現代日本のオタサーの姫が、古代ブリテンのお姫様になったら (蕎麦饂飩)
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世界で一番お姫様なわたし
わたしの名前はアムル。ブリテン王国のお姫様なのですっ。
因みに前世では底辺校のじょしだいせーやってました。
でもこっちのみんなには内緒だゾ☆
前世の名前はぁ織田姫子っていうの。
名前はどこかの武将の血を引いてそうだけど、実際は先祖は遡っても農民しか見当たらないみたい。
ざ~んねん(-_-;)
でも、わたしったらカワイイものだから、周りが勝手にお姫様扱いするのよね~。やーん姫子困っちゃう(棒読み)
えっ、わたしの地元ってやっぱりあの信長と関連ある地域なの?
すっご~い。○○クンってやっぱり物知り~~っ!!
――――ってキャラ作りをした結果、変なのに好かれて、それをフったら、
逆上した勘違いストーカーに殺されてしまいましたとさ。
まあそういうこと。
アレは私が本命のカレと帰っている時だった。
いつだったか覚えてないけど、
見た目は憶病そうなのに、少し優しくしたら、のめり込んでき過ぎたキモメンがいたので、
正面からしっかりと誤解を解いてきたら、それに逆上してきたわけ。
何時も以上にキモい喋り方で、私に悪い所がある様に文句言ってきたの。
私だってその醜悪な存在自体に文句言いたかったわ。
「あっ、ああ…よっよくも…。うっ、その…そう、そうだ。
他に男がいるなんて、きいてっ、ないぞぉ」
まあ、言った事も無かったし当たり前のことではあった。
「ひっ、ぼ、僕にはひどい事を言ったのに。
『アンタと付き合うくらいなら靴下を恋人にした方がマシよ』って、
ひどい、ひどいよぉおおおおお」
本命のカレの前で、変な事を言われては面倒だったので、
「えっ、そんなこと言ってないですよぉ?
わたしが言ったのはぁ、長靴を穿いたネコさんが恋人だって言っただけなのにぃ。」
そう誤魔化していたところで、キモいのがナイフを取り出して来たから、
カレに助けてもらいながら逃げようと思っていたら、私より先にカレ…ううん、あの最低男が逃げちゃった。
そして刺されて、ジ・エンド。
あ~あ、ホントに家柄も容姿も良い女の子たちと比べられたら勝てないからって、お姫様扱いされないからって、
オタクたちの集まりに自分から行って、興味も無いアニメの話に相槌を打って、苦行積んで人生詰んじゃうなんて、正直最悪ね。
あのキモい奴等なんて、セイバーがどうとか、ライダーがどうとかいつも過呼吸みたいに有害物質が詰まっていそうな臭い息吐いて、
苦痛でしょうがなかったのよね。
そんな奴に殺されるなんて最っ低。
視界が真っ暗になっていく。痛いし、顔にも傷が付いたし、服汚れるし、死んじゃうしマジで最低ね。
あー、お姫様扱いされたかったな。本物のお姫様に生まれていれば良かったのに。
本物のお姫様なら何もしなくても、キモいのだけじゃなくてイケメンたちからもチヤホヤされたのに。
人生うまくいかないな。
お姫様になれないなんて人生終ってた。お姫様にさえなれれば他はどうでも良かったのに。
もしくは、最初から希望も持たない位救いが無かったら、こうはならなかったのでしょうね。
まあ、どっちでもいいや。私の人生おーしまいっと。
――――そう思った時に、気が付いたら私は産まれていた。
ブリテン王アーサーの娘、つまりブリテンのお姫様として。
私はお姫様になれた。それは運を使い果たして走馬灯の中でお姫様になったのかと思った。
でも、これは現実だった。私は遂にお姫様に、本物のお姫様になったのだ。
私の母親は私を産んで直ぐに死んでしまったようだけど、まあ私がお姫様になれたから特に問題は無い。
どうせ、私を産むしか存在価値の無い、ブリテンの主役なお姫様の製造機だ。役目を果たした後は知った事じゃない。
何せ、父親のブリテン王アーサーが健在で私の事を認知しているのだから問題は無い。
その例の母親は、王の正妃では無かったようだけど、
王は正妃(現時点では正式婚約者)とは産んだ後継ぎがいない様だし問題は無いかな。今のところ。
第一、名前も知られてないような女に王を取られるくらいだしね。
今後の事は、いざとなったら…まあ、鬼灯的な薬味を手に入れればいいだけだから。
敢えて言わなくても言いたいことは伝わるでしょう。ねぇ?
不倫をでっち上げても良いかもね。その後に信じていた正妃に裏切られて、義憤に駆られた『わたし』をアピールすればいいだけだし。
正妃のギネヴィア、それともグィネビアだっけ、まあ一見冷たそうな美人だし、
裏切り者に仕立て上げるのは意外性とああやっぱり感が絶妙なバランスっぽいから、
まあ何とかなるでしょう。
私はそんな考えを表に出す事無く、生前の日本にはとても見かけないレベルのイケメンばかりの騎士たちを、
どうにか落とすため、男の理想的な『お姫様』として成長する様を演じてみる事にした。
取り敢えずイケメン全員私の物にしたいけど、今のところはマーリンっていう人と、ランスロットって人が今のところいい感じかな。
マーリンって人は私の事少し冷たい目で見てくるけど、まあ、イケメンだから許す。
それに宮廷魔術師って肩書が高給取りのインテリみたいで良いしね。
そして私は目的の為に、カワイイ『わたし』を演じながら、カワイイ『お姫様』として成長した。
世界は私をお姫様にして、わたしは世界のお姫様になるの。いいでしょう。ねぇ?
ふんわり度はマイナス80くらいでお送りしました。
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わたしが殺す。わたしが生かす。わたしが傷つけわたしが癒す。
裁縫、詩、ダンス、お化粧。お姫様らしいことは何でも頑張りました。
やろうとすれば私が望む方向性の事は何でもうまくいく。
やれば出来るから、出来ると確定しているから、努力も絶対に無駄にならないから、
そういう肉体を操るのであれば、頑張る事は何も苦痛ではないんだから。
えっ、戦闘術? 『わたし』はそんな野蛮な事はやりません。
お姫様や男装した女性が男に交じって闘うなんて、そんなの普通に考えてありませんから。
第一、アーサー王の娘に生まれて、野蛮な戦闘術で自分をアピールする必要なんてないでしょう?
だって、『わたし』は『お姫様』なんだから。
齢10歳にして凄いお姫様なお姫様として、近隣の国々にまでその名声が響き渡った。
ブリテンの中では最早言うまでもないでしょ。
まあ、世界で一番なお姫様だから当たり前なんだけど。
「アムル様可愛い」「アムル様可愛い」「アムル様可愛い」「アムル様可愛い」「アムル様可愛い」「アムル様可愛い」「アムル様可愛い」って。
まあ、もっともっと褒めてくれても良いんだけどね。
だって、『わたし』は『お姫様』だから。
『わたし』が泣けば騎士たちは心配し、『わたし』が笑えば騎士たちも喜び、『わたし』が甘えれば騎士たちはデレデレしながら奮起する。
わたしを中心に世界は回る。まさしく、私がこうあるべきだと願った世界だった。
一向に世継ぎを産まない正妃の存在感なんて、もう脅威でも何でも無いくらい、わたしに全てが上手く行く様に進んでいく。
問題と言えば、マーリンがデレないのと、
前世の安月給の父親とは比べ物にならないくらい、女性と見間違うばかりに美形なアーサー王はわたしと余り関わろうとしない事くらい。
まあ、実の父親とどうこうとか、そういう背徳的なのはお姫様的にも無しだから良いんだけどね。
そんな事より、『世界中の人々のお姫様』となったわたしを求める沢山の王子様をどう選ぶか、どう侍らすかが大切なの。
わたしと言う絶対の基準が存在する以上、
王子様と結ばれる少女がお姫様になる訳じゃ無い。
わたしと結ばれる男性が王子様となるの。
わたしが王子様を承認するの。私が――――、わたしだけが。
その為には、尚の事、更に世界中の男性全てに求められる『お姫様』でなければならないの。
わたしを巡って戦争が起きるのなんて前提条件にもならない当たり前の事。
わたしの為に命を散らす覚悟なんて持っていない方がおかしい。
わたしが誰よりも美しいのは確定条件。
ハードルが否応なしに上がっていくけれど、『お姫様』であるためなら、
お姫様の様なお姫様であるためになら、私はどんな犠牲だって払うし、どんな苦労も、私を含んだ誰の苦痛も意に介さない。
全ての男性の欲望の実態像にして、どの男性にも独占させる事を赦さない絶対神聖な花嫁。
わたしの魅力によって幾つもの内乱が引き起こったりもした訳だけど、
結局は争う男達全てのお姫様となった事で、わたしという中心から蜘蛛の巣の様に放射状に延びる見えない鎖によって、
男達は縛られるように、絡め取られるように、繋ぎ合わされるように団結した。
そうして、わたしという核を以ってブリテンは団結した。
ブリテンの全ての権力者たる男達の集合を擬似的に一つの人格として、わたしがその花嫁となる事で全てが解決したのだ。
わたしが全てを許し、わたしに全てを許す男達がいる限り、男達しかいない限り、
ブリテンに崩壊はあり得ないだろう。
ありとあらゆる要因によって滅びの綻びを見せていたブリテンは此処に恒久の平和を見出した。
ブリテンがわたしによって完全な統一を見せた途端、他の国々が私のブリテンに突如牙をむき始めた。
フランスが、ゲルマンが、――――そしてローマが。
どうして『わたし』に刃向かうのかわからない、どうして『わたし』を愛さないのかが解らない。
私がこうあるべきと理想とした願いを実現できるスペックを兼ね備えた
私がこうありたいと祈っていた
誰もが愛して溺れて傅くべきなのだから。
だからわたしの愛で呑み込んで、わたしの愛で溺れさせて、わたしの愛で縛りつけてやる。
そうして誰もが私を愛する世界に変えて見せる。
世界は――――そう在るべきなのだから。
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さあ、わたしの勇者たち! 進撃よ! 声高らかに、わたしを褒め称えなさい!
フランスも、ゲルマンもローマも終わってしまえばどうという事は無かった。
情報伝達を僻地へ送るのにも多大な時間を要するこの時代、
一つの国が一枚岩であるなんてことは非常にまれだった。
意思の疎通や監視が容易でないこの時代において、国1つが団結して
基本的に物語ならお姫様の役割と言うのは大きくは次の6つに絞られる。
1つは不和。お姫様を巡って男達が争う物語。
1つは調和。お姫様の為に男達が助け合う物語。
1つは融和。女性的な平時の統治の象徴の物語。
1つは親和。お姫様が英雄に力を授ける物語。
1つは平和。対照となる暴君から取り戻される権力と安寧の象徴としての物語。
1つは永和。お姫様との結婚による物語の終焉。
『お姫様』である『わたし』はこれらの事象を、特に前半部分の事象に特化して上手く支配する才覚がある。
バラバラにしてぶつけ合って勢いを失った所を掻き集めて治めてしまえばいい。
適切な角度でぶつけ合った川は勢いを失う。そこにダムを造れば水を治める事が出来るのと同じことだ。
理屈としては難しい事では無い。
だけど、難しいのは適切な川の分割割合に、再開させる際の衝突角度と、勢いは失ったものの依然としてそこに存在する水量の保存処置。
これが難しい。
自分以外の人間を衝突させる角度と両河の勢い調整、そして勢いを失ったそれらを治め込む場。
何より、其処に誘導する誘発剤が必要だったの。
幸い馬を走らせるためにぶら下げる人参は手元にある。そう、わたしだ。
そして友であったものを裏切る価値のあるトロフィーは手元にある。そう、わたしだ。
そして共同してでも手元に置きたい宝物も手元にある。そう、言うまでも無く――わたしだ。
私がわたしである。この一点だけで全ての困難が解決される。
わたしの魅力で気持ちを逸らせて仲違いをさせて、その上でその両者をわたしを繋いで和解させる。
そんな事が何度も成功する訳が無い?
いえ、とっても簡単だったわ。そう、
手始めに、感情的なフランス人をバラバラにして纏めて誑し込んで、
わたしをフランスのアイドルかブリテンのアイドルかと、ファンたちを誘導した後、両国のメインヒロインにまで押し上げさせた。
わたしの強引なやり方に夫や恋人を諌める女性達も居た様だけど、『お姫様』で無い、あるいは無くなった女性に価値なんてない。
彼女達の勝ちなんてある筈も無かった。
男達の心変わりを非難する男女平等に基づく法律の執行機関なんて存在しない以上、
弱肉強食の恋愛戦争の勝者と敗者がいるのみであった。
わたしは様々な有力者を虜にした。一度国交を開いてしまえば後は間接侵略の難易度なんてグッと下がる。
前世で自称ハッカーのキモオタがティーシーピーアイピーがとかテルネットがとかルーティングがとか、ポートが、ネットワークがとか私に興味も無い話をしていた。
話の内容自体も知識自慢の独りよがりの域を超えてないし、何より私が話者に興味がわかないから、
「ふ~ん、へぇ、そうなんだ? すごいね」で適当に持ち上げながらスルーしていた。
未だに興味も無いし、この時代には完全に不要の類だけど、
結論としては相手に許可される交通手段を確立してしまえば、相手の監視や干渉が可能になるという結論で良いのかしら?
そうだとしてら、デジタルな世界もアナログな現実もそう変わりは無い物なのね。基本は同じ。
そしてフランスと言う港を制覇してしまえば、ヨーロッパの大陸として地続きになっている各国を籠絡していくのは非常に簡単だった。
最大の権力を誇るローマを侵略の第2弾とした。
此処で勝てればそこからの各国への影響が大きくなるし、此処で負ける様ならそれまでだし、
第一わたしはお姫様だから負ける筈が無いし。
ローマの始祖と同じ名前らしい西ローマの皇帝を、
東ローマの皇帝ゼノンとわたしを通じて仲良くさせた所くらいから私の勝ちは確定だった。
わたしの恋愛世界征服の為に、ブリテンから往復するのも面倒になって来たのでブリテンからローマに拠点を移す事にした。
是には両ローマ皇帝が賛同したし、
主要な騎士たちがローマに派遣される事で一応の納得は得た。
これって、前世で独り暮らしで親元から離れて、親の金で借りたアパートに男を連れ込んでいた時と少し似た気分だった。
この時、以前とは幾分かは態度が変わって来たマーリンが何かを言いたそうにしていたけど、別に私はそこまで気に留めなかった。
ブリテンのキャメロットにいた時はマーリンが上位グループに組み込まれる好みの男だったけれど、
似たようなタイプの性格や肩書や顔の男なんて、世界規模で探せばそれなりにいるものだから。
マーリンが何か言いかけた時もわたしの周りには、天才型の宮廷仕えの知識人を周囲に侍らしていたから尚の事だった。
だから、私にはマーリンが何を言おうとしたのかが届く事は無かった。
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両雌共命別(われらともにてんをいだかず)
これからは――――
わたしの頭脳は私に必要な世界の知識を際限なく吸い上げた。
わたしの身体は私が望む男を際限なく惑わせる魅力を手に入れた。
男達を競わせて、争わせて、融和させて、信仰させて、私は今、ヨーロッパのお姫様として此処にいる。
この意味が解る人がいるかしら、…………いいわ、教えてあげる。
このわたしが! 世界で一番! カワイイって事なのよ!
何処へ行っても各地域のイケメン権力者がわたしをチヤホヤしてくれる。
私をチヤホヤしてくれる。
最ッ高に気分が良いわ。前世で無駄な人生を費やした甲斐があったと言うものね。
…だから、私が拠点をローマに移したことを良い事に、
反対勢力が、敵対に乗り気では無い王妃を旗頭にしようと動いているようだけれど、
未だに子供のいないあの義母では神輿には不十分。
自分で周囲を動かす意思と力の無い女は、男を上手く転がせて初めて価値が出る。
「あの子性格悪いよ」と可愛い女の子に嫉妬しただけにしか見えない女性は、男達から軽蔑の対象にしかならない。
一発逆転で理想的な王子様でも生み落せばどうなるかはわからないけれど、あの
そして効率的にブリテンを維持する事にしか興味の無さそうな父親がわたしを廃する理由が無い。
あったとして、私の正道がアーサー王の目指す正道と違う程度の事なのだから。
結果としてわたしはブリテンだけでなくヨーロッパを救ったのだから文句は言って欲しくない。
そもそも、女性に嫌われることがあったとしても、男性に嫌われるはずなんて絶対にないんだから。
今だって、中東と東欧とローマからの独立の機と見たエジプトの方からヨーロッパが攻められて来ているけれど、
今までしてきた事のスケールを広げただけの話。
相手が地球の人間の男である限り、『わたし』に敗北なんてものは存在しない。
元々はエジプトの支配者はギリシャの人々であったとのことだったらしいけれど、
結局は地元民との融和も進み、内心的にはギリシャの後継者たるローマよりも土地の人々に根付いた政治体系となったらしい。
故の今回の反乱。かつて見た土着信仰と密接に関連した太陽を再び仰ぐ黄金時代に回帰するために、
ローマによる効率的支配の為に生存を許されて雌伏の時を過ごした中流層が、ローマから派遣されてきた上流層を廃して反乱。
その旗頭となったのが双子の姉弟だとのこと。
本当かどうか信憑性の薄いものだが、エジプト王朝の落とし胤の系譜であり、
エジプト王朝滅亡時のクレオパトラの子達になぞらえて、再び王朝の再復興を謳っているとのことだった。
――まあ、結局は独立して自分達がお山のてっぺんに立つ為のお題目でしかないのでしょうね。
天に立つのは私一人で良いというのに。
双子の内、特に姉のクレオパトラ・セレネ3世が権力を持っているとのこと。
恐らく、絵を描いた人間が夫として収まる為に男児たる弟では無く、女性の姉に権力を集中させたのではないかしら?
それが的中していた場合、崩す事は非常に簡単な事よね。
権力が欲しい。その為に女性を手に入れる。その女性が美しければいう事は無い。
その条件なら上位互換が存在する。そう――――わたしに他ならない。
例え、彼ら彼女らの信念が本物だったとしても、こちらは今までに引き入れたヨーロッパのあらゆる国の英雄たちがいる。
一地域の英雄たちなど数の力で呑み込める。最早時間の問題ね。
少しでも勢いを弱める事が出来れば、反対派を醸成して掻き回した後、責任を双子に押し付けて、
私が信仰の座に収まればいい。共に天を抱く事は無い。男達に求められるのは私だけでいい。
クレオパトラ3世とやらは奴隷たちにでも恵んであげれば良いのかしらね。
東欧の人間達もそこまで脅威では無い。
こちらの方は、広大な土地を持つものの、独立精神と反乱気質が高く、自信家で裏表こそ薄いが、その分欲が解りやすく滲み出ていた。
そういう人間を操るのは非常に簡単だったわ。
あらゆる言語や文化を即座に理解して応用できる文系チートなこのアムルの身体の前に、人気取りで勝負して勝てる者はいない。
私は敢えてヨーロッパ本土に西側を応援させて、それでいて厳重な守りの下、わたし自身が東側で戦争の無意味さを説く。
そのタイミングで、サクラとして忍び込ませていた主戦派を大人しくさせると共に、サクラでない主戦派を暗殺させればいい。
中東は本来のタイミングより早く世界規模に広がるであろう宗教が成立して、ヨーロッパに反乱を起こしたけど、
ヨーロッパ全てが完全に団結して互いに背中を心配する事無く、友軍を自由に自国を通過させられる状況を理解していたのかしら?
本来戦争と言うのは一国が相手であっても、その後に周囲の国との関係や、損害を考慮した力量差を考慮しないと、次の一戦が危うくなる。
そういうものらしい。表面上は戦争は殿方のものだし、女には難しくて解らない振りをしているけどね。
それを取っ払ったわたしの能力、私の功績は素晴らしい。
私が、私こそがこのヨーロッパを統一したの。
この『私』こそがヨーロッパ、いえ、――――世界そのものなのよ。
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究極の命題
世界の為に『わたし』があるのか
ヨーロッパとその他辺境周辺国を併合させたヨーロッパ大帝国の中で、
権力=『象徴たるわたし』の争いが顕在化してきているのが気になるけれど、それよりまずは領土拡大が先ね。
足を引っ張り合う味方の問題よりも、明白な敵の方がムカつくから。
それに、今のところは奪う相手がいないと生計が安定しないから、マグロや鮫が泳ぐように奪い続けるのが最良だ。
ヨーロッパ世界で生まれて、白人系のイケメンに囲まれて過ごしてきた私の価値観では、
正直に言えば、その他の人種には今ではそんなに興味が無いの。
だから、ここから先は懐柔吸収では無く、今まで掻き集めに掻き集めた総戦力で、征服踏破の道を進む事にした。
勿論言いだしっぺは私ではない。嫌な役目は人に任せるに限るわ。
モンゴルや中国の大帝国も纏めて蹂躙。
未だに内政重視なわたしの父アーサー王は、そこまでブリテン以外の事には執着しないけれど、
ローマ皇帝ゼノンを初めとする内地ヨーロッパ組は、
かつて存在した征服王とかいう人が成し遂げられなかった悔いを達成すると張り切っていた。
アフリカ方面へもエジプトを拠点として攻めて攻めて攻めまくる。
双子の姉を人質に、弟を前線指揮官として派遣させた。
その上で更に戦争を煽る。他者を使って煽らせる。
それにしても白人と黒人の人種戦争とまでになってくると最早止まらないようね。
どちらかを絶滅させるまで終わらない。
かつて黒人が変異種たる白人を迫害して追い払った仕返しだとか、過去をどんどん掘り下げて互いに正当化し合うから、
どんどん過去のしがらみが発掘されて。それが広まって、常識化して、戦争が正当化される。
まあ、別にいいけどね。ヨーロッパ=『わたし』に服従するか、さもなくば死ねばいい。
終わりの見えない憎しみの連鎖の結末なんて、無理に見る必要なんかない。
全ての者は私だけを見ていればいいんだから。
後は、アメリカ大陸やオーストラリア大陸や日本列島などの飛び地程度かしら。
フィリップ・K・ディックの映画じゃないけれど、こう言いたくはなるわよね。
「世界を我が手に」
ヨーロッパ大帝国が対馬や九州を大船団で攻めようかとしている時、
わたしは久しぶりにブリテンに帰ってきていた。
わたしを中心にヨーロッパにおいては戦争は絶滅した。
ヨーロッパの白人種は互いに手を取り合い、歌い合う平和を手に入れた。
食物や資源は
少々残る問題は、わたしを巡る男達の欲望が顕在化し過ぎてきた事。
それと『わたし』の下位互換として全ての女性が存在するという意識が広まり、
その『わたし』が男を立て過ぎるものだから、私以外の女性に価値が無くなり不満が出てきている事。
『わたし』による融和では無く、ヨーロッパによる虐殺蹂躙の被害に遭った地域での抵抗が思いの外存在する。
精々その程度に過ぎない。
そう考えていると、かつてはダントツで一番のお気に入りだったマーリンが私に話しかけてきた。
「まさか、予想以上だったよ。ここまで君が『理想のお姫様』として活躍してくれるとは思わなかった。
それで、この後はどうしたいんだい? ここらで『完全な理想のお姫様』にでも完成するつもりかな?
そうだとしたら僕は君を見縊っていたことを謝罪するよ」
『完全な理想としての完成』
それはつまり――――――――
選択肢
・ええ、『わたし』は理想のお姫様ですから。
・いやよ、『私』はまだお姫様を楽しみたい。
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世界で一番お姫様な私
選択肢
・ええ、『わたし』は理想のお姫様ですから。
→・いやよ、『私』はまだお姫様を楽しみたい。
「いやよ、『私』はまだお姫様を楽しみたい」
この世界で『私』は折角お姫様になれたのに、意味のある世界に、価値のある世界に出会えたのに、
此処で手放してなるものですか。
お姫様になれれば他に何もいらないから、お姫様である事だけは止めたくない。
「そうかい。ではこの後どういうお話に持っていくつもりだい?
どちらにしろ、男である僕には君へどうこうする事は出来ないからね」
「決まっているわ。
ハッピーエンド、完全無欠のハッピーエンドよ。それ以外は絶対に認めないわ」
だからマーリン、あなたは私が描く物語を見ていればいいわ。
私は『わたし』を受け入れる優しい世界に愛されている。だから私だってこの世界に愛されるはず。
心の底からそう思っていた。
取り巻きの騎士の1人に試しに『私』の在り方を見せてみた。
すると、その騎士は酔いがさめたような顔をしていたので、少しからかってみただけという事にして誤魔化した。
そして他の騎士に試してみた時も、他の王に試してみた時も同じ反応だった。
それを繰り返していくうちに私もいい加減に気が付いた。
男達が求めていたのは『理想のお姫様』であって、『織田姫子』なんかじゃない。
私がお姫様でいられればいい様に、男達はお姫様が相手でいれば良かった。
――それならそれでいい。
『私』は『わたし』として『私』になる。
私が、わたしになる。
日本と、オーストリラリアとアメリカ。
この時代其処までの戦力や技術を持っていなかったハズなのに、驚異的な離島同盟の盟主として、
ユーラシア・アフリカと陸続きで無い諸島群を纏め上げ強力な海軍を構築した。
そして人間だけでなく、動物や妖怪、果ては神霊に準じる化身の様な者達も私達に対抗するべく団結してきた。
それにより、大ヨーロッパ帝国の進撃が停滞した。
私はその時にふとある事がよぎった。
衝突により流れを止められた水がどのように扱われるか?
私がまずいと思った時、暗黙の了解でギネヴィア妃を形式上の長とした女性達による反乱が勃発した。
ここで私を囲い込んで息の根を止めるつもりだと。
でも、ここで終わるようならそもそも今の今まで『理想のお姫様』をやってこれていない。
もしもの時のカウンターとして用意していたランスロットを差し向けてある。
義母が例え乗り気でなくとも、関係ない。
敵対組織の戦意を削ぐために必要な処置だ。
彼女達も神輿を壊されてはどうにもならないだろう。
少なくとも、今度は相手の動きが止まる。そこで逆に男社会と言うダムの枠組みで封じてやる。
それよりも侵略戦争だ。敵対者の抹殺と併合だ。
私が解決する度にスケールが大きくなっていく敵対者の反乱。
それは、ヨーロッパの表面積が増える分接する地域が大きくなるからだろう。
きっとそうだ。そうに違いないの。
だから、気にすることなく私はオーストラリア、日本、そしてアメリカ大陸を撃破させて支配させた。
そうすることで、世界が統一された。これで私に逆らう者はいない。
「アムル様!!」「アムル様!!」「アムル様!!」「アムル様!!」「アムル様!!」「アムル様!!」
「アムル様!!」「アムル様!!」「アムル様!!」「アムル様!!」「アムル様!!」「アムル様!!」
世界市民たちが統一言語で私の名前を称賛する。
素敵だった。最高だった。これがあるべき世界の姿だと思った。
その暫く後だった。
星の外側から良く解らない化け物がやって来た。
私を狙ってくる化け物を倒すために地球の人々が一丸となって戦い、少なくない犠牲を払ってそれを押し返した。
その暫く後、化け物は他の化け物と共にこの星へとやって来た。
でも、今までと違って私達の戦力は以前の戦争から増えて入っていない。
一回目の化け物撃退とは比べ物にならない被害を世界は受けた。
領土外の外敵の撃退故に、恩賞も与えられなかったが人々は私の為なので何とか納得したようだった。
第一、恩賞とかどうでもいいんじゃないかと思う。
それでも私を護り切ったのだからその意味はあったんだから。
そして、第3次異星漂着者撃退戦では敵対する化け物は4体になっていた。
それでも、それでも私を護る為に、男達はそれ以外を顧みず戦った。
そして道路は分断され、土地は荒廃し、本来護られるべき彼らの妻子は死んでいった。
そうして何とか勝利を収めた。
それでも、私を護り切ったのだから意味は十分にあった。
意味は十分にあった――――――其のはずだったのに
「どうして…ですか…?お父様――――」
3回目の異星の化け物達を追い払った後、アーサー王の聖剣が私を貫いていた。
どうして? 私は全ての男に護られるべきお姫様の筈なのに。
男が私を害する訳が無いのに。
私は幸せに生きるべきはずなのに――――
そんな私の疑問の一部を解消するように、アーサー王の隣にいたマーリンが呪文を呟くと、
アーサー王は女性と見間違うばかりの凛々しい王から、髪を下ろしたどう見ても美しい女性的な姿に変わった。
アーサー王は女性だった?
では私はどうやって?
いったいどういう事かわからない。何も考えられないし、考えたくも無い。
いや、そんなことはどうでもいい。
お姫様が悪い奴に狙われるのは当たり前。だからそれを正義の味方が助けに来るのも当たり前。
そのはずなのに、どうして
私は世界をまとめた。世界を平和にした。世界を救ったの。
だから私が救われても良いじゃない。なのに…
どうして?ねえ、どうして――――
世界を破滅させる事は無いが、世界を破滅させる要因を無限に呼び続ける厄災の姫の終焉。
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現代日本のオタサーの姫が、古代ブリテンのお姫様になったら
選択肢
→・ええ、『わたし』は理想のお姫様ですから。
・いやよ、『私』はまだお姫様を楽しみたい。
「ええ、『わたし』は理想のお姫様ですから」
わたしは極めてお姫様らしくそう答えました。無価値な前世の織田姫子の気持ちなんてどうでも良いのですから。
わたしはお姫様になれればそれだけで良かったのです。
お姫様になれるならそれ以外の全部はどうでも良かったのです。
お姫様になる事だけが目的なのですから、お姫様として始まったらお姫様として終わらなければならないでしょう。
ヘタにボロが出るくらいなら、ここらで幕引きをして永遠に『理想のお姫様』であるほうが良いとは思いませんか。
その方がきっとリソウノオヒメサマなはずなのですから。
芸術とお姫様ごっこは一緒。死んで初めて完成されると言うものです。
そして死人には文句を言う事も出来はしません。
永遠のわたしの1人勝ちなのです。
「この世界がわたしの為に争うのなら、大好きなみんなが争うのなら、
原因のわたしがそれを止めます」
悪意を知られる事無く、美しい表面だけを全ての人が知るのなら、
それは客観的に完全な事実なのですから。そうでしょう?
わたしは永遠に美しいままの理想であるために、わたしが世界を動かすために悪意を遣わした者達を処分した後、
父王の剣を使って争いを止める様にと自害しました。
――丁度、戦争が終わるタイミングを見計らって。
☆ミ☆ミ
「わたしのために争わないで」
そう言って若き命を散らしたブリテンの、否、世界のお姫様がこの世から消えたのは、
丁度彼女が嘆き悲しんだ戦争が終焉した時だった。
人々は口々に、後少し思いとどまってくれればこの世界に戦争は無かったのにと嘆き合った。
彼女が裏では性格が悪かったという説もオカルトレベルで存在し無い訳ではないが、
実際に彼女が素敵なお姫様らしくない言動を見たと言うものは1人もいなかったという。
結局は理想的なお姫様に対する嫉妬以外何物でもないという事だったのだろう。
お姫様はお優しい可愛らしい性格ゆえに、争いに傷ついたのだ。
そうお姫様を一掃美化した男達は争うことの愚かしさを理解した。
世界は一つの国として統一され、言語も統一され、アムル姫への信仰が世界唯一の宗教と化した。
世界は大きな悲しみに包まれたが、その悲しみを何時までもアムル姫は望んでいないはずだ。
人々の中から徐々にそのような声が現れて、人々は立ち直った。
2015年現在、世界であらゆる少年はアムル姫に見合う男になる様に、
あらゆる少女はアムル姫の様になる様に教育される。
世界の誰もが理想のアムル姫を心に宿して共有する。世界は理想を共有して平和を保つ。
これはそんな世界の始まりの物語。
そう、彼女は世界で一番のお姫様
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