バカとテストと召喚獣 ~The if or true story~ (天沙龍月)
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人物設定 (5話まで)


 一応書いてみました。
 読む時の参考にしてもらえればと思います!


 人物設定

 

 メインキャラ

 

 

吉井 明久 (よしい あきひさ) 男

 性格 温厚で優しい 優子の事になると……

 容姿 原作通り

 クラス Fクラス

 

 この作品の主人公。小3から前の記憶がない。

 学園では何故かバカを演じており、実際にはそんなにバカではないが天才というほどでもない。

 ある力を持っているようだが自分では知らない。

 優子に再会してからは姫路や島田などの他の女の子には好意を抱くことはなくなっている。

 LGNIの次期CEO。

 

 

 

 

 

木下 優子 (きのした ゆうこ) 女

 性格 他のクラスを見下す傾向あり 明久の前では積極的

 容姿 原作通り

 クラス Aクラス

 

 この作品のヒロイン。明久の本当の初恋の相手。

 小3の頃、明久の元から転校する。

 明久と再会してからは会えなかった時の寂しさからか明久にとても甘える。

 明久の現状について学園の生徒で唯一理解している。

 

 

 

 

 

如月 龍星 (きざらぎ りゅうせい) 男()

 性格 誰にでも優しい イタズラ好き

 容姿 少し長めで外ハネのある黒髪で後ろ髪が長く纏めていている。細身の長身だが筋肉はある。私服はどこぞの銀の狼のようなロングコートを着ている。

 クラス Fクラス

 

 この作品のもう一人の主人公。謎の多い人物。

 明久と優子を護るために学園にやってきた。

 LGNIの元CEOで明久たちの両親とも面識があり、明久を護るためにLGNIのCEOの座を輝久に与えた。

 自分の力が制限され、身体も万全ではないと言っているが、それがどんな力なのか、またその原因についてはまだ不明。

 つるぎからは神になれると言われているが頑なに断っている。何か事情があるらしい。

 ラグナリオンと呼ばれる鎧の様な物を纏う事が出来る。

 普通の人間ではなく5次元体。

 

 

 

 龍星側

 

 

 

如月 凛花 (きざらぎ りんか) 女()

 性格 明るくおおらか

 容姿 一番分かりやすいのはヴァルドラの倫花を少しクールにした感じ。おっとりではなく令嬢の様な気品のある雰囲気。

 クラス Aクラス

 

 優子を守るためにAクラスにやってきた少女。

 少し世間知らずな所がある。

 義父である龍星を溺愛しているが、龍星は凛花の事は恋愛対象ではなく自分の子供として愛している。

 

 

 

 

 

如月 凛音 (きざらぎ りおん) 女

 性格 生真面目 甘えん坊 どこか抜けている

 容姿 黒髪のショートカット。凛とした顔立ちで日本人らしい奥ゆかしい体つき。165㎝とちょうど良い身長。いつもメイド服。

 

 龍星の屋敷の使用人。19歳。

 龍星を愛している。

 龍星も恋愛対象としてある条件を凛音に了承してもらった上で愛している。

 龍星と二人きりになるとメチャクチャ甘える甘えん坊。

 甘えん坊になった理由は龍星が屋敷を空ける事が多く、自分に構う事も出来ない程忙しかった時に寂しさから龍星と二人きりの時にはメチャクチャ甘える様になった。

 龍星もその事には気付いており、そのためついつい凛音に対して甘くなってしまう。

 

 

 

 

ディルシウス・レスト 男

 性格 真面目 

 容姿 銀髪のオールバック。優しそうなおじいさん顔で執事服

 

 龍星の屋敷の使用人。

 優しそうな顔とは裏腹に武術に長け、龍星のトレーニングの相手やサポートをしている程。

 気遣いが上手く、龍星にも信頼されている。

 家事はほとんどこの人がやっている(凛音が危なっかしいから)。

 

 

 

      学園側

 

坂本 雄二 (さかもと ゆうじ) 男

 性格 乱暴な態度をとるが根は優しい

 容姿 原作通り

 クラス Fクラス

 

 明久のクラスメイト。明久とは高1から知り合いで、明久を相棒の様に思っている。しかし、本人は明久の不幸を願っていると言っている。

 頭脳明晰で計算高く、試召戦争ではFクラス代表として指揮をとりEクラス戦では勝利を飾った。

 Aクラスの翔子を密かに想っている。

 

 

 

 

土屋 康太 (つちや こうた) 男

 性格 無口でクールだが情に熱い

 容姿 原作通り

 クラス Fクラス

 

 明久のクラスメイト。あだ名はムッツリーニで本名よりあだ名で呼ばれる事が多い(本名は島田や翔子にしか呼ばれる事がない)。

 カメラの扱いが上手く女子をよく撮っている。実は学園中に隠しカメラを仕掛けており学園内の情報を収集している。

 影でムッツリ商会を経営しており女子たちの隠し撮り写真を売っている。

 明久にも秀吉の写真を売っている。

 明久とは高1からの知り合いで親友。

 

 

 

 

木下 秀吉 (きのした ひでよし) 秀吉(男)

 性格 温厚で優しい

 容姿 原作通り

 クラス Fクラス

 

 明久のクラスメイト。

 優子とは小学校が演技の才能が理由で違うため幼い頃には明久と会っていない。

 明久とは高1からの知り合いで親友。

 

 

 

 

姫路 瑞希 (ひめじ みずき) 女

 性格 おっとりしていて優しい

 容姿 原作通り

 クラス Fクラス

 

 明久のクラスメイトで初恋(本当はそうじゃない)相手。

 小学生の頃に明久と知り合った。この頃には明久は記憶を無くしている。

 明久の事がその時から好き。

 

 

 

 

島田 美波 (しまだ みなみ) 女

 性格 ツンデレオブツンデレ

 容姿 原作通り

 クラス Fクラス

 

 明久のクラスメイト。

 高1の頃に転校してきた帰国子女。

 その時に明久に助けられ、明久の事を好きになる。中々素直に接する事が出来ず、好意の裏返しとして暴力を振るってしまう。

 

 

 

 

霧島 翔子 (きりしま しょうこ) 女

 性格 真面目でクール 雄二には積極的

 容姿 原作通り

 クラス Aクラス

 

 優子のクラスメイト。高1の頃からの親友。

 普段は真面目で大人しいが、雄二には積極的にアタック(物理)している。

 

 

 

 

工藤 愛子 (くどう あいこ) 女

 性格 いたずら好き 根は優しい 変態

 容姿 原作通り

 クラス Aクラス

 

 優子のクラスメイト。

 高1の1月に転校してきて優子と知り合った。

 保健体育の実技が得意でムッツリーニのライバル。

 

 

 

 

    ささみさん@がんばらない側

 

邪神 つるぎ (やがみ つるぎ) 女(神)

 性格 小悪魔だが純粋 ブラコンでシスコン

 容姿 原作通り 破壊神を取り入れてないため小さいまま

 

 龍星の代わりに明久たちを護る為にやってきた助っ人。

 龍星が原作の世界に介入した為、結末が異なっていて鎖々美たちと共に同じ世界で生活している。

 神格は高いが原作の中で重要な存在であるため、平行世界には龍星の助けがなければ介入が出来なくなっている。龍星の言う神とつるぎの存在が根本的に違うため、龍星の知る天照の存在とつるぎの天照という存在は別の存在として世界からは認識される。

 戦力としては申し分ないが、兄である神臣やかがみ、たまへの愛情表現が過剰でウザがられる事がありそういう時には龍星にめちゃくちゃ甘えるきらいがある。

 つるぎが龍星にウブになってるのはつるぎが龍星を甘えられる対象だと認識しているから。つるぎには今まで甘えられる対象がおらず、頼られる事しかなかったため甘える事に慣れていないから。

 つるぎもある条件を了承し龍星を愛している。

 

 

 

 

 

邪神 かがみ (やがみ かがみ) 女(神)

 性格 ツンデレ、鎖々美が大好き

 容姿 原作より少し成長している

 

 龍星が異世界で出会った少女。

 いつも眠そうにしているのは相変わらず。

 最終巻後の為高校3年に上がっていて容姿が成長している。

 龍星には好感を抱いているもののそれは友人として。

 

 

 

 

 

 

邪神 たま (やがみ たま) 女(神)

 性格 天然

 容姿 原作と同じ

 

 龍星が異世界で出会った少女。

 次代神であるため神を喰らう事ができる。

 大人のような体とは裏腹に子供っぽい性格。



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第1章 バカと恋人と召喚獣編
プロローグ


 プロローグ
 作者はいまテストの勉強をしながらこの小説を書いているのですが結構難しいものですね!


 明久side

 

 僕は夕暮れのオレンジ色の空をバックに幼稚園の帰り道を一人の少女と手を繋ぎながら歩いていた。

 しばらく歩いた後、少女かくるりと僕の方を見て、

「あきくん!あたし…あたしね…あきくんの事、せかいでいっちばんだいすきだよ!」

 茶髪の少女が顔を紅く染めながらそう言ってくれた。僕はそう言ってくれたのがとても嬉しかった。僕も彼女の事が好きだった。だから、

「ぼくも、ーーーちゃんのことがだいすきだよ!」

 とちゃんと言葉にして伝えた。しかし、

 ー今の僕には彼女の名前がわからない。

「え~!?本当?やった~‼」

 彼女はそう言いながら、ピョンピョンと跳び跳ねていた。余程嬉しかったんだろう。そんな彼女の様子を見ながら、僕もとても嬉しくてしょうがなかった。端から見ればだらしない笑顔を並べていただろう。これで彼女の名前さえ思い出す事が出来れば何も言う事はないのが…

 

 

 いやダメだな、彼女以外の景色が消えてきている。もうこの夢か終わりかけている。もう何も思い出せないだろう。

 

    ーそして、すべてが白に変わった。ー

 

 

 

 

 目を開けると見慣れた天井だった、僕の部屋だ。太陽がまだ登ってまだそんなに時間は経っていないだろう。

 時計を見るとまだ午前5時だった。そんなことより、

「さっきのは…夢、なのかな? だけど……」

 だけど彼女は、どこかで見た気がする。一体どこだったか。夢の中では幼稚園の帰り道だったから、もしかすると幼稚園の頃の友達かもしれない。だけど、彼女の顔が思い出す事が出来ない。

    彼女の顔に白いモヤがかかったように。

 

 

 彼女の事はとても気になるけど、こんな調子だと考えても多分答えは出てこないだろう。僕はバカだからね、しょうがない。さてと。考え事をするのは後でもできる。それよりも今のうちに朝ご飯を作らなきゃ、学校に遅れてしまう。時計を見ると午前5時30分いい頃合いだろう、料理を始めよう。

 

 キッチンに向かい朝ごはんの献立を考える。

 今日は何にしようかな? 2年生の始まりだし縁起の良いものがいいかな。だけど縁起の良いものなんてしらないや。よし決めた、普通に和食にしよう。ご飯と、味噌汁にワカメ汁と焼き鮭とほうれん草のおひたしでいいかな。献立は決めたから早速つくろうか。

 

 

 1時間後

 料理は作り終わったけど、作っている間も夢に出てきた少女の事を考えてしまった。ホント、何でこんなに気になるんだろうか? 朝ごはんを食べながらまた考えてしまう。朝ごはんを食べ終え、身支度を終わらせて、7時30分。ちょうどいい時間だし、学校にいこうかな。ガスの元栓を締め、戸締まりを確認して玄関へ向かう。玄関を出てカギを締める。 さぁ、学校にいこう。

 

 

 

30分後

 学校への通学路を歩いていると、あるものを自分が持っていない事に気づいた。

 「バック、忘れた~!」

 完全に忘れていた。今から取りに行って学校に着くのは遅刻ギリギリだろう。まったく我ながら何で忘れちゃったかな~。

 

 

さらに30分後

 学校の校門がやっと見えてきた。校門の近くには誰かがいた。もしかして、あれって鉄人!?なんであそこにいるんだろう?

 「遅いぞ!吉井!」

 「げっ!…鉄人!」

 「鉄人じゃない。西村先生と呼べ!お前で最後だ。ほら。」

鉄人から渡されたのは、なにかの封筒だった。なんだろう?もしかして、

 「振り分け試験の結果通知だ。今日からそこがお前のクラスになる。」

 「はーい。」

 早速開けてみよう。

 「実はな。吉井…今だから言うが、去年一年間お前の事を見て、もしかしたらこいつは…バカなんじゃないかと疑いを持っていた。たが、試験の結果を見て先生は自分の間違いに気づいたよ…。すまなかったな。吉井…お前を疑うなんて俺が間違っていたよ。」

 何て事言うんだ鉄人は!僕がバカなのは当たり前じゃないか。さて、中の紙を見よう。これは…

 「お前は、疑いの余地もなく本物のバカだ!」

 

 

 

 

 

 

  やっぱりFクラスか!

 

 

 




 今回はこのぐらいでしょうか。ほかの作者さんのようにいい滑り出しが出来たと思います。今回のようにアニメに出てくる所はアニメのままの言葉にさせて頂きます。その方がオリジナルの出来事とアニメを繋げられるからです。感想お待ちしています!


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第1話 Fクラス、そして試召戦争開幕

 UA400超え、お気に入り9件。ありがとうございます!
 お気に入り登録してくださった9人の方々本当にありがとうございました!作者のモチベーションは上がりっぱなしで
今回なんと8000文字超えです。このままの量で出来るかな…?心配です…。そんなことはともかく、
 では本編をどうぞ!


 ここ文月学園は、世界初の特殊なシステムを導入した進学校である。その1つは、試験召喚戦争、最先端技術で実現された召喚獣によるクラス間戦争である。そして、もうひとつは成績累進式の教室設備。一年の終わりに振り分け試験を行い、その成績によって上のAクラスから下のFクラスまで6段階にクラス分けがされる。

 

 

 

 

 明久side

 はぁ、やっぱりFクラスだったか。そんなことを思いながら校門から下駄箱に移動して靴を履き替える。振り分け試験の時に姫路さんを助けたからな~。それ以降のテストは、すべて0点

になっているだろう。まぁ、後悔はしてないけど、好きな人を助けられたんだから。そんなことを考えながら、誰ももういないであろう廊下を歩く。僕は学校では、バカを演じている、だから、

 

 「なんだよ?Fクラスって最下位クラスじゃないか。振り分け試験は頑張ったのにな~10問に1問は解けたのにな~」

 

 なんてアピールをしておく。こうすることによって、周囲にバカと思わせている。これで、動きやすくなるからそうしている。さて、Aクラスの教室をみてみようかな、遅刻はいつ教室に行っても遅刻だからね。出来る限り自然に行こう。

 

 

 

 さぁAクラスの教室の前まできた。中を見てみよう。これは…

 

 「わぁ~!システムデスクにリクライニングシート!ノートパソコン支給か~!あっ!フリードリンクサーバーだ!お菓子も食べ放題か!いいな~!Aクラス~!」

 …めちゃくちゃ興奮してしまった。まぁ、あんな設備を見せられたら興奮もするよね。さて、Aクラスの設備も見たし我がFクラスに行こう。

 

 

 

クラスの看板が僕がきたときの衝撃で真っ二つに割れた。教室の中を見てみる。僕はバックを落としてしまった。

 

 「畳、座布団、ちゃぶ台…これがFクラスの教室!?」

 

 

 other side

 

 ここ文月学園は厳しい。より良い学園生活を望むならより良い成績を! それがこの学園の定めである!

 

 other side out

 

 「くそぅ…!これが格差社会というやつか!」

 「吉井君、早く席についてください。」

 「はい…。」

 

 僕がバカだからこんな教室で過ごさなきゃいけないだ…。これでも学年が、上がっただけでもましだと思おう…。そういえば、

 

 「僕の席はどこですか?」

 「好きな所にどうぞ。」

 「席も決まってないの!?」

 

 といっても座る所なんて決まっているけどね。遅刻したせいで。僕は唯一空いていると言ってもいい所のちゃぶ台にバックを置く。そして、座布団に座ろうとすると、パフッという音と共に違和感を感じた。そうか、

 

 「先生、僕の座布団ほとんど綿が入ってないんですけど?」

 「我慢してください。」

 

 そうだよね、これぐらいは我慢しないとね。最下位クラスなんだし。ふと、風を感じたのでそちらの方をみるとひび割れた窓があった。これは流石に…

 

 「先生、すきま風が寒いんですけど?」

 「我慢してください。」

 

 そういうやり取りをしているうちに僕のちゃぶ台の足が、バキッという音を立てて折れた。これは流石に…

 

 「先生、ちゃぶ台の足が折れたんですけど?」

 「我慢してください。」

 

 そうか。我慢だなって、

 

 「無理だっつの!」

 

 これは流石に無理だ!ちなみに先生に暴言を吐いたのも演技だ。僕はバカを演じるのに先生に丁寧に話すなんておかしいからね。そうすると先生は、笑いながら

 

 「冗談ですよ。」

 

 と言って木工ボンドを出した。嘘だよね、それで直せっていうの!?

 

        こんなの嘘だ~!

 

 other side

 

 ここ文月学園はやっぱり厳しい!

 

 other side out

 「え~。私がFクラス担任の福原です。皆さん1年間よろしく…『バキッ!!』工具を取って来るので皆さんは自習していてください。」

 

 まさか、教卓もボロいとは…それにしても福原先生、色々な意味ですごいな、生涯の恩師になりそうだよ。そういえば、ちゃぶ台を直さなきゃいけないな。多分直している間に誰かが話しかけて来るだろうから、バカの演技をしなきゃ。

 

 「本当にひどい教室だよな~。ここで1年過ごすのか~。憂鬱だな~。」

 「文句があるなら振り分け試験良い点とっとけよ。」

 「雄二!雄二もFクラスに!?」

 

 やっぱり最初に話しかけてきたのは、雄二だったか。坂本雄二、1年の時に知り合った元不良。今は、悪友でもある。Fクラスに来たってことは何かやりたい事があるんだろうな。何をやるかは大体わかってるけど、大方何か理由をつけて僕らを利用して霧島さんに告白したいんだろう。

 まぁ、いいけどね。人助けだから。

 

 「他にもいるぞ~。」

 「ハロハロ~。ウチもFクラスよ。」

 「島田さん!」

 

 あのポニーテールは島田美波さん。1年の頃に知り合ったドイツから帰国したいわゆる帰国子女。事あるごとに僕に暴力をふるって来るから結構苦手だ。

 

 「そっか。島田さんはやっぱりFクラスだよね~。」

 「ウチがバカだとでも言いたいの!?」

 「痛い!痛い!痛い!胸がないから耳があばら骨に擦れてすごく痛い!」

 

 やっぱり島田さん怒るよね。まぁ、予測してたけど。ヘッドロックをやられて4秒で瞬殺された。マジで強いよ!島田さん!あっ!島田さんのスカートが少しめくれたのにムッツリーニが反応した!その間1秒にも満たない早業だ!ムッツリーニこと土屋 康太。1年の時に知り合った親友だ。趣味は盗撮と盗聴というど変態だ。裏ではムッツリーニ商会の代表だ。僕もお世話になってるよ、色々と。

 

 「見えそうで…見え…見え…」

 「ウチは帰国子女だから出題の日本語が読めないだけなのよ!」

 「相変わらず賑やかじゃのう。」

 「秀吉?」

 「わしもFクラスじゃ。よろしく頼むぞ。」

 

 話しかけてきたのは木下秀吉。1年の頃に知り合った演技の天才。自分を男子だと思っている可哀想な女子という設定がある。まぁ、僕はそれでも、何故か好きになってしまったんだけどね。

 

 「こちらこそよろしく!」

 「しっかし、流石は学力最低クラス、見渡す限りむさい男ばっかりだなぁー。」

 「お前も入ってるけどな。」

 

 うるさいな。雄二。

 

 「でも良かったよ、唯一の女子が秀吉の様な美少女で。」

 「わしは男子じゃ。」

 「ウチが女子よ。」

 「分かってないな~女子というのは優しくおしとやかで、見ていて心和むオーラを漂わせる存在で、島田さんの様なガサツで乱暴で怖くて胸が無いのは…腕の間接に激しい痛みが!」

 

 ヤバイこれ完全に決まっちゃってるよ!ものすごく痛い!島田さんやめてよ!後、ムッツリーニは島田さんの下着を見ようとしてないで助けてよ!

 

 「あの~遅れてすみません。保健室に行っていたら遅くなってしまって…」

 

 あれは、姫路さん?やっぱりFクラスだったか。まぁ、そうだよね。振り分け試験の時に熱を出して倒れてしまったからね。点数は無いに等しいだろうな。姫路瑞希さん。僕が小学生の時に出会った初恋?の人。めちゃくちゃ可愛い子だ。そういえば、何故さっき初恋に疑問形がついたかというと実は僕は小学3年生から前の記憶が無い。何故無くなってしまったのかは分からない。母さんにも聞いて見たんだけど、

 

 「まだその時じゃないわ、それに、母さんの口からは言える事ではないわ。」

 

 なんて言われて教えてくれなかった。そういえばさっき、姫路さんのことを初恋の人だと言った時、何故か夢の少女がふと思い浮かんだな~。どうしてだろ?もしかして、彼女が…

 

 「姫路さん…。」

 「あっ、吉井君…!」

 

 姫路さんがこちらの方にやって来た。その時に外野がうるさかったけど気にしない!

 

 「吉井君…。」////

 「何かな?姫路さん…?」

 「『バキッ』痛くないんですか?」

 「『バキバキッ』うお~!僕の脊椎が今まで経験したことのない曲がり方をしている!あぁ~!これ以上曲がったら男子「見え…見え…。」」

 

 other side

 ここで一つの奇跡が起こる。割れた窓からの突風が奇跡的に島田のスカートに吹いた。

 other side out

 

 あれ?ムッツリーニが驚愕の表情をしている。めずらしいな。と思ったら鼻血を吹き出して倒れた!

 

 「ムッツリーニ!しっかりしろ!「みず…」しゃべらないで!今医者を呼ぶから!「み、水色…」ムッツリーニ~!」

 

 早く助けなきゃ!

 

 「良かった~。他にも女子がいて。席、特に決まってないから。適当に座っていいって」

 「はい。ありがとうございます。それじゃあ、ここ、空いていますか?」

 

 え~!姫路さんが僕の隣!?もちろん…

 

 「うん!どうぞ~!」

 「そっか~姫路さんもFクラスなんだ…。」

 「よろしくお願いしますね!吉井く…エホッエホッ」

 「まだ体調、良くないの?」

 「えぇ…少し…。」

 

 やっぱりか。振り分け試験からそんなに日は経ってないもんね。それに、

 

 「すきま風の入る教室。薄っぺらい座布団。カビとホコリの舞う古びた畳。病み上がりには良い環境じゃないよな。」

 

 そうだよな。じゃあ姫路さんのためにいっちょ試召戦争でもやってみようか。

 

 

 

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

 掃除の時間だ。姫路さんが、床を箒で掃いている。

 

 「エホッ!エホッエホ!」

 

 やっぱりこの教室に姫路さんが居たら、姫路さんは体調が悪化してしまうかもしれない。まぁ、僕の家の権力を使えばすぐ解決出来るんだけどね。今、皆に家の事がばれるとめんどくさい。これは雄二に相談してみよう。

 

 

 「で、何の用だ?」

 

 分かっているクセに。ここは劇の様にいってみよう。

 

 「僕は思うんだよ…。学校というのは社会の縮図だろう?こんな差別の様なクラス格差があるべきじゃない。でも、最下位の僕らが何を言っても負け犬の遠吠えにしかならないから、実力と発言権を得た上でこの疑問を世の中に…「つまりお前は姫路のためにクラスの設備を良くしたいと。」恥ずかしいから遠回りに言ってるのに何でストレートに言い直すんだよ!」

 

 そう来たか。まぁ、そうだとは思ってたけどね。それに今言った内容のほとんどは思ってもいないことだ。学校が社会の縮図ならこの格差はあって当然だしね。

 

 「実は俺も仕掛けてみたいと思っていたんだ。」

 「えっ、?雄二も?」

 「あぁ、世の中、学力だけがすべてじゃないって証明してみたくてな。それに勝算はある。」

 

 そんな事の裏では霧島さんに告白したいだけのクセに~。全く素直じゃないな~。それに、勝算というのは多分姫路さんの事だろう。姫路さんは1年のときは学年次席だからAクラス並みの学力が期待できるしね。回復試練が間に合えばだけど。

 

 「やってみるか?明久?」

 「あぁ、やろう!試験召喚戦争を!」

 

 

 

 

 まぁ、お膳立ては雄二にやってもらおう。その方は楽だし。教卓がある黒板の前に雄二と共に向かう。さぁて、これからどうするのかな?雄二?

 

 「皆!聞いてくれ!Fクラス代表として提案する。俺たちFクラスは試験召喚戦争を仕掛けようと思う。」

 

 Fクラスの皆びっくりしてるね~。それしても雄二がFクラス代表か。実力的には問題ないけど目的がな~。

 

 「なんじゃと!?」

 「試験召喚戦争ってまさか!」

 

 そのまさかだよ。島田さん。

 

 other side

 

 ここ文月学園には試験召喚戦争、通称試召戦争と呼ばれるシステムがある。生徒は教師の立ち会いの下科目別の点数に応じた攻撃力をもつ召喚獸を召喚する事が出来る。その召喚獸にもよって戦争を行い、上位のクラスに勝利する事でそのクラスと教室を交換する事が出来る。

 

 other side out

 

 「皆!このおんぼろ教室に不満はないか!『おおありだ~!』だが試召戦争に勝利さえすればAクラスの豪華な設備を手に入れる事だって出来るんだ!『おぉ~!』我々は最下位だ!『おぉ!』学園の底辺だ!『おぉ!』誰からも見向きもされない『おぉ!』これ以上したのないクズの集まりだ!『おぉ!』つまりそれはもう失う物はないということだ!『はっ!』ならダメ元でやってみようじゃないか!それに俺たちにはこいつがいる!」

 

 一斉に僕の方に視線が集まる。だけど僕は後ろを向いてその視線を僕の後ろに集めた。皆の頭に疑問が浮かぶ。それにしても上手いな、雄二。皆の不満を募らせてそれを試召戦争への目的に転嫁させるとは。

 

 「ここにいる吉井明久はなんと観察処分者だ!」

 

 クラスがざわつく。まぁ、そうだよね。観察処分者ってきいたら皆驚くよね。バカの代名詞だし。

 

 「いやぁ、それほどでも…」

 

 ここでもバカの演技をしておく。積み重ねは大事だね。姫路さんが手を挙げてる。どこか分からない所でもあったんだろうか?…姫路さんが分からないそうな所は大方予想がついてるけど。

 

 「何だ?姫路?」

 「観察処分者って凄いんですか?」

 「あぁ、誰にでも好きになれる訳じゃない。成績が悪く学習意欲の問題児に与えられる特別待遇だ。」

 

 そこまで言わなくてもいいじゃないか!僕は自ら望んで観察処分者になったんだから。何故観察処分者になったかというとちゃんとした理由がある。一つ目に召喚獸の特別な性質。普通召喚獸というのは物に触れない。だが観察処分者の召喚獸は先生の雑務を手伝うため物に触れるのだ。2つ目に先生の手伝いが出来るから。僕はなるべく人を助けたいんだ。だから観察処分者になったという訳さ。

 

 「バカの代名詞とも言われておる。」

 「全く何の役にも立たない人の事よ。」

 「わぁ!本当に凄いですね!」

 「だぁ~!穴があったら入りたい!」

 「試召戦争に勝利すればこんなおんぼろ教室からはおさらばだ!どうだ!皆!やってみないか!」

 『おぉ~!!』

 

 皆やる気になったようだ。いやぁ良かった良かった。さて次は、

 

 「手始めに一つ上のEクラスを倒す。明久、Fクラス大使としてEクラスに宣戦布告をしてこい。」

 「えっ、?僕?普通下位勢力の宣戦布告の使者ってひどい目にあうよね?」

 「それは映画や小説の中の話だ。大事な大使にそんなまねをする訳ないじゃないか。「でも…。」明久、これはお前にしか出来ない重要な任務なんだ。騙されたと思って行ってきてれ。」

 

 やっぱり君は悪者だ、雄二。そうやって皆に自分のしたいことをやらせる。だけど、もしここで断ればおかしいと思われる。それは避けたい。だったら、行くしかない。

 

 「騙されたよ!」

 「やはりな。」

 「予想してたのかよ!」

 「これぐらい予想出来なければ代表は務まらん。」

 「少しは悪びれろよ!」

 

 Eクラスがあんなに盛大に歓迎してくれるとは。全身が痛い。だけど、これでやっと初められる。

 

 「さぁ、これてもう後には引けないぞ。明久、覚悟はいいな?お前の望みなんだろう?」

 「あぁ!いつでも来い!」

 

 other side

 

 「ほう?今年の2年は1学期初日から試召戦争をやろうってかい。面白いじゃないか。承認してやりな。」

 「かしこまりました。」

 「さぁて、見せてもらおうか。」

 

 あたしは試召戦争許可の書類に承認の印をおす。Fクラスといえばアイツがいる所じゃないか。大方Aクラスになるはずだった姫路だったか、その子のためにでもやるだろうさ。まぁ、やるだけやってみな。バカを演じている天才。

 

 other side out

 

 翌日、雄二から作戦の説明があった。

 

 「戦闘の立ち会いには長谷川先生を使う。ちょうど5時限目でEクラスに向かう所を確保する。」

 

 やっぱりか。長谷川先生なら島田さんが有利だしね。だって長谷川先生は、

 

 「長谷川先生というと科目は数学?」

 「数学ならウチは得意よ!」

 「その、島田の得意な数学を主力に戦う。」

 「姫路さん、数学は?」

 「苦手ではないですけど…。」

 「やった~!姫路さんも一緒に戦えるね!」

 

 いや、それは無理だよ…島田さん。試験召喚獸の戦闘力は最後受けたテストの点数、つまり振り分け試験。ということは姫路さんは熱で途中退席したせいで数学のテストは0点のはずだ。そうなると姫路さんは初期の戦力としては使えない。何故雄二が数学を選択したかというと数学なら島田さんが得意だからだ。

 島田さんは帰国子女で日本語が読めないけど数学なら数式だからわかるはず。帰国子女ということは学力は並みの人以上にあるはずだから戦力として使える。

 その間に姫路さんに回復試験を受けさせ、Aクラス並みの点数を出してもらう。そうすればもうトントン拍子だ。そういうことだろ?雄二。

 

 「いや、ダメだ。「どうして!?」一番最後に受けたテストの得点が召喚獸の戦闘力となる。俺たちが最後に受けたテストは、「振り分け試験…。」「私は途中退席したから0点なんです…。」でも試召戦争が始まると回復試験を受けることができる。それを受ければ途中から参戦出来るさ。「はい…。」頑張ってくれ。「はい…!」」

 

 雄二、その優しそうな笑顔をこっちに見せないで!霧島さんらしき人が廊下にいるよ!いいの?あ、居なくなっちゃった。霧島さん、可哀想に。

 

 

 

 

 

 

 キーンコーンカーンコーン

 

「長谷川先生確保~!」

 

 お、早かったね。その声を聞いて雄二が教卓を叩いて皆の注目を集める。

 

 「開戦だ!総員戦闘開始!」

 『おぉ~!!』

 

 

 other side

 

 所変わってEクラス

 

 「全く…バカの癖に生意気ね。全員出撃よ!Fクラスなんてとっちめてやりなさい!」

 『おぉ~!』

 

 other side out

 

    さあ、このチート染みた戦争を初めようか!

 

 明久side out

 

 優子side

 あたしは、木下優子。Aクラスよ。今は、FクラスとEクラスの試召戦争が、始まってから30分くらいかしら。今、あたしはAクラスで自習をしている。何故なら試召戦争が始まると試召戦争をやっているクラス以外は自習になるから。

 だけど、あたしには心配している事ことがある。それは、観察処分者である吉井明久君の事。吉井君もといあきくんは、あたしの初恋相手で、彼とは、幼稚園からあたしが転校してしまった小学3年生までずっと一緒で、幼稚園の頃にあたしの方から一目惚れしてしまった。まぁ、その後の話は、また後で。

 それで、彼を心配しているのは何故かというとあたしは、彼にケガをしてほしくないから。あたしは、実の所まだ彼のことが好きだから。愛が重いと思われるかもしれないけど8年間ずっと彼のことを想ってきた。

 この試召戦争が終わったら、あたしはあきくんに会いに行くと決めていた。だけど心配で仕方ない。あきくんがもしケガしたら、と思うと震えが止まらない。あきくんが何故ケガをしてしまうというと、観察処分者であるあきくんは、召喚獣が特殊で物に触れる。そのメリットと引き換えに召喚獣がダメージを負うとそのダメージが召喚者であるあきくんにもフィードバックしてしまうのだ。だから…

 

 「…子?ねぇ、優子ってば!」

 「え!?な、何?愛子、どうかした?」

 「何って、優子さっきからペンが止まって、てめちゃくちゃ顔色悪いよ?心配事?」

 

 声をかけてくれたのは、工藤愛子。去年の終わりに文月学園に転校してきた子で、あたしの親友。あたしはずっとあきくんの事を考えていてペンが止まってしまっていたらしい。愛子に感謝だわ。

 

 「そうね。心配事といえば心配事かしら?だけどもう大丈夫よ。ありがと。」

 

 それでも、愛子は心配そうにあたしを見ていた。話を変えようかしら。

 

 「そういえば愛子。」

 「何?優子?」

 「あのバカのFクラスが、1学期早々試召戦争を仕掛けたらしいわね。」

 「そうらしいね。優子は、EとFのどっちが勝つと思う?」

 

 この会話の間もペンは止めない。そうね…あたしはあきくんのいるFクラスが勝って欲しいけど普通に考えて…

 

 「普通に考えてEクラスじゃないかしら。学力的には勝っている訳だし。」

 「僕もそう思うよ。」

 

 …自分で言ったはずなのになんか辛いな。やっと自習のプリントが終わって自分の勉強したい所も一段落した。そういえば…

 

 「代表はどう思う?今回の試召戦争。」

 

 あたしが話しかけたのは代表こと霧島翔子。Aクラスの代表で学年主席。物静かだけど好きな人の事になると意外と大胆。知り合ったのは1年のとき。それからはあたしの親友。もう自習は終わったらしい。

 

 「私は…Fクラスが勝つと思う。」

 「へぇ~。どうして?」

 「…雄二はこんな所で負けたりしないから。」

 

 凄いなぁ、少し憧れるわ。私は、そんな風に言えないから。あたしは自分のせいであきくんがあのFFF団だっけ?アイツらに傷つけられるかもしれないと思うと恐いから。

 でもそれでも、あたしは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     あきくん、早く会いたいよ…。

 




 さぁ、やっと優子を出せました。この作品の優子はちょっと愛が重いというか心配性というか…。
 今後も今回の様に優子の考えも書いていきたいと思います。
 さて、学園長が言っていたアイツとは一体、雄二と明久どっちなんでしょうね(笑)
 明久はこんな口をきいていますが特に役に立ちません。
 感想、応援、評価よろしければお願いします!作者のモチベーションが上がります!
 


 試召戦争は終わり明久と優子は出会う。その出会いによって何がどう変わっていくのか?明久の家とは?オリキャラは出るのか?
次回「試召戦争終了。そして、運命の出会い」  お楽しみに!
 


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第2話 試召戦争終了。そして、運命の出会い

 UA750越え、お気に入り13件ありがとうございます!
 お気に入り登録してくれた方々、本当にありがとうございます!
 感想書いてくらさった鏡月紅葉さん、本当に感謝です!
 感想を頂いた時に目尻が熱くなりました!

 今回、アニメの部分は少ないです。そして、ちょっと急展開?です。


 では本編をどうぞ!


 明久side

 

 試召戦争が始まった。相手は一つ上のEクラス。こちらの第1陣は島田さん、ムッツリーニ、秀吉と他大勢。島田さんたちには悪いけど今回の試召戦争では捨て駒だ。姫路さと雄二以外はね。当然僕も捨て駒。姫路が回復試験を受け終わるまでの時間稼ぎをしているに過ぎない。それに気づいてるのは僕ともう一人くらいかな。本当に皆良い意味でも悪い意味でもバカだね~。おっと、始まったかな?廊下が騒がしくなってきた。

 

 「島田美波!行きます!」

 「木下秀吉!参戦いたす!」

 「土屋康太!…同じく!」

 「承認します!」

 

 長谷川先生の承認の合図でE、Fクラスとその廊下に数学のフィールドが展開される。このフィールド内じゃないと試験召喚獸を召喚する事が出来ない。そして、召喚獸を召喚する時には合言葉を言わないといけない。それが、

 

 「試験召喚獸召喚!試獸召喚(サモン)!」

 「…試獸召喚」

 「試獸召喚!」

 

 おっ、最初に召喚獸を召喚したのは島田さんたちか。威勢がいいことで。時間稼ぎに使われてるとも知らずに、せいぜい頑張って欲しいものだ。そういえば何故廊下の声が聞こえるかというと、教室の壁が薄いからだ。流石おんぼろ教室だよね。

 

 

 

 

 

 5分後

 最初の戦死者がEクラスから出た。戦死者というのは自分の召喚獸の点数が0点になること。それ以上戦えないため、補習室で強制的に補習を受けることになる。それに補習の担当は鉄人こと西村先生だ、鬼の補習を受けさせられる。大体補習か終わったあとには趣味は勉強、尊敬するのは二宮金次郎になるってどんな補習をするだろうか?

 

 

 

 

 

 30分後

 まだ島田さんたちは頑張ってくれている。だけどそろそろ限界だろう、あっちは僕たちより上の点数を出している訳だから、最初は同じくらいの人数でも後になればなるほどこちらの戦力は削られる。

 

 「どういう作戦でいくの?雄二?」

 「作戦なんかねぇ。「え?」力任せのパワーゲームで押切られた方の教室に敵がなだれ込む。そして、代表が倒された方の負けだ。」

 「まさか、押切られたりはしないよね?「もうダメ!押切られる!」え~!」

 「Eクラスの方が成績は上だからな。ストレートにぶつかれば押切られるのは時間の問題だ。「そんなぁ~!」だが向こうも所詮はEクラス、Fクラスとの差は大きくない。押切るには時間が掛かる。その時間が勝負のカギだ。」

 

 そうだろうね。そういえばさっき雄二が言っていた代表が倒された方の負けだというのはその通りなのだ。試召戦争のルールとして明確に書かれている。だからクラスの代表は前には出ずいつも後ろにいる。これが試召戦争の基本的な戦法だろう。そろそろ時間か。

 

 「うぅ!点数が!」

 「このままでは戦死じゃ。お主は下がって点数を回復するのじゃ!」

 「分かったわ。」

 

 島田さんが最前線から居なくなったってことはもうすぐ前線は瓦解するだろう。

 

 other side

 

 「回復試験、受けます!」

 「この試験の点数が次に召喚獸を召喚したときの点数になります。低い点をとるとかえって召喚獸が弱くなることになります。それでもよろしいですか?」

 「分かりました。科目は何にしますか?」

 「数学でお願いします!」

 

 少しでもたくさん答えて点数をあげなきゃ!

 

 other side out

 

 「もう無理!」

 「ムッツリーニ!戦略的撤退じゃ!」

 

 秀吉たちも前線から離脱した。これで一気に押切られるな。

 

 「この勝負貰ったわ!」

 

 それはどうかな?Eクラス代表。まだ勝負は分からないよ。姫路さんの方が多分あともう少しで終わるだろうから、それまで時間稼げればなんとかなるんだよね~。

 

 「しまった!」

 「突撃よ!」

 『おぉ~!』

 

 Eクラス代表を先頭として教室になだれ込んで来る。

 

 「防衛線が破られたな。」

 「ヤバイよ。雄二~!」

 

 other side

 

 数式だけなら日本語が読めなくても解けるから楽勝!うわぁ!漢字だ!ここ飛ばして次の問題に…。隣を見ると姫路さんが凄い速さで問題を解いている。凄いわ!

 

 other side out

 

 「戦死者は補習室に集合!」

 『ヒィ~!』

 

 西村先生が戦死者を連れていく。あと残るのは僕と雄二だけだ。これは僕が時間稼ぎをしないといけないだろう。しょうがない、やるか。

 

 「どうしよう?雄二~!」

 「もう終わりなの?これまでのようね。Fクラス代表さん?」

 「おやおや、Eクラス代表自ら乗り込んで来るとは。余裕じゃないか。」

 「新学期早々宣戦布告なんて、バカじゃないの?振り分け試験の直後だからクラスの差は点数の差よ。あなたたちに勝ち目があるとでも思ってるの?「まぁ、どうだろうな?」そっか。それが分からないバカだからFクラスなんだ。」

 「雄二、やっぱり作戦も無しじゃ上のクラスに勝てっこないよ。「おっと、そういえば一つだけ作戦を立ててたっけ。」「え?」何故お前をここに置いているのか分からないのか?」 

 「え?そうか。」

 

 ここは演技をするしかない。

 

 「まさか、そいつは…」

 「そう。この吉井明久は観察処分者だ。明久。お前の本当の力を見せてやれ!」

 「ちぇ。しょうがないなぁ、結局最後は僕が活躍する事になるだね。試獣召喚!」

 

 Eクラスのほとんどが後退りした。そんなことしても逃げられないのに。

 

 「観察処分者の召喚獣には特殊な能力がある。罰として先生の雑用を手伝わせるために物体に触る事が出来る。『ゴツン!』そして、召喚獣の受ける痛みはその召喚者も受ける。「痛い痛い痛い!裂けてないかな?大丈夫かな!?」な、面白いだろ?」

 「それだけかよ!」

 

 全く痛いのは勘弁だよ。それにしても姫路さんまだかな?

 

 「いいわ。まずはその雑魚から始末してあげる。試獣召喚!」

 「そう簡単に負けはしない!行くぞ!」

 

 僕の召喚獣が勢い良く走り出す。ここで上手く自然に床が落ちる場所に操作する。そして、

 

 「痛~!同じ所ぶった~!いた、痛い!流石はEクラス代表。なかなかやるじゃないか。」

 「全く役に立たない護衛ね…。」

 「いんや~。十分役に立ったさ。」

 

 そうみたいだ。姫路さんの採点がちょうど終わった頃か。

 

 「それじゃ。代表自らあなたに引導を渡してあげるわ。覚悟して。Eクラス代表中林広美、坂本雄二に…」 

 「待ってください!姫路瑞希、受けます!召喚獣召喚、試獣召喚!」

 

 やっと姫路さんがきてくれた。姫路さんが召喚した召喚獣がEクラスの生徒を一掃する。姫路の点数は412点。Eクラスで勝てる人はいないだろう。チートっぽくて僕はやりたくないなぁ。

 

 『Aクラス並の攻撃力!?何でFクラスにそんな生徒が!?』

 

 Eクラスの人たちがすごく驚いている。それはそうだろう。

 

 「やっと来たか。」

 「姫路さん!」

 「姫路瑞希ってもしかしてあなた!?」

 「吉井!「島田さん?」この子やっぱりすごいわ!」

 「流石、Aクラス候補だっただけはあるな。」

 「あれが姫路さんの成績?」

 「問題数無制限の文月学園のテストは答えられれば何点でも取れる。「それじゃあ、作戦っていうのは…」テストの時間稼ぎだな。」

 

 いやぁ、姫路さんが間に合って良かった~。

 

 「Fクラスにそんな人がいるなんて聞いてないわよ!」

 「それじゃあ、行きます!ごめんなさい!」

 

 姫路さんの召喚獣の一撃がEクラス代表に当たる。そして、Fクラスの勝ちが決まった。

 

 other side

 

 かくして、この試験試験戦争はFクラスの勝利で幕を閉じた。

 

 other side out

 

 その後の交渉で事件は起きた。

 

 「やった~!すごいよ、姫路さん。これも姫路さんのおかげだよ!」

 「そんなこと…ありがとうございます…!」

 「これで僕らはEクラスと教室の設備を交換出来るんだよね。少しだけど今までより良い環境になるよ。」

 

 そんな訳にはいかないか。

 

 「いんや。設備は交換しない。「え?」設備は今までのままだ。良い提案だろ?Eクラス代表さん?」

 「そんな…どうして?」

 「何でだよ?雄二?せっかく勝ったのに…」

 

 教室の扉が開いた。あれ?誰だろう?秀吉に似てるけど明確に違う。言葉では言い表せないけど。何か懐かしいような…

 

 「決着は着いた?」

 「どうしたの?秀吉?その格好?そうか!やっと本当の自分に目覚めたんだね!「明久よ。わしはこっちじゃ。」え?秀吉が二人!?」

 「秀吉はあたしの弟よ。あたしは2年Aクラスからきた大使。木下優子。我々AクラスはあなたたちFクラスに宣戦布告します。」

 『えぇ!?』

 「どうしてAクラスが僕らに!?」

 「最下位クラスじゃないだからって手加減しないから。容赦なく叩き潰すから。そのつもりで。」

 

 木下さんは明らかにこちらを見下していた。やっぱり木下さんとは初めて会った気がしない。

 

 明久side out

 

 時は少し遡る。

 

 優子side

 

 あたしは今Fクラスの近くまできている。何故かというと目的は2つ。1つはあきくんに会うこと。もう1つはFクラスに宣戦布告するため。中の話が大分終わった様なので教室に入る。

 

 そして現在

 

 Fクラスの面々が驚いている。それはそうだろう。さてと、

 

 「あなたが観察処分者の吉井君?」

 「そうだけど?な、何か用かな?」

 

 あきくんだ~!って違う違う!そうじゃない。

 

 「さっき、先生にあなたに頼みがあると言付けを頼まれてね。一緒に来てくれるかしら?」

 

 なるべく見下しているような口調だったけど大丈夫だよね!?これであきくんに嫌われたらやだなぁ。ちょつと泣きそう。でもこれで、あきくんとちゃんと会える。

 

 優子side out

 

 明久side

 

 今日、先生の手伝いはあったっけ?突然手伝いが必要になったのかな?まぁ、木下さんに付いていけばわかるか。

 

 「ごめんなさい吉井君、先生の用って話は嘘なの。「え?」何で嘘なんてついたのかはここでは話せない内容なの。屋上に一緒に来てくれる?そこで話すわ。」

 「わ、分かった。屋上に行けば話してくれるんだね?「えぇ。」それじゃあ行こうか。」

 

 どうして木下さんは嘘をついたのか?最悪の場合も想定する。そうしている内に屋上についた。

 

 「聞かせてもらっていいかな?嘘をついた理由。」

 「えぇ、いいわ。それはあたしが吉井君と二人きりで話をしたかったから。」

 

 なるほど。木下さんが嘘をついた理由は分かった。だけど、何で僕と話をしたかったんだろう?それも二人きりで。木下さんとは接点はなかったはずだ。考えられる悪い予想は2つ。一つは僕の家の事がバレてそれを理由に僕を脅すため。もう一つは二人きりと見せかけてのリンチ。だけどこの場合はあり得ないかな。何故なら屋上には僕と木下の二人の気配しかないからだ。まぁ、話を聞いてみよう。

 

 「どうして僕と?」

 「それは…」

 「それは…?」

 

 木下さんはそこで黙ってしまった。言いづらい事でもあるのだろうか?木下さんはうつむいてしまった。うつむいている顔が少し赤い気がする。すごく可愛い。これは…もしかして告白しようとしてるのか!?でも、何でだ!?だって木下さんに会ったこともないんだぞ!?そんなバカな事を考えていると、

 

 「……もう…ない…。」

 「え?」

 「もう我慢出来ない!」ダッ

 「うわっ!」

 

 木下さんがいきなり抱きついてきた。もう少しで倒れてしまう所だった。はぁ、木下さん温かいし、いい匂いがする。ダメだダメだ!そんな事考えちゃ!そんな事を思っていると木下さんが僕から素早く離れた。もう少しそのままでもよかったのに…はっ!何考えているんだ僕!しっかりしろ!

 

 「ご、ごめんなさい!急に抱きついたりして!」

 「いや…そんなこと…」

 「本当にごめんなさい!やっと…やっと……たから…」

 「え?」

 「やっとちゃんと会えたから…あきくんに…」

 「い、今なんて…?」

 

 木下さんは顔を赤らめてそう言った。え?何でその呼び方を木下さんが知っているんだ!?それって…

 

 「あきくん…?」

 「………」

 「そ、そういえばちゃんと言ってなかったよね?」

 

 僕は頭の理解が追い付かず、黙り込んでしまった。そこに木下さんは顔を真っ赤に少し目尻に涙を浮かべなからとても可愛い笑顔で、

 

 「8年振りだね…久しぶり!あきくん!」

 

 ドデカイ爆弾を落としてきた。う、嘘、だろ…。僕は木下さんを8年前に知っているのか!?だけど…8年前って、

 

 「あきくん…?どうかした…?」

 「う、ううん!久しぶりだね!ゆうちゃん!」

 

 え?僕は何を…?そ、それに木下さんのこと…ゆうちゃんって…?え?だって僕は、

 

 「だって僕は8年前以前の事全てを忘れているのに、かい?」

 「「え?」」

 

 

 誰だ!?屋上には僕と木下さんしかいないのに!?そう思っていると、屋上の扉の影から裾の長い黒のロングコートを着た男が出てきた。誰だ?気配はしなかった。って事は結構な手練れか?それに文月学園の制服を来ていない。僕を狙った暗殺者か?だったら、

 

 「はぁ!」

 

 僕は自己防衛の為に黒コートの男に殴りかかった。木下さんはびっくりしているけど構わない!だけど、

 

 「筋は良いけどまだ甘いね。」

 

 軽くいなされる。そして、

 

 「はい、チェックメイト。」

 

 ナイフを首に突き付けられた。僕の負けだ。そして、拳を下ろした。

 

 「全く…。こっちの話を聞いてからそういうのは判断してほしかったな。俺は君を狙った暗殺者じゃない。LGNI次期CEO吉井明久君。」

 「え!?」

 

 男もナイフを下ろした。でも暗殺者じゃないって、

 

 「あ、暗殺者って何!?何であきくんを狙うの!?」

 「君は木下優子さんか。俺は暗殺者じゃないよ。」

 「えぇ!?なんであたしの事知ってるの!?」

 

 ど、どういう事だ?理解が全然追い付かないぞ!?

 

 「あぁ、明久君も君も理解が追い付いていないようだ。じゃあ、順に説明しようか。まず、俺の自己紹介から、俺は如月龍星。明久君のお母さんである吉井明菜さんとお父さんである吉井輝久君から明久君と木下優子さん、君を守るようにと依頼された護衛さ。「あ、あたしも!?」そうさ。だって君、明久君の婚約者だろ?」

 「えぇ!?」

 「あ、もしかして知らなかった?ごめんごめん。まぁ、帰ったら君の両親に聞いてみな。そして、明久君。君には俺の名前は如月龍星よりレビウス・ディ=シルヴァティアって言った方が良いかな?」

 

 今なんて?レビウス・ディ=シルヴァティアだって!?もしかして、

 

 「貴方は…LGNI前CEOの…」

 「そうだよ。まぁ、輝久君にCEOの席を渡してからはこの前まで旅人だったんだけど。まぁ、その話は置いといて。君は俺に聞きたい事があるんじゃない?」

 

 そうだ。何で、

 

 「何で貴方は僕が8年前から記憶が無いのに木下さんの事、ゆうちゃんって呼んだですか?」

 「えぇ!?あきくん記憶ないの!?何で!?」

 

 木下さんがめちゃくちゃ驚いている。まぁ、そうだろうね。好きな人が記憶がないだもん。

 

 「木下さん。落ち着いて。」

 「落ち着ける訳ないわよ!」

 「それで記憶が無いのに木下さんの事を、ゆうちゃんって呼んだ事だよね。まぁ、言うなれば明久君の愛の為せる事って言うことかな。「えぇ!?あ、あきくんの愛!?」そうさ。俺の推測だけど、明久君は木下さんの事を無意識にずっと覚えてたんだ。そしてやっと会えた。だから無意識に前の呼び方を言ったんだと思うよ。ロマンチックだよね。」

 「そう、だったんですか。なんて言えるか~!本当はどうなんですか!?」

 

 そんなの信じられない。

 

 「俺にも分からないよ。だけど多分俺の推測が当たっていると思うよ。「どうして!?」だって君、この推測が正ければその他にも心当たりあるんじゃない?

 「え?」

 「例えば秀吉君の事とか。だって君秀吉君の事「う、うん!」じゃないか。その理由は?」

 「え?えぇと…」

 「理由はない、が答えじゃない?」

 

 たしかにそうだ。秀吉の事は好きだけど理由が分からない。これが答えだろう。

 

 「…もしかしたら秀吉を木下さんと…勘違いして…」

 「もしかしたらそうかもしれないよね。これで分かったかい?君は無意識の内から木下さんを覚えていたってこと。」

 「なんとなくですが、分かりました。次になんですが、何故貴方はここにいるんです?」

 

 理解しきれてないけどしょうがない。

 

 「そうだね~。明日からこの学園に生徒として通うからかな。君たちを近くで護るために。」

 「けど貴方は20歳を越えてますよね!?どうやって?」

 「だから、如月龍星の名前の出番さ。日本はセキュリティをもっとあげた方が良いよね。」

 

 まさか、この人、

 

 「日本政府と文月学園のコンピューター、ハッキングしちゃった♪」

 「えぇ!?」

 「だから明日からFクラスに転校するんだよ。まぁ、明久君とはなるべく関わらないけど。」

 

 それはそうだろう。転校した初日から僕と知り合いだって思われたらクラスメイトにそのなりそめを尋問される。そうすると僕の正体まで最悪知られる。それは絶対に避けたい。そういえば木下さんはさっきの愛の所から顔を真っ赤にして上の空だな。話が終わったら、起こさなきゃ。

 

 「おっと、もうこんな時間だね。お暇しようか。後は明菜さんにでも聞いておくれ。それじゃまた明日。」

 

 レビウスさんは腕時計を見てそう言って階段を降りて行った。それはそうだ。もう日が傾いてきてる。さて、木下さんを起こさなきゃ。

 

 「起きて。木下さん。」

 「…あきくんの愛…あきくんの愛…」

 「おーい!木下さん!」

 「え!?あきくん!?あの、如月さんは?」

 「あー、もう帰っちゃった。僕たちも帰ろう?」

 「…嫌。」

 「何で!?」

 

 どうしてだろう?何か悪い事しちゃったかな。

 

 「…手、繋いでくれなきゃ帰らない。」

 「えぇ!?そんなぁ~!」

 「…あたしと、手を繋ぐの、いや?」

 

 木下さんが涙目になりながら上目遣いで聞いてきた。めちゃくちゃ可愛い!これは、

 

 「いやじゃない!いいよ。」

 

 反射的にそう答えてしまった。その可愛いさは反則だよ!僕たちは手を繋ぎながら校舎に降りてきた。木下さんの手、温かい。なんか安心する。なくしてしまったものが戻ってきた、そんな安心感。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この子とまた離れたくなんてない。もう絶対に。

 

 

 

 

   そんな思いが僕の中で沸き上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は少し遡る。

 

 レビウスside

 

 ファーストコンタクトはこんな感じでいいかな?明久君、君には期待してるよ。屋上に続く階段から少し降りた所に俺と同じような格好の長い黒髪の少女がいた。

 

 「…どうだった?ターゲット。」

 「筋は良いけど、まだまだ。普通の少年だよ。」

 「…そう。」

 「そんな顔しないでよ、凛花。可愛い顔が台無しだよ?」

 

 凛花の頬に手をやる。凛花は少し顔が赤くなった。やっぱり可愛いな、凛花は。頬から手を離すと凛花は少し名残惜しそうにしていた。さて、凛花も愛でたしいこうかな。

 

 「じゃあ、凛花。木下さんの方は頼んだよ。」

 「はい!任せて!」

 「自分の役割も分かった所で屋敷に帰ろうか?」

 「分かった。」

 

 俺は凛花の方に手を差し出す。凛花と手を繋ぐためだ。凛花も手を繋いだ所で帰ろうかな。

 

 

  吉井明久君、か。君も資格者なのかな?

 

 

 

 

 

      俺たちは歩き出した。

 

 




 レビウスと凛花というオリキャラを出しました。レビウスはこの作品ではもう一人の主人公となります。
 
 さてレビウスと凛花はバカテスの物語にどのように関係してくるのか?
 レビウスの言ったLGNIとは?

 それを次回書ければと思います。

 前回7年前と書いたんですがよく考えると8年前でした。すみません。修正します。




 明久と優子は出会った。いや、出会ってしまった。この行動が二人の運命を変えてゆく。明久は母親に真実を尋ねる。

 次回「帰り道 そして、真実」
  お楽しみに!


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第3話 帰り道 そして、真実

 大変お待たせしました!言い訳はしません。サボってました!半月程、全然創作意欲が湧かずそのまま放置していました。ごめんなさい!ですが安心してください。今回も何とか8000字越えです。そして、完全なオリジナルの話です。
 後、お気に入り30件越え、UA1900越えてました!ありがとうございます!
 それでは本編をどうぞ!


 明久side

 

 校舎の中に入ると僕ら以外に人影はなかった。木下さんをこのまま一人で帰らせられる事なんて出来ないので、木下さんはAクラスに、僕はFクラスに行って荷物を取りに行き、一緒に帰ることにした。ただ問題が一つ。木下さんが僕の手を離してくれないのだ。

 

 「き、木下さん。」

 「何?あきくん。」

 「もう手を離してくれないかな?」

 「…やだ。あきくんはまた居なくなるかもしれないじゃない。」

 「そんなこと…「ないって言い切れる?」…言い切れません。僕が悪かったです…」

 

 こんな調子で離してくれない。

 

 「もう、しょうがない…僕も一緒にAクラスにいくよ…」

 「えへへ♪それでいいの♪」

 

 仕方ない。このまま手を繋いでいくしかないようだ。まぁ、僕も本当は手を離したくないからいいんだけど。少し歩いてAクラスに着いた。それにしても、やっぱりすごい教室だなぁ。木下さんの机に行って荷物を取りに行く。さてと、次は僕の荷物か。

 

 「忘れ物はない?」

 「そんなのないよ?あきくん。」

 「それじゃあ、次は僕の荷物を取りに行こう。」

 「分かったわ。」

 

 AクラスからFクラスは結構遠い。何せAクラスは新校舎。Fクラスは旧校舎たからだ。5分くらいしてやっと着いた。行く途中で誰にも会わなかったから良いけど、Fクラスの連中に見つかりたくないな。もし、知られたらと思うと寒気が…

 

 「あきくん?顔色悪いよ?」 

 「あ、ごめんごめん。ちょっと考え事をしてて…」

 「もしかして、あたしとこんな事してるってFクラスの連中にばれたらって考えてる?」

 「…うん。そんな事になったら僕だけじゃなくて木下さんにも迷惑がかかっちゃうから。」

 

 それだけは避けたい。もしそれで木下さんに何かあったら…僕は生きていける気がしない。やっぱり僕は本当に木下さんが好きなんだって思う。こんなにもいとおしいのは姫路さんにも感じたことがない。

 

 「そんな事絶対ない…それでもあたしはあきくんが好き…。それに如月さん?もいるじゃない。だから心配しないで…?」

 

 そうだ。僕たちにはレビウスさんもいる。あの人ならFクラス、いや学園が相手でも負ける事は万に一つもないだろう。だってLGNIのCEOの時にもテロや紛争がある所に一人で行っては2、3日で解決してきた。そんな話をいくつも母さんから聞いている。

 そんなことを話しながらFクラスに着いた。よし、誰もいない。自分の荷物を取ってふと、視線を感じた。誰だ?この感じは雄二や島田さんではないらしい。誰かわからないというのはとても怖い事だ。誰かわからないということはこの状況を見られて、僕たちにどんな影響があるかわからないし、もしかしたら、僕を狙った暗殺者かもしれない。ただ、この視線に悪意は感じられない。

 

 「どうしたの?あきくん?」

 「いや、何でもないよ。さぁ、行こう。」

 

 悪意が感じられないということは、僕たちに悪影響がある可能性は低くなる。このまま観察だけしていてもダメだろう。それに、木下さんを早く帰して家に帰りたい。母さんに聞きたい事もあるし、頭の整理もしないと今後に影響がある。

 僕たちは少し喋りながら下駄箱まできた。

 

 「じゃあ、靴を取って履き替えるまでは手は離す。それでいいね?」

 「うん…しょうがないからね。待っててよ!本当にね!」

 「分かってるよ。」

 

 こうして、僕たちは一度手を離し、靴を履き替えて昇降口に来て、手を繋ぎ直した。なんか、言葉も変だけど。帰り道で、

 

 「…あきくん、本当に記憶無いの?」

 「そうだよ。小学3年から前の記憶は無いんだ。どうしてか分からないけど。ただ…」

 「…ただ?」

 

 これは木下さんに言ってもいいだろう。

 

 「ただ、昨日の朝変な夢を見たんだ。」

 「どんな?」

 「夕暮れで僕は幼稚園の頃ぐらいに小さくて、隣には僕の事をあきくんって呼ぶ、茶髪の同じくらいの女の子がいて…」

 「…それで?」

 「その子が僕に告白してきて、僕もその子に告白したんだ…って木下さん大丈夫!?」

 

 木下さんの顔が真っ赤だ。もしかして…

 

 「それって…あたしがあきくんに告白した時の…」

 

 やっぱりか。あの子は木下さんだったんだ。だけど、

 

 「僕たちって付き合ってたの?」

 「そうだよ。幼稚園の頃からね。」

 

 そんなことも忘れているなんて僕は本当にバカだ!この身を呪いたくなる。あぁ、何で忘れてるんだよ!

 

 「あきくん…もし、あたしが危険な事に巻き込まれたりしたら助けてくれる…?」

 

 木下さんが不安そうな顔をしていた。木下さんを猛烈に抱きしめたくなる。ここはグッとこらえて…ってもしこれが無意識のうちに安心させる方法を導き出しているとすれば…? 僕は木下さんを抱きしめ、頭を撫でる。

 

 「大丈夫だよ…。僕が木下さんを絶対に助けるから。安心して…?」

 「あ、あきくん…えへへ…ありがとう…。」

 

 よし、安心してくるたようだ。

 

 「…だけどあきくん、いつまであたしのこと木下さんって呼ぶつもり?」

 「え?じゃ、じゃあ、どう呼べば良いの?」

 

 そんな質問は想定外だった…木下さんの答えは決まっているだろう。

 

 「ゆうちゃんって呼んで…?」

 「いや、それは…」

 「皆の前ではまだダメだけど…ゆうちゃんって呼んで?」

 「き、木下さん、「ゆうちゃん」ゆ、ゆうちゃん。「それでよろしい。」わかったよ…。」

 

 僕、結構恥ずかしいんですが…。

 

 

 そんなこんなで別れ道まできていた。

 

 「それじゃ、ここから違う道だから…また明日の放課後、屋上で。」

 「また明日…。大好きだよ!!あきくん!」

 「僕もだよ。」

 

 こうして僕たちは自分の帰路についた。

 

 10分後

 

 僕は家に着いた。さてと、これから夕食の準備をして、夕食がすんでから母さんに話を聞こう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 1時間後

 

 夕食を済ませたので母さんに話を聞こう。母さんと父さんは海外のLGNIの本社にいるので電話するのにも一苦労。あ、つながったかな?

 

 「もしもし?LGNIの本社ですか?」

 「そうですが、どちら様でしょうか?」

 「吉井明久です。母さんはいるでしょうか?」

 「あ、明久様!?すぐにお呼びします!」

 

 受付の人、結構驚いてたな。それはそうか。次期CEOが電話してくるんだもんな。程なくして母さんが出た。

 

 「もしもし、明久?どうしたの?」

 「実は母さんに聞きたい事があるんだ。」

 

 聞きたい事は決まってる。

 

 「なにかしら?」

 「今日学校でレビウスさんに会ったよ。母さんたちが依頼したんでしょ?」

 「そうよ。貴方がCEOになる前に死んでしまったら意味がないもの。」

 「そうか…。後、木下優子さんって知ってる?」

 

 父さんがCEOになったのも僕の為って言ってたしね。でも何で?そして今日のメインの質問をする。

 

 「…!何処でその名前を?」

 「本人に会ったんだ。」

 「そう…。優李がそういえば同じ高校って言ってたわね。それで?」

 

 母さんか驚いてたのが電話越しでもわかる。それに優李さんって誰だ?普通に考えて、おそらく木下さんのお母さんってところか。

 

 「それでって…母さんは知ってたの…?僕が記憶を無くす前から木下さんと知り合いだったの。」

 「そうね、知ってるわ。だって…貴方たち婚約してるもの。」

 「やっぱりそうだったのか…。今日、レビウスさんが教えてくれたんだ。でもどうして?僕は木下さんの事を覚えてないの!?」

 

 やっぱり母さんは知っていた。なのに何で僕に言ってくれなかったんだ?

 

 「それは…貴方が知るにはまだ早すぎるわ…。もうこんな時間ね。それじゃ、明久、木下さんの事大事にするのよ。」

 「ちょ、母さん!…切られた…。」

 

 最後は強引に切られてしまった。何で僕には教えてくれないの?母さん。

 

 明久side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明菜side

 

 ごめんなさい明久。まだ貴方には教えられないわ…。もし、ここで教えたら貴方はまた…。

 

 明菜side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 優子side

 

 「ただいま~」

 「おかえりなさい。今日は遅かったのね~」

 「ちょっと用があって…。」

 

 あたしは家にやっと着いた。家に入るとお母さんが夕飯の準備をしていた。お父さんはまだ帰っていないらしい。

 

 「お母さん。お父さんと秀吉は?」

 「まだお父さんは仕事が残っているらしくて。秀吉はまだ部活かしら?帰り道で会わなかったの?」

 「いいえ。会ってないわ。」

 「そう。じゃあ、優子早く着替えてらっしゃい。…何か用があるんでしょ?」

 「は~い。てか、あたしが用があるってよく分かったね?」

 「そりゃあ、貴女を何年見てると思ってるの?考えている事くらい分かるわ。さぁ、早く着替えてきて。」

 

 お母さんには何でもお見通しみたいだ。あたしは急いで部屋で着替えてリビングに戻ってきた。するとお母さんはもう夕飯の支度は終わったようでリビングでくつろいでいた。さて、本題だ。

 

 「それで?どうしたの?」

 「実は…今日、あきくんに会ったの。」

 「あきくんって吉井明久君?良かったじゃない。」

 「そう。それである人にこう言われたの。」

 「なんて?」

 「あたしとあきくんは婚約してるって。」

 「…誰に聞いたの?」

 「レビウスさんって人。何でそんなことになってるの!?」

 

 お母さんの雰囲気が、少し変わった。

 

 「そう…。レビウスさんが…。優子は吉井君と婚約してて嫌?」

 「嫌じゃないけど…何でそんなことになってるのか教えてほしいわ。」

 「…分かったわ。これから話す事はまだ吉井君には絶対に言わないで。」

 

 お母さんは少し暗い顔をしていた。聞くには覚悟が必要ってこと?どうして?

 

 「…分かった。あきくんには話さない。」

 「良かった。まず何で婚約してるかっていうとこれは、吉井君を守る為に必要なことだから。そして、優子にも話さなかったのはそれを知って貴方に危険が及ばないため。」

 

 婚約する事があきくんを守る為?そして、それを話さなかったのはあたしの為?どうして?そんなこと…

 

 「よく分かってないみたいね。貴女は吉井が今どんな存在だか分かる?」

 「…LGNIって会社の次期CEO。」

 「そう。貴女はLGNIの事を知ってる?「…いいえ」そうよね。LGNIというのは正式名称でいうとlaureate global navigation and armaments industries 優秀な世界的な航行技術及び軍事技術工業というの。この会社の仕事としては世界の優秀な工業会社の監視と粛清。吉井君の父親がそこのCEOなの。世間には知られていない会社なんだけど、どの国もこの会社には頭が上がらないわ。自分たちの軍事技術の情報をすべて知っているから下手な真似をすると国が無くなってしまうからね。」

 

 あきくんはそんな所の次期CEOなの?何で?

 

 「何であきくんはそんな所のCEOにならないといけないの!?」

 「それは…吉井君を守る為よ。彼は生まれた時から特別な「力」があった。その「力」は世界のどの国も喉から手が出るほど欲しい力だったの。幼い頃から色々な国から狙われてきたわ。だから、吉井君の両親はその時のCEOであるレビウスさんに自分たちの息子に特別な「力」があり、そのせいで息子が狙われている事を伝えて守ってくれる様に頼んだ。そうするとレビウスさんはLGNIのCEOにする事を薦めたの。あの人も不思議な人でね、吉井君が特別な「力」を持って生まれてくる事を知っていたようなの。それでLGNIは吉井君の為に作ったから好きに使うといいといってくれた。それで吉井君の父親である輝久がCEOの席を譲り受け、どうにか吉井君を狙われないようにしたの。」

 「あきくんの事についてはなんとなく分かったけど、お母さんは何でその事を知ってるの?」

 

 細かい出来事まで知ってるなんてどうにもおかしい。

 

 「それは、私が吉井君の両親の幼なじみだからよ。吉井君の事を相談されてレビウスさんを紹介したのも私なのよ。前までLGNIの結構上の方だったからね。秀介さんも分かっていたわ。貴女たちには隠していたけど。」

 「何でお母さんはLGNIに勤めていたの!?」

 

 お母さんは少し悩んだ顔をして、

 

 「レビウスさんにスカウトされたのよ。貴女たちが生まれる1年くらい前にね。君が今後生むであろう子供たちの為にって最初は半信半疑で断ったんだけどその後不思議な体験をしたの。まだ生まれる事も分からなかった貴女たちの事が見えた。その中の貴女たちはとても苦しんでいた。私が護らなきゃって思った。それでスカウトを受けたの。その後貴女たちが生まれて今に至るわ。」

 

 おかしい…。お母さんの話はびっくりだけどレビウスさんは未来が見えていたとか?…そんなのありえない。もう空想の話だ。そんなことをお母さんと話し合っていたとき、突然リビングの扉が開いた。そこにいたのは、

 

 「ただいまなのじゃ。母上、姉上。何か話をしていたのかの?」

 

 秀吉だった。秀吉にこの話を聞かせるのはまずい。

 

 「何でもいいでしょ。ね、お母さん。」

 「そうね。」

 「そうかの?それなら良いのじゃが。」

 「さて、夕飯を出さなくちゃ。優子少し手伝って~」

 「わかったわ。」

 

 

 なんとか誤魔化せたかしら。まだあんたに話す訳にはいかないの。あきくんの為にも。

 

 優子side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は1時間程遡る。

 

 

 

 

 

 

 レビウスside

 

 今、俺と凛花は明久君たちを尾行をしていた。さっき、帰った様に見せたのは凛花と合流するためと明久君に俺達がもういないと思わせ木下さんは自分が護らなければと考えさせる事の2つ。

 それにしても、木下さんは結構積極的なんだなぁ、さっきからずっと明久君の手を離そうとしていない。明久君も満更じゃなそうだけど。……こう見てると何年も付き合っている恋人同士にしか見えないんだけど…さっき再会したばっかりなんだよな。

 

 「…いいな。」

 「どうした?凛花?」

 「だって、ああいう事してくれないじゃん!」

 

 頬を膨らませまがら訴えられても困るんだが…

 

 「凛花、しー。気付かれる。」

 「っ!…ごめんなさい。」

 「分かってくれれば良いさ。…家に帰ったらそれについて話し合おう?いいね?」

 

 凛花の髮をそっと撫でながらなだめる。

 

 「…分かった。」

 

 凛花は少し頬を赤らめながら納得したようだ。さて、明久君たちの尾行を続けよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明久君たちがFクラスにいたときだった。誰かが明久君たちを見ているようだ。それも隠れて。俺と凛花はなるべく気配をわからせずにその相手に近づいた。相手とあと数十歩の距離から一気に加速し、峰打ちをする。ちゃんと効いてくれたようで地面に倒れ込みそうだったのをキャッチする。このおかっぱ頭の少年…この学園の制服だから明久君たちのクラスメイトか?だが、AクラスやFクラスにはこの生徒は居なかったはず。別のクラスの誰か?しかし、この状況を見られたのはまずいな…。

 

 「どうするの?」

 「そうだなぁ、記憶を消すか。」

 「それが一番良いと思うよ。」

 

 凛花と相談し、記憶を消す事にした。消すといってもさっきの場面だけだ。後は彼の脳が勝手に記憶を捏造してくれる。どうやって消すか?そんなの決まっている、「力」を使うんだ。その名も絶対順守。相手に強制的に自分のさせたい事をさせる力。どこかの9人兄妹の長女様のような力やシスコン元王子のような力と似ているがそれよりももっと強力で並の人間ならば太刀打ち出来ない。さて、

 

 「おーい。起きろ!」

 「ん?な、なんだ!?お前らは一体誰だ!?この学園の生徒じゃないよな!」

 「俺は如月 龍聖、こっちは如月 凛花。よろしく。君は?」

 「お、俺は根本 恭二だ。」

 

 よし、これで名前は聞けた。この「力」には相手の名前を知っている事が不可欠だ。これで準備は出来た。

 

 「よし、根本君、こっちを見てくれ。「な、なんだ?」………………レビウス・ディ=シルヴァティアが命じる。根本 恭二、さっき見たものをすべて忘れろ。Fクラスにいた者たちの事もだ。」

 「何を……ウッ!頭が、頭が痛い!!………はい、忘れます。」

 

 成功だ。これで何とかなっただろう。明久君たちも無事に帰ったみたいだし、俺たちも帰るか。

 

 「凛花、帰るよ。」

 「はーい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 30分後

 

 ふぅ、家に着いた。俺たちの家は、まぁ言うところの豪邸だろう。文月学園から少し山の方に行った森の中にある。結構デカイ。ここには俺たちの他にメイドさんの凛音と執事のディルがいる。凛音は黒髪のショートで背丈が凛花よりちょっと小さい。真面目で健気な子だ。年齢は今年で19かな?ディルは銀髪の老紳士。何でも頼みを聞いてくれる頼れる人だ。出迎えは凛音か。

 

 「ただいま、凛音。」

 「ただいま、凛音さん。」

 「お帰りなさいませ。レビウス様、凛花様。凛花様、何度も申し上げていると思いますが、私にさん付けは不要です。」

 「いやいや、凛音さん、それは出来ないですって。」

 

 …また始まったよ、凛音と凛花のさん付け議論。凛音は自分にさん付けは要らないと、凛花はさん付けは敬称なのだから必要と主張し合い、終わらない。別にどっちでも良いと思うけどなぁ。ずっとこのままって訳にもいかないよな。

 

 「だからさん付けは要らないと!」

 「いやいや!要りますって!」

 「どっちもストップ。4月とはいえまだ肌寒い。早く家に入らないか?二人とも風邪引くよ。それじゃ。」

 「待ってくださいませ!レビウス様!私がご案内するのですから!」

 「待って~!」

 

 こうするのが手っ取り早い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 家の中に入ってすぐディルがやって来た。

 

 「お帰りなさいませ。レビウス様。お食事の準備が出来ております。」

 「分かった。ありがとう。」

 

 

 

 

 

 少しして、食事の広間に着いた。さて、

 

 「凛音、凛花もそろそろやめたらどうだ?」

 

 実はあの後も議論が続いていて廊下に響いていた。こうなったら…切り札を使うしかないな。

 

 「いえ、これだけは譲れませんので。」

 「そういうこと。」

 「はぁ…。いつまでもそうしてるなら今日のご褒美はなしだよ?いいの?」

 「「え!?そんな!」」

 「そう思うんだったら早くやめたら?」

 「「は、はい…。すみませんでした…。」」

 「それでよろしい。それじゃあディルと凛音、食事を持ってきてくれ。」

 「「かしこまりました。」」

 

 これでよし。さっき言ったご褒美というのは凛音と凛花の頭を撫でたり添い寝したりなど、まぁいうなればイチャイチャだ。内容はその時の俺の気分により変わる。これが無いと次の日の彼女たちのテンションがめちゃくちゃ低い。これを条件にすればほとんど頼みを聞いてくれる。まぁ、そんな風にしたことは無いけど可哀想だからね。

 

 

 

 お、ディルたちが料理を持ってきた。この家では使用人も主人たちと一緒に食べる様にしている。そうしないと凛音が可哀想だからね。

 

 「さて、頂こうか。」

 「「「はい。」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 30分後

 

 俺たちは談笑しながら料理を食べ終わった。今頃明久君たちは驚いているだろうな。明日が楽しみだ。

 さて、料理も食べ終わったし、ご褒美をしようかな。

 

 「今日は凛音から来てね。じゃあ、後で。」

 

 俺は自分の部屋に行った。俺の部屋は黒茶色を基調とした落ち着いた雰囲気の部屋だ。部屋の中には二振りの黒い剣が飾られている。。俺はそれに触り、

 

 「……まだ力は戻らないか。後2ヵ月か……君と話せるのを待ってるよ。ラグ。」

 

 そんなことをしている内にドアが2、3度トントンとノックされた。凛音が来たかな?

 

 「は~い。どうぞ~。」

 「お、お邪魔いたします。レビウス様。」

 「今は二人きりだから様は要らないよ、凛音。」

 「分かった。で、何で今日は凛花様より先だったの?」

 

 凛音は俺に腕を絡ませながら聞いてきた。わかっているだろうに。

 

 「そんなの簡単だよ。今日は1日凛花と一緒だったからね。凛音が寂しかっただろうなと思って。」

 「そ、そう。ありがとう♪ えへへ♪レビウス~」

 

 凛音が頬釣りをしてきたので、髮を撫でてあげた。そうすると凛音は目を細めて気持ち良さそうにしていた。

 

 

 そして30分後

 

 「それじゃあ、おやすみなさい。レビウス。」

 「あぁ、おやすみ。凛音。」

 

 凛音が帰り、今度は凛花が来た。

 

 「お邪魔しま~す。」

 「凛花へのご褒美はどうしようかな。」

 「何で!?」

 「だって今日ずっと一緒にいたからなぁ~。」

 「そ、そんな~!」

 「なんて嘘だよ。」

 

 凛花へのいたずらも済んだ事だし、凛花の頭を撫でてやろう。頭を撫でると凛花はとても赤くなっていた。可愛い。

 

 

 10分後

 

 「今日はここまで。それじゃあ、おやすみ、凛花。」

 「分かったよ…。おやすみなさい。」

 

 

 さて、これからどうしようかな。寝るか。そうしよう。

 

    明日が本当に楽しみだ。




 レビウスの方が明久よりイチャイチャしてる…こんなはずじゃなかったのに!作者はただ明久と優子のイチャイチャを書きたかっただけなのに…というわけでレビウス君イチャイチャしすぎだろうという作者の考えにより近い内に明久と優子のデート回やります。

 後、作者は今ISABにはまっています。そのせいで更新が遅れてるというのもあるですが…クーが可愛いすぎるのが悪い!もしやっている方がいましたらレビウスというのが作者のプレイヤーネームです。よければフレンドになってください!


 この作品へのご意見、ご感想等があれば気軽におくってください。特に感想を送って頂けると作者の更新スピードが上がります。

 次回「第4話 転校生 そして、放課後」
 お楽しみに!


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第4話 転校生 そして、放課後 前編

 明けましておめでとうございます!去年最後の、そして今年初めての投稿です。なんとか出せた~!いや~、ギリギリでしたf(^_^;)

 UA2800越え、お気に入り40件越えありがとうございます!感想をくれた足元注意さん、メリーさんありがとうございました!おかげで早く書けました。

 …そして一つ謝らなければなりません。
 サブタイを見ると分かると思いますが今回初めて前編後編に分けました。すみません!内容が膨らみ過ぎて1話に収まりきりませんでした!今回でも8000字越えてます。予定していたものを全て書くと2倍以上の内容になってしまいます。なので不本意ではあるのですが、分けさせていただきました。

 では本編をどうぞ!


 レビウスside

 

 「ん…。朝か。」

 

 俺が目を覚ますと部屋の窓から月の光が部屋を弱々しく照らしていた。さて、今日から二度目の高校生か…。俺は目元の涙を拭いながら体を起こし伸びをする。時計を見ると午前4時だった。いつも通りだ。俺は部屋着からトレーニングウェアに着替えて、ドアを開け部屋から出ると、

 

 「おはようごさいます。レビウス様。」

 「おはよう。ディル。」

 

 ディルが居た。ディルはいつもトレーニングに付き合ってくれている。トレーニングというのは戦闘を想定したトレーニングで、トレーニングの場所は地下室だ。俺とディルは談笑しながら地下室へと向かった。

 

 

 

 

 地下室に着いてディルは俺に二振りの剣を持ってきた。この剣は鉄で出来ており、トレーニングには十分な強度もある。ディルは剣を俺に渡した後機械の制御室に向かい、俺は何の構えも無くただ目を閉じ立っていた。少しして、トレーニングが始まった様だ。ディル以外の気配を感じ、こちらに向かってくるモノを弾いていく。どんどんこちらに向かってくるモノのスピードが上がりそれと対応するように弾くスピードは上がっていき、常人では何をしているか分からないくらいのスピードまで上がった。そこで、初めて目を開く。そして、もっとスピード上げていき限界まで上げ、最後に向かってくるモノすべてを受け止めた。

 

 「…どうですか?」

 「1秒間に250連撃でした。前回よりも速度が1.2倍になっています。いやはや人間とは思えませんな。」

 「あはは、そんなことありませんよ…。ア…や…ヴにはまだ追い付いていませんから。」

 「彼女たちは…。」

 「分かってますよ…。それでもです。だって俺も一応…ですから。…には負けていられませんよ。」

 

 今やったトレーニングは自分が1秒間にどのくらいの速さで剣を相手に当てられるかのトレーニング。これ以外にも色々なトレーニングをやっているが目標とする人たちにはまだ届かない。それでも継続はしている。継続は力なりというからね。

 

 

 

 

 

 

 2時間後

 

 トレーニングは軽めにして終わらせた。夜もトレーニングはするし、今日からは学園に通わなければならないからね。そんなに朝から疲れたくはないし、余力は残しておかないと。地下室から出てシャワーを浴びた。その後朝食用の服に着替えて、起きてきた凛音や凛花と一緒に少しゆっくりお茶を飲みながら談笑し、凛音は朝の準備があるからと少し早めに切り上げた。それから少しして、食事が出てきて皆で談笑しながら食べた。さて、

 

 「凛花、学園に行く準備をするよ。なるべく早く終わらせてね。」

 「は~い。」

 

 

 

 

 20分後

 

 凛花が準備をやっと終わらせて、学園に行く準備が出来た。もう学園に行こうと思う。今日はなるべく早く行かないといけないからね。色々とあるから。

 

 「さて、いってくるよ。凛音、ディル。」

 「「いってらっしゃいませ」」

 

 凛音にいってきますのキスをして、学園へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 other side

 

 ここ文月学園では学力こそが力であり、テストの点数こそが正義である。

 

 other side out

 

 

 

 

 

 雄二side

 

 俺は朝早くから学園にきていた。理由は2つある。1つは昨日、Aクラスに宣戦布告されたことについて考えるため。もう1つは姫路に呼ばれたためだ。姫路が俺に用があるとするとその用件は限られてくる。

 

 「どうした?姫路、俺に何か用か?」

 「実は坂本君に聞きたい事が…ちょっと良いですか?」

 

 …何だ?今何か殺気が…。

 

 「…え?」

 

 姫路が何かに驚いた様だ。一体何だ?まさか…あいつ…。

 

 雄二side out

 

 

 

 

 

 

 other side

 

 「……以上です。2年1学期最初の戦争は、FクラスがEクラスを倒して終結しました。」

 「ふーん。やるじゃないか。今頃負けたクラスは設備がボロくなって腐ってるだろうね。悔しかったら勉学に励んで次の戦争で取り返せって教えてやりな。人生は戦いだって。」

 

 あたしは前の戦争の報告を受けていた。流石はあいつらがいるクラスだ。どんな理由で戦争を始めたか知らないが…簡単には負けないだろう。

 

 「いえ…それが…生徒の自主申告で教室設備は入れ替えていないんです。」

 「うん?どういうことだい?」

 

 教室を入れ替えない?何故だい?それに何かメリットがあるとは思えないが…。全く何をしたいんだろうね?そんな事を考えていると、ドアのノック音が聞こえた。

 

 「…誰だい?」

 「本日からこちらの学園に通う事になった、如月龍星と如月凛花です。」

 「入りな。高橋先生、布施先生、この話は後だ。いいね?」

 「「分かりました」」

 「「失礼します。」」

 

 転校生か。こんな時期には不自然だが…。受け入れない訳には行かないからね。と考えていると、ドアが開いた。端正な顔付きの黒髪の青年と長髪で黒髪の綺麗な顔の少女が入ってくる。青年の方は青年とは思えない雰囲気を漂わせていた。何故あんな雰囲気が出せるのか疑問に思ったがそれよりも…

 

 「初めまして。学園長先生、本日からこの学園のFクラスの方に通わせていただきます、如月龍星です。よろしくお願いします。」

 「初めまして。学園長先生、同じく本日からAクラスの方に通わせていただきます、如月凛花です。よろしくお願いします。」

 

 なんとも礼儀正しいね。だが…龍星の方は何故Fクラスなんだ?頭は良さそうに見えるけどね。

 

 「そうかい。あんたたちが…。あたしがこの学園の長、藤堂カヲルだよ。よろしく頼むよ。それで…何故この学園に来たんだい?」

 

 理由も言わずにこの学園に通われても困るからね。ちゃんと理由を聞かせて欲しいものだよ。

 

 「そうですね…貴方には話していた方が良さそうですね。人払いしてもらっても宜しいですか?貴方以外には聞かれたくない内容なので。」

 「分かった。高橋先生、布施先生。」

 

 高橋先生たちに下がる様に目配せする。。高橋先生は少し心配そうな顔をして留まっていたが最終的にさがってくれた。あたしを信頼しておくれよ…さて、

 

 「…これで良いかい?」

 

 龍星の方は申し訳なさそうに、

 

 「すいません、ありがとうございます。では理由でしたね。実は俺たちは、ある生徒たちの護衛をしに来たんです。」

 

 ある生徒たち?一体誰だい?

 

 「その生徒たちの名前は?」

 「2年Fクラス吉井明久。2年Aクラス木下優子、以上です。」

 

 吉井?あの観察処分者の吉井かい?後Aクラスの木下?その子は確か優等生の…。だが…

 

 「何故だい?」

 「それは吉井君の立場のせいです。貴方も…少しは知ってるんじゃないんですか?吉井君の事を…」

 「っ!」

 

 あたしは動揺していた。龍星の目が、暗い深淵の様な目をしていたからだ。何なんだ?こいつは吉井の事をどこまで知っている!?そうだよ。あたしは吉井の事を多少は知っていた。吉井の履歴を見たときに疑問点があり調べさせた。そうして出てきたのが吉井はLGNIと何か関係があるという噂だった。まさかあの噂は本当だったのか!?

 

 「吉井君は今とても危うい立場なんです。実は吉井君の父はLGNIの現CEOで、後を吉井君に継がせようとしています。それだけでも危ういのですが、それ以外にも吉井君は普通の生活を学ぶために護衛はいません。これで分かりましたか?」

 

 龍星が答えた。LGNIの次期CEOってだけでも最悪命を狙われるだろうが、護衛も居ないなら吉井は今世界を1人で相手にしてるようなものだ。危な過ぎる。だが木下も?

 

 「木下さんは吉井君の婚約者なんです。昨日までどちらも知らなかったようですが。」

 

 また、龍星が答えた。そうだったのかい…。木下が…だが何故だ?吉井と木下にはほとんど接点は無いはずだが……。

 

 「それで?あたしはどうすれば良いんだい?何か手伝える事はあるのかい?」

 

 龍星は首を左右に振った。

 

 「貴方たちには何かをしてもらわない方がこちらとしては好都合です。その方が敵が出てきやすいので。」

 

 あたしには何も出来ないのかい…。吉井の為に…。だが、そう思うのと同時に疑問が浮かんだ。だったら…

 

 「あんたら二人でどうにか出来る問題じゃないんじゃないのかい?」

 「いいえ。どうにか出来ますよ。此方には龍星様がいるで。」

 

 今度は凛花が答えた。何故龍星がいればどうにか出来ると言えるんだい?

 

 「それは…………………………。」

 「何だって!?」

 

 

 この話を初めてからあたしは今一番驚いていた。だが…

 

 「まぁ…理由は分かった。この学園での2年間を楽しみな。」

 

 これ以上こいつらと話していると頭がおかしくなりそうだ…

 

 「ありがとうございます。学園長先生。ではまた朝会で、失礼します。」

 「あぁ、それじゃあね。」

 

 全く…とんだ生徒が入ってきたもんだよ…。

 

 other side out

 

 

 

 

 

 明久side

 

 僕は今まで生きて来た中で一番驚いていた。

 

 

 

 

 それは少し前の事だ。

 

 

 

 今日は全校での朝会があるため、僕は遅刻をしないように早起きして学園にやって来ていた。だってレビウスさんが転校して来るんだよ?遅刻なんてしたら失礼じゃないか。Fクラスに着いた。もう雄二やムッツリーニも来ていたようだ。

 

 「おはよう。雄二、ムッツリーニ。」

 「お、明久か。こんな早くにどうしたんだ?お前、いつも遅刻ギリギリに来るのに20分も前に来るなんて。明日は世界の終わりじゃないか?」

 「そんなことないよ!全く失礼だな!」

 

 なんていつもの会話をしているといつの間にか朝会の集合時間が間近に迫っていた。もう行かなきゃね。

 

 「朝会の集合時間だね。早く行こうよ。」

 「あぁ、分かってる。よーし皆行くぞー。」

 『うーい。』

 

 僕は雄二に促して朝会へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 朝会は滞りなく進んでいきすぐに転校生の紹介になった。その時、問題が起きた。転校生たちが壇上に上がっていく。え?たち?それに……

 

 「初めまして、皆さん。私が今紹介に預かりました、如月龍星です。出身はフランスですが純日本人です。どうかよろしくお願いいたします。」

 

 黒髪の端正な顔の青年が挨拶をして軽くウインクをする。それで反応が分かれた。女子からは黄色い歓声が、男子からは舌打ちの嵐が。だけどそんなことは関係ない。昨日会ったレビウスさんは普通に三十代ぐらいだったのに今は17,8ぐらいにしか見えない。どうしてだ!?若返った?そんなことがあり得るのか!?そうしてる内にもう一人が自己紹介を始めた。

 

 「初めまして、同じく如月凛花です。よろしくお願いいたします。後、名字で大体分かるかも知れませんがこちらの龍星は私の兄です。」

 

 黒い長髪の美少女がレビウスさんと同じようにウインクをした。今度は男子が黄色い声援が、女子から舌打ちの嵐が、女子って恐い! そんな中僕はというと か、可愛い。はっ!ダメだダメだ!僕には心に決めた人がいるんだ!首をブンブンと左右に振る。雄二たちに変な顔をされたけどそんなこと気にしてられない!さっきは何も見なかった。それで良い。そんなことより!レビウスさんの妹!?本当によく分からない!何なんだ!? なんて思っていた。

 

 「えー、自己紹介も終わった所で如月龍星君と凛花さんのクラスを発表します。龍星君がFクラス、凛花さんがAクラスに割り振られました。クラス代表にはもう発表していましたが如月君たちは試召戦争には参加する事が出来ません。試召戦争の間は試召戦争の観戦をしてもらいます。」

 

 高橋先生からさっきよりは軽い驚きを与えられた。やっぱりそうなるよな~。試獣の操作の訓練をしていないからね。ちゃんと訓練をしていないと試召戦争に参加しても言って悪いが足手まといになってしまう。そんなこんなで朝会が終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 僕たちは教室に戻って先生からレビウスさん改め龍星さんの紹介がされた。

 

 「朝会でも言っていた通り龍星君はフランス出身ですが貴方たちと同じく日本人です。仲良くしてあげてください。」

 「改めて如月龍星です。本当は1学期の最初から来たかったんですが手続きが遅れてしまいこんな中途半端な時期になってしまいました。少し日本に乏しい所があるかも知れませんがどうぞ仲良くしてください。……もしこの中で俺の妹に手ぇ出したい奴がいるならぶっ殺してやるからかかってこい。なんて…冗談です♪」

 

 いや…全然冗談の顔じゃなかったですけど…Fクラス皆が同じ事を思っただろう。だって笑顔のはずなのに全身から凄まじい程の殺気が出てるんだよ?あれ?それなのに誰も気絶していなかった。まさか…気絶しない程度に殺気を出していたのか!?す、凄すぎる。

 

 「皆さんどうかしましたか?シーンと静かになって?」

 

 先生が少し驚いている。そうでしょうね。いつも騒いでいるクラスの皆が静かになっているだもん。驚きますよね…。そんなHRが終わった。龍星さんは休み時間になってすぐ教室から出ていった。僕はあとを追う為に教室を出ようとした時、雄二から声を掛けられた。

 

 「どうしたんだ?明久?」

 「ちょっとトイレに…。」

 「ゲームの続きを早くしたいんだ。早くしてくれよ。」

 「分かってるよ。」

 

 たぶん雄二は僕が龍星さんと会う事を薄々感づいている。あんな自己紹介をしたから心配してとか思ってるだろう。僕は教室を出て、龍星さんがいるであろう屋上に向かった。

 

 「…来たね。吉井君。」

 

 やっぱり居た。龍星さんが佇んでいた。

 

 「なんで龍星さん、若返ってるですか!?それに妹ってどういう事です!?」

 

 龍星さんに近づきながら聞きたい事を聞いた。龍星さんはいたずら好きな子どもみたいな顔をして、

 

 「驚いた?吉井君たちにサプライズ的な?」

 「そんなことあるわけないでしょ!本当はどうしてなんです!?」

 「まぁ、本当の事を言うと若返ったというのは言葉が違うんだよ。」

 

 どういう事だ?

 

 「元に戻ったが正しいかな。俺はある時から不老になってしまったんだ。信じられないと思うけど本当だよ。LGNIのCEOだった時は歳をとったように見せていただけだしね。幻覚でね。あと凛花は妹じゃない。養子だよ。木下さんを守らせる為に連れてきたんだ。」

 「そう、だったんですか。」

 

 龍星さんの答えはすっと耳に入ってきた。そして、龍星さんは思い出したようになにかを取り出した。

 

 「はい、これ。俺たちへの連絡用の端末ね。あとフリーチャットも出来るから木下さんとも連絡出来るよ。良かったね~これで授業中も寂しくないよ(笑)」

 「そんなに木下さんが恋しくなることなんて…すいません。あります…。」

 

 昨日、木下さんと再会してからというもの、木下さんが近くに居ないとなんか落ち着かくなってしまった。Fクラスでも演技には支障が無いものの何度か顔に出る所だった。早く木下さんに会いたい。そう思ってしまうと落ち着かない。あ、ヤバい。

 

 「き、木下さんに今会えますかね?」

 「全く…しょうがないね。…あぁ、凛花?今どこ?…ふぅん。じゃあこっちに来てくれる?…うん。お願い。それじゃあね。」

 

 龍星さんが僕に渡した端末と瓜二つの端末でどこかに連絡してこちらを見てニコニコしている。

 

 「良かったね♪すぐ来れるって♪」

 「誰がです?」

 「君が会いたいって言ってたでしょ♪愛しのフィアンセを呼んでおいたよ♪」

 

 何だろう?もしかして…

 

 「あっきくーーん!!」

 「え?ぐふ!」

 

 屋上の扉からこっちに飛んでやって来る木下さんに抱きつかれた。あぁ、ゆうちゃんだ…。木下さんの感触が、匂いが、暖かみが、僕を落ち着かせてくれる。さっきまでの不安な気持ちを溶かしてくれる。ずっとこうしていられたらどんなに幸せだろう……。

 

 「やぁ、凛花。」

 「どうしたの?突然呼んだりして。」

 「いやー、この状況見て大体分かるでしょ?」

 「…まぁ、そうだね。」

 「おーい。お二人さん、もういいかい?時間が押しているんだ。」

 

 龍星さんが読んでいる。しょうがない。

 

 「…分かりました。…ゆうちゃん離してくれるかい?その代わりに手、繋ご?」

 「…分かった。いいよ。はい、手。」

 

 僕と木下さんは抱き合うのをやめて手を繋いでいた。もちろん恋人繋ぎだ。さて、

 

 「で、龍星さん何ですか?」

 「入れ替え早いね~。ま、良いや。でね、吉井君と木下さんを呼んだのは言わなきゃいけない事があったからなんだ。」

 「一体何ですか?」

 「実はね…」

 

 龍星さんためるなぁ。本当に大事なことなんだろうな。

 

 「二人に同棲してもらうことになったんだ♪」

 こうして初めに戻ることになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 明久side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は朝会終了まで遡る

 

 

 

 

 

 

 

 優子side

 

 あたしたちはクラスに戻って改めて如月さんの自己紹介を聞いていた。

 

 「如月さんはフランス出身ですが皆さんと同じく日本人です。仲良くしてあげてください。」

 「改めて如月凛花です。1学期の始業式から転校して来たかったんですが手続きが長引いてしまい、こんな中途半端になってしまいました。日本に乏しい所もあるので教えて頂くと幸いです。どうかよろしくお願いいたします。」

 

 綺麗な人だなぁ。あきくんも朝会の時にやけてたし…あたし、そんなに可愛くないのかな…。そんなことを考えると自分が嫌いになりそう。うぅ、あきくん…。

 

 「……さん。木下さん!」

 「は、はい!」

 「話を聞いてましたか?」

 「すみません…。考え事をしていて…。」

 「考え事も良いですが、話は聞いて下さいね。」

 「はい…。すみません。」

 

 あきくんの事を考えていたら高橋先生に指名されていたようだ。あきくんの事を考えていると他の事が疎かになるみたい。気をつけなきゃ。

 

 「それでなんでしょうか?」

 「実は如月さんに学園の中を案内してほしいのですが。良いですか?」

 「別に良いですけど…。いつですか?」

 「今からです。1時限目の授業は公欠にしますので、大丈夫です。」

 「分かりました。如月さん行きましょう?」

 「あ、はい。よろしくお願いいたします!」

 

 何だ、学園の案内か。如月さんとは聞きたい事もあるし、丁度良いや。あたしは如月さんに教室から出て学園の案内を始めた。それより…

 

 「改めて如月凛花です。よろしくお願いいたします。」

 「あたしは木下優子よ。優子で良いわ。あたしも凛花って呼ぶから。」

 「はい!優子!」

 

 この子、一つ一つの動作に気品を感じるわ。どこかのお嬢様なのかしら。それに、如月…。彼女に疑問を抱きながら案内を進めた。

 

 

 

 

 「大体、終わったかしら。はい、これ。」

 「あ、ありがとうございます!」

 

 大体の案内を終えて自販機から紅茶を買う。1つを凛花にあげた。談話室に行き一息ついた。さてと、

 

 「で?単刀直入に聞くわ。凛花はあたしを守りに来たの?」

 「…まぁ、そうなりますね。あ、そういえばこれをどうぞ!」

 

 凛花から何かの端末を貰った。何かしら?

 

 「これは?」

 「それはですね、私や龍星様、それに吉井君に連絡出来る端末です。それにフリーチャットが出来るので授業の間も吉井君と話せますよ♪」

 「っ! そ、そう。ありがとう。」

 

 やった!あきくんと話せるんだ!えへへ♪

 

 「あ、そういえば…優子は吉井君の何処が好きなんですか?聞きたいです♪」

 「え!?そ、そうね…全部好きだけど一番好きなのは笑顔、かな。えへへ。」

 「そうなんですか!良いですねぇ~。青春してますね!」

 

 凛花がいたずらっ子みたいな笑みを浮かべる。な、何よ。そんな時だった。凛花が何かに気付いた。あれはあたしのと瓜二つの端末だった。

 

 「…私だけど、どうかした?…今ですか?談話室ですけど。…え?はい。分かりましたけど…。木下さんも連れて行った方が良いですか?…はい。それじゃあ。」

 「誰?」

 「あ、龍星様です。屋上に来て欲しいと。優子も一緒に来て欲しいそうです。」

 「そ、そう。」

 

 龍星さんが?どうして?そう思いながら屋上に向かった。

 

 

 

 

 ん?何か話し声が聞こえる。

 

 「誰です?」

 「君が会いたいって言ってたでしょ♪愛しのフィアンセを呼んでおいたよ♪」

 

 もしかして、あきくんと龍星さん?あきくん、あたしに会いたがってる?なんかとてつもなくあきくんに抱きつきたい!

 

 「ほーら♪抱きついてきたら?」

 「そ、そうね。」

 

 あたしは助走をつけ、あきくんをロックオンして飛んで行った。

 

 「あっきくーーん!!」

 「え?ぐふ!」

 

 あたしはあきくんに抱きついて離さない。あきくん!大好き!あきくんの匂い、感触、暖かみが心に染み渡る。もう離したくない。ずっとこうしていたいよ…。

 

 「おーい。お二人さん、もういいかい?時間が押しているんだ。」

 

 龍星さんの声で現実に戻った。あきくんが申し訳なさそうに、

 

 「…分かりました。…ゆうちゃん離してくれるかい?その代わりに手、繋ご?」

 「…分かった。いいよ。はい、手。」

 

 あきくんは小声でゆうちゃんと呼んでくれた。それだけで嬉しかったが、その後の言葉もあたしにはとても嬉しかった。あきくんが自分から手を繋ごうと言ってくれたから。あたしとあきくんは抱き合うのをやめて手を繋いでいた。あきくんの方から恋人繋ぎにしてくれた。嬉しい♪

 

 「で、龍星さん何ですか?」

 「入れ替え早いね~。ま、良いや。でね、吉井君と木下さんを呼んだのは言わなきゃいけない事があったからなんだ。」

 「一体何ですか?」

 「実はね…」

 

 一体何だろうか?

 

 「二人に同棲してもらうことになったんだ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「え?えぇ!?」

 

 あたしは混乱していた。あきくんと同棲!?




 ということで明久と優子が同棲しちゃいます!これでもまだ4話の半分いってません。すいません!作者のミスです。

 同棲する事になった明久と優子ですが、後編ではまだ同棲はしません!そこだけは注意してください!
 後、レビウスがやっていたトレーニングですが、これは某黄金騎士や某銀牙騎士のトレーニングをモデルとしています。分かる人いたかな?

 本作品への評価、感想、お待ちしております。

 感想はログインしていなくても書けるので是非書いていただけるとありがたいです!Twitter初めました。作者の名前で検索していただくと出るはずです。仲良くしてくれた方にはこの作品のネタバレをDMしようかな~なんて思ってます。ぜひフォローしてください!


 次回「4話 転校生 そして、放課後 後編」お楽しみに!


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第4話 転校生 そして、放課後 後編

 お待たせしました!UA3700越え、お気に入り45件ありがとうございます!

 今回はなんと!9500文字越えです!これでも削った方なのに……。

 あとがきで大事な発表があります。

 では、本編をどうぞ!


 明久side

 

 訳が分からなかった。え?なんで?僕と木下さんが同棲するなんて話になってるの?母さん、何も言ってなかったんですけど!?

 

 「どういう事です!?」

 「どうにもこうにもそういう事だよ♪まぁ、詳しい事は放課後ね。」

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 龍星さんのその言葉と同時に予鈴が鳴った。ヤバい!

 

 「それじゃあね、凛花。」

 「それじゃ、龍星様。」

 

 龍星さんは如月さんにそういうとすぐに教室に戻って行った。如月さんも教室に戻ったようだ。え?僕たち置いてきぼり!?

 

 「じゃ、じゃあ、僕たちも戻らないと。」

 「…やだ。」

 「何で!?」

 

 木下さんが僕の手を離してくれない。ヤバいよ!本当に遅れちゃうよ!僕は良いけど木下さんは絶対に遅れちゃダメだ。

 

 「…だって後、放課後しか会えないんでしょ?…だったらもう少しこのまま…。」

 「…大丈夫。多分、昼休みには一度Aクラスに行くと思うし…授業の間もこの端末で連絡出来るよ。…それでも寂しい?…だったら………これでどう?」

 

 僕は木下さんを安心させるような口調でそう言った。僕だって木下さんと離れたくて離れるんじゃない。だからせめてハグをしてあげた。1分ぐらいして自然に離してくれた。その時、木下さんは顔をメチャクチャ赤くしていて凄く可愛かった。

 

 「…ありがとう…。あきくん…。」

 「…それじゃあ、今度こそ帰ろう?」

 「…うん。」

 

 そして、僕たちはそれぞれの教室に戻った。まぁ、僕は結局は遅れたけどね。だって遠いんだよ!屋上からFクラスって!

 

 明久side out

 

 

 

 

 

 

 雄二side

 

 明久のやつ何で遅れて来たんだ?如月の方は普通に戻って来てたが…。まぁ、次の休み時間にでも聞いてみるか。

 

 

 

 授業が終わり休み時間になった。さてと、

 

 「おい、明久。」

 「…何?」

 「さっきの時間結構トイレが長かったんだな。病気か?」

 「そんな訳無いじゃないか!ただトイレが混んでただけだよ!」

 「本当か?」

 

 なんか怪しいな。龍星はなんかFクラスの連中とすぐ仲良くなってるし、さっきの時間一体何があったんだ?まぁ、明久は本当に困ったら俺たちに言うだろうし、本当にトイレが混んでただけかもしれん。明久を信じるか。

 

 「なぁ、如月。」

 「どうかした?確か…代表の坂本君だよね?俺に何か?」

 「いや、一応代表として自己紹介でもしようかと思ってな。代表の坂本雄二だ。呼ぶ時は名字でも良いし、名前で呼んでくれても構わない。まぁ、よろしく頼む。」

 「よろしくね!俺はさっきの時間、吉井君だっけ?彼には会ってないよ?…それを聞きに来たんでしょ?」

 

 本当に何なんだ?こいつ、俺より頭が回るんじゃないか?だがだったら何でFクラスに…。

 

 「…まぁ、聞きに来たっちゃ聞きに来たんだがな。まぁ、分かった。すまんな。」

 

 さて、如月か。こいつはどう使うとするかな。

 

 雄二side out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明久side

 

 昼休みになった。やっと木下さんに会える!いや授業中にも連絡はとってたけどね。なんて惚気けながら雄二たちとお昼ごはんを食べていたら、バキッ!という音ともに僕のちゃぶの足が折れた。お弁当は大丈夫だったけど先生にボンドを貸して貰わなきゃ。

 

 「はぁ、先生からボンドを借りてくるね…。」

 「なんとも災難じゃなぁ。わしもついて行くかの?」

 「ありがとう秀吉、その心遣いだけでも貰っておくよ…。」

 

 秀吉に感謝しながら職員室に行った。さて、福原先生はいらっしゃるだろうか?

 

 「失礼します。Fクラスの吉井です。福原先生いらっしゃいますか?」

 

 職員室がざわついた。おそらくFクラスの生徒が来たからだろう。まぁ、当然の評価だろう。だけどそんなこと気にしていられない。僕は急いでるんだ。木下さんに会う時間が少なくなっちゃうからね!福原先生は…

 

 「あぁ、ここですよ。吉井君。」

 「そこでしたか。」

 

 福原先生が気を使ってくれた。ありがたいです!先生に言ってボンドを貸して貰う。その時気付いたが、ボンドが瞬間接着剤になっていた。教室を変えなかったから備品が少し良くなっていくのか。

 

 「それじゃあ、借りていきますね。」

 「はい。ちゃんと返してくださいね。」

 「分かってますよ。」

 

 職員室から出て教室へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 「おまたせ~。」

 「おぉ、遅かったな。」

 「まぁ、ちょっとあってね。」

 

 僕は自分のちゃぶ台を直すためさっきの瞬間接着剤を見せた。そして、あるロボットアニメのロボットのドッキングのような音を出しながら接着剤を勢い良く飛び出させる。これ一回やってみたかったんだ。

 

 

 「さすがは瞬間接着剤。あっという間に修理完了!」

 「良かったのう、明久。接着剤が良くなったのじゃな。」

 「苦労して勝ったんだもん、せめて支給品くらいレベルアップしてくれないとね。」

 

 それにしても……本当に運が良かったとしてもEクラスに勝てたのはFクラスの皆のおかげだ。これでクラスの皆の自信に繋がれば良いけど……。Aクラスとの試召戦争では、また皆の力を貸してね。Aクラスとの試召戦争では雄二はどんな作戦を考えてくれているか。多分だけど真っ向勝負なんてしないだろうから……代表を各クラスで決めて戦うのかな?どちらにしてもこっちに優勢な作戦を考えてくれているだろう。これで姫路さんも良い環境で勉強出来るだろう。まぁ、

 

 「雄二!何で設備の交換を断ったんだよ!?」

 「何だ?お前、あんなボロっちい木の机が好きなのか?」

 「こんなすぐ壊れるちゃぶ台よりは良いに決まってるじゃないか!」

 

 ドン!あ、やべ!ちょうどちゃぶ台にあった瞬間接着剤が手に付いた!秀吉の方に残り少しになったであろう接着剤の脱け殻が……ということは、

 

 「うわぁ~!ちょっ!うが!」

 

 驚いた拍子に倒れてしまう。当然、ちゃぶ台も付いてくるので僕の上にちゃぶ台が!

 

 「どうせ吉井は勉強しないんだから、机なんて関係無いでしょ。」

 「関係無くないよ!机は!お弁当食べたり、居眠りしたり、落書きしたり、学園生活の大事なパートナーじゃないか!」

 「……というより一心同体……。」

 

 ムッツリーニナイスツッコミ!

 

 「そのちゃぶ台も今日だけだ。俺たちはAクラスに宣戦布告されたんだからな。」

 「あ……。」

 「次に勝てばAクラスの設備が手に入る。少し計画は狂ったが、問題はない。事はすべて俺の計画通りに進んでいる。な、姫路?」

 「え?あ、はい……。」

 

 何で姫路さんがそこで出てくるんだ?まぁいいや。

 

 「さて、Aクラスに乗り込むぞ。」

 

 雄二が教室の扉の前でそう言った。それを待っていたんだ!早く木下さんに会いたいなぁ~。

 

 

 

 

 僕らはAクラスの教室に着いた。

 

 「ここがAクラス……。」

 「まるで高級ホテルのようじゃの……。」

 「ふ…僕が学園生活を送るには、ふさわしい設備じゃないか。」

 「見て!吉井!フリードリンクにいお菓子が食べ放題よ!」

 

 島田さんが驚いている。だけど僕は昨日ここに来てたんだよね……。だから、そんな驚かないんだけどここは演じなきゃな……。

 

 「うふん、そんな事にいちいち驚いていたら足元を見られるよ……。もっと堂々と構えてなきゃ……。」

 

 僕はブレザーのポケットに入りきらない程お菓子をいれておどけて見せる。

 

 「ことごとく発言と行動がともわなぬのう。」

 

 秀吉の言う通りだよほんと。まぁ、わざとやってるからね、バカを演じるために。さて、漫才はここまで。

 

 「あらぁ?開戦は明日じゃないの?」

 「姉上!」

 「もう降服しに来たの?」

 

 ほら、お出ましだ。あぁ、木下さん……本当に可愛いなぁ。ヤバイ、また抱きつきたくなってきた。

 

 「もうすぐ俺たちのものになる設備の下見だ。」

 「随分強気じゃない?」

 

 雄二も木下さんも悪い顔してるなぁ。雄二がAクラスの高そうなソファーにどこかの悪者みたいな格好で座る。

 

 「交渉に来た。クラス代表同士での一騎討ちを申し込みたい。」

 

 やっぱりか。普通の方法じゃ僕たちが勝つなんて不可能に等しいからね。まぁ、他のみんなは結構驚いてるみたいだけど。

 

 「貴方バカじゃないの?2年の首席に一騎討ちで勝てる訳ないでしょ。」

 「怖いのか?確かに終戦直後で弱っている弱小クラスに攻め込む卑怯者だしな。」

 「今ここでやる?」

 

 雄二が挑発して木下さんの苛立ちを悪化させる。上手いな、さすが元神童。

 

 「……待って。……一騎討ち受けても良い。」

 「代表!?」

 「……でも、一つ条件がある。」

 

 あ、霧島さんだ。やっぱり霧島さんがクラス代表なのかな?ってあれ?霧島さんが姫路さんの方に近づいて……

 

 「負けた方は何でも一つ言うことを聞く。」

 「え?」

 「それがFクラスに宣戦布告した理由か。」

 

 やっぱり霧島の狙いは……雄二かな?これは公式の試合みたいなものだから条件を飲めば雄二が霧島さんから付き合ってほしいと言われても断ることが出来ないしね。良い考えだね!霧島さん。

 

 「勘違いしないで。あたしたちAクラスには学園の治安や品格を守る義務があるの。一学期早々何の努力も積まない内に戦争をやらかしたバカへの制裁措置よ。」

 

 木下さん頑張って正論っぽくしようしてる!がんばれ~!

 

 「良いだろう。代表同士の一騎討ち、負けた方が言うこと聞く。」

 「一騎討ちじゃないわ。5対5よ。」

 「優子?」

 

 やったぁ!雄二が条件を飲んだ。良かったね、霧島さん。あれ?今僕どっちの味方だっけ?なんか分からない内に話が進んでるし!みんな固まってる?何で?

 

 「代表が負けるとは思わないけど慎重になるに越した事はないわ。」

 「よし5対5で構わない。その代わり対戦教科の選択権はこちらが貰う。」

 「……分かった。」

 「交渉成立だ。」

 

 え?何で代表が5人になってるの!?そんな事を思っている内に雄二がAクラスを出てしまう。話が分かんないだけど!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕たちはAクラスを出た後屋上に来ていた。僕と一心同体になった(間違いじゃない)ちゃぶ台でお菓子を食べていた。(Aクラスから少し盗んで)

 

 「どうすんだよ雄二?あんな約束して。」カリッ

 「俺たちが勝つんだから関係無い。」カリッ

 

 関係無い事は無いんじゃない?だって負けたら雄二の人生が終わっちゃうかも(笑)その慢心が命とりかもよ。

 

 「向こうが言いなりになる特典が付いただけだ。」カリッ

 「本当によいのか?あの霧島翔子という代表には妙な噂があるようじゃが。「噂?」成績優秀才色兼備。あれだけの美人なのに周りには男子が居らんというはなしじゃ。」

 「へぇ~。モテそうなのにねぇ?」

 「噂では男子には興味が無いらしい。」

 

 そりゃあ、そうでしょ。霧島さん、雄二以外に興味ないからね。そういう意味じゃ噂は本当だけど。

 

 「男子にはって……まさか!?霧島さんの目的って……!?(ガチャ―ン!)ままままさか。まさかそんなはずは……それって変だよ!そんなことがこんな身近にあるわけじゃない。ねぇ!島田さん?」

 「ある……。そんな変な娘、身近にいるわ!」

 「見つけました!お姉さま!」

 

 島田さんに誰かが抱きついてきた。誰だ!?あの娘!?

 

 「ひどいですわ!お姉さま!美春を捨ててけがわらしい豚共とお茶会だなんて!」

 「放しなさい!寄らないで!」

 「誰?」

 「……二年Dクラス清水美春。」

 

 ムッツリーニが説明してくれる。ってムッツリーニいつの間にカメラの整備終わらせたの!?

 

 「やめて!離してよ!」

 「恥ずかしがらないでください♪お姉さま♪本当は美春の愛してくださってるのに、照れ屋なんですね!」

 「ウチは男子の方が好きなの!「あぁん!」吉井!言ってやって!」

 

 そこで何で僕に振るかな……。まぁ、しょうがないこれも人助けだ。

 

 「そうだよ、清水さん。女同士なんて間違ってる!たしかに島田さんは見た目も性格も胸のサイズも男と区別がつかないぐらい……四の字固めが決まって~!」

 「ウチはどう見ても女でしょ!」

 「そうです!美春はお姉さまを女性として愛してるんです!」

 「ギブギブ!ギブ!」

 

 島田さんと清水さんから四の字固めを決められる。メチャクチャ痛い!何でこんなことするのさ!?ていうかムッツリーニも島田さんのスカートの中を見ようとしないで助けてよ!

 

 「い、痛い!島田さん助けてよ!何でも言うこと聞くから!」

 「ほ、本当に?それじゃあ今度の休み、駅前のラ・ぺリスでクレープ食べたいなぁ!」

 「え?そんな!?僕の食費「あぁ!?」がぁ~!いえ奢らせていただきます!」

 

 

 くっそぉ~!今度の休みは木下さんとデートの約束してたのに!島田さんの悪魔!

 

 「それから……ウチを美波様と呼びなさい!ウチはアキって呼ぶから!」

 「は、はい!美波様!」

 「それから……それから、ウチの事あ、愛してるって言ってみて!」

 「は、はい……。言います……。」

 

 そんなこと言える訳無いじゃないか!僕が愛してるって言えるのは木下さんだけに決まってるじゃないか!だけど今、命を取られたら放課後木下さんに会えない!だったら言うしかないのか……!

 

 「させません!」

 

 清水さんが絞める力を強くする。痛いよ!

 

 「言いなさい!」

 「うぼぉ!」

 

 それに応じて島田さんも絞める力を強くする。何で!?このままじゃヤバイ!だからムッツリーニ!島田さんのスカートの中を覗こうとしてるのは分かったから僕を助けてよ!

 

 「さぁ!ウチの事を愛してるって言いなさい!」

 

 もう言うしか生き残る道はない……。島田さんなんて大ッ嫌いだ!

 

 「は、はい……ウチの事愛してるっ言いなさい!」

 

 チーン

 

 え?なんか今鐘の音が……

 

 「!!このッバカ~!」

 

 島田さんが僕にトドメを刺した。それから僕は昼休みから放課後まで記憶が無い。 ていうか昼休みになってから龍星さんを見ていない。どこかに行ったんだろうか?一応僕たちの護衛ですよね?まぁ、ちゃんと僕たちの周囲には気を配っているだろう。

 

 明久side out

 

 

 

 

 時は昼休み始めに戻る

 

 

 龍星side

 

 吉井君たちはAクラスに行ったようだね。さてと、

 

 「あ、龍星どっか行くのか?」

 「まぁね。ちょっと妹に会って来ようかなって。何か欲しい物とかある?ついでに買ってくるけど。」

 「いや、特に無いな。じゃあ妹さんによろしく言ってくれ。」

 「うん。Fクラスの連中には絶対関わるなって言っておくよ。」

 「何でだよ!?」

 

 俺は須川くんの声を無視して教室を出る。全く愛娘をあんな奴等に関わらせる訳無いじゃないか。どんな悪影響が出るか知れたもんじゃない。そんな事を思いながら空き教室にきた。ここで凛花と待ち会わせしていた。

 

 「あ、龍星~!」

 

 お、来たようだ。凛花が手を振りながらこっちに来た。

 

 「一体何の用?こっちはFクラスの人たちが来て大変だったんだけど。」

 「一応、定時連絡が欲しかったから呼んでみただけだよ。で?どうなったFクラスとの交渉。」

 

 これが一番聞きたかった事って訳じゃないけどね。

 

 「なんか代表を決めて戦うみたい。後、廊下にこんなものがあったよ。」

 

 凛花が見せてきたのは小型のカメラだった。あぁ、ムッツリーニ君だっけ?彼のカメラだろう。

 

 「廊下のどこにあったんだ?」

 「ゴミ箱の近くだったはず。」

 

 全く……

 

 「それで持ってきたと?……凛花、よく考えてみて?俺たちの目的は?」

 「吉井君と優子の護衛?」

 「護衛は秘密裏にやらなきゃいけないでしょ?だったら、表で目立ったらいけないんだよ?凛花がやった事でどんな事が起きる?」

 

 凛花は少し考えて、ハッとした。

 

 「……カメラの持ち主に気づかれたらそこからどんどん怪しまれる……!」

 「だからこういうのに気づいても触れちゃいけないんだよ。今度から気を付けてね。」

 

 ムッツリーニにこの事がばれると最悪、坂本君まで情報が行きかねないからね。凛花からカメラを貰い、カメラのあった場所に後で戻しておこう……。さて、

 

 「Aクラスでは友達とか出来たかい?」

 「うん!いっぱい出来たよ!」

 「それは良かった。お昼は食べた?」

 「もう食べたよ。」

 「そっか。それじゃあ、戻って良いよ。」

 

 一応俺もここに来る前に食べておいて正解だったね。凛花が戻った後、俺は一人考える。……吉井君と木下さんを同棲させることでまだ繋がりは切れないはず。これでどのぐらい持つか……3ヶ月は持って欲しいものだ。そうすればラグも力を取り戻すし、こちらの準備も終わる。そうすれば事はすぐにでも解決するはずだ。全く吉井君も面倒な「力」を持ってるものだよ……。

 そんなことを思っている時、突然 キーン! と金切り音が頭に響く。まさか……

 

 「……不味いかもしれない。」

 

 この音の主の相手は俺がしないといけないようだ。今戦えるのは俺しかいないし、たぶんこの相手は「力」が暴走して本能で活動している。しかも俺も万全の状態じゃない。それでもやるしかないか。こっちに気づいて戦いに来るなら、早くて2、3日はかかる。それまでに準備はしておこう。よし、今後の方針も決まったところで俺も戻ろうかな。

 

 

 

 

 

 

 

 教室に戻ると吉井君が気絶していた。

 

 「吉井君、どうしたの?」

 「実はな……」

 

 坂本君に聞いてみた。要約すると吉井君が島田さんを怒らせて、四の字固めを極められたらしい。それは吉井君が悪いね、反省した方がいい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、放課後になった。さてと、

 

 「吉井君、全然起きないね。俺、保健室に連れていく?」

 「あぁ、頼む。まぁ、もう少しで起きると思うが。」

 「分かった、一応連れていくね。」

 「気を付けてな。」

 

 坂本君に一応一声かけて行く。まぁ、今から行くのは屋上だけどね。さてと、

 

 「吉井君、起きて。」

 「ん……。え?は、はい!」

 

 殺気をまぜて吉井君を起こす。まぁ、今まで引きずってたんだけど。

 

 「今、何時ですか!?」

 「もう放課後だよ。たぶん、もう木下さんも屋上に来ていると思うけど。」

 「わ、分かりました……。すみません。」

 「いや、別に良いよ。だけど、島田さんには後で謝っておくんだよ。完全に君が悪いよ、あれは。」

 

 吉井くんが気まずそうな反応をする。

 

 「聞いたんですか……。」

 「女の子の扱いはちゃんとしてあげないと、いつか刺されるよ。」

 

 俺も一度刺された事あるしね。いや……もっとかな?まぁ、良いや。

 

 「はぁ……。」

 「女の子の事、舐めない方が良いよ。前刺された時、めっちゃ痛かったし。」

 「え?刺された事あるんですか?」

 

 吉井君が驚いた顔をする。そんな驚く事かな?

 

 「普通、一回は刺された事あるんだよ。永く生きてると。」

 「マジですか……。」

 

 そんな事を話していると屋上に着いた。屋上にはもう凛花と木下さんが先に来ていたようだ。

 

 「あ、やっときた~!」

 「いやぁ、ごめんごめん。吉井君が気絶していてね、起こすのに手間取ったんだ。」

 

 気絶という言葉を聞いて、木下さんはとても心配している表情をして、

 

 「アキくん!大丈夫なの!?午後、呼び掛けても全然応答してくれなかったから心配したよ!?」

 「全然大丈夫だよ!心配させてごめんね。」

 

 木下さんは吉井君に抱きついて、吉井君は抱きついて来た木下さんの頭を撫でている。あぁ、コーヒーが欲しい……。凛花は凛花でそれを羨ましそうに見ていた。いや、いつもじゃないけどやってるでしょ……。って何でここに来たか覚えてるかな……

 

 「オーイ!皆さんここに来た理由覚えてる~?」

 「何でしたっけ?」

 

 吉井君が答える。はぁ、全く……君も忘れてるのか。

 

 「吉井君と木下さんの同棲のことについて聞きたかったんじゃないの……?」

 「あ!そうでした!す、すいません!」

 

 吉井君が慌てて木下さんと抱きつくのをやめて、こちらに向き直る。もちろん、木下さんと手を繋いで。まぁ、いいや。聞いてくれるだけ……。

 

 「同棲させる理由だけど二つあるんだよ。」

 「二つ、ですか?」

 「まず一つ目に吉井君たちを守りやすくする為。これは、敵に狙われやすくなるデメリットもあるけど、こちらも迎撃しやすいメリットもある。」

 

 まぁ、これは表向きの理由だけど。

 

 「二つ目に吉井君と木下さんの愛を深めて欲しかったから♪」

 「そっちの方が本当の理由か!」

 

 吉井君が驚いていた。まぁ、本当の理由ではあるんだけどね。君が思っているような理由ではないんだけど……。

 

 「まぁ、そういうことで明日には家の準備が終わるから、そっちに移ってもらうよ。」

 「……早いですね?」

 「昨日明菜さんと優李さんに聞かなかったんだよね?……全く、言っておいてくれないかな?はぁ……。」

 

 はぁ、昨日教えておいてくれればこんなことになんなかったんだけどなぁ……。吉井君たちが困った顔をしている。

 

 「あ、ごめんごめん。まぁ、今日も明菜さんたちに聞いてみて。後、龍星さんが怒ってたって言っておいてね。一応これで話は終わりかな?明日の放課後に家に案内するから、空けといてね。」

 「「分かりました。」」

 「それじゃ、また明日ね。」

 

 その一声で吉井君と木下さんは屋上から居なくなった。後に残るのは俺と凛花だけだ。

 

 「そういえば、凛花。」

 「何?」

 「俺、用が出来たから明後日からちょっと2、3日吉井君たちの事、よろしくね?」

 

 凛花は驚いて、

 

 「どうして!?その間、私だけじゃ無理だよ……。」

 「大丈夫、俺の代わりを連れてくるから。」

 「そういう問題じゃないもん!どうしても龍星様が行かないといけない用なの!?」

 「そうだよ。俺が行かないと駄目なんだ……俺が……。」

 

 そう言って俺は凛花を安心させる為に抱き締める。それでも凛花をなだめるのに10分ぐらい掛かってしまった。

 

 「大丈夫だよ……俺はちゃんと帰ってくるから……。さぁ、帰ろう……?」

 「うん……。」

 

 はぁ、これは凛音に言ったとき絶対同じ反応するなぁ。と思いながら屋敷に帰った。……案の定凛音にも同じ反応をされた。……別に死地に向かうなんて言ってないんだけど。どうしよう?あいつを連れて来ようか?

 

 

 

 

 

 レビウスside out

 

 

 

 

 時間は少し遡る。

 

 

 明久side

 

 僕は木下さんとまた一緒に帰る為にFクラスに向かった。姫路さんがまだ残っていたようだ。えーと、僕は龍星さんに保健室に行って起きたって設定で良いか。

 

 「はぁ、ひどい目にあったなぁ。あ、姫路さん?何書いてるの、姫路さん?」

 「あ、吉井君!?」

 

 こんな時間まで勉強かな?僕が近くに寄るとやっと気づいた様だ。

 

 「あ!」

 

 何かの紙が落ちた。なんだろう?え?これは……もしかしてラブレター?誰に?……まさか!だけど、雄二には霧島さんが……

 

 「あ、あの!これは……違うんです!いえ違わないんですけど、違うんです!」

 

 姫路さんが慌てて言い訳しようとしている。木下さんに再会するまでは、多分気になってしまっていたけど今はそんなに気にならない。やっぱり木下さんに一途になったからだろう。でも一応好きだった人だからちょっと心配だなぁ。

 

 「……変わった不幸の手紙だね。」

 

 ちょっとバカの演技をしよう。

 

 「それはそれで、困る勘違いですけど……。」

 「相手はうちのクラス?「……はい。」そっか。じゃあ、僕が正しい不幸の手紙の書き方を教えてあげるよ♪」

 「いえ!これは不幸の手紙じゃないですから!」

 「不幸の手紙だよ……だって…………」

 

 なんて下りをやって分かった事がある、僕の事を雄二×明久のカップリングで受けにしてる少女がいるらしい。後でOHANASIしようかと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 そして少しして木下さんと合流して一緒に帰った。もちろん手を繋いで。あ、そう言えば、

 

 「ゆうちゃん。」

 「な~に?アキくん!」

 

 木下さんがとても上機嫌にこちらを向く。

 

 「実はね……今度の休みにデート行こうって話、その次の日でも良いかな?」

 「え!?何で!?」

 「実はね、島田さんにクレープを奢らせられる事になって……」

 

 木下さんの機嫌がどんどん悪くなっていく。

 

 「…………その島田さんって娘のせいでデートの予定が……」

 「ゆ、ゆうちゃん?」

 「その娘、殺して良い?」

 

 木下さんが殺気を隠そうとせず、笑顔でそう言った。その時、僕は咄嗟に木下さんを抱き締めた。

 

 「ゆうちゃん、そんなこと言わないで……。お願い……僕はゆうちゃんが人を殺すのなんて見たくない……。」

 「あ、アキくん……。ごめん、ごめんね。アキくんとの楽しい時間が無くされると思って……ちょっと熱くなっちゃった。」

 

 僕は冗談だとしても木下さんには、手を汚してほしくなかったんだろう。僕は木下さんを抱き締めているうちに泣いていた。それで木下さんをなんとかなだめる事ができた。そして、なんとか僕は泣き止んで木下さんに僕が抱き着いた形で分かれ道に着くまでそのまま帰った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 木下さん、君が手を汚すくらいなら……僕が……

 

 

 明久side out

 

 




 はい、明久が危ない事を言っていますね!まぁ1章では関係ないんですけど……そう、1章ではね……。

 今回も伏線いっぱいですね~!

 大事な発表なんですが……実は2月中盤までこのSSは更新しません!活動報告を見てもらえば分かるんですが、失踪ではないので安心してください!
 後、感想をお待ちしています!

 レビウスの言っていたあいつとは?レビウスの戦わなければならない相手とは?

 次回「代表戦 そして、同棲開始!」

 次回もお楽しみに!


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第4.5話 異世界 そして、助っ人

 お待たせしました!サブタイで分かる通り今回、ちょっとバカテスではなくて話が違います。そして、明久たちは出てきませんし、龍星が惚気けます!
 それが嫌だ!という方やバカテスじゃないなら嫌だ!!という方はちょっとだけ読んですぐに次の話に飛んで頂いても結構です!作者もちょっとやり過ぎた感が半端ないです!

……でも読んで欲しいんですよね~。本音を言うと。

 では本編をどうぞ!



 レビウスside

 

 屋敷の皆が寝静まった後、俺は部屋から出る。大体2時くらいだろうか。植物や動物たちも寝ているだろう時刻だ。何故俺がこんな時間に部屋を出ているかと言うと、ある人物に会うためだ。屋敷から出て屋敷の近くの森に向かい、少しだけ開けた所に出る。さてと、

 

 「……時系列確認。……ダイバージェント確認。……時空座標確定。……目標パラレルワールドの座標確定。……これで大丈夫っと。」

 

 あぁ、皆には何をやっているか分からないか。今はね、この世界の位置を確認して、目標の世界の位置を見つけているんだ。まぁ、簡単に言うと別の平行世界へ移動するための下準備かな。そんな事出来っこないって?それは君たちがまだ3次元の中にしか存在を確認出来ないからだよ。まぁ、今からする事は人間にはまだ出来ない芸当だけど。さぁて、ここからが本番だ。俺は小さな黒い仮面の様な物ラグナデバイザーを取り出し、ラグナデバイザーの両端を押す。そして、

 

 「……ラグナリオン。」

 

 と呟く。するとその仮面の両目が蒼く光輝き、そして、

 

 「……LIMITED LAGUNARION A WAKING」

 

 という低い機械音が聞こえる。そのラグナデバイザーを右手に持ち、体の前で左から右に振る。すると俺を中心に黒色の竜巻と蒼色の雷が起こり、空まで届き雲を晴らす。その竜巻と雷は少しの間吹き荒れてすぐに止んだ。しかし、そこにはもう俺の姿は無かった。そこには全身が黒く鋭利なデザインで、所々蒼く発光している騎士。そして顔にはさっきのラグナデバイザーと似た仮面が両目が蒼く光輝いた状態で装着されている。これが、ラグナリオン。破世の力を持つラグナリウスの武器。限定的ではあるが力は引き出させている様だ。

 

 「……時空座標、目標パラレルワールドの座標ともにリンク完了。time shift level2。別平行世界への移動を開始。」

 「…yeser time shift level2 parallelworld jump start」

 

 また低い機械音が聞こえ、俺の体の周りに時空の歪みと世界線の歪みが出てくる。言っておくと俺は一応人間は越えている。3次元体ではなく5次元体として存在するため平行世界や時空を越える事が出来る。まぁ、ラグナリオンの力を借りなければならないし、今は操る時間が制限されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今から行く世界は前に救った事のある世界だ。その世界では神と人間が遍在している。まぁ、そのせいで問題もあるんだが、大きな問題は前に解決したため小さい問題しかないと思う。その大きな問題というのも俺のせいで起きた事とも言えるのだが……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回会うのはこの世界の住人だ。最初は可愛い可愛い俺の子孫だったが、天孫降臨等のせいで神としての存在をなくして今は人間とともに生きることを選んだ逞しい娘だ。お!見えてきた。天沼矛町(あめのぬぼこちょう)だ。こちらに来る時に時間を進めて朝にしておいて正解だった。町の全体が見渡せる丘に座標を合わせていたから

。それにしても……

 

 「……変わったなぁ、この世界も。」

 「そうか?そんなに変わらないと思うが……」

 「え?」

 「ん?どうした、龍星?」

 

 すぐ隣で柵に寄りかかりゲームをしながらこっちに合いの手をする、赤いサイドポニーで白衣の幼女、邪神つるぎがいた。え?何で?俺何も連絡とかしてないよね?何で居るの?

 

 「ほら、早くラグナリオンを解除しろよ?人に見られるぞ?」

 「そうだった。ってだから!何でつるぎ居るの!?」

 

 ラグナリオンを解除しないと人に見られる。まだ力が戻らないから人の記憶に残らないように出来ないからだ。ラグナリオンを解除してつるぎに問いただす。つるぎはゲームをやめ俺に抱きつきながら、

 

 「いや~。そろそろ龍星がこのつるぎちゃんに会いたい!って思っているかなぁと思って。つい、メンゴメンゴ♪」

 「……本当は?」

 「……空間の歪みが出来ていたから見に来たんです。ウソついてごめんなさい。本当悪かったと思ってる。」

 

 そう言いながら抱きつくのをやめ、とても綺麗な土下座してくるつるぎ。全く……

 

 「まぁ、良いよ。」

 「ホントか!?龍星はこれだから大好きだぜ♪」

 「何でこっちに来たか分かる?」

 

 また、抱きついた。調子良い奴め。この娘が俺の代わりとして来て貰おうと思っている助っ人。この娘の他にも頼みたい娘はいるんだけど……。

 

 「なにかあったのか?違う世界で。」

 「まぁ、そんな感じ。つるぎたちに頼みたい事があるんだけど。」

 「たち?ってことは他にも誰かに頼むのか?」

 「一応かがみとたまにも頼もうかと思ってる。」

 

 流石つるぎ、話が分かってる。かがみとたまというのは、つるぎの一応姉妹ってことになってる少女たち。つるぎだけでも戦力としては申し分無い。だけど、つるぎ一人を来させても性格的に凛花たちに何するかわからないし、保険としてね。

 

 「て事は結構な案件か?」

 「まぁ、そうだね。予断を許さない感じかな。」

 「分かった。で?力はどんな感じだ?」

 「まだ万全ではないかな?ラグも目覚めてないし。」

 

 そうなんだよなぁ。何とかしなきゃいけないとダメなんだが……ラグは待つしかないし力は……

 

 「まぁ、気長にな。せっかくの不老なんだ。人生楽しめよ?」

 「ありがとう、つるぎ。いや、今のはアマテラスとしての言葉かい?」

 「どっちもだよ。それにお前が居なきゃあの人たちも悲しむ。あたしたちもな?」

 

 つるぎの掴む力が強くなる。それはちゃんと……

 

 「わかっているよ。つるぎ、愛してる。」

 「それはわかっているよ。だから……ん。」

 

 つるぎが唇を突きだす。その行為の意味を理解し口付けをする。軽い口付けではなく、もっと濃厚な物だ。

 

 「ぷはぁ……まぁ、あの人たちには届かないが。」

 「ごめんね、彼女たちが一番だから。それでも愛してくれるつるぎも大好きだよ。さぁ、行こうか?」

 「あ、あぁ。」

 

 さっきの話を聞いて顔を真っ赤に染めているつるぎを連れて歩き出す。向かうはつるぎが住んでいるアパート。

 

 「そういえば日留女はどうなった?」

 「あーあいつはヴィシュヌの中で眠ってる。鎖々美たちも今は普通に学校に通ってる。アラハバキも今は壊滅状態だ。他の神々も今は落ち着いている。平和だよ、この世界は。」

 「そうか。」

 

 あの後も世界は安定しているようだ。よかった。

 

 「お前はまだ神になるつもりはないのか?」

 「そうだね、まだなるつもりは無いさ。まだ目的は達成してないし、彼女たちにもまだ合わせる顔がないよ。」

 

 そう、俺はまだ神にはならない。俺が起こした問題をすべて解決しないといけないし。師匠との約束もまだ果たせていない。こんな状態で神になっても前の二の舞になるだけだ。

 

 

 

 自分たちの近況を話しているとアパートの一室に着いた。

 

 「かがみやたまはまだ寝てるかもな。あたししかこんな時間に起きる奴はいねぇよ。」

 「そうだろうね。ちょっとゆっくりさせてもらうよ。」

 「あぁ、そうしてくれ。さぁて、」

 

 つるぎは俺をベットまで連れてくる。まさか……

 

 「邪魔物はいねぇ。やるか?」

 「いやいや、やる勇気ないでしょ?」

 「それはどうだろうな?にしし♪」

 

 つるぎ……お前、誘ってるのか?俺はどっちでもいいけど。俺はつるぎを押し倒す。つるぎはびっくりした表情をしていた。これはその気はないが、俺をからかおうとしたのかな?

 

 「ふぇ!?りゅ、龍星!?ちょっと……」

 「全くその気がないなら誘わない。いいね?」

 「う、うん……。」

 

 俺だってその気があるなら襲ってるさ、俺は聖人とかじゃないし。つるぎを抱きしめベットに寝る。つるぎっていつも自分が押す側たから押される側になると対処出来ないんだ。可愛いだろ?

 あぁ、つるぎの温もりが俺を安心させてくれるなぁ……。今は安心して寝れそうだ。そして数分もしない内に俺はすぐ寝てしまった。

 

 「お、おい!龍星?なぁ、離してくれよ……全くしょうがないやつだな♪」

 

 つるぎが満更でもないような顔をしてると知らずに。

 

 

 

 

 

 

 

 「一体何をしているのですか~!」

 

 その後、起きたかがみにめっちゃ怒られました……。

 

 「久しぶりだね、かがみ。」

 「ご、ごめんって!つい、出来心だったんだって!許してくれよ~!でも、こんなプレイも良いかも♪ハァハァ」

 

 俺は普通に挨拶し、つるぎは全力で土下座してかがみに謝っている途中で息を荒げ始めた。変態か。

 高校生の妹に本気の土下座をする幼女の姉って何か見ていてシュールだ。

 

 邪神かがみ。黒髪のショートカットでいつも気だるげな雰囲気の少女。高校の制服が良く似合っているが前に会った時より大人の女性としての落ち着いた雰囲気を放っていた。

 

 「お久しぶりなのです、龍星君。……姉さん、何で夜中部屋から抜け出してどこかに行ったと思ったら龍星君が居るのですか?そして、何故一緒に寝てるのです?」

 「いやぁ、言ってなかったっけか?空間の歪みを見つけたから、調査してくるって。その歪みがあった所に龍星が居たんだよ。話を聞くとあたしたちに用があるらしいから連れてきた。そして、龍星が疲れた様だからベットで寝ていたんだ。」

 

 つるぎが上手く理由を説明する。かがみは納得しそうになる。よし、ここで爆弾投下!

 

 「まぁ、つるぎがベットで誘ってきたんだけど。それで俺は抗えなくて……」

 「な、龍星!おま「姉さん……一体どういう事ですか?」ごめんなさいごめんなさい!あたしが悪かったって!許して~!」

 

 かがみの顔が怖くて見れない……フッフッフ……つるぎ、これが報いだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから小一時間つるぎは説教を受けた。つるぎは終始涙目だった。こりゃあ、後で逆襲されそうだな。気を付けよ。

 それは置いといてかがみとたまに事情を説明し、協力して貰う事にした。

 

 「事情は分かりました。それで私たちは何をすれば良いのですか?」

 「ある人たちの護衛と監視を頼みたいんだ、明日から2、3日。」

 「明日からですか……。ちょっと辛いかもなのです。私は鎖々美さんたちの護衛をしなくてはならないのです。」

 「私もダメだお。希美ちゃんたちと遊ばないといけないんだお~。」 

 「あたしは大丈夫だが……どうする?もっと他に誰か連れて行くのか?」

 

 やっぱりか、そうだよなぁ予定も何も聞かないでくればこうなると思っていたんだが……。

 かがみの役目は大事だし、たまは下手に機嫌を損ねて暴走されても困る……。他に連れて行くって言っても今すぐ動けそうな人はいないよな。最悪、つるぎだけ連れていくか。

 あぁ、さっきのだおだおちゃんは邪神たま。小学生なのに高身長、巨乳という大人な体を持つ邪神三姉妹の末っ子。

 

 「いや、つるぎだけを連れて行こうかな?だけど、条件がある。」

 「あぁ、いいぜ。何だ?」

 「俺の養子や使用人にちょっかい出さないで。これさえ守れば良いよ。」

 「分かった。だがこっちからも条件、あっちに行ってからデート3回だ。せっかく人が親切に異世界に行くんだ、これぐらい良いだろ?」

 「あぁ、良いけど、三回だけで良いの?」

 「何?もっと良いのか!?だったら5回だ。」

 「良いよ。」

 「よっしゃあ!」

 

 それぐらいなら安い物だ。つるぎは結構嬉しかったようでガッツポーズを決めている。さてと、

 

 「じゃあ、そういう事で。行こうか、つるぎ。」

 「あぁ。って鎖々美たちには会っていかないのか?あいつらもお前に会いたがってるぞ?」

 

 つるぎに声をかけ、手を繋ぐ。つるぎの言っている事も分かるんだけど、今は急がないとね。部屋から出ながらその答えを話そう。

 

 「いや、もう時間が結構過ぎているからね。もうちょっとここに留まると移動してきた時間に戻れなくなるから、つるぎを送ってくる時にでもゆっくり会うよ。」

 「そうですか。それは楽しみに待っています。では。」

 「まったね~!龍星~!」

 

 かがみとたまが送り出してくれる。短い間ではあったけどかがみたちにも会えて良かった。

 

 

 さっきの補足として何故時間に戻れなくなるというと、俺が時間が操る事ができるのが現在の時間の前後6時間だからだ。それを過ぎると1時間毎に10分、現在の時間に加算される。だからなるべく時間を加算しないようにしている。

 それに時間を加算されると滅茶苦茶疲れるのだ。それこそ1日動けないぐらいに、だからそれを避けるためにも時間をちゃんど守るようにしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部屋から出たその足でさっきの丘までやって来る。さてと、

 

 「つるぎ、準備は良いかい?」

 「あぁ、いつでもいいぜ。」

 

 それじゃあ、遠慮無く。時空座標と目標パラレルワールドの確認を終わる。後は先程と同じようにラグナデバイザーを構え、両端を押し込む。そして、

 

 「……ラグナリオン。」

 「……LIMITED LAGUNAION A WAKING」

 

 同じ過程を経てラグナリオンになる。

 

 「……時空座標、目標パラレルワールドの座標ともにリンク完了。time shift level2。別平行世界への移動を開始。」

 「…yeser time shift level2 parallelworld jump start」

 

 そして、つるぎを連れて元の世界へと戻る。さっきまでの天沼矛町とは違い、暗い夜のとばりが落ちた森に出た。ラグナリオンを解除してっと。

 

 「ほぉ~。ここが今お前が介入してる世界か。何か面白そうだな♪」

 「この世界は文月学園っていう学園があって、そこが今回の頼みの護衛が通ってる高校だよ。そこのシステムが面白いんだ。」

 

 つるぎが辺りを見回し、この世界の状況を俺が事細かく話す。春とはいえ肌寒いな。

 

 「俺の屋敷がすぐ近くにあるから、そこを拠点にしてね。今案内するから。」

 「あぁ、分かった。で?やって良いのか?」

 「うん。だけど程々にね。」

 

 つるぎが今言ったやるっていうのは別に卑猥な意味じゃない。つるぎがこの世界に留まる為の改変の事だ。そうしないとつるぎはこの世界に留まる事が出来ない。

 

 「よし、OKだな。」

 「じゃあ、屋敷に行こうか。」

 「分かった。」

 

 世界が確実が変わった。少しだが……。俺はつるぎの手を取り屋敷へ向かう。そろそろつるぎも体が冷えて来ただろうからね。

 

 

 

 

 

 

 

 「お帰りなさいませ、レビウス様。そちらの方は?」

 

 屋敷に向かうとディルが迎えてくれた。話を聞くと俺が何も言わずに外に出たため、目が覚めたのだという。

 

 「あぁ、紹介するね。この娘は邪神つるぎ、今日から3、4日ここに居てもらうからそのつもりで。でこちらは屋敷の家事等をやってもらっているディル、ディルシウス・レスト。」

 「あぁ、よろしく頼むな、ディルさん。」

 「はい、よろしくお願いします。つるぎ様。それで、つるぎ様はレビウス様とは、どんな関係で?」

 

 ディル……結構気にしているね。まぁ、俺とつるぎの関係なんて決まっているよ。

 

 「一応、こ、ここ恋人、だよな?龍星?」

 「いや、妻でしょ。もう少ししたら結婚するんだし。」

 

 つるぎの顔が一瞬で真っ赤に変わる。どっきり成功だ。結婚するっていうのは本当だ、他の娘たちともするつもりだし。

 

 「え、え!? けけけけ、結婚!?あたし、聞いてないぞ!いきなり!?」

 「いきなりでもないでしょ。最初に言ったはずだよ。「一緒になろう」って。」

 「それは……そうたけどさ……ものには順番ってあってだな……」

 

 つるぎが顔を真っ赤にしてもじもじしている。可愛い。

 そして、ディルがつるぎを突き刺したかの様に視線を外さない。つるぎは気づいてないようだけど。俺がフォローしよう。

 

 「大丈夫だよ、ディル。この娘は信用出来る。」

 「そうですか。レビウス様がそう言うのであればよろしいです。では、つるぎ様。お部屋に案内致します。」

 

 ディルは納得してくれたようだ。良かった。

 

 「いやディル、つるぎは俺の部屋で生活させるから案内は良いよ。」

 「分かりました。ではレビウス様、用がある際にはベルを鳴らしてお呼びください。」

 

 ディルはそう言うと自分の部屋へと戻っていった。さぁて、

 

 「つるぎ、それじゃあ行こうか。今後の事も話したいし、聞きたい事もあるでしょ?」

 「え?あ、あぁ。」

 

 さっきの告白が結構響いたみたいで呆然としていたつるぎに話しかけ、部屋へと向かう。つるぎはまだ顔を真っ赤に染めているがなんとか相づちを打つ。よし、これならまだ悪戯出来そうだ。

 つるぎはさっきも言ったように押しに弱いから、こっちから悪戯した時の対応の仕方が可愛い。だからつい悪戯してしまうのだ。だって可愛いんだもん!

 

 

 

 

 

 

 

 つるぎを連れて俺の部屋に着いた。一応俺の部屋は誰が来ても受け入れられるように2,3人部屋位の広さはある。だから、つるぎが来ても全然問題ない。

 

 「そういえば、改変の設定はどうしたの?」

 「その文月学園ってとこに行かないと見張る事が出来ないからな。一応そこの国語の非常勤講師ってことにしていた。それで良いだろ?」

 「まぁ、つるぎのやりたいようにやってくれて構わないよ。あ、お茶でも飲む?」

 「あぁ、紅茶でも緑茶でもいいから頼む。」

 

 つるぎを向かい合わせのテーブルのイスに座らせ、つるぎ用の紅茶と自分用のコーヒーを作る。長い話になりそうだし、多めに作ろう。

 

 

 

 

 

 紅茶とコーヒーを作ってテーブルに置いて、マグカップを二つ持ってきてくる。一つには紅茶、もう一つにはコーヒーを注ぐ。

 

 「はい、つるぎ。」

 「あぁ、ありがとう。紅茶か、いい茶葉を使ってるのか?」

 「それはもう、最高級の茶葉を。」

 

 つるぎに紅茶の入ったマグカップを渡し、つるぎが美味しそうに飲むのを見て俺もコーヒーを飲み始める。自分で言うのもなんだけど美味しい。さてと本題に入ろう。

 

 「それでつるぎ、明日から学園に行くのかい?」

 「あぁ、そうするかな。一応慣れておきたいし、で?具体的にはどっちを見張っておけば良いんだ?」

 「一応、Fクラスの方の吉井君だね。Aクラスの木下さんは、明日改めて紹介するけど俺の養子が見張っているし。そっちに集中してもらうとありがたいね。」

 「分かった。」

 

 木下さんの方は凛花に任せても大丈夫だろう。だとすると俺が居ない間に危ないのは吉井君の方だろう。それに吉井君の方が敵には会わせたくないんだよね。

 

 「それで?何で龍星はそんなにそいつらにこだわるんだ?」

 「実は……少年の方がある厄介な力を生まれ持っているんだ。それもラグナリウスの力の中でも強力なのをね……。」

 「……それはそれは。そんなに厄介なのか?」

 「その力は……………………というものだからね。」

 「何だと!?そんな力が暴走でもしたら……。」

 「そういうこと。だからくれぐれも慎重に動いてね。」

 

 つるぎにも念を押しておく。それに俺だって今まで結構慎重に動いていたのだから。吉井君の力が暴走でもしたら本当にまずいのだ。俺とつるぎは同じタイミングでマグカップを傾ける。はぁ、コーヒー美味しい。

 

 「俺が学園を空ける時は頼むよ。本当にね。」

 「そういやまだ聞いてなかったな。お前が今回相手にする奴、強いのか?」

 「今の万全じゃない俺だと負ける確率の方が高いよ。力が完全に戻っていればなんとかなったんだけど……無いものねだりをしてもしょうがないし、本音を言うと今は相手をしたくない。それでもやらないといけないんだ。」

 「負ける確率の方が高いのにか?何でだ?逃げればいいじゃないか。」

 「そういう訳にもいかないんだ。もうあっちは俺と吉井君に気づいている。あっちが気づいているならどこまでも俺たちを追いかけてくるだろうし、吉井君はまだ戦う事が出来ない。俺がやるしかないんだよ。」

 

 そう……俺がやるしかない。もちろん、死ぬ気なんて毛頭ないけど。やれる事をやる。もし、これが自分を赦すために必要な事なら俺は喜んでやろう。それが自分への罰であり、赦しなのだから……。

 

 「まぁ、お前がそこまで言うならやるしかないんだろうな。あたしは止めないよ、お前がちゃんと戻ってくるって信じてるから。」

 「ありがとう、つるぎ。さすが、俺の妻になる娘だ。」

 「う、うるせぇー!」

 

 つるぎ、照れてる照れてる。可愛いなぁ。

 

 「さぁて、固い話はここまで。世界を越えてちょっと疲れたよ。あと、1時間ぐらいでトレーニングしないといけないし、もう寝るね。」

 「ちょ、ちょっと待ってくれよ!あたしも一緒に寝る!」

 

 疲労が学園で出るとやばいし、睡眠を取らないと。ベットに行こうとするとつるぎが追ってくる。俺はベットにつるぎと一緒に横になる。あぁ……つるぎぃ。

 

 「つるぎ……ん。」

 「はいはい、今日の龍星は甘えん坊だな♪……ん。」

 

 つるぎにおやすみのキスをしてもらう。つるぎを抱きしめてると安心できる、俺の手から大切なものが零れ落ちていない事を改めて確認できる。そして、また俺はすぐに寝てしまった。

 

 レビウスside out

 

 

 

 

 

 

 

 

 つるぎside

 

 あたしは寝ている龍星を見る。今は安心して寝てるようだが、時折龍星の顔が苦悶している顔になり、いつも同じ言葉が聞こえてくる。

 

 あたしは想う。

 

 

 龍星、お前の自己犠牲の精神は本当にすごいと思うよ。だけどな、それだけじゃ世界を変える事は出来ない。

 すべての世界を一人で救おうとしてるお前なら分かってるはずだろ?

 そんなんじゃ、いつかまた同じ事を繰り返すぞ?心のキャパシティが足りなくなって壊れてちまう。

 ……アマテラスの頃のあたしみたいに。

 

 

 

 

 あたしは出来るなら、お前にそんなことして欲しくない。アマテラスだった頃、何度かお前の愛する人たちに会う機会があった。

 あの人たちはお前がどんな道を歩もうとも見守ると決めていた。とても悲しそう顔をしていたけどな。自分のせいでお前の人生を歪ませしまったと後悔していた。自分のせいでお前が狂ってしまったのだと。前のお前が神になってなお、罪悪感と無力感に苛まれ、自分と世界に絶望していたと。

 

 

 

 

 

 お前は今も自分に絶望しているのか?だから、こんなにも苦しみを求めるような真似までしてるのか?

 何でなんだ?何故世界はそんなにもお前を苦しめる?壊そうとするんだ?お前にとってそれが罰であり、赦しなのか?でもそれはあの人たちは望んでなんていない。あたしたちだって望んじゃいないんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 それでもお前は同じ修羅として生きる事を選ぶのか?自分よりも他人の願いや世界、目的を優先すると?

 でも、その果てには何も残らない。自分さえも消えてしまう。正義を通して出来ない事を必要悪として成そうとしてもお前には何も返って来ないんだぞ?

 

 

 ……まぁ、あたしもそんなお前に惚れたんだが。

 

 

 

 

 

 

 ……お前が今必要とすべきなのは罰や赦しなんかじゃない。

 

 

 希望だ。

 

 

 あたしじゃ、お前を救う事は出来なかった。だけど……愛する事やお前を想う事は出来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      愛してるよ、龍星。

 

 

 

 

 

 つるぎside out




 今回は軽いなと思いましたか?残念!最後にとてつもなく重い話をもってきました。
 今回登場した邪神3姉妹はささみさん@がんばらないという作品からです。原作から1年経っている設定です。
 
 原作とは違い、鎖々美たちと仲良く暮らしているという結末に至っています。
 いつか、そのささみさん@がんばらないのSSも書いていきたいです!

 何でつるぎが大人になっていないかや結構純粋っぽいかっていうとちゃんと理由があるんです。だから感想やコメントに「つるぎっぽくない!」とか書かないでください(涙)
 その理由は設定を書く時に書きたいと思います。
 ここで書くと長くなるので。

 今回、少しだけ龍星、いやレビウスの過去に触れました。一体レビウスとは何者なんでしょうか?
 ていうか龍星寝過ぎでしょ!まぁ、仕方ないんですが本編にも書いた通り平行世界への行き来や時間の制御はとても疲れるので。

 つるぎの言う龍星の希望とは?龍星は勝てるのか?そして、次はちゃんとバカテスの話がやれるのか?

 感想や評価、お気に入り登録もよろしくお願いします!

 次回「代表戦 そして、同棲開始!」

 次回もお楽しみに!


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第5話 代表戦 そして、同棲開始!(前編)

 本っ当にすみませんでした!1ヵ月以上も待たせてしまいました!ごめんなさい!
 プリコネに熱中しておりました!クランも自分で作ってクランリーダーしてます!
 ……本当に申し訳ないです。
 ただ、その間にUAやお気に入り件数も増えていて恐悦至極でございます!ありがとうございます!

 話は変わるんですが、今回の空白の間に感想が来ていたんですが……龍星君、つまりオリキャラの方が設定が濃いという話なんですが皆さんもそう思いますよね?
 作者もそう思ってました(自分で書いていてどういう事だって話ですよね)
 一応、今までやこれからの龍星君の話はちょっとバカテスとは別の作品と思っていただけると読みやすいと思います。完全に話が違う訳ではないですが、ある程度まで進まないと話が本当の意味でのクロスはしません。(完全にこれネタバレだ~!)

 そして今回も話を分けてます……全然書き切れないんですよね~ごめんなさい……。

 では、本編をどうぞ!



 明久side

 

 僕はいつもより早い時間に学園に来て教室に向かっていた。

 

 

 Aクラスとの試召戦争当日、今日で1つの決着がつく。

 これで姫路さんをAクラスにしてあげられる。これで姫路さんの事も諦める事ができるだろう。

 いや、違うな。本来の初恋の相手(木下さん)に戻るというだけだ。

 ……姫路さんには悪いけど僕が本当に好きなのは木下さんだから。

 

 いやいや姫路さんは僕の事が好きな訳じゃないから何も謝る事はないのか。いやでもな……

 

 そんな事を思いながら教室に入る。教室には誰も居なかった。時計を見るともう8時だった。

 

 雄二や龍星さんも来ていないっていうなのはおかしくないか?そう思いながらも自分の机に向かう。

 そういえば……昨日、龍星さんから聞いた同棲の話を母さんに話してみると電話越しでも分かる程に動揺していたなぁ……。あれにはビックリだった。

 

 

 『龍星さんに聞いたんだけど同棲ってどういう事さ!?』

 『え?ああ、その事。貴方たちって何年も離れていたじゃない?だからよ。』

 『そういう事……。僕と木下さんが何年も離れていて、突然許嫁って言われてもビックリするだろうから同棲でもして仲を深めろって事でしょ?いや、それだったら昨日伝えてくれれば良かったじゃないか!龍星さんも怒ってたよ!』

 『……え?龍星さんが?……本当に?』

 『嘘を言ってどうするのさ!』

 『……そう、龍星さんが。ど、どうしましょう?龍星さんが怒ったらどうなるか分からないわ。え?どうしよう?う、うう~……龍星さんに怒られるよぉ……どうしよう?どうしよう?』

 『か、母さん?どうしたの?大丈夫?』

 『大丈夫な訳ないじゃない!あの龍星さんに怒られるのよ!?前にも怒られる事があったけど思い出したくもないわ……ごめんなさい、明久。ちょっと気分が悪くなってきたから切るわね……龍星さんにはごめんなさいと伝えておいて……それじゃ、』

 『ちょ、母さん?ねぇ!ねぇってば!切れてる……。』

 

 あの母さんがあんな風になるなんて……どんだけ恐いんだ?龍星さんって底知れないな……。

 

 そんな風に回想しているとこちらに走ってくる音が聞こえてきた。誰かな?

 

 バタン!と教室の扉が開けられる。

 

 「おはよう、吉井君。」

 「おはようございます。龍星さん。」

 「やっぱりまだここに居たんだね。もう皆Aクラスの教室に居るよ。早く行かないと、もう始まるから。」

 「え?あ、はい。」

 

 教室に来たのはにっこり笑う龍星さんだった。僕を探しに来たらしい。

 何でもう始まるの?そんな事聞いて……そっか!

 

 「すみません!すぐ行きます!」

 

 そうだ!昨日の交渉の時、最後の方を聞いていなかったんだ!その時に時間の指定があったのかも!

 僕は龍星さんと急いで一緒にAクラスへ向かった。

 

 「いやぁ、まさか大事な代表戦の時に遅刻するとはね~。」

 「え?まだ8時ですよね?」

 「いや?もう9時半だよ?」

 

 あれ?おかしいな、教室の時計は8時だったはずだ。

 やっとAクラスに着いた。Fクラスの皆はもう僕以外皆いた。うそでしょ?

 

 「すまんな、如月。手が空いてるのがお前しかいなくてな。」

 「いや、大丈夫だよ。それじゃあ、俺はもう行かないと。それじゃ、頑張ってね。」

 「あぁ。やっと来たか、明久。もうお前抜きでやろうかと思っていたぞ。」

 「ごめんごめん。なんか時間を間違えたみたいで……。」

 

 本当に申し訳ない……。

 

 「まぁ、良い。これで全員揃いました、高橋先生。」

 「では、一回戦を始めます。」

 

 高橋先生の一言で代表戦が始まったようだ。

 

 ラウンド1

 

 Aクラスの巨大なディスプレイにそう書かれた紙を持った秀吉が映し出される。

 

 「何でワシがラウンドガールなのじゃ?」

 「何を言ってるのさ?秀吉以外に誰がラウンドガールをやるって言うんだよ~?」

 「ワシはガールじゃないと言うとるのに……」

 

 秀吉が恥ずかしそうにポーズを決めていた。

 まぁ、そうだよね。木下さんに再会するまでは僕もそんな事一切考えてなかったよ。

 

 「では両クラス選手、前へ。」

 

 高橋先生のその掛け声と共に召喚フィールドが展開される。

 いよいよ始まるんだ。最初は誰が行くのかな?やっぱり島田さんかな?

 

 「頼んだぞ、島田。」

 「それじゃあ、行ってくるね!」

 「早い所、済ませましょう?どうせ勝負にならないですから。」

 「Fクラスだからって舐めないでよね。」

 

 Fクラスからは島田さん、Aクラスからは木下さんか。これは……すぐに決着が付きそうだね。

 ていうか木下さん、ちょっと怒ってない?なんか自信ありそうな顔なのにまつ毛が少し上がっている気がする。

 やっぱりデートの事かな?

 

 「試合開始!」

 

 カーン!

 

 「試験召喚獣、試獣召喚(サモン)!数学に関してだけはウチはBクラス並の学力があるんだから!」

 「あら~、すごいんですわね。試獣召喚!「ふぇ!?」」

 

 島田さんの点数は……182点。これは負けたな。

 それよりも……やっぱり怒ってるよね?でも怒ってる姿も可愛く見えるなぁ、後で頭を撫でてあげよう。

 

 ドカーン!

 

 「「そ、そんなっ!?」あたしはもちろんAクラス並ですけどね。」

 「勝者、Aクラス木下優子!」

 

 Aクラスから歓声があがる。すごいなぁ、木下さんAクラスでも人気があるんだ。まぁ、誰にも渡す気はないけどね!ちょっとすっきりした顔をしてる、やっぱりデートの事だったんだね。

 

 島田さんがとぼとぼと帰ってくる。何か声を掛けてあげよう!まぁ、ちょっと良い気味だとは思ったけど。

 

 「仕方ないよ~、Bクラス並じゃAクラスに勝てない事も分からない程度の頭に酸素が足りない……ちょっと気持ちいいかもしれないこれ~。」

 「見え、見え……!」

 

 島田さんにまた絞められた。そしてムッツリーニ、君は何故そこまで島田さんのスカートの中が見たいんだい?

 

 ラウンド2

 

 「2回戦を始めます、選手前へ。」

 「Aクラス佐藤美穂です。」

 

 眼鏡の女子が丁寧にお辞儀をしてきた。礼儀正しいなぁ。さて、次は誰だろう?

 

 「よし、明久。頼んだぞ。」

 「え?僕が?ここで負けたら後がないよ?」

 「大丈夫だ。俺はお前を信じている。」

 「やれやれ、それは僕に本気を出せって事?」

 

 まぁ、ホントに本気なんて出さないけどね。

 

 「ああ、もう隠さなくても良いだろ?皆にお前の本気の力を見せてやれ!」

 「やれやれ、仕方ないなぁ~。「貴方……まさか……」ああ、今までの僕は全然本気なんかだしちゃいない。「それじゃあ……貴方は……!」そうさ……君の想像通りだよ。今まで隠していたけど実は僕、左利きなんだ。」キラッ

 

 バコーン!

 

 僕の左手に付いていた机がフィードバックの影響で壊れた。やっぱりここでふざけないとダメだと思ったんだ。

 

 「あーん、ですです……。」

 「勝者Aクラス佐藤美穂!」

 

 またAクラスが勝っちゃった。どうするのかな?雄二?

 

 「テストの点数に利き手は関係ないでしょうが~!!」

 「見え、見え……」

 

 そして、僕はまた島田さんにお仕置きされていた。やめてよ!島田さん、僕は、僕はただやらなきゃいけない事をやっただけなんだから!そして、ムッツリーニまた君かい?

 

 「勝負はこれからだ!本気で行くぞ!」

 「雄二、貴様!僕を信じてたんじゃないのかよ!?「勝つ方に信じてた訳じゃない!」お前に本気の左を使いたいぃ~!」

 

 まぁ、僕に期待されても何もできないけどね。僕は姫路さんがAクラスにあがるのは良いけど、霧島さんにもチャンスがあった方が良いと思うから。

 

 ラウンド3

 

 「では3回戦を始めます。Aクラス工藤愛子、Fクラス土屋康太。」

 

 今度はムッツリーニか。今回は確実に勝てるね。だけど、あの緑の髪の子、1年の時に居たかなぁ?

 

 「教科は何にしますか?」

 「……保険体育。」

 「君ぃ、保健体育が得意なんだってねぇ?だけど、かなり得意なんだよぉ、それも君と違って実技でね。」

 「実技……?あ、あ、あ……ぶしゃー!」

 

 まずい!ムッツリーニが実技という言葉だけで工藤さんのブルマ姿を想像して勢いよく鼻血が!

 

 「ムッツリーニ!よくもムッツリーニに、なんてひどいことを!卑怯だぞ!」

 「君が選手交代する?でも勉強苦手そうだねぇ、保健体育で良かったら僕が教えてあげるよ?もちろん……実技でね。」

 「「うおぉ~!!」」

 

 実技という言葉で僕もムッツリーニも勢いよく鼻血が!

 

 「ぷっ!実技って聞いただけでそれかよ~そんなんじゃいつまで経っても童貞のままだなこりゃ!」

 「う、うるさいですよ!つるぎ先生!そんな事言わないでくださいよ!悲しくなるじゃないですか!」

 

 今の先生は邪神つるぎ先生。国語の先生で、結構生徒から人気がある。 

 つるぎ先生、盛大に笑ってる。なんか負けた気分だ……。

 先生だって彼氏とかいないじゃないか。

 

 「「あき~!(吉井くん!)」」

 

 島田さんと姫路さんが僕に駆け寄ってくる。心配してくれるの?

 

 「余計なお世話よ!アキには永遠にそんな機会ないから!」

 「そうです!吉井くんには金輪際必要ありません!」

 「何でそんな悲しい事いうの……?」

 

 あんまりだよ……。僕だっていつかは木下さんと……は!僕は何を……木下さんと結婚する訳じゃないんだから……いや、許嫁なんだから良いのか?あ、やばい……今度は違う理由で鼻血が出そう……!

 

 そんな事を思ってると不意にムッツリーニが立ち上がった。大丈夫なの?

 

 「ムッツリーニ!?」

 「……大丈夫。これしき……。」

 

 そんな鼻血いっぱい出てる状態で言われても説得力ないけど……

 

 「では、試合開始!」

 

 カーン!

 

 「……試獣召喚。」

 

 最初に召喚獣を呼び出したのはムッツリーニだ。忍者装束をまとった召喚獣、それがムッツリーニの召喚獣だ。保健体育だから負ける事はないはずだ。がんばれ!

 

 「試獣召喚!」

 

 今度は工藤さんが召喚獣を呼び出した。セーラー服を着て身の丈程の大きな斧を持っている。それに腕輪がある!?ていうことは……

 

 「400点オーバー!?」

 「実践派と理論派、どっちが強いか見せてあげる。ばいばい、ムッツリーニ君!」

 

 工藤さんが最初に仕掛けた。まだムッツリーニに動く気配はない。

 ムッツリーニは一体何点なんだ?まだ表示されないってことは……

 

 「……加速。」

 

 ムッツリーニの召喚獣が工藤さんの召喚獣と打ち合う瞬間、消えた。

 

 「……加速終了。」

 

 そのあとすぐにムッツリーニの召喚獣は姿を見せ、工藤さんの召喚獣はポン!という音とともに消えた。

 そしてムッツリーニの召喚獣の点数が表示された。

 

 576点

 

 「そんな!?この僕が……!」

 「勝者、Fクラス土屋康太。」

 「強い……!保健体育だけ僕の総合科目並の点数だよ……!」

 

 Fクラスの皆から歓声があがる。だけどまだ1勝2敗、こっちが不利だ。ここから勝つためには姫路さんと雄二、どちらも勝たなくてはならない。

 姫路さんはなんとかなりそうだけど雄二は勝つ気がしない……たぶん、雄二の作戦に決定的なミスがあるのかもしれない。

 まぁ、どちらが勝つにせよ出来るだけその後の事が穏便に済むことを願おう。

 

 ラウンド4

 

 「では、4回戦を始めます。」

 「それじゃあ……行ってきます。「姫路さん、頑張って!」はい♪」

 「では、僕が相手をしよう。」

 

 Aクラスの代表らしい生徒が出てきた。眼鏡をかけていて自信ありげな声、Aクラスの中でも指折りの実力者だろう。

 Aクラスとしてはもうここで勝負を決めてもいいはず、だとすると学年次席の生徒か?

 

 「久保利光か……ここが正念場だな。「どうして?」奴は学年次席、不得意科目でも突かなければ苦しい。「そんな……!」」

 

 やっぱり、学年次席か。姫路さんが相手だとしても勝てるかどうか怪しいところだ。

 

 「では、教科は何にしますか?」

 「総合科目でお願いします。」

 「そんな勝手に……!選択権は僕らが……!「構いません。」姫路さん……。」

 「まずいな、総合科目は学年の順位がそのまま強さになる……。」

 「それじゃあ……!」

 

 これは結構マズイ。姫路さんがどれだけ優秀だとしても点数で負けているなら勝機は薄くなる。この前の試召戦争で勝てたのは相手との点数の差があったからだ。

 もしあの時、姫路さんの回復試験の結果が相手と同じだったとしたら完全に負けていた。姫路さんの技術がどれだけあるかによってはここで負ける事も十分にあり得る。

 

 「試合開始。」

 

 高橋先生のかけ声で試合が始まった。

 

 「……試獣召喚。」

 

 最初に召喚獣を召喚したのは久保君だ。久保の召喚獣は二振りの大きな鎌を持っている、見るからに死神の様な召喚獣だ。

 久保君の点数が表示される。

 

 3997点

 

 「すごい点数……!学年次席ってこんなに点数高いの!?」

 「「姫路さん……!」召喚獣召喚……!試獣召喚!」

 

 姫路さんが召喚獣を召喚する。そして、点数が表示される。

 

 4409点

 

 「4000点オーバー!?」

 「学年首席に匹敵する点数だな。」

 「いつの間にこんな実力を!?」

 

 これは……勝った!このぐらい点数に差があれば押し勝てる!

 

 「私決めたんです……!頑張ろうって!」

 

 姫路さんと久保君の召喚獣が衝突する。

 

 「私、聞いたんです……何でこの召喚獣戦争を始めたのか……私、このクラスが好きです。人のために一生懸命になれる皆がいるこのクラスが……私の好きな人のいるこのクラスが……だから……私も頑張ります!」

 

 召喚獣同士が鍔迫り合いを何度かした後、姫路さんの召喚獣が久保君の召喚獣を一閃する。

 

 「勝者、Fクラス姫路瑞希!」

 「スゴいよアキ!今ので2対2まで追いあげたわ!「姫路さん……。」」

 「次の一戦で勝負が決まる訳じゃな。」

 

 え!?何で秀吉は上半身裸なの!?こ、これがき、木下さんだったら……!

 

 「「ぐほぉ~!」」

 

 僕もムッツリーニも鼻血がと、止まらない!

 

 ラウンド5

 

 「では5回戦、ファイナルラウンドを始めます。」

 「さて、俺の出番だな。「雄二……」まぁ、見てな。Fクラス代表、坂本雄二だ。」

 「Aクラス代表、霧島翔子。」

 

 雄二と霧島さんが向かい合う。

 

 「教科は何にしますか?」

 「勝負は日本史の限定テスト対決でお願いします。内容は小学生レベル、方式は100点満点の上限あり。」

 「「テスト対決!?召喚獣のバトルじゃないのか?」」

 

 other side

 

 試験召喚戦争はあくまでもテストの点数を用いた戦争である。テストを用いた勝負であれば教師が認める限り経緯と手段は不問である。

 

other side out

 

 「分かりました、では試験を用意します。対戦者は教室に集合してください。」

 

 雄二がこちらに戻ってくる。

 へぇ~こういうやり方もあるのか。また、試召戦争をやるときにでも参考にしよう。まぁ、相手にもよるけどね。霧島さん相手だったら通じないんじゃないだろうか?それに……この作戦は雄二が100点を取らなければ完全にアウトだよね?負けるの確定じゃないか。

 

 「どういう事だよ?雄二!」

 「小学生レベルのテストじゃと二人とも100点を取って当たり前じゃ!」

 「それじゃあ、引き分けになってじゃない!」

 「いえ、小さなミス一つで負けるって事ですよ。」

 「「「あ!」」」

 

 だけど、雄二には何か秘策があるのだろう。じゃなきゃこんな勝負挑む訳ない。

 

 「その通り。学力じゃなくて注意力と集中力の勝負になる。「雄二……。」心配するな、勝算はある。翔子は一度覚えたことは絶対忘れないんだ。」

 「それじゃあ、暗記力勝負の歴史は不利じゃないか!」

 「いや、そこが落とし穴だ。奴はな……大化の改新を無事故の改新、625年と間違えて覚えているんだ。「えぇ!?」もしその問題が出れば俺は勝てる。」

 「待ってよ雄二!大化の改新って625年じゃないの……?」

 「無事故の改新、645年だ!この情報は本物だ。信用しろ明久!「雄二……。」このクラスのシステムデスク、俺たちのものにしてやる……!」

 

 そして、雄二は教室に入っていった。

 なるほどな~。でも、これは負けたね。あ~あ、ちゃぶ台の下ってなんだろうなぁ。

 そういえば、龍星さん達ってどこで見てるんだろう?別部屋で中継映像でも見てるのかな?僕を呼びに来てから見てないや。

 

 僕はそう思いながら雄二達のいる教室を映し出されたスクリーンを見る。雄二と霧島さんのどちらも真剣な面持ちでテストを待っていた。そのテストで姫路さんをAクラスの教室で勉強させてくれるかが決まってくる。

 高橋先生からテストの問題が渡される。今回のテストは問題用紙と回答用紙が分かれていないものだった。

 

 「では、始めてください。」

 

 高橋先生のかけ声でテストが始まる。僕の予想が正しければ雄二が霧島さんに勝つことは万に一つもない。だって、100点取れないんだもん。雄二が前は神童と呼ばれる程の天才でも、勉強していなければ勝つ事なんてできない。

 

 「いよいよだね。」

 「もし、その問題が出なかったらどうなるんじゃ?」

 「集中力と注意力で劣れば雄二が負けるだろうね。」

 「でもその問題が出たら……!」

 

 はぁ、もしその問題が出れば勝てると皆思ってるけど、それは雄二が100点を取る事が出来る事が前提で話が進められる訳で雄二は一言もそんな風には言ってない。ということは雄二は100点を自分が取れるという確証がないまま僕達にこの話をしてきた……雄二がこの勝負を勝てると確信しているのはその前提が抜けてしまっていたんだろう。ということで雄二は勝てないという事が容易に予想できる。さぁ、どうなるのかな?

 

 「出た!」

 

 問題自体は出た。雄二はその瞬間霧島さんを見る。過去の思い出を思い出しているのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 キーンコーンカーンコーン

 

 そして、テストは終わった。

 

 「それでは、限定テストの結果を発表します。」

 

 AクラスとFクラスの全員に緊張が走る。

 

 「Aクラス代表、霧島翔子97点。」

 

 Aクラスの全員が負けを確信したような雰囲気だ。そして、Fクラスの皆は勝ちを確信したようだ。

 

 「やった~!」

 「Aクラス代表は満点を逃したぞ!」

 「今日、この設備がウチらのものになるのね!」

 「吉井君……!」

 「続いてFクラス代表、坂本雄二53点。」

 

 そんなの勉強してなくても取れる点数だよ……。

 一気にFクラスの皆の気分が沈んでいくのが分かった……。

 

 other side

 

 Fクラスの卓袱台がミカン箱になった

 

 other side out

 

 Aクラスから戻ってくるともう設備が変えられていた。皆、意気消沈しながら帰っていく。

 龍星さんからは屋上で待ってると連絡が来た。後、端末を通話中のままにしておいてとも。たぶん、この試召戦争の結末が知りたいんだろう。

 そして、いつものメンバーが残ったわけだが……

 

 「前よりひどくなったじゃないか!何なんだよ雄二!あの点数は!?」

 「いかにも。俺の実力だ。」

 「自分が100点取らなきゃ作戦が役に立たないだろう!?」

 「まさかあんな伏兵が潜んでいるとは意外だったなぁ。」

 「自分が伏兵になってどうするんだよ!?」

 

 やっぱり抜けていたみたいだ。まぁ、これで霧島さんが幸せになれるだろうなぁ~。良かった良かった♪

 僕はどちらが勝っても良かったからね。まぁ、姫路さんには悪いけど今回は完全に作戦から悪かったわけだし。しょうがないよ。それよりも早く帰らせてほしいなぁ、僕と木下さんが同棲する場所を早く見たいしさ。

 

 「……雄二。「「「え?」」」雄二、約束……。」

 

 あ、霧島さんが来た。さてどんなお願いするのかな?検討はついてるけどね。

 

 「約束って……何でも言うこと聞くって……」

 

 そういえば、昨日その事で屋上で何か話をしてたような……。

 

 「分かっている……。何でも言え。」

 

 そう雄二が言った瞬間、ムッツリーニがカメラを用意し始めた。ムッツリーニ……カメラ……姫路さん……、そうだ!あれだ!

 

 「い、いけないよ!霧島さん!女同士でだなんて……!」

 

 そんな風にふざけてると霧島さんは雄二に近づいていった。そして、

 

 「……雄二、私と付き合って……!」

 「「え?」」

 

 顔を赤らめながらそう言った。やっぱり告白だったね。それに対しての雄二の返事は、

 

 「お前、まだ諦めてなかったのか。」 

 「私は諦めない……!ずっと、雄二の事が好き……。「拒否権は?」ない。約束だから今からデートにいく……。「え?あ、う……!」」

 

 そう言った瞬間、雄二は倒れ込んだ……。そして、霧島さんに引きずられてどこかに行ってしまった。

 霧島さんが幸せそうで良かった~♪

 

 「今の何だったの?」 

 「さぁ、何でしょう……?」

 

 島田さんと姫路さんがきょとんとしている。まぁ、霧島さんの愛情表現は過激だからねぇ~。

 

 「それじゃあ、霧島さんが姫路さんの事を見てたのは?」

 「雄二の近くにいる女子が気になったのじゃなかろうか……。」

 

 まぁ、そういうことだよね~。それよりも、

 

 「あの……ごめん、姫路さん。前よりひどい教室になっちゃって……。」

 「……いいえ、いい教室ですよ。私、大好きですよこのFクラス♪…………。「え?」……それと、」

 「さぁてと!それじゃあアキ、クレープ食べに行こっか♪」

 

 そう言いながら島田さんが手を組んでくる。……あれ?

 

 「え!?それは週末って約束じゃ……!」

 「週末は週末。今日は今日♪」

 「そんな!?二度も奢らされたら僕の食費が……!」

 「駄目ですよ♪吉井君は私と映画を見に行くんです♪「えぇ~!?姫路さん、それは話題にすらあがってないよ!?」はい、今決めたんです♪」

 

 姫路さんが島田さんとは別の手を引き始めた。あれ?おかしいなこれ!?

 

 「ほら、早く!クレープ食べに行くわよ♪」

 「どんな映画に連れて行ってくれますか?」

 「そんな!?いやぁ~!生活費が!栄養が!ちょっと待って!うおぉ~!?」

 

 僕は島田さんと姫路さんに引きずられていく。その後に秀吉とムッツリーニが何か言ってる気がする。

 この会話、龍星さん聞いてるのに……!不味い、不味いよ!これ!?完全にアウトな気がする……。

 




 はい。今回はここまでです。ここが一番きりが良いと思いまして……。
 今回は明久sideだけにしました。これでも8,000字越えるんですよ……。次の話では優子や龍星君の話も持っていきます。あとは……ようやく同棲の話を書ける……!

 感想やご意見、評価をお待ちしています!

 明久はデート(?)に連れていかれる。その時、優子や龍星達は……。

 次回「代表戦 そして、同棲開始!(後編)」

 次回もお楽しみに!
 


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第5話 代表戦 そして、同棲開始!(後編)

 大っ変申し訳ありませんでした! 2か月以上も音沙汰なしで失踪と思われた方々もいらっしゃることでしょう。ホントすみません! 今回の話は結構悩みながら書いたのでいつも以上に時間がかかってしまいました。

 そのかわりといってはなんですが今回なんと1万二千文字越えしました! これでも次回に回したところもあるんですが……

 では、本編をどうぞ!



 明久side

 

 やばいやばい!どうする!?まずは龍星さんに連絡を取らないと!

 

 「美波様!姫路さん!ちょっと良いかな!?」

 「何ですか?吉井くん♪」

 

 姫路さんが答えてくれた。よし、反応してくれるならまだ何とかできるか?

 

 「ちょっとお手洗いに行ってきて良いかな?ちょっとやばい状況なんだけど!」

 「そ、そうなんですか……どうぞ行ってきてください……。」

 

 姫路さんは顔を赤らめながら手を離してくれた。姫路さんには悪いけど今はこれしか……!

 

 「しょ、しょうがないわね!早く行ってきなさい!」

 「あ、ありがとう!」

 

 島田さんも渋々手を離してくれた。ふぅ、早く行ってこよう……!

 僕はそのままトイレに向かい、ポケットに入れていた端末で龍星さんに話しかける。

 

 「龍星さん!聞いてましたか!?どうしましょう!?」

 『まぁ、落ち着いて。う~ん……仕方ないからこのまま気の済むまで付き合ってあげよう。こちら側の事を知られると困るし強引には引き離せないだろう。後、木下さんには俺から連絡しておくから。終わったら連絡してくれ、合流場所を教えるから。』

 「分かりました。それじゃあ、また。」

 

 これで良いかな。木下さんには悪い事しちゃったなぁ……それに木下さんに早く会いたいよ。

 島田さん達にはホント驚かされるよ。こっちの事情を知らないとはいえ、上手くそれを潰すように予定を入れてくるし。はぁ……今日だってホントは木下さんと同棲する家を見て移るはずだっただけどな~。

 たぶん、今から映画行くとしたら最低でも1時間以上は付き合わないといけない。そうしたら、帰れるようになる頃には日が落ちてる……。荷物はどうするか分からないけど今日は家を見るぐらいも出来るかどうか……。

 

 

 

 10分後

 

 「おっそ~い!何してたのアキ!」

 「ごめんごめん~。ホントに危なかったよ~。」

 「それじゃあ、行きましょうか♪」

 

 なんとか演技を続けるぐらいには落ち着いてきて戻って来れた。

 せめてクレープか映画、どっちかひとつにして欲しいなぁ。

 

 「それでですね、吉井君。私と島田さんで話し合ったんですけど……」

 「ん?何を?」

 「映画かクレープどっちか一つにしようって。それで映画だけでも良いですか?」

 

 お、そうかそうか。一つに決めてくれるならありがたいなぁ、時間が長い方だけど。

 

 「僕はどちらで良いよ。」

 「分かりました♪それじゃあ映画館に行きましょうか。」

 「うん!」

 

 僕らは映画館に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 明久side out

 

 

 

 

 

 

 

 時間を少し遡る。

 

 龍星side

 

 『龍星さん!聞いてましたか!?どうしましょう!?』

 「まぁ、落ち着いて。う~ん……仕方ないからこのまま気の済むまで付き合ってあげよう。こちら側の事を知られると困るし強引には引き離せないだろう。後、木下さんには俺から連絡しておくから。終わったら連絡してくれ、合流場所を教えるから。」

 『分かりました。それじゃあ、また。』

 

 う~ん……話を聞いてた限り、島田さんと姫路さんは吉井君に気があるらしい。これはなんというか御愁傷様だな~、吉井君には木下さんが居るし吉井君も木下さんを想ってる。

 島田さん達には付け入る隙がない訳だし、だけどそれでこちら側の事を話す訳にはいかない。

 

 「どうしたの?」

 「あぁ、ごめんごめん。ちょっと吉井君の方が複雑な事情が出来ちゃってね。」

 

 凜花が心配していたから頭を撫でてやる。すると、気持ち良さそうにしていた。

 さて、端末からの位置情報で吉井君の位置は分かるしこちらに問題はない。問題は……木下さんなんだよなぁ。

 まだ屋上には俺と凜花しかいない。木下さんはまだAクラスから向かってくる途中かな?こんな事で木下さんが愛想をつくとは思わないけど、残念そうにするだろうなぁ。

 

 「すみません……!遅れちゃいましたか?」

 「大丈夫だよ、遅れてないから。」

 

 そう思ってる間に木下さんがやってきた。どう説明しようか?

 

 「あきくんはまだですか?」

 「実はその事なんだけど……。」

 

 俺は木下さんに事情を話した。最初は普通に聞いていたけどだんだん不機嫌になっていくのが目に見えて分かった。

 

 「……そう、なんですか。……それが終われば来てくれるんですね。……はぁ。」

 「吉井君が帰ってきたら、慰めてあげてね。一番残念がってるのは吉井君だと思うから。」

 「分かりました。任せてください♪」

 

 なんとかそれで機嫌を直してくれるかな?ふぅ、これだから不安要素があると困る。まぁ、吉井君は木下さんとしか一緒になれないし、心配はないと思うけど。

 

 「さて、これからどうしようか?」

 「え?どうしようかってあきくんを待つんじゃないんですか?」

 

 まぁ、それはそうなんだけどね……。ここでずっと待ってる事も出来ないし、第一怪しまれるだろう。そうだなぁ……、

 

 「それじゃあ、木下さんは一度、家に戻ってもらおうかな。その後、俺の家まで来てもらおう。」

 「家に帰るのは良いですけど……何で龍星さんの家に?」

 「まぁ、来てみれば分かるよ。それじゃあ、一度帰ろう。」

 「はい……。」

 

 木下さんはとぼとぼと歩いて行った。木下さんが家に帰っていないと秀吉君が怪しむだろうし。一応、木下さんには凜花が付いて行ってもらおう。危ない事はないはずだが念のためだ。

 

 「じゃあ、私は優子に付いていくね!私、一応優子の護衛だし。念のため、ね?」

 「……うん、頼むよ。俺は少しここに残るから、先に行ってて。」

 「うん……それじゃあ、先に行ってるね!」

 

 凜花が木下さんを追うように屋上から出ていく。さてと、

 

 「これで良いかな?なるべくこの事は口外してほしくないんだけど、土屋君?」

 「……分かっていたのか。」

 

 何処からともなく土屋君が現れる。

 

 「君が来る事は予想していたけど意外に早かったね。」

 「一体お前は何者なんだ……?何故明久と面識がある?」

 

 忍装束の様な服を着た土屋君はとても驚いている様な表情をしていた。

 

 「う~ん……それは君に関係あるのかな?知らない方が良いと思うけどなぁ。」

 「……? どういう事だ?」

 「逆に聞くけど……君達は吉井君が何者なのか知っているのかい?率直に答えてみてよ?」

 

 土屋君は少し考えて、

 

 「……あいつはバカだか誰よりも純粋で真っ直ぐで、誰よりも他人の為に尽くせる良い奴だ。そして、俺の知る限りあいつは普通の高校生のはず。」

 「なるほどね。まぁ、合ってる所は合ってるけど……間違いもあるね。彼はバカじゃないし、普通の高校生でもないよ。」

 「……なんだと。だが、何故だ……?……俺が調べてもそんな事実はなかった。」

 

 土屋君はとても驚いている様だ。まぁ、そうだろう。吉井君の情報は国家機密レベルの代物だし。それに並みの情報網じゃ情報の末端も見えない様になっている。多分、土屋君もそんなに詳しくは調べてないだからだろうけど。

 

 「まぁ、それは後々教えるよ。今は教えられないけど。」

 「……簡単には教えないか。だが、今はという事はいつか教えるということか?」

 

 やっぱり食いついて来た。

 

 「こちらの条件を飲んでくれるなら、かな。条件を飲んでくれるなら吉井君や俺の事を教えよう。まぁ、条件を飲まなくても俺は全然良いんだけど。」

 「……どんな条件だ?その条件の内容が分からないと返答出来ない。」

 

 そう、それで良い。俺は微かに笑みを浮かべた。

 

 「それは……

 「……分かった。その条件なら喜んで飲む。」

 「理解が速くて助かるよ。なら頼むよ。」

 「あぁ。」

 

 

 

 

 

 

 

 龍星 side out

 

 

 

 

 

 

 明久side

 

 

 20分後

 

 僕達は映画館にやって来たんだけど……

 

 「学割とはいえ……チケット一枚千円……!コーラMサイズ三百円……!ポップコーンSサイズ四百円……!これがたったの2時間で消費するのか……!? 映画館……何と恐ろしい場所だ……!」

 

 僕はまた演技をしていた。一応、僕はゲームの買いすぎで今月はやりくりが大変だという事になってるからね。こういう所もしっかり演技しておかないと。

 本当は全然そんな事はない。大部分は雄二たちを騙すためにゲームに使ったけどまだ困るぐらいにはなっていない。木下さんとのデートにはどのぐらい使っても大丈夫だし、貯金もあるからね。いざとなれば銀行から引き落とせば問題ない。

 

 「吉井君……。」

 

 おっと、考え事してたら姫路さんに呼ばれてたようだ。

 

 「な、何?姫路さん?」

 「こ、これ!見ませんか!?」

 「へぇ~!良いんじゃない?これにしようよアキ。」

 

 姫路さんが指差していたのはザ・ラブストーリーみたいな映画だった。あれってもしかして木下さんと一緒に見ようって話してた映画じゃないか!? ダメだ!あれを見たら木下さんと行った時に面白くなくなる、そんな事にはしたくない! ……! そうだ!

 

 「そ、そう。じゃあ、僕は良いから二人で見てきてよ……。」

 「「えぇ~!?どうしてですか(よ)!? じゃあ、アニメにする?」」

 「いや~、そういうことではなくて……。」

 

 僕だけが見なければ良いと思ったんだけどやっぱりダメか……。そんな簡単にいく訳ないよね……。どうしようか……? アニメを見て満足した雰囲気を醸し出すしかないか。

 僕がこの状況の打開策を考えていると……。

 

 「観念するんだな、明久。……男とは……無力だ……。」

 

 そこには手枷をしている雄二とその手枷に繋がっているであろう鎖を持った霧島さんがいた。何故だろう?すごく絵になっている。あぁ、美女と野獣だからか。

 

 「え?雄二?」

 「雄二、どれが見たい?「早く自由になりたい。」じゃあ、地獄の黙示録完全版。」

 「おい!待て!? それ3時間23分もあるぞ!「2回見る。」一日の授業より長いじゃねぇか!?」

 

 雄二が今まで見たことないぐらいに焦っている。別に良いじゃないか~、大好きな霧島さんと二人きりの映画デートなんだから♪

 

 「授業の間、雄二に会えない分のう・め・あ・わ・せ♪」

 「やっぱ、帰る!」

 

 雄二は首に付けられた鎖をジャラジャラと鳴らしながら帰ろうとする。だけど、霧島さんは……

 

 「今日は、帰さない。」

 

 と言いながら何処からともなく見るからに強力なスタンガンを出し、

 

 「な、何だ翔子!? それ!? あべ! ちょ! しょうこ!? ユアファ!?」

 

 雄二にそのスタンガンを刺し、確実に意識を奪った。

 

 「学生2枚、2回分。」

 「はい♪ 学生1枚、気を失った学生1枚、無駄に2回分ですね?」

 

 そして、何事もなかったようにチケットを買おうと受付の人に話し、受付の人も普通に受け答えしてさりげなく雄二を罵倒しながら霧島さんの注文を繰り返していた。

 えぇ~……普通は驚くのに、あの受付の人どれだけ神経が図太いんだろう……?

 僕はちょっと引きながらその光景を見ていた。

 

 「仲の良いカップルですね~」

 「憧れるよね~」

 

 姫路さんたちはちょっと違う見方をしていたみたいだ。

 さて、僕たちはどうするんだろう?

 

 「私たちはどうしましょうか?やっぱり恋愛系を見ませんか?」

 「そうよね~、あんなの見せられたら私たちも!って思っちゃうわよね~。どうするアキ?」

 「ぼ、僕的にはこのままお開きの方がありがたいなぁ~、なんて……「「ダメ(です)!」」だよね~……。だったらアニメの方が良いかな。恋愛系を見てもすぐ寝ちゃいそうだし……」

 

 やっぱりあの恋愛映画は木下さんと見たいし、この理由だったら島田さんたちも納得してくれるだろう。

 

 「仕方ないわね~……アキが見ないなら楽しみも半減しちゃうし……姫路さんもそれで良い?」

 「はい……私は吉井君と映画を見れればそれで良いですから」

 「ごめんね~僕のせいで……」

 

 島田さんたちは渋々、という感じで納得してくれた。

 これで見る映画は決まったことだし、映画を楽しもうか。

 

 

 

 2時間後

 

 「いやぁ~、面白かったね~!」

 「そうね、結構面白かったわ~!それにあのラスボスが派手に吹っ飛ぶシーン!」

 「そうですね!あのシーンは気分がスカッとしました♪」

 

 僕たちは映画を見終わり、映画館から出てきていた。

 さっきまで見ていた映画、結構な名作と言えるだろう。キャラの心境をしっかりと描きながらアクションやストーリーもちゃんと上手くお客さんの想像の斜め上をいく物で、それでいてちゃんと尺を余す事なく使いきっていた。

 子供はともかく大人さえも引き込まれるようなストーリーに姫路さんたちも大満足のようで良かった。

 

 「おっと、それじゃあ僕はここで。」

 「また明日ね~、アキ~♪」

 「また明日です♪ 吉井君♪」

 「うん♪ また明日~」

 

 別れ道になり僕だけ二人とは違う道に向かった。

 

 

 

 

 

 「さてと……」

 

 しばらく歩いた後、ポケットに入れていた端末で龍星さんに連絡しようとする。

 

 「あれ? おかしいな……留守電になっちゃった。」

 

 数回コール音が鳴った後、留守電になってしまった。何かあった、と考えるのが妥当だろう。

 だったら龍星さん以外にも連絡してみよう。まずは……凛花さんに連絡してみるか。

 

 『はい、もしもし? 吉井君ですか?』

 「あ、はい。吉井です。あの……そちらで何かあったんですかね? 龍星さんに連絡しようとしても繋がらなくて……」

 

 良かった~凛花さんには繋がった。これであっちの状況が分かるかも。

 

 『あ~……、あった事はあったですけどね~、すぐに龍星様が対処したんです。まぁ、優子は今安全な所にいるのでご心配せずに♪ 後、龍星様は多分まだその対処で忙しいから出れなかったんだと思いますよ。』

 「そう、なんですか。じゃあ、僕どうしてればいいですか?」

 『あ~、それについては龍星様から指示を貰ってるので大丈夫です♪ 今から吉井君の端末に位置情報が入ったデータを送るのでその情報の通りに向かってください。』

 「分かりました。それじゃあ、切りますね?」

 『は~い、では♪』

 

 何かはあったらしいけど龍星さんが対処してなんとかはなっているっぽいな。凛花さんの口調からしてそんなに緊迫した状況ではなさそうだし、木下さんも無事みたいだ。

 

 ビービー ビービー

 

 そんな事を考えている内に位置情報が送られてきた。

 

 「う~ん……ここ、行ったことないな~。道に迷わない様に気を付けないと。」

 

 

 

 

 30分後

 

 なんとか示された場所までは来れたみたいだ。ちょっと迷いそうになったりしたけど。

 

 「だけど……なんか此処、貴族の家敷みたいだな~。周りも森ですごく広いし、庭園も広そうだ。」

 

 今、僕が立っているのは大きな門の前だ。門の奥は広い庭園になってるっぽい。だけど……

 

 「どうやって入ろう?」

 「吉井 明久様で御座いますか?」

 「うわっ!? ビックリした~! は、はい、そうですよ。」

 「では、中へどうぞ。」

 「お、お邪魔しま~す……。」

 

 門の前で突っ立っていると突然声をかけられた。声をかけてきたのは銀髪の執事服を着た老人だった。

 僕の名前を知っているということは龍星さんの知り合いだろう。中に入るように誘導される。

 なんか緊張するなぁ。

 門をくぐり、庭園を通り過ぎ、見るからに大きな屋敷の中に入る。広い廊下を少し歩いた後、執事さんはある扉の前で止まる。

 

 「此処でお待ちください。ただいま凛花様たちをお呼びいたします。」

 「あ、はい。わ、分かりました……。」

 

 凛花さんたち、もうこっちにいるって事なのかな?

 部屋に入ると落ち着いた雰囲気の部屋だった。いかにも高そうなソファーに座って待つ事にした。

 5分ほど待つと廊下から3人分ほどの足音が聞こえてきた。

 そして、扉が開いた。

 

 「待たせてしまってごめんなさいね~。」

 「いや、そんなには待ってないですよ。大丈夫です。」

 「じゃあ、ちょっと待っててくださいね。龍星様ももう少しで来ると思いますから、お茶でもどうですか?」

 「あ、はい。でも、ちょっと映画館で飲まされ過ぎて……ちょっと遠慮しておきます……。」

 

 最初に入ってきたのは凛花さんだった。凛花さんは僕の真正面のソファーに腰かけた。さっきの執事さんは部屋の前で待っているようだ。もう一人はまだ入って来ない。何かしたのだろうか?

 そういえば凛花さんと面と向かって話すのって初めてだなぁ、ちょっと緊張する。

 

 「じー。」

 「もう、優子何してるの? 早くこっちに来て?」

 「あきくんが凛花と話す時、あたしと違う反応するのがちょっと気に入らないだけだから気にしないで。」

 「き、木下さん、今日はごめんね? 僕のせいで……」

 

 誰かに見られていると思ったら、木下さんがこちらをジト目で見ていた。

 もう一人は優子さんだったのか。僕の反応がちょっと気に入らなかったらしい。ジト目の木下さんもかわいいなぁ。今日の事はちゃんと謝らないとね。予定がほとんど潰されて待ちぼうけしてたようなものだろうし。

 

 「そんなことは全っ然、気にしてないから。」

 「やっぱり気にしてるでしょ、その反応……。木下さん、ちょっとこっちに来て……?」

 「何? ふぁ……! あきくん……。どうしたの……急に?」

 

 僕は木下さんをこっちのソファーに座らせて、後ろからそっと抱きしめる。

 

 「ごめんね……? 今日の事は本当に。だけど、僕は木下さんううん、ゆうちゃんしか大好きな人なんていないから。それだけは信じてほしい、お願い……。」

 「そんなこと、言われなくても信じるよ……。あたしも、あきくん以外を大好きになんてならないもん。」

 「ゆうちゃん……。」

 「あきくん……。」

 

 僕とゆうちゃんの距離がだんだんと狭まっていく。そして、もう少しでゆうちゃんの唇を奪えるというところで、

 

 「う、うんっ! ちょっとお二人さん? ここに来た理由、覚えてますか~!」

 「「はっ! ご、ごめんなさい!」」

 「息ぴったり……。それはともかく吉井君、何か質問はありませんか?」

 「あ、そうでした。ここは一体……?」

 

 凛花さんに止められなかったらあのまま……。僕もゆうちゃんも顔を真っ赤にしながらソファーに座った。

 僕はは最初に一番気になっていた事を聞く。凛花さんはその質問がくることを楽しみにしていたようで、ニコっと微笑みながら答えてくれた。

 

 「ここはですね……龍星様のお屋敷です♪ といってもお屋敷は世界中、日本各地にあるのでこの地域の、といった方が良いでしょうが。」

 「そうなんですね~……って世界中にあるんですか!?」

 「あ、でもここはお屋敷の中でも小さい方ですよ~。LGNI本社の近くのお屋敷はこの3倍ぐらいは軽く越えますし。」

 「え~……。」

 

 ここはやはり龍星さんの屋敷なのか。それにしてもここでも十分大きいのに3倍ってどんだけ広いんだろう……。改めて龍星さんの凄さに驚いた。それじゃあ、本題を聞いてみよう。

 

 「さっき電話で言っていたあった事ってなんですか?」

 「あ~、それはですね……「それについては俺から教えよう。」あ! お帰りなさい、龍星様♪」

 

 凛花さんがお帰りと言ったのはいつもの制服姿ではなく黒いロングコートを羽織った龍星さんだった。

 龍星さんは凛花さんの隣にスッと座った。

 

 「いやぁ~、吉井君がいない間にちょっと襲撃されてね。」

 「え!? 大丈夫だったんですか!?」

 「大丈夫大丈夫♪ ロシアの特殊工作員30人が一気に突入してきただけだから♪」

 「どこに安心する要素が!?」

 「いやぁ、30人ぐらいだったら5分あれば余裕で倒せるでしょ♪ まぁ、木下さんや凛花がいたから守りながら倒してたから30分くらいかかっちゃったけどね~」

 

 何て事だ……、知らない内に龍星さんたちが襲撃されてるとは……それでも5分でロシアの特殊工作員を倒せる龍星さんって……。龍星さんの凄さをまたひとつ知った気がする。

 

 「まぁ、前からロシアは不審な動きをしてたから警戒はしていたんだけどね~。屋上での話を軍事衛星で盗聴していたようで木下さんの方を狙ったんだろう……。ただ、これでロシアは沈静化するだろうね~」

 「木下さんを狙って襲撃した、という事実をLGNIに握られたからですか?」

 「そう、こちら側としては荒っぽい事はしたくないんだけど。これでロシアは粛清対象としていつでも壊滅させることができるからね。今頃首脳たちはいつ粛清されるかと怯えているだろうね。」

 

 まぁ、そうなるだろう。まだ木下さんは僕とは何の関係もない一般市民ということになってるし、ロシアはただの一般市民を狙った襲撃をしたという規定違反を犯したことで十分LGNIの粛清対象に入るのだから。

 

 「まぁ、倒した特殊工作員たちの身柄はLGNIに引き渡したから動かぬ証拠になっていくだろうね。その手続きのせいで遅れちゃったんだけど。」

 「そうだったんですね。それで、今日は後どうするんですか?」

 

 龍星さんが来てもそれが聞けないと此処に来た意味がない。もしかしたら……このまま解散なのかな?

 

 「そうだね~……少し予定は狂ったけど吉井君たちがこれから住む事になる所に行こうか。荷物とかは全部あっちに置いてあると思うからそのまま今日から住んでいいよ。」

 「結構遅いですけど大丈夫なんですか?」

 「あぁ、大丈夫大丈夫♪ 一軒家だし、周りは俺の信頼出来る友人とかしかいないから♪」

 

 龍星さんに信頼されてる人たちってどれぐらい凄い人たちなんだろうか? 

 

 「さてと、それじゃあ早速行きますか♪ ディル~、車まわしてきてくれ。」

 「かしこまりました。」

 「え? もう行くんですか?」

 「もちろん、早い方が良いでしょ? 何事も。」

 

 まぁ、それはそうだけども……少し緊張しながら僕たちはあの執事さん、ディルさんが車を屋敷の前につけるのを少し待ちながら今後の事について話す事にした。

 

 「そう言えば……吉井君って週末、どうなってるの?」

 「え? あぁ~、そうですね……土曜に姫路さん達と約束していたクレープを食べに行って、日曜に木下さんとデートしに行こうかと。」

 

 そうだ! 僕、週末って結構忙しいじゃないか! 木下さんとデートに行けるのは良いけど……次の日って補習だよなぁ~……

 

 「そっかそっか。吉井君も隅に置けないなぁ~♪」

 「そんなことないですよ……僕は木下さんしか好きになんてなりませんし。」

 「まぁ、頑張りなよ? あぁ、そう言えば言う機会逃してたんだけど俺、週末は用事があるから吉井君たちの護衛出来ないんだ。代わりの人は手配しておいたから、気にしないでね?」

 「え? そうなんですか……まぁ、頑張ってください……。」

 「うん、ありがとう。」

 

 そうなのか、週末は龍星さん居ないんだ……多分護衛よりも大事な用事なんだろうなぁ~。姫路さん達と出かける時にアドバイスもらえたら良いなって思ってたんだけど居ないならしょうがない。

 

 「龍星様、お車の準備が出来ました。」

 「あぁ、ディルご苦労様。さてと行こうか。」

 「は、はい。」

 

 一体どんな家なんだろうか? 僕は木下さんと手を繋ぎながら車に乗って同棲する家に向かった。

 

 

 

 

 30分後

 

 「さぁ、着いたよ。」

 「うわぁ~、凄い……。」

 「ここがあきくんと同棲する家……。」

 

 龍星さんの屋敷から約30分、車に乗ってやって来た住宅街には他の一般の一軒家より小柄な二階建ての家があった。

 家の色とかは辺りが暗いためよく分からないが結構落ち着いた様な色だと思う。

 

 「吉井君たちしか住まないし、あんまり大きくても手入れとか大変だと思って小さめの家にさせてもらったよ。どうかな?」

 「すごく良いです!」

 「じゃあ、中も見ていこうか。」

 「「はいっ!」」

 

 木下さんもすごく気に入ってるみたいだ。それにしても、こんなに良い家作ってるのに母さん達何も言ってくれないとは……ひどいなぁ~。

 家の中に入ってみるとやはり少し小さめな玄関、次に大人数が来ても大丈夫なぐらいの広さのリビングダイニング、二人並んで料理出来そうなオープンキッチン。

 その他諸々……僕らが住んでも本当に良いのかってぐらいの立派な家だった。

 

 「龍星さん、ホ、ホントにここに住んで良いんですか? 僕達にはまだ早いと思うんですが……。」

 「あきくんの言うとおりですよ。ま、まるで……」

 「まるで新婚さんの家みたいだって?」

 「「恥ずかしいから言おうとしてなかったのに!?」」

 

 ホントそうだ。さっきは遠回りに言ったが新婚さんの家みたいで僕達にはまだ早いような気がしてならない。

 そう指摘を受け、龍星さんは……

 

 「アハハ、何いってるの? 後一年もしたらもう新婚さんでしょ? それが一年早くなっただけだって♪」

 「「っ!」」

 

 笑いながら返された。

 そうだ……僕達ってもう新婚さんも同然なんだなぁ~。まぁ、木下さんが相手だから全然良いんだけど。木下さんが一年後には僕のお嫁さんかぁ~僕と木下さんってまだ再会して数日しか経ってないんだよな、でも自然に受け入れてる自分がいる。

 やっぱり、昔の僕はそれぐらい木下さんが大好きだったんだろうなぁ。

 そんなことを考えていると、

 

 「それじゃあ、俺達はお邪魔になるとアレだから帰るね♪ あ、今日は二人で料理でもしてみたら? 食材は冷蔵庫にあるから勝手に使ってね~それじゃ♪」

 「優子、頑張って♪」

 「え? ちょっと!? 僕達まだ了承とかしてないんですけど!?」

 「り、凛花! ちょっと待ってよ!」

 

 おもむろに龍星さん達が帰る準備をして、さっさと帰ってしまった。え? 本当に帰っちゃったよ……。

 

 「こ、これからどうしようか?」

 「そ、そうだねぇ……あ、あたし、あきくんと一緒に料理、したいな?」

 

 突然二人きりになると緊張してしまう……、しょうがないじゃないか! こんな可愛い娘と居たら緊張するに決まってる。これで緊張しないのは男じゃないか龍星さんぐらいだと僕は思う。

 何とか話を始めて帰ってきた答えに驚きながら考える。木下さんと料理を始めたとしよう。まず始めにエプロンを着るよね、服を汚さないように。うん!ここで死ぬかも、木下さんが可愛いすぎて。そして……

 なんてこと考えていると僕が答えに詰まっていると感じたのか、

 

 「あ、あきくんはあたしと料理、したくないの……?」

 「っ! そ、そんなことないよ? 何作ろうかって考えてただけだよ。全っ然大丈夫!」

 「そうなんだ~良かった♪ もしかしたらあたしと料理したくないのかと……」

 「そんなのあり得ないよ!「そ、そう?」うん!」

 

 木下さんが目を潤ませながら上目遣いで聞いてきた。それは反則だよ……可愛いすぎて倒れそうになってしまった。

 さてと、ホントに何作ろうかな?

 

 「ゆうちゃんは何か作りたいものとかある? あればそれ作るけど……?」

 「あきくんと一緒に作れるなら何でも良いよっ。強いて言うならあきくんの得意料理とか一緒に作りたいなぁ~。」

 

 得意料理かぁ。やっぱりパエリアかな? 一番作りやすいのは。

 

 「じゃあ、パエリアだね。」

 「パエリアかぁ~作れるかな?」

 「大丈夫、僕が手取り足取り教えながら作っていこうと思ってるから。」

 「それだったら安心だねっ♪」

 

 天使? ここに天使がいる。天使が僕に満天の笑みを浮かべている。ヤバイ、僕はここで昇天してしまうんじゃないだろうか? そう思えるぐらいに木下さんの笑顔は破壊力抜群だった。僕は明日まで生きているのだろうか?

 

 ちなみに二人きりになってから僕達はこれでもかってくらい顔が真っ赤になっていた。

 

 

 明久side out

 

 

 

 

 

 

 

 龍星side

 

 俺と凛花は既に屋敷に戻り食事など諸々の事を済ませて、後は寝るだけとなっていた。

 俺は眠気が来るまでウィスキーを飲みながら屋敷のバルコニーから夜空を見上げる事にした。屋敷から見る夜空には星達が点々と並び煌めいていた。屋敷は住宅街やマンションなどが近くに無いため星が綺麗に見える。

 

 俺はロックのウィスキーが入ったグラスを傾ける。今日のある出来事について考える。それは吉井君の異変とロシアの工作員襲撃の事だ。

 後者は吉井君にも言った通り軍事衛星で屋上の会話を盗聴されたため起きたことだ。まぁ、ロシアは前々から粛清しなければならないと思ってたから正当な理由が出来てくれて良かったというのが俺の感想だ。

 

 だが、前者の吉井君の異変については早急に対処しなければならない。やはり、「暴走した力」が近くまで迫っているからと考えるのが妥当だろう。自己防衛のために無意識下で力が発動してしまったか。

 

 ……まだ、吉井君には力の事を言うつもりはない。まだ彼にはやらなければならない事があるだろうし、ホント出来ればこちら側には来させないことが一番良いことなんだろうがそれは絶対に出来ない。

 

 この世界線での運命では逃れらない。運命が収束してしまうから。世界線が変わるくらいの事をこの世界でやると俺の目的にも支障がでてしまう。それは避けたい。

 

 やはり、俺が相手を倒し力を落ち着かせる。それが今の状況下での最善策だ。そのための準備は余念なくしておかなければ。

 

 「何だ、まだ起きてたのか。」

 「まぁね、つるぎは寝てたんじゃないの?」

 「ちょっと目が覚めたら隣にお前がいなかったからな、ここじゃないかと思って来てみた。それで? どういうことなんだ、あれは?」

 

 後ろを見るとつるぎが可愛いハート柄のパジャマを着て立っていた。つるぎも察知していたんだろう、吉井君の異変を。

 

 「何で吉井の存在が1時間以上この世界から消えたんだ? やっぱり暴走した力のせいなのか?」

 「そうだよ、大きな力が近くにあったから自己防衛のために無意識に力を発動させたんだと思う。これ以上近づけるのは不味いと思ってくれて良い。」

 

 つるぎが俺の隣でバルコニーの柵に寄りかかった。つるぎが欲しそうにしてたからグラスをつるぎに渡すと少し飲んで返してきた。

 暴走した力がこれ以上近づいたら多分、力が暴走を始める。そんなことは絶対にさせない。今はまだその時じゃないんだ、用意も出来ていない。

 

 「だから、暴走した力を止める、か。用意は出来てるのか?」

 「ギリギリ、かな。後、一つだけあってくれると助かるモノがある。」

 「それは?」

 「それは……」

 

 それを言おうとした時、俺の端末にメールが届いた。

 俺はそのメールの送り主の名前を見て、

 

 「今、ちょうど調整が終わったみたいだ。ごめんつるぎ、ちょっと部屋に戻ってて。今から大事な電話するから。」

 「おう、分かった。じゃあ、部屋で、な?」

 「うん、分かってるよ。それじゃ。」

 

 つるぎは少し顔を赤らめながら部屋に戻っていった。さてと、

 

 『もしもし? どちら様ですか?』

 「俺だよ。例のモノの調整が終わったんだって?」

 『レビウス様! はい、ようやく終わりました。大変でしたがレビウス様の為とあれぱ私達は喜んで協力致します!」

 「そうか、ありがとう。それでいつこちらに届く?」

 

 俺が連絡したのはLGNIのある部署。そこに俺に協力してくれてるCEO時代の部下達が居る。CEOを辞めた今でも俺に協力してくれている。こちらとしては嬉しい限りだ。

 

 「恐縮です! クルーザーからLG-01で直接送りますので1日は掛からないかと。アレの他には何もいらないんでしょうか?」

 「あぁ、大丈夫だ。今回は必要ないよ。」

 「かしこまりました。」

 「それじゃあ、また協力を頼むと思うがよろしくね。」

 「はい! いつでもご自由にご指示を! それでは失礼します。」

 「うん、頑張ってね。」

 

 よし、これで準備は出来た。簡単に勝てるとは思わないが頑張って五分五分まで持っていけるだろう。

 さてと、部屋に戻ってつるぎを可愛がらなきゃ。

 少し夜空の星を見て俺は部屋に戻った。




 はい、お疲れ様でした! 今回結構削ったんですがこのぐらいの量になっちゃいました。

 結構龍星の話の中で気になる言葉があったと思いますが今後その理由を明かしていくのでお楽しみにしていてください!

 もし良かったら感想な評価をください!
 感想や評価をもらうと作者は書くスピードが上がります。

 明久たちの夜はまだ始まったばかり、一体どのぐらいイチャイチャするのか? 
 そして、龍星の戦いもようやく始まろうとしている。

 次回 第6話 同居初夜 そして、休日デート

 次回もお楽しみに!


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