魔法少女リリカルなのは~愛、恐いなぁ~ (極麗霊夢)
しおりを挟む

イベント系の話
リアルイベント・バレンタインデー


 いま、私の目の前にはお菓子がある。

 勉強机いっぱいのお菓子。

 今日は2月14日、バレンタインデーである。

 バレンタインデー。

 恋人がまたは片想い中の女性が、好きな人にチョコを渡し愛の告白を告げるリアル充イベント。

 また女同士で友チョコなんかもある。

 

 さて、そんなイベントにうちの恋人である月村すずかが、参加(暴走)しないわけがなかった。

 

 学校で突撃して来なかったのでおかしいなとは思ってたけど、すでに私の部屋に置いていたとは……朝、なかったのになぁ。

 

「しっかし、大きい」

 

 特大のぬいぐるみくらいはある。

 明日感想を聞かせてねと言われたので、恐らくチョコだと思うけど……うわぁおっきいなぁ。

 

 梱包されてあるリボンをほどき、包装紙を丁寧に剥いで、箱を開けて呆然とした。

 

 まず、まず私から見てチョコの右側を見る。

 ホワイトチョコレート塊。

 いや、人の形を模してるから塊と言うには語弊がある。

 問題はホワイトチョコレートのモデルだ。

 恐らくツインテールであろう片側のテール。

 リボンもあって私が今付けてるのと同じ箇所に食紅が塗ってあってリアルだ。

 目も食紅でちゃんと紅い。

 胸はストンとまな板。

 お腹まではある。

 次に左側を見る。

 普通のチョコレートの色だ。

 ただこれも人を模してる。

 ぶっちゃけすずかだ。

 もうこと細やかに描写もしたくないから言うけど右側に私が半分で、左側がすずか半分を合わせた巨大チョコ。

 それがすずかからのバレンタインチョコ。

 

 とても一人で消化できる量じゃない。 あ、手紙。

 

「なになに……この世で一番誰よりも大切なシングちゃんと私を模したチョコだよ。 うん、見たらわかる。 時間を掛けてもいいのでちゃんと食べてくれたらいいな……か」

 

 ………………………………よし、食べよう。

 

 

 ☆

 

 

 もそもそ、まぐまぐ、ぐっぐっぐっ……。

 

「うん、美味しいんだけどね。 流石にきっつい……」

 

 すずかの巨大チョコを食べてると、バタンッ!と扉が開かれた。

 誰だろうと扉の方を見ると、そこにはお母さんが輝かんばかりの笑顔で立っていた。

 

「お母さん?」

 

「シングちゃん、これ! ハッピーバレンタイン~」

 

 お母さんに渡されたのは熱い緑茶だった。

 

「緑茶?」

 

「ええ! すずかちゃんのチョコ大きかったから同じチョコは飽きるかなって、だから愛情を込めてお茶を()れたの!」

 

「………………ありがとう、お母さん」

 

 お母さんの心遣いに感謝して、私はお茶を飲みながらチョコを食べた。

 

 

 ☆

 

 

 翌日。

 すずかに昨日の内に全部食べて美味しかった事を伝えた。

 すずかは一日で食べきると思ってなく、かなり驚いていたけど、まぁ、そこは愛だよと答えた。

 




すまぬ。
いつもの長さだといつ終わるかわからないので、こんな短さになりました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

リアルイベント・ホワイトデー

今回かなりやっちゃったなーとか思ったりしてる。

結構バッチィかもです(というか想像しなくともバッチィ)。
そういったのが嫌いな人はブラアウザバックお願いします。



 ホワイトデー。

 バレンタインデーの時にチョコを貰った人にお返しをする日。

 本来のホワイトデーは、そんな意味じゃないと思うけど、そんなイベントに無縁だった私が本来のホワイトデーを知るよしもなく、ホワイトデーはバレンタインデーのお返しの日しか思い付かない。

 まぁ、何が言いたいかと言うと、すずかと母さんのお返しを考えてる。

 

「思い付かないモノを延々と考えてるより、本人に聞いた方がいいかな」

 

 こういう時、バレンタインの方がいいなぁとは思う。

 でもそれもしょうがないと思う。

 私の前世の性別はたぶんだけど男だと思う。

 バレンタインとかはしゃぐような女子でなかったし、ワンチャンそういうイベントに興味がない女子の可能性もないこともない。

 そんな私がバレンタインイベントではしゃぐとか、一日が過ぎる度に二月十四日の出来事を夢想しながら過ごすことはないからね。

 

「と、言うわけで母さん達はホワイトデー何が欲しい?」

 

「母が望むのはただ一つです。 シングちゃんにはいつも元気で居てほしい。 お母様の方もそれを望んでますよ」

 

「んー、でもお返しはお返しだし何かでお返しさせて欲しいんだけど……」

 

「そうですねぇ……なら紫虫と縁を切り」

 

「それはなしの方向で……私もその好きだから」

 

「なら、シングちゃんの手料理が食べたいな」

 

 母さんがお母さんに戻って私にそう言う。

 手料理……まぁ、凝ったものは出せないけど、それならいいかな。

 

「いいよ、なら明日の夜は私がご飯をつくるよ」

 

「やった♪」

 

 お母さんのポヤポヤ笑顔を見て、つられて笑顔になってしまう。

 そうだな、ステラにも私の手料理をあげようかな。

 

「それですずかはホワイトデー何がいい?」

 

『シングちゃんの処女』

 

 ……………………こんなんでも私の恋人だ。

 

「それはそれは……もう少し身体が成長したらね。 他は?」

 

『もう籍に入ってもいいんじゃないかな? 両想いなんだし……』

 

 …………………………ちくしょう、こんなんでも私の愛する恋人なんですよ。

 

「時間が許してくれないから時間が許すときになるまでとっておこう。 他にないの?」

 

『ならシングちゃんのパンティー』

 

 ………………………………こんな

 

『シングちゃんが穿いて一番汚しちゃったやつ!』

 

 …………………………………………ちょっとすずかが何を言ってるかわかんなぁい。 知ってます? これでも私の愛する人なんですよ? 引いてるけど、すずかが望むならーで許してしまえるんです。

 

「OK、すずかの望みはわかった。 ………………一週間待ってね」

 

『裸で待ってる!!』

 

「服着よう。 猿になっちゃダメだよ。 私達は文明人なんだから」

 

「わかった!!」

 

 

 ☆

 

 

 そんで翌日の夜。

 ホワイトデーの夜です。

 今日はお母さんの要望により、私が夜ご飯を作ることになった。

 お母さんの好きな料理は魚系の料理だ。

 今日は煮魚を作ろうと思う。

 

 まず取り出したるは、カレイ。

 ネットでレシピ検索してたら初心者でも、簡単煮魚とあったから大丈夫でしょう。

 変なアレンジをしなければいいのだ。

 

 あ、ちなみに昼はステラにお弁当食べさせた。 あーんをした。 ステラ激カワ。 暴走する母さんの気持ちが理解できた。

 

 と、あーんして照れたステラの顔を思い出してたら、鍋から噴き出してた。

 火を止めて夢想無限アザバール遊星にアクセス。

 少しだけ煮付けの時間を干渉して煮汁を魚に染み込ませる。

 アザバールの規模が規模なだけに操作するのが難しい。

 腐らせることないようにしないと……。

 染み込ませる作業が終われば、温めなおしてはい、出来上がり!

 

 カレイの煮魚は皆に大好評だった。

 あとちょっとした里芋の煮っころがしを沢山作って座覇家とホワイトラブ邸へお裾分けした。

 座覇家は日本家庭だから良かったけど、ホワイトラブ邸の食卓で里芋の煮っころがしが並ぶのはちょっと違和感ありそう。

 まぁ、喜んでくれたからいいんだけどね。

 

「………………ステラ、ちゃんと分けているよな?」

 

 対応したのがステラで、ステラの目が煮っころがしに釘付けなってたから、かなり不安なんだが………………。

 

「アザバール、起動。 ホワイトラブ邸の食卓を観測しろ」

 

 

 ★

 

 

『ステラ、その日本の料理をパパにも食べさせてくれないかい?』

 

『もぐもぐもぐもぐ、んくっ。 わ、わたしの……』

 

『ママも食べてみたいなー。 ステラちゃんのお友達が作ったお料理』

 

『………………………………半分だけ』

 

((妥協されて半分!?))

 

 

 ☆

 

 

 此処まで見て私はそっと観測映像を閉じた。

 

「………………………………………………ちゃんと分けあって食べなさい!!」

 

「いや、せめてステラに念話で注意しようよ」

 

 しょうがないから、ステラのお腹の許容量以上のおかずのお裾分けを明日しよう。

 そしてステラにはお仕置きかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一週間後。

 

 一週間……。

 7日間……。

 168時間……。

 10080分……。

 604800秒……。

 

 ……………………ごめん、電卓使った。

 

 

 まぁ、これがなんの時間かと言うとすずかにホワイトデー何が欲しいか電話してから、ちょうど一週間です。

 パンティー……変えてません。

 それどころかお風呂の時も、1日15分サウナに入った時も着用してましたとも。

 そしてナイチンゲールになんとか見つからないように、アザバールからの干渉で清潔なパンティーとして誤魔化した……けど、何度か顔を傾げてたから勘づいてはいそう。

 そろそろナイチンゲールを誤魔化しきれない頃が、この一週間という時間だ。

 意を決して見ないよう努めてた私のパンティーは、まぁ、汚いよね。

 

「私が穿いてて一番汚しちゃったやつ……」

 

 トイレとかは流石に人として終わってそうだから、着用したままなんてのはしてない。

 でもそれ以外はやった。

 やってしまったなー。

 

「いくらすずかでもこれは受け取らないよね? ……………………あり得そうで困る」

 

 ふぅ………………………………よしっ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一日中穿きっぱなしのパンティーをすずかに渡した。

 すずかは大変喜んでたけど、家宝にするとかマジでやめてください。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第1章 原作前
プロローグ


頭空っぽにして読む小説です


 

 

 

 転生した。

 特典とやらを持っての転生だ。

 転生間際に神様にあったし、自分の今の姿と年齢を考慮してから夢ではない事がわかる。

 

 さてどうしようか? こう冷静に見えて実は冷静なんかじゃない。

 何故なら俺、いや、僕? なんか違う……私、、、そう私……しっくり! ってそうじゃない。

 確か神様が意識が浮上したら「ステータス」と念じろと言われたから、そう念じると私…………この一人称もやっとするなぁ。

 まぁ、いいや。

 ステータスと念じて現れたのは、たぶん私にしか見えないステータス画面。

 何故なら側で此方を眺めてるたぶん母親が、なんの反応もしないからだ。

 もし、このステータス画面が他人にも見えてるなら、急に自分の子供の前に変なのが現れたら驚くはずだしね。

 さて、ステータス内容はっと……

 

 

〔ステータス〕

 

・名前 シング

・性別 女

・魔力 いっぱいある

・容姿 ホワイト☆ロックシューター

・人種 日本人(先祖返り)

・転生世界 魔法少女リリカルなのは

       ∟第一話視聴する [▶]

          〔略〕

       ∟最終話視聴する [▶]

 

      劇場版魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st

       ∟視聴する [▶]

 

      魔法少女リリカルなのはA's

       ∟第一話視聴する [▶]

          〔略〕

       ∟最終話視聴する [▶]

 

      魔法少女リリカルなのはA's -THE BATTLE OF ACES-

       ∟シナリオを視聴する [▶]

 

      魔法少女リリカルなのはA's -THE GEARS OF DESTINY-

       ∟シナリオを視聴する [▶]

 

      劇場版魔法少女リリカルなのは The MOVIE 2nd A's

       ∟視聴する [▶]

 

      劇場版魔法少女リリカルなのは Reflection

       ∟視聴する [▶]

 

      魔法少女リリカルなのはStrikerS

       ∟第一話視聴する [▶]

          〔略〕

       ∟最終話視聴する [▶]

 

      魔法少女リリカルなのはvivid

       ∟第一話視聴する [▶]

          〔略〕

       ∟最終話視聴する [▶]

 

      魔法戦記リリカルなのはForce

       ∟第一話視聴する [▶]

          〔略〕

       ∟最終話視聴する [▶]

 

      外伝魔法少女リリカルなのはINNOCENT

       ∟第一話を視る [▶]

          〔略〕

       ∟最終話を視る [▶]

      

・転生特典 英霊依代召喚

      英霊召喚

      神霊召喚

      自戦闘力0

 

 …………………………………………………………へぇ、私、女なんだ。

 通りで私って一人称がもやるけどしっくりくる。

 そして魔法少女リリカルなのはの世界に転生ねぇ。 あ、なんか視聴出来る。

 これで原作知識深めれてバッチシだね! 余計なことして!!

 しかも、全シリーズあるし、ゲームシナリオもある。

 原作介入、原作崩壊推奨なの? というか自分の戦闘力0って私軽く死ねる。

 魔力がアホみたいな表記でいっぱいあるとか書いてあるけど、自戦闘力0って……あれかな? 英霊召喚とかで乗り切れと? 令呪は? 令呪はないの!?

 

 そんなことを考えながら頭の中がパニックになってると、うっすらと自分の身体が光だした。

 何事か!?と思い、思い通りにならない体を動かして鏡がある方を見ると、なんというか身体全身に魔術回路が張り巡らされていた。

 こんな怪現象を目の前に母親はどう対応するのかと、戦々恐々しながらも母親が居た場所に目を向けるが、母親の姿は何処にも居なかった。

 

 たぶん、大人しくしてる私に安心して家事をしにいったのだろう。

 さて、どうしたものか。

 鎮まれって思えば光るの止めてくれるかな? あ、光が収まった。

 どうやら自分の意思でなんとかなりそう。

 ふわぁっ……そろそろ眠くなってきたから寝よう。

 嗚呼、どうか神様……私に平穏なる日々を送らせてください。

 とりあえず海鳴市には行きたくないでござる。

 では、おやすみなさい。

 

 

 

 

 

 ・現在地 京都市→海鳴市

 

「ママ、来月の頭に海鳴市へ転勤になった」

 

「あら、ならお引っ越ししないと……」

 

「……え、ついてきてくれるの!?」

 

「当然じゃない。 パパに私や娘を引き離すなんて出来るわけないでしょ!」

 

「ママッ!!」

 

 と、私が寝てる間に、関わりたくない土地ナンバーワンの海鳴市に引っ越す事が決定された。

 この時の私は当然の如く、まだ知らない……。

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第一話 闇のアプローチ

 昨日の驚き疲れで寝むった私は、自分の周りがドタバタと忙しない音が聞こえてしょうがなしに目を覚ました。

 自分の子供がスヤスヤと寝てるのに、何をしてるのかと我が両親の様子を観察してると、どうやら引っ越しの準備をしてるみたいだ。

 

 どういうこと?

 

 なんて疑問に思うけど、こちとら声があうあうとかいひひーだとかそんな赤ちゃん言葉しか発せれないので、暇潰しに魔法少女リリカルなのはを視聴することにした。

 

 

『カッコー』

 

 ん? ああ、お昼かな?

 

 鳩時計ならぬ郭公時計の鳴き声で、頭内で放映中のリリカルなのはから意識を離すと、目の端から見える窓の明るさから12時回った頃と判断する。

 身体へと意識をやれば、猛烈な空腹感と喉の乾き、さらには股間辺りに生暖かい何かがある。

 

 ……………………み、みみとめたくないも、ももものだな……わかさゆえのあやまちとやらわ。

 

 どうやらこの体……転生物語でよくあるような赤ちゃんの頃はオートで泣きながら親に知らせる機能がないようだ。

 

 そうとわかればなにももんだいない。

 

 赤ちゃんとは乳を吸って、漏らしてやらかすのがお仕事だ。

 決して良い歳した精神年齢体がアニメに夢中になって、お漏らししてしまって恥ずかしいなんて事はないのだ。 うん。

 そんな現実逃避をしてると、母親がやって来て抱っこされたが、ゆっくりとベッドにリリースされた。

 

 私は魚か!!

 

「おっぱいの前にオムツ変えましょうね~」

 

 アッハイ。

 

「朝からバタバタしてごめんね~。 パパが海鳴市に転勤になっちゃったから、ママとシングもついていくことになったの」

 

 なん、、、だと? いや、まてしかし……早まるな、私。

 期間、そうだよ、、、転勤には期間がある。

 どうせ二、三年に決まってる。

 原作まで居るなんてそんな、、、ないない、ない、よね?

 

「最低でも20年くらいはあっちに居るんだって」

 

 それ、左遷やないの!? いや、まてまて勝手に左遷と決めつけるのは良くない。

 もしかしたら今よりも役職が上になったり、お給料が良くなったりする左遷とは別の……なんだっけ? えっと異動? なんか違うけど良いことかもしれない。

 ふぅ……少し焦ったZE。

 

 さてさて確実に原作真っ只中に海鳴市で住むことが確定した訳だけど、今更ゴネゴネしたり、抵抗したりしても遅いというか出来ないので先の苦労よりも今を大切にしていこう。

 ということでやることもなく暇な私は再び、魔法少女リリカルなのはを視聴するのであった。

 

 

 初期の魔法少女リリカルなのはを見終わっちゃった。

 感想としては、主人公が沈んでる時に友達と喧嘩したシーンなんだけど、魔法の事を伏せて相談することは出来なかったのだろうか? あと怪我してる使い魔、オレンジの毛並みをした狼なんだけど、うん、普通に考えて居るわけないっ!! まぁ、そんな気にしてたらアニメも楽しめないよね。

 さて、今日はもう寝よう、そうしよう、うん。

 

「はーい、お風呂の前にお尻をキレイキレイしましょうね~」

 

 ああ、どうやらまた私はお漏らし……い、いや、赤ちゃんとしてのお勤めを果たしたにすぎんっ!! 親に報告の泣きじゃくりをしなかったけど……。

 

 ☆

 

 海鳴市に引っ越してきて4日。

 特に大きな出来事もなく、父が配属された会社も可もなく不可もなく至って普通らしい。

 そのことを父と母がご飯時に話してたから、間違いないだろう。

 母と一緒に胸を撫で下ろしたしね。

 さて、これからA'sを視聴するとしよう。

 確か魔法少女リリカルなのはシリーズ全体を通して、ジュエルシードと呼ばれるロストロギアが海鳴にやって来る前からA'sで活躍する闇の書があるはずだし、闇の書の主として私が選ばれる可能性もある。

 現に目の前に禍々しいオーラを放って自己主張してる本が浮かんで……ってギプリャッ!!

 

 ちょ、まっ!

 

『接続』

 

 なに? なんて!? チッ!! 此処は日本なんだから日本語で話してよ!! 郷に入っては郷に従えという言葉を知らないのか、あっあ、あ、あっ本から本から禍々しいのが私に近っ近づ、いて……うぅ。

 誰でも良い、誰か! 誰か助けて!! 私、闇の書となんか契約したくないっ!! あんな呪いのアイテムなんか要らないっ!! 誰か!! 母さん(・・・)っ!!

 

「虫の気配がしますねぇ……我が子に近付く毒虫が……」

 

「毒虫ですって? ならば排除しなくてはいけません。 司令官は非常にデリケートな方です。 清潔な環境を保たねばいけません」

 

 え? え?

 

『……!!』

 

「我が子に巣食わんとする毒虫が思い上がりましたねぇ」

 

 バチバチと私の側から電流が迸る音が聞こえる。

 心の底から震えそうな言葉だけど、私には優しく、頼もしい声に聞こえたのは、その声の人物が私の味方と本能レベルで理解していた。

 

「此処は危険です。 司令官は私の後ろから出ないように」

 

「『牛王招雷・天網恢々』」

 

 赤服の女性の影からチラッと見える紫の雷と紫の女性。

 紫の女性が複数人見える。

 声からして赤服と紫の女性の二人かと思ったけど、どいう状況なのか……。

 

「ふふ……あははははっ! ――矮小十把、塵芥に成るがいい!」

 

 う、うん? わいしょ? ちり、あくた? ちょ、まっ

 

 なんだかよくわからず、でも助けてくれてる事は理解してるけど、それでもなんかやらかしてしまったとも理解してしまい、タンマを掛けようとするが、私の制止は遅すぎた。

 紫の雷は家を半壊しながらも、闇の書を追っ払った。

 

「チッ……逃しましたか」

 

「今は司令官の無事を喜びましょう」

 

 くるりと私に背を向けていた赤服と紫の女性は、私の方を向いて穏やかな微笑みを浮かべながら名を教えてくれた。

 (みなもと)のバーサーカー。

 看護のバーサーカー。

 

 ……バーサーカーはつおいね、とでも言っとこう。

 あ、それより家、つか母さんはどうした!? まさかさっきの雷で家もろとも巻き添えになったんじゃっ!!

 

「大丈夫だった? シングちゃん」

 

 ん?

 

 紫の……源のバーサーカーさんから、私の耳によく馴染む声が聞こえてきた。

 チラリと源のバーサーカーさんの方を見ると、源のバーサーカーさんは光の粒子に包まれ、粒子が消えると同時に私がよく知る母の姿として現れてきた。

 

 なん、、だと……?

 

 ☆

 

 あれから、母というか源のバーサーカーが説明してくれたのが、母の身体を依代として召喚されたとのこと。

 子である私の要請で源のバーサーカーになるし、戦闘が終了すれば母親に身体を返すらしい。

 母も私が安全安心に育んでくれるならと、依代として快く承諾したとのこと。

 

「看護のバーサーカーさんも娘が病気に苦しんでたら助けてくれるみたいだし~。 アルビノのシングちゃんにとってもママである私としても安心だわ~」

 

「お任せください、司令官のお母様。 司令官の命を救うためなら私はなんでもしますっ!! ええ、どんな手を使ってでもっ!!」

 

「ありがとう~看護のバーサーカーさん」

 

 その人に私の命を預けるのは、かなり命の危機を感じるのだけど、此処は母の看護のバーサーカーに対する信頼を信じよう。

 にしても、看護のバーサーカーとか、源のバーサーカーとかいちいち言いにくいなぁ。

 なにか他に呼び名はないものか。

 

「……毎回毎回、その呼び名ではスマートさに欠けますので、そうですね、、、フローレンスと呼んでください」

 

「あ、なら私の事はママって呼んでね? フローレンスさん」

 

「はい、ママさん」

 

 うん、私も看護のバーサーカーのことはフローレンスさんと呼ぼう。

 看護のバーサーカーよりも名前らしいし、実際に名前かもしれないし、あとは父さんの説明は私の将来の為に近くに住んでた医者に専属医としてお願いしたと言えば良いしね。

 

「では早速ですがママさん。 この町は色々と危険が多く、司令官の自衛力もありません。 随時私やママさんが居れば問題ありませんが、そういかないのが世の中です。 ここは司令官にも自衛力を持ってもらうのはどうでしょう?」

 

「そんなに危険なの?」

 

「割りと危険です」

 

「そうね~。 シングちゃん、何かないかしら?」

 

 って、私に言われてもなぁ。

 英霊召喚とか神霊召喚って最低でも人の形をした存在だから、そんな所持できる存在は居ないんじゃないかな? まぁ、やってみるけど……………………

 

 んーっと自分で力を込めてみるけど、何かが召喚される気配もなければ、私の中から何かが抜けていく感覚もなく、もしかして魔力が足りないのかとステータスを開いてみる。

 

・魔力 まだまだいっぱいあるよ

 

 ……………………………………うん? うん。

 いっぱい……あるのか。

 

 内心首をかしげて、ほんとにどうしたもんかと考えてると、魔力についての詳細が頭に浮かんだ。

 

 〔魔力について〕……貴女の魔力は数値化出来ない為、言葉で表現します。 魔力が全快から空っぽの時の表記は以下の順です。 『魔力が満杯だよ』『まだまだいっぱいあるよ』『まだいっぱいあるよ』『いっぱいあるよ』『まだまだいけるよ』『まだ大丈夫』『へーきへーき』『あと8回は神霊召喚いける』……『もうすぐ危険域だよ』『あと5回しか宝具使えないよ』……『あと1回しか英霊召喚できないよ』『あと1回しか宝具使えないよ』『危険域だよ』『危ないよ』『もうすぐ空になるよ』『空っぽだよ』 なお、魔力回復量は秒間2ランク回復していきます。

 

 反則過ぎてワロタ(ちょーチート)

 

 ま、まぁ、召喚はできる魔力はあるみたいだけど……召喚方法はどうすればいいの? もしかして魔力の時と同じでジーッと見てたら詳細が出てくるのかな?

 

 というわけで英霊召喚の欄を穴が空くほど見続けると、魔力の時みたいに頭に詳細が浮かんだ。

 

 〔召喚について〕……貴女の魔力を代償に英霊や神霊を召喚する。 英霊依代召喚の場合は、依代となる生物と貴女の魔力による召喚となり、消費する魔力は通常よりも少なく済みます。

 

 〔召喚方法について〕……貴女がどんな英霊を喚びたいかという意思と魔力だけです、、、が、英霊、神霊側が召喚を拒否して召喚されない場合があります。

 

 〔召喚不能な英霊と神霊について〕……〔英霊〕名君ギルガメッシュ、英雄王ギルガメッシュ、賢王ギルガメッシュ、ファラオ・オジマンディアス(他、ファラオ)、騎士王アーサー、円卓の騎士、征服王イスカンダル……他。

 〔神霊〕イシュタル、エレシュキガル、オーディン、アルテミス、ステンノ、エウリュアレ、メドゥーサ、ゴルゴーン、ケッツアル・コアトル、ジャガーマン、アンリ・マンユ、巨神⬛⬛⬛⬛⬛……他。

 

 ……なるほど、召喚出来ない人達も居るのか。

 まぁ、私が制御してる未来が想像できないけどね。

 フローレンスさんや源のバーサーカーさんが私の召喚に応じたのも、フローレンスさんは私の病弱体質(アルビノ)を心配しての事だし、源のバーサーカーさんは母さんとの依代召喚に成功した所から、母性として私が命の危機に応じたんだろうし……。

 しかし、自衛の為の戦力なんて……

 

 そんな事を考えてると、私の側に2つの光柱が発生した。

 召喚……出来たのかなぁ?

 

「クー・フーリン、召喚に応じ参上した。 最初に言っておく、俺はお前の槍だ。 敵が現れたらソイツを指差せ」

 

「サーヴァント、ランサー。 エルキドゥ。 君の武器が欲しいという呼び声で起動した。 好きに使っておくれ」

 

 現れたのは、朱色の槍を持った黒くて異形な姿の男と緑の中性的な男の人。

 私の槍と称したクー・フーリン。

 自分を武器と呼称してるエルキドゥ。

 

 ……たぶん、私はとんでもない存在を呼び出した。

 

 ☆

 

 闇の書の襲撃を退(しりぞ)けたその日の夜。

 父さんが帰ってきて、私が初参加の家族会議が開かれた。

 まずは今日あった出来事で、いきなり魔法の本に襲われたとか馬鹿正直に話さない。

 別の意味で頭の中を疑われる。

 父さんに話すのは、以下の通りだ。

 今日の昼頃、私を乗せたベビーカーと母さんが公園で散歩してたところ、非番の女医と出会い、アルビノである私の事で意気投合して格安で専属医になってくれると言われた事。

 次に町中で行倒れてた外国人二人を発見し、(いえ)に招待してご飯を食べさせて事情を聞くと海鳴市に留学しに来たが、泊まる場所がなく、仕方なく公園で隠れて生活していたが、お金も尽きてしまいどうすることもなく行倒れになったと説明され、それならばと母さんが(うち)にホームステイしないかと誘い、これを二人が受けたという事後報告(・・・・)をした。

 そう、事後報告だ。

 これには母さんも私も同情を禁じ得ないが、母さんは源のバーサーカーやフローレンスさんによって、海鳴市の将来の危険性を教えられてる為、私から危険を出来るだけ守らないといけないのだ。

 転生した身とはいえ、私は歴とした母さんの子供だからね。

 

「ホームステイ……その人達の国は何処なんだい?」

 

「確か……ケル、アイルランドとウル、イラクだったかしら?」

 

「? ふむ、二人ともバラバラだ……んー、まぁ、勉強に来たとはいえ、知らない土地、しかも行倒れになるほどの苦をまたさせるのも心苦しいし、なによりもうママが許可しちゃったんだよね? なら僕が却下するわけもいかないよ」

 

「ありがとう、パパ! 大好きっ!」

 

「ははっ僕もママのこと大好きだよ。 もちろん、シングもね」

 

 こうして無事にフローレンスさんやクーフーリン、エルキドゥの諸々は片付いた。

 というか、もうこれで十分だよね?




 源のバーサーカーに撃退された闇の書は、次に魔力が多い他の転生者の元へと向かったが、、、

「フォオオオオオオオオッ!! 闇の書ちゃんキターーーーッ!! はやてよりも魔力いっぱいにして正解ですなぁああ!! 俺の嫁! バインバインのシグナム! リインフォースも良いよね! ただしメシマズシャマルは駄目だぁあっ!! ロヴィータん、お兄たまって呼んで!! ザッフィーはマスター権限で女体化してワフワフフォオオオオオオオオッ!! あっれー? 何処に行ったの? 闇の書タァァアアアアアンッ!!!」

 相手側の精神汚染が酷いため、おとなしく八神はやての元へと向かった。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二話 前々世からの忠

 あれから三年。

 何事もなく幼稚園生となった私は、一人(ぼっち)でも元気です。 泣きたい。

 

 はい、何事もないというのは嘘で、実は入園式の時やらかしてしまいました。

 保護者の方々が……。

 そう、あれは昨日の入園式……

 

『ママ、あの子、マッシロシロスケだよ』

 

『ほんとだー! 真っ白ー』

 

『こら、指差さないの!』

 

『あやちゃんもからかったりしたらダメよ』

 

 と、私を見てはしゃぐチミッ子達。

 それを(たしな)める保護者。

 しかし、はしゃぎ時のチミッ子達は珍しい肌と髪を持つ私に興味津々。

 だんだんと子供達の騒ぎが大きくなり、ついにはキレた。

 

『おい、ガキ共。 うちの子がそんなに珍しいか?』

 

『お母様方、保母の皆々様……少しよろしいですか?』

 

 まずはクーフーリンさんが子供達をガンつけ、フローレンスさんが保護者と保母さん達を呼びつけた。

 

『いいか、ガキ共。 他人の色が貴様らになんの関係がある』

 

『次、僕らの妹に手を出したら……わかるね?』

 

『良いですか? 司令官はデリケートなんです。 日の光に含まれる紫外線などで簡単に病気になります。 過度なストレスを受けて鬱病になったり、、、』

 

『娘がいじめを受けていたら、承知いたしませんから……その時は御覚悟を』

 

 などなど……晴れて私はモンスターペアレントの娘として、保母さんや保父さん、園長先生、他の保護者の人達、同級の子達に腫れ物扱いされております。

 

「はぁ……」

 

「どうしたの?」

 

「いや、こんな事態になって、もう今後どうしようかと」

 

「……………………」

 

「? エル?」

 

「この状況も一種のいじめ……なのかな?」

 

「いじめだなんてとんでもない! まさに私の意思を尊重した結果の状況だから余計な報告はしないでくださいお願いします!!」

 

 不穏なことを言う監視役(エル)に頭を下げてお願いする。

 これ以上状況が悪化すれば、私の小学校生活までぼっちになりそうだ。

 何故、エルが幼稚園(ここ)に居るのかと言うと、エルが持つ変身? 変容?スキルで髪に結われてるリボンとなって私の護衛兼監視をしている。

 

「いい、エル? いじめっていうのはあれだから」

 

 と、私は今現在いじめを受けてる子といじめてる子達を指差す。

 そこには集団で一人の男の子を囲ってる姿。

 端から見ればかごめかごめをしてるようにも見えるが、ようく目を凝らして見てみれば手や足を出してるし、耳を澄ましてみれば悪口らしき言葉を吐いてるのがわかる。

 

「ふぅ~ん。 性能を競い合うわけでもなく、ただ単に他者を傷付けるなんて、わからないなぁ……人間って」

 

「別に難しいことじゃないよ。 あいつが生意気だ。 あいつよりも優位に立ちたい。 みんなと同じ行動をすればハブられることはない。 とか、まぁ、そんなしょうもない理由で始まるのがいじめだから」

 

「そこが理解できないんだけど」

 

「それは……」

 

 理解できないのではなくて、したくないんじゃない? 人間の感情っていうものをさ……なんて、エルに言うことは私には出来なかった。

 なにせエルは感情があるくせに、自分は兵器だからと、武器だからと感情が無いように振る舞いってる。

 入園式のモンペ事件の時は、私を大事に思ってるような事を言ってたけど、それは人として私が好きではなくて兵器として所有者である私の事が大事という考えによる発言だけど、感情的になっていないことはなかった。

 自惚れてるわけではないけど、私が喚び出したサーヴァントは皆、私の事を好ましく思ってくれてる。

 だからなのか、理解したくないと問うて、今の関係を壊したくないのだ。

 

「シング?」

 

「ん、なんでもない」

 

「……それで、シングはどうするんだい? あのいじめ」

 

「もちろん助けるよ。 見てしまったからね」

 

 個人的に放置したかったけど、エルに説明していく内にいじめっ子どもと同類と思われたくないと思ったからね。

 

 

 ☆

 

 

「総督……」

 

 どうしてこうなった。

 

 今、私の目の前で膝ついて頭を垂れてるいじめられっ子。

 エルの影ながらのフォローで、いじめっ子達のいじめに介入して追っ払っていじめられっ子と目が合うと、いじめられっ子は目を見開き、そして何かに納得して私を総督と呼んで今に至る。

 

 意味がわかんない。

 なんだこれは!? どうする? どうすればいい!?

 

「えっと……そうとくって?」

 

「なんと!? 記憶が戻られて……いや、確かわしも今の今まで忘却の彼方にあった……で、あれば」

 

 で、あればなんなんだろうか? よもや私の頭に衝撃でも加える気なのか? だけどそんな素振りは見せてないけど……強いて言うなら今から自己紹介する体勢?

 

「わしは座覇(ざは) 修司(しゅうじ)。 前々世では総督と弟子、取巻き共と一緒に宇宙を旅していたザハにございます」

 

「ザハ……だと?」

 

 ザハ? 総督……私と取巻き達と一緒に? 余計わか……あ、もしかしてブラック★ロックシューターのゲームに出てくるラスボスの右腕的存在? もしそうだとしたら、どうしよう? 姿が似てるだけで無関係なんだけどなぁ……。

 

「その御様子では、わしの事を思い出さったのですね!?」

 

「あ、いや、なんと言うか……」

 

「もう正直に話したら?」

 

「!! 何奴!?」

 

 突然、私達以外の声が聞こえ、ザハ シュウジと名乗った少年は辺りを警戒し始める、、、んだけど、ごめんなさい。

 声掛けてきた人は私の頭でヒラヒラと風に揺られてるリボンなんだ。

 敵じゃないんだ。

 

「むっそこかぁあっ!! っ!!」

 

 そしてエルの気配を感じたのか、ザハ少年は私の頭に揺られてるリボンを睨み付けて、何かを思い止まった。

 

 なんだ? 何をしようとした? もしやその握った拳を私……というかリボンに放つ気だったのか?

 

「おや、どうしたんだい?」

 

「貴様……畏れ多くも総督の御髪(おぐし)を盾にっ!!」

 

「フッ、、、これはシング……君の言う総督が『僕』にリボンとして護衛するように命じたから、こうしてるのさ。 前々世とやらでは側近とか護衛役は君だったみたいだけど、今は『僕』だから」

 

 ギリィッ!!! ギリギリギリギリ……

 

 何かを食い縛る音と強く握る音が聞こえる。

 その発生源はザハ少年だ。

 というかエルキドゥさんや、そんなにザハ少年を挑発しないで……。

 

「はぁ、ほんとにどうしてこうなった?」

 

 

 ★

 

 

 輪廻転生。

 死して再び生を得るインドらへんの思想。

 前々世よりも前の生のことは知らぬが、わしは前々世からの転生者と呼ばれる存在だ。

 わしとしての記憶は、地球生まれでなくエイリアンと呼ばれた存在だった。

 わしが生れた星では強者が生き、弱者が喰われる弱肉強食の世界。

 わしは生きるために強さを力を求めて、必死に生きてきた。

 その生きるための技術として、宇宙空手という武術に手を出し、幾千、幾万、幾億と拳を解くことなく大木に、大地に、大気に、わしを倒さんとする敵、わしと互角にやり合う好敵手に、わしよりも強かった強者に、幾度となく拳を繰り出し、ついには弱者の世話が出来るほどの余裕ができるまでになった。

 だが、それほどまで強くなったわしを赤子の手を捻るかのような圧倒的な強さを持つ存在と出会った。

 それが『総督』である。

 総督はわしらのような者を集め、率いて広大な宇宙を巡り、とある星の衛星へと降りた。

 衛星から見える星は青くて美しかったが、そこに住む者達は弱すぎた。

 個体としても群れとしても、文明でさえ我々との差がありすぎた。

 だがそんな星の連中に可能性を見出だしたのか、総督は青い星へ降り、我々が知りうる技術の提供を開始した。

 それが遠い未来……我々を追い詰めてしまう事になろうとは……。

 

 数年後、青い星の人間共に絶望した総督は侵略を開始した。

 人間達も抵抗はしたが、元より我々の敵でない奴等は全滅させるのに時間が掛からなかったが、両手で数えれる頃になると戦況が一転した。

 

 ホワイト。

 

 総督の遺伝子を元に生み出された完全なるクローン体が現れたのだ。

 目覚めて間もないと言うのに、初めての戦場でエネミー達を殲滅し、我々の仲間であるミーを下した。

 そこから始まるホワイトと我々との戦い。

 結果は人類が滅び、それでもなお戦うことを止めなかったホワイトが、我々に挑み、弟子であるナフェ、わし、ついには総督にすら勝ってみせたのだ。

 死した総督の身体を生き延びてしまったわしが抱えて、青い星を後にしたが、やはりわしにもホワイトとの戦闘で受けたダメージに意識が失い、、、、

 

 

 ★

 

 

 次に目が覚めたのはモビルファイターと呼ばれる機械の中だった。

 わしはシュウジ・クロスという人間となって、世界中のファイター達と武を競い合ってた。

 いまだこの身に染み付いた宇宙空手の技を用いて、戦って闘って戦い抜き、世界最強という称号に手が届こうとした時、わしはまた負けた。

 チャップマンという強者に、だ。

 一度ならいざ知らず二度まで負けた宇宙空手の技術をわしは捨て、一から次こそは誰にも負けない武を編み出していった。

 

 しかし、武を編み出すと言っても中年では未完のままで終わる可能性がある、いやしかしと頭を振ってわしは己を鍛えた。

 身体中の水分が汗となって滝のように落ちるほどの晴れの日だろうと、前が見えないほど雨が降る日だろうと、台風や嵐が吹き荒れる日だろうと、吹雪の日だろうと、雷がわしに直撃しようとも、、、わしは拳を握り続けついにやり遂げた。

 厳しい自然の中に身を投げてまで、完成した武は苦戦することもあったが敗けはなく、まさに敵無しと言って良いほどだ。

 現に前世のわし、シュウジ・クロス……いや、東方不敗マスター・アジアを打ち破ったのは、愛弟子のドモン。

 あやつもまた流派東方不敗。

 敗けは悔しいが、それほどまでに弟子の成長が嬉しかった。

 病魔に犯された身での決着ではあったが、わしは満足だった。

 

 そしてまさかの第三の輪廻転生。

 最初は総督と共に歩んだ生。

 次は二度と大切な存在を失わないよう強さを求める生。

 しかし、三度……何があると言うのか。

 仕えるべき存在も居ないし、新たな生でまた力を求めるのは何か違う。

 この三度目になんの意味があるのか……そう思い過ごしてきた。

 だが、この三度の生に意味が出来た。

 出会ったのだ。

 あの白き姫。

 存在してるだけでわしを率いる御方。

 『総督』

 

「この三度目の生、、、また貴女様について行きます。 何処までも」

 

 なればこそ、流派東方不敗の再修得せねば!!




 総督に仕えてたザハは、マスター・アジアとなり、次の生で総督に再会する。 泣ける話や


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第三話 真の英霊

ここからキャラ崩壊が激しくなります。
マスター・アジアに一定のイメージが崩れる恐れがあるので、それが嫌な方のみブラウザバックお願いします。


 私を守る為、今まで怠けていた自分に喝を入れて修行に励みます。

 と言い出した座覇(ざは)くんは、クーフーリンさんとエル相手に組手をしていた。

 私個人としては英霊相手に組手修行とか、愚の骨頂、バカ、愚かの極みとしか言えないけど、現状自衛力皆無な私は黙っておく。

 本当は私も総督みたいな強さを持ってツエーしたい。

 

「でも自称兵器二人組との組手とか、師に当たる人でも召喚……」

 

 魔力を捏ねながら言葉を放った私の魔力は、ちょうど私の前までぶっ飛ばされた座覇くんを巻き込みながら依代召喚。

 光の柱から現れたのは、白髪の三つ編みおさげで鍛えに鍛え上げられた身体を持ち、その鋭い眼光は並の武闘家すら竦み上がらせる翁。

 正直、私はこんな英霊をあのアニメでは見たことない。

 

「次はこちらから行くぞぉおおお!!」

 

 そして始まる人外と兵器二人による乱戦。

 一般人な視力を持つ私ですら、その動きは見えず、私の周囲は地面が抉れたり、木々が私の顔の横を間近で通過したりと、少しでも動けば死ぬレベルな嵐をガタつきながら見はめになった。

 

「と、とととりあええええず…………召喚しよとか考えた過去のわたしをひっぱたきたい」

 

 どうしようかなっと現実逃避してると、私の魔力が2回ほど回復した。

 

「え?」

 

「流派! 東方不敗が最終奥義……」

 

「全呪解放。 加減はなしだ」

 

「呼び起こすは、星の息吹……」

 

 ちょっ! 待って! お願い!! こんな山ん中で宝具ブッパしないでぇええええええええ!! 山が消えるぅううううう!!!

 

(サーヴァント)(バーサーカー)/源頼光の上限が愛にて突破されました》

《BクラスからHS(ハイサーヴァント)へと転臨しました》

《HS/源頼光の上限が愛にて突破しました》

《HSから真の英霊・源頼光へと転臨しました》

 

 え?

 

「『牛王招雷(ごおうしょうらい)天網恢々(てんもうかいかい)』」

 

 私の後ろから、赤ちゃんの頃に見たすべてを塗り潰す黒縄地獄の雷。

 お母さんを依代とした源のバーサーカー……いや、源頼……母さん(・・・)の子を危険と虫から守る宝具(母の愛)

 それは神性を持つ者であろうと、物の怪だろうと屠る雷。

 勿論、雷だからただの人でも危険だ。

 つまりは完全回避出来るスキルか、どんな攻撃でも揺らがない無敵の身を持たないと耐えることも避けることも出来ない。

 

「熱いなぁ」

 

「チッ……次は、、、ない」

 

「ぬぁめるなぁああ!!」

 

 だけど今修行してた3人は、その完全回避スキル持ちだった。

 これで被害は山を蹂躙する雷だけ……3つの宝具による山消失か、すべてを塗り潰す雷による消失か……規模は減ったと思っておこう。

 そう、死人が出る確率はなくなったと、胸を撫で下ろそうとするが、雷を避けた3人を追い掛ける雷が視界に入った。

 

「なん、、、だと……」

 

 必中スキルによる追尾効果……いや、それだけでなく、4つの頼光の分身が3人へと宝具(・・)を放っていた。

 

「『黒縄衝撃(ダークネス・スパーーーク)』!!」

 

「『釈提垣因(しゃくたいかんいん)金剛杵(こんごうしょ)』」

 

「ーーーーーー!!」

 

「ーーーーーー!!」

 

 雷の爆音で近くにいる二人の母さんの宝具しか聞こえなかったが、3人に向かって放たれた宝具は直撃して暴れてた3人は気を失った。

 

 

 ☆

 

 

「………………はぁ」

 

「あ、あの……シングちゃん? えっと、その……」

 

 左にクーフーリンさん、右に座覇くんを膝枕してあげ、リボンへと変容したエルを肩に乗せながら撫でつつ溜め息を一つ吐いて、オロオロしてる母さんを無視する。

 そんな私の態度に母さんは涙目になるが、私は許す気はない。

 

 確かに私は困っていた。 山が消し飛ぶという事態になるかもしれないと、さらにその巻き添えで私が死んでしまうかもという恐怖もあった。 それを心配して尚且つ護る力がある母さんの行動は、娘を護るという名目上全力でそれを成したのだろう。 それは素晴らしい行動理念だし、尊敬もするが、いくらなんでもやりようはあったはずだ。 それをこんな……こんな、、、

 

「とりあえずエルの力で元の自然に戻せない?」

 

「うーん、どうかな? 僕の友人なら元に戻す秘薬が蔵にあるだろうけど、彼が君の召喚に応じるとは思えないなぁ。 あと僕は動物と会話が出来たり、自分の体を変容するだけで自然に働きかけるなんてことは出来ないよ」

 

「クーフーリンさんは?」

 

「師なら出来るし、キャスターのオレなら出来るだろうが生憎とバーサーカーのクラスで顕界してるオレには出来ん……いや、やってみるか」

 

《SB/クー・フーリンの上限が忠誠にて突破されました》

《BクラスからHSへと転臨しました》

《HS/クー・フーリンの上限が忠誠にて突破されました》

《HS/クー・フーリンから真の英霊・クー・フーリンへと転臨しました》

 

「え? ちょ、ちょっと待って!!」

 

 私の目の前で色々と姿が変わっていくクーフーリンさんを手を伸ばすも、私の手は何も掴むことなくクーフーリンさんの転臨が完了した。

 

「ん? どうした?」

 

「いや、そのハイサーヴァントとか真の英霊に転臨って何!?」

 

 今の今まで真の英霊というものから目を逸らし続けてた私はいよいよ無視できなくなったので、HS(ハイサーヴァント)なるモノと真の英霊なる枠組を詳しく聞くことにした。

 

 そしてクーフーリンさんによると、そもそもサーヴァントとは偉業を成した英雄達を7つのクラスに分割して、人間でも程度は有れど使役出来るまで型落ちしたのがサーヴァントで、ハイサーヴァントはその一つ上で、クラスという枠組から解放され分割されたの統一して、生前出来てた事が出来るようになるが、生前よりかはやはりレベルダウンしてるとのこと。

 真の英霊状態は完全に生前と同じ処か、槍兵(青年期)としての全盛期と魔術師(晩年期)としての全盛期が統一されたお陰で生前よりも強化されてる状態にあるらしい。

 さらに恐ろしいのが真の英霊状態よりも上の(くらい)があることだが、それは冠位英霊と呼ばれ冠位の資格があるものじゃないと至らない境地らしい。

 

「で、なんで一気に真の英霊までいけたの?」

 

「「忠誠()、故に」」

 

「忠誠ならばワシとて負けはせんわ!! ぬぅううあああああああ!!!」

 

「僕だって兵器だけど、マスターが好きという感情はある。 やってみせるとも……ふっ!」

 

《S(ライダー)/シュウジ・クロスの上限が忠誠にて突破されました》

《RクラスからHSへと転臨しました》

《HS/シュウジ・クロスの上限が忠誠にて突破されました》

《HS/シュウジ・クロスから真の英霊・シュウジ・クロスへと転臨しました》

 

《S(ランサー)/エルキドゥの上限が愛にて突破されました》

《LクラスからHSへと転臨しました》

《HS/エルキドゥの上限が愛にて突破されました》

《HS/エルキドゥから真の英霊・エルキドゥへと転臨しました》

 

 ……………………いや、おかしい。 何故こうなる?

 

「「「「愛故に」」」」

 

 なんでもかんでも愛と言えばいいなんて思ってない!? そんな都合の良い言葉じゃないよ!!

 

「まぁ、とりあえず自然を元に戻すぞ」

 

 私が発狂してる間にクーフーリンさんが、ルーン魔術で元の緑多い繁る山へと戻し、そしてナイチンゲールさんも真の英霊状態へと至った。

 経緯はなんでも私が発狂したのを感知して、保護愛にて上限突破したらしい。

 ちょっと理性的になって嬉しかった……

 

「司令官!! 腕に傷が!! 消毒っ!! いえ、化膿……いえ、いいえ! 腐ってるかもしれないので切断を!! 悪いとこは余さず切断です!!」

 

 なってなかった!! ちょ、やめて!! 小枝に引っ掛けた程度のかすり傷だから!! 切断しなくていいから!! 消毒だけでいいし、むしろアロエ塗るだけで良いんだってばぁ!!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第四話 テスト

正直、このハチャメチャ感好き


 私のクラスには大きな家に住んでる子が一人居る。

 その子は私達転生者からしてみれば、原作組という枠組に入る。

 私のメニューにある原作や二次創作小説を映像化したモノにも登場するから、面影がなくても名前さえ知ってれば本人かどうかわかるのだ。

 さらにその子は二次創作でよくある前作のとらいあんぐるハートなる作品で、吸血鬼の末裔だかなんだかの設定がこの世界にも反映されてるらしく、何が言いたいかと言いますと……。

 

「そ、その子は関係ないの……お願い、、叔父さん帰してあげて……」

 

「へ、へへ。 関係なくともすずか嬢に絶望を与えさせることは出来ます」

 

「そん、、、な……」

 

 はい、巻き込まれなう。

 

 何故、私が月村家のゴタゴタに巻き込まれたのか……これには海よりも深く、山よりも高いそれはそれはのっぴきならない事情がなくもない。 え、結局どっちだって? ごめんなさい、自分から首を突っ込みました。 パンピーが誘拐されてるから助けなきゃって自爆めいた決断したわけでもなく、原作介入前の予行練習でもう月村すずかちゃんに接触して仲良くなろーなんてバカな思考の下でもなく、座覇くんが私の護衛役というか救出役に相応しいかどうかというテストで、ちょうど誘拐されそうになってる月村さんに絡んだのだ。 そう、拐われそうになってる月村さんに向かって、「すずかちゃん、何してるの?」と、別に親しくもないのに馴れ馴れしく、私達はお友達っ!みたいな感覚で、そんなことをすれば当然、誘拐犯は目撃者である私を排除するか一緒に連れ去られるかのどちらかなわけで、今命の危機なうな状況。

 

 そもそも座覇くんの護衛役のテストを行う事になったのは、装飾品兼護衛役のエルと同じく護衛役のクーフーリンさん、保護者の母さんの発案で、本当に私を任せるにたる人物かどうか疑わしい為だとかなんとか……。

 私としては真の英霊として覚醒したから、平気だと思ってるというか友達欲しいです。

 部下とかそんなんいらんねん。

 

「にしてもこのガキ静かだな」

 

「タスケテー」

 

「静かにしやがれ!!」

 

 あんた……私にどうしろと? ただまぁ、そろそろこの茶番も終わるころなんだよね。

 

 ちらりと天井を見てみると、黒い影が104人ほど居るって多いな。

 

 よく隠れてられるね!? 君達!!

 

 ちなみに104人の内訳は、99人が百貌のハサンさん、母さん1人、クーフーリンさん1人、エル1人、段蔵さん1人、小太郎くん1人で、今さっき座覇くんがやって来て105人。

 百貌のハサンさんと段蔵さん、小太郎くんは私が2才の頃に召喚して、イマデハリッパナカゾクデス。

 あ、お父さんには全部話してあります。

 魔法や私の魔術、母さんの英霊状態、エル達と、結果お父さんはすべてを受け入れて「僕にもママみたいに出来る?」なんて聞いてきたので、依代召喚したら誰も召喚されなかった。 うん、頑張れお父さん。

 

 それはともかく。

 

 月村家の大変な事情を告げられる前に事態を収拾して貰いたかったのだけれど、どうやら誘拐犯さんは私の思惑を裏切って月村家は吸血鬼の一族なのだ~とかなんとか私に暴露して、月村さんの顔が絶望一色に染まる。

 

 まぁ、知ってましたし? だから何って話だし、月村さんの親戚である貴方も吸血鬼の一族ってことは暴れてもOK? では、せーのっ!!

 

「きゅーけつきってなぁに? ばけものってつよい?」

 

「は?」「え?」

 

 いや、だって普通の人間の幼稚園児に何を期待してるのか。 まだまだ吸血鬼の存在だって知ってるかどうか怪しいしね。 それに……

 

「吸血鬼云々より、3歳児相手に鬼のような顔で怒鳴り迫るおじさんの方がよっぽど怖いわ」

 

「きさっ!」

 

「ザハ!! これ以上の時間の浪費は減点よ!! 速やかに処理しなさい!!!」

 

「畏まりました」

 

「何!? 後ろ!?」

 

 天井から誘拐犯の後ろへと降りた座覇くんは、誘拐犯が振り返ってから動いた。 減点10。

 誘拐犯が驚き振り返って座覇くんの正体に気付いて安堵した瞬間、座覇くんの右の掌底が誘拐犯のお腹に直撃し、すかさず左の掌底で顎を撃ち抜く。 私が視認できる速度なので減点30。

 顎を撃ち抜かれた誘拐犯は膝から崩れ落ち倒れて、座覇くんのドヤ顔が現れた。 減点60。

 

「計➖100点で護衛役失格。 参考までに母さんの対処法を」

 

「可愛い娘に手を出した瞬間、消します」

 

「は参考にならないからクーフーリンさん」

 

「殺戮だ」

 

「も参考にならないからエル」

 

「ゴミの処分なら貫いて燃やす、だろ?」

 

「頼むよ、小太郎くん!」

 

「火でしたらお任せを」

 

「何を任せられるのか原稿用紙十枚くらい書いてろ! 段蔵!!」

 

「尋……」

 

「百貌のォオオオ!!」

 

「生きてる事を後悔させながら始末」

 

「こんなんばっかだよぉおおおおおおおっ!!」

 

 あかん。

 まともな英霊を呼ばないとダメだ、これ。

 

「あのっ」

 

 と、大分放置してた月村さんが私達に声を掛けてきて、そう言えば一緒に拐われたというか私が便乗しただけなんだけど、放置はいけないよね。

 たぶん、月村さんちのセ○ムも来る頃合いだろうし、私は月村さんちの秘密を知ってしまったから、二次創作映像では記憶の封印かズッ友契約させられるらしい。

 まぁ、記憶の封印受けると絶対黙ってない英霊が居るし、逃げるにしても月村さんをどうにかしないことには、月村家の情報網で徹底的に調べられて、二次創作では鉄板の妹キチ侍が加わった脅迫、もしくは月村家の闇に葬られそうになったら、やっぱり英霊が動く。

 どちらかが滅びるしかないルートだ。

 座覇くんの試練とは言え、あっぶない橋だよね。 どうしよ。

 

「彼女の記憶を弄ればいいんじゃない?」

 

「バレたときは戦争だし、その手の方法は二次創作にもあってたいていが効果のない結果に終わってるのよ、エル」

 

「それは素人がやるからでは? 主殿ならばその手の専門家を召喚できるのでは?」

 

「それしかないのかな? しかし、記憶を改竄する専門の英霊なんて………………」

 

 記憶の改竄、記憶記憶と呟きながら魔力を捏ねる。

 私が最も欲してる技能を持つサーヴァントを英霊の座に繋いで、、、

 

「あのっ!!」

 

「おぅわ!? へ? 何?」

 

 突然の大声ーーまぁ、自分の記憶をどうこうするという話だから当然だけどーーに驚いて捏ねてた魔力が霧散する。

 そのせいか召喚されそうな英霊は、その透明な姿を空気中に散らして消えた。

 

「わ、わたし、酷いことしないようにお姉ちゃんに言うから! ちゃんと止めてって言うからわたし、、、わたし……忘れたくない、です」

 

 私達という恐怖しか感じられない相手に、無理をしてでも自分の意思を通そうと涙目ながら言うその気迫に私は押されながらも、なにもしないと告げて座覇くん以外を影に潜めさせて、月村家のセ○ムを待った。

 

 

 ☆

 

 

 座覇くんに助けられてから、数時間後。

 予想外の遅さに、私と座覇くんはすずかちゃんと本当の友達になった。

 また誘拐されそうになったら助けてねと、座覇くんじゃなく私に言うすずかちゃんの頬は若干赤かった。 解せぬ。

 

「すずか! 無事!?」

 

「あ、お姉ちゃん!!」

 

「すずかちゃんから離れろ!! って、え?」

 

 そして漸くすずかちゃんのセ○ム登場。

 

 というかおっそい。 何してたんだろ?

 

 と、まぁ、そんなことを思っても言える立場と歳でもないので私達は後日また会うことを約束して、その場を立ち去った。

 帰り道、デュフフフ言いながら辺りを見渡してる同年代っぽい子が居たけど、精神的にゾワゾワしたから全力で見逃してやった。

 あと何人かマシな同類が居たし、彼らに憑いてた何人かの英霊がこっちに来たことで、召喚出来なかった英霊が召喚出来るようになった。

 なんでも妄想が激しくてやってられんだとか、(オレ)の姿を似せるだけでなく、我が宝物庫と中身を雑種が好き勝手するのは我慢できんだとか、助けてくださいメイガスだとか……なんでも転生者達の転生特典とやらで一緒に憑いてく事になったらしく、自分達の知る魔術師が近付くのを待ってとのこと。

 ちなみに憑いてた英霊が離れたら、転生特典は使えなくなるらしい。

 ……………………強く、生きてほしい。

 

 その後、能力を失った事を知った転生者達は慌ててこうなった原因は他の転生者に違いないと、まずは自分が知る転生者を疑い、次に原作組に接触する異質な存在を疑いだした。

 つまりは私と座覇くんである。

 座覇くんはモブだの私はレズだの罵倒されてるけど、そんなのは無視無視。

 実害は能力が扱えるようにと頼んだ身体能力くらいでないが、再召喚で救出した英霊達によって粛正されてる。

 酷いのなんか英雄王の能力を望んだ転生者だ。

 如何に子供好きな英雄王と言えど、中身は成人した大人だからバッサリ切り伏せてる。

 そのお陰でちょっとした騒動があったけど、犯人はいまだ見つかっておらず、今後も見つかる予定はない。

 私的に納得いかないのが、デュフフフと笑っていた転生者の転生特典が健在な事だ。

 どうやら転生特典が英霊に関する特典じゃなかったから、私の英霊救出な対象外だったらしい。

 

 

 ☆

 

 

 さて、すずかちゃん誘拐事件から五日が経った。

 座覇くんのもう一度チャンスをと言うので、チャンスを与えることになった。

 今度はそうアリサお嬢様誘拐事件に巻き込まれよう。

 今度は別の幼稚園の子なため難しいかなっと思ったけど、すずかちゃんの時と同じ要領で誘拐された。

 

 要は「アリサちゃん、大丈夫!?」「なんだガキ!? チッこいつも連れてくか!」「なっ! その子は関係ないでしょ!?」「うっせー」って感じだ。

 

 今度も一部始終を見てた小太郎くんから、遠く離れてた座覇くんへと情報が伝わり、座覇くんが動くという手筈となってる。

 そしてその座覇くんの後を私の保護者がついてくる感じだ。

 で、今回はというと……

 

「今回は間に合った。 そこまでだ! 誘拐犯!! フヒッ貴様の悪事、たとえおてん……おて……! お日様が許してもぼきゅは許しゃなひで! ひははんだ……」

 

 以前見たデュフフフ転生者だった。

 

 終わった……即失格だね、これは。

 

 私が諦めた瞬間……

 

此処(こぉこ)かぁああ!! 流派東方不敗が秘技!! 十二王方牌大車併ハイパーーーモーーードッ!! 我が忠義! 我が愛!! 我が魂の一片まで燃やして総督を御守りせん!! 酔舞(すいぶ) 再現江湖(さいげんこうこう)デッドリーウェイブ!!」

 

「「超級覇王電影弾ッ!!!」」

 

光輝唸掌(こうきおんしょう)! 日輪よ我が手に宿りて光輝けぇえええ!! 灼熱!! サァアアンシャイン・フィンガァアアアーーーーッ!!!」

 

「「光輝唸掌(こうきおんしょう)! 九龍(くーろん)よ、我が手に宿りて猛り吼えよ!! クーロン・フィンガァアアアーーーーッ!!!」」

 

光輝唸掌(こうきおんしょう)! キング・オブ・ハートよ……くっやはりキング・オブ・ハートは無理か……ならばっ!! 悪魔が如き暗黒の力よ宿れ、敵を粉砕爆発せよ! ダァアアクネス・フィンガァアアアーーーーッ!!!」

 

「「超級覇王日輪(ちょうきゅうはおうにちりん)(だぁぁああああん)ッ!!!」」

 

「逝くぞぉおお!! 流派東方不敗が最終奥義……石破天驚拳!!」

 

 ああ、なんということでしょう。 人知れない港は座覇くんのやりすぎで崩壊。 一緒に拐われたバニングス嬢は気絶してるし、デュフフフ転生者と誘拐犯の姿が見えないし、ここは撤収しとこう。 うん、これはヤバイ。

 

 と、言うわけで私は気絶してるバニングス嬢を公園の遊具に背を預けさせ、家へと帰った。

 あ、崩壊した港はクーフーリンさんのルーン魔術で元に戻りました。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第五話 干渉したい過激派転生者

一応、原作1話目は出来てますが、無印を書き終えてから順次投稿します。
とりあえず原作前の話が6話です。


 愛だ!

 

 突然何をと思う者も居るだろう。 だがしかし! あえて! そう、あえて言うならばわしに足りないものは愛よ。 先だっての二度目の試練の時、わしはハートフル・フィンガーを放とうとしたが、とある事情によりそれが出来んなんだ。

 その事情とは愛を持って世界を正しき方向へ導く証たる『キング・オブ・ハート』のソレが出現しなかった事だ。

 そう、愛!! 確かにわしは今現在愛で世界を導くなどという考えで動いとらん。 じゃが、総督の母君から言うにそれは甘えではないかと、この座覇修司思い知らされた。

 愛を持って世界を正しき導く証等なくとも、愛を持って総督に忠を尽くせばハートフル・フィンガーを放てるというモノ。

 それを聞いてわしは愕然とした。 もちろん、わしの愚かさにだ。

 母君の言葉はわしの胸に、心に! 魂に!! 深く、深く、、、深く突き刺さり、わしは総督を前にして震えてる。

 何に? 当然! 告白! 宣誓! そう愛の忠を貫くため!! 羞恥を捨て、否! この羞恥(かんじょう)すら総督を思わんが為に沸き上がるモノ!! 羞恥(ソレ)を捨てるなど言語道断!! ならばなればこそ!! 羞恥すらも慈しみわしの愛で包む!! 弟子に出来て師匠であるわしが出来ないことはない!! さぁ、行くぞ! 言うぞ!! 我が愛!!!

 

「総督!! 前世から勿論の事! 前々世から今世、来世までいや末世に至るまでわしは総督の事を!! 愛してる!! 好きじゃ!! 轟け! わしの総督への熱い愛!!」

 

 わしの気が! 魔力が!! 高鳴り、溢れる光の柱となりて天を貫いた時、わしの手の甲にキングの姿がない『キング・オブ・ハート』が顕れた。

 

「今こそ魅せる時!! ハートフル・フィンガァアアアーーーーッ!!!」

 

 わしの手からピンク色の気の手が天へとうち上がるのを見て、わしはここにザハとしてでなく、勿論東方不敗たるシュウジ・クロスとしてでもなく座覇修司として完成した事を確信した。

 

「その愛、その忠、見事です。 今の貴方ならば娘を任せられます。 くれぐれも娘に集る虫になりませぬよう……それと、娘に集る虫は……」

 

「我が拳を持って粉砕させます」

 

「よろしい」

 

「……………………………………………………頭おかしいよ」

 

 

 ☆

 

 

 癒しだ!

 

 突然何をと思うもの人も居るかもしれない。 だけど聞いて! 私に足りないものそれは癒し! 圧倒的なまでの癒しなの!! 先ほど熱烈な愛の告白紛いななんか変な宣言を受けて、私のお腹はキリキリ軋んでるの!! 癒しがほしい……抱き締めれて、かつ私も抱き締めてきて良い子良い子と頭を撫でてくる母性というか姉性(しせい)?溢れる癒しがほしい。

 確かに愛は欲しいけど、あんなぐいぐい来る愛はもはやネタにしかならない……誰が私の人生はネタか!! こんな人生計画を立てた奴が居たらぶん殴ってやりたい。

 被害妄想でしかないけど、私の人生が物語として二次創作小説の無料サイトに晒されてたら、その作者を亡き者にしてくれるっ!! とにかく癒しだ! 私は今! 猛烈に癒しをほっしている!! 応えろ!! 我がほぼ無尽蔵な魔力ッ!!!!!

 

 瞬間、光の柱が天を貫き、柱が消えて現れたのは緑のフード付きのコート? 服? を着た少女だった。

 

「んー……むにゃむにゃ……おお! はれ? ここ、どこ? まぁ、いいか。 ……すぅすぅ」

 

 少し起きて驚いてまた寝た。 なんだろう? この生き物は……。

 

 と、私はマスター権限として、今召喚したであろう少女のステータスを見る。

 だけど見てたステータスは全てが目を疑うものばかりで、さらに英霊というか人間という種族じゃないことにも驚いた。

 彼女の名前はフェゴール。

 種族は魔族。

 そのステータスの殆んどはランクA以上であり、人物紹介欄をマジマジと見れば、怠惰の魔王にして魔壊神トリリオンを討伐した魔界の英雄にして、大魔王へと昇格した存在というのがわかった。

 恐らく、というか絶対これは座覇くんと融合したマスター・アジアと同類サーヴァントで、他の作品のキャラクターだ。

 それに王族や神霊を召喚出来なかったのに召喚出来たのは、転生特典で王族や神霊達を解放した影響で、召喚可能になったためだ。

 

 とりあえず眠るフェゴールの側に寄ってぎゅっと抱きしめてみる。

 抱きしめた時にフェゴールがおー……と言ってたけど、起きる様子がないので、そのまま顔をフェゴールに(うず)めて目を閉じる。

 

 すやぁ……

 

 

 ★

 

 

 親戚の叔父さんが私とシングちゃんを誘拐した日から一週間。

 シングちゃんと全然遊べてない。

 あの誘拐事件からシングちゃんとは友達になって、別れるときに後日私の家に行くと言ってくれたシングちゃん。

 誘拐された次の日は自分の部屋で今日来るかもしれないとクッキーとジュース用意して待ってたけど来なかった。

 その次の日、まぁ、誘拐された次の日はないよね!って自分に言い聞かせながら、今度は玄関より近いリビングでクッキーとジュースを用意して待ってたけど来ない。

 その次の日、保護者さんが過保護になってて外出させてくれなかったんだよ ーーでも幼稚園には来てたけど、会話できなかったーー!と自分に言い聞かせて、玄関の前で猫と遊びながら待ってたーーちょっとファリンに引かれたーーけど、来ない!

 そのまた次の日、そう住所がわからなかったんだ、そうだよ、そもそも住所教えてなかったし!と言い聞かせて、幼稚園で勇気を出して話し掛けたそのついでに住所も教えた。 今度こそ遊びに来てくれるはず!! と張り切ってたらバイオリンのお稽古で、夜遅くに帰ってきたらお姉ちゃんにシングちゃんが遊びに来てくれたと教えられて、落ち込んだけど私の推理は間違ってなかったとガッツポーズした。

 そのまた次の日、シングちゃんは幼稚園に居たし、バイオリンのお稽古がないと言ったーーでも来れるかわからないって言ってたーーし、本当はいけないけど、ファリンにシングちゃんの監視を頼んだからもう大丈夫ぶ!と部屋でクッキーとジュースを用意して、あと猫達も集めてネコネコ天国にして待ってたら、顔を青ざめたファリンからシングちゃんはまた誘拐されたと告げられて、私の目の前が真っ暗になった。

 次の日、目が覚めた私は事情をファリンから詳しく聞いたお姉ちゃんにシングちゃんの事を聞くと、なんでもシングちゃんは誘拐されそうになってるお嬢様っぽい女の子を助けようとして、一緒に拐われたとか……私の時といいなんでシングちゃんはこうも男前なのか頭が痛いけど、そこがシングちゃんの良いとこだもんね。

 なんか大事な事を忘れてる気がするけど……。

 それでお姉ちゃんの話によればシングちゃんが連れ去られたはずの港で、大きな爆発が起きて半壊したが数分目を離した隙に元の状態に戻ったらしいけど、港よりもシングちゃんがどうなったのか知りたかったから、お姉ちゃんにシングちゃんがどうなったかを聞いたーーその時のお姉ちゃんはドン引きしてたーーら、シングちゃんは自分の家でシングちゃんのお母さんに抱きしめられてたとのこと。 良かった無事で……。

 その次の日、シングちゃんは誘拐されたばかりだからか家で大人しくしてるって、ファリンが監視から帰ってきて教えてくれた。

 そして今日、昨日の私の愚かさと無能さに嘆いた。

 なんで、私は昨日シングちゃんのお見舞いに行かなかったのかっ!! 友達を誘拐されて怖い思いをしたシングちゃんを心配せず、卑しくも自分の欲を満たすだけしかシングちゃんを見てなかった。

 それの何処が友達か!! 友達とは真の友達とは、その人の身に危機が迫った時、自分の命すらも惜しまず捧げる存在のはず!! そう! シングちゃんが誘拐されたと知ったとき気絶じゃなく助けにいかないといけない!! それが友達っ!!

 

「お姉ちゃん!!」

 

「!? な、なに? すずか」

 

「私、シングちゃんの友達に相応しい女性になるっ!!」

 

「そ、そう……どう頑張るかわかんないけど頑張って、ね?」

 

「うん! 頑張る!!」

 

 待っててね! シングちゃん!!

 

 

 ☆

 

 

 ぞくり。

 

 また誰か病んだ。 願わくば、私に関係のない人でありますよう、神様よろしくお願いします。

 

「主殿、すずか殿が何やら堕ちた目で主殿に相応しい友達になるために頑張るみたいです」

 

「シット!!」

 

 糞食らえ、ゴッド!!

 

 

 ★

 

 

 誘拐されたと思ったら公園で警察に保護された。

 いくら説明しても子供のたわ言だと思われて信じてもらえないし、私の名前を呼んで勝手に巻添えくらった子をいくら探しても見つからないし、、、

 

「あーーーもう!! なんなのよーーーーーっ!!!」

 

 私を苛立たせる白いアイツ!! 次見掛けたらただじゃおかないんだから!!!

 

 

 ☆

 

 

『やかましいわ!』

 

「ははっワロス」

 

 今、家のテレビで芸人のコント見てます。

 

 うん、現実逃避だ。 最近、キャラ崩壊が激しくてついつい現実逃避してしまう。 でもしょうがないと思う。

 誰しも病んだ友達とか、病んでる部下や自称兵器、母さんの相手とか私の精神は瀕死です。 まともなのと言えば百貌さんと小太郎くんくらいなもので、段蔵さんはドジっ娘ぽくてほっこり。

 最近召喚したフェゴールだって毎日だらけて寝てるけど、私の癒しとしての役割を果たしてる。 ステイタスが規格外だけど……。

 

「今、戻った」

 

「おかえりー。 座覇くんどうだった?」

 

「あとは身体が成長しきれば全盛期以上になるはずだ。 東方不敗とはよく言ったもんだ。 敗けなしというのもあながち嘘じゃねぇみてぇだしな」

 

「最強の一角だったからね」

 

「へぇ……そいつはおもしれぇ」

 

「最強……か……うん、いいね」

 

 私の言葉にリボンに変容してたエルも加わって、クーフーリンさんとエルは邪悪な表情を浮かべた。

 

「んー、二人は座覇くん嫌い?」

 

「いや、強い奴は好きだぜ」

 

「キミを守れる道具は多い方がより良い」

 

 ……………………今日もうちの護衛は最高に頭がおかしいです。

 

 

 ☆

 

 

 さてさてそんなこんなで、時が過ぎていき。

 

「まだ二日しか経っていません、総督」

 

 過ぎさせてよ……もうお腹いっぱいなんだって。

 なんだって公園に、なのは少女を集団で囲う心が大きなオトモダチが居るのさ。

 

 え、助けなきゃダメ?

 

 ちらりと座覇くんを見る。

 

「どうかされましたかな?」

 

 私とはちょっと違うけど男で、転生者で、原作知識がなく、主人公バリの補正がついてそうな主人公にとっての強敵……。

 

「座覇くん、あの子を助けてあげなさい」

 

「しかし、わしには総督をお守りするという使命が……」

 

「ザハ、二度は言わすな」

 

「はっ!」

 

 凄みを効かせた私の命令に座覇くんは、残像を残してなのは少女を助けにいった。

 わかってる。

 これはただの先伸ばしであり、私と彼女は決して他人になりえないことくらいはわかってるのだ。

 座覇くんと友達になれば、私も友達になるし、今を無視してもいずれはすずかちゃん経由で友達になる。

 その時、バニングス嬢が私を覚えてたら、報復を受けそうな気がする。

 いや、私は生きる! 何を置いても!!

 

 

 夜。

 転生者に呼び出された。

 用件はただ一つ、調子に乗るなモブ。

 私と座覇くんを呼んだ連中に、特典消失した転生者も居るが彼らよりも上に居る転生者を見てみると、それはそれは素晴らしい魔力の持ち主だ。

 私と比べるのは可哀相だからあんまり詳しく言えないけど。

 

「お前ら、いい加減目障りなんだよ」

 

「此処で痛い目にあいたくないなら、オレらの攻略キャラから手を引くとギアスロールに誓ってもらうぜ?」

 

 攻略キャラ……ねぇ。

 私達は別にすずかちゃん、なのは少女を原作組と言った括りはするけど、あんな恋愛ゲームを攻略するキャラクターなんて括った事はない。

 

「はぁ、人を自分を飾るためのモノと認識してる奴らに目障りとか言われたら、アレだな……不快だ」

 

「我々は我々のルールに従って動いてる! そのルールを守らず好き勝手するのは悪だ! 悪いがお前達を我々の正義の下、粛正させてもらう!!」

 

「正義? ハッ! 正義と今言ったのか? 貴様らが? 他者の能力で粋がってた貴様らが!!」

 

「誰だ!?」

 

 恐らく転生して自意識と貰った特典をある程度扱えるようになったであろう某正義の味方くんは、腰のベルトに無理矢理吊るしてた夫婦剣の干将莫耶を抜いて、私の後ろに居る存在を睨むが、そんなことをすると……。

 

「戯け! 誰の赦しで我を見るどころか睨んでいる!! フェイカーを視界に入れるのも度しがたいというに、よもやフェイカーの贋作……いや、贋作すら烏滸がましい出来損ない風情が、この我を睨み、反抗的な言葉遣いをするとはなぁ!! 貴様らの不敬此処に極まったか?」

 

「な!?」

 

「バカ、な……」

 

「そんな……」

 

「なんで、此処にあいつが……」

 

 闇夜であっても輝くその黄金の鎧は、その尊顔を照らして他の転生者達を驚かせた。

 そりゃそうだ。

 何せ、自分達の目の前に絶対に逃げられない裁定者が居るのだから……。

 

「う、嘘だ……こんなこと……そ、そうだ。 に」

 

「それ以上言うなよ? そう考えるだけでも万死に値するのだ。 言葉として出したら、我とてどうなるかわからんぞ」

 

「っ!!」

 

 にせ者、同じ転生者と口にしようとしたのか、某正義の味方くんは裁定者の警告に口を閉ざす。

 

「そうさなぁ……とりあえずはそこの不出来な品々には塵となってもらう。 光栄に思えよ出来損ない。 本来であればゴミ掃除に我が宝物庫は開かんのだが、もう限界なのでな……塵となって失せよ。 我が審美眼が腐れ落ちるわ」

 

 一瞬だった。

 黄金の波紋が拡がり、大砲のような砲音が聞こえたと思ったら、私達の前に居た転生者達は屍すら残さずに消え失せた。

 文字通り塵となって……。

 

「あとは任せた。 我はこれから世界を漫遊する故、我を喚ぶ事のないように、な」

 

「ええ、助かりました。 ありがとうございます人類の裁定者様」

 

「ふんっ」

 

 こうして組織だった転生者は消え、あとは隠れて機会を伺ってる連中だけとなった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第六話 すずかちゃん? 良い子だったよ、ほんと……

いつもいつも誤字報告ありがとうございます


 小学生になった。

 順調にすずかちゃんと普通の友達として付き合い続け、その隙間を縫うが如く座覇くん経由でなのはちゃんと友達になった私はギリギリのラインですずかとなのはちゃんが遭遇しない綿密な計画と小太郎くん他100名余りが陰ながらフォローした事で、あの原作3人が友達となった感動秘話のシーンが始まらなかった。

 原因はただ一つ。

 私に相応しい友達というちょっと何言ってるかわからない間柄になりたいすずかちゃんのやった事は、まず自分の人格の矯正にはいったのだ。

 うじうじしてて自己主張をあまりしなかった子が、私に対してだけぐいぐいとそれはもうぐいぐいとスキンシップしたり、言葉もハキハキとして元気溌剌(げんきはつらつ)な子になった。

 ちなみに幼稚園では隠してた身体能力を座覇くんと張り合うことで、子供にしては異常な身体能力をこの子なら普通という認識にしてしまった。

 まぁ、私から座覇くんに合わせるよう言ったんだけどね。

 そのお陰か、バニングス嬢はうじうじしないすずかちゃんのリボンを取ることはなく、見覚えがあって集団から離れて見てる私のリボンにターゲットを変えてリボンを奪う瞬間、リボン(エル)の逆襲にあってお腹を抑えてうずくまった。

 

「大丈夫? アリサちゃん」

 

「あ、あんた……」

 

「しっ! 静かに、奴らに気付かれる」

 

「奴らって誰よ……そ、うじゃなく……けほっ」

 

「いけない、思ったより苦しそう。 保健室に連れていかないと! そもそもなんで私にちょっかいかけたの? 此処に通うほどの頭があるなら、私がキチガイ共に守られてるって理解してるでしょ?」

 

 如何にもバニングス嬢の事を心配してる風に周囲に聞こえるように言いながら、私はさらにバニングス嬢に顔を近付けないしょ話をする。

 その際、テンテンテンと、何かが落ちて此方に転がってくるのを後ろから感じ取り、振り返ると光を一切感じない目をしたすずかちゃんがガン見してた。

 

 恐い。

 しかし、なんだろう……果てしなく嫌な予感がする。

 

「シ、シシシシッ!! シングちゃんとバニングスさんがき、きききキス、フッ!!」

 

 ズシンと鈍い衝撃音と震動。

 青紫色の瞳だったすずかちゃんの瞳は(あか)く、(あか)く、(アカ)く、(アカ)く、爛々(ぎらぎら)と闇夜すらも照らす鮮血(アカ)い月のようになっており、壁は私達よりも先へと(ひび)が走って、震源地にはすずかちゃんの拳がめり込んだ壁。

 

 ハハッ笑っちゃうよね、私……すずかちゃんに依代召喚なんてしてない。

 つまりはこの惨状はすずかちゃんによる素の実力……死ねる。

 

 ちらりとバニングス嬢を見ると泡吹いて倒れてた。

 もうダメかもしれないと思ったけど、バニングス嬢が倒れてるならなんとかすずかちゃんを抑えることが出来る……といいな。

 

「ちょっと落ち着こう、すずかさ」

 

「さん!?」

 

「い、いや、すずかちゃ」

 

「ちゃん!?」

 

 え? 私、今まですずかちゃんって呼んでたよね? え、間違ってる?

 

「す、すずか……」

 

「なぁに? シングちゃん」

 

 私に呼び捨てされたことが嬉しかったのか、漫画なら台詞後に音符がついてるような声色でおとなしくなった。

 もっとも目はいまだに爛々と輝いてるけど、下手したら死を覚悟せねばならない。 いや、死なないけども……。

 

「私とバニングス嬢は、キス」

 

「キス! 口付け!! 接吻っ!!!」

 

「ちょ、声、声大きい……」

 

 え、なに? 説明させてくれないの?

 

「私もシングちゃんと……」

 

「ちょ、ちょっと待ってねぇ! 待って、お願いなんでもするから」

 

「いくらでも待つ!」

 

 あ、うん。 なんでもするって言うとほんとこんな事になるから気を付けよ……。

 

「あのね、すずか。 お友達ではキスはしな」「親友!!」

 

「あ、うん。 私も親友だと信じて疑わない「だったら!」………………」

 

 こえぇぇ……。

 

「親友でもしないかなぁ……あれは好き「大好き!」あってる……うん、親友としてだよね? 同じ好きでも「大! 好きなの」うん、大好きでも恋人同士じゃないとダメなの」

 

「そ、そん……な……あ!」「女同士じゃ恋人関係になれないから恋人にはなれないよ!」

 

 かっこ一部の人達は除くかっことじる。

 

「じゃあ、バニングスさんとキスしたのはなんなんですか!」

 

「してないから!! それともすずかは私の言葉を信用出来ない?」

 

「してます!」

 

 すずかちゃんの目の輝きが収まりつつある事に、ホッと胸を撫で下ろす。

 

「デュフフフ……ユリユリでしゅなぁ」

 

「ユリユリ?」

 

 と、思ったらすずかちゃんの目が輝きだした。

 クッソ、デュフフフ転生者ッ!!!

 

「はい、すずかちゃ「シング、ちゃん?」……すずかはあっちで私と遊ぼうねー」

 

「うん!」

 

 はぁ、原作の友達シーンどうしよ。

 

 

 ☆

 

 

 翌日。

 私はすずかに壁ドンされた。

 後ろからパラパラとビシビシと壁の破片が落ちる音と(ひび)が拡がる音が聞こえてる事から、すずかの壁ドンの力は強烈なモノだとわかる。

 おかしい、依代召喚……してないよね? わたし……。

 しかも昨日の放課後では収まってたアカい目の光が、昨日以上に輝いていた。 恐い。

 

「で、どうかした?」

 

「家でユリを検索したらpixy(ぴくしー)百科事典で百合、百合カプ、百合ックス、百合夫婦、レズ等々の興味深い単語がでたんです!!」

 

「あー、その分だと意味も……」

 

「調べたの!!」

 

 ビカーッ!!と目がさらに輝く。 眩し恐い。

 

「そっかー知っちゃったかー……」

 

 こんな恐ろしい状態のすずかだけど、実はこんな事態は予想していた。

 こうなっては仕方ないと、私は覚悟を決めている。

 

「ならしょうがないな……」

 

「え、えっえ、え! ええっ!!」

 

 近すぎるすずかの顔を、頬を撫で、顎に移動させクイッと上げて、すずかの唇を舌で舐めると、すずかの目がぐるぐると泳ぎだす。

 さらに追撃としてすずかの唇を唇ではみはみしたり、あっと開いた口の中に無理矢理舌を入れて、そこでボンッ!とすずかの顔が真っ赤になった。

 

「ふふっギブアップしたかにゃー」

 

「な、なにやってんのよ! 人前で!!」

 

「あ、バニングス嬢おはよう」

 

「おはようじゃなーい!! おはよう」

 

 私のゆっる~い挨拶にツッコミをいれるも、挨拶を返してくれるバニングス嬢。

 それよりもっと、バニングス嬢は自分の事をバニングス嬢じゃなくアリサと呼びなさいと言ってきた。

 

「え、嫌だけど」

 

「え?」

 

「え? なんで?」

 

「え、だって友達でしょ?」

 

「え?」

 

「え!?」

 

「友達? 誰と誰が?」

 

「私と貴女がよ!!」

 

「嘘でしょ?」

 

「そ! れ! は! わ! た! し! の! セ! リ! フ! よ!!!」

 

 叩けば響くとはまさにこの事なのだろう。

 バニングス……アリサちゃんは本当に面白い子だなぁ。

 

「その意気ですずかとも友達に」

 

「嫌よ。 だってその子恐いもの」

 

「……………アリサちゃん、すずかが恐いからと言って、友達になりたくないなんて好き嫌いしたらダメだよ?」

 

「いや、好き嫌いって問題じゃないと思うんだけど?」

 

「すずか……アリサちゃんと友達になるなら、今日はお泊まり会でも」

 

「アリサちゃん、私と友達。 OK?」

 

「は、はい……」

 

 私のこの一言で、気絶してるフリしてたすずかは勢いよく起きて、アリサちゃんを私から離して小声で強迫紛いな事を言って友達になった。

 うん、お泊まり会を餌にしたとは言え、アリサちゃんには悪いことしたかも、だが私は謝らない。

 あとはなのはちゃんかな。

 今のままだと座覇くんに依存しきっちゃうからなぁ。

 

 

 ☆

 

 

 結果、私のソレは杞憂だった。

 夜、お泊まり会を開いた私はすずか、座覇くん、アリサちゃん、なのはちゃんと開いたらちゃんと原作最初の三人娘となった。

 

「さて……あと何年かで大きな事件が起きるんだけど、どうしよ?」

 

「関わらなくてもよいのでは? 重要なのはその次」

 

「ああ、闇の書なんてふざけたモンが優先だ」

 

「そうだね。 僕らが居ない時、随分と勝手な事をしてくれたみたいだしね」

 

「ですが、そのお陰で娘と会えた……感謝はしますがそれは前回見逃した事で終わり」

 

「はい。 次は徹底的に滅菌させてあげます」

 

「僕も真の英霊になれたら、力になれたのですが……すみません」

 

「段蔵らの力では、彼の書の邪気には耐えられませぬ」

 

「申し訳なく……」

 

「んー? 真の英霊って簡単じゃん。 こうすれば良いんだよ、やー」

 

 

《HS/フェゴールの上限が愛にて突破しました》

《HSから真の英霊・フェゴールへと転臨しました》

 

「え? うそ!? なんで!?」

 

「いやー、ゼボちん以外に私を本当の姿にする人居ないと思ったんだけどなー。 案外シンちんの抱かれ心地と抱き心地はゼボちんと同じだからなー」

 

「それでも愛情を持つには弱くない?」

 

「ワタシにとってゼボちんと同じってのは大切なんだぞ」

 

「そうなの!?」

 

「そうだぞー」

 

「静謐のならば、マスターに尽くす愛はあるだろうが、我らには難しいものがあるな」

 

「ぼ、僕も……難しい、です」

 

「段蔵も、です」

 

「でもそうなるとフェゴールも働くことになるよ?」

 

 そう真の英霊状態とは、マスターに対する忠誠心或いは愛によって至れる境地で、そこに至った英霊は令呪の縛りはないがマスターの心からの命令には絶対に従うモノなのだ。

 

「シンちんは優しいからなー。 だからシンちんが頼ってくれるならなんでもしてあげるぞ。 大丈夫、姉上は強いんだぞ」

 

 強いのはステイタス見てわかってる。

 ま、フェゴールが私を認めてくれたのはうれしい。

 さぁ、始めようか、闇の書さん。

 どちらが生きるか破壊されるか勝負だ! ただしお前が負けたらネブレイドだ。




このすずかは清姫と融合していません。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2章 ジュエルシード事件
第一話 私の恋人


原作突入ですが、原作に絡むというより裏でいろいろしてます。


 夜、町中を木霊する声と爆発音。

 一匹の小動物は、得たいの知れない化け物に襲われ、小動物は魔法と呼ばれる技術で地球上に住む魔力を持つ者達に呼び掛けていた。

 

 そうーーー助けて、と。

 

『嫌だ』

 

『『『ブフッ!』』』

 

『え?』

 

 だがその救援は一刀両断され、あまつさえその一部始終を聞いてた魔力を持つ人達に笑われ、小動物の心に冷たい風が吹き(すさ)ぶ。

 

『昨日、私の夢に変なジャックしただけでも許せないのに、今度は助けてときた。 というか私は夕方にあなたを助けたからもう良いよね? 私は早く夢の中でシングちゃんに会って明日の朝またシングちゃんを見て会話して妄想して匂いを嗅いで抱き締めたいの! あなたを助けてる暇はないから』

 

『すずか、悪いけど全部聞こえてるから』

 

『シングちゃん! 以心伝心ってヤツだね!』

 

『いや、違うと思うぞ?』

 

『座覇くん、ちょっと黙ってくれない? 私とシングちゃんの愛の会話に割って入らないで』

 

『総督の母君の逆鱗に触れるような事をよく言えるな、貴様』

 

『ハッ! あの人は過保護すぎるんです! いい加減私にシングちゃんとの関係を認めればいいんですよ!』

 

『毒虫が……きゃんきゃんにゃーにゃーと犬猫のように喚きますねぇ。 シングちゃんは母と共にいる事こそが史上の幸せ。 何せ家族ですから』

 

『チッお邪魔虫は誰ですか!! シングちゃんは私と結ばれるべきなんです!!』

 

『あ、あの……』

 

『『黙れ! 穢らわしい害獣が!!』』

 

『し、しどい……』

 

『あー、元気だしなよ。 もうすぐそっちに助っ人が来るからさ』

 

 すずかと母さんに害獣認定された可哀想なフェレット形態のユーノに、苦笑しながらもユーノに近付いてくる友達の事を教えてやる。

 彼女に魔法の事を教えておらず、ただ単に私達の声を聞くだけだから、翌日の追求は免れないだろうと明日の事を考えて憂鬱になる。

 なので側ですやすや寝てるフェゴ姉を抱きしめて眠る。

 

『だから頑張れ、なのはちゃん。 そのフェレットさんの言うことを聞いてれば解決するからさ』

 

『夜中のお散歩を控えるシングちゃん。 流石は私の娘です。 明日の朝は良い子良い子してあげますからね』

 

『なっ! 卑怯ですよ!』

 

『すぅ……ふふん。 ワタシは今良い子良い子しちゃうもんね』

 

『『フェゴール (さん)!!』』

 

 おやすみー。

 

 

 ☆

 

 

 翌日、私達はなのはちゃんの質問攻めにあった。

 念話でにゃーにゃーにゃーにゃーと、まるで猫みたいに喚く。

 

『かわいいよね、猫って』

 

『猫がかわいいのは認めるけど、なのはちゃんはかわいくない』

 

『聞こえてる! 聞こえてるよ!?』

 

 そりゃ当然念話のチャンネルが、私達のコミュニティーグループでの念話だから聞こえるはずだ。

 ちなみに依代召喚してないすずかが念話使えるのは、ひとえに愛の力らしいです。 愛ってすげー通り越して恐いっていつも言ってる事だったなぁ。

 

『そもそも私はなのはちゃんが言う魔法☆少女(キラッじゃないよ?』

 

『いえ、魔法少女ではなく魔導師なんですがってちょっと待ってください!! 魔導師じゃないのになんで念話が使えるんですか!?』

 

 すずかの発言にユーノくんが物申す。

 確かにユーノくんの常識では魔導師でもない、レアスキルでもないのに念話を使えるって驚愕事実なんだど、悲しいかなこれは現実なのだ。

 

『そう、忘れもしない……あれは雨が降り続いてシングちゃんに会えない憂鬱な日。 電話越しでお話していく中、私は思ったの……』

 

『あの……それ長くなりますか?』

 

『あんまり話の腰を折るのはよくないよ?』

 

『おとなしく聞いてます』

 

『シングちゃんの生声を聞きたい』

 

 なまごえってあんた。

 

『なんとか出来ないかとうんうん唸ってると、突然シングちゃんの裸体が写った鏡』

 

『ちょっと!? 初耳なんだけど!?』

 

 え? 鏡? なに?どういうこと? って、もしかしてお風呂入って電話してた時の話? 言われてみたら念話もこの頃だった気がする。

 

『あ、これ秘密だった。 とりあえず姿が見えたのなら声も届くはずと、私は叫んだ。 それはもう愛を込めて!』

 

 ………………。

 

『すると今度は鏡越しじゃなく肉眼で見てるように感じて、すぐに携帯のカメラ機能で連写したけど、携帯が私の部屋を撮してたことに気がついて、私はどうやったら見たものを撮せるか考えた』

 

 なんか方向性が間違ってきてる。

 

『そしたらシングちゃんったら、いきなり椅子に座って足を広げたの!! これは確実に残しておきたいと思って携帯に意識を集中させたら、なんと私の携帯の写真フォルダにシングちゃんのあられもない姿が写ってることに成功したんだよ!!』

 

 ……………………だめだ、わたしのりかいをこえてる。

 

『あと念話はなんか出来た』

 

『テキトーですね!?』

 

『にゃははは。 ユーノくんあんまりすずかちゃんに構ってると胃に穴が開いちゃうよ?』

 

『アリサちゃんは尊い犠牲となったのだ』

 

『総督、もうじき教師に当てられます』

 

『え、どこ!?』

 

『36ページです』

 

『ありがとう』

 

 さて、念話は置いといて勉強に集中だ。

 って、あれ? なんのために念話してたっけ?

 

 

 ☆

 

 

 昼休み。

 いつものメンバーでお母さんの作ってくれた弁当を突っついてる。

 お母さんの料理は家庭の温かさがある料理で、冷凍食品という手抜きはしない。

 いや、冷凍食品を使う他のお母さん達が手抜きしてるとかそんなこと思ってない。

 冷凍食品を使ってるお母さん達だって、ちゃんと家族のために炊事洗濯掃除をこなしてる。

 

「座覇くんのから揚げいい?」

 

「どうぞ」

 

「ありがとう。 から揚げの代わりになにか欲しいのとかある?」

 

「では、その小さいオムレツをいただきます」

 

「はいはーい」

 

「あ、なのは! タコさんウインナー頂戴! 代わりにアスパラのベーコン巻きのアスパラをあげるから」

 

「にゃ!? アリサちゃん、それズルいよ!! なのは海老フライがいい!!」

 

「なっ! こ、この海老フライはダメよ!! いくらタコさんウインナーでも釣り合わないわ」

 

「でもでも、アスパラだけよりは釣り合うよ!!」

 

「ただのアスパラじゃないわよ! 焼いてあるわ!!」

 

「…………………………え? それだけ!? せめてベーコン巻いてるヤツにしてよー!!」

 

「しょうがないじゃない! ベーコン食べちゃったんだから!!」

 

「なんでアスパラのベーコン巻きのベーコンだけ食べちゃうの!?」

 

 やいのやいのとなのはとアリサが弁当のおかず交換で、喧嘩するのはいつものこと。

 そしてすずかはと言うと……

 

「シングちゃん、このミニトマトを口に入れて転がして」

 

「転がしたミニトマトをまた弁当に容れず、食べて良いよと言ってくれるなら転がす」

 

「ならいいや」

 

 と、しょぼんと落ち込むが、騙されてはいけない。 この変態なすずかの進化は留まることを知らない。 念話が良い例だ。

 

「あ、すずか」

 

「ん? ふぁに? !?!?!?」

 

 でも、だからと言ってあんまり冷たくする気はまったくない。

 すずかは暴走さえなければ、良い子なのだ。

 だから、故に、私はすずかが半分(くわ)えたミニハンバーグの残りを咥えて、すずかの唇に触れるのをお構い無く口内のミニハンバーグを掠め取った。

 

「もぐもぐ、ん」

 

「あんたら、いちゃつくなら他所でやりなさいよ。 見てる此方が恥ずかしい」

 

「あまり母君を刺激するのはよろしくないかと」

 

「にゃわわっ!」

 

「きゅ~」

 

「まぁ、恋人同士だから良いんじゃない? あと母さんにはしたくないけど、秘密にすればいいし、座覇くんもエルも言わないでしょ?」

 

「「もちろん」」

 

 私が小さく座覇くんとエルに念を押すように言うと、黙ってくれることを了承してくれた。

 

「彼女の愛は本物だからね」

 

「ですな」

 

 そしてさらりと言ったけど、私とすずか……付き合ってます。

 キスを迫られてすずかがユリというモノを知った日に。

 それからというものすずかのキスの要求が、日に日に増えていって今ではソフトどころかディープまでしたり、一緒にお風呂に入ったり、身体の洗いっこしてすずかがやんちゃしたり、お泊まり会で寝てる私の浴衣をはだけさせたり、発情して血を吸ったりと、うん、、、血よりも別の吸ってるんだよねぇ。 悪い気はしないからいいんだけど……。

 

 

 ☆

 

 

 放課後。

 この世界を原作通りに手を出さず、見守っていこうとかいう転生者達に呼び出された。

 正直、行きたくない感満載だが、行かなければ行かないで後が五月蠅い。

 ちなみにデュフフ転生者くんは、何処の派閥にも入ってない。 あと以前ギルに殺された誰々さん達も俺の嫁組とか、原作介入組とか、原作遵守組にも入ってなかった。

 というか……

 

「原作遵守って海鳴市に居ることとは矛盾してるよね? だって、居たら確実に介入されるんだもん。 他でもない闇の書のヴォルケンリッターによって」

 

「そ、それは……」

 

 当然、その事に考えは至ってたのだろう。

 だが相手は転移魔法が使えて、こちらは転移魔法が使えるほど魔法技能は低いし、闇の書に狙われたら確実に逃げられない。

 そもそもこの町に居る転生者を軽く調べたら、10人で完成に至る。

 私入れたら2人で十分だけど、私には護衛がいる。

 護衛がいない彼女達では、ヴォルケンリッターを退けるのは難しい。

 だからこそ、彼女達は転生する場所を間違えてる。

 

「私は赤ん坊の頃、八神はやてよりも魔力が多いせいで、闇の書に目をつけられマスターにされそうになった。 まぁ、特典の英霊召喚で事なきをえたんだけど……もし、私の抵抗が遅れていたら世界は確実に滅んでたし、君達の中で戦乱のベルカで猛威を振るってたヴォルケンリッターに対抗できる? 出来なきゃ君達の信条である原作遵守の誓いは破られる」

 

「確かに私達が此処に留まれば何人かの犠牲で闇の書は完成するわ。 だけど、それは何も対策しなかったらの話よ! 私達の中には魔力反応を誤魔化す道具を所持してる!! あなた達が彼女達に近付かず、縁を切るのであれば……」「シングちゃん?」「!?」

 

 遵守組の言葉を遮るように口を挟んだのは、私を探しに来たであろう月村すずかだった。

 

「月村、すずか……」「どうして此処に……」「認識阻害は?」「依然として健在です」「なん、で?」

 

「どうしたの、すずか?」

 

「シングちゃんの匂いが消えたから、探しに来たの」

 

 匂いって……すずかは犬かなにか? いや、夜の一族である吸血鬼の末裔による嗅覚の恩恵なんだろうけど。

 

「ところでシングちゃん。 そこの劣等種が私とシングちゃんの縁を切れとか、距離を置けだとか、冗談としても許容できない事を抜かしてなかった? まさか、いやいや、そんな、、、ねぇ、シングちゃん? そんなクソみたいな冗句をうけるなんて、ない、、、よね?」

 

 すずかの目がアカくなる。

 この流れは私としては久々だ。

 話としてはつい最近、前話であってると思う。

 

 ズシンと、一歩足を踏み出したすずかの足元は、コンクリートなのに蜘蛛の巣状に(ひび)が拡がってる。 恐い。

 なんて言ってる場合でもない。

 くどいようだがすずかは私と関係を持ってるとはいえ、依代召喚で擬似的な英霊になっておらず、夜の一族とはいえ一般人だ。

 まれに原作組最強が転生者に圧倒してる創作モノはあるが、あれは転生者が手を抜いてるまたはギャグ時空あるいは、このキャラに勝てる気がしないなどの思い込みによるものだ。

 それも魔法少女リリカルなのはの世界では高町一族というのが挙げられるが、月村一族には残念ながらそんな補正はない。

 つまり月村すずかと転生者の間には反則的な強さで勝てる方式が……………………………………あった。

 

「ごみ処理は終えたから、一緒に帰ろ?」

 

 にっこりと頬に彼女達の血を付けて笑うすずかに、私は顔を青褪めながら「はい」と答えた。

 彼女らとすずかの強者の差がどれだけ埋められたか知らないが、断言しておこう…………………………これ、ギャグ時空じゃないわ、ガチだ。

 月村すずか……どうやら私の恋人はヤバかったらしい。




召喚しか出来ない主人公が念話を使える理由は、鯖達とのコミュニケーションとしてデフォルトでついてきたオプション魔法の応用。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二話 黒い少女

 目の前に広がる惨状。

 日曜日、なのはちゃんのお父さんがやってるサッカーの試合の日。

 その日に起こるであろう出来事をすっかり忘れてました。

 

「いや、だって最近見直ししてなかったし、干渉とかしてなかったから、今どこら辺かわからなかったし、だいたいこう言う時のために他の巻き込まれたくなーいとか、人々を守る!!的な転生者が居るはずなのに、何してたのか……小太郎!」

 

「はっ! 僕が監視してた転生者によると、『主人公、高町なのはの決意が本物になるイベントだから静観が正しい。 町の人達には悪いけど』という発言を漏らしてました」

 

「…………段蔵の方は?」

 

「段蔵のとこもそのような感じでありまする。 ただ怪我人がないように治療魔術や助けに入ると言っていました」

 

「巻き込まれたくないと常々言ってる連中は結界を家で被って引き込もってるぞ」

 

 やってくれる人はやってくれるみたいか。

 それでも限界はあるだろうけど、なにもしないよりかは良い。

 

「エルはこのまま私の側に、クーフーリンと力自慢の百貌は復興作業、他は救助活動開始!!」

 

『『『ハッ!』』』

 

 

 ★

 

 

 総督の命により、救助活動することになったわしは総督の共にあることを良しとしたエルキドゥに嫉妬しながらも、地面から出てくる大木の根をマスタークロスで輪切りにしたり、襲われそうになってる一般人をマスタークロスで引っ張ったり、降ってくるコンクリートの破片を拳で打ち払ったりしながら中心部へと突き進む。

 勿論、わしだけでなく、段蔵や小太郎、ハサンらめも同じだ。

 そんな中、頼光殿は剣圧で総督の家を守護していた。

 本人曰く、母とは愛する者が帰っこれる家を守るのが仕事で、当然娘と夫も守るのが母との事らしい。

 フローレンス殿は避難所で怪我人の手当て、そしてこの事態が収まった時、病院が満員だった時のための医療部隊として動く準備中だ。

 

「ぬっ! バニングス!」

 

「修司!? ちょ、これ、どうなってんの!?」

 

「ジッとしておれ! ぬぅぁぁあああっ!!」

 

 バニングスの頭上から大木の根が降り下ろされそうになったのを気付き、全身張り巡らしてる気を手に集中させ……

 

「石破天驚拳!!」

 

 現状出しうる最高の技で根を吹き飛ばす。

 

「な、なに!? なんなの!? あんた達またなんかやったの!?」

 

「ええい! 毎度毎度我らの所為にするでない!」

 

 バニングスを引っ掴み、この場を離れて近場の避難所へと向かう。

 

「ぐぇっ! ちょ、運ぶならもっとマシな運び方ないの!?」

 

「文句言える元気があるなら問題あるまい!!」

 

「あるわよ! ぶっ飛ばすわよ!!」

 

「月村に総督を困らせたと言うぞ!」

 

「何してんのよ! このままで良いから避難所に連れていきなさい!! すずかが居ない避難所にしなさいよ!」

 

「そこは祈れ!」

 

「居たとしてもさっきみたいなこと言わないでよ!? いまだにシングが絡んだすずかが恐いんだから!!」

 

 誰も慣れんと思うがな……あれは。

 

 と、バニングスと会話しながら避難してると、後ろからバッタバッタと倒れる音が聞こえ振り返ると、そこに居たのは目を真っ赤に輝かせた月村が居た。

 

「シングちゃんの名前が聞こえたけど、座覇くんにアリサちゃん……シングちゃんは何処?」

 

 まるで嘘は許さないと言わんばかりの雰囲気に、バニングスは泡を吹いて気絶した。

 

 正直言うが、わしも月村のことはあまり得意でない。 総督に対する愛は本物であるが、それだけなのだ。 彼奴の線引きは総督とその他大勢で、自分の家族すらその他大勢の中に入れており、内訳もどれ程コンパクトに縮めているのやら……。

 

「当然コンマレベルです。 本当は全てシングちゃん一色で考えたかったけど、ほらシングちゃんは優しいでしょ? 私の人間関係がシングちゃん一人だとシングちゃんが傷つくから……あ、勿論私はシングちゃんだけでも大丈夫というかシングちゃんの考えを別に否定はしてないんだよ? 本当だよ? でもさ、シングちゃんも吹っ切ればいいのにね? シングちゃんには私がいれば良いし、私はシングちゃんさえいれば他は……その他大勢なんてそんな無価値なの要らない」

 

 う、うむ。 その独占愛もわしらは否定せん。 わしらもそれでいつも争いあってるが、あそこまで酷くはない。

 

「それで月村よ。 総督だったか?」

 

「うん! 今どこにいるの? 護衛役なら知ってるよね?」

 

 輝かしい笑顔で聞き返してくる月村。

 その月村の真横から大木の根が襲い掛かろうとして、いざ助けようとした瞬間、月村が腕を払うように振ると襲い掛かった大木の根は、月村の小さな手に収まって握り潰される。

 何が起きたのか、月村が何をしたのか、我が目を疑ったが、いくら現実を避けても目の前にソレが見えるせいで現実逃避が出来ん。

 いくら吸血鬼の末裔でもあり得んし、わしのようにガンダムファイターでも、英霊でもないただ少し人から離れた人間。

 

「月村、おぬし何者だ?」

 

「私はシングちゃんの恋人だよ? 座覇くんが言う気とか、クーフーリンさんが言う魔力だとか、エルキドゥさんが言う神力だとか、そんなの世界最強の力の前では無力なんだよ? そう、愛の力の前では全てが無価値」

 

 四方から鞭のように放たれる根を何でもないかのように凪ぎ払い、握り潰し、蹴り千切り、眼力で弾く月村。

 

 

 

 

 ………………………………………………………………………………………………総督、月村は本当に英霊とかではないのか? わしにはデビルガンダム以上の化け物に見える。

 

 

 ☆

 

 

 私は無実だ!

 

 とりあえず、各方面から来そうな苦情みたいなのを先読みして、無実を訴えたけが、誰も信じてくれなさそうだ。

 にしても、この状況はなんだろう?

 

「答えて、エイリアンの総督」

 

 今、私の目の前に居るのは黒く左右非対称のツインテールの黒のパーカー、貧乳の黒のビキニ、黒のホットパンツ、右手に黒刀、左手にはゴツい機関銃。

 はい、まんま私の2Pカラー……いや、2Pカラーは私なんだけども……。 ここは一つ()の存在としてなりきってみよう。 うまく行けば仲間に出来そうだし?

 

「………………」

 

「この惨状も貴女の仕業なの? この世界の人類も……」

 

「それはいくらなんでも早計だが、この状況を知らないのならお前はザハと同じか」

 

「ザハ!? 彼もこの世界に!!」

 

「ああ、先に言っておくが私たちはエイリアンではないぞ。 人間としてこの世界に転生した存在で、この騒動は私達とは無関係だ」

 

「人、間? 貴女達が?」

 

 私の目の前に居る女、それはブラック★ロックシューターTHE GAMEに出てくる人類側の最終兵器……ホワイト(ステラ)

 

「別段、珍しいこともないだろ? お前だって元は前世の私の遺伝子によって産み出されたクローンなのに、お前も人間に転生している」

 

 はい、まったくの出鱈目です。 私の出自というか前世は総督じゃない。 でもそんなこと言っても通じないだろうし、ザハだった人が私に忠誠を誓ってる事もあってテキトーな事で言いくるめるしかない。 もう座覇くんの総督呼びにも慣れたしね。

 

「わ、私は人間、だもん! 貴女とは……」

 

「違う……か? だがな、私は人間、、、地球人をネブレイドしたし、地球人の遺伝子情報はその時に取り込んでる。 ギブソン博士が私の遺伝子をどう使ってお前達を産んだのか知らないが、ギブソン博士自身の遺伝子も組み込んでいたのなら、私とお前はやはり同じだ」

 

 確か、ステラや他のグレイ達は私の遺伝子だけでなく、ギブソン博士の遺伝子も掛け合わせてた的な……なかったっけ? まぁ、どうでも……ん? ネブレイド? あれ? なんか、なんか引っ掛かるような………………気のせいかな? うん、気のせいだ。

 

「違う!!」

 

 私の言葉を否定して、ステラは地を蹴って私に迫る。

 自衛力もなく、座覇くんのような超人的身体能力のない私では反応しきれないけれど、私のリボンは最古にして神々が造り(たも)うた兵器。

 迫るステラの一撃はリボンで反らされ、ステラを元の場所へ弾いた。

 それはもうベチンッと良い音がした。

 だがそれで落ちてくれたら、苦労はしない。

 瓦礫を退けて立ち上がるステラはキッと私を睨むが、今日はもう此処までということで……。

 

「何処に行くの!?」

 

「もう事態は収まりつつあるからな。 救助活動は此処までだ」

 

「え? ええ!? きゅ、救助……活動?」

 

 町上空に走るピンクの光線が、大木に触れると大木の根や大木は幻のように消えて、残ったのは根によって荒らされた町。

 

「え? あれ? じゃ、じゃあ本当に?」

 

「ま、原因はわかっていたがな。 こうなるまで放置してたのは私のせいとも言う」

 

「ご、ごめんなさい! 私、勝手に勘違いして、思い込みで襲ったりして……」

 

「ふぅ~ん」

 

「え、なに?」

 

「いや、ああ、お前の今の名前はなんだ? 私はシングだ」

 

「シン、グ……私はステラ。 ステラ・ホワイトラブ」

 

「は? …………ステラ・ホワイトラブ? ぷっくくく……なんだ、それは……っははは!」

 

「そ、そんなに笑わなくても……」

 

「くっくくく……ステラ、私のとこで活動しないか? あと何度かこのような事態が起こるんだ。 私には以前のような力はないし、部下も……まぁ、それなりには居るがやはり手が足りない……どうだ?」

 

「え? 力がない?」

 

「ああ、先程のも私の部下が私を守っただけだ。 今の私はたぶんだがお前にすら勝てん」

 

 こう、自分で事実を口にすると堪えるものがあるなぁ、やっぱり。

 だけど事実だ。 私は弱い。 か弱いと言っても過言じゃないくらいに……。

 力を持ってる原作組にすら勝てる気がしない。 だから私は仲間を集めて守ってもらわないといけない。

 

「………………………………………………………………うん、いいよ。 でも、前みたいにネブレイドしたらダメだからね?」

 

「しないよ、地球人だぞ? 出来るわけがない」

 

「そっか……うん、そうだね」

 

 こうしてステラを仲間に入れて、私は家に帰った。

 

 

 ☆

 

 

 大木の根っ子事件から時間が経ち、町はだいぶ落ち着きを取り戻した。

 その大半は影ながらフォローしていたクーフーリンと忍二人、ハサン達だ。

 あと、今回の件でいい加減呼び方を変えろと言われたので、さん付けがなくなった。

 そして昨日の夜、すずかが私の家にお泊まりに来た。

 明日というよりは今日、すずかの家で友達全員集めてのお茶会のはずなのに、すずかは家に来たのだ。

 お茶会の準備とかがあるだろうに……。

 

「うにゃシングちゃんのくちびる……おいひいれしゅ」

 

「なんて寝言だ」

 

 さて朝日が登って目覚めたからには、すずかも起こさなくてはいけない。

 

「すずか、朝だよ。 起きな?」

 

「んー、やぁ……シングちゃんの匂いをハスハスするー」

 

 頭を抱えた。

 

 すずかはなんというかネット語? ヲタ語? を覚えて以来、ネットサーフィンしてさっきのような事を口走る事が少しある。

 その殆んどは私に向けて言っており、まぁ、良く言えば言う相手をちゃんと見極めてると言うか……忍さんからは私が教えてるんじゃないかと勘ぐってる。

 ま、それを言おうものならすずかがバーサークするんだけどね。

 セ○ムの高町恭也くんすら圧倒するのは口が開きっぱなしだった。

 

 ああ、それとこの間、頭に過った私の仮説。

 総督を知る各関係者が、私の事を総督と断言しちゃったこと。

 月村すずかが吸血鬼の末裔で、私の血を吸ったこと。

 吸血鬼の吸血行為が眷属を生み出す以外に、遺伝子や魂の情報を少なからず吸ってると仮定して、その全てが事実なら、すずかは私の前世……は若干覚えてるし、一般人だったから前々世の総督の魂の情報を吸血行為で取込み、その情報からネブレイド能力を取得した。

 ネブレイドを取得したことで、私の血をさらに吸血することで、総督の魂情報を取り込んでいき強くなったのなら、原作組の一般人枠だったすずかがこれほどまでに強くなったのに納得が行く。

 

 ま、私の前々世が本当に総督だったらの話で、すずかの吸血が私の仮説通りならの話だけどね。

 今はまだ私の前々世を調べる手段はない。




というわけでホワイトことステラさん登場。
この子もザハと同じ存在です。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第三話 またまた転生者

 すずかを起こして朝食を食べて、月村邸へと向かいながら座覇とステラと合流する。

 月村邸へと到着し、すずかの猫達とステラで遊びながら待つこと30分、アリサちゃんが到着した。

 

「おはよーってあんた何やってんのー!?」

 

 だがアリサちゃんは到着早々、猫に群がるステラとさらに猫を乗せようとする私に向かって激しいツッコミをした。

 

「いや、ちょっとにゃんにゃんチャレンジ?」

 

「なんで疑問系!? それにあんたもあんたで少しは嫌がりなさいよ!! すずかは嫉妬しない!! って、こら! 私に群がるんじゃなにゃわー!?!?」

 

 えっさえっさとステラから猫を引放すアリサちゃん。

 私に構ってもらえず、ステラに嫉妬の炎を(たぎ)らかせるすずか。

 私とステラの遊びを微笑ましそうに眺める座覇。

 ひっぺがされた猫達は、激しく動くアリサちゃんを遊んでくれるものと認識したのか、アリサちゃんに群がる。

 それに反応して猫達を引きはなそうと、さらに暴れるアリサちゃん。

 

「……ねぇ、アリサ」

 

「何よ!?」

 

「! …………ふ、ふんっ! 激しく動いて猫の感心を惹くだなんてハレンチにも程があるわ。 勝ったと思わないで!」

 

「うっさいわよ! 変な拗ねかたしてんじゃないわよ!!」

 

 試しに呼び捨てで呼んでみたけど、拒絶されないと認められた感じがあって嬉しかった。 でも、露骨に嬉しそうにして見せると癪だからアリサっぽくツンデレしてみたけど、変な風に誤解された? まぁ、誤魔化せたしいっか。

 

「って、すずかからドス黒いオーラ出てるんだけど!? 私、どっかしくじった!?」

 

「あ、たぶんそれ私のせいだ」

 

「クソが!! 友達の手綱くらい首輪つけて持っときなさいって何回言わせるつもり!? 本気でヤバイんだから!!」

 

「そんな、鎖付きの首輪だなんてまだ早いよぉ。 式もまだなのに」

 

 荒れるアリサ、何か意味フな事をぬかすすずか。

 

「ハハッカオス」

 

「いつもの事だ。 慣れよ、ホワイト」

 

「ア、ハイ」

 

 

 ☆

 

 

「で、あんたにクリソツなその子誰?」

 

 暫くして落ち着いたアリサは、頭に猫を乗せつつ席に座り、ステラの方を指差して私に言ってきた。 解せぬ。

 

「なんで私に聞くの? 私に似てるから、すずかが暴走して拉致した可能性を考えない?」

 

「考えてそうだよって言われるのが怖かったからあんたに聞いてんの」

 

「! そうか、言われてみれば匂いもどことなく」

 

「おい、すずかに何吹き込んじゃってくれてんの!? 私のステラをヤンデレの脅威に晒すんじゃない!!」

 

「死なばもろともー!!」

 

 もう自棄になったのか、アリサはステラを抱き抱えてすずかに特攻した。

 

 くっ弱くなった私を許してくれ、ステラ……(ホロリ。

 

 

 ☆

 

 

 すずかを落ち着かせ、再びステラで遊ぶ私。

 にゃんにゃんチャレンジも36匹も乗せればギネスに載るだろうか?とバカな考えをしていたら、なのはちゃんがやって来た。

 

「あ、やっと来た」

 

「こんにちは、なのはちゃん」

 

「遅かったな、寝坊でもしたのか?」

 

「どうせ夜更かしでもしたんだろ。 早寝早起きは健康に良いんだぞ?」

 

「ど、どうも」

 

「にゃはは、ごめんねって、猫のお化け!?」

 

「だから困った顔するくらいなら嫌がりなさいよ! なんで良いようにされてるわけ?」

 

「あ、あははは……個人的にちょっと嬉し、、、いから?」

 

「にゃんこ共、新しい玩具だ」

 

「キュッ!?《え? え? え?》」

 

 ステラに引っ付いてる猫達が見えるように、フェレット型ユーノを見せてポイッと遠くへ放ると、にゃんこ達は目を光らせユーノを追いかけた。

 

「きゅ~~~!!《シング~~~!!》」

 

「いってらっしゃ~~~い、元気で~~~」

 

「あれね、シングは良い死に方しないわ」

 

「お茶目なシングちゃん可愛いよね!」

 

「にゃ、にゃははは……のーこめんとで」

 

「流石、総督っ!!」

 

「………………ザハってこういう人なの?」

 

 締めにステラが座覇に対して、呟いた。

 

 

 時間が流れて、3時頃。

 私達の魔力感知に反応があった。

 

 私よりも極々小さいが、間違いなくジュエルシー……まさかロストロギアの一角、次元世界崩壊させる程の魔力があるとか、もしかして下手に魔法を使ったら次元世界崩壊するのかな?

 

『なのは!!』

 

『うん!』

 

『行くのか? だったらステラを連れてくといい。 役に立つ』

 

『え、いいの?』

 

『シングがそう言うならいいよ』

 

『だったらよろしくね! ステラちゃん』

 

『うん』

 

 マルチタスクとう思考を複数にわける魔法で、なのは達は喋ったり動いたりしながら念話をする。

 

 私はそんな高度な魔法が使えないから、素の状態で思考分割してる。 これでも頑張って練習した方で、今では4つまで分割出来るが…………すずかはおよそ100程分割出来て、本気を出せばいくらでも分割出来るらしい。

 

 ちなみに平常時は5つ程使って、そのうち4つが私の動作、声、姿、読心(ほんしん)聴思(がんぼう)に分けられてるらしい。 ………………そう、すずかは4つ使ってるとか言ってるが、5つ全て私で埋められてるというか最後の2つは思考分割じゃないし、最後の聴思(がんぼう)については軽く無視されてる。

 

『無視じゃなくて、私じゃ叶えられないから』

 

 ………………………………私の願望はただひとつ、自重してすずか。

 

『今の私じゃ抑えきれないッ!!』

 

 もう今更、私の思考とか本心を読み取ったり、聞き取ったりする技術については突っ込まない。 この世界の月村すずかは『月村すずか』なんだと思うことにした。

 

 いつか根源とかに繋がりそうだよね。

 

『やだなぁ、シングちゃん。 あんな何も無いとこに興味あるの? あまりに殺風景だからちょっとシングちゃんでいっぱいになっちゃったけど』

 

 …………………………えっと、ちょっとなにいってるかわからない。

 

「ねぇ、ユーノ急にどうしたのかしら?」

 

「なのはちゃんも、座覇くんに頼んだ方が早く終わるのにね」

 

「それがあやつの悪い癖でもある」

 

「………………ステラ、なのはを追い掛けて、連れ戻してこい」

 

「うん、わかった………………」

 

 あくまでも友人を心配してる風に、現状頼りになるステラを使ってなのはの援護に向かわせようとするが、ステラはくるりと此方を見てきた。

 

「? どうした?」

 

「あ、や、その……」

 

「シングの護衛に行かせれば良いじゃない。 ステラをパシリみたくしなくても」

 

「いや、うちの護衛は頭おかしいし、私から離れないんだ」

 

「知ってた」

 

 それにステラは表向きでは私の友人だが、あの巨木事件の後で護衛役になったんだよねぇ。

 しかし、だからこそ不思議だが、何故ステラは動こうとしないのか?

 

「……ホー」

 

「ん?」

 

 ほー? ステラの呟きに思考を高速回転させる。

 ステラ ほー このワードに何か引っ掛かる……あっそうか。

 

「ステラ」

 

 トボトボとなのはが走った方へと歩いていくステラに待ったを掛ける。

 

「なに?」

 

「ああ、なんだ……なのはを頼んだぞ。 タリーホー」

 

「! ホー! タリーホー」

 

 タリーホー……私がそう言うとステラは輝かんばかりの笑顔で同じ単語を私に向けて言い、走り出した。

 

 そう、ステラが言ったホーとは、タリーホーのことで前世のステラが生き残りの人類と共に戦場へ向かうときに言った言葉。

 意味は突撃だったかな。

 

「ステラって……犬みたいね」

 

「私の犬だからな」

 

「いやいや、友達なんでしょ!?」

 

「私はシングちゃんのメス」

 

「言わせないわよ!!」

 

 ふふっ……さぁ、早く帰って青春を謳歌しようステラ。

 

 

 ★

 

 

 タリーホー。

 前の生、シングが言うには前世の時、対異星人兵器として目覚めた私の仲間から教わった大切な思い出(ことば)

 前の仲間達じゃないけど、今の仲間がタリーホーと言ってくれたのはうれしい。

 

 でも浮かれるのはそこまでにしないと……。

 

 私は急いで魔力というのを出して、前の生で着てた服に着替え、巨大な機関銃を担いで加速する。

 なのはの元へと駆け付けた先には、巨大な猫と空には黒マントの金髪の子が電気の球を自分の周りに置いてる。

 

 まさかアレを猫に当てないよね? いや、あれ撃つ気だ!!!

 

 地を蹴って彼女の射線上を防ごうとするけど、上から影が差し込んできて、上を見ると此方へ刀を振り下ろそうとしてる人が目に入り、機関銃でガードをするが上から下へ向かう力に勝てず、後ろの木にぶつかって茂みに落ちる。

 

「だぁめじゃないか。 転生者が介入しちゃ♪ まぁ、ブラック★ロックシューターのスペックでこの世界じゃあ、やっていけないだろうけど?」

 

「ブラックロックシューター?」

 

 わたし、の事かな?

 

 茂みの中から立ち上がり、邪魔をしてきた人を睨む。

 

「おや? 知らない? まぁ、いいけど……あちらも用事は終わったし、じゃあね~」

 

 私を邪魔してきた人は、巨大な猫が居た方を見て私の前から姿を消した。

 長い刀を持った黒い和服の少女。

 

 私の事を知ってたみたいだけど、誰なんだろう? と、騒動が収まったならなのはを連れ戻さなきゃ……

 

 呆然と空を見てるなのはを発見し、連れて帰った私はシングにさっきあった出来事を報告した。

 シングは難しい顔をして、私に礼をしてくれた。

 

 あのシングが!!

 

 その事が今まで以上に嬉しくて、思わず笑顔になってしまった。

 

 うぅ~、いきなり笑って気持ち悪いとか思われてないかなぁ。

 

 

 ☆

 

 

 フェイト・テスタロッサに転生者らしき存在が確認された。

 

 ステラが言うには刀を持った和服の少女らしく、剣を交えたステラ曰く、座覇より下……まぁ、一介の転生者が座覇より強かったら、私は英霊召喚しまくるけど……。

 

 それはそうと、私の膨大な魔力はまだまだ増えているらしく、エルやクーフーリンに魔力を回して霊基強化してる。 少しでも自衛力(他力本願)を強くしてないと気が気でないからだ。

 母さんの方はもう世界さいつよだから……。

 

「なのはちゃん、この温泉で元気になるといいね? シングちゃん」

 

「うん、私をひんむきながら言う台詞じゃないかな……」

 

 車内で私の隣に座ってるすずか。

 なのはの事を出汁にして、私の胸元へと手を滑らせ手刀一閃。

 上着どころかホットパンツすらも裂けた。

 

「……………………だから着替えてと言われたのかー、知らんかった」

 

 そう、この服は私が車に乗る前、すずかから提供された服なのだ。

 まぁ、流石のすずかも他人の服をおじゃんにするわけがないか。

 

「ちゅぱちゅぱ……」

 

「…………………………ステラも興味があるのか?」

 

「う、うぇあ!? そ、そそそそそんなことないよ!! うん、ない!!」

 

 横目でチラチラと見て、すずかがちゅぱじめてからは、ガッツリと隠す気がない視線を向けるステラ。

 声が滅茶苦茶動揺してるし、鼻息荒い、顔が赤い、ツインテールが心なしかぴょこぴょこしてる。

 

「…………………………別にやってもいいよ」

 

「じゃ、じゃあ少しだけ」

 

 私が許可すると即座に食い付いた。 少しは隠せよバカヤロウ。

 

 あと私の護衛役のエルとかクーフーリンさんとか、風紀を取り締まる母さんは別の車で、前の席には座覇くんが私の護衛としている。

 

「見える?」

 

「いえ、見えませんので、どうぞごゆるりと」

 

「あ、うん。 そうね」

 

 もう、脳死(何も考えない)で過ごそう。

 

 

 ☆

 

 

 温泉旅館に着いた。

 ボロボロの状態で車から降りるとバニングスがバーニングしたけど、段蔵と小太郎が即座に服を着せてくれた。

 

「さ、シングちゃん!」

 

「部屋でゆったり寛ぐのも悪くないと思わないか? ステラ」

 

「シングはいっつも寛いでるよね、紅茶とか飲んで」

 

「なんだ、ステラは紅茶苦手か?」

 

「み、ミルクティーなら飲める!」

 

 ふふ、ああ可愛い癒される。

 

「シぃングぅちゃん?」

 

「ア、ハイなんでしょう」

 

 すずか怖す……。

 

「小太郎よ、卓球勝負と行こうではないか!」

 

「真の英霊クラスとは無理です。 やるなら高町士郎殿や高町恭也殿とが良いです。 母上もどうです?」

 

「良いですね、段蔵は守りを固めます」

 

「ハッハッハッ親子でダブルスか。 行けるな、恭也?」

 

「勿論だとも……行くぞ! 小太郎!!」

 

「推して参る!!」

 

 と、座覇の誘いを断って母親と高町親子で卓球場へと向かう小太郎達。

 

「いくつになっても男の子ね、士郎さん」

 

「うちの旦那もはしゃぐ時は男の子ですよ」

 

「ママさん、私は司令官のとこへ付いております」

 

「よろしくね、フローレンスちゃん」

 

 お母さんと高町桃子さんも卓球場へ向かい、フローレンスーーナイチンゲールーーは私の方へと来る。

 このあとは部屋でゆったりするんだけど……

 

「ですが、司令官。 そちらのすずかさんはお風呂に引き込む気ですよ?」

 

「くっ邪魔なっ!!!」

 

「お黙りなさい、司令官の体は弱いのです! 長湯させて逆上せ気絶させられてはいけません。 露天風呂へ行かれるのでしたら……いいえ、本日は私が司令官の護衛です! 私の目が黒い内は無駄にはしゃがせません」

 

 此処まで、此処まで頼もしい……いや、もう本当に此処まで頼りになるサーヴァントが居ただろういいや、断じて! 断じて居なかった!! どいつもこいつも過剰防衛っぷりに何度頭にきたことか。

 私の平穏は守られた!!

 

「あ、姉さんは? 今日全然見てないけど」

 

「此処に」

 

 ガチャンと、百貌のハサンがバックドア開けるとすやすやと寝息を起ててるフェゴールの姉さんが居た。

 

「まぁ、座って寝て背中痛めるのもあれだしね!」

 

「いや、ここに寝ても背中というか腰も痛くなるわよ?」

 

 アリサがなんか言ってる。 どうでもいいや。

 

「私もすずかちゃんみたいに強くなれたら……」

 

「いや、なのははこのまま伸び伸びと強くなった方が良い。 あれは修羅の道よ」

 

 なのはが迷走してるけど、座覇によってなんとか引き戻そうと……うん、なのはがぐるぐるした目ですずかを見てるからダメかな。

 

 ちらりとすずかを見ると、ナイチンゲールとすずかの立ち位置が入れ替わっていた。

 愛に生きる二人にとっては静かだなぁという印象しかない。

 基本的にすずかと母さん、すずかとエル、すずかとクーフーリン、すずかと座覇の戦いは激しいのにだ。

 私が疑問に思ってると、急にすずかが膝付いた。

 

「…………まさか、この手から感じる違和感……極薄透明手袋っ!! それも私の手に合わせた完全一致サイズ……」

 

「それだけではありません」

 

「ッ! 私の愛の爪が切られて清潔にっ!? それにこの手袋から感じる水分……消毒液による消毒済みとでも言うの?」

 

「さらに前言の極薄透明手袋ですが、少し訂正をさせていただくとウルトラ耐久性能の極薄透明手袋驚異の0,01㎜です」

 

「この私が、、、負けた?」

 

 ……………………………………………………………………………………………………………………ちょっと何言ってるかわかりませんねぇ。




フェイト側にも当然居ます。 転生者。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第四話 力を持ちすぎて破滅思考に振り切った人達がいるそうな

 チャポンと湯船に誰かが入ってくる音が聞こえた。

 時間的にアルフかなっと、先に上がったなのは達は大丈夫だったろうかと考えながら入ってきた人を出迎える。

 当然、私のそばにはナイチンゲールがいる。

 

「おやおんやぁ? 黒岩さんの次は白岩さん? ブラック★ロックシューターに白岩って居なかったから……ああ、THE GAMEかな? となると黒岩さんは黒岩さんじゃなくてホワイト、ステラなのかな? いや、でも黒岩さんがブラック★ロックシューターを知らないってのはおかしいような……って、なんで婦長さんもいるの?」

 

 と、私の予想を裏切って現れたのは、ステラがこの間出会ったと言った転生者だった。

 その後ろにアルフも居るけど、表情を見る限り、仕方なくそばにいるって感じだ。

 

 なんで他の転生者達って自分勝手に行動したがるのか。

 するなとは言わないけど、周りの人間関係にも気を回せばいいのに、、、もしかしてフェイト側じゃなくプレシア側なのかな?

 

「司令官、そろそろ逆上せます」

 

「わかった」

 

「ちょっと何無視してるわけ? ムカつくんですけど?」

 

 彼女に反応しなかったせいか、もしくは疑問に答えなかったせいかテンションが上がってた彼女は急に冷めて、凄味を利かせた声を出すけど、正直愛故に突っ走ったすずかの方が怖い。

 それに私に掴み掛かろうとした彼女の手をフローレンスが掴んで、露天の縁にまで吹き飛んでいったから驚異でもなんでもない。

 なんせフローレンスは真の英霊に昇華してるとはいえ、私の専属医で非戦闘員だ。

 そんな彼女でも楽々不意をつけるのだから、あの転生者の戦闘レベルは高くない。

 ステラが不意を取られたのは、つい最近私達側に来たからだ。

 

 うん、なんだ心配して損した。

 

「浴衣……良いですね、火照った体の熱が逃げやすいですし、団扇も使えばその分早く熱が冷める。 湯冷めしないように気を付けてください」

 

「わかった」

 

「それと今回の介入もステラさんだけです。 司令官が介入する必要はありません」

 

「はーい」

 

 その辺はまだ大丈夫だ。

 私が介入する時は、本当に町が危険な時だ。

 

 

 ☆

 

 

 カット。

 温泉での出来事は簡単に言えば、原作のような展開が起きて、イレギュラーと言えばフェイト側の転生者とステラが二度目の激突でステラが勝利をもぎ取った。

 正直、瞬間移動染みた瞬歩とか、斬魄刀の能力、鬼道をどう潜り抜けたのかわからないけど、ステラが勝てた事を素直に喜ぼう。

 だが、なのはの悩みは吹っ切れておらず、またアリサが苛々し始めた。

 恐らく明日辺りにでも、なのはを叱るアリサが見れるに違いないが、原作と違って私達と言う相談相手が居るにも関わらずこうなるってなのはの病気は幼少時代に少し干渉した程度じゃ治らないという事なんだろう。

 巨木事件の頃も相談せずに見逃してたみたいだしね。

 

「なんで相談してこないんだろ」

 

「依存に入ってたら相談くらいは受けれたと思いますが、結局は幼少時代に形成されてしまった性格故、でしょうな」

 

「シングはなのはの悩みを知ってるんだよね? 相談に乗らないの?」

 

「悩みは知ってるが、理解できんのが現状だな」

 

 なのはの悩みはフェイト嬢が悲しい目をしているのか、どうしてジュエルシードを集めてるのかの二点に集約される。

 そんなの私からしてみれば、ジュエルシード集めにライバルが出現した、負けた、悔しいから強くなる、絶対に負けたくない、だからどうあっても倒すくらいしか思えないし、ライバルが何故悲しい目をしてるか等と敵の心情を探るなんて思考自体がわからない。

 

 まぁ、答えを知ってるから導いてやることは出来るんだけどね。

 

 リボンを解きエルに手鏡になるよう言い、なのはの前に手鏡を置く。

 

「えっと……な、なに? シングちゃん」

 

「さぁ? ただ今のなのはの悩みの答えはなのは自身の中にあるんじゃないかと思って」

 

「わたし?」

 

 手鏡をリボンに戻して、髪を結んで私は怒ったアリサを追い掛けずにステラと座覇の二人でジュエルシードが目覚める場所へと向かったが、商店街に入った瞬間、私がいた場所が隔離される。

 

「……ここは邪魔してほしくなかったんだがな」

 

「ここから、物語は急速に動き出す。 邪魔はさせない」

 

「物語通りに事を進めようと静観したのが、あの巨木の根っこだ。 あれだけの被害……今回もあのような暴走が起きたら次元崩壊は免れんぞ」

 

「それがどうかしたか?」

 

「なに?」

 

「次元崩壊……結構ではないか。 元より我々は原作遵守派ではない。 原作崩壊は勿論の事、世界すらも玩具として遊ぶ終焉の鐘だぁ!!」

 

「…………………………………………………………は、ダッサ」

 

 終焉の鐘と名乗る世界に壊滅的なまでの病原菌の主張を聞いての感想だ。

 これにはリボンのエルもステラも座覇も呆れた顔をしており、その隙に令呪を使って母さん達を喚んだ。

 

「この背徳感を楽しめないとは残念な奴だよっ!!」

 

 病原菌が何かを言ってるが、それを聞いてやるほど優しくもない私はクーフーリンさんに突撃させるが、真っ正面からの突撃だったため簡単に避けられる。

 

「クーフーリン、終わらせて」

 

「了解した、マスター。 全呪解放……」

 

 私の魔力を少しだけ持っていったクーフーリンは、その体に刻まれた呪を解放し、宝具を発動した。

 

 ――それは伝説の怪物のように巨大な体躯。

 ――頭は毛先から金、赤、黒の三層の頭髪。

 ――全身に刻まれたルーンは、淡く輝き始めてクーフーリンのステータスを上昇させる。

 ――手に持つ呪いの朱槍も、赤黒く禍々しい魔力を大放出してる。

 

「ひ……」

 

 病原菌が怯え始める。

 当然だ。

 彼の前世がどんなモノだろうと、いまだ神秘があった時代の英雄達ですら、このクーフーリンに魅了されるか恐怖によって怯ませるかのどちらかだ。

 終焉の鐘だ破壊だなんだと言っても、所詮は強大な力を得て増長したガン細胞だ。

 

「真っ当なオレや(いびつ)なオレみたく期待すんなよ。 マスターが殺れと言ったからには遊びはない。 『刺し穿ち突き穿ち抉り穿つ鏖殺の呪槍(ゲイ・ボルク)』!!」

 

「き、緊急だっ……」

 

 無駄だ。

 ゲイ・ボルクの真名解放は、放った瞬間に相手の心臓を貫いてるという結果を残す。

 回避するなら豪運かゲイ・ボルク同等かそれ以上の防御型宝具で防ぐしかない。

 そして真の英霊となったクーフーリンの宝具ランクは、A➕➕➕にまで上昇されてる。

 そのせいかはわからないけど、豪運持ちの心臓ですら貫けたりする。

 

「カッ……ガフっあ、ひゅー……ごぶぁ……ぶしっ!!」

 

 病原菌の体内から呪の死棘が、木枝の如く飛び出て死へと(いざな)った。

 病原菌が死ぬと私達を捕らえていた結界が消えていく。

 

「時間にして3分か……」

 

「奴の戯言に付き合いすぎだ、マスター。 次はもっと早く、な」

 

「ああ、わかったよ」

 

「そう言えば「我々」とか言ってたね、彼。 あんなのが一杯いるの? 迷惑だなぁどっかの女神を名乗るゴミみたい。 マスター達みたいなマトモな転生者居ないの?」

 

「そう言うモノさ……人というのは。 エルがいた時代よりも便利になった分……いや、それは違うか……だけどどこかに必ず弱きを助け悪しきモノを討つ転生者はいるはずだ」

 

 

 ★

 

 

 地球ではない何処か別次元の世界。

 

「消エロォオオオオオオオッ!! 聖剣使ィイイイイイイッ!!!」

 

 天を轟かす程の化け物が一人の男へ、巨大な拳を向け放った。

 男は向かってくる拳に慌てることなく、手に持つ剣を掲げる。

 

「聖剣よ……我が同胞達を喚べ」

 

 男の言葉に聖剣は光輝く事で応え、男の後ろに彼の同胞達が召喚される。

 男の同胞達は皆、白く聖なる力を宿した鎧を身に纏い、男と同じ聖なる剣を手に持った女騎士達が(たたず)んでいた。

 

「皆! この世界を守るため、力を貸しておくれ……」

 

「はい! それでこそ我が王」

 

「お任せください。 我が聖剣の耀きは王の為に!」

 

「王の威光は世界を照らす光」

 

「その世界を曇らす闇は我らが討ち払います」

 

「宝具開張!」

 

「「「世界を照らす我が王に捧げし聖光(ナイト・オブ・ラウンズ)」」」

 

「オオオオオオオオノォオオオレェエエエエ! 聖天ノ騎士ィイイイイイイ」

 

 彼の、男の同胞達が放った聖剣の耀きは化け物の心臓を貫き、その巨体を光へと変えた。

 

(ふぅー今回もなんとかなった……しかし、なんでこんなにも外道に堕ちる転生者多いんだ? どっか真っ当な転生者は居ないのかね……はぁ)

 

 ため息つく男を余所に、彼の同胞は王の勝利を称える。

 自分達の功績であるにも拘わらず、彼らは流石は我が王だの王の威光は留まることを知らないなど、男が彼らを称えても誰一人として賛同しないのだ。

 ただただ王に尽くすだけだった、、、愛ゆえに。

 

(にしても俺の転生特典が曲者すぎる……聖剣を媒介に騎士系サーヴァントを召喚って、、、しかも何故か知らないけど女体化してるし……まぁ、それはいいけど自衛力0はいただけない……ほんと、どうすればいいのか)

 

 男の苦悩はまだまだ続く……が、同性にも好かれてる同系統の特典を持つ女転生者よりマシな方だと彼は知らない。

 

 

 ☆

 

 

 なんか急に同情したくなったけど、別にどうでも良くなった。

 なんかこう……同じ悩みだけどなんか違うというか、そんな感じだ。

 さて、病原菌一匹消してから数時間、なのはとフェイト嬢が戦い始めた。

 当然、側には私の仲間と、フェイト側の転生者がいる。

 勿論、私に危害が与えられないよう小太郎の捕縛術と、真の英霊である源頼光とクーフーリンの監視付きだ。

 

「過剰戦力乙」

 

「黙りなさい、虫が……誰が娘に話しかけていいと言いました?」

 

「あと見るな、嗅ぐな、認識するな」

 

「無理難題過ぎて笑えない……」

 

「囀ずらないでください。 主殿は情が深いので貴女の処理に戸惑いが生まれます」

 

「ちょ、ちょっと白岩さん!! 助けて! 貴女の保護者が過保護過ぎて私死んじゃう!!」

 

「少し黙っておれ、総督はお疲れなのだ。 あと少しでも生き延びたいなら、その二人の言うことを切実に守った方が良いぞ。 わしですら二人の意見を覆すのは難しいのでな。 ワハハハハ!」

 

「そんな……東方不敗ですら難しいと言わせるなんて、流石は平安魔境武者と超戦闘民族……オワタ」

 

「本当に始末しないの?」

 

 絶望に打ちひしがれてる転生者を一瞥したエルが私に言う。

 始末、処分、、、しても良いが、彼女の立ち位置が本当にわからない。

 私達のように今の生を謳歌してるのか、それとも終焉の鐘とやらの同じ考えで動いてるのか、はたまた別の思惑か……。

 

「正直に答えたら助けてやるが、もし一つでも嘘が混じってるなら敵と見なす」

 

「……マスター」

 

「これは戯言に付き合ってる訳じゃないよ」

 

「…………そうか。 敵を見定める行為ならオレに文句はない」

 

 私が言いたいことを一言で理解するクーフーリン。

 何故か母さんが不服そうだけど、たぶんクーフーリンが転生者を見逃したことだろう。

 

「でも、そろそろか。 質問はこれが終わった後だな」

 

 なのは達の戦闘は佳境を迎え、ジュエルシードが鼓動を始める。

 ジュエルシード程の魔力の鼓動は、戦ってるなのは達も気付き、戦ってる場合じゃないと感じたのかジュエルシードを封印する体勢に入る。

 動き、魔力コントロールの全てが同じで物語通り二つの光の帯がジュエルシードへ向かうが、、、

 

「あ、あれ!?」

 

 フェイト側の転生者が叫ぶ。

 その方向には、封印の魔力が込められた光の帯が10個。

 明らかにジュエルシードを暴走させ次元崩壊させる気だ。

 私の魔力感知内にいる遵守派も慌てて動こうとするが、時すでに遅しといった所だ。

 だが……

 

「安心しろ。 私が何とかする」

 

 12の魔力で抑え込められたジュエルシードは、数秒も待たずに次元震を起こし始めるが、すでにジュエルシードの魔力よりも高い私がジュエルシードの魔力放出を包み込み、世界から隔離する。

 

「シングちゃん!」

 

「ッ!!」

 

「全魔術回路起動。 リンカーコア最大稼働……ジュエルシードの魔力掌握、収束、収束、収束、収束、収束、収束、収束、収束、収束」

 

 暴力的で強大な魔力が私のリンカーコアと魔術回路を通して、私の中の聖杯へと注がれる。

 私の魔力は満ち満ちてる状態だけれど、何故か魔力を入れる場所がある。

 

「うそ……なに、これ……魔力チート所じゃないわよ」

 

「ば、化け物……」

 

「こんなの、人間が取り込める量を越えてる」

 

「リーダー! 既に奴の魔力量は計測不可能!!」

 

「バカな!! 一つの次元世界に満ちてる魔力を計れる程の測定機だぞ……それもかなり魔力が豊富な世界の!!」

 

「今のうちに倒した方が……」

 

「させるとお思いですか? 羽虫」

 

「な、過保護者(モンスターペアレント)!?」

 

 私が事態の収束を図ってる頃に漸く現れた遵守派は、母さん達に包囲される。

 まぁ、それも当然だ。

 今の私はこの上なく無防備だ。

 だからこそ、護衛役を全員喚んでるのだ。

 

「もっとも……今此処にいる病原菌共は再起不能にさせるがなっ!!!」

 

 未だにジュエルシードに魔力を注いでる10の魔力帯すらも掌握し、回収速度を上げに上げ、魔力切れを起こした者のリンカーコアに魔力を一気に送って即座に回収。

 そうすることで、魔力が空っぽになった転生者の魔力は飽和状態となり破裂する。

 一人、二人、三人以下省略。

 

「「「「グギャァアアアアアアアアアアアァァァ………………」」」」

 

 

 ★

 

 

 夕方と夜の狭間。

 昔では黄昏時と呼ばれ、私達、先祖が活発になる時刻。

 バイオリンのお稽古の準備をしてると、町の方で光が見えた。

 私の直感が囁く、シングちゃんが活躍してる事を……。

 その場を激しく見たいのに、此処に居ればさらに凄いものが見られると直感が告げる。

 いや、これはもう啓示だ。

 神の啓示? いや、違う……これはもっと別の遥か空の彼方。

 星々が煌めく宇宙を駆ける一つの星が、見逃すなと。

 私達の女王が……

 

「あ……」

 

 現れた。

 

 その御姿は、白く美しくそれでいて畏れを抱く、月に住まう偉大な太陽。

 

「あれが、あの姿が総督の本来の御姿」

 

 

 ★

 

 

「おおっ! 総督!! やはり貴女は総督だ!! わしが前々世より御守する事が出来なかった!!」

 

「……シング・ラブ」

 

 彼の姿を知る二人は再び目にするその偉容に震えた。

 それは歓び、それは畏れ……。

 当然、前者は座覇で後者がステラだ。

 だが、二人が感じたソレは別の感情が覆った。

 ソレは愛だ。

 ステラは付き合って短いが、シングから注がれた情を感じてた。

 その情は前世で注がれる事のなかった母の愛。

 

 勿論、座覇に向けられたのは別の情だ。

 だが、それもまた愛であることに変わりなく、座覇は高らかに世界に聞かせるように叫ぶ。

 総督の復活を、いまだ会うことが出来てない古き同胞達が聞こえるように、我が王は、此処に健在であると……。

 

 そして知識のみ知ってるフェイト側の転生者、観測していた終焉の鐘の者達は恐怖した。

 当然だ。

 彼女達は彼女に情を向けられてないからだ。

 理解できない存在に対して、彼女達が取った行動は身に包む冷たい恐怖に耐える事だ。

 

 何も知らないなのは達もまたその強大な魔力に震える。

 凡そひと一人が持つ魔力量じゃないことに、得たいの知れないナニかに……。

 

 シングの姿を見た者を余所に巨大なシング・ラブは消え、世界を揺るがす次元震は収まり、次元崩壊という驚異はなくなった……が、理解不能のソレを観測したモノは荒れていた。

 

「なんなの!! なんなのアレは!! あんなのが居たんじゃ私の、私のアリシアは……ああ、アリシア、私のたった一人の娘……」

 

 世界は一つの物語を加速させ、一つの物語は終局へ向かう。




力を望んで刹那的思想で破滅思考な転生者さん達のご登場。
居るよね、こういう人って


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第五話 東・西・南・北・中央! 不敗!! スーパーアジア

に相応しいガンダム!!


 ジュエルシードによる次元震をなんとか防いだ日から数日が経った。

 あの日から5日程、魔力持ちのなのは達から怯えた目で見られたが、私の身内、座覇、ステラはいつも通りだったけど、すずかがクトゥルフに出てきそうな狂信者みたいな感じになってた。

 あと夜中に暗殺者が襲ってくるようになったが、元々私の身辺警護は完璧なのでその心配はしてない。

 というか、身辺警護についてるのが百の貌を持つハサン、忍の小太郎と段蔵、母さん、クーフーリン、常に私のリボンになってるエル、彼らを退けるなんて並以下の暗殺者には不可能。

 ただ一人だけ初代山の翁の転生特典持ちが居て、ヤバかったけど真の英霊となり、妹分である私を何があろうと護ると誓ったフェゴ姉さんが、処理した。

 

「あの時の姉さん……すっげー恐かったなぁ」

 

 

 

『お前、かなりムカツクな。 消えろ』

 

 

 

 姉さんの初めてみる優しさのない冷たい目、冷たい声は背筋を震わせる程だった。

 あと放課後ではすずかが無双してた。

 私にちょっかい出そうとしたら、即座に私との間に入って、暗殺者の腕を握り潰したり、凶器である宝具を砕いたりして意味がわからなかった。

 宝具を砕かれた所持者も「ハァ(゜д゜)?」的な顔をしていたからこそ、その理解不能な状況がどういう空気だったかわかってもらえるだろう。

 その時のすずかの言葉がこちら……

 

 

 

『死ね』

 

 

 

 高揚感のないその言葉にアリサのパンツは濡れた。

 そしてすずかのお姉さんである忍さんから、すずかが絵を描くのを始めたらしく、部屋にでかでかと巨大な私が町を見下ろす絵らしいが、それがなんか冒涜的な精神的なナニかが来るモノがあるらしい。

 あ、勿論、すずかに殺人はさせてない。

 そこは絶対だ。

 

 まぁ、過ぎたことはどうでもいい。

 重要なのは今と未来だ。

 と、そんなこんなで今はなのはも私を見て取り乱すことはない、素晴らしい。

 

 さて、私の身辺報告はこのくらいにして、件のジュエルシード事件だ。

 公園の人形の木を沈静化して、ジュエルシードを封印。

 そして争いに発展したが、時空管理局を名乗る人が間に入って争いを阻止した。

 管理局の名を聞いて、フェイトは逃げたがフェイト側の転生者は大人しく管理局に捕縛され、なのはは管理局に現地人の協力者としてジュエルシード事件の解決を改めた。

 流れ的に物語通りではあるが、いつそれが崩壊するかわからない。

 ステラも座覇も何度か遵守派や終焉の鐘とやらと戦闘してるが、止めを刺す前に逃げられるとのこと。

 敵さんも段々と強くなってきてるという事なんだろう、頭が痛いことだ。

 勿論、真の英霊状態の座覇やエル達だと確殺だ。

 

 そして私はというと、時空管理局に入って原作のアースラ組に混じってやって来た転生者と向き合ってる。

 

「とりあえずは仕事させてもらうよ。 こちらとの敵対意思と名前は?」

 

「あったら逃げてる。 名前はシングだ」

 

「ありません。 ステラ・ホワイトラブです」

 

「現地人……でいいのかな? それともどっかの次元世界の人?」

 

「高町なのはと同じ現地人だよ。 ステラもね」

 

「ふむふむ、それじゃあーえーっと、気を悪くしちゃうかもしれないけど、上手い言い方を思い付かない僕を許してほしい……僕を囲ってるこの人達、なに?」

 

過保護者(モンスターペアレント)。 私が召喚した」

 

「召喚? …………英霊? この東方先生も?」

 

「ああ」

 

「OK、ここからはプライベートと行こう。 だから黙秘権もあるから、答えたくなかったら答えなくていいよ。 キミは転生者?」

 

「イエス」

 

「ステラさんも?」

 

「う、うん」

 

「あーこれは言いたくないなら本当に言わなくていいし、先に僕が答えろって言うなら言うけど、、、転生特典はなに?」

 

「ステラは記憶と前世で使ってた武器だ。 お前達風で言うならブラック★ロックシューター――THE GAME――の世界からこの世界に生まれ落ちた存在だな」

 

「ステラ本人!? うっそ! ほんと!?」

 

「え、う、うん」

 

「で、私もそうなんだが、自衛力0で英霊召喚くらいしか出来ん」

 

 と、時空管理局の転生者に嘘を言っておく。

 嘘は勿論、私が総督ということと、英霊召喚くらいしか出来ないということだ。

 私の以前言った通り、私の召喚特典の神霊と王族関係、冠位英霊のロックは解除されてる。

 喚ぼうと思えば喚べるが、抑えれる気がしないからしない。

 というかTHE GAMEって、今のとこ知ってる人ばかりだけど、そんなに有名だったか? 30人中2人知ってれば多い方なのに……。

 

「THE GAMEのステラさんの色違いと言えば、総督さんかぁ……いや、自衛力0はきついですね」

 

「ああ、だから護衛が必要なんだ」

 

「それがこの過保護者……と。 ああ、そうだ僕の特典を教えとくね。 僕の特典はスーパーロボット大戦っていうゲームに出てくる機体を7機ほど高町なのはさんが持ってるデバイスにした奴とそれを使えるだけの魔力。 もっとも一機分の魔力量だから、高町なのはさんクラスだけどね」

 

「なのはクラスというのも破格だと思うぞ」

 

「いやいや、貴女ほどじゃないよ」

 

 スーパーロボット大戦に出てくる機体なら、無限エネルギー持ちの機体はどうなるのか。

 私も魔力チートだが、奴も奴で魔力チートと言える。

 んで、7機の名前は言わないのか……まぁ、自分の手の内は見せないよね。

 

「んで、終焉の鐘って組織知らない?」

 

「存在自体なら知ってる」

 

「所属してたり」

 

「ない」

 

「じゃあ、聖天の騎士は?」

 

「………………名前からすると正義の味方っぽいが?」

 

「あ、これは知らないのか。 だよね、聖天の騎士は終焉の鐘より小規模だし」

 

 そう言って時空管理局の転生者は説明を始める。

 どうでも良いけど、早く名乗れ。

 

 

 聖天の騎士団。

 それは複数のの聖剣使い達が集まった集団。

 弱きを助け、悪しき存在を討つ正義の味方。

 構成員は一人を除いて女聖騎士。

 ただ一人の男聖騎士を王と仰ぎ、慕い、というか好かれてハーレム状態で非常に羨ましいとは、目の前の時空管理局の転生者と彼らを知ってる転生者の言らしい。

 だが私にはどことなくわかってしまう。

 彼はきっと苦労してる。

 慕われてる女性に愛され過ぎて愛が恐い状態になってると……だが異性に好かれるとは何事か! 私に同情されたくば異性でなく同性に好かれて掘られろ!! と、暗黒面に陥りそうになったが、ステラを抱き締めて思い止まる。

 

「って人が説明してるのに百合展開しないで下さいよ」

 

「これは親子のスキンシップだ。 前世では出来なかったからな」

 

「ステラさんを僕にください。 絶対に幸せにしてみます。 あ、僕の収入見ます? 具体的にどう幸せにするか計画もあるので聞い……」

 

 嬉々として通帳を見せようとしてくる時空管理局の転生者の首筋に、私のリボンが首をかっ切れるように待機する。

 

「ああ、すまない。 ちょっとうまく聞き取れなかった。 私のステラを……なんだったか……幸せ? 誰が? お前がか? ああ、今貴様の首筋を薄く切って血を流したのは、世界最古に神々が造り出した兵器だから、慎重に答えろよ……雑種(ざぁっしゅ)

 

「あ、いえ! なんでも、そうなんでもありませんとも……」

 

「そうか……いや、しかしまぁ……あまり口を滑らすモノじゃないぞ? どれが私の逆鱗かわからないうちは、な」

 

「はひ!」

 

 まったく、いまだ名前すら名乗らない馬の骨にステラをやるくらいなら、私はステラを一生嫁に出さん。

 

『聞こえますか、今、ステラちゃんを一生養おうとしてるシングちゃんの脳内に語りかけてます』

 

 こ、こいつ、直接脳内に……って、どうしたのすずか?

 

『ステラちゃんとシングちゃんは私の嫁。 誰にも渡さないよ』

 

 ………………………………喜んでいいのか嘆けばいいのか、とりあえずステラに最強のセ○ムがついた。

 

「あ、ならシングさんどう……うあひぃ!? 生言ってすいませんしぶひあ!!」

 

 何か寝言をほざいた目の前の転生者は、たぶんすずかの念話に精神をボロボロにされ、そして過保護者に殺気を飛ばされというか頭がもげる程の威力の裏拳をぶちこまれた。

 

 数時間後。

 

「ごほんっ! えー、なんだっけ?」

 

「………………とりあえずお前の好みの乳は?」

 

「貧乳あるいはまな板、断崖絶壁だね。 一般的に巨乳と呼ばれる部類は奇乳ぽくて吐き気がするし、普通の平均的なモノですら僕の目には気持ち悪く見える。 現に僕の目の保養はキミとステラさんくらいなものだよぷぺ」

 

 気持ち悪いことを抜かした時空管理局の転生者を段蔵が殴って気絶させる。

 そのあとはゴミを見るかのような目で、ゴミを見てるけどもしかして一目惚れ?

 

「気持ち悪いことを言わないでください、旦那さま。 ただ段蔵の胸を気持ち悪いと言われたのでムッときただけです」

 

 まぁ、彼の認識がそうなら母さんだとSAN値直葬レベルだろうね。

 通りで母さんを一切見ないわけだ。

 

「えっと、じゃあそろそろ名前教えて」

 

「あ、はい。 時空管理局最年少記録を上塗りしてしまった。 そう! この僕こそは!! ダララララララララ……」

 

「エル。 おい、そこまでにしとけよ、転生者」

 

 あまりにもふざけてる名乗りに、セルフでドラムロールしてる転生者の額にエルが槍を向ける。

 

「す、すみません。 ……あ、名前ですね。 はい、僕はギャルタス・ノーメンです。 ふざけてすみません」

 

 時々暴走する彼はほんとなんなんだろう? 間にネタを挟まないと死んじゃう病にでも患ってるのかな?

 

「最後の確認だが、お前は物語遵守派か? それともある程度介入して行こう派か? 崩壊派か?」

 

「もちろん介入して行こう派ですよ。 そもそも転生者が沢山居ることがわかったからこそ、時空管理局に入隊してこのアースラ所属を狙ったんです。 原作乖離するとミッドチルダの未来が危ないので……いやもう切実にです。 僕の他にミッドやベルカ実地区に転生した人達が居て、ある人は転生特典で犯罪に走り、ある人は原作を間近で観たいとかなんとかで地球観光行こうとするし、他にも原作で出た場所や人達に軽く顔見知りになったり、原作に僕みたいなの居ないから排除~とか、もう奴らの好きにさせてると、世界がマッハで破滅ですよ。 それが地球にも居るんでしょ? もしなのはちゃんが時空管理局に入らなかったらジェイル・スカリエッティ事件とか誰が解決するのかわからないし、下手したら転生者に育てられた聖王陛下にアボンですよ?」

 

「ノーメンの不安、確かにあり得ない話じゃない。 ああ、世界の危機についてよくわかった」

 

 心当たりが多すぎて、共感しかないわ。

 

「あ、その反応だとやっぱり何かありました? 例えばこの間のジュエルシードの暴発的な」

 

「巨木の根っこの被害が物語より拡大。 暴発の時は崩壊派の介入で一気に次元崩壊レベルの危険を晒したが、私がジュエルシードの魔力を掌握して吸収した」

 

「ロストロギアの魔力を吸収!? 化け物ですか?」

 

「自覚はあるが、自重する気はない」

 

「あ、しなくていいです。 むしろされると一瞬で次元崩壊されそうだし…………」

 

 まぁ、今も勝手に魔力の成長が止まらなさすぎて、もうなにもしてないのに次元震起こせそう。

 

「それで私たちの次の行動なんだが……」

 

「僕はなのはちゃんとフェイトちゃんの一騎討ちを警戒するよ。 キミはフェイトちゃん側の転生者をなんとかしてくれる?」

 

「勿論、そのつもりさ。 そうだな、修司にやらせるか」

 

「シュウジ? 東方先生?」

 

「ああ、彼は私の特典と彼自身の転生特典で擬似サーヴァントになってるんだ。 修司の本来の姿は私と同年代だ」

 

「転生者だったの!?」

 

 

 

 ★

 

 

 と、やり取りを終えて、なのはは時空管理局という組織と共にジュエルシードの回収に乗り出した。

 度々フェイト嬢と衝突する事があり、その時の転生者の対応はわしを補佐にステラが対応した。

 ステラも今の自分がどう動けるか、前世との違いと誤差を修正していって縦横無尽に戦場を駆けていった。

 本当ならば総督同様にわしが総督と共に御守したいのだが、戦える力があるならと総督はステラに戦闘経験を積ませると、ステラ本人も総督の自衛力がないのなら自分も総督を守りたいと言ったのでやらせてる。

 うむ、これが親子愛なのだろう。

 今世では親子ではないが、前世では間違いなくステラと総督は親子。

 わしも人間の営みを知って、愛を学んだからわかる。

 総督はステラを子として愛し、ステラは総督を親として愛してる。

 

 く、やはり愛は素晴らしい……この世の何者にも優る力だ。

 ふっふふふ、わしにも総督への、、、そして総督の娘で在らせられるステラへの愛が滾り、溢れるわ。

 

「今のわしなら可能やもしれん。 我が宝具が一つ、マスターガンダムを構成するDG細胞の変質。 我が愛にて! 今一度生まれ変わるが良い!! カァアアアアアーーーーーッ!!!」

 

 マスターガンダムを呼出し、わしの溢れんばかりの愛がマスターガンダムを隈無く浸透し、細胞を活性化と共に変質させる。

 灰色の細胞が赤となり、さらに変容して青へ、またさらに変化して水色、そこからさらに進化してまっさらな白い細胞へとなって、黒かったマスターガンダムも白いマスターガンダムと進化した。

 所々、変化してるが一番の変化は色だ。

 

「名はそう……東西南北中央不敗、スーパー・シュウジのガンダム……全方位(ピンイン)マスターガンダム!!」

 

 さぁ、来るならかかってこい! 総督に仇なす愚か者共め!!

 

 

 

 ★

 

 

 地球ではない何処か別次元の世界の一つ。

 闇に包まれた世界にある城の円卓の部屋で、黒いローブを着た転生者――終焉の鐘――の幹部が顔を付き合わせていた。

 

「あの目にするのもおぞましい転生者の処分はまだなのか?」

 

「どうも~アレを守護ってる奴らが~つっよいみたいよ~」

 

「情けない。 自分の能力不足をそのような言い訳で、失敗を覆い隠そうとは」

 

「そういう『剣帝』くんも、聖天の騎士に煮え湯を飲まされてんじゃん? ウシシッ」

 

「あれは俺の実力ではない。 奴らが腑甲斐無いだけだ」

 

「聖天の騎士もそうだが、地球のアレどうするんですか? 過去に遡って、アレが生まれる前に親を殺そうとしたら、邪魔されて実動班は帰ってこないし、刺客を送っても異様に強い月村すずかに邪魔され、護衛のエルキドゥ、クーフーリン挙げ句に東方不敗達に亡き者にされる。 家を爆撃しようとしてもいつの間にか墜落させられるし、ボクが造った対神、対魔、対人専用暗殺機人を送り込んでも、異様に強い月村すずかに破壊されます。 それがこの映像……」

 

 

 

 夜、寝静まってるシング月村宅。

 

 

 

「よし、待ていろいろ待て」

 

「家の表札がシング? つか、取り消し線されて月村宅ってなんだ?」

 

「質問は後で受け付けるよ。 もっとも受け付けるだけで、答えれるなんて思わないでね」

 

 

 その家に侵入する3つの人影。

 自身に取り付けられた神、魔、人に対して特攻効果が付く宝具の数々。

 それは手にだけでは収まらず、肩、足、腹、背とそれぞれに対する兵器も搭載されてる。

 負けるはずもないただの作業だと思い、彼らは奥へまた奥へと進んでいき、やがて一つの部屋にたどり着いた。

 扉の前に護衛は居ない。

 居るとしても猫達がこちらを見てる(・・・・・・・)だけ。

 ソッとドアノブを回して扉を開けた瞬間、暗闇に浮かぶ二つのアカが彼らを歓迎した(・・・・)

 

『………………』

 

 アカいナニか。

 暗視スコープを掛けてるのにアカいナニかしか見えない暗闇。

 アレは目だと後ろの対神特化が言う。

 アレが目? と対人、対魔が頭を傾げる。

 もし仮にアレが目ならば何故暗闇で猫のように光る? あんな赤々とした目は見たことないと彼らは判断するが、アカいナニかは目を細めた。

 ニタリと嘲笑うかのように、、、

 そこからの映像はない。

 そこからの記録はない。

 そこからの思いは、、、もうない。

 

 

 

「このあと、あのアカい目が片方だけドアップで映るけど見る?」

 

『『『あ、遠慮しときます』』』

 

「正しい判断で結構。 で、何か言うことは? 答えられないけど聞くよ」

 

 このあと、月村すずかの異常性を見た終焉の鐘は、盛大にツッコミをいれた。

 

 

 ★

 

 

「始めよう、最初で最後の本気の勝負!!」

 

 なのはちゃんがフェイトちゃんに向かって言う。

 無印で二人が戦う最後のシーン。

 

 え? 海でのジュエルシードとその戦闘? 終焉の鐘とやらが回収してたのを白岩さんグループが襲撃して回収してました。

 そのお陰でなのはちゃんが持つジュエルシードは原作を超えてる。

 まぁ、問題なかったと言えば問題はなかったよ。 プレシアさんのお仕置きが原作より酷くなったけど……。 そんで私とアルフは無能&飼い主の親に噛みついた事で没シュートされた。

 

 そして私は擬似的に霊体化して、アルフに着いてったけど白岩さんとこの小太郎くんに見つかり拘束。

 拘束してる鎖は勿論、神特攻のエルキドゥで転生特典でBLEACHの死神の能力を持つ私にバリバリ効いた。 あと白岩さんの家に厄介になってるって理由でメガッサ恐いすずかちゃんに睨まれて、マジもんで恐い。

 キャラ崩壊ってレベルじゃないよ。

 

「さぁ! 我らもやり合おうか!!」

 

 そして私に向かって何かおかしなことを言うチートファイター。

 

「え、何を? 私って白岩さんと敵対しないよ? フェイトちゃん側だし、原作通り行くならフェイトちゃんと一緒にそっちに着くし……」

 

「何を言っておるのだ? 拳と拳での語り合いの方が嘘偽りなく進めれるであろう?」

 

「いやいやいや、此方から話しかけようってのに、殴り合いとか非効率的だと思うんだけど!?」

 

 いったい何を言ってるんだはこっちの台詞だし!!

 

「んー、よくわからんがとりあえず拳との語り合いをしようではないか」

 

 いかん、まともだと思ってた東方不敗が、想像絶する程のヘッポコさだ。

 拳との語り合いは別に良いけど、東方不敗とか源頼光とかは回避しなきゃ!!

 

「待った! わかった! わかったから、ちょっと待って! 私、思うに私とやり合うのに相応しいのは黒、えーっとステラ、さんだっけ? す、ステラさんだと思うの!!」

 

 私の主張に首を傾げる東方不敗。 ヤバイ、伝わってない!!

 

「ほら! 考えてみて!! 私と最初に戦ったのはステラさんでしょ? そして2回目もステラさん。 なら3回目のこれだってステラさんが相手するのは当然の事だと……」

 

「何を言うかと思えば、そのような事……。 よいか? わしは東方不敗マスター・アジアである前にザハよ! ザハとしての使命は総督を今度こそ危険因子を排除すること。 あの頃は敵だった故、拳を交えたが今世の総督はステラを認知した。 つまりは! 総督の御子もまたわしが護るに相応しき御方よ」

 

 あ、ダメだこれ……もう覆すこと出来ないや。

 そ、そうだ!!

 

「な、ならハンデ、ハンデ!! 東方不敗がガンダムに搭乗してる時は枷を付けてるようなモノだって聞いた!!」

 

「ほう、よく知ってるな。 なぁらば!! お主の望みを叶えてしんぜよぉおおおお!!!」

 

 あ、これ、やらかした雰囲気だ。

 

「ガァンダァアアムッッ!!」

 

 東方不敗がマスタークロスを回しながら飛び上がると、地面を揺るがす白い突起物。

 この時点で普通のマスターガンダムじゃないことがわかる。

 

「見よ! これぞ我が愛によってDG細胞を侵食し、極限まで元のUG細胞に近付けて甦った! 東西南北中央不敗、スーパー・シュウジが乗るに相応しきガンダム!! その名も!!」

 

 白いマスターガンダムがゆるやかに流派・東方不敗のポーズを取り、白いマスターガンダムの背後には雷と共に、、、

 

「ピ ン イ ン マ ス タ ー ガ ン ダ ム!!」

 

 ドドーンと全方位升多亜頑駄無(ピンインマスターガンダム)の文字が出た。

 

 正直、無茶苦茶過ぎるだるぉおお!! と叫びたい。

 叫びたいが、私の身から出た錆……しかし、あそこまで巨大ならワンチャンある!!

 

「少しサイズを抑えるか」

 

 と言い出した東方不敗を何言ってんの? と見てると、なんとピンインマスターガンダムとやらがISチックになった。

 

「え、あの……なんでそんなこと出来るの?」

 

「総督を御守する愛故だ」

 

「ア、ハイ」

 

 もう何も言えなかった。

 

「ふ……もうゴールしてもいいよね? 勝てる気しないというか花を持たせる気ないよね!?」

 

「なぁにを言うか! これは言わば問答よ! さぁ、拳と拳で語り合おうぞ!!」

 

「く、くそがー!! 自分がどれだけチートか知らない癖にっ!!」

 

 自棄っぱちになったのだろう。

 今思えば、私は何故突っ込んだのかと小一時間とまではいかないけど、説教したくなった。

 でも、今も数分前の私も、そして未来の私も同じ場面に合えば必ず時間稼ぎせずに自棄になって突っ込むんだろうなぁと、私は思った。

 

 そしてまぁ、流派・東方不敗であるスーパーになったマスター・アジア相手に良い勝負処かゲームにすらならないこの試合はなのはちゃんがスターライト・ブレイカーでフェイトちゃんの心をへし折るまで、私の体と心はボロボロになった。




それが全方位マスターガンダム!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第六話 ジェイル・スカリエッティ

今回、ドクターJがフライングします。


 なのはがフェイトにスターライト・ブレイカーで敗けを認める。

 それは転生者達に、いや、魔法少女リリカルなのはというアニメを知ってる転生者なら当然の結果だと言える。

 が、結果的にそうであっても過程がそうでないという事態は、アニメを知る転生者達にとって許容しがたいモノだった。

 例えば、なのはがバインドで拘束されなかった。

 例えば、フェイトの切り札たるフォトンランサー・ファランクスシフトをなのはが全弾耐える所か避けた。

 例えば、フェイトがなのはのディバインバスターに余裕で耐えた。

 例えば、フェイトがスターライト・ブレイカーをシールドで耐え凌いだ。

 例えば、単発のスターライト・ブレイカーがなのはが分身する事で、その分身がスタービットの代用品となって連発でスターライト・ブレイカーを撃てるようになったとか。

 例えば、最終的に撒き散らした全魔力をさらに集束させて、スターライト・ブレイカー・オーバーチャージという魔法に発展させたとか。

 例えば、シングによって広域反応消滅型魔法アルカンシェルの小型術式がなのはの手に渡ったとか。

 例えば、ブレイカーやバスターといった使用者の負担を『愛』で0にしたから撃墜フラグがなくなったとか。

 後半に関しては転生者が知るよしもない情報だが、挙げればキリがない程に、この世界はアニメを知る転生者の予想を遥かに上回っていた。

 だが、シング達以外のなのは達に干渉せずに見守ろうとしてた転生者達は手を出したい、干渉したい、シング達を、、、あの邪魔者達を排除したいと欲を駆り立てた。

 

 が、そんなちっぽけな欲を持つ転生者達は、平和な世界でぬくぬくと育ち、チートを持って転生しても覗きしかしなかった転生者達が、歴戦の英霊達に勝てるはずがなかった。

 

「あふ……」

 

「ちょっと退屈~。 キミ達さ、持つだけ持って勝てるわけないだろ? 僕のマスターであるシングでさえ、勝つために訓練してるんだから……あ、そうそうそのシングからの伝言なんだけど、もうこれ以上のイレギュラーは要らないから、大人しくしててね、、、だって」

 

「ぐ……」

 

「キミ達がどんな力を持ってるか知らないけど、使われる前に無力化すればなんてことはない。 自分達を心配してくれる家族の元へお帰り」

 

 エルキドゥとフェゴールはシングの頼みで、次の最終決戦に介入しようと準備してた原作遵守派の所へと(おもむ)き、これを壊滅。

 これを機に、地球にいた原作遵守派は完全にいなくなった。

 

 

 ☆

 

 

 なのはがフェイトを座覇がフェイトに付きまとっていた転生者を倒して、エルキドゥもフェゴ姉さんも戻ってきて私達はアースラで最終決戦前のプレシア・テスタロッサの通信を待つ。

 と、言ってもまだ通信が来ないのでフェイト側の転生者の取り調べを行う。

 

「さぁ! キリキリ吐けぃ!!」

 

「ちょ、待って、まだダメージ抜けてないのっ!」

 

 座覇がまだダメージが残ってだらけてる転生者を無理矢理起こし、転生者は痛い痛いと喚きながらも、椅子に座って私と向き合った。

 

「えーっと、とりあえずはさっきぶり、白岩さん」

 

「私の名は白岩ではない。 シングだ」

 

「あ、はい。 私はキキーテル・ジブラルタ。 キキで良いです」

 

「では、キキよ。 貴様は限りなく私達に近い……そうだな物語とか関係なしにある程度介入またはガッツリと介入する転生者で間違いないな?」

 

「ええ、そうよ。 ちなみにフェイトちゃんを狙った転生者は私以外に居ないわ」

 

「最初っからフェイトと行動してたみたいだが、どこで出会った?」

 

「んー、フェイトちゃんが此処に来る前、私が転生した世界で買い物してたのよねー。 そっから仲良くなってかな」

 

 つまりは、原作前のリニスという使い魔が居なくなった辺りからの知り合いか?

 

「なるほど……で、貴様の転生特典はなんだ? ああ、これは黙ってて問題ない」

 

「………………BLEACHの死神のスキルと斬魄刀一本。 始解はなんとか出来るようになったけど、卍解は無理」

 

 流石に斬魄刀の始解の能力は言わないか。 しかし、BLEACHの死神のスキル、、、か。 成りはそうだったから死神のスキルを貰ったのは本当だろうが、死神だけと思い込まないようにしておこうか。

 

「プレシア側の転生者は?」

 

「協力者として居るんじゃない? あ、庭園には居ないのは確認済み」

 

「プレシアの様子は?」

 

「あー原作通りかな。 フェイトちゃんの虐待もあったし、変化は全然見られなかったかな」

 

 ふむ、プレシアなら私がジュエルシード抑え込んだ時、監視していて私の、、、冒涜的なアレを見て何かしらの変化があると、思ってたんだが……本当にないのか?

 

 

 ☆

 

 

 キキの取り調べを終えて数時間。

 ここまで通信が来ないと、またイレギュラーでも起きたのかと不安だったが、ブリッジから外部からの通信が来たと報告が来た。

 なのは達と一緒にブリッジへと行くと、通信モニターに予想外の人物が居た。

 

「嘘、ジェイル・スカリエッティ……」

 

『おや? ふむ、管理局の制服を着てないのに私の名を知る存在が此処にも一人……これは興味深いがよく見たらフェイト嬢のオトモダチかね? 私の存在を明かしたのかい? プレシア・テスタロッサ』

 

 キキの漏らした声を聞いて、私達に目をやったジェイル・スカリエッティ。

 そして後ろに居るのだろうプレシアに問い掛けるが、、、

 

『そんな事はどうでもいいのよ!! 娘よ、私の娘! フェイト(・・・・)とはまだ繋がらないの!? ジェイル・スカリエッティ!!!』

 

「え?」

 

「なんだって?」

 

 プレシアの言葉にキキとアルフが困惑する。

 当然だ。

 ほぼ物語通りと言われた私ですら困惑してる。

 

『まぁ、落ち着きなよ』

 

『落ち着いてられるわけないでしょ!! フェイトが、私の可愛い娘が!! 得たいの知れない化け物の住処に捕らわれてるのよ!! フェイト、ふぇいと……ああ、だめ、だめよ……私を一人にしないで……』

 

 ……………………ああ、これもしかして……。

 

『いやぁ、すまないね。 今プレシアはおかしくなってね』

 

「母さんに何をしたの!?」

 

『うん? これ、私が何かした流れにされてる? キミの名推理を否定して申し訳ないがね、フェイト嬢。 これは……あー、、、何て言うかそこの白い子のせいなんだ』

 

「ああ、やっぱり?」

 

『ふぇいと……いま、ふぇいとの声が聞こえたわ。 ふぇいと、そこにぁぁあああああああ!! なんで? どうして!? ジェイル!! これはどういうこと!? なんで! 娘の近くにアレがあるの!? だめよ、あんなの存在しちゃダメなのに! ふぇいと、そこから離れて!! 離れなさい! 帰ってきて、帰ってきなさい!! 今すぐよ、いますぐに!! 帰ってきたらいいこいいこするから、ピクニック……そうよ、またピクニックに行きいきま……』

 

『ええい、うるさいよ。 ぷすっとな』

 

 フェイトの声を聞いて此方側を見ようとしたところで、狂気の原因たる私を見て発狂。

 それをジェイルが強力な睡眠剤を投与して、プレシアはがくりと崩れ落ちる。

 これで漸く話を進めることが出来ると思った矢先に……

 

「母さん? かぁああさぁあああん!! お前、貴様、母さんに何をしたァァアア!!」

 

 と、まさかのフェイト発狂。

 とりあえずうるさいので眠らせておく。

 

「やかましいよ。 ドスッとな」

 

 首にガスっと手刀を入れて、フェイトを気絶させるのに成功。

 

『……………………私が言うのもアレだがね。 容赦ないね、キミ』

 

 ジェイルの言葉にうんうんと頷くアースラクルーとなのは達。

 頷いてないのはうちの子達だけだ。

 自覚はあるので問題ない。

 

「そんな事より質問に答えてほしいんだけど」

 

『ん? なんだい? 私もキミについて幾らかの質問があるんだが、此方の質問にも答えてもらえても?』

 

「構わないよ。 では此方からまず一つ。 私が気になってるのは先のプレシア女史の反応だ。 私が知ってる彼女の情報は彼女のクローンであるフェイトは人形レベルの認識で、愛娘であるアリシアは左利きなのに対し右利き、しかも愛娘の命を奪った原因にもなった黄金の魔力を持ち、愛娘には持っていなかった魔力だった事からも嫌悪の対象で、お使いに失敗すれば児童虐待レベルの体罰……とてもフェイトを愛娘として可愛がる人間じゃなかったし、先程まで得た情報では私の知る女史であった……との事だったけど?」

 

『よく知ってるね。 確かにプレシアはフェイト嬢を娘と認識してなかった。 そう、アルフくんとキキくんを追い出し、フェイト嬢を追い詰めてジュエルシードを探すよう言い出した辺りまではね。 では何故変わったのか……それはフェイト嬢が庭園を出て一人っきりになった時の孤独感がある種の恐怖を呼び込んだ。 キミがジュエルシードを抑え込んだ時に見せたあの、アレを思い出したプレシアは誰もいない庭園で助けを求めて、求めて、求めた先が……』

 

「庭園の奥に眠るアリシアちゃん」

 

『正解だ、キキくん。 しかし眠るアリシア嬢では女史の恐怖を打ち消すことは出来なかった。 それよりもアリシア嬢の寝顔と体罰で気絶したフェイト嬢の顔が重なり、さらにキミのあの姿が悪い方向で嵌まった……するとどうなる?』

 

「また自分は置いていかれる。 その恐怖も合わさって母性が生まれ、フェイトさんを人形から娘へ娘から愛娘へ認識したわけね」

 

『それも正解だ、リンディ・ハラオウン提督』

 

「それでなんで広域指名手配中の次元犯罪者がそこに……」

 

『ああ、次の質問は私だよ。 クロノ・ハラオウン執務官。 これはそういう流れだろ?』

 

「そんな流れはない」「一理あるな。 次はジェイルからどうぞ」「シング!?」

 

 一人噛み付くクロノをクーフーリンに頼んで抑えつけ、ジェイルの質問を促す。

 

『キミたちはなんだい? 地球という魔法文明のない世界で、そんな膨大な魔力を持ち魔力を使った術を行使する。 魔導師のそれとは技術体系が違いすぎるし、何よりも我々や時空管理局の事を知りすぎてる。 それに私の顔を見ただけで私の名を看破したキキくん……キミもその白い子の同類と見た』

 

 ふむ、私達のことか。 これは難しい質問だ。 答えるのは別に難しくないが、これは私個人で話してもいいモノじゃない。

 が、此処は話しておこう。 同じような状況があって誤魔化せる程世の中単純じゃないしね。

 

「私達は転生者だ。 上位世界で一度死に、そして神と呼ばれる頂上の存在により、個人が好きな下位世界での能力をその世界で生き残れるように保証として、あと前世の記憶を持ったまま転生した特異体質の存在だ。 まぁ、ある種の例外はいるがな」

 

 ステラとか座覇とか……。

 そんな転生者事情を暴露して、近くのキキやなのは達が驚いていた。

 キキは別の理由として、なのは達からしてみれば一種の死者蘇生のようなものだからなぁ。

 

『なるほどなるほど……だから奴らは……』

 

 奴ら? ふぅん、なんとなくだがジェイル・スカリエッティがあそこにいる理由がわかった。

 管理局で勤めてる転生者あるいは最高評議会側に転生者が現れて、その転生者によって追われる身となったか、だな。

 

 しかし、この状況でどう対処する? ここに通信したということは二人とも自首する形なのは間違いない。 何せここは時空管理局所属のアースラだし。

 駄目元で私に助けを求められても、この艦のメンバーを敵に回したくない。

 

「次はこっちだな!? ジェイル・スカリエッティ! なんで広域指名手配中の次元犯罪者がそこにいる!?」

 

『そりゃあ、勿論時空管理局から襲撃を受けてね。 スポンサーも私を見捨てられて、途方にくれてた所をプレシア女史に拾われたのさ。 ま、女史からしてみれば助けを求めたのが私なんだがね』

 

 スポンサー……確かジェイル・スカリエッティは管理局の最高評議会だっけ? それに見捨てられたって、フリーって事だから貰っちゃってもいいかな?

 

 私はこっそりとアルフを誘って物陰に隠れる。

 さりげなくキキと座覇が私達を隠すようにカバー入って内緒話スタート。

 

(アタシに何か用かい?)

 

(実はジェイル・スカリエッティが求めてるのが私達の保護下かどうか聞いてきて)

 

(はぁ!? なんで?)

 

(まぁ、ここは推測に入るけど、時空管理局に自首したら高い確率でプレシアとスカリエッティは闇に葬られる。 お話しとしてプレシアは死んでもらわないとダメっていうグループがいるし、スカリエッティを追い詰めた管理局員にとって、スカリエッティは早々に逮捕しとかないといけない。 そしてスカリエッティを追い出した連中にとって、スカリエッティ程の頭脳は後々邪魔になるから早々に抹殺したい。 以上の三点からプレシアとスカリエッティには生きてもらわないとダメだし、死なれると私達に降りかかる災厄がどれほど膨れるかわからないから)

 

(んー、わかったけどどうするんだい? 見ての通りアタシが向こうに行く隙はないし、アンタに知らせる術もないよ)

 

(そこはそれ。 とりあえずアルフは向こうに行って聞いてくれるだけでいい。 その後は私がなんとかする)

 

(……………………)

 

(フェイトの今後の幸せにも繋がるから)

 

(本当だね? 嘘だったら承知しないよ?)

 

(嘘じゃないから大丈夫)

 

 と、アルフをなんとか説得していざ送り出そうとした時に、問題が発生した。

 それはアースラの中で転移魔法使おうものなら、すぐさま気付かれるということ。

 例え海鳴市に転移しようと庭園に行こうにも、アースラの責任者であるリンディ・ハラオウン提督の許可がいる。

 あ、やばい、本格的に困った。

 

『お困りですか?』

 

 そうなんだよねー。 いや、規格外とは言えすずかにだって出来ないことあるだろうし、私の困り事はすずかじゃどうあっても無理なのは――ー

 

『じゃあ、助けますね♪』

 

 ふぁ!?

 

 突然のすずかの乱入。

 いや、乱入とは言えない乱入は、すずかという規格外を知ってる私ですら理解できない惨状が起きた。

 まず庭園が浮いてる空間の遥か向こうから隕石みたいなのが降ってきて、庭園に爆着した隕石はジェイルを始めとした生命体を取込み、庭園で研究していたであろうプレシア女史の研究データを吸収、その後隕石は浮上してまた彼方へと去っていった。

 

 え? は? えっと……はい。

 

 

 

 

 

       




もうすずかを魔改造するだけでなんでも解決できそう。

あ、あとまだ続きます


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第七話 無限夢想アザバール13遊星

 隕石が何もかも持っていく数時間前。

 月村すずかはヴェルバーと呼ばれる外宇宙を飛来してる彗星に侵入。

 愛しのシングから(たまわ)った異星人の因子を以て、ヴェルバーが捕食した文明やヴェルバー自身をネブレイドした。

 当然、勝手に侵入し、我が身を取込み異分子を排除しようと尖兵達を向かわせるも、破壊の尖兵も浸食の尖兵も月村すずかの前ではただの餌でしかなく、ヴェルバーは完全降伏を月村すずかに提唱するも聞き入れられずに全てを失い取り込まれた。

 そもそも月村すずかが、何故外宇宙に来てるかと言うとシングの役に立ちたいからというただそれだけでしかない。

 シングの役に立つモノは、なんでもネブレイドし知識を得る。

 外宇宙の地球より進んだ科学の星に降りて、すずかはシングが頂点に君臨出来る兵器を造る。

 それは外宇宙のさらなる外の宇宙から発せられる波動を動力とした彗星。

 

「ラトテップを土台にヨグとシュブをエンジンへ、アブは通信系統、ヴォイドセル・オートマトンの中をアップグレード。 その他諸々のシステムはめんどくさいのでアザに丸投げて、完成! 捕食遊星ヴェルバー改め、無限夢想アザバール13遊星」

 

 それは13の星達。

 夢想し観測し干渉し侵食し増殖し捕食し進化し否定し剥奪し蹂躙し畏怖し回帰して溺愛する遊星。

 何度も言うようだが、これはシングが困ってる時に応える為のモノ。

 そしてちょうどよく、シングが困ってる電波を受信したすずかは事情もよく知らず、調べず、聞かず、ただただ了承を取るだけ取って動いた。

 その結果がとある時空に漂う庭園に突撃し、干渉と捕食を使って飛び立つ。

 さらに庭園の中に居た生命体は回帰させ、溺れるほどの愛に漬け込んで出来上がったのがこちら。

 

「病に蝕まれて痛む身体が、頭の毛先から足の爪先まで潤いと張り、そして活力に溢れ、偏頭痛も嘘のように消えて思考がクリアに! 今の私ならフェイトを……娘を溺愛(あい)せる」

 

「これが生まれ変りという奴かい? ふむ、異文明の知識やみなぎる力……これはこれは調子に乗ってしまうのも無理はないかな。 まぁ、私には無縁の話かな? シング……彼女が私の新たな神かい?」

 

「言葉には……別に気を付けなくていいかな。 シングちゃんはそういうの気にしなさそうだし、あっでも総督の方が良いのかな? 私も時々そう言ってるし、シングちゃんの仲間さんも総督って言ってるし」

 

「そうなのね。 あ、でも私、総督に酷いこと言ったわ」

 

「それも問題ないかな。 というか最初っから畏怖付きなら早々裏切るなんてないだろうし、下手なことしないよね?」

 

「ええ、勿論よ」

 

「しかしここまで凄いと死者蘇生なんかも簡単に出来そうだけど、可能なのかい?」

 

「それは不可能かな。 いくらシングちゃんでも、、、、なんか出来そう」

 

「それならプレシア女史の……」

 

「いいわジェイル。 今更アリシアとだなんて虫が良すぎるし、今ではフェイトという娘を自覚できて満足だもの」

 

 ジェイルの気遣いにプレシアは、今は満足と今まで抱いていた最愛の娘との再会の野望を捨てる。

 その表情は無理をしてる顔じゃなかった。

 

 

 ☆

 

 

 とまぁ、すずかが何かしらの方法でジェイル達を連れ去ってから三ヶ月。

 その間、庭園で何かしら残ってないか調べたり、目を覚ましたフェイトに母親が庭園ごと隕石に激突して行方不明と告げたら発狂したのでまた眠らせたり、そんな状況下で空気を読まずに此方へ来ようとしてるプレシアとすずかをジェイルと一緒に抑えたり (すずかは無理でした) 、すずかになんとかしろと無茶ぶりしたらダミーのプレシアとジェイルを作って連れてきてくれた。

 そのダミーに自分は記憶喪失で思い出せるのは誰かと電話をしてる最中に大きな衝撃を感じ、目が覚めたら月村家にいたという設定で通すようにと言って管理局に引き渡した。

 この時、フェイトが荒ぶってたが本物を見せた後、また眠らせてフェイトのダミーも作って管理局に丸投げ。

 たぶん、向こうの遵守派が保護するか、正義に酔いしれた転生管理局員が頑張るか、破滅ウェーイ派が処分してくれるでしょう。

 外道なことをしてる? 自覚あるよ。

 

 それよりも問題なのが、この無限夢想アザバール13遊星とやらなんだけど、これのスペックがほんとに頭おかしい。

 

「過去現在未来、前後左右上下全斜線の世界と次元世界の超短時間航行が可能で、シングちゃんが『夢想』する世界は全て『ある』ことが前提というか確定事項で移動できるし『観測』、『干渉』も可能。 さらにはそこの文明を『捕食』か『増殖』させて同じ世界を創って、『進化』も促したりして文明最高期にある程度を『剥奪』して、また文明進化を促して『観測』。 『剥奪』したのは自分のモノにしてシングちゃんを助けるお助けマッシーン♪」

 

「とりあえずアザバールが自律意識ををもって私に反逆する可能性とかは?」

 

「あはは。 それはないよぉ。 もしそうなったら私が 

 

                     ゆ

      る

                         さ

              な

 い

           も

 

                    ん」

 

 狂気的恋心。

 まぁ、それを許容してる私も狂気に走ってるんだろうなぁ。 でも仕方ないと思う。 献身的に私に尽くし私を信じ私を見て私を溺愛させてくれる。

 息苦しく溺れそうな程に……。

 それが何よりも愛おしい。

 それが何よりも可愛らしい。

 それが何よりも……

 

 すずかを抱きしめ、自分のお腹にすずかの顔を(うず)めさせる。

 すずかが息苦しくなろうとも、息できなくなろうとも、、、私のお腹はすずかの鼻血で血塗れになった。

 なんでも私の匂いを嗅ぎすぎて、興奮して溺れかけて妄想から夢へ夢から天獄(てんごく)へと堕ちそうになったとか。

 

「………………夏の私が運動した時、汗だくのまますずかの顔にだいしゅきホールドしたらとんでもないことになりそう」

 

「良い……今年の夏、運動会終わったらお泊まりしよ!」

 

「はいはい、みんなと一緒にねー」

 

 自分で言っといてあれだけど、身の危険を感じた。

 

 と、すずかのことは一旦置いといて、問題はプレシア達の事をどう秘匿するかだ。

 いくらすずかが生み出した遊星が規格外とはいえ、巨大組織に対して個人が隠し通せすには無理がある。

 

「シングちゃん」

 

「なに?」

 

「私のシングちゃんの役に立ちたいという想いが、そこらの組織の手足ごときに遅れをとるなんてありえないんだよ? このアザバールは永遠に認識されないようにするなんて朝飯前なんだから!」

 

「…………ぶっちゃけ出来ないって言ってた死者蘇生も出来る?」

 

「やだなー。 シングちゃんに出来ないことなんてないんだよ?  だってシングちゃんの能力って死者に魔力の身体を与えて顕界させるんでしょ? だったらこのアザバールの『夢想』をシングちゃんの意識に接続して、シングちゃんの能力で召喚する。 ね? 簡単でしょ?」

 

 ………………まぁ、出来たとしても本人がもう吹っ切れたからいいか。

 

「でもさ、なのはのこともあるから、流石にダミーのフェイトに任せっきりにするのも……」

 

「その事なら大丈夫だよ。 ダミー全員死んじゃった」

 

「は?」

 

「殺されたよ。 終焉の鐘っていう調子に乗ってる塵に」

 

 ハッ! いや、腐っても転生者集団か。 想定内ではあるけど、これで時空管理局の特にリンディ・ハラオウン提督殿に言い訳が立つ。 ちゃんとジェイル、プレシア、フェイトを死なせないように保護すると契約させたしね。

 

 しかしなのはとフェイトの友情が育まれてないって、これはこれでやばいような。 大丈夫だよね? あ、そうだ。 リンディ・ハラオウン提督が報告に来る前になのはとフェイトの仲を進展させとこ。

 プレシアとジェイル、フェイトの戸籍をアザバールに通して『夢想』し、地上の電子情報媒体、紙情報媒体に『干渉』して作成。

 その他、必要な手続きをアザバールに丸投げって、あ、やば。

 

「プレシアとジェイルが夫婦として受理された」

 

「良いんじゃないかな?」

 

「そして海鳴市の墓地園にアリシアの墓とアリシアの遺骨が埋葬されてる」

 

「良いんじゃないかな」

 

「プレシアの車が外車……しかも超高級車!? それにともなって二人とも超高額収入者という経歴」

 

「良いことだよ」

 

「住むとこも豪邸……え、は? ちょっと待って、歴史! 歴史も改変されてる!?」

 

「シングちゃん」

 

「これ、やりすぎじゃないか!? いや、流石にやりす」

 

「シングちゃん!」

 

「へ、んっ!!」

 

 すずかの怒ったように私を呼んで、首をすずかの方へ持ってかれる。

 一瞬首がぐぎりってなったけど、まだ生きてるからヘーキヘーキ。

 というかすずかにキスされてる。

 それもディープな感じの。

 すずかの舌が私の舌を蹂躙し、舌の裏をなぞるように這わせ、歯茎を歯をなぞられ、口のなかに貯まった唾液を(すす)られる。

 一通り終わったら、すずかは私に唾液を送り込まれたりした。

 

「ん、ぁ……」

 

「すず、か……」

 

 ようやく口を離してくれたすずか。

 私の口からすずかの舌先から繋がる涎の糸に、ちょっと欲情してしまうがなんとか堪える。

 

「シングちゃんはこの世界の女王であり、女神様なの。 全ての生きとし生ける知的生命体は、シングちゃんにかしずいて、シングちゃんの(めい)(いのち)をも差し出さないといけない。 だからシングちゃんは何も間違ってないし、シングちゃんが間違ってるって言う人は私達が改心させてあげる。 だから安心して?」

 

 すずかの言葉は甘い毒のように、私をいけない方向へ行かせようとする。

 すずかの私の全てを肯定する言葉は、私を優しく包み込む。

 もっともっとと私はすずかに溺れる。

 

 私の理性の最後は、すずかを押し倒し、服を引き裂いてすずかを美味しく頂いた。

 




これにて無印のジュエルシード事件はおしまいです。
また書き上げ期間に入るので気長にお待ちください。
幕間かそのまま闇の書編に入るかまだ悩んでますが、この話が投稿されても思い付かなかったら活動報告にアンケート取ります。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3章 闇の書事件
第一話 紅白と暴走巫女


 ざっざっざっと森の中を走る。

 鬱陶しい草木が私の行く手を阻むが、そんなのを無視して走る。

 後ろから迫ってくる前世の知人を姿丸々似せただけの別人から、私は逃げてた。

 何せどんだけ弾幕で追い払おうと、あいつはノーダメで迫ってくるのだ。

 正直やってられない状況だ。

 

 と、もうすぐ森から抜けるかなっ!

 

 タッと地面を蹴って勢いよく森を抜けると、そこは崖だったってここ本当に日本?

 

 不思議に思いながら能力を発動させようとしたら、私が出てきたとこからもう一人現れた。

 そいつは私を追い掛けてたあいつじゃなく、真っ白な髪、赤いリボンと紅い瞳の……。

 白い女の子は私の身体をお姫様だっこするように抱え、もしかしてあいつの仲間かと抵抗しようとするが時すでに遅く、髪を結ってるリボンが私を拘束した。

 

「れーいーむーさーん!!!」

 

 バサッ! とまた私が出てきた所から一人の少女が現れる。

 あいつ……緑の長髪に蛙と蛇の髪飾り、着ている服は脇を露出させた緑の巫女服。

 東風谷早苗の姿をしたナニカ。

 

「む? 私の霊夢さんが何処の誰か知らないモブに囚われてる」

 

 まずあんたのものになった覚えはないわ。

 だからあんたも私をあいつに差し出そうとするな! 私はあの気持ち悪いのから逃げてたんだからね!!

 

「エル、補佐よろしく」

 

「了解」

 

 何処からか聞こえた声。

 私を拘束してるリボンがさらに伸びた気がして、白い少女の四肢にまとわりつく。

 一瞬大丈夫なのかと白い少女を見るが、白い少女は自信に溢れた顔をしていた。

 

 着地。

 本当に着地したのかわからないほど、衝撃の無さに驚くが白い少女はあいつから私を引き離そうととんでもない速度で走り出した。

 それは妖夢が私の引退祝いで見せてくれた縮地と呼ばれる歩法。

 妖夢は達人技と自慢してたのが印象的だった。

 そんな技を私と変わらない子がやってる。

 

「あんた、凄いわね」

 

「凄いのは私じゃなく、私の部下だ」

 

 部下? そう言えばさっき「エル」と呼んでたわね。

 その言葉に応えるようにリボンが動いた。

 つまりは私や彼女に巻き付いてるリボンが、彼女を剣術の達人の歩法を使用可能にまで押し上げてる。

 

「だが、やはり上からだと逃げずらい」

 

 チラリとあいつが居るだろう上空を見る彼女。

 それにつられて私も上を見ると、目を限界まで開いて鼻息で興奮してる変態。

 全身に寒気と鳥肌が立った。

 

 やばい、あれはやばい。

 

「ちょ、ちょっと不味いんじゃない!? あれ!!」

 

「あー、大丈夫大丈夫。 最悪同類をぶつけるから」

 

 同類? え、あれとおんなじのが居るの?

 

「ステラ! 目標私の上空! タリーホー!!」

 

 彼女がそう言うと、白い少女の側の木から黒い少女があいつに飛び掛かった。

 あいつも白い少女の大声を聞いてなにかがやって来ると警戒してたのか、飛び掛かってきた黒い少女へ弾幕を張って華麗に躱すはずだった。

 

「ウイング展開、ブースト!」

 

 黒い少女の背中に黒い機械の羽が出現し、高速で弾幕を躱してあいつへと肉迫し、右手の黒くて大きいお空の制御棒みたいなのを振ってあいつの顔面にぶちこんだ。

 

 

 ☆

 

 

 夏休み、長野県に観光旅行にいつもの面子で来た私は、夜に変な力を感じて現場へと向かった。

 そしてそこには2色の巫女さんのバトル。

 一人は逃げ、もう一人が追いかけながら光弾を飛ばしていた。

 私はひとまず逃げてる方を保護しようと逃げてる巫女さんを抱えて、エルの補佐で高速移動をして、追い掛けてる方をステラに任せて現場からおよそ一キロ離れ安全を確認して抱えてる巫女さんを降ろした。

 

「とりあえず聞きたいこともあるだろうけど、まずは自己紹介からでも……私はシングだ」

 

「博麗霊夢よ」

 

 博麗霊夢? どっかで聞いたことあるような、まぁ、いいか。

 

「で、追ってた人は友だ」

 

「なわけないでしょ!! 知らないわよ! あんな気持ち悪いの!!」

 

「でも、さっき」

 

「なんでか知らないけど、私を見るなり、名前も教えてないのに霊夢さんとか言って襲われたの!!」

 

 なるほど、私は知らないけどあっちの巫女さんは彼女の容姿が「霊夢」というキャラクターに似ていて、思わず暴走した、と……。

 ようは転生者なのかな?

 

「貴女の姿が好きな人にダブって見えた……」

 

「私の姿も何も、今も昔もこれからも私は博麗霊夢よ」

 

 彼女……博麗霊夢というのがなかなか思い出せないけど、たぶん座覇やステラと同じ存在なのだろう。

 博麗霊夢……なんだったかなぁ、、、なんか姿と名前に見覚えあるんだよなぁ。

 あとあの緑の巫女さんも……。

 

「で、あんたは何者? それに私の弾幕すらノーダメだったあいつにダメージらしいダメージ与えて今も足止めしてる子は?」

 

「その事なんだが、気を悪くしないで聞いてほしい。 私もあの子も、キミもあの緑の巫女さんも同類だ」

 

「なっ! ふっざけんなっての!!」

 

「だから落ち着けと言ってる! 前の生を全うし、神と呼ばれる存在に次の生に記憶を持ち込めるようになった! 言わば特殊な転生を受けた者!! 転生者!! それが私達やあの緑の巫女だ!!」

 

「…………じゃ、じゃあ、あいつは私の知ってるあいつってこと?」

 

 やはり、あの容姿は前世の知合いか。

 まぁ、認めたくはないか。 知合いが変態染みた行動を取ってると……。

 

「それは知らない。 中には好きな人の容姿や能力を望んで転生する者もいる」

 

 私は神に何を願ったか知らないが。

 

「………………あいつが私の前の知合いって証明する方法はないの?」

 

「あるが、それには情報が必要だな。 あの容姿の名前とあれの名前は………………調べるかぁ。 そして能力を知る必要がある」

 

「能力はどっち?」

 

「キミが知ってる方のだ」

 

「……………………あいつの名前は知らないけど、あの身体は東風谷早苗。 守矢神社の現神人で能力は奇跡を起こす程度の能力よ!」

 

 やはりどこか覚えのある名前だ。

 まぁ、いい……今は…………

 

「無限夢想アザバール13遊星に接続」

 

 私の声は言霊となって概念空間という次元空間、虚無空間とは違う観測されることはない空間に漂うアザバールに届き、アザバールの全機能が私と一体になり、なんとも言えない全知全能感が私を酔わせる。

 ジュエルシード事件以来、何度か接続してるがこの感覚は一向に慣れる気がしない。

 まぁ、慣れたら慣れたで私がラスボスになりそうなんだけど。

 

「緑の巫女を『観測』。 名前は二風谷沙苗(にぶたにさなえ)。 彼女の記憶に『干渉』。 生誕より前へ……前世の名前と能力は、東風谷早苗、奇跡を起こす程度の能力……」

 

「っ!」

 

 私が名を連ねるように言うと、博麗が息を飲む音が聞こえる。

 確認の為に出ただけで確定したわけじゃないけど、アザバールを制御しないと端から端までの検索結果を寄越してくるから気が気じゃない。

 と、結果は……

 

「前世の名前は谷川遥(たにがわはるか)。 趣味は東方Projectの百合同人誌? 至言? レイサナもいいけどサナレイもいけるわ……」

 

「早苗じゃないの?」

 

「…………あ、うん、みたいだな」

 

 アザバールとの接続を切る。

 あんまりと言えばあんまりな結果に何も言えない。

 

「そう、なら全力で懲らしめてもいいってわけね」

 

 博麗が力を練りながら言うが、正直に言って博麗が勝てるイメージがわかない。 あの二風谷という人間はすずかと同種。 つまりは『愛』による規格外という事だ。

 ステラでもヤバイ気がする。

 

「きゃふっ!」

 

 ズザザザーッとステラが吹き飛ばされてこちらまでやって来た。

 ステラの身体は大きな傷こそないものの擦り傷だらけで、痛々しいとこも所々ある。

 わかってはいたけど、これはブチ切れそう。

 

「ありがと、もう大丈夫」

 

「へ? いや、あれの処理なら私達がするけど!?」

 

「色々と世話になったけど、これは私の問題だし、何よりこのまま任せきりだと、、、私が私ヲ許セナイ」

 

 ぞわりと寒気がする。

 博麗が此方を振り向き様に着けた赤い鬼の仮面。

 

「霊夢さん霊夢さん霊夢さん霊夢さん霊夢さん霊夢さんレイムさんレイムさんレイムさんレイムさんレイムさんれいむさんれいむさんれいむさんれいむさんれいむさん……あれ? 鬼巫女?」

 

「私ノ大事ナ人ノ姿デ調子ニ乗ルナァァアアアアーーーーッ!! 哀符『怒発天葬(ドハツテンソウ)』」

 

 一撃。

 いや、私の目では見えなかったから、何発入れたかわからないけど、技で言うなら一撃で博麗は二風谷を瀕死まで追い込んだ。

 あれほどの怒りで生きてるということは手心というより、法律を考慮しての事だろう。

 証拠隠滅しなくて済むから助かると言えば助かる。

 しかし、彼女もまたすずかの同種とは思わなかった。

 

 二風谷をぶっ飛ばしてスッキリしたのか、博麗は仮面を消してこちらに振り向く。

 

「はーっスッキリしたわ。 ありがとね! これで未練なくこの地から離れられるわ」

 

「どっか行くのか?」

 

「ええ、海鳴市の八束神社ってとこで巫女をする事になったのよ」

 

 海鳴市……。

 魔力はそんなにないから巻き込まれる事はないと思いたい。

 

「なら運か縁があればまた会えるだろ」

 

「え?」

 

「私達は海鳴市から来たからな」

 

「あ、そうなんだ。 そうね、貴女達と私の縁が本物なら会えるでしょうね。 それまでじゃあね!」

 

「ああ」

 

 博麗と別れ、私はステラを抱えて皆が居るホテルへと帰った。

 勿論、瀕死の二風谷はそのまま。

 『愛』に生きる存在なら、瀕死で死ぬことはないのは確認済みなのだ。

 

 



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第二話 海水浴に行ったら襲われた夏の日

 凶暴な魔力を持った海洋生物が住む無人の次元世界で、私、すずか、ステラ、座覇、フェイト、プレシア、アルフ、キキ、ジェイル、母さん、他サーヴァント達で海水浴。

 目に毒にしかならない母さん達を見ないように、私は白のビキニの水着を着たステラの髪を弄る。

 私と同じスリーサイズであるステラの水着姿は、私にとってかなりドストライクだ。

 

「白もいいけど黒いビキニのシングちゃん最ッ高。 普段黒着てるステラちゃんも反転色の白は殺人級に似合ってるね。 魂が似てるからかな? っ……いけないいけない、これ以上視てたら私の中から愛が迸っちゃう」

 

 と、私の髪をクリクリと弄りながら、私とステラを視姦するすずか。

 私ならともかくステラを視姦して欲しくはないけど、私もすずかの事を好いてるためかあまり強く言えない。

 むしろすずかにならいいかな?とさえ思う。

 ステラもステラで、強く止めてと言えばいいが生来の優しさ故か、それとも私の恋人を信頼してるのか恥ずかしがるだけで、すずかの暴走を許してる。

 一時期感極まったすずかが、ステラに「私の愛人にならない!?」と変な事を言ってたが、それに対してステラは「考える時間をちょうだい」と言った。

 

 いやいやいや、考える余地なんてないでしょ? 愛人ですよ、愛人!! しかも本妻というか本命が私というね。

 

 だがステラはその日の夜、私に相談してきた。

 それは当然の如く、その日のすずかの告白だが……なんとステラはすずかの事が好きだったらしく、でも私とすずかの関係を知ってるから、告白の返事に迷ってると言ってきたのだ。

 正直、マジかと言いたかったが、私のキャラじゃないから「そ、そうか……」と相槌をうった。

 その後、「別にステラがすずかの愛人になっても構わない」とも言った。

 なんせすずかの愛人なら私の愛人という事になるのだ。

 ステラを愛人にしてしまえば、嫁に出すことはない。

 

 ふふふ、愛しの娘に変な害虫はいらんのだ。

 ワンチャン、座覇になら嫁がせてもいい。

 

「おや?」「あら……転移魔法の反応ね」

 

 さて、そんな私達の青春をぶち壊すかの如く現れたのは……。

 

「へぇ、こいつは当たりだな。 それなりに魔力が高いのが沢山いる」

 

「油断するな。 アレらは、いずれも強者だ」

 

 黒い騎士甲冑――とは言うけど服要素が多い――を身に纏った金髪灼眼の男と喋る大型の狼。

 見覚えのある狼に、ステイタス画面にあるリリカルなのはA'sのヴォルケンリッターが勢揃いしてる所を再生して見比べる、、、、、までもなくヴォルケンリッターが一匹、盾の守護獣ザフィーラと一致した。

 

「敵か? 敵だな? 殺るか? 殺るんだろ? 行くか? 行くぞ!」

 

「虫ですね。 羽虫です。 毒虫です。 害虫です。 愛しの娘の害です。 排除、します」

 

 言うが早いか、クーフーリンと母さんが完全武装して二人に突貫していった。

 

「いやね、すぐに暴力に訴えるなんて」

 

「前から思ってたんだけど、シングくんって守られる程弱いのかい?」

 

 プレシアが突っ込んだ二人を酷評し、私の本性というか化け物レベルの魔力を持ってるのを知ってるジェイルが、思ったことを聞いてくる。

 これに対して私は「是」と答える。

 私は未だに自衛レベルの魔法が使えないのだ。

 念話や召喚は余裕だが、それを戦闘に使うと何故か出来ないのだ。

 何度も何度もひたすら練習したし、なのはにコツを聞いたり、ユーノに教えを請うたり、フェイトに見てもらったり、アルフの戦闘訓練とやらに参加したりしたがどれもうまく行かず、終いには私を攻撃したという理由で母さんがアルフにぶちキレた。

 その時はなんというか申し訳なさがあった。

 そして最後の手段として、ジェイルに私の魔力に耐えうるデバイスを作ってもらおうとしたが、ジェイルはこれを拒否。

 無駄に私を信仰してるジェイルが拒否したのは、かなり驚かされたけど理由を聞いて納得した。

 

『シングくんの化け物魔力に耐えられるデバイス? まずその魔力の1割でも良いから耐えられる物質を見つけることから始めなきゃいけないんだけど……あると思うかい? 未だ魔力が増え続けてるシングくん』

 

 まぁ、無理だよね。

 まず私の魔力の成長が安定しない。

 日に日に魔力の増加速度が速くなったり、遅くなったりする。

 さらに困ったことに遅くはなるけど、減少したり停滞することはないのだ。

 常に上昇し続けてる。

 上昇し続けるなら私の全体の魔力の1割は、それこそ秒単位で変わるのだ。

 

 と、それはともかくとして、、、。

 

 私は母さん達が突貫した方向を見る。

 凡人だった私の視力は、溢れてる魔力によって動体視力が勝手に強化されて達人の動きをなんとか見れるようになったのだ。

 

 

 ★

 

 

 突然現れた敵に向かう。

 奴らの牙が、主人に届く前に速く。

 狙いは黒い、、、と行きたいが、どうやら源が行くみたいだから、オレはあの犬っころか。

 

「チッ……やりづれぇが飛び出した手前、獲物を譲る気はねぇ」

 

 別に主人に撫でられる黒いのが羨ましいとかじゃねぇ。

 オレは槍だからな。

 

「お前が俺の相手か」

 

「んなわけあるか。 今から始まるのは殺戮だ。 戦いなんて綺麗なもんじゃねぇ」

 

「何!?」

 

 迅速に的確にただ相手の心臓()を貫く。

 

「舐めるなぁ!!」

 

 が、オレの槍は白く薄い壁一枚で阻まれる。

 主人を信仰する科学者は、ソレをシールドと言う魔法らしいな。

 魔法……オレらからしてみればあんま言葉に出したくねぇ言葉だ。

 なんせ人が言う奇跡を起こす事象のことを魔法と呼ぶんだからな。

 だから、そんな陳腐な技術は魔法って言葉を格落ちさせてるようなもんだ。

 

「それは、こちらの台詞だ。 んなもんで、オレの槍を止めれると思うな……」

 

「な!?」

 

 少し力を込めて押し出せば、奴のシールドを砕く。

 驚く奴を余所に、オレは槍を振り回して刃先で奴を切り裂く。

 少し奴の筋肉質が硬かったが、問題なく奴を怯ませることも出来た。

 

「と、遊びすぎた……このままじゃ主人に何も言えなくなる、、、終わらせるか」

 

「ぐっ!」

 

 右腕の筋肉を盛り上げ、槍を奴に突き放つ。

 例え先程のシールドで防ごうとも、さらに強力な壁を展開しようと容易に貫き、心の臓を砕く。

 また避けようとしても槍に付与された追跡機能で心の臓に食らい付く。

 問題は……

 

「助かった……」

 

 …………奴らの後方で、標的を転移させる奴が居ると回避されるという事だな。

 やはり真名解放しねーと一撃鏖殺にはなんねーか。

 

 獲物を取り逃がしたオレはもう一人の方を見て、大丈夫そうだと判断して主人の下へ帰った。

 

 

 ★

 

 

 娘から少しだけ離れて、あの黒い虫に向かう。

 

「お、俺の相手はあんたか? 楽しめそうだな」

 

 虫が何かほざいてますが、気にせず我が刀で切り裂く。

 

「ってっぶねぇーな!! あにしやがる! ババア!!」

 

「あまり口を開かないで下さいまし……娘が呼吸してるこの世界で虫が飛ばした唾が空気中に分散して、娘の口内に入ったかと思うと不愉快ですので」

 

「無茶苦茶言ってる自覚ある!? つーか無駄な心配してんじゃねっからあぶねーだろ!! 最後まで喋らせろ!!」

 

 ピーチクパーチクと囀ずってる割には、私の矢も躱す虫。

 ここまでしぶといとは思いませんでした。

 虫一匹潰すのにこんな手間を取るなんて……。

 

「ああ、腕が鈍ってしまいましたかね……いけません。 これでは娘が危険です」

 

「いや、俺ぁ……あんたのが危険だと思うわって……今度は(まさかり)かい、、、おたく殺意高過ぎワロタ」

 

「よそ見、していいんですか?」

 

「は?」

 

 虫の背後を取ってた牛頭天王が私の姿で虫を惑わし、後ろを振り向いた瞬間に残り三体の牛頭天王が刀で首を、矢で心の臓を、槍で胴を狙い穿ち斬る。

 が、それも紙一重で避けられる。

 

「と、分身とかまじすげぇ! ババア、もっとだもっと俺を熱く滾らせろ!!」

 

「本当に、、、(はらわた)が煮え繰り返そうです。 なんなんでしょう、貴方は……娘に害なす存在なのに! 簡単に潰れないなんて!! 娘を愛する母が願ってるのです! 簡単に潰れてください!!」

 

「ア″…… こっちもなぁ、やっちゃいけねーって事は理解してんだよ!! でもやんなきゃなんねー!! やらなきゃ主がやべーんだよ!! だからさぁ、魔力を寄越しやがれぇぇええええーーー!!」

 

 刀と拳がぶつかり合う。

 虫の拳には魔力が込められてるのか、私の刀では斬り潰すことは出来ない。

 その事実にまた苛立つ。

 

 虫が 何かを叫んでいましたが、平穏な日常を壊しにきたのは彼方(あちら)です。

 正義は我にあり。

 正義でなくても、正しいのは私の娘です。

 

 一息で十八の斬撃を放つが、虫は九つは躱し、九つを拳で防ぐ。

 虫も九つの拳と九つの蹴りを繰り出すが、先程の十八の斬撃で対処して、その隙に槍を穿つが、槍を出した瞬間に回避行動を取られて追撃に至らず。

 

「神脚無双! グングニール!!」

 

 蹴り一閃。

 回避が間に合わない程の鋭い蹴りが、私のお腹に吸い込まれるように放たれる。

 蹴りの威力を軽減する為の後方に跳ぶという方法もありますが、此処はあえて受けることで確実に仕止める。

 

「ぐっ!」

 

 直撃。

 身体の中で暴れるダメージを全身の筋肉、関節などに流して外へ外へと分散させる。

 そして見せた虫の隙。

 

 刺突一閃。

 多少のダメージで間が開いてしまいましたが、虫を討つことに成功

、、、、しませんでした。

 

「っ!!」

 

 私の攻撃が届く前、虫の足下に緑の陣が現れて虫が消えました。

 恐らくは後方に控えていた虫の仲間が居たのでしょう。

 まぁ、戦略としては定石ですが、、、潰すどころかこれは敗けですね。

 

 

 ☆

 

 

 しょんぼりと落ち込んだまま、母さんが私のとこへ戻ってくる。

 労いの言葉をかけてやると、落ち込んでた母さんはみるみる元気になった。

 

 それにしても母さんと対峙したアレ……完全に転生者だよね? 正確には彼のオリジナルが……。

 

「過去にも転生者居るとか勘弁してほしいわ」

 

「ふむ、なら僕もその転生者とやらに出会ってるかもね。 アルハザードにキミみたいなの居たかなぁ」

 

「ジェイルをもってしてもわかんないの?」

 

「何分、僕はオリジナルのクローンだからね。 アルハザードの知識はあっても僕のオリジナルの記憶まではどうだか……。 それにアルハザードはどいつもこいつもおかしな奴ばかりだったから」

 

「ふぅ~ん」

 

「そういえばシングちゃん」

 

「何?」

 

「あの紫虫は何処に?」

 

 母さんがキョロキョロと辺りを見渡して、すずかの所在を聞く。

 

「すずかならちょっと泳いでくるとか言って海に潜ってったけど?」

 

 勿論、嘘だ。 いや、私のでなくすずかのね。 私の予想が正しければ、今頃すずかは襲撃者のとこで遊んでるはずだ。

 

「あと仮にも私の恋人を虫にしないで」

 

「うぅ……ごめんなさい」

 

 目尻に涙を溜めて謝罪する母さんの頭を撫でながら、すずかが居るであろう方向を見る。

 

 

 ★

 

 

 小さな小さな無人島。

 そこにシングちゃんとの休みを邪魔する不届き者が居た。

 金髪で緑の服を着てる女の人とピンクのポニーテールをした女剣士だ。

 

 シングちゃんが言うには幼女が居るはずなんだけど、今日は居ないのかな? まぁ、どうでもいいや。

 

「アザバール、起動。 私の権限でクト顕現。 ちょっと驚かしちゃおうか(蹂躙)♪」

 

 ぶくぶくと海中に潜ませたアザバールが浮上してくる。

 無人島で休憩中だった二人は不信に思いながら、自らの得物に手を掛けるが、次第に現れる巨大な触腕と海坊主のようなツルペタな表面の紫色をした丸い頭部。

 バシャバシャと海面を揺らし、無人島で待機してた二人の女性は騒がしくなった海を見るが時折見える触腕に顔を青ざめてる。

 

「シングちゃんの敵なら容赦しません。 あ、でも未来ではシングちゃん……というかなのはちゃんのお友達さんかぁ…………………………シングちゃんに害をなす存在なんて、たとえなのはちゃんの友達になる人達だとしても必要ないよね」

 

 クトの触腕で二人を叩き潰す。

 触腕は無人島を縦に両断し半壊させたが、残念ながら敵を倒すには至らなかったみたい。

 驚いてる隙を作ったつもりなんだけど、避けられてちょっと悔しい。

 

「なら次は2本でどうかな?」

 

 触腕が2本振り上げて、宙に足場を作って停滞していた二人を叩き落とそうとするが、これも空を飛んで避けられたり、剣で防がれたり、逆に斬られたりする。

 

「んー、こういう戦い慣れないなぁ……。 いつもはパーッと行ってパーッと終わらせるし……もう私が動こうかな? でもでもシングちゃんにあまり戦いに参加してほしくないって言われてるんだよねぇ……」

 

 ……………………ちょっぱやで、あ、ダメだ。 私には及ばないけどあの二人も多少は愛を力に変換してる。 瞬コロするには時間を掛けちゃうかな。

 

「って、クトさん。 私の目だけじゃなく自分の目でも追ってよ」

 

 私がクトにそう言うと、上げて上半身までせせり上がった。

 クトの上半身が顕になったことで、二人の動きに乱れが生じた。

 

 当然だよね、クトというかアザバールに使った素材の特性は、常人にとってかなりキツイ異様さだもん。 全体でないにしても上半身丸々見て発狂しないだけマシかな。

 

「それじゃ、蹂躙再開!」

 

 クト自身で操る触腕は、先程よりも動きが洗礼されて振り回す速度も上がってる。

 何度か避けていく内に二人だったのが三人になった。

 

「……………………使えない保護者ですね。 一人逃すなんて……クーフーリンさんでしょうか? もう一人増えたらあのモンペさん達より一歩リード……そして逃した相手を倒せばさらにリード! これには私もニッコリだよ」

 

 うへへへぇと妄想してると、取らぬ狸の皮算用という言葉をこの身で味わうことになった。

 

 

 ☆

 

 

「ただいまあぁ~……」

 

 浜辺でステラの体に砂を埋めて、ステラの要望で胸を大きくした砂ボディを作ってると、やけにローテンションなすずかが戻ってきた。

 

「どうしたの? なんかアザバールも浮上させてたみたいだけど」

 

「うぅ……シングちゃんごめんなさい」

 

 そう言って今までやっていた事を説明しだしたすずか。

 なんでもピンクの女剣士と緑の女魔導師を驚かせていたら、いつの間にか戻ってきた犬っころと黒い男闘士に不意を突かれて逃げられたそうな。

 

「やばいよ、シングちゃん!」

 

「あ、うん、そうだね」

 

 この世界最強と思ってたすずかに、逃げ仰せるとか本当にヤバそう。

 しかもこの時期は主のはやて嬢と、まだ幸せの生活を送ってると思ってたのに、襲撃だもんねぇ。

 

「奴ら……オレ達と同じ匂いがした」

 

「「は? 言葉の訂正しろよ、駄犬。 私達のシングちゃん(むすめ)に対する愛と()の主人に対する愛が同じなわけないでしょ?」」

 

「あ? 駄犬だと? 己の身を削ってまで蚊を殺す蚊取り線香以下の虫コロリどもが」

 

「「虫一匹潰せない駄犬に存在価値ないよ(ありません)」」

 

「テメェ……」

 

 一発触発。

 このままだと本当にヤバいと感じた私は、魔力を一気に放出した。

 魔力チートを越えた魔力。

 それは魔力という枠組みを越えて別の新しい何かとして、発せられる私の威圧は物理的な干渉が可能となって、結果……騒いでる三人を止めることが出来た。

 

「逃げた、逃がしたのどうでもいい。 危険がなくなったら遊ぶ……そうだろ?」

 

「はっ!」「うん」「了解」

 

 でも、三人が苦戦したってことは、あちらも『愛』溢れてるのか……。

 これは遅れを取る可能性を考慮しとかないとね。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第三話 これで子供産めるよ、やったね! クイントちゃん

 無限夢想アザバール13遊星の霊子電脳空間内で、私、ジェイル・スカリエッティは今までやって来た研究と、今の契約者であるシングくんから見せてもらった色んな世界の私の研究を平行している。

 普段ではそんな事出来ないし、やっても非効率的だが、此処では現実の1秒が何千、何万と引き伸ばされるまさに研究者として理想の空間で、さらにシングくんへの信仰愛というものが私の中に少なからずあるため、プレシア女史までは行かないまでもある程度の事は出来る。

 

「しかし、こう……アニメーションとして見せられると研究資料が足りない。 考察するにしても限度があるし、かと言ってシングくんからこれ以上の情報は得られないだろうし、、、いや、待てよ?」

 

 この無限夢想アザバール13遊星は、シングくんの『夢想』から始まる。

 そこから『観測』『干渉』……私に与えられた権限レベルは1で、自由に使えるのは『観測』。

 

「シングくんに事情を説明し、『夢想』してもらう……そして私が『観測』し、必要ならば『干渉』してもらう。 よし、これでい」

 

「何が?」

 

 ある程度結論が出たところで私にとっての魔王が現れた。

 彼女、月村すずかは契約者シングくんの恋人であり、シングくんが心の底でもっとも信頼してる人物。

 そして私にとっての敵。

 なにかとシングくんを動かそうとすると、突如として現れて私の計画を阻むのだ。

 これはいけない。

 研究者として計画前段階で阻止してくるとか、少しは私にも遊び心というものを与えても罰は当たらないと思うんだがねぇ。

 

「あー、すずかくん」

 

「そうだねぇ……シングちゃんの手を煩わせるのは反対だけど、シングちゃんのためになるならいいかな」

 

「勿論、私の研究成果はシングくんに還元するとも……こう見えて助けられた恩にはきっちりかっちり報いる性質でね」

 

 ニッコリと善人が受ける笑顔ですずかくんに答えるが、すずかくんは一瞬だけ疑わしい目をして、唾を吐き捨て「どの口が言うのか……まぁ、でもいいよ。 シングちゃんにお願いしてみる」と言ってくれた。

 本当に僕って信用無いなぁ。

 

『僕を信用しない方がいいよ、主人公くん』

 

『知ってるさ』

 

 と、空気を読んでくれないかな? この別時空の僕。

 

 

 ☆

 

 

 すずかにお願いされて別の世界線を『夢想』して欲しいと言われ、アザバールに接続して『夢想』を繰り返す。

 ただ頭の中で色んな設定の色んな世界を延々と考えてるのも、あれなのでその世界での小説を書こうとしたけど、文才がないから止めた。

 が、アザバールが勝手に小説を書き出したので、出来上がったら見せてもらうようお願いしよう。

 

「……てか、やることなくなったー。 ちょっと旅行にでも行こうかな」

 

 思い立ったが吉日。

 私はアザバールを動かして、次元の海を彷徨う。

 何か面白いことはないかと航行してたら、すぐ近くの次元世界で弱っていく魔力を感じた。

 

「んー、最近人助けが板についてきた気がする」

 

 かと言って見捨てるのも寝覚めが悪いので、アザバールに転送してもらうと、StrikerSで登場する戦闘機人らしき存在とばったり遭遇。

 アザバール経由で念話でスカリエッティに繋げる。

 

『やぁ、どうしたんだい?』

 

『あー、なんか戦闘機人っぽいのと出会ったんだけど、知り合い?』

 

『ふむ、どれどれ……あー、今『観測』し終えたけど、僕が開発した子じゃないね。 そもそも僕の子達は、ウーノを除いて破壊されたしね』

 

『そ、なら容赦なく潰せるか』

 

 私の言葉にすぐに動いたのは、やはりというかリボンに変容していたエルだ。

 どこかの武装警察ホールドの特殊部隊ホーリー所属の断罪さんのお人形さんみたいに、リボンでパイプや敵の武器を切断していく様は素直に凄いと言える。

 ちなみに念話中、一方的に攻撃されてた。

 そのせいか、エルの機嫌も悪く、リボンの速度がかなり速い。

 

「くっ! 強い……」

 

 敵さんもエルの速度についていけず、思わず呟いた言葉に私は心の中で「強いのはエルであって私じゃないんだよなぁ」と思った。

 や、別に言っても良いんだけど、敵さん、思わぬ強敵の遭遇にワクテカしてらっしゃるもんで……。

 

「そろそろ本気だして、しと……」

 

『あ、研究用に貰いたいんだけど』

 

「え? 要るの?」

 

『要る、要らないというよりも、何かあったときのためさ。 その時になって用意してないとか、研究者としての誇りが許さない』

 

 いやー、誇りとか別にねー。

 それにすずかが出れば、なんでも解決出来そうなんだよねー、物理的に……。

 

『いやいや、すずか嬢でもどうにもならないことはあっただろ? 海の件とか海の件とか!』

 

『違うもん。 シングちゃんのゴーサインがあれば、行けるよ! 私は!!』

 

『そんな君にこの言葉を送ろう。 え~、本当にござるか~?』

 

『よぉし! そこで大人しくしてろ。 今、そっちに行って、解体しにきた!』

 

『ひぇ!? はやい!! ちょ、まっ』

 

 見苦しいので念話カット。

 

「と、言うわけで捕獲優先で」

 

「すでに捕まえてあるよ」

 

「んー! んー!!」

 

 エルの言う通り、リボンで全身をぐるぐる巻きにされて拘束されてる戦闘機人が出来上がっていた。

 そして当初の目的である人命救助。

 血塗れで、青い長髪の女性を眺める。

 こうしてる間にも、彼女の生命は減っていき死へと向かっていた。

 

「ナイチンゲー……」

 

 9割彼女の名を口にして止める。

 確かに医療行為ならナイチンゲールが妥当だが、果たしてこの状態の患者を前にナイチンゲールはどう行動を取るか。

 いや、シミュレーションしなくてもわかる。

 彼女を、患者を認識したナイチンゲールは、まず彼女をアザバールに連れ込んで、殺菌、滅菌、無菌ルームへと移動。

 そして始まる手術という名の切断。

 

 パッと見て千切れかかってる左腕……切断。

 潰れた右足……膝辺りで切断。

 ボッコボコで腹に穴が空いてる……駄目な内蔵は切除。

 顔……右目を洗浄して潰れた目を取り除く、左目も若干ダメっぽいから……もう両目とも切除だね。

 鼻は骨を矯正して、、、、うん、とりあえず見た目が痛々しい通り越すレベルだ、これ。

 

「やっば、どうしよ?」

 

「何が?」

 

「いや、この人を蘇生? させる方法……というかこんな死者蘇生じみた事が得意な英雄なんて知らないし……。 アザバールと接続したら死者蘇生とか簡単って言ってたけど、死んだ犬の蘇生でさえ失敗してるからなぁ」

 

「んー、彼女の傷を癒して蘇生させればいいんだね?」

 

「そう」

 

「出来るよ」

 

「え?」

 

 エルの「なんだ、その程度か」みたいな言葉に、開いた口が塞がらない。

 

「僕は神々が生み出した神造兵器。 そして君の魔力と愛によって僕のスペックはウルク時代よりもさらに万能に至った。 君が望むなら僕は万能の願望機……聖杯の真似事だって出来る」

 

「それって……」

 

「もちろん、君の魔力も必要だけど、君にとって微々たるものだ」

 

 衝撃的事実にちょっと頭が追い付かない。

 

 え? エルってそんな凄いの? いや、凄いのは知ってた。 けど、それは兵器として凄いということで、え? え?

 

「本当に、可能なの?」

 

「勿論だとも! というか君には、シングにはそろそろ僕も凄いってとこを見せつけようと思ってね」

 

 エルが輝き始め、私の魔力が少し増減して、エルは謳うように宝具(ことだま)を紡いだ。

 

「聖なる杯よ、我がマスターの意、願いの下、その力を振るえ! 『万能の杯(ウルクの大杯)』」

 

 光はより一層輝き、死へ向かう女性を優しく包みこんで女性と共に消えた。

 残ったのは私とエルと拘束されてる戦闘機人。

 混乱してる私にエルは、「大丈夫」と優しい声色で言った。

 

「彼女は帰るべき場所に帰ったよ……家族の下へね」

 

「そう、なら大丈夫かな」

 

 願わくば、こんな危ない場所へ赴く仕事を辞めて幸せな家庭を築いてほしいかな。

 ………………難しいよね。

 

 

 

 ★

 

 

 目を覚ますとそこは見覚えのある部屋の天井だった。

 呆然と、、、まだ上手く働かない頭で辺りを見る。

 視界は良好、身体中の傷や痛みすらない。

 死に瀕してた私は、研究所でそのまま家族にも会えずに眠りにつくはずだったのに……。

 

「! そうだ、わたし……」

 

 急に娘達の顔が見たくなった。

 当然、夫の顔もだ。

 

 今は何時、いや、今日は何日だろう? 私が助かったのなら隊長やメガーヌだって助かってる可能性はある。

 

 バッ!と自分の部屋にある時計を見て、さらに驚く。

 時刻は隊が研究所に侵入した翌日の昼。

 計算が合わない。

 

 研究所に侵入して、違法研究者の戦闘機人と戦闘に入り、私達が全滅したとして、私の傷を癒したのは、誰? 私を部屋のベッドに寝かせたのは、ダレ?

 

 目の前が真っ暗になった。

 理解不能の出来事。

 デバイスの記録データは抹消されて、隊の皆に連絡付かない。

 娘達の顔を見たいのに、今は幼稚園に行ってるのか居ないし、夫だって仕事だ。

 足下が崩れて世界からこぼれ落ちそうな程、私の精神は不安定で弱っていた。

 

「だ、れ……か、、、」

 

 私に現実(リアル)を教えて……。

 

 

 

 次に目が覚めたのは、病院だった。

 家で倒れてた私を娘達が発見して、夫に連絡、そして夫が仕事を切り上げて、病院へ連れていったとのこと。

 夫は私が任務に失敗して、帰らぬ人になったとの報告を聞かされていたらしく、帰るまで私が家で倒れてるなんて半信半疑だったらしい。

 そして病院の検査結果は、、、

 

 ど こ に も 異 常 な し。

 

 子を産める健康な体。

 昔負傷して一生残ると言われた傷ですら、綺麗さっぱりなくなっていた。

 私に何が起きたのか……。

 管理局から事情聴取されたが、私にすらわからないことを答えようがなかった。

 

 

 ☆

 

 

 拘束した戦闘機人をジェイルに投げて、私はすずかと一緒に遺跡探検をしていた。

 次元世界はそれこそいろいろあり、ロストロギアがあったらしき場所を発見したらアザバールで過去に『干渉』して、ロストロギアを入手したりと好き放題してたら、今度はヴォルケンリッター全員に囲まれた。

 勿論、後方支援であるシャマルは私達の肉眼からは見えないとこにいる。

 

「何かな? 私とシングちゃんのデートの邪魔してくれちゃって……」

 

「前は不覚を取ったが……」

 

「今度こそ!」

 

「テメェらの魔力を」

 

「蒐集させてもらう!!」

 

「ッ、ほんとに……邪魔」

 

 アザバールからすずかの表情を見てると、そこには眉間に皺を寄せて、目は赤というかかなりどす黒い感じのナニかが蠢いてる。

 暴走して私に迫ってきたアカ目でも綺麗だったすずかの目が、、、濁ってた。

 それほどまでにこの時間を邪魔されたくなかったのだろう。

 勿論、私だって邪魔されたことに怒りを覚えてる。

 うん、だからこれはすずかの逆鱗に触れた彼女達が悪いんだ。

 

 空を蹴り、駆るすずかはまず烈火の将へと向かい、自らの筋肉と爪を操作して吸血鬼特有の爪擊を振るうが、将と言われるだけあってすずかの速度についていけて、レヴァンティンと呼ばれる剣型のデバイスで防ぎってた。

 そして唯一の護衛であるすずかが離れた事で、私が残りの三人に囲まれた状態になってるが、何、別に問題はない。

 

「さて、護衛も我が将へ向かって、アンタがいつもしてるリボン……あれも護衛なんだっけ? それもしてないし、近くにババアやバカデカイ黒いのも居ない。 こう言っちゃ萎えるんだけどよ、降参してくんね? いや、だってもう勝負ついてるっしょ? 魔力すっげーのはわかるけど、おたく……戦える力ないだろ?」

 

 確かに私は魔力だけなら凄いある。

 凄いなんてモノじゃないくらいある。

 自慢できるものは何かって言われたら、まぁ、容姿だと答えるが魔導師に聞かれたら魔力と答える。

 だが、私に戦闘力はない。

 それでも言わせてもらうけど、別に問題はないんだ。

 

「正直、ザフィーラやカイトが苦戦したって奴と戦いたかったが、アタシの運がなかったって諦めるから、テメェも諦めて大人しく魔力を寄越せ」

 

 ロリが何か言ってるが、再三言わせてもらおう。

 

「別に問題はないよ。 護衛が居なくても、貴様ら程度に明け渡す魔力はプランクトンレベルでない」

 

 ああ、私の魔力は確かに膨大だ。

 膨大という言葉が陳腐に思えるくらいに大きい。

 自衛力、戦闘力に運営出来ないほどの馬鹿げた魔力。

 そんな魔力が果たして魔力という枠組みに入るわけがない。

 じゃあ、どうなる?

 どういう枠組みに入る?

 大きすぎる力は、もはや神通力すら超え、力という力の概念すら昇華する。

 『圧力』。

 ここで注目して欲しいのはただの圧力じゃないということ。

 濃厚で押し潰されるほどの霊圧。

 霊圧の次元を超えて相手の霊圧を計れないが、近付けば押し潰される霊圧。

 魔力でも同じだ。

 魔王が放つ威圧感、畏怖は自身よりも放たれる膨大な魔力を圧力として感じてるからだ。

 つまり、何が言いたいかと言うと……

 

「ぐっ」「がっ」「はっ!?」

 

「私が魔力を抑制せずに垂れ流してると、我が魔力は『圧力』となって敵の行動を阻害……どころじゃないな。 数秒で満身創痍になる『圧力』……自衛力0の看板はもう仕舞い時かな」

 

 私の『圧力』を間近で受けて、手にしてたデバイスも纏ってたバリアジャケットも、肩と胸を大きくそれこそ大袈裟に動かして必死に呼吸してる様は滑稽だ。

 

「ふふ……」

 

 さて、すずかが戻ってくるまで、何してようかな。

 

 

 ★

 

 

 戦乱の世を駆け、ベルカの猛者達を屠り、恐れられた我ら闇の書の守護騎士が、あんな平和な世界でぬくぬくと暮らしてる騎士でもなんでもないただの人に、私は苦戦を強いられていた。

 

「くっ……レヴァンティン!」

 

 ガシュン!とカートリッジ内の魔力が、レヴァンティンと私の魔力をブーストする。

 ブーストされた魔力を身体強化に使って斬り掛かるが、紙一重に避けられ、カウンターで蹴りを入れられる。

 その蹴りが私の芯を捉える程で、体勢がすぐに崩れる。

 とても人が出す威力ではない。

 だが、それでも奴の身体から魔力の気配がない。

 あり得ない。

 こんな、人間が居るのかと自問自答するが答えが出るわけもないし、ましてや本人に聞いても答えることはないだろう。

 何処となく、私達が出す魔力とは違った力にも似てる気がするが、まさかな。

 

「貴様は強い。 だが、私の方が遥かに上だ!!」

 

 主の事を思う。

 戦いしか知らなかった私達に、笑顔や幸せの日常を教えてくれた。

 苦しむ主を見て、痛む私達に愛だと説いてくれた。

 愛は何ものにも勝るのだと、故に私達の愛が! 負けるわけな

 

「うん、まぁ、なかなか強かったよ。 でもごめんね。 私なら苦しんでる大切な人を一人っきりにさせないかな」

 

 思考が停止した。

 目の前に居た少女の姿が変わっていたからではなく、少女のある一言でだ。

 

「サファイアちゃん、やるよ」

 

「本当になさるのですか? あのクラスカードは……」

 

「サファイアちゃん、シングちゃんが私に酷いことするわけないでしょ?」

 

「…………どうなっても知りませんから」

 

「呪文省略、夢幻召喚(インストール)、フォーリナー!!」

 

 私達で言うデバイスのような杖とカードみたいなのを掲げて、少女は光に包まれ、また新たな姿を晒した。

 紫色だったストレートヘアーは、白銀のツインテールとなり、瞳は先程よりもアカアカしく、左目には赤い炎が灯っていた。

 服装も白のパーカーに白のビキニ、白のホットパンツと私達が狙っている白い少女に似た姿。

 違う点といえば、背には機械の翼と左手で軽々しく扱う白い大鎌。

 

「なん、だ……その姿は……」

 

「悪いけど、240秒しか相手出来ないから……」

 

 白い少女が私の知覚から消えた。

 だが、わかる。 死と言う名の大鎌が、今まさに私の首を……。

 

「すみません、我が主……。 あとは頼むぞ、みんな」

 

 届かない謝罪を主に、後の事を皆に託して私は眼を閉じた。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第四話 増えた

 すずかと烈火の将が他所で戦って、私がシャマルを除いた残りのヴォルケンリッターを相手に足止め中。

 正直、シャマルが原作でなのはにやったリンカーコア摘出をいつやられるか戦々恐々としている。

 なんとかシャマルも動けない状態にしたい。

 

「……アザバール、私の魔力を送るから中継して『圧』を掛けてくれる?」

 

 私の指示に了承の意思が返ってきて、余ってる魔力をアザバールに送ろうとしたらアザバールが悲鳴を上げた。

 え? 何? とアザバールが浮かんでる場所を見ると、そこに居たのは複数の騎士。

 瞬時に状況を把握してヤバイことを理解する。

 何故なら爽やか系王子様みたいなのと、美女騎士達が今まさに聖剣を放とうとしている。

 

 避ける? 何処へ? 横へ跳んだとしても左右に5人ずつ並んでる。 なら上か下? いずれは飲まれる。 母さん達を召喚? 却下! 母さん達を召喚して突撃させても間に合わない。 すずかを呼び寄せるにしても距離が空きすぎて……チッ向こうにも騎士が何人か行ってる!! 新しいサーヴァント召喚は……まずこんなテンパった状況でうまく出来る自信ないし、アザバールはさっきの不意打ちで沈黙して、中では修復に優先されて各機能がダウンしてる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………………………………………あ、これ死ぬ。

 

 朝陽のような光が、世界中の希望と言う名の輝きが、闇すら飲み込む極光が、私の『圧』を、私の魔力を切り裂いて私へと迫る。

 

「…………………………()

 

 最後に発した言葉は誰に向けたモノか。

 すずかかステラか……

 

 私自身わからなかった。

 

 

 ★

 

 

 桃色女騎士さんに止めを刺そうとしたら、間に剣を挟まれて邪魔された。

 一旦距離を置いて、後方にジャンプすると先程まで居なかった桃色女騎士さんの左右に銀と赤い髪の女騎士が2人居た。

 

「……………………仲間、なわけないよね。 誰かな?」

 

「円卓の騎士が1人……ベディヴィア!」

 

「同じく……トリスティン」

 

「弱きを助け、悪を討つ!」

 

「聖天の騎士団、ここに推参!!」

 

「ペッ」

 

 吐き気がした。

 悪を討つ? 私を? いや、シングちゃんを悪と評するクソ共に殺意が沸く。

 はぁ、このクラスカード、私に結構負担掛かるから結構キツいんだけど、まぁ、シングちゃんの平穏を乱すバカは一掃するが一番!

 

「10秒、、、延長。 ラストにアレ行くよ!」

 

「す、すずかさん!?」

 

 驚くサファイアを無視して超加速で2人に迫る。

 べでぃ……銀色と赤色が驚くも、すぐに迎え撃とうと剣を構えるが、遅い。

 今すぐにでも振り下ろせたその大鎌を私はピタリと止めて、シングちゃんが居る方向を見る。

 いつも寡黙なアザバールが悲鳴を上げた。

 それだけでも珍しいのに、私の胸のざわめきが強くなり、一刻も早くシングちゃんに会わないとという脅迫概念に駆られたのは今が初めてだ。

 

「シングちゃん!」

 

 もはや私の頭に桃色女騎士や銀と赤の女騎士の事は、頭から消えて即座にシングちゃんの下へ駆けた。

 墜落するアザバールを放置して、次に見えたのがシングちゃんが展開してる『圧』。

 

 その前に佇む騎士みたいな……うん、確実に銀と赤の騎士の同類だ。

 

 今、まさにシングちゃんへ剣を向けてる騎士達を通りすぎて、シングちゃんを庇うように立つ。

 間に合って良かったと、安心するが私の姿は夢幻召喚の無茶な運用でボロボロ。

 アレらの攻撃をシングちゃんに、届かせないようにするのが精一杯だ。 さて、どうしたものかと思考を加速させるが、そんなもの知ったことではないと言わんばかりに剣に纏ってた光が、私を飲み込む。

 

「すずかぁ!!」

 

 シングちゃんが私の名前を呼ぶ。

 でも、もぅ……

 

 

 ―――大好きな人が名前を呼んでくれてるんだ。

 

 ―――もうひと踏ん張りくらい出来るよね?

 

 私の背後から暖かいのが拡がり包み込む。

 

 

 ・ステイタス

 

 クラス:キャスター

 真名:すずか

  ≪以下略≫

 備考欄一部抜擢……夜の一族として自覚し吸血鬼へと変貌。 真祖としてのポテンシャルを得た未来のすずか。

 

 ・ステイタス

 

 クラス:フォーリナー

 真名:スズカ

  ≪以下略≫

 備考欄一部抜擢……シングの血を吸うことでネブレイドし、エイリアンとして覚醒した未来のすずか。

 

 わかる。

 私が三人にわかれて、吸血鬼の私がシングちゃんを安全地帯に避難させて、エイリアンの私が光を引き裂いて私の隣に居る。

 

「さぁ、私の未来の妻に手を出したんだ……決めるぞ、未熟者」

 

「今は言わせてあげる」

 

 エイリアンの私の言葉に苛立ちを覚えるけど、まずはシングちゃんを泣かせた敵を倒す。

 完全に完膚なきまでに倒すと決意する。

 すると私が知覚してる全てが、私より遅く感じるようになる。

 所謂ゾーンという奴だ。

 

 もっともそれは未来の私達には適さないらしく、欠伸して私が動くのを待ってる。 キレそう。

 

 それからエイリアンの私と今の私、吸血鬼の私による蹂躙劇が始まった。

 最初に襲ってきた騎士達は、隠れてたもう1人の仲間が転移で助けたらしい。

 最初の敵は見逃すけど、この騎士達は絶対に逃がさない!!

 

 

 ☆

 

 

 英霊のすずかにアザバールの中心部まで運んでもらった私は、アザバールに魔力を渡して修復しながら外の状況を把握する為、全方位モニターで外を見ていた。

 闇の書の守護騎士は撤退しており、今すずか達が戦ってるのは前に管理局に勤めてるギャルタス・ノーメンが言ってた聖天の騎士団なのだろう。

 しかし、すずかが3人とか、私の身が持ちそうにないんだけど……。

 

「シンちん、そんな事考えてないで、アタシ達に言うことがあるだろ?」

 

「シ ン グ ちゃ ん?」

 

「言え、何故あの闇の書の騎士共に囲まれてる時にオレ達を喚ばなかった?」

 

「まさかとは思うけど、あの海の一件で僕らが頼りにならないなんて思ってないよね?」

 

「司令官!! 遺跡探索は古代から生息していた菌が生き、探索者達に未知の病を与えるのです! 何故、私を付き添いに命じなかったのですか!? 死にたいのですか!?」

 

「主殿、皆さんのお怒りは至極真っ当です。 かく言う僕らも真の英霊にまでは至ってない身なれど、怒ってます」

 

 なんて考えてる場合じゃなかった。

 身内の怒りのせいで、今ピンチだ、私。

 まずは召喚してから今までそれほど怒りを見せなかったフェゴ姉さんから始まり、涙目で迫る母さん、凄味を効かせてるクーフーリン、髪をリボンにして私を逃がさないようにでも緩く拘束してるエル、未知の菌による病気を心配するナイチンゲール、そして他の諜報員代表で小太郎くんが、、、全員が全員、逃げ場を塞ぐように私を囲ってる。

 あ、後で段蔵が涙を流してる。

 

 さて、この状況どうしたものかと頭を悩ませると、私の所へ3人ほど新たにやって来た。

 見なくてもわかる。 すずかだ。

 

「ただいま、シングちゃん」

 

「ただいま帰ったぞ、私の愛おしい妻よ」

 

「ただいま帰りました、旦那様」

 

 上から私の恋人、エイリアンのすずか、吸血鬼のすずかが声をかけてくる。

 2人は未来のすずからしいけど、うん、エイリアンのすずかも吸血鬼のすずかも大層な果実を実らせてらっしゃる。

 特に吸血鬼のすずかは、腕を胸の下で組んでないと前倒れになるくらいだ。 現に吸血鬼のすずかもそうしてる。

 

「あら、旦那様は私の胸が気になります?」

 

「「黙れ、無駄脂肪が……」」

 

 むにん♪と組んだまま腕を上げて、そのデカイ胸を強調してきた。

 が、そこに2人のすずかが、悪態をつく。

 別にすずかはすずかでまだ成長期だから、大きくなる可能性あるし、エイリアンのすずかも十分に大きいと思うけどなぁ。

 

「そんな虫よりも」

 

「まずは」

 

「此方の相手をしてもらおうか?」

 

「シンちん、今日は寝かせないぜ」

 

「いえ、睡眠は大切ですので起床したら続きです」

 

 ああ、うん、これは長くなりそうだ。

 

 結局、家族の説教に3日、ステラや座覇の注意に2日、アリサに登校日に休んだ事を問い詰められて1日費やした。




すずかが増えた。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第五話 なのはの新しい友達は図書館の常連らしい

「「あ」」

 

「ん?」

 

 二人のすずかが声を揃えて、何事かと振り向くと二人はキラキラと光の粒子を散らしながら消えていった。

 原因は何かとステイタスを見直すと、どうやらすずか達は一時契約だったらしく、今、漸くその契約が切れた所らしい。

 再度、召喚出来るみたいだけど、すずかが邪魔物が居なくなって清々したと笑顔で言ってたので、再度の召喚はしないことにしておく。

 まぁ、考えてみればとんでもな切り札が二枚増えて、私に損はない。

 

「……さて、次はだいぶ後回しにした騎士さまの様子でも見てこようか」

 

「え、シングちゃん、あのゴミに何か用でもあるの?」

 

 ゴミって……なんだろう日に日にすずかの人間性が壊れていってるような…………そうでもなかったね。

 

「うん、まぁ、私と同種の特典持ちだけど、誰かを喚んで脱出してなかったから、どうしたのかなって」

 

 可能性としてはアザバール内で対処が出来てないか、取り上げた剣がないと召喚出来ないかかな。

 ちなみに円卓の女騎士達はすずか達が座へと送還したらしい。

 私としてはどうでもいいけど、世に蔓延る踏み台転生者にとってはザマァ展開なのだろう。

 

 というわけで、アザバールの閉鎖空間。

 エルの一部が鎖となってイケメン騎士さまを拘束してる。

 見る人が見れば、いただきますとかごちそうさまでしたとか言われる事、間違いなしなシチュエーションだ。

 

「くっ……」

 

「君らの襲撃を受けて一週間くらいかな?」

 

「なんの、用だ!」

 

「まだ威勢が良いとは驚いた。 流石は聖なる天の騎士団の長サマ」

 

「僕は……悪には、屈しないっ!!」

 

 言い切る瞬間、牢と言うよりアザバールが揺らいだ。

 原因は私の前に居る恋人と母さんだ。

 私達と彼の間にある半透明のバリアに、愛に生きる存在が壁ドンよろしくな()い一撃が見舞われたのだ。

 そりゃあ、アザバールも揺らぐ。

 ちなみに私も愛に生きてるけど、出来ないが『圧』を放つことは出来る。

 

「悪? 私の恋人が?」

 

「虫ならいざ知らず、うちの子を悪呼ばわりとは許せませんね」

 

「っ!」

 

 ぼんやりと、バリアに反射して見えるすずかと母さんの目はアカかった。

 あの目はたまに私に向けられる事がある。

 それは、やはり心配掛けたり、ヤキモチ妬かれたりだが、怒りや殺意はない。

 それを向けられる聖天の騎士団の長は、死を覚悟しなければならないほどだろう事は想像に容易い。

 私もすずかやステラを倒すべき悪だとか言われたら……

 

 ギリ……

 

「その辺にしておけ。 アザバールが悲鳴をあげている」

 

 肩にポンと手を置かれて、ハッとする。

 見れば母さんやすずかは勿論、後ろに控えてるクーフーリン達が私に注目し、騎士団長は顔を青ざめていた。

 

「ンンッ……とりあえず君の誤解を解こうか」

 

「ご、誤解?」

 

「そう、誤解だ。 君は私達が交戦してる騎士がボロクソにやられて、一方的な蹂躙を私達がしてると判断したんだろうが、なんてことない、、、襲われたのは私達だ」

 

「なんだって!?」

 

「証拠なら後で見せよう。 そもそも彼女らは闇の書の……わかるか? ベルカの技術者が開発した夜天の書をその主達が改悪していった結果災厄の魔導書となった闇の書の守護騎士……ヴォルケンリッターだ」

 

「……っ!」

 

 私の言葉にゴクリと生唾を飲み、目を見開く騎士団長。

 というか、いい加減名前を知りたい。

 

「さらに詳しく説明したいとこだが、私達が悪でないと理解したらそろそろ名前を教えてくれ……」

 

「あ、ああ、僕はイーサー。 イーサー=ペンドラクル」

 

「ありがとう。 私はシング。 そして君から見て左が私の母さん」

 

「母さん!?」

 

「右が私の恋人の月村すずか」

 

「こいびと!? え、でも、じょせ」

 

「後ろの右からエルキドゥ、クーフーリン、ナイチンゲール、加藤段蔵、風魔小太郎、百貌のハサン…………………………以下略で、この可愛いのが私の前世の娘だ! 手を出したら私達が全力でお相手しよう!!」

 

 ギュッとステラを抱きしめながら、イーサーに宣誓する。

 こういう爽やか系に限って、いつの間にか大切な人を掠め取って行くのだ。

 しかも、質が悪いことに申し訳なさそうにしながら譲らないときた。

 全く油断も隙もない。

 

「むすっ! まてまて、ちょっと待って!」

 

「そうよ、待ちなさいなシング。 私の娘を以下略とかないんじゃない?」

 

「え、僕はどちらでも構わないよ。 正義の味方とか興味ないし、関わりたくないからねぇ」

 

「か、母さん、、シングさんにそんな事言ったらダメ、だよ?」

 

「違う! 僕が言いたいのは……」

 

 またも収拾がつかなくなろうとした瞬間、またアザバールが揺らいだ。

 今度は大きく。

 立ち上がったイーサーが揺れで尻もちつくほどに……。

 

「喧しい」

 

「我らがマスターが困ることを毎度の如くやってるから省略されるんだよ。 少しは学習しなよ」

 

「拙者は座覇殿を差し置いて紹介された事に申し訳なく」

 

「いやいや、小太郎殿も総督の為に頑張られてるので、序列や紹介の順番、略されたされてないは気にしていません」

 

「逆に段蔵は……段蔵めは主様に粗相ばかり……」

 

「段蔵はそのままでいいのって、本当に収拾つかなくなりそう」

 

 とにかくと、イーサーに私達は思ってるほど悪でない事を教えて、私は聖剣をイーサーに返却して釈放した。

 

「先に襲ったのに何の罰もなしに釈放してくれてありがとう」

 

「別に……ま、私は正義の味方とは程遠い存在ではあるけれど、私と君は言うなれば同類。 なら、少しは他と差別化したいのさ」

 

「うん、でも……ありがとう」

 

 二度目の感謝の言葉と同時に、イーサーは転移で私達の前から消えた。

 

「…………………………ふっ同、類……か」

 

 私の前で攻撃魔法ではないけれども、転移魔法で立ち去る……か。

 

「次は容赦しないっ!」

 

 別に奴が私を差し置いて召喚と召喚した後のオプション魔法以外の魔法を使った事に怒ってはない。 ああ、羨ましくもないとも! 私には恋人も娘も居るんだからな!!

 

 

 ☆

 

 

 

 さて、捕らえていたイーサーの誤解を解いて、次は闇の書の連中だ。

 いい加減、狙われ続けるのも面倒なのでこっちから襲撃して闇の書関連の諸々を解決していこう。

 

「と言うわけで、最近行動が怪しいなのは」

 

「なのはちゃん、隠し事はためにならないよ?」

 

「え? え? な、なに? なんのこと!?」

 

 とは言っても詳しい住所が原作に出てるわけもなし、設定集とかキャラマテとやらに載ってるかもしれないけど、そんなの見てもないし、見たとしても覚えてない。

 ならどうする? 当然、知ってる人に聞けばいいし、私達の中で八神はやてについて知る可能性があるのはアリサとなのは。

 そしてそのなのはは、ここ最近休みの日何処かに用事があるらしく、アリサとは全く遊べてないとのこと。

 つまりはなのはにはここ以外で友達が出来て、その子の家に遊びに行ってる可能性が高いし、なのはの性格が15%明るくなり、日常におけるツッコミのキレが段違いに上がってる。

 その他にも成績向上、無駄知識の量も数%上がってる。

 これらを踏まえて、、、

 

「最近、なのはは図書館をよく利用し、勉強も苦にならない程度には好きになった。 つまりは図書館で友達が出来た」

 

「水臭いぉ、なのはちゃん。 紹介……してくれるよね?」

 

「は、はやてちゃんはふ、普通の女の子だよ……」

 

 震えた声で言うなのは。

 うん、普通なら普通でいいし、普通じゃなくても闇の書の主でなければそれでいい。

 

 と、私が言ってもなんの説得力もなさそうだ。

 まぁ、数少ない未来の親友フェイト嬢をマザコンにして親友とは違った形になってしまったけど、そこはほら友達が原作よりも増えたから許してほしい……原作とか教えてないけど。

 

「と、とにかく、はやてちゃんは普通なのー!!」

 

 ダーッとやけに速い逃げ足で、なのはは私達から逃げた。

 

「どうする? シングちゃん」

 

「まぁ、監視くらいはするよ。 本当にただの人かもしれないし……とりあえずは小太郎」

 

(は! ここに……)

 

「なのはに着いてって」

 

(承知!)

 

 バッと影に潜みバッとなのはを追いかけた小太郎。

 流石は草の者と言ったところかな。

 

「段蔵」

 

(御側に……)

 

「他に闇の書の主に相応しい歪な魔力を持った人を探してきて」

 

(了承にござる)

 

 小太郎同様に段蔵も同じ動きで私から離れる。

 こう、忍者を従えてて一番感動するのってこういう所だよね!

 

「ハサン」

 

(なんなりと……)

 

「守護騎士共を草の根を分けてでも探し出せ」

 

(我らが百の貌を持つハサンめにお任せを!)

 

 ウゾウゾ、ズババババと私の影が弾けて、あとはただの私の影が残る。

 うん、こういうの格好いいわ。

 

《やぁ! 此方でも探すかい?》

 

《アザバールの目を使ってもいいが、今回は従者に任せる》

 

《了解した。 ま、無いとは思うけど僕の知識を御所望ならいつでも呼んでくれたまえ。 プレシア女史共々駆け付けるよ》

 

《ありがとう、Dr.ジェイル・スカリエッティ》




シング「ネタはあがってるんですよ? なぁのはさん!」

なのは「やめてーはやてちゃんは違うのー」


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第六話 フルボッコだドン☆

「主殿、主殿」

 

 夜、晩御飯も食べ終え、部屋で読書をしていると、なのはを尾行していた小太郎がやって来たので、顔を上げて小太郎を見る。

 当然ながら小太郎の姿はどこにも傷はなく、先走った行動は取らなかったみたいだ。

 まぁ、八神はやてが闇の書の主だった場合、小太郎が奇襲して返り討ちにあった前提だけど。

 

「で、どうだったの?」

 

「ハッ! 真っ白だったでござる」

 

 つまり、八神はやては闇の書の主ではない。

 これは、なのはに謝らなくちゃいけないかな。

 原作の知識に囚われていた。

 私のとこへ来たのなら、他の転生者のとこに行くよね。

 それで闇の書のファンならそのまま受け入れるだろうし……。

 

「あと執拗に私達を狙ったということは、あちらも転生者から蒐集すれば闇の書を完成させる事が出来る」

 

 でも、誰があんな文明破壊の魔導書を受け入れる? 例えファンでも世界を破滅に……………………。

 

「主様。 主様が仰られた人を発見しました」

 

 段蔵が小太郎の影から現れて言った。

 そして段蔵が調べた人物は終焉の鐘に所属していた八神はやての姉、八神かおる。

 原作がどうのと言っていたから確実に転生者であるらしい。

 終焉の鐘に入った動機は私が街中で魔力を解放し、冒涜的な魔力に触れての発狂し、『救済の死』だとかそんな感じで所属。

 妹八神はやては変わり果てた姉を見て、部屋で怯えて暮らしてるらしい。

 これに関しては正直すまないという気持ちでいっぱいだ。

 

「マスター、今戻りました」

 

「状況は?」

 

「マスターが以前、旅行先で助けた転生者を襲っています。 我々の何名かが助っ人として加勢してますが、どれくらい持つことやら」

 

 旅行先で助けた転生者? ああ、博麗霊夢。

 確か、海鳴市に引っ越すと言ってたっけ。

 でも、彼女魔力あった?

 

「Cランク魔導師レベルです」

 

 ハサンの報告に成る程と返す。

 はぁ、とため息を一つ吐いて、私はエルとクーフーリンと共に霊夢の下へと駆ける。

 

 

 ☆

 

 

「……ぁぁあああああああっ!!!」

 

「マスター!!」

 

「っ!」

 

 響き渡る霊夢の叫び。

 ハサンが私を呼び叫ぶが、私も間に合わなかったかと顔を歪めるが、そこで立ち止まったら今で走ってきた努力が水の泡だと、必死に霊夢の声が聞こえる方へ走る。

 暫くして私は霊夢の魔力を蒐集してる場所へとたどり着き、最速でクーフーリンの宝具を叩き込む。

 

「加減は……なしだ!!」

 

 クーフーリンの肩が盛り上がり、投擲されるは朱い魔槍。

 放てば心の臓に当たり、傷を負うってもその槍に秘められし呪いは傷を癒すことはない。

 そしてクーフーリンの槍は、通常のそれよりも凶悪だ。

 

「っ!?」

 

「シャマルッ!!」

 

 槍の邪悪な魔力に感付いたが、守護獣が守るよりも速く、槍は湖の騎士の胸を貫いた。

 

「ゴフッ……カハッ!!」

 

 そしてそれだけでなく、貫かれた傷口から木が生えていき、次第にその木は木人形となって着火した。

 クーフーリンの第二の宝具、『灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)』。

 

「シャマルッ!!」

 

 仲間の傷口から生えてきた木が普通の木じゃないと察した守護獣は、仲間の名前を叫ぶが助けられないと判断して私の方へ睨んできた。

 

「おいおい、睨むのはお門違いだろ? 先に仕掛けてきたのはそちらだ。 それも二回もだ」

 

「ぐっ!」

 

「正々堂々とか甘ったれた事を言わなかったのは誉めてやる」

 

「我々も………………報復される事は………………わかっていたが!! 納得出来るものではない」

 

「ハッ! なんと目出度い頭だ。 次は貴様だ」

 

 納得出来るものではない? 出来るものではないとは何様だ? クーフーリンの言う通り、目出度い頭をしてらっしゃる。

 貴様らに襲われた被害者が知れば、どの口がと思うだろう。

 現に私もそう思ってる。

 闇の書の主である八神かおるの命に従ってるとは言え、彼らがやってることは許されざる事ではない。

 騎士として扱ってほしいなら奇襲ではなく、真っ正面から来て名乗りをあげてから来いというモノだ。

 

「クーフーリン……とりあえず私達の平穏を破壊してくれた彼を破壊してくれ」

 

「了解。 何、あの女のように始末すればいい」

 

「させるか!」

 

 と、私の背後から声が聞こえるが、私は振り返ることなく、私のリボンに変容していたエルが鎖となって貫き拘束した。

 

「なにっ!?」

 

「闇の書事件は終わりだ。 闇の書なんていう呪われた魔導書はなく、古代ベルカから連綿と連なる歴史はなく、夜天でなく晴天、闇でなく日の光……そして私は私が犯した罪を償おう。 闇が私を選んだ時、街中で魔力を初めて解放し、ある一人の人物を破滅思想に導いてしまった罪を……闇の書よ、来たれ!」

 

 私の転生特典の応用。

 召喚という形で闇の書を手元へ持ってくる。

 そして、私は闇の書に(まつ)わる全ての歴史と時間を『干渉』して改変する。

 

 

 ★

 

 

 それは一つの奇跡。

 それは一つの魔法。

 それは一つの御業。

 

 たった一つの魔導書の時間が逆巻き、歴史がなくなっていく。

 例えば一つの船が魔導書の侵食により、失われた人達が居たという歴史が消え、復讐に燃えていた一人の老人と二匹の使い魔達は平穏に日常を謳歌し、悲しみにくれた母子家庭は父の帰りに喜び、他の死ぬはずだった人達は伴侶と、恋人と、友人達と楽しく過ごしては歴史が紡がれていく。

 例えば無数の村が、魔法生物が魔導書の完成と引き換えに破滅、全滅させられた歴史が消え、各々の生を全うし、或いは別の何かによって命を断たれたりしては歴史が紡がれいく。

 例えば一つの世界が、魔導書の暴走で無くなった歴史が消え、今もなお文明は続き、別の次元世界との交易または発達しすぎた文明によって自滅した歴史になったり、、、

 

 延々と世界の歴史が消えては、もしものifの歴史が書き換えられる。

 そして闇の書の誕生の歴史が消え、夜天の魔導書の歴史が続く………………が、さらにそれを改変する。

 夜天の魔導書まで、改変、改造、改善。

 夜天は晴天となり、歴史が作られる。

 改悪しようとする歴代の魔導師達を修正しては改悪の阻止。

 そして、、、

 

 終焉の鐘所属の転生者達が造り出した闇の書の暴走。

 シングは自分と自分に関わりのある人間を伴って、その場へと現れた。

 

 

 ☆

 

 

 数ある無数の次元世界の海上。

 一つの化け物と対峙するのは、私と他数十名。

 

「いや、他数十名ってシング……」

 

 詳しく言うならば、まずは魔力を蒐集された被害者である高町なのは、フェイト・テスタロッサ、博麗霊夢、キキーテル・ジブラルタ、ギャルタス・ノーメン執務官…………。

 

「………………。 おい、キキにノーメン。 お前ら闇の書の危険性とか理解してなかった?」

 

「あ、相手が一枚上手だったのよ」

 

「不意を突かれちゃって申し訳なく思う」

 

「使えないカスだな」

 

「「もっとオブラートに包んでぇえええ」」

 

 そして蒐集されそうになったけど、なんとか回避した組が私ことシング、ステラ、座覇、クロノ・ハラオウン、猫姉妹、イーサー、晴天の魔導書の主である八神かおる、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、カイト、晴天の魔導書の発展魔導書、風転の魔導書の主の八神はやて、その騎士兼ユニゾンデバイスであるリイン・フォース。

 

「………………」

 

「なに見てんだ……です」

 

「いや、別に……ただちみっこいなって」

 

「喧嘩なら買うぞ! ゴラァ!!」

 

「こら、ヴィータ! 本当のこと言われて怒らないの」

 

「そうやよ、それにヴィータちゃんはそこがええねん」

 

「でも、かおる! はやて!!」

 

「シング、僕に何か言うことは?」

 

「はて?」

 

「はて?じゃない! なんでここに殺された筈のテスタロッサ家族が居る!?」

 

 はぁ、ギャーギャー喧しい。

 それと当然過保護組も居る。

 フェイトを襲われて怒髪天のプレシア・テスタロッサ、霊夢を襲われたと知り、何処からともなく現れた東風谷早苗の転生者である守矢早苗(もりやさなえ)、そして私とステラを襲って保護者と恋人が黙ってる筈がない。

 月村すずか、エイリアンのスズカ、吸血鬼の月夜すずか、源頼光(母さん)、クーフーリン、エルキドゥ(エル)、加藤段蔵、風魔小太郎、百貌のハサン。

 ナイチンゲールは家でお留守番。

 そして、なんかもう一人居た(・・)

 アザバールが粘土のように姿を変え、エヴァンゲリオンで現れた六対の羽根を生やした白い綾波レイのすずかvan。

 

「ねぇ、アレはすずか達……御親戚かなにか?」

 

「んー、私とスズカと同じサーヴァントだと思いますわ。 詳しくはステイタスを御覧くださいませ、旦那様」

 

 吸血鬼の月夜すずかの言う通り、彼女のステイタスを見るとこんなん出た。

 

 クラス:バーサーク・フォーリナー

 真名:月村すずか(無限夢想アザバール13遊星融合)

 ≪以下略≫

 備考欄一部抜擢……つよい(かくしん)。

 

 知 っ て る

 

 もうなんでもいいか。

 さて、闇の書の暴走体は私達の方へ世界を壊す程の砲口を上げ、此処に闇の書事件の最終決戦を始めよう。

 

 

 闇の書の暴走体は、原作のそれ以上の巨体だ。

 言うなれば、私達の背後に居る巨大なすずかよりも巨大だ。

 その巨体を覆う対物理、対魔力、対霊力、対斬撃、対貫通、対衝撃の障壁が有に600枚重なっている。

 普通なら絶望的だが、此処には転生者が何人も居るし、バックアップだっている。

 作戦は原作通り、全員で障壁ぶっ壊して本体へ連続攻撃してシャマルを始めとしたサポートがリンカーコアをアースラの射線上に転送してアルカンシェルでズドンだ。

 

「まずはお前達から行こうか!」

 

 手を振り上げて、ポジションに着いた三人に指示を出す。

 

「一発目行くぜ! 高町なのは! キキーテル!」

 

「しくじらないでね」「ヴィータちゃん」

 

「言ってろ! 鉄槌の騎士ヴィータと鉄の伯爵グラーフアイゼン!!」

 

 アイゼンがカートリッジをブーストしてそのフォルムをサイズを変えた。

 

「轟天爆砕!! ギガ!」『ギガ!』「ギガ!」『ギガ!』『「ギガント……シュラーーーーーーーーーークッ!!」』

 

 巨大な鉄槌は闇の書の暴走体の障壁の何枚かを破砕するが、まだまだ余力はあると障壁が修復される……………………が、そんな事させる筈がない。

 次に控えてるのはキキ。

 

「破面のキキーテルと我が斬魄刀ロンゴミニアド! 聖槍抜錨!!」

 

 そう言って霊力の嵐に身を投じるキキ。

 黒い和服から白い服、晒してた顔には獅子の上半分の頭蓋を被った金髪の女性。

 つまりは聖槍持ちのアルトリア。

 確かにBLEACHの能力だが死神限定じゃなかった? 始解しか出来ないってのは帰刃一回分という事として、まぁソニードを瞬歩、虚閃や虚弾を鬼道と誤魔化せばいけ……る?

 

「これが今の私の全力! 最果てに輝ける槍(ロンゴミニアド)!」

 

 霊力の嵐から現れたキキは、BLEACHに出てくるネリエルの帰刃みたく、下半身には馬の四つ足で上半身は獅子王の鎧を着た姿をしていた。

 そして放たれる霊力と魔力の奔流。

 

 キキの変貌に驚いたなのはだが、私が目を向けると慌てたように構えて二人に続いて名乗る。

 

「高町なのはとレイジングハート・エクセリオン……行きます! エクセリオン……バスター!! ブレイクシューーーーーートッ!!」

 

 レイジングハートの新しいフォームの新しい魔法。

 ディバインバスターよりも強力なのか、四つの砲撃の後に五つ目の砲撃が四つを纏め上げて巨大な砲撃となって障壁が崩れる。

 

「次だ」

 

 ヴィータ達の向かいへと目をやる。

 そこにはシグナムとカイト、プレシア、フェイト、イーサー。

 

「烈火の将シグナムと炎の魔剣レヴァンティン! 刃と連結刃に次ぐもう一つの姿」

 

 レバ剣と鞘が一つとなり、弓となる。

 そして先と先が繋ぐ魔力の糸をシグナムは引っ張り、矢が具現してシグナムの周囲に燃え盛っていた炎が矢の先へ集中して放たれた。

 一条の矢は彼の大英勇のより弱いが、それでも全力で放ったのだろう集束してる触手を凪ぎながら障壁をぶち破る。

 

「無双の騎士カイトが魔拳ゲイボルク……因果逆転の一撃!」

 

 ギュッと力を込めた朱いナックラーに禍々しい魔力を一点に集中させて放つ魔法は、障壁を貫通させて闇の書の暴走体に擦った。

 障壁はただ穴が入っただけで顕在。

 しかも変にダメージが入ったお陰で、暴走体はさらに進化。

 

「貴様、あとでシメる」

 

「……………………すまない」

 

「此処からあの暴走体にまでダメージを通せば良いのでなくって?」

 

「いや、何枚あると思ってるの?」

 

 プレシア女史が問題ないと言わんばかりに言うけれど、障壁はまだまだあるのだ。

 

「プレシア・テスタロッサ……行くわよ。 極雷必滅! アルティメットサンダーストリーム!!」

 

 プレシア=サン ノ ハナッタ イカズチ ガ ショウヘキ ヲ ナンマイ カ ウチクダイタ。

 

「母さんに続きます! フェイト・テスタロッサと閃光のバルディッシュ・アルティメットザンバー!!」

 

 おかしい、バルディッシュ・ザンバーじゃない。

 

『カートリッジ・ロード』

 

 斬艦刀並のバルディッシュが魔力ブーストを行い。

 フェイトはバルディッシュを振り上げ、そして……

 

「エタ」「まさかエターナルサンダーソード、相手は死ぬとか言う気じゃあるまいな?」「それで!」

 

 私のツッコミに天然ボケでホームラン打った後、フェイトはバルディッシュ・アルティメットザンバーなるモノをぶん投げて障壁を何枚か貫いて砕いた。

 当然、暴走体に掠りもしてないので、死んでない。

 

「流石、私の娘ね」

 

 どんな教育してるのか激しく心配になった。

 

「聖天の騎士、イーサー・ペンドラクルと」

 

「「「我ら聖天の騎士団にして円卓の騎士! 我が主の威光を持って消滅させる!!」」」

 

 いつの間にか自分の騎士を呼び出したイーサーは、聖剣を掲げて騎士達が手に持つ宝具を重ねる。

 すると聖剣から魔力の波動が拡がり、波動を受けた障壁に皹が入る。

 

約束された勝利の剣(エクスカリバー)!!」

 

 そして放たれる宝具。

 え? 英霊とは言え異性を召喚でき、転移魔法も使えて宝具も使える? 英霊召喚しか出来ない私を挑発してるんですかねぇ? んー?

 

「はいはい、障壁はまだまだあるからどんどんやっちゃおう」

 

「その前に攻撃が来るぞ!」

 

「ここは」「私達とクロスケに」「任せてもらおうか!」

 

「させないよ。 呼び起こすは星の息吹、人と共に歩もう……僕は、、、故に人よ、神を繋ぎ止めよう(エヌマ・エリシュ)!」

 

 猫姉妹とクロノが張り切っていたようだが、エルの宝具で攻撃体制だった触手は軒並み貫かれて拘束スタン。

 固まる三人を無視して、次のアタッカーに指示を出す。

 

「行くわよ! 早苗!」

 

「はい、霊夢さん!!」

 

「博麗の巫女、博麗霊夢と」「現代っ子の現人神、守矢早苗……私の恋人を襲った罪を償ってもらいますからね!!」

 

「相思」「相愛!」 「「神風天生!!」」

 

 数える事すら馬鹿馬鹿しい程の弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕 中略 弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕弾幕。

 二人の巫女によって放たれた弾幕は障壁七割を叩き割った。

 

「あともう少し!」

 

「では、シングちゃん。 私も行きますね」「行ってくる」

 

「行ってらっしゃい」

 

 続いて母さんとクーフーリンが動く。

 母さんは京極という馬を召喚し、クーフーリンは全呪力を開放する。

 

「行きますよ、京極!! 金時より学んだ私流のどらいぶ! 京極砲音(ほーすはうりんぐ)! 黄金疾走(ごーるでんどらいぶ)!!」

 

 母さんにしては珍しく黄金の雷と英語力で、暴走体の障壁へ突貫というか……。

 

「え、あれ、大丈夫? 逆に潰れたりとかしない?」

 

「しませんよ」

 

 私の疑問に背後から母さんの声が聞こえて、振り向けば母さんが居た。

 居たっていうか、え? なに?

 

「あの突貫した私は牛頭天皇の私です」

 

 あ、なるほどっ!?

 

「「「「はぁ!?」」」」

 

 天を揺るがす程の衝撃音。

 振り返って暴走体を見ると、そこには京極が爆走しており、天を仰げば京極にぶっ飛ばされたと思わしき暴走体。

 まずどうやってぶっ飛ばしたし……

 

「子を思う母の愛に不可能は御座いません」

 

「いや、いやいやいや! おかしいから!」

 

「あら、あれくらい出来なきゃ子なんて持てないわよ」

 

「常識よ常識」

 

「黒い人は何をそんなに、驚いてるんですか?」

 

「いや、クロスケじゃなくても驚くわよ!!」

 

「何を言ってるのかな? こんなのシングちゃんを想えばデコピンだけで浮かせれるよ」

 

「無理だよ! すずかちゃん!!」

 

「「「あ?」」」『Aaa……』

 

「ひっ!」

 

「あ、あかん、うち、もうわけわからん」

 

「はやてもまだまだね」

 

「言うたかて姉ちゃん出来んやろ?」

 

「あら、はやてを思う愛は誰にも負けないわ」

 

「あかん……」

 

 にしても、クーフーリンの活躍を見逃してしまった。

 が、暴走体から生えてる赤い棘がたぶんクーフーリンの成果なのだろう。

 再生しようにも呪いのせいか再生出来てないのが見てとれる。

 

「次は僕が行きましょう。 見ていてね、ステラさん。 僕の貧乳に、対する想いの熱さ!」

 

「あ、死んでもらっていいですか、ノーメン執務官」

 

「酷い!! でもその罵声も貧乳キャラ筆頭のシングさんなら興奮して力が増す!!」

 

「いや、マジで死んでよ」

 

 すずかがそれはそれは冷たい声でノーメンに言うが、興奮してるノーメンは無視してるのか、そもそも聞いてないのかデバイスを天へと放り投げて、別のデバイスを起動する。

 その姿は魂の碧き巨人型のデバイス。

 

「ソウルゲイン、フルドライブ!! でぇぇえええええええやっ!!」

 

 ノーメンの拳から放たれる弾幕、全弾撃ち尽くしたノーメンはまだまだ終わりじゃないと言わんばかりに暴走体に近付いては、バキンッとかドカッとか恐らくは超接近戦で殴ったり蹴ったりして……

 

「あ、拳と蹴りで暴走体を持ち上げて徐々に吹き飛ばしてる」

 

 そして最後に蹴り上げ、ノーメンも暴走体の後を追うように大跳躍。

 暴走体を通り過ぎる程の跳躍は、果たして計算か偶然か……まぁ、計算なのだろう。

 最初に放り投げたデバイスを突かんで起動。

 そのデバイスは大きな大きな……そうフェイトが持ってる斬艦刀並の大きさとなった。

 

「見るがいい! これぞ乾坤一擲の一撃なり!! 一刀!! 両断!!」

 

 そしてすれ違い様に斬るが、ノーメンがさらに斬艦刀の刀身をエネルギーの刃に変換し、振り上げる事で暴走体を貫いて吹き飛ばす。

 

「我が斬艦刀に断ち貫けるモノなし」

 

 大分、そう大分、暴走体にダメージは通ってはいるが、それもまだ微々たるモノ。

 次は誰かと思えば、ああ、そうかと思い至る。

 

「お前も憤慨していたんだな」

 

 私達が居るこの場所が、星が、生命の輝きを、気として取り込む漢。

 

「ハアァァ……」

 

 その身に気を充満させ、黄金へと輝くその光りは魂を燃やす黄金の炎。

 

「流派! 東方不敗が最終奥義……」

 

 演武を披露するように、見せつけるようにゆっくりとしかし確実に……。

 集中で閉じてた目はカッと見開く。

 

「石破! 天驚けぇぇえええええええええええええんっ!!」

 

 地響きと共に放たれる気の爆流。

 それは暴走体の八割を消し飛ばす程の力を持っていた。

 八割……そろそろリンカーコアを摘出出来るまでに弱らせたが、実は今までちょこちょこしか再生を許してないせいか、暴走体に内蔵されてある魔力はまだまだ尽きていない。

 あっという間もなく、暴走体は元の姿へと再生しきった。

 

「ほう、オレの呪いの朱槍(置き土産)すらも塗り潰したか」

 

 だが、こちらにもまだ切り札がある。

 

「ステラ……」

 

「うん」

 

 私が呼び、ステラは黒いウイングを展開し、暴走体の上を陣取る。

 今からステラが行うのは、歌。

 別にマクロスみたいな歌で沈静化させるとかじゃない。

 その歌は総督が最後の切り札として、ステラに向けて放とうとして放てなかった愛の歌。

 その歌の名は――――

 

「シング・ラブ」

 

 暴走体の体はステラの歌が終わるまで半壊し続け、魔力は再生へと回され続けていく。

 ステラの歌が終わる頃になれば、暴走体の体は六割程しかなく、次に待つは四人のすずかによる総攻撃。

 

「月夜すずか。 旦那様の為に尽力します」

 

「エイリアン、スズカ。 妻の為に全力で蹴散らします」

 

『AaAAAa''AAAAAAa''AaAAAAAAAAAaaaAAAAAa……AAAaaaAAAaaa''AAa……AAAAaAaaaaaAAAaaa!!』

 

「まだ地球人の月村すずか……害獣は消えろ」

 

 次の瞬間、六割しかなかった暴走体は肉片となって、海へと散乱した。

 

「シャマル、ジェイル、管理局!」

 

「リンカーコア、摘出完了しました! すごい、心苦しい程に弱ってる」

 

『闇の書の闇のリンカーコアをアースラの射線上に転送する……というか、私、今どうなってるんだろうね? すずか君化したアザバールに居るのだが』

 

『リンカーコア、転送確認!』

 

『アルカンシェル、、、()ぇえええええええええええええ!!!』

 

 宇宙での、観測はアースラクルーに任せるとして、私達は海上に散らばる肉片の監視を行う。

 恐らく、たぶん終わったと思うけれど、不意の事態に警戒するに越したことない。

 

「ね、ねぇ……もう言っていいんじゃない? 良いよね?」

 

「ああ、ここまでやれば言っても逆転されないはずだよね、シングさん!!」

 

「……………………言ってみろ。 続いたらどうなるか全てを終えた瞬間海の藻屑にしてやる」

 

「やめときます」

 

 暴走体を完全に消滅したような雰囲気で、あの台詞を言いたいのはわかるが、まだ確証があったわけでもないので、私達はアースラクルーとジェイルの完全消滅の報告があるまで喜ぶことは一切なかった。




正直に申しますとラストがダレてきた。
でもこれ以上待たすわけにはいかないと思い書き上げた。
だってだらだら書いてるともっと時間かかりそうだったし


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第七話 そして私は……

 あの後、終焉の鐘が起こした闇の書事件は無事解決した。

 解決したが私が襲われた事やすずかが死にそうになった事は許されないのが、うちの過保護組からのお達しだ。

 故に改変してなくなった歴史は、聖天の騎士団と晴天の守護騎士達の記憶に植え付けてる。

 なくなった歴史だけど確かにあった歴史として……。

 

 そして今の今まで隠していた事がクロノ達に露見したが、管理局がダミーのプレシアを守れてない時点で信用はなくなり報告して、引き渡しても同じになると判断したと言いくるめた。

 ま、実際に管理局内では死刑という事になって終わったことだ。

 アースラの映像記録その他もろもろは、改編済みだし、グレアム提督、クライド艦長、リンディ副艦長には復讐の歴史や哀しみの記憶を対価に黙ってるよう脅してはいない。

 その時のクロノは何か言いたげだったが、私の勝手とは言え幸せを手にしたのだ……許容してほしいね。

 

 闇の書の暴走体を消滅させるのに貢献した高町なのはと八神一家は管理局にスカウトされ、嘱託魔導師として次元犯罪者を逮捕したり、ロストロギアの封印、回収任務に西や東、北に南、あっちにこっち、そっちに向こうと奔放してる。

 霊夢はようやく再会した早苗と共に、地球で一般人として楽しくも爛れた性活をしている。

 主に早苗が暴走して、まるで他人事とは思えない霊夢に同情したが霊夢も悦んでるから幸せなのだろう。

 フェイトやプレシア達は、今もなおジェイルと共にアザバール内で研究したり、二人で論争したりしてる。

 そんで、正義の味方である聖天の騎士団は地球を観光した後、終焉の鐘達を追って次元の海へ旅立ち。

 吸血鬼、エイリアン、アザバール融合体のすずか達は、やはりというか長期の契約が出来ずに『英霊の座』へと還っていった。

 

 最後に私や座覇、すずかはアザバールと共々地球から離れることになった。

 その際、お父さんを置いていくため、母さん……お母さんも地球へ残す事になった。

 この結果に当然だが母さんは泣いた。

 大いに泣いた。

 私を抱き締め、放したくないと傍に居たいと懇願されたが、私は首を振ってお父さんと一緒に私が帰ってくる場所を守ってほしいと言った。

 最後の最後でようやく納得してくれた母さんは、「辛くなったら何時でも帰ってくるのよ」と言って私を私達を送り出した。

 

 

 ☆

 

 

「うん、まぁ、こんなものかな」

 

 日記を書いてたペンを置いて、私はアザバールが映し出す宇宙を見て微睡む。

 すると私の近くに人の気配がする。

 

「これからどうするの? シングちゃん」

 

 振り向かずともわかる。

 その人の気配はすずかだ。

 これからどうするか……そんな事決まってる。

 

「私の……私の出生の秘密とやらを探る」

 

 そう、今回、地球を離れたのは私の出生の秘密を探すためだ。

 何故なら私は……私の名前は シング。

 それだけだ。

 あの両親から生れたてのなら、私はあの両親の苗字が表記されてないとおかしい。

 だが、私のステイタスにはシングのみ。

 両親に聞いけば、私はある日空からあの両親の元へやって来たらしい。

 なんだそれはと言いたくなったが、私は両親の言葉を信じてこうして宇宙へと出た。 

 多くの本当に多くの物好きと一緒に……。

 

「私はシングちゃんがどんな存在でも愛せるよ」

 

「ありがとう、すずか」

 

 もっとも、私の正体なんてスズカを見てだいぶ察しがつくんだけどね。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

報告です

魔法少女リリカルなのは~愛、恐いなぁ~をお気に入り登録して頂き、また此処まで読んでくださりありがとうございます。

この小説は一応魔法少女リリカルなのはStrikerSまであります。

ありますが、次回から描写の方をもっと鮮明に細かく書いていきたいなと思い、ちょっと書き方を模索してるところです。

で、何が言いたいのかと言うと少し時間を下さい。

いま、別の小説で描写を細かく書く練習をしています。

それが一章終わった頃までには書き慣れてくると思うので、誠に勝手ながら最終章、になるかわかりませんが

、気長にお待ちください。

また書き出し始めたら、あらすじの方に第4章 第1話 下書き 書き始めたとか書き出します。

 

 

以上、秋代からの報告でした。

ではでは、以下文字数稼ぎの為に少しだけキャラ紹介をしたいと思います。

 

主人公 シング

性別  女

容姿  WRS (ホワイト☆ロックシューター)

特典  英霊召喚

 

裏主人公 イーサー・ペンドラクル

 性別  男

 容姿  アーサー・ペンドラゴン

 特典  異性の円卓の騎士を召喚出来る聖剣

 

フェイト側の転生者 キキーテル・ジブラルタ

 性別  女

 容姿  アルトリア顔

 特典  BLEACHの破面の技や特性(帰刃)の使用。

 

管理局側の転生者 ギャルタス・ノーメン

 性別  男

 容姿  スパロボのアクセル

 特典  スパロボに出てくる七つの機体をデバイスにしたもの。

     一、ソウルゲイン

     二、スレードゲルミル

     三、ゲッター(ゲッター線から総スカン中)

     四、マジンカイザー(無反応)

     五、ゼオライマー(次元連結システムなし)

     六、ゲシュペンストマークII

     七、真・龍皇機(四霊)

 

八神はやて側の転生者 八神かおる

 性別  女

 容姿  八神はやて似

 特典  八神はやてよりちょっと多めの魔力と適性。

 

二次キャラ転生者組

 

名前 博麗霊夢

性別 女

前世 博麗霊夢

 

名前 守矢早苗

性別 女

前世 東風谷早苗

 

名前 座覇修司

性別 男

前世 東方不敗マスター・アジア

前々世 ザハ

 

名前 ステラ・ホワイトラブ

性別 女

前世 ステラ

 

 

その他の転生者 デュフフ転生者

 性別  男

 特典  不明

 備考  結局こいつがなんなのか不明。

     ただ一つ言えることはこいつがすずかに『百合』の概念を教えたきっかけとなった。

 

 

規格外 月村すずか

性別  女

備考  愛に目覚め『愛』に生き『愛』の為にシングに人生を捧げる狂人。 その暴走は未来でも爆進中。

 

 

終焉の鐘 時空管理局の始まりの三人がバックについており、現在ジェイル・スカリエッティのポジションで戦闘機人、戦闘魔人、戦闘神人などと様々なことをしてる模様。 現在の目的は聖王オリヴィエのクローンと闇の書の再構築中。



目次 感想へのリンク しおりを挟む