大海と大地に育てられし者 (lmisa)
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プロローグ
ーーねぇ、みて!テティ!できた、できたよ!
ーーええ、見てるわ。上手にできてるわね~じゃあ新しいのやってみましょうか。
ーー待たぬか!次はわしのやつのはずじゃ!!のう、ラキ。わしのやつの方がやってみたいじゃろう?
ーーいいえ、ラキはもっと私の技をやりたいはずだわ。ねぇ?
ーーなんじゃと~!!
ーーラキ!どっちのがやりたい かしら?/んじゃ?
ーーテティ?モス?ぼくはどっちもやりたいよ?だから、どっちもおしえて!
ーーあら、可愛いわね~。そんなラキは抱きしめてあげちゃう♡
ーーうむ、愛いやつじゃ。ほれ、こっちへ来てみぃ。一緒に空高く舞い上がってやろう!
ーーテティ?…モス?どこ?
一人にしないで
ーーどこにいるの?テティー!モスー!
さみしいよ…
ーーっひぐ、うう、テティっ、モスっ
どこにいったの?テティスマーレ!モスティエラ!
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-キ…ラキ!おきて!
「うう~、シ、エラ?…どうしたの?」
「ラキ、すっごいうなされてたの~。大丈夫なの?」
「うん、もう大丈夫。ありがとう。~っ、うぷ。キモチワルイ…やっぱり大丈夫じゃない。」
マグノリアへと向かう列車の中、列車に酔っている女の子に見えなくもない顔立ちの淡い金髪の少年、ラキスと水色の喋る猫、シエラがいた。
相当乗り物に酔いやすいラキスにとって列車での移動は苦でしかなく、目的地に着くのをただただ待っていた。
「ラキ~?いつも思うんたけど、酔うってわかっててどうして毎回乗り物使うの?別にわたしの
「う"…うーん、でもシエラが疲れちゃうでしょ?それに、もしかしたらそのうち慣れるかもしれないし…」
「そうなの~」
"マグノリア~、マグノリア~"
「あ!着いたなの~、ラキ、行こ!」
「うぷ…うん、早く降りよう。」
「そういえば新しく仲間が増えたみたいだね~。なんでも、傭兵ゴリラを倒したらしいよ!」
「へぇー、そうなんだ。傭兵のゴリラってどんなのか全然予想つかないけど、倒したなら頼もしそうだね。」
うぅ~やばい。キモチワルイのが全然なおらない…倒れ、そ…う
ファサッ
酔った影響でずっとフラフラしながら歩き、遂には倒れかかってしまったラキスを黒いマントの男が支える。
誰だろうと思いつつ顔をあげてみると、同じギルドの仲間が支えてくれていた。
「大丈夫…ではなさそうだな。送ってやる。」
「いいの?ありがとう。」
「あまり無理をするな。」
「そうだよ!ラキはもうちょっと休むべきなの~」
そのまま抱きかかえられたラキスは疲労していたのと、歩くときの振動の気持ちよさでだんだん眠くなり、ギルドに着く頃には完全に寝てしまっていた。
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ミストガン
ここは
それぞれが思い思いに過ごしていたのだが、突如眠気に襲われ数名を除いたほとんどが眠りだした。
そんな時、ギルドの入り口に何かをかかえた人影と浮かんでいるものが現れる。
「ミストガン。…とラキス!?」
「シエラもいるの~」
マスターが驚いているのを気にもとめず、黒いマントの男、ミストガンは
「行ってくる」
選んだ依頼書をマスターに渡し、ラキスをカウンターテーブルにもたれかかせるように座らせると、側にいたシエラと少し言葉を交わし出口に向かって歩きだす。
「これっ!!眠りの魔法を解かんかっ!!! あと、ラキスはどうするつもりじゃ!!」
マスターは去ろうとするミストガンにすかさず抗議をする。
だが、ミストガンは振り返ることすらせず、その代わりといったふうにシエラがわたしが寝かせるの~と言って、ラキスを奥の部屋に連れていった。
「伍…四…参…弐…壱」
ミストガンが完全に姿を消すと同時にギルドのメンバーが目を覚ます。
「ミストガン?」
「
「どういう訳か誰にも姿を見られたくないらしくて、仕事をとる時はいつもこうやって全員を眠らせちまうのさ。」
目が覚めてミストガンの仕業だと騒ぎだす周りに不思議に思い、思わず疑問の声をあげたルーシィにたまたま近くにいたロキとグレイが答える。
自分が答えた相手がルーシィだと気づいたロキは何故か後ずさっていったが…
「なにそれっ!!! あやしすぎ!!」
「だからマスター以外誰もミストガンの顔を知らねえんだ。」
「いんや…オレは知ってんぞ。」
ルーシィ達が話しているところに突然声が割り込む。
それはもう一人の最強候補、ラクサスだった。
ラクサスに気づいたナツはオレと勝負しろー!!!とケンカをふっかけるが全く相手にされない。
そして、ラクサスがいる二階までのぼっていこうとするとマスターの巨大化した手に潰された。
ギルドの二階の
少しのミスが死を招くような仕事があり、マスターにみとめられた者しか受けられないのだ。
そのため、まだ認められていないナツは二階に行くのを止められたのだった。
###
次の日、ギルドはいつになく騒然としていた。
ナツとハッピーとルーシィがS級クエストに勝手に行ってしまったのだ。
グレイがナツ達をとめに行ったのだがなかなか帰って来ず、皆どこか落ち着きがない。
「ふわぁ~…おはよ…。おじいちゃん。」
「おはようなの~」
「む、ラキス、シエラか。よく寝とったのー」
「うん、まさか朝まで寝ることになるとは思ってなかったよ。…列車恐るべし。」
そんな時、やっと起きたのかラキスとシエラが奥から出てきた。
とりあえずマスターに挨拶したものの、ギルド内の雰囲気に違和感があり尋ねると、どうやらナツ達がS級クエストに行ってしまったとのことだった。
「むむ、一応グレイが止めに行ったんだがのう。なかなか帰ってこんわい。」
「ねぇ、それさ、グレイもナツに無理矢理連れてかれてたりしない?」
「うむ、そうかもしれんの~。どうしたもんか…そうじゃ!ラキス、行ってくれんかの?お前ならあやつら4人連れ戻せるかもしれん。」
「えっ!?僕が?ナツやグレイに勝てたことなんてほとんど無いのに…ていうか4人?」
「そうじゃ、最近新人が増えてのう。えらいスタイルのいいねーちゃんじゃぞう」
新人のスタイルの良さをニヤニヤしながら話すマスターを適当にあしらっていると鎧を着た緋色の髪の女性、エルザが入ってくる。
マスターがエルザにナツ達を連れ戻すようにいっているので自分はもう行かなくてもいいだろうとラキスは思っていた。
「ではラキス、シエラ。行くぞ。」
しかし、そうはいかなかったようだ。
ナツ達が心配ではあるが、明らかに面倒事である頼みにラキスは思わずため息をつきたくなった。
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悪魔の島
晴れ渡る空の下、一隻の海賊船が海を進んでいた。
「勘弁してくれよ…ガルナ島は呪いの島だ……。噂じゃ人間が悪魔になっちまうって…。」
「興味がない。掟を破った者どもへ仕置きに行く。それだけだ。」
船の行き先は誰も行きたがらない呪いの島。
突如やってきた恐ろしい人物の命によってガルナ島へと向かわねばならなくなってしまった海賊たちは、自分達の船長と緋色の髪の恐ろしい人物、エルザのやりとりを遠巻きに見ていた。
その二人から少し離れた所では、飛んだり喋ったりする不思議すぎる水色の猫のそばで淡い金髪の子供が明らかに船酔いをしてグロッキー状態になっている。
「うう"…まだ、つかない…のかな…?もう…うぷ」
「がんばれ、ラキ!あとちょっとなの。…たぶん。」
「たぶんって…」
「お、おい。大丈夫か?」
「だいじょうぶじゃ…ない…です。」
遠巻きに見ていた船員達の一人が恐る恐るラキスに話しかけてきた。
よっぽどかわいそうに見えたのだろう。
「あのよぉ、そんなにつれーならこれなめてみたらどうだ?少しはマシになると思うぜ。」
「氷?えっと…ありがとう、ございます。」
「かまわねぇよ。ところで坊主、あの島はホントに危険だぜ?」
「そうだぞ~。あ、あのお方はともかく、お前はやめといた方がいいって!」
エルザみたいに恐ろしい人物ではないとわかったからか、他の船員達も近づいて来て口々にやめた方がいいと言ってくる。
ラキスの見た目はまさに年端もいかない子供といった風貌なのだが、同行者があまりにも恐ろしかっただけになかなか近づく気が起きなかったようだ。
「うーん、行きたくはなかったけど、連れ戻さなきゃいけない人達がいるのは確かですから…。」
「そうなの。おバカさんたちがいるの~。」
「そうか…。」
心配そうに気を付けるように言ってくれる船員達にお礼を言い、エルザの方へ歩いていった。
###
「それにしても、あの船員さんたち優しかったの~。」
「そうだね。おかげでいつもより気持ち悪くなかった気がするし。しかも帰りも乗せてくれるみたいだよ。」
船を降りてからエルザと別行動をしたラキス達は村の資材置き場にあるテントの中にいた。
「どこだ、ここは?」
「あ!おはよう、グレイ。」
「ラキス!?シエラもか!…」
「うん。ここはむらからちょっと離れた資材置き場なんだって。なんでも村は昨日の夜になくなっちゃったからなんだとか。」
「エルザもいるの~。」
同じテントの中で眠っていたグレイが起き、ラキス達がいることに驚いた。
起きたならとエルザのいるテントへ行くようにとグレイは促される。
グレイがテントに入ると、エルザと縄で縛られているルーシィとハッピーがいた。
エルザと一触即発の状態になり、テントを出ていこうとするグレイと入れ違うようにしてラキスとシエラが入ってくる。
「グレイ。新しい包帯を貰ってきたよ、ってあれ?どこ行くの?」
「行っちゃったの~。」
「エルザ、何があったの?なんか怪我が増えてた気がするんたけど…」
「ああ。……。」
たいそう怒っているように見えるエルザはルーシィ達の方へ振り向く。
持っている剣の先には血がしたっているため恐ろしさは倍増だ。
ところが、斬られると思って怯えていたルーシィ達の予想とは違って縛っていた縄を斬った。
そしてラキスはその間、ルーシィのことをじっと見つめていた。
「行くぞ、これでは話にならん。まずは仕事を片付けてからだ。」
喜びを表すルーシィを見た後、ルーシィの服の裾を掴んでラキスがポツリと呟く。
「……ルー姉さん?…だよね?」
「え!?…まさか…ラキス?」
「久しぶりだね。懐かしい匂いがしたからまさか、とは思ってたんだけど…」
「急にいなくなったと思ったら…」
「まぁ、詳しいことはまた今度」
初対面のはずなのに知り合いだったようである二人にハッピーとシエラが驚きの声をあげる。
しかし今は先を急ぐ必要があるため、適当にあしらわれてしまっていた。
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