テンプレ転生者の定まらない日常 (はくぁ)
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第一期 テンプレ転生者の定まらない日常
1話 アニメの始まりはだいたい目覚めるところから始まるか、いきなり戦闘シーンから始まることが多い


初投稿です。
あったけぇ目で見てやってください。

※タイトルとサブタイの変更に伴って、1話の大幅な付記を行いました。


ピピピッと、しつこいぐらいに同じ電子音を鳴らし続けるそれは、朝起きられない小学生から社会人まで広く知られたの味方で在ると同時に、憂鬱な一日の始まりを告げる悪魔の機械。そんな矛盾を抱えたそれを人は、目覚まし時計と呼んだ。

 

横文字の少し気取った言い方をするとアラームだが、まぁそんなことはどうでもいい。もう何周目かも忘れるほど、ループして音を鳴らし続けるそれを僕はスルーして、今こうしてクソくだらない目覚まし時計に対する自己解釈を誰に向けるのでもなく永遠と考え続けている。

 

「れーくーん!朝だよ―!」

 

その声を聞いて、僕は1秒で布団から出た。ずっと鳴り続けていた、目覚まし時計はやっと仕事を終え、「やれやれだぜ・・・」と言わんばかりのふいんき(なぜか変換できない)を醸し出して、停止ボタンを押されるのを今か今かと待っている。

 

僕は、停止ボタンにチョップを叩き込むと、少し鈍い音を立てて、ようやく悪魔の音色(アラーム)を停止させる。チョップを放った僕の右手が少し痛いが、そんなことには気も来れず、去り際に「お前に負けたのではない・・・」と心の中で少し負け惜しみのように愚痴りつつ、僕はいそいそと制服に着替え、リビングへ降りる。

 

リビングに行くと、エプロン姿の20代前半(にしか見えない)の女性が、たった今出来たであろう朝食を机へと並べていた。

 

「れーくんおはよう!ご飯できたから一緒に食べよう!」

 

リビングへやって来た僕に気がついたのか、満面の笑みを浮かべ、朝っぱらから爆発寸前のカップルが言うようなダダ甘な台詞を僕に言うのが、僕の母 天符 麗花(てんぷ れいか)(33)である。

 

「ほらほら!早く座って!ご飯冷めちゃうから早く食べよ!」

 

そう言って、僕の手を取って椅子へと誘導し、座らせる。そして、ちゃっかり隣の椅子に座っており、僕よりも早く「いただきます!」と言ってもう朝食に手を付け始めている。ちなみに、いつの間にか等間隔に置かれていたはずの椅子の距離が狭まっており、もうほぼ密着しているような状態である。

 

さて、もうわかっただろうが、この母。それはもう、息子である僕を溺愛しているのだ。良い意味での親馬鹿であり、悪い意味で言うなら超過保護と言ったところだろうか。まぁ早い話、マザコンの逆だ。言うなれば「ンコザマ」だろうか。

 

「れーくん?食べないの?」

 

と可愛らしく、少し首を傾げてそう言う母。少し思考に浸っていたせいか、食べることを忘れていたようだ。流石にこれ以上呆けているわけにもいかないので、食事を始める。数分で食べ終わり、小さく「ごちそうさまでした」と言い、早々に席を立ち、洗面所へと向かう。

 

洗面所で、鏡で自分の身嗜みを整え、歯磨きをして、軽く顔を洗う。タオルで顔を拭いた後に、再度見る自分の顔は、いつもと変わらない、無表情で無愛想。そして、光に反射すると少し眩しいと思ってしまう、白銀の髪と、金色と銀色のオッドアイが、眠そうにこちらを見つめていた。

 

この異様な自分の容姿にも、もう慣れた。もう別に気にすることでもないが、時々こうして自分の顔を意味もなく眺めてしまう。「こいつこんな顔してんだな」とか「相手からはこう見えてるのか」と少し感慨に浸りながら。それも意味のないことだとはわかってはいるが、人という生き物はめんどくさいもので、そういったことを割り切れず、考え込んでしまうものらしい。

 

だから、僕は僕の顔を見て「普通じゃないなぁ」とか「眠そうにしてるなぁ」とかそういうどうでもいいことを思うようにしている。そうでもしなければ、余計なものまで見えてしまうから。・・・今日はなんだか、考え込むことが多い日だ。久しぶりの学校で、変なテンションになってしまっているのだろうか?

 

僕は一つ短く息を吐き、踵を返して洗面所を出る。すると、玄関前にもうすでに僕の発行指定のカバンを抱えた母さんが、まるで、デートの待ち合わせ場所に30分前に来てそわそわしている乙女のようにして待っていた。これもいつものことなのだが、少し長い休み明けに見るとなかなか思うところがあるのだ。

 

そして、僕が洗面所から出てくるのを確認すると、満面の笑みをを浮かべてこちらを見るのだ。傍から見るとラブラブの新婚の夫婦にも見えるが、僕はもう気にしないことにした。そんな母さんをスルーして、僕は靴を履き、カバンを母さんから受け取る。

 

「いってらっしゃい!気をつけてね!」

 

と、いつも通り母さんの声をバックに、「テンプレ」通りの日常への第一歩をあの時のように(・・・・・・・)踏み出すのだ。

 

 

 

 

 

 

・・・あぁそうそう。自己紹介がまだだったな。僕の名前は 天符 零斗(てんぷ れいと)高校2年生。しがない、転生者だ。

 

ーーー

 

「突然だが」このワンフレーズで始まる物語は、数えるのも億劫になるほど存在している。そして、その大方の物語は、突然というよりも唐突に始まっているものが多い。故に、始まり方は千変万化。同じようなものは存在していても、完全に一緒なものは早々ありえない。

 

そんな物語の中にも、よく出てくる言葉と言うものがある。それは、所謂「テンプレート」と言うやつで、大体「テンプレ」と略されて広く使われている。その「テンプレ」とは、大体の意味で「定形」を指すものであり、それの通りにやっておけば取り敢えずはまぁ、それなりのものになるというものだ。

 

少し話はずれたが、要は「テンプレ」と言うやつは、どの作品にも少なからず当てはまるもので、先程の物語の中での「テンプレ」を挙げるとすれば、「転生」とか「転移」とかであろうか。これらの「テンプレ」を大まかに説明するなら、「死んじゃったから、別の世界へレッツゴー!」と言う、普通に考えなくても馬鹿らしいものなのだ。

 

だがこうした、「テンプレ」ができていることから、それに対する需要は一定数あるようで、今現在も物語はこの「テンプレ」の元に量産されている。・・・さて、僕がこうして、ぐちぐちと能書きをたれたのには、それなりの理由がある。と言うより、ここまで言ってわからないやつも少ないだろうが、僕は今その「テンプレ」と言うやつを実際に体験しているということにある。

 

目が覚めたら、真っ白な空間に居て神と名乗る存在が、地面を擦り減らす勢いで土下座をしている。・・・こう最低限のことだけを文字に起こしてみると、今の僕の置かれた状況がいかに馬鹿らしいかよく分かるだろう?これが今時の「テンプレ」と言うやつなのだから、恐れ入る。

 

休話関題。話を戻してこの目の前に、地面を擦り減らして土下座している神は、急に顔を上げてこれまた急に

 

「ごめんなさいいいいぃぃぃ!」

 

と、可憐であったであろう顔を自分の体液でぐちゃぐちゃにして僕に謝罪している。傍から見ると、「幼女に土下座させて泣くほど謝らせているやべー奴」である。因みに、神は小学3年生ほどの身長130cmほどの幼女である。その神の容姿も相まって、なんだかやるせない気持ちになってくる。

 

流石にこのまま、この幼女を放置して置けるほど僕は鬼ではない。取り敢えず、僕のも取る最大限の慈愛を持って目の前の幼女を慰めるのだった。・・・紳士諸君は、決してイヤラシイ意味ではないから、安心してほしい。そうして、30分ほど幼女をなだめるとようやく気が落ち着いたのか、ぐすぐすと鼻水を啜りながら、事の本末を語りだした。

 

先程、取り乱して泣いて謝ったのは、僕を誤って(ギャグではない)殺してしまったからだと言う。そしてこの真っ白な部屋は、死んでしまった魂を裁く部屋であるということを、幼女は涙目ながらにゆっくりと話してくれた。・・・まぁこれも「テンプレ」と言うやつなのだろうから大隊で察してはいるが、自分が死んだということがあまりにも唐突過ぎて、理解が及ばない。

 

「そうでしょうともー!」

 

といきなり、僕の思考に横切ってぶっこんでくる幼女も、「テンプレ」というやつらしい。

 

「ちょ!?さっきからなんだか失礼なこと考えてますよねー!?全部聞こえてたんですよ―!?と言うかさっきからテンプレってひどくないですかー!?」

 

この反応も「テンプレ」通りであるし、一気に色々言われて返しづらい。と言うのが僕の本音だ。あと幼女特有のハイトーンボイスは頭に響くから、とてもうるさい。

 

「ひどっ!?さっきまで優しく宥めてくれていたのがウソのように冷たい!?」

 

それはそれ、これはこれ。

 

「投げやりすぎません!?」

 

さっきとは違って、元気になれたからいいじゃないか。

 

「まぁ・・・。確かにさっきと比べたら元気になれましたけど・・・」

 

なら、細かいことは気にするな。それに、まだ本題は途中までしか聞いていない。

 

「急に真面目にならないでください・・・。はぁ・・・じゃあえっと、どこまで話しましたっけ?」

 

死んでしまった僕が魂を裁くこの空間に来た、と言うところまでだったと思う。

 

「おーけーです。じゃあ続きから。」

 

ここからの話は冗長になるので割愛。要点だけまとめて話すと、

 

・間違って送られてきた魂は裁きにはかけられず、天国へ行くか他の世界へ転生するか選べる。

 

・もし転生する場合は、今の記憶を引き継いで赤ん坊から生を受ける。

 

・そして、手違いで死なせてしまったお詫びに転生する場合、いくつか特典を付ける。

 

・因みに、天国は何もないまっさらな世界だからあまりおすすめはしない。

 

・転生する世界はランダムで決まるため、僕が元いた世界にも行ける可能性がある。

 

ということだった。・・・遠回しに僕に「転生しろ」と言っているようにも思えるが、この展開も「テンプレ」通りとのことで、僕にはもうなにがなんだかわからない。最早、僕にはほぼ選択肢などなく「テンプレ」通りに転生することを選んだ。

 

・・・のだが。転生するに当って、僕がぶち当たる障害が存在する。それは、「特典」と言うやつだ。これは、最近の「転生モノ」でよくある、ボーナス的なモノと捉えてくれていればいいだろう。理想の能力や容姿を普通の人は(・・・・・)「特典」として望むのだろうが、僕は別にそう言った容姿や能力がほしいとは思わない。

 

僕は、今のこの容姿を気に入っているし、そんなアニメなどで出てくるような能力にも事欠いていない(・・・・・・・)と言うことから、別段僕はそういった要望があるわけでもない。故に、僕は「今と変わらない容姿と能力」と「現在の記憶を引き継ぐ」ということぐらいしか、望むことがないのだ。

 

僕は、それだけでも一向に構わないと言うか、これだけでいいのだが、幼女曰く、

 

「最近は5つぐらいは特典あげなきゃ文句言われちゃうの!」

 

とのことであり、確かにそのような「テンプレ」は存在している(・・・・・・)事から、今こうして僕が頭を悩ませる元凶となっているのだ。その「特典」に関しての「テンプレ」は見えている(・・・・・)が、よくわからない呪文のような文字ばかりが見えるだけで、何がなんだかよくわからないものばかりでピンとくるものがないのだ。

 

故に、僕は(・・)思考放棄することにした。・・・そう。僕は(・・)。ここまであからさまにすればもう分かるだろう。僕は、幼女にぶん投げたのだ。決して、めんどくさくなったとか、怠くなってきたとかではない。自分ではどうしようもないと判断したから、と言うちゃんとした・・・ちゃんとした!理由があるのだ。

 

それに、幼女も快諾してくれたので、問題はない。もう一度言おう。問題は、ない。・・・さて、抱えていた悩みも、無事解決したから、早いところ「転生」したいのだがあの幼女は一体何をしているのか。

 

「あなた鬼ですか!?仕事押し付けて、サラッと私のことディスって行こうとするなんてド畜生の諸行じゃないですか!?」

 

うるさい。この世で一番大事なものは、時間だということを知らないのか。

 

「こちとら神様ですよ!?もうちょっとこう・・・あるでしょう!?」

 

はい、語彙力―。神様だったらもうちょっと語彙力鍛えようね―。

 

「うぅ・・・。私神様なのに・・・。神様なのにぃ・・・。」

 

ちょっと煽ったら、壊れた玩具のように「私、神様なのに」と譫言のように呟くだけになってしまった。・・・少し悪ふざけが過ぎたようだ。

 

「・・・正直、すまんかった」

 

「謝る気ゼロじゃないですかぁ・・・。」

 

いやいや、本当に悪いとは思っている。幼女を泣かせると全世界の紳士に、殺されてしまうしな。

 

「謝る動機が不純すぎますよぅ・・・。」

 

「・・・ホントに、ごめん」

 

「うっ・・・。急に真面目にならないでくださいぃ・・・。」

 

・・・チョロいな。

 

「聞こえてますからね!?」

 

ほら、元気なった。

 

「元気になったんじゃなくて・・・あぁもう!調子狂うぅー!」

 

はっはっは。

 

「はっはっは、じゃないですよ!?・・・ほら!こんな馬鹿なやり取りしてる間に、準備できたので、早く行っちゃってください!」

 

そう幼女は食い気味に僕の背中を押して、先程まではなかった扉へ向かわせる。それに対して、少し思うところもあったが、僕の目には「テンプレ」としか映らない(・・・・・・・)。そして、この先に待っている展開も、少なからず見えている。だから、僕は戻れなくなる前に後ろに振り向いて、「テンプレ」通りにこう言うのだ。

 

「ありがとう」

 

それだけ言って、僕は扉を開け、新たなる世界への一歩を踏み出した。

 




どうも、はくぁです。
ここまで見ていただいた方はお疲れ様です。
深夜テンションで適当に書いたものなのでアレなのですが気が向いたら更新するかもです。
それと、主人公の設定はまた次の話で、少し話をするかもです。
では、機会があればまた次の話でお会いしましょう。


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2話 唐突に始まる自分語りは主人公の特権

あれから、僕は無事転生を果たし、ベビーベッドの上でおぎゃーおぎゃーと泣き喚いて居たのが、16年前。気がつけば、こうして僕は高校生になっていた。・・・端折りすぎ?それに関しても、色々言うところはあるだろうが、大方既視感あふれるような内容になってしまうので割愛した。

 

転生特典で色々苦労したり、親に犯されかけたり、施設に連れて行かれたりしたが、それも今ではどうでもいいことなのだ。まぁ正直なことを言うと、面倒いから端折るというだけなのだが。誰しも特に理由もなく、昔のことを思い出そうとは思わないだろう?

 

「そういえば」と何かのついでに、思い出すと言うのが人間というものだ。話そうと思っていても、その話そうと思っていた話題をその時まで覚えて置けるほど、人は並列に物事を熟すことが出来ない。割りと、人間の思考というのは、複雑ではなく、単純なのだ。

 

例えるなら、朝遅刻しそうな時に、「スマホがない!取りに行かなきゃ!」と取りに行き、家を出る。学校に遅刻ギリギリで間に合って一安心したところで、思い出す。「そういえば、今日体育あったな」と言うことを。そして、体操着は家の玄関に起きっぱになっているということを。

 

この僕も例に漏れず、「そういえば」で思い出すことは多々ある。今僕の目の前の曲がり角に見えている「テンプレ」のように。

 

ーーー

 

僕には生まれつき、不思議な能力(ちから)があった。それは、どんなモノにもある共通意識とも呼べるモノの集合体、所謂「定形(テンプレ)」を視る不思議な目。言葉、文字、物体、人、動物、事象、果ては未来まで、「定形(テンプレ)」を視ることが出来るという能力だ。

 

これは、僕が転生する時に、望んだ特典の一つの「今と変わらない容姿と能力」、厳密には「前世の容姿と能力を引き継ぐ」という特典のおかげで今も使用できる。そしてこの能力については、別枠の特典で「この能力の強化及び制御可能になる」と言うのもあり、この能力は僕が転生してからも、一番使用している能力(ちから)だ。

 

・・・「定形(テンプレ)」を視るというのがわけがわからない?まぁ普通はそうだろう。まぁこの能力を少しでもわかりやすく言うなら、「普通」を視る能力と言ったところだろう。例えば、「1+1=」と言う問題が在るとしよう。「1+1=」と言う問題の答えの「テンプレ」は、「2」だ。

 

その「テンプレ」が僕には視える。「1+1=」なら答えは「2」であるし、他の問題でもそうだろう。だが、この「1+1=」という問題にはもう一つ答えがある。それは「田」と言う答えだ。よくあるなぞなぞの答えだが、「普通」なら「1+1=」という問題を見てこちらの答えを先に上げる者は居ない。

 

俗に言う「ひっかけ問題」と言うやつなのだが、僕にはこの「田」と言う答えは見えない。何故なら、「普通ではない」から。僕が視えるのは「定形」、定まった形のモノであり、人間の共通意識であるものしか視えない。これが僕の能力(ちから)、「定形観測(ロードオブテンプレート)」なのだが、ただ、このような単純な数式の答え程度なら、さほど問題にはならない。

 

だが、この「定形観測」は、「定形(テンプレ)」だけでなく、「ご都合主義的展開(テンプレ)」、「お約束(テンプレ)」まで「定形(テンプレ)」称されるものなら全て見えてしまう。どんなに少数でも「共通認識」になってしまえば、視えてしまう。

 

要は、範囲が広すぎるのだ。期末テストで、「テストの範囲は高校から小学校までの教科書全部」と言われるぐらい広い。しかも制御可能になった今でも、視える範囲は「高校3年間の教科書全て」ぐらい。そして、初めに挙げたようにこの「定形観測」は森羅万象、果ては未来まで「定形(テンプレ)」が視えてしまう。

 

因みに、この能力ON/OFFが効かない。制御可能になった(ON/OFFが出来るとは言っていない)とは、とんだ詐欺である。あと、この能力(ちから)の影響で、僕はオッドアイになった。生前でも、濁った銀色のような目の色だった僕だが、転生してからは、純度の高いホワイトシルバーとイエローゴールドになった。「強化されるところそこなのか・・・」と初め、鏡を見た時に思ったのは良い?思い出だ。

 

休話関題。結局、自分語りをしてしまったが、何を言いたかったかというと、現在僕の目の前に薄っすらと視える「定形」があるのだが、これは所謂「お約束」というやつで、「曲がり角でパンを咥えた転校生とごっつんこ☆」という一昔前の少女漫画の導入のような未来が視えた。

 

大抵は、未来が視えていてもその行き着く先は、ブレブレでまともに見えたものではないのだが、こういう、明確に未来が視えるというのは結構珍しいことであり、少なくとも僕がこの世界に来てからは、数えるほどしか視えていない。そして、こういう明確に未来が視える場合、大体、碌な事にならない上に、回避不能なのだ。

 

仮に、引き返して他の道から学校に行こうとしても、道中でまたこの未来が視えるだろう。これは、「不確定な未来」ではなく、「確定した未来」だからだ。確定した未来は、どんなに先延ばしにしても、結局「一つの結果」に収束する。故に、回避はできない。予測可能だが、不可避。それが、今回視えた未来だ。

 

・・・結局何のために、僕の能力(ちから)について説明したのかわからない?始めに言っただろう?人は「そういえば」で動く。さっきの説明も、「そういえば」で思い出しただけの唯の昔話だ。いきなり、話が飛躍して話題が変わることがあるだろう?それと同じだ。

 

ただ、「思い出したから」話しただけ。意味なんて特にないが、強いて言うならば「テンプレ通りに自分語りをしてみた」と言うところだろうか?まぁ実のところ、唯の現実逃避なのだが。だって考えても見てくれ。碌な事にならないとわかっているのに、誰が好き好んでそこに行きたいと思う?

 

いわば、視えている地雷を自分から踏みにいっているようなものだ。それを好き好んで踏みに行くなんて、ドMでもしない。そして、僕はドMではない。Mでもない。どちらかというとSだ。凄まじく帰りたい。一生布団の中で眠っていたい。貝になりたい。チーズ蒸しパンにはなりたくない。

 

あぁ・・・憂鬱だ。今日はポカポカ陽気の快晴だというのに、心の中は台風が直撃したかのように大荒れだ。だが、ここでうじうじしていても、時間はただ無為に流れていくだけ。もう覚悟をキメて(誤字に非ず)逝くしかない。僕は、もうどうにでなぁ~れ(AA略)と投げやりに歩を進めた。

 

ーーー

 

すぐに、曲がり角の手前ほどに到着した。僕は最大限の警戒をしながら、歩をゆっくりと進める。傍から見れば、挙動不審の変人だが、そんなことを気にしている余裕は僕にはない。そして、曲がり角が存在する道を半分ほど通過したところで、激しく靴が地面に擦れる音が聞こえた。

 

横を見ると、僕が通っている高校の制服を来た生徒が、食パンを咥えて猛スピードで走ってくる。それを見た瞬間、僕は大きくバックステップを踏んだ。「見えている地雷が在るなら、飛んで超えればいいじゃない」これが僕が出した精一杯の運命への反逆であった。

 

だが、この生徒はあろうことか、高校とは逆方向にバックステップを踏んで避けた僕の方へと、突っ込んできた。バックステップは未だ実行中であり、避けることは不可能。そしてその生徒は、前を見ていなかったのか、走っていた勢いをそのままに、僕へ激突した。

 

僕と激突した拍子に、咥えていた食パンは放物線を描き宙と投げ出され、僕は受け身も取れない体勢で、口を大きく開けた状態で背中から地面に叩きつけられる瞬間に、「サクッ」と言う小気味いい音と主にバターの風味が口の中に広がっていく。一瞬遅れて「ガチッ」と言う歯と歯が打ち鳴らされた音が僕の頭の中で反響する。

 

「ってて・・・。ご、ごめんなさい!急いでて前見てなくてぇぇぇ・・・え?」

 

何か声が聞こえるが、僕は食パンを咥えたまま背中の鈍痛に悶えるように、背中を大きく反らして、左手で擦りながら、ごろごろとアスファルトの上で右往左往していた。

 

「おぉぉおおおオマエ!転生者か!?しかもその見た目・・・踏み台転生者!?」

 

僕は心の中で、「気にするとこそこかよ」とツッコミを入れるが、口には出せない。何故なら、いつの間にか食パンを咥えているからだ。多分ぶつかった時に偶然僕の口にプットインしたということなのだろうが、一体どんな確率・・・と言うか、そもそもそんなことあり得るのかと声を大にして言いたい。食パン咥えてるから無理だが。

 

「というか、ボクの食パンは!?何でお前が咥えてるんだよ!?」

 

知らん。僕が聞きたい。・・・少し時間が経って、少し痛みも引いてきた。未だに背中は少し痛いが、立てないほどではない。僕はゆっくりと、砂を払いながら立ち上がる。ここで一つ、大きなため息をつきたいが、咥えている食パンのせいで溜息をつけない。

 

「あーもう!訳分からん!取り敢えず、オマエのことは後だ!急がないと遅刻する!」

 

そう言って、彼だか、彼女だかよくわからん中性的な外見をした奴は高校とは逆方向に走り去っていった。僕はそれを見ながら、「忙しいやつだなー。あと方向逆だぞ―」と口が開けられないので、心の中で注意しておいた。まぁ聞こえるはずはないのだが。

 

・・・それにしても、少し前は気にしていなかったが、「転生者か」と奴は言っていたが、何故わかったのだろうか?いや、まぁ外見的に言うならば、まるわかりなのだろうが。僕のこの外見は所謂「踏み台転生者」と言うやつの容姿と大体一致している。

 

たしかに外見は、その「踏み台転生者」と言うやつなのだが、外見だけでそれに繋がる当たり、ネット小説に毒された奴なのだろうか?・・・それとも、僕以外の転生者なんだろうか?どっちにせよ、今この問いに対する答えを出すことは不可能だ。

 

しばらく、その場に立ち尽くして思考に浸っていたが、いよいよ時間的に厳しくなっている事に気がついた。僕も、急がなければ遅刻してしまう。ということで、少し小走りで僕は学校へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

因みに、食パンは道中美味しく頂いた。

 




どうも、はくぁです。
ここまで見ていただいた方はお疲れ様です。
初めて感想というものを頂いたのですが、予想以上に嬉しいものなんですねぇ・・・。
自分の作品を評価してくれる人がいるというのはとっても嬉しいことなんやなって・・・。
とちょっと思うことがあった今日この頃です。

個人的に、一話を見てニヤニヤして居たりしていたのですが、一話の後半部部への入り方が違和感バリバリというか、ゴリ押しすぎるのでいつか手直ししたい。(するとはry)

更新頻度は、ちょっと遅めですが、引き続き見ていただけるとうれしいです。
なるべく早めに、やってるんだけど全然進まないですね・・・。
他の作者さんは3日置きとかで5000文字とか平気で書いてるの見てちょっと尊敬してたりします。
誤字脱字も、投稿前にチェックしてたりするんですけど、投稿して見てみると粗とか、脱字が目立つんですよねぇ・・・。
こうして書く側になると、予想以上に大変だということが身にしみました・・・。

※補足 タグのクロスオーバー及び原作:色々とありますが、クロスオーバー要素が出てくるのは章区分第二期からとなります。第一期の終了は十二話から二四話を予定しているためクロスオーバー要素は割りと先となりますので、その点をご了承ください。

自分語りが少し多くなってしまいましたが、今回の後書きはここまでとさせていただきます。

では、機会があればまた次の話でお会いしましょう。


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3話 コンビニは8月の半ばぐらいからおでんを売り始めるけど、流石に時期尚早だと思う

待たせた・・・のかなぁ・・・(激不安



住宅街を抜け、少しすると僕が通う公立高校が見えてくる。校門前から、グラウンドを囲うように咲いた桜は、少し時期を過ぎてしまって淡い桃色のような花弁を散らして、まばらに緑色が見えてしまっている。その名残である、散った花弁がチラホラと僕の歩いている道路にも見受けられる。

 

こうしている今も、桜はその残り少なくなった桃色の花花弁を風に舞わせている。桜は春という季節の始まりを告げ、散っていく。その様は、儚く幻想的・・・なんてありふれた台詞で言い表してみるが、僕としてはどことなくしっくり来ない。

 

確かに、桜の散りゆく様は、なんだか寂しい気持ちになるが、儚いとは思わないし、幻想的とも思わない。精々綺麗だなとか、もう散ったんだな、とかしか思わない。普通はその程度の認識でしかないモノを、誇張気味に語っても、虚しいだけだ。

 

それに、桜は誰に言われるでもなく次の年も、その次の年もこうしてこの季節が来ると桃色の花を無数に咲かせて、僕達に春の始まりを告げてくれる。だから僕は寂しいと思わない。なまじ見えすぎる目を持っている僕は尚更そう思えた。

 

・・・さて、そろそろ僕がなんでこんなどうでも良い桜談義に一人で花を咲かせていたのか?その理由は、この馬鹿げた現実から少しでも気を逸らそうとしての精一杯の努力・・・と言うと良く聞こえないこともないが、要は今日何度目かの現実逃避だ。

 

「私、参上ッ!ですわーーー!」

 

・・・馬鹿げた現実、と言うより、馬鹿なヤツからの逃避だが。

 

ーーー

 

新学期。それは、始まりの季節。新学期。それは、期待と不安が入り交じる新しい生活への第一歩・・・と言うのが、新入生や正常に高校生活を謳歌している者のみが至ることの出来る思考だ。では僕はどうなのか?と言う話だが、転生前は普通にアラサー手前だった僕が、そんな期待や不安なんて感情(モノ)があるわけもなく、淡々と過ごしていた・・・わけでもない。

 

では、自由気ままに高校生活を謳歌していたのかと言われると、それもNOだ。じゃあどうしていたのか?それは・・・

 

「零くん!零くん!おはよーございますですわ!」

 

そう、ブロンドのサイドに付いた二つのドリル(チョココロネ)を揺らして、ブンブンと両手を振って季節外れの向日葵のような満面の笑みを浮かべ、こちらへやってくる女生徒が、僕の高校生活をぶち壊していった張本人であり、僕が現実逃避していた元凶。御城(おじょう) 姫芽(ひめ)。通称おしろちゃん。

 

「テンプレ」通りのお嬢様・・・なのだが、テンションと発想が斜め上にぶっ飛んだ、ヤベー奴である。「ちょっと小腹がすいたのでコンビニ行ってきますわ!」と何故かやたらコンビニを押してくるお嬢様なのだが、別にコンビニをやたら押してくるだけならまぁ「こいつキャラ付け相当苦労してんな」としか思わなかっただろう。

 

だが、なぜだかこいつは、ある一件以来やたら僕に絡んでくるようになったのだ。しかも、いつも間にか御城のお目付け役兼ツッコミ役兼ストッパーという認識が、生徒だけでなく教師にまで浸透しており、僕としては、非常に迷惑しているのだ。

 

「零くん!零くん!聞いてくださいですわ!今日、ロートクでからあげくんさんのいちご練乳味なるものがあって買ってみたのですけど、一緒に食べてみましょう!」

 

いつもこんな調子で、犬猫のように僕のに擦り寄ってくるのだ。・・・と言うかいちご練乳味ってなんだ。どういう発想でその商品を作ったんだと、開発部に小一時間問い詰めたい。

 

「あれでわよね!ゴリガリさんのナポリタン味を彷彿とさせる発想ですわよね!私こう言う見えてる地雷みたいなの結構好きですわよ!」

 

うん僕も好きだけど、食べてみたいかって言われるとそうでもないんだけどな。

 

「わかりますわかります!ですわよねー!」

 

はっはっは。こやつめ。お前にからあげくんさん投げつけんぞ。・・・なんだかんだこの御城(バカ)と一緒にいるのは別に楽しくないわけではないが、時々・・・いや結構な頻度で意味わからん行動を起こす。それがなければ、別に僕だって眉間に皺を寄せて、悩む必要もないのだが。

 

その一端であり、御城との出会うきっかけとなった「KIKW事件」と言うものがある。当時、高校1年の5月序盤の出来事だった。元々、御城は入学してからすぐに「新入生のヤベー奴」としてかなり有名だった頃もあり、僕はその時は「別のクラスだし会うこともないやろ」と高を括って僕は高校生活を過ごしていたある日の事だ。

 

その日は、3限目も中盤に差し掛かって、僕は次の4限のことを考えて少し憂鬱になっていた時だった。授業中、いきなり大きく教室の引き戸が全開まで開いた。そこには御城が居た。そのときの奴の顔はいまだに覚えていている。今と変わらない、季節外れの向日葵のような満面の笑みを浮かべて、こういった。

 

「ちょっとコンビニ行きますけど、付いて来る人いませんか!」

 

と宣言したのだ。そこに居た全ての人間が唖然としていたが、教師だけはなんとか冷静さを取り戻してこういった。

 

「お、御城。ここらへんコンビニないぞ?」

 

全然冷静じゃなかった。

 

「大丈夫ですわ先生!走って行ってきますから!」

 

そう言って御城はサムズアップしていた。・・・何が大丈夫なのか、小一時間ほど問い詰めたくは・・・ないな。と言うか、走っていくのか。仮にもお嬢様なんだったら、もう少しお淑やかにしろよ。

 

「いやいや。落ち着け御城。一番近いコンビニは自転車でも、10分は掛かるぞ?」

 

先生あんたが一番落ち着け。

 

「問題ありませんわ!体力と足の速さには自身がありますの!3限目が終わるまでには帰って来れますから!」

 

問題だらけじゃないか。主に何故コンビニに今行こうと思ったのとか、自分のクラスではなくうちのクラスに報告に来るのかとか。つーかお前も落ち着け。「この指とまれ!ですわ―!」とかしても誰もいかないから。

 

「あー・・・。なら良いか・・・?でも流石に一人でコンビニまでいかせるのはなぁ・・・。」

 

いや良くないだろ。どう考えても良くないだろ。早く正気に戻ってくれ先生。と言うか、誰かを生贄に出そうとするな。今皆一斉に先生と御城から目を逸らしたぞ。・・・おい。こっちみんな。お前らなんでチラッチラこっち見てんだ。行けってか?行けというのか?

 

「じゃあそこの、奇抜な髪の色をした貴方!ついてきてくださるかしら!」

 

嫌です。初対面で外見のことナチュラルにディスっていく人とはうまくやれる気がしないので。後あなたのブロンドも相当奇抜だと思います。断ろうと、振り向いた瞬間、いつの間にか僕の手を握っていた御城が居た。そして、手を引いて僕を無理矢理立たせると、そのまま手を引いて教室から駆けていった。

 

開け放された教室のドアから見えたのは、無言で無駄にいい笑顔をしてサムズアップしていた先生とクラスメイト達。その時僕は、「帰ったら、お前らにコンビニで買ったグミぶつけてやるからな」と思いながら、御城に引きずられていった。

 

これが、高校生活3週間目の悲劇、「KIKW事件」である。因みに、KIKWは「コンビニ(K)行って(I)きます(K)(W)!」の略称だ。死ぬほどどうでもいい。後日談として、ちゃんと3限目が終わるまでには間に合った。あと、グミはちゃんと投げつけた。その後、グミは拾って洗ってから食べた。

 

・・・と言うのが、僕がこの世界で初めて出会った僕以外の転生者(・・・・・・・)御城 姫芽との邂逅のきっかけとなった始まりの茶番(馬鹿騒ぎ)である。

 

ーーー

 

さて、僕が何故こいつ(御城)との出会いを思い出して(回想して)いたのか。それは、今朝の出来事が未だに引っかかっているからなのだろう。あれから少し考えてみたが、結局結論は出ず、奴が何者なのかはわからずじまいであった。まぁ、視えていた未来からして、今日中にはまた会うことになりそうだが。

 

「零くん!零くん!私、休み中にカバディを覚えたんですの!一緒にやりましょう!」

 

・・・まぁ今はこの馬鹿の相手をしていよう。そう、全力で「カバディ」を連呼しながら高速で横ステップを踏んでいる、御城を見て思うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、結局からあげくんさんはどうしましょうか?」

 

・・・一緒に食べようか。

 

「はい!」

 

その日のからあげくんさんは、とても、よく。空を舞った。

 




どうも、はくぁです。
ここまで見ていただいた方はお疲れ様です。
実に4週ぶりぐらいの投稿です。
4週も会ったのにできたのもは適当な上に、3300文字程度という悲しみと絶望。
ま、まぁエタらなかっただけでもマシか(震え声

さて、話は変わりますが、この物語に出てくる企業名や物の名前は適当にもじっただけだったりのものが多いです。それらがわかりずらいかもしれないので、後書きの方で少し解説おば。

・ロートク(元ネタ ローソン ソン()トク()に変えただけ。)

・からあげくんさん(元ネタ からあげくん さんを付け足しただけ。)
 キャッチコピーは「さんをつけろよデコ助野」。

・ゴリガリさん(元ネタ ガリガリ君 初めのガリをゴリに変えて君をさんに変えただけ。)
 パッケージにはガリガリのゴリラ「ゴリガリくん」がプリントされている。ナポリタン味は言わずもがな。

・カバディ (そのまんま。)
 意外と知られていないかもしれないけど、銀魂で山崎がやっていたやつだったり、某TRPGゆっくりリプレイでお茶っ葉を投げていたあれ。インドの国技。「カバディ」を連呼しているのは、攻め側らしい。

・・・とこんなものでしょうか。
随時、こうして作中の用語を(適当に)解説していきますのでご了承ください。
登場キャラクターについても、作中で開示された情報を少しまとめて乗っけようかと考え中ですがどうなるかは未定。

次の投稿はなるべく早くしたいけど、どうなるかは相変わらず未定。
こんなのでもよろしければ、引き続き見ていただけると幸いです。
では、機会があればまた次の話でお会いしましょう。


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