妹は聖槍使い!? (天覧会の部長)
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旧校舎のディアボロス
第一話


どうも!セラ部長です。初の小説投稿です!どうか温かい目で見守ってください!


 こんにちは、私の名は「兵藤清羅」私立駒王学園に通う高校一年生です。学校の皆からは清羅と呼ばれてます。

 

 自他ともに認める甘党で、休日は友人の搭城小猫ちゃんとよく甘味めぐりにいってます。そんな私は現在…

                                            

「また女子更衣室を覗いたんですか?兄さん?」

 

 

 

                                        

 

 この学園の汚点の一つ、「変態三人組」の一人にして私の兄でもある「兵藤一誠」に軽く一時間ほど説教をしてました。その三人組の名が示す通り、女子更衣室の覗きはもちろんのこと。教室でアダルトグッズを開帳するといったド変態です。今日も女子剣道部員の着替えを覗くという迷惑極まりないことをしでかしてくれました。                                           

「清羅!誤解だ!俺は覗いてなんかいない!主に覗いてたのは松田と元浜だ!俺は覗いてない!!」 

                                            

「・・・でも兄さん。その場にはいたんですよね?」

                                            

「おう!」

                                                                                        

「だったら有罪です!今すぐに原稿用紙5枚分の反省文を先生に提出してきてください!」

 

 

                                            

「そんな殺生な!俺はこの後松田と元浜とともにAⅤの鑑賞会をしなきゃいけないのに!」

                                            

 呆れて物が言えません。この馬鹿兄の頭の中には煩悩しか詰まっていないのでしょうか…         

 

 というかこの馬鹿兄がこれだけの犯罪行為を犯しておきながら警察沙汰になっていないのが不思議でしかたありません。この学校の事情は裏に関することも含めてほとんど把握しています。なので、この変態行為を自分たちの評価のために表立たせるわけにはいかないのでしょう。けれどこのまま放置という事態は見過ごすわけにはいかないので生徒会の悪魔さん方に相談してみましょうか。

                                                                                                                                                                                                                              そんなことを考えながら自宅にある部屋でおすすめの甘味処の情報を見ていると、勢いよく部屋の扉が開きました。そこにはいつもより興奮した様子の馬鹿兄が立っていました。そして、ありえないことを言い出しました。

                                            

「清羅!俺に彼女が出来たんだ!」

 

          

                                                                   

 今とんでもない事が耳に入ってきました。この性欲しか取り柄のない馬鹿兄に…「彼女」?

                                            

「兄さん、もう一度お願いします。今聞き間違いでなければ<彼女>と聞こえたんですが?」

                                              

きっと何かの間違いだろうと思って質問します。兄に彼女が出来るなんてことは天地がひっくり返ってもあり得ません。しかし返ってきた答えは… 

                                            

「いや、聞き間違えじゃないぜ!彼女が出来たんだ!!ほら、これ写真!」

                                                                   

そういって見せられたのは、綺麗な黒髪が特徴的なこの付近では見ない制服に身を包んだ少女でした。

                                            

「兄さん……いくらで頼みこんだんですか?」

                                            

「違うわ!下校途中に告白されたんだよ!!」

                                         

  なんか聞けば聞くほど胡散臭い話ですね。というかこの小女…

                                            

「堕天使じゃないですか…」   

 

 

 

                      

「ん?なんか言ったか?」

                                                                 

「いえいえ!!何でもありません!!!」

                                             

危ない危ない!聞かれるところでした。というか、なんでこの町に堕天使がいるんでしょうか?念のためあのちょいワルおじさんに後で質問してみましょう。しかし、なぜ兄に接触したんでしょうか…

 

                                            

「そういえば、お前は彼氏とかいるのか?あまり聞いたことないんだけど?」

                       

この馬鹿兄、自分に彼女が出来たからって調子に乗ってますね。いいでしょう私もリア充としての証を見せつけてやるとしましょう!

                                                                                         

「はい、彼氏はいますよ。ちょっと性格に難はあるけど結構前から付き合っている彼氏は。」

                       

とりあえず彼氏のことを話しておきました。さてなんて反応するんでしょうか?

                                                                                                              

「は?お前彼氏いたの!?初耳なんだけど!!お前学校中がパニックになるぞ!!!」

              

 

                     

「何故学校中がパニックになるのですか?心当たりがないのですが。」

                    

                     

 というか本当になんででしょうか?私、何かしましたっけ?すると兄が

                                            

「当然だろ!お前学校でどういう立ち位置なのか知らないのか!?」

                                             

「よく噂はされてますが何のことだかはさっぱり。」

                                                                  

いや、多分成績関連のこととかで噂されてるのかなぁとはつくづく思ってましたが、自分の立ち位置なんて考えたことありませんでした。さてなんなんでしょうか?

 

                                                                

「お前、学校では小猫ちゃんとよくいるだろ?だから学園の二大マスコットの一人として知られてるんだよ!だから俺に対して嫉妬する男子が後を絶たねえんだよ!」

                                                                

…‥いや、初耳でした。まあ確かに自分は小柄な方だとは思ってました。ある部分とかはまあそれなりに育っていて小猫ちゃんからよく嫉妬されますが。そんな扱いだとは知りませんでした。しかし馬鹿兄、嫉妬を受けていることを私に言われてもどうしようもないんですが…

                                                                 

「そうだったんですか。結構驚きました。それで?ただ彼女が出来たことを自慢しにきただけじゃないんでしょう?」 

                                                                   

本当にどうしたんでしょうか、まあ、このタイミングで来たからにはある程度予想はついてますが。

 

                                                                                        

「お前、彼氏いるんだったらちょうどよかった!今度デートに行くからどうすればいいか教えてくれ!」

                                                                                        

「まあ、そうだろうとは思ってました。わかりました、でも妹からのアドバイスなんで参考になるかはわかりませんよ?」

                                                                                                                                    

「ああ頼む!他の奴に言っても信じてくれなさそうだからな!」

                                                                                       

「そこ、胸張るところですか?」

                                                                                                              

こうして、デート講座は終了しました。しかし、このデートが原因で、兄が裏に関わり、あんなことになるとは…この時の私は知る由もありませんでした。

                                                            

 

 

 




いかがでししたか?まだまだわからない事だらけなので教えていただけると助かります!これからも宜しくお願いします!!


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第二話

続いて第二話です!コメントをくれた方々、本当にありがとうございます!あと、これからの場面変更の部分は―●●●―を使うことにしました。


 家族の皆が寝静まっている中、私はとある場所へ電話をかけてました。

                                            

「もしもし、此方兵藤清羅です。」

                                           

『おお!清羅じゃねぇか!どうした?こんな夜遅くに掛けてきて?あぁ、あれか?久しぶりに俺の声が聞きたかったとか?』

                                            

「安心してください。そんな気持ち微塵もありませんから。」   

                      

『…そうか』

                       

割りとショック受けてるんでしょうか?堕天使総督の心は硝子でしたか…しかし今はこんなふざけたこと考えてる場合じゃありませんでした。早く聞きたいこと聞いて寝ないと!

 

                                            

「ところでアザゼルさん。この町に堕天使がいるんですが何か心当たりは?」

                                                                 

 『……はぁ?そんな奴ら知らないぞ?というかお前が連絡寄越すってことはそいつら何かやらかしたのか?』

 

                                           

「いえ、まだ何もしていませんが私の兄に接触してきました。これについて何か言い分は?」

                     

 ちょっとだけ威圧しながら問いかけます。すると?

                                         

『マジすんませんでした。そいつらが手出してきたら好きにしていいんでどうかご勘弁を!』

                                            

「言質はとりましたよ?彼によろしくお願いします。それではお休みなさい。」

                                            

―●●●―

 

                       そして、翌日。私はいつも通り学校に登校。今現在小猫ちゃんとランチを食べながら今度の休日に行く甘味巡りの計画を練っていました。

                                                                  

「そう言えばスイーツの話題とは関係ないんですが…」

                                                                 

 小猫ちゃんがいつもの無表情で訪ねてきました。

                                                                

「どうかしましたか?」

 

 

                                                                  

「清羅のお兄さんに彼女が出来たという噂は本当なんですか?」

 

                                                                 

「はい、本当ですよ。写真を見るまでは私も信じられませんでしたが…」

 

                                                                 

「その…少しでも説教の負担、減るといいですね…」

                                                               

小猫ちゃんに励まされましたが、馬鹿兄の彼女(仮)が堕天使なので多分私の心が休まる日は来ないでしょう。というか、逆に多くなりそうな気がしてきました。

                                           

―●●●―

                                           

 小猫ちゃんとの楽しいランチが終わり、学校が終了した後、私は二年生のクラスまで足を運んでいました。

     

                                           

「兄さん!迎えに来ましたよ!」

                                            

今日は馬鹿兄の変態行為防止のため一緒に帰ることにしました。なのでこの馬鹿兄のいる教室に来たわけですが…  

 

                                           

「皆!清羅ちゃんが来たぞぉ!!」

 

                      

「何ィ!?あの学園マスコットの一角にして、『理想の後輩ランキング』一位の清羅ちゃん!?」 

 

                      「「「ハァ…ハァ!!!!」」」

                                            

教室に来ていきなり何でしょうかこれは…というか今若干数名危ない人がいたんですがこれはいかに!?                                         

「兄さん。取り敢えずこの意味の分からない状況は無視して帰りましょう。この状況には関わらない方がいいと思うので…」     

 

                                            

この状況から逃れるために一刻も早く兄を連れ出さなければと思い声を掛けます。すると兄が…

                                            

「じゃあな!お前ら!俺は可愛い妹とともに帰るから!いやぁ、妹と彼女がいないお前らが可愛そうでしかたないよ!」

 

                                            

何故今ここでその言葉を言うんでしょうかこの馬鹿兄は…すると、放たれた言葉によりクラスが

  

                                           

「「おのれ!!おのれ兵藤ォォォ!!!!」」

                                           

「「今ここでくたばれェェェェ!!」」

                                         「#$%^#$*%^$&?!!!!!」                                                    

更に状況が悪化しました…それにしても最後の人、明らかに人間が出せる殺気と声じゃないんですが!あれですか!?邪神でも宿ってるんですか!?実はこの町には邪神と契約した人間がいたと!?だとしたらとんでもない大事件なんですが……このクラスは大丈夫なんでしょうか?

                                                                 

―●●●―

                                            

帰り道、二人で歩いていると、目の前に先日見せてもらった写真の少女がいました。その少女は兄を見ると微笑んで話しかけてきました。

                                          

 「こんにちは、イッセー君!」

                                           

 すると兄は、全身から幸せオーラを出しながら爽やかな笑顔で。

                                                                   

「こんにちは!夕麻ちゃん!もしかして帰り道?わざわざ待っててくれてたの?」

                                                                 

 そうして二人が会話を弾ませていると今度はこっちに話しかけてきました。

                                                                  

「イッセー君、そっちの女の子は?あ!もしかして早速浮気!?」

                                                                  

その堕天使は私を見るなり浮気かと疑いをかけてきました。まあ、付き合っているのに他の女の子と帰っているの見たらそうなりますよね。それに対して兄は慌てて。

                                            

「違う違う!こいつは俺の妹!清羅っていうんだ!」                                         

「あら、そうなの。こんにちは!清羅ちゃん!私は天野夕麻。お兄さんから聞いてたかしら?」

 

              

 

     

兄が全力否定して堕天使が話しかけてきました。まあ、話しかけられたので応答しますが。

            

 

「はい。昨日兄から自慢されました。こんな馬鹿兄ですがよろしくお願いします。」

 

                      

取り敢えず無難な返しをしておきました。すると、堕天使は、兄と休日のデートの日程を決めると帰っていきました。

 

 

                     

「いやぁ〜夕麻ちゃんやっぱり可愛いなぁ!彼女ながら誇らしい!お前もそう思うだろ?」

 

                     

 この馬鹿兄はあの堕天使にベタ惚れのようですね。まあ良くも悪くも真っ直ぐなので仕方ないといえば仕方ないんでしょうが。

 

                      

「まあ、そうですね。良かったですね兄さん。可愛い彼女ができて。」

 

                      

というかこの馬鹿兄、顔はまぁまぁいいのに変態行為が全部台無しにしてるんですよね…これまでの変態行為がなければとっくに彼女くらいいたと思うんですが。

 

 

                     

「ところでお前の彼氏ってどんなやつなんだ?そんな詳しく聞いてなかったからこの際聞いておきたい!」

                                                                  

何故この際なのかはおいといて、彼氏がどんな人なのかは私も紹介しておきたかったので今紹介するとしましょうか。

 

 

                     

「この待受にいるこの暗めの銀髪の子が私の彼氏です。どうですか?」 

 

                      

少し自慢するように彼氏の写真を見せます。だって彼氏ですよ?この兄が彼女に惚れているのと同じように私も彼に惚れてますからね!これくらいは当然です!

 

 

                      

「…お前!イケメンじゃねぇか!あのイケメン王子とはまた違ったタイプの!こんなやつと付き合っているだなんて!お兄さん許しませんよ!!」

 

 

                      

「いや、兄さんの彼女も十分美少女の類じゃないですか…何故にそうなるんですか…」

 

            




次はいよいよデート編です。案外長引いてしまった…


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第三話

お待たせしました!いよいよデート編です!  そしてレイナーレさん…お疲れ様でした…


 日曜日。今日、私は小猫ちゃんとともにスイーツ巡りに!そして兄は堕天使とデートです。というか私も久しぶりに彼とデートしたくなってきました。今度誘ってみますか。

 

 

 それはさておき私達は今、目の前の巨大パフェに夢中です!!なんですかこれ!美味しすぎます!?もうスプーンが止まりません!!

 

 

「小猫ちゃん!これ美味しすぎません!?どこで見つけたんですか!?」

 

 小猫ちゃんに勢いよく質問します。いやぁ、こんなに美味しいパフェは久しぶりに食べました。これは毎週通うこと確定ですね…

 

 

「…この前テレビで放送してるの見てこう、ビビッときまして、清羅と休日行こうと思ったんです。」

 

「小猫ちゃん、ナイスです!」        

 

 パーフェクトです、小猫ちゃん。さて!私も自慢のお店に案内するとしましょうか!!

 

―●●●―

 

 

 オッス!俺は兵藤一誠!彼女持ちのリア充だ!今俺はデートの待ち合わせをしている!もうここに来て数時間程経ってる!それだけ今日の俺は気合十分だ!

 

「イッセー君!お待たせ!!」

 

 

 そして私服姿の夕麻ちゃんが来た!!いつもの制服姿も可愛いけど今日の私服姿もすげぇ可愛い!こんな彼女がいるなんて!今日、俺はこの世界の男達に宣言する!   ー俺は勝った!!ー

 

 

 デートの最初は洋服の店に行った。清羅から教えてもらったときにはありきたりすぎじゃないか?と思ったけど『デートが初めてならありきたりな位がちょうどいい』って言われたからここにした。

 

 その後、清羅に教えてもらったパスタの店に行った。ちなみに、ここのパスタはめちゃくちゃ美味しかった!夕麻ちゃんもすっげぇ幸せそうな顔して食べてたから、その顔を見た俺は思わず気絶しそうになったね!ここを紹介してくれた清羅には帰ったらちゃんとお礼を言っとかないとな!

 

 そんな多分この世で一番幸せな時を満喫していたら、もう夕方になっていたんだ。楽しいと時間が早くすぎるって聞いたことはあるけどここまで早くすぎるとは思ってなかったぜ。

 

 それと同時にもう終わりかという寂しさが浮かんできた。でも、これからもあるんだからそんな気持ちになる必要ないよな!!

 

 そして場所は夕暮れの公園。この時期の公園は人がいないのかな?と思いながら夕麻ちゃんを見ながら妄想してたら夕麻ちゃんが俺の手を離れて目の前に立ってた。

 

「イッセー君、今日は楽しかったね!」

 

 そう言って夕麻ちゃんは微笑んだ。それにしても可愛いすぎる!夕暮れがマッチして更に魅力が増してるぜ!

 

「ねぇ、イッセー君。」

 

「どうしたの?夕麻ちゃん?」

 

「初デートだからさ、私のお願い聞いてくれる?」

 

 夕麻ちゃんが微笑みながら尋ねてくる。これはキタァァァ!!父さん!母さん!清羅!俺、ファーストキス今捧げます!!

 

 

 

 

 

「死んでくれないかな?」

 

 

 

 

 ・・・・え?どういうこと?今ありえない一言がとんできたんだけど…ハハッ、俺ってば緊張しすぎで聞き間違えちゃったみたいだ。

 

「……ごめん、もう一回言ってくれないかな?俺の耳変になっちゃったからさ…」

 

 でも返ってきたのは同じ一言。

 

「死んでくれないかな?」

 

思わず「冗談やめてよ〜夕麻ちゃん」と言おうとした瞬間。頭上から黒い羽が落ちてきた。

 

 え?と驚いているのもつかの間、夕麻ちゃんに黒い羽が生えていた。え?何これ?と思っていると、彼女の目が今までとは一変して恐ろしいものになっていた。

 

 そして俺の体から光る槍が生えていた。比喩表現じゃない。本当に生えていたんだ。確認した直後、俺の体から大量の血が噴き出した。

 

 足音が聞こえる。夕麻ちゃんだ。すると、夕麻ちゃんの声がかすかに聞こえた。

 

「ゴメンナサイね。あなたが私達の計画の危険因子だったから始末させてもらったわ。恨むなら、その身に神器(セイクリッド・ギア)を宿した神を恨んでちょうだいね」

 

 なんだよ、神器(セイクリッド・ギア)って、わけわかんねぇよ…

 

 というか俺死ぬのか!まだ何にもできてねぇよ!明日俺どうなるんだろ?

 

 父さんや、母さんに親孝行も出来てないし。清羅にお礼も言ってねぇよ…そう思っていると、夕麻ちゃんからまたかすかに声が聞こえた。

 

「あなたとのデート、はっきり言ってままごとレベルだったけど。あのお昼のパスタのお店だけは良かったわよ。」

 

 最後に言った一言に対して何も言えなくなったとき、ふと、 耳に聞きなれた声が聞こえて来た。

 

 

「そうですか。それはありがとうございます。」

 

 そこに立っていたのは、見たことのない神々しい槍を持った俺の妹だった…

 

 

 

―●●●―

 

 

 いきなり堕天使が正体を表したと思ったら馬鹿兄が串刺しにされてるじゃありませんか…これはあれですね?手を出したって認識でいいんですよね?

 

 

「あら、あなた、そこの人間の妹じゃない。まあ、見られたからにはここ」

 

 

 この堕天使が言葉を言い終えるより前に、一瞬で堕天使の背後に回り込み、この汚らしい羽をすべて切り落としました。すると堕天使は。

 

「キャァァァァァァア!!!!!!!よ、よくも!よくもよくもよくも!!!至高の堕天使であるこの私のハ」

 

 ・・・・もう声を聞くのも不快になってきたので上半身をオーラによって消滅させます。そしたら、下半身がたおれこみ、汚らしい黒い羽が頭上から落ちてきました。

 

「さて。堕天使も掃除し終えたのでどうしましょうか、先輩?」

 

 そして、私は串刺しになっている兄のポケットから出てたポケットティッシュに刻まれた魔法陣から出てきた赤髪の先輩に問いかけます。

 

「やっぱり気づいてたのね。清羅。」

 

「はい、いきなり先輩の気配が現れたものですから。」

 

というか先輩は所有する魔力からか、気配を察知しやすいので簡単にわかるんですよね。

 

「それにしても相変わらずすごいわねその槍は。中級堕天使を一瞬だなんて……」 

 

 先輩はそう言ってますが、あなたの魔力もこの程度の敵なら同じこと出来ますよね?と、喉まで出かかった疑問は置いといて、評価は素直に受け取っておきましょう。

 

「ありがとうございます。ところで、この兄はどうしましょうか?」

 

取り敢えず、この打開策を知ってそうな先輩に質問します。私もこの程度なら治癒できますが、『神器(セイクリッド・ギア)』を宿している以上この裏の世界に関わらざるを得ないでしょう。なので、先輩に任せる事にします。

 

「そうねぇ、堕天使が警戒するなら相当強力な『神器(セイクリッド・ギア)』でしょうね。わかったわ!」

 

「――私が拾ってあげる。私のために生きなさい。」

 

 先輩はそう言って兵士(ポーン)の、悪魔の駒(イーヴィル・ピース)を兄の中に入れました。毎度思うんですが、やはり体の中にチェスの駒が入るのっていつ見てもファンタジーですよね。駒を入れた先輩は。

 

「あれ?どういうこと?駒が入っても転生しないんだけど…」

 

 

 

 ・・・・なんか戸惑ってました。まあ、駒が足りないだけだと思うので先輩に助言します。

 

「先輩。駒を追加してみてはいかがでしょうか?」

 

 そしたら先輩は、ハッとした顔で。

 

「そ、そうね!駒を何個か追加してみる事にするわ!」

 

 そう言って駒を追加し始めました。というかこんなに転生に手間取ることなんてあるんでしょうか…もしかして兄さんの神器(セイクリッド・ギア)は……

 

「ちょっと!嘘でしょう!?駒7個でも足りないの!?」

 

 ・・・・驚きました。これやっぱり間違いありません。兄さんの神器(セイクリッド・ギア)は…

 

「先輩、兵士(ポーン)の駒全部使ってみたらどうでしょうか?多分それで転生出来ますよ。」

 

 

 取り敢えず、リアス先輩に駒を8個使ってもらう事にしました。

 

「分かったわ。私の駒全部かけてあげる。そのかわり清羅。今度仕事手伝ってね?」

 

 ・・・・仕事を手伝わされますがまあ仕方ない。これも運命だと思って受け入れますか…

 

「それじゃあ、また今度説明するわね。お休みなさい、清羅。」

 

「お休みなさい、先輩。また明日。」

 

 そう言って私と先輩は別れました。さて、気絶してる兄を家まで運ぶとしますか。

 

 

 

               




ありがとうございました!次の話もお楽しみに!!


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第四話

お待たせしました! 第四話、始まります
!!


 夢を見た。俺が彼女に殺される夢。

 

 憂鬱な気分が晴れないまま朝食を貪る。そしたら、今になって清羅に心配そうな顔をさせている事に気付いた。

 

 妹にこんな顔させてしまうなんて兄失格だ。いつも妹に心配かけてばかりだけど、毎日心配させているから分かる。今日のこの顔は少し変だ。いつもは呆れたような顔で心配してくる妹が、今は不安が混じったような顔で心配している。

 

 妹の心配を少しでも和らげるために、事実を明るい感じで伝えてみる。 

 

「あぁ、実は夜に変な夢を見て気分が悪くってさ。だから大丈夫。そんなに心配しなくていいって。」

 

 取り敢えず夢で気分が悪いだけと伝えて大丈夫だと言ってみる。そしたら妹はひとまず安心したのかホッとした顔で。

 

「…そうですか。わかりました。今晩はいい夢が見られるといいですね。」

 

「そうだな!んじゃ、先に学校行ってくる!」

 

 妹の心配はひとまず治ったみたいだから学校に向かう。そして登校中にいつもとは違う違和感を感じた。

 

 まず、朝の日光がすごい眩しく感じる。あと日光を浴びるだけで気分が悪くなる。

 おかしい。俺は決して朝に強いというわけではないが、ここまで朝に弱いわけじゃなかったはずだ。取り敢えずこの疑問を頭の隅に追いやり、俺は学校に向かった。

 

―●●●―

 

学校に到着するなり、俺はため息をつきながら席に座った。すると、俺の同士である松田が声をかけてきた。

 

「よぉ、同士達よ昨日貸したAVはどうだった?特にイッセー、お前はちゃんと妹にばれずに鑑賞できたか?」

 

 こいつ、実は運動神経抜群のスポーツ少年なのだが、その力を運動部に活かさず写真部に所属し、女子高生を撮影する日々を過ごす変態の一人である。

 

「おうとも松田、昨日は素晴らしいものが見れた。今でもこの高揚が抑えられんよ。」

 

 そういってカッコつけて喋っているメガネが俺の同士の一人でもある元浜だ。こいつはメガネを通して体型を数値化するというスカウターのような真似ができる。

 

 この二人が俺のエロの同士にして親友でもあるのだが、なぜだろうか?夜に見た夢が最悪だったからかこいつらとあった途端気分が滅入る。

 

 その後、いつものようにエロ話をしてて、女子にドン引かれながら学校生活を過ごしていた。途中、俺がエログッズに反応しないことを心配されたが、俺は今日そんな気分じゃないんだ、と返したら二人にかなり驚かれた。

 

「お前、ホント今日どうした?あぁ、あれか。俺には彼女がいましたっていう幻想の影響か?」

 

 話の中で、俺には彼女がいたという話をしてみても、どうしたんだこいつ?という感じで見られるだけだった。

 

「俺たちそんな子知らないぜ?これに関しては精神科行くべきだ。」

 

「まず第一、お前に彼女なんてリアルでできる訳がない!!」

 

 最初はからかってるだけなのかと思ったが、その後の会話で本当に知らないと確信した。

 変だなぁ。俺は確かに彼女ができた。それをこいつらにしっかりと自慢して「お前らも早く彼女作れよ」って余裕に溢れた言葉を言ったはずだ。

 こいつらに俺には彼女がいたんだ、という証拠を見せつけるために、夕麻ちゃんの携帯のメアドと電話番号を探したが、そんなのは一切見つからなかった。

 

 俺には確かに彼女がいた。でも、メールや電話の記録すら無くなり、友人達もこのことを覚えていない。じゃあ、夕麻ちゃんという人物は誰だったのだろうか?

 本当に幻想だったのでは?と思いもしたが、幻想にしては顔をしっかりと覚えている。

 やっぱりどうしても納得いかない。

 

 そうして考え込んでいると、松田が声をかけてきた。

 

「まあ、俺達も思春期真っ只中の高校生だ。そんな幻想を見ることもあるだろう。ここは俺の家に来るといい。秘蔵のコレクションを三人で鑑賞しようではないか!」

 

「いいじゃないか!これは是非とも行くべきだよ!イッセー君!」

 

 明らかに危ない笑みを浮かべながら提案してくる二人。まあ、俺も普段は人の事言えないわけだが。

 俺はこの誘いに、ヤケクソ気味になって答える。

 

「…わかったよ!!今日は無礼講だ!!!派手に祝賀会でもやるぞお前ら!!」

 

 もう仕方ない。この件はひとまず保留にして欲望に真っ直ぐになろう!

 その後、この学園の二大お姉様の一人、リアス・グレモリー先輩と目があって少しビビったけど、取り敢えず俺は、松田の家での鑑賞会に向けて期待を膨らませていた。

 

―●●●―

 

 松田の家で鑑賞会が終わったその帰り。気分が高揚しすぎて収まらない!いやぁ、泣いた泣いた!鑑賞中に松田は、何故俺には彼女がいないのかという理由で号泣。

 元浜は、体育館裏に呼び出され、女子にカツアゲされたことを思い出して号泣していた。これには俺も思わずもらい泣きしてしまった。

 

 そうして、エログッズ鑑賞会で泣くという馬鹿げたことをした帰り、俺は違和感を感じた。まず、ものすごく五感が鋭くなっている。

 それと、身体能力がすごい強化されている気がする。今の俺ならインターハイに出ても優勝できる。といったぐらいだ。

 マジで何なんだろうかこの力は…俺はいつの間にか夜型人間になってしまったのか?

 

 そうしてまた考え込んでいると、ふと、俺に何か視線が向けられた気がした。明らかに敵意を含んだ冷たい視線を。

 こういうのを殺意っていうんだろうなと思って震えていると、眼前の怪しい男と目があった。

 

「ほう、珍しいものだ。このような場所で、貴様のような存在に出会うのだからな。」

 

 とか言ってこっちをみている。ヤバイ、これは逃げるしかない。今にも襲い掛かってきそうだ。

 

「こんな場所でうろつくなど主なしか…ならば殺しても問題あるまい。」

 

 不審者が層言っるてる間に強化された身体能力で逃げる!

 逃げ続けて15分程だろうか…俺は公園に辿り着いた。ここは間違いない。夕麻ちゃんと行ったデートで最後に来た場所だ。

 

「逃げられるとでも思っていたのか?」

 

 そう言いながら不審者が現れた。なんかコイツも後ろから羽出してるんですけど!?

 いくらなんでもファンタジーすぎないか!?そう思っていると不審者が。

 

「貴様の主は誰だ?いや、こんなに困惑しているのを見るにはぐれか?ならばこんな反応なのも納得いく。」

 

 なんかまた変なこと言ってるけどこの状況はまずい、夢の通りだと俺はこのあと…

 

「ふむ。間違いないな、特に主の気配もなし、ならば殺しても問題あるまい。」

 

 そう言いながら目の前の不審者は光る槍を構えた。

 ヤバイ、あの夢と同じだ。このままだと俺はあの槍に貫かれて…

 

 「グ…ァァァ…!」

 

 そう思っていたら夢のように既に貫かれていた…

 痛い痛い痛い痛い!!槍を引き抜こうにも触れただけで火傷する。

 

「どうだ?光は貴様らにとって猛毒。さぞ苦しかろう?」

 

 そう言いながらまたゆっくりと目の前の不審者が近づいてくる。マズイ!!これは逃げられない!!

 そう思っていたら、目の前で爆発が起きた。そして、煙が晴れたあとには、赤髪のあの人が立っていた。

 

「その子に手を出さないでもらえるかしら?」

 

「赤髪、そうか…お前は。」

 

「お察しの通りよ。リアス・グレモリー、こんばんわ、墜ちた天使さん?」

 

 

 なんかよくわからない問答を繰り返している。

 

「となるとそこのガキはお前の眷属か…ならば詫びよう。だがな、一つ忠告しておこう。下僕を放し飼いにするのは良くないぞ?また今日のように私が狩ってしまうかもしれんからな。」

 

 そう言って不審者はどこかに行ってしまった。それに安堵したからか、今までかろうじて保っていた意識が消えかかる…

 

「…これはまずいわね、ひとまずあなたの治療を」

 

 リアス先輩が何か言い終えるより前に俺は意識を失った。

 

―●●●―

 

 清羅です。兄を起こしに来た今、兄と先輩が裸で一緒に寝ていました。この状況に対して、なんと言えばいいのでしょうか…

 

「先輩、これはどのような状況で?」

 

 取り敢えず、確実に事情を知っているであろう先輩に質問します。やっていたことは治療なのでしょうが、万が一という可能性もあるので念のため聞いておきます。

 

 「えぇ、実は昨日、この子が襲撃されてたみたいだから裸で抱き合って治療してたのよ。」

 

 うん。そうだとは思いましたが、両者ともに裸なのであらぬ誤解を招きそうです。もし起こしに来たのが母さんだったら確実に誤解してたでしょう。

 

「取り敢えず、ご飯出来てるので早めに降りて来てください。」

 

 まあ、要件だけ伝えて降りる事にします。途中、兄の悲鳴じみた叫びが聞こえてきましたが気にしないでおきましょう。

 

―●●●―

 

 学校に登校してから数分後、周りがやたらと騒がしかったので、何事かと外の様子を見てみると、兄と先輩が一緒に登校していました。

 あぁ、これは多分、あれでしょうね。リアスお姉様があんな変態と一緒に登校だなんて!的なやつですね。

 案の定、さっき思った通りの言葉が言われていました。そして、何故か兄が男二人に殴られていました。

 

…もう気にしなくていい気がしてきました。気にしたら余計疲れるだけでしょう。

 

 そう思って携帯をいじっていると、小猫ちゃんが声をかけてきました。

 

「…兵藤先輩に事情を説明するそうなので授業後部室に来てほしいそうです。いいですか?」

 

 あぁ、やっと説明するんですか。そろそろ私の事とか、先輩達の事とかも説明しておきたかったので丁度良かったです。なのでこの返事には。

 

「わかりました。授業後向かいますね。」

 

 授業後に向かう事を伝えておきました。そうしたら。

 

「ありがとうございます。お菓子たくさん用意しておきますね。」

 

 これはますます行かなければなりませんね!では、今日の授業後、説明会といきますか!

 

 

 




ありがとうございました!次は説明会です。お楽しみに!


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第五話

第五話、始まります!やっと説明会。ここまで長かった…


 授業後、私はオカルト研究部にやってきました。目的はお菓子と兄への説明です。説明は多分リアス先輩辺りがしてくれるので私はお菓子を食べ続けるのみです。この時間ならば、木場先輩が使いとして兄を呼びに行っているはずです。

 

 そう思いながらお菓子を食べていると、部屋の扉が開き、そこへ兄と木場先輩がやってきました。すると、兄は驚いた顔で私を見るなり。

 

「清羅!?お前、ここの部員だったのか!?」

 

 あぁ〜、そう言えば私がよくここにいる事伝えてませんでしたね。そりゃそう思いますよね。ここは素直に。

 

「いや、部員というよりかは、小猫ちゃんと一緒にお菓子を食べているだけというか…」

 

 授業後毎回お菓子を食べるだけのために来ているようなもんですからねぇ。兄はそれに納得したのか。

 

「そっか。それよりリアス先輩は!?」

 

「そこのシャワー室にいると思いますよ。」

 

 というか、なんで学校の部室にシャワー室があるんでしょうか…必要ないと思ったのは私だけではないはずです。

 

 すると、兄はシャワーあがりのリアス先輩を見るなり顔をいやらしくにやけさせてました。これに、思わず小猫ちゃんは

 

「…いやらしい顔」

 

 いいぞ、小猫ちゃんもっと言ってやってください。そしたら兄は、若干申し訳なさそうな顔をしました。

 

「ゴメンナサイね、昨日はシャワーを浴びてなかったから、今汗を流してたの。」

 

 そういえばリアス先輩は昨日家で泊まってましたね。それでですか。でも、そこのシャワー室。普段も使っているからそこまで違いはないはずなんですが…

 

「これで全員揃ったわね。兵藤一誠君。いや、親しみを込めてイッセーと呼ばせてもらっていいかしら?」

 

「はい!是非!」

 

 兄さん嬉しそうですね。

 

「私達オカルト研究部はあなたを歓迎するわ」

 

「え、あ、はい」

 

「悪魔としてね」

 

 その言葉とともに、兄と私以外のここにいる人たちは翼を出しました。そして一つだけ言いたい!

 …私、悪魔じゃないんですがそれは…

 

 

 

 

―●●●―

 

 

 

 

「粗茶ですわ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

「うまいです」

 

「ありがとうございます」

 

 

 そういって単純な感想を述べる兄。ちなみに私もいただいてます。だって朱乃先輩のお茶、美味しいんですもの!そう思ってお茶を味わっていると。

 

「単刀直入に言うわ。私達は悪魔なの」

 

 …すごい単刀直入ですね。一瞬ですが兄と思考が被った気がします。

 

「信じられないっていった顔ね。まぁ仕方ないわ。でもあなたも昨夜見たでしょう?黒い翼の男を」

 

 この町にまだ堕天使いたんですか。まあ、どうせ下っ端の雑魚でしょうから話を流します。

 

「――天野夕麻」

 

「あの日、あなたはその子とデートをしていたわね?」

 

 …天野夕麻って言ったら、うるさかったので私が殺したあの堕天使のことですか。そういえばそんな名前でしたね。多分本名は違うんでしょうが…

 

 そんなどうでもいいことを考えていると再びリアス先輩が口を開き。

 

「彼女は実在していたわ。確かにね。でも、あなたの妹の逆鱗に触れてこの世から消滅してしまったけれど」

 

 あの堕天使が消えたのに情報が消えていたのは恐らく他の堕天使の仲間がうまく証拠を消したんでしょうね。

でなければこうなってるはずがないですから。

 そうこう思っているうちに、一通りの説明が終わっていたのか、今度は狙われた原因と現在の三大勢力の力関係。神器(セイクリッド・ギア)についての説明を始めてました。

 

「彼女があなたに近づいた理由はあなたの身に宿る神器(セイクリッド・ギア)を警戒して、殺すためでしょうね。最初は反応が小さすぎてわからなかったのだけど向こうが時間をかけて調査するうちに確証に至ったのでしょう」

 

 これを聞いた兄は、殺されたはずなのに生きている事に疑問を抱くと同時に、理不尽に殺された事に対する怒りが混じって、困惑した様子で叫びました。

 

 すると、リアス先輩が兄を慰めると同時に、生きている理由について説明しました。それにより、兄の困惑はひとまず収まり、説明が再開されました。

 

 その後、部員の皆が神器(セイクリッド・ギア)の説明をし終えたあと、兄の神器(セイクリッド・ギア)を確かめるため、兄に一番強いと思う存在を想像してもらうことに。兄は疑問を抱きながらも、左手をかざしてその場から立ち上がり。大きな声で。

 

「ドラゴン波!!」

 

 と、好きな漫画のキャラの技を大声で叫びました。

 

 

 

そう。大声で。

 

 

 

 

 

これは非常に恥ずかしい!!今私はものすごく顔を真っ赤にしています!皆が兄に注目してるのが不幸中の幸いでした。今の顔を見られたら問答無用で聖槍を突きつけてしまいそうです。

 

 そうやって恥ずかしい思いをしていると。左腕が強い光を放ちました。その後、兄の左腕には宝玉がはめ込まれた赤色の籠手が装着されてました。

 

「な、ななな、何じゃこりゃぁぁぁぁ!!?」

 

 これが普通の神器(セイクリッド・ギア)だったならば私は未だに恥ずかしい思いをしているままだったのでしょうが、発現した神器(セイクリッド・ギア)に対する驚きでそんな思いもどこかに消えてしまいました。

 

 

 というか本当に驚きました。以前彼氏とデートした際、彼からこの町に「赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の所有者がいる可能性がある、注意しろ。」とは言われてましたが。

…まさかそれが兄だったなんて。

完全に予想外でした。今思えばあの時駒8個使用した時点で気付いておくべきでした。

 

 ドラゴンは戦いを呼ぶ。こればっかりは覆しようのない事実です。それが二天龍ならば尚の事。

 一刻も早く対策をしなければ。そう思いつつ、先程の恥ずかしい思いを忘れ、お菓子を食べながらこれからの事を考えてました。

 

 

―●●●―

 

 

 

 

 そうして、悪魔についての説明も終わったあと、兄がなぜ私がここにいるのかと疑問を抱き、リアス先輩に質問していました。

 

「そういえば、なんで清羅はここにいるんですか?もしかして清羅も悪魔だったりするんですか?」

 

 そうなりますよね。ここにいる兄さん以外の人は私の事を知ってますが、兄は私のここでの裏の顔を一切知らない。ここはちゃんと説明するべきでしょうね。というわけで、リアス先輩に説明することを伝え、説明することにしました。

 

「いや、私は人間ですよ。私も兄さんと同じように神器(セイクリッド・ギア)を宿してまして。それの関連でこうして皆さんと知り合ったわけです」

 

「…え?お前も神器(セイクリッド・ギア)を宿してたのか!?じゃあ見せてくれよ!」

 

 そうして強くお願いされました。まぁ、見せた方が説明も早いので見せることにします。

 

 

「…わかりました。ではお見せしますね。あぁ、それと、悪魔には少しきつい光ですので注意してくださいね」

 

 ちゃんと忠告して、オーラを極限まで押さえ込みます。それでも悪魔には害のある光を放ちますが。そして、私が神霊狩りの際に使用する槍の真名を呟き、手元に出現させます。

 

 

黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)

 

 

 先程の兄の神器(セイクリッド・ギア)の発光の時より一際大きな光を放ったあと、私の手元には、光輝く槍が握られていました。兄以外の皆は、知っているので驚いていませんでしたが、これを見た兄は、大きく目を見開いて驚いてました。

 

「って、すげぇぇぇぇぇぇぇ!清羅!お前こんなの宿してたのか!?部長!この槍の名前っていうのは分かるんですか!?」

 

 驚いたあと興奮したのか、ものすごくはしゃいでました。本来なら、私から説明するべきなんでしょうが、リアス先輩にしてもらったほうが効果的でしょうので、リアス先輩に説明を任せます。

 

「清羅の神器(セイクリッド・ギア)の名前は黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)。神をも貫く絶対の槍にして、すべての神器(セイクリッド・ギア)の頂点に立つ存在よ」

 

 これを聞いた兄は、ピタリと動きが止まり、一分程硬直しました。

 その後、自分の神器(セイクリッド・ギア)

が発現したときよりも大きな声を上げて。

 

「…え?この槍ってそんなにすごいんですか!?ていうか神器(セイクリッド・ギア)の頂点!?それって最強じゃないですか!?」

 

 …そりゃあ驚きますか。なにせ自分の妹も神器(セイクリッド・ギア)を宿している。何よりそれが全ての神器(セイクリッド・ギア)の頂点だった。なんて知ったらそりゃ驚きますよね。

 

 

 皆の自己紹介も終わり、今度は悪魔として生きていくための説明会が始まりました。その説明の中、最初は下僕として生きていくことに不満を感じていた兄ですが、悪魔としての爵位を得るとハーレムを築けると知った馬鹿兄は。

 

 

 

 

「ハーレム王に俺はなるっ!」

 

 

 

 先程の不満いっぱいの顔から一変。途端に欲望丸出しであり得ない言葉を叫びました。

うん。まぁ、いいんじゃないですかね。馬鹿に真っ直ぐなところはこの兄のいいところだと思うので。

 

 でもね、女性がいる中でそういう発言は控えた方がいいと思うんですよね。後でしっかりと言い聞かせておきましょうか。

 

 

 こうして、馬鹿兄はハーレム王への道を進みましたとさ。

 

 これ、誰が得するんでしょうかね?

 

 

 




ありがとうございました!やっと説明会終わりました。ここまで長かった!!


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第六話

お待たせしました!第六話、始まります!!感想や評価、誤字脱字報告をくださった方々、本当にありがとうございます!


 

 兄が悪魔に転生してから数日。私はある人物と待ち合わせをしていました。メールで確認したところ、彼はもう到着しているとの事なので急いで向かっています。

 

 数分後、待ち合わせ場所のラーメン屋に到着しました。ちなみに、待ち合わせ場所がラーメン屋という件についてはもう慣れました。

 

 そして、扉を開き、一番奥の場所に座っている銀髪の少年の場所に向かいます。すると、彼は私に気付くなり、無表情でラーメンを食べ続けていた手を止めて、優しく微笑みながら話しかけてきました。

 

「やぁ、意外と遅かったね。何かあったのかい?」

 

「…寝坊してました。スイマセン。」

 

 実は昨日、兄のちらし配りを手伝ったりしていたため、少々寝るのが遅くなってしまい、それで起きたのが今日の待ち合わせの三十分前だったために、こうして少しだけ遅れてしまったのです。

 

 この返答に目の前の彼は苦笑いしながら慰めの言葉をかけてくれました。

 

「…その、まぁ、いくら君でもそういうことはあるさ。あまり気にしないほうがいいぞ」

 

「ありがとうございます、そう言ってもらえると助かります」

 

「まぁ、何はともあれ、かなり久しぶりだね。清羅」

 

 

 そういえば数日前にデートしたっきり直接会ってはいませんでしたね。

とりあえず、久しぶりに直接会えたことに喜びながら、私も、目の前の彼の名前を呼びます。

 

 

「本当に久しぶりですね・・・・・・・・ヴァーリ君」

 

 

 

 

 お昼ご飯(私にとっては朝ご飯)を食べた後、私達は近くのカフェに行き、最近の状況について語り合ってました。会話の最中、赤龍帝でもある私の兄の事を思い出して、早速伝えることにします。

 

「そういえばヴァーリ君。唐突ですがいいニュースか悪いニュース。どっちが聞きたいですか?」

 

 ちなみに、いいニュースが赤龍帝が見つかった事。悪いニュースが今代の赤龍帝は、多分歴代最弱ということです。さて、これにはどう答えるんでしょうか?

 

「本当に唐突だな・・・じゃあ、いいニュースから聞かせてもらおうかな」

 

「かしこまりました。では、発表します。今代の赤龍帝が見つかりました!!」

 

 しばらく硬直してポカンとした表情を浮かべるヴァーリ君。

 

 ・・・これはありですね。

 

「・・・・本当か?アザゼルはまだ見つかってないと言っていたが・・・・」

 

「・・・・え?てっきりもう知っているのかと思ってたんですが・・・・」

 

 アザゼルさん。まだ見つけてなかったんですか。これは意外でした。まぁ、反応も弱すぎたみたいですし仕方ないですね。

 

「さて、アザゼルのドジは置いといて。赤龍帝が見つかったということには驚いた。だが、まだ悪いニュースがあるんだろう?今度はそっちを聞かせてくれ」

 

「・・・・わかりました。では悪いニュースです。今代の赤龍帝・・・・おそらく歴代最弱です・・・・」

 

 というか兄は赤龍帝になるタイミングが悪すぎましたね・・・・私の彼氏であるヴァーリはこの赤龍帝の対となる存在でもある白龍皇と呼ばれる存在です。いわゆるライバル関係になるわけですが、ヴァーリは兄とは真逆で、歴代最強の白龍皇と呼ばれています。これには、アザゼルさんのお墨付きです。このニュースを聞いて、ヴァーリは。

 

「・・・・・・・・」

 

 あまりのショックに言葉を失い、心底落胆した様子で机に突っ伏していました。

 

 ・・・そりゃそうなりますか。自分は高いスペックを持った歴代最強の白龍皇。対してライバルは一般人に毛が生えた程度の歴代最弱の赤龍帝。こうなるのも当然です。

 

 すごく可哀想になってきたので、ひとまず慰めの言葉をかけてあげることにします。

 

「・・・・そのぉ、元気出してください。これからは普段より多くデートの機会と戦闘する機会を増やしてあげますから・・・・ね?」

 

「・・・そう言ってくれると嬉しいよ・・・俺のライバルは歴代最弱かぁ・・・思わず笑いがこみ上げてきたよ・・・ハハッ」

 

 まずいです。ヴァーリ君がもはや落胆を通り越して空虚な笑い声を上げています!

 

「ヴァーリ君!気を確かに!!!それ以上はいけません!!」

 

 とりあえず、目の前にあったお盆で頭を叩きます。そしたら、それが効いたのか、虚ろだった目が元通りになり、顔をガバッと上げました。

 

 

「・・・・ハッ!?お、俺は一体何を!?」

 

「気にしないで下さい。ショックで目が虚ろになっただけですから」

 

「・・・・そうか。俺、疲れてんのかなぁ・・・・」

 

 いや、疲れてるのかなぁではなく、疲れてるんです。最近、アザゼルさんの書類整理の手伝いもあるみたいですしね。ここは、労いの言葉をかけてあげることにします。

 

「ヴァーリ君、あまり無理しないでください。助けが必要ならいつでも呼んでください、可能な限りサポートとかお願いも聞きますから」

 

 これで立ち直ってくれるといいんですが・・・・

すると、ヴァーリ君は勢い良く体制を突っ伏した状態から持ち上げて

 

「!本当か!?よし!」

 

 今までの表情が嘘のように元気になりました。まぁ、お願いも聞きますからって言ったのは私ですから聞いてあげますか。

 

「今から『神の子を見張る者(グリゴリ)』のバトルフィールドに行くぞ!久しぶりの戦闘だ!!そしてその後は久しぶりに泊まっていってくれ!!」

 

 

 ・・・・あれぇ?なんでそうなったんでしょうか?

 

 

 

 ・・・・父さん、母さん、兄さん。私は今日、家に帰ることができないようです。多分明日は神の子を見張る者(グリゴリ)の施設から学校に登校することになりそうです。

 

「・・・・わかりました。久しぶりに泊まることにします。ちなみにアザゼルさんからの許可は?」

 

 多分もらっているんでしょうね〜私が泊まる際、二つ返事でOK出すような人ですからあの人。これに対して、ヴァーリ君は。

 

「フッ、当然もうもらっているさ。さぁ、今すぐに行こうじゃないか!」

 

 デスヨネー。そうだろうと思いました。そう半分諦めていると、携帯がなってメールの着信が入ってました。

これは、さっき泊まることを伝えておいた際の返信ですね。えぇっと?メールの内容は・・・・

 

     

 

 

 

   

 

   『孫の名前。考えておくわね♪』

 

 

 ・・・・ちょ〜っと待ってください。なんでそうなるんですかねぇ?そう考えていると、メールの返信をヴァーリ君に見られたようで・・・・

 

「なんだ、まだそっちの親は考えてなかったのか?アザゼルはもう百通りくらい考えているそうだぞ?」

 

 メールの返信以上の爆弾発言を投下してきました。

 

 ちょっと待て!あの堕天使総督!最近やけにお義父さん呼びをせがんでくると思ったら・・・・こういうことだったんですか!とりあえず、会ったら一発殴る事を心に誓いながら、神の子を見張る者(グリゴリ)の施設に向かう事にします。

 

 

―●●●―

 

 

 翌朝、足腰がおぼつかない状態で学校に向かいます。途中、兄と鉢合わせて、昨日はどこに行ってたんだ?と質問されたので、彼氏の家で泊まっていたと伝えました。すると、兄は血涙を流しながら走り去って行きました。

 

「何だったんでしょうか?今の」

 

 その後、教室に向かい、小猫ちゃんに、兄の悪魔生活の様子を聞いてみると、契約はとれず、失敗。でもアンケートではまた語り合いたいとの事。そして、金髪美少女シスターに会って、教会に案内したところ、部長に怒られたりと、なかなかに波乱万丈な悪魔生活をおくっている事がわかりました。

 

「ん?小猫ちゃん。今金髪のシスターって言いませんでしたか?」

 

「あ、はい。先輩が言うにはそうらしいですけど。」

 

 おかしいですね。こんな時期にシスターが赴任してくるなんてまずありえないはずです。この付近には寂れた教会しか無いですから・・・・

まさか堕天使共が何か企んでいるんでしょうか?だとしたら十中八九下っ端の独断でしょうので後でリアス先輩に教えておいてあげますか。

 

 




ありがとうございました!あと少しで一巻分が終わりそうです。


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第七話

お気に入り登録が100件突破してました!この小説をこんなにも読んでいただき、本当にありがとうございます!!これからも更新頑張っていきます!!


 

 今、オカルト研究部にはピリピリした雰囲気が漂っています。理由は簡単。兄が堕天使に攫われたシスターの救出を申し出たからです。

 

 ・・・・正直に言わせてもらうと無謀という言葉を隠しきれません。現在の兄はまだ神器(セイクリッド・ギア)すら完全に覚醒しきってない未熟と言わざるを得ない状況。それで悪魔の天敵でもある堕天使に挑むのは完全な自殺行為です。

 

「だったら、俺一人でも行きます。アーシアの事を放っておけません」

 

 部長が必死に止めているのに向かうというのは、それだけそのシスターが大切なんでしょう。これほど真っ直ぐに物事を考えられる兄のこの部分は私が唯一尊敬できる美点です。

 

 この兄の真っ直ぐな視線に、リアス先輩はついに折れたのか、兄に兵士(ポーン)の駒のプロモーションについて話すと、私が伝えた教会に一足先に向かいました。

 

 

 さて、私も動きたいところなのですがここは兄の神器(セイクリッド・ギア)覚醒のために見守りに徹する事にします。私が出るのは兄が本当に死にかけた時。こうでもしないとこれからの戦いに生き残れないでしょうから。辛いですがこれも兄のため。そう方針を決めると、私は見守るためにここから退室します。

 

「私も大事な用事ができました。少し外に出ますね」

 

「ッ・・・・!そうか・・・・清羅がいてくれたら心強かったんだけど・・・・」

 

「すいません。どうしても外せない用事なので」

 

 うん。嘘は言ってませんね。さて!見守ると決めたならば早速準備です。私も一足先に教会に向かうとしましょうか。

 

 

 

―●●●―

 

 

 俺は今、木場、小猫ちゃんと一緒に教会に向かっている。本当は清羅も一緒に来て欲しかったんだけど大事な用事とやらでどっか行っちまった。多分清羅がいてくれたら一瞬で終わったんだろうけどな・・・・

 

 以前、気になって清羅の強さを訪ねたところ、部長曰く、俺達のトップである魔王様とも互角以上に戦えるだとか、多数の墜ちた神様を葬っただとか、多数のはぐれ悪魔の群れを無傷で葬っただとか、この他にも様々な武勇伝が出てきた。

 

 ・・・・俺の妹、そんなに強かったんだな・・・・ていうかどこでそんなに強くなったんだろうか?

そうやって考えながら走っていると、いつの間にか目的の教会についていた。

 

「さて、乗り込もうか」

 

 木場の言葉に俺は覚悟を決めて教会に入った。そして、聖堂まで走り抜くと、柱から、白髪の神父が顔を出してきた。

 

 それを確認して、俺は神器(セイクリッド・ギア)を展開して殴りかかろうとする。そしたら、木場が手を出して俺を止めてきた。

 

「ここは、僕に任せてくれないかな?」

 

 木場はそう言うと、クソ神父の撃つ弾丸を避けながら一瞬で近づき、鍔迫り合いを始めた。

 

 早い!これが騎士(ナイト)の速さと木場の剣術の実力か!と感心していると、鍔迫り合いをしていた神父は楽しそうに笑い。

 

「やるねぇ!こりゃいいバトルができそうだ!・・・・と言いたいところなんだが・・・・」

 

 そう言うと、神父は光の剣を巧みに操って木場を弾き飛ばした。マズい!と思っていると、神父はいきなり武器をしまって両手を上げ始めた。?何考えてんだこの神父は、と思っていると、神父がありえない発言をした。

 

「通っていいぜ」

 

 は?どういうことだよ?こいつは俺達を止めるためにここにいるんじゃないのか?と考えていると。

 

「ここだけの話、門番の役割は形だけなみたいなもんでさぁ。あの堕天使に協力してるのも上からの命令なんだよねぇ〜。だから早く行け、じゃねぇとお目当てのシスターが死んじまうぜ?」

 

 なんかよく分かんないけどこいつはここを通してくれるって事でいいのか?もしかしてこいついい人って思っていると。

 

「信用できないね」

 

 木場がそう言い放った。その一言に対して神父は。

 

「あぁ〜もう!信用ねぇな俺っちは!分かりましたよ〜。だったら負けたって事でここから退散するとしますかね〜」

 

 と、愚痴を言いながら窓から出て行った。これには俺達も一瞬意味が分からなかった。しばらくの間硬直していると。

 

「・・・・何であれ、門番は立ち去りました。とりあえず地下へ向かいましょう・・・・」

 

 その一言にハッとなった俺達は、無言で頷きあうと、隠し階段を使って地下に向かった。

 

 

―●●●―

 

 

「お疲れ様でした。フリードさん」

 

 とりあえず、三人に相対してもらったフリードさんにお礼を言います。本来なら、あそこで戦ってもらって兄の神器(セイクリッド・ギア)の覚醒をさせる予定でしたが、地下のシスターの神器(セイクリッド・ギア)の状態を確認したところ、急がせなければと思い、急遽撤退してもらいました。

 

 ・・・・ちょっとだけ予定と違いますが堕天使との戦闘で覚醒してもらうしかなさそうです。まぁ、ここは兄のいざという時の根性を妹として信頼するとしましょう。

 

「いやいや〜、アレくらいどうってことないぜ〜清羅たん〜。ちょっとだけ戦いたいって思いはあったけど、どうせ手加減してやられなきゃいけないから意味ないしね〜」

 

 ちなみに、フリードさんに対して監視の指令を出したのはアザゼルさんです。下っ端の動向を探るために私がフリードさんを指名したところ、快く向かわせてくれました。

 

「さて、では兄の赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の覚醒を待つとしますかね」

 

「そうだね〜。ヴァーリには及ばずともどんな覚醒の仕方をするのか楽しみだからね〜」

 

 なんだかんだでこの人もそういう戦闘好きの部分がありますからねぇ。まぁ、私もその一人なんですが・・・・

 

「やべっ!?仕事の後ルフェイたんとデートの約束してんだった!こんなことしてる場合じゃねぇ!!んじゃ、あとは任せたぜ〜」

 

 あ、そういえばこの前そんな約束してましたね。フリードさんはアザゼル特製転移装置で即座に転移しました。それでは、一人で兄の観察といきますか。

 

 

―●●●―

 

 

 俺たちは今、部屋の中で多数の神父と交戦していた。その一番奥の儀式場とやらでは、アーシアが十字架に磔にされていた。それを見て俺は思わず叫んだ。

 

「アーシアァ!助けに来たぞ!!」

 

「ふん、あの時の小僧か。だがもう遅い!!あとすぐで儀式が終わる!」

 

 目の前のドーナシークとやらがそう言うと、アーシアの体が光り、体の中から小さな指輪が出てきた。

 

「フハハハハ!ようやく手に入れたぞ!これで俺にもう敵は無い!!」

 

 あれはマズイ!!直感でそう思った俺は急いでアーシアの側へ向かう。途中、神父たちが邪魔してきたけど、小猫ちゃん達が倒してくれた。

 

「アーシア!しっかりしろ!!」

 

 そう呼びかけるけど、アーシアはぐったりとしたまま返事をしない。体温を調べても冷たいまま。それが真実を物語っていた。

 

「無駄だ小僧。そのシスターはすでに死んでいる」

 

 その現実を聞いて、俺は今自分でもおかしくなるほどの憎悪をだしていた。あぁ、多分これが殺気ってやつなんだろうと思いながら目の前の存在に対して怒声を上げる。

 

「堕天使ィィィィィィィィッッッ!!!!!」

 

「喧しい小僧!!貴様のような下賤な輩が俺に対して吠えるな!!」

 

 許さない許さない許さない許さない!!!!こいつは本当の下種だ!!悪魔よりも汚くて外道じゃないか!!そう思って目の前のこいつを睨んでいると木場から声がかかった。

 

「このままでは不利だ!兵藤君!一旦その子を抱えて離脱してくれ!!逃げ道は僕らが確保する!!」

 

 ッ!!俺はその言葉に従うしかなかった。この状況が不利なのは素人の俺が見てもわかる。目の前の堕天使を睨んで、アーシアを抱えて離脱する。

 

 途中、神父達に邪魔されたけど、二人が薙ぎ倒してくれた。すまねぇ!!ありがとう!!そうやって二人に心の中で感謝しつつ、俺は地下の階段を上がって聖堂に出た。そして、目の前にあった長椅子にアーシアを寝かす。そうしたら、俺の目から凄まじいほどの涙が出た。

 

「なんでだよ!!意味わかんねぇよ!!この子は何も悪くないじゃないか!この世には神も仏もねぇのかよ!?なんでこの子が死ななきゃならないんだよ!?巫山戯んなよ!!巫山戯んなよ!!」

 

 今の俺は、怒りと悲しみが混じってわけが分からなくなっていた。そうして泣いていると、後ろから、堕天使の声が聞こえてきた。

 

「下らんな。悪魔がシスターの死を悲しむだと?こんな馬鹿げた悪魔がどこにいる!?こいつは傑作だ!!ハハハハハハ!!!!」

 

 

 そう言いながら笑いながら見下してきた。

 

 

 

 馬鹿にしやがって!!!こんな奴のためにアーシアは死んだのか!?しかもあんなに誇りに思っていた神器(セイクリッド・ギア)まで盗られて!?許さない!絶対に許すもんか!!!

 

 そう思っていると、俺の篭手が眩い光を放って形状が変化した。すると、体中に力が駆け巡った。今までの状態とは次元が違う。

 

「無駄な事を。そんな下級神器(セイクリッド・ギア)で何ができる!!」

 

 そう言いながら、目の前の堕天使が投げた光の槍がおれに刺さった。光が悪魔の弱点!?でもなぁ、この程度痛みなんざアーシアがこれまで受けた痛みに比べれば痛くも痒くもねぇよ!!

 

「ほう!その槍を耐えるか!!下級悪魔にしてはよくやる。ならば、今度は四本だ!!」

 

 そう思いながら槍を無理矢理引き抜いた後、今度は四本の槍が投擲されて俺に刺さった。クソッ!こいつは痛ェ!!さっきまでとは桁違いの痛みが体中を駆け巡る。もう全身が痛くて体が動かねぇ。

 これは限界かな・・・・そう思って膝をついた。すると、目の前の長椅子で静かに眠っているアーシアが目に写った。

 

 ・・・・俺は目の前の少女を死なせてしまった。こんないい子だったのに。これから絶対に明るい未来が待っていたはずなのに。それを目の前で馬鹿笑いしてる屑に全部台無しにされたんだ。この子はに悔しいに決まってる。いや、絶対に悔しいはずだ。

 

 ・・・・だったらさ。その悔しさを少しでも晴らしてやるっていうのが、友達の。そして、男の役割なのではないのだろうか?

そう思っていたら、自然と体が動いてくれた。

 

 ―殴ってやる。

 ―一発でいいから。

 ―目の前で馬鹿笑いしている屑を殴ってやる!

 

 そう決意した俺から凄まじいほどの力が湧き上がってきた。あぁ、そうか。魔王様が願いを聞き入れてくれたのか?それとも、俺の神器(セイクリッド・ギア)が思に答えてくれたんだろうか?

 

 まぁ、力が湧き上がってきたんならやることは一つだ!

目の前の屑を。アーシアの悔しさを乗せてぶん殴る!!!

 

「な!?あ、ありえん!!下級悪魔風情が、なぜ立ち上がれるのだ!?」

 

「・・・・ァァ〜痛え。確かに痛い。痛いんだけどさ・・・テメェに対する悔しさと憎しみが体中を駆け巡ってどうにかなっちまったよ!!」

 

 おそらくチャンスは一度きり。だから絶対に外さない。そう決心して目の前の屑を目で捉える。

 

「いくぜ。俺の神器(セイクリッド・ギア)!こいつをぶっ飛ばす一撃!打てるんだろ!?」

 

『Explosion!!』

 

そしたら、俺の神器(セイクリッド・ギア)はその問に応えてくれたみたいに、力強い声を上げてくれた。

 

 いける!籠手からスゲェ量のエネルギーが溢れてくる。でも、この力は一撃だけだ。

 今の俺が撃てる。一撃限りの大技。だったら絶対に外せない。だったらやることは一つだけ。

 

 目の前のコイツを、全力で殴ることだ!!!!

 

「何だこのエネルギー量は!?高々下級悪魔の分際で!!何故上級悪魔の力がだせる!?こんな事があってたまるかぁぁぁぁ!!!」

 

 目の前の屑が何か言ってるけど気にしない。翼を広げて逃げようとしてる屑を左手でがっしり握って逃げられないようにする。そして、今出せる全力の一撃を放つ!!!

 

「ブッ飛べ!クソ天使!!!」

 

 

ドンッッッ!!!

 

 

 鈍い音がして奴は飛んでいった。あれだけの一撃だ。おそらくもう立ち上がっては来ないだろう。俺は晴れ晴れとした気持ちで目の前の少女に報告する。

 

「敵は打ったぜ・・・・アーシア」

 

 

 ―僅かに。目の前の少女が微笑んだ気がした。

 

 

―●●●―

 

 

「お疲れ様です。兄さん」

 

 そう言って、目の前で倒れ込むようにしていた兄を抱きかかえます。すると、兄は目を大きく見開きました。

 

「って清羅!?お前、用事があるんじゃ!?」

 

「たった今済ませてきました。事後処理です。」

 

 やっぱりでした。兄はピンチで見事に神器(セイクリッド・ギア)を覚醒させました。龍の手(トゥワイス・クリティカル)の形態から、ちゃんと赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)に進化してますね。

 

 とりあえずは、作戦成功ということで安堵していると、皆から労いの言葉をかけられてる兄の前に、堕天使が引っ張りだされて来ました。 

 

「リアス先輩、兄さん。この鴉の処理は私が担当していいですか?」

 

 兄と先輩に許可を取ります。すると、二人共意見はないのか、無言で頷いてくれました。

 

「さて、堕天使さん。あなたの抹殺許可はすでにもらっています。最後に何か言い残すことは?」

 

「・・・・嘘だ。アザゼル様が私を見捨てるはずが・・・・」

 

「見捨てましたよ。それでは、さようなら」

 

 手に聖槍を顕現させ、グサッと一突きします。すると、目の前の鴉は灰となって、崩れ去りました。

 

「ありがとう清羅。あなたがいてくれて処理が楽になったわ」

 

「いえ、お気になさらず。ところで兄さん。それ、覚醒したんですね」

 

 そう言うと、私以外の皆は頭に疑問符を浮かべてました。・・・・あぁ〜この人達赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の実物知らないんでしたっけ。

 じゃあ、説明しますか。

 

「皆さん。聞いてください。兄さんの神器(セイクリッド・ギア)はただの神器(セイクリッド・ギア)ではありません。」

 

 皆が驚いた表情を浮かべます。普段無表情の小猫ちゃんまで驚愕の表情を浮かべてました。これに珍しいなと思いながら話を続けます。

 

「兄さんの神器(セイクリッド・ギア)は私と同じ神滅具(ロンギヌス)の一つ。約十秒ごとに持ち主の力を倍にしていき、極めれば神をも殺す事が出来る能力を得る赤き龍が、封じられた伝説の籠手。赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)がその正体です」

 

 この事を聞いた皆は、先程よりも驚愕の表情を浮かべてました。中でも兄さんが人一倍驚いてました。

 

 

「嘘だろ!?だとしたらこれとんでもない代物だぞ!?」

 

 皆が神滅具(ロンギヌス)に驚愕して言葉を発さなくなりました。このままでは神滅具(ロンギヌス)の話題だけで終わってしまいそうなので、話題の方向性を変えることにします。

 

「ところで皆さん。そこで眠ってらっしゃるシスターさんはどうするんです?」

 

 すると、兄さんが悲しい表情を浮かべてました。これに対し、リアス先輩は驚きの案を提示しました。

 

「ねぇ、イッセーこれ、なんだと思う?」

 

 そう言って、リアス先輩は僧侶(ビショップ)の駒を見せました。本気ですか!?シスターを悪魔に転生させる気ですかこの先輩は!?すると、駒を見せた意図を掴んだ兄は心底驚いていました。

 

 そして、リアス先輩の詠唱が終わり、無事僧侶(ビショップ)の駒が体に入ると、奪われた神器(セイクリッド・ギア)も体内に入り、死んだはずのシスターが目を覚ましました。

 これに、兄は思わず目の前のシスターを抱きしめて一言。

 

「帰ろう。アーシア」

 

 

 さて、ひとまず一件落着ですね。

 

 

 

 




 お読みいただき、ありがとうございます!!原作一巻分、終了しました!次、ようやく二巻分に入ります!!



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戦闘校舎のフェニックス
第八話


 お待たせしました!第二巻の内容。始まります!


 私の兄が悪魔に転生してからもう一ヶ月。兄は順風満帆?な悪魔ライフをおくっています。最近では、悪魔に転生したアーシアさんが家に下宿することになったり、兄が赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)を使いこなすための本格的な訓練を始めたりと、これまでとはまた違った毎日を過ごしていました。

 

 そんな中、私宛に一通の手紙が届きました。こんな時期に珍しいと思い中身を確認してみると、冥界の知り合いから、婚約の話し合いがあるから仲介人を頼みたいという内容でした。

 

 そういえばあの人そんな話してましたね。もうそんな時期でしたか。

 

 

 兄の悪魔ライフから一ヶ月。これは何か起こりそうな気がしてきましたね・・・・

 

 

―●●●―

 

 

 学校の授業が終わり、家に帰っていつも通り本を読みながら過ごしていると、突然リアス先輩の気配がしました。何事かと思い、兄の部屋のドアを蹴破って侵入すると、兄がリアス先輩に裸で攻め寄られてました。

 

 うん、前にもこんな事あったけどあえて言わせてもらいます。

 

「これ、どういう状況?」

 

 そう思っていると、突然魔法陣が出現し、見知った女性が現れました。

 

「こんなことをして破断に持ち込もうというわけですか?」

 

 ちょっと待ってください。いきなりの急展開に流石の私もついていけてないのですがそれはいかに?

 

「すいません。これはどういう状況で?」

 

 こうなったらど直球に聞いてみるに限ります。すると、グレイフィアさんは丁寧な挨拶とともに簡単な説明をしてくれました。

 

「お久しぶりです、清羅様。では、この状況。簡潔に説明致しますと、お嬢様が婚約破棄のためにあなたのお兄様に操を捧げようとしていたわけです」

 

 ・・・・リアス先輩や。あなた、そうまでしてあの人との婚約破棄したいんですか・・・・

 

「あ、ありがとうございます。ということは話し合いは今週中に?」

 

 グレイフィアさんが人間界に来たということは、確実にグレモリー家の判断でしょうから、婚約取り決めの話し合いが近日中に行われるということでいいでしょう。そう思って確認すると。

 

「はい、話し合いは明日行う予定でございます」

 

 わぁ〜お、思ったよりも早かったですね。まぁ、明日は特に予定もないので承諾しますが。

 

「わかりました。では、明日はよろしくお願いします」

 

「いえ、こちらこそ」

 

 話し合いの確認が終わると、リアス先輩は兄の頬にキスをし、呆然としてる兄を置いて、グレイフィアさんとともに魔法陣で転移しました。

 

「この兄、放っておいてもいいですよね」

 

 幸せそうな顔を浮かべている兄を放置して、自分の部屋に戻りました。

 

 

―●●●―

 

 

 翌日、話し合いのため、私達はオカルト研究部の部室に向かっていました。すると、この場で初めて気配を察知したのか、木場先輩が。

 

「・・・・僕がここまで来て初めて気がつくなんて・・・・」

 

 と言いました。というかここでやっと気づくというのは遅いですね。私は学校にいるときからすでに気づいてましたけど。

 

 扉を開くと、すでに皆が揃ってました。しかし、いつもより数段雰囲気が重たいです。すると、リアス先輩が。

 

「全員揃ったわね。では、部活をする前に少し話があるの」

 

 そう言って、説明しようとすると、部屋にあった魔法陣が光りだし、魔法陣から演出用の炎が飛び散ります、やがて収まると、一人の男が立っていました。

 

「ふぅ、人間界は久しぶりだな」

 

 いきなりの男の登場に、兄が驚いていると、その男は私を捉え、にっこりスマイルで。

 

「おぉ、久しぶりだなぁ清羅。今日はよろしく頼むぞ」

 

「そうですね。お久しぶりです。ライザーさん」

 

 このやり取りに、グレイフィアさんと私以外の人達が心底驚いていました。そんな中、リアス先輩が。

 

「清羅!あなた、ライザーと知り合いだったの!?」

 

「ん?あ、はい。以前冥界で万屋みたいなことしてたときに知り合いまして」

 

 あぁ、そういえばリアス先輩達には説明してませんでしたね。すると、ライザーさんを知らない兄が。

 

「というか、あんた誰?」

 

 空気を読まないどストレートな発言をかましてきました。コレには、私とライザーさんは思わずズッコケます。

すると、ライザーさんがこの理由を察したのか、私が言いたかったことを言ってくれました。

 

「リアス。もしかして俺の事、その下僕君に話してないのかい?」

 

 この問に対してリアス先輩は。

 

「話す必要がないから話してないだけよ」

 

 嫌悪感を隠そうともせず、冷たく答えました。コレには、ライザーさんも思わず苦笑いを浮かべてます。

 

 未だに状況が掴めていない兄に私が説明しようかと思ったら、グレイフィアさんが兄に説明してくれました。

 

「兵藤一誠様」

 

「は、はい」

 

「この方はライザー・フェニックス様。純血の上級悪魔であり、フェニックス家のご三男です。そして、お嬢様と婚約されているのです」

 

 この説明に、兄はしばらく硬直した後、よっぽど驚いたのか。大声で絶叫をあげました。

 

 

―●●●―

 

 

 

「いい加減にしてちょうだい!」

 ライザーとの婚約話にとうとう我慢できなかったのか、リアス先輩の激昂した声が部室に響き渡ります。

 

「ライザー!何度も言ったはずよ!私はあなたと結婚なんてしないわ!」

 

「・・・・リアス。君の今の発言は現在の悪魔情勢を知ってのことなのかい?」

 

 この発言に対し、二人の間にさらに亀裂が走ります。ライザーさんは未だ冷静なままですが、リアス先輩の方はさらに激昂した様子になっています。すると、激昂した状態のリアス先輩は。

 

「えぇ当然よ。私は家を潰さない。婿養子だって迎え入れるつもりよ。でも、あなたとは絶対に結婚しない!」

 

 あくまで婚約しないと意地を張ります。コレにはライザーさんも呆れたのか、ため息をつくと、私とグレイフィアさんに体を向けます。

 

「これは婚約どころの話じゃありませんね。清羅、グレイフィアさん。何か案はありませんか?そのためにここにいるんでしょう?」

 

 ライザーさんが婚約を否定するための方法を私とグレイフィアさんに聞いてきます。

 

「はい。こうなることは両家の方々も重々承知していました。そこで、ここで話し合いがつかなかった場合最終手段を用いることにしました」

 

「最終手段?どういうこと?」

 

「あ、これは私が説明します。実は、この婚約に双方が納得できない場合は『レーティングゲーム』にて決着をつけろと、伝言を預かってます」

 

 この説明に、リアス先輩とライザーさんは心底驚いています。

 

「・・・・いいのか?俺は自慢ではないがプロとして活躍して勝ち星も多い。これはワンサイドゲームでは?」

 

 そうでした。確かライザーさんはすでにプロとして活躍し、多くの勝利を収めてました。しかし、リアス先輩はよほど婚約を破棄したいのか。

 

「やるわ。あなたを消し飛ばしてあげる、ライザー!」

 

 と言ってゲームに参加する意思を表明しました。これはちょっと無謀じゃないんですかね?

 

「・・・・なぁ、リアス。もしかしてここにいる面子だけでゲームに挑もうというわけか?」

 

 ライザーさんは若干困惑した表情で問いかけます。この問に対してリアス先輩は。

 

「だとしたらどうなの?」

 

 と、怪訝そうに質問を返しました。すると、ライザーさんは少々呆れながら。

 

「これじゃあ少し無謀じゃないか?確かに君の下僕は潜在能力が高い者たちが多い、しかし現時点で俺の下僕に対抗できるのはそこの『雷の巫女』ぐらいしかいないじゃないか」

 

 そう言うと、部室の魔法陣が光だします。やがて光が収まると、そこには十五名のライザーさんの眷属が揃いました。

 

「それに、俺はメンバーがすべて揃っている。対してそちらは王を含めて六名しかいない。」

 

 そう言って眷属を見せました。すると、どこからか大号泣する声が聞こえてきました。

 

「・・・・お、おい、清羅、リアス。そこの兵士、俺を見て大号泣しているんだが・・・・」

 

 ライザーさんがドン引きした表情で問いかけてきます。私は、今目の前で大号泣しているのが自分の兄だという現実から目を背けながら質問に応じます。

 

「おそらく夢がハーレムを築くことだから感動?してるんだと思います・・・・」

 

「・・・・そ、そうか・・・・苦労してるんだな・・・・」

 

 そう言ってすごい憐れみの視線を向けられました。しかし、今はその視線が痛い!

 

「ま、まぁ、このままレーティングゲームを行ったとしても結果は見えている。」

 

 すると、何かを思いついたのか、ライザーさんは顎に手をやり考え始めました。

 

「リアス、十日後でどうだ?そしたらいい勝負になるだろう」

 

 どうやら、リアス先輩達に十日間の修行期間を与え、初めてのレーティングゲームに備えさせるようです。

 

 そう思っていたら、ライザーさんはこちらを見るなり、さらにとんでもない事を提案してきました。

 

「!そうだ!リアス、そちらはただでさえ人数が少ない。ならば清羅にレーティングゲームに参加してもらってはどうだろうか?」

 

 ・・・・いいんでしょうか?私が出たら一方的な蹂躙で終わりそうな気がします。その意思を読んだのか、グレイフィアさんが。

 

「では、非公式のゲームなので許可をいただけるか両家に相談してみることにします。おそらく、出場した場合、多くの制限をかけられると思いますが」

 

 マジデスカー、許可出しちゃうんですか・・・・でも、制限かけても結果は変わらない気がするのですが・・・・

 

「それでは、リアスとその眷属たち、そして清羅。ゲームでまた会おう」

 

 そう言って、ライザーさんとその眷属たちは、魔法陣で帰っていきました。

 

 

 




 ありがとうございました!次は修行編に入ります!


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第九話

 お待たせしました!修行編!お楽しみください!!


 

 ライザーさんとの話し合いがあった翌日。私達は修行のためにグレモリー家が所有する別荘に来てました。

 

「さて、早速修行を開始するわよ!」

 

 ちょっと休憩したらリアス先輩達の準備が整ったらしく、修行を始めました。その間、兄は未だにバテてましたが、持ち前の気合で乗り切り、なんとか皆についていきました。

 

 

 

 

 

 最初の修行内容は木場先輩との剣術修行だそうです。現在、兄と木場先輩が打ち合っています。

 

「おりゃぁぁぁぁ!!!」

 

「はっ!やぁっ!」

 

 ・・・・木場先輩は最小限の動きで木刀を振るって対処しているのに対して、兄はただ力任せに木刀を振っているだけ。木場先輩が視野を広げろとアドバイスをしていますが、そう簡単にできるはずもなく、また木刀を叩き落されてしまいました。

 

 その後、何度も打ち合ってましたが、兄の木刀が木場先輩に当たることは一度もありませんでした。

 

 

 

 木場先輩との剣術修行の次は朱乃先輩による魔力修行。

 

「できました!」

 

 この修行で早速才能を開花させたのはアーシア先輩でした。教わってすぐに魔力の塊を作るのに成功しています。

 

 一方兄は、元々魔力が子供以下なのでロクに魔力が練れていません。ようやく作れた魔力の塊も米粒程度の大きさ。

 

 

 ・・・・ヴァーリ君。どうか絶望しないでください。

 

 

 

 朱乃先輩の魔力修行の次は、小猫ちゃんによる格闘技の特訓でした。

 

「のわぁぁぁぁ!!」

 

 あ。また兄が吹っ飛ばされました。これに、思わず小猫ちゃんは。

 

「・・・・弱っ」

 

 容赦の無い毒舌を放ちます。この言葉に兄は吹っ飛ばされた時より落ち込んでいました。

 

 

 

 

 ・・・・というか格闘技がこのレベルってかなりヤバイのではないでしょうか?このままだとライザーさんの兵士にすら手が出せずに終わりそうです。

 

「・・・・さ、もう一回です」

 

 そう思っていると、小猫ちゃんは兄に軽く死刑宣告を言い渡し、兄を吹っ飛ばし始めました。

 

 

 

 

 

 兄が吹っ飛ばされる状況を眺めた後、次はリアス先輩との基礎トレーニングだそうです。その間、私は兄とリアス先輩以外の面子の修行をつけることになりました。

 

「では始めますよ。木場先輩」

 

「うん、よろしく頼むよ」

 

 私達は互いに向き合い礼をします。そして、木刀を構え、試合開始を待ちます。

 

 「始め!」

 

 朱乃先輩の号令がかかりました。そして、試合開始と同時に先手を取ったのは木場先輩。私に一瞬で肉迫すると鋭い突きを放ってきます。

 

 ・・・・中々の速度ですね。まぁ、騎士なら当然ですか。そう考えながら木場先輩の突きを難なく弾き、友人から教わった刃くずしで木刀を叩き落としたあと、極限まで威力を抑えた蹴りを叩き込みます。

 

「グッ!」

 

 これが効いたのか木場先輩は蹴りをもらった後、地面に倒れ込みます。流石に手加減したとはいえやり過ぎた感がすごいのでとりあえず近くによって手を差し伸べます。

 

「・・・・すいません、手加減した一撃とはいえやりすぎました。怪我とか大丈夫ですか?」

 

 この発言に、木場先輩だけでなく、小猫ちゃんと朱乃先輩も驚いていました。

 

「・・・・あれで手加減なんて・・・・」

 

「・・・・相変わらず規格外ですわ」

 

 なんか二人に超生物を見たような目で見られましたが気にしないでおきます。これは気にしたら負けな気がしてきたので。

 

「三人とも、これはまだ軽い方です。私の師匠の修行は殺す気で行かないと逆に殺されるレベルだったので・・・・」

 

 これを言うと、朱乃先輩と木場先輩は更に目を見開いて驚きました。そんな中、小猫ちゃんは。

 

「・・・・清羅、体震えてますよ。大丈夫ですか?」

 

 と、心配させてしまいました。

 

 ・・・・あぁ、師匠との修行内容を思い出して自然と体が恐怖で震えてしまっていたようです。

 今考えても本当に恐ろしい事この上ないです。だっていきなり魔獣の群れの中に放り投げられたと思ったら今日はその中で生き残れって言われたり、昼食中なのに槍を投げられたり、寝る時も槍を投げられたりと、修行中はまともな生活ができませんでした。

 

 

 

 ・・・・そう考えると今の修行ってかなり楽ですね。

 

 

 

 この後、小猫ちゃんには筋肉の使い方の指導を。そして朱乃先輩には魔力の流れを加速させて今の雷の出力をあげさせたりしました。そうしてる間に、兄のメニューが全て完了したのか、今日の修行はひとまず終わりを迎えました。

 

 

 

―●●●―

 

 

「旨い!旨すぎる!!!」

 

 皆!聞いてくれ!俺は今幸せを噛み締めている!!

 

「ありがとうございます」

 

 今日の修行が終わって、俺は今妹が作ってくれた食事をいただいてる。というか何これ!?めちゃくちゃ美味しいんだけど!?コレには皆も。

 

「あらあら、負けてしまいましたね」

 

「・・・・流石です。清羅」

 

「美味しいなぁ」

 

「・・・・これ、下手したら家のシェフよりも・・・・」

 

「うぅ。こんなおいしい料理は食べた事がありません!」

 

 などと各々の感想を口にしている。ていうか妹ってこんなに料理旨かったの!?兄は驚きだぜ!

 すると、俺の顔から言いたい事を察したのか。

 

「料理は彼氏と過ごす内に学びました。今では皆で集まってよくパーティーをしてるのでこういうのには慣れてるんです」

 

 と答えてくれた。というか妹の彼氏はこんな美味しい料理をいっつも食べてるってことか!?こんなに可愛い妹を彼女に持っていて更にこんな美味しい料理を食べられるって・・・・

 

 なんだそのリア充野郎!!許せん!ライザー以上に許せん!!!いつか会ったら絶対に殴ってやろう!!

 

 とまぁ、俺の妹はかなり可愛い部類に入ると思う。それこそ部長達と張り合えるほどに。

 

 肩辺りまで下ろしたアーシアとは髪色の違う金髪にサファイアを連想させる瞳。そして身長に少し不釣りあいな胸と綺麗なクビレを描くウエスト。張りのあるお尻といい、学園の二大マスコットとして人気が出るのも分かる。

 

 というか本当に兄妹か?と疑問に思っていたら部長から声をかけられた。

 

「さて、イッセー。修行してみてどうだった?」

 

 この質問に対して俺は正直な感想を口にした。

 

「・・・・俺が一番弱かったです」

 

「そうね。それは確実だわ」

 

 そう。実は俺は妹に挑んでも負けた。最初は妹に負けてたまるか!って息巻いてたんだけど一瞬でやられてしまった。これに対して、皆は私達も同じようにやられたから仕方ないと励ましてくれたけどやっぱり悔しかった。

 

 夕食が終わり、露天風呂の話になって覗こうとしたら小猫ちゃんには「・・・・覗いたら、恨みます」と言われ、妹には聖槍を突きつけられて覗くなと忠告された。

 

 

 

 ・・・・妹よ。最近兄の扱いが雑じゃないか?

 

 こんな感じて結局木場と二人っきりで風呂に入り、修行一日目は幕を閉じた。

 

 

 




 ありがとうございました!次回もお楽しみに!!


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第十話

 それでは修行編ラスト!始まります!!


 

 

 修行二日目。今は修行をせず、皆で兄とアーシア先輩の悪魔の知識に関する勉強会です。これは知っておかねばならないワードですからね。

 早速兄には天使の主要メンバーを答えてもらいます。

 

「えぇっと・・・・ミカエルにラファエルにガブリエルに・・・・ウリエルか?」

 

「正解です。では次に現在の四大魔王について答えてください」

 

「おう!これはバッチリ覚えてるぜ!ルシファー様、ベルゼブブ様、アスモデウス様、そして!いつか出世してお会いする予定のレヴィアタン様!!」

 

 ここに来てもやっぱり女性の事を考えてましたよこの兄は・・・・

 でも残念。レヴィアタン様ことセラフォルー様は綺麗系の女性ではなく可愛い系の美少女です。これを知った兄の表情が楽しみですね。

 

「じゃあ今度は僕から出題するよ。イッセー君が一番苦手な堕天使の幹部を言ってもらおうかな」

 

 ・・・・あぁ〜、これは面倒くさいですね。他の勢力に比べて幹部が多くて名前も複雑なので覚えるのに一苦労しそうです。

 

「確か、堕天使の中枢組織が『神の子を見張る者(グリゴリ)』で現総督がアザゼル、副総督がシェムハザ。あと幹部が・・・・タミエル。ベネムネ。あとヘロインだっけ?コカインだっけ?」

 

「薬物の名前じゃなくてコカビエル、そしてサハリエルだよ。これは基本だからきっちり覚えないと」

 

 コレには兄も、苦虫を噛み潰した表情で了承します。難しいけどちゃんと覚えてもらわないといけません。家に帰ったら教育しますかね。

 

「では、僭越ながら私、アーシア・アルジェントが悪魔祓い(エクソシスト)の説明を致します」

 

 そう兄の指導内容を考えていたら、今度はアーシア先輩が悪魔祓い(エクソシスト)の説明をしてくれるようです。

 

「え、えっと!以前私が所属していた場所では、悪魔祓い(エクソシスト)は二種類に分けられます」

 

「二種類?」

 

 兄は疑問に思ったのかアーシア先輩に問いかけます。

 

「一つはテレビなどに出て来る悪魔祓い(エクソシスト)

です。これは神父様が聖書や聖水を用いて人々に入り込んだ悪魔を祓う『表側』の悪魔祓い(エクソシスト)です。そして、『裏側』が悪魔にとっての脅威となっています」

 

『裏側』の悪魔祓い(エクソシスト)がどんな存在なのか、私が説明しようかと思いましたが、これについてはリアス先輩が説明してくれました。

 

「イッセーも出会っていると思うけど、私達の最大の敵は神。あるいは堕天使に祝福された悪魔祓い(エクソシスト)よ。彼らは天使の光の力を借り、常人離れした身体能力を駆使して私達を襲ってくるわ」

 

 リアス先輩の説明に兄は何かを思い出したのか、しばらく考え始めました。その間、アーシア先輩はバッグから聖書や聖水といった、悪魔が嫌う物を取り出しました。

 

「では次に、聖水や聖書の特徴をお教えします。まずは聖水。先程部長が説明してくれたように、悪魔が触れると大変なことになります」

 

「アーシア先輩。決して触れたらいけませんよ。触れたら肌がとんでもないことになりますので」

 

「はいぃ、そうでした・・・・気をつけます・・・・」

 

 なんかすごい罪悪感を感じます。どうしよう、かける言葉が見つからない・・・・

 

「作り方も一応教えます。役に立つかどうかわかりませんけど」

 

 こんな感じで、午前の裏の世界講座が終わり、午後の修行へと移りました。

 

 

―●●●―

 

 

「では、兄の神器(セイクリッド・ギア)禁手(バランスブレイカー)に至らせます。そうでもしないとライザーさんには勝てません」

 

 ・・・・なんかとんでもない事を妹に言い渡されました。ええっとドライグ、禁手(バランスブレイカー)ってなんだ?

 

『いいか相棒。禁手(バランスブレイカー)というのは

ある領域に至ったものが発揮する力の形のことだ。本来なら所有者の想いや願いが世界の「流れ」に逆らうことで至るものだが、どうやらお前さんの妹はそれを今この場でお前に発現させるそうだぞ?』

 

 ドライグがなんか説明してくれたけど、要するにすごいパワーアップをさせるってことだろ?しかも劇的な変化が必要みたいだし・・・・

 

「ま、最悪できなくても最終手段を使うのでそんなに問題ありませんが・・・・」

 

 そう言ってくれるけど、ライザーに勝つためには至らなければいけない。

 そう思っていて、ふと気になったことを聞いてみた。

 

「なぁ、清羅。お前は禁手(バランスブレイカー)を使えるのか?」

 

 ただでさえ制限がかけられるくらいなんだからちょっと気になったことを聞いてみる。

 すると、妹は少し考える素振りを見せてから。

 

「もちろんです。じゃなかったらこんなことは言いませんよ」

 

 とあっさり返されてしまった。ていうか妹強すぎじゃありません!?

 

『当然だろう。お前さんの妹は・・・・いや、ここは何も言わないでおくか・・・・』

 

 ドライグが何か言おうとしてたのか?まぁいいや!強くなってライザーを倒すために妹のシゴキから耐えきってやるぜ!!

 

「準備はできましたか?『兄さん』いや、『兵藤一誠』」

 

 

 ・・・・と思ってたらそこにはいつもと違う表情で聖槍を構える妹の姿。

 悪魔が苦手とする聖なるオーラは抑えられてるみたいだけど、それ抜きにしてもヤバイ雰囲気がヒシヒシと伝わってくる。

 

「なぁ、ドライグ。俺、生き残れるかな?」

 

 心配になってきてドライグに相談する。そしたら。

 

『・・・・相棒、お前のことは忘れないぞ』

 

 なんかヤバイ返答が返ってきたんだけどぉぉぉ!!?そしたら、妹から修行内容の説明をされた。

 

「ルールは簡単。この山の中で私から逃げ切ること。途中で攻撃もしますから逃げ延びてください。大丈夫です。手加減しますから・・・・・・・・多分」

 

 ルールは分かった。でも言わせてほしい!最後!!不穏な言葉が聞こえたぞオイ!!ドライグ!頼んだぜ!!

 

『・・・・次の宿主は誰かなぁ・・・・』

 

 

 

 

 ・・・・この裏切り者ぉぉぉぉぉぉ!!!!!

 

 

 

―●●●―

 

 

 生き残った!俺は生き残ったぞ!!あの地獄から俺は生き残ったぞ!!

 ・・・・死ぬかと思ったぜ・・・・山の端まで行ってやり過ごそうと思ったら一瞬で追いつかれて攻撃されるし、こっちも負けじと反撃したらあっさりと攻撃が無効化され、諦めて逃げに徹しようと思ったらまた攻撃されて辺り一帯が更地になったりした。

 

 

 地獄のような修行をなんとか生き残ったけど、俺は結局禁手(バランスブレイカー)には至れなかった。

 

 これで自覚した。俺は弱い。

体力もなく力もなく、これといった特別な才能すらない。あるものといったらこの赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)ぐらいだ。

 

 

 ・・・・・・・・俺は、役立たずだ・・・・・・・・!

 

 

―●●●―

 

 

 やり過ぎた・・・・

今日兄の修行をつけて思ったことです。死なないように手加減したんですが、それでも辺り一帯を更地にしてしまいました。

 

 辺り一帯を更地にしても兄が禁手(バランスブレイカー)に至ることもなく、少し基礎能力が上がったくらいで終わってしまいました。

 

 

 

 

 ・・・・仕方ありません。アレ、使いますか。

そう思いながら、私は兄のいる部屋に向かいます。

 

「兄さん、いますか?」

 

「おう!いるぞ!!どうしたんだ?」

 

 とりあえずいることが分かったので、中にお邪魔します。そして、持ってきた箱を兄の前に差し出します。

 

「兄さん、これを渡しておきます。」

 

 そう言って、私は箱から幾重にも文字が刻まれたリングを取り出し、兄に渡します。

 

「なんだこれ?」

 

「これはまぁ、所謂神器(セイクリッド・ギア)の抑制装置です。これを対価とすれば一時的な禁手(バランスブレイカー)状態になることも可能です」

 

 これを聞いた兄は心底驚いたのか、目を大きく開いて神器(セイクリッド・ギア)抑制装置を見ています。

 これくれたアザゼルさんには今度お礼言わなきゃなりませんね。

 

「・・・・ドライグ。いけるか?」

 

 兄はこれを対価に禁手化(バランス・ブレイク)できるかドライグに確認します。

 

『あぁ、短い時間ではあるが可能だ。しかし相棒の妹よ、こんなのどこで手に入れた?』

 

 ドライグが中々痛いところを指摘してきました。この質問には、言葉を濁して答えることにします。

 

「まぁ、神器(セイクリッド・ギア)の研究が大好きな知り合いに頼んで貰いました。私から言えるのはこれだけです」

 

 この返答に、ドライグは一応納得したのか、それ以降何も言わなくなりました。

 

「では私はもう寝ることにします。あぁそうそう、リアス先輩がリビングで悩んでましたよ。相談に乗ってあげてはどうでしょうか?」

 

 そう言い残すと、私は部屋を出ます。その後、兄は私の言葉にハッとなって、部屋を勢いよく飛び出していきました。

 

 

 

―●●●―

 

 

 そして修行最終日、兄の修行の成果を確認するために木場先輩との模擬戦をすることになったようです。

 さて、叩き込めることは叩き込みました。一般人に毛が生えた程度の悪魔だった兄がどれくらい成長したのか楽しみですね。

 

「それじゃあイッセーの神器(セイクリッド・ギア)発動から二分後に模擬戦開始よ!」

 

 リアス先輩がそう言うと、兄は左腕に赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を発現させ、力を倍加させていきました。

 

 そして、力の倍加が二十回を迎えたところで、今できる倍加がすべて完了したのか、籠手から音声が響きます。

 

『Explosion!!』

 

 これを合図に木場先輩は木刀を持ち、兄は素手でそれぞれ構えます。

 

「準備できたわね?それでは、始め!」

 

 

 部長の掛け声とほぼ同時に木場先輩が兄の視界から消え、兄に早速一撃を加えます。

 兄は腕を交差させることでこの一撃を難なく防ぎ、木場先輩が呆気にとられていた瞬間を見逃さず拳を放ちます。

 

 でも、この攻撃は当たらず、木場先輩は上に回避することでそこから空襲を仕掛けます。兄はそれに反応が一瞬遅れたためか、上空からの一撃を頭にもらってしまいます。

 しかし、兄はこの一撃に屈することなく、木場先輩にすかさず蹴りを放ちます。

 

 

「イッセー!魔力の一撃を撃ちなさい!」

 

 中々攻撃が当たらない兄にリアス先輩がアドバイスを出します。これを了承したのか、兄は篭手を構え、小さな魔力弾を作ると、相手に向かって放ちます。

 最初は小さかった魔力弾が突如巨大な物へと変貌して木場先輩に迫ります。木場先輩はこれをかわしました。

 そして、当たらなかった魔力弾は、あと一つだけになった山に当たると、その山を消し飛ばしてしまいました。

 

 

『Reset!』

 

 山が消し飛んだことに呆気に取られる兄。そこに、再び篭手の音声が響くと、倍加されていた力が抜けたのか、兄はその場に座り込みました。

 

「お疲れ様。さて、イッセー。これで分かった?神器(セイクリッド・ギア)を、発動させていないあなたは確かに弱い。でも発動させた場合は次元が変わる」

 

 どうやらリアス先輩はこの模擬戦で兄に自信を持たせたかったようです。その目的通り、兄は驚きながらも瞳を輝かせてます。

 

「いい?あの一撃はゲームの要となる。倍加中は逃げるしかないけど私達はチーム!あなたをフォローする仲間たちがいる!皆!このゲーム!必ず勝ちましょう!」

 

「「「「はい!!」」」」

 

 リアス先輩の言葉に皆が強く返事をします。皆は決意を新たにして修業合宿を終えました。

 

 

 

    

    ―そして、ついに決戦が始まる―

 

 

 




 ありがとうございました!!ついにライザーさんとのレーティングゲーム編です!!
次回もお楽しみに!!


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第十一話

 ついにレーティングゲーム開始!!
お楽しみください!!


 

 レーティングゲーム当日。

 

 

 私達は現在、レーティングゲームのバトルフィールドの『駒王学園』のレプリカの中のオカルト研究部部室にて待機していました。

 

 一方、転移したのに部室にいることに困惑する兄とアーシア先輩。どうやら、まだ周りの気配を察知するのに慣れてないのか、ここがゲームフィールドだということに気づいてないようです。

 

『皆様、この度のレーティングゲームの審判を担当するグレモリー家の使用人グレイフィアでございます』

 

 そうこうしてる内にグレイフィアさんからの放送がかかりました。この説明でここがレプリカであると知った兄とアーシア先輩はかなり驚いていました。

 

『早速ですが本日のレーティングゲームのゲスト。「兵藤清羅様」にかけられる制限を解説致します』

 

 今日のゲームに参加するにあたっての私の制限が発表されるようです。コレに対して、リアス先輩は何か考え込むようにして放送を聞いています。

 

『かけられる制限は主に三つでございます。一つ目は禁手(バランス・ブレイク)の使用禁止。二つ目は黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)以外の武装の使用禁止。三つ目は「兵藤清羅様」の戦闘可能な時間は、戦闘が開始してからの一分のみとさせていただきます。尚、戦闘開始から一分が過ぎたら、清羅様は強制的に退場されます』

 

 まぁ、こんなもんでしょうね。禁手(バランス・ブレイク)なんて使ったら開始一秒でこの空間ごと破壊できますから妥当な制限だと思います。

 

『開始のお時間となりました。制限時間は人間界の夜明けまで。それでは、ゲームスタートです』

 

 そう考えていたらゲームが始まったようです。

 

 

「それでは行ってきますね。参考までに聞いておきます、何人ほど倒せばいいでしょうか?」

 

 窓に手を掛けて早速飛び出す準備をします。すると、リアス先輩が慌てて声をかけてきました。

 

「待ちなさい!ゲームはまだ始まったばかりよ!?ここは大人しく私の指示を『聞こえなかったんですか?』ッ!」

 

「いいですか?私の戦闘可能な時間は僅か一分。だったらリアス先輩の指示に従うよりも自分で行動した方が早いんです」

 

 今回は指示に従うつもりはないのでちょっと威圧をかけて黙らせます。コレにはリアス先輩も渋々了承したのか。

 

「・・・・分かった。じゃあ『兵士(ポーン)』、『僧侶(ビショップ)』、『騎士(ナイト)』を合計で四名ほどお願いできるかしら?」

 

「了解しました。では、暫しお待ちを」

 

 そう言って、私は窓から飛び出しました。その最中、リアス先輩に膝枕されて泣いている兄の姿が視界に見えましたが気のせいにしておきましょうかね。

 

 

 

―●●●―

 

 

 

「到着っと・・・・さてさて?ライザーさんの眷属は何処に?」

 

 そう言って呼びかけてみます。すると、この呼びかけに応えたのか、ライザーさんの眷属達が数名、私を囲むようにして構えてきました。

 

「・・・・久しくお目にかかる。清羅殿。『騎士(ナイト)』のカーマラインだ」

 

「あ、お久しぶりです。それで、ライザーさんからの指示で私の足止めをするためにここに?」

 

 私の疑問に、カーマラインさんが首を縦に振ってくれて肯定してくれました。

 

「あぁ、そうだ。あなたを止めるためにライザー様は我々を派遣された。だから負けるとわかっていても我々はあなたに全力で挑む!!!」

 

 きっと負けると分かっていながら、ライザーさんに頼み込んで派遣させてもらったんでしょうね。

 ふと周りを見てみると、ここにいる全員が同じ気持ちなのか、全員が覚悟を決めた表情で構えてきました。

 

「もう後には引き返せませんよ?」

 

「無論だ!!」

 

「・・・・分かりました。では、来い。

黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)―」

 

 手元に聖槍を顕現させると、周りから息を呑む音が聞こえてきます。

 

 しかし、コレに怯まず迫り来る影が一人。カーマラインさんでした。

刹那、火花を散らしてぶつかり合う聖槍と剣。鍔迫り合いを繰り返して向こうが不利だと悟ったのか、一旦私から距離を置きました。

 

「我らフェニックスの眷属は炎と風と命を司る!受けるがいい!炎の旋風を!!!」

 

 距離を置いたと思ったら、中々の大技を放ってきました。これで仕留めるつもりか?と思っていたら、サイドから兵士の女の子二人が特攻を仕掛け、僧侶は魔力による援護をしてきました。

 即席とは思えない見事な連撃に感心しつつ、当たったら流石に面倒くさいので、此方もある技を使おうと思います。

 

聖櫃(アーク)

 

 技の名前を呟くとともに放たれる聖なるオーラの集合体。

これにより、兵士二人と僧侶をを再起不能にし、迫ってきていた炎の旋風を打ち消します。コレにはカーマラインさんも絶句します。

 

「・・・・見事だ。我々ではまだ届かなかった…か…」

 

『ライザー・フェニックス様の「兵士(ポーン)」二名、「騎士(ナイト)」一名、「僧侶(ビショップ)」一名、リタイア。そして、制限時間となりましたので、兵藤清羅様は退場となります』

 

 おっと、戦いを楽しんでいたら制限時間がきてしまったようです。

 

 さて、やることはやりました。ここからは修業の成果を見せるときですよ。兄さん?

 

 

 

―●●●―

 

 

 

「お疲れ様。清羅」

 

 ゲームの制限時間を終えて転移した先では、紅髪の青年とグレイフィアさんがいました。

となるとここは観戦室ですか。

 

「はい。久しぶりですねサーゼクスさん。それにしてもよく許可なんて出しましたね?どうやったんです?」

 

「ハハハ、それは秘密さ」

 

 何が秘密なのか気になりますがどうせろくでもないことだと思うので何も聞かないことにします。

 そんなことよりも、まずは言いたい事を言うことにします。

 

「制限は妥当だったんですが時間が少なすぎです!おかげさまで暴れたりませんよ!」

 

 この言葉にサーゼクスさんは苦笑いを浮かべます。

 

「いやぁ。実はこうでもしないと許可が降りなくてねぇ。今回もかなり妥協したんだ。すまなかった!」

 

 クッ!こう言われると弱いです!

仕方ありません。今日のところは許してあげることにしましょう

 

「それよりもゲームを観戦しないかい?今面白い事になってるようだよ?」

 

 そう言われてゲームを見てみると、そこには鋭く生えた幾重もの魔剣の山に貫かれるライザーさんの眷属達。

 

 ふむ、多分赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)で倍加した力を木場先輩に譲渡した結果でしょうね。中々面白い事をしてくれます。やはりあの修業は無駄ではなかったようです。

 

 さぁ、楽しませてくださいよ?兄さん。

 

 

 

―●●●―

 

 

 

『リアス・グレモリー様の「女王(クイーン)」一名、リタイア』

 

「「ッ!?」」

 

 俺と木場は同時にアナウンスの内容を疑った。どういうことだ!?朱乃さんがやられただと!?そう思っていると。

 

「グァッ!!!」

 

 俺の隣で大爆発が発生すると同時に木場の呻き声が聞こえてきた。隣をハッとして見てみると。

 

 

 そこには全身血だらけの木場が倒れていた。そして、駆け寄る間もなく木場の体が光って消えていく。

 

『リアス・グレモリー様の「騎士(ナイト)」一名、リタイア』

 

 俺は戦場で一人になった。空を見上げると、そこにはライザーの所の『女王(クイーン)』。

 

 アイツか!!!アイツが木場と小猫ちゃんと朱乃さんを!!

 

「テメェか!!テメェが皆をやりやがったのか!!降りてきやがれ!!一発ぶん殴ってやる!!」

 

 この言葉に、相手は涼しい顔で新校舎の方へ向かい始めた。

 

 ッ!?ヤベェ!!そっちには決戦中のライザーと部長とアーシアが!!クソッ!!これ以上やらせてたまるか!これ以上邪魔されてたまるかよ!!

 

 そう思って後を追う。数メートル走ったところで俺は転倒した。

 ―全身が動かなかった―

 体力が限界を迎えてる。ハッキリ言って全身が痛い。でも。行かないと。

 

「ウオラぁぁぁぁぁっっっ!!!」

 

 痛む体を気合で抑えて立ち上がって再び走る!もう後には引けない!部長のためにも!皆のためにも!

 俺は校舎に侵入して屋上に向かって駆け抜ける!

 

「『プロモーション』!!『女王(クイーン)!!」

 

 敵陣に入ったのでプロモーションして能力を増やす。そして一気に屋上まで駆け上がる!途中、転んでは怪我をして、体が壊れそうな痛みに耐えて走った。

 

 見えた!!俺は休むことなく屋上の扉を蹴破った。

そこには対峙するライザーと部長。アーシアは少し離れた場所で待機してた。

 

「イッセー!」

 

「イッセーさん!」

 

 二人が歓喜の声を上げる。ありがとう!!俺はこれで頑張れる!!

 

「・・・・そうか。ここまで辿り着いたというわけか」

 

 なんか感心してるライザー。そして、何か思いついたのか、校舎の下にいるあいつの妹に向かって声を上げた。

 

「レイヴェル!お前が持つフェニックスの涙をここにいるリアスの『兵士』に使え!!」

 

 なっ!?どういうことだ!?貴重な回復アイテムを俺に使うだと!?コレには思わず部長も

 

「どういうこと!?」

 

 と困惑した様子で大きく声を上げた。俺もアーシアも訳がわからない。そんな様子を察したのか、ライザーが言い聞かせてきた。

 

「いいか?このまま戦っても結果は火を見るより明らかだ。それに、こんな戦いをこんな形で終えるのは・・・・」

 

「男として、失格だろう?」

 

 ッ!!俺は絶句した。こいつ!そんなことのために!?

 

「お前は婚約を破棄したいというリアスの思いを背負っている。それに対して俺は家の名前と思いを背負っている。互いに背負う物の重さは同じくらいだろう」

 

 ・・・・あぁ、そうだ。俺も部長の思いを背負っている。向こうも家の名前と思いをを背負っているんだ。

 今、ようやく理解した。俺は相手を見誤っていたみたいだ。

 

ライザーという悪魔を。

ライザーという男を。

 

 最初はただのハーレム野郎だと思って目の敵にしてたけど今は違う。目の前の相手は真の男だ。どうりであんなにも女性から信頼されるんだ。

多分目の前の男は、俺の目指すべき理想だ。

 

 

 

「さあ、傷は癒えたか?『兵藤一誠』。癒えたならば構えろ!お前・・・・いや、お前達の思いを阻む敵は!今お前の目の前にいるぞ!!」

 

「やってやるぜェェェェ!!!行くぞ!!ライザー・フェニックスゥゥゥ!!!」

 

 もう迷いはない。傷と魔力も完全回復した。

 俺は、部長や皆の思いを背負って目の前の男に全力で思いをぶつける!!行くぞ!ドライグ!!

いや、『相棒』!!

 

『フッ。いい面構えになったじゃないか「相棒」

ああ、存分に使え!』

 

 あぁ、存分に使わせてもらうぜ『相棒』!

 

「輝きやがれぇぇぇッッ!!オーバーブーストォッ!!」

 

Welsh(ウェルシュ) Dragon(ドラゴン) over(オーバー) booster(ブースター)!!!』

 

 機械的な音声と共に篭手の宝玉が強い光を放つ。光が収まると、俺の体が赤い龍を模した鎧を纏っていた。

 

「ほう!赤龍帝の力を鎧に具現化させたか!!来いっ!!」

 

「言われなくてもそのつもりだァァァァ!!!」

 

 

 

 俺の言葉を合図に、両者は飛び出す。

 今、部長の婚約破棄をかけた一大決戦が行われようとしていた。

 

 

 




 ありがとうございました!!次回、いよいよライザーとイッセーの一騎打ちです!お楽しみに!


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第十二話

 お待たせしました!ライザーとの決戦!
 始まります!!


「ドライグッッッッ!この鎧の制限時間は!?」

 

『ふむ、本来のお前なら十秒と保たんだろうが、今はこの腕輪が対価となりお前にかかる負担を全て請け負っている。最低でもあと数分は保つぞ』

 

 そうか。この力が保つのはあと数分か。だったらその間にライザーとの戦いを終わらせるッ!

 

「はぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!」

 

「はッッッッ!!」

 

 お互いの拳がぶつかり合う。力と力がぶつかり合ってフィールド全体を振動させる。

そして、ライザーが地面を強く踏み込むと同時に俺に業火を纏った肘打ちを仕掛けてくる。俺は咄嗟に腕をクロスしてガードするけどその勢いを防ぎ切れずに数メートル程後方に飛ばされた。

 

 チクショウ!こいつ!全く隙が無い!!遠距離で戦いたいけど俺にはそんな戦い絶対に無理だし・・・・

 

『相棒。薄々気付いてると思うが相手の格闘術はリアス・グレモリーのとこの「戦車(ルーク)」の格闘術を遥かに上回っている。このまま近接戦闘を続ければ確実に負けるぞ』

 

 分かってるよ!!でも俺には近接以外の戦闘方法が無い!!今だって鎧の力と小猫ちゃんから教わった最低限の格闘術でなんとか防戦に持ち込んでる状況だ。

 不味いな。ここは一定の距離を保ってドラゴンショットの連発に移るか?でもそんなことしたら制限時間より先に鎧の効果が切れちまう。でも、やるしかねぇか!!

 

 飛ばされた距離を保ったまま、俺は相手に手を向け、今出せる自身の最高の技を放つ!

 

「喰らえ!ドラゴンショットォォォッ!!」

 

 デカイ!!あの時山を破壊した一撃の数倍はあるんじゃないか!?コレならいける!!

 

「ほう、龍の波動をさらに倍加して放つか!ならばッ!」

 

 ライザーはそう言うと足に業火を集中させ、強く足を踏み込み、空間を包むほどの業火とともに回し蹴りを放った。

 

 

 激しい爆発音がフィールド全体に響く。やったか!?と思っていたら、そこには平然と立っているライザーの姿。

 

 ッ!嘘だろ!?俺の渾身のドラゴンショットを回し蹴りで相殺させやがった!!

 

「中々の威力だが、鎧が体に馴染みきっていないためにまだまだパワーを引き出しきれていないな!」

 

 チッ!ライザーの言う通りだ。俺が鎧を使えるのだって、今装着している腕輪のおかげに他ならない。体が馴染んでないのも当然か。

 

「どうしたどうしたァ!!お前の思いはこの程度か!?これではリアスは守れんぞ!!」

 

「ッ!!んなわけねぇだろ!!だったら今すぐ証明してやる!!」

 

 中距離からの攻撃はだめ。だったら俺には近接戦闘しかない!!

 俺は覚悟を決めてライザーに迫る!もう引き返さねぇ!いくら技術が足りなくてもやるしかねぇ!!

 

 俺の背部にある噴出口から魔力を噴き出し、一気に相手の懐まで迫る。

 迫ると同時にその勢いを利用して全力の打撃を放つ!

 

 ―スカッ

 

 しかしその打撃は当たらなかった。

どういうことだ!?俺は確かにライザーに一撃をかましたはず!!なのに消えた!?

 少しの間困惑していると、ドライグが警告してきた。

 

『相棒!!横だ!!』

 

 ッ!?慌てて横を見ると、そこには今にも拳を放とうと構えるライザーの姿。

 

 いつの間に!?あの時確かに俺の目の前にいたはずだ!!マズイ!!やられる!!

 

「ガハッッッッッ!!!!」

 

 ライザーに盛大にぶっ飛ばされた俺は校舎の壁に激突して血を吐いてしまった。

痛え!うまく呼吸ができねぇ!鎧も半壊してやがる!プロモーションしてなかったら確実にリタイアしてたな。

 

 俺はボロボロの体に鞭打ってふらつきながらも立ち上がる。クソッ!あの一撃が未だに体に残ってやがるぜ!

 

「・・・・驚いた。あれを受けてまだ立ち上がるか。確実に仕留めるつもりで撃ったのだが・・・・」

 

 あぁ、知ってるよ!現に俺はボロボロだ!なんで立ててるか自分でも不思議でたまらねぇよ!!

 そんな本心を隠して、俺は虚勢を張る。

 

「何言ってやがる!あの程度の一撃で俺が倒れるとでも思ったか!!あんなパンチ、痛くも痒くもねぇよ!!」

 

 この発言に対して、ライザーは大きく目を見開いて俺を見ている。

 

「!・・・・そうか。それは失礼した。どうやら俺はお前を甘く見すぎていたようだ」

 

 ライザーがそう言うと、発せられる炎が増大した。

 ッ!!まだ上があるっていうのか!?だとしたら俺にもう打つ手はないぞ!?どうすりゃいいんだ!?

 

 絶賛ピンチの中、俺の篭手から声が響いた。

 

『・・・・なぁ相棒。一つ案があるんだが・・・・』

 

 ・・・・え?マジかよ!?よし!その案を今すぐ教えてくれ!ドライグ!!

 

『まぁそう急かすな。・・・・だがな、これは非常に危険な賭けだ。お前の左腕を俺に差し出す事になるがそれでもいいのか?』

 

 ・・・・なんだ、そんなことかよ。俺の腕一本であいつに勝てるんだったら安いもんじゃねぇか。

 あぁ、構わない。左腕の一本くらいお前にくれてやるよ!だから勝てる案を教えてくれ!ドライグ!!

 

『了解した。じゃあまず、お前の制服の内ポケットを見てみろ』

 

 は?内ポケット?そういやさっきからなんかあるなぁとは思ってたけど・・・・

 

 中身を確認してみると、そこには、聖なる輝きを放つ一振りの短剣があった。

 なんだよこれ?俺こんなの持ってたっけ?と思っているとドライグが。

 

『ここだけの話、その短剣は使わない方針だった。本来、悪魔ならそんな聖なるオーラを内包した武器を扱えるわけがないからな。そこで、お前さんの腕を龍化させてその武器を使うという最終手段を、お前さんの妹に用意してもらったわけだ』

 

 ッ!!マジかよ!俺知らなかったんだけど!?

 

『当然だろう。言ってないんだから』

 

 だよなぁ!でもありがてぇ!!これで左腕を差し出して龍化すればあいつに勝てるんだよな!!感謝するぜ!ドライグ!清羅!

 

『まぁ、そうなんだが。問題は相手にどうやって短剣の一撃を与えるかだ』

 

 ッ!忘れてたぜ。そもそもライザーに一撃当てるってことがまず容易じゃない。あっちも本気モードみたいだしさっきよりもっと攻撃が当て辛くなるだろう。

 

『フッ。なんにせよお前は撃ててあと一撃だ。だったらその一撃に今のお前ができる倍加を全てつぎ込んでやれ!』

 

 そうか!だったらやることは一つだ。

 そして、俺は鎧の力を使って一気に限界まで倍加する。左手で短剣を力強く握り締め、相手に向ける。

 

『いいか!力を譲渡して構え続けろ!次相手が攻め込んできたときがチャンスだ!』

 

 了解!!短剣に力の譲渡完了!!

 さあ、来いっ!!ライザー・フェニックス!!

 

「怖気づいたか?・・・・いや、その一撃で終わらせる覚悟か・・・・いいぞ、乗ってやる。せいぜい後悔するなよ、兵藤一誠!!」

 

 

 ライザーが言葉を言い終えると同時に飛び出す!!

 さぁ、こっちに来い!!

 

 

 まだ耐えろ、まだ使っちゃダメだ。

 もっと距離を詰めて、短剣が当たる範囲まで来い!

 

 

 ライザーが拳を振りかぶる。

 

 

 ここだッ!!!

 

 

『今だ!相棒!!』

 

「アアアアア!!!」

 

 

 グサッ

 

 

 ライザーの拳に短剣が突き刺さる。

 

「ッ!?こ、この短剣は!?まさか!?」

 

 自分の拳に刺さった短剣に困惑するライザー。

 

「その短剣には悪魔の苦手とする聖なるオーラが内包されてる!倍加によってオーラが増大した一撃はいくらあんたでも大ダメージは逃れられないはずだ!!」

 

「本気か!?つまりお前はこの一撃のためだけに左腕を支払ったというのか!?」

 

 ライザーは驚愕に染まった瞳で俺を見ている。

 

「あぁ、そうだ!だって俺の腕一本で部長が自由になれるんだ!だったら腕の二本や三本くれてやるよ!!」

 

 グッ!!こうは言ってみたもののもう体が本当に動かねぇ!鎧もさっきの一撃で解除されちまったし・・・・

 それでもライザーはまだ立ってる。

 

 ここまでか?

 

「・・・・ククク・・・・・・・・・・・・フーッハッハッハッハッハッハ!!!!!!」

 

 なっ!?いきなり笑いだしたぞ!?

 

「何がおかしい!!」

 

「ハハハ。いや、失礼。まさかお前がここまでやるとは思ってなくてな。わざわざフェニックスの涙まで使ったかいがあって安心したよ」

 

 ・・・・褒められた・・・・のか?今の言葉をそのまま受け取ったらそうなるんだけど・・・・

 

「・・・・信じられんって顔してるな。兵藤一誠。・・・・見ろ」

 

 言われるままに俺はライザーを見る。

 すると、いつもは再生するはずのライザーの体が再生していなかった。

 

「つまりはこういうことだ。・・・・・・・・安心したよ」

 

 ?何を安心したんだ?自分がやられたってのに?

 

「俺とここまで戦える覚悟と強さ。そして思いをお前が背負っているってことだ。これならリアスをお前に任せても問題なさそうだな」

 

 

「誇れ、兵藤一誠。お前はこのライザー・フェニックスに打ち勝ち。お前の愛する主の婚約を阻止したんだからな」

 

 

 そういうことか・・・・

 俺の腕を対価にして叩き込んだ一撃は通用したんだな・・・・

 

 あぁ、俺の覚悟はやっぱり無駄じゃなかったみたいだ。

 そしてそれを、目の前の敵はそれを証明してくれた。

 

 本当、感謝してもしきれないや。

 

投了(リザイン)する!このゲーム。リアス・グレモリー側の勝利だ!!」

 

 

 

 こうして、初のレーティングゲームは、俺達の勝利で幕を閉じた。

 

 

―●●●―

 

 

「・・・・お見事です、兄さん。これはヴァーリ君が喜びそうですね」

 

 レーティングゲームが終わり、私は転移で既に家に戻っていました。

 あの短剣。ドライグと相談して用意したんですが、無駄じゃなかったようです。

 

 さて、あの腕輪の性能をアザゼルさんに報告するとしましょうか。

 試作品だったみたいですけどちゃんと機能するあたり、流石アザゼルさんといったところでしょうか。

 

 

 では、兄が帰ってきたら、労いの言葉をかけてあげるとしますか。

 

  




 ありがとうございました!また次回!お楽しみに!!


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月光校庭のエクスカリバー
第十三話


 お待たせしました!新章始まります!!


 

 朝、目が覚めて、足腰に力が入らない状態で隣を見ると、そこには未だに気持ちよさそーに眠っているヴァーリ君の姿。

 

 ・・・・昨夜は向こうの方が明らかに激しく動いていたはずなのに、なぜこうも体の調子が違うのか・・・・

 あれですか?ドラゴン系の神器(セイクリッド・ギア)を宿すと性欲が増すんですか?それともヴァーリ君は悪魔の血も宿してるからでしょうか・・・・

 どちらにせよ不公平さを感じずにはいられません。

 

 

 そう思っていると、ヴァーリ君も目を覚まし、私と目を合わせると、天使のような微笑みでこちらに語りかけてきました。

 

「やぁ、いい朝だね」

 

「・・・・私はそうじゃないんですが・・・・」

 

 この返答に、ヴァーリ君は天使の微笑みを悪魔の微笑みに変えてこちらに語りかけてきました。

 

「・・・・そうか、それは悪かった。清羅。君はまだ欲求不満なのだろう?だからいい朝ではないんだね・・・・わかった。ならば昨日の続きをしようじゃないか!」

 

「や、やめてください!!今日一日、私を本当に行動不能にする気ですか!?」

 

「・・・・・・・・それもいいな」

 

「よくありません!!なんですか!?いつからそんなにサディストになったんですか!?」

 

「いや、俺は別にサディストじゃないさ。ただ、惚れた女が慌てふためく姿が好きなだけだ」

 

「余計性質が悪いです!それ結局サディストじゃないですか・・・・」

 

 こうしてヴァーリ君とベッドの上で話し合っていると、いきなり扉が開かれ。

 

「おう、お前ら。起きたか?早速だがコカビエルの奴の起こした事件の後処理に関す・・・・・・・・・・・・失礼しました〜。ごゆっくり〜」

 

「「・・・・・・・・」」

 

 私達は言葉を失いました。

 そして、数秒の沈黙の後、お互いに顔を見合わせ、強く頷きあいます。

 

「・・・・清羅。分かっているな?」 

 

「・・・・はい。分かってますとも」

 

 お互いの気持ちは一つ。互いに意思を確認し合ったあと、それぞれの神器(セイクリッド・ギア)を発現させます。

 

 

 その後、無事堕天使総督の捕獲を終え、二人で制裁を叩き込んだあと、今回の事件についての報告が始まりました。

 

 

 

「・・・・ったく。お前ら。少しは加減ってもんをなぁ」

 

「ほう。まだくらいたいのか?アザゼル」

 

「いえ、なんでもございません」

 

 またアザゼルさんが余計な事を言おうとしてきたのでヴァーリ君が拳をちらつかせながら黙らせます。

 

「まぁ、その事については一旦置いとくとして、今日清羅とヴァーリに集まってもらった理由だが」

 

 ようやく本題ですか。待ちくたびれました。

 

「お前ら二人のどちらかがコカビエルを取り押さえてくれ」

 

 ふむ、やはりそうきましたか。まぁ実力的にも立場的にも私達が丁度いいんでしょうね。

 すると、ヴァーリ君が。

 

「わかった。引き受けよう」

 

「おっ!引き受けてくれんのか!?どうした?今日はやけに素直だなぁ、おい!!」

 

 ・・・・誠に不本意ですが今回はアザゼルさんに同意見です。さて、なんでこんなにもあっさり引き受けんでしょうか?

 

「・・・・俺と清羅の時間を奪ったコカビエルが許せないだけだ・・・・・・・・まぁ、簡単に言うと八つ当たりだな」

 

 ・・・・え?そんな理由?

 私が驚きと恥ずかしさが入り混じった気持ちでいると、ヴァーリ君の発言にアザゼルさんは大爆笑。

 

 もちろん、大爆笑したアザゼルさんはヴァーリ君からきっちり制裁を受けていました。

 

「さて、コカビエルの件は了承したが、いくつか条件がある」

 

「おう。なんだ?」

 

「一つ目。コカビエルが事を起こすまでの監視等をフリードにやらせること」

 

 なるほど、いい人選ですね。フリードさんならきっちりこなしてくれるでしょうから。 

 

「二つ目。俺と清羅はコカビエルを捕縛するまでは駒王町で過ごすからその際の必要経費はすべてそちらが負担すること」

 

 マジデスカー。コカビエル捕縛するまではホテル暮らし?

 私、大丈夫ですかね?

 

「わかった。それくらいならお安い御用さ。フリードにはこっちから連絡を入れとく。頼んだぞ」

 

「了解だ」

 

「わかりました・・・・あ。家族に連絡入れないと」

 

 こうして、私とヴァーリ君のコカビエル捕縛作戦が始まりました。

 

 

―⚫⚫⚫―

 

 

 翌日、私達はホテルを確保したあと、町中にあるファミレスに来ていました。

 いつもみたくラーメンじゃないんですか?と疑問に思ってヴァーリ君に聞いたところ、今、期間限定でパフェが安いとのことで、私の事を考えてここにしたそうです。

 ・・・・え?いつものことですが男前すぎません?

 

「なぁ、清羅。あっちを見てみろ」

 

 そう言われて、ヴァーリ君の示す方向を見てみると、そこには二人組の悪魔祓い(エクソシスト)と兄さん達が向かい合って聖剣について話し合っていました。

 

 というか二人組の片割れってイリナさんじゃないですか?まさか聖剣使いの悪魔祓い(エクソシスト)になっていたとは・・・・

 ものすごくびっくりです。

 

 すると、ヴァーリ君が、向こうの話の内容を簡単に説明してくれました。

 

「どうやら聖剣を破壊するために手を組むそうだ。・・・・まぁ、悪魔祓い(エクソシスト)と悪魔が手を組むなど違和感だらけだが、そこは悪魔の力ではなくドラゴンの力を使うといって無理を通すようだな」

 

「・・・・いいんでしょうか?おそらくあの木場先輩辺りの復讐を叶えてあげるためにやっているとは思うんですが・・・・」

 

「まぁ普通に考えれば無謀としか思えないな。悪魔が協会側の聖剣を破壊するということの重大さがよく分かっていないからこそできることだと思うが」

 

 まったくもってその通りですね。まぁいつも真っ直ぐな兄さんらしいっちゃらしいんですがね。

 

「それで、あれどうするんですか?」

 

「まぁ、しばらくあのまま泳がせるさ。兵藤一誠やその他のグレモリー眷属達の成長のためにコカビエルをぶつけるというのも悪くない。グレモリー側に打つ手がなくなったらこちらが介入すればいいだけだからな」

 

「そうですか。だったらフリードさんに連絡入れときます?」

 

「・・・・そうだな。彼にはもしコカビエルとグレモリー眷属が衝突しそうになったとき、死なないように調整してもらわなければ・・・・」

 

 とりあえず私達の方針が決まりました。まぁ、フリードさんがいるかぎり万が一の事は起こらないと思いますが・・・・

 あ!忘れてました。

 

「そういえば魔王が事態を収めに来たらどうすれば?ここ、一応悪魔の領土って事になってますから・・・・」

 

「・・・・ふむ。ならば魔王がコカビエルの身柄を拘束しようとした時に堕天使側の者だと介入してひとまず身柄をこちらに引き渡させればいいんじゃないか?

 ・・・・でも、あの戦争狂は魔王が到着するより先にこの町を破壊すると思うがな・・・・」

 

 それもそうですね。あの戦争バカだったらそれくらいやりますか。

 

 

 それにしても兄さん達が気配察知に疎くて良かったです。

 私、今家族には一週間程、ボランティア団体のスタッフとして海外で過ごすと伝えてあったので・・・・

 

 さて、兄さん達はどう動くんでしょうね?

 

 

―●●●―

 

 

「やあやあ悪魔くん達!久しぶりだねぇ。元気にしてたかい!?」

 

「「なっ!!」」

 

 

 俺、兵藤一誠は聖剣に復讐したいという木場を説得して、幼馴染の悪魔祓い(エクソシスト)、イリナとその相棒であるゼノヴィアそして匙。小猫ちゃんと共にエクスカリバーを破壊するためその捜索をしていた。

 

 そんな中現れたのは聖剣エクスカリバーを手に持った以前木場を軽くあしらった白髪の神父。

 

 その神父の登場に、匙を除く俺達は驚愕してたんだけど、特に驚いていたのは悪魔祓い(エクソシスト)である二人だった。

 

「フリード・セルゼン、だと!?」

 

「なんで彼がこんなところに!?」

 

「え?二人共!あの神父のこと知ってるの!?」

 

 驚く俺の問に、二人は首を縦に振って肯定してくれた。

 

「・・・・あぁ、彼の名はフリード・セルゼン。教会の悪魔祓い(エクソシスト)の中でも五本の指に入る実力者だったのだが・・・・今は堕天使の陣営に席を置いている男だ」

 

 ッ!?マジかよ!あの神父そんなに強かったのか!?

 ていうか五本の指!?それって間違い無くこの二人より強いんじゃ・・・・・・・・

 

 

 この話に、匙と小猫ちゃんは目を丸くして驚き、木場は更に憎悪の視線を送っていた。

 

「おぉ!すんごい高評価!嬉しいねぇ。ところで、そこの騎士君が熱い視線を送ってきてるんだけど?俺っち、何かしたっけ?」

 

 向こうは木場の憎悪を受けながらも全く動じてない。それどころかヘラヘラした態度でこっちに質問してくる。

 

「はァァァっっっ!!!」

 

「馬鹿!やめろ!!」

 

 そんなヘラヘラ下態度のフリードに木場が一直線に突っ込む。

 ゼノヴィアが即座に静止の言葉をかけるも、止まる様子がない。

 

「・・・・あぁ〜〜。俺っちの持つこの聖剣を見た途端にその態度。もしかして君。あの計画の被験者?」

 

「それがどうした!!!」

 

「ダメだこりゃ。全く、少しは人の話をだなァ」

 

 そう言うと、フリードの姿が消えた。斬りかかった先にいなかったので困惑する木場。

 

 

 すると、突如木場が地面に叩きつけられた!!

 

 は!?なんだよ今の!?何も見えなかった!!

 それどころか騎士である木場が容易く叩き伏せられるなんて・・・・

 コレには匙と小猫ちゃんも

 

「嘘だろ、オイ。何なんだよ、今の・・・・!?」

 

「・・・・・・・・疾い!!」

 

「さてさて〜この騎士君が大人しくなったところで〜、そちらのお二人が持つ聖剣を頂戴いたしますか!!」

 

 ヤバイ!!木場がやられたあと、すぐに俺達の報に狙いを定めてきやがった!!

 クソッ!狙いはやっぱり聖剣かっ!!

 堕天使の幹部と最強の悪魔祓い(エクソシスト)・・・・俺達にとって最悪の組合せだ!!

 

「グっ!!」

 

「イリナ!!」

 

 しまった!イリナがやられた!

 これでエクスカリバーが一本奪われてしまった!!

 

「フリィィィドォォ!!」

 

 こうなったら仕方ねぇ!!最強の悪魔祓い(エクソシスト)がなんだ!!こっちはドラゴンだ!!

 まずは一発!!

 

 

「・・・・遅え」

 

「グハッ!!」

 

「「兵藤(イッセー先輩)!!」」

 

 ・・・・痛え。相手に俺の拳が届くよりも先に殴り飛ばされた。

 コイツ、強すぎんだろ・・・・

 

「さてさて?擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)はゲットして、次はそこの青髪ちゃんが持つ破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)だけなんですが・・・・」

 

「渡すものか!!よくもイリナを!!」

 

「まぁ、それは奪わないおきますわ」

 

 なっ!?どういうことだよ!

 コレには俺だけじゃなく、匙や小猫ちゃん達も驚いていた。

 

「いや、だって・・・・ねぇ?・・・・・・・・面倒くさいですし?どうせまた戦うんだからその際に奪えばいいだけだし?」

 

 ・・・・そういうことかよ!!!バカにしやがって!!

 

「んじゃ、俺っち。招集かかっちゃったから!また後で〜」

 

「っ!!逃がすか!!」

 

 ゼノヴィアが斬りかかるも、フリードは球体を地面に投げつけると眩い光を放った。

 光が収まると、フリードは消えていた。

 

「このままでは終わらせられん!私は奴を追う!!」

 

 そう言うと、ゼノヴィアは即座にその場から離脱した。

 

「まだ体にダメージが残っているけどエクスカリバーを破壊するためだ!僕も行く!!」

 

 続いて木場もその後を追った。

 

「おい!お前ら!!・・・・クソッ!」

 

 声をかけたときには二人はいなくなっていた。

 

 すると、後ろから聞き覚えのある声。

 

「皆・・・・・・・・これはどういうことかしら?説明してもらうわよ」

 

 

 そこにいたのは、部長でした・・・・・・・・

 

 




 ありがとうございました!!また次回もお楽しみに!!!!


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第十四話

 第十四話!
 始まります!!


「・・・・そう。エクスカリバーの破壊のために町を捜索していたら、聖剣を持ったはぐれ悪魔祓い(エクソシスト)が出てきたというわけね」

 

 俺達は現在、部長に黙って行動していたことがバレて、正座させられている。

 部長は苦虫を噛み潰したような様子だ。

 

「・・・・それにしても、コカビエルが引き連れてきた者の中にあの『フリード・セルゼン』がいるなんてね・・・・」

 

 部長に襲われた際の様子を詳しく報告して、フリードの名前を出したら、ものすごく驚いていた。

 ・・・・やっぱりあの神父は有名みたいだ。

 

「裕斗もあとを追ったのだと思うのだけれど、今のままじゃあ確実に返り討ちに・・・・」

 

 今思えば、すごい迷惑な事をしたと思う。部長には本当に申し訳ない。

 そう思っていると、小猫ちゃんと俺は、突然部長に抱きしめられた。

 

「本当に馬鹿な子達・・・・心配ばかりかけて・・・・」

 

 ・・・・ごめんなさい。部長。こんなにも心配かけてしまって・・・・

 

「か、会長!向こうはなんかいい感じに終わってますけど!?」

 

「それがどうかしましたか?よそはよそ!うちはうちです!!」

 

「ギャアアアアア!!!!」

 

 ・・・・ついでにお前もごめんな、匙、巻き込んじまって。

 

 

 

―●●●―

 

 

「どうやらフリードと彼らが接触したらしい。適度に痛めつけてフリードは退散したそうだがな」

 

「・・・・思ってたより早い接触でしたね・・・・・・・・予定より早く動くことになりそうです」

 

 遠くから様子を見ていた私達は、あの接触の様子から、すぐにでも動かなければならなくなることを予想しました。

 

「!・・・・そうか。清羅、準備してくれ。コカビエル側も学園で準備に取り掛かったそうだ。グレモリー眷属達も学園に向かったと、たった今フリードから連絡が入った」

 

 ・・・・見事に予想が的中してしまいました。

 ん?となると学園にいるのは・・・・

 

「・・・・もしかして兄さん達だけですか?・・・・魔王が来たりとかは・・・・」

 

「・・・・いや、彼らの会話の内容を確認したところ、魔王がここに到着するのは一時間後だそうだ。それに対して、コカビエルの術式が発動するのは約三十分後。・・・・予定通りと言ってはなんだが、間違い無く彼らは衝突する」

 

 ふむ。とりあえず魔王の誰かにコカビエルの身柄を奪われる事はなさそうですね。

 

「わかりました。準備は既に整っているのでいつでも行けますよ?」

 

「・・・・流石だな。では俺達も行くとするか。

フリードが現場の調整をしてくれているが万が一ということもある。・・・・特に君の兄とか」

 

「・・・・そうですね・・・本当に申し訳ないです」

 

 ・・・・はぁ。我が兄ながら本当に面目ないです。

 まだ赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の使い方がなってないから、ケルベロス一匹だけで苦戦してる様子が目に浮かびます。 

 

「・・・・そう落ち込むな。今回の戦いで成長するだろうからな・・・・・・・・・・・・多分」

 

「・・・・最後にボソッと呟いた一言さえなければ良かったんですが・・・・」

 

「では行くとするか!」

 

 

 あ、話そらしましたね。ヴァーリ君。

 

 

 

 

―●●●―

 

 

「来たか。それで、誰が来る?サーゼクスか?それともセラフォルーか?」

 

「お兄様とレヴィアタン様の代わりに私達」

 

 ドオオオオオオンッッッ!!!!!

 

 !?なっ!?なんだよあのデッケー光の槍!!

 さっきまであった体育館がなくなったのか!?

 

「つまらんな。ま、余興にはなるか・・・・」

 

 俺が改めて堕天使幹部の力にビビっていると、コカビエルが指を鳴らす。

 すると、地面から巨大な三つの首を持った化け物が出てきた。

 

「・・・・ケルベロスですって!?」

 

 地面から出てきた化け物に部長も驚きを隠せてない。

 ていうかケルベロス!?あのゲームとかに出てくるあの!?

 

「やるしかねぇのか!!『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』!!!」

 

『Boost!!!』

 

 とりあえず籠手を展開しておく。

 実はここに来る前に部長と話し合ったんだけど、俺は今回サポートに徹することになった。

 

 これを聞いて俺はなるほどと納得した。

 素の俺よりも明らかに強い部長と朱乃さん。

 この二人に譲渡することで必殺の一撃を放つことができる。

 

 そんな俺は現在、必死に逃げ回っていた。

 チクショウ!倍加が完了するまで俺は攻撃できないからな!!

 

 

 ?俺の籠手がなんか点滅してる?どういうことだ?

 

『これは所謂お知らせ機能ってやつだ。リアス・グレモリーか姫島朱乃に力を譲渡すればケルベロスを倒せるだけの力が与えられると知らせてくれてるんだよ』

 

 おぉ!そりゃすごい!!

 俺は早速部長と朱乃さんを呼ぶ。

 

「部長!朱乃さん!ケルベロスを倒せる段階まで力が貯まりました!!受け取って下さい!!」

 

 俺はこちらに近づいてきた部長と朱乃さんに力を譲渡する。

 そしたら、二人からとんでもない量の魔力が溢れ出した。

 

 

「喰らいなさい!!」

 

「天雷よ!!鳴り響け!!」

 

 

 二人の力に恐れをなしたのか逃げ出そうとするケルベロス達。

 しかし、地面から生えた剣がそれを阻む!!

 

「逃さないよ!!」

 

 木場か!!ナイスだぜ!!

 

 ケルベロス達は身動きが取れないまま無に帰した。

 

 

 よしっ!!あとはお前だけだぜ!コカビエル!!

 

 

―●●●―

 

 

 ・・・・さて、グレモリー眷属達の戦いを見物して一言。

 

 お前らはアホか!!!

 

 何が天雷よ!だ!雷光にすればもっと火力上がるだろうがよ!!

それとリアス・グレモリー!!お前はただ魔力の塊撃ち出すだけかよ!!お前の兄を見習えや!!

 白髪のチビ!!お前なんで殴るだけなんだよ!!仙術使えばもっと弱らせたりとか色々できるだろうが!!

 

 

 ヤベえ。まだまだ言い足りない事だらけだわ。

 すると突然、コカビエルからお呼びの声が。

 

「フリード!四本の力を得たエクスカリバーを使え!それで戦ってみせろ」

 

「・・・・へいへい」

 

 ・・・・にしてもバルパーの爺さんは何にも分かっちゃいねぇ。こんな継ぎ接ぎだらけのエクスカリバーなんてすぐに折れるに決まってんだろ・・・・

 

 ・・・・全く、グレモリー眷属達といい、青髪の悪魔祓い(エクソシスト)といい、よくそんな実力でコカビエルと戦おうなんて思えたもんッスね。

 

 これはあれか?ヴァーリか清羅たんが来るまで俺が噛ませ犬的な役割をしなくちゃならない感じッスか?

 そう思っていると、グレモリー眷属の一人の『騎士』が憎悪を秘めた声を発した。

 

「バルパー・ガリレイ。僕は『聖剣計画』の生き残りだ!」

 

「・・・・ほう。あの時の生き残りとここで再開するとはな。数奇なものだ・・・・」

 

『騎士』の問に対してバルパーの爺さんは小馬鹿にした様子で言葉を返す。

 

「貴方のせいで・・・・未来ある子供達が死んだ!貴方の欲望のせいで!!」

 

「そうか。でもそれは当然のことではないか?不要になったものを処分する。これのどこにおかしな点がある?」

 

「・・・・貴様っ!!」

 

「全く煩わしい限りだ。それだけ言うのならばこの因子をくれてやろうか?こんなものはもう量産できる段階まで来ているからな」

 

 ・・・・うーわ。本当に分かっちゃいねぇ。

 

 そう思っていると、バルパーの爺さんから因子を受け取った『騎士』君が涙を流す。

 

「__聖歌」

 

 ・・・・こりゃ面白い事になりそうですわ。

 ヴァーリ。清羅たん。コカビエルとグレモリー眷属をぶつけたのは間違いじゃなかったッスよ!

 

『__聖剣を受け入れるんだ』 

 

『__怖くなんてない』

 

『__たとえ、神がいなくても』

 

『__僕達の心はいつだって』

 

『ひとつだ__』

 

 因子の中の魂たちが天に登ると、大きな光が降り注ぎ、『騎士』くんを包み込む。

 

 

 ・・・・至ったみたいッスね。ついに!

 これで漸く勝負になるっス。

 

 

 さぁ。楽しませてくれよ?切り札を切らせてくれる程度にはよ。

 

 

―●●●―

 

 

「グレモリー眷属の『騎士(ナイト)』。木場裕斗!

行くぞ。フリード・セルゼン!この禁手(バランス・ブレイカー)。『双覇の聖魔剣(ソード・オブ・ビトレイヤー)』。聖と魔を有する剣の力。その身で受け止めるといい!」

 

 おおー、騎士らしく宣言されちゃったよ。これは俺っちも名乗り返すしかないね!

 

神の子を見張る者(グリゴリ)所属の悪魔祓い(エクソシスト)。フリード・セルゼン。んじゃ、来いよ。『騎士』」

 

「言われなくともっ!!」

 

 そう宣言してすぐに走り来る『騎士』君。

 中々速いねぇ!

 でも、目に見えない程ではないので落ち着いてその一撃を受け止める。

 

「ッ!」

 

 受け止められて不利と悟ったのか一旦離脱する『騎士』君。

 ・・・・へぇ。あの剣。一応この継ぎ接ぎカリバーと打ち合える位の強度はあるみたいッスね。安心したッス。

 

「どうしたどうした!!その程度か!?グレモリーの『騎士』はよぉ!」

 

「何の!!まだまだ!!」

 

 一旦離脱した『騎士』君は新たに聖魔剣を創り出し、二刀流で攻めてくる。

 

 なるほど。威力が足りないなら手数で攻めるってことッスか。面白いッスね!

 

「ヤァァァッッッ!!」

 

 ギィィン!!

 

 迫りくる二つの剣戟を『擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)』の能力を使って受け止める。

 その後何度か打ち合ったあと、こちらは剣の先を枝分かれさせて縦横無尽の攻撃を放つ。

 しかしその剣先を『騎士』君は難なく捉え、自らのスピードを活かして剣を捌く。

 

 うーん。これじゃ双方とも決定打に欠けるッスね。

 

 そう思っていると、青髪の悪魔祓い(エクソシスト)ちゃんが左手に聖剣を持ち替え、何か詩のようなものを詠唱しだした。

 

 ってあの詠唱!マジっすか!?

 

「この刃に宿りしセイントの御名において、我は開放する。__デュランダル!」

 

 やっぱりマジだったぁぁぁ!!ウソン!あの子。天然の聖剣使いだったの!?

 先程の決定打に欠けるって言葉を撤回!デュランダル相手だとこの継ぎ接ぎカリバーは確実に折れる!!

 

「デュランダルは触れた物全てを切り裂く暴君だ!さぁ。覚悟しろ!フリード・セルゼン!!」

 

 ちょ、オーラの充填始めてる!

 ・・・・マジかー。こりゃ最悪アレ使うことになりますわ。

 ま、元々こんもんには期待してなかったんスけどね。

 

「はァァァ!」

 

 青髪ちゃんの掛け声と共に打ち合われる二つの聖剣。

しかし、本家元来の聖剣にはこの継ぎ接ぎカリバーは耐えられなかったようで・・・・

 

 ガキィィィン!

 

 甲高い音を残してポッキリ折れた。

 

 ・・・・うん。知ってた。もうここまであっさり折れると清々しいッスね。

 

「はぁぁぁ!」

 

 継ぎ接ぎカリバーが折れたのをチャンスとみて一気に詰め寄ってくる『騎士』君。

 

 ・・・・仕方ねぇ。使いますか。あれ。

 そうして、即座に手ぶらになった手で魔剣を持ち、その魔剣の真名を開放する。

 

 「・・・・撃ち落とせ。__『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』__」

 

「ッ!!!!!」

 

 開放と共に放たれる黄昏の波を咄嗟に回避する『騎士』君。

 ま、威力も抑えて回避できるように調整したので当然ッスね。

 

「・・・・バルムンクだと!!・・・・いや、そうか。確かフリード・セルゼンは魔剣使いだという噂を耳にしたことがあったが、まさか本当だったとはな・・・・」

 

 なんか青髪ちゃんが驚愕してるけどいいんスか?

 ここ戦場なのに・・・・ 

 

 何がともあれ、これで漸く対等ッスね!!

 俺っちは笑みを浮かべ二人に宣言する。

 

「さて、魔剣まで使わせてくれんだ。楽しませてくれよ?聖魔剣使いにデュランダル使い!いいッスね?コカビエルの旦那!」

 

「いいぞ。好きにやれ」

 

 

 さーて、コカビエルの許可ももらったことだしやるとしますか!

 ま、許可なんて出なくてもやるつもりだったんスけどね




 ありがとうございました!!
 次回もお楽しみに!!!


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第十五話

 お待たせしました!
 第十五話!始まります!


 

 ・・・・僕、木場裕斗は今、ゼノヴィアと共に目の前に立つ圧倒的な存在と対峙していた。

 

 フリードが先程放った一撃。

 あのデュランダルを優に超える一撃だった。

 名のある魔剣とは言えあそこまでの一撃を放てるとはね・・・・

 

 覚悟を決めて聖魔剣を強く握り締める。

 隣にいるゼノヴィアも同じ様子だ。

 圧倒的にこちらが不利だけどそれでも僕はいく!

 

 

 僕を信じてくれた仲間達のためにも!

 

「覚悟は決まったかい?青髪ちゃん。『騎士』君?こっちはいつでもオーケーだぜ?

 __来いよ__」

 

「はァァァァッッッ!!」

 

 僕より先にゼノヴィアがデュランダルを携えて飛び出す!

 出遅れたか!!一瞬遅れて僕も飛び出す!

 

 ガキィィィン!!

 

 響き渡る剣戟音。ゼノヴィアは必死に打ち込んでいるのに対し、フリードは涼しい顔をして受け止めている。

 

「よっと!」

 

 そして、何回かの打ち合いの末にゼノヴィアが空中に弾き飛ばされた。

 しかしゼノヴィアは体制を即座に立て直し、一気に斬り込む。

 僕もそれに合わせて斬り込んだ。

 

「ふーん。即席にしてはまぁまぁの連携ッスね・・・・・・・・でも」

 

 ギィンッッッ!!

 

「「クッ!」」

 

「それだけじゃまだ足りないぜ、お二人さん」

 

 一瞬だけど僕も打ち合って痛いほど実感した。

 差がありすぎる!!

 僕は禁手(バランス・ブレイカー)に至ったばかりで、ゼノヴィアはデュランダルを使いこなせていない様子。

 それに対してフリードはバルムンクを完全に使いこなしている!

 

「フッ。私がデュランダルを使いこなせていないのに対して向こうは完全に使いこなしているか。

 ここまで差があると笑えてくるな」

 

 ゼノヴィアもそう言っているけど本心ではとても悔しそうだ。

 

 ・・・・僕も同じだ。

 

 いや、そんなことで諦めてどうする!!

 コカビエルといい圧倒的な差があるのは分かりきったことじゃないか!僕は勝つ!!

 

「まだだ!!」

 

「あぁ!そう来なくっちゃなぁ!!」

 

 行くぞ!僕の思いに応えてくれ!

 

魔剣創造(ソード・バース)ッッッ!!!」

 

 幾重にも聖魔剣を創り出してフリードを包囲する

 

「・・・・舐められたもんッスね。これで囲ったつもりッスか?」

 

 しかしフリードは魔剣を一閃するだけで周囲の聖魔剣を難なく破壊した!!

 

 やっぱりだめか!!

 

 だったら正面突破だ!!

 

 僕は真正面からフリードに斬りかかる。

 しかしフリードは一切動じずに僕の聖魔剣を受け止める!

 

「・・・・やっぱりまだうまく使いこなせてないッスね」

 

 フリードはそう呟くと、聖魔剣を破壊し、僕を吹っ飛ばした。

 

「グアッ!」

 

 くッ!やっぱり勝てないのか!?

まだフリードだけでなくコカビエルまでいるというのに!!

 

「はぁぁぁッッッ!!」

 

 僕が倒れてすぐにゼノヴィアが立ち向かう。

 

 デュランダルとバルムンク。

 

 名のある名剣どうしが幾度となく剣戟を繰り広げる。

 しかし、使い手の実力差により、ゼノヴィアは吹き飛ばされた。

 

「・・・・ま、こんなもんかねぇ」

 

 デュランダルを持ってしても敵わないのかっ!

 そう歯噛みしていると、フリードが声をかけてきた。

 

「いやぁ〜、別に悔しがることはないっスよ。そっちの『騎士』君は禁手(バランス・ブレイカー)に至ってすぐで経験が足りてないし、青髪ちゃんはデュランダルを制御しきれていないッスからね〜。これは当然の結果ッス」

 

「・・・・というかデュランダルは特に制御できなくて普通なんスよ。

・・・・・・・・まぁ、先代の担い手がほぼ完全に制御して使いこなしてたって例はあるっスけどね」

 

 そうは言うけどやはり悔しい!

 こうして情けをかけられていることが特に悔しさを助長させた。

 

 そんな中、もう一人余裕ある顔をする人物がいた。

 __コカビエルだ。

 コカビエルは僕達の様子を見て苦笑し、言葉を放った。

 

「ふふふ。まさかフリードが魔剣バルムンクの使い手だったとはな。・・・・・・・・しかし、仕えるべき主をなくしてまで、お前達神の信徒と悪魔はよく戦うものだな」

 

「どういうことだ?」

 

 地に伏すゼノヴィアが怪訝な様子で聞く。

 すると、コカビエルが衝撃の一言を放った。

 

「・・・・あぁ、そうだったな!お前達下々の者たちは知らないのだったな!!なら教えてやろう!先の大戦で、四大魔王だけでなく、神も死んだんだよ!!!!」

 

 __は?

 

 なんだって!?

 

 周りを見渡すと、フリード以外の皆が同じ表情だった。

 

「これは知らなくて当然のことだ。神が死んだという重大事実。誰に言える?特に人間に知られてみろ。大混乱が起こる。これを危惧した三大勢力の長たちはこの事実を封印したのだよ!あぁ、ちなみに、先程その事実に近づいたバルパーは俺が殺したがな」

 

 嘘・・・・だろ?

 これが事実だとしたら・・・・僕らは一体何のために

 

「嘘だ・・・・嘘だ・・・・嘘だ・・・・」

 

 僕の隣にいるゼノヴィアは特に狼狽していた。

 証拠に目が虚ろで力が抜けている。

 

 ・・・・無理もないか。彼女は僕と違って現役の信仰者だ。生き甲斐を失うのとほぼ同義だろう。

 

 僕らが衝撃の事実に項垂れていると、コカビエルは憤怒の形相を浮かべ、強く語りだした。

 

「俺は戦争がしたいんだよ!神と魔王を失った悪魔と天使は戦争継続は無意味と判断して引き下がり、アザゼルさえも『二度目の戦争はない』と宣言する始末だ!耐え難い!ふざけるなぁっ!!あのまま継続すれば確実に俺達が勝っていたのだ!!!」

 

 バタリ

 

「アーシア!しっかりしろ!アーシア!」

 

 アーシアさんは衝撃の事実に倒れ込んでしまった。

 彼女は悪魔になっても信仰心は死んでなかった。やっぱりこうなってしまったか・・・・

 

「俺は戦争をする!お前達の首を土産に!俺だけでもあの時の続きをしてやるッッッ!!!」

 

 コカビエルは拳を天にかざして戦争続行の意を示した。

 フリードといい、僕達が挑むべき相手ではなかったのかもしれない。

 そう思いながらも、僕は剣を握り締め立ち向かおうとした。

 

 

 __パチパチパチパチ__

 

 そこに突如拍手の音が鳴り響いた。

 音源を見れば、そこには手を叩くフリードの姿。

 

 どういうことだ?彼はコカビエルと同じく戦争を望んでいるんじゃなかったのか?

 それなのにフリードはコカビエルを馬鹿にした様子だ。

 コレにはコカビエルも少々苛立った様子。

 

「・・・・フリード。貴様。どういうつもりだ?」

 

「ククッ。いやぁ?見事目論見通り動いてくれたなぁって思ってさぁ」

 

 目論見通り!?どういうことだ!?

 

「どういうこと!?」

 

 部長も驚いた様子だ。

 すると、フリードは衝撃的な一言を発した。

 

「何を隠そう!俺の役割はグレモリー眷属達とコカビエルが衝突してグレモリー眷属達が死なないように現場を調節することだったのだよ!!!ってな!!」

 

 !?嘘だろ!?

 

 ・・・・いや、でも、よくよく考えたらフリードがその気になれば僕達を殺せる瞬間なんて数え切れない程あったはずだ。

 

 ・・・・そういうことだったのか。

 

「・・・・そうか。ではお前が相手になるか?フリード・セルゼン?あれ程の剣士なのだ。さぞ楽しめそうだ」

 

 っ!マズイ!ここで戦いが始まるのか!?

 だとしたら皆が危ない!

 そう危惧していると、フリードは驚きの一言を放った。

 

「うーん。それもいいッスけど俺っちはか弱い人間!なーのーでー!俺はパスしまーす!」

 

 んな!?正気なのか!?

 コレには僕達だけでなく、コカビエルも目元を引きつらせている。

 

「・・・・何故だ?ここにいるグレモリー眷属達だけでは俺には敵わないと思うが?まともに戦えるのはお前だけだろう」

 

「なっ!私達が負けるとでもいうの!?ふざけないで!」

 

「・・・・・・・・ふざけてんのはてめぇらの方だっつーの。何?本気で堕天使幹部に勝てるとでも思ってたのか?」

 

 

 !!フリードから発せられる圧が増大した!

 これほどのものなのか!?

 現に僕や部長達の震えが止まらなくなっている!

 

「ふん。先程の威圧だけで動けなくなるとはな。

 それでフリード。結局、お前以外に誰がこの俺を止めるのだ?」

 

「まぁまぁ、そう慌てなさんな。

 ・・・・・・・・お?やっとご到着か〜」

 

 フリードがそう言って天を見た。

 僕達も釣られて天を見る。そこにはいたのは眩いばかりの白。

 

 

 __勝てない__

 

 天から降り注いできたそれは、僕達に圧倒的な存在感と力量差を感じさせた。

 

 よく見ればあれは白く輝く鎧。似ている・・・・

 一誠君の『赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)』にそっくりだ!

 ならば答えはひとつ。目の前の存在の正体は!

 

「・・・・・・・・『白い龍(バニシング・ドラゴン)』!赤に惹かれた」

 

「黙れ」

 

 コカビエルが言葉を言い終えるより前に彼から血が吹き出した!

 

 疾いっ!!!僕も何が起きたか全然分からなかった!

 

「おのれ!!」

 

 コカビエルは数え切れない程の光の槍を形成し、白龍皇に攻撃する。

 しかし白龍皇はそれをものともせず、腕を横に払うだけで消失させた。

 

「・・・・・・・・弱いな。半減を使わずしてこの程度とは・・・・つまらん。一刻も早く終わらせるか」

 

 白龍皇は落胆したように呟くと、光の軌跡を生み出して僕達の視界から消えた。

 

 ドンッッッ!!!

 

 白龍皇の鋭い拳がコカビエルに突き刺さる。

 そして、コカビエルは力なく地面に倒れ込んだ。

 

「こ、この俺が、そんな」

 

「いい加減黙れ。見苦しい」

 

 ゴンッッッ!

 

 白龍皇は喚くコカビエルを殴って意識を奪った。

 

 

 僕達が手も足も出なかったコカビエルをいとも容易く・・・・・・・・

 

「さて、ご苦労だったな、フリード」

 

「ほいほーい、別にこの程度どうってことねぇっスよ」

 

 白龍皇は意識を失ったコカビエルを抱え、そしてフリードは白龍皇に掴まり、空に飛び立とうとした。

 

『無視か、白いの』

 

『起きていたか、赤いの』

 

 互いの宝玉が光って言葉を発している。 

 二天龍同士が会話を始めたのか?

 

『せっかく出会ったのにこの状況ではな』

 

『いいさ、いずれ戦う運命だ。こういうこともある』

 

『そうだな。しかし赤いの、今回は敵意が全く伝わって来ないが?』

 

『そちらこそ、敵意が段違いに低いじゃないか』

 

『お互い戦い以外の興味対象があるということか』

 

『そういうことだ。こちらはしばらく独自に楽しませてもらうよ。たまには悪くないだろう?また会おう、ドライグ』

 

『それもまた一興か。じゃあな、アルビオン』

 

 二天龍は会話した後、別れを告げた。

 しかし、一誠君は納得できなかったようで。

 

「おい!どういうことだよ!?お前達は何者で、何をやってんだよ!?」

 

 この問に対して、白龍皇は一言だけ残した。

 

「まぁ、全てを理解するには力が必要だ。強くなれよ?いずれ戦う俺の宿敵君」

 

 そして、再び白い光の軌跡を生んで飛び立っていった。

 

 __終わった・・・・のか。

 この町は救われたんだ。思わぬ乱入もあったけど・・・・

 そうして考え込んでいると、ふと後ろから叩かれた。

 

「やったな!木場!へぇ〜。それが聖魔剣か!なんかこう。幻想的だな!」

 

「あ、ありがとう。一誠君」

 

「裕斗」

 

 僕と一誠君が聖魔剣について話していると、部長から声をかけられた。

 

「裕斗、本当によく帰ってきてくれたわ。それに禁手(バランス・ブレイカー)だなんて。主として誇らしい限りだわ」

 

「部長!僕は改めて誓います!僕、木場裕斗はリアス・グレモリーの眷属__『騎士(ナイト)』として貴女と大切な仲間をお守りします」

 

「ありがとう。さて、裕斗?」

 

 ん?何か部長が手に魔力を集め始めたぞ?

 ・・・・すごい、嫌な予感が。

 

「勝手な事した罰よ。お尻叩き千回ね」

 

 

 

 __その後、学園の後処理が行われ、僕は痛むお尻を抱えながら、家に帰った。




 ありがとうございました!!
 また次回もお楽しみに!!


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第十六話

 お待たせしました!
 エクスカリバー編。ついに完結です!!


「お疲れ様です。フリードさん、ヴァーリ君」

 

「いやいや〜大したことないって!コカビエルくらい!」

 

「・・・・倒したのは俺だがな・・・・・・・・ところで清羅」

 

 ん?ヴァーリ君が顔を引きつらせて何か言いたげな顔をしてますね?

 何かあったんでしょうか?

 

「・・・・君の周りで倒れている悪魔達は一体何なんだ?良ければ説明を」

 

 あぁ、コレのことですか。

 別に隠すことでもないので説明することにします。

 

「はい。実はこの悪魔達がカオス?ブリザード?とかいう組織に入れって言ってきましてね。断ったら襲いかかってきたので返り討ちにしたわけなんですが・・・・」

 

「・・・・あぁ。確か『禍の団(カオス・ブリゲード)』とかいうアザゼルもびっくりな厨二病患者達の集まりじゃなかったか?」

 

 ・・・・ヴァーリ君。言い方えげつないですね。しかもそれに加えてアザゼルさんの事も軽くバカにするとは・・・・

 

 

 彼、やっぱりサディストですね。

 

 

「さて、こんな厨二病患者達に関わっていても仕方ない。とっとと『神の子を見張る者(グリゴリ)』の施設に戻るとしよう」

 

「そうですね」

 

「りょーかい」

 

 そうして鎧を着込んだヴァーリ君に掴まり、飛び立ちます。

 いやぁ。空から見る夜景が綺麗ですね。

 

 

 

―●●●―

 

 

「おう!お前ら!ご苦労だったな!」

 

 施設に到着するなり、アザゼルさんが出迎えてくれました。

 

「任務は完了した。今日はもう遅いし寝ていいか?・・・・・・・・早く清羅と一緒に寝たい」

 

「うん、俺っちもお眠っスわ。・・・・・・・・チッ、今日は一人だな」

 

「おう!いいぞ!にしてもコカビエルの野郎。面倒事起こしやがって・・・・・・・・あ〜あ。報告書とか資料書かなくちゃなぁ。・・・・・・・・めんどくせー」

 

 ・・・・アザゼルさん。もう少し真面目に仕事しましょう・・・・・・・・シェムハザさんが泣きますよ・・・・・・・・

 

 

「あ、そうだ。お前ら。ちょっと相談したいことがある」

 

 ん?なんでしょうか。アザゼルさんがいつもとは違う真面目な表情で語りかけてきました。

 

「実はここだけの話な。そろそろ隠れて神器(セイクリッド・ギア)の研究をするのに限界がきた」

 

 うん。でしょうね。それはよーく知ってます。

 この話に対して、私やヴァーリ君達は首を縦に振って肯定します。

 

「というわけでだ!俺は今回の出来事を機に和平を持ちかけることにした!!」

 

「「「ッ!?」」」

 

 え?本当ですか?

 あのアザゼルさんが!?

 コレには思わずヴァーリ君も、アザゼルさんが正気かどうかを疑います。

 

「・・・・アザゼル。大丈夫か?今日は休んだほうが・・・・」

 

「俺は正常だよ!」

 

「いやいや・・・・そりゃ俺達も疑うぜ?だって旦那。三すくみの中で最も信用ないじゃないッスか」

 

 それには深く同意します。

 

「・・・・・・・・悲しいことにそうなんだよなー」

 

 自覚があったのか少し項垂れるアザゼルさん。

 __仕方ないですね。あれ、言ってあげましょうか。

 

「・・・・その・・・・元気出してください。

『お義父さん』」

 

「・・・・・・・・・・・・え?清羅。お前、今俺のことをお義父さんって・・・・!」

 

「さて、ヴァーリ君。一緒に寝ましょ?」

 

「あぁ、そうだな」

 

「おやすみッス〜」

 

「あ、ちょ!待ちやがれ!!」

 

 うん。何か堕天使の総督さんが言ってるけど気にしなーい、気にしなーい!

 

 

 

 ・・・・・・・・『お義父さん』呼び。やっぱり恥ずかしいですね。言うの控えましょうか・・・・・・・・

 

 

―●●●―

 

 

 そして、『お義父さん』呼び事件(私命名)から数日後。私は久しぶりにオカルト研究部部室に顔を出しました。

 

 そして、そこにはソファに腰掛ける緑色のメッシュが入った青髪の少女。

 

 

「やぁ、赤龍帝。そしてお初にお目にかかるな。神殺し殿」

 

 この前の事件で駒王町にやってきた悪魔祓い(エクソシスト)のゼノヴィアさんがいました。

 

 ・・・・・・・・感じ取ることのできるオーラが悪魔のものになってるんですが・・・・・・・・・・・・マジですか?

 

 

 というか『神殺し』って・・・・・・・・

 

「こちらこそ初めまして。その二つ名に関して言いたいことは山ほどあるんですがひとまずそれは置いときましょう。・・・・・・・・なぜ悪魔になってるんですか?」

 

 二つ名についてはとりあえず放置して、とりあえず現在、一番気にしてることを聞きます。

 

「神がいないと知ったのでな。破れかぶれで悪魔に転生したんだ。今日から私も駒王学園の高校二年生のオカルト研究部所属だ。よろしくね、イッセー君♪清羅ちゃん♪」

 

 ・・・・そんな真顔で可愛い声出されても反応にこまるんですが・・・・

 

 ていうか、神の不在を知ったからって悪魔に転生するとは・・・・

 中々ぶっ飛んだ思考の持ち主ですね。この人・・・・・・・・

 

「ところでイリナはどうしたんだ?」

 

 ここで兄がイリナさんの行方について質問します。

 

 ・・・・多分イリナさんは神の不在を知らなかったので異端扱いされず、そのまま教会にエクスカリバーの欠片を持って帰還したんでしょうね。

 

「彼女は、私が悪魔となったことをとても残念そうにしていたよ。別れの理由も言えず、なんとも辛い別れだった。・・・・次に会うときは敵だな」

 

 ・・・・それはそうでしょうね。

 だってこれまで苦楽をともにしてきた相棒が、突然敵の勢力に行ってしまったんですから。

 そう考えていると、部長が全員揃ったことを確認し、私達に向けて事件の件について話し始めました。

 

「全員揃ったわね。少し皆に話があるわ。

 事件の真相について堕天使総督アザゼルから、神側と悪魔側に説明があったの。

 今回のエクスカリバー強奪はコカビエルが独断で起こしたことで我々他の幹部勢は知らないことだった。

 これにより、コカビエルは『地獄の最下層(コキュートス)』で永久冷凍の刑になったそうよ」

 

 ・・・・でしょうね。今回の事件は下手すれば再び戦争が勃発してもおかしくない出来事でしたから。これくらいの処置は当然ですね。

 

「今回の件を受けて三すくみの代表達が会談を開くそうよ。なんでもアザゼルが折り入って話したいことがあるみたいだから。それにしてもあのアザゼルが折り入って話したいことだなんて・・・・」

 

 ・・・・アザゼルさんや。こんなところでも貴方の信用は最底辺ですよ。

 日頃の行いを正しましょうね。

 

 

「私達もその会談に招待されたわ。なんでも、事件の当事者だからその場で事件の報告をしなければならないみたいなのよ」

 

 あ、そうなんですね。てっきりリアス先輩達は行かないかと思ってました。

 

「そして清羅も招待されているのよ。・・・・・・・・堕天使側の付き添い人としてね」

 

 

―●●●―

 

 

 え?

 どういうことだ?

 清羅が堕天使側の付き人として会談に出る?

 

「・・・・その・・・・部長。清羅って・・・・」

 

「先程話した通りよ、イッセー。

 詳しいことは本人に説明してもらうしかないけど、三代勢力の中で清羅と一番関わりが深いのが堕天使なのよ」

 

「そ、そうなんですか・・・・」

 

 ・・・・そうだったんだな。てっきり俺らとよくいるから、一番関わりが深いのは悪魔だと思ってたぜ

 

 すると、俺の顔から聞きたいことを察したのか、清羅が詳しく説明してくれた。

 

「まぁ、三代勢力の中で一番依頼件数が多いのが堕天使ですからね。必然的にそうなってしまうんですよ。・・・・・・・・それに」

 

 ふむふむ、そうだったんだな。それとなんだろうか?

 

「・・・・私の彼氏。堕天使側にいますしね・・・・・・・・」

 

 へぇぇぇ〜・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?

 

「はァァァァァァ!?」

 

 え?ウッソだろおい!

 え?何!?清羅の彼氏って堕天使側にいたのかよ!

 

 周りを見ると、俺以外も驚愕していた!その中でも、清羅と特に親しい小猫ちゃんなんかは普段の無表情を何処かに捨てて、目を大きく見開いていた。

 

「・・・・清羅。あの写真の彼、堕天使だったんですか・・・・?」

 

 小猫ちゃんの呟きに、清羅は首を横に振って否定した。え?どういうことだ?ちがうのか?

 

「いや、彼氏は堕天使じゃないですよ?特殊な事情で、堕天使側に席を置いてる『神器保持者(セイクリッド・ギア・ホルダー)』です」

 

 あ。そうだったのか!

 びっくりしたぜ。俺の妹の彼氏が堕天使って・・・・

 

 

 

 ん?よく見たらゼノヴィアが何故か驚愕してるけど、なんでだ?

 そしたら、ゼノヴィアが清羅に恐る恐る声をかけた。

 

「・・・・まさかとは思うが、君の恋人は・・・・・・・・・・・・『白龍皇』なのか?」

 

 ・・・・・・・・

 

 

 ゼノヴィアの質問に、部室が静寂に包まれる。

 

 

「はい、そうですよ」

 

 

 それを破ったのは清羅だった。

 

 

 

「はぁぁぁぁっっっ!?」

 

 

 やべっ!また思わず大声出しちまった!

 隣にいる清羅だけでなく、皆が耳を塞いでいた。

 

 

 え?嘘。俺の妹の彼氏が、あの時、コカビエルを一瞬で片付けたあの『白龍皇』なのかよ!

 

 

「・・・・噂で聞いたことはあったが、まさか真実だったとはな」

 

 

 マジか。清羅と『白龍皇』が付き合ってるって事、教会でも噂になってたのか・・・・

 すげぇな。俺の妹。

 

「さて、話は終わったことですし、私は退出させていただきますね。なにせ、このあとアザゼルさんとかと打ち合わせがあるものですから」

 

「・・・・まだ聞きたいことがあるけど仕方ないわね」

 

「すいません。また後日に」

 

 そう言い残して、清羅は部室から退出していった。

 ・・・・清羅も色々あるんだな。

 

 

 

 

 その後、ゼノヴィアが、アーシアを『魔女』と言って侮辱したことを謝罪して、二人が和解した。

 ・・・・良かったぜ。このままギクシャクしたのはやっぱり嫌だからな。

 

 

「さ、皆!清羅は今回用事でいないけれど、ひとまず、部活動再開よ!」

 

「「「はいっ!」」」

 




 ありがとうございました!これにてエクスカリバー編は終了です!
 次回からヴァンパイア編に突入します!
 ヴァーリ君とお義兄さんの素顔での対面をお楽しみに!!


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停止教室のヴァンパイア
第十七話


 第十七話!始まります!!


「いやぁ悪いな、悪魔くん。今日も来てもらって」

 

 現在、俺は悪魔稼業でお得意様の所へ来ていた。

 ・・・・毎回思うけど、なんでこの人は俺のことを呼ぶんだろうか?

 しかもその契約内容がちょっとおかしいんだよなぁ。

 コンビニにパン買いに行かされたり、釣りに付き合ったり。

 

 

 わざわざ悪魔呼んでまですることじゃないと思うんだが・・・・

 ・・・・・・・・・・・・報酬はすごくいいんだけどね。

 

「今日はレースゲームでもやらないか?この間、今話題のゲーム機とソフトが手に入ったからな」

 

 そう言うと、目の前のお客さんは今世間を騒がせているゲーム機とソフトを用意した。

 

 ・・・・・・・・ていうかこれ。清羅も持ってたやつだ!

 何度か一緒にやったんだけど一回も勝てなかったんだよな。

 

「よし!準備できたぞ。ほい、コントローラー」

 

「あ、ありがとうございます。俺、このゲーム、プレイしたことあるんで中々強いと思いますよ?」

 

「お、そうか!よろしく頼むぜ」

 

 そう言って俺達はレースゲームを始めた!

 最初は俺が有利だったが、後にお客さんはコツを掴んだのか、俺を軽々と抜かして一位になりやがった!

 マジかよ!このお客さん。ほんの数レースだけでコツを掴みやがった!

 ・・・・只者じゃないぜ。

 

「俺の勝ちだな、悪魔君。いや、『赤龍帝』?」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?

 ちょっと待て。

 今、このお客さん。なんて言った?

 俺の耳が正しければ、今確かに『赤龍帝』って。

 

「・・・・・・・・あんた、何者だ?」

 

 俺は恐る恐る問いかける。

 すると、目の前の男は悪戯が成功した時の子供のような笑みを浮かべ、背中から十二枚の黒翼を展開した。

 

「俺の名前はアザゼル。堕天使共の頭をやってる。

よろしくな、清羅の兄。『赤龍帝』兵藤一誠」

 

 

 ・・・・・・・・おいおい、マジか。

 

 

 

―●●●―

 

 

 私、兵藤清羅は現在、オカルト研究部に顔を出してました。

 そこには、眉を釣り上げて怒るリアス先輩の姿。

 

「冗談じゃないわ!」

 

 どうやらアザゼルさんが身分を隠して自分の下僕に接触していたことに怒っているそうです。

 ・・・・というかアザゼルさん。この町でそんな事してたんですね・・・・

 

「私の可愛いイッセーに手を出そうだなんて万死に値するわ!おそらくアザゼルの狙いはイッセーの持つ『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』でしょうね。・・・・安心して、私がイッセーを必ず守るから」

 

 それにしてもアザゼルさん。やっとあのゲーム機手に入れたんですね。

 私を含む、ヴァーリ君の仲間達はほとんど持ってますけど・・・・

 

「・・・・なぁ、清羅。アザゼルはやっぱ俺の神器(セイクリッド・ギア)を狙ってるのかな?堕天使の総督だから・・・・」

 

 ゲームの事考えてたら兄が不安を口に出していました。

 ・・・・ここは素直に話して兄を安心させてあげるとしますか。

 

「まぁ、アザゼルさんが神器(セイクリッド・ギア)マニアというのは本当です。でも、兄さんを洗脳したりとかはないと思いますよ?」

 

「・・・・そうなのか?」

 

「はい。約束します」

 

 私の言葉に兄はひとまず安心したようです。

 ・・・・ていうかアザゼルさんは洗脳等の方法は極力使わないんですよね。

 ・・・・・・・・今回みたいな悪戯はよくしますけど・・・・・

 

 

「アザゼルは昔からああいう男だよ、リアス」

 

 すると突然、この場の誰でもない他者の声が聞こえてきます。

 声のした方向を見ると、そこにはにこやかに微笑む紅髪の男性。

 

 

 まさか部室に直接転移してやってくるとは。

 ・・・・ちょっぴり予想外でした。

 

「お、お兄様!?」

 

 リアス先輩が驚愕しています。

 そして、よく周りを見ると、兄とアーシア先輩とゼノヴィア先輩以外の皆がその場で跪いていました。

 

 

「くつろいでくれたまえ。今日はプライベートで来ている」

 

 サーゼクスさんの言葉で、私以外の皆が姿勢を楽にしました。

 そして、私はとある疑問をぶつけます。

 

「・・・・こういう登場の仕方好きなんですか?サーゼクスさん?」

 

「やあ、清羅。それはもちろんだよ。なんてったって、我が可愛い妹の驚いた顔が見れるからね!」

 

 ・・・・うわぁ、ここにシスコンがいます。

 私がサーゼクスさんのシスコンっぷりに若干引いてると、それを見たグレイフィアさんが、助け舟を出してくれました。

 

 

「・・・・サーゼクス様。ここでそのような発言はお控えください。清羅様が困っておりますので」

 

 助け舟を出してくれたグレイフィアさんに心の中で感謝していると、リアス先輩が顔を真っ赤にしてサーゼクスさんに話しかけました。

 

「お兄様!どういうことですか!?魔王ともあろうあなたが仕事をほっぽりだして来るなんて!」

 

 ・・・・リアス先輩。相っ当、恥ずかしいみたいですね・・・・わかりますよ、その気持ち。

 

「いやいや、これは仕事でもあるんだよ、リアス。実はここで三すくみの会談が行われることになってね。今日はその下見に来たんだよ」

 

 衝撃のカミングアウトに私以外の部員達は目を丸くしています。

 ちなみに、私はアザゼルさんから事前にこの事を言われていました。

 

「どうやらこの学園は何かしらの縁があるみたいでね。いろんな力が入り混じって多くの事象を呼び込んでいる。その中心にいるのが、『赤龍帝』__兵藤一誠君__だと思っている」

 

「アザゼルさんも全く同じこと言ってましたね。

となると、天使側も同じ意見なんでしょうか?」

 

「あぁ、その通りだよ、清羅。これは三すくみのトップ全ての意向だ」

 

 ・・・・うーん。なんか自分の兄がトラブル呼んでるって思うと少し複雑ですね。

 

「あなたが魔王か。初めまして。ゼノヴィアだ」

 

 兄のトラブル体質について考えていると、ゼノヴィア先輩が会話に介入してきました。

 ・・・・会話の入り方。唐突すぎません?

 

「ごきげんよう、ゼノヴィア。私の名はサーゼクス・ルシファー。それにしても驚いたよ。まさかデュランダルの使い手が妹の眷属になるとは・・・・」

 

「私も大胆な事をしたと思っている。勢いでここまでやってしまうとは、正直自分でも思ってなかった・・・・」

 

 ・・・・大胆な事をした自覚、あったんですね。

 

「うむ、やはり妹の仲間というのは、愉快な者たちが多いくていいね。ゼノヴィア、これから、妹の眷属として、皆を支えてほしい」

 

「伝説の魔王にそこまで言われては私も頑張るしかないな・・・・わかった、やれるとこまでやらせてもらう」

 

「ありがとう、ゼノヴィア」

 

 ・・・・ん?ゼノヴィア先輩。少し頬が赤いですね。照れてるんでしょうか?

 

「さて、人間界に来たのはいいが、どこに泊まろうか・・・・」

 

 ・・・・えー。この魔王さん。宿とらずにここ来たんですか・・・・

 若干呆れていると、兄が手をあげながらある提案をしました。

 

「あのぉ〜、だったら__」

 

 

 

―●●●―

 

 

「妹が迷惑をかけていないようで安心しました!」

 

「いえいえ!リアスさんはとてもいい子ですよ!」

 

「ほんと、イッセーにはもったいないくらいでして・・・・」

 

 現在、私の家でサーゼクスさんとグレイフィアさんが、両親と楽しげに会話しています。

 

 あの後、兄がサーゼクスさんに対して、『それなら、俺の家に泊まりすか?』と提案したのです。

 サーゼクスさんは、最初こそ目を丸くしていたのですが、リアス先輩が私の家に下宿していることを思い出し、両親に挨拶をするという名目も兼ねて、この意見を快諾。

 これに対して、リアス先輩は恥ずかしさにより、最初は抵抗していたのですが、サーゼクスさんとグレイフィアさんの勢いを止められるはずもなく、ここに来てしまいました。

 

「それにしても今日は家に来る人が多いなぁ、母さん」

 

「本当ね、父さん」

 

 ん?誰か他に家に来たんでしょうか?

 

「・・・・父さん。他に誰か来たんですか?」

 

「あぁ!実は先程、清羅の彼氏とそのお父さんが挨拶に来てな!」

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・え?

 

「ヴァーリ君、立派な子だったわねぇ。清羅。いい男の子を彼氏にしたのね!」

 

 ・・・・マジですか・・・・・・・・全く聞いてないんですがそんなの・・・・

 

「・・・・失礼ですが、イッセー君のお父さん。そのヴァーリ君の父親の名前を伺っても?」

 

 サーゼクスさんが身を乗り出して質問します。

 

「はい!『アザゼル』さんという、とある研究所に勤めている研究者さんなんですよ!」

 

「「「ええぇぇっっっ!?」」」

 

 この解答に対して、私と両親以外が驚きの声をあげます。

 ・・・・・・・・その中でも、兄が一番驚いてますね。

 

 

「そ、そうですか。ありがとうございます」

 

「いえいえ、ところで、そちらのメイドさんは?」

 

「あぁ、はい。グレイフィアです」

 

 父さんの問いに、サーゼクスさんは先程の引きつった笑みを一転させて答えます。

 

「実は私の妻です」

 

「「「えええっっ!?」」」

 

 サーゼクスさんのカミングアウトに、私とリアス先輩以外が先程と同じように大声をあげます。

 そんな中、グレイフィアさんは一人。無表情のままサーゼクスさんの頬を抓っていました。

 

「ご紹介が遅れました。メイドのグレイフィアでございます。我が主が冗談を口にして申し訳ございません」

 

 グレイフィアさんの綺麗な謝罪。心なしか若干照れているようにも見えます。

 一方、隣のリアス先輩は恥ずかしさのあまり、顔を両手で覆っていました。

 

「それでは、グレモリーさんも授業参観に?」

 

「はい!仕事が一段落したこの際に授業風景を拝見できたらと思いましてね。当日は父も顔を出すんですよ」

 

「そうなんですか!リアスさんのお父さんも」

 

「ところでグレモリーさん!お酒はいけますかね?実は今日。美味しい日本酒がありましてね」

 

 父さん・・・・さすがにここでお酒は・・・・

 

「ぜひともいただきましょう!日本酒は大好きなのでね!」

 

 ・・・・そうでした。サーゼクスさん。お酒好きなんでしたね・・・・

 ・・・・グレイフィアさん。頑張ってくださいね・・・・

 

 




 ありがとうございました!!
 次回もお楽しみに!!


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第十八話

 第十八話!始まります!

 


 私は現在。オカルト研究部の引き受けた仕事の一つ。プール掃除を終えて水着に着換え、プールサイドのベンチに腰を掛けてました。

 ちなみに、今回着用している水着は、クルシェ系の水着。普段より露出が少なめのものです。

 

 ・・・・ヴァーリ君にも見せたかったなぁ・・・・

 

「ところで兄さん?妹である私をそんな目で見るとはどういう了見ですか?」

 

 さっきから卑猥な視線が向けられていると思ったら、案の定、私の兄でした。

 しかし、兄はそんな視線を向けていたことに対して開き直って。

 

「いやぁ、清羅。我が妹ながらスタイルいいなぁ。お兄ちゃん嬉しいよ!」

 

「・・・・スタイル褒められたのに全く嬉しくないのはなんででしょうか?」

 

「ひどいな!」

 

「だったらその実の妹に本来向けるべきではない、卑猥な視線をやめてください」

 

「それは無理だ!だって男だからな!」

 

「・・・・・・・・もういいです。それより、アーシア先輩の水着を見てあげたらどうですか?」

 

 私がそう言うと、兄はハッとして、涙目になってるアーシア先輩のところへかけていきました。

 

 ふむ、アーシア先輩と小猫ちゃんはスクール水着ですか。

 ・・・・なかなか面白いところを攻めてきますね。

 

 すると、小猫ちゃんが私の肩を叩いて。

 

「・・・・すいません、清羅。ちょっとお願いしたいことが・・・・」

 

 どうしたんでしょうか?

 

 

―●●●―

 

 

「いち、に、さん、し。到着です。お疲れ様でした!」

 

 あの後、小猫ちゃんは泳ぎの練習に付き合ってほしいと頼まれたので、私は小猫ちゃんの手を握って、バタ足から練習を付き合ってました。

 

 ちなみに、隣では兄がアーシアさんの泳ぎの練習の手伝いをしています。

 二人共、楽しそうですね。

 

「ふぅ。・・・・ありがとうございます、清羅。練習に付き合ってくれて・・・・」

 

「とんでもないです。これくらい容易いことですよ」

 

「・・・・相変わらず清羅は優しいですね」

 

「ふふっ。ありがとうございます」

 

 相変わらず小猫ちゃんは律儀ですね。礼儀正しくていい子です。

 ・・・・姉妹でもこんなに違いがあるんですね。

 性格とかスタイルとか・・・・

 

「・・・・なんか失礼な事を考えられた気がしました」

 

 !この子、脳内の考えを読み取った・・・・ですって!?

 小猫ちゃん。恐ろしい子!

 

 

「小猫ちゃん、どうします?まだ続けますか?それとも一旦休憩にします?」

 

 これ以上考え事を察知されても困るので、話題を変更することにします。

 

「・・・・休憩させてください。さすがに疲れました・・・・」

 

「分かりました。飲み物持ってきますね」

 

「・・・・ありがとうございます」

 

 こんなこともあろうかと、何本か飲み物を持ってきていたのです。

 

「どうぞ。オレンジジュースでいいですか?」

 

「・・・・はい、ありがとうございます」

 

 ちなみに私はリンゴジュースです。

 

「・・・・清羅のおかげでだいぶ泳げるようになってきました」

 

「私が教えたのなんて基礎中の基礎ですよ。ここまで泳げるようになったのは、小猫ちゃんの力です」

 

 というか本当に何も教えてないんですよね。

 小猫ちゃんの飲み込みの早さと運動神経が役に立ちました。

 

「・・・・清羅。もう一度、お願いできますか?」

 

「はい。じゃあ、やりましょうか!」

 

 小猫ちゃんも回復したようですし再開することにしました。

 途中、魔力を用いた攻防戦が行われていた気がしましたが、きっと気のせいですね。

 

 

―●●●―

 

 

 し、死ぬかと思ったぜ・・・・

 俺、兵藤一誠は二人のお姉様の攻防から命からがら用具室に逃げこんだ。

 すると、そこには見慣れた少女の姿。

 

「どうしたんだ?兵藤一誠。かなり疲れているようだが・・・・」

 

「ま、まぁな。それよりお前はここで何をしてたんだ?」

 

「水着の着用に手間取っていた。何分、このようなものを着るのは初めてだからな・・・・似合っているだろうか?」

 

 そっか。今までこういうの着たことなかっただろうから当然か。

 

「おぉ、似合ってると思うぜ!」

 

 お世辞抜きで本当に似合ってると思う。

 ゼノヴィアもなんだかんだでいいスタイルしてるからなぁ。

 

「兵藤一誠。折り入って話したいことがある」

 

「本名わざわざ言うの面倒くさいだろうから、イッセーでいいぜ」

 

「ではイッセー。私と子作りをしてほしい」

 

 

 

 ・・・・・・・・は?

 

 この子は何を言ってるんだ?

 

 

「む、すまない。唐突だったな。では順を追って話そう」

 

「・・・・はい。お願いします」

 

「・・・・私はこれまで神に仕えていたんだ。しかし、神の不在を知り悪魔になったため、生き甲斐を失った。そこで、リアス部長に相談してみたんだ」

 

「うん。話は分かった・・・・でもなんで?」

 

「話を聞いたところ、好きに生きてみろと言われたからそうすることにしたんだよ」

 

 好きに生きる・・・・か。

 

「だから私は新たな目標を立てた。それが・・・・・・・・子供を産むことなんだ」

 

「・・・・そっか・・・・でも、何故に俺?」

 

「君はドラゴンの力を宿しているだろう?私は産まれる子供は強くあってほしい。・・・・そこで、君に白羽の矢が立った。というわけだ」

 

 ・・・・そ、そうなんだな・・・・

 ていうか俺の遺伝子ってそんなに魅力的なのか?

 

「何事も実践あるのみだ。早速始めよう」

 

 え!?ちょちょちょ!!!

 脱ぎ始めちゃったんですけど!?

 

 ええいっ!!こうなったらヤケだ!!

 もうここで覚悟を決めてヤッてやる!!

 そうして、俺はゼノヴィアを押し倒そうとしたその時・・・・・・・・

 

 

「・・・・イッセー?」

 

 後ろから聞こえる聞き慣れた声。

 恐る恐る振り返ると、そこには仁王立ちする部長の姿。

 

「・・・・あらあら、イッセー君ったら」

 

 朱乃さんまでいる!!

 ていうか目が全然笑ってねぇ!!

 

「・・・・イッセーさん、酷いです!」

 

 アーシアも目を潤ませて怒ってる!

 

「・・・・兄さん・・・・マジですか・・・・」

  

 清羅は清羅でめっちゃドン引きしてる!

 やめてくれ!!兄をそんな蔑んだ目で見ないでくれ!!

 

「・・・・イッセー先輩。最低です」

 

 小猫ちゃんも清羅と同じく蔑んだ目で見てくる!

 

「・・・・私。用事が出来たので帰りますね」

 

「ちょ!!清羅!!助けてくれェェェェ!!」

 

 あぁ!!俺の頼みの綱がァァァ!!

 

「イッセー。少し、『お話し』しましょうか?」

 

 イヤだァァァァ!!!死にたくない!!

 誰か助けてくれェェェェ!!!

 

 

 

―●●●―

 

 

 さて、兄のプールサイドから聞こえてきた絶叫を無視して、私は皆より一足先にプールから上がっていました。

 そして、校門に行くと、そこには幻想的な雰囲気を纏う一人の銀髪の美少年の姿が。

 

「・・・・ヴァーリ君。待っててくれてたんですね」

 

「あぁ。今日は一緒に帰ると約束しただろう?・・・・・・・・それにしても、先程の絶叫は何だったんだ?」

 

「気にしないでください」

 

「そ、そうか」

 

「・・・・それにしても、なんでわざわざ校門で待ってたんですか?」

  

 本当になんでなんでしょう。

 いつもみたいに近くの公園で待ってればいいのに。

 

「・・・・いや、この際だからな。俺の将来の『お義兄さん』に挨拶しておこうと思って」

 

「そうですか・・・・あぁ!そういえば父さんと母さんにあったそうですね!・・・・アザゼルさんと一緒に」

 

「あぁ・・・・いい両親じゃないか。アザゼルともすっかり仲良くなっていてな。・・・・俺の事も認めてもらえた」

 

「・・・・悪いとは言いませんが、行くのなら私に一言言ってほしかったです・・・・」

 

「ハハハ。サプライズだ」

 

 ・・・・ヴァーリ君といい、アザゼルさんといい、この二人。本当にサプライズが好きですね!

 ・・・・おかげさまでびっくりの連続ですよこっちは。

 

「お、話をしている内に来たようだぞ」

 

「あ、本当ですね」

 

 ・・・どんな反応するんでしょうかね。私の兄は。

 

 

―●●●―

 

 

 ふぅ〜、災難だったぜ。

 俺はやっとあの地獄から開放され、トボトボと校庭の方へと歩いていた。

 ・・・・それにしても、一人で帰るのも久しぶりだな。

 

 そうして、校舎を出ようとしたとき、俺の視界に見慣れた金色と見たことのない銀が写った。

 

 

 !?

 

 

 一瞬心が持ってかれた。

 すんごい美少年と美少女が二人で楽しそうに話している。

 ・・・・・・・・ていうか美少女の方は俺の妹じゃねぇか!

 で、その隣にいる美少年は誰だ?

 

 そう考えていると、二人がこっちに気付いたのか、視線をこちらに向け、話しかけてきた。

 

「やぁ、初めまして」

 

「は、初めまして・・・・」

 

 え?誰?

 ・・・・・・・・・・・・・・・・あ!

 こいつ、清羅の待ち受け画面に写ってた・・・・!

 

「俺はヴァーリ。清羅の彼氏だ。・・・・そして、白龍皇__『白い龍(バニシング・ドラゴン)』でもある」

 

 ・・・・!そうだったぜ!確か清羅の彼氏って白龍皇だったんだよな!!

 

「ここで会うのは二度目か、『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』__赤龍帝。兵藤一誠・・・・いや、ここはお義兄さんと呼ばしてもらおうか」

 

 はあ!?

 ・・・・コイツ!お義兄さんだとぉ!?清羅の彼氏ってだけで許せないのに、もう『夫』気取りだぁ!?

 

「認めんぞ・・・・」

 

 認めるもんか・・・・・・・・

 こんなイケメンで白龍皇で堕天使側に属していて、それでいて可愛い妹の彼氏だなんて・・・・!

 

「てめぇみたいなリア充クソ野郎!たとえ父さんと母さんが許しても、俺が許すもんかァァァ!!!」

 

 許さん!!目の前のこいつは、全国の非リアの敵だ!!

 そうと決まれば話は早い!

 まずは一発殴って・・・・!

 

「何しようとしてるんですか?兄さん?」

 

「す、すいません!」

 

 こ、怖ぇぇ!!

 清羅が凄い笑顔で聖なるオーラを出してる!

 ・・・・あのまま殴りかかってたら俺、死んでたな・・・・

 

 

「さて、後ろで控えてる君たちも出てきたらどうだ?」

 

 え?後ろ?

 振り返って見ると、そこには敵意剥き出しのオカルト研究部の皆。

 

「ちょっと冗談がすぎるんじゃないかな?」

 

「ここで『赤龍帝』との決戦を始めさせるわけにはいかないな『白龍皇』」

 

 木場とゼノヴィアなんかはそれぞれの武器を手にしてドス黒い声を出している。

 

「・・・・木場先輩、ゼノヴィア先輩。やめておいた方がいいですよ?・・・・・・・・手が震えているじゃないですか」

 

 清羅の言うとおり、ゼノヴィアと木場の武器を持つ手は震えていた。

 

「清羅の言う通りだ。でも、誇っていい。相手との実力差が分かるのは強い証拠だ。俺と清羅の二人と、君達との間には非常に大きな差がある。コカビエルごときに苦戦していた君達では、絶対に勝てないよ」

 

 コカビエルごときか・・・・

 実際、俺達グレモリー眷属が束になってかかっても勝てなかった相手をこいつはごときと言った。

 おそらく清羅とこいつにはコカビエルごときと見下せるだけの実力があるのだろう。

 

「さて、お義兄さん。あなたはこの世界で何番目くらいに強いと思う?」

 

「い、いきなりなんだよ」

 

「未完成の『禁手化(バランス・ブレイカー)』状態と化したあなたは上から数えた場合四桁。千から千五百の間くらいだろう」

 

「何言ってるんですかヴァーリ君。宿主のスペックも考慮するともっと下ですよ」

 

 おいぃぃ!さり気なく妹にディスられたんですがぁ!?

 

「ま、このような話はここらへんにして・・・・リアス・グレモリー」

 

「『白龍皇』、なんのつもりかしら?あなたが堕天使と繋がりをもっているのなら必要以上の接触は」

 

「・・・・それを言うなら清羅も堕天使側と繋がりがあると思うんだが・・・・まぁ、いいか。今日は別に戦いに来たわけじゃない。清羅を迎えに来ただけだ。俺と清羅もやることが多いんでね」

 

「あ、兄さん。私、今日帰るの遅くなります」

 

「あ、あぁ。分かった」

 

 二人はそう言い残して、この場をあとにした。

 二人が去っても、俺達は緊迫した表情のままだった。

 ・・・・・・・・ていうか、野郎にお義兄さんって言われてもなぁ・・・・・・・・・・・

 

 




 ありがとうございました! 
 次回もお楽しみに!!


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第十九話

第十九話!始まります!




「清羅、アーシアちゃん、イッセー。後でお父さんと一緒に行くからね!」

 

 朝、気合の入った母さんに見送られて私達は登校します。

 ・・・・うちの親は授業中に声援を送ってくるから恥ずかしいったらありゃしません!

 

 その一方で、アーシア先輩はうちの両親が来てくれることに大喜びして、満面の笑みを浮かべています。

 

 アーシア先輩。嬉しそうですね〜

 ・・・・そう思えることが羨ましい。

 

 

―●●●―

 

「清羅。やっぱり両親は来るんですか?」

 

「はい。わざわざ新しいカメラ買ってスタンバイしてたくらいですから」

 

「・・・・大変なんですね」

 

「それはもう」

 

 ・・・・あぁ、小猫ちゃんの優しい眼差しが心に染みます。

 

「清羅。もうすぐ授業が始まりますよ、一緒に頑張りましょう?」

 

「・・・・ありがとうございます」

 

 あぁ!私の天使はここにいましたか・・・・

 

 

―●●●―

 

「では、今配った紙粘土を使って好きなものを作ってみてください。自分が今頭に思い浮かべた物を形作るのです。そういう英会話もある」

 

 いや、それはおかしい。

 そんなの英会話じゃない。

 そう思ってしまった私は悪くないはずです。

 

「それでは。Let's try!!」

 

 ・・・・そこだけ英語で言っても特に変わらないと思うんですがねぇ。

 

「清羅!ファイトよ!!」

 

「清羅!こっち見てくれ!」

 

 遂に来ましたか!

 恐れてた事が起きてしまいました!

 ここで変なもの作ったら笑いものに・・・・

 

 一人で悩んでいて、ふと周りを見渡してみると、皆は文句を何一つ言わず、紙粘土をこねていました。

 ・・・・・・・・えぇ・・・・それでいいんですか・・・・

 

 ・・・本当に何作りましょうかね。  

 私が一番に思い浮かべるもの・・・・

 

 うむむ・・・・・・・・

 私の使い魔の・・・・

 首が九つあって硬い甲殻に覆われてて・・・・

 猛毒を所持してる・・・・

 

「せ、清羅さん・・・・・・・・」

 

 どうしたんでしょう?

 先生が私の肩に手を置いて驚いた様子で、自らの肩を震わせています。

 

「・・・・清羅、それ」

 

 隣の小猫ちゃんも同じような表情です。

 二人共私の手元に注目しているようなので、私も自身の手元を見てみました。

 

 すると、そこには今にも動き出しそうな、九つの首を携えたヒュドラの姿。

 

 ・・・・・・・・・・・・え?

 これ、私が作ったんですか?

 

『おおっ!!』

 

 クラスの皆は私の作品を見て歓声をあげました。

 

「・・・・素晴らしい、素晴らしいよ清羅さん・・・・!今日、この授業を行って良かった・・・・!!」

 

 な、なんか先生が思いっ切り泣いてるんですが・・・・・・・・

 

「清羅ちゃん!俺の作品と交換してくれ!」

 

「だめだ!清羅ちゃん!五千円出そう!」

 

「ふざけるな!俺は七千円出すぞ!」

 

 あの、皆さん、今一応、授業中なんですが・・・・

 

 

―●●●―

 

「二人共、よくできているわね」

 

 昼休み、私は小猫ちゃんとともにオカルト研究部メンバーのもとに集まっています。

 そこで、リアス先輩に私の『ヒュドラ像』と兄さんが作った『リアス先輩像』を見せていました。

 

 あの後、このヒュドラ像は一万円で売ることにしました。

 でも、私が少し、部員の皆に見せたいということで、作品の受け渡しは帰りに行うことに。

 

「それより部長!清羅の使い魔がヒュドラって本当なんですか!?俺初めて知ったんですけど!?」

 

 兄さんは私の作品の出来よりも、私の使い魔がヒュドラだということに驚いているようです。

 ・・・・そういえば伝えるの忘れましたね。

 

「えぇ、そうよ。また今度見せてもらうといいわ」

 

「お望みであればお見せしますよ?」

 

「じゃあ、また今度・・・・」

 

 兄さんに今度ヒュドラを見せてあげようとおもっていると、そこに木場先輩が現れました。

 

「あら、裕斗。お茶?」

 

 リアス先輩が尋ねると、木場先輩は首を横に振って、廊下の先を指差しました。

 

「あ、いえ、どうやら魔女っ子が撮影会をしてると聞いたので見に行こうかと思いまして」

 

 魔女っ子ですか・・・・・・・・まさか・・・・!?

 

 

―●●●―

 

 

 パシャッ、パシャパシャッ!!

 激しいフラッシュがたかれ、カメラを手に持った男性陣が廊下の一角で一人の女性を撮影していました。

 

 ・・・・やっぱり、この人でしたか・・・・

 

 そこには、魔法少女の格好をして手に持っているスティックをくるくる回す、現四大魔王。セラフォルーさんの姿。

 

「オラオラ!天下の往来で撮影会たー良いご身分だぜ!」

 

 そう言いながら匙先輩と生徒会のメンバーが乱入してきました。

 

「ほら解散解散!今日は公開授業だ!こんなところでいらん騒ぎをつくんな!!」

 

 匙先輩の一声により、四方に散らばっていくカメラを持った男性陣。

 騒ぎを鎮圧したあと、匙先輩はセラフォルーさんに声をかけます。 

 

「さてと、あなたもここで、そんな格好はしないでください・・・ってもしかして親御さんですか?だったら余計に困りますよ」

 

「えー、だってこれが私の正装だもん☆」

 

 しかし、セラフォルーさんは匙先輩の注意を受けても聞く耳を持ちません。

 ・・・・魔王さん、それでいいのか・・・・

 

「あ、リアス先輩。ちょうど良かった。今魔王様と先輩のお父さんを案内してたところなんです」

 

 匙先輩はリアス先輩を確認するなり頭を下げました。

 すると、そこに会長さんが現れ、匙先輩に軽い注意を言い渡します。

 

「何事ですか?サジ。問題はいつも簡潔に解決しろといつも言って」

 

「ソーナちゃんみっけ☆」

 

 そこへ、セラフォルーさんは会長さんの言葉を遮り、即座に会長さんに抱きつきました。

 ・・・・あぁ、やっぱり。

 

「セラフォルー。君もここに来ていたんだな」

 

 サーゼクスさんがその姿を確認するなり声をかけます。

 一方で、兄はサーゼクスさんの発した言葉に困惑している様子。

 そこへ、リアス先輩がトドメの一言。

 

「レヴィアタン様よ、イッセー」

 

「・・・・えええええええええっっ!!??」

 

 言葉の意味を完全に理解するなり絶叫する兄さん。

 ・・・・頼みますからもう少し静かにしてください。

 

「あ、リアスちゃんに清羅ちゃん☆お久〜☆元気にしてた?」

 

 うん、相変わらずのテンションですね。

 兄さんが全くついていけてないようですが。

 

「お久しぶりです。セラフォルーさん。今日は会長さんの授業参観に?」

 

「うん☆そうなの☆ソーナちゃんったら酷いのよ!私に今日のこと黙ってたんだから!お姉ちゃんこれにショックで天界に攻め込もうとしちゃったぐらいなんだからね☆」

 

 いや、そんな可愛らしく物騒なこと言っても・・・・

 

「ごきげんよう、セラフォルー様。ほらイッセー、あなたもご挨拶なさい」

 

 リアス先輩に言われ、兄さんが頭を下げて挨拶をします。

 

「初めまして、兵藤一誠です。リアス・グレモリー様の『兵士(ポーン)』をやってます!よろしくお願いします!」

 

「初めまして☆私、セラフォル・レヴィアタンです☆気軽に『レヴィアタン♪』って呼んでね☆」

 

 ピースサインで宣言するセラフォルーさん。

 いや、無理でしょ。

 

「ねぇねぇ、サーゼクスちゃん。この子が清羅ちゃんのお兄ちゃんで、噂のドライグ君?」

 

「そうだ。彼が清羅の兄にして『赤い龍(ウェルシュ・ドラゴン)』を宿す者、兵藤一誠君だよ」

 

 セラフォルーさんの質問に受け答えるサーゼクスさん。ちなみに、サーゼクスさんを『ちゃん』づけして呼んでいることに突っ込んではなりません。

 

「あら、グレモリーのおじさま」

 

「あ、ジオティクスさん。お久しぶりです」

 

「あぁ、久しぶりだね二人共。それにしてもセラフォルー殿。その格好は些か魔王としてどうかと思いますが・・・・」

 

「あら☆おじさま、ご存知ないのですか?今、この国の最先端の服がこれなんですよ?」

 

「おぉ、そうでしたか。いやはや、これは私が無知だったようだ」

 

「いや、信じちゃだめですからね?ジオティクスさん?」

 

 危ない危ない。グレモリー家の当主に日本の間違った認識を植え付けるところでした。

 

「あのぉ、清羅、部長?魔王様が俺の想像を遥かに超えたノリの軽さなんですが・・・・」

 

「兄さん、慣れてください。現四大魔王の方達は、プライベート時になると酷いくらい軽くなるので」

 

「えぇ、そうよ。イッセー、分かった?」

 

「は、はぁ・・・・」

 

 兄さんは未だありえないといった表情です。

 まぁ、こればっかりは慣れてもらうしかないですね。

 

「お姉様。ここは学舎です・・・・い、いくら身内だとしてもそのような格好は容認できません!」

 

「ソーナちゃんなんで!?ソーナちゃんにそんなこと言われたらお姉ちゃん凹んじゃう!」

 

「お姉様!ご自重ください!」

 

 あぁ。会長さん。そうなったらもう・・・・

 

「なぁ、清羅。会長がお姉さんを呼ばなかった理由って・・・・」

 

「大体その予測であってますよ、兄さん。セラフォルーさんが、妹を溺愛しすぎるあまり、その愛しい妹が堕天使に汚されると知ったら、即戦争になりかねなかったんですよ」

 

「・・・・なるほど」

 

「もう駄目です!耐えられません!」

 

 あ、会長さんが遂に逃げ出しました。

 

「待って、ソーナたん!お姉ちゃんを置いてかないで!」

 

「ついてこないでください!あと『たん』付けはいつもおやめになってくださいとあれほど!」

 

 それを即座に追いかけるセラフォルーさん。

 大丈夫ですかね?この学校。

 

「うむ、シトリー家は平和だ。そう思うだろう?リーアたん」

 

「お兄様。『たん』付けはおやめください!」

 

 うわぁ、こっちでも始まりましたか・・・・

 

「・・・・リーアたん。そんな・・・・ついに反抗期かい!?」

 

「お兄様!!どうしてこう、私をからかう」

 

 リアス先輩が反論しようとしたところを写真に収めるジオティクスさん。

 ・・・・すごい・・・・感動してますね。

 

「いい顔だ、リアス!次もどんどん撮っていこうか!」

 

「お、お父様まで!?」

 

 ・・・・苦労しますね、リアス先輩。

 

「お、清羅、イッセー」

 

「父さんですか」

 

 学校を見回り終えて、手をあげながら現れる私の両親。

 

「清羅、一誠君。お二人がご両親かな?」

 

「はい。そうですよ」

 

「そうか」

 

 ジオティクスさんは確認すると、私の両親の前に立ちます。

 

「初めまして、リアスの父です」

 

 父さんに手を向けて握手を求めるジオティクスさん。

 それに対して両親は先程の表情を一変させ、緊張の表情を見せます。

 

「こ、ここここれは!どうも!兵藤清羅と兵藤一誠の父です!リアスさんにはいつもお世話になっておりまして!!」

 

 父さん、慌てすぎです。

 

「いえ、こちらこそ。リアスがお世話になっております。いつか挨拶に向かおうと思っていたのですが、私もサーゼクスも多忙な見でして。今日は機会に恵まれたようで。お会い出来て光栄です」

 

「そ、そそそそんな!私達も一度挨拶をと、父さんと。いえいえ、夫と話をしていたのでしたのでしたですわ!!」

 

 母さんも慌てすぎて口調がおかしくなって・・・・

 隣を見ると、兄さんとリアス先輩も顔を真っ赤にしていました。

 

「しかし、ここは落ち着いた場所で話をしたいものですな。互いの子供達が恥ずかしいでしょう」

 

 そうしてください、お願いします。

 

「木場君。すまないがどこか落ち着けるところへ案内してくれないか?」

 

「はい。では、ご案内します」

 

 そうして、木場先輩に連れられて歩き出す両親とジオティクスさん。

 兄さんが、父さんにジオティクスさん相手に変な事を言わないようにと釘を指してましたが、まぁ多分、大丈夫でしょう。

 ・・・・多分

 

 




 ありがとうございました!
 また次回もお楽しみに!


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第二十話

 第二十話!
 お楽しみください!!


 き、昨日は災難でした・・・・

 

 ジオティクスさんと両親が日本酒を飲んで意気投合し、授業参観で撮ったビデオを交互に見比べてました。

 あれ程の地獄は体験したことなかったですね・・・・

 

 

 そんな地獄を体験した私は現在。部員の皆と一緒に、旧校舎一階、『開かずの間』と呼ばれる部屋の前に立っていました。

 あぁ、やっと彼を開放するんですね。

 

「さて、皆。開けるわよ」

 

 リアス先輩の言葉と同時に、刻まれていた封印が消え、ただの扉となったところを開きます。

 

「イヤァァァァァァ!!!」

 

 私達が入ろうとすると、部屋の中から絶叫が発せられました。 

 兄さんとアーシア先輩が聞こえてきた絶叫に困惑していますが、私達は気にすることなく部屋の中に入っていきます。

 

「な、ななな、何ですかぁぁぁ!!?」

 

「あらあら、封印が解けたのですよ?もう外に出られるのです。さぁ、私達と一緒に出ましょう?」

 

 朱乃先輩が優しく声をかけます。しかし・・・・

 

「嫌ですぅぅぅ!!ここで引きこもっていたいぃぃ!!外に出たくないですぅぅぅ!!」

 

 返ってきたのは、相変わらずの引きこもり宣言。

 この前とほとんど変わってないじゃないですか・・・・

 

 遅れて中に入ってきた兄さんは、ギャスパー君を見て、歓喜の表情を浮かべます。

 ・・・・多分兄さん、今ギャスパー君の事、女の子だと勘違いしてますね。

 

「イッセー、この子は見た目女の子だけど、紛れもない男の子よ?」

 

 私が訂正しようとしたら、リアス先輩がやってくれました。

 しかし、兄さんは未だ信じられない様子。

 

「いやいやいや、部長。どう見ても女の子じゃないですか・・・・・・・・・・・・・・・・マジで?」

 

「マジです、兄さん」

 

「女装趣味があるのですよ」

 

 私の肯定と共に、朱乃先輩からの追加情報。

 兄さんは、暫く動きを止めます。そして

 

「はぁぁぁぁぁっっっっ!?」

 

「ご!ごごご!ごめんなさぁぁぁい!!!」

 

 兄さんの絶叫に耳を抑えながら必死に謝るギャスパー君。

 まぁ、兄さんの気持ちも分からなくはないですが・・・・

 

「嘘だァァァァァ!!」

 

 兄さんは、ショックで頭を抱えて叫びます。

 

「おかしい!この世界はおかしい!こんな美少女の姿で・・・・お、男だなんて・・・・!こんな残酷な事があっていいのか・・・・!?」

 

 いや、どんだけ納得いかないんですか・・・・

 

「というかなんで女装なんてしてんだよ!引きこもりなのになんで女装してんだよ!誰に見せるんだよぉ!」

 

 兄さんが心の声を叫びます。

 それに対して、ギャスパー君から反論の一言。

 

「だ、だって、女の子の服の方が可愛いんだもん・・・・」

 

「・・・・『もん』とか言うなぁぁ!!一瞬でも金髪ダブル『僧侶(ビショップ)』を夢見た俺の夢を返せぇぇ!!」

 

「兄さん、いい加減諦めてください」

 

「うァァァァ!!」

 

 よし、もうほっときましょう。

 そう私が決めると、ギャスパー君が恐る恐るリアス先輩に話しかけます。

 

「と、ところでこの方達は誰ですか?」

 

 そう言った後、ギャスパー君は兄さん、アーシア先輩、ゼノヴィア先輩を順に指差します。

 

「貴方がここにいる間に増えた眷属よ。『兵士(ポーン)』の兵藤一誠、『騎士(ナイト)』のゼノヴィア、あなたと同じ『僧侶(ビショップ)』のアーシア」

 

 そんなギャスパー君の疑問に、リアス先輩は優しい声音で答え、再びギャスパー君に外に出るように言います。

 

「ギャスパー。外に出ましょう?ね?貴方はもう封印されなくていいのよ?」

 

「い、嫌ですぅぅぅ!!僕に外の世界なんて無理ですうぅぅぅぅ!どうせ僕が出ていっても皆に迷惑をかけるだけなんだぁぁぁぁ!」

 

 しかし、ギャスパー君はリアス先輩の言葉に耳を傾けず、部屋の片隅で喚いています。

 

「ほら、部長が外に出ようって・・・・」

 

「イヤァァァァァァ!」

 

 兄さんがギャスパー君を引っ張り出そうとすると、彼の目が怪しく光り、私と彼以外の時が止まりました。

 

 

「・・・・相変わらずですね、ギャスパー君」

 

「ご、ごめんなさい・・・・」

 

「とりあえず、落ち着きなさい。私も事情説明位はしてあげますから」

 

「本当にごめんなさい・・・・!」

 

 そう言って、ギャスパー君は深呼吸をして興奮を抑え、私以外にかかっている時間停止を解除します。

 

「あれ?」

 

「おかしいです。何か今一瞬・・・・」

 

 停止状態から解除されて、兄さん、ゼノヴィア先輩、アーシア先輩は困惑している様子ですが、事情を知ってる他の皆はまたかとため息をつきました。

 

 すっごく不思議そうにしている兄さん達に事情を説明します。

 

「兄さんアーシア先輩ゼノヴィア先輩。いいですか?彼は興奮すると視界に入る全てのものを停止するという『神器(セイクリッド・ギア)』を所持してるんですよ。

それにより、私以外の皆さんは停まったというわけです」

 

「皆さん。本当に!本当にごめんなさい!!どうか怒らないでぇ!!!」

 

 どうしてこう、ちゃんと謝れはするのに、素直に外に出ないんでしょうかね・・・・

 私がそう疑問に思っていると、朱乃先輩が追加情報を説明します。

 

「先程の清羅ちゃんの説明にもあった通り、この子は、自らの『神器(セイクリッド・ギア)』を制御できないため、大公及び魔王サーゼクス様の命でここに封じられていたというわけです」

 

 私と朱乃先輩の説明に、三人はなるほどといった表情を浮かべます。

 そして、リアス先輩はギャスパー君をそっと抱きしめ、三人にギャスパー君の紹介をします。

 

「この子の名前はギャスパー・ブラディ。私の眷属の『僧侶(ビショップ)』。転生前は人間と吸血鬼のハーフよ」

 

 

 

―●●●―

 

 

「さぁ走れ走れ!さもなくば、このデュランダルの餌食となるぞ!!」

 

「ヒィィィィィ!!こっち来ないでぇ!!」

 

 時間は夕方頃。あれから、リアス先輩に頼まれ、ギャスパー君を鍛えようという話になり、今現在行われているのは、吸血鬼狩り。

 おかしいですね・・・・頼まれたのは引きこもりの脱却だったんはずなんですが・・・・

 

「うぅ。折角、私と同じ『僧侶(ビショップ)』さんにお会い出来たのに目も合わせてもらえませんでした・・・・」 

 

 吸血鬼狩りが行われている中、アーシア先輩は心底残念そうにしています。

 そういえばよく家で「もう一人の『僧侶(ビショップ)』さんに会いたいです!」って言ってましたからね。

 

「ほら、ギャー君。ニンニク食べれば健康になるよ」

 

「やめてくださいィィィィ!!小猫ちゃんが虐めてくるぅぅぅ!!!」

 

 小猫ちゃんはニンニクを持ってギャスパー君を追いかけ回しています。

 ・・・・小猫ちゃん、楽しそうですねぇ。

 

「おーおー、やってるやってる」

 

 すると、ここに匙先輩がやってきました。

 

「おっ、匙か」

 

「こんにちは、匙先輩」

 

「よー兵藤、清羅ちゃん。解禁された引きこもり眷属がいるって聞いて花壇の手入れのついでに見に来たぜ」

 

「そうですか、ちなみに、そこでゼノヴィア先輩に追いかけ回されているのが解禁された引きこもり眷属です」

 

「ゼノヴィア嬢が伝説の聖剣豪快に振り回してんのはいいのか?・・・・って、あれか!美少女!しかも金髪!」

 

 金髪美少女と勘違いして喜ぶ匙先輩。

 そこへ、兄さんが現実を叩きつけます。

 

「残念、あれは女装野郎だそうだ」

 

 兄さんから叩きつけられた現実に崩れ去る匙先輩。

 ご愁傷様です。

 

「・・・・マジかよ。しかも女装で引きこもりってかなり矛盾してんじゃねぇか」

 

「だよな、それには心底同意だ」

 

 兄さん達が共感しあっていると、そこへ見知った堕天使の気配が。

 アザゼルさん、なんでここに来てるんですか・・・・

 

「へぇ、魔王眷属の悪魔さん方はここで集まってお遊戯してるというわけか」

 

「・・・・何しに来たんですか?アザゼルさん」

 

「よー、清羅!いやなに、ただの散歩ついでに聖魔剣使いをだな」

 

「木場先輩なら今はサーゼクスさん達のところです。会いたいのならそこへ行ってみればいいんじゃないですか?」

 

 私の冗談混じりの説明に、アザゼルさんは苦笑いしながら返しました。

 

「馬鹿言え、そんなこと俺がやってみろ。即座に魔王との戦闘だよ」

 

 ここに侵入してきた時点でアウトだと思うんですがね・・・・・・・・

 そうして私がアザゼルさんの適当な部分を心配していると、アザゼルさんは兄さん達に戦闘する意思はないと告げました。

 

「おい、構えを解きな、下級悪魔君たち。清羅以外じゃ束になっても、俺には勝てやしねぇよ。分かるだろう?」

 

 しかし、そう言われても兄さん達は構えを解きませんでした。

 私とこうやって親しげに会話してる時点で大丈夫だと気付かないんですかね? 

 

「まぁ、いいか・・・・あぁ、そうだ。そこに隠れてるヴァンパイア」

 

 兄さん達の態度に若干呆れているアザゼルさんは、何か思いついたのか、ギャスパー君が隠れている木陰に近づきます。

 

「お前さん『停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』の持ち主なんだろう?そいつは使いこなせないと厄介な代物だ。『神器(セイクリッド・ギア)』の補助具で不足している要素を補うといいんだが・・・・」

 

「多分無理でしょう。悪魔側は『神器(セイクリッド・ギア)』の研究が進んでませんから」

 

「・・・・あぁ〜、そうだったか。んじゃあ無理だな。だったら代わりになりそうなもんは・・・・・・・・お?」

 

 アザゼルさんは少し考えたあと、匙先輩の方に振り向きます。

 

「お前それ、『黒い龍脈(アブソリューション・ライン)』か?だったらそれ使って制御の練習してみろ。ヴァンパイアにラインを接続して余分なパワーを吸い取りつつ発動すれば、暴走も少しは抑まるだろうさ」

 

 アザゼルさんの説明に困惑する匙先輩。

 

「・・・・俺の『神器(セイクリッド・ギア)』。そんなこともできるのか?ただ単に敵のパワーを吸い取って弱らせるだけかと・・・・」

 

 匙先輩の発言に、アザゼルさんは呆れた様子を見せました。

 

「ったく、これだから最近の『神器(セイクリッド・ギア)』所持者は自分の力をロクに知ろうとしない。『黒い龍脈(アブソリューション・ライン)』は五大龍王の一匹、『黒邪の龍王(プリズン・ドラゴン)』ヴリトラの力を宿している。ま、最近の研究で発覚したことなんだがな。そいつはどんな物体にも接続することができて、その力を散らせるんだよ。短時間なら、持ち主のラインを引き離して他の者や物に接続することも可能だ」

 

 相変わらずの『神器(セイクリッド・ギア)』マニアっぷりですね・・・・

 

「じゃ、じゃあさ、俺側のラインを兵藤とかに繋げられるのか?」

 

「あぁ、成長すればラインの本数も増える。そうすりゃ吸い取る力も出力も倍になるさ」

 

 アザゼルさんの説明に黙り込む皆さん。

 そんな空気を気にせず、アザゼルさんは話を続けます。

 

「『神器(セイクリッド・ギア)』の上達で一番手っ取り早いのは赤龍帝を宿した者の血を飲むことだ。ヴァンパイアなら血を飲めば力もつくだろうさ」

 

 それだけ言い残して、アザゼルさんはこの場からさろうとします。

 しかし、再び何か思い出したのか、私の方へ顔を向けました。

 

「そうだった、清羅。当日は会談が始まる一時間前にうちに来てくれ。打ち合わせがあるからな」

 

「あ、はい。わかりました」

 

「おう、じゃあな」

 

 私に伝達して、アザゼルさんは今度こそ、ここから去っていきました。

 

 

「あれが堕天使総督か・・・・・・・・なんとも掴めない男だったな・・・・」

 

 ゼノヴィアさんが相対した感想を述べます。

 やっぱり初対面だとそう思いますよね。

 なんかこう、胡散臭いというか。

 

「と、とりあえず、そこの『僧侶(ビショップ)』君に俺の『神器(セイクリッド・ギア)』を取り付けて練習してみようぜ」

 

 ゼノヴィアさんの次に声を発したのは匙先輩。

 皆は反対することなくこの案に賛成し、ギャスパー君の修行を再開しました。

 

 




ありがとうございました! 
次回もお楽しみに!!


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第二十一話

お待たせしました!
第二十一話、始まるよ!


 会談が始まる前。私達は『神の子を見張る者(グリゴリ)』の施設にて、軽い打ち合わせを行っていました。

 

「さて、お前ら。いよいよ会談というわけだが、何か異論はないか?」

 

 アザゼルさんが私達に最終確認を行います。それに対する私達の意見は――

 

「無いな」

 

「無いッス」

 

「無いですね」

 

 もちろん、満場一致で異論無しでした。

 ・・・・いや、会談の内容にむいてはいいのですが、今回の人選について一つ気になることが。

 

「アザゼルさん。一つ、質問いいですか?」

 

「おう、なんだ?」

 

「いくら当事者達とは言え、私達の陣営・・・・過剰戦力過ぎません?」

 

 正直言って、ヴァーリ君一人でもお釣りが来るレベルなのに、そこにフリードさん、私を加えるとなると、過剰戦力にも程があるかと・・・・

 そんな私の疑問に対して、アザゼルさんは頭をかきながら答えます。

 

「まぁ、やり過ぎた感はあるが、態々集まってまでドンパチするわけじゃないから、そこは安心しろ。

むしろ問題なのは『あいつら』だ」

 

 ・・・・あぁ、なるほど。そういう事ですか。

 

「わかりました。では、そろそろ行きますか?」

 

「そうだな。ヴァーリ、準備してくれ」

 

「了解」

 

 ヴァーリ君の言葉と共に、部屋に魔法陣が展開され、私達を包み込みました。

 

 

―●●●―

 

 

 俺、兵藤一誠はあまりの緊張感に生唾を飲んでいた。

 部屋を見渡してみると、そこには各首脳陣の姿。その中に、俺の妹と、『白龍皇』ヴァーリ。そして、あの時の神父、『フリード・セルゼン』がいた。

 

「来たか。では、そこにある席に座りなさい」

 

 サーゼクス様の指示を受け、俺達は指定された場所へ座る。

 

 俺達が座った事を確認すると、サーゼクスさんが再び口を開いた。

 

「全員が揃ったところで、ここにいる者達は最重要禁則事項『神の不在』を認知していることとする」

 

 全員ということはこの場にいる会長もご存知なのか?と思い、視線を向けてみたが、特に驚愕した様子でもなかった。

ということは事前に何らかの形で知っていたのだろう。

 

「では、これより会談をはじめる」

 

 サーゼクスさんの一言により、会談が始まった。

 

 

―●●●―

 

 

 あれから、会談は順調に進んでいた。

 時々、アザゼルの余計な一言でその場が凍りつき、そのアザゼルが、清羅達から絶対零度の視線で見られたりしてたけど、特に異常なく進んでいた。

 

「さて、リアス。この前の事件について話してもらいたい」

 

「はい、ルシファー様」

 

 そして、サーゼクスさんに促され、遂に部長の報告の番となった。

 

 部長の話に聞き入る三大勢力の首脳陣達。

 淡々と事件の内容を話す部長の手は、震えていた。

 

「・・・・以上が、私、リアス・グレモリーと、その眷属悪魔達が関与した事件の報告です」

 

「ご苦労、座ってくれたまえ」

 

 そうして、部長はサーゼクス様のお言葉で、ようやく着席できた。部長、お疲れさまです。

 

「さて、アザゼル。この報告を受けて、堕天使総督の意見を聞きたい」

 

 再び、サーゼクスさんの一言により、この場にいる全員の視線がアザゼルに向けられる。

 その視線を受けたアザゼルは、不敵に笑った。

 

「この前の事件はコカビエルが他の幹部達や俺に黙って単独で起こしたものだ。この前送った報告書にもそう書いてあっただろう?やつの処理はうちのフリードとヴァーリが行った。今頃あいつは『地獄の最下層(コキュートス)』で永久冷凍されてるよ」

 

「・・・・説明としては本当に最低限のレベルですが。あなたが我々と大きな事を起こしたくないという部分は本当なのでしょう」

 

「もちろんだ。俺は戦争になんか興味ない。その証拠に、コカビエルも俺のことを散々罵倒してただろう?」

 

 ・・・・確かにそうだった。コカビエルは、アザゼルの事をかなり悪く言っていた。

 それに続いて、今度はサーゼクスさんが質問する。

 

「ではアザゼル。なぜここ数十年『神器(セイクリッド・ギア)』の所持者をかき集めている?

私はてっきり、悪魔か天使側に戦争を仕掛けるのではとおもっていたのだが・・・・」

 

「同じく。あなたが『白い龍(バニシング・ドラゴン)』を手に入れ、最強と呼ばれる聖槍使い。兵藤清羅さんと親しい関係にあると聞いたときは、強い警戒心を抱きましたよ」

 

 二人の言葉を受け、アザゼルは苦笑する。

 

「数十年間神器(セイクリッド・ギア)を集めてたのは研究のためだよ。だからといって戦争するつもりなんざこれっぽっちも無い・・・・・・・・やっぱりあれか?俺の信用は最底辺かよ」

 

「それはそうだ」

 

「そうですね」

 

「その通りね☆」

 

「ま、当然でしょうね」

 

「いい加減認めろ、アザゼル」

 

 すげぇな。堕天使の総督様はどれだけ信用されてないんだよ・・・・・・・・

 それと、今さり気なくヴァーリと清羅が追加攻撃してた気がするんだが?

 

「チッ。先代共よりマシかと思ってみればやっぱりこうなったか。あと清羅とヴァーリ、お前らからはもう聞いた」

 

 あ、事前に言われてたんだな、あの人。

 

「ま、コソコソ研究するのも限界かねぇ。だったら和平を結ぼうぜ?もともとそのつもりだったんだろ?天使と悪魔もよ」

 

 ・・・・・・・・え?

 固まっているのは俺だけではなく、各陣営の首脳達。隣の部長やまた別の場所にいる会長。

 驚いてないのは堕天使側の三人だけだ。

 

「・・・・えぇ、私も悪魔側と堕天使側に和平を持ちかける予定でした。このままの関係を続けていても、我々は確実に滅びますからね」

 

 ミカエルさんの言葉にサーゼクスさんも続く。

 

「我らも同じだ。悪魔も先に進まなければならない。次の戦争が勃発すれば我らも滅ぶ」

 

 サーゼクスさんの言葉に、アザゼルも先程のような不真面目な態度を引っ込め、発言した。

 

「その通りだな。次の戦争が起これば、俺達は今度こそ共倒れだ。人間界にも多大な影響を及ぼすだろう。俺達はもう、確実に戦争を起こせない」

 

 アザゼルの発言に強く頷くサーゼクスさん達。

 

 そして、会談の内容は今後の勢力図の話に移ったみたいだ。

 うん、さっぱり理解できねぇや。

 

「さて、話し合いもいい方向に片付きましたし、そろそろ赤龍帝殿のお話を聞いてもよろしいですか?」

 

「あ、はい!」

 

 マジか!ミカエルさんの言葉で全員の視線が俺に集中してる!緊張するぜ・・・・

 

「・・・・では、教えてください。何故、アーシアを追放したんですか?」

 

 俺の質問に驚いた表情を浮かべる全員。

 そして、数秒の沈黙のあと、ミカエルさんが真摯に答えてくれた。

 

「それに関しては申し訳ありません・・・・・・・・神が消滅したあと、神の加護や奇跡等を司る『システム』だけが残りました。この『システム』を神以外が扱うのは困難を極めます。つい最近、兵藤清羅さんの協力もあって、ようやく、安定して奇跡を供給できるようになったぐらいでして――」

 

「せ、清羅がですか!?」

 

「はい。兵藤清羅さんのおかげで、奇跡等は安定して供給できるのですが、『神の不在』を知る者達、一部『神器(セイクリッド・ギア)』を宿す者達の分までカバーすることはできません・・・・・残念なことですが」

 

「その一部『神器(セイクリッド・ギア)』の中に、『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』があったわけですね?」

 

「えぇ、その通りです。――改めて、アーシア・アルジェント、ゼノヴィア、此度は、本当に、申し訳ありませんでした」

 

 そう言って、ミカエルさんが二人に頭を下げた。

 これに、二人は目を丸くしていたが、二人は首を横に振り、微笑んだ。

 

「ミカエル様。どうか頭を上げてください。一時は理不尽だと感じておりましたが、理由を知ればどうということはありません。それに、私は今の暮らしに満足していますから」

 

「ミカエル様。私も今、とても幸せです。ここで暮らして、大切な方がたくさんできました。それに今日。ミカエル様にお会いできましたから!」

 

 二人の言葉を受けたミカエルさんは、安堵の表情を浮かべていた。

 

「あなた達の寛大な心に感謝いたします。デュランダルは、引き続きゼノヴィアにお任せします。サーゼクスの妹君の眷属ならば、安全でしょうから」

 

 ・・・・ありがとうございます、ミカエルさん。俺なんかの願いを聞いてくれて。

 アーシアとゼノヴィアもそうやって思ってくれて嬉しいよ。

 

 そうして、俺がアーシアとゼノヴィアを感慨深く見つめていると、アザゼルが質問をしてきた。

 

「さて、そろそろ俺達以外に世界に影響及ぼしそうな奴らに意見を訊こうか。まずはヴァーリ、お前はどうしたいんだ?」

 

 アザゼルの質問に、『白龍皇』ヴァーリは優しい笑みを浮かべて答える。

 

「俺は、清羅と共に過ごせればそれでいいさ」

 

 ・・・・は?こいつ、こんなところで何プロポーズみたいなこと言ってんだ!?

 おい!!お前!清羅の肩を自分側に寄せるな!

 それで咄嗟の行動に顔赤くしてる清羅がめちゃくちゃ可愛いじゃねぇか!!この野郎!

 

 それを見たアザゼルは腹を抱えて笑う。

 でも、そこには馬鹿にした様子が、一切感じられなかった。

 

「ハハハハハ!いいじゃねぇかヴァーリ!清羅にも訊こうと思ったが、その必要は全く無いな!

よし。次は赤龍帝、お前はどうしたい?」

 

 今度は俺に話を振ってきた。

 え?お、俺も!?

 

「・・・・正直、分からないです。小難しいことばかりでさっきから頭が混乱しっぱなしで・・・・なんというか、実感がわきません」

 

 俺は、正直に自分の意見を言った。

 すると、アザゼルが再び口を開く。

 

「そうか。じゃあお前にも分かりやすいように説明してやる。俺達が戦争したら、リアス・グレモリーを抱けないぞ?」

 

 ・・・・・・・・え?

 

「いいか?ここで和平を結べば次に大事なのは種の存続と繁栄だ。あとは・・・・言わずともわかるな?」

 

「はい!分かりました!!和平にしましょう!!部長とエッチがしたいです!!」

 

 なんだ!そうだったのか!始めっから和平にすればよかったんだな!!

 

 なんか隣で部長が顔を真っ赤にしてるけどお構いなしだ!それと、妹達から可哀想な子を見る目で見られてるけど関係ねぇ!!

 

 そんな最高潮の気分を迎えてる俺に、あの時の慣れない感覚が襲い掛かってきた。

 

 俺の体の機能が、停止する。

 

 

 

―●●●―

 

 

「あれ?」

 

 機能停止状態から目が覚めたら、会議室の雰囲気が一変していた。

 え?もしかして穏やかじゃない感じですか?

 

「お、赤龍帝の復活だ」

 

 アザゼルが復活した俺に声をかけてきた。

 よく周りを見渡してみると、停まっているものとそうでない者達の二つに別れている。

 

「ずいぶんと遅い復活だな、『お義兄さん』?」

 

 『白龍皇』ヴァーリが声をかけてくる。

 

「その言い方やめろ!!・・・・ていうか、なんでお前はこの中で動けてるんだよ」

 

「この程度の停止能力で停まるほど、俺と清羅とフリードも弱くはないさ。君の場合は、『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』を宿しているからだからだろうがな」

 

「・・・・そうか」

 

 あぁ、そういうことか。そういえば、ここで動けてるんだ人達は、俺なんかじゃ手も足も出ないような強者ばかりだな・・・・

 それよりも!

 

「何があったんだ?」

 

「テロだよ」

 

 俺の質問に答えたのはアザゼルだった。

 ・・・・え?それ本当?

 

「ほら、外見てみろ」

 

 アザゼルが窓の向こうを指差す。

 するとそこには、巨大なゲートから転送されてくる数え切れない程の魔術師みたいな者達。

 

「さて、この校舎は俺達が結界を構築しているからいいとして。このままあのハーフヴァンパイアを放置しとくのは、ちとマズイな・・・・」

 

「ギャスパーが利用されてるんですか!?」

 

「あぁ、おかげで校舎を取り囲んでいた堕天使、天使、悪魔の軍勢も全部停止させられてるようだぜ。あのハーフヴァンパイア、末恐ろしい限りだな」

 

 そう言いながらアザゼルは手を窓の方へ広げ、空に無数の光の槍を形成し、それを放った!

 なっ!!!あの数を一瞬で!?バケモノかよ!

 

 俺がそんな感想を抱いていると、部長がサーゼクスさんの前に立ち、進言した。

 

「お兄様、私がギャスパーを奪い返しに行きます。あの子は私の眷属です!」

 

 おおっ!流石我らのお姉様!!

 

「・・・・分かった。しかし一人で行くのは些か無謀すぎる。グレイフィア、どうにかできないだろうか?」

 

「・・・・そうですね。サーゼクス様の魔力を借りられれば、もう一人ほど、転移可能かと・・・・」

 

「なら!俺が行きます!」

 

 だったら俺が行く!ギャスパーは俺の大切な後輩だ。絶対に奪い返してみせる!

 

「そうか、君ならば安心してリアスを任せられる。頼んだよ」

 

「はい!お任せください!」

 

 よし!そうと決まれば早速準備だ!

 そうして意気込んでる俺に、アザゼルが声をかけてきた。

 

「おい、赤龍帝」

 

「俺は兵藤一誠だ!」

 

「じゃあ兵藤一誠。こいつを持ってけ」

 

 そうしてアザゼルが渡してきたのは、二つの腕輪だった。

 ?この腕輪、どっかで見たことあるような・・・・

 

「そいつは『神器(セイクリッド・ギア)』をある程度抑える力を持つ腕輪だ。お前、それ使ったことあるから分かるだろう?」

 

 ・・・・・・・・ッ!

 そうか!そうだった!!

 どっかで見たことあると思ったら間違いない!

 これはあの時ライザーさんと戦うために、清羅から貰った腕輪だ!!

 まさかアザゼルが関わってたなんて・・・・!

 

「お、やっと思い出したか。なら話は早い。一つはあのハーフヴァンパイアに付ける用。もう一つはお前の『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』制御用だ。ちなみに、身を持って体験してるから知ってると思うが、あくまで対価になるだけだから、体力の消費まではカバーできない。そこは考えて使用しろよ」

 

「・・・・わかったよ」

 

 そうだよな。ライザーさんとの戦闘のあと、俺は暫く動けなかった。あの時みたいにならないように注意しなくちゃな。

 

 そう俺が考えていると、アザゼルは次に、清羅達に声をかけた。

 

「さて、お前ら。暴れていいぞ。幸い、結界は向こうが出してくれてるようだしな」

 

「了解。行くぞ、二人共」

 

「じゃあ始めますか」

 

「かしこまりました!リーダー!」

 

 三人はそう呟くと、ほぼ予備動作無しで外に飛び出した!

 てか速っ!今なんにも見えなかったぞ!

 隣を見ると、『騎士(ナイト)』である木場とゼノヴィアも驚愕の表情を浮かべていた!

 

「『禁手化(バランス・ブレイク)』!」

 

『Vanising Dragon Balance Breaker!!!!!!』

 

 『白龍皇』ヴァーリは、あの一瞬で自らの光翼を展開、背中の光翼が機械的な音声を発したあと、オーラで体を覆い、オーラが晴れたあとには、白い輝きを放つ『全身鎧(プレート・アーマー)』を身に纏っていた。その後、魔術師、悪魔達の攻撃をものともせず、一方的という言葉が生温いくらいに蹂躙。

 

 一方清羅は、いつもの聖槍を手に携え、その身には純白のローブを纏って、空を縦横無尽に飛び回りながら魔術師達を次々と串刺しにしていた!

 

「「「くたばれぇ!!」」」

 

 相手は、魔術師達では不足と見たのか、敵側の悪魔達も清羅に襲いかかる。

 ッ!あいつら!部長くらいの魔力が感じられる!

 てことは上級悪魔クラスか!!

 流石に清羅でも・・・・・・・・っ!!

 

 俺が飛び出そうとすると、アザゼルに止められた。

 

「おい!何すんだ!?早く清羅を!」

 

「馬鹿言え、お前に何が出来る?それによく見とけ。あの程度の上級悪魔達が束になったところで、お前の妹には、傷一つつけられやしねぇよ」

 

 は?馬鹿言え!いくら清羅が神を殺せるからって、あの数の上級悪魔達が相手じゃ無謀だ!!

 俺がそう思っていると、清羅は手を悪魔達に向けてかざし、夥しい量の聖なるオーラを放つ!

 

「――『極大聖櫃(オメガアーク)』」

 

 カッ!!!!

 

 清羅に襲いかかろうとしていた悪魔達が、聖なるオーラの集合体に捕らえられ、その後すぐに激しい光と共に爆発!塵も残らず悪魔達は消滅した!

 

 思わず息を呑んだ・・・・!

 ヤベェ・・・!もし、あれをまともに喰らったら!

 

『・・・・恐らく、相棒なら先程の悪魔達の様に、完全に消滅するだろうな・・・・・・・それにしても、凄まじいの一言に尽きる。あれに耐えるには、最低でも最上級悪魔クラスの力が必要・・・・・・・・いや、それでもだめか?やはり魔王クラスでなければ耐えるのは不可能か・・・・・・・・』

 

 ドライグも、あの技に畏怖を抱いていた!

 というか、魔王様ぐらいの力じゃないと耐えられないのかあれ!

 俺の妹、強すぎだぜ・・・・!!

 

 そして、フリードは魔術師や悪魔達の攻撃を『騎士(ナイト)』顔負けの俊足で躱しながら容赦無く手に持つ魔剣で斬り捨てていく!

 

 木場やゼノヴィアも戦っているけど、多分倒した魔術師、悪魔達の数はフリードの方が圧倒的だった!

 

「リアス、イッセー君!準備ができたぞ!グレイフィア!早速彼らを飛ばしてくれ!」

 

「はっ!かしこまりました!」

 

 グレイフィアさんは、俺達の足元に人二人分位の小さな魔法陣を展開した。

 

「リアス、イッセー君、頼んだよ」

 

「「はい!」」

 

 サーゼクスさんからの言葉を受け、俺達は光に包まれ、転移を開始した。

 




 ありがとうございました!
 次回もお楽しみに!


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第二十二話

お待たせしました!
第二十二話、始まるよ!


 

 僕、木場裕斗はイッセー君達が転移したあと、魔王様からの命を受け、ゼノヴィアと共に魔術師達の討伐を行っていた。

 

 しかし、僕達はほとんど役に立っていないと言っていい。

 その理由は、僕達以外に戦っている者達が、圧倒的な力で敵を殲滅しているからだ。

 

 ――規格外

 

 今戦っている清羅ちゃん、ヴァーリ、フリードを表す言葉は正にこれだろう。

 

 何せ、僕とゼノヴィアが敵を一人倒してる間に、向こうは単独で数十〜数百人程の数を倒している。そして、その中には上級クラスの悪魔達も確認できた。

 

「オラァ!その程度かぁ?悪魔さん達よぉ!」

 

「クッ!舐めるな!」

 

 フリードに襲いかかる悪魔と魔術師達。

 しかし、そんな彼らの攻撃は意味を成さず、フリードの神速の一閃により、彼らは逃げる間もなく両断されてしまう。

 

「ったく、上級悪魔クラスの力があるからと思って期待してみたらこの程度かよ・・・・バルムンクちゃんも暴れ足りねぇみてぇだし・・・・」

 

 幾多もの敵を斬り伏せてきたフリードは、疲れた様子など一切見せず、期待外れといった様子。

 

 ・・・僕達の時は、本気じゃなかったんだね・・・

 

「さて、張り合いある奴もいないことだし、俺は旦那と旧魔王様の戦闘を観戦させていただくとしますかね。そっちはどうするんスか?」

 

「君と同じく、観戦させてもらうよ」

 

「あぁ、私もだ」

 

「・・・・そうッスか」

 

 フリードは僕達に確認を取るなり、アザゼルとカテレア・レヴィアタンの戦闘に目を向けた。

 

 そこで僕達が見たのは凄まじいオーラの暴力。

 あちらも、僕達グレモリー眷属とは次元が違うレベルの戦いだった。

 

 アザゼルが幾多もの光の槍を放てば、カテレアはそれを防御魔法陣で防ぎ、即座に自らの得意属性であろう水系の力で反撃を繰り出す。

 しかしそのガテレアの反撃を、アザゼルは難なく弾き返した。

 その余波で吹き飛ぶ校庭や学園の建造物。

 

「・・・・!へぇ〜、旧魔王様。予想以上に旦那に食い下がってるッスね〜。てっきりあのまま殺られて終わりかと思ってたんッスが・・・・・・・・・・・・・あぁ、そういうことか・・・・」

 

「何か分かったのか?」

 

 ゼノヴィアが、あの戦闘で何かに気付いたであろうフリードに問いかける。

 

「ん?あぁ、あんたらは気付いてなかったんスね。ほれ、旧魔王様のオーラ、よ〜く見てみな」

 

 彼の言う通り、僕とゼノヴィアは注意深くカテレアを観察する。

 ・・・・?何かおかしい。纏っているのが悪魔の魔力じゃない?

 

「気付いたッスか?」

 

「あぁ、あれは一体何だ?」

 

「オーフィスだよ」

 

「「!?」」

 

 僕達は思わず目を点にした。

 バカな!?彼女を包むあの不気味なオーラは、オーフィスの力だっていうのか!?

 

「お察しのとおりッスよ。大方、組織のボスであるオーフィスから力を借り受けてるんだろーね」

 

「そうか・・・・」

 

 なるほど。そう言われてみれば納得できる。

 道理で、本来アザゼルに劣る彼女があそこまで食らいつけているわけだ。

 

「ん?・・・・へぇ!了解、リーダー!」

 

 そんな中、僕の隣にいたフリードが、何かに応答した。

 何があった?

 僕が考え込む中、フリードは楽しそうに、僕達に問いかけてきた。

 

「あんたら、まだ戦えるッスか?」

 

「う、うん。戦えるけど」

 

「まさか・・・・新手か?」

 

「正解!ほら!あれあれ!」

 

 そう言ってフリードはゲートを指差す。

 そこから出てきたのは、夥しい数の魔獣達!

 

『グギャァァァァァ!!!』

 

 耳障りな咆哮を喚き散らし、ゲートから次々と飛び出してこちらへ襲い掛かってくる・・・・!

 

「ふむ、向こうは何が何でも、この会談をぶち壊したいみたいッスね。魔術師と悪魔達だけでなく魔獣まで投入してくるとはなぁ」

 

 フリードはそう言いながらも、むしろ楽しそうに魔剣を構える。

 そして、フリードの魔剣の柄に埋められた青い宝玉が煌めき、凄まじい魔力を放出する!

 ッ!!この構えは、あの時のっ・・・・!

 

「受け取れ!これは挨拶代わりだ!」

 

 そして放たれる黄昏の波!

 その波を受け、魔獣達の九割が消失した!

 

「ほら、あんたら!何ボサっとしてんスか!ゲートが破壊されるまで、魔獣達の相手をするッスよ!」

 

「!分かった!」

 

 しまった、出遅れたか! 

 

 

―●●●―

 

 

「張り合い無いですね、ヴァーリ君」

 

「まぁ、たしかにな」

 

 私、兵藤清羅は、悪魔達と魔術師を全滅させたあと、ヴァーリ君と共に上空から襲い掛かってくる魔獣達の相手をしています。

 

 しかし、あまりにその魔獣達が脆く、攻撃も貧弱なため、私達は動かずして殲滅することが可能。

 現に、ヴァーリ君は大量の弾幕を放ちながら、私の『禁手(バランス・ブレイカー)』に熱い視線をおくっています。

 

「・・・・しかし、君の『亜種禁手(バランス・ブレイカー)』――『至高天・運命の天廻聖槍(ロンギヌスランゼ・グラズヘイム)』はいつ見ても美しいな・・・・・・・・!」

 

「ありがとうございます。実はこれ、発現した際に纏っている衣が、アザゼルさん曰く、今は亡き『聖書の神』が纏っていたとのものとそっくりみたいですよ?」

 

「なるほど。道理で、天使達が見惚れてしまっているわけだ」

 

 私の言葉に納得するヴァーリ君。

 それにしても、アーシア先輩が停まっている状態で本当に良かった。

 この衣と、今の状態の槍を、信仰深い彼女が見たら心が持ってかれるだけじゃすまない。

 ゼノヴィア先輩あたりは、まだ大丈夫みたいですが、それでも見続けるのは危ないですからね。

 

 

 

「ただではやられません!」

 

 む、アザゼルさんの戦闘に変化が。

 どうやら、カテレア・レヴィアタンが自らの命を糧として自爆を目論んだ模様。

 

 ――まぁ、やらせませんけどね。

 

「キャァァァァァァ!!!!」

 

 触手を伸ばしてアザゼルさんに巻き付こうとする彼女を、聖槍の投擲によって貫く。 

 その体を、悪魔にとっては必殺の猛毒である聖槍に貫かれた彼女は、悲鳴をあげながら、塵一つ残らず、この世から消滅しました。

 

 

 

 

 

  その後、投擲した聖槍が、光の軌跡を空に描いて私の手元に帰ってきます。

 これは、私が師匠から教わった術式の一つ。

 もう一つの槍の方は、ほぼ自動的に手元に戻ってくるのですが、聖槍の方はそうでないため、術式で補っています。 

 

 

 

 

 そして、私が聖槍を手元に戻してすぐ、こちらへ近付いてくるアザゼルさん。

 

「いやぁ、助かったぜ清羅。体の一部を犠牲にせずに済んだ・・・・・・・・それにしても、槍の投擲技術、また上がったんじゃねぇか?」

 

「・・・・いえ、師匠からは、『まだ甘い』と」

 

「あ、相変わらずだな、あの女は」

 

 若干引きつった笑みを浮かべてくるアザゼルさん。

 まぁ、あの人からしてみれば、仕方ないことなんですがね・・・・

 

「・・・・にしても、『人工神器(セイクリッド・ギア)』もまだまだ穴だらけだな。もう少し改良するか」

 

「改良に熱中しすぎるのだけはやめろよ?アザゼル。でないと、シェムハザあたりに、またこっぴどく叱られるぞ?」

 

「う・・・・そりゃ勘弁だ」

 

 シェムハザさんの説教を思い出して、げんなりするアザゼルさん。

 ・・・・確かにあれはキツイでしょうね。

 

 

 

『ゴギャァァァァァ!!!!!』

 

 私達が会話してるところに響く獣の咆哮。

 声の発信源に視線を向けると、そこには全長数十メートルはあろう巨大な魔獣と、それと激しい戦闘を繰り広げるフリードさんの姿。

 ゼノヴィア先輩と木場先輩は、戦闘に付いて行けずダウンしてますね。

 これ、私達が行ったほうが良いでしょうか?

 

「いいね!いいねぇ!どいつも張り合いの無い奴ばかりかと思ってたが、てめぇだけは別だぜぇ!」

 

 ・・・・いや、加勢しようかと思いましたが、どうやら、その必要は無さそうです。

 

「おい!フリード!その魔獣、殺るのにあとどのくらいかかる?」

 

 アザゼルさんがフリードさんに問いかけます。

 それに対し、フリードさんは。

 

「ん?あぁ。その気になれば即座に片付けられるッスよ?そうした方がいいッスか?」

 

 と、魔獣に幾多もの傷をつけながら冷静に返答する余裕ぶりを見せました。

 

「ならそうしてくれ!」

 

「了解だ!旦那!」

 

 アザゼルさんからの指令。

 この指令を受け、フリードさんは魔獣から少しばかり距離を取り、魔剣を再び構え直し、この戦況を変える一撃を放つための詠唱を始めました。

 

 

 

「――悪しき竜は堕ち、世界は今落陽に至る。

撃ち落とせ――『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)』!」

 

 放たれるは半円状に広がる黄昏の波。

 それを受けた巨大な魔獣は、断末魔をあげる暇もなく、この世から消え去りました。

 

 

 

 

 

 

「・・・・ふぅ、ま、こんなもんかねぇ」

 

「お疲れ様です。フリードさん」

 

「おう!ま、あの程度の魔獣なら、はっきり言ってどうってことないッスよ」

 

 うん、本当にどうってことなさそうですね。

 だって、一切汗をかいてないですし。

 

 

 すると、ヴァーリ君がアザゼルさんに質問します。

 

「ところでアザゼル、あの魔獣で最後か?」

 

「あぁ、奴らに利用されてたハーフヴァンパイアも解放されて、一件落着ってとこだな」

 

「・・・・そうか。もう少し張り合いのある奴が来てくれれば暴れられたんだがな・・・・」

 

「おいおいヴァーリ、勘弁してくれよ。ここを更地にするつもりか?」

 

「・・・・・・・・・・・・冗談だよ」

 

「・・・・うわぁ、こいつマジだ」

 

 あ、本当ですね。

 ヴァーリ君、大分消化不良みたい。

 その証拠に、不満が顔から滲み出てます。

 

 ・・・・・・・・仕方ないですね。

 

 

「ヴァーリ君、今度相手してあげます。

だから、そんな顔しないでください」

 

 

 私の言葉を聞き、嬉々とした笑みを浮かべるヴァーリ君。

 そんな中、アザゼルさんは何故かげんなりした表情を浮かべてました。

 

 

「ありがとう、清羅。では、次の日にでも全力でやろうか!」

 

「えぇ!望むところです」

 

「・・・・・・・・頼むから自重してくれよ」

 

 アザゼルさんが何か言ってるけど、気にしないでおきましょう!

 私もはっきり言って消化不良だったのでね。

 

 

 

 

―●●●―

 

 

 

 俺、兵藤一誠が校庭に足を踏み入れた時、三大勢力の軍勢が事後処理を行っていた。

 

「終わったんだよ・・・・な?」

 

「えぇ、終わりましたよ、兄さん」

 

 俺の疑問に答えてくれたのは清羅だった。

 

 それにしても、清羅は先程までアザゼルやヴァーリと話してたけど、何を話してたんだ?

 気になった俺は尋ねてみることにした。

 

「なぁ、清羅。アザゼルやヴァーリと何話してたんだ?」

 

「あ、はい。ちょっと今後の予定について少々」

 

「・・・・そっか」

 

 なんだ、そんなことか。 

 なんかアザゼルがげんなりした表情を浮かべてたから、何事かと思っちゃったぜ。

 

 げんなりしたアザゼルに、サーゼクスさんとミカエルさんが話しかける。

どうやら、『禍の団(カオス・ブリゲード)』についての今後の方針を確認しているようだ。

 

 

 ・・・・あ!そうだ!俺、ミカエルさんに頼みたい事がもう一つだけあったんだ!

 

「あの!ミカエルさん!」

 

「どうしました?兵藤一誠君」

 

「・・・・一つだけ、お願いがあります」

 

「分かりました」

 

 この場にいる皆が疑問に満ちた顔をしている。

 

「アーシアとゼノヴィアが祈りを捧げる際のダメージを、無しにできませんか?」

 

「!?」

 

 俺の言葉に驚愕するミカエルさん。

 やっぱり、こんな事言われるなんて予想外だったのかな?

 しかし、ミカエルさんはすぐに表情を戻すと、小さく笑って頷いてくれた。

 

「分かりました、二人分位ならなんとかできるでしょう。本部に帰ったら早速取り掛かることにします」

 

 やったぜ!ありがとうございます!ミカエルさん!

 

「私も手伝った方が良いですか?ミカエルさん」

 

「いえ、たった二人分なので問題ありませんよ。流石に、十人以上だったら協力してもらう必要がありましたが」

 

 清羅がミカエルさんに確認を取った。

 そうか、清羅も協力してくれるつもりだったんだな。ありがとう!

 

 

 

 

「さて、サーゼクス、後始末は任せたぞ」

 

「あぁ、もちろんだ」

 

 そう言って、アザゼルはヴァーリとフリードを始めとした部下達と共に帰っていった。

 

「兄さん、私も一旦ヴァーリ君達の所に行きますね」

 

「お、おう。分かった」

 

 そう言って、魔法陣で帰ろうとした清羅だが、ふと立ち止まり、俺に向かって話しかけてきた。

 

「そうでした、兄さん。これだけは伝えときますね?アザゼルさんとフリードさん、ヴァーリ君がこれから当分、ここに滞在するそうですよ?」

 

 

 

「・・・・・・・・・・・・え?」

 

 ・・・・ちょっと待て、マイシスターよ。今、なんとおっしゃいましたか?

 

「それでは兄さん、また明日」

 

「おい!?どういうことだよ!?」

 

 俺の疑問には答えず、清羅はただ笑って去っていった。

 

 ・・・・え?マジでどういうこと?

 

 




 
 ありがとうございました!

 ちなみに、フリードは『幻想大剣・天魔失墜』《バルムンク》!を放つ際、「撃ち落とす――」ではなく「撃ち落とせ――」と言います。
 
 二十二話にて、ようやく清羅の『禁手』の名称が登場です!詳しい説明はまたいつかさせていただくので、その時までお楽しみに!
 


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第二十三話

お待たせしました!
今話、短いです。


 

「というわけで、今日からオカルト研究部の顧問になった。皆、俺の事をアザゼル先生と呼べ。あぁ、清羅は『お義父さん』でもいいぜ?」

 

 あの会談から後、俺たちの前で着崩したスーツ姿のアザゼルが部室のソファで寛いでいた。

 

 

 ・・・・・・・・なんで!?

 

 

「・・・・・・・清羅、これはどういうこと?というかなんでヴァーリとフリードもここにいるの!?」

 

 部長は声を荒げ、清羅の隣にいるヴァーリとフリードの二人に視線を向ける。

 部長の言葉に、清羅が応答する。

 

「そうですね。簡単に説明すると、アザゼルさんがこの町に滞在するために、皆さんの未成熟な『神器(セイクリッド・ギア)』を正しく成長させることという条件をかせられたというわけでして。

ヴァーリ君とフリードさんがいる理由は、単純にこの町の戦力強化のためです」

 

「・・・・そ、そう。一応理解したわ」

 

 清羅の説明に、溜息をつきながら一応の理解を示す部長。

 

「ま、清羅の説明の通りだ。これからこの町は、三大勢力の重要な拠点となる。それに、『禍の団(カオス・ブリゲード)』なんて物騒な組織もある。将来的な抑止力の一つとしてお前達グレモリー眷属。そして、現抑止力のとして、うちの組織のチームの一つ。『ヴァーリチーム』がここの防衛に当たるってわけだ」

 

 アザゼルが補足説明をしてくれた。

 そ、そっか。俺達、将来的な抑止力として期待されてるんだな。

 ていうか、ヴァーリと清羅はもう抑止力として数えられてんのかよ!

 

「・・・・すいません。気になったんですが、『ヴァーリチーム』のメンバーって、ヴァーリと清羅以外に誰がいるんですか?」

 

 俺は気になったことを質問してみる。

 

「俺のチームのメンバーは、清羅と俺、フリードを含めると、七人と一頭だ・・・・・・・・それにしても、偶然にしてはできすぎてると思わないか?清羅、フリード」

 

「えぇ、そうですね」

 

「そうッスね〜」

 

 俺の質問に答えてくれたのはヴァーリたった。

 ・・・・・・・・それにしてもできすぎてる?

 どういうことだ?

メンバーの事を聞いたら、更に謎が深まったぞ?

 

「その様子だと、更に謎が深まったみたいですね、兄さん。安心してください、また改めて紹介しますので・・・・・・・・あぁ、それと小猫ちゃん」

 

「・・・・・・・・なんですか?清羅」

 

 

 

 

 

 

 

「貴女のお姉さんの指名手配が、この前の会談にて、正式に解除されました」

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

 いつもの無表情を一変させ、目を丸くする小猫ちゃん。し、指名手配?小猫ちゃんのお姉さんが?ど、どういうこと?

 周りを見れば、グレモリー眷属の皆も目を丸くしていた!

 

「清羅、どういうことなの!?『SS級はぐれ悪魔』黒歌の指名手配が解除されたですって!?」

 

 部長が慌てて清羅に問いかける。

 ッてSS!?なんだよそれ!!

 

 

 そんな俺の・・・・いや、俺達の疑問に答えたのは、清羅ではなく、アザゼルだった。

 

 

 

「あぁ、清羅。ここは俺が説明する。

実は、黒歌の罪には悪魔側に大きな非があってな。それを証明するため、以前からサーゼクスと共に、清羅を通じて秘密裏に調査してたんだ。で、この前ようやくその証拠を掴み、黒歌の罪を晴らすことに成功したというわけだ」

 

 お、おぅ。なんかすごいことになってるぞ。 

 清羅、サーゼクスさん、アザゼル。そんな事をしてたんだな・・・・

 それを聞き、皆が驚愕している。

 

「じゃ、じゃあ、姉様は力に飲まれたわけじゃなかったん、ですか・・・・?」

 

「あぁ、そうだ」

 

 

 小猫ちゃんが、涙を必死に堪えながらアザゼルに問いかける。

 

「・・・・姉様にまた・・・・会えるんですか?」

 

「あぁ、会える。そうだな、今度うちの組織に来い。そして、姉妹で腹を割って話し合え」

 

 

「・・・・はい・・・・ッ!」

 

 

 小猫ちゃんが堪えていた涙を流す。

 なんだろう、よく見ると、小猫ちゃんの何かが吹っ切れたように見える。

 

 

 

「本当に良かったですね、小猫ちゃん・・・・!」

 

「うん・・・・!」

 

 再び小猫ちゃんの方を見ると、清羅と二人で抱き合っていた。

 なんかよく分かんないけど良かったな、小猫ちゃん・・・・!!!

 

 

 

 

―●●●―

 

 

 

「落ち着いたか?小猫」

 

「はい、お見苦しい所をお見せしてすいません」

 

 小猫ちゃんはあれから数分位泣いて、今は完全に落ち着いている。

 

「何言ってるの、小猫。見苦しいわけないじゃない」

 

「あ、ありがとうございます」

 

 そうだぜ。部長の言う通り、見苦しいなんて絶対に思わないさ。

 

「さて、話を戻させてもらうぞ?

いきなりで悪いが現状の確認だ。

まずは木場裕斗。お前、どの位『禁手(バランス・ブレイカー)』を維持して戦える?」

 

 アザゼルが、まず木場に質問した。

 

「現状、一時間程度が限界です」

 

「・・・短いな。三日は維持できるようにしろ」

 

 厳しいなぁ。

 

「俺は限定条件付きで十秒ですが・・・・」

 

 俺が言うと、アザゼルは呆れた様子だった。

 

「お前は一から鍛え直す。ちなみに、ヴァーリと清羅は『禁手(バランス・ブレイカー)』を一ヶ月以上は維持できるぞ」

 

 ・・・・・・・・一ヶ月か。

 正に、天と地の差だ。

 

 

 ・・・・・・・・俺、追い付けるかな?

 

 

 アザゼルが俺への話を終え、次に朱乃さんへ視線を向けた。

 

「さて、朱乃。まだ俺らが―――バラキエルが憎いか?」

 

 ・・・・そうか。そういえばそうだった。

 朱乃さんは堕天使幹部の実の娘なんだ。

 アザゼルの質問に対し、朱乃さんは厳しい表情で言葉を返す。

 

 

「えぇ、許すつもりはありません」

 

「・・・・そうか。お前が悪魔になったとき、アイツは何も言わなかったよ」

 

「当然です。あのヒトが私に何か言えるはずがありませんから」

 

「・・・・そういう意味じゃないんだがな。ま、グレモリー眷属になったのは悪くないと思うぜ。ただ、それ以外だったらどうなってたかな」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 朱乃さんとアザゼルは、互いに複雑な表情を作って、黙り込んだ。そして、その状態が暫く続いたあと、何故かアザゼルが俺に顔を向けてくる。

 

「おい、確かイッセーだったか?

お前、ハーレムを作るのが夢なのか?」

 

「え?あ、はい!」

 

 あぁ、そうだ。ハーレムは俺が本気で叶えたい夢の一つだ!

 そんな俺に対して、アザゼルはとんでもない事を言い出した!

 

「なら、俺がハーレムを教えてやろうか?これでも過去数百回ハーレムを形成した男だ。話を聞いておいて損はさせねぇさ」

 

 ―――え?

 

「マジ・・・・ですか・・・・!?」

 

「あぁ、マジだ」

 

 ウォぉぉぉ!!!

 来た!キタキタキタキタァァァ!!

 

 

 すると、次の瞬間。俺が興奮してるところへ、衝撃的な一言が叩き込まれる事となる。

 

「アザゼルの言葉に乗るな、『お義兄さん』。確かに、アザゼルは過去数百回のハーレムを形成した。だが、裏を返せばそれは過去数百回崩れているという事だ。それに――」

 

「そ、それに?」

 

 俺はヴァーリの次の言葉が気になり、待っていると、何故か清羅が口を開く。

 

「アザゼルさん以外の周りの人達が妻子持ちなのに対して、アザゼルさんは一人寂しく、独身街道一直線ですからね」

 

「おい!お前ら!人が地味に気にしてる事を言うんじゃねえよ!!!」

 

 二人の宣言に声を荒立てる総督殿。

 ・・・・そうか、そうだよね。そんなうまい話ないよね。

 アハハハハハハ・・・・・・・・

 

「・・・・ま、よくよく考えたら、ここにいる女達が、お前の貞操をそう簡単に手放させるわけないか」

 

 アザゼルは、独身の話題を出されて、一人納得しちゃってるし・・・・・・・・

 え?ていうか俺の童貞、管理されちゃってるんですか!?

 

「えぇ、その通りよ、アザゼル。――それにしてもイッセー?ヒトの貞操を守っておいて、自分の貞操は他で散らすってどういうことなのかしら?」

 

 おぉう!部長が怖い!!

 そんな俺が部長に言われているのを見て、アザゼルは腹を抱えて笑う。

 

「ハハハハ!そうかい、そうかい!やっぱり教えるまでもねぇな!だったら俺は、お前らの修行を手伝う事に専念させてもらおうか!」

 

 うーん、ハーレムを教えてもらえないのは残念だけど、童貞が管理されてるんじゃ仕方ない。

お願いしますよ、先生。

 

「おっと、言い忘れるところだったぜ」

 

 え?なんだろうか?

 

「サーゼクスからの伝言だ。

 『魔王サーゼクス・ルシファーの名において命ず。グレモリー眷属の女性陣は、スキンシップ向上のため、兵藤家で共に暮らす事』だそうだ」

 

 ・・・・・・・・え? 

 それ、本気ですかい?

 

「それと、これは俺からヴァーリへ・・・・いや、ヴァーリチームへの指令だ」

 

「なんだ?」

 

「この町に暮らす際、お前達も兵藤家で暮らすこと。いいな?」

 

「それは清羅と同棲しろ、と言うことか?」

 

「なんだ?嫌なのか?」

 

「そんなわけ無いだろう、大歓迎だ!・・・・・・・・ただ、ちゃんとそちらの親御さんの許可はもらったのか、ということの心配をだな」

 

 おいおいおい、ちょっと待て。

 朱乃さんたちだけじゃなく、ヴァーリとその愉快な仲間達まで来るっていうのか!?

 

「ヴァーリ、そこは心配するな。この事を話したら、向こうは快く許可してくれたぞ。ていうか、寧ろウェルカムといった雰囲気だったな」

 

 父さん!母さん!あんた達、何許可出してんですかァァァ!?

 

「フッ、そうか。なら問題ないな。というわけで清羅。早速、今日からお邪魔させてもらうぞ」

 

「はい、分かりました!・・・・・・・・ところでアザゼルさん。部屋の方は――」

 

「当然、お前達二人は同室だぜ。もちろん、向こうと俺が話し合って決めた」

 

 嘘ォ!!

 父さん、母さん!あんた達本気で何考えてんだ!?こんな見るからに性欲旺盛な男を、可愛い可愛い娘と一緒にするなんて!!

 クソッ!!これも堕天使総督の策略かっ!

 

 

 

「さて、これから同じ家、同じ部屋で同棲だ。よろしく頼むぞ?清羅?」

 

「はい、もちろんです。こちらこそよろしくお願いしますね?ヴァーリ君」

 

 くぅ!向こうは向こうで幸せそうだし!

 羨ましいことこの上ないぜ、チクショウ!

 

 

 

 

 

 ていうか、清羅との距離がさっきから近いんだよこの野郎!いい加減離れやがれ!!

 

 

  




ありがとうございました!
まだ次回もお楽しみに!


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冥界合宿のヘルキャット
第二十四話


大変長らくお待たせしました!
色々忙しくってなかなか投稿できなくて・・・・

それでは、始まるよ!


 朝、大改造されて大豪邸となった我が家の食卓にて、俺の両親、部長、アーシア、朱乃さん、ゼノヴィアが集合していた。

 そして、その他にも――

 

 

「ヴァーリ!その目玉焼き貰い受けるぜぃ!」

 

「なっ!?おのれ美猴!今すぐ返せ!」

 

 一つの目玉焼きを巡って争う、ヴァーリとその仲間、美猴。

 

「まーた二人がやってるにゃ。あ、そうだ。アーサー、その焼き魚いただくにゃん!」

 

「いや、それはまぁいいですけど、あなたもやってること二人と大して変わりませんからね?」

 

 その向かいには、焼き魚を搾取する小猫ちゃんのお姉さんである黒歌。

そして、黒歌に焼き魚を奪われたアーサー。

 

「ヴァーリ君、美猴さん。そんなことで騒がないでください。ほら、私のあげますから」

 

 ヴァーリの隣には、俺の妹である清羅。

 

「清羅様のお父様、お母様、どうですか?」

 

「あぁ、美味しいよ、ルフェイちゃん!」

 

「えぇ、本当に美味しいわ。ルフェイちゃん、料理も上手なのね!」

 

 母さん、父さんと楽しそうに話している、アーサーの妹であるルフェイ。

 そして、隣にはフリードが。

 

「フリード君もありがとうね。ルフェイちゃんと並んで料理してるところなんか、まるで夫婦みたいだったわ」

 

「いえいえ、とんでもないッスよ。お役に立てて何よりッス!それにしても夫婦・・・・かぁ」

 

「わ、私がフ、フリード様と!?ええええ、えぇっと!そ、その!」

 

 

 

 こ、これがヴァーリのチームか・・・・

 俺の家がリフォームされたのも驚いたけど、それ以上にこの面子に驚いた!

 なんていうか、俺たち以上に賑やかで個性が強いメンバーだなぁ。

 

「それにしても、一晩でよくここまで改築したものだな、リアス・グレモリー」

 

「えぇ、まぁね。私達に加えて、貴方達までここで生活するみたいだから、早めに済ませたわ」

 

「そうか。感謝する」

 

 でも、そんなメンバーを束ねてるってことは、それだけ力があるってことか。

 

『だろうな、向こうは王としての資質も兼ね備えていると見た。差はでかいな、相棒』

 

 はぁ・・・・だよなぁ〜。

 

 

 

―●●●―

 

 

 

「冥界に帰る!?」

 

 グレモリー眷属の皆さんと私達が朝食を終え、リビングでまったりしていた私達の耳に、兄さんの大きな声が響き渡りました。

 

「えぇ、そうよ。夏休みだし、故郷に一旦帰るの。――って、イッセー、どうしたの?」

 

 リアス先輩の言葉に、涙を流す兄さん。

な、何故?

 

「うぅ、俺、てっきり部長が俺を置いて故郷に帰っちゃうのかと思いましたよぉ」

 

 あ、あぁ、そういうことですか。

大泣きするから、一体何事かと・・・・

 

 あ、そうでした。

 

「兄さん、私達も夏休み、冥界に行ってきます。向こうでやりたいことがあるので」

 

「え!?せ、清羅も!?」

 

 私の言葉に目を丸くする兄さん。

 そこまで驚くことですかね?

 

「イッセー、何驚いているの?貴方もこの夏、冥界に行くことになっているのよ?」

 

 だって、リアス先輩の言うとおり、眷属である兄さん達も行くというのに。

 

「え?お、俺もですか!?」

 

「えぇ、貴方達は私の眷属なのだから、当然でしょう?あ、そういえば、アーシアとゼノヴィアは初めてだったかしら?」

 

 リアス先輩の問いに、強く頷くアーシア先輩。

 

「はい!ま、まさか生きているのに冥界に行くことになるなんて!き、緊張してます!」

 

 アーシア先輩、動揺しすぎでしょ。

 

「八月の二十日辺りまで向こうで過ごす予定よ。修行等は向こうで行うからそのつもりで」

 

 へぇ、向こうで修行ですか。

 兄さん、大丈夫ですかね?

 

 

 ・・・・おや?玄関から不審人物(アザゼルさん)が。

 

 

「俺も冥界に行くぜ」

 

『ッ!?』

 

 アザゼルさんの登場に驚愕する、グレモリー眷属の皆さん。

 あぁ、気付いてなかったんですね。

 

「ど、どこから入ってきたの?」

 

 目を見開いて質問するリアス先輩。

 

「うん?普通に玄関からだぜ?」

 

 アザゼルさんは平然と答えます。

 

「・・・・気配すら感じませんでした」

 

 そして、木場先輩は、若干悔しそうに、自分の気持ちを口にしました。

 

「ふむ、そりゃお前達の修行不足だな。ヴァーリ達は普通に気付いてたぜ?」

 

「・・・・そうなの?」

 

 ヴァーリ君に顔を向けて質問するリアス先輩。

 

「あぁ。あの程度なら普通に気付くぞ?」

 

「そ、そう」

 

 未だ目を見開いているリアス先輩。

 そんなに驚くことですかね?

 

「冥界でのスケジュールは・・・・リアスの里帰りと、現当主に眷属悪魔の紹介。そして俺はその間にサーゼクス達との会合か。あ〜あ、面倒くせぇ」

 

「全く、面倒くさがるな、アザゼル。一応一組織の総督様だろう?」

 

「・・・・そうだな」

 

 まぁ、アザゼルさんはこう面倒くさがりながらも、仕事はある程度こなしますから、大丈夫だとは思うんですが・・・・

 

「ということはアザゼル・・・・先生もあちらまでは同行するのね?行きの予約をこちらでしておいていいのかしら?」

 

 リアス先輩の言葉に頷くアザゼルさん。

 

「あぁ、よろしく頼むぜ。こう見えて結構楽しみにしてるんだ。悪魔のルートで冥界入りするのは初めてだからな」

 

 アザゼルさん、なんだかんだ言って冥界に行くの楽しみにしてますね。

 

 

 

―●●●―

 

 

 

 そして、旅立ちの日。私達は、最寄り駅の地下にある秘密の階層に入り、三番ホームへ向かっていました。

 この階層を知らなかった兄さん、アーシア先輩は、未だに困惑している様子。

 

 ま、これからもっとすごいものが待ち受けているんですが。

 

 

「そうだ。清羅、俺達が降りる場所は、グレモリー領の辺境でいいのか?」

 

 ふと、ヴァーリ君が尋ねてきました。

 

「はい、合ってますよ」

 

「そうか。では、あの噂の真偽を確かめに行くとしよう。既に、ジオティクス・グレモリーから許可は貰っているからな」

 

 ヴァーリ君の言うとおり、私達は今回、グレモリー領の辺境にて、とある噂の真偽を確かめに行きます。

 まぁ、その噂が本当だったら、とんでもない事態になるわけですが・・・・

 

 

 

「おーい、二人共!こっちだぜぃ!」

 

 二人で考え込んでる内に、既に列車に乗っていた美猴さんが、手招きしてくれていました。

 

 ていうか、もうそっちいたんですね。

 流石、好奇心の塊。

 

 

 

―●●●―

 

 

 

 列車が出発してから数十分。

 私達は、最大八人でプレイ可能という大人気狩猟ゲーム

『モンスターハンティング』略してモンハンをチームの皆とプレイしていました。

 

「なぁ、清羅、ヴァーリ」

 

 そんな中、兄さんが話しかけてきました。

 

「どうしたんですか?」

 

「ヴァーリチームの皆はこれからどうするんだ?なんか、辺境に行くとか言ってたけど」

 

 あぁ、そういえば兄さん達には詳しく説明していませんでしたね。

 

「詳しい事は言えませんが、簡単に言うと、グレモリー領の噂を確かめに行くんですよ」

 

 細かい内容は伏せて伝えると、兄さん達は、とりあえず納得してくれた様子。

 

「それよりも兄さん、グレモリー領では腰を抜かさないようにしてくださいね?驚くことばかりですから」

 

 私が調査から話題を変え、グレモリー領での注意を行うと、兄さんは。

 

「いや、現時点でもう腰がすっかり抜けちまってるんだけど・・・・」

 

 かなり引き攣った顔で答えてきました。

 あぁ〜、そりゃいきなり土地貰ったりしたらそうなりますよね・・・・

 グレモリー領って結構広いですから。

 

 

 

 

―●●●―

 

 

 

 

 兄さん達が、グレモリー城前にて下車してから十数分後。私達はグレモリー領の辺境にいました。

 周りを見ると、チームの皆はそれぞれ戦闘態勢に入っており、緊迫した雰囲気が伝わってきます。

 

「ルフェイ、何か引っかかったか?」

 

「いえ、この辺りには何もありません」

 

 ヴァーリ君がルフェイちゃんに生体反応の確認をとります。

 しかし、確認したところ、何一つ引っかかっていない様子。

 

 

「皆!一大事だにゃ!」

 

 そんな中、別の場所を探索していた黒歌さんが、慌ててこちらに戻ってきました。

 

「どうしたんですか?黒歌さん」

 

「あ、清羅!ちょうどよかったにゃ!こっちこっち!」

 

 私を見つけるなり、黒歌さんは私の手を掴んで走り出します。

 そ、そこまでやばいものなんですか?

 

「黒歌、まさかいたのか?」

 

 ヴァーリ君もここまで慌てるのはおかしいと思ったのか、黒歌さんに問いかけます。

 

「そ、そういうわけじゃないんだけど・・・・まぁ、見ればわかるにゃ!」

 

 はぁ、見れば分かる・・・・ですか。

 

 

「・・・・分かった、取り敢えず向かうか」

 

 ヴァーリ君は一応納得したのか、黒歌さんのあとに続きました。

 

 

 

 

 ――そして、向かったその先には――

 

 

「な!?」

 

「おいおい、マジかよ・・・・!?」

 

「これは・・・・」

 

「まさか・・・・そんな」

 

「おいおい、こりゃあ・・・・!」

 

 

 これは、確かに一大事ですね・・・・

 

 

 

「皆、戻るぞ。これは確かに緊急事態だ」

 

「「「「了解!」」」」

 

 

 ヴァーリ君の指示を受け、帰還準備を始める皆。

 さて、急ぎましょうか。

 

 

 

―●●●―

 

 

 

「もしもし、こちらアザゼルだ。いきなり連絡してくるなんてどうした?ヴァーリ」

 

 俺、アザゼルは会談の後、ヴァーリからいきなり開かれた回線に応じていた。

 

『それほどの内容ということだ、アザゼル』

 

「・・・・まさか、いたのか?」

 

 こいつが、いきなり回線を繋げてまで報告してくる程のことだから、あの噂が真実だったのかと疑う。

 

「近からず遠からず、といったところだな。詳しい事はグレモリー城でジオティクス・グレモリーを交えて話すこととする。いいな?」

 

 近からず遠からずか・・・・

 なんにせよ、グレモリーの現当主を交えて話すほどのことだから、ただ事じゃないのは確かなんだろうがな・・・・

 

「・・・・分かった、気を付けろよ」

 

『言われなくとも分かっているさ』

 

 そうして、回線は切られた。

 ・・・・やはり、和平を結んだとはいえ、そう簡単に物事は運ばないという訳かね・・・・

 

 

 

―●●●―

 

 

 

 俺、兵藤一誠がグレモリー城に着いてから数時間後。

 清羅達も例の調査から戻ってきていて、俺達と同じように会食を始めていた。

 

 というか・・・・

 

 この豪華な食事の食べ方が分かんねぇ・・・・!

 

 周りを見ると、俺以外のグレモリー眷属達は、皆優雅食べていた。

 

 そして、清羅、ヴァーリは上手に食べている。

 アーサー、ルフェイの兄妹は家柄故か、優雅に食べている。

 黒歌、フリードも上手に食べれている。

 

 

 ヤバイ!この中でまともに手つけられていないの俺だけじゃん!

 

 

 ・・・・いや、更に周りを見渡してみると、俺と同様に手を付けられていない仲間がいた! 

 

 ――美猴だ――

 

 なんだろう、あいつとは何故か仲良くなれそうな気がする・・・・

 

「ところで兵藤一誠君」

 

「は、はい!」

 

 そんな事を考えていると、部長のお父さんから声をかけられた。き、緊張するぜ・・・・!

 

「ご両親は変わりないかな?」

 

 え?父さんと母さんのこと?

 

「は、はい!二人共元気です!じ、実は、リアス様の故郷に来るにあたってお土産を期待されていまして・・・・本当、欲張りな親で困りますよ・・・・アハハハ」

 

「ふむ、お土産か・・・・」

 

 俺の冗談混じりの言葉を受けた部長のお父さんは、手元にあった鈴を鳴らして執事を呼ぶ。

 

「お呼びですか?ご主人様」

 

「あぁ、兵藤一誠君と兵藤清羅さんのご両親に城を一つ用意しろ」

 

 城!?お、お土産で!?

 

「西洋式でしょうか?和式でしょうか?」

 

 え?じょ、冗談じゃないの!?

 

「ふむ、悩むところだな・・・・」

 

 や、やばい!このままじゃ本当にお城がプレゼントされちゃう!!

 

「ジオティクスさん、日本はただでさえ領土が狭いんですから、お城なんて不可能ですよ」

 

 そんな中、清羅が助け舟を出してくれた。

 流石頼れる我が妹!

 

「むむむ、そうだったな。では何が良いのだろうか・・・・」

 

「お父様。あまりそういう気遣いは逆に迷惑をかけます。イッセーと清羅のご両親は物欲の強い方々ではありませんし」

 

 部長も一緒に説得してくれている。

 二人の説得を受け、部長のお父さんも深く頷いていた。

 いやぁ、良かった良かった。

 

 

 そんな感じで、冥界初日。グレモリー家での会食は幕を下ろした。

 

 

 

 

―●●●―

 

 

 

 会食が終わり、ジオティクスさんに報告を済ませ、一段落ついた頃、私とヴァーリ君は用意された部屋で今日の事を共に振り返っていました。

 

「それにしても、今日はあの噂が真実味を帯びてきたな・・・・!」

 

 嬉々とした笑みを浮かべるヴァーリ君。

 

「嬉しいんですか?」

 

「まぁね、ただの噂に過ぎないと思っていたものが真実味を帯びたんだ。嬉しくないはずがないだろう?」

 

「そうですね。私も嬉しかったですし」

 

 確かに、あの噂が本当だったかもしれない、という事には私も興奮を抱きました。

 

「・・・・まぁ、これから暫くはグレモリー家が調査を行うようだからな。この話は置いておくとしよう」

 

 そうなんですよね・・・・

 

 今回の調査結果をジオティクスさんとアザゼルさんに報告したところ、これから暫くの間はグレモリー家が率先して調査を行い、手に負えなくなったら再び調査を依頼する、とのことだったので、私達の調査は暫く後になりそうです。

 

「ま、何が何であれ、清羅」

 

「はい、なんでしょうか?」

 

 

 次の瞬間、ヴァーリ君は先程までの嬉々としたバトルマニアの笑みを一変。

 

「今日も一日、お疲れ様」

 

 無邪気ながら、それでいて優しい微笑みでそう言ってきました。

 

「!あ、ありがとうございます。そちらこそ、今日も一日、お疲れ様でした」

 

 くっ!さ、先に言われてしまいました・・・!

 て、ていうか、今の不意打ちの笑顔で顔赤くなってないですよね!?

 

 

 自分の今の状態を必死になって気にしていると、フワっと何かに包み込まれる様な感覚が

――って。

 

「なな、何してるんですか!?ヴァーリ君」

 

 いや、包み込まれたんじゃないですね、抱きしめられてます、これ!

 

「何って、抱きしめているんだが?」

 

 特に気にした様子もなく答えるヴァーリ君。

 

「それは分かります!何でいきなり抱きしめてきたんですか!?」

 

 これに対してヴァーリ君は。

 

「そうだな。照れて顔を赤くしている所が可愛かったから、かな」

 

 お、おかしいです!今のヴァーリ君なんかおかしいです!!

 な、なな何でそんな恥ずかしい事平然と言えるんですか!?

 

 

 

「あうぅ・・・・」

 

 恥ずかしさのあまり、顔を自分でも分かるくらいに真っ赤にしてヴァーリ君の胸元に顔を埋める私。

 

 何してるんでしょう。こんなことしたら余計恥ずかしいに決まっているのに・・・・

 

「清羅、俺が思うに、今君が行ってる行動の方が恥ずかしいと思うのだが・・・・?」

 

 ヴァーリ君にもそう言われてしまいました。

 

「分かってます・・・・・・・・でも、こうさせてください・・・・・・・・だめ?」

 

「いいぞ。どうせ、二人きりなんだ。存分に甘えてくれて結構さ」

 

 見上げると、先程と変わらぬ優しい笑みで了承してくれたヴァーリ君。

 

 

 じゃあ、今晩は恥ずかしい思いさせられた分、たくさん甘えさせてもらいますからね?

 

 




ありがとうございました!
次回もまたお楽しみに!


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第二十五話

お待たせしました!

始まるよ!


 

 翌日、私達は、若手悪魔の会合を終えて帰還したグレモリー眷属達と共に、温泉に浸かっていました。

 

「いや〜、流石名家グレモリー家の温泉!極楽だにゃ〜」

 

「本当ですね!黒歌様!清羅様!」

 

 隣には黒歌さん、ルフェイちゃんがまったりしていました。

 あぁ、今までの疲れが取れていきます。

 本当、気持ちいいです。 

 

「ところで清羅。またおっぱい成長しのかにゃ?」

 

 そうやってまったりしていると、突然黒歌さんが訳のわからない質問をしてきました。

 

「突然何を言い出すんですか、あなたは・・・・」

 

「えぇ〜、いいじゃにゃい。今は女の子だけなんだから〜」

 

 確かにそうですけど・・・・

 あとルフェイちゃん、地味にそうやってから知りたそうな顔をしないでください。

 

「ぁん・・・・って!何するんですか!?」

 

 いきなり黒歌さんが胸を鷲掴みにしてきました。

 さ、触り方が嫌らしい・・・・!

 

「むむむ、やっぱり大きくなってるにゃ!触り心地もいいし・・・・」

 

「ちょ・・・・!どこ触ってるんですか・・・・!」

 

「どこって・・・・おっぱいだけど?」

 

 私の質問に平然と答える黒歌さん。

 そ、それはそうですが!

 

「んぁっ・・・・こ、小猫ちゃん・・・・助けて・・・・んぅ・・・・下さい・・・・!」

 

 私は、この黒猫の魔の手から逃れるため、近くにいた、親友である小猫ちゃんに救援を求めました。

 

「・・・・・・・・嫌です・・・・!」

 

「な、なん・・・・で、ですか・・・・ふぁ!」

 

 しかし、そんな私の救援要請は、小猫ちゃんには届かなかったようです。

 な、何故ですか・・・・!親友だと思っていたのは私だけだったんですか・・・・!!

 

「あぁ〜、なるほど・・・・白音、妬けちゃったみたいにゃ」

 

 どこか納得した様子で呟く黒歌さん。

 や、妬けた?何故?今のやり取りの、どこに妬ける要素が?

 

 

 

「ぬわぁァァァァ!!」

 

 そうやって、小猫ちゃんが嫉妬した理由を一人考え込んでいると、空から兄さんが降ってきました。

 

 兄さん、ついに壁を乗り越えてまで覗きに来るレベルの変態に成り下がりましたか・・・・!

 

「み、皆!これは、アザゼル先生に投げ飛ばされて・・・・!」

 

 兄さん。いや、この場合はもう『馬鹿兄』でいいですね。その馬鹿兄が必死になって弁解してますが、言い訳無用です。

 

「・・・・最低ですね、変質者先輩」

 

 小猫ちゃんも、構えていつでも拳が放てるようにスタンバイしてます。

 

 

「清羅、お前・・・・おっぱい成長したな!お兄ちゃん嬉しいZE!」

 

 そんな状況の中、無駄に良い笑顔でふざけたことを言う馬鹿兄。

 

 ほ〜う。どうやら、死にたいようですね。

 ならば・・・・・・・!

 

 

「『黄昏にて光を放て。其は空を裂き、地を繋ぐ。――嵐の錨。――黄昏にて輝ける槍(ロンゴミニアド)!』」

 

 加減したとはいえ、聖なる力を込めた言霊による詠唱により、ある程度の力を持った一撃が、馬鹿兄に向けられる。

 

「ギャァァァァ!!!」

 

 そんな一撃を受けた馬鹿兄は、悲鳴をあげながら、遥か彼方へと飛んでいきました。

 

 

「清羅・・・・・・・・流石にやりすぎなんじゃないかしら?」

 

 それを見て、心配そうにしているリアス先輩。

 甘い、甘いですよ。リアス先輩!

 

「リアス先輩、甘いですね。あの様な変質者は、これくらいするのが丁度いいんです!」

 

「その通りです、部長」

 

 私の言葉に同意した言葉を投げかける小猫ちゃん。

 これには、リアス先輩も一応納得したのか、馬鹿兄を心配することはなくなりました。

 

 

 

―●●●―

 

 

 

 俺、兵藤一誠が女湯を覗いた事により、妹に吹き飛ばされてから一日が経った。

 

 今日から修行を始めるため、グレモリー家の広い庭の一角に、眷属の皆とヴァーリチームの皆が集まっていた。

 ヴァーリチームの皆がここにいる理由は、俺達の修行を手伝うためらしい。

 

「よし、全員集まったな。これより修行を開始する。まずはリアス、お前からだ」

 

 先生は部長を呼ぶと、修行内容が記された紙を部長に渡した。

 

「・・・・これって、特別すごいメニューには思えないのだけれど?」

 

 渡された紙を見て首を傾げる部長。

 

「そりゃそうだ。なんてったって、基本的なトレーニング方法だからな。お前はそれでいい。ただ、問題は『(キング)』としての資質だ。『(キング)』というのは時と場合によって、力よりも頭が求められる事の方が多い。だから、お前は期限までにレーティングゲームというものを知れ。データや戦略を頭に叩き込むこと、いいな?」

 

 的を得た説明お見事です!先生!

 やっぱ、説得力が違うなぁ・・・・

 

「次に朱乃」

 

「・・・・はい」

 

 先生に呼ばれ、かなり不機嫌になっている朱乃さん。

 そんな不機嫌な朱乃さんに、先生は真正面に言う。

 

「お前は自分の中に流れる血を受け入れろ」

 

「ッ!」

 

 ストレートに言われた事により、顔をしかめる朱乃さん。

 

「フェニックス家との一戦、見せてもらったぜ。本来のお前のスペックなら、敵の『女王(クイーン)』を苦もなく打倒できたはずだ。いいか?雷だけでは限界がある。光に雷を乗せ、『雷光』としなければお前の真の力は発揮できん」

 

 キッパリと言い切った先生。

 そうだよな、朱乃さんは堕天使の血を引いてるわけだから、光の力も使えるってわけだ。

 

「・・・・私は、あのような力に頼らなくとも」

 

 それに対し、朱乃さんは複雑そうな表情だった。

 

「否定はするな。最後に頼れるのは己の体だけだ。否定がお前を弱くしている。自分を全て受け入れろ。でなければ今後の戦闘でお前は邪魔になるだけだ。『雷の巫女』から『雷光の巫女』になってみせろよ」

 

「・・・・・・・・」

 

 先生のストレートな言葉に、朱乃さんは黙ったままだった。

 

「さて、次は木場だな」

 

「はい」

 

「お前は、まず『禁手(バランス・ブレイカー)』を開放している状態を一日保持することだな。それに慣れたら、次は実戦形式の中で一日保持させる。それを続け、状態維持を一日でも長くできるようにするのがお前の目的だ。『神器(セイクリッド・ギア)』の扱い方は、あとでマンツーマンで教えてやる」

 

 なるほど。木場は『禁手(バランス・ブレイカー)』を保持する時間を長くすることが目的か。

 

「剣術の方は・・・・お前の師匠、アーサー、フリードから実践形式で学ぶという事でいいんだな?」

 

「はい、その通りです」

 

 な!?

 こいつの師匠にも驚いたけど、あの二人からも実践形式で学ぶのか・・・・

 木場、修行終わったらすごいことになってるんじゃないか?

 

「次はゼノヴィア。お前の目的はデュランダルを今以上に使いこなせるようにすることと・・・・もう一本の聖剣に慣れてもらうことにある」

 

「もう一本の聖剣?」

 

 ゼノヴィアは先生の言葉に疑問を感じた様子。

 も、もう一本の聖剣?

 

「あぁ、ちょいと特別な剣だ」

 

 ニヤける先生。

 しかし、すぐに笑みを消すと、次はギャスパーに視線を向けた。

 

「次はキャスパー」

 

「は、はいぃぃぃぃぃ!」

 

 先生に声かけられてここまでビビるかね、この引きこもりくんは・・・・

 

「そうビビるな。お前の最大の壁はその恐怖心だ。まずは、それを克服せにゃならん。元々お前の血筋、『神器(セイクリッド・ギア)』は相当なスペックだからな。というわけで、お前専用の引きこもり脱却プランを考えておいた。いいな?」

 

 先生の言うとおりだな。まずは自分自身の精神が安定しないとだめなんだよな。

 

「はいぃぃぃぃぃ!が、頑張ります!」

 

 そう言いながらダンボールに入ろうとするのはどうかと思うが・・・・

 

「次はアーシアだ」

 

「は、はい!」

 

 お!アーシア、気合入ってるな!

 今回の修行を得て、今まで以上に自信を持ってもらえると嬉しい!

 

「お前の場合は基本的なトレーニングをこなすことに意味がある。まぁ、メインは『神器(セイクリッド・ギア)』の強化にあるんだがな」

 

「アーシアの『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』は最高ですよ?触れるだけで大体のものは治せますし」

 

 正直、これ以上回復能力を高めても意味はないと思う。今でも回復スピードはかなりのものなんだしさ。

 

「そのことは理解してる。回復能力の高さとスピードは大したもんだ。だがな、問題はその『触れる』って点だ。態々至近距離まで行かないと回復が出来ないってとこにある」

 

 確かにそうだ。アーシアの『神器(セイクリッド・ギア)』は至近距離まで来ないと回復が出来ない。

 

「あぁ。ということは、アーシア先輩の回復範囲を広げる気なんですね?」

 

 そうか!そんなことできるのか!

 清羅の言葉を、先生が肯定する。

 

「その通りだ、清羅。こいつは裏技みたいなもんなんだが、『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』の真骨頂は効果範囲の拡大にある」

 

「なるほど、やっぱりそうでしたか」

 

 清羅は普通に納得してたけど、ソレってかなりすごいことじゃないのか!?

 

「しかし、効果範囲の拡大には、やはり問題があってな。敵味方の判断ができずに回復させてしまいそうなことだ・・・・こればっかりは、アーシアの問題だ」

 

「何が問題なんですか?」

 

 俺の質問に対し、先生は真剣な面持ちで応える。

 

「『優しさ』ってやつだよ。アーシアは例え敵だったとしても、そいつのことも回復したいと思ってしまうだろう。こればっかりは生来のものだからどうしようもない」

 

 そっか。アーシアの優しさが敵も癒やしてしまうと。範囲拡大もいいことばかりじゃないんだな。

 

「というわけで、もう一つの可能性を見出す。それは、回復のオーラを飛ばすという力だ」

 

「そ、それは、離れた所へいる人に、こんな感じで私が回復の力を送るということですか?」

 

 アーシアが指鉄砲で何かを撃ち出すジェスチャーをした。

 

「あぁ、そんな感じだ。今簡単に説明したのは、アーシアが何となくやっていたが、飛び道具バージョンだな。これならば、直接触れずとも回復ができるようになる」

 

 回復能力が飛び道具で可能に!

 すげぇ!そりゃあすげぇ!

 

「アーシア!やったな!大活躍できるぜ!」

 

 アーシアは、この情報に驚きながら、自分が活躍できると聞いて、嬉しそうだった。

 

「直接触れるよりも多少回復能力は落ちるだろうが、遠距離の味方を回復できるようになるのは、戦略性が広くなる」

 

 アーシア、本当にすげぇや!

 アーシアの『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』は、フェニックスの涙か回復薬よりも、汎用性と信頼性が段違いだもんな!

 

「アーシア、お前の力はこのチームにおいて強力な武器となる。あとはアーシアの体力次第だ。基礎トレーニング、しっかりこなせよ」

 

「はい!頑張ります!」

 

 ファイトだぜ!アーシア!

 

「次は小猫だな」

 

「はい」

 

 小猫ちゃんも、静かながらも気合の入った返事だ。確か、今回は小猫ちゃんのお姉さんも修行に付き合うんだっけ?

 

「お前は申し分ないほどオフェンス、ディフェンス、『戦車(ルーク)』としての素養を持っている。更に、ここにお前の仙術が加われば、上級悪魔クラスだ。確か、仙術に関しては黒歌に一から教わるんだったよな?」

 

「はい、一から教えてもらう予定です」

 

「任せるにゃん!お姉ちゃんが一から手とり足取り教えてあげるから!」

 

 あれれ?なんか、小猫ちゃんより小猫ちゃんのお姉さんの方が気合入ってないか?

 

「さて、最後はイッセーだ。お前は・・・・ちょっと待て、もうすぐ来るはずなんだが」

 

 そう言うと空を見上げる先生。

 え?何故空を見るんですか?先生?

 

 皆で空を見上げてみると、俺達の視界に巨大な影が写った。

 何事!?敵襲ですか!?こんな時に!?

 

 その巨大な影は、大きな音と土煙を上げ、俺達がいた地面の近くに降り立った!

 

 

 そして土煙が晴れたあと、目の前に現れたのは、ドラゴンだった。

 

「お久しぶりです、タンニーンさん」

 

「久しいな、タンニーン」

 

 そんな現れたドラゴンに、いきなり挨拶をしたのは清羅とヴァーリだった!

 ちょ!?何してんだ二人共!?

 

「あぁ、久しいな、清羅、ヴァーリ。お前達も相変わらずそうで何よりだ」

 

 え?知り合いなの?

 ていうか喋れるんだ!このドラゴン!

 

「やっと来たか、タンニーン」

 

 先生もこのドラゴンの事知ってるみたいだ。

 

「アザゼル、よくもまあ、悪魔の領土に堂々と入れたものだな」

 

「ハッ、こちとらちゃんと魔王様直々の許可をもらってんだぜ?文句でもあんのかよ」

 

「フン。まぁいい。今回はサーゼクスの頼みだから特別に来てやったんだ。その辺を忘れるなよ、堕天使総督殿」

 

「ヘイヘイ。てなわけで、イッセー。こいつとヴァーリがお前の先生だ」

 

 ほうほう、この二人が俺の先生というわけだね。なるほどなるほど・・・・・・・・って

 

「えええええぇぇぇっっ!?マ、マジですか!?」

 

 マジでどういう事!?ヴァーリはまだ分かるけど、このドラゴンも俺の先生!?

 

「そちらも久しいな、ドライグ、アルビオン。聞こえているのだろう?」

 

 ドラゴンは俺の籠手の方に語りかけてくる。

 すると、俺の左腕が赤く輝き、『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』が出現する。

 隣を見れば、ヴァーリも『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)』を出現させていた。

 

『あぁ、懐かしいな、タンニーン』

 

『我ら三体がこうして揃うなど、先の大戦以来ではなかったか?』

 

 ドライグとアルビオンは、俺とヴァーリだけでなく、周囲の者達にも聞こえるように音声を出した。

 

「ドライグ、知り合いなのか?」

 

 気になって聞いてみると、ドライグは肯定してくれた。

 

『こいつは元龍王の一角、「魔 龍 聖(ブレイズ・ミーティア・ドラゴン)』タンニーンだ。その火の息は、隕石の衝撃に匹敵するとさえいわれている」

 

 おぉう、元龍王様ですか。初めて見るけどすげぇ迫力!

 ていうか俺、これからこれクラスのヤバイ奴に狙われるってことだよな!?

 恐ろしいぜ・・・・

 

「タンニーンが悪魔になって、『六大龍王』から『五大龍王』になったんだったな。今じゃ転生悪魔の中でも最強クラス。最上級悪魔だ」

 

 さ、最上級悪魔!?ていうかこのドラゴンさんは悪魔だったのか!

 

「というわけでタンニーン、ヴァーリ、修行に付き合ってやってくれ」

 

 先生の言葉に、タンニーンさんは何か納得したようだ。

 

「なるほど。ドラゴンの修行と言えば元来から実戦方式。俺とヴァーリでこの少年をいじめ抜けと言うわけだな」

 

 とんでもない事を言い出すタンニーン。

 待って待って!俺、今からいじめられるの!?

 

「あ、私のヒュドラも行かせますね」

 

 サラッと、笑顔でとんでもない事を口にする清羅!

 

「おぉ、それは素晴らしいな。ぜひとも頼む、清羅」

 

 何納得してるんですか!?タンニーンさん!?

 元龍王に白龍皇。これだけでも十分死ねるのに、そこにヒュドラ!?俺、一体何百回死ねばいいの!?

 

「カール、兄さんをしっかり鍛えてあげて下さいね」

 

「キュアアアアアアア!(お任せください!我が主!)」

 

 待て待て待て!

 カール君、すげぇ気合入ってるけど、俺本当に大丈夫!?ていうか名前カールって言うのね!?

 

「それじゃあ皆、各自各々に修行メニューをこなすこと!いいわね」

 

 部長と先生は俺を置いて話を進めていた!

 

 ちょっとちょっと!俺はこのままですか!?

 俺、化け物に襲われて死んじゃうよ!?

 

「兄さん!ファイトです!」

 

 清羅が、ものすごく良い笑顔で俺にエールを送ってくれている!

 

「何をしている、『お義兄さん』早くあの山で修行するぞ」

 

 そう言って、俺の首根っこの部分を掴んで背中の光翼で飛び立つヴァーリ。

 

 

「た、助けてくれぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 お父さん、お母さん。そして、天国にいるお祖父ちゃん。

 冥界での夏休み。

 僕は、山で怪物達と過ごすこととなりました。

 お祖父ちゃん、待っててください。僕もすぐにそっちに行きます。

 

 

 

 ・・・・・・・・いや、よくよく考えたら、俺、悪魔だから天国(そっち)には行けないじゃん。

 アハハハハハハハ。

 

 




ありがとうございました!
次回もお楽しみに!


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第二十六話

お待たせしました!
第二十六話!始まるよ!


 ――冥界。俗に言う、地獄。

 その地獄にある山にて、周りに茂っていた木々は消え去り、地面には数え切れないほどのクレーターが出来上がっている。

 

「死にたくないィィィィ!!助けてくれエエエエエエエエエ!」

 

 そんな中、俺は、必死になって怪物達の攻撃から逃げ回っていた!

 

「ほらほら、避けないと消し炭だぞ?」

 

「キュアアアアアアアアアアア!!(その程度か!兵藤一誠エエエエエ!)」

 

 はい、その通りですよ!!!

 

 ていうか褒めてくれてもいいんじゃないの!?

 俺、化け物に身を狙われ続けて未だに生きてるんだからね!?

 

 

 あ、ちなみにこの修行中で、清羅の使い魔であるカール君の言葉が、ある程度分かるようになりました。

 

 ヴァーリにその事を話したら、ヴァーリチームの皆は全員分かるそうです。

 ・・・・・・・・すげぇや。

 

「全く、逃げ足だけは本当に速くなったものだな、小僧」

 

 そう。この数日で逃げ足だけは、本当に速くなった。

 タンニーンのおっさん、ヴァーリの分析によると、魔王クラスが相手でもなんとか逃げ切れるんじゃないか?と言われるぐらいだ。

 

 

「逃げてばかりじゃ仕方ないだろう。そろそろ反撃してこい、兵藤一誠」

 

「いや無理だって!皆強すぎだ!」

 

「キュアアアアアアアアアアア!(ならば早く『禁手(バランス・ブレイカー)』に至るのだ!)」

 

「そんな簡単じゃねぇんだよぉ・・・・・・・・」

 

 俺は涙を流しながら呟く。

 

「・・・・ま、まぁ、以前と比べて、基礎的な力と、サバイバル能力は向上した。そこは誇っていい」

 

 涙を流す俺を見かねて、ヴァーリがこれまでの俺をフォローする言葉をかけてくれた。

 

 はぁ・・・・・・・・

 褒められたのは嬉しいけど、どうせなら、部長に抱きしめられながら褒められたい!

 

「おー、やってんな。どうよ?」

 

 そう思いながら半泣きで空を見上げると、堕天使の総督様がやってきた。

 

 

 

―●●●―

 

 

 

「うめぇ!うめえ!涙が止まんねぇよ・・・・・・!」

 

 俺は、アザゼル先生から差し入れられた弁当を、涙を流しながら食べていた!

 

 ちなみに、隣ではヴァーリが、ここに来る時、毎回清羅から渡される手作りのお弁当を食べている。 

 

 信じられるか?俺が山にいる猪とか狩って、焼いて食べてる時、こいつは美味しそうに恋人から渡されるお弁当食ってるんだぜ?

 

 なんか俺、涙流してばっかだな・・・・・・

 主に修行とかヴァーリに対する嫉妬で。

 

「朱乃が作ってくれた弁当もある。そっちも食ってやれよ・・・・・・・・しかし、数日見ない間にいい面になったもんだな」

 

 先生は、俺の肩を叩いたあと、暫く見つめてからそう言った。

 

「ふざけんな!!俺さっきまで死にそうだったんだからね!?皆強すぎる!俺、このままじゃ『禁手(バランス・ブレイカー)』に至る前に死にますって!」

 

 俺は、半泣きしながら先生に言う!

 

「何を言っている。俺達が殺す気になれば、君はあっという間に、この山ごと消し炭だ」

 

 そんな中、ヴァーリは半眼でそう言ってきた。

 

 え?・・・・・・・・マジで?

 俺の驚愕した表情から全てを読み取ったのか、ヴァーリは頷いた。

 

「まぁ、それでも基礎トレーニングはきちんとこなしてるんだろ?なら大丈夫だ。この修行が終わって『禁手(バランス・ブレイカー)』に至った時、ある程度体がついてこれるようになってるだろうからな」

 

 うーん・・・・そういうもんかね?

 

 まぁ、部長の最強の『兵士(ポーン)』を堂々と名乗れるようになるために、一刻も早く『禁手(バランス・ブレイカー)』に至ろう!

 

「お、やる気出たみたいだな。その調子で気張れ」

 

 先生は、俺の方を見てそう言ってきた。

 ていうか、俺ってそんなに分かりやすい?

 

「さて、イッセー。一旦グレモリーの別館に戻るぞ。俺がここに来たのはそのためだ。タンニーン、ヴァーリ、カール。少しの間返してもらう。明日の朝には戻す」

 

「了解した。ではタンニーン。その間、少し、手合わせを願いたい」

 

「いいだろう。ではこちらも本気で行くぞ?ヴァーリ」

 

 先生、ヴァーリ、タンニーンが話している。

 て?俺一旦屋敷に帰るの?

 

 てか、さりげなく大戦争が行われようとしているのはいいのか?

 

 

 

 そして、先生に連れられて山を下る際、漆黒の獄炎と大質量の火炎が衝突して、えげつない事になっていたけど、本当に大丈夫か!?

 

 

 

 

―●●●―

 

 

 

 兄がヴェネラナさんとダンスの練習に励んでいる中、私、兵藤清羅は、ヴァーリ君、カールの様子がどうなってるか山に見に来たのですが・・・・

 

 

「『波状の獄炎(ヘルブレイズ・ウェーブ)』!!」

 

「ガァァァァァァッッ!!!!!」

 

 上空にてぶつかり合う、ヴァーリ君が放つ漆黒の獄炎と、タンニーンさんのブレス。

 ぶつかり合う余波だけで空間が悲鳴をあげていることから、その威力の凄まじさが分かります。

 

「流石だな!タンニーンッッ!!」

 

「そちらこそ!なんとも楽しませてくれるっ!」

 

 笑い合いながら、空中で激突する二人。

 

 

「楽しそうですね〜、ヴァーリ君、タンニーンさん」

 

「キュアアアアアアアアアアア!?(いや、このままではここら一帯が消え去るのでは!?)」

 

 それに対し、カールは慌てた様子です。

 

 

 いや、分かってはいるんですよ?

 でも、あんなに楽しそうな二人を見てると・・・・・・・・ねぇ?

 

「キュアアアアアア(そ、そうですか)」

 

 でも、カールの言う通り、このままじゃ山が跡形も無く消え去りそうなので、止めることにしましょうか。

 

「ヴァーリ君!タンニーンさん!周りを見てください!とんでもないことになってますよ!」

 

 私の呼び声に反応し、即座に戦いをやめ、周りを見渡す二人。

 

 そして、若干申し訳なさそうにしながら、こちらへ降りてきました。

 

 

「二人共。いくらなんでもやりすぎです」

 

 降りてきた二人をその場で正座させると。私は説教を始めました。

 

 ていうか、自分でやらせといてあれですが、タンニーンさんが正座してるところって、なかなかレアですよね。

 

 

「いや、清羅、よく聞いてくれ。最初はただの手合わせのつもりだったのだ」

 

 まず、タンニーンさんが、今回の事の発端について話します。

 

「それが、互いに激突する度に物足りなくなってしまってな。

 つい、熱くなりすぎてしまった・・・・今は、申し訳ないと思っている」

 

 続いて、ヴァーリ君が今に至った経緯を話したあと、反省の意志を見せました。

 

 

「本当に、自重してくださいね」

 

 うん。二人共、今はちゃんと反省しているようなので、これ以上何か言うのは必要ないと思います。

 

 なので、軽い忠告だけで済ますことにしました。

 

 

「あぁ、次からは気を付けよう」

 

 謝罪の言葉を口にするタンニーンさん。

 

 ・・・・・・・・いいドラゴンですね。

 

 ドラゴンっていったら、自分勝手な部分が多いものですが、タンニーンさんはそれに当てはまらない、いい意味での例外だと思います。

 

 

「そういえば清羅。兵藤一誠は、何故屋敷に呼ばれたんだ?」

 

 私が一人、そんな事を思っていると、ヴァーリ君が、気になった事を口にしました。

 あぁ、そのことですか。

 

「なんでも、兄さんが将来リアス先輩と社交界に出るためのダンスの練習だそうです」

 

 私の簡単な説明に、納得した様子のヴァーリ君。

 

 

 というか、リアス先輩と共に社交界に出る。という言葉の本当の意味を理解してないのは、兄さんだけじゃないんでしょうか。

 

 大丈夫ですかね?本当、どこかで亀裂が走らないといいんですけど・・・・・・・・

 

「清羅、どうした?」

 

「あ、はい。ちょっと兄さんとリアス先輩の関係について考え込んでいまして」

 

「関係?・・・・・・・・あぁ、そういうことか・・・・」

 

 私の考えている事を察してくれたヴァーリ君。

 相変わらずの鋭さですね。

 私の兄も、流石にこれくらいとは言いませんが、もう少し鋭くなってほしいです。

 

 

 

―●●●―

 

 

 

「では、俺はこれで。魔王主催のパーティーには俺も出席する。また会おう、兵藤一誠、ヴァーリ、カール、清羅。それとドライグ、アルビオン」

 

 グレモリー本邸前。俺達はタンニーンのおっさんの背に乗って帰ってきた。

 

「うん。ありがとうおっさん!パーティーでまた!」

 

『世話になった、タンニーン。また会おう』

 

「あぁ、俺も楽しかった。あの二天龍達に協力したのだからな。長生きはするものだ。そうだ、俺の背に乗ってパーティー入りするか?」

 

「本当に?いいの!?」

 

「大丈夫だ、問題ない。俺の眷属を連れて、パーティー開催日にここへ来よう。詳しい事は、あとで連絡を入れる」

 

 おお!またあの空中旅行ができるのか!

 

「では、明日、またここへ来よう。さらばだ!」

 

 おっさんはそう言うと、空へ羽ばたいていった。

 

「以前から思っていたが、いいドラゴンだな」

 

「本当ですね」 

 

「キュアアアアアアアアアアア(話を聞かない邪龍達も見習ってほしいものです)」

 

『龍王としては、甘いと思うがな』

 

 

 

 隣で、ヴァーリと清羅とアルビオンとカールが話している。

 

 そうだよな!俺もそう思う!カッコよくて、話が分かって。

 本当、いいドラゴンだと思うよ。

 

「やぁ、イッセー君」

 

 そんな事を思っていると、隣から木場に声をかけられた。

 なんだろう、あのイケメンフェイスが更に引き締まった気がする。

 

「・・・・・・・・いい体になったね」

 

 木場が俺の上半身を見て、そう言う。

 

「その目でそう言うのをやめろ!すげぇ身の危険を感じるから!」

 

 俺は木場から即座に上半身を隠す。

 

「ひ、酷いな。僕は筋肉がついたねって言いたかっただけなのに」

 

「そういうお前は・・・・・・・・変わらないな」

 

「まぁ、僕は筋肉がつきにくい体だからね。羨ましいよ」

 

「おー、イッセーと木場。清羅とヴァーリにヒュドラか」

 

 聞き覚えのある声がしたので、振り返ってみると、そこにはミイラがいた。

 

「ゼノヴィア・・・・だよな?その格好はなんだ?」

 

 俺が恐る恐る聞くと、ゼノヴィアは。

 

「あぁ、これか?修業してケガして包帯巻いてたらこうなったんだよ」

 

「ゼノヴィアさん、こっちに来てください。包帯巻き直しますので」

 

「あぁ、すまない、ありがとう。なにせ、不器用だからね」

 

 そうして、清羅に包帯を巻き直されるゼノヴィア。

 

 それにしても、木場もゼノヴィアもオーラが濃くなったな・・・・・・・・

 

 あれ?俺、いつの間にそんな事分かるようになったんだ?もしかして修業の成果か?

 

「皆さん!」

 

 可愛らしい声と共に、城門からシスター服姿のアーシアが出てきた。

 

「アーシア、久しぶり!」

 

 こっちに来たアーシアに挨拶をしたのだが、何故か顔をそむけられてしまった。

 え?なんで!?

 

「兄さん、服を着てください。その状態のままじゃ変質者ですよ」

 

 清羅がそう言ってきた。

 あぁ、そういうことね。

 

「あら、皆揃ったみたいね」

 

 そう言いながら現れたのは、部長だった。

 あぁ!本当久しぶりだ!

 

「部長!兵藤一誠!ただいま帰還しました!」

 

「イッセー・・・・・・・・随分逞しくなって・・・・・・・・いい体になったわね」

 

 そう言うと、部長は俺に抱きついてきた。

 あぁ!俺は今、生を噛み締めている!

 

「さて、皆。シャワーを浴びて着替えたら、修業の報告会をしましょう!」

 

 良かったぁ!俺、やっと文化的な生活がおくれるよ!

 

 さて、修業の成果、お披露目するとしますか!

 

 

 

―●●●―

 

 

 俺達、グレモリー眷属が全員集合したのは、二週間以上ぶりだった。

 

 皆の修業内容を聞いたところ、木場は先生から『神器(セイクリッド・ギア)』の扱い方を学ぶとともに、木場の師匠、フリード、アーサーとの模擬戦。

 

 ゼノヴィアは、デュランダル、もう一つの聖剣になれるために、フリード、アーサーとの模擬戦。

 なんでも、デュランダルは自ら使い手を選ぶじゃじゃ馬だから、同じく使い手を選ぶ聖剣、魔剣を持つこいつらに学べ。と先生に言われたそうだ。

 

 二人が修業内容を話し終わったあとに、俺も山での修業生活の事を話した。

 

 話し終わったあと、皆、かなり引いてた。

 

「あの先生、なんか俺だけひどい生活送ってないですか・・・・?」

 

「あぁ、俺も驚いてる。お前なら途中で逃げ帰ると思って考案したプランだからな・・・・やりすぎた、すまん」

 

「・・・・・・・・・・・・」 

 

 部屋がしばしの静寂に包まれる。

 

 こんなひどい話があっていいのか!?

 いくら悪魔だからって人権を無視していいわけじゃないだろう!

 

「ま、まぁ、そのおかげで体力も向上したし、正式に『禁手(バランス・ブレイカー)』に至れたんだからよかったじゃねえか」

 

 それはそうだけども!あの地獄の修業を得て『禁手(バランス・ブレイカー)』にも至れたけど!

 

「イッセー・・・・・・・・よく頑張ったわね」

 

 そう言いながら俺を抱きしめてくれる部長。

 あぁ、部長のぬくもりが俺を包む!

 やっぱり、葉っぱにくるまって寝るのとは大違いだ!比べ物にならねえよ!

 

 

「さてと、報告会はぼちぼち終了にするか。今日は解散とする。皆、しっかり休めよ」

 

 先生の一声によって、報告会は終了した。




ありがとうございました!
次回もみ、お楽しみに!


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第二十七話

 
 大変長らくお待たせしました!第二十七話、始まるよ!

 あと、今回の話は短いです。すいません!




 

 兄さん達のレーティングゲーム当日。

 私、兵藤清羅はチームの皆と共に、各勢力の重鎮達が招かれているVIPルームで待機していました。

 

「清羅。一つ聞きたいことがある」

 

 抹茶ラテを飲みながらまったりしていたら、ヴァーリ君から質問されました。

 

「君がリアス・グレモリーの対戦相手なら、眷属の中で確実に誰を取る?」

 

 誰を確実に取るか、ですか。

 それは当然――

 

「兄さんですね。チームの皆はもうとっくに知ってると思います。チームの精神的な柱が誰なのかを・・・・」

 

 

 どんな状況でも前を向き、諦めず進み続ける兄さん。

 そんな兄さんの諦めの悪さが、良くも悪くもチームの皆の活力となっています。

 その中でも、特に影響を受け、自らの精神的な柱としているのが、『(キング)』であるリアス先輩ですからね。兄さんが討ち取られたときが心配です。

 

「同じだな。俺も彼を狙う。戦いにおいて、敵の精神的柱を折るのは当然のことだからな」 

 

 ヴァーリ君も同じ考えだったようで、手を組み、頷いていました。

 

 

『皆様、このたびはグレモリー家、シトリー家のレーティングゲームの審判役を担うこととなりました。ルシファー眷属「女王(クイーン)」のグレイフィアでございます』

 

 グレイフィアさんの試合開始のアナウンスが聴こえたため、私達は試合会場に目を向けました。

 

『我が主、サーゼクス・ルシファーの名のもと、ご両家の戦いを見守らせていただきます。どうぞ、よろしくお願い致します。早速ですが、今回のバトルフィールドはリアス様とソーナ様の通われる学舎「駒王学園」の近隣に存在するデパートをゲームのフィールドとして異空間にご用意いたしました』

 

 今回のゲームの会場である、学園の近くにあるデパート。両チームが内部の構造を知っているため、本来なら比較的やりやすい部類に入るでしょう。しかし――

 

『今回、特別なルールがございます。陣営に資料が送られていますので、ご確認ください。回復品である「フェニックスの涙」は今回両チームに一つずつ支給されます。なお、作戦を練る時間は三十分です。この時間内での相手との接触は禁じられております。ゲーム開始は三十分後に予定しております。それでは、作戦開始です』

 

 今回の特別ルール

『デパートを破壊し尽くさないこと』により、グレモリー眷属側がかなり不利となります。

 おそらく、全力を出せるのは木場先輩くらいですかね?・・・・・・いや、それも厳しいですかね

 

 

 

 

―●●●―

 

 

 

 その後、グレイフィアさんが試合開始宣言をしてからかなりの時間が経ちました。

 あっという間に時は過ぎ去り、ゲームはもう終盤です。

 

 それにしても、小猫ちゃんの猫耳姿、可愛いなぁ。

 

 しかし、ギャスパー君が試合開始してから即座にリタイヤさせらたことには驚きを隠せませんでしたね。

 それでも、リタイヤの理由が理由なので、観戦していた方々は皆、理解しながらも微妙な表情をしていました。

 そんな私も、微妙な表情をして見ていた一人です。

 

 

「ほっほっほっ、面白い試合じゃな」

 

 目を輝かせ、モニターで試合の様子を見ているオーディンさん。

 

 それにしても珍しいですね。あのオーディンさんが、ここまで楽しそうにしているなんて。

 

「あのシトリー家の『兵士(ポーン)』。いい悪魔じゃな。ああいうのが強くなる。これだからレーティングゲームの観戦は楽しいわい。弱者が一線の間に化けるのだからのぅ」

 

 数時間前まで名前すら知らなかった匙先輩に対して、最大級の賛辞を贈るオーディンさん。

 

「そうでしょうそうでしょう!オーディンおじいちゃんったら話が分かるんだから☆」

 

 先程まで泣きそうな顔だったセラフォルーさんは、妹の眷属を褒められたことで一気にテンションアップ。

 

「・・・・やられたか、兵藤一誠・・・・」

 

 その一方で、兄が撃破されたことに対し、難しい顔をしているヴァーリ君。

 

 

 あぁ、兄さん。これ、帰ったらヴァーリ君による鬼のしごきコースですよ・・・・

 

 

 

―●●●―

 

 

 

 ゲーム終了後。俺は医療施設の一室で目を覚ました。

 

「お目覚めですか?兄さん」

 

 声のした方を見ると、そこにはりんごの皮を剥いている我が妹の姿。

 

「なぁ、清羅。試合の結果は・・・・?」

 

 俺は、清羅が剥いたリンゴを食べながら、恐る恐る質問する。

 

「試合は、兄さん達の勝利です」

 

「・・・・・・・・そっか」

 

 俺は、清羅の回答に、力なく答えた。

 

「喜ばないんですか?初の勝利なのに」

 

 そんな俺に疑問を持ったのか、今度は清羅が質問をしてきた。

 

「・・・・あぁ。喜べない。なにせ、ゲーム前、圧倒的な力を持っているって言われてたのに、実際結果を見てみればギリギリの勝利だったからな・・・・」

 

 その中でも、俺は赤龍帝なのにやられちまった。

 

 おっさん、カール、ヴァーリに協力してもらって『禁手(バランス・ブレイカー)』にも至ったっていうのに、やられちまったから、更に喜べない。

 

「そうですか・・・・」

 

 清羅はそう言うと、それ以上何も言わず、黙々とリンゴを食べ始めた。

 

 俺は悔しくて、悔しくて。ただ自分が情けなくて、一言も話さずにいた。

 

「あぁ、そうでした」

 

 そんな中、静寂を破ったのはリンゴを食べていた清羅だった。

 

「ヴァーリ君から伝言です。『修業内容。更に厳しくするから覚悟しておくように』だそうです」

 

 清羅は、申し訳なさそうにヴァーリからの伝言を伝えた。

 

「わかった」

 

 俺はそれに対し、ただ一言、そう答えた。

 

 清羅は、心底珍しいものを見たといった表情をしていた。

 

「意外ですね。もうあんな修業やりたくないって泣き言を言うかと思っていましたが・・・・」

 

 清羅の言うことはもっともだ。

 

 以前の俺だったら、嫌だ、死にたくない!って言って全力で断っていただろう。

 

 

 ・・・・・・・・断っても意味なさそうだけど

 

 

「俺だって、本当は厳しい修業なんてしたくないさ。でも・・・・」

 

 

 でも、今回の試合を通じて、理解した。

 今のままじゃ、俺は何の役にも立たない。

 

 ―――だから

 

 ヴァーリに清羅、アザゼル先生といった自分より格上の相手に戦い方を学ぼう。

 

 部長や朱乃さん。アーシア、ゼノヴィア、ギャスパー。同じチームの仲間達と強くなろう。

 

 同じチームの仲間で、悪魔になった当初から超えたかった相手、木場。

 そして、今回の戦いで思いと拳をぶつけ合った新たな俺のライバル、匙。

 この二人と競い、高め合あって、強くなる!

 

 

「いい顔つきになりましたね、兄さん」

 

 隣にいた清羅が、そう言って微笑みながら、優しく頭をなでてくれた。

 女の子特有の柔らかい手触りと、温もりが頭に伝わってくる。

 

「ありがとな、清羅」

 

 俺は、更に頑張れる気がした。

 

 

 

―●●●―

 

 

「へぇ、あれが清羅の兄にして今代の赤龍帝、兵藤一誠か」

 

 とある施設の中にある一室。そこで若手悪魔同士のレーティングゲームをモニターで観戦していた黒髪の青年が口を開いた。

 

「うん。彼もまた、予想の斜め上を飛んで成長していきそうだな。性格も戦い方も違うとはいえ、そこはやはり兄妹というわけか」

 

 黒髪の青年は、愉快気に笑う。

 

 

「しかし、それでもまだ俺達の領域には程遠い」

 

 彼は、その言葉とともに、先程の愉快気な笑みを一変させ、表情をかたいものにする。

 

「さてさて、一刻も早く強くなってもらうために何か仕掛けたいところだが・・・・うちの構成員達と保護した子供達は、現在ハワイでバカンスの真っ最中だしなぁ」

 

 どうしたものか、と彼は腕を組み考え込む。

 

「――そうだ、あれがあったな」

 

 何か閃いたのか、彼はニヤリと口元を歪め、カバンから携帯電話を取り出した。

 

「さて、そうと決まれば早速手配しよう。まずは清羅に連絡を入れて―――『おかけになった電話番号は、現在使われておりません』だと・・・・!?」

 

  




 
 最後に出てきた黒髪の青年。一体何操なんだ・・・・
 
 彼が今はどんな立ち位置なのか。清羅とはどういう関係なのか、それらのことはこれから判明していきます。お楽しみに!
 


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第二十八話

お待たせしました!第二十八話、始まるよ!

・・・・・・・・それはそうと皆様。曹操さんのアニメでの声、中の人が中の人なだけに、声を聞いてると某ニートを思い浮かべてしまうのは私だけでしょうか?


 すっかり夏も明け、高校生活が再開した頃、私のもとに思いもよらぬ相手から連絡が入ってきました。

 

『やぁ、久しぶりだね。清羅』

 

 どことなく胡散臭さを感じる声で挨拶してきた相手は、師匠のもとでともに修業に励んだ兄弟子にして、現在はとある一大組織を束ねる首領、曹操さんでした。

 

 ・・・・・・・・あれ?というか私、この人に携帯番号教えてないはずなんですが?

 

 

『おそらく君は、何故俺が君に電話をかけられたか疑問に思っていることだろう。答えは簡単。ゲオルクに携帯番号を教えてもらったからさ』

 

 あぁ、そういうことでしたか。それで、私の番号を知らないのに電話をかけてこられたわけですね。

 

『というか清羅?うちのメンバーの殆どが番号を知っているのに俺だけ知らないとか、軽く・・・・いや、かなりショックだったんだが・・・・?』

 

 若干悲しんでるような声で質問してくる曹操さん。

 

 嘘偽りは好きではないので、ここは正直に答えることにします。

 

「あぁ。それは携帯番号を変えた際、他の人達にはちゃんと伝えたんですが、あなたには面倒くさくて伝えていなかったからですね。ごめんなさい」

 

『ひ、酷くないか?俺は一応、君の兄弟子にあたる存在なのだが・・・・」

 

 先程よりも、悲しみが増したこのような声で抗議してくる曹操さん。

 

 彼の事を何も知らない相手が聞けば、本当に悲しんでいると判断し、すぐに謝罪するであろう声音と態度。

 

 でも、彼の事を知っている人からしたら――

 

「そろそろ悲しむふりもやめてください、曹操さん。いい加減鬱陶しいです」

 

 私のように、ただ鬱陶しいだけです。

 

『・・・・つれないなぁ。ここは「ごめんね!曹操お兄ちゃん!」って涙声で謝ってくれたっていいだろうに』

 

「死んでもそんなことはしません」

 

 おぉ、自分でも驚くくらい早く言葉が出ました。

 

 ていうか曹操さんの私の声真似、驚くほど似てませんでしたね。寧ろ気持ち悪いです。

 

『冗談だよ。そこまで本気になって否定しなくてもいいだろうに。すぐムキになっちゃって・・・・・・・・全く、可愛いなぁ』

 

「いい加減にしなさい。切るぞ?」

 

 

 

『・・・・・・・・分かった。これ以上おちょくって君が怒ると本気で切られそうだからやめよう。だから清羅、言葉遣いを戻すといい。ぶっちゃけかなり怖い』

 

 曹操さんに指摘されるのは癪ですが、自覚はあったのでいったん深呼吸をして、心と体を落ち着かせます。

 

『落ち着いたかい?』

 

「はい」

 

『それは良かった。では、早速本題に入ろう』

 

 彼は、私の呼吸を確認したあと、ようやく今回の件の本題に入り始めました。

 

『実はだね―――』

 

 

 

―●●●―

 

 

 

「・・・・・・・・なるほど」

 

 あの電話のあと、私はヴァーリ君に曹操さんから連絡があったことを伝えました。

  

 と言っても、向こうがヴァーリ君には伝えてほしいと頼んできたからなんですが。

 

「まさか、彼がわざわざそんな事を頼み込んで来るとはな・・・・」

 

 全力で面倒くさそうにしているヴァーリ君。

 

 うんうん、その気持ちは理解できます。

 

「しかしいいのか?そんなことをして。この町は今や、三大勢力の重要拠点の一つなんだが・・・・」

 

 曹操さんの頼み事の内容に首を傾げるヴァーリ君。

 そう。普通ならこの町で何かすることは愚か、入ろうとするだけでも難しい事なのですが・・・

 

「彼曰く、アザゼルさん、サーゼクスさん、ミカエルさんと楽しい楽しい『お話し』をしたところ、すんなり入る許可を頂けたみたいですよ」

 

「・・・・そういうことか・・・・」

 

 私の話した曹操さんの内容に、ドン引きするよりも、あぁ、やっぱり。と納得した表情を見せるヴァーリ君。

 

 あぁ、やはりヴァーリ君の中では彼、そういう扱いなんですね。ま、大賛成ですが。

 

 

 そんな感じで、私達は曹操さんの頼み事の準備に取り掛かりました。

 

 

 

―●●●―

 

 

 

「ええっと・・・たしかここの一軒家で合ってるんだよな?」

 

 俺、兵藤一誠は悪魔稼業のため、この町にある一軒家を訪れた。

 

 ここのところ、悪魔稼業そっちのけで、夏休みの課題と修行漬けの毎日だったから、今日の仕事はきっちりこなさなきゃな。

 

「ごめんくださーい。悪魔稼業で参りました!」

 

「――あぁ、入ってくれ」

 

 聞こえてきたのは、若い男性の声だった。

 

「失礼します!」

 

 中に人がいることが分かったので、扉を開け玄関に入る。

 

「やぁ、よく来てくれたね・・・・・・・・それにしても本当に自転車で来るんだな。驚いたよ」

 

 入った先で出迎えてくれたのは、漢服を羽織った二十代くらいであろう黒髪のイケメンだった。

 

 ・・・・イケメンからの呼び出しかぁ。どうせなら木場みたいに、美人さんに呼ばれたかったなぁ。

 

「・・・・なるほど、自分を呼び出した相手が男性で、がっかりした、というところかな?」

 

「とととと、とんでもありませんよ!!あなたのような美男子に呼び出してもらえて、本日は光栄の極みです!」

 

 しまった!顔に出てたか!?できるだけ顔には出さないよう気をつけてたんだけど・・・・・・・・だとしたらとんでもなく失礼なことしちゃったぞ!

 

「ハハハ、そう畏まらなくてもいいよ。俺だって、どうせ自分を呼び出してくれるなら、男性より女性の方がいいからね。素直なのはいいことだ」

 

「・・・・すいません」

 

 まずいな、こうは言ってくれてるけれども、第一印象最悪だろうな。

 よし!これから巻き返していかなくちゃな!

 

 

「それで、本日悪魔を召喚した理由はなんでしょうか?願いがあったから呼んだんですよね?」

 

 気を取り直して、少しでも先程の悪印象を払拭するべく、まずは今回彼が俺を召喚した理由を聞いてみた。

 

 すると、彼は腕を組んで考え込みだした。

 あぁ、やっぱり悪魔との契約だからリスクとか考えてるのかな?

 

 

「――決めた。願いは、君と話すことだ」

 

 しばらく考え込んだ末に彼が口に出した願いは、俺が予想していたもの願いより、単純で軽いものだった。

 

 ・・・・え?もっと大きい願いかと思ったけどそれだけか?なんかこう、大金持ちになりたいとか、モテモテになりたいとか・・・・

 ――いや、この人なんかできる人っぽいからそういうのは間に合ってるのかな?

 

 だとしたら羨ましいぞこんちくしょう!

 

「そ、それだけ・・・・ですか?」

 

 あ、つい思ったことを口に出してしまった。

 それに、多分顔も引き攣っている。あれだけ注意しようと決めたばかりなのに、もうやらかしちまった。

 

 

「あぁ。他にもいくつか候補を考えたんだが、互いが互いをを知らない状況では、それは叶えられないことだからね」

 

 なるほど。そういうことだったんだ。

 

 しかし、何を考えていたんだろうか?互いが互いを知らなきゃ叶えられない願いって、一体何がある?

 

「でも、いいんですか?そんな願いで・・・・正直申し上げますと、俺と話なんかしても全然面白くないと思うんですが・・・・」

 

 話すのはいいけど、相手を不快にさせて契約が取れなくなってしまったら意味がない。

 

 俺は、清羅や部長みたいに話上手、聞き上手というわけではない。どちらかといえば、話すのや聞くのが下手な部類に入るだろう。

 

 だから、一応確認しておく。

 

「なんだ、そんなことか」

 

 俺の確認に対し、相手は手をポンと叩き、俺の反応を意外そうに見て呟いた。

 

 ・・・・何かおかしなところでもあったか?

 

「別に構わないよ。話さえできればそれでいい。―――それに」

 

 そ、それに?

 

「現赤龍帝とのお話だ。面白くないはずがないだろう?」

 

 彼は口元を歪め、ニヤリと笑いながらそう言ってきた。

 

「ッ!?」

 

 ――俺の背中に悪寒が走り、即座にその人から離脱する。

 

 

 しまった・・・・!まさかこの人、『禍ノ団(カオス・ブリゲード)』の刺客か何かか!?

 だとしたらまずい!警備が強化されているこの町に難無く侵入できている時点で、相当な実力者だ・・・・!

 

 

「・・・・『神器(セイクリッド・ギア)』の名前を言い当てられただけで、そこまで警戒するかい?」

 

 彼は呆れた様子で、やれやれと肩をすぼめた。

 

「あんた。なんで俺の『神器(セイクリッド・ギア)』のことを知っている」

 

 相手を睨みつけながら、声を低くして質問する。

 

「知ってるも何も、君は有名人だからね。そのくらいのこと、調べればすぐに分かる」

 

 しかし相手は、俺の睨む視線なんか気にも止めず、あっさりと答えた。

 

 ・・・・え?そ、そうなのか?

 

「そこまで意外だったかい?兵藤一誠君?リアス・グレモリーの『兵士(ポーン)』で現赤龍帝。これだけで、普通は名が広まるものなのだが」

 

 なるほどなるほど!俺、そんなに有名だったんだ。

 

 ・・・・いや、この場合は部長の知名度に感心すべきなのか?

 

 

「・・・・君、顔に出やすいタイプだろう?」

 

 相手に苦笑されながら、思わぬところを指摘されてしまった。

 

「そ、そんなに分かりやすいですか?」

 

「あぁ。その顔を見てると嫌でも分かるよ」

 

 きっぱりとイケメンスマイルで断言された。

 なんだろう、ポーカーフェイスとか俺には向いてないのかな?そこまで分かりやすい顔?

 

「って、話が逸れましたけど・・・・・・・・じゃああなたは、『禍の団(カオス・ブリゲード)』の刺客ではないんですね?」

 

 話の調子が狂ったけど、気を取り直して再び質問する。返答次第じゃ即戦闘になるかもしれない。

 

「あぁ、刺客ではないよ。仮に、もし俺が本当に刺客だとしたら、君は今頃死んでる」

 

 サラッと恐ろしいことを言いながら否定された。

 

「だってそうだろう?ターゲットから情報を抜き出すためならともかく、ただ殺すだけならこうして会話を楽しむ理由がない」

 

 お、恐ろしいこと言ってるのには変わりないけど、言いたいことは理解できた。

 

「それで、願いは叶うのかい?」

 

「あ、はい!叶います!じゃんじゃん聞いてください!」

 

「それは良かった。では早速なんだが―――」

 

 

 

―●●●―

 

 

 

「ありがとう。今日は楽しかったよ」

 

「こちらこそ!有意義な時間を過ごせました!」

 

 あのあと、いろんな事を話した。

 最初は、聞かれたことだけ答えればいいやと思ってたんだけど、気が付いたら俺の方から一方的に話してしまっていた。

 

 話してみて分かった。この人、ものすごく聞き上手だ!話しててこんなに楽しかったのは『ドラグ・ソボール』について語った以来かもしれない。

 

「あ、そうだ。最後に名前を教えてもらってもいいですか?まだ聞いていなかったので」

 

 たくさん話しておきながら俺は未だにこの人の名前を知らない。聞いて教えてくれるだろうか?

 

「あぁ、そういえばこちらは名乗っていなかったね。分かった、俺の名前は曹操だ。気軽に曹操さんと呼んでほしい」

 

「はい!分かりました!それでは、これからもご贔屓に!曹操さん!さようなら!」

 

「あぁ、さようなら」 

 

 挨拶を交わし、俺は家から出た。

 

 それにしても曹操さん、か。

 

 どこかで聞いたことある名前だけど、多分気のせいだよな!

 

 




ありがとうございました!次回もお楽しみに!


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