戦姫絶唱シンフォギア 罪人となった装者 (ぬヰ)
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プロローグ

同時進行していきますよろしくお願いします。


「師匠……今なんて………」

 

司令室に集められた8人の装者達は司令の言葉に言葉を失った。

 

「我々『S.O.N.G.』Squad of Nexus Guardiansは……解散となった……」

 

 

この通達が司令の口から発せられた時、魔法少女事変の事柄が落ち着いたと思った矢先だった。

錬金術師、キャロルにより日本や他の国の建造物、土地などが破壊された。

この件は国が何とかしてくれるという話だったが、全てここS.O.N.G.に責任を負わされた。

風鳴弦十郎はなんとかして説得しようと試みるが人が変わったように国の人物は見て見ぬ振りをした。

そして下された責任とは、、、、

 

 

 

 

 

…解散

 

 

だった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「何でいきなりS.O.N.G.に責任が回ったデスかね…?」

 

学校帰りの切歌、調、クリス、響、未来の5人はゆっくりと歩いていたところで切歌が口を開いた。

 

「おっさん、かなり説得してくれてたんだけどな、国が受けてくれるんじゃなかったのかよ…」

 

「国が放棄したのかな」

 

「でも響、それだとなんでS.O.N.G.に全て投げつけられるんだろう」

 

「S.O.N.G.はかなり国にとっても有能な団体だったはずなのに……」

 

色々考えてみるが5人には到底真実にたどり着くことは出来なかった。

 

『速報です』

 

歩いていると街の建物に映るテレビからニュースが流れた。

 

『近年、このような事件が多数起こっておりますが……』

 

画面には魔法少女事変の時の動画が流れていた。

みんな立ち止まり画面を見つめ始める。

 

『そこには必ず不審な格好をした人達が現れているとの情報が多数来ております』

 

映っていたのは確かにシンフォギアを纏った響だった。

 

「私……?」

 

『国はこの者達が事を起こしていると判断し、全国から特殊部隊の派遣を準備しているとの事です。不審な姿を見かけた方はこの番号までお知らせください。以上速報でした』

 

「なん……デスか……これ……」

 

「まるで私達が罪人見たいな……」

 

切歌と調はニュースを見て唖然としていた。

 

「待てッ!国はあたし達の存在を知ってるだろ!!なんでこんな…!」

 

「響、大丈夫…?」

 

「戻ろう……なにか嫌な予感がする…」

 

響がそう呟くと5人は急いでS.O.N.G.の本部へ向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

本部へたどり着いた装者5人は急いで司令室へと走り、扉を開ける。

 

「師匠!これは一体!!」

「どーなってやがるッ!!」

「デスデス!!」

 

入ると同時に響、クリス、切歌は弦十郎、司令に理由を求めた。

 

「少し落ち着けお前達…」

 

その場に居た翼が低い声で3人を黙らせる。

 

「不味いことになったわ…」

 

マリアが口を開く。

その隣には翼、奏が立っていた。

 

「よく聞けお前ら……」

 

珍しく風鳴弦十郎は唇を噛み締めながら話を続ける。

 

「お前達8人は、逃げろ…」

 

「え…?どういうこと…」

 

調は理解出来ずに詳しく説明を要求した。

 

「すぐに国がッ!いや、世界が動き始めるッ!お前達8人を殺しに…」

 

その場にいた8人の装者と司令、エルフナインの場が凍り付いたように固まる。

 

「殺しって…私達何もやってないデスよ!?」

 

「確かにお前達や勿論俺も…何も起こしてなんかいない……だが、国がそう下しやがったッ!」

 

司令は横にあった柱に思いっきり拳を叩きつけた。

その柱は粉々に砕け、足元へと転がる。

 

「待てッ!日本にとってS.O.N.G.はかなり重要な戦力のある団体だったろ!?それは国だって分かってるはずだ!!なのに何で…!」

 

「国が決めた事だ……今更どうすることも出来ない……」

 

誰の返事も待たずに司令は話を続ける。

 

「お前達は緒川と一緒に逃げろ、誰にも見つからないところに…いずれ世界は戦争を起こす…」

 

「戦争……だと…?」

 

奏は冷静では居たが何処か落ち着かない様子だった。

その途端…

 

ドォォォンッ!!

 

と地面が揺れるほどの衝撃が走った。

 

「なに!?」

 

声を上げたのは未来だった。

響は「捕まって!」と未来の手を握り、揺れを耐える。

 

「もたもたするなッ!既に国が動きだしたッ!緒川と一緒にここを脱出しろッ!」

 

司令は未だかつて無い程に叫び、皆を誘導させた。

 

「し、師匠は…!?」

 

「俺も後から追いかける、俺はここの責任者だ。最期の時は俺が居なくてはならない」

 

「分かりました…絶対追いついて来てくださいね!!」

 

司令は微かに首を縦に振る。

 

8人の装者は裏口から外に出る。

そこには緒川さんが車の前に居た。

 

「早く!車に乗って!」

 

緒川さんの指示で8人の装者と一緒に逃げてきたエルフナインは車へ乗る。

8人とエルフナインが乗ったことを確認した緒川さんは全開にアクセルを踏み、車を発進させた。

しかし、後ろから何台か車が追いかけてきていた。

 

「クソッ!しつこい奴が!!」

 

クリスがシンフォギアを纏い攻撃しようとした。

 

「行けません!!クリスさん!」

 

緒川さんが叫ぶ。

 

「何でだよ!!」

 

「人を殺しては行けません!!それこそ本当の罪人になってしまいますッ!!」

 

「じゃあどーすりゃあいいんだよ!!」

 

シンフォギアを解除したクリスが叫ぶ。

 

「逃げましょう、なるべく遠くへ……」

 

 

そして、緒川さんと8人の装者、エルフナインは遠くへ遠くへ逃げた……

 

 

 




ご覧頂きありがとうございます!
この話は奏さんが生きている、未来さんがシンフォギアを纏えるという設定で話が進んでいきます。ご理解頂けると幸いです。
こちらも同様不定期更新です。m(_ _)m


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【第1章】特殊部隊と装者達
【1話】逃げ場所のない世界


こちらは一話となっています。


「おい!緒川の兄ちゃん!どこまで逃げるつもりだ!このままじゃ追いつかれるぞ!」

 

前、真ん中、後ろに座席があり、

助手席にマリア、真ん中は左から響未来奏、後ろは左からクリス切歌調と座り運転席の後ろにいた奏が叫ぶ一歩手前の声で緒川さんに問いかける。

 

「とにかくこの場は熊本県へ逃げましょう!!」

 

「何故そこで熊本ッ!?」

 

「この際どこでもいい!追いつかれなけりゃ良いんだよ!!」

 

クリスが手っ取り早く話をまとめる。

 

「緒川さん!翼さんが…」

 

未来の膝の上に乗っていたエルフナインが右の窓を指しながら言う。

そこにはバイクに乗った翼が近づいていた。

緒川さんは窓を開けると翼に目的地を伝えると翼は車から離れて並行して進む。

 

「これから……どーなるデスかね……」

 

「大丈夫、私たちが何もやっていないことを証明すれば」

 

切歌の膝に調が手を置き、切歌慰めた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

追手を高速道路のパーキングエリアなどを使って上手く撒いた後、熊本県の田舎町へと到着した。

緒川さんは田舎町の近くの山の麓まで行くとそこには使われていない小屋のような建物があった。

 

「とりあえず、ここに見を潜めましょう」

 

車から降りた装者はそれぞれ浮かない顔をしていた。

 

「おや、旅人さんかい?」

 

静かな空間に1つの音が鳴り響く。

みんなは声がした方を向くとそこには農家のおばあちゃんがいた。

 

「大勢なこと、楽しそうだねぇ」

 

「え、いや、その」

 

おばあちゃんは調の近くに寄り、あるものを渡してくれた。

 

「みんなで食べなさいな、それじゃあね」

 

調はトマトや色んな野菜が沢山入った籠を受け取り、そのままキョトンとしていた。

 

「もしかして、ここにはまだ伝わってない…?」

 

エルフナインが呟く。

 

「とりあえず、小屋に入りましょう。追いついて来る可能性もありますし」

 

緒川さんの言う通りに装者達は小屋へ入り、調はキッチンのような場所に籠を置いてみんなのいる場所に行く。

 

「とりあえずここは一旦身を潜めましょう」

 

「それが最善策だね…」

 

未来が小屋の扉を閉めながら言う。

 

ゴゴゴゴ…

 

といきなり奇妙な音が近づいてくる。

 

「なんデスか…!?」

 

切歌が窓から除くと山から追手が現れた。

 

「撒いてねぇじゃん…」

 

クリスがそう呟くと逃げるために装者達は後ずさる。

山からは3台の車が出てきて、小屋の前で止まった。

中からは特殊部隊であろう人達が出てきて銃を構えていた。

 

「どうしたら…」

 

響がか弱く言うと、1人が立ち上がる。

 

「数えて15~20ぐらいか…」

 

それは奏だった。

奏は窓から見える範囲で敵の人数を数える。

そして思いっきり深呼吸をした後残りの装者に告げる。

 

「犯罪者は、アタシだけでいい」

 

そう言うと奏は扉を開け、特殊部隊の元へ突っ込む。

 

「待てッ!奏ぇぇ!!」

 

翼が飛び出した奏を追いかけようと出ようとするが緒川さんに止められてしまう。

 

「ーCroitzal ronzell Gungnir zizzl」

 

飛び出した奏はシンフォギアを纏い、1人で突っ走る。

 

「と、止まれッ!!止まっ……ぐはッ!!」

 

奏は槍を特殊部隊の1人に目掛けて突いた。

槍の先端には血が付着し、槍を抜くと血飛沫が飛び散る。

 

「奏さん……!」

 

響が声を殺して叫ぶ。

奏はこのままでは皆が捕まってしまうと考え、1人だけ本当の罪人になる決心をしたのだ。

 

次々と銃を持った人を確実に貫いていく。

遂に残り5人ぐらいまでになると奏のシンフォギアには返り血が沢山付着していた。

 

5人まとめて始末しようとした奏だが、この5人だけは他の人と違うオーラを感じ取り、容易に動くことが出来なかった。

 

「やぁ、どうも。シンフォギア装者さん」

 

「…ッ!!」

 

残り5人の中のリーダーであろう人が顔全体を隠していたマスクを取り、顔を晒す。

そのリーダーは腰に刀の様なものをぶら下げていていた。

 

「僕はミアと申します。以後お見知り置きを…」

 

「お前達の狙いはなんだ…」

 

奏が警戒しながらも問う。

 

「僕達はあなた達の殲滅です。シンフォギア装者の……ね」

 

「殲滅……国からの派遣か…」

 

「まあ、そんなところです。他の4人もそうですけど、僕達は特殊部隊。つまり特殊な能力、訓練を成し遂げてきた人達の中でも優秀なトップ5です。正直、今日で終わらせるつもりなので」

 

「やれるものならやって見るんだな、生身の人間が」

 

奏は昔から刀相手の特訓を飽きるほどやっていた、翼と……

つまり、奏はギアで強化された自分に負けるという文字は無かった。

 

「やるからには本気で参りますので………ッ!」

 

「え……?」

 

気づいた時にはミアという人物は真横へと移動していて刀を振り下ろした。

ギリギリ受け止めた奏は体制を立て直すために距離を取る。

 

「へぇ、流石シンフォギア…普通の人間とは訳が違う…」

 

「お前もビックリするぐらいつえぇな……」

 

「フフ、何せ僕は特殊部隊のリーダーなので、そのくらいは出来ませんと」

 

奏はニヤリと笑い、槍を自由自在に操り始める。

あらゆる箇所へと攻撃を仕掛けるがミアはそれを全て見切っているかのように全て避けて見せた。

 

「無闇に突っ走っても無駄なんだよ…?」

 

そう言うとミアは刀の持ち手の部分で奏の腹部を突く。

 

「ぐわぁっ……」

 

周りからは軽く突いたようにしか見えなかったが奏は後方へと吹き飛ばされてしまった。

 

「奏ッ!!」

 

「ダメです!翼さん!!貴方まで人殺しをするつもりですか!!」

 

「クソッ!!奏がピンチなのに……!!」

 

森の木にぶつかった奏は腹部を抑えながら立ち上がる。

 

「へぇー、なかなかしぶといもんなんだシンフォギアって」

 

「クソ……ハハ、これはまずいな……」

 

「格の違いってやつだね、君はまだ僕には叶わない」

 

 

 

「ほざいてろッ!三下ァァッ!!」

 

ミアが刀に手を伸ばした時、小屋の屋根にシンフォギア姿のクリスが全弾発射していた。

 

「ッ!!いつの間にクリスさんまで!!」

 

翼を止めるのに必死だった緒川さんはクリスが抜け出したことに気付いていなかった。

 

「君たちは本当に楽しいね、こんなんで僕を止めようだなんて…」

 

ミアは刀を抜き、構える。

クリスの弾はミアに向かって一直線に飛んでくる。

 

しかし、次の瞬間ミアは高速で刀を振りかざし始めた。

その行動に奏もクリスも驚きを隠せていなかった。

なぜならミアに当たるであろう弾を刀で全て切り落としてしまったからだ。

 

「嘘だろ……こんな…」

 

クリスは予想以上のミアの強さに足が震えるほどだった。

少し時間が経つとミアの額から一滴の血が滴り始めた。

 

「おっと全部は弾けなかったか、それとも斬った時の破片かな?」

 

態度を全然変えないミアが恐ろしくて2人ともガラ空きの背中に攻撃を仕掛けることも出来なかった。

 

「今日はここら辺で帰るとするよ、また来るからね!」

 

そう言うと残りの4人を連れて、車で遠くへ行ってしまった。

 

「奏さんッ!クリスさんッ!!」

 

エルフナインが2人に駆け寄る。

後からみんなも来る。

 

「冗談じゃねぇ……あんなの、どーすりゃあ…」

 

クリスはミアの強さに身を震わせていた。

 

「あのクリス先輩が…」

「怖がるほどデスか…」

 

エルフナインは奏とクリスを小屋まで連れていき、メディカルチェックをする事にした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ただいま戻りました」

 

「あぁ、偵察はどうだったかな?」

 

「そうですね、案の定僕達5人以外は全員死んでしまいましたね」

 

「そうか、それで1人ぐらいは殺せたか?」

 

「何ですかー?、偵察って言われたんで殺してないですよー」

 

「まあいい、存在を知らせに行かせた迄だ」

 

「でしょうねー」

 

「じゃあ次に向けて万全な状態にするように」

 

「了解しましたー」

 

ミアと話していた男が部屋から出るとミアは呟く。

 

「まぁ、最初はコイツからかな」

 

机に座ったミアは1枚の写真を見つめていた。

 

そこに写っていたのは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小日向未来

 

 

 

 




ご覧頂きありがとうございました!
今回はオリジナルキャラクターの『ミア』という少年を出してみました。
少年ですよ、少年。
他の4人も名前が出てきますし、最後話していた男も後後出していくつもりです。
誤字脱字などありましたらコメントよろしくお願いします。


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【2話】襲撃再び

この話は2話となっております。


「クソッタレが!!」

 

奏は突如現れたミアという少年に完全敗北し、悔しさのあまり誰もいない森で八つ当たりをしていた。

 

「奏…さん、大丈夫ですか……?」

 

奏は誰かいる事に気付きその声の方を向く。

そこには心配そうに奏を見つめる小日向未来の姿があった。

 

「はっ、シンフォギア纏っているアタシ達が纏っていないやつにボコボコにされたんだ。大丈夫な訳あるか」

 

「そう、ですよね…でも、きっと次は……!万全な状態で望めば必ず……」

 

「それは無いな」

 

「えっ……」

 

「アイツの強さは人間を超えている。アタシ達が勝てる相手じゃない」

 

「どうして…諦めるんですか……!?」

 

「シンフォギアを纏うことを嫌っているお前には分からねぇよ!!」

 

奏は歯を食いしばりながら叫ぶ。

未来は装者でありながらシンフォギアを纏うことを嫌っている。

そのせいで誰かがまた傷付くなら未来はシンフォギアを纏わないと言い続けていた。

 

「そぅ、そろそろ調ちゃんとマリアさんがご飯を作ってくれる時間だから……戻ってきてね」

 

未来はそう言うと奏の元から離れた。

 

「クソっなんでアタシはいつもこうなんだ……」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ただいま」

 

未来が小屋に戻るとそこには調とマリアが作った料理のいくつかがキッチンに並んでいた。

そして切歌と響が料理を運んでいて、翼はテーブルを綺麗に吹いていた。

 

「小日向か、奏の様子は…?」

 

「ダメでした、どうやら相当ショックだったみたいで…」

 

「クリス先輩も帰ってこないデス」

 

その瞬間小屋の扉が開き、外からクリスの姿が現れた。

 

「クリスちゃん!」

 

響が安心して名を叫ぶがクリスは元気が無い様子で何も言わずに椅子へ座った。

 

「どうした、雪音らしくないぞ」

 

「あぁ、すまねぇ。どうしたらアイツらに勝てる、いや、同等に戦えるのかを考えて色々行ってみたんだが、よく分からなかった」

 

「まぁ、焦りすぎね。もし3人で行ったら?もし未来と響が一緒に戦ったら?切歌と調、翼と奏でユニゾンしたら?色々可能性はあるわ」

 

マリアが切歌と響の手伝いをしながら可能性を何個か出す。

そして、テーブルに調とマリアの料理が並び、奏を抜いた9人は奏の分を残しながら料理を平らげた。

 

「どうしたの?未来」

 

食べ終わると響は何か考えている未来に問いかけてくる。

 

「あ、ごめん。少し考え事を…」

 

「どんなこと?」

 

「奏さんにシンフォギアを纏うことを嫌っているお前には分からねぇよって言われちゃって…それで…」

 

「奏さんにそんな事を…」

 

響が未来を心配して呟く。

 

「ダメだね私って、装者でありながら戦うことを嫌ってる…」

 

「そんな事ないよ、未来はみんなの支えになってる存在だよ。きっと未来が居なかったらみんなこんなに落ち着いていない。未来がいるからみんな少し安心出来るんだよ」

 

「それだといいんだけど…」

 

食器洗いは翼が引き受け、その食器を拭くのをマリアがやる。

調と切歌はテーブルを拭き、クリス、響、未来は外の見回りを担当した。

相変わらず奏は帰ってくる様子は無い。

 

「おい!お前ら!!」

 

クリスが小さい声で叫びながら手招きをする。

何事かと響と未来がクリスの元へ向かうと、村の外に見覚えのある車がある事に気づいた。

 

「アレって…」

 

未来が呟く。

 

「恐らくあの連中だろうな」

 

「でも4人しか居ないような…」

 

響が言うと3人はミアという人物を探した。

しかし、車の中にはミアの後ろにいたであろう4人しか乗っていなかった。

 

「あいつは居ないのか……?」

 

「もしかしたら1人だけ別なところに居るのかも…」

 

 

 

 

「正解」

 

未来が言った途端後ろから鳥肌が立つような声が聞こえた。

 

「お前はッ!」

 

「ども、ミアです」

 

「未来ッ!下がっててッ!」

 

未来の前に響とクリスが立つ。

 

「コレは罠だったの…?」

 

「うん、そうだよ。君たちを呼び寄せるためのわっかりやすい罠!」

 

「ねぇ、何故君たちは私達を襲うの?装者を殲滅って言ったけれどそうされる覚えは私達にはない、誰かに命令されてるの?」

 

「うーん、命令か…そうだね、僕達はただ命令で動いてるに過ぎない」

 

「なら!話し合う事も出来るはずだよ!!」

 

「それは難しいよ、僕達は話し合うって言う能力を持っていない。力しか求めてこなかったんだよ」

 

「でも…!」

 

「生憎今日は君達には用はない、用があるのは……」

 

ミアはゆっくりと未来の顔を見る。

 

「ダメ!未来には触れさせない!!」

 

響はミアの目線を追って未来をねらっていることに気づくと手を広げて未来を守る。

 

「うーん、君達には手を出すつもりはないんだよ、痛い目合いたくないなら黙っててくれないかなー」

 

しかし、クリス、響共に動こうとしない。

それどころか、シンフォギアを纏う。

ミアはため息を付き

 

「仕方ないなー」

 

と言う。

その瞬間ミアはクリスの腹部に弾丸のような拳を喰らわせた。

 

「がッ………!!」

 

クリスは声に出すことも出来ずにその場に崩れ落ちる。

 

「クリスちゃんッ!」

 

響が叫ぶがクリスは反応しない。

クリスの心配をしていると今度は響が狙われた。

 

「オラッ!」

 

ミアが声を上げて殴りかかってくる。

響はこれを両手でなんとか受け止め、その掴んだ拳を引っ張る。

その影響でミアの体は響に寄る。

そして響はミアに全力の拳を喰らわせた。

響の拳はミアの腹部へ当たり、ミアは後ろへ飛ばされる。

 

「ってて、今のは素直に痛かったな…」

 

しかし、吹き飛ばされたミアはすぐ様起き上がり、体勢を立て直した。

そしてミアはまた響との距離を詰める。

響は同じようにミアに殴り掛かった。

 

「残念、こっちだよー?」

 

しかし、今度は響の拳はミアに当たるどころか響が喰らっていた。

 

「グハ………ッ!」

 

確かにミアを捉えて出した拳だが、ミアは響の真後ろに居た。

その後、ミアは響の死角へ周り楽しむように響を殴り続ける。

 

「ほらほら、どうした?やっぱり所詮シンフォギアなんてこのくらいなのかなぁ?」

 

ミアの猛攻撃に耐えられなくなった響は地面に倒れ込んでしまう。

 

「まだ……まだだ……!」

 

「あー、もういいや。どうせ動けないだろうし、本編と行こうか」

 

「ダメだ!未来には…!!」

 

「んもー、うるさいなー。雑魚は黙ってろって!!」

 

ミアは響の口を封じるために倒れている響を蹴り飛ばした。

 

「ぐぁああ……!!」

 

響は地面に叩きつけられ、やがて動かなくなってしまった。

 

「響ィィー!!!」

 

未来が叫ぶものの響は動かなかった。

 

「響……」

 

未来は耐えられずに涙を流してしまった。

 

「いいねぇ、友情ってやつかな?」

 

「よくも、、よくも響を……ッ!!」

 

未来は決意したのか、ペンダントを手に持つ。

 

「ーRei shen shou jing rei zizzl」

 

シンフォギアを纏うことを嫌っていた未来が響を気絶までさせたミアに怒りを覚え、シェンショウジンを纏った。

 

「おぉ、やっと来たねぇ。御手並み拝見と行こうか!!」

 

 

 




ご覧頂きありがとうございます!
今回は未来さんの覚醒(?)をさせてみました。
次回は未来さんとミアの対決となります。
少し内容薄いです、すみません。


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【3話】居場所

この話は3話となっております!


「へぇーこれがシェンショウジンってやつかー」

 

ミアはシンフォギアを纏った未来の姿を見て感心していた。

 

「はぁぁぁッ!」

 

未来はミアに向かって光線を放つと土埃が舞いミアを視界を遮った。

 

「姿を消して隙を突く作戦かな…?」

 

ミアは何処から来てもいいように精神を研ぎ澄ます。

しかし、一向に姿を表すことは無く土埃が消えた。

辺りを見渡すとその場には未来、響、クリスの姿はどこにも無かった。

 

「クククッ…面白いねぇ…僕から逃げるなんていい度胸だ……」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「はぁ…はぁ…」

 

未来は響とクリスを両手を上手く使い抱え、出来るだけミアから離れようと必死に走る。

 

「………未来…?」

 

気が付いた響は未来に抱え込まれていることに気付き驚いていた。

 

「今は出来るだけ遠くへ行かないと……」

 

その途端、ドォォンッ!と背後から轟音が鳴り響いた。

そこからはミアが追いかけてきていた。

 

「見つけたッ!!」

 

「クッ…これでも見つかるか……」

 

未来はボロボロになった響と未だに気絶しているクリスを抱えながら懸命にミアから逃げる。

 

「これで3人共吹き飛べぇーッ!」

 

ミアが未来に向かって殴り掛かる。

その時…

 

「オラアァァッ!!!!!」

 

1人の少女が未来とミアの間に入り込み、ミアの顔面に強烈なパンチを叩き込んだ。

 

「グハァッ!」

 

ミアは不意打ちに対応出来ずに後ろへ後ずさる。

未来は足を止め、その少女に目線を向ける。

オレンジ髪でロング、手には槍を持ったシンフォギア装者。

そこには天羽 奏、ガングニールの装者が立っていた。

 

「奏さんっ!」

 

「さっきは悪ぃな、あんな酷いこと言っちまって」

 

「そんなことより……!」

 

「あんた達は安全な所に居るかそのまま仮拠点に戻るかどっちかにしろ、ここはアタシが何とかする」

 

未来は奏を置いて戻るなんて到底出来ないため、クリスと響を岩の陰に寝かせ、未来はシンフォギアを解除し、奏を見届けた。

 

「こないだはよくもまあボコボコにしてくれたなぁッ!」

 

「これはこれは、先日の」

 

「今度はアタシがお前をボコボコにする番だッ!」

 

「それが出来るなら…ねッ!!」

 

ミアはそう言うと物凄い速さで奏との距離を詰める。

前の奏ならここで対応出来ずにミアの思うがままにされていた、しかし今回の奏はしっかりとミアの攻撃を見切り、対応していた。

 

「お前とは長戦にしたくない…だからもう本気で行くぞッ!!」

 

「フフ…面白い、かかって来なよ。どうせ君も後から殺す予定だし、手間が省けるだけだ」

 

ミアがそう言うと奏はペンダントに手を近づける。

 

「あれは……まさか……」

 

意識が朦朧としているが、いつの間にか起き上がっていた響が奏の姿を見て何かを察した。

 

「イグナイトモジュール、抜剣ッ!!」

 

奏の周りに赤黒いオーラが纏い始め、黒いシンフォギア。イグナイト状態へと奏は変身した。

 

「へぇ、それが噂のイグナイトってやつか。でも、僕には敵じゃない…イグナイトの存在を知った僕達はイグナイトに向けての特訓すらも乗り越えてきている」

 

「やってみねぇとわからねぇぞ…ッ!」

 

奏はミアに向かって走り出す。

そして槍を自由自在振り回すが、ミアにはその攻撃が一つも当たらない。

 

「イグナイトも大したことないね」

 

ミアがそう言うと奏の腹部に蹴りを喰らわす。

グハッと奏は唸るが、膝を着くことなく耐えきった。

 

「こっからが本番だ…」

 

奏はそう言うがミアにはピンと来ていなかった。

 

「イグナイトモジュール、ダブル抜剣ッ!!」

 

奏はペンダントをカチカチッと2回押すとイグナイトであることは間違いないが、ダブル抜剣なため雰囲気がガラッと変わっていた。

 

「これでも喰らえッ!!」

 

奏は槍を投げるとその槍は数10個に分裂し、ミア目掛けて全てとんでくる。

 

「え、まて、これは流石に、予想してないッ!」

 

ミアは出来るだけ当たらないように避けるが無限にあるかのような槍の雨はミアの体を貫いた。

 

「ガァアッ!!」

 

等々ミアは膝を付き、息切れをしていた。

 

「はぁ…クソッ…こんなの聞いてないぞ…」

 

「トドメだ…」

 

奏は立てずにいるミアに槍を突き刺そうとした。

その時未来が奏を止める。

 

「待って!奏さん!」

 

「なんだ?」

 

「この人拠点に連れて帰ろう」

 

「はぁ!?何言ってんだお前!」

 

「もしかしたら他の4人についても詳しい事が聞けるかもしれないでしょ?」

 

「ほぅ…なるほどな…」

 

未来の提案に納得した奏は強引にミアを持ち上げ、肩を貸してあげた。

響はなんとか歩ける様だったため未来に捕まりながら歩く、クリスはまだ目を覚まさずに居るため未来が抱えて歩き出した。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「デェェェス!?」

 

「本気で言っているのか!?」

 

拠点に帰ってきた未来と奏、クリスと響はミアの説明をした。

そして奏がミアを倒したという事に切歌と翼は驚愕していた。

未来は傷付いたクリスと響をエルフナインに任せようとしたところに奏がミアのメディカルチェックも要求した。

 

ミアの手当てはすぐ終わったが、クリスと響は少し時間がかかるようだった。

ミアはエルフナインの隙を狙ってある男に連絡を繋げた。

 

「もしもし、ミアです」

 

『ミアか、何があった』

 

「異常事態が発生しまして、シンフォギアの見た事の無い力に敗北してしまいました」

 

『見たことの無い力だと…?』

 

「しかし幸い彼女らの拠点に潜入することに成功。隙を狙って殺す事が可能です」

 

『もういい、お前は用済みだ』

 

「…………」

 

ミアの思考が一瞬にして止まった。

 

「い、今なんて……」

 

『シンフォギア装者1人も殺せないクズなどもう必要ない。それに敵に助けられている時点でお前はもう終わりだ。好きにしろ』

 

通話はこれで途切れてしまい、ミアは何度もかけ直すがそれから二度と繋がることは無かった。

 

「僕が…用済みだと……?この僕が……見捨てられたのか…?騙されていたのか…?認めたくはないが初めて装者に触れた時に感じた…コイツらは罪人なんかじゃないと……それがあの男に気づかれていたのか……?」

 

「あ、いたいた。あまり動かないでくださいよー!傷口が広がっちゃいますよ!」

 

ミアを探していたエルフナインが現れる。

 

「なんとも思わないのか?」

 

「ん?何がですか?」

 

「僕は君達を殺そうとしたんだ。恨みとか怒りとか」

 

「多少ありますよ。でも、今は隙を付いて殺そうなんて思っていませんよね?」

 

「あ、あぁ…」

 

「暫くはここで安静にしてて下さいね」

 

「昨日までは向こう側が僕の居場所だったはず……なのに今はここが僕の居場所なのか……?」

 

 

 




ご覧頂きありがとうございます!
今回は奏さん大活躍!!
未来さんは誰もが予想していたと思いますが戦うことはありませんでした(ただ纏っただけ……)
最近毎日更新が出来て話が進めて行けることが嬉しく思います!!
これからもよろしくお願いします!


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【3.5話】ミアの仲間

この話は3話と4話の間のちょっとした話となっております!


響、クリスが起きたあと8人の装者は椅子に座り、ミアについて話していた。

 

「しかし、ミアは殺す気が無くなったのは何故だ?」

 

翼は未来に問い質す。

 

エルフナインからミアは殺す気がもう無いと聞いた8人の装者は1度整理するためにみんなで話し合っている。

 

「分かってくれたんじゃないでしょうか、私達が罪人じゃないって」

 

「でも、そう簡単に分かるか?」

 

クリスはが疑いながらも話す。

 

「それこそ、拳と拳で語り合えたかも知れないよ?」

 

「お前は少し黙ってろ」

 

響の返答にめんどくさくなったクリスは響の発言を制限した。

 

「でも、もしミアって奴が仲間になったら相当心強いデェース!」

 

「確かに、あんなに強いなら頼りになるかも……」

 

切歌と調は色んな展開に話を広げる。

 

「あ、皆さん…」

 

すると2階の寝室からミアが降りてきた。

 

「あ、ミア君起きたんだ」

 

未来が呼びかける。

 

「まず謝らせてください、僕はどうやらあなた達を勘違いしていたようです…」

 

「じゃあ私たちを殺す気はもう無いって事だな」

 

翼が安心し、胸をなで下ろす。

 

「出来るならば、世界を敵に回しているあなた達の手伝いをしたい」

 

「それは嬉しい事だね!」

 

未来は喜ぶように声を上げる。

 

「宜しいのですか…?僕はあなた達を殺そうとした人なんですよ?」

 

「あーそのなんだ、確かにお前がやった事はかなりあたしらにとっては印象が悪い。だが、今はちゃんと分かってくれてるからな。今がそれならあたしら全員文句はねぇよ」

 

クリスが簡潔にまとめると皆は納得する。

ミアはありがとうございますと頭を下げた。

 

「ところで、お前達の仲間のあと4人ってのはどーゆー人物なんだ?」

 

奏がミアに情報提供を求めた。

 

「まず、僕の紹介をしないと話せませんね。僕はミア、特殊な能力を持った1人です。僕の能力は相手の思考を読み取る事です」

 

「相手の思考を読み取る…?」

 

ピンと来なかったのか奏は詳しく聞いた。

 

「要するに相手の考えている事が分かる能力です」

 

「なんか凄いデース」

 

「でもあの4人の中で一番怖い能力の持ち主がいるんです」

 

「と、言うと…?」

 

翼が声を上げる。

 

「名前はルーカス。性別は女。能力はマインドコントロールです」

 

「まい…ど…こん……なんて?」

 

切歌が頭にハテナを浮かべながら聞き返す。

 

「マインドコントロール、相手を思うがままに操ってしまう能力です」

 

「ひぇ!!なんデスかその能力!」

 

「恐ろしいため、僕達もあまり怒らせないように配慮していた人物です」

 

「そんな奴がいるの……」

 

調がそう言うと空気が凍ってしまった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「え?ミアがやられた?」

 

「あぁ、もう相手側に付いた」

 

「裏切りやがったな、ミアの奴」

 

そこにはミアと話していた男とルーカス、そしてもう一人の男が話していた。

 

「今度はお前らだルーカス、ゾイ」

 

「あ、わたし面白いこと思いついちゃった……!」

 

「お、どーゆー感じだい?」

 

「……………」

 

ルーカスはゾイと言う男の耳元で囁く。

 

「ハハハッ!それはクソ面白そうだ!」

 

「なんの手を使ってもいい、シンフォギア装者を殲滅だけが我々の目的だ」

 

「オケでーす、ミアは余裕が合ったらわたしが殺しときますんでー」

 

「頼んだ」

 

ルーカスとゾイは男がその場から立ち去ると目の色を変えた。

 

「てなわけで、罪人を殺しに行きますか…」

 

「俺はお前に着いていくぜ」

 

「おうよ、着いてきなッ」

 

 

 




ご覧頂きありがとうございます!
今回は少しばかり短い内容となってしまいました(汗)
しかし、展開としてはミアが仲間になり、特殊部隊の2人が動き出すと言うところです。
4話は戦うシーンではなく特訓や装者達の今の過ごし方など書いていこうかなと考えております。
もう言っちゃいます。4話は未来とミアと当然の如くきりしらの話です()


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【4話】今の生活

この話は4話となっています。


ミアが仲間になった次の日、ミアから次襲ってくる日をみんなに伝えた。

 

「ルーカスは慎重に下準備をする人だから、しばらくは襲ってこないと思いますよ」

 

「あって何日後ぐらいだ?」

 

翼はミアの右斜め前の椅子に座り問いかけた。

 

「恐らく2日、3日後だと思われますねー」

 

「じゃあそれまでは生活環境を整える作業に取り掛かるデース!」

 

「珍しく切ちゃんがやる気だ……」

 

そうして、各自やる事を行った。

未来はミアと戦略を立て、響、翼、マリアは特訓、クリスと奏は周りの見張り、切歌と調は食料調達と担当分けされ動き始める。

 

「それで、ミア。ルーカスに付いて色々教えてくれるかな?」

 

「いいですよー、ルーカスは計り知れないほどの能力を持っていますから、説明し切れないかも知れませんが…」

 

「大丈夫、多分…」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ほぇー……」

 

「切ちゃーん、何か釣れた?」

 

「いぃや、全くぅぅ」

 

食料調達に来た切歌と調は切歌は川で釣り、調は山菜を採取していた。

全く釣れない切歌はぼぅっとしながら竿を見つめる。

 

「あぁー太陽が温かいデェースー……」

 

調はのんびりとした切歌を見て微笑みながら食料を集めていた。

 

「お、なんかかかったデース」

 

切歌が竿を持ち上げると先には魚がピチピチと尻尾を動かしながら引っかかっていた。

 

「これは………アジデース!!」

 

「違うわっ」

 

切歌がドヤ顔で調に言うと調は切歌の頭を軽くコツンと叩き否定した。

 

「調痛いデスよー」

 

「全く、アジが川で釣れるわけないでしょ?アジは海魚…」

 

「ちぇーアジじゃないデスかー…」

 

「切ちゃん…何を狙ってたの…?」

 

「マグロデェース!!」

 

「ええええ!?」

 

調は顔が赤くなりながら切歌に説得する。川魚と海魚の違いや、狙う物とか色々……

 

「……わかった?」

 

「全くもって謎デス」

 

「はぁー、ダメだこりゃ……」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

一方未来はその時、ルーカスについてミアから話を聞いていた。

 

「つまり、彼女はミアよりも能力では上なの…?」

 

「まあ、技術面では僕が飛び抜けていたのでリーダーに任命されたんですけどね、本当にマインドコントロールはされてる人を見ましたが本当になんの抗いもなく操り人形のようにされてしまうんですよ」

 

未来は予想以上にルーカスが恐ろしい人間だと思い知らされ、冷や汗をかく。

 

「で、でも弱点とかはあるよね…?ミアみたいに乱射攻撃に弱いとか……」

 

未来は帰ってくる答えが分かっていてもミアに聞く。

 

「僕が知っている限りではあの人に弱点は無い……しかし、ずっと一緒にいるゾイと言う男を何とかすれば変わる可能性はあります」

 

「ゾイ……?」

 

「ルーカスはゾイと言う男と共に行動しています。ルーカスの支配下として動いています」

 

「そのゾイって人の能力は……?」

 

「それが見たことないんです、あの男は能力を使わずに今まで戦ってきているんです」

 

「能力を使っていない…?未知数って事ね…」

 

ミアから色々話を聞いているとどんどん謎が深まり、余計に分からなくなってしまう。

未来はこのくらいを頭の中で整理するのに精一杯だった。

 

「うーんと、つまりルーカスとゾイはミアにも分からない何かがあるってことなのかな?」

 

「まあ、そうなりますね」

 

そして、未来とミアは戦略を考え始めた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ここも誰もいないな」

 

見張りに来ていた奏とクリス。

ミアと2回目に戦った場所へ足を運んでみるが、誰もいない状況だった。

 

「でも、黒服野郎はウジャウジャ居てやがるな…」

 

「クリスは手を出すなよ?罪人はアタシだけで充分だ」

 

「そいつはゴメンだ、正直もうあたしだって人殺しちまった」

 

クリスは崖の下を指差すと下には1人の男が血を流して倒れていた。

 

「まさか、あいつは」

 

「あぁ、さっき後ろから追っかけてきてた。そんで投げ飛ばしたってわけだ」

 

クリスには手を汚させないと決めていた奏だったが時すでに遅し、クリスはもう十分汚れていた。

 

「つまり、あたしら2人は罪人ってことだ。これ以上の罪人を出すわけにはいかない、そのためには2人ぐらい必要だろ?」

 

「それで、お前はいいのかよ…」

 

「元々あたしゃネフシュタンの鎧を纏って暴れてたんだ、これくらいどうってことないさ…」

 

クリスは崖の下を見つめながら言う。

クリスはあっと思いつき奏を見て話す。

 

「何となく奏とあたしって性格似てるからさ、多少は息が合うだろ…?」

 

「まぁ、そりゃ否定出来ないけどな…」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして、日が落ちると皆は小屋に戻り、調とマリアがいつもの如く料理を作ってくれた。

切歌が釣った魚の正体はよく分からなかったが食べてみると美味しかった。

食べ終わると翼が食器を洗おうとすると未来が慌てて翼と交代する。

そんな生活が2日続く。

 

未来はミアから初日以上に特殊部隊の詳細を聞き、翼、響、マリアは特訓に専念した、奏とクリスは近付いてくる黒服を退治しつつも安全を確保し、切歌、調は多少の慣れで初日より多くの食材を採る事が出来た。

 

そして、遂にミアが言った日になった。

装者達は警戒心を持ちながらこの日を迎えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「さてと、準備が出来たから行くけど、そっちはどうだ?」

 

「前から準備完了だっての」

 

「ふっ、分かった。じゃあ行くとするか」

 

その日、ミアが言う通りルーカス、ゾイが動き出した。

 

「作戦は把握してるだろうね…?」

 

「無論、インプット済みだ」

 

「ミアが飛んできたら対処よろしくー」

 

「あぁ、分かってる」

 

ルーカスとゾイは車へ乗り、小屋へと走り始めた。




ご覧頂きありがとうございます!
今回は戦い無しの生活メインで書きました!
まあ好きなのできりしらの場面がほぼほぼメインです(笑)
少しばかり遅れました、すみません。


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【5話】最悪な作戦の実行の始まり

この話は5話となっています


「ありゃ、こっちの行動読まれてたみたいだな」

 

ルーカスとゾイが乗っている車が小屋が見えるところまで来ると2人の装者がこちらを見ている様子が伺えた。

その2人はクリスと奏だった。

しかし、ルーカスの考えた作戦は行動がバレていただけで防がれるものではない。言ってしまえば強引にやろうと思えば出来てしまう事だったからだ。

 

「来た…小屋に戻るぞ!」

 

クリスがいつもの崖からルーカスたちが乗った車を確認し、急いで戻る。

 

「ミアの言う通り、あいつら来やがった!」

 

奏がみんなに知らせると未来とミアが考えた作戦を実行する。

作戦と言うのはとても簡単で、いくら弱点がわからないルーカスでも5人相手では手も足も出ないとミアが考えた。

未来はとてもミアらしい答えだと思った同時に、それ以外方法がないという事も分かった。

それぞれ配置に付き、指定の場所に来たら一斉に押しかける。

2人はそう考えたのだ。

 

そして、ルーカスとゾイはその指定の場所へ足を踏み入れた。

その時、作戦通りに5人程の装者がルーカス目掛けて攻撃を仕掛けた。

 

「やっぱり、なんか企ててたな」

 

ルーカスがそう言うとゾイがここは任せろと言い放ち、ミアも初めて見るゾイの能力が展開された。

 

ゾイは両手を広げるとゾイ中心にドーム型の壁のようなものが広がっていく。

装者達の攻撃はそれを全て呑み込み、見事に作戦が失敗した。

ミアでもゾイがこんな能力だとは思っていなかったらしく、慌てていた。

 

「やぁ、ミア。そっち側にあんたは付いたんだね、まあ今日は殺しに来たんじゃないんだ」

 

ルーカスは足を動かさずにその場から話し始める。

 

「クソがぁぁッ!」

「オラァァ!!」

 

その瞬間にクリスと奏が見事な連携プレイでゾイの壁を破る。

しかし、その衝撃で2人のギアが強制解除されてしまう。

小屋の入口目の前に転がり落ちた2人は中から様子を伺っていたエルフナインに助けられる。

 

「ギアが解除されちまったか……」

「ただあの男の展開した壁は破れたぞ」

 

クリスと奏はエルフナインに手伝ってもらいながら立ち上がるとそう言った。

 

「無茶はしないで下さい、あなた達2人はかなり精神的にも不安定なはず……」

 

クリスと奏は人を殺す担当に自らなっていたが流石に精神にダメージを負っていた。

 

「ルーカスッ!!お前達は間違っている!!僕の話を聞いてくれ!!」

 

ミアはルーカスに向かって叫ぶがルーカスは聞く耳を持たず、ルーカスの作戦を実行し始めた。

 

「悪いけど、今日は戦わないんだ……その代わり……ッ!」

 

ルーカスの両手に波紋が広がり始め、ルーカスは装者に向かってそれを放った。

 

「わたしの考えた作戦はな、《シンフォギアの装者同士殺し合いをさせる》って事だ」

 

「なんだと…ッ!?」

 

ミアはルーカスのとんでもない作戦に驚愕した。

しかし、もうどうする事も出来ない状況に陥っていた。

なぜならその波紋を受けた装者はルーカスの能力、マインドコントロールに掛かってしまったからだ。

装者達はスタスタとルーカスの元へ歩いていく。

 

「お前らッ!正気に戻れ!!」

 

幸い、ギアを纏っていた装者が対象だったようで強制解除されたクリスと奏はマインドコントロールに掛かっていなかった。

 

「せめて1人だけでも………ッ!!」

 

その時誰も思いもよらない出来事が起きた。

エルフナインが動いたのだ。

 

「この体はキャロルから貰った体……!僕がキャロルを呼び出せば、錬金術は使えるはずッ!!」

 

すると、手を伸ばしているエルフナインの右手からキャロルが使っていた錬金術のような模様が浮かび上がった。

そして、エルフナインは1番近い切歌を捕まえる事が出来た。

 

「切歌さん!!正気に戻ってください!!」

 

エルフナインは錬金術を多様に使い、切歌を小屋の入口付近まで引き戻した。

 

「クソ、3人取り損ねたか……まあいいや、これはこれで楽しいショーが始まる!よーし、帰るぞーゾイー」

 

「はいよ、ルーカス」

 

ルーカスはマインドコントロールで手に入れた響、未来、翼、調、マリアを連れてその場から一瞬にして姿を消してしまった。

 

「これが……マインドコントロールなのか……」

 

奏が連れていかれた翼の事を考えながらルーカスが居た場所を見つめる。

 

「しっかし、エルフナインが錬金術をなぁ……」

 

クリスがエルフナインと切歌の正気を戻そうと必死に肩を揺さぶっていた。

 

「どわッ!!私、何してたデスか!!?」

 

ようやく切歌が目覚める。

 

「ルーカスに連れていかれそうになったんだよ」

 

奏が説明すると切歌は調を探すが調も連れていかれたとクリスが言うと切歌は絶望したような顔をして、その場に立ち尽くした。

 

「アレで分かったでしょう……マインドコントロールはとても恐ろしい………」

 

ミアが歯を食いしばりながら3人の装者に伝える。

 

「みんな連れて行かれなくてよかったです、3人も居れば、まだ、助けられる余地はありますから、、」

 

エルフナインがそう言うと目と口から血が垂れてきていた。

 

「お前ッ!!目から血がッ!」

 

奏がエルフナインの様態に気付くとすぐに寝室という名のメディカルルームへ連れて行った。

 

「クリス先輩…」

 

クリスも奏の元に向かおうとした時切歌に呼び止められた。

 

「どうした…?」

 

「どうやら私はまだ、マインドコントロールが解けてないみたいデス…」

 

「なんだと!?」

 

「頭が混乱してるデス、さっきからクリス先輩を殺せと言う声がずっと聞こえてくるデス……」

 

「切歌……お前……」

 

そう言うとクリスは切歌を抱き締めてあげた。

 

「心配すんな、あたしがお前を守ってやるから、そんな言葉に負けるな…」

 

「ありがとデス……先輩……」

 

 

そう言うと切歌はクリスの胸部に包丁を突き刺した……

 

 

 




ご覧頂きありがとうございます!
少し、詰め詰めで書いてしまったので、この話ばかりは内容が伝わらない可能性大です!ごめんなさい!!
簡単に説明すると

未来とミアは一斉攻撃を提案し、ルーカスに仕掛けるがゾイの能力で食い止められ、その後クリスと奏がゾイの能力を壊すがギアが解除、そしてルーカスがマインドコントロールをする。
響、未来、翼、調、マリアはそのマインドコントロールにかかってしまい、ルーカスと共に動くようになってしまった。
エルフナインの力により切歌は助けられるが、マインドコントロールが解けていなく、クリスを殺そうとした。

というのがこの話までです。
意外と8人となると書くのが大変なので一気に5人を減らす行為をしました(重罪)
他にもよく分からない事がありましたら感想でお願いします!!


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【6話】最悪の作戦の実行その1

この話は6話となっています


クリスの胸部に刺さった包丁は切歌の手で抜かれ、そこから血が滴り落ちる。

 

「え………」

 

「ごめんなさい、先輩……」

 

切歌はそう言っているが辛うじてクリスは切歌の顔を見るがボヤけていて表情が分からなかった。

次第にクリスは視界がボヤけていくが、それでも負けるまいと立ち上がる。

 

「もう、辞めてください先輩……こっちも…やりたくないんデスよ……」

 

「お前は………ゴホッ……意識があるのか………?」

 

「体が……言うこと聞かないんデスよ……」

 

すると切歌はさっきの包丁ではなく、ポケットからやや大きめの包丁を取り出し突き刺すと、今度は腹部へ突き刺した。

 

「ぐっあぁぁ……!!」

 

クリスの体は血塗れで、口からも血が出ていた。

それでも、まだ意識があったクリスは膝を着き、安定して体を支えるために地面に手を着いた。

 

「お前は……あたしが治してやる……だから……」

 

クリスが話している途中でも切歌はまた走ってくる。

刃毀れするであろう包丁をクリスへ向かって突き刺す。

その瞬間クリスは包丁で腹部を刺されるも切歌を抱きしめた。

さっきの2発は切歌の僅かな力の制限で刃の置くまで刺していなかったがクリスが抱き締めた為、刃は置くまでしっかりとクリスの腹部を貫通していた。

 

「自我を保て………お前はそんな弱い奴じゃない…だからあたしが保証してやる……だから……これを後悔すんな……」

 

「クリス……先輩………」

 

体が言う事を聞くようになったのか切歌は即座に刺した包丁を抜いて、クリスを抱き抱える。

クリスは既に意識が無かったが、口は笑っていた。

 

「クリス先輩……ごめんなさい……すぐに…手当てをするデス……」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

切歌はクリスを寝室という名のメディカルルームへクリスを運ぶ。

エルフナインの手当てが済んだ奏はそのクリスの重症に気付き、近付いてくる。横になっているが意識はあったエルフナインも異様な光景に目を向けた。

 

「どうなってんだ!!何があった!!」

 

「全部、私がやったデス……」

 

「は!!?」

 

「早く手当てを……!」

 

「………息はしてる…よし、急ぐぞ!」

 

「デス!!」

 

奏と切歌はエルフナインの指示を助けに、2人で何とか処置をした。

しかし、血が大量に出ていた為助かる可能性は低かった。

奏と切歌は出来ることを全力でやり終え、後はクリスを見つめながら2人は椅子に座った。

 

「どうしてこうなりやがった……」

 

「私がマインドコントロールに対抗できなかったから……体が勝手に動いたデス……」

 

「クソッ!似たもの同士だとか言って、少しは共通関係が生まれたと思ったのに……おい!エルフナイン!クリスは死なねぇよな!?」

 

奏はあまりにも焦りすぎて横になっているエルフナインに大声で聞く。

 

「見ている限りでは……その可能性の方が……高い……と…思われます……」

 

「ふざけるなッ!そんなの認めねぇぞ!!」

 

奏は怒りが爆発し、椅子をガタンッと倒しながら立ち上がる。

しかし奏は何も出来ない事に気付き落ち着く。

奏と切歌はクリスの傍に寄り、クリスが息をしているかをちょくちょく確認する。

その時は突然来た。

 

「まて……」

 

クリスの様子がおかしい事に気付いた奏が声を上げてクリスの心臓の音を聞く。

 

「嘘だろ……冗談はよしてくれ……」

 

奏の顔が青ざめたのを確認した切歌は続いてクリスの心臓に耳を当てた。

 

「と、止まってる……デス……」

 

クリスはその時息が止まっていて、心臓の鼓動も聞こえなかった。

 

「クリスが………死んだ………?」

 

奏はガクッと体が重力に引っ張られ、膝を着く。

 

「私のせいデス……私がクリス先輩を殺したんデス!!」

 

切歌は頭を抱え、その場にしゃがみ込む。

 

「何でた……なんでだよ……!なんでクリスが死ななきゃならねぇんだよ!!」

 

悔しそうに床を叩く奏の目からは涙が流れていた。

 

「クソが…………」

 

「クリスさん……」

 

エルフナインが呟いた時……

 

「ガハッ……!ゴホッゴホッ………ヴッ……はぁ…はぁ…」

 

驚く事にクリスが息を取り戻した。

 

「クリス!?」

 

「クリス先輩!!」

 

「……あぁ危ねぇ…死ぬところだった………」

 

「もう一時死んでたぞ、クリス…でも何で……息を取り戻した……?」

 

「いてててっ、あたしは死なない…死ねない……可愛い後輩が居るんだからな……」

 

「クリス先輩ごめんなさい…!私のせいで……!!」

 

切歌は泣き目になりながら懸命にクリスに謝る。

 

「こうなったのはあたしのミスでもある、後悔すんなって言ったろ?」

 

「で、でも……」

 

「安心しろ……あたしは………………」

 

話してる間にクリスは眠ってしまった。

奏は心臓に耳を当てて動いているか確認する。

 

「ふぅー、一時はどうなるかと思った……」

 

「ごめんなさいデス…」

 

「クリスも言ってたろ?そんな謝るな、ごめんなさい禁止な」

 

「でも、こうなったのは私のせいデス……」

 

「自分を責めるな、アタシだってクリスも切歌の事責めちゃいねぇよ」

 

切歌は奏に頭を下げると、奏は切歌の頭を撫でる。

安心した奏は寝室から出て、連れていかれた5人の装者を助けるべく、特訓し始めた。

 

 

 




ご覧頂きありがとうございます!
完全にミアの存在を書き忘れましたが、目を瞑ってください……
今回はクリスが死にました(一瞬)
クリスが被害を受けましたがクリスはしにましぇん!
殺したらまず感想欄が「死ね」で埋まります…ですが、自分はこの物語では装者を殺す予定です…
覚悟の方をよろしくお願いします。


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【7話】8人の装者は…

この話は7話となっております


「未来ー、調子どうー?」

 

「んー、まあまあかなー」

 

「未来が居れば心強いから安心するよー」

 

「んもー響ったら、あんまりだらけてると殺られちゃうよ?」

 

「分かってるって、でも翼さんやマリアさんだっていることだし…まだ私達が出る頃じゃないって、ルーカスちゃんも言ってたでしょー?」

 

「そうだけど…、いつ要請くるか分からないじゃない?」

 

「ここの居心地好きだけどなー、私は」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ルーカスのマインドコントロールによって響、未来、翼、マリア、調は特殊部隊の拠点である基地へと連れてこられていた。

ルーカスは5人の装者に他のシンフォギア装者を殺せと命令したが、マインドコントロールという事もあって、普段の生活とあまり変わらない雰囲気だった。

5人の装者は特殊部隊に元から居たとルーカスに操られ、一見普通に見えるが完全にルーカスの手の中に居たのだ。

連れてこられた5人の装者は響と未来、翼とマリアと調という2つのチームに分け、第一部隊を翼率いるチーム、第二は響と未来と言われた。

勿論操られている装者はルーカスとゾイの仲間だと脳に命令されたため、ルーカスともいつも通りのテンションで響や翼は話していた。

 

「とりあえず、翼とマリアと調は第一にシンフォギア装者の殲滅、言うならば奏、クリス、切歌だな」

 

「何故奏は……敵になってしまったのだろうか……」

 

「それを考えても仕方ないわ、奏は誰かに操られている可能性もある」

 

「なるほど……その為には……」

 

「殺すしかないんだよ、奏をね!」

 

ルーカスはニコニコしながら翼に言う。

 

「やはり、そうするしかないのか……」

 

「切ちゃんは私に殺させて…その方が切ちゃんも楽だと思うから……」

 

「うん、いいよー。でももし負けるようだったらひびみくに要請入れるからねー!」

 

「あぁ、頼む」

 

翼とマリア、調はルーカスの要請が来るまで、家事の手伝いや鍛錬を積み重ねていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

響と未来は裏庭の様な庭園にある大きな木の下で溢れ日を浴びながら2人で話していた。

 

「クリスちゃん、どうしちゃったんだろうね……」

 

「クリス…突然怖い顔になっちゃったもんね…」

 

「やっぱり誰かに洗脳されたとしか思えないんだよ!」

 

「響…?」

 

響は立ち上がって言う。

 

「だってそう思わない?クリスちゃんがいきなり敵になるはずがないんだよ!なら誰かの脅しで動いているか、洗脳されているか…」

 

「脅しを喰らってもクリスなら口が強いから何とかなりそうだけどね」

 

未来は微笑すると、座っていた体を横にした。

 

「風が気持ちいいよ、響。たまにはお昼寝でもしようよ」

 

「未来から誘われたら断れないじゃんかー」

 

響は未来の隣に横になり、2人は木の下で揃って昼寝を始めた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

切歌はクリスの目覚めをずっと待つようにベッドの横の椅子に座っていた。

 

「切歌さん、そろそろ寝たほうがいいのでは…?」

 

時計は既に12時を回っていた。

エルフナインは切歌が心配で寝る事も出来ずにいた。

それは切歌も同様だ。

ちょくちょくクリスの呼吸が止まってないか、心臓が止まっていないか確認するが、さっきよりも安定している。

 

「クリス先輩が起きた時、誰も居なかったら寂しいデスよ。なら私がずっとここに居るデス」

 

そして切歌はクリスの目覚めを待っている間に眠ってしまった。

 

 

その後、切歌は目覚めると外は明るくなっていてクリスが目覚めて切歌の頭を撫でていた。

 

「クリス先輩!!!」

 

切歌が嬉しそうにクリスの名前を呼ぶ。

 

「あまり大声出すなよ、エルフナインが起きちまうだろ」

 

「良かったデスよ、私のせいで死んだら……どうしようかと……」

 

「だから、あたしは死ぬわけには行かないんだよ」

 

クリスはそう言うとバタンとベッドに横たわる。

 

「マインドコントロールはどーなんだ?」

 

「どうやら完全に消えたっぽいデース」

 

「それなら、お前は対抗した。充分すげぇ事じゃねぇか?」

 

そう言うと切歌はえ?という顔をしてクリスを見る。

 

「あたしに少し当たっちまったけど、切歌がマインドコントロールを解くことが出来たんだ。それなら他の奴も解くことが出来るって分かったじゃねぇか」

 

「クリス先輩……」

 

気付けばクリスの優しさに切歌の目からは涙が溢れていた。

 

「あれ、おかしいデス。なんで泣いてるデスか……」

 

クリスは涙を隠すような仕草をした切歌をぎゅっと抱きしめた。

予想もしなかったクリスの行為に切歌は驚き尚更涙を流してしまった。

 

「おいおい、もう泣くなって、泣くのはすべて終わってからだ」

 

切歌は首を縦に振るが到底泣き止む雰囲気は無かった。

 

 

 




ご覧頂きありがとうございます!
投稿遅れてしまいました、すみません…

今回は連れていかれた5人の装者、残された3人の装者の今を書いてみました。
会話文が多くなり、内容が短いですが目を瞑ってください…(笑)


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【8話】装者同士の戦い

この話は8話となっております


「奏さん!!」

 

ルーカスの襲撃があった後ミアはルーカスの後を追いかけるようにその場から消えたが、ルーカスとほぼ平行移動していたため追いつけなかった。

その後ミアは1人で歩いていた奏に声をかける。

 

「お前か、」

 

「切歌さんやクリスさんは…?」

 

「切歌がマインドコントロールによって操られクリスを刺した。今はもう治ってるはずだけどな」

 

「そうですか…ごめんなさい、僕何も出来ませんでした…」

 

「ありゃしょうがない、ルーカスとゾイって奴はかなり強いコンビだ、アタシと翼のツヴァイウィングだとしても、切歌と調のコンビだろうと勝てっこない…」

 

「ルーカスは分かりませんが、ゾイには弱点があります」

 

奏は驚いた様にミアを見つめる。

 

「ゾイはバリアの様なものを展開します。その時分かりました、ゾイはアレを撃った後反動で動きが鈍くなるんです」

 

「なるほどな、ゾイだけでも倒せばルーカスも戦いづらいか…」

 

「しかし、ゾイは撃った後ルーカスの影に隠れます。それが厄介です……」

 

「んー、やっぱり強大な力がどっちにしろ必要だな……」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「つばマリしらー、行くぞー」

 

要請がかかった翼とマリアと調は言われるがままにルーカスの下へ集まり、移動し始めた。

 

「翼さん達行ったみたいだねー」

 

「さて、私は帰ってきた時の癒しの為お風呂やご飯でも作ろうかな」

 

「未来の料理だー!」

 

「響、要請かかってないんだから勝手に行っちゃダメだよ?」

 

「わかってるってー」

 

そう言うと未来は響の元から離れた。、

 

 

いつも通り、ルーカスは車を止め、堂々と小屋へ歩いてきた。

 

「っ!!奏さん!ルーカスです!!」

 

「なんだと!?」

 

ミアと奏は木の影に隠れてルーカス達を観察する。

その後切歌とクリスが中から出てきて、奏達の元へ来る。

 

「クリス、怪我は…?」

 

「多少治ってねぇとこあるけど問題ねぇ」

 

奏は無理するなよと呟き前を向く。

 

「じゃあ素敵なショーの始まりだ!装者対装者、これほど面白いものはない!」

 

その瞬間翼は奏に刀を振る。

装者達はその瞬間にバラバラに拡散した。

奏はそれをガードし、弾き返す。

 

「翼!正気に戻れ!!」

 

「そっちこそ早く目を覚ませ!奏!!」

 

翼は奏、調は切歌、マリアはクリスと各々特に大事に思っている人に勝負を仕掛けた。

 

「切ちゃん、私が殺してあげるから!」

 

「調はそんなこと言わないデス、でも調は調、鎌を振ることは出来ないデス……」

 

切歌は調の攻撃をガードもせずに受け続ける。

 

「切ちゃん、何もかもおかしくなっちゃったのね…」

 

「ハァ……ハァ……」

 

切歌の体からはところどころ血が出ていて、流石に動ける状態ではなかった。

 

「バイバイ、切ちゃん……」

 

そう言ってトドメを刺そうとした時だった。

切歌の前に1人の人物が立つ。

その人物はフードがある茶色っぽい色のマントの様なものを着ていて誰だかは判別出来なかった。

 

「はぁぁ!!」

 

その人物は片手剣のようなもので調に着々と攻撃を与えていくと調は危機を感じ、後ろへ下がる。

 

「誰!?」

 

調は怒ったような目をしてフードを被った人物に問いかける。

 

「あなた達は操られている……」

 

声を聞く限り女の人だった。

フードの少女は調に向かって答えた。

 

「は?何を言ってるの?」

 

いつもの調とは違い、切歌を殺したいという欲求を持った調は邪魔をされた事に苛立っていた。

 

「あなた達はおかしいと思わない?何故殺す以外の考えを持たない?」

 

「そんなの、それ以外に無いからに決まってるでしょ!!」

 

「切歌、調を助ける為に考えていることはある?」

 

「え、んーっと、ルーカスを倒す……デスとか…?」

 

「小当たり、確かに発症源のルーカスを倒せばマインドコントロールは解かれる可能性はある、けれど解かれないかもしれない」

 

「じゃあ、どうするデスか?」

 

「こうするの、こっち来て」

 

フードの少女はそう言うと切歌の手を掴み、調に近づいてくる。

 

「切ちゃん以外、こっちに来るなぁ!!」

 

調はそう言うと手に持っていたヨーヨーをフードの少女目掛けて投げつける。

その途端、フードの少女は切歌を前に出す。

 

「え、ちょっ………!!」

 

フードの少女は切歌を盾替わりにして自分を守った。

物凄い勢いだったヨーヨーは切歌の左脚に直撃し、貫いた。

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁッ!!!!!」

 

切歌が苦痛の叫びをあげると、奏とクリスは切歌の方向を向く。

 

「アアッ!!私の足が………ッ!!」

 

切歌の左脚からは血が滲み、確実に骨は折れていた。

 

「ちょっと!何やってんの!!」

 

調は叫びながら切歌の元へ歩き始める。

 

「何って、これやったのはあなたでしょ?月読 調」

 

「私じゃない!!これはあなたがやったの!!」

 

「そうかな、結局切歌を殺せるんだから好都合じゃない?」

 

「殺す………?」

 

この時フードの少女はフードから少しだけ見える口をニヤリと動かした。

 

「あなたは切歌を殺す為にここに居るんでしょ?なら殺せばいいじゃない、早く」

 

「てめぇ何やってやがる!!」

 

クリスはマリアの猛攻を避けながら切歌の元へ走ってくる。

 

「クリスはマリアと戦ってなよ!」

 

フードの少女は走ってきたクリスを蹴り飛ばす。

クリスは反動で後ろへ飛ばされてしまう。

 

「クソッ!!」

 

クリスはどうすることも出来ず、地面を叩く。

 

「さて、調。あなたは切歌を殺す殺す言って、殺せないんでしょ?」

 

「そんなわけない!!」

 

「じゃあ早く殺して見せてよ、こんなチャンスないよ?切歌は足を貫かれて動けない、私は見てるから」

 

「切ちゃん……私は………」

 

「分かった……デス……あなたの狙い………」

 

切歌は無理矢理体を起こして、フードの少女を見る。

 

「殺す恐怖を与えて、マインドコントロールの効果を弱める……それがあなたの考えデスね……!」

 

「大当たり、切歌だってそうしたでしょ?」

 

「切ちゃんは私が殺すんだ!!うぉぉぉ!!」

 

調はフラフラしている切歌目掛けて突進してくる。

 

「調!!」

 

鋸を回しながら走ってきた調を切歌は多少切られながらも抱きしめる。

 

「調、正気に戻るデスよ!調はこんなデタラメに負けるほど弱くないデス!気に食わないなら私を斬ってもいい!デスから、冷静になるデスよ!!」

 

「切……ちゃん……!!私、なんて事を………!!」

 

「良かった……調……目を覚ました………デ………………」

 

「切ちゃん!切ちゃん!!」

 

調は切歌を抱き抱える。

 

「多少強引だったけれど、このぐらいやらないとマインドコントロールは解除出来ないから…切歌は死んでいないでしょ?」

 

「気絶してるだけ……?」

 

「恐らく。私はもう行くよ……」

 

「待って!!あなたは誰…!?なんでこんな方法を使うの!?」

 

フードの少女は調達に背を向けて歩き始めていたが調の声を聞くと、くるりと体を調達に向けてフードを調だけに見えるように上げた。

 

「え………なんで………あなたは………!!」

 

フードの少女は調に向かって微笑みながら口元に人差し指を立ててこの場所を後にした。

 

 




ご覧いただきありがとうございます!
お久しぶりです!!!!
今回は装者同士戦わせるというルーカスの作戦が実行されました。
そして、何かしらみんな知っているフードの少女、みなさん誰だか予想してみてください!!


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【9話】塵となる装者

この話は9話となっております。


「未来ー?」

 

響は未来を探しにお風呂場に来た。

そこはピカピカでお湯が溜まっている状態だった。

恐らく未来がもう済ませた場所だと響は判断し、キッチンへ向かった。

 

「未来ー?」

 

キッチンへ足を運ぶが、キッチンにも居なかった。

まな板には切り途中の野菜と包丁が綺麗に置かれていた。

 

「未来どこ行ったんだろう……」

 

「響…?」

 

そう呟いているとキッチンの入口から未来が現れた。

手には絆創膏を貼っているようで、響は包丁で手を切ってしまったのだと思って未来に近づく。

 

「どこに行ったかと思って心配したよー」

 

「ごめんごめん、ちょっと切っちゃってね」

 

「大丈夫?」

 

「へいき、へっちゃら。でしょ?」

 

未来がそう言うと響はにっこりと笑い返事をした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

調は切歌を抱き上げ、小屋へと身を隠す。

エルフナインが引き取ろうとしたが、調は自分でやるといい切歌を手当てし始めた。

 

その頃、クリスとマリアは一歩も譲らない戦いを繰り広げていた。

お互い距離が縮まらずに、ただ時間が過ぎていく戦いだった。

その時、同じ場所で戦っていた奏の背中とぶつかる。

 

「お、クリスか…」

 

「どうよそっちは…」

 

「流石は翼だ、そう簡単には行かない」

 

「こっちも同じようなもんだ」

 

 

「あら翼じゃない」

 

「マリア、さっさと終わらせるぞ」

 

「分かっているけれど、なかなか手強いのよねぇ。あ、そうだ、翼とタッグを組まない?」

 

「ユニゾンするつもりか?」

 

「まあそうだけど、私と翼は共にステージで歌った事もある。多少連携出来るはずよ」

 

「よし、分かった。一気に叩き込もう」

 

クリスと奏は翼とマリアの動きが変わったことに気づき、それぞれ対処していく。

 

「連携ってわけか……!」

 

奏がそう言うとクリスは奏の前に出て矢を放つ。

その矢は空中で何個にも分散し、翼とマリアに降り注ぐ。

しかし、その攻撃はマリアのギアによって防がれてしまう。

 

「くそ、なかなか上手くいかないか……」

 

「これで決めるわよ、翼」

 

「あぁ!」

 

そう言うと2人はクリスと奏に向かって走り込んできた。

 

「なぁ、奏……」

 

「ん?」

 

「今あたしがやろうとしていること、聞いても怒らねぇか…?」

 

奏はそれに少し、ほんの少しだけ間を開けて返事をした。

 

「いいよ」

 

「悪ぃな、」

 

「内容は?」

 

「こーすんだ…」

 

クリスはそう言うと目を閉じた。

背後から見ている奏には到底その姿は見えない。

そして、旋律が鳴り響く……

 

『ーGatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el baral zizzl』

 

「この詠唱は……!!」

 

「まずい!撤退だ!!」

 

マリアと翼はなにか危険を察知し、勢いを止め逆方向へと走り始めた。

 

『Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el zizzl………』

 

「絶………唱……だと……?」

 

奏は目を丸くしてクリスを見つめる。

 

「悪ぃな、これしか思い付かなかった。そしてこれは言わせてくれ、先輩とマリアはあたしが殺しちまうだろう……」

 

そう言うとクリスは猛スピードで翼とマリアを追いかける。

 

「まてっ……!クリスっ…」

 

「ほたえなッ!2人共ッ!!」

 

クリスは大ジャンプし、空中でギアが巨大兵器のような形に変形する。

肩に二つのレーンのようなものを背負い、そこでミサイルを撃とうと言う手段だ。

 

「こうなったら私のギアでッ!!」

 

逃げられないと悟ったマリアはアガートラームを展開させる。

 

「翼も手伝って!!」

 

「…あ、あぁ!」

 

そしてクリスから2つの巨大ミサイルが発射された。

そのミサイルはアガートラームのバリアとぶつかり合う。

翼とマリアは踏ん張り、ミサイルをはね返そうとするが、到底出来るわけもなく押し負け、大爆発が起きた。

 

「あちゃー、こりゃ参ったなぁぁ……」

 

ルーカスが頭を掻きながら状況を把握する。

 

「ルーカスー!!!!」

 

その時ミアが隙を付きルーカスに仕掛ける。

 

「おっと、ミアが居たか。悪いけどもうあんたには殺す価値もないよ、引っ込んでな」

 

ルーカスはゾイの方へミアを投げ飛ばし、ゾイはミアを思いっ切り殴り飛ばし、ミアは後方へ飛ばされてしまった。

 

爆発が起きた場所から煙が消えると、そこには無惨に倒れている翼とマリアの姿があった。

奏は翼をじっと見つめ、歯を食いしばる。

 

「翼……アタシのせいで、助けてあげられなかった……ごめんな……ほんとに…ごめん………」

 

すると、目線の端に上から落ちてくるクリスの姿が見えた。

 

「クリスッ!!」

 

奏は走って、クリスを受け止める。

 

「ゴホッゴホッ……クッ……ソ……体が…動かねぇ………」

 

「待ってろ!今手当てを…………ッ!!」

 

既にクリスの体からは古傷から血が溢れ出ていて、目からも口からも血が出ていた。

 

「無駄だ……あたしはもう時期死ぬ……」

 

クリスは息を切らしながら無理矢理声を出して喋った。

 

「バカヤロ!!そんなのアタシが許さねぇ!!クリスは何としてでも助けてやらァ!!」

 

「無理言うな……」

 

「エルフナインのとこに持っていく!お前が死んだら切歌や調はどーすんだよ!!」

 

「……………」

 

「クリス……?おいクリス!!!」

 

奏の呼びかけにクリスはもう反応しなかった。

クリスが死んだと奏は思いたくなく無我夢中でクリスを抱えて走った。

 

小屋に戻るとエルフナインにクリスを預けるとエルフナインは驚愕し急いで応急処置を行った。

 

調もその姿を見て、目を丸くしていた。

 

「はぁーい、どーもー」

 

その時ルーカスが窓から姿を現す。

 

「クソ!次はなんだッ!!」

 

奏は怒りをルーカスにぶつけて言う。

 

「おぉ、怖い怖い。悪いけど調は持ち帰らせてもらうよ、じゃあねぇぇ」

 

ルーカスは調の手を強引に掴むとそのまま姿を消えてしまった。

 

「調………」

 

「クリスさん…応急処置を行いましたが、心臓が停止しています……人工呼吸や心臓マッサージをしてみないと……」

 

そう言われると奏は心臓マッサージと人工呼吸を繰り返した。

 

「クリス……頼むから戻ってきてくれ……」

 

エルフナインは両手を組んで祈るように見つめる。

 

ドクンッ

 

と心臓マッサージをしていた奏の手に感覚を覚えた。

 

「動いた……」

 

エルフナインはすかさず様態を確認する。

 

「どうやら一命を取り留めることが出来たみたいです…ですが、意識が戻るかは……」

 

「あぁ、死なないだけよかった。後はアタシに任せな……クリス……」




ご覧いただきありがとうございます。
この回は一段と暗い話となりました。
翼さん、マリアさんはクリスの絶唱により死亡。
絶唱をしたクリスは意識不明。
調はルーカスに連れ戻される。
と言ったいい事なしの回となりましたが、ちょくちょくのんびりとしたひびみくシーンを入れるので、そのシーンを心の癒しにして頂けると嬉しいです。


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【10話】続く襲撃

この話は10話となっております。


「ルーカス、おかえりなさい」

 

料理を作っていた未来が帰ってきたルーカスを迎えた。

ルーカスの右手にはダラっと力が抜けて意識もない調が居た。

 

「………」

 

未来はそれを見て、心配そうにルーカスに聞いた。

 

「調ちゃんだけ……?」

 

「あぁ、つばマリはクリスに殺された」

 

「そんな……響には言わないでね…」

 

「そのつもり」

 

「あ、そうだ。サンドイッチ作ったの、お腹空いたら食べて」

 

「ありがとう」

 

ルーカスは未来の作ったサンドイッチが乗っている皿を受け取り、自分の部屋へ戻る。

 

「未来ー?」

 

「あ、響。サンドイッチ作ったんだ、どう?食べない?」

 

「食べる食べる!!」

 

響は未来の料理を食べている間に未来は片付けをする事にした。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「さてと、お持ち帰りした調を改造しなきゃ」

 

「……離してッ!」

 

「それは出来ないなぁ、だって調は改造しなきゃいけないからね」

 

「改造……?」

 

調は手錠を掛けられ、その手錠を吊り下げて手が頭の後ろよりちょっと上に来るように拘束した。

 

「まずは第一段階ねー」

 

ルーカスはみんなの前で見せたマインドコントロールの波のようなものを調だけに掛ける。

 

調は一瞬操られそうになったがなんとか自我を保つ。

 

「私はもう……そんなので操られない……!」

 

「じゃあ効力あげるよー」

 

ルーカスから発せられる波紋は次第に細かくなり調を襲う。

 

「ぐっ……まだ、耐えてみせる……」

 

「んー、しぶといな……もうめんどくさいから全力でやろ」

 

ルーカスは今よりも50倍以上の威力の波を調に当てる。

 

「いや、まって……やだ…おかしくなる…やだやだやだ…」

 

「ほーらー、早く諦めなよ」

 

「うわぁぁぁぁぁ!!!」

 

調が叫ぶとダラッと力が抜けたようで、手だけが上に吊るされてる状態になった。

 

「よし、後はずっと浴びせてれば洗脳されるっしょ」

 

ルーカスはそう言うと、マインドコントロールの波が発せられるスポットライトのような機械を使って、永久的に調に向かって当て続けることにした。

 

「ひびみくの出番だからね、出番来るまで浴びててよ」

 

そう言うとルーカスは部屋から出ていこうとした。

 

「…や…まってぇ……止めて行ってぇ……頭がおかしくなるぅ……」

 

「その為にやってんのに止めたら意味無いでしょ」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ひびみくー」

 

「あ!ルーカスちゃん!」

 

「つばマリは遠征に出てもらったから今度は君達の出番だ」

 

「おぉ!やったね!未来!」

 

「もー響はしゃぎすぎ」

 

「クリスは絶唱を使って寝込んでる。ミアは私しか攻撃して来ない、切歌も重体。つまり今は奏しかいない、こんなチャンスないでしょ?」

 

「確かにそうね…」

 

未来が考えているように言うと、響が早く行こうと急かしてくるため、未来を含めルーカスも行く準備をした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「奏さん!」

 

「なんだ…?」

 

紅茶を飲んでいた奏の元にミアが近づいてくる。

 

「ルーカスが!恐らく響さんと未来さんを連れて…!」

 

「分かった、向かおう」

 

奏はそう言うと紅茶をテーブルに置き、扉を開く。

奏は小屋に行く経路にある崖の上からルーカスの出没を待つ。

 

「あれかも!」

 

ミアが指した先には3人の集団が居た。

 

「先手必勝とか言うやつだな」

 

そう言うと奏はイグナイトになり、槍をルーカス目掛けて投げる。

 

「ん?」

 

ルーカスは槍の存在に気づき落下地点から遠ざかる。

地面に突き刺さった槍は煙を立てて勢いが止まっていた。

 

「おっかないなぁ」

 

ルーカスは槍を持って呟くと、槍を投げ返す。

しかし、その槍は奏の思っている以上に速度が速く、ギリギリ対処するほどだった。

 

「っぶね…!」

 

「ひびみく、よろしくね」

 

「はいさー」

 

「私は小屋の方に偵察してくるね」

 

「おーけー、よろしくな未来」

 

そう言うと未来は走って小屋の方を見に行った。

 

「ガングニール対ガングニール…見ものだねぇ」

 

ドォォンッ!

 

と言う轟音と共に光の槍のようなものがルーカスの胸部を貫通する。

 

「なっ……、誰が……」

 

「ったく、なんで俺が助けないと行けないんだ……」

 

小屋の前にエルフナインが立っているのが見える。

 

「いや、あれは…キャロルちゃん……?」

 

「どうやら、エルフナインにある俺の記憶を復元して、一時的に俺が表に出ることを許してくれたらしい……しっかし、呼ばれたと思ったら仲間を助けろって……」

 

エルフナインの姿をしたキャロルは頭を掻きながら言った。

 

「クソ………不意打ちとはね……」

 

「あまり余裕見せまくるといつか自分に降り掛かるぞ」

 

キャロルはそう言うと小屋の中に入ろうとした。

その時、姿や気配など全て消していたゾイがキャロルを襲う。

 

「はぁ…攻撃する時に気配をバリバリ出してどうする……」

 

呟いたキャロルは振り返り、黄色い光線の様な物を飛ばした。

あまりの速さにゾイは能力を展開する事が出来ずに、そのまま体が倒れた。

 

「ゾイッ!!」

 

膝をついて、胸部を抑えながらルーカスは叫ぶがピクリとも反応しなかった。

 

「ん……ま、念の為心臓潰しとくか」

 

キャロルは右手をゾイに照らし合わせその手を握り締める。

その途端にゾイの体から血が噴き出した。

 

「お前……ゾイを殺しやがったな…」

 

「お前こそ、翼とマリアはほぼほぼお前のせいだろうが」

 

その瞬間にもガングニールとガングニールのぶつかり合いは始まっていた。

 

「はぁぁぁッ!!」

 

奏が声を上げながら迫ってくると響は拳で奏に猛攻撃を行うが、全て槍で防がれ、奏が槍で振りかざすも響は拳でやり合っていた。

 

「奏さん!目を覚まして!!」

 

「それはこっちのセリフだな、何故お前はアタシ達を狙う」

 

「それは殺すためだよ」

 

響は途端に声が低くなる。

何かを感じ取ったのか奏は警戒心を強く抱く。

 

「じゃあなんでお前達はアタシらを殺してなんのメリットがある?」

 

「メリット…?そんなの、世界が穏やかになる、平和になる、争いも何も無くなる…」

 

「今の平和じゃ物足りないと言いたいのか?」

 

「うるさい!!うるさいうるさい!!」

 

響はそう叫ぶと、姿が赤黒いオーラに包まれた。

ガルルッと呻くと奏は響が希に起こす「暴走」状態だと悟り、槍を構える。

 

「ギャアアアアア!!」

 

暴走した響が手を上げるとその手は奏に向かって、鋭く当てに来た。

しかし、それをガードしたのは奏ではなくキャロルでも無い。

 

「お前は……」

 

茶色いマントとフードを被った少女が響の拳を止めていた。

 

「暴走状態になるなんて、何を思ってたんだか……」

 

するとフードの少女は掴んだ響の手を投げ飛ばすと響の体も一緒に付いて響自体がフードの少女によって投げ飛ばされた。

 

「お前は何者だ……この間も居ただろ……」

 

「私は、中立の存在だよ…」

 

 

 




ご覧頂きありがとうございました!
ずっとこの話は戦い戦い戦いと言う話です、どんだけ好きやねん()
今回も出てきましたフードの少女、そして復活しましたキャロルちゃん、なんか色々やばい調。
今回はこんな所を中心となっております。


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【11話】月とキャロル

この話11話となっております。


「響、そろそろ目を覚ましなよ…」

 

フードの少女は叫び狂う響に体制を低くして走り込む。

そして前につんのめるようにすると、上に上がった足を響の頭へ踵落としのように振り下ろす。

フードの少女は縦に一回転し、響をノックアウトにさせた。

 

「奏、響をよろしく」

 

「おいお前!一体何者なんだ!!」

 

そう言われるとフードの少女は調にやった時みたいにフードを少しだけあげ、奏だけに顔が見えるようにして、人差し指で微笑んでいる口元を当てる。

 

「お前は……なんでここに…」

 

「内緒…」

 

そう言うとフードの少女は木々の中へと溶けていった。

 

「………いてて…」

 

「おい、大丈夫か?」

 

「ッ!!触るなッ!!」

 

「響……?」

 

気が付いた響は奏の手を薙ぎ払うように手を退け、距離を取った。

 

「殺す相手に助けられてたまるか……!」

 

「まだ目覚めてないのかよ……」

 

「奏さんは、私が殺してやるッ!!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「このクソがッ!!」

 

ルーカスは胸部に槍を刺されるがその槍を抜き、キャロルに反撃を仕掛ける。

 

「お前も化け物だな……」

 

「あんただけは絶対あたしの手で殺すッ!!」

 

「あーはいはい」

 

ルーカスの有りと有らゆる攻撃をキャロルは錬金術で全て跳ね返してしまい、ルーカスはマインドコントロールを試みる。

 

「あー、あのな。この体はエルフナインのなんだから元は俺の体らしいけど、今はエルフナインのモノってことだから俺にやっても効かないんだけど?」

 

「クソ、チートめ……」

 

「それが俺のステータスだ」

 

キャロルはドンッと胸を張って主張した。

 

「う……致し方ない…響ッ!!未来ッ!!撤退だッ!!」

 

「えぇぇ??は、はーいちょっとまってぇぇ」

 

響が奏との戦いを放り投げると響はルーカスが乗った車に乗る。

その後も小屋の方から駆けつけた未来も車に乗る。

そして3人は猛スピードでその場から離れた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「すまん、これは予想外すぎた……もっかい体制を立て直してから行く準備をしよう」

 

ルーカスはそう言うと調の居るルーカスの部屋にある拷問室へ向かった。

 

「さーて、どうなってるかなー?」

 

調はダラっと力が入っていない様子で、ルーカスは調が生きているか確認した。

調は生きていているが、マインドコントロールに頭がおかしくなってしまっていた。

 

「おーい、調ー?」

 

「あ、ルーカスちゃん」

 

ルーカスは途端に調に蹴りを食らわせた。

すると調は笑い出していた。

 

「フフフ……ハハハッハッハハッハハハッ!!もっと!もっと!もっとやって!もっとぉぉ!!」

 

「あ、完全にぶっ壊れてんな。まあこのくらいがいいか」

 

ルーカスは光線のライトを消すと調に問いかけた。

 

「理性あるかお前」

 

「はぁ……はぁ……早く……何かを壊させてぇ……」

 

「あーあー完全に終わってんなぁ」

 

ルーカスは調の前に立ち、調に言い聞かせる。

 

「いいかー、あたしや響、未来には手を出すなよ、あとここのものもな。他に切歌、クリス、奏、エルフナインはいっくらでも壊せ」

 

「いいの……?」

 

「あぁ、ただしここにいる人達以外な、切歌、クリス、奏、エルフナインだけに限る。それ以外を壊したら今後一切の破壊を認めんからな」

 

「分かった…」

 

調が落ち着いたのを確認すると手錠を外した。

 

「ホントにいいか、これで襲いでもしたら最悪お前を殺すぞ」

 

「わかってる、理性は保ってるから」

 

「ホントだろうな……」

 

「襲わないから、切ちゃんとクリス先輩と奏さんとエルフナインちゃんだけでしょ?」

 

「ゾイが一番の出来だったから使ってたけど、調はどうかな?」

 

昔ルーカスはゾイを調のように洗脳し、ゾイを操っていた。

その前はルーカスに反抗的だったが、今になっては亡き者となってしまった。

ルーカスはキャロルを必ず殺すと胸に刻みながら調を響と未来の元へ連れていった。

 

 

 




更新遅れました!!
すみません…!
後書きも適当になります!今回だけ…
感想も返信出来ていませんが読ませていただいているので、時間が空きしだい返信致します!!


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【12話】フードの少女

この話は12話となっております


小屋で1人淡々と紅茶を飲む奏は、紅茶の水面を眺めながら今後の事を考えていた。

 

「クリスは意識が無い、切歌は足を貫かれて立てることすら出来ない、翼とマリアは塵となった、響はルーカスの手に、未来は…知らん、調は連れて行かれた、アタシはどうしたらいいんだ……」

 

木の椅子の上で胡座をかきながらもう分からんッ!と叫びテーブルにマグカップを置いた。

完全に動けるのはこっち側はアタシ、天羽奏とミア、そしてエルフナインという名のキャロルの3人。

それに対して向こう側はルーカス、響、未来、調もそうだろう、姿を顕にしないもう2人の特殊部隊の奴ら。

かなりの不利だ。

どうせそろそろルーカスがまた誰か連れてここに来るだろう、その時誰かをこっちに呼び戻さないとかなり全滅する可能性が高くなる。

 

「考え事か」

 

悩み考えていた奏の後ろにキャロルがエルフナインの姿で立っていた。

 

「お前は余裕そうだな……」

 

「まぁな、シンフォギア纏ってないやつに負けてたまるかって思うのは当然だ」

 

「でも響とか未来いるだろ」

 

「誰がシンフォギア装者と戦うっつった?俺はゴメンだぞ」

 

「なんでだ、こっちの負担も考えてくれてもいいだろ」

 

「1度装者に殺されそうになった俺が装者を助けるって思うこと自体が馬鹿だ、ただ言わせてくれ、ルーカスは任せろ」

 

キャロルは窓を見つめながら最後に鋭い声から緩い声に一瞬だけ変わった。

 

「あぁ、頼んだ」

 

奏は再度紅茶を口に含んで、席を立った。

そして、何も言わずに2階へ上がってしまった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「いいかー?調、約束忘れてないだろうな」

 

「大丈夫だって、切ちゃんとクリス先輩、奏さんとエルフナインちゃんだけでしょ?」

 

「あぁ、それ以外ぶっ壊したら殺すからな」

 

「はーい」

 

ルーカスは調を連れて小屋の近くまで来ると、木の影に姿を隠した。

 

「んま、大丈夫か」

 

ルーカスはそう言うと、小屋に近づく。

その途端…

 

プチッ

 

と音が鳴り爆発が起こる。

ルーカスは調を守るように背を向けた。

 

「…だぁ、ビックリした!」

 

爆発が収まったことを確認し、ルーカスは調を離した。

 

「あ、ありがとう」

 

「咄嗟の判断だ、目眩しみたいな事をされたか…」

 

「ん………?」

 

ルーカスが右の森からなにか感じ取り、目線を向けると光の矢の様なものが飛んできていた。

ルーカスはそれを右手でしっかりと掴み、矢を折った。

 

「同じ手にはかからないぞ、錬金術師」

 

ルーカスは調に奏の行方を探せと言うと、自分の事に集中した。

 

「そろそろ出てきたらいいんじゃないか」

 

ルーカスがそう声を上げると、木々に隠れていた小柄な錬金術師は姿を現した。

 

「お前は、何故人を操って自分のモノにする」

 

「何故かって?そりゃあ、操ればなんでも言うこと聞いてくれる、私の人形に出来るからだよ」

 

「似てるな、俺と……」

 

キャロルは世界を壊そうとした時の事をエルフナインが覚えている限り思い出した。

つまり、今のルーカスのマインドコントロールを使う理由は若干オートスコアラーと重なっていた。

そして、ルーカスとキャロルの睨み合いが始まった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「キャロルのやつ、始めたみたいだな……」

 

「みィつけたァ…!!」

 

岩場に隠れていた奏の上から調が顔を出した。

その顔は狂気に染まり、奏の知っている調と同じ人だと思えなかった。

 

「調……」

 

「これ壊していいんだよね?」

 

彼女は今にでも殺したいという欲求で満たされていた。

そして、彼女は奏に突進してくる。

 

カキンッ!と言う金属音と共に、金属同士がぶつかり合った。

しかし、それは鋸と槍では無く鋸と(つるぎ)だった。

奏の前にまたフードの少女が姿を現した。

 

「これじゃ、限りがない……」

 

調はいまいち状況が把握出来ていなかったが、数秒たった後理解したような顔をした。

 

「またお前か………」

 

「またお前なのかぁぁぁ!!!」

 

鋸を回転させながらそのまま押し出す。

 

その状況に感づいたルーカスは調が指定した人以外の人を殺そうとしていたため、調の元へ向かった。

 

「おい、錬金術師。少しだけ時間をくれ、その後全力で相手してやる」

 

「いいだろう」

 

キャロルに許可を得たルーカスは急いで調の元へと走った。

 

「死ね!死ねぇ!!」

 

鋸の猛攻にフードの少女は片手剣のようなもので一つ一つカバーしていく。

 

「調ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

その時、走ってきたルーカスが調の頬に一発かました。

 

「おい、殺そうとしてんじゃねぇよ」

 

「だって、中の人がクリス先輩か切ちゃんって可能性があるでしょ!?」

 

「いや、ないな」

 

「なんで!?そういい切れるの!!」

 

どうやらルーカスはフードの少女の正体を知っているようだった。

調と奏両方フードの少女の中の人を見たはずだが、調そんな事忘れて殺すことに夢中になっていたのだ。

 

 

 

「おい、そろそろ姿隠さなくてもいいんじゃないか、()()

 

そう言われるとフードの少女はゆっくりとフードを外した。

 

 




ご覧いただきありがとうございました!
今回は最後にフードの少女の正体が分かると言うことでサブタイトルを『フードの少女』とさせて頂きました!
そして若干キャロルとルーカスの間が縮まるという現象も起きています(笑)
全然出番の無いミア、そのうち登場させます()


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【13話】それぞれの戦い

あけましておめでとうございます(*・ω・)*_ _)
投稿遅れまして申し訳ありませんでした!
この話は13話となっております!


「……いつから?」

 

「最初現れた時から」

 

「ふーん、バレてたのねぇ…」

 

フードを脱いだ未来は奏の方へ歩き出す。

 

「お前、マインドコントロールが効いていなかっただろう?」

 

「正確にはルーカスちゃんが拠点に連れてきた時ぐらいに解けた」

 

「そうか、私は何度も操ろうとしたが変わる様子は無かった。何故だ?」

 

「さぁ、私は響さえ無事ならいいと思っているからかもね」

 

未来が調を見つめると調はルーカスに話しかける。

 

「ねぇ、どうせ未来敵でしょ??壊しちゃダメ……?」

 

「ダーメ、今の状態はまだ未来はこっち手の中だ響がいる限りな。だからここで未来を敵にすると響までも敵になっちまう可能性がある」

 

「そんな事言ってると…………殺されるよ」

 

調が指を差したところには未来が奏の槍を持ってルーカスに飛び込んで来る姿があった。

 

「なるほど、もう未来は仲間じゃないと……」

 

「私は1度だってあなたに従ったことはない……」

 

ルーカスは決意したのか目を瞑ると何でもしてくれと言うように手を広げた。

その姿に甘えた未来は槍をルーカスに向かって投げつけた。

投げた槍は一直線にルーカスの頭へ飛ぶ。

そして、額に刺さる一歩手前で………

 

「死ぬなんて認めねぇぞルー」

 

「そうだ、あんたが居なくなったらあたし達困るんだよ……」

 

その時、とある男女の2人が槍を食い止めた。

 

「イーサンに、エヴリンじゃんか。まだ出てくる時じゃないだろ」

 

「てめぇが死にそうな絵が成り立ってたってのに出る時じゃないとかてめぇは死ぬつもりだったんかよ?」

 

「いいや、死ぬつもりじゃなかったけど」

 

「やっぱりあんたよく分からないねぇ」

 

イーサンが男の方でエヴリンが女の方で、どうやらルーカスの仲間の様だった。

 

恐らく姿を現していない2人だろう。

奏はそう捉えると未来がそっと寄ってくる姿が見えた。

 

「奏さん…」

 

「どうした?」

 

小声で話しかけてくる未来に合わせて奏も小声で応じた。

 

「力を貸してください…」

 

「何をする気だ……?」

 

「ルーカスちゃんを目覚めさせます」

 

「どー言うことだ…?」

 

「ルーカスちゃんは自分の持っている力に操られています」

 

「そんな間抜けな話あるのか?」

 

「ルーカスちゃんは普段は優しい仲間想いの人なんです、だから私をまだ仲間だと思っていてくれた。きっと昔なにかのトラウマで仲間を失いたくないんだと思います」

 

「んでもなぁ、協力はしてやりだけど具体的にどーすりゃいいんだ?」

 

「まずはあの二人組のイーサンとエヴリンって言う人たちをルーカスちゃんから離れさせないといけないですね…」

 

「……話は聞かせてもらったぞ」

 

未来と奏が小話をしていると後ろから低い声が聞こえた。

二人揃って後ろを振り向くとそこにはキャロルが腕を組みながら立っていた。

 

「あの2人は俺に任せな」

 

「キャロルちゃん大丈夫なの…?」

 

「ふん、お前達に心配される筋合いは無いな、俺は死なない。これはフラグでもなんでも無い、いいか、俺があの2人を引き付けている間にお前は調の相手だ」

 

と未来を指さして言う。

 

「え?ちょっと……」

 

「んでお前がアイツの相手しろ、アイツを殺すつもりでやれ」

 

「キャロルちゃん、私たちはルーカスちゃんを助けようと……」

 

「分かってる、この間俺がアイツに攻撃を仕掛けた時に確かに急所に当てたはずだったがアイツは何事もないように動きやがった。つまりアイツは殺すつもりでやったとしても死ぬ事はない。俺から話す事は終わりだ」

 

「キャロルちゃん……」

 

「お前、案外優しいじゃねぇか!」

 

「ふ、ふんっ…ただ俺は気に食わないだけだ……」

 

キャロルは頬を赤らめて言った。

 

「死ぬんじゃねぇぞお前達は……」

 

キャロルはそう言うとイーサンとエヴリンの2人に錬金術で攻撃をし始めた。

 

「あ?いい度胸してんなあのチビ錬金術師」

 

「私達に攻撃を仕掛けるとはねぇ」

 

「忠告しておこう、痛い目見るのはお前達の方だ」

 

「まさかダウルダブラを使おうってか?使ったところで俺らには勝てねぇよ」

 

キャロルはダウルダブラの存在を知っていた事に多少驚いていた。

だが魔法少女事変を起こしたぐらいだ、知られててもおかしくはない。

 

「ダウルダブラなど、使うまでも無いな。エルフナインがくれた体だ、そう簡単には負けん」

 

そう言うとイーサンがキャロルに向かって銃弾を放った。

キャロルはその銃弾を錬金術で受け止め、放たれた弾は地面にカランッと音を奏でて落ちた。

 

「今のうちだ未来、調を頼む」

 

「え、う、うん」

 

その瞬間に調が未来に向かって走り始めた。

 

「ごめんね、調ちゃん、少しの間大人しくしてて……!」

 

未来は走ってくる調の右足を引っ掛け調の体は前につんのめる。

未来は調の頭を掴み前ではなく後ろへ引っ張った。

軸となっていた左足を思いっきり蹴り、バランスを崩したところでバナナの皮を踏んだように滑らせるように足を掛けた未来はそのまま調の頭を地面に叩きつける。

 

「とりゃぁああああ!!」

 

頭から落ちたのも当然の衝撃を喰らった調はグタッと動かなくなった。

調の心臓辺りを確かめると鼓動を打っている音が聞こえたので、予定通り気を失わせることが出来た未来は、すぐ様キャロルの元へ向かう。

 

 

「いつまで錬金術が持つか見ものだなこれはぁ!」

 

イーサンとエヴリンは二人揃ってキャロルに片手銃のようなものをリロードしながら打っている。

その銃弾はキャロルに向かって飛んでいくが、キャロルは何とか錬金術で抑えていた。

 

「あんなデカい口叩いておいて何も出来ないのかい?これは飛んだーッ!!」

 

エヴリンの様子の変化に気付いたイーサンは目線を向けるとそこには未来が立っていた。

 

「後ろがガラ空きだよ、余裕を見せる暇があるなら背後の敵にも気付かなきゃね」

 

どうやら未来は手刀でエヴリンの後頭部に衝撃を与えたようだ。

しゃがみ込んだエヴリンの背後に居た未来はピョンピョンと2回ほど飛んだ後エヴリンの頭を掴み持ち上げた。

 

「てんめぇ!何しやがる!!」

 

イーサンが未来に向かって銃弾を放つが、その弾はキャロルの錬金術に寄って防がれた。

 

「俺を忘れるな」

 

イーサンはクソがッ!と叫びながら未来に向かって連射してくる。

しかし、それ全てキャロルが防いでしまう。

 

その間にも未来が持ち上げた頭を離して、左足を軸にクルッと回ると上げた右足をエヴリンの腰辺りに直撃し、勢いよく木々の中へ飛ばされた。

 

「回し蹴りってやつだなアレは…」

 

キャロルがボソッと言うと未来がキャロルの元へ走ってくる。

 

「キャロルちゃん、大丈夫??」

 

「手を出すなと言ったのに、お前は…」

 

「まあまあ、2対2の方がいいでしょ?」

 

「俺はまだ攻撃を受けているんだぞ」

 

話している間にもイーサンが銃弾を放っていた。

それをキャロルずっと食い止めていたのだ。

 

「じゃあ終わらせればいいんじゃない?」

 

「お前なぁ……んまぁいいか……」

 

キャロルはそう言うと食い止めていた錬金術の盾のようなものからその大きさ分程の特大レーザーをイーサンに向かって放った。

 

「え、ちょまて………!」

 

そのレーザーから逃げる事も出来ずにイーサンはレーザーに飲まれた。

 

「キャロルちゃん凄いね!」

 

「少しばっかり使いすぎてしまったな、疲れた……」

 

「後は奏さんに任せよう……」

 

「あぁ……」

 

 

しかし、未来もキャロルも奏とルーカスの戦いを見て、瞬時に同じ答えが出た。

 

奏は勝てない

 

 

 

 




ご覧頂きありがとうございます!
新年初めての更新となります!
大幅に遅れてしまい申し訳ありませんm(_ _)m
今回は新キャラ登場と退場のお知らせでした!
次作の物語は今構成中なので、出来れば今週中に第1話かプロローグを投稿出来ればいいなと思っております!


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【14話】それぞれの想い

この話は14話となっております。


「はぁぁああッ!!」

 

奏はルーカスに攻撃の隙を与えないように攻撃し続ける。

しかし、ルーカスは奏の槍を突き出す位置を的確に読み取り当たらない角度へと動いていた。

 

「かなりいい手だけど、それじゃあ私には勝てないねぇ」

 

ルーカスは微笑みながら攻撃を交わし続ける。

 

「ならこれはどうだッ!」

 

奏は高く飛び上がり槍を投げ付けるとその槍は分散し、拡散弾の様になりルーカスに襲う。

 

「え、まってそれは聞いてない…!」

 

ルーカスは途端に逃げるが間に合う訳もなくその槍の拡散弾はルーカスの体へと突き刺さる。

ルーカスはグハッと声を上げながらそのまま倒れてしまった。

 

「はぁ、こんなあっさり勝てるとはな……」

 

奏はルーカスが動かない事を確認すると未来達の元へ歩き始めた。

 

「お前ッ!後ろだッ!!」

 

その時突然キャロルが声を上げる。

その声を聞いた奏は後ろをふり向くとそこにはルーカスの姿があった。

 

「ナぁニカっテニオワラセテンダ……!!」

 

ルーカスは呻き声のような声で話すと奏の腹部を相当な力で殴り付けた。

 

「なっ………」

 

奏の体はそのまま地面に叩きつけられ滑りながら倒れる。

 

「ってぇ……やってくれるじゃんかよぉ……」

 

普通ならば気を失っているレベルだが、奏はなんとその状態で立ち上がる事が出来ていた。

これには流石のキャロルも驚いていた様で目を見開いていた。

 

「アタシだって全力で行かせてもらおうか…」

 

そう言うと奏は胸にあるペンダントに手を出した。

 

「イグナイトモジュール、ダブル抜剣ッ!」

 

「奏さんッ!その状態でダブルは危険すぎですッ!!」

 

奏の無茶に未来も声を上げ始める。

 

「ここでアタシが頑張らねぇとな……クリスと切歌が目覚めた時に合わせる顔がねぇよ…」

 

「だからってッ!!」

 

「みんなアタシの前でやられてんだッ!!アタシの力不足で2人共やられちまった…なら、アタシが2人分まで戦果を残さねぇと行けないんだよッ!!」

 

奏はそう言うとルーカスに突進する。

 

「はぁあああッ!!」

 

奏は槍を使わずに拳でルーカスに攻撃を繰り出した。

ルーカスはやはり見切っている様でそれを手で受け止めてきた。

 

「おらぁぁああッ!」

 

奏は手で受け止められた後の事を想定していたらしく足でルーカスの腰の辺りを蹴り付けた。

しかし、ルーカスはピクリとも動かない。

 

「クククァ……」

 

完全に覚醒と化したルーカスの力は圧倒的でイグナイトのダブル抜剣をした奏でさえ叶わなかった。

 

「なんでだよ………まだ力不足だってのかよぉぉぉッ!!」

 

再び槍で攻撃し始めるがルーカスには当たらない。

ルーカスが繰り出す攻撃は必ず的中し、奏だけがダメージを負っていく戦いが続いた。

 

そして、奏の限界が来る………

 

イグナイト状態が解かれてしまったのだ。

 

「キャロルちゃん!私達も助けに行こう!」

 

「あぁ、その方が……」

 

「来るんじゃねぇ!!」

 

未来とキャロルはそろそろまずいと感じ奏を助けに行こうとするが奏自身が手助けを無用とした。

 

「なんで!!奏さん!そのままじゃ死んじゃう!!」

 

「これはアタシの戦いだ……たとえ無理な相手でも、勝ち目が無い相手でも戦い続けるのが天羽奏だッ!!」

 

「お前…死ぬ気か……?」

 

「はは、それがアタシの運命ならそれも有りだな…」

 

奏がキャロルの問いに答えると未来が叫ぶ。

 

「生きるのを………諦めないでぇぇぇ!!!」

 

この空間が一気に凍り付いた。

 

「奏さんが響に言った言葉でしょ!?自分で言った事を自分で諦めてどうするの!?」

 

未来の聞いた事の無い怒鳴り声に奏は驚くが、実際この状態では奏が勝てるという確率は0に近い。

それはここにいる誰もが分かっていた。

 

「モウ………オワリニシヨウ……」

 

少しだけ待っていてくれたルーカスもそろそろ動き始める。

ルーカスは奏に向かって歩き始めた。

 

「奏さん!!」

 

「アタシは……もう……」

 

「奏さん……!」

 

ルーカスはもう奏の真後ろまで来ていて今にも奏に手を出そうとしていた所だった。

 

 

 

その時、ルーカスの背後に人影が見える。

バサッ

 

「ルーカスちゃん、もうやめよう?この人達は国の人じゃない、こんな事してもなんにもいい事なんてないよ……」

 

ルーカスの背後には響の姿があり、後ろからルーカスを優しく抱き締めていた。

 

「響!?」

 

いち早く反応したのは未来だった。

響には伝えていないはずだし、マインドコントロールも解けていないのに何故と頭の中で必死に考えてしまった。

 

「未来、私も未来と同じぐらいの時にマインドコントロールは解けていたんだよ。でもかかってるフリをした」

 

「あの暴走の時も!?」

 

「うん、あれは無茶だったけどね…」

 

響は苦笑するとルーカスに再び話しかける。

 

「ルーカスちゃんが辛かったことや過去に会ったことは全部ルーカスちゃんの能力に教えてもらったよ」

 

「どういう……こと………」

 

「未来なら分かると思うけどルーカスちゃんのマインドコントロールという能力は見せかけ、ルーカスちゃんの能力はマインドコントロールなんかじゃなくて、《自分の記憶を他人に共有し、自分のことをルーカスの仲間だと思ってしまう能力》なんだよ」

 

「そんな、ピンポイントな能力があるのか……?」

 

歯を食いしばりながら立ち上がった奏が問う。

 

「ルーカスちゃんの過去を知れば納得した。ルーカスちゃんは過去に、"国に仲間を全員殺された"んだ」

 

未来は知っているため頷いていたが、奏とキャロルは初耳だった為驚愕していた。

 

「ルーカスは表では強いキャラを演じているけれど、かなり悲しんでたんだと思うよ」

 

未来が響の話に合わせて語る。

その時ルーカスの力が抜け、腰が抜けたようにその場にしゃがみこんでしまった。

 

「ルーカスが知らない間に誰か分かってくれる人を求めていた、そして仲間が欲しかった。だからこんな能力を使えるようになったんでしょ?」

 

ここで初めて素のルーカスが表に出た。

 

「やっと………やっと………分かってくれる人がぁ………」

 

ルーカスは大粒の涙を流しながら手を伸ばしていた。

 

「ルーカスのマインドコントロールが解かれた瞬間にルーカスを助けてあげたいと思っちゃったんだよね、きっと響もそう」

 

未来がそう言うと響は頷いた。

 

「ルーカスはとても仲間思いだから翼さんとマリアさんの看病もしているでしょ?」

 

未来の口からその言葉が放たれると一番早く反応したのはやはり奏だった。

 

「翼は!!生きているのか!?」

 

翼とマリアは絶唱の攻撃を受けたあとすぐにルーカスが拠点に運び出し、1人で看病をし続け意識も戻り、安静にしているとルーカスから説明された。

 

「はぁ…良かった……」

 

「ったく………仲間が欲しいなら最初っから言えっつーの………いてててっ」

 

小屋の中からクリスがミアの肩を借りながらも歩いて出てきた。

この戦いの間ミアは全力でクリスと切歌の手当てをしていたらしい。

 

「クリス!!大丈夫なのか!?」

 

「なんとか、な。まだ戦えそうに無いな………」

 

その後から体全体を包帯で包まれた状態の切歌も出てきた。

 

「調に殺されかけたのは驚いたデスよ…!」

 

切歌は壁に手を付けなんとか歩いているような状態だった。

 

「こんな事しなくたって分かってくれる人は居るんだよ、ルーカスちゃん…」

 

響と未来は涙を流しながら手を伸ばしているルーカスの手を握った。

 

 

 




ご覧頂きありがとうございます!
そして更新遅れてしまって申し訳ありませんでした!!!m(*_ _)m
今回は奏vsルーカスの戦いと戦いの終わりをメインに書かせていただきました!
ひっさびさに登場したクリスと切歌、まだ戦える体ではありませんが、後々復活していきます。
ミアは完全にモブですね。書いている間に「あ!!ミア居たな!!」と作成者ながらも忘れるということになってしまいました(ルーカスのキャラが濃すぎるせいですねはい)

そろそろ第1章(?)が終了し、第2章が幕を開けます。
規模はドンドン大きくなっていき、構成上では第3章で完結となっています。(もしかしたら4章行くかも)
他にも、新作の物語も書き始めました!
注意書きをしっかりと読んだ上でご覧頂けると嬉しいです!
それでは( ´ ▽ ` )ノシ


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【14.5話】ルーカスの過去

こちらは14.5話です。今回は原作キャラ出てきません。


ー私は豪華な家庭の次女としてこの世界に誕生した。

豪邸で有意義な暮らしをしていた私、ルーカスは6歳になったぐらいのころに両親に捨てられた。

両親曰く私は必要では無かったらしい。

両親は私の姉をとても可愛がり、私には目を向けてすらくれなかった。

町外れの貧しい村へと捨てられた私はその村でも、親元が分からない子供だといじめられた。

生きている意味を忘れかけた頃、私の目の前に私と同じぐらいの少女が手を伸ばしてくれた。

名前は「シーナ」小柄で今にもポキッと骨が折れそうな見た目の子だったが、思っていた遥か上を行く強さで、私は少女に抵抗したつもりが投げ返されてしまっていた。

 

「あなた、私と生きる気無い?」

 

透き通るような綺麗な声で私に手を差し伸べてくれた。

こうして私はこのシーナという少女にいじめが絶えない生活から救ってくれたのだ。

 

一緒に過ごしているとシーナの事が少し分かってきた。

いざとなった時はとても頼りになって勇敢な子だけれど若干わがままだったりする。

私とシーナはわがままを言い合いながらも互いを理解し共に成長して行った。

 

ある日、

 

「ねぇルーカス」

 

「ん?なにー?」

 

「特殊能力を使えるようになってみたいって思わない?」

 

「とくしゅのうりょく?その能力によるかなー」

 

「色々あるらしいんだよね、簡単に空を飛べたり、新幹線並みに速く移動できたり」

 

彼女曰く特殊部隊を育てる施設があるらしく、私はシーナのやりたい事について行くことにしているので行ってみるだけ行ってみた。

流石特殊部隊を育成させている場所だけあって空気の重さが全然違かった。

しかし、幸いと言っていいのか分からないけれど二人共能力の才能があると言われ、施設に通い詰め、遂には本当に特殊部隊へとなってしまったのだ。

 

「なんかノリで来てたのに本当になっちゃったね……!」

 

「2人一緒に行けるなんてね」

 

特殊部隊になると国から目的や守る物や任務に関して説明され、初めての任務に私とシーナが命名された。

14歳で特殊部隊になったのは最年少らしく特殊部隊の人からは好評の言葉を貰うばかりだった。

二人同時に特殊部隊のワッペンを付けると任務へと向かう。

任務内容は対象の人物を殺すと言うよくある任務だった。

その場には私とシーナ、隊長さんと他数人で来ていた。

隊長さんがここだ、と言うと私は昔の記憶に釘が刺されたように思い出す。

 

「………私の家だ…」

 

「えぇ!?」

 

シーナと出会う前に住んでいた豪邸そのままだった。

隊長さんからは対象はここに住んでいる人全員と聞いたため、父と母、そして姉、雇っているメイドや執事も殺すという事だろう。

 

「ターゲットは3人か、なかなかいい情報が得られたな」

 

「何を言っているんですか隊長!!ルーカスの実家ですよ!?そんな簡単に……!!」

 

「任務は任務だ、逆らう事など出来ん」

 

「そんな………」

 

シーナは私を思って、隊長さんに懸命に任務の中止を要望したが、流石のシーナでも食い止めることは出来なかった。

 

「いいんだ、シーナ。私を捨てた人なんてもう家族じゃないよ」

 

シーナにそう言うと、心配そうにしていた顔が緩く微笑むような顔に変わった。

恐らく、シーナ自身は私の家族だろうとなんだろうと殺せるけど、そのせいで私に何かあった時のことを考えて心配してくれていたのだろうと思う。

 

「じゃあ行くぞ」

 

隊長さんに言われ私達は対象の居る豪邸へと足を運んだ。

 

「あ、ちょっと待ってください!」

 

私は正面の扉を開けようとした隊長さんを呼び止める。

 

「恐らく正面には執事が居ると思うので裏の扉から入りましょう」

 

「分かった」

 

昔の記憶を辿って、屋内の図を展開する。

 

「内装を知っている人が居ると安心しますねー」

 

シーナは裏の扉まで来るとそう囁き、扉を開けた。

見渡す限り人は居なさそうだが大人数で移動するのはリスクに伴うため、私とシーナ、隊長さんで中に侵入する。

 

「恐らく母はキッチンでしょう、父は書斎だと思われます。姉は自分の部屋ですね。父と姉は2階だと思います」

 

隊長さんは分かったと呟き、恐る恐る中へと入っていく。

私は追記で執事はかなりの腕前だと伝えておいた。

それぞれ隊長さん、私とシーナという2組に分かれ任務を遂行する。

 

「〜♪」

 

私とシーナはキッチンに向かうと、キッチンから母の鼻歌が聞こえる。

 

「ここは私が行く……」

 

シーナは首を縦に振り、私は扉を開けた。

 

「なぁに?まだご飯は出来てないわよ?」

 

誰か入ってきた事には気付いた母だが、誰までとは分かっていない様子だった。

 

「楽しく過ごしてそうだね、お母さん…」

 

母は私の声に微かに聞き覚えがあったらしく体をビクッと震わせながら私の方に振り向く。

 

「………ルー……カス……?」

 

「捨てた事はもう恨んでないよ、恨んでないけれど許せはしないかな」

 

私は拳銃を母に向ける。

 

「まって!ルーカス、帰って来なさい!私はルーカスを捨てるつもりは無かったわ!!脅されていたの!!」

 

昔からの母の悪い癖、嘘をつくと口元が緩む。

それで私を騙そうとしていた。

 

パァン!!

 

「一度捨てて、また戻ってくるとかありえないっしょ」

 

母の頭にヒットさせた私はそう呟いてその場を去った。

去り際に母を見るとピクリとも動かずに血が滴り落ちるのが見えた。

 

「流石ルーカスだね、手を抜かない!」

 

「シーナには言われたくないなぁ、次シーナの番だよ」

 

シーナははいよーといい執事に出会さない気を付けて2階へと登った。

2階の廊下には隊長さんがいて、姉の部屋の前にしゃがんで準備をしていた。

 

「隊長さんに姉さんは任せて、私達は父さんのところに行こう」

 

私はそう言って書斎へと向かった。

 

父も母と同じだった。

私を見るなり震えて、帰って来いと嘘をついた。

シーナは容赦なく父の首を切断した。

 

「ルーカスの気持ちも知らないで、クソ野郎が…」

 

シーナはそう呟くとルーカスに笑顔を見せて、いっしょに廊下に出た。

丁度隊長さんも仕留めた後らしく、廊下で鉢合わせした。

メイドはシーナが広範囲の特殊能力で一掃し、残りは執事だけとなった。

 

「これはこれは、物騒な方が入り込んでいましたね」

 

エントランスに向かうと執事が鞘に手を付いて歩いてきた。

 

「ここは俺に任せな」

 

隊長さんがそう言うと前に出た。

隊長さんと執事共に刀を持っているが、特殊能力を持った隊長さんなら大丈夫だろうと言う考えが私とシーナにはあった。

 

刀同士の戦いは長期戦に及び、結果は2人同時に刀で体を突き刺され倒れて終わった。

 

「隊長さん!!」

 

「お前らはここから脱出しな、俺も後から行くから…」

 

そう言うとすぐにシーナがこの場から去っていったので私もシー着いて行った。

 

「シーナ!なんで助けなかったの!?」

 

「見たでしょ?隊長さんは心臓を貫かれていた。助かる余地は無い…」

 

「それは分かったけど!!」

 

シーナと私は外に出ると、空にヘリコプターが飛んでいるのが見えた。

私とシーナは任務終了後の帰還する方法だと思っていたが全くもって違かった……

 

空からはかなりの数の爆薬。

数百個投下されたのだ。

 

「アレって………国のヘリでしょ……?」

 

「ルーカス危ない!!」

 

次の瞬間周りの空間全てが爆発した。

勿論豪邸も爆発の被害に会う。

 

ドォォォォン!!!

 

爆音と共に暴風が吹き荒れる。

肌は熱く、今にも吹き飛ばされそうな勢いだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

気が付くと爆発は止み、爆発に巻き込まれた豪邸からは黒煙が立っていた。

 

上半身を起き上がらせると上にはボロボロになったシーナの姿が……

 

「シーナ………?シーナ………」

 

「ルーカス?」

 

爆発の前にシーナは私を庇って私が下、シーナが上と言う状況を作っていた。

 

「シーナ…!!しっかり!!」

 

「良かった……ルーカスが無事でぇ………」

 

シーナの背中は酷く赤黒くなり、何よりも皮膚が溶けているようだった。

 

「シーナ!!今手当てを!!」

 

「ルーカス……あなたに声を掛けててホントに良かった……」

 

「まって!シーナ!嘘でしょ!?死なないで!!」

 

「特殊部隊はそんなに甘くなかったよ……アハハ……ルーカスと何かやりたいって思ったんだけど………失敗だったよ……」

 

「シーナはドン底に居た私を助けてくれた、楽しい生活にしてくれた!これからも………!!」

 

「私みたいに理解してくれる人は他にもいるはず………だって、ルーカスは素直だもん……」

 

「そんな事ない!!シーナがいたから!!!」

 

「ルーカスは死なないでね………」

 

そう言うとシーナはグタッとなり、それからは2度と動くことはなかった。

その夜の空爆事件の場に1人の泣き声が響き渡った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

それから4年、特殊部隊の最年少入団をしたルーカスは今現在特殊部隊の中でダントツで一番長く滞在している。

 

シーナが言っていた理解してくれる人を求めて………

 

 

 

 




ご覧頂きありがとうございます!
今回は14.5話ということでルーカスの過去をざっくり物語で書いてみました。
これでもっとルーカスの事が分かったのではないでしょうか……()
新作はもう少しお待ちください
それでは( ´ ▽ ` )ノシ


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【15話】戦いの終わり

この話は15話、第1章最終話となっています。


ーやっと見つけた……

 

シーナの言っていた理解してくれる人が……

 

シーナの言葉を信じてよかった……

 

ルーカスはひびみくの手を握ると立ち上がり、涙を袖で拭いた。

辛うじて歩いてきたクリスと切歌はルーカスを見てニッコリとしていた。

 

「みんなありがとう……」

 

「それを言うのは、まだ早いんじゃない?ルーカスはまだやる事あるでしょ?」

 

未来がそういい指を指すと、その指の先にはルーカス自身が洗脳させた調の姿が……

 

「アレ……おかしいな………ルーカスが居ない………なら、全部壊しちゃおうかなー」

 

調はルーカスの約束を破り問答無用に攻撃を仕掛けてくる。

 

「未来!私達もやろう!」

 

「うん!」

 

ひびみくはルーカスを助けるべく走ろうとしたが、それをルーカスは止めた。

 

「これは私が原因だ。私が何とかする」

 

そういい、ルーカスは飛んでくる鋸を避け、調の身体に触れ洗脳解除した。

ドォン!と音が鳴り、調の体から紫のオーラのような物が抜けていく感じがした。

時期に調はガクッと力が抜け、眠ってしまった。

ルーカスは調を未来に預けると本当にありがとうと伝えるとその場から去ろうとした。

 

「まって!ルーカスちゃん!ミアみたいにこっちに来ない!?」

 

「ごめん、響。私は特殊部隊のエースだと言われているんだ。そのエースと呼ばれている人が響達と行動したら尚更響達が怪しまれてしまう。だから私は戻るよ…」

 

「でも!折角巡り会えたんだし!!」

 

「大丈夫、ひびみくなら特殊部隊の拠点に入れるはずだよ。私のマインドコントロールが解除されてるにも関わらず入ってたんだから。何かあったら私の部屋に来て、緊急出動がない限りそこにいるから」

 

「響、それなら大丈夫じゃない?」

 

「うん、そうだね…」

 

「寂しくなったらいつでもこっち来ていいんだぞ?」

 

奏さんが肩を抑えながら立ち上がるとそう言った。

 

「お前との決着が付いてないから逃げたら承知しねぇぞ」

 

キャロルは腕を組みながら木にもたれかかっていた。

なんだかんだキャロルはルーカスの事を気に入っているみたいで、キャロルなりに支える発言をした。

 

「いつかまた会おう!装者達!」

 

ルーカスはそう言うとその場から去っていった。

 

しかし、まだ気付いていなかった…

まだ調の洗脳が解かれていないことに……

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「これで一件落着だねー!」

 

響がクリス達を見て喜んでいると、いきなり小屋の扉が開いた。

皆は警戒するようにバッと扉を見ると、そこからは翼とマリアの姿があった。

 

「翼さん!マリアさん!」

 

未来が手を合わせて喜びながら声を上げる。

 

「遅くなった、すまない…」

 

「翼さんとマリアさんが帰ってきたし、本当に落着したね!」

 

「後は調が目覚めるのを待つだけデース」

 

「後はあたしと切歌の怪我が治るのも残ってるぞー、案外あたしら重症なんだからな?」

 

「分かってるデスよー」

 

と言いながらも切歌は壁に手を付いていないと軸が安定しなく立っていられない状態だった。

奏はその姿を見たが、目をそらした。

 

「そう言えば緒川さんって何処に居るんだろう?」

 

「アタシらが小屋についてすぐ辺りを見てくると言ってから帰ってきて無いな…」

 

「少し心配な所はあるんだろうが、そろそろこの場から離れねぇと次何連れてくるか分からねぇぞ」

 

キャロルが壁に寄りかかってコーヒーを飲みながら言う。

 

「緒川さんは強いからきっと無事ですよ!」

 

響がそう前向きな発言をすると皆ニッコリと笑って、そうだなと意見を揃えた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

特殊部隊本部に戻ってきたルーカスはある男に報告していた。

 

「装者達との交戦中イーサンとエヴリンが乱入、しかし装者にやられその後は行方不明。戦闘不能だった装者が復活し圧倒的不利な状況に陥ったため撤収……てな感じ」

 

「そうか、生き残ったのはルーカスだけということか、まあいいゆっくり休め」

 

「どうもー」

 

ルーカスは自分の部屋へ戻ると調を洗脳させていた部屋が開いていた事に気付いた。

ルーカスはその扉を閉めようと寄ると、視界に入った部屋の中を見るとルーカスは大きく目を見開いた。

 

「洗脳が解かれてない……?これは、まずいな……」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「なんだろう……とてもなにかしたくてうずうずしてる……」

 

眠りについていた調は夢かどうか分からない空間にいた。

 

「何か刺激があるものが欲しい……壊す?何を壊したい?物?それとも別の何か?」

 

そうだ………

 

 

 

 

やっぱり人間を壊した方が楽しそう………!

 

 

 




ご覧頂きありがとうございました!
これにて、第1章は完結致します!
次回からは新章第2章1話を予定しています、お楽しみに!
そして、同時に新作の方もよろしくお願いします!
それでは( ´ ▽ ` )ノシ

(最近更新頻度が下がっているのは本当にごめんなさい、、、)


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【第2章】鏖《みなごろしの》・シュルシャガナ
【16話】罪悪の始まり


この話は第2章1話兼16話となっております。


ーお前はまだ動ける。

 

ーお前はやるべき事がある。

 

ーお前は破壊するんだ。

 

ーさあいけ…

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

気付くと私は花畑の中に立っていた。

足元の花を見るとマリーゴールドとスノードロップが咲いている。

それぞれ花は開花季節が異なる。

マリーゴールドは夏から秋に向けて、スノードロップは冬から春にかけて開花する。

しかし、この空間はマリーゴールド、スノードロップ共に開花している。

私、月読調はその不思議な空間に居たのだ。

 

「私はもう、切ちゃんと一緒にいる事は出来ない…」

 

やがて視界が歪む………

 

「……………」

 

目を覚ました時間は夜中の2時半。

隣には切歌とクリス。

調は2人に手を出そうとしたが、伸ばそうとした右手を左手で抑える。

 

「まだ、まだその時じゃない……」

 

「月読……起きたか…」

 

寝室の扉が開くと風鳴翼の姿が見える。

 

「月読……お前………」

 

感の鋭い翼は調の異変に気づいたかと調は心の中で思ったがそこまで心配する必要は無かった。

 

「ゆっくり休めよ」

 

そう言うと翼はゆっくり扉を閉めた。

調はふぅーと小さく息を吐く。

暗くなった空間に調のピンク色の瞳は微かに光っていた。

それは月の光なのかは分からないが、誰が見ても不気味な雰囲気があった。

 

 

 

「響ー?そろそろ起きないとー」

 

「んー、後5分だけ……」

 

「もう………」

 

時間は8時前。

装者達は疲れたのか未だに寝ている方が多い。

しかし、その眠りは切歌の叫びでみんなを一気に覚ました。

 

「調!?調が居ないデス!!」

 

未来は慌てて調と切歌とクリスが寝ていた部屋へと駆ける。

ガチャン!と音を立てながら部屋に入ると、窓が開いていて部屋には所々に包帯が見える切歌、まだウトウトしているクリスが居た。しかし、何処を見ても調の姿は無い。

切歌達が寝ていた部屋は2階、1階に降りてくる方法は室内の階段を使わないと出てこないが、その1階はスペースが広く。2階から降りてきたら誰でも分かる空間だった。

未来はその空間にずっと居たが調は降りてこなかった。

 

「月読………夜中は居たのに……」

 

何故だ、と翼は頭を抱えながら考えている。

 

「翼さん、夜中には居たって言うのは……」

 

「私が水分を取るため水飲みに言った時なんだが、こっそり月読達の部屋を覗いたら丁度月読が起きていたんだ。私はゆっくり休めよと言って部屋から出たんだが……」

 

奏も2階から降りてきて状況を把握する。

 

「ただ昨日は何かボーッとして調らしくなかったな」

 

奏がそう言うとマリアも2階からトコトコと足音を立てながら降りてきた。

 

「翼さん、夜に調ちゃんを見たのは何時頃ですか?」

 

未来に聞かれると顎に手を当てて少し考えると返答する。

 

「確か2時半ぐらいだったな」

 

未来が起きた時間は6時。

つまり、2時半~6時の間に調は姿を消したという事だ。

時期に響もクリスも起きて来る。

切歌はショックを受けたのか俯きながら椅子に座っている。

 

「そう言えばミアは…?」

 

奏がそう言い見渡すがミアの姿が無い。

 

「ミアは行動範囲広いからそのうち出てくると思うけれど…」

 

ガチャッとその時外に繋がる扉が開いた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ルーカスは調の様子を伺うために夜中装者が居座っている小屋へと足を踏み入れた。

調の様子は特に変化なくぐっすりと眠っている様だったが、何故か寒気がしてならなかった。

その夜ルーカスはそのまま拠点へと戻ったが、朝また来てみると未来と奏が起きているのを確認出来た、しかし……

 

「あれ……?」

 

調の姿は無かった。

外から見る限り調は居ない、何よりも調が居た部屋の窓が空いている時点で抜け出した可能性が高かった。

その時、村の方面から悲鳴のような声が聞こえた気がしたので、ルーカスは村へ向かった。

村の外れにある小屋から村まではかなりあるが、ルーカスは能力を使いスピードアップをし、村へ近づく。

 

「何……これ……」

 

村の様子が見えてくるとルーカスは驚愕する。

至る所から悲鳴が聞こえ、泣き声も聞こえる。そして中央の1件には火が点火している。

畑の方にはおばあちゃんが腰が抜けたように座り込んでいる姿があった。

 

「おばあちゃん!大丈夫!?」

 

「ありがとねぇ、ちょっと驚いてしまったんだよ」

 

「ここは危ないから安全な場所に移動して!」

 

「お嬢ちゃんはどうするんだい?」

 

「私はまだ危ない人が居ないか見てくるから」

 

おばあちゃんはルーカスの手を掴み立ち上がると気を付けるんだよとゆっくり燃えている家から反対方面へと歩き出した。

火は1つの家を飲み込み、次の獲物を捉えようとしていた。

 

「そんな強くないけど、能力使うしか……」

 

ルーカスやミアなどの特殊部隊の人達は全て特殊能力三大基礎(とくしゅのうりょくさんだいきそ)と言う能力を取得している。

《速》《飛》《攻》の3つが基礎。

その中の《攻》は状況によって使うものが違う。

ルーカスは今その特殊能力で水を出そうとしていた。

燃えている場所へ両手を向け、手のひらから水を放つ。

 

「私だけじゃ………」

 

その時、ザザザッとルーカスの繰り出した水量とは比べ物にならない程の水が燃えている家に降り掛かった。

その水はまるでバケツの中の水をひっくり返すような勢いで家に降り注いで、一気に火は消火した。

姿は見えなかったが、私を助けてくれた人は大体予想ついた。

 

「ミアかな……」

 

ミアは特殊能力に関しては飛び抜けて強い為あの水量でミアだと推測した。

 

「キャァァァァ!!」

 

村の北方面。南側にある小屋とは真逆の方面から悲鳴が聞こえる。

ルーカスは急いでその悲鳴が聞こえた場所へ向かう。

 

「………これは……」

 

あまりにも無残な光景がルーカスの目に映し出された。

家に居る人は全て血を流し死んでいる。

道端に倒れている人も居たがそれも皆血を流し、死んでいた。

 

「う………ぁ………」

 

1人だけ、傷口を抑えてなんとか生き長らえている男性が居た。

 

「大丈夫?誰にこんな事を……」

 

見る限り、胴体に何箇所か斬られた痕、そして首が斬られたのか布で首元を抑えて出血を抑えていた。

 

「ぁ……ぶない………は……やく………にげろ…………」

 

男性はそう言うと抑えていた手がダランと力が抜け、地面に叩きつけられた。

 

「手遅れってやつか……」

 

ルーカスは男性に向けて手を合わせて拝んだ。

そして、北側へ進む。

 

「見つけた………」

 

ルーカスはある人の背後に姿を現すとある人は後ろを向いた。

 

「よく分かったねぇ、小屋にでも行ったかなぁ」

 

その人の右手には何処で手にしたのか刀を持っている。

そして左手にはもう死んでいるだろう人間の首を掴んでいた。

 

「私の洗脳は解いた。つまりあんたは自分の意志か、将また他の誰かに洗脳されたか……」

 

「これは私の意志だよ、ルーカス」

 

 

 




ご覧いただきありがとうございました!
今回から新章に入らせていただきます!
2章では装者と別行動しているルーカス、1章であまり活躍の無かったミアなどの話が盛りだくさんの章になります!
2章の敵はまさかの………
という事で、最近更新頻度が戻って来たかなと薄々思っています
それでは( ´ ▽ ` )ノシ


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【17話】かつて敵同士の契約

更新遅れてしまい、申し訳ありませんm(*_ _)m
こちらは17話となっております


ドンドン!

 

扉からノック音がするとキィィと開いた。

装者全員は警戒したが、外から入ってきた姿には皆見覚えがあった。

 

「ルーカス?」

 

未来がそう呼ぶと所々怪我しているルーカスが返事をした。

怪我に気付いた未来は

 

「ルーカス!?どうしたのそれ!!」

 

とルーカスの体を支えながら言う。

 

「あぁ、ちょっとな……」

 

未来の肩を借りたルーカスはそう言って適当に流した。

しかし、誰がどう見てもルーカスの姿は普通ではなかった。

彼女の服はボロボロになった上、体の所々に赤黒い液体が付着している。その液体は自らの体から出てる箇所も何箇所かある。

ルーカスを椅子に座らせた未来は、すぐにタオルを濡らして固まった血を拭き取った。

何かを悟った切歌が包帯などの医療器具を持ってくると、未来は慣れた手つきで手当てを済ませた。

ルーカスの体の傷口には繊細に巻かれた包帯がある。

それを確認したルーカスは立ち上がった。

未来は服も着替えさせようとしたが、ルーカスがこのままでいいと聞かないので、せめて洗うだけと未来が言い返すと、まあ洗うだけなら…と了承を得ることが出来た。

 

下着姿になったルーカスは服であまり気付かなかったが意外と胸があることに翼は気付き、少しばかり唇を噛み締める姿を奏が見つけると翼の肩をポンっと叩くと翼がギロリと奏の事を睨んできたので、奏はゆっくり翼との距離を置いた。

歩ける事を確認したルーカスはまるでここの住人のようにキッチンへと足を運び、牛乳を取り出し口に含んだ。

 

「どうしてそれがある事と飲んでいい物だと分かるのよ……」

 

ここでマリアが小声で呟く。

キッチン担当だったマリアは食材管理にはうるさかった。

机に寄り掛かりながら牛乳を飲み始めたルーカスはここまでの経緯を説明し始めた。

 

「村が襲われた」

 

いきなりのぶっ飛んだ内容で皆声が出せなかった。

 

「私は調の様子がおかしい事が気になって調のことを見に行ったんだ。その時はまだ寝ていた、でも朝来てみると調は居なく、微かに森の奥から煙が立っているのが見えた私は村に向かった。村は驚く事に中心の家が燃えていた、私はなんとか火を止めたけれど、問題はそこじゃなく、人が殆ど死んでいるって事だ」

 

「人が死んでるって……火事の問題じゃないよな……」

 

クリスが確認の為に言うとルーカスは頷く。

 

「火事はまだ大事(おおごと)にはなっていなかった、なぜなら………」

 

「火事よりも大事な事が起きたから……か?」

 

奏がルーカスの発言に入り込み、言った。

ルーカスは話を続けた………

 

 

「調、本当に意志なのかどうかは放っておいて少しやりすぎだ」

 

「私の関係ない人だもん、殺してもなんのダメージを受けないんだよ?」

 

「その関係の無い人を殺すなと私は言っているんだけどな」

 

「ならさ……」

 

そう呟いた調は瞬時にルーカスの首元に刀が突き刺す。

 

「関係のある人は殺していいよね?」

 

調の瞳はピンク色に光り、シュルシャガナを纏う。

 

「詠唱無しで……?」

 

シュルシャガナは持っていた刀に吸い込まれ、シュルシャガナのアームドギアのような形状になった。

シュルシャガナの力を吸い込んだからか、調はシュルシャガナの姿にはなっていない。

その代わり持っている刀が変形し、鋸のようだがやはりよく見ると刀のような形になり、腕だけがシンフォギアを纏ったような姿になる。

 

「そんな事出来るのか……」

 

その刀に見覚えがあったルーカスは、記憶を遡り辿り着いたのは特殊部隊員用戦闘武器(ムラサメ)だった。

何故調がそんな物を持っているか考えていると…

 

「ぼーっとしてるなら大人しく殺されて!」

 

と調が襲いかかってきた。

刀はルーカスの首目掛けて振り下ろされるが、ルーカスは一歩も動こうとしない。

その隙を突き、調は思いっきり刀を振り翳す。

その途端ガシッとルーカスの左手が調の右手を掴む。

ルーカスは刀を無理矢理引きちぎり、刀の効力を解除した。

 

「クソっ!!」

 

調はすぐ様シンフォギアを纏い直し、中距離攻撃のヨーヨーを飛ばしてくる。

刀を持ったルーカスは迎え撃とうとする。

 

「ムラサメは……こうやって使うんだよ」

 

ルーカスが呟くとヨーヨー自体が真っ二つに割れる。

流石に勝てないと思ったのか、調は大量の鋸を飛ばすとそのまま逃げてしまった。

大量の鋸は流石に抑えきれずいくつか削られたり、刺されたりしてしまった。

 

「ムラサメの事は私が一番知ってるんだから……」

 

特殊部隊員用戦闘武器が誕生したのはシーナが死んだ後、新しい隊長から渡されてから何年も使っていた物だ。

今になっては部屋の奥に仕舞っていたはずなのに、、、

 

 

ルーカスが今までの経緯を説明すると、切歌は

 

「調ぇぇ……」

 

と悲しい声で何処か心配でしょうがないような声で呟く。

 

「そんで、調は具体的にどんな感じだった?」

 

切歌の肩に手を乗せた奏はルーカスに詳細を求めた。

ルーカスは腕を組み替えて説明を始めた。

調の目が光ったこと、この刀を持っていたこと、そして誰かに操られているということ、、、

次いでにムラサメという刀についても話す。

 

「力を吸収する刀か……」

 

刀を扱っているからか、翼が反応する。

 

「翼…?何か心当たりがありそうね」

 

「あぁ、昔どこかの軍隊に力を持つ刀があると小耳に挟んだことがあってな、その軍隊とやらがもし特殊部隊だとしたら……」

 

「その刀に間違いないって事ね、でもそんな事私達は聞いたことがないわ、少なくとも機密にされていると思うわ」

 

「んじゃあなんで調のやつが持ってたんだ?」

 

比較的大人組の翼、マリア、奏と並んでルーカスが話し始める。

クリスは切歌がここに居ても仕方ないと考え、外に出てくると言い扉を開けた。

 

「あ、私も行く!」

 

クリスに続き響も外に付き合うと言ってくれたので切歌の事は二人に任せた。

 

「ミアの奴はどうなんだよ、姿現さねぇじゃんか」

 

「ミアは大丈夫」

 

ルーカスは皆に特殊能力の事、ミアに助けてもらったことを説明する。

流石冷静組はなるほど、と言っただけだった。

もしここに響とかが居たら「わー!なにそれー!!」と寄ってきただろう。

 

「という事はミアは大丈夫そうだな」

 

と翼が1件を纏めるともう1人、話を聞いていた人物が口を開く。

 

「お前ら、難しく考えすぎだ、普通にルーカスの奴がまだ操っているとか考えたりしないのか?まだルーカスは仲間だと証明もされてないぞ」

 

キャロルだった。

外に行かず、共に話を聞いていたらしい。

 

「待って、私は確実に洗脳を解いたぞ!あなただって見たでしょ?」

 

「さあ、洗脳を解いたフリをして洗脳解除して無いかもしれないし、別の洗脳方法だってあるかもしれない。後は洗脳解除したが、その後にもう1回洗脳し直したとかな、考え用にはかなりの選択肢がある」

 

「お前はルーカスを疑っているのか?」

 

翼がキャロルの態度からそう考え出した。

 

「逆にお前達は疑っていないようだな、ルーカスは仲間だと慢心でもしてるのか?俺はただ、ありとあらゆる可能性を疑っている、それだけだ」

 

考え用にはルーカスが敵じゃない証明は出されていないので、ルーカスが演技をしている可能性も無きにしも非ずの状況だった。

キャロルの発言以降、その空間では沈黙が続いた。

 

「今は疑う事しか出来ないのかもしれない、でも、もし騙されているなら騙された上で乗ってみるって言うのも面白いとは思わない?」

 

流石ルーカスと言ったところか、信じてもらえず落ち込むかと思いきやそれを逆手に取り笑って見せた。

 

そのルーカスの行動に一本取られたキャロルは寄っかかっていた壁から背中を離し、ルーカスの提案に賛同した。

 

「まあ、いいだろ。それもそれで面白そうだしな、もし俺の言ったことが真実だとしたら、俺は容赦なく潰しにかかるぞ」

 

「その時は返り討ちかな」

 

キャロルとルーカスは握手を交わし、この2人の間に決して切れる事の無い頑丈な糸が結ばれたような気がして、心無しか危なっかしい同盟が組まれたとそこに居た全員がそう思った。

 

 

 




ご覧頂きありがとうございました!
今回はこの章の敵とルーカスとキャロルの同盟のようなものが組まれた回でした。
つまり、ルーカスとキャロルが一緒に戦う場面も……?

最近更新頻度がガタ落ちですが、なるべく早く次回をお届け出来たらいいかなと思います!
それでは( ´ ▽ ` )ノシ


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