ちょっと?変わったコードギアス (はないちもんめ)
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1 出会いのきっかけなんて誰にも分からない

ちょっとご都合主義過ぎですかね?


~ナリタ日本解放戦線本部~

 

「何だと!?もう一度言ってみろ、桐島一等兵!!」

 

「落ち着け、草壁」

 

「いや、ですからぁ」

 

自分より明らかに身分が高いと思われる上司に怒鳴られているにも関わらず、飄々とした態度を崩さずに桐島彰は答える。

 

「止めましょうって、こんな作戦。成功するわけありませんし、成功したって馬鹿な貴族が数人死ぬだけです。メリットの割りにリスクが高すぎますよ」

 

「何をバカな!そうすれば、日本解放戦線の存在意義を日本人に主張できる!」

 

「それで?」

 

だから、どうしたと言わんばかりに桐島は続ける。

 

「主張してどーすんですか。こんなことすれば、クロヴィスも黙っていない。掃討作戦が始まります。ガチンコでブリタニア軍とぶつかります?まあ、勝つ見込みはないわけじゃありませんけど、勝率は低い。片瀬少将はそーゆー作戦は好まんでしょう。」

 

しれっと当たり前のことのように桐島は続ける。

 

その言葉にいよいよ堪忍袋の緒が切れたのか草壁は腰に下げた自らの日本刀を手に取った。

 

「言いたいことはそれだけか?己の命が惜しい臆病者は日本解放戦線にはいらん!この場で切り伏せてくれる!」

 

日本刀を手に取った草壁に対して事態を静観していた周囲の人間も流石に止め始めた。

 

「止めろ、草壁中佐!」

 

「藤堂!何故止める!」

 

「ここは仲間を粛清する場ではない。皆で話し合う場だ!桐島は自分の意見を述べただけだ!桐島!お前も口が過ぎるぞ!今すぐこの場から出ていけ!」

 

「しょーちしました」

 

藤堂の言葉で桐島はスタスタと扉の方にまで歩き、大人しく部屋から出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、肩がこる」

 

会議室を追い出された俺はグルグルと肩を回しながら1人呟く。やっぱり俺には集団行動は合わんのかねぇ。そんなことを考えていた俺に声をかける物好きがいた。

 

「よう、またやったなバカ」

 

「そのバカに声をかけるあんたも相当だろ卜部さん」

 

そう言って笑いながら俺の隣に並ぶ。完全に組織で浮いてる俺に話しかけるのなんてこの人くらいだろう。

 

もしくは仙波さんか藤堂さん。千葉さんと朝比奈さんには嫌われてるから小言しか言われない。

 

まあ、千葉さんは分かるけど朝比奈さんは何故嫌うんや。何、ホモなの?

 

「そんなこと考えてるから、嫌われるんだよ」

 

「何故分かる」

 

顔に出過ぎだと更に笑われる。まあ、好き放題やってるのに藤堂さんに認められてるお前が気に食わんってのもあるだろうけど。そんなことを言いながら持ってきていたコーヒーを飲む。(もう片方の手には俺用のコーヒーがあった。うーん、イケメンや。顔以外。)

 

「お前があそこまで止めたってことは今度の作戦そんなに勝ち目がないのか?」

 

「藤堂さんがやるなら、多少はあるけどね。草壁さんには荷が重すぎでしょ」

 

「勝率を表すならどのくらいだ?」

 

「俺が千葉さんに告白して成功する確率くらいだな」

 

「つまり、ないってことだな」

 

何と失礼な。当たってるけど。いや、ワンチャン…ないな。

 

まあ、あの片瀬少将が大切な藤堂さんをこんなことに使う訳ないけど。藤堂さんがいなくなったら、この組織持たんしな。

 

「お前が手伝ったらどうだ?メンバー的にお前も選ばれる可能性高いだろ」

 

「あの草壁さんが俺の意見を聞くと思う?」

 

「…無理だな」

 

「でしょ?」

 

あー、憂鬱だ。負けると分かっている戦いに行かなくちゃならんとは。

 

「まあ、元気出せ!まだ結果が決まってる訳じゃないんだからよ!」

 

そう言って卜部さんはバシッと俺の背中を叩く。卜部さん知ってる?それって死亡フラグって言うんだぜ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、こうなるよな」

 

作戦は失敗。目的の貴族を1人に怪我を負わせたくらいで部隊はほぼ全滅。

 

草壁さんは生き延びたみたいだが。自分の命を惜しむ人じゃないし、悔しいだろうなぁ。

 

俺?死なないように一番逃げやすい位置にいたよ。お陰で生き延びたよ。とはいえ…

 

「下水道から逃げなきゃならんとは…まあ、死ぬよりマシか」

 

くそ、この包囲網じゃ二、三日はゲットーまで行けんから租界にいなきゃいけんのに、この匂いはマズイ。安心できる場所まで来たら風呂に入ろう。って、ん?

 

「子供?しかもブリタニア人か?」

 

歩いてる先に倒れてる女の子を見つけた。死んでるかと思ったが、息をしてる音が聞こえることから生きてるらしい。どう考えても荒事をする身なりじゃないし、どうやらテロに巻き込まれたか。

 

くっそ、誰だよテロなんてしたのは。俺らだよ、チクショウ。

 

このまま放っておくのは罪悪感的な意味で俺の心が持たない。しょーがない。助けるか。

 

「おい、大丈夫か?しっかりしろ?」

 

「…ん?…お兄様…じゃ…ない?」

 

んなもん見れば一目瞭然…ってこの子目が見えないのか。

 

「残念ながら俺はお兄様じゃねーな。だから、そのお兄様の所まで連れてくよ。歩ける?」

 

「あの…すいません。私足が…」

 

目が見えなくて歩けない上にテロに巻き込まれるとは…運が悪い何てレベルじゃねぇ…

 

「んじゃ、おんぶして送ってやるよ。ちょっくら揺れるよ?」

 

「は、はい。ありがとうございます!えっと、あなたの名前は…?」

 

「俺?俺か?んーと」

 

本当の名前を言って良いものか。まあ、いーや。バレても困らんし。

 

「桐島彰だ。嬢ちゃんは?」

 

「桐島さんと言うのですか。私はナナリー・ランペルージと言います。あの…桐島さんはどうして私を助けてくれるのですか?」

 

これが俺とナナリーの出会いだった。そして、これがきっかけで俺の運命を変える究極のシスコンと出会うことになるのである。

 

何てことを今の俺は全く知る由もないのだった。

 

「いやまあ、この爆破事件を起こしたの俺たちだからね。罪悪感ってやつ?」

 

「え!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




とりあえずは、ここまで。
続くかは未定です。


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2 誤解はさせるものではなく解消するもの

主人公はロリコンじゃないんだよ?本当だよ?


「はあ!はあ!はあ!」

 

時間は夜になろうとしている。しかし、そんなことはどうでも良いと言わんばかりに、爆破テロで荒れ果てた現場の側をルルーシュは走り続ける。

 

「ルルーシュ様!」

 

「「ルルーシュ!!」」

 

「ルル!」

 

「咲夜子さん、会長、リヴァル、シャーリー!!ニーナ!ナナリーは、ナナリーは見つかりましたか!!」

 

折角の日曜日。ナナリーと一緒に出掛けていたルルーシュは幸せな一日を過ごすはずだった。

 

しかし突然起こったテロのパニックでルルーシュはナナリーと離ればなれになってしまった。

 

ルルーシュはナナリーを探そうとしたのだが、現れた警官に危ないからと現場から遠ざけられてしまった。

 

しかし、それで究極のシスコンであるルルーシュが諦めるはずもなく素早く警備の隙をついてナナリーを探し始めたのだが、一向に見つからず夜になってしまった。

 

帰りが遅いルルーシュとナナリーを心配した小夜子はルルーシュに電話を掛けナナリーが行方不明になってしまったことを知った。

 

そして、自分もナナリーを探そうと屋敷を飛び出した小夜子とその時偶然鉢合わせた生徒会メンバーも事情を聴き、一緒に探していた。

 

藁にもすがる思いが伝わる悲壮な表情で話しかけてくるルルーシュに対して言葉をかけることができずに下を向く。

 

その反応で察したルルーシュは再びナナリーを探し始めた。

 

それを見て慌てて全員でルルーシュを止めようとした。ルルーシュの顔色がとてつもなく悪くなっていたからだ。

 

「いけません、ルルーシュ様。このままでは、ルルーシュ様の体が持ちません。後は私が探しますからルルーシュ様は休んでいて下さい。」

 

「そうよ、ルルーシュ。ちょっとは休まないとあんたが壊れちゃうわよ」

 

「俺のことはどうでも良い!!」

 

普段ならば絶対に聞かないルルーシュの決死の怒鳴り声に近づいてきていたメンバーの足が止まる。

 

「ナナリーが!ナナリーがいなくなったんです!俺のことなんて気にしてないで早くナナリーを」

 

その時丁度ミレイの携帯が鳴り始めた。祖父からだと知り慌てて電話を取る。

 

「何、おじいちゃん。事情は話したでしょ?今はちょっと電話に出れる状況じゃ…え?…えー!?ナナリーから電話があった!?」

 

急展開に驚きを隠せない一同だが、驚くよりも前にミレイから電話を奪い取っていたルルーシュが話始める。

 

「すいません、会長失礼します!理事長!ナナリーは、ナナリーは、一体どこから電話を!?怪我は!?いくら電話をかけても出なかったのに一体どうやって電話を!?」

 

『落ち着け、ルルーシュ。一度に聞かれても答えられんわい。私も詳しいことは聞いとらん。ただ、親切な人に助けられてアッシュフォード学園まで運んでくれたらしくての。今は家で休んでおるそうじゃ。』

 

「そうですか。良かった…」

 

ホッとして気が抜けたのか思わずその場で座り込んでしまったルルーシュだが、一早く妹に会いたいという気持ちが勝ったのか即座に立ち上がる。

 

「では、俺はこのままアッシュフォードに戻ります。理事長ありがとうございました。では、これにて。お礼はまた後日させて頂きます。」

 

そう言うと電話を切り、お礼を言って会長に返し、鬼気迫る表情でリヴァルに迫った。

 

「リヴァル早くバイクを出せ!速度は最大限だ!お前が捕まっても構わん!」

 

「何言ってんだよ、お前!?お前が構わなくても俺が構うわ!!」

 

「ナナリーの無事を確認する。それが今の戦略の最優先事項だ。後のことはどうでも良い。」

 

「お前最低だな!?」

 

お互いに必死なのは分かるが、周りから見ればコントにしか映らない。

 

突然戻ってきた何時もの日常に見ていた女性陣は笑顔を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~アッシュフォード学園~

「お兄様たちの居場所は分かったか?」

 

電話を掛け終えたナナリーに桐島は置いてあったルルーシュ家の晩飯を食べながら(当然、ナナリーの許可は取っていない)話しかける。

 

ナナリーを担ぎながら下水道から脱出し、家まで連れてきたまでは良かったが、家には誰も居なかった。

 

目が見えず、歩けない少女を1人残して帰るのも気が引けたので家の人が帰るまで居座ることにしたのだ。

 

「はい。お兄様や小夜子さんの電話に繋がらなかったので理事長に。どうやら、皆で私のことを探してくれているそうです」

 

「まあ、あんな事件に巻き込まれたらな。これも旨そうだな。そりゃ、探しに行くだろ。旨いなぁ。愛されてる証だ。タレが効いてるんだな。良かったな。いやぁ、ウメェ」

 

「は、はい。あの…食べるか誉めるかどっちかにしてくれません?」

 

旨いんだから、しょうがない。いやはや、これを作ったやつの料理の腕は大したもんだな。

 

「いやはや、久し振りに旨いもん食ったな。後、ビールとかある?」

 

「ありませんし、あっても呑んじゃ駄目です!彰さん、未成年じゃないですか!」

 

大丈夫、大丈夫。問題ない。後もう少しで20だから。ここまでいけば誤差だから。

 

「たっく、頭が固いな。これだからお嬢様育ちは。てか、ランペルージって聞かないな。これでも結構知ってる方だと思うんだが。無名な貴族か?それにしちゃ、育ちが良さそうだけど」

 

「え?え…と…はい」

 

何さ、その反応。困った後に下向いちゃったよ。せめて、困ったように笑ってよ。突っ込めるから。

 

なーんか、事情があるみたいだな。今度調べてみるか。

 

まあ何にせよ、今一番大切なのは

 

「おーい、ナナリー。白ご飯とかあるか?スープがあるからぶっかけたいんだけど」

 

「まだ食べるんですか!?」

 

腹が減ってるんだから、しょうがない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、満足。満足」

 

「随分食べましたもんね。ふふっ。彰さん美味しそうに食べるから私も結構食べちゃいましたよ」

 

いやぁ、やっぱり人助けってするもんだよね。情けは人のためじゃないんだよ。

 

ここまで寛ぐともっとダラダラしたくなってくる。ダメもとで頼んでみようか。

 

「んじゃまあ、腹もふくれたし、匂いが気になるからシャワー浴びたいんだけど良いか?」

 

「勿論良いですよ。どうぞ」

 

何の問題もないかのようにナナリーが勧めてくる。

 

何て良い子なんだ。これは俺としてもサービスをせざるを得ない。さて、何をしてあげようか。

 

「よし、じゃあ、ナナリーも入ろうか」

 

「何でそうなるんですか!?」

 

顔を真っ赤にしながらナナリーが質問してくる。俺は何か不味いことを言ったか?

 

「何か問題あるのか?ナナリーも結構汚れてるから洗ってやろうと思ったんだが」

 

「その心遣いはありがたいのですが…あの…その…」

 

顔を赤くしてモジモジしながらボソボソと呟く。

 

なるほど、そういうことか。流石に俺も理解した。

 

しかし、これは大きな誤解だ。この誤解は解かなくてはならない。何だ?何を言えば誤解を解いて貰える?

 

頭の中に雷鳴が轟いた。これだ。ハッピーエンドへと至る道はこれだったのだ。

 

未だに顔を赤くしているナナリーの肩を掴み、真剣な顔で見て告げる。

 

「安心しろ、ナナリー。俺は貧乳には興味がない」

 

告げた瞬間俺は見事なアッパーで吹き飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「解せぬ。何故殴られた?」

 

「彰さんは一度デリカシーという言葉を調べた方が良いと思います」

 

ナナリーと二人で風呂に浸かりながら内容のない会話をする(名誉のために言っておくが、俺はタオルであそこを隠しているし、ナナリーはしまってあった水着を着ている。ナナリーはそれでも抵抗したが、汚れてる服を着続けるのも嫌だったのか渋々納得した。)

 

「そんな馬鹿な。俺ほどデリカシーを分かっている奴はいない」

 

「訂正します。彰さんはデリカシーを調べる前に自分のことを理解するのが先ですね」

 

心なしかナナリーの対応が冷たくなっている気がする。距離が近くなったんだな、きっと。

 

「さて、暖まったし髪でも洗ってやろうかな。プリンセス。お手を拝借」

 

「ありがとうございます。エスコートはしっかり頼みますね?」

 

照れてはいるが、なかなかの返しじゃないか。俺は笑いながらナナリーの手を掴み、抱き抱えながら風呂桶を出ようとするが、慣れていないので体勢を崩してしまった。

 

「任せて下さいって、ちょっ!?やばっ!?」

 

「えっ!?キャッ!!?」

 

危うくナナリーの頭がタイルに激突する所だったが俺の手で何とか回避した。しかし衝撃でナナリーは気を失ってしまった。

 

「いてて、おい、悪いな、ナナリー大丈夫か?」

 

返事がない。完全に気を失っているようだ。しょうがないこのまま起こして

 

「ナナリー!?ここにいるのか」

 

向こうに運ぶわけには行かないようだ。恐らく兄だと思われるメチャメチャイケメンのブリタニア人が風呂場に凄い勢いで入ってきた。

 

妹の無事を見て安心するかと思いきや信じられないものでも見たかのように立ち尽くし震えている。

 

何故こんなにも動揺しているのかと疑問に思い、冷静に今の状況を分析してみる。誤解を招くようなことはないはずだ。

 

 

~分析開始~

 

男の目の前には誰かが少しでも押せばランデブーしそうな距離にいる気を失っている水着姿の中学生。

 

しかもその男は全裸(転んだ拍子にタオルが飛んでしまった)

 

家にはさっきまで二人だけ。

 

 

~分析終了~

 

 

 

 

誤解しかしない状況だった。

 

どうする!!?何て言えば納得して貰える!?このままじゃ俺ロリコンであり、犯罪者じゃん!!

 

ナナリーを起こすか?いや、どう考えても今にもブチギレそうなこの兄がそれを待ってくれる訳がねぇ!!

 

泣きたくなってきた。

 

いや、俺にはまだ希望がある。パンドラの箱にも希望が残っていた。さっきはだめだったけど、今回なら

 

「ど、どーもお兄様はじめまして」

 

 

 

 

 

 

 

直後お兄様の怒声が屋敷内に響き渡った。

 

 

 

 




普通に考えたら次話で主人公殺されますね


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3そして誤解は解けないで続いていく

生徒会メンバーってこんなキャラだっただろうか……


人生とは思いがけないことの連続である。

 

こんなはずじゃなかった。

 

こうなるはずだった。

 

考えればキリがない。

 

だからこそ、未来は分からないという前提に立って今できる最大限のことをするのが大切だと俺は思う。

 

え?何が言いたいかって?いや、つまりさ

 

「あの、せめて服を着させて貰えませんかね?このままじゃ俺風邪ひいちゃう」

 

「ダマレ」

 

「あ、はい。すいません」

 

このお兄様の逆鱗を修めるために、最大限のことをしようってことさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガツン、ガツン、ガツン。

 

裸で床に正座させられてる(せめてもの慈悲で腰にタオルだけはつけさせて貰った)俺は、この状況を打開すべく辺りを見渡した。

 

左…さっき風呂場で気絶したナナリーが寝ている。メイドさんが手当てをしてくれているが、まだ目覚めないようだ。起きれば、万事解決なのだが起きないことにはしょうがない。

 

ガツン、ガツン、ガツン、ガツン。

 

右…あの後、すぐに来た女の子(皆、妙に顔レベルが高い)と男の子のブリタニアの学生がまるで犯罪者でも見るかのような顔で見ている。

失礼な。誤解だよ、誤解。紳士なテロリストだよ。あ、どっちにしても犯罪者か。

しかし、この分では援護は期待できない。右も左もダメか…はてさて、どうするか。

 

ガツン、ガツン、ガツン、ガツン、ガツン。

 

正面?無理だよ、無理。もう、これ援護とか期待できるもんじゃないよ。だって、お兄様が断罪者みたいな顔して座ってるんだもん。怒りとかを超越しちゃってるもん。スーパーサイ○ジンみたいになってるもん。

 

しかもお兄様はさっきから、ガツン、ガツンとチェスの駒を机にぶつけてるけど怖すぎだからね。物は大切にした方が良いと思うよ、とかの冗談も言えないレベルだからね。

 

「…思うんだが」

 

「何でしょう、お兄様」

 

「貴様にお兄様と言われる筋合いはない!」

 

「ひっ!!?」

 

「ま、まあまあ、落ち着けルルーシュ!!話が進まないから!!」

 

「そ、そうだよ、ルル!!とりあえずは、話始めないと!!」

 

怒りのままに立ち上がったお兄様を見て思わず悲鳴をあげてしまった。とても怖い。以前、藤堂さんに惚れてる女の子を藤堂さんに紹介してあげた後の千葉さんの反応くらい怖い。

 

しかし、このままでは話が進まないと判断した周りがお兄様を止める。ナイスだ、学生供!後で飴をあげるぞ!

 

「そ、そうだな、シャーリー、リヴァル。どうやら、取り乱してしまったようだ」

 

「いや、俺が悪いんですよ。申し訳なかったです。距離がある呼び方が不満だったんですよね。すまない、兄貴。今度から気を付けるよ」

 

「……」

 

「ルル!ルル!落ち着いて!果物ナイフを振りかざしてどうするの!?」

 

「落ち着けルルーシュ!!流石にそれはシャレになってねえ!!まだ刑は執行されてないぞ!推定無罪だ!」

 

「そうだよ、ルルーシュ。それじゃあ、殺せないでしょ。はい、これ。一応研いでおいたから」

 

「ああ、ありがとう。ニーナ助かるよ」

 

「助かるよじゃねぇだろ!!何を言ってんだ、お前!それに、ニーナーーー!!お前このSSで始めて喋ったと思ったらそのセリフか!!?一体何路線で行くつもりなんだ!?」

 

「え?イレブンだし問題ないでしょ?」

 

「問題しかないよ!?何で放火犯にライターを渡すような真似をしてるの、ニーナ!!?」

 

「まあ、皆落ち着けよ。兄貴、嬉しいのは分かるが喜びは素直に表現してくれねぇとわかんねぇよ」

 

「「そして、お前は何で火事の現場に油を被って突っ込んでいくんだーーー!!?」」

 

ニーナから貰った包丁を振りかざし、今にも降り下ろしそうなルルーシュを取り押さえるリヴァルとシャーリー。そして、それを煽るニーナと殺されそうになっているにも関わらずルルーシュの怒りを買い続ける男。

 

まさにカオス。

 

この現状を見て流れに乗り遅れた何時もは騒動を引き起こす側のミレイはふと思う。

 

「え?これは私が静めないといけないの?」

 

勿論です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ、はあ、はあ!!良いだろう話くらいは聞いてやる!」

 

「流石はお兄、うぷっ」

 

「はいはいはい、折角ルルが落ち着いたんだから余計なことを言うのは止めましょうねー!?」

 

「必要なことだけ話せ!余計なことは話さなくても良いから!」

 

必要なことだと?彰はチラリとお兄様の方を見る。

 

今にも悪魔にでもなりそうな程怒り狂っているお兄様を見て改めて思う。

 

(え?無理じゃね?)

 

ここまで怒っている人間を宥める言い方など彰には思いつかなかった。

 

何を喋っても怒らせることにしか繋がらない気がする。

 

彰は怒りを買うのは得意だが、宥めるのは苦手なのだった。

 

しかし、彰は慌てない。この程度の苦難など幾らでも乗り越えてきた。

 

「タイムアウト!」

 

「「「……は?」」」

 

「だから、タイムアウトだよ。タイムアウト。話を纏めるから少し時間をくれ。そして、オレンジの髪の女とそこのモブっぽい男。ちょっとこっち、来い」

 

「え?私?」

 

「誰がモブだ、誰が!」

 

そう、自分が思いつかないのならば、誰か他の人に考えて貰えば良いのだ。

 

(すげえな、俺冴えてるわ)

 

男の方はブツブツ文句を言っているが、言いながらもこっちに来る。

 

ああ、こいつ良い人で終わるタイプだな(確信)

 

頼みながら、こんなことを考える辺り控えめに言ってもクズである。

 

 

 

~作戦会議中~

 

(で、何で呼んだの?)

 

(本当だぜ、タイムとか言ってる場合じゃねぇだろ)

 

(いや、お兄様を宥める方法を教えて貰おうと思ってな。あのお兄様が好きなものとか何か知ってるか?)

 

(ナナちゃん)

 

(ナナリー)

 

(え?何?ガチモンのシスコンなの?)

 

(ガチモンてか、何というか……なあ?)

 

(うん、まあ……間違いなくこの世で一番大切にしてると思うよ)

 

(何てことだ……おい、お前らから上手く言ってお兄様の機嫌を取ってこい)

 

((無理))

 

(諦めるのがはえーんだよ。諦めたらそこで試合終了なんだよ)

 

(試合というより、命が終わりそうじゃない?)

 

(黙れモブ2号)

 

(ちょっと!?リヴァルと一緒にしないでよ!!)

 

(おい、どういう意味だシャーリー!!)

 

(いや、そーいう意味だろ)

 

(原作でも最後まで目立たなかったしねぇ)

 

(それな)

 

(おいい、メタ発言止めろぉーーーー!!!)

 

~会議終了~

 

「もういい!!こうなったら、ナナリーを叩き起こして俺の身の潔白を証明してやる!」

 

「おい、馬鹿止めろ!今度こそやべぇぞ(ルルーシュが何をするか分からないという意味で)」

 

「そーだよ、ナナちゃん気絶してるんだから!!」

 

「馬鹿はお前らだ!俺の命がかかってんだよ!」

 

ギャーギャーと騒ぐ三人を差し置いてルルーシュは別の方向に動き出していた。

 

「ニーナ。騒ぎにならないで人を消す手段を考えてくれ。会長。人一人をここから運び出したいので、人手を貸して下さい」

 

「うん、分かった」

 

「いや、貸さないからね。そして、あんた大分ぶっ飛んできてるわね、ニーナ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっぱり、ちょっと短めですね


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4日本人の文化・・・それは

今年最後の投稿ですね・・・間に合って良かった


「・・・なるほどな」

 

ようやくカオスの状況が収まり、まともな話し合いが行える空気になったので桐島はようやくナナリーとの出会いから今に至るまでの流れを説明した。

 

自身が日本解放戦線のメンバーであり、テロを起こしたグループにいたことだけは黙っていたが。

 

テロに巻き込まれたナナリーの家族であるルルーシュには後で教える予定だったが、他の人には教えない方が良いだろうという判断からだ。

 

イタズラに怖がらせる必要はないし、学生ならば知らない方が良いと思ったのかもしれない。

 

桐島(いや、だって警察とか呼ばれたら面倒臭いし)

 

……思ったのかもしれない。

 

「そっか、そんな状況になりながらナナちゃんを助けてくれたんだ……ありがとう、桐島君」

 

「俺からもお礼を言わせてくれ。ありがとう桐島」

 

「生徒会長である私からもお礼を言わせて貰うわ。ありがとう桐島君」

 

「ありがとうございます桐島様。ナナリー様を救って下さって。本当に何と申し上げれば良いか……」

 

その場のほとんど全員からお礼を言われて桐島も有頂天になる。

 

「いやあ……はっはっはっ。何を言っているんですか。人助けをするなんて当たり前じゃないですか。情けは人のためにあらずってね。日本人なら皆心掛けてることですよ」

 

何て素晴らしい人なんだという目で見られて、更に誇らしげになる桐島。

 

ただのマッチポンプであるのだが、ここまでいくと清清しいものである。

 

「……何なのよ、イレブンの癖に」

 

しかし、ニーナだけはまだ桐島に敵意を向けている。

 

「ちょっとニーナ!失礼でしょ!!」

 

「そうだぜ、ニーナ!!わざわざナナリーを助けてくれた人に」

 

「助けた何てまだ分からないじゃない!こんなイレブンの言うことを信じるなんて皆どうかしてるわよ!あの爆発だって、この人達がやったんじゃないの!?」

 

その通りである。

 

「ニーナ!幾らなんでも言い過ぎよ!そんな訳ないでしょ!!」

 

残念ながら、そんな訳があるのである。

 

「申し訳ありません、桐島様。私の方から謝罪を」

 

「いえ、良いんですよ」

 

当たり前である。本当のことなのだから。

 

しかし、そんな事実など知らない、かのように物憂げな顔をしながら、桐島は語る。

 

「日本人ってだけで差別を受けるのはもう慣れました。でも、思うんですよ……皆が幸せな世界を作れたら良いなって。難しいですかね」

 

寂しそうな顔をして語る桐島に同情的な視線が向く中桐島は考える。

 

(やべぇよ、あの眼鏡の子正解知ってるよ。やべえよ、コ○ン君だよ。何とかあの子を騙せる手段を考えないと)

 

この男は一回くらい死んだ方が良いかもしれない。

 

(何とかあの子の敵対心を和らげる方法はないか……待てよ?何か喜ぶものをあげたら日本人のイメージも良くなるんじゃないか?日本人の文化で眼鏡で地味で大人しい女の子が喜ぶものと言えば……何だ、ちょうど良いものがあるじゃん)

 

「ニーナさん」

 

「な・・何ですか」

 

「もしかして、日本人のことが苦手ですか?」

 

「そ・・・それに何か問題があるんですか!!??」

 

「いや、問題は無いですよ。価値観なんて人それぞれですし」

 

そうは言いながら、徐に彰は自分のバッグを広げて中にある袋をニーナに渡す。

 

「ただ、もしかしたらニーナさんが日本人のことが嫌いなのはもしかしたら日本人のことを知らないからかもしれません。ですから、これを受け取って下さい」

 

「こ、これは?」

 

「日本人の文化です。これを見ればニーナさんも日本人のことを好きになってくれるかもしれません」

 

ニーナは不審に思いながらも袋の中を開けてみる。そこには

 

「こ、これは!!!」

 

ニーナの頭の中に電流が走る。

 

「あなたが神か?」

 

「BL?同人誌?何のことです?」

 

「彰さん・・・」

 

「何でしょうか?」

 

ニーナは顔を赤らめながら手を差し出し、桐島は悪い笑顔を浮かべながら、その手を握る。

 

「日本人の文化って素晴らしいですね!!」

 

「分かってくれて良かった」

 

「「「ええええええ!!!???」」」

 

「ちょっと待てえ!!!!お前一体ニーナに何を渡した!?」

 

ニーナの日本人嫌いを知っている他の面々は驚愕の表情を浮かべ、リヴァルは思わず桐島に詰め寄った。

 

「だから、言ったろ?日本人の文化だよ」

 

「それが何かって聞いたんだよ!!」

 

「何だよ、そんなに女の子の秘密知りたいのか?そんなだから、モテないんだよ。本命の女の子に振り向いて貰えないんだよ」

 

「そ、そ、そ、そんなことねえし!!結構モテてるし!!」

 

「いや、あんたはモテてないでしょ」

 

「「うん」」

 

「会長!!??皆も酷くね!!??」

 

ここぞとばかりに、リヴァルをからかい出す生徒会メンバー。これで話は穏やかな方に流れたかのように見えた。しかし

 

「リヴァルがモテるかどうかはどうでも良いが」

 

「ルルーシュ!!??どうでも良くねえよ!!」

 

「お前の話を完全に信じる気にはなれん」

 

話に加わらずに冷静に見ていたルルーシュは、騙されてはくれなかった。

 

「ちょ、ちょっとルル!!言い方を」

 

「現状、桐島が言ったことは飽くまでも桐島が言っただけだ。俺に話が本当かどうかを確かめる手段がない以上俺に桐島を信じることはできない」

 

「そ、そうかもしれないけど」

 

周りのメンバーは桐島を庇いたかったが、ルルーシュの言葉は正論なので、フォローすることはできない。

 

しかし、そんなルルーシュの言葉を聞いて桐島は内心ルルーシュに好感を持っていた。

 

状況や雰囲気に流されず、冷静に事実だけを見て判断できるその姿が好ましく感じたからだ。

 

「ふう・・・とはいえ、ナナリーを助けてくれたのもまた事実・・・か。会長。皆も遅いし、親も心配だろうから、もう帰って下さい」

 

「ま。そうだな。子供は寝る時間だ」

 

「桐島君も同い年くらいでしょ!!てか、え?もうこんな時間!!??」

 

「やっべ、もう帰らないと!!」

 

「本当だ、もう帰らないと。ありがとう、彰君。日本人について教えてくれて」

 

「変わったわね、ニーナ・・・じゃあ、私も帰るわね。本当にありがとう桐島君。ルルーシュ。あんまり虐めちゃだめよ」

 

「会長の中で俺はどういう人になっているんですか・・・」

 

そんなことを言いながら生徒会の他のメンバーは帰って行った。

 

その姿を笑って見送っていたルルーシュは全員が完全に帰ったことを見送ると一転真顔になり、咲世子に話しかけた。

 

「咲世子さん。申し訳ありませんが、ナナリーを部屋まで運んで貰えませんか?俺は桐島と二人で話したいことがありますので」

 

しかし、その申し出はルルーシュの身を案じる咲世子には受け入れがたいものであった。

 

確かに、ナナリーを助けてくれたことには感謝をしているが、身元不明の不審者を自身の主と二人きりにすることはできない。

 

「ルルーシュ様。それは」

 

「お願いです。咲世子さん」

 

咲世子は断ろうとしたのだが、ルルーシュに真っすぐに見つめられて、それ以上の言葉は出てこなかった。

 

「・・・承知しました」

 

咲世子はナナリーの体を静かに抱え上げ、ナナリーの部屋の方へと運ぶ。咲世子が出て行ったことで、そこにはルルーシュと桐島の二人きりになる。

 

「くくく・・・あんた大分慕われてるな。友達も可愛い子ばっかりだし、人生勝ち組だねえ。羨ましい」

 

「そんな話は良い」

 

立ち上がっていたルルーシュはドカッと椅子に座る。

 

「本当のことを話せ」

 

「本当のこと?」

 

「とぼけるな。お前のさっきの話は本当の話が大部分なのだろうが、嘘も大分含まれているんだろ?だから、お前が話易いように二人きりになってやったんだ」

 

「何の話か分かんねえなあ」

 

「ふん、白々しい。お前の話は所々抜けがあった。お前の住所、現在何をしているか、そして何より何でナナリーが倒れた場面に出くわしたのか。それらの説明が酷く曖昧だった。何より気に食わないのは、お前は自分の話に抜けがあることを承知の上で俺たちに話したように感じられる点だ。まるで、後で本当のことを話すのだから構わないと思っているかのようにな。正直に言え」

 

ルルーシュは冷たい目で桐島を見る。

 

「お前は何者だ?」

 

桐島は感心する。自分が残した僅かな手掛かりを基に、ここまでの推測ができるルルーシュに。

 

(まだ学生でこれかよ・・・天才ってのはいるもんだな)

 

「そこまで分かってるなら、俺の正体も薄々分かってんだろ?ルルーシュ」

 

「・・・テロリスト・・・か、それとも他国の諜報員か。そんな所だろ」

 

「正解、正解、だいせーかい」

 

パチパチと拍手をして正解を祝福する桐島をルルーシュは冷静に見つめる。

 

「改めて、自己紹介といこうかお兄様」

 

すくっと立ち上がって桐島は告げる。

 

「俺は日本解放戦線の桐島彰一等兵だ。以後、宜しく」

 

これが日本を、いや、世界をひっくり返すことになる二人の本当の意味でのファーストコンタクトであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




来年もこれぐらいのペースで投稿できたら良いな(希望)


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5何だかんだありつつも、物語は加速していく

新年初投稿です。


「日本解放戦線……なるほどな」

 

「へぇ、これは信じるのか?」

 

「信じない理由がない。それならば俺の疑問点は解消されるし、お前が此処で一般人の俺に嘘をつく必要もない。言いたくないならば、何も言わずに帰れば良いんだからな」

 

「本当にキレるな。お前が日本人なら迷わずスカウトしている所だ」

 

「ふん、民族差別か。やってることはブリタニアと変わらんな」

 

「まあ、否定はしねぇな。ぶっちゃけ、その通りだしな。俺自身はブリタニア人の力を借りたいんだがなぁ」

 

「何?」

 

ピクッとルルーシュは反応する。

 

「そりゃ、そうだろう。相手は世界最大の帝国様だぞ?こんな資源の少ない国だけで勝てる訳ない。勝つなら、反ブリタニア同盟を周辺の国々と結ぶしかねぇ。当然、ブリタニアの在り方に疑問を持つブリタニア人の力も借りてな。まあ、その前にそもそも」

 

「そもそも?」

 

「差別ってやつが嫌いなんだよ、俺は」

 

「……お前、組織で上手くやれてないだろ」

 

「え?何で分かるの?」

 

「むしろ、今の話を聞いてお前が組織で上手くやれてると思う方が不思議だ」

 

ヤレヤレと言わんばかりに、ルルーシュは首を振る。

 

「分からんな……何でお前はそんな異色の考えを持ちながら日本解放戦線というテロ組織に所属している?」

 

「まあ、色々あってねぇ。そんで、どうする?」

 

「何がだ?」

 

「俺をブリタニアに通報するか?ブリタニア人のルルーシュ?」

 

ニヤリと笑いながら、桐島は問いかける。

 

聞く必要もない質問だが、この傑物が何と答えるのか興味があった。

 

当然、何があっても逃げられるような準備はしていたが。しかし、そんな必要がないのではないかということも桐島は感じていた。

 

「逃げる準備はしている癖に白々しい」

 

「質問に答えていないぞ」

 

「……今のところはする予定はない。今後は分からんがな」

 

「ほお。主義者か?」

 

「別にそんなつもりはない。だが、この国に恨みを持つ貴様らの気持ちに理解はあるつもりだ……何せ」

 

ニヤリと笑いルルーシュは続ける。先程までとは違い、その顔は圧倒的な憎悪に覆われていた。

 

「俺もブリタニアには……大きな貸しがあるからな」

 

ルルーシュの雰囲気に思わず桐島は一歩下がる。

 

幾多の死地を潜り抜け、長年戦闘に携わってきた桐島でさえもルルーシュの底知れぬ怒りに一瞬寒気を感じたのだ。

 

(こいつ……何者だ?)

 

しかし、次の瞬間にはルルーシュの憎悪のマントは取り外されて普通の学生に戻っていた。

 

 

普通ならば気のせいかと思い忘れるだろうが、桐島には逆にルルーシュのブリタニアへの憎悪の深さが見えた気分だった。

 

「こんな話はどうでも良い。確かに通報はしてやらないでやるが、お前をここに居させる訳にはいかん。」

 

「まあ、そりゃそうだな」

 

そう言うと桐島は置いていた自らの荷物を持ち、帰る準備をする。

 

確かに、ルルーシュとナナリーには気になる点は多々あるが、この場ではルルーシュが喋らない限り、これ以上を知ることはできそうになかったからだ。

 

それに何より、何となくルルーシュとナナリーのことを気に入っていた桐島にとって、自分がいることで、この二人に迷惑はかけたくなかった。

 

「随分と素直だな」

 

「そりゃあ、なあ。元々長居をするつもりでもなかったしな。ごっそさん。飯は旨かったぜ」

 

そう言って、ルルーシュに背を向け、出口へと歩いていく。

 

「何時の間に食べていたんだ。後、待て」

 

「何だよ、まだあんのか。安心しろ。全部は食べてないから。ちゃんと一人前くらいは残ってるから」

 

「……明日の朝の分も考えて、五人前くらいは作ったつもりなんだがな。後、その話でもない」

 

「ああ、冷蔵庫にあったタルトの味か?ありゃあ、絶品だったな。商品化してもいけると思うぞ」

 

「食い物の話から離れろ」

 

溜め息を吐いてから真顔になり、ルルーシュは頭を下げる。

 

「ありがとう……本当に感謝する。ナナリーを助けてくれて」

 

「感謝されることはしてねーよ。あのテロを起こしたのは俺たちだ。言うならば、究極のマッチポンプだ。むしろ、お前は俺に恨みを言って然るべきだぜ?」

 

「それでも……だ。この借りは何時か必ず返す」

 

「そーかい。真面目なこって」

 

ヒラヒラと手を振りながら、桐島は家を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テクテクと歩きながら、ふと桐島は振り返りルルーシュの家を見つめる。

 

「借りは返す……ね。もう会わない方があいつにとっては幸せなんだろうがな」

 

そんな物悲しい気分に浸っていると、自分の電話の着信の音が聞こえた。

 

面倒臭そうに携帯を手に取ると着信の履歴が凄いことになっている。

 

「ほとんどが卜部さんと藤堂さんとリョウかよ……男ばっかりだな。せめて、アヤノが電話してくれよ。携帯の履歴が男臭くなるわ……はい、もしもし?」

 

『何だよ、やっぱり生きてんじゃねーか』

 

「こんな作戦で死んでたまるかよ。んで?何でお父さんがこの作戦のこと知ってるわけ?」

 

『お父さんじゃねぇ!!卜部からお前と連絡がつかねぇって電話があったんだよ!!』

 

「まあ、そりゃそうか。日本解放戦線でもないお前らの連絡先知ってるのは俺以外だとあの人だけだからな」

 

『俺は心配ねえって言ったんだがな……たく心配性だな、あいつも』

 

『良く言うよ。リョウも何だかんだ言いながら心配してた癖に』

 

『余計なこと言うんじゃねぇよ、ユキヤ!!』

 

「親子コントはそれぐらいにしとけ。んで?話は終わりか?なら、切るぞ?」

 

『待て、待て。ユキヤがお前に知らせたいことがあるんだとよ。携帯で話せる内容でもねぇから一旦こっちに来な』

 

「ほいよ、じゃあ、また後で」

 

ピッと携帯の通話を切る。同時に溜め息をはく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヤレヤレ……また何か面倒事かよ」

 

 




なかなか反逆しないルルーシュ


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6年頃の娘の扱いには気を付けろ!

珍しく早い投稿


「おー、やっと来たか」

 

「とりあえず、色々あって疲れた。ビールある?」

 

「中年のサラリーマンみたいなこと言ってるな」

 

電話を受けた桐島は面倒臭いとは思いながらも、渋々用事があるというリョウたちのいる隠れ家に向かった。

 

そこに居たリョウに文句は言われつつも、投げて渡されたビールを旨そうに飲む。

 

いやー、やはり一日の終りはこれだな。

 

あれ?そういえば

 

「後の二人は?」

 

「ユキヤはお前を呼んだ件で電話だ。アヤノは……分からん」

 

「何で?」

 

「……教えてくれないんだ」

 

「まだ怒られてんのか、お父さん」

 

「まだって言うな!!」

 

年頃の女心を分からんやつはこれだから困る。

 

「だから、あれほどお前の下着と一緒に洗うなと言ったんだ」

 

「言ってねえだろ!てか、何でお前がその事を知ってんだ!!」

 

「ユキヤから聞いた」

 

「ユキヤー!!!!」

 

怒り狂っているリョウを眺めながら、更に呟く。

 

「全く……娘は反抗期で息子は引きこもりか……お父さん失格だな」

 

「ぜ・ん・ぶ・お前のせいだろうが!!」

 

桐島はリョウに首を掴まれる。

 

大分攻撃的である。子育てに疲れたのだろう。

 

「おいおい、育児の失敗を俺のせいにしないでくんない?ヒステリーもそこまでいくと見苦しいぜ?」

 

「三年前にお前が俺たちがEUに行く船を爆破したせいで俺たちはまだこんな所にいることになったんだろうが!」

 

過去のことを未だにグチグチと……尻の穴の小さい男だ。

 

「はっ!そんな昔のことは忘れたなぁ」

 

「こ……このクソヤロウ」

 

ワナワナと震えているが全く気にしない。何時ものことだ。

 

「んで、その引きこもりの息子は何時まで電話してるんだ?」

 

「その言い方止めてくんない?」

 

ガラッと扉を開けて引きこもり(ユキヤ)が現れた。

 

「僕は外に出たくないだけだから。外に出たら敗けだと思ってるだけだから」

 

「それを引きこもりって言うんだよ。引きこもりの特徴なんだよ」

 

「甘いね、彰!今は外に出なくたって生活はできるんだよ!ネット社会万歳!!」

 

「もうダメだな、こいつは」

 

何時からこいつはこうなってしまったのだろうか。父親の教育が悪かったのだろう。

 

俺がそんな思いを抱いているとお父さんが現実世界に戻ってきた。

 

「あ、おいこらユキヤ!ネットは一日一時間にしろって言ってるだろ!」

 

「イキナリうるさいなぁ、リョウは」

 

「苦労してるな。頑張れお父さん」

 

多分無理だろうけど。そんなことを思いながらも一応応援はしておこう。

 

「だから、俺はお父さんじゃ、てか、こんな話をしてる場合じゃねぇだろ!ユキヤ!早く本題に入れ!」

 

「はいはーい」

 

ピッとパソコンのキーを押し、画面を切り替えてから俺とリョウにその画面を見せる。

 

画面にはかなりイケメンの男が写っていた。俺は迷わずパソコンの電源を落とした。

 

「「何をやってんだ、テメェはーーー!!!」」

 

「イケメン何て滅べば良い」

 

「そんな理由で話の腰を折るんじゃねぇよ!」

 

「全く……これだから、三枚目は」

 

「引きこもりのお前よりはマシだ」

 

ぐいっと残りのビールを飲み干してから呟く。

 

「で?このイケメンがどうしたって?」

 

「どんだけイケメンを引きずってんだ……たく、ユキヤ説明してやれ」

 

「こいつの名前は紅月ナオト。聞いたことくらいある?」

 

「いや、全く」

 

「まあ、弱小レジタンスのリーダーくらいじゃ名前は知らないか……でも、能力はかなりのもんだよ?下手すれば彰んとこの藤堂さんくらいに化けるかもね」

 

「へぇ、そりゃすげえな」

 

「ま、あくまでも将来的にはの話だがな」

 

リョウまで言うとなると本当なのだろう。ほー、まだそんな隠れた実力者が身近にいたか。

 

「そいつの写真を見せたということは、俺に紹介してくれとか頼まれたか?日本解放戦線に加わるために」

 

「外れ。もしかしたら、今後は頼むつもりだったかもしれないけどね」

 

「何で過去形だ?まさか」

 

「そのまさか。死んだんだよ……表向きにはね」

 

「表向き?」

 

そのニュアンスからすると生きてんのか?

 

「その紅月ナオトのグループは自分達の作戦の最中に事故ってね。その結果紅月ナオトは消息不明になった……と信じてる。リョウと撲以外は」

 

「じゃあ、お前らは見つけたんだな?」

 

「ご明察……偶然だけどね。リョウが見つけた」

 

「なら、残りのグループの奴等に教えてやれば良いじゃねーか」

 

「それが、そうもいかねぇんだよ」

 

すると今まで黙っていたリョウが会話に参加してくる。

 

「生きてると言えば生きてるんだがな……死んでるといえば死んでる」

 

何言ってんだ、こいつ。

 

「意味分からん。何だ、そりゃ」

 

「実は傷が深すぎてね。大手術になった。その結果一命は取りとめたんだけど」

 

「だけど?」

 

溜め息を吐いてから、ユキヤは続ける。

 

「意識が戻らないんだよ。医者が言うには一生このままの可能性もあるってさ」

 

「うわぁ……面倒なことになったな。だけどよ、それなら余計に教えてやれば良いじゃねーか。その状態でも見つかれば喜ぶだろ」

 

「そうしたいんだが幾つか問題がある」

 

「問題だ?」

 

コクリと頷いてからリョウが話し出す。

 

「まず、ナオトの身体を健康に保つためには人手とある程度快適な環境が必要だ。奴等程度のレジスタンスじゃ、その場所を確保できねぇ」

 

「今いる病院じゃダメなのか?」

 

「ダメだな、早く出ていくように言われてる」

 

「代わりの場所は?」

 

「決まってねぇ」

 

「……なら、余計にそいつらに渡してやれよ。俺たちが匿う必要もねーだろ」

 

冷たいように聞こえるかもしれないが、これが現状だ。全ての人を救うことなどできない。

 

「俺たちも本当ならそうしたいが、できねーんだよ」

 

「理由は?」

 

「……そいつ、アヤノの親友の兄貴なんだ」

 

「……なるほど、お前らが何でそんなに必死になってそのイケメンを助けようとしてるのか分かったよ」

 

そのイケメンを見殺しにしたら、アヤノは苦しむ。そして、助ける手立ても見つかっていない以上ぬか喜びはさせたくない……か。甘いな、こいつらも。

 

まあ、だから、助けたいと思ってしまうのだが。

 

「俺を呼んだのは匿う場所を探す手助けをして欲しいからか?」

 

「そうだよ。一ヶ月以内にね」

 

「……なかなかの難題だな。まあ、一応当たってはみるけどよ」

 

ハーッと溜め息を吐く。

 

「ほんっとうに、そのイケメンは優秀何だろうな?この苦労に見合うくらいに」

 

「間違いないよ。それは保証する」

 

ユキヤのその言葉を聞いてから、飲み終わったビールをゴミ箱に投げ入れる。

 

……外れた。

 

あーあ、幸先不安だな。

 

 

 

 

 

 

 

 




紅月ナオトの設定はオリジナルです


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7願い事は適度なものにしよう

週一投稿が続くとは……作者もビックリです。


~前話から三週間後~

「全然見つからねえ……無理だろ、こんなの」

 

リョウとユキヤから頼まれて紅月ナオトとかいうイケメンを保護してくれる場所を探しているがまるで見つからない。希望すら見えてこない。

 

「何時目が覚めるか分からなくて、日本人でテロリストで実績がない男を預かってくれる、とても親切で安全な場所に住んでる人がいる場所だと?あるかよ、そんな場所」

 

最初から無理なんだよ、こんなん。

 

ていうか、そんな場所があるなら俺が住まわせて貰うわ。

 

何故俺がこんな苦労をして、会ったこともないイケメンの世話をせにゃならんのだ。

 

あー、何だか空しくなってきた。

 

一応、万が一を考えて藤堂さんと片瀬さんに頼んだけど予想通り駄目。

 

他にも卜部さんから聞いた日本解放戦線と関わりが深い組織とかにも聞いてみたけど、それも駄目。

 

金で解決しようとしたが、そんなにリスクに見合う金を持ってる訳がねえ。

 

一応、一ヶ所だけ心当たりみたいな所がないわけではないが、あの人にも立場があるし、何よりあの人に貸しを作ると利子がとんでもないことになりそうだから、やだ。

 

やべぇ、本当につんだな。後、一週間あるけど頼める心当たりがない。

 

「てか、やっぱり、日本人じゃあ無理だな。何時ブリタニアに攻撃されるか分からんから、あんな怪我人を養う余裕はないだろうし。だとしたら、ブリタニア人に頼むしかねーけど、俺にそんなことを頼めるブリタニア人の知りあい何て……知りあい何て……あ。」

 

『この借りは何時か必ず返す』

 

そういえば、一人だけいたな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~アッシュフォード学園~

「ルル!また、授業をサボって掛けチェスに行ってたでしょ!駄目だって何回も言ってるのに!」

 

「大丈夫だよ、シャーリー。出席日数はきちんと計算してる」

 

「そういう問題じゃないでしょ!」

 

「あははー、怒られてやんの」

 

「リヴァルも!そもそも、リヴァルがルルを連れていくからこんなことするんでしょ!」

 

ここでは何時も通りの日常が流れていた。

 

しかし、この日常が作られた平和であることを知っていたルルーシュにとっては、かけがえのない時間であり、そして、何時奪われるか分からない日常であるかが分かっていた。

 

「全くもう……そういえば、ルル。彰君から連絡来た?」

 

「いや、来ていないな。でも、その内来るかもしれないな」

 

「そうなんだ……面白い人だったから楽しみだな」

 

「相手はイレブンだってのに、相変わらずフレンドリーだねぇ。ルルーシュから乗り換えた?」

 

「ちょ!?リヴァル!そんなんじゃないから!」

 

じゃれあっている二人を楽しそうに見ながら、ルルーシュは桐島から、もう連絡はないだろうと考えていた。

 

(犯罪者のあいつが学生のブリタニア人の俺たちに連絡を取るのは難しいだろうな。なかなか、使えそうな奴だったし出来れば使える駒にしたかったんだが)

 

桐島が去った後、ルルーシュはブリタニアに反逆をする期間を早めようかと考えたが、どれだけ考えてもまだ準備不足の感は否めなかった。

 

必ず借りは返すと言った言葉に嘘はないが、次に会うときまでに桐島が生きてる可能性は低いだろう。

 

(例え、奴が死んだとしても借りは返してやるさ。奴の夢の日本解放を俺がやるという形でな)

 

そんなことを考えていたルルーシュに栗色の髪の可愛らしい女の子が近づいてきた。

 

「ルルーシュ君。久し振りだね」

 

「……久し振り?申し訳ないが、君とは初対面だと思うんだけど?」

 

「そんなことないよ。ルルーシュ君が忘れたとしても私は、はっきり覚えてる」

 

そんなことを言われてもルルーシュに見覚えは全くない。

 

自分の記憶力に自信のあるルルーシュは、謎の女の目的を考えて脳をフル回転し始める。

 

(何者なんだ?この女は?)

 

そんな二人の様子に気付いたリヴァルとシャーリーは喧嘩を止めて飛んでくる。

 

「ちょ、ちょっとルル!誰よ、その子は!?」

 

「メッチャ可愛い子じゃん!お、おいルルーシュ!紹介しろって!」

 

その二人の反応で公衆の面前であることを思い出したルルーシュは即座に頭を切り替えて、何時も通りを装って話始める。

 

「いや、俺には全く見覚えがないんだよ。彼女の勘違いじゃないかな?」

 

「そ、そんな!酷い……」

 

ルルーシュの言葉に女の子はポロポロと涙を流し始める。その反応に思わずルルーシュも驚くが知らないものは知らないのだ。

 

しかし、端から見たら唯の女泣かせの男の図だ。

 

「おいー!!ルルーシュ!何を泣かしてんだ!」

 

「そーだよ、ルル!ここまでしてる女の子を知らないわけないでしょ!」

 

「い、いや。そんなこと言われても」

 

「酷い……酷いよお……」

 

女の子は顔を手で覆う。

 

「二人で話したあの夜を……忘れたって言うの?」

 

「は!?」

 

「よ、夜!?ルル!もしかして……」

 

「お前まさか……」

 

「ま、待て!誤解だ、誤解!」

 

このままでは、自分の学園での立場が不味いことになってしまう。

 

そう考えたルルーシュは泣いている女に人違いだと話しかける。

 

「ゴメン。悪いけど、俺には本当に心当たりがないんだ。人違いってことはないかな?」

 

「そんなことないよ……だって……だって、あなたはあの時

 

 

 

 

「この借りは何時か必ず返す」って言ってくれたもの」

 

そんなことをルルーシュはこの女に言った記憶はない。このセリフを言ったのは……まさか。

 

最悪の自分の想像にルルーシュの顔はひきつる。

 

ここまで自分の頭の回転が早いことを呪ったことはなかった。間違いであって欲しかった。

 

「なあ、君?」

 

「はい」

 

「もしかして、君と始めて会ったのは一ヶ月くらい前かな?」

 

「はい!思い出して頂けたのですね!」

 

「……俺が君に作ったデザートは何だったっけ?」

 

「タルトですわ。お忘れになりましたの?」

 

ルルーシュの膝が崩れ落ちる。何やら、シャーリーも錯乱しているようだが、そんなことを気にしている場合ではない。

 

ルルーシュは執念で立ちあがり、笑顔で女の腕を掴む。

 

「ああ、ゴメン。忘れていた。そうか。そうだったな。お前だったのか。久し振りに会えて嬉しいよ。思わずこの場でブチコロシテやりたいくらいに」

 

「やっだー、もう。ルルーシュ君てばー。照れ屋なんだから」

 

コツンと自分の額を叩いてくる女は、傍目から見たら可愛いだろうがルルーシュは殺意しか覚えない。

 

殺意で人が殺せたら、ルルーシュはこの女を殺しまくっている。

 

「ははは。本心なんだけどな。それじゃあ、ちょっと屋上まで来てくれないか?」

 

「いいわよ?貴方となら何処までも」

 

気色悪いことをほざく奴の顔面を叩き割りたくなったが、鋼の精神で押さえつけ、ルルーシュは女を連れて屋上へと上がっていく。

 

一方、どうでも良いことだが

 

「シャーリー!落ち着け!死ぬにはまだ早いって!」

 

「止めないでリヴァル!私はもう生きる希望が!」

 

色々と余裕がなかったルルーシュは窓から飛び降りようとしているシャーリーとそれを必死で止めるリヴァルに気付くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「こんな場所で二人きりになりたいなんて……私何かされるのかしら」

 

「その気色悪い変装と喋り方を止めろ、桐島彰。」

 

ルルーシュがそう言い睨み付けると桐島は笑いながら変装を脱いだ。

 

「いやあ、流石だねぇ。俺の変装に気付くとは。結構自信あるんだぜ?」

 

「どう考えても外見では分からん。お前がヒントを喋ったから分かったんだ。で?わざわざ、変装までして何の用だ?」

 

「いやー、ロリコンのお兄様なら、こういう格好で来た方が喜ぶかなと、おーけー、冗談だ、ルルーシュ。だから、警察に電話をしようとするな」

 

無言で携帯を取り出したルルーシュを慌てて説得する桐島。ルルーシュは、その姿を冷めた目で見て言う。

 

「たまには真面目になれ。で?本当に何の用だ?」

 

「いやー、それなんだがよ」

 

言い辛そうに頭をかく桐島。その姿にルルーシュはイライラしてくる。

 

「早く喋れ。頼みごとなら、残念なことに、本当に残念なことにお前には借りがあるからな。できるだけ叶えてやる。」

 

「んー、じゃあ、喋るけどよ」

 

一転真面目な顔になり、桐島は続ける。

 

「お前の家で日本人で意識不明なテロリストの男を匿うことってできる?」

 

 

 

 

 

「はあ?」

 

さしものルルーシュにも全く想定外の願いだった。




コードギアスの続き早く始まって欲しいですね。


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8母親の愛情は無償の愛情

大分ご都合主義の内容になっていますが、ご容赦を。


「ほう、なるほど……大分面倒なことになっているな」

 

桐島から事情を聞いたルルーシュがまず言ったことはそれだった。

 

「事情は分かった。だが、そんな面倒をお前がする必要があるのか?」

 

「まあ、普通に考えたらないんだよなぁ」

 

桐島とてそれくらいのことは理解している。というよりも、桐島もルルーシュと同じことを考えている。本当は、こんな面倒なことに関わりたくはなかったのだ。

 

「そんなに大事か?そいつらのことが」

 

「そんなんじゃねぇよ。まあ、簡単に言えば」

 

桐島は頭をかいてそっぽを見ながら続ける。

 

「お前にとってのナナリーみたいなもんだ」

 

「そうか……」

 

桐島の発言を聞いてルルーシュも優しい顔になる。

 

「つまり、お前にとって、リョウとかいう奴らは、かけがえのない自分の命よりも大切な宝であり、至高の存在ということか」

 

「あ、訂正します。俺にとってできの悪い家族みたいなものです」

 

ルルーシュの余りのシスコンぶりに思わず桐島も敬語になってしまう。簡単に言えば、ドン引きである。

 

「何だ、なら最初からそう言え」とルルーシュは舌打ちをしているが普通に考えたら、ルルーシュの発想にはならない。

 

今日も思いっきりシスコン全開である。

 

「まあ、そんなわけなんだよ。実際、どうだ?」

 

「どうもこうもない。お前、それをすることによって俺のリスクがどれだけ上がるか分かっているのか?」

 

もちろん分かっている。この話は、ルルーシュにとってデメリットしかない。そんな男を匿っているのがバレたらどんな目に合うか分からない。それが分かっているからこそ、桐島はお手上げというように手を挙げる。

 

「分かってるよ。聞いてみただけだ。そんなことをしてもお前には何の得も「まあ、構わんがな」マジで!?」

 

予想外のルルーシュの返事に思わず桐島も大声になる。そんな簡単に了承して良いのか?

 

「ただし、3つ条件がある。一つ目は、その男の治療費は全部お前持ちだ」

 

ルルーシュは指を一つ挙げて言う。それは桐島にとって当たり前のことであり、条件に挙げるつもりもなかった。

 

「二つ目は?」

 

「そいつを看護する人を寄越せ。小夜子さんに俺とお前の契約の仕事をさせるつもりはないからな」

 

「それも問題ない。三つ目は?」

 

「これが一番大切なことだ。もし、万が一そいつの存在がブリタニア側にバレたら俺はそいつを見捨てる。この三つが呑めるなら預かっても良い」

 

「……え?そんな条件で良いのか?」

 

桐島としても、そんな条件でこんな面倒なことを引き受けてくれるのならば有り難いこと、この上ない。

 

何故ならば、ルルーシュの言った条件は桐島にとって条件でも何でもなく最初から頼むつもりのことだったからだ。

 

しかし、だからこそ、腑に落ちない。完全にリスクとリターンが比例していない。

 

「ふん。言ったろう?お前には借りがあるから、大抵の願い事は聞いてやるとな。そいつはテロリストらしいが、別に有名でもないんだろ?」

 

「ああ。というよりも、無名だな」

 

「なら、簡単だ。ナナリーと小夜子さんにはそれらのことは伏せて、テロに見舞われた可哀想な日本人を看護しているということにしておく。日本人だから、何処の病院も受け入れてくれないとな。少し強引だが、お前に頼まれたと言えば不審にも思わんだろう」

 

「にしたって、バレる可能性はあるぞ?」

 

「その時はその時だ。バレた時用のカバーストーリーは考えてある。まあ、必要ないだろうが」

 

いや、いつ考えたんだよと当たり前のことのように言うルルーシュに内心で思う桐島。

 

そんな桐島を無視してルルーシュは続ける。

 

「バレるとしたら、そいつをお前が屋敷に連れて来たのを見られる時くらいだ。まさか、それくらいのことが出来ないとは言わないな?」

 

挑戦的に笑って言うルルーシュに思わず笑みが浮かぶ。

 

(は、上等じゃねーか)

 

「なめんなよ?何年テロリストやってると思ってんだ?」

 

これにて契約は完了とでも言うように桐島はルルーシュから背を向けて歩き出す。

 

その背中を見ながらルルーシュは問いかける。

 

「何時来る気だ?」

 

「明日の深夜だ。安心しろ。時間には遅れねぇ」

 

バッと屋上から飛び降りる桐島にギョッとしてルルーシュは屋上の縁に近寄るがロープかなにかを利用としたらしく桐島は無事に着地していた。

 

しかし、変装をし直すのを忘れていたらしく日本人という以前に女装をしている変質者として警備員に追われている。当然である。

 

「さてと」

 

桐島のことだから運び出すのは、しっかりとやるだろう。ルルーシュも準備をすることはあるが、それほど手間がかかるものではない。問題は

 

「ルルーシュ!あんた、女の子と関係があったんだって!?何で私に報告しないのよ!誰、誰!?どんな子!?」

 

「ルル!何処に行ったのよ、あの子は!?」

 

「ルルーシュ!!お前あの状態のシャーリーを放っておくなよ!大変だったんだからな!」

 

「ダメだよ、ルルーシュ!ルルーシュの相手は彰君って決まってるんだから!受けか、攻めか!問題はそれだけだよ!」

 

完全に誤解したこいつらの誤解を解くには、どうしたら良いかということである。

 

余談だが、ルルーシュはこの誤解を解くことが一番大変だったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、桐島は何の問題もなく紅月ナオトをルルーシュの家へと運び込んだ。

 

介護をする人には、そのイケメンの母親という丁度良い人が見つかった。ルルーシュの家で介護だけさせては、目立つので家政婦としても仕事をすることも頼んだが、母親としては、死んだと思っていた息子が生きていただけで満足であり、何の迷いもなく受け入れてくれた。

 

行く宛のない息子を匿ってくれているルルーシュに、その母親は泣いてお礼を言っていたが、その反応にルルーシュが戸惑いまくっていた。その姿に爆笑していたら、ぶん殴られた。痛くなかったけど。

 

紅月ナオトの世話をする以上、住み込みで働くことは明白であり、ナナリーと小夜子さんとの関係も不安だったのだが、この母親は要領は悪いが、性格は素直で物凄く良い人だったのであっという間に受け入れられた。嬉しい誤算だ。

 

ちなみに、給料は要らないと言っていたのだが変なところで真面目なルルーシュはしっかりと金を払っていた。何処にそんな金が?と聞いたら「色々とな」と言って笑っていた。本当に何なんだよ、こいつ。凄すぎだろ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「娘を探して欲しい?」

 

紅月ナオトと、その母親がどんな感じかを聞くために久し振りにルルーシュの所に訪れた桐島にルルーシュはそう言った。

 

「ああ。何でも一ヶ月程前にブリタニア人の父親のブリタニア側の妻の所に強引に引き取られたらしい」

 

「あの母親がそんなことを頼むか?」

 

「いや、最初は言わなかった。だが、休みの日の度に何処かに行くから、心配したナナリーが聞いたらしい。ナナリーは優しいからな。どうにかできないかと俺に聞いてきたんだよ」

 

「なるほどな。まあ、そんなに面倒なことじゃなくて良かったわ」

 

兄貴の世話をする場所を確保することに比べたら圧倒的に簡単だ。名前さえ分かれば、一日で分かる。

 

まあ、アヤノに聞いても分かるとは思うが。友達らしいし。

 

「んで?その娘の名前は何て言うんだ?」

 

「本名は紅月だが、今は別名を名乗っているらしい。今の名前は

 

 

 

 

 

カレン。カレン・シュタットフェルトだ」

 

 

 




ようやく、次であの子を出せますわ。


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9人生には予想外の出来事に対処する対応力が必要

カレンのお母さんの名前が分からなかったので、このSSでは紅月仁美さんということにします。


結果から言うとカレン・シュタットフェルトは一日所か二、三時間で見つかった。近所にすむ、そこそこ有名な貴族だったからだ。

 

ここまで簡単なら、あの母親でも何時かは見つけられただろうな。多少時間はかかると思うが。

 

まあ、見つかったのは良いのだが。

 

「まさか、探していた女の子がルルーシュと同じ学園どころか同じクラスだとは……何なの、この偶然?」

 

てか、何であいつは名前を聞いて気付かないんだよ。どんだけ、クラスに興味がないんだよ。どんだけ、興味が妹に振り切ってんだよ。

 

一応、この事をルルーシュに報告したら『そうか。なら、後は俺がやっておく。心配するな』と言っていたが、本当に大丈夫なのだろうか?

 

短い付き合いだが、あいつは合理的に命令をしたりすることは天才的だが、人の気持ちを酌むということは案外ポンコツだ(妹は例外)

 

なので、こんな簡単なことでも面白い、ごほん。大変な事態を引き起こしている可能性があるので一応確認に向かっている。

 

たまには、テロリストらしい活動をしろって?大丈夫、大丈夫、この間痛い目を見たばかりだから上の方も暫くは動かないから。俺は週休三日で活動してるから。

 

と、こんなことを言っている間に着いたな。

 

「おーい、ルルーシュ今どんな」

 

俺の思考はここで止まった。何故なら目の前で

 

「何であんたがお兄ちゃんのこと知ってるのよ!」

 

「……」

 

赤髪の可愛い女の子がルルーシュの首を両腕で持ち上げていたからである。

 

流石に予想外過ぎるだろ。何で、こんな状況になってんだよ。あいつは何をやったんだよ。

 

「ねぇ!何とか言いなさいよ!」

 

いや、無理だと思うよ。あんたが首を絞めてるから喋れないんだよ。口をパクパクさせるだけになってんだよ。

 

どうしたものかと思いながら、見ているとルルーシュと目が合う。ようやく俺の存在に気付いたらしい。

 

一応手を振ってみる。すると何か口を動かしている。えーと、何々?

 

『こいつを止めてくれ』

 

聞こえないなぁ笑

 

いやー、残念だ。残念ながら何を言っているのかさっぱりだ。口を読んだ所、助けを求めているように見えたが気のせいの可能性もあるしねぇ。いやー、残念だ。

 

別に普段スカしたイケメンが苦しむ様を見てるのが楽しいとか思ってないよ?本当だよ?

 

そんな訳で笑いながら、二人が遊んでいるのを黙って見ているとルルーシュが物凄い形相で俺を見てきたが、女の子に掴み上げられている状況では全然怖くない。むしろ、笑える。

 

そのうち、気絶する手前までいったのかルルーシュが口から泡を吹き始める。すげぇ、始めて見た。

 

しかし、ヒートアップしている女の子はそんなルルーシュの状況に気付いていないようだ。しょうがない、そろそろ助けてやるか。

 

「あのー、そこのお姉さん?もしもし?」

 

「何よあんた!今忙しいんだから邪魔しないで!」

 

「いやー、俺も邪魔したくはないんだけどね。ちょっと落ち着いて掴んでる男の状況見てみ?」

 

「え?」

 

俺の言葉で多少落ち着いたのか、少し冷静になって掴んでいるルルーシュを見る。すると、そこには

 

「…………」

 

青い顔を通り越して白い顔になって半分昇天しているルルーシュがいた。

 

「ええ!?ちょ、ちょっとあんた!しっかりしなさいよ!戻ってきて!」

 

そのルルーシュを見て慌てて手を離して介護をし始める女の子。何を見てるのか知らんが、ルルーシュは「ああ。母さんそんな所にいたんだね。待ってて今行くから」とか言ってる。ルルーシュの母さんが何処にいるのかは知らんが、そこには行っちゃいけない気がする。

 

そんなことを思いながら、死にかけているルルーシュと慌ててる女の子をボケッと見ていたのだった。

 

 

 

 

 

~30分後~

「……本当に死ぬかと思ったぞ」

 

「ご、ごめんなさい。つい、興奮しちゃって」

 

ようやく話が出来るようになったルルーシュから話を聞くと、クラスで一人になったカレンを中庭に連れ出して、「お前の兄のことを知っている。放課後、気付かれないように屋上に来い」と言って去ろうとしたら、いきなり首を絞められたらしい。

 

本題から入りすぎだろ。死んだと思ってる肉親のことについて話したこともない男が知ってるとか言われたら勘違いもするわ。まあ、カレンがこんなに力があるとは思わなかったってのもあるだろうけど。こんなに可愛くて華奢なのにルルーシュを簡単に持ち上げる筋力があるとは。

 

そのカレンは復活したルルーシュに散々嫌みを言われて今はシュンとしているけど。

 

まあ、突然手を出したのは悪いけど、デリカシーが無さすぎるルルーシュにも非はあるから、そこまで気にしなくても良いんじゃね?結局生きてるし。

 

「まあまあ。ルルーシュも大したことなかった訳だし、カレンもそんなに気にしなくても良いよ」

 

「俺の台詞だがな。そもそも、お前があそこで止めなかったから、気絶まですることになったんだ」

 

「さて、話を本題に移そう」

 

「お前後で覚えていろ」

 

ルルーシュが何か言ってるけど気にしない。さてと

 

「今さら放課後まで待ってって言っても多分気になって無理だろうし、もう、ルルーシュの家に連れて行った方が早いだろ。昼休みだが、抜けても大丈夫か?」

 

「おい、何を勝手に」

 

「いや、もう無理だろ。ここまで言って後三時間くらい待てと言われても我慢できないだろうし」

 

「そうかもしれんが、二人揃って抜けたら目立つだろ」

 

「お前ら二人に関係性があるなら別だが、ほとんど知らないんだろ?名前だって知らなかったくらいだし。なら、別にお前ら二人が居なくなったって誰も疑わねーよ」

 

「ふむ、まあ、一理あるな」

 

「あのー、ちょっと良い?」

 

「「ん?」」

 

俺たち二人が話し合っているとカレンが話しかけてくる。

 

「何だ、カレン?」

 

「いや、用って程のことはないけどさ、あんた日本人よね?」

 

「見ての通りな。ついでに、男だよ。今度デートしない?」

 

「嫌よ。それよりもさ」

 

一瞬でフラれた。泣きたくなる。

 

「何で日本人のあんたとブリタニア人のルルーシュが仲良く喋ってんの?そもそも、何でこんな所に普通にいるの?」

 

「仲良くはないがな」

 

「またまたー、お兄様ったらツンデレなんだから」

 

「むしろ、死ねと思っている」

 

どうやら、お兄様は思っていることと真逆のことを喋ってしまうらしい。今度病院を紹介しよう。

 

「まあ、ルルーシュとは色々あったんだよ。そして、何で日本人の俺がこんな所に堂々と来れるのかというと」

 

喋りながら顔に手を当てる。すると、まあ、不思議。

 

「こういうのが特技なんだよ」

 

一瞬でブリタニア人の顔に早変り。これが、俺の潜入調査をする上での最大の武器である。

 

「「な!?」」

 

それを見たカレンとルルーシュは流石に驚いている。てか、ルルーシュには一回見せたはずだが。

 

「目の前で見せられるのは違うだろ。成る程な……こんな特技があるからこそ、あの時も普通に俺の家に来れた訳だ」

 

「そゆこと」

 

日本人が行くと目立つ場所に行く時のために、藤堂さんから変装術を教わったのがきっかけなのだが、予想外に俺の筋が良かったらしく、教えた藤堂さんも驚愕していた。「変装の域を超えている」と藤堂さんは言っていた。

 

「まあ、こういうことさ。納得したか?」

 

変装を止めながら、未だに驚愕しているカレンに問う。

 

「あ、うん。てか、藤堂さんってもしかして……」

 

「そう。ご存じ『奇跡の藤堂』さ。一応俺は日本解放戦線に所属してるんでね」

 

この呼び方したら、藤堂さん怒るんだけどね。まあ、あんだけ藤堂さんが頑張って勝ったのに『奇跡』の一言で片付けられちゃたまらんわな。

 

「……お前、そんなに簡単に自分がテロ組織に所属していることを言っても良いのか?」

 

「いーんじゃない?カレンも所属してるんだろ?」

 

そもそも、日本人が無許可でこの学園にいることだけでも射殺されるだろうし。今更、罪の一つや二つ増えた所で問題はない。

 

「……私の所はあんたの所みたいに有名じゃないけどね。弱小のレジスタンスよ」

 

「まあな。俺も存在さえ知らなかったし」

 

「おい、否定してやれ。例え、事実だとしても傷つくだろ」

 

「あんたら二人揃って失礼よ」

 

青筋を浮かべながら喋るカレン。何か気に障ったのだろうか。カルシウムが足りないのかもしれない。胸に栄養が全て行ってる可能性がある。

 

俺としてはもう少しお互いを知るために雑談をしていたかったのだが、合理主義の鬼であるルルーシュは話をまとめて先に進めようとする。

 

「こんな話はどうでも良い。どうする?放課後にするか?出来れば、そっちの方が良いんだが」

 

「今行くわよ。決まってるじゃない」

 

「そうか」

 

うんざりという感じでため息をはくルルーシュ。まあ、諦めろ。この子、絶対に止まらないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

~ルルーシュ家にて~

 

「お兄ちゃん!!」

 

死んだと思っていた兄の姿を見て、最初は信じられないという顔をしていたが、現実だと気付いたのか涙腺が崩壊して、号泣しながら紅月ナオトに抱きついている。

 

途中で仁美さんも入ってきて、二人で感動を分かち合っている。

 

親子水入らずにした方が良いと判断したルルーシュと俺はそっと部屋を出ていった。詳しい事情は、仁美さんが話してくれるだろう。それにしても

 

「あの三人だけ見てると理想の家族なんだけどねぇ。父親は何をやっているのやら」

 

「……父親なんてそんなものだろう」

 

あり?何、この微妙な感じ。

 

「なあ、ルルーシュ?言いたくないなら言わなくても良いけどお前の両親は?」

 

「……母親は死んだ。父親は生きてはいる。父親だとは認めていないがな」

 

「今何やってんだ?」

 

「お前の両親はどうしたんだ?」

 

そこまでは答えられないか。デリケートな問題っぽいな。

 

「こんなことやってる段階で察しはつくだろ?死んだよ。もうずっと前にな」

 

「そうか……」

 

微妙な沈黙が続く。しかし、暫くすると部屋からカレンと仁美さんが出てきた。

 

「ありがとうございます。ルルーシュ様。彰様。本当に何とお礼を言ったら良いのか……」

 

「お母さんから話は聞いた。二人とも本当にありがとう。」

 

その言葉を俺は「いやいや、それほどでも」と受け取っておいたが、ルルーシュは、そっぽを向いていた。素直じゃないやつめ。そんなほのぼのとした空気の中でカレンが話始める。

 

「ね、ねえ、ルルーシュ?ちょっと頼みがあるんだけど」

 

「「駄目だ」」

 

「まだ何も言ってないんだけど!?」

 

言われたルルーシュだけじゃなくて、俺も答えてしまう。想像はつくわ。駄目に決まってるだろ、そんなの。

 

「ふん。最後まで聞かなくても想像はつく。この屋敷で生活したいと言うんだろ?無理だ」

 

「気持ちは分かるが、無理だな。急に新しい使用人を雇って更に新しい同居人が増えたら、紅月ナオトの件がバレる可能性が上がっちまう」

 

その言葉にギャーギャーとカレンは言うが、無理なものは無理だ。諦めて、学校が終わってから放課後の間までにしろ。

 

「それにしても、カバーストーリーが必要だ。いきなり接点がなかったカレンがいきなり俺の家に来るようになれば、流石に怪しまれる」

 

「そうなんだよなー。そこをどうするか」

 

俺とルルーシュと仁美さんの三人で何とかカレンを宥めた後に、そんな話をしながら四人で玄関の方に向かう。ん?誰かいるな。てか、あれ?あいつらって

 

「あ!ルルまた授業サボったでしょ!あれだけ駄目だって言ってって……彰君!?カレンも!?何でここにいるの?」

 

「おー、皆久し振り」

 

「軽いな、おい!!結構久し振りだぞ!?てか、本当にカレンさんがいる!?何で!?」

 

「あ!彰君!久し振り!ねぇ、ねぇ!彰君から貰った本を参考にして私も本を書いてきたの!もし、良かったら」

 

「あー、うん。ニーナ、それは後でね。久し振りね。彰君。それで、何でカレンはルルーシュの家にいるの?面識あったっけ?」

 

「え、えーと、それは」

 

しどろもどろになりながら答えようとするカレンだが、言葉が出てこない。ルルーシュも何かを考えているようだがまだ上手い言い訳が思いつかないらしい。まあ、まさか、いきなり見つかるとは思わんしなぁ。

 

助けてやりたいが、何と言うべきか。んー、どうするか……あ、簡単な口実があるじゃん。

 

「いや、俺はともかく、カレンとルルーシュが一緒にいるのは変じゃないだろ?この二人付き合ってるんだぜ?」

 

全員何を聞いたのか分からないという顔をして、一瞬の静寂が走る。しかし、その一瞬後

 

「「「「「「「「はあ!!!???」」」」」」」」

 

学園中に轟くのではないかというくらいの大絶叫がルルーシュの家に響いた。

 

 

 

 




ちょっと無理矢理過ぎましたかね?


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10テンションが高い人たちに合わせるのは結構大変

最近の寒さで体調を少し崩しました……皆さんも気を付けて下さい


空が青い。

 

改めて見てみると空の青さというのは何故こうも清清しいのだろう。

 

ルルーシュは、いつになく達観した気持ちで空を見て、そんなことを考えていた。心は晴れやかだった。しかし、目は死んでいた。そんなルルーシュの態度を人によっては、こう呼ぶかもしれない。

 

「さあ!始まりました!第一回!チキチキ!ルルーシュの本妻は誰なのか!!選手権!司会は私生徒会長ミレイと!」

 

「ご存じ皆の人気者の熊さんでいかせて頂きます」

 

「ご存じと言っても多分誰も知らないと思いますが、何故そんなぬいぐるみを着ているのですか?」

 

「男は多少身秘密があった方がミステリアスでしょう?」

 

「くーっ!意味は分かりませんが、とりあえず、私と熊さんの二人で本日は司会を進めさせて頂きます!さあ、皆様本日はよろしくお願いします!」

 

そう。現実逃避と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしてこうなった。

 

頭を抱えながら優勝賞金?として舞台の上に座らされているルルーシュは、ここ数日何度となく自らに問いかけた質問を再びぶつける。

 

~二週間前~

 

「え!?ちょ、ルル!?嘘でしょ、嘘だよね!?だって、ルルとカレンが喋ってる所なんて見たことないよ!?」

 

「そーだぜ、ルルーシュ!!お前いつの間にそんなに羨ましいことになってんだよ!」

 

「また嘘なんでしょ!?嘘だって言ってよ!ルルーシュの相手は彰君じゃない!」

 

「ちょ、ちょっと皆落ち着いてくれ」

 

ルルーシュは事情を聞きに集まってきたメンバーの対処に追われていた。援護を求めにカレンの様子を伺ったがカレンもカレンで大変な目にあっていた。

 

「カレン!あんた何でそんな面白いこと早く言わないのよ!水臭い!」

 

「カレン……あなたは、まだ子供だと思ってたけど、もうそんな年になったのね……ナオトも喜ぶわ。ルルーシュ様ならお母さんは大賛成よ」

 

「会長!?お母さんまで!?い、いや、私とルルーシュはそんなんじゃないから!」

 

「照れちゃって!可愛い!」

 

……カレンの援護は期待できそうにない。何を考えているんだ、あいつは!?確かに、カレンがここにいる言い訳としては最適かもしれんが、後始末が大変だろうが!

 

心の中で悪態をつきながら、こんな騒ぎを引き起こした元凶を目で追うが、居なくなっている。

 

嫌な予感がした。居たら、居たで問題を引き起こす奴だが居なければ居ないで、何をしでかしているか分からないという不安がある。

 

慌てて、辺りを見渡し、桐島の姿を探すと窓の近くに寄っていた。本能的に、ルルーシュは桐島の行動を止めようとしたが間に合わず、桐島は窓を開けて言い放った。

 

「何だって!?カレン・シュタットフェルトとルルーシュ・ランペルージ副会長が付き合ってるだって!?」

 

直ぐに窓の外から悲鳴と怒号が響き渡った。

 

一瞬、呆然としてしまったルルーシュだが、我に返ると射殺さんばかりの眼差しを桐島に向けるが、本人は笑顔でサムズアップを返してきた。果てしなくウザかった。

 

それに気付いたシャーリーが桐島に詰め寄った。

 

「何やってんのよ、彰君!?そ、そんな嘘を学園中に広めたりして!?」

 

「嘘?何でそんなこと分かるんだ?」

 

「だ、だって、そうじゃない!ルルとカレンは今までほとんど付き合いがなかったんだよ!?それなのに、いきなり付き合ってるとかあり得ないでしょ!?」

 

ルルーシュとしても全く同感である。幾ら、そんなことを言ったところで無理がある。ルルーシュはカレンのことをほとんど知らないのだし、カレンもルルーシュのことをほとんど知らないのだから、何処かで必ずボロが出る。

 

そのはずなのに、桐島は余裕の表情で笑う。嫌な予感が広がっていく。

 

「甘いな、シャーリー」

 

「な、何がよ?」

 

「確かに、ルルーシュとカレンは付き合いが浅い。ここ、一週間くらいの付き合いしかないんじゃないかな」

 

「だ、だったら、やっぱり」

 

「知らないのか?シャーリー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワンナイトラブという言葉を」

 

空気が凍った。ルルーシュをしても、思考が一瞬固まってしまったが、誰よりも早く現実に返り、皆の様子を見ると全員が石像のように固まっていた。

 

カレンだけは、顔を真っ赤にさせ、パクパクと口を動かしていたが、言葉は出てこなかった。

 

このままでは、とんでもないことになると判断したルルーシュは事態を納めようとしたが、それよりもニーナの悲鳴の方が早かった。

 

「イヤーーーーーーー!!??ルルーシュの裏切り者ーーーー!!??」

 

叫ぶや否や、泣きながら飛び出して行ってしまった。裏切るも何も、俺は何も言っていないと思いながら、ルルーシュは、呆然とその後ろ姿を見つめていた。

 

それで正気に戻ったのか、シャーリーも顔を真っ赤にして桐島に問いかける。

 

「ワンナイトラっ!!??ワンナイトラブって、え!?何言ってんの?」

 

「おいおい、何言ってんの?ワンナイトラブって言ったら意味は一つしかないだろ?」

 

やれやれと言いながら、桐島は喋り続ける。

 

「そりゃ、もちろん、セッ○スしたってことに決まってんだろ?世間では童○とか、○帝とか、言われてる、ルルーシュも、処○とか言われてるカレンもこのSSでは既に経験者なんだよ。ベテランも真っ青だよ。毎晩、毎晩、ピーとか○○○とかしまくって、ギャーー!?」

 

しかし喋っている途中に、動く18禁男が突然の轟音と同時に、窓ガラスをぶち抜いて窓の外にぶっ飛ばされた。

 

ルルーシュは何が起きたのか分からなかったが、後ろを見て、その理由が判明した。

 

「……」

 

顔を更に真っ赤にさせたカレンが、息を荒くさせながら、投球後のピッチャーのような格好をしていたからだ。

 

何を投げたのかと思いながら周りを見ていると、近くにあったソファーがなくなっていることから、ソファーを投げたのだと推測できた。

 

……何十キロもあるソファーを目に見えない速度で放り投げられる女など、化け物以外の何者でもないが、事実なのだからしょうがない。

 

「え……と……何が起きた?桐島は?」

 

「気にするな、リヴァル。このSSが18禁になるのを防ぐ修正力だ」

 

「何言ってんだお前!?」

 

あいつのことだから、どうせ死んでいないだろうし、問題ない。

 

「ね、ねえ?カレン?何をしたの?カレンの方から何か飛んできたのを感じたけど?私の制服に何かがカスっていったけど?」

 

「さ、さあ?分からないわ。こほっ、こほっ。ごめんなさい、さっきから、咳が止まらなくて。こほっ。こほっ。」

 

何やら病弱をアピールしているが、どう考えても無理がある。そのはずなのに、何故か周りの全員がカレンを心配している。

 

おかしいだろ。何でさっきまで、ピンピンしてた奴がいきなり咳き込んでるんだ?何で明らかにカレンの方向から飛んできたのに、誰も突っ込まなくなってるんだ?そもそも、何でカレンは病弱何てキャラを演じてるんだ?絶対にバレるだろ。中身と全然違うんだから。

 

「大丈夫カレン?ちょっと横になってた方が良いんじゃない?」

 

「だ、大丈夫よ、お母さん。心配しないで。落ち着いたから」

 

「そうなんだ、良かった……と、ところで、カレン?ルルと付き合ってるって本当なの?」

 

「え、えーと、いやあ、それは」

 

チラッと俺の方を見ているが助け船は出せんぞ。そもそも、付き合ってるというのが無理があるんだ。諦めて嘘だと言ってしまおう。あの馬鹿がいなければ、邪魔をされはしないだろう。

 

とルルーシュは思っていたのだが。

 

「どうやら、お困りのようね。カレン。シャーリー!」

 

ルルーシュは忘れていた。

 

「こうなった以上、この問題を解決する方法は一つしかないわ」

 

ここには、吹っ飛んだ馬鹿以外に、ルルーシュの想定外の行動を引き起こす人間がいることを。

 

「恋とは勝ち取るものなのよ!カレンが恥ずかしくて言い出せないなら!シャーリーが認めないなら!納得がいくまで戦いなさい!」

 

「か、会長一体何を」

 

「今ここに!ミレイ・アッシュフォードが!第一回ルルーシュ争奪戦を開くことをここに宣言します!」

 

「「「「ええ!!!???」」」」

 

 

~~回想終了~~

 

何度思い返しても頭が痛いルルーシュ。

 

止めさせようとしたのだが、吹っ飛んできた馬鹿も舞い戻り話に乗っかったことで、ルルーシュが何を言ったところで話は進み、こんなことになってしまった。

 

次からはあの二人を組み合わせないことを固く誓ったルルーシュであった。

 

「さあ!まずは選手の紹介から始めたいと思います!」

 

「いやー、全員可愛いですね。目の保養になります」

 

ミレイと謎の熊のぬいぐるみの司会の下で、生徒は最高に盛り上がりを見せている。

 

一方で

 

(帰りたい……)

 

周りの盛り上がりにも関わらず、これがルルーシュの心からの本音であった。

 

 

 

 

 

 




何時になったら、コードとギアスと反逆が出てくるんだろうか


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11知ってると思っている相手のことも実は結構知らないもの

キャラ崩壊の期待が高くてびっくりです。

そもそも、そんなことする予定なかったって言ったら誰が信じてくれるんだろう。


何故私はこんな場所にいるのだろうか。

 

紅月カレンは真剣にそう考えていた。

 

「まずは、エントリーNo.1!優勝候補でもあるカレン・シュタットフェルト選手でーす!」

 

誰がエントリーしたのよ。誰が優勝候補よ。

 

カレンとしては、エントリーした覚えなど全くない。

 

やんわりと断ろうとしたのだが、強引どころか、ほとんど強制的に参加させられてしまったのだ。それにも関わらず

 

ウンザリした目でカレンは横を見る。

 

「ルルーシュ様を奪っちゃイヤー」

 

「何だよ、カレンさんも結局顔なのかよ!」

 

「憎しみで人が殺せたら……」

 

「信じらんない……絶対にルルリヴァが至上だと思ってたのに」

 

何故私が恨まれなければいけないのだろうか。若干恨みの方向がアレな人たちもいる気がするが、理不尽にも程がある。

 

加えて、腹立たしいことに、カレンの怒りを向ける方向がないのだ。

 

1番の元凶は会長と彰なのだから、この二人に怒れば良いと思うかもしれないが、会長に何を言ったところで無駄であろうし、彰に至っては論外である。

 

何故止めなかったのかとルルーシュに文句を言うことも考えたのだが、どうしてもできない。私以上に頭を抱えて、優勝賞品と書かれた王冠を被り、哀愁漂う姿で矢倉の上に座らされているルルーシュを見ているからだ。とてもではないが、文句など言えない。むしろ、同情すら沸いてくる。

 

「はあ……」

 

結局黙って勝つしかないのだ。負ければ、お母さんとお兄ちゃんの看病をすることができなくなるのだから。

 

とはいえ、勝つのも、それはそれで悪いと思っているのだ。何故ならば……

 

「続いて、二番人気!ルルーシュは渡さない!シャーリー・フェネットです!ルルーシュとの付き合いの長さを考えると、どっちが勝ってもおかしくありませんね」

 

「か、会長!?そんなんじゃないですから!!」

 

シャーリーがいるからだ。

 

私と違って本当にルルーシュのことが好きだということが目に見えて分かるシャーリーを差し置いて、私が勝つというのは非常に申し訳なく感じる。

 

まあ、杞憂だとは思うが。私よりも確実にルルーシュのことを知っているだろうし。

 

「最後に、大穴!ニーナ・アインシュタイン!正直、出たのがびっくりです!てか、何で出たの!?」

 

「譲れないものがあるんでしょう。私には分かります」

 

何を適当なことを言っているのだ、あいつは。

 

最後の参加者であるニーナの紹介も終わり、ようやく大会が始まる……始まってしまった。

 

「では、第一種目は……クイズです!」

 

「「「クイズ?」」」

 

「そうです。ルルーシュのことを一番知っているということをここで証明して貰います。ちなみに、全部で4問あります。一番得点の少ない人が脱落して上位二名には次の勝負をして貰います。」

 

いきなりの難問である。

 

そんなことを言われてもルルーシュのことをほとんど知らないカレンに分かるはずもない。

 

(まあ、良いか……無理なら、無理で頭を下げて頼み込めばルルーシュと彰なら別の方法を考えてくれるでしょ)

 

カレンはほとんど諦めてクイズの後のことを考えていたが

 

「第一問。ルルーシュのスリーサイズは?」

 

その内容に思わず頭を目の前にある机に強打する。

 

涙目になって周りを見ればルルーシュとシャーリーも似たようなことになっていた……というか

 

「「「ちょっと待てーーーー!!!」」」

 

カレン・ルルーシュ・シャーリーの叫びが見事なシンフォニーを奏でた。

 

「え?何か?」

 

司会の熊が如何にも不思議だという感じを出して頭を傾けている。その仕草に可愛いという人もいたが、中身の本性は可愛いという概念と反対側にいる人間である。

 

「何がじゃないで……ないと思うんですけど。そ、そのルルーシュ君のスリーサイズ何て分かるわけありませんし」

 

「そ、そーだよ!分かるわけないじゃん!」

 

「その通りだ!俺ですら知らない情報だ!答えがないものをクイズにして良いわけないだろ!」

 

三人の叫びは最もである。しかし

 

ピンポーン

 

え?という顔をした三人は、その発信源を目で追うとニーナが眼鏡を光らせていた。

 

そして……

 

「上から90・70・86です!」

 

「ニーナ選手大正解!三つともピタリ賞なので五ポイント獲得!」

 

「流石ですね。大穴の選手だけあります。さて、次のクイズは」

 

「「「いや、ちょっと待てーーー!!!」」」

 

「さっきから何なんですか、あなた方は。妨害ですか?」

 

「妨害でも何でもない!何なんだ、その数字は!何でお前らは正解を知ってるんだ!」

 

「ていうか、おかしいと思うんですけど!?何その具体的な数字!?怖いから聞きたくないんだけど、何でニーナはそんなこと知ってるの!?」

 

「いやん、聞かないでよ恥ずかしい」

 

「もうキャラブレブレじゃない!もう原作見てる人だってあんたが誰か分かんないわよ!」

 

「妄想という名の想像力は無敵なのよ……」

 

「お前は俺を脳内でどんな姿にしてるんだ!?」

 

「はい。クイズ中は静かに。常識ですよ?」

 

「常識を宇宙の彼方に放り投げてるお前に言われたくない!!!」

 

「ちなみに、こちらが答えを知っているのは屋敷に忍び込んでルルーシュに気付かれないようにサイズを測ったからです。さあ、これで良いですか?」

 

「「「常識どころか、普通に犯罪行為じゃねぇか!!誰かあいつを捕まえろーーー!!!」」」

 

「会長権限で許可したから無罪です。さあ、第二問はこれだ!」

 

「俺のプライバシーはどこへ!?」

 

この第一問のクイズで、ルルーシュ・シャーリー・カレンの三人は否応なく悟った。

 

(((このクイズこれから先も絶対に普通じゃない……)))

 

まあ、ぶっちゃけ今更ではあるのだが

 

 

 

 

 

 

 




こちらも今更ですが、ルルーシュのスリーサイズの情報は捏造です。


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12 体調管理には気を付けろ!

先に全力で謝っておきます。

全シャーリーファンの方々申し訳ありません。


普通じゃないクイズだとは思っていたが、同時にシャーリーは戸惑ってもいた。

 

(何で……何でニーナがルルのことをそんなに知ってるの?私だって、私だってルルのことを沢山見てきたはずなのに分からない何て)

 

この心の声をルルーシュとカレンが聞けば「いや、それが普通だから」と訂正してくれただろうが、生憎と心の声なので二人には聞こえていない。

 

しかし、何だかんだで目敏いミレイはシャーリーの顔を見て彼女が悩んでいるのを悟った。

 

「どうやら、迷っているようね、シャーリー」

 

「会長……え?私が迷っている?」

 

「ええ。司会の立場の私が選手に助言するなんて間違ってると思うんだけど、少しだけ言わせて貰うわ。熊さん。大丈夫ですか?」

 

「良いでしょう、許可します」

 

「ありがとう、熊さん。さて、シャーリー」

 

優しくも厳しい顔になり、ミレイは続ける。

 

「何でずっとルルーシュのことを見てきたあなたがニーナに負けたのか……それは覚悟がなかったからよ」

 

「覚悟?」

 

「ええ。自分の好きなものには素直でいるという覚悟よ」

 

その言葉に、シャーリーはごくっと唾を飲む。確かに、自分はルルーシュのことがずっと好きだったのに、行動に移さなかった。そのツケが今になって回ってきたのかもしれない。

 

項垂れるシャーリー。

 

一方で

 

「いや、覚悟なんて関係ないから。そんなもんがあろうがなかろうが、人のスリーサイズ何て分からないから」

 

「というか、何に感銘を受けてるんだシャーリーは。今の会長の言葉ペラッペラだぞ。コピー用紙より薄いぞ」

 

カレンとルルーシュは突然始まった寸劇にツッコミまくっていた。

 

しかし、そんな二人を無視してミレイは続ける。

 

「シャーリーまだ遅くはないわ。あなたの本当の気持ちは何だったの?思い出して」

 

「わ、私の……本当の気持ちは」

 

顔を赤くするが何も言えないシャーリー。それを見て再びミレイは笑う。

 

「無理はしなくて良いわ。例え今は無理でも後で出来るようになる。絶対になれる。嘘じゃない。今からあなたは今までのシャーリーじゃないわ。今日からあなたは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガン○ムよ」

 

「「何でだぁーーーー!!!!!!」」

 

思うところはあったが、黙って寸劇を見守っていたルルーシュとカレンだが突然の展開に流石に横槍を入れた。

 

「ちょ、ちょっと邪魔しないでよ、ルルーシュ、カレン」

 

「うるさいわよ!文句を言うなら自分の言葉を見直して下さいよ!良い話の雰囲気出してたのに、何でそこでガン○ム!?意味わかんないんですけど!?」

 

「いや、気持ちは分かるよ?確かに、困ったらガン○ムやれば人気出るっていう考えには確かに俺も同意できない」

 

「お前が言ってるのは視聴率の話だろうが!話が拗れるからお前は黙っていろ熊!」

 

「私も思うところがあってね……来週からスーツ週間を始めようと思ってるの。一週間だけ生徒はリクルートスーツかモビルスーツを着ないと登校できないってね。面白そうでしょ?」

 

「それってスーツはスーツでも全く違うもんだろうが!!!」

 

「ちなみに、先行して私だけ今日からリクルートスーツとモビルスーツを両方着て着心地を確かめてるの」

 

「いやあ、さっきから目線の高さが合わないから話しにくいと思ってたんですよね」

 

「今着てるの!?そんなもん着ながら司会やってたの!?」

 

「とりあえず、暖房設備がイマイチね。熊さん。記録に残しといて」

 

「はい。既に」

 

「ありがとう。流石ね」

 

「じゃないだろ!絵がないからって好き放題やるんじゃない!何でモビルスーツを着ながら司会をやってて今まで誰もツッコまなかったんだ!」

 

「皆素直の良い子達なのよ……」

 

「「そんなんで納得ができるか!!」」

 

そんなことで、一部の参加者は別の意味で盛り上がりを見せていたが、シャーリーの耳には入っていなかった。さっきの会長の言葉が頭に残っていたからだ。

 

(私の本当の……望みは……)

 

そんなシャーリーをルルーシュ達の話に参加していなかったニーナが見つめて話始める。

 

「シャーリー。そんなに難しい話じゃないわよ。自分の心の目で見れば良いのよ」

 

「ニーナ……心の目って?」

 

「自分の本心なんて考えたって見えないよ。だから、目をつぶって考えて……自分が好きな人のことを」

 

言われた通りにシャーリーは目を瞑った。そこで出てきたのはやはりルルーシュだった。

 

「考えた?そうしたら、脱がしていくの……1枚一枚ゆっくりと……そうしたら、たどり着けるはず……私と同じ境地に……ラフ○ルに」

 

シャーリーの想像したルルーシュは服を脱ぎ始めた。その姿を見てシャーリーは自分の意識が覚醒していくことに気付いた。

 

(これが……ニーナの見ていた景色……やっと私も同じ場所に立てた。今なら、分かるよ、ルル!ルルのことが!あああ、身体が軽くなっていく……)

 

「ギャーーーア!?シャーリーが鼻血を吹き出したぁ!?何この子いきなりどうしたの!?」

 

「いや、どう考えてもヤバイだろ、この量は!?救護班!救護班を呼べ!」

 

(今ならニーナにもカレンにも負けない!誰にも負けない!空の向こうにも飛んで行けそうな気がする)

 

「いや、鼻血の出し過ぎで意識飛びかけてんのよ!行っちゃいけない所に行きそうになってんのよ!」

 

「というか、血の供給が全く追いついていない!?供給と同時に鼻血が吹き出してるぞ!?」

 

カレンとルルーシュと救護班の助けにも気付かずにシャーリーは至った。

 

(そうか……これが……答え……)

 

そして、同時に倒れた。

 

「「遂にぶっ倒れたぁ!?」」

 

自らの意識が不明瞭になっていくにも関わらず、シャーリーは近くのルルーシュの手を握った。

 

「ごめんルル……私……失敗しちゃったみたい」

 

「いや、みたいじゃないだろ!明らかな失敗だろ!良く分からんが!」

 

「周囲が凄いことになってるんですけど!?血まみれ何だけど!ほとんど殺人現場何だけど!ていうか、これが全部鼻血ってある意味凄いわね!」

 

「私……何度生まれ変わっても……きっと、また、ルルのことを好きになる」

 

「そのセリフここで言っちゃうの!?原作の名シーンのセリフをこんな場面で使っちゃうの!?」

 

「ていうか、死んで良いのか!?こんなアホみたいなシーンで死んで良いのか!?」

 

「いいよね、ルル。生まれ変わってもまたルルを好きになっても……」

 

「いや、好きにすれば良いんじゃないかしら!?死なないけどね!こんなくだらないシーンで絶対に死なないけどね!」

 

「何度も……何度も……好きに……」

 

その言葉を最後にシャーリーは喋らなくなった。

 

その姿を見て

 

「「「「シャーリー!!!!」」」」

 

周りにいた会長や熊やニーナや生徒達は悲しみの涙を流した。

 

だが

 

「「いや、お前らこんな茶番のどこで感動した!!!」」

 

カレンとルルーシュは泣かなかった。当然である。

 

「普通に生きてるぞ!あんなんで死ぬわけないだろ!」

 

「何に感動したのか全く分からないわよ!ただ、変態が鼻血出して倒れただけじゃない!」

 

「うう……感動の場面でしたね……まさか……まさか……シャーリーがこんなことで死ぬなんて……」

 

「だから、死んでないって言ってるでしょうが!ぶっ飛ばしますよ会長!モビルスーツごと!」

 

「しかし、非常に残念ですが……勝負は続きます……シャーリー選手が脱落してしまったので、第一種目はここで終了……次は勝ち残ったカレン選手とニーナ選手で第二種目を行います」

 

「まだ続くの!?こんなクソくだらないことをまだ続けるの!?」

 

「いい加減にしろ、もう良いだろ!何時になったら原作にいくんだ!?そろそろ読者だって怒り始めるぞ!ただでさえ、コードギアスをこんなくだらない小説にしたってことで反感を買ってるんだから!」

 

「では、次でまた会いましょう」

 

「「話聞けよ!!」」

 




この話終わったら、流石にもう少しふざけないでやりますので、お許し下さい。


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13 優秀なナレーションは先の先を読んでやる

一ヶ月振りの投稿です。

そろそろ、シリアス書かなきゃまずいんじゃ?って思いながら、今回もシリアスは死んでいます……


「さあ、残すところは決勝戦のみ!優勝するのは大本命のカレン選手か!はたまた、ダークホースのニーナ選手か!一瞬も眼を離せない展開になって参りました!」

 

「いや、幾らでも眼を離して良いから。そもそも見る価値もないから、こんな茶番劇」

 

「こんなもの見るだけ時間の無駄だ……そもそも、何故俺がこんなものに付き合わされているんだ……」

 

「今更でしょ……私も完全に同感だけど……」

 

苦労人ポジションが定着してきたカレンとルルーシュは死んだ眼をしながら、虚空を見つめる。

 

しかし、諸悪の根元である二人は、そんなことを気にも留めないのであった。

 

「さて、最終種目の発表に移ります」

 

「おーっと、熊さん、展開が早いですね。では、どうぞ!」

 

「待たせる男は嫌われるんでね……最終種目は……デートです!」

 

「「デート?」」

 

「響きが素晴らしい言葉が来ましたー!ところで

、デートでどうやって勝負するんですか?」

 

「ふっ。まあ、焦らないで下さいよ。判定基準は私も知りません。判定するのは優勝賞品(ルルーシュ)です」

 

「おい、お前俺を物扱いしたな。というか、俺が決めるのか?」

 

熊の発言にルルーシュは額に青筋を浮かべるが、その発言の内容に一応確認を取る。

 

「そうです。あなたの恋人なのですから、その最終判断はあなたに決めて貰う必要があると思いまして」

 

「無駄に正論だな。本当に無駄だが。では、俺の希望に沿って今すぐこれを終わらせるという選択肢はないのか?」

 

「え?あると思ってるんですか?」

 

「……本当に一度くらい死んでくれないか、頼むから」

 

ストレスで体を震わせながら漏れでるルルーシュの本音だが、周りの皆は聞いてすらいない。

 

唯一カレンだけが、本当に可哀想な者を見る目で見つめていただけだった。

 

「先行はニーナ選手です。行く場所はくじで決めてもらいます」

 

ニーナは意気揚々と席を立ち、ルルーシュは心の底から面倒だと思いながら、その後に続いた。

 

ニーナはミレイから差し出されたくじ箱の中に手を突っ込み一枚を引き当てた。場所は

 

『動物園』

 

「二人のデート場所は動物園となりました!では、レプリカを用意しましたので、所定の場所について下さい」

 

デート場所としては定番だが、カレンとルルーシュは何だか拍子抜けした気がした。

 

「何というか……普通ね」

 

「ああ……驚くくらい普通だな」

 

しかし、だからこそ、何となく嫌な予感がする二人だが、そう考えると本当に実現しそうだったのでなるべく考えないようにしていた。

 

「では、デートスタートです。二人とも頑張って下さい。」

 

「よし!じゃあ、行きましょうルルーシュ!」

 

「デートに頑張るも何もないだろうが……それで、何でニーナはそんなにやる気満々なんだ」

 

「決まってるじゃない。彰君以外にルルーシュを渡すわけにはいかないのよ」

 

「……何を言っているんだニーナは」

 

「まあ、渡すとしたら高いハードルがあるわね。日本人でルルーシュと幼馴染みたいな関係で親友同士で爽やかイケメンみたいな男の人なら譲っても良いわよ」

 

「嫌に具体的だな!もう、一人しか思い当たらないんだが!?ていうか、ニーナはそいつが誰か知ってるんじゃないか!?」

 

『二人は良い雰囲気を出しながら、動物園を歩いていった』

 

「ナレーション付きなのか!?手が込んでるな!全く状況説明はできていないが!」

 

『そこにはたくさんの動物たちがいた。二人のテンションは次第に上がっていった』

 

「あ!ルルーシュ、ライオンよ」

 

「本物を用意したのか!?こんなくだらないことに何をやってるんだ……」

 

『ライオンは猫科の肉食獣であり、百獣の王として知られている』

 

「聞いてないわ!そもそも、そんな説明必要ない!」

 

「ルルーシュ、人間もいるわよ」

 

「別に不思議でもないだろ。動物園なんだから」

 

ニーナの言葉に動物園なのだから、エキストラとして他の人間でも呼んだのだろうと考えたルルーシュは何を当たり前のことをとでも言うように返事をする。

 

「いや、私たちみたく見物じゃなくて」

 

しかし、残念ながらルルーシュの言葉とは違い、檻の外にではなく

 

「俺をここから出せや、こらー!」

 

『玉城』と書かれる檻の中に立っていた。

 

「檻の中に。玉城だって」

 

「ちょっと待て!何で動物役で人間を採用したんだ!」

 

「ていうか、メチャクチャ知ってる人何ですけど!何、何!?どうなってんの!?」

 

突然の展開にルルーシュだけでなく、眺めていたカレンも突っ込みを入れる。しかし、もちろんナレーションは気にしない。

 

『玉城はヒト科の雑食であり、素人童貞として知られている』

 

「そんな説明の前に言うべきことが山程あるだろ!」

 

『彼は時給880円で協力してくれました』

 

「安い!?あの人簡単過ぎでしょ!」

 

「こんなバイトなんて聞いてねーぞ!カレン!助けてくれ!お姉さんと良いことができるバイトだって言われて騙されただけなんだ!」

 

「え?カレン知り合いなの?」

 

「いえ、私はあんな動物は知りません」

 

「カレーン!この薄情者が!」

 

騙された内容を知ったカレンは突然ゴミを見る目で見るようになり、知らない動物だと断言した。

 

『しかし、ここでトラブルが発生した』

 

「何?トラブルだと?」

 

「あ?鍵が開いてる?」

 

『玉城の檻の鍵が外れてしまったのである』

 

「お前が遠隔操作で外したんだろうが!」

 

「ラッキー、これで出られるぜ」

 

『しかし、そこにルルーシュが立ちはだかった』

 

「俺か!?何故、俺がそんなことをやらねばならん!」

 

「ちっ、邪魔すんじゃねえよ」

 

「誰も邪魔などしていない!行くなら、さっさと何処にでも行け!」

 

『彼は貧弱だが勇敢だった。例え敵わないとしても立ち向かう勇気があった』

 

「だから、俺はそんなことをやらんと言ってるだろ!何なんだ、このナレーターは!全く状況を伝える気がないだろ!」

 

「そこまで必死に止めるかよ。なら仕方ねえな」

 

『何があっても止めてみせるというルルーシュの気迫を恐れた男は懐からナイフを取り出した』

 

「お前は何で俺の状況ではなく、全く役に立たないナレーターを信じているんだ!通っても良いと言ってるだろ!」

 

「俺はどうあっても先に行く!そこをどけ!」

 

「人の話を聞け!早く行け!」

 

『男はそのままルルーシュに襲いかかった。しかし、そこに』

 

「お呼びじゃないのよ」

 

「へっ?ギャーーーー!?」

 

『何処からか飛んできた砲撃が降ってきて、男は吹き飛ばされてしまった』

 

「ちょっと!?本当に降ってきたんだけど!?死んでないわよね!?」

 

『どうやら、カレンはギャグパートで人は死なないという真理を知らないようである』

 

「知るわけないでしょ!そして、何でこのナレーションは外野にまで口を出してるのよ!」

 

「というか、お前はやり過ぎだ!俺まで危なかったじゃないか!」

 

『余談ですが、これは私の仕掛けたものではありません』

 

「「え?」」

 

「ブサイクがルルーシュに近づくのは許さないわ。私と、この」

 

颯爽と立つニーナの隣にそびえ立つ巨大な大砲

 

「ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲が」

 

「「何だ、それは!?」」

 

『あれはネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲ですね。完成度高いな、おい』

 

「その無駄に長い名前は何だ!?そして、形状が完全に学園にあってはならない形をしているんだが!?」

 

それらの声を聞きながら、ニーナは悔しそうに語る。

 

「残念ながら、まだフレイヤは完成していなくて……」

 

「おい、馬鹿やめろ!絶対にまだ出てきちゃいけない兵器をこんなくだらんことで出そうとするな!」

 

『はい、ではそこまでです。時間がきましたのでデートは終了です。ニーナ選手が男らしくルルーシュを庇う様はルルーシュポイントが高そうですね』

 

「ルルーシュポイントって何だ!?」

 

「どの辺が!?今の有様でどの辺がポイントが高そうに感じたの!?」

 

『では、次はカレン選手の出番です。男らしさを出してルルーシュを守ってあげて下さいね』

 

「私、女何だけど!?」

 




コード「俺たちの」

ギアス「出番は」

反逆「まだか!」


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14 大切なのはどんな時も自分を失わないこと

GWも終わってしまいました。明日からの仕事を頑張りましょう!


『では、カレン選手。くじを引いて下さい』

 

物凄く憂鬱である。

 

カレンは物凄く気が進まなかった。

 

何故なら、絶対にまともなデートになるはずがないということが経験的に分かるからだ。

 

『カレン選手。早くして下さーい』

 

どの面を下げて言うのだろうか。

 

自分が早くくじを引きたくない元凶がそんなことをほざいていると思わず拳を握ってしまう。

 

苛立ちを吐き出すようにカレンはため息をはく。文句はあるが、やるしかない。

 

諦めたようにカレンはくじの場所へと進んでいく。

 

(ニーナが動物園か……となると、私はどこよ?遊園地?美術館?)

 

そこはかとなく、どころか、果てしなく不安な気持ちに教われながらカレンはくじを引く。

 

そこに書かれたカレンとルルーシュのデート場所は

 

『ラブ○テル』

 

会場で地面が震えるほどの歓声が沸き上がる。

 

『さて。では、行ってもらいましょうか』

 

「「ちょっと待て、グオラァ!!」」

 

あまりに予想外の展開にカレンとルルーシュは顔を赤くして抗議の声を上げる。

 

『待ちません。所定の場所について下さい』

 

「行くわけないでしょうが!ニーナは動物園っていう全年齢対象の場所なのに、何で私だけR18の場所でデートしなきゃいけないのよ!どんな羞恥プレイよ!親が見てんのよ!」

 

『そりゃ、引いたあなたの責任でしょう。私は一切関知していません』

 

「くじの中にこんなもん入れた段階で関知しまくってるって言ってんのよ、ゴラァ!!!」

 

『はい。あなたは自分の学校でのキャラを思い出しましょうね。地が出まくってますよー。自重して下さいね』

 

「……あいつ、何時か殺してやる」

 

「その時は俺も呼べ。喜んで協力しよう」

 

カレンとルルーシュが彰の殺人計画を練っているにも関わらず、当の本人は淡々と司会を続けていく。

 

『さーて、興味が深いですね。どんなデートになるのでしょうか。まずルルーシュとカレンがどんなプレイを演じてくれるのか!熊さんはどのように感じていますか?』

 

『ルルーシュが受けなのか、攻めなのか。それが問題なんだ』

 

「「あの名言をこんな場面に引用するな!!」」

 

『特別ゲストの仁美さん。どう思いますか?』

 

「何!?わざわざ仁美さんを呼んだのか!?」

 

『そうですね……カレン選手は幼い頃から男勝りの部分はありましたけど、いざという時には積極的になれない乙女な部分もありましたから、なかなか事態は進展しないかもしれませんね』

 

「ねぇ、自分が何を言っているのか分かってんの!?あなた親でしょ!?娘がこんなことになってんのを見て止めないわけ!?」

 

『あんなこと言ってますけど、どうなんですか仁美さん?』

 

『今の私は仁美でも親でもありません。ゲストです。とりあえず、観客の一人として生で見た上で録画を4Kテレビでじっくりと見るつもりです』

 

「楽しんでるだろ!高画質テレビをこのためだけに買うほど気合いを入れてるだろ!」

 

『ルルーシュ様。わざわざ、このために私にボーナスを下さり、ありがとうございます……』

 

「誰がこんなことのためにボーナスを渡すか!」

 

『さあさあ、時間がなくなりますよ?早く行って下さい』

 

「「う……」」

 

大歓声の中、ラブ○テルと書かれた看板がある建物の下に立つルルーシュとカレン。

 

二人の顔は面白いくらいに真っ赤である。

 

こんなに奇跡的な展開になるとは流石に思っていなかった桐島は着ぐるみの中で爆笑していた。

 

『さあ、ではスタートです!』

 

そんな中ミレイの掛け声でデートは始まる。

 

同時に歓声が止んだ。

 

ナレーションもなくなり、無音がルルーシュとカレンを包む。

 

驚くほどに静かだ。二人に聞こえるのは自らの心臓の音だけだった。

 

そんな静寂を打ち破るかのように声が響いた。

 

「「いや、ふざけろよ!!」」

 

『はい?何を言ってるんですか、あなたたちは?』

 

これ以上ないほど顔を赤くしたルルーシュとカレンは全力でナレーションに突っ込んだが、ナレーションは冷静に返す。

 

「お前は何でこんな時だけふざけないんだ!?ふざけろよ!全力で邪魔をしに来い!」

 

「そうよ!!何かボケなさいよ!何か恥ずかしくなってくるじゃない!」

 

自分達のデートの時だけ何も邪魔しに来ないどころか、声もかけないナレーションに恥ずかしさからかルルーシュとカレンは全力で要求をぶつける。

 

『いや、デートくらい自分達でして下さいよ』

 

「「お前が言うな!!」」

 

心からのルルーシュとカレンの突っ込みをナレーションが無視したため、再び二人を沈黙が包む。

 

時だけが過ぎていくが、二人の足は全く動いていない。

 

カレンは僅かに焦ってくる。ルルーシュには勝たなければいけない理由はないが、自分にはあるのだ。

 

シャーリーが相手ならば、勝ちを譲ることも考えたが、ニーナが相手では勝ちを譲る理由もない。

 

(な、何よこんなの。今までの戦いに比べたら大して危険もないじゃない。わ、私がアレを開いて、ル、ルルーシュのアレを私のアレに、アレするだけでしょ?か、簡単じゃない。お、女なら何時かは経験する訳だし?遅いか、早いかの違いだけで大したことないし……)

 

緊張と恥ずかしさで目を回し始めたカレンの様子を不安に感じ始めたルルーシュは落ち着くようにカレンに声をかける。

 

「おい、カレン。何を考えている?このまま黙って立っていれば良い。そうすれば、時間になって終わる。その後に俺がお前を選べばそれで解決だ。余計なことをする必要はない」

 

「そ、そうよね、ルルーシュ。分かっているわ」

 

目を回しながらカレンはルルーシュの方を向く。

 

「じゃ、じゃあ、まずはルルーシュから脱いで」

 

「何も分かっていないな!?おい、落ち着けカレン!俺たちがアクションを起こす必要はないんだ」

 

「だ、大丈夫よ。経験もないし、そういうのを見たことないけど人間である以上本能であんたのアレと私のアレは引きつけあうはずだから」

 

「そういう意味で言ったのではない!くっ、何てことだ肝心のカレンが緊張で我を失ってしまうとは!戦略を考え直す必要がある!」

 

言うや否や、ルルーシュは建物の中に侵入する。状況を暫く理解できていなかったカレンも慌ててルルーシュの跡を追う。

 

「何かカレンの足を止められるものは「待てぇ、ルルーシュ!」速い!?前々から人外だとは思っていたがここまでか!スザクを下手すれば超えているぞ!」

 

自分の周りにトンでもない逸材が集まっていることにルルーシュは驚いたが、全員問題を抱えているので両刃之剣だ。泣きたくなった。

 

しかし、泣き言を言っている場合ではない。このままでは自分の大切なものが失われてしまう可能性が高い。

 

「くっ!」

 

少しの間でも足を止められればと近くにあった建材を撒き散らし、進路を防いだ……が

 

「こんなもの!」

 

「何い!?」

 

足を止めるどころか減速もしないで腕の一振りで建材を吹き飛ばした。

 

「何だこの化物は!?」

 

「これが輻射波動だ!」

 

「絶対に違うだろ!こんな無茶苦茶で戦略をひっくり返すな!」

 

近づいてくる化物(カレン)との距離は見る見る内に縮まっていく。

 

藁にもすがる思いでルルーシュが辿り着いた部屋は

 

『ベッドルーム』

 

如何にもな場所にわざわざ自分から逃げ込んでしまった事実にルルーシュの思考は一瞬停止する。その隙をついて追い付いたカレンはルルーシュを持ち上げてベッドの上に放り投げる。

 

「うぉっ!?ま、待てカレン!お前は混乱しているだけだ!冷静になれ、まずは水でも」

 

「だ、大丈夫よ、ルルーシュ。痛いのは最初だけだって言うし。し、暫くすれば、き、気持ち良くなるはずだから」

 

「だからそういう意味ではない!くっ、こ、これは本格的にまずい、どうすれば」

 

自分の貞操の危機が迫っているルルーシュは今までの人生で始めてというくらいに頭を回し始める。

 

しかし、ルルーシュが考えている間もカレンは近づいていく。

 

(何とかしてカレンを止めなければ……しかし、どうやって……混乱を解くのは無理だ、だとすればこの勝負を終わらすしかない。しかしどうやって)

 

そう考えたときにルルーシュは、このゲームの趣旨を思い出した。

 

(このゲームの勝者は俺が決められる!ならば!)

 

カレンの腕がルルーシュを捉えた。同時にルルーシュが叫ぶ。

 

「おい、ナレーション!」

 

『はい?』

 

ルルーシュは今までで最大の声を出す。

 

「決勝の勝者はカレンだ!だから、ゲームを終わらせろ!俺はカレンを愛しているぞ!」

 

その言葉で照明が消える。その変化でカレンも冷静を取り戻した。

 

「え?何があったの?」

 

「やっと、正気に戻ったか……」

 

ルルーシュは頭を抱える。

 

『えー、誠に残念ですが勝者が決まってしまいました。ルルーシュに選ばれたのは

 

 

カレン・シュタットフェルトだーーー!!』

 

その放送に悲鳴と歓声が再び沸き上がる。

 

下らない、中身のない戦いはこうして幕を閉じた。

 




次回はおまけみたいな話ですね


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15 遊びと仕事の両立が人生には大切

これでこのギャグ話も一区切りです。


「知らない天井だ」

 

「何言ってんの、あんた」

 

眼が覚めたシャーリーは暫く現場把握ができなかったが、赤髪の女の子の呆れたような声で、自分が保健室にいることを悟った。というか、この子は

 

「カレン……?勝負はどうなったの?」

 

「あー、何というか……一応私が勝った……のかもしれない」

 

「何その曖昧な発言」

 

うっさいわね、私だってあんなんで勝ちなのか分かんないのよと顔を赤くしながら話す。

 

「どうやって勝ったの?」

 

「聞かないで」

 

突然真顔になるカレン。とても怖い。何があったのだろうか。

 

「え?でも、「聞かないで」……」

 

ここまで否定されると却って気になってしまう。そんな私の考えを感じたのか真顔のままカレンは立ちあがり、隠し持っていたナイフを構えた。

 

「それ以上聞くなら私にも考えがあるわよ」

 

突然出てきた凶器に戸惑ってしまう。これ以上聞くなら私を殺すと言うのだろうか。

 

「え!?まさか、それを使って」

 

「そうこれを使って私は」

 

そう言うとカレンはナイフを自分に向ける。

 

「自害する」

 

「そこまで!?安心して、カレン!これ以上は聞かないから!だから、構えたナイフを下ろして!今のカレンだと本当に自害しそうで怖いから!」

 

私の説得が伝わったのかカレンはナイフを下ろす。安心してため息を漏らす。

 

ところで、さっきから気になっていたのだが。

 

「カレン、クラスの時と大分……というかかなり雰囲気が違くない?」

 

「私にも色々あんのよ。言えないけど。とりあえず、他の人には秘密にしといて。ルルーシュと彰には言っても良いけど」

 

残念ながら私には理由を話してくれないようだ。まあ、カレンにも色々あるのだろう。私としては、普段の大人しいカレンより今の方が話しやすいので別に構わない。

 

「そっか。まあ、別に良いよ。ただ、悔しいなあ。負けちゃったか」

 

「あー、その話なんだけど……ね」

 

「どうしたの?」

 

首を傾けながらカレンの話の続きを待つ。

 

「これも悪いんだけど、詳しいことは言えない……けど、私はルルーシュと恋人関係になる必要はあるんだけど、別に好き合ってる訳じゃないというか、別に嫌いではないというか」

 

「何を言ってるの?」

 

「うっさいわね!私だって何を言ってるのか分からないわよ!」

 

両手で頭をかきむしりながら、カレンは続ける。

 

「別に私はルルーシュのことを嫌いじゃない。どっちかと言えば好きだと思う。けど、シャーリーほどじゃない。だから」

 

真剣な眼をシャーリーに向けながら更にカレンは続ける。

 

「私はシャーリーが嫌だっていうなら、私は勝ちをシャーリーに譲る。困ることはあるけど……別の方法で絶対に何とかするから」

 

つまり、カレンはこう言っているのだ。

 

ルルーシュの恋人には、本当にルルーシュのことを好きなシャーリーが相応しいと。

 

勝たなければいけない理由はカレンにもあったが、シャーリーの一途さにカレンの心は動いたのだ。

 

「カレン……ありがとう」

 

そんなカレンの気持ちはシャーリーには

 

「でも、私は絶対に負けないから!」

 

「へ?」

 

欠片も届いていなかった。

 

「カレンの気持ちは分かったよ!でも、大丈夫!私は全然諦めてないから!」

 

「いや、全然分かってないけど!ねぇ、さっきの私の話を聞いてた!?」

 

「聞いてたよ。勝負に負けた私を励ましてくれたんでしょ?確かに今はカレンの方がルルのことを好きなのかもしれない。でも、何時か絶対に追いつくから!」

 

「全然聞いてないわよ!何時かどころか現在既にシャーリーの方がルルーシュを好きだって話を」

 

「ねぇねぇ、何かこういう展開ってワクワクするよね。好きな男の子を巡って女の子同士で争うとかさぁ」

 

「何この子、メチャクチャ面倒臭いんだけど!恋する女の子モードが暴走しまくってんだけど!」

 

この後もカレンは説得を続けたが、暴走したシャーリーの耳には全く入らず、結局カレンがルルーシュの恋人ということで落ち着いたようである。

 

何だかんだあったが、結局当初のもくろみ通り、ルルーシュとカレンは恋人(笑)になることに成功した。

 

 

 

 

 

「会長!」

 

「ルルーシュ?どうしたの?」

 

騒ぎが終わり、周りを見渡すと桐島の姿が見えなかったので嫌な不安を感じたルルーシュは桐島のことを探していた。

 

「桐島を知りませんか?騒ぎが終わってから姿が見えないのですが」

 

「あー。彰なら少し校内に用事があるって言って校舎の方に向かったわよ」

 

「……え?許可したんですか?」

 

「もちろん」

 

頭を抱えるルルーシュ。何を考えているんだ、この人は。まあ、わざわざ宣言するあいつもあいつだが。あいつの変装技術があれば、そんなことを言わずとも潜入できるだろうに。

 

「……会長」

 

「何かにゃ?」

 

「何を考えてるんです?部外者の日本人を一人で校内に入れるなんて。問題が起きれば、会長の責任問題になりますよ」

 

「そうだねー。でもまあ、大丈夫、大丈夫。何とかなるって」

 

笑いながら何も問題はないと言うミレイのことがルルーシュには信じられない。

 

桐島のことをある程度知っているルルーシュから見れば、確かにあいつが、こんなところで悪事を働く意味はないことから問題は起こさないだろうと理解できるが、ミレイは桐島のことをほとんど何も知らないのだ。

 

もし、自分がミレイの立場なら、絶対に一人で行動させるようなことはしないと断言できる。

 

普通の相手なら、「馬鹿な奴だ」と思いながら特に言及はしないが、ルルーシュはミレイに対して恩がある。なので、一応今後のことを考えて助言することにした。

 

「会長。余計なお世話かもしれませんが、無用心過ぎです。あんな不審人物を野放しにしておくなんてどうかしています。会長だって、あいつが普通の日本人だなんて思っていないでしょう?」

 

「あはは。それを言われると少し弱いんだけどね」

 

ルルーシュの言葉に困ったように笑いながらミレイは続ける。

 

「確かに私は彰のことをほとんど何も知らないし、普通に虐げられてる日本人だとも思ってないよ。多分何かを隠してると思う」

 

「そうであれば「でもね」え?」

 

ルルーシュの眼を真剣に見つめるミレイ。

 

「私に分かるのはここまで。私はルルーシュほど頭が良くないからさ。彰が何を隠しているか分からない。でもさ、一つだけ分かってることがある」

 

「それは?」

 

満面の笑顔になるミレイ。

 

「彰が理由もなく皆に暴力を振るうような人間じゃないってこと。あの子が何をやっているのか分からないし、どこから来たのかも分からない。私にできるのは、私の目で見た彰を信じることだけよ」

 

ルルーシュはミレイから眼を背けた。つまり、ミレイはこう言っているのだ。

 

自分の目で見た彰を信頼すると。

 

(本当に敵わないな、この人には……)

 

データもなく、情報の裏付けもない日本人。

 

そんな人物を自分が信じると決めたから信じることができるミレイの強さ。

 

それは、ルルーシュが決して持ち得ないものだった。

 

「ま!面白そうなトラブルを起こしてくれる気はかなりするけどね。まあ、そうなっても、大丈夫、大丈夫。私には頼りになる副会長がいるからね」

 

そう言いながらウインクをするミレイ。もう、真面目な話はお仕舞いということだろう。

 

それを理解したルルーシュはため息を吐きながら、話に乗っかる。

 

「俺としては勘弁して欲しいんですけどね。これだけ、重労働なら有給を頂きたいくらいですよ」

 

「なーに言ってんの。若人にそんなものあるわけないでしょ。ガッツ、ガッツ!若さがあれば、何とかなるわよ」

 

ミレイの無茶苦茶な理論に苦笑するルルーシュ。しかし、それも悪くない。そんな風に思うルルーシュもいた。

 

 

 

 

一方、その頃話題の桐島は

 

「こんな所かねぇ。しっかし、かなりの量があるな」

 

桐島は、学園の図書館とアッシュフォード家の蔵書から、ブリタニアの歴史と貴族関係の本を片端からコピーして、データに納めた。

 

(折角こんな機会があるならと欲張り過ぎちまったか……一人じゃキツいな)

 

そう考えた桐島は携帯を手に取り、連絡を取る。相手は

 

『働きたくないんだけど』

 

「まだ、何も言ってねぇよ。それと働けユキヤ」

 

引きこもりの代名詞のユキヤである。第一声からダメ人間全開のセリフである。

 

『だってさー、彰からの連絡とか絶対に面倒ごとじゃん。もうすでに嫌なんだけど』

 

「決めつけんじゃねーよ。もしかしたら、違うかもしれないだろ?まあ、違わないんだけど」

 

『ユキヤ寝まーす』

 

「諦めろ。起きろ」

 

本当に渋々といった感じでユキヤはため息を吐く。

 

『あー、やだやだ。で?何?』

 

「調べて欲しいことがある。ブリタニアの貴族と皇族についてだ」

 

『は?何を今更?』

 

「話は最後まで聞け。調べるのはアッシュフォード家と関係があって、アッシュフォード家より位が高い貴族と皇族だ。亡くなってるとか、既に没落してるとかであってもリスト化してくれ」

 

『何でそんなことをって言うわけないか……てか、普通に大変なんですけど?何人いると思ってんの?』

 

「んじゃ、後はよろしく。資料はもうお前にメールしたから」

 

『……何時か地獄に落ちろ』

 

「はい、聞こえない。じゃあな」

 

ピッと携帯を切る。まあ、何だかんだで仕事はしっかりやる奴だから大丈夫だろ。

 

(調べたからって別にどうなるもんでもないんだが……気になっちまったからなぁ)

 

桐島は頭をかきながら、最近妙に関係が深くなっているブリタニアの兄妹を思い出す。

 

(あの二人の気品とか立ち振舞いからすれば、どう考えても二人は位の高い貴族か下手すれば皇族だ。それがこんな所にいるということは既に没落しているか、捨てられたかのどっちかだ。だが、ルルーシュのブリタニアへの憎しみとわざわざ、アッシュフォード家の敷地に住まわせて貰ってるということは……)

 

桐島の思考は更に先へと進んでいく。

 

(捨てられたんだろうな。母親が亡くなったとか言っていたが、その辺りのことが関係してるのか……まあ、分からんな。ともかく、捨てられたにも関わらずアッシュフォードがわざわざ後ろ楯になろうとする程の大物なのは間違いない。それも今の状況から一発逆転を狙えるほどの……な)

 

桐島は懐に入れてある以前ルルーシュとナナリーと自分の三人で写っている写真を見ながら思う。

 

(ルルーシュとナナリー……か。本当に何者なんだかな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 




原作まではもう暫くお待ちを!


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16 踏み込むな!その先はプライバシーだ

何時までこのペースで投稿できますかね


「ねぇ、ルルーシュ」

 

「何だ?」

 

場所はルルーシュが住んでいるゲストハウス。カレンに話しかけられたルルーシュはカレンがいることに驚きもせずに読んでいた本から目も話さず応える。

 

最初はある程度客として対応していたルルーシュだが、恋人(笑)の権利を得たカレンは毎日のように兄の看病がてら訪れているので、最早、客としての対応もしなくなった。

 

「彰の奴が何時此処に来るか知らない?聞きたいことがあるんだけど」

 

「ああ、奴なら日本解放戦線の会議があるとか言っていたから暫くは来ないだろ」

 

「は?会議?」

 

「らしいな」

 

「何であんたにそんなことを?」

 

「知らん。聞いてもいないのに、奴が勝手に喋っていただけだ」

 

ルルーシュとしても何故それを自分に言ったのかが分からない。自分にそれを言うメリットと理由をルルーシュは100通りほど考えたが、どれも正解とは思えなかった。

 

ちなみに、彰がルルーシュにそれを言ったことに特に理由はない。只の報告会議であり、別にそれがバレたことで問題は生じないので言っただけだ。

 

勿論特に言う理由もない。言ったのは、ぶっちゃければ「何となくの気まぐれ」なのだが、無駄に深読みをするルルーシュには、その解答は導き出せない。

 

(ふーん、まあ、アイツのことだから、特に意味もなく言ったんでしょうね)

 

(本当に分からん……あいつは何故俺にそんな情報を与えたんだ?俺に何を期待していた?いや、もしくは反応しないかどうかを探っていたのか?)

 

直感で生きているカレンの方が正解だった。

 

居ないにも関わらず、今日も今日とて、彰に振り回されるルルーシュであった。

 

「そういえば、あいつって日本解放戦線でどんな扱いをされてるのかしら」

 

「さあな。奴の扱いなどどうでも良いが、奴を扱わなければいけない上の人間を俺は同情するよ」

 

この言葉を藤堂が聞いていれば、激しく同意してくれたことだろう。

 

付き合いが短いにも関わらず、苦労が目に見えるようである。

 

 

 

 

 

 

 

「これで報告は以上です」

 

「うむ。良くやった。戻っていろ」

 

やれやれ、これで俺の報告は終わったか。

 

今は日本解放戦線の幹部達の報告会議の真っ最中である。

 

……もう一度言おう。幹部達の報告会の真っ最中である。

 

何で一等兵の俺がこんなもんに出なきゃならんのだ。

 

聞いた話によると藤堂さんが俺を出席させるように片瀬さんに頼んだらしい。

 

余計なことをしてくれたもんだ、おかげで面倒事が増えたじゃないか。

 

というか、何故皆反対しないんだ。

 

これも聞いた話だが、片瀬さんはともかく、あの草壁さんも俺が参加するのに賛成したらしい。

 

しかも、四聖剣も朝比奈さん以外全員賛成したそうだ。

 

ここまでいくと悪意を感じる。嫌がらせなのか?このメンバーに藤堂さんが加われば誰も反対できんだろーが。

 

まあ、いいや。もう終わったことだし。さて、後はボケッと座ってれば「待て」……そういうわけにもいかないようだ。

 

「何ですか?草壁中佐」

 

「桐島一等兵。報告はそれだけか?隠していることがあるだろう」

 

「何を仰っているのかは存じ上げませんが」

 

桐島は首をすくめる。

 

「私は自分の任務をこなして、それを全て報告しましたよ?何が不満なんです?」

 

「これだけの期間がありながら、お前がこれだけのことしかしないと儂が思っているとでも「よさんか、草壁」片瀬少将!しかし」

 

珍しいことに片瀬さんが援護に入ってくれた。

 

「桐島一等兵は自分の任務を適切にこなしただけでなく、プラスの報告もした。何の問題があるというのだ?」

 

心底分からないといった感じで片瀬さんは質問する。

 

「……はっ。確かに問題はありません」

 

その片瀬さんの質問で草壁さんは渋々といった体で食い下がるのをやめる。

 

確かに問題はなかったのだろう。草壁さんは疑問があっただけなのだから。

 

「よし、では次は」

 

やれやれ、これで本当に終わったか。

 

そう思いながら桐島が自分の席へと向かうために藤堂さんの前を通ると

 

「桐島。後で私の部屋に来い」

 

……またしても、まだ終わらないようだ。

 

 

 

 

 

 

 

「で?何で藤堂さんに呼び出されて藤堂さんの部屋にいるのにあんたたちまでいるんです?」

 

渋々向かった藤堂さんの部屋には藤堂さんだけでなく四聖剣の皆さま方が勢揃いしていた。いや、何でよ。

 

俺の質問に千葉さんが当然だとでも言うように話始める。

 

「当たり前だろう。お前のような適当な男と藤堂さんを二人きりになどしておけるか」

 

ねぇ、この人一体何を心配してるの?変な誤解が生まれそうだから止めてくんない?

 

「いや、千葉さん。悪いけど、俺そういう趣味ないから。俺はノーマルですから。そりゃあ、千葉さんが書いた本だとそうかもしれないし、あの本を勝手に持って行ったのは悪かったですけど、そういう嫉妬は女性の方にした方が良いと思うんですけども」

 

「誰がそんな話をしてるか!というか、やっぱり、あの本を持っていったのはお前だったのか!返せ!一体何処にやった!」

 

俺の返しに千葉さんは顔を真っ赤にしながら、襟首をつかんで怒鳴ってくる。落ち着いて下さいよ、そんなことをしてもあの本は返ってきませんから。あの本は日本とブリタニアの架け橋になりましたから。

 

「ほう、千葉は本を書いてるのか。どんな本だ?」

 

俺と千葉さんの騒ぎを何時ものことだと冷静に見ていた藤堂さんは自分にとって初耳な話に興味を覚えて会話に加わってきた。

 

いや、どんな本と聞かれてもねぇ。

 

チラリと千葉さんを見ると慌てて良く分からない日本語で返している。テンパりすぎだろ。

 

ふむ……とはいえ、何と返すべきか。嘘をつかずに事実をねじ曲げて伝えるには……

 

「男と男の受け方と攻め方を書いた本ですね」

 

俺の発言に朝比奈さん以外の四聖剣のメンバーが何!?と言いたげな顔でこちらを見る。嘘はついてないよ?

 

「なるほどな……戦術の本か(戦闘の)」

 

「ええ、新しい戦術の本ですね(恋愛の)」

 

藤堂さんはある程度の理解をしてくれたようだ。何か誤解をしている可能性は高いが気にしちゃいけない。

 

「どの辺りが新しいのだ?」

 

「今まではこうした戦術に興味がなかった女性に新しい世界を見せた点が新しいと思いますね」

 

「何?女性が好む戦術なのか?」

 

「ええ。まあ、好む男性もいるかもしれませんが、俺は好きではないですね」

 

「お前がか?興味があるな。千葉。良ければ私に一冊見せて貰っても構わないか?」

 

「ええ!?いや、それは、あの、その……」

 

突然自分に飛び火したことに慌てふためく千葉さん。流石に哀れだ。もし、万が一見られたらこの人自殺するんじゃないだろうか。

 

俺がそんな風に思っていると卜部さんと仙波さんが藤堂さんの肩を叩いて首を振る。あ、この人たち何の話をしてたか分かってるな。

 

「藤堂中佐。それだけは勘弁してあげて下さい。武士の情けってやつですよ」

 

「武士の情け?私は今後の参考に新しい戦術を知りたいだけなのだが」

 

「中佐。その戦術はとても危険なんです(千葉の精神にとって)。うかつに見て良いものじゃありませんぞ」

 

「何!?知ることがそんなに危険なのか!?(命にとって)」

 

「はい。大変危険です(千葉の精神が)」

 

「それほどか……分かった。興味はあるが止めておこう」

 

その言葉にあからさまに安堵する千葉さん。多分藤堂さんは今後も詳しく聞いてくるだろうけど、それは黙っておこう。知らなくても良いことはある。

 

「それで、藤堂さん。何でわざわざこいつを呼び出したんですか?」

 

話が一段落すると今まで黙っていた朝比奈さんが俺に指を突きつけて藤堂さんに質問する。相変わらず、嫌われているようだ。一体俺が何をしたというのだ。

 

「ああ。聞きたいことがあってな」

 

その朝比奈さんの言葉で藤堂さんは真面目な顔になり、俺を問いただす。

 

「桐島。何を隠している?」

 

「嫌だなぁ、藤堂さん。何も隠していることなんてありませんよ」

 

その言葉に藤堂さんは深くため息を吐く。相当疲れているようだ。

 

「訂正しよう。あの時会議で言わなかったことで、ここ最近お前がブリタニアについて得た情報は何だ?」

 

その言葉で俺は笑みを深くし、朝比奈さんと千葉さんは目を鋭くし、卜部さんと仙波さんは頭を抱える。いや、気にしすぎですって。

 

「新しいナイトメアの情報……ですね」

 

「新しいナイトメア……だと?」

 

「ええ……

 

 

 

ブリタニア新型兵器。第7世代ナイトメア。ランスロットについてのね」




さーて、次くらいで新しい原作キャラを出せそうですね


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17リーダーは大変なんだって感じるのはリーダーになったときなんだろうなあ

前半はふざけきってますが、まあまあ真面目な話になりました


俺は日本解放戦線の桐島彰。

 

幼馴染みでもない四聖剣の人達と藤堂さんの部屋に遊びに行った俺は、黒ずくめのお茶菓子とお茶を発見した。

 

お茶を飲むのに夢中になっていた俺は背後から近寄ってくるその場の流れってやつに気が付かなかった。

 

俺はその空気に流されて、目が覚めたら

 

ブリタニア軍に潜入捜査をしていた!

 

日本人が潜入捜査をしていると奴等にバレたら回りの人間にも危害が及ぶ。

 

卜部博士の助言で正体を隠すことにした俺はモブのブリタニア兵に名前を聞かれてとっさに

 

 

コナン=エドガワと名乗り、父親が探偵をやっているというそのモブのブリタニア兵に取り入って潜入捜査をすることに成功した。

 

まだ潜入捜査の成果は出ていない。しかし、父親が探偵をやっているというモブのブリタニア兵の名に懸けて必ず成果をあげてやる。

 

ブリタニア兵になっても頭脳は同じ!迷宮なしの

 

「おい、そこのお前!何をしてる!ボサッとするな!」

 

「は!申し訳ありません!キューエル殿!」

 

はい、止めます。真面目にやります。大人しく潜入捜査をしますよ。

 

心の中で俺はため息を吐く。全く面倒なことになったもんだ。

 

 

 

 

 

 

 

「だ」

 

「第七世代ナイトメア」

 

「ランスロット」

 

「だと……!?」

 

いやあ、流石四聖剣の皆さんだ。仲が良い。まさか、四人で一つの文章を喋るとはねぇ。俺はそんな心底どうでも良いことを考えながら自分で淹れたお茶を飲んでいた。旨いなぁ。

 

「「「「そんなノンビリしてる場合か!!」」」」

 

本当に仲が良いことだ。まあ、落ち着いて下さいよ、どうせ今焦った所でできることは限られてるんですから。

 

俺がそんなことを言うと卜部さんが反論してきた。

 

「限られてることはないだろ!お前ならこの状況が分かってるはずだ!こっちが、必死で第六世代ナイトメアを超えるナイトメアを作ろうとしてるのに、向こうは既に第七世代ナイトメアを作っていたんだぞ!」

 

「まあ、まだ量産は無理みたいですけどね。詳しいことは流石に知らんすけど。もし量産化の目処が立ってるならもっと噂が広がってるはずですし」

 

「何を言っとる!量産が無理でも、もし、その機体にエース級の奴が乗れば手がつけられんぞ!」

 

「もし、じゃなくてほぼ確実にエース級の奴が乗りますよ。それもナイトオブラウンズクラスが。しかし、それならランスロットとは随分と凄い名前をつけたもんですね。裏切ることが前提とか?こっちは助かりますけど」

 

「そんな皮肉を言ってる場合か!乗るパイロットは決まっているのか?」

 

「流石にそこまでは。まあ、決まってたら厄介なことこの上ないですけどね。幾らこっちが有利でも一機で状況をひっくり返せる存在ですからねぇ」

 

「なら早く攻めこむべきだろ!今ならまだ十分に勝機がある!そうだろ?」

 

「無理です」

 

ずずーっとお茶を飲む。ちょっとは冷静になりましょうよ。お茶でもどうです?そう言って全員にお茶を淹れて渡すが誰も飲まない。悲しくなった。

 

「無理ですってお前!前に勝機はあるって言ってたじゃないか!あれは嘘だったのか!?」

 

「いえ、本当ですよ」

 

そんなことで嘘をついてもしょうがない。

 

「じゃあ、何で!?もしかして、その新しいナイトメアが原因か!?」

 

「それ以前の問題です」

 

四聖剣の皆さんは「はあ?」という顔をしてるが、藤堂さんは俺の言葉にハッとした顔になり、喋り出した。

 

「いや……そうか、だからなのか、桐島?お前は、だからこそ会議でこの話を言わなかったのか?」

 

そういうことです。流石藤堂さん話が早い。

 

俺が無言で頷くと藤堂さんは「やはりか……」と呟いて深く項垂れる。

 

しかし、話についていけていない四聖剣のメンバーは焦りながら聞いてくる。

 

「いやいや、二人だけで話を進めないで下さいよ!一体何の話をしてるんです?俺たちにも分かるように話して下さいよ!」

 

「そ、そうですよ!何がやはりなんですか?」

 

「このまま普通に攻め込めば100%負けるって話ですよ」

 

俺は至って冷静に淡々と事実を述べる。

 

「何でだよ!お前の話だと勝機はあるんだろ!?だったら」

 

「条件が違いますよ」

 

俺は側にあったお茶菓子を食べながら卜部さんの言葉を遮る。

 

その俺の言葉で真意に気付いた朝比奈さんは呟くように言う。

 

「そうか……租界の階層構造」

 

その朝比奈さんの言葉で言いたいことが分かった他の四聖剣の人達も苦い顔になる。そういうことですよ。

 

「ただでさえ、人数も武器の質も劣る俺たちがあんな場所に立て籠られたらどうしようもないです。戦いにすらならないです。ただの虐殺になります」

 

まあ、それでも行きたい奴を止める義理もないのだが、流石に長年同じ釜の飯を食べてきた者達を見殺しにする気にはなれない。

 

「なるほど……確かに、草壁中佐達なら強行手段を主張するだろう。それを止めるために会議ではこの情報を隠していた訳か」

 

「正確には少し違いますけどね」

 

パンっという音を鳴らしながら、お茶菓子のせんべいの袋を開けながら喋る。

 

「少し違う?」

 

朝比奈さんが怪訝な顔になる。旨いな、このせんべい。

 

「それは草壁さんを舐めすぎです。あの人なら、勝ち目がないことくらい流石に分かりますよ」

 

藤堂さんのような才能やカリスマ性はないが、自ら前線に出て死地を幾度も潜り抜けてきた人だ。成功率が一%ならやるだろうけど、絶対に負ける戦いに挑むほど馬鹿じゃない。

 

「は?じゃあ、誰が主張するんだよ?」

 

「正確には、草壁さんの下に付いてる過激派の連中です」

 

俺の発言に藤堂さんまでもが疑問符を浮かべた顔になる。あんたも分かってなかったんかい。

 

駄目だ、この脳筋たち。早く何とかしないと。

 

「この日本解放戦線には二つのグループがあります」

 

しょうがないので、一から説明する。誰か、政治ができる奴を連れてこい。

 

「一つは藤堂さんのグループ。これは言わずもがな。四聖剣の皆さんが筆頭ですね」

 

これが日本解放戦線の主流派。片瀬さんもこのグループ寄りだ。

 

……まあ、ぶっちゃけ藤堂さんを頼りにしてるだけだけどねあの人。そもそも、あの人に指導力があったなら、

こんなことにならなかった訳で。

 

「そして、もう一つが草壁さん達のグループ。テロを推進する過激派です。問題はこのグループが草壁さんを信じているんじゃなくて、自分達が思い浮かべた草壁さんを信じていることから生じているんですよ」

 

全員が更に疑問を深めた顔になる。

 

「このグループはほとんど全員日本の力を信じています。日本が本気を出せば、ブリタニアは倒せるとね。ここまでいくとこれは妄想です。狂気と言い換えても良い」

 

まあ、これは藤堂さんのグループにも言えることだが。言ったら怒るから言わないけど。全員が藤堂さんなら何とかしてくれると思っている。最早宗教である。藤堂教とかどうだろう。……入りたくねぇ。

 

「まあ、そうかもな。んで?この連中がどうしたって?」

 

「草壁さんはこの連中の蓋なんですよ。本人が自覚してるかは知らないですけど」

 

「蓋……だと?」

 

「ええ」

 

藤堂さんが渋い顔になる。ある程度言いたいことは伝わったらしい。

 

「草壁さんがある程度過激なことを実行してくれるから、こいつらのガス抜きになってるんですよ。その草壁さんまでもが自分達の行動を支持しないとなれば、こいつらは勝手に動きます。蓋からはみ出してね。そうなったら、制御不能です。何をするか分からない」

 

そうなったら、日本解放戦線というか、片瀬少将も終わりだろう。内部分裂何て問題を引き起こせばキョウトのジジイ共が黙っているはずがない。何だかんだでお人好しなあのロリ姫なら分からんが。

 

「なるほどな……そんなことになれば日本解放戦線はガタガタになる。片瀬少将の責任問題にもなるしな」

 

「それくらいで済めば良いですけどね」

 

片瀬少将に日本を解放するだけの手腕がないことなど、キョウトにも分かっている。

 

良くて左遷だが、最悪の場合………

 

「どういう意味だ?」

 

良く分からないという顔の卜部さんに何でもないと返事をする。今言っても信じないだろ。不信感を生むだけだし。

 

「うーむ、ならばどうするか。藤堂中佐。とりあえず、桐島に潜入捜査をさせて新型の状況だけでも確認させますか?」

 

「うむ。それが良いだろうな」

 

「え?ちょっと待って?何この流れ?」

 

真面目な話をしてたら急に無茶ぶりな話がきた。何それ、聞いてないよ?

 

「まあ、こいつならブリタニア兵に変装するの何か訳ないですし、大丈夫でしょ」

 

「いや、行かないっすよ?俺は基本的に命を大事にで行動してるんで」

 

幾ら変装したって敵陣のど真ん中に潜り込むのは色々大変なのだ。そんな面倒臭もとい危険なことをしたくはない。

 

「行けばお前の有給を倍にするぞ」

 

「喜んで行かせて頂きます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今考えると餌に釣られた感が凄いな。

 

まあ、いいや。俺は生きて帰ったら有給を使ってエンジョイするんだ。

 

……まあ、生きて帰る前にどこ行けば良いかすら今は分からんのだが。

 

ぶっちゃけ、迷子である。

 

しょうがない。適当な人でも探すか。

 

そう思って基地の内部をうろついていたのだが、丁度良い人がいない。怪しまれずにすむから、できれば名誉ブリタニア人が一番良いのだが……あ、いた。

 

「おい、そこのお前!」

 

「は!何でございましょうか!」

 

「特派とやらに用事があるのだが、それがどこか分からん!案内しろ!」

 

ブリタニア軍人が名誉ブリタニア人の日本人に話しかける演技をするのは非常に楽である。

 

メチャクチャ偉そうに振る舞えばそれっぽく見えるのだから。

 

実際、目の前の日本人も全く疑っていない。チョロ過ぎである。

 

「承知致しました!私

 

 

 

 

枢木スザクが責任をもって案内致します!」

 

 

 

 

 

 




困ったもう一人の主人公登場!
どんな扱いにしようかなぁ


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18 優しさが別の人にとって優しさとは限らない

シリアスで終わるのって難しいですね


「もう少しで着きますから、もう少々お待ちください」

 

予定通りにブリタニア軍の内部に潜入。特派への侵入もここまでいけば順調にいけそうだ。しかし、昔の捜し物がこんな所で見つかるとは

 

枢木スザク

 

今は亡き枢木首相の唯一の息子。

 

その血筋から、日本解放戦線の御輿に丁度良いと思い、探していたのだが、藤堂さんの命令により止められてしまった。片瀬さんがリーダーよりも、よっぽど注目が得られると思うんだけどなぁ。

 

そのことを一度ロリ姫にも相談したのだが、あの人にしては珍しく断固反対という態度だった。

 

理由は「自分の責任から逃げた人だから」ということだった。何の話だ。まあ、予想はつくけど。てか、それ私情だろ。

 

加えて、腹だたしいことに戦闘能力は確かに高いが、頭は悪いとのこと。本当に嫌いなんだな。このロリ姫が、ここまでハッキリと人の悪口を言うのを始めて聞いた。

 

しかし、まあ、逆に言えばそんなロリ姫ですら認めざるを得ないほど戦闘能力は高いのだろう。戦士タイプか。カレンとどっちが上かな。

 

実際、ここまで歩いてるのを見ただけで身体能力の高さは感じられた。ここまで高いのであれば、確かに戦闘能力も高いのだろうが……何というか

 

(何だ?このチグハグな感じ)

 

バランスがおかしいのだ。試しに殺気をぶつけたりしたのだが、全く反応がない。一般人なら気付かないだろうが、名誉ブリタニア人として戦ってきて、ここまで戦闘能力が高いこいつが気付かないのはハッキリ言ってあり得ない。異常とも言える。

 

隠してる可能性も考えたが、反応からして本気で気づいていないようだ。

 

今までの経験上こういう人間には二つの可能性がある。一つは死ぬのを恐れず戦闘を楽しむタイプ。そしてもう一つが

 

死ぬために戦っているタイプ

 

直感だが、こいつは後者の気がする。

 

ため息を吐きたくなる。死ぬほど面倒臭いタイプだ。アキトも大概だったが、こいつは、更にその上をいっている。

 

恐らくこいつは、何度も死んでおかしくない戦場に出ている。

 

普通であれば、死ぬのだろうが、戦闘能力だけは無駄に高いこいつは死なずに生き残る。

 

生き残ったということは、戦った相手は死ぬということた。当たり前だが、そいつらは枢木スザクのことを恨むだろう。

 

そして、その恨みを忘れずに抱えて生きていく。それによって、更に激しい死地へと向かう。

 

まさに、地獄のような無限ループ。ドMもビックリのプレイである。

 

何でこいつがこんなことをしてるのか大体の理由は知っているが、理解はできない。

 

あれは別に、こいつの責任ではない。

 

こいつのことを嫌ってるロリ姫ですら、そのことでこいつを責めたことを聞いたことがない。

 

ただ、まあ逆に言えば

 

(誰かに責められたかったんだろうな、こいつは)

 

皆、こいつが私利私欲のためにした訳ではないことは知っていた。

 

だからこそ、責めなかった。咎めなかった。

 

その結果、自分が犯した罪を自分だけで攻め続けて、ある意味壊れてしまったのだろう。

 

ここまでいけば、俺がこいつに何を言った所で何も響かないだろう。今更、こいつが自分を許せるとは思えない。

 

思わず刀に力を入れる。…が、ため息を吐きながら、手を緩めた。

 

楽にしてやろうと思ったが、俺にそんな資格はない。

 

こいつの問題はこいつが解決せねばならない。例え、死ぬことがこいつの望みだったとしてもだ。

 

「着きました!こちらになります」

 

どうやら、そんな物騒なことを考えている間に着いたらしい。誰も居ないようだが…まあ、好都合か。

 

「ご苦労。後は下がっていろ」

 

「は!しかし、一体ロイドさんにどんなご用なのですか?」

 

「お前が知る必要は…ロイドさん?知り合いなのか?」

 

「はい!何回かテストパイロットとして、呼び出されたことがあります!」

 

ふーん。ということは、こいつがランスロットのパイロット候補か。

 

こいつの身体能力を考えれば、パイロットとしても一流なのだということは予想がつく。候補どころか、普通ならパイロット確定だろう。それが、未だに候補止まりということは、名誉ブリタニア人ということが関係してるのだろう。こちらとしては、好都合だが。

 

そんなことを考え、敵地で油断したのが失敗だった。

 

「探偵ごっこは」

 

考えることに気を取られていた俺は背後から近づいてくる男の気配に気が付かなかった。

 

「そこまでだよ」

 

俺はその男が仕掛けていた罠で発生した電撃が炸裂してるのを見た。失敗した…敵地で考え事に耽るとは、素人のようなミスをしてしまった。まあ、喰らったのは俺ではなく

 

「アババババ!!」

 

枢木スザクなのだが。立っていた場所が悪かったな。まあ、何か罠っぽい感じがしたから俺は、その場所には行かなかったのだけれど。

 

「あ、兄貴!?」

 

「こんなガキにつけられるとはねぇ」

 

全身が黒こげになったスザクがピクピク痙攣しながら何とか声を出す。

 

「な…何をするんですか、ロイドさん…僕は、ただこの人を案内しただけです」

 

「ロイドじゃない…兄貴だよ」

 

全身黒ずくめの格好のロイドは、そう答えた。

 

「このガキは確かジェットコースター殺人事件の時の」

 

「ジェットコースター殺人事件って何ですか!?エドガワさん僕とずっと一緒でしたよね!?」

 

「つけてやがったのか!クソが!兄貴!このガキばらしますか?」

 

「どんだけ悪ノリするんですか!?ていうか、何で二人とも黒ずくめの服装に着替えたんですか!?」

 

「いや、銃は不味い。まだ軍の関係者がいるかもしれないからねぇ」

 

「あなたがその軍の関係者ですが!?」

 

「だからこそ…」

 

ロイドは、懐からあるものを取り出す。それは

 

「セシル君が作った卵焼きを使おう」

 

真っ黒に焦げた卵焼き?だった。変な邪気が出ている気はするが。

 

「何でここで卵焼きぃ!?」

 

「何しろ体内から毒が発見されない代物らしいからねえ。まだ、人に食べさせたことはないんだけど」

 

「絶対に食べちゃいけない気がします!ちょ、ま、待って下さい、ロイドさん!いや、マジで!!」

 

そんなスザクの言葉を無視し、卵焼きがスザクの口に向かう。だが、入れられる、その瞬間

 

「何で人の料理をアポトキシン扱いしてるんですか?ロイドさん」

 

笑顔に青筋を浮かべながら現れたセシルがロイドが掴んでいた卵焼きをロイドの眼に眼鏡ごと突き入れた。

 

「ギャァア!?目が、目があ!?」

 

「バ○ス」

 

「エドガワサンは何を言ってるんですか!?」

 

「いや、何か言わなきゃいけない気がして」

 

そんなカオスの状況を無視して、セシルはため息を吐きながら喋る。

 

「全く…スザク君に失礼ですよ、ロイドさん。上司だからってやって良いことと悪いことがありますよ」

 

「セ、セシルさん…」

 

感動のあまり涙が出てきたスザク。だが、その涙は

 

「昨日作った卵焼きを食べさせる何て失礼ですよ。こんなこともあろうかと私がさっき作っておきました」

 

セシルの言葉で止まる。そして、すぐさま態勢を立て直し、その場から逃げようとする…が

 

「そんなにはしゃがなくても良いわよ、スザク君。食べ物は逃げないから」

 

目にもとまらない速度で後ろに回り、首を捕まれたスザクは動きを封じられ、床に叩きつけられた。効果はばつぐんだ。

 

「セ、セシルさん!作ってくださったのは大変嬉しいんですけど、今日僕はお腹の調子が悪くて!だから、ロイドさんとエドガワさんに渡して下さい!」

 

「遠慮しなくて良いわよ、スザク君。少し柔らかく作ったから消化にも良いわよ」

 

「消化に良いっていうか、胃ごと溶かされそうなんですが!?ロ、ロイドさんとエドガワさんも何か言って下さい!」

 

そう言って首を押さえられながらもスザクは何とか周りを見渡すが

 

「あら?あの二人何処かに行っちゃったわね」

 

逃げられてしまった。スザクは絶望のあまり青褪める。

 

「しょうがないわねぇ、あの二人にも食べてもらいたかったんだけど」

 

「そ、そうです!やはり、こういうのは皆で味わうべきです!で、ですから食事は次の機会に」

 

「スザク君に三つとも食べて貰えば大丈夫よね。スザク君。成長期なんだから残さず食べなきゃダメよ?」

 

そう言ったセシルはスザクの前に卵焼き?を並べていく。

 

スザクは目の前に死神が見えた。

 

しかし、そんなスザクを無視して食べやすい大きさにほぐした卵焼き?をスザクの口に持っていくセシル。

 

「はい、スザク君。食べさせてあげる。あーん」

 

「ノ、NOOOOOOOOOOO!!」

 

そのスザクの絶叫は租界にまで響いたらしい。

 




ここのセシルさんのモデルが誰かなんていうことは聞いてはいけない!


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19 人とは違う視点で物事を見てみよう

コードギアスの続編が決まりましたね!今から楽しみです。


スザクの犠牲、ごほん!スザクが料理を食べてくれたおかげで安全に移動できた二人はランスロットを目の前に話し合っていた。

 

「これが僕の自慢のランスロットだよ!」

 

「ほう、これが」

 

ものすごく楽しそうに自らの作品を自慢するロイドだが、彰の耳にはあまり入っていなかった。何故かというと

 

(何だよ、このチートナイトメア…)

 

一緒に見せられたテストデータにドン引きしていたからだ。

 

グラスゴーどころか、サザーランドすら比べ物にならない性能を誇っている。

 

これにスザクが乗ったとしたら目も当てられない。鬼に金棒とはこの事だろう。

 

はっきり言って、現在のブリタニア軍と日本解放戦線の戦力差に、これが加わったら勝ち目が見えなくなる。

 

その事実に頬をひきつらせる彰。

 

(こりゃあ本格的に、こいつ対策を考えなきゃダメだな…スザクは名誉ブリタニア人だからパイロットになれない可能性は高いが、乗った時のことを考えた対策を作るのが正解だな。まあ、それが必要ない方が良いけども)

 

「どーう?凄いでしょ!」

 

「ははは…凄いなんてもんじゃないですね。完全に化物ですよ」

 

「でしょ!でしょ!」

 

僕って天才だからねーと彰の心からの本音に満面の笑顔と自信満々の言葉で返す。

 

この男の厄介な所は、言葉だけでなく本当にこの男が天才だということだ。

 

まあ、変人過ぎるので普通の軍人が普通に考えれば絶対に採用されないだろう。それがこんなナイトメアを作れるほどの研究資金が得られているということは…

 

(シュナイゼルのせいか…あー、やだ、やだ)

 

面倒臭い…EUにいる癖に、日本にまで影響を及ぼしてんじゃねぇ。

 

シュナイゼル.エル.ブリタニア。はっきり言って化物である。正直、勝てる気がしない。

 

クロヴィスを倒そうと。コーネリアを倒そうと。ナイトオブラウンズを倒そうと。最後には、この男が立ちはだかる。こいつを倒さないとブリタニアには勝てない。

 

しかし、勝ち筋が見えない。心底、厄介な野郎だ。だからこそ、当面の間はEUの方に集中していて貰いたい。

 

その間に俺はシュナイゼルの動向を探りながら、シュナイゼルに勝つ手段を模索する(ちなみに、ランスロットのことを知れたのも、シュナイゼルの動向を探っていたお陰である)。なので、正直暫くの間はクロヴィスを潰したくねぇ…クロヴィスを潰せばシュナイゼルが日本に関心をよせちまう。今の俺らの力じゃ、シュナイゼルどころかコーネリアにも勝てねぇし。

 

ぶっちゃけ、クロヴィスに勝つ…というか、殺すのは簡単なのだ。このまま潜入を続けて不意打ちで殺れば終わりだ。それをしない理由は、それをするメリットよりもデメリットの方が圧倒的に大きいから。

 

草壁さんとかが聞けば、日本人の誇りがどーだの言うだろうが、俺にとってはどーでも良い。誇りで勝てれば苦労はない。

 

(まあ、今日のところはこの辺で良いか…とりあえず基本的なスペックは分かった。それに、細かい装備も少しな。特に準備もしてない段階じゃ、これ以上は無理だろ)

 

そう考えた彰は話を終わらせようとする。

 

「全く…天才には敵いませんね。ありがとうございました。良い勉強になりました」

 

「あはぁー。僕も開発間近のランスロットの自慢ができて良かったよー。ところでさ、代わりって訳じゃないけど一つ質問に答えてくれない?」

 

「はあ、良いですけど何か?」

 

「君…誰?」

 

一瞬、彰は動きを止める…が、直ぐに何事もなかったかのように答えた。

 

「は?どういう意味ですか?」

 

「おーめーでーとーうー!君の潜入は完璧だよ!どうやったかは知らないけど、データベースに登録されていないにも関わらず、ここまで来ることができた!しーかーもー、スザク君や他の人たちにも全く気付かれることなく!ここまでいけば、芸術だねぇ」

 

ロイドの言葉にため息をはく彰。データベースまで調べられたのならば、言い逃れはできない。

 

「やれやれ…時間があったらデータベースの細工までしてたんだがねぇ。生憎と急に決められた案件じゃ、そこまでできなくてね。ご参考にまで聞かせてくれ。何で気付いた?」

 

「君のハイスペックのおかげだよぉ!僕は自分の研究以外に興味がない。だから、興味がない人間の顔なんて100回見たって覚えない。だけど、逆に言えば興味があれば一回見たら忘れない。意味わかるよねぇ?」

 

「なるほどな」

 

彰は頭をかく。これだから変人は厄介だ。常人では見ない視点で物事を見てくる。

 

「そのとーおーりー!今の僕が一番探しているのはランスロットのパイロット候補!!まあ、スザク君がなればベストなんだけど名誉ブリタニア人だから問題があってねぇ。だ.か.ら.ここにいるブリタニア軍人のデータは全て見た!君ほどの身体能力があれば目に留まらないはずがないんだよねぇ。そして、目に留まったなら僕は絶対に忘れない。生憎と僕は機械よりも自分を信じているんでねぇ。幾らセキュリティーチェックを潜り抜けたとしても疑うよぉ」

 

「やれやれ…長い解説ありがとうよ…で?どうする?」

 

「何が?」

 

キョトンとした顔で尋ねるロイド。こいつ、状況分かってんのか?

 

「俺が俺の正体を看破したお前を生かしておくと思ってんのか?今ならお前を殺せば俺の侵入は誰にも気付かれないんだぜ?」

 

ニヤリとした彰は刀に手をかける。

 

しかし、ロイドはそんな姿を見ても焦った姿を見せない。こいつ、恐怖の感情死んでるのか?

 

「確かにねぇ。ても、大丈夫だよぉ。だって、僕この事を誰かに言う気何かないから」

 

「は?」

 

今度は彰が聞き返す番だった。

 

「別に驚くことじゃないでしょ?だって、僕は自分の研究をやりたいだけなんだもの。だから極端な話、僕はブリタニアが勝とうが負けようが滅びようが別にどうでも良いんだよぉ。僕がブリタニア側にいるのは、シュナイゼルちゃんがたっぷりと研究資金をくれるからってだけだからね。別にブリタニア人だからブリタニアに仕えている訳じゃないんだよぉ」

 

変人の究極体である。

 

「なるほどな。だが、お前の説得には一つだけ大事なものが抜けてるぞ。科学者のお前になら分かるだろ?」

 

「あはぁ、やっぱり勢いで騙されちゃくれないかぁ。そうだねぇ、僕のさっきの話には根拠がない。こんな口約束何て守ると考える方がおかしいからねぇ」

 

「そういうこった。それをどう保証する?」

 

「無理だねぇ。保証するのは不可能だよ。なら、代わりと言っちゃ何だけど取引しない?」

 

「何?取引だと?」

 

「そうだよぉ。君がここで僕を殺さない代わりに、僕が君の頼みを一つだけ何でも聞き入れる。もちろん、これにも根拠はないし、無理な願いは無理だけどねぇ」

 

「ふむ」

 

さしもの彰も長考の構えを見せる。

 

本音を言えば、彰もできればロイドを殺したくはないのである。

 

理由はクロヴィスと同様に、シュナイゼルに目をつけられたくないからである。

 

ロイドの技術力は確かに驚異だが、現状ではシュナイゼルの方が遥かに厄介だ。

 

もちろん、この場で騒がれたら殺すしかないのだが、本人曰く言う気はないらしい。

 

根拠はないのだが、俺から見ても確かにロイドが俺のことを誰かに言うとは考え辛い。何故なら、本当に言う気なら俺に言わずに回りの兵士がいるときに言えば済む話なのだから(まあ、仮に襲ってきても逃げる自信はあるが)。

 

とはいえ、常人にはあり得ないことだろうが、ロイドは完全に変人である。常人と同じ思考回路を求める方が間違っている。

 

「まあ、良いか…質問に答えるなら、その条件を飲もう」

 

「流石ぁ。話が分かるね!どんな質問?」

 

「何故俺にそんな質問をした?黙ってれば問題は全くなかっただろーが」

 

「あはあ、そんなこと?そんなの簡単だよ!それはね

 

 

 

 

 

 

僕が科学者だからだよぉ。自らの仮説には検証をしないと満足しない人種なのさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロイドと別れた彰は無事に脱出するために考えていた脱出ルートを辿っていた。

 

最後の質問の答えのアホらしさで完全に殺る気がなくなってしまったからだ。

 

(てめえの在り方を貫くためなら、自らの死も関係ないか…完全にアホだな。だけど、ちくせう。ちょっと格好良いと思っちまったじゃねえか)

 

そこはかとなく敗北感のようなものを感じながら急ぐ彰。そこに突然声がかかる。

 

「おい、そこのお前!道を開けぬか!誰の前の道に立っていると思っている!」

 

(ゲ、おいマジか)

 

振り返った場所の先頭にいたのは、クロヴィスの軍の中ではトップクラスに厄介なジェレミアだった。

 

ナイトメアの腕もそうだが、一番面倒なのは、その忠誠心だ。自分が死んでも皇族を守ろうとする精神は、極限状態になればなるほど面倒臭いものになる。

 

とはいえ、別に戦う訳ではない現状では厄介な存在ではない。

 

ロイドのような変人ではないし、頭も大してキレないので俺の変装がバレることなどあり得ない。

 

なので、ジェレミアのことはどうでも良かった。問題はジェレミアの後ろにいる人物である。

 

「良いんだよ、ジェレミア。そんなに怖い声を出す必要はない」

 

「は!申し訳ありません!しかし」

 

「良いんだよ、別に今は職務中じゃないしね。今の僕はただのクロヴィスであり」

 

懐に入っているカードを取り出しながら続ける。

 

 

 

 

 

 

「妹を守り隊の会員No.3だ!」

 

 




続編が始まる前に原作に入ってたら良いなあ(願望)


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20 隠したいものはベッドの下に置いておこう

多分始めてシリアスっぽい感じになった


「いやあ、やはり天気が良いというのは素晴らしいね!何てことない景色でも素晴らしく見える!そうは思わないかい?」

 

「仰る通りです、殿下!」

 

「ここに妹がなおさら、良いんだけどね!そうは思わないかい?」

 

「仰る通りです、殿下!」

 

「もちろん、弟でも全く構わないよ!僕は皆平等に愛すからね!全く…何で弟を愛し隊がなかったのか、理解に苦しむ…そうは思わないかい?」

 

「仰る通りです、殿下!」

 

…信じられるか?この二人さっきからずっとこんな会話を繰り返してるんだぜ?本気なんだぜ?ギャグじゃないんだぜ?

 

ここまで不毛なやり取りを繰り返すことができる姿にはある意味尊敬を覚える。お互い楽しそうにしているが何が何が楽しいのか全く分からない。

 

先程の偶然の出会いの際にクロヴィスから「絵を描くから見てみないか?」のようなことを言われて断る術もなくここにいる。

 

そんなことがなければ、クロヴィスにもジェレミアにも用事がない俺がここにいる理由は全くない。

 

まあ、こんな不毛なやり取りをただ見ている時間にも一定の意味はあった。それは

 

「あの二人のためにも、ここを住み良い場所にしなければいけないというのに…全く、どうしてこうも上手くいかないんだ」

 

クロヴィスが他のブリタニア人の貴族のように日本人を特別蔑んではいないということを知れたことだ。(まあ、ブリタニア人よりも下の人種だとは思っているようだが)

 

こいつの言葉が本当なのだとしたら、こいつは別に日本人を差別するつもりはないのだろう。つまり、こいつは別に悪党なのではない。

 

ぶっちゃければ、統治者としては無能なのだ。根本的に統治者に向いていないのだ。

 

「殿下!殿下の素晴らしい支援は私も存じています!たかがイレブンのために、そこまでする殿下の優しさに感動しています!近い将来必ずやその成果は出るでしょう!」

 

出ねぇよ。

 

喉まで出たその言葉を彰は必死に押し込めた。

 

クロヴィスが何をやっているか詳しくは知らんが、こいつの日本人のためにやっているという支援のほとんどは日本人に届いていない。

 

支援の話が事実ならば、その支援とやらのほとんどは日本人に届く前に吸収されている。つまりは、汚職や横領によってブリタニアの偉い奴等の懐にしか流れていないのだ。

 

日本人に支援を行き届かせたいなら、こいつらを摘発しなければならないが、ぶっちゃけ、無理だろう。

 

クロヴィスは権力は持っていても、能力がない。

 

この状態で摘発しようとしたところで、とかげの尻尾切りで終わりだ。

 

そもそも、録に政治経験もない癖に反政府組織の多い日本の統治者になろうとするのが間違っている。そんなもんできるわけがない。てか、良く周りに止められなかったな。

 

…ん?そう言えば何でブリタニア皇帝はクロヴィス何かを日本に派遣したんだ?いきなりこんな難易度が高いところに飛ばしても上手く統治ができないことなど分かりきっている。ブリタニア皇帝がそんなことに気付かないはずがない。

 

ということは、別に上手くいかなくても良いと思っているということになるが…何で?

 

何か自分が核心に近いところに近づいた感覚に襲われた彰だが、残念だがここは敵地であり、長々とこんなことを考えていられる場所ではない。

 

小さく舌打ちをしながら現実へと思考を戻す。

 

後に、この時にもっと良く考えておけば良かったと後悔することになるのだが、そんなことはこの時の彰には知る由もなかった。

 

そして、それと同時に絵を描きあげたクロヴィスが声を上げる。

 

「さあ、できた!ジェレミア見てくれ!そこの君も見ても良いよ!」

 

「流石は殿下!素晴らしい腕前でございます!」

 

「素晴らしいですね…言葉が出ないとはこのことです」

 

ジェレミアだけでなく、絵を見せられた彰も関心の声を上げる。

 

お世辞でも何でもなくクロヴィスの絵が本当に素晴らしかったからだ。

 

(いや、お前大人しくブリタニアで絵を描いてろよ)

 

彰の心からのツッコミだった。こんな意外な才能があるのなら何故敢えて日本でポンコツ統治者をやっているのだろうか。全力で転職をおすすめしたい。

 

「ふふふ。最近忙しくて絵を描く時間がなくなってたからね。こういう安全な場所でのんびり描けるっていうのは、リラックスするねぇ」

 

いや、すぐ後ろにテロリストがいますけどね。

 

クロヴィスは完全に彰の射程圏内にいる。つまり、殺ろうと思えば何時でも彰はクロヴィスを殺ることができるわけだ…が…

 

(ここまで隙だらけだと逆に殺る気が削がれるな…)

 

そもそも彰にクロヴィスを殺す気など無いのだが、例え殺る気だったとしても多分殺す気がなくなってただろう。

 

そんな彰の心情など知る由もないクロヴィスは誉められたことと良い気分で絵を描いていることで、機嫌が良いのか楽しそうに今まで描いた絵を見せてくれた。別に頼んではいないのだけれど。

 

しかし、美術に詳しくない彰でもそれらの絵は綺麗に見えたので単純に楽しみながら絵を見ていた。衝撃で一瞬無防備になる、とある一枚の絵を見せられるまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルルーシュは、態度には見せなかったがそこそこ疲れていた。

 

家でナナリーとゆっくり過ごすはずだったのに、来ていたカレンが「良い天気だから、ナナリーと散歩してくるわ」と出かけようとするものだから、シスコン代表のルルーシュに行かないという選択肢は存在せず、一緒に行くことになってしまった。俺の休みを返せと全力で叫びたかった。

 

しかもカレンのいう散歩とは、ルルーシュの定義ではピクニックに近いものだった。何処の誰が散歩で野原を走り回ると思うだろうか。

 

本来のルルーシュであれば、怒って止めていたのだろうがナナリーが喜んでいたのでは、ルルーシュとしても怒りようがない。ナナリーからすれば、過保護なルルーシュと一緒では絶対にできない遊びが出来て楽しかったのだ。まあ、とはいえ

 

「疲れた…あいつの体力は一体どうなっているんだ…」

 

ルルーシュがカレンと同じ運動量を普通にこなせるわけがないのだが。それでも、カレンにとっては本当に散歩の範疇にあるのはご愛嬌である。そんなルルーシュに突然声がかかる。とはいえ、知り合いの声なので焦ることもなかったが。

 

「よーう。お疲れだねぇ、お兄様」

 

「全くお前は…普通に玄関から入って来れないのか?」

 

顔も向けずに来客である彰へと話しかけるルルーシュ。彰も当然のように答える。

 

「登場にはインパクトが大事なんだよ。驚いたろ?」

 

「お前じゃなければな。今更お前がどんな登場をしても驚きはしない。それで何の用だ?大したことじゃないなら、疲れてるから帰ってくれ」

 

「いきなり来た客に冷たいねぇ。何かあったの?」

 

「カレンの散歩に付き合わされてな…あんなものを散歩とは俺は認めん」

 

「やれやれ…体力がないな。あの母親の子供だってのに」

 

その言葉にルルーシュの動きが一瞬止まった。他の人が見れば分からなかったかもしれないが、彰にとってはそれで充分だった。そして、そのお陰で彰の推測は確信へと変わった。

 

「何の話だ?俺の母親は別に「いないんだよ」何?」

 

ルルーシュの言葉を彰が遮る。

 

「知り合いに頼んで調べさせたが、『ランペルージ』というブリタニアの貴族は確かに存在する。いや、正確に言えば存在した。50年以上前にな」

 

彰の言葉で動揺した心をルルーシュは無理矢理押さえ込んだ。

 

「そうか。確かにお前が調べた資料だとそうかもしれんが所詮は資料だ。漏れなど無数に存在する」

 

「はっ。確かに。俺も最初はそう思ってた。まさに、悪魔の証明だ。いないということを証明するのは案外難しい。だが」

 

彰は言葉を続ける。

 

「今日、別件でクロヴィスの所に忍び込んだ。そこであるものを目にしたんだ。本当に偶然だった。流石に目を疑ったぜ」

 

彰は懐から一枚の写真を取り出し、ルルーシュに投げて渡す。受け取ったルルーシュは息を飲んだ。そこに写っていたのは一枚の絵だった。だが、問題はその絵の被写体だった。何故なら、そこにはクロヴィスとユーフェミアとコーネリアの三人と

 

「お前とナナリー…だよな。かなり幼いが。愛されてたんだな。今でも良く書いてるらしいぜ。亡くなった弟と妹に思いを馳せながらな。優しいお兄様だ」

 

ルルーシュは歯を食いしばる。何か言葉を返さないといけない。しかし、返す前に彰の方が先に口を開いた。

 

「ルルーシュ・ランペルージとナナリー・ランペルージが密かに存在していた。もちろん、その可能性もあるが俺はもう一つの可能性の方が遥かに高いと思うぜ?お前らは日本に人質として送られてきた。そして戦争に巻き込まれ亡くなったと思われていた兄弟だ」

 

止めろと怒鳴りたいがルルーシュの叫びは声にならない。その間も彰の言葉は続く。

 

「あの状況を歩けない上に目も見えない妹と良く生き延びたもんだ。さてと、改めて挨拶といこうか。なあ、お兄様。いや、こう言い換えた方が良いか

 

 

 

 

 

 

 

 

第17位皇位継承者ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア」




ご都合主義なのはご容赦を!
そして、『ランペルージ』の話は捏造です。


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21 ヒロインがヒーローをやったって良いじゃない!

信じられないペースでの投稿


(ええ!?ちょ、ちょっと待ってよ!一体どういうこと!?)

 

カレンは突然始まったルルーシュと彰の口論を聞いて、その内容に驚愕していた。

 

一応カレンの名誉のために言っておくが、別にカレンは盗聴をして二人の会話を聞いているとか、部屋のドアの前で聞き耳をたてているとかそういうことはしていない。カレンはルルーシュのベッドの下のスペースにいたので普通に聞こえたというだけの話だ。

 

では何故、そんな所にカレンがいるのか。

 

それは簡単。一時間前にルルーシュの家から帰る直前に彰から

 

『ルルーシュのベッドの下に隠れといて。俺が良いって言うまで出てくんなよ。当然、他の奴らには秘密でな』

 

というメールが来たからだ。

 

ぶっちゃけ理解不能だった。

 

とは言え相手が理解をすることがそもそも不可能な生物なので今更ではあった。なので即時に『何で?』というメールを送ったのだが、返信が全く来ない。

 

無視して帰ろうとしたカレンだが、相手はあの彰。一%以下の確率で何か意味がある可能性があった。(まあ、意味の無い確率の方が大きかったが、その時はぶん殴ろうと決めていた)

 

しかし、自分の家族を救ってくれた大恩人であるルルーシュに黙って本人のベッドの下に隠れるというのは人としてどうなのだろうか。

 

しかし、彰もカレンの大恩人であり、おまけに無駄に頭が良いことも認めていた。なので、これが万一ルルーシュを助けるなどの理由であったら自分はルルーシュを見捨てたことになってしまう。

 

カレンは悩みに悩んだが、結局、渋々とルルーシュのベッドの下にずっと静かに隠れていた。これで意味がなかったら半殺しにするくらいは許してほしい。

 

一時間以上待っても全く何も起きない上に全く返信も来ない事実にカレンのストレスはピークに達し、もう帰ろうとしていた矢先にルルーシュが部屋に入ってきた。

 

なので、慌てて再びベッドの下に隠れていると今度は彰本人が窓から入ってきた。

 

意味が分からないこの現状に文句を言おうとするカレンだが、事前に『彰が良いと言うまで』出てくるなと言われているカレンはギリギリの所で思い止まった。

 

しょうがないので、隠れながら二人の会話を聞いていると彰の口から信じられない衝撃の事実が放たれた。別にルルーシュの出生などに全く興味がなかったカレンだが、流石にこれには驚かされた。

 

(ルルーシュが皇族で皇位継承者…いやいや、何がどうなってんのよ!?)

 

突然の急展開にカレンの脳はオーバーヒートしかかっていた。しかし、そんなカレンをさしおいて二人の会話は続いていく。

 

「…どうやら、惚けても無駄なようだな」

 

殺気すら漂わせてルルーシュは答える。しかしその殺気を受けても彰は何時もの飄々とした雰囲気を崩さない。

 

「まあ、そんだけ分かりやすいとな。ポーカーフェイスの練習した方が良いぜ?せっかくクールなイケメンで通ってるんだから。ポーカーフェイスはクールなイケメンには必須だろ?」

 

(何で、あいつこの空気の中でふざけられんの!?あいつの心臓どうなってんの!?)

 

ベッドの下に隠れているカレンは何もできないので、心の中で全力のツッコミをする。

 

「まさか、兄上が未だに俺たちの絵を描いてるとはな…本人にとっては供養かもしれんが完全に良い迷惑だ」

 

(ルルーシュガン無視してる!!そりゃそうよ、だってそんな空気じゃないもの!今はシリアスだもの!!)

 

「そういやぁ、何でイケメンはクール系が多いって印象あるんだろうな?別に良いよなぁ、熱いイケメンがいても。あー、でも最近は熱いイケメンも多いか」

 

(もうイケメンの話は良いのよ!!そんな話はどうでも良いのよ!!お願いだから真面目になりなさいよ、見てるこっちが怖いのよ!)

 

「…それで、俺をどうする気だ?解放戦線に連れていくか?それとも、ブリタニアに売り飛ばすか?」

 

(ルルーシュ貫いた!シリアスな空気を貫いた!)

 

「んにゃ、別に?」

 

「何?」

 

(は?)

 

彰の返答に隠れて聞いていたカレンでさえも疑問の声が出そうになった。何故、わざわざ苦労をして調べて何もしないと言うのか。

 

どう考えても、割に合わないし、理解できない。

 

そう考えたルルーシュは手の平を机に叩きつける。衝撃で机の上に立てられていたチェスの駒が床に散らばる。

 

「ふざけるな!ここまで調べて何もしないだと!?そんなことがあるか!」

 

普段からは考えられぬルルーシュの怒声。それを聞いても彰は耳をほじりながらダルそうに答える。

 

「しゃーねーだろ?気になっただけなんだもんよ。ていうか、そもそも

 

 

 

 

見捨てられた皇子に人質としての価値なんてあるわけないだろ?」

 

くっと悔しそうな顔をするルルーシュに彰は続ける。

 

「敗者は斬り捨て、勝者が正義がブリタニアの国是だ。敗者である捨てられた皇子のためにブリタニアが動くとはとてもじゃないが思えないな。まあ、クロヴィスなら動くかもだが…そもそも、俺にとっちゃあいつなんて敵でも何でもないんだよ」

 

だから、俺にとってお前に人質の価値はない、と彰は伝える。

 

(まあ、本当なら御輿としての価値はあるけども)

 

ブリタニアに捨てられた皇子など御輿には最適だ。だが、今の日本解放戦線ではルルーシュは御輿にはならない。それは日本解放戦線が日本を助けるために動いているからだ。ルルーシュがトップに立つならば、ブリタニア人を倒すのではなく、世界をブリタニアの支配から解放するために、ブリタニアという国を倒す組織でなければならない。

 

だが日本解放戦線がその方向に変化することは難しいだろう。彰としても、変化の意味と価値を藤堂さんに何度も説明しているのだが一更に変化がない。まあ、幹部のほとんどが反対していれば当然と言えば当然だが。

 

「では何故その話を俺にした?黙っていれば、何も問題はなかったはずだ」

 

「そりゃ、お前が鋭すぎるのが原因だ。こんな事実を黙ってれば何時か綻びが出る。まあ、普通の奴くらいならだまし続けられる自信はあるが…お前は例外だ。そん時に疑われるくらいなら今話した方がマシだ」

 

ルルーシュの頭のキレが自身を上回っていることは分かっている。こういう相手には隠し事をせず、堂々と話した方が良い。このような相手の内面に踏み入るような事柄なら尚更だ。

 

「…俺にそんな話を信じろと言うのか?」

 

「事実だからな。信じてもらうしかねぇな」

 

「嘗めるな。人質として以外でも俺たちを利用してできることなど無数にある。お前がそれをしないという証拠など、どこにある?」

 

「証拠だと?…はっ!ルルーシュ。俺はお前のことを誤解してたみたいだな」

 

「ふん、俺がそんな言葉で流されるとでも思っていたか?」

 

「いや、逆だ。最初に会った時はお前のことを冷静に周りを見ることができる人間だと思ってたんだが…どうやら、違ったようだな」

 

「何?」

 

ピクリとルルーシュは眉を潜める。

 

「周りを冷静に見ているわけじゃねぇ。お前は周りを信じることができないだけだ。はっ、お笑いだな。童貞野郎の分際で一人で何でもできるとでも思ったか」

 

「貴様…」

 

ギリッと歯軋りをして彰を睨み付けるルルーシュ。そんな空気の中でカレンは思った。

 

(ルルーシュって童貞だったんだ…)

 

おい、カレン。考えるのは、そこじゃない。

 

「前にナナリーを守ると言ったな?人を信じないでどうやって誰かを守れる。断言してやるよ、今のお前じゃ誰も救えないし、守れない。シャーリー達やナナリーどころか自分自身もな」

 

「黙れ…」

 

「お前がナナリーを大事にしてるのは知ってるし、見てれば分かる。だが、お前のそれは独り善がりだ。お前はナナリーの気持ちを考えてない。なにせ、お前はナナリーでさえも本当は信用してないんだからな。お前は、てめえの理想を勝手にナナリーに押し付けているだけだ」

 

「黙れ!」

 

キレかけているルルーシュを見ても彰は、ふんと鼻を鳴らして言い続ける。

 

「このままじゃ、ナナリーがお前の守りたいナナリーじゃなくなった時、お前はナナリーを殺すことになるかもな」

 

その彰の発言にルルーシュの中のナニカがキレた。

 

「黙れと言っているだろうが!」

 

怒鳴りながらルルーシュは彰に掴みかかる。それを見て流石に飛び出そうとしたカレンだが、彰はそれを手で制する。

 

「貴様に!貴様に何が分かる!親に!兄妹に!親戚に!信じていた者全てに裏切られ!利用され!殺されかけ!泥水を飲みながらでも生きてきた俺達兄妹の気持ちが!貴様に何が「わかんねぇよ」」

 

彰は半狂乱になりながら怒鳴ってくるルルーシュの手首を掴み、逆の手でルルーシュの顔面をぶん殴る。

 

当然のように吹き飛ばされるルルーシュ。それを見て我慢の限界がきたカレンがルルーシュを庇うように前に立つ。

 

「彰!やり過ぎよ!これ以上やるなら、私が相手にはなるわよ」

 

「カレン!?お前何処から!?」

 

「え!?えーと、あの、その」

 

ルルーシュから投げられた質問にカレンは答えを探す。勢いのまま出てきてしまったので、そこまで考えてなかったのだ。そんなカレンを助けるように彰は会話に加わる。

 

「俺が呼んだんだ。カレンに怒るのは筋違いだぜ」

 

「貴様!一体どういうつもりだ!」

 

「その方が良い方に転がると思ってな。ぶっちゃけ、こういうのは俺の柄じゃねーし」

 

「何の話だ!何を企んで「ルルーシュ!落ち着いて!とりあえず冷静になって」お前は黙っていろ、カレン!お前には関係ないだろうが!」

 

倒れていたルルーシュを起こすために手を出していたカレンの手をルルーシュは振り払う。

 

そのルルーシュの行動と発言が、色々と言いたいことがあったが我慢していたカレンをキレさせた。

 

「ゴチャゴチャとうるさいのよ、あんたは!」

 

「ウグ!?」

 

今度はカレンがルルーシュの胸ぐらを掴む。キレていた自分に逆にキレてきたカレンを見て少し冷静になるルルーシュ。しかし、カレンはヒートアップする一方だった。

 

「あんたがルルーシュ・ランペルージだろうが、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアだろうが、そんなの知らないわよ!私が知ってるのはね!偉そうで!ヘタレで!無駄に頭が良いイケメンで!シスコンで!お人好しなのに、変な所で不器用で!頑固な、ただの『ルルーシュ』よ!それ以外どうだって良いのよ!その、ただの『ルルーシュ』は、私の家族を、一番大切なものを守ってくれた!だから、今度は」

 

一息ついてカレンは続ける。

 

「私が守るから!シャーリー達を!ナナリーを!あんたを!あんたが守りたいものを私も守るから!だから…私のことくらい信じなさいよ!私はあんたの彼女でしょうがぁ!!!」

 

言い終わったカレンは掴んでいた手を離す。自然とルルーシュはストンと座ることになった。しかし、ゼェゼェと息を吐きながら自分を見てくるカレンに怒りも忘れて呆然とする。

 

そして、彰はそれを見て、聞いて肩を揺らして大笑いする。

 

「だーっはっはっはっ!たまんねぇな、おい!どっちが彼女だ、おい!カッコよすぎるだろうが、彼女!」

 

それでも笑いは収まらないのか涙目で彰は続ける。

 

「くっくっくっ。良かったなルルーシュ。お前は信じていないかもしれんが、お前のことを信じている者が少なくとも二人はいる。手始めに…その二人のことは信じてみないか?」

 

スッと手を出す彰。それを見て先程の自分の発言を思い出して赤くなりながらもカレンも手を伸ばす。

 

まだ呆然としながらもその手を見つめるルルーシュ。ルルーシュは伸ばされたその腕を

 

「悪いが…まだ保留だ。俺にはまだその腕を掴むことはできん」

 

取ることは出来なかった。

 

ムッとしたカレンは怒ろうとするが、彰は何とかそれを制止する。

 

「まっ、良いんじゃねーの?いきなり変われって言われても無理だろ。さっきも言ったけど、お前の気持ちなんざ俺達は知らんしな。だから、待っててやるよ。お前がこの手を掴むまでな」

 

「…何時になるかは分からんぞ」

 

「それだけ聞ければ十分だ」

 

ニッと笑う彰を見て、不貞腐れるルルーシュ。ようやく何時も通りになった二人を見て、カレンも笑うが、思い出して彰に尋ねる。

 

「あんたさ…こうなるのが分かってたの?」

 

「そりゃ、もちろん」

 

「嘘をつけ。行き当たりばったりだろうが」

 

「結果オーライだろ?まあ、せっかくだし、俺は知ってるけどカレンにルルーシュのここまでの人生でも聞かせてやれよ。一応保留とはいえ、信じてるんだろ?」

 

「…別に聞かせるような話でもないがな」

 

そこで語られたルルーシュの今までの話を聞き、「ブリタニア皇帝ぶっ殺す」と言って飛び出そうとするカレンを二人がかりで押さえたのは余談である。

 

 

 




ご都合主義ですいません!

ぶっちゃけ、このSSの始まりのきっかけは、ふと、このシーンが頭に浮かんだからでした。


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22 守りたいものは人それぞれ

さあ、ふざけるよ!(悪ふざけが嫌いな方は読み飛ばしても問題のない回です)


ルルーシュは満たされていた。

 

色々と危ないことがあり、その問題は今もって解決していないが、あの様子から怪しい動きをするまでは保留にしておこうと考えた。

 

だが、そんなことすら今のルルーシュにはどうでも良かった。何故なら

 

「ほら、ナナリー。口にジャムが付いてるよ」

 

「お、お兄様!恥ずかしいです」

 

ナナリーの口許に付いたジャムを自らの手で拭くルルーシュの姿を見て、紅くなるナナリー。

 

幸せな時間だった。平穏を壊す悪魔もカレンも今日はいない。明日はカレンは来るかもと言っていたが、それでもナナリーと一緒にはいられる。

 

つまり、この二日間は多少の邪魔(カレン)は入るかもしれないが、概ねナナリーと二人だけの時間を過ごすことができるのだ。

 

ルルーシュにとって、こんな幸せなことはない。

 

この上ないほど上機嫌なルルーシュが今日のデートのプランを練っていると、ナナリーが声をかけてきた。

 

「あ、お兄様。言い忘れていたことがありました」

 

「何だい、ナナリー?」

 

「明日なんですが、少しお出かけしてきてもよろしいでしょうか?」

 

「明日?構わないが、随分と急だな。どうしたんだ?」

 

内心少しショックなルルーシュだったが、ナナリーのお出かけを邪魔するのも悪いと思ったので、何時もの態度を装った。

 

(ふむ…カレンと出掛けるのか?それとも、シャーリーか、会長か…いや、クラスメイトの可能性もあるが…)

 

「はい。デートなんです」

 

その瞬間、ルルーシュの世界は壊れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彰さん、今日はお願いします!」

 

「彰樣。私からもよろしくお願いします。あの…本当に私はついていかなくてもよろしいんでしょうか?」

 

「だいじょーぶ、だいじょーぶ。任せておけ、ナナリー、小夜子さん」

 

次の日。彰との約束の場所までナナリーを連れてきた小夜子は本当に自分が付いていかなくても大丈夫なのか、尋ねたが彰もナナリーも心配ないの一点張りだった。

 

そこはかとなく、どころか非常に心配な小夜子だが、本人が大丈夫だと言っている以上、無理やりついていくのも憚られる。

 

「分かりました。では、お気をつけて」

 

「おう。んじゃ、ナナリー行くぞ」

 

「はい、彰さん」

 

小夜子の心配をよそに二人は先に進んでいく。

 

そんな二人の三百メートル後方では…

 

「No.1。ターゲットを補足した」

 

身長が高い日本人がライフルを構えて彰を狙っていた。

 

それを聞いた、No.1と呼ばれたブリタニア人の青年は冷静に答えた。彼はブリタニア人にも関わらず着物を着ている。更に、眼帯をつけ、吸っていないにも関わらず片手にはキセルを持っている。

 

「そうか…No.4。照準を合わせろ。俺が合図をしたら即座に撃て」

 

「了解」

 

ふうとブリタニア人の青年はため息を吐く。冷静を装ってはいるが、顔には少し青筋を浮かべ、内心は殺意で満ち溢れていた。

 

(保留にしておいて正解だったな。まさか、こんな形で裏切るとは…まあ、良い)

 

ニィッと男は邪悪に笑い、言い放つ。

 

「俺は、ただ壊すだけだ…ナナリーを奪ったこの世界を!撃てえ!!」

 

「待ってたぜ!じゃあな、彰!」

 

命令を受け、日本人の男は引き金に手をかける。そして

 

「「じゃ、ねぇだろぉ!!!!」」

 

「「ごふっ!!??」」

 

突然現れたカレンとアヤノに頭を踏みつけられ、地面へと沈むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「何やってんのよ、ルルーシュ!朝から怪しい動きをしてるから後をつけてみたら…あんたまでボケてどうすんのよ!一人残された私は、このボケだらけの世界でどうすれば良いのよ!泣くわよ私!ツッコミ放棄するわよ!?」

 

「リョウもだよ!カレンに言われてついてきてみれば…何やってんのよ、朝から!」

 

「ルルーシュじゃない…妹を守り隊会員No.1だ」

 

「リョウじゃねぇ…妹(娘を含む)守り隊会員No.4だ」

 

「うっさいわよ!変装までしてバカじゃないの!?いや、確かに似てる所はあるけども!お互いに世界を壊したい中二病だけれども!」

 

地面に埋もれながらも妙なところを訂正するルルーシュとリョウに突っ込むカレン。

 

そのやり取りを見て、頭を抱えるアヤノ。

 

「たく…で、何時こんなブリタニア人と知り合ったんだ?」

 

「そう言えば…ルルーシュ、あんたリョウと顔見知りだったの?」

 

「いや、会ったのは今朝が初めてだ。リョウという名前も今知った」

 

「へぇ、お前ルルーシュって言うのか」

 

「知らなかったんかい!何で名前も知らない奴と暗殺をする気になるのよ!」

 

そのカレンの発言にフッと笑う男二人。

 

「甘いな、カレン。俺達に名前など意味はない」

 

「ああ。俺達は互いに妹(娘でも可)を愛していることが分かればそれで良いんだよ」

 

「良いわけあるかぁ!!何よ、その気持ち悪い結束!」

 

「確かにカレンの言う通りだな」

 

「分かってくれた?」

 

カレンの魂の叫びを聞いてルルーシュはカレンの肩に手を置く。

 

「俺も最初は妹を愛し隊に娘を愛する奴が入るのは無粋だと思った」

 

「そっちじゃないわよぉ!!!」

 

「俺も最初は妹を愛する奴なんて気持ち悪いと思ってたぜ」

 

「いや、本人を目の前にしてそんなこと言うあんたが一番気持ち悪いぞ、リョウ!」

 

「だが、そんな俺達の視界を開かせてくれる存在がいたんだ。その方の名前は分からない…だから俺達はこう呼ぶ」

 

「ああ。果てしない闘争に終止符を打った伝説の英雄…妹を愛し隊会員No.0であり、創設者だ。畏敬を込めてみんなあの人のことをこう呼ぶんだ」

 

ルルーシュとリョウの声が揃う。そうあの方の名前は

 

「「奇跡を呼ぶ【ゼロ】と」」

 

「「いや、ちょっと待てぇ!!!」」

 

暴走する二人にカレンとアヤノが声を荒らげる。

 

「何だカレン」

 

「ふっ、そうか、アヤノ。お前にもゼロの凄さが分かったか」

 

「何だじゃないわよぉ!!何となくだけど!何となくだけど、こんな所でゼロが出てくるのは間違ってる気がするわ!」

 

「同意見だ!手遅れになる前に止めろ!」

 

「まあ、せかすな。俺達もただ見ていただけじゃない。ちゃんと力はつけた」

 

「力って何だ!?絶対に普通の力じゃないよな!?」

 

「ああ。ゼロに任せきりじゃない。数いる妹を愛し隊の中でも発言力がを持ち、皇帝のように振る舞えるようになった俺達も今では四皇と呼ばれるまでになった。No.4以外の二人は顔も知らんがな」

 

「何でもありか!!あんた何髪のシャンクスになるつもりよ!」

 

そんな騒ぎの中でもターゲットを捉えていたリョウはターゲットが移動するのを見つけた。

 

「ん!?おい、No.1!ターゲットが移動したぞ!」

 

「何!?ちぃ、ここからでは死角だ!No.4移動するぞ!」

 

「了解だ!No.1への借りはここで返す!」

 

言うや否やあっという間にその場からいなくなってしまった二人。

 

取り残されたカレンとアヤノは呆然としたあと、大声で叫ぶ。

 

「「いや、二人とも待てぇ!!!!」」

 

 

 




さりげなく、アヤノが初登場


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23 言っちゃいけないことが人にはある

相変わらず何も進んでない…


「大体ねぇ…あんたら、冷静になって考えてみなさいよ。ちょっとは落ち着きなさい」

 

「そうだ。あの彰が普通にデートなどしてると思うか?」

 

ナナリーと彰の後方から二人を見つめるルルーシュとリョウにカレンとアヤノは落ち着くように言う。

 

しかし、予想外にルルーシュは、怒り狂っている様子には見えない。ふう、とため息を吐く。

 

「冷静じゃなくなったわけじゃない」

 

「いや、どう考えても冷静に見えないんだけど」

 

だが、カレンから見れば怒りを圧し殺したようにしか見えないので、全く冷静に見えない。

 

「別に俺はあいつとナナリーが付き合ってるかどうかなんて最初からどうでも良かったのさ」

 

「は?」

 

意味が分からないことを突然話し出すルルーシュに、カレンは疑問符を浮かべる。

 

「俺にとっては、ナナリーの隣に俺以外の異性はいないという世界を壊したことが問題なのさ。こうなったら、俺も同じことをやるしかあるまいよ。世界を壊すしかあるまいよ」

 

「ねえ、ちょっとルル杉さん?あんたもしかしたら、あの人にキャラを寄せようと思ってるのかもしれないけど、それ無理だから。あんたとキャラが被り過ぎてて、似せるというかあんたが喋ってることとあんまり変わらないから」

 

完全に暴走しているルルーシュにカレンが呆れながら突っこみを入れる。この男、妹が結婚するとか言ったら、どうするつもりなのだろうか。

 

カレンにはとてもではないが、このシスコンが妹の結婚相手を祝福する姿が全くと言って良いほど、想像がつかない。それならば、「妹と結婚ができる世界を作るぞ!」と言い出し、日本解放に参加する方が余程想像しやすい。と言うか、そんな想像しか浮かばない。しかも、そんな考えにもう一人のシスコン(リョウ)と彰が協力する姿がありありと浮かぶ。そうなれば、新生日本は近親相姦で埋め尽くされる国家と成る。滅んだ方が良いかもしれない。

 

その考えをカレンは首を振って頭から追い出す。一応とはいえ、自分の彼氏がそんな姓犯罪者となってしまう未来など考えたくもない。

 

「しかし、あいつ建物に入ったきり出てこねぇな…おい、No.1。どうするんだ?」

 

カレンが自分の考えに耽っている間に、リョウがルルーシュに話しかける。

 

それを聞いたルルーシュは、自身の懐から携帯を取り出す。

 

「問題ない…おい、準備は完了か?」

 

『問題ないよ…さあ、始めようか…

 

 

血で血を洗うカーニバルを』

 

「「お前まで何やってんだ、ユキヤー!!」」

 

電話から聞こえた予想外の声にカレンとアヤノは声を荒らげる。

 

『何やってるって?復讐だよ』

 

フフフッと不気味にユキヤは笑う。ぶっちゃけ、少し怖い。

 

『あいつニートを好きなだけ扱き使ってくれたよ…あいつの頼みのせいで、この一ヶ月ほとんどずっと仕事だよ…ニートを怒らせたらどうなるか思い知らせる良い機会だ』

 

「いやまあ、可哀想な気もするけど、あんたニートでヒッキーなんだから時々なら良いんじゃない?」

 

「そうだな。家でダラダラしてるよりはずっと良い」

 

『へぇ。そんなこと言って良いんだ?アヤノ』

 

携帯越しにニヤリと笑うユキヤの顔が想像できて、アヤノの顔がひきつる。このニート一体何を言うつもりだ?

 

『彰に文句があるのはアヤノも同じでしょ?前から彰が持ってきてくれるって言ってたアノ本を勝手にブリタニア人にあげちゃったもんだから、こないだからずっと「わあーーーーーーーーーーー!!!」』

 

ユキヤに最後まで言わせず、顔を真っ赤にしたアヤノがルルーシュから携帯を奪い取り、奇声をあげる。

 

端で聞いていたカレンも余りの音量に耳を押さえる。

 

「うっさい!アヤノいきなりどうしたのよ!?」

 

親友の突然の奇行に訝しげの目を向ける。

 

だが、そんなこと知ったこっちゃないと言わんばかりに、携帯に向かって声を荒らげる。

 

「お、お、お、お、おま、おま、おま、おま、

お前ぇーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

『あぶ!?ねぇ、突然大声出さないでよ。朝飯のラーメン溢す所だったじゃん』

 

「そ、そ、そんなこと知るかぁ!!な、な、な、な、な、何でユキヤがそのことを知って」

 

『甘いねぇアヤノ。電子の海は自由なんだよ』

 

その言葉に絶望の気分を感じながら、アヤノは必死に言い訳の言葉を並べる。

 

「ち、ち、ち、違う!アレは違うんだ!」

 

『いや、何が違うのさ』

 

「何もかも違う!私は男が好きだ!」

 

『いやまあ、そうだろうけど、そんなことカミングアウトされてもねぇ』

 

「だから、それが違う!そ、そういうことではなくてだな」

 

『別に隠さなくても趣味は勝手だし、良いでしょ。何にアヤノが興奮したり、感じたりしても、それはアヤノの自由なんだし。へぇ…アヤノもわりと過激な』

 

「今お前一体何を見ている!?く、こうなったら」

 

くるっと振り返り、壁際まで走り出す。いきなりの展開に見ていた三人は何も言わず、呆然と見ていると

 

「消え去れ、私の記憶ーーーー!!!」

 

「「アヤノ!?」」

 

ゴガシャンと音をたてながら、アヤノは自らの頭を壁に叩きつける。

 

リョウとカレンは流石に驚きの声をあげて、アヤノを取り押さえる。

 

「ど、どうしたんだよ、落ち着けアヤノ!」

 

「そ、そうよ、少し冷静に!」

 

「止めないでくれ、リョウ!カレン!私は一度人生をリセットしなければならない!あいつに会う前の!アレに出会う前の!キレイな私に戻るんだぁ!!」

 

「ねぇ、発言がヤバすぎるんだけど!?ちょっと大丈夫よね!?年齢制限がかかるようなことじゃないわよね!?」

 

『まあ、年齢制限はかけた方が良いかもね…ある意味で』

 

「何!?おい、ユキヤ!!一体お前らは何の話をして「聞くな!喋るな!」ごふぅ!?」

 

「リョウ!?」

 

「おい、俺の携帯だぞ!?」

 

発言の内容から、リョウはユキヤに内容を聞き出そうとしたのだが、そうはさせないとアヤノは足で携帯ごとリョウを地面に踏みつける。心なしか、満足そうに見えるリョウの顔は気のせいだと思いたい。

 

『だが残念。この携帯は特別製でね』

 

「なら、遥か彼方に吹き飛ばして」

 

「良いから落ち着け。その携帯は世界を壊すのに必要なんだ。お前の話など、どうでも良いから今はその携帯をだな「黙っていろ、シスコン!」そげぶ!?」

 

「ルル杉!?」

 

騒ぎを第三者の目で見ていたルルーシュも自らの携帯が壊されそうになったので、鎮静化しようと近寄ったが、一瞬でアヤノの右ストレートで吹き飛ばされた。哀れである。

 

「このまま、この携帯を『まあ、当然だけど、その携帯僕のじゃないし、壊された所で僕にはダメージなんか全然ないから別に良いんだけどね』……ウガァ!!!」

 

「アヤノ!?本当に落ち着きなさい、アヤノ!!駄目よ、そんなの!飛び降りたって人生にセーブポイントはないのよ!リスタートはできないのよ!」

 

「放せ、カレン!後生だから、放してくれぇ!」

 

「放すわけないでしょうが!?」

 

なお、踏みつけられたリョウが起きるまで、この騒ぎが続いたのは余談である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




原作との相違点とか書こうかなと思ったら、同じ所を見つける方が大変そうだったので、止めました笑


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24 似ているけど、違うものって結構ある

珍しい投稿の速さ


やれやれ、ナナリーに買い物に誘われたから何事かと思ったが…

 

「デートの誘いかと思ったんだがねぇ、こんなオチとは。ガッカリ感は拭えないな」

 

「あら?私と一緒に出掛けることだけじゃ不足ですか?」

 

「とんでもない。お姫様と一緒に居られるだけで十分ですよ」

 

「ふふふ。相変わらずですね、彰さんは」

 

のんびりしながら、中身のない会話をするナナリーと彰。

 

とは言え、2人ともこういう会話をするのは好きなので、実は結構平常運転だったりする。

 

ここにルルーシュがいれば、会話の邪魔をしようと乱入してくるのだが今日はいないので(実は近くにいるのだが)気楽な会話を楽しんでいる。まあ、居れば居るでルルーシュをからかうことに会話の内容がシフトするだけなので、2人がそれはそれで楽しんでいるのは余談である。

 

「最初の出会いはアレでしたけど、お兄様とも仲良くなって良かったです」

 

「ばーか、お前あんだけインパクトがある、はじめましてもねーだろうよ」

 

「まあ、インパクトはあったでしょうね‥それがプラスかマイナスかは置いておいて」

 

何を言っているんだ間違いなくプラスだろう。おかげで未だに関係が続いているのだから。マイナス点と言えば、濃密な殺気を浴びたくらいだ。ちょっとだけ死ぬことを覚悟したぜ。

 

「ナナリー。人生は結果オーライなら良いんだよ」

 

「その人生は流石に博打が過ぎると思うのですが‥」

 

その通りだが、人生はその方が面白くないか?それに、俺が今の職業を選んだ時点で今更だ。明日死ぬかもしれない人生など博打も良いところだ。まあ、多かれ少なかれ、人間は皆そうなのだが。

 

彰がそう言うと、ナナリーが今までの明るい雰囲気を変えて、慎重に言葉を選んで話し始める。

 

「彰さんは‥今の職業を変えるつもりはないのですか?」

 

「ないよ」

 

俺が選んだのは修羅の道だ。一度選んだ以上、後戻りをすることは許されない。そんなことをすれば、今まで俺に殺されたブリタニア兵に申し訳が立たない。

 

「ナナリー。お前の気持ちは分からんでもないが‥無理だ。この道は一方通行なんだ。一度選んだ以上進むしかないんだよ」

 

その覚悟がない奴はこの道を進んではならない。

 

「しかし、辞めてとは言わないんだな」

 

少し意外だと彰が言うと、ナナリーは泣きそうな顔になりながら答える。

 

「私にそんな資格はありませんから。彰さんの思いは、彰さんにしか変えられません。だから、私は、私の夢のために願うだけです」

 

「夢?」

 

「世界が平和になりますように」

 

その言葉に彰の思考が一瞬止まる。それは一瞬だったのだが、ナナリーはその変化に気がついた。

 

「彰さん?」

 

「いや、何でもない。恩人が昔、言っていた言葉と同じだったから驚いただけだ」

 

「そうでしたか。とは言え、私の言っている平和はそんな大したものではありませんよ?」

 

ナナリーは続ける。

 

「私の平和は‥彰さんが会長やニーナさんと悪巧みをして、それをお兄様が怒って、怒ったお兄様をカレンさんやシャーリーさん、リヴァルさんが止めて、それを私や小夜子さんや仁美さんが笑いながら見ているそんな毎日で‥そんな平和が続けば良いなって‥思ってるんですよ」

 

「いや、無理だろ」

 

気持ちは分からんでもないが、彰は即答する。今の状況は偶然が重なりに重なって起こった奇跡みたいなものだ。何かが少し変われば、一瞬で全てが崩れ落ちる程の危うい均衡の中で。

 

その返事を聞いたナナリーは頬を膨らませる。

 

「彰さんは意地悪です。少しくらいは優しい言葉をくれても良いじゃないですか」

 

「叶わん夢は見ない主義だ」

 

見るのは現実と実現可能な未来だ。後、可愛い女の子。

 

「もう‥そう言えば、彰さんは以前私に一つだけお願いを聞いてくれるって言ってましたよね?」

 

「そういや、そんなことを言ったな。でも、仕事を辞めろとかはなしだぞ

 

爆弾テロに巻き込んだ時に。命の恩人とは言っても完全にマッチポンプなので、一つだけお願いを聞いてやると約束したのだ。

 

「そんな難しいことは言いませんよ‥ただ‥」

 

そう言ってナナリーは小指を差し出す。

 

「また来年の今日も‥一緒に出かけてください。再来年も一緒に。約束ですよ?」

 

笑顔で言うナナリーに肩をすくめる。苦笑しながら、彰も小指を出す。

 

「オーライ。善処するさ」

 

「はい。お願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ、殺すぞ。今殺すぞ。すぐ殺すぞ」

 

「落ち着きなさい、ルル杉!どう見ても、指きりしてるだけでしょうが!」

 

「何処を見ている!どう見ても、あいつがナナリーに「俺の肉奴隷になれ」と

言っているようにしか見えんだろうが!」

 

「あんたこそ、一体何処を見ての発言よ!?ねぇ、ユキヤ!これ、映像だけじゃなくて音声も拾えないの?」

 

『無理だね。向こうのシステムにそもそも音声は付いてないみたいだから』

 

ユキヤのお陰で館内にいる彰とナナリーの様子を盗聴することが可能になったのだが、姿を見ているにも関わらずルルーシュの暴走は止まらない。最早、妄想である。

 

カレンはため息をはく。まあ、先程までルルーシュ以上に暴走していたアヤノが落ち着いただけマシなのだが。

 

『これは落ち着いたって言うわけ?』

 

「言うのよ‥これしか方法がなかったんだから。あんたも、アヤノをこれ以上からかうんじゃないわよ?』

 

チラリとカレンは縛られて寝ている親友を目にやる。このままでは本当に飛び降りてしまうと思われたので気絶させて縛ったのだが、罪悪感は拭えない。リョウ?縛られたアヤノを見てられなくなって、少し前に自ら頭を打ち付けて気絶したよ。

 

「こうなれば俺も黙って見ているわけにはいかん。リョウが使えなくなった今、射殺はできん。次の手段だ」

 

「何をする気よ?まさか、爆破するとか言わないでしょうね?」

 

「馬鹿を言うな。そんなことをすればナナリーも巻き込まれるだろ」

 

「ねぇ‥あんたの今の話だとナナリーが巻き込まれなきゃ爆破しても構わないっていう風に聞こえるんだけど?」

 

カレンのツッコミを無視してルルーシュは電話をかける。その相手に何かを言っているのだが、カレンには聞こえなかった。

 

「あんた今誰に電話をしたの?」

 

「見てれば分かる。くくく、彰め‥ナナリーと指きりをした罪の重さを知るが良い」

 

「指きりって一体何なのよ‥」

 

少なくともカレンが知っている指きりとは違う意味を持っているらしい。

 

暫くすると、映像に1人の日本人が現れた。その人物は男性であり、眼鏡をしている。カレンには、その男性に見覚えがあった。いや、見覚えとかそんなレベルではなく

 

「南さんー!!??ちょ、あんた、南さんと知り合いだったの!?」

 

思いっきり知り合いだった。思わずルルーシュの肩を掴んで、事の次第を確かめる。

 

「知り合いと言えば知り合いだが‥何だ、カレンも知り合いか?お前、友人は選んだ方が良いぞ?」

 

「彼氏も、もうちょっと選べば良かったって後悔してるわよ!」

 

思わずカレンから本音が溢れる。例によって、そんなカレンを無視してルルーシュは続ける。

 

「あいつは犯罪者だぞ?あまり、付き合わん方が良いと思うがな」

 

「いやまあ、そうなんだろうけど、それを言えば私も彰も同じだし‥」

 

ぶっちゃけ今更だろうとカレンは思う。というか、事情を知って自分や彰との付き合いを続けているルルーシュがそんな事を気にするのは意外でもあった。カレンがそう言うと、ルルーシュは、ふんと鼻を鳴らして答える。

 

「別にお前らの場合は、俺にとって何の害もないからな。むしろ、ブリタニアを潰したいという思いだけなら共感するくらいだ」

 

「あんたは、そういう奴だったわね‥あれ?じゃあ、南さんは?」

 

その基準でいけば南さんも別にルルーシュが嫌う必要はないと思うのだが。

 

「俺が奴を嫌うのは別の理由からだ。まあ、良い‥行け、南!彰に向かって攻撃だ!」

 

「あんた本気!?南さんが彰に敵うわけないでしょ!?」

 

「俺が居なかったからな。何のために俺がいると思っている?」

 

ルルーシュがそう言うと、画面に映っている南が巨大化してきた。肌は赤黒く、鬼のような姿になっている。と言うか

 

「何よ、あれ!?どうなってんの!?」

 

「マジックカード発動!ロリコン注入!」

 

「あんた、何言ってんの!?」

 

説明しよう。ロリコン注入とは、ロリコンにしか効果を発揮しない装備アイテムだ。半径10メートル以内に中学生以下の女の子がいる時に発動できる。付けたロリコンの戦闘力は、5倍になる。

 

「奴は真性のロリコンだからな。奴のためにあると言っても過言ではないカードだ。全く変態とは恐ろしいものだ」

 

「知りたくなかった!そんな事実知りたくなかった!てか、あんた、それなら妹を愛し隊に南さんは入ってるの!?」

 

「馬鹿を言うな。良いか?カレン。ロリコンとシスコンは似て非なるものなんだ」

 

「どっちもタダのど変態でしょうがぁ!?てか、どうすんのよ、あれ!?ほとんどパニック映画みたいな光景よ!?」

 

カレンが指差す画面では完全なロリコンと化した南が彰とナナリーに向かっている。年齢規制がかかるような光景である。

 

しかし、ルルーシュの顔は晴れない。

 

「これで倒せれば良いんだがな‥あいつがそんなに簡単にいくか‥」

 

「いやいや、あんなの彰だってどうしようもな‥」

 

瞬間。南の体が急速に縮んでいく。何が起きたのか理解ができないカレンを尻目にルルーシュが舌打ちをする。

 

「やはりトラップカードか!」

 

「トラップカードって何!?」

 

『流石は彰。的確な判断だね』

 

「何でユキヤまで知ってんのよ!?」

 

カレンのツッコミの間にも画面は続いていく。

 

「カウンタートラップ発動!熟女降臨!」

 

説明しよう。熟女降臨とは、ロリコンにしか効果がないカードだ。ロリコンの戦闘力を通常時の半分にまで低下させ、1人だけ熟女を召喚することができる。

 

「俺に、そんな安易な攻撃が通じると思ったことが間違いだったな!現れろ、千葉さん!」

 

日本解放戦線の千葉が現れた。明らかに不機嫌である。

 

「さあ、敵を滅ぼせ!滅びの熟女ストリーム!」

 

「お前が滅びろぉ!」

 

千葉の滅びの熟女ストリーム(かかと落とし)が彰に直撃した。彰のライフはゼロになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そろそろ原作に行きます


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25 サプライズってのは、本当に隠し通してこそサプライズなんだ

今年最後の投稿!間に合って良かった〜


「千葉さん‥もうちょっと空気読んでくれよ‥今のは完全に乗る流れでしょーよ」

 

「何時も空気などカケラも読んでいないお前が何を言うか!わざわざ呼び出して何かと思えば‥今まで何回思ったか分からんが、お前馬鹿だろ!!馬鹿なんだろ!!」

 

千葉さんが怒りで顔を真っ赤にして言い放つ。

 

いきなり会って人の事を馬鹿呼ばわりするとは何て人だろうか。これだから余裕のない年齢の大人は困るんだ。皆は、こんな大人になっちゃいけないよ。お兄さんとの約束だ。

 

「落ち着いてくれ、千葉さん。確かに千葉さんくらいの微妙な年齢の人に熟女呼ばわりは失礼だった。今度からは、アラサーと呼ぶことにするから許してください」

 

「よーし、遺言はそれで良いんだな。おい、大人しく首を出せ。切腹に協力してやる。10年以上の付き合いの縁だしな」

 

そう言うと隠してあった刀に手を掛けるのが見えた。何を考えているんだこの人は。

 

「何考えてるんですか、千葉さん。こんな人前でそんなの出そうとするなんて死にたいんですか?もうちょっと節度がある行動をしてくれないと困りますよ」

 

「何故だろうな‥言っていることは正論なのにお前が言うと殺意しか湧かないのは‥色々な問題を先延ばしにしても良いから今この場で斬り捨てたい気分だ」

 

「だから、落ち着いてくださいよ。そんなことしたら千葉さんの夢が叶えられなくなりますよ?」

 

「う‥まあ、そうだな。今、潰える訳にはいかんか‥」

 

「そうですよ。自分が書いた本を世に広めるという夢を実現するまでは死んじゃいけませんて」

 

「何時、誰がそんなことを言ったぁ!!勝手に私の夢をねつ造するな!」

 

「え?違うんですか?そうだと思って俺も優しさから布教活動に協力してたんですけど」

 

今のところ信者は三人だけだが、ブリタニア人も二人いるという国際色豊かなメンバーだ。今後の伸びが期待される。

 

「何を勝手なことをしている!本当にブチ殺されたいのか、お前は!」

 

興奮した千葉さんは俺の襟首を掴みながら体を揺らしている。多分照れ隠しだろう。今後も布教活動を続ければきっと何時かはデレてくれるはずだ。

 

「あ‥あのー」

 

「何だ!」

 

突然始まった寸劇に今まで呆然としていたナナリーが会話に参加してくる。てか、千葉さん幼女相手に大人気ないよ。

 

「私は彰さんのお友達のナナリー・ランペルージと申します。貴方は千葉さんと仰るのですか?千葉さんは彰さんとお知り合いなのですか?」

 

首を傾げながら尋ねるナナリーに千葉さんも少し冷静になったのか、俺から手を離し、こほんと咳払いをしてから答える。

 

「誠に遺憾ながら‥知り合いだな。名前は千葉だがフルネームは勘弁してくれ。ちなみに、欲しいものはタイムマシーンだ。何故なら、こいつとの出会いをなかったことにできる可能性があるからだ」

 

「彰さん、貴方一体何をしたんですか?」

 

「いや、普通のことしかしてないけど」

 

「千葉さん……ご苦労をなさってきたんですね‥」

 

「分かってくれるか、ナナリー!」

 

ガシッと手を掴み合う千葉さんとナナリー。謎の意気投合をしたようだ。百合百合の関係が好きな人が、でへへへしそうな雰囲気である。

 

「私の苦労を分かってくれる存在がこんな所にいるなんて……しかし、ナナリーのような子が何でこんなのと一緒にいるんだ?」

 

「おい、弟分にあんまりな言い方じゃないですか?」

 

「私は、こんな弟分を持った覚えはない」

 

ピシャリと言い放った。ツンデレの対応は分かり辛くていけない。

 

しかし、何がおかしいのか俺たち二人の対応を聴きながらナナリーはくすくすと笑う。

 

「ふふ。仲が良いんですね。ちょっと、妬けちゃいます」

 

「「今の対応の何処に仲の良さを感じた?」」

反論の言葉がハモってしまった。その事実にナナリーは更に笑みを深める。

 

「そういうところがですよ。ちなみに、私が彰さんと一緒にいるのは、彰さんに頼んでデートをして貰っているからです」

 

ナナリーの言葉を聞いた千葉さんは犯罪者を見る目つきで見てくる。いや、あんたも犯罪者だから。

 

「お前、ロリコンだったのか?」

 

「よし、千葉さん喧嘩しよう。とりあえず、殴って俺に対する誤解を解消させる」

 

「考えてみれば片鱗はあったな……かぐや様にも妙に好かれていたし」

 

「おい、誤解を招く言い方はやめろ」

 

あの人は例外だから。あのロリ姫の考えは俺たちとは次元が違うから。

 

「かぐや様?もしかして、彰さんの恋人ですか?」

 

突然出てきた知らない人物の名前にナナリーがとんでもなく的外れな言葉を投げかける。

もちろん、彰は全力で否定する。

 

「いや、ありえねーから。俺はもっと大人の魅力に溢れてる人がタイプだから」

 

「いや、そもそもお前結婚してるだろ」

 

それ以前の問題だと呆れながら、千葉さんがツッコミを入れてくる。良いんですよ、そんなこと気にする相手じゃねーですし。

 

しかし、ナナリーは千葉さんの発言で石化していた。一体どうしたのだろうか。

 

「け、け、け、け、け、けけけ結婚!?彰さんが!?どうやって騙したんですか!?」

 

「おう、とりあえず何故俺が結婚してたら相手を騙してるという事実に行き着いたのかの理由から聞こうか」

 

千葉さんが当然だという風に頷く。

 

「ナナリーの考えは最もだが、驚いたことに事実のようだぞ。私も詳しくは知らんがな」

 

千葉さんの答えに、顔を引きつらせながら、恐る恐るといった雰囲気でナナリーは疑問を投げかける。

 

「相手は……人類ですか?」

 

「実は私もその可能性を考えていてな…ターミネーターや、エイリアンやナメック星人であった場合でも驚かないようにしているんだ」

 

「張っ倒されたいのか、あんたらは」

 

急に仲良さげにヒソヒソ話を始めた知人達に彰は、ため息を吐く。何故、急に仲良くなっているのだろうか。

 

「というか、彰さん酷いじゃないですか!紹介してくれても良いのに黙ってるなんて!」

 

「言ってなかったっけ?まあ、とにかく紹介するのは無理だよ、俺も暫く会ってないし」

 

「どれくらいです?」

 

「三年くらい?」

 

「長くないですか!?何で会いに行かないんですか!?」

 

「まあ、会うには距離があるというのもあるが…」

 

「他にもあるんですか?」

 

「会ったら殺されそうな気がしてな」

 

「結婚してるんですよね!?本当に、結婚してるんですよね!?」

 

中々良い感じに混乱している場の空気を落ち着けるために、千葉さんも会話に参加する。

 

「まあ、こいつの結婚相手になるくらいだ。相手も普通の神経はしていまい。ナナリー。気にするだけ無駄だ」

 

アイツが聞いたら泣きそうなセリフである。

 

「確かにそうですね。でも、残念です。会えるなら会ってみたかったんですけど。そうすれば、一緒にプレゼントも買えましたし」

 

「プレゼント?ナナリーはプレゼントを買いに来たのか?」

 

「はい。実は今日は私のお兄様の誕生日でして、以前に注文していた品を彰さんと受け取りに来たんです!」

 

「なるほどな。デートとはそういうことだったのか」

 

得心がいったと千葉さんは首肯する。まあ、俺も聞いた時はそういう反応だったのだが。

 

何でもルルーシュは自分の誕生日を覚えていないらしく、毎年ナナリーがサプライズパーティーをするそうだ。

 

あんだけ頭が良くて、何故自分の誕生日を覚えていないのか疑問だが、まあ、アイツらしいと言えばアイツらしい。

 

それを聞いた千葉さんはニヤッと笑い、面白そうに告げる。

 

「責任重大だな、桐島。何としてでもサプライズパーティーを成功させろよ?失敗は許さんぞ」

 

やれやれと思いながら肩をすくめて答える。

 

「まあ、一応頑張りますがね。難しいと思いますよ」

 

何故なら、既にサプライズでも何でもなくなっているのだから。ナナリーの失敗は自分の兄のシスコン具合を甘くみていたことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、こんなことじゃないかと思ってはいたけどね。どう?ルル杉?満足した?」

 

音声が聞こえない現状に我慢がならなくなったルルーシュは、カレンを連れて一緒にショッピングセンターに侵入し、彰とナナリーの様子を隠れて見ていたのだが、蓋を開けてみれば何のことはなく、ルルーシュが心配するようなデートではなかった。

 

カレンはこれで文句はないだろうとルルーシュを見ると何やら考え込んでいる。自分が今までしてきた行動を恥ずかしがっているのだろうと考えたカレンは無視して電話でユキヤに話しかける。

 

「そんな訳だから、ユキヤ、馬鹿騒ぎは終了よ。倒れてるリョウとアヤノを回収にでも行きなさい。無理なら私がやるけど」

 

『あー、つまんない。彰をボコれるチャンスだったのに。しょーがない、ネットショッピングでもするか。あー、別にあの二人は放っといて良いよ。リョウは縛られてないし、自分で何とかするでしょ」

 

「……あんた、案外酷いわね」

 

『これが僕のスタイルなんで。それじゃ、また』

 

ブツっと電話が切れる。まあ、あそこまで同居人が言うのだから、あの二人は放っといて構わないのだろう。であれば、自分はルルーシュを連れて早く帰るか。南?そんなロリコンは知らない。

 

「んじゃ、帰るわよ、ルル「こうしてる場合ではない!カレン!急いで準備するぞ!」うわ、びっくりした!ど、どうしたのよ急に?てか、準備って何の?」

 

突然訳の分からないことを叫び出したルルーシュにカレンは疑問を投げかける。

 

理解が遅いカレンにルルーシュは舌打ちをする。

 

「何故分からない!いいか!?ナナリーは俺のためにサプライズパーティーをしようとしてるんだぞ!」

 

「らしいわね。その前までの話は遠くて良く聞こえなかったけど」

 

「じゃあ、何故ナナリーはサプライズパーティーなど開くと思う!!」

 

「そりゃ、あんたを驚かすためでしょうね」

 

「正確には、俺とカレンをだ!だから、カレンにも黙っていたんだからな!しかし、このままでは、サプライズにならない!何故ならサプライズされるべき俺とカレンがその事実を知ってしまったんだからな」

 

「ええ。あんたのせいでね」

 

そもそも、ルルーシュがバカなことをしなければこんなことにならなかったのだ。というか、今日ルルーシュの誕生日だったのか。一応、彼女として何か買った方が良いのだろうが、何を買うべきか。

 

焦っているルルーシュを差し置いて、カレンはそんなことを考える。

 

「この場合俺はどうでも良い!問題はお前だカレン!」

 

「は!?私!?何で!?」

 

「俺にとっては演技など簡単だ!ナナリーのために自分の誕生日を忘れることに比べれば造作もないことだ!」

 

「あんた意識的に誕生日忘れてんの!?凄いわね、無駄に!」

 

「しかしお前は別だ!とてもではないが、お前が演技が上手いとは俺には思えん!」

 

「あー、まあ……うん」

 

「だからこそ、今からサプライズに驚く訓練をせねばならん!行くぞ、カレン!俺の誕生日プレゼントなど、それで構わんから付き合え!」

 

「それで良いの!?あんたのプレゼントそれで良いの!?」

 

「当然だ!行くぞ!」

 

「ちょ、ま、待ってよ!さっきから電話かかってきてんのよ!」

 

「電話とサプライズパーティーへの対策と、どっちが大切だ!」

 

「電話に決まってんでしょうが!良いから五分待ってよ」

 

そう言ってルルーシュから少し離れたカレンは電話を取る。ルルーシュが遠くから睨んでいるが、気にしない。

 

『カレンか。今大丈夫か?』

 

「扇さん。少しなら大丈夫ですけど、何かあったんですか?」

 

『驚くなよ。例の日が判明した。何と明後日だ」

 

「明後日!?そんな急に!?」

 

『ああ。だから今から皆で集まりたいんだが大丈夫そうか?』

 

「あ、うん、すぐには無理だけど、夜なら何とか」

 

『分かった。待ってるからな』

 

そう言うと、電話が切れる。それを確認してカレンはため息をはく。

 

(明後日…か。まさか、そんな急になるなんてね)

 

「おい、カレン!電話が終わったのなら急げ!」

 

遠くからルルーシュの怒鳴り声が聞こえて、カレンは現実に戻った。急いで、いつも通りの自分をイメージして、答える。

 

「わ、分かってるわよ」

 

「?まあ良い。行くぞ!」

 

その後、パーティーの時間ギリギリまでカレンはルルーシュと生徒会メンバーによって行われた訓練に参加することになったのだった。カレンにとっては、戦闘訓練よりも大変だったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、訓練の甲斐もあり、サプライズパーティーは見事に成功?した。

 

参加してくれた生徒会メンバーを見送ったルルーシュは、とりあえず終わったかと一息つく。しかし、そんなルルーシュの目にふとある人物が入ってきた。

 

「何だ、カレン。まだ帰ってなかったのか」

 

「あー…うん、まあ」

 

何ともはっきりしないカレンの態度がルルーシュには、奇妙に見えた。

 

何となくパーティーの前あたりから様子が変だと感じていたのだ。

 

「あのさ、ルルーシュ。変な事聞いて良い?」

 

「何だ?」

 

「私のこと…好き?」

 

「はあ?」

 

意味不明なカレンの質問にルルーシュは眉を顰める。ふざけるなと一蹴しようとしたが、余りにも真剣なカレンの様子を見て真面目に答えることにした。

 

「好きか嫌いで言えば嫌いではないが……一体何だこの質問は?」

 

「そっか。じゃあ、私のお母さんとお兄ちゃんは?」

 

「おい、俺の質問に「いいから、答えて」…仁美さんを嫌いになる理由がない。お前の兄に関しては分かるわけがないだろう。何せ、寝ている所しか見たことがないんだからな。これで満足か?」

 

「うん…私は、ルルーシュのことが好きよ。ナナリーも小夜子さんも。私がブリタニア人で好きになったのはあんたら兄妹が初めてでしょうね」

 

「急になんなんだ?」

 

その質問には答えず、カレンは寂しげに笑う。

 

「何でもない。ただ…もし…もし…ルルーシュや彰と会うのがもう少し早かったら…私がルルーシュや彰のことをもう少し嫌いになれてれば…別の道があったのかもしれないって…そう思うの」

 

「…カレン、本当にどうした?」

 

余りにも変な様子のカレンに流石のルルーシュも少し心配する。

 

しかしカレンは笑いながら質問には答えずに、ルルーシュの脇を通り過ぎ、玄関へと向かう。

 

「何でもないったら!じゃあ…またね」

 

「…ああ、またな」

 

問い詰めようかと思ったが、後日聞けば良いと判断してルルーシュはカレンを見送る。

 

この時の判断をルルーシュが後悔するのは、明後日のことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次から原作です(原作通りとは言っていない)


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26 大切なものっていうのは、いつのまにか出来ていたりするかもしれない

あけましておめでとうございます。
今年もこわなふざけた小説をお願いします。


「朝から、どーしたんだよ彰?」

 

「んー、ちょっと気になることがありましてねぇ」

 

話しかけてきた卜部に答えながらも、パソコンを動かす手を止めない彰。

 

(なーんか、気になるんだよなぁ。カレンのあの態度)

 

先日の、ルルーシュの誕生日会でのカレンの様子に違和感を覚えた彰は、ここ最近のブリタニア軍の動きやレジスタンスの動きを探っていた。

 

本来なら、カレンのグループの動きを探れば良いだけなのだが、弱小レジスタンス過ぎて碌な情報が手に入らなかった。

 

だが、それはおかしいのだ。本来であれば、どんな情報でも東京のレジスタンスの様子なら彰の耳に入っている。それが入っていないということは、誰かが情報を意図的に上手く隠しているということだ。

 

数で負けているレジスタンスが勝つには不意打ちが最も効果的である。そのためには、情報の秘匿は最重要案件だ。とはいえ、ゲットーに様々な情報源がある彰の耳にも入らないとは、かなりの徹底の仕方と言っても良い。

問題はここからだ。ここまで徹底できる人間は限られている。少なくともカレンや他の奴等の話を聞いた限りじゃ臨時リーダーの扇って人じゃあ、無理だろう。となると…

 

(紅月ナオト…どうやら、優秀だって話は嘘じゃなかったらしいな)

 

前のリーダーの紅月ナオト以外にあり得ない。

 

しかし、大した逸材である。ここまでできるのが日本解放戦線に何人いることやら。

 

まあ、強いて言えば、ここまで完全に情報を隠すと逆に何かあると疑われる可能性が高いので、ある程度の情報は流すべきだったとは思うが、無名のレジスタンスのリーダーということを考えれば十分に合格ラインだろう。たらればを言っても仕方ないが紅月ナオトが倒れなければ、今後に期待のグループになったと思う。

 

とにかく、紅月ナオトがそこまでして隠したいこととなれば、かなり大きな仕事になると考えて良い。そうだとすれば、次に考えなくてはいけないのは、どんな仕事なのかということだ。

 

普通に考えれば紅月ナオトのグループ程度が起こすテロなど、たかが知れているが、何となく普通に考えると大怪我することになる気がする。

 

であれば普通ではない状況になれば良い訳なのだが、カレンの様子がおかしくなったことから察するとカレンも知らされるまではテロを仕掛ける日時は知らなかった可能性が高い。

 

つまり、当事者でさえ、直前まで何時、普通ではない状況になるのか分からなかったという訳だ。だとすると、それは日時限定のイベントを利用するテロだということになるが、今日どころか近日中に行われるイベントにそれらしきものは全く発見できなかった。

 

なので、他のブリタニア軍や他のレジスタンスのネットワークにハッキングを仕掛けてはみたものの今のところ成果らしき成果はない。

 

流石に彰もため息を吐く。これで勘違いだったら、馬鹿以外の何者でもない。いや、普段から言われてるけど。

 

そんな彰を見かねてから卜部も差し入れを渡してくる。

 

「全くまた勝手に動いてるってことかよ。俺じゃなかったら問題になってるからな。まあ良い、とりあえず食え。お前朝飯も食べてないだろ」

 

「何だかんだ優しい卜部さんに感謝っす。ヒュー男前〜」

 

「男に褒められても嬉しくねぇよ」

 

「卜部さん…格好良いです」

 

「女声になっただけで喋ってるのはお前だろうが!」

 

怒鳴っているが、やはり優しい。これで何で女性にモテないのだろうか。顔以外は大体完璧な人なのに、何が悪いのだろうか。やはり、顔が悪いのだろうか。

 

(ん…毒ガス?)

 

どうでも良いことを考えていた彰の目に物騒な単語が飛び込んできたことで、彰の身体がフリーズする。

 

そんな彰の様子に気付かない卜部は、自分も飯を食べながらパソコンの画面の単語に驚きの声をあげた。

 

「おいおい、毒ガスって…そんな情報聞いたことねぇぞ。てか、やっぱりお前流石だな。よくもまあ、そんな目新しい情報を次から次へと見つけてくるもんだ」

 

そんな卜部の賞賛の声も彰の耳には入らない。何故なら、自身が想像する最悪のパターンが脳裏に浮かんだからだ。

 

「あの馬鹿!」

 

「うお!?ちょ、彰、お前どこ行くんだ!?午後の会議はどうすんだよ!?」

 

「すいませんが、お腹痛いんで欠席です!」

 

「そんな馬鹿みたいな嘘で通せるか!おい、待てって!」

 

卜部の声を気にもせずに彰はひた走る。自分の考え過ぎならそれでも良い。だが、そうでなければ急がなくては手遅れになってしまう。そして、そうなる可能性が高いだろうと彰は薄々感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…であるからして、この場合は」

 

授業に出席してはいるが、ほとんどそれを聞かずにルルーシュは一昨日のことを思い出していた。

 

(カレンのあの態度…妙に引っかかる。一体何を隠している?)

 

隠してはいたが、何時もとは明らかに違ったカレンの雰囲気をルルーシュは気にしていた。

 

加えて、昨日からカレンに連絡を取っているのだが、全く繋がらないこともそれに拍車をかけていた。念のために、彰にも電話をしたのだが、こちらも全く応答がない。

 

とはいえ、これ自体は別におかしな事でもないのだ。普通に何時も会っているから忘れそうになるが、あの二人はレジスタンスであり、ブリタニアを倒すために動いている。だからこそ、作戦行動中だったり、忙しければ連絡を取れないことなどあって当たり前なのだ。実際、過去にも何度かそういう経験もある。

 

しかし、今度ばかりはそれとは違う気がした。何の根拠もないが、ルルーシュの勘が警報を鳴らしていた。

 

「…ル……ル…ル…ルル!ルルってば!」

 

そんな考えに耽っていたルルーシュがふと気付くとシャーリーとリヴァルが呆れたように見ていた。どうやら、何時の間にか授業が終わってしまったらしい。

 

「やっと気付いた。もうお昼だよ?何を考えてたの?」

 

「ルルーシュくーん。恋人のカレンさんが休みだからってそんなに心配すんなって」

 

思わずルルーシュは苦笑する。からかっているだけだと分かってはいるが、何とも正解に限りなく近いことを言ってくるものだ。

 

「まあ、一応な。後で電話くらいはしようと思ってる」

 

「いいなぁ、カレンは。一度休んだくらいで心配して貰えて…でも、体調を壊したなら心配だし…うう、私はどうしたら…」

 

「大変だねぇ、恋する乙女も」

 

嫉妬したり、心配したりで忙しいシャーリーを揶揄するようにリヴァルは言うが、シャーリーのその気質を好ましいものと思っているのは、雰囲気からして明らかだった。

 

ルルーシュも少し穏やかな気持ちになりながらシャーリーを見ていた。そんな時に、ルルーシュの携帯が鳴った。

 

チラリと見て彰からのメールだと分かった。メールには、周りに生徒がいない場所に移動しろとあった。

 

ルルーシュは、すぐさま、席を立ち、移動した。

 

「すまん、二人とも!野暮用だ、少し抜ける!」

 

「あ、ルル!授業までには戻らないとダメだよ!」

 

「ああ、行ってこいよ。まあまあ、良いじゃん、シャーリー。たまには」

 

「たまにじゃないから、言ってるの!」

 

そんな二人の声を背後に聞きながら、ルルーシュは急いで学校を出て、自分の部屋へと移動し、着いたと同時に彰へと電話をかける。

 

『よう、ルルーシュ。悪いな、電話に出れなくて』

 

「そんなことは良い!お前に聞きたいことがある。カレンは『カレンなら逃亡の真っ最中だと思うぜ?』何?」

 

自らが質問をする前に先に答えたことから、彰もカレンの様子を気になっていたことが分かったが、逃亡の真っ最中とはどういうことだ?

 

その質問にも聞かれる前に彰は答えた。

 

『カレンのグループがブリタニアの毒ガスを奪いやがったんだよ。ニュースにはなってないが、恐らく今頃シンジュクは大変なことになってるよ』

 

ギリっとルルーシュは歯軋りをする。カレンの妙な態度の謎が解けたのだ。

 

「何を考えてるんだ、あいつは!自分たちのリーダーは倒れているんだぞ!どう考えても、そんな大それた作戦をやれるだけの余力が残っているわけがないだろうが!仮に上手く奪えたとしても、反撃には一体どうやって対処するつもりだ!」

 

『さあな。最悪考えていない可能性もある』

 

「馬鹿が!だったらせめて俺に相談すれば『そりゃあ、無理だろ』何故だ!!俺ならば、カレンとついでにそのグループも助けることぐらいはできた!」

 

ルルーシュには、その自信があった。クロヴィスがどのような手を打とうと対処できる自信が。

 

しかし、彰は無理だと答える。ルルーシュには、その考えが全く理解できない。

 

『天才でも自分のことは、分かってないらしいな』

 

「分かりやすく話せ!一体何の話だ!」

 

『好きだからだよ』

 

「何?」

 

意味が分からないという風なルルーシュに彰は言う。

 

『好きだから。死んで欲しくないから。あいつはお前とついでに俺にも黙ってたんだよ。危ない作戦だってことはあいつだって知ってたはずさ。もちろん、あいつのグループもな。だからこそ、お前には言えなかった。お前に生きてて欲しいと思ったから。ナナリーと幸せに暮らして欲しいと思ったから』

 

ルルーシュは、予想外の言葉に何も言えなかった。そんなルルーシュを無視して彰は続ける。

 

『誇って良いぞ、ルルーシュ。短い付き合いだが、お前は確実にカレンの大切な存在になったんだ。恐らく、あいつがブリタニア人で家族と同じくらいに守りたいと思ったのはお前ら兄妹だけさ』

 

ルルーシュの脳裏に一昨日のカレンの言葉が蘇る。

 

「…そんなんじゃないだろう。ただ、自分の兄を助けてくれた存在だからというだけだ」

 

『はっ。仮にそうだったとしても、それは大切な存在にならないのか?お前がそれを言うのか?妹を事件に巻き込んだテロリストに、しっかりと恩を返したお前がそれを言うのか?』

 

「…カレンは何処にいる?お前もそこに向かっているんだろ?俺も向かう。俺とお前がいれば、クロヴィスなど『来るんじゃねぇ』…」

 

彰の質問に答えられなくなったルルーシュは、別の質問をぶつけるが、それも否定される。

 

しかし、その否定を予測していたルルーシュは即座に言葉を返す。

 

「別にカレンは関係ない。俺は、遅かれ早かれ、ナナリーのために反乱を起こす気だった。そのためには、優秀な駒がいる。お前とカレンはそれだよ。俺の計画のために、お前らを失うわけにはいかない」

 

『だから来るなと言ったんだ』

 

「何?」

 

意外な返答にまたしてもルルーシュは、言葉が止まる。

 

『何も分かってないな、お前は。言っとくぞ。お前が反乱を起こしたら絶対にナナリーは悲しむし、喜ばない』

 

「…そんなことは知ってる。だが、俺はナナリーを『守るために。居場所を作るために反乱するって?』…そうだ」

 

ふんと彰が鼻を鳴らす音が聞こえた。

 

『なら、保証してやる。ブリタニアが何をしてきても。ランペルージを失ったとしても。お前ら兄妹は絶対に大丈夫だ。何せ、お前がいるんだからな。どんな事態にも絶対に対処できる。だから、お前がナナリーを守るために、戦場に来るならそれはお門違いだ。全く必要ない』

 

「じゃあ、お前は何故戦場に行く!お前なら戦場に行かなくても、別に生きることはできるだろうが!」

 

ルルーシュの核心に近づく彰の言葉を遠ざけるように、ルルーシュは声を張り上げる。

 

そのルルーシュの言葉に、彰はふうと息を吐いてから答える。

 

『失いたくないからだよ。俺にどんどん近づいてきた奴らをな』

 

自嘲するように軽く笑いながら彰は続ける。

 

『知ってるか?ルルーシュ。戦場で生き残るには大切な奴は少ない方が良い。いざという時に見捨てられるからな。そのはずなのに…お前らときたら勝手に俺の大切なものになりやがって。これ以上、増やす気は無かったのによぉ。まあ、だからルルーシュ。安心しな。カレンは俺が責任を持ってお前の所に返すさ。心配するな』

 

彰の言葉にルルーシュは何も言えなくなった。

 

『それでも来たいって言うなら…ナナリーのせいにするんじゃねぇ!てめえの意思で!てめえのために戦場に来い!ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア!』

 

それを最後に電話は切れた。

 

切れた後もルルーシュの足は止まったままだった。

 

頭では理解している。自身が行く必要はないことを。誰も自分が行くことを望んでいないことを。

 

だが、それでもルルーシュの足は動き出した。戦場である、シンジュクへと。

 

そのルルーシュの脳内では、先ほどの彰の言葉が蘇る。

 

(知ってるか?ルルーシュ。戦場で生き残るには大切な奴は少ない方が良い。いざという時に見捨てられるからな。そのはずなのに…お前らときたら勝手に俺の大切なものになりやがって。これ以上、増やす気は無かったのによぉ。)

 

ルルーシュは舌打ちをする。何を勝手なことを言ってるんだあいつは。それは…それは全部…

 

(全部…俺のセリフだろうが!)

 

ルルーシュは初めて動き出す。ナナリーと自分以外の誰かのために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




祝!原作入り!


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27 久し振りに再開した人は結構変わっている人が多い

ちょい短めですが、この期間の投稿は珍しい


(くっ…まさか、私一人で毒ガスを持って逃げることになるなんて…)

 

カレンは予想外の展開に舌打ちをする。本来であれば、二人で逃げて一人は乗せてあるナイトメアを使って敵を足止めする作戦だったのだが、もう一人は運悪く、乱射された銃に当たってしまい、帰らぬ人になってしまった。

 

一人しかいないのではナイトメアを使えるはずがない。

 

その結果として…

 

「そこのトラックは今すぐ停止しろ!さもなくば、発砲する!」

 

などという怒号が上空や、後ろから絶え間なく聞こえてくるにも関わらず、逃げるしかできないという状況を生んでいる。もちろん、そんなことを言いながら、雨あられのように銃弾が撃たれているのは言うまでもない。

 

(どうすれば良い!?一体どうやって逃げれば…)

 

カレンは自らの思考回路をフル回転させ、脱出方法を考えていた。そんな時に

 

『はいはーい。カレンちゃんに嬉しいお知らせです。助けてやるんで、今すぐ俺の言う通りに動いてくださいな』

 

無線から最近良く聞く声が響いた。しかし、その声は今この場で聞こえるはずがないものだった。

 

カレンは、あり得ない展開に思わず無線に向かって怒鳴ってしまう。

 

「彰!?あんた何でここにいんのよ!?というか、一体何でこのこと知ってんのよ!?そもそも、私はあんたらに来て欲しくなくて言わなかったのに、何で来ちゃうのよ!!」

 

『質問が多いっつーの。時間があれば、答えてやるんだが、今はそんな暇ないでしょーが。さっさと動け。動いた先にアイツが待ってるから指示に従いな』

 

「私の話聞きなさいよ!てか、アイツってまさか!?何で呼んだのよ!あんたにも、アイツにも関わって欲しくなかったのに…だから、私は…」

 

自分たち家族の恩人である二人を自分たちのエゴに巻き込みたくなかった。カレンの言葉からは、そんなカレンの心情が嫌という程伝わってきた。

 

『お前が俺たちにこのことを言わなかったのと同じ理由だよ』

 

一拍置いて彰は続ける。

 

『俺たちもお前に死んで欲しくなかったってだけだ。それに、お前が居なくなったら俺一人で、あの顔と頭が良いだけのガラスメンタルなシスコンを一人で面倒見なきゃならねーんだぞ?やってられねぇよ、俺は』

 

『何を勝手なことを言っている』

 

また別の男の声が無線から響いた。その声も、カレンにとっては聞き覚えのあるものだった。

 

来て欲しくはなかった者の声にカレンは帰るように言おうとするが、男の方が早かった。

 

『良いか、カレン。異論も反論も許さん。早く、このバカの指示に従って俺のところに移動しろ。言っておくが、お前に死ぬ権利はないぞ。お前は言ったな?俺と俺の大切なものを守ると。ならば、最後まで守り通してみせろ。途中で逃げるな』

 

『別に良いけど、男としてそのセリフはどうなんだ?』

 

『俺がキングならカレンはエースだ。役割分担の問題なのだから、問題ない』

 

『は!上手い例えだな。だったら、俺はジャッカルか?』

 

『ふん。お前がそんなタマか』

 

『なら、俺はジョーカーだな。ジョーカーらしく切り札的な感じで、この戦いを終わらせてやるさ』

 

『お前は何もしなくて良い。俺の初陣だ。黙って見ていろ』

 

『お前こそ、キングなら黙って守られてろ!そもそもだ、この彰君がクロヴィス如きに殺られるかもと思われていたことが我慢ならん。そろそろ本気出して、ジョーカーの力を見せてやるよ』

 

外が戦場なのだということが信じられないくらいに、いつも通りな二人の会話を聞いていると思わず笑みが溢れてくる。

 

そして、カレンは気付いてしまった。

 

自分が何を言ったところでこの二人は私の話など全く聞かずに、自分を助けるために動くであろうことを。

 

自分がまだ死にたくないことを。生きて、また何時もの日常に戻りたいと願っていることを。

 

「全く…助けられる側の意見を全く聞かずに助けようとする人間なんている?」

 

『少なくとも俺は一人知ってるな。人の話など全く聞かずに好き勝手やる馬鹿を』

 

『俺も一人知ってるぞ。何だかんだと理由をつけないと動くこともできない変なところでお人好しのシスコンを』

 

カレンは不思議な気持ちになった。追われている現状は変わらない。絶体絶命な危機なことに変わりはない。なのに、何故だか分からないが…全く負ける気がしない。

 

「分かったわよ…で?どう逃げれば良いの?」

 

『次の道路で右折しろ。そのまま真っ直ぐ行けば地下道に繋がる道があるからそこに逃げろ。そうすれば飛んでるハエは追って来れない』

 

「車は追ってくるわよ?」

 

『そうだろうな。まあ…その時まで動いていられたらの話だがな』

 

直後。後ろで轟音が鳴り響いた。確認すると、後ろの車は木っ端微塵に吹き飛んでいた。

 

『はっはー。派手な開戦の狼煙になったな』

 

「あんた何したのよ!?」

 

『ただ、バズーカを撃っただけだ。それより急ぎな。今ならハエの注意も俺のところに向いてるから逃げやすい』

 

「分かった。気をつけなさいよ」

 

『お互いにな』

 

さてと、と言いながら彰は無線を切り、思考を巡らせる。品川のレジスタンスには、民間人の救助に当たるように命じたが、指揮官が頼りない現状では不安が残る。自分が行けばベストだが、カレンたちと合流を先にしたい身としては、それは悪手。ならば、あまり使いたくない手だが、リョウにでも行かせるかと電話に手をかけた瞬間に電話が鳴る。相手は

 

『よう、助けは必要か?』

 

「貸しなら今度飯奢りますよ。最高のタイミングですよ卜部さん」

 

本当に最高の人が最高の時に電話をしてくれた。保険として、まだリョウに動いて欲しくない彰としては、卜部は最高の助っ人だった。

 

『そいつは良かった。会議をすっぽかした甲斐があったってもんだ』

 

「最高の判断っす!グッジョブ!」

 

『感謝しろよ?お前の分も含めて二人が会議を抜ける言い訳も考えてやったんだからな?』

 

この人本当に気が利きすぎる。女に飢えていると思うので、今度安い風俗にでも連れて行ってあげよう。

 

「そんじゃ、卜部さん。今から俺が教える番号のレジスタンスと合流して、民間人の救助を指揮してください。詳しいことは、また連絡します」

 

『ああ、分かった。気をつけろよ』

 

再びお礼を言って、カレン達の所に向かう彰。戦いの本番が今まさに始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、カレンと合流したルルーシュの前には予想外の人が立っていた。

 

「もしかして…ルルーシュか?僕だよ。スザクだ」

 

「スザクか!?お前…メガネをかけるようになったのか?」

 

 

 

 

 

 




〜日本解放戦線〜
千葉「ん?卜部さんからか?なになに?」

『俺と彰は、乾燥による肌荒れと潤いをケアするために会議を欠席するから、上手く言い訳を頼む』

千葉「…女子高生か!言えるわけないだろうが!もっとマシな言い訳を持ってこんか!」


彰が本当に感謝すべきは、千葉なのではないかという舞台裏。


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28 変なものを食べたらお腹が痛くなるかもしれないから気を付けた方が良い

二月にこのペースでの投稿は…無理だろうなぁ


毒ガスを探しに来たスザクは、想定外の事態に正直、驚いていた。

 

トラックの中の毒ガスを見つけたら、そこに、長年生死不明だった親友がいたからだ。

 

ルルーシュも同じ気持ちだったのか、信じられないという顔をしていたが、同時に僕が生きていたことに喜んでくれた。

 

僕も同じ気持ちだったが、何故こんな所にいるのだろうか?それも女の子と一緒に。

 

話を聞いてみたところ、女の子の名前はカレンさんと言うらしい。ルルーシュと二人で歩いていた所でテロに巻き込まれて、命からがら、ここまで逃げてきたということだ。

 

何というか、随分とついてない話だなぁとも思ったが、同時に、軍人として、何より友達として絶対にこの場から助けねばならないと強く思った。

 

少しだけ、カレンさんがルルーシュを見る目が尊敬半分、呆れ半分なのが気になったけど。恐らく僕が会う前に二人で何かあったのだろうと思い、深くは聞かなかった。『一応』二人は恋人同士らしいし。というか、一応って何さ。妙に強調してたけど。

 

しかし、あのルルーシュにまさか彼女ができるとは思わなかった。いや、ルルーシュの顔とか性格とかの問題じゃなく、基本的に人とは深く関わらないタイプなので、そういった存在を作るのは避ける方なのだ。

 

どういった心境の変化なのか聞いてみると自嘲気味な口振りで『アレのせいだ』と呟いた。いや、アレって何さ。

 

「お前も変わっただろう、スザク。まさか、お前がメガネをかけるようになるとは思わなかったな。肉体労働タイプのお前が」

 

「ああ、うん、何か…卵焼きを食べたら急に視力が落ちたんだ」

 

「「それ、本当に卵焼き(か)!!??」」

 

そんなことを言われても困る。何かカレンさんまで食い気味にツッコミ入れてきたけど。

 

「作った上司曰くそうだね。確かに色が真っ黒で臭気が漂ってたけど、卵焼きらしいよ」

 

「いや、それ卵焼きじゃないでしょ!タマゴヤキという名のナニカでしょ!あんた良くそんなの食べたわね!?」

 

「そう思ったけど…上司と妙な名前のブリタニア人の兵士のせいで食べるしかなかったんだよ」

 

「妙な名前?」

 

ルルーシュが訝しげな声を出すので、答えた。

 

「うん。確か…コナン・エドガワって名前だったような」

 

「はい、アウト!完全に偽名よ!そんなみたいな名前に騙されてるんじゃないわよ!そんな小学生探偵は、この世界にいないのよ!どんな馬鹿よ、そんな偽名使ったのは!」

 

そのカレンさんの言葉にルルーシュがハッとした顔になり、恐る恐るといった感じで僕に確認してきた。

 

「スザク…まさかとは思うが…そいつが来たのは1ヶ月ほど前か?」

 

「あ、うん、そうだけど」

 

何で分かったのかと聞く前にルルーシュがもの凄い笑顔になって僕の肩を握ってきた。

 

「流石だな、スザク。それでこそ、俺の親友だ。こっちの世界にようこそ。これからは味方だ。あいつの対処はお前に任せたよ」

 

「いや、何の話!?」

 

急な話の展開についていけない僕を他所に、ルルーシュは、カレンさんに耳打ちをして何故か納得した顔を浮かべると、すぐに真顔になり僕の正面に立った。

 

「事情は分かった…けど、あんたが味方かどうかは私の基準で判断するわ。もし、あんたがツッコミなら私も喜んで歓迎するわ…だけど」

 

そう言うとカレンさんは何処から持ってきたのか、マシンガンを構えた。

 

「ボケなら私がこの場で殺す」

 

「ボケに対する扱いが厳しすぎないかな!?」

 

何なの、カレンさんは!?ボケに対して何か嫌なことでもあったの!?

 

「そして、あんたがボケなのは今までの会話で分かったわ…あんた天然ボケね…ならば…死になさい」

 

「ちょ、ま、ま、待って!」

 

少しだけ冗談だと思っていたのだが、カレンさんは躊躇いなくマシンガンを乱射し出した。何とか避けたけど、流石に冷や汗をかいた。

 

すぐにルルーシュが慌ててカレンさんを抑えにかかった。何とか言葉で説得するつもりらしい。

 

「落ち着け、カレン!流石にそれは時期尚早だ!」

 

「退きなさいルルーシュ!私は…私は、これ以上耐えられないのよ!これ以上ボケが増えるのを私は看過できないのよ!」

 

「大丈夫だ!お前には俺がいる!だから、落ち着け!」

 

何か言ってるセリフは告白みたいなのに、全く告白に聞こえないのは何故だろうか。というか、大事なことを忘れているような…

 

そう思って周りを見てると、カレンさんが乱射した銃弾が毒ガスに穴を開けていることに気が付いた。

 

その瞬間僕が二人に警告を発するよりも早く毒ガスの蓋が弾け飛んだ。

 

流石に二人も一旦会話を止めて、僕と一緒に慌ててその場を離れる。

 

しかし、その場から出てきたのは毒ガスではなく…

 

「「「お、女!?」」」

 

何やら厳重に縛られている女の子が出てきた。予想外過ぎる展開に三人とも言葉を失う。そして、その場に

 

「そこの三人!その場を動くな!」

 

突然の照明と拳銃の音が鳴り響いた。気を取られていた隙に他のブリタニアの舞台がこの場に到着したらしい。

 

このままでは、ルルーシュとカレンさんが勘違いで殺されてしまうと考えた僕は慌てて部隊の前に出て釈明した。

 

「待ってください!彼らは、偶然此処にいた一般市民です!」

 

「何だ貴様は!構わん!全員撃て!この場にいる者全員生かしておく訳にはいかん!」

 

「いえ、撃てません」

 

「何!?何故だ!?」

 

部下の思わぬ言葉に上司と思われる男は声を荒げる。

 

「彼の代わりはいません。ブリタニアに彼の力は必要です!」

 

「何を言う!たかがイレブンだろう!奴の所属を言ってみろ!例え、エースパイロットでもイレブンならば殺しても問題ない!」

 

「いえ、彼は卵焼き係です」

 

「卵焼き係ってなんだぁ!!??」

 

 

 

 

 

 

 

 




〜日本解放戦線〜

藤堂「ふむ、そうか」

千葉「藤堂さん!ガツンと言ってください!」

藤堂「千葉。悪いが適当に言っておいてくれるか?」

千葉「藤堂さん!?良いんですか!?」

藤堂「良くはないが…アイツのことだ。何か考えがあるのだろう。卜部もいることだしな」

千葉「いや、しかし!」

藤堂「千葉…頼む。お前だけが頼りなんだ」

千葉「(私だけが!?)はい!分かりました!(キュン)」

藤堂「?うむ。では、頼んだぞ」

千葉「はい!」



恋する乙女はちょろ、ごほん、甘いっていう話


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29 待ちに待った初登場!でも、扱いが良いとは限らないもの

ルルーシュの映画行きました!

面白かったですけど、 C Cが凄いヒロインし過ぎてたんで、カレンとシャーリーにも分けてあげて欲しかったです。

そして、あるかは知りませんが、続きを期待して待ちたいです!




自分は頭がおかしくなったのかと思った。

 

それくらいに信じられない発言だった。

 

それでも一縷の望みをかけて、目の前で行われる光景をその目に収める。

 

「何なんだ、その係は!?本気で言ってるのか!?」

 

「ええ。彼以外に卵焼き係は務まりません」

 

「だから、何でそんなふざけた係が重要みたいになってるんだ!?」

 

やはり、勘違いではなかった。ああ、やっぱり、ここ(シリアス)でも、ボケからは逃げられないんだ。

 

そんな真理に気付いたカレンの目は死んでいた。

 

「新しいナイトメアを作るためです。彼なら立派に役目を果たせる」

 

「いや、ナイトメアを作ることとの関連性が分からないんだけど!?それに、そうだったとしても、そんな役目誰にやらせても良いだろうが!別に死ぬわけじゃあるまいし!」

 

「確かに、死ぬわけではないですし、構わないのですが…少し問題がありまして…」

 

「問題?何だそれは?」

 

上官であるブリタニア兵はイライラしながら、答えを待つ。

 

「彼は食しても視力が一定程度落ちただけで済んだのですが…」

 

「いや、『だけ』で済ませて良いレベルじゃないからな!?」

 

「他のものは皆、身体が縮んでしまいました」

 

「ナイトメアを作るより、とんでもないモノ産み出してるだろ!?」

 

上官の心からの叫びを無視して、部下は事実を淡々と言う。

 

「飲まされた被験者は、男女共小学一年生まで若返ってしまいました。違いとしては、男の方は口癖が『バーロー』になり、女の方は赤みがかった茶髪になるということがあげられます」

 

「何処の出来損ないの名探偵を飲まされたんだ、そいつら!?」

 

スザクの背後から、ルルーシュとカレンが同情100%の視線をスザクに向けるが、スザクが気付くことはなかった。

 

「そんな訳で彼は必要なのです。まあ、上官殿が代わりをやってくれると言うのならば、話は変わりますが」

 

「よし、後ろのブリタニアの学生を打て!何があっても卵焼き係には当てるなよ!!いいな、絶対だぞ!分かったな!」

 

「了解しました!」

 

部下はそう言うと持っていたマシンガンを構えた。それを見たスザクは慌てて止めようとする。

 

「待ってください!あの人たちは巻き込まれた一般人です!」

 

「どけ!お前を撃つわけにはいかんのだ!」

 

「どけません!私が私であるためにも!例え撃たれたとしても…え?」

 

そう言ったスザクが自分の身体に違和感を感じて見てみると撃たれていたことに気付く。

 

そして、その直後にスザクは意識を失った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この展開で撃ったぁ!?」

 

背後で見ていたカレンは突然の展開に驚きを隠せない。そして、それはブリタニアの上官も同じだった。

 

「いや、お前何で撃ったぁーーーーーーーーーー!!!!????」

 

「え?フリじゃなかったんですか?いやぁ、あんだけ念押しするから撃たなきゃダメなのかなと」

 

「そんな展開求めてないわぁ!もう良い!とにかく、先にあのブリタニア人を撃て!その後に、あの女の回収を「無理だな」何ぃ!」

 

上官の言葉を見ていたルルーシュが否定する。無表情のまま、ルルーシュは更に口を開く。

 

「そいつには無理だ。撃ちたければお前が撃てば良い。それともお前が撃つ度胸がないのか?言っておくが、お前が持ってるものはオモチャじゃない。本物だ。撃って良いのは撃たれる覚悟がある奴だけだ。お前に、その度胸があるのか?」

 

そのルルーシュの言葉に、上官は青筋を浮かべる。

 

「ほざいたな、ガキが!そんなに死にたいなら、望み通りにしてやる!俺がやるまでもない!もう良い、片付けろ!」

 

「ふん、片付けろか…ならば、片付けてやるさ。だが、片付けられるのはどっちか分からんがな。知らなかったのか?この場で処刑執行人は俺たちに変わった。精々目に焼き付けろ。この場は」

 

無表情だったルルーシュの顔に冷酷な笑みが浮かび、口を開く。

 

「お前らのこの世で見られる最後の景色だ」

 

その音と同時にブリタニア兵の近くで爆発が鳴り響く。上官のいた所は無事だったが、背後にいた部下は全員吹き飛んでしまった。

 

あり得ない出来事に上官は、信じられない思いの中で口を開く。

 

「一体何が!?」

 

「やだなぁ、上官殿。貴方が言ったんじゃないですか、片付けろって。私は命令を聞いただけですよぉ〜。だから」

 

そう言った部下は銃口を上官に向ける。

 

「これで、この場の片付けは終了でーす。片付けの後始末までは請け負ってないので、ご容赦を」

 

「貴様、まさか、レジスタンス!?」

 

「おせぇよ。まあ、あの世で反省しろ。ついでに教えといてやる。上に立つ者ならな」

 

男は銃口の引き金に手をかける。そして

 

「部下の顔くらい覚えるんだな」

 

パンと音が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふん。まあまあの手際だったな。口だけの男じゃなくて何よりだ、彰」

 

「ええ!!??」

 

カレンの驚きを他所に、彰は当たり前のように変装を脱ぐ。

 

「命の恩人に対して口の聞き方がなってないな。俺がいなきゃヤバかったんじゃねぇの?」

 

「お前がいなければ、別の手を打っていたさ。あのトラックには、自爆機能もあったからな。お前の変装に気付いたから、お前に任せただけだ」

 

「それにしたって気付くのが遅いんだよ。わざわざ、お前らに一度見せた顔で来たってのに」

 

何の話だとカレンが聞くとルルーシュがカレンと始めて会った時に変装して見せた顔だと答えた。そんなもの覚えてるわけないだろうと怒りたかったが、ルルーシュは覚えているので何とか堪えた。

 

「まあ、アレでスザクを撃たなかったら俺も気付かなかっただろうがな」

 

「アレって何よ?」

 

「麻酔銃だよ。スザクの様子を見てみろ」

 

言われたカレンがスザクの様子を見てみると出血が異常に少ないことが分かった。おまけに、穏やかな寝息を立てている。なるほど、あの時撃ったのは麻酔弾だったわけだ。

 

「てか、何で撃つ必要があったのよ」

 

「色々面倒な奴なんでな。寝ていて貰った。性格上、何があってもレジスタンスに協力何てできる奴じゃないし」

 

(まあ、本当は殺した方が良いんだろうけど…ルルーシュの友達みたいだし、流石になぁ)

 

戦略的な考えで言えば、彰としてはスザクにはこの場で死んでいて欲しかった。

 

ランスロットのパイロットであり、戦闘能力も極めて高い。加えて、「法」と「正義」を重んじ、それに反する行動は絶対に取らない奴だ。

 

どう考えても面倒なことをしでかす奴というのは明らかであり、この場で殺すのが利口なのだろうが、ルルーシュの友達であり、大体のスザクの過去の罪を知っている彰にはそれができなかった。

 

「まあ、とりあえず、スザクのことは放っといて良い。んで?その縛られてる女の子は誰?」

 

そんな訳で、とりあえずスザクのことは放っとくことにした。今はそれよりも考えねばならないことがある。

 

「さあな。一応毒ガスということになっているが」

 

「毒ガス?この娘が?」

 

ルルーシュの言葉に言葉の真意を考える彰。そして気付く。なるほど、そういうことか。

 

「遂に毒ガスも擬人化できる時代になったのか」

 

「んな訳ないでしょうが!どう考えても毒ガスって情報が嘘だったのよ!」

 

そんな彰とカレンの会話を聞きながら、毒ガス娘がモゾモゾ動き出した。何かを伝えようとしているようだ。

 

「何か伝えようとしてるみたいだぞ?」

 

「馬鹿が。サッサと拘束具を切ってくれと言ってるに決まってるだろうが」

 

「やれやれ。だから、お前は童貞なんだ」

 

「関係ないだろうが!」

 

「いや、童貞を否定した方が良いと思うけど」

 

ボソッと呟くようなカレンのツッコミを無視して彰は娘の縄を弄り始める。

 

暫くして、その作業が終わった頃に話し始める。その作業とは

 

「良いか?これがこの娘の望んでいることだ。まずは最初に…亀甲縛りだ」

 

ただの変態行為だった。

 

「動けない女の子に何してんのよぉ!?」

 

完全に性犯罪者の行為を仕掛けた彰にカレンの飛び膝蹴りがヒットする。

 

「ぐほっ!?待て、落ち着け、俺くらいになるとな、喋らなくても女の子が何を言ってるのかは分かるんだよ。良いか?この娘はな…

もっと縛って欲しいと言ってるんだ」

 

「おい、馬鹿止めろ!勘だが、絶対にこいつはこんなことされるキャラじゃないと思うぞ!」

 

「どう見ても目が血走ってますけどぉ!?怒ってるのよ、絶対に!」

 

「だからお前らはお子ちゃまだってんだよ!せっかく恋人同士何だからたまには、そういうプレイで遊んでみようとか思わんのか!」

 

「ただの変態行為でしょうがぁ!誰があんなことするかぁ!」

 

こんな展開でも、騒いでる自分の仲間たちに頭が痛くなりながら、ルルーシュは毒ガス娘の縄を解くことにした。流石に見てられなかったからだ。

 

「おい、大丈夫か?全く不運だったな。まあ、助かっただけでも良しと」

 

ルルーシュのその後の言葉が続くことはなかった。何故なら

 

「解くのが遅いんだよ!この童貞ボウヤがぁ!」

 

解かれた娘がその瞬間にルルーシュのことを蹴り飛ばしたからだ。

 

予想外過ぎる展開に喧嘩をしていた彰とカレンの動きも止まる。その姿を気にも止めず、毒ガス娘はようやく立ち上がる。

 

「どんだけ出すのに時間かかってるんだ!?原作だと一話から登場してるんだぞ!」

 

ヒロインの一人が漸く登場した瞬間である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




千葉「しかし、言い訳と言われても何か良い手がないものか…むう、そうだ仙波さんに聞いてみるか」

テクテク

千葉「仙波さん、いますか?少し聞きたいことが、あれ?いないのか?これは…手紙?」

『ネイルサロンに行ってくるので少し会議に遅れます。探さないでください』

千葉「だから、女子高生か!何でここの組織にはマトモな奴が少ないんだ!」

千葉さんは、結構苦労人だっていう話。


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30 よく分からない人との契約とオレオレ詐欺には気を付けろ!

書いた私が言うのもアレですが…C.C.好きな人は見ない方が良いです。いや、マジで。


「全く…女をこれだけ待たせるとは…これだから、童貞ボウヤは」

 

毒ガス女はそう言うと、意外過ぎる展開に呆然としている彰とカレンに目を向ける。

 

「それで?お前達は一体何なんだ?」

 

お前の方こそ誰なんだと声を大にして言いたいカレンは、口を開きかけるが先に彰の方が口を開いた。

 

「俺はルルーシュの友達だ。彰と呼んでくれ。こっちの女はカレン。まあ、ルルーシュの彼女だな」

 

「友達?彼女?ルルーシュの?」

 

予想外と言わんばかりに、目を広げた毒ガス女に対して、その反応に違和感を感じたが、彰は更に口を開く。

 

「んで?あんたの名前は?何て呼べば良い?」

 

「…C.C.だ。そう呼べ」

 

「C.C.ね。りょーかい。んじゃ、C.C.とりあえず、質問したいことがいくつかあるんだが、聞いて良いか?」

 

「答えるかは保証しないがな。聞くだけ聞いてやる」

 

「そいつは有難い。んじゃ、聞くがあんたは何で…ルルーシュが童貞だと知っていた?」

 

「まず、質問するとこ、そこぉ!?」

 

「それ以外に聞くことが山程あるだろ!」

 

「簡単だ。匂いだよ。童貞臭がした」

 

「あんたも答えなくて良いわよぉ!というか、薄々感じてたけど、あんたもボケね!もう、嫌こんな世界!」

 

予想の斜め上な質問をする彰にカレンとルルーシュの怒号が飛ぶが、気にせずにアキラは会話を続ける。

 

「臭いか…ふっ。俺もまだまだなようだな」

 

「当然だ。私はC.C.なのだから」

 

「あんたとは良い関係になれそうだ。さて、自己紹介も終わったことだし、これからの計画を話「じゃ、ないでしょうがぁ!!」ツェゲズラ!」

 

会話は終わったと言わんばかりに、今後の計画を話そうとした彰にどこからか出してきたカレンのハリセンが炸裂し、吹き飛ばされた。

それでも、まだ怒りが収まらないカレンがその勢いのまま話し始める。

 

「ボケとボケが話し合ったって、何も生まないのよ!0と0をいくら足したって0にしかならないのよ!あんたは少し黙ってなさい!もっと聞かなきゃいけないことが沢山あるんだから!」

 

「おお、そうだ。忘れるところだった」

 

カレンの言葉で思い出したように、C.C.はポンと手を叩き、そのまま倒れたままだったルルーシュの所に近付く。

 

「な、何だ?」

 

「おい、ルルーシュ。契約しろ」

 

「「は?」」

 

言われたルルーシュも聞いていたカレンも意味の分からない言葉に思わず、疑問を返す。

 

当然、吹き飛ばされた彰も言葉だけは聞いていたので、叩かれた場所を抑えながらカレンの所に近付く。

その彰に思わずカレンは呟く。

 

「契約って…あの二人知り合いだったの?」

 

「さあ?皇子だった時の知り合いかもな?ルルーシュは忘れてるみたいだが」

 

「いやいや、あんなキャラ濃い人間を忘れようと思っても無理でしょ」

 

「色んな相手にカッコつけてるからイチイチ覚えてないんだろ。やれやれ、イケメンはこれだから困るんだ。どんな相手にもフラグを振りまきやがって。彼女として注意をした方が良いんじゃね?いや、お前も学園では似たようなもんか」

 

「失礼ね。私は必要に迫られて演技をしているだけよ。あんなカッコつけ男と一緒にしないで」

 

「中身は全然完璧じゃないんだがなぁ。シャーリーあたりなら知ってるのかね?」

 

「そりゃ多少は知ってるでしょうけど、あいつ上手く隠してるから、どうなのかしら。何せ、プライドの高さだけはエベレストよりも高い奴だから」

 

「おい、全部聞こえてるからな、貴様ら!」

 

ヒソヒソと会話をしている彰とカレンの声に青筋を浮かべたルルーシュが反論する。

 

しかし、そんな会話が聞こえていないかのようにC.C.は話を続ける。

 

「今からするのは契約だ。契約する代わりに私の願いを一つだけ叶えてもらう」

 

「いや、契約をするなど一言も言ってないんだが…まあ良い。どんな契約なんだ?」

 

ルルーシュのその問いにC.C.はニヤリと笑う。

 

「王の力だ…だが、王の力はお前を孤独にする。お前にその覚悟があるか?」

 

「王の…力?」

 

何を言っているのだこの女はとルルーシュは頭をフル回転させるが、側で聞いている二人はその限りではなかった。

 

「うわー、あの毒ガス女、メチャクチャ痛いこと言ってるわよ、彰」

 

「おいおい、そんなこと言ってやるなよカレンさんよ。あの娘アレだよ、中二の心を持ったまま生きてきたんだよ、もう引き返せない所まで来てるんだよ」

 

「髪の毛緑だし、本当にそうかも…もしかして、縛られてたのもわざとだったりとか?傷ついたら力が増すとか思ってるんじゃないかしら」

 

「何処のジャンヌさんですか?メイデンさんですか?普段から拷問器具の中で暮らしてるんですか?もしかして、王の力ってシ○ーマンキングのことですか?何時からここは、パッチ村になったんですか?もう見てらんないよ、心も身体も痛すぎるよ、あの娘。可哀想だから、カレンも契約してあげたらどうだ?」

 

「はい、ガードー。私にそんな中二の力いらないから。私は既にそれは卒業したから」

 

「お前らうるさいぞ!空気読め!どう考えても今はシリアスだろうが!」

 

外野の言葉にC.C.も流石に怒鳴るが、そんなことなど気にしないでカレンと彰はC.C.に近付いていく。

 

「悪かったわよ、ごめんなさいね。きっとあるわよ王の力は。私に見えないだけなのね」

 

「俺は分かってたよ。ネバーランド的なアレだろ?子供にしか見えないんだよな王の力は。大丈夫だよ、探せばあるさ。俺も未だにラピュタはどっかにあるって信じてるから」

 

「完全にバカにしてるだろ、お前ら!?誰が子供だ!」

 

小馬鹿にしている二人の態度にC.C.も青筋を浮かべる。

 

「怒らないでよ。大丈夫よ、あんたには王の力があるんだから」

 

「そうだよな。問題ねぇよ、王の力があるんだから」

 

「…貴様ら、言わせておけば…」

 

長い緑の長髪によって俯いたC.C.の目が隠れる。どうしたのかとカレンが覗き込もうとすると、同時に顔を上げる。

 

その顔は何処までも無表情であり、見ているものを不安にさせた。

 

「ならば見せてやろうか。私の力を。お前達くらいのガキなら一生もののトラウマになるレベルのショックを与えてな」

 

根拠はなかった。だが、見ている三人にはこれから何かが起こると感じられた。もしかしたら、これが王の力なのではないだろうか。

 

そう思わせるほどの雰囲気を出すC.C.に

 

「今ならまだ間に合うぞ。早くここから去れ。そうすれば、お前達のような子供に手をかけることは…ガッ!?」

 

先程の爆発で弱くなった頭上の岩盤から落石が落ちてきた。

 

まさに直撃。頭から大量の血を出し、素人目から見ても助からないのは明白だった。

 

同時に周りの空気が死んだ。

 

残された三人とも何と言って良いのか分からなかったからだ。

 

「え…と…どうしようか?」

 

恐る恐ると言った感じでカレンはルルーシュと彰に助けを求める。求められた二人は

 

「さてと。これから、どうするルルーシュ?」

 

「そうだな。とりあえず、カレンの仲間と連絡を取ることから始めるか」

 

全力で今までの出来事をなかったことにした。最低である。

 

「何あんたたち時を巻き戻してるのよ!そんなことしたって現実は変わらないのよ!」

 

「何を言っているんだ、カレン。何もなかったろ?」

 

にこやかな笑顔でルルーシュが答える。当然のように彰もこの勢いに乗る。

 

「そうだよな。王の力なんて最初からなかったんだよ」

 

「いや、王の力はなかったのかもしれないけど、あの人はいたから!あれは現実だから!」

 

「勝手に人を過去形にするな」

 

「「「え?」」」

 

突然聞こえた声に三人とも振り返ると

 

「これぐらいで私が死ぬか。これぐらいで死ねたら苦労はないんだよ」

 

顔中血だらけのC.C.が立っていた。

 

「「ギャー!?出たー!?」」

 

「馬鹿な!?確実に死亡するレベルの落石だったはずだ!?」

 

その事実に彰とカレンは悲鳴をあげ、ルルーシュはあり得ない出来事に戸惑っていた。

 

「こんなことで驚くな。こんなことで驚いてたらこれから先の人生やっていけないぞ」

 

「たった今、今までの人生の常識を完全に否定されたんですけど!?何、あんたどうなってんの!?それが王の力なの!?巫力使って回復したの!?」

 

「だから、私をシ○ーマン扱いするな!ただ、不死身なだけだ!」

 

「いや、充分凄いことだから!そんな大したことないみたいに言うことじゃないから!」

 

「不死身ねぇ…どれどれ」

 

カレンの言葉を他所に銃を頭上に発砲する彰。すると、衝撃で再び落石がC.C.に直撃する。

 

直撃を受けたC.C.は先ほどより更に血だらけになりながら、こんなことをしでかした彰に抗議する。

 

「痛いわぁ!馬鹿なんじゃないか!?何をするんだ、お前は!」

 

「いや、本当に不死身なのかなぁと思って」

 

「不死身だからって痛覚はあるんだよ!だから死ぬほど痛いんだよ!だから、もう止めろ!マジでショックイメージを流し続けて人生終わらせてやるぞ!!」

 

血だらけの上に涙目になったC.C.が彰と口論している中、驚きから我に返ったルルーシュはこの事実から一つの考えが浮かんだ。

 

(王の力とかいう訳の分からん力を与えるという女をクロヴィスが毒ガスと嘘をついて連れてきた…?クロヴィスの奴何を知っている?)

 

最高機密レベルに隠蔽された毒ガスの情報。更に、その毒ガスの情報すら、偽りのものであり、蓋を開けてみれば中身は王の力とやらを与えるという不死身の女。

 

恐らく自分たちは期せずして、とんでもないカードを得た。クロヴィスどころかブリタニアという国自体を揺るがしかねないカードを。そして、カードを得た以上、自分たちは自分たちがカードを得た情報を隠さねばならない。

 

現在、この事実を知っているのは、ここにいる俺たち三人だけ。ブリタニアは、まだ俺たちがこのカードを得たことを知らない。しかし、いずれは、クロヴィスに知られてしまう。

 

ただ、カレンを助けに来ただけのはずだったのだが、驚愕の事実に直面したルルーシュはこの後の展開を再構築せざるを得なかった。この場で、何としてもクロヴィスの口を塞がねばならない。

 

「おい、彰。プランを変えるぞ」

 

先ほどからふざけているようだが、アイツが自分達の今の状況を理解できていないはずがないと考えたルルーシュは彰に当然のようにプランの変更を迫る。

 

彰もすぐにうなづいた。顔も先ほどまでとは違い、真剣なものに変わっていた。

 

「ああ。こうなった以上、クロヴィスはここで潰す。カレン!ナイトメアを借りるぞ!」

 

そう言うと彰はトラックのナイトメアに乗り込もうとするが、それを見たカレンは慌てて付いて行こうとする。

 

「待ちなさいよ、彰!私も行くわ!」

 

「お前はダメだ。ルルーシュの側にいろ」

 

「何でよ!?私も戦えるわ!」

 

「そんなもん知ってる。だが、今の状況ならお前がいなくても何とかなる。それよりもルルーシュを守ってくれる方が百倍有難い。何だかんだ言っても、こいつはこれが初めての実戦だからな」

 

それを聞いてカレンは渋々とうなづく。それを確認した彰は今度はルルーシュに声をかけた。

 

「とりあえず俺が暴れる。ルルーシュはそれを見て、カレンのグループと俺が呼んだ品川のグループに連絡して上手く合わせるように指示してくれ。お前なら楽勝だろ?」

 

「…最初の指揮から俺がやりたいところだが、それで我慢してやる。では、地図と品川の奴らに繋がる携帯を寄越せ」

 

地図と携帯を投げて渡した彰はナイトメアに乗り、外へと向かう。それを見たカレンは少々不安そうだ。

 

「大丈夫かしら?」

 

「ふん、こんな所で死ぬようならアイツもその程度だったというだけだ。それに俺たちも人のことを気にしてられる場合じゃないしな。さっさと移動するぞ。おい、そこの不死身女。お前もだ」

 

「え?あの女連れてくの?」

 

「当たり前だ。あんな女にブラブラされたらたまったものじゃない」

 

「まあ、言われずともついて行くがな…だか、その前にだ」

 

「何だ?」

 

検討はついているが一応建前上聞いておくルルーシュ。

 

「決まっているだろう?契約だ、わざわざわたしはそのために「断る」…何だと?」

 

聞き間違いかというような顔をするC.C.にルルーシュはもう一度告げる。

 

「断ると言ったんだ。突然現れた不死身女と謎の契約をする奴がどこの世界にいる?」

 

「お、お前正気か!?一応、これは『コードギアス 』なんたぞ、分かってるのか!?ここで契約しなかったら、色々不味いんだぞ!?」

 

「何を訳の分からんことを…とにかく移動するぞ。おい、カレン。そいつを引きずってでも連れてこい」

 

「あ、本当に移動するな、この童貞ボウヤが!というか、カレン!本当に引きずるな!おい、良いのか!?本当に契約しないつもりなのかお前!?」

 

C.C.の悲痛の叫びに答えるものは誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、久し振りのナイトメアでの戦闘…と」

 

リョウと卜部さんには連絡した。後は、暴れるのみ。

 

「ここで反逆する気もなかったんだが…まあ、あんな女が現れたらしゃーないか」

 

予定が大幅に前倒しになったが、こんな有り得ない出来事が起こればしょうがないとも言える。そう考えた彰は頭上から敵のナイトメア相手に斬りかかる。奇襲は見事に成功し、相手のナイトメアの動きは停止する。

 

他の奴はそれに気付いて戦闘スタイルを取ろうとするが、圧倒的に遅い。その集団相手にマシンガンを発射し、絶命させる。

 

それが合図と言わんばかりに、ワラワラとブリタニアの兵士が現れた。その様子を見て、彰が得意げに笑い、何を思ったか外部スピーカーをオンにして話し始める。

 

「そういえば言ってなかったな。ブリタニアの皆様方。ようこそ、わざわざいらっしゃいました。遅くなりましたが、今から歓迎してやりましょう…さあ…パーティだ!日本へようこそ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




幹部A「では、会議を始める!…ん?卜部と桐島はどうした?仙波もいないようだが」

千葉「(結局、碌な言い訳が思い浮かばなかった…)卜部さんと桐島はその…敵情視察に出ています」

幹部B「何?それは会議よりも大事なものなのか?」

千葉「え、ええ…多分」

幹部C「多分だと!?何だ、それは!」

千葉「(何故私が怒られねばならない…)」

幹部A「全く…で?仙波は?」

幹部C「仙波ならネイルサロンに行ってます」

幹部A「そうか。なら、仕方ないな」

幹部B「そうだな」

千葉「(それは怒らんのかぃぃぃぃぃ!?そっちを怒れよぉぉぉぉぉぉ!?」


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31 時間がある時にやろうと思うと忘れるので、早めの行動を忘れるな!

コードギアスの映画の影響すげぇ…メチャクチャ更新スピードが上がった笑


理不尽にも程がある。

 

カレンはルルーシュの指揮を見てそう思った。

 

圧倒的に追い込まれていたはずの戦場があっという間に優位に変わっていく。

 

ルルーシュが品川のレジスタンスと扇さん達に連絡を取った。そこで、謎の男として(カレンはともかく、カレンの仲間まで信じる気はないと言って絶対に名前は明かさなかった)指揮を開始してから僅か1時間。

 

自分たちが今まで苦戦していたのが何だったのかと思いたくなるレベルである。

 

カレンは畏怖を覚えずにはいられなかった。これが本当の指揮官なのだと本能が理解した。

 

にも関わらず、当のルルーシュは不機嫌な顔を崩さない。

 

「アイツ…余計なことを」

 

「え?」

 

ルルーシュは舌打ちをすると彰に電話をかけた。

 

「おい、もう動くな。このままでは、俺が楽過ぎる!お前はこれから戦闘に参加するな!」

 

「文句言うところ、そこ!?どう見てもあんたが凄いと思うんだけど!?」

 

カレンからしたらルルーシュのしたことは凄いという言葉では表せないが、本人からしてみるとそうでもないらしい。

 

「ちっ。何処がだ。全部アイツが勝手に的確な行動をして、俺はそれに合わせているだけだ。カラオケで言えば、常にガイドボーカルが流れているようなものだ!俺はアカペラで歌いたいんだよ!俺の力を試すためにもな!」

 

「ええ…何それ…」

 

「運良く、あいつの…というかカレンのグラスゴーが半分壊れてたからこれ以上は無理らしいがな。全くこのままでは俺の力がどの程度通じるのか分からない所だった」

 

初めての戦闘にも関わらず、求める水準が高過ぎることにカレンは若干引いたが、当人が満足しないのではしょうがない。

 

ちなみに、彰から言わせれば、こちらから指示していないのに自分の行動を教えただけで、自分の考えを全て理解し、痒いところに手が届くどころか、将来的に痒くなるであろうところにまでフォローしてくるルルーシュが異常なのだが。これで初めての実戦だと言うのだから笑うしかない。

 

そして、ここにはルルーシュ以外に満足していない人間が一人いた。

 

「…おい、ボウヤ。本当に契約しないのか?今ならまだ間に合うぞ?」

 

「しつこいぞ。しないと言っている」

 

未だに契約のことを言ってくるC.C.に振り向きもせずにルルーシュは答える。

 

聞いていたカレンも、うんうんと頷く。

 

「当たり前でしょ。言っておくけど、あんた、相当怪しいわよ。普通そんな奴に契約なんて言われたってする人いないわよ」

 

圧倒的な正論にぐうの音も出ないC.C.を見て、鼻で笑うルルーシュ。

 

「そういうことだ。だがまあ...不死身女の契約に興味がないと言えば嘘になる。こちらの質問に答えるなら、その契約とやらを考えてやっても良い」

 

「ほう?何だ?言ってみろ」

 

「ちょっとルルーシュ!本気!?」

 

信じられないという顔で止めようとするカレンを手で制しながら、ルルーシュは先程の出来事の中で浮かんだ疑問を聞く。

 

「お前は、何故三人の中で俺を選んだんだ?いや、もしくは最初から俺だと決めていたのか?」

 

ルルーシュの質問にC.C.は苦い顔をする。その顔を見て、ルルーシュは疑問を更に深める。

 

(こいつは完全に俺以外と契約を結ぶ気がなかった。だか何故だ?俺でないといけない理由があるのか?)

 

「答えはYESであり、NOでもある。お前たち三人の中ではお前が適任だった。だが、お前でないといけない訳ではない」

 

「ほう?では、何故俺だと適任なのだ?」

 

「言えない」

 

「では、王の力とは何だ?」

 

「ギアスと呼ばれる力を得られる。まあ、正確には違うが、超能力と思えば良い」

 

「超能力?どんな能力だ?」

 

「さあな。得た人によって変わる」

 

「...契約の条件は?」

 

「現状では特にない。将来、私の望みを一つ叶えてもらうだけだ」

 

「望みとは?」

 

「言えない」

 

話にならんと言わんばかりにルルーシュはコメカミを抑えるが、側で黙って聞いていたカレンはそうではなかった。

 

「あんた自分の立場を分かってんの!?そんな謎だらけの契約を結べるはずないでしょうが!!ていうか、ルルーシュが結ぶって言っても私が許さないわ!」

 

「口を出すな。お前には関係のない話だ」

 

「出すわよ!あんたがこいつを騙そうってんなら、手も口も足の爪の先から髪の毛の先端に至るまで全部出すわよ!」

 

それ出し過ぎじゃないか?とルルーシュは思ったが、口には出さなかった。

 

「別に騙す気はない。嘘も言っていないしな。ただ、こいつが自分の目的を叶えるために必要な力を提供してやろうと言っているだけだ。見返りに私の願いを一つ叶えてもらうがな」

 

「...あんた、一体ルルーシュのことをどこまで知ってるの?」

 

「さあ?何処までだろうな?」

 

妖艶な笑顔で笑うC.C.にカレンが目が細めるのを見て、この二人の相性の悪さに気付いたルルーシュは頭が痛くなる。まさか、これからずっと俺がこの二人の喧嘩を止めなければならないのだろうか。

 

そんな嫌な未来予想図を振り切るように話の流れをルルーシュは変えようとするが、その前に彰から携帯に連絡が入る。

 

『よう。暇そうだな?』

 

「ああ。あっけない程上手くいったからな。これから更にカレンの仲間と品川のグループを前進させクロヴィスの守りを薄くすれば不意をついてクロヴィスを討つことも可能だ」

 

『さて、そんなに上手くいくかね』

 

「何?」

 

彰の言葉でルルーシュは眉を顰める。

 

『まあ、情報がないお前じゃ予想できないのはしょうがないが...これからイレギュラーが出てくる。気を付けろ。油断すると死ぬぞ』

 

「待て、何が始まるんだ?」

 

『お前が戦略の怪物ならアレは戦術の怪物だ。目に焼き付けろ。そんなに見れるもんじゃないぜ?理不尽なまでの強さってやつはな』

 

同時に、カレンの仲間が倒されたという連絡が入った。ルルーシュは初めて圧倒的な個の力を味わうことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやあ予想はしてたけど、ドン引きの強さだねアレ。知らなかったら間違いなく逃げるね絶対」

 

「喋ってる場合じゃねぇぞ、ユキヤ!死ぬぞ、マジで!」

 

ヤバイのがいるから足止めを頼む。絶対に勝てないから、命を大事に作戦でいけよとどこかの馬鹿に言われて待機場所から飛び出したリョウ達三人だが、相手の余りの強さに驚きを隠せないでいた。

 

「おい、指揮官!何かさっきまでみたいな策はないのか!?足止めも限界だぞ!」

 

『…実弾は効かず、不意打ちで切り掛かったり、障害物で潰そうとしてもあり得ない反射神経とスピードで当たらない。これは無理だな。現状の戦力でこれを倒すのは不可能だ』

 

「指揮官が諦めてどうする!?大量の爆薬とかないのか!?」

 

『そんな都合の良いものはない!だが、誰が諦めると言った?倒すのが無理なら勝利条件を変えるだけだ』

 

アヤノの言葉を否定したルルーシュは即座に別のプランを立て始めた。

 

『所詮、その化け物がそこで勝った所で戦術的な勝利だ。その間に俺たちが頭を叩く!とにかく、時間を稼げ!最終的に負けても構わん!』

 

「アイツといい、お前といい、簡単に言ってくれるもんだ!この化け物相手に時間を稼げ…だぁ?どんだけ難しいか分かってんだろうな!」

 

『分かっている!他の奴等にも連絡して援護に当たるように言ってある!正直、どれだけ役に立つかは疑問だがな』

 

「立たねぇよ!この段階で分かるわ!卜部はともかく、それ以外の援軍は居ても居なくても同じだ!」

 

『やはりか…では、あの化け物の構造上の欠陥から攻めるとしよう』

 

「へぇ、そんなの分かるんだ?」

 

『ああ。何処かの馬鹿が一度潜入して情報収集したらしいからな。とにかく、一度距離を取れ!』

 

「「「了解!」」」

 

ルルーシュの言葉に三人とも敵から距離を取る。

 

『よし!そこから一気に近付け!』

 

「無茶を言うな!撃たれるぞ!」

 

『違うな!間違っているぞ!急に距離を取り、武装を変えたことで先程までとは違う武装を使っている!そこからの攻撃では、データによるとその武装からは

 

 

 

 

 

 

 

醤油が出る』

 

「「何で醤油だぁ!!」」

 

あり得ない展開に戦闘にも関わらず、リョウとアヤノから怒号が飛ぶ。

 

『製作者によると、丁度その時醤油が切れていたので今後困ることがないように付けたそうだ。目玉焼きが好きらしい』

 

「そんな情報死ぬほど、どうでもいいわ!」

 

「馬鹿だろ!その製作者馬鹿だろ!」

 

『ふっ、なるほどな。馬鹿と天才は紙一重とは良く言ったものだ』

 

「うるせぇよ!上手く話をまとめてんじゃねぇ!」

 

しかし、ルルーシュ達が喋っている間にランスロットから出続けていた醤油が止まってしまう。

 

『早くお前らが攻撃しないからチャンスが減ったぞ!何をしている!』

 

「やかましい!あんな状態の敵に攻撃できるか!」

 

「大丈夫だよ。心配しないで」

 

「ユキヤ?何か作戦が?」

 

とつぜんニヤリと笑いながら、安心させるような発言をするユキヤに何か手があるのではないかとアヤノは顔を綻ばせる。

 

「僕を誰だと思ってるのさ。ハッキングして本来の装備とは別のものに替えさせるくらい簡単だよ」

 

「おお、すげえじゃねぇか!何が起こるんだ?」

 

「醤油が出なくなったのは本来の量より少な目に設定されていたからさ。さあ、僕のターンだ。これからは醤油じゃなくて

 

 

 

 

マヨネーズが出る」

 

「「だから、何でマヨネーズだぁ!!!」」

 

リョウとアヤノのツッコミにユキヤは得意顔をする。

 

「目玉焼きに醤油っていうのが許せなくてね。僕はマヨネーズ派だし」

 

『違うな。間違っているぞ。素材の良さを活かすなら塩がベストだ』

 

「間違ってるのはお前の反応だ、指揮官!言うべき言葉はそれじゃねぇだろ!俺はソースだけど」

 

「おい、お前ら真面目にやれ!今は戦闘中だぞ!ちなみに私はポン酢だ」

 

「「『珍しいな、おい!』」」

 

話が盛り上がっている間に、ランスロットのマヨネーズも打ち止めになってしまう。それを見たユキヤは思わず呟いてしまう。

 

「あー、なくなる前にちょっとでも貰っとけば良かった」

 

「そういや、もう在庫がなかったな。後で買いに行かねぇとな」

 

『おい、在庫管理は戦闘の基本だぞ』

 

「分かってるんだけど、時間ある時に買いに行こうとすると忘れちゃうんだよなぁ」

 

『甘いな。ならば、スケジュールにしっかりと組み込んでおくことが大切、待て、カレン!落ち着け!『落ち着いてられるかぁ!あんたら現実逃避も良い加減にしなさいよ!敵が目の前にいるのよ!分かってんの!?』』

 

「あれ?カレン?そっちにいたのか?」

 

『いたわよ!黙って聞いてれば話が進まないから出てきたのよ!そんなどうでも良いこと喋ってないで早く戦いなさいよ!』

 

「いや、無理だってこんなの。もうマヨネーズもないし、後出来ることといえば出来るだけ逃げることくらいだよ。まあ、性能が違いすぎるから時間稼ぎにもならないだろうけど」

 

「実際そんなところだな。んじゃ、早く三人とも散って…何?停戦命令?」

 

リョウが話している間にブリタニア側に停戦命令が鳴り響いた。

 

しかし、攻めてきたブリタニアが今更停戦命令を出す意味はない。だとしたら、こちら側の人間が何かをしたのだ。

 

そう考えたルルーシュは、今この場にいない人間のことを思い出す。更に、その後の展開まで読んだルルーシュは慌ててそいつに合流するために行動を急ぐのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何人かの死体に囲まれながらクロヴィスは恐怖で震えていた。周りの人間を死体にした張本人が目の前で銃を構えていたからだ。

 

「さ、さあ。停戦命令はしたよ?だから、頼む命だけは」

 

どう考えても助けを呼んだ段階で殺されると考えたクロヴィスは命乞いをするしかない。だが、それを聞いた彰は冷酷に笑いながら答える。

 

「そりゃ、お前のこれからの行動次第だ。さあ、クロヴィス。質問に答えてもらうぜ?」

 

 

 

 

 

 

 

 




幹部A「では、暖房機と加湿器のどちらを買おうかという話だが」

幹部B「どちらにしたものか…」

千葉「(心底どうでも良い…)」

片瀬「ううむ…藤堂。どう思う?」

藤堂「ふむ…これは難しいですな」

千葉「(流石藤堂さん!こんな問題でも真剣に考えるなんて!私はそんなところが(照)」

解放戦線は千葉さんがツッコマないと色々話が進まないという話


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32 気付いたら主人公よりも主人公してるキャラっているよね

C.C.のキャラってこんなんかな?


「答える!答えるから銃を下ろしてくれ!」

 

彰から銃を向けられているクロヴィスは、哀れなほどに震えていた。

 

「良い心がけだ。んじゃ、早速だが…お前が盗まれたっていう毒ガス…ありゃ何だ?」

 

「ど、毒ガスか…あれは一応対テロのために「あー、すいませーん、手が滑りました」ひぃ!?」

 

この状況で嘘が通じると考えた浅はかなクロヴィスの顔の隣に銃を撃つ。距離は僅か5ミリほどだ。

 

「調べはついてんだよ。もう一回嘘つけばつい手が滑って足くらいに当たるかもな」

 

「わ、分かった!アレのことは…私も良く知らないんだ」

 

「知らんだと?」

 

「あ、ああ。バトレーが父上に献上する予定だった不老不死の女を私が頼んで寄越してもらったんだ…ただ、研究データも見ていないし、本人にもまだ会ってないから」

 

「写真しか知らないと。その様子じゃ、嘘じゃなさそうだな」

 

「そ、そうだ!誓っても良い!」

 

「じゃあ、このことを他の誰が知ってる?知らないとは言わせないぜ?」

 

「バ、バトレーとその研究員だけだ。他には毒ガスと言ってるし、一部にも女ということしか知らせてない」

 

「ふん、賢明だな。不老不死の女なんて存在を広めたら大変なことになる」

 

さて、どうするかと彰は考える。

 

恐らく、こいつを脅しても得られることはもうないだろう。とあれば、別に絶対に殺す必要もないのだが、こいつがいればC.C.の存在が露呈される可能性がある。それに何より…

 

「さ、さあ、質問には答えたぞ?だから」

 

「ああ。そうだな」

 

そう言うと彰は引き金にかける力を強める。

 

「ま、待て!質問に答えたら助けると言ったじゃないか!」

 

「何時俺がそんなことを言った?それに、お前新宿の人たちに何をしたか忘れたわけじゃねぇだろうな」

 

コイツは無関係の人を殺しすぎた。別に俺らのようなレジスタンスをいくら殺した所で文句はない。だが、ただ新宿に住んでいた人達に罪はない。コイツの行為は一線を越えたんだ。

 

「そ、そんなのレジスタンスの奴等が悪いんだ!あ、あいつらが私のモノを盗んだらするから!」

 

「だから報いは受けただろ?多分何人も死んでるさ。ま、そんなことをしでかしたんだ。そいつらも殺されて文句を言う資格はないがな。だから…今度はお前が報いを受ける番だ。仮に、そいつらが悪かったんだとしてもやり返したのはお前だ。やったらやり返される。常識だろうよ。そんなことも分からない奴が戦場に立つな」

 

「止めろ!止めてくれ!」

 

「目には目を。歯には歯を。罪には罪を。じゃあな、クロヴィス」

 

彰は取り乱すクロヴィスを頭を撃とうとする。だが、その直前に聞き覚えのある男の声が響いた。

 

『待て!そいつを殺すな!』

 

その瞬間、彰の意識が飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

気付いてみれば、ルルーシュとカレンとC.C.が近くに来ていて、ルルーシュはクロヴィスと喋っている。

 

いや、待て。何が起きた?何でクロヴィスはまだ生きてるんだ?何で一瞬の間にお前らが来てるんだ?

 

そんな俺の様子を見たカレンがパッと笑顔になる。とりあえず、可愛いけど、早く説明をください。

 

「良かった!気が付いた?」

 

「ああ、うん気が付いた…というか…いや、ごめん、何が起きたか全く分かってないんだが」

 

「ギアスの力よ。あんた、ルルーシュのギアスの力にかかってたのよ」

 

「ねぇ、俺がいない間に何があったの?お前らがタイムリープしてきたって言われた方がまだ納得できるくらいに意味が分からないんだけど」

 

「ああ、うん、いや、私も良く分かってないんだけど…」

 

カレンの説明が始まる。話は今から15分程前に遡る。

 

〜15分前〜

 

警備の目を潜り抜けてクロヴィスの近くにまで来たルルーシュ達だが、検問の存在からそれ以上近付けないでいた。

 

「いくら警備が手薄になったと言っても、ここより先は流石に無理か…くそ、早く行かんとアイツにクロヴィスが殺される」

 

「ていうか、彰はどうやって進んだのよ。全く騒ぎになってないじゃない。どうなってんの?」

 

「アイツの変装技術があれば、そこまで難しくはない。警護の一人を殺して成り代われば、ここから先もノンストップで行ける。どうしても行けない所や、絶対に側を離れない警備の人間だけ不意打ちで殺せば騒ぎも最小限で済むしな。クロヴィスの警護なら実戦経験も少ないから、戦闘能力もそこまでではない。合理的な判断だ」

 

「…アイツ本当に無駄に凄いわね。悔しいけど」

 

「今更だ。しかし、不味いな。ナイトメアまであるとは…この人数で強行突破は不可能だ」

 

「戦えるのは私とカレンの二人だけ。しかも虚弱体質の足手纏いも一緒とあってはな」

 

「しかも、ここまで来るのにバテてるし…全く現実はとんだ無理ゲーね」

 

「おい、仲が悪い癖に俺を攻める時だけ意気投合するんじゃない!」

 

ルルーシュは一緒にいるカレンとC.C.の言葉に青筋を浮かべる。しかも本当に自分だけ息を切らしている状況では否定もできない。

 

「ていうか、別に良いんじゃないの?クロヴィスなんてどうなろうとも」

 

「聞かなければならんことがある。それまでは殺すわけにはいかん」

 

「何を聞きたいのかは知らないけど…そんなに大事なことなの?」

 

「…ああ。絶対に明らかにせねばならんことだ」

 

真剣な面持ちで告げるルルーシュを見て助けになってあげたいカレンだが、何の手も浮かばない。そもそも、ルルーシュがどうしようもないようなことをどうにかできるとも思えない。

 

しかし、ここには二人だけではなかった。どうにかできるかもしれない力を持った不死身の女がいるのだ。

 

C.C.は、ここぞとばかりに挑発的に笑う。

 

「どうする、ルルーシュ?私と契約すればどうにかなるかもしれないぞ」

 

「ふん、どんな能力が得られるかもしれんギアスとやらの力か?」

 

「そうだ。それがあればお前の目的は叶えられるかもな」

 

「論外よ。信じられるわけないわ。だめよ、ルルーシュ。こんな話に乗ったら」

 

「ふふ。確かに現状私を信じることなど不可能だろう。だが、お前たち二人にこの状況が何とかできるのか?私は提案しているだけだ。ルルーシュが本当に叶えたい望みなら、それを叶える可能性がある力を与えてやろうという提案をな。後は、お前が決めろ、ルルーシュ。そこまで叶えたい望みがないなら、別に無理に結ばなくても良いさ」

 

ルルーシュは、その言葉に長考する。確かに、リスクはある。だが、そのリスクを取らなければ母を殺した犯人が分からなくなってしまう可能性がある。その犯人を探して殺すことは、ルルーシュにとって生きる理由の一つでもある。故に

 

「…いいだろう」

 

「ルルーシュ!?」

 

ルルーシュは契約することを選択した。カレンは慌てて止めようとするが、ルルーシュはその姿を見て言う。

 

「カレン。君の言いたいことも分かるが、これは俺が生きるために必要なことなんだ。そのためなら俺は…悪魔とだって契約してやるさ」

 

「良いのか?言い忘れていたが、王の力はお前を孤独にする。その覚悟があるのか?」

 

「不死身の女との契約だ…副作用くらい覚悟するさ」

 

「良い心掛けだ」

 

ニヤリと笑いながらC.C.はルルーシュに近付く。だが

 

「邪魔だ、カレン。何のつもりだ?」

 

C.C.の前にカレンが立ち塞がる。

 

予想外の反応にルルーシュもカレンに声をかけるが

 

「お、おい、カレン一体「あんたは黙ってて!」…はい」

 

カレンの怒気に押されて黙ってしまう。お前、もっと頑張れよ。

 

「…私にルルーシュが決めたことをどうこう言う資格なんてない。だけど、これだけは言っとくわ」

 

そう言うとカレンは持っていた銃をC.C.に向ける。

 

「ルルーシュに何かあったら…どんな方法を使っても私があんたを殺す」

 

「ほう?不死の存在をどう殺すと言うんだ?」

 

「撃ち殺す。嬲り殺す。焼き殺す。刺し殺す。死なないっていうなら死ぬまでありとあらゆる方法を試してやるわ」

 

「大層なことだな。そんなに、この童貞ボウヤが好きか?」

 

「馬鹿にしないで。そんな軽い気持ちじゃない」

 

カレンは真剣な面持ちのまま続ける。

 

「恩がある。一生かけても返せるかどうか分からない恩が。ルルーシュと彰は…何の関係もない私の家族を…私と仲間の命を助けてくれた…今の私が笑っていられるのは、二人のおかげよ。だから今度は…命をかけてでも私が二人に恩を返す!ルルーシュと彰のためなら…何時でも死ぬ覚悟はできてる」

 

カレンの覚悟を聞いて、流石のルルーシュも少し罪悪感を覚える。別に、カレンの兄貴を助けたのは彰に恩を返すためだけだ。カレンの母さんを雇ったのはカレンの兄の介護をさせるためだ。カレンを助けたのは、自分の目的を叶えるためだ。カレンの仲間を助けたのは、そのついでだ。別に、助けたくて助けた訳ではない。何かが少し違えば、ルルーシュは絶対に助けることなどなかっただろう。

 

しかし、そんなことはカレンだって知っていた。

 

彰にとっては、ほんの気まぐれだったのかもしれない。ルルーシュにとっては、彰に対する恩返しというだけだったのかもしれない。今があるのは偶然の積み重ねかもしれない。だが、そんなことはカレンに何の関係もなかった。

 

自分と家族と仲間を助けてくれた。素の自分を出せる場所を与えてくれた。どんな理由にしろ、自分を助けるために戦場に来てくれた。それらの事実はカレンが命をかけるに値する。

 

そんなカレンをC.C.は鼻で笑う。

 

「それは随分と安い覚悟だな」

 

「何か文句でもあるって言うの?」

 

「別に文句はない。ただ…お前の自己満足の恩返しがおかしかっただけだ」

 

「あんた…」

 

C.C.の言葉でカレンの目に殺気が宿る。

 

しかし、そんなカレンの殺気を受けてもC.C.は全く動じない。

 

「自己満足以外の何だと言うんだ?お前に命懸けで守られて残された二人はそれで満足するのか?お前が知っている二人はそんな奴等なのか?」

 

C.C.の意外な言葉と雰囲気にカレンは返す言葉を失った。

 

C.C.は寂しそうに微笑みながら続ける。

 

「命をかけてでも守る?そんなものただの守る側の自己満足だよ。私なら…命をかけて守ってもらうよりも…例えお互いがボロボロになったとしても共に生きて欲しいと願うよ」

 

「C.C.…」

 

ほんのさっき出会っただけの関係だが、カレンにはC.C.が始めて本音で喋っているように見えた。

 

自分の発言が恥ずかしかったのか、C.C.はカレンから顔を背ける。

 

「何でもない。余計なことを言った。今の言葉は忘れろ。いくぞルルーシュ。準備は良いか?」

 

二人の会話から完全に置いてけぼりにされていたルルーシュはC.C.の言葉に、ハッと我に帰る。

 

「ああ!結ぶぞ!その契約!」

 

 

 

 

 

 

〜現在に戻る〜

「てな、訳なのよ」

 

「それで得た力が絶対遵守のギアスと…何ともまあ…」

 

彰から言わせれば、それ、どんなチート?という話である。

 

どんな命令でも必ず相手を従わせるとか常人が使っただけで、とんでもない能力だ。そんな能力をよりによって、ルルーシュが身に付けたのだ。もう反則という言葉以外思い浮かばない。

 

しかも、さっきギアスを受けた時の記憶がないということは絶対遵守の命令を受けている前後は記憶が飛ぶらしい。

 

余りの最強の能力っぷりに笑うしかなくなった彰を他所にルルーシュはクロヴィスと話を続けている。その様子を見ていると、不意にルルーシュの瞳に文様が浮かび上がった。なるほど、アレがギアスかと感心しながら見ていた彰には何故かデジャブに見えた。

 

(あれ?俺、あの文様を何処かで見たことあるような…?言われてみれば、ギアスって言葉にも聞き覚えがあるような…)

 

しかし、そんなことを彰が考えている間にルルーシュのギアスが発動する。

 

『誰だ。母さんを殺したのは…』

 

「コーネリアとシュナイゼル…あの二人が知っている」

 

そのギアスの発動を見て、現実に帰った彰はギアスの凄さを実感させられた。言われてみれば、確かにかけられてる方は普通の反応をしていない。

 

同時にルルーシュの質問から、ルルーシュが明らかにしたい事の内容が分かった彰はシスコンの上にマザコンとか、手に負えないよ、あの残念イケメンと思ったが口にすることはなかった。

 

その後、クロヴィスの悲鳴に近い声を聞きながらルルーシュは冷酷に笑う。

 

「止めろ!腹違いとはいえ、実の兄だぞ!」

 

「綺麗事だけじゃ…世界は変えられないから」

 

そして、次の瞬間

 

「あれ?」

 

気が付いたら彰の前にルルーシュが倒れていた。

 

「お前何してんの?」

 

とりあえず、彰は倒れていたルルーシュに聞いてみる。殴られたのか頬が赤くなっており、そこを抑えながらルルーシュが怒鳴り出す。良く見たら、それ以外もボロボロである。さっきまで別行動していた彰には理由は分からないが。

 

「それはこっちのセリフだ!何を考えている!」

 

「いや、そりゃこっちが聞きたいんだが」

 

彰が困ったように周りを見ると、カレンも困惑気味に声を出す。

 

「いきなり彰が「殺すな!」って言ってルルーシュを殴ったのよ。覚えてないの?」

 

「言った覚えねぇんだけど!?え?どゆこと?」

 

三人が混乱してると黙って事の成り行きを見ていたC.C.が会話に加わる。

 

「ギアスの力だ」

 

その言葉にカレンは首を傾げるが彰とルルーシュは顔をひきつらせる。両者ともに最悪な展開を予測した。

 

その予想を払拭するため、彰はギギギと音がしそうなほど、ぎこちなく首を回し、カレンに問いかける。

 

「カレン…確認だが、ルルーシュは俺にさっきどんなギアスをかけた?」

 

「え?うん、確か…「待て!そいつを殺すな!」だったような気がするけど、それが何…か」

 

言っている最中にカレンも気付いたのか顔が硬直する。

 

そう。先程のルルーシュのギアスによって彰はクロヴィスを殺さない所か殺そうとする者からもクロヴィスを守らなくてはならなくなってしまったのだ。

 

「お前ふざけんなぁ!これ、もうほとんど呪いじゃねぇか!」

 

彰はブチ切れながらルルーシュの胸倉を掴み、抗議する。当然である。

 

「うるさい!お前が勝手な行動をするから悪いんだろうが!」

 

「俺のせいにしやがったな、このクソ野郎!今すぐ解除しろ!」

 

「無理だな」

 

当たり前のことのようにC.C.が告げる。

 

「そんなことできるものか。ギアスは絶対だ。例外はない」

 

「なら、ギアスを上書きしろ!そうすれば」

 

「あー…それも無理だと思う」

 

可哀想な者を見る目をしながらカレンが告げる。

 

「さっき私もギアスを受けたんだけど…何か同じ人に二回以上は通じないみたい」

 

「はっはっはー。なるほどねぇ、そうか」

 

カレンの言葉を聞いて笑い出した彰をルルーシュとカレンは驚きながら見ていた。すると

 

「罰として、てめえ、一生童貞でいますギアスかけろ!当然の報いだ!」

 

「全ては過去!終わったことだ!そんなギアスをかけても何にもならん!断る!」

 

「てめぇに選択の余地はないんだよ!その目広げて無理矢理発動させてやる!」

 

彰がルルーシュに飛びかかり、見るも無残なしょーもない喧嘩が巻き起こる。

 

この喧嘩は見るに見かねたカレンが無理矢理止めるまで続いたという。




ルルーシュが怪我をしてた理由

ルルーシュ「これがギアスか。カレン『少し黙ってくれ』」

カレン「…」

ルルーシュ「カレン?」

カレン「え?何?」

ルルーシュ「ふむ、どうやら成功したようだな。では、カレン!『もう少し、おしとやかになれ!』」

カレン「は?」ピキ

ルルーシュ「何?効いてない?どういうことだ、C.C.!」

C.C.「どうやら、お前のギアスは同じ人に二回は効かないようだな」

ルルーシュ「貴様!そういうことは、早めに言え!」

カレン「ねぇ、ルルーシュ?今のギアスはどういうこと?ねぇ?」胸倉ぐい

ルルーシュ「落ち着けカレン!誤解だ、今の命令はな、待て!殴るな、ぐぉっ」

C.C.「あんなのが契約者で大丈夫だろうか」


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33 突然兄弟が増えたら実際どうして良いか分からないよな

結構ご都合主義ですが、ご容赦を!


彰はにこやかに微笑みながらリョウ達の隠れ家に一人の男を連れて来ていた。

 

それを見たリョウ達三人の顔は引きつっている。

 

その姿を目に収めた彰は、こほんと咳払いをしてから告げる。

 

「今日から君たちの弟になるクロヴィス君だ。仲良くしてやってくれ」

 

「はじめまして。クロヴィスだよ。よろしく頼む」

 

「「じゃ、ねぇだろぉ!!!」」

 

「ぐふおぅ!?」

 

彰とクロヴィスの挨拶にツッコミを我慢できなくなったリョウとアヤノのコンビネーションキックが炸裂する。彰はクロヴィスガードを発動して防御した。クロヴィスは気絶した。

 

「おい、ブリタニア人だからって差別するな。そんな人間じゃないだろ、お前らは」

 

「頭沸いてんのか、てめえは!」

 

「それ以前の問題だ、この大馬鹿!一体何処の世界にテロリストの傭兵の家に皇族を住まわそうと言う奴がいるんだ!」

 

「ここにいる。俺がいるだろ?」

 

「もう殺そう、コイツ!手遅れだよ!頭が!」

 

完全にヒートアップしているリョウとアヤノを見て、ため息を吐く。全く情けない。これぐらいのことで取り乱すとは。

 

「何で俺らがおかしいみたいになってんだ!おかしいのは、テメェの頭だろうが!早くそんなの捨ててこい!」

 

「待ってよ、お父さん!道に捨てられてたんだ、また捨てるなんて出来ないよ!」

 

「捨て猫か!そして、誰がお父さんだ!」

 

「一緒にキャバクラ行ったこと黙っててあげるから!」

 

「黙ってねぇだろ!おい、馬鹿止めろ!」

 

「リョウの来月の小遣いは五割カットだな」

 

「許してくれ、アヤノ!俺はお前一筋だ!お前にメッチャ似てる女がいるってこの馬鹿にそそのかされただけなんだ!」

 

「その方が気持ち悪いわぁ!私に近寄るなぁ!」

 

「つぶほう!」

 

リョウの変態発言によって発動したアヤノの飛び膝蹴りによって、リョウは気を失う。やれやれ、シリアスな話が続かない奴等だ。

 

「困った奴等だ…んで?ユキヤはどーなのよ?」

 

「僕は別に良いけどね。家賃さえ貰えれば構わないよ」

 

「流石だな、話が早い。顔バレしてるから外には出せないが日光を与えておけば勝手に成長するから気にするな」

 

「植物か!」

 

「分かったよ、日光と適度な水分があればそれで良いんだね?」

 

「だから、植物か!おい、止めろ、この家はただでさえ既に一人引きこもりを抱えているんだぞ!これ以上、不良債権を増やせるか!」

 

「ねぇ、アヤノ。もしかしてそれ僕のこと?僕のこと言ってる?」

 

ユキヤの問いかけを無視して、彰とアヤノは互いに向き合う。一人は手懐けた。一人は倒れた。残る敵はあと一人!

 

当然、アヤノはそれを自覚して戦闘態勢を構える。両者ともに負けられない戦いがここにある。

 

まず、彰が仕掛ける!彰のターン!ドロー!

 

「アヤノ。よく考えろ。この取引はお前のためでもある」

 

「何が私のためなんだ?」

 

「コイツは政治と統治者としての能力は死んでるが、その代わりに芸術関係の能力は高いんだ。特に絵が上手い。美術館に普通にあっておかしくないレベルだ」

 

「だから、どうした。そんなこと私に関係ない。まさか、それを売って儲けろと?転売するのも楽じゃない。断る!」

 

アヤノはその程度のことで私が動くかと鼻で笑う。

 

しかし、彰にとっても、ここまでは予想の範囲内。問題はここからだ。

 

「話はここからだ…コイツは絵が上手い。そしてお前はあの方の影響を受けて小説を書いているな?」

 

「な!?お前何で知って」

 

「まあ、聞けよ。つまりは…だ。コイツの画才があれば、お前の妄想に絵を加えることができる」

 

まさに青天の霹靂という風にアヤノに衝撃がはしる!それを感じた彰はここぞとばかりに畳み掛ける。

 

「素晴らしい出来になると思うぞ?そうすれば、お前はあの方に一歩近付ける!お前の妄想は新たな形に生まれ変わることができるんだ!」

 

彰の言葉にアヤノの顔は青くなったり、赤くなったりを繰り返す。そして

 

「…いいだろう。こいつを迎え入れてやる」

 

彰の勝利が決まった。彰は小さく、ガッツポーズをする。

 

契約はこれで完了と言わんばかりに、すぐ様、クロヴィスの生活費をユキヤに渡した彰は逃げるように隠れ家から出て行った。

 

これで懸念事項が一つ減って安心した彰は、こうなった原因を思い出す。そもそも、アイツが俺にあんなギアスをかけなければこんなことにならなかったんだよと思いながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜3時間前〜

「で?どうするの?」

 

ルルーシュと彰の喧嘩を止めたカレンは、このままではラチがあかないと思い、話を進める。

 

どうするもこうするも、彰とルルーシュから言わせれば殺せない以上方法は一つしかない。

 

「誘拐するぞ」

 

「そうだな」

 

「え!?見逃してくれないのかい!?」

 

クロヴィスの馬鹿が何か言ってるが全員無視する。しかし言うのは簡単だが、誘拐するのは殺すよりも難しい。正直、彰だけでは不可能なのでルルーシュに考えを聞いた。

 

「で?具体的にどうする?」

 

「ギアスをかけてるから後30分間はここに人は来ない。その間に、形式上、クロヴィスはここで死んだことにする。向こうにある死体を使ってな。お前はデータを改竄してくれ。ここからなら、できるはずだ」

 

なるほどねと彰は頷き、殴ってクロヴィスを気絶させ、近くにあった親衛隊の死体の顔と名前を確認する。しかし、話の流れを理解していないカレンは、慌ててルルーシュに尋ねる。

 

「待ってよ!一体どういうこと?」

 

「そこの親衛隊の死体をクロヴィスにでっち上げるということだ」

 

「無理よ!全然似てないじゃない!」

 

「腕一本を残して、徹底的に燃やし尽くす」

 

「何で腕一本残すのよ!」

 

「腕を一本くらい残さないとクロヴィスが死んだ証拠にならないだろう。指紋のデータは恐らくデータで登録されているだろうから、彰が今そこの死体の指紋とクロヴィスの情報と入れ替えてる」

 

「燃え残った骨は!?」

 

「燃え残った証拠については、解剖医になる可能性がある医者とクロヴィスのかかりつけの医者全員にギアスをかけてそれをクロヴィスの死体だと証言させる。証言させた後は墓荒らしにでも見せかけて骨を回収する。後で改竄の証拠が見つかってもそうすれば検証できない」

 

死体が一つ足りないことになるが、ここまで人が死んでれば行方不明の死体の一つや二つ出ても誰も疑わないしなと言ってルルーシュは話を締めくくる。

 

カレンは医者はどうやって見つける気だと聞こうと思ったが、ルルーシュの頭とギアスがあれば、どうとでもなるのだろう。

 

(何でもありじゃない、ギアスって…)

 

何時から自分はSFの世界の住人になったのだろうかとカレンは遠い目をする。

 

そんなカレンの心情も関係なく事態は進んでいき、彰の作業が終わった。

 

「おい、とりあえず改竄は終わったぞ。ついでにクロヴィスも負傷兵に見せかけたが…どう考えても普通に行ったらバレるぞ?」

 

「問題ない。外で検問をしていたヴィレッタとかいう女から車を奪ってある。それがあれば簡単に移動は可能だ。問題はクロヴィスを何処に隠すかだな。ちなみに、俺の家は無理だぞ。これ以上増えたら流石に目立つ」

 

「偶然とはいえ、都合が良いな。さて、行くか。クロヴィスの隠し場所なら俺に任せろ。考えがある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜現在に戻る〜

 

それから、新宿の仲間たちの様子を見に行ったカレンとC.C.を隠しに行ったルルーシュと別れた彰はリョウ達の所に来たのだった。

 

全く、とんでもないことになったなと彰はため息を吐く。

 

(クロヴィスとかどうでも良いくらいにヤバイ力が見つかったな…ギアスねぇ…調べても分からんだろうな、絶対)

 

メチャクチャ詳細な情報が欲しい彰だが、疲れてやる気にならないし、どう考えても情報など手に入る気がしなかった。というか、簡単に調べて分かったら大問題である。

 

ちなみに彰の携帯の電源は切ってある。恐らく鬼のように千葉さん達から電話が来ている気がしたからだ。ただの時間稼ぎの現実逃避でしかないのだが。

 

そんな訳で、解放戦線の所に帰れない彰はルルーシュの家へと向かった。

 

そして、そこでは

 

「大嫌い…大嫌い…ははは。俺もう死ぬしかないのかな」

 

「大丈夫よ、ルルーシュ!誤解だから!ナナリーだったら絶対に分かってくれるから!私も手伝うから!だから、お願い!元気出して!」

 

「おい、このピザっていう食べ物はもうないのか?」

 

彰は思った。

 

何このカオス

 

 

 

 

 




あったかもしれない会話

クロヴィス「ルルーシュと一緒に住みたい!ナナリーと会いたい!」

ルルーシュ「論外だ!」

クロヴィス「お願いだよ、ルルーシュ!ナナリーとも会いたいんだ!」

ルルーシュ「断る!ナナリーに兄と呼ばれるのは俺だけで良い!」

彰・カレン((もしかして、こいつ兄としての独占欲からクロヴィス住まわせたくないんじゃ…))


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34 追い詰められた奴は何を言い出すか分からない

この話は書いてて楽しかった笑


ルルーシュを励ましていたカレンは、物音から彰が来ていたことに気付いて目を向けた。

 

「彰!あんた来てたの!?じゃあ、お願いあんたも「あ、すいません、お邪魔しました」って帰るなぁ!」

 

彰は何やら嫌な予感がしたのでそのまま帰ろうとしたが、カレンに後ろ首を掴まれて動きを阻害される。

 

捕まった以上、自身と同程度の戦闘能力を誇るカレンから逃げるのは難しいと判断した彰はため息を吐く。疲れていたので、これ以上面倒ごとに関わりたくなかったのだが。

 

「逃げないであんたも手伝いなさいよ!私だけじゃ、どうしようもないんだから!」

 

「さっきからブツブツ言ってるアレのことだろ?もう無理だよ、アレがナナリーに嫌われたら他の人が励ましたってどうしようもないよ。諦めよう」

 

「いや、そうかもしれないけど、ちょっとは努力しようとしなさいよ!そもそも、C.C.を匿おうとしたあんたにも責任があるんだから!」

 

「そういや、何でC.C.がここにいるの?ここで匿うことにした訳?」

 

「そんなの私が知りたいわよ!」

 

カレンの話によると、新宿の扇達と合流し、生き残った人たちの怪我の治療や状況の整理が終わったカレンは、扇の命令で一度家へと帰るように言われたので、ルルーシュの家へと帰ってきたらしい。

 

いや、お前自分の家に帰れよと彰は思ったが、話が進まないので黙っていることにした。

 

その後、ルルーシュの家の玄関でC.C.の隠れ場所を一時的に用意したルルーシュと偶然合流したカレンは「今日は疲れてるから泊まる」とルルーシュにゴリ押しして、許可を取ってから一緒にリビングへと入った。ほとんど、有無を言わさぬ迫力だったのは言うまでもない。

 

しかし、そこで事件は起こってしまった。

 

 

 

 

〜カレンの回想開始〜

「あ、おかえりなさい。お兄様。カレンさん」

 

「おかえりなさいませ、ルルーシュ様。カレン様」

 

「おかえりなさいませ、ルルーシュ様。あら、カレンこんな遅くにどうしたの?」

 

笑顔で二人の帰宅を迎えるナナリーと小夜子と仁美の声に、二人は反応できなかった。何故なら

 

「おかえり。ルルーシュ。カレン。遅かったな」

 

この場にいるはずがないC.C.がいたからだ。

 

何でここに、この女がいるのだとルルーシュに問い詰めようとしたカレンだが、ルルーシュはルルーシュで想定外の事態に思考が停止していた。本当に予定外の事態の時には役に立たない男である。

 

しかし、そんな二人の思考を知る由もないナナリーは自らの疑問を聞く。

 

「そういえば、こちらのC.C.さんと仰る方はさっきお兄様の知り合いだと仰っていたんですけど、どういった知り合いなんです?」

 

「え?いやあ、それはな」

 

出来るだけナナリーに嘘はつきたくないルルーシュは、ナナリーの質問に対して答えに詰まる。しかし、そんな時にC.C.がルルーシュの援護をする。

 

「将来(契約)を誓った仲だ」

 

「え!?」

 

なお、その援護はルルーシュを助けることではなく殺すことに使われるようです。微妙に真実を含む発言に、ルルーシュとカレンの顔がひきつる。

 

ナナリーは何故かC.C.の台詞に固まっていたが、暫くすると震える声でルルーシュに確認を取る。

 

「お兄様…今、C.C.さんが仰っていたことは本当なのですか?」

 

「いや、うん、まあ、嘘というわけでもないが」

 

「そう…ですか」

 

そう言うと、ナナリーは顔を伏せる。その様子を見たルルーシュは心配してナナリーの顔を見る。そんなルルーシュに

 

「お兄様の…浮気者ーーー!!!」

 

「ぐほっ!?」

 

「ルルーシュ!?ちょ、ちょっと待ってナナ…リー」

 

ナナリーのアッパーが炸裂する。ルルーシュの身体は放物線を描き、地面へと叩きつけられる。予想外の展開にカレンはナナリーの誤解を解こうとするが、その声も止まってしまった。何故なら

 

「何でなんですか…お兄様…カレンさんという存在がいながら」

 

ナナリーが泣いていたからだ。その涙を見てカレンとルルーシュの思考は完全に止まる。しかし、ナナリーの誤解は進んでいく。

 

「カレンさんは凄く優しくて暖かい人なのに…何で浮気なんかするんですか!この浮気野郎!人でなし!女たらし!そんなお兄様なんて…お兄様なんて…大嫌いです!行きましょう、小夜子さん!仁美さん!」

 

「あ、はい、ただいま!」

 

「分かりました」

 

仁美は慌ててナナリーの車椅子を押して移動し、小夜子はカレンにルルーシュのことを頼んだと伝えて扉から出て行った。

 

待って!置いていかないで!と思ったカレンは手を伸ばしたが、無情にも扉は閉じられてしまった。

 

恐る恐るカレンはルルーシュの方を見る。さっきからずっとピザを食べてるバカ女が役に立たないのは明白なので、何とかするのは自分しかいないのだが…どうこうできる気がしない。

 

だって完全に無表情なんだもの!完全に目が死んでるんだもの!

 

カレンが慰めの言葉を探していると、急にルルーシュが窓へと歩き出し呟いた。

 

「…死のう。もう、母さんの死の真相とかどうでも良い」

 

「だめぇ!それだけはだめよ、ルルーシュ!何とかなるから!絶対に大丈夫だから、それだけは思い止まって!」

 

 

〜回想終了〜

 

「なるほど。不幸な事故だったな」

 

「何処がよ!どう考えてもそのバカ女のせいでしょうが!」

 

ルルーシュを励ましながら片手でカレンはC.C.を指差す。しかしなぁと彰は言う。

 

「嘘は言ってないだろ?」

 

「お前は流石だな。理解が早い」

 

「誤解を生みまくってるわよ!そもそも、この女がここにいるからこんな問題が起こるのよ!この家の住人じゃない人は出て行って!」

 

「カレン。お前それマジブーメラン」

 

まあ、俺も人のことは言えないけどと思いながら彰は言う。それに、C.C.にフラフラされる方が余程困るので、彰としてはこの家にいてもらった方が正直助かるのだ。

 

「うっさい!あんたどっちの味方なのよ!」

 

「んなこと言われてもねぇ…じゃあ、C.C.。俺の家に住むか?」

 

「断る。私は契約者の側を離れる気はない」

 

「だってさ。諦めよう」

 

「早いわよ!もうちょっと粘りなさいよ!」

 

「いや、無駄だって。絶対に言うこと聞くわけないじゃん。そもそも、俺はC.C.に命令できる立場じゃねぇし」

 

それにと彰は続ける。

 

「カレン。お前にも責任があるんだぞ?」

 

「何で私のせいになるのよ!」

 

「お前がナナリーの好感度を爆上げしたから、こんなことになったんだろーが」

 

元々親しい相手にはお節介を焼きたがるカレンの性格が災い?して、カレンと接する機会が多いナナリーの、カレンに対する好感度は凄いことになっている。ルルーシュと一応付き合ってることも関係して、たまにカレン姉様とナナリーに呼ばれて赤面していることを彰とルルーシュは知っている。

 

「ほう、そうなのか?良くこのシスコンが怒らなかったな」

 

意外と言う感じでC.C.が言う。まあ、気持ちは分からんでもない。

 

「思うところはある感じではあったけどな。多分お兄様の立場は守られたから良かったんじゃねぇか?」

 

「ふふ…ははは…ふははははは!!!!」

 

彰とC.C.が会話していると、蹲っていたルルーシュが突然笑い声を上げながら立ち上がる。ぶっちゃけ、怖いと思った三人はルルーシュから若干距離を取る!

 

「俺はずっと考えていた…失われたナナリーの好感度を取り戻すにはどうしたら良いのかと…そして、今のお前らの言葉で閃いた!くくく…世界は変わる!変えられる!」

 

(普通にナナリーの誤解を解消すればそれで済む話だと思うが、気付いてないんだろうな)

 

ルルーシュの話を聞いて、彰はそんなことを思ったが、聞こえないのでルルーシュは話を続けながら何故かカレンの肩を掴む。

 

「俺はそのために今の世界を壊し!新たな世界を作る!だからカレン…結婚しよう!」

 

「アホかぁ!!!!!!!」

 

ルルーシュの発言で顔を真っ赤にしたカレンのアッパーがルルーシュの顎に突き刺さり、宙を舞う。

 

死んだかなと思いながら彰とC.C.はその姿を見ていた。

 

殴った張本人であるカレンはまだ動揺が治らないのか、顔を赤くしたまま喋り出す。

 

「しっかりしろ、ルルーシュ!!正気に戻れぇ!!ば、ば、ば、馬鹿言ってんじゃないわよぉ!!」

 

「カレンも随分と動揺しているな」

 

「イケメンに告白されたことに対する照れ隠しもあるんだろ」

 

「外野は黙れえ!」

 

更にカオスと化した場に追い打ちをかけるように、ルルーシュはフラつきながら立ち上がる。

 

「落ち着けカレン。これはナナリーの俺への好感度を取り戻し、喜んで貰うための政略結婚だ。つまり、愛などなくても問題ない。偽物のカップルが偽物の夫婦になるだけだ」

 

「ねぇ、最低のこと言ってんだけど、このクズ!殴っても良い!?殴っても良いわよね私!!」

 

既にお前殴ってるよと思いながら、彰とC.C.はことの成り行きを見守る。

 

「だから落ち着け!それに、結婚したらお前にもメリットがある…一番のメリットはお前はこの家で暮らせるようになるということだ。もうこれからは、シュタットフェルト家に帰る必要もなくなる」

 

ルルーシュの言葉に、カレンに一瞬迷いが浮かぶ。カレンはシュタットフェルト家にいるよりも、ここにいる方が遥かに居心地が良い。だから、ルルーシュに何度も住まわせてくれるように頼んでいるのだが、イエスの答えは帰ってこない。

 

ここで暮らすことはカレンの目下の夢でもあるのだ。だが、しかし…しかし…

 

「だ、だからってそれが理由で結婚なんてできるかぁ!」

 

乙女の心的に色々不味かった。ルルーシュはカレンの言葉に舌打ちをする。これで買収できると思っていたのだろう。それを見てカレンの顔に青筋が浮かぶ。このクズ、これぐらいで私が結婚してくれると思っていたのだろうか。

 

「彰!C.C.!黙ってないであんたらもこのクズになんとか言いなさいよ!」

 

カレンは後ろにいる仲間たちに顔を向ける。しかし

 

「なるほど、最近の結婚式場はこんなに変わったのか」

 

「とりあえず、費用の計算から始めようぜ?予算の中から出来ることを決めないとな」

 

後ろにいたのは仲間ではなく、敵だったようだ。その事実にカレンの思考が停止するが、そのうちにルルーシュが会話に加わる。

 

「違うな。間違っているぞ。予算も大事だが、何より大事なのはバリアフリーの式場であるかどうかだ。ナナリーが参加するのだからな」

 

「確かにな。じゃあ、これはどうだ?」

 

「お前は乙女の気持ちが分かっていないな。それならこっちだ」

 

自分の話を聞かずに勝手に式場の予定を決めていく連中に、カレンの中のナニカが切れた。そして

 

「あんたら…あんたら全員私の話を聞けぇ!!」

 

カレンの絶叫がこだました。




カレンがシャーリーだった場合

ルルーシュ「結婚しよう」

シャーリー「はい」

彰・C.C.「「おめでとう!」」



…こうなっちゃうから、シャーリーは出しにくいという裏事情


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35 他人と自分を比べるな!条件が違うんだから!

若干の映画のネタバレありますので、見てない方は気をつけてください


カレンの心からの叫びを聞いた他の三人は流石にカレンに注視する。そして、ルルーシュは言った。

 

「何を当然のことを言っている。花嫁の意見を聞くのは当たり前だろう」

 

「誰が花嫁よ!同意した覚えなんてないわよ!」

 

カレンの当然の抗議が響き渡る。そんな時に

 

「待ってください、ルルーシュ様!」

 

「お母さん!?」

 

仁美さんが部屋へと入ってきた。そのまま、仁美は脇目も振らずにルルーシュへと直進する。

 

「話は聞こえました!ルルーシュ様…幾ら何でも酷すぎです!」

 

「待って、お母さん!これはルルーシュの冗談だから!もう少し冷静になれば、分かってくれるから!」

 

母親の態度を見て慌ててカレンはルルーシュを庇おうとする。しかし、そんなカレンに反応も見せずに仁美は言った。

 

「結婚式場なら母親である私の意見も聞いてくれないと困ります!」

 

「そっちの心配!?」

 

「当然じゃないですか。お母さんの意見を聞かずに進めるなんてあり得ませんよ」

 

「何でさりげなく既に息子感出してんのよ!と言うか、それ以前に私の同意を取らずに話を進めてる方があり得ないわよ!」

 

カレンの言葉を聞いた彰とC.C.は肩を竦める。

 

「カレン。人生諦めが肝心だぜ?」

 

「全くだな。試しに結婚してみれば良いじゃないか」

 

「試しに付き合う的な感じで言ってんじゃないわよ!そんなに簡単に結婚できる訳ないでしょ!」

 

「やれやれ…頭でっかちな奴はこれだから困る。何でそんなに頑ななんだよ。間違いなくルルーシュなら大切にしてくれると思うぜ?」

 

「同感だな。あのシスコン童貞ボウヤのことだ。結婚相手は大切に扱うだろう」

 

「…そりゃ、わたしもそう思うけど」

 

「だろ?オマケにイケメンだし、家事もできる。しかも何だかんだ言って、お互いの相性も良い…アレ?結婚しない理由ないんじゃね?」

 

「言われてみれば確かにないな。決定じゃないか」

 

「だから、そういう問題じゃないわよ!」

 

「「何で?」」

 

カレンの火が出るような怒声に彰とC.C.の疑問符の声が刺さったことで、カレンは顔を赤くし、モジモジし出した。

 

「…言わなきゃだめ?」

 

「そりゃな」

 

「言ってみろ。理由次第なら、結婚反対に回っても良い」

 

彰とC.C.の意見に赤かった顔を更に赤くしたカレンはボソボソと呟く。

 

「…その…ルルーシュがどうとかじゃなくて…やっぱり結婚とか、プロポーズって言うのは、ちゃんと付き合って良い雰囲気の時に真剣に言ってもらいたいなって言うのがあって…その…」

 

顔を真っ赤にして、指をツンツンさせながら喋るカレンを見て、つまらないものを見たような顔をした二人は言った。

 

「「おい、ブラックコーヒー持ってこい」」

 

「あんたらが言えって言ったんでしょ!!?」

 

予想外の言葉にカレンは怒鳴りつけるが、それを聞いても二人はやってられないと言わんばかりの態度を続ける。

 

「たく、どんだけ大層な理由かと思ったらそんな理由かよ…あーあ、やってらんねぇ。もうお前ら結婚しろよ。それで恋のABCをやり尽くせ。そうすれば、そんな寝言は言えなくなる」

 

「これだから処女娘は面倒臭いな。良かったじゃないか、童貞ボウヤと処女娘の組み合わせだ。これ以上ないマッチングだぞ。幸せになれるさ」

 

「うるさい!だからあんたらみたいな爛れた恋愛しか経験してなさそうな奴等に言いたくなかったのよ!ええ、そうよ!私は今までちゃんと異性と付き合ったこともありませんよ!恋のABCどころかお兄ちゃんとか以外の人と手を繋いだことだってほとんどありませんよ!何か文句ある!?」

 

「文句しかねぇよ。お前そんなんだから映画でせっかくルルーシュと再会したのに抱きつくだけで進展がなかったんだよ。既にキスまでしてるんだから、出会い頭のキスくらいやれよ、このヘタレ」

 

「全くだ。何が「何を言えば良いか分からない」だ。幾らでも喋ることがあるだろう。好きだと言えば良い。生きてて嬉しいと叫べば良い。私も付いていくと頼めば良い。そんなだから、ほとんどルルーシュと二人で喋るシーンがないんだよ」

 

「それ原作の私だから!こっちの私のせいにすんじゃないわよ!それに、シャーリーよりは頑張ったじゃない!」

 

「お前、シャーリーに謝れよ!シャーリーだって頑張ったんだからな!そりゃ、折角生存√行ったのにほとんど出番なかったけどさ!アイツだって本当はもっと出番欲しかったんだよ!次回作あったら絶対もう少し扱い良くなるって俺は信じてるから!」

 

「そもそもお前とシャーリーを比べるな。お前はシャーリーと違ってチャンスあったんだからな?出番多かったんだからな?」

 

三人が微妙どころか、ある意味世界まで超えて趣旨から外れた会話で盛り上がっていると呆れたようにルルーシュが近付いてくる。

 

「何を喋っているんだ…花嫁の君が話し合いに参加しなくてどうする?ほら、とりあえず参加者のリストを作ってみたから確認してくれ」

 

「そして、あんたは何でどんどん進んでんのよ!!私は結婚に同意すらしてないわよ!」

 

「今更何を言っているんだ…仁美さんは先程来たナナリーと既にお前が結婚式で着る服の話を進めてるぞ?」

 

「カレン。ちょっとこっちに来て。採寸を測りたいから」

 

「カレンさん。いえ、カレン姉様。こんなに早くカレン姉様とお呼びできる日が来て嬉しいです」

 

何時の間にかこちらの結婚勢力に合流し、自分とルルーシュが結婚するということをあっという間に信じているナナリーを見てカレンは慌てて訂正するために近寄る。

 

「ナナリーまで!?違うのよ!これは全部周りのボケどもの影響なの!お願いだから!お願いだから私の話を聞いてー!!!」

 

それから1時間。カレンによる必死の誤解を解く説明が行われた。結果として誤解は解けたが、ナナリーと自分の母親の若干つまらなさそうな顔は全力で見なかったことにしたのは余談である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先程からニュースを見てるが…今のところクロヴィスが殺されたというニュースは放送されていないな。まあ、時間の問題だろうが」

 

チェスの駒を弄りながら淡々と話を進めていくルルーシュを見て、彰とカレンは思った。

 

((こいつ…さっきまでのポンコツ具合を全力で無かったことにしてやがる))

 

誤解が解け、全員でご飯を食べた後、ルルーシュ達四人はルルーシュの部屋に集まった。

 

少し前の壊れっぷりを完全に無かったことにしているルルーシュに白い目を向けるカレンと彰だがその意味に気付きながらもルルーシュは全力で無視を決め込んだ。

 

「計画の開始は俺が高校卒業を待つつもりだったが…ギアスという力を得た以上、待つ意味はない。俺は動き出す。お前はどうする?彰」

 

「俺か?」

 

声をかけられた事を以外に感じながら、彰は返事を返す。

 

「ああ。カレンはどうやら自分のグループを説得して俺を自分たちのリーダーにしたいらしい。あの強奪の手際を見た限りでは、俺が求める水準としては役不足としか言いようがないが、一応カレンの仲間だからな。まあ、カレンが仲間の説得に成功するなら前向きに考えるつもりだ」

 

チラと横目でカレンを見たら何とも微妙な顔をしていた。そりゃあ、コイツの今の言葉を聞いたら思うことはあるだろう。

 

でも、厄介なことにコイツの言うことって真実なんだよなぁ。ただ、オブラートが地平線の彼方に吹き飛んでるだけなんだよなぁ。

 

「で?その仲間の説得とやらは成功しそうなのか?」

 

「な、何とかするわよ!さっき言った時は全然取り合って貰えなかったけど、大丈夫!何とか私が説得するから!」

 

「お前の希望は聞いてねぇよ。まあ、普通に考えたら正体不明の謎の男をリーダーとして迎えようって言うのは無理だわなぁ。まあ、ルルーシュがちゃんと姿を現して結果を見せれば別だが、お前出生どころか顔すら見せる気がないんだろ?」

 

「当然だ。そんな奴等に正体を見せる気は無い。見せるとしても、正体をバラさないという信頼がある少数の者だけだ」

 

「それじゃ、カレンが成功する可能性は低いな。無理ならお前どうすんだ?」

 

「それなら俺が適当なグループを見つけてテロを始めるだけだ。最悪、その適当なグループのリーダーにギアスをかけて俺を信頼させれば良い。俺が結果を見せ続ければ他の奴らも俺を認めざるを得ないだろう。その後、勢力を伸ばしてカレンのグループを吸収すればカレンを仲間にすることも容易い」

 

「お前最低だな」

 

「ふん、何とでも言え。そこで…だ。出来ればお前も俺のグループに参加して欲しい。お前の性格は終わっているが、実力は認めている。それに、俺のことを知っている奴が居た方が俺も楽だしな」

 

「お前に言われたくねぇよ、性格破綻者。てか、C.C.はどうすんだ?」

 

「私はルルーシュの共犯者だ。ルルーシュが行くところに行くだけさ」

 

「へぇ、そりゃ、ありがたい。あんたは俺たちが持ってる最大のアドバンテージだしな。ルルーシュの側に居てくれたら俺も助かる」

 

「まあ、この女に信頼は置けないがな。何せ目的も話さない女だ。それでどうする?お前は俺のグループに参加するのか?しないのか?」

 

ルルーシュの問いかけに彰は若干悩む。そして悩んだ末に一つの結論を出した。

 

「そうだな。俺は」

 

 

 

 




彰「お前って結構乙女だよね」

カレン「うるさい!」

C.C.「言ってあげるな。真実の愛があると信じてるんだろ?永遠の愛を探してるんだろ?」

カレン「だから、うるさいっての!」

ルルーシュ「何の話だ?」

カレン「何でもないわよ!そもそも、あんたのせいだからね!」

ルルーシュ「それは理不尽じゃないか!?」


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36 相手の立場になって考えるって多分人生で一番大切で一番難しい

マジでカレンが書きやすすぎて困る…シャーリー頑張って!多分まだ挽回できるから!


「いやあ付き合ってもらって悪いわね、ルルーシュ!お母さんと小夜子さんが気合入れてご飯作ってくれたから食べなきゃ勿体無いんだけど、他の人と一緒だとこんなにご飯食べられないからさ!本当にあんたが居てくれて助かったわ!」

 

「…それは別に構わんが、お前それ一人で食べるのか?」

 

「そりゃそうでしょ。何?あんたも食べたいの?あげようか?」

 

「…そうか。いや、俺は自分のがある」

 

場所はアッシュフォード学園屋上。ルルーシュとカレンは二人で昼食を食べていた。

 

ちなみに言っておくと、これはかなり珍しい光景である。基本的に、この二人は学園ではあまり喋らないし、関わらないのだ。

 

二人に言わせれば『帰ったら会う奴と学園で喋る意味が分からない』ということらしい。全国のカップルに喧嘩を売っている発言である。

 

他の人から見れば『本当に付き合ってるのか?』という疑問が浮かぶのだが、たまに喋ったら意気投合してるし、一緒に帰る(偶然帰る時間が一緒になっただけ)姿が目撃されているので、少しドライな恋人関係なのだなと認識されているのだが、本人たちはそんな周囲からの目線に全く気付いていない。

 

ただ、今日は仁美さんと小夜子さんがカレンのために大量の昼飯を作ってくれたので学園でのお嬢様モードのカレンとしては、そんな大量の昼飯を食べるわけにも行かず、ルルーシュに昼飯を一緒に食べようと誘ったのだ。

 

その件に関してはルルーシュも問題なかったのだが、大量の昼飯が瞬く間にカレンに食されているのを見ると、カレンを病弱なお嬢様と見てファンクラブまで作っている連中に同情を禁じ得ない。本当に何でコイツ今まで周りの人を騙せてるんだ?

 

「てかさ、あんた良かったの?」

 

「何がだ?」

 

「彰を仲間に引き入れなかったことよ。あんなにあっさり了承しちゃってさ」

 

「ああ、そのことか」

 

カレンの言葉にルルーシュは昨夜のことを思い出す。彰はルルーシュからの誘いを断って、解放戦線に残ることを選んだのだ。カレンとしてはそれも驚きだったのだが、ルルーシュがあっさり引き下がったことの方が余計に衝撃だった。

 

「予想はしてたからな。それに現状、アイツが絶対に必要という訳でもない。もちろん、将来的には俺の下についてもらうがな」

 

「どうやって?」

 

「日本解放戦戦線を吸収すれば良い。あそこには藤堂とかいう奴もいるらしいしな。戦力を整えるにはどの道必要だ」

 

(…相変わらずの自信家振りね、コイツ…)

 

まだテロを始めてもいない癖に、日本のレジスタンスの希望の星である奇跡の藤堂を従わせる発言をするルルーシュに、カレンは半ば呆れてしまう。しかし、新宿の戦いを見たカレンからすれば、もしかしたらコイツならやれるかもしれないとも思ってしまう。

 

しかし、そこでカレンにある疑問が浮かぶ。

 

「相変わらずの自信家振りね…そういえば、一つ聞いて良い?」

 

「何だ?」

 

「将来的にあんた何がしたいの?」

 

「決まっている。ブリタニアを壊す」

 

「それは知ってる。私が知りたいのはその先よ。壊して終わりじゃないでしょ?」

 

「…まあ、一応考えてはいるが」

 

「何を?」

 

「…他の奴には言うなよ。当然彰にもな」

 

「わかったわ。で?何?」

 

「…優しい世界だ」

 

「は?」

 

ルルーシュの口から突然出たロマンチックな言葉にカレンから疑問符の声が飛ぶが、構わずルルーシュは続ける。

 

「優しい世界だよ。ナナリーのような身体的弱者も…精神的弱者も…皆が安心して過ごせる世界だ。戦争もなく、平和な世界だ。俺はこの世界を…そういう世界にしたいと思ってる」

 

「…ぷっ」

 

「…おい」

 

聞かれたから真面目に答えたことを笑われたルルーシュは青筋を浮かべる。ただカレンも悪いと思ったのか笑いながら謝る。

 

「あはは。ごめん、ごめん。まさか、あんたの口からそんなロマンチストみたいなセリフが出るとは思わなかったから」

 

「ふん、それは、悪かったな」

 

「べつに良いと思うわよ?それに私にとってもその方が都合が良いし」

 

「どういう意味だ?」

 

「考えてたのよ。どうやったらあんたと彰に恩を返せるか。ブリタニアを潰すのは日本解放を目指す私の夢とほとんど同じだからカウントできないし、どうしよっかなって。でも、今の話で思いついたわ。私も優しい世界を作るのに協力するわ!その世界なら彰が嫌う差別がない世界も作れるし一石二鳥!」

 

「おい、話の流れが急すぎる「はいはい、あんたの話は聞いてないのよ」ぐむ」

 

突然のカレンの宣言に抗議するように開かれたルルーシュの口に、カレンが無理やりご飯を詰め込んで黙らせる。

 

「癪だけど、あんたがどっかで私を信じきれてないのはわかってんのよ。そんなあんたと約束しても意味ないからあんたとは約束しない。だから、私は私自身に勝手に約束させてもらうわ」

 

そう言うとカレンは真剣な眼差しで告げる。

 

「この先何があるか分からないけど、私はあんたの夢に協力する。あんたの側に居続ける。それが私が私に誓った誓いよ」

 

突然のカレンの発言にルルーシュは呆然とする。そんなルルーシュの顔を見て流石に恥ずかしくなったのか、そっぽを向いてカレンは続ける。

 

「それに、私と彰くらいしかあんたの事情を知らないから。彰と違って私は暇だし。まあ、私はあんたたちほど頭良くないから、何処まで役に立つかは保証しないけどね」

 

その姿を見てルルーシュはため息を吐く。

 

「物好きなことだな。まあ、自分で自分に決めた誓いなら俺が何か言う資格もない。勝手にすれば良いさ。それより、そろそろ昼休みが終わるぞ。早くご飯を食べろ」

 

「え!?ヤバ!?もう、こんな時間!?ちょっと待って急いで食べるから!」

 

急いでご飯を口に入れるカレンを目に入れながら、ルルーシュは小さな声で呟いた。

 

「……ありがとう」

 

とても小さい消え入るようなルルーシュの声が届くと、カレンは驚いた顔をした後、ニンマリと笑った。

 

「何?何?何て言ったの、ルルーシュ?もしかして嬉しかった?もしかして照れちゃった?大きな声でもう一度言ってごらんなさい?」

 

「何も言っていない!そんなこと、どうでも良いから早くご飯を食べろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、暇だ。仙波さん、アダルト雑誌持ってきてくれません?」

 

「…お前、そんなこと言ってるから独房に閉じ込められていると自覚してるか?」

 

「そりゃ、もちろん。海よりも深く。山よりも高く」

 

「…はぁ」

 

彰はルルーシュの家から帰った翌日、独断で戦闘に参加したことで独房に1週間閉じ込められることになった。

 

「卜部の奴も怒っておったぞ。お前がランスロットの実戦データの取得を全部卜部の手柄にしたことをな」

 

「しょーがないでしょう。卜部さんが何の手柄もなかったら俺以上に責められる。そうしたら、藤堂さん側の奴等で庇う奴が出てくる。そんな面倒ごとになるのはごめんですよ」

 

「そこまで分かってるのなら、もう少し自重して欲しいのだがな。では、独房に閉じ込めた中佐に思うところはないと?」

 

「あるわけないじゃないですか。むしろ、これくらいやらないと朝比奈さん辺りは納得しないでしょ」

 

「そうか。なら、何故朝比奈がそんなに怒るかわかるか?」

 

「そりゃ、朝比奈さんみたいなタイプなら軍規には厳しいでしょ」

 

「…分かっとるようで実は分かっとらんな」

 

頭が痛いと言いたげにコメカミを抑えた仙波は、ため息を吐いて続ける。

 

「まあ良い。ところで、知っとるか?お前がクロヴィスを殺したから厄介なことになっとる」

 

「俺じゃないですけどね。知ってますよ。こんだけ周りが騒げば嫌でも耳に入ります」

 

「その犯人と勘違いされた奴が捕まった。枢木首相の息子の枢木スザクらしい」

 

「へぇ、人身御供ですか」

 

「向こうも立場があるだろうからな。公開処刑が行われるらしい。助けるかどうかで戦線でも軍議が起こった。どうなったか知りたいか?」

 

ニヤリと笑いながら仙波さんは言うが、彰としては話など聞かなくてもどうなったか分かる。

 

「いいです。結論はわかりますし。どうせ、草壁さんが行動を主張したけど、藤堂さんがどう考えても罠だと反対。それを聞いた片瀬さんが反対に決定。そんなところでしょ?」

 

まあ、藤堂さんの言う通り罠だろうけど。そんな罠に飛び込むなど余程の馬鹿か天才かのどちらかだ。

 

「可愛げのない奴め…戦線の決定にお前はどう思う?」

 

「んー、別に良いと思いますけどね。確かに助けたら宣伝にはなりますけど、それで終わりです。進んで名誉ブリタニア人になった奴が、助けられたからってテロ組織に入るとも思いませんし」

 

「処刑は明日だ…明日まで独房のお前では何もできんが、個人としては残念だな」

 

「何がです?」

 

「お前が自由なら…何としてでも助けるだろうと思ってな。人に罪を押し付けて黙ってられる奴でもあるまい。この罠の中でどうやって枢木スザクを助けるのか見てみたかった」

 

「そりゃ買い被りですよ。ただまあ…助けるのは見られるかもしれませんが」

 

「…それは別の組織が枢木スザクを助けるということか?この状況で?」

 

「さて。それはわかりませんがね。ただの勘ですよ」

 

枢木スザクの友達のアイツが、自分のせいで友達が死ぬのを見てるとも思えん。さて…明らかに罠の中でアイツはどうするのかね。

 

 




彰くん、独房のためスザク君救出に参加できず


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37 結婚してるからって仲が良いと思うのは幻想だよ

スザク君救出はスキップ!


「桐島出ろ。期限の1週間だ」

 

「やっとっすか。やれやれ、肩が凝ってしょうがない」

 

藤堂に言われて牢から出された彰は疲れたと言わんばかりに肩を回す。

 

その姿を見た藤堂は若干申し訳なさそうに謝る。

 

「すまなかったな。迷惑をかけた。ランスロットの情報はお前が持ってきたのだと分かってはいたのだが、こうでもしないと周りに示しがつかなくてな。それに、できればスザク君の件はお前にも意見を聞きたかったのだが」

 

「俺が勝手にしたことなんで気にしなさんな。スザクの件は間違ってないと思いますよ?助けたところで、絶対に解放戦線に参加はしない。それどころか処刑されにブリタニアに戻る可能性が高い。まあ、それが今の法にとっては『正義』ですからねぇ。そして、あいつはその『正義』に従う。アイツを殺すためにでっち上げられた茶番だとしてもね」

 

「むう…」

 

藤堂は複雑そうな顔をしている。幼少期のスザクと過去を知る身としては思うところもあるのだろう。彰としてはどうでも良いが。

 

それよりも、彰としては先に確認をしておきたいことがある。

 

「ところで、その処刑の時間は?晒し者にしたいなら、テレビ放送するでしょ?」

 

「あ、ああ。丁度始まるところだと思うが」

 

「そうっすか。じゃあ、行きましょうか」

 

そう言うと彰は藤堂と移動しながらテレビのある部屋に向かう。着いた後、テレビを見ながら携帯を見ると、カレンからあり得ない数の電話がかかってきていた。ルルーシュはそれで俺の状況が何となく分かったので諦めたのだろう。

 

とりあえずカレンに電話をしようとすると、テレビの映像に画面を被った謎の不審人物が現れた。

 

『私は…ゼロ』

 

不審人物はそう言うと、そのままジェレミアにスザクを渡せと言い出した。同時にナイトメアに囲まれるが、見えていないかのように話を続けている。

 

突然の展開だった。しかし、横の藤堂さんと前の方にいた卜部さんと仙波さんと千葉さんは『おい、こいつ誰だよ。お前知ってんだろ?』と言わんばかりのジト目を向けてきたのだが、彰は完全にシカトを決め込んだ。実際知らないし。まあ、予想はつくけど。あんな派手な格好であんな派手なことができるのは、あのシスコン以外に思い当たらない。というか、他にいてたまるか。

 

普通に考えたら、あのゼロとかいう変態の行動と服装は頭がおかしいとしか思えないが、彰は別の感想を抱いた。

 

(手としてはアリだな。とりあえずインパクトは抜群だ。もしこれで仮にスザクを助けて逃走に成功したら、一躍スターになれる。無名から名を売るのにこれ以上の手はない。まあ、このナイトメアに囲まれた状況から逃げられればの話だが)

 

本当にあのシスコンはどうやって逃げるつもりなのだろうかと期待しながら見ていると、アイツはギアスという特殊能力を一回使っただけで、あの絶望的な状況からスザクを救出して無事に逃げ去った。

 

当然見ていた解放戦線の連中はゼロとは誰だと大騒ぎ。問い詰められたくない彰は、騒ぎの隙をついて解放戦線のアジトを抜け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くく…はっはっはっ!」

 

解放戦線のアジトから出て、目的もなくフラついていた彰は先程の光景を思い出して、思わず笑ってしまった。

 

あのシスコンは、確かにギアスという特殊能力を持っている。だが、アイツ以外に誰があんな真似ができる?誰が一つだけ命令を聞かせるだけで、あの軍隊から人を助けられる?

 

(面白い…面白すぎだぜ、あの馬鹿)

 

徐に彰は携帯を取り出す。先程から電話をしているが繋がらないカレンではなく、別の人に電話をかけた。

 

『はい』

 

「よう、ハニー!久し振りだね!元気だった?」

 

ブツっと電話が切れる。普通に考えたら中々に失礼な行為だと思うが、彰は特に何の気持ちも抱かずにもう一度電話をかける。

 

『…はい』

 

「何だよ、ハニー!久し振りの電話なんだからもう少し素直な反応しようぜ?」

 

『物凄く素直な反応をしていますよクソダーリン。お久しぶりですね。あなたの声を久し振りに聞いて私は大変不快です』

 

敬語なのにそこはかとなく悪意を感じる気がしたが、彰は気のせいだと思うことにした。

 

「相変わらずだな。まあ良い、今日は報告することがあったから電話したんだ」

 

『事後報告ですか、ゼロ?』

 

「ゼロは俺じゃねぇよ。そろそろ動き出す…お前くらいには言っとこうと思ってな、ハニー」

 

『あなたがそう言うなら、そう言うことにしときましょう、クソダーリン。しかし、この段階で動くとなると、ゼロという男の影響を考えざるを得ませんが問題ありませんか?』

 

「ああ。それもあるな」

 

『一般的に言えば、ゼロの行動による周りへの影響を見てから動くべきです。あなたがそれを分かっていないはずがありません。それなのに、動く意味があるのですか?日本解放戦線の改革もできていない現状で?』

 

相変わらず痛いところを突いてくる女である。

 

「それを言われると痛いが…状況が許してくれんのでな。クロヴィスが死んだ。ゼロというテロリストも現れた。ここまで大ごとになってブリタニアが動かないわけがない」

 

『だとしても、こちらが手を差し伸べることはできませんよ。片瀬少将は日本人至上主義です。そんな彼が私たちに助力を請うことはないでしょうし、日本解放しか考えていない組織と手を組むメリットもありません』

 

「ああ。そうだな。だから待ってろ。そのうち、この状況が変わるさ」

 

『そうですか。ではまた状況が変わった時に』

「いや、良いのか?」

 

『何がですか?』

 

「アイツらのことだよ。お前なら心配してない訳がないと思ったんだが」

 

『はあ。そんなことですか』

 

何となくだが、呆れている感じが伝わってくる。

 

『あなたと違って定期的に連絡をしていますから、あなたに聞く必要はありません。それに、私はあなたのことを何時もふざけてばかりのやる気のない最低のゴミで、さっさと離婚届に判を押して死んでしまえと思っていますが』

 

散々な言われようである。

 

『…信頼はしています。だから、あなたが守ってくれると信じているだけですよ』

 

「…あっそ」

そして、どちらともなく電話を切った。相変わらずの口が悪い、どうにも苦手な女である。本当に結婚相手の選択を間違った。顔だけは美人なんだけどなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう…」

 

生理的に受け付けないゴミ虫野郎との電話を終えて、ため息を吐く。

 

しかし、アレが動くとなるとブリタニアも変わらざるを得ないだろう。そうなると距離的に離れているこちらも無傷という訳にもいくまい。

 

そう考えていると、近くにいた二人の男のうち一人がニヤニヤ笑いながら喋り出す。

 

「久し振りの旦那様とのお話だってのに、随分と難しい顔してるじゃねぇか。レイラ・桐島しょうぐってギャァア!!??」

 

喋っている時に額にボールペンが刺さった男を見て、ボールペンを投げたレイラはにこやかに告げる。

 

「あら、ついていますね。アシュレイ中尉。もう一つ呼吸できる場所を増やしてあげようと思ったのに、額に当たるなんて」

 

「何しやがんだこのアマァ!」

 

「最大限の譲歩はしたつもりなのですが?次に私のフルネームを呼んだら眼球抉りとりますよ?」

 

とてつもない笑顔でとんでもないことを言うレイラに、アシュレイは本気を感じ取り、口を噤んだ。

 

静かになったのを見たレイラはこほんと咳払いをして本題に入る。

 

「では、ひろし中佐。軍議を開く準備をして欲しいのですが」

 

「いや、あの私ひろしじゃないんですけど…」

 

先の惨状を見ていたので、微妙に遠慮しながら口を開いたクラウス中佐の言葉を無視してレイラは続ける。

 

「分かってますよ、ひろし中佐。この段階で軍議は必要ないということですよね。ですが、早くしないと手遅れになる可能性があるのです」

 

「いや、だから私はひろしじゃなくて」

 

「いや、ひろしのおっさんの言う通りだぜ」

 

「あの…はい、ひろしで良いです」

 

アシュレイまで自分をひろし呼びしたことでクラウスは諦めた。泣いて良いと思う。

 

「ブリタニアが動いてからでも俺たちが動く必要はねぇ…そもそも、アイツがブリタニアを揺さぶれるのかも微妙だしな」

 

アシュレイの言葉にレイラはふっと笑う。

 

「では、賭けましょうか?アシュレイ」

 

「へぇ、あんたが言うとは珍しいねぇ…何をかけるんだ?」

 

レイラの笑みを受けてアシュレイも笑う。おおよそ、賭けの内容が分かったからだ。

 

「そうですね…それでは

 

 

 

 

 

 

次に日本に登る太陽を」

 

 

 

 




気が向いたら、この二人が何で結婚したのかについてのエピソード書きます


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38 どんな1日でも乙女にとっては大事な1日

レイラ「私たちが何故結婚したのかですか」

彰「愛かな」

レイラ「死にたいんですか?」

彰「あ、はい、すいません」


「今日こそ…今日こそはこれをルルに渡さないと…!」

 

2枚分のチケットを手にとって、鬼気迫る迫力でルルーシュがいるゲストハウスの周りをウロウロするシャーリー。ぶっちゃけ、周りから見ると不審者である。

(大丈夫…大丈夫!偶然チケットが手に入って、偶然それが2枚しかなくて、偶然一緒に行くはずだった人が来れなくなって、偶然ルル以外の人の予定が合わなくなったから誘うだけだよ。だから別にデートじゃないから、カレンに気兼ねしなくていいし、ルルも浮気とかにはならない!完璧!よし、後は誘うだけ!)

 

そんなことを思いながら一週間以上前からルルーシュにチケットを渡せていないのが現状だったりする。良い加減渡さないとルルーシュにも別の予定ができてしまう可能性が高いので渡さないといけないのだが

 

「…いや、うん!やっぱり、明日の方が良いかも!」

 

なかなか踏ん切りがつかない女なのである。そんなシャーリーに

 

「何がだ?」

 

後ろから声がかかり、ギャァアと女の子から聞こえたくない声があがる。ビックリして振り向くと、そこにはシャーリーの良く知る男がいた。

 

「な、何だ彰か…あー、ビックリした」

 

「俺の方がビックリしたわ。何やってんのお前?」

 

「えーと…あー、うん。別の場所で話しても良い?」

 

何と言われると説明するのが恥ずかしいのだが、何でもないと言うには自分の行動に無理があることを重々承知していたシャーリーは、場所を移動してからかいつまんだ理由を彰に話す。

 

「なるほどな。要するにアレだろ?逆NTRしたいんだろ?」

 

「違うから!そんなんじゃないから!」

 

「別に良いと思うぞ」

 

「しかも肯定されちゃった!彰はカレンと仲が良いんだから止めるべきじゃないの!?」

 

「それは関係ないだろ。恋愛の世界は弱肉強食。奪われた方が負けだと思ってる」

 

「やっぱり最低だよこの人!」

 

応援してやろうと言うのにうるさい奴だ。というか、ルルーシュとカレンはそう言う関係じゃない。本当にこんな高校生があり得るのかと思うくらいに、アイツらは一緒に居ても全く甘い空気を発さない。

 

カレンは分かるよ?兄の命の恩人としてしか見ないように知らないうちにフィルターをかけてるのかもしれない。

 

でもルルーシュ、お前はおかしいだろ。何であんな可愛くてスタイルも良い娘が側にいるのにアイツ何もしないんだよ。どうなってんだよアイツの童貞力。ヘタレにも程があるわ。

 

その現実を思い出した彰はため息を吐いて言う。

 

「落ち着け。とりあえずは…だ。俺には何もできんがせめてこれをやろう」

 

「何これ?」

 

彰から差し出された液体が入った瓶を見てシャーリーは疑問符を浮かべる。

 

「媚薬だ。これをアイツに呑ませて襲わせろ。その既成事実があれば、アイツは根が真面目だから責任は取ってくれる」

 

「いらないよ!思いっきり犯罪じゃない!」

 

手にあった瓶を思いっきり地面に投げつけて、顔を真っ赤にしたシャーリーは怒鳴り散らす。良い案だと思うのだが。

 

「しかしな。こうでもしないとお前がアイツを落とすのは難しいぞ」

 

「どんだけ私って魅力ないの!?え!?そんなに私ってダメなの!?」

 

「違うな。問題はアイツだ。お前、アイツの童貞力なめんなよ。若干痴女入ってたり、男との距離感がおかしい女がメッチャ近づいてきても反応しないんだぞ」

 

「誰よその女の人!?」

 

「女が目の前で裸ワイシャツしてたり、風呂上がりの下着状態でウロついてても邪な感情を浮かべず、冷静に注意する男だぞ。お前、こんなの正攻法だと、どうしようもないだろ」

 

「だから誰なの、その女の人!?」

 

本当に考えてみるとアイツの男としての機能って終わってる気がする。マジでイケメンの無駄遣いだな、アイツ。

 

そんなことを考えていると、シャーリーが顔を赤くしたまま移動しだした。

 

ついていく必要もないのだが、彰は何となくついていく。

 

「おい、どこ行くんだ?」

 

「銀行!もう、彰なんかに話するんじゃなかった!何の参考にもならないんだから!」

 

「的確な助言だと思うがな。んじゃ、お前はどうしたいんだよ?」

 

「責任とか取ってもらいたいんじゃなくて、私は一緒にいたいだけなの!」

 

「既に結構一緒にいるじゃないか」

 

「そ、それはそうなんだけど、何というかロマンチックな雰囲気になりたいというか…」

 

「アイツにそれを求めるのは難しいと思うがな。ちなみに、どんなロケーションがベストなんだよ」

 

「色々あるけど…例えば私がピンチになった時に、サッとルルが現れて助けてくれる…とか」

 

「お前ドラマの見過ぎだぞ」

 

「別に良いの!夢なんだから!そもそもピンチになるなんて日常生活を送ってればそうそうないんだから、夢だってことくらいわかって…」

 

そう言いながらシャーリーと彰が銀行のドアを開けると、そこには

 

「てめえら、手を上げろ!抵抗すると撃つ!」

 

日本人の銀行強盗が銃を向けて立っていた。

 

突然の展開にシャーリーの思考が停止する中、彰は呟いた。

 

「おい、良かったな。お待ちかねの展開だぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふう…久しぶりの外か」

 

濡れ衣が晴れ、久しぶりの日光を眩しく感じているスザクに声がかかる。

 

「よう、晴れて無罪放免となって外に出た気分はどうだ?枢木スザク」

 

「君は…誰だい?」

 

声をかけたのはリョウだった。その男のそばにいるアヤノとユキヤは、その男を呆れたように見ていた。

 

しかし、リョウを知らないスザクからすれば知らない男からいきなり声をかけられたのだから自然と警戒心は起こる。それを知りながら、リョウはニヤついた顔のまま話をする。

 

「名乗るほどの者じゃねえさ。お前ほど有名人でもないしな」

 

「そうか…僕に何の用だい?」

 

「別に用はねえさ。ただ、母国を裏切ってまで働いたのに、殺されかけた馬鹿な野郎の面を見てみたいと思ってな」

 

リョウの言葉に流石のスザクも顔を顰める。

 

そんな状況に隣のアヤノはため息を吐いた。

 

「全く…こんなことして何か意味があるのか?私たちは買い出しに来ただけだぞ?」

 

「いいじゃねぇか。買い出しに来たら、こんな有名人と遭遇したんだ。興味が湧くのは当然だろ?なあ、ユキヤ」

 

「まあ、否定はしないね」

 

妙な三人組だなとスザクは思った。普通、自分のような悪目立ちをした人物と関わろうという日本人は滅多にいない。他のブリタニア人の反発が怖いからだ。

 

そんなことをスザクが考えていると、四人に走って息を切らした桃色の髪の女の子が話しかけてきた。

 

「あの、すいません。た、助けてください!」

 

「え、やだよ、面倒くさい」

 

話しかけられたユキヤは面倒なので普通に断る。動きたくない精神の塊のような男である。

 

「そ、そこをなんとか!私、追われてるんです!お金なら払いますから!」

 

「い、いや、お金なんて別に良いですけど一体誰に「お前は黙ってろ!おい、幾らだ?」」

 

助けを求める女の子に事情を聞こうとするスザクに割り込んで金の匂いを嗅ぎつけたリョウが話し出す。金儲けには目がない彼には、桃色の女の子は最早金にしか見えない。

 

「助けてくれたら言い値で払います!」

 

「よっしゃ、乗った!おい、アヤノ!バイクの後ろに乗せてやれ!」

 

「おい、リョウ!本気か?確かに金は持ってそうな感じではあるが」

 

「たりめーだろ。こんな儲け話はそうそうねぇ」

 

そう言ったリョウは笑いながら移動しようとしたので、ある程度納得したユキヤとアヤノもそれぞれのバイクを準備するが、それを見た桃色の髪の女の子はスザクを指差して言う。

 

「あ、あの、すいませんが、彼も連れて行っても良いですか?」

 

「あん?まあ、客の要望だからな。アイツが良いって言えば俺は構わねえが、お前どーすんだ?」

 

「僕!?ま、まあ、構わないけど」

 

「決まりだな。俺の後ろに乗れ。良し、行くぜ!しっかり掴まってな!」

 

そうして全速力でその場から、離れた一同は離れた場所で少し休憩する。

 

「皆さんありがとうございます!中々一人で行動させてくれなくて困ってたんです」

 

「良いってことよ!金のためだからな!」

 

ガハハと笑って言うリョウを見てスザクはため息を吐く。

 

そんなスザクを無視して、リョウは顔をニヤつかせながらアヤノとユキヤの肩を掴み小声で会話を開始する。

 

「なあ、おい、もうコレこのまま誘拐でもすればもっと金が入るんじゃねぇか?」

 

「私もそう思った」

 

「だろ?くくく…こりゃあ、ボロ儲けできるぜ」

 

予想外の収入になりそうな気配にリョウとアヤノの頬が緩む。しかし、ユキヤは自身のスマホを見ながら冷静に告げる。

 

「誘拐はリスクが高いと思うけどね。ハイリスクハイリターンだよ」

 

「何でだよユキヤ?」

 

「ほら、これ」

 

ユキヤが差し出したスマホの画面には、桃色の髪の女の子が写り、ユーフェミア・リ・ブリタニアと書かれていた。

 

その事実にリョウとアヤノは大量に冷や汗を出し、小声で会話を開始する。

 

(リョ、リョウ?あの女の子は、この写真の皇女様に似ていないか?)

 

(馬鹿言うんじゃねぇよ!だって、お前これ皇女様だぞ!皇女様がこんな所にいるわけがねぇよ!)

 

そんなリョウとアヤノの逃避も虚しく、現実は淡々と進んでいく。

 

桃色の髪の女の子は、ニコッと笑いながら自己紹介をする。

 

「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私はユーフェミアです。ユフィと呼んでください」

 

「へぇ、きれいな名前なんですね」

 

桃色の髪の女の子、もといユフィの口から放たれた衝撃の言葉にスザクは返事を返したが、リョウとアヤノは言葉を無くす。同時に思った。

 

((だ、第3皇女かよーーーーーーーーーーー!!!!))




どう考えても、この流れだとゼロレクイエムならなそうだから彰とこっちのカレンを入れてifでやろうと思ったんですけど…ダメなんだよなぁ…どう考えても、彰がいる段階でシュナイゼルに騙されないし、こっちのカレンがルルーシュの嘘に騙されるわけないんだよなぁ…むしろ

カレン「ずっと側にいるって言ったでしょうが!嫌だって言うならあんたがここで私を撃て!ルルーシュ!」

くらい言いそうなんだよなぁ…


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39 混ぜるな危険って奴らが混ざることはたまにある

コードギアス のアプリの発売延期か…残念ですが、より良いアプリになって出てくることを期待します!


シャーリーは戸惑っていた。人生で初めて銀行強盗に人質にされたというのももちろんある。だが、それ以上に

 

「いやー、銀行強盗か。まあ、下手だけどそれはそれで良いか。しかし、ルルーシュは何処から助けにくんのかね。主人公らしくスマートに屋根から侵入とかやんのかな」

 

人質とは思えないほどリラックスしている自分の友人の反応に戸惑っていた。

 

おかしいよね?何で目の前で銃を持った人の前で、胡坐をかいて座ってられるの?どうしてあくびをしながらのんきなことを言ってられるの?

 

「それじゃあ、ルルーシュが助けに来るまでゆっくりしてるか。あ、昨日買ったガムが残ってた。シャーリーはガム食べる?」

 

「食べるわけないでしょ!?彰はこの状況分かってるの!?」

 

「絶賛、銀行強盗の人質になってるな」

 

「分かってるんだったら大人しくしてよ!目を付けられちゃうでしょ!?」

 

「静かな声で喋れよシャーリー。聞こえちゃうだろ」

 

「絶対に注意されたくない人に絶対にされたくない注意されちゃった!?」

 

そんな風に喋っていれば目立つので、当然のように怒った銀行強盗が寄ってくる。

 

「おい、お前ら!うるさいぞ!」

 

「ひっ!?ご、ごめんなさい!」

 

「すいませんねぇ、この子には俺が良く言っとくんで」

 

どの口が言うんだとシャーリーは思ったが、この状況では流石に口には出せない。

 

シャーリーの思いを他所に、この男はとんでもないことを言い出した。彰はシャーリーの肩に手を置いて続ける。

 

「でも、あんたらこの子には敬意を払った方が良いと思うぜ?」

 

「何だと?」

 

「え?」

 

「この子の彼氏は、日本最強のテロ組織である日本解放戦線の知り合いだよ?」

 

「な、何だとぉ!?」

 

銀行強盗が彰の言葉に衝撃を受けるが、シャーリーもまた衝撃を受けていた。

 

いや、ルルはそんな人と知り合いじゃないと思うんですけど!?聞いたことないんですけど!?

 

二人の驚き顔を見ながら彰はニヤリと笑う。

 

「つまりだ。お前らの銀行強盗が上手くいくかはこの娘次第って訳だ。この娘の身に何かあればお前らは色々終わるぞ。命もな」

 

「そ、そんな凄い人と知り合いだったのかこの女…」

 

違うからね!?この人の話を真剣に受け止めたらダメだからね!?

 

シャーリーはそんなことを考えているが口に出してはいないので、当然ながら聞こえるわけがない。

 

そんな折に、他の銀行強盗が慌ててこちらに近付いてきた。

 

「か、頭!大変です!」

 

「ど、どうした!?何事だ!」

 

「ぐ、軍の奴らが近付いてます!こんなに動きが早いなんて!」

 

「もう来たのか!?ま、まさか、これもこの娘の策略なのか!?な、何て娘だ!この歳で軍の奴らとも人脈を築いているなんて」

 

銀行強盗が畏怖の念を込めて自分を見ているのを見て、シャーリーは思った。

 

違います!偶然です!私は一般人です!

 

話を聞いていた彰も真剣な顔をして、静かに言葉を発する。

 

「何?もう軍の奴らが来たのか?マズイな…このままじゃ、ルルーシュの出番がなくなる」

 

もう黙っててくれないかな、この人!ルルの出番なんてどうでも良いから!

 

「クソ、俺たちはもう終わりだ!軍が来るだけじゃなくて、こんなテロリストと軍とネットワークを築く娘を相手にして勝てるわけねぇ…」

 

テロリスト達は勝手な誤解をして勝手に諦めていく。

 

あれ?何かこれ解決するんじゃない?何かメチャクチャだけど、これ解決するんじゃない?

 

シャーリーがそんな淡い希望を感じている中で彰はスッと立ち上がった。

 

「待て、お前ら!諦めるな!お前らにはまだ俺たち人質が残ってるだろ!」

 

この人一体何言ってるの!?

 

シャーリーは驚愕したが、諦めかけていたテロリストは彰の言葉に希望を感じて、俯いていた顔を上げる。

 

「軍の奴らが来るにはまだ時間がある。既に集めていた現金を持ってすぐに移動すれば成功する可能性はある」

 

「で、でもよ、軍の奴らは容赦がねぇ…もし、容赦なく発砲されたらどうすんだよ」

 

「そのために俺たち人質がいるんだろ?人質を盾にすればそう簡単には攻撃しねぇよ」

 

もう人質じゃないよ、この人!犯人だよ!むしろ主犯だよ!

 

「あんたは何も分かってねぇ!軍は人質ごと撃つに決まってる!それにそんな沢山の人質がいれば動きも遅くなるし」

 

「そうだ。だから人質は一人で良い。それが向こうにとって重要な人物なら攻撃してはこない」

 

「でも、そんな人が人質なんて…そ、そうか!」

 

銀行強盗は、ハッと気付いてシャーリーを指差す。

 

「この娘を人質に移動すれば良いんですね!」

 

「え…えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!???」

 

助かると思っていたのに自分だけ人質として連れ去られそうなことに、シャーリーは悲鳴をあげるが、隣の彰はウムと頷く。

 

「そういうことだ。お前らはこの娘を連れて逃げろ。後の人質は、俺が上手くこの場から解放する。お前らのことは軍に言わないように言っておくから…お前らも上手くやれよ!」

 

彰のサムズアップを見て銀行強盗は涙を流してお礼を言う。完全に外道である。

 

「あ、兄貴…ありがとう…ありがとうございます!」

 

「ふっ…良いってことよ。じゃあな」

 

そして、彰は他の人質にもう大丈夫だと言って、解放してから自分も外に出ようとする。その背中を

 

「いや、待ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

 

シャーリーが思い切り引っ張って止める。それを彰は嫌そうな顔をしながら見る。

 

「何?俺もう帰るんだけど」

 

「何で私が悪いみたいなことになってるの!?これ完全に彰が原因だよね!?完全に彰のせいで私だけ逃げられなくなってるよね!?」

 

「大丈夫だよ。お礼は言わなくて。ルルーシュがシャーリーを助ける場面を俺は作っただけだから。シャーリーがお礼を言うことじゃない」

 

「どんな思考回路すれば私がこの場でお礼を言ってくれると思うわけ!?怒ってるのよ!彰のせいで私のピンチが続いてることに怒ってるのよ!」

 

「ヒーローはピンチの時にやってくる。主人公もまた然りだ。安心しろ」

 

「できないよ!?だって、ルルは肝心な時に間に合わない系主人公だもん!肝心な時にポカを踏む系主人公だもん!」

 

「兄貴!俺たちが逃げる準備はできました!兄貴も逃げてください!」

 

「あなた達もバカなんじゃないの!?何でこんな外道の言葉を信じるの!?」

 

そんなシャーリーの言葉も虚しく彰は手を振りながら去ろうとする。このままでは、本当にこの男は自分を置いて去ろうとすると感じたシャーリーは、必死に考えて叫んだ!

 

「ちょ、ちょっと待ってください!あの人が…私の彼氏の知り合いのテロリストです!」

 

彰と銀行強盗の時間が止まる。その後、同時に呟いた。

 

「「…え?」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ど、どうするのこれ!?ね、ねえ、リョウ!これどうすれば良いのコレ!?」

 

「し、知るわけねぇだろ!俺だって分からないことはあるんだよ!できないことがあるんだよ!逃げ出したいこともあるんだよぉ!」

 

自分たちが誘拐しようとした娘が皇女だと知って、リョウ達は慌てふためいていた。

 

「だから私は止めようって言ったんだよ!それをリョウが金で安請け合いするからさぁ!」

 

「俺だけのせいじゃねぇだろ!お前らだって受け入れたじゃん!俺らは三人で一人のチームだろ!」

 

見苦しい責任のなすり付け合いが続いた後に、ラチがあかないことに気付いたリョウは、これからの方針を立て始める。

 

「お、落ち着け。現状俺らは誘拐してねぇ。このまま、さりげなくあの皇女様から離れちまえば良いだけだ」

 

「そ、そうだな…あれ?ユキヤは?」

 

リョウの方針に納得したアヤノはユキヤを探すと、何やら皇女様とお話をしていた。

 

「あ、そういえば貴方達はこれからの予定とかあるんですか?」

 

「そうだね。方針しか決まってないけど、とりあえずあんたを誘拐してコーネリアから身代金を奪おうと「「何を言ってるのかなぁ、ユキヤ君!!」」ふげぶ!」

 

完全にアウトなセリフを言うユキヤの頭を、リョウとアヤノは踏み付ける。

 

「今誘拐とか言った?」

 

「バカだなぁスザククン!誘拐なんて言うわけないだろ!?融解だよ、融解!今やってるゲームの話!コイツゲーマーだからさ!」

 

「そ、そ、そ、そうだ!完全なる勘違いだ!全くゲーマーは現実と非現実の境目が分かってないから困る!」

 

「あ、そうなんですか。私も勘違いしちゃいました」

 

何とか納得してくれたスザクとユフィを見て、リョウとアヤノは胸をなでおろす。

 

倒れたユキヤが変なことを言う前に逃げようと、リョウとアヤノは逃げる準備を開始する。

 

「じゃ、じゃあ、俺らはこの辺で!」

 

「え?一緒に行ってくれないんですか?」

 

「え、ええ!用事を思い出したので!だからお金ももう結構です!」

 

「そうですか…残念です。それじゃあ、お姉様によく分からない日本人に変な場所まで連れて来られたので、向かいに来て欲しいと電話で言わないと」

 

「と、思ったんだけど用事はなかったなぁ!なぁ、アヤノ!」

 

「そ、そういえばそうだった!なくなったんだなリョウ!」

 

「そうなんですか!では、一緒に回りましょう」

 

ユフィのとんでもないセリフに、リョウとアヤノは全身から冷や汗を吐き出しながら、一緒に行くことを了承する。

 

そんな折に、ふとユキヤが何かに気付いた。

 

「ねぇ、リョウアレ見て」

 

「お前は寝てろ!余計なことしか言わねえんだから!」

 

「んじゃ、黙るけど本当に良いの?」

 

一体何なのだとリョウとアヤノはユキヤの指の先を追う。するとそこには、日本解放を目指すテロリストなら知らぬ人はいない日本の希望であり、ユフィの敵でもある

 

((き、奇跡の藤堂が来たーーーー!!??))

 

日本解放戦線の藤堂が歩いてきていた。

 

「あら?あの方珍しいですね。軍人みたいな格好をしています。日本人みたいですけど」

 

「え、そうなんです「スザク君!ちょーっとあっち見て!凄くない!ぐえっ!?ちょ、痛い!」」

 

情報からスザクが藤堂を知っていることを知っていたリョウ達は、即座に行動に移った。

 

まずアヤノがスザクの首を固定して、藤堂の方を見れないようにする。その間にリョウが自分の買い物袋を藤堂の頭から被せることで、スザクが藤堂を認識できないようにする作戦だ。

 

買い物袋に顔を包まれた藤堂は当然疑問の声をあげる。

 

(む?誰だか知らんがこれはなんだ?)

 

(あんたみたいな有名人が顔出してちゃ色々マズイんだよ!良いから被ってろ!それでそのまま通り過ぎろ!そうすれば別にこの袋取って問題ねぇから!)

 

「わあ、それそういう遊びなんですか?」

 

(何で来るの!?こんな遊びあるわけねぇだろ!?お願い来ないで皇女様!300円あげるから!)

 

リョウの思いも虚しく、楽しそうに笑いながらユフィは近付いてくる。アヤノの妨害も限界だったのか、スザクもユフィと一緒に近付いて来る。

 

その様子を見て、脂汗まで出てきたリョウとアヤノは思った。

 

((誰か!誰でも良いから俺(私)たちを助けてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




その頃のルル

ルル「何故だ!何故なんだナナリー!何故俺ではなくてカレンなんだ!」

C.C.「下着を買いたいからと言ってたろ」

ルル「この間までは俺が買っていた!それなのに…それなのに…もう年頃だから自分で買うとか!女の子同士で楽しみたいとか!訳の分からないことばかり!」ダン!

C.C.「ものすごく訳が分かると思うがな」

ルル「その上、カレンの奴俺が変なことをしないようにC.C.まで置いておくとは…尾行くらいしかする予定はなかったのに俺を信じなかったんだよあいつは!彼女が聞いて呆れる!」

C.C.「立派に彼女してるからお前の行動が読めてたんだろ」

ルル「何故だ…何故なんだナナリー」

C.C.(何となくコイツは他にした方が良いことがある気がする…)


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40 人には色々な事情があるのでとりあえず話してみるのが大事

シンジュクに非常事態宣言!


「全く…何で自分の問題に人を巻き込むかねぇ」

 

「私のセリフだから!それ全部私のセリフだから!」

 

呆れたように言う彰の言葉をシャーリーは全力で否定する。

 

場所は銀行強盗が運転する車の中。

 

運転していない一人が彰に銃を向けている最中に、二人は会話を続けている。

 

「いやいや、シャーリーが言ったんだろ?ピンチになってルルに助けられたいってさ。その夢が実現しただけなんだから甘んじて受け入れろよ」

 

「だからって実現するって思ってないから!それなのに、彰が嘘ばっかりついて私だけ人質を続けさせるからこうなったのよ!」

 

「分かったから揺さぶるな。もう少しリラックスしろ。焦ったって状況は変わらないから」

 

「へ、まさか解放戦線の人間を人質に取れるなんて思わなかったぜ。姉御!この後はどうしますか?」

 

「何で私が人質からジョブチェンジして、リーダーみたいになってるの!?違うからね!?私は貴方たちの犯罪とは何の関係もないからね!?」

 

「姉御!一生ついて行きます!」

 

「だからそれを止めてよ!」

 

どうやらシャーリーはダーマ神殿に行ってもいないのに、ブリタニアの学生から銀行強盗のリーダーに転職をしたようだ。いやはや、人生は本当に何がきっかけでどうなるか分からないもんだな。

 

そんな時に彰の携帯が鳴った。彰が確認してみると、千葉さんからの連絡だと確認できた。応答しようとすると、慌てたように銀行強盗は彰から携帯を奪ってしまった。

 

「てめえ、何普通に携帯に出てんだ!?人質なんだからもうちょっと『彰ぁ!貴様一体何処をほっつき歩いてる!さっさと帰ってこんか!』うわ、声でか!?よ、よく聞けよ、てめぇ!」

 

『ん?何だ貴様は?彰はどうした?』

 

「そいつは俺たちが預かってる!生かして返して欲しかったら要求を聞け!」

 

『よし、良くやった!殺せ!』

 

「お前ら仲間じゃねぇのか!?」

 

『銃で撃ったくらいで満足するなよ。首を切り、体には火をつけて徹底的に燃やせ。証拠として首を持ってくれば報奨金はくれてやる』

 

「どんな関係なんだお前ら!?お、おい待て…切りやがった…」

 

あり得ない出来事に遭遇したかのように呆然とする銀行強盗を尻目にシャーリーは、彰の肩を掴んで問い詰める。

 

「ねぇ、誰あの人!?一体何をどうしたらあんなに嫌われるの!?」

 

「気にするな、いつも通りの会話だよ。愛情表現の一種だ」

 

「人間関係がデンジャラス!?日本人の人間関係ってそうなの!?」

 

「姉御!違います!普通の日本人はそんな人間関係じゃありません!俺たちの関係は鉄よりも強いですから安心してください姉御!」

 

「何でその人間関係の中に私が入ってるのよ!?っていうか、そこまでリーダー扱いするならお金を返して自首してください!」

 

「い、いくら姉御の頼みでもそれだけは…この金がねぇと俺たちの他の家族が死んじまうんでさぁ!」

 

「え?どういうこと?」

 

意外な理由にシャーリーがどういうことか尋ねる。このテロリストの男曰く、自分たちの家族はこの間破壊されたシンジュクに住んでいたらしい。その時に娘が怪我をして入院したが、そのための金も底をついた。運転手の男も日に日に痩せ細っていく自分の家族を助けるためにこんなことをしたと言うのだ。

 

意外すぎるシリアスな理由にシャーリーも驚いたが、だからと言ってそれは犯罪を正当化する理由にはならない。

 

「でも、だからって、こんなことしても」

 

「分かってまさぁ、姉御!だけど俺らにはこれしか…これしか方法がなかったんですよ!」

 

「アホか」

 

泣きながらシャーリーに訴える銀行強盗の話を、今までちゃんと聞いていたかどうかも分からなかった彰が会話を遮った。

 

「な、何だとてめぇ!」

 

「んなもん、問題の先送りにしかなってねぇよ。仮に逃げられたとしても、こんなことしてブリタニアが黙ってると思うか?お前らは一生追われ続けるぞ。勿論家族もな。そうなったら入院させてくれる病院が果たしてどの程度あるんだろうな」

 

「そんなこと、分かってんだよ!テメエらみたいに強い組織にいる人間には俺らの気持ちは分からねぇ!奪われ続ける者たちの気持ちは!」

 

「確かにそうかもな。俺にはお前らの気持ちは分からん。だからぶっちゃけお前らがどうなろうとどうでも良いんだが…乗りかかった舟だし、何よりお前らの境遇にはちょこっとだけ俺の責任もあるからな。しょうがねぇから助けてやるよ」

 

よっこらせと言って立ち上がる彰を見て銀行強盗は慌てて銃を向けた。

 

「て、てめぇ!動くんじゃねぇ!」

 

「あー、もう良いから。全く…そんなショボいモデルガンで騙せるわけねぇだろうが。何回本物見てきたと思ってんだ。とりあえず、サッサとシンジュクへ向かえ」

 

「偽物だったの!?」

 

「な…何でんなこと分かるんだよ…あんた、一体…?」

 

衝撃を受けるシャーリーと銀行強盗を気にせずに、伸びをする彰は当たり前のことのように告げる。

 

「お前らがさっきから言ってたろ?日本解放戦線のただのテロリストだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とんでもない面子が集まっていた。

 

一人はブリタニアの第3皇女様。

 

一人はクロヴィスを殺した犯人とされていた男。

 

一人はブリタニアに唯一土を付けた日本の希望の軍人(頭には買い物袋を着用)。

 

三人は金を貰って仕事をする裏世界の傭兵。

 

何とかスザクのことは知らないフリをしろと藤堂に言うことには成功したが、リョウとアヤノが滝のように冷や汗を流す中、ユキヤが思いついたように告げる。

 

「どうしようか。とりあえず彰でも呼んでみる?」

 

「お前この状況を何とかする気ねぇだろ!?こんな何時爆発するか分からない地雷原に、核爆弾ぶち込んでどうすんだ!」

 

「あのー、ところで何でこの方は買い物袋を頭から被っているんですか?」

 

リョウとユキヤの会話の流れを断ち切って、ユフィは首を傾げながら聞いてくる。

 

顔を隠すためだよ!という本音を言う訳にはいかないので、リョウはしどろもどろになりながら返答を返す。というか、委ねる。

 

「あ…あー、アレだ、ほら…何だっけ?アヤノ」

 

「私か!?そ、そうだねユフィ…えーと、は、流行ってるんだよ、こういう遊びが!日本人にはさ!私たち知り合いだから会ったらこういうことをするのが普通になっちゃっててさ」

 

「そうそう!その通りなんだ!俺たちマブダチだからさ!」

 

「へぇ、そうなんですか。私はてっきり顔を明かす訳にはいかないのかと思っちゃいました」

 

考え過ぎですね。と言って舌を出すユフィを見てスザクは和んでいるが、リョウとアヤノはそうもいかない。その通りだからである。

 

「あ!私閃いちゃいました!じゃあ、貴方も一緒に私たちと行動しませんか!」

 

(もう止めてぇ、皇女様!死んじゃうから!私たちの胃がご臨終しちゃうから!)

 

名案と言わんばかりに喋るユフィの言葉を聞いて、アヤノの顔は青褪めるが、買い物袋男(藤堂)は、ふむと考えるが

 

「ふっ。偶には若者と行動するのは良い経験か…良いだろう」

 

(お前は断れぇ!何の経験になるんだよ!お前は何がしたいんだよ!)

 

「良かったぁ!あ!私ユフィと言います。貴方は?」

 

「そうだな…トゥードゥーと呼んでくれ」

 

(微妙に偽名になってねぇ!?)

 

「そうですか!では、トゥードゥーさん、今日はよろしくお願いしますね!」

 

(いや、あんたがよろしくしてんのテロリストの希望!あんたの敵!)

 

そこで、先程から疑問を感じていたスザクが会話に参加してくる。

 

「見た時から思ってたんですが…トゥードゥーさん、僕と会ったことありますか?声に聞き覚えがあるんですが?」

 

「む?そうか?実は私もユフィ君に見覚えがあってな」

 

(気付けよぉ!?敵の親玉みたいなもんだろうが!何だよ奇跡の藤堂って!コイツ実は馬鹿だろ!奇跡の馬鹿だろ!)

 

「へぇ、そうなんですか!偶然ってあるんですね!」

 

「そうだね、ユフィ。トゥードゥーさん」

 

「ふっ。そうだな」

 

(何なのこいつら!?馬鹿しかいねぇよ、ツッコミが追いつかねぇよ!!誰かカレンを呼んでこい!)

 

三人の会話を聞いていたリョウとアヤノは、ツッコミ所しかない状況に心の中でツッコミしまくっていた。

 

「しかし、一体何処に行きたいのだ?」

 

トゥードゥーの疑問にスザクもそういえばと思う。

 

色々なことがあったせいで、未だにユフィが何処に行きたいのかを誰も聞いていないのだ。

 

「では、シンジュクでお願いします」

 

え?と思った一同がユフィの顔を見ると、先程までのゆったりとした顔から真剣な顔へと変わっていた。

 

「お願いします、皆さん!私をシンジュクへと連れて行ってください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




その頃のカレンとナナリー

カレン「とりあえず、買い物は終わったわね。何しようか?」

ナナリー「カレンさんと一緒だったら何をしても楽しいから何でも良いですよ?」

カレン「嬉しいけどダメよナナリー。ちゃんと自分の意見を持たないと」

ナナリー「ふふ、分かりました。それではシンジュクの方に行ってみたいんですけど」

カレン「それだけはダメ!」

ナナリー「な、何でですか?」

カレン「何かが危険を叫んでる…絶対に今のシンジュクには行っちゃダメだって…」

ナナリー(カレンさんは何を感じているんでしょう…)


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41 何歳になっても子供っぽさを忘れない子供でありたいって結構皆思ってる

ユフィのファンは…見ない方が良いかもしれない


「良いか、テメエら!全速力でシンジュクまで行け!軍の奴らは俺が対処する!」

 

「りょ、了解っす!」

 

銀行強盗の車の中で銀行強盗に指示を出した彰は、そう言って一息つく。焦らせるようなことを言ったが、逃げる事に関して、彰は大して心配していなかった。

 

何故なら軍の奴らはチラホラ見られるのだが、全員

 

『ユーフェミア様は何処かー!?』

 

『殿下が大変なのです!戻ってください!』

 

とか言ってて全くこちらに注意を払わないからだ。ユーフェミアと言えば第3皇女の名前だが、まさか誘拐でもされたのか?流石にないか。まあ、それよりも今の問題は…

 

「…」

 

「そんなに見るなよ。照れちゃうだろ?」

 

無言で俺を見てくるシャーリーへの対処が優先である。ノリと勢いで思わず俺の正体言っちゃったけど、マズかったかな?まあ、良いか。どの道近い内に話す予定だったし。

 

「そんなこと言ってる場合!?テロリストって本当なの!?今まで私たちを騙してたってこと!?」

 

「おい、人聞きの悪いことを言うな。俺は一度も自分がテロリストじゃないって言ってないぞ」

 

「そりゃそうだけど!あー、もう!偶然入った銀行で銀行強盗に襲われて誘拐されて、友達がテロリストっていうことをカミングアウトされるってナニコレ!?何の厄日なの今日!?あー、もう頭パンクするよ!今ならルルがゼロだって言われたり、カレンもテロリストの仲間だって言われても受け入れられる気がするよ!」

 

「お前すげえな」

 

「何がよ!?」

 

「いや、別に」

 

彰は、こほんと咳払いをして話を変える。

 

「まあ、この話は後で幾らでもしてやるよ。とりあえず今は逃げることが大事なんでな。我慢してくれよ」

 

「…本当に後で話してくれるの?」

 

「本当だって」

 

彰の言葉にシャーリーは、はぁ〜と長いため息を吐くとその場でコテンと横になった。

 

「もういいよ、今日は疲れた…彰がテロリストでも何でも良いから早くこの状況を何とかしてよ…」

 

「自分で言っといて何だが、切り替え早いなお前」

 

「半分ヤケになったのよ!!…それに…私はテロリストだったとしても彰は約束は守る人だって知ってるから」

 

シャーリーの妙な信頼を感じるが、彰からしたら理由が分からない。俺は何時の間にこの娘の信頼を勝ち得るようなことをしたのだろうか。

 

「兄貴!そろそろシンジュクです…だけど問題が!」

 

「どうした?」

 

「検問です!アイツら網をかけてやがったんだ!」

 

流石にノンストップでは行かせてくれないか。まあ、予想通りと言えば予想通りだ。

 

「よし、運転を代われ」

 

「構いやせんが…何をするんで?」

 

「お前らを車から降とす」

 

「は!?じょ、冗談ですよね?」

 

「そんな訳あるか。持てるだけの金だけ持って歩いて逃げろ」

 

コイツらの車は完全に銀行強盗の車だと認識されているはず。こんな車で何時までも移動していたら、何時までも追われるに決まっている。逆に言えば…この車が移動している限り、狙われるのはこの車だということになり、歩いて逃げるコイツらは大して注目されないだろう。かなりのスピードで走っている車から落とされたコイツらが、無事かどうかは保証しないがな。

 

俺のセリフから本気だと分かったのか、二人の銀行強盗の顔は青褪めてシャーリーに助けを求めるような顔を向けるが、シャーリーは黙って首を振った。

 

「諦めた方が良いと思う…この人やるとなったら本気でやるから」

 

「そういうことだ…じゃあな!お元気で!」

 

彰に蹴られて突き落とされた銀行強盗はゴロゴロと地面を転がるが、まあ死ぬことはないだろう。多分。

 

残されたシャーリーは、運転をする俺の肩を掴んで引きつった笑顔で祈るように声を発する。

 

「ねえ、彰?私たちのこれからの行動は、銀行強盗が居なくなったんだし大人しく残ったお金を返すか、そのまま残ったお金を置いて逃げるかのどっちかだと思うけど…ねぇ、どっちかなんだよね!?どっちかなんだよね!?」

 

「何を言ってるんだシャーリー?そんなの決まってるじゃないか」

 

彰はニコリと笑ってシャーリーに返答をする。

 

「そんなもん…強行突破で検問をぶち破る第3の選択肢に決まってるだろうがぁぁぁぁ!!」

 

「もうヤダこの人!薄々分かってたけど、絶対に穏便な選択肢を選ばない!」

 

ブワっと涙を溢れさせたシャーリーを尻目に、彰は有言実行と言わんばかりにアクセルを全開にして検問を強行突破した。

 

その後、二時間以上二人の警察からの逃亡劇は続いたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがシンジュク…酷い状況ですね…」

 

リョウたちに頼んで連れてきて貰った、先日の戦いにより荒れ果てたシンジュクを見て、ユフィは悲しみで目を伏せた。

 

そんなユフィの様子を見てスザクは恐る恐る声をかける。

 

「ユフィは…何でここに来たかったの?」

 

「私の兄が…ここで亡くなったからです…最近は会えてませんでしたけど…優しい兄でした」

 

失った過去を懐かしむように空を見上げながら言うユフィを見て、スザクもトゥードゥーもかける言葉を失う。当然リョウたちもそうだったが、その理由は全く異なっていた。それは悲しみの感情ではなく

 

(いや、そいつ超生きてる!!多分今頃家でテレビ見てるよ、そいつ!)

 

ただの罪悪感である。良心の呵責とか色んなもののために、物凄く罪の意識を感じていた。

 

(な、なあ、私たち悪くないよな?だって何も関係ないもんな!!?ただ匿ってあげてるだけだもんな!!?)

 

(と、当然じゃねぇか!俺たちはアイツから人を預かっただけだ!何もしてねぇ!攫ったのも死亡したってことにしたのも全部アイツがやったんだからな!俺たちは関係ねぇから!だから俺たちが罪の意識を感じる必要なんてこれっぽっちもねぇ!)

 

誰に言い訳をしてるのか分からない、リョウとアヤノの呟きも聞こえないユフィの独白は続いていく。

 

「天国では…兄様は何をしてるんでしょう…何を感じているんでしょう…」

 

(天国は知らねぇけど、俺の家では良く絵を描いてるよそいつ!庶民の暮らしを意外に満喫してるよそいつ!)

 

「どんなものを食べてるのかしら…想像しかできないですよね…」

 

(少なくとも朝はカップラーメン食ってたよ!)

 

「もう一度会えたらって…そう思うんです…無理なのは分かってるんですけど…心の底から…もう一度会いたいって」

 

(超簡単に会えるよ!こっから車で行けばすぐ会えるよ!本当止めて皇女様!泣かないで!俺たちの良心をこれ以上苦しめないで!)

 

涙目で語るユフィが我に返り、ごめんなさいと謝ってから地面に沈んでいるリョウとアヤノを見て首を傾げた。

 

「あの…リョウとアヤノは何をしてるんですか?」

 

「いや…ちょっと罪悪感という名のディオガグラビドンを喰らっていまして…」

 

良心の呵責という重力攻撃を喰らっていたリョウとアヤノは、何とか震えながら立ち上がる。

 

何も知らないスザクとトゥードゥーはユフィの独白を聞いて声をかける。

 

知らないって幸せなことだと思う。

 

「優しいんだね、ユフィは…そんなにもそのお兄さんのことを大切に思っているなんて」

 

「ああ。ユフィ君の兄を思う気持ちは嫌と言うほど私たちに伝わってきた…その兄も草葉の陰で喜んでいることだろう」

 

(喜べるわけねぇだろぉ!?だって生きてるんだもの!兄上様ピンピンしてるんだもの!)

 

スザクとトゥードゥーの言葉に、ユフィは笑顔を浮かべて感謝の言葉を伝える。リョウとアヤノは引き攣った顔で立っていることしかできなかったが。

 

ちなみにユキヤは心を閉ざしてスマホのゲームを楽しんでいる。ある意味鉄のメンタルをしていると思う。

 

この話題が続くことは精神衛生上大変よろしくないと考えたリョウとアヤノは、話を別の方向に向けようとする。

 

「な…なあ、そろそろ帰らねぇか?ほら、この辺治安悪いし」

 

「そ、そうだな。確かにこの辺は物騒な奴らが多い!早く帰った方が良いな!うん!」

 

「心遣いありがとうございます。だけど私には現状を理解する責任があるので、帰るわけにもいかないんですよ」

 

「そのユフィの気持ちは分かるけどさ!ここは帰った方が「おい、見ろよ。あんな所にイレブンの奴らが固まってるぜ!負け組で慰めあってんのかよ?」あん?」

 

リョウとアヤノがユフィを説得しようと喋っていると、少し遠くから自分たちを見て小馬鹿にしてくるブリタニア人の二人組の男がいた。

 

だが、普通に暮らしていればあんな連中は掃いて捨てるほど存在する。なので馬鹿にされたリョウたちもスザクもトゥードゥーも何の感情も湧かなかったが、ユフィだけは違っていた。

 

ムッとした顔をして注意をしようと彼らに駆け寄ろうとするが、その肩をユキヤが掴んで止めた。

 

「ユキヤ?」

 

「あんな連中相手にするだけ無駄だよ。ユフィが気にするようなことじゃない」

 

「でも、あんな言い方ってないですよ!」

 

「だから気にしないでって。じゃあ、こうしようか?僕があの二人と気持ちを入れ替えるように話してくるからそれで終わりにしようよ。だからユフィはここで待ってて」

 

そう言うとユキヤはそのブリタニア人の二人組のところに歩いて行った。少し話すと、三人でこちらから死角となる構造物の影に隠れた。何やらコソコソ話は聞こえてくるが、何を喋っているのかはわからない。それからしばらく経つと、三人とも見える場所に出てきた。出てきたのだが

 

「大丈夫だったよ、ユフィ。二人とも分かってくれたよ。これからは気持ちを入れ替えてくれるってさ」

 

ブリタニア人の二人組はパンツ一丁になり、首輪を付けられた状態でユキヤに引きずられていた。

 

「「いや、それ気持ちだけじゃなくて人間としての大事なものまで入れ替わっちゃってるんだけどぉぉぉぉぉ!!??」」

 

ユキヤの奇行にリョウとアヤノは全力のツッコミを入れるが、ユキヤは微笑みながら犬と化した二人のブリタニア人に話しかける。

 

「良かったよ。分かってくれて。やっぱり話し合いって大切だよね」

 

「…はい…そうですね…」

 

「…僕が悪かったです…だから…あのことだけは…」

 

「話し合ってねぇだろぉ!?完全に怯えてんじゃねぇか!何をしたんだお前!?」

 

「話し合ったよ?話し合った結果犬にしてくれって頼むから仕方なくさ。僕も心が痛むよ」

 

「とてつもなく楽しそうにしか見えないんだが!?」

 

「そうなんですか…分かってくれて良かった…」

 

「良かったねユフィ…」

「やはり話し合いこそが道を切り開くのだな…」

 

「ねぇお前ら何に感動したの?このドSの所業の何処に感動したの?」

 

あり得ないユキヤの所業に涙を浮かべて感動しているユフィ達に、リョウは疑問の言葉を発したが、構わずユフィは涙を拭ってそのブリタニア人に近づいて行き、話しかけた。

 

「良かったです二匹とも。今後はあんなこと言っちゃダメですよ?」

 

「はい…だからあの…そろそろ…」

 

「あら?犬になったのなら喋っちゃダメじゃないですか。喋るならワンでしょ?」

 

(天然隠れドS現る!?おい、もう勘弁しろよ絶対に開けちゃいけない扉に手をかけちゃってるよ皇女様!!)

 

「わ…ワン」

 

「良く言えましたね。はい、お手。あ、でも汚そうなのでハンカチの上からお願いしますね」

 

ご褒美と言わんばかりにハンカチを差し出すユフィを見て、リョウとアヤノに戦慄が走る。

 

(もうアレって扉に手をかけてるレベルじゃなくないか!?完全に足を踏み入れちゃってないか!?)

 

(誰か止めろぉぉぉ!!皇女様が戻ってこれなくなるぞぉ!!)

 

リョウとアヤノの絶叫に近い気持ちを分からないユフィの行動は続いていき、ふと思い出したように微笑む。

 

その笑顔はとても幸せそうであり、事情を知らない者が見れば誰でも心が安らぐ程の笑顔である。

 

「そういえばさっきから何か変だと思ってたんですけど、犬がパンツ履いてるっておかしくないですか?」

 

「僕としたことが迂闊だった。ありがとうユフィ。じゃあ、これからコイツらのパンツを「「アウトォ!!!!」」ゴフッ!!」

 

年齢制限がかかりかねない行動を笑いながら言うユキヤに、リョウとアヤノの全力のツッコミが炸裂した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




コーネリア総督が日本に到着したそうです

コーネリア「…」

文官A「あ…あの…新総督?」

コーネリア「…腑抜けている、たるんでいる…堕落している」

文官B「あの…寝ている状態で言われましても」

ダールトン「いかん!ユーフェミア様成分欠乏症だ!」

ギルフォード「早く写真を急げ!」

部下A「見せています…しかし、長いフライトでもはや効果が…後は直接会わねば改善は難しいかと」

ギルフォード「ならばユーフェミア様を探せ!トウキョウ中の全ての組織に伝達をするのだ!急げ!」


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42 簡単に男に好きっていう女の好きには気をつけろ!

長くなったので二話に分けました。
次の話でこの話も一区切りの予定。


「ふう…ようやく完了だな」

 

彰はくたびれたと肩を回し、その場に腰を下ろすが、そんな彰を変な生物を見るような目でシャーリーが見つめてくる。

 

「今度はなんだ?」

 

「…散々好き勝手なことしてるのに変な所で真面目なんだなと思って」

 

ああ、そのことかと彰は得心がいった。

 

彰は警察から逃げきった後、残ったお金をシンジュクの事件の時に怪我を負った人が多い病院に全て寄付。そんなことを、シャーリーから見て傍若無人の塊である彰がするのは意外だったのだろう。

 

「まあ、ただの自己満足の罪滅ぼしさ」

 

「罪滅ぼし?」

 

言いながら彰の隣にシャーリーも腰を下ろす。そんなシャーリーに彰は買ってきていた二つのジュースの片方を無言で渡し、シャーリーはお礼を言ってから受け取る。

 

「このシンジュクの戦いは俺も参加してたからな。まあ、破壊の殆どはクロヴィスの奴が原因なんだが…俺にも多少の責任はあるんだよ」

 

だからこその罪滅ぼし。だからこその寄付。そんなことで己の罪がなくなるわけでは決してないのだが。

 

「…やっぱり本当なんだね。テロリストだって」

 

「ああ」

 

何の迷いもなく彰は即答する。

 

シャーリーはとても良い奴である。もちろんそれは彼女の美徳だが、彰に関しては事情が異なる。彰はテロリストだからだ。

 

そんな人間に疑いもしないで仲良く接していれば、何時か取り返しのつかないことになりかねない。だからこそ、彰はそうなる前に自分の正体を打ち明ける気だった。彼女が自分から距離を取るように。

 

「…聞いても良い?」

 

「何だ?」

 

「何でテロリストをやってるの?」

 

「何で…か…何で何だろうな」

 

彰は横になり、空を見上げる。思い出すのは自分を守ってくれた彼らのあの言葉。

 

「世界が平和でありますように」

 

恐らくあの言葉が俺の原点なのだろう。あの言葉を叶えるために、俺はまだここで足掻いているのだ。

 

「急にどうしたの?」

 

「恩人の言葉だよ」

 

「良い言葉だね。その人たちはどうしたの?」

 

「俺が殺した」

 

なかなかにショッキングな言葉だと思うが、シャーリーは動揺もせずに受け止めた。

 

「…事情があったんでしょ?」

 

「お前は本当に人の言葉を良いように解釈するね」

 

思わず苦笑してしまう。ここまでの良い奴はそうそういるもんじゃない。

 

「事情ってほどのもんじゃないがな…まあ、よくある話さ。俺の両親はブリタニアの侵攻時に、ブリタニア兵に殺された」

 

「…だからテロリストになったの?」

 

「それなら話は早かったんだがな。俺はその後、ブリタニアの馬鹿なお人好しの夫婦に拾われたのさ。世界の人々は皆平和に共存できると心から信じている、お人好しな馬鹿たちだった」

 

世界が平和でありますように。あの人たちの口癖だった。

 

「良い人たちだったんだね」

 

「ただの大馬鹿だよ。ブリタニアを憎んでいる日本人の子供を養おうってんだからな。当然俺はその人たちに懐きはしなかったさ。だけど、その大馬鹿たちはそんな俺を愛し続けたよ。その人たちを憎むのが馬鹿馬鹿しくなる程にな」

 

だから俺はブリタニアに良い人がいることを知っている。日本人を愛してくれる人たちがいることを知っている。

 

「だから彰はブリタニア人の私たちを嫌わないんだね」

 

「まあな。だがちょっとしたことから俺は自分の両親を殺したブリタニア兵を見つけた。復讐しようと思ったよ。だから、俺はそいつを殺そうと思って跡をつけた。それで直前まではいったんだが」

 

過去を思い出した彰は苦笑しながら話を続ける。

 

「その大馬鹿共に止められてな。怒りに負けるなって。懇願されたよ。その熱意に負けて俺は銃口を引けなかった。だけどその時、偶然今の俺の組織の人たちが来てブリタニア兵に発砲した。その時にあの人たちも死んだんだよ。俺を庇ってな」

 

今でも夢に見る。俺がもし復讐しようなんて思わなければ、あの人たちは今でも生きていたんじゃないだろうか。俺がもし早くあの軍人を殺していれば、あの人たちは今でも生きていたんじゃないだろうか。

 

「ちょっと待ってよ!それ別に彰が殺した訳じゃないじゃない!」

 

「直接的にはな。だが俺が居なければ、あの人たちが今も生きてただろうってことは変わらない事実さ」

 

しかもその時に襲ってきた解放戦線の人たちの殆どを、俺は怒りで我を忘れて殺してしまった。笑えない話だ。俺はあの人たちの命も、あの人たちの言葉も守ることができなかったのだから。

 

「でも…そんなのって…」

 

半分泣きそうになっているシャーリーを見ると思う。こういう人たちが次の時代には必要なんだってことを。

 

「別に良いさ。まあ、とにかくその後何だかんだあって、結局今の組織にいることになった訳だ。俺なりにあの人たちの夢を叶えるためにな」

 

「…優しい世界を作るために?」

 

「ああ。日本人だろうがブリタニア人だろうが関係ねぇ。シャーリーみたいな奴らが笑って暮らせる世界を作る。それが俺の願いだ。…とはいえ、俺のやってることが正しいことかどうかはわからん。ぶっちゃけ、やってることは人殺しと変わらんからな」

 

間違いなく、死んだら両親やあの人たちとは会えないだろうなぁ、と彰は呟く。余裕で地獄行きの特等席のチケットは取れているだろうし。

 

そんな彰を見て、シャーリーは何かを言わなければならないと思った。

 

別に彰のしていることを擁護するつもりはない。それに、彰は自分の行動を罪だと断言しているし、その行動を擁護して欲しいとも思っていないとも思う。

 

だが何かを言わなければならないと思った。同情でも慰めでもない。彰の言葉を聞いた自分なりの思いを。

 

「…その話さ。ルルやカレンも知ってるの?」

 

何故こんな質問をしているのかとシャーリーは自分で恥ずかしくなる。自分が言いたいことはこんな言葉ではないのに。

 

「詳しくは知らないだろうなぁ。言ってないし。と言うか一人の例外を除いて全員知らんと思う」

 

しかし、返ってきたのは意外な言葉だった。そんな話を何故自分に伝えたのだろうか。

 

「何でそんな話を私に言ったの?」

 

「お前が聞いたんだろ」

 

「言わないって選択肢もあったじゃん」

 

そう言われると彰もそうだなと思う。何でこんな恥ずい話を普通にしてるのか…

 

彰はゴロッと寝返りを打ち、横のシャーリーの顔をマジマジと見る。

 

「…多分似てたからだろうな」

 

「私が?誰に?」

 

「ああ。底抜けにお人好しそうなその顔が」

 

自分で言っていて彰は気付いた。そうだシャーリーは似ているんだ。何処までもお人好しで。何処までも人を信じられる強さを秘めてるその瞳が。あの人たちやアイツに似てるんだ。だからおもわず喋ってしまったのだろう。

 

その言葉を聞いてシャーリーはフッと笑う。

 

「何それ。そんな理由で言ったの?」

 

「多分な」

 

「そっか…彰らしいね」

 

「放っとけ。んじゃ、俺も聞いて良いか?普通は軍に通報するか、距離を取るかのどっちかだと思うが、何でシャーリーは俺にそんなことを聞いたんだ?」

 

彰の言葉にシャーリーは吹き出す。何なのだろうか、この男は。そう思うのなら自分の正体を隠しておけば良かったのに。

 

「多分…私も同じだよ。彰が似てたからだと思う」

 

「あん?」

 

顔も性格も全然違う。でも妙な所で似てると思う。

 

「彰が似てたから…私は今まで通り接することができてるんだよ」

 

別に彰は、シャーリーに自分の正体を言う必要などなかったのだ。だが彰は巻き込みたくなかったから、自分のせいでシャーリーを傷つけたくなかったから言ったのだ。しかもそのことをシャーリーに伝えることもなく。

 

変な所で不器用な人間だと思う。だがその不器用さは似てるのだ。シャーリーが心から好きだと断言できるあの人に。

 

その事実に思い至ってシャーリーは分かった。今自分がこの不器用な男に言いたい言葉を。

 

「だからってわたしは別に彰のしてることを応援はできないよ。そのことで誰かに恨まれるのもしょうがないと思う」

 

「だろうなぁ」

 

だが…だが、たとえそうだとしても。彰が地獄に落ちるとしても。これだけは伝えなくてはならない。

 

優しく微笑みながらシャーリーは彰の目を見る。

 

「私は好きだよ。彰のことが」

 

失ってしまった人たち以外にも、彰のことを大切だと思ってくれている人たちがいることを、シャーリーは彰に伝えたかった。

 

その言葉を聞いて彰は思った。

 

「…何?二股?」

 

「ち、違!?こ、こ、こ、これはそういう意味じゃなくて!?」

 

自分の今の発言がどういう誤解を招くか、言われて気付いたシャーリーは顔を真っ赤にして否定するが、その様子をやれやれと言わんばかりに肩をすくめて見ていた彰は、呆れたように言った。

 

「さて、それじゃ遅くなってもアレだし、色んな男に好きって言いまくるビッチを家に送り届けるか」

 

「ビッチじゃないから!まだ彰にしか言ったことないから!」

 

それはそれでどうかと彰は思う。

 

これはシャーリーが悪いのか?それとも、ここまで分かりやすいのにも関わらず分かってないルルーシュが悪いのか?

 

どちらにしても、これはこれで問題だと思う。カレンもカレンでアレだがシャーリーも十分にアレだな。

 

そう思った彰は懐からゴソゴソとお守りを取り出し、シャーリーに渡す。

 

シャーリーとしては疑問でしかない。何故自分に渡すのだろうか。

 

「何でお守り?これは何?」

 

「両親の形見だよ」

 

「うへぇ!?も、貰えないよ!返す、返す!」

 

「嘘に決まってるだろ」

 

言われたシャーリーの顔に青筋が浮かぶ。この男は自分をからかわないと普通に会話ができないのだろうか。

 

「まあ、怒るな。余りにお前の思いが進展しなさそうなんでな。ただの後押しだよ。これを貰ったんだからデートの誘いくらいは大丈夫さ。安心して誘え」

 

「…何その根拠のない自信」

 

思わず苦笑してしまう。からかったかと思えば、こうやって励ましてもくれるのだから本当に読めない。

 

「というかコレ何のお守りなの?恋愛成就とか何も書いてないけど」

 

「…さあ?」

 

「…そんなお守りに効力あるの?」

 

「知らん。だがまあ、俺が人に何かをあげるなんて滅多にないんだ…だから」

 

彰はニヤッと笑い言い放つ。

 

「超レアだぜ?」

 

ジト目で見ていたシャーリーはそれを聞いてクスッと笑う。

 

「それ何のお守りにもなってないよ。だけど…ありがとう。大事にする」

 

ギュッと両手で握って笑顔で言われると彰としても少々気まずい。別にそんな大層なものでもない。

 

それじゃ帰るかと彰は言いながら足を進める。

 

その後にシャーリーはついて行きながら話しかける。

 

「じゃあ、今度は私が彰に何かあげるよ。このお返しにさ」

 

「いらん。もうお前からは十分に貰ったしな」

 

シャーリーは首を傾げているが、彰としては貰ったものを言う気はない。

 

肯定してもらって嬉しかったなど恥ずかしくて言える訳がないのだから。

 

「ついでに約束してやるよ。お守りまでやったのに告白もできないんじゃしまらねぇ…一般人のお前にゃ不要な心配だとは思うが、ルルーシュに告白できるまでの間はお前のことは俺が守ってやるさ」

 

 

 

 

 




彰とシャーリーの帰り際

ジェレミア「…マリアンヌ…様」傷だらけで倒れる

シャーリー「彰!助けてあげないと!」離れた場所から駆け寄り

彰「よし!トドメを刺そう!」持っていた銃を抜く

シャーリー「ダメに決まってるでしょ!救急車!」

彰「一応俺テロリストなんだがなぁ…」

ユフィ達が来ないせいでキューエル達にボコボコにされたオレンジ君



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43 親は何時までも子供に尊敬されたい自分でありたいとか思ってるかもしれない

彰「さてと、オレンジ君も助けたことだし次は車を処理するか」

シャーリー「ごめんね、無理言って」しょぼんと項垂れる

彰「別に構わん。ぶっちゃけ、お前の前で人殺しをするつもりもなかったしな」車の下に爆弾設置

シャーリー「何してるの?」

彰「こんな確実に警察にNo.覚えられた車をまた使うわけにもいかんだろ。だから吹き飛ばす」直後に爆発して車が崖の下へと落下

シャーリー「ちょっと!?車が崖の下に落ちていったけど!?大丈夫なの!?ちゃんと確認したの!?」

彰「大丈夫、大丈夫。俺の見聞色の覇気によると下には人がいないから」

シャーリー「それ何も確認してないってことだよね!?」


「戦争なんか起きない平和な世界…私はこの世界がそんな世界になって欲しいと思ってます」

 

「すいません、ユフィ様。良いこと言ってますけど、隣でドSがブリタニア人を首輪で繋いでいる段階で全然シリアスにならないです」

 

ユフィは荒れ果てたシンジュクを見て哀しげな表情になり、自分の思いを吐露しているのだが、隣でユキヤが犬と化した二匹のブリタニア人を繋いだ縄を持っている段階で色々と台無しである。

 

「ブリタニア人による日本人への虐待…どうしたらそれを止められるのでしょうか…」

 

「すいません、ユフィ様。日本人によるブリタニア人への虐待が目の前で行われてるんですけど、どうすれば良いでしょうか」

 

「このままでは憎しみの連鎖は延々と続いてしまいます…それでは平和な世界は訪れません。未来のために私たちは現実を変えるべきなのです」

 

「すいません、ユフィ様。とりあえず目の前で生まれている憎しみの連鎖に対処するのが先決だと思います」

 

至極ご尤もなリョウの言葉を聞き流したユフィは、ニコリと笑いスザクに問いかける。

 

「あなたはどう思いますか?スザク」

 

「僕ですか?」

 

「ええ。やってもいない罪を着せられ処刑されかけた貴方は、この現実をどう思いますか?」

 

「僕は…変えなきゃいけないとは思う。だけど…その方法が分からないんだ」

 

悔しさと無力感とが混ざり合った感情を浮かべながら喋っているスザクを見たアヤノは思った。

 

(まずは目の前のブリタニア人を助けてやるのが第一歩だと思うのだが…)

 

チラリとアヤノが横目で見ると、ユキヤは犬から椅子へとジョブチェンジさせたのか、四つん這いにさせたブリタニア人の上に腰と足を載せてゲームを開始している。おい、誰か止めてやれよ。

 

「私も同じです…変えたいのに方法が分からない…このままじゃ、ただの夢物語ですよね…私には何の力もない」

 

「そんなことはない」

 

「トゥードゥーさん…」

 

先程まで黙っていたトゥードゥーは、ユフィとスザクの思いを聞き口を開いた。

 

「私には息子はいないが…二人ほどそれに近い者は居る。5、6年だが親代わりとして教えてきた二人だ」

 

トゥードゥーは懐かしいと感じながら話し出す。

 

「上の方は優秀でな。手がかからない上に一生懸命に努力して力を高め、私の言うこともしっかり聞いた。だが下の方は言うことを聞かないわ、素直じゃないわ、直ぐに手を抜く上に天邪鬼という、ダメ人間の典型のような奴だった」

 

だがと言ってトゥードゥーは続ける。

 

「自分の信念をしっかりと持っていた。そいつは良く言っていた。差別がない世界を作りたいと。当然聞いていた者のほとんどは笑っていたが、アイツはまだそれが実現できると信じている。正直敵わないと思った」

 

トゥードゥーはそれを聞いて思ったのだ。

 

この男は目先のことしか考えてない自分とは違うと。その先にある未来を常に考え、行動してきたのだと。ほとんど全員に信じてもらえないとしても。

 

「君たちも同じだ。夢がある。理想がある。そこへの道が分からないとしても、迷いながら夢に向かって進んでいる君たちは、賞賛に値する人間だ」

 

「トゥードゥーさん…」

 

臭いことを言ってしまったなと笑うトゥードゥーの言葉を聞いて、スザクは返す言葉を探す。自分たちはそんな大した人間ではないと言うべきだろうか。それともそう言ってくれてありがとうと言うべきだろうか。

 

ユキヤが零したジュースをブリタニア人に飲ませるという金持ちの道楽みたいなことが行われている中で続けられていくシリアスに、リョウの顔面に青筋が浮かぶ。

 

「おい、お前らいい加減にしろよ!?何でこの状況でシリアスを続けられんだよ!!止めろやぁ!!ツッコミ放棄したんじゃねぇぞ、テメエラ!?」

 

「ありがとうございます、トゥードゥーさん。貴方のお陰で気付けました」

 

「何も気付いてないからね、ユフィ様!目の前で行われてる惨劇に全く気付いてないからねユフィ様!!」

 

スザクが戸惑い、リョウが吠える中、ユフィは自らの答えをトゥードゥーに述べようとする。

 

「私はこの状況を見て弱気になっていました。そうですね。夢は見なくなったら終わりです。だから私はここで宣言したいと思います」

 

「ふっ。良いだろう。聞かせてくれ。君の思いを」

 

トゥードゥーの言葉にユフィはニコリと笑って宣言する。

 

「はい。私は誓います。これから先に何があっても私は私の思いを貫くと。この世界を平和な世界にしてみせます」

 

ユフィは誓った。どんな困難があったとしても、この世界を平和な世界にしてみせると。

 

そんな彼女がスザクには輝いて見えた。未来を信じて進む彼女の強さは、スザクには決して持ち得ないモノだったからだ。

 

彼女は何があっても進むだろう。誰が反対したとしても。誰も信じてくれないとしても。頭上から車が降ってきたとしても。

 

…いや、ちょっと待て。

 

将来ではなく、たった今ユフィの頭上から車が落ちてきた。ユフィの姿は車に埋もれて目の前から消える。

 

残された者たちが呆然とする中、リョウとアヤノは思った。

 

((思いを貫く前に身体を貫かれちゃったんだけど、皇女様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!))

 

自分たちは何も悪くないのだが、このままでは誘拐犯どころか皇女殺人犯に間違われてしまいそうな現状に、リョウとアヤノは再び全身から冷や汗が吹き出し、考える前に行動した。それは生物の生存本能と言うべきもの。つまり

 

「やってられるか、チクショォォォォ!!逃げるぞ、ユキヤ!アヤノ!」

 

「も、もちろんだ!このままでは非常にマズイ!」

 

逃げの一手である。人としては最低だと思う。

 

もちろん、そんな行動を正義の人間であるスザクが認めるはずもなく、リョウとアヤノの身体を掴んで止める。

 

「何をしているんだ!助けないと!」

 

「どんだけ馬鹿なんだお前は!?完全に潰れてるって絶対!このままじゃ俺ら捕まるどころか死刑への道の一方通行だぞ!!こんなもん逃げるしかないだろうが!」

 

「はーなーせー!私たちは無関係だ!正義の味方はお前一人でやっていろ!私たちはそんな者に興味はない!生きるのが第一だ!」

 

「生きるだけの人生に何の意味があるんだ!」

 

そんな対極の話し合いが行われている中、三人の肩に手が置かれる。

 

え?と思った三人は後ろを振り返ると警官が立っていた。

 

警官は後ろの車を指差し、お前らがやったのか?と言葉ではなく態度で示す。

 

リョウとアヤノの顔は完全に引き攣り、言い訳をしながらユキヤとトゥードゥーの姿を探すが、二人の姿はそこにはなかった。自分らが捕まってるのを見ながら囮にして逃げたらしい。

 

呆然とする中、犯人と勘違いされた三人の手には手錠がかけられる。

 

あいつら殺す!とリョウとアヤノは心に誓いながら、スザクと一緒に連行されていった。心底哀れである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「助けないで良かったのか?」

 

離れた場所で袋を取った藤堂は、ゲームをしているユキヤに声をかける。

 

「大丈夫でしょ。見た限りだけど、ユフィは直撃避けて吹き飛んでただけみたいだから。皇女様が庇ってくれれば大した罪にはならないでしょ。実際、何もしていないし」

 

それもそうだなと考えた藤堂は、ではなと言いながらユキヤの元から去ろうとする。

 

そんな藤堂にユキヤは問いかける。

 

「僕からも一つ良い?あんたなら彼女が第3皇女だってことは見た瞬間分かってたでしょ?なのに、何で何もしなかったの?」

 

ユキヤからの問いに藤堂は少し笑いながら答える。

 

「何のことだ?私が会ったのは平和を愛するブリタニア人の女性だ。皇女など知らんな」

 

「あんたがそれで良いなら良いけどね。レジスタンスとしては失格だと思うけど」

 

「そうかもしれんな…だが私は親代わりとして息子に恥じない生き方をしたいと思っているのでな。まあ、アイツが私のことなど見ているとも思えんが」

 

「僕はその息子のことは知らないけど、その息子はちゃんと見てると思うよ。アンタの背中を」

 

「そうだと良いがな。では、もし今後その息子に会うことがあれば伝えてくれるか?

 

 

 

 

 

 

あまり無茶をするな。とな。私が言っていたと言わないでくれると助かる」

 

そう言うと、藤堂の姿はユキヤの視界から消える。

 

藤堂の言葉を思い出したユキヤは若干苦笑しながら呟く。

 

「全く…分かりにくい似た者親子だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




コーネリアと愉快な仲間たちの話

コーネリア「ユフィは…ユフィはどこだ」ヨロヨロ

武官A「殿下!ユーフェミア様がいらっしゃいました!」

コーネリア「おお!」パァと顔が輝く

ギルフォード「姫様!ユフィだよ?」ユフィの女装姿

ダールトン「姫様!私が本物のユフィだよ?!」ユフィの女装姿

コーネリア「私の前から消え失せろ!」地平線の彼方に蹴り飛ばす

ギルフォード・ダールトン「「どっちが悪かったのですかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」


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44 他人から見たら羨ましくても本人からすればそうでもないことって結構ある

なかなか登場できなかったあの人たちの登場です!


何故自分がこんな所に来なくてはならないのだろうか。

 

彰の心中は文句で一杯だった。

 

場所はよく分からん所の地下。目隠しされて連れて来られた訳だが、何の説明もなく30分くらい待たされている。

 

逃げようかなと考えていると、目の前のドアがスッと開き中から黒服の男が出てきた。

 

「準備ができた。お忙しい中、会ってくださるのだ。失礼のないように感謝を持って接しろ」

 

その言葉を聞いた彰は無言で手を上げて発言する。

 

「分かりました。失礼のないように、会わないで帰らせていただきます。というわけで失礼します」

 

「いや、それが失礼だからな!?」

 

黒服の男は帰ろうとする彰を慌てて止める。

 

どうやら、逃げさせてはくれないらしい。

 

彰はため息を吐く。藤堂さんも面倒な命令をしてくれたものだ。

 

 

 

 

 

 

〜3日前〜

「お会いしていただけて、光栄と言うべきかな?片瀬少将。藤堂中佐」

 

怪しげな仮面を被った男は二人の女を引き連れて片瀬と藤堂の前に現れた。

 

その姿を見て片瀬と藤堂は驚きに目を広げる。

 

一方、側で立っていた彰の顔はそれを見て引き攣る。やってくれたな、あの野郎。

 

意外な人物の登場に片瀬は言葉を失うが、藤堂は何とか冷静さを保ち話を始める。

 

「まさかの人物が出てきたものだ。君がシンジュクの指揮を取っていたと認識して良いのかな、ゼロ?」

 

「正確に言えば違うな。あの時の私はゼロではなかった。あの時はただの…世間知らずのブリタニアの学生だったよ」

 

そこまで言うとゼロは自ら仮面を外す。そこから現れたのはブリタニア人の子供であった。

 

予想外過ぎる行動に藤堂も後ろに立っていたカレンも絶句する。

 

これによって場の主導権は完全にブリタニア人の子供、いや、ルルーシュに握られた。

 

それを把握したルルーシュは、ニヤリと笑う。

 

ここまでは全てルルーシュの読み通り。それを認識しているのは、この場においてルルーシュ以外では彰のみであった。

 

「では、改めてご挨拶させていただこう。私がゼロ…ルルーシュだ」

 

彰は予想された最も面倒な展開になったことに内心でウンザリしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故、こんなことになったのかと言うと話は更に2日前に遡る。

 

藤堂たちから彰はシンジュクの件について、尋問を受けた。絶対に話せないことは完全にしらばっくれたのだがシンジュクで指揮を取っていた者の存在については流石に知らないで通すことに無理があった。

 

なので妥協案として、本人が会うと言ってくれたら場を設けることに同意させた。ルルーシュが会わないと言えばそれで話を終わらせようと思ったからだ。

 

かと思ってたのに、ルルーシュは「思ったより遅かったな。では明後日に会うことにしよう。場所はお前が決めたら良い」と言いやがった。それを聞いて彰は顔を強張らせて「この性格破綻者が…」と呟いたが、ルルーシュは悪そうに笑って「何のことだ?お前が会わせようとしたんだろう?」と返答してきやがった。

 

この男の厄介な所は彰がルルーシュと藤堂たちを会わせたくない理由を全て分かった上で会おうとしていることだ。性格が悪いにも程があると思う。

 

そんな彰の心中が顔に出ていたのか、ルルーシュは平然と答える。

 

「これはお前らの組織の根本的な問題だ。何時かは問題になっていたさ。俺はそれを加速させるだけに過ぎない。遅いか早いかの違いだ。避けようと考えることに無理がある」

 

まあ、言われずともお前なら分かっていると思うがなと言うルルーシュの圧倒的な正論に彰も黙るしかない。

 

側で聞いていたカレンは意味の分からない二人の会話に疑問符を浮かべていたが、その様子が唯一の彰の癒しだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

完全に主導権を握ったルルーシュは、片瀬少将から日本解放戦線からの協力を取り付けた。

 

その代わり何かあったら喜んで協力させてほしいなどと言う思ってもいないだろうことを平然と言うルルーシュに、彰だけでなく後ろで控えているカレンも若干ジト目を向けていた。

 

片瀬少将は完全にルルーシュの提案を鵜呑みにし、自分たちにとって都合の良い展開になったという感じで笑っている。この性悪男がそんな自分たちに不利な提案を無償でするわけがないんだがなぁ。

 

とは言え、ルルーシュの言葉に嘘はないだろう。ただ、その行動の真意を言っていないだけだ。まあ、これは交渉なので言ってしまえば、真意を読み取れていない片瀬少将と藤堂さんに問題があるという話になるのだが。

 

その後、解散となったがその直前にルルーシュは片瀬少将に「ああ、言い忘れていました。片瀬少将。当然ですが『何があっても私の正体は内密にお願いします。藤堂中佐にもしっかりと言い含めておいてください』」と言いながらしっかりとギアスをかけていた。本当に抜け目のない奴である。

 

しかも藤堂さんにはかけないで片瀬少将にだけかける所からルルーシュも自分と同じ未来を予想していることが感じ取れた。もうやだ、コイツ。

 

加えて、彰は藤堂さんからゼロと協力することになったことをキョウトに伝えてくれと言われて、行きたくもないのにキョウトまで連れて来られることになった。踏んだり蹴ったりである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分がここに居る原因を思い出した彰は再びため息を吐く。ああ、面倒臭い。この上更に面倒臭い人に会うことになるとか嫌だなぁと考えながら連れて来られた扉の奥に案内される。すると奥には

 

「まあ、ゼロ様!お久しゅうございました!感動の再会に妻として私は何をすれば良いでしょうか、ゼロ様!」

 

「いや、俺はゼロじゃないです。神楽耶様」

 

皆さんご存知のロリ姫が顔を輝かせながら待っていた。彰の苦手な人ランキング堂々2位の登場である。

 

「ゼロ様ったら、そんな謙遜を。何時あなた様が私の期待に応えて立ち上がってくれるのかと私は心待ちにしておられましたのよ?」

 

「いや、立ち上がってないです。神楽耶様」

 

「妻として私は立ち上がった夫を見て何をすれば良いのでしょうか?でも安心なさってくださいゼロ様!私はあなたになら身も心も差し上げる覚悟はできています」

 

「いや、俺が受け取る準備ができてないです。神楽耶様」

 

「ゼロ様が既に結婚なさっていることは承知しておりますが、私はそんなことには拘りませんわ!愛があればそんな問題など関係ないのです」

 

「ねぇ、さっきから会話が成立してないんですけど神楽耶様。何ですかこの言葉のドッジボール」

 

相変わらず話を聞かないお姫様である。そこら辺に俺の意思とか落ちてないかな。

 

そんな風に彰が思っていたら突然首筋に刀を突きつけられる。何なのだろうと思っていると、そこには見知った顔の男がいた。その男はそのまま呟いた。

 

「神楽耶様の御前だ。言葉遣いに気を付けろ」

 

男の脅迫めいた言葉にも全く動じずに彰は、懐かしいと言わんばかりにその男に声をかけた。

 

「おお!ロリト君!ロリト君じゃないか!久しぶりだな!相変わらずのロリっ娘との犯罪スレスレのイチャイチャライフを楽しめているかいって、危ねぇな、おい!」

 

彰が話しかけている最中、ロリト君ことアキトはそのまま無言で突きつけていた刀で彰に斬りかかったがギリギリで彰に交わされてしまった。

 

「避けるな。上手く死ねないぞ」

 

「おいおいロリト君よ。恩人に向かってその態度は感心しないな。男のツンデレは需要がないぜ?」

 

「恩人?迷惑をかけられた記憶しかないんだがな。俺たちがEUに帰れなかったのは誰のせいだと思っている?」

 

「考えが浅いんだよ。良く考えろ。あのままだとお前金髪巨乳という一つの景色しか見えなかったのに俺のおかげで黒髪貧乳という真逆の景色を見ることもできたんだぞ?良かったじゃないか。他のロリコンの羨望の的だぞ」

 

穏やかに会話をしているように感じるが、先程からアキトは彰に斬りかかり続けており、それをギリギリで避けながら会話を続けている。変に器用な二人である。

 

そんな二人の様子を眺めていた神楽耶はニッコリと微笑みながら会話に参加した。

 

「まあ、ダメですよアキト。殺るなら首からいってくれないと」

 

「申し訳ございません、神楽耶様。では首狙いでいきます」

 

「あれ?この主人の言葉おかしいよね?完全に俺のこと殺す許可出しちゃってるよね?」

 

「私のことを貧乳呼ばわりする夫には、仕置きが必要ですわよね?」

 

「仕置きって段階じゃないですよね、それ。完全に人生にピリオド打たせる気ですよね、それ」

 

「心配なさらないで良いですわ、ゼロ様!あなた様なら私は…私は…」

 

赤くした顔の頬に手を当てうっとりとした表情で神楽耶は告げる。

 

「首だけになっても愛します」

 

「愛が重いよー、神楽耶様。重すぎて潰されそうだよ、神楽耶様」

 

「では、神楽耶様の許可も出た…覚悟しろ。…ああ、そうだ一応確認しておくが」

 

そう言うとアキト改めて剣を構え直して言葉を続ける。

 

「首の貯蔵は充分か?」

 

「充分なわけねぇだろ、このバカ。首は一個しかねぇんだよ、このバカ」

 

彰の言葉も効かずにアキトは彰に再び斬りかかる。くだらないデスゲームが幕を開けた。

 

このデスゲームは一時間以上続いたらしい。

 

 




感想欄でついに問題作とまで言われたことに笑ったけど、あんまり反論できないことに気付いた。


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45 告白は場所と時間を考えてからやれ!

この作品は基本的に紅月家に優しい世界…つまりカレンにも優しい世界…そのはずなんだよなぁ…


「そうですか。日本解放戦線とゼロ様が手を組みになったと。個人的には大賛成ですが、解放戦線としては悪手じゃありませんか?彰様」

 

「ここまでいったらなるようにしかなりませんよ、神楽耶様」

 

デスゲームから暫くして、ようやく本題に入れた彰は神楽耶の所に来た理由を話し始めた。その過程で彰がゼロではないことをとりあえず受け入れた(完全に信じてはいない模様)神楽耶は、解放戦線の行動に疑問符を浮かべるが、彰としてはもうどうしようもない問題だと匙を投げるしかない。

 

この問題はルルーシュが言っていたように、避けようがない問題だ。今回の話はその問題を加熱させただけだろう。

 

神楽耶もそう思ったのか、話をスッと切り替えた。

 

「少なくともゼロ様と面識がある彰様から見れば、今回の問題はどっちにも付きづらいですわね。下手なことをすれば、ゼロ様と対立することになりかねませんし」

 

「俺一言も知り合いだなんて言ってないと思うんですが?」

 

「まあ!知り合いじゃないと?と言うことは、たまたま彰様が戦闘に参加したシンジュクで、たまたまクロヴィスが亡くなって、たまたまその時の犯人がゼロ様で、たまたまゼロ様が解放戦線とお会いになられて、たまたまそれを彰様が私にお知らせする役目を授かったと?凄い偶然ですわね。それならたまたま明日世界が滅んでブリタニアが滅亡する可能性もありそうですわ」

 

ニッコリと微笑んで嫌味のオンパレードを捲したてる神楽耶に、彰の顔は引き攣る。

 

だから嫌なんだよ、この人に会うの。

 

無駄に鋭いんだもの。無駄に優秀なんだもの。

 

彰は降参とばかりに両手を挙げる。

 

「はいはい。認めますよ。確かに俺の知り合いですが、正体は死んでも言えませんので脅しても無駄ですよ」

 

「大丈夫ですわ。私時間の無駄は嫌いですし、ゼロ様に直接お聞きしますから。もちろん実は彰様でしたーってオチもウェルカムですわ!」

 

「ねーですよ、そんなオチ」

 

「ここでは、そう言うことにしときましょうか。では、話が変わりますが、あの裏切り者のクズやろうが、ゼロ様に助けられた恩義も忘れて、ブリタニア兵として学園生活を送っているという話をアキトから聞いたのですが、本当なのですか?」

 

「噂によるとそうですね」

 

カレンとナナリーから聞いたので間違い無いのだが、ここではそういうことにしておこう。

 

「そうですか。お会いしたことは?」

 

「二度ほどありますね」

 

「ダメですわ!ちゃんと害虫は駆除しておかないと!」

 

「相変わらずですね、あんた」

 

先程から露骨に嫌悪感を出している神楽耶を見て、彰は嫌われてるなぁと呟く。チラリと後ろに立っているアキトを見ると、ジッと俺を見ていた。その目が何とかしろと言っているのだが、無茶苦茶にも程がある。卵焼き係として苦労してるって言ったら許してくれるかな。

 

ぶっちゃけ、彰が若干スザクに甘いのはこれが原因だったりする。ここまで嫌われてると優しくしてあげたくなるものだ。

 

「まあ、殺すかどうかはともかくスザクの周辺には注意が必要ですね。一応手は考えてるんで監視くらいはしときますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

所変わって場所はアッシュフォード学園。

 

全く違う場所で散々罵倒されていたが、スザクは案外すんなりと学園のみんなに受け入れられた。

 

日本人だって別に良いじゃない!と空気を読まずにスザクに積極的に話しかけたシャーリーと、ルルーシュの幼馴染と聞いてから目を輝かせてスザクに関わるようになったニーナの存在が大きかったのだ。

 

その二人があまりにも自然とスザクと話すものだから周りも差別などできなくなり、スザクも予想できなかったくらいに平凡な学園生活のスタートを切ることができたのだが

 

(頭良い癖に肝心の所が抜けてるのよね、アイツは本当に!)

 

そんなこととは関係なしに、トラブルというものは起きるものなのである。

 

アッシュフォード学園の廊下を必死の形相で走りながら、カレンは頭の中でルルーシュに文句を言いまくっていた。

 

何故カレンがそんなに必死になっているのかと言うと、ルルーシュからゼロのお面を被った猫を探すように言われたからだ。

 

何でそんなことになるのよ!馬鹿じゃないの!?と散々カレンはルルーシュに文句を言ったが、だからと言って手伝わないという選択肢はカレンには存在せず、嫌でも手伝うことになってしまった。

 

誰かに見られでもしたら問題になるのは明らかなので、二人は別れて先程から懸命に探していた。そんな折に

 

『はーい、皆さん!生徒会長のミレイです!今から報告がありまーす!』

 

校内放送が鳴り響いた。

 

カレンは嫌な予感がした。普段からボケに振り回されているが故に身に付いてしまった悲しい直感である。

 

『今から特別イベントです!校内にいる猫を探し出した人に!来年の部費を2倍にする権利と、生徒会メンバーの誰かからキスをしてもらえる権利を差し上げます!』

 

カレンの嫌な予感が的中してしまった。何を考えているのだあの会長は。カレンは自らのキスが権利に加えられたこともあり、更に必死になりながら猫を探すために移動する。が、校内放送はそこで終わりではなかった。

 

『ミレイちゃん』

 

『ん?何?ニーナ?』

 

『キスの権利なんだけど、それって私が生徒会の人に別の人にキスするように命じても良いの?』

 

『んー、そうねー。ちなみに誰が誰にしてもらう予定なの?』

 

『ルルーシュがスザクにマウストゥマウスするの』

 

『ニーナそれは…面白いから全然おっけー!』

 

『ありがとう!ミレイちゃん!じゃあ、ちょっとアナウンスするから貸して。学校中の我が同胞に告げる!』

 

そう言ったニーナは一拍置いてから続きを話す。

 

『人は平等じゃない!男で男が好きなもの!女で女が好きなもの!児童が好きなもの!老人が好きなもの!趣味は多様だ!だからこそ、人はそれを主張し、自らの感性に従わなければならない!常識の壁を乗り越えるのよ!その先に未来がある!オールハイルBL団!』

 

ニーナの声で学校中から怒号が鳴り響く。オールハイルBL団!オールハイルスザルル!などの声が色んなところから聞こえてくる。もうこの学校BL学園とかにした方が良いんじゃないだろうか。

 

カレンはそんなことを考えて学園を辞めたくなったが、そんな場合ではないと気持ちを引き締める。

 

しかし、圧倒的に人手が足りない。どうしようかと考えていると、カレンの携帯に電話が鳴る。相手はC.C.であった。

 

「C.C.!何なのよ!」

 

『校内放送が聞こえてな。大変だろうと思って手伝いのために電話をかけた』

 

「そんな暇あるならあんたも探すの手伝いなさいよ!」

 

「あれ!?カレンも猫を探してるの!?」

 

カレンの大声が聞こえたのか、遠くからシャーリーが近付いてきてカレンに話しかけた。

 

咄嗟のことで、何と言ったら良いものかとカレンは考えるが電話越しのC.C.が助言をしてくる。

 

『カレン。ここは無難な言い訳で切り抜けろ。復唱しろ!もちろんでしょ!ルルーシュのくちびるは私のものなんだから!』

 

「わ、わかったわ!もちろんでしょ!ルルーシュの唇は私のものなんだからって言えるかぁぁぁぁぁぁぁ!!!??」

 

真っ赤な顔をしたカレンは思わず携帯を地面に投げつける。

 

しかし、その言葉は既にカレンの口から大部分が放たれており、当然側にいたシャーリーの耳にも届いていた。

 

「え!?カ、カレン?今のはどういう意味?」

 

「嘘よ、シャーリー!冗談よ!冗談に決まってるでしょ!」

 

「そんな風には聞こえなかったよ!カレンばっかりずるいじゃない!カレンは好きな時にできるんだから、こういう時には私に譲ってよ!」

 

シャーリーの言葉で赤かったカレンの顔は更にリンゴのように赤くなり、ほとんど反射で反論する。

 

「ば、バカじゃないの!?そんなことしないわよ!シャーリーは私とルルーシュのこと何だと思ってんのよ!?」

 

恋人に決まっているだろうと電話越しのC.C.は思ったが、声には出さない。

 

「じゃあ、別にカレンはこのイベントに参加しなくても良いじゃない!参加するってことは、そういうことでしょ!?」

 

「違うわよ!このイベントには私の唇を守るために参加してるのよ!」

 

「じゃあ、心配しなくても良いわよカレン」

 

「そうね。心配いらないわ」

 

「「ニーナ!?会長まで!?」」

 

真剣に話し合っていたため気付かなかったのか、何時の間にかニーナと会長と他の多くの生徒が側に来ていた。

 

不吉な予感を感じながらも、カレンは二人に言葉の真意を聞く。

 

「し、心配いらないって何がですか?」

 

「キスの件だよ。私たちが猫を見つけたらルルーシュとスザクにキスをしてもらうから、カレンは心配しなくても大丈夫」

 

「それでも心配なら、会長権限でカレンだけキスの対象から外すことにするわ。どう?これならカレンはこのイベントに参加しなくても良いんじゃない?」

 

確かにそれなら、先程の理由ではカレンがこのイベントに参加する必要はなくなる。

 

「そ、そんなことありません!」

 

「何で?どうして?」

 

物凄い良い笑顔になりながらミレイはカレンに追求する。

 

その笑顔をブン殴ってやりたい衝動にかられながら、カレンは言い訳を探す。

 

カレンは自らがこのゲームに参加する本当の理由を言うことはできない。探している猫がゼロの仮面を被っているなどと言えるわけがないのだから。

 

しかし、いくら考えてもカレンには一つの解しか見出せない。

 

そんなことを言いたくはない。だがしかし…しかし…現状はそれしか選択肢がない。

 

カレンは覚悟を決めた。自らの恥ずかしさなど何だと言うのだ。私はアイツを絶対に守ると誓ったのだ。そう、これはその一つなのだ。

 

真っ赤の顔のままカレンは大きく息を吸う。そして

 

「ど、ど、ど、ど、どうしても何も決まってるじゃないですか…他の誰が相手でも譲る気はないんです!!ル、ル、ル、ルル、ルルーシュ君の唇は私のものって決まってるんだからぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

盛大な愛の告白をした。

 

一瞬の間が空く。その後、湧き上がる歓声と悲鳴。

 

「愛の告白が宣言されましたー!彼女として!彼を愛する一人の人間として!彼氏の唇は誰にも渡さないという強い愛!これぞまさに青春!会長として私はここまで熱い思いを間近に感じるのは初めてです!これはアッシュフォード学園に未来永劫残ることになるでしょう!」

 

「やっぱり、最大の関門はカレンか…皆!負けられないよ!」

 

「結局、ルルの唇のためだったんじゃない!でも、カレン!今回は譲ってもらうからね!」

 

皆が思い思いの言葉を残しながら、その場を去っていく。

 

残されたカレンは真っ赤な顔のまま、誰か私を殺してくれと思いながら立ち尽くしていた。

 

そんなカレンに電話越しのC.C.が励ましの声をかけた。

 

『うわぁ…本当に言っちゃったよ、コイツ』

 

「アンタまじで何時かぶっ殺すわよ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 




その後のカレンとC.C.

C.C.「良い音声が取れた。良いイベントだったよ」

カレン「ちょ、アンタ録音してたの!?まさか、ネットに流してたりしてないわよね!?」

C.C.「そんな非常識なことするわけないだろ」

カレン「そ、そうよね。良かった」安心のため息

C.C.「彰とルルーシュに送っただけだ」

カレン「ネットに流された方がマシだったわよぉぉぉぉぉぉ!」恥ずかしさでのたうちまわる


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46 若いうちの無茶は良いけど、ほどほどにしておけ!

今回で終わらせるつもりだったんだがなぁ


「おい、カレン!来てくれ!こっちだ!」

 

探していた猫を特定の場所に追い詰めたルルーシュは、挟み撃ちにしようとカレンを呼び出した。

 

危うい所だったとルルーシュは安心するが、呼び出したカレンの様子がおかしいことに気が付いた。

 

真っ赤な顔で、少しフラつきながら走っていたからだ。

 

流石のルルーシュも少しは心配したのかカレンに問いかけた。

 

「一体どうしたんだ?」

 

「何でもないわ…ただ…」

 

フッとカレンは悟ったように笑った。

 

「アンタと一緒に世界を壊したくなっただけ」

 

「絶対に何かあっただろ」

 

少しの間に世界を壊したい病が発症している自分の恋人(笑)に、ルルーシュは理由を聞くことはしない。

巻き込まれたくないからである。実は既にメチャクチャ巻き込まれていることを本人は知る由もない。

 

「まあ、良い。あの机の下だ。俺が追い立てるからカレンは反対側に立って捕まえろ」

 

「…わかった」

 

まだダメージは抜けきっていないが、何とか返事をしたカレンは言われるがままにルルーシュの反対側に立つ。

 

するとルルーシュに追い立てられた猫が予想通りにカレンの所に近づいて行く。

 

後は捕まえるだけと思い、確保しようとするが、もし自分がこの猫を捕まえたらどうなるのだろうかと考えを巡らせる。

 

〜カレンの妄想開始〜

 

① カレン学校猫を捕まえた!このイベントの勝者はカレンです。

 

② カレンが勝者なら欲しいのはルルーシュのキスよね?(学園の全員の意見)

 

③ 公開イベントなんだから当然キスはみんなの前でやるのよね?(学園の全員の意見)

 

④ みんなの前でルルーシュとキス!ハッピーエンド!

 

〜カレンの妄想終了〜

 

「いや、何処もハッピーエンドじゃないわよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

「突然何を叫んでるんだ!?早く捕まえろ!!」

 

「捕まえられるかぁぁぁぁぁぁぁ!!アンタそんなに私のファーストキスが欲しいの!?」

 

「何を意味がわからないことを言っている!?おい、脇に逃げたぞ!」

 

普通に考えればゼロの仮面だけ取って、猫自体は捕まえなければ良いのだが、顔を真っ赤にしてパニックになっているカレンにその回答は導き出せない。

 

「脇に逃げたから何だって言うのよ!?猫と私とどっちが大切なのよ!」

 

「何で私と仕事とどっちが大切なのよ的な質問をされなきゃならないんだ!?馬鹿なこと言っていないで現実を見ろ!」

 

二人がコントのようなことをやっている間に、猫を追ってきたニーナを含めたBL団が大量にやってきた。余りの人数の多さに流石の二人も争いを止める。

 

「BL団!厄介な奴らがきたわね」

 

「…何だそのBL団とは?」

 

「アンタ放送聞いてなかったの?聞きたいなら教えるけど」

 

「…いや、頭が痛くなって終わりそうだから良い」

 

ルルーシュはスキル『悟りという名の諦め』を覚えた。その代わりに『常識』を失った。

 

そんなもんがこの世界に今まであったのかどうかは不透明だが。

 

「「「「「猫ゲットォォォォォォ!!!」」」」」

 

BL団は全員が息を荒くしながら目的のためにひた走る。ハッキリ言って気持ち悪いが、その決意は並外れたものであった。その決意の目的が余りに残念なことを除けば大したものである。

 

「お願いルルーシュ。あの人たちにギアスをかけたって言って。そうじゃないと、私はこの学園を辞めたくなるから」

 

「俺もその可能性にかけて記憶を辿ったが、無理なようだ。まあ、そのおかげであいつらを止めることが出来るんだがな」

 

ルルーシュはそう言うと、手に持っていたビー玉のようなものを頭上に向けてバラマキ、その反射を利用してギアスをかけた。

 

『全員猫探しを止めろ』

 

「・・・世界一無駄なギアスの使い方ね」

 

「ほかに方法がないだろう」

 

ルルーシュもこんなことにギアスを使いたくはなかったがそうも言っていられなかった。

 

何はともあれ、これであいつらの動きは止められるはずだ。

 

だが、ニーナを筆頭にBL団の何人かはギアスをかけられても尚、前に進もうとしている。

「何!?ギアスに逆らったのか!?」

 

「嘘でしょ!?何で!?」

 

「仮説だが・・・どうしてもやり遂げたいという強い意志があったからだろう。その意志の強さがギアスの命令に抵抗したんだ」

 

「凄いわね・・・内容を知らなかったら尊敬してたわ」

 

尊敬すべきだろうか、それとも軽蔑すべきだろうかとカレンが思考を巡らしていると、目の前に凄い速さで通過する、女を抱えた男がいた。その姿を見てルルーシュは声を荒げる。

 

「スザク!?シャーリーまで!?何やってるんだお前ら!?」

 

「シャーリーにはお世話になってるからね。お礼に猫探しに協力してるんだ」

 

「・・・」

 

「いや、その恩を返す相手気絶してますけど!?あんたの化け物みたいな身体能力で一般人振り回したら、そうなるに決まってんでしょうが!」

 

「お前も似たようなものだろう」

 

「何か言った?ルルーシュ君?」

 

「い、いや、何でもない」

 

ニコリと笑って質問を投げかけてくるカレンに、心の声が漏れていたルルーシュは慌てて否定する。二人の力関係が分かる言葉である。

 

「二人も猫を探しているみたいだけど、負けられないよ。じゃあ、これで」

 

「待て!お前何で猫の場所が分かるんだ!?」

 

「分かるよ。これがあるからね」

 

そう言うとスザクは自分の眼鏡の機能を利用する。その機能に気付いたルルーシュは目を見張る。まさかアレは

 

「猫追跡眼鏡か!!」

 

「そうだよ。流石だねルルーシュ」

 

「いや、何でそんなもんがあるのよ!!しかも微妙に違うし!」

 

「ロイド博士の発明品さ。学生になった僕のために色んな装置を作ってくれたんだ」

 

「100%学生生活に要らない装置よね、それ!?」

 

そうは言うものの、今の状況では役に立つ機能であることに間違いはなく、スザクはシャーリーの意思を大切にして、猫を追うために階段を上がり始める。できれば体のことももう少し大切にしてあげて欲しい。

 

「てか、どうすんのよ!?このままじゃ、アイツに猫捕まえられちゃうわよ!?」

 

「ふん、舐められたものだな」

 

ルルーシュはそう言うと、何処からか持ってきた靴を装着する。何なのそれ?というカレンの無言の問いにルルーシュは答える。

 

「ジャンプ力増強シューズだ」

 

「また微妙に違う!?何でアンタまでそんなもの持ってんのよ!?」

 

「気にするな。捕まれカレン!この靴は足のツボを刺激して、持ち主のジャンプ力を限界以上に引き上げてくれる!」

 

ジャンプの体勢に入ったルルーシュにカレンは慌てて捕まると、同時にルルーシュは信じられない高さまでジャンプした。そのスピードは先に階段を登っていたスザクを追い越すまでであった。

 

こんな理不尽が許されて良いのかは分からないが、ともかくスザクを抜かし、猫を視界に捉えたカレンは捕まっていたルルーシュの背を叩き、もう一回飛ぶように促す。

 

「凄いわよルルーシュ!猫の姿が上に見えたわ!後一回飛べば捕まえられるわよ!さあもう一回ジャンプ力増強シューズでジャンプを!」

 

「…すまんが、それは無理だ」

 

「へ?」

 

カレンが疑問の声を上げてルルーシュの姿を見ると、地面にうつ伏せになって倒れていた。

 

その姿をカレンは死んだ目で見つめる。

 

「何やってんのあんた」

 

「ジャンプ力増強シューズの欠点だ。高く飛べるようになったところで筋肉まで増強されたわけではない…着地の衝撃に俺の体が耐えられないから、使用後は暫く動くことができなくなる…」

 

「アホかぁぁぁぁぁぁぁ!!それが分かってるなら使うんじゃないわよバカモヤシィィィィィィィィ!!」

 

そんなことを言っている間にスザクがカレンとルルーシュを追い越して先に向かう。それを見たルルーシュは、カレンに自分を置いて猫を追いかけるように言う。

 

「行けカレン!ここは俺が何とかする!お前だけでも先に行くんだ!」

 

「言われなくても先に行くわよ!アンタ格好つけてるけど、全部アンタの馬鹿が原因でこうなってるんでしょうが!!!」

 

言いたいことは山ほどあるが、カレンはスザクを追って走り出す。

 

メチャクチャどうでも良い戦いはクライマックスを迎えようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次でこのイベントも終わりです!


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47 かなり昔のキャラがイキナリ出てくるとこいつ誰だよってなるよね

かなり昔の感想見たらこのSSのことをルルカレって言ってる人いましたけど、今でもそう言ってくれるのかな?いや、無理だろう(断言)


「待ちなさいよ、スザク…君!!」

 

先行していたスザクは正直驚いた。あのカレンさんが自分を追いかけて走ってきていたからだ。確か彼女は病弱なはずなのだが。

 

「カレンさん?驚いた。足が速いんだね。病気がちだって話だけど瞬発力はあるんだ?」

 

「え!?え、ええ。おほほ。体力はないんだけどね」

 

ぎこちなく笑いながらカレンさんは答えてくれる。何となく変な感じがするけど、まあ、そういうこともあるのだろう。

 

「そうなんだ。でも悪いけど、手加減はできないよ!」

 

「女子には優しくしなさいって習わなかったのかしら?」

 

「普通ならね。だけど、手加減して勝てる相手じゃなさそうだ」

 

「お褒めに預かり…光栄ね!」

 

人類の枠を超えた化け物二人の徒競走が始まった。しかし、ナイトメアならともかく肉弾戦となると、カレンには少し不利である。

 

悔しいが、その事実を認めていたカレンはどうすべきか考えを巡らせる。

 

と言うか、そもそも自分が猫を確保したら、学園中の生徒の前でルルーシュとキスをすることになってしまう。

 

なのでルルーシュに猫を確保して貰うのが一番良いのだが、あの馬鹿モヤシはジャンプ力増強シューズとかいう問題しかない道具を使用した反動とかで、暫く動けない。

 

本当に何をやっているんだアイツはと考えた所で、カレンの脳にヒラメキが生まれた。

 

カレンは全速力で自分が今走ってきた道を逆走し、ルルーシュの所まで舞い戻る。カレンのヒラメキなど知らないルルーシュは慌てて戻るように言うが、カレンは説明している暇はないと強引にルルーシュが履いているジャンプ力増強シューズを脱がして自らに装着する。

 

装着したカレンは倒れているルルーシュを抱えてジャンプの体勢に入る。

 

ここまでいけば、カレンが何を考えているのか嫌でも分かったルルーシュは、必死でカレンを止めようとする。

 

「お、おい馬鹿よせカレン!ジャンプしたらお前も暫く動けなくなるんだぞ!?俺も動けないし、飛んだ所で誰が猫を捕まえる!?」

 

「大丈夫よ。しっかり考えてるわ。とにかくアンタは落ちないように、私にしっかり掴まってなさい!」

 

言うと同時にカレンは舞い上がる。

 

そのジャンプは先ほどのルルーシュのものを遥かに凌駕していた。当たり前だが。

 

舞い上がったカレンの目は、階段から外に出ようとしている猫を捉えた。その頭にはしっかりとゼロの仮面が被せられている。

 

それを確認したカレンは空中でルルーシュを掴みながら、グルグルと回転し始めた。掴まれているルルーシュは、嫌な予感を感じながら恐る恐ると言ったようにカレンに問いかける。

 

「お、おい?何をするつもりだ?まさか…」

 

「そのまさかよ。そもそもアンタが猫に仮面を盗まれたのが原因なんだから、しっかりと…責任取って来いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「後で覚えていろ貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

ニヤリと笑ったカレンは全力でルルーシュを猫の方に投げ飛ばす。そのコントロールは見事なもので、半泣きになりながら怒鳴ったルルーシュは、寸分違わず猫の元に飛んで行く。

 

驚いた猫は慌てて避けようとするが、ルルーシュの飛んで行くスピードの方が遥かに早かったので、ルルーシュによって捕まった。しかし、カレンの投げたスピードは凄まじく、先にあった扉もぶち破り、ルルーシュは外に放り出された。

 

その衝撃でルルーシュは抱えていた猫を離してしまい、何処か遠くへ飛んで行ってしまった。

 

あの筋肉馬鹿女どんな力で放り投げてるんだと思いながら、ルルーシュは慌てて猫の姿を確認するが、最悪なことに猫は仮面を被っていない。先程の衝撃で落ちてしまったらしい。

 

急いで下に取りに行かなければならないのだが、自分は先程の反動でマトモに動けない。恐らくカレンも同様だろう。最後の手段としてルルーシュはC.C.に電話をかけた。

 

「C.C.!!今何処だ!」

 

『お前の家に決まっているだろう。猫探しのイベントはどうなった?』

 

「イベントになっていたのか…猫が校外に出たから終わりだ!というか、そんなことはどうでも良い!」

 

『何だつまらん』

 

「つまらんことがあるか!猫は校外に飛んでいったが仮面は校舎の下に落ちている筈だ!今すぐ回収に向かえ!」

 

『また器用に面倒臭い状況になったものだな。まあ、良いだろう。手伝ってやる』

 

「終わったら連絡を寄越せ!いいな!」

 

そこまで言ってからブツっと電話を切ると、ルルーシュは急いで校舎の上から仮面を探そうとするが、距離もあるせいで流石に簡単には見つからない。そんなルルーシュの背後にシャーリーを背負ったスザクが現れた。

 

「いやあ、まさか、負けるとは思わなかったな。流石だよルルーシュってアレ?猫はどうしたの?」

 

「校外に飛んでいったよ。これでイベントは終了だ」

「何でそんなことになったのか聞きたいけど、まあ、それならしょうがないね。シャーリーに勝たせてあげたかったんだけどなぁ」

 

内心は早く会話を切り上げて仮面を探したいルルーシュだが、そんなことはおくびにも出さない。この辺りの演技力は見事である。

 

「ルルーシュ君!猫はどうなったの!?」

 

その二人の会話にやっとの思いで階段を上がったカレンも加わる。だが、その事実はルルーシュからすれば看過できないものだった。

 

「校外に飛んでいったが…お前なんで普通に動けてるんだ?」

 

「え?かなり痺れてるから走ったりするのは無理だけど、歩くだけなら何とかできるでしょ?」

 

カレンの言葉に内心で化け物めとルルーシュは思ったが、口には出さない。まあ、カレンからすればルルーシュがモヤシすぎるという話なのだが。

 

化け物とモヤシのスペックの差による悲劇である。

 

「しかし、計算外だが助かった!カレン!俺をおぶって下まで降りてくれ!」

 

「…ルルーシュ。男として情けなくないかい?カレンは病弱なんだよ?」

 

「カレンの体調が良い日なら大丈夫だ!彼氏として保証する!カレン!頼む」

 

「…あー、はいはい」

 

一応女としてもう少し女性扱いして欲しいものだが、ルルーシュの態度から緊急事態が生じていることが分かったので渋々従う。付き合いの長さは伊達ではない。

 

そうしてカレンにおぶられることで、何とかルルーシュは下まで辿り着き、会長たちへの説明を全てスザクに任せたルルーシュは、カレンと二人で落ちた仮面の探索を始めたが、そこに見覚えのある栗色の髪の女子生徒が現れた。その顔を見てルルーシュは思いっきり顔をひきつらせるがカレンには見覚えがなかったので、ルルーシュの反応に眉をひそめる。

 

「久しぶりだねー、ルルーシュ君。全く何をやってるのかな?こんなポカをするなんて。緊張感が欠けてるとしか思えないですねー」

 

困ったものだと肩をすくめる女子生徒をカレンは誰なんだろうと思っていたが、何とか歩けるようになったのか、ルルーシュはカレンの背中から降りて、その女の子の顔を思いっきり掴みながら怒りを込めて話し出す。

 

「な、ん、で、お前がまたそんな格好でこんな所にいるんだ…」

 

「やだなぁ、そんなのルルーシュ君に会いたかったからに決まってるじゃないですかー。女の子に言わせないでくださいよ恥ずかしい」

 

そんな女の子の告白じみた言葉を聞いてもルルーシュは全く嬉しそうな顔を見せず、それどころか身体中から怒気を発していた。そんなルルーシュの様子はカレンからしたら意外過ぎるものだった。

 

ルルーシュは自分と親しくない相手には、基本的に親切に接するからだ。逆に言えば、怒ったり意地悪をしたりするのは、それだけ気を許してる証拠と言える。

 

自慢ではないが、一応彼女としてルルーシュを間近に見てきたカレンはそのことを重々承知していた。更に、ルルーシュの人間関係で知らない人物などカレンには存在しない。まあ、皇族時代の人間関係なら話は別だが。

 

なので、今のルルーシュの彼女に対する反応には、カレンとしては首を傾げざるを得ない。恐らく親しいのだろうが、私の知らない人間関係があったのだろうか?

 

「ね、ねぇ、ちょっとこの女の子は誰なの?ルルーシュ君?」

 

「…別にこいつの前で猫を被る必要はない。お前も良く知っている奴だしな」

 

「はあ?私知らないわよ?こんな可愛い子」

 

「確かに見た目だけは可愛らしいがこいつは女じゃない。ここまで言えば分かるだろう」

 

頭が痛いと言わんばかりにルルーシュは頭を抱える。だが女じゃないとはとういうことだ?そうだとすると男ということになるが、こんな可愛い姿になるなんて、普通の変装とかじゃ無理…え?

 

そこまで考えてカレンは青褪める。自分の周りに一人だけ存在する。あり得ないレベルの変装技術を持っていて、こんなことをしでかしそうな、自分が猫を被る必要がない男が一人だけ。

 

カレンは震える手で女の子を指差す。間違いであって欲しい。一縷の期待を込めて、カレンは確認のため尋ねる。

 

「あんた…彰?」

 

「やだー、カレンさん。この姿の時はイブちゃんって呼んでくださいよー」

 

やだなぁと言って自分の肩を叩いてくる変態を、カレンは思いっきりぶん殴りたかった。しかし、もしかしたら何か事情があるのかもしれないと思い、一応聞いてみる。

 

「…何でここにいるの」

 

「んー、スザク君がここに転校したって聞いたんですよー。それでー、二人もこの学園に通ってるし、重要人物が揃ってるからどんな感じになってるのか確認に来たんですよー」

 

「…何でそんな姿で来たの?」

 

「色々ありますけどー、一番の理由はー」

 

そこまで言ってからイブはウインクをして、続きを話す。

 

「趣味ですねー」

 

ツッコミどころが多すぎて、カレンは何も言えなくなった。

 

そんなカレンの様子を見かねて、ルルーシュが話を本筋に戻そうとする。

 

「気にするなカレン。俺も始めて見たときはお前と同じ気持ちだった。それで?お前が落ち着いているということは仮面は見つけたのか?」

 

「もちろんじゃないですかー。C.C.さんに事情を聞いてー、手伝ってあげたんです。仮面は彼女に渡してますから安心してくださいね」

 

えへへと楽しそうに微笑みながら答えるイブは間違いなく可愛いのだが、中身を知っているルルーシュとカレンからすれば、全身から鳥肌が立つのを止められなかった。

 

「…そうか。では、騒ぎになる前に学園から消えるんだな。ついでにできれば、この世からも消えてくれ」

 

「もうルルーシュ君たらツンデレなんですからー。でもまあ、そうですね。今日のところはこの辺で帰ります」

 

予想外なことに大人しく帰ろうとする変態に、ルルーシュとカレンは少し驚く。

 

コイツがここまで来て何もしないで帰るとは思わなかったからだ。

 

そんな反応を見てイブはニッコリと微笑みを返す。

 

「そんなに驚かないでくださいよー。そもそも今日はお二人に会うつもりもなかったんですから。ではでは。さよならです。近いうちにまた会いましょう」

 

そう言うと、変態は鼻歌を歌いながら去っていく。

 

その後ろ姿をルルーシュとカレンは疲れきった顔で見送っていた。

 

「…何だったのかしらアレは」

 

「忘れろカレン。アレは天災のようなものだ。人間は忘れることで生きていける」

 

「…そうするわ。ゴメン、頭が痛いから保健室行ってくる」

 

「…俺も同行しよう」

 

そう言いながら二人は揃って保健室に向かう。今見たものを忘れようと懸命に努力しながら。

 

 

 

 

 

〜次の日〜

 

場所はアッシュフォード学園のルルーシュとカレンのクラス。

 

周りの生徒の盛り上がりの中で、ルルーシュとカレンの顔は完全に引きつっていた。

 

そんな中で担任教師は淡々と続きを話す。

 

「はい、静かに!今日は転校生を紹介する。さあ、自己紹介を頼む」

 

「はーい、分かりました」

 

先生にそう言われた転校生の少女は、そのままクラスのみんなの前で自己紹介を始める。

 

「はじめましてー。私はイブ・クロードって言いまーす。好きなものは楽しいこととルルーシュ君でーす。色々都合があって休むことも多いと思いますけど皆さんよろしくでーす」

 

ルルーシュとカレンは絶望を感じたまま、思いっきり頭を机に強打した。

 

 

 

 




一部の生徒の感想

(あの時ギアスを使わなければ…)

(何かおもしろいこと起こりそう!)

(アレ?あの子確かルルーシュとワケありの子じゃ?)

(病気を理由に休学しようかしら…)

(え!?あの子確かルルのこと好きだった子だ!うー、またしてもライバルが)

(女の子だけど、ルルーシュと付き合っても良いと思うのは何でだろう)

(随分と可愛い子だな。しかし好きなものがルルーシュとか大胆だなぁ)


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48 転校生の仕事は積極的に周りに声をかける事だと思う

前半と後半のギャップが凄い


「藤堂さん!部下に示しがつきません!桐島を今すぐに日本解放戦線から追放すべきです!」

 

頭が痛い。

 

朝比奈の話を側で聞いていて、卜部はそんなことを思っていた。

 

「落ち着け朝比奈。確かにアイツは問題行動も多いが、実力は確かだ。解放戦線に…いや、日本のためにあいつは必要だ」

 

「理由もハッキリ言わないで、女装して高校に潜入捜査する奴が必要だって言うんですか!」

 

それだけ聞けば、変態を擁護してるようにしか聞こえないなと卜部は思った。一緒に聞いている仙波さんも似たような気持ちだろう。千葉は…分からんなぁ。

 

藤堂もそう思ったのか、難しい顔をして押し黙る。

 

「それだけじゃありません!この間も勝手に銀行強盗をした上に、奪った金を無断で全額寄付するなんて独断専行以外の何物でもないでしょう!多少実力があるからって、そんなことを認めて良いと本当に思ってるんですか!?」

 

ぐうの音も出ない程の正論である。

 

色々彰から事情を聞いている卜部からしてみれば、色々弁解をしてやりたい気持ちもあるのだが、ここで卜部まで大っぴらに彰の肩を持つような発言をすれば後でしこりが残るし、何より朝比奈の言うことは疑いようもなく真実であるがために庇いようがない。本当に組織人としては失格の男である。

 

「…確かにな。では、今度私が直接アイツから事情を聞こう。この話はそれで終わりだ」

 

そう言って藤堂は逃げるように部屋から出ようとする。ぶっちゃけ問題の先送りでしかないのだが、藤堂にはそれが限界であった。

 

藤堂はあくまでも武人であり、こういう人間関係の問題を対処することには長けていないのだ。

 

当然、そんな説明で満足するはずもなく、朝比奈は藤堂の後を追いかけて文句を言っている。

 

その結果、部屋に残された他の四聖剣の三人の内の卜部と仙波は頭が痛いと倒れこむ。千葉はその二人の姿を見ながら淡々と言い放つ。

 

「全てあの馬鹿が撒きまくった種です。弁解の余地はありませんよ」

 

「…分かってるから頭が痛いんだろうが」

 

卜部と仙波とて、彰が原因の問題であると分かっている。とは言え、実力は認めているし、何より彰のことを気に入ってる二人からしたら、見捨てるなどという選択肢はあり得ない。

 

「千葉。お前も何か良い案を出してくれよ。アイツとは解放戦線の中でも一番長い付き合いだろ?」

 

「ええ、そうですね。つまり、それだけ私が一番アイツを殺したいと考えている期間が長いことになりますが」

 

言うと同時に千葉から殺気が溢れ出す。言う相手を間違えたと卜部は反省した。卜部から見ても、千葉とレイラだけは彰を殺しても罪には問われなくて良いのではないかと思っている。

 

「まあ、この問題は簡単には解決しまい…朝比奈の個人的な思いも絡んでいる問題だからな」

 

諦めたように言う仙波の言葉が全てを物語っていた。何かしたくても、ここにいる三人ではどうにもできない問題だと言うことだ。

 

「朝比奈の問題?どういうことですか?」

 

仙波の発言に疑問の声をあげる千葉。どうやらこの問題の根っこにあるものに千葉は気付いていないらしい。千葉が気付いていないということは、藤堂も彰も気付いていないだろう。

 

「「はあ…」」

 

卜部と仙波は同時にため息を吐く。本当にどうしたものかと頭を悩ませながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃話題の問題児は

 

「すいませーん、私は何処に座れば良いんですか?とりあえず、席がないならルルーシュ君の上に座っても良いですよ?」

 

相変わらず馬鹿なことを口走っていた。

 

周囲の生徒は、いきなりのルルーシュへの告白と大胆な発言に、戸惑いを隠せずにざわついていた。

 

その中でも、黙って見ているわけにはいかない生徒筆頭であるシャーリは、慌てて立ち上がった。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!良いわけないでしょ!?席なら他のところが空いてるんだから他のところに行きなさいよ!」

 

「えー、だってー、初めてのところって緊張するじゃないですかー。そういう時にはやっぱり知り合いの側の方が安心するんですよー。それにそもそも…何で貴方にそんなことを言われなきゃならないんですかー?彼女さんですか?違うなら口出しできる立場じゃないと思うんですけど?」

 

ルルーシュとカレンは、心の中でお前がそんなタマなわけあるか!と全力でツッコミを入れていたが、更に騒ぎが大きくなるのが明らかだったので黙っていた。

 

一方、シャーリーはイブの言葉に反論できなかった。確かに彼女でもない自分が口を出せる話ではない。なので、シャーリーはあくまでも一般論としての説得を試みる。

 

「そ、そうかもしれないけど、ほら、やっぱり転校生は知らない人と積極的に話しかける方が良いと思うの!ほら、スザク君の隣とかどう?スザク君も転校してきたばかりだし」

 

「えー、そうなんですかー?じゃあ、それでも良いですよー。どうせ、ルルーシュ君とはプライベートでも会いますし」

この言葉は嘘ではないが、果てしなく誤解を生む言葉なので、当然のようにシャーリーだけでなくリヴァルまで反応する。

 

「え!?プライベートでも会うような関係なの!?」

 

「おいルルーシュどういうことだよ!?前にあの子とは何でもないって言ってたじゃないか!」

 

リヴァルの言葉を受けて、周りの生徒も興味を惹かれる。

 

え?前から関わりあったの?どういう関係なの?と言った呟きが所々から聞こえてくる。

 

ルルーシュは頭の中でどうやってあの天災を黙らせ、周りの誤解を解こうかと自慢の頭脳をフル回転させるが、未だに答えは出ていなかった。

 

その隙をついて、イブはシャーリーの質問に顔を少し赤くしながら恥ずかしそうに答える。

 

「えー?ここで聞いちゃうんですかー?そうですねー、簡単に言えば…一緒にお風呂に入ったり、ルルーシュ君のベットで寝たりするような関係ですねー」

 

この言葉も嘘ではない。一緒に風呂に入ったことくらいはあるし、ルルーシュの家に泊まった時にルルーシュのベットで寝たこともある。もちろん、男同士なのだから特に問題があるわけでもない。

 

しかし、カレンとルルーシュを除いてそんなことを知らない周りの生徒は歓声と悲鳴を上げる。今まで黙っていたが、ルルーシュの親友として黙っていられなくなったスザクやBL団まで加わって、更に場はカオスの状態になる。

 

「ルルーシュ!カレンさんがいるのにどういうことだ!君は二股をしてたって言うのか!?何時からそんなフシダラな人間になった!」

 

「そ、そうだよ!ダメだよイブさん!ルルにはカレンっていう恋人がいるんだから!ねぇ、そうだよねカレン!ってアレ?」

 

スザクの言葉にシャーリーの心の中で希望が湧いた。そうだ。恋人であるカレンならば、自分と違ってイブさんを止める権利がある。

 

そう考えたシャーリーは、喋りながらカレンの席を見るが居なくなっていた。何処に行ったのだろうかと周囲を見渡すと、無言で教室から出ようとしていた。逃げようと思ったからである。

 

「え?あ、うん。良いんじゃないかしら。どうでも」

 

「いや、良くないよ!?どうしたのカレン!?彼女なんだからちゃんと言わなきゃダメだよ!」

 

「大丈夫よ、シャーリー。私は心広い系彼女だから。幾らルルーシュ君がその子とイチャイチャしてても一向に構わないわ。それじゃ、私はうなじツヤツヤ病にかかったから一年ほど休学するわ。というわけで皆さんさようなら」

 

「それ絶対にどうでも良い病だよね!?」

 

シャーリーの言葉も受け流して、カレンはこの場から去ろうとする。だが

 

「まあ、待て彼女」

 

「離してくれないかしら、彼氏」

 

その肩をルルーシュが掴んで止める。顔はにこやかだが、一人で逃げる事は許さないと言わんばかりに、普段のルルーシュには考えられないほどの力が込められている。火事場の馬鹿力とは良く言ったものだ。

 

そんなルルーシュにカレンも笑顔で応えているが、今すぐこの場から離脱したい思いで一杯である。

 

「彼氏が誘惑されてるんだぞ?彼女として庇って欲しいな」

 

「ルルーシュ君なら私が居なくても大丈夫よ。自信持って」

 

「いや、俺にはお前が必要だ。もうお前無しでは生きていられない。お前もずっと側にいると約束してくれただろう?」

 

「いやいや、確かに約束したけどアレはこういう意味のアレじゃないから。アレはそういうアレだから」

 

「いやいやいや、アレはそういうアレじゃないだろう。アレはこういうアレだろう。俺が言うんだ、間違いない」

 

そんな二人の会話を聞いていたイブは涙目になりながら二人の会話に加わった。

 

「やめて!私のために争わないで!」

 

「「お前(あんた)のせいで争ってるんだ(のよ)!!!!」」

 

余りに見当違いのイブの発言に二人は青筋を浮かべて怒鳴りつけるが、イブはその怒りを受けてハッとした顔になりすまなそうに答える。

 

「すいませーん。もしかしてルルーシュ君は私が上に座るのが嫌なんですか?私を下に座りたいんですか?でも、ルルーシュ君が良いならそれでも良いんですけどー、経験値がないルルーシュ君じゃ難しいと思いますよ?彼女のカレンさんで先に練習した方が良いんじゃないですかー?あ、ごめんなさーい。カレンさんもまだマサラタウンから一歩も出てない未経験者でしたねー。お互いがまだコラッタも倒してないんじゃ経験値何て持ってるわけないですよねー」

 

ぷぷっと笑いながら謝ってるのか喧嘩を売ってるのか分からないイブの発言に、ルルーシュとカレンの額に青筋が浮かぶ。

 

「ルルーシュ君。イブちゃんはどうやら自殺志願者みたいなの。私手伝ってあげても良いかしら」

 

「何だ、そうか。お前はそんなに死にたかったのか。早めに言ってくれれば良かったのに。喜んで手伝ってあげれば良いだろう。出来るだけ苦しめてから殺してあげろ」

 

色々とキレたカレンは諸悪の根源を殺そうと思い、笑顔で殺気を振りまきながら椅子を持ち上げる。自身の病弱設定は完全に忘れているようだ。

 

流石に黙って見ていた周りの生徒も慌てて止めに入る。

 

「いや、それはやりすぎじゃない!?落ち着いてカレン!!」

 

「ダメだよルルーシュ!二股がバレたからってそんなやり方は間違ってる!」

 

「ヤッて良いんじゃない?何故だかルルーシュとイブちゃんの組み合わせなら、許せる気がする」

 

「良い訳あるか!ニーナも黙ってないで止めろ!」

 

教室は完全にカオスと化した。そのカオスを担任教師が止められるはずもなく、今日は授業にならなかったらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




こんなSSですがお気に入りが2000を超えました!皆さんありがとうございます。


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49 相手のことを思っていても相手に伝わるとは限らない

そろそろゴールデンウィークですね!
楽しみたいもんです


「ルルーシュー。転校生が来たって聞いたんだけどって、何でアンタ扉の前に立ち塞がってるの?」

 

「すいませんが会長。貴方は今日から俺の教室に入ることを禁じます。副会長特権です」

 

何言ってんだコイツと思うかもしれないが、ルルーシュは本気である。ガチ中のガチである。

 

これからの自分の命(精神的な意味で)がかかっているのだから、本気にならない訳がない。災害と災害が遭遇してしまうなど、ルルーシュは想像すらしたくない。想像したら現実になりそうで嫌なのである。

 

なお、ルルーシュよりも更に負担が重くなりそうな気がするカレンはと言えば、既に諦めて灰になっている。

 

頑張るんだ、丈!いや、カレン!

 

「何言ってんのよ。そんなの私には通じません!だって私は会長だもの。ほら、どいた、どいた。緊張してる転校生を励まさないといけないんだから」

 

「全力で要らない気遣いです。アレにそんな可愛い感情など備わっていませんから」

 

アイツが転校初日で緊張しているなど、ルルーシュからしてみれば絶対にあり得ないと断言できる。そんなことがあり得るなら、シュナイゼルが女装して転校生としてやってくる方がまだあり得る。この世界なら否定しきれないのが恐ろしい。

 

「あれー?ルルーシュ君?その方はどなたなんですかー?」

 

「お前は出てくるなぁぁぁぁぁ!!!」

 

しかしそんなルルーシュの気持ちなどイブが考慮するはずもなく、笑顔でルルーシュとミレイに近づいて行く。

 

そんなイブを見て彼女が転校生なのだと理解したミレイは、ルルーシュを押しのけて笑顔で答える。

 

ルルーシュ。お前は頑張ったよ。

 

「初めまして。私が生徒会長のミレイよ。これからよろしくね」

 

「こちらこそ、お願いします。何かミレイさんとは仲良くなりそうな気がしますねー」

「あら、イブちゃんも?奇遇ね、わたしも。不思議ねー」

 

「不思議ですねー」

 

ウフフと笑い合う二人を見て、爆弾と爆弾を混ざり合う姿を想像したルルーシュは間違ってないと思う。

 

「でもー、残念なんですけどー、そこまで長くお世話になれないと思うんですよねー」

 

「あら、どうして?」

 

「色々都合があってー、学校を休むこと多いんですよー。会長とは学年も違うから、そんなに会う機会がないんじゃないかなーって」

 

「そうなの?んー、あ!なら、良いアイデアがあるわ!」

 

閃いたと言わんばかりに手を叩く未来を見て、すかさずルルーシュが間に入る。このタイミングでこの人が思いつくことで、自分に迷惑がかからなかった試しがない。しかし、それを止められた試しもない。

 

「そうか。それは残念だったな。では、会長。そういうことなので、コイツとはあまり関われませんね。では帰ってください」

 

そう言うと、ルルーシュは会長を押して無理やり帰そうとするが、全く動かない。モヤシの力の限界である。

 

「イブちゃんも生徒会に入れば良いのよ!そうすればあんまり学校に来れなくても関われるわ!」

 

「えー!?本当に良いんですかー?でも、ルルーシュ君が嫌がるんじゃないですかー?」

 

「ああ、嫌だ。間違いなく嫌だ。この世の中でトップクラスに嫌だ」

 

そう言いながらイブがチラリとルルーシュを見ると、露骨に嫌そうな顔をしていた。原作では、まず見られなかった顔である。

 

「あ!そんなことありませんでしたね!ルルーシュ君も受け入れてくれるみたいです!」

 

「お前は一回眼科と耳鼻科に行けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

「当然じゃない!我が校の副会長がそんな小さいことを言うわけないわ!」

 

「言っています会長!先程から言いまくってます!」

 

そんなルルーシュの抗議など聞くはずもない二人は、話をどんどん進めていく。

 

「まあ、とは言え流石に他のメンバーにも話を聞かないとね!ちょっと聞いてくるわ」

 

ミレイはウインクをしながらそう言うと、教室の中に入り生徒会メンバーから同意を取るために説得に周る。

 

そこで得られた意見はこのような意見だった。

 

「良いと思うよ。ルルーシュ君との絡みも見れるし」

 

「え!?うーん…まあ、確かに学校にあんまり来れないのは可哀想だし、でも…」

 

「可愛い子が増えるのは大歓迎!」

 

「ふふふ…どうせ私が何を言ったところで世界は変わらないのよ…滅びの道を歩むしかないのよ…」

 

「良いと思います。人数が多い方が楽しそうですし」

 

生徒会メンバー全員の話を聞いてからミレイはニコリと笑った。

 

「良かったわ。皆賛成してくれて!流石は私の仲間たち!心が広いわね!ルルーシュも見習いなさい!」

 

「いや、一人だけとんでもない闇を抱えている人いましたよ会長!暗黒の海のゲート開いちゃいますよ会長!デジヴァイスが黒く染まっちゃいますよ会長!デジモンカイザーになっちゃいますよ会長!」

 

ルルーシュの正論が続けざまに放たれるが、正論が通らない世界においてルルーシュの正論など聞き届けられるはずもない。残酷な世の中にはなったものだ。

 

「では、ここでイブちゃんの生徒会への入部を正式に認めます!これからよろしくね!」

 

「はい!こちらこそよろしくお願いします!」

 

そう言ってニコリと笑うイブに、ルルーシュと会長の話を聞いていた他の生徒会メンバーは、一人を除いてイブの入部を祝うために集まってきた。集まっていない残りの一人が誰なのかは察してあげて欲しい。

 

抵抗も虚しく台風と台風の接近を許してしまった現実に、ルルーシュは遠い目をする。

 

世界はこんなはずじゃないことばかりだ…

 

〜日本解放戦線基地〜

「草壁中佐!今日という今日は黙っていられません!」

 

「私も同意見です!」

 

「そうです!この作戦を決行して、自分たちの力をブリタニアに見せてやりましょう!」

 

日本解放戦線のある部屋では、草壁派と呼ばれる過激派の面々が集まっていた。一応話し合いの名目で集まったはずなのだが、殆どのメンバーは今すぐにでも行動しそうなほど苛立っていた。

 

草壁は黙って話を聞いていたが、その様子が更に他のメンバーの苛立ちを増していた。

 

「草壁中佐!何を迷うことがあろうか!」

 

「そうだ!片瀬はワシらの提案は撥ね付ける癖に、ゼロの提案は受け入れるのだぞ!あんな奴に最早従う義理はない!」

 

この過激派の面々が苛立っている一番の理由は、今の発言に全てが含まれている。

 

要するに、自分たちの発言は取り合ってくれないのに、ゼロという不審人物の発言が聞き届けられるのが不満なのだ。

 

無論、片瀬少将にも言い分はある。

 

ゼロが作戦で失敗して死んだ所で解放戦線にはなんのダメージもない。精々、支援した物が失われるくらいだ。

 

しかし、解放戦線のメンバーによる作戦で失敗したらそうはいかない。片瀬の責任問題にもなるし、貴重な解放戦線の戦力が失われてしまう。

 

だからこそ危険な作戦はゼロにやってもらい、解放戦線はその支援に回るというのが片瀬の理想なのだ。

 

しかし、そんなことは過激派の知ったことではない。彼らは戦いたいのだ。自らの手で日本を解放したいのだ。そうであれば、片瀬の考えなど愚の骨頂に他ならない。

 

まあ、片瀬から見たらそんな無茶な作戦を認められるわけがないということになるのだが。

 

要するに、お互いが相手のことを良く考えないで行動した結果のすれ違いだ。どっちもどっちである。

 

しかし、皆の怒りを聞いても草壁はまだ答えを出さずにいた。

 

自分たちがする行動は、今までのものとは違う。これが分水嶺だ。これをしてしまえば、もう後戻りはできない。

 

とは言え、他のメンバーの様子を見れば、自分が反対しようと行動してしまうであろうことは自明の理。

 

だとすれば、自分を信じてついてきた彼らに責任を果たすことは自分の務めなのではないか。

 

そう考えた草壁は沈黙を破り、言葉を発する。

 

「…よし、やろう」

 

草壁の言葉に歓声が湧き上がる。ようやく自分たちの思いが叶うという感情が爆発したのだ。

 

「決行は来週になる。至急準備に取り掛かれ!」

 

 

 

 




シリアス「さて、そろそろ出番か」

シリアル「僕の出番かも!」

ギャグ「俺もそろそろ出番かも!」

シリアス「お前らは基本的に何時も出てるだろうが!」


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50 予想外の人は予想外の所に現れるもの

平成最期の投稿でーす


「馬鹿な!」

 

片瀬はテレビの速報を見て、思わず手を思い切り目の前の机に叩きつけた。

 

その速報では、日本解放戦線と名乗るテロリストが人質を取って、ホテルを占拠していると放送されていた。

 

こんな作戦を、解放戦線のトップである自分が許可を出した覚えなどない。

 

加えてこのホテルでは国際的に重要な会議が行われており、これを襲えば日本の名に傷がつくとキョウトから厳重に釘を刺されていた。

 

それらの事実に片瀬の背中から冷や汗が吹き出す。キョウトに連絡をしたとしても『何とかしろ』と言われて終わりに決まっている。

 

そんな片瀬の様子を見ていた藤堂は、片瀬にそっと近寄り声をかけた。

 

「少将。草壁中佐の姿が見えません…恐らくは…」

 

「分かっておる…」

 

犯人など言われずとも片瀬にも分かっている。こちらから連絡を取り、今すぐ止めろと言うのは簡単だが、言ったところで聞くわけがない。そもそも、それで聞くようならこんな馬鹿な真似はしていないだろう。

 

となると実力行使しかないのだが、それをすれば日本解放戦線は終わる。片瀬にも藤堂にもそれは良く分かっている。

 

実力行使で止めれば実情はどうあれ粛清にしか映らない。それを片瀬と藤堂が行えば、解放戦線に残っている過激派寄りの藤堂派も黙っていない。内部分裂どころか仲間同士の殺し合いに発展することもあり得る。

 

とは言え、放っておくことはできない。そんなことをすれば、今度は片瀬がキョウトに責任を取らされて殺されかねない。

 

引くも地獄。進むも地獄。

 

その事実に片瀬と藤堂は打つ手を失う。だが正確に言えば違う。

 

一つだけあるのだ。自分たちが今打てる一手が。

 

しかし、それをするのは自分たちの沽券に関わる。それを分かっている片瀬と藤堂は沈黙を貫くしかない。

 

嫌な沈黙が流れる中、片瀬は苦渋の決断を下した。

 

「藤堂。ゼロに連絡だ」

 

「…よろしいので?」

 

「分かっているだろう。他に選択肢はない」

 

「…御意」

 

自分たちの問題を他人に尻拭いさせるという決断を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「承知した。生死を問わないで良いのであれば承ろう」

 

『問題を解決するのが先決だ。方法は問わない』

 

「良いだろう」

 

そう言うとルルーシュは藤堂からの電話を切る。

 

その顔は想定通りと言わんばかりに、あくどい笑みで溢れていた。

 

そんなルルーシュを見ていたカレンは、ジト目で見ながら告げた。

 

「…随分と嬉しそうね」

 

「当然だろう?俺の予想通りに物事が進んでるんだ。こんなに嬉しいことはない」

 

クククククと笑うルルーシュを見て、一応自分の彼氏兼主君ではあるが、悪役にしか見えないとカレンは思った。

 

とは言え、ルルーシュが喜ぶのは無理もないことはカレンにも理解できる。ここまで自分の予想通りに物事が進めば笑いたくもなるだろう。

 

 

〜〜〜片瀬とルルーシュの会談直後のこと〜〜〜

 

「ねぇ、ルルーシュ。あんなにあっちの都合が良い提案をしちゃって良かったの?」

 

片瀬との会談直後、ルルーシュとC.C.と三人で帰っていたカレンは、気になっていたことをルルーシュに尋ねた。

 

「ああ、確かに都合が良いな。もちろん、俺たちにとって都合が良いという意味だがな」

 

ニヤリと笑って告げるルルーシュに、カレンの頭には疑問符が浮かぶ。どう考えてもカレンには、アレらの提案が自分たちにとって都合が良いものとは思えなかったからだ。

 

「あの提案の何処が私たちにとって都合が良いのよ?危険な作戦を全部私たちに押し付けようって魂胆が見え見えじゃない」

 

「だろうな。そうして貰わなければ俺が困る」

 

「あー、もうハッキリ言いなさいよ!アンタは何を目論んでんのよ!」

 

曖昧にしか答えないルルーシュに、元々気が長くないカレンは、分かりやすく言えと怒鳴る。

 

長い付き合いなので、カレンがそう言うだろうと思っていたルルーシュはアッサリと答える。

 

「簡単だ。日本解放戦線を内部分裂させる」

 

「はあ!?あの提案で!?」

 

「そうだ。まあ、彰のやつは俺の狙いに気が付いていたようだがな」

 

「…何で気付いてんのにアイツは止めないのよ?」

 

「止めようがないからだ。俺の提案は奴らの分裂を早めただけだ。遅かれ早かれ、奴等は内部分裂していたさ」

 

「解放戦線っていう大きな組織なのに?」

 

「大きな組織だからだ。片瀬にはそれを纏める力がないのさ」

 

中からではなく、外から組織を見ているルルーシュにはそれが良く分かった。

 

解放戦線は日本を解放するという目的は共通しているが、どうやってそれを成し遂げるかという手段の点では全く共通していない。加えて片瀬にはそれを一つに纏め上げるカリスマもなければ、上手く組織を一つにする手腕もない。

 

「何でアンタはそんなこと知ってんのよ?彰が言ったの?」

 

「アイツが言うわけないだろう。奴等の動きを見てれば、上手く統一されてないのは一目瞭然だ。片瀬のやり方では生温いと思っている連中が存在することくらいな。そんな奴等が、俺たちのような新参者が大胆な作戦を提案し、それが受け入れられ続けていればどうなるかは火を見るよりも明らかだ」

 

「…なるほどね。それは分かったけど、そんなことして得があるの?」

 

カレンからしてみればそれが分からない。確かに、結局は内部分裂しそうだしそれをルルーシュが止まる義理もないのは理解できるが、わざわざ内部分裂させて何かあるのだろうか。

 

そんなカレンの問いを受けてルルーシュはニヤリと笑う。

 

「あるに決まっているだろう?必要なのさ。解放戦線を吸収するためにはな」

 

 

 

 

 

 

〜〜〜現在に戻る〜〜〜

 

「さて、それでは計画に移るか。カレン。扇達を呼んでくれ」

 

そう言って地図を広げたルルーシュに対して、カレンは返事をしてから扇達を呼びに行こうとするが、その前にカレンは確認のために一応ルルーシュに尋ねてみる。

 

「ねぇ、ルルーシュ?ナイトメアで突撃する作戦だけど、やっぱりダメ?」

 

「前も言ったろう?その作戦はない」

 

その返事にカレンはガックリと肩を落とし、トボトボと歩きながら扇達を呼びに行く。

 

ここで言った作戦とは、草壁達が占領したホテルにブリタニアの白兜を奪って突撃するという作戦だ。もちろん、考案者はカレンである。

 

カレンが自信満々に言ったその作戦をルルーシュは即答で拒絶した。

 

ルルーシュ曰く。

 

リスクが大きい。

 

白兜が奪えるかどうかもわからない。

 

別の作戦があるのにリスクを取る必要はない。

 

と言うものだった。ボロカスである。

 

カレンとしては、あまりルルーシュの役に立っていないので(本人がそう思っているだけでルルーシュとしては、かなり役に立っているのだが)こういう時にこそ活躍したいという思いを込めての発言だったのだが、ここまで否定されたらゴリ押しはできない。

 

とはいえ、カレンの作戦は原作のルルーシュであったならばここまで否定はせず、一考するに値する作戦ではあった。

 

にも関わらず、こっちのルルーシュが完全否定したのは、元来持っているルルーシュの性格が起因している。

 

この男は他者に厳しいが、一旦自分の中に入ってきた者は異常なくらい大切に扱うのだ。まあ、過去の出来事を考えれば仕方のない部分もあるのだが。

 

要するにルルーシュはカレンに危ないことをさせたくなかったのだ。本人に指摘をしてもカレン(というか、ナナリー以外の存在)が自身にとって大切だとは絶対に認めないだろうし、そんな自覚すらないのだろうが。本当に面倒臭い男である。

 

そんなツンデレ王ルルーシュの所に、先程扇達を呼びに行ったはずのカレンが血相を変えてやってきた。そんなカレンの様子を見てルルーシュは眉をひそめる。

 

「ルルーシュ!大変よ!テレビつけて!テレビ!」

 

「何だどうした?」

 

「良いから早く!」

 

カレンがそこまで言うので、言われるがままにテレビをつけたルルーシュの思考はそこで停止する。

 

そこではホテルを占拠したテロリストが流したと思われる、人質と思われる人達の映像が流されていたのだが、ルルーシュの思考が停止したのはそこに映っている人物の存在だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「草壁中佐達の粛清は、ゼロに委ねられるそうだ」

 

「そうですか…」

 

藤堂からの報告を受けた四聖剣のメンバーは、悔しさと悲しさが入り混じった顔でその報告を聞いていた。自分たちの仲間がそんな馬鹿な真似をしでかしたことと、それを止める役目が自分たちに与えられなかった悔しさが伺える。

 

「中佐…ゼロに全て任せてしまってよろしいのですか?」

 

「…他に私たちにどんな選択肢がある?」

 

良いかどうかという問題以前に、解放戦線に他の選択肢は存在しない。少なくとも藤堂には思い浮かばない。

 

朝比奈も居るので、この提案はあまりしたくなかった卜部だが、そんなことも言っていられないので藤堂に提案してみる。

 

「…中佐。彰の奴に相談してみては?」

 

「卜部さん!あの馬鹿に解放戦線の未来を委ねる気ですか!?」

 

「そうは言っていない!意見を聞いてみるだけだ!」

 

「落ち着け二人とも!今はそんな争いをしている場合ではない!それに先程から連絡は取っている…一向に繋がらないがな」

 

自分たちに報告する前に既に彰に連絡を取ろうとしていたという事実に、朝比奈だけでなく千葉も面白くなさそうな顔をするが、朝比奈と違い能力だけは…本当に能力だけは彰のことを認めている千葉は、溜息を吐きながら彰に連絡を取ろうとする。

 

「では、私からも連絡を取ります…アイツがこの事態を知らない訳がないですから、その内繋がるでしょう」

 

そう言いながら携帯で連絡を取り始めた千葉を見て、朝比奈は何か言いたげな顔をする。

 

千葉は朝比奈の気持ちは良く分かるし、正直頼んだら余計に面倒なことを起こしそうな気しかしないので頼みたくないのだが、背に腹は変えられない。

 

出て欲しい気持ちと出ないで欲しい気持ちがある中で千葉は電話のコールを聞き続ける。そして

 

『はい』

 

出てしまった。一瞬だけやっぱり切ろうと思ったが、何とか気持ちを立て直して声をかける。

 

「彰か?私だ。少しお前に聞きたいことがあってな」

 

『彰じゃない』

 

「は?」

 

『日本解放戦線にホテルで人質に取られてるイブちゃんでーす』

 

予想外過ぎるイブの発言に、千葉の思考が停止する。その思考が再開するのと、ルルーシュがテレビの映像でイブを確認したのは同時だった。

 

そのまま同時にルルーシュと千葉は言葉を発する。

 

「「いや、お前(あいつ)何やってるんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」」

 

 

 

 

 

 




ルルーシュ「緊急事態だ!急いで出るぞ!」

カレン「えぇ…行くの?」

ルルーシュ「当たり前だ!ここで行かねば計画が狂う!」

カレン「アイツがいる段階で計画通りに進む訳ないでしょ!?」



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51 言いたいことを言うのは時と場合を考えよう

令和初投稿!


『落ち着いてー、千葉さん。大きな声を出さないでくださいよー。びっくりするじゃないですかー』

 

「びっくりしたのは私の方だ!!だ…だがまあ良い、結果オーライだ。彰。今はホテルのどこにいるんだ?」

 

『彰じゃないでーす。イブちゃんでーす』

 

「馬鹿か!?彰!今はそんなふざけてる場合じゃないだろうが!」

 

『イブちゃんでーす』

 

電話中の千葉の額に青筋が浮かび、握られている携帯がメキキと嫌な音をあげる。

 

だがクールになるのだ千葉。ここでツッコメば完全に彰のペースになってしまう。

 

千葉は自分にそう言い聞かせて、何とかツッコミたい気持ちを抑えて会話を続ける。

 

「そ、そうか。では、イブ。今はホテルのどこにいるんだ?」

 

『やだー。女の子にそんなこと聞かないでくださいよー』

 

「お前、男だろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??いいから、さっさと答えんかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

しかし、そんな千葉の決意は一瞬で崩れさる。過去に幾度となく決意したが、その決意が成就されることは決してなかった。

 

『トイレに行きたいって言って抜け出してきたので、今はトイレの中にいまーす。絶賛う○こ中でーす。ついでに見張りに来た人は気絶させましたー』

 

「そこまで具体的に答えんで良い!!しかし、なるほどな。何とか抜け出してきたわけか…そっちで何か変わったことはないか?」

『変わったことじゃないですけど…困ったことはありますねー。行動を先走り過ぎちゃいましたー』

 

「何?何があった?」

 

イブの発言に千葉の眉が細まる。長い付き合いで、この変態の能力の高さは分かっている。そのコイツですら、困る事態とはどういうことが起こったのだろうか。

 

『実はー、私がいるこのトイレってー…ウォッシュレットがないんですよー』

 

「どうでも良いわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!使わなきゃ良いだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

『ダメですよー。ほら、私ってー。お尻が弱いじゃないですかー』

 

「全力で知るかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

完全にイブのペースで話は進み、シリアスはどこかに忘れ去られている。

 

このままではいけないと考えた卜部は千葉から電話を受け取り、話を進めようとする。

 

「イブちゃんか?俺だ。卜部だ」

 

『あー、卜部さんじゃないですかー。お久しぶりですー。お元気でしたか?』

 

「ああ、元気だよ。イブちゃんも元気そうで何よりだ。俺も嬉しいよ」

 

「いや、何ですかこの茶番は。挟まないといけないんですか?」

 

千葉の真っ当なツッコミは当然のように無視され、話は進んでいく。

 

「ところでイブちゃん話は聞いた。ウォッシュレットが使えなくて困ってるそうだな」

「いや、卜部さん!それどうでも良いです!掘り下げる部分じゃないです!」

 

『そうなんですよー。使わないで出ろっていう千葉さんのプランAは使えないですし、困ってるんですー』

 

「プランAって何だぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「なるほどな分かった。なら、イブちゃん。こうしよう。トイレットペーパーを下の水に少しだけ浸してウォッシュレットの代わりをするんだ。つまり…プランBを実行だ」

 

「アホなんですか!?何を真面目に答えてんですか!!」

 

『Bは私も考えたんですけどー、ダメなんです…何故なら…トイレットペーパー自体ないからです』

 

「なん…だと…」

 

その事実に卜部は崩れ落ちる。馬鹿な。敗北を認めるしかないのか。諦めろと言うのか。

 

そんな卜部の援護と言わんばかりに座っていた仙波が立ち上がる。

 

「慌てるでない!まだプランCがある!」

 

「『仙波さん!!プランCとは?』」

 

「アンタもかいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

 

感性と悲鳴が鳴り響く中で仙波の話は続いていく。

 

「プランCとはな…まず座ったままの状態でトイレのドアを開ける。そして素早く隣のトイレに移り、そこのトイレットペーパーを使うという作戦じゃ」

 

どうじゃ?と仙波は電話越しにイブに確認をする。

 

しかし、イブは残念だと言わんばかりにため息を吐く。

 

『それもダメなんですー…このトイレって…個室なんですよー』

 

「ば…馬鹿な…ホテルのトイレが個室じゃと?」

 

そのイブの言葉に仙波も崩れ落ちる。

 

部屋の中を諦めと沈黙が包む。今度こそダメだと諦めたその時に、倒れた卜部と仙波の肩が掴まれる。

 

その人物の顔を見て卜部と仙波の顔に希望が戻る。その人物は

 

「諦めるのはまだ早い。お前たちには私がいる」

 

「「藤堂中佐…!!」」

 

「「藤堂さんーーーーーーー!!!???」」

 

奇跡の藤堂だった。

 

予想外の藤堂の発言に千葉だけでなく、朝比奈までが悲鳴をあげる。

 

しかし、そんな声にも慌てずに、藤堂は仙波から携帯を受け取る。

 

「イブよ…話は聞いた。こうなれば最後の手段だ…題してプランDだ。お前にその覚悟があるか?」

 

『当たり前じゃないですかー藤堂さん…私はいつでも…Dの名を名乗る準備はできてます…イブ・D・クロードとして』

 

「お前にDの意思など宿ってないわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」

 

「愚問だったな…では始めよう!プランDを!」

 

これより、イブちゃんトイレ脱出大作戦。題してプランDが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うう…お母さん…」

 

「だ、大丈夫よ!大丈夫だから!」

 

シャーリーは自分より一回り小さい女の子を励ましながら、内心自分も泣きそうになっていた。

 

会長から誘われた旅行に会長と私とニーナの三人で行くはずだったのだが、ニーナが急用で行けなくなってしまったので代わりにイブちゃんが参加した。もちろん、私と会長に不満などあるはずがなかった。

 

楽しい旅行になるはずだったのに、まさかこんなことになるなんて…

 

イブちゃんはトイレに行きたいと言ってテロリストの一人とトイレに行ったけど、戻ってこないのだが、大丈夫だろうか。

 

他人の心配をしている場合ではないのだが、それでも他人の心配を何処かでしているシャーリーはどこまでもシャーリーである。

 

その一方で

 

(日本解放戦線…確か彰が所属してるって言ってた組織だ)

 

自分たちを人質に取った組織の名前を思い出して、シャーリーはそんなことを思っていた。

 

だが不思議と彰のことを恨んだり、怒ったりする感情は無かった。

 

(なのに何でかなぁ…彰がこんなことをしたなんて私には全く思えないよ…日本人のテロリスト…疑って当たり前なんだけどなぁ)

 

シャーリーはバッグに付けていた彰から以前貰ったお守りをギュッと握りしめる。

 

優しい世界を作る。彰が言ったあの言葉に絶対に嘘はない。私は信じてる。その優しい世界がこんなことをして作られる訳がない。だとすれば彰がこんなことをするはずがない。

 

自分でも無茶苦茶な理屈だと思う。

 

だとしても自分はそれを信じてしまった。どれだけ馬鹿馬鹿しいとしてもそれを自分が信じてしまったのであればしょうがない。

 

自分の馬鹿度合いにシャーリーは自分で笑う。何だ彰のことを馬鹿なんて言う資格は私にはないではないか。

 

そんなことをシャーリーが考えていると、日本解放戦線の兵士が近寄ってきた。

 

怯えていた女の子はその姿を見てイレブンと呼んで悲鳴をあげる。

 

その声を聞いて慌ててシャーリーは口を塞ごうとする。日本人のことをイレブンと呼ばれて気分の良い人などいるわけがない。テロリストならば尚更だ。

 

シャーリーの予想通りその兵士は気分を害し、持っていた剣をその女の子の首元に突き付ける。

 

効果があるのかは分からないが、許してもらえないかと頼むが、案の定否定される。

 

「ま、待ってください!悪気はなかったんです!」

 

「どけ女!そのガキは言ってはならんことを口にした!誰がイレブンだ!もう一度言ってみろ!」

 

「許してあげてください!お願いします!」

 

シャーリーは土下座をせんばかりに頭を下げる。しかし、そんなことでは兵士の溜飲は下がらない。

 

「ならん!そのガキに教えてやらねばならん!日本人の誇りをな!」

 

「そんなことで日本人の誇りは伝わりません!そんなことじゃあ、貴方たちは本当にタダのテロリストになっちゃいます!」

 

「なんだと女ぁぁぁぁ!!」

 

兵士は持っていた剣をシャーリーへと向ける。言ってしまったとシャーリーは後悔したが、出した言葉は戻らない。それに自分は言わなければ良かったとは思っているが、出した言葉が間違っているとは思わない。

 

「だ…だって、こんなことをしたってしょうがないじゃないですか!自分たちが正しいと思うなら!自分たちの立場が不遇だと思うなら、こんなことは間違ってます!」

 

「貴様に何が分かる!どうせ貴様など日本人などゴミだとしか思っていないだろうが!」

 

「そんなことない!」

 

自分でも信じられないくらい強い声が出た。

 

会長を含めて自分を心配していた人もビックリした顔をしている。

 

だが、その言葉だけは否定しなければならない。シャーリーの脳裏に一人の男の姿が過ぎる。

 

「そんなことない!私は…私はあの人をそんな風には思ってない!」

 

「お前が日本人の何を知っている!」

 

「確かに私は日本人のことは詳しくは知りません…だけど…だけど…あの人のことは知ってる。あの人はメチャクチャで私の話は聞かない自分勝手なとんでもない人だけど…だけど…」

 

知らず知らずの間にシャーリーの瞳から涙が溢れる。

 

「優しくて…暖かくて…信じられる人だよ」

 

そのシャーリーの真摯な思いに一瞬兵士は黙るが、それを恥と思ったのか顔を赤くして反論する。

 

「ふ、ふん!どうだかな!どうせ、あの人とやらはお前のことを何とも思っていないさ!」

 

「そうかもしれない…だけど…私は信じてる。守ってくれるって…約束したから」

 

「ほう?では、こんなのはどうだ?」

 

兵士はニヤリと笑い、シャーリーに向けて剣を振り下ろす構えをする。

 

「俺が今からお前にこの剣を振り下ろす。その前にあの人がお前を助けてくれたらお前の勝ち。お前が死んだらお前の負けだ。簡単だろう?まあ、結果は決まっているがな。オメデタイその思考のまま死なせてやろうとしているんだ。優しいだろ?」

 

「シャーリー!」

 

見ていた会長も慌ててシャーリーを守ろうと動き出すが間に合わない。

 

しかし、不思議とシャーリーは落ち着いていた。自分の命がかかっているというのに。どうやら、非常事態も度が過ぎると逆に冷静になるらしい。

 

シャーリーは涙を流したまま、その兵士を見つめて言い放つ。

 

「本当に優しい人は…こんなことしない。あの人が作りたい優しい世界は絶対に…こんな世界じゃない」

 

彰も方法は間違っているかもしれない。彰もこの人と同じ犯罪者かもしれない。だけど、ナニカが違う。彰とこの人は絶対に違う。

 

「遺言はそれで良いか!?馬鹿女が!お前を守る日本人など何処にいるというのだ!」

 

同時に男から剣が振り下ろされる。それと同時に

 

「ここにいる。俺だよ」

 

入り口の扉が蹴破られ、そこから現れた彰の拳が剣を振り下ろす直前の兵士の顔面を捉えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




プランD

藤堂「倒した兵士がいると言ったな?」

イブ『言いましたけど…まさか…』

藤堂「それしか方法がない…」

イブ『私のケツを舐めさせるんですか?』

千葉「この大馬鹿変態がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!服を破ってトイレットペーパーの代わりにするに決まってるだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


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52 夢はでっかく!とは言いますがほどほどに

どうしてこうなった…


突然だった。

 

自身に向けられる銃口を見てユーフェミアは、予想外すぎて恐怖よりも驚きの表情を浮かべる。

 

そんなユーフェミアに銃を向けている彰は、無表情のまま告げた。

 

「さて。皇女様。この状況をどうするよ?」

 

話は10分程前に遡る。

 

女の子が兵士に殺されそうになっているのを見て、護衛が止めるのも無視してユーフェミアは立ち上がろうとしたその瞬間

 

「ここにいる。俺だよ」

 

扉を蹴破った男がその勢いのまま、兵士を殴りつける。

 

それにより兵士がよろめいた隙に後ろに回り込み、首を両腕を使用して締める。完全に極っているのか、喋ることもできない兵士を見ながら、侵入してきた男は無表情のまま言い放つ。

 

「木村さんよ。別にあんたがブリタニアを恨んだって別に構わねえ。日本人の誇りとやらを大切にするのも良いだろう。だが」

 

男の目が自然と鋭くなる。

 

「一般人に…それも女に…手を出してんじゃねぇ」

 

その直後、気を失ったのか木村と呼ばれた兵士は動かなくなる。それを確認した男は兵士から手を離す。

 

その謎の男はそのまま、シャーリーとか呼ばれてた女の子の側まで近寄る。

 

その女の子は当初は何が起きたのか分からずに戸惑っていたが、男の顔を確認すると、パッと笑顔に変わった。知り合いなのだろうか?

 

ユーフェミアがそんな疑問を抱いている間に、男は女の子の手が届く範囲まで行き、そのまま

 

「いひゃい、いひゃい、いひゃい!」

 

思いきり、ほっぺたを引っ張った。

 

え?と少し緊張しながら成り行きを見守っていた私を含めた周りの人質は、突然の展開に目が点になる。

 

しかし、男はそんなことは御構い無しに若干青筋を浮かべたまま話し始める。

 

「死にたいのかアホウ!お前が何処の誰か何て俺は全く知らないから全然構わないが、俺が間に合ったのは偶然だぞ!勝算も無しに勝てない相手に喧嘩を売ってんじゃねぇよ、馬鹿たれが!」

 

「わ、わひゃったから!ひょ、ひょりあえずひぇをはなひて!」

 

それから暫くほっぺたを引っ張った後、満足したのか男は手を離した。

 

本気で痛かったらしく、女の子は涙目になっている。

 

その女の子と反対の方向に向きながら男はおもむろに口を開いた。

 

「お前にも譲れないことがあったのかもしれないが、大切なのは生きることだよ。あの人とやらのことは知らないが、あの人とやらの誇りを守るために死ぬくらいなら、あの人のために生きやがれ。俺があの人だったら、その方がよっぽど嬉しいだろうよ」

 

最初は痛さのあまり女の子は男を睨みつけていたが、男の言葉を理解するとクスッと笑った。

 

「うん、いや、はい。何処の誰かは知りませんが…助けてくれてありがとうございます」

 

女の子の感謝の言葉に男は何も答えず、無言で頭をかく。女の子の連れと思われる金髪の女の子は、男の乱入に最初は目を丸くしていたが、今となってはニヤニヤと笑っている。どうしたのだろうか。

 

ユーフェミアがそんな疑問を抱いているとは知る由もない男は、クルッと私たちの方に向き直り言葉を発した。

 

「さてと…悪かったなあんたら。仲間が迷惑をかけた。今から俺があんたら全員をここから逃す。逃げる準備をしとけ」

 

突然の男の発言にザワッと混乱が広がる。誰かも分からない男から、急にそんな発言が飛び出せば無理もない。

 

そんな混乱など知らんと言わんばかりに、男は話を続ける。

 

「静かにしろ。まあ、アンタらの気持ちも分からんでもないが俺は本気だよ。側から見たらただのテロリストだろうが、俺は俺なりに信念があるんでね。死んでも一般人を巻き込むようなことはしないさ」

 

その言葉が受け入れられたのかは分からないが、周りの混乱は次第に収まっていく。これで逃げられそうだと考えた時に、男が拳銃を懐から取り出したのが目に入った。

 

「だが…」

 

男は取り出した拳銃をそのまま私の方向に向けて構えた。

 

「お前は別だ。だって関係者だもんな。そうだろ?ユーフェミア・リ・ブリタニア」

 

 

 

 

 

 

 

そして話は現在に戻る。

 

銃を向けられたのを見て護衛が慌てて前に出ようとするのを、ユーフェミアは手で制した。

 

そんなことをしても、この男が止められないのは明白だからだ。

 

周りの人達はこんな所に皇女である自分がいることに驚愕の表情を浮かべていたり、自分たちを助けてくれると言った男がいきなり拳銃を抜いたことに恐怖していた。唯一の例外は、先程まで殺されそうになっていたオレンジ髪の女の子だけだ。

 

その子だけはどんな感情なのかは分からないが、少し驚いた後はジト目で拳銃を抜いた男の顔を眺めていた。

 

そんな女の子の視線に気付いているのかいないのかは分からないが、男は無表情のまま私に拳銃を向け続けている。

 

ともあれ聞かれた以上答えねばなるまいとは思うが、何と答えて良いか分からないので聞かれた質問に質問で返す。

 

「どうする…とは何のことでしょう?」

 

「決まってんだろ?この状況にどう対処するのかってことさ。このままじゃあんた死ぬぜ?」

 

ユーフェミアにはそこが疑問だった。生かして人質などで取引に利用するならともかく、ここで私を殺すことに何か意味があるのだろうか。

 

「人質にするならともかく、私をここで殺しても逃走に関係ないのではありませんか?」

 

「逃走のことは関係ねぇよ。だが、諸悪の根源たるブリタニア皇族を殺せるチャンスを無視できる訳ねぇだろ。こんなチャンスは早々ねぇ」

 

ニヤリと笑うと男は銃を持つ手の力を強める。それを聞いて、なるほどと思うがそれをさせる訳にはいかない。

 

「申し訳ありませんが、殺される訳にはいきません」

 

「何だ?多くの人の血を浴びて生きてきたブリタニア皇族様が命乞いか?」

 

「はい。そうです」

 

その発言に男は眉をひそめるが、構わずに私は続ける。

 

「ここで死ぬ訳にはいきません。私には私の使命があります」

 

「はっ。日本人を支配するのがか?」

 

「いえ。日本人…いや、ブリタニア人を含めた全ての民族が平等に安心して暮らせる、戦争がない世界を作るという使命です」

 

それは私の夢だ。短い間かもしれないが、日本の現状を見ていて思った。ブリタニアはこのままではいけない。このまま戦争を続けていては、永遠に憎しみの連鎖を生んでしまう。その連鎖は断ち切られなければならない。それがブリタニア皇族に生まれた私の役割だ。

 

「随分と変わった皇女様だな…で?どうやって?」

 

「…」

 

それを言われたら言葉に詰まる。そのための方法など私には分からない。

 

そのことが伝わったのか男は鼻で笑う。

 

「んなこったろうと思ったよ。どんだけ大層な夢を描いても、それを叶える手段や方法がないならただの夢物語だ。戯言にしかならねぇよ。平等?笑わせるな。仮にブリタニアが崩壊したとして、今まで虐げられてきた人々が、ブリタニア人と仲良く暮らしたいと思うか?ブリタニアが滅びれば、今度はブリタニア人が差別される側に回るだけだ。憎しみの連鎖は止まらねぇ」

 

男の言葉は棘のように私の心に刺さっていく。確かにそうかもしれない。私の夢は戯言にしか聞こえないかもしれない。だが、それを諦める訳にはいかない。

 

「今は飛行機がありますね」

 

「は?」

 

突然の話の変わりように、男は疑問符の声を上げる。

 

「何でできたと思いますか?」

 

「科学技術の進歩だろ」

 

「確かにそうですけど、私の答えは違います。私は…人が空を飛びたいと思ったからだと思うんです」

 

本当のことは私は知らない。しかし、私はそうだと思っている。

 

「そんなことは無理だと笑われたかもしれない。馬鹿にされたかもしれません。でも、その夢を諦めずに足掻いて…もがいて…やり抜いたからこそ夢は叶ったと思うんです」

 

「回りくどい話だな。アンタ何が言いたいんだ?」

 

「だから、私も私の夢を諦めません!今は方法がわかりません!でも、最後の最後まで…私は私の夢を諦めません!そうすればきっと可能性が見えてきます!そうすれば、きっと…人が戦争をしないで良い世界になります!」

 

ユーフェミアの声は決して大きな声ではなかった。だがしかし…心からのその言葉は不思議と響いた。

 

皇女様に拳銃が向けられているというあり得ない状況に少しざわついていた人質たちも、気付けば耳を傾けていた。

しかし

 

「戦争がない世界…ねぇ」

 

彰は銃を下ろさない。

 

「本当に実現させるつもりか?ブリタニアなんか関係なく、人類が生まれてから戦争がなくなったことはねぇ。まあ、人間の本能みたいなもんだからな。それを叶えるって?人類史上だれも叶えたことのない壮大な夢を、お前が叶えるって?」

 

「私じゃありません。私たちが…です」

 

彰の言葉をユーフェミアは訂正する。

 

「私にそんな力は残念ながらありません…頭も良くないですし、運動神経も並ですし…だから仲間を探します。私の夢を手伝ってくれる仲間を」

 

ユーフェミアはそう言ってから手を伸ばす。

 

それを彰は怪訝な顔で見つめる。

 

「何だその手は?」

 

「あなたはテロリストみたいですが、それでもブリタニア人の女の子を命がけで助けてくれました…多分あなたは本当は優しい人間なんだと思います…だから」

 

ユーフェミアはニコリと微笑み続ける。

 

「私の夢を…手伝ってくれませんか?」

 

ユーフェミアの発言に流石の彰も目を丸くした。まさか、今にも殺されそうなこの場面で勧誘されるとは思わなかったからだ。

 

「くくく…訂正するぜ」

 

しかし、それでもまだ彰は拳銃を出している手を下ろさない。

 

「お前は馬鹿じゃねぇ。大馬鹿野郎だよ」

 

その直後、静かな発砲音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、どうした木村?お前人質の見張りだろう」

 

突然自分たち幹部のいる部屋に部下が来たので、草壁は訝しげに見る。

 

他の者も同じ気持ちだったのか、何故来たのか尋ねている。その質問に木村は頭を下げて答えた。

 

「それは別の者に任せました!人質の中にとんでもない人がいたので、草壁中佐にそれを報告しに来た次第です!」

 

「とんでもない人?誰だそれは?」

 

「ユーフェミア皇女です」

 

その言葉に草壁も含めた部屋の中の全員は驚く。まさか、こんな所にそんな大物がいるとは思わなかったからだ。

 

「そ、それでユーフェミア皇女はどうした!?」

 

「他の者に引き渡して屋上に連れていかせました…恐らくテレビを見れば確認できると思います」

 

慌ててテレビをつけるとテレビの放送で自分たちが占拠しているホテルが写っていた。その先には

 

『ご、ご覧ください!お分かりになるでしょうか!ユーフェミア様と思しきお方が今ビルの屋上に現れました!まさか、人質として捕まっていたのでしょうか!?』

 

ユーフェミア皇女と思われる人物が写っていた。その事実に幹部の一人が苛立ちの感情を含めながら声を荒げた。

 

「馬、馬鹿者!?まずは最初にココに連れて来んか!!」

 

「それがそういう訳にもいかず…何せ、他の見張りを手薄にさせるにはそれ相応の手土産が必要だったので」

 

「何?」

 

ニヤリと笑いながら言う部下の声に、誰かが疑問符のついた声を上げるが、それを見た草壁はある可能性に気が付き、慌てて命令した。

 

「今すぐそいつを拘束しろ!」

 

草壁の謎の命令に、一瞬全員が思考を停止する。その一瞬が致命的な隙となった。

 

「隙見っけ。援護ありがとよ」

 

その瞬間大量の発砲音が鳴り響き、伏せた草壁以外の幹部は全員倒れた。それをやってのけた部下を、草壁は舌打ちをしながら睨みつけた。

 

「貴様…どうやって侵入した?ユーフェミアも貴様の仕込みか?」

 

「んなわきゃねーでしょう。完全な偶然ですよ。とりあえず諦めてくださいな。もう詰んでますし。大人しく降参した方が無難ですよ」

 

「馬鹿な。まだユーフェミアは我らの手中にある。アレがいればブリタニアとの交渉も優位に進められる」

 

「でしょうね。アレが本物だとしたらですが」

 

「何?…まさか、貴様!?」

 

更に激しく睨みつけてきた草壁を尻目に部下はニヤリと笑う。

 

「たりめーでしょう。こっちの切り札をあっさりと渡すかよ」

 

木村と呼ばれた男はそう言うと、自身の顔を掴み変装を脱ぐ。すると

 

 

 

 

「あ、あの…大丈夫ですか?ユーフェミア皇女殿下?」

 

警護は冷や汗を流しながら目の前にいる自分が守るべき皇女に声をかける。

 

助けてくれた男の指示で、見つからないように人質全員で逃げたのは良いのだが、改めて守るべき皇女の現在の姿を見ると、動揺を隠し得ない。

 

「ユーフェミアではありません」

 

しかし、本人はそんなことを気にせずに堂々と答える。そこにいたのは

 

「ハゲフェミアです」

 

ハゲになったユーフェミア。

 

そして代わりに屋上にいて殺されそうになっているのは

 

(いや、俺…皇女じゃねぇんたけどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!??)

 

ユーフェミアの髪の毛で作ったカツラとユーフェミアの服装をした玉城であった。

 

そして、更に草壁の前では

 

「不吉を届けにきたぜ。なーんつってな」

 

変装を脱いだ彰が草壁に銃を突きつける。

 

とんでもない物語はとんでもない方向に流れていく。

 

 

 

 

 

 

 




コーネリア「クロヴィスの仇取らせてもらう!」

ゼロ「そんなことやってる場合ではない!ユーフェミアの尊厳が奪われるぞ!」

扇「流石はゼロだな…迫真の演技だ」

カレン(演技じゃないのよねぇ…本気なのよねぇ…)




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53 失ったものはなかなか生えてこないから、日頃のケアが大事だと思う

うーむ…流石に無理矢理すぎかな


〜30分前〜

痛みがくるのを覚悟してユーフェミアは目を瞑ったが、いつまで経っても痛みがやってこない。

 

どういうことだろうかと恐る恐るユーフェミアは目を開く。すると、目の前に『馬鹿は見る』と書かれた旗が出ていた。

 

予想外の展開に声も出ずにいると、ふっと笑いながら口を開いた。

 

「馬鹿もここまでいけば上等だな」

 

そう言うと、そのまま銃をしまって何事もなかったかのように行動を開始する。その後ろ姿を見ながら、ユーフェミアは思ったことがそのまま口に出た。

 

「殺さないんですか?」

 

「あん?何で俺がお前みたいな、戦場に出たどころか人を殺したことすらない、脳内ピンクの馬鹿を殺さなきゃならんのだ。俺はそんなに暇じゃねぇ」

 

言われてみれば、あの人は銃を出してから私との会話の間、あの銃を弄っていない。つまり、最初から殺すつもりはなかったと言うことか。

 

そう思いながら周りを見ると、あのオレンジ髪の少女がため息を吐いているのが目に留まった。考えてみれば、あの少女だけは最初から最後までほとんど動揺もせずに彼を見ていた。この結末を何となく想像でもしていたのだろう。

 

今この場でその事実が分かったのは、ユーフェミアと苦笑いをしているミレイだけである。

 

しかし、それを分かっていない警護は銃を出そうとするがそれをユーフェミアは止めるように言う。ここでこの男と争ったところで益はない。

 

「何故ですかユーフェミア様!こいつは貴女様を殺そうとしていたんですよ!?」

 

「優先順位を間違えてはいけません。今はここにいる全員が死なずに生き延びることが第一です。そのためには、この人の協力は必要不可欠です」

 

ですよね?と確認の意味を込めてユーフェミアは彰を見やる。

 

その視線の意味に気付いている彰は、面白くなさそうにフンと鼻を鳴らして答える。

 

「お前に言われんでもそのつもりだ…が。まだキャストが揃ってねぇ。もう少し待て」

 

キャスト?と誰かが呟くのとほぼ同時に扉が開いた。

 

「待たせたな!人質の奴等!今助けに来たぜって…あれ?」

 

正義の味方の登場だと言わんばかりにドヤ顔で扉を開けた玉城は、意外に全員がリラックスしている現状を見て逆に慌てる。

 

「な、なんだお前ら?人質だろ?どうなってんだ?」

 

そんな玉城の様子を後ろで見ていた扇と井上は、どうしたのだと声をかけながら部屋に入ってくる。

 

「グッドタイミーング。テロリストの諸君」

 

彰がパチパチと手を叩くと、その存在に気付いた玉城が銃を向けるが扇は止めるように言う。

 

「君は一体誰だ?」

 

「あんたらの味方だよ。敵の敵は味方ってな」

 

彰はそう言うと、判断に困っている扇にゼロに電話するように言う。

 

何故知っていると扇達は慌てるが、彰からすればほとんど予想していた展開である。

 

自分では判断できない事態に、扇は言われるがままに電話をして事情を伝えるが、予想外にあっさりとそいつに協力しろと返事が返ってきた。

 

その事実に、特に玉城は訝しげに彰を見るが、そんなことは知らんと言わんばかりに彰は無視して、ユーフェミアに近づいていく。

 

「キャストは揃ったし準備を始めるか。皇女様よ。ちょっと後ろ向いてな」

 

「貴様!何をするつもりだ!」

 

「やかましいっつの。死なせたくないんだろ?だったら黙って見てな」

 

それでも警護は納得せずに、彰を近づかせないようにしているが、例によってそれをユーフェミアが止めて、自らは後ろを向く。

 

「良し。それじゃいくか。あんまり動くなよ」

 

そう言うとヴィィィンという電子音が響き、頭に軽い刺激が走った。

 

何だろうと思って後ろを向くと、入ってきたテロリストも含めた彰以外の全員が口を半開きにして、顔面蒼白になっている。

 

その様子を疑問に思いながら見ていると、男は呆れたように言う。

 

「おい、動くなっつの。上手く剃れないだろうが」

 

「剃る?」

 

ユーフェミアが疑問の声を発するのと、自身の側に落ちている物体に気付いたのはほぼ同時だった。それは確かに先程まで自身に備わっていたものであり、あるのが当然と考えていたもの。つまり

 

「私の髪の毛?」

 

自身の長髪だった。

 

呆然としているユーフェミアを無視して、ユーフェミアの髪の毛を半分削ぎ落とした張本人である彰は、バリカンを持ったまま平然と告げる。

 

「確認は終わったか?よぉし、半分まで終わったから残りの半分いくよー。じゃあ、準備してー」

 

「じゃ、ないでしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!??」

 

「無礼者がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!何をしてくれてんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

しかし、そんな暴挙がこれ以上許されるはずもなく、シャーリーと警護の女のドロップキックが彰に炸裂する。

 

「痛えな!急に何なんだよ!」

 

「いや、それ思いっきり私のセリフ!!ねぇ、何してんの!?何を考えて生きてんの!?」

 

「やはり死にたいようだな貴様!今すぐ処刑してくれる!」

 

二人の抗議を受けて、何に怒ってるのか判明した彰はため息を吐いて答える。

 

「分かった、分かった。安心しろ。次はお前らをカットしてやるから」

 

「何処も安心できない上にそこじゃないぃぃぃぃぃぃぃぃ!!違うから!何で急にユーフェミア様にバリカンをかけたのかってことだから!」

 

「何だそんなことか…まさかとは思うが、俺が何の考えも無しにこんなことをしたのかと思ってるんじゃないだろうな?」

 

「そうとしか思えないんだけど…」

 

情けないと言わんばかりに彰は首を振る。これくらいのことは見ただけで分かってほしいものだ。

 

「良いか?三つの理由がある。一つ目はコイツの格好だ。こんな如何にも皇女丸出しの奴がいたら、皇女がいるとバレやすい。こんなレベルの変装じゃ、隠しようがないしな」

 

これは彰の本心である。こんなピンクの長髪をしている人間など世の中にそういるものじゃない。

 

「二つ目は囮を作るためだ。この人数を逃すには警備の手を緩めるしかない。それには相応の生贄が必要だ。皇女様ともなれば生贄には十分だ」

 

これも彰の本心である。正直、囮でもいない限りこの人数を守るのは至難の業だ。

 

「三つ目は暫くシリアスだったからな。正直、ふざけたくなりました」

 

「それが本音だよね!?間違いなく三番目の理由が本当の理由だよね!?」

 

「やかましい!命が助かるだけありがたいと思え!ハゲになるのと死ぬのとどっちが良い!」

 

「とんでもない二者択一を迫ってるよこの人!?」

 

「両方ダメに決まっているだろう!ユーフェミア様を何だと思っている!!」

 

そんな風に三人が揉めていると、半分ハゲになったユーフェミアが仲裁のために割って入った。

 

「三人ともやめなさい!」

 

「ユーフェミア様!しかし!」

 

「私なら大丈夫です…事情はわかりました。ハゲになろうと私は私です…この場の皆様が助かるなら、私がハゲになることなど…どうでも良いことです」

 

「ユーフェミア様…」

 

ユーフェミアの圧倒的な慈悲の心に、警護だけでなく周りの人間も涙を浮かべていた。しかし、空気を読まない彰は、その空気の中で平然と作業を続行しようとする。

 

「良し、本人が良いと言ってるんだから問題ないな。良し。それじゃあ残りの半分いこうか」

 

「ねぇ空気読んで!?頼むから空気読んで!?空気は吸うだけのものじゃないんだよ!?」

 

そこから更に10分後

 

ほとんど全ての人がドン引きしている中、清々しい顔をした彰はやりきった顔で告げた。ユーフェミアの髪は完全にお無くなりになられている。酷すぎると思う。

 

「ようやく完成だ…今日からお前の名はユーフェミアじゃねぇ…今日からお前の名は…ハゲフェミアだ」

 

「何処の湯婆婆!?」

 

「申し訳ございませんコーネリア殿下ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!私は…私はユーフェミア様の髪を守ることができませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「さてと、次だ。おい、ハゲ。服を脱げ」

 

「せめてハゲフェミアって言ってあげて!?」

 

「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?今度は服を脱げだと!?何をするつもりだ!?」

 

「囮に使うんだよ。そのためにこっちのテロリストと服を交換してもらう」

 

「はあ!?俺が!?」

 

くいっと自身に指を向けられた玉城は、予想外の展開に驚愕の顔をする。完全に部外者のつもりでいたからだ。

 

「ふざけるな!あんな汚らしい男の服をユーフェミア様に着させられるか!」

 

「おい、そこまで言ってあげるな。確かに臭そうだし、不潔そうだし、着たら何か菌とかうつりそうだけど、本人の前で言ったら傷つくだろ」

 

「テメエの方がボロクソ言ってんだろうが!そもそも何で俺がそんなもんに協力しなきゃいけねぇんだよ」

 

「仕方ないんだ…よく聞いてくれ。俺は人質を助けるためならあんたが死んでも構わない」

 

「ぶっ殺すぞ、テメエ!?」

 

人権を無視した彰の発言に玉城は怒り狂う。当然である。

 

だがある程度は予想していたのか、彰は少しトーンを落として話し続ける。

 

「まあ待て。アンタにとっても悪い話じゃない」

 

「何処がだ!」

 

「考えてもみろ。ハゲになったとはいえユーフェミアは相当な上玉だぞ?」

 

「だからどうしたんだよ!」

 

「アンタはそんな上玉がさっきまで着ていた服を着れるってことさ。しかも堂々と…な。まだ匂いとか体温とかは残ってるだろーな」

 

彰の発言に玉城は暫く沈黙する。そしてこれまでになく真面目な顔をして答える。

 

「それってーと…アレか?着た服は俺が貰っても…良いんだよな?」

 

「何言ってんだ?当たり前じゃないか。命を助けるんだ。それくらい貰っても許されるに決まってる」

 

ニヤリと笑った彰の発言に、グヘヘへへと下衆な笑い声をあげてから玉城は了承の言葉を発した。

 

「しょ、しょうがねぇなぁ。人質のために俺が身体を張ろうじゃねぇか!」

 

「流石だな。アンタならそう言ってくれると思ってた」

 

さてと、と言ってから、今度は完全にクズを見ているその他全員の視線を完全に無視してユーフェミアに告げる。

 

「代わりになってくれるってよ。じゃあ、ハゲ。さっさと脱げ」

 

「「今の話を聞いて脱げるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 

しかしその発言はユーフェミアではなく、側にいる警護とシャーリーに否定される。

 

「しょうがないだろ?ここの監視の目を緩めるには、それ相応の手土産が必要なんだよ。ユーフェミアなら、手土産には十分だ。監視の目がユーフェミアに集中している間に、ここの全員を逃がす準備ができる」

 

「皇女様にそんなことさせたら、生き残っても私たち全員死刑だよ!」

 

「せめて私の服を着させろ!いや、頼むからお願いします!私の服を着させてください!」

 

「アホか。多分テレビ放送で流されるから、それだとコーネリアには一発でユーフェミアじゃないってバレるだろうが。遠いから顔は軽い変装でもバレないだろうが、服は流石にバレる。敵を騙すにはまず味方からだ。コーネリアにはテレビに映ってるのがユーフェミアだと誤解させなきゃならん」

 

恐らく屋上で晒し者にされて、最悪落とされるのかもしれないが、それを言うと玉城がやらないと言い出しそうなので黙っている彰。鬼である。

 

「し、しかし…」

 

「分かりました。服を交換します」

 

「ユーフェミア様…申し訳ございません…」

 

ユーフェミアの優しさと自身の無力さに警備は涙を流す。しかしそんなことを構うはずもない彰は、うんうんと頷いて準備を始める。

 

「流石は皇女様だ。よし、ビデオカメラは準備したからいつでも着替えて良いよー。はい、スタート」

 

「「それは絶対に作戦に関係ねぇだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」

 

「ピーカブー!!」

 

しかし続け様に行われる彰の暴挙は、シャーリーと警備の人間の突っ込みと言う名のドロップキックに阻まれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと…草壁さん、馬鹿な真似はこれで終了だ。幕引きだよ。もうチェックメイトさ」

 

草壁に銃を突き付けた彰はサラッと事実を述べる。

 

確かに彰の言う通りだ。

 

人質はいるとはいえ、隠れられて直ぐには見つからない。

 

捉えているユーフェミアは偽物。

 

幹部のほとんどは彰に倒され、草壁も銃を突き付けられている。

 

状況的にはほとんど詰みである。

 

だがそんな状況にも関わらず草壁は笑った。

 

「ははは。何も分かっていないな貴様は。詰んでいる?馬鹿な。そんなものこんな真似をしでかす前から分かっていたわ。貴様も同じだろう」

 

「…まあ、薄々は」

 

「そして儂が助からんということもな。ユーフェミアがいたのは偶然だ。その偶然がなければコーネリアに人質ごと殺されていたわ。万が一助かっても、片瀬少将もキョウトも儂を絶対に許さん。この戦いは始まる前から死ぬことが決まっておったわ」

 

「そこまで分かってて良くやりましたね」

 

「男にはやらなければならん時がある。これが、それだというだけの話だ。それに結果として貴様にとっても良い展開になったのではないか?」

 

「は?何処がですか?こんな面倒毎に巻き込まれてむしろ迷惑ですよ」

 

「儂を堂々と殺せる良い機会が巡ってきたではないか。貴様の育ての親であるブリタニア人を殺した儂をな」

 

「はっ。何を言うかと思えば」

 

草壁の発言を彰は鼻で笑うが、その瞬間外で物音が聞こえた。それにより彰の注意が一瞬逸れたのを見逃さず、草壁は瞬時に剣を彰の銃に向かって投げつける。

 

それは見事に命中し、彰は銃を床に落とす。急いで拾おうとするがそんな真似が許されるはずもなく、草壁は瞬時に飛びかかり、もう一つ持っていた剣で彰に斬りかかる。

 

彰も隠し持っていた剣で何とか対応するが、この体勢では落ちた銃を拾うことは不可能だった。

 

鍔迫り合いを続けながら彰は舌打ちをする。

 

「正気ですか?俺を斬ったところで何も解決しませんよ」

 

「何。死ぬ前に忘れ物を思い出しただけだ。6年前の決着をな」

 

「ありゃ、アンタの勝ちでしょうよ」

 

「ふん。奇襲だったとはいえ、まだガキだった貴様にあの場にいた部下を全員殺された儂が勝ちだと?そんな勝ちなど儂は認めん」

 

お互いが相手の刃をはじいて距離を取る。

 

分かっていたことだが、お互いがお互いの実力を認めた。

 

「殺す気で来い桐島。お前の親の仇はここにいるぞ。儂もお前を殺す気でいく。部下の仇であるお前をな」

 

「何回言ったらわかるんですかねぇ…」

 

ぽりぽりと彰は自身の頭をかきながら続ける。

 

「敵討ちとか興味ねえって言ってんでしょうが…ただ…」

 

彰の脳裏に殺されそうになったシャーリーの姿がフラッシュバックする。

 

「俺の大事なものを、アンタにこれ以上奪わせる気は更々ねぇ」

 

彰の言葉に草壁は薄く笑って再び斬りかかり、彰もそれに応戦する。

 

6年前に止まった時計の針が再び動き出した。

 

 




入れたかった会話
ミレイ「本当の名前はしっかり隠しておいてくださいね。戻れなくなりますから」

ユーフェミア「私なりかけてました。ハゲフェミアになりかけてました」

シャーリー「いや、会長何処のハクですか!?」

彰「おい、カミナシ。準備終わったか?」

護衛の女「そこはカオナシと言ってさしあげろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


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54 後悔先に立たずって言うのは後悔しないように生きろって意味だと思う

とりあえず一言…戦闘描写むずい…


〜6年前〜

「こんなガキにここまでやられるとはな…」

 

草壁は怒りと情けなさと驚きが混ざったような気持ちのまま言葉を発するが、剣は目の前にいる子供の首にしっかりと当てられていた。

 

だが、後は殺されるのを待つだけになっているはずの子供の目には、まだ殺気が漂っていた。

 

それを見た草壁はふと周りを見やる。

 

ブリタニア兵を殺す作戦行動中に、偶然出会ったブリタニア人の夫婦を殺しただけのはずだった。しかし、蓋を開けてみれば、自分以外の仲間は目の前の子供に殺されて全滅。

 

しかも殺される者になれば恐怖するはずなのに、恐怖するどころか自分をまだ殺そうとしている。

 

「面白い」

 

殺すのが普通の筈だ。部下を殺されたのだから。しかし、少しだけ。ほんの少しだけ勿体無いと思ってしまった。

 

今はまだそれほどではない。しかし、この小鬼がどこまで強くなるのか見てみたいと思ってしまった。

 

「ブリタニア人や大人なら日本人でも殺していたがな」

 

だからこれはほんの気まぐれだった。

 

「選べ小僧」

 

草壁は突き付けていた剣を少しだけ離す。

 

「今死んで楽になるか…生きて地獄を味わうか…選ばせてやる」

 

それが彰と草壁の最悪の出会いだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

カレンの思考は予想外過ぎる展開に、少しだけ停止した。

 

完全とはいえずとも、ある程度はルルーシュの予想通りに進んでいた筈だった。

 

後は、こんな騒ぎを引き起こした主犯たちにギアスをかけるだけ。

 

そんな思いでカレンはルルーシュであるゼロの護衛につきながら、主犯連中がいるところまで案内されていた。

 

しかし、扉が開かれてみたら、中にはいるはずのない彰がおり、しかも殺伐とした空気の中で殺し合いを演じている。

 

自分たちを案内した兵士もこんな出来事は予想外だったのか、カレンと同じく止まっていたが、我に戻ると彰に向けて銃を構えた。

 

「カレン!」

 

側にいたゼロは、流石にカレンよりも先に冷静になったのか、カレンに向けて大声を上げる。

 

全て聞かずともゼロが言いたいことは伝わったカレンは、無言で持っていた銃をその兵士の頭に殴りつけて気絶させた。

 

それを確認したゼロは、スッと前に出て話し始める。

 

「さて…私は草壁中佐と話に来たのだが…これは一体どういう状況か教えてもらえるだろうか」

 

ゼロの当然の疑問に振り向くこともせずに、彰は答える。

 

「ようゼロ。お前の疑問は分かるが…今はそれどころじゃねぇ。ただまあ、簡単に言えば」

 

スッと剣を構えながら彰は続ける。

 

「俺にとっても、完全に想定外の状況ってことだ」

 

「想定外?ほざけ。このために乗り込んできたのだろうが」

 

「な訳ねぇでしょうが。アンタに銃を突き付けて、他の馬鹿どもを諦めさせるつもりだったんですよ。コンチクショウ」

 

「ふん、どうだかな。ゼロよ、すまんな。クロヴィスを殺した奴に興味があったから、殺される前に顔を見ようと思って呼んだのだが…その前にやることができた」

 

「そいつを殺すことがやることだと言うのですか?」

 

ゼロはクイッと指を彰の方向に向けて尋ねる。

 

「まあ、結果はそうだが正確には違うな。儂は10年前の儂の選択が正しかったのか示したいだけだ」

 

「10年前の選択?」

 

草壁の言葉にゼロではなく、カレンが疑問の声を上げる。それを気にするでもなく草壁は続ける。

 

「あの時生かした鬼が日本のためになるのかどうかをな。くくく…後は死ぬだけだと思っていたが、こんな機会が巡ってくるとはな。神もなかなか粋なことをする」

 

「何言ってんだか…知らないんすか?」

 

そう言いながら彰の重心が少し下がる。それを見た草壁も剣を強く握る。

 

「髪ならさっき無くなったんだよ」

 

言葉と同時に彰は飛び出し斬りかかるが、待ち構えていた草壁に受け止められる。

 

草壁は受けるだけでなく、もう片方の手で持った鞘を使って攻撃をすることで、彰の態勢を崩しにかかる。それによって隙が生まれた彰に向けて頭から叩き斬ろうとするが、寸前で躱す。

 

しかし完全には躱しきれず、肩を浅く斬られた。

 

戦闘続行には支障はないと思われるが、黙って見ていられなくなったカレンは加勢しようとする。

 

だがそんなカレンを、ゼロであるルルーシュは肩を掴んで止める。

 

何故邪魔をするという目でカレンはゼロを睨みつけるが、それを無視してゼロは彰に問いかける。

 

「らしくもなく苦戦しているな。手を貸そうか?」

 

「いらねーよ」

 

「だろうな」

そう言うとゼロは壁に背中を預けて、完全に傍観者の姿勢になる。

 

「聞いた通りだ。カレン。絶対に手を出すな」

 

「なんでよ!?別に加勢したって卑怯でも何でもないでしょうが!」

 

不服しかないゼロの命令に、カレンは敬語も忘れて怒鳴り返す。

 

「普通の戦いならもちろんそうだ。だが、二人の雰囲気から見る限り、どう考えても訳ありだ。だとすれば、私たちが介入すべきではない」

 

しかし、とゼロは続ける。

 

「私たちにも色々と急ぐ事情があるのでな。短時間で決着をつけてもらえればありがたい」

 

「ふはははは!なかなかに冷たい奴だな、ゼロ!コイツが死んでも構わんと言うのか?」

 

「当然だ。借りなら返した。私がそいつを助けてやる義務などまるでない。別に仲間でもないしな」

 

ちょっとゼロ!とカレンは反論するが、それを無視してゼロは続ける。

 

「それに助けなどそいつに必要ない」

 

「何?」

 

ゼロの言葉にピクッと草壁が反応する。

 

「私はそいつと親しくもないし、むしろ死ねと思うことの方が多いが…強さだけは認めている。この世でだただ一人、私が守る必要など全くない人間だ」

 

そのゼロの言葉に彰はニヤリと笑う。それはルルーシュの彰に対する、カレンとは違う意味での信頼。彰がこんな所で死ぬはずがないという確信だった。

 

「やれやれ…信頼されたもんだ。俺がその信頼に応えられなかったらどうすんだ?」

 

「簡単だ」

 

迷うまでもなく、ゼロは即答する。

 

「骨は拾ってやる」

 

「上等だ」

 

笑いながら彰は、草壁に剣の先を向けながら走り出し、そのまま突きを放つ。だが、その突きも草壁はギリギリで躱し、カウンターを仕掛けてくる。

 

しかし、彰もカウンターが繰り出されることを読んでいたのか、楽々と躱す。

 

そこからは彰の怒涛のラッシュが始まる。普段の適当な様子からは想像もつかないほど洗練された剣術は、徐々に、しかし確実に草壁を捉えていく。

 

そして遂に彰の剣が草壁の腕を浅く切り裂いた。それを皮切りに彰の剣は、完全に草壁の身体にダメージを与えるようになった。

 

このままなら勝てると手を握りしめて応援していたカレンは思ったが、草壁もそこまで甘くはない。調子に乗るなと言わんばかりにダメージを覚悟で一歩踏み出し、守るどころか攻撃に転じ始めた。

 

あっという間に攻守は逆転し、今度は草壁が迫る立場になっている。

 

少し落ち着きたいと考えた彰は何とか距離を取り、一息をつく。

 

「全く…面倒臭い人だぜ本当に。こんなことしたいなら藤堂さんか朝比奈さんに頼めよ。俺はやりたくないっつってんだこのヤロー」

 

「練習ならそうだろうな。だが殺し合いなら別だ。普段本気にならない貴様も、殺し合いなら本気にならざるを得まい」

 

「ちっ。たく、疲れたしボロボロだしやってられねぇよ。労災おりるんだろーなこれ」

 

減らず口を叩いているが、草壁にも彰にもそれほどの余裕はない。

 

身体はボロボロ。疲れはピーク。それほど長い戦いをやり抜くだけの体力は最早ない。

 

だとすれば次が最後になる。生きるか勝つか。二つに一つ。他の選択肢はあり得ない。

 

タイミングを計った訳ではない。だが二人が走り出すタイミングは不思議と重なった。

 

互いの剣の間合いに入る前に何を思ったか、草壁は持っている剣を彰に向かって投げつけた。

 

予想外だったが、長年の経験からか彰は確実に防いだ。しかし、その間に草壁は彰の間合いに入り込み、拳で攻撃を繰り出す。

 

流石に躱しようがなくモロに攻撃を喰らう。弾き飛ばされた彰は距離を取ろうとするが、許されるはずもなく、連続で拳の攻撃を喰らう。

 

素人の拳ではなく、長年戦場に身を置いてきた草壁の拳である。喰らっている彰の意識は何度か飛びそうになるが、舌を噛むことで何とか意識を保ち、反撃の蹴りを放つ。

 

そこで生じた隙に彰は斬りかかるが、迎撃せんと地面に刺さった自らの剣を取り、草壁も斬りかかる。

 

剣のスピードは草壁の方が早かった。確実に自らの刃が先に届くと分かった草壁は、勝ちを確信して声を張り上げる。

 

「桐島ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

だが

 

「何!?」

 

とんでもない反射神経で、彰は自らに迫る草壁の刃を回避する。

 

そこで、この一撃に全てを全力を込めていた草壁に少し隙が生じた。

 

その隙に彰が一歩踏み込む

 

「悪いんだけどよ、草壁さん」

 

踏み込むと同時に身体を回転させ、攻撃態勢を整えた。

 

その直後

 

「約束してんだよ。次の誕生日を祝ってやるってよ。だから

 

 

 

 

ここで終わる訳にはいかねぇんだ」

 

彰の刃が深く草壁に突き刺さった。

 

 

 

 

 

 

 

 




屋上での会話

玉城フェミア「い、井上!こ、ここまでリアルにやることねぇんじゃねぇか?何かマジに突き落とされそうな気がして怖えんだけどよ」あと一歩進んだら屋上から落ちる状態

井上「あら、気のせいよ」後ろで拳銃を構える役

玉城フェミア「だ、だよなー、そんな訳ねぇよな!」ホッと一息

井上「本当に突き落とす気だもの」ニッコリ

玉城フェミア「い、井上さぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!??」

井上「良かったじゃない。そこまでして欲しかったユーフェミアの服と共に死ねるんだから」

玉城フェミア(このままじゃマジで殺されるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!ゼロ!カレン!扇た、助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!)ガチ泣き



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55 喧嘩した思い出も振り返ってみると良い思い出になってることもある

うーん、らしくないけど…まあ、たまには良いですかね


無音の静寂の中、プルルとゼロの電話が鳴った。

 

「どうしたP 1?」

 

『ゼロ。例の物の設置が完了したと連絡があった。後はゼロがスイッチを押すだけだが…そっちは終わったのか?』

 

改めてゼロは目の前の光景を見やる。

 

草壁は倒れ、地に伏した。それは死闘が終わった合図だった。

 

「ああ。どうやら、終わったようだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「く…くくく…やはり勝てなかったか」

 

「ギリギリでしたけどね。今でも冷や汗が止まりませんよ」

 

それはお世辞でも何でもなく、紛れも無い彰の本心だ。

 

その証拠に草壁の最後の攻撃は、彰の腹にパックリと傷を残している。あと数センチ深ければ、立場は逆転していただろう。

 

加えて彰も全身がボロボロである。本当に紙一重の勝負だったのだということがありありと分かった。

 

その傷を見て、参戦したいのを堪えて傍観していたカレンは慌てて近寄ってきた。

 

「彰!大丈夫!?早く傷見せなさいよ!治療するから!」

 

「いや、いいよ、後で」

 

「良いわけないでしょうが!アンタの言うこと聞いて黙って見てたんだから、今度は私の言うこと聞きなさいよ!」

 

反論は許さないと言わんばかりのカレンの剣幕に彰も渋々従う。男の子としては強がっていたかったのだが、どうにも許してくれないらしい。

 

その傷跡とやり取りを見て草壁はニヤリと笑う。

 

「どうやら…完全に躱されたという訳でも…なさそうだな」

 

「アンタの全力の攻撃を完全に躱せる人類なんて存在しねぇよ」

 

スザクとかカレンなら分からんが。まあ、良いか。コイツら人類じゃないし。

 

「ふはは…地獄への土産話くらいには…なりそうだな」

 

「それくらいの傷なら直ぐに手当てすれば死にゃしませんよ。後は逃げるだけみたいですし。なあ、ゼロ?そうなんだろ?」

 

「そうだな。準備は整った」

 

話を振られたゼロは平然と会話に参加する。ある程度自分に振られることが分かっていたのだろう。

 

「だそうだ。という訳でサッサと逃げますよ。国内ならともかく海外にでも逃げればキョウトも追いかけはしないでしょうし」

 

「断る…儂の人生に…これ以上逃げるという事実を作ってたまるか…それに何より…桐島。貴様に借りを作るなど…死んでもごめんだ」

 

草壁の言葉に彰はため息を吐く。ある程度は予想していた。この人はこういう人だ。

 

「アンタの考えなんて知ったこっちゃありませんよ。こんな所で死なれたら後味が悪いんでね。悪いですけど、嫌でも生きてもらいますよ」

 

「とんだ親不孝者もいた者だな…貴様の親を殺した儂を…わざわざ生かすと言うのか?」

 

側で聞いていたカレンだけでなく、ゼロも仮面の中で驚愕の表情を表していた。何かあるとは思っていたが、ここまでとは考えていなかったのだ。

 

「そうなりますね。アンタをここで殺したら…あの人たちに顔向けできないんでね」

 

「何?」

 

「聞こえなかったんすか?あの人たちの最後の言葉が」

 

身体を撃たれ、死ぬ直前だと言うのに、あの人たちは自分の身体のことなど何も気にしていなかった。俺の身体のことだけを心配し、それを確認して言ったのだ。『良かった』と。

 

「あんなお人好しども中々いませんよ。俺はそのお人好しどもに助けられた。助けられた俺は、あのお人好しどもに恥じないように生きなきゃいけない。だから」

 

彰は持っていた刀を鞘に戻した。

 

「俺はアンタを『許す』ことにした。それが、俺があの人たちのためにできる唯一のことだ」

 

周りが全員呆然とする中で彰は続ける。

 

「それにアンタは俺から奪っただけじゃない。ちゃんと与えてくれたよ」

 

生きる方法。戦う方法。殺す方法。作戦の立て方。基本的な勉強。そして何より

 

「アンタは俺を道に立たせてくれたんだ。アンタと出会わなかったらあの人たちは死ななかったかもしれないが、後ろの馬鹿共には会えなかったよ」

 

クイッと彰は後ろのゼロとカレンを指差す。

 

草壁に出会わなければ彰の育ての親は死ななかった。しかし、皮肉にも今の彰の大切な存在達は、草壁に会ったからこそ出会うことができた。

 

「わかんねぇもんだよな。空っぽになって適当に生きてただけのはずだったのにな…気付けば空っぽじゃなくなってたよ」

 

大切なものなんて作る気はなかったのに、あの馬鹿共は人の気持ちなど考えずに、土足で人の中に入ってきた。

 

『は?何を言ってるんですか?貴方が裏切る心配なんてしてる暇が私にあると思ってるんですか?』

 

『テメエが助けを必要かどうかなんて関係ねぇ!俺がやりたいからやるんだ!文句あるか!』

 

『お前がここで死ねば俺は助かるが、司令は悲しむ。離婚届に判が押せなくなるからな』

 

『借りを作ったまま、何処かに行くなんて許さないよ』

 

『君が居なくなったらつまらないでしょーよ』

 

『私が勝手にお前を信じた!だからお前について行くんだ!!』

 

『レイラとの結婚式を見るまでは絶対に殺させないわよ?』

 

『あら?知らないんですか彰様?彰様が信じていなくても、私は貴方を信じているんですのよ?』

 

『託しても良いか?お前に日本の未来を』

 

『非常に残念なことに私はお前と知り合ってしまったからな…まあ、本当に困ったことがあったら助けてやらんでもない』

 

『バーカ。俺に頼れよ。先輩なんてその為にいるんだよ』

 

怒涛のように思い出される記憶に彰はふっと笑う。

 

「あの時アンタが言ったことは正しかったよ。確かに地獄のような世界だ。だがその地獄の中でしか…出会えない人達もいましたよ。だからまあ、俺は今の俺の環境をそこそこ…気に入ってるんですよ」

 

彰の言葉を聞いて、草壁は綺麗事を言うな!と怒鳴りつけようとしたのだが、どうしてもその言葉は出てこなかった。

 

納得してしまったからだ。この男ならそういうだろうと何処かで予想していたからだ。

 

(…コイツのことが気に食わんはずだ)

 

草壁も含めて解放戦線のほとんど全員は、独立していた『過去の』日本を取り戻そうとしている。

 

(この馬鹿は親を二度も失っても…空っぽになってもなお…光(未来)を見るのか)

 

その考えに思い至り草壁は笑った。自分の過去の選択が、完全に間違っていたと分かったからだ。

 

桐島はどう考えても、自分が望むような『過去』の日本を取り戻しはしないだろう。

 

「ふん…やはりお前は日本解放戦線には相応しくないわ」

 

この男は『未来』の日本を作るつもりだ。

 

「良く言われますよ」

 

しかし、どうやら自分は相当に博打が好きらしい。

 

「連れてきた儂が間違っておったわ。貴様などクビだ。何処にでも行け」

 

前回の自分の選択が間違っていたと分かった。だが

 

「そりゃ、残念。だけど片瀬さんや藤堂さんにクビと言われないと出て行けませんよ。ほら、一応真面目な人間で通っているんで俺」

 

もう一度コイツに…賭けてみたいと思ってしまった。

 

だが、だとすれば賭けるに値するかもしれないもう一人の存在についても、自分は確かめなければならない。

 

草壁がそんなことを思った直後に轟音が鳴り響き、建物全体に大きな揺れが走る。

 

この場にいた草壁を除く全員が戸惑った隙をついて、草壁は最後の力を振り絞って立ち上がり、机の上のスイッチを手に取った。

 

彰の傷の手当てをしていたカレンとされていた彰は一瞬遅れて反応し、スイッチを奪い返そうとするが、その前に草壁がスイッチを前に差し出した。

 

「動くな!これは爆発物のスイッチだ!下手な動きをすれば爆破するぞ!」

 

そう。これは自決用に草壁達が用意していた爆発物のスイッチだ。

 

その言葉にカレンは舌打ちをしながら止まる。

 

ゼロはギアスを使おうとしたが、一瞬でもギアスに逆らわれて爆破されたら本末転倒なので、ギリギリの所で思い止まった。

 

「爆破されたくなければ儂の質問に答えろ!ゼロ!貴様は何のために日本を取り戻そうとする!」

 

彰とカレンに合図を送って打開策を練ろうとしていたゼロは、予想外の要求に驚き、思考が空白になった。

 

「虚偽は許さん!虚偽だと儂が判断すれば、今すぐこれを爆破させる!」

 

何の意味があるのかとゼロは思い悩む。だが、草壁の真意をゼロは全く理解できない。

 

そうであるならば、相手が望む回答をするのは難しい。その上、相手が虚偽だと思えばその場で爆破される。

 

それに何より先程の彰の言葉を聞いていたゼロは、何時もなら絶対にあり得ないことだが、自分の本心を語った。

 

「…ブリタニアに恨みがあるのですよ。だから私はブリタニアを壊すために私は行動を起こした。日本解放はそのついでです。別に日本を解放したくてやっている訳ではありませんよ」

 

思わぬルルーシュの回答に、彰とカレンは思わず顔を見合わせる。

 

この男が本心を言うなど全く思っていなかったからだ。

 

しかし、そのルルーシュの回答は悪いものではなかったのか、草壁は高笑いを始めた。

 

「復讐か!フハハハハ!!なるほどな、悪くない答えだ!そこのバカの綺麗事よりもよっぽど信じられるわ!ゼロ!お前は儂達と同じだな!」

 

「一緒にしないで貰いたいですね」

 

「いや、同じだ!ゼロよ!お前は『過去』に囚われている!だがまあ、悪いことではない!負の感情というのは侮れん!結果としてという形ではあったとしても、貴様の日本解放の思いは真実だと受け取った!そしてクロヴィスを殺し!枢木スザクを助けたお前の実力が本物だということに疑いの余地はない!」

 

グハッと口から血を流しながらも草壁は笑みを崩さない。

 

面白い。コイツも充分に賭けるに値する人間だ。

 

その結末を自分は見ることはできないだろうが、負けたとしても悔いはない。この絶望的な戦力差の中で、日本を解放できる可能性があるとしたらこの二人だけだ。

 

「では、第二の命令だ。今すぐこの場から出て行け。儂を置いてな」

 

「はあ!?」

 

意味不明な草壁の発言にカレンは素直な感想を発するが、ゼロと彰は草壁の真意を読み取った。

 

「…無駄死にする気ですか?」

 

「好きに解釈しろ。さっきも言ったが儂は本気だ。お前らが去らなければ本気でお前らごと爆破するぞ」

 

彰と草壁が無言で視線を交わす。

 

その様子を傍目に見ていたゼロは、淡々と事実を告げた。

 

「行くぞ。カレン。彰」

 

「…いや、でも」

 

「でもも何もない。本人がここまで言っているのに、助ける方法など何処にある」

 

「…そうだな。行こう」

 

彰は何かを言いかけたが、辛うじてそれを踏み止まって部屋の出口へと足を向ける。それを確認してゼロも部屋を去ろうとするが、その前に独り言のように呟いた。

 

「先程の轟音は恐らく、地下からブリタニアが突入した音だろう。となれば突破するのは時間がかかる。貴方の傷の深さから判断すると、それは致命的だ。貴方は彰に殺されたことになる。だが、仮に貴方が自分の意思で自爆すれば、貴方は自殺したことになるだろう。草壁中佐…貴方がそこまでして守りたかったものとは」

 

「止めろ、ゼロ。そんなものはない」

 

しかし、全てを言わせずに草壁は止めた。

 

「勝手に勘違いされては困るわ。まあ、せっかく会ったのだ。最後に一つだけ忠告しておこう。ゼロ。復讐でブリタニアを壊すのは先程言ったように構わん。だが、それに飲まれんようにすることだ」

 

「何が言いたいのですか?」

 

「飲まれれば、貴様は儂と同じ運命を辿るということだ。その復讐の炎はお前自身をも焼き尽くすだろう」

 

「そんなことはさせないわ」

 

草壁の言葉にルルーシュが反論する前にカレンが反論する。

 

「私と彰がいる限りそんなことはさせない。何があろうと、私はゼロを幸せにするって私自身に誓ってるのよ」

 

カレンの何の根拠もない、だが力強い言葉を受けて草壁は薄く笑い、そうかと呟く。

 

それを聞いてゼロとカレンは部屋から出て行く。それに続いて彰も出て行こうとする。

 

「俺には何かないんすか?」

 

「貴様に言うことなど何もないわ。早く消え失せろ」

 

「相変わらず冷てぇなぁ」

 

困ったように笑った彰は、後ろを振り返らずに呟く。

 

「俺はさ…草壁さん…あんたのことが割と好きだったよ」

 

「そうか…」

 

それを聞いて草壁は返答する。

 

「儂はお前が嫌いだ」

 

「でしょうね。どうやったら好きになってもらえますかね?」

 

「そんな方法などこの世にない。だがまあ、更に嫌いにさせる方法ならあるぞ」

 

「どんな方法です?」

 

「夢を叶えろ」

 

草壁の言葉に彰がピクッと反応する。

 

「儂が絶対に認めない貴様の夢をな。そうすれば…心置きなく嫌いになれる」

 

その言葉を聞いて笑った彰は、黙って部屋を出て行く。

 

一人になった草壁は、ふうとため息を吐いて天井を見る。

 

どうやら走馬灯というのは本当にあるらしい。しかしせっかくならば、もっと良い記憶を呼び戻して欲しいものだ。

 

甦るのは草壁が世界で最も嫌いなあの馬鹿との思い出ばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『桐島ぁぁぁぁ!貴様また練習サボっとるのか!!』

 

『いやいや、だってこんなに良い天気なんですから、俺くらいは外に出てないと太陽も拗ねちゃいますよ。だからみんなの分まで俺が日光を浴びときます』

 

『ただ寝とるだけだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

いつも通りサボっている桐島の態度に草壁は激怒する。そんな草壁の様子を見て彰は、カラカラと笑う。

 

『まあまあ、落ち着いてくださいよ。たまには練習じゃなくて夢を語り合うとかどうですか?』

 

『ふん。皆が平等な世界を作るとかいう貴様の綺麗事か?』

 

『夢はでっかくって言うでしょ?』

 

『ふん。そんな世界など儂は認めんし、従わん。お前が本気でそんなたわ言を成し遂げたいと思うならば、まず儂を倒すんだな』

 

『いやあ、そんな必要はないでしょ』

 

『何?』

 

『別にブリタニア人が嫌いな日本人がいたっていいじゃないですか。俺だってイケメンは嫌いですし。滅べば良いと思ってますし』

 

『相変わらず心が狭いな…』

 

『あ、だから草壁さんは好きですよ』

 

『どう言う意味だ貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

 

失礼すぎる彰の発言に、草壁の額に青筋が浮かぶ。

 

『ま。だから問題ないんですよ。好き嫌いは人それぞれ。それぞれがそれぞれの好きなものに全力になるってのは悪くないですよ』

 

『…その結果、儂がブリタニア人を殺しても構わんということか?』

 

『そんな心配はないですよ。俺が止めますから』

 

ニヤリと笑って言う彰の言葉に草壁は一瞬返す言葉を失った。

 

『その世界でブリタニア人を殺したいなら、まずは俺を殺してくださいよ。そうじゃなきゃ、ブリタニア人は殺させませんよ。だから、俺が草壁さんより強くなれば、草壁さんはブリタニア人を殺せないでしょ』

 

当たり前のように言われた言葉は草壁の心に突き刺さる。だが、それを認められない草壁は、持っていた竹刀を思い切り彰に振り落とした。

 

『だわっはい!?急に何をするんですか!?』

 

『そこまでのホラを吹くなら、儂より貴様は強いということだな?面白い!今からそれを…証明して見せろぉぉぉぉぉ!!』

 

『アホかぁぁぁぁ!!いつかですよ、いつか!誰も今なんて言ってませんよ!』

 

『問答無用ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!』

 

 

 

 

 

そんな過去を思い出した草壁は苦笑いする。本当に碌な思い出がないものだ。

 

だが、それも…悪くないな。

 

「暫くこっちには来るなよ大馬鹿者」

 

そんな感傷に浸っている時間は終わったのか、草壁は持っていたスイッチを強く握る。

 

「暫く貴様の顔は見たくないわ」

 

その瞬間、草壁の周りで爆発音が響き渡り、生じた閃光が草壁の身体を包み込む。

 

最後に見えた草壁の顔は…満足そうに笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

「あれ!?イブ!あんた無事なの!?」

 

「イブちゃん!!良かった!大丈夫だった?」

 

「はーい。大丈夫でーす。彰とかいう人に助けられたんですよー。その人はどっか行っちゃいましたけど」

 

「え!?彰…さんに会ったの!?怪我とかしてなかった!?」

 

「全然平気そうでしたよー。めんどくせーから先に帰るとか言ってました」

 

「帰っちゃったの!?もー…ちゃんとしたお礼も言ってないのに…」

 

君たちを助けるとやってきたテロリストと隠れていたが、暫くしてボートに乗って逃げるぞと言われたシャーリーとミレイは、あと一人残っているのだと事情を説明していると、そのあと一人であるイブが戻ってきた。

 

それを見てシャーリーとミレイは笑顔になる。まあ、シャーリーは笑ったり、怒ったり忙しくしているが。

 

だが、そんな風に忙しくしていたシャーリーが、イブの顔を見て疑問符を浮かべる。

 

「イブちゃん?何かあったの?」

 

「えー?何がですか?」

 

「いつも通りに見えるけど…何が気になるのシャーリー?」

 

「えー、じゃあ、私の気のせいなのかな?何かイブちゃんが今にも…泣きそうな顔に見えたから」

 

シャーリーの言葉にイブは苦笑いを浮かべる。

 

「別に何もないですよー。ただ…

 

 

 

 

入ったトイレにウォッシュレットが付いてなかっただけですよ」




これで一区切りですね


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56 予想外のところで知り合いに会うと気付いてないフリをたまにしちゃう

今回の話は…うん、まあこんな感じです


(ジェレミア卿は未だ発見できないか…やはり死んでしまっているのか?)

 

ある人物を尾行しながらヴィレッタは、ここ最近ずっと同じ問題に対して考察している。

 

事件はコーネリア総督が到着する日に起きた。浅はかなキューエル達は、総督が到着される前にオレンジ疑惑で疑われているジェレミア卿を秘密裏に暗殺しようとした。(なお、完全に独断専行であり、勝手にそんなことをしたキューエル達は全員謹慎が言い渡されている。本来なら死刑だが、ユーフェミアの懇願でギリギリ免れた)

 

そこで粛清されたジェレミアだが、死体を確認してはいないことが分かったので、ヴィレッタは部下に命じて探させていた。

 

とはいえ、これは形式上だけの確認作業であり、本来であればヴィレッタが出てくるようなことではない。

 

しかし、何と驚いたことに、その日の同時刻に粛清が行われた場所のほど近くに、ブリタニア人らしき傷だらけの男が車で連れて行かれた所が目撃されていた。

 

ならばと人海戦術で付近の病院を全て当たって調べたが、全く発見できない。

 

もしテロリストに発見されて連れて行かれたのなら、もう殺されてしまっているだろうし、病院に運ばれたのなら見つかっていないのはおかしい。

 

となると殺されているという結論に至るしかない。なので、ヴィレッタはジェレミアのことを探してはいるのだが、半分は諦めていた。

 

しかしこの案件について調べていると、一人興味深い人物が捜査線上に浮かんだ。

 

(シャーリー・フェネット…この間のテロ事件に巻き込まれた少女か)

 

ジェレミア卿が車で運ばれた現場の近くに、オレンジ髪のブリタニアの学生がいたと言うのだ。

 

調べてみると、この少女がシャーリー・フェネットという少女だと判明した。

 

当然更に調べてみたが、調べれば調べるほどタダの学生という情報しか上がってこない。こんな状況で上に訴えても相手にされないに決まっている。

 

普通に考えれば、無関係なのだと判断するところだが、ヴィレッタの勘が警鐘を鳴らしていた。この少女には何かがあると。

 

そう考えたヴィレッタは、ここ数日ずっとシャーリーを尾行していたのだ。今の所、何の成果も上がっていないが。

 

(あの少女には何かある…ん?今日は何時もと帰り道が違うが…何処に行くんだ?)

 

しかし今日は違った。何時もと違う帰り道を選んだシャーリーは、何と病院に向かったのだ。

 

(この病院はまだチェックしていないが…まさか、ここにジェレミア卿が!?いや、まさか…)

 

そんな風に思考の海に沈んでいくヴィレッタとは違う方向から、シャーリーを尾行していた者も同じようなことを考えていた。

 

(シャーリーを尾行して何がしたいのよあの女の…)

 

もう一人のシャーリーの(正確に言えばヴィレッタの)尾行者であるカレンは、そんなことを思っていた。

 

帰り道に偶然シャーリーを見つけたカレンは、シャーリーがブリタニアの女に尾行されているのを発見した。

 

別にブリタニア人のシャーリーがどうなろうと知ったこっちゃないカレンは、本来であれば無視したいのだが、それはできない。シャーリーがルルーシュにとって大切な存在であることを知っているからである。

 

シャーリーが居なくなればルルーシュは悲しむ。そうであるならば、シャーリーはカレンにとっても守るべき対象になる。

 

そう考えて二人の後をつけているのだが、女の目的が分からない。シャーリーを尾行して何の得があるのだろうか。

 

周りは少々…いや、大分…いや、かなりヤバイ連中が多いがシャーリー自身は普通の女の子である。

 

考えても無駄だと判断したカレンは大人しく二人の後をつけることにする。

 

しかし幾ら後をつけても、シャーリーが普通に病院での検診を受けているようにしか見えない。

 

最後の手段として尾行している女を問い詰めようとしたカレンが動き出す直前に、受付の順番が来たシャーリーの名前が呼ばれたせいで、シャーリーが動き出してしまったのでできなくなってしまった。

 

「すいませーん、失礼しまーす」

 

そんなことを全く知らないシャーリーが医者がいる扉を開ける。すると、そこには顔に施術痕を付けた男性の日本人が座っていた。

 

「あの…ここで合ってますか?聞いていた先生と違うんですけど」

 

「ああ。彼は少し用事でね。俺はその代わりだ。安心しろ。どんな病でも治してやるさ。この…」

 

医者は突然立ち上がり、自らの白衣をバサッと広げながら告げた。

 

「ホワイト・ジャックがな!」

 

((いや、絶対違うだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!))

 

有り得ない名前に尾行していたヴィレッタとカレンは内心でツッコミを入れる。

 

一体何故こんな展開になっているのだろうか。

 

 

 

〜今から1時間前〜

 

「悪いな爺さん、無理言ってよ。ある程度の治療はできたから、見つかる前に病院を変えるってさ。全く心配性な野郎だ」

 

「なあに構わねぇよ。あんな重要人物を置いとく方が危険だからな。バレたら俺が殺されるし」

 

「それが分かってて良く引き受けたな…」

 

「そりゃ、彰は上客だからな。金をくれれば基本的に全て請け負うさ」

 

今日もキャバクラで呑みまくるぞーと言ってる糞医者に、リョウは懲りねぇなーと笑ってるが、アヤノは白い眼を向けている。しかし、良くもまあ、彰の奴は良くもここまで個性的な人物と知り合いになれるなと、アヤノは溜息を吐く。

 

自身もその一人なのだが、本人は気付いていないらしい。

 

リョウとアヤノは彰からの依頼でここに入院していたジェレミアを別の場所に移してほしいと言われたので、ここに来たのだ。バレたら事だが、バレなければ別に難しい仕事でもないので二つ返事で引き受けた。

 

その任務は全く問題なく終了し、今は完了の連絡がてら話に来ている。表向きには普通の病院なので、患者を装いながらだが。

 

「んじゃ、俺らは帰るわ爺さん。また今度な」

 

「待たんかい」

 

しかし、帰ろうとするリョウの首根っこが爺さんに掴まれる。何だよ?と聞くと、青筋を浮かべた爺さんは怒鳴りつけるように話し出す。

 

「馬鹿野郎!金だよ、金!テメェ、こないだの酒代まだ返してねぇだろうが!」

 

「あ…あー、あれか。ま、また今度金が溜まったら返すからよ!」

 

「待てるか馬鹿野郎!今すぐ返せ!彰から報酬貰ってるだろうが!それで返せ!無理だってんなら、テメェの内臓貰ってくぞ!」

 

「それが命を救う医者のセリフか!分かったよ、払えば良いんだろ払えば!おい、アヤノ!金貸してくれ」

 

「駄目だ」

 

予想外のアヤノのセリフにえ?と呟きながらリョウはアヤノの顔を見るが、アヤノは無表情で淡々と告げる。

 

「今月は出費が多かったからな。アイツからの依頼は全て生活費に充てる」

 

「あの…アヤノさん…金渡さないと俺の内臓取られちゃうんですけど…」

 

その言葉にアヤノはニコリと満面の笑顔になる。

 

「ここが病院で良かったじゃないか。一石二鳥だな」

 

「一石二鳥の使い方を間違ってねぇか!?」

 

そんな二人の会話に医者はため息を吐く。

 

「そんなこったろうと思ったよ。しゃあねぇなぁ…条件を飲むなら借金を返すのは延期しても良い」

 

「無しにするんじゃねぇのかよ…」

 

「文句あるんなら今すぐ払え!」

 

「嘘だよ、嘘!で?どんなことをしろって?」

 

「実はこの後も俺は仕事なんだが…どうしても抜けなきゃいけない用があったな。代わりに診察をしててくれねぇか?」

 

(どうせ女あそびだろうな…)

 

「アホか。医者の仕事なんてできるか」

 

「大丈夫だ。今日は基本的に暇で決まった人しか来ないからな。ここに置いてある薬を渡して適当に喋れば良い。薬には名前も書いてあるしな」

 

チラリと薬を見れば確かに名前が書いてある。確かにそれならできそうだが、既にここまでやっているということは、この糞ジジイ最初から俺に頼むつもりだったなとリョウはイラっとするが、それなら金を返せと言われたら返せないので、ため息を吐いて了承の言葉を発する。

 

「分かったよ。やれば良いんだろ?やれば」

 

「おう、そうこなくちゃな。良いか?くれぐれも問題は起こすなよ」

 

じゃあ、テメェで仕事しろ!とリョウが怒鳴る前に糞医者はサッサと出て行った。突然降って湧いた面倒ごとに、アヤノは呆れたようにリョウを見る。

 

「まんまと使われたな」

 

「他の選択肢はねぇだろ…」

 

そんな風にリョウはブツブツ文句を言っているが、諦めたように白衣を着て準備を始める。

 

「まあ、頑張るんだな。私は帰る」

 

「いや、お前手伝えよ!」

 

「リョウの責任だろう。考えて呑まないから悪い」

 

「そ、そうかもしれないけどさー、アレだよお前?家族なんだからさー、やっぱり困った時は助け合うってのが大事だと思うんだよ俺は。ほら!ナース服もあるからさ!これ着て一緒に頑張ろうぜ!」

 

「カメラを持ってそんなことを言うな気持ち悪い!何故私がそんなもん着なきゃならないんだ!」

 

「親代わりとしては娘の成長記録を残すのは義務だろうが!」

 

「そんな義務など存在せんわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

そんな風に二人が騒いでいると、受付から新規の客が来ると連絡が入った。

 

「新規の客だぁ!?あのクソジジイ!いきなり常連以外の客が来てるじゃねぇか!対処できるわけねぇだろ!」

 

「とはいえやるしかないだろう。やらないと本当に内臓取られるぞ」

 

「糞がぁぁぁぁ!頼むアヤノ!手伝ってくれ!時間がねぇ」

 

「たく、しょうがないな…いいか!絶対に写真は撮るなよ!!お待たせしましたー。お待ちの患者様は、名前を言って入ってきてくださーい」

 

文句を言いつつアヤノは白衣を着用し、待っているお客様に声をかけた。

 

そのすぐ後に患者が入ってきたが、その顔を見てリョウとアヤノは顔をひきつらせる。何故なら

 

「ピエル・アノウだ。この私がこんな汚い病院に来てやったのだから感謝せよ、イレブンども!」

 

((お前かよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!))

 

思いっきり知り合いだったからだ。

 

EUで色々あって…本当に色々あって知り合いになり、しかも日本に一緒に来たのだが、アノウの方がこんな疫病神共と関わりたくないと言って何処かに行ってしまったのだ。(まあ、不思議な縁でその後も何度も会っているのだが)

 

そんな風にリョウたちが顔を引きつらせているのを見て、アノウは嫌な笑い方をする。

 

「何だ?この病院は患者にそんな態度を取るのか?私は患者だぞ?わかってるのか?」

 

軽い変装をしているため、目の前の二人がリョウとアヤノだとは気付いていないアノウは、ふんぞり返って座りながらそう言った。

 

その発言にリョウとアヤノは青筋を浮かべながら、何とか笑顔を取り繕い言葉を発する。

 

「失礼致しました。お名前は確か…マダオ様でよろしかったですか?」

 

「誰がマダオだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ピエル・アノウと言っているだろうが!!」

 

「いや、カルテだと確かそうなっていましたが?そうだよね?アーヤノ君」

 

「先生の仰る通りです。何をやらせてもまるでダメな男。略してマダオと記載されていますね」

 

「何を言うかぁぁぁ!このイレブンども!私を誰だと思っている!昔はEUで司令官まで務めた男だぞ!」

 

「あー、いますよねぇ、そういう過去の栄光にしがみついてる男って。何時まで経っても何大学卒業だとか俺は高校時代イケてたとか。嫌になるよなぁ、アーヤノ君」

 

「先生の仰る通りです。そういう男にロクな男はいません。やっぱりマダオですね」

 

「何を言うかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!私はあの疫病神達にさえ会わなければ、今でもEUの司令官だったのだ!」

 

恐らくだが勝手に自分たちを疫病神扱いしていたことにリョウとアヤノの青筋は更に太くなる。

 

「そうなんですか。では、診断を始めますが…とりあえずオプジーボを打っときますか。アーヤノ君。オプジーボを一つ」

 

「待てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!絶対にとりあえずで使用して良い薬じゃないだろ!?」」

 

「了解しましたー!オプジーボ一つ入りまーす!」

 

「話を聞けぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

アノウの話を全く聞かずに、リョウとアヤノの治療という名の憂さ晴らしは続いていく。

 

「先生。オプジーボってどれですか?このドクロマークが付いてるやつですか?」

 

「いいよ、適当で。コイツが出来るだけ苦しみそうな薬なら別に何でも良い」

 

「色々ぶっちゃけ過ぎだろ貴様らぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!こんなもん打たせるかぁぁぁぁ!!」

 

そう言うとアノウはアヤノの手からオプジーボを奪おうとするが、その弾みでオプジーボは床に落ちてしまった。

 

「あーあ。壊しちゃったよ」

 

「これは弁償ですね先生」

 

「勿論だよアーヤノ君。責任は取ってもらわないとなぁ…大体3000万円になりまーす」

 

「貴様らのせいでもあるだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ふ、ふん。それに私にそんな金はない。あの疫病神のせいで文無しになってしまったからな。残念だったな」

 

そんな奴が病院に来るんじゃねぇという真っ当なツッコミはせずに、リョウとアヤノはニコリと笑う。

 

「患者様。大丈夫です。そんな心配は要りません」

 

「そうですよ、患者様。お客様は運が良い」

 

そう言うとリョウとアヤノは更に笑顔になりながら、何処から持ってきたのか知らないがチェーンソーを構えた。

 

「「ここが病院で良かったですねぇ」」

 

「何をする気だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!待て!!ヤメロォォォォォォ!!」

 

空いているベッドにアヤノがアノウを縛り付けている間に、リョウはネットで調べごとを始めた。

 

「大丈夫ですよー。患者様。このホワイト・ジャックに任せてください。おい、アーヤノ君。内臓ってどれくらいで売れるんだっけ?」

 

「丸ごと売れば3000万円くらいにはなると思いますよ先生。良かったですねぇ患者様。借金はしなくて済みますよ。ヤミ金に手を出さない人生を送れて幸せですね」

 

「ヤミ金よりヤバい医者に捕まってるんだが!!!???」

 

しかし二人がアノウの言葉などに耳を貸すはずもなく、正に解体ショーが行われようとした次の瞬間、ノックの音が響いた。

 

「あのー、先生?どうしたんですか?何か叫び声がしましたけど」

 

「ああ、気にするな。少し注射に患者がごねてな。困ったものだ」

 

「そうなんですか。あのー、患者の治療は終わりますか?次の患者さんが来ているんですけど」

 

「何?もう?しょうがないな。入れてやってくれ」

 

そんなリョウと受付の人との会話を尻目にアヤノは猿轡をアノウにかけ、バレないように布団をその上からかけた。悪いことをする時だけはチームワークが良い連中である。

 

「すいませーん、失礼しまーす」

 

すると、ブリタニアの学生らしき可愛らしいオレンジ髪の女の子が入ってきた。

 

リョウはカルテを確認するが、あのジジイの常連の客ではないらしい。

 

あのクソジジイ全然使えねぇじゃねぇか!とリョウは内心で声を荒げる。

 

そんなリョウの沈黙が不安だったのか、女の子は確認という感じで声をかける。

 

「あの…ここで合ってますか?聞いていた先生と違うんですけど」

 

まさか違うとは言えない。リョウはこうなれば勢いでやるしかないと、腹を括って立ち上がった。

 

「ああ。彼は少し用事でね。俺はその代わりだ。安心しろ。どんな病でも治してやるさ。この…ホワイト・ジャックがな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




こんな感じで彰のせいでキャラ変したEUの連中(それ以外もいる)は今後もちょくちょく出てきます。
…EU編やらなきゃまずいかなぁ…


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57 我慢というのはし続けていると限界がくるので定期的に吐き出そう

銀魂も遂に今週で終わるそうです…悲しいなぁ


「…何か凄く何処かで聞いた名前なんですけど、大丈夫ですか?」

 

「当たり前だろうが。何を心配する必要がある?良く見ろ」

 

シリアスな空気を形だけでも作ろうとしているリョウは、一応真顔で告げた。

 

「この顔がふざけているように見えるか?」

 

((いや、ふざけているようにしか見えないんだけど!!??))

 

リョウの言葉にシャーリーではなく、後ろで聞いているヴィレッタとカレンが内心でツッコミをあげる。

 

特にホワイト・ジャックがリョウだと気付いているカレンは尚更である。近くのナースも何処から見てもアヤノだという事実が、それに拍車をかけている。

 

(何やってんのよアイツら!!??)

 

一言で言えばこれがカレンの全感情である。

 

「あの…すいません見えます」

 

しかしリョウとアヤノとは初対面のシャーリーはそれに気付かないので、自然とツッコミも控え目なものになる。知らないとは可哀相なものである。

 

「確かに何も知らなければそう思うかもな。それに俺は彼を尊敬している。名前もそれをオマージュしていることは否定しない。だが俺は、そんな生半可な覚悟でオマージュをしてる訳じゃない。色んな点を真似しようとしている。だから俺は、彼を見習って医師免許を取っていない。彼がそうしているようにな」

 

((ただの不法行為だろうが!!!))

 

真っ当なヴィレッタとカレンのツッコミは、残念ながら聞こえない。

 

「え!?いや、それは駄目なんじゃないですか!?」

 

「馬鹿野郎!常識に捉われるな!」

 

((お前は少しくらい捉われろよ!!))

 

「いや、私が悪いんですか!?」

 

いきなりキレられたことにシャーリーは少し戸惑う。アヤノはそんなシャーリーの肩を掴み、安心させるように微笑む。

 

「大丈夫ですよ。先生の腕は確かです。これまでも数えきれないくらいの人間を切ってきました。安心してください」

 

(そりゃ、切ったじゃなくて斬ったんでしょうが!!)

 

しかしそんなことは知らないシャーリーは、アヤノの言葉を間に受けて驚いている。

 

「ええ!?無免許なのにそんなことして良いんですか!?」

 

「良いんですよ」

 

((良いわけねぇだろ!!!))

 

ヴィレッタとカレンの内心のツッコミなど知る由もないアヤノは、泣き真似をして言い放つ。

 

「本当は私と先生だって…こんなことしたくないんですよ!でも…誰かを助けるために仕方なかったんです…」

 

今にも泣き崩れそうなアヤノの様子を見て、カレンは完全に白い目を向けているが、シャーリーは戸惑っていた。

 

常識で考えれば許されることではないのかもしれないが、常識では救えない命があるということを知っているからだ。

 

「い、いや、そうかもしれないですけど…でも…」

 

「たく、しゃあねぇなぁ…分かったよ。今から俺の腕を見せてやるぜ」

 

座っていたリョウはそう言うと、すぐ近くのベッドに手をかける。

 

そのままベッドの布団を取ると、驚いたことに口輪をされて縛られた男が現れたのだ。

 

驚きのあまり声も出ないシャーリーを尻目に、リョウは告げた。

 

「コイツは病気に罹っていたな。マダオ病と言う。俺しか治せない不治の病だ」

 

「あの…この人メチャクチャ首を振ってますけど」

 

「ただの発作ですよ。ねぇ、マダオ様?そうなんですよね?」

 

ニコリと笑ったアヤノは、微妙にシャーリーには見えない角度で、メスを首筋に当てながらそう言った。

 

すると半泣きになりながらアノウは静止する。それを見たシャーリーはアヤノの言葉を信じたが

 

((思いっきり脅迫だろうが!!!))

 

全て見えていたヴィレッタとカレンには、そうとしか思えなかった。

 

「誤解が解けたようで良かったぜ…さて、俺の腕を見せるか。まずは」

 

そう言うとリョウは、置いてあったチェーンソーをすっと構えた。

 

「マダオ様にチェーンソーを振り下ろします」

 

((ただの処刑場にしか見えないんですけどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!))

 

「いや、待ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!良いですから!!!そこまでしなくても先生のことを信じますから!思い止まってください!」

 

解体ショーが始まる寸前になって、流石にシャーリーもリョウのことを静止する。このままでは、とんでもないものを見せられると思ったからだ。

 

「え?良いのか?キレイな赤が見える所だったのに」

 

「いや、見なくて良いですから!間に合ってますから!」

 

「そうなのか?ちっ、じゃあ良いか。んで?どんな症状なんだ?」

 

「あ、はい。最近少し喉が痛くて」

 

「なるほどな。病気はわかったよ」

 

「え!?診断もせずに分かったんですか!?」

 

「たりめーだろ。俺くらいになるとな。このくらいの病気は感じるだけで分かる。そこら辺の馬鹿医者とは違うんだよ!」

 

「す、すごい…で?どんな病気なんですか?」

 

「お前はな…恋の病だ!」

 

((お前が一番馬鹿だろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!))

 

「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!???恋の病で喉って痛くなるんですか!?」

 

「勿論だ。思春期の奴の病気の原因は、大体恋の病と中二病だと決まっている」

 

「そうなんですか!?」

 

((な訳ねぇだろ!!!))

 

普通に考えたら有り得ないことでも、医者に言われたからか、シャーリーは素直に信じている。

 

この世界で生きるなら、もう少し人を疑った方が良いと思う。

 

「そうだ。まあ、あまり知られていないがな。と言うわけで、お前の病気を治すには、お前の恋を成就させるしかねぇ!」

 

「そ、そんなこと言われても…」

 

急な質問にシャーリーの顔が赤くなる。そんなことを聞かれるとは思わなかったのだ。

 

そんなシャーリーの様子を見ていたアヤノはニヤリと笑う。完全に楽しむことに決めたようだ。

 

「これも病気の治療のためですよ。何に悩んでいるんですか?」

 

「いや、えっと、あの、その…」

 

顔を真っ赤にしたシャーリーは口籠っていたが、喋るしかないのかと腹をくくり、ボソボソと話し出す。

 

「好きな人がいるんですけど…その人は既に彼女がいて…でもその彼女は私の友達で…どうしたら良いのかと」

 

「何だ簡単じゃねぇか」

 

「え!?解決策あるんですか!?」

 

シャーリーは思わず俯いていた頭を上げる。聞いていたアヤノも拍子抜けしたような顔をしている。

 

「いや、それは当然でしょう。簡単に解決できますよそんなの」

 

「本当ですか!?一体どうやってです!?」

 

希望が見えたと言わんばかりに目を輝かせたシャーリーは、ワクワクしながら続きを待つ。

 

「「その彼女を殺せば良い」」

 

「何をとんでもないこと言ってんですか!?」

 

(いや、その彼女って私何ですけどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!??)

 

シャーリーだけでなく、こっそり聞いていたカレンも思わず絶叫する。カレンは心の中でだが。

 

しかしリョウは当たり前のように続きを話す。

 

「当たり前だろうが。お前、恋と友情とどっちが大切だ?」

 

「どっちも大切何ですけど!?」

 

「お気持ちは分かりますが…それは贅沢と言うものです。良いですか?何かを選ぶということは、何かを選ばないということです」

 

(何か格好良い感じで言ってるけど、アンタら最低なことを言ってるからね!?)

 

「そう。欲しいものがあるならば、何かを捨てなければいけないんです。それは品性かもしれません…誇りかもしれません…。ですが恋とは、それに見合う価値があるものです。もし覚悟が決まれば、私達に頼ってください」

 

そこまで言ったアヤノは、ガシッとシャーリーの肩を掴む。

 

「金次第でその彼女を私達が殺してあげます」

 

(結局金なんかいぃぃぃぃぃぃぃぃ!金のために色んなもの全部捨ててるのはアンタらでしょうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)

 

知らないとはいえ、自分の親友が自らを殺すと言っていることに、カレンは心中で絶叫する。コイツらなら殺すのはともかく、金のために自身を半殺しくらいにはしかねないと思った。

 

「そう…何ですかね?」

 

(アンタはアンタで悩むなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!何、心を動かされてんのよ!何、私を殺す決心を固めてきてんのよ!)

 

「そうに決まってるだろ?じゃあ、決め手だ。大先生に意見を仰ごうか。大先生。出番です」

 

「この程度のことで僕を呼ばないで欲しいけどね…まあ、しょうがないか。はじめまして。僕こそ」

 

リョウがそう言うと奥の扉がスッと開いた。そこから、白衣を着て明らかに作り物の鼻を付けた青年が現れた。

 

「本間ユキ太郎だよ」

 

(やっぱり、おまえ(ユキヤ)もいるんかいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!)

 

(また変なのが出てきた…)

 

ユキ太郎の素性を知っているカレンは心の中で絶叫し、次から次へと現れる変人にヴィレッタは頭を抑えた。

 

「あ、あの…意見を仰ぐってどのような?」

 

「そんなに難しいことじゃないよ。要するに君の好きな人が誰なのか、ハッキリさせようって話さ。ハッキリすれば殺す決意もできるでしょ?」

 

そう言うとユキ太郎は大きな画用紙を床に敷いた。人が一人丁度乗れるような大きさだ。

 

訳の分からない行動に、シャーリーは首を傾げる。そんなシャーリーの疑問に答えるように、ユキ太郎は喋り出す。

 

「今から君の好きな人を頭の中に思い浮かべるんだ。そうしたら君の思い浮かべた人物が本当に好きな人なら、その人はここに現れる」

 

「ええ!!??何ですかそれ!?そんなものあるんですか!?」

 

「勿論だよ。このラーの紙は真実を映し出す紙さ」

 

((そんなもんあるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!ただのパクリだろうが!!!))

 

そんな尾行者の反応など知る由もないユキヤは、発煙筒を焚いて視界を遮ってから続ける。

 

「さあ!思い浮かべるんだ!君の好きな人を!」

 

普通であればそんなもんあるのかと疑問に思う所だろうが、場の空気に流されたシャーリーは、律儀に自分の好きな人を思い浮かべる。

 

(私の…私の好きな人は…)

 

器用なのに変な所が不器用で。格好つけたがりで。本当は優しいのにそれを表に出すのが下手で…

 

そこまで考えてシャーリーはフッと笑う。

 

(ああ…やっぱり私は…ルルのこと…好きなんだなぁ)

 

改めてそれに気付いたシャーリーはうっすらと目を開ける。

 

もしこれで目の前にルルが現れていたら。今度こそ伝えよう。自分のルルに対する思いを。振られたとしても悔いはない。

 

煙が晴れて、紙の上に人物が居るのが薄っすらと見える。その人物の体型は思ったよりもしっかりしていて、日本人のような顔をして、栗色の髪で…いや、ちょっと待て。

 

「…何してるの?スザク君…」

 

そこに現れた人物は自分が考えていた人物ではなく、クラスメートであり生徒会の仲間でもある枢木スザクだった。

 

シャーリーのジト目が突き刺さる中、スザクは堂々と告げた。

 

「出番が来るまで窓の外でずっとスタンばってました」

 

沈黙が一瞬周囲を包む。そして…

 

「じゃねぇだろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

「スプラトゥーン!!!」

 

遂に我慢の限界が来たカレンの、ツッコミと言う名の飛び膝蹴りがスザクに炸裂した。

 

 

 

 

 

 

 




カレンも結構耐えたんですけどねぇ…


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58 おかしいのは自分じゃない!って言いたくなる時は誰にでもある

やべえ、ふざけ過ぎたかもしれない


「い、痛いんだけどカレン…何でここにいるの?と言うかこんなことする人だったっけ…?」

 

「うっさいわよ!アンタらが悪いんでしょうが!ツッコミ不在のまま、ボケばかり増えてんじゃないわよ!と言うか、アンタこそ何でここにいんのよ!」

 

「ユーフェミア様に頼まれたんだ…行方不明のジェレミア卿が心配だから探してくれって…」

 

突如として現れたカレンのツッコミと言う名の攻撃を貰ったスザクはその場で蹲るが、律儀なことにしっかりとカレンの質問には答えていた。

 

いきなり現れたカレンに、シャーリーと隠れて見ていたヴィレッタが驚き過ぎて完全に思考が停止している中、スザクはリョウに自分の任務を告げた。

 

「すいません。こちらの病院にジェレミアという軍人は入院していらっしゃらないでしょうか?」

 

「いや、知らねぇな。もしかしたら他の奴なら知ってるかもしれねぇから、聞いてみたらどうだ?」

 

こういった突然の展開に慣れているリョウは、スザクの質問にアッサリと嘘を答える。

 

この病院に居ないのは知っているが、居ないと断言したら何故知っているのかという話になるので嘘を言ったのだ。

 

その嘘をアッサリと信じたスザクはそうですかと返事をし、カレンとシャーリーにまたねと伝えてこの場を去る。この男は何をしにこの部屋に来たのだろう。

 

スザクが去ったことで、カレンはくるっとリョウ達の方に振り返り口を開いた。それを見て焦ったリョウたちは、慌ててカレンの言葉を止めようとする。

 

「で?アンタら三馬鹿はこんな所で何を「おおーっとお客様!内密な相談があるのでちょっと良いですかぁ!?こちらです!」ちょ!?何なのよ!?」

 

正体がバレたらマズイので、カレンが喋り終わる前にリョウとアヤノはカレンの肩を掴み、強引に後ろの扉の中に連れて行き、頭を下げて頼み込んだ。まあ、最悪バレても構わないアヤノは頭を下げてないが。

 

「頼むカレン!俺たちの正体は内密に頼む!」

 

「はあ?何でよ?」

 

訝しげにリョウを見るカレンに溜息を吐きながら、アヤノは事情を説明する。それを聞いたカレンもアヤノ同様に溜息を吐いて、ジト目でリョウを見る。

 

「事情は分かったけど…何してんのよアンタは。酒は程々にって言葉も知らないの?」

 

「私も全く同意見だが…まあ、今回だけは許してやってくれカレン。本来ここで働いてない医者でもない男が患者を診てるなんてことになれば、あのヤブ医者は間違いなくクビになり、リョウの内臓は取られるだろう。だから協力してくれとは言わんが正体をバラす事だけは勘弁してくれないか?」

 

「まあ、良いわよ。別にリョウが医者やってたって私には問題ないしね」

 

そんなカレンの言葉に一安心したリョウは安堵の息を吐き、三人揃って他の面子が居る所に戻ってきた。

 

「あ、あのカレン?知り合いだったの?」

 

「えーと…まあ、うん。私もこの病院偶に来るからね」

 

シャーリーの質問にあははと顔を痙攣らせながら、カレンは誤魔化すように笑う。

 

続けたら面倒なことにしかならないと考えたリョウは、会話を断ち切ってシャーリーの診察を続けようとする。

 

「待たせたな。じゃあ、これから診断の続きを「お前らちょっと待てぇぇぇぇぇ!!」んだよ、うるせえな!」

 

だが、放置されている間に何とか喋れるようになった、マダオことアノウが口を開いて会話を止める。

 

リョウはそのことに青筋を立てて怒鳴っているが、縛られて殺されそうになっているのだから、アノウの言葉は当然と言えば当然である。

 

「何を逆ギレしているのだこのヤブ医者は!おかしいだろ貴様ら!何でこんな風に完全に縛られている患者を見て、普通に診断を続けているんだ!」

 

「え?診療をしてるんじゃないんですか?」

 

「何処の国のどんな治療だ!?こんな治療方針があってたまるか!!おい!お前もそう思うだろ?」

 

シャーリーの的外れ過ぎる返答にアノウはキレながら返答し、同意を求めるようにカレンを見る。

 

「え?まあ、そう思いますけど」

 

そう言うと、カレンは遠い目をして諦めたように笑う。

 

「私はこれぐらいのことでツッコむのは止めたんです」

 

「おい、お前諦めるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!諦めたら試合終了だぞ!!安西先生だってそんな姿は見たくないぞ!?」

 

「アンタに私の何が分かるのよぉぉぉぉぉ!!私だってね!諦めたくなんかなかったわよ!だけどしょうがないでしょ!?世界は残酷なのよ!優しくなんかなかったのよ!!安西先生だって許してくれるわよぉぉぉ!!」

 

「許すわけがないだろうがぁぁぁぁ!!安西先生は最後まで諦めないんだよ!!お前に安西先生の何が分かる!!知ったような口を聞くな!!」

 

「少なくともアンタよりは知ってるわよ!!あの人を全国に連れて行きたいと思ってんのよ!今でもバスケがしたいと思ってるのよ!!」

 

「いや、もう途中から完全に安西先生の話になってるぞテメエら!!ボケなのかツッコミなのかハッキリしろや!!」

 

完全に収拾がつかなくなったカレンとアノウの会話にリョウが横槍を入れる。そうでもしないと止まらないと思ったからだ。

 

そんなカオスな状況を

 

(な…何なんだアイツらは一体…?)

 

隠れていたヴィレッタは、冷や汗を流しながら見ていた。

 

何処からか突然出てきたカレンにも驚いたが、診療どころか普通の会話すらしていない連中に、ヴィレッタは自分は一体何をしているんだろうと現実逃避を始めていた。

 

「私は尾行までしてこんな奴らを見て、何をしているんだろうか…」

 

「そりゃ、ストーカーなんじゃないの?」

 

突然後ろから聞こえた声に、ヴィレッタは慌てて振り返る。そこに居たのは大先生と呼ばれていた本間ユキ太郎だった。

 

ニヤニヤしながら現れたその男に、ヴィレッタは愛想笑いを浮かべながら答えた。

 

「な、何の話です?話が読めないのですが?私がここに居るのは偶然ですよ?」

 

「へぇ。偶然ずっとシャーリーとかいうあの女の子を尾行してるんだ?」

 

バレていると感じたヴィレッタは、表情を変えて隠し持っていたナイフで斬りかかるが、予想していたのかアッサリとユキ太郎は躱す。

 

「怖いねぇ。最近のストーカーはナイフを常備してるんだ」

 

「お前…何者だ?」

 

「世界一の引きこもりを目指している男だよ」

 

ナイフによる奇襲攻撃にもアッサリと対処したユキ太郎に、ヴィレッタの警戒心は最大限に跳ね上がる。

 

それをユキ太郎も察したのか、微妙な距離を取りながら他の面子を呼ぼうとする。だが、突然ヴィレッタの様子に変化が現れた。

 

「…ねぇ、何やってるの?」

 

「知るか!何かに引っ張られているんだ!一体何…が」

 

何故かヴィレッタは、何かに引きずられるように診察室の中まで吸い込まれそうになっており、それを防ぐように何とか壁にしがみついている状態だ。ユキ太郎にしても意味が分からない。自分には何も起きていないのだから。

 

しかも話している途中で何故かヴィレッタは途中で倒れてしまった。何が起きたのだろうと、ユキ太郎はヴィレッタから視線を外して診察室の中の様子を見る。そこでは、拘束されていたはずのアノウが仁王立ちしていた。

 

それを知っていたユキ太郎は、冷や汗を流しながらアノウの姿を見つめる。

 

「まさかアレが発動するなんてね…これは逃げた方が良いかも。この人の正体には興味があったけど、まあ良いか。あの女の子にそこまでする義理はないし」

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなことをユキ太郎が言っている一方で

 

「で!?何なんですか!!?アレは!?」

 

診察室の中にいたせいで、ヴィレッタよりも更に強くナニカに引っ張られているシャーリーを何とか庇っているリョウとアヤノに、シャーリーは尋ねた。

 

うるさいから殺そうとリョウがメスを振りかぶったその瞬間に、突然ソレは起こったのだ。

 

アノウの拘束は外れて、何故か発生した謎の引力にシャーリーは引っ張られるようになったのだが、ギリギリとリョウとアヤノが庇ったことにより、吸収されずに済んだのだ。

 

「アレは悲劇の力だ。ある連中と会ったことで、マダオは職も、地位も、名誉も、妻も、お金も、人間としての尊厳も、幸運も失ってしまったんだ…その結果、幸福な者を不幸に落とすようになった…俺たちはアレをこう呼ぶ…マダオゾーンと」

 

「迷惑以外の何物でもない!?そこまで分かっているなら早く止めてくださいよ!」

 

「いや、俺たちもそうしたいんだがなぁ…よく見ろ」

 

アヤノの説明により当然発生するシャーリーの要望に、リョウはそれが難しいことを説明する。

 

シャーリーからしたら意味がわからない。一体この状況で自分は何を見れば良いのだ?

 

そんなことをシャーリーが言うと、リョウは溜息を吐く。何故こんな簡単なことが分からないのだろうか。

 

「気付かないのか?マダオはあの場所から一歩も動いていないんだ」

 

「いや、だから何なんです!?」

 

予想外過ぎるリョウの回答に、シャーリーは思わず大声を出す。だから何なのだと全力で叫んだ。

 

「信じられない高等技術です。自分の手元に来るように幸福にスピンをかけてるんですよ。南次郎さんが私にやったことと同じです」

 

「いや、南次郎って誰です!?というか何で二人は平気なんですか!?」

 

「馬鹿野郎。俺たちが幸福な訳ねぇだろ。散々な人生だぞ。お前と一緒にすんな」

 

「…ねえ…あの…ちょっと良い?」

 

今まで黙っていたカレンが突然声を発する。何だろうと残りの三人がカレンの方を見ると、カレンは微妙な顔をしながらその場に平然と立っていた。いや、むしろ若干部屋の外に押されていた。

 

「…一応そんなに悲惨な人生歩んでるつもりはないんだけど…何で私は押し戻されてるの?」

 

そんなカレンの質問に三人は暫く考え、結論を出した。

 

「…不幸に落ちたら一体どうなるんてすか?」

 

「人によるな。結構ランダムな結果が待ってる」

 

「試してみますか?私たちが離れたら多分分かりますよ」

 

質問に答えないという選択を。しかしそんなことでカレンが納得するはずもない。

 

「いや、待ちなさいよ!質問に答えなさいよ!何で私だけ遠ざけられてるのよ!」

 

再度のカレンからの問いかけに、視線を全く合わせずに三人は答えた。

 

「…た、多分人によってはそういうこともあるんだよ」

 

「ほ、ほら!カレンは結構苦労もしてたし!」

 

「そ、そうだ!だから安心しろ!お前がマダオだって驚くくらい不幸だってことはないはずだ!」

 

「…じゃあ、私と立場を代わってくれる?」

 

涙目のカレンが三人に頼むが、三人とも回答は決まっていた。

 

「「「…それはちょっと」」」

 

「ほら、やっぱりぃぃぃぃぃぃぃぃ!!私だって薄々気付いてたわよ!私の負担だけ異常だって!私だけボケで逃げられる機会が薄いってことくらいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」

 

カレンはブワッと泣き出すが、そんなことをしても状況はまるで変わらない。三人が物凄く可哀想な人を見る目で見つめてくるようになっただけだ。

 

何故こんなことになってしまったのだろうか。

 

自分はこんなキャラではなかったはずだ。

 

何故、何故、何故、何故、何故。

 

そこまで考えて虚ろな目になったカレンは、目の前でマダオゾーンを発動しているアノウが目に入った。

 

「ふふふ…そう。アンタもボケキャラだった訳ね。つまり私の味方は未だに増えない訳ね…ああ、そう。分かったわ」

 

変なスイッチが入ったカレンは薄笑いを浮かべた。そしてそのまま、押し出される力に対抗してアノウの元へと歩いていく。

 

「今ならルルーシュの気持ちが分かるわ。最近私は私に嘘をついていた。おかしいのは私じゃないのかって嘘を。でも違った。そうじゃない。おかしいのは私じゃない。世界の方よ…だから!」

 

そこまで言うと、突然カレンの周りに閃光が走った。あまりの眩しさにリョウたちが一瞬目を閉じるが、その一瞬の間にマダオにかかと落としを炸裂した。

 

リョウとアヤノは驚きを禁じ得ない。あのマダオゾーンを破ったと言うのか?そんな人物など過去に二人しかいないからだ。

 

つまり、カレンはこの短期間であの人に追いついたということだ。

 

「リョ、リョウ…まさかカレンは…」

 

「ああ。多分間違いねぇ…あの野郎はこの短期間で…」

 

「え?何の話ですか?」

 

一人だけ話についていけないシャーリーは、疑問をリョウとアヤノに尋ねるが、答えになっているのか分からないリョウの独白は続いていく。

 

「本当に…辿り着いたと言うのか?…ツッコミの境地」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




マダオゾーンの悲劇

ヴィレッタ「う…ん?ここは?」

ユキ太郎「アレ?起きたの?なら都合が良いや。アンタは誰で何であの女の子をつけてる訳?」

ヴィレッタ「何の話…ですか?というよりここは…何処ですか?」

ユキ太郎「いや…病院だけど…え?アンタまさか」

ヴィレッタ「私は…誰ですか?」

ユキ太郎「僕知ーらないっと」(全速力で逃亡)





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59 はっちゃけた後って結構後悔することが多い

書いてて思った…意味わからん


「…いや、あのあんまり聞きたくないんですけど、ツッコミの境地って何ですか?」

 

引きつった顔をしながら、シャーリーがリョウに問いかける。

 

シャーリーからしたら正直あまり聞きたくなかったのだが、聞かないとこの異常事態に対処できなくなるかもしれないと考えたのだ。

 

「何だ、お前知らないのか?」

 

「知ってるのが常識みたいな雰囲気出さないでください。世界の殆どの人は知りませんから」

 

「私から説明しましょう。ツッコミの境地。アレは自分のツッコミの限界を超えた者だけが踏み入ることができる場所。それがツッコミの境地です」

 

そう言ってリョウではなく、話を聞いていたアヤノが答える。

 

しかし、その説明を聞いたシャーリーは冷や汗を流しながら、それに疑問を呈する。

 

「あの…何か格好良い感じで言ってますけど…それってただツッコミに疲れ果てた人ってことなんじゃないんですか?」

 

そんなシャーリーの疑問を完全に無視して、アヤノの解説は続いていく。

 

「ツッコミの境地発動状態になると、私たちにも見えるオーラを出し、過去に戦った者達へのツッコミを無意識に発動します。見てください。今までのカレンのツッコミの集大成です。アレは飛び膝蹴りですね。見事なものです」

 

「いや、それ完全にただの可哀想な人です!ただ条件反射でツッコミを出すようになっただけです!」

 

そんなシャーリーの視界にはツッコミを次々と繰り出すカレンと、それをマダオゾーンによる反発で防ぐアノウが映った。

 

何か菊◯印のステップとか言ってカレンが三人に分身しているのだが、ツッコミをしたら負けだと思ったので黙っていた。

 

もう、何か色々有り得ない気がするが、残念ながら現実なので対処する他ない。

 

「というかこれ、どうやって収拾つけるんですか?カレンは条件反射でやってるんですよね?マダオさんも元に戻らないし」

 

死ぬほどどうでも良い、無駄に激しい戦いを指差してシャーリーが尋ねる。診療なんてどうでも良くなったので、正直帰りたいのだが、流石にこれを無視して帰るのは可哀想な気がする。

 

そんなシャーリーの当然の疑問をアッサリと否定する。

 

「いえ、終わりますよ」

 

「え?終わるんですか?」

 

「はい。見てください。おかしいと思わないんですか?カレンのあの汗の量を」

 

「…確かに異常に汗が出てる気もしますけど、今更この程度のことをおかしいと思うわけないじゃないですか」

 

またしてもシャーリーによる当然の反論を全く無視して、何故かドヤ顔でリョウが続ける。

 

「漸く気付いたようだな。ツッコミの境地の弱点に」

 

「いや、弱点しかないです。存在自体が弱点です」

 

「本来できないことを限界を超えてやっているんだ。その反動で異常にツッコミ力を使う。幾らカレンといえども長い時間はもたねぇ」

 

「(ツッコミ力って何?って聞いたら負けなんだろうなぁ…)…じゃあ、どうするんです?」

 

「決まっている…参戦するだけさ。俺はあの境地に至った者を三人知っている」

 

「…そんな可哀想な人が後三人もいるんですね」

 

そんなシャーリーの同情タップリの言葉を無視して、リョウは続ける。

 

「解放戦線の千葉。EUのレイラ。そして…」

 

ブワッとリョウの周りに謎のオーラが発生する。

 

「他ならぬこの俺だ」

 

「いや、アナタもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!??」

 

突然の展開に流石のシャーリーもツッコミをあげるが、構わずにリョウは続ける。

 

「ふっ…能ある鷹は爪を隠すと言うだろ?さあ、行くぞマダオ!覚悟しなって、ふぶおおおう!!」

 

「何か吹っ飛ばされた!?」

 

しかし格好つけたにも関わらず、リョウは不可視の攻撃によって思い切り壁に叩きつけられる。

 

何故の現象にシャーリーは戸惑うが、全く動じていないアヤノはこれまたドヤ顔で解説を始める。

 

「甘いですね、お客様。これはカレンの「アンタがそんなもん使える訳ないでしょうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」という意味が込められた無言の見えない速さのツッコミです。ツッコミの境地に至ったからこそできる高速のツッコミ。流石は私の親友です」

 

「ドヤ顔の所悪いですけど、全然誇れることじゃないです!確かに凄いですけど、悲しすぎる力です!」

 

そんなシャーリーとアヤノの会話がある中でも、カレンとマダオの悲しい戦いは続いていく。繰り返されるツッコミという名の攻撃に、マダオの防御も限界が来ていた。

 

しかしツッコミの境地の反動により、カレンのツッコミ力もかなり失われていた。つまり、お互いに限界が近い。戦いの決着は近かった。

 

「どっちももう余力がない…次のツッコミが最後になる。炸裂するか防がれるか…それとも相討ちか…」

 

(突っ込まない…突っ込まないよ私は…)

 

何故かシリアス顔で話すアヤノに言いたいことは山ほどあったが、かろうじてシャーリーはツッコミを思い留まる。

 

最後の攻防の前にカレンのオーラが更に光り輝いた。それに負けまいとするかのようにマダオゾーンのオーラも力を増した。

 

その姿はまさに台風と台風のようだ。

 

その台風と台風は少しずつ接近していき、遂に激突した。

 

二人のオーラの輝きは本日最大となるが、拮抗し過ぎているせいで中々決着がつかない。

 

そのせいで溜められたエネルギーは行き場を失い、唯一の逃げ場となる天空へと動き出した。

 

つまりまあ、要するに

 

「…空が綺麗ですね」

 

「そうですね、お客様。今日も綺麗な青空です」

 

診療所の屋根をそのオーラで吹き飛ばしてしまったのだ。無駄に凄い奴らである。

 

しかしそこまでしてもなお、決着はつかない彼等の激突は止まらない。

 

「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」」

 

雄叫びを上げながら二人は飛んだ。飛びながらも何度もぶつかり合う。その激突は正にツッコミとボケの頂上決戦の様相を呈していた。

 

(…私は何を見させられてるんだろう)

 

そんな感想をシャーリーが抱いていることなど関係なく、二人の戦いは遂にクライマックスを迎えようとしていた。

 

負けるわけにはいかないと言わんばかりに、マダオのオーラは更に強くなる。彼には負けられない理由があった。

 

(こんな小娘に…私の不幸が分かってたまるものかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!)

 

思い返せば3年前。アレから私の人生にケチがつき始めた。

 

突然私の前に現れた四人の疫病神。奴等に会ったせいで…奴等に会ったせいで…

 

勝ち組だった自分の人生は真っ逆さまに負け犬人生…見下す人生が一転して見下される人生に…人を見下して鼻で笑う人生を送れるはずだったにも関わらず…

 

結構最低なことを言っている気もするが、本人は至って真面目である。つまり、コイツもロクデナシだと言うことだ。本当にろくな奴がいない世界だと思う。

 

ぶっちゃけ、原作でも結局勝ち組人生から見事に転落しているので、遅いか早いかの違いなのだが。自身の性格にも多大な問題があるのを自覚した方が良い。

 

とは言え、四人の疫病神による齎された不運が非常に大きかったのも事実なので、恨んでも筋違いという訳でもない。そんなマダオの負のオーラは確かに凄かった。

 

だが

 

(馬鹿なこと言ってんじゃないわよ…)

 

(何だと…)

 

マダオは知らなかった。

 

(不幸?そんなもんが何だってのよ…こちとら)

 

自身が相手をしている存在が何なのかを。

 

何故か相手の思考に割り込んで会話を始めたカレンは、そのまま負の笑いを浮かべたまま続ける。

 

(ボケしかいない絶望の中で…戦国時代を生き抜いてんのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!)

 

(何ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!)

 

そこまで言うとカレンのオーラが一段と激しくなる。その勢いは止まることを知らず、マダオのオーラを圧倒する。

 

トドメとばかりに空中で回転したカレンは、そのままマダオの負のオーラを打ち砕かんと回し蹴りをする。

 

バキバキバキという音を立てながら、マダオの防御オーラが砕かれていく。

 

そして

 

「これで…終わりよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「馬鹿なぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

遂にマダオを捉えたカレンはそのまま地面(病院)に叩きつけた。

 

叩きつけられたマダオは完全に気を失っている。それを確認したアヤノは手を挙げて勝利を宣言する。

 

「ゲームセット!ウォンバイカレン!セブンゲームストウシックス!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと…リョウ…テメエ…内臓置いてくんだろうな?」

 

「おい、馬鹿待てよ!俺のせいじゃねぇだろうが!」

 

「知るか馬鹿野郎!患者の責任は医者の責任だ!」

 

「俺は医者じゃねぇ!」

 

「代理とは言え医者だろうが!さっさと心臓の一つや二つ置いてけ!」

 

「心臓は一つしかねぇんだよ!」

 

心底どうでも良い戦いのせいでボロボロになった病院の中で、メスを片手にヤブ医者に追いかけられているリョウを見ながら、アヤノとシャーリーは立っていた。

 

その側で何が起きたのか全く分かっていないスザクは疑問符を浮かべながら、シャーリーとアヤノに尋ねた。

 

「あの…何をしたら一体こうなるの?」

 

「「何というか…その…」

 

何故のテンションが落ち着いて冷静になったアヤノと、元から冷静だったシャーリーは揃って答えた。

 

「「テニプリやってました…」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これでこの話も一区切りです


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60 変わったと思ってもなかなか人は変わらないもの

書いてて思った…ウチの原作主人公なかなか面倒臭えなぁ


「ねぇ、答えてルルーシュ…貴方にとって私は何?」

 

外では月が顔を出し始めた頃。アッシュフォード学園のゲストルームでは、赤毛の少女が涙目になりながら、目の前の男に問いかけていた。

 

貴方にとって自分は何なのかと。自分はどんな存在なのかと。

 

そんな必死の問いかけに答えるどころか目も合わさないで、男はチェス盤に向かいながら何かを考えていた。

 

そんな男の様子は怒るでもなく、少女は続けた。

 

「私…貴方となら…ねぇ!答えて!」

 

熱を帯びてくる少女の言葉に、流石の男も無視を続けることの無理を悟ったのか、頭痛を堪えるようにコメカミに手を当てながら答えた。

 

「…彼女ということになるだろうな」

 

「そうよね…だったらこんな問題…大したことじゃないじゃない」

 

「無理だと何度も言っているだろうが」

 

「どうして…どうしてなのよ!」

 

少女の目から涙が溢れ出した。信じていたのに。彼なら分かってくれると。なのに何故…何故…

 

「どうして…彼女なのに…一緒に住むのを認めてくれないのよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

「お前こそ何度言ったら分かるんだ!彼女だからって一緒に住む訳ないだろうが!」

 

(こいつらこのやり取りを何度やれば気が済むんだ?)

 

泣きながら頼み込むカレンと、それを平然と断るルルーシュと、それを見ながらピザを食べるC.C.。

 

何時も通りの平和な一幕だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良い加減、住まわせてやれば良いだろう。あいつの性格上、認めてもらえるまで諦めないぞ」

 

「簡単に言うな。そんなアッサリと認めて良い問題ではない」

 

結局何時も通り認めてもらえず、泣きながら「鬼!悪魔!童貞!」と叫びながら帰って行った。最後の言葉は自分にとってもブーメランな気もするが、気にしてはいけない。

 

ふうっと溜息を吐きながら、当たり前のようにルルーシュの部屋にいるC.C.の言葉に答えるルルーシュ。このやり取りは何度目だろうか。もう数えるのも面倒になってきた。

 

「論理より感情で動くのはカレンの欠点だな…まあ、それが良いところでもあるが」

 

「お前もそうだろう」

 

「何?」

 

予想外のC.C.の言葉にルルーシュは眉をしかめる。

 

「本当にカレンをこの家に住まわせないのは、アイツの兄の存在がバレる可能性が高くなるからというだけか?」

 

「当然だ」

 

「嘘だな」

 

「何?」

 

「お前は万が一を考えて、カレンの兄を安全な病院に移せるように仕掛けはしている。そうであるならば、カレンが此処に住んだ所で特に問題は無いはずだ…怖いのか?これ以上、自分の内面にアイツが踏みこんでくることが」

 

「…ふん。馬鹿馬鹿しい」

 

C.C.の言葉を鼻で笑うと、ルルーシュはC.C.に背を向けて、もう寝るから部屋から出ていくように伝える。

 

C.C.もルルーシュの言葉に反論するでもなく、ボソッと一言だけ言い残してから部屋を出て行った。

 

一人になったルルーシュは、寝るためにベッドに潜り込むと、何故か先ほどC.C.が言い遺した言葉が頭の中に反響する。

 

(お前がそれで良いなら私は構わないさ。私はお前の共犯者だからな)

 

その言葉にルルーシュは苛立ちが募る。何故か最近イライラすることが増えた。プライベートも黒の騎士団の活動も順調なのにも関わらずだ。ルルーシュにとっても理解できない心理状態である。

 

だが、その言葉は正確には違う。ルルーシュは何に対して自分が苛ついているのかは理解している。本当に分からないのは、何故自分がそのことに対して苛ついているのかだ。

 

(それで良いなら?良いに決まっているだろう)

 

そんな心理状態だからこそ、何時もなら気にもしないだろうC.C.の言葉を思い出した。どう考えても自分が正しいにも関わらずにだ。正しいからこそ、カレンも諦めないとはいえ何時も渋々とシュタットフェルト家に戻るのだ。

 

(彰の奴なら何と言うだろうな…)

 

一瞬でも、そう考えた自分をルルーシュは恥じた。そんなことを考えてどうする。人の意見など知ったことか。論理的に正しいならば、アイツの意見などどうでも良いはずだ。

 

「くそ!」

 

思わず声を出して嫌な考えを振り払おうと、布団の中に頭を潜り込ませて何とか眠ろうとするルルーシュ。

 

自分は間違っていない。

 

心の中でそう叫びながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すいませんルルーシュ様。わざわざ買い物にお付き合いくださって」

 

「いえ。特に用もなかったので構いませんよ」

 

申し訳なさそうに謝る仁美にルルーシュは笑顔で答える。

 

特に予定もない週末。家でゆっくりとナナリーと触れ合いながら、今後の戦略でも練ろうかと思っていたルルーシュであったが、突然ナナリーから仁美の買い物に付き合ってあげてくれないかと頼まれたのだ。

 

今まで仁美からそんなことを頼まれたことがないルルーシュは、少し不審に思ったが、断る理由もなかったので付き合うことにした。

 

付き合うことで仁美の要領の悪さを見て苦笑いすることも多かったが、仁美の人間性はルルーシュにとって好ましいものであったので、一緒にいることは多少のリフレッシュにもなった。(そもそも、何だかんだ言っても世話好きなので、要領の悪い人間を助けるのは嫌いじゃなかったりする)

 

その後買い物が終わり、二人は近くのカフェで腰を下ろす。ルルーシュが手伝ってくれたので買い物も早く終わり、仁美は心からの感謝をルルーシュに告げた。

 

「ありがとうございます、ルルーシュ様。おかげで何時もより早く買い物が終わりました」

 

「それは良かった」

 

ニコリと微笑むルルーシュに、仁美も笑顔を向ける。

 

平和な時間だった。特に会話で盛り上がるという訳でもないのだが、こういう何もない穏やかな時間は、ルルーシュにとっては癒される時間だった。心に刺さっているトゲが抜けるには至らないが。

 

「気分は…完全には晴れていないようですね」

 

ピクリとルルーシュの眉が動く。しかし、自身の動揺がバレないように、平静を装いながらルルーシュは会話を続ける。

 

「何の話です?俺の気分は至って良好ですよ?」

 

「隠さないでも大丈夫ですよ、ルルーシュ様。ナナリー様やカレンに言ったりしませんから」

 

しかし、ニコリと微笑みながらルルーシュの言葉を否定する仁美に、隠し通すのは無理だと判断した。カレンやシャーリーが相手なら、最後まで誤魔化し通すのだが、仁美が相手だとどうにも勝てない気がするのだ。

 

カレンの母親の母性が凄いのか、ルルーシュのマザコンが凄いのか、判断に困る場面である。まあ、両方なのだろう。

 

そんなこともあり、実は仁美はルルーシュにとって最も勝てない相手なのである。

 

「隠すのは上手い方だと思っていたんですけどね…そんなに分かりやすいですか?」

 

「いえ、そんなことはありませんよ。ただ、母親をやっていて、隠し事を見抜くのが上手くなっただけです。ナオトもカレンもイタズラ好きでしたから」

 

過去を思い出すかのようにそう言う仁美を見て、ルルーシュは少しだけカレンが羨ましくなる。自身には、こんな風に自身の過去を思い出してくれる人はいない。

 

「隠し通せないはずですね。まあ、そんな大したことでもないので、仁美さんが気にするようなことはないですよ」

 

実際に大したことじゃない上に、仁美に言えるような内容でもない。

 

なので、ルルーシュは誤魔化すように微笑みながら、頼んでいたコーヒーを口に含んでいたのだが

 

「彰様と何かあったんですか?」

 

仁美の言葉で盛大に吹き出した。

 

余りにも驚いた所為でむせてしまい、ゴホゴホと咳をするルルーシュに謝りながら、仁美はルルーシュの背をさする。

 

「す、すいません!大丈夫ですか?ルルーシュ様?」

 

「い、いえ…大丈夫ですよ。と、ところで何でアイツが出てくるんですか?」

 

「何となくですが、最近のルルーシュ様の態度を見てそうではないかと。その様子だと当たりみたいですね」

 

これで違うとも言えず、関係ないと突き放すのも憚られたルルーシュは、内容をボカしながら告げた。

 

「別にアイツと何かあった訳じゃありませんよ。ただ…アイツと俺の共通点を見つけただけです」

 

「ルルーシュ様と彰様って似てますものね」

 

「幾ら仁美さんでもその発言は許せません。撤回してください」

 

あんな迷惑な動く人間台風と似ているなど、断じて認めない。そんなルルーシュの鬼気迫る表情を笑いながら躱した仁美は、ルルーシュに続きを促した。ルルーシュも納得していないながらも続きを話す。

 

「過去に似たようなことが俺とアイツにはあったんですよ。ただ、にも関わらず、アイツは俺と正反対な道を選んだ。それが全く理解できないだけです。アイツの考えが俺には理解できない」

 

そこまで言って、再びルルーシュの頭にあの出来事がフラッシュバックする。

 

何故アイツは自身の育ての親の仇を許せる。アイツなら復讐できたはずだ…泣くしかない他の有象無象とは違って、アイツにはそれを成すだけの力があった。

 

にも関わらず、アイツは復讐をしなかった。それ所か助けようとしていた。

 

それがルルーシュには理解できなかった。大切な存在を奪われる苦しみを、ルルーシュは知っている。どれだけ悲しいか。どれだけ会いたいと願うか。どれだけ殺した相手を恨むか。

 

母親が殺されたあの日から、ルルーシュの心の奥の復讐の炎が消えたことはない。過ぎ去った年月がルルーシュの心を癒したことなど一つもない。何一つとして忘れてはいない。

 

だからこそルルーシュは、復讐と残されたナナリーのために生きてきた。それ以外はルルーシュにとって不要だった。信じれば裏切られた。だからこそ人を信じてこなかった。その考えは今でも変わっていない。

 

だが

 

『くっくっくっ。良かったなルルーシュ。お前は信じていないかもしれんが、お前のことを信じている者が、少なくとも二人はいる。手始めに…その二人のことは信じてみないか?』

 

過去の映像がフラッシュバックする。ルルーシュはその時出せなかった自分の手を見つめる。恐らく彰であれば掴んでいたであろう手を。自分は掴むことができなかった手を。

 

(あの時…差し出された手を掴んでいれば…何かが変わったんだろうか…)

 

そんなことを考えて顔をしかめるルルーシュを見て、仁美は暫く考えて言葉を発した。

 

「ルルーシュ様は…ご自身の選択を…後悔なさっているんですか?」

 

「…まさか。そんなはずありませんよ」

 

後悔などあろうはずがない。あの時の憎しみは本物だった。どう考えても、あの男を。ブリタニアを。許せるはずがない。

 

俺は間違っていない。

 

ルルーシュは、自らが間違っているかもしれないとは考えることができない。それはルルーシュの存在の否定に繋がる。今までの人生の否定に繋がる。

 

そう結論づけたルルーシュは、話を終わらせるために、何時もの微笑みの仮面を被りながら席を立つ。その仮面は、今までルルーシュの心を他者の侵攻から守ってきた。人を信じられなかったから。人を信じたくなかったから。だが本当のところはそうじゃない。

 

ウラギラレタクナカッタカラ

 

ルルーシュはそのまま会計をするために仁美に背を向けるが、その背中に仁美は声をあげた。

 

「ルルーシュ様…ルルーシュ様が何に悩んでいるのか私にはわかりません。ですが…話せる時がきたら話してください。私は何があってもルルーシュ様の味方です」

 

仁美のその言葉は、ルルーシュの笑顔の仮面にヒビを入れる。だが、凝り固まったルルーシュの心は、そのヒビを即座に塞ぎにかかる。

 

仁美がそう言うのは、ナオトをルルーシュが助けた理由を知らないからだ。

 

本来であれば、ルルーシュがナオトを見殺しにしていたことを知らないからだ。

 

ルルーシュがブリタニアの皇族であることを知らないからだ。

 

これらの事実が知られれば、仁美はルルーシュの側から離れるだろう。俺たちの関係は、そんな嘘で作られた虚構の関係。そんな奴の言葉を信じて良いはずがない。

 

完全に修復された笑顔の仮面を再び貼り付けたルルーシュは、振り返って答える。

 

「ありがとう仁美さん。頼りにしていますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会計を終えたルルーシュが仁美の所に戻ると、仁美の近くに、長身で筋肉質な金髪の、ブリタニア人と思われる青年が立っていた。

 

その様子を見て、少し早足でルルーシュは仁美の側に急ぐ。

 

仁美は日本人なので、差別主義的なブリタニア人に絡まれることが多い。(まあ、ルルーシュや彰の前でそんなことをやったら、とんでもないカウンターが返ってくるのだが)

 

「すいません、私の連れなのですが何か御用ですか?」

 

そう言って仁美と金髪のブリタニア人の間に入ったルルーシュは、ブリタニア人を牽制する。

 

しかし、そのブリタニア人はルルーシュに対して、何も言わずに立ち続けていた。

 

その様子にルルーシュは眉をひそめる。

 

(何だコイツは?何かを言う訳でもなく、睨みつける訳でもない。一体何のつもりなんだ?)

 

自然とルルーシュの警戒心は上がっていく。気付けばルルーシュの額には汗が浮かんでおり、目の前のブリタニア人の一挙手一投足に注目していた。周りの騒音がやけに遠く聞こえる。昼下がりの平和なカフェが、一瞬で別の雰囲気に変わった。

 

まあ、もちろん

 

「オボロロロロロロロロォォォォォォォ!!!」

 

ギャグに変わっただけなのだが。

 

金髪のブリタニア人は、目の前のルルーシュに向かって思いっきり大量のゲロをぶっかけた。少し後ろで見ていた仁美は、あらまあと言わんばかりに、口を手で押さえてその様子を見ていた。

 

ゲロをぶっかけられたルルーシュは、ぷるぷると怒りで震えていた。そんなルルーシュの様子を全く気にかけず、吐くだけ吐いたブリタニア人はスッキリとした様子でルルーシュに礼を言った。

 

「いやあ、悪い、悪い!ナイトメアに乗るのは平気なのに、何故か他の乗り物だと酔いが酷くてさあ!到着してからずっと調子が悪かったんだよ。吐くだけ吐いてスッキリした!」

 

「そうですか、それは良かった。なら、俺からもお礼をしないといけないですね」

 

ゲロまみれのルルーシュは、ニコリと微笑んだかと思うと、次の瞬間には目に謎の模様を浮かべて手を掲げた。

 

「ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。貴様は死「お待ちください、ゲローシュ様!お気持ちは分かりますが、何となくそれはしてはいけない気がします!」誰がゲローシュですか!!離してください!」

 

しかし、ルルーシュがとんでもない行動をしようとしていることを何となく悟って、慌てて仁美が止める。その騒ぎは、金髪のブリタニア人の連れの女が到着するまで続いた。

 

 

 




あったかもしれない会話

彰「仁美さんって居るだけで他人を癒す感じがあるよな」

カレン「昔からそういう感じがあるのよねぇ」

C.C.「年の功というやつだな。お前らのような子供にはないものだろう」

彰・カレン「「じゃあ、お前は頑張れよババア」」

三人による乱闘が開始されたので会話終了


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61 友達の友達って変な所で繋がりがあったりする

出番が薄すぎてキャラが分からんから、崩壊してるかどうかも分からん笑


「ウチの頭が失礼しました」

 

そう言って、かけられたゲロを何とか拭き取ったルルーシュに頭を下げるのは、後から来た金髪のブリタニア人の部下とかいう女性。

 

ルルーシュから見てもなかなか美人な女性である。正確な年は分からないが、自分と同じくらいだと推察される。名前はジャンと言うらしい。ついでに言えば、金髪のブリタニア人はジノというようだ。見た目だけなら手荒な真似などできそうもないのだが、着いた瞬間自分の大将をボコボコにしていたことから、見た目と性格は真逆のようだ。まあ、ルルーシュからしたらどうでも良いのだが。

 

それよりも問題は

 

「あはははは。そんなに殴るなくても良いじゃないかジャン。こっちの学生さんだって、普段彼女にかけまくってるんだろうから、偶にはかけられる側になるのも良い勉強だって」

 

ボコボコにされていながら、全く謝罪の様子を見せない下ネタ大将の方である。

 

喧嘩を売っているとしか思えないのだが、本人にはその気がないのか、バンバンとルルーシュの背中を叩いてくる。周りに人が居なければ、間違いなくルルーシュはギアスを使っていたのは内緒である。

 

「どうでも良い下ネタ発言は止めてください。どんだけ失礼なんですか」

 

そんなジノの背中にジャンは思いっきり蹴りを入れて、なぎ倒す。かなり乱暴な気もするが、ルルーシュからすれば、むしろもっとやって欲しいくらいなので、何の問題もなかった。

 

しかし、とんだチグハグコンビもいたものだ。一方は下ネタ発言がオンパレードの変態だが、相方の女は多少なりとも常識があるらしい。

 

そんなことをルルーシュは思いながら、見つめていたのだが

 

「童貞にそんなこと言えば傷つくでしょう。童貞にはもう少し丁寧に接してください」

 

訂正。こっちもかなり変態だったようだ。むしろ、こっちの方がヤバいかもしれない。

 

「おいおい、ジャン。童貞だって決めつけんなよ。もしかしたら既に始まりの街を出発してるかもしれないだろ?」

 

「何処を見てるんですか?彼を見れば一目瞭然でしょう。どう見ても彼は童貞です。私が保証します」

 

「マジなのか?そりゃあ、悪いことしたなぁ」

 

ジャンの言葉で自分がどれだけ悪いことをしたのかを悟り、ジノは心から申し訳ないという態度でルルーシュに頭を下げる。

 

「すまなかった…童貞だって知らなかったんだ。かけたことないのに、先にかけちまって悪かったな。でも諦めんなよ。まだ若いんだからこれからじゃないか」

 

「頭の非礼をお詫びします。童貞に対する気遣いが出来ていないんです。今後は童貞に対する扱いを変えると思いますので、今回は許してあげてください」

 

「欠片も謝る気がないだろう、貴様ら…」

自身を童貞と決めつけて謝罪する二人に、ルルーシュの額に青筋が浮かぶ。どうしてくれようかと思っていると、そんなルルーシュを見かねて後ろにいた仁美が声をかける。

 

「大丈夫ですよルルーシュ様…カレンも初めてですから、大した問題にはならないです」

 

「親が何を言っているんですか!?」

 

「おいおいおい、初めて同士か?そいつはマズイぜ、ルルーシュ。男は女の子をリードしてやるもんだぜ?」

 

「大きなお世話だ!それに貴様に名前で呼ばれる筋合いはない!」

 

馴れ馴れしく肩に手を回してくるジノに、ルルーシュが怒鳴りつける。

 

しかし、そんなルルーシュの態度など構わずに、ジノはアハハと笑いながら話し続ける。

 

「大丈夫だって。よし!俺が奢ってやるから一緒に経験値を積みに行こう!俺はD(DX)コースを選ぶから、ルルーシュはC(Cherry)コースだな」

 

そう言いながらルルーシュを引っ張って、夜のお店に連れて行こうとするジノの後ろで、ジャンは木刀を構えた。

 

「そうですか、知りませんでした。頭はD(Death)コースを選ぶんですね」

 

そう言ってジャンは、真顔でジノの頭に木刀を思いっきり振り下ろす。ぎゃあああと叫ぶジノの声が響き渡るが、ルルーシュはこれ幸いと仁美の手を掴んで、二人から離れようとする。

 

「そ、そんなに急いでどうしたんですかルルーシュ様?」

 

「決まってるでしょう?あんな変人どもに関わったらロクなことになりません。俺の人生にこれ以上変人はいりません」

 

「決めつけは良くありませんよ、ルルーシュ様。彰様だって多少変わっていますけど、ルルーシュ様と仲良くやっているじゃありませんか」

 

「…ツッコミたいことは多いですが、とりあえずだからこそです。俺の変人の受け入れ容量は、アイツだけで限界を超えているんですよ」

 

「ん?おい、仁美さん?今もしかして変人の彰とか言ってたけど…それって桐島彰か?」

 

ルルーシュと仁美の会話に、ボコボコにされたせいで顔全体が赤く腫れ上がり、縄でぐるぐる巻きにされて地べたに放り出されていたジノが、会話に割り込んでくる。

 

そのジノの言葉に、ルルーシュと仁美の歩く足が止まる。

 

ルルーシュは知らないフリをしようとするが、真面目な善人である仁美は驚いた顔で肯定した。

 

「え、ええ、そうですが…ジノ様は彰様のことをご存知なのですか?」

 

「アハハハ!ご存知も何もアイツと俺は大親友さ!」

 

「あら、そうだったのですか。世界は狭いものですね。私も彰様には大変お世話になっておりまして」

 

「おお、そうか、そうか!まあ、アイツは良い奴だからなぁ!」

 

ジノに影響されて仁美は微笑みを浮かべるが、ルルーシュは類は友を呼ぶという諺は、真理なのではないかと考えていた。その理屈で言うと、ルルーシュも変人ということになるのだが、黙っていることが優しさだろう。

 

「お二人ともアレと知り合いだったのですか…余計なお世話かもしれませんが、アレは付き合うと、感謝と同時に後悔も増えますよ」

 

「…その言葉は、アイツと会う前に聞きたかったな」

 

血に塗れた木刀を握りしめながら話しかけてくるジャンに、ルルーシュは頭を抱えながら答える。嬉しくも何ともないが、初めて二人が意気投合した瞬間である。

 

「既に分かっているようですね。ということは既にアレとは親しいわけですか」

 

「断固として否定するが親しくはない。ただ、まあ付き合いはそこそこ長いというだけだ」

 

「では、そんな貴方にご忠告を…直ぐにこのエリアから離れなさい」

 

「それはどういう意味ですか?」

 

全く雰囲気を変えずにサラッと重大なことを言われたルルーシュは、良く意味が分からないという態度を装って尋ねてみる。

 

彰の知り合いというだけで、堅気の人間ではないことは想像できる。まあ、ナナリーやシャーリーのような例外もいない訳ではないのだろうが、確率としては低いだろうとルルーシュは考えていた。

 

それに加えてこの発言。明らかにナニカを知っている人間であることは明白だった。

 

しかしそんなルルーシュの演技が見抜かれたのかどうかは定かではないが、ジャンはその質問にまともに答えることはせずに、ルルーシュから背を向けてジノの所に向かった。

 

「そのままの意味です。私はアレに借りがある。ですので、アレの知人を見殺しにするわけにはいかないんですよ」

 

借りとは何の話かとルルーシュは聞こうかと思ったが、聞いたところで絶対に答えないだろうと感じたので止めにした。別にギアスを使ってまで聞きたい話でもない。

 

「そろそろ行きますよ、頭。私たちはダベリに此処に来た訳ではないんですから」

 

そう言うとジャンは縄の端っこを持ち、ジノを引きずるように…いや、まさに引きずりながら店を出て行こうとする。喋っている途中だったジノは、少し待つようにジャンに頼むが、全く聞き入れられずに引きずられていく。

 

「待てってジャン!喋ってる途中だから!いや、本当にさ!え!?本当にこのまま引きずって連れてかれる訳?いや、俺一応頭なんですけど…あの、ジャンさん?聞こえてます?あの、ちょっと…」

 

そしてそのまま、ルルーシュと仁美の視界から二人は居なくなった。個性的な人たちでしたねぇと微笑む仁美の神経を、ルルーシュは讃えたくなったが、今はそれよりも、ジャンとか言う女が言っていたことが引っかかる。

 

「そうだ、仁美さん。思い出したんですけど、俺は買いたいものがあったんですよ。仁美さんは帰るだけだと思うので、先に帰ってて貰っても良いですか?」

 

「それでしたら私が買いに行きますから、ルルーシュ様はお帰りになっても大丈夫ですよ?」

 

「いえ、個人的なものなので、私が買いに行きたいんです」

 

「そうですか?それでしたら、良いのですが…あの、ルルーシュ様?1つ良いでしょうか?アドバイスという訳でもないのですが」

 

「何でしょうか?」

 

仁美の発言で、ルルーシュの脳内が活発に動き出す。何か今の自分の演技に至らない所があったのだろうか。

 

この後は、先程のジャンの言葉の真意を探るために、単独行動を開始したい所なのだが、それを言うわけにはいかないので、表面上は、穏やかないつも通りの笑顔を取り繕って会話をするようにした。

 

ルルーシュがそんなことを考えているとは全く知らない仁美は、声を下げて続きを話す。

 

「必要ないかもしれませんが、一緒にゴムも購入した方が良いと思います」

 

「貴方は俺が何を買いに行くと思っているんですか!?」

 

 

 




次は番外編の方の更新になるかもです。


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62 ついてない時って連鎖してついてないことが起こるよね

今更ですけど、この話も原作改変。


「私だ。扇。今は大丈夫か?」

 

『ああ、問題ないがどうしたんだ?』

 

「問題が発生した…という訳でもないのだが、気になる情報が入ったので調べてもらいたい」

 

『気になる情報?どんな情報なんだ?』

 

「具体的な情報は今の所はない。だが、イケブクロ周辺の組織で気になる動きをしている所はないか?」

 

『イケブクロ周辺…特に報告は上がってないな。もちろん、俺たちの支配下にある組織の範囲でという条件付きだが』

 

「そうか…では、情報を集めろ。優先度は高めに設定して良い。誰か手を空いている者に手伝わせても構わん」

 

『わかった』

 

その言葉を聞いたルルーシュは、頭の中で今ある情報を整理する。

 

何とか一人になることに成功したルルーシュは、早速扇に電話をかけた。あの女が言っているような、何か怪しい兆候が起こっていないか確認をするためだ。

 

しかし、残念ながら特に情報は得られなかった。これからのためにも、手早くトウキョウの組織のことなら、ある程度は把握できるネットワークを早急に築く必要があると思ったが、今考えるべきことではないだろう。

 

今考えなければいけないのは、この事態にどう対処するのかだ。放っておいても問題ないのかもしれないが、万が一のこともある。ルルーシュが想定しているよりも遥かに大きな出来事だった場合、この辺りで支配域を広げている黒の騎士団の活動に影響を及ぼす可能性もある。

 

彰に聞くことも考えたが、アレでも一応解放戦線の一員。現段階で彰に情報提供を依頼すれば、それは借りになってしまう。他人に借りは出来るだけ作りたくないと考えているルルーシュにとって、それは避けたい手段だった。まあ、もっと切羽詰まっている状態ならば話は変わるが、現状ではそこまで問題は大きくなっていない。

 

そうなってくると、現状ルルーシュにとっては、黒の騎士団の部下から情報が上がってくるのを待つことが、最善の手段ということになる。

 

黒の騎士団の組織に影響があるのかどうかすら分からない状態である現状を考えれば、この方法で何の問題もないはずだ。

 

だが

 

(ここの辺りは彰やカレンはともかく、シャーリーや仁美も良く利用する地域だ…有り得ないとは思うが…有事が起こったら巻き込まれる可能性も無いとは言い切れん)

 

彰やカレンなど、ルルーシュから見ても殺し方が分からない人種(本当に人類かどうかという段階でルルーシュは疑っている)など心配するだけ時間の無駄だが、シャーリーや仁美のような一般人が予測できない事態に巻き込まれては、無事では済まない可能性がある。

 

彼らはナナリーにとって大切な存在である。だからこそ、彼らが居なくなってしまったらナナリーが悲しんでしまう。それは絶対にルルーシュにとっては看過できない事態だ。それを防ぐために、ルルーシュは万に一つの可能性も塞ぐ手を打って置く必要があると考えた。少なくともルルーシュはそう思っていた。そう考えるようにしていた。

 

(ナナリーのためだ…他の理由など存在しない…存在してはならない)

 

ルルーシュの心の仮面はまだ壊れそうになかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか…では、他にここらで問題になりそうなものはないんだな?」

 

ルルーシュはどう考えても一般人が足を踏み入れそうにない廃屋に居た。目の前にはきちんとした服を着た日本人が立っていた。

 

何故ルルーシュがそんな所に居るのかと言えば、黒の騎士団の捜査で、この廃屋がその手の連中が出入りする場所だと聞いたからだ。

 

ルルーシュがそこに行けば、予想通りに一般人とは思えない連中がたむろしていた。通常の状態であれば、ルルーシュの質問に答えることなどあり得ない奴等ではあるのだが、ギアスを持っているルルーシュ相手に答えないという選択肢は存在しない。そうであれば、当然

 

「ああ。最近起こった問題はそのくらいだ」

 

ルルーシュの質問に淡々と答えることになる。その質問から、ルルーシュは自身が聞きたい情報が手に入ったという確信を得た。

 

「そうか。分かった」

 

そこまで言ってからルルーシュは堂々と立ち去る。ギアスをかけられている彼等にルルーシュを止めることはできないので、当たり前のように見送ることになる。意識が戻った時には、今何が起こったのかも分かっていないだろう。

 

しかし、上手く言ったはずのルルーシュは、歩きながら舌打ちをして、頭の中で問題を整理しようとしていた。

 

(リフレインか…予想をしていなかった訳ではないが、面倒なことになったな)

 

情報が得られたのにも関わらず、ルルーシュの顔色は晴れない。自分が考え得る事態として考えていた事柄の中で、最も面倒な事態だということが分かったからだ。

 

ルルーシュが情報を仕入れた、イケブクロ周辺で活動をしている裏組織の一員である奴等の情報によると、今イケブクロではリフレインが日本人の間で大流行しているようだ。

 

リフレインとは、簡単に言えば麻薬の一種で、過去の幸せだった時のことを思い起こさせることができるという特性があるらしい。何ともまあ、今の日本人には縋る者が多そうな麻薬である。

 

これは黒の騎士団も把握していた情報であり、正義の味方の知名度を向上させるのに打ってつけなので、片っ端から摘発に動いていた。黒の騎士団が把握していなかったのはその後の問題だ。

 

そんなことをしていれば当たり前だが、リフレインの供給が減る。しかし需要は変わらないので値段がとんでもなく上がる。そうであれば、売れば莫大な利益になると考える馬鹿が現れる。困ったことに実際に現れた。

 

その馬鹿はある商人のグループの末端に属しており、その組織の商売のルートを勝手に利用して、ある筋からリフレインを大量に仕入れることに成功した。

 

更にそいつは手に入れたリフレインを売ろうとしたのだが、さっさと売れば良いものを、欲に目が眩んであらゆる組織に声をかけて、一番条件が良い組織に売ろうと考えた。若しくは足元を見て値段を釣り上げようとした。

 

そんな才覚があれば良かったのだが、残念ながらその馬鹿にそんな才覚など存在しなかったので、上手く立ち回ることが出来ずに殺されてしまった。

 

しかも最悪なことに、その馬鹿はリフレインの隠し場所を、イケブクロに隠したことしか言わずに殺されてしまったので、現在その大量のリフレインの隠し場所を知るものは誰もいない。

 

その情報を掴んだ残された麻薬組織は、血相を変えてイケブクロ周辺を探しているのだが、まだ見つかっていないらしい。そのせいで今のイケブクロは、麻薬組織のどんぱちのオンパレードになっているらしい。危ないとかいうレベルの話ではない。

 

本来であれば完全に警察が出てくる案件なのだが、クロヴィス時代の名残で警察組織は汚職が蔓延しており、上までその情報が伝わっていないので警察が動くことは期待できない。マジでクロヴィス碌な仕事をしてねぇ。

 

(この情報はそんなに簡単に仕入れることはできないはず…しかも俺に危ないと忠告をしたということは、麻薬組織の連中ではないだろう…ということは、あの二人は商人のグループの一員か)

 

ルルーシュは仕入れた情報と分析から、ジノとジャンの素性を素早く推理した。まあ、分かったところで現状役に立ちそうにない情報ではあるのだが。

 

とりあえず何か理由を付けて、仁美やシャーリー達には何があっても絶対に暫くはイケブクロ周辺には行くなと言い含めて、早急に黒の騎士団を動かして、この危険地帯の治安を何とかすることをルルーシュは決心した。

 

そんなことを考えて、ルルーシュが廃屋の階段を降りていると、下の階段を誰かが上がってくる音が聞こえた。ルルーシュは焦る素振りも見せず、にギアスを使用する準備をする。初見であれば、どんな人間でも間違いなく対処することが可能のはずなのだが、できなかった。何故なら

 

「ルルーシュ様!見つけました!ダメですよ!こんな危ない場所に一人で入っては!」

 

「仁美さん!?」

 

下の階から現れたのは仁美だったからだ。何やら怒っているが、ルルーシュはそれどころではない。

 

何でこんな所にいるのかと問い詰めようかと思ったが、そんなもの自身を尾行してきたに決まっている。

 

自身の迂闊さを呪いたくなったが、そんなことをしても現状は変わらない。とにかくこんな所に仁美が居るのは危険しかないので、慌てて一緒に外に出ようとするのだが、その前に上の階で爆発音が鳴り響いた。

 

仁美はもちろんルルーシュですら、驚愕で動作が停止する。しかしその間に爆発によって廃屋の上の天井が崩れ落ち、ルルーシュと仁美の所に落下してきた。

 

「仁美さん!」

 

考える間もなく、反射でルルーシュは仁美を突き飛ばし、落下物の範囲外へと突き飛ばす。自身も逃げようとしたのだが、ルルーシュの身体能力でそんなことをしたせいで完全に足を捻ってしまい、満足に立ち上がることすらできなくなってしまった。

 

「ルルーシュ様!私のせいでお怪我を!」

「大丈夫ですよ。大したことではありません」

 

半泣きになりながら近寄ってくる仁美にルルーシュは微笑みを浮かべるが、痛みのせいで脂汗をかいていては誤魔化せるはずもない。急いで手当てをと自身の服の一部を破って包帯がわりに利用しようとしている仁美を見ながら、ルルーシュの耳には下の階で乱闘が起きている音が聞こえた。

 

ルルーシュは自身の間の悪さに歯ぎしりする。最悪の現状だった。

 

つまり、ルルーシュが偶然情報収集に訪れた廃屋で、偶然麻薬組織の乱闘が起こっているのだ。それ以外に今の爆発や下の乱闘騒ぎは考えられない。

 

しかも自身と一緒にいるのは、カレンや彰どころか一般人である仁美で、自身は足の怪我で碌に動くことすらままならない。

 

(将棋で言えば飛車角落ち…いや、それどころではないな。くそ、何の厄日だ!)

 

ルルーシュの高性能の頭脳は勝ち目がないと訴えてくる。こうなっては如何に上手く負けるかの勝負になると。確実に何かを捨てなければ生き残れないと。

 

ルルーシュと仁美の勝ち目のない戦いが始まった。

 

 

 

 

 




ルルーシュの評価表

絶対に守る存在 ナナリー

守る存在 仁美、小夜子、シャーリー、会長、リヴァル

できれば守ってやる存在 黒の騎士団のメンバー、生徒会以外のクラスメート

倒すべき存在 ブリタニア一族

仲間にしたい存在 スザク

評価外(人外) 彰、カレン、C.C.

彰「まあ、打倒だな(スザクも人外だが)」

カレン、C.C.「納得がいかない」







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63 探していた答えほど実は簡単だったりする

長くなっちゃいましたが、投稿です


「ルルーシュ様。本当に大丈夫ですか?」

 

「はい。大丈夫…とこの姿で言っても説得力はありませんが、まあ大丈夫ですよ」

 

仁美に肩を担がれながら、片足で上手く歩いているルルーシュが苦笑しながらそう告げる。

 

仁美によって最低限の怪我の治療をしてもらった(何処かの娘が怪我をしまくる性格だったからか、家事に比べて手馴れていた)ルルーシュを仁美はおんぶするつもりだったのだが、プライドの塊のルルーシュにとっては有り得ない選択だったので、持ち前の頭の回転と口の巧さを利用して、何とかそれを回避することに成功した。

 

普段は直ぐに折れるのに、何故かなかなか考えを曲げない仁美の説得に成功した時には思わず叫びたくなってしまったが、状況を考えたら有り得ない選択なので必死に思い止まった。

 

実際、本当にそんな状況ではない。

 

それどころか、最悪と言って良い状況だ。

 

ルルーシュと仁美がいる階はまだ安全のようだが、下の階からはひっきりなしに銃弾の音と悲鳴が聞こえてくる。機械音もすることも考えれば、ナイトメアも複数台存在するように思われる。

 

それに対してこちらが持っているのは、一般人の仁美のみ。加えて自分自身も足を負傷しており、一人では満足に歩くこともできない。後で仁美の記憶を忘れさせればギアス無双で何とかなるかとも思ったが、向こうにナイトメアがあるのではそれも難しい。

 

これは何という無理ゲーだ?

 

ルルーシュをしてもそういう風に考えざるを得ないほど、絶望的な状況だった。持っていた携帯も先程のトラブルで壊れてしまったし、そもそも持っていたところで、今から助けを呼んで間に合うとも思えない。

 

あらゆる選択肢を考えても、二人だけでここを切り抜けられる可能性はゼロだった。自身の無力さにルルーシュは舌を噛むが、そんなルルーシュの様子を見て、痛みが酷くなったのかと心配して仁美が声をかけるがルルーシュは笑って誤魔化す。

 

しかし元来心配性の仁美は強引にでも少し休もうと言い放ち、隣にあったドアに手をかけた。

 

すると、そこには

 

「これは…一体…?」

 

「…良くは分かりませんが…何かの中毒者みたいですね」

 

大勢の日本人がいた。

 

それだけであれば良いのだが、問題はその様子だ。

 

一人の男性は物凄く楽しそうに、声高々に誰かの名前を叫んでいる。

 

一人の女性は目の前にあるダンボールを撫でながら、そのダンボールを全力で褒めている。

 

一人の老人は良く分からないことを言いながら、のんびりと座っている。

 

一人の子供は楽しそうに全力で走っている。

 

狂気的なその有り様に仁美は震えながら言葉を発した。その疑問に対する答えにルルーシュは思い至りながらも、ただの学生である自分がそんなことを知っていてはマズイので、知らない振りをして話を通した。

 

「中毒って…一体どんな「薬を…リフレインを…くれよぉ〜」え?「ちっ!寄るな!」」

 

どう見ても常軌を逸している人々の様子に、仁美はどんな中毒を起こしたら、こんなことになるのだろうかとルルーシュに質問を投げかけるが、そんな仁美のそばに、禁断症状を起こしたと思われる男が鬼気迫る様子で寄ってきた。

 

いち早くそれに気付いたルルーシュは驚く仁美を尻目に腕を振り払って追い払おうとするが、完全に正気を失っているようで全く効果がない。舌打ちをしたルルーシュは、仁美の注意が自分から逸れていることをギアスを発動した。

 

「何度も言わせるな。『俺たちに近寄るなと言っている』」

 

流石の禁断症状もギアスには勝てないようで、怠慢な動きではあるがゆっくりと二人の側から離れて行った。

 

しかし、その男から漏れた単語から仁美にも彼らがどんな薬の中毒になっているのか分かってしまった。

 

「ルルーシ