俺たちの戦いはこれからもつづく。 (ななゆー)
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事案1
事案1・整理番号001 『1年13組』
はじめに『あらすじ』を読まれる事を強くお勧めします。
「現時刻より、状況を開始するわ。オペレーションYOBAIスタート!総員配置に付けっ!」
時刻は夜、それも日付が変わった直後の深夜。
総員配置の号令で男子2人と女子4人の6人で固まっていた集団は、一斉に男子は男子、女子は女子とチームを作り分散して行った。
その6人は全員全身黒ずくめの装備で身を包んでいて傍から見ると異様だ。
だが、そんな彼らもれっきとした高校生なのである。
「男子チームの対象アルファーは女子寮602号室にて就寝中、女子チームの対象ブラボーとチャーリーは男子寮209号室で就寝中なのを確認したわ。各員の目標を予定どうり襲撃せよ」
「「了解」」
そして、黒装備の女子高生4人は男子寮209号室へとたどり着く。
ハンドジェスチャーで一人が突入合図すると、もう一人がICカードキーを特殊装備で解除し、突入合図した方がカチャとならないような丁寧さで中の人間を起さないように侵入しようとしたその時ーーー
ドアノブを引いただけなのに、プシューっと白いガスのようなものが209号室を包んだ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
第三次世界大戦。
かつて無いほど世界に混乱を与えたこの戦争は世界の様々なパワーバランスを変えてしまった。
バランスを変えた主な原因は日本語の台頭である。
なぜ、日本語なのか。
それは人類の暮らしを変えた、次世代プログラミング言語『のぞみ』が今までのプログラミング言語と違い、完全日本語ベースで開発されたからに他ならない。
日本語特有の曖昧な表現や多様な表現が、既存の言語と差をつけた原因とされている。
天才研究者『
世界の人々は外国語として『JAPANESE』を学び、世界共通語もいつの間にかそれに釣られて『英語』から『日本語』へと変化していったのである。
またこれと同時期に治安・経済情勢が悪化していき、世界のバランスは徐々に音を鳴らしながら崩れていき....第三次世界大戦が勃発した。2047年のことだった。
終戦は、2049年。
終戦を迎えても治安が安定しない国は多数存在し、また犯罪組織の国際化も目立ってゆく。
こうした現状に、世界を安定化するべき『国連』が役立たずとバッシングを浴び、存立危機に直面する。
このような経緯を受け、加盟国は総会で一つの条約の採択を決断した。
それは、国際警察力強化による国際治安安定化に関する条約、いわゆる『DIP条約』。
国家が主権の一部である警察権を国連と自主的に共有するというもの。
表向きでは満場一致で可決され、異例の速さで各国が批准し2050年末には本格的に発効される。
これにより、国連は初の常設実権組織『
当然日本もその対象で、海上保安庁の全てと自衛隊の一部、消防と警察の一部と在日米軍の一部を合体する形で国際警察局日本本部を設立。
延べ10万人ほどの人員が国際公務員となり、日本で国連の警察として活動することとなったのである。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
入学おめでとう!
デカデカとそう書かれた横断幕を横目に、俺はこれから入学する高校の門を潜る。
高校と言ってもそこは巨大な要塞。
広さが約93haあり、東京ドーム19個は収まる面積を誇る。
『国際連合国際警察局 名古屋国際警察大学校』
それが俺が今から入学する学校の正式名称。
俺はその付属高等部に入学するんだ。
まあ、内部進学なんだけどね。
周りを見回していながら人の流れに流されていくと、新入生受付のカウンターが姿を現す。
「次の方どうぞ」
数人待ったが、すぐに俺の番が回ってきたみたいだ。
「入学おめでとうございます、お名前よろしいですか?」
「
「お調べします。少々お待ちください」
カウンター事務のお姉さんはPC端末で情報を呼び出し、手続きをして
「お待たせいたしました」
と俺に作業終了を告げてくる。
「木場さんは13組に配属になりました。教室の場所を記した校舎案内図を転送します。タッチしてください」
PC横のNFC近距離無線通信端末へ『ストラップ』のタッチを促してきた。
指示された通りに、腕につけているソニー製ストラップ端末をNFCへタッチする。
すると一瞬で校内図が転送され、ストラップは立体投影で図を表示した。
このストラップと呼ばれている端末、8年前ぐらいに登場した新型携帯電話でそれまでの主流だったスマートフォンを一瞬で駆逐してしまった代物。
形は時計タイプで、重さは20gくらい。めっちゃ軽い。
それでいて、立体投影は空気振動による空間操作でタッチパネルを触ったような感覚があるから違和感がない。
そして、充電要らず。
今や、携帯キャリアが電話の電波と一緒に電気も電波で届けるようになった時代。
だから、バッテリーが搭載されてないのが標準になってたりする。
あれもこれも全て『のぞみ』の恩恵らしい。
「木場さん、図の赤く光っている所があなたの教室です。玄関入ってすぐの階段を利用して3階になります。手続きは終了しましたので、他にご質問がなければ教室に向かってください」
「わかりました、教室に向かいます。ありがとうございました」
そうして、図に従って俺は教室に向かった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
『多目的ルームA』
うん?おかしいな。図が指示した教室に向かったら、明らかにホームルームではないであろう部屋に到着してしまった。普通、『1-13』とかじゃかいの?
部屋に入るのを、少し躊躇していたらいきなり背後から
「おい、早く部屋の中に入らないか」
と声をかけられた。
「13組の教室ってここであっていますか?」
「ああ、そうだ。そして私は残念なことに13組のの担任だ。早く入室して席につけ。座席表は黒板に表示してあるから」
残念なこと?どういう事だ?さっぱり分からん。
考えてもしかたがないので、指示されたとおりに俺は座席表を確認して自席に着席した。
どうやら俺がラストだったようで、他は全員着席している。
全部で9人?随分少ないな・・・中等部の頃は普通に1クラス30人はいたのに。
そんなの事を考えていたら、先程の残念担任が教室を見回してから生徒に向けて喋り始めた。
「では、新入生の諸君。これより、名古屋国際警察大学校高等部1年13組配属生徒に対する新入生オリエンテーションを開始する。
まずは、担任紹介から始めよう。私は本年から卒業まで君達の
ーーーこのクラスにいる俺達新入生は、残念担任改め中野大尉が言ったとおり『早期教育幹部候補生、通称・早期幹』という枠で国際警察局に入局している。
早期幹は常に人材不足で自転車操業状態の国際警察局に1日でも早く・たくさんの即戦力幹部を投入しようとして創設された制度で、小学校卒業後の児童を採用し、世界9箇所にある国際警察大学校の付属中等部に入学させて一般教養と並行して国際警察官としての基礎教養を叩き込む制度のこと。
小学校卒業後という、しっかり自分の今後を考えられないかもしれない年齢の子供を採用するのは、各界からかなりの反対も受けているが、各々入学したい理由がかなり厚いので(両親失ってたりとか、お金無くて進学できないとか、超超軍事マニアとか)世界中で2700人を毎年採用しているが、それでも毎年かなり高い倍率の入試となり、それを勝ち抜くのは容易ではない。
そんな試験戦争を勝ち抜いた俺たちは、育った国の最寄りの国に設置されている国際警察大学校の中等部でそれぞれ基礎習得の為の勉強をし、今日高等部に進学した。進学すると専門知識習得の為に普通捜査科や陸上戦闘科など各専門学科に振り分けられる。
学科によってはいくつもの高等部に設置されているものもあるので、そのまま中等部と同じ敷地にある高等部に進学する者も多いが、俺のように配属学科が中等部と同じ敷地にある高等部に設置されていなかった場合は、その学科がある国の高等部に飛ばされるケースがある。
俺は両親の都合でヨーロッパに住んでいたのでドイツにある中等部に在籍していたが、つい三日前『お前の学科は名古屋にある学科になった。はよ行け』と言われてドイツの学校を追い出され、はるばる日本にやってきた。
移動準備とかあるのだから、もうちょい早く言って欲しいがこれが早期幹の教育スタイルらしい。
ちなみに、俺がどの学科になったかは今も知らない・・・・。
知らされていない。
謎の伝統で、初日に担任から伝達されることとなっているらしい。
だから、クラスみんな待っている。
中野教官が学科を発表するのを。
「みな、この13組が何の学科クラスだか気になっているようだな」
「はいっ気になります〜」
教官に元気よく応答したのは俺の前の座席に座っていた、女子。
いわゆる金髪ロリという言葉がピッタリあてはまるであろう容姿。
碧眼で、サラサラ金髪で、背が低い。
電車を小児運賃で乗ってもバレなさそうな感じ。
「君は..アリス ウィルソン君か。では、逆に問おう。なんの学科だと思う?」
「えっ..学科って新学期になったら教えて貰えるんじゃないのですか〜?」
「普通はそうだな。しかし、この学科は
「課題ですか・・・?」
期待した返答をもらえず、意外な返しをうけたウィルソンさんは『?』顔をしている。
「ああ、そうだ。しっかり課題をこなした者には良いことがあるかもしれないから、しっかりやるように。では、学科のことはここまでとしてーーー」
「君達は本日をもって、高等部の学生となったわけだが、中等部とは違うのは基礎訓練を修了し、専門学科に別れて勉強する事だけじゃない。中等部では君達は単なる学生としての学業と基礎訓練をこなしていけばよかっただけだが、高等部ではそうはいかない」
「どの学科でも専門学科の履修のために、実際に現場に赴いて活動する。そうなった時に必要なのが、この警察手帳だ」
中野教官は制服の内ポケットからスっと自分の警察手帳を取り出し、みんなに見せながら話を続けた。
「今から君達にこれと同じ物を貸与する。これを手にしたら、君たちは晴れて高校生でありながら、正規の権限を持った国際警察官の一等保安士に任官する。そこからは毎年進級する事に階級がひとつずつエスカレーター式で上がっていって、大学校を卒業できれば晴れて幹部だ。まぁ、そんなに簡単には進級できるカリキュラムではないがな」
「ーーだが、ここまで中等部で訓練を耐えてきた君達なら、高等部もドロップアウトせず卒業できると私は信じている。邁進するように」
その後、警察手帳の配布とストラップで今日のこれからの指示が書かれた手紙を一斉送信メールで受け取って、新入生オリエンテーションはお開きとなった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
俺は校舎を後にし、先ほど受信した指示書に従い宿舎に向かった。宿舎はわりかし校舎と近い位置にあり、マンションのような建物が2つ並んで建っている。俺から向かって左が女子用・右が男子用らしい。
「えっと俺の部屋は209か..」
部屋の鍵は先ほど教官からもらった警察手帳。
刑事ドラマにでてくる縦開きのヤツとは違い、横開きのタイプで開くと左側にIDカード、右側に局章(国際警察局のマークが描かれた金バッチ)がついている。
一見アナログな代物だが、高密度暗号化非接触ICと生体情報記録が内蔵されているらしく偽造は不可能らしい。
大切な警察手帳を失くすとクビになるとか、ならないとか。
そんな事を考えながら、ドア横の電子キーに警察手帳をタッチすると『pi』と電子音がして開錠される。
ドアを開けると靴が一組。
相部屋なのかな?
あまり深く考えずに部屋の方向に短めの廊下を進むと、いきなり....
『お兄ちゃん...私たちは特別だよね?』
と甲高い声が聞こえてきた。
は?お兄ちゃん?
カチ・カチ・カチ
マウスのクリック音らしき音も聴こえてくる。
『私のぜんぶ...もらってくださいお兄ちゃん//』
全部ってなんだ。そもそもあんた、誰?
その不思議な声の方向(というか、209号室のメインルーム)に進むとーーー
「あぁ〜ナギサたんの全部もらったるぅ〜」
と叫んでいる変態が一人ノートパソコンとおしゃべりしていた。
☆お久しぶりですの方。
『鎮守府のつくりかた』の更新が遅れていてすみません。
年内更新を目指しております。もう少々お待ちください。
☆それから、遅れましたが『コミケ92』でさーくる*にじいろへお越しいただいた方。
ありがとうございました。処女本で右も左もわからず大変でしたが、同人誌製作は楽しかったです。
巻末四コマについてはpixiv掲載予定でしたが、都合により次回の巻末に回そうと考えています。
次回はキャラ中心に『暁』本をだそうかと思います。いつになるかはわかりませんが、決まり次第お知らせ予定です。
☆はじめの方。
初めまして。更新激遅の素人nanayuと申します。ハーメルン書いたり、同人サークルで艦これ本出したりしました。これからも少しずつ書いていくので、少しでも気に入って頂ければ幸いです。
(艦これ二次創作『鎮守府の作り方』→ https://novel.syosetu.org/106189)
(Twitter→ https://twitter.com/anitaku7yu)
(サークルのpixiv→ https://pixiv.me/nijiiro_doujin)
☆『俺たち戦いはこれからもつづく。』第二話もよんでくれるやさしい方。
次回更新はなんと本日午前六時三十分です。
激遅更新人間ですが、今回は頑張りました!
現在、最終フェーズ中です。六時三十分までお待ちください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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事案1・整理番号002 『江 列缺』
「アァ、ナギサたんの全部もらったるぅ〜」
と叫んでいる変態が一人ノートパソコンとおしゃべりしていた。
「えっと・・・今大丈夫か?」
エロゲとしか視線をあわせてない彼(変態)にコンタクトを試みたところ
「このシーンが終わるまで待ってくれ」
と待機命令を受けたので、部屋に配達されていた俺の荷物を荷解きして待つことにした。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「ふぅ、ひと段落ついたからセーブした。待たせてすまない」
彼のエロゲ―プレーは、俺が荷ほどきを始めてから五分ほどでかたがついた(らしい)。
さっきまで鼻息フンフンして気持ち悪かったのに今は、いたって冷静だ。
しかも声のトーンが2オクターブは低い。
彼はさっきまで起動していたノートPCをロック状態にしてこちらを向いた。
黒髪で背は高一にしては低めで、さっきのナギサたんオタケビさえ聞かなければきっと、かなりの好印象を得られる面構え。
初めましてのはずだが、どっかで見たことあるなこの顔・・・
「はじめまして。僕は君と相部屋になった
「・・・・・」
「ーーーどうした?なぜ黙る?なぜ怪物をみるような呆気にとられた顔をしているんだ?」
ジャンリィチュエイーーー
怪物...彼の例えは正しいかもしれない。
彼は怪物だ。
江 列缺という名を耳にして固まらない国際警察官なんているのか?というレベルで彼は有名な学生。
なぜなら、毎年アメリカで開かれる
そんな人間が俺と相部屋だとしったら、そりゃ誰でも怪物をみるような呆気にとられた顔になる。
見覚えがあったのはきっと、国際警察局ネットニュースで顔写真を見たからだ。
だが、それならそれで好都合かもしれない。調べたい事があったから、情報のプロがいるのは助かる。
それに俺が固まってちゃ話にならないのでとりま脳を再起動して話を続けることにした。
「おおう、悪い。レツ、俺は木場有紀だ。日本人だけど、両親の都合でヨーロッパ生まれで中等部はハンブルクにいたんだ。俺のことも有紀って呼んでくれ」
「OK、ユウキ」
「ところで、レツ。中野教官の宿題の件なんだが...」
「やっぱりユウキも気になっていたか」
「ああ、あんなに
「そういえば、そんな事も言っていたな。明日ではダメな理由があったりするのかよくわからんがーーーーまぁ、安心してくれ。今、このノートPCで俺が作った情報収集AIがすでに情報収集をはじめているからな」
「おぉ~さすがだな。エロゲーやってるだけじゃ無かったんだな」
「まぁ、ノートPC用の機能制限版で、形跡残さないように且つ小一時間で調べられる程度の情報だから、期待するなよ?ーーおっと、早速情報が揃いつつあるな」
レツは早速収集したPDFの一つを開こうと、ダウンロードしたファイルを開くよう操作してくれている。
やっぱり、情報のプロは頼もしい。
PCの壁紙が白濁液に包まれた美少女じゃなかったら完璧なんだが、そこは目をつぶることとしよう。
「そのPDF、申請書の類か?」
俺はノートPCを操作するレツの横から画面に映っているPDFを見ながら、レツに内容の確認をとった。
「そうみたいだな..これは『演習・訓練許可証』だな。えっと」
レツがスクロールして内容を確認する。
「えっとなになに、以下の内容の訓練を許可する。
訓練内容:
訓練場所:名古屋国際警察大学校高等部男子寮209号室。
襲撃対象者:一等保安士 木場有紀、一等保安士 江 列缺・・・」
「襲撃訓練の許可書か・・って、おいおいおい襲撃対象者がなんだって?」
いま聞こえちゃいけない名前が聞こえた聞こえた気がしたんだが、レツ君?
「襲撃対象者:一等保安士 木場有紀、一等保安士 江 列缺」
「それは~つまり俺たち、襲撃されるってことか?」
「まっそーゆうことだな」
「MA JI KA YO」
中野教官のさっさとなにかあるから調べろオーラと性能でデスクトップパソコンに大きく後れをとるノートPCからでも、スグに閲覧できるレベルのザルセキュリティなイカニモ見てくださいと言わんばかりの演習・訓練許可証。
中等部三年間、キチガイ教育を受講してきた俺たちになら、直ぐに推測が立つ。
「なぁ、レツ。それは『先輩達が
「100%同感」
「という事は、中野教官の課題は意訳すると『先輩達来るから、どんな学科か調べて先輩たちの得意な戦闘パターンを分析して対策練ろよ』って意味だな」
中等部では誰もがある『掟』を叩き込まれた。
―――例え不意打ちだろうと訓練は訓練。
いつ何時どんな事件が起きるかわからない不安定な世の中。
それに対処できないヤツは、問答無用で厳しい罰がまっている。
思い出しただけで、トイレに行って吐きたくなるような罰が・・・
だから、自分が訓練参加者だった場合、例えそれが事前に知らされてなくても全力で挑まなきゃいけない。
それが、早期教育幹部候補生の鉄の掟なんだ。
「おっと、ユウキ。ここで悲しいお知らせだ」
「聞きたくないけど何?」
「そのご挨拶開始時刻は明日
「マジカヨ」
「マジデス」
早期幹の訓練は一年一年が物凄い濃い内容で構成されている。つまり、先輩と言うだけでかなりの実力差があるとみるのが普通だ。たとえ、レツみたいにひと分野で卓越してても、なんでもアリの戦いでは総合力で劣る。
「あと12時間もない状況で、先輩達を迎え撃つのか..厳しいな。襲撃してくる先輩達の人数は?」
「4人だ。全員、女。えっと名前は
上等保安士
上等保安士
保安士長
保安士長
上等保安士が二人で保安士長が二人だから、2年が二人、3年が二人ということになるな」
「2vs4でおまけに相手に3年が二人もいるのかよ...かなり、ムリゲーじゃね?それ。・・・そういえばレツの中等部時代の戦闘評価はどうなんだ?」
「拳銃E、小銃E、狙撃銃E、体術E、戦略B、情報戦Sってところかな。どうだ、スゴイだろ?」
「あぁ、ある意味スゴイな、その成績でどうやって中等部を卒業したんだよ。まぁ、薄々予想はしていたが、肉体使う戦闘は実質俺一人じゃねぇか。こんなんで、先輩四人相手どうやって戦うかなぁ」
半分詰んでいると思いながらも、俺は今日の指示がかかれたメールを自分のストラップに表示して、読み直す。
そこには『拳銃』の受け取り手順が記してあったからだ。
拳銃は国際警察官にとっての必携品で国際警察官は非番時にも、携帯が推奨されている。
中等部時代は校外の携行は禁止だったが、警察手帳を授かる高等部の学生は校外携行も解禁される。
ドイツの中等部から名古屋の高等部に移動になった俺は昨日まで中等部の学生で校外携行権限が無かったから、自分の拳銃を警察局の空輸部隊に移送をしてもらっていたので、それを受け取りに行くことにした。
先輩達を迎撃するにも、武器がなきゃ始まらないからな。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「高等部1年13組の木場です。拳銃を受領しにきました」
ここは名古屋国際警察大学校の銃器管理センター。
郵便局みたいにいくつか窓口が並んでいて、拳銃の購入相談や修理窓口、小銃や狙撃銃の貸し出しや
基地と呼ばれる大人数の国際警察官が勤務する場所と大学校には必ず設置されているらしい。
「では、こちらの読み取り口に警察手帳をタッチしてください」
窓口のオジサン(制服と名札から察するに装備部所属の保安上等軍曹三島さん)は俺がタッチした警察手帳の情報から拳銃の預かり記録を検索。
収納されている場所を割り出し、ささっと手馴れた手つきで俺の拳銃が入ったジュラルミンケースを持って来てくれた。
俺はそのケースをあけ、中身を確認する。
ダイヤルロックを解除しカチャッと音が鳴り、ふたが開く。
中から姿を現したのは、見た目を重視しながらも軽さ・精度・剛性どれをとっても抜け目のない黒く美しいシルエット。
ドイツLegende社製、射撃支援システム搭載版ストライカー式9mmコンパクトパラベラム拳銃『P320C』。
中等部時代からの相棒だ。
それを荷解きしてる時に出しておいたショルダータイプのホルスターにシュッとしまって、三島さんにお礼を言い、銃器管理センターをあとにした。
銃と密着しているこの感じ。
一般人とはズレている感覚なんだろうけど、なんか安心するな。
そして、俺が次に向かったのはPX。
正式名称は購買部。
割かしなんでも売ってる便利な商店街みたいなところだ。
チャラララランチャン♪チャラララララン〜♪
耳に残る独特な入店音。FamilyMart名古屋国際警察大学校店に足を運んだ。
「あった、これこれ」
そう言いながら俺が棚から取ったのは、たぶん、米軍と自衛隊と警察局の施設内でしか買えない限定商品『これでバッチリ!自主練用9mmゴム訓練弾(人に向けて撃たないこと!)』50発入の箱、おひとつ2500円!(税込)
それをひと箱もって、レジへむかう。
「Tポイントカードはお持ちですか?」
「いえ」
「おつくりしますか?」
「お願いします」
どうやら、日本ではTポイントというものが溜まるらしい。覚えておこう。
チャラララランチャン♪チャラララララン〜♪
「ありがとうございました~」
次に向かったのはPX内の装備屋『武器屋本舗』。
ファミリーマートと軒を連ねている。
俺の目当ては
真っ向から先輩達とやりあっても勝てないので、非殺傷兵器をばら撒く戦法をとるためだ。
しかし、フラッシュバンコーナーでフラッシュバン(3個パック6000円)を手に取ろうとした時、思わぬ誤算に気づく。
金がねぇぇぇぇぇえー
もうちょい正確に言うと、日本円がないっ。
ヨーロッパから来た俺は
貯金はヨーロッパの口座から、ウェブ上で開設した日本の銀行口座に振り込んで日本円建てにする手続きは済ませているが、まだ俺の手元に『キャッシュカード』がない。
名古屋の男子寮宛に届けるよう手続きはしたが、俺の日本行きが決まったのは三日前で、当然口座を開設したのもその後なので到着まで数日かかるキャッシュカードがまだ届くわけがない。
時刻をストラップで確認したら、もう午後5時半。
銀行に通帳を持って行って、窓口で引き出すことも不可能(そもそも、通帳も届いていない)。
詰んだーーーゴム弾だけで先輩達倒すとか無理だーーーと思ったが...レツがいた。
そうだ、ヤツなら中等部も名古屋だから日本円を持ってるはず!
直ぐにストラップの電話帳を開き、つい先ほどアドレス交換したばかりのレツに電話を掛ける。
『もしもしユウキ、どうした?』
「悪い、レツ。グレネードを買おうと思ったんだが、日本円を切らしちまったんで、貸してくれない?」
『あ~、悪いな..ユウキ。俺も金はねえんだ』
「は?この前の給料はどこに消えたんだよ?」
実は早期幹では中等部の学生に手取り14万円/月の給料が支給している。そして寮暮らしなので、家賃・光熱費・食費はかからないし、訓練で忙しくて外でお金を使う時間がないので無駄遣い症のやつでもいくらかは貯金があるはずなのに...それがない?どういうことだ?
『液体窒素でパソコンのCPU限界を破る競技で『オバークロック』ってのがあるんだけど、高校進学記念に一度やってみたいな~なんて思ってしまって....液体窒素とか必要な道具を買ってたら、福沢様どころか野口君まで俺の財布から滅亡した』
野口君も滅亡!?俺の財布ですらまだ二人ご存命なのに....あいつの財布は俺以下なのか。
もうダメだ・・先輩達に蹂躙されるしかないのか・・
と頭を抱えようとしたが・・
あれ?液体窒素って言った?今
「レツ、液体窒素は手元にあるのか?」
『あぁ、209号室の洗面所に置いてあるぜ』
「量は?」
「そこそこ沢山あるかな」
「そうか、わかった。その液体窒素使うなよ。じゃ、部屋戻るから電話切るぞ」
『あぁ、了解。こっちもお前が出て行ってから新たにわかった情報、まとめとくわ』
ダメかもと思ったけど、液体窒素があれば先輩達にかてるかもしれないーーーぶっつけ本番になるが、やるだけやってみる価値はあるぞ。
そう考えながら、俺は209号室に戻った。
道中でいろはすのペットボトルを5本買いながら―――
作中のエロゲーに登場する人物はすべて18歳以上です。
そのエロゲーをプレイしているレツ君が高一だという矛盾は突っ込まないでください。仕様です。
銃メーカーは未来の銃というこで架空設定です。
本当は一話冒頭の先輩たちが209号室に突入する所まで書きたかったのですが、力尽きました。
なお、次回更新は未定です。鎮守府のつくりかたの更新後となります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました
m(*_ _)m
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