「バブ?」
ここは何所だ?
「爺ちゃん、龍斗が起きちゃったみたい」
何だか聞き覚えのある声ですね?
「おお、遊戯や。そんなに大きな声を出したら、龍斗が泣き出してしまうぞ?」
龍斗って誰だ?
俺か?俺なのか?
いや、流れ的に俺だろうけれども
「ブァブ?」
近くに赤ん坊がいるのか?
てか赤ちゃんってバブバブ言わないからな?
「おーよしよし、じぃちゃんだぞ~」
うわ、体が宙に浮いて…高所恐怖症になったらお前の所為だからな!?
「ズルいよ爺ちゃん。僕にも抱かせてよ!」
止めろ!
引っ張るな揺らすな!
訂正するお前らのせいだからな!
―――
それから三カ月が経ち、嫌々ながら状況が呑み込めてしまった。
どうも転生したらしい。それもデュエルが出来ないと死んでしまう遊戯王の世界である。
まぁ、遊戯王は好きだから別にいいけどね。前の自分の事とかよく覚えてないし、ただ遊戯王関連の記憶は覚えてる。知らない事は仕方ないとしても、覚えている事は利用していこうと思う。
「ただいま~龍斗。あのね杏子がさぁ」
それと俺は遊戯の弟になるらしい。あ、遊戯兄さんの。
流石、何でも願いが叶うのに友達が欲しいと千年パズルに願っただけあって、ボッチ街道順調に進行中である。杏子は友達じゃないのかとも思ったけど、恋人だったっけ?
まぁ、それはともかく遊戯兄さんが友達が出来ないのは、双六お爺ちゃんの出どころ不明ゲームの所為だと思う。そりぁ、話題も合わないだろうと。
教師の悪口でも言い合えれば良いのだろうが、心優しい遊戯兄さんには人の悪口はハードルが高いのだろうな。
「遊戯ー、帰っとるのか?」
「あ、爺ちゃん。どうしたの?」
「うむ。実はこれをやろうかと思ってな」
そういって取り出したのは、金色の小箱…って千年パズルの箱じゃん!?
てことは原作開始、6年前ってことか…いや、イレギュラーの俺がいる時点で当てにならない。去年母親が妊娠していたならパズルしてる時間もないだろうし…。
「なにこの箱?」
「これはな…」
そんな危険な物は、俺の目の届かない所でやってくれないかな!?
――――
そして生まれてから三年が経過し、言葉を発声できる様になった。
遊戯兄さんは、相変わらずパズルと格闘している。
大きく変わった事と言えば、爺ちゃんが店でデュエルモンスターズのカードパックを扱う様になった事だろう。今までなら入手したカードパックは、爺ちゃんが全て開封してしまっていた。(我慢できなかったらしい)
最近は遊戯兄さんが、にこにこしながらパックを開けるのを見て、子供の楽しむ顔が見たいと我慢できるようになったとか。
「爺ちゃん、カード!」
俺も弱かったとはいえ元OCGユーザー、カードが好きなのである。
「ホッホッホ、龍斗にはまだ早いかの」
「ちがうのー、カード欲しいの!」
どちらかというとパックを開封するドキドキ感が、大好きなのである。最近は発売されているパックの中身を公式サイトで確認してから買うために、このドキドキ感が無くて結構がっくりしていた。
しかし、この世界では全てのカードが同じパックで出る。
つまりはカードは何が出るか分からないのである。ワクワクとドキドキが帰って来た。
「ゲームは、良いのかのう?」
あ、爺ちゃん。あんな俺ルールゲーム無理です。
「ゲームは良いの、カード集めるの!」
「ホッホッホ、龍斗はコレクターなんじゃな」
いや、エキスパートルールになったら、やるよ爺ちゃん。
「じゃあ、店の手伝いをしてくれるならご褒美にパックを一つあげようかの」
「ホント?お手伝いするの!」
――――
「ありがとございましたーの!」
俺は爺ちゃんのお店でお手伝いをしている。重い物は持てないから、在庫整理は出来ないけど店番は出来る。商品には値札が張ってあるから、レジに数字を入れるだけで良いのだ。カードパックを買って行く人は、その場で直ぐに開封するからゴミ箱が必要だ。
でも要らないからってカードを捨てて行くのは、ダメだろう。マナー的にも。
爺ちゃんに相談したら、そういうカードは貰っても良いんだってさ。捨てられたカードは、オリパにするかまとめてカード専門店とかに売り払うらしい。しかし、はにわとか運命のろうそくとか凄い懐かしいカードだ。
「龍斗やご苦労様、ご褒美のカードじゃ」
「やったの!どれにしようか悩むの…」
カードパックは正方形の箱に、小さい正方形の敷居一つ一つ収められている。
「よし、決めたの!」
俺は左端から三つ右のブロックのカードパックを選ぶ。
「ホッホッホ、何が出るかの~?」
早速、パークを開く。
このワクワク、ドキドキする感じ…カードゲームの醍醐味の一つだよね。
「五枚入りなの!」
パックを開けたら裏向きでカードが出て来た。
なかなか焦らす奴だ。
カードをカウンターに置いて、一枚ずつ表にする。
サイクロプス
トモザウルス
眠り子
死者蘇生
マブラス
「やったの死者蘇生なの!」
「良かったの~、爺ちゃんもデッキに入れとるカードじゃぞ。それにサイクロプスも出とる、もう少しカードを集めたら一緒に遊べるぞ」
「サイクロプスは、強いの?」
サイクロプスの攻撃力は1200、守備力は1000っと大して強い印象は無い。
「ホッホッホ、強さ自体は中の下と言った所じゃが、このデュエルモンスターズでは攻撃力が1000を下回るモンスターはかなり多いのじゃ。ほら捨てられていったカード達もそうじゃろう」
そうか、今の遊戯王の世界では、シンクロやエクシーズ、ペンデュラムもリンク召喚も無いからステータス重視になるんだ。
しかも魔法やトラップのカードは、数が少なく殆どがレアカード。それはカード市場もステータス押しになる。
「デュエルモンスターズは、日本に入ってきてまだ日が浅いからのう。攻撃力が高いモンスターがどうしても目立つんじゃな」
そう言えばデュエルモンスターズって、アメリカ発祥なんだっけ?
OCGみたいにデッキ販売とかやればいいのだが、自分で組んだデッキでゲームをプレイして欲しいというペガサス氏の純粋な願いが見える気がした。
「ただいまー。あ、龍斗そのカードどうしたの?」
「店番のご褒美じゃよ」
「そうなんだ。何が出たの?」
「んー、サイクロプスとー…」
「へー、僕もサイクロプスは持ってるけど死者蘇生は持ってないよ。龍斗は凄いなぁ」
遊戯兄さんサイクロプス持ってたんだな。
使ってるシーンは見た事無いけど、代わりにシルバーファングを入れたのかな?
死者蘇生を持ってないのは、以外。
「死者蘇生いるー?」
俺はまだデュエルする予定は無いし、エキスパートルールになった頃には爺ちゃんのデッキ貰うハズだから死者蘇生も帰って来るだろ。
「え?良いよ。それは龍斗が手に入れた初めてのレアカードなんだから、大切に持ってなよ」
遊戯兄さんは心優しい、天使やな。
「そうだ!僕から龍斗にパックをプレゼントするよ。デュエルモンスターズを始めたお祝い!」
「ホッホッホ、遊戯やお兄ちゃんしとるの」
双六は微笑ましい物を眺めている目をしている。
若干ムカつくけど新しいパックにドキドキだ!
「良いの~!?」
「うん、好きなパックを選んで」
「じゃあ、これにするの!」
「さっきと比べて、えらく早いのう」
「このパックとどっちにしようか迷ってたの!」
何と言えば良いのか、感覚的な物だから言葉にし難いがカードが呼んでいるとでも言うのだろうか、とてもそのパックに惹かれる様な感じがしていたのだ。
「さて何が出るかなぁ~」
プチリュウ
一眼の盾竜 (ワンアイド・シールドドラゴン)
真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)
ドラゴン族の秘宝
レッサー・ドラゴン
「ドラゴンパックだ~」
「「…れ、レッドアイズ……!?」」
レッサー・ドラゴンは初めて見るカードだ。なんか嬉しい。
「見て見て、爺ちゃん。レッサー・ドラゴンだよ!サイクロプスとお揃いなの~」
「あ、ああ。そうじゃな、サイクロプスと同じ攻撃力だじゃな」
「ぼ、防御力もだよ爺ちゃん…」
遊戯兄さんも爺ちゃんもどうしたんだろ。たかがノーマルモンスターだよ?
レッサー・ドラゴンってそんなに珍しいのかな…。
「いいかい、始めたばかりの龍斗は知らないと思うけどレッドアイズのカードは、滅多に出ないレアカードなんだ」
「じゃあ、ラッキーだね。でもレッサー・ドラゴンの方が嬉しいの~」
強いカードより、見た事のないカードの方が嬉しいのが、龍斗なのである。
「あんまり人にレッドアイズのカードを人に見せたらダメなんだよ?」
「なんでー?」
「このカードは、オークションとかで40万の値が付いた事もあるんだから、ドロボーさんが持って行っちゃうかも知れないんだよ?」
「カード盗っちゃじゃダメなの!」
「そうなんだけど…爺ちゃん」
大丈夫。高値で売られるカードが危険なのは、遊戯兄さん以上に良く知っている。グールズや海馬社長がいるのが決定しているのだから。
「ホッホッホ、強いカードよりレッサー・ドラゴンの方が嬉しいのか、これは大物になるぞ」
閉店した店内からは、楽しそうな笑い声が響いていたという。
はい、そんな訳で私の妄想ワールドへようこそ。
この話はこんな感じで進んでいきます。
因みにデッキは決まっていて、子供モブデッキとメインキャラ風デッキを考えています。
デュエルタクティクス?このお話に求めないでください。
ただの妄想ですよ。
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デュエリストの国
「なんで…」
フィールドには、荒野を背にしたレッドアイズ・ブラックドラゴン。
「レッドアイズで、アンデット・ウォーリアーを攻撃。黒炎弾!」
「俺の負けだゾォ…」
「何と何と!あのゴースト骨塚を倒したのは、若干4歳の新星、武藤龍斗だーーー!」
「「「わぁーー!」」」
はい、突然ですがデュエルモンスターズの大会に出場しています。
何故か?
賞品が欲しかったのとデッキ組んだら、使いたくなったのが理由かな。大会と言っても小さい規模の大会だけどね。
まさか幼稚園の遠足でこんな大会に出くわすとは、この世界は面白すぎる。
それにしてもこのゲーム、攻撃力の高いドラゴンを出せば、ほぼ勝利が確定する。
ダメだわこのルール。
「おめでとう!優勝賞品のサンダードラゴン一式だ。是非使ってみて欲しい」
TVゲームで大変お世話になったサンダードラゴン。この時代で作るなら、このデッキだと考えていた所にこの大会だ。
ペガサスが開催する様な公式の大会以外にも、こうして個人や企業が開く大会が数多く開催されている。有名な処では、城之内の町内大会とかである。
今大会はカードコレクターの叔父が亡くなり、その供養の為に開かれた大会である。俺が受け取った商品のカードは、そのコレクターの遺品にあたるのだが、コレクターの遺言でカードを使いこなせるデュエリストに託したという訳だ。
でもアンデット使いがなんでサンダー・ドラゴンが欲しかったんだろう?
――――
はい、小学一年生になった龍斗です。
時間が飛びすぎた感があるけど、まぁ聞いて欲しい。
「龍斗ボーイ、ユーをデュエルキングダムに招待しマース!」
時系列が良く分からないんだけど、キングダム編が始まったらしい。そういえばいつの間にか、城之内さんや本田さんが家に来るようになってたような。
「キングダム?」
「イエース、デュエリストの王国デース」
「んー、招待されても困るのー」
いや、待てよ。
いつの間にか、千年パズルが完成していたような…。
「オー、これは正式なオファーデース。デュエルキングダムという世界大会を盛り上げるお手伝いをして欲しいのデース!」
「お仕事なの?」
「その通りデース!」
「じゃあ、行う業務内容と報酬を提示して欲しいの!」
「オー、小学生とは思えまセーン…」
――――――
良く分からないけどペガサス・J・クロフォードさんの依頼を受けて、デュエルキングダムに参加する事になりました。
遊戯兄さんに参加して貰えれば、大会が盛り上がるからとビデオレターを送る事になった。人質役だったけど割と楽しかった。
いや、ビデオとか懐かしいわ。
で、大会での業務だけど運営側のデュエリスト『プレイヤーキラー』を頼まれちゃいました。フィールドパワーソースがどうのこうの言ってたけど、そもそもゲームのルールに問題があったので、GX式のルールを提案したら褒められた。
この間まで忘れてたけどバトルシティルールって、融合モンスターを手札に入れるんだよね。たしかマリクの人形が手札に入れてた。
流石にそんなバトルシティルールは、勧められない。
そもそもフィールドパワーソースなんかは、フィールド魔法の使用率の低さを嘆いて考案されたんだってさ。でも海ならまだしも、草原とかあっても困るよね。
ペガサスさんは、色々考えてたみたいだけど最後にはルール改定が決まった。この大会は世界に配信されるから、新しいルールを知って貰うのに丁度良いらしい。
そうそう、報酬はカードで貰う事にしたんだ。
未来で作成されるカードの一部を前倒しにして、作って貰ったんだ。これで最低限動かせるデッキが組めたよ。
それにしてもペガサスさん、カードの話をしている時は凄く楽しそうだったな。まぁ、良く分からないウサギの漫画を押し付けなければ良い人だよ。
あ、そうだ。インセクター羽蛾が遊戯兄さんのエグゾディアを捨てるのは覚えてたから、あの弱虫野郎は別の船に乗せる様にペガサスさんに進言した。
ついでに女性用の部屋を用意する事を忘れない様に言っておいたよ。舞さん以外にも女性デュエリストがいるかもだしね。
―――――
大会当日まで暇だなーっと思っていたら、海馬モクバって変な名前の子供がやって来た。なんでも海馬コーポレーションの社長の弟で、本人も副社長らしい。
ペガサスさんが子供同士の方が気が楽だろうと、俺の借りてる部屋まで連れて来たんだってさ。つい「アポ取れよぉぉぉ!」って叫びそうになったのは、秘密なんだ。
「おまえ、何でこんな所にいるんだ?」
「ペガサスさんから、仕事のオファーがあって受けたの!」
「おまえも敵って事か!」
「良く分からないけど報酬も貰ってるから、大会を盛り上げるだけなの!」
「大会?……デュエリストキングダムの事か?」
「そうなの。新しいルールのデュエルモンスターズが始まるの!」
「新しいルール!?兄さまに…ッグ」
「新ルールは、大会前に公開されてるからきっと伝わってると思うの」
モクバからすれば、海馬が少しでも不利になるようなルールを避けたいって所かな。でも実態はペガサスの方が、不利になってる気がする…あれー?
「そうか…」
安心からか木馬のお腹から、小さく虫の音が聞こえた。
「お腹空いたの?」
「う、うるさい」
「もうお昼なの。一緒に食べるの!」
部屋に備え付けられたテレビ電話で、お昼ご飯を注文する。
木馬を見ていたら、ハンバーガーが食べたくなったので注文した。流石にペガサス城には無いかなと思っていたら、種類を聞かれた。あるんだハンバーガー。
それからモクバとは、一緒にデュエルをしたりして仲良くなった。
――――――
「では、ユーにはプレイヤーキラーの説明をお願いしマース」
「はーい」
寝ていたからと言って、爺ちゃんのカードが破られた時に放置していたのは許せない。だから今回は思いっきり楽しそうなイベントに関わってやる。
ペガサス城の二階、バルコニーって言うのかな?
ベランダみたいな所にペガサスさんと一緒に登場する。あ、遊戯兄さんと友達の皆が見える。手振って於こう。
「皆さん、デュエリストの王国へようこそ。本日ここデュエルキングダムの開催を宣言しマース!」
ペガサスさんの言葉と共に盛り上がるデュエリスト達。城之内さんはなんか喚いてるけど、本田さんに取り押さえられている。
あ、遊戯兄さんはアテムモードで怖い顔してる。ガクガク。
「今大会では新しいルールの導入に伴い、厳しい生き残り競争をしてもらう事になりマース。新たなルールを理解できない古き者は、以後デュエリストとは認められまセーン」
ペガサスさんが新しいルールが書かれたルールブックと、栄養価の高い非常食、水の入ったペットボトルを出場者に配らせる。
ああ、デュエルグローブとスターチップは健在だったけど、デュエルリングシステムが間に合わなかったのでリングの機能の一部だけ使う事になったよ。
分かり易く言えば、使えるのはソリッドビジョンと相手の場が見えるモニター、ライフポイントの表示。後は火炎放射器ぐらい。
モクバに海馬社長と連絡取れれば、システムを使えるのにってボヤいたら色々使えるようにしてくれた。海馬コーポレーションのゴタゴタで、無関係なデュエリストに迷惑はかけられないって言ってたよ。
「それでは今回の目玉である『プレイヤーキラー』を一人紹介しましょう。『武藤龍斗(むとうりゅうと)』デース!」
あ、出番が来た。
「やっほー、プレイヤーキラー筆頭の武藤龍斗だよ。プレイヤーキラーの説明は僕からお伝えするの!」
何だか会場がざわざわ言ってる気がするけど気にしていたら、やっていられない。
「まず『プレイヤーキラー』とは、大会参加者を狙う大会運営側のデュエリストの事だよ!プレイヤーキラーとのデュエルは拒否することが出来ない。でも安心して、デュエルにかったらスターチップが手に入るのは同じだよ。これは大会が進むにつれて、デュエルリストが少なくなるから必要になるんだ。もしプレイヤーキラーに実力が認められたら、この大会でのみ手に入る珍しいカードが貰えるの!」
「珍しいカードだと…レアカードか!」
「大会限定のカードだ。間違いなくレアカードだぜ」
プレイヤーキラーの説明で、まさかのレアカードである。デュエリスト達が盛り上がるのは仕方がない。城之内さんも盛り上がっている。
「でもただ勝つだけじゃあ、あげられないの。新しいルールのPV候補になるような熱いデュエルを期待するのー!」
「「「おおおお!」」」
「以上、プレイヤーキラーの説明を終了するの」
「さぁ、デュエリスト達よスターチップを求めて戦うのデース!」
こうしてデュエルキングが開催された。
久々のデュエルが楽しみだ。
主人公のデッキはオリカ、アニカ込みで一つ完成しました。
遊戯たちのデュエルはカット対象ですが、次回はモブと主人公のデュエルをさせたいと思います。
書くの大変なんだよね・・・
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お前の名前は、弱虫野郎
解りにくいかも知れませんが、ご容赦ください。
「なぁ、遊戯…あれ」
城之内君がペガサスの隣で、元気よく手を振っている龍斗指さす。
「…どうやら、無事だったみたいだが…」
戦う理由がなくなり、困惑に包まれる遊戯。
「すごい、イキイキしてやがるぜ」
呆れ顔でボヤく本田。
「ま、無事で良かったんじゃない?」
一先ず無事を確認して安堵する杏子。
「龍斗くん…予想の斜め上を行ってるね」
龍斗の誘拐を聞きつけて、駆け付けた獏良。
いつものメンバーは、龍斗の姿を確認して安堵と困惑を手に入れた。
―――――
「じゃ、城の周りに人影が見えなくなったら、お仕事開始なの!」
「気を付けてな」
「モクバは何を心配してるの?」
「いや、お前なに仕出かすか分かんないだろ…」
モクバの心配は龍斗の身柄ではなく、何か仕出かさないかというオカン的発想である。
「変な信用が付いたの…」
「オレは簡単には城から出られないんだからな!」
「分かったの。モクバはお留守番してるの。行って来るの~!」
「ホントに分かってんのかぁ」
モクバは短い時間とは言え、孤独を埋めてくれた友人の背を見送った。
――――――――
「デュエルキングダムと言えば森なの!」
エグゾディアの因縁を持つ、インセクター羽蛾との手に汗握るデュエル。そして弱虫野郎命名のシーンである。
「見つけたぁ~」
「?」
森のデュエルリングに向かっている最中、茂みから人の声が聞こえて来た。
「君、ペガサスの隣にいたプレイヤーキラーだよね。僕にカードくれないかなぁ」
「あ、全日本チャンプの弱虫野郎なの!」
「誰が弱虫だ!下手に出てれば付けあがりやがって…デュエルっと言いたい所だが、下手にプレイヤーキラーに手を出すのは馬鹿のすること。君の相手はコイツがする」
そう言うとインセクター羽蛾は、茂みに隠れていたもう一人のデュエリストを引っ張り出した。
「ええ!?俺かよ!」
「大人しく言う事を聞くんだ…もし勝てればスターチップっとレアカードが手に入る。仮に負けたとしても、僕が取って置きの激レアカードをくれてやる」
「ほ、本当だろうな…」
「もちろんさ」(取って置きのゴキボールをな)
盛り上がっている所悪いのだが、プレイヤーキラーは獲物を自分の目で見極める。要は対戦相手はプレイヤーキラーが決めるのだ。
まぁ、デッキの慣らしには丁度いいかも知れない。
でも羽蛾がデータ収集しているから、全力でのデュエルは危険かも知れないな。
「まぁ、良いか…スターチップは一つで良いの」
――――
「「デュエル!」」
ルールが改正されたと言っても、ライフポイントは4000。そして先手ドロー有。
「俺のターン、ドロー。俺は手札から、スカイ・ハンターを召喚!」
スカイ・ハンター(風)レベル4 通常モンスター
攻撃力1550 守備力1200
「…(ソリッドビジョン凄いの)」
「さらにカードを一枚伏せてターンエンドだ」
モブ手札4
「僕のターン、ドロー」
龍斗手札6
「僕は手札からサンダー・ドラゴンの効果を発動。手札からこのカードを墓地に送り同名カードをデッキから、二枚まで手札に加える。そして死者蘇生を発動!」
サンダー・ドラゴン(光)レベル5 効果モンスター
攻撃力1600 守備力1500
「サンダー・ドラゴン…レアカードだ」
「ヒョヒョヒョ、良いカードだ」
羽蛾はキモイ。
「そして手札から融合を発動するの!」
双頭の雷龍(そうとうのさんだーどらごん)(光)レベル7 融合モンスター
攻撃力2800 守備力2100
「そして融合回収からの融合なの!」
双頭の雷龍が二体フィールドに鎮座する。
龍斗手札6-7-6ー3-2-4-2
「双頭の雷龍が二体!?」
「バトル、一体目の双頭の雷龍でスカイハンターを攻撃!」
モブLP2750
「うわぁぁ!?」
ライフポイントは、当然4000だ。
この世界で8000のルールは無いだろう。話のテンポが悪くなるし、大会なんてOCGの世界大会ですら長いのに遊戯王ワールドで8000なんて一回のデュエルがどれだけ長いのか。
「何もなければ、止めなの」
「ま、まてリバースカードオープン!リビングデッドの呼び声!」
倒したばかりのスカイ・ハンターが復活する。
「んー、二体目でスカイ・ハンター再攻撃!」
モブLP1500
「ヒョヒョヒョ、必至だなぁ!」
「うるさい!」
リビングデッドは良いカードだけど、最初のターンに伏せる様なカードじゃないと思う。墓地も肥やしてないし。でも、そのお陰であのモブは生き残った。
「カードを一枚伏せてターンエンドなの」
「俺のターン、ドロー!」
モブ手札5
「俺も君に習わせてもらうよ。マジックカード融合!」
手札融合…墓地に送られたカードは、悪魔の知恵と魔天老?
「融合召喚『スカルビショップ』!」
スカルビショップ(闇)レベル7 融合モンスター
攻撃力2650 防御力2250
「また五十なの」
攻撃力2650。素材は弱いモンスターだが、融合召喚を目的に考えれば採用されても不思議はない。効果は無いものの高い攻撃力を誇るモンスターは、ステータスを重視するしかない環境では強力な存在だ。
「このままでは、双頭の雷龍の攻撃力2800には150も及ばない。なら、手札から装備魔法『執念の剣』をスカルビショップに装備する。執念の剣の効果で、攻撃力と守備力が500上昇する!」
スカルビショップ 攻撃力3150 守備力2750
「攻撃力が3000を超えた…海馬のブルーアイズも敵じゃない。ヒョヒョ」
「このまま攻撃したい処だけど、その伏せカードが問題だ」
(伏せカードは、サイクロンなの。攻撃反応系が有れば伏せてたの)
モブの手札は1枚。ー、使い切っても後がないし攻撃をためらっても、次のドローで此方の手札は3枚になる。折角の融合モンスターも倒される可能性が高い。
「ここは攻撃だ!」
スカルビショップが装備した執念の剣で、双頭の雷龍を切り払う。
「ん…」
龍斗LP 3650
「カードを一枚伏せてターンエンド」
モブ手札0 LP1500
「僕のターン、ドロー」
龍斗手札3
「このカードが来たって事は…」
もしかしたら…。
「龍斗!?」
「あ、あれはテレビで見たインセクター羽蛾!?」
「龍斗くん!?」
「デュエルしてんのか…相手は誰だ?」
(ほぉ、面白い事になってやがるぜ…)
あれは遊戯兄さん達…あ、闇バクラになってる。
「ギャラリーが増えて来たの……カードを一枚セットして、手札から天よりの宝札を発動するの!」
「天よりの宝札!?」
「知ってんのか遊戯?」
「天よりの宝札はお互いの手札をすべて捨て、それから手札が6枚になる様にドローする。…最高のドローカードだ」
龍斗手札6
でも城之内さんが合流した途端にこれか、やっぱり絆とかあるのかな。
「手札から融合を発動する。僕は手札のレッドアイズ・ブラックドラゴンとフィールドの双頭の雷龍を融合!」
「レッドアイズ!」
城之内さんが驚いた様に叫ぶ。
「融合召喚!現れよ雷眼の黒竜(サンダーアイズ・ブラックドラゴン)!」
雷眼の黒龍(サンダーアイズ・ブラックドラゴン)(光)レベル10 融合モンスター オリカ
攻撃力3000 守備力0
「だ、だが攻撃力ではまだ俺のスカルビショップの方が上だ!」
「サンダーアイズの効果、このカードの融合召喚に成功したとき墓地に存在するサンダーと名の付くモンスターを装備魔法扱いとして装備し、その攻撃力分このサンダーアイズの攻撃力をアップする。装備するのは当然、双頭の雷龍!」
雷眼の黒竜(サンダーアイズ・ブラックドラゴン)
攻撃力5800 守備力0
「なっ!?」
「炎雷弾!」
モブLP-1150
「俺の…負けか」
相手の見せ場の為に除去カードが使えないとか、運営側は厳しい。
そっと墓地のサンダーブレイクに目をやる。
「このデュエルでは、カードはあげられないの…」
相手のデュエリストから、スターチップを受け取りデュエルリングから飛び降りた。
――――――――
「龍斗!心配したんだからね!」
「そうよ、あんなビデオ送ってきて…」
デュエルリングを降りると、待ち構えていた遊戯兄さんに絡まれた。
「ドッキリビデオなの。実はペガサスさんに頼まれたの」
「なんだ、誘拐かと思って損したぜ」
「ペガサスはあんなビデオを送ってまで、遊戯君をデュエルキングダムに参加させたかった?」
「あ、バクラ!」
いつの間にか闇の表情を隠してやがる。
「なんで龍斗は獏良君のことを呼び捨てにするの?」
「んー、分かんない」
初代遊戯王の中で、一番好きなキャラが闇のバクラなだけだ。
「もぉー」
「まぁ、とにかく遊戯が戦う理由は無くなったみたいだしよ。俺は賞金が欲しいから残るけど、お前らはどうする?」
「城之内だけじゃあ心配だもん!」
「僕も折角の大会だから、行ける所まで勝ち進むつもり」
「ペガサスさんから、頼まれたお仕事続けるの…デース!」
「ま、ついでだ。城之内の応援でもしてやるか」
「本田テメェ!」
「一人で帰るのも何だし、僕も一緒に行くよ」
「よーし、決まりだな」
さて、これでメインキャストのデュエルキングダムが始まる。
「お前たちボクを無視するんじゃない!」
ノートパソコンで書いているのですが、充電器が壊れるという事故が発生した為時間がかかりました。
いやー、初めてアマゾンのお急ぎ配達したよ。
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赤眼は巡り合う
「ボクを無視するんじゃない!」
すっかり蚊帳の外になっていた弱虫野郎こと『インセクター羽蛾』は、大袈裟に騒ぎ立てた。
「そう言えば、弱虫野郎が残ってたの。スッキリ忘れてたの」
「スッキリだとぉ~!?」
ついでに思い出したけど、レアカードは渡さなくても良いのだろうか?
「もう許せん…これまでの無礼な暴言の数々、全日本チャンプのこの僕がデュエルで叩きのめしてやる!」
羽蛾は全国大会で優勝した程度で調子に乗っているが、デュエルを挑んだ相手は『あの』武藤遊戯の弟である。
単純なドロー力もさることながら、最も恐ろしいのは彼のデッキが時間が惜しくなった場合を考慮して、ワンキル能力を兼ね備えている事だろう。ライフポイントが4000な事に合わせたお手軽なバーン効果を使う程度なのだが、カード3枚があれば発動可能な物なので持ち前のドロー力でもって、それなりの頻度で初期手札である5枚の中に紛れ込んでいたりする。
付け加えるのならば、羽蛾が優勝したのは俺ルール時代のデュエルモンスターズであり、その時代の戦略の多くは使い物にならない。
「待てよ…そのデュエル俺が相手になるぜ!」
「遊戯兄さん?」
「せっかくデュエルキングダムに来たんだ。参加者同士でデュエルしないとな!」
デュエルキングダムのルールとして、プレイヤーキラーが大会参加者から勝負を挑まれたからといって、態々相手をしなければならない理由は無い。参加者が、プレイヤーキラーから逃げられないだけである。
龍斗としては、原作通りになるであろう試合に興味もない。
「ヒョッヒョッヒョ、どこかで見た顔だと思ったら…遊戯君じゃあないか、あの海馬君を破った」
「おうよ、遊戯にかかれば海馬のヤローなんて…」
「でもこの大会は特殊勝利カードの使用は禁止されてる。知ってるよねぇ?」
「何!?そうなのか、龍斗?!」
「そだよ」
当然の様に頷く。
カードゲームには良くあることなのだが、大会ごとに使用カードが決められている事は珍しい事ではない。俗にいう『大会レギュレーション』という奴である。
バトルシティ編のバーン効果禁止ルールなどは、これに当てはまる。
余談だがプロデュエルリーグには、各種族限定の大会なども存在しており、全ての大会で優勝を収めると
『マスター・オブ・デュエリスト』の称号が送られる。
メタ的な発言をすると、ペガサスが遊戯に勝つために動員したルールでもある。せっかくサウザンドアイズサクリファイスを出して、追い詰めたとして「俺の引いたカードは、封印されしエグゾディア!」をされては、堪ったものではない。
「フン、お前相手にエグゾディアはもったいないぜ!」
「ヒョッヒョ、良いだろ相手してやるよぉ。その威勢、どこまで持つか楽しみだぁ」
決着は呆気なく付いた。
やはり羽蛾如きでは、アテムの足のつま先程にも実力が満たないのだ。しかも、ちゃっかりスターチップを全部奪っている。
「まぁ、でも見ごたえはあった…」
ミラーフォース先輩の初登場シーンであるからして、罠カードの有用性を広くプレイヤーに知らしめてくれることだろう。つまりだ。
「大会参加者、武藤遊戯選手!」
遊戯兄さんは憑依が解けた様な、きょとんとした表情をしながら振り向く。
「先程の試合は、罠カードの有用性を周知させるのに十分な物であった物と認める。よって大会限定カードを進呈する…の」
いかん、最後まで我慢できなかった。
「ああ、プレイヤーキラーが認めたら貰えるっ言いう…ブラック・カーテン?」
ブラック・カーテン フィールド魔法 オリカ
一ターンに一度、手札の闇属性モンスターを墓地に送り、デッキから同レベルの光属性モンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。
このカードの効果によって特殊召喚されたモンスターは、効果を無効にし自分エンドフェイズに除外される。
「これは…テクニカルなカードだね」
前に言っていたと思うけど元々デュエルキングダムは、フィールド魔法の盛り上げように企画された大会だ。まぁ、世界大会や海馬コーポレーション乗っ取りも同時進行しているから、カオスな大会ではあるのだが。
そんな訳で実力が認められた(今後PVとして使えそうな)デュエルの報酬として最も相応しいと言えるだろう。
しかし、ペガサスにフィールド魔法を復旧させたいなら凡庸性の高いカード作れよと言ったら、酷いカードが出来た。確かに属性対応の効果なら凡庸性は高いだろうが、パッと思いついただけで暗黒界、カオス、サイバードラゴン、ブルーアイズ、モリンフェン…色々酷い事になりそうだ。
しかもこれ、全属性対応するようにカードが作られている。それぞれ違う属性の組み合わせで、同じ効果を持っているのだ。いつか種族もの出そう。
「うっし、龍斗俺とデュエルしてくれ!」
「ん?」
俺とデュエル?
「城之内の野郎、さっきのサンダーアイズを見て暴走してやがる」
「龍斗君、相手してあげたら?」
悪い笑顔ですねバクラさん。
「どっちが真のレッドアイズ使いか、確かめてやるぜ!」
「?」
あれ、竜崎編先に終わってた?
「城之内さん、レッドアイズ持ってたの?」
「そっか龍斗は知らなかったな。あの羽蛾って野郎が、全国大会の決勝で戦った相手が持っててよ」
ダイナソー竜崎ですね。
「で、アイツは羽蛾に負けたのを気にしててな」
城之内さんの話が、長くて分かり難かったのでまとめると、ダイナソー竜崎は全国放送で羽蛾に敗北→次は負けない様に強いカードを購入(レッドアイズ)→デュエルキングダムに乗り込んでみたら、羽蛾が気にしていた武藤遊戯を発見。勝負を挑む→人命(龍斗)が掛っているから絶対に負けられない。城之内乱入→遊戯と戦いたいなら先に俺をtaデュエル。
「それで何でアンティルールになったの?」
船に女子部屋を作ったから、部屋追い出され事件は無かったはず。つまりダイナソー竜崎が、孔雀舞の下僕になるくだりもなくアンティに移行する事もない。
「何かデュエルの最中に杏子に惚れたとか言い出してよぉ」
竜崎ェ。
「ワイが勝ったら、そこの杏子はん貰っていくってな?」
「冗談じゃないわよ。もう!」
アイツそんなキャラだったのか、まぁ女に惑わされて部屋から叩き出される様な奴だったけど。
「まぁ、そんな訳でレッドアイズを持つ者同士デュエルと行こうぜ!」
「んー、チップは?」
「全掛け…っと言いてぇ所だが、どうも格上みてぇだからな竜崎からぶんどったスターチップ2個だ」
じゃあ最初の敗退者はダイナソー竜崎になったのか。
「良いよ、リングに上がるの!」
「「デュエル!」」
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決戦!迷宮兄弟!?
デュエルキングダム二日目、城でキングサイズのベットを堪能していると、地下ダンジョンを担当しているプレイヤーキラー『迷宮兄弟』から連絡が入った。
なんでも遊戯一行が地下ダンジョンステージに侵入したらしい。コインの奴ですな。
「見に行くのも面倒だし…プレイヤーキラーの仕事をするの!」
「オー、龍斗ボーイ。頑張ってクダサーイ」
「行って来るの!」
さてPV素材を探しに島を徘徊するか。
ああ、城之内とのデュエルね。意外と苦戦したけど勝ったよ。流石に専用サポートカードが入ったサンダーアイズデッキには勝てないよね。でもペガサス氏が、生涯出会ったデュエリストの中で、武藤遊戯の次に才能のあるデュエリストと評価しただけはあった。
城之内の家は両親が離婚して、兄妹離れ離れで暮らしてるんだけど。父親が飲んだくれで借金まみれの酷い家庭なんだよね。(そらグレて不良グループにも入るわな)そんな彼はカードの購入に資金を注ぎ込む事はまず出来ない。つまりはカードの質が圧倒的に悪いのである。
勿論、OCG次元の皆は、低レベルでも低攻守値のモンスターでも幾らでも活躍の幅を持たせることが出来るだろう。だがここは初代遊戯王デュエルモンスターズの世界なのである。そもそもカードの種類が少ないのだ。アメリカならもっと種類いが豊富だろうが、城之内が英語を読めると思いますか?
因みに英語は俺も読めない。
あ、でもPVに使えそうな良い対戦だったから、カードはあげたよ。グリーン・カーテンってフィールド魔法のカードね。効果は風属性モンスターを手札から捨てて、同レベルの炎属性モンスターをデッキから特殊召喚、ってブラック・カーテンと同じね。城之内が属性考えてデッキ組む訳ないし、多分売却ルートですね。まぁ、この世界なら数年眠らせて置けば500万ぐらいの価値になるだろう。
「そういえば、部屋にモクバいなかったの…」
もしかして脱走したのだろうか?
ふむ、原作が暴発してる気がする。
「あ、参加者見っけ!」
「げぇ、プレイヤーキラー!?」
げぇって何だゲェッテ…あ、スターチップは全掛けね。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「結局こうなったの…」
俺が連れて来られたのは、地下特殊デュエルリンク。通称地下ダンジョンである。このリングでは、デュエルモンスターズのカードを使ってダンジョンを攻略する所謂、ローカルゲーム用のデュエルリングなのだ。
作られた由来は最初期のルールが完全になくなるのが悲しいと、ペガサスがごねたからである。
「ささ、筆頭玉座に」
「兄者、お茶をお持ちしたぞ」
「気が利くな、でかした弟よ!」
「なぁに、これくらい」
「「八ッハッハ!」」
何これぇ?
「「「「デュエル!」」」」
こちらの都合を無視して開始されたデュエル、実況は私、武藤龍斗がお送りいたします。
おっと先攻は、迷宮兄弟兄(本名不明)であります。さぁ、発動された迷宮のカード、ラビリンス・ウォール!
さぁ、ここで地下ダンジョン攻略の方法が説明されます。
1.勝利するには迷宮を攻略し、迷か宮と書かれた扉の何方かを指定する。
2.それぞれのライフポイントは2000とし、ダイレクトアタックは禁止。
3.ダンジョンを攻略するプレイヤーは、どちらか片方でもライフポイント及びデッキを失った者が出た場合敗北となる。
4.召喚されたモンスターは、レベル一つにつき一マスダンジョンフィールドを進むことが出来る。飛行能力を持つモンスターは、ダンジョンでは生息できない。
5.第三勢力のドロップモンスター倒す事が出来たら、ドロップデッキからカードを手札に加える。
ん?
ドロップモンスターの管理、俺がするんですか?
「行くぜ、ルイーズを召喚!」
そう言えばエグゾディアの代わりに入ったのが、ルイーズ、マグネット三兄弟とバルキリオン何だとか。でも入ったものの、キングダムでは出番がないマグネット達。
「ルイーズ、迷宮を進め!」
「僕のターン、ドロー。手札からダンジョンモンスターを召喚、ターンエンドなの!」
ダンジョンモンスターは召喚するだけで、移動や戦闘の指示を出すことは出来ない。ターンの終了時に自立行動するのだ。といっても移動のルールは他の参加プレイヤーと同じだ。
まぁ、ダンジョンモンスターと言いつつ、ゲームの扱いとしてはトークンのようなものだ。時代にあったように攻撃力は500、守備力0である。完全にボーナスモンスターなのだが、迷宮兄弟の召喚したモンスターと同時に出会うと厄介な事態を引き起こす。
「では私のターンだ。兄者の為に、手札から融合を発動!」
原作でお馴染みのラビリンス・ウォールとしゃどうシャドウ・グールの融合である。迷宮の掃除屋が誕生する。
「さぁ、ウォール・シャドウよ。侵入者を排除せよ!」
何処かで見たようなシーンが広がる中、迷宮兄弟に渡されたダンジョンデッキはどんどん消費されていった。特に城之内が酷い。サラマンドラでダンジョンモンスターを全滅させて、17枚ドローとか何やってんだ。
「ブラック・デーモンズ・ドラゴンの攻撃!「罠カード発動!」」
原作のままじゃ俺がいる意味がない。
「ダンジョンの魔力!」
「トラップだと!?」
「このカードはダンジョン外に存在するモンスター同士がバトルを行う時に発動できる。そのバトルを無効にし、バトル中のモンスター二体をダンジョン内に移動させるの」
これで振り出しだ。
「そして、ブラック・デーモンズ・ドラゴンは飛行能力があるモンスター。飛行できるモンスターはダンジョンの中では生存できない…破壊されるの」
「「なっ!?」」
これで遊戯兄さん達に残されたモンスターは、ブラック・マジシャン一体だけ。
「「対して我らにはゲート・ガーディアンがいる!」」
そしてゲート・ガーディアンには水、風の破壊耐性が備わっている。(ダンジョンデュエル限定)
「そんなぁ!」
「もしかして、このまま地下暮らしか!?」
「諦めちゃダメよ!」
一応、大会運営側の人間だからね。わざと手を抜く訳にもいかないし、後で怒られちゃうし。
「クッ…ターンエンドだ」
「遊戯…」
まぁ、とても手軽な攻略法が有るんだけどね。
「ダンジョンに宝箱を設置してターンエンドなの」
宝箱は遊戯王で言えば装備魔法である。ラビリンス・ウォールに装備する事で、ダンジョン内に宝箱を設置できるのだ。
「ドロー…む。ターンエンドだ」
迷宮兄弟の使用しているデッキは、ダンジョンデュエル様に構築された専用デッキ。ゲート・ガーディアンを素早く揃える以外は、時間稼ぎ用のモンスターやサポートカードで構築されている。後半に移行すればする程に手札に不要なカードが集っていく訳だ。
召喚もしなかった様子をみるにモンスターを引けなかった様だ。
「俺のターン、ドローカード!」
打って変わって城之内のターンだ。配下のモンスターは無し、切り札のレッドアイズも墓地だ。遊戯兄さんのエンド宣言で攻撃力も元に戻り、墓荒らしも使用した後だ。
「俺は岩の戦士を召喚して、迷宮に入るぜ!」
岩の戦士 戦士族 レベル4 通常モンスター
攻撃力1300 守備力1200
非常に重たい岩石の剣を振り回す、岩石の戦士。
「おっとダンジョンカードを使うぜ。二倍歩行!」
このカードの効果で、レベルの倍の数まで駒を進めることが出来る。
あ~なるほど。流石はギャンブラーだ。
「7マス進み、宝箱を開けるぜ!」
「城之内くん!?(確かにこのままでは敗北は必至。だがもし宝箱が罠だったら…っ!)」
「さぁ~て、中身は何だ?」
宝箱のカードには、効果欄に宝箱を取得した際に発生する出来事が書かれている。トラップでモンスターが破壊されたり、ライフポイントが回復したりと様々だ。そして今回の効果は…。
「えーっと…隠し部屋のカギ?」
「「何!?」」
分かり易くうろたえる迷宮兄弟。
アトラクションになっている地下ダンジョンの隠し部屋となれば、ある程度予測は出来るだろう。そう、避難用の緊急出口である。
「そうか大会である以上、最低限参加者の命を守らなければならない!」
「どういう事だバクラ?」
本田は喧嘩以外では、役に立たないな。
「つまり火事とか地震とかに備えて、設置が義務付けられている避難経路よ」
「学校で訓練するアレか!?」
それは訓練であって別物だけどね。
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