!」

 

 

そう言って道満は陰陽術を駆使し、召喚術を発動する。

 

するとドロンと魑魅魍魎の類である式神が空を舞いながら召喚される。

 

 

「いやどっからどう見ても魑魅魍魎の類しか出てないし、華麗どころかほぼ晴明さんと同レベルなんだけど!!」

「何ィ!?」

 

 

召喚されたのが魑魅魍魎の類であることにツッコむ琴里に道満はショックを受けている様子。

道満の失敗に今度は清明がせせら笑う。

 

 

「失敗したな道満!! 華麗と言う言葉をもう一度漢字辞典を引いて調べてくるがいい!!」

「晴明ぃい!! 貴様ァあ!!」

「儂が華麗と言う意味を見せてやろう!! 見るがいい、これが結野衆の超華麗なる歓迎ォおおおおおお!!!」

 

 

今度は清明が陰陽術で式神を召喚する。

召喚されたのは大鬼や魑魅魍魎の類ではなく美しく幻想的な鳥が二頭で、琴里達の上空を華麗に舞っている。

その光景を見て道満も負けてはいられなかった。

 

 

「晴明ィィィィ!! おのれェェェ、貴様には負けんぞぉ!! 見よ!! 超絶華麗なる俺の歓迎をを!!」

「片腹痛いわ道満ん!! 見よ!! 超絶スーパーハイパー華麗なる儂の歓迎をを!!」

「何のォォォ!! 俺の超絶スーパーハイパーウルトラ華麗なる俺の歓迎がァァァァ!!」

「まだまだァァァ!! 儂の超絶スーパーハイパーウルトラグレート華麗なる儂の歓迎がァァァァ!!」

 

 

もはや銀時達を歓迎するのではなく、どちらの歓迎が上なのか張り合う晴明と道満。

二人を中心に召喚された式神が飛び交う中、その光景をほったらかされている琴里は呆れた表情を浮かべる中、

 

いつの間にか沈められていた銀時も復活し、張り合う二人の光景を見て呟く。

 

 

「おいおい、和解してもまだ喧嘩続いてんのかよ。飽きないもんかねぇ」

「もはや両家の中ではお約束的なものになってきやしたからね、結野衆や巳厘野衆にとってはもはや日常茶飯事でござんす」

「......ねえ外道丸さん、アレっていつまで続くの?」

「そうでござんすね......ああなったら一時間は掛かるかと」

 

 

外道丸からの発言を聞いて銀時と琴里は死んだ魚の様な目をして結野衆の屋敷に向かう。

 

 

「「先に行って待ってるわ/待つことにするわ」」

「それは良いでござんすが......今の発言のハモリといい、その目といい...」

「「だから狙ってねぇって言ってんだろ!!/ないって言ってんでしょ!!」」

「......まだ、言ってないでござんすが?」

「「.........」」

 

 

張り合う晴明と道満を他所に屋敷に入る銀時達であった。

 

 

 

 

「待たせてしまってすまなんだ、これは待たせてしまった詫びじゃ」

 

 

現在、銀時と琴里、外道丸は結野衆の屋敷内のとある和室で晴明と対面していた。

 

あの後、晴明と道満の張り合いは一時間後銀時達がいなくなってしまった事に気づき中断する形で収束した。

張り合っていた道満は巳厘野家の屋敷に戻った為、此処にはいない。

 

晴明は待たせてしまった詫びとして右手でフィンガースナップをすると、ドロンと銀時と琴里の目の前にご馳走が現れた。

 

 

「!!」

「よかったら酒も出すが、どうする?」

「なら酒はいちご牛乳割りでお願いしま~すお義兄たま」

「だからお義兄たまではないと言ってるじゃろ」

 

 

突如ご馳走が現れた事に驚く琴里とは対照的に、一度晴明の術を見ていた銀時は気軽に酒を頼んでいた。

 

 

「何なのよコレ......指パッチンでご馳走が出てくるなんて、顕現装置(リアライザ)でも無理だわ......この世界に来て色々と常識壊されてきた私もそろそろ頭がパンクしそう...」

「さっきから分かんねえこと口走ってけど、こんなのまだまだ序の口みてぇなもんだからな」

「何やら気分が優れぬ様子でござんすね。仕方ない、この限定チュッパチャップス付きデラックスキッズプレートはあっしが味見を」

「頭パンクしそうだったけど気のせいだったわ! と言うことでこのデラックスプレートもチュッパチャップスもいただくわ!」

「......現金なガキんちょだなぁ、誰に似たんやら」

「そちに似たのではないのか?」

 

 

結野衆の屋敷に来てから驚きと衝撃の連続で若干参っていた琴里だが、好物のデラックスプレート(限定チュッパチャップス付き)を涎垂らす外道丸に奪われるのを阻止する為に食べる事に。

琴里と外道丸のご馳走争奪戦を注文した酒(いちご牛乳割り)を片手で飲む銀時と晴明は見ながら早速本題である依頼について話す。

 

 

「...んで、お義兄たま。ご依頼についてですが江戸滅亡ってえのはどういう意味で? ちなみに報酬はこの婚姻届に結野アナの名前を書いてくれればOKなんで」

「たわけが、何がOKじゃ.........お主はここ最近の異常気象は知っているな?」

「ああ、最近は雨ばっかな天気の事だな.........確認だが、結野衆と巳厘野衆(おたくら)がまた争っているって事はねえよな?」

 

 

晴明から雨続きの異常気象について聞かれ銀時は先の張り合いを振り返りある可能性を疑っていた。

 

銀時達万事屋は結野クリステルと接触したのを機に結野衆と巳厘野衆によるお天気戦争に関わった。

呪法を使う戦いは天気さえも自在に変えてしまう戦いであったが、最終的には両家が争う切っ掛けとなったある鬼神を結野衆と巳厘野衆が協力して銀時達に力添えして討伐した事で両家は和解した。

 

しかし雨続きの異常気象を見て銀時はある可能性が思い浮かんだ。

それは結野衆と巳厘野衆が再び呪法を使ったお天気戦争を始めている可能性である。

結野衆と巳厘野衆は和解し、晴明と道満の仲も先の張り合いを見て良好でありその可能性は低いが、

天気を晴れから雨に変える呪法合戦を直接目にしている銀時にとっては無視できない可能性でもあるので疑っているのだ。

 

晴明も銀時の真意に気づいており首を横に振って否定する。

 

 

「それはないな。結野衆と巳厘野衆も先の呪法合戦で完全に和解し争いごとも無くなった。それに呪法で天気を変えるにしても複数人の陰陽師がいなければ出来ない事じゃ。もしそのような事をやるとしたら必ず結野衆と巳厘野衆が気づく筈じゃ」

「だが、そんなことも起きてないっと......って事は人の手で起こしているって線はないって事か」

「その通りじゃ。......残る可能性は

 

 

 

 

 

「御頭ァァァァァ!!!」

『!!』

 

 

話し合いの最中、結野衆の陰陽師の一人が襖を開けて駆け込んでくる。

その表情は何か焦りを感じていた。

駆け込んできた陰陽師の表情を見て晴明と銀時は悟る。

 

 

「おいおい、お義兄たまこいつぁ...」

「まさか...チィ!」

 

 

晴明が先程の陰陽師と共に急ぎ和室を出ると銀時も晴明の後を追う。

 

 

「ちょ...銀さんに晴明さん!! 何処に行くのよ!!」

 

 

外道丸とご馳走争奪戦を繰り広げていた琴里も二人の後を追う。

琴里が後を追っていく中、晴明がある和室の入っていくと後から銀時も入っていく。

 

 

「な、何だとぉ!!」

「おいおい、こいつぁ...!!」

 

 

和室から驚愕的な声が聞こえ、琴里は向こうではただならぬ事態になっていることを感じた。

 

 

「銀さん! 晴明さん! 一体何が...」

 

 

何が起こっているのか知る為、琴里も和室に入る。

そこで目にしたのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『最近予報外しちゃってごめんなさーい。気持ちを切り替えて昼からの天気予報をお伝えしたいと思いまーす』

 

「結野アナァァァァ!! ヤベーよ、録画してねーよ俺!! 今からバーさんに電話して頼んでも間に合わねぇ!!」

「何故じゃあ!! 何故また昼の天気予報にクリステルが出ておるぅ!!」

「御頭、それが予定されてたお天気お姉さんが昨日からの風邪が悪化したみたいで」

「それよりもお義兄たま、早く録画しねぇと!!」

「そうじゃ!! はやくDVDに録画を!! 後、誰がお義兄たまじゃ!!」

「............」

 

 

お天気お姉さんである結野アナが昼の天気予報に出ている事に騒ぐ銀時と晴明ら結野衆。

そんな彼らを見て琴里はジト目で呆然としていた。

そんな琴里を他所に銀時と晴明は結野アナの天気予報を録画しようとするが

 

 

「それが御頭、DVDの容量がアベンジャーズとスパイダーマンでパンパンです!」

「消せェェェェ!! アベンジャーズ消せぇ!! もう何回も見たし今月で新作公開するから!!」

「いやでもお義兄たま、今月で新作出るからこそ残しといたほうが良いんじゃね?」

「あ...それもそうか。ならスパイダーマン...いやでもアベンジャーズ...いや、やっぱスパイダーマン!! スパイダーマンのヒロインの所だけを消せ!! あの腹が立つ場面を!!」

 

 

銀時と晴明が録画を急いでいる中、結野アナの天気予報が始まるとしていた。

 

 

『それではいきます』

 

「お義兄たまァァ!! 予報始まっちまうぞォォォ!!」

「おいィィィ貴様らァァァァ!! 五段祈祷法の準備は出来てるかァァァァァ!!」

 

 

晴明が掛け声と共に屋敷の庭に出ると、そこには残る結野衆の陰陽師たちが五段祈祷法の準備を整えていた。

 

ちなみに五段祈祷法については原作三十三巻に解説が載っているので、そこから知ってほしい。

決して作者本人が面倒だから

 

 

「聞き逃すなよ貴様らァァァ!! なんとしてもクリステルの予報を当てさせるんじゃァァァァ!! 聞いた瞬間祈れよ!! 間髪入れずに祈れよ!!」

 

 

晴明が陰陽師たちに気合を入れていると結野アナが昼の天気を告げる。

 

 

『今日の昼からの天気は晴れです』

 

『晴れろォオオオオオオオオ!!!』

 

「............何これ?」

 

 

結野アナが告げた天気を当てようと両腕を曇空に向けて上げ、全力で祈る晴明ら結野衆。

その様子をジト目で傍観していた琴里が呟くと、同じく傍観していた外道丸が解説する。

 

 

「これも結野衆の日課でござんす。ああしてクリステル様の天気予報を五段祈祷法による祈りをもって全力で応援しているでござんす」

 

『この思い天に届けェェェェェェ!!!』

 

「応援って...こんな感じで一族あげて毎日応援してるの? 晴明さん、妹萌えどころか妹さん燃やしそうな勢いなんだけど.........ところで銀さんは?」

「銀時様なら既に結野衆の一員になっちゃってるでござんす」

 

 

琴里が銀時について尋ねると外道丸がある方向に指をさす。

指さす先には、結野衆の一員的な感じで仲間入りし祈る銀時の姿が

 

 

「ねえ、さっきまで疑ってた人が何であんな事出来るの? 何で違和感なく自然に溶け込んでるの?」

「銀時様もクリステル様のファンでござんすから、結野衆とはクリステル様に対してのベクトルが同じだからでございましょう」

「......要はバカだからってことね」

 

 

呆れる琴里と外道丸が結野衆の応援を傍観していると変化が

 

 

「!!」

「始まったでござんすか...」

 

 

それは結野衆の隣の屋敷から光の柱が曇天に向かって出現したのだ。

突如、光の柱の出現に琴里は眩しさとともに驚いていたが、一方外道丸はその光の柱を知っているのか特に眩しさも感じていなかった。

光の柱が出現したことに驚いていたが、それが現れた場所に琴里は外道丸から教えられていた。

 

 

「あそこって...巳厘野家の屋敷!」

「道満様率いる巳厘野衆も五段祈祷法を始めた様でござんすね」

「始めたって......もしかして巳厘野衆も結野アナを応援に?」

「そうでござんす。かつて争っていた両家も今やクリステル様を応援していく仲になったでござんすが...」

 

 

外道丸がそう言っていると巳厘野衆の屋敷からあの男の声が聞こえてくる。

 

 

「ははははははは!! どうした晴明!! 貴様のクリステルへの応援はその程度かァ!!」

「道満!!」

 

 

道満の挑発に反応する晴明。

そのまま道満は挑発を続ける。

 

 

「今日の応援呪法合戦は我ら巳厘野衆が頂くぞ晴明ィ!!」

「そうはいかんぞ道満!! 者どもォォォ、奴らの呪法に負けるなァァァァ!!」

 

 

道満の挑発の触発され、晴明ら結野衆も曇天に向けて光の柱を発生させる。

結野衆と巳厘野衆が発生させた二つの光の柱はぶつかり合いながら曇天の空に向かっていく。

 

 

「道満んんん、儂らの超絶応援呪法が上じゃァァァァ!!」

「まだだ晴明ィィィ!! 我らの超絶ウルトラ応援呪法が上だァァァァ!!」

「それがどうしたァァァ!! 儂らの超絶ウルトラスーパー応援呪法がァァァァ!!」

「無駄無駄無駄ァァァ!! 我らの超絶ウルトラスーパーハイパー応援呪法がァァァァ!!」

「オラオラオラオラァァァ!! 儂らの超絶ウルトラスーパーハイパーメガトン応援呪法がァァァァ!!」

 

「.........この応援呪法合戦、さっきの張り合いと同レベルでしょ」

「そうでござんす。毎日毎日あのように張り合っていてクリステル様も苦笑していやしたが......そろそろ決着でござんすね」

 

 

先の歓迎での張り合いと同レベルなやり取りをする晴明と道満に呆れる琴里であったが、外道丸はそろそろ決着が付くと発言。

その発言通りにぶつかり合っていた二つの光の柱は曇天の空の中に入っていくと、一瞬曇天の空に光が弾けた。

その後に曇天の空に変化が起きる。

 

曇天だった空に太陽に光が射し、次第に晴れていく。

そして最終的には快晴に至った。

 

 

応援呪法合戦による天気の変化に琴里は驚愕していた。

 

 

「す...すごい......これが陰陽師の力...!」

「ええ、ここまでは良いでござんす......ここまではでござんすが......」

「え......それって」

 

 

どういう意味よっと質問しようとした琴里であったがそれは出来なかった。

 

 

ウ~!! ウ~!! ウ~!!

 

「!!」

「...どうやら来ましたね」

 

 

突然、結野衆と巳厘野衆の屋敷全体に鳴り響く警報に緊張が走る琴里と対象的に外道丸は落ち着いた雰囲気である。

その様子に琴里は外道丸に問い出す。

 

 

「外道丸さん、この警報は一体?」

「これは江戸に何かしらの異常を伝える『亜瑠楚九(あるそっく)』の術でござんす」

「......なんかどっかの警備会社の様な名前だけど...それは置いとくとして、異常を知らせるって...」

「その異常、もう起こってるでござんす」

「え!?」

 

 

外道丸はそう言って快晴の空を見上げると琴里も吊られて空を見上げる。

すると快晴な空に変化が

 

快晴だった空に曇り空が現れ、次第に太陽が隠れてしまう。

 

再び変わる天気に結野衆と巳厘野衆は気を引き締める。

 

 

「御頭、これは...!」

「うむ......来たようじゃな」

「道満様!」

「分かっている! 今回は負けんぞ!」

 

 

結野衆と巳厘野衆の陰陽師達は事態に対処する準備を始める中、置いてけぼりの銀時が尋ねる。

 

 

「おいおいお義兄たま、こいつァ...」

「すまんが説明している暇はない!! 者ども、もう一度五段祈祷法を始めるぞ!!」

「お前たち!! 結野衆に後れを取るなよ!!」

 

 

再び五段祈祷法によって結野衆、巳厘野衆ら両家が二つの光の柱を発生し、曇天に染まろうとしている空に向かって昇っていく。

二つの光の柱が曇天に染まろうとする空に到達すると、何か強大な力(・・・・)とぶつかり合う。

 

 

『晴れろォォォォォォォォォォ!!!!』

 

 

結野衆、巳厘野衆は五段祈祷法をもって全力で晴れにしようと両腕を空に向けて上げ叫ぶ。

しかし、二つの光の柱にぶつかりながらもその強大な力は空を曇天に変えていく。

 

 

「お、御頭ァァァァ!! ダメです、ビクともしていません!!」

「諦めるなァァァァァ!! 何としてもクリステルの予報を当てさせるんじゃァァァァァァ!!」

「道満様ァァァァ!! これ以上はもう...!!」

「黙れェェェェ!! 何が何でも晴れにするのだァァァァァ!!」

 

 

結野衆、巳厘野衆が五段祈祷法で晴れにしようと必死に奮闘する。

 

 

『晴れろォォォォォォォォォォ!!!』

 

 

両家の叫びと共に二つの光の柱は先程よりも大きくなり空を曇天に染める強大な力とぶつかる。

三つの力によるぶつかりは空一面を閃光で満たすがそれも一瞬。

閃光が消えると、残ったのは曇天の空と

 

 

「ハァ、ハァ......ど、どうじゃ?」

「ゼェ、ゼェ......や、やったか?」

 

 

力を出し切って息を吐く結野衆(ついでに銀時)と巳厘野衆、その様子と傍観する琴里と外道丸だけであった。

晴明と道満ら陰陽師たちは曇天の空を見上げる。

 

しかし.........

 

 

ポタ

 

 

庭に一滴の水が曇天の空から落ちる。

 

 

ポッ ポッ ポッ

 

 

次第に一滴の水が複数落ちていき

 

 

ザアアアアアアアア

 

 

やがて雨へと変わった。

 

 

「また......駄目だったか......」

 

 

晴明は雨に濡れながら無念の表情を浮かべ曇天の空を見上げる

 

 

「く...クソォォォォォォォォ!!」

 

 

道満も濡れながら悔しさと無念な表情を浮かべ曇天の空に向かって叫ぶ。

 

 

ザアアアアアアアアアア

 

 

しかしただ無情に雨が結野衆と巳厘野衆の陰陽師達を濡らしていくだけであった。

 

 

 

 

呪法合戦から数分後。

 

結野衆と巳厘野衆の陰陽師たちはそれぞれの屋敷に戻り、銀時達も先程の和室に晴明と共に居座っていた。

晴明は先程の呪法合戦で消耗してたが、数分経って回復していた。

しかし表情は暗い。

 

 

「......見ていた通り、ここ最近の雨続きに対し、結野と巳厘野が協力してクリステルの予報を当てさせようともこのざまじゃ」

「晴明さん......原因はわかっているの?」

「原因だが...前に言った可能性について戻るが、このような事を起こせられるのは人の者ではないとしたら残るは人外...つまりは化生しかいない......そしてこの様な事を可能とする存在に儂と道満は心当たりがある」

「その心当たりって?」

「......千年前、京の空を雨雲で人々を苦しめ、結野衆と巳厘野衆の誕生にも関わった鬼神『闇天丸』じゃ」

 

 

晴明の口から語られる原因。

だがその原因と思われる鬼神は既に存在しない事は外道丸から教えられた琴里は知っている。

 

 

「闇天丸......でもその鬼神は銀さんや結野衆と巳厘野衆の手で討たれたはずでしょ?」

「そうじゃ、闇天丸は万事屋と共に結野衆と巳厘野衆が協力して討ち取った......だが、現にこの様に雨が降り続いている。...この現象を見て儂と道満はある仮説に思い至ったのじゃ」

「それって......まさか」

 

 

琴里もその仮説に思い至ると、晴明は顔を縦に振り肯定する。

 

 

「そうじゃ、この江戸に...闇天丸に次ぐ存在......『二代目闇天丸』が現れたと言うことじゃ」

 

 

 

 

 

「よぉはよぉ~、その二代目闇天丸ッつぅ奴をぶっ殺せばいいって事だろォ~、お兄たま~」

「.........あの、銀さん?」

 

 

晴明と道満の仮説を聞く中、銀時は相当な荒みっぷりにと血走った目で返事する。

そんな銀時の様子に琴里は顔を引きつる。

 

銀時がこの様になった原因は先の呪法合戦の結果によるものである。

毎朝、結野アナの天気予報や占いを見るほどファンである銀時にとっては彼女の天気予報をハズレさせる行為は許されないのだから。

 

そんな荒んでいる銀時を落ち着かせようとする琴里だが

 

 

「銀さん...出来れば落ち着いてほしいんだけど...」

「あァん? 何言ってんだよ琴里ィ、銀さんはとォ~ても冷静だよォ? 今頭の中でその吾妻丸をどんな感じで四分の三殺しの刑にしてやろうか考えていたところだからよォ」

「吾妻丸じゃなくて闇天丸だし、四分の三殺しってそれほとんど殺っちゃてるからね?......ダメだ、異常じゃない荒みっぷり加え目が血走ってるわ...」

「まあ、気持ちはわからないでござんすよ」

「外道丸さん...!」

 

 

銀時の荒みっぷりに困る琴里に外道丸が会話に加わる。

助け船が来たかと琴里は思ったが

 

 

「クリステル様の予報をハズされる事にハラが立っていたので、良かったらあっしもその刑罰に参加しても良いでござんすか?」

「よォし外道丸、今回はテメェの外道っぷりを存分に発揮しな。俺が許可する」

「御意でござんす銀時様」

「逃げてェェェェェェ!! 此処に最悪のドS同士が手を組んだわよォォォォォ!!」

 

 

銀時(ドS)外道丸(ドS)が手を組む所を見て琴里は現在雨を降らす存在に警告と言う叫びを上げる。

そんな様子を見ていた晴明はごほんと咳払いし会話を続ける。

 

 

「...気持ちはわかるが話を続けるぞ.........二代目闇天丸が存在することを知った儂と道満は結野衆と巳厘野衆と共に今も躍起になって捜索をしてるのじゃが...」

「......まだ、見つかっていないって事?」

 

 

琴里の答えに晴明はコクリと頷く。

未だに見つかっていないという晴明の答えに疑問を覚える銀時。

 

 

「見つかっていねぇって......そりゃあどういう事なんだよ? ちゃんと股先からつま先まで穴が開くほど探したのかよお兄たま?」

「だからお兄たまではない......どうやらこの振っている雨が原因じゃ」

「雨がだァ? どういう事だよ?」

「この雨はどうやら霊力で出来ていて、二代目闇天丸が出現すると共に降ってくるため大まかな場所は特定出来ても、その正確な位置を特定することが困難なんじゃ」

 

 

晴明の説明を聞いて今度は琴里が二代目闇天丸の場所を問う。

 

 

「晴明さん、その特定してる大まかな場所って一体何処なの?」

「......おぬしらがよく知る場所じゃ。今日の雨降りの際もそこに出現したのも確認した」

「...おいおい、それって」

 

 

勘付いた銀時に晴明は二代目闇天丸が出現した場所を告げる。

 

 

「江戸の町『かぶき町』。二代目闇天丸はそこに潜んでいる」




デアラ三期は今月で最終回を迎えましたがいい作品でした。
何時頃になるかと思いますが四期に期待です。
銀魂も漫画はアプリで続きが配信される様で
気長に原作を読み返したり、アニメを見たりなどしてますが
やっぱり銀魂は面白いの一言。
次回も不定期ですが出来る限り早く更新出来る様にしたいと思います。


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