白猫 -クロトラinバレンタイン- (RASN_Pixiv1本になります)
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白猫 -クロトラinバレンタイン-

ここは飛行島、冒険家が住み着いたり等と池に湖の精がいたり実は鎧が隠されていたり地下があったりと謎の多い飛ぶ島である。

 

そんな飛行島のとある草っぱらに赤髪の少年のRASNが寝っ転がっていた、一応主人公であり二回目の強化を心待ちにしてたりしている。

 

「やっほー!RASN君ーお邪魔するよー?」

 

「…?!」

 

「やぁやぁ、お久し振りだねーRASN。」

 

そんな彼の元にショコラの国のアーモンドピークとスィー島の魔物であるデザートンが姿を現したのであった。

 

「天気はいいけどこんな寒い中で寝ちゃったら風邪引いちゃうよー?」

 

「というか君はいつも半袖だけど寒くはないのかいー?」

 

「…!(フルフル)…?」

 

「そっかー…んで何で僕達がここに来たかって?」

 

「…!」

 

「それはねー…バレンタインデーだからでーす、はいアーモンドピーク特製のアーモンド○ークよー?」

 

アーモンドピークがそう言うとRASNの手のひらにアーモンドピー○の箱を置いたのであった。

 

「…?」

 

「まだバレンタインじゃない…?まぁそれは別にいいんだよ。」

 

「…?」

 

「え?それにどうしてアーモ○ドピークって感じかって?大人の事情だよ?」

 

「…。」

 

「それはともかくとして…はい、僕からもあげるよー。」

 

デザートンはそう言うと腹に差し込んでいる箱を開いてチョコバーを一本取り出したのであった。

 

「…!」

 

「礼には及ばないよ、シェアすることが幸せって教えられたからね…ほら?」

 

「あー…私はちょっとね?体系的なのが…ね?」

 

「そー?それじゃ僕たちだけで楽しんじゃうかな。」

 

「…!」

 

そうしてデザートンとRASNは○ーモンドピークとチョコバーを分けあったのであった。

 

「うーん…やっぱりいいね、こういうの。」

 

「…!…?!」

 

「えっ?!どうしたのRASN!?」

 

二つの菓子を分けあった後RASNは腹を抱えて踞ったのであった、そして何故かシュルシュルとRASNの体から煙が立ち込め始めていたのであった。

 

「わぁー?!なんだなんだー!?」

 

「けほっけほっ!RASNー大丈夫ー?」

 

煙は立っている二人の視界を塞いでいた、そして暫くすると煙は晴れたのであった。

 

「ようやく晴れたか…けふっ…」

 

「そうみたいねー…って、あれ?RASNは…?」

 

「けふんっ!あれー?いないねー?」

 

二人が辺りを見渡してもRASNの姿は見当たらなかったのであった。

 

「どこかしらー…あらっ?これってRASNの服?」

 

アーモンドピークが一歩歩を進めようとしたら足先にRASNの服がぶつかったのであった。

 

「何で服が?」

 

そして足にぶつかった服をピーク(アーモンドピークの略称でお願いします。)は拾い上げたのであった、するとポロっと服から何かが出てきたのであった。

 

「…ん?何か落ちたかい?」

 

「何かしらー?…えっ?猫?」

 

二人が足元を見てみるとそこには黒色の毛に赤色の毛が少し入り混じった様な毛色の子猫が倒れていたのであった。

 

「えっと…まさかRASN?」

 

「いや…赤いのはRASNの色かもしれないけど黒が大部分を占めているよ?」

 

デザートンがそう言う最中ピークは黒い猫を拾い上げたのであった。

 

「そうだけど…とりあえず起こしてみましょうか、おーい起きてー?」

 

ピークはゆさゆさと揺らし、そして体も揺れて揺れる物も揺れているのであった。

 

「…?」

 

すると揺らされてる黒い猫はパチクリと青色の眼を覚ましたのであった。

 

「おー眼を覚ましたのかい、よかったねー。」

 

「そうだね、えーっとよいしょっと。」

 

そうしてピークは黒い猫を下ろし、黒い猫は少し不馴れそうな足使いで立ったのであった。

 

「んーっと…にににゃにゃっにいにゃににゅにゃ?」

 

するとピークは膝を曲げて目線の高さを同じにするとにゃにゃっとし始めたのであった。

 

「えーっと…何してるんだい?」

 

「猫語で話したらどうにかなるかなって。」

 

だが黒い猫は首を傾げて眼を細めていたのであった。

 

「…分かんないみたいだね。」

 

「えっー…それじゃ普通にやってみようかな、んーっと君は誰かな?」

 

「…!」

 

そうして再度は猫語ではなく普通に喋ったのであった、すると黒い猫はRASNの服をぐいぐいと爪で引っ掻けたのであった。

 

「それにご執心ってことはやっぱRASNなのかな?」

 

「…!!」

 

デザートンの発言に黒い猫となったRASNは頷いたのであった。

 

「でもどうしてこんな…?もしかしてあのお菓子が原因かな?」

 

「んー、どうしてそうなったのかはともかくとして、どうしようか戻し方とか分かんないんだけどなー」

 

「…それじゃ私に少し考えがあるかも!」

 

ピークがそう言うとRASNの前で指で渦巻きを描き始めた。

 

「コリグハシカオイマアー…コリグハシカオイマアー…えいっ!」

 

そして謎の呪詛のようのを呟き鼻をトンと押すとボフンと煙が立ったが何も起こらなかった。

 

「ありゃー…失敗かー」

 

「駄目だったのかいー?」

 

「えぇ、一旦お菓子にする魔法をかけてから戻す魔法をかけようかなって思ったけどお菓子にできないからねー?」

 

「さりげなく恐ろしいことを言ってるね…」

 

「…?!」

 

RASNとデザートンは額に汗を垂らしていた。

 

「ともかくどうしようかな…戻し方が分からないと大変だよね?」

 

「…!(コクコク)」

 

「…そうなるとプレミオに聞いてこようかな…色々旅をして魔法には詳しいと思うから…少し待っててね!」

 

そう言ってピークは魔方陣を展開してその場から姿を消したのであった。

 

「…それじゃ僕もそろそろ帰らないといけないけど…まぁ頑張ってね?」

 

そうしてデザートンもその場から姿を消し、残されたのは黒猫のRASNだけとなった。

 

「……、…。」

 

RASNは数回コロコロと転がったりその場を回ったりしてから、とりあえずアジトへと歩を進めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-飛行島 アジト-

 

「…?」

 

RASNはトコトコと歩いてようやくアジトへとたどり着いていた、そしてその道中で特に誰とも会えなかった事に首を傾げてした。

 

「…?おーい!クロトラじゃなーい!?」

 

「…?!」

 

アジトの中にへと片足を踏み込んだ時喋れる白い猫のキャトラが姿を見せてRASNへと駆け寄ってきた。 

 

「ほんと久し振りねー…藁しべならぬフォークしべ以来よねー?」

 

「…、…!」

 

「…相も変わらず無口ねー?まぁいいわちょっと来なさい、面白いというか美味しいとこに連れていってあげるわ。」

 

キャトラがクイッと首を引くとアジトの中へと歩いていきRASNもといクロトラはキャトラに付いていった。

 

 

 

 

 

 

 

そうして二匹がたどり着いたのは厨房であった。

 

「…?」

 

「こっちよこっちーよいしょっと…!」

 

キャトラはそう言うとドアのすぐ側の猫ドアを潜って中へと入って行き。その後に馴れぬ足でクロトラもそれに続いて中へと入った、そしてクロトラの鼻には一杯のチョコレートの香りが立ち込んでいた。

 

「どうかしら?今はバレンタインデー前だからここでとかならチョコを貰いたい放題なのよー!付いて来なさいー!」

 

「…。」

 

呆れつつもクロトラはイキイキと進むキャトラを追っていった。

 

「やっほー元気してるー?」

 

「あっ、キャトラね?つまみ食いでもしに来たのかしら?」

 

「まーそんなとこね、おーいクロトラこっちよー?」

 

「…!」

 

キャトラはひょいひょいと調理台にへと登りクロトラは足をバタつかせながら調理台にへと登れた。

 

「あれー?チェシャ、その猫何ー?」

 

「わぁーまるで色違いみたいー?」

 

「こいつはクロトラって名付けてるわ、よろしくしてちょうだい!」

 

「よろしくするのー!」

 

「よろしくねー!えーと…クロチェシャ!」

 

「…!」

 

クロトラは回りにいるエシリア達に挨拶や撫でられたりされていた。

 

「ところでさーこのチョコとか誰にあげるのからしらー?ペロペロ…ふぅんミルク風味が多いわね…」

 

キャトラはクロトラに気を取られてる内にボウルに入っているチョコを舐めていて顔中チョコまみれとなっていた。

 

「私はカティア様にお兄ちゃんにかな。」

 

「やっぱガレアにかなー?」

 

「エクルはー…誰がいいのかなー?」

 

「もー…みっともないわよキャトラ?」

 

ティナは呆れた顔でキャトラのチョコまみれな口元を布巾で拭き始めたので。

 

「んぐんぐ…ティナは誰に渡すのかしら?やっぱブラッドやファルファラとか…あとヴィンセントとか?」

 

「まぁ…そうなるわね、あとは…お父さんにお母さんかな…」

 

「そっか…渡せると良いわね。」

 

「うん。…はい、終わりよ。」

 

ティナは頷きキャトラを解放したのであった。

 

「…そういやエシリアが作ってるのね、てっきり自分の分ぐらいしか作らないと思ったけど…」

 

「そんなことないよチェシャー」

 

「ふーん…それじゃその三つのチョコは誰宛なのかしらねー?キャロとかかしら?」

 

「まーそうかなー、あとこれとこれはあんちゃんとにいちゃんにだよー!」 

 

「にいちゃんって…RASNの事ね、でも何でこっちのはこんなに大きいの?」

 

「えー?だってバレンタインのお返しって三倍でしょー?だから大きめにすればお返しをたーくさん貰えるでしょ?」

 

「…?!」

 

クロトラは無邪気に喜んでるエシリアを見て苦笑いしていた。

 

「なるほどね…まぁ頑張んなさい、そういやアイリス知らなーい?見当たらないみたいだけど?」

 

「知ってるー?」

 

「知らないー。」

 

「そう…そんじゃクロトラ別のとこに行きましょ?」

 

「…!」

 

「じゃーねチェシャークロチェシャー!」

 

二匹はエシリアに見送られてその場から離れたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして暫く二匹は歩き別の厨房の猫ドアを潜っていったのであった。

 

「ふーん…ここは少しビターな香りがするわね…」

 

「…?」

 

クロトラとキャトラは先程と同様に調理台を登っていった。

 

「クロトラー!あんたも猫の端くれならちゃんと登って来なさーい!」

 

「…!」

 

いまだまだコツを掴めてないクロトラはキャトラに激を飛ばされながらも登れたのであった。

 

「ようやく来れたみたいね?そんじゃ…って、えっ?」

 

「…?…?!」

 

二匹は台から顔を出している面々を眺めようとしていた、だがすぐ間近にいた意外な人物に体が固まったのであった。

 

「なっ…なんでじゃー?!」

 

「…うるさいぞキャトラ。」

 

その人物とはネモであり先程まで仏頂面でチョコを練っていたのであった。

 

「そりゃうるさくなるわよ?!何でアンタがこんなとこに?!」

 

「どうでもいいだろそんなことは…それに何だその黒い猫は?」

 

ネモは持ってたボウルを隣にいたリュゼーヌへと渡すとしかめっ面でクロトラの方を見下ろしていた。

 

「こっちはクロトラだけど…あっ、そっかー…アンタが渡す相手って…ノアね?」

 

「そうだか?」

 

「…即答ね…。」

 

「…こういったのも必要だと思ってな。」

 

フンッと頭にバンダナとエプロンを巻いているネモは息を吐き腕を組んでいた。

 

「と言ってもここに入るときに藁をもすがるような声で頼んで来たけどね?」

 

「なっ…?!」

 

「そうですわね。『ノアに美味しいチョコを食べさせてやりたい!』と土下座までされまして…断るに断れずに…」

 

「ぐっ…やめ…」

 

「…面白そうだから写真も撮っておいたわ。」

 

「………。」

 

ネモは静止した。

 

「ほほぅー…まぁ事情は大体了解したわ、そんでアンタらは誰にあげるのかしら?」

 

ニタニタと笑うキャトラは少し引いているクロトラを率いて先ずはボウルを持っリュゼーヌの元にたどり着いた。

 

「あら?私ですか、私は二つですわね。」

 

「……まぁ片方は多分アンタの妹にだと思うけど、もう片方は誰かしら?もしかして気になる殿方かしらー?」

 

「まぁ、そんなところですわね…フフッ。あの方とは一緒にこの飛行島に咲いた青い薔薇を見た仲ですから…ねぇ?」

 

「…!?」

 

リュゼーヌは自分の間近にある薔薇の形に作られたチョコを撫でてクロトラを見たのであった。

 

「…まぁ気になるけどそれ以上先は…」

 

「そう、踏み込んではいけませんわ…その代わりにはい…」

 

そう言ってリュゼーヌは先程まで持っていたボウルに爪楊枝で刺したマシュマロを二個でチョコを少し取り、キャトラとクロトラの口へと運んだのであった。

 

「んぐんぐ…分かったわー、いやー甘さとほろ苦さが良いマッチングねー。」

 

「…!」

 

「ふふっ…それじゃ次に行かれた方がよろしいのでは?」

 

「あっ…!そうね!ありがとねーリュゼーヌ!」

 

「…!」

 

そうして二匹は続いてシズクの所に歩いていった。

 

「おいー、チョコちょうだい!」

 

「んぇ~?キャトラが二匹もいるらぁ~?えっへへ~しかも色違いらぁ~」

 

だがシズクは酒瓶を持ち赤い顔をして二匹を見ていたのであった。

 

「あーっ…出来上がってるわね?」

 

「ん~…あーまだ出来上がってないらよ~?だったら仕上げの一発ぶちかますどー!」

 

シズクはヨロヨロとした足取りでチョコが入ったボウルにドボドボと酒を入れ、そして型に流し込んで冷蔵庫へとブち込んだのであった。

 

「んへぇ~これで…くかー…」

 

「あっー…こりゃダメね、次行きましょ?」

 

「…!」

 

そうして二匹は続いてエスメラルダの方へと足を運んだ。

 

「やっほーエル、チョコ貰いに来たわよー?」

 

「あらあら?キャトラも隅に置けないわね、可愛いボーイフレンドかしら?」

 

「そんなとこ…ってこれ前にも誰かに言ったようなー?」

 

「…?」

 

「まぁともかくチョコはあげるわこんな感じだけどね。」

 

そう言ってエスメラルダは皿にトロトロなチョコを流して二匹の前に置いたのであった。

 

「ありがとね!」

 

キャトラはエスメラルダに礼をするとすぐさまチョコを舐め始めてクロトラもそれに続いた。

 

「どういたしまして。ところでキミ、お名前は?」

 

「…!」

 

「あら?喋れないのかしら…って喋れないのが普通よね。」 

 

「まぁ、そういえばそうよね…ペロペロ…そういえばクロトラよ!ペロペロ…」

 

「そう、よろしくねクロトラちゃん?」

 

「…!」

 

エスメラルダはそうしてクロトラの顎を撫でたのであった。

 

「ところでエルは誰にあげるのかしら…ペロペロ…ってまぁ大体は察しついてるけどねペロペロ…多分弟さんとRASNにでしょ?」

 

「そうね、可愛い弟だもの先週からちゃんと準備してたわ!」

 

「へぇーペロペロ…ふぃーご馳走さま!」

 

「…!」

 

「はい、お粗末様。」

 

「そういえばエル、アイリス知らない?」

 

「アイリスね…そういえば見当たらないわ、少し前までここにいたけど…?」

 

「ん~…別のとこに行っちゃったのかしら?まぁ良いわ、クロトラ!次行くわよー!」

 

「…!」

 

そうして二匹はまた別の厨房へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また暫くして二匹は別の厨房へと入った、今度の厨房はかなり広く作られていたのであった。

 

「ふんふん…甘いわね?」

 

「…?」

 

先程同様に調理台に登った二匹だが、クロトラはコツを掴んだのかすんなりと登れたのであった。

 

そして今度来た厨房内では数名の女性がいた。

 

「あっ!キャトラ航海士に…そちらの黒猫は?」

 

「あーこっちはクロトラね、それよりアイリス知らない?色んな所に行ってみたけど見当たらないのよねー?」

 

「アイリス機関長なら確かソフィ様とカレンさんと一緒に包装用のラッピングが足りないと買い足しに行きました!」

 

「そっかー…それじゃ何時ものいきますかー?」

 

「プルクワ?何をするでござるか?」

 

「ふっふっふー…チョコのご賞味してついでに誰に渡すのか聞きにきたのよー?」

 

「…。(汗)」

 

「えっ、もうお腹一杯なの?だらしないわねー?」

 

「その様子だと結構回ってたみたいね?」

 

「…!(コク!)」

 

「そうね、でも私はまだ欲してるわ!」

 

「へいはいほいー!ここは私にお任せー!ほいっと!」

 

飛び出してきたのは魔法学園の生徒のミモリであり二重の意味でペロリストである。そんなミモリは手にあったチョコをキャトラの頭上に放ったのであった。

 

「えっ?」

 

「それじゃー…バンボロー!」

 

そして掛け声を掛けるとキャトラの頭上のチョコが2個3個と増え、キャトラの足元に降り注いで来たのであった。

 

「おっー!これは便利じゃないー!もぐもぐー!」

 

「そんなに誉めんなよー、バンボロポロー!」

 

キャトラは無数のチョコを食べ始めた、だが食べても食べても減らずに次第にどんどん山は天井へと辿り着きそうになっていた。

 

「ぎっ…ぎにゃー?!ミモリー!止めてー?!」

 

「あえっと…バンボロー?」

 

ミモリが少し違うトーンで声を掛けたが山はついに天井に届いてしまったのであった。

 

「ありゃりゃー…?駄目かなー?」

 

「駄目かなーじゃないわよー?!ぎにゃー?!」

 

「…ミモリ、私に策があるわ耳を貸しなさい。」

 

「えっ?私の耳を舐めるの?!だったら後で頬っぺたの感触を…」

 

カスミがミモリを手招きしたが、ミモリは期待の眼差しでカスミの頬を見たのであった。

 

「…貸さなくていいわ。お得意の魔術で空間転移とか出来るって聞きたかったけど、出来るかしら?」

 

「えっー…まぁ出来るけど、何処に繋げられるか分かんないよー?」

 

「ともかく今はそれしかないの!お願い!」

 

「ほいほいっと!それじゃバンボロー!」

 

そうしてまた掛け声を上げると魔方陣が床を進みチョコ山で止まるとチョコは床に消え入るように無くなっていった。

 

「って!待ちなさーい?!このままじゃ私も何処か行きじゃない?!ぎにゃー!!」

 

「危ない!」

 

キャトラは体を捻って消えゆくチョコから飛び出し、そして飛び出しキャトラはパルメによって受け止められたのであった。

 

「サンキューパルメ…はぁー暫くチョコはこりごりね…」

 

「あれ?そもそも猫にチョコは駄目じゃ…?」

 

「あー別に大丈夫よ。前にザッハトルテとか食べてたしこれまでも食べてて特に何ともないし、ねっ?クロトラ?」

 

「…!」

 

キャトラにそう言われクロトラは一応頷いたのであった。

 

「まぁ喋れてることが不思議だもんね…」

 

「…さてと。第一目的は腹一杯ね、そろそろ次行こうかしら?」

 

「次って…?」

 

「とぼけちゃってー誰に渡すのかしらー?」

 

キャトラはにやつきながらパルメを小突いていた。

 

「私?私はエイジにだけど…?」

 

「へー…それじゃ何で来た時にパルメの前にチョコが二個もあったのかしらー?」

 

「えっ…そっ…それは…」

 

「大人しく白状なさいー!ぎにゃー!」

 

「わっ…分かったわよ、もう一個はRASNさんによ。」

 

「…?!」

 

「何でアンタが驚くのさ?ともあれアンタら…どこまで行ったのかしら?」

 

「何処までって…確か最近はロープ縛りをして…あとは…」

 

「ちょっと待って?!アンタらそういうヤバイ関係なわなけー!?」

 

キャトラが叫んだことにその場にいた四人と一匹はビクッと驚いていた。

 

「なっ…何言ってるの?!ただのパントマイムの練習よ!練習!」

 

「パントマイム…?そっち方面じゃなくて…?」

 

「そうよ、だってRASNさんはパントマイムが好きって白い本にあったから練習に付き合って貰ったのよ。だからそのお礼ってこと。」

 

「…ふーん…なんだーつまんないなー、そんじゃ次っ!」

 

キャトラはパルメの腕から抜け出すとミモリの前に出てきたのであった。

 

「ん?次あたし?私はねーそんじゃRASN君にもあげちゃおっか…、…!?」

 

ミモリがケラケラと笑いながら言おうとしていた、だが途中で少し顔を青ざめて口を止めたのであった。

 

「ん?どしたの?」

 

「いや…私はやっぱハルカにかな?どっちが美味しいのを出来るかって競ってるんだっけなーだから二個は難しいわーあっははは…あとはプリムラにもかなー?」

 

「そっ…そんじゃ次は…シオンでも…」

 

ミモリはキャトラが前から離れるとチラッと後ろを見た、そこにはクロトラがフランとヒナとコヨミに撫でられてる姿があった。

 

「さっきのは一体…?」

 

 

 

 

 

 

「やっほー、聞きに来たよー?」

 

「分かってたわ、チョコの事よね?」

 

キャトラは宣言通りにシオンの所に向かっていた。

 

「そうよーまぁ大体察しつくけどさー。」

 

「…じゃあ、聞かない?」

 

「いや、聞くわ!」

 

「分かったわ、私は家族にかな…だから三つ。」

 

「…ドラゴンはチョコ大丈夫なのかしらね?」

 

「大丈夫です!むしろドラゴンのお腹に優しいカカオもありますので!」

 

するとエクセリアはチョコをかき混ぜながらやって来たのであった。

 

「そうなの、悩んでいた時に助けてもらったの。」

 

「へぇー…ところでそんなお姫さまは誰に渡すのかしら?」

 

「私ですか?私は勿論ラピュセルにフィーユに…あとお父様とモニカさんにソルト…あとカグツチにマクリルとゲオルグにもセルジュにも…あとは…」

 

「あー…取りあえず沢山って事ね、ありがとね。」

 

「それにゲンコツさんにも…あとエイスさんも…!」

 

キャトラは熱弁するエクセリアを置き、そんな熱弁を聞いてるシオンに手を振られながら次の人の所へ向かった。

 

「次は…ルウシェにツキミにケイね!」

 

「あ~、いらっしゃい~お団子食べる?」

 

「いただくわ!はむはむ…やっぱチョコ入りお団子ね!」

 

キャトラの口に突っ込まれたのは中にチョコが詰まった団子であった。

 

「そうだよ~、これで今日は売りに回るよ~?」

 

「商魂逞しいわね!そんで他二人はそのお手伝いってとこかしら?」

 

「はい、お手伝いしてるうちにアラストルもお団子作りが上手くなりました!」

 

ルウシェの側にいるルウシェのアルマのアラストルは大きい手を上手に使って団子をこねて串付けも器用にこなしていた。

 

「そっ…そうみたいね…それでケイはどうかしら?」

 

キャトラは綺麗に出来ているお団子の横にある歪な形で曲がって刺さってる団子を目にしないようにケイに顔を向けた。

 

「私か?元より槍使い故に団子に串を突くなど…この通りだ!」

 

ケイはそう言い自ら空に放った団子を一突きでまとめたのであった。

 

「やるじゃない!…ところでバイパーにあげるチョコは上手く出来たのかしらー?」

 

「なっ…?!何を言うかっ!?私は弟にやる分しか…!」

 

キャトラにそう聞かれたケイは顔を赤らめていた。

 

「ふーん…ねーシオン!ちょっと来てー?」

 

「…?何?」

 

キャトラはエクセリアの話が終わっていたシオンを呼び出したのであった。

 

「ちょっとね…ぎにゃにゃっ…って感じで出来ない?」

 

「いいけど…いいのかしら?」

 

「良いのよ!やっちゃえー!」

 

「うん…、………。」

 

シオンはケイに一歩近づき目を瞑ったのであった。

 

「それじゃケイ、バイパーにあげるチョコはどんなのかしら?」

 

「だから私は…!」

 

「…バイパーさんにあげるチョコは結構上手く出来てたな…やっぱ先月からちゃんと練習をしたおかげだな…」

 

「えっ?!」

 

ケイはまだ目を瞑りながら喋るシオンに驚いていたのであった。

 

「それに上手くハートの形に出来た…あとはどう渡すかだ…」

 

「あっあああ…!」

 

そしてケイは少し引いてきた赤い顔を更に紅潮させた上に目を白黒とさせていたのであった。

 

「渡すならやはりロマンチックに…だったら…」

 

「…シオン…もういいわ、流石にやり過ぎたわ…。」

 

「もう良いの…?」

 

「ううぅ…穴があれば入りたい…」

 

ケイはもう涙目で頭を床に付けていた。

 

「…大丈夫でしょうか…?」

 

「多分大丈夫よ、ところでルウシェは…まぁアシュレイにあげるのよね?」

 

「えっ騎士様にですか?一体何をあげるのでしょうか?以前御守りを差し上げた事はありますが…」

 

「…え?それじゃルウシェ…チョコは作ったの…?」

 

「チョコですか?チョコなら私は皆様のチョコ作りのお手伝いを…ところで皆様は何故チョコを作られているのでしょうか?」

 

「あー…そこからかー…どうしたものか…」

 

「…?」

 

キャトラは口を開けて呆れて、ルウシェは首を傾げて頭から?マークを出していた。

 

「ルウシェちゃん~、今度はこの生地をこねこね出来るかな~?」

 

「はいっ!精一杯こねこねさせて頂きます!」

 

ルウシェはツキミ渡されたボウルの中のお団子の生地をこね始めたのであった。

 

「どーしたもんかしらねー…ん?」

 

キャトラは自分の頭がツンツンとつつかれて見上げるとアラストルがいたのであった。

 

「何かしら?えっ、これって?!」

 

そしてそんなアラストルの手にはルウシェのブローチの形に出来たチョコがあったのであった。

 

「まさか…アンタが…?」

 

アラストルはキャトラの質問にコクコクと頷いていたのであった。

 

「やるじゃない!…あっ、でも意味も分からないルウシェにどうやって渡しに行けば…」

 

「大丈夫だよ~当日はルウシェちゃん連れて行くから安心だよ~?」

 

「そうなの?やるじゃん!」

 

「そんなに誉めてもお団子しか出ないよ~?」

 

「そんじゃ頂くわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は変わりキャトラがシオンの所へとちょうど向かった頃、クロトラは心地良さげに寝ていたのであった。

 

「……。」

 

「おークロやん気持ちよく寝ちゃってんねー?」

 

「でも少しここじゃ邪魔ね…ここなら良いかしら。」

 

カスミは寝ているクロトラを起こさぬように持ち上げた、そして少し離れた所にあった椅子にクロトラを置いてタオルを被せたのであった。

 

「さてと…続き続き…」

 

「…そういえばカスミー、RASNにチョコあげていいかいー?」

 

「なっ…何でそんな事を聞くのかしら…?」

 

「えー?そりゃ愛する旦那様にチョコを勝手に渡したら奥様がお怒りになっちゃうからねー?」

 

「…いやだからそんな関係じゃないわよ…」

 

カスミはもう馴れたように溜め息を吐き、チョコをかき混ぜながらコリンに応えたのであった。

 

「んなこと言っちゃってさー?おっ?」

 

コリンがにやけると二人の元にヒナとコヨミがやって来たのであった。

 

「あっ、カスミねーねにコリンねーね!クロトラちゃん知らない?」

 

「クロやんかい?そんならあっちの椅子だぜー?」

 

「…でも寝ちゃってるからそっとしておいた方が良いわ。」

 

「そうなんだ…。」

 

「まぁ、そう気を落とさんなって。そういやコヨミはチョコは誰に渡すんだい?」

 

「コヨミはねRASNにーにとタローに、リーゼねーねやコリンねーねに…一杯だよ!」

 

「へぇー…後で手伝ってやっかなー、ところでヒナちゃんはどうすんだい?」

 

「…ヒナは…パパにママにバーバに…。ねぇ…ママ?」

 

そしてヒナはもじもじとカスミの服の裾を掴んでいた。

 

「…?どうしたの?」

 

「ピヨ…あのね……、クロトラちゃん…飼っていい?」

 

「おー、いいじゃんかー?カスミも結構気に入ってたし飼ってみたらいいんじゃね?」

 

「コヨミもさんせー!」

 

「…賛同するのはいいけど、あの子が誰かにもう飼われていたらどうするのよ?」

 

「それはきっと大丈夫ですよ、首輪も付けられて無いんですから。」

 

すると音も立てずにカスミの背後にフローリアが姿を現したのであった、だがカスミは後ろから伸ばされていたフローリアの手を掴んでいたのであった。

 

「…そう、ところでその手は何なのかしら?あとその瓶も。」

 

「これですか、惚れ薬ですが?」

 

「何でチョコに入れようとしてるのかしらね…」

 

「そりゃ奥手なRASNさんも積極的にして…」

 

「…その必要性はいらない…と思うけど?」

 

「…成る程、そんなお世話も要らない程進展してるのですね…?」

 

「違うわよ!?というかその手を止めなさいって!」

 

カスミはそう叫びボウルを置くとフローリアの両手を抑え込んだのであった。

 

「ままっ…固いこと言わずに、コロッといけますよ?それにヒナちゃん、パパとママが仲良しこよしだと嬉しいですよね?」

 

「うん…!」

 

「…と、言うわけで…」

 

「そういう訳じゃないわよー?!」

 

そうしてカスミはグイグイと押し寄せてくるフローリアを退け続けていた。

 

「それに一人っ子は寂しいのでは…?!」

 

「何言ってんのよ?!」

 

「ピヨ…?」

 

 

 

 

 

「あっちは面白そうだねー?何時もあんな感じなのー?」

 

「…!」

 

一方そんな喧騒の外れにはミモリとメアにカモメとフランがいて、ミモリの腕の中にはクロトラが欠伸をしていた。

 

「ウィ!いつもとっても楽しそうでござるよ!」

 

「フラン…私から見たら楽しんでるのはフローリアぐらいだと思うけど…」

 

「へぇー…そういえばフラン達は誰にあげるの?」

 

「えっ?そんなこと別にいいじゃない…?」

 

「えっー?気になるよー!それじゃ!私はハルカにプリムラにあげるんだ!…はい、それじゃ私言ったから言って言ってー!」

 

「えぇ…」

 

「……。」

 

「それはさっき聞いたような…」

 

カモメ達にクロトラは額に一筋汗を垂らしたのであった。

 

「言ってよー!?あっ、それじゃさっきフローリアに渡したこの惚れ薬でも…!」

 

「わっ…分かったわ!教えるからそれを引っ込めて?!」

 

「やったー!それじゃ…メアから!」

 

ミモリはきゃっきゃっと小動物の様に喜び跳ねるとメアを指差した。

 

「私は…まずは手紙のあの子にかな…あとはセラさんにテトラにもかな、一応オズマさんにバイパーさんにもで…あとは…」

 

メアは五人目を言い終えると急に口をつむって目を背けたのであった。

 

「…ええっと…………RASNに……。」

 

「…!」

 

そして赤い顔でボソッと呟き、クロトラは耳をピクピクとして驚いていたのであった。

 

「えー?ちょっと聞こえにくかったからもう一回っ!」

 

「一回だけだって?!…それじゃ次はフランね!誰に渡すのかしら?!」

 

「セッシャでござるか?セッシャなら…シショーにチチウエとスール達にリンプイ殿などのニンジャ達にでござる!」

 

「ええっと…スール?」

 

「あっ、エクスキューズでござる。スールというのはセッシャの妹分の事でござるよ!」

 

「へー…シショーって誰だろ?クロトラは知ってるー?」

 

「…、…!」

 

クロトラは少し悩んでからふるふると頭を振ったのであった。

 

「むーん…そんじゃ最後はカモメ!」

 

「私ですか…私はRASN船長にお父さんにあげようかと…。」

 

「カモメ殿もシショーにでござるか!お揃いでござるな!」

 

「へぇー…カモメ達もなんだ…」

 

「どんな形でござるか?気になるでござるよ!」

 

「そっ…それは秘密ですって…!」

 

「へぇーRASNの事か…人気者だねー、ねぇクロちゃん?」

 

「……。」

 

クロトラは見下ろすミモリに視線を合わせようとしなかったのであった。

 

「おーい、そこいるのかしらクロトラー?」

 

すると奥の方からキャトラがやって来たのであった。

 

「おっキャト…うっ…うぷぷぷ…。」

 

「何ー?急に笑いだしたりしてー?」

 

「いやだって…あはは!首にバンダナだもん…!あははは…!」

 

「あー…また変なツボに入ったかー、そういやミモリ例の情報は?」

 

「ひっ…ひぃ…あぁ…ちょっと待ってね……はい、これ。」

 

ミモリは腹を抑えながら紙を取ってペンを走らすとキャトラの首に巻かれているバンダナの中にそっと入れたのであった。

 

「ありがとねー、さっきコリンの所にも行ったからこれで全部ね!」

 

「?」

 

「あぁ、実はね密かにコリンやミモリと協力してチョコ渡す相手を聞いていたのよ。」

 

「…?」

 

クロトラは自信満々な顔をするキャトラに首を傾けていた。

 

「どうしてって、そりゃ…良いネタじゃない?色々と使えるのよねー。」

 

「…。(汗)」

 

「そんじゃアイリス迎えに行くわよ、そろそろ帰ってくるらしいからさ。」

 

「…!」

 

そうして二匹はとてとてと厨房を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-飛行島 アジト入り口-

 

「あー…そこそこ…良い手つきじゃないー。」

 

「…!」

 

キャトラはクロトラに誰もいない入り口近くで夕陽に照らされる白い毛を毛づくろいさせてまったりとしていた。

 

「…ん?この足音…」

 

「…!」

 

キャトラとクロトラが耳をピクピクとするとアイリスがやって来たのであった。

 

「おーい!アイリスー!」

 

「あら?キャトラに…クロトラちゃん!?」

 

「…!」

 

「…久し振りね、何処に行っちゃってたのかしら?」

 

「私も今日会ったのよねー、奇遇よねー?」

 

「…!」

 

クロトラは静かに頷いた。

 

「そうなの、今度は…うん、ゆっくりしていってねクロトラちゃん?」

 

「…?」

 

クロトラはこちらを撫でながら一回言葉を詰まらせたアイリスを不思議そうに見上げていた。

 

「おや?キャトラ君に…そちらの黒いのは…?」

 

そして少しするとアイリスの後ろからカレン達が姿を現したのであった。

 

「あ、皆さんこちらはクロトラちゃんです。」

 

「クロトラ様ですか…まるでキャトラ様みたいな名前ですね!」

 

「そりゃそーよ、なんせ私の名前を少し貸してあげたのよねー?」

 

「…!」

 

「そうか、中々良い名前だな…!」

 

そう言われるとクロトラはソフィに抱えられてカレンに顔を撫でられていた。

 

「それに…中々……可愛いな。」

 

「…?」

 

そしてクロトラをの顎を撫でるカレンは後ろでファフナーが肩を叩いても気付かなかったのであった。

 

「………。」

 

「…。」

 

ファフナーは少しガックリとするとガシャンガシャンと足音を立ててアジトの中に荷物を持って去り、クロトラはそれを少し申し訳なさそうに見ていた。

 

「クロトラ様は誰かの飼い猫なのでしょうか?それとも野良でしょうか?」

 

「野良なら私が飼っても…いいか?スコーンや甘いココアを御馳走するぞ!」

 

「…!」

 

クロトラがココアと言う言葉にピクンと反応したのであった。

 

「そうか!なら是非私のところに…!」

 

「駄目ですよカレンさん、もし飼い猫でしたら飼い主に迷惑が…」

 

「むっ…だがもし野良であったら…」

 

「駄目です…。」

 

アイリスは辺りがシンとなるような声をカレンにへと当てたのであった。

 

「…?!」

 

そしてそれに当てられカレンは少し身を縮みこませていた。

 

「ソフィさん、クロトラちゃんをこっちに…」

 

「あっ…はい、…どうぞ…。」

 

「…?」

 

ソフィもカレン同様に縮みこまっていたが首を傾げているクロトラをアイリスへと渡したのであった。

 

「…?」

 

「…。」

 

そしてクロトラを受け取ったアイリスはジッと見つめてから静かに頭を撫でたのであった。

 

「ああ…やはりココアはバン○ーテンのが良かったのか…?」

 

「恐らくそうではないかと…」

 

「さぁ、行きましょうキャトラ?」

 

「あっ!待ってよアイリスー!」

 

そうしてアイリスはアジトの中へと入ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその後クロトラはアイリスにキャトラと行動を共にする事になっていた。

 

-飛行島 酒場-

 

「あー!お腹ペコペコー!」

 

キャトラは騒々と机の上に座り、アイリスは椅子にきちんと座ってその膝の上にはクロトラがいた。

 

そしてそんな彼女達の側にはウエイトレス風の星たぬきが紙とペンを持って見上げていた。

 

「そんじゃアタシはカニカマスペシャル盛りでお願い!…そういや今朝からRASNが見当たらないわねー…アイリス知らない?」

 

「そういえば見ないわね…クロトラちゃんはどれがいいかな…?」

 

「………。」

 

そしてアイリスは膝の上のクロトラにメニューの紙を見せていたのであった。

 

「アイリスークロトラの分はアタシのカニカマ分けるから別に…」

 

「駄目よ、ちゃんとしたの食べないと…アストラパイとかどうかしら?」

 

「…!」

 

アイリスがアストラパイを指差すとクロトラはそれに重ねるように手を重ねた。

 

「決まりね、それじゃそれを二つで御願いね?」

 

「きっきゅー!」

 

そうしてその後アストラパイ二個とカニカマを平らげたのであった。

 

「ふー…もう満腹ね…」

 

「そうね、クロトラちゃんは大丈夫?」

 

「…!」

 

机の上のキャトラは腹を膨れさせてご満悦の顔であり、クロトラはアイリスに撫でられていた。

 

「そんじゃ後は寝るだけねー…ってクロトラはどこで寝るのかしら?」

 

「…、…?」

 

「そうね、だったらアタシの寝床を少し貸しても…」

 

「大丈夫よキャトラ、クロトラちゃんの寝床はちゃんと考えあるから。」

 

「…アイリス、何かさっきからおかしくない?やけにクロトラを気にするじゃない…?」

 

キャトラは怪訝そうな顔でアイリスとクロトラを見詰めたのであった。

 

「そんなことはないわよ…あっ、アンナさんがこっちに…」

 

「ぎっ…ぎにゃー?!」

 

キャトラの後方にアイリスは指を指してそう言うとキャトラは雄叫びならぬ猫叫びをあげるとその場から去ったのであった。

 

「…それじゃ、行こっか?」

 

「…!」

 

そしてアイリスはクロトラを抱えると酒場から出ようとしていた。

 

「…?」

 

アイリスが扉に手をかけた時にクロトラは酒場を一望して首を傾げたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-飛行島 アイリスの部屋-

 

そうしてクロトラはアイリスの部屋で降ろされたのであった。

 

「えっと…寝床はこんな感じでいいかしら?」

 

「…!」

 

アイリスはそう言ってクロトラの前に置いたのは中にタオルケットが敷かれたバスケットであり、クロトラはひょいっと中に納まり丸まったのであった。

 

「…!」

 

「ふふっ、寝心地はどうかしら?」

 

「…!!」

 

「良かったわ、それじゃ私は少しお風呂に入るけど…クロトラちゃんも入る?」

 

「…?!…!!!」

 

クロトラは首を横に振り頬を赤くすると丸まったのであった。

 

「ふふっ、冗談よ。それじゃ行ってくるからね?」

 

アイリスは微笑んでクロトラの頭を撫でるとドアを少し開けてその場から去った。

 

そして暫くシンとなってからクロトラはバスケットから抜け出しアイリスの部屋を見渡していた、だが一通り見回ってからまたバスケットの中に納まったのであった。

 

「…。」

 

欠伸をしたり体勢を変えたりゴロゴロ転がってみたりしたが少し開いているドアからアイリスは中々姿を現さなかった。

 

「……………。」

 

そして体にタオルケットを被せて顎を下にするとそのまま瞼も下に降りたのであった。

 

「ふぅ…思わず長風呂しちゃった…」

 

ドアが動くと髪が少し濡れているアイリスが出てきたのであった。

 

「クロトラちゃんは…やっぱ寝ちゃってるわね…」

 

アイリスはすやすやと寝ているクロトラを撫でて確認したのであった。

 

「……………、そろそろ私も寝ようかな…それじゃお休みなさいね…」

 

一瞬愛しさと悲しさが混じったような視線を見せると明かりを落としたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイリスの部屋では寝息が二種類出されており下の方からの寝息が少し乱れていた。

 

(お………!………ー……!)

 

「……?」

 

(お…い…!RASNく…!)

 

「…?」

 

(おーいー!RASN君ー!)

 

「?…!?」

 

クロトラは頭に響いていた声で眼を覚ましてバスケットから出てきたのであった。

 

(RASNー!響いてたら返事してー!)

 

「…!?……?」

 

クロトラは訳もわからず辺りを見渡していた。

 

(とりあえず響いていたら何か強く念じてー!)

 

「…!………。」

 

クロトラは響いてくる事に従って念じてみたのであった。

 

(あっー!やっと返事が来たよー、何処にいるの?)

 

「…!」

 

(えっ…アイリスの部屋……へぇー……。)

 

「…?!…!」

 

(分かってるわよー、それより戻せる方法が分かったから貴方の部屋に来てくれる?)

 

「…!」

 

クロトラは頷くと1回寝ているアイリスの方を向いてから部屋を出たのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-飛行島 RASNの部屋-

 

クロトラが到達したのは自分が猫へと変わってしまった所であり、そこにはピークが手を振って待っていたのであった。

 

「…!」

 

「ごめんねーでも何とかバレンタインには間に合いそうね!」

 

「…!!」

 

「分かってるわよ足を肉きゅうでぷにぷにしないでよ~」

 

ピークは笑いながらもクロトラに服を被せたのであった。

 

「…。」

 

「それじゃ行くわ!ニトモ=レドモ!」

 

そう言ってピークはクロトラの鼻をぷにっとするとクロトラは猫になってしまった時の様に煙が立ちこめた。

 

「ケホッっと…どうかなー?」

 

ピークが窓を開けて煙を晴らすとクロトラはRASNへと姿を戻していたのであった。

 

「…!…!!」

 

「どういたしましてー、それよりどうかな?猫耳とか尻尾が残ってたりしてない…?」

 

「……、…、…!」

 

そう言われRASNは頭等に手を当てて確かめたが特に変なものがくっ付いたり無くなったりはしてなかった。

 

「そっかー、これで安心ね。」

 

「…!……。」

 

RASNはピークに礼をしたが同時に大きな欠伸をしたのであった。

 

「大丈夫?」

 

「…!」

 

「まぁそうよね、やっぱ疲れてるよね…それじゃ私はこれで失礼しようかしら?」

 

「…!」

 

そうしてRASNはピークを部屋の外まで送るとそのままベッドへと沈んだのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……?…?!」

 

翌朝ベッドへと沈んだRASNは自分の上に違和感を感じながら起きたのであった、そして眼を覚ますと眼前には寝ているフランが寄っ掛かりフランの寝息がかかっていたのであった。

 

「…すぅ…」

 

「……、…!?」

 

「…フェ?!何事でござるか…ふぁぁ…」

 

暫くその状態でいたがドアのノック音が響くとRASNは思わず体を震えさせしまい乗っているフランは眼を覚ましたのであった、そしてドアからはカモメがやって来て目の前の場景に口をポカンと開けてしまったのであった。

 

「…えっ…こっ…これは…一体…?」

 

「…、…!」

 

RASNは少し焦り慌てていたがフランは欠伸に眼元を擦っていた。

 

「…んむ…オーララ、シショーにカモメ殿!ボンジュールでござる!」

 

「…!」

 

「えっ…あっ、おはようございます…」

 

フランに元気よく挨拶され二人は困惑し、フランはベッドから離れたのであった。

 

「フ…フランさんはナニをしてたんでしたか…?」

 

そしてカモメはそんなフランに恐る恐る聞いたのであった。

 

「セッシャでござるか?セッシャは朝早くにシショーにチョコを渡そうとしたらペティスプゥシィで苦しそうでごさって…それに寝間着でもないでござったから…」

 

「…!」

 

RASNは今更ながら自分の服装がパジャマになってるのに驚いていたのであった。

 

「そうしたらセッシャも少し眠くなって…つい…。」

 

「えっと…何から突っ込めば良いのか…」

 

カモメは眼をぐるぐるさせて頭を抱えていた。

 

「それより…んしょ…シショー!ハッピーバレンタインでござるよ!」

 

フランは呆気に取られている二人を置き、机に置かれていた二つの箱のうち小さくなく洋梨が結び付けられている方をRASNへと手渡したのであった。

 

「…?」

 

「こっちでござるか?これは…」

 

RASNはもう片方の箱を指差し、フランはにっこりとしながら指差された箱を開けたのであった。

 

「これは…香水ですか?」

 

「ウィ!チチウエに何が良いかと聞いてみたら香水が良いと言われて…選ぶのに結構悩んだでござるよー…」

 

「……、…!」

 

開いた箱の中の香水瓶の蓋をRASNはそっと上げた、するとほんのりと洋梨の香りが部屋を包んだのであった。

 

「…そういえばカモメ殿もバレンタインでござるな?」

 

「えっ…そっ…そうですが…」

 

「ならセッシャに御構い無くシショーにボナペティするでござるよ!」

 

「はっ…はい…あの、RASN船長これを…。」

 

カモメはフランに背中を押されて赤い顔をRASNに見せないように右手から可愛くラッピングされた箱を出したのであった。

 

「…!」

 

「あと…フランさんの後で少しアレですけど…これも…。」

 

そうして今度はもう片方の手から細長めの箱をRASNの目の前に差し出し、RASNはそれを開けたのであった。

 

「プルクワ?これは時計でござるか?」

 

「はい、その…貰ってくれますか?」

 

「…!」

 

RASNはそっと微笑むと懐中時計を受け取ったのであった。

 

「…ありがとうございます!良かったです…!」

 

「カモメ殿!イリティボンでござるな!」

 

「…!……?!」

 

そして部屋がホッとなるとRASNの腹の虫が鳴り響いたのであった。

 

「オララ?シショーはお腹はファムでござるか?」

 

「そういえば朝食がまだですね…それじゃ一緒に行きませんか?」

 

「…!」

 

「それじゃお着替えを手伝…」

 

「せっ…船長!私達は酒場で待ってますねー!」

 

「オッ?!オーララ!?」

 

フランがRASNの服に手をかけようとしたところをカモメはフランを抱えてRASNの部屋から出たのであった。

 

そしてRASNはちゃんと着替えて部屋を出たのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-飛行島-

 

RASNは更にアジトから出て酒場へと至る道を歩いていた。

 

「…!」

 

すると対面からドタドタと走ってくる影がやって来たのであった。

 

「にいーちゃーん!みっーけたー!」

 

「…!?」

 

そしてそれはRASNに体当たりして押し倒し、エシリアはRASNの体に股がっているのであった。

 

「やっほー!にいちゃん!バレンタインだからチョコレートをあげにきたよー!」

「…!」

 

するとエシリアは懐からトランプの模様柄のラッピングがされた箱をRASNに押し付け、RASNは少し戸惑いながらもそれを受け取った。

 

「ちゃんと味わってねー?あとねーホワイトデーは五倍返しだよー!」

 

「…!?」

 

「えっ?三倍返しじゃないかって…あれー?にいちゃんに言ってたけなー?」

 

「…、……!」

 

「なんでもないのー?それじゃ来月は八倍を楽しみにしてるねー!」

 

「…!」

 

そうしてエシリアはRASNに手を振ってその場から去り、RASNはチョコの箱をしまうとまた酒場へと至る道を歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-飛行島 酒場-

 

「…、………!」

 

RASNはその後特にぶつかられたりもせずに酒場へと入れた、そして中で二人を探し見つけたのであった。

 

「あ!RASNにーにおはよー!」

 

「パパ…!おはピヨ。」

 

するとやって来たRASNに駆け寄ったのはコヨミとヒナであり、よく見ればカモメ以外にもカスミも相席していたのであった。

 

「あら…RASNさん?おはよう。」

 

「…!」

 

「にーに!一緒にご飯食べよ!」

 

「キャンキャン!」

 

「…!?」

 

RASNはコヨミに押されヒナに引っ張られてカスミの隣の席に着かされ、コヨミはカスミの反対隣へと座りヒナはRASNの膝に座ったのであった。

 

「お待たせー持ってき…RASN?!」

 

「…!」

 

するとメアにフランとフローリアが料理を取ってやって来たのであった。

 

「オーララ!シショー到着でござる!」

 

「…でもRASNさんの分は持ってきて…」

 

「それならノンスィンギンチィでござる!こーもあろうかとシショーの分は持ってきてるでござるよ!」

 

そうして三人はみんなの前に持ってきた皿を並べたのであった。

 

「美味しいねパパ、ママ…」

 

「…!」

 

「そうね、ほらほっぺにケチャップ付いてるわよ。」

 

「ピヨォ…あっ、そういえばパパにこれ…!」

 

ヒナはカスミに頬を拭かれると振り返り向くと懐から丸いヒヨコが散りばめられたラッピングの箱を渡したのであった。

 

「バレンタインだからヒナ頑張ったよ?」

 

「…!」

 

「ピチチッ…。」

 

RASNはヒナからそれを受け取り微笑むと頭を撫でたのであった。

 

「あー!コヨミもにーにに頑張ってチョコを作ったよ!」

 

コヨミはヒナの撫でられるところを見ると負けじと懐から六花模様が散りばめられた水色のラッピングの箱をRASNへ渡したのであった。

 

「…!」

 

「えへへ…撫で撫で嬉しいなー。」

 

RASNはそれを受け取り撫でていない方の手でコヨミの頭を撫でたのであった。

 

「……。」

 

そしてそんな光景をRASNの隣のカスミは横目で見ていた。

 

「カスミ…今が渡すチャンスですよ?」

 

「…なんでよ?」

 

するとカスミの隣にいたフローリアが耳打ちしてきたのであった。 

 

「今なら自然な形で頭を撫でてもらえるかもしれませんよ?」

 

「…撫でてもらえるって…今両手は撫でているから無理じゃない…?」

 

「それじゃ…口にで…んむぅ?!」

 

カスミは少し不機嫌そうな顔をするとフローリアの口を横から指で挟んだのであった。

 

「そっちの口をまず塞がないとかしらねー?」

 

「じょ…じょうらんですよー?ピヨピヨグチの刑は勘弁してくださいよー…」

 

「ピヨピヨ…?ピヨ?」

 

ヒナは不思議そうに二人のやり取りを見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして食べ終えてRASNらの目の前の皿はウエイトレス風星たぬきらに片付けてもらっていた。

 

「ふぅ…御馳走様でしたね。」

 

「…!」

 

「うん!…あっ!コヨミまだチョコレートあげる人いるから行ってくるね!」

 

「キャンキァウン!」

 

「…オーララ!セッシャはスール達にチョコを渡さねばいけないでござる!セッシャはここで失礼するでござる!」

 

コヨミはハッと思い出すとトタトタと酒場からタローと共に出て、フランはコヨミらと同様思い出したがバッとその場から姿を消したのであった。

 

「…ピヨォ…すぅ…」

 

「……。」

 

RASNの膝上のヒナは瞼を閉じており、RASNは頭を埋めているヒナの背に手を置いて支えていたのであった。

 

「随分心地良さげに寝てますね…」

 

「…そうね…ふぅん紅茶も中々良いものね…。」

 

「帝国産の茶葉で淹れたお茶ですからね、味はアヤメ大尉の御墨付きですよ!船長もどうぞ!」

 

「…!」

 

カモメは残った人に紅茶を振る舞っていたのであった。

 

「…あの船長…」

 

「…?」

 

「…その…良かったらでいいんですが、ヒナちゃんを代わりに抱えてあげましょうか?ずっとそれでそれだとツラそうかなって…」

 

カモメはRASNの前に紅茶を置くとそう提案したのであった。

 

「…!」

 

「はいっ!それじゃ…こっちに。」

 

カモメはにぱっとなるとコヨミが座ってた席に座りRASNからヒナを受け取り、頭や背中を優しく撫でたのであった。

 

「よいしょと…」

 

「んぅ…ママ…」

 

「…!えへへ…」

 

「……。」

 

カスミはカモメがヒナを嬉しそうに抱えているのを眼を細めて見ていた。

 

「カスミ…不味いですよこれは…!」

 

「…何がかしら?この紅茶別に不味くは…」

 

そしてそんなカスミの隣のフローリアは何故か焦っておりカスミは更に眼を細めてフローリアも見ていた。

 

「…そうではないですよ!このままではヒナちゃんのママの座が…!」

 

「……はぁ……、そんなの狙ってないわよ…全く…」

 

するとカスミは紅茶を飲み干して溜め息をつき、席を立ったのであった。

 

「…あっ!待ってくださいよ…!」

 

そしてフローリアはそんなカスミを追って酒場から出たのであった。

 

「あっ、行っちゃいましたね…どうしたんでしょうか…?」

 

「…?」

 

カスミとフローリアを見送った二人は不思議そうに首を傾げていた。

 

「………。」

 

そして今まで静かに食事をして紅茶も啜っているメアが紅茶のカップ越しにRASNとカモメを見ていた。 

 

 

 

 

 

 

「それにしても中々起きてくれませんね…」

 

「…!」

 

暫く時間も経ち酒場に残っている人もかなり少なくなっており、カモメに抱えられているヒナは未だぐっすりと寝てしまっている。

 

「………。」

 

そして未だにメアは席を離れずケーキやパフェも注文して何杯か平らげていた。

 

「…やっぱりちゃんと部屋で寝かしておいた方が良いですよね…」

 

「…!」

 

「それじゃ私は部屋に行ってきますね…んしょっと。」

 

そう言ってヒナを抱えるとカモメは酒場から出て残ったのはメアとRASNだけとなった。

 

「……。」

 

「…?」

 

そしてメアはRASNを見つめながらもパフェを静かに食べていた、だがそっとRASNの方にへとまだ平らげていないパフェを一個差し出したのであった。

 

「食べて良いわよ…?」

 

「…!」

 

「…中々良いわよねここのパフェって、そういえばさ…」

 

「…?」

 

RASNはパフェを受け取ると食べ始めメアはRASNの顔と向き合わせないように話していた。

 

「…今日バレンタインだけど…コヨミちゃんやヒナちゃん以外にも貰ってるわよね…?」

 

「…!…、……!」

 

RASNは指折り数えて五本の指を広げたのであった。

 

「五人ね…と言うことはやっぱ私が最後なのね…」

 

「…?」

 

「あっ、何でもないわ…それより…これ。」

 

メアはそう言うと立ち上がり近づくと四角い箱をRASNへと手渡したのであった。

 

「…それと、これも貰ってくれる?」

 

そしてそのままRASNの首にチェーンソーの刃の様なネックレスを通したのであった。

 

「…!?」

 

「なんかね、チョコだけじゃ物足りないかなって思って…どうかな?」

 

「…!」

 

「…!…ありがとう…!」

 

メアは眼を見開きボソッと聞こえないように呟くとギュっと抱き締めたのであった。

 

「…?!」

 

「………あっ!ごっ…ごごご…ッッ…!?」

 

だがメアはハッと気付くと顔を赤くし慌て後退りをすると声にならない声を上げ、酒場の扉をぶち抜く勢いで出ていったのであった。

 

「…?……。」

 

RASNはメアの行動に困惑しつつも酒場の扉を調べ壊れてないかを調べたのであった。

 

 

 

 

そして壊れてない扉よりRASNは酒場から出たのであった。

 

「……。」

 

「はぁ…はぁ…あっ、RASN…!」

 

出てすぐに出会ったのは息を切らしたカスミであった。

 

「…?」

 

「心配無用よ、そもそも私達ってスタミナ無限じゃない?」

 

「…??」

 

「…まぁいいわ、それよりこれ渡しそびれていたわね。」

 

首を傾げるRASNへとカスミは桜模様の和紙に包まれた箱を渡したのであった。

 

「…!」

 

「はいはい、どういたしまして…あとこれもね?」

 

カスミはRASNの返礼を淡々と流して渡した箱の上に赤と黒の桜模様の財布を置いたのであった。

 

「…?」

 

「まぁ、アンタには結構世話になってるしね…チョコだけじゃ足りないかなって思ってセツナ達と一緒に選んでみたのよ?」

 

「…!」

 

「そう、お気に召してくれたなら嬉しいわね。」

 

そう言ってカスミは嬉しそうに微笑んだのであった。

 

「それに…これでお揃いかしらね…」

 

「…?」

 

「…何でもないわ。それより別にお礼とかはいいから、それじゃ…」

 

カスミはそう言い顔を合わせぬ様にその場から去った。

 

 

 

 

 

 

 

-飛行島 RASNの部屋-

 

「…。」

 

RASNは酒場から出てから自分の部屋にまた着くまで様々な人や郵便屋に出会い、そして様々なチョコやお団子を貰っており机上には青薔薇模様やハートマークたっぷりや同じハートマークでも蝙蝠も描かれたりと多種多様な数十個の箱が置かれていたのであった。

 

「んっふっと…おーい!…ってここにもいないかー。」

 

すると少し開いていたドアからキャトラが体を出してから声を出したのであった。

 

「…?」

 

「あ、RASNいたんだー…そういやどうかしらー?」

 

キャトラはニヤつきヒョイっとRASNの肩に乗って机上を見下ろしたのであった。

 

「ふんふん…予想より何個か多いじゃない、やるわね!」

 

「…!」

 

「ん?誰を探してるって?…アンタが知ってるかどうか分かんないけど…クロトラっていう黒い猫知らない?」

 

「…?!」

 

「そうね…特徴は私を黒くしたみたいな感じで…アンタみたいな赤いのが少しあって…アンタみたいな眼の色してたっけ…?」

 

するとキャトラは特徴を述べているとRASNの髪や眼をまじまじと見ていたのであった。

 

「…気のせいかしらね…まぁ前みたく無断で何処かに行っちゃったのかしらね…?」

 

「…。」

 

「何でアンタがそんな顔すんのさー…まぁいいわ、取りあえず…!」

 

キャトラは気まずそうな顔をするRASNの肩から降り、ドアの近くに置いてあった箱を机上に乗せたのであった。

 

「中々見つからないしこれアンタにあげるわ、でもクロトラに会ったらキャトラからってちゃんと言って渡しなさいよ!」

 

キャトラそう言ってから少し開いていたドアから出ていき、残された箱を手にしたRASNは少し複雑そうな顔をしていた。

 

 



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