DARK SOULS〜Human prise〜 (リューラ)
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ep.1

処女作です。期待せずに読んでください。手元にある資料が少なすぎてだいぶ更新は遅くなると思われます。


俺は終わりを迎えたはずだった。あの幾度も繰り返される世界を確かに終わらせ、新たな世界を生むための薪となりそのまま燃え尽きるはずだった。

 

 

しかしアレはそれを認めなかった。だから結局は同じことの繰り返し。

 

 

 

俺は…私はいつしかこの終わりなき世界に終わりを求めた。私の力は確かに強大だ。アレにも勝てよう…だがすでに私はアレに勝ててもアレの求めたこの世界自体に負けている。既に私の力でこの世界に終わりを呼び込むことは不可能だろう。あぁ、もう時間か…願わくば、次こそは終わりを迎え、安らかな眠りを…

 

 

 

そして始まりの鐘が鳴った…

 

あぁ、鐘の音が聞こえる。鐘の音…?

 

ここはどこだろう?

 

 

 

確かに目の前は真っ暗だが、少し視線をずらしてみると微かに光が見える。俺は自分が何かの中にいることに気づき、ソレを持ち上げる。重々しい音を響かせ、自分の体を封じ込めていたソレが落ちる。

 

ソレは棺桶の蓋だった。

 

 

 

は?

 

 

 

自分の置かれた状況についていけない。しかし混乱してても仕方ないと思い直し自分の体を見渡す。どうやら俺は騎士の鎧のようなものを着ているようだ。顔に手を当ててみると冷たい感触と鉄臭さを感じるから兜の類いはないのだろう。

 

後ろを振り向き棺桶の中を覗くと直剣の柄が見つかった。

 

 

 

ここがどこだかはわからないが危険な場所だというならマズイな…武器になりそうなものがこんなものしかないとは…。盾に使えそうなものは…棺桶の蓋くらいか…?とはいえさすがに持ち手もないし諦めるか。

 

 

 

俺は現状を整理し、前を見る。整備されていないが前に進むことは出来そうだ。

 

俺は武器と呼べるか微妙な剣の柄を手に前に進む。少し進むと枯れた噴水のような場所を見つけたが、重要なのはその枯れた噴水の近くにボロ切れのようなローブを着た人型がうずくまっていることだ。

 

 

「あんた、大丈b…ッ!」

 

 

 

声をかけて安否確認をしようとしたらこちらを見るなりどこから取り出したのかナイフを右手に持ち、上段からの突きで襲いかかってきた。咄嗟に頭を横にずらし回避し、頬を少しかすらせるのみに留める。

 

 

 

そしてうずくまっていた人の顔を直視することになった。

 

 

 

顔は痩け、目は窪んでおり、まるで干からびたようにヒビがはいっている。ローブから出る手足は骨と皮しかなく、どう考えても生きている人間のそれとは思えない状態だった。

 

 

 

なんなんだこいつ。と、怯んでる場合じゃないな…。どう見たってまともじゃないな。ただ、そっちがその気なら殺らせてもらう。

 

 

 

性懲りもなく隙の大きい上段からの突きを繰り出そうとする人型の右手首を左手で掴んで固定し、右手の柄の断面を喉めがけて突きいれ、捩じ込む。人型の喉から真っ赤な血が溢れだし、地面と俺の鎧を汚した。そして何かが自分の中に入り込むのを感じ、すぐにそんなことを気にしている場合じゃないと思い直す。

 

 

少し距離を取り人型の…亡者の様子を見る。どうやらもう動くことはないようだ。念のために柄をもう一度、今度は心臓へと押し込み完全に沈黙していることを確認し、抜き取る。そして先ほど自分に何かが入ってきたような感覚を思い出し身体に異常がないかを確認したが特にそれらしい異常はなかった。

 

 

 

ふと、枯れた噴水にチラリと光るものが見え近づいてみる。どうやら瓶のようだ。それを手に取ってみると突然頭に何かが流れ込む。今度はなんだと頭に手をやると知らないはずの手に持った瓶の情報が思い浮かぶ。

 

どうやらエストの灰瓶というらしい。この中の液体を飲むと精神力を回復してくれるらしい。今のところお世話になることはなさそうだがな…

 

ついでに腰にも同じようなものが付いていることに気づく。こちらはエスト瓶といい、毒などでないならば大抵の傷などを回復してくれるみたいだ。俺の身体はいったいナニをされたのだろう。記憶はいまだに霞がかかったように何も思い出せない、普通の人であったとは思うのだが…

 

そんなことを考えながらも俺は剣の柄を持ち前にへと進むのだった。

 

 

 

 




前書きでも書いた通り期待しないで読んでください。時間がある時にぼちぼち書き進めますので。文才をくれ


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ep.2

はい、更新は不定期です。1日に複数回投稿することもあれば1月以上ないことだってあるのです。なお、最初の亡者以外のチュートリアル亡者はダイナミックカットでお送りします。面倒だしね。


忍び足で後ろから近づきこちらに気づいていない、亡者の喉元に直剣の柄を捩じ込み暗殺する。これでこのあたりの亡者達は全部か?

またこの感覚か…何度目になるかもわからないが自分の中になにかが入り込んでくる感覚とともに頭に情報が流れ込む。どうやら俺はもうまともな人間じゃなくなったらしい。先ほどから亡者を殺す度に自分の中に入り込んで来ているのはソウル…つまりあの亡者たちの魂らしい。つまり俺は魂喰いのバケモノとなったようだ。

まぁ、悪いことばかりではないので前向きに考えよう。

どうやら自分に身につけた装備や武器などもソウル状態にして取り込むこともできるようだ。試しに今しがた暗殺した亡者の持っていた直剣を手に取り取り込むことを意識してみると直剣はその輪郭を薄れさせ、光るソウル体となって俺の中に入ってきた。また、その逆も然りだ。

 

ほかの亡者の武器とかも回収しとくか…

 

結局回収したのは先ほどの直剣とクロスボウだけでクロスボウの弾であるボルトにいたっては4本回収出来たのみだ。補給は絶望的なので完全にとはいわないがないと思っていた方がいいだろう。

 

亡者を倒している最中に見つけた沼地の方はいったん無視し、崖の方へと歩を進める。

あぁ、これ落ちたら即死だろうな。

 

そんなことを思いつつ崖から離れ、左側を向いてみると捻れた剣が刺してある焚き火後のようなものを見つける。とりあえず頭の中が?でいっぱいだ。なんなのだろうこれは?この地では篝火に剣を使うのが一般的なのか?燃えないだろ普通…

立ち止まっていても仕方ないので近づき捻れた剣を掴もうとする。しかし途端に自分の中が焼かれるような感覚に襲われ、触れる直前で手が止まる。するとその手から火が這い出してきて剣を伝わり篝火が息を吹き返したように燃え始める。

 

ぁァッ!なんだいまのは?!

 

理解不能な感覚に襲われた俺は思わず篝火から距離を取り、再びその篝火を観察する。剣が刺さっている以外は普通の篝火のはずで先ほどの感覚的にも危ないもののはずだと頭で理解しているのに不思議とその火を見ていると安心する。気がつけば俺は篝火の近くで腰を下ろし休んでいた。

 

休んでいたのは何分だったか何時間だったか。そろそろ前に進むかと思い、装備品などを確認する。ふとエスト瓶を見ると篝火で休む前より量が増えている。どうやらエスト瓶の補給は篝火でできるようだ。奪った直剣を見ると刃こぼれがなくなっている。

 

篝火から立ち上がり、前へと進んでみる。少しいった先にまたローブを着た亡者が座っている。しかし今度はなんだとある程度数が固まっている。正面から戦うしかなさそうだな。

亡者が2人こちらに気づいて顔をあげる。するとすぐに体を起こし武器を持ちこちらに近づいてくる。どちらも武器は折れた直剣のようだが、2体同時に相手取るのはキツイ。なんとか1体ずつ相手したいのだが…都合よくはいかないか。様子を見るために後退すると、相手の1体がこちらに向かって走りながら折れた直剣を振り払う。それを屈んで避けながらもう1体の動きに注視する。どうやらこちらは突っ込んでこないようだ。最初につっこんできた方が折れた直剣でこちらに突きを入れるより先にリーチで勝っているこちらの突きを入れ、そのまま骨と皮しかない身を斬り払う。まずは1体、と油断したのが不味かった。背中に焼けるような痛みが走る。意識が朦朧とするなか体をローリングさせその場から一旦引くと直剣持ちの亡者がいた。2体いた方の亡者に気を取られ逆側を確認していなかったか!

距離をとりエスト瓶を一口飲む。すると背中の痛みがなくなる。

 

戦闘は続行可能。先ほどの倒した亡者は動く様子なしだな。次は油断しない…確実に残りを殺していく。

 

直剣持ちが突撃してくる。ローリングしながら突撃を避わし横を取ると直剣で袈裟に裂く。横から折れた直剣持ちが走って来ているのは見えているので倒しきれていないが一旦直剣持ちから離れる。わけもなく折れた直剣持ちの突撃に合わせ蹴りを放ち、怯ませると直剣持ちが動くより先に突きをいれる。

これで2体目。目の前の折れた直剣持ちが脅威になるとは思えないが一瞬だけ回りのに目を向け、他には近くにいないことを確認し折れた直剣持ちに意識を戻す。折れた直剣持ちは乱雑にこちらを遠ざけるように武器を振り回す。それをローリングしながら避わし、後ろを取ると腹部に直剣を突き刺し、そのまま地面とキスさせてやる。動かないように体重をかける。しばらくすると抵抗もなくなったので直剣を抜き取る。

直剣持ちが来た方の道を覗くとちょっとした段差になっているので降りてみる。その先にも少し高い段差になっていた。よく見ると真下に亡者がいるようだ。直剣を逆手に構えながら落下攻撃を決めなにもさせずに殺す。

 

そこから朽ちたと思われる大門が見えた。




ようやくここまでたどり着きました。次回は灰の審判者 グンダ戦です。たぶん
誤字報告等ありましたらコメ欄でお願いします。確認次第修正します。


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ep.3 Gundyr,ludex of Ash

グンダ戦です。誤字報告・疑問に思ったこと等あれば指摘お願いします。仕事で忙しいですがなるべく対応しますので


近くの亡者達を一掃し、使えそうなものを整理し先ほど見つけた朽ちた大門の前にへと戻る。今俺の手札は下の崖際にいた亡者が持っていた槍と腰に下げている直剣、そして背中に背負っているライトクロスボウである。それに加えて亡者の遺体から火炎壺も2つほど失敬した。

なにがいてもいいように右手に槍を左手に直剣を持ち朽ちた大門の中に入る。少し進むと水たまりがあり、そこに人型の膝をついたような鉄の像がある。鉄像には篝火と同じものだろう捻れた剣が刺さっていた。また、奥には朽ちた大門と同じデザインであろう朽ちていない、扉の閉まった大門があった。

今のところは動き出す気配なし、か。一度奥の閉まっている門を確認してみるか。そんなことを思いながら奥にへと進み大門の手をかけるがどうやら開かないらしい。仕方ないので鉄像の前へ戻り捻れた剣に手をかけてみる。少し力を入れてみると動く感触があったので両手で思い切り引っ張ってみる。

すると捻れた剣は抜け落ち、同時に鉄像が動き出す。どうやら鉄の像だと思っていたが実際にはフルメイルの鎧のようだ。

 

「ヨウヤク、キタカ。」

 

ようやくと言いたいのはこちらだ。起きてからというものの人の話しも聞かずに襲いかかってくるやつばかりだったしな。ここらで情報収集といきたい。

 

「ヒツギ ノ 資格がアルカ。ワタシが、コノ グンダがタメそう」

 

前言撤回だ。結局さっきのやつらと変わらないのか。ヒツギの資格?なんだそれは?全く訳がわからないが襲ってくるというのなら応戦しないわけにもいかん。グンダというやつの得物は、ってアレ食らったら即死するんじゃないか!?

 

それは人が振るものとは思えないような長大な斧槍。グンダはそれを重量を感じさせない動きで振り払ってきた。それを転がりながら避け、直剣で斬ろうとするが今度は振り払いの遠心力をそのまま叩きつけに利用してきた。もう一度今度は無様にだがローリング回避を成功させる。しかし重量がかなりあるだろう斧槍は叩きつけの際に地面を抉り撒き散らされた破片が身体に当たる。それを歯を喰い縛りながら耐え、直剣で突きをいれる。グンダの鎧は鉄塊のような強度を誇る、ただの斬撃ではまともに効果はないだろう。再びグンダは斧槍を構え振り払う。それを先ほどと同じようにローリングで避わす。そこから先も同じように今度は余裕を持って叩きつけを回避し破片も鎧で受けて無効化し、今度は槍による刺突をいれる。しかしグンダは叩きつけ、地面に斧の部分が埋まった斧槍を手放し、こちらにタックルをしてくる。これには対応しきれず俺の身体は吹き飛ばされる。

 

大振りな斧槍攻撃だけかと思っていたが小回りの効く格闘も使いこなすか。エスト瓶を飲むような間はない。まずいなこちらはまだ直剣と槍それぞれ刺突を一度入れただけだ。あの動きを見るに大して効いているわけでもなさそうだ。まぁ、ちまちまとやるしかないか。

 

「ソレナリニハ ヤルヨウダナ。シかし、コノ テイ度 デハ ヒツギは出来ヌぞ」

 

「そのヒツギってなに?」

 

「なにモ シラナイノカ。だがソレも ワタシを倒セバ ワカルコトだ。倒せルのならばな」

 

そう言いながらグンダは跳躍するとこちらめがけて斧槍による叩きつけを見舞う。それを走りながら避け、一度グンダの巨体に貼り付く。グンダはショートタックルでこちらを吹き飛ばそうとするが俺はそれをバックステップで避わし無防備となったグンダに槍を突きいれ、間接部を直剣で切り裂く。だがグンダも怯むことなく斧槍による叩きつけを行い、そこから斧槍を軸にし左手で殴りかかってくる。叩きつけを左サイドステップで避けた俺は続く殴りつけを右に転がりながら避ける。だがグンダはまだこちらを捉えている。やはりというべきかグンダはその巨体の側面だけをこちらに向け、タックルを繰り出す。だがそれは読めている。タックルを左にローリングすることで避け、グンダの首元に直剣を突き刺す。

 

「合格ダ。資格を持ツモノヨ。ソシテ視るガいイ。コレがヒト ノ 醜サ だ。」

 

それはちょうど捻れた剣が刺さっていたところだろうかグンダの胸から黒いナニかが這い出てくるそしてソレはグンダの上半身を覆うと蛇のような異形となり、赤く光る目のようなものがこちらを見る。斧槍を持つ右腕はそのままだが左腕は黒いナニかに覆われ三本爪のようになっている。

殺ったと思ったがまだここからのようだな。

 

異形は左腕を地面につけグンダと一体化した身体を持ち上げるとそのまま斧槍を振り払いながらこちらに突撃してきた。しかし先ほどのグンダと比べると児戯に等しい。ただ暴力を振り撒くだけの怪物だが威力自体は侮れるものではなく今の俺では食らえば即死は確定だろう。

その後、何度か大振りの攻撃や蛇のようなものからの噛みつきが来るがすべて避ける。また、攻撃の隙が大きいのでエスト瓶を一口飲み、グンダとの戦いで負った傷を回復させておく。

 

さて、そろそろこいつをどうにかしないとな。すでに2、3度攻撃してみたけど今のところ効果はなし。あとはアレを試してみるか

 

異形の三本爪を備えた左腕による攻撃を避け、自分のソウルから火炎壺を取り出し異形へと投げつける。火炎壺は放物線を描きながら異形にぶつかり、その身で爆発する。だけにとどまらず油でもあるかのように異形を包み燃やしていく。これには異形も堪らなかったのだろうその身を苦悶に震わせている。俺はここぞとばかりに異形の蛇のような頭に槍で突きを入れ、直剣で斬りつける。火炎壺による 火が消えると異形は距離を取る。それを見た俺は背負っているライトクロスボウにボルトを装填し狙いやすい胴体へと放つ。

 

亡者から奪ったボルトの名は火炎ボルトその名の通り先端部分に空気摩擦で発火する特別な代物だ。もちろん1発で倒れるとは思っていない。火炎で怯んでいるうちに2発、3発と撃ち込んでいく。そして最後の1発を撃とうとした時異形の光る目がが火に炙られながらもこちらを捉え、あろうことか跳びかかりながら斧槍を振るってきた。突然のことに動揺し、身体が思うように動かない。なんとか手に持っていたクロスボウでガードするも元々そんなことをするためのものではないので粉々に砕け散る。それだけでなく右腕もひしゃげてしまっている。意識が飛ぶ。ここで意識を失えば死ぬというのにあまりの痛みに目の前が真っ暗になる。

異形が斧槍をを引きずりながらこちらにやってくる。続けて聞こえるのは斧槍を持ち上げる音だろうか…。俺はここで死ぬのだろうか。何をするかも分からず、何者なのかも分からず。

 

嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

 

落ちそうになる意識を懸命に保つ。こちらも瀕死だがあちらももう一撃で殺れるのだ。ならば今やることはただひとつ。立ち、相手の攻撃を避わし、攻撃する。やることは今までと変わらない。ならば出来る。出来なければ死ぬだけだ…。

 

目を開くと異形はすでにこちらに来ていた。右腕が使い物にならないので左腕で身体を起こし、フラつきながらも立ちあがる。右腕が動かせないためバランスが取れないが一度だけなら避けるくらいはなんとかなるだろう。斧槍の叩きつけを左に回避し左腕を軸に再度立ち上がり、槍を取り出し攻撃しようとするが異形はバックステップでこちらから離れる。

 

ここで倒さなければこちらが殺られる!今の俺が出来る攻撃はなんだ!?手札を整理しろ!考えるのをやめるな!思考を停止し諦めれば訪れるのは死だ!相手はすでに距離を取った。クロスボウはもうない。槍は届かない。火炎壺も当たるか怪しい。直剣は論外。ならばここでするのは攻撃じゃない!

 

エスト瓶を取り出し残りの一口を飲み干す。目論見はうまくいった。

左腕に持っていた槍を完全ではないが再生した右腕に持ち替える。異形が奇形と化した左腕でその巨大な身体を持ち上げ斧槍を振り上げる。だがこちらも回復したとはいえ、もう回避するほどの気力はない。そして避ける気なぞ元よりない。

俺は槍を肩にまで上げ左足を踏み込みながら異形に槍を投げる。それは異形の本体であるグンダの胸を貫き、その巨体をソウルにへと変えた。それを確認すると俺は意識を闇へと落とすのだった…

 




初のボス戦が3000文字程度で収まるという。作者の語彙不足ですね。地味にグンダさんが格闘織り交ぜて本来のグンダどうすんだ的な感じになってますが、本来のグンダを強化する方向で考えてます。
これから毎話槍はぶん投げることにします。槍が壊れたら別の武器に犠牲者になってもらいます。


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魔術レポート byリューラ

やぁ、みんな。

いや、誰だよ って顔しないでくれたまえよ。私は…そうだね。しがないただの魔術師さ。名前はリューラ。作者じゃないか、って?確かに私にはモデルとなった人物がいるけど少なくともそれは作者のような凡人ではないよ。狂ってるという点では同じかも知れないけどね。少しずれたけど、私にはモデルとなる人物がいて、そのおかげで私ももれなく魔術師キャラとして生まれたわけだ。

 

さて、なんでこんな茶番をしているかって?実は作者はリアルの都合でゲームが全然出来ないんだ。闘争に身を置けないというのは彼にとってかなりストレスみたいだね。それにここまでのグンダ倒すところまでも自分の記憶だけを頼りに書いたらしいね。一応補足するけど結晶の大トカゲを無視ったのはわざとだよ。あの時点での彼の武装と油断の仕方だと死んでただろうしね。作者の話によると攻略動画見つつ登場人物の台詞メモしながらか1週間くらいゲームに打ち込んでネタ書きだす余裕でもないと平日更新とか無理だとかなんとか。まぁ、読者の方々が気にしないなら会話はダイナミックカットで概要説明だけして進めても良いらしいけど。読者が許したとしても作者があまりそれをやりたがらないんだよね。まったく面倒な人間だよ。

 

さて、馬鹿の話はこのくらいにしておいて。せっかく魔術師として生まれたんだ。魔術の話をしないとね。と言っても本編とはまったく関係ないことだし、私の個人的な解釈だから読みたくない読者諸君はブラウザバック推奨だよ。

 

ん?付き合ってくれるのかい?ではまず基本的な事柄から説明しようかな。魔術っていうのは鱗のない古竜 白竜シースがソウルを研究した結果生まれたものだよ。古竜というのはこの世界が始まったときに世界を支配していた生物のことだよ。彼らは岩の鱗を持ち、圧倒的不死性で世界を支配していたんだ。まぁ、火が出てからはそのほとんどが滅ぼされたのだけどね。で、だ。シースには古竜としてあるべき鱗がなかった。だからそれを理由に虐げてくるほかの古竜たちが憎かった。だから古竜たちを裏切り王のソウルを持つもの達の方の味方をしたんだ。王のソウルを得て、公爵となったシースはソウルの研究を開始した。そしてその結果生まれたのが魔術というものだね。

基本的な魔術といえば攻撃系統の基本技ソウルの矢だね。矢と銘打ってあるけど単純にソウルの塊を敵に向かって射出するだけだよ。ソウルの性質を継いでるおかげかちょっとくらいにら弾道がずれても相手を追尾してくれるよ。歩いてる相手くらいになら当たるかな、って程度の追尾力だけど。

有名なところだとソウルの槍とかソウルの塊とかかな。そういえば槍といえば奇跡っていう魔法のようなものがあるんだけどそっちにも槍の名を冠するものがあるね。雷の槍や雷の大槍ってものがあるんだけど。そうそうシースは古竜たちを裏切って王のソウルを持つもの達、そのなかでも首領クラスであっただろうグゥインとかなり深い関係があるんだ。なんでいきなりそんな話をするんだって?まぁまぁ話は最後まで聞いてから質問したまえよ。グゥインは雷の力を操りその身から迸る雷を槍状にして放ち、古竜を倒していた。もちろんシースだって古竜たちの長き戦いにおいて幾度となくその場面を見たはずなんだ。つまりソウルの槍と雷の槍は偶然似たような名前になったんじゃなくてシースはグゥインの放つ太陽の光の槍を何度も見たからこ自ら生んだ魔術に槍の名を冠する名を与えたんだと思うんだ。このへんは僕の想像になってしまうけどね。

 

さて、私も私でネタ切れになってきたしそろそろ終わりにしようかな。もしも次があったらどうしようか…。それはそれでその時に考えようかな。ん?たぶん続かないって。それはないんじゃないかな作者!




茶番回&ネタ切れ報告&考察回でした。ネタは切れたけどやめるとは言ってない。ここ重要


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ep.4 達人

相変わらずの駄文ですが読んでくれる物好きの方々がいるようなので心折れずに書いていこうと思います。戦闘描写にもっと幅を持たせたい。


ん。あぁ、俺は…生きてるのか。

どうやら賭けには勝ったらしい。意識がはっきりしグンダと戦った場所を見渡す。するとグンダと戦う前といくつか差違がある。いつから、というよりどこから現れたのかはわからないが最初にグンダがいた場所付近に篝火ができていた。

これの存在は謎が多いが今の俺にとっては身体を即時に万全の状態にできるとりあえずは休んでいくか。右腕は痛みを堪えればなんとか動かせるが基本的にボロボロだ。鎧にも斧槍の叩きつけ攻撃の際に発生する衝撃波と破片による傷がいくつもついている。武器の方は槍と直剣が健在だが、クロスボウは原型をとどめておらずまた弾薬もなし。あとは火炎壺が2つほどか…。ともうひとつあるな、螺旋の剣。篝火に刺さっている不思議な捻れた刀身を持つ剣。どうやら武器としては使えないようなので今は無視だな。

篝火にあたりつつ現状を整理する。エスト瓶は3口分ほど補充されたか。重要な回復アイテムだ。これからも頼りにさせてもらおう。

身体が万全の状態となりもうひとつの差違、グンダを倒したことにより開いたと思われる大門を見る。

今はとにかく前へ進む。大門を出ると坂が見えた。階段跡のようなものがある。坂を上がると遺跡のようなものが見えた。

鬼が出るか蛇が出るか

 

そんなことを思いながら遺跡の中へ入るとすぐに左右へと別れる階段がある。下の方は大きな広場になってるらしい。左の階段を下りたすぐ近くに金髪の女性がいた。

 

「篝火にようこそ、火の無き灰の方。私は火防女。篝火を保ち、貴方に仕える者です。

玉座を捨てた王たちを探し、取り戻す。そのために私をお使いください。」

 

「火防女?っていうの?あんたは俺がなんで目覚めたのか知ってるの?」

 

「それはあとでお話しいたしましょう。今はこの祭祀場に篝火を。彼の審判者を下したのならあなたのソウルの中には螺旋の剣があるはずです。」

 

「それが終われば話してくれるんだな?」

 

「はい、灰の方に使命をお話しするのも火防女の役目ですから…」

 

ソウルの中から螺旋の剣を取り出し、篝火の跡と思われる場所の真ん中にへと刺し込む。また、あの感覚だ。自分の中が灼かれるような感覚を覚えるが最初ほどではない。螺旋剣を持つ自分の手を、腕を伝って火が流れ、篝火を灯した。

 

「終わったよ。これで満足?じゃあ、さっさと話の続きといこうか」

 

その後火防女に色々と聞いた。曰く、この世界の原初の火が消えかけており、優秀な薪がそれを継がねばやがて世界が滅びる。曰く、火を継ぐはずだったロスリックの王子が火継ぎを拒み、サブの火継ぎシステムであったかつての薪の王を目覚めさせたが目覚めた4人のうち3人が玉座捨て自らの故郷に帰った。そしてサブさらにサブの火継ぎシステムである俺、つまりは火のない灰を目覚めさせたのだと。ややこしいなこれ。

 

火のない灰というのはかつてダークリングをその身に宿し不死の力に目覚め、火継ぎ際にその呪いから解放され死という眠りを手にいれた者のうち、自我が保っている状態の者のことのようだ。

つまり、俺が目覚めた場所にいた亡者たちと同類ということか。死に続け、人間性や記憶を削り切れば本能のまま魂を貪る化け物になるってわけか。

 

「で?火防女ってのは具体的に何が出来るの?」

 

「灰の方。あなたの集めたソウルを使い、私はあなたのソウルを強化しましょう。そうすることであなたの身体はより強靭なものになります」

 

つまり魂レベルで肉体を強化できるのか。これは良いことを聞いた。もしかしなくてもそのうちグンダのような強力な武器も扱えるようになるな。そんなことを思いながら早速強化を火防女に頼む。当面は生命力やスタミナ、筋力、技量などを中心に鍛えるか。信仰、理力など気になるものも見えるが火防女に話を聞くと魔術や奇跡というものを扱うために必要なものらしい。だが、今のところ俺にはそのような魔術書の類いはないし必要なものでもないだろう。

 

「すまん。やっぱりあとにする。」

 

そう一方的に言い放つと祭祀場を出る。直剣と槍で近くにいた亡者たちを殺し、そのソウルを取り込む。亡犬は動きが速く対処が面倒だったが槍の先で突くのではなく、昆として殴り飛ばしたあとに直剣で切り裂き殺した。

亡犬が居たのと逆側に進んでみる。祭祀場の入口の上に行くための階段には亡者が二人蹲っていた。奥の1体に槍を投げ直剣で手前の1体の胸に突き入れ地面にへと刺す。奥の亡者が動くより先に左手で槍を抜き、代わりに右手を胸に突っ込み中の肉を掴み、引き抜く。ソウルにへと還る亡者たちを見つつ右手に持った亡者の内蔵を握り潰し、地面にへと落とす。

亡者たちがいた階段を下り右の方にある。まだ行っていない階段の方にへと目を向けると人影が見えた。

 

あれも、亡者か?見慣れない武器だ…

 

そいつが持っているのは刀身が長く、刃は片方にしか付いていない。しかし刀身は薄く、とても脆そうだ。

そいつはこちらに気づいたのか、近づいてくる。

 

「ほう、貴様亡者ではないな。それに先ほどの亡者を倒す時の手際。面白い。手合わせ願おう。わしのことはそうさな、達人とでも呼ぶがいい」

 

そう言うと手にもっていた武器を鞘に納め、しかし手を離すことはなく添えたままこちらに近づいてくる。こちらは槍を両手に構え神経を研ぎ澄ませる。どんな攻撃がきても大丈夫なように…

 

そして、音もなく斬撃が飛んできた。

 

!?疾い!

 

とっさに身を引き凶刃から逃れる。それでも無傷とはいかず胸を浅く斬られた。

 

鎧越しに斬られた!?

 

武器自体の切れ味が高いということもあるのだろうがそれ以上に使い手の技量が高すぎる。冗談なしに気づかないうちに頭と胴体が離婚させられるかもしれない。

 

「ほう、避けるか。やりおるな小僧。」

 

怯んでる場合じゃない。そう思い直し槍を構え突きを放つ。2撃3撃と連続して突きを繰り出すがそのどれもが見切られてるいるのかボロボロの衣服をかすらせるのみに留まる。今度は突きの合間に槍自体を振り抜き、打撃を与えようとするがこちらも避けられるか手にした武器で防がれる。

もっと速く!そう思い、再び連続突きを放つ。もちろん避けられるが想定済みなので問題ない。避けたところで槍を振り払う。さらにそこから叩きつけに派生させると槍の穂先を地面に刺し跳躍する、空中で身体を捻らせ槍でさらに叩きつけを行う。ここだ、左足で踏み込み槍で思い切り薙ぎ払う。

 

世界がスローモーションになる。

薙ぎ払いへと繋げた槍が確かに達人の横腹にへと吸い込まれる。

しかし、その時確かに達人にへとダメージを与えんとする槍の一撃は達人の振るった片刃の武器と達人の技量によって弾かれ、胴ががら空きになる。

 

 

「勝負あり、じゃな。少し打ち合っただけじゃがやるのう。若いの…じゃがわしを捉えるには至らんかったな」

 

達人はそう言いながら俺の首元へと片刃の武器を押しつける。

 

「と言っても、だ。お主には見所がある。どうじゃ、わしの弟子にならぬか?なんなら刀も一本譲ってやろう」

 

「ちなみに断ったら?」

 

「刀の素晴らしさを理解させるためにもその首を貰うことになるの」

 

yesかはいしか返答がない件について

 

「わかった。」

 

もちろん了承した。火の無い灰の身だが死ななくて良いならそうすべきだろう。それに刀という武器には興味がある。幸いなことに今の俺火の無い灰、時間はたっぷりとある。達人は俺に予備の刀をくれた。装備してみるがどうにもしっくりこない。なんというか刀に拒まれているような感覚がある。

 

「今のお主ではそれを扱う技量が足りんのじゃよ」

 

なるほど、そういうことか。今の俺にはこいつを扱うだけの技量がないらしい。今のままでは凶悪な切れ味を持つこいつもただの鉄の棒と変わらないだろう。1度祭祀場に戻り、火防女にソウルの強化を頼む。技量を上げては達人の元へ行き、刀が馴染むまで振るう。何度かそれを繰り返しているうちにそれなりの形になり、達人からあとは実戦から学んで来い、と言われた。

その後残ったソウルを生命力やスタミナ、筋力に振り、入り口の階段下にいた火防女の侍女から消耗品と交換したり加治屋のアンドレイに武器を修理を頼んだりした。

「おめぇさんどういった武器の使い方してやがる。ただ突いてるだけじゃ槍がこんな消耗はしねぇぞ」

 

「投げたり叩きつけたり跳ぶときの足場にしたり色々かな」

 

「…まぁ、壊れれば直してやるから安心しろ」

 

そのあとクールラントのルドレスに謁見し、話を聞く。火防女の話と大体同じ内容だった。だが彼は錬金術というものを行えるらしくもし錬成炉を見つけ、私に預けてくれれば君の力になろう、と言ってくれた。

あとはなんか絶望してる根暗やつとかもいた。

 

そうしてもろもろの準備を整え篝火へと向かうこの篝火から俺が次に向かうべき場所へと行けるそうだ。篝火の近くへ腰かけ意識を闇へと落とす。

 

そして俺は見知らぬ場所で目覚めた…

 

 




次回からロスリックの高壁に入ります。投稿がどの程度の期間になるかは誰にもわかりません


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ep.5




目覚めるとそこは小さな教会?だった。周りを見渡すと目の前に古びた木の扉、後ろには小さな聖杯のようなものと同じく小さな螺旋の剣があった。他に見るべき点もなかったので古びた木の扉を開け、外に出る。距離がかなりあるが城が見える。とてつもない巨大さだ。かつてこの国がどれだけ繁栄したのかがよくわかる。別の施設と繋がっているのだろう大きな橋も見えた。少し進むと階段があり、下を見ると足から先が木と一体化した亡者ががいた。しかも1体ではない。階段を下りそれに近づいてみるが動く気配はない。とりあえず安心だ。足から先が木と一体化した亡者のインパクトで気づかなかったが篝火がある。

これで3つ目だろうかいい加減火を灯す感覚にも慣れてきた。道は2つ。どちらも階段で下に降りられるようになっている。篝火から少し離れた方にある階段の様子を見る。一部の外壁が崩れており、いい感じに外観を見てとれそうな木の床があった。気配を感じ、右を見ると兵士の格好をした亡者が壁に寄りかかっていた。手にはクロスボウを持っているが、撃たせるより前に刀で喉元を貫きソウルに還らせる。下の様子を伺うとこちらに気づいていない亡者が2体、亡犬が2匹いた。面倒だし1度向こうも様子を見るか。そう思いもうひとつの階段の方へと進む。逆の階段を降りてみると祈るような仕草をしている亡者が5、6体はいるだろうか。さらにその奥にはもう死んでいるだろうドラゴンがいた。と、ドラゴンに気を取られたが木の横から徘徊中であろう亡者が出てくる。気づかれたのだろうこちらに走ってくる。武器は直剣のようだ。1度目の振り下ろしを避わし、少し距離を取り、刀を鞘に納め手を添える。馬鹿の一つ覚えのように再び振り下ろしをしてきたので刀で直剣を弾く。亡者は直剣ごと腕を大きく身体の外へと開き、胴体ががら空きになる。刀を胸に突き刺し、その状態のまま斬り払う。どうやら上手くいったらしい。刀の修練の結果が出たな。といってもまだまだ使いこなせていないし何より刀はその薄さ故脆い。忘れる必要はないが火力が欲しいここぞというとき以外は使用を控えるべきだろう。刀を鞘に納め、ソウルから槍と直剣を取り出す。当面はこいつらに頑張ってもらおう。

そんなことを考えながら進もうとしたところで少し進んだ先の階段から亡者が上がってくる。こちらに気づいたのか叫びながら手に持ったランタンのようなものを振っている。あれはまずい!確実に仲間を呼ぶ部類のものだ。早急に撃破するため槍を右手に直剣を左手に構え、駆ける。右手の槍で喉を貫き絶叫を無理やり止め、左手の剣で胴を薙ぐ。しかし遅かったのか半裸のダガー持ちの亡者がこちらに近づいてくる。それだけではない、半裸の亡者を右手の槍で牽制し周りを見ると先程まで祈るような仕草をしていた亡者たちがこちらを見ている。さらに階段の下からは直剣持ちの兵士亡者が上がってきている。だが幸いなことに祈っていた亡者たちは武器を持っていない。囲まれれば面倒なことには変わりないが今は包囲網が完成するより先に兵士亡者と半裸亡者を殺す!直剣を鞘に戻し槍を両手で構えると踏み込みながら周りを思い切り薙ぎ払う。兵士亡者には避けられたが不用意に近づいてきた半裸亡者ら複数を吹き飛ばす。槍を床に落とし左手で刀の鞘を少し上げ、右手を添える。接近していた兵士亡者に居合い抜刀。兵士亡者の首を飛ばすと床に落としいた槍の石突き辺りを踏み穂先の方から浮かせる。目の前にいた亡者を右手で持った刀で突き刺し左手で槍を回収し、後ろにいる亡者を見ることもなく槍の石突きで突き飛ばす。

 

ん、こんなもんか。

 

突き飛ばした亡者に槍の穂先を突き入れながら嘆息する。温存すると決めた瞬間にこれだ。先が思いやられる。

 

半裸の亡者が来た方向に上へ続いている階段があるのでそちらに進み、頭を少しだけ出して様子を見る。奥の方に絶叫する亡者がいる。どうやら祈っている亡者たちはあいつの指揮がなければこちらを襲ってこないらしいので絶叫亡者がこちらに気づくより前に一気に近づき直剣で喉を裂き、胴を薙ぐ。さらに上に行く階段があったので上っていると階段上から亡者の奇襲を受けそうになったが後ろに引き突きを避け、直剣で斬り殺す。階段の上には遠眼鏡があった。

 

まぁ、敵情視察程度には使えるだろ。俺が忘れてなければ。

 

階段を降り、兵士亡者が上がってき階段を下り建物の中へと入る。よ少し見えづらかったが左に先程と同じ兵士亡者が座り込んでいたので動くより先に槍の連続突きで始末する。近くあったテーブルの足の床に火炎壺があったので拾う。入口からは見えなかったが木の箱の後ろに亡者がいたらしい。拾いたての火炎壺を投げつけると周りの樽に引火物があったのか派手に爆発し亡者を焼き尽くす。

 

なるほど、樽には気を付けた方が良さそうだな。これもこれで使い道がありそうだが。

 

梯子以外に進む道はなさそうなので梯子を降りる。降りた先は鉄格子になっていた。もしかしたら監獄のような場所なのかもしれないな。ドアは開いており問題なく進めそうなので鉄格子を出てさらにその先から外に出られそうだ。扉はすでになく様子を伺うと盾と槍を持った亡者とクロスボウ装備の亡者がいた。盾持ち亡者はこちらに気づいたのか盾を構え警戒している。クロスボウ装備もこちらに狙いを付けようとしている。クロスボウは放たれると面倒なので相手が射撃体勢に入ったところで槍を投げつけて殺す。槍と盾装備の方は直剣を両手で構え、下から盾をめくり、がら空きになった胴に直剣を突き入れ殺した。クロスボウ装備に投げつけた槍を回収すると流石に無理が祟ったのか持ち手の部分にひびが入っていたので盾持ちの方の遺体から奪っておく。

階段を上がり先に進もうとすると階段の上には大量の亡者がいた。

 

建物の入口の扉は見えているのでその近くのやつらだけ排除するかと腹を括り階段を出ようとすると突然何かの叫び声が聞こえる。悪寒が走り階段を下へと急いで戻る。

 

ドォン!と巨体ななにかが降り立つ音がする。振り返り、階段の上を見ると入ろうとしていた建物の上に竜がいる。竜は口から生物を死に追いやる火炎を吐き出す。階段の上にいた亡者たちはたちまち焼き尽くされソウルに還った。竜と目が逢う。竜は再び大きく口を開き、火炎を吐く。階段の下の壁に身体を押し当てブレスを受けないようにする。

 

竜はこちらを見失ったのか建物の上に佇んでいる。全力で走れば竜の下の建物の中に入れそうだな。そう思い、竜が少し顔を逸らした瞬間に走り抜けようとする。再び竜と目が逢い、竜はこちらに目掛けて火炎のブレスを吐く。身体が火炎に炙られる前になんとか扉を開き中にへと入れた。向かい側に別の扉が見える。ひと安心だ。これで先に続く扉がなかったらまたあの竜の顔の前を横切らなければならなかった。近くの梯子を降り、下のフロアを見渡すと宝箱が見える。が様子がおかしい。今一瞬蓋の部分が独りでに開いたのだ。しかも歯のようなものも見えた。

 

1度梯子を登り宝箱が見える位置に行く。そこから火炎壺を投げつけ様子を見る。するとやはりというべきか蓋の部分が独りでに開きそこから亡者たちと同じ白くひび割れた長い手足と細い胴が出てくる。なんだこいつ…。所謂ミミックか?ミミックはこちらに気づき近づいてくるが流石に梯子を登るほどの知恵はないのかしたのほうでうろうろしている。上の床から飛び降りながら頭にあたる宝箱の部分に直剣を突き立てる。しかしそれだけで仕留めきれなかったのかまだ動いている。どんな攻撃をするかが分からず距離を取り情報を集めることに集中する。突然ミミックがジャンプしたかと思えばこちらに向かって飛びかかりながら蹴りを放ってきた。構えていた直剣でとっさにガードするももともと荒い使い方でガタがきていた刀身が半ばからへし折れてしまった。折れた直剣を捨てミミックの蹴りを避ける。後ろに回り込み刀の居合い攻撃で足を一本切り落とし無力化する。しかしミミックは身体を後ろに倒すとブリッジのような体勢になり、2本の腕と一本だけ残った足でバランスを保ち蓋の部分にある歯で噛みつこうとしてくる。異様な姿に軽く引きつつも刀を納め、背負っていた槍を取り出していつもの如くぶん投げる。それは頭にあまる宝箱の蓋の部分に刺さるとミミックはようやくソウルにへと還った。ミミックの中に入っていたのは深みのバトルアックスという戦闘用の斧でその刀身には闇を纏っている。

エスト瓶で回復したあと扉を抜けるとすぐ右に亡者がいた。深みのバトルアックスを取り出し動き出すより前にその頭蓋にへと刀身を叩きつける。直剣を失ってしまったがバトルアックスが手に入ったので戦力的にはプラスだろう。なにより攻撃力が高い代わりに耐久が低い刀を補う高耐久と闇を纏っていることによる安定した火力は直剣には無かったものだ。

頭蓋を割られソウルに還る亡者を横目に見つつ目の前の建物を見る。ガチャガチャと音を立てながら防御力の高そうな騎士が出てきた。武器は見る限りはロングソードと盾という王道のものだ。こちらに気づいたのか盾を構えつつ近づいてくる。こちらもバトルアックスを右手に持ち様子見に徹する。

来る!

 

騎士は唐突に走り出すと手にしたロングソードを振り払う。バックステップでそれを避けるが騎士は連続して斬撃を放つ。それをサイドステップやローリングを用いて回避する。最後の真横の振り払いを屈んで避け、バトルアックスを振り上げる。が騎士は盾でそれを受けとめる。ダメージといったダメージはないだろうが闇が盾を抜けた感じはある。

再び騎士の猛攻が始まる。盾を持っていないため回避するかパリィするかしか選択肢がない。だが今は回避に集中すべきだろう。騎士は今度は突きを中心に攻め立てて来る。騎士の攻撃を避けきると懐から火炎壺を取り出し自爆覚悟で騎士の近くで爆発させる。もちろんダメージを受けるのは盾を持っていないこちらだが狙いはダメージではなく相手の視界を奪うことだ。目的は達成している。

相手がこちらを見失っている隙に盾の内側に潜り込み盾を持っている左手をバトルアックスで斬り落とす。1度騎士から離れ刀に持ち替え、走りながら突きを繰り出す。騎士はこちらにはこれ以上好きにさせるものかと直剣を振るいこちらを遠ざけようとするがその一撃を見切り刀で迎撃パリィする。刀を手放しバトルアックスを腰から取り出すと騎士の顔面へと叩きつける。タフなのか騎士はまだソウルに還らないため残り少ない火炎壺をプレゼントしその場を離れる。

今度こそソウルに還る騎士を見つつエスト瓶で回復する。そろそろ補給しないとまずいな。騎士が出てきた建物に入ると黒い影が目に入る。それなりに速いが犬ほどではない。黒い影はこちらには駆けてくるがそれに合わせて左手でフードを被った亡者の顔を掴むと床に叩きつけバトルアックスで顔面を叩き割る。脇腹に違和感を感じる。もう1体いたのか。どうやら投げナイフを放ってきたらしい。大したダメージではないので今度はこちらが駆けつけると刀を逆手で抜き斬りつけ怯んでるところにバトルアックスで胴を薙ぐ。これで付近は終わりか。入口から見て右の扉を抜ける。階段を上がり、広間の様子を見るが敵影はなく、代わりに篝火がある。

 

ようやく休息が取れる。そう思いながら篝火の近くに腰かけ、少しの間意識を落とすのだった。

 

 

火の無い灰 ○○の世界が一時統合されました。

 




次回はオリキャラも入れていこうと思います。


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ep.6

お待ちいただいていた方々お待たせしました。今後とも細々と頑張らせて頂きます。


最後の敵の喉を直剣で切り裂く。それでもまだ立ち、こちらに剣を振ろうとする。が、裂かれた喉に手刀を捩じ込み今度こそ絶命させる。

 

周りは赤く、紅く、朱い。

その中には敵だったものがいる。

その中には味方だったものがいる。

その中には守られなければならなかった者たちがいる

 

いや、まだ生きてるのがいるらしい

 

-騎士様。私を…殺してください。私にはもう家族もいません。村を襲ったやつらに殺されました。私は逃げられないようにと足を潰されました。もう一人で満足に生きていくこともできないです。ですから騎士様、私を家族と同じところへ…-

 

そう言われて、俺は。俺は?どうしたんだっけ?

 

夢を見ていた。おそらくは俺の記憶だろう。ただ今重要なのはそんなことでなく、いつの間にか寝てしまっていたらしいということ。敵がどこにいるかも分からないのに無用心だったと反省しつつ瞼を開ける。そして目の前には灰色の髪をした少女がこちらを覗き込んでいた。

 

敵か!?即座に戦闘態勢に移ろうとするが。

 

「私は敵じゃないよ。あなたを殺したいのなら態々寝顔の観察なんてするわけないじゃない」

 

それもそうか。此処に来てから人の話を聞かないやつらか聞いて尚襲いかかってくるやつらしかいなかったのでそこまで頭が回らなかった。

 

「すまない。ここまでの道中は敵しかいなくて…」

 

謝罪をしつつ目の前の少女を今一度確認する。首もとまで伸びた特徴的な灰色の髪、白い肌に金の瞳とまるで人形のようだ。身につける防具は白いシャツに紺のベスト、白いズボンにブーツと騎士団のようだ。

 

「まぁ、ここもそんな感じだもんね。正直最初は無防備な亡者かと思って斬り伏せようと思っちゃったし」

 

危うく死ぬとこだったのか俺。彼女が賢明で助かった。あと篝火で休むのは良いとしても寝るのは控えよう。そのうち気づかない間に死んでそうだ。

 

「俺は先に進むけど君はどうする?」

 

「ここにいたって仕方ないんだし。その意見には賛成だよ。あと、私にはアルシアという名前があるの。だから君、じゃなくてアルシアって呼んで」

 

「じゃあ、アルシア短い間だろうけどよろしく。」

 

「よろしく。って、私、あなたの名前聞いてないんだけど…」

 

不満そうな顔で見てくるアルシア。俺はいまだに自分の名前を思い出せていない。久しぶりに、というか此処では初めての名前を気にしてくれる人物に会えたのだ。理由もなく教えないのも悪いだろう。

 

「目覚めたときから記憶が曖昧なんだ、まだ記憶が戻ってないんだ。だから好きに呼んでもらって構わない」

 

アルシアと二人で階段を降り、入口から中を様子見る。盗賊亡者と騎士がいる。

 

「盗賊2体と騎士1体どっちがどれを殺る?」

 

「なら、私が騎士の相手するから盗賊はよろしく」

 

話が速いのは良いことだ。盗賊2体程度なら問題ない。さっさとやって彼女の力を量らせてもらう。

 

「どっちが先に仕掛ける?」

 

ふっ、と笑う彼女は不敵に答える

 

「もちろん、レディファーストで!!」

 

「ん、援護は任せて」

 

そう答えながら背負っていた槍を構え、投げる。騎士に向かって走っていくアルシアを襲おうとしていた盗賊亡者を先んじて潰し、バトルアックスを腰から抜くともう1体に斬りかかり牽制する。

一方、アルシアは騎士に真正面から挑んでいる。彼女の得物は長大な大剣だ。刀身の半ばに持ち手があるそれの名はツヴァイヘンダー。特大剣の中でも軽量な部類の一品だがそれを片手で扱う彼女は俺より筋力をソウル強化しているのだろう。騎士の持つ得物は直剣とはいえ騎士の体格自体が大柄なため片手剣に見えるだけで普通の人間には十分に大きい、しかし特大剣相手には大柄な騎士とはいえ直剣ではリーチが足りないのか盾を構えガードに徹するしかない状態のようだ。

ひゅん、と音がする。少しアルシアの戦いに集中しすぎたようだ。目の前にいる盗賊亡者はすばやい動きでこちらの横を取ろうとし、また唐突な突撃でこちらを揺さぶろうとするがアルシアの戦いも佳境だ。有象無象なぞさっさと処理してしまおうと盗賊の動きを注視する。懐からナイフを取り出し投げてくるがそれを頭を逸らせて避け、続くナイフに突きをあえて左の掌で受け痛みに顔をしかめながらも左手で盗賊亡者の手を固定し、逆手に構えたバトルアックスを相手の喉元に振り払う。終わったか。動かなくなった盗賊亡者を横目で確認しつつ再びアルシアの戦闘にへと意識を戻すのであった。

特大剣による叩きつけ、振り上げ、突きが騎士を襲う。騎士は隙を見て攻撃しようとするがアルシアはツヴァイヘンダーの刀身の持ち手を使い騎士の攻撃を防ぐ。

 

「うーん、久しぶりに身体動かすから鈍ってるなぁ~。それにしてもツヴァイくんが無事で良かったわ、他のはほとんど灼けちゃったし」

 

アルシアがよくわからんことを言っている。

 

「手伝おうか?」

 

思わずそう言うが

 

「必要ないよ。そろそろ馴染んできたし遊びは終わらせようか」

 

そう言うとアルシアはツヴァイヘンダーを振り払う。騎士はバックステップでそれを避け走りながら逆に斬り払おうとするがそれを強く踏み込み密着することで回避する。さらにツヴァイヘンダーで床を破壊しながら騎士に対して強烈な振り上げを行う。

 

いや、馬鹿力にも程があるだろ。

 

騎士は宙高く飛び、一定の高さまで上がったあと重力に従い落下するが落下中にアルシアがツヴァイヘンダーで叩き斬りソウルに還す。その身体が地面に着くことはなかった。

 

「お見事。」

 

「そっちこそ、初手で槍投げるとか私には真似できないわ」

 

「?」

 

「うん、本気で不思議そうな顔しないでもらえるかな」

 

よく分からんが先に進もう。少し先に下りの螺旋状になっている階段がある。横にある折れた木の骨組みから下の様子を見る。盗賊亡者が徘徊していた。数は2。

 

「下のやつらは俺が殺っていい?」

 

まぁ、返事を聞く気なんてないけど。刀を抜くと落下しながら盗賊亡者に突き刺す。流石の切れ味だ。特に問題もなく骨まで断てた。刀を抜き突如降ってきたこちらに戸惑っているもう1体の盗賊亡者に向かい走る。トップスピードに入ると同時に突きを放ちもう1体の方も片付ける。

 

「ん、終わり。先に進もうか。それとも下の方にいく?」

 

飛び降りたところの近くに外への出口と崩れた床に梯子があったのでアルシアに聞いてみる。

 

「じゃあ、先に下の方に行ってみよっか」

 

どうやらアルシアは下の方が気になるらしい。先に付近の安全確保といくか

 

「ん、了解」

 

梯子を使って下に降りる。ハルバート持ちの亡者がいた。

ひゅん、と耳元をハルバートが通りすぎるが大振りなので回避は簡単だった。そんなことをしているうちにアルシアが亡者の後ろに行き体勢を崩してそのままツヴァイヘンダーで叩き斬った。

その後も特に苦戦もせず二人で亡者たちを蹂躙する。階段を下り先に進むと牢屋があった。中にずだ袋のようなものを被った人?が居たが残念ながら鍵はない。

 

「無駄足だったね」

 

…なにも言えない

 

会話もなくもとの道を戻り、今度は外へと出る。亡者が壁から登ってこようとしていたがそれをいち早く察知したアルシアが亡者が手をかけていた壁をツヴァイヘンダーの突きで砕き下へと落ちていった。もう彼女の馬鹿力には触れないでおこう。巡回中だったのか梯子を登ってきた亡者は槍でヘッドショットを決めておいた。

 

ここ、家屋の屋根の上だよな?

 

亡者たちが集会を開いていた。この手の亡者たちはこちらに襲ってこないので別にいいが疑問は拭えない。しかし、1体の亡者がこちらを見ると身体を震わせる。まずいと思ったが時すでに遅し、亡者はグンダと同じような黒いナニカ覆われ巨大な化物に変わった。

 

「これは、なんというか。気持ち悪いね…」

 

アルシアは初見なのか軽く引いていた。

 

「俺が火炎壺投げて相手の動き封じるから」

 

それだけ言うとソウルから火炎壺を取り出し化物に投げる。どうやらグンダの時と同じく火に弱いらしい。化物が怯んでる間に斧で斬りかかるがどうにも効果が薄いように感じる。アルシアもツヴァイヘンダーを叩き込むが見た目通りタフなのか効いてはいるようだが倒れてはいない。

 

「ちっ やっぱりこの程度じゃ殺せないか」

 

「なんかそっちの斧の攻撃全然通じてないみたいだけど大丈夫?」

 

アルシアもこちらと同じ認識だったらしい。深みのバトルアックスは闇属性が付与されている。つまりアレは闇に近しいものということか…

ならばと斧を腰にかけ、背中に背負っていた槍を左手に右手で刀を抜く。

火がなくなり自由になった化物がその赤く発光する目でこちらを睨む。倒すことはできなかったが先ほどの攻撃もそれなり以上の効果はあったのだろう。ならば速攻だな

 

「来るよ!」

 

アルシアが叫ぶ。

 

「ん、分かってる」

 

短く答えると化物に向かって駆ける。蛇のような頭で噛みついてくるがスピードを落とさずスライディングしながら避け、懐に入る。刀を振り払い、槍を突き入れ、即座に抜く。化物がその巨体を落とし俺を潰そうとするがギリギリで離脱できた。巨体で押し潰そうとしたため隙ができた化物にへとアルシアが接近し、ツヴァイヘンダーを両手で振り下ろす。それは化物の一部を切り落とした。化物はアルシアに噛みつこうとするがそんなことを俺が許すはずもなく槍を投げ、蛇のような顔を穿つ。アルシアはその隙を見逃さずツヴァイヘンダーを両手で構え踏み込みと蛇のような頭をかち上げる。

 

見えた!

 

アルシアのかち上げのおかげで化物の一部から変身した亡者本体が見えた俺は刀を納刀しつつ近づき亡者本体を居合い斬りで断ち斬る。

 

絶叫を上げつつ消滅する化物…今入ってきたソウルからの情報によると人の膿と言うらしい。

 

「アルシア怪我はない?」

 

「え、うん。大丈夫だよ」

 

「なんで驚いてるのさ」

 

「いや、ほらこんなところだから心配とかされたことないし」

 

「なるほど?」

 

アルシアと他愛のない会話をしながら先に進もうとするが

 

「!?とぉあぁぁ!」

 

進もうとしたがアルシアがうら若き乙女が出してはいけない叫び声を上げながらツヴァイヘンダーを振っていた。

 

「なにやってんのさ」

 

目のハイライトを消しつつアルシアに問う。

 

「いや~ごめんごめん。結晶トカゲいたからつい、ね?」

 

赤い舌を出しつつアルシアが謝ってくる。

今さら可愛く言ったところで遅いぞこの脳筋…

 

今度こそ先に進む。屋根から梯子を降りようとしたが奥にクロスボウを構えている亡者を発見する。どうやらすでに狙いを付けた後らしい。あの射線だと…狙いは少しはなれたところで結晶トカゲから取れたアイテムを眺めているアルシアだ。

 

「アルシア!」

 

叫びつつ走りギリギリのところで彼女を押し倒し回避に成功する。

 

「いったぁっ!急になにするのさ!」

 

この脳筋…

 

「クロスボウで狙われてる。梯子降りた先の柵の近く」

 

「いきなり押し倒してきたからとうとう君も獣になったのかと…」

 

この脳筋…

 

「なんか今すごい失礼なこと考えてなかった。」

 

「はぁ、ふざけてないで行くよ」

 

そう言うといつものごとく槍を投げてクロスボウ亡者を殺す。

「「あ」」

 

が、亡者の後ろが柵だということを忘れていたため、投げつけた槍は亡者の身体を穿つと重力に従い下にへと落ちていった。

この先大丈夫かな、そんな事を思いながらもアルシアと共に先を行くのだった。

 

 




槍「こんな使い方荒いやつの手元に居てられっか。じゃあの」

アルシア「なぜか主人公くんの中での私の評価が脳筋なんだけど?」

主人公「おうどん食べたい」

ダクソ関係ないですがFGOの異端なるセイレム楽しみですね。たぶん来週はそっちやってるんで更新しないかもです。まぁ、本気出せば1日くらいで終わるんでそしたら書いていきます。数少ないこんな作者の妄想の塊の作品を見ていただいてくれる方々のために頑張ります。


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ep.7

どうも、作者です。仕事とfgoで忙しくてなかなか書けておりませんでしたがなんとか形にできたので続きどうぞ。


梯子を降りたすぐのところに屋内にへと続く入口があった。中を覗くと大盾と槍を持った騎士が徘徊していた。

 

「入ろうか」

 

「ん、まぁのうき…アルシアもいるし大丈夫か」

 

「君さっきから私に対する罵倒を隠す気も無くなったよね!?ちょっと扱いひどくない?」

 

「さっきから喋らなければ可愛いのにな、って切実に感じてる」

 

軽口を叩きながら騎士が奥に進んだのを確認して屋内へ入る。横に部屋があるらしい。階段の上に亡者がいる。まだこっちには気づいてないみたいだ

 

「槍なくしたのが辛いけど、まぁこれで代用かな」

 

そう言うと俺は手に持っていた斧を投げつける。

 

「手癖悪いね…」

 

「殺せれば何だっていいだろ」

 

武器を投げるのがそんなにおかしいのだろうか?遠距離攻撃の手段はそこまで多くないのだしこのくらいは普通だと思うのだが…

 

横の樽から亡者が襲いかかってくる。が

 

「はいドーン!」

 

アルシアが片手で振り下ろしたツヴァイヘンダーが亡者を頭から叩き斬る。

 

「アルシアありがと」

「急に素直に感謝されると照れちゃうからやめて」

 

「うんホントに君は喋らない方が可愛いよ。アルs…脳筋」

 

「急に罵倒するのもやめてくれないかな!あと最後の逆だから!名前と罵倒逆だから!!」

 

二人して馬鹿やってたら騎士が駆けつけて来た。二人で囲んでボコったので特に問題はない。投げた斧を回収し、使えそうなアイテムをソウルに入れる。先に進むと横道などに亡者たちが居たが動き出すより前にアルシアが特大剣を乱雑に振り回しソウルに還っていた。

曰く、障害物はとりあえず殴っとけば安心だそうだ。やっぱりこいつ脳筋だな…

 

下のエントランスには亡者や亡犬が徘徊している。上から火炎壺を投げてある程度は爆殺しておく、階段を使ってエントランスに行くとまだ残っていたらしい亡犬が襲ってくるが噛みつきに居合い斬りをあわせて真っ二つにする。ここではエストのかけらや上にあった牢獄で使えそうな鍵などを見つけた。それになんと言っても

亡者の遺体からハルバートを回収できた。騎士が使っていた槍は長すぎて使いにくかったので槍と斧の2つの武器が合体したこれは願ってもない物だ。

「あぁ、可哀想なハルバート。どうせ投げられるんだ。そのうち壁に刺されて足場にでもされそう…」

 

「あぁ、そういう使い方も在るのか。」

 

「あ、私余計なこと言っちゃったかも。」

 

脳筋がアホの子な表情をしたがどうでもいい。持ち物を整理しながら次の行き先を決める。鍵を手に入れたが牢獄はあとで行けばいいだろう。エントランスから外に出る事ができるようなのでこのまま進むことにする。

 

外に出ると亡者が腰かけていた。アルシアが無言でツヴァイヘンダーを振るおうとするが左手で手首を持って止め。右手で抜いた刀で亡者の首を跳ねる。

 

「なんで邪魔すr…」

 

「静かに。ちょっと伏せてアレを見ろ」

 

アルシアのわざわざ特大剣を止めたのにはもちろん理由がある。というのも特大剣を叩きつければそれなり以上の音が出る。そのせいでアレ、青い鎧のデb…大柄な騎士に見つかりたくなかったからだ。あのデ…騎士の得物は斧槍か。当たればただではすまないだろう。

 

「なるほど、アレに見つかりたくなかったわけね。それにしてもデブいなぁ」

 

こいつ、俺でも言わなかったのをよくもぬけぬけと…

 

「まだこっちには気づいていないし正面切っての戦いは死ぬことはないだろうけど消耗はすると思う。だからなるべく暗殺で仕留めたい」

 

「あ、暗殺するならこんな武器あるけどあげようか?」

 

そう言うとアルシアはソウルの中から1つの武器を取り出す。

 

「かぎ爪っていうの。特大剣だと素早い敵辛いからサブで持ってたんだけど今は別のサブ持ってるし君の方がうまい使い方してくれそうかな、って。で?どうする?」

 

ほう、面白そうな武器だ。刀と斧槍と斧と暗殺に使うには厳しいものばかりだったしな。それはそうとアルシアのサブ武器の方が気になるがそのうち見る機会もあるだろう。

 

どうやらあの騎士は背中の鎧から小さな羽が出ている。あそこの防御力が薄そうだな。あとは各間接部か…

 

小さな羽を持つ騎士が俺の前を通っていく。まだ気づいていないのだろう、同じ巡回経路を回っている。今の俺は鎧を仕舞っている。鎧の金属が擦れあう音で気づかれたくなかったからだ。背後から足音を立てぬように近づき、かぎ爪を羽と鎧の隙間に捩じ込む。

 

殺れなかった…

 

思った以上に肉が厚く腕が奥の方まで届かなかった。だが死の運命は変えられない。今の一撃で死ねなかったことを後悔してもらおう。羽を根っこから掴み回りの肉ごと抉り取る。騎士も堪らず地面でもがいている。

 

「アルシアあとはよろしく」

 

「ん、了解」

 

アルシアと短いやり取りをする。彼女は地面でもがいている羽の騎士に対しツヴァイヘンダーを高く振り上げ。

 

「Rest in peace」

 

そう言いながら頭に向かって振り下ろした。

 

それにしてもここは何があったんだ?広場には首のないロスリック騎士の遺体が無数に散らばっている。侵攻でもされたのだろうか。今はこんなことを考えていても仕方がない。先に進もう。

 

ガキィン ガキィン

 

「なんだ?」

 

「わからないけど、注意が必要かな」

 

脳筋でも警戒くらいはするのか…。そんな事を考えていたらアルシアがジト目でこちらを見てきた。

「絶対バカにしてる…」

 

「先に進もうか」

 

テキトーにあしらって先に進む。そして先ほどの音の正体がわかった。

どさ、と崩れ落ちたのは盾と槍を持った亡者。それを殺したのはまるで獣のように低い姿勢で右手に仄かに青い刀身の直剣を持つ騎士、というには冒涜的な雰囲気を纏っておりまるで理性がないように見える。右の大門から来たのだろう。その数は3体。

向かって左の聖堂のような場所からロスリック騎士が出てくる。先頭は隊長格なのだろう赤い目を光らせ鎧も濃紺と他のロスリック騎士とは色が違う。その隊長格が直剣持ちと槍持ちのロスリック騎士それぞれ2体を引き連れてくる。総勢5体。

 

まずいな、こちらは俺とアルシアの2人だけだ。どちらか片方だけならなんとかなるけどどちらにも目を付けられたら終わる。

しかし、ロスリック騎士と異形の騎士は敵対関係のようだ。これならばどちらか残った方だけを片付ければいい。

 

騎士達に目がいっていたため周辺の確認を怠っていたのが仇となった。ビュン、と音がする。続けて脇腹に痛みが走る。音は右から、目を向けて確認するとクロスボウ装備の亡者がいる。懐から盗賊亡者から失敬したナイフを取り出し投げる。それが相手の脇腹に刺さると亡者は怯む。そこに2本3本と投げつける。それらは胸の中心と頭にへと刺さり亡者を絶命させた。

 

「大丈夫?」

 

「構えろ、クロスボウの音でこっちの存在を気づかれた。」

 

しかもどっちの陣営もこっちに来ている。しかし、どちらの陣営もそれなりには消耗している。

 

「どうする?」

 

「ロスリック騎士は任せた。俺はあっちをやる」

 

「了解。そっちには行かせないから心配しないでね」

 

「ん、数はそっちの方が多いけど気をつけて」

 

相手は決まった。ならばお互い役目を果たすとしよう。アルシアとロスリック騎士たちから意識を外す。異形の騎士たちは手強いだろう。気にかけている余裕はない。

 

 

さて、と。こっちもぼちぼちやりますか。私の目の前には隊長格率いるロスリック騎士がこちらを囲もうとしている。大盾持ちが私の前で所謂盾チク戦法を行い、また味方に攻撃が当たらないように特大剣による凶刃を防ぐ。直剣と中盾持ちの方はその後ろから隙を見てはこちらを攻撃しようとしてくる。隊長格は少し後ろで武器にエンチャントをかけている。現状把握終わり。この状況だとツヴァイヘンダーだとキツイかな。

一瞬だけ、彼の方を確認する。異形の騎士たちは盾を持たないがその分動きが速い。また、獣のような低い姿勢から繰り出される攻撃に彼もまだ慣れていないのだろう観察に徹しているようだ。あの調子ならこちらを死にかける余裕もないだろう。

ソウルの中からツヴァイヘンダーに代わる武器を取り出す。銘を白王の特大剣。とある白銀の国の王の剣。といっても性能は劣化しまくっている上に耐久力はほぼない。理由は私が薪の王だから。長い年月灼かれ続けた結果私のソウルの中にあった武具は大半が灼けてなくなるか性能が劇的に落ちている。今のこれではツヴァイヘンダーよりも弱いだろう。

 

えーと、お、あった。あった。

ソウルの中からとあるアイテムを見つけ、それを躊躇いもせず白王の特大剣にねじり込む。

 

白王のソウル、私が殺し彼の王が残した魂を彼の王が使っていた武器に入れる。灼けた白王の特大剣が仄かに光る。よし、性能を確認。うん、これでいける。

ロスリック騎士たちはそれぞれの役目を全うしつつこちらを殺しにかかっている。悪いが蹂躙させてもらう。特大剣を振るう。大盾持ちが防ごうとしたが残念。特大剣に魔力を通す。すると特大剣は青い光を纏い、また、その青い光でただでさえ広い攻撃範囲がさらに延びていた。今の一撃で敵は陣形を変える他なくなった。大盾持ちは軽微なダメージで済んでいるが光の刀身の部分は盾で防ぎきれていない上に盾を貫通して直剣持ちたちに大きなダメージを与えた。

相手はこちらが攻撃した隙を突く戦法に移行したのだろう隊長含む5人で囲んでくる。ソウルの中からまた別の武器を取り出す。煙の特大剣。反逆の騎士レイムが灰のナドラに見出だされ手にした熔けた溶岩の塊のような刀身の特大剣。こちらにも先ほどと同じようにレイムのソウルを入れて性能を戻す。

そして刀身に闇の炎を纏わせる。黒と橙が混じった炎が刀身にまとわりつく。地面に剣先を押し付け炎を解放する。全周囲に球状の炎が自分を中心に放たれる。対応できずに直剣持ちが吹き飛ばされ死ぬ。大盾持ちはガードでなんとか耐えていた。隊長格は軌道を読み切り回避。隊長格は後だ、弱っ大盾持ちを先に潰す。再び刀身に闇の炎を纏わせる。両手でもって解放するように振り払うと闇の炎は刀身を覆い隠しリーチも延びた炎の鈍器のように大盾持ちを襲う。ガードで防ぐ騎士たちはしかし炎に焼かれ呻き声を上げながら倒れた。

 

さて、と。派手にぶっぱなしちゃったし彼には…バレてないか。あとは隊長格だけだしツヴァイヘンダーでも大丈夫かな?

 

煙の特大剣をソウルに戻しツヴァイヘンダーを装備する。隊長格もエンチャントが切れていたためかこちらが武器を変えている間にエンチャントをかけ直していた。

お互い見合い同時に踏み込む。ツヴァイヘンダーによる刺突、盾で受け流されそのまま直剣による振り払いが来る。前進しツヴァイヘンダーで強引にガードし、腹に蹴りを見舞う。流石に体勢は崩せないか。逆に盾で殴りかかられこちらがよろめく。相手がその隙を見逃すはずもなく直剣での突きを放たれる。頭を傾けてギリギリで避ける。踏み込んでからのかち上げを踏ん張ってのガードで耐えられる。かち上げをした反動を使い盾に蹴りを入れる。かち上げをガードして油断していたためか腕は大きく開き胴体ががら空きになる。ツヴァイヘンダーを胸に突き刺し踏み込んで刺し貫いた隊長格ごとツヴァイヘンダーを担ぐとそのままツヴァイヘンダーを水平に振り払い隊長格を聖堂の壁にへと叩きつける。

 

たまには彼の真似でもしてみようか。ごめんねツヴァイヘンダー…

 

まだ動こうとしていた隊長格。彼が立つより先に投擲されたツヴァイヘンダーが突き刺さり今度こそ絶命させる。

 

 

攻撃力が足りない。刀は相手がフルメイルなのと俺の腕が足りないせいでその火力を発揮しきれていない。斧とハルバードは火力が安定しているがそれだけだ。3対1の状況でダメージ覚悟で安定火力をぶつけたところで手痛いダメージを受けるのは自分だけだ。アルシアのように特大剣があるなら突撃してもダメージは受けるだろうが1体ずつ確実に殺れるだろう。まぁ、無い物ねだりをしても仕方がない。リーチのあるハルバードである程度の距離を保ちつつ削る。現状ではこれしかない。

1体の騎士が突撃してくる。直剣による振り払い、身を屈めてやり過ごす。鋭利な手甲による引っ掻き、後ろに引き避ける。上体を持ち上げてからの直剣の叩きつけを斧で強引に受け流しハルバードで刺しカウンターを決める。追撃をしようとしたが後ろから別の騎士が直剣で水平斬りをしてくる。それを避けるために屈む羽目になり追撃は失敗に終わる。

3体目は鎧の状態を見るに3体の騎士の中で一番ダメージを負っているのだろう。今のところは静観を決めている。まあ、単純に割り込む隙がないのだろうが。同士打ちは無理だな。獣みたいな動きの割には思考は理性的なようだ。やりにくい、その上騎士たちの位置関係を常に把握しなければ手負いの騎士に背後を取られて囲まれる。そうなれば待っているのは死だ。

斧を腰にしまい、ハルバードを背中に背負う。鞘から刀を抜く。こいつしか現状を突破する火力がない。斧とハルバードでの削りではいつか押し負ける。ならば今は一刻でも早く敵の数を減らすことが優先される。

俺の腕が武器に追い付いていないのならば無理矢理にでも追い付くしかない。まずはイメージを固める。刀とは人体、その肢体を効率的に解体する武器だ。力任せに叩き斬るのは得意としていない。刀と人とが一体となり業をもって斬るのがこの武器だ。先ほどと同じように1体の騎士が突撃をしてくる。直剣を叩きつけようとしてくる。重ねるのは達人の動き。振り下ろしに合わせるように刀を振るう。その一刀は騎士の肘の関節部を断ち斬り直剣を持った腕ごと地面に落とす。

 

ん、少しは刀にも慣れてきたか。まぁ、達人ならもっと綺麗に切り落とすだろう。

 

追撃はしない。どうせ他の騎士の横槍が入るだろうし。と思っていたが腕を切り落とされた騎士が自分の腕を拾いあげると傷口を押し当て口からだろうか、冷凍ブレスを吐き出し無理矢理腕を繋げていた。

 

「おーい、こっちは片付いたよ。聖堂の中は安全みたいだしこっちに入って!」

 

アルシアの方はもう終わったみたいだ。やけに早いな。異形の騎士たちも一旦引くようだ。ならばこっちも引かせてもらおう。

アルシアと共に聖堂内に入る。奥に誰か座っているようだ。

 

「おぉ、お待ちしていました。火の無い灰。私はエンマ。この城、ロスリックの祭儀長。貴方にお伝えすることがあるのです。薪の王はこの城にはいません。皆、帰っていったのです。この城の麓に流れ着き、淀んだ、かつての故郷へと。…高壁の下に向かいなさい。大城門の先、この小環旗が貴方を導くでしょう。」

 

大城門、さっき異形の騎士たちが引いていった場所だな。

 

「注意なさい火の無い灰よ。大城門には番犬がおりますゆえ」

 

番犬?異形の騎士たちのことだろうか?なんにせよ注意しないとな。

 

「大城門ってさっき騎士っぽいのが帰っていった場所かな?ならあの騎士たちとはまた戦わなきゃだね」

 

アルシアもやる気のようだ。俺たちは聖堂を出て、階段を下る。敵はもういないようだ。自分の持ち物の確認、エストも4口分はある。なんとかなるだろう。あと気になることと言えば

 

「そういえばアルシアはエストの残量どれくらい?」

 

「んー?まだ一杯あるよ~」

 

「それにしても騎士5体も相手によく無傷だったね」

 

それとなく質問してみる

 

「た、たまたまうまくいっただけだから。」

 

まぁ、彼女が何かしらを俺から隠したがっているのはなんとなく気づいていたし詮索するつもりもない。ただ彼女が今のところ俺の味方という事実さえあれば良い。

 

「何も聞いてこないんだね、君は」

 

「必要ならそっちから喋ってくれるでしょ。数時間の付き合いだけどアルシアは嘘とか下手そうだし」

 

「うん、そっか。ありがとう」

 

大城門前に着く。近くに白く光るサインのようなものがある。触れてみると「達人」の二文字が見え、唐突に光りだす。それはやがて人型をとると達人となる。

 

「久しぶりだな弟子よ。此度の戦い儂も力を貸してやろう」

 

これ、アルシアと達人いれば俺要らないんじゃ…

そんな事を思いつつ大城門の中に入る。おかしい、こちらに来たはずの騎士たちがいない。とりあえず警戒しつつ奥へと進む。蔦に覆われた門があった。触れてみるが開かない。

突然、寒気がした。何事かと思い後ろを振り向くと、空間が歪み、先ほどの異形の騎士たちが現れる。さらに大きな歪みがある。そこから出てきたのは虎のような冑をした大きな槌を持った巨大な騎士だった。他の騎士たちと同じく獣のように四つん這いになり、開戦の合図のように咆哮を轟かせた。




作者はアルシアさんは割と気に入ってます。ただアルシアさん初期案では緑衣の巡礼よろしく電波不思議っ子ちゃんにする予定だったのですが気がついたらただのアホの子になっていました。ただおかげで主人公くんもだいぶ口調が崩れてきましたので全然OKです。
ちなみにヒロインではないのでちょくちょくストーリーには関わる予定ですが原作がダクソなのであれ


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ep.8 Boldt of the Boreal Valley

ちょっと雑ですがボルド戦です。fgoでアビゲイルちゃん当たりました。テンション高めの作者です。なお混沌の爪なくて最初の再臨で躓きました


直剣持ちが3体と大槌持ちの巨大騎士が1体。見るからにエンマの言っていた番犬とはあの巨大騎士のことだろう。他の騎士3倍はあろうかという体格をしている。

巨大騎士は俺の方を見ると巨体とは思えない速さで大槌を振るい下ろしながら突っ込んで来る。大槌の単純な振り下ろし。だがその破壊力は抉れた地面を見れば一目瞭然だろう。間違いなく即死ものだ。

巨体騎士が動いたからか他の騎士たちも突撃してくる。

 

「他の奴ら相手にしつつあれの相手をするのか…面倒だな」

 

 

「ほらほら、ぼやいてないで応戦しなさい!」

 

「まったくじゃな」

 

さて、殺るか。

手元のハルバードを回しながらこちらに突撃してくる直剣持ちの対処に入る。見たところ先ほど刀で腕を切り落としたやつのようだ。まっすぐ向かってくるあたり恨んでいるのだろうか?まぁ、何でも良いが…

飛び込みながらの直剣の叩きつけをサイドステップで避け、ハルバードを振るう。それは直剣持ちの頭部に命中し騎士は少し苛立つような唸り声を上げる。追撃は…出来ないよな。横から鉄塊が迫ってくる。前側に転がり持ち手の部分が頭の上を通り過ぎる。数では相手の方が多い。誰かがこの巨大騎士を1人で相手にしなければならないかもしれない。このまま乱戦を続ければどこかでこちら側に限界が来る。

 

巨体へと突っ込んでいく人影…達人だ。巨大騎士の顔へ張り付くと柄で顔面を殴打し、そのまま袈裟、逆袈裟、払い斬りへと続く流麗な連続切り。巨大騎士は堪らず引こうとするがそれを達人が見逃すはずもなく強烈な突きを放ち痛手を与えた。

 

「きょ、強烈だね…」

 

「流石だなあの人」

 

右手のハルバードで1体の騎士を牽制する。もう1体が高速で突進してくるがサイドステップで避け、左手で刀を逆手で抜きそのまま斬りつける。騎士は怯むことなく直剣を叩きつけてこようとするが大振りなため剣の軌道は見えている。ハルバードで受け流し、そのままハルバードを手放し腰の斧に持ち替え首にと叩きつける。

ずいぶんタフだな。今ので殺しきれないとは思わなかった。やはり首を落とすなら刀の方が良かったか。俺が相手をしてる騎士はどちらも死にかけ、といっても攻撃を受ければ形成逆転されるのはこちらの方だ。数とは戦いにおいて重要な要素の1つ気は抜けない。それに達人がいつまであれを引き付けていられるかもわからない。早急にこいつらを片付ける必要があるだろう。

 

 

この騎士やる!

 

特大剣の特徴は強力な一撃にあり、最悪ダメージ覚悟でもお釣りが出るほどの強烈な一撃を相手に叩き込めるのがメリットである。

だが今相手にしている騎士は自分から攻撃をしてくることは少なく、こちらの攻撃を避けてカウンターを狙ってくるのがほとんどだ。特大武器全般はそういう戦法に弱い、この騎士は獣性に狂いながらも自身の戦闘経験からか的確にこちらの弱点を突こうとしてくる。

特大剣を使っているとこういう輩ともよく戦う。もちろん対策は立ててある。特大剣を背負いソウルの中から別の武器を取り出す。赤く太い刀身を持つ剣、ただ普通の剣と違うのは柄の逆側にも同じ刀身を持っていることだ。俗にいう両刃剣というやつだ。この赤鉄の両刃剣はヴァンガルさんから頂いた私向けの筋力向けの業物だ。

さて、攻めようかやるなら徹底的だ。赤鉄の両刃剣を構え騎士に突撃する。横に一振りする。騎士は避けようとするが逃がす気はない。踏み込みつつ柄を軸に刀身を回す。逃げようとしていた騎士の頭に回転し遠心力の乗った刀身が食い込む。

「つーかまえたっ!」

両刃剣を前にと出し、両手で刀身を高速で回転させ連続切りを浴びせる。図体もそこそこ大きいからか怯まない。バックステップで距離を取られる。まぁ、久しぶりに使ったにしては良い感じか。

騎士はなりふり構わずという感じか突進からの貫手での突きから直剣を振るう。これはなかなか強烈だ。うーん、避けるので手一杯かな?

だからこそ気づけなかった。すぐ横にまで迫っていた死に…

 

 

どちらから片付けたものか…

刀を弄びつつ目の前の騎士2体を見る。こいつらはダメだな。完全に獣性に呑まれている。動きは早い、攻撃は確かに強力だ。だが、それだけ。アルシアと戦っている騎士はまだ理性が残っているのか良い動きをしている。ま、アルシアの方が上手だったか。アルシアが他の武器使ってるのも見れたしさっさとこいつらを片付けて達人の援護に行こう。

なんだ?アルシアが相手をしている騎士の動きが変わった。獣性に呑まれたか?

違う…!?達人が相手をしている巨大騎士を見る。あの立ち位置はまずい。間に合うか?いや、間に合わせる!

アルシアの方へと駆ける。手負いの騎士たちが立ち塞がるが1体を斧を右手にスライディングしながら逆手に持ち替え斧を振るい遠心力で振り返りながら騎士の命を絶つ。騎士の死体を踏み台に加速しつつかぎ爪を左手に装備しもう1体に突撃し胸にかぎ爪を捩じ込み心臓と思わしき物を握りつぶす。

まずい…達人を無視し巨大騎士が巨体とは思えない速さで突撃を開始する。その対象はアルシア。大槌を片手に突進しながら地面に大槌を擦りながらアルシアを横殴りにしようとしている。

ギリギリ間に合った。ハルバードと斧を両手に持ちつつアルシアと大槌の間に入り込みガードする。大槌による強力な一撃をその身を犠牲に防ぐ。もともと騎士を囮に火力源のアルシアを潰すつもりだったのだろう騎士は大槌に吹き飛ばされすでにソウルに帰っている。ガードした代償として斧の刃が破砕しハルバードの持ち手がへし折れる。それだけでなく左腕が潰される。頭に衝撃が走り血管がいくつか切れる。視界が赤く染まる。

 

「なんか、前もこんな感じだったぞ俺…」

「だい…」

「大丈夫」

 

武器がまた壊れた。まぁ、生きてればその辺で拾えるからどうでもいいか。

左腕が潰れたか…斧とハルバードももう使えそうにない。あと使えるのは刀だけか…火力が足りない。

 

「あいつ…」

 

アルシアが暴走しかけている。ツヴァイヘンダーがアルシアの手元から消え溶岩の塊みたいな刀身の剣が手に現れた。それを巨大騎士…先ほど殺した騎士たちのソウルによればボルドというらしい…に叩きつける。ボルドはそれを気にもせず大槌を両手に持ち捧げるように掲げる。するとボルドの身体が仄かに光りだす。

 

「先ほどから何度も斬ってはおるんじゃがあの光…あれを纏うと途端に手応えが硬くなる。そろそろこいつの刃こぼれも酷いわい」

 

おぅ、ちょっとは心配しろよクソ師匠。

 

「アルシア。使わないならツヴァイヘンダー貸して」

 

「そんな身体で戦闘に参加するの?正気…?」

 

狂気だな。エスト瓶を一口仰ぐ。さっきの大槌の衝撃でエスト瓶の中身もだいぶ飛び散ってしまった。全身の傷は回復したが潰れた腕や視界不良は治らなかったか…

 

「ほら、回復はしたよ」

「はぁ、投げたりしないでね」

「保証はしない」

 

ツヴァイヘンダーを片手で持つ。なんとか片手でも持てるようだ。

 

「すまんの。武器の方が限界じゃ」

 

達人は戦線離脱か特大剣…か初めて持つがなんとなく手に馴染む。生前にでも扱っていたのだろうか?

まぁどうでもいい。この重さなら使い物にならなくなった斧とハルバードの火力を補って余りあるだろう。

「さて、行きますか…」

横を見るとアルシアがすごい形相になっていた。まぁ、立場が逆なら俺も頭に血が昇り今すぐにでも突撃していただろう。

 

「アルシア落ち着いて…。そんなんじゃそっちも怪我するよ」

「すでに重傷者がなに言ってんのさ!?」

 

良い感じのテンションだ。少しは冷静さを取り戻したみたいだ。

 

「俺は先に進む。使命ってのを果たすために。そのためにはボルド…とりあえず今はあんたが邪魔だ…!」

 

ツヴァイヘンダーを片手に突進する。大槌で押し潰そうとするがツヴァイヘンダーを振り払い遠心力を使い前に加速する。大槌を避わし滑りながら身体を捻りツヴァイヘンダーを振るう。確かに手応えが硬い。ボルドは身体をを少し浮かし地面にプレスする。斬った反動を使いギリギリで範囲外に退避する。

そこにアルシアが横から斬りかかる。あの剣じゃ斬るというよりは殴るなんだろうが…

ボルドは横目でアルシアを確認するとその巨大でタックルを繰り出す。アルシアは手に持つ異形の大剣を盾代わりにすることでなんとか受けきる。

 

「これだから巨体は面倒な!」

 

あんな武器を持っているくらいだ。やはりアルシアはこういうやつらとも戦い慣れているらしい。ボルドはアルシアを無視しこちらに突進してくる。満身創痍のこちらを先に潰そうということか…なめてくれる。大槌を避わすとボルドは大槌を捧げるように掲げ再び光を纏う。

あの防御力上昇、効果時間は大体30秒ほどかインターバルは無いみたいだし祈るような構え中にしかまともにダメージを与えられないみたいだな。

「アルシア、あの光纏ってる間は攻撃ほとんど効かないけど構え直してるなら…」

 

「無駄だよ。構えてから光纏うのにかかる時間ほとんどないもん。だったらあの光の上から削り続けるしかないよ」

 

「まぁ、そうなるよな。」

 

さて、なら防御上げてる分殴って殴って殴りまくって中々死ねないことを後悔してもらおうか。大槌の叩きつけが迫る。そんな大振りに当たる俺たちではない。

ダッシュしながらツヴァイヘンダーを振るいボルドの脚を払う。ボルドは振り返りながら大槌を振り払うがツヴァイヘンダーを盾代わりにして防ぐ。直撃よりマシだろう。吹き飛ばされるがツヴァイヘンダーを床に刺し無理矢理ブレーキをかける。アルシアは後ろから両手持ちの特大剣で薙ぐがやはり目立ったダメージはない。

ボルドはこちらに突進してくる。ツヴァイヘンダーを床から抜きこちらも前に走り滑りながら避ける。ボルドはこちらに振り向くと虎のような冑の口にあたる部分から膨大な冷気を吐き出してくる。

ツヴァイヘンダーでガードする。しかし、冷気が身体を蝕む。身体が途端にだるくなる。

ボルドが突撃してくる。冷気に体力を奪われているのか身体がうまく動かせない。ならばとソウルの中から火炎壺を取り出し下に投げつける。爆風で無理矢理に自分の身体を吹き飛ばし突進を回避する。ついでに身体に熱が戻る。万全ではないが戦えないこともないだろう。

いつまでたっても俺を仕留めきれないのに苛立ったのだろう。今度はアルシアに突撃する。彼女は特大剣を両手で振るい大槌の殴り付けを迎撃し、さらに顔面に一撃を入れる。だがボルドは気にした様子はない。

俺はその間に先ほど一撃入れた足にへと攻撃を入れる。ようやく鎧の一部が壊れ、その身を露にした。ボルドは俺たちから距離を取る。

 

「やらせるかよ…」

 

そう言いつつ一気に距離を詰める。ボルドが大槌を両手で構える。まだ発動はしていない。ツヴァイヘンダーを振るい遠心力で加速し一瞬でも発動を遅らせるためにツヴァイヘンダーをブーメランのように投げる。ボルドもこれには面食らい少し体勢を崩す。

 

「ナイス!」

 

アルシアが突っ込む。特大剣は背負っており両刃剣を構えている。この場合は手数で押した方がダメージが取れる。ボルドの顔面に両刃剣の刃が食い込む。それも一撃ではない。アルシアの手元で太い刀身が幾度も回転し、まるでそれは敵に死をもたらす暴風のようだ。

まだだ。アルシアと一瞬視線を交差させる。跳躍しボルドの眼前に躍り出る。アルシアはバックステップですでに離れている。

 

「はぁっ!」

 

ツヴァイヘンダーの代わりにかぎ爪を右手に装備しボルドの目に突き入れる。引き抜きつつボルドから離脱する。

「アルシア、あとよろしく」

 

アルシアは両刃剣から特大剣に持ち替え両手で前にへと突き出す。それは俺が今しがた抉ったボルドの目に突き刺さり、ボルドのその身体はソウルとなった。

 

 

「ようやく終わった。身体ボロボロだし、防具もボロボロだし。武器はほとんどが壊れたし…」

 

「篝火が出てきたね。休もうか…」

 

だからどこから生えたんだよ。アルシアはアルシアで疑問を持ってくれよ…。なんで何事もなかったように座ってんの?

 

「なんか疲れたし。俺も休も」

 

そう言いつつ横になる。篝火の火を見ていると安心する。急速に眠気が来るがなんとか抑える。

 

「結局、俺の前では本気見せなかったね」

「ん~、やっぱり気づいてた?」

「そりゃあ、ね」

 

ボルド戦の時にあんな異形の武器使ってるの見れば、ね…

 

「そこのところもっと話聞きたかったけど…無理そうだな」

 

「ん?どゆこと?もしかして、私とはもう口を訊きたくないとか!?」

 

「ん、気づいてなかったの?身体、透けてるよ。この世界は時間も空間の繋がりもめちゃくちゃなんだろ?なら、アルシアと俺の一時的に重なった世界が離れようとしてるんじゃない?」

 

「あ、ホントだ。もうお別れの時間か~」

 

ま、いつの間にか勝手に帰りやがった達人もいることだしな。

 

「じゃ、またね。アルシア」

 

「またね、か。うん、またね」

 

アルシアの身体は完全に透き通りそして消えてしまう。

 

さて、先に進むか。大扉を開け、崩落した道にでる。そこで小環旗を掲げる。

うん、なんかデーモンみたいなの出てきたね。あ、しかも1体じゃねーや。腕とか掴まれてるんだけど。

 

そしてオレの身体は空へと連れていかれるのだった。




次の話はどうしましょうか?作者の気分次第では番外編とか入れていこうと思います


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ep.9

次の投稿は番外編かつ来年度になります
エレシュキガル当たりました。



デーモンに体を掴まれあの場から飛び去った俺は崩落した砦の跡地のような場所に降ろされた。意外と優しいなあのデーモン…

近くに篝火を見つけた。今までので相当な量のソウルも手に入ったし、高壁の方でやり残したこともある。先にそちらを片付けるか…

篝火を使い祭祀場へ向かう。火防女に頼んでソウルの強化を施してもらう。今回は生命力などの基本的な部分を強化し筋力をさらに向上させ、刀を上手く扱うための技量もそれなりに上げておいた。ついでに楔石という石を使い打刀とかぎ爪を強化しておく。まだまだ余ってるし良い武器が見つかればそれに使わせてもらおう。

次に高壁の塔へ赴き地下に閉じ込められていた奴隷…グレイラットを助け出す。彼からは不死街での頼みごとまで請け負うことになったがなんにせよついでだ。請け負ってはあげた。それに祭祀場でグレイラットの様子を見に行くと彼は盗品を売ってやると言うのだ。火炎壺や投げナイフを安く買えるのでこれからも贔屓にさせてもらうか。

祭祀場に見落としがないか見て回っていると仮面付きの帽子をかぶったレオナールというやつが俺を見ながら怪しい笑みを浮かべ話し掛けてきた。赤い瞳は云々言っていたが興味もないので話し半分という感じで聞いていた。

 

いろいろ終わって高壁の下に戻ってきた。少し進むと亡者が亡犬に襲われていた。どうやら門の向こう側にいる農夫のような格好をした亡者が仕向けたらしい。出来れば相討ちになって欲しかったが亡犬は1体も減ることなく付近の亡者を一掃してしまった。数は4か…

2体かたまっているところに火炎壺を投げつけ爆殺する。残りの2体はこちらに気づき走ってくる。噛みつこうと飛びかかってきたところを頭を地面に叩きつける。もう1体は飛びかかるより前に蹴り飛ばし投げナイフでトドメを刺す。地面に叩きつけた方はまだ生きてるのか…

グシャ…

かぎ爪で頭を突き刺しもう1体も殺す。

 

あらかた処理し終わったので先に農夫の亡者がいたのとは逆に進む。途中で亡犬を見つけたが死体に群がっていたので火炎壺で愽殺しておいた。

 

なんだここは?

 

崩落した通路となっているが問題は大量の巡礼たちが死んでいることだ。大体2いや30は軽くあるな…

そんなことをしていたら死に損なったと嘆いている巡礼に捕まった。彼はヨエルというらしい。なんだか分からないが俺のことを闇の王だなんだと呼び従者にしてくれと頼み込まれたので仕方なしに祭祀場に送った。ヨエルは簡単な魔法なども売ってくれるらしい。魔法、か…興味はあるがすでに魔法を覚えるだけの強化に使えるソウルはない。今は諦めるとしよう。

 

ここはもう進めない農夫のいた方に戻るか。農夫のいた方に行き、レバーを引き門を開ける。農夫は異常に気づき逆側のレバーを再度引こうとするが投げナイフで怯ませそれを阻止する。一気に門の中まで入り込み農夫を刀で一閃する。

崩落した家屋の中に篝火が在った。本当にどこにでもあるなこれは…まだ損耗はなし。なら、休む必要はないな。

大きな家屋の中から二人組の農夫亡者たちが出てくる。1体は鉈、もう一方は三叉鍬か。二人組はこちらを見るやいなや襲いかかってくる…が遅すぎる。鉈を持っている腕を刀で切り落とし、鉈を回収して鍬を持っている方に投げる。鍬持ちの農夫はガードで投擲を防ぐが続く投げナイフが頭と心臓に刺さり絶命する。腕を切り落とした方は地面でもがいていたので逆手で持った刀で胸を貫いて殺す。その後も農夫や奴隷に襲われたが特に問題もなく切り抜けた。

2階の開いているドアから出ると遺体が吊るしてあった。ここ以外に家屋の中や外には遺体が吊るしてある…たぶんそういう文化なのだろう。他所の文化に口出しは出来まい。

吊るしてある遺体の中心が仄かに光っている。確認するためにも一度縄を切り落とすか

遺体を地面に落下させ俺も剥き出しの縁を伝って降りる。光を確認すると遺体のものであろう骨が出てきた。ソウルの業で情報を確認するとどうやらグレイラットの言っていたロレッタという女性のものらしい。グレイラットには残念だが黙っているのも忍びない…報告はするとしよう。

それにしても悠長に遺体を漁っている俺も俺だが遺体が落ちてきた音に一切気づかず木に向かって参拝をしているこの農夫亡者たちも大概だな。まぁ、いい。強化のためにはソウルが大量に必要なのだ狩らせてもらう。

農夫たちは問題なく仕留める。そう、農夫たちは、だ。今俺が相手にしているのはトゲ状のメイスを持った大柄な女性であり、メイスはもちろん呪文攻撃も気をつけねばならない。動き自体は鈍重だしボルドやイルシール騎士と比べるまでもない。炎を身体に宿しこちらを拘束しようとしてくるが引き付けてからのバックステップで避け刀で斬る。浅かったか、いや単純に向こうがデブいだけだろう。大柄な女性はメイスを振ってくるが左手にかぎ爪を装備しその一撃をパリィする。無防備な隙に首を切り落として戦闘は終了だ。呆気なかったな…

一応こいつも聖職者のようだ。スパイクメイスをありがたく頂戴し先にと進む。出てくる農夫たちをスパイクメイスの試しとソウル稼ぎのついでとばかりに殲滅していく。

 

スパイクメイス、使ってみたが良い感じだ。一撃で相手の骨まで砕いたのではないかという確かな手応えや、トゲが刺さることにより相手に出血を強いられる点。なにより火力だな今まで使ったものの中でもトップだ。素早い敵の相手は少し厳しいのが難点か…。それにしても、アルシアから一時的に借りたツヴァイヘンダーも良かったが個人的にはスパイクメイスの方がしっくりくる。

そう思うとボルドの使っていた得物も良いな…そういえばルドレスが錬成炉があれば特別なソウルを扱えるようになるって言ってたか。ただボルドの大槌を扱うには筋力も技量も今の俺には足りないだろうしスパイクメイスで良いか。

 

密集した家屋の中を抜け、ドアが開いている一軒に入る。相変わらず遺体が吊るしてあるしかも大量に…前見えねぇよ、あぶねーな。とか思いつつ壁伝いに進もうとしたらドアのすぐ右脇の床に穴が開いていて落ちた。

そこでやけに懐かしい感覚のするスープと何かの紋章…だろうか?下手くそな太陽の描かれたものだ。ソウルの業で情報を確認…太陽の…制約?どうやらこの紋章を着け、サインろうを使い他の世界に太陽霊として赴きその世界の主を助けることが目的らしい。自分のことで手一杯なのに他人の面倒なんて見るわけないから別に要らんな。

横で煮込まれていたスープを一口戴くとエスト瓶と同じ味がした。道理で懐かしく感じるわけだ…不味いけど。

小部屋から出ると赤い目の農夫を見つけた。こちらを発見するやいなや他の農夫の3倍はあろうかという速度で突っ込んで来る。さらにそのまま攻撃に移行するが突っ込んで来るときの速さはどうした!と叫びたくなるほど遅い。これでは他の農夫たちと変わらない。相手が得物を振るうより先に蹴りを入れ、左手で顔面を殴る。怯んだところでスパイクメイスを叩きつけ吹き飛ばした。まだ動けるのか起き上がろうとしているがスパイクメイスを投げつけ今度こそ息の根を止める。

スパイクメイスを回収するために赤目農夫の遺体に近づくが近くの籠が突然動き出す。その籠の中には何体もの亡者たちが無理矢理押し込まれている。ここまでされても死なないのか…憐れだな。刀を取り出し籠の鉄の間を乱雑に刺していく。やがて籠も動かなくなるが赤目農夫にめり込んだスパイクメイスを回収して籠を横から思い切り殴り吹き飛ばす。これで流石に死ねただろう。

家屋を抜けた先は密集した家屋が続いている。家の中からの待ち伏せにも気をつけねばならないだろう。奥の方には例の聖職者もいる。距離も離れているが魔法を飛ばしてきているから油断はできない。

 

 

これで最後か…聖職者が振るうメイスを同じくメイスを振るうことで相殺する。刀に持ち替え聖職者の本を持っている手を切り落とす。メイスを落としもう片方の手で患部を押さえつつ恨めしげにこちらを睨む。さっさと殺るか。刀を鞘に納め居合いの構え、抜刀。その一撃は正確に聖職者の首を落とす。

 

「こっちも貰うよ」

 

聖職者が落としたスパイクメイスを拾い、ソウルにしまう。これで予備も確保出来た。大槌は高耐久だし大丈夫だろうがあるにこしたことはない。

密集した家屋の最奥にある家の中へと入り壊れかけの階段を下る。外へと続くドアが見えたのでそこに進もうとすると足元に突然赤い文字が浮かぶ

 

〜狂った闇霊 聖騎士フォドリックが侵入しました〜

 

闇霊、か。よく分からんな。ま、あれだ。とりあえず殺せばいいだろう。警戒しつつ進むか…

 

外に出ようとドアを抜けた俺の横目に大剣の刃が見えた。それは俺の首を狙ったものだろう一撃をギリギリで回避し頬を掠らせるのみに留める。

「あっぶねぇッなぁっ!」

 

警戒していなければ死んでいなくとも大ダメージは確定だっただろう。 しかし、避わせた。相手もこれである程度はダメージを与える算段だったのだろう。微かに動揺しているのがわかる。

 

相手の奇襲は潰せたが…いきなり奇襲とかこいつ本当に聖騎士かよ。ならば今度はこちらの番だ。

 

地面を削りながらメイスを振り上げる。が途中で手を離し投擲に切り替える。身を引いてメイスの振り上げを避けようとしていたフォドリックは投擲されたメイスを避けれなられない。が反応は出来たのか大剣をとっさに盾代わりにし難を逃れる。

 

ちっ、今ので仕留めなくともそれなりのダメージは与えるつもりだったが。一筋縄じゃいかないか…

 

フォドリックは盾を構え距離を取る。今のうちにこちらはこちらでスパイクメイスを回収させてもらう。フォドリックの手に唐突に火が灯る。特に熱そうな様子はないしどんな手品なのやら。と、その様子を見ているとやつは火の灯った手を自分の胸に押し当てる。するとフォドリックの身体に赤いオーラのようなものが出てくる。やつは大剣を両手で構えるとこちらに走ってくる。

 

さっきより速い?身体能力を強化する類いか。ま、グンダやボルドと比べればまだ遅いけど。

といっても対人戦は初めて?だよな。油断はできない。

 

大剣を構え、ダッシュからの回転切り。それを避け、踏み込もうとするがディレイをかけてからの凪ぎ払いが俺の目前を掠める。

メイスの攻撃は避けられるな。刀を抜くにも時間がない。と、するとかぎ爪か…いやまだ使うには早いか

メイスを手放し振り切ったままの右腕を取り背負い投げを決める。空中で体勢を立て直され離脱されたが逃がすつもりはない。追撃の居合い、ダッシュによるスピードの乗った高速抜刀による一撃はフォドリックの胴を深く斬る、が致命傷には至っていない。

再び距離を取られあの火を左手に灯すフォドリック。今度は自分の前にと手を掲げる。すると淡い光がフォドリックの眼前へと現れその光は優しい、暖かな火を周りに放出する。すると胴の胴に与えた傷が少しずつ回復していく。

自己回復の類いか…これは面倒だ。道中でそれなりにエスト瓶を使ってしまっている。長期戦になれば不利なのは俺の方だ。目指すは短期決戦だがさっきまでの打ち合いでこちらの手札も大分使ってしまっている。まだ切っていない札と言えばかぎ爪くらいだろう。

これで三度の打ち合い。これで決める!

 

フォドリックが回復しきる前に突撃する。メイスを片手で持ち遠心力を使った横回転の凪ぎ払い、遠心力を殺さぬままメイスを振り上げその反動を使い宙に浮く。宙で身体を回転させ高速で叩きつける。フォドリックら回転凪ぎと振り上げを避わしてみせるが叩きつけは避けきれなかったようだ。しかし、叩きつけ後の硬直を見逃さないように今度はフォドリックが突撃してくる。

悪いが読めている。空中で身体を回転させての全体重を乗せた一撃は強力だ。だが、メイスはその一撃で深く地にめり込み簡単には抜けない。だからこそ俺はメイスから手を放し、低い体勢のまま突撃してきたフォドリックの足を払う。それを避けつつ追撃を仕掛けるためにフォドリックはジャンプし俺の足払いを避ける。

ここだ。この瞬間を待っていた。最後の札を切る。すでにソウルから取り出す準備をしていたそれ…2本目のスパイクメイスを装備しフォドリックに叩きつける。フォドリックはすでにジャンプで宙に居たためその一撃を避けられない。

 

確かな手応えを感じる。フォドリックは吹き飛びながら紫色の霊体を崩壊させ俺の世界から消滅するのだった。先ほどと同じように俺の足元に光る文字が現れる。

 

-狂った闇霊聖騎士フォドリックが死亡しました-

 

ようやく終わったとため息をつきつつ先に進む。篝火を発見したので篝火を灯し再び祭祀場にと帰る。そこそこ貯まったソウルで消耗品の補充とスパイクメイスの強化を済ませる。あとは悩みはしたがグレイラットにロレッタの骨を渡しておいた。彼はそれを見ると乾いた笑いをしながらロレッタに渡すはずだった指環を譲ると言ってくれたのでありがたく頂く。少しの間塞ぎこんでいたが、少し悩んだあと俺のために盗みに出て得たアイテムを売ってくれるそうだ。変に死に急がねばいいが。

祭祀場での用は済んだ。少し休憩したら不死街に戻るとするか。篝火で横になって篝火から来る心地良い熱に浸る。やがて睡魔に襲われ俺の世界は心休まる黒で覆い尽くされた。




物語を創る能力が欲しいのです。

※話数間違えていました。10話ではなく9話です


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番外編!

お正月とは一体?まだエタりませんよ


やっぱりあの人の世界はどこかおかしい。それとも私の世界がおかしいのだろうか?いや、白霊として別の世界にも行ってみたが多少の差異はあれど高壁にロスリック騎士の編隊やイルシールの外征騎士が現れたのは彼の世界だけだ。ならば、イレギュラーなのはやはり彼の世界…もしくは彼自身だろう。

 

だけど、もし彼や彼の世界がイレギュラー…この世界の本来のルールから外れているのなら、私の望みは彼の世界で叶うかもしれない。とするとどうやって彼の世界に行くかが問題、か。世界が交わる程度には彼と私の世界は近い位相にあるはず。

無名の闇霊が侵入しました -

 

「またか~。しつこいのは嫌われるよ。ま、闇霊やってる時点で嫌われようが気にしないんだろうけど」

 

ドラングレイグの時からよく侵入してくる無名の闇霊たち。彼(彼女)らは名前もない不死者でよく私の世界に侵入に来る。というか私がそういうのを呼び込みやすい体質なのだろうか。ドラングレイグでは警告もなしに他の敵のど真ん中に陣取ってこちらの進路を妨害されたしたぶんそうなんだろな~。

今回来たのは刺剣使い。得物は刺剣の中でも大型なエストックか…私の得物は特大剣と両刃剣、刺剣のような攻撃速度の速い武器は苦手だ。一撃の火力はこちらが大きく上回ってるし、殺られる前に殺る。手っ取り早く終わらせる。

ツヴァイヘンダーを構え闇霊を迎え撃つ。闇霊は走りながら距離を詰め、刺剣の一撃を入れ離脱する。典型的なヒット&アウェイだ。ならばこちらにも策がある。闇霊は再び走りながら距離を詰めての一撃。

舐めるな!

その一撃に合わせ自分から一歩踏み出す。刺剣の一撃が横腹を貫き服が裂け血が出るがそんなのはお構いなしだ。強い踏み込みは刺剣の一撃を受けて尚体勢を崩すこともなくツヴァイヘンダーのかち上げに繋げる。下から掬い上げるような強烈な一撃を受け、無名の闇霊の身体は宙に舞う。そこに追撃の振り下ろし。しかし、闇霊も案外やるようだ。空中で身体を捻らせ体勢を整えると盾を取り出し追撃をガードしこちらの攻撃の反動を使い距離を取る。

お互い離れた距離を詰めることもなく懐からエスト瓶を取り出し飲む。こちらは一口分、向こうは2口は飲んでいる。これで状況は振り出しに戻ったがエスト瓶の数はこちらが有利ってところか。

 

無名の闇霊が侵入しました -

2体目!?これは予想してなかった。まずい、合流されると流石に死ぬかも…その前に刺剣持ちを、って、もういないし!

白霊サイン近くに無いかな~在るわけないよね~、って在った。やったこれで勝てる、かも。

 

白霊 リューラが召喚されました -

 

「チェンジで」

 

「出てきたばかりの人に対してそれは酷いんじゃないかな、ドラングレイグの王よ」

 

「マジで帰って胡散臭いし。貴方の力を借りるくらいなら亡者になった方がマシ」

 

「というか君なら無名の闇霊の2体程度どうにでも出来ると思うんだけど」

 

「召喚しちゃったもんは仕方ないし諦めるからさっさと無名の闇霊倒してきてharry」

 

「僕にだけ容赦なさ過ぎじゃないかい?」

 

「は?第一なんで白サインなんて面倒なことしたの?貴方ならサインなんて出さなくても他人様の世界に出入り出来るくせに」

 

ため息をつきつつ目の前の一応青年に目を向ける。元貴族の金髪と青目の魔術師、別世界のドラングレイグで火を継がず自分の世界すらをも棄て、あらゆる世界に存在する代わりにどの世界にも存在できないという矛盾の塊。困ったことに私はドラングレイグでもこれに絡まれた。助言も何度も受け実際に助かっているというのが本当に屈辱だ。なんでこんなところにいるのか…

 

「だって今回メタ回だし」

 

「ごめん人間の理解できる言葉で話してもらえます?」

 

「すまない。なにこちらの話だよアルシア」

 

めたかいってなに美味しいの?

 

「さて、なんで僕がわざわざ白サインなんて出したか、だったかな?」

 

「あ、どうでも良いんであそこにいる闇霊たちに武器なしで突っ込んでもらえます?そっちが殴られてる間に敵ごと叩き斬ってあげるんで」

 

「なんとなくだよ」

 

「死ね!」

 

殺したい

そんなこと思ってたら最初に来た刺剣持ちの無名の闇霊がしびれを切らせて突撃してきた。普通の魔術師はその強力な術を扱える反面、接近戦は苦手な類いが多い。しかし、

 

「邪魔は無しで頼むよ。」

 

そういうとこの男は杖でなく異なる短剣両手にを構え、左手の三又のような短剣…パリングダガーで刺剣をパリィする。

刺剣持ちの闇霊は硬直する。

 

リューラの方は何かを唱え終えると素早くもう1本の短剣…ダガーを闇霊の胸に無造作に突き立てる。

瀕死になる闇霊、しかしまだ生きているらしい。リューラの方は追わないらしい。いや、追わなくても良いのだろう。なぜなら魔術師に対して距離を取るというのは悪手でしかないのだから。

距離を取った刺剣持ちがすぐにこの世界から消えたのも仕方のないと言うものだ

 

「相変わらず便利ね、それ」

 

リューラの周りにはソウルの結晶で出来た浮遊する剣が3本取り囲んでいる。本来なら5本展開だが先ほど刺剣持ちにトドメを刺すため残りの2本は高速で飛んでいった。

 

「追尾するソウルの結晶剣、僕が作った僕しか使用者のいない魔術だからね。元の魔術と比べると破壊力に指向性を持たせたから後ろ取られたりすると射出に時間が掛かるのが問題だけどね。その分威力と射出速度自体はこちらが上だ。それに」

 

そういうとおもむろに浮かぶ剣を取り、背後にいた短剣を持った闇霊の攻撃を捌く

 

「こういった汎用性の高い使い方も出来る。」

 

闇霊はバックステップでその場を離れ、ある程度の距離を取りリューラを警戒する。ソウルの中から大斧と大盾を取り出す。更に杖を取り出し大盾にソウルの強い盾をかける。魔術師対策は十分といったところか。

 

「これは面倒だね。アルシア あの盾どうにか出来ないかな?」

 

「え?早く相討ちにでもなって消えてくれないの?」

 

「む、君の目的達成に僕なら手を貸せるけど?ま、仕方がない。君にそう言われるとなるとさっさと消えてしまうか…」

 

イラッ コイツ ゼッタイ コロス

 

「実際あなたにあんなの問題ないでしょ。手を貸すまでもないわ」

 

「堅いこと言わないでくれよ。こっちももう歳なんだから」

 

不死になったやつに歳とか関係ないでしょ。第一あなたは会う度に青年だったりおじさんだったりで元の年齢すら不詳でしょうが…

 

「ま、僕の目的のためというのもある。アルシアにはまたあの世界に行ってもらわないと困るのでね。物語の都合もある…」

 

最後のがうまく聞き取れない。なんか頭にもやがかかったような…

 

「さて、そろそろ君にも退場してもらおうか。邪魔だしね」

 

闇霊は大盾を構え距離を詰める。近接戦というには遠く魔術を展開するには近い距離を維持してくる。リューラが動く、魔術師にとっては危険な近接戦へ自ら足を踏み入れる。リューラは杖を取り出すとその杖を両手で構え呪文を唱える。

 

「試作品だがこれでどうかね?」

 

杖から刃が現れる。現れたのは宇宙の深淵を宿したような刀身。あまりに綺麗なソレは昔見た蒼の大剣によく似ているが内包している力は瞭然だ。蒼の大剣はただのクリスタル状の綺麗な剣だったがこちらは視るものを魅了してしまう魔剣か聖剣の類いだろう。

それを大盾に突き入れると爆発のようなものが起こる。しかし、試作品というのだその爆発自体はダメージを産み出せないのだろう。

 

「古い月光の波動、と僕は呼んでいる。試作品というかは失敗作の類いでね古の月光の力を魔術で顕現しようとしたんだが、結果は見ての通り中途半端な呼び出しで破壊力なしの波動だけしか呼び出せなかった。これはこれで盾剥がしには役立つから問題はないのだけどね。さて、これでトドメだ」

 

衝撃により盾を持った腕ごと大きく開き無防備な体勢になっている闇霊にリューラは左手に異様に長い杖をソウルから取り出し詠唱する。

 

「さて、さようなら。もう君も用済みだ」

 

闇の特大剣、か。闇の大剣の範囲と威力拡大版。しかも振るうと中からの追うものたちが5つほど発射されて自動追撃。対人戦のこういう場面ではもはや死ななくても死ぬという謎の言葉を言いたくなるほどの逸品だ。

闇霊はその身体に闇色の刀身を叩きつけられ私の世界から消滅した…って用済み?

 

「あなた用済みってまさか…」

 

「ん?なんだい?まるで僕が君の世界に白霊で立ち入るために彼らを差し向けたとでも言うのかい?」

 

こいつならやりかねないし

 

「死ね!」

 

特大剣を振るうが白霊のためこちらの攻撃は当たっても何事もなくすり抜ける。

 

「残念だったね」

 

殺したい。この傍迷惑な存在を世界から消してしまいたい…って出来るじゃん

 

「はい、黒水晶。指定はリューラ。カエレゲス野郎。」

 

「あ、今更思い出したんだ。また今度遊びに来るね。」

 

ようやく終わった。

 

「やっほー、遊びに来たよ。」

 

「死ね!」

 

特大剣を振るうが避けられた。

 

「さて、茶番は終わりだ。物語を進めよう。アルシア あと作者の労力の問題とかもあるしね」

 

まただ…また頭にもやがかかったみたいにうまく聞き取れない。

 

「それでは今から君をあの世界に送る。世界的にはかなり近いようだし簡単だろう。一応どんな手段使うか知りたい?」

 

「私の目的のためにも貴方の目的のためにも私はあの世界に行くべきってことでしょ。手段なんてどうでもいいから」

 

「わかった。さて、がんばってくれよ。君があの世界に行ってくれれば僕もあそこに入れる。そうすれば色々な手伝いもできるし」

 

心底いらないんだけど。あ、身体が透けてきた。というか足下どころか私を中心として上下左右に変なメッセージ出てるけどこれホントに大丈夫?ま、一応リューラは天才にして天災だし問題は…なかったらいいなぁ

 

 

 

「ん、行ったようだね。頼んだよアルシア。君の目的のためにも私の…」

 




※アルシアさんは主人公の世界へ行きましたが当面は出番なしです。祭祀場で待ちぼうけしてもらいます

アルシア「え?」


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ep.10

2話投稿しないとは言ってない


祭祀場で休んだ俺は三度、不死街へと赴き、農夫の亡者や無駄に身体がデカイ赤ずきんの亡者、聖職者etc.を葬った。篝火から進めば塔の上から大弓に狙撃され、火炎壺投げてくる亡者共を始末しに向かえば呪術使いの弟子にされ、横道に入れば骸骨に襲われた上に、それを切り抜けた先にいた火防女になれなかった聖職者とその従者を祭祀場に迎えることになっていた。

今は大弓から狙撃を受けたであろう塔の麓に来ている。大きな扉を開け、中に入る。

 

ガコン、ガコン

 

ん?すでにエレベーターが起動している?

 

俺はスパイクメイスを構えエレベーターの方を警戒する。すると出てきたのは

 

「ウ~ム。」

 

なんというか。なんなんだ?

全体的に丸みをおびたそのフォルム。冑の上の方は狙ったように尖っている。まさしく、その鎧を一言で表すならば…

 

「タマネギ…?」

 

「おぉ!すまない考え事に夢中で気づかなかった!私はカタリナのジークバルド。火のない灰の一人だ。」

 

このエレベーター上にもワイヤーが繋がってるな。ということは…ま、一旦下にも行ってみるか。

 

「おぉ!貴公、下に行くのなら気を付けたまえよ。下には異形の騎士がいた。あれは手強いぞ」

 

異形の騎士…か。まさかとは思うがイルシールの外征騎士じゃないだろうな

 

「警告どうも。代わりといってはなんだけどあんたの考え事もすぐに終わるよ。じゃ、俺は下に行くから」

 

ジークバルドがキョトンとしていたが無視だ。エレベーターに乗り下に行く。

 

「やっぱりイルシールかよ」

 

イルシールの外征騎士がいた。こちらを見るなり突進してきたがギリギリで避ける。相変わらず速いなコイツ…面倒な

 

振り払い、叩きつけ、突進の連続攻撃を避け続く冷凍ブレスをバックステップで避けようとしたが騎士はそれを見てブレスを中止、突進突きに切り替えてくる。こちらはすでにバックステップをしてしまったため宙に身体が浮いている。回避は…出来ないか。ならばとスパイクメイスでガードすることでダメージを軽減する。戦闘続行に問題なし。振り向いて来たところに頭目掛けてメイスを振るう。手応えあり、イルシールの外征騎士は少し怯んだが大きく後方へと飛び退き追撃を避わす。唸り声を上げ突進してくる外征騎士に対してメイスを投げる。外征騎士はそれを気にも留めず避け、こちらに直剣による連続攻撃を浴びせようとする。ソウルから投げナイフを取り出し両手に構え、連続攻撃を掻い潜り外征騎士の右腕、その間接部に投げナイフを捩じ込む。これにより腕はうまく動かなくなり直剣を振るうのはもちろん基本的に獣のように手足で地を這いバランスを取る外征騎士の動きを阻害できる。

無手となったが攻撃は止めない。甲冑目掛けて拳を叩き込む。怯んだところに回し蹴り、蹴り入れた右足を軸に宙に浮き身体を捻らせて左足での踵落としによる追撃をかける。腰に差していた刀を抜き更に追撃、以前見た達人の動きを思いだし、刀による連撃を行う。袈裟斬り、逆袈裟、振り払いと繋げトドメの突き。

外征騎士は怒りの声を上げこちらに攻撃しようとするが腕に刺さったままのナイフが動きを阻害しうまく動けていない。かぎ爪を装備し追撃により破損していた外征騎士の鎧、その中心部に腕を捻り込む。そして外征騎士の心臓と思われる部分を無造作に引き抜くと外征騎士はその身体をソウルに換え俺の中へと吸収された。

 

外征騎士がいた大広間の向こうに扉が見えたので開ける。篝火があったので休憩しておく。一度塔へと戻りエレベーターに乗り最初の入口のところへと戻る。エレベーターの起動スイッチを踏み即座にその場から離脱する。やはりというべきか上からもうひとつのエレベーターが降りてくる。それに乗り塔の最上階へと昇っていると

 

「ウ~ム、ウーン」

 

さっき聞いた声が聞こえた。最上階前にエレベーターが止まらないが足場があったな。後で行ってみるか。

 

最上階に着き周囲を探ってみると大弓の狙撃主らしき巨人がいた。話しかけると

 

「オマエ トモダチ カ?」

 

と聞いてきたのでとりあえずyesと答えておいた。後々知ることになるがこれで大弓の狙撃出来るところなら俺以外の敵を狙うようになるそうだ。

 

再びエレベーターに乗り先ほど見つけた足場に乗り移る。声が聞こえる方へと行くと屋根に腰かけて悩んでいるジークバルドがいた。

 

「どうしたの?」

 

「おぉ!貴公か!なにあれを見てみろ。あれをどうにかしないと進めそうになくてな。あれは危険だ貴公もむやみに手を出そうと思うな」

 

ジークバルドが指差す先には岩のような身体をした化物がいた。全体的なシルエットは人間に酷似している。しかし、まず大きさが格段にデカイ。飛べることはないだろうが数秒ほどなら滞空は可能であろう小さな翼を持ち、岩のような身体にはヒビが入っている。手に持つ大槌もその身体に見合ったもの。つまり当たれば即死ないし瀕死は確実だろう。

 

「悪魔?」

 

「貴公はあの類いを見るのは初めてか?あれはデーモン。混沌より出でる化物よ」

 

デーモン…か。さて、別にそこに用はないけどあれを野放しにしておく訳にもいかないな。それにあれを倒せばそれなり以上のソウルを手に入れられるはずだ。

 

「あれ、殺らないなら俺が貰うよ」

 

ジークバルドに一方的に告げ屋根を降りる。

 

「貴公!なぜ待てなかった。」

 

ジークバルドも渋々だが参加したようだ。見捨てない辺り善人なのだろう。死なないために自分を強くしようとしている独りよがりの俺とは違うな。

デーモンの元にたどり着く。デーモンはこちらに気づいたのか手に持つ大槌を振りかぶりこちらを押し潰さんと振り下ろす。しかし単調すぎる。今更そんな攻撃には当たらない。大槌を避け、デーモンの股の間を抜けて足の後ろを取る。そこにスパイクメイスを叩き込むが手応えが鈍い。打撃に対しての防御が高いか?ならばと刀を抜き一閃するがこちらも大したダメージにはならなかったようだ。メイスで殴った方が早いな。

ジークバルドはというとソウルからツヴァイヘンダーを取り出し特大剣の強烈な一撃でデーモンにダメージこそ与えているがデーモン自体は大して気にした様子もなく大槌でジークバルドを押し潰そうとしている。あれでは次の回避は間に合わないだろう。仕方がない…

 

「深追いしすぎだジークバルド」

 

ジークバルドに注意を促しつつスパイクメイスの全力振りでデーモンの大槌を迎撃しジークバルドに攻撃がいかないようにする。

 

「貴公!恩にきるぞ」

 

やっぱ惰力が違うな。相手も全力で振ってくれば確実に負けるか。

デーモンに対してジークバルドも俺もなるべく後ろを取り攻撃する。ジークバルドの持っているシールドには大型の刺突スパイクがありツヴァイヘンダーの攻撃の隙をそちらで消している。しかし、やはりというかデーモンはあまり堪えてないように見える。

デーモンが大槌を大上段に構えたのを見てスパイクメイスを持ち走る。振り下ろして来たところを低い姿勢になり地面スレスレを這うように加速することで避わしその加速とスパイクメイスを振るう遠心力をもってデーモンの足にメイスを打ちつける。これには流石のデーモンも唸り声を上げこちらを押し潰さんとジャンプしヒップドロップをしてくる。しかし、その頃には俺はすでに攻撃も終わり離脱している。むしろその行動により隙ができ攻撃の頻度も高くなる。俺の振るうメイスが頭部を打ち据え角のようなものを破壊し、ジークバルドの振るうツヴァイヘンダーがその身に入るヒビを更に拡大させる。

殺しきる!スパイクメイスを肩に乗せ力を溜める。デーモンが身体を起こそうと飛び上がった瞬間を狙って振り下ろしその頭部を押し潰す。一際大きな唸り声を上げデーモンの身体は崩れた。

 

「ん、終わったか」

 

「おぉ貴公あまり無理はするものではないぞ」

 

ジークバルドは俺に酒を渡すとその場で眠り込んでしまった。デーモンは倒したしここに用はないんだが帰り道探さないといけないしついでにここらにいる敵性存在は排除してデーモン討伐を手伝ってくれた彼の安眠を守るとするか。

 

ざっと大広間や家屋の裏などを調べ使えそうな物も拾っておく。家屋に入り籠に乱雑に押し込まれた亡者たちが天井から落ちてくるのを排除し、奴隷亡者たちもメイスで叩き潰しておく。二階の屋根に出ると聖職者が2体待ち構えていた。流石に死ぬかと思ったが1体目を腕を刀で切り落とし無力化し、2体目がメイスを振るってきたところに文字通り肉盾にして殺す。2体目が詠唱に入ったところにスパイクメイスを投げ詠唱を止め、体勢を崩す。近づいて後ろを取りかぎ爪でバックスタブを決めトドメを刺した。

辺りの制圧を終えた俺は屋根にあるアイテム類を回収し下に続いているであろう塔の中へと入る。流石に鎧を着たままだと足に甚大なダメージを負いそうだ。一度鎧の類いをソウルに戻し下着になる。そして下に気を付けつつ飛び降りていく。降りた先は大きな階段の手前だった。

 

鎧などを身に纏い辺りを見ると階段の上には大きな扉がある。登って開くかを確認したがダメだった。どうやら中から鍵がかかっているらしい。仕方がない、と諦めて後ろを向くとこちらに近づいて来る集団がある。聖職者を先頭に農夫が2人と亡犬が2匹か。ま、問題はないだろう。まだこちらに気づいていないようなので火炎壺と投げナイフを取り出し息を殺す。ある程度近づいたところで亡犬の足元に火炎壺を投げ火だるまにする。火を消そうと地面でもがいているところに投げナイフを投げつけ生命の火を消してやる。ついで爆発に巻き込まれたらしい農夫たちは無視し聖職者が呪術を唱えようとしていたのでこちらには予備のメイスを投げる。聖職者は呪文を中止し避けようとするがその体型のせいで腹にモロにメイスを受ける。一気に近づき外征騎士に対して行ったように刀による連撃を浴びせる。やっぱり、達人の動きにはまだまだ遠いな…。そんなことを考えながら最後の突きを入れ、まだ生きているようなので顎に向かって蹴りを入れその反動を使って後退する。

「邪魔だ」

 

下がった先に火を消火し終えた農夫たちが武器を手に襲いかかろうとしていたので背中に背負っていたメイスを取り片手で振り払いながらその場で1回転し、まとめて吹き飛ばす。

聖職者は間合いを詰めメイスによる叩きつけをしてきた。単調すぎるそれを左手に装備したかぎ爪で強引に反らしパリィし、逆にメイスで叩き潰してやる。

こんなものか…

 

予備のメイスや投げナイフを回収しつつ今の俺の状態を確認する。

道中も含めそれなりに刀の扱いにも馴れてきた。まだ達人とまではいかないがまず俺の戦闘スタイルは1つの武器に固執したものでもないし問題はないだろう。だが刀という武器は気に入っているのでこれからも世話になるだろうし鍛練は続けるべきだ。

次にメイスだが初めて扱っているとは思えないくらい手に馴染む。もしかしたら生前の俺もメイスないし重めの武器を扱っていたのかもな。投擲するにしても槍と違い刺さらなくても相手に大きな痛手を負わせることも出来る。流石に運用の楽さという面では槍や投げナイフの方が優秀だけどな。あとはかぎ爪だが耐久性は皆無に等しいが相手の攻撃を反らしたりトドメを刺す時に重宝する。距離次第では武器のリーチより攻撃速度の方がいい場面もある。今の俺ではメインでは扱えないだろうがサブや最後の詰めでの運用が最適だろう。

 

後ろの扉も開かないみたいだし骨片だったか、篝火に移動できる物もあるみたいだしそれで戻るか。

 

途端、重々しい音が後ろから響く。それはどうやら扉の開いた音のようだった。しかしあの扉は中から鍵がかかっていた。つまり開いている扉の向こうには敵か、もしくはアルシアやジークバルドのように同じ灰の誰かということになる。

重々しい音が鳴り終わり赤い霊体が現れる。

敵か闇霊なんぞいつの間に来たのか。そんなメッセージは…どうやらさっきの戦闘中に出ていたらしい。戦闘中に確認なんぞ出来るかバカ

考え事に耽っていたら闇霊が声をかけてくる。

 

「我が名はヴィンス!さぁ、いざ尋常に…ってあぶな!?」

 

外したか…予備のメイスが勿体ないな。なんかいきなり攻撃とはどういうことだなんだと叫んでいるが無視だ。第一侵入してきた分際で正々堂々を謳うとは滑稽だな。

 

「名乗りも上げんとは…貴様それでも騎士か!?」

 

知るか。こちとら記憶喪失なんだ、着けているものは鎧だがそれもなんでかはよくわかってないしな。すこし挑発しとくか

 

「ずいぶん余裕だね?バンズだっけ?そこにいられると邪魔なんだけど」

 

「き、貴様…よっぽど死にたいらしいな」

 

投げナイフを2本取り出し同時に投げつけ、すこし間を開け再度投げる。

バンズはそのどちらも避ける。回避は目を見張るものがある。今のところ目に見える武器は直剣だけか。盾の類いもない。左手がフリーだし何かしら隠し玉はあるだろう。

 

刀で斬り合うか?いや、耐久性で負けるし却下だな。メイスで叩き潰す…この手に限るな。

メイスを横に払うが避けられる。身体を捻りメイスを地面に押し付け掬うように振り上げ砂を飛ばし目潰しにする。これには対応…してきたか。やつは自由の効く左手で砂の目潰しをガードしそのままこちらに突撃をかけてくる。

 

 

こちらの名乗り上げの最中に攻撃してきた敵を見据える。そのあとに至ってはわざとやってるじゃないかと言いたいくらいに失礼な名前間違えをしやがった。

しかも挑発の直後にこちらの対応なんぞ知らんとばかりに投げナイフを投げてくる。メイス投げてきたときといい手癖が悪すぎる。

やつの武器は今のところ確認出来ているのは背負っているメイスと腰に差してある刀、あとは先ほどから攻撃の合間に投げてくるナイフと多岐に渡る。しかもメイスの横振りは避けた途端に下からの掬い上げで目潰しを行ってくるなど戦いかたが騎士のそれではない。

目潰しをなんとかガードし突撃を仕掛けたがその途中で光るものが見えたから回避に移る羽目になる。やっぱり投げナイフじゃないか…

 

 

今のを避けるか。ま、いいや。ローリング回避の起き際に踏み込み左手で逆手抜刀そのまま斬りつける。ようやく当てた。畳み掛けるかちょっと怯んだところに足払いをかけ転倒させる。そのまま右手に持つメイスを振り上げトドメを刺す。しかし、トドメを刺せると確信した一撃をギリギリで転んで避けられる。すこし苛立ちを感じ、地面に叩きつけたメイスを擦り付けながらに振り上げ闇霊を吹き飛ばしてやる。

 

 

 

地面を転がり醜くもなんとか決死の一撃を避わしたが続く一撃で吹き飛ばされた。肋を何本か折られる程度で済んだがエスト瓶を飲む間もなくやつは刀を手に俺を殺そうとしてくる。躍起になっているやつは刀を大上段に構え斬りかかってきた。

ここだ!

やつの大振りな一撃を刀で迎撃し刀を弾く。これでやつに致命的な…

 

「これで!」

 

「これで、なに?」

 

なに…が?俺の剣は確かにやつの刀を弾き飛ばしたはず。なのになぜ…

 

 

敢えて刀で目に見えて大振りなんてしたんだ迎撃してくるであろうことは予想している。だから刀を振り下ろす際に手から力を抜き刀だけを弾かせてやる。

ほら、簡単にかかった。

刀を迎撃するためにそいつの放った一閃。その行動が致命的な隙となる。

左手で喉を掴み肺に酸素がいかないようにし意識を奪い取り、かぎ爪で胸を貫く。

 

「ふぅ、やっと終わった…!?」

 

途端、腹が灼けるように痛む。良く見れば殺したはずの闇霊はいまだにその形を保ち右手に持つ直剣は俺の腹に刺さっている。

蹴りを放ち引き離そうとしたがその必要もなくあちらから距離を取ってくれた。

流石にあと1、2発攻撃をもらうと死ぬか?

 

「なんであれで死んでないの?殺った手応えはあったけど。ま、いいや。何回でも殺せばいいんだし」

 

しかし、闇霊は懐から黒い水晶のようなものを取り出しこちらに一方的に吐き捨てる

 

「今回はこれくらいにしてやる。いいか、俺はヴィンス。ロザリオの指のヴィンスだ。近いうちにお前を殺す男の名だ」

 

「バンズ?」

 

「ヴィンスだ!」

あ、消えた。ま、勝手にがんばってくれ。殺されるつもりもないけど。

 

なんか疲れたな…奥の広間には立ち寄らず骨片を取り出し砕く。目を一度瞑り、次に開くと外征騎士を倒した先にあった篝火の前にいた。

すこし休憩したら先に進むか。あの広間を調べるのはまた今度だ。




槍は当面お休みいただきます。さぁメイスよ某ガンダム作品並に働くがよい


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ep.11

書き貯めておいた分だしさっさと出しちゃいましょう。
あとUAが1000超えました。こんな作品を読んでいただき本当にありがとうございます。完結目指して頑張りますね


なんで?と声がする。肩に担いだ女がうるさい。足が潰された程度でなんだというのだ。別に足を動かさなくたって働けるし多少の介護は必要だろうが生きてはいける。

騎士様、お願いですから。私を家族と同じ場所へ。女が泣き叫びながらこちらの背中を叩いてくる。鬱陶しい。

王にはもし村に生き残りが居れば何があったのか聞きたいから生きて連れてこいと命令されたのだ。ならばこの女には生きてもらわねばこちらが困る。せっかく生き残りを見つけたのだ命令を果たさないとあの戦場と化した村で死んでいった皆も報われない。

 

「なんであれあんたは生き残った。なら生きろ。じゃないとさ、あんたを助けるために死んでいった皆の死が無駄になる。もう、いや、いつだってあんたの命はあんただけのものじゃないんだ。泣きたいなら泣けばいいあんたの家族を弔いたいなら祈ればいい。それくらいなら許してやる。だけど死ぬことだけは許さない」

 

そう言って城まで連れ帰って。王に報告をしに城に帰って

 

「お前はもう少し女の扱いをしっかりとしろ。肩に担ぐのはなしだろ。普通ならそこはお姫様抱っこだろうが。まだまだだな○○」

 

「はぁ?そんな離ししに来た訳じゃないし帰るよ。その女の判断はそっちに任せた」

 

「おい焦るな。で?どうだった?」

 

「ん、そっちの読み通りかな。村を襲いに来たただの山賊じゃなかった。あれは確実に兵としての訓練を積んでいた。武器も良いもの使ってたしもしかしたら精鋭だったのかも」

 

「やっぱり隣の国からの嫌がらせ、か。こちらの損害は?」

 

「村にいたやつはそこの女を除いて皆殺されてた。その女も逃げられないように足を潰されてたし顔は良いから娼婦にするつもりだったんでしょ。こっちも俺以外は…」

 

「そうか…。だが下手に手を打てば取り返しはつかない。どちらかの国が滅びるまで戦い続けるだろうな。その場合…」

 

「あぁ、俺が戦いの先陣を切る。いつも通りだ。」

 

「先走るなよ。まだ戦うと決まった訳じゃない。それにお前に死なれると困る」

 

「俺の命は王が拾ったものだ。王が死ぬか、死んでこいと言われるその日まで俺は死なない。」

 

「ふ、お前に死なれるとお前の秘密が他国のやつらにばれてしまうからな。そうなればどのみちこの国は終わりだよ。そうだ。あとその村娘の面倒はお前が見ろ。お前が拾ってきたんだからな」

 

「は?」

 

「俺の命令には逆らわんのだろ?」

 

「了解。衣食住はこっちで用意するよ。職に関しても、なんとかなる、かな?」

 

……

 

「ん、また寝てたのか」

 

前は目覚めたらアルシアがいたんだっけ?

 

「貴様!わざわざ再戦しに来たというのに寝ているとはどういうことだ!何度寝首を掻いてやろうかと!!」

 

「えっと。ヴィ…ヴィ…」

 

だれだっけ?こいつ?ま、いいや。赤いし敵だろ。袖に隠していたナイフを抜き投擲する。しかし、あと少しということころで避けられてしまった。せっかくアドバンテージ取れると思ったのに…

 

「あぶな!?」

 

「えっと?ヴぃんず…だっけ?わざわざ起きるの待ってたの?バカだろ」

 

「ヴィンスだ!貴様俺を愚弄し続けるのもいい加減にしろ」

 

「ヴィンセントに改名した方がカッコいいよ」

 

「カッコよさなど求めとらんわ!」

 

「やる気あるの?」

 

「貴様にだけは言われたくないわッ!」

 

こうしている間にも攻撃を続けていたが向こうも今回はこちらの攻撃を避け、また右手の直剣で応戦してくる。

右手に持つメイスを叩きつけ即座に持ち手を短くし横に振るう。左手で刀を逆手抜刀しメイスを振るった反動で切り裂こうとする。しかし、胴を逆袈裟に咲く予定だったそれはやつの身に付けている防具の表面を切り裂くのみに留まる。

やつの動きが変わる。左手に細身の剣…レイピアを取り出し、こちらの攻撃後の隙を狙ってくる。

突然のテンポ変化と攻撃後の隙を突かれたこと、レイピアという攻撃速度が重視された武器のため避けることができない。仕方ないのでメイスから手を離し、不恰好なタックルで距離を取るついでに向こうの腕が伸びきる前にレイピアにあたりに行きダメージを少なくしておく。

 

「お前はふざけたやつだが強い。だから俺も本気で行くぞ」

 

メイスを握り担ぎ、相手の情報を整理する。

 

「ふーん、右手は直剣。左手にレイピアと聖鈴だっけ?奇跡を扱える媒体、か。

で?あとは?まさか俺を殺すために用意したのはこれだけじゃないよな?」

 

「なにを強がりを…」

 

本当にこれだけかよ。ならもう見るべき点もない。前回同様一度殺しても死なないだろうけどあれも奇跡の類いだろう。なら次を発動させる時間を与えなければいい。

メイスを両手で持ち横振りを連続で行う。低い体勢で懐に入ろうとしてきたところで持ち手を短く持ち突き上げをお見舞いする。ギリギリで直剣を盾代わりにして致命傷は避けてきたか。メイスから手を離し腕を上げ、ソウルから予備のメイスを取り出し投げつける。まだ息の整いきっていなかったやつはそれに直撃する。

「ぐッ!?」

 

「どうした?さっきまでの威勢はどこに消えた?まだ武器は握ってるんだろ?だったらその剣で立ち向かってこい。出来なければこのまま死ね」

 

「ハァッ!」

 

左手のレイピアの連続刺突、合間を縫って直剣の斬撃を繰り出し。左右の武器を同時に突きだす。左手にかぎ爪を着けたまま刀を抜刀し右手のメイスも合わせそのすべてを受け流し、ガードする。

 

「まだまだッ!」

 

ヴィンスは一度引き、左手に聖鈴を構え詠唱を開始する。止めようと思いナイフを投げつけるが彼の身体には淡い光纏われ当たったナイフも防具に刺さることもなく落ちる。

この感じはボルドの時の感覚に似ている。そうしている間に詠唱は完了したのか聖鈴を中心に電撃が伸びている。それはまるで槍の様に見えた。

 

「喰らえ!」

 

ヴィンスは身体を弓なりに反らしその槍状の雷をこちらに向けて放ってくる。投擲されたそれはかなりの速度でこちらに飛来し、避けるために行動を開始したときにはすでに俺の右肩を掠めた後だった。これでお互い痛み分けか。

 

「胸部への直撃を狙ったが…雷の槍をかすり傷だけで済ませるとは」

 

ヴィンスはさらに雷の槍を放とうと構えに入る。対策は…あれがあるか。投げるために身体を弓なりに反らし始めたところに火炎壺を投げつける。あの光で対して効いてないだろうけど視界を奪うには十分だ。

 

 

 

雷の槍を投げようとしたところで投げつけられた火炎壺に視界が奪われる。爆炎の中に右に避けようとしたやつの影が見えた。それに向かい投げつける。しかし、なにかに当たったような手応えもなく爆炎が晴れてもやつの姿が見えない。次の瞬間俺の意識はなくなり、惜別が発動した。これは致命傷を一撃だけなかったことにしてくれる。しかし、負った傷自体が治るわけではなく即刻回復しなければ掠めただけでもこの身体はもたないだろう。いまだに脳が揺れ距離を取れない俺はそのままメイスを叩きつけられ元の世界へ帰ることとなった。

 

 

 

なるほど。あの奇跡は死んだ事実だけをなくすから傷自体は消えないんだな。

火炎壺を投げたあとソウルから取り出したロスリック騎士の鎧を適当に投げたあとメイス地面に押し付け跳躍することで死角を突きさらに宙で身体を捻り強引にメイスを引き付け必殺の一撃と化したそれを頭に叩きつけた。やはりというか即死はしなかったが頭を打った甲斐もありそのまま動けなくなったやつを手早く倒すことができた。

「なんか疲れたけど先に進むか」

 

周りは木などが生い茂っている。奇襲とかにも気を付けないとな。少し進むと下の方に人型ではあるが黒い肌に山羊のような頭をした異形がいた。こちらに気づいても攻撃してくる様子はないが唐突に身体を抑えなにかに堪えているように震わせている。

突然背中に翼のようなものを生やした異形は先程と違いこちらに突進し手に持った大型のナイフで攻撃を仕掛けてくる。

攻撃速度はかなり早くしかもそれを連続で行うので面倒なことこの上ない。大上段からの振り下ろし、逆袈裟、振り払いを左右に一回ずつの合計4連撃か。

攻撃後はそれなりに隙が出来るようだな。メイスを振るい吹き飛ばし体を起こそうとしたところに投げナイフを飛ばす。流石に殺しきることは出来ないが起きる時間を多少は延ばせる。その間に刀の突きを見舞う。

 

異形を倒し終え先に進んだがその先には3体とかほど同じような場所にいたため迂回路を進む。だがこれが不味かったか足を踏み外し死にはしなかったが亡犬とずいぶんとワイルドな格好をした手にかなりヤバそうな包丁を持つ女性の前に落ちる。一瞬の静寂は吠え始めた亡犬の声によって動きだし俺に向かって走ってきた亡犬の1匹をギリギリで蹴り飛ばし崖下に落とす。女の方はというと手に持った包丁で斬りつけてきたがそれを屈んで避ける。もう1匹残っている亡犬が噛みついてきたので自爆覚悟で火炎壺を近くで爆発させ爆風を使い離脱と亡犬の排除を行う。あと少し飛んでたら命ごと現世から離脱するところだったが死んでいないので無問題だ。

これで残りは包丁持ちの女だけだ。メイスは通路が狭すぎて使えない。刀とかぎ爪で戦うか。包丁での叩きつけをバックステップで避けながら刀を振り払い腹を薙ぐ。突撃を仕掛け包丁による叩きつけを誘発させる。重心を右に傾けつつ叩きつけを誘導し右足でステップを踏みそれを避けつつ後ろを取る。背中胸にかけてを刀で貫き蹴りを入れながら一気に抜く。まだ動くようなので刀を手放しかぎ爪だけになると立ち上がろうとしたところを踏みつけ今度はかぎ爪で腰から腹を抉ってやる。

 

息が荒い。連戦も続いているし祭祀場に戻ってきちんと休んだ方がいいか?いや、行けるところまで進もう。ナイフや火炎壺も底が見え始めているし武器もそれなりに損耗しているがまだまだ大丈夫だろう。辺りの使えそうなものなどを回収し立ち去る。点字で書かれた聖書も手に入れたのでイリーナに渡せば奇跡を買うこともできるだろう。

道なりに進んでいくと異形たちがたむろしている石橋を見つけた。どうやらここから先に進むことができそうだが、4体か。変身前に1体倒したとしても3体。ちょっときついか。武器は大鎌持ちと大短刀持ちが半々といったところか。

近くの石を拾い物陰から投げる。それに気づいた1体が近くまで来たところで刀で首を切り落とし絶命させる。それによって他のやつらが気づくがこれならもう1体を変身前に倒し2対1に持ち込める。これなら勝算は十分だろう。一斉に変身を始めたので鎌持ちの1体に一気に近づきメイスで吹き飛ばす。変身を終えた1体が動こうとしたところを殴り飛ばし先ほど吹き飛ばした方にメイスを投擲し仕留める。まともに動けた異形の大短刀による一撃をかぎ爪でパリィし刀で刺し貫き地面に突き立てる。殴り飛ばした大鎌持ちが近づいてきたので火炎壺を投げ足止めし、地面に突き立てた方を刀で脊椎をなぞるように切り裂き殺す。

これで残り1。大鎌持ちの異形は炎が無くなったのと同時に距離を詰めてくる。腕を振り上げたところで刀を振るいその腕を切り落とす。こちらに落ちてきた鎌を奪い首筋に刃を合わせつつ柄を引き異形の胴に蹴りを入れ首を落とす。

戦闘が終わり他に敵が居ないか辺りを見渡すと光っている物が見えた。俺が来た方向の石橋の下の方にあるようだ。それも拾っておく。石橋の先に進むと篝火と俺の身に付けている鎧よりも上質な鎧を着た騎士とそのお付きだろう2人組がいた。

話を聞くとアストラのアンリというらしい。もう一人は親友なのだそうで。もう一人の方は特に何も喋らなかったが唐突に青の守護者の誓約をくれた。誓約の説明をソウルを通し行ったが別に悪いやつじゃないらしい。

彼女たちの目的は薪の王のひとり神喰らいの聖職者エルドリッチを倒すことらしい。そのためにこの先にある聖堂を目指しているらしい。互いに困ったことがあれば助け合おうと言ってきてくれたので機会があればありがたく頼らせてもらおう。

 

さて、と。そろそろ武器の損耗も消耗品とついでにバカに侵入され続けてるせいで地味に削れている精神力を回復させるためにも祭祀場に戻るか。

 

 

-ロザリアの指 ヴィンスに侵入されました-

 

 

………殺す

 




3度も侵入されるのにはもちろん理由があります。原因は現在祭祀場にいますが。こちら側の世界に来たことでちょっと特性が変化しましたね。無銘ではなく普通のが呼ばれるようになりました。簡単に言えば常に干からびた指使ってる状態です。でも主人公にはもっと強くなってもらいたいので作者も手加減せずに殺しにかかる所存です(でも死なない)


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ep.12

書き貯めておいた分はこれで最後です。acvdとedf5満喫したら次の話書きます。


ヴィンスに三度侵入された俺は現在凄絶な追いかけっこをしていた。

侵入してきた闇霊が逃げ回り道中の敵性存在を片手間で排除しつつ侵入された側が追いかけ回すという普通逆だろ、という図が展開されていた。

背中に十字架のような木を背負った狂人や無駄にでかい蟹などもいたが突然槍のように大きな矢が降ってきて排除してくれた。

ヴィンスは俺を自分にとって有利な場所へ誘導しているのだろうがどうでもいい。

俺の休息を邪魔してきたんだ。例えどんな手を持っていようが確実に殺す…

 

ハートは熱くしかし、頭は冷静にヴィンスの攻撃を避け受け流し片手間で丸太を持った亡者や毒を撒き散らす害虫を排除していく。

 

沼を越え、逃亡騎士の遺体があった先でヴィンスが止まる。

 

「今回の俺は手段を選ばん。恨むなよ」

 

大槌持ちと大剣?いや刀身は刀に近い感じだし大型の曲剣か。3対1か…

 

ま、どうだっていい。彼らが構えている先には建物がありその後ろには梯子が見えている。下があるのだろう。ヴィンスが詠唱を始め大槌持ちがこちらに突撃をかけ大曲剣持ちは後ろを取ろうとしている。大槌持ちが振ってくるのに合わせメイスを振るい迎撃する。すかさずメイスから手を離し顔につけている仮面を手で掴み足を膝裏にかけ体勢を崩し地面に叩きつける。

ヴィンスは詠唱が終わったのかすでに投擲に入っているが体の向きで投げてくるであろう場所は大体見当がついている。雷の槍を回避し建物の中へと一気に入る。

大曲剣持ちが追いかけてくるがヴィンスと大槌持ちはまだ追い付いていない。大曲剣の片手振りをパリィし刀で胸を貫き梯子付近から突き落としついでに刀を両手で持ちアンカー代わりにし身体を支え大曲剣持ちを踏みつけながら降りる。大曲剣持ちの体と鎧が落下時に潰れるが俺の方は足の骨にヒビが入る程度で済んだ。目の前の篝火を灯しておきエストを飲み足を完治させる。

 

それにしてもなんか臭いな

 

大曲剣持ちの身体が崩れソウルとなり俺の中に入ってくる。どうやらこいつらは処刑人というらしい。ヴィンスは梯子の上で様子を見ているがもう一人の処刑人は先ほどの仲間の死を見ていてもたっても居られないのだろう梯子で急降下しながら降りてくる。

ヴィンスはその様子を見て処刑人たちの援護は期待できないと察したのだろう。その顔には諦めが見える。俺はソウルから予備のメイスを取り出し身体を弓なりに反らし降下中に処刑人にぶん投げる。仮面に隠された顔からは確かな驚愕が見てとられたがすでに直撃コースだ。避けられはしない。メイスは処刑人の無防備な背中に吸い込まれるように当たり、その一撃は処刑人の身体から梯子に掴まるだけの力を奪い取る。梯子から手が離れそれなりの高さから落下した処刑人は俺の前へと落ちてきた。すでにメイスを振り上げていた俺はなんの躊躇いもなくそれを振り下ろし大槌持ちの処刑人をソウルにへと変える。

 

「ん、あとはお前だけだぞヴィンス」

 

「まともに名前を呼んだ、だと!?もう少し消費させてから呼ぶ予定だったが…やむを得ん。黄色い指の!出番だぞ!」

 

突如足元に侵入のメッセージが沸く。

またかよ。どうやらヴィンスの仲間みたいだけど…

 

どこから、と振り返るとそいつはすでにいた。体の造り的に女だろう。頭に不可思議な形の黄色いターバンをぐるぐるに巻きつけている。手に持つのはこれまた黄色いピッケルだ。

 

「よろしくお願いしましす!」

 

いきなりお辞儀された。なにこいつ敵なの?なんなの?

 

唖然としてる隙にヴィンスとも合流された。まずいなせっかく殺す隙があったというのに無駄にしてしまった。

 

さっきよりはマシだが2対1だ。ま、他にも敵は山ほどいるからそれどころじゃないけど。

さすがに旗色が悪いか。こちらには仲間などいない。

 

しかし、やることは変わらない。いつも通りだ。昔から変わらず目の前にいる敵をすべて倒すだけだ。

 

昔?昔から…俺は戦ってたのか?

 

視界に黄金光り飛来するものが見える。それをなんとか避け頭を切り替える。今はそんなことを考えている場合じゃない。

狭い場所だと囲まれると死ぬ。そう思い外に出ると沼地があった。毒を孕んでいるためであろう沼地からは腐臭が漂っている。さっきから臭いと思ったらそういうことか。

沼地に足を入れれば雷の槍を回避するのは困難だ。かといってこのままだと囲まれる。

ならば速攻でどちらかを倒す。まずは遠距離持ちのヴィンスからだ。

メイスを右手で保持しならがらヴィンスに向かって走る。左手でナイフを3本構え投げる。もちろん避わされるが回避行動を取らせるのが目的なので問題ない。ヴィンスが回避している間にこちらの間合いに入る。

後ろから詠唱が聞こえる。

しまった!もう片方も魔法かなにかの使い手か!

後悔するもすでに詠唱は終わり俺の後ろからは質量を持ったソウルの散弾が迫っていた。

完全な回避は不可能。ならばとメイスを盾代わりにしダメージを減らす。しかもこの防御のせいでヴィンスに後ろを取られる形となり直剣による突きが俺を襲う。それを敢えて左手で受け、手のひらを貫いた直剣を力任せに握る。

 

「捕まえた」

 

メイスを右手で力任せに振り払う。ヴィンスは咄嗟に直剣を離し回避しようとするがこちらの方が速い。メイスの一撃により身体をくの字に曲げながら毒沼に吹き飛んでいったヴィンスを横目に黄色い方に向き直る。杖の類いは無いように見える。先ほどの魔術を受けた時メイスを盾代わりにしたとはいえ被害が少なすぎた。つまり、だ。

「その手に持ってるピッケル それが魔術の発動の媒体か。手品が分かれば対応策なら幾らでもある。」

 

こちらにピッケルを向け詠唱を始める。しかし、こちらが投擲したナイフにより詠唱は中断される。

 

「弱点その1 飛び道具による詠唱中断」

 

こちらの攻撃の間合いに入った。しかし、まだ近接魔術やピッケルとしての近接武器としての攻撃も警戒しなければならない。ピッケルの先からソウルで出来た直剣のようなものが出る。

近接魔術か…だけど

 

「弱点その2 近接魔術は発動までにラグがある。つまり攻撃の出が速い武器には弱い」

 

腰に付けていたかぎ爪を左手に装備しソウルで出来た直剣が振るわれるより前にその身体にかぎ爪を叩き込み怯ませる。

 

「弱点その3 そもそも媒体がなければ発動できない」

刀を抜刀し両手首を切り落としたあと膝蹴りを放ち沼地に放置しておく。これで残りは…

 

「ハァッ!」

 

横からきた刺剣の攻撃を避け続く直剣の袈裟斬りをかぎ爪で反らす。

 

「ヘイゼル!お前は一体どれだけの力を…」

 

「さぁ?」

 

メイスを構えヴィンスを見る。向こうも直剣と刺剣の二刀流で応じるようだ。

 

動きだしたのはヴィンスからだった。彼は迷わず踏み込み直剣を振るう。袈裟、逆袈裟と続け左手の刺剣による突きを放つ。先ほどの、いや今までしてきたどの攻撃よりも速く太刀筋も綺麗だ。あまり斬りあいで使いたくなかったが仕方がない。最初の袈裟斬りを避け続く逆袈裟を打刀で捌き刺剣の高速突きはメイスを盾にしかすり傷に留める。

冷静にヴィンスの攻撃パターンを解析し攻撃のリズムを読む。

 

引けば雷の槍、近づけば直剣と刺剣による連続攻撃。近づいた場合、直剣の袈裟斬りによる始動が6割強。それ以外だと直剣か刺剣の突きか直剣による振り払い。雷の槍は発動までの時間が2秒ほど…撃たれた場合10m程度で直弾までにかかる時間は1秒未満といったところか。投げる方向は身体の向きから逆算出来るから問題はないだろう。

 

よし、やるか。

 

互いに距離を図りどちらが踏み込むかを見極めている。先に動きだしたのはヴィンスだった。

踏み込みながら直剣の振り払いを身を引くだけで避け続く刺剣の刺突を首を傾けて避ける。さらに踏み込んでくるヴィンスは身を捻りながら横薙ぎをしてくるがメイスを地面に立て攻撃を中途半端に止めその胴に蹴りを叩き込み怯ませる。

ヴィンスは自分から後ろには飛ぶことで蹴りの威力を殺し、さらに追撃させないようにする。いつもの意趣返しとばかりに後ろに飛びながら投げナイフを放ってきたが指で挟み込み回収しておく。

 

ヴィンスは飛び退いた後、追撃のために突撃をかけていたこちら対しに左手に聖鈴を構え雷の槍を放つ。身を屈めほとんど地面に擦り付けるようにしてそれを回避しヴィンスに肉薄する。両腕をクロスさせながら直剣の袈裟斬りのダメージを減らしつつヴィンスにタックルをしかけその身体を押し倒し胸の位置を踏みつけ肺の空気を強制的に押し出しその意識を落としにかかる。

残念なことに意識を落とすのは失敗したがマウントは取った。このまま…

 

視界の端に魔術の光が見える。先ほど転がしておいてのが復帰したか…

 

やむなくヴィンスから離れながらソウルの短矢を回避し現状を確認する。

ピッケルを持つ手だけをエスト瓶で無理矢理繋ぎ止めたようだな。ヴィンスもエスト瓶で回復してるし振り出しに戻ったか。

動き出そうとしたこちらにそれぞれが詠唱を始め近づけまいとする。狙いは散弾のように打ち出される魔術でこちらの回避を誘発させたところに雷の槍を合わせるといったところだろう。単純だが崩しにくい。

 

放たれる散弾を回避せずにメイスを盾に突っ込み雷の槍だけを避ける。どうせダメージは貰うのだ。ならば安く済ませるに超したことはない。

そのままヘイゼルに突っ込む。ヘイゼルは咄嗟にピッケルを振るうが読んでいる。かぎ爪でその一撃を受け流し逆手で抜刀した刀で首を一閃しその霊体を崩壊させる。

 

「さて、と。あとお前の手札は何枚残ってる?それともこの間みたいにまた逃げる?」

 

ヴィンスを見ることもなく言い放つ。

 

「お前の強さはなんなんだ!?どうすればそこまで強くなれる?」

 

「そんなの俺も知らないよ。でも、まぁ…強いやつは強いし弱いやつは死ぬんだよ。この世界じゃさ」

 

「そんなの…じゃあ俺の今までの努力は…!」

 

「努力は…努力ってさ無駄にはならないけど、望んだ結果が得られるものではないよ。どれだけの努力を積み重ねようとそれが力にならなければ意味がない。この世界はどんなものであれ力がすべてなんだから。権力、知力、財力、そして暴力。努力すればそれらが手に入れられるなんてありえない。力で力を征す。与えられたリソースに限りがあるなら誰かから奪わないと力なんて手に入らない…」

 

無駄話をしすぎたか。早く片づけよう。

 

「殺る気があるならかかってこい。戦意がないならさっさと帰れ。ただ…前を見ないやつに勝利はないよ」

 

ほどなくしてヴィンスの霊体は俺の世界から消える。

 

「疲れた…休も」

 

-ファランの守護者に侵入されました-

 

勘弁してくれ…

 

 

 

 




がんばれ主人公。このまま監視者戦まで持っていくから。ついでに監視者も強化しときますか


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登場人物まとめ!

登場人物まとめておきました。


主人公

本作の主人公。バトルスタイルはオールマイティー。

主武器は大槌と槍。サブに刀、かぎ爪などを扱う。

火のない灰になる前の生前の記憶が曖昧でいまだに名前すら思い出せていない。戦闘経験を積む度に動きの精度や多様性が増えており明らかに戦い馴れている。

大槌についてはep.9から使い始めたがかなり使い慣れていることからおそらく生前も使っていたのではないかと自己評価している。

手癖が悪いため槍の使い方が荒いが槍だけではなく頑丈なら何でも投げる。前向きに考えると武器毎に固執した扱いをせず非常に柔軟に扱えている。

逆に耐久性の低い刀やかぎ爪などは割と丁寧に扱っている。でもたぶん相手に勝てると思えば盾代わりにもするし投げもする。

現在は騎士シリーズを頭以外に装備している。ただし自らに騎士としての誇りが在るわけでも剣を振るう大義が在るわけでもないので騎士道精神などは皆無である。

彼の本質は王を守り、王の敵を討つ一振りの刃。武器とは扱うものの意思により盾にも剣にもなる。ならば彼の行いの善悪は彼の王となる者の意思なのだ。

現在使用中の武器:スパイクメイス、打刀、かぎ爪

 

 

アルシア

2主。バトルスタイルはパワーファイター。主武器は特大剣。サブ武器は両刃剣(脳筋用)という分かりやすい脳筋。ただし

白王の特大剣が扱える程度の理力は持っているため魔術等を戦闘に組み込むのが苦手なのだと思われる。

ドラングレイグの火継ぎ経験者だが、最終的に火は継がず資格のみを今ももて余している。世界がループすることに気づいておりそのため火継ぎに意義を見出だしていない。

現在はツヴァイヘンダーを愛用している。これにはドラングレイグでもお世話になっているため愛着があるという点が大きいがそれと同時に自分のソウルの中にある他の武器が自分の中の火に灼かれた続けているため耐久がお釈迦になっているためでもある。

ツヴァイヘンダーと赤鉄の両刃剣は装備し外に出ている時間が長かったため劣化が少ない。ソウル武器に対応したソウルを使うことで一部ではあるが武器の本来の使用者の能力を再現可能なあたり脳筋な割にはソウルの業にはかなり精通している。

防具はミラシリーズを身に付けている。これはドラングレイグの旅路で幾度となく助けて貰ったミラのルカティエルから譲って貰ったもの。ルカティエルの最期を看取った彼女はその終わりの先になにを見たのか

使用した武器:ツヴァイヘンダー、赤鉄の両刃剣、煙の特大剣、白王の特大剣

 

 

 

リューラ

メタ回要員で出したけどこれからはちょくちょく本編にも出す予定。

戦闘スタイルは逸般的な魔術師。元ネタの人よりはましなんじゃね?くらいの強さ。要はチート

世界を棄てたため身体がないので存在が稀薄。そのためどの世界のあらゆる場所に存在出来るが同時にどの世界のどこにも存在ができない。要はいつだって霊体の状態。

自作魔術の開発に成功しているほどの天才かつソウルの業に精通している。自作魔術の場合なら記憶スロットはいらない。また、すこし威力が下がるが杖等の発動媒体を持たなくても発動は可能。一応自作魔術の研究をまとめた魔術本の製作は行ってある。魔術師と言ったが一番好きなのが魔術なだけで奇跡は呪術、闇術に至るまですべて扱えるし研究もしている。記憶スロットは主に奇跡を扱う際に使うらしい。理由は「物語全部覚えないと発動できないからめんどくさい」とのこと

魔術などを研究しているだけでなく月光の聖剣、深淵、混沌についても研究している。

登場した自作魔術:追尾するソウルの結晶剣、古い月光の波動、闇の特大剣

 

ヴィンス

ロザリアの指の一人。3連続で主人公の世界に侵入するくらいの幸運ランクの持ち主。

戦闘スタイルは直剣と刺剣の二刀流に聖鈴による奇跡を絡めたオールラウンダー。器用貧乏ともいう。強さ的にはオリジナルキャラの中では現在最下位。レオナールイベントに絡ませる予定。

主人公に力がなければ物事を成し遂げられないと告げられた彼の行く末は

 




ではep.13で会いましょう


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ep.13

投稿し忘れてました。


目の前に転がっている肢体を切り落とした騎士みたいなやつの腹部に刀を刺し貫きその霊体を消滅させる。

 

これで5、6体か?いい加減やめて欲しいんだが…

 

内心で毒づきつつようやく周りの安全を確保できたので毒沼を見渡す。小山となっているところに火が灯っている塔が3つあるくらいか。地道に探索するしかないな。

といっても毒沼内での戦闘時間が長かったせいでエスト瓶に限界が見えている。だが闇霊やら守護者たちが周辺の敵も活用していたため雑魚ごと蹴散らせたし探索事態には支障がない。心置きなく探索に移ろう。倒れた石柱にグレートソードなどが落ちていた。あとはエストの欠片や魔術のスクロールも発見した。

 

ヴィンスたちと戦ったところへと一度戻る。篝火はまた後で使わせてもらう。使える状態ならば、だが。毒沼に覆われていないもともとは綺麗にレンガで舗装された道であったであろう場所にひとつのメッセージがあった。読んでみると大門を開くには3つの火を消せ、と書いてある。大門が何かはよくわからないが3つの火とは小山の上にあるあの灯台のことだろう。

小山の近くに行くと残ったグルーとやたらデカいグルーがいた。デカいのから潰すべきだろうか?それとも先に弱いやつから始末するべきか…

デカい方が動き出す。手に持つ巨木のようなものを地面に打ち付けるとそこから怨念のようなものが沸いて出る。紫煙を撒き散らしつつこちらに向かってくる。避わすために身体を動かすがそれと同時に怨念もこちらに追従してくる。ならばとギリギリまで引き付けてから回避する。いくつかは地面に当たり消滅するがそのほかは上へ、右へ、左へと別れ旋回するとまたこちらに向かってくる。

さっさとあの木偶を片付けるべきだな…

 

狙うはあの怨念を出している術者、つまりはデカいグルーだ。怨念は追尾性こそ凄まじいが速度はない。だったら逃げながらあのデカいのを一刻も早く始末する。それが最善手だ。走りながら刀を抜刀しグルーの股下を潜りつつ足を斬りつける。それにより体勢を崩したグルーだが怨念が追いついてきたのでいったん離脱する。再び怨念を回避し反転したところで予備のメイスを取り出しグルーに投げつける。まだ生きているらしく巨木を地面に打ち付け追加の怨念を放とうとしていた。やらせはしない!背中のメイスを地面に押しつけ高跳びの要領でグルーとの距離を詰めソウルからグレートソードを取り出し急降下斬りを決め骨ごと肉を断つ感覚が腕に伝わる。グルーが死んだことにより怨念のようなものも散り散りになって消える。地面にめり込んだグレートソードを持ち上げようとしたが重すぎたので素直にソウルに戻し装備を回収する。

 

筋力ももう少し上げないとな…

 

小山を道なりに進むと火の灯った祠とグルーが2体いた。こちらに気づかれる前に1体を刀で両断し、もう1体は木の盾を構えていたがメイスで強引に体勢を崩させてから粉砕した。

祠に近づき周辺を確認する。灯台の真下に当たる部分に祠が在るわけだしこの祠の火が灯台の火の種火と見て間違いないだろう。案の定祠の火を消すと灯台の火も消える。

これであと2つか。デカいグルーがホントに面倒だな。

とにかく危険なのはあの怨念だ。高追尾にあの数は下手な闇霊たちより厄介だ。メイスの投擲でも殺せなかったし生命力も大したものだろう。刀で問題なく斬れるので堅さ自体はそうでもないのが救いか。だが、その刀も刃こぼれが目立ち始めているので多用は禁物だろう。気づかれないようにするのが一番のようだ。

この祠も謎だな。描かれているのは巨大な木?だろうか。しかし両端には炎のようなものも描かれている。

 

2つ目の篝火があった場所の目の前にある小山を登る。デカいのは居ないな。先ほどの小山と同じようにグルーが2匹たむろしていたが先制攻撃で沈め祠の火を消し先に進む。

そのまま下り坂があったので進み毒沼を渡りながら次の塔を目指す。特段問題もなく3つ目の祠の火を消す。

3つ目の小山の先には石橋があった。

 

別にそれだけなら問題はないが彼らのいる場所は小さな石橋の上だ。落ちればただではすまないだろう。かといってそんなところで戦いたくもない。向こうはまだこちらに気づいていないようだし走って突き抜けるとしよう。

かぎ爪以外の武器はソウルに仕舞い走り出す。

 

石橋に入る。まだ向こうは気づかない。

接敵まであと3歩。先頭で寝てたやつが気づく…

戦闘のグルーの横をすり抜ける。2体目も気づき起き上がる。だが遅い。

2体目の横に走り着く前に3体目がこちらに気づく。しかし手に持っているのは杖ならば無視だ。

 

3体目の横をすり抜け小さなボロボロな建造物の中へと入る。

 

ホントにどこにでもあるなこれは…

 

建物の中には篝火があり触れると身体から火が移り捻れた剣を中心に燃え盛る。

 

篝火の火に当たり休憩をしようとしたが、突然篝火から火が消える。

 

〜ファランの守護者が侵入しました〜

 

予定調和だな。もはや怒りさえも湧かない。先に進みつつ襲いかかってきたところを返り討ちにさせてもらおう。態々探しに行くのも億劫だ。

それにしても刀は刃こぼれだけでなく小さな亀裂も入ってきているしメイスもスパイク部分が欠け、また一部は曲がっていてその出血効果も落ちている。予備の方も似たような状態だ。さっき拾ったグレートソードはまともに振るうことも出来ずその破壊力を生かせない。せいぜいジャンプ中に取り出し落下攻撃に使用するくらいだ。唯一かぎ爪だけが損耗も少ない。といっても元の耐久性なんて無いようなものだし無理をすればすぐに壊れてしまうだろう。

 

エストのほうは闇霊を倒すと中身が増えるおかげで余裕がある。しかし投げナイフや火炎壺といった消耗品は底を尽きかけている要所毎に使い分けなければ最悪素手で戦うことになるかもしれない。

 

無い物ねだりをしたって時間の無駄だ。進もう。運が良ければ武器も調達出来るかもしれないしな。

 

 

 

 

暇だ。

というか彼はいつ祭祀場に戻ってくるんだろう。まさかとは思うが補給も定期的なソウルの強化もなしに進み続けているのかな?

彼だとあり得そうなのが、ね。強いし。

待ってても帰ってこなさそうだしこっちも動き始めようか

 

私は祭祀場の中心に刺さっている篝火に手をかざしその身を磔の森へと転移させる。

ここは沼が近くにあり何かの遺跡のようなものがある。別の世界のお手伝いもしてたしこの先に何がいるのかは知っている。

ただ、この世界だとそういった事前情報が役に立たない可能性がある。ツヴァイヘンダーを手に進む。

どのみちこの世界の情報は必要だ。どの程度まで他の世界と一緒なのか?なぜ他の世界と差違があるのか?調べることは多い。

特に難もなく結晶の古老が出る場所へと来る。ここまでは他の世界と全く同じだった。ならばもしかしたらロスリックの高壁だけが特殊だったのかもしれない。もしくはイルシール勢だけが特殊なのか…

 

結晶の古老のいる場所その広場の中央まで行くと祭壇のようになっている場所の地面から結晶の古老が現れる。紫色の結晶槍が飛来するがそんなものに当たるわけもなく古老との距離を詰める。手に持ったツヴァイヘンダーによる大上段からの一撃は確かに古老の身に入りダメージを与える。

 

「やっぱり高壁かイルシールが特殊なだけ、かな」

 

これならば分身体を含めた多対1の戦闘になっても苦もなく倒せるかな?

 

 

そう思っていた時期が私にもありました

 

普通なら分身体からの弾幕による圧殺。それが本来の結晶の古老だ。

それがどうだろう。分身はもちろんどこから出てきたのかファランの不死隊の魔術師が現れた。それどころか古老は結晶体を放ちそこからソウルの槍やファランの矢雨、降り注ぐ結晶などが放たれる。一応破壊は出来る。しかし壊さなければその場に留まり続け魔術を放ち続ける。

物量と弾幕がえげつない。白竜の息が地面を這い回りソウルの槍が飛び回る。不死隊の魔術師はファラン独特の魔術を使い弾幕を張っている。擦っただけでも大ダメージだろう。とにかく打開しなければ

まずは結晶体の強度確認だ。さっき試したときは特大剣の一撃で壊れた。手応えはそうでもなかったし案外脆いのだろう。

投げナイフを構え放つ。結晶体は大体ナイフ3本で破壊できる。最大展開数は3。

一度柱に隠れ息を整える。さらにツヴァイヘンダーをソウルに格納し白王の特大剣を取り出す。その刀身にソウルを纏わせ盾の代わりにして突撃。これなら多少は被弾するが刀身に纏わせたソウルによりソウルの槍や白竜の息でもない限りは防ぎきれる。

そのまま不死隊の魔術師の元へ突撃しファランの速剣を展開する前に左手に装備したセスタスで顎を殴り詠唱を止める。そこから首を掴んで持ち上げそのまま次の魔術師の所へ行くまでの盾とする。盾代わりとなり息絶えた魔術師を捨て、逃げようとした方の魔術師を特大剣で砕き斬る。近くにあった結晶体をナイフで破壊し柱に隠れる。

 

やっと一息つける。

 

エストで傷を回復させつつ状況を確認する。

 

結晶体は破壊する度に補充されているけどどうやら本体しかそれは出来ないみたい。

不死隊の魔術師はあと1人。分身体は相変わらずの5体だけどあれらも耐久度は結晶体と変わらない。いけるかな?いや、まだだ!警戒を解けば先程の二の舞だ!エストにも限りがある以上は慢心による被弾などもっての他だ。

結晶の古老本体についても耐久力に関しては高い方ではない。分身体と結晶体を無限近く出せる以上は長期戦は不利。

つまり短期決戦だ。本体に張り付いた時にこちらの持つ大火力を叩き込む。

セスタスをソウルに仕舞い、代わりに取り出すは煙の特大剣。右手の白王と左手の煙をクロスさせ古老本体へと突貫する。古老はこれに対して自分だけでなく分身体や結晶体からソウルの結晶槍を放ってくる。真後ろに回避すればすべて避けられるがそれをしたところで再び弾幕で削られるのがオチだ。故に足を止めず右手の白王の特大剣にソウルを纏わせ前方から迫る結晶槍を切り伏せる。流石に古老にとってもこれは予想外だったのだろう目に見えて狼狽えている。逃げるための詠唱を開始しようとするがすでに遅い。白王の特大剣を上へと投げ捨て煙の特大剣に黒炎を纏わせて大上段から叩きつける。

ダメージを負わせることは出来たが仕留めきれていない!古老は地面へと吸い込まれるように消えた。

いつもなら2、3秒しなければ出てこないがイレギュラーな世界の存在だ。

古老は分身体を含め私を囲うように現れる。たしかに囲まれた状態では複数の魔法を捌ききることはほとんど不可能といっても良いだろう。しかし今回に於いてはそれが都合良かった。私は黒炎を纏わせた煙の特大剣を地面に押し付け自分の周囲へと黒炎の爆発火球を展開する。それは私を中心に旋回しながら古老の包囲網へと炸裂し分身体を消し飛ばし、古老にもダメージを与える。更に間髪入れず剣に纏わせた黒炎を増大させるとリーチと威力を増した一閃で古老の本体を焼き付くし戦いの幕は引いた。

 

篝火が出てきたのを確認した私は一先ず疲れた身体を癒すため火のほとりに腰を下ろし瞼を閉じた。

 

 

 

 



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Crystal Sages

お久しぶりです。道中のモブどうするかクソ悩んでたらこんなに難産になりました。基本的にダイナミックカットする方向でいきます。
他にもモンハンしたりVDしたりBloodborneやったりしてましたが一番の原因は仕事で電波繋がるとこにいなかったためです。


目の前に転がっている肢体を切り落とした騎士みたいなやつの腹部に刀を刺し貫きその霊体を消滅させる。

 

これで5、6体か?いい加減やめて欲しいんだが…

 

内心で毒づきつつようやく周りの安全を確保できたので毒沼を見渡す。小山となっているところに火が灯っている塔が3つあるくらいか。地道に探索するしかないな。

といっても毒沼内での戦闘時間が長かったせいでエスト瓶に限界が見えている。だが闇霊やら守護者たちが周辺の敵も活用していたため雑魚ごと蹴散らせたし探索事態には支障がない。心置きなく探索に移ろう。倒れた石柱にグレートソードなどが落ちていた。あとはエストの欠片や魔術のスクロールも発見した。

 

ヴィンスたちと戦ったところへと一度戻る。篝火はまた後で使わせてもらう。使える状態ならば、だが。毒沼に覆われていないもともとは綺麗にレンガで舗装された道であったであろう場所にひとつのメッセージがあった。読んでみると大門を開くには3つの火を消せ、と書いてある。大門が何かはよくわからないが3つの火とは小山の上にあるあの灯台のことだろう。

小山の近くに行くと残ったグルーとやたらデカいグルーがいた。デカいのから潰すべきだろうか?それとも先に弱いやつから始末するべきか…

デカい方が動き出す。手に持つ巨木のようなものを地面に打ち付けるとそこから怨念のようなものが沸いて出る。紫煙を撒き散らしつつこちらに向かってくる。避わすために身体を動かすがそれと同時に怨念もこちらに追従してくる。ならばとギリギリまで引き付けてから回避する。いくつかは地面に当たり消滅するがそのほかは上へ、右へ、左へと別れ旋回するとまたこちらに向かってくる。

さっさとあの木偶を片付けるべきだな…

 

狙うはあの怨念を出している術者、つまりはデカいグルーだ。怨念は追尾性こそ凄まじいが速度はない。だったら逃げながらあのデカいのを一刻も早く始末する。それが最善手だ。走りながら刀を抜刀しグルーの股下を潜りつつ足を斬りつける。それにより体勢を崩したグルーだが怨念が追いついてきたのでいったん離脱する。再び怨念を回避し反転したところで予備のメイスを取り出しグルーに投げつける。まだ生きているらしく巨木を地面に打ち付け追加の怨念を放とうとしていた。やらせはしない!背中のメイスを地面に押しつけ高跳びの要領でグルーとの距離を詰めソウルからグレートソードを取り出し急降下斬りを決め骨ごと肉を断つ感覚が腕に伝わる。グルーが死んだことにより怨念のようなものも散り散りになって消える。地面にめり込んだグレートソードを持ち上げようとしたが重すぎたので素直にソウルに戻し装備を回収する。

 

筋力ももう少し上げないとな…

 

小山を道なりに進むと火の灯った祠とグルーが2体いた。こちらに気づかれる前に1体を刀で両断し、もう1体は木の盾を構えていたがメイスで強引に体勢を崩させてから粉砕した。

祠に近づき周辺を確認する。灯台の真下に当たる部分に祠が在るわけだしこの祠の火が灯台の火の種火と見て間違いないだろう。案の定祠の火を消すと灯台の火も消える。

これであと2つか。デカいグルーがホントに面倒だな。

とにかく危険なのはあの怨念だ。高追尾にあの数は下手な闇霊たちより厄介だ。メイスの投擲でも殺せなかったし生命力も大したものだろう。刀で問題なく斬れるので堅さ自体はそうでもないのが救いか。だが、その刀も刃こぼれが目立ち始めているので多用は禁物だろう。気づかれないようにするのが一番のようだ。

この祠も謎だな。描かれているのは巨大な木?だろうか。しかし両端には炎のようなものも描かれている。

 

2つ目の篝火があった場所の目の前にある小山を登る。デカいのは居ないな。先ほどの小山と同じようにグルーが2匹たむろしていたが先制攻撃で沈め祠の火を消し先に進む。

そのまま下り坂があったので進み毒沼を渡りながら次の塔を目指す。特段問題もなく3つ目の祠の火を消す。

3つ目の小山の先には石橋があった。

 

別にそれだけなら問題はないが彼らのいる場所は小さな石橋の上だ。落ちればただではすまないだろう。かといってそんなところで戦いたくもない。向こうはまだこちらに気づいていないようだし走って突き抜けるとしよう。

かぎ爪以外の武器はソウルに仕舞い走り出す。

 

石橋に入る。まだ向こうは気づかない。

接敵まであと3歩。先頭で寝てたやつが気づく…

戦闘のグルーの横をすり抜ける。2体目も気づき起き上がる。だが遅い。

2体目の横に走り着く前に3体目がこちらに気づく。しかし手に持っているのは杖ならば無視だ。

 

3体目の横をすり抜け小さなボロボロな建造物の中へと入る。

 

ホントにどこにでもあるなこれは…

 

建物の中には篝火があり触れると身体から火が移り捻れた剣を中心に燃え盛る。

 

篝火の火に当たり休憩をしようとしたが、突然篝火から火が消える。

 

〜ファランの守護者が侵入しました〜

 

予定調和だな。もはや怒りさえも湧かない。先に進みつつ襲いかかってきたところを返り討ちにさせてもらおう。態々探しに行くのも億劫だ。

それにしても刀は刃こぼれだけでなく小さな亀裂も入ってきているしメイスもスパイク部分が欠け、また一部は曲がっていてその出血効果も落ちている。予備の方も似たような状態だ。さっき拾ったグレートソードはまともに振るうことも出来ずその破壊力を生かせない。せいぜいジャンプ中に取り出し落下攻撃に使用するくらいだ。唯一かぎ爪だけが損耗も少ない。といっても元の耐久性なんて無いようなものだし無理をすればすぐに壊れてしまうだろう。

 

エストのほうは闇霊を倒すと中身が増えるおかげで余裕がある。しかし投げナイフや火炎壺といった消耗品は底を尽きかけている要所毎に使い分けなければ最悪素手で戦うことになるかもしれない。

 

無い物ねだりをしたって時間の無駄だ。進もう。運が良ければ武器も調達出来るかもしれないしな。

 

 

 

 

暇だ。

というか彼はいつ祭祀場に戻ってくるんだろう。まさかとは思うが補給も定期的なソウルの強化もなしに進み続けているのかな?

彼だとあり得そうなのが、ね。強いし。

待ってても帰ってこなさそうだしこっちも動き始めようか

 

私は祭祀場の中心に刺さっている篝火に手をかざしその身を磔の森へと転移させる。

ここは沼が近くにあり何かの遺跡のようなものがある。別の世界のお手伝いもしてたしこの先に何がいるのかは知っている。

ただ、この世界だとそういった事前情報が役に立たない可能性がある。ツヴァイヘンダーを手に進む。

どのみちこの世界の情報は必要だ。どの程度まで他の世界と一緒なのか?なぜ他の世界と差違があるのか?調べることは多い。

特に難もなく結晶の古老が出る場所へと来る。ここまでは他の世界と全く同じだった。ならばもしかしたらロスリックの高壁だけが特殊だったのかもしれない。もしくはイルシール勢だけが特殊なのか…

 

結晶の古老のいる場所その広場の中央まで行くと祭壇のようになっている場所の地面から結晶の古老が現れる。紫色の結晶槍が飛来するがそんなものに当たるわけもなく古老との距離を詰める。手に持ったツヴァイヘンダーによる大上段からの一撃は確かに古老の身に入りダメージを与える。

 

「やっぱり高壁かイルシールが特殊なだけ、かな」

 

これならば分身体を含めた多対1の戦闘になっても苦もなく倒せるかな?

 

 

そう思っていた時期が私にもありました

 

普通なら分身体からの弾幕による圧殺。それが本来の結晶の古老だ。

それがどうだろう。分身はもちろんどこから出てきたのかファランの不死隊の魔術師が現れた。それどころか古老は結晶体を放ちそこからソウルの槍やファランの矢雨、降り注ぐ結晶などが放たれる。一応破壊は出来る。しかし壊さなければその場に留まり続け魔術を放ち続ける。

物量と弾幕がえげつない。白竜の息が地面を這い回りソウルの槍が飛び回る。不死隊の魔術師はファラン独特の魔術を使い弾幕を張っている。擦っただけでも大ダメージだろう。とにかく打開しなければ

まずは結晶体の強度確認だ。さっき試したときは特大剣の一撃で壊れた。手応えはそうでもなかったし案外脆いのだろう。

投げナイフを構え放つ。結晶体は大体ナイフ3本で破壊できる。最大展開数は3。

一度柱に隠れ息を整える。さらにツヴァイヘンダーをソウルに格納し白王の特大剣を取り出す。その刀身にソウルを纏わせ盾の代わりにして突撃。これなら多少は被弾するが刀身に纏わせたソウルによりソウルの槍や白竜の息でもない限りは防ぎきれる。

そのまま不死隊の魔術師の元へ突撃しファランの速剣を展開する前に左手に装備したセスタスで顎を殴り詠唱を止める。そこから首を掴んで持ち上げそのまま次の魔術師の所へ行くまでの盾とする。盾代わりとなり息絶えた魔術師を捨て、逃げようとした方の魔術師を特大剣で砕き斬る。近くにあった結晶体をナイフで破壊し柱に隠れる。

 

やっと一息つける。

 

エストで傷を回復させつつ状況を確認する。

 

結晶体は破壊する度に補充されているけどどうやら本体しかそれは出来ないみたい。

不死隊の魔術師はあと1人。分身体は相変わらずの5体だけどあれらも耐久度は結晶体と変わらない。いけるかな?いや、まだだ!警戒を解けば先程の二の舞だ!エストにも限りがある以上は慢心による被弾などもっての他だ。

結晶の古老本体についても耐久力に関しては高い方ではない。分身体と結晶体を無限近く出せる以上は長期戦は不利。

つまり短期決戦だ。本体に張り付いた時にこちらの持つ大火力を叩き込む。

セスタスをソウルに仕舞い、代わりに取り出すは煙の特大剣。右手の白王と左手の煙をクロスさせ古老本体へと突貫する。古老はこれに対して自分だけでなく分身体や結晶体からソウルの結晶槍を放ってくる。真後ろに回避すればすべて避けられるがそれをしたところで再び弾幕で削られるのがオチだ。故に足を止めず右手の白王の特大剣にソウルを纏わせ前方から迫る結晶槍を切り伏せる。流石に古老にとってもこれは予想外だったのだろう目に見えて狼狽えている。逃げるための詠唱を開始しようとするがすでに遅い。白王の特大剣を上へと投げ捨て煙の特大剣に黒炎を纏わせて大上段から叩きつける。

ダメージを負わせることは出来たが仕留めきれていない!古老は地面へと吸い込まれるように消えた。

いつもなら2、3秒しなければ出てこないがイレギュラーな世界の存在だ。

古老は分身体を含め私を囲うように現れる。たしかに囲まれた状態では複数の魔法を捌ききることはほとんど不可能といっても良いだろう。しかし今回に於いてはそれが都合良かった。私は黒炎を纏わせた煙の特大剣を地面に押し付け自分の周囲へと黒炎の爆発火球を展開する。それは私を中心に旋回しながら古老の包囲網へと炸裂し分身体を消し飛ばし、古老にもダメージを与える。更に間髪入れず剣に纏わせた黒炎を増大させるとリーチと威力を増した一閃で古老の本体を焼き付くし戦いの幕は引いた。

 

篝火が出てきたのを確認した私は一先ず疲れた身体を癒すため火のほとりに腰を下ろし瞼を閉じた。

 

 

 




今回からアルシアの方でも攻略させていこうと思います。基本的には王達は主人公が頑張って倒し、サブをアルシアさんが蹂躙します。


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ep.15

 

死の音が耳元を掠める。それをどこか他人事のように感じつつ俺は今の状況を省みていた。

 

遡ること20分ほど前、火を全て消し終え、大門を越えた俺は砦のような趣を感じるこの場所も大分奥にまで来たんじゃないかと思いつつ襲ってくるグルー達を別のグルーから奪った粗末な槍で刺し殺し、時にはかぎ爪で裂き、時には素手で絞殺しつつ進んでいた。

目の前にまっすぐ奥へと進んで行く黒い二人の騎士っぽいやつらは奥のグルー達を見るなり突撃していったのでこれ幸いと城塞跡の探索を行っていた。相変わらず闇霊に侵入された状態が続いていたので篝火は灯すだけにしておき階段付近にいたグルーや、その奥にいたデカいトカゲを狩り、いったん外の様子を見ようと城塞跡を出たところでいままでどこにいたのかよく分からない闇霊とご対面。

いきなり火の塊投げつけられたがなんなく回避、しかしここから不運が始まった。音に気づいた騎士擬きもこちらを追いかけてきた。2体の騎士擬きの片手剣の連撃と闇霊が投げつけてくる炎の塊を避けつつ、城塞外縁の奥に逃げ込んだが鉄格子の扉が見え、追い詰められたかと思ったけどダメもとで蹴破ったらなんとかなった。広いところに出ることができ、ここなら戦いやすいしなんとかなるかと思ったのも束の間、奥から特大剣と盾を持った黒い鎧の騎士までがこちらに気づき襲ってくる。

 

間違いなく俺のせいだな…

 

城塞の奥ではなく騎士擬きがグルーを狩っていた方向に逃げればここまで絶望的な状況ではなかっただろう。

囲まれているがなんとかなるだろうか?メイスを背負いかぎ爪を両手に装備し隙を減らす。そこに黒騎士の突きが来るがギリギリまで引き付けてから避ける。それは後ろから斬りかかろうとしていた騎士擬きに突き刺さりその破壊力を持って騎士擬きの身体をソウルにへと還し分厚い刀身の片手剣は持ち主を失い地面に落ちる。そしてその持ち主たる者のソウルが俺に入ってくる。

 

殺したやつがソウルを吸収する訳じゃないのか?まぁどうでもいいか

 

どうやら闇霊の攻撃は元の世界が違うためか騎士や異形を透過するようだ。ついでに騎士や異形から認識されないため攻撃もされない。しかし騎士達の攻撃は同じ騎士や異形に対する相討ちは狙えるようだ。それにそろそろあの炎も打ち止め寸前であろうことは先程からあまり投げてこない様子から推測できる。

あの騎士擬きどもはダークレイスというらしい。

ダークレイスの直剣が俺の身をかすり、返す一撃が肉を裂く。そこから更に袈裟懸けに続けようもしたところをかぎ爪でパリィしその胸を穿ち心臓を掴み勢い良く引き抜く。これであとは黒騎士と闇霊だけだ。

さすがに戦力が大きく減ったことに焦りだしたのか闇霊もその手に武器を取り出そうとし一瞬意識がこちらから外れた。その隙を狙い背負っていたメイスを全力投擲して闇霊の身体を吹き飛ばし壁にへと叩きつける。黒騎士が特大剣を振り下ろして来たところをパリィしてから無視し闇霊にトドメを刺すべく近づき…一度引く。闇霊が俺が身を引く直前に伸ばした手からは案の定というべきか大きな爆炎が生まれるがその頃には安全なところにいる。闇霊から驚愕の声が出るが知ったことではない。いまだに体勢を崩したままの闇霊に足元に落ちていたダークレイスの直剣を手に取りその首を落とす。闇霊が消滅したのを確認し黒騎士に振り返る。

 

黒騎士は先程パリィされたことを警戒しているのかあちらから動くことはなく左手の堅牢そうな盾を構えている。

こちらもメイスを手にいつでも動けるように構える。

 

黒騎士が駆け距離を詰める。黒騎士の攻撃に当たれば即死ないし重症は確実だ故に攻撃を見極め回避することに専念する。特大剣による刺突を身を捩ることで避わす。黒騎士が特大剣を振り上げたのを見て再びパリィするためにタイミングを計ろうとするが黒騎士は振り上げた特大剣を背中の方から床にめり込ませそれは地面を削りながらの渾身のかち上げに繋がる。その一撃をメイスの柄を踏み強固な打撃部で強引にガードするがあまりの一撃に俺の身は宙に浮きメイスの打撃部は半分ほどが抉られていた。

宙で体勢を立て直しそのまま俺を叩き斬らんとする黒騎士の顔面に蹴りを入れ特大剣による振り下ろしを中断させ、着地と同時に腰の刀を抜き居合いにてその首を落とす。

 

周りに敵がいないことを確認し装備を回収していく。来た道を戻り城塞外縁の篝火へと戻ると久しぶりに祭祀場にへと戻る。

 

篝火で閉じていた目を開け問題なく祭祀場に戻れたことを確認した俺はアンドレイのいる鍛治場へと足を運ぶ。

 

「おう、どうした」

 

「はい、壊れたから修理お願い」

 

ソウルから破損したり大分傷んでしまった武器を出しつつアンドレイに頼み。必要な分のソウルを譲渡する。ついでにエストの欠片を渡しエスト瓶の容量も増やす。

 

「ちと時間がかかる。後で取りに来い」

 

武器の状態と数を見たアンドレイがそう告げてくるので了解の意を示し後にする。

次に不死街で出会った呪術師を探す。

 

「おお、お主か。前は世話になったな」

 

彼からは呪術を操るための火を貰った。ついでに森で拾った呪術書を手渡し炸裂火球と炎の嵐という2つの呪術を買う。

 

グレイラットは問題なく戻ってきたらしく消費した火炎壺や投げナイフを補充する。

 

最後に火防女にソウルの強化を頼み。各身体能力や呪術を扱うために必要な能力も強化する。

 

篝火で炸裂火球と炎の嵐の使い方を頭に入れてからとりあえず試してみる。問題なく発動したのを確認し安堵する。これで遠距離攻撃の手段が増えた。と言っても俺の集中力ではそこまで回数は使えないし要所で投げナイフと使い分けといったところだろう。さて、やることはやったし戻るか。

 

再び篝火の近くに身を置き、城塞跡を意識しつつ瞼を閉じついでにとばかりに自らの古い記憶を探そうとした。

 

思い出されるのは王を追う旅路の中でデーモンを狩り最期はその身を灼かれそれでも執念だけで動こうとする我が身。

 

人間性を求め深淵の使徒となり他の不死人を狩る亡者。

 

○○に指輪を授かり冷たい国より部隊を率い追放されるが如くロスリックへの遠征へと赴こうとする日。

 

死ぬことも出来なくなり絶望の果てに精神すらも枯れただの魂喰らいになる私。

 

火は陰り、英雄としての務めを果たすため旅に出るが全ては遅かった。ならばこの場で次の英雄を試す審判者となることを誓ったあの日。

 

自分の記憶を思い出そうとしてもまるでそんなもの初めから無いかのように 別の誰かの記憶が出てくる。自分は何者だ?そんな疑問が湧いてくる。だからだろう。どこかで聞き覚えのある二人の男女が発したその名に縋ってしまったのは。それを自分の証としたのも。

 

オーウェン。それがこの時から俺の名になった。

 

そして意識は反転する

 

 




次回は深淵の監視者です

よく見たら13話投稿し忘れてたので投稿しました。申し訳ありません
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Abyss Watchers

このくらいの更新ペースを維持したいですね。今話から深淵の監視者戦となります。ちょっと1話で納めるのはキツかったよ。
あと暇つぶしにACVD活動記という作品も投稿してみました。あちらはこちら以上の駄文なので注意しておいてください、


扉の向こうから金属がぶつかり合う音が聞こえる。

肉を貫く音が聞こえる。

城塞外縁の篝火へと戻った俺はダークレイスやグルーたちを殺しつつ奥に見えた扉の前へと足を運んだ。すると扉の中からは戦闘音と思われる音が途切れることもなく発せられ奥に入るのを躊躇わせる。

 

と言っても入るしかないんだが…

 

仕方もなくその大きな扉を開き中へと踏み入れる。

 

そこは血の海だった。同じ格好をした剣士が床一面に倒れ、血をこぼす。その中心ではいまだ2人の剣士が殺しあっていた。

否、それも終わりを迎えていた。一人の剣士がもう一人の特大剣を左手の特異な形をした短剣で反らし肩を持つと右手の特大剣を胸に突き刺す。労るように優しく剣を抜きながらようやくこちらに気づいたようだ。

 

右手の特大剣をこちらに向け左手の短剣を特大剣とクロスさせるように首まで掲げる。

 

おそらく彼らなりの殺し合いの儀礼だろう。

 

ふと、祭祀場に戻ったときにホークウッドから聞いた話を思い出す。薪の王 深淵の監視者であるファランの不死隊は深淵が蔓延したのなら国をも滅ぼした、と。

火防女から聞いた俺の使命は王を連れ戻すことだ。ここで戦うのはまずいかもしれないな。

 

「薪の王 深淵の監視者たるファランの不死隊の方とお見受けする。俺は火防女より薪の王を玉座に連れ戻すよう言われている。」

 

目の前の剣士は何も言わず。戻る意思はないとばかりに低い姿勢で剣を構える。

 

言葉は意味をなさない…か

 

ならばとこちらもメイスを肩に背負うように構える。

 

剣士はもうスピードで突撃しつつ剣の間合いに入った途端に身を捩るように剣を振るう。それは全方位への薙ぎ払いとなり俺に襲いかかる。

速い!けど避けられる!

 

突撃薙ぎ払いを右に跳ぶことで避け、剣士と再び相対する。低姿勢からの剣技は驚異だ。だからこそこちらが有利な近距離での打ち合いをすべく近づく。

相手もこちらの思惑に気づいたのだろう。しかし距離を離すことはせず打ち合いに臨むようだ。

剣士は右手の特大剣を振り払い、それを避けた俺に対し左手の短剣で斬りかかることにより特大剣の隙を消す。そのあとに続くは特大剣による叩きつけ。俺はそれをメイスでガードし相手が短剣振るうより先に足で蹴り飛ばし体勢を立て直す前にメイスを投げつける。

さすがに剣士もこの攻撃は効いたらしくメイスを回収してから再び距離を詰める。メイスの一撃は特大剣に防がれたが俺が狙っているのは次の敵の攻撃だ。こちらの狙い通り短剣による攻撃を挟んできた剣士に対し左手にかぎ爪を装備しその短剣の攻撃をパリィする。

すでに俺の右手はメイスを手放しており代わりに手にするは腰の鞘より抜いた打刀。パリィにより体勢を崩した剣士の胸に打刀を突き刺し足で踏みつけながら強引に抜きながら吐き捨てる。

 

「あまり時間をかける気はない。本気を出すなら早くしろ」

 

視界は常に広く、だ。すでに床で倒れていた他の剣士たちが置き上がったことは把握している。

 

なるほど確かに”不死”隊だな。

これでは1体に張り付いたとしても他の剣士たちから突撃攻撃を喰らってしまうか…

 

新たに起きあがった不死隊の剣士は4人。さらに先ほど刀で貫いた1人も立ち上がった。合計5人か…少し厳しいものがあるな。メイスを再装備しつつ様子を見る。

しかし、起きあがった4人のうちの1人が突如雄叫びを上げたかと思えば躊躇いなく見方であるはずの剣士に斬りかかる。仲間割れ…という単純な問題でもなさそうだ。思い返せば俺が入ってきたときもこいつらは味方であるはずの剣士同士で斬りあっていた。

 

どういうことだろうか?

 

暴走(仮定)状態の剣士のおかげでこちらには最初の剣士ともう1人しか来ていない。まだ考えながら打ち合う程度の余裕がある。

 

ファランの不死隊は深淵の監視者であり深淵を確認すればたった一団で国をも滅ぼした。つまりファランの不死隊は深淵を狩るために存在するもの。ならばなぜ同じ不死隊の剣士同士で斬り合うのか?

深淵に呑まれた?おそらくこれだな。深淵と接する機会の多い彼らは深淵を狩るための存在でありながらその最期は等しく深淵に呑まれる。それゆえに彼らは隊として動くのだろう。自らが深淵にのまれてもきっと仲間が介錯してくれると信じて。そして仲間たちがいつか深淵を完全に滅ぼしてくれると信じて。

 

つまり、あの剣士は深淵にのまれて理性を失っている状態なわけか。

 

目の前の剣士たちは同じ剣技を繰り出してくる。しかし最初からいたやつの方が技に深みがある。伊達に最後まで立っていたわけではないか。それに一度パリィを取られたことにより安易に振り下ろしや短剣による攻撃はせず狼が群れで狩りを行うような独特の剣技を中心に繰り出してくるようになった。

低姿勢からの短剣をも使った回り込みながらの斬り込み。それをメイスを地面に叩きつけ剣の腹を叩き上げ体勢を崩したところに左手のかぎ爪で貫く。

これで1人倒したが向こうの暴走状態の剣士も討ち取られたらしい新たに2人こちらを向き敵意を露にしている。

 

さて、どうするか。こいつらは不死だ。殺したところで蘇るだろう。

 

暴走剣士と戦っていた剣士が独特の構えを取り、まるで狼の狩りの如く突撃攻撃を仕掛けてくる。しかも一人ひとりが別々のタイミングで突撃してくるのだから回避しづらい。

それでもなんとかそれを避けた俺に今度は最初からいた方の剣士が攻撃してくる。それは自らの手でトドメを刺すべく繰り出されたものではない。仲間が攻撃に移るまでの時間稼ぎであり、こちらを狩るための布石である。

 

やっかいな!

 

再び突撃攻撃を仕掛けてきた剣士たち。一人目の攻撃を横に飛びながら避け、メイスを構える。二人目の剣士の攻撃をメイスを投げつけ無理やり止める。刀を抜きフォローに入ってきた剣士の腹を切り裂く。

 

このままだとこちらが先に息切れしそうだ。この際多少のダメージは仕方ないと諦めてでも一気にカタをつけたいな。

といってもこいつらをどうやって殺しきったものか…

とりあえずいい加減にもう一人くらいは数を減らさないと

 

そう思い、最初から相対しまた、味方のフォロー等もこなす剣士に攻撃を仕掛ける。こいつもそろそろ一度くらいは倒れてもいい程度のダメージは負わせたつもりだ。しかし、それを嗅ぎ付けたかのように剣士は下がり、また他の剣士がフォローに入ってくる。

不死隊であり群で個を成す彼らに死の恐怖などないはずだ。だからこそ彼らはただ1つの集団で国をも滅ぼしたのだから。

 

群で個を成す…か。なるほど、あいつはこの群を支える最後の楔なのか…。

 

俺と最初に相対した時、彼は1人だった。俺がここに入る直前まで深淵に堕ちた味方の剣士を殺していた。もう不死隊として動けるのは彼だけなのだろう。故に不死として蘇る他の剣士が一時的に彼に協力するとしても一度深淵に堕ちてしまえばやがて理性はなくなり彼はその味方をまた斬らねばならない。

 

ならばやることはひとつ。速攻でやつを殺すことだ。

 

剣士たちは俺を囲みそれぞれが独特の剣技の構えを取る。

ここだ!俺は今まで切らずにいた札を切る。左手に呪術の火を灯しその火を地面に押し当てる。

剣士たちの突撃攻撃が来る。3つの刃は俺の身体に当たるより前に火柱によって阻まれその致死の刃の持ち主である剣士たちをも飲み込み叩き上げていた。

 

呪術 炎の嵐 使用者の回りに数多の火柱を発生させるこの呪術は囲まれた状況下においてこそ力を発揮する。

しかし、負けられないのは向こうも同じか。隊の楔たる剣士は左手の短剣を捨て肉厚な特大剣を両手で持つと空中に打ち上げられたにも関わらずバランスを即座に掌握し、即座に身体を捻り回転させ遠心力の乗った曲芸のような叩き斬りでこちらに攻撃してきた。

 

身を引き肩を斬られながらも必殺の一撃をなんとか耐えきった俺はもう瀕死である剣士の胸へとかぎ爪を突き刺した。それでも殺しきれなかった剣士が俺から距離を取るがそれを見越して左手で投げつけた投げナイフが彼の心臓へと吸い込まれ赤い華を咲かせる。楔となる剣士を討ったからだろうか。他の剣士たちも崩れ落ちるように倒れた。

 

そして終わったと安堵した途端、狼の遠吠えが聞こえた。

 

 

 

 

 

 




次は前書きでも紹介したACVD作品の方を投稿する予定です。


あともちろん監視者も強化していますのであしからず


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