Fate/Hevun"s Fin White (道神碧輝)
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英霊参加
煩悩の焔も満ちて今ここに目覚めし魂


和歌山県、御坊市日高郡日高川町にある道成寺。『安珍・清姫伝説』が語られる場でもある。実際、存在するかしないかは置いといてここに清姫の墓が供えられている。道成寺には千手観音が置かれ迫力のある演出が見学に赴く人に魅了効果が発動。見てよかったなと写真を撮れない惜しさに帰路へ向かう。それでまた見たいと道成寺へ向かうのだ。絵巻で『安珍・清姫伝説』の説明も執り行っておりそちらも人気らしい。

道成寺に住んでいる住職、桜井安嗣の息子桜井 沙嗣(すなつぐ)は寺を出て行って魔術を終らせたいと願っていた。なぜならば両親を友人を魔術の手によって抹殺されたからだ。運が悪く観光で来た外国が魔女戦争、表向きはゲリラ戦として扱われていたが…。とにかく魔術を行使した戦争は醜いものだった。当時、名前は和喜だった。

 

「和喜!早く!逃げて!!!」

「裕樹!見捨てられないよ!!」

「君!その子から離れるんだ!!」

 

刹那、おじさんの声が聞こえたかと思ったら裕樹の体が黒く汚染されまるで夢でも見ているかのような…悪だった。業火の地、両親の叫び、友人の謎の死。当時5歳だった和喜には1度には整理し難い内容だった。受け止めきれず放心状態。そんな中もう1人のおじさんが

 

「切嗣…こいつあ、奇跡だ!この子1人が生きている!!!あんたの願いとは程遠いが…これは救済と言える!!」

「何言ってるんだ、僕はこの街を救えなかったから正義の味方失格だ。つい、三時間前に会った人もこの中にいると言うのに…詩蓮…それは救ったとは…言えない救済の欠片だ断片に過ぎない」

「しかし!俺は!俺達は…まぁ、いい。ここを片付けてからにしよう…」

 

おじさんこと、里見詩蓮は白魔術と黒魔術を交互に扱える魔術師だ。もう1人のおじさんは衛宮切嗣。切嗣は心臓の鼓動を遅らせたり、自身の速さを速めたりする能力を持つ魔術師だ。切嗣が魔術師になれたのは殺した父親の遺体から魔術刻印の1部を2割ほど継承したというのもある。

 

「…後は我々がやる…」

「…っ、魔術協会っ!」

「なにも言わずに下がっていろ里見詩蓮、衛宮切嗣」

 

名前も素性も明かさないかのような格好に切嗣と詩蓮は息を飲む。切嗣は昔、見たことがあったのだがよく覚えていない。

 

「僕は、救いたいんだ…」

「…!よせ、切嗣!今は抑えろ!」

 

切嗣が沸騰する前に詩蓮が抑える。それを見た魔術協会の1人は嘲笑うかのようにこの魔女戦争を終焉へと導かせた。

魔女戦争から半年、切嗣と詩蓮は日本へ一旦帰還する。詩蓮の地元は和歌山なのでまず先に和歌山の日高川町に足を運んだ。

 

「久しぶりの日本は良いな…!なぁ、切嗣?」

「あぁ、僕もそう思うよ。しかし、長居は出来ない。聖杯戦争が待ってるんだからな1度アイリの所に戻るとするよイリヤも待っているだろうし」

「あぁ、ホム…いや、あんたの嫁さんか写真みたけど初々しうて可愛かったぜ…子供さんもよ」

「悪いが君には渡せないよ」

 

それはどういう意味だ?と詩蓮は言おうとしたが愚問だと感じ言わないで微笑した。

 

「あ、またお前1人で行動する気?」

「いや、1人サポートしてくれる人がいるよ」

「あ、さてはまた女の人だな?」

「まぁ、そんな感じかな」

 

喜びも悲しみもないトーンで切嗣は言った。

和喜は今、詩蓮の背中(だっこ状態)で寝ている。なんとも可愛らしい姿だ。

 

「じゃあ、僕はこの辺で知り合いの人の所は解るね?」

「地元の人間を舐めてもらっちゃ困るね」

「なら、良いんだ僕は早急に戻らなきゃ行けないから君の知り合いの寺には挨拶出来ないからよろしく伝えて欲しい」

「…解った」

 

切嗣はそう言いどこから来たのか迎えの車が道路の端に止まっていた。クラシックな感じな車だなと詩蓮は和喜を起こさないようにその車を眺める。

 

「もしかして…さっき言ってたサポート役ってあの女の人か?くーっ、モテやすねぇ!!」

 

おっと、と詩蓮はバランスを崩しそうになりショートヘアの女の人を少し見つめる。…目が合い向こうから軽くお辞儀したのでこっちもお辞儀で返した。

車は和歌山を後にし冬木へと向かった。

 

「なんやかんや言って恵まれてるよあんた、切嗣」

 

詩蓮はそう言い残し和喜の養子を引き受けてくれる知り合いの道成寺に足を運んだ。

こうして桜井沙嗣は生まれたのである。

 

 

 

「はぁ、この寺を継ぐ気はないと。だから、外国へ留学しに行ったんだな?沙嗣」

「あぁ、外国に行ってまでやりたかったことがあったからな。ボランティアとかその他諸々…。そんで、この日本で観光ガイドを通訳的な役割で仕事をしたいと思っている」

「何を言うのかと思えばまたそれか…留学の功績は認めるが…」

「しかし!だったら!!」

 

沙嗣は息を上げる。我慢出来なかったら拳をハゲ頭に喰らわせるところだ。この彼の将来の夢は親を説得させるための罠的処置。本当は聖杯戦争を行える万全な体にするために留学し今年始まる冬木の聖杯戦争に向けて準備するために上京したいという。

 

「あのな、沙嗣。21歳にもなってバカバカしいとは思わんか?大学で仏教の事学んでるんだろ?どうなんだ?」

「あれは、スペアだ」

「そうかそうか、自信ないのだな?観光魂が…まぁ、それは止めて素直にここに継ぐことだ」

「くそっ!だったら!」

 

魔術を展開しようと思ったがここではマズいと我に帰り自分を止めることに成功する。

 

「ふっ、なにをするのかと思えばワシに暴力を拳を喰らわせるつもりだったか。21歳にもなってこれとは情けない」

「〜!だったら、もう出ていく!」

「…あてはあるのか?」

 

安嗣は笑いながらないだろうと思いながら訊ねた。しかし安嗣の期待を裏切り彼はこう言った

 

「あてはあるさ」

 

安嗣はその自信ありげな一言に怒りを覚え背中に苦痛を覚えながらも立ち上がり安嗣は怒りの一言を言う。

 

「じゃあ、出ていけぇ!!!荷物まとめてなぁ!!!でけ!!!!!」

「言われなくてもっ!!!」

 

沙嗣は待っていたのかと言わんばかりの部屋の出方に安嗣は文字通り腰を抜かした。

沙嗣は今日、和歌山県から家を道成寺の家を出て行った。遠家出。

沙嗣は無事に冬木に着き安堵する。親の事を考えるとモヤモヤするがそこは後回しにしようと脳みそ倉庫の奥へ仕舞った。親には日々感謝しているが親が親なため意見の相違が生まれ喧嘩になる。それが5割の確率で発生するので蓄積され嫌気がさした。そして今に至るわけだ(しかし今回はイレギュラー)。

沙嗣は深呼吸しもう始まっているであろう聖杯戦争の舞台冬木に鋭利な刃物で刺すような目付きで景色全体を見渡した。

夜刻、沙嗣は召喚の術式を展開させ沙嗣は息を整えて--

 

『 素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には我が大師シュバインオーグ。

  降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ

 

   みたせ   みたせ   みたせ   みたせ   みたせ

 閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。

  繰り返すつどに五度。

  ただ、満たされる刻を破却する

 

               

 ―――――Anfang

 

 ――――――告げる

 

 ――――告げる。

  汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

  聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

 

 誓いを此処に。

  我は常世総ての善と成る者、

  我は常世総ての悪を敷く者。

 

  されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――。

 

  汝三大の言霊を纏う七天、

  抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!』

 

自分でもこんなに上手く詠唱できるとは思いもしなかった。やはり成果の賜物だなと自負しながら己の令呪を見つめる。

 

「さて、そろそろ…」

「…後ろですよ…」

 

女性の声が後ろから聞こる。透き通っていて怖いぐらいに聞こえる聞こえの良い音。一言で言うと雪女。魂を持ってかれそうな雰囲気を背後に感じ取る。別に震えている訳ではないが沙嗣は刹那の速さで後ろを振り返った。

 

「問いましょう?其方が私の、マスターですか?」

 

着物を着た女性はなんとも幻想的で、才色兼備という言葉が似合うであろう方だった。全てを知っているかのような笑みを浮かべ沙嗣に恒例の挨拶をする。

 

「あぁ…間違いない…!あんたが俺のマスターだ!!!バーサーカー!!!!!」

 



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ハサン・サッバーハ

昔昔、山の翁という暗殺集団がいた。教主ハサン・サッバーハは異名『呪腕のハサン』と呼ばれていた。彼自身仕事をこなしているだけなので殺人に哀楽を求め犯している理由(わけ)ではないためその点では下の下ではない。そんな彼の聖杯の願いは顔と名前を戻す事。ハサンは生前顔と名前を捨てお面を被りお面と共に行動していた。彼自身その行動に悔恨の念、後悔している。長いため息がつくほど悩んでいるのだ。

ハサンはマスターは絶対裏切らない、最後の時まで必ず行動する、無茶な命令でも訊くという暗殺心とはくっつきにくい心を持っている…。

 

「おい、ジャック」

「鉄炮塚、なんで、ございましょう」

 

今回のハサン・サッバーハ(以下、呪腕のハサン)のマスターは鉄炮塚健司。彼は小説家で魔術を題材にし面白おかしく書いている。鉄炮塚がなぜこんなに魔術についてリアルに書けるのか…それは彼が魔術師だからだ。一般人にはそんなに魔術が本当にあると認知されていないため娯楽として読書してくれる。彼らの無知さで直木賞を獲得したと言っても過言では無いと下劣な考えを持つのが鉄炮塚健司。

話に戻るがなぜ鉄炮塚がハサンの事を『ジャック』と呼んでいるのか…?という疑問を解決するとしよう。ヒントを与えよう。名字、鉄炮塚はペンネーム。それを呪腕のハサンが聞きピーンと頭に何か閃きの光が灯した…。解答フェイズへ移行しよう。そもそも『ジャック』というのは『ジャック・ザ・リッパー』からとったもので鉄炮塚が自分の名字が『真名』じゃないからと比喩し、そう聞いた呪腕のハサンが思い付いたのは『偽名同士の信頼』だ。それに意味あるのかと突っ込みたいところだが彼らにとって遊びの範疇。この遊び心あってこその信頼。これで聖杯戦争がスムーズ、円滑に進める事が出来ると思ったのだ。

 

「その宝具とやらは使えるのか?」

「私、その、宝具に、誇り、思っている」

「ふふふ、そうかそうか。ならそれを信じよう。まぁ、ジャックが負けてもスポーツマンシップに乗っ取り行動するのが我のモットーだからな…。責めはしないさ」

「ありがたき…」

 

呪腕のハサンは笑い返し一礼。

 

「…本当にその仮面の中を見てはならぬのか?」

「だめ、絶対、たとえ、マスター、許せない」

 

鉄炮塚は我ながらいい考えだと口にこぼしてしまいそうな不敵な笑みを浮かべる。

 

「令呪で命令、してもか?」

 

刹那、呪腕のハサンは投擲を鉄炮塚の首筋に掠める。鉄炮塚の耳元でこう呟いた。

 

「これが、答え」

 

鉄炮塚は両手をあげ抵抗しない姿勢を見せる。呪腕のハサンは解ればいいと言わんばかりの動きをした。投擲をゆっくり静謐に仕舞ったのだ。鉄炮塚は冷や汗を掻きながら

 

「ふぅ、解ったよ。頭冷やしがてら執筆しているからジャックは気配遮断とかでも使って他のマスターとかの様子やらを見てきて…」

 

と命令。鉄炮塚は本気で死にそうな顔をし過呼吸を抑え普通の呼吸へと変換させる。

 

「御意」

 

呪腕のハサンは静かに霊体化し去っていった。



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必滅の黄薔薇

アサシン・呪腕のハサンは今、戦闘中だ。呪腕のハサンは自慢の投擲で遊ぶかのように操っている。新幹線よりも速く一言でいうなら迅速という文字が相応しい走りで相手を魅了させた。その『相手』というのはクラスはランサー真名はディルムッド・オディナ。ケルト神話で有名なサーヴァントだ。彼の宝具が展開するのを見るとしよう。呪腕のハサンは投擲を5個ずつ投げたりバリエーションを変えたりしてバラエティ豊かにディルムッドの速足を鈍らせる。大橋の真上を流星の速さで通過。海に落ちずに空中戦。そのまま地に着地しまた走る走る走る。彼らは百メートル走選手権があったら冗談抜きで数秒で終わりそうだ。プロ並みの選手が呆然として顎がはずれるであろう。

『必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)』でアサシン、呪腕のハサンを打ち倒そうとするが中々当たらない。ディルムッド舌打ちし必殺の宝具『ゲイ・ジャルグ』を出そうとしたが失敗。理由は単純、呪腕のハサンに先を越され『右手』が出血してしまったからである。

 

「くっそおおおおおおおおお!!!」

 

これでは『ゲイ・ジャルグ』が使えない。ならばこの投擲を抜いてと考えたが考えるだけで頭が痛む。そのまま続行し…いつの間にか沼に来ていた。周りの雰囲気を例えるなら富士の樹海。東西南北、どれも同じだ。道のりを覚えていなかったら餓死は逃れないだろう。餓死確定だ。霧がかかっていて幻想的だがこれでは足場が見えづらい。沼に何かがいるかもしれないのに確認しづらいとディルムッドは沼の水につかないように走り歩く。川に石が直線的に移行している感覚でディルムッドは走っている。

刹那、ディルムッドの足に何かがひっかかった。否、掴まれたのだ。魔物のような触手で彼を襲う。これも呪腕のハサンの企みと考えるべきだろう。ディルムッドは

 

「貴様…!」

 

と言い触手を振り払った。しかし、これは茶番に過ぎなかったようだ。

 

「妄想心音(ザバーニーヤ)…」

 

呪腕のハサンは折りたたんでいた腕を展開し異常で異形な腕を動けない彼、ディルムッドに触れ彼の擬似心臓を精製。

彼は必死に振り払い抵抗するがもう遅い。呪腕のハサンの宝具によって擬似の心臓が握り潰される。ディルムッドは胸部になにか空洞が開いたのを感じ空いた方向に目をやった。刹那、ディルムッドは倒れ魔物の触手に飲み込まれ何も言わずにこの聖杯戦争から退場する。彼が行き着く先は聖杯ではなく沼の黒く冷たい『底』だった。

呪腕のハサンは潰した心臓を躊躇いもせず口に放り投げた。




訂正 クーフーリンではなくディルムッド・オディナです


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新たなるランサー

今回のランサーのマスターは柳洞清心。柳洞寺の養子で柳洞一成に養われている子供だ。柳洞寺には葛木宗一郎の遺言で魔術の心得を寺のもの全員に教える事になった。ディルムッド・オディナの脱落により清心のマスター権は消えたが教会に聖杯戦争の間身を引き取られ保護状態になっている。その清心の管理役が言峰綺礼。現在、40歳前後。そろそろ合コンに興味を持ち出したらどうだとギルガメッシュに言われたが「麻婆豆腐しか愛せない」とかいう冗談を抜かしたのでギルガメッシュはため息をつけずにはいられなかった。無論、清心もその話を聞いており「面白いこと言うんですね」と微笑混じりに言った。

 

「…で、どうかね?またマスターになる気は」

 

綺礼はチャンスを与えると腕にある令呪の塊を見せつけた。これだけ時間が経てばまた聖杯戦争に参加してくれるだろうと半々の確率で清心の心を読み取る。

 

「あぁ、なりますよ。この心に偽りは存在しない」

「なら、いい。では詠唱したまえ…」

 

清心は令呪の再契約をし手に入れたのは『ランサー』真名をクーフーリンと言った。

 

「セタンタ…」

「ん?」

 

綺礼は清心の言葉に首を傾げる。ギルガメッシュは察した様子で半笑いしていた。

 

「あ、いえ。お気になさらず」

 

新たなるランサー、クーフーリンが召喚される20分前綺礼が清心にあるランサーについてのシナリオを伝言された。

 

「ちょっと柳洞清心…」

「はい?」

「本来なら私がマスターになるハズだったのだが…」

 

清心はその事を思い出し胸に槍が刺さったかの様に痛い何かが走る。彼の言う事を聞けば聖杯戦争がスムーズに進むのだが清心側にとっては不利になる。しかし、『次の手』もあるらしいので安心して欲しいと綺礼は言っいた。何を根拠にと清心は思ったが今は言われた通りの事をしようとランサーがいる目の前で心で誓う。清心は共闘という意味を込め左手をグーにしランサーの腕の近くで止めた。

ランサー、クーフーリンは

 

「おっ、こいつぁ俺のマスターでいいってことか?まぁ、これが付いてるしそうなんだろうなぁ…。しかし、変わった絆の確かめ方だ」

 

と察しクーフーリンは右手をグーにし清心のグーを力弱くぶつけた。

 

「頑張ろう、ランサー」

「おうともそのつもりよ」

 

ギルガメッシュは笑いを堪えるのに必死で平然な顔を保っていた。

清心が教会を後にして10分経つ。綺礼はため息をついた。それが何のため息か解らないがマイナスな息ではない事は確かだろう。

 

「どうした?綺礼。また、何か思いついたのか?」

「あぁ、また美味しい酒が飲めるさ…」

 

ギルガメッシュはその成長ぶりに解らないように鼻で笑った。



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カムランの戦い、そして

後悔は誰にだってある。しかし、後悔によっては大きいもの小さいものが少なからず存在する。微小なほどの後悔なら拭えるかもしれないが大きい後悔は拭いても拭いてもとれないかもしれない。王の執事なのに助けられなくって後悔した者がいる。これは大きな後悔か?想像するだけで荷が重くなる。

 

 

「ここが、冬木…」

 

衛宮士道。血は繋がってないものの衛宮士郎の息子。要するに養子だ。士郎は昔やった聖杯戦争の話をすると士道は冬木へ旅行に行ってくると言い三日経つ。士郎は「魔術も取得してるわけだし向こうで召喚されでもしたらどうしよう…」と心配していたが凛にそんな事ないから安心しなと薬を盛る。

士道は冬木で聖地巡礼的な旅行をするために来たはずだった。

…。士道は冬木の展望台から夜景を見下ろす。すると空中に人かUFOか解らないものが浮かんでいるのが見えた。否、浮かんでいるというより動いている。しかも黄金に煌めく輝きと槍のようなものの残像が目に焼き付いた。

こちらにはまだ気づいておらず戦闘?的なものを彼らは夢中になっていた。

しかし、槍使いはこちらに気づいたような素振りで黄金に輝く王に中断の合図を送る。黄金に輝く王は満足しているというのを訴えるかのような笑いを返し了承。槍使いは恩に着るとその場を抜け出し黄金に輝く王…ギルガメッシュは霊体化しその場を去った。

士道はそれに全く気づいておらずなんで片方は消えたんだと首を傾げる。

--刹那、彼の後ろに音のおも出さずに立った槍使い…クーフーリンがそこにいた。

 

「よぉ、お前さん。夜景見物は好きか?」

「だっ誰だ…」

「誰だ…かそいつは教えることが出来ねぇ。真名を言えば無関係な人でも…」

 

クーフーリンは士道にある匂いを感じなるほどと微笑。

 

「お前さんも…この戦場(いくさば)に参上する気か?しかし、参加者だとしてもだ。口封じには変わりねぇ…。死ね」

 

士道は返す言葉もなく展望台専用双眼鏡に後頭部をぶつけながらも後ろに退く。月夜に照らされた紅き槍が心臓に突き刺さろうとした刹那クーフーリンは反射的に一歩、下がる。下がった理由は単純、予測できなかった伏兵に眉をひそめたからだ。剣が槍に弾き飛ばされるもののクーフーリンは驚き目を丸くする。

 

「おいおいおいおい?誰だテメェは!もしかして、お前がこれのサーヴァントとかよっ!」

 

士道は今にも顎が外れそうな顔をしたが我に帰り今出てきた単語を整理する。サーヴァント。マスター。てことは士道の手にもあるはずだ。そう『令呪』が。それが…あった。存在した士道は夢じゃないかしらと頬を抓る余裕もなく立たされサーヴァントが出てくるのを待った。おかしい点が1つある。凛の話によれば英霊召喚は何らかの儀式を行わなければならないと言う掟があったはずだしかし、なんのアクションもなくサーヴァントが召喚される事があるのか?否、士郎の言ったイレギュラーがあればありえることなのだろうか。それなら自分、士道はイレギュラーと言えるだろう。

 

「問おう…答えてくれなきゃどち道ランサーに殺められる…殺められる前に答えろ…あなたが私のマスターで間違いないね?」

 

月夜に照らされ現れたのはクラスはセイバー…。真名はルーカン。円卓の騎士の1人である。



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月が綺麗ですね

「いつか、戻ってきたら…抱いてくれますか?」

「あぁ、約束するよ」

 

安珍は幼い頃の清姫にありもしない約束をした。そのお陰で災厄が訪れるということを知らずに。安珍はその場しのぎで約束を交わしたのか約束の日には覚えていないと清姫に言い彼女を絶望させた。絶望の感情によって生まれたのが大蛇。この大蛇は安珍を追い追い追い込み安珍諸共燃やし尽くした。

 

「…。夢…」

 

桜井沙嗣はバーサーカーのマスターになって2日目の朝を迎えた。その前夜に清姫は「あなたは裏切らないですよね?」と言った意味が翌日ようやく解った気がする。

 

「お兄ちゃん起きたの?また、ピアノ聞かせて!」

 

お兄ちゃん、と呼んだのはサーヴァントではなく生身の人間。冬木の隣町、久米次(くめつぎ)でとあるショッピングモールにあるピアノで弾いてたところ予想外の客が観ていた。それがこの小2ぐらいの女の子。今回出て行くにあたって小2ぐらいの女の子、雪菜(せつな)に厄介になっていた。無論、この雪菜に許諾を得たわけじゃなく雪菜の姉、秋菜(高校2年ぐらい)に許可を得たのだ。と言うのはここには姉妹だけが住んでおり姉が母親代わりになっているとのこと。ここに厄介になるのは胸が苦しいところが何ヶ所かあるが妹の雪菜に気に入られちゃ断るわけにもいかない。しかもその姉とはただの関係ではなく昔、ピアノの師弟関係だった。なので快く秋菜も受け入れ今こうしている。偶然を通り越して運命ではないかと目で疑うほどだ。しかし、この後の事を考えるとこんなに事が上手くいって良いのかと胸がソワソワする。悪い方向で。

沙嗣はショパンが好きなので雪菜にショパンの曲を弾かせたらかなり気に入ってくれた。幻想即興曲とかも弾かせてやりたかったがかなり無理難題だと思い練習中でもあるので諦めることに。あの曲に関しては聴いているだけでいいと思った。

 

「あら、前より上達してるじゃない?」

「そうか?まだまだだよ」

 

沙嗣は照れ隠しなのか謙遜しているのか解らない。解らないが秋菜は微笑した。

 

『私、ちょっと警備の仕事に行ってきます』

『あぁ、気をつけて』

 

清姫から伝言があったので脳で返した。近い言葉で言えばテレパシーだろうか。しかし、ここでピアノを聴いていればいいものをと沙嗣はたとえサーヴァントであっても疲れは来るだろうと心配してたがあのトーンの様子だとまだ大丈夫なんだろうなと感心する。

でも、サーヴァントの気配もマスターの気配もないこの街で何を警備するのだろう。一応念の為というのもあるしと沙嗣は考えるのを止めた。

 



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聖女探求

雨生家と四方田家の絡みはオリジナルです


四方田虎徹。虎徹は年17で殺しを楽しんでいた。今、連続殺人の犯人はほぼ彼で間違いないだろう。随分、昔の話四方田家は雨生家と『悪魔の召喚の儀』をテーマに共に研究していたらしい。こうして現代に生まれたのが快楽的殺人犯四方田虎徹という訳だ。

彼は最初から殺しをした最後に魔方陣を描きそこには僕がいたという証明をメッセージを残した。モチベーションの低下で魔方陣を描いているのではない。

 

「これで、何件目だ?解らねえ。これでもし出世できるんなら社長ぐらいにはなっても良いんじゃないかと思うなぁ、坊主」

 

虎徹は今から殺す子供に話しかける。まるでまだ猶予はあるぞと見下しているみたいに。無論、親も滞在しており親は先に殺された。

 

「神様はよぉ、今この状況をみてプレイ実況しているのかもしれねえぜ?まぁ、お前の口から神の存在を否定する言葉が出てきたらただじゃあおかねえ。あ、この状態が有料か。もう払ってんだよなぁ…。だからあとは僕に殺される…のみ!」

 

虎徹は殺された人の血で魔方陣を描き始めた。

 

「えっと、記述のとおり『みたせ?みたせ?みたせ?みたせ…』んー、坊主、君、僕?お前?あんさこれって…4回5回?まぁいいやさよなら」

 

子供は理不尽ながらも虎徹の一手で1発で無惨に殺された。虎徹はそれを『芸術』と呼んでいる。

 

「さて、もう1度、『素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ

閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。

繰り返すつどに五度。

ただ、満たされる刻を破却する

――――告げる。

汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

誓いを此処に。

我は常世総ての善と成る者、

我は常世総ての悪を敷く者。

汝三大の言霊を纏う七天、

抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!

』っだっけか。なんだよ言えるじゃん」

 

虎徹は自負し何かが起こるのを待つ。しかし、何も起こらなかったのでまたどこか読み間違えたかとがっかりしその場を去ろうとした刹那----

 

「ーー貴殿の名をここに問う其方は何者なるや?」

 

虎徹は一瞬何事かと思ったが彼の思考回路は単純で明快だった。そう、虎徹は『悪魔』を召喚したんだと思った。しかし、悪魔となると生贄になる者はこの手で殺してしまったし悪魔に見せる顔はないと急いで部屋中を探し回りマグカップを見つけ被害者の血をそこへ注ぎ込んだ。

 

「えっと、申し遅れた!四方田虎徹!職業、解剖師になる予定!趣味は殺し!全人類!ラブ!っと、さっき子供殺しちゃったんだけど…その残り血で杯を交わしはしない…か?」

 

キャスター、ジル・ド・レェ。ジルはため息をつき微笑する。ジルはマグカップを受けとりその血を飲み干した。

 

「其方、人殺しと言いましたね?なら、恐怖の鮮度を知っているはず」

 

ジルは飲み干したマグカップを地に叩きつけ足で踏み躙った。

 

「恐怖の鮮度…?恐怖の味噌汁?なんだって?」

「…。はぁ、ここにはまだ人がいますね」

「え…?マジ?見落としてた…」

 

ジルは虎徹の事を指さそうと思ったが、ジルの考えと一致、理解出来そうな人だと思い部屋の天井を指さす。デタラメに指しているのではない本当に上の階には子供が存在した。

 

「ほら、そこに子供がいるでしょう?…そなたの考えでは単に忘れてたか、この子に絶望を与えたかったか…のどちらか。しかし、今は詮索をせずにこの子の事に集中しましょう」

 

ジルは希望となるドアを開け虎徹を先にあがらせる。

 

「…おじさん達、だれ?」

 

寝起きなのか子供は目を擦り視力を回復させる。ジルは今ありのまま起こった真実を告げ『状況的絶望』をさせた。虎徹は退屈そうにマグカップの破片を見ている。

 

「さぁ、あなたは大丈夫。このおじさん達に救われたと思ってそのドアから出て外へ行きなさい…。あ、リビングは見ては行けませんよ」

 

虎徹は「おい、何逃がして…」とジルを責めたが何かジルには秘策があるらしく虎徹に静かにと人差し指でジェスチャーした。

子供は希望のドアが絶望の廊下へと通じている事を知らずに開きホットした刹那込み上げてくるのは涙。安心と絶望が同時にある涙は気持ち良くないものだった。子供ながら幼き者ながら一家惨殺はあまりにも不幸すぎると幼きながらも理解する。しかし、自分は助かるのだーー

 

「!?ギャアアアアアアア!!!ギャィタア!!!!」

 

刹那、子供は待ち伏せしていた狂気に満ちた怪物に飲み込まれその一家よりも無惨に殺された。

 

「どうです?私の脚本は…」

「…」

 

虎徹は瞬時何が起きたのか解らなかったがこれだけは言えた彼は自分に愉快と楽しさを与えてくれたのだと。

 

「…あんた、何者だ…?素晴らしいよ。今の…今までにないエンターテインメント…」

「えぇ、期待に添えて光栄です。私は…この現代では青髭と言われてますが…ここは1つ『旦那』でいかがでしょう?虎徹、と言いましたね?私の悲願と一致する様子…。虎徹となら聖杯戦争を円滑に進めそうです…」

 

虎徹はハッとし聞いたことがあると自分の胸に手を当てた。ここ、冬木で行われる断片的聖杯戦争。魔術師が揃い戦いを繰り広げ勝者1人になった暁には願いが叶えられる願望器があると。虎徹はそれに選ばれたんじゃないかとワクワクが止まらなくなる。

 

「…あぁ、あぁ!よろしく頼むぜ!旦那!!!聖杯戦争?なんだかよく知らねーが願いを叶えられる戦争なんだろう!?」

 

ジルはハッとし満面の笑を浮かべ虎徹の手を強く握った。

 

「あなたは前のマスターよりもこの戦争に於いての理解力がよろしいようで…」

 

と虎徹に聞こえるか聞こえないかの声で言った。



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残るクラスは2つアーチャーとライダー

ユグドミレニア一族は型月世界に存在しますがカエサル・ユリファロード・ユグドミレニアはオリジナルです


なぜ、私が船に乗っているのであろう。手紙を書いてあの者に届けに行くのはあの人達だと言うのに。なぜ、海を渡っているのだろう。私はここへ居なきゃいけないのに。なぜ…なぜ…。

 

「問おう、あなたが私のマスターですかな?」

「クラスは…ライダーか、よろしく頼む」

 

冬木にある川でなぜか召喚されたライダー。触媒は6色の色紙。何の変哲もない色紙だが何らかの魔術が施されている。川と船とこの色紙が交わることで生まれたライダー。彼の特徴は浴衣姿でマスター・小野仁時は思っていた人と違うと嘆いた。このサーヴァントの能力は聴力EXという化け物(褒め言葉)並の聞き分け、耳が良い。そんな特集能力のライダーは何に乗るのかというと『船』だ。かつて部下?が乗り降りしていた船を乗(ライド)している。

速度が調節でき海を自分の庭にだってする事が出来る索敵機能まで付いている優れもの。心のどこかでこのライダーとなら勝てるとマスター・小野仁時はそう信じている。

 

「さて、マスター。ところでマスター。私の衣装はいかがなさいますかな?」

「どうって言われても…。この時代と一致しないとだけ言っておこう。あと、髪型は最近の物だな…。一言でいやあ違和感っつーか」

 

と左、右に感想を並べるとライダーは肩を落とし人差し指で円を書いていじけた。このいじけ方も現代にそっくりだと内心、小野は思った。

 

「あっ、ライダー。俺の名は小野仁時。名前は結構気にいってるんだ。よろしく」

「…では、仁時でよろしいかな?」

 

旅館にいる女将のような正座と仕草をライダーはした。これはまた何の表れなのだろうか。意図が全く掴めない。ライダーのもう1つの特徴といえば一言で言うと爽やか。いわゆる草食系男子と同形態なのだろう。少なくとも肉食では無い。

仁時は早速ライダーに気に入られるがこのライダーの時代にはあだ名文化が少なかったため仁時自ら「仁」と付けた。片付け仕事をしたと言っても過言ではない。

 

「では、早速。ライダーには初任務を託そう。そう、パトロールだ」

 

現代の知識を植え付けられたサーヴァント、ライダーにはパトロールの説明など不要だ。「御意」と快く承ってくれた。聴力EXの能力はこのパトロールでも役立つ。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

「ユグドミレニア一族として頑張らなければ」

 

カエサル・ユリファロード・ユグドミレニアはユグドミレニア一族の養子。ダーニックに拾われ養われてきた子供だ。なぜダーニックは養子など笑顔で歓迎したのか理由は単純、カエサルは魔術能力がプロ並みだからだ。ユグドミレニア一族は魔術社会に見返せるチャンスと見てカエサルを養子として受け取った。更にユグドミレニア一族の証明として第5,5次聖杯戦争に参加し『聖杯獲得』という領収書をカエサルは取りに向かう。

そんなカエサルにはアーチャーというクラスを召喚。本来ならバーサーカーとして召喚される予定だったがこの不安定な聖杯システムで予定が崩れアーチャーとして現れたのだ。そんなアーチャーの本懐は『王であることの証明、戦い続けること』だ。聖杯はマスターが欲しいならくれてやる。ただしお前は味方でいろ。ミスもできるだけするな俺の考え次第で『殺す』と辛辣的な注意を受ける。しかし、カエサルは動揺せず承諾。

 

「しかしまぁ、俺がアーチャーで良かったな。バーサーカーだったらもっと厳しいぞ」

「もう、それでご馳走さまさ。こんな厳しい拷問もどきなんて昔の刑事の取り調べかよってレベル」

「おいおい…俺は拷問をしているつもりはない。注意をしているだけだ」

 

ふっ、とカエサルは鉄塔の支柱を触りながら鉄の冷たい感触を感じ取りいつか錆びるのではないかと感想を抱く。確かに彼が仮に真のクラス、バーサーカーとして顕現してたら心は折れていたかもしれない。

 

「なぁに、お前の心配はいらない。アーチャー。俺らは全力で勝ちに行く。そんでルーマニアに土産を持ってくさ解りやすい形でね」

「ほう?てことは願いとやらは見つけたのか?」

 

カエサルは自信ありげに空を見上げ。言った

 

「我が国、ルーマニアに核権力の拡大を…だな」

 

そう言った直後流れ星が降ったような気がした。



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聖杯戦争『五日目』
報道と犯人と捜査と


スポーツを楽しむ者、世間ニュースを楽しむ者、政治やら色々なニュースがテレビの中で嵐の如く回っている。否、ニュース等には台風の目が存在しないため台風、嵐という表現は間違っているのかもしれないが。そんな中に四方田虎徹という男は殺人犯Aとしてテレビに映っているのだ。平成のジャック・ザ・リッパーとも言われ悪魔復活、魔女戦争復活など様々な意見がネット上やらで交換、論争されている。虎徹はそれに混じりながら論争やらを楽しんでいた。素性がバレない程度に。

 

「しかしまぁ、平成の切り裂きジャックだと!これは大ウケ!ポエマーかよ!」

 

虎徹は笑いながらパソコンの画面を睨む。片手にコーラを持ちながら。これでもちゃんと働いているため職場からもこんだけでかい事件になりゃ考察論争にも発展する。1番恐ろしいのが虎徹は職場仲間と考察論争に参加している事だ。そいつが犯人と気づかずに快く会話をしているのが何とも変な光景。まるで人狼をやっているかのよう。

虎徹はパソコンを閉じ次の現場へ向かう。今となれば旦那、もといキャスターがいるので従来の10倍の速さで事件は完成し事件の精度も上がるのだ。次来る異名に期待しながらもアパートから5分の所にある家に目を付けた。

 

「サンキュー旦那。もう、やってくれたのか」

「えぇ、素晴らしい教本で彼らを裁きましたよ。虎徹」

 

もう1度虎徹は礼を言い最後の仕上げをする。魔法陣を描くというお約束の跡残し。もう悪魔は召喚されているのでもう詠唱する必要は無いが彼の足の体力だと限界が来ているため疲れる。

 

「ふぅ…もう、疲れたよし。引き上げるか…」

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

虎徹が侵入して5時間が経過した。警察が到着しまず目を付けたのが紅く染まった魔法陣。大阪府警の刑事薮雨(やぶさめ)陽一は虎が憑依したかのように睨んだ。

これは間違いなく確認もするまでもない殺人に値する。これで自殺と断定するなら目が腐っているのだろうと薮雨はため息をついた。

 

「こいつは殺しで間違いねーな…。ったく。これ以上見ると税金泥棒やってた方がマシだわな…」

 

吐き気を催す代りに言葉を吐いた。しかし、同僚の刑事はもう遅かったみたいだが。

 

「奈津。また、吐いてるのかよ」

 

奈津刑事の背中を擦る。薮雨は案外優しい所もあるのだ。奈津は大丈夫。とゆっくり立ち上がりハンカチを誤魔化すようにワイルドにしまった。奈津も捜査に加わり現場検証を開始。しかし、遊びの線を変えたかのようなグロテスクな光景。なにか犯人は意図を変えたのかと言わんばかりの殺し方だった。奈津は「やはりホシは遊んでるな」とため息混じりに言う。正にその通りだと薮雨はそう思い頷いた。

 

「しかし、今までとは違ってグロさが増してるというか人間業じゃねぇな。しかし、同一犯は確かだ」

 

薮雨は周りを1週する。被害者の状況は説明しづらい状況で強いて言えることと言えば死体を包帯で巻かなきゃいけないという事ぐらいだ。しかもここ被害者の家で犯行が無かったら身元確認がスムーズに行われなかっただろう。想像するだけで背筋が凍る現場だ。

 

「それは間違いないわな魔法陣だってあるからな」

 

奈津は欠伸をしながら魔法陣を見下ろす。ゲロの疲れが来たからなのか目を擦り視点を合わせる。

 

「ったく、無理するなよ。帰りにポカリ奢ってやる」

「あぁ、スポドリか気が利くね」

 

「馬鹿野郎」と補足し奈津と薮雨は捜査を進めた。収穫と言えば魔法陣の書き方が今までとは違うのと殺しのやり方が違うということぐらいだった。



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寝床とセイバーとワインと

衛宮士道は士郎が昔住んでいた家にお邪魔する事にした。セイバー、ルーカンは何かとウキウキしている様子だが特に面白い物が置いてあったりとか面白いものがあるわけではない。ルーカンの普段着と言えばジーンズ、白シャツ。現代の服装で1番気に入った組み合わせらしい。

 

「なぁ、セイバー。なぜそんなにウキウキしてるんだ?ただのおじぃちゃんの家だぜ?」

「いやいや、どれだけワインが置けるのか楽しみで仕方なく」

 

…。士道はため息をついた。話は戻るがこの家に住むにあたって士郎には許可をとってある。公式に住んでも良いというサインを貰ったわけだ。

 

「セイバーって、いつもにこにこしているよな」

「そうかな?」

 

しまった。声に出ていたと士道は手を動かし誤魔化した。

 

「もし、これが健康の秘訣だとかつまらないこと言ったら怒るかい?」

 

ルーカンは士道を試すような質問をする。士道は「怒らねえよ…」と半分呆れ顔で話を流した。ルーカンは棚を物色し始め思いついたような無邪気な顔で「士道」と名前を呼ぶ。

 

「今度はなんだい」

「ここ、ワインいれに使っても」

「いいけど、俺、保存の仕方解らないんだが」

 

ルーカンはにやっと微笑み

 

「大丈夫。もう一つの宝具で保存できるようにしてあります」

 

と冗談にも聞こえた真実の言葉を発した。ルーカンの宝具は戦闘用とありえない事だが真実、ワイン保存用のがある。士道はそれに何の疑問も持たずに宝具解放の許可をルーカンにくだした。

 

「これで、よし。いつでも飲めるぞ飲ますことができる」

「…あの、俺未成年なんだが…?」

 

ルーカンは口をポカンと開け5秒沈黙した後、笑い飛ばした。しかし、さっきの光は綺麗だったなと士道は感想をこころのなかで思った。

 

「まぁ、全部。ぶどうジュースにしますか。盛り上がりに欠けるけど…」

 

ルーカンは残念そうに宝具でワイン棚と化した棚にもうひとかけ魔法を加えた。これで不思議なことにワインからぶどうジュースへと生まれ変わった。一部は自分用にワインのままだが。まぁ、ストックは幾らでもルーカンの懐にあるので自ら出せば問題ない。

士道は台所を使いおつまみをと用意しようとした矢先、ルーカンが

 

「私は元々執事ですから、おもてなしされる側になると痒くなります。何か手伝いましょうか?」

「…」

 

士道は考えた。しかし、あるのはチーズと柿ピーと…料理する物は特に買っていない。2人になると逆に狭くなり逆に足で纏いになりそうだった。しかし、ルーカンの執事精神を見てしまうとどうも断れなくなる。士郎の影響かと思っちゃうほどお人好しとは違うが断れない性格になってしまったのか…。

 

「いや、皿に載せるだけだぞ…」

「それでもいい。何かやらないと気が済まないのです」

 

士道にはそれがワガママに聞こえた。



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舟で歩む

冬木の川を下り海へ出る。冬木大橋と夜景が素晴らしくマッチしており驚きの声も出ないほど。小野は驚きの代りにため息をついた。

 

「なんて、良い景色なんだ…」

 

小野は舟の操縦者じゃないためくつろぎ永遠とも思われる雄大な景色を魅とれていた。ライダーは操縦者なのだが魔力で動かしているため自動的に操縦している。

 

「この舟空も飛べるんだよ」

 

ライダーは勢いよく「ふんぬっ!」と水を土台にするかのように月へ目掛けてジャンプ。小野はライダーの裾を掴み…チャームポイントなのか解らないがとりあえずこの絵面は可愛い。

 

「最高のアトラクションだよ」

 

小野は心にこもってるのかこもってないのか…感想を漏らす。

 

「そりゃ良かった見せたかいがあったてもんよ」

 

ライダーは鼻を擦りながら笑う。照れ隠しのつもりだろつか?小野はこんな奴がサーヴァントじゃなかったらずっと友人になれたと思うと心が痛む。いっそ、サーヴァントを感情無しで創ればいいじゃないか?と疑問に思った。居心地がいいのに窮屈さを覚えた。

今はまだ『共闘』という単語が珍しく(珍しいのかどうか解らないが)出ていないが小野は誰かと一時的に組んで闘いたいと思っている。騙し合いではなく戦士としての誇りを持って行うつもりだ。なので、やられた側には教会へさっさと保護していく方向。ライダーとは長く付き合っていきたいため最後まで生き抜きたいと夜空の星々に誓った。

ライダーと小野は冬木にあるネカフェで一夜を過ごすことにした。ライダーのド派手な服は仮装の練習だと誤魔化し入店。ライダーは現代の技術に目を輝かせる。可愛いものだと小野は微笑んだ。霊体化すれば良いのでは?と思うが小野は生身で触れ合いたいらしい。

 

「まんが…?というやつか?この書物、解りやすいぞ!絵が書かれてある。物語も面白い!」

「夜だから静かにしろよな」

「解っておる。おぉ、そうだ。あれ、明日になったら蹴鞠をしないか?」

 

と、ライダーは内心ウキウキしながら小野と心を通わせた。全くこんな奴がサーヴァントであっていいものか。と小野は再度哀しむ。

 

 

 

「始まったな?脱落者は?」

「そう焦るな、ランサーよ」

 

冬木教会に居座る。第3のランサーとアーチャー。アーチャーは余裕な笑みでランサーに「まぁまぁ」と落ち着かせる。アーチャーは自分の番がいつくるのだろうかと思うと眠らずにはいられないとジョークを重ねたジョークを考えた。脳内で盛大に笑いながらアーチャーは質問をする。

 

「ランサーよ、今戦っているランサーは知り合いだと聞いたが本当か?」

「…」

「なぜ黙る?」

「知り合いも何も私の弟子だ」



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清姫の本懐

「ふぅ〜弾いた弾いた」

「とってもいい演奏でした」

「そうか?間近で褒められると照れるな」

 

沙嗣は頭を掻いた。清姫に褒められるとは想像もしてなかった。否、訂正ちょっぴり期待はしていた。夜這いも少しは期待しているような…。と、沙嗣はブンブンと頭を横に振り我に帰る。自分は清姫が好きになった相手ではないと確認する。地元でどれだけ清姫の伝説を言い聞かされたと思っているのだと自分に問う。

バーサーカーとは思えないが…まぁ、ヤンデレ思考だからというので狂戦士という役割を与えられたのだろう。確かに龍に変化する様は怖い。

ピアノの弟子にしていた雪菜の家に世話になっているがまぁ、「ピアノを弾いてるだけでいいから家賃はいらない」と彼女は言ってたがそうはいかない。この闘いが終わったら何かお返ししないとと思った。師匠、沙嗣はメラメラと心の中で火を灯す。

清姫は満足してくれたのか落ち着いた表情を見せる。今夜のピアノも終わりだ。なんか前より上手くなっている気がする。自分でも解った。そりゃ弟子に指摘されるのだから僕が解らなきゃダメかと沙嗣は苦笑いする。

 

「もう、寝るのです?」

「あぁ、今夜は疲れたからな。そんな奇襲とか気にしなくていいから清姫も休みなよ」

「あら、お優しいのね」

「昔から優しいよ」

 

「おやすみ」と沙嗣は清姫に挨拶をした。清姫は挨拶をした後静かに霊体化する。そりゃそうかと沙嗣は思いつつ布団に入った。けして夜這い等期待していないのだから。まだ下心という心が自分の胸にあるのかと絶望する。

無論、沙嗣は独り、部屋で寝ている。女子の部屋にお邪魔してはいけないだろうという考えからだ。秋菜には「一緒に寝よ!」と言われたが。いつか昼寝とかで誤魔化そうかと思ってた刹那、腹に何か違和感を感じた。

 

「ゴバッ!?」

 

奇襲か?と思い起き上がるも起き上がれない。金縛りでもあったかのように動けなかった。

しかし、この感触は…匂いは…。まさかと沙嗣は恐る恐る携帯に入っている機能の懐中電灯を点灯。

 

「清姫ぇ!?」

 

期待していた夜這い。約3日目の早い段階で体験できるとは思わなかった。しかも、向こうから。清姫は何もすること無く綺麗ないびきをたてている。変だな、サーヴァントは寝ないはずだと思いつつもこの光景は微笑ましかった。

幸せそうな顔を清姫はするものだからこっちも釣られて幸せそうな笑を返す。

 

「安珍…殺してやる…」

 

と聞こえた気もするが気のせいか空耳だと沙嗣は清姫の寝言をスルーした。

 



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…大丈夫なのか?

ルーカンという男は聞いてもいない聖杯戦争の話を聞かされた。面白い物語だったので眉をひそめずになんとなく消化出来た。士道はその話を聞いて今は大変な事になってるのかもしれない。とネットに検索をかけたが秘密裏にされてるのか出てこない。代りと言っちゃアレだがルーカン史について調べることにした。

 

「目立った行動はしてないな…」

 

時間があればアーサー伝説からの人物らしいので買って見てみるが生憎、懐事情。

ルーカンはたまたまパトロールから帰っており士道の部屋を見てしまった。彼にとっては思い出なのだから。

 

「何見てるんです?士道」

 

ルーカンは画面を見ると同時に嫌悪を覚える。ルーカンはうおおお!と雄叫びをあげた。

 

「どっとうした…」

「いえ、記事に『彼に目立った功績は無い』と書かれてあって刺さるものが…」

「ほら、!お前の事じゃないかもしれんぞ!えーと!『アーサー王も参加したカムランの戦いでルーカン卿(執事)も活躍しているがこれと言った成績は無く』…」

「もう、良いです」

 

彼はこのトーンを知っている。これは怒りだ。静かな。静かな怒りほど怖いものは無い。

 

「士道なりの励ましのようですが。かえってあれです」

 

語彙力が欠けるほど。

 

「一旦、頭冷やす??」

「そうします」

 

ルーカンは姿を消した。

士道はもう1度パソコンに向き合い再度調べる事にする。

ルーカンを調べれば調べるほど大丈夫か?という文字が浮かぶ。彼は彼なりに頑張ったと思うが。でも、彼の聖杯戦争の話によると召喚されたってことは…でも、急な召喚いわゆるイレギュラーだしと士道はあれこれ考察するが士郎の話、ルーカンの話以外はさっぱりなので頭がパンクしそうだ。難しい話は嫌いな質。

 

「まぁ、彼は接しやすいし人間性としては充分機能してるんだよなぁ」

 

アーサー王に仕えてるだけあって。流石、執事だと思った。お茶を飲みながらパソコンに向かう姿は現代の鑑と言っていい。コーラとポテチじゃないのかというツッコミは置いといて。

 

「今度セイバーとパーティでも開くか…」

 

と、悠長な事を言っているところ本当に士道は聖杯戦争の素人と言える。何が来るか解らないのにも関わらず。

もう既に彼は令呪の存在も忘れかけているのかもしれない。

 

「今日は俺が飯担だったな」

 

士道は士郎に教えられたご飯を励まし代わりにセイバーに食べさせるべく自慢の料理を用意しようと奮発する。

てことで、今日の夜飯は肉料理だ。

 

「わぁ、士道あなたが作ったのです?」

「おう、さっきは変なこと言って悪かったな」

「いえいえ、とんでもない。あなたは私に思い出を思いださせてくれました。そして、こんな料理まで」

「…ぶどうジュースはさすがに夜食には似合わないぞ」

「では、私はワインを少々」

 

聖杯戦争五日目はルーカンがパトロールしたのと拗ねただけで終了した。



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聖杯戦争の本気
夢の中で恨まれる者


魔術を無くす。…それは魔術師にとって『いけない』事。退屈という圧を貰う行為と一緒だ。沙嗣は夜な夜なうなされこんな夢をみた。

 

「…本気かい?全世界の魔術師から敵を回すことになるが?」

「…お前は…」

 

1本の長い剣を持っていた。身の危険を感じ取る。

 

「いやいや、そんな警戒しなくていい僕は至って普通の魔術師だ。これは護身用だよ」

 

護身用にしてはデカすぎやしないか?沙嗣はお茶目に首を傾げる。

 

「そうなるのも無理はないかな。まぁ、僕自身どっちの味方でも無いけどね‥こう話し合えるなら少しばかりの助言をしようと思う」

 

魔術が無くなれば魔術師は無くなる。そんな簡単な事だと思っていたが残りは存在する。残りは魔術師の生き残りをさす。

もし、沙嗣が勝ち残り聖杯をとり願った場合彼ら魔術師は沙嗣を無論マークするだろう。マークするに違いない。命の賭けというわけだ。

 

「さぁ、この選択は君にかかってるがね…どうだろう?すこし時間を繰り上げて観るのは?」

「繰り上げ?」

 

魔術師は手を沙嗣の頭にあて問答無用で硬直させる。そこには聖杯戦争後の世界が広がっていた。悠久な土地…平和を感じさせる鳥々…しかし、沙嗣は追われていた。鳥肌が立ち恐怖を感じ魔術師の生き残り世代に目を向けられパパラッチ状態。魔術を継承出来ない憎しみを魔術師は沙嗣の死でストレスを発散させようとしている。そうなれば暮らすことは出来ない。

 

「これは一体」

 

沙嗣は汗まみれの手を見ながら今の現状を見つめる。都合よくさっきの魔術師が現れた。

 

「これはこの時のためだけの能力なんだけどね、本来なら僕は使えないはずだから。だから助言したと言ってるんだよ、よくよく考えて行動する事だね」

 

…起きた。沙嗣は額の汗を拭いながらさっきの夢の内容を振り返る。

 

「クソっなんて、夢だ」

 

あの魔術師の名を知りたいと思ったが後の祭りだ。前に戻れない。

清姫は相変わらず沙嗣の横で気持ちよく寝ていた。それが精神安定剤になって助かると沙嗣は思った。

目が覚めてしまったので清姫と2人を起こさないように茶をくみにいった。

台所で考え事をするなど思いもしなかった。それも命に関わる。まるで、映画の世界じゃないかと沙嗣はため息。

 

「ちくしょう、あの魔術師のお陰で怖くなっちまった…清姫の願いと少し似てるから清姫の願いを…」

 

少し考え沙嗣はある事を思い出す。うちの親も寺だという事を。クソっと台所のタイルを蹴った。少し痛い。台所はこんなに痛い所なんだと改めて理解出来ただけ良かった。しかし、あの魔術師のお陰で考える事が出来た事に感謝…したくはないがするしかなかった。

 



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命の賭け

これは聖杯戦争。英雄はサーヴァントととしての知識を与えられマスターと共に聖杯の争奪戦をする。いわば棒倒しの強化版と言ってもいい。闘うことを強いられたサーヴァントは仲間の信頼を重視しなければならない。沙嗣と清姫はもうバッチリと言っていいかもしれない。ライダーと小野もルーカンと士道も。良好と言って良いだろう。まだ、始まったばっかりでいつもとは違う戦いだ。聖杯システムが微弱と化しどんなイレギュラーが発生するのか解らない。もう、既に発生しているのだが。彼らは知らないまま聖杯戦争の6日目を迎える。朝日が不必要と思うほどに嫌に眩しかった。

 

「おにぃちゃん!おはよ!!」

「秋菜?」

「も〜べったりなんだから…元気ね子供は」

「ねぇ、おにぃちゃん。なんか、窓にいるよ?」

「え?私には何も…」

 

沙嗣は思い出した、子供には霊が見えると。しかし、後ろを振り返ったら…清姫がいた。清姫はビクっと緊張し固まる。弘法にも筆の誤りの顔をしていた。子供には透明化したサーヴァントが見えるのだろうか。

 

「子供の戯れ言子供の戯れ言…」

 

清姫はブツブツこんな事を言っていた。焦っている。少し可愛い。とか、言うと怒られるだろうなと心の中にしまっておく。

英霊と言うだけあって子供には見えるのだろうと遡り自己解決。すると秋菜は白刃取りを外すような発言をした。

 

「可愛い!」

 

清姫の事だろう…多分。確に清姫は可愛い。しかし、秋菜の無邪気さには直球過ぎる。清姫もノックアウトだ、完全に。女座りで倒れている。

 

「お嫁にいけない…」

 

と、頭の中で囁かれた。どうする事もできない。清姫はため息。

雪菜は秋菜に「顔洗いにいくよ」と洗面所に連行された。沙嗣ははぁ、と楽しい息を漏らす。清姫には

 

「何を楽しんでるの?」

 

と、イライラされた。怒っているのだ少し。これが朝7時とか濃すぎだろと沙嗣は自分の人生を振り返る。これが夢であって欲しいとかそうは思ってもいない。大切な思い出としてしまっておこうと内心、涙しながら思った。沙嗣は面白いと腹を抱えて笑うが頭に契約期間というのが過ぎる。清姫と一緒にずっといられたらと思うと虚しくなる。仕方ないと清姫を見ながらため息。清姫はなんなの?気持ち悪いという目で見られたが…清姫はため息返しをし透明化した。

 

「クックック楽しそうで何より何より。健司に伝えないと…土産話にはもってこいの話しじゃないか」

 

呪腕のハサンはこっそりと監視している。無論、沙嗣達に気づかれない。清姫は少し勘づいたが気のせいかと空気を払った。

 



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一つの疑いと一つの視え

「藪雨さん!」

「なんだ、慌てて」

 

奈津は藪雨の肩を掴む。片手に持ってたのは今回の怪事件の資料だった。

 

「手掛かり少しだけど解りました!」

「ほう、聞いてみよう」

「これは、この魔法陣が結果として出てるんですが何かの魔術師が絡んでるんじゃないかと」

 

藪雨はハッと笑う。そんな馬鹿なと。

 

「魔術師ぃ?ありえんな。こんな日本に来るはずがない外国の話だろう?こことは無縁だ」

「ですが、しかし…」

「…お前、そういう魔法みたいなのが好きなのは解るが無理矢理過ぎるだろ?第1この日本に東の国になんの用があってくるんだ?魔術師様も暇じゃねぇよ」

 

確に。藪雨の言葉には説得性が感じられた。奈津はうーんと悩む。じゃあ、この本物に近い魔法陣は一体と思った。

 

「いい線までいってたんだけど…まぁ、藪雨さんがそう言うなら…」

「…おいおい、俺の意見一つで諦めるのかよ。これは猟奇的な殺人だ。第1その家族の子供がいない。その魔法とやらでやったかもしれんぞ?」

「え?」

「何も、お前の意見を全否定してる訳じゃないって事だ。だとしたら時計塔やらが少なくとも絡んでいる。関わりたくないだけだったんだよ。だから、否定した」

「おとなげない…」

「るせーよ」

 

藪雨はタバコを取り出し機密事項を思い出す。これは大掛かりな事件になると確信はしていたが信憑性が高まってきつつある現状に腹が立った。

 

「よし、今日はおでんだ奢ってやる」

「…本当ですか!?いやぁ、頑張る!」

 

奈津の目は輝いていた。藪雨方面でも少し、調べておかないといけない。そりゃ、みんな同じ事だ。

 

 

「はぁ」

「どうしたんです?虎徹」

「いやさ、ここんとこ餌なくね?」

「…確に。静かですねぇ」

「今のうちにお前の願いをおさらいしようしようと思うんだ」

 

キャスターことジルは感極まっていた。ここまで思想が同じで聖杯戦争に関心理解があるとは驚きだ。子供さらいの精度は格段に上がり自分も満足する結果。あとは虎徹が警察の輩に捕まるのを避けるだけだとジルは現代知識を膨らます。

 

「無論、聖処女ジャンヌの復活です…」

「ほぅ、そんなに彼女が好きなのか」

「…好きというよりかはあれですねぇ神様です」

「へぇ、ツンデレ?」

「…なんと?」

 

ジルは聞き覚えのない言葉を耳に入れる。ツンデレとは?と紳士らしからぬ行為、首を傾げる。

 

「お前さん、ツンデレを知らない?」

 

虎徹は勘づいたのか嘲笑。一般人ならジルにすぐ様殺されそうだが虎徹だから「なんだと?こら?」で許された。

 

「ツンデレというのは好きな…えーと、難しいな恋とかしたことねぇし。好きな事をだな、隠して裏返し的な事を言うみたいな」

「裏返し…」

「そう。好きなのに「嫌いよ!バカ!!」みたいな」

「…なるほどジャンヌにその様な思い入れが…」

「まぁ、正直になれ。後、現代知識もっと埋め込もうぜ?青髭さんよ?勝った時どうすんだよ??」

「…考えても、いなかったですねぇ」

 

虎徹は大男を前に笑う。ジルはツンデレという単語を頭に叩き込んだ。



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先に殺すべき相手

「はぁ」

「どうした?」

 

セイバーことルーカンは桜並木を眺め良いなぁと眺めていたもんだから士道がため息とは青の感情が生まれてしまった。

 

「こんな事してて良いのか?聖杯には興味無いが狙われてるのは少々心配だ」

 

ルーカンはふっと笑い

 

「大丈夫だ。この私が付いていれば問題は無い。多分」

「多分かよ」

 

士道はとんだボディーガードを持ったぜとやれやれ顔をする。ルーカンの姿はネクタイと黒いスーツ。バイクに乗れば似合うの一言だが、生憎乗れない(試した)ため辞退した。この正装じみた服は代々受け継がれているらしいと元いた世界ではそんなもの無かったとルーカン自身は語る。一般人にはただのおじさんと士道としか見えないのだ。腐女子とやらを横に置いたら煩くなるだろう。

…偶然なのか里見はそこを歩いていた。士道との接触をはかろうとする。里見はクッと歯軋りし面倒くさそうに士道へ忠告を言い渡す。

 

「誰だ!」

 

ルーカンは武装を付けはじめ士道はストップ!と、目立つからと慌てて制御する。

 

「敵意が感じられたんならそれは間違いだ。俺は里見魔術側の者でね直々時計塔の先生に就くんだ。エルメロイ先生の推薦でね」

 

士道には理解が追いつかず。ハテナが浮かぶ。ルーカンは警戒していた。

 

「…ったく、ひでぇなこれからお前らに極秘入手した情報で忠告しようかと思ったのによ」

「忠告…?」

「今回もまた、キャスタークラスの脅威が感じられる。先に、やっとくべきだな」

「どのぐらい危険なんだ?」

 

士道は問う。食いつきぶりに里見は驚いた。

 

「ふっ、キャスターことジル。お前セイバーでも少し名前は聞いたことあると思うが」

「ジル…ジル?あっ…!」

 

執事ながらも少々アルトリアの話を聞いていたため困惑した表情を隠せない。

 

「な?見覚えあるだろ???」

「この街で猟奇的な事を…?」

「そうだ、また子供を晒い殺す。悪逆非道のキャスターを同盟で結び倒せば安泰して聖杯を巡る戦いができるって事だ」

 

里見はジュースを飲み干しゴミ箱へダストシュートした。ルーカンは歯軋りをする。士道も少し、許せない思いで1杯になっていた。

 

「一般人を殺すのか…身内間だけだと思ってたのに」

「身内間、ぷはっとおもしれえなお前」

 

里見は士道を見て笑う。

 

「これから起こりそうなのは祭りだ。気づいた頃には大惨事になるそれを防ぐためには聖杯に関与してるサーヴァントが必要だ」

「めんど…」

 

里見は笑う。

 

「まぁ、めんどいがこれから起こる事の方がめんどいと思うが?」

「…はぁ」

「あっ、士道またため息ですか」

 

ルーカンはやれやれと優しい目で見ていた。



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同盟を結ぶ前に

「同盟か…まず、その前にどんなヤツがいるかだな」

「…まだ、何も情報が無いと言いますか…」

 

ルーカンはチーズとワインを片手に悩んでいた。クラッカーも忘れていない。ルーカンの宝具は2つあるという少しイレギュラーな奴なのだが…まぁ、ワインを出すだけの宝具なので実質、戦闘向けは1つなのでフェアである。ギルガメッシュが聞いたら即座に気に入るだろう。「直(じき)の執事にしてやる」とか何とか言われスカウトするに違いない。

 

「パトロールでもしてみるか…?」

「そうですね…骨が折れると思うが…」

「まっ、地道にやるしか無いかなぁ」

 

ランサーはしめたと思い空からルーカンを捕らえようとしたがそうは行かない。ルーカンはスキル『濡れないワイン(ノーレイングラス)』でクッションし士道を弾き飛ばしランサーことクーフーリンの地面への衝撃を抑える。幸い周りには誰もおらずルーカンは秒で安堵し一歩、退いた。

 

「天空から察知するとは、中々じゃないか?」

「警備を舐めるな」

「舐めたら不味い不味い」

 

クーフーリンはフードを取り槍を構える。今回のランサーは一味違った。凄まじい火花を散らしていたクーフーリン。士道の目にはもう記憶として焼き付いていた。

 

「言っとくが、かなり強いからな俺は」

「はっ、戯れ言を自分で強いとかナルシストかな?」

 

ルーカンも武装し剣を握る。まだ、一段階の剣。士道は置いてけぼりだ。しかし、我に帰り当初の目的を思い出す。

 

「ストーープ!!!」

「「何だ!?」」

「セイバー、同盟の件はどうした??」

「…あっ」

 

「ランサーよ、武器を一旦降ろして頂きたい話がある」

「…なんだ、改まって…」

 

クーフーリンは言われた通りにやるのは不満だがルーカンの執事なりの丁寧な頼みに断れなかった。

 

「とりあえず、この聖なる戦争に脅威が感じられる。情報によるとキャスターだ。そのキャスターは一般人をさらい駆逐しそれを遊びと称しやっている。見過ごす訳にも行かない。あなたの戦力を借りて同盟を結びキャスターを討ち滅ぼしたいのだが、いかがでしょう??」

「一般人…だと?」

 

クーフーリンは驚愕の目をルーカンと士道に向ける。士道は頷いた。

 

「…その、情報は確かか??」

「あぁ、ほぼ間違いない。間違えたのならその槍で私刺すといい」

「そこまでの覚悟か良いだろう。口だけでは無いって所を見せてやろうか」

「大丈夫かよ」

 

士道はルーカンの覚悟に頭を掻く。よくもまぁ、そんなお覚悟を誓えるなと思う。

 

「そして、加えて近々この街を研究材料に使うらしいそうなると前代未聞の大惨事になる。キャスターの血祭りが始まろうとしている」

「クソっ、俺よりもやべぇ奴だな。そんなん、蹴散らす当然。一般人を巻き込むなんざ有り得ねえよ…よし、一先ず冷戦だ。同盟を結ぶ」

 

ルーカンは素に嬉しくなり腹からお礼を述べた。クーフーリンは笑う。こんなにもあっさりと行くもんだなと士道は口を開き驚きを表した。

…呪腕のハサンはそれを観察していた。余裕の表情で観察していた。



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革命
極秘調査隊『夜桜』


薮雨宛に吉報が届く。猟奇的殺人の現場から完全に拭き取られたと思っていた指紋が検出されていたのだ。もう1回検証しておいて良かったと鑑識は見落としはないと晴れ晴れした気持ちで提出。

 

「おぉ…!後は誰のかを調べれば」

「前科リスト、警察関係者には無いそうです」

「まぁ、ヒントはヒントだ懐に閉まっておこう」

 

と、解りやすいところに置く。これで少しは解りやすくなった。が、しかし誰の指紋か解らない。そんな時に謎の集団が現れた。

 

「なんだ???」

「お目にかかるのは初めてだろう。我々の名は『夜桜』極秘に任務する者だ。命令は絶対にしてもらうよって、その指紋は預からせて貰おう」

「夜桜…?まさか、ホントにいるとはな」

「薮雨さん、知ってるのか?」

 

異様な集団は警察組織なのかと疑うぐらいの異様さだ。だが、手帳をキチンと所持している。突然の登場にみんなびくついていた。

 

「あぁ…京都に現れるとは思わなかった…この夜桜っていう集団は警視庁の極秘捜査隊。たまにこうして表に出て協力を求めるっていう」

「たまに、偽物が来て情報を横取りするっていう猛者もいるが我々は本物だ」

 

先頭に立つ者はそう言い後方にいる者達は笑う。確かに、警察関係者なら偽造して警察手帳を出せば簡単に情報を横取り出来る。夜桜は簡単に作れるわけだが、でも今年は確か夜桜の警察手帳は黒ではなく桜色に染まったため簡単に入手できなくなりもう偽造は不可能になっていた。

 

「解った、とりあえず夜桜いるってことはこの猟奇的殺人は一般人の殺しでは無いって事だな??」

「あぁ、正解だ。馬鹿でも解る。よし、指紋は預かった!もう、この件からは遠のいてよし!!!」

 

と、言い残し夜桜は捜査一課から去っていった。足音が年季入っていて近寄れない。

 

「はぁ〜」

「よく、タメ口で行けたねぇ」

「圧に負けたく無かったからなぁ」

 

薮雨はヘトヘトに解けていた。奈津は薮雨の背中を摩る。

夜桜からの遠のき宣言から1週間後京都府上層部から猟奇的殺人事件のチームを完全解散宣言。次の仕事へと移行した。後は夜桜がやってくれるから安心しろと上層部は言う。

蚊帳の外状態になった薮雨と奈津達は次の作業へ取り掛かろうとしたがそうはならなかった。時間が止まったというかそんな類な感じで後味が少々悪い。更に言うと自分だけ話題に避けられている気分だった。クソッタレと薮雨は思う。

 

「なぁ、奈津どう思う?横取りされる気分は??」

「…まぁ、危険だと感じたから夜桜に回ったそんな感じじゃないのかな?だから仕方ないと…」

「仕方ないじゃない!!俺らはやっとここまで来たんだぞ!!と言ってもまだ犯人は決まらないが…だが、足掻いてやっとここまで…!」

「…お前の勝負心もここまでにしろ」

 

刑事巡査部長に肩を優しくポンと叩かれ拒否された。薮雨はクッと悔しがり別の仕事へと移行する。

 

 



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ランサーとセイバー

「キャスターを殺す、か」

 

クーフーリンは躊躇いもなく殺すという単語を発した。ルーカンはため息をした。

 

「にしてもよぉ…俺を期待し過ぎだぞ?」

「いや、道にたまたま会ったのがランサーだっただけで」

 

士道は言い終わると同時にクーフーリンは睨む。士道はちょっと後ずさった。

 

「まぁ、魑魅魍魎的なヤツを相手に俺を売るってなら相当お釣りが来るんじゃねぇかな??」

「…まぁ、相手は一般人を相手に殺す、虐殺行為をしている相手ですから容赦はしませんよ。ただただ許せないです」

 

ルーカンは拳を握りため息をした。士道に「幸せが逃げるぞ」と肩を叩かれたがまた、ため息をした。

 

「ふっ、まぁいい俺のこの槍でぶっぱなしてやるから安心しろ」

「足、震えてますよ」

「戯け!これは準備運動だ!!!」

 

士道はルーカンの指摘に笑う。これも後には敵同士となると少し苦い。

呪腕のハサンは得意の気配遮断で話を聞いていた。どれが最善策か…コンマ数秒で導き出す。呪腕のハサンは仮面の下で笑い(1度、ランサーを倒したのにも関わらず別のサーヴァントとして復活をしているのも含め)タイミングをまった。良好の。

 

『貴様らよ…私も仲間に入れてくれやしないか』

「っだれだっ!!?」

 

クーフーリンは足に摩擦が発生し手で地面を抑える。そんな技士道は出来ないとちょっと憧れてしまった。ルーカンは冷静に応じ剣を顕現させる。

 

「アサシンだ。驚くなかれ、私もそのキャスターってヤツを倒したいのだ。共闘してくれマスターからはもう許可は降り済みだから安心しろ」

「親子関係みてぇだなまるで…」

 

クーフーリンは呆れる。しかし、まさかのアサシンから共闘を申し込まれるとは夢にも思わなかった。の以前に夢をみていないのだが。

 

「共闘の間は…冷戦だ…マスターは不服だがなぁ…キャスター倒した直後に貴様らを叩くかもしれん」

「注意喚起そりゃどうも…けっ、異色の共闘だな…まぁ、作戦会議の続きと行こ…」

「私はマスターに用があるのででは…」

 

と、アサシンこと呪腕のハサンは目に見えぬ速さで姿を消した。士道にはもっと解らなかった。

 

「ちっ、自由行動な野郎だな。な?セイバーさんよ」

「全くです。集団行動というのを身につけるべき」

「はっはっ、アサシン相手に言うじゃねぇか!!セイバーからの説教かな??」

 

槍を野球のバットのように首で支え両手で覆った。表現しにくいが仕方ない。打開策はまだ何も思いついて無いし前衛後衛をまだ決めてないし数も解らない状態だ。こんな悠長に月を見ても良いのかと、ルーカンだけが思っていた。

そんなこんなしてるうちにも子供が犠牲になっているかもしれないのに。

 

「久々の餌!よろこべ!旦那ァ!聖杯を手に入れるのは近いぞ!!!」

「虎徹…なんとも頼もしいお方…涙が出てしまいます…」

 

キャスターこと、ジル・ド・レェ、ジルは虎徹の熱に感動を受けていた。同士と一緒に悲願を叶える事が出来るなんてなんて幸せな事なのだろうか。

 

「虎徹…」

「なんだ!?旦那!!」

「そろそろ、虎徹に見せたいものが…」

 

ゆっくりなトーンで言う。サンタになりきるみたいに。

 

「プレゼントかぁ!?」

「そう、川で見せたいものがあるので着いてきてください…体張って作ったモノを披露しますぅ…」

 

と、魔導書を片手に殺す寸止めの子供を置き去りにし虎徹も着いていく。そこには呻き声しか聞こえなくなっていた。虎徹のはしゃぎ声はもうここには無い。

入替りでやってきたのはライダーだった。

 

「耳を長くしてやってみれば!!!」

「どうした!ライダー!」

 

小野はトンネルの前で異臭がしたので鼻をつまみ後ずさる。

 

「それでいいのです…!下がってな!!」

「何する気だ!ライダー!あの声は人間だぞ!!」

「あなたにも聞こえてしまったか…」

「そりゃ、一応魔術師だからな」

 

鼻を高くし小野はライダーを見る。しかし、足は震えていた。全貌はライダーよりは見ていない。距離はかなり離れているのだから。なんで、キャッチボールが出来るのかと言うと小野の聴力強化とトンネルの響き強化の魔術で会話が出来る。ライダーはそれを容易く受け取る事ができるスキルを持っているのでトンネルの違和感な声は無く普通に会話が出来るのだ。

 

「とにかく!燃やして、ここ全体を無かったことにします!!」

「おっおう…任せたっ」

「あなたはやはり善人だ!!令呪を使って私を強制送還させるわけがなかろう!そうだろ!我が主!!!」

 

小野は鼻を擦り

 

「俺は別にこの件に関わりたくないだけだ。高く見ちゃ困る」

「はは、よし。燃やすぞ。小野は表に出てろ!」

「おうおう」

 

跳力で小野は軽々と地面を踏み台にし近くの高台に登る。

 

 

「『赤紙の守り手よ!出よ!出雲の血を引き継ぐもの!!神の御加護を拝借し獄炎を現す!!仏に誓い教えに守り!亡きものを浄土に!!!』ハァッ!!!」

 

と、ライダーが唱えた瞬間太陽並みの温度の炎が手品みたいに何も無いとこから燃え上がった。トンネルや排水口といった廃トンネルを人払いごと消滅するだろう。

 

「最後に私の我儘を聞いてください…仏様よ…トンネルをどうか復刻させてくれませんか?」

 

スキル『仏の顔も三度』。文字通り3度なので残りは2度になった。全部使い切り0の状態で懇願するとライダーは滅ぶ。



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王の杯

「綺礼、お前はいつも美味しそうに飲んでいるな」

「そうか?私はいつも通り普通だが??」

「普通じゃ、無いのよなのぉ?第3のランサー」

「ふっ、私には関係ない」

「とか、言っておいて貴様も飲んでるではないか」

 

イレギュラーのアーチャーことギルガメッシュ。ギルガメッシュは金髪が整い現代にも通用するようなジャージみたいな格好をしている。この数十年、現代に浸透していったらしい。言峰はため息混じりにワインを飲む。

 

「ここに、麻婆豆腐があれば愉悦…」

「でた、綺礼の愉悦よ…そこだけ口調が強い強い」

「ふっ、くだらない…」

「くだらないとはなんだ!ランサー!1度も麻婆豆腐を食したことなかろうに!!」

 

ランサーはワインを飲み干しツヤツヤした髪を払う。

 

「なんなら、ここ教会から出て現代にあったコーディネートで買い物に出掛け作りましょうか?」

「よせよせ、料理が出来るのか?貴様は」

 

ギルガメッシュはケタケタと笑う。嘲が入っていた。

 

「私を甘く見るな?この槍でひとつきだ」

「おー怖怖い。俺に勝てるとでも思って言ってんのか?」

「さぁ…さっきの質問だが私は料理は出来るプロかと言われたらそれは解らない」

「はっはっはっ、綺礼よ。これは外出許可まったなしじゃないか??」

 

勝手に話が進められたが言峰の失言でこうなったから仕方ない。ため息をし言峰は

「ランサー、買ってこい。しかし目立たない格好でな。だが、サーヴァントの匂いは残るからそこら辺は気をつけろ。弟子と同じ末路に辿らない事だけは祈る」

「はっ、私を誰だと思っての口か?それは辛口決定だな」

 

ランサーは瞬時に着替えた。ランサーの私服。これは流石のギルガメッシュもおぉと内心驚いた。最近の女子って感じだ。デニムにダメージジーンズでこの美人形。素晴らしいの一言だった。

 

「さっ、行ってくる財布も勿論あるからな」

「あぁ、気をつけるんだ」

「はっ、まるで親と子だな」

 

ランサーは笑い冬木教会をあとにした。

…ランサーはいつも言峰の食事に付き合わされていたというのはおかしいか、見ていたのだ。観察。彼は、麻婆豆腐を美味しそうに食っている。その姿は紳士そのものだとランサーは感じた。ギルガメッシュの教えで言峰綺礼の観察をしている。暇潰しの一つだ。しかし、ギルガメッシュの言う通りこの男は面白いにつきた。

 

「買ってきました」

「おぉ、早かったなではさっそく厨房へ案内する」

「はっ、英霊遣いが荒いな綺礼」

「あらじゃあ、アーチャーが料理してくれるのかしら?」

「戯け、この俺がするわけなかろう」

 

…実に説得力のある圧だった。そして、ランサー特製の麻婆豆腐は出来上がる。

 

「愉悦…」

 

ランサーの麻婆豆腐は美味かったらしい。ギルガメッシュもランサーを見て上出来だとおかわりを申請するほどだ。エルキドゥにも食わせてやりたいと思ったが首を振り気持ちよく否定し笑う。



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未遠川の海魔

「見せたいものって、川に?」

「えぇ、長年貯蓄していたモノをここに全て放り投げます…」

 

ジルは魔導書を開ながら川に入り込む。虎徹は真似をしようと思ったが止めにしておいた。

 

「さぁ、あなたに見せましょう!最高のCOOLを!!!」

 

妖しい光がフラッシュする。虎徹は眩しいのか手で防ぎ何とか耐える。午前2時。しかも平日の朝方にこんな光が起きたら嫌でも起きる。ギャラリーが続々と川の方に流れていく。見ようと言う精神がそうしているのだがやろうとしている人々はせいぜい15人だった。橋で見たりあるいは望遠鏡や携帯で見たりと様々だ。そして、光と共に現れたのは海魔と凄くでかい海魔とは程遠い何かの怪物。そこにその中にジルはおさまっていた。

 

「すげぇ…」

 

虎徹は退屈なんかもう、おさらばだなと軽々しく思い鑑賞に浸る。これならいずれ死体が出るだろう。そう考えた虎徹は一般人には到底思い付かないワクワク感で目をキラキラ輝いていた。

 

「よぉ、アンタもこの怪物鑑賞かい?」

「…まぁ、そんなとこ。すごいグロッキーだろ?」

「最高だな…」

 

なぜか、通りすがりの一般人と話があった。バイクで川を通り過ぎようと思った刹那、光がありなんだ?と見たらそこに怪物が現われる。なので、気になり土手にバイクを止め鑑賞しようと思ったら目を輝かせている若者(虎徹)が一人いたので話しかけた。今ここ。

 

「ビール、飲むか?」

「生憎、未成年なんだわ」

「んだよ、釣れねぇ」

「あ、ごまスティックは貰うわ」

「あいよ」

 

バイクのおっちゃんはごまスティックを虎徹に渡す。虎徹は嬉しそうに頬張った。おっちゃんは嬉しそうにしてんなとそんなにスティックが好きかと愛猫を見る目で虎徹を見る。召喚したのがこの虎徹とは知らずに。

セイバー、ランサーが駆けつけたのは半を過ぎてからだった。

 

「思ったよりお早い登場だな!」

 

クーフーリンは槍を回し構えの態勢を取る。

 

「まぁ、手間が省けたと思えばいいでしょう」

「なぁ、まさかアレと戦えと?俺を放り込むとか鬼設定ないよね?」

「まさか、私はそんな無茶させません!ランサーはどうか知らないが私で良かったですね!」

「命拾いしたな!おい!少年!」

 

ランサー、クーフーリンは冗談混じりに言い歯を輝かせた。士道はマジで?って、いう顔をする。

時間が経つにつれて慌ただしくなる未遠川。この光景は誰も見たことがない歪なものだった。紫という色が似合う光に川が包まれ海魔とでかい怪物はゆっくり前進する。士道は見守るなかセイバー、ルーカンとランサー、クーフーリンは海魔を蹴散らす、がなかなかこれも切っては復活しの繰り返しだった。

 

「ちっ、ちょこまかと」

「キリがない…」

 

柳洞清心はこの情報をランサーから聞きスクーターで川までひとっ飛び。

 

「なんだ!これは!!!」

「お前!危険だ!!なぜ!!!!」

 

士道はスクーターで来てわざわざ見物をしようとは度胸のあるやつだなと思ったが、あまりにも状況がアレなので撤退命令を出すが…

 

「ふっ、あんたも同類だろ?二重な意味で!この際名乗る!俺はランサーのマスターだっ!」

「…お前が、ランサーの…!?」

「あぁ、以後よろしく!」

 

海魔達を見物するためのパスポートを提示した清心は笑う。しかし、発狂と勘違いされちゃ困るので少し笑う程度で留まらせておいた。

 

「うちのランサーがお世話になってるようだな」

 

土手を(虎徹達とは違う位置の土手)綺麗に滑らせ着地。士道はおぉ、と漏らした。

 

「あっあぁ、そうだな。協力っていう形」

「じゃあ、一先ず冷戦だな」

 

士道は右手をチラッと見る。清心にも令呪があった。さっき見せられたが刹那的だったのでよく解らなかったが令呪のデザインが士道よりカッコイイものだと思った時なぜか悔しい思いに芽生えていた。



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未遠川の悪魔

「ライダー、あれは…」

「…妖怪、だろうか…?」

「いや、妖怪よりも倍でかいぞ…」

 

小野は息を呑む。望遠鏡で覗いてみる限り東京ドームの倍以上はあると確信できた。ライダーのこのこじんまりとした船では近づくのが精一杯で接近戦は不可能だろう。少し、1歩手前のとこまで来ているため紫の境界線が悔しくも綺麗に見えた。

 

「接近戦は無理だ!」

「誰が、接近戦しか出来ないと言ったかね??」

「あーいや、はやとちりはやとちり…?」

「どうした!?」

「この音、聞き覚えが…」

 

小野は耳を澄ます。空からだった。飛行機みたいないや、飛行機より小さな小柄な物。そう、戦闘機だった。

 

「おいおいおいおい!まずいぞ!?まさか、コレを迎撃するつもりで来たのか!?」

 

小野は焦り、船は揺れる。

 

「おい!酔うだろ!やめろ!!!」

「あっ、悪い!ライダーでも一般人が…!」

「あの距離では私でも注意喚起は不可能だ!!あの距離から聞くのはいけるが、言うのは無理だ!!」

「ちっくしょう!指くわえるしか!!」

「…負けないように応戦しよう!!『翔罰』っ!!!」

 

と、ライダーは唱えると海魔に綺麗なビームが直撃するが瞬時に復活した。

 

「…あれは…?F15-J…??なんで????」

 

一方、士道は戦闘機の音で名前を当てる事が出来るらしい。そろそろ、肉眼でも見える頃だった。

 

「なんだ、詳しいのか」

「…まぁ、いつの日か士郎とショーを見に行った事があってさ…でも、あれ自衛隊の戦闘機…まさか、あの怪物に突っ込む気か?」

「士郎?まぁ、良いって何っ!?あの戦闘機はこの怪物に突っ込むのか!?無茶だ!自殺しますと宣言してるようなものだろ!!何考えてる!それで迎撃できるならサーヴァントなんか必要ないのと当然だろっ!!」

 

清心は拳を握る。悔しさと、何も出来ないイライラだ。清心は缶けりの要領で地面を蹴り飛ばし地べたについた。

 

「はっはっ、これは一般人の犠牲者でるぞ~」

 

ついに、清心は現実逃避をし始める。

 

☆☆☆

 

「仰木さん、小林…!くそっ、待ってたぜ!!怪獣野郎!!俺達の日常を奪いやがって!!!!」

 

戦闘機の乗組員、青樹は待ち焦がれていた。未遠川の怪物の出現。何年か前に小林と仰木という者達が冬木に応援に駆けつけるも消息を絶ち何年以上も戻ってこないことから彼らは帰らぬ人になったのだろうと基地の人達は非公式に葬式をあげた。

その中で取り残された1番親しかった青樹は同期と涙を流し枯れるまで流した。

 

『おい!青樹っ!早まるな!!何年か前の末路と同じになるぞっ!待機命令を出したはずだ!! 』

「いや、待てませんよ…櫻井さん…もう、俺の俺達の戦いは始まったんです!全弾ぶち込みますよ!あの紫がかった怪物がなんだ!!仰木さんと小林を返せよ!!デカブツ!」

『おいっ!青樹!おっーー 』

 

通信を切断する。これはやっては行けない行為で始末書行きで櫻井の怖い説教が待っている、が青樹はそんなのは気にしなかった。

 

「一緒にトランプをした事!キャンプファイヤーをした事!数少ない女官にナンパして砕けた事!全部!ナシにしやがってぇ!!」

 

1機の戦闘機はジルの怪物の間近まで来た。

 

「報告通り…目が無数もある…そして、この不気味なーー」

 

感想を言い終わる前に青樹の戦闘機は飲み込まれまた、無かった事にされた。戦闘機を丸ごと飲み込まれる光景はライダーと小野とルーカンとクーフーリンと清心と士道に深く記憶に刻まれる。



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未遠川の妖魔

「飲み込んだ……だと……」

 

ついに一般人を巻き込んだという悔恨の念が周囲の空気でヒタヒタと伝わってくのが解る。

クーフーリンはオイオイと変な汗が滲み出ていた。はぁとため息し清心に次の作戦を伝える。

 

「おい、マスター」

「あっ、はい……」

「あのバケモンをもう、倒していいか」

「だが、勝機はないんだぞ!正気か!!」

「言葉遊びしてる暇なんかないぞ……」

 

ルーカンと士道は同時に頷いた。少しズレがあったが。清心は疲れきっている。今まで閑静なとこで過ごしていたのだから無理もないだろう。

クーフーリンは不敵な笑みをし宝具展開の準備をするためあの化け物に近づく。英霊だから出来る荒業。

 

「仕方ないですね、生物(なまもの)を直接食う様な危険な行為ですが……まぁ、あの者に続いて私も宝具を使いますか……」

「他にも使えるのか?」

「えぇ、勿論!」

 

彩りみどりだなと士道は息を呑んだ。それと同時に少し怒りが生じた。

 

「だったら最初に言ってくれよ……」

 

士道は脱力するように言う。ルーカンはランサー、クーフーリンに続いて宙に舞った。

 

「よぉ、お前もか。我ながら戦争なのに協力するとは恐ろしいものよ」

「仕方なく、ですよ。ランサー」

「ほほぉ、では前後打ちといこうか」

「えぇ、そうだ。そうしよう」

「そっちの方がロマンあるだろ?」

 

クーフーリンの変な拘りにルーカンは賛成。少し笑ってしまいバランスが崩れそうになった。クーフーリンは後ろに回りルーカンは前に。未だに紫色のオーラが毒々しく出ていて触れれば即死しそうな雰囲気。虎徹は未だに興奮していた。もう、周囲には危ないとさすがに野次馬はいないがバイクのおっちゃんはまだ虎徹と酒盛りをしていた。

 

「今何杯目?」

「見てなかったのか……5杯」

「ひゃ〜でも聖杯の器はまだ浅そうだ」

「……聖杯?まぁいい、そんな聖なる器があるならそこについで飲みたいね」

「ダメダメ、飲む用の器じゃないから」

「美術館にあるようなやつなのか?」

「そそ、そんな感じ」

 

虎徹はおっちゃんと談笑している。ニヤつきながら見ていると2人宙に浮いているのが視認出来た。

 

「ん?まさか、倒そうとしてる?アレを?」

「はっ、まさか。アレを倒すとか……生身の人間でか?」

「……おっちゃんは知らないようだけどアレ人間だけど人間じゃないよ」

 

 

虎徹は説明面倒いなと頭を掻く。おっちゃんはへぇと半ば無関心そうにビールを飲んでいる。ゴミはちゃんと袋に入れている律儀な人だ。

 

「宝具!刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)っ!!!」

「宝具!約束された勝利の剣(エクスカリバー)っ!!」

 

 



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未遠川の終魔

あぁ……あの一線の光は……芸術……あぁ、どこかで見たことある……

キャスターことジルは怪物の核から一筋の光が見えた。開いたとこから日光が当たったかのような光。今から光合成をするかのような準備をするようにジルは目を閉じた。自分の終焉は自分が知っていると言わんばかりに。

 

「おぉ!……ジャンヌ……っ!」

「ライダー、アレ!」

 

ライダー達は少し離れたとこで怪物を見ていた。終焉の光も。ランサーことクーフーリンはセイバーことルーカンの宝具展開する前に退避し安全地帯の空中に行く。

ライダーは2人が宝具展開する前に少し離れると小野に言い魔力で走った。

走ってる最中で宝具を見たのだ。あんなに公開していいのかと思うぐらい呆気なく宝具が飛び出た。まぁ仕方ないかと緊急事態だからと小野は自分の意見を染み込ませる。

ジルは消滅し川は元に戻っていた。前まで怪物がそこにいたなんて嘘みたいに。

 

『狙撃班、準備を』

「はっ!」

 

裏でコソコソとキャスターこと怪物が消滅したと同時に何者か達が動き出した。動いたと思えば建設中の建物から光が見える。それを最初に捉えたのは意外にも意外バイクのおっちゃんである。目を丸くしこっちに向かってくると察していた。

 

「いや〜凄い光で旦那が消えちゃったよ……」

「仕留めたんじゃないの……かっ!危ないっ!」

 

虎徹がハテナを浮かべる前におっちゃんは虎徹を庇うように左右の手を広げ壁を作る。

 

「ちょっあんた……何を……?」

「ふぇ……避けようかと思ったが、それじゃあ流れでどこに行くか解らないからなぁ……」

 

汗を垂らし跪いた。おっちゃんは腹を抑えつつも虎徹を狙っていたと察し事を伝える。

 

「防弾チョッキを通販で買っといて助かったよ。あんた、狙われてるよ」

「……まさか、助けてくれたのか?」

 

拍子で虎徹は地に尻もち。

 

『被疑者、仕留め損ねました』

「……ちっ、また撃て」

『……しかし、一般人が邪魔で……しかも、この銃弾を止めたようで』

「はぁ?!その距離で止るぅぅぅ???アホなん???」

 

驚く様が耳に響いたのでスナイパーは耳を抑える。そう言うのは冷静に言えと思ったが無理もない。

 

『……いったぁ……はぁ、一体なにもんなんでしょう

まっまぁ、でも彼あの少年がクロなんて思ってもないでしょうね』

「そうだな、情報が世間に漏れてないからなアイツが犯人だと言うことは……しかし、あの距離で察知して止めるか?普通、馬鹿だろ」

 

独り言が聞こえたので左耳で音楽を最大に掛けた。まぁすぐに作戦が聞こえたため下げため息しつつも次の作戦へ移行する。

 

「おい、どこへ行くつもりだ」

「なぁに、俺の親切心さ……」

 

綺麗な笑顔を歯型を見せたおっちゃんは無傷の虎徹を乗せて2人乗りでバイクを発進。もう、川には一般人などいない。

キャスターことジル・ド・レェはこの世から消滅し虎徹は聖杯戦争の参加権利を失った。



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最年少の聖杯戦争参加者について

冬木教会にて。言峰がある言葉を発した。

 

「今回の聖杯戦争の参加者は男性率が大いに高い」

「それは本当か綺礼よ」

 

言峰はギルガメッシュの言葉に静かに頷く。マスター名は隠さず、独自で作った資料をランサーことスカサハとギルガメッシュに渡した。ギルガメッシュはふむと得意気な笑みで2度3度見返す。確かに今回の聖杯戦争参加者に男しか存在しない。これは珍しい事だと言峰は学校の先生の如く熱弁。

 

「確かにこれは異例だしかも、中学生ぐらいの最年少の聖杯戦争参加者もいる」

「……幼少年か」

「貴様何を考えている」

「えっ?いっや!?」

 

スカサハは資料で照れた顔を隠しギルガメッシュの視線を遠ざけた。

 

「その、幼少年はかつて聖杯戦争に参加した人の息子だ」

 

ギルガメッシュは言峰の衝撃の告白を聞いた時資料を見、ほくそ笑む。

 

「それは愉快極まりない!綺礼の言葉で言うなら愉悦か!!それこそ、興奮してしまう!」

 

綺礼はふっと笑い、ギルガメッシュのプロスポーツ選手の名シーンを見るような輝かしい目で興奮を語った目を眺めていた。スカサハは一瞥したが鏡の自分を見ているようで嫌気がさしため息。興奮した内容は違えど同類なんだなと思うと絶望しかない。

 

「衛宮士郎……懐かしい響きだな」

 

言峰は小声で呟き上品に微笑んだ。

 

「あの『男達』は非常に不愉快な人類だ私に幸せなど与えてくれないような人達だ」

「そんな、相性が悪い男と再度面影だが見るかも知れんぞ?綺礼よ??」

「ふっ、それでも私は1度死んだ身。2度の失敗はしないさ」

 

と、赤いワインを飲みながら資料を眺め愉悦と発した。

 

「実に愉快な男よな、綺礼は」

 

ギルガメッシュはスカサハにそう囁く。ッ……と体を小さくし蹲った。スカサハらしくない。

そんな賑やかな冬木教会を後にしてキャスターことジルを討伐後の直後の話と後日談をお披露目したい。

 

「ククク、私が居なくてもどうにかなりましたな……」

 

アサシンことハサンは透明のまま協力するタイミングを狙っていた、が。呆気なく2人の宝具でキャスターが倒れたことを目の当たりにし笑うだけの傍観者になっていた。呆気ないとも思わず笑い飛ばし一掃された川を見、どこかへ消え去った。

ルーカンとクーフーリンは打ち解けているがこの2人が戦う……そんな事を考えていた士道と清心は少し複雑な気持ちで目を合わせていた。

 

「そんな難しい顔をするな!あんた!戦争ってのはこう言うものよ!一時冷戦ってな!」

 

クーフーリンは綺麗な歯型を見せルーカンの肩を叩く。困り顔だったが、少し笑っていた。まるで喧嘩後の友情を取り戻した顔をしている。



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聖杯戦争『約1週間経過』
ドッペルゲンガー


似たもの同士……では無く本人と本人がぶつかりあったらどうなるのか?その答えはただ1つ。消滅である。しかし、イレギュラーはある。この本人同士が英霊だった場合どうなるか消えるか消えないかは本人同士で決まる事になる。

 

「「俺が2人……?」」

 

キャスター討伐祝いが終わりランサーとマスター、清心は帰路途中。柳洞寺に後もうちょっとで着くと思った矢先事案は発生した。

今まで姿を現さなかったアーチャーが目の前に現れたのだ。

 

「よぉ、随分と俺似の英霊がいるものよ」

アーチャーは重そうな体を軽々と移動させる。ランサーとは異なった不気味な笑みを浮かべこれからの事を想像していた。

 

「お前、サーヴァント……」

「そうだ、人間。俺もサーヴァントだ。この際ややこしいから真名名乗っとくか?」

「そうだな、マスターも困惑しているようだし……だが、見た目的に真反対……」

 

ランサーが言い終える前にアーチャーは自慢の武器の槍でランサー目掛けて投げる。しかし、ランサーはアクロバットに避け槍がアーチャーに戻ってくるだけだった。

 

「反射能力いいね、クク。俺バーサーカーが良かったよ。もうちょっと強くなってたよなぁ……」

 

今回のバーサーカー枠を恨みながら話した。フードをとり構え直す。

 

「お前、マスターは?」

「は?言うわけねぇだろ?だが、ここの近くにはいないとだけ伝えておく」

 

クーフーリンはふっと笑い清心に離れとけと命令した。清心は従い上の道路から2人を眺める。

 

「俺の真名はクーフーリンオルタ」

「……驚いた、名前まで一緒たァ大したもんよ。こんな偶然……俺の真名はクーフーリンだ」

 

刹那、時が止まったかと思えば再度2人は口を開き

 

「「俺が2人……?」」

 

と、静かに同時に驚愕。

クーフーリンオルタは少し歯軋りし構える。クーフーリンは槍を回し構え直した。

 

「お前、そのムカデみたいな尻尾……ダサいな」

「……はっ、お前こそ耳についてるピアスみたいなもんダサいな。恥ずかしくてフード被ってるのかと思ったぜ?」

 

そして、また沈黙が蘇りーー

 

「「殺すっ!!!」」

 

なんとも呆れた理由(ホイッスル)で戦闘が始まった。

清心は大丈夫かよと片手で顔を隠す。

クーフーリンオルタはクーフーリンに向かって槍を再度投げつけるがクーフーリンは今度はその槍を手で掴む。攻撃パターンはお見通しだと言わんばかりの笑みでクーフーリンオルタの槍を戻した。クーフーリンオルタは舌打ちし受け取る。

 

「おいおい、アーチャーなのに弓はどぉしたぁ?」

「弓ならあるぞ……後ろになっ!」

 

クーフーリンオルタはニヤリとしクーフーリンは背後を見る。だが、間に合わずあの槍に似た形の矢の連撃を回避出来なかった。



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本物VS偽物

「どちらか本物か決着つけようじゃないか」

「言われなくても俺だ」

 

クーフーリンはニヤつきながら槍をクーフーリンオルタに向けて投げつける。しかし、その槍の成果は戻ってくるだけでクーフーリンオルタは避けられた。

クーフーリンオルタはニヤつきながら槍をどこからか具現し空中に40本ぐらいあるか。その槍達を同時に連撃する。残像の煌めくオレンジの光線が美しく見える。

クーフーリンは間一髪逃げ切った、槍を盾にし。

クーフーリンオルタはクーフーリンのフードを清心に渡すとこを見、そろそろ本気かとクーフーリンオルタは快感に浸る。

 

「お前は良いよな、産まれ故郷が解っててよぉ!」

 

クーフーリンオルタはやや八つ当たりの加減で槍を弓代わりにしクーフーリンの腹を狙うも避けられる。

 

「産まれ故郷だぁ?お前も俺と同じだ。同じだろ?だが、お前は偽物だ。それだけは覚えとけ」

「訳の解らねぇこと言ってんじゃねぇっ!」

 

クーフーリンオルタは的をクーフーリンの心臓に変更した。40本が50本になり激しさが増す。清心はフードを片手に息を呑むしかなかった。もしかしたらクーフーリンオルタの方が上かもしれないと。

 

「マスター、どうやら俺はここで宝具をまた使わなければならない。いいな?」

「あぁ、好きなように……」

 

清心はよっかかる余裕もなく手の甲にある令呪を見る。まだ3画ある。まだ。ここは引けと命令すればすんなりと撤退してくれるだろう。だが、感情までは操作出来ないのでこの後が問題だ。だからタイミングを計って令呪を使おうと思った。

 

「宝具っ!刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)っ!!」

「んじゃ、こっちも……宝具、抉り穿つ鏖殺の弓槍(ゲイ・ボルク)」

 

途端、槍は弓状の槍は煌めき心臓を貫く事を目標にし攻撃開始。クーフーリンオルタは本数勝負で勝つかと思ったが素直に槍が目の前に来たため

 

「貴様ァッ!」

 

と、叫び槍を目の前で具現させた。すると、クーフーリンの槍は止まり勢いは止まる。まるで時がそこだけ止まったかのような。

 

「っちっ、無駄な体力を使わせるな。貴様の命はないと思え」

「ランサー!戻れっ!無理だっ!令呪で命ずるっ!ランサー!今すぐ撤退せよ!!!!!!!」

 

クーフーリンオルタはフッ腰抜けがと嘲笑し数十本空中で留まっていた弓状の槍が消える。ランサーことクーフーリンは悔しそうな目をしているが懸命な判断だと清心を称賛。クーフーリンは透明人間のように消え去る。多分、いや確信的に拠点柳洞寺に戻ったのだろう。

 



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VSギルガメッシュ

「お前、いい判断だった」

「あっあぁ……ならいい」

 

クーフーリンはフードを被り両手をポッケに入れる。全体私服化したので違和感はあまりない。

清心は怒られると思ったがそんな事ないと空気で感じ取り安堵。クーフーリンはまっ、結果オーライだなと歯型を見せ笑う。

刹那、クーフーリンの顔が豹変した。鈍い音と共に空を見上げる。そう、アーチャー。ギルガメッシュが空中に腕を組んで孔雀の様に広げた金色の何本ものの凶器が待機していた。その内の1つがクーフーリンの背に刺さったのだ。

 

「ランサー!!」

「雑種め、どんな男かと思えばちっぽけな男よ」

 

清心は空を見上げ悔しそうに歯軋りする。クーフーリンは戦闘態勢に入るも弱まっていた。私服化を解除しフードを取る。

 

「もう、自害した方がいいんじゃないか?」

 

ギルガメッシュは鼻で笑いそろそろ金色の凶器をクーフーリンに投げつける。的確に。すると、クーフーリンは攻撃も出来ずに腹やら足やら腕やらに光り輝く武器が突き刺さっていった。

もう死の寸前。クーフーリンは清心に向かって

「逃げろぉぉぉおお!」

 

と、叫ぶ。清心は何も出来ない自分に握り拳をした。今更令呪を使っても無意味に等しい。

清心は背に響く血反吐音。目も充血し始めたクーフーリンは抵抗できないと思いつつ教会に逃げた。

 

「いいぞ、雑種は雑種らしく……な?」

 

ギルガメッシュは絶命するクーフーリンを見る。クーフーリンは金色と鮮やかな色が混ざった感じで消滅しこの世を去った。

 

「クソっ!ランサーすまない!」

 

清心は教会に逃げ込み颯爽とスカサハに土下座する。

もう、残るはスカサハしかいない。

 

「ギルガメッシュと戦った……か」

 

言峰はふっと笑い清心の方を見る。ウチの者がすまないと嘆く真似をしつつ。

言峰は新たな令呪を清心に託した。

 

「これが、最後だからな3度目の正直ってヤツだ」

「……あぁ、すまない……」

 

言峰は薄ら笑い腕を隠すように袖を直した。

スカサハはため息し2秒見つめたかと思うと口を開く。

 

「問おう、お主が私のマスターか?」

「あぁ、よろしく……お願いします……」

 

悔しそうな後悔の念が清心の心に刻まれ二度とこの思いをしないよう勝手に誓った。

 

「私になにか言うことはないかな?」

「え……?」

 

スカサハは私服姿を見せる。無論、ここにはギルガメッシュはいない。ギルガメッシュは教会に戻れば面倒な事になると察知しその辺をウロウロしている。

 

「似合ってますね……?」

「あぁ、お似合いだろ。自信作だってこの世で買った物だがな」

 

シンプルなファッションセンスだがスカサハにとっては気に入っているみたいだ。弟子がやられた事に関しては気にするなと逆に励まされなんか喉に小骨が挟まったようなそんな感覚を得た。



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謎の一般人

「お前は一体誰なんだよっ!!!」

「そんな慌てるな。慌てると毒がついてくるぞ」

 

バイクのおっちゃんは迷信めいた事を言ってくる。虎徹はその一言で馬鹿らしくなり一気に冷めた。謎のおっちゃんはごまスティックをストックしていたのかリュックから取り出しお前も食うか?と虎徹に渡す。虎徹は乗り気じゃないがどうも……とお礼を言い1個食べる。意外にも美味しくて止まらない。バイクのおっちゃんはその姿を見ていい感じに爽快に笑った。

 

「お菓子は休息。お菓子は可笑しくなれる食い物だ。たまにはこういうのもいいだろ?」

 

…確かに幸せな気分になれる。さっきまでの戦闘が嘘みたいだ。そこの記憶だけ夢の記憶の中に保管されてるみたいな感覚。ストンと何かが落ちて気分が良くなる。

 

「……あんたは何者」

「だから言ってるじゃないか、ただの一般人だって」

「聞いてないけど…」

 

はっはっはっ…とケラケラと笑っているが上品に見える。そこには人生の様々な徳を積んで歩んで来たのだろうなと感じる重みがある。まぁ、元兵隊であっても一般人で良いかと質問攻めはしないでいいかなと思ってしまうような笑顔。その笑顔は計算なのか、天然なのか。

 

「なんで、防弾チョッキなんか持ってんだよ…」

「…護身用だよ。この答えじゃ不満かな?」

「いや、それで良い」

 

そして、この場所。水滴が一定の感覚でポタポタと垂れてくる。意味深で連れてきたような感じ。だが、このおっちゃんは特に何も考えていない。シチュエーションも特に何も考えていない。天然でこの場所を選んだのだ。なんていう男だ。

 

「この際、俺が何者かはどーでもいい。お前さん、なんで狙われているんだ???というか、あの怪物はなんだぁ???」

「……ったく、ずりぃよな。フェアじゃねーけど……?!なんつーか、答えてもいっかてなってしまうような口調…俺はなぁ、救いようのない人殺しとか言ったら笑うか?逮捕するか?冗談だと言って笑い飛ばし流すか?」

「いいや、それでいい。その答えを待ってたんだ……」

 

なにっ!?と虎徹は不気味な笑顔にゾッとする。多分、誘拐犯のオッサンはこういう仮面を被ったような笑顔なのだろう。誘拐された事は無いがそういう光景が目に浮かぶ。

 

「おいおい、そんなに驚くなよ?そんなに怖がるなよ??俺はこの日常に感謝しているだけだ。確かに、俺の笑顔は怖いとよく言われるから気持ち解らならくもない」

 

何を言っているんだ……と虎徹は明らかに一般人ではないと察する。いや、元・非一般人で現・一般人なのかもしれない。謎が深まるばかりだ。

 

「はっは、んな事よりどら焼き食うか??」

 

また、不気味な笑顔をしバイクのおっちゃんはどら焼きを虎徹に渡した。どんなものが来るのか…警戒していたがそこら辺に売っているただのどら焼きだった。



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惑星

「やっと1人脱落…か」

 

沙嗣はピアノ専用の椅子に座り楽譜を見ながらそう言った。もう1、2週間経っているのにまだ1人しか脱落していない。あまりにも遅すぎる。1年かかりますと宣言されても納得してしまう。まさか、本当に1年かかってしまうのか??

 

「あまり、自分を環境を責めない事ですよ」

「あぁ、解ってるよ。清姫…」

 

清姫はフフッと微笑みスーッと姿を消す。沙嗣はふぅ、とため息をつき演奏し始めた。『木星』だ。この曲を弾けば心が落ち着く。ピアノを習い始めてからそれをやってきた。自然と浄化され嫌な事が無かった事になるような…錯覚..

 

「こんなもんかな」

 

沙嗣は、よしっと弾きながら思った。美しい。確かに音色は美しいが…どこか外れているそんな感じにも聞こえる。それは沙嗣が焦っているから?沙嗣の願いが塵になってしまうという不安や焦燥からなのかもしれない。本人は自覚が無いようだが。

 

いい汗をかきながらピアノを弾き終える。

 

「いい演奏ね」

「まだまだだよ」

 

もう、謙遜しちゃって…と秋菜は私服姿で牛乳を飲んでいる。風呂上がりなのだろう。牛乳を飲んでいるということは。なぜかこの家には丁寧にフルーツ牛乳が常備されている。それが物凄く美味しかったというのを覚えているため懐かしく微笑んだ。

 

「他の惑星も聞かせてよ」

「良いぞ。火星な」

 

拒否権は無いと冗談混じりに言う。なにそれと秋菜は軽く笑う。家中に火星が鳴り響いた。心地よい。この時間だけ聖杯戦争の事を忘れる事が出来る。

 

美しい。ただただそう思った。

 

☆☆☆

 

「嫌に静かね…」

 

清姫は透明化になりながら夜の警備をする。まぁ、ただ単に特定されていないだけというのもあるが聖杯戦争のせの字も無い。ここが本当に戦場なのか?疑ってしまう。ここは偽物で本物は別の場所でやっているのではないか??

 

「まぁ、安全なのはいい事なのでしょうけど…あまりにも…」

 

生暖かい風が吹き始めた。嫌な予感がする。

 

『誰』かが来る。時が動いた。そんな感じ…耳を澄ます。警戒に警戒を重ねる。まさか、逆にストーキングされていたとは…

 

「私はライダーです。話がしたい」

 

ライダー。清姫は首を傾げる。なんだその現代で浮いてそうな衣装は…と清姫は困惑したが自分も似たようなものだったので五十歩百歩という事で自己解決した。

 

「あらあら、私に話?確かに、月は綺麗ですけど…告白なら受け付けないわよ??もう心に決めている人がいるので」

「いやいや、そんな事はしませんよ…私はこう見えて紳士。あっ、変態紳士ではありません。普通の紳士です」

 

ライダーは微笑する。

 

「で?本題は…?」

「…本題。そうだね、2人で協力してアサシンを倒したい。マスターの命令だ。というか、マスターと決めた事だ」



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意外な協力者

ライダーは神出鬼没なアサシンを倒そうと話を投げてきた。マスターともう提出済みらしい。清姫は手際が良い事で…と敵ながら天晴れと内心思った。

 

「…で?アサシンは2人、それ以上で倒さなきゃいけないものなの?」

「あぁ、あいつは厄介だ。少し追っかけたがいなくなる。気配が消滅するのだろう」

 

清姫は数少ない情報でへぇ、照れ屋さんなのですね…と楽観的に考えた。ライダーは?と清姫のうっとり顔に疑問を抱きながら説明を再開する。

 

「そこで君だよ。君が必要なのさ。マスターと初期会議の時は誰でも良いんじゃないか?と話をしていたのだが…君は裏切らないとマスターが言っていたよ。一体、どんな自信があるのか……不思議不思議」

「そんな、私達を捨て駒みたいに…」

「いやいや、そんな事は無いよ!君みたいな有能な戦士を見つけた!素晴らしい日だと思わないか?」

「なんか、私そういうのついてけなーい…」

 

清姫はすっかりテンションが下がっていた。もう1人いるのならともかく2人でアサシンを倒すのか…ライダーがヘマをしそうで怖いのだ。賢そうに見えるが実は…って事を想像するとお茶漬けも通らなくなる。もう一度ため息をついてしまった。

 

1に清姫をそんな目で見られても困る。自分で言うのもなんだが呪いの塊。いつこっちが裏切るか解らない。いつ暴走するか解らない。なんでライダーのマスターは自分を選んだのか…そんな狂気に満ちている脳みそを覗いてみたいものだ。

 

「バーサーカーの君がいれば!百人力だと!!マスターが言っていたから間違いない!」

「…マスターマスターって、うるさいわね…あんたの考えは無いのかしら??」

「そっそれは…」

 

1分、沈黙。意外だった。考えているのか体が硬直している。能無し??まさか、こんな貴族みたいな格好をしている人が???眉を顰める。目を疑う。霧だと思っていた天気が実は晴れだったと思ってしまう。

 

「無いなら組めないわ。マスターの指示だけで動いてる人と…なんか、見た目の割にはヒョロね。ヒョロ」

「そんな事ないっ!私には私なりの考えがあるっ!!」

 

急に強気になる。へぇ…と清姫はニヤリとした。内心、楽しんでいる。そんな予定じゃ無かったが聞こうじゃないかと清姫はベンチに上品に座った。

 

「考え、ね」

「私はあのめんどくさいアサシンを倒したい!だが、あなたのバーサーカーの力があればっ!!百、いや!私の言葉で表せば1兆越え力!もう、相手は怯んで動けなくなるでしょう!!マスターと同じ考えになった……!ただそれだけのことですっ!」

「へぇ、嫌いじゃないわ。そういうの。正直でよろしい!!好きになりそう…まぁ冗談はさておき……私も熱くなってごめんなさいね。あなたの作戦、飲むわ」

 

 



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