魔法使い「聖杯を嫁にしたんだが冷た過ぎて辛い」 (シフシフ)
しおりを挟む

プロローグ

初投稿です。生暖かい目線で舐めるように見てください。

登場した鯖は誰でしょう(オリ鯖)

人気なら続けるかも?





 聖杯戦争。

 それは7人のマスターと7騎のサーヴァントが最後の1人になるまで戦う儀式。

 その第三回が行われ、閉幕を迎えていた。

 

「マスター、やりましたね」

「あぁ」

 

 那須色の瞳をし、緑の髪を腰まで靡かせ外套を着た真面目そうな女性。その手には弓を持っている。

 彼女はマスターと呼んだ人物に冷静にそう言うも、内心では歓喜に打ち震えていた。

 

 それは聖杯への資格を得たからではない。やや半歩前に立つ男、自身の問に短く答えたマスターを讃えての事だ。

 人が手にするには無謀とも言える叡智を軽々と扱うその技術。無双を謳う英雄達に一切の物怖じもせずに突貫する胆力。それらが蛮勇でないことを解らせる一切隙のない神算。

 

 女性、アーチャーはこれ程のマスターに出会えた事に深く感謝していた。

 その冷酷な眼差しは決して揺るがず、常に「全ては掌の上だ」と言わんばかりに強い光を灯し、その頭脳は常に相手のニ手三手、いや、二十手先をも読む。

 天才鬼才では言い表せない、正に怪物であった。

 

「全ては御身の御心のままに」

 

 緑の髪をふわりと揺らし、今の今まで怪我どころかダメージすら受けずに勝ち抜いたマスターに敬意を払い膝をつくアーチャー。

 もはや自分の願いなどどうでもいい、今はこの人の先を見たい。アーチャーはそう考えていた。

 

「──────大儀であった」

「っ!!」

 

 不意討ち気味に放たれた声に胸が跳ねる。

 唯の一言、初めての労いがアーチャーの鼓動を酷く乱した。生前も、死後も、決して認められた事など無かったアーチャーが初めて言われた「自分を思う言葉」。

 

 ──ずるい御方だ。

 

 アーチャーは口元がにやけるのを抑えられない。無様な姿を晒す訳にはいかないと必死に堪える。

 

「ありがとうございます」

 

 その一言を絞り出すのに途轍もない労力を要した。

 黒い髪をした黒い目を持つ魔法使いはそんなアーチャーの様子を無表情で見下ろしていた。

 

 顔を伏せ膝をつくアーチャーがそれに気が付ける訳もなし。アーチャーの中で肥大していく感謝と信仰を一身に受け、それでも腰が引ける事など無い。上に立つべくして立つ男、それがアーチャーのマスターなのだ。

 

「……この令呪も、もう無くなってしまうのですね」

 

 アーチャーが感慨深いといった声音で男の令呪を見つめる。

 自らとマスターを繋ぐ鎖が無くなってしまえば、もう……いや、そんな簡単に無くなってしまうような絆ではない!

 

 アーチャーは自らの想像を即座に否定し、男を見上げる。見る者が見れば少女が初恋の相手を見上げるような、そんな淡い眼差しに見えただろう。

 

「落ち着け、アーチャー。……本来ならば()の願いを叶えるつもりだった」

!?」

 

 君、という言葉にアーチャーは過剰なまでの反応を示す。アーチャーからすればマスターとの距離が縮まったかのように感じたのだろう。喜びのあまり顔を上げ、問いただそうとする気持ちをグッ、と我慢し踏み止まる。そのせいか変な体勢になってしまった。

 

「っ!も、申し訳ありません!私の願いなど端な物、どうか崇高な目的の為、使用してください!」

「……感謝する。それと、無理をするな」

 

 男の困惑を肌で感じたのか、はっとして謝るアーチャー。感謝の言葉とさり気ない気遣いに頬が紅潮する。戦争中は驚くほど口数が少なかった男だが、戦争が終わって口に結ばれた紐も緩んだのかもしれない。

 そう考えると頰っぺまで緩んでしまう、とアーチャーは両手で頬を確かめながら少し笑う。

 

「そして」

 

 男はアーチャーの目を真っ直ぐに見つめ、言う。

 

「すまない」

「ぇ?」

 

 男の右頬にある赤い痣、令呪が光る。

 

「令呪を持って命じる。抵抗をするな」

「っ!マ、マスター?……これはどういう……」

 

 無表情のまま、声音を変えることなく淡々と。冷酷な声で、けれどはっきりと聞き取れる音量で。

 

「重ねて命じる。一切の行動を禁ずる」

「っ!、!!、!?」

 

 身動きの全てを禁じられたアーチャーは困惑を隠せない。けれど、同時に理解した。ストンと、ある事実が胸にはまったのだ。自らの過去と照らし合わせてしまったのだ。

 

 ────あぁ、私など……所詮道具としか見て頂けていなかった、か。

 

 後悔があるとするならば、この、最期に芽生えてしまった想いを伝える事ができない事か。

 でも、それすらも「マスターなりの」思い遣りなのでは、と勘ぐってしまう。

 

 ────やはり、ずるい御方だ。この様や仕打ちを受けても、貴方を敵だとは思えない。貴方を恨む事すらできそうにない。この心はとっくに貴方に支配されていた。

 

「……自害では苦痛が残る。故に、死だけを与える事にした」

「────」

 

 無表情だった男の顔が、一瞬、歪んだように見えた。それはどうしようもないものにぶち当たった過去の自分に重なって見えて……。

 

「最後に、伝えておく」

「!」

 

 その一言にはっとする。まさか、と思ってしまう。アーチャーは動けないまま期待の眼差しを送ってしまう。

 

「聖杯は汚染されている。そのため、使用する事は出来ない」

 

 けれど、返答はどこまでも事務的な「アーチャーを殺す理由」だった。

 

「我々が戦ったこの世全ての悪(アヴェンジャー)が聖杯を汚したのだ。これにより、願われた願いは全て、破滅へと繋がるだろう」

 

 そう言いながら、何処か謝罪の雰囲気を滲ませる男。

 

 

 ────違う、違うのですマスター。私は、私の願いなんてもう要らない。貴方の願いが叶う瞬間をただ……隣で見ていたかった。

 

「故に、君の願いを叶える訳にはいかなかった。聡明な君なら分かっていたかも知れないが……最後の最後で、俺は君が信用ならなかった。───君を殺すのは私的な理由だ、だから()()()()()()()

 

 嘘だ。アーチャーは確信した。

 背中を常に預けてくれたのだ、嘘に決まっている。私の為に嘘をついてくれたのだ。

 端倪すべからざる神算鬼謀を見せるマスターにあって、私的な理由での裏切りなど有り得ない。

 

 ならば、自らに託されたマスターの計画があるはずだ。と、アーチャーは考えを巡らせる。

 

 聖杯、汚染、自らの殺害。

 

 思い出す男より語られた聖杯の仕組み。アーチャーは男との会話が嬉しくて一言一句覚えていた。

 もしも、これらを悪用出来るなら……。

 

 突拍子もない計画だった。それを自らのマスターが考えたとは思えない。けれど、大きく外れてはいない気がした。

 男の計画の隅々を把握できない未熟さに悲しくなるが、それでもソレを成そうと決意する。

 同時にそれほどの事を任せて貰えるのか、とその信頼に胸を熱くする。

 

 ──まだだ、まだ、考えろ。なぜマスターは「恨め」と言った?……この世全ての悪、か?けれど、これでは余りにも無謀すぎる……だが!

 

 精神論、という物がある。やる気があればどんなことだって出来る。という物だ。アーチャーはそれはあまり好きではない。だが、仮に、己の浅はかな考えが男の計画を壊してしまうとしたら、それは余りにも恐ろしい事だった。

 ならば、精神論だろうがなんだろうが縋り付いて、懸命に役目を全うしよう。

 

 ────やってみせます。だから、どうか……!

 

 覚悟を決め、決意を固め、男を限界まで恨んでみせる。

 強引に、生前の敵……圧制者達を思い浮かべ、それと重ね合わせる。

 ズキリと胸が傷んだ。あの愚者達とは違う。上に立つべく御人なのだ、と心が叫んでいた。

 

 恨め。怒れ。怨め。憎め!

 

 増幅する憎悪、自らへの嫌悪感すらそこに乗せ、この世全ての悪へ希う。

 

「……そうだ。それで良い」

 

 男への憎悪が限界まで達した時、男は目を閉じ、静かにそう言った。

 

 ──よかった、間違えてなどいなかった。私はまだ、マスターの掌の上に居られている!

 

「では、また。いつの日か会えることを願う」

は、い!」

「ザラキ」

 

 たった一言の呪文で、三騎士が一騎、弓兵のサーヴァントは死亡する。外傷は無し、無傷の死であった。

 

「……」

 

 アーチャーの遺体がゆっくりと光になって空へ上がっていく。その一部が一定の方角へと流れていく。

 黄金の輝きが、2人を祝福しているかのようだ。

 

「魔法使い、か────情けないものだな」

 

 その光が見えなくなるまで、男はずっと空を見上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

*

 

「……」

 

 そこに、黄金の杯はあった。禍々しい泥を吐き出しながらその姿を現していた。

 ()の名はアンリマユ。この世全ての悪である。

最後の一騎の魔力を回収し────────?

 

──────残る役目は願いを叶え破滅させること、のみとなった。

 そんな()を見て男は溜息をついた。その美しさに思わず零れ出たのか、それともその邪悪な気配に嫌気がさしたのか。

 もしくは失った相棒への罪悪感で出たものだろうか。

 彼らの戦いは見ものだった。サーヴァントがマスターの補助に回りマスターが敵を倒すとは。

 

 ───魔法使い。

 

 それが目の前に無表情のまま立つ男の正体だ。今の時代では珍しく。聖杯戦争を無傷で圧倒的な勝利で以て、この場に立っているのだ。

 私をして「凄まじい」と思わされる。

 

 圧倒的な魔力、()()にある宝具の域にまで達する呪文。

 サーヴァントをいともたやすく砕く姿は正しく魔法使いという言葉が相応しい。

 無表情のまま、私へと歩み寄る男に声をかける。

 

『勝者よ、万能の聖杯に何を願うか』

 

 私は密かに期待していた。一度根源へ到達しているであろう魔法使いが何を願うのか。そしてそれをどのようにして叶えててやろう(破滅させよう)か、と。

 

「……()()()()、か」

 

 その問に男は表情を一切変えることなく──気配を変えた。

 ──ぞわり。今は無機物に取り付いた筈の私がその体を震え上がらせる。

 魔力が男から溢れ出していた。それも、聖杯などとは比べ物にもならないほどの量。そして、質。

 その魔力をどのようにして使うのか、分からない。が、理解する。このままでは消される。聖杯から取り除かれる。下手をすれば「アンリマユ」が殺されかねない。これはなんだ、この感情はなんだ。

 

 ────いや、知っている。この感情は……!

 

「──物は黙っていろ」

 

 ─────恐怖だ。

 

「言われずとも願うとも」

 

夥しい程の魔力が溢れ出し、無数の結界が張り巡らされた。そのままゆっくりと私の元へと近づき、鷲掴みにされる。

しばしの静寂の後、ゆっくりと、けれど、その一言は驚く程に良く響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺の妻となり、添い遂げろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……はい?』

 

巨大な爆発と共に、私の苦難が始まろうとしていた。

 








評価、コメント、待ってますー。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「聖杯に嫁を願ったら幼女が出ました」

まさかコメントが沢山来るなんて思ってなかったので初投稿です。

今回、嫁聖杯と主人公が同じ場面をそれぞれの一人称でやるのでご了承くださいな。
あと、下ネタ注意。後書きに「アーチャー」の答えを置いておきますね。


 

 爆発が視界を覆った。

 いや、爆発等という生易しい物では無い。

 確実に世界の半分近くを滅ぼせるだけの破壊力を秘めていた。

 

 だと言うのに。

 

 この体が感じているのは全てを無に返す爆風でもあらゆるものを焼き尽くす熱波でも無い。

 素肌に触れる布の感触、全身を優しく包み込むような圧迫感。

 

「──大丈夫か?」

 

 低く、冷たい声が私の耳を打った。そこに含まれているはずの願いの成就による幸福感は無い。この声はこう言っているのだ「やるべき事をやったまで」。

 

 ぞわり、と歓喜が湧き上がる。

 何故だ?と困惑をする。目の前の男に対し、私が抱く感情は恐怖と忌々しさだけのはず。

 

 であれば、この感情は私のものではなく、別の場所からの発生……もしくは、植え付けられた物。

 となれば発生源は限られてくる。私の肉体を構成し、奴の願いを叶えた物。

 

 万能の願望機、聖杯。そこからの強制力と言う事だろうか……厄介だな。

 

 だが、奴は失敗を犯している。何をするつもりだったのかは不明だが、大きな失敗をしているのだ。

 

 愚かな事に、あの男はあろう事かこの私を、神霊アンリマユを、その()()を、この器に降臨させたのだ。

 聖杯が持つ大量の魔力が、()()()()()()()()()()()()()()()()()()と言う願いをより破滅的方向に導いた結果が、アンリマユ本体の顕現へと繋がった。

 

 ククク、馬鹿なヤツだ。きっと今頃、火に包まれた街を呆然と眺めているに違いない。

 つまり私はそんな奴に対して「お前のせいだぞ」と言ってやればいい。なんてことは無い、早速だがこの貧相な器を使って奴にトドメを刺してやろう。

 

 そう思い、私は目を開く。

 そこには砂埃一つ付いていない奴の姿。ローブは依然として汚れていないし、怪我をしている様子もない。

 

「目が覚めたか」

 

 無表情で、一息つく魔法使い。

 やけに顔が近いな。

 

 ……?

 

「……どうした、なにか付いているか?」

 

 キョロキョロと私は周囲を見渡す。

 壁がある。床がある。天井すらある。

 

 ………………あれ?

 

 えっ?ま、町、消えてないぞ。どういう事だ……まさかあの爆発を防いだっていうのか!?そんな、有り得ない。

 

「まぁいい。今から俺の家に向かう。……その格好では不便だろうからな」

「ぇ?」

 

 私は自分の体をみる。……裸体だ。まぁ、当然か。

 だが、それよりも、視界が引き上げられて気がついたのだが…。

 私は魔法使いに抱き上げられていた。

 

「は、はなせ」

「断る。今から転移の術を使用する。話をするな、噛むぞ」

 

 魔法使いを睨みつけ全力の抵抗を試みる。当然だ、こんな奴の言いなりになどなるものか!死ね!

 しかし奴は無表情で返してくる。死ね!

 

「……はぁ。そうか、君はその格好のまま街を練り歩いて家に向かいたいのか」

 

 なっ!馬鹿なのか此奴は!自分の嫁を願っておいてその扱いはどうなんだ!馬鹿か!

 って歩き始めたぞ!?待て待て待て待て!

 

「っ!ま、まてっ!」

「……いいだろう。で、要件は?」

 

 こ、こいつ……!無表情過ぎて何考えてるかわからん!

 それにしてもなんだ!?なんでこんなに胸が高鳴っているんだ!確実に私の感情じゃないだろ!?

 聖杯なのか?聖杯が悪いのか!?

 

「……」

「黙りか。まぁいい。私も犯罪者にはなりたくないのでな。─────ルーラ」

 

 やれやれ、と肩をすくめる姿に苛つく私。しかし、そんな姿もカッコイイです!と私の内で声がする。

 魔法使いが何かを言ったかと思えば、視界が青白くに染まった。

 思わず私は目を閉じてしまった。

 

「さて、着いたぞ」

 

 は?

 

「わぁ……!」

 

 目を開けば一変した世界。口から勝手に零れでる感嘆の溜息。

 これが転移……凄まじいな。ここが何処なのか皆目検討つかない。

 

「──俺の家だ」

 

 目の前には背の低い緑の草に覆われた小さな丘があり、所々に青や白の花が咲いている。丘の頂上には一世帯が暮らすには十分な大きさの二階建ての家が建っていた。ヨーロッパ風の建築物だ。

 屋根の上には知識にない鳥の姿を象った風見鶏がクルクルと回っている。

 

「いや、言い直そう」

 

 少し強い風が吹き、草花が揺れる。魔法使いのローブも大きくはためいた。

 私を抱き上げる腕に少し力が篭った。

 

「──ここは、俺達の家だ」

 

 言葉とは裏腹に、決意に満ちた表情が、私の脳裏に焼き付いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 ◻

 

 

 俺は転生者だ。ドラクエの魔法が使える上に、魔法に必要なステータスはカンストしている。

 つまり、強い。脆いが。

 

 だが、そんな俺にはとある物が無かった。

 

 大切なものを失う勇気だ。

 

 そう、その大切なもの失う勇気が無いせいで、俺は何時までもこの重荷を背負い続けて……いや、ぶら下げ続けている。

 

 ────童貞。

 

 それは、未だかつて無い程の強敵だ。どれだけの研鑽(自重)を重ねても、倒す事の、失う事の出来ないもの。

 

 だが、それを失うのも最早秒読み段階までやって来ている。

 遂に出来てしまったのだ。

 

 チラリ、と腕の中にスッポリと収まる幼い少女を見る。

 

 爆発の衝撃で意識を失っているのか、穏やかな寝息をたてていた。

 ………………アカン、鼻血が。

 

 失礼。穏やかな寝息を立てている、と分かったのは音ではない。胸が上下していたからだ。更に言えば、そこにある小さな赤い突起を童貞たる俺の(まなこ)が離してくれなかったから。

 

 赤い点が上に、下に。上に、下に。俺の目も同様の軌道を描く。

 

 ああそうだ、目の前の少女の外見だが、これに関しては驚いた。

 アンリマユが入っていると言う事なので、てっきり星0のアンリマユの女体化的なススワタリみたいな奴が出てくると思ったのだが……色白なのだ。そのせいで赤が目立つ。ずるいエロい。

 

 と、そうではないな。失礼。

  紳士たるもの外見の描写には真摯に行かねば。

 

 黒く、長い髪は腰のあたりまで届いているだろうか?抱き上げるために腰に腕を回しているのだが、髪の毛の感触がある。スベスベだ。エロい。ナニをしたいとは言わないが、いつかしたい。

 瞳の色は分からないが、神霊だ、赤い可能性が高いだろう。神性が高いと赤くなるらしいしな。

 かく言う俺も転生者であるためか、やや赤い。

 

 いや、俺の事なんてどうでもいいんだ。

 そして、体格なのだが、なかなかに細い。あれだ、栄養が若干足りていないのでは、と思わされる外見。

 

 の癖、やや膨らんだ二つの小山が魅力的。

 

 ではなく、えー、そうだな。うん。耳とかは普通の耳だ。とんがったりはしていない。ネコ耳とかもない。

 

 ふむ。あとは何をいえば……「ん」っとと、目を覚ましてしまったか。

  くそぅ、もう少し凝視したかった。

 

 

 ん?待てよ、今のって割とチャンスだったか……?いやいや、合意の上でヤラねば童貞卒業とは言い難い気がする。

 

「大丈夫か?」

 

 俺の問いかけに、少女─聖杯ちゃんとでも呼んでおこう─、聖杯ちゃんは眉毛をピクリと動かす事で応えた。

 

 寒くないだろうか、少しだけ抱き寄せておこう。

 

 !?!?!?

 

  ふわり、と香る甘い香り。俺は頭が激しくノックされたような衝撃を受けた。

 

 ……はっ、ま、不味い!なんだこの香りはッッ!!反則だろう!?女の香りなんて俺は嗅いだことなんてないんだぞここ数百年間!

 

 不味いっ、バベルの塔が……!右に傾いてる塔が建設されていく!このまま塔が高く登りすぎれば神がお怒りになるぞ……!堪えるんだ!

 

 は、はぅ……!不味い、不味いぞぅ、既に俺のズボンにその頂上が到達している!このままでは雲海(ズボン)を押し上げ、神の園へと辿り着いてしまう!

 

 倒壊する!壊されてしまう!

 

 ……待てよ?女性にチ〇コを壊されるならむしろ御褒美なのでは?

 

「……」

 

 っ、め、目を覚ましたぞ!……目の色は黒が混ざった赤か。

 だがしかし、このままでは不味い。バベルの塔はもうすぐそこだ。ズボンに阻まれてはいるものの、その先端は少女の大事な部分に標的確認、方位各固定、不毀の極槍して吹き飛んでしまいそうだ。

 

 ミッションとしては自然な流れでバベルの塔が回転して白いエアを発射する前に立ち上がる事。

 

「目が覚めたか」

 

 出来る限り上半身を少女に近づけ、腰を引く。チンさんを股間に収納するのだ。

 

 っ!近い!顔が近い!瞼の動きとかすごいよく分かってしまう。エロい。……いやいやいや、ロリ相手に何を言っているんだ俺は。……待てよ、相手はアンリマユだ。つまりとても年齢を重ねているはず。……合法ロリだと言うのか……?

 

 いや、しかしだな。いけない事だ、少女を襲うというのは。yesロリータnoタッチ!イエスロリータノータッチ!

 

 ……気がついてしまった。秒読み段階まで来たと思ったが、数年待たねばならないじゃないか!

 

 待てよ?つまりこれは……光源氏計画という事か。

 

 〜理想の嫁を育てよう、アンリマユ編〜

 

 という訳だな?

 ちなみに、嫁にする際、アタックカンタとマホカンタ、アストロンその他バフ、デバフをフルで使用した結界を張って漸くギリギリ防ぐ事が可能な爆発が起きるため注意した方がいいぞ、願うなら。

 

 ふふふ、いやぁ、夢と股間が膨らむな。

 もうぶつかってしまいそうだ。耐えろ俺。あ、触れた。あぁ、押し付けてしまう、それだけは避けるんだ!

 

「?……?。??」

 

 聖杯ちゃんは俺の顔をじっと見つめてくる。バレたか?背中の感触に気が付いてしまったか?

 俺の極刑棒に、気がついてしまったか?

 

「どうした、何か(背中に)付いているか?」

 

 キョロキョロと首を動かし周囲を確認し、不思議そうにした後、更に天井を見渡し、床をペタペタと触って更に不思議そうな顔になった。

 可愛すぎて死にそうになった。

 

 あぁ、不味い。母性と父性が刺激されてしまう。なるほど、ギロチンブレイカーならぬチン〇ンブレイカー、性欲そのものを保護欲に変化させる宝具かっ!

 

 ……鼻血を堪えなくてはならない。

 

「まぁいい。今から俺の家に向かう。……その格好では不便だろうからな」

 

 背中の異変に気が付かれる前に素早く立ち上がる。ミッションコンプリートだ。

 しかし余計な一言も言ってしまった。少女が裸である事を知ってしまったのだ。なんて事だ、これで隠されたら見れない。……隠す姿もとても見たい。

 

「は、はなせ!」

 

 うん、ですよね。

 そりゃそうだ。俺でも目が覚めたら裸の自分が男に抱き上げられてました、なんて逃げようとする。絶対にだ。

 

「断る」

 

 だが断る。いくら暴れようとも、嫁を離すつもりは無い。もはや今生にてこのような出会いは無いに違いないからな。俺は詳しいから知っているんだ。俺には致命的に女運が無いことをね。

 

 何故ならば今まで出会った女性は必ず俺を殺そうとして来たからだ。

 槍持った対魔忍とか特に怖かった。その2本の槍で二穴プレイですか?と言おうとしたら「力を示せ!」とかなんとか。殺意が凄まじかったが、まぁルーラ安定。死にそうになったらこれに限る。

 

 そうだ、家まで遠いし、ルーラを使うとしよう。なに、どうせ裸の少女を抱えたうえ、頬に残念なビジュアル系バンドのマークみたいな痣を引っつけた男が町を通ったら即通報だ。

 妻を願ったら豚箱とか、流石に嫌だ。……ほとんど誘拐なので逮捕されても文句を言えないんだけども。

 

「今から転移の術を使用する。話をするな、噛むぞ」

 

 おっととと、まだ暴れるか……めっちゃ睨んでくる。可愛い。やばいな、顔がデレッデレになりそうだ。途端にそんな顔になったら絶対に嫌われる。引き締めろ。そして見つめ返すんだ。

 何だったか、ひとめぼれは7秒のうちに起こるらしいし、7秒間耐えよう。

 

 ……惚れた?……なわけないか。

 

 あー、この子に恥じらいとかあるのだろうか……聖杯だぞ?アンリマユに汚染されているとは言え、考え方が無機物でもおかしくは無い。まぁ、先ほどの反応からして平気だとは思うが……カマをかけてみよう。

 

「……はぁ。そうか、君はその格好のまま街を練り歩いて家に向かいたいのか」

「っ!ま、まてっ!」

 

 恥じらったッッッッ!

 く、くぅ〜!鼻がそろそろ決壊しそうだ。

 

「……いいだろう。で、要件は?」

「……」

 

 冷静に、冷静になろう。今本性を知られては光源氏計画は無に帰す。そうなっては振られて終わりだ。俺はロリコンではないが、ひたすら女に飢えている、そこさえ我慢できればなんとかいけると思うんだが、耐えれるだろうか……耐えるためにも聖杯ちゃんに服は必須だろう。

 着てくれるか分からないが、着させればいいんだ。

 

「黙りか。まぁいい。私も(性)犯罪者にはなりたくないのでな」

 

 特に要望は無いらしいので、さっさと行こう。

 

「ルーラ」

 

 呪文を唱えればほんの一瞬、それこそ0.01秒程の速度で魔法陣が俺の周りを回り、術が完成する。早さには自信があります。アレもこれも。壊音の霹靂よりずっとはやーい!

 視界が白にそまり、その次の瞬間には俺達は人里離れたこの場所にいた。

 

「さて、着いたぞ」

「わぁ……!」

 

 ンー!素晴らしい反応!なんだこの天使は。目をキラキラさせながら俺の腕から少し身を乗り出すように辺りを見渡しているのだ。幼い外見も相まって天使。

 ……神だったわ。

 

「──俺の家だ」

 

 こだわった点は風見鶏のモデルをレティスにした事だろうか。理由?特にない。なんか縁起がよさそうだなーと思っただけだ。……それにしても、内装なんて無いぞ。旅ばっかで荷物置き場としてしか使用してなかったからな。大丈夫だろうか……「ダサっ」とかそんな感じで嫌われないか?既に遅い気もするが……。

 

「いや、言い直そう」

 

 そうだ、もう、ここは俺だけの家じゃなくなる。この聖杯ちゃんとの愛の巣になるのだから。俺の家じゃない。

 俺は決意し、力強く言う。

 

「──ここは、俺達の家だ」

 

 この家で、俺は、この子で、童貞を捨てる。

 そう心に固く刻んだのだった。

 

 

 




現在、聖杯ちゃんは酷く混乱しているため思考力が悲しい事になっています。(ぽんこつ)
少し落ち着いたら勘違いが加速するでしょう。落ち着いて思考すればするほど勘違いの沼にハマって行ってくれるといいな、と思いました(小並感)

主人公は原作の知識を大部分忘れているのです。彼が貰った特典は「無限の寿命」と「ドラクエ魔法」です。
殺されると死にます(蘇生はある)


という訳で、オリ鯖のステータスです。


名前:ロビンフット(♀)
性別:女
属性:秩序/善
クラス:アーチャー

ステイタス
筋力D
耐久D
敏捷B
魔力A
幸運D
宝具B

宝具
祈りの森(イー・バウ)
ランクD

ロビンフットの周りにイチイの森が出現しその森と一体化する宝具。森は徐々に広がっていく。森と一体化することで、全ての木々に瞬時に移動が可能。転移には魔力が必要な為、多用は出来ない。木々の一つ一つはエーテル体で構成された言わば擬似的なロビンフットである為、神秘の篭っていない方法での破壊は困難。
放たれるイチイの矢が突き刺さると、任意のタイミングで真名を解放。森中の毒素が対象に集中して流れ込む。この毒素は対魔力でやや軽減が可能である。
祈りの森と顔の無い女王、破壊工作が組み合わさる事で圧倒的な殺傷力を発揮する。

顔の無い女王(ノーフェイス・メイクィーン)
ランクB
彼女の着ている外套による能力。完全なる透明化、背景との同化ができる。伝承防御と呼ばれる魔術品でもあり、光学ステルスと熱ステルスの能力をもって気配遮断スキル並の力を有するが、電子ステルスは有していない為、触ってしまえば位置の特定は可能。外套の切れ端であるものを使い指定したものを複数同時に透明化させたり、他人に貸し与えても効果は発動する。これを解除させるには、対軍クラスの攻撃をさせることが有効。

スキル

単独行動A

対魔力D

破壊工作A

黄金律D

皐月の王B



性格は真面目、悪事をとことん許さない。幸せな家庭を望んでいる。尚、家事が苦手なぽんこつ。料理をさせてはいけない、イチイが入っている場合があるゾ。死ゾ。


くっくっくっ、ロビンフットだと気が付けた方は居たかな?ロビンって沢山いるし、女の子呼ぼうぜっと、こうなりました。


コメント、評価、お願いします。
次回、続け。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「家来たけど何も無いんで調達をバッ」

前回のあらすじ!

シフシフ「初投稿です」

魔法使い「聖杯使って童貞捨てるぜ!」
嫁聖杯「今起こったことを説明するぞ。聖杯戦争の勝者の願いを叶えて世界を滅ぼそうと思っていたら嫁になっていた。しかも世界破滅アタックを防がれた。何を言っているかわからないかもしれないが、私も何が起きたのか分からなかった。願いだとか、万能だとか、そんなちゃちゃなもんじゃだんじてない。もっと恐ろしい片鱗をこれから味わいそうだだ……」


という訳で、2話、初投稿になります。

主人公視点しか無いです。あと、テスト期間の合間に作ってたので、色々物足りないかと。
生暖かい目で舐め回すように見たあと、コメントに「フッ(失笑)」やっちまって下さい。



 

 

 家。それは最も落ち着く空間であり、何処よりも安全で安心できると感じさせる空間である必要がある。

 と、俺こと魔法使いは思うのだ。

 

 しかし、我が家にはとても大きな問題がある。

 それは……

 

「……なにもない」

 

 そう、何も無いのである。安心も信頼もないのだ。

 外観で「わぁ……!」ってなってたのに……すまない。有るとすれば隅っこの方に山積みになった木箱位のものだ。

 

「これから増やせばいい」

 

  ポジティブに行こう。愛の巣は相談しながら作ればいいんだ。

 

「っ!……!」

 

 む?抱っこしている聖杯ちゃんが身動ぎしている。なんだ、降りたいのか?だが地面は埃だらけ、歩けば足の裏が真っ黒になる。それは可哀想だし少し待ってほしいな。

 

 ふむ、綺麗にする魔法……俺の持っているドラクエ呪文は攻撃系ばかりだからな。うーむ、バギの威力を下げて使えばいいだろうか?

 

「暴れるな。───バギ」

「!」

 

 小さな竜巻が形成され、部屋を走り回る。結構な風が吹き、窓や扉が全て開く。そこから大量の埃が吹き飛んでいった。

 ……ビクってなったよな?可愛い愛でたい。

 

 よし、綺麗になったな。それにしても、めっちゃギュッって襟に捕まって来てるんだけど、何これ天使?天使だよな?もう天使で決定。

 

「……降りるのでは無かったか?」

「っ!……うるさい」

 

 ああぁ!降りてしまった……何てことを言ってしまったんだ俺は……これだからコミュ障は……

 

「ひぅっ!…………」

 

 ん?……縮こまっているな。さらには震えている。

 お、こっち見た。

 ふむ……?

 

「っ〜〜!」

 

 俺の事を睨んでいる……?めちゃくちゃ可愛いが、何が言いたいんだ?寒いのか?それは解るが……あ、裸足だから床冷たいとかそう言う?……仕方ないなぁ聖杯ちゃんはぁ(デレデレ)ほら、抱っこしてあげるよと手を差し伸べる。

 

「いやだ。はやくふくをよこせ」

「断る」

「!?」

「……すまないが、君の大きさに合う服はない。使っていない俺のローブで我慢しろ」

 

 流石に今のはキモイな。本心がでてしまった。抱っこなんてさせてくれなさそうだから、仕方ない。

 裸を見ていたい気持ちは強いが、ローブを渡すことにする。隅に積まれた木箱の中から使っていないローブを取り出し、聖杯ちゃんに投げる。

 投げてから気が付いたが手渡しした方が「あっ」「あ、ご、ごめん」みたいな手と手が触れ合うハプニングが起こったかも知れない……これからは気をつけよう。

 

「…………ぶかぶか」

「……我慢しろ」

 

 ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!カワイイんじゃぁあ!!

 ぶかぶかとか言いながら腕を片方ずつ上げるの最高か!?

 いやぁ、ローブっていいっすね!胸見えそう。なるほど、これが着エロか……。だが、子供なんだよなぁ。最早子供にすら発情しかけている童貞だが、それでも踏ん切りは付かん。いや、踏ん切りだとか何とか言ってる時点でブレーキが故障していることは分かっているんだが……。

 

 それにしても、俺は口が悪いな……。嘗められないようにと数百年この口調だったからもう染み付いてしまったか。というか、足が冷たいと言う問題を解決出来なかったな。まぁ、何も無いんだ仕方ない。しかし靴下すらないとは……む、裸ローブ+靴下だと?……エロいのか分からん。

 

「さて、足りないものは魔術協会に……と思ったが」

 

 魔術協会に家具の依頼をしようか、などと考えていると、突然魔力の反応を捉える。地下の使っていない物置に続く扉を進んですぐの位置だ。こちらの声も届くだろう。

 

「─────誰だ、出て来い。さもなくば相応の報いを受けることになるぞ?」

 

全く、空き巣か?なら災難にも程があるな。探したとして、木箱の中には俺の私物しか……まさか俺のコレクション(エロ本)達がバレてしまったか?それは不味いな、聖杯ちゃんに見られる前に取り除く必要がありそうだ。

 

 ん?なんか掴まれた?

 ────ぶふぉ!?な、なんだと……!聖杯ちゃんが俺のローブの端っこを掴んで後ろに隠れたっっっ!

 や、やべぇ萌え死ぬ。このままでは相手と相対する前に死ぬ?!これ程まで母性を擽るか、聖杯ちゃん!

 

「も、申し遅れました。わたくしは、アインツベルンより魔法使い様に贈られました、ホ、ホムンクルスでございます」

「要らん。帰れ」

「で、ですが」

 

 もう俺は聖杯ちゃんの将来に全てを捧げるつもりなのだ。今更下々の世話とかいらない。と言うか、俺と聖杯ちゃんの愛の巣に勝手に入ってくるんじゃない。ゴーレムとかも他の家から贈られてくるが、止めてくれ。可哀想で処理出来ないんだ。

 なので押し売り反対!と睨み付ければホムンクルスはしゅんと小さくなった。

 

「……も、申し訳ありません。先の発言は取り消しいたします」

 

 ん、待てよ?アインツベルンに聖杯ちゃんの洋服貰えば良いんじゃないか?ならついでに送ってあげるか。

 にしても、どんな服を……修道服は違う気がする。もっとこう、ザ・女の子みたいな奴がいい(願望)

 ゴスロリとかどうっすかねぐへへ。大人になる前に写真撮りまくろう。コレ決定事項な。

 

「では、わたくしはこれで……」

「待て、ホムンクルス。少しアインツベルンに用が出来た。来い」

 

 何用ですか?と聞いてくるホムンクルスを無視してその手を掴む。2歩ほど俺が前に歩いた為に、聖杯ちゃんがよろめいてあわあわしている。鼻血が出そうだが、問題ない。全速力でホイミを唱えたからな。血が溢れる前に傷は治った。

 

「あ、あの……」

「フバーハ。ルーラ」

「「?!」」

 

 そう言えば温度に関する呪文もあったなぁ、とフバーハも使う。

 さて、アインツベルンの本拠地前まで来た訳だが、居るだろうかあの爺さんは。

 

「えっ!?」

 

 と驚いているホムンクルスは無視して聖杯ちゃんを見ると、目をぱちくりして周囲をキョロキョロしている。可愛い。いきなり寒くなくなって驚いている様でローブの中を覗き込んだりしていた。……見えちまったぜ、中の宝石がよォ……。

 

「案内を頼むぞ、ホムンクルス」

「は、はい」

 

 それにしても、と俺は思う。随分と臆病なホムンクルスだな。さっきから吃りすぎだろう。アインツベルンにそういう性格が好きと勘違いされたか?この前のツンデレお嬢様系とか、本当にホムンクルスが可哀想に思えたからやめてあげて欲しい。

 

 俺が怖いのか、顔を真っ青にしながらも懸命に役目を全うするべく「こ、怖くなんかないんだからね!このク、ク、クズ魔法使い!」とか……可哀想だろう?ラリホーで眠らせたあとルーラで送り返してあげたが……殺されたか捨てられたか再利用されたかしたのだろう。

 まぁ、俺の家に置いても死ぬだけなのでまだ助かる可能性のあるアインツベルンに送る方がいい筈だ。

 

「──まほうつかい、ここは?」

 

 ふ、ふぉおおおおおおお!?裾をチョンチョンと引っ張ってからの上目遣い(身長差による意図せぬもの)だとぉおおおおお!?

 わざとじゃない辺りがポイント高いぞぉ!っはッ!正気になれ俺、落ち着け……俺は魔法使い、落ち着くんだ。冷静にかっこよく返すんだ。かっこよさげな顔をするんだ。

 

「アインツベルンの城だ」

 

 事もなさげに、当然だ、みたいな顔で言う。魔法使いはクールでかっこよくなくてはな。

 

「そうか、アインツベルンか……」

 

 そう言えばアインツベルンって聖杯作った御三家の一つだったな、確か。……俺も聖杯を作る時に魔力だけ提供したんだったか。マキリは元気だろうか。

 

 むむ、聖杯ちゃんが少し険しい顔になっている。そんな顔も可愛らしい。愛でたい……我慢だ。好感度を稼いでからでないとマイナスに振り切る。

 

 暫く無言で歩く。ホムンクルスがチラチラとこちらを時折見てくるが、気にする必要も無い。股間には来るが。

 なんつープロポーションしてるんだよ全く……性処理用とか言われても否定出来ない外見だ。白髪赤目って時点でエロいのに、そこにボンキュッボンだぞ?

 

 ……何故俺はホムンクルスで卒業をしなかったのか?なんと言うか、あれだ。儚過ぎて抱くの怖い(童貞)

 

 

 まぁ、そんなことはどうでもいい。聖杯ちゃんだ。聖杯ちゃんを俺は見るぞ。……周囲をチラチラと見渡す聖杯ちゃん。もしや怖いのだろうか?心做しか、俺のローブを握る力が強くなっているような。

 ならば、かっこよく守ってやらねば。夫だからな!

「マヌーサ」と小声で詠唱し、目の前を歩くホムンクルスに幻覚をかける。ついでに「メダパニ」をかけ、記憶を改変する。

 

「……安心しろ、君は俺が守る」

「は?なにをいって」

 

 ホムンクルスが足を止め、俺は聖杯ちゃんの前に立ちそう言った。聖杯ちゃんが非常に困惑したような顔をしてこちらを見上げる。ナイス身長差。

 

「そうだな……こうしよう」

「え?」

 

 俺の知っている魔法……呪文にはモシャスという物がある。それを使うと外見や使用するスキルなど、全てを丸パクリ出来るという素晴らしい魔法なのだ。

 ちなみに、肉体そのものも変わるためあんな事やこんな事も出来なくはない。が、勇気が無くて出来なかった……(童貞)

 

「──モシャス」

「!?」

 

 イメージするのは常に最エロの女性。と言いたいが、あんまりエロい姿に変わると童貞的に困るので、知ってる女性にしようと思う。ちなみに、モシャスの制御など余裕で出来る俺からすれば、姿だけをモシャスする事も可能!能力与えたら怖いからな。

 という訳でこの間俺が召喚したアーチャーに変わっててもらうか。

 

「これ、は……?」

「一時的に外見を変えさせてもらった。これならば君が聖杯であると看破される事も無いだろう」

「─────チッ」

 

 いやぁ、いい夫だな俺は。素早く妻の内心に気が付き、その対応も迅速!

 ふっ、惚れていいんだぞ?

 

 さて、アインツベルンの城の中を歩いている訳だが……まだかなー。アハト君ー、早く出てきてくれたまえよー。

 まったく、産まれたばかりの頃からの知り合いだろうに。生まれた瞬間から爺さんだったが、今も生きてるんだ、ホムンクルスというか、オートマトンというか、凄いな全く。俺が言えたことじゃないが。

 

「ここで暫くお待ちください」

「あぁ」

 

 お待ちください、か。どうする。聖杯ちゃんと話し合いでもするか?だが、今更なんだが、自業自得なのだが……!

 どうしてアーチャーにしてしまったんだ俺は!アーチャー……毒矢……うっ、頭が……!

 

 確か召喚した時のセリフが「サーヴァント、アーチャー。貴方が上に立つに相応しいか、確かめさせてもらいます」だったはずだ。弓を構えながらな。

 召喚した瞬間からオナ〇ー絶対禁止宣言とは恐れ入った。俺は上に立つに相応しくなんてないんだ、立つのは下だからな。

 

 そんな思いが通じてしまったのか、親の仇を見るかのような目で常に俺を睨んできた。そこからは透明マント的な宝具で常に隠れながら俺を視姦してきた。常日頃だ。

 

 戦闘になった時なんて「宝具の使用許可を!」からの許可なんて出してないのにちらりと振り向いたら「っ、わかりました。ご武運を!」とかなんとか言いながら森を展開、そこからは毒矢のオンパレードだ。避けてなかったら確実に俺に当たっていた。死ぬわ。

 

 と言うよりもマスターを前に立たせるサーヴァントって何なんだ……。セイバーとランサーが同盟を組んで襲いかかってきた時だって俺一人で相手取って近接戦闘だからな。俺の武器、素手だったからな(泣き)

 

 広範囲を吹き飛ばしたかったけど、そんな隙を与えてくれるような相手じゃなかった。だから近接戦闘に甘んじてたんだが、俺にはアーチャーの呟きしっかり聞こえていたんだ。「なるほど、無辜の民達を巻き込まないように範囲攻撃をしていないのですね」とな。

 

 俺のことなんだと思ってたんだ?俺が三騎士の内の2騎に囲まれてる中、他人のことを気遣えると思ってたのか?援護してくれよ……。

 

 まぁ、わかることがあるとすれば、確実にアーチャーは俺を殺そうとしていた。聞こえるようにああいう事を言って俺の行動を制限して殺させようとしてたんだ。なんてやつだ。

 

 聖杯を見つけた時だってめっちゃ見てきたし。なんだかんだ言って絶対に背後から刺して奪うつもりだったぞ。腹いせに童貞卒業しようとしたけど勇気が無くて失敗した。「令呪を持って命じる。抵抗をするな」「重ねて命じる。一切の行動を禁ずる」、こんなふうに令呪を使ったのだが、勇気が足りなかったんだ。これ程までに、俺の魔法使いとしての歴史は深かったのか、と恥ずかしくなった。

 

 そこからはヤケになって童貞卒業したい!けど無機物は嫌なの!ってわけで、童貞卒業に相応しいお嫁さんを願った訳だ。

 しかし、現れたのはどうした訳か幼女、世の中ままならないものですな。

 

「おい、魔法使い。何故私をここに連れてきた?一体何の目的だ」

 

 ひっ、話し掛けてきたか!おのれ、その平坦な声は本当に俺を現実に引き戻すのが得意だな!仕方ない、応戦するしか道は残されて居ないのだ。

 それにしても連れてきた目的……?家に一人は可哀想だから連れてきたのだが……?他にはないぞ?

 俺は内心で首をひねりながら考えるが特に目的のようなものは無い。むしろ、少し後悔しているレベルだ。

 

「……」

「…………そうか」

 

 え?あ、無視してしまった……!

 違う、違うんだ聖杯ちゃん!決して聖杯ちゃんを無視した訳では無い!アーチャーが怖くて声が出なかったんだ!あんなに長い間ものすごい近くから命を狙われ続けると言う経験が俺にトラウマを植え付けただけなんだ!

 

 あぁ、なんか顎に手を当てて考え込んでる……胸のしたで腕を組むな!エロ過ぎるだろ!くっ、俺の千里眼が捉えて離れてくれない。くそぅ、俺のmysonよ、お前は女ならば誰でもいいのか!

 

「?」

 

 あ、目が合った。

 そうだ、それでいいんだmy千里眼。女の子が目の前にいる時のみ発動するタダのエロ目線だが、相手が自分を見ている時だけは絶対に相手の目を見て離さないのだ。

 これは今までの戦闘における慣れ、もしくは癖なわけだが、結構助かっている。

 

「……何か用か、魔法使い」

「特に要件は無い」

 

 出来れば脱いでくれないか、なんて思ってませんとも。

 

「では何故私を見ている」

「いや───俺も女々しいと思ってな」

 

 今更アーチャーの裸体見てみたかったな、とか、少しも思ってませんとも。

 

「そう、か」

「おまたせしました」

 

 おお、やっと来たか。さて、話を……

 

「申し訳ありませんが、その、アハト様は……腰痛で」

「……」

 

 ……腰痛?……腰痛か。……腰痛かぁ?老人として設計されたとして……そんな機能付けるのか?……設計者の意図は分からんが、アハトが仮病である事はわかる。まぁ、アハトが居ようと居なかろうと、ただ洋服貰いに来ただけだなのだから。

 

「ならば良い」

 

とは言え、家主に何も言わずに服の交渉はダメだろう。なので、強引に起こしてあげることにする。さぞかし驚くだろうが、まぁ、気付け薬という事で許してもらおう。

 

 掌を真上に向け、魔力を高めていく。

 

「────元より、()()許可など求めていない」

 




次回予告。
「初投稿!服を求める魔法使いVS怒られると思っているアハト!頑張ってアハト!あなたが負けてしまったらアインツベルンは滅びるわ!次回!アハト、死す!スペルスタンバイ!」

次回は、お嫁さんの勘違いからはじまるかと。場面が同じ場所を書くことになると思われるため、嫌なら飛ばしてもいいんだ……ブラウザバックするんだ……!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「嫁の視点が思いの他文字数あってアハトが居ねぇ」

前回のあらすじ!

魔法使い「家だ!なんにもないぞぅ!さぁ、まずはアインツベルンに洋服を貰いに行こう!」
嫁聖杯「家だ!……なんにもない!」
ホムンクルス「ひぃ!」
アハト「腰痛、腰痛……腰痛なんです……」
魔法使い「脅かしたろ!」

という訳で、初投稿となる3話です。


えー、そしてですね。皆様に重☆大な報告があります。
嫁視点を書いていたところ、筆が捗りすぎまして……アハトのところまで辿り着けませんでした。

まぁほら、初投稿ですから。仕方ありませんよね?それにほら、皆さんもおっさん共がひたすら誤る(誤字にあらず)ような展開なんかより、女の子が読みたいですもんね?

なので、生暖かい目で舐めるように文面を見渡し「プギャー、語彙力のなさ!こんなので勘違いとか、他の作者に謝れよ」とコメントしてください。

(注)コメ稼ぎではありません。

では、どうぞ。








 

 

「……なにもない」

 

 私が奴の家に入り初めに思った事はそれだった。

 質素、と言うには物が無さすぎた。玄関から見える光景は壁と床、そして天井のみ。

 仮にコレを家と言うのなら、犬小屋の方が相応しい。

 

「これから増やせばいい」

 

 私の呟きが聴こえたらしい。魔法使いがそう言う。これから増やすと言っても……その量は計り知れない。何せなんにも無いのだから。必要なものを揃えるだけでも結構な時間がかかるだろう。

 それに、私はハリボテに留まるつもりなど無いのだ。

 

「っ!……!」

 

 故に、抵抗する。拘束から解き放たれ、さっさと逃げ出そうと考えた。

 

「─────暴れるな」

 

 だからだろうか。頭上から降り注ぐ極寒の声。そして、バカみたいな量の魔力の隆起。まるでそこだけが別の重量に捕まったかのように空間が歪む。

 

 殺される、とそう思った。

 

「───バギ」

「!」

 

 詠唱と共に放たれる小さな竜巻。それが部屋を蹂躙し、埃の全てを外へと放った。

 おのれ、魔法使いめ。あの魔力は脅しだったか……。

 

「……降りるのでは無かったか?」

「っ!……うるさい」

 

 こ、こいつめ……!私の事を完全におちょくっているな?!少なくとも妻として現界させたのだ、多少は優しくしろ!

 フン!とそっぽを向きながら緩んだ拘束から素早く抜け出し───

 

「ひぅっ!…………」

 

 床の冷たさに悲鳴を上げた。

 な、情けない。しかし何故こんなにも冷たいのだ!あ、暖かな場所を探さなくては! 

 

 そう思った私は素早く周囲に目を走らせ、見つける。

 

「っ〜〜!」

 

 なんで、なんでお前しか居ないんだ魔法使い!早く服とか靴をよこせ!裸では限界がある!

 

 っ!こ、こいつ、両手を広げて……来いという事か?ふざけるなバカ者が。折角逃げ出したのに戻るわけないだろう!それも計算済みか!?

 

「いやだ。はやくふくをよこせ」

「断る」

「!?」

「……すまないが、君の大きさに合う服はない。使っていない俺のローブで我慢しろ」

 

 無表情で言うな。こいつ、私の事を()()として見ていないな?

 

「おぶっ?!」

 

 うぅ、ローブを投げてきただと?私は物か?……聖杯、だな。まさか……いや、そんなはずは無い。こいつが私がアンリマユだと気が付いていないはずがない。

 

 いう事を聞かない体に、不可思議な感情。

 明らかな封印だ。

 そうだ、そうだったのだ。こいつの考えがやっと一つ理解出来た。

 嫁にするなど、所詮表面的なものでしかない。

 

 真の目的は私の封印。汚染を除去し、聖杯戦争を正常に戻すための自己犠牲。

 聖杯制作に関わった者としての責務か!

 

「さて、足りないものは魔術協会に……と思ったが」

 

 ん?なんだ、何か魔力の反応が……まさか、敵か?確かに魔法使いの敵など山ほど居そうだしな。

 

 はっ!これはやつが逃げられないように私が押さえておけば死ぬかも知れない!

 いいぞ!やれ!殺せ!!

 

「……誰だ、出て来い。さもなくば相応の報いを受けることになるぞ?」

 

 っバレてるぞおい!くっ、しかし奴の目的が私の想像通りならば、私の事は必ずや守るはず。私が奴を押さえ込むことで名も知らない相手はやりやすくなるはず!

 

 ふっ、掴んでやったぞ魔法使い。その命をな!

 さて、出てくるのはなんだ?魔法使いを殺すべく創り出されたゴーレム、若しくは高名な魔術師殺しか?

 

「も、申し遅れました。わたくしは、アインツベルンより魔法使い様に贈られました、ホ、ホムンクルスでございます」

 

 ……ほむんくるす?

 

「要らん。帰れ」

 

 帰れ、役に立たん。ホムンクルス如きが勝てるわけなかろう。

 

「で、ですが……も、申し訳ありません。先の発言は取り消しいたします」

 

 何やらモジモジと言い訳をしようとするホムンクルスを睨みつける。私の努力を無駄にしたのだから当然の報いだ。私の視線に気がついたのか、ホムンクルスは酷く顔を青ざめさせた。ふふん、そうそう、そういう顔をしてくれなくてはな!

 

「では、わたくしはこれで……」

「待て、ホムンクルス、少しアインツベルンに用が出来た。来い」

 

 ふふふ、そう、アンリマユたる私を恐れる事は悪い事ではない。なぜなら!私はこの世全ての悪なのだから。むしろ恐れろ。嫁にするとか絶対に言うなよ。呪い殺すぞ。

 

「──」

 

 ぬわっ!?ま、眩しい!?

 

 ……え?

 

 な、何故だ。私はさっきまでハリボテに居たはず。いつの間にか豪邸に変わっている?

 まさか先程のは幻術……?

 

 っ!なんだ?とても暖かいぞ?

 

 ……ふむ、調べても特に異常はないか。魔術か?話を聞きそびれたな。

 

「案内を頼むぞ、ホムンクルス」

「は、はい」

 

 ……どうやらあの家が姿を変えたわけでは無さそうだ。癪だが聞けるやつは魔法使いしか居ない。仕方ないから尋ねるか。

 

「まほうつかい、ここは?」

 

 私は軽く、そう聞いた。だがすぐ様その問に後悔することになる。

 

「───アインツベルンの城だ」

 

 その顔は恐ろしい程に冷たかった。表情という表情を理性で殺し、無表情という仮面を被っているような、そんな無機質さを感じさせる顔。

 

「そうか、アインツベルンか……」

 

 確かに思い浮かべれば私は聖杯で、アインツベルンはそれの制作に関わった御三家の一つ。さらに言えば最も魔法使いと交流があったであろう場所。

 

 しかし、アインツベルンは()()()()()

 魔法使いを裏切ったのだ。

 反則に反則を重ねたルール無視。それを第3次聖杯戦争で起こしたのだから。

 

 魔法使いに対抗するために、アヴェンジャーとルーラーの召喚を行った。

 正確にはアインツベルンが選び出した優秀なマスターにアヴェンジャーを使役させ、その裏でアインツベルンがルーラーを使って暗躍した。

 

 ────この魔法使いが参加した聖杯戦争で。

 

 その結果何が起きたかなど、語る必要すら疑問に思うレベルだ。

 分霊のアンリマユは殺され、聖杯は汚染された。

 つまり、魔法使いはアインツベルンの尻拭いをしたのだ。

 自らを裏切ったアインツベルンの。

 

 つまるところ、この訪問は報復。もしくは罰を与えに来たのだろう。

 奴のあの表情がそう言っていた。

 

「……安心しろ、君は俺が守る」

「は?なにをいって」

 

 私が考え込んでいると、魔法使いが私の顔を覗き込んできた。思わず聞き返すも返答は

 

「そうだな……こうしよう」

「え?」

 

 ────魔法だった。

 

「──モシャス」

「!?」

 

 肉体の全てが書き換えられていくのを感じる。

 霊格すらもだ。

 魔力の質さえ変貌していく。

 

「これ、は……?」

 

 私は恐怖に慄いた。なぜやらなかったのかは不明だが、奴は私という存在を、アンリマユという存在を容易く()()()()()ということが出来てしまうと、理解してしまったから。

 

「一時的に外見を変えさせてもらった。これならば君が聖杯であると看破される事も無いだろう」

 

 外見だと?バカにしやがって。そのような子供騙しな言葉が通用すると思っていたのか。

 もはや肉体は別物だ。視点は随分と上に上がり、体の肉は随分と増えた。

 

「─────チッ」

 

 私にはわかった。この体が奴の召喚したアーチャーであると。

 弱点を理解できる肉体に変えたのだろう。さらに言えばアーチャーの宝具もスキルも何も使えない。サーヴァントとしての側だけ、ステータスさえ無いへっぽこだ。

 

 魔法使いの警戒心の強さ、用意周到さに舌打ちが出る。

 だからだろうか、答え合わせが欲しかった。私の考えた事が全て嘘であり、全部が偶然の産物で、まぐれの出来事なのだと言って欲しかったのかも知れない。

 

「おい、魔法使い。何故私をここに連れてきた?一体何の目的だ」

 

 しかし、かえってきたのは無言の()()。私の目を真っ直ぐと見て。

 まるで、心の中を覗かれたような気分だった。そしてそれは間違っていないのだろう。

 

「…………そうか」

 

 なんて言うことだ、つまり、私は逃げる事が叶わないということか。

 少なくとも、なんの力もない状態で魔法使いを殺さなければ私は自由にはなれないのだ。

 

「……何か用か、魔法使い」

「特に要件は無い」

「では何故私を見ている」

「いや───俺も女々しいと思ってな」

 

 内側から歓喜が湧き上がる。

 忌々しい限りだ。そして、理解した。こいつの私への封印は二重では無い。三重だったのだと。

 

 此奴は自らのパートナーであったアーチャー、ロビンフッドまでを楔に使用したのだ。

 つまり、この感情は聖杯でもなく、私でもなくロビンフッドの物。

 

 奴らの会話を思い出す。

 

 ──落ち着け、アーチャー。……本来ならば君の願いを叶えるつもりだった。

 

 あの時、魔法使いはそういった。この言葉の意味を私は理解できる。ロビンフッドは恐らく分かっていないのだろう。

 

 ロビンフッド、アーチャーの願いは「幸せな家庭を築く事」だった。

 生前は戦いに明け暮れ、名も、顔も知れることなく死んでいった彼女はたとえ平凡で無くとも幸せな家庭を望んだのだ。

 

 だがアーチャーは魔法使いと聖杯戦争を共に戦い抜いたことで自らの願いの小ささを恥じ、魔法使いにその願いを伝えなかった。

 

 ところが魔法使いはその願いを理解していたのだ。本人よりも正確に。

 あの時のセリフはプロポーズにほかならない。

 

 自らを慕い、恋慕を寄せ家庭を築きたいと望んだ少女の願いを叶えるつもりだった、とそう言ったのだから。

 だが、私……アンリマユが死亡し、聖杯を汚染した時点でその願いを叶えるわけには行かなくなったのだろう。

 

 だから、アーチャーが自覚すらしていなかった「褒められたい、報われたい」と言った願いを叶えようと、不器用にも褒めたのだろう。

 全ては自分が想い、自分を想った少女の為に。

 

 ……だからこそ、私にあのような恐ろしい気配をぶつけたのだ。

 

 奴は私を見ていない。

 奴が見ているのは私の中の……ロビンフッド。

 納得がいった。

 魔法使いの行動、言動の全てに。私に向けられる冷たい眼差しの意味に。

 

 私は物なのだ。入れ物なのだ。愛しいロビンフッドを犠牲にしなければならない程の厄介な獣を閉じ込めるためのケージ。

 やつにとって服を与えることすら煩わしい忌々しい器。

 

「ならば良い────元より、奴に許可など求めていない」

 

 立ち上る魔力に鳥肌が立つ。

 無表情とは裏腹の激流のような魔力。

 

 

 あぁ、そうだ。

 

 

 魔法使いの怒りは、きっと、誰よりも……

 

 

 

 

 

 

 

 ────私に向けられている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何故……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何故、私は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 寂しいと思っているのだろう。

 

 









嫁聖杯の願いは─────









──────必要とされたい。










ㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤㅤto be continued?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「アハトー、洋服ちょうだい。ぇ?何?無いの?」

なんか、お気に入りの件数が凄まじいことになっていて驚いているシフシフです。
ほとぼりも冷めたし、この話を投稿することによりお気に入りの件数が2000位まで下がると予想しているため、初投稿です。

遅くなった理由としては、スマホ変えてました。最新ってすごいね。
久しぶりに小説を書いたので色々と酷いかも。許してヒヤシンス。

あと、だれか聖杯ちゃんとか描いてくれてもいいのよ?


追記。

アハトのキャラがわがんね……おかしかったら言ってください。修正します。





 ─────パリン。

 

 と、何かが割れるような音が幾度と無く響く。

 それは魔術工房であり、長い年月をかけて城や土地に備えられた無数の結界が圧倒的な()()()に押し潰されて壊れた音。そして大量の窓ガラスが弾け飛ぶ音でもあった。

 

 一切の魔術を使用せず、ただ魔力を垂れ流しにしただけでこの有様。

 ホムンクルスは恐怖からか瞳を開いたまま動かなくなり、血が巡らないのかどんどんと青ざめていく。

 この場において先程と何ら変わりないのは、事を起こした張本人である魔法使いとそのサーヴァントだけだった。

 

「───お待ちくだされ、魔法使い様」

 

 そこに落ち着いた低い声が響いた。

 アーチャーがその鋭い眼差しをそちらに向ければ、そこには白髪に染まった壮麗な翁の姿。そしてその後にズラリと並ぶ麗しい男女のホムンクルス達。

 

 その声に気が付いたのか、元から予想していたのか。魔法使いは目も向けずに佇む。未だその身から溢れる魔力は健在だ。

 

「まずは、謝罪を───」

「────謝罪は必要ない。立て、話がある」

「……はい」

 

 その姿から確かな怒りを感じ取ったアハトは恐る恐るといった風に、謝罪をするべく一歩前に進む、が次の一歩が進まない。

 

 魔力が生み出す圧迫感たるや、物理的な壁に阻まれているかのように魔法使いへの接近を許さないのだ。

 魔法使いがゆっくりとアハトの方を向く。その顔に表情は無い。冷酷、無慈悲、そんな言葉が頭を過ぎる。アハトは全身が打ち鳴らす警告を無視し、自らの死をも覚悟して魔法使いの前に立つ。

 

「アハト、聡明な君ならば俺が何のために来たか……わかるな?」

「はい」

 

 返事を返す声が震えていない事に感謝しながら、アハトは考える。

 魔法使いがアインツベルンに、アハトに求める物。それは何か。

 

 アハトと魔法使いの付き合いは長い。アハトが生まれた瞬間からの長い付き合いだ。

 

 アハトは魔法使いから多くを学んだ。恐怖という感情を学んだのも魔法使いからだ。

付き合いが長いからこそ、魔法使いの求める事を最も理解して行動に移して来たのは自分だと考えている。魔法使いが与える難題を幾度と無く叶え、乗り越えてきたのだ。と。

 

今回の裏切りは意図したものではあった。しかし、「魔法使いを殺す」為の裏切りではなく「魔法使いに聖杯を諦めさせる」為の裏切りであったのだ。

 

魔法使いの召喚したサーヴァントを殺す事により聖杯戦争から脱落させ、手を引いてもらう。そういう手筈だった。

 

そのために用意したサーヴァントは神霊アンリマユと天草四郎時貞。アハトの計算では最高の召喚となる予定だった。しかし、アンリマユはまさかの大ハズレ。

さらには魔法使いが召喚したサーヴァントは「ロビンフッド」、驚く程の隠密能力を保有しており、終ぞ一撃も与える事が出来なかったのだ。

 

まるで、全てを読んでいたかのようなサーヴァント召喚。

裏切られる事を想定し、自らが殺されないことも確信し、サーヴァントを隠すように戦っていたのだ。

 

それにアハトは魔法使いを過小評価していた。三騎士の内、セイバーとランサーが同盟を組み魔法使い陣営を攻撃しに向かったと報告を聞いた時、魔法使いの死を覚悟したアハトだったがその結果はまさかの返り討ち。

ランサーは死に、セイバーは瀕死になりながら令呪の力で逃走。しかしその後アーチャーの毒により死亡した。

 

ホムンクルスが撮影した映像を見ると、アーチャーは魔法使いを巻き込む事を承知で宝具を使用し、毒の矢を四方八方から放っていた。つまり、魔法使いは実質、三騎士全員と戦っていたのだ。

 

恐るべき叡智と、人を軽く飛び越える戦闘能力。

神々が二物を与えたもうたような魔法使いが求めるものは……アインツベルンの滅亡……もしくは─────

 

 考えうる最悪の事態にアハトは無表情ながらも演算を行い続ける。

 

────大聖杯の確保。

 

大聖杯が欲しいのなら、アインツベルンにやって来る必要は無い。しかしそこは魔法使い。魔術師らしからぬ律儀な性格と器の広さで顔を出しに現れ、許可を得に来たのだろう。

 

 聖杯を手に入れただろう魔法使いが何を願ったのかは明らかになっていない。何故大聖杯を求めるのかも。

 

しかし隣にサーヴァントが居ることからサーヴァントの受肉を選択した可能性が高いと思われる。当然、単独行動等のスキルにより現界している線も残されているが、魔法使いの魔力が濃厚すぎてサーヴァントか否か、識別すらできない。

 

──────また、何かをお考えか……。

 

 ゆっくりと髭を触りながら、アハトはアーチャーを見た。鋭い眼差しがアハトの目を貫く。

 なるほど。とアハトは納得した。

 

─────大聖杯を求めているのは彼女か。受肉を優先したという事は、現世で何かをするつもりなのだろう。そして、それは魔法使い様にとって有益な物だったに違いない。……やはり、求めているのは大聖杯で確実か。……なんとも間の悪い。

 

 現在、大聖杯は……確認出来ていない。

 

 没落すると思われた一族、ユグドミレニアが現在進行形で大聖杯を奪う為に攻撃を仕掛けてきているのだ。

 

 第三次聖杯戦争、そこにナチス・ドイツ側として参戦した魔術師、ダーニック・プレストーン・ユグドミレニアが聖杯戦争の終戦直後に軍勢を率いて大聖杯を奪いに来ている。

 

 数分前までその報告を受けていたアハトだったが、魔法使いのお怒りにより、通信は遮断、アインツベルンに張り巡らされていた結界は崩壊し、無防備もいい所。

 

 情報を得る前に封じられ、隠蔽の手回しすら魔法使いにより封じられた。……大聖杯を失ったとなればアインツベルンの名は地に落ちるだろう。アインツベルンの滅びは王手に近付いているように感じた。当然、まだまだ手段は残されている。しかし、先回りされている可能性の方が高い。何せ、魔法使いが敵対しているかもしれないのだから。

 

──────既に、見限られているのかも知れない。

 

 そんな思いが背中にあるはずの無い冷や汗を感じさせた。

 

 アハトは思考する。思考する。思考する。

 

 結果、導き出した答えは至極真っ当───────

 

「申し訳ありません」

 

 謝罪である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────申し訳ありません」

「何?」

 

 何?

 

 洋服下さいって言おうとしたら突然謝られた件について。

どうしたんだアハト、ボケたか?

 

 なんて、とぼけるのはやめてやろう。

 

 くくく、驚いた様だな。俺の魔力に!当然か、何せアハト達が一生懸命に作り上げた結界とか破壊してしまったからな!

 

 ……すまない。実は魔力の解放はonかoffしか無いのだ。

 

 解放するとどんどん溢れてくる。そして俺の魔力が空間 を満たし、支配すると他の奴は自分が生み出す魔力しか使えなくなる訳だ。使いやすくていい。

 

 しかし、謝らせるほど怖がらせてしまったか。悪い事をしたな。まぁでも、腰痛は治ったようだし?いいんじゃないか?

 

 さて、と。洋服を貰うとしよう。アハトなら俺の言いたいことが分かってくれてるはずだ。今までの実績からしてな。

 あと、よくよく考えたら俺がアインツベルンに来る時って基本、服とかの日用品を貰いに来てるんだよ。まぁ、大抵が「贈り物があります」って言われて取りに来るんだが。

 

 俺が着ているローブもアインツベルンが作ったものだ。家紋?も刻まれている。仲良しだ。

 

 ……流石に聖杯ちゃんの前でフリフリゴスロリドレスをくださいなんて言えないからな。

 今までも俺の内心を当ててくれたその慧眼に感謝を込めて!

 

「謝罪などいい。俺の求めるものがわかるのなら、差し出せ」

「やはり……それが目的でしたか」

 

瞳を閉じ、ゆっくり頷くアハト。どうやら分かってくれたらしい。流石だアハト。お前は最高だ。

 

「ですが……」

 

 言い淀むアハト。そんなアハトが確認をとるようにホムンクルス達に目を向ければ、ホムンクルスは青ざめた顔で首を横に振る。

 

 …………まさか、洋服がないのか?

 

「まさかとは思うが……」

「はい、その通りです」

 

 ……お前ら服着てるだろ?仕方ないからそれの予備とかでもいいから欲しいんだよ。伝われ、俺の気持ち。

 

「……本当に()()()()()()は無いんだな?」

「はい。心中お察しいたします」

 

 心中お察ししてますか。ふむ、嘘は付いていなさそうだな。アハトの事だ、確実に分かってるんだろうな。

 つまり……お前ら服もって無いの?それで全部なのか。

 

 ははは、アハトよ。あまりからかわないでくれ。俺は聖杯ちゃんとの愛の巣作りをしなければならないんだ。ここでお巫山戯してタイムロスとか嫌だぞ。

 

 っと、アハトが口を開く。

 

「実を言うと……非常に申し上げ辛いのですが……」

「構わん、言え」

「─────今まさに奪われようとしているのです」

「……ほぅ?(震え声)」

 

 ─────いや違うからな!?

 

 べっ、別にお前らから奪おうとかしてないからな?!

 

 ……金は払うぞ?……とりあえず誰に奪われそうなのか聞いてみるか(震え声)オレジャアリマセンヨウニ。

 

「それは誰に?」

 

 謎の緊張感よ……。

 

「──ダーニック・プレストーン・ユグドミレニア」

「ダーニック……か、やはりな」

「読まれておいででしたか」

「あぁ……」

 

 あぁ良かった、やはり俺じゃ無かった(安堵)

 

 それにしても、ダーニック……誰だったか……あぁ、思い出した。聖杯戦争中にいきなり名乗りを上げて突っ込んできて、マホトラで一発で無力化された奴か。

 

 ダサかったなぁ。しかもくっ殺してきたし。男のくっ殺は要らぬ。

 

「奴が魔法使い様の求める物を奪い去ろうとしているのです」

 

 なっ!?俺が求めている物をダーニックが……?

 

それってつまり、幼女に着せる可愛らしいフリフリの服って事だろう?

 

ダーニック……変態かよ。結構イケメンだったんだが、人は見かけによらないな。

 

「それは何処にある」

「……冬木に」

 

 ……ん?お前ら冬木に服置いてきたのか?

 あ、そういや別荘あったな。そこに予備が有るのか。確かに聖杯戦争中もちょこちょこホムンクルス見かけたし、可笑しくはないか。そして、そこに泥棒ダーニックソが来ていると……。

 

 聖杯ちゃんに着せるフリフリゴスロリドレスを奪いに!

 

 おのれぇこそ泥ガぁぁぁあ!っ、やばい。俺の脳内でフリフリゴスロリドレスを着たダーニックがガガガ……!おろろロロロロ。

 

 くっ、聖杯ちゃんとの今後について考えろ!

 頭を一杯にするんだ。

 ……どんなドスケベ衣装着せてやろう、とか考えたら止まらねぇ!ぐふふふふ。

 

 そして、冷やかな視線が後ろから止まらねぇ……!アーチャー、怖い……怖い。

 

「もしや、御守り下さるのですか?」

「断る」

 

 そんな時間無いわ。裸ローブで過ごさせる訳には行かないんだ。

 と言うか、静かだなアーチャー……と言うよりも聖杯ちゃん。頼む、俯いて無いでなんか話してくれ。

 

「アーチャー、要件は終わった。帰るぞ」

「……」コクリ

 

 なんか喋ってよぉ!!怖いからさぁ!中身、中身は聖杯ちゃんなんだからさぁ!

 

 はっ待てよ?

 

──「邪魔しないように静かにしてなきゃっ!」

 

みたいなことを考えているかもしれない!

うぉおおおぉぉぉぉ!かわぃいいいいいい!(母性)

 

 ……さて帰るか(賢者モード)

 

「お待ちくだされ」

 

アハトが俺に静止の声を掛ける、当然、断ろうとするのだが。その時、不思議な事が起こった。

 

 

 

「─────邪魔だ、我がマスターの邪魔はさせん」

 

 

 

「「!!」」

 

 なっ…………!?

 

俺とアハトの間に割って入る緑髪。

 

 ……アー、チャー?

 

 ひ、ひぃいい!な、なんでだ!?どんだけ俺のこと嫌いなんだよっ!

 どれだけ付きまとうんだよそろそろ成仏しろよ!恨めとか言ったけどさ、やめてくれよ恐いから!お願いします何でもしますから!

 

「貴様らアインツベルンの裏切りを、我がマスターが気が付いていないなどと思うな」

 

 アインツベルンの裏切りってなんだよォお!知らねぇよお!おじいちゃん(俺)と孫?(アハト)の関係にヒビを入れに来るなよォ!聖杯ちゃんの悪ふざけなの?虐めなの?ささやかな反抗なの?

 

 ────────許す!(寛容)

 

「貴様らはマスターのご好意で生かされているに過ぎないと知れ!」

 

 はい!!

 

「これ以上の甘え、例えマスターが許そうとこの私が許さん!」

 

 はい!甘えません!!

 

 ひっ、こっち見た。

 

「……申し訳ありませんマスター。出過ぎた真似を……暫く、眠ります」

「あぁ……構わん。休め」

 

 休んでください、そしてもう来ないで。

 

 ……何だったんだ今の……アーチャーなのか?えぇ、やだなぁ、怖いなぁ……モシャスってこんな副作用的な効果あるのか……。使うのやめようかな……。

 

それにしても、アーチャーの声聞くと化けの皮が剥がれるな……。

 

 っと、アハトの目線が痛いのでルーラで逃げよう。ルーラは最強です。あ、待てよ?そういやさ、奥の部屋にでかい白い服飾られてたよな?取ってくるか(盗)

 

「行くぞ。……邪魔をしたな。ルーラ」

 

 アーチャーの腕を掴む。若干手が震えているのは怖いからだ。おいそこ、情けないとか言うな。トラウマはトラウマなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あぁ、家に着いた。ベッドに飛び込みたい。が、ベッドなんて文明的な物はこの家に無い。

 

「はぁ。モシャス」

「……」

 

溜息をつきながら聖杯ちゃんの姿を戻す。可愛い……癒される。アーチャーの毒が抜けていく……。

と、俺がじっくりと聖杯ちゃんを見つめていると

 

「……」プイッ

 

聖杯ちゃんはそっぽを向いてしまった。なんだろう、この胸のざわめき。……これが、悲しみなんだね。

 

「……さて、君の衣類は……ふむ」

 

天のドレス、だったか?

…………んー?なんか、構造がよくわからんなこれ……。

 

「それをきればいいのか?」

「─────そうだな」

 

んー、礼装だな?。

まぁいいか。とりあえずは着てもらおう。上からローブも着るんだぞ、ここ寒いから。

あー、じゃあ着てる間にベッドでも。

 

 

 

 

というわけでやって来たぞ冬木!

人払いの結界だとか色んな魔術が使われているようですごいぞ。ダーニックがゴスロリドレスを着るために頑張っているのだろう。

 

とりあえず虫君にでも会いに行って上質なベッドを手に入れるぞ。

長い間あってなかったが、名前変えたんだよなぁ臓硯に。

 

「おい!貴様、何者だ!(ドイツ語)」

 

ん、なんだ?

 

……男が銃を構えて俺になにか叫んでいる。

何言ってるか全くわからん。インテを使ったりモシャスしたりすればわかるのだが……無関係を装って通り過ぎよう。

 

「そのローブの紋章、アインツベルンだな!死ね!(ドイツ語)」

 

射撃音が鳴り、弾丸が空気を切り裂きながら俺に迫る。だが、それは俺にあたる直前で透明な何かに当たり止まった。その一瞬後、その衝撃や殺傷力が純粋な魔力の塊となって男に襲いかかった。

 

「うぐっ!?……ごはっ」

 

……アタックカンタ常に張ってあるので、弾丸は効かない。と言うか魔力系の攻撃以外は効かない。ちなみにマホカンタも常に張ってあるので魔力系も効かない。豆知識として、先にアタックカンタを張らないと弾かれるので注意。

3次の時はこの防御を使っていなかったからピンチに何度も陥った(慢心)

まぁいい。臓硯君を訪ねに行くのだ。

 

ん?待てよ……いまダーニックソがアインツベルンの別荘を狙ってるんだよな?……火事場泥棒ワンチャン?

流石に汚いか。汚れてそう。

 

んー、いいか。よく良く考えたら無駄に高級な物を揃える必要も無い。モシャスで一般人になってサクッと買い揃えよう。

そうなりゃお店にひとっ飛びですわー。

 

 

……まずはお金を取りに行かねば。

 

 






あとがきに何を書くか思いつかなかったのでアーチャーロビンの性能の話でも。

サラッとセイバーをぬっ殺したと書いてありますが、アーチャーの宝具である矢が1度でもささり(あるいは掠るなどして)体内に毒が侵入した場合、令呪や転移でどれだけ遠くに逃げようと真名解放の毒集中からは逃れられないので死にます。
毒耐性がある、もしくは真名解放前に殺す、宝具であるイチイの森を破壊するなどが対処法となります。

基本的に隠れながらの暗殺が戦法となるので、魔法使いとの相性はいいです。目立ちますから、魔法使い。
魔法使いはアーチャーの事が苦手なのでやりませんでしたが、魔法使いのバフを受けることでステータスが凄まじく上がります。魔法使いはサーヴァントなどのステータスを大体三段階上げられると思ってください。魔力、幸運、宝具のステータスは上昇させることが出来ません。

アーチャーステイタス
筋力D→A
耐久D→A
敏捷B→A+
魔力A
幸運D
宝具B

やばい(確信)
力強く、速く、硬い奴が対軍宝具で薙ぎ払わなくちゃいけないような隠密をしてくる。あと宝具が毒。これはウザイ。
これだけで勝ち抜けた事を、魔法使いはまだ知らない……。




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「妻を泣かせる夫の鏡(自嘲)」

筆が勝手に……!

予想が外れて3000代をキープしているので初投稿です。

ちなみに、急いで書いたため、誤字脱字は酷そう(未確認)

しかし、このテキトー感。これを投稿した暁には確実にお気に入りが減るはず。
勝ったな(謎)










 

 肝の冷える思いだった。

 突如として内から湧き上がる激情。抑えんと力を込めた瞬間にはそれを強引に突破してアーチャーの意識が表面化したのだ。

 

 それ程までの想いだとは思わなかった。

 

 アンリマユと言う神霊が聖杯に乗り移り、アーチャーと聖杯を核に形成された脆い人格だとして、仮にも神霊だ。その精神を突破するとは……。

 他人の願いを叶えるという聖杯と、人格や意識が本来存在しない私だからこその現象なのかも知れない……アーチャーが核になっている事も大きな理由なのだと思う。

 

「…………おどろいていた?」

 

 アーチャーの声が響いた時、魔法使いは素早く振り返った。アハトがやってきた時などとは比べ物にならない程に。

 

「…………」

 

 あぁ、よく分からないな。

 なぜ、私がこのような事で悩まなければならないのか。

 

 魔法使いに手渡された服……と言うよりも魔術礼装を見る。

 

「てんのドレス……なるほど、せいはいにふさわしい」

 

 大聖杯の起動に必須な特殊礼装……これがなければ大聖杯の完全な起動は困難だろう。つまり、魔法使いの狙いは復讐では無く初めからこの天のドレスだったのだろう。

 そして、これを簡単に手に入れるために私やアーチャー、ダーニックすらも利用した。

 

 アハトは魔法使いをよく理解していたが、そこすらも計算済みだったのだろう。アハトの意識を大聖杯に向かわせ、天のドレスの警戒を解かせた。

 さらには怒ったふりをして魔力を放ち結界やその他もろもろの魔術を破壊、あとは頼み込んでくるアハトを無視してさっさとドレスを奪い帰るだけ。

 

 大聖杯が奪われてしまったとしても……魔法使いから守り通せるとは到底思えない。どれだけ防備を固めても転移されて終わりだ。

 

 ダーニックに大聖杯を奪わせて、その後天のドレスを保有している自らが横取りと言うわけだ。横取りと言うよりは正面から叩き潰すのだろうが……。

 

 私はいそいそと天のドレスを着込んで行く。

 その時だ。

 

 ガタン!

 

「ひうっ!?」

 

 と大きな音が隣の部屋から響いた。……悲鳴をあげたのは私だ。

 そろりそろりと隣の部屋を覗き込めば……ダンボールの山?

 

「なんだ、これは?」

 

 ひとまず手前にあったダンボールを開く。そこにはキッチン用品。次のは下着などの無数の服。随分と……雑多にあるな。テキトーにカゴに突っ込んで来たのだろう。……うぅ、やっぱりモノ扱いしているだろ魔法使いめ……。

 

 それに安物ばかり……大切に思ってないだろ!

 うぅ、大人ものを探してやる。アーチャーのために買ってるんだろ?!知ってるぞ私は!

 

「あれ?……んー?」

 

 あれ、無いな。どこにも無い。それどころか男物すら無いぞ。……魔法使いの事だ。地下室の方に転移させて隠すつもりだな!

 廊下を駆け、地下への扉を開けて階段を駆け下りる。……なんもない。

 

 ……うーむ?アーチャーを受肉させた後のことは考えていない?それとも……まさかな。アーチャーの受肉を考えていないはずが無い。

 まだ時期尚早という事か?

 

「──────────何をしている?」

「っーーーー!(驚き過ぎて声が出ていない)」

「ここは寒い。上に行くぞ」

「……」

 

 ……い、いつの間に後ろにいたんだ魔法使い……ビックリした。

 こんなの大聖杯守れるはず無いな……ダーニック、顔も覚えていないが可哀想な奴だ。

 

「……着替えておけ、そのドレスは些か目立つ」

「ふんっ!」

 

 貴様の話など聞くか馬鹿め。

 だが、着替えろだと?……どこかに出かけられるのか?魔法使いの選んだ服を着るなど業腹だ。自らで選べるのであればありがたいな。それに!先程ちらりと見た限りだと服のセンスは皆無だ。とりあえずフリルのついた可愛らしいものを選んでおけば良いなどと、安直にも程がある。

 

「…………俺では君の趣味が分からない。だから街に君を連れていく。理解出来たか?」

 

 やや、優しげな口調でそういう魔法使い。

 

「……わかっている」

 

 私はそっぽを向いた。……わかっているのだ。わかろうという気持ちすら無いことも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やった、やったぞ。……聖杯ちゃんとのお出かけの約束を取り付けることに成功した。

 

 ふふふふふ、プイッとそっぽを向かれてもなぁ、なんて言うかなぁ、「ツンデレ」っぽく見えて可愛いと思うんだよ……。ふふふ、ふふふ。

 

 ……変態だな、俺。聖杯ちゃんに嫌われ無いように生きなくては。

 それにしても、冬木では現在ゴスロリドレス争奪戦が始まっているせいで買い物に行けない。聖杯ちゃんにそんな血なまぐさい戦場を見せる訳には行かないのだ。

 トラウマになったら可哀想だからな。……!?……トラウマになり、夜な夜な「眠れなくて……」とか枕を抱き締めながら俺の元に……?

 

 くっ、堪えろ……!正気になれ俺!

 わざと連れて行く時点で最低だ!しかもそれでは真の意味でお互いに愛し合う的なあれではない!

 

 と思う。

 

 あぁだけど、もう少し甘えて欲しいなぁ。頼りなくてすまないな。

 

「少し休んでいろ」

「?……かいものは……いかないのか?」

 

 っ!……買い物、行きたいのか?あぁ、俺の言い方が悪かったか。いや、天のドレスとか何が起きるか分からんし、あと早くゴスロリ着てもらいたくてテキトーな理由付けをしただけなんだ。

 いや、もちろん買い物には行くぞ?だが、今ではないのだよ。

 

「……今ではない」

「……ふんっ」

 

 あああぁぁぁぁぁあ!?……機嫌を……損ね、た?

 うううぅ……天のドレス、可愛いですね……。

 

「手早く準備を整える。家具の設置だ。……外は何があるか分からん。来い」

 

 来い、俺の胸の中に(イケボ)

 

「やだ」

「……危険だぞ。いいのか?」

「ならけっかいをはれ!」

「断る」

「うぅ……」

 

 か、可愛い……天のドレスの膝あたりをギュッと握りしめながら俺を睨んでいるッ!!目覚める!新たなる扉が、開くぅ!……あ、このトビラとっくに開いてましたわ。蝶番が外れただけか、なぁんだ。

 

「っ!?」

 

 めんどいので勝手に抱き上げる俺氏。

 ……なんだ、なんだこの匂いは!!!!!!天国か!?

 

 おお、此処こそがオケアノス……。

 

「お、おろせ!そしてしね!」

「断る。では始めよう」

「バカなのか!?わたしをだいていたらなにもできないだろ!」

「そうだな」

「おろせ!」

「断る」

「!?」

 

 この柔らかくも芯のある感じ、離すわけないよな。

 天のドレス着ていてもわかるスベスベモチモチ感。離してなるものか!

 なので、えー、モシャスは怖いけど仕方なく使います。これ以外の呪文で労働力の作り方知らんし。

 

 抱き上げたまま階段を上がり、一階へ。そこには立ち並ぶ5体のマネキン。まだ照明無いから怖いね。うん。

 

「ひっ?!……マネキン?」

「あぁ」

 

 あぁ……可愛い……癒される。そして恐がらせた、悪いな。

 さてと、人数を無駄に増やすと大変だ。なので1体1体がこういった引越し作業的な事が出来ると嬉しい。

 

 モシャスでマネキンを変化させる対象は─────

 

「いったい、なにをするきだ?」

「モシャス。さぁ、俺の為に働くがいい──────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────魔王の使いよ」

 

 

 その変化は劇的だった。無機物であるはずのマネキンが()()()。その表面がボコリと盛り上がり、ねじ曲がりその姿を変貌させて行く。

 

 そして、その変化の瞬間から沸いて出るおぞましき気配。明らかなる邪悪の気配だ。

 

「っ!……は、っ!」

 

 その気配に当てられて私の体が震え始めた。

 怖い、恐ろしい。勝てるはずがない。私は無力だ。余りにも無力なのだ。権能も能力も何もかも封じられ、出来ることなど何も無い。

 

 蠢く肉塊はその形を変えていき、牙を持つ顔となる。

 筋骨隆々、顔すらも筋肉に覆われているのでは、と思うほどに厳つい顔だ。その頭は頑丈そうなヘルムに守られ、胴体も同様だ。

 

 しかし、最も特異的な場所は……その腕だ。

 左右対称に二本づつ。計4本の腕にそれぞれ別々の武器を持っている。

 アレらが振り回されればどのような戦士であれ致命傷を逃れることは出来ないだろう。

 なるほど、確かに「魔王の使い」に相応しい。

 

「─────────」

「……へっ?」

 

 しかし、そんな恐ろしい戦士達は一斉にそのギラつく武器を仕舞い、膝をつき頭を垂れた。

 他ならぬ魔法使いに向かって。

 

「後ろにある荷物を俺達が生活しやすいように並べろ。お前達の独断と偏見で構わん」

「───!」

「もういい、やれ」

 

 頭を垂れながら了承の意を示し、動かずに待っていた魔王の使いに魔法使いは顎で指示していた。

 

「───────はぁ!?」

 

 私がこんな声を出したのも仕方の無いことだろう。あんな化け物共5体に頼むことが家の模様替えだと!?巫山戯ているのか!?

 沢山手があるからとかそんな理由なのかまさか!?違うよな、違うと言ってくれ魔法使い!!

 

「……ん?どうかしたか」

「な、な……なんでも、ない……」

「そうか」

 

 ……そうか、此奴はこんな化け物を簡単に従えるような存在なのか……この魔王の使い1体でも並のサーヴァントは苦戦を強いられ、近接攻撃しか出来ないのであればほぼ確実に負けるだろう。宝具などにもよるだろうが……

 

「……怖かったか?」

「……」プイッ

 

 ……脅しか。そうなんだろう?魔法使いよ。逃げたら何が追ってくるか、分かるだろうと言いたいのだろう?

 ……逃げられるものか、まるで監獄だ。いや……地獄か?

 

 私は自らが落ち込んでいるのを自覚している。

 どうせ、魔法使いは鼻で笑いながらどこかに向かうだろう。そう考えていた。だが、今回は少しだけ違ったのだ。

 

「それは……すまなかったな」

「ぇ?」

 

 思わず見上げれば、魔法使いは少しだけ困ったような顔をしているように見えた。真下から見上げたため、正確かはわからないが……少なくとも私にはそう見えた。

 

「……さて、中に居ては邪魔だろう。少し外に出よう」

「ぁ……や、やだ……」

 

 余りにも珍しく見えたから、私はボケーっと見つめていた。魔法使いの声にはっとして私は魔法使いの提案を蹴る。だが、魔法使いは私の声を無視して歩き出す。

 

「……俺は君の事を何も知らない。……それは君も同様だろう」

 

 扉が開いた。眩い光が私の目を閉じさせ、吹きすさぶ風が私の熱を奪う。

 風から私を(アーチャー)守るようにそっと、魔法使いの抱きしめる力が強まる。

 

「だから、語らおう。もうすぐ陽は落ち始める」

 

 あぁ、嫌だ。お前は、やっぱり私を見てはいないんだ。

 お前の言う「君」がアーチャーであることなど、とうに気付いているのだ!

 

「────俺は、君の事が知りたい」

「っ」

 

 そう言う魔法使いの顔が、笑っているように見えた。

 

 胸が跳ねる。

 アーチャーのでは無く、私の胸が。

 聖杯の強制力はやはり恐ろしい。

 

「わ、わたしは……しりたくなど……ない。きさまなど、しねばいいんだ……!」

 

 あぁ、何故……涙が溢れ出す……?

 

 魔法使いが求めているのはアーチャーだ。私の中のロビンフッドなんだ。

 

 この言葉が、私に向けられることなど、無いのだ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ま、不味いぞ!泣かせてしまった!!魔王の使いはやっぱり怖すぎたか!?

 うーん、いい性能なんだがなぁ……。

 

 後で謝ろう!ごめんね聖杯ちゃんっ!!







スマホを替えたら色々と変わってめちゃくちゃ戸惑ってます。改行とかが変だったりするかもです。はい。
許してヒヤシンス。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「嫁と質問ごっこしたいけど緊張して質問できぬぇ」

新年明けましておめでとうございます。
新しい年なので初投稿ですね。


ちなみに。話しはすすみません。(謝罪と進まない事を同時に報告する爆笑ワード)
それと今回も超特急で仕上げたのです(行事が多くてかけなかった)
誤字脱字の報告待ってます。あとあれです、なんか今回やけっぱち感が……面白くなかったらお気に入りを消したあと「消してやったぜ」とコメントをすると作者はハーメルンをそっ閉じして部屋に引きこもりゲームをします。
ほかのコメントをしたり、高評価を付けたりすると、作者はハーメルンをそっ閉じして部屋に引きこもり満足感に浸ります(おい)








 

 

 太陽が西へと傾いていく。

 扉の先は先程家に入った時とは全く違う景色だった。

 

 花畑の広がる丘では無い。深い深い森の中だ。熱帯雨林なのだろうか、木の枝から地面まで伸びる苔や大きな葉っぱも確認できる。

 

「うぅ……ここは?どこなのだ?」

「知らん。人のいない所に転移しただけだ」

 

 お、お前には聞いていない!まったく……。

 

 それにしても聞かれては困る話でもする気なのだろうか。魔法使いは知らないと言いながら森の中を進む。その足取りに迷いは無い。確実にどこかへ向かっていた。

 

「君は……聞きたくないのだったか」

「……ふん」

 

 魔法使いの低い落ち着いた声が私にそう問いかける。私はそっぽを向くことでそれに応えた。

 

 聞きたくはないが、何であれ魔法使いの情報を得るチャンスではある。

 しかし、素直に聴くのは癪に障る。腹立たしい。なので腕を組んで目も閉じる。聞く気は無いと態度で表すのだ。

 ……魔法使いの腕の中で、という辺りが何とも格好が付かないな。

 

 ……なかなか話さないぞ?

 

 と片目を開き確認をしたら目が合った。日が傾いたせいか真っ黒に見える瞳に吸い込まれそうになる。

 

「っ!」

 

 私は急いで目を閉じる。

 心臓がバクバクと嫌な音を立てていた。もしや殺されたり……するかもしれない。

 

「聞きたいようだな?」

「ち、ちがっ」

「……そうだな。質問をしてくれないか?俺はそれに答えよう。まずは君から俺に、そしてそれが終ったら俺から君に質問をしよう」

「……すこし、まて」

「あぁ」

 

 し、質問?沢山知るチャンスだと思っていたが、てっきり一人語りでもしてくれるものだと……うーん、絞り出すなら……沢山ありすぎて何処から聞けば良いか……。

 

 ま、まずは特別大きな疑問からぶつけてやろう。

 

「────どうやって、まほうつかいになったんだ?」

 

 私がそう聞くと魔法使いは思案顔になり少し上を向いた。

 どこか遠い過去を思い浮かべているのかもしれない。少しだけ、顔の筋肉が引きつったように見えた。

 

 チャンスだ。畳み掛けて弱点を探すのだ!ふっふっふ、心の弱みにつけ込んで身の安全を確保するのだ。

 

「いったいなにをぎせいにしたんだ?どれだけのものをすててきたんだ?どんなものをだいしょうにそのちからをえたんだ?」

「……」

 

 よし!いいぞ!……あ、あれ……これって下手すれば怒られて殺されるのでは……い、いや気にするな!どうせなら赤っ恥をかかせるとかなんかして復讐してからだ!

 

「……その問いに対し着飾らず最も簡潔に答えるとすれば────」

「すれば?」

 

 魔法使いがこちらを見た。いつもの様に、私の目を真っ直ぐに見つめている。言いたくないことを言う、そんな雰囲気が無表情からも伝わって来る気がする。

 

 不思議な緊張が私の内側から湧き上がる。アーチャーだろう。アーチャーは魔法使いが無辜の民達を救う英雄で、上に立つに相応しい人物であると信じている。

 

 つまり、彼女にとってこの問いは意味のあるものなのだ。

 

 暗き深淵に手を伸ばす為には灯火がいる。その深淵を歩いて行くというのなら、尚更に。

 その灯火は魔力であったり、感情であったり────他人であったりする。

 

 根源へ至る為には何らかの犠牲は付き物だ。何かを失わずして新たなるものを得るなど類人猿には不可能なこと。

 

 アーチャーが不安に思っているのは魔法使いが「魔術師らしい」か否か、だ。力を得る為にはどんな事でもして来たのか、それとも違うのか。

 どうか、違ってほしい。そんな想いが私に伝わってくる。

 

「俺は……“何も捨てる事が出来なかった”」

「!?」

「どうしても捨てたい“もの”があった。どんな手を使ってでも失いたい“もの”があった」

 

 ……また、見たことの無い顔をした。

 悔やむような、自分に呆れたような不思議な顔。茜色の光に当てられ明暗が分けられ、そのように見えるのやも知れない。

 だが……私とアーチャーは確かに「魔法使いが後悔をしている」とそう感じたのだ。

 

「だが、俺には勇気が無かった。それを失うために必要な行為を……行う事がどうしても出来なかったのだ」

 

 何も失わず、魔法使いになる。

 その言葉の重さ、それを私達は理解出来ない。聖杯を使って根源に至るにしたって無数の犠牲の上に成り立つのだ。

 

 懸命に研究に励み、何らかの方法で至ろうとも、結果的に何かを失うのだ。

 もしも、魔法使いが言うように「何も失わない」という条件で根源を目指せ、などと言われたらほぼ全ての魔術師は匙を投げるだろう。

 魔術師そのものが先達の犠牲の元に成り立っているのだから。

 

「おまえは、なにもうしなわずに……ここに?」

「楽な方法など他にもあった。横道に逸れて解決する事だって出来た。道はいくらでもあった。だが、俺は何も選ばず真っ直ぐに進んだ」

 

 ……分からないな。また、魔法使いがわからなくなってしまった。聞けば聞くほどわけが分からん。知れば知るほど理解が追い付かない。

 感情を失った訳ではないのも、先程の表情でわかった。

 

 こいつは……本当に何も失っていないのか……?

 何も失わずに根源に辿り着いたと?

 

「それが──────失わざる者、即ち魔法使いだ」

「わふっ。あ、あたまをなでるな!」

 

 茶化して逃れる気だな!質問攻めにしてくれるわ!

 

「まほうつかい、おまえのしそんはいるのか?」

「……いや、居ない」

 

 やはり居ないか。まぁ、聖杯から遡って座の記録を見ると、数千年前の歴史にもこの魔法使いらしい人物が登場しているし、長寿なのだろうが……作らなかったのか。

 

「じゃあ、かぞくは?」

「君だけだ」

「なっ!〜〜〜〜!!」

 

 突然跳ね上がる心臓。硬直する体。目が魔法使いから離れない。

 

 おお、おちおちおちつけ私。すぅー、はぁー。よし。

 アーチャーめ、おめでとうと言ってやる。そして嬉しそうな感情を垂れ流して私を混乱させるな!びっくりするだろ!!祝ってやるから落ち着けそして魔法使いは死ね!貴様のせいだぞ!

 

 あぁ顔が赤い!熱い!恥ずかしい!

 だが、夕陽のおかげでバレてはいないな。私が魔法使いに赤面など考えたくもない!

 

 うぅ……聖杯の影響力とアーチャーの感情の暴力が辛い。

 

「で、でしは?」

「生きているのは1人だな」

 

 おぉ?弟子をとっていたのか。何も失わない為に外界との交流をやめたとばかり思っていた。あぁ、それも世俗を捨てることになるのか。……だが積極的に世俗に関わるような性格でもあるまい。自らの手の届くところ全てを助けようとした……という訳でも無いだろうさ。

 

 ……一体何を失いたかったんだ。物か?人物か?わからん。

 

「えーっと……つぎは……いまなんさいだ?」

「わからん。……数えるのをやめたのは1200歳あたりか」

「……な、ながいきだな」

 

 やはり、色々な物語にでてくるのはこいつで間違いないようだな。

 

「アーサーおうもしっているのか?」

「あぁ。男装が下手な奴だった」

「ん?……まぁいい。マーリンはしっているか?」

「奴は気に食わんな。ほいほい街に繰り出しては女遊びを……君が知るべきことではなかったか、忘れろ」

 

 むむむむ……謎が深まる。

 アーサー王伝説では……魔法使いはマーリンに連れてこられて王に紹介されその実力をピクト人相手に遺憾無く発揮するし、ブリテンの食卓事情を軽く改善した。

 いざブリテンを去ろうという時、アーサー王の「ブリテンを助けたい。どうすれば良いか」という問いに対して「踏み止まり足掻くも良し。お前の好きにしろ」と冷たく突き放したとされている……らしい。

 

 確かに、魔法使いは私に優しくない。分かるぞブリテン。お前達の気持ちが。

 

「物語に出て来る魔法使いで黒髪の男は大体が俺だ。まぁ半分以上はフィクションだがな」

「そうなのか……すごい(小声)」

 

 なんか凄いとか言ってしまったのだが……アーチャー、やめろそう言うの。おまえは核として働け。爆発はするんじゃない。お前の感情が荒ぶるとこちらの表層にまで出てくるんだぞ……。

 

「凄くなど無い。巻き込まれただけだ」

 

 うわ聞こえてた!?

 

「しね」

「死なん」

 

 確かに死ななそうだ。

 はぁ、どうすればいいんだ私は。魔法使いはいずれ準備が整い次第、私という意識を殺しロビンフッドにするつもりなのだろうが……はぁ死にたくない等の考えも聖杯に植え付けられたのだろうか。

 

 魔法使いに従う?それはとても嫌だ。なら……私が魔法使いを従わせたい訳だが……無理だろうなぁ。無理は承知で何か頼んでみるか?それで気持ちよく応えてくれるようなら何とかなるかも知れん。

 

 はっ!

 

 そうか、魔法使いは失いたいものを失えなかった。

 その失いたいもの、というのが何か……私は分かってしまった気がする。

 

 この男は無表情だ。冷酷で氷のようだ。だが、殺意は放つし、先程のように表情を変える事もある。人間としての性を持ちながら長く生きるもの達は総じて「感情」に苦しむのだ。

 

 友人、知人、家族などは死んでいくのに、自らは生き続ける。永遠に続く別れに心を壊してしまうものも多い……はずだ!

 魔法使いは不老不死なのかもしれないが、感情を捨てられなかったから大切だと認識してしまったものを切り捨てる選択肢を取れなかったのでは無いか?

 

 ふふふ、合ってそうな予感がするぞ。なぁ、アーチャー。

 ……同意の感情を感じるぞ。合ってそうだな。

 

 つまり、大切なものだと認識さえさせてしまえば私の勝ち!その後はポイして逃走だな。

 

「…………な、なぁ」

「なんだ?」

 

 …………んー!?なんだ!なんだか言葉がつっかえるぞ。邪魔すぎないかこの感情達。

 私は演技をしてスムーズに進めたいのだ。恥じらい等捨てろ!

 

「そ、その……」

 

 くぅっ……!顔がぁ、顔が熱いぃ……

 うぅ、こっちを見るな魔法使い。そっぽ向け。というか私を抱いて歩いているなら前をむけ!!危ないだろ!

 

「ま、まえをむいてあるかなくていいのか?あぶないぞ」

 

 んにゃぁぁあ!?違う、そうじゃない!もう私は何を言っているんだバカ!

 ぐぬぬぬ……この体になってまだ数時間だ、なかなか制御が効かん!これも魔法使いの策略なのか!?

 

「……そうだな。前を向くとしよう」

 

 ……ん?なんか、あれだな。雰囲気が元に戻ったぞ。

 

 あれ、もしかして私の今の言葉、励ましと捕えられたのでは?

 ……あぁ、最悪だ。いや、大切な者として認識されたい、という目的には一応沿っているが……私の個人的な感情で言うなら最悪だ。何が嬉しくて自分をゴミスペックな器に閉じ込めた奴を励まさなくちゃ行けないのか。

 

「はげましてないぞ」

「あぁ」

「……なんかうれしそうにみえるのだが、はげましてないからな」

「わかっている」

 

 ぐぬぬ……。アーチャーまで喜んでいる。巫山戯るな、私だけいつも置いてきぼりじゃないか……

 

「はぁ……どこにむかっているんだ?」

「……旅の祠、という魔術礼装だ」

「まじゅちゅ、まじゅちゅっ!……ま、じゅ、つ!……れいそう?」

「魔術礼装だ」

「まだはつおんがにがてなのだ!しねっ!」

「死なん。発音については少しづつ学べ。焦る必要は無い」

 

 死ね魔法使い死ね。

 こんな体にするとか、本当に呪ってやる。いつか必ず殺す。貴様の考えなど読めているのだぞ。

 

 それにしても旅の祠か。大掛かりな魔術礼装なのだろうな。このような場所に隠すとは。

 

「で、そのたびのほこらというのはどんなものなんだ?」

「簡潔に述べるなら、俺が使うルーラと言う魔法の範囲を限定し、代わりに永続的に発動するようにしたものだ」

「ふむ」

「まぁ、使えばわかるだろう」

 

 ……なんか、軽く言ってるがとてつもなくすごい事なんだぞソレ。

 自身の工房内ならいざ知らず、こんな遠いところ……いや、どの程度離れているのかは知らないけども。

 とにかく遠いところからの擬似転移はとにかく魔力がかかる上に不安定なのだ。魔法使いの転移は安定しているのだろうか……嫌だぞ、頭だけ飛ぶとか。

 

「見えてきた」

「どれだ?」

「あれだな」

 

 おっとと、少し持ち上げられた。

 ふむ、良く見えるな。んー、パルテノン神殿みたいな……古代ギリシャの建物みたいだな。周りの風景とミスマッチ過ぎないか?……熱帯雨林にある癖に苔どころかシダとかもくっ付いてない、まるで新品だ。

 

「なぁ、まほうつかい」

「なんだ」

「あれはどこにつながっているんだ?」

「家だ」

「わたしたちの?」

「……………………あぁ」

 

 ふーむ。つまり軽い散歩だったと。……まぁ、私と会話するために……アーチャーと、だったな。うむ。……うむ?そう言えば魔法使いから質問なんてされてないぞ?どういう事だ……私のあとは質問をしてくるんじゃなかったのか?

 

 まさか嵌められたのか!?自分は聞かない気か!ずるいぞ!って、そうか……私はまだ生後数時間、語るものなど大して無かったから聞かなかったのか。

 

「……認めてくれるのだな」

「む?」

「君は意識をしていなかったかも知れないが────」

 

 な、なんだ?私は何か言ったか??

 

「今、君は“私達の家”と言ったぞ。まぁ事実その通りなのだから、君からすれば当然なのかもしれないがな」

「ッ────!!しねっっ!」プシュー

 

 ひ、ひっ、卑怯者ッッ!!

 なぜ蒸し返した!?私自身が気がついて無かったんだぞ?!そういうときは無視をしろ馬鹿め!!

 ああああぁ!嫌だ、いやだいやだ!聖杯とアーチャーのせいだ!死ね死ね死ね!

 

 魔法使いが近いと顔が赤くなるのも!心臓がうるさくなるのも!やけに落ち着かないのも!

 

 ぜえぇええええええんぶ!聖杯とアーチャーのせいだっ!

 

 バカバカバカ!

 

「顔が赤いぞ……やはり、裸で放置した時間が長過ぎたか……」

「ひうっ────!?」

 

 か!かかかかか、顔が近いんだお前はいつも!おでこをくっつけるな!手でわかるだろう!?あぁ今抱っこされてるから無理なのか……じゃなくて!?どけっ!!ぐぬぬぬ……力が足りない!押し退けられない!

 

「……力も上手く入らないか、これは不味いな。早く祠で家に戻ろう。そうすれば準備が整っているはずだ」

「ち、ちがっ……ぅ……」プルプル

 

 うぁぁぁあ!もう地上いやだぁー!魔法使いの馬鹿!生き地獄だ!生殺しだ!全然私に興味ない癖に変に優しくするな!

 女心で遊ぶなぁ!!!

 

 









恐らく読者はこんな事を考えているのでは?という作者が妄想したやつの下から四番目くらいのやつを発表。ネタバレしてもいい場所、的なやつです。なるほどーくらいに思ってくださいね。

Q、なんで嫁パンチを避けるの?当たった方が可愛い成分貰えて魔法使い嬉しいんじゃないの?

A、魔法使いは全力で嫁の攻撃を回避しなくてはならないのだ。
ヒント:反射魔法。

強いと言うののは、童貞というのはいつでも孤独という事(彼女無し)

コメント待ってますー。新年初コメントはだれなのか!?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「聖杯ちゃん熱を出す。俺は鼻血を出す」

引越しとモンハンワールドが重なっていた為、小説投稿はおろか、執筆すら出来ていなかったぜ。
モンハンワールドも名前はシフシフでやってます。ヴァルハザクの装備がかっこよくて強くて好き。
でもテオ・テスカトルに火耐性-20で挑んだのは慢心のしすぎだなと自分でも思った。2乙した。

というわけで新居に腰を落ち着けたので初投稿です。

タイトルが全て。

あと、魔法使い視点に入る際は「◻」、嫁視点に入る際は「◼」、第三者視点に入る際は「✳」となってる気がします。


PS。
ジャンヌと邪ンヌとセラ様が私のカルデアに来ました。無課金勢の割りに星五持ってる数はそこそこ。
でも私のカルデアはバーサーカーがメインなのです。フォーリナーが来ようともヘラクレス無双は終わらせねぇ!






 想定外な事態に見舞われてしまった。

 まさか聖杯ちゃんが風邪をひいてしまうとは。フバーハは実際には体を温めたり冷やしたりする呪文では無い。

 寒さや暑さに強くなるだけ……と言うよりも一時的に凌げるに過ぎない。無効化では無いのだ。

 

 だと言うのに自分は平気だからと過信して聖杯ちゃんの肉体面を考慮しきれていなかった。俺の落ち度だ。

 

「ま、まって、はしるなっ!」

 

 聖杯ちゃんを抱いたまま祠に飛ぶ。

 何故か、単純な話だ。……これ以上のチャンスはなかなか来ない!

 

 風邪で弱った聖杯ちゃんの看病……勝ったなッッ!

 

 と言うのが半分、俺のせいだと罪悪感に心が押し潰されそうなのが半分だ。

 もう魔王の使い達が家の支度を終えているだろう。流石に食材の調達は無理だろうから適当に俺が買ってこよう。あの外見で買い物はダメだろうな、聖杯ちゃんの反応からしても。いや、マヌーサを街全体にかければいけるか……。

 

「とまれ!ゆらすな!」

「断る。そして話すな、舌を噛むぞ」

 

 一応言うが、一切揺らしてなどいないぞ?トベルーラにより飛翔しているため、揺れることは無い。揺れていると感じているのは聖杯ちゃんが暴れているからだ。俺のせいじゃない。

 

 階段をガン無視して祠の内部へ。

 

「おや、魔法使い様?随分とお急ぎの様で……あぁ、使用するのですね」

「あぁ、りゅうおうよ。この少女の登録を頼む」

「えぇ。お任せ下さい」

 

 ここに居たのか……黒バナナ。お前ここの担当だったか?……ローテーション組んだんだったか?悪いな、忘れていた。

 

「えっいまのだr」

「目を瞑れ」

 

 

 祠に飛び込み帰宅する。

 地下室だ。特に置くものもないし、なんかこう秘密の抜け道っぽいからと言う理由で設けた。

 しかし?木箱が新たに増えている。魔王の使い達がここに配置したのだろう。軽く魔術で調べた所、日用雑貨の予備や保存期間の長い食料……防災用品のようだ。

 

 ルーラの使える俺が何故旅の祠なんてものを作ったかと言うと……金儲けの為だ。

 ルーラはとても便利だが、この世界でルーラを使えるのは俺だけ。転移と言う行為自体が非常に珍しいのだから仕方ない。

 

 そこで機械などが嫌いな古風な考えの魔術師達を相手にこの祠による高速移動を提供しているのだ。

 古風な考えを持たない魔術師達も使っていたりするが。

 

 そもそも旅の祠はドラクエに出てくるアレを俺が再現したものだ。バシルーラを自分に使ってランダムワープをして旅をしていた頃、その着地地点に作っていた。この地球上に相当な数があるだろう。何せ数千年の旅だったのだから。

 

 龍脈が強いところだったり、人類未踏の地であったり神秘に溢れていた場所ばかりだ。逆に言えば街などの人の多い場所には少ない。

 人払いはもちろん、その他に対する警戒も十分だ。

 

 この神殿では俺とその近辺の人物しか通常立ち入ることは許されていない。

 転移門の維持の為には()()の魔力が必要なんだが、近寄ると魔力を持っていかれる。俺からしたら誤差すら感じない程度なのだが……魔力が0になると死んだり気絶したりする。処理は面倒なのだ。

 今回は聖杯ちゃんを神殿化した祠に「俺の近辺の人物」として登録し、仮に1人でここに来ても使えるようにしようとしたのだ。

 

 旅の祠を利用する魔術師達は登録など済ませてはいない。使用する際は予め俺に連絡を寄越してもらい場所を指定し、大量の触媒と金を持ってこさせる。

 触媒の魔力が優先して吸われる為、触媒の魔力が持つ間に祠に飛び込む必要があるが、命には関わらない

 

 ……金がかかる?割と人気なんだぞ。他にも俺が確保した肥沃な土地を使わせてあげる……まぁ土地貸しだな。それも莫大な利益を生んでいる。俺は何もしなくても金が手に入るのだ。使わないけどな、普段。

 それで経済が麻痺しても困るので弟子に押し付けている。可哀想な奴だ。今も家の教訓と現状を比べ断るべきか?とか悩んでいるだろう。それでも俺が莫大な資産を持つことに変わりは無い。

 

「……うぅ」

 

 っ、思考がそれた。聖杯ちゃんが俺の腕の中で辛そうに震えている。顔も赤いしやや呼吸も荒い。……はぁ、初めは「ぉ?デレた?」とか思っていたが……こっそり魔術で調べて普通に風邪を引いていた。

 忘れているかもしれないが、聖杯ちゃんは生後数時間、赤子も同然なのだ。下手を打てば病死なんて事も有り得なくは無い。

 

 ……キアリーと言う手もある。しかし、呪文で治した場合は耐性が付かない。きれいさっぱり治してしまうからな。

 

「辛いか?」

「ふんっ」

 

 顔を俺から背けながらも若干元気が無さそうな聖杯ちゃん。必死な抵抗が可愛い。……俺は鬼畜か?馬鹿なのか?すぐさま体を温めてやって栄養のある食事を取らせなくてはならないと言うのに。

 

「今から部屋に向かう。少し我慢しろ」

「……」

 

 階段を上がり1階へ。部屋は2階だが、魔王の使い達が1階で待っているだろう。

 そう思い1階に上がれば予想通りに魔王の使い達は玄関ホールに揃っていた。しかし、片膝をついて()()()の方を向いているのは面白いな。

 俺達が地下から帰ってくるとは思わなかったんだろう。

 

「──────魔王の使」

「──────ッ!」

 

 俺が後ろから声を掛けると、魔王の使い達は即座に反転しその二対の腕にいつの間にやら抜き放った4種の武器を振り切った。

 合計にして20の腕が()()()()()()()()()()()()。斬撃、打撃、刺突の嵐が巻き起こる。5体が同時に攻撃を放とうものならば互いの体が邪魔をして満足な攻撃は出来ないだろう。しかし、そこは魔王の使い。見事な腕裁きで特技を繰り出してきた。

 

「────アストロン!」

 

 そこで俺は俺以外の周囲のもの全てにアストロンを展開する。当然、魔王の使い達にもだ。

 何故って?そんなの簡単だ。まだ礼を言っていない。

 

 もはや何本なのかも分からない剣閃が俺に当た───る前に何かにぶつかり、その全ての物理エネルギーは魔力弾に変換され放たれる。

 最低で20発、複数回攻撃特技が無数にあったため反射も無数だ。もしもアストロンを使っていなければ夢のラブラブマイホームは即座に木っ端微塵だっただろう。

 

 武器がアタックカンタにぶつかり甲高い音を立て、反射された魔力弾がアストロンにぶつかり破裂音を巻き起こす。……まぁ俺以外はアストロンに守られている以上、音は聞こえていないだろうが。

 

「………………へっ?」

 

 聖杯ちゃんが間抜けな声を出した。可愛すぎる抱き締めたい。

 

「ウガ?」

 

 魔王の使いが間抜けな声を出した。嫁に傷を付けたら殺す。いや、付けそうだったし殺すか。……なんてな。今はそれどころではない。

 

「熱烈な出迎え、感謝する。……どうやら仕事はこなしたようだな?ご苦労、外で待っていろ」

 

 何やら必死に弁明を行っている魔王の使い達を無視して2階へ。聖杯ちゃんは目をまん丸にしたままフリーズしている。なにこれ……お持ち帰りしよう。……してたわ。

 

「……はっ!い、いまなにが!?」

 

 ……!!!!!!!!

 …………つ、強めにしがみついてっ……!不味い!ホイミ!鼻血ホイミだ!!

 

 あっぶない……!鼻血を出したら聖杯ちゃんにかかってしまう。それはいけない事だ。血で彩られるのはまだ未来の話なのだから。

 

「まほうつかいこたえろ!いまのはなんだ!てきたいしているのか!」

 

 おうふ、顔が近いですよお嬢さん(鼻血ホイミ)。ダメだこれ、リホイミをかけておこう。鼻血リホイミだわ、

 胸ぐらを掴んでゆすろうとしているのだが、自分が揺れている。俺は揺れていない。可愛い。

 

「まさか君は……誰も居ないはずの地下から現れた人物を即座に信用するのか?」

「はぁ?だとしてもやりすぎだ!しぬぞ!」

「死なん」

「おまえじゃない!わ・た・し・がっ!」

「……何故君が?」

 

 俺がそう尋ねると、聖杯ちゃんはきょとんとした顔をした。その顔にはありありと「何言ってんだ」と書かれている。

 

「俺は君の夫だ。君は俺の家族だ。……死なせる訳ないだろう?」

 

 フッ。かっこいいな俺。今の俺はかっこよかった。

 ……ん?聖杯ちゃんがジト目になってしまったぞ。可愛いが、なにか不満があるんだろう。

 

「何か不満が?」

「とうぜんだろ」

「そうか。部屋に着いたぞ」

「ぇぇ……きらい」

 

 部屋に着いた。何か聖杯ちゃんが言っていた気がするが俺はナニモキコエナカッタ。嫌われて等いない。絶対。

 扉を開けたそこはシンプルな部屋だった。ぬいぐるみ等は購入していないし、小物も買っていない。

 

 必要最低限の家具が設置されただけの部屋だった。

 

「こざっぱり」

「後に色も付くだろう。簡素なのは今だけだ」

 

 さて、お粥でも作ってやろう。腕によりをかけて全力のフルコースで胃袋を掴むつもりでいたが、よく考えたら初めて食事をするのだ。いきなり旨いものと言うのも舌がバカになる。

 初めは質素に、そこから徐々に美味しくしていこう。

 

 聖杯ちゃんも美味しくしていきたい(願望)

 

 ベッドに近寄り、魔術で掛け布団を退けて聖杯ちゃんを優しく寝かせる。掛け布団は何時でも聖杯ちゃんが掛けられるように聖杯ちゃんの足元にセット。そしてパジャマをテキトーに選別し聖杯ちゃんに渡す。

 

「……これは?」

「それを着て眠っておけ」

「………………」

「俺は君の食事を作ってくる」

 

 俺は部屋を後にし、扉を閉めて─────────扉に耳を押し当てる。

 ふふふ、盗み聞きだ。

 

「────やさしかった」

 

 おおおぉ、うむうむ!そうだそ聖杯ちゃん。俺は優しい。

 

「────だが、どうせうそだ」

 

 ……馬鹿な、まさか俺がただのド変態だとバレているのか……?やはり胸などを触ったのが悪かったのか?お姫様抱っこの時にさりげなく揉んでいたのがバレたのか!?

 

 く、くぅううう。仕方ない、盗み聞きは終わりにしてお粥を作ろう。

 

 

 

 

 

 ◼

 

 

 私は今、ベッドの中に居る。

 新品のふわふわの毛布などに包まれ、体がホカホカしているのだ。最早ここから抜け出そうなどとは思えない。魔法使いが居なくなった後、暫くして鍵を掛けに行ったので、奴が入ってくることは無い……と思いたい。流石に、奴もノック無しに入って来る事は無いだろう。

 

 あぁ……あったかい。

 頭がぼーっとするような感覚で、波に揺られるような緩やかな眠気。魔法使いは私が風邪を引いていると言っていたが、そんな訳が無い。

 仮にも神霊だ。更には聖杯と英霊を核にした超神秘的な存在なのだ。風邪なんて引くか馬鹿め!

 

「へっくち」

 

 むむむ?

 暖かいのに、くしゃみが出た。……まさか、魔法使いめ不良品を掴まされたか?それとも新品だから細かい毛などが落ちていないのかもしれない。ぐぬぬ、安眠妨害反対!まだ寝たことないがな!

 

 ん?何やらおでこが暖かい。とてもポカポカで……少しゴツゴツしている。そう、まるで……人体のような暖かさ……で!?

 

「─────大丈夫か?」

「っ!なっ……!なななはなな?!」

 

 ま、魔法使い!なんで中にいるんだ貴様は!鍵は閉めたぞ!?ってドア開いてないし!?……転移か、お前は転移なんて馬鹿みたいに魔力を消費しそうな魔法をポンポコ連打しているのか?!家の中のこの狭い範囲でか!?

 

 いや待て、そもそもここはやつの工房なのでは?それならばほぼ無制限に転移も可能なはず。

 ぐぬぬ……なぜその程度の可能性に行き着かなかったのだ私は……!!!まさか本当に風邪なのか?知識で知っていても体験などした事がないからな……。

 

「って!さわるなっ!」

 

 私の額に当たる手を弾く。……というか叩いたら除けてくれた。力が無さすぎて悲しい。

 

「粥の準備が出来た。リビングで食事を取りたいところだが、君を動かすのは酷だと思ったのでな。さぁ楽な姿勢になれ」

「かぜなんてひいてない」

「口を開けろ」

「じぶんでたべれる!」

 

 馬鹿なことをいう魔法使いから私専用の?小さな鍋をふんだくる。……重い。「む」などと変な声を上げな魔法使い。

 全く私を子供扱いする……な……?

 

「あっつい?!」

「おっと」

 

 私が放り投げた鍋を魔法使いは片手で上手く捕らえ、吹き飛んだ中身を見事に受け取って見せた。

 が、私の手は真っ赤になってしまっている。完全に火傷だ。……あぁ、どうやら認めねばならないらしい。思考もままならないでは風邪じゃないとは言えないな。

 

「……はぁ。手を見せろ」

「ぅぅ……あつかった」

「当然だ。だが、頭から被らなかっただけマシだっただろう」

 

 ヒリヒリと痛む手を素直に差し出す。魔法使いならば簡単に治せるはずだ。何せ時空を操るとされる男だ。

 

「酷い火傷でもないな。──ホイミ」

 

 魔法使いが短く唱えると、その体の周りを見た事の無い─聖杯の知識にも存在しない─文字?が列になって現れ魔法使いの周りを回る。それと同時に青白い光が魔法使いの手から私の手へと当てられる。

 

 火傷により赤くなっていた皮膚が見る見るうちに元に戻っていく。これが魔法使いの代名詞……時間遡行による治療だ。死者ですら蘇生可能だとされている。

 近くで見、肌で感じわかった。……何もわからないという事が。

 

 何をどうやって時間を戻しているのか、さっぱり分からない。というか、なぜお前は火傷しないんだ魔法使い!

 

「無駄な抵抗は止せ。栄養を取らねば治るものも治らないぞ」

「ぅぅ……」

 

 くっ、背に腹はかえられないか!仕方ない、食事を済ませ素早く眠ることで魔法使いとの会話をシャットアウトしよう。

 

「ん……はむっ」

 

 魔法使いがふーふーと息を吹きかけ、冷ましたお粥をスプーンで私の口に運んでくる。

 そんな事するな、とか色々と考えるものがある。なので目を瞑って一気にスプーンに飛びついた。

 

「……んむんむ……っ!?」

 

 美味しい!噛めば噛むほど甘みがまして……!というか、これが「甘さ」なのか!思えば産まれて此方、空気と唾液しか口には存在していなかった!

 ふむふむ……美味!おいしいぞぅ!

 

「あむ。もぐもぐ、ぱくっ!」

 

 お腹がペコペコだった事にもようやく気が付いた。どうやら体の機能自体もまだまだ眠りの中にあったようだ。今更ながらに伝えてくるとは!

 はっ!?初めてがこれ程質素なものであったと言うことは……これからグレードアップしていく食事は常に美味しく感じるのだろう?!うわー、やったな。これは楽しみになってきたぞ!

 

 そんなことを考えながら、運ばれてくるお粥に飛びつく事20分。

 

「──────────うぅ、もうだめだ」

 

 私は恥ずかしさのあまり枕を抱きしめ毛布の中に潜り込んでいた。

 

「はぁ。はずかしい……わたしはなにをしているんだ」

 

 きっと必死に食らいついてくる私を奴は内心でバカにしていたに違いない!

 あぁ……一生の恥だ!

 

 あぁぁ!もう!アーチャー!貴様はさっきから「微笑ましい」的な感情を送り付けてくるなぁぁぁあ!!

 そんなことは分かっている!子供だからな!私は子供だからな!必死に食べる姿はさぞ滑稽で愛らしいものだっただろうさ!死ね!死んじゃえ!

 

「……ぐすん」

 

 

 

 ✳

 

 一方その頃、魔法使いは食器を洗っていた。その手付きは見事なもので、手元を一切見ずとも完璧な洗浄だった。

 

「…………………………」

 

 しかし、洗い場は真っ赤に染まっている。決してトマト料理を作った訳では無い。

 それは、鼻から溢れ出した愛情だった。

 

「……!」

「……?」

「……。」

 

 少し……いや途轍もなくお見苦しい主の姿に、魔王の使い達は困惑しながらも血みどろのお皿をもう一度洗浄するのだった。

 

 

 

 




次回、主人公の名前が明かされる……!?(過去作と同じ)更には聖杯ちゃんに新たなる名前が……!?(過去作と同じ)

名前が明かされたあとは時間が加速していくかも……?まぁグタグタとだらだらとイチャイチャさせてもいいんすけどね!ネタが続かないことを除けば!

誤字報告、コメント、待ってます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「聖杯ちゃんに名前を付けようと思うンゴ」

お久しぶりです。あっ、初めまして。
今回で何と……ぁれ、何話目だこれ……コホン。初投稿となります。

今回は魔法使いと聖杯ちゃんの名前が登場!
さらに!魔法使いの過去編……的なものが若干入るぜぇ!
……なお、ギリシャ神話とか時系列詳しくないから……おかしいかも知れないっす。

それと、ここからは一身上の都合なのですが……蓄膿症辛たん。頭痛いぜぃ。
なので……なんかこう……自分で見返して「はあん?何言ってんのこれぇ」となってしまったのです。勘違い要素が欠けらも無いきがします。すまねぇ、すまねぇ。

「あぁ、つまんね」と思ったその瞬間にお気に入り登録を解除してコメントに「ぺっ」とか書き込んでもいいんですよ。
それかプラウザバックだ!







 ◼

 

 

 私は惰眠を貪っていた。

 いや、惰眠と言うのは些か酷というものだろう。

 

 なにせ、「私」としての初めての睡眠なのだから。それと同時に私は風邪を引いており、寝ていなければならないという大義名分まである。

 

 つまるところ惰眠では無く、致し方ない状況ゆえの休眠なのだ。

 

 おでこに当たるひんやりとした冷気の様なものが心地良い。瞼を働かせる事すら億劫なので、その冷気を発する物体が氷なのかはたまた人が作った何らかの医療器具か不明だが、その目的が私の熱を冷まそうとしている事は理解できる。

 

 ただそれを行ったのが恐らく魔法使いなのだろう、という所が唯一気に食わない。

 奴にとって私は死んで欲しくない存在なのは理解している。ロビンフッドという女を蘇らせるための贄なのだから。

 

 どれだけ優しくされても、その目的を知っている以上……心を開くなど不可能に近いだろう。余程の能天気じゃない限りは。

 

 ……それにしても、ベッドの中が酷い有様になっている。私の汗でびしょびしょなのだ。決して尿を漏らした訳では無い。

 寝心地はあまり良くないのだ。

 

「ぅ…………ん……?」

 

 寝返りをうち、体を横にする。すると冷りとした物が私の側頭部を冷やす。……私はもう一度寝返りをうち元に戻る。

 

 すると紙が擦れるような音がした。いやだいぶ前からしていたのだが、眠気と熱で朦朧としていた故に気が付くのが遅れたのだ。

 私はそっと、薄く目を開く。

 

「───────────」

 

 そこに居たのはやはり魔法使い。ベッドの横にある小さな椅子に座り、何やら分厚い本を片手で支え読んでいる。ページが勝手に捲られていく事から、なにか魔術を使っているのだろう。

 

 もう片方の手は、と言うと……私の頭へと伸びていた。

 どうやら魔法使いが魔術を使い、直々に冷やしていた様だ。少なくとも魔法使いは風と水の属性を持っている。昨日は風で家を掃除していたし、今まさに私のおでこを冷やしている。聖杯戦争では火と土だったと言うのに。……幾つの属性を持っているのか……。

 

「……ふむ」

 

 ……何の本だろうか。時折悩ましげな声を出しているが。

 

「名前、名前か……どうしたものか」

 

 名前?……私のか。そう言えば私の名前はまだ無いのか。アンリマユという名はあるが、それは私生活がつらくなりそうだ。自己紹介でこの世すべての悪です、などと言ってみろ、下手をうてばその場で死ぬぞ。

 

「……下手に捻るよりはそのままの方がいいかもしれんな」

 

 えぇ……?

 まさか私がアンリマユである事を公表し、自らがそれを封印したのだと功績にでもするつもりか?……いや、そんな事をする意味は此奴にはない筈だ。途方もない名声を持っているのだから。

 

「アンリマユ……聖杯……どこから取るか」

 

 やはりアーチャーからは取らないんだな、かぶるのは嫌か。そうかそうか。これは私も口を出した方がいいのか?いいよな?

 

「ぁ、ん、り……まゆ……」

「ん?起きていたのか。……そうだな、アンリマユから取るか」

 

 そうだ、私はアンリマユ。誇り高い……かもしれない神なんだぞ。

 ええい撫でるな馬鹿。

 

 ………………長い!少しにしろ!

 

 私が首を左右に振ると魔法使いは撫でるのをやめてくれた。……ふん、それでいいのだ。

 

「──────マユ」

「む?」

「ふむ。……マユというのはどうだ。君の名だ」

 

 人差し指を立ててそう「()()」提案する魔法使い。ふふん、悪い気はしないな。

 それにしても、まんまだな。だがバレるような名前でもない。

 

「なんでもいい」

「そうか、ならばこれで決まりだな。ではマユ───ん?」

 

 魔法使いは私の頭をもう一度撫でて立ち上がる。だが、私は奴の名を聞いていない。名とはそれこそ大きな意味を持つ。呪いの対象にする事もまた可能だ。

 どの文献にもやつの名は登場していない。つまり、ここで聞き出せれば……!

 

 そう考えた私は立ち上がろうとした魔法使いのローブを掴む。結構本気で掴んだ。……つ、つりそう……。

 

「ま、まてっ……!まほうつかい、おまえのなまえは?」

「…………」

 

 ……?

 

 ……え、なんで無言なんだ?なんで無表情なんだ!

 怖い怖い怖い怖い!待て!まさか殺す気か私を!?

 えええぇ、名前聞いたら死ぬの?嘘だろう?

 

 あわ、あわあわはわはわ……!どどどど、どうすればいいんだアーチャー!お前なら分かるだろう!?す、凄い見てくるぞ!睨まれてる!めちゃくちゃ冷たい目で見られてる!

 

 やっ、やるのか!?やってやるっ!こいバカー!

 

「────────ショウだ」

「ヒウッ!…………へ?」

「ショウ、それが俺の名前だ……(かばね)は無い」

 

 私から目をそらす様にして背を向け、魔法使いは言った。

 

「しょう…………ショウ。……ふむ」

 

 何度か口で転がし、舌に馴染ませニヤリと笑う。

 そうすることで()()()混乱していた頭も落ち着けた。ふん、他愛もない。余裕だな。

 あとは魔力を確保して奴を呪い殺すだけだ。ふふふ、私に希望が見えてきたぞ!

 

「……では、俺は食事を用意する。動けるのなら下に来るといい」

「……ふん」

 

 魔法使いが部屋から出ていく。

 

 …………

 

「ねむいぃ……」

 

 ボフッと私はまた惰眠を貪ったのだった。この時、私はまだ「魔力の確保」の具体案を何も考えてはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 ◻

 

 

 涙目で見上げてくるとか暴力か……!?俺を殺すつもりなのか!?くっ。直視できない!

 しかも一瞬笑ったよな?目を背けちまったが、この俺の目は見逃さなかった!まさか……デレ期到来か……?2日目にして!?

 勝ったな。飯作ってくる。

 

「……では、俺は食事を用意する。動けるのなら下に来るといい」

 

 男ショウ、背中で語りこの場を去るぜ。

 ちょっと心臓がきついのでね……。

 

 階段を降り、魔王の使い達をサクッと倒しキッチンに向かう。

 

 さて、愛情たっぷりの麦粥でも作るとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ✳

 ????年前。回想。ギリシャ。

 

 

 

 男はただ、歩く。

 轟々と唸る吹雪を苦とせずに。

 まるで雪や風の方が男を避けているかのようだった。

 

 男はその名前を「ショウ」と言った。まだこの世に無い「日本語」の名前だ。故にその名を知るものは無く、知ったとして正しい発音が出来るものもいない。

 

「はぁ───────」

 

 ショウの吐く溜息は白い。

 外気との差で空気中に躍り出ると同時に、水分が冷やされ可視化されているのだろう。

 

「無闇矢鱈と寒いんだよなぁ……フバーハとかなかったらとっくに死んでそうだよ全く」

 

 ショウの最近の癖は独り言だった。

 数週間の旅を続けているのだが、途中からは一人旅となった。道中で仲良くなった森の精霊もこの雪山には付いてこられなかった。領域が違うのだとか。他にも勝手に付いてきた可憐な少女も居たのだが、ショウは少女が眠っているあいだにこっそりと逃げ出し、一人旅をしている。

 

 いつの日かまた会おう、そう一方的な約束をした。

 しかしこの吹雪だ。魔法使いであるショウと言えど確実に生き残る事が出来るという保証はない。

 

 神代というのは厄介な時代(もの)で、神々が好きな様に自らの領土を主張しては奪い合っている。そういった関係上、ショウの持つ「ルーラ」という転移魔法はおいそれとは使えないのだ。

 

「───使えば確実に『おっ、君いい所にっ!○○って男を殺してくれないか!?』みたいな感じで厄介事に巻き込まれるんだよなぁ」

 

 神々の間では英雄を作り出し競わせるのが流行っている。ショウが思い出せる最近の有名人といえばアルケイデスなる男だろう。出会ったことは無いが、名前を噂で耳にした。

 ショウはこの世界がFateという作品に非常に類似している事をこの時すでに知っていたものの、前世で言うところの「ライト層」であったショウは「アルケイデス」と言うのが誰かまでは知らないのだ。

 

「はぁ……早く国境こえてぇなー」

 

 ショウの背負う布袋は軽い。そこに詰め込まれていたであろう食物は今は乾燥させた携行食位のものだ。口に合わないからと残しておいたのだが、役目を全うできそうで何よりである。

 

「おーい!まってー!私も連れて行っておくれー!」

「………………マジかよ」

 

 吹雪の中、後から響いてくる声。振り向けばそこには灯りが灯っていた。

 その明かりはショウの事を正確に視認したのだろう。ザクザクと軽快な音を立てて駆け寄ってくる。この深い雪の中を軽い調子で駆け寄れるなど、候補は限られてくる。

 それに、ショウは魔力の反応もしっかりと捉えていた。

 

「全く、置いていかないでくれよぉ!」

「……俺、連れて行くなんて行ってないからな?」

「いいじゃないか、旅は道連れ世は情けなんだろう?いい言葉だよねぇ。それに、いつかまた会おうって言ったのは君だろう?」

「……あ、うん。そだね。……聴こえてたのかよ(小声)」

 

 鷹の翼を象ったマントを身につけた美しい少女……故あって少女の身に姿を変えている魔女、キルケーがショウを追いかけてきたのだ。

 正確には肉体のあるキルケーの分霊の様なもので、使い魔に近い。

 

「はぁ……お前さ、自分の島戻らなくていいのか?ペット達はどうなってんの」

「ピグレット達は平気だよ。大人の私がしっかりと可愛がってるからね!」

「えぇ……」

「それより!私は君が欲しいんだ。ほらほら、美少女が甘えてるんだぞ?」

「……甘えられるのはまぁいいとして、豚にされたくないから断る。なんだってこの時代の美女はこう言うのが多いのか……(小声)」

「ちぇー、いいじゃないか」

 

 よくねぇんだよなぁ……とまた小声で呟き、ショウは歩く。

 キルケーはそんなショウを横からチラチラと見ながら時折話し掛けては軽く流される、というのを繰り返す。

 

「ところで、君はどこにむかっているんだい?教えてよ」

「知らんな。テキトーに歩いてるんだよ」

「転移すればいいじゃないか」

「神々がうるせぇ」

「そのくらいのお使い簡単だろう?」

「人殺しをお使いとか言うなバカタレが」

「あいたぁ!?き、君!乙女の頭を叩くとはっ!」

「乙女ぇ?……ぇ、そんな年だっけ?」

「豚にするぞ!?そんな君はもうお爺さんどころの話じゃないだろう!?」

「はっ、笑わせるな。まだまだ現役じゃわい」

「ふふっ、似合わないね、その口調っ」

「……当然だろ?」

 

 当時、ショウの理想は高かった。それはそれは高かったのだ。

 美人でボッンキュッボンで家事が完璧で優しい人を求めていたのだ。

 そこに裏があってはならない。完璧な嫁を求めていた。

 

 しかし残念かな、そういった女性は大抵の場合、下半神(ゼウス)だとかに先を越されてしまうのだ。

 

 残念な事にキルケーは美人でボッンキュッボンで家事も出来て優しいのだが……飽きた男を動物に変えてしまう恐ろしい魔女でもあった。

 ショウの恋愛対象からは外れてしまったのだ。

 

 しかし、そこをどう捉えたのか……ショウもギリシャの男性達と似た性癖、所謂ロリコンだと考えたキルケーはこのように少女の自分を作り出して送り込んだのだ。しかし残念かな、ショウは懐いてしまった子供のようにキルケーを扱っていた。

 

「はぁ、いつまで付いてくるの」

「ん?そりゃあ死ぬまでさ!」

「………………うへぇ」

 

 天真爛漫と言ったふうに満面の笑みを咲かせるキルケーにショウは多少の恥ずかしさを感じながらも「こいつがいたら子持ちだと思われる……女寄ってこねぇよ……!」と割と最低な事を考えたのだった。

 

 

 

 この分霊のキルケーはショウから魔術を教わりながら、約束通り死ぬまでショウに寄り添った。

 死因は旅の途中幾度と無く遭遇した神々の悪戯である、という事だけはここに記しておく。

 初めての弟子の死にその堪忍袋がはち切れ、魔法使いは事件に関与した神々の多くを殺害して回った。 しかし、逸話として残されているのは「神々の悪戯に魔法使い様は怒り、その多くを殺した」という部分だけで、キルケーとの旅や弟子としての活動などは残されていない。

 

 なお、キルケーの死から10年もしないうちに「童貞捨てておけばよかった」と全力で後悔する事になるのだが…そこはご愛嬌である。

 

 

 

 

 

 

 ◻

 

 粥……か、懐かしいな。

 なんて名前だったか。キュケオーン?キュケイオーン?わからん。

 

 まぁ、毒にも薬にもなる神の麦粥らしい。当時の味などは残念ながら再現できないのだが……。

 

 それでもこうして時折作るのだから、なんだかんだで引きづっているのだろうな。

 

 くくく、昔の女を引きづるってやつか。まるで何度も女を取っ替え引っ替えしているヤリチンの如き発言……!

 はっはっは!そう今の俺には彼女がいるのだからっ!

 

 ………もしや、マユが少女の外見で産まれたのは……キルケーとの記憶があったからなのか?

 

 確かに一個人として共に旅をした中では相当長い部類だったし、あそこまで俺を好き好き言ってくれたのもキルケーだけだ。まぁ、豚にしたい!豚にして愛でたい!とか言っていたから恐怖しか当時は感じなかったが……

 

 今の俺なら────

 

 はぁい!喜んで豚になりましゅぅううううう!!!!ブヒィイイイイイイイイ!(アヘ顔)

 

 ───位は言いそうだしやりそうだもんな……あの当時は飢えてなかったから……(比較対象:今現在)

 

 となると!?まさか赤い瞳に黒い髪は対魔忍二穴槍ウーマンなのか!?

 くっ、あの溢れ出るBBA臭のする性格……あんま話したことないけど、いつだったか……結構前はビビるくらいの高頻度で襲って来たからなぁ、影の国?だっけ、そこ引き摺り込まれたし。

 

 名前なんだっけな、スカアハだっけ?……スカアヘ?ス○ト○アヘ顔かな……?

 

 あ、まずい。殺意を感じる。バシルーラバシルーラ、ハイハイ、バシルーラ安定ですわ。

 

 って不味い、粥が焦げる……。

 

 畜生、あのおっぱいタイツめ……体だけ下さい。性格はいらないです。

 もっと恥じらいのある淑女になって。

 

 しかし……そうか、外見に二穴おっぱいタイツが反映されているとするのなら……将来はおっきくなるのか……やったぜ。……まてよ、完全に大きくなる前にだな……ごほん。何でもない。

 

 自重しよう(今更感)

 

「……さて、降りてこないか。持って行ってやろう」

 

 

 

 

 








過去編、という事で誰を登場させるか迷った俺氏。
結果、「俺のカルデアにいない奴にしよう!」となりました。んで持って絡ませやすい人は……キルケーかな!と大体5秒で決定。ちょうど粥のお話だったしピッタリだな!


……しかし、こうして考えるとショウ君は毒味の強い(物理的若しくは性格的に)女性ばかりと出会ってるんですなぁ。
キルケー=麦粥(毒)
ロビン=手料理(イチイ混入)

……?のこる毒女性鯖は……?うわぁお(察し)
ひ、一人はチョロインだな。ショウ君的には明らかにアウト何だけども。炊事洗濯何しても毒になるのはちょっと……生き返る事は出来ても即死はするんですよ?触れ合ったらキアリーが間に合わなければ死んでしまう娘は流石にねぇ?



ありそうなコメント。

Q「冷えピタとか氷枕とかないの?」
A「あります(真顔)」

Q「もうちょっと名前捻れなかったの?」
A「捻れなかったの」

Q「ショウってどう言う漢字なの」
A「聖(しょう)です」

Q「聖杯ちゃんの寝ているベッドのサイズは?」
A「ダブルです」

PS。バーチャルYouTuberにハマって最近ずっと見ています。ぜったい天使くるみちゃんが一押しだったというのにぃ!天魔機忍は不滅だ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「実況、マユちゃんの料理」


時間を一気に飛ばそう、そう思うと、何故か飛ばずに物語は進む。
おかしい……時間が飛んだので初投稿ですって言おうとしたのに……これじゃあただの初投稿じゃないか……!

今回は丸々1本ショウ視点!

下ネタ注意ですぞ!
それと、勘違いに繋げるための回なので勘違い要素は少なめな気がするぞ!先にマユ視点でも良かったかもと思っているぞ(未練タラタラ)

ちなみに作者が一番好きなクラスはバーサーカーです(1ミリたりとも関係の無い話し)

今回も変だと思うので「ここ、こうした方がいいんじゃね?」みたいなコメントはありがたいですよ?(何故か上から)







 ◻

 

 麦粥を聖杯ちゃん……もといマユ……ちゃんに食べさせた。

 ふっ────マユって呼び捨てにするの恥ずかしいな。

 

 んんっ、だが夫としてマユと呼び捨てにしない訳にはいかない(固定観念)

 恥ずかしさをこらえ呼ぶのだ。

 

 麦粥を食べ終わったマユはすぐに寝てしまった。……麦粥を持って行った時も寝ていたのだが。

 ベッドが汗等で濡れている事を考慮し、魔術で乾かしておいた。

 

 ……俺も今日の予定は特に無いな。さて、何をするべきか。

 

 1階に降り、リビングに向かう。

 そこは正しく新築の様な見た目だ。全ての家具が新品なのだから仕方ない。さらには趣向品の一つすらない為、聖杯ちゃんの言った「こざっぱり」と言うのはこのリビングにも当てはまるだろう。……マユね、マユ。よし、覚えた。

 

 このリビングをどうにか出来ないものか……。

 

「ふむ……」

 

 リビングといってもリビングダイニングキッチンなので、料理を作りながらでもリビングに居る誰かと会話が出来るのだ。

 

 ……普通ー。なんだこの家は、本当に魔法使いの家なのか?

 

 否!断じて否!

 

 こんなのタダの家よ!辺境の地に建ってるだけの掘っ建て小屋よぉ!

 

 という訳で、魔改造しようかな!

 

 と言っても?いきなりテキトーに手をつけると取り返しが付かないので、ゆっくりと設計を練っていこうと思う。

 マユちゃ……マユにバレないようにこっそりとな。ふふふ、既にマユが驚く顔が目に浮かんでいるぜ。

 

「まずは買い物か」

 

 設計台?的なものを買わなければならない。……ん、わかったぞ、昔みたいに幻獣の皮とかで作ればいいか。魔法使いっぽいからという理由で当時やっていたが、確かに「それらしい」しな!

 外見は変えずに内装を変えよう。ここが俺達の家だ、って言ったしな。内部だけ広くするか?うーん、幻獣などの素材とか使うべきか……悩む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 …………………………夜だ(驚愕)

 

 待て待て待て……夢中になり過ぎだろ俺……聖杯ちゃん、じゃなくてマユちゃんはどうなっている?(結局マユちゃんと呼ぶ事にした)

 餓死してないか?昔は狼とかペットとして育てていたが……死んでないよな?

 

 さ、流石にそんなことは……いやだが生まれてから食したものが麦粥だけだぞあの子。栄養たっぷりではあるが……。心配だな、見てこよう。

 

 自分が篭っていた書斎を抜けて、リビングへ。

 短い廊下を数歩進み(この廊下に地下室に行く階段もある)、リビングに入ると驚愕の光景を目にした。

 

 それは──────────

 

「……………………汚い、だと?」

 

 もう一度言う。汚い。このリビングは正確にはリビングダイニングキッチンだ。……うむ、キッチンが凄いことになっている。

 そりゃもうきたねぇなんてもんじゃねぇ。明らかに「実験しました」と言っているかのような汚さだ。

 

 だって積み上がってるもん、汚れた鍋が積み上がってるもんこれ。

 

 えぇ……うわ、よく見たらいくつか皿割れてるやん。

 

 まぁ犯人は探すまでも無いんだが……餓死してないだろう。うむ、確信した。むしろ満腹で横たわっているに違いない。

 

「うぅ……ぐすっ……」

 

 ふぁ!?えぇ!?な、ええっ……?!

 ええええ、な、なんかマユちゃん泣いてるんだけどぉ!?ソファーで体育座りして泣いてるんだけど!

 

 ッ……!!

 

 よく見たらテーブルの上に料理が並んでいる……?いや、あれは料理なのか……?ちがう、あれはダークマターだ。

 

 しかし口をつけた様子がないということは……まさか俺を待ってたのか……?な、なんて健気なんだ!許す!汚くしたの許すよ俺は。もう褒めちぎってキスまでしてやる!

 

「まずいぃ、たべれない……おいしくない……」

 

 食えないんかい!

 え、お腹減って泣いてるの!?俺が帰ってこなくて悲しんでるとかじゃないのな。

 

 可愛いから許すわ(断言)

 

 さて、なんて話し掛けようか。とりあえず許すけど、一言言わないといけないだろう。

 

「うぅ……かたづけなきゃ……かえってきちゃう」

 

 ……………………………………自分、見守っていいっすか?

 

 えー、突然ですがここからは実況、ショウがお送り致します(母性暴走)

 

 さぁマユ選手立ち上がった!おおっとぉ?お腹を押さえているぞ!お腹が減っているのか、それとも食べたものがお腹にあたっているのかぁ!?

 

 さぁここで審査(診察)が入りました。

 えー、どうやら食あたりの様です。豚肉を食べてしまったようですねぇ……生で!

 なんてワイルドなんでしょうか……!おおっと思わず実況、キアリーを放ったァーー!

 

「うっ?……あれ、いたくない?」

 

 ぐはぁぁああ!?

 ………………ぐっ、くっ……ダメだ、俺、が……やらないと(実況しないと)……いけないんだ……!

 

 うぉおおおおぉぉおおおおお!

 

 復活!復活です!マユ選手のお腹と私の「今すぐ好奇心など投げ捨てて抱きしめたい」と言う欲望からの復活です!

 

「うぅー……ひのつけかたはわかったけど……こげちゃう」

 

 ──────────────(昇天)

 

 ――――はっ!!……えー。たったいま見た事をお教え致しますと。

 マユ選手は焦げ付いたフライパンを両手で一生懸命に持ち上げ、焦げ目を見ながら先程のセリフを言っていました。その時の首を傾げる姿……わたくしの記憶にしかと刻み込みました。

 

 目の保養とは正しくこの事か。

 

「……せんざい、どこ……?これがスポンジで……これは?」

 

 あー、マユ選手、フライパンが重すぎたのか置いてしまいました。そして洗剤を探し始めたようです。

 本来ならばマユ選手では荷が重い(文字通り)フライパンは横に避けて、軽いものからやるのがベストなのでしょう。なにせ、フライパンを置いた時、小さく「ピキ」っと言っておりましたからねぇ、小皿かコップかそこらが割れてしまったのでしょう。

 

 なかなか強く下ろしてましたからねぇ。フライパンは重心が前の方なので持ち手を持つと重いですからね、マユ選手には辛かったのでしょう。

 

 おおっと、何か手に取りましたよ!?

 あれは……?

 

 ……ん?

 

 …………んん?

 

 

 あの、魔王の使い君達……何故、何故キッチンに俺の私物を……?

 しまう所なかったのか?

 

「んー?なににつかうんだ……せんざいいれるの?」

 

 そこにはバベルの塔を入れます。上下に動かします。天地乖離す開闢の星が出ます。

 

「……しましま、かわいい」

 

 名称をTENGAと言います。

 あ!そうか……魔王の使い達はTENGAを知らなかったのか!そしてマユちゃんと同じく調理道具と間違えたのか!

 あれは俺が苦労して再現して作った奴だ、あまり使ってないがな。

 それと、マユちゃん。ソレは、可愛くない(断言)

 

「んー?」

 

 なぜそれに興味を示したんだマユちゃん!!はよ、はよ清掃はよ!

 そんなもんは捨てなさい!

 

 ッ──────!

 

「こうっ!…………たおれた、ちがうか」

 

 やめてっ!ぼくのオナホで遊ばないでっ!そんなにたくさん色んなものを突っ込まないでぇ!使用用途としてはナニかを突っ込むことだけども!

 調理器具を突っ込むことじゃないの!モノ入れだから!物入れじゃないの!

 

 ガバガバになっちゃう!無駄に色んなもの使用して作り出した世界初のオナホが幼女に弄ばれてガバガバになっちゃぅぅぅ!

 

 

 

 

 

 ありだなッッ!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 ……まぁ、アレだ。うん……止めようか。

 

「─────────何をしている?」

「っ!?」

 

 んん。切り替えていこう。ここからは真面目なパパンだ!(違います)

 

「……聞こえなかったか?何を、している?」

「こ、……これは、その……ごはんをつく、てて」

「そうか……」

 

 まぁそうだよな。ご飯を作るとかつまみ食い以外にキッチンに来る必要性は無いからな。

 とりあえず褒めなきゃな。初めての割には頑張ってたんじゃないか?勝手に火を扱うのは怖いが……怪我も特にはなさそうだ。

 

「……後は俺に任せておけ」

「ぇ……?」

 

 俺はほっと一息つく。

 キアリーを使用しなければならないくらいには重症だったからな。

 俺の落ち度だ。まさか家の設計に夢中になりすぎるなんてな。情けない。

 

「俺のいない間によく頑張った。テーブルに着いて待ってくれ、すぐに用意しよう」

「……!よ、よういってなに?」

「ん?食事だ。腹が減っているのだろう?」

「う……うむ」

「なら、座っているといい」

「……」

 

 ちゃんと言うことを聞いてテーブルに行ったな。偉いぞ。……ふ、語尾にハートが着きそうなのを必死に我慢する俺の気苦労も知らないで……知られたら困るけどな♡

 

 おろろろろろろろろ。意識して付けると気持ち悪過ぎて笑えねぇ。

 

「……」

 

 ……。

 膝に手を当ててしっかり待ってる。何あの可愛い生き物。何で緊張してるの?可愛すぎないか?もしかして怒られると思ってたのか?

 

 なら怒った方がいいのか?注意だけはしておくか、その方が良さそうだ。

 

 まてまてまて、わかったぞ俺は。

 料理の勉強を一緒にやればいいんだ!!革命キタコレ……。

 

 手取り足取り、1から全て俺が教えてやるぜ……(イケボ)

 

 やべえ、興奮してきた。落ち着け俺。まだ、まだ早まるんじゃない。何かさり気ない会話で場をつなぐんだ。

 

「俺がいない間、ずっと料理をしていたのか?」

「!」

 

 ビクッ!って感じにこっちを見たな。あと、膝に乗せてた手を絡ませてモジモジしている。……ふっ、俺レベルの童貞になると客観的に物事を見る事により()()()()()()()()()()のだ。

 細かな変化も見逃さないぞ。今の俺はな……。

 

「…………ぅむ」

「本当か?」

「…………た」

「た?」

 

 言葉を詰まらせたようで、肩が上がっている。目も挙動不審だ。恐らくは家の中を歩き回っていたのだろう。俺の書斎までは来なかったようだが。

 

「たんさく……してた」

「そうか。家の構造は理解出来たか?」

「うむ……い、いいのか?」

「……何故それを問う?」

 

 家の中知らないとか、むしろ怖いわ。是非知ってどうぞ。

 しかし、胸の前で手を合わせ問われるのはイイな。かわいい(語彙力低下)

 

「……わ、わたしがにげてしまう、かもしれない……だろう?」

「──────────(昇天)」

 

 必死に何かを伝えたい、そんな想いが伝わってくる。しかし、上目遣いはあかんて……死ぬわ。

 

「────お、おまえからすればわたしが、ちえをつけるのは、いやなのだろう?」

「…………」

 

 ……恐る恐るといったように、椅子に座りながらだが俺に問う。マユちゃんがそう感じた理由は恐らく、俺が無表情で無愛想だからだろう。

 そしてそれを今更どうこうしようとしても……邪悪な笑みとかそんなふうに言われるに違いない。

 

 どうにか言葉で伝えなくては。しばしの思考のあと、俺は口を開く。一言一言丁寧に……。

 

「──俺は()の夫だ。であれば、()()()()を喜ばない訳がないだろう」

「────ッ!そう、か。……そうだろう……そうだろうな!」

 

 ……!?な、何故涙目に?!しかも明らかに「怒っている」!?

 

「きさまがもとめているのはわたしのからだだろう!?わたしのからだのせいちょうがもくてきなんだろ!!」

「ッ!」

 

 な、な、なんだとぉおぉ?!バレてる!?成長したら沢山ヤリたいとか考えていた事がバレているぅー!?

 いつだ……何時気がついた!?どこにバレる要素が……!!

 

 あっ(過去を振り返りバレる要素を無数に見つけた時の声)

 

「なまえだっておざなりだ!わたしにはなんのかんじょうもいだいていないのだろう!?ついにおもいだしたのだ、きさまの“神殺し”のいつわを!」

 

 ……青ざめながら捲し立てるマユちゃん。

 気迫が怖いわー、沢山食べて嫌な事は忘れようか!(現実逃避)

 それと、君に抱く俺の感情は……むつかしいな。愛ってなんて表現すれば……(現実逃避)

 

「きさまは───────!()()()()()()()()ころしてきただろう!?わたしもそうやってッ、()()()()()()()()

「……ほう」

 

 “殺す気なのだ”

 

 反響する。

 

 何度も頭の中を跳ね回り……その言葉に俺は……確かに憤怒の情を覚えた。

 

 すこし、叱る必要が出てきたのかもしれない。

 

 

 





魔王の使いサイド。回想

(´・ω・`)つ「TENGA」「ウガ?ウガガ?(何これ、どこしまえばいいかな?)」
(・ω・`(・ω・`(・ω・`)「うがー(わからん)」
(´・ω・`)「ウガ……(えぇ、じゃあ……見た感じキッチンかな)」
(・ω・`(・ω・`(・ω・`)「ウガガ(せやな)」

次回は今回の場所のマユ視点をお送りできたらいいなと思う。
次回の予定。
・一人きり(違います)に興奮して探索だぁー!とはしゃぐマユ
・お腹減った!料理作るぞ!……わからん!教えてアーチャー!えっ?わからん?

みたいな感じを予定。そんなマユを見守ってもらおうかなと……OK?

誤字脱字、コメント、お待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「前回の嫁視点!!」


初投稿かなーwやっぱw

えっ、遅くなった理由……?大体全部サブカルクソ雑魚ムカデ人間委員長が悪い。あとずっとアリアンロッド+モンハン+ブラッドボーンやってしました^^*(聞いてないw)

そしてその間、1日100文字くらいの超☆スローペースで執筆しておりました(嘘)
嘘です(自白)。今日、朝起きて仕上げました。

そして!なんとぉお!初投稿にして!初挿絵!
誰も描いてくれないからシフシフ頑張って描きました。でもね、色よく見えないから色塗りはしていないのです。


【挿絵表示】

うーん、挿絵のやり方合ってるかな?まぁこんな感じの外見だと想像しております。ほら、これだけやればみんな描いてくれるのでは?チラッチラ。

はい、すみません。反省します。次はもっと早く初投稿するんだ……。










「───────ふわあぁ〜?……ううぅ……」

 

 私は目を覚まし、上体を起こす。

 起こした拍子に身体を包み込んでいた暖かな毛布等から体が出てしまい、途端に襲い来る冷気に震え上がる。

 

「さ、さむい……」

 

 急いで掛け布団を掴み、体を倒す。再びの楽園だ。しかし、そんな楽園に奴はやってきた。

 

 ────ぐぅうう……!

 

 空腹だ。

 

 堪えられないほどでは無く、けれど「お腹が減っているよ」と頻りに私に訴えかけてくる。

 

 無視は出来ない程度に空腹なのだ。

 

「……しかたない……でるか」

 

 自らの決意を言葉に出して身体に言い聞かせる。私は布団から出るのだ!……出るのだ!(布団の中)

 

 布団から出られない……まぁどうせショウが食事を持ってくるだろう。その時に起きればいいんだ。

 

 

 ……。

 

 …………。

 

 ………………。

 

 

 来ないな、来ない。

 

 もう堪えられない……お腹がペコペコだ。

 

 空腹が私にその存在を訴える度、私の脳裏にはショウの作った麦粥が浮かぶ。

 私が人生で初めて食べた料理。暖かくて、口に含むとふわりと甘みが広がる。噛むと言う行為が殆ど必要ない位に柔らかく、すんなりと喉を通り抜ける。

 

 身体も栄養を求めていたのか、あの時は夢中で食べてしまった。若干、癇に障る。

 だが今もまさにあの味を求めているのだ。食べると不思議と安心出来る味……ほかの料理を知識以外で知らない為、この表現が正確なのかはわからないがな。

 

「きのうののこりがあるかも……」

 

 私は残り物を期待して下に降りる事にした。

 モゾモゾとベッドから這い出し、廊下へと繋がる扉に手を掛け名残惜しいベッドに視線を戻す……化粧台の鏡に私が映りこんだ。

 

「うわ、ぼさぼさだ」

 

 腰の辺りまで伸びる黒い髪がいろんな方向に跳ね回っている。自由な髪だな、全く。

 とはいえ、こんな姿をショウに見られては不味い。奴に気に入られる事でしか“私”と言う個は生きられない。

 例えどのような組織に身を預けようと奴には敵わないだろう。

 

 化粧台に置かれている櫛を使い、髪を梳く。

 自分の姿をしっかりと見るのは初めてだ。

 

 ……色白の肌を黒い髪が縁取り、赤黒い瞳が爛々と輝いて見える。

 私は聖杯だ。そしてアンリマユだ。

 

 ……ショウは聖杯に嫁を願った。

 アンリマユに汚染された聖杯を嫁に、と。

 

 聖杯は願いを叶える。もしショウが理想の嫁をイメージしたのなら、その姿のままに私は誕生したのだろう。

 

 だとしたら、この姿はショウにとっての理想の嫁なのだろうか?

 

  否。そんなはずはない。

 

「はぁ──────」

 

 どうにか体が大人になる前に気に入られる必要がある。

 ショウ、子供は好きだろうか?もしもそうなら子供らしさを前面に押し出し情けをかけさせるべきだが……子供が嫌いならそれは悪手だ。

 

 うーむ、どんな人が好きなのか、子供は好きか、そんな質問をしておくべきだった。

 

 ……しかしあの時はまだまだ混乱の最中だった。いや、だからこそあのタイミングで質問を受け付けたのだろうな。余計な詮索をされにくい。そして今では前に質問は受け付けたから、と逃げられる場合も考えられる。

 

「むむむ」

 

 ……私が生き残る為にはショウにとっての“大切なもの”になるほか無い。それにあたり、生活の掌握は必須とも言えるだろう。命に関係する重要な役割を私が独占できるなら生存率は鰻登りの筈。

 

 少しづつでいい、ショウの生活の領域を削り私の領域を広げることが出来れば……私はショウにとっての“大切なもの”になれる筈だ。

 逆に、なる事が出来なければ私は死ぬ。

 

 あの「モシャス」と言う恐ろしい魔法で私を即座にアーチャーに変えなかったのは訳があるはず。

 考えられるものとしては──

 

 1、私が聖杯である事。

 聖杯としての機能をフルで活用する為に生かしている。と言う仮説。これはほぼ確定しているとは思う。ショウは天の衣も手に入れていた。

 ただ、大聖杯を確保しなくては使い続ける事は出来ない。その為、いつか奪いに行く事になる筈だ。

 そして私が聖杯であるため、あのモシャスを使いアーチャーにする事を先送りにしているのだろう。

 

 2、モシャスにはデメリットが存在する説。

 私に使用されたモシャスと、マネキンに使用されたモシャスでは大きな差があった。

 マネキンを魔王の使いに変える際、マネキンの表面がぶくぶくと膨れ上がり膨張、縮小を繰り返しながら変化した。明らかにやばい。……恐らくだが完全な形の魔王の使いが誕生した。

 しかし私はというと、アーチャーに変化させられたものの……ぶくぶくと変化する事は無かったし、能力も得ていない。

 

 そこを考えるとモシャスで完全な形に変化させる場合、肉体的なダメージが大きいのかもしれない。

 また、魔王の使いが4本腕だったし何らかの部分が増えると代償も大きくなる……のかも。

 

 ──────ぐううぅぅぅううう……!

 

 ………………空腹の訴えが過激になってきた。

 

「ごはんは、まだなのか……!」

 

 やはり、昨日の残りを探すか自分で作るかしか無いようだな!

 まず目指すべきはキッチンだ。……キッチンだから、えっと何処だ?

 

 お腹を押さえながら扉を開けて、廊下を見渡す。誰も居ない。

 

「……………………ま、まおうのつかい、いない?」

 

 足音も気配も何も無い。ショウは何処だ?

 わからない以上、進むしかない。寒さに身を震わせ、空腹に喘ぎながらも階段を下る。足の裏が冷たくなってきた。

 

 

 

 そこから数分。怯えながら進んだ為か酷く時間がかかったが、どうにかキッチンに到着する事が出来た。

 私が期待した麦粥の残りは無く、綺麗に洗われた小さな鍋が置かれていた。

 

 

 ……1人だ。

 

 私は気が付いた。

 

 1人なのだ。いま、私はショウに見られてもいない。……微かな自由を手に入れている!

 空腹にこそ苛まれているが、少なくとも自由なのだ。確実に扉や窓には結界などが張られているだろうが、それらに触れさえしなければ……家の中ならば私は自由なのだ。

 

 ふふふ、魔王の使いも居ないのだし、家の中を探索し尽くそう。地理を制さなければ勝てるものにも勝てん。生活の掌握という目標の為にもな!

 

 

 

 

 

 〜少女探検中〜

 

 

 

 ……お腹、減った……もう、無理ぃ……。

 

 ……食材はあった。しかしだ、調理するための道具はどこだ?というか、どれをどう使えばいいんだ?さすがに、そんな知識は聖杯の知識には入っていない。

 

 となれば……簡単に火を使い炙るなどして調理する必要がある。だが……どうやって火を付ければいい?ここにある突起を捻ればいいのか?

 

 ……?

 

 

 …………つかないな。むむ、なにか透明なモヤが……ガスか。つまりあとは火を近付ければいいんだな。ふむふむ。火をつける道具なんて何処にあるんだ……。

 

 お?押し込めるぞこれ。押し込むとー、お?押し込みながら回すとカチッと言う音がする。ふむふむ。何度かやってみよう……。んー、つかない。音的に火打石みたいなものだと思うのだが……勢いが足りないのか?

 

「えい!」カチッ

 

 ボォン!

 

「ぴゃぁあっ!?」

 

 ぅあぁ!?なななな、何事だ!?な、なぜ爆発した!?……はっ!ガスが何度も漏れていたからかっ!

 あ、危なかった……恐ろしいなこれは。

 

 しかしどうにか火をつける事には成功したぞ……くっくっく。これで私の腹も満たせるな!

 

 えーっと……フライパン?というものがあったぞ。値札付けっぱなしじゃないか……おかげでわかったが。

 これにお肉をのせて焼く。ふっ、簡単だな。

 

 じゅー、じゅーと焼く訳だが。……いい匂いでお腹が余計に……。

 

 も、もういいかな?いいよな?よし食べよう!

 

「あ、あれ?くっついちゃった……」

 

 むむむ……むつかしい。

 

「よしとれた。あむっ……なまだ」

 

 まだ焼けてなかったか。あまり美味しくないな。麦粥がいい。

 

 

 

 

 

 

 

 その後も試行錯誤を続けた私だが……キッチンは悲惨な有様となってしまった。

 しかし、どうにか料理を完成させた……!

 

 外見はショウの作り出した麦粥よりも断然良い。味にも期待が持てる。最後に取っておくために味見をせずに我慢してきたのだ。くくく、もう空腹で倒れそうだ。空腹は最高のスパイスだと知識にある。これはもう絶品料理確定だ。

 

 ふふん、ついでにショウの分も料理してやったんだ。偉いな私は。材料が余っていたからついでにな、ついでに。

 途中で楽しくなって作りすぎてしまったが……まぁいいだろう。全て食べられるはず。こんだけ腹ぺこなのだから。

 

「ショウ、まだかな?」

 

 あとはショウを待つだけだ。くっくっく、驚く顔が目に浮かぶな。「なっ、これだけの料理を1人で?」とか「……美味い」とか言うに違いないっ!

 

 そうなれば私の計画も大いに進むというものよ!笑いが堪えられないぞ!

 

 あー、早く帰ってこないかなー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぅ……ぐすっ……」

 

 ショウが帰ってこないぃいい……!しかも!……しかもぉ!

 

「まずいぃ、たべれない……おいしくない……」

 

 我慢出来なくてつまみ食いしたらびっくりするほど美味しくないっ!!!

 

 うううううぅぅ……ショウはやく帰ってきてくれ〜!空腹で死ぬ……お腹痛い……お腹痛いぃ……。

 

「うぅ……かたづけなきゃ……かえってきちゃう」

 

 そろそろのはずだ……そろそろのはずなのだ。そろそろ帰ってきてくれないと……私は限界だ。そしてこの惨状、どうにかしなくてはならない。

 

 割れた皿、汚れたキッチンを見られたら確実に私の計画は遠のく。ショウが帰ってくるまで待とう!なんて思っていたが、その間に片付けることは出来たはずなのに……頭が回らなかった……料理を見つめながら待つ時間のなんと残酷な事か。

 

 

 しかも!希望打ち砕かれたし!早く帰ってきてくれショウ!

 

「うっ?……あれ、いたくない?」

 

 お腹が減りすぎて痛くなっていたお腹が痛くなくなった。限界を超えたのか?

 いや、そんなことよりも片付けることが優先だ。

 

「うぅー……ひのつけかたはわかったけど……こげちゃう」

「……せんざい、どこ……?これがスポンジで……これは?」

「んー?なににつかうんだ……せんざいいれるの?」

「……しましま、かわいい」

「んー?」

「こうっ!…………たおれた、ちがうか」

 

 むむむ……むむむー!

 くっ……!何に使うんだこのシマシマは。んーん?わからん。

 

 

 私の片付けがほんの少しだけ進んだ時、その声は後ろから響いた。

 

 

「─────────何をしている?」

 

 

 

「っ!?」

 

 耳を打つ冷たい声。低く落ち着く音域であるはずなのに、身体を芯から冷やす感情を含まない声。

 肩を跳ね上げ、喉は引き攣り、壊れた機械のようにギギギと振り返る。

 

「……聞こえなかったか?何を、している?」

 

 私が答えない事が不満だったのか、ショウはもう一度私に問う。

 ……怒っている。私はそう思った。嘘をつく事は出来ない周りの状況的にも、そして何より私の矜持に反する。だからこそ、震える声で真実をありのまま言う。

 

「こ、……これは、その……ごはんをつく、てて」

「そうか……」

 

 だが、言い終わる前にショウは話しを区切り、その視線を私から周辺へと移す。ゆっくりと見渡すような視線に私の心臓は不規則な音を立てて動き出す。

 

 殺されてしまうかも知れない、そんな思考がぐるぐる回る。

 

「後は俺に任せておけ」

「ぇ……?」

 

 ショウはハァと小さくため息をつく。

 失望された?だとしたらその結末は想像に固くない。

 

「俺のいない間によく頑張った。テーブルに着いて待ってくれ、すぐに用意しよう」

 

 ショウはこちらを見ずにそう言う。

 

「……!よ、よういってなに?」

「ん?食事だ。腹が減っているのだろう?」

「う……うむ」

 

 ……全ては予想通り、か?分かりきっていたのか。私がこうすることも、私を1人にするとどうなるかも分かっていたのか?

 

「なら、座っているといい」

「……」

 

 私はショウの言葉に従い席に着く。ここで抵抗しては命を縮めるだけだからだ。

 

 できるだけショウの視界に入らないように縮こまるが、意味は無いだろうか。

 時折、ショウからの視線を感じる。

 

 っ!

 

 私の作った料理が浮かび……ゴミ箱に飛び込んでゆく。

 ふつふつと怒りが胸のそこから湧いてくる。私がどれだけの時間をかけそれらを用意したか、分かっているのか?……分かっているのだろうな。その上で「食べることが出来ない」から捨てたのだ。

 

 腐れ外道め……人を妻だと呼ぶのなら食らって見せろ……!

 

「俺がいない間、ずっと料理をしていたのか?」

「!」

 

 突如声をかけられまた肩が跳ねる。

 そして理解する。やはりショウは分かってやっている。……これがショウなりの怒り方なのか?巫山戯ている。

 

「…………ぅむ」

「本当か?」

 

 ……追求された。探索していたこともバレている。ショウにとっては予想通りなのだろうが。

 

「たんさく……してた」

「そうか。家の構造は理解出来たか?」

 

 答えた所に間髪入れずに、用意されていたかのようなセリフを入れてくる。

 ……家の構造を理解されることにショウは危機感を覚えていないのか?私の逃走は無いと考えている?それとも、逃げられても即座に連れ戻せる何かがあるのか?

 

「うむ……い、いいのか?」

「……何故それを問う?」

 

 ……喉を鳴らす。唾液を飲み込み、尋ねる。

 

「……わ、わたしがにげてしまう、かもしれない……だろう?

 

 

 

 ───お、おまえからすればわたしが、ちえをつけるのは、いやなのだろう?」

 

 私の言葉に、ショウの腕が止まる。空中に浮かび洗われたり拭かれたりしていた食器も止まる。……まるで時間が止まったかのような、そんな空間。

 

 

 バクバクと大きな音を立てる私の心臓と、チクタクと耳に残る音を残す時計だけが時間の流れを感じさせてくれる。

 それは数分だったのだろうか、それとも数秒?緊張のあまり長く感じる中、やがて口は開かれた。

 

 

 

 

「──俺は(アーチャー)の夫だ。であれば、妻の成長を喜ばない訳がないだろう」

 

 

 

 

「────ッ!」

 

 あぁ……そうだった。そうだったな。

 

「そう、か。……そうだろう……そうだろうな!」

 

 魔法使いが求めたものは私ではなかった。そうだったな。ロビンフッドの為に私を育てていたのだったか。危うく忘れかけるところだった。

 こいつは私の事など少し足りとも大切だなんて思っていないのだ。

 

「きさまがもとめているのは、わたしのからだだろう!?わたしのからだのせいちょうがもくてきなんだろ!!」

「ッ!」

 

 魔法使いの目元が引き攣ったのを私は見逃さなかった。

 なぜ……?いや、考える必要は無い。私に気付かれたから何かが変わるわけでも無いはずだ。

 

「なまえだっておざなりだ!わたしにはなんのかんじょうもいだいていないのだろう!?」

 

 捲し立てる。どうせ殺されるくらいなら、とあらん限りの力を振り絞る。頭を回転させ、知識をかき集める。そして、見つけた。……魔法使いの手口を。

 

「ついにおもいだしたのだ、きさまの“神殺し”のいつわを!」

 

 名を与えるとは、他の事物と区別して言い表すという事だ。今よりも遥か昔、神々が地上に頻繁に降り立っていた時。その時の「名」が持つ力は今とは比べ物にならない。

 

 神は神の名を持つからこそ、神であり超常の力を持つ。人は人の名を持つからこそ人なのだ。神話のような強さを得るのだ。

 

 だが、魔法使いは……その者の名を全て破棄しただの人としての名を与え、殺してきた。肉体も神格も人にされ、名前すらも人にされては最早神ではない。

 

 事実、神としては死亡する。

 

「きさまは───!かみをひとにしてころしてきたのだろう!?わたしもそうやってころすきなのだッ!!」

「……ほう」

 

 奴になんの考えがあるのか、私の名は未だに神の名を残している。だが、肉体は既に人だ。奴はいつでも私を殺すことができる……!

 

 

 

 






時間なくてまともに誤字脱字だとか確認してない所か、読み直しすらしていないと言うね……これは無能。文法とか死んでそう(いつもの)。
しかし、これ以上遅れるのは不味いと思うの。

なので皆さん、誤字脱字報告……お願いします(土下寝)
それと、コメントが来る度に「やべぇな!急がないと!」となるのでコメント送るといいですよ(謎の上から目線)

えるえるのところのイキリトすこすこスコティッシュフォールド。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「怒ろうと思ったら怒られた」

初投稿!時間が無いため適当に前書きを終わらせるぜ!

今回は超特急で書いた!確認は済んでいないです!皆さん確認してね!
誤字脱字コメント、待ってますぞ!コメントくれから加速したんやで?ほらほら、コメント下さい(乞食)










 ▪

 

 

 その時、世界は止まった。

 宙に浮かぶ食器も、壁に掛かる真新しい時計も水道から流れ出る水ですらも。

 

「一つ、訂正する事がある」

 

 ショウの魔力が溢れ出す。その場のオドを全て退ける程の量。物理的な壁を感じるほどの重圧を放ちながら、ショウは言う。

 

「妻である君を殺すことは無い」

 

 いつも通りの顔で、いつもとは違う雰囲気で述べる。

 自分の身体が徐々に後ろに下がるような感覚を覚えながらも、私は奥歯を噛み締め堪える。

 

 言わねばならない事がある。胸の奥から湧くアーチャーの歓喜の感情が苦痛でしかない。

 

「わたしはマユだ!おまえがそうなづけた……!“君”ではない!」

 

 ショウへの反抗は死に繋がるだろう。だがたとえ死ぬことになろうとも……いや、もう死んでしまうなら言いたいこと全てをぶつけるべきだ。

 

「それに、わたしはおまえの“妻”になったおぼえも、こんなところにとじこめられるいわれもない!」

 

 両手を握りしめ、震える喉から声を絞り出す。恐怖で血の気が引き顔が青ざめていようとも口を閉ざすことは無い。

 

 口を閉ざせば屈伏、頷けば従順。

 

 そのどちらも許せないのだ。

 

 従えば生き長らえるだろう。だが、終わりは来る。だと言うのになぜ踏み止まらなければならない?

 くだらない。プライドを捨ててまで生きたいなど、思わない。

 

「わたしはしにたくない!だからおまえにしたがった!だが、それもここまでだ。ころしたければころせ。ころされるために“飼い殺し”にされるのはごめんだ!」

 

 許容できるとするなら……同等の立場だ。

 どちらかが上でも下でもない。同じ位置。それなら、我慢出来る。

 

「“愛”のないおまえなんかに、わたしはっ──────」

 

 恐怖か別の何かか、涙が溢れそうになるのを堪えながら更に吠えんとした時、ショウが口を開く。

 

「───そうか……そうだったか」

 

 突如として、ショウの魔力が消失する。

 

「うあ!?」

 

 魔力の壁に押し出されないように前のめりに踏ん張り続けていた身体が、自由になった反動で前によろめく。その先にはショウが居た。

 踏みとどまろうとするよりも早く、ショウが私の身体を受け止めた。

 そこからガラス細工を扱うような優しさでそっと抱きしめられる。

 

「俺がマユを殺す事は無い」

「っ」

 

 低い声に棘は感じない。ささやき声が耳元で響く。

 どこか諦めたような声音だった。

 胸がズキリと傷んだ。引き離そうと藻掻くも、非力な体でそれは無意味だった。

 

「……先に謝罪しよう。マユ、俺は……手を放す事が出来ない」

 

 ショウの声は悲痛なものに徐々にかわり、抱きしめる力が少し強くなる。

 

「目的がある。……捨てられなかった物を捨てる為に、マユが必要なんだ。他には何もいらないと、そう考えていた」

「……やはり、からだがもくてきか」

 

 やはり、私の推測は間違っていなかった。……だが、待てよ?他には何もいらないだと?……捨てたいものを捨てた先にロビンフッドは在るのだろうか。

 

「そうだ。だが」

 

 ショウはやや鼻息荒く、力強く言う。

 

「マユを見た時から、その考えを改めた。今の言葉を聞いて深く悔いた」

「……どういうことだ?」

 

 私は身体を強ばらせたまま疑問符を浮かべる。からだが触れ合ったせいか、またはショウの感情が高まっているからか、私にショウの魔力が流れ込んできている。

 濃厚……いや、それどころの話ではない。こんなものを秘めていては生き物は死ぬ。

 

「……マユの心が欲しくなった」

「は?やるわけないだろう」

「ふっ、だろうな」

 

 鼻で笑いながら、ショウは私を抱きしめる腕を離し立ち上がり、背を向けた。

 

「初めは、殺す気なのだろうなどと言うマユの発言を咎めようと思った……が、どうやら叱られるべきは俺だったようだ」

 

 気が付けばテーブルの上は綺麗になり、麦粥とは違う簡単な料理が並んでいる。焼かれたパン、そしてそれに塗る為のジャムなどだ。

 

「怖がらせてしまったな。……すまない。これからはマユに好かれるため、努力するとしよう」

「え?」

 

 ……えっ?えっえっ……え?

 まてまてまて……考えるんだ私。好かれる為に努力するだと……?馬鹿なのか此奴は。というか、心が欲しいとか、え?それはあれだろう、魔術の材料的なアレなんだろう?

 

 落ち着け私。顔を赤らめるな体。キョロキョロするなおい。

 

 好かれる為の努力だと?ショウはアインツベルンの居城でホムンクルスに洗脳紛いの魔法を使っていただろう。それを使えば一発じゃないか。……こんな事に今更気付くとは私は残念な頭をしているな全く。

 

 つまりなんだ、ショウは魔法を使わずに私を惚れさせると?馬鹿なのか?馬鹿だな、馬鹿。うんうん。ショウは頭がおかしいんだな。

 

 おい、ほっぺた。ショウがこちらを振り返る前にそのニヤケ顔をやめろ。ショウを言い負かす事が出来て満足しているから仕方ないが、ニヤついているところを見られると何か言われてしまう。

 

「……さて、腹を空かせているんだろう?好きなだけ食べるといい」

「ふん。つぎわたしのりょうりをすてたらおこるからな」

「ふむ。次からは料理の手解きをしてやろう」

 

 料理を教えてくれるのか、ふむふむ。それは良い。ショウがいなくてもご飯が食べられる。

 

 ん……?料理が上達するまではショウがいないと食事が出来ないのでは……か、考えるのはやめよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◻

 

「───そうか……そうだったか」

 

 マユちゃんの告白(別れ話)を受けた俺は世界に絶望した。

 妻じゃないって……妻じゃない……おおおおおおお(男泣き)

 

「うあ!?」

 

 おっと危ないな。

 と俺はマユちゃんを受け止める。ついでに抱きしめる。おっふ、もふもふ……もふもふ……くんかくんか。ルイズコピペを言いたくなるが流石にキモすぎてNG。

 

「俺がマユを殺す事は無い」

「っ」

 

 そう、言わねばならない。

 

「……先に謝罪しよう。マユ、俺は……手を放す事が出来ない」

 

 こんな可愛い存在を手放すわけないんだよなぁ(犯罪者)

 というか、香りが……!くっ!まずい……後回しにしていた興奮がッッ!

 

「目的がある。……捨てられなかった物を捨てる為に、マユが必要なんだ。他には何もいらないと、そう考えていた」

「……やはり、からだがもくてきか」

 

 耐えろ俺っ……!どうにかして台詞だけは繋ぐんだ……!ま、まずいぜ……!俺の約束された勝利の剣が全て遠き理想郷からぬき放たれてしまうっ!

 

「そうだ」

 

 あぁ!正直にいってしまった!待て落ち着け、否定するんだ。

 

「だが」

 

 興奮で鼻息荒くなるわこれ……細い肩とか最高ですね。というか、女の子を抱きしめるとか……くっそ無駄に長い間生きてるのに……何回目よ?数回しかないよね俺。

 いや考え直せ、数回あった奇跡を思え。俺って恵まれてるな。

 

「マユを見た時から、その考えを改めた。今の言葉を聞いて深く悔いた」

「……どういうことだ?」

 

 マユちゃんの身体が震えてるし、固まってるな。ぐふふ、揉みほぐして……あ、俺みたいな奴に抱きしめられてるから怖いのかごめん。

 だがまぁここからカッコよく挽回するのが俺ですよ。

 

「……マユの心が欲しくなった」

 

 ドヤァ。興奮でちょいキャラ崩壊気味だが、ノープロブレム。

 

「は?やるわけないだろう」

 

 マジレスキタコレ。やべぇ、致命傷だわ。だがそれがいい。

 

「ふっ、だろうな」

 

 俺は立ち上がり、背を向ける。抜剣されてしまった約束された勝利の剣を隠す為に。

 

「初めは、殺す気なのだろうなどと言うマユの発言を咎めようと思った」

 

 だが、気が付いたら心をズタズタにされ、後回しにしていた興奮に襲われ興奮した。

 

「……が、どうやら叱られるべきは俺だったようだ」

 

 変態でごめんなさい。叱って下さい。罵ってもいい。

 さて、興奮も収まった。まだ約束された勝利の剣は発光したままだが。ここから先は全て本心だ。……いや、さっきまでも本心だけども。

 

「怖がらせてしまったな。……すまない。これからはマユに好かれるため、努力するとしよう」

「え?」

 

 うん?ドン引きしてる?

 は、話を変えよう。そしてゆっくりと時間をかけてわかり合えば良い。

 

「……さて、腹を空かせているんだろう?好きなだけ食べるといい」

 

 うん……あれだな。話の変え方が雑。でも童貞にはこれが限界だよ。

 ……いや、よく考えたらロリ相手にタジタジな俺ってヤバイやつでは?今更か……。

 

「ふん。つぎわたしのりょうりをすてたらおこるからな」

「ふむ。次からは料理の手解きをしてやろう」

 

 後ろを向いてるから分からないが、マユちゃんが頷いたのはわかった。

 さて……どうすればマユちゃんにテントを見られずにテーブルに着けるだろうか。

 

 あ、そうだ。

 

「ルーラ」

「!?」

 

 ルーラで直接椅子に座る。とてつもない無駄遣いだ。マユちゃんが目を見開いてこちらを見ている。可愛い。

 

「どうした、座れ。食事だぞ」

「あ、あぁわかった」

 

 席に着いたマユちゃんにイチゴジャムを塗ったパンを手渡す。すると、それを両手で持ってはむはむと食べ始めた。

 何この小動物。可愛すぎかよ。

 

 あー、あとあれか。閉じ込められてるとマユちゃんが感じているから……お散歩もしなければならないのか。いや、旅行と言い換える事で夫婦感満載になるな。旅行しよう旅行。

 

 だがその前に家の改造だな。

 また魔王の使いを作って仕事してもらわないといけない。家具の設置とか途轍も無くダルいからな。

 ポンと改造して、後の設置物等は魔王の使い達に任せる。任せているあいだに旅行。……完璧か?

 

 いや待てよ。旅行と言うよりは、街に探索……と言った方がいいかもしれない。いきなりヨーロッパとか行ってもな。まずは近場から慣れさせよう。慣れないと人混みなんかは疲れるからな。

 ……!!

 

 疲れさせておんぶ……する?悪魔的発想だ。俺は天才だった?

 まてまてまて……可哀想だな、意図的に疲れさせるとかやってはいけない。

 

「はむっ、はむ……!」

 

 うーむ、天使。

 

 あっ、わかったぞ。魔術協会とか教会とか、至る方面に「紹介しよう。俺の嫁だ」ドヤァ!挨拶回りしてこようか。アインツベルンとか御三家にもな。

 これは世界的ニュースの予感。マユちゃんを狙う魔術師とか現れたらそれはそれで美味しい。カッコよく、かつ華麗にそれらを撃退し愛を囁くのだ。……どうせ本番では囁けないが(照)まぁ理想は理想。妄想はタダだからな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 *

 

 1日後、世界は阿鼻叫喚の大騒ぎとなった。

 

『魔法使い、少女を娶る』『魔法使いの心を奪ったのは幼き少女』『世界の転機か!!魔法使い結婚!!』

 

 などなど、魔術師などの「そちら」を知る者たちは大パニックを起こしたのだった。

 

「…………………………………………ショウ」

「ん?どうした、マユ」

「……………………しね」

「死なん」

「しね!!!!」

「死なん」

「ううううぅぅぅ……!バカバカバカ!こんなのただのはじさらしだ!しんでしまえばーか!」

 

 新聞を読んだ某嫁も、大パニックになったのだとか。

 

 

 











物語の時間……飛ばすか否か!迷ってるぞぉー!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「 このセリフを言われて喜ばぬ女は居なかった(童貞妄想並感)」


確定演出でアナスタシアが来た記念に初投稿。
確定演出で出てきたヘラクレスでレベ100ヘラクレスが宝具レベル5になった記念に初投稿。
確定演出でピックアップよアタランテオルタを殴り飛ばして来てしまったベオウルフゆるさない記念に初投稿。
さらについででポロッと出てきたうるさいファラオの王様も当たってしまった記念に初投稿。

……いや、無課金でしかも最近遊んでないんすよ。育てられる気がしないよ星5鯖。素材枯渇してるよ多分!

飛ばす飛ばすと言いながら書いては消すこと数回。結局殆ど飛ばなかった初投稿だよっ!

おや……?放置気味だったアーチャーの様子が……?という感じですね今回は。

結局、2時間で仕上げた。あいだに食事も入ったけど。

というわけで、誤字脱字報告、コメントをシフシフことシフシフは待っております。

遅れてすまねぇ!(遅刻報告激遅ニキ)









 

最近、マユちゃんの元気が無い。

 

やはり「彼女が出来ました。いえーい」みたいな報告はダメだっただろうか。

 

「……」

「マユ、食事が出来たぞ。そろそろ麦粥も卒業する頃合だと思ったからな。肉料理だ」

「…………おいておけ」

「食べ方はわかるか?」

「とうぜんだろう。なめるな」

「そうか。では置いておくが……冷めると不味くなるぞ」

 

……うん。冷たい!

 

っかぁ〜〜!あまあまな生活はまだか!?俺の自業自得なのだろうか!!

……まぁ確かにさ、「君の心が欲しい」からの「彼女が出来ました。いえーい」は無いと思うよ?いやもちろん、こんなテキトーに言ったわけでは無いぞ?ものすごい真摯に、カッコよく、綺麗な言葉でいずれ娶る、と宣言をしたわけだ。

 

───このセリフを言われて喜ばぬ女は居なかった。

 

位の自信があったがな(童貞)。……うーむ。他に思い当たる節が全然ないんだが……本人に聞くしか無いのだろうか。

あの告白以降部屋に籠りっぱなしだし。

 

家の変化にも気がついてないんだろうなぁ。

 

 

 

今、あれだからな?我らが愛の巣は物理法則無視してるからな。

 

逆ピラミッドみたいな拡張のされ方してるからな。下に行くほど小さく、上に行くほど大きい。ガタイのいい男みたいな感じか?

一番下の部屋を破壊したら上も全部落ちてきそうな……まぁ想像出来るだろう。当然だが、下を破壊されたところで倒壊はしないぞ。

 

今マユちゃんがいるのは最上階の寝室だ。ちなみに、この建物に寝室はそこしかない。

つまり、どういう事かわかるか?

 

──そう、俺とマユちゃんは同じ部屋で寝ているのだ。

 

……事案?確かに、バレたら事案だろう。だがな……マユちゃんが眠ってから最も睡眠が深いタイミングで中に滑り込んで眠り、マユちゃんが起きる前に起きて可愛い寝顔を心ゆくまで楽しんでからルーラで他の部屋に向かうことでバレない。

 

そも、夫婦なのでバレても問題は無い。……まだ夫婦では無いか。許嫁的な?

 

まぁ、そんなこと言ったら初っ端から丸裸見てたし?多少はね?

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

 

あぁ、最悪だ。最悪の気分だ。本当に、嫌な気持ちだ。ショウめ……まさかとは思うが、これが狙いか?

ちっ、初めこそ無視していたが、これは酷く憂鬱になるな。

 

まさか……私の心が欲しいとショウが宣言したせいで…………

 

 

 

ロビンフッドが拗ねるなんて……。

 

 

 

ええい!!黙れロビンフッド!私の核たる貴様が落ち込むと私まで落ち込むのだそ!やめろバカ!

 

大体、何度も言って聞かせているだろう?!奴のあの言葉はまやかしだ!あの場を凌ぐための嘘でしかないと。

それにだ!仮にショウが本当に私の『心』を手に入れようとしていたとして、その『心』と言うのが何を指し示しているのかはまだ不明なんだぞ!?

 

言葉通りに受け取るなら確かに私からの好意かも知れんがな……ショウの目的を考えるなら私の心臓部……要するに聖杯……に、なるはず……だ?むむむ……いや、既に手に入れたも同然だ。となれば心は別……?

 

ああ待て!落ち込むなやめろ!

 

まてまてまて……待つんだ!えっと、うーんと!

 

───待てよ?ショウが捨てようとしているものは感情なのではないか、と言う仮説を私は立てた。

そしてショウはなんと言っていたか……確か──

 

 

──「俺は……何も捨てる事が出来なかった。どうしても捨てたい“もの”があった。どんな手を使ってでも失いたい“もの”があった」

 

──「だが、俺には勇気が無かった。それを“失うために必要な行為”を……行う事がどうしても出来なかったのだ」

 

──「目的がある。……捨てられなかった物を捨てる為に、マユが必要なんだ。他には何もいらないと、そう考えていた」

 

 

……ショウが捨てたい“もの”が感情だとする。そして感情を捨てるには()()()()()()()()()()()()()()()の行為をしなければならない。

そして、その行為には私……若しくは私の体が必要なのだ。ショウは忙しく動き回っていた。(聖杯)を手に入れたその日にアインツベルンへと向かい天の衣を手に入れていたし、あの日も何処かに夜遅くまで出掛けていた。

 

……恐らく、あの日に何処かに出掛けた際に何かを見つけたのだろう。結果、聖杯だけでは足りないと考えた。私の心を手に入れる事で何らかの変化を得られるのだろう。

 

他人の心を犠牲にする事で……なんてオチではないと願いたい。

………………マユが必要なんだ。他には何も要らないと、そう考えていた。

 

 

あぁ、最悪だ。ショウはもしや……いや、そんな筈はない。それではショウが願いを叶えてあげたい等と言うものか。

 

えー、ともかくだ。ロビンフッド……言うのが面倒だからこれからはロビンと呼ぶぞ。いいかロビン。ショウの目的は大きく分けて2つだ。

 

1つ、感情を捨てる事。

これはあくまで推測でしかない。が、ショウの行動や言動などから考えて有り得なくはない。

 

2つ、ロビンの復活。もとい婚約。

……まぁ、説明する必要などないだろう?どうせ私を通して聞こえているだろうし、私の考察も盗み聞き出来るのだから。とはいえ、私の体が成長するまではショウもこちらの計画は進めないようだし……となると、1つ目は2つ目を行う前にやるつもりか。

 

……ショウは感情を捨てたあとロビンと婚約を結ぶのか……?

 

ん?あぁ、待て落ち込んだ感情を送り付けるな呪うぞ。

そも、ショウが全ての感情を捨てると決まった訳では無い。怒りや悲しみと言った「永く生き続ける」には不要な感情を消し去るだけなのかもしれない。

 

……全ての感情を失うだけなら出来るだろう。ショウのことだしな。

 

とにかくだ、拗ねるのはやめろ。私にまで影響が出るのだから。

 

むぅ……なぜ嫉妬の感情を感じるのか。まさか、私の方が早くショウの名前を知ったから、とかショウに名前を読んでもらえるから、とかそんな理由か?それとも私がショウと実質二人きりで生活しているからか?

 

くだらんな……私はこんなにも恐怖に苛まれているのに。まぁだが、ロビンにも多少の感謝はしているのだ。きっと、お前がショウの事を好きじゃなかったら、その感情を私に伝えてこなければ……私は恐怖のあまり狂い果てることも有り得た。

 

お前という存在がショウを愛しているからこそ、私は平常心をギリギリで保てたのだろう。

普通なら自分を片手間に殺せる存在とひとつ屋根の下、なおかつ外に出られないなど……地獄以外の何物でもないだろう?

 

そういった意味合いでは感謝しているのだ。

だからこそ、先に謝っておこう。私はお前に身体を譲るつもりなど無いし、ショウの婚約者として死ぬつもりなど無い。

 

呪い殺してでも逃げ出して、自由になってみせるさ。

 

 

 

……ふっ、それでこそロビンフッドだ。反骨精神は並ではないな?

さて!気分も晴れた事だ。さっさと肉を食うとしよう。

 

「…………?」

 

まて、テーブルは何処だ。スプーンもないぞ?どうやって肉を食えと……あぁ、言外にリビングで食えとそう言っているのか……面倒な。まぁ、部屋から私を自主的に出そうという考えなのだろう?

 

はぁ……まぁいい。腹が減ったことに変わりはないし、それを満たすために食器はあった方がいい。私はアンリマユ。獣ではないのだからな。

 

皿を持って扉を開ける……のは無理だから、皿を置いて……扉を開く……っ!?

 

「ふぇっ!?」

 

扉を開けばそこは─────空!

 

「ちょちょちょっ!?おちおち……おち……ない」

 

えええぇ……見えない床と見えない壁がある……なぜこんな風に……

 

と言うか…………!!

 

 

「たかぁぁぁぁぁい!」

 

周辺が山で囲まれてたなんて私は知らなかったぞーー!

高すぎるだろう!?なんでだ!?私が知らない間に何だってこんな巨大な建造物になっているんだ!!おかしいだろう!?

 

せめて同居人に何か言ってからやれ!心臓が止まったらどうする気だ!!そしてロビンッ!感心している場合か貴様!どんだけショウが好きなんだ!?私が死んだらショウの計画は水の泡、お前とショウの幸せ家庭生活も全部無しだ!分かってるのか!?

 

まったく……!!!最悪だ!最悪だぞショウ!最低だ!

 

「…………」プルプル

 

ぐぬぬ……ええいショウめ……最悪だ…………!!

 

「う、うごけない……」

 

うぅ……腰が抜けた……。む?後ろで物音?

 

「──大丈夫か?」

 

うげっ、ショウだ……腰が抜けているところなど見せられない!

 

「だだ、だいじょうぶだ。よゆうだ」

「……そうは見えないな。立てるか」

「たてる。……っ!……くぅ!……ぐぬぬ……!」

「…………………………」

 

な、なんで立てないんだ……力入らないし体重いし!しかも無言でこっち見てるし!本当に何考えてるか分かりにくい!ショウ怖い!……なんか魔術とかで虐めてるだろ私のこと!

 

「 もういい。ほら手を上げろ」

「ううぅ……ぜんぶショウがわるい!なんでスプーンもはしもないんだバカ!わたしをいじめてたのしいか!?」

「気分を害したなら謝ろう。そら、下に行こう」

 

いや謝れよ!?謝ろうで謝った気になるなショウ!もっと誠意を見せろ!私の満足のいく説明をよこせ!ショォオオオオオオ!

 

 

 

 

 

「ふん!ゆるさないからな!」

「早く食わないと不味くなるぞ」

「おまえはわたしをなんだとおもっているんだ!たべものをあたえればだまるしょうどうぶつではないんだぞ!」

「ほら、切ってやったぞ。口を開けろ」

「だいたい!わたしはだな!モグッ。むぐむぐ……」

「……黙ったな?」

「うふはい!はへものははいっへへははへないんは!はか!(うるさい!食べ物が入ってて話せないんだ!バカ!)」

「お代わりはいくらでもあるぞ。好きなだけ切ってやる」

「むむむ?(ほんと?)」

「あぁ」

「……ごくん……ふん!ゆるさないからな!りょうりおしえるとかいったくせにかってにつくるし!」

「……それはマユが降りてこないからだろう?」

「いいやショウがわるい!」

「なんて理不尽な」

「ショウがいうのかそれ!?」

 

 

 

 







次回……!未定……!!!



最近はリア友達とフォートナイトでビクトリーロイアルするのがたのしいですね(唐突)
なんか、ロケランとか爆発物しか武器がない爆弾魔なるモードがあるのですが、それのスクワッド(4人でチームを組むモード)を友人とプレイした際、招待されてパーティーに入ったのでルールとかゲームモード見てなくてスクワッドだということを知らずに友人と2人で突撃。
美しい漁夫の利を決め続けまさかの初回でのビクトリーを飾った時はびびりましたね。
ちなみにシフがスクワッドだと言うことに気がついたのはグループLINEで友人達に報告している時でした。

魔法使いかなーやっぱw

あ、ちなみにフォートナイトをプレイして2回目でビクトリーロイヤル取れた時は手が震えるほど嬉しかったです(聞いてないw)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「未来から来ちゃった☆(来ないで)」


初投稿です。えふじーおーがだいすきなので、かいちゃいました、まる
がまんできませんでしたまる。だめだったらやめます、まる。

あ、遅れてすみません(正気)

新しく学校か始まって死にそうだゾ☆
うーん睡眠時間がほすぃ。
実際、バイトがあると睡眠時間が3~4時間になるので頭が回らなくて執筆進まないぜ☆







「先輩、次のレイシフト先なのですが……」

 

 鈴のような声が耳を打つ。

 私の名前は藤丸立香。そして、ベッドの上に寝転がる私に話しかけるのは後輩のマシュ。

 

 私達は人理を修復する為、特異点への転移を繰り返して来た。組織の名前はカルデアって言って、ロマ二やダヴィンチちゃん、他にもムニエルさんとかと今まで頑張ってきた。

 

「もしかして、あの特異点?」

「は、はいっ“1900年”に発生した特異点です。今までは安定性が段違いで人理修復の妨げにならないと放置してきましたが、協会による審査が入りますから……後顧の憂いは断つべきだと」

「……うん。そうだね!じゃあいつも通り頑張ろうか!」

 

 私達はなんとか、色んな英雄達の協力もあって世界を救えたわけだ。ゲーティアをマシュの盾でぶん殴った感触はまだ覚えているし、マシュが目前で死んでしまったあの瞬間は未だに夢に見る。

 

 でも、私達は強くなった。

 肉体的には全然だけど、心はなかなかのものだと思うよ。ふふん。まぁ、それを活かす機会はほとんど無くなるだろうけどね。

 

 それにしても……“謎の特異点”かぁ。確か、ダヴィンチちゃんが言うには異世界点未満の特異点以上なんだっけ?つまりどういう事なのかわからん

 

「では、今回のレイシフトに関する説明を……」

 

 マシュがそう言うのが早いか扉がノックされ、開いた。優しそうな青年。……未だにカルデアに残って魔術協会に備えてくれているシャーロック・ホームズ。ホームズといつも呼んでる。

 

「おはようミス・立香」

「おはようホームズ!」

「ははは、元気で何よりだ。もう少し話していたいけど、早速本題だ」

「うん、特異点でしょ?マシュから少し聞いたよ」

「ミス・キリエライト、詳細の説明は?」

「今から行う所でした」

「わかった。さて、今回の特異点は正直異常だ」

 

 ニコニコとしていたホームズがスっと真顔になる。真剣な話の時はこうなる。私も真似してシャキッと引き締める。

 

「この特異点は魔術か……それ以上の何かで意図的に作られている。少なくとも聖杯の力じゃないことは確かだ」

「えっと……つまり?」

 

 それって魔術師が特異点を作ったってこと……?

 ホームズは基本、勿体ぶる。なかなか答えを言ってくれないんだ。まぁ、私たちの為だとは思うけどね。

 

「魔術王の可能性は無い。他の誰か、あるいは団体が()()()()()()()()()()()として作り出した。そして……人理滅却に耐えられるだけの魔術なんてものは神代の魔術にも無い」

「じゃあ、魔法?」

「そうだね、そうなる。そうなると該当する人物は限られてくる」

「魔法使い様……!?」

 

 魔法使い。マシュがぼそっといった単語に私は反応した。数多くの御伽噺にこれでもか!ってくらいに出てくるから知らない方がおかしいし、私達は魔法使いさんに何度も何度も助けられている。

 いや、魔法使いさんって言うより、魔法使いさんが残したものなんだけど。

 

 旅の祠って言うワープ装置が各地にあって、私達はそれを利用したりして頑張った。そこを守っていた()()の皆は見た目と違って理性的で知性に満ちていて、魔法使いさんが残したものを消されてたまるかっ!って私たちにみんな協力してくれたんだ。

 最低でも一体一体がサーヴァントかそれ以上、果ては神様より上かも!なんて言われちゃう凄い強さだった。

 魔王の使い、って名乗った4本腕の戦士の人は円卓の騎士達を相手に大立ち回りを演じるし、りゅうおうって言う面白い髪型の人はドラゴンになってラフム達を薙ぎ払っちゃうし。

 

 命令を守るために祠の近くから動けないけど祠からラスボスに攻撃するとか、祠に相手を引きつけるとか、色々とやってくれた。

 

「いいい、急いで準備ををを……!!」

「マシュ、興奮しすぎ」

「あ、す、すみません……!!」

「あはは、いいじゃないか。私も会えると思ったら興奮してきたからね」

「ホームズも?」

 

 伝説の存在と会えるかもしれない。そう思うとワクワクするのは当たり前だ。特異点に挑む時だって恐怖と不安とワクワクを綯い交ぜにして立ち向かうんだから。

 ホームズもマシュもやや興奮気味だ。ホームズが否定しなかったし、この喜びようなんだから、あの御伽噺に出てくる魔法使いさんで確定なんだろう。やっと御礼が言えるわけだ。

 

「おーい、マシュに立香君!そこの無駄に逃げ足の速い探偵君を捕まえてくれないかい?」

「おっと、もう追い付いてきたか。このままではレイシフトについていけなくなるな……」

「行かせないよ?私だって()()()()に会いたいんだ。それに、レイシフトだって久しぶりだ。何が起こるかわからない以上、万全を期すべきだ」

 

 ダヴィンチちゃんの言葉にホームズは「やれやれ」と賛同し、私たちと一緒には行けない、と私の方を掴んできた。痛い痛い痛い、結構本気で悔しがってるよこれ……。

 

「そうか、時代的に君と彼が出会っていてもおかしくは無い。彼が()()()()()()表舞台から姿を消したのは1800年代初頭だ。残念ながら私は会う事が叶わなかったがね。でも大丈夫、英霊となったから寿命は無限、いつでも待てるよ」

「ふふふ、羨ましいかい?私はね、彼と理想のおっぱいの大きさについて語り合ったんだ」

「「えっ」」

「おお、それはそれは。で、彼はなんと返したんだい?」

「──理想など人それぞれ。強いて言うならみてくれなどどうでも良い。だったね、いやぁ、渋い」

「「ほっ(安堵)」」

「うんうん、なるほど。ダヴィンチ女史、君相手にされてないな?」

「そんなことないやい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◻

 

「おはよう、マユ。朝食の時間だ」

「ちっ……おはよう、ショウ。きょうもたのむ」

 

 うーん、可愛い。嫌々仕方なくやってますアピールが凄い。

 でも教え始めると目をキラキラさせながら必死になるからな、最高だぜおい。

 

「パンや卵を使った簡単な料理は作れるようになったはずだ。よって、これからは米と野菜を使った料理に入る」

「ふむふむ」

「さて、このページから食べたいものを選べ」

「むむむ!………………ちゃーはん?はどうだ?」

「炒飯か。比較的分かりやすいものを選んだな。……少し筋力が不安だが……まぁいい。必要な道具もそこに書いてある。読めるか?」

「ばかにするな!もじくらいよめる!…………うっ、なんてよむんだこれ……」

 

 次からは予めふりがなをふってあげようと思いました(優しい気持ち)

 おっ、そうそう。そのフライパンを持ってだな……あ、持てない?そう。お、こっち見た。フライパン見た……こっち見た。

 

 助けろと?可愛すぎない?

 

「……バイキルト」

「……?」

「持ち上げてみろ」

「だから、もちあがらないとっ!?すごいもちあがった!みてくれ!」

 

 ────。(尊死)

 

 はっ、危ない。持ち上がったフライパンを嬉しそうにこっちに見せてくるとか死ぬわ。

 まぁ、それでも俺は動じない訳だが(大嘘)

 

「そうか。良かったな」

「ぐ、ぐぬぬ……」

 

 それにしても白のワンピースだけってのも、素晴らしいな。黒い髪が白のワンピースに映える。100人中100人が可愛いと言うに違いない。 あ、下着はパンツ履いてるからな。上はまだ要らんだろう。

 

 

 ─────で、だ。

 

 はぁ……なんで侵入者?いやいや、ここに来るには旅の祠使ってくれ。全く、全身タイツから逃れる為だとか、多目的に作ったわけだが。防犯の自信はあったぞ?世界線越えてくんなよ……

 

 うーむ、マユに知られないようにさくっと行ってサクッと掃除するべきか。

 まあ、来れるとしたらゼル位だろう。

 

「マユ、少し出かけてくる」

「えっ、こ、このあとはどうすれば……」

「このページのここだ。作り方は書いてある。……そうだな、ふりがなを振ってやる」

「……こどもあつかいするな」

「教えるのは次の機会にまわす。留守を頼むぞ」

「……わかった」

 

 うむ。いい子に育つんだぞ。

 ではルーラ。

 

 

 

 

 

 ✳

 

 

 それは余りにも唐突だった。

 マシュと立香、が特異点に降りたって10秒も経たない……周囲の花畑に見とれていた瞬間だ。

 

「───ようこそ、我が箱庭へ。だが、招待状を送った覚えは無い」

「ッッ!!」

 

 その反応は奇跡だった。マシュは咄嗟に盾を構えた。偶然にも盾で庇える方向に立香が居た、だから助かった。幸運だったのだ。

 驚き硬直した瞬間、辺りが光に包まれたかと思えば……2人は宙に舞っていた。

 

「ぇ──────?」

「マスター!」

 

 気配も無く、突然の出来事だ。

 空中に佇む一人の男は、その場の全員を感情を感じさせない底冷えする目で見下ろしていた。

 

「あれが……魔法使い……様?」

 

 マシュの呆然とした呟きが虚しく風に流されてゆく。勝てない、不味い、守らなきゃ。絶望と使命感が体を支配する。

 

「お前達がそう呼ぶのならそうなのだろう。事実、魔法は数多く扱える。そして、お前達は愚かにもその魔法使いと事を構えようとしている」

 

 ショウはゆっくりと瞳を閉じ、その両手に魔力を集中させてゆく。2度目の警告だ。そう言わんばかりのゆっくりとした動作だ。

 

「ち、違います!私達はっ……!」

()()()()、だろう?」

 

 自らの所属、身分、目的を話せば理解してもらえる。そう思い事情を述べようとしたマシュ。今まで間接的にとは言え人理修復に手を貸してくれた存在だったのもある。しかしその魔法使いは釘を刺す用に先手を打ってきた。

 

 つまり、自分たち『カルデア』を知っていて攻撃をしてきた。そう理解すると同時に腰がひけてくる。逸話だけを見ても()()()()()()()位に強いのだ。事実は小説よりも奇なりと言うように、正しく目の前に居る男は()()()を通り越した存在であると理解出来た。

 

「っ!……そ、そうです。私達はカルデアから来たもので、人理の修復を目的に、やって来ました……」

 

 それを理解したマシュの声量が徐々に小さくなっていく。だが、それでも尚、立香の前に立ち交渉を試みる。死なれたくない、()()()()()()()。尋常に対する憧れと、超常に対する畏怖と敬意がマシュを立ち止まらせた。

 

「マシュ・キリエライトよ。()()はお前達の邪魔になっているのか?」

 

 名前を知られていることに疑問などわかなかった。魔法使いなのだから知っていて当然だ。

 

「い、いえ!非常に安定していて、人理修復には邪魔になりませんし、そもそも人理修復は終えました!ただ……」

「面倒な詮索が入る。故に、邪魔になった。違うか?」

「そ、それは……」

「えーっと!あのー」

 

 底冷えする雰囲気の中、立香はゆっくりと立ち上がり手を上げる。

 

「いやぁ〜!いい場所ですね!……ええっと、藤丸立香です!お名前聞いてもいいですか?私達、貴方が魔法使いだって事しか知らなくて」

 

 頭の後ろを掻いて挙動不審になる立香。周りの雰囲気を和ませようという彼女なりの努力。とはいえこの雰囲気の中でそれを行う胆力は……多数の特異点を越えた今だからこそのものだろう。

 

「必要ない」

「え?」

「お前達には必要ない」

 

 しかし、帰ってきたのは明確な拒否。

 1ミリたりとも表情が動いていない。人形よりも人形らしいな、と立香はおもった。だが、その程度で諦めるほど人理を救った英雄は弱くない。

 立香の顔がキリリと変わったのをマシュは見た。特異点を探索している時の真剣な眼差しだ。

 

「人の事を一方的に知っていた癖に。そっちは隠すなんてずるい。プライバシーの侵害!」

「ま、マスター?!そそその、不敬では?!」

 

 あぁ、真剣な眼差しからこういう事言うからヒヤッとします。

 と顔に書いてあるかのようなリアクションをとるマシュ。一瞬でシリアス空間がほのぼのに変わる。

 しかし、ほのぼのを許すショウ(三人称視点)では無い。

 

「名とは、祝福にも呪いにもなりうるものだ。俺のように永きを生き、そしてあまたの敵意を抱かれるものにとって名前とは最悪の弱点になる」

 

 ショウはやれやれと首を振り、質問に軽く答える。

 しかしそれだけでは終わらず、いくつか言うことがあるようで、手に集中させていた魔力を霧散させた。

 

「名を明かすと言うのは相応の信頼と信用、そして実績が必要なのだ。理解出来るな?」

「うーん、なら仕方ない!」

「そ、そうですね!」

 

 あ、魔法使い様の目が半目になった気がします。動いてはいませんが。とマシュは思い内心で謝罪しつつ誇りに思う。立香のペースに呑まれるとどんな英雄だっていつの間にか仲良くなっているのだ。

 

「ひとまず、帰れ。ここにお前達の居場所は無い」

「えっと、魔法使いさんはすごい偉いんだよね?もしかして魔術協会を退けたりできる?」

「俺がそうする道理は無い。これ以上の恩情を俺から受けて、お前達は返し切れるのか?」

「うへぇ……返却しなきゃいけないのかぁ……」

 

 

 ◻

 

 実際俺は必死だった。

 全力で2人をカルデアに帰したかった。そう言えばFate世界に『カルデア』なんてあったな、というレベルだったのだから。

 

 ゼルレッチのクソジジイがいると思って攻撃を撃ち込んだらあらビックリ、可愛い2人のボンキュッボンの女の子ではありませんか。

 

 俺は息子は伸びても鼻の下は伸びないよう全力を出し、そして眼差しが胸や尻、太腿に行かないように死力を尽くしていた。あぁ、あらかじめ出し尽くしておけばよかった。

 どんな理由でも良かった。()()だけはいけない。だから帰ってくれ!

 

 だって何をどうしたら浮気判定になるかわかったものではない。ギリシャとか見てみろ、ケルトとか見てみろ、女怖いんだぞ。裏切られた女怖いんだぞ。

 

 神話って知ってるか?女の嫉妬やべぇんだぞ。

 

 俺は怯えていたのだ。

 

 何が人理修復をした英雄か。家庭崩壊を招く災厄じゃないか!

 

 もしも何故か好感度が高い2人が家の中に入ってきてしまったら……マユを見られてしまう……!そう、そうなったら俺はロリコン扱い確定!どんな言い訳をしようとも恐らくだが()()される。なんか適当な理屈を付けられてロリコンにされる!なぜって?この時期ってホームズいるじゃねえか!

 

 だめだぁ、もうおしまいだァ……!

 

 いや、諦めるな。とりあえず帰ってもらってそのあと考えよう。

 

「あっ、あと宜しければここにサインを……」

 

 どんな悪徳商法ですか?!そこにサインをしたら何が起こるんですか?あなたはカルデアに全面協力しますとかそういうことかな!?

 ……と思ったら色紙?あ、サインってそういう……いや、用意してないから。

 

 と言うか名前を言えない理由言ったよね!?俺言ったよね!?

 

「……まさかとは思うが、話を聞いていなかったのか?」

「で、ですよね……ホームズさんがその、非常に楽しみにしていたので……」

 

 ホームズ……まじか、ホームズに俺狙われてるのか……怖、逃げよ。

 って不味いっ!!マユが外に向けて歩き始めたぞ!?まだ玄関までは距離があるが、それまでに帰さなくては……!

 

「どうでもいい。早急に帰れ。来るならば日を改め、あらかじめ連絡を寄越せ。さらばだ」

「は、はい」

「また今度来まーす!」

「……来なくていい。ルーラ」

 

 もう来なくて結構です。新聞お断り、カルデアお断り。サヨナラ!

 

 

 

 急げ急げー、と玄関前にルーラした俺。ドアを開けるとそこには今まさにドアノブに手をかけようとしていたマユの姿!手を伸ばしてドアノブを掴もうとしていたマユは突如目標物が無くなりバランスを崩す。

 

「ふぇ?!」

 

 そしてそこを即座にキャッチ!ラッキースケベ(意図的)を行いさりげなくパイタッチ。胸無いから……肋骨タッチ?

 

「マユ、何をしている?」

「ぇ、ぇっと……そのぉ……ええい、ショウにはかんけいない!」

 

 ……む?おまた抑えてるな。

 

「……ふむ。もしや……」

「…………か、かんけいないだろ!せんさくするな!」

 

 マユ……またトイレの場所分からなくなったのか……

 

「はぁ、こっちだ。今度は道を覚えろ」

「うぅ……めいろにするショウがわるい……」

 

 仕方ないやん……空間広げたりするの楽しかったんだから。

 それに、利便性は高いのだよ。ルールを覚えれば。

 

「とある仕掛けがある。それを覚えれば迷路では無い」

「ならそれをおしえろ!かってにかたちかわるし!」

 

 行きたい部屋を思い浮かべながら魔力を家に極少量流す事で邪魔な部屋が退くのだ。なお、この魔力と言うのは俺かマユ限定である。

 

「ある程度探せばわかる事だぞ?俺が教えてしまっても良いのか?」

「うっ……!おしえなくていい……!!」

 

 うーむ、発見は遅れそうだな?

 








寝不足のまま強引に書いた。テンションに任せてな……だから、皆、頼んだぞ……誤字報告、コメント……お気に入り……止まるんじゃ……ねえぞ……(ネタを守りきらない)





質問来そうだからここで答えるぜ(未来予知)

Qなんか文章読む限りだと複数の世界線にショウ君おるん?ヤバない?いきなり設定生やすなよ作者、謝罪として毎秒投稿しろ。
Aショウ君はランダムでワープしてそこら辺に祠を立てていましたが、その際「ショウ君の行ったことがない所」にランダムワープしているので同じ世界に限らず、知らないなら飛びます。
お陰でFGOの世界線でも祠があって大活躍という訳です。

Q1。このままFGO編やるの?アポクリファは遊びだったのね!あんたなんか知らない!
Q2。……投稿するのか……俺以外の原作を……

A私の気分次第だ。アポ編をやりながらFGO説もあるし、どちらかに専念して片方を失念することも出来る(おい)




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「カルデアの資料が届いたので嫁と見ることにした」

新しく学校も始まり、平日の睡眠時間が平均4時間を逝くシフシフです。このような初投稿小説にお集まり頂いてしまったとしたら恐悦至極にございまする。

なんて言うか、後半力尽きたかんがあったよ。眠くて眠くて全く執筆に力が入らない……こんなのが初投稿なんて……!




「来てくれないなら招待する!!」

「は?」

 

 カルデアの一室で立香はバッと立ち上がり大声で言った。つい先程帰って来てムニエルや他の職員と魔法使いの話をし終えた次の瞬間の出来事であった。

 

 その目はキラキラしていて、悪意なんて欠けらも無いのだろう。世界を救ったカルデアという機関を見てもらいたい。……褒めてもらいたいのだ。

 

 ムニエルはそれを察して、しかし話を聞く限りだと難しいだろうと結論を出した。

 

「いやいや、だって取り付く島もなかったんだろ?マシュから聞いたよ」

「んー、でも割りと好意的だったよ?」

「えっ!?あの話しのどこら辺からそう思ったの!?」

「招待されたら来るよ、みたいな事言ってたしー」

「それは昔からある社交辞令だろ?!」

 

 社交辞令。その言葉を聞いた立香が「むー」と口を尖らせていると、休憩室の扉が開いてダヴィンチが入ってきた。

 何やら普段よりも化粧に気合が入っていると立香は感じた。

 

「やぁやぁ立香くん。どうだった?魔法使いは」

「うーん、若干怖かったけど……割とやっぱりいい人だとおもう!」

「うんうん。そうだね、その通りさ。ところで、彼の張った結界か魔法かで私達は内部の様子を伺う事ができなかった。詳しい内容を教えてくれないかい?見えたものとかでもいいからさ」

「了解!……なんか珍しいね、ダヴィンチちゃんがそこまで食いつくってなかなか無くない?」

「そうかい?私は天才だからね、面白い事には目が無いよ?割と色んなことに食いついてきたと思うんだけど」

「うーん、なんかそれとは違うというか……まぁいいや」

 

 立香が10分ほどかけて事の顛末を語ると、楽しそうだったダヴィンチの顔は徐々に困惑へと変わり、最終的に考え込む様に腕を組み黙り込んでしまった。

 

「……ムニエルー、どうしよ」

「何か考えてるなら何れ話し出すよ多分」

「それならいいけど」

 

 暫く考えていたダヴィンチだったが、「うん」と声を上げたかと思えば晴れやかな顔でニコリと笑う。

 

「ちょっとレイシフトしてくる」

「いやいやいやいや!おかしいだろぉ!?」

「まぁまぁ、ほんの数分さ」えちょ!立香ちゃんまで!?」

「なにかわかったの?」

 

 ちょぅと様子を見に、ね。と言葉を濁し部屋を出るダヴィンチの後ろを立香は着いて行く。

 

「……彼が立香ちゃんを見て尚動かないなんて、()()()()()()()()()()()()か、()()()()()()()()()かのどちらかだ。前者であった場合、ソレを確かめなきゃいけない」

「なるほど。でもダヴィンチちゃんが行く必要はあるの?」

「ふふん!知り合いだからね!きっと君達よりは優しいはずさ!」

「おー!……あれ……?(生前と姿が違うんじゃ……?)」

「ふふふ、見てろよ〜魔法使い。君に最高の女ってやつを魅せてやるさ!」

 

 えいえいおー!と腕を上げた2人をムニエルは呆れた眼差しで見送るのだった。顔は真っ青だったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▪

 

 

「むむむ……」

 

 私は頭を悩ませていた。

 内容はどのようにしてここから逃げだすか、これに尽きる。もちろん、次の料理は何を教わるのか、とか日常的なものもあるがそれを悩みなんて大袈裟なくくりに入れるつもりは無い。

 

 逃げ出すのは割りと簡単だろうと私は踏んでいる。ショウの監視は甘々だ。だが、問題はこの家を覆っている可能性の高い結界などの防衛魔術だ。

 痛みを発するとか、記憶が混乱して来た道を引き返してしまうとか、そんな優しいものをショウ程の魔術師が作るだろうか……と言われると……多分地の果てまで追いかけて来る死の魔法とか仕掛けられているに違いない。

 

「むー?」

 

 ソファーに座っていた私は横にパタリと倒れ、ぐでーっと天井をみる。うーん、やはりおかしい。天井が高い。ショウの改造─もしくは隠していたものを出現させたか─により、階段が撤去された我が家には昇降機の様な働きをする透明な床が階段のあった位置に設置されている。

 酷く狭い塔のように、エレベーターの様に上へと伸びる筒に設置されたそれに乗ると、上に連れていってくれる。上にいる時に乗ると下に連れていってくれるわけだ。

 

 便利だが初めて乗った時は怖くて死ぬかと思った。真下見えるとか怖いだろ。ショウ曰く眺めが良くて良いらしい。馬鹿なんだな、と思った。

 

 ……そう、天井が高いのだ。明らかに空間が歪んでる。天井が高く、魔法のエレベーターはその途中までしかない。だと言うのに2階にたどり着くのだ。

 

 《時間を征く者》の名すら持つ男だ。密接に関わる空間を扱えないとは思えないし、それらをいじくり回したからこそのこの家なのだろう。とはいえ、何をどうしたらこうなるのか……。

 

 ……まぁ要するに、こんな事が出来るショウの家から逃げ出せるのか、と言われると私の脳味噌は「ノー!むりー!」と叫び、心の中のアーチャーが「こ こ か ら に げ だ す な ん て と ん で も な い !」とやたらと強調した感情を送り付けてくる。

 

「それに」

「……なにか用か?」

 

 私がソファーから起き上がり、対面にある一人用のソファーを見ればそこにはショウの姿が。

 ……本当にいつの間にかすぐそばに居るんだ。いくら転移の魔法だからって、多少は何らかの前兆があっていいと思うのだよ。まぁ、ショウの転移の秘密が時間を止めて一生懸命動いている、なんて物だったら呆れてしまうが……

 

「ん、それはなにをよんでいるんだ」

「これか……多少、規模の大きい英雄譚だ。そして、その英雄達に対する考察や懸念、疑念や疑惑。調査の目的やそこに向かう者達の名前、所属などの書類だな」

 

 ……うむ?

 たしかにショウの目の前には無数の書類が山積みになっていた。しかし、なぜ英雄譚なんぞにそこまでの労力を?ショウまで協力するのか?それとも、こんなことをしますって言う報告?

 

「……ふむ。やはりアレらは書くのが良く似合う。どちらも煩いのが欠点だが。……ほう、祠は無駄にならなかったか。……礼装は見つけられなかったか。敵の手に渡らなかったなら重畳だろう」

 

 え、なんか、ブツブツといいはじめたぞ。……き、気になる。なんて書いてあるんだ?しかし、ショウの近くに行くのは気にいらない。むー、どうする。いやいや、まてまて……あれはショウの物語なのか?だとしたらソレが気になって読みに行くなんて絶対に嫌だぞ。……待てよ?英雄達と言っていたし、ショウではないかも。

 

「………………」

 

 じー。

 

「ほほう。なるほどなるほど。……馬鹿な、なぜそんなに面倒な選択を……いやしかし、なるほどそう来たか。ふむ……奴が絡んでたかならば仕方あるまい」

 

 じー…………。

 

「なんだと……?……そうだったか、であればいつか謝罪をせねばな。はっ?レオナルドが?あの……アレが……?ダメだな、考えてもやらんだろ、それは……」

 

 じー……!!!

 

「ん?どうかしたか、マユ」

「んんー……!」

 

 気が付くの遅すぎるだろう!!結局ショウの目の前まで来てしまったぞ!

 ショウが悪いのだ。気になることをブツブツ、ブツブツと……!

 

「…………読むか?」

 

 バレてる?!

 

「……………………ょ、よむわけないだろ!ショウがよまないなら、そこにおいておけ!」

 

 ぬぁー!ちがうちがう、そこは貰っておけ!というか好かれるという計画を思い出せ私!どうにかショウの生活に入り込まねば死ぬのは私なんだぞー!

 

「そうか。では()()()()()()()()()()()()()()()

 

 へっ?ええっと、ショウの持ってる本、私の顔より分厚い様に見えるのだが……?

 

「えっ……あ、あとどのくらいあるんだ?」

「随分と超大作のようでな、しかも─────」

「しかも……?」

 

 読むのは数日後になるかもと心配になった私がショウに尋ねると、やたらと溜めがながい。き、気になる……!私が読めるのはいつなんだ!

 

「─────二冊ある。作者が二人いるのでな、詳細は異なるが」

「にさつッ!?」

 

 ぽんっ!ともう1冊を手元に出したショウに私はずっこける。

 するとショウは至極当然と言った風に、片方を閉じ、先程出したもう1冊を私の元へ差し出してくる。

 

「こっちならマユも読みやすいかも知れないな。あの老人は童話が有名だ。待てよ……字はまだ完全な習得はしていないのだったな?」

「………すこしよめるし」

「ふむ。では勉強のついでに読むか。さぁ、こい」

「うわ!っておい!わたしをだきあげるな!そしてひざにおくな!」

 

 読めるのは嬉しいがなんで膝の上で読まねばならんのだ!死ね!

 

「読めない字があれば言え。教えてやる」

「…………ちっ。……これは?」

「ゆえに、だな。ふむ……怪物は名前を呼ばれた故に、奮闘した、か。……マユ」

「なんだ」

「初めから読んだ方がいいんじゃないか?」

「………………うむ」

 

 初めから読もう。

 全く……私は聖杯だぞ……アンリマユなんだぞ……知識の吸収は早くても経験の反映は遅いんだ。自我を持たないもの同士がくっついてるだけなんだぞ。

 

 字だって聖杯の知識で「聖杯戦争をする上で不自由がない程度に」は理解しているんだ。ただ、この体になったせいか、聖杯の知識を満遍なく全て取り寄せると言ったことが出来なくなってしまったらしい。

 だが、この本を見ろ。無数の英雄が登場する。小難しい単語が時折出てくる。

 聖杯の知識が刺激され、より聖杯の知識を引き出せるようになるはず!くくく、今に見ていろショウ。もう魔力は貰ってるんだからな!……呪いの方法を知らないだけで、いつか必ず呪ってやる。

 

 

 

 その後も、私は料理を作る時とトイレに行く時以外はずっと本を読んでいた。そしてショウはそんな私をずっと膝の上に乗せて字を教えてくれた。

 ……仕事がひと段落したのだろうか?恐ろしいことだ。

 

「ふんふふーん♪」

 

 それにしても、風呂と言うのはいいものだ。入った瞬間こそビリビリと痺れるような感覚があったが、慣れてしまえば心地よい。この感覚はまだ味わったことがなかったし、新鮮な気持ちだ。

 

「そうだろう?ところでマユ、どの英雄が気になった?」

「わたしか?わたしはなー、うーん、まようなー」

 

 私はまだ第1特異点とやらまでしか読めていないからな、候補は少ない。

 まぁ正直に言うなら目の前のこの男がなぜ私と一緒に風呂に入っているのかが1番気になるが……混浴と言うやつだろうか。

 

「さぁマユ、来い。頭を洗うぞ」

「む、わたしだってじぶんであらえるぞ!……たぶん、いやぜったい!」

「この国の風習だよ。一緒に風呂に入ったなら互いの体を洗い流す。その人物への労いも兼ねているし、尊敬する人物などに行う者もいる」

「ふむふむ。なるほど、ではまかせた」

 

 バンザイしろ、と言われてバンザイをすれば脇に手を入れられて持ち上げられ、ショウの膝の上に座らせられる。ショウはあの第3次聖杯戦争で見せた近接技術からして鍛えてはいるのだろうと思っていたが、なかなかの筋肉だ。お尻やももに当たる硬い感触から考えるに細マッチョと言うやつか?

 

「うぉう?」

「気にするな、シャンプーハットだ」

「……?」

「石鹸が目に入らないようにするための道具だ。そら、これでも読んでいろ」

「ほ、ほんだと!?ぬれたらたいへんだぞ!まだちょっとしかよんでない!」

「構わん。そも、濡れることはない」

「えぇ……?ほ、ほんとだ……」

 

 ショウに頭をわしゃわしゃと洗われながら、本を読む。

 若干読みづらくはあるのだが……まぁ、なんというか、頭を洗うというのは気持ちのいいものだな。

 

「……」

「ショウ?」

「なんだ」

「これはなんてよむんだ」

「しかり、だ」

「ほほう……」

 

 

 

 

 □

 

 マユちゃんと風呂なう。

 

 風呂なう……風呂なう……………………

 

 ブハッ(心の中で鼻血を噴き出す)

 

 あ、危ねぇ……マユちゃんが子供じゃなかったら確実におったてた俺の3倍のもう1振りの聖剣がガラティーンする所だった。

 何とか自分の太股に挟み納刀出来たが、今も尚ビキビキのムキムキのムケムケである。でもほら、スッポンポンのお嫁さんが目の前におって、しかもその生尻が太股にのってるとかさ、ロリコンじゃなかろうとおったてなきゃ逆に失礼というか。

 

 ね?分かるだろう。

 

 …………全く、シェイクスピアとアンデルセン君には心から感謝をしなければならないな。

 

「んしょ」

「!」

 

 はうぅ!?……馬鹿な、寄り掛かってきただと!この俺を背もたれにした……!?

 本が読みづらいのは理解出来るけどもね、密着する面積が増えすぎて……!!ガラティーンが……!!俺の太股によるアイアンメイデンを突破しようと言うのか……!

 

「マユ、洗い終わったぞ。湯船に入れ」

「うむ。なぁ、ほんもいれてへいきか?」

「あぁ」

 

 あぁ〜、危ねぇ。俺のピクリともしない圧倒的鉄仮面がなければ死ぬところだった。

 最近リホイミ使いすぎている感はあるが、ないと鼻血やべぇ。

 

「……ッ!」

「ん、どうした?」

 

 ハッ!?また侵入者!?何回来るの?誰だよ……いや、この反応の仕方だとまたカルデアか……??

 

「面倒な……また招かれざる客の様だ」

「きゃく?だれか、きたのか?」

 

 ……いやぁ……最悪だろタイミング。これは殺されても文句言えないよな?

 

 





次回!ダヴィンチ、死す!城之内スタンバイ!

……あれ?

誤字脱字コメント待ってますー!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「レオナルドがモナ・リザになっていた。何を言ってるか(ry」


ん、遅くないかって?ははは、私は初投稿なので遅いも何も……皆さんがこの小説を読むのはこれが初めてですよ!

いつものように一日クオリティ。

正直読んでて「あぁん?ホイホイチャーハン?」って感じでした。蟹になりたいね。





「うわー、ここが魔法使いの家かぁ。なんて言うか、流石だね。物理法則完全無視だ」

「ねー。この前来た時はよく見れなかったから、でも見てみると凄いなぁ。ピラミッドみたい」

「まぁ彼もファラオとして数えられてたりするからね」

「へー」

 

 ダヴィンチと立香は呑気に会話をしながら魔法使いの特異点へとやって来た。警戒は無く、自然な歩みだ。

 だからこそ、魔法使いも攻撃をしなかった。決してダヴィンチが想像の遥か上を行く美人だったから攻撃の手が緩んだとかでは無いのだ。

 

「!」

 

 先程までは何も無かったそこに魔法使いが現れた。トリックでもマジックでも無い。本当にそこにポンと現れたのだ。それは何時でも殺せるのだというアピールに他ならず、同時にダヴィンチ達がそれに対して身構え無かったのは信頼の証だろう。

 

「……変わらないね。魔法使い」

「お前は驚く程に変わったな、レオナルド」

「……あちゃー、バレてたか。どうやって知ったんだ?驚かせるつもりだったのに」

「知り得たのだから仕方あるまい。それより、何の用だ」

 

 ダヴィンチが限界まで『美しい女性の微笑み』を浮かべ話しかければ、全くそれに反応することなく魔法使いは答える。その事実にダヴィンチは一瞬硬直するも、話しを止めてはならないと繋げてゆく。

 

「なぁに、招待状を送ろうと思ってね。まずは下見ってやつさ」

「…………」

「もしかして……邪魔だったかい?」

「あぁ、()()つもりで出て来たからな。お前の変わり様に思わず手を止めてしまっていた。さて、死ぬ準備は出来たか?」

「おっと!それはすまないね。まぁほら昔馴染みの友人が来たんだ。お茶でも……」

「友人?……ストーカーの間違いだろう」

「……」

「ダヴィンチちゃん?」

 

 ストーカー。それは所謂清姫である(説明終了)。

 というのはさておき、現モナ・リザことレオナルドは生前、魔法使いに接触していた。彼の知恵を求めたのだ。

 

 結果としてヘリコプターなどの着想を得るも、設計するだけに留まった。

 とても、そう、とても言いづらいことなのだが……レオナルドは惚れたのだ。……他ならぬ魔法使いに。

 

 ホモォとか思った人は美術館に行くとモナ・リザが目で追ってくるから気を付けること。

 

 惚れたと言ってもその知識に、知性にである。

 天才である自分ですら並び立てないとなれば、まさしく深淵。その限りなく底深い場所に位置しているのだと。

 

 あらゆる手段で質問などを重ね、自白剤を盛ったりして努力したレオナルドだったが、終ぞ魔法使いの口を割ることはできなかった。軽く話を聞いて貰えた程度。行き詰まった研究のヒントをもらった程度だ。

 

 結果、レオナルドが最後の手段として考えついたのが……ハニートラップである(大正解)。

 しかし、レオナルドは天才だった。要するに一般的な人間と考え方が違いすぎた。

 

 当時のレオナルドはこう考えたのだ。

 

「あ、これワシが最高の美人になればワンチャンあるんじゃね?」

 

 と。

 

 どうしてそうなったとか、結果として失敗に終わってるじゃん、とか思ったそこの貴方。スマホを1度再起動するとホーム画像がモナ・リザに変わっているかもしれない。気を付けて。

 

 

 

「ストーカーとは失礼じゃないかい?それより、私は魔法使いの家が見てみたいなぁー」

「うわ、ダヴィンチちゃん目が反復横跳びしてるよ」

 

 静かにしたまえ、立香ちゃん。ダヴィンチが冷や汗を垂らしながら立香を止める。立香も素直に従い、2人してチラリと魔法使いの反応を伺えば……額に手を当て深いため息をついていた。

 

「はぁ……帰れ」

 

 そう言って魔法使いが踵を返す。

 だが帰れと言われて帰る女達ではない。

 

「待ってください!」

「そうだ。待ちたまえ魔法使い。言いたいことが幾つもあるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 □

 

 はぇ〜、すっごい美人。

 マジモンのモナ・リザとは思わなんだ。だが、男だ。

 ありがとうシェイクスピア、ありがとうアンデルセン。お前達がいなければ俺は確実にストーカーの魔の手に落ちていた。

 

 にしても聞きたいこととはなんだろうか。

 正直な話、美人二人に呼び止められ、しかもカルデア来ない?みたいに誘われるのってアレだな、よからぬお店の勧誘みたいだよな。

 

「……なんだ」

「君は、こうなる事が()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ……ん?こうなる事ってなんだ。

 

 ……あぁ、もしや人理焼却の事か?だとしたら知らなかったぞ。旅行した記念くらいの感覚で作ってたからな。

 

「あぁ……」

 

 あ、不味い。思わず納得の声を出してしまった。

 

「なら、それを活用して人理修復を成し遂げた立香ちゃんを褒めるべきなんじゃないかな?」

 

 ん?先に俺に対してありがとうございますって言うんじゃないの?まぁ、別に気にしないけども。

 

「ダヴィンチちゃんダヴィンチちゃん、先に御礼の方がいいよね?「あ、あぁそうだったね」……えっと、ありがとうございます。お陰でたくさんのピンチを乗り越えられたし、本当に助かりました!」

「…………気にするな」

 

 あ、ちょっと待てこの子いい子すぎる。罪悪感が湧いてくるんですけど。

 ごめん何も知らずに祠乱立させてごめん。

 

「……話を戻そう。貴方は立香ちゃんに人理修復を託した。人理焼却が起きることを知っていたから、解決しやすいように準備を整えていたんだろう?」

 

 あー、そうか。俺は影の立役者ポジなのか。これ以上の嘘はまずいな。何れボロが出るし、嘘をつきまくる夫なんて嫌だよな!!

 

「何を勘違いしているか知らないが、俺とて何が起き誰が解決するかなど知りようがなかった。俺が知れるのならば千里眼を持つ賢者共が理解していよう」

「でも、君は動いた」

 

 ……うむ。レオナルドのやつ面倒いな!昔からだが。凄いしつこく聞いて来るからな。

 本当に気まぐれに適当に作ってただけだしなぁ。マユの手前ちょっとカッコつけたくて「ほう、役に立ったか」みたいな事言っちゃったが……内心では「あ、使ったんだ。というか、使えんだ。よかったな。誰が管理してたんだろ」みたいな感じだったぞ。

 

「……いや、動いて等いない。俺はただ()()()()だけだ」

 

 ぼかすしかない。昔の俺は割と原作知識があったが、今の俺はほぼ忘れている。マシュマロおっぱいを見て初めてカルデアという単語を思い出し、そこから藤丸立香の情報を断片的に思い出しただけなのだ。

 人理が修復された以上、ホームズがいるのも分かっているが。

 

「お前達にとって祠が便利であった、それだけの話。アレらは所詮、気まぐれに建てたに過ぎない」

「それでも、私達は助かりました。あれが無かったら間に合わなかったから!」

 

 うぅ……立香ちゃん結構押し強いな……しかも全部本心からの言葉っぽい。いやわからんけど。

 あぁ……だが絶対に家には入れない。これだけは譲らん。マユちゃんを見せるわけには行かないのだ……!!

 

 俺はそう決心を固め、話の流れなどぶった切ってでも2人を追い返そうと決意した。

 

 その時だ。

 

 

 

「────────うわ、そとにいた。か、かくれないと!」

「「「!?」」」

 

 

 ファァァア!?マユちゃん!?どうして外出てきちゃったノォ!?

 やべぇよ...やべぇよ...どうする!?どうしよう!?

 人生二回目の精神的ピンチだよ!!

 

 ま、まて……落ち着け。慌てふためいたらそれこそやましいですと言っているような物だ。出来るだけ冷静に、まるで娘に語りかけるような感じで行こう。

 

「──マユ、何故出てきた。中に居ろと言っただろう」

わわばれてるじゃないか!」

 

 慌ててる可愛い……じゃなくて。マユちゃんは玄関前で右往左往した後、郵便ポスト(役割は果たしていない)の後ろに隠れた。しかし、足丸出しだ。頭隠して尻隠さず状態だ。

 

 そんなマユちゃんに声をかければ、焦っているのか冷や汗を垂れ流し郵便ポストから顔だけを覗かせる。

 

「…………魔法、使い……あれ、は?」

「ダヴィンチちゃん?ダヴィンチちゃん?平気!?なんか壊れてない?!」

「いや、いやいや……魔法使いに、子供なんて、ははは、ありえないありえない」

 

 おいレオナルド、どういう事だ。俺が万年童貞で彼女が出来るわけないんだから子供がいるはずないって?ぶっ殺すぞ。

 

「現実を見るんだダヴィンチちゃん!」

 

 おい立香ちゃん。君も追い打ちをかけるな。

 

「そ、そうか。そうだ……あれは恋人なんだ……そうに違いない……うぅ、そうに違い、ない……ぐぬぬ」

「はわわ、ダヴィンチちゃんの天才的頭脳がショート寸前だ!是非も無いネ!」

 

 あきらめるな立香ちゃん……そして大正解だよレオナルド!いや、お嫁さんだから違うわ。ハズレだわ、よって死罪はまぬがれぬ。

 あ、マユちゃんが好奇心を抑えられずにこっちに走ってきた。可愛すぎるんだけど何コレ。

 

「な、なぁショ…………まほうつかい」

「?なんだ、マユ」

 

 名前を言いかけて止めた……?なぜだ?……あぁもしかして皆が魔法使いって呼ぶから合わせたのか?ふふふ、気遣いも出来ちゃう自慢の嫁です(惚気)

 

「えっと……このひとたちは?」

「あ、私はね藤丸立香っていうんだ!宜しくねマユちゃん!」

「うわっ、あ、あぁ……よ、よろしく?」

「あらら……かくれちゃったか」

 

 ………………(昇天)

 

 

 はっ!(堕天)。人見知りか?立香ちゃんから隠れて俺の後ろに周りローブを掴んでぎゅっとしてきた。ひざ裏の辺りをギュッてしてきた。俺はもうしんでしまうのかもしれない。

 

「怖くないよー、ねぇねぇお父さんについて教えてくれない?」

 

 ふっ、俺のマユちゃんをただの子供だと思って甘く見たな。全然俺の事なんて話さないはず。だって嫌われてると思うし。……思うし……いや!そんな事はねぇ!!だって見ろ!!今俺の膝の裏あたりにギュッてしてる天使を!!

 

 俺は愛されているに違いねぇええ!(やけくそ気味)

 

「─────まほうつかいはわたしのちちおやではない」

「?」

「────()()()だ」

「「えっ」」

 

 そうそう。そこでロリを誘拐監禁して妻にする宣言をしたクソ野郎だって言う…………言う……?

 え(思考停止)

 

「あー………………そ、そうかー、おっとかー……どういう意味のおっとなんだろー」

「ダヴィンチちゃんが遠い空を見上げ始めたー!?」

 

 …………はぁ。もうなんでもいいや。俺は今、満ち足りている。こんな幸せな気持ち初めて!もう何も怖くない、ロリコンだって言われてもいい。

 

「おっと、というのはいせいがこんいんをむすぶことでだな」

「ストップ!やめてくれたまえ……私が死ぬ……」

「…………ふっ。わたしのかちのようだな」

「ッッッ!!!…………か、必ず振り向かせてみせるよ……!」

「ざんねんだが、まほうつかいはわたしにメロメロなのだ」

「めっ、メロメロ……!?」

「そうだ。まいにち()()()()()()()『いろんなことを』おしえてくれる」

「くっ……!!!見損なったよ魔法使いッ……!」

 

 ぁあ、もしもまだ神が地上に残っていたのなら俺の総力を上げて褒め称えるのに……!

 あ、マユたんが神かぁ!納得したわぁ……!こんなマユたんの気持ちを引き出してくれたレオナルド達の言うことだ、聞いてやろうじゃないか。

 わかったよ、行ってあげるよ仕方ないなぁもう。

 

「はぁ……俺は家に戻る。それと、カルデアへの招待も確かに受け取った。もてなす必要は無い。好きに見て好きに帰る。以上だ。マユ、行くぞ」

 

 満足気なため息を吐き、俺はマユたんを抱っこして家に歩き出した。

 マユたんが「ふん。アーチャー、やくそくはまもれよ」と言っていたようなきがするが、そんな事は無い。アーチャーはもう居ないんだからな。

 

このまま家に帰ったらランデブーに突入するんだ。ふへへ

 






ショウside

というわけでまさかのマユデレ。 えっ?アーチャーに何か言われてるって?ははは、アーチャーなんているわけないだろ?

あれはマユたんのデレだったんだよ!

いやぁ、ハッピーエンドですなぁ!このあとはもちろんベッドに寝かせてルパンダイブですわ。んじゃ、行ってくるんでよろしく。

ショウside終了。


その後、緊張しすぎてダイブは愚か部屋に入ることすら出来なかったショウが廊下で凍えているところを君たちは見つけるのだった。

…………続きます。

コメント、誤字脱字報告が私の励みに!
コメントや誤字脱字報告をした方々からはこんなお声が届いています!

AV「コメントをしたら返信が帰ってきて、受験にごうかくした!」
BL「誤字脱字をこっそっと教えたら彼女が出来ました!」
ホモ「彼氏が出来ました!」
ゲイ「ずっと治らなかった不知の病が簡単に治りました!」

さぁ!みんなもコメント、誤字脱字報告をしよう!!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「カルデア潜入。お尻が危険だったとは思わなんだ」


初投稿!!!
前回の初投稿からなんと……たぶん1週間くらいかな?いやぁ、もう最新作ですよ。ふふふ、これが読み終わったら次回のシフシフの作品をお待ちください。


しかし、雑である。
2時間で仕上げろとか、担当(俺)も無茶を言うよね。執筆(俺)にだって限界はとても沢山あるんだぞ。





 ▪

 

 ショウの目が届いていない事を祈り、玄関から外に出てみればそこには2人の女性と立ち話をするショウの姿が見えた。

 

 驚いた私は声を上げてしまい、急いで隠れる。

 

 しかし、ショウ達は気付いたようで私の名を呼んだ。

 これでは逃げ出せないな、と観念して郵便ポストからショウ達を観察する。

 

 ショウは既にこちらに背を向けているため顔は見えないが、他2人はこちらを見ている。特に、私をして美人だと思わせる女性が驚いたように私を見ていた。

 

 なんだか、つい最近見たような外見だった。はて、何処だったか。そう思い返せばほんの数分前まで読んでいた本の登場人物にそっくりだった。

 

 ダヴィンチとか聞こえるし。まぁサーヴァントである事には気が付いていたが。だとするとその隣の少女は藤丸立香なる人物なのだろうか。

 なぜここに来たのだろう。……考えられるとすればショウに力を貸してほしい、などの理由だろうが……まだ1割と読めていないとは言え、流石に人理は救えたのではないのか?救えていなければ私達は自意識を持つことも無いはずだ。

 

 人理が焼却されているのならこの瞬間私達は存在しないのだから。

 

 となると、人理修復とは別の目的でここを訪れた事になる。もっと観察しなければ……

 

 耳を澄ませて会話を盗み聞きする。そして2人の行動に目を光らせる。

 むむむ……ダヴィンチちゃんとやらはショウを相手に挙動不審すぎるな……

 

 っ!

 

 ダヴィンチちゃんと呼ばれたサーヴァントを凝視していたら聖杯としての知識が刺激されたのか、情報が流れ込んでくる。

 

 なるほど。モナ・リザ、レオナルド・ダ・ヴィンチか。……むむっ!?魔法使いの友人であると周囲に話し、しかも肉体関係を迫った事もあるだと!?

 えっ?……ダヴィンチは男だったんだよな?昔からその身体ではあるまい。ま、まさかショウは……うっ!やめろアーチャー、悪かった、そうだなショウはノーマルだなはいはい。

 

 ん?なんだと?…………読み取り辛いな。複雑な感情や考えは受け取り難いようだ。

 ………………ふむ。なるほど。確かにな。一理ある。

 

 要するにショウに悪い虫がくっついて私からの心が離れてしまえば、簡単に捨てられてしまうし殺されてしまう。

 そうなればアーチャーもタダでは済まないし、ショウが目の前で他の泥棒猫に奪われるのは嫌だと。

 

 しかしどうする気だ。まさか目の前でショウに告白でもする気か?

 

 …………なるほど。確かにな……あのダヴィンチの反応は()()()()()だろう。

 つまり、奴よりもショウと親密である事を理解させれば良いわけだ。ふむふむ。私の魅惑のボディにショウがメロメロだ、とか言えばいいのか。簡単だな。

 

 では行ってこよう。

 

 てってって……

 

「なぁショ」

 

 と私がショウに近寄り話しかけるために名前を呼ぼうとすれば、アーチャーから待ったが入る。

 一体なんなんだお前は……。

 なに?ショウという名前は私とお前しか知らない物で、とても大切なものだから泥棒猫には聞かせてはダメだと?

 

 …………しかし大衆がショウの名を知ればショウを呪い殺す術も見つかるかも知れない。

 ……そんなんで死ぬわけないだと?……否定出来ない。

 確かに小さな確率に賭けるよりは堅実に着実に潜り込む方が現実的だな。

 

「まほうつかい」

「なんだ?マユ」

 

 おい、アーチャー。私の名前簡単に出されたぞ。

 ……いや、私の名前は真名では無い。となれば知られた所で大して脅威ではないのか。ぐぬぬ……なんか悔しいぞ。

 

「えっと……そのひとたちは?」

 

 ショウを足元から見上げ、小首を傾げるように尋ねる。だが私の問に答えたのは少女の方だった。

 

「あ、私はね藤丸立香っていうんだ!宜しくねマユちゃん!」

「うわっ、あ、あぁ……よ、よろしく?」

 

 まさかそっち……立香が答えるとは思っていなかった私はやや挙動不審になって安全地帯に逃れる。ショウにしがみついておけば緊急時の転移について行けるので安全なのだ。結界もあるし。

 

「あらら……かくれちゃったか」

 

 しかし、藤丸立香で確定か。ならば、聖杯の知識になかったあの英雄譚は作り物ではなく、本物ということか。ほぼ誰も知らない英雄譚だからこそ、聖杯にその知識が加わっていないのだろう。

 

「怖くないよー、ねぇねぇお父さんについて教えてくれない?」

 

 お父さん?ショウの事か?なんだ、私はショウの子供だと思われているのか。まぁ、容姿は確かに似ている。黒髪だしそう考えてもおかしくは無いな。

 

 ん、ここがチャンス?まぁ、そうだが……どちらかと言えばダヴィンチが尋ねてきた時に言った方が破壊力があるのではないか?

 

 まぁいい。お前の指示に従ってやる。ただし、私が何らかの協力を求めたら従えよアーチャー。

 納得の意を感じ、私はショウのローブを掴んだまま立香に言う。

 

「─────まほうつかいはわたしのちちおやではない。おっとだ」

「「えっ」」

 

 やや舌足らずである為か、可笑しな顔で固まる2人。ショウはどんな顔をしているだろうか。ほぼ真上に位置している為顔は読み取れない。

 

「あー………………そ、そうかー、おっとかー……どういう意味のおっとなんだろー」

「ダヴィンチちゃんが空を見上げ始めたー!」

 

 ダヴィンチは壊れたロボットのようにぎこち無い動きで空を眺める。

 ふっ。私の勝ちだな。……なに?追撃のチャンスだと?既にやるべき事はやったはずだが……純真さを前面に出してアピールだと?面倒だな……それに恥ずかしい。

 

 まぁ借り2つだと思えばいいか。

 

「おっと、というのはいせいがこんいんをむすぶことでだな」

「ストップ!やめてくれたまえ……私が死ぬ……」

「…………ふっ。わたしのかちのようだな」

「ッッッ!!!…………か、必ず振り向かせてみせるよ……!」

 

 いや、無理だろう。男だぞお前。

 アーチャーも納得している。多数決で私の勝ちだな。

 

「ざんねんだが、まほうつかいはわたしにメロメロなのだ」

「めっ、メロメロ……!?」

「そうだ。まいにちてとりあしとり『いろんなことを』おしえてくれる」

 

 料理とか文字とか、掃除とか道具の使い方とかな。

 

「くっ……!!!見損なったよ魔法使いッ……!」

 

 涙目で拳を握るダヴィンチ。いや、見損なったのはこっち側だと思うのだが?

 

「はぁ……俺は家に戻る。それと、カルデアへの招待も確かに受け取った。もてなす必要は無い。好きに見て好きに帰る。以上だ。マユ、家に帰るぞ」

 

 ショウに抱き上げられ、家に向かって歩き出す。

 私はダヴィンチ達に良く見えるようにショウにしがみつき、首元に顔を埋める。

 不思議と落ち着く匂いがした。何の匂いだろうか。本や紙のような匂いだ。逸話に似合わないな。てっきり焦げ臭かったり血の匂いでもするかと思ったが。

 

 あ、ダヴィンチと目が合った。

 まだショウを諦めないとはなかなか呆れたやつだな。

 

「………………べー」

「ッッ!!くぅ〜!!」

「あははは、可愛いなぁ。お子さんなのかな?それとも知り合いの子?」

 

 舌を出してからかったらなんだか胸がスッキリした。

 

「さて……カルデアに向かうか。ルーラ」

 

 え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ※

 カルデアside

 

 バァン!とダヴィンチがホワイトボードを強く叩く。

 

「どうやったら魔法使いを落とせるか……!会議だ!」

「はいはい解散ー解散だー」

「そんなぁ!?あまりにも酷すぎるだろうホームズ!君には恋する乙女を応援しようという優しさは無いのかい!?」

「いやいや、そんなことは無いさ。君たちは魔法使いをカルデアに招く事に成功した。つまりチャンスはいくらでもあるんだ。君の魅力を魔法使いがカルデアにいる間に精一杯アピールする、僕らはそれを邪魔しない」

「爽やかな笑顔が憎たらしい」

「ははは」

 

 ダヴィンチの決心も虚しく、ホームズにホワイトボードは片付けられ、渋々集まっていた職員は各々仕事に戻っていく。

 

 だが、彼らは知らなかったのだ。

 まさか魔法使いの「もてなす必要は無い。好きに見て好きに帰る。以上だ」という言葉が文字通りであるなどと。

 

「…………ショウ」

「なんだ」

「な、なんでわたしたちにみんなきがつかないんだ?」

「透明になり気配を消しているからだ」

「そ、そうか……」

 

 そう、魔法使い達は無数の資料から得たカルデアの情報を元にルーラで接近し、その後は飛翔してカルデアに正面から侵入。

「ステルス」なる呪文を使い、完全な気配遮断と空間との調和、無色透明になり匂いも消えている。

 これを見抜ける物はこの場にはいない。かのホームズでさえ、強く疑い、探そうとしなければ見つけられないだろう。

 

「えっと……なにをしにきたんだ?」

「さてな、見に来いと言われたから見に来た」

「…………まさかもうかえるのか?」

「マユ、見たいものはあるか。そこに行こう」

「えっと、何があるんだ」

 

 魔法使いの内心はアニメの聖地を巡礼するオタク1割、マユたんカワユス6割、レオナルドにお尻狙われてたっ……!?が3割だった。

 

「シバやカルデアス……あの本に載っていた物はほぼあるだろうさ」

「えいれいたちにあえるのか!?」

「ふむ……どうだろうな。この様子を見ると座に帰ってしまった者達が殆どのように思えるが」

「くそ……みかたにつけてショウをころそうとおもったのに(小声)」

「……ふむ。ならば仮想空間の戦闘シミュレーションに彼らのデータは登録されているだろう。戦うだけの抜け殻だが、見る事は出来るだろうさ」

「むむむ……いや、いい」

 

 殺してやろうと思ったのに、と言う言葉が確りと聞こえていた耳のいい男ショウ。抱っこしてるのにそんな事言ったら聞こえるだろうに、と悲しみで前が見えなくなりそうだったがどうにか会話を繋ぐ。

 

「……なぁ、ショウ。ショウはどんなえいゆうたちとであったんだ?」

 

 マユはなんとなしにそう尋ね、返事が来なかった為にショウの顔を見る。

 そしてその顔を見て後悔した。

 

「────英雄になど俺は出会わなかった。持て囃された者、祭り上げられた者、晒された者。騙された者。そんな者達にしか俺は出会わなかった」

 

 さぁ、歩いてまわろう。

 そう言ってスタスタと目的もなく、ショウは歩き出す。抱き上げられたマユは離れる事も許されず、なされるがままに運ばれてゆく。

 

「────結局、誰もが俺を置いて逝く」

「っ!」

 

 小さく、本当に小さく呟かれた一言がマユの鼓膜を打った。

 胸が早鐘のように鳴る。言わねば、とマユを急かす。

 

「そんなことは……!!」

「あぁ、そうだ。だから、俺は…………!!」

 

 ─────君で全てを失おう。

 

 決意とは時に残酷な程に……悲壮な目を人に強いる。

 

 









コメント、誤字脱字報告、頼んます!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「誰もが童貞を置いて先にイク」

初☆投☆稿☆!

さぁさぁ皆様やってまいりました記念すべき初投稿!!!

最初から最後まで主人公視点となっております。初の試みですねぇ。
あ、皆様、コメントや評価のほう、お手柔らかにお願いします(人 •͈ᴗ•͈)
今回は非常にシリアス成分が多めになっており、誰だお前は!となる方もいるかもしれません、しかし、思い出してください。これは初投稿、つまり登場する人物は全て初登場なのです……!(ゴリ押し)




 □

 

 童貞を卒業する。

 

 それは俺の昔からの夢であり、目的であり、ある意味存在理由ですらあると俺は考えている。

 

 とは言え童貞を卒業したいというなんとも可愛らしい願いは、なにも転生した瞬間からのものでは無いのだ。

 じゃあいつから?と言われると返答に困ってしまうのだが、いつの間にやら「童貞を卒業したい」と思うようになっていた。

 

 まぁ、誰にでも共感できる話だとは思う。なにせ、永遠の相棒に一切の役割が与えられないままでは可哀想だ。

 そう、永遠の相棒である。

 

 俺はその永遠の相棒を「童貞」なんてレッテルでTENGAのように包み込んでいるわけだ。皮をかぶってるという訳では無いからな。

 

 ……恥ずかしいと思わないか?情けないと思わないか?

 

 俺は思った。

 

 だってさ、女の子とにゃんにゃんしたいし、イチャイチャしたいしねんごろになりたい訳だ。雄だからな。

 

 本能的にもぜひぜひ、と勧められる行為なのだ。

 しかし、運が悪いのかなんなのか、俺は未だに童貞を卒業出来ていない、

 

 

 さらに言えば、目の前で繰り広げられた『チキチキ☆魔法使い対策会議』なる現象は俺の身に酷い危機感を覚えさせたのだ。

 俺は童貞を卒業するまえに後ろの処女を失うところだったのか、と。

 

 それはあまりにも強大な恐怖だった。

 尻の穴がキュッとしまり、レオナルドのしわくちゃの相棒を突っ込まれる瞬間まで想像して悲鳴を上げそうになったくらいである。いくらステルスという呪文が強力でも動揺した悲鳴を隠すことは出来そうにない。

 必死に我慢した俺は偉いと思うんだ。

 

 かつて、俺をここまで追い込んだ恐怖はなかった。

 それほどか?と思うのも無理はないだろう。

 

 たしかに、全身エロタイツ二穴おばさんは恐ろしかった。今までの人生で最も俺に襲いかかった女性は確実に全身エロタイツ二穴おばさんだろう。特に彼女の必殺技?は酷かった。名前は確か……

 刺し穿ち、突き穿つ、ゲイ掘る具・オンナ恥部だったはずだ。

 

 言わずともわかるだろう。前の穴を刺し穿ち、後ろの穴を突き穿つ。あの槍でだ。

 しかもその後に続くゲイ掘る具とオンナ恥部……つまるところ女も男も関係なく仕留める(意味深)やばい技なのだということはわかった。しかもあの槍は無数にあるらしく、数人の相手を同時にこなすこともできるはずだ。なんて性欲の塊なのか。

 

 もしかしたら男が当たったらルーンか何かで前の穴を制作されるのかもしれないが、考えたくもない事だ。

 

 他にも神々数百柱と何故か戦争になったりな。びっくりしたわ。

 ただ、連携出来てない烏合の衆感が半端なかった。自己主張しすぎて押し合い圧し合いしてるから範囲攻撃でまとめて薙ぎ払ったが。

 

 そんなあれこれよりも遥かに恐ろしい……あ、待てよ……あのケルトビッチも怖かったな……いや、しかしそれよりも恐ろしい。なにせもう何時死ぬかも分からない嗄れた翁に俺の尻が狙われていた、などと……タチの悪い悪夢であって欲しかった。

 

 

 バァン!とレオナルドがホワイトボードを強く叩く。

 

「どうやったら魔法使いを落とせるか……!会議だ!」

 

 こいつは本当に天才なのだろうか、と昔からの俺の疑問は解消されない。

 空を飛ぶ乗り物の話しをされたからヴィマナの話をすれば「ほうほう」と頷き、他には?と言われたからヘリコプターの話しをすれば数日後には巻貝みたいな変な設計図を寄越してきた。無理だろ、飛ばねぇよそれ、と言ってみれば作るのは諦めたようだったが。

 

 レオナルドとホームズの漫才も終わり、クスクスと笑う者や疲れたような顔で、けれど口の端を満足げに上げた者達が部屋を出ていく。

 

「…………ショウ」

 

 すると、俺の右側から可憐な声が響いた。黒い髪に赤い瞳を持ち、やや丸みを帯びた可愛らしい輪郭が幼さを一層強調している幼女。

 彼女の名前はマユ。聖杯と、そこに入っていたアンリマユの残滓的な物で構成された俺の嫁だ。

 

 今の俺はその成長を待ち、日々を幸せに暮らしている。

 

 そんなマユが俺のローブをくいくいと引っ張り、こちらを見上げている。

 見覚えのない始めてくる場所に困惑しているのか、不安げにこちらに身を寄せるマユに父性を刺激されながら、見上げ続けるのも辛いだろうと腰を屈めて視線をあわせる。

 

「なんだ」

「な、なんでわたしたちにみんなきがつかないんだ?」

 

 正面切って見つめられるとマユは目を逸らす。そして疑問を口にした。とは言え、その詳細を語る必要は無いだろう。マユは幼いものの聖杯の知識を有する。完全かどうかは疑問が残る所ではあるが、こういった事柄には詳しいだろう。なので簡潔に現状の説明で済ませる事にした。

 

「透明になり気配を消しているからだ」

「そ、そうか……」

 

 普段はこのような呪文は使わない。なにせ、透明になって気配を消すなど犯罪臭しかしない。俺はアニメや漫画などで透明化できるキャラクターは必ず()()()()()にその能力を1回は使っているはずだと睨んでいる。

 思春期なら尚更だし、男ならやらないはずが無い。

 

 だが、俺はやらなかった。

 なぜかと言えばこの呪文は割と難しい部類に入る。術はあくまでも結果を引き起こす為にあり、その後の制御は術者本人の技量に委ねられる。

 そんな呪文を俺が使い、風呂など覗こうものならどうなるだろう。鼻の下を伸ばし、天地乖離す開闢の星がズボンを突き破りバベルの塔を建造する事はほぼ確実。

 そんな状態で呪文を制御できるか……?俺はできると自信を持って胸を張ることは出来ない。なぜか、それは童貞だからだ。

 

「えっと……なにをしにきたんだ?」

「さてな、見に来いと言われたから見に来た」

 

 ここまでこれ程までに冷静かつ、真面目な口調を維持しているのも一重にレオナルドのケツ掘り未遂のせいなのだが、もしやこの口調を維持し続けた方が俺はカッコイイのではないだろうか。

 どの道、マユがいなければ俺は精神的ショックで瀕死だっただろう。マユの癒し効果は半端なものでは無いという事だ。

 

「…………まさかもうかえるのか?」

 

 そう言いながらもどこか諦めたような雰囲気のマユ、恐らくもう少し見て回りたいのだろう。

 それか、聖杯が集まるこの場所に何かを感じたのかもしれない。

 

「マユ、見たいものはあるか。そこに行こう」

「えっと、なにがあるんだ」

 

 そんなマユの気持ちがわからない訳では無い。FGOなるスマホアプリは完全無課金でエンジョイ勢、ストーリーをスキップしてしまうことすらあったレベルだし、もはやどのようなサーヴァントが出演していたのかも定かではない。

 

 とは言え、「昔有名で、今でも何となく覚えている映画やドラマ、アニメ」の聖地に訪れたとなれば興奮を抑えられないのはそういった物に少しでも傾倒したものなら当たり前だろう。

 

 さて、何があるのかを問われたのであれば応えねばならない。

 しかし、知識と経験は正確に結びつくものでは無いのだ。シェイクスピアとアンデルセンから送られた小説や、魔術協会からの資料に目を通して居たとして、完全な案内など俺には出来そうにない。

 となれば当たり障りの無い目玉施設を例に述べるとしようか。

 

「シバやカルデアス……あの本に載っていた物はほぼあるだろうさ」

「えいれいたちにあえるのか!?」

 

 と胸の前で握りこぶしを揃え、ゾイっという効果音が聞こえそうなポーズで俺の顔に急接近するマユ、思わずキスしそうだったが、俺は堪えた。

 

 思わぬ反応に多少たじろぎ、それが表に出ないように苦心しつつ、マユがなぜ英霊を求めるのかを考える。

 マユは聖杯だ。となれば英霊たちの情報に関しては俺よりも遥かに多くのことを知っていると言えた。

 そうなればやはり先程俺が述べたような知識と経験は結びつくものでは無いのだ、という物に当てはまるのだろう。知識で知っている無双の英雄に会ってみたい、と思うのも仕方の無いことだ。

 

 しかし、マユの望みを叶えられるかと言うとそれは難しそうに思えた。

 辛うじて覚えている第2部の始まり部分、それはカルデアを調査しに現れた協会の者達の1部が敵であり結果としてたくさんの職員が犠牲になる事になる、というものだった。なぜ多くの犠牲者が出たのかといえば、無数にごった返していた英霊達の多くが人理修復と共に役目を終えたと座に帰還したからだ。

 

「ふむ……どうだろうな。この様子を見ると座に帰ってしまった者達が殆どのように思えるが」

「くそ……みかたにつけてショウをころそうとおもったのに(小声)」

「……ふむ。ならば仮想空間の戦闘シミュレーションに彼らのデータは登録されているだろう。戦うだけの抜け殻だが、見る事は出来るだろうさ」

 

 俺は聞こえないことにした。心が受け入れることを避けたのだ。うむ、痛い。避けてなお突き刺さるとは……何処ぞの青い狗っころよりも遥かに高精度だ。

 

「むむむ……いや、いい」

 

 いやはやしかし、もしもこの反応がレオナルド等を見た結果であるとすれば、それ即ちヤンデレだとか焼きもちという事になる。そう考えると可愛いものだ。全身がスライムのようになるレベルで可愛いものだ。

 だが、次に彼女が発したそのセリフは、俺の色々なものを想起させる事になる。

 

「……なぁ、ショウ。ショウはどんなえいゆうたちとであったんだ?」

 

 英雄。普段ならば軽々しく口にするものの、マユという特定の人物からその単語が発せられたからなのか、俺は反応を示し、記憶の引き出しがとんでもない速度で開けられていく。

 

 結果、俺が導き出した答えは

 

「────英雄になど俺は出会わなかった。持て囃された者、祭り上げられた者、晒された者。騙された者。そんな者達にしか俺は出会わなかった」

 

 というものだ。

 なぜ、このような悲壮感溢れる文章になってしまったのか……それは非常に簡単な答えなのだ。

 “英雄は色を好む”という言葉をご存知だろうか。事実、その通りである。

 

 

 ズルくない?

 

 おかしくない?

 

 なんでこんなに不公平なの?

 

(女達に)持て囃された者、(女達に)祭り上げられハーレム築く者、あいつら絶対に妬み殺す。

 

 まぁなんだ、全員が全員いい思いをした訳でもない。晒された奴は居たし、騙された奴もいたさ。

 

 だがな……!!全員っっ、致した……!!

 

 俺だって致したいんだ。晒されてもいい、騙されてもいい、ただ女の子とイチャイチャキャッキャ、ネチョネチョアンアンしたかったのだ。

 

 ズルいと思う。俺視点でいうなら全員タダのヤリチン野郎かクソビッチだから。俺のシマじゃノーカン。

 ちょっとドラゴン倒しただけで綺麗なお姫様貰えるとか、何それ、デリヘルなの?性奴隷なの?

 

 あぁダメだ……鬱になりそうだ。

 

「さぁ、歩いてまわろう」

 

 マユたんを強く抱きしめながら俺は歩き始めた。

 

「────結局、誰もが童貞()を置いてイク」

「っ!」

 

 でも、俺はもう歩き始めたんだ。希望に向かって……!マユたんが成長して俺のイチモツを受け入れられるようになれば、俺は卒業するんだ。

 

「あぁ、そうだ。だから、俺は…………!!」

 

 ─────君で全てを失おう。

 

 右手の先で、小さく息を呑む音が、俺の心をそっと締め上げた。

 

 

 

 

 

 

 







皆さんが覚えているかどうかの、ちょっとした勘違い要素。

①、ショウは魔法使い(童貞)

②、ショウがマユの事を呼ぶ時に「君」と呼んだ場合は、マユの中で核となっているアーチャーを呼んでいる……とマユは勘違いしている。



ふふふ、さて、マユはショウが呟いた最後の一言をどう受け取るのか……!!
それは次回作をお待ちください……!!

というわけで、病院の待ち時間を利用して書き上げました今回、なんか、色々と変化も知れません!

誤字脱字、コメント、お待ちしております!!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「俺は嘘なんてついていない。俺は悪くねぇ!!」

初投稿ー、初投稿ー、初投稿が通りますー。進路上の皆様はお洋服を脱いでご自分の横に畳んで積み重ね、社会の窓を開けながら待機してくださいー。右に曲がってマース(開幕下ネタ)

はい、申し訳ありません。初投稿です。

えー、皆様。今回は短めです。制作時間は1時間半!そして、なんと過去に類を見ないほどにシリアスでござます。

シリアス「そマ?今から帰るんやけど」
休み「ふっ、どうやらまだ俺の出る幕ではないようだな」
残業「こいよ、こっちこいよ」
シリアス「や、やめてくれ……殺さないでくれ大佐!」
タイムカード「お前の俺は最後に切られると言ったな……あれは嘘だ」
シリアス「うわああああああぁぁぁぁぁぁあ!」

今回はなんて言うか強引なきがします。……なんでそないな文章なん?舐めとんのかワレェと言われても仕方の無いことでしょう。
でも、それでも!!初投稿だから……!初投稿だから読者ニキのみなさんは寛大な心で許してくださるはず。

もう許せるぞおいって言われたいな(願望)







 

 カルデアに来た私はショウに質問を重ねていた。なにせ英霊たちが犇めいているであろう場所だ。ならば、私の真の姿……この世全ての悪に勘づく者も少なからず居るかもしれない。

バレた所で即座に殺されることは無いとは思う。むしろ、幼気いたいけな少女を守らんと味方になってはくれないだろうか?

 

そんな不安と悪企みを交互に繰り返しながら、私はまたショウに質問を重ねた。

しかし、それに私は後悔することになる。

 

「……なぁ、ショウ。ショウはどんなえいゆうたちとであったんだ?」

 

 特に深い考えもない、話をつなぐための一言。だったと言うのに、ショウの変貌は……ここ数日共にした私で無くてもハッキリと分かるほどに大きかった。

 

「────英雄になど俺は出会わなかった」

 

眉間にシワが寄り、目付きが険しくなった。

 

「持て囃された者、祭り上げられた者、晒された者」

 

冷たい声に熱が篭もり、その怒りの熱を外に放り出そうとしているようにも思える。

あるいは、常に胸に燻る激情という熱を冷やすために、今までショウは無感情を装っていたのかもしれない。

 

「騙された者。そんな者達にしか俺は出会わなかった」

 

『魔法使いは数多の英雄達の物語にその姿を見せ、友好を結び、そして助言や助力を度々行い、友としてその最期を見送った。常に先を歩く者でありながら常に命を見送る者でもある彼は───』

 

私の脳裏に何らかの英雄譚の文章が過ぎる。これは聖杯としての知識だ。

魔法使いという存在は、英霊達が現世で苦労しない為に聖杯より与えられる知識の中にすら含まれている。それを私は思い出したのだろう。

 

思い出した知識を噛み砕き、咀嚼し、さらに思い出そうと苦心している間に、その言葉は小さく吐き出す様に私の耳に届いた。

 

「────結局、誰もが俺を置いて逝く」

「っ!」

 

 心臓が跳ねる。初めて聞いた声だった。余りにも弱々しく、悲しい声。魔法使いという男が見せる初めての弱さ。それに私は思考すら止めて固まった。

何かを言わなければ、そう思う事はできるのに、言葉は喉に突っかかって出てこない。

私を抱きしめる力が強くなる。それは……まるで救いを求める幼子のような必死さを私に伝えてきた。

 

「そんなことは……!!」

 

……そんなことは無いと、言えるだろうか。寿命が無限の生物など存在しない。それこそ、神の様な何らかでなければ。しかし、ショウと神々の相性は最悪だ。短命種としか友好を結べないショウにとって、彼らの死は……彼らが居なくなるというのは耐え難い事だったのかもしれない。

だから、私は何かを言わんとした自分の口を噤んだ。

 

怖かったのだ。恐れていたのだ。……ショウの気に障ることを言えば殺されてしまうかもしれなかったから。

 

 

 

でも、また私は間違えた。

 

 

 

「あぁ、そうだ。だから───」

 

 

 

私を抱きしめる力が強くなる。それこそ、痛いほどに。

咎めるようにショウの顔を見て、私はまた固まった。

 

 

──それは決意の篭った悲壮な顔だ。

 

 

──それは無表情の中に垣間見える無限の絶望だ。

 

 

──それは永遠の時間の末に身に染み、魂を犯した爪痕だ。

 

人は人であるために感情を持った。

けれど、感情は時に人に牙をむく。現実の不条理に嬲られ、責められ、力尽きた人間にトドメを指すのは……自分自身の感情だ。

 

私はショウの目的(感情の消滅)を知っていたはずだった。

でも、それは少しだけ、少しだけ希望的観測が入っていたのかもしれない。

 

けれど、この後に続く言葉は予想が出来た。

 

知識でもなく、権能でもなく、単なる……1人の少女として。ショウと過ごした単なる子供として、予想が出来た。

 

出来てしまった。

 

それを自覚してようやく理解した。

 

私が………………何を恐れていたのかを。

 

 

 

「俺は……………………!!

 

 

 

 

 

 

─────(ロビン)で全てを失おう」

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

この言葉(私の否定)を聞くのを恐れていたのだ。いつの間にか、私ですら気が付かないうちに私は……ショウに浸っていた。

 

私だけに囁く冷たい声(優しい嘘)を聞いていたかったのだ。

 

私だけを見る冷たい眼差し(濁った水晶体)が心地よかったのだ。

 

それの何がいけない?何が()()?誰からも悪だと断じられ、責任転嫁のための的にされ、悪意の肥溜めだとされてきたのだ!

 

意思がなかった頃の方がましだった。だが、今は得ている。()()に向けられるあらゆる感情は今も尚、私に届いている。

権能を失った今も!受け止め、受け入れる機械ですらなくなった私に、お前は悪い、お前が悪い、自分たちは悪くないと!

 

……なにが、いけない……?

唯一の理解者を得ようと、必死になることの何が悪い?()を見てくれて、()に話しかけてくれる存在に、期待して何が悪い?

 

私の為にと家具を買い、家を変え、魔法や呪文を唱える姿をみて、期待しないなど出来ると思うか?

 

好かれるための努力をプライドと自己嫌悪と戦いながら、ショウに少しづつ心を開いていく自分に現実逃避を重ねて、それでも()()()()()()と思ってなにが駄目なんだ!?

 

…………言ってくれたんだ、ショウは私に……確かに言ったんだ。

そうして思い出すのあの日の事だ。

 

『わたしはしにたくない!だからおまえにしたがった!だが、それもここまでだ。ころしたければころせ。ころされるために“飼い殺し”にされるのはごめんだ!』

 

私は……対等の立場を、初めから求めていた。

 

『“愛”のないおまえなんかに、わたしはっ──────』

 

愛されることを望んでいた。

 

『───そうか……そうだったか』

『うあ!?』

 

 魔力の壁が、まるで私とショウとを隔てる壁に思えて、これ以上離れるものかと懸命に食いついた。

けれど、ショウがその壁を消し去ったんだ。

優しくそっと抱きしめられて、胸に生じた痛みを考えない様に必死になって。

 

『俺がマユを殺す事は無い』

『っ』

『……先に謝罪しよう。マユ、俺は……手を放す事が出来ない。……目的がある。……捨てられなかった物を捨てる為に、マユが必要なんだ。他には何もいらないと、そう考えていた』

 

手放せないと言われて、必要だと言われて、嬉しくて、けど言い訳を口にして、否定されなくて悔しくて。

 

『……やはり、からだがもくてきか』

『そうだ。だが、『マユを見た時から、その考えを改めた。今の言葉を聞いて深く悔いた』』

『……どういうことだ?』

 

そんな言葉に胸が高鳴って、顔が赤くなって。それでも恥ずかしいからそれを隠して生意気を言って。

 

『……マユの心が欲しくなった』

『は?やるわけないだろう』

『ふっ、だろうな』

『初めは、殺す気なのだろうなどと言うマユの発言を咎めようと思った……が、どうやら叱られるべきは俺だったようだ』

『怖がらせてしまったな。……すまない。これからは─────』

 

 

 

 

『マユに好かれるため、努力するとしよう』

 

 

 

 

 

 

言って……くれたのに……。

 

なんで、私なんてものを…………願ったんだ……お前は……。

 

どうせ、嘘をつくなら……バレないようにしろ、この不器用が…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

むむ?……マユたん震えてる……?ごめんよ、流石にマユたんで全てを失おうとか宣言されたらそら怖いよね。悪かった!!すまん!

 

しかし、なんというか手から伝わってくる震えの罪悪感が大きすぎて声が出ぬぇ。

 

どうしよう、と思ったらなんですかこの部屋は。《藤丸立香》……?

 

………………JKの部屋?

 

ひゃっほい!とつにゅー!

 

ってまてまてまて……さっきの宣言から即JKの部屋に侵入するのはマユたんからの心情がさらに悪くなる気がするンゴ。というわけでスルー。いやぁしかし、部屋多いけどほぼ空室なんだな、やっぱり規模に対して人員は少ないんだろうな。

 

それにしても、大人しいなマユたん……大丈夫なのか?お腹痛いの?大丈夫?結婚する?

 

「マユ?」

「…………」

「どこか痛いのか?」

 

…………あれ、これ結構まずいやつでは?怒ってるのか?そんなに英霊に会いたかったのか……いないから仕方ない……いや待てよ?立香ちゃんとかに頼めば召喚行けんじゃね?

 

「…………むねが、いたい」

「……そうか。回復の呪文を使ってやろう。ホイミ」

 

ぐへへ、本当はお洋服をぬぎぬぎして視診からの触診からの唾液で治癒をですね……?

まぁしかし、今回は様子も変だし、呪文で念の為やっとこう。でも見た限りだとなんの異常も無いんだけどなー。

 

「気分はどうだ?良くなったか」

「んーん」

「……帰るか?」

「うん……」

「わかった。では家に戻ろう」

 

レオナルドには文句のひとつでも言ってやりたいが、まぁ仕方ないね。マユたん優先だからなこの世界は。どんな事よりもマユたん優先だからな。

俺はマユたんを優先しないやつは許さねぇ。マジ、これマジだからまじで。

 

落ち込んでいるみたいだし、元気になってもらうためにも腕を奮って最高の料理をお作りいたそう!!

 

「ルーラ」

 

 







さぁついに自分の本心に気が付いたマユ!だが勘違いはとまらぬぇ!!そのせいで深まる溝!!ちなみにマユに谷間はないぞ。まな板だよこれ。

そしてそれに気が付かないショウ!痛恨のミス!!ちなみにマユがまな板で谷が無いことは気がついているぞ。


PS
誤字脱字報告、コメント、いつも楽しみに待っております。
コメント返しは勢いとノリとフィーリングだけで返しているため、なにいってだこいつと思われる方も多いかもしれませんが、許してヒヤシンス。
あ、誤字脱字を楽しみに待つのは失礼ですよね、皆様にやらせてしまっている訳ですし。全裸焼き土下座しました(過去形)
しかし、コメントを楽しみにニヤニヤしているのは事実!前回のコメントは本当に笑い転げましたぞ。ああいう発想の文才が欲しいなぁ……。

みなさん、面白いコメントなどがあったらぜひぜひGoodを押してくださいね!せっかくの機能なので沢山使っていきましょう!

誤字脱字、コメントお待ちしております!




目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「寒さとは即ち……男女が裸で身を寄せあって暖をとる最大にして最高のチャンs(ry」



皆さん、夏休みですね。
前作からかなりの間が空いてしまいましたが、初投稿です。

とても久しぶりに初投稿をするので、文章が拙いと思います。小学四年生位のロリが書いたと思って生暖かい目で文章を見つめて、充電が切れて暗転したらその顔を30秒見つめてください。そしてこれは悪いやつだな、と思ったらコメントで報告してください(*´꒳` *)





 

「へっくち!」

 

朝だ。窓の外は白み、びゅうびゅうと吹雪が吹いている。

 

「いや、おかしいだろ」

 

昨日まではさんさんと日光が降り注ぎ、地面を照らしていた筈なのだが、いきなり過ぎないか?

そらは雲におおわれているし、凄い吹雪だ。

 

「…………さ、さぶいっ……!」

 

骨身に染みる様な寒さを感じてブルリと震えながら、ベッドの中に潜り込む。すると、何か硬いものに当たった。それは暖かく、この寒さを凌ぐのに適しているように思えた。

 

「…………あったかぃ」

 

それにギュッと抱きついて暖を取る。少し触って確かめると意外と凸凹している。硬いがなんだろうか。私のベッドの中にこんなものはなかったと思うんだが……まぁいいか、暖かいし。

それになんだか落ち着く香りもするし、ショウの顔も見たくないししばらく部屋に篭っていよう。

 

寒さのせいで早く起きすぎてしまったが、これならばよく眠れそうだ。

 

「ふふ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

どうやら、俺は今天国にいるらしい。

寒くてベッドから出られなかった俺だったが、なんとその間にマユたんが起きてしまったのだ。

誤算と言うよりは単純に寒さに負けた俺のせいなのだが……まぁ仕方ない。フバーハとか掛けて眠って見れば俺の言いたいことは分かるはずだ。ぬくぬく感が全くなくて毛布などをかけて眠っている感覚になれないのだ。

 

まぁそんなわけで、実は俺にマユたんがくっついてきた。寝惚けているのかそれとも分かっていてやってるのかは分からないが。

だが、俺に抱きついている事は確かだ。寒いからか頭まですっぽりと潜っている訳だが、なんか背徳感がする。童貞だからか……?このまま俺の息子を……いや、なんでもないです。

 

「ふふ……」

 

はぅっ、鼻血でりゅぅぅぅう……!!ホイミホイミ。よし、セーフ。

 

……さて、そろそろカルデアに行かなきゃ行けないな。ちなみに、ここは立香ちゃん達の世界とは色々と異なってるから世界ごと凍った訳では無い。今雪が降ってるのは単純に、極寒の世界ってどんな感じなのかな、なんて再現してみただけだ。極寒最高ですわ、だって見てみ。抱きつかれてんねんぞ。幸せかよ。

 

実際、まだ向こうも凍った訳では無いだろうし。

 

ゲームやってた時は確か、なんも出来ずに職員達が死んじまう訳なんだが……世界を救った英雄達が簡単に殺されていく様って言うのはなんて言うか……あの時は確かに怒りを感じたと思うんだ。

今はまぁ、そうなんだ。位の感覚なんだが……嫁さんに惚れてもらうためにもかっこよく生きたい(本音)

 

……。

 

でももう少しくっついてていいよね?……ダメだよなぁ……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「や、やぁ!よく来てくれたね魔法使い様!」

 

魔法使いがカルデアに来る。

その知らせを聞いて、ダヴィンチ達は大急ぎで出迎えの準備を整えた。

できる限りの持て成しをする為だ。

 

何せ今日は魔術協会の者達がやってくる、まさにその日なのだ。

魔術協会の者達が来た時に、何の持て成しもされていない魔法使いを見たらどう思うか……。

魔法使いとはそれだけ“大きな”お人なのである。

 

「持て成しは要らないが……仕方あるまい」

「……」

「?」

 

魔法使いもそれが分かっているのか、渋々といった様子で受け入れた。

しかし、それよりもダヴィンチが気になったのは魔法使いの後ろでやや俯いたまま立ち尽くすマユの事だ。

 

先日会った時はダヴィンチを挑発するような元気な女の子だと思っていただけに、反応らしい反応をしないマユをやや案じた。

魔法使いが魔術師“らしい”男なら、傀儡にされたとかの予想が付くが、そういう訳でもないのだろう。

 

「魔法使い様。マユちゃんはどうしたのかな?」

 

魔法使いはその言葉に肩をすくめる。そして、ダヴィンチを正面から見つめる。冷酷で感情の起伏を感じさせない眼差しだ。ダヴィンチは胸が跳ねるのを感じながら、それをおくびにも出さずニコリと笑い返す。

すると、グイッと魔法使いの顔がダヴィンチに近付く。

耳打ちをする気なのだ、と分かっていても赤面を止められない。

 

「────レオナルド、君のような存在に、マユは会いたがっている」

「ひゃ、ひゃいっ……!あ、あわあわ、あわせてあげるとも!!」

 

囁かれる声は冷たく、けれどダヴィンチの顔は灼熱を纏った。

 

「そうか、礼を言う」

 

ばっ!と魔法使いから伸び退いて背を向けながらパタパタと顔を扇ぐダヴィンチ。冷静な思考が訴えかける。

こんな事をしている場合ではない。ひとまず、魔法使いを味方に付けなくては。

 

「ま、魔法使い様!」

「お前に様を付けられるのは気に障る。昔のままでいい」

「っ!……あ、あぁ。わかった。魔法使い」

 

魔法使いが表情を変えず、こちらを見ている、そう認識するだけでダヴィンチはそわそわと落ち着かない気持ちになる。私が惚れているのはその知性だけだー!とどうにか自分を誤魔化して、本題に入る。

 

「今日、ここに君が来たということは、私たちを助けてくれるって事でいいのかい?」

「なんの事か分からんな。今日、“何かが”変わるのか?」

 

やはり、魔法使いは何かを知っている。

2人のやり取りを遠巻きに見ていたムニエル他職員やホームズは確信する。ダヴィンチも理解した。そして、これは恐らく彼なりの誠意なのだと受け取った。

 

「今日、魔術協会が来る。私達の証言では恐らく足りないだろう。けど、魔法使いの言葉なら向こうは考慮せずにはいられない。少なくとも、表面上はね」

「……」

 

魔法使いは黙り込む。カルデアの中であるため、風もない筈なのだが、ふよふよとローブが蠢いている。

魔法使いの後ろで彼に溺愛されているであろうマユと言う少女がローブの動きを目で追っていた。

 

「………………わかった。助けよう」

「本当かい!?ありが…!」

「─────だが、証言はしない」

 

え、という困惑の声を誰かが上げた。

 

「俺はお前達の軌跡を知るが、それを直接この目で見た訳では無い。肌で感じた訳でもなく唯知り得ただけだ。それに──」

 

「それに……?」

 

「世界を救って見せたなら、協会程度どうとでもなるだろう?何をいまさら怖気付いている。俺はお前達を助けよう。だが、それはお前達の命だけだ」

 

周囲を見渡しながら、語りかけるように魔法使いは言った。背中を押したのだ。

 

“お前達は世界を救った英雄達だ。心配せずに戦ってこい。命だけは必ず救ってやる”

 

これ程心強い後ろ盾があっただろうか。正面から協会にぶつかって、死んだとしても生き返らせてもらえるのだ。

無論、正面からぶつかるなんて事はバカのやることだ。協会は本来ならば味方……と言うよりもカルデアの上司にあたる組織。

今回はカルデアの有用性や飛ばされた1年間の説明などを行い、カルデアがどれだけ人類に必要な物なのかを協会に分からせるための戦いなのだ。

 

死人なんて出るはずがない。

 

職員の()()がそう考えた。

 

「………………死人が、出るのか……」

 

ダヴィンチが唖然としたような……あるいは可能性としては考慮していたものの、それを確信させるような事を言われ戸惑っているような顔で、ボソリと呟いた。

それは声のよく反響するこの場では大きく響き、職員達にざわめきが広がる。

 

ホームズの隣で事を見守っていた藤丸立香やマシュ・キリエライトも胸に手を押し当て、心配そうに職員達を見回していた。

 

「レオナルド、カルデアには何騎のサーヴァントが残っている?」

「私とホームズだけだね」

 

ちらりと魔法使いがホームズの方をみれば、ホームズが片手を胸に添えてお辞儀をした。整った顔立ちにスラリとした体型。着こなされたスーツにより、実に様になっている。

 

「マユ、あの男には近寄るなよ」

「…………」

 

そっとマユに魔術で内緒話しをする魔法使いは……実に小さな男であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

カルデアに来た。

ショウが何かを話している。

 

ダヴィンチが私の様態について聞き、ショウはそっとダヴィンチに耳打ちした。

何を言っているのだろう。悪口か?……いや、それはないか。どうにも考えが暗い方向に向かってしまう。

 

はぁ、というため息を外に出さずに飲み込み、ふよふよと揺れるショウのローブを眺める。

 

「マユ、あの男には近寄るなよ」

「っ…………」

 

いきなりショウの声が耳元から聞こえて心臓が飛び出そうになる。

なんとかそれを堪えて、ショウの言った男を見る。

 

……シャーロック・ホームズ。確かに、あれは危険な男だろう。聖杯としての知識も、ところどころ欠けているもののその危険性を十分に分からせるものだった。

 

僅かな情報から真実を探し出す……味方としては心強いが敵に回すと最悪の相手だろう。

私の場合、味方にしても恐ろしい。なにせこの世全ての悪であり、聖杯などという特異な存在だ。それを知られ言いふらされたら終わりだ。

 

…………いや、私が死ねばショウの目的は達成できない……ちっ、生き返らされてしまうか……ダメだ。近寄るべきではない。堂々と反抗し意識を殺されては一泡吹かせることすら出来ない。

 

今は耐え忍ぶべきだ……。

 

「あ、じゃあ私、案内しますね!」

「私も行きます、先輩!」

 

考え込んでいる間に話は進んでいたらしい。

どうやら私達が泊まる部屋に案内されるようだ。サーヴァント達のほとんどが座に帰り、空室が沢山あるのだとか。

 

1人で1つ部屋を貰えるのかも。ここならショウの監視の目も緩むかもしれない。悪巧みを……

 

「マユと俺は同じ部屋でいい」

 

…………え。

 

「わかりました!」

 

……どうやら、悪巧みは出来そうにないみたい……だ。ガクリ

 

 







誤字脱字、コメントお待ちしております!
PS。
遅くなって申し訳ないですが、夏休みも予定でみっちりなので投稿ペースが早くなったりはしません!┏○┓


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「マユ、服を脱げ(真顔)」

期間を開けて初投稿。

今回はなんと……!!

1、ショウ視点
2、マユ視点
3、ロビン視点

となっております!!!初投稿だゾ!

ただ、久しぶりに書いたのと、テストのショックでそれぞれの視点は1000文字位の短いものとなっております。

初投稿だから文字数が少ないのは仕方の無い事なのだ。うん。




 

「…………」

 

部屋に着いた俺たちだったが、マユたんはぷんすこしている。サーヴァントに会えると思っていたのに会えなかったからだろうか。それとも、単純に俺と同じ部屋なのが嫌なだけか。

 

後者だった場合、俺の心は死ぬ。

 

いやしかし、俺の妻だと明言したマユたんだ。俺は信じるぞ(震)

だが気になるには気になるし、聞いてみるか……

 

「マユ、何か不満があるのか?」

「………………ベッドがたりない」

 

そう言って指を指す。なるほど。確かに普段マユたんが使っているベッドはキングサイズだもんな。一人用の備え付けベッドでは小さいか。サイズがキングなのは俺の愛の表れ+俺が一緒に寝るためだ。ダブルでも良かったが、キングの方がこっそりと抜け出したり入り込んだりが楽だと考えたのである。

 

よし、チャチャッと魔術で大きくしよう。

 

「────これでいいか?」

「ぇ……ぃゃ…………うっ……ま、まぁいい」

 

む?反応がイマイチ……はっ!分かったぞ、無理難題を言って甘えようと考えていたのか……?!

一人用サイズのベッドに2人でぎゅうぎゅうに入りたかったのか……!?

く〜〜ッッ……!!惜しいことをしたッッ……!今更元のサイズには戻せない……!!

 

「に、にもつは……どこにおく?」

 

マユたんがそう言いながら肩から掛けていた鞄を抱き締める。

明らかに不安そうだ。それか、中に大切なものでも入っているか?現状、マユたんの私物なんてほぼ無いが……本とお裁縫セット位では?……あ、でも水とか保存食とか用意してた気がするな……さすが俺の嫁。サバイバルの可能性すら考慮しているなんて……!

 

ちなみに、現在のマユたんの格好はパーカー+スカート+肩掛け鞄という健全なエロスを感じ……コホン。とても可愛らしい格好だ。パーカーはピンクが基調となっており、フードの部分が猫なのだ。耳もついている。

 

ソックスもポイントが高い。衣服には魔術で保護をかけてあるから、寒くも無ければ暑くもない程よい温度を保ってくれるはずだ。

呪文は戦闘に特化したものが多いが、魔術はそれこそ細かい所にまで手が届くので使いやすいな本当。

 

「好きなところに置くといい」

「……ぇっと……ここでいいか」

 

そう言って「ネズミさん鞄」をベッドの横にあった化粧台に置くマユたん。

手当り次第買い漁った中からあの鞄を選んだ時、「猫さんパーカーとネズミさん鞄を合わせれば弱肉強食だな!」と謎のこだわりが独り言として口から零れているのを俺は聞いてしまった。

かわいかった(語彙力の低下)

 

「こ、このあとは……なにをするんだ?」

 

……かわいい(語彙力(ry)

 

明らかに緊張しているマユたんに俺は動揺を隠せないはずだがかわいさによって動揺は吹き飛ばされていた。何を言っているか分からないが、俺も俺を抑えられない(謎)

心做しかマユたんの顔が赤くなってないか……?まさかまた風邪を引いたのか!?

 

くっ、すまない!マユたんの体のことを考えずに世界を寒くしてしまった……!!あれが原因で風邪を引いたのだとすれば完全に俺の責任……うへへ、視診触診の時間ですな。

 

「マユ……?顔が赤いが……体調でも悪いのか」

「っ〜!!……ちがう!へやがあつい!それにおまえがちかいのだばか!あつくるしい!」

「……?」

 

部屋が暑い……?そんな馬鹿な、マユたんの洋服には魔法使い(童貞)の俺が全身全霊の愛を込めた魔術や魔法、その他技術を注ぎ込み、さらに幾重にも重ねられ、神殿と化している筈だ……温度調節をミスった……?

そんな訳はない!とは言いきれないな。マユたんの着る洋服、という要素が俺を興奮させ術を狂わせた可能性は0では無い。あるいは術の重ねすぎで不具合が生じた場合も考えられる。そうはならないようにやったつもりだったが。

 

1度回収し、術を確かめなくてはならない。

 

術に不備が出たか……マユ、服を脱げ」

「…………ふぇ!?」

「何を驚く?やりたいことがあるんだ」

「や、ややや!?」

「や?」

「いやーーーーーー!!」

 

…………あれ?マユたん!?……物凄い勢いで部屋から出ていってしまった……

 

 

 

 

 

 

この変態!助平!すけこまし!あのクソ魔法使いがー!

 

なななな、なにがヤリたいだ!死ね!私の肉体はまだそういった事をするだけの成熟を迎えていないわ戯けえ!!

 

「はぁ、はぁ、はぁ……。むぐぐ…………」

 

『マユと俺は同じ部屋でいい』

『───これでいいか?』

『マユ、服を脱げ』

『ヤリたいことがあるんだ』

 

…………

 

「かくしんはんだぁぁあ!」

 

お、おおお、犯す気だったのだ私の事を!な、なななぜこよタイミングへ!?(動揺)

家なら何時でも出来ただろうに!ま、まさかたくさんの人がいる場所じゃないと興奮しないとかそういう特殊な奴なのか!?ど、どうにかして状況を打開する必要ががが……!

 

ま、まて落ち着け……既成事実を作ればショウの弱味を握ることが出来るかもしれない……が、この体でアレを受け入れるなど不可能。死ぬわ。ショック死するに決まって…………ひっ、ショウなら死んでも蘇らせることが……出来てしまうっっ!?

 

こ、怖すぎるッッ……!

 

ほ、保護を求めよう!ダヴィンチ辺りに相談すれば良いか!?

は、早くしなければショウに見つかる!急げ急げ!逃げろー!

 

 

…………ふふ、なんか楽しいかもしれない。

 

 

っ!いやいやまてまて、子供か私は!鬼ごっこでもしているつもりか!!

犯されて死に、生き返らされる永遠ループが待っているんだぞ!?楽しくなんかあるわけないだろ!

 

「っ!」

 

っ!な、なんだロビン。……?

 

言いたいことが、ある?

 

 

 

 

 

 

 

ぐちゅり、ぬめり。

 

耳障りな音が私の鼓膜を叩く。

腕や足が泥に呑まれ、()()()()()

 

激痛が私を苦しめる。

 

けれど、耐えられる。

マスターの声が聞こえる度に、私を苦しめる泥が僅かに離れて行く。心が暖かくなり、まだそばに居ても良いと思わせてくれる。

 

でも、苦しんでいるのは私だけではない。

この子(マユ)もだ。

 

この世全ての悪であり、けれども無垢な子供でもある。

 

この子は苦しんでいる。

この世全ての悪と無垢な少女の2面性が、思考や心を蝕んでいる。

…………私は、柱だ。

この世全ての悪に無垢な少女が潰されてしまわないように、支える柱。

この子が受ける2面性の弊害(苦しみ)のほとんどを、私は受け持っている。

泥に浸かって、押し留めて、少女の未熟な心が囚われないように。

 

────苦しい。痛い。死にたい。

────楽になりたい。苦しみから開放されたい。

────受け入れてしまえば、楽になる。

 

そんな甘美な甘言は私の腕を、足を這い上がり喉元までやってくる。

飲み込んでしまえば、きっと[私]は居なくなる。でも私はまだ、マスターに守られている。

声が、魔法が、私を守ってくれている。

 

そしてこの子もマスターに守られている。ならば、使い魔である私は、マスターの命に従わなければ。

 

……だから、この可愛らしい勘違いを正す必要があった。

私は、道具なのだ。確かにこの子の言う通りなら……それはどれほど嬉しいことなのだろうと考えずにはいられない。

けれど、もしマスターが()()()()()()したのなら、きっと私は許せない。それが私を生き返らせる為に行ったとしても。

 

マスターは圧政者では無い。

私はそう確信した。だから忠誠を誓った。

私は柱。マスターの愛は、確かにこの子に向けられている。

こうしてこの子の目を通して見ても、ハッキリと分かるのだから。

 

ほんの少しだけ羨ましく思う。けれど、そういった感情は利用されてしまうから、切り捨てる。

幸せそうな2人を見て、心を暖めて、冷たい泥を跳ね除ける。

 

……私がいなくなれば、この幸せは無くなってしまうのだ。

私の願いのひとつを叶えてくれた、マスターの幸せが。

 

私はこんなにも近くで見られる。

この子のために頑張ることで、マスターの願いに、幸せに添える。寄り添っていられると、必要なのだと確信できる。

 

 

伝えなくては。この気持ちを。私の考えを。

 

言葉は届かない。でも、感情だけは届く。

 

私は、あなたを応援している。頑張って。勇気をだして。

陳腐な言葉に、精一杯の感情をのせて贈る。

 

私は使い魔(サーヴァント)

マスターの傍に居られるだけで、マスターを見ることが出来るだけで声を聞けるだけで────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───胸が苦しくなるくらい幸せなのだから。

 

 

 

 

 









マユの服装一式に付与されている効果。

「猫さんパーカー」
・自動温度調節。
・自動修復。
・自動回復。
・自動復活。
・自動攻撃反射。
・超強障壁。
・かわいい。

「ネズミさん鞄」
・収納拡大。
・内部時間停止
・収納物修復。
・かわいい。

エミヤやギルガメッシュ、メディアなど、魔術に対する特攻宝具を持っている人物でないと傷一つ付けられない上に反撃で即死するレベルの報復が飛んでくるトンデモ装備。


誤字脱字、コメント、評価、待ってますぜ!






目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「マユたん応援の回」


お久s初めまして。シフシフと言います。
初投稿となりますが、どうにか30分ほどで書き上げることが出来ました。
何故か投稿もしていないのにコメントがやって来て……期待に応えなきゃって必死になって書きました!30分で!

誤字脱字の確認なんかかなぐり捨てて書きました!
伏線の回収なんてかなぐり捨てて書きました!……ん?伏線の回収……?何を言っているんだ僕は。これが初投稿でした!あはは!


さぁ、今回の初投稿はショウとマユの視点が何度か入れ替わるので分かりづらいかと思います。でも初投稿だから許してください!お願いしますマユちゃんが代わりになんでもしますから!(ネタ募集)






 ▪

 

 視察団?的な奴らが到着した。

 まぁそんなことはどうでもいいとして……もう、俺は生きて行けない(唐突)

 

 マユたんが見つからないのだ。

 

 普段なら秒とかからずに見つけられるはずなのに。

 

「………………」

 

 足を組み、腕を組み、顎を擦りながら唸るようにして考え込む。

 恐らくだが、マユたんは逃げ出したは良いものの帰り道が分からずどこかので迷っているのだろう。

 はっ!!?どこかの通路で泣いているのでは!?

 そう考えただけでいても立っても居られなくなるな。ゾワゾワと恐怖が這い上がってくる。

 

 よし、決めた。みんなが怖がるかもしれないと躊躇していたが、魔力で探知してしまおう。魔法よりはマシなはずだし。

 

「あー、えっと魔法使いさまっ…………っ!?」

 

 …………あ、魔力解放したらムニエル君が倒れてしまった……すまないムニエル君。アルミに包んで焼いてあげるから許せ。君は無駄にしない。少しも。

 

 魔力を周辺の全ての物に通して、形状やら何やらを知覚する……ゴリ押しだ。しかも俺を中心に魔力を展開する以上、俺の位置が丸わかり。こっちだよマユたん。

 

 俺の魔力が体を突き抜けるわけで、魔力が低い奴は気絶してしまう。自分の魔力を一瞬とは言え押しのけられてしまうからだ。

 

 あ、レオナルドとホームズが消滅しそうだ。……そりゃそうか、エーテルが掻き乱されたらやばいよな、サーヴァントは。ほい、ホイミホイミ。

 おー驚いていらっしゃる。

 

 ……!?な、なんだあの女!ピンクの髪に……ボンキュッボン!?戦闘力が高すぎる……だが、俺には分かるぜ……ボンキュッボンで美人は大体危険人物だ。しかも、あの怯み方だとサーヴァントだろう。死にそうだな、ホイミしとこうかな……いや、要らないみたいだな。礼装か何かで強化してあるのか。俺対策……?

 

 まぁいいや。

 

 ……ん、はっ!?お前はゴル…………なんだっけ、まぁいいかゴルフ君と呼ぼう。

 確かお前良い奴だったよな(うろ覚え)気絶させて済まない。

 

 あーあー、もうみんな倒れちゃって……むちゃくちゃだよ。あ、マユたん居た。めっちゃ走ってる可愛い。あ、こっちに走ってるのか。うへへ迎えに行かなきゃ。

 

 さて、魔力を戻してと……

 

 部屋の掃除からお菓子の準備……

 

 マユたんが来る前に最高の状態でお出迎えしなくては。ふへへ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◼

 

 

 ────────!?

 

 

 ショウの元へ向かっていた私は突如として襲い来る魔力の波に足を止めた。

 ショウの魔力だ。私の体がショウの魔力で満たされていなければ、きっと何らかの影響が出ただろう。

 

「ぁ……ぅ……」

「な……にが……」

「………………」

 

 周りは死屍累々。自分が持つ魔力を一瞬とは言え押し出された職員達が倒れてしまう。

 全身の筋肉全てが5cmほどズレたと考えてみればどの程度の苦痛なのか分かる。下手を打てばショック死する可能性だってあった。

 

 強力な魔力を持つ相手と対峙した時、ビリビリする感覚や物理的な壁のような物を感じる時があるらしい。あれは魔力と魔力がぶつかり合うからこそ起きる現象だが、それがショウの場合はぶつかると言うよりもぶん殴ってくる。

 

 ……怒っている訳では無い。私を探しているのだ。

 

 私をみつけたからなのか、魔力が引いていく。それに、倒れていた人たちも魔術か何かで回復し、立ち上がれるようになっていた。

 魔力の波が引いた方向にショウはいる。

 

 …………急がなくては周りの人に迷惑をかけてしまう。別に構わないがそれで敵対しては私を匿ってくれる組織がなくなる可能性がある。急げ急げ。

 

 

 私は廊下を迷いながら走る。通路がどっちか分からない。とはいえもう一度魔力を放出されればみんなに迷惑が……と、変な仮面の男が現れたぞ?なんだコイツら。

 

 

「ツァーリの名n」

「ふぇ!?…………溶けた……?」

 

 ぇ……?ええ……ショウ、何かしたのか?

 殺しちゃったのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 □

 

 頑張れ……!頑張れマユたん!そこを右だ!……あ!そっちじゃないぞマユたん!

 

 くっ、そこ!そこだよ!そうそうそう!行ける行ける!…………あぁっ!惜しい……そこ左なんだなぁ……

 

 いやぁ……可愛いですねぇ。1度反応を見つけたからマーキング(意味深)して観察中な俺。

 応援しながら帰りを待っているのだ。

 

 ちなみに、現在オブチリニキ?……よくわからん兄貴達にカルデアは蹂躙されている。

 マユたんを応援してたら1時間くらい経ってた。マユたん方向音痴過ぎでは?めっちゃ一生懸命なのは痛いほど伝わるんだけど……可愛すぎて永遠に眺めたくなるが可哀想になってきた。

 

 多分内心では恐怖で怯え震え上がっているものの、俺に会うために一生懸命に廊下を走っているのだろう。助けて上げたい……!!

 でもなんて言うかな、はじめてのおつかいっていうか、この応援してあげたい感。

 

 無敵お洋服着てるから安全だし、見守りたい……!

 

 

 あ、おいこらムニエル君を虐めるな。お前ら全員マーキング済みなんだぞ全部見えてるからな。ザキ!

 あ、お前もだぞコラ!ムニエル君に寄って集って何やってんだバカ!ザキ!

 

 おおい!!ムニエル!お前人気か!?美味しいからか!?めっちゃお前のところにニキ来てるじゃねぇか!いいデコイになってるなおい!!

 

 むっ!き、貴様らァ!女の子相手に数人でだと!!ゴクリ。許さん!ザラキ!

 

 あ、済まないが名前覚えてない技術班のオッサン!殺されてるじゃないか可哀想に……よし、ザオリク!

 あぁもうめちゃくちゃだよ……コラコラコラ……そんなに壊さないでくれよ……全く。じゃあ、あれだなニキ達に壊された部分だけ直すか。ベホマズン。

 

 お?マユたん近付いてきた!ええぞええぞ!その調子や!

 そこで真っ直ぐだぞマユたん!…………なんでだ!!なんでそこで曲がったんだ……!あ、さっきの通路からニキ来とるやんけ!マユたん運いいな。

 あってめ、マユたんの残り香に誘われて曲がったな!?ザキ!

 

 ふぅ。……はっ!?マユたんの目の前にニキが!ザキ!

 危なかった……。

 

 っ!まずいな……ふざけている場合では無くなったか。数が……多すぎる。

 全部片付けても良いんだが……面倒だしな。仕方ないか。マユたんには自分で頑張ってもらいたかったが(手出ししまくってる)、助けに向かうとしよう。

 

「……ルーラ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▪

 

 

 ま、まずい……仮面のヤツらに囲まれた……!明らかに私を殺そうとしている。

 皇帝万歳とか何とか言っているが、何の話だ……?

 

「っ!」

 

 全員が銃を私に向けている。

 ダメだ、私がそれを避ける事なんて出来るはずもない。……できそうなことと言えば蹲り丸くなること。

 

 あと、は……ショウが助けに来ることを信じるくらいか。

 まぁあの男の計画を鑑みても私をみすみす捨てるわけが無い、と思う。こんな時に捨ててしまっては苦労した意味が無いだろ。

 

 ふふん。貴様らは誰を相手にしているのかも分かっていないのだろうな。

 私は“あの”魔法使いに嫁認定されているそれはそれは凄い者なのだ。決して貴様らが手を出していい存在ではない!手を出せば最後、魔法使いに殺されてしまうのだ!

 

 くくく、ショウの力を利用して散々好き勝手するのもいいかもしれない……虎の威を借る狐作戦!

 

 

 ……って!引き金に指がかけられる……?

 

 ……え?来る、よな?……来てくれるよな!?……ショウ?ショウ!?お、おい!!嘘だろ……ショウ!

 

「た、たすけ、て……!ショウ!たすけてッ!」

 

 思考が支配される。恐怖、不安、困惑。期待、信頼、希望的観測。

 助けに来てくれる。守ってくれる。そのはずだ。

 でも、もしかしたら間に合わないかも。助けてくれないかも。死ぬのを望まれているのかも。

 

 恐い。怖い……死ぬのが恐い。……必要とされていないかもしれないことが怖い。

 さっきまでは平気だったのに。疑った瞬間に怖くなった。耐えられないほどに……。足場が全部崩れたみたいだった。

 

 恐怖に負けた私は

 私はあらん限りの大声で叫んだ。

 それをかき消す、銃声

 

 私は────

 

 

 

 

 

「ヒャダルコ」

 

 

 

 

 

 ──────死んでなかった。

 

 目の前に立つ、黒いローブ。その背には大きな紋章。

 ……いつものショウだ。

 ほっとした、力が抜ける。ぺたりとその場に座り込んでしまった。

 

 周りには氷像になった仮面達。

 

「……遅くなった。それにしても、まさかマユから助けを求められるとは……聞き間違えか?」

「─────!!ち、ちがっ!ききまちがえだばか!」

「そうか……」

「そ、そうだ!というかおそい!わたしがしんだらどうする!」

「……死なせるつもりは全くないが、死んでしまったら生き返らせるだろう」

「…………だ、だとしてもだな」

「……怖かったか?」

「こここここわくなんか、ないし!バカなのか!?わたしはアンリマユだぞ!こわくなんか、ない!」

 

 あぁ、良かった。生きてる。死んでない。

 ふらつく足でショウの近くに行く。ローブの端っこを掴む。

 

 触れる。感触がある。……怖くない。

 

「ショウ、ここはきけんだ。いえにかえるべきだ」

「…………家と言ってくれるんだな。分かった、帰ろう」

 

 どうせ逃げれないんだ。開き直りもするさ。

 

「だが、職員を助けねばならない。そういう約束だ」

「……な、ならわたしをおんぶかなんかしろ!うたれたらしぬ」

「いいだろう」

「おおい!?なんでおひめさまだっこなんだばか!はずかしいだろ!まほううてないだろ!」

「いや、撃てるぞ。余裕だ」

 

 ……ふふ。安全確保だな。ここより安全な場所などそうはあるまい。

 

 

 

 ………………ってぇえええ!本末転倒では無いか!!

 

 私はショウから逃げたいのではなかったのかァァァ!

 今思い出してどうするだバカぁあ!!

 がっちり掴まれてる!逃げれないじゃん!

 

 お!おのれアーチャー!お前なんかしただろ!このバカ!私の周りはバカしかいないのか!ぐわぁぁぁあ!!

 

「…………暴れるなマユ。落ちるぞ」

「うぅ…………のろいころしてやるぅ…………!」

「なぜだ……」

 








次回は従業員を救って帰る予定。
ぇ?世界ぶっ壊さないのって?……マダンテでワンパン(オーバーキル)

世界を救うのは主人公に任せて、こっちは日常を謳歌しよう。
ついでにほか世界線のカルデア(人理修復中)の方に突撃したりして、ほかサーヴァントと絡めたりしてみたい(本音)



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「名前教えて?覚えてないから。ゴル……ゴルゴ?」


高速真言E+++……。
やる気がある時だけ高速で物語を綴る事が出来るスキル。
更には「初投稿」の時にしかその効果を発揮しない。


という訳です。つまり、初投稿という事だ。




 ※

 

 藤丸立香とマシュ・キリエライトは全力で廊下を走っていた。

 本来の歴史と違い、壁に傷はない。

 そうして何事もなく格納庫にたどり着いた。

 

「ここが、格納庫……?」

「はい。ですがあんなに大きなコンテナ、今まではありませんでした……!」

「つまりはダヴィンチちゃんの発明かな!」

 

 立香が目を輝かせながらそう言った。彼女たちにはまだまだ余裕があった。魔法使いという心強い後ろ盾が、自分たちを守ってくれているのだから。

 

「ご名答!とても頑丈なシェルターさ!中においで。急がないと魔法使いに迷惑がかかってしまう!」

「分かった。けど、他の職員のみんなは……?」

「─────魔法使いに任せてある」

「そっか……よかった」

 

 一緒に冒険をした訳でもないのだが、魔法使いへの信頼度は高い。しかし現実ではお嫁さん相手にカッコつけたい魔法使いがデレデレしながら行っているだけなので格好がつかないが。

 

「……!アナウンス……この声、ゴルドルフさん……?」

 

 

 

 

 

 

 

「あぁ……!誰か、誰か…………!誰かいないのか!」

 

 ゴルドルフは1人で孤軍奮闘していた。その手には魔銃と魔除けを握りしめ、近寄ってくるオプリチニキに牽制を繰り返していた。

 

「私だって……!私だって努力したんだ!名をあげよう、認められようってな!!ちくしょう……!こんな所で……やっと、やっとここで成功できると思ったのに……!!」

 

 涙と後悔に顔を歪め、それらを怒りにでも変えたのか必死に戦っている。転がるようにして相手の攻撃を躱し、這いつくばってでも生きようともがいていた。

 

「死にたくない!まだ、死にたくない!!私はまだ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▪

 

 ショウと一緒にカルデア内を進む。

 職員たちを片っ端からルーラでどこかに転移させながらだ。転移の魔法なんて、大量の魔力を消費しそうなものだが……こんなに何回も使って平気なのだろうか。

 

 カルデア内にはアナウンスが流れていた。ここを買った人のようだ。

 哀れなやつだ……だが、その努力は認められるべきだと思う。私にもどうやったら他者に好かれるのか分からない。

 

 ショウの方をちらりと見る。表情は全く変わらない。……私は、好かれてるのだろうか……?

 

 

「──1()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 

 

「──ッ!」

 

 耳に飛び込んできた言葉に、息を詰まらせる。

 

「マユ?」

 

 身体が強ばったのを感じたのか、ショウが私を心配そうに見下ろしている。走っていた足は止まっていた。

 

「な、なにしてるんだ……はやくいけ」

 

 ショウがまた走り始めた。私とショウの周りを不思議な文字のようなものが描かれた光の帯がクルクルと回り続けている。

 仮面の男達が視界に入る度に凍らせ、あるいは溶かして進み続けた。

 

 その間、ずっと私の脳内にはさっきの言葉があった。

 

 …………暗い考えを持ち過ぎているのだろうか。

 

 ふふっ、なんだか途端に馬鹿らしくなってきた。考えるだけ無駄なんじゃないか?

 何も考えず、あるがままを見、感じ……ショウの隣にいるだけで良いのではないか…………。

 

 私は疲れているのだろうな。

 

 ………………屈服などしてなるものか。

 せめて平等でなくてはならない。じゃないと『夫婦(めおと)』では無い……だから諦めない。

 雌雄が互いに支え合うからこその夫婦だ。だと言うのになぜ私だけが献身せねばならない?断る、断固として断る。

 

 私は人形でも願いを叶えるための玩具でもない、意思を持った個なのだ。

 思い通りになどなってなるものか。

 

 …………アナウンスの男も諦めていない。嘆いているし、情けない声を上げている。でも、負けていない。

 恐怖に怯えてなお、必死に抗っている。

 持ちうるものの全てを使ってだ。

 

 私は……使ったか?努力をしたか?

 私という個人が持ちうる全てを使ってショウとぶつかっただろうか。

 …………そのつもりではあった。

 

 だが、足りない。

 私には知識も経験も足りないのだ。これでどうして数千年生きたショウに届こうか。ショウに並び立てようか。

 

 認められていないだろう。愛されて等いないだろう。

 だからどうした。まだだ、私にはまだ時間がある。

 私の体が成熟するまでの長い年月がある。その間に学び蓄え、試行錯誤を繰り返せる。

 

 認められていない?愛されていない?

 ならば、認めさせ愛させてみせよう。それが現状唯一、私という個が生存するための道なのだ。

 

 ショウの魔術で頑丈な扉は即座に霧散し、部屋の中へと飛び込んだ。アナウンスの男の居る部屋だ。

 

「ぐっ、ぐぁぁ!いたい、いたーい!やめろ!やめるんだ!」

「っ!!ショウ!」

「わかっている」

 

 ショウの腕に抱えられながら、私は指を指して叫んだ。

 予め準備されていたのか、周囲を回る光が強くなった。男を囲む無数の仮面達に、その光は放たれる。

 

「──ライデイン」

 

 ショウの一言と共に()()()()()()()。天に咲き、空を裂き、天井を突き破って。

 ソレはかつて神々のみが振るったという神罰の一撃。あらゆる神話において神と同じようにして考えられた自然現象。

 

 0.001秒という認識不可能な速度で爆音を響かせながら……いや、響く頃には既に終わっていた。

 

 ────────────────ッッッ!!!

 

 何も聞こえず、眩しさに目を開くことすらできなかった。

 ショウの腕の中で必死に耳を押さえながら、鳴り止まるまでを待った。

 男はきっと悲鳴をあげただろう。それか気絶してしまったかもしれない。

 

 私も悲鳴をあげたが、かき消されたのでセーフ。

 

「…………ぁ……は…………ぇ…………は???」

 

 腰砕けになってあわあわと焦げて倒れ伏せる仮面達を見る男。マルっとした肉体が生まれたての小鹿のように震えている。

 

 ……良くもまぁ生きているものだ。まぁ、ショウが間違って殺してしまうことなど有り得ないか。

 

「──────()()()()()()()()

 

 ショウが話し掛けた。

 手を差し伸べながらだ。私は片腕で抱かれる形となり、ショウの腕の上に座るような状態だ。

 これでは格好がつかないのではないか?と思ったが、よくよく見れば床は未だにピリピリと帯電しており降りられそうにはなかった。

 

 男には何らかの魔術が掛けられているのだろう。その状態でも特に問題はなさそうだ。

 振り向きショウを視認した男。震えがピタリと止まる。そして、しばらく固まった。

 

「……へ?」

 

 そうして出てきた言葉は情けなかった。

 

「…………ふぉあ!?おぉおおおまままま、魔法使い!?様!?」

 

 動転し過ぎだろ。

 

「いいいいい、いいま今なんと仰りましたか!?」

「名は、なんと言う」

「わ、わた、私の名前を、きき、聞いてくださるのですかぁ!?ぉ、おおおお……!!」

 

 ……?

 

 なんでこんなに喜んでるんだ?

 私は思わずコテンと首をかしげた。少し思案し思い至る。生ける伝説の魔法使いに魔術を学び何れ魔法にたどり着こうと考えてる魔術師達が出逢えばどうなるか、更には名前を覚えてもらえるかも、なんてなった時……その衝撃や喜びはとてつもないもの……なのだと思う。

 

「ご、ゴルドルフでございます!ムジーク家のゴルドルフでございます!」

 

 腰が抜けたまま四つん這いでショウに迫るゴルドルフとやら。このまま進ませては靴でも舐め始めるのではと思う程だ。

 ばっちいぞ、ショウが怒ったらどうするつもりなんだ……。

 

「……ではゴルドルフ。お前には任を与えよう」

「は、ははぁ!!どのような任であれ必ずやお答えしてみせましょう!!」

 

 あ……これ無理強いさせられるやつだな。私には何となくわかるぞ。

 

 

 

 

「そうか。ならば……世界を───()()()()()()()()

 

 

 

 

「ははぁ!!お任せあれ!!こうしてはいられん!早急に人類を救いに…………

 

 

 …………あれ?…………ぇ?人類を……??」

 

 ……頑張れ、ゴルドルフ。

 私は小さく手を振った。とても面白い顔でゴルドルフは白くなった。

 

 

 

 

 

 ────追記────

 

 伝説において、かの『魔法使い』は特別な人間しか、名前を覚えなかったという。

  所謂英雄や勇者、魔女や魔王。そう言った特筆すべき人物達しか彼の「蔵書」の中にはない。

 

 故に、魔法使いに名前を呼ばれる、あるいは覚えて貰えるというのはそんな過去の英傑達と同等の扱いをされているようなものなのである。

 

 実際、未来を正確に予言する魔法使いが「名前を覚えた」人物は、必ずと言っていいほどに皆大成し、歴史に名を残すような発明や出来事を起こしている。

 

 逆に言えば、名前を覚えられた人物は大事件に巻き込まれると言うことだ。

 ゴルドルフは世界を破壊することで人類を救う旅に強制参加(ルーラ)させられる。

 必ずやゴルドルフは世に名を残すだろう。

 必ずや羨望の的になるだろう。

 

 彼の願いの1つは最高の形で叶えられたのだ。

 かの魔法使いに名を覚えて貰えるという……最も贅沢な方法で。

 

 






その後の一幕。(キャラ崩壊、台本形式注意)

シ「……調子に乗るな。慢心するな。いいな?」

ゴ「は、はいぃ!!」

シ「……よし、お前にこの呪文を授けよう」

ゴ「はぃいいい!?」

シ「アストロンだ。いくつかのタイプがあるが、お前には全身を金属に変えるタイプが最も相性がいいだろう。この世のあらゆる物質よりも硬く、柔軟で如何なる温度でも融解することがない。そんな魔法の金属に全身を変えるものだ」

ゴ「──────────(気絶)」

シ「………………要らないのか……そうか」

マ「(いじわるだ!ショウがいじわるしてるぞ!小心者にいきなり『魔法あげる』とか、しんぞうつぶれるわ!たぶん!)」

マ「わ、わたしにくれてもいいぞ!」

シ「俺が守る以上持っていても無駄だ。むしろ、それで矢面に立たれてはかなわん」

マ「くっ!!」

ロ「(尊い……尊い……主とロリ……尊い……)」





アストロンについて。
無敵方法が3種類程ある。()内は型月における近しいもの。

・世界から隔離する。(アヴァロン)
・めっちゃ硬い防壁を張る(ロードオブキャメロット)
・固くてやらかい(ORT化)


評価、コメント、誤字脱字報告、お待ちしておりまする……!!


次回!!ケツ狙い変態ホモ野郎死す!そして爆誕!ロリホモ野郎!
デュエルスタンバイ!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「お友達でお願いします。お友達。あとついでにマユたんの友達になれ」


初投稿です。
え?何故初投稿なのかって?
そりゃあ、童貞だからでは?

こんなものを投稿したところで僕の童貞は消えない。だから僕はね初心(ウブ)を忘れずに初投稿を続けるんだ。う”っ(投稿)



「─────えっ?」

 

 戸惑い、困惑の声が上がる。

 それを言ったのは立香か、マシュか……はたまた()()()()()()()()()ダヴィンチか。

 

 ソレは魔法使いすら予想だにしなかった(単純に忘れてた)別れ。

 突然の悲劇。

 

 天才の死。

 

 笑い声と悲鳴が響く。

 ダヴィンチを助けたい……だが、もう脱出せねばならない。

 それに、もしかしたら魔法使いが助けてくれるかも知れない。

 

「さぁ、行くんだ。大丈夫、私は天才だぜ?あの時だって……大丈夫だっただろう?」

 

 引き抜かれた手、大量の血を吹き出しながら立香とマシュを安心させるため笑う。

 あの時とは違う。確かに死ぬ瞬間を立香達は見た。

 

「さぁ!早く、行くんだ!」

「そんな……!そんな……!!」

「マシュ!!」

 

 極少数の英雄達が乗る英雄船は出航した。潜るは虚数。目的は救済。手段は……世界を壊すこと。

 

 多数の世界を犠牲に、自分の世界だけを、救え。

 

 

 

 

 

 

「…………かひゅ……っ、やっちゃった、なぁ……」

 

 ダヴィンチは身体が光へと変わって行くのを呆然と眺め独りごちる。言峰神父は既にこの場には居ない。

 

「魔法使い……助けて、くれるかな……むり、だよなぁ」

 

 1人だ。1人で凍っていくカルデアに残されている。凍りついていくという事は、それを止めていた魔法使いが既に居ないということ。

 徐々に霜に覆われていく壁に寄りかかり……そのままゆっくりと座り込んだ。

 

 死んでしまうかも。

 それすら予見して、策は残した。もう1人の小さなダヴィンチが、彼らを導いてくれるだろう。

 

「私の役目は……終わったんだね……」

「さて、どうだろうな」

「!」

 

 達観と諦観。希望を託し、霊格を砕かれた身体は抜け殻と大差ない。そう思っての言葉は感情の起伏を感じさせない低く冷たい声に遮られた。

 

「……約束を果たしに来た」

「…………“命だけは助けてやる”……だった、かな。……ありがとう、魔法使い。貴方の、お陰で多くの、命が救われた」

「………」

 

 ダヴィンチが壁に寄りかかったままに、顔を上げ魔法使いを見やる。魔法使いは相も変わらず無表情で……でも何処か寂しさを感じさせた。

 数多の英雄達も、この顔を見てきたのだろうか。そう思うと、やはり長生きなんてろくなことは無いんだなと思わせた。

 

「……そう、命だけだ。私たちサーヴァントは、昔に死んでいる、からね。君の約束は、果たされた」

 

 ダヴィンチは微笑む。

 だが、その目には僅かに嫉妬の炎が揺らいでいた。

 

 

☆ダヴィンチside

 

 あれは私の上位互換だ。

 魔法使いはいつも、私が閃いた革命的な発明にそっと()()()を示した。

 

 こうした方が良いぞ。この方が良いだろう。

 

 唖然とした。驚愕した。自身の作品がより高みに至る事に歓喜した。

 けれど、それは最初の頃だけだ。それ以降は違った。必死になって魔法使いを越えようと発明品を生み出す度に、設計図を描く度に()()が加えられた。

 

 魔術師として遥か高みに存在する男、それが魔法使いではなかったのか。科学者としても、天才である私を凌駕するのか。

 

 私は嫉妬した。憧れた。尊敬した。

 

 それらが綯い交ぜになって、気が付けば好きになっていた。いわゆる師弟の関係だろうか。一方的に懐いていた。

 恥ずかしくて、情けなくて……けどこの男なら仕方ないよな。と自分を納得させた。

 

 全く、変な話だ。

 私なんかではなくて、魔法使いが立香ちゃん達といるべきだったんだ。そうすれば何もかもうまくいったのに。

 

 …………この醜い感情はひた隠しにすべき物だ。英雄を好く魔法使いの為にも、高潔で無くてはならない。

 すこしでもよく見られたかった。劣等感がそうさせるのだろう。

 

「────君が、彼女達について行ってくれれば良かったのに」

 

 そう、思っていたのに。

 私の口からはぽろぽろと、愚痴のような情けない想いが零れだした。

 

「君は私なんかよりも、遥かに凄いんだ。魔法も使えて、科学にも精通してる。私よりも……ね」

 

 これは八つ当たりだ。もう消えてしまうから、消える前に好き勝手言おうという、そんな意地汚い腹積もりなんだ。

 

「だから、私なんかじゃなくて、君だったら……ロマニだって、消えることは……!!」

 

 聞かなくたっていいのに、律儀な人だよ貴方は。そうやって、どんな話しも嫌な顔一つせずに聞いてくれた。君にとってはとうの昔に考え付いていたであろう理論も、哲学も隣に座って聞いてくれた。

 

「君だったら……!いろんな犠牲も止められたっ!何もかも立香ちゃん達に押し付けずに、彼女達の負担も減らせたっ!」

 

 もう、止めてくれよ魔法使い。

 君なら、私を黙らせるなんて簡単な筈だろう?

 君なら、私の声も届いているんだろう?

 

「私じゃ……ダメだったんだよ、魔法使い……」

 

 ……私は、弱かった。メッキが剥がれた気分だ。君を前に覚悟が崩れてしまった。甘えてしまった。

 

「君は……凄いじゃないか……偉大な魔法使い様だろう……?わたしがどんな発明品を見せても、直ぐに改善点を示してくる……君に勝てたのなんて、多分、絵しかない」

 

 あぁいや、絵でも君に勝てた気がしないなぁ……だって、()は君の(アニメ絵)が大衆に人気なんだもんなぁ。どこまで先を見てるんだよ、全く追いつける気がしない。

 

「館で死ぬまでの3年間、一緒にいたのにさ……全然、君の底が見えなかった……」

 

 ……もう私は消える。座に帰るんだ。魔法使いの返事も聞くことなく。……はは、勝手だなぁ。なんだが、本当に女の人になった気分だ。……いや、失礼かな……?じゃあやめておこう。「ベホマ」………………?って、あ、あれ?

 

「ぇ?ま、魔法使い?この光は……?」

 

 あれれぇ?おっかしいぞぉ?魔法使い様よ、貴方は命だけを助けるんじゃなかったのかい?

 どうして霊基が完全修復されているのでしょうか。うわ、服についていた血まで消えている。わぁお、綺麗なダヴィンチちゃんだ。

 

 …………………………ど、どどど、どうしよう!!

 

 ま、不味いぞ不味い不味すぎる!

 もう消えてしまうから、どうせ助からないからと好き勝手に言いまくったがッッ!なんで助けたんだい!?

 

 あわわ、あわわわわわ……!!!

 

 

「─────聞け、レオナルド」

「……!!!」

 

 内心で慌てふためく私の両肩を、魔法使いが掴む。座り込む私に視線を合わせてだ。必然的に顔が近くなる。

 魔法使いの顔は決して絶世の美男子という訳では無い。だが、それでも平均以上だしそもそも纏っている覇気的なものが普通の人とはあばばばば

 

「俺は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「…………そ、それは?」

「単純な話だ。俺とお前では生きた年代も、年月も違う」

 

 そ、それはそうだね?は、はぅ!な、なんだその表情は!若干悔しそうな顔なんて初めて見たんだが!?や、やばい……これがギャップ萌えってやつなのかな!?

 

「恥ずかしい話だが、俺がお前と同じ位の時は()()()()()()()()()

「!」

「何もせず、空を眺め、これから何をするべきなのか漠然と考えていた。考えている、という現状に満足してな」

 

 魔法使いから語られる。私との違い。

 そうか、魔法使いも怠け者だった時期があったのか。それも、私の寿命レベルの長さで。

 

「いつもいつも眠る時になって何かをしなくては、と自分を形だけの戒めで責め、朝日が登ればそんなものは何も無かったかのようにまた空を眺めた」

「……」

「空を眺めて、歩いた。どこに行こうとか、そんな事も考えずまるで亡者のように日々を過ごしていた」

「それが君の、一人分の人生って事かい?」

 

 そうだ。と答える魔法使いの顔は何処か恥じらいを感じさせて、私は少しだけ得意になる。

 きっと、この顔は、この話は()()()()()()()のだと思うと、優越感すら感じてくる。

 

「……人里に辿り着けばナンパしていた」

「え”ッ!?」

「……悪い、見栄を張った。ナンパしようとしたが勇気が無くてできなかった。一人分の人生の間な」

「えぇ……」

 

 魔法使いって見栄はるんだ!というかあれだ、えっ可愛い(ホモ)

 

「……俺はな。お前達からすればずっとずっと、ゆっくりとした時を生きてきた。お前が発明や計画を俺に見せてくる度に感心したよ。()()()()()()()()()()()()とな」

「……………………ぇ」

「1世に呼ばれた時はずっとお前の話をしていた。魔法だなんだ歴史がなんだと聞かれずに話すのは珍しい物だったな」

 

 わわ、わたしが友人……?!あ、ちょま……意識が遠のく……!まて耐えろダヴィンチ!耐えろレオナルド!

 

「……1世は言った“かつてこの世界にレオナルドほど優れた人物がいただろうか。絵画、彫刻、建築のみならず、レオナルドはこの上なく傑出した哲学者でもあった”とな。お前が死んでから……だいたい20年も後だったか」

 

「俺は1世の言葉に偽りは無いと考えている。俺が数千年掛けてたどり着いた所に、お前は数十年でたどり着いた。…………俺が認めよう、レオナルド・ダ・ヴィンチ。お前は優れている。優秀で偉大で、友人として尊敬に値する偉人だと」

 

「っ──────っ!─────くっぅぅ!!」

「……レオナルド?」

「好きだ魔法使いぃぃ!」

「アストロン」

「!?な、なにぃ!?触れないだとぉ!?おのれぇ抱き着いて既成事実を作ってやろうと思っていたのに!」

「…………はぁ」

 

 …………あぁ、本当にずるいな魔法使いは。ふざけて誤魔化さないともう直視できないじゃあないか。

 胸が暖かい。変な凝りが溶けて無くなったみたいだ。私と魔法使いはお互いに尊敬し合い、認め合っていたと……もはや結婚では?

 

 これは結婚だな。

 

 よし、籍を入れよう」

 

「………………声に出ているぞレオナルド。それと、俺は男と結婚するような趣味はない」

「だいじょーぶさ!なにせ今の私は女だからね!それに、役目も終わった事だし自由の身さ!……それに、私が消えないようにパスも繋いでくれたんだろう?実質婚約では?」

 

 だよね?

 

「はぁ……こういう所だけは尊敬出来んな」

「ガビーン、ダヴィンチショック。しかーし、天才はめげないしょげない泣いたりしない。早速だが君のお家で共同作業と行こうじゃないか」

 

 ふふふふふふふふ、妄想しただけで昇天しそうだがこれはチャンスだ。マユちゃんという最大のライバルが居るがそんな事は関係無い。むしろ手篭めにして2人で魔法使いを落しに向かう計画を立てよう。

 

「……そうだ。お前の役目は終わった。だから、新たな役目を与えようと思う」

「へ?」

「─────レオナルド」

「は、はぃい?!か、顔近い……!!はっこれはキッス!?」

「……子供になれ」

「─────はい?」

 

 え?どゆこと。天才であるダヴィンチちゃんは訝しんだ。

 







今回の勘違い要素。

ダヴィンチ「サーヴァントは生物じゃないから助けてもらえないな」
魔法使い「よーし、全員助けっぞー。おっダヴィンチじゃーんベホマしたろ。……えっ、なんかめっちゃ愚痴言ってる……これ聞いた方がいい雰囲気だな。……やべそろそろ消えそう。ベホマすとこ」
ダヴィンチ「えっ、た、助けてくれた//////」



ダヴィンチ「 魔法使いは超天才!私の上位互換だ!」
魔法使い「いや、俺はそれ思いつくまでに数千年かかってるからね?あと大半は現代の技術で俺が考えた訳では無い」



館で死ぬまでの3年間。
1世「魔法使い様、よろしければこの館使ってください。あとレオナルドは一室使っていいからね」
魔法使い「(レオナルド……?あ、もしかしてレオナルド・ダ・ヴィンチ!?すげぇ!!)あぁ分かった。有難く使わせてもらう」
↓からのレオナルドストーカー化
魔法使い「 お前友達な。友達な!!」
ダヴィンチ「友人だって!?これは実質結婚では!?」
魔法使い「友人って言っておけば満足して踏み込んでこないやろ。あれ?めっちゃ来るやんこわ。まぁマユたんの友達を作るためや。しゃーない。よし、ロリになれ」
ダヴィンチ「え?」




誤字脱字があるかと思いますので、皆様報告してくださると嬉しいです!
それとコメントで毎回吹き出すくらい笑ってるので……こほん。コメントで笑う様が目に浮かんでいるのでぜひコメントをください!腹を抱えて笑いたいと思っております。

初投稿なのでお気に入りとか、評価とかもしてくれると……ちょ、ちょっとしか、嬉しくないんだからね!(雑んでれ


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「家の中には隠しカメラがある。これはタイトルだけの秘密だぞ」




初投稿です!
やっぱり初投稿といえば導入部分ですよね!なので日常生活を書きながら、物語が始まりそうな雰囲気を頑張ってみました!投稿するのってドキドキしますね!

誤字脱字とか沢山あると思うので、親切なお兄さんお姉さん、良かったら教えてください!(ショタボ)




 ▪

 

 慌ただしかったカルデアでの出来事が終わった。

 ショウに抱えられ家に帰ってくると、ショウは「忘れ物をしていた」ともう一度カルデアに転移して行った。

 

 私の前には沢山の男女がいる。年齢層は広くはないが、人種は幅広いし、職種も広い。カルデアのメンテナンスをしている人なんかもここに来ていた。

 

 みな一様にショウに感謝の念を抱いているようだ。ふふん。と得意げになってもいられない。

 ショウが出掛けたということは、この家の住人は私だけなのだ。ショウの代わりに彼らにおもてなしをしなくてはならない。

 

「えっ、えっときいてくれ!」

 

 わたしが大きな声を張り上げると、無数の顔がこちらに振り向いた。顔の数の2倍の目が私を見つめている。

 正直とても怖い。ふと自分の手を見れば、空をさまよっていた。…………ショウのローブを掴む癖は無くしたいな。

 

「あれって……」

「あぁ、魔法使い様のところの……」

「かわいいわ……」「隠し子?」「嫁さんだって聞いたぜ」

 

 ジロジロと好奇の眼差しが私を捉える。

 こ、怖くなどない!と自分を奮い立たせ、1歩前に踏み出した。

 

「と!とつぜんのてんいでこまっているとおもう!しんじゃっていきかえらせてもらったひともいるとおもう!」

 

 仮面の男達はとても恐ろしかった。銃と斧を手に、黒ずくめの服装で襲いかかってくるのだ。彼らはそれに襲われた。ショウに守られている訳でもない彼らはとても怖かったと思う。私なんか守られてても怖かったぞ。

 

「こんらんしないでよくきいてくれ!」

 

 そんな彼らに必要なのは安心させること、今は生き残った喜びに打ち震えている彼らも、やがては不安になる。ここは何処だろう、カルデアはどうなったんだろう、ここにいない人はどこに?とな。

 

 とはいえ、私では安心させることは出来ない。

 故に、時間稼ぎをする。不安や疑問に至る前に、さらなる衝撃で持って思考を止めさせるのだ!

 

 それに、お家の紹介って妻っぽいし!

 

「ようこそ!“魔法使いの家”へ!おっとがかえってくるまでに、わたしがあんないしよう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◽︎

 

「で、こうなっていると」

「う、うむ」

 

 俺が家に戻ると、救い出した職員達が物珍しそうに家の中を物色しているではないか。

 もちろん、ものをとったりはされていない。が、やめて欲しいな……。

 

「へぇ……凄いなぁ、ここはどんな魔術で……」

 

 とか、女魔術師が壁掛けに触ろうとしている。結界等を隠すようには施していない為に、多少の心得があるなら簡単に術の核が分かってしまうのだ。

 

「空間を圧縮したり拡張したりしている。「ヒャイッ!?」不用意に触れてくれるな」

 

 そんなわけで触れようとした手を押さえてそう声をかける。なぜか悲鳴を上げられた凹む。

 

「お前達もだ。好奇心で死んだのならそこまでだ。生き返らせることはしないぞ」

「「「「は、はい!」」」」

 

 声を揃えて直立不動となった魔術師達に頷きながら、俺はマユたんのほうに顔を向ける。

 マユたん曰く、あのまま外に放置は可哀想だったから家に入れたのだとか。俺の嫁さんは非常に出来た人物なのだ。可愛すぎて死にそう。その上天使のような優しさまで持っていると来た。

 普段俺にどことなく冷たいのは恥ずかしさからなんだって俺は理解しているからな。

 

「ま、まほうつかいにさらわれたあわれななかまだからな!」

 

 と腕を組んでそっぽを向くマユたん。かわいい。

 

「さらわれた……?」「今はっきり聞こえたぞ……」

「ザワ……ザワザワ……」

 

 おっとぉ?なんだろう、俺の背中に無数の非難の鏃を括りつけた矢がズブズブと突き刺さっているんだが?

 だが残念だったな、俺は攫ったのでは無い。願ったのだ(論破)

 

「ち、ちがっ!さらわれてなんてっ!」

 

 おやおやおやぁ?マユたん、どったの?とっても慌てているね。可愛いよ?

 

「わたしは、その、まほうつかいがきらいだから、わるくいったのだ。おまえたちがわたしの、しゅかんにまどわされるひつようは、ないのだ」

 

 俺を突き刺していた視線達が柔らかくなった。

 マユたんが天使すぎて周りの人達が完全にマユたんの味方なんだが。まぁ俺はその1号なので何も言えんが。

 

「マユ、自分で考え行動するのは良いことだ。俺は怒っていないぞ、そう怯えるな」

「おおおびえてない!さっさとしごとをしろ!このひとたちをかえすんだろ!?」

「ふむ……その口調は少し治す必要がありそうだが……今は仕事をするとしよう」

 

 俺の仕事は一家の大黒柱として当然のこと。つまり、家に沢山やってきたこの客人たちを家に返す事だ。

 

「今からお前達を転移させる。しかし人類史は今、氷結している。お前達をそんな世界に送り出したところで分と持たずに死ぬだろう。故に、方舟を用意した。その“導き手”もだ」

 

 ノアの方舟のような大層なものでは無いが、この俺とマユの世界と同じようなもの、小さな特異点を用意した。

 レオナルドにはそこで皆の面倒を見てもらおうという考えなのだ。ついでに近似特異点(おとなりさん)としての付き合いも始めようという幸せな夫婦には欠かせない要素を補おうということである。

 さらに言えば幼女になったレオナルドにはマユの友人として一緒に遊んでもらったりする予定だ。情操教育というものだ。俺と2人だけでは堅苦しい関係になりそうだしな。天才のレオナルドなら様々な刺激を与えてくれると考えたのだ。エッチぃのとか、難しい話は無しで、子供らしさを教えてやって欲しいと伝えてある。

 

「今からお前達をそこに送り届ける」

 

 皆の顔が引き締まる。中には喉を鳴らしている人もいる。初めての転移では襲われている所をいきなり飛ばされた様なもので、実感も湧かなかっただろうが、今回は予め警告されている為に緊張してきたのだろう。

 ふっ、俺の観察眼は素晴らしいな。

 

「ルーラ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ▪

 

 うぅ……なんという事だ。私の計画ではこのまま彼らを押し留め、二人きりという危険な状況を脱しようと考えていたのに……!

 大勢の前で私の情けない所を言うから頭から抜け落ちてしまっていた……!

 

 また二人っきりか……うぅ。頑張れ私。

 火照った顔をパタパタと手で扇いで冷ます。喉の渇きもあるし、麦茶でも飲もう。

 

「ぇっと、イスもってこなきゃ」

 

 冷蔵庫が大きいせいで麦茶を掴めても出せないのだ。

 ポケット?みたいな枠に入れられているから掴んだ後は一度持ち上げ、斜めに傾けて取り出すのだが……私の身長では掴めても持ち上げられないギリギリの高さだ。

 故に専用の小さな椅子を持ってくる必要がある。絵柄はカエルさんだ。踏み潰されてもぐえっ!とか言って潰れない根性のある奴だ。

 

「んよっ……ととっ!ほっ!!……ふぅ」

 

 危ない危ない。持ち上げてから下ろすまでが私の細腕では筋力的に厳しいため、細心の注意を払う必要があるのだ。ふふん、一滴も零さない華麗な技だな。

 

 あとはコップを取ってこなければ。

 

「イスをうごかしてー」

 

 これも食器棚の上の方にあるためカエルさんが居なければ届かない。お気に入りのクマさんカップは何処だ……お、あったぞ。本来はホット用なのだが、別に冷たいものを入れてはいけない訳では無い。それに使ったら洗って拭いて戻せばいいのだ。

 容量もコップの方が優れているが、私は一度にそんなに飲めないし、この位がちょうどいい。

 あとは麦茶を入れるだけだな。

 

「いれて〜…………あっ!」

 

 …………す、少し零してしまったがなんの問題も無い。……ぐぬぬ、力が無さすぎる……カップに向けて傾けるだけでも注意しなければならないというのは不便だな……。

 

「あ、あとでふこう」

 

 あ、そうだ。ついでにお菓子も食べよう。疲れたし癒しが必要だとは思わんかね?……そうだろうそうだろう。ロビンは話しがわかるやつだな!

 食器棚の下の段がお菓子入れだ。私たち2人しかこの家では暮らしてないから食器が少ない。

 下のスペースが空いているからそこにお菓子入れを設けたのだ。これは私の案でショウも私の頭を撫でながら頷いていた。

 

「クッキー……マカロン……チョコレート……ま、まよう……」

 

 何か一つじゃないとダメ、なんて制限はないが、今全部食べたら食べたい時に食べれなくなってしまうかも!と手が出しづらい。食べるのは私だけなのだから気にしなくてもいいとは思うのだが……今回のように客人が来た際に菓子の一つも出せないようでは品位が疑われるというもの……やはりいくつか残すべきだろう。

 

「…………く、クッキー!」

 

 マカロンやチョコレートは高級な感じがする!なのでふいに現れた客人ようだ!

 さぁあとはテーブルクロスと零した麦茶を拭く布巾。あとは汚れないようにナプキンだな。

 

 さて!準備は完璧だ!

 

「いただきまー」

「今戻った」

「 …………す?」

 

 おいショウ、お前はなんてタイミングで帰って……帰って……

 

「え、えっとぉ。わ、わたしの名前はリザ!よよ、よろしくね!?」

「よ、よろしく……」

 

 ………………誰だその娘……おいまてショウ。なぜ頭を撫でる?おい娘、なぜ嬉しそうなんだ?

 

「まほうつかい、そのこはだれだ?」

 

 私はジトーっとした目でショウを睨みながらそう尋ねる。すると、ショウは娘の頭に置いていた手を離し、私を見据える。真剣な目だ。

 

「──“導き手”のリザだ」

「…………………………そうか、よろしくな」

「う、うん!よろしく!仲良くしようねっ!」

 

 私は直感的に感じた。コイツとは仲良くなれないだろう、と。

 だってそうだろう?サーヴァントだぞ、しかも、リザなんて英霊で幼女だと?そんな奴は私は知らない!

 

 おのれショウめ……何を考えているんだ?






デュフフwなかなか良い日常生活が書けたのでは?と寝不足のハイテンションで見直し無しの初投稿をぶちまけたでござるwww

コメント、評価も待っているでござるwww(メタボ)


まぁ、こんな感じで家の中は魔法使いが緻密に計算した「と、届かない!」な感じでマユが背伸びしたりする必要がある可愛いを作る空間になっております。
マユからすれば大変極まりないですが、そこは毎度のように魔法使いが「これか?」とか言いながらフォローして点数を稼ぐのでおk。あざとい、さすが魔法使いあざとい。

そしてロリンチちゃん登場。モナ・リザでもロリンチちゃんでもバレそうだったのでリザとして登場するも、サーヴァントなのはバレバレでした。

さぁどうするマユたん!ショウを狙う泥棒猫がやってきたぞ!
そんな感じで次回をお楽しみに!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「可愛さを前に語彙と脳を失った男、スパイダーマッッ!」

初投稿です。


 ◽︎

 

「……なんの用だ」

 

 剣、銃など色々な武器を手にした20人近くからなる武装集団に俺は取り囲まれていた。彼らはホムンクルスだ。

 

 本筋の世界は今、凍りついているが……特異点には何ら影響はない。

 

 作るのは難しいが特異点そのものを作ること自体は可能だ。

 全てを1から作ろうとすれば、そこにいる全ての生物や物体、気体その他全要素を自作する必要があるが、イメージだけで作るのならざっくりでいい。

 

 まぁそんなことは置いておこう。目の前にいるのはユグドミレニアのホムンクルス達だ。

 ここはとある特異点で聖杯戦争が頻繁に行われている世界だ。

 俺がマユたんを創り出した世界だと言えばいいか。

 

 要するに、聖杯大戦が行われている特異点だ。あの原作とは細かな所が違うが、そこは俺の干渉があった為に分岐したのだろう。ちなみに時間の進みが家の特異点とは違う。こっちの方が遥かに早い。

 マユたんを創り出してからこっちでは既に20〜30年近い月日が流れたようだ。

 

「魔法使い様、我らの主がお呼びです」

 

 武器構えながらそのセリフはなんだ。行く訳ないだろ、馬鹿なの?顔が可愛いからってホムンクルスは対象外なんだよ。これだからダーニックソは……大人の御人形遊びは恥ずかしいと思うんだが?

 

「知らん」

 

 武装集団に囲まれながらお茶する気にはなれない。人形に囲まれながらとか……ねぇ?大の大人がねぇ?子供ならまだしも……も?ッッッッッ!!! マユたんが……ぬいぐるみに囲まれ…………!!

 

 危ねぇホイミ。

 

 俺の脳内に幸せ空間が一瞬にして広がり、保存された。

 

「そうですか。では、排除します……!!」

 

 よし!お礼言いに行こう。そしてその後ぬいぐるみを買いに行くんだ。

 

「よし、気が変わ」

「「「──────!!!」」」

 

 一斉に掌を構え、魔術を放つホムンクルス。それに合わせるように剣や槍を持った個体も突撃してくる。

 

 ま、不味い!!

 

「待てっ」

「はぁあぁああああ!!」

 

 アタカンタとマホカンタ切ってないから待って!

 

「────ヅ!?」

 

 あーあ、攻撃が反射されて死んだぞ……なぜ自分たちが死ぬレベルの全力で殴ったのか。これが分からない。

 

「…………案内が居なくなったが……まぁいいか」

 

 よく良く考えればお礼とか要らないよな。ぬいぐるみ買い物行こ。

 ……待てよ?適当な店から買ったチンケな人形でいいのか?いいやダメだ。プロにお願いしよう。

 

 たしか、青崎橙子とか言ったな。他の特異点の時計塔では人形師とか呼ばれていたはずだ。相当に人形作りが上手いのであろう。これは期待できるぞ。よし、まずは居場所を知るために時計塔へGO!

 

「ルーラ」

 

 

 

 ▪

 

「ま!魔法使い様、行っちゃったね!ところで君のお名前を教えてくれないかな??」

 

 リザがショウが転移した後にそう切り出した。私ばブスッと不機嫌さを隠しもせずに、家主であるからとコップを取ってくる。

 おもてなししなくてはならない。客人が来たが……マカロンは出さなくていいか。こいつにあげたくないぞ私は。

 

「わたしは……マユだ。まほうつかいはどうせすぐにかえってくる。しばらくはおかしでもたべてればいい」

「マユちゃんだね。覚えたよ!」

 

 覚えなくていい。

 ちっ、わざわざ隣の席に移動してきた……上座に置いてやったのに。

 

「ねぇねぇ、マユちゃんはさっ……ま、魔法使い様とどんな関係なの!?私気になるなぁ〜?」

「……モグモグ」

「あれ?無視かい?もーいいじゃないか!教えてよ!」

 

 なぜ言わなければならない。必要があるのか?ないだろ。

 

「やだ」

「いいだろう?」

「やだ」

「おーしーえーてーよー」

「いーやーだー」

 

 馴れ馴れしく私に抱き着いてくるリザを押し退けようと踏ん張るもサーヴァントが相手ではどうしようもない。

 

「ええいやめろ!」

「やめるもんか!うりうり〜ここだろ〜ここなんだろ〜??」

「うひゃ!?にゃなにをっ!?」

「こちょこちょ〜!!」

 

 

 

 

 ◽︎

 

「あははははは!やめっ、やめて!くすぐるのダメだっ!」

「ふへへへへ!そーらーそら!私の全力の擽りを受けたまえ!」

 

 帰ってきたら妻がこちょこちょされていた件について。おい、レオナルド。

 なんだろうなこの気持ちは。

 仲良くなれとは言ったが、お触りOKとは言ってないぞ。

 

 やべぇ、嫉妬心がマシマシですわ。

 でも、見た目だけならロリ達が戯れているだけだから尊い。

 

 混ざりたい…………ッッ!

 

「はぁ、はぁ、もう、つかれた……おしまいだ、やめろ」

「ははは!そうしようか。じゃあお菓子食べようよ」

「わたしは、はじめから、そういってたのに……」

 

 なんだと?おいレオナルド。どういう事だ。お菓子を一緒に食べようとマユたんが誘っていたというのに、お前はこちょこちょなどと称して全身をお触りしていたと?ぶっ殺すぞ。

 

 ……しかし、お菓子を食べている目の前でぶっ殺したらさすがにトラウマになるだろう。やめてやる。喜べレオナルド。だが次は無いからな。

 

「??????」

「どうした?」

「えっと、なんか視線を感じたんだけど……気のせいかな?」

「む、まほうつかいだな。まほうつかいはとうめいになれるから、どこにいてもおかしくない!」

 

 レオナルドが俺の視線を感じ辺りを見渡している。そしてマユたんは俺が透明になっていると推理したようだ。

 しかし、残念かな。俺は何時ぞやに言った隠し部屋に居て、そこから隠しカメラで拝見しているのだ。ちなみに、隠しカメラにはステルスが付与されているので場所は特定不可能だ。

 

「おい!まほうつかいでてこい!」

「まぁまぁマユちゃん。魔法使い様がそんな事するわけないだろう?あ、でもマユちゃんが心配で覗いているのかも?」

「うぇ?そ、そんなはずはない……なにかたくらんでいるんだ」

 

 魔法使いはもっと酷いことをしていますよレオナルド君。そして、企んでなんか居ないよマユたん。ただ平和を傍受しているだけさ。

 さて、アリバイ作りのために、家の外にルーラして玄関から登場しようではないか。

 

「────今戻った」

 

 玄関の扉を開けると、家の中からトットットと足音が聞こえてくる。走っているみたいだな。

 

 ッッ!まさかッ!マユたんがお出迎えを!?

 

「魔法使い様っ!おかえりなさいっ!」

 

 お前かよレオナルド。魔法使い様はがっかりだよ。

 

「うぇぇ……かえってきた……」

 

 レオナルドの奥、リビングの扉から顔だけ半分出してジト目でマユたんがこちらを見ている。

 かわいい(思考停止)

 この光景を見られただけでレオナルドを許せる。

 

「あぁ、帰ってきたぞ」

「はわぁ〜!うへへへへ」

 

 うわ、なんだコイツ。ちょうどいい位置にあったからつい頭を撫でてしまったがよくよく思えばじじいの禿頭じゃねぇか。しかもロリボディに馴染みすぎでは?ロリジジイ感をもう少し出せ。怖いぞ。

 

「な!……お、おいまほうつかい!リザにきやすくふれるな!」

「ん?あぁ、済まない」

「あー!……もう!マユちゃん!」

「っておおい!?わた、わたしのあたまをなでるな!さわるな!しね!」

「ひぃ!?そそ、そんな事言っちゃダメだよマユちゃん!!」

「うるさいぞリザ!どうせしねといってもしなないんだからいいんだ!」

 

 ふふふふふ、それに比べて、マユたんはカワユスですなぁ。触ると死ねって言ってくるけど、あれだろ?俺には分かってるんだぜ。本当は自分も頭撫でてもらいたかったんだろ?ん?そうだろ?ふへへへ。

 ………………そうだと、いいなぁ。死ねの一言がボディブローの様にジワジワ効いてくるわ……。

 

「そんなことよりも魔法使い様っ、何処にお出かけしていたんだい?教えておくれよ」

 

 おい、レオナルド。俺に近づいて上目遣いを自然に使おうとするな。そして、そう言うのはマユたんに聞かれたいんだ。お前ではない。

 

「ふんっどうせ、ろくでもないところだ。きくいみなんてないぞ」

「そうだな。確かに、あまり意味のある所では無かったかもしれん」

 

 マユたん、魔法使いは心がガラスなんです。優しくして。

 ふっ、しかし既にぬいぐるみの設置は完了している……!部屋に向かえばマユたんの態度も豹変!「わぁ!ショウありがとう!こんなに可愛いぬいぐるみに囲まれて幸せだぞっ!大好き!結婚しよう!」となるに違いない!

 

 いや待て!

 

 焦るな魔法使い。これだからお前はいつまで経っても魔法使いなんだ。

 

 そうなったらなったで嬉しいが現実的ではない。これはそうなる為の1プロセス。経過点でしかないのだ。

 ふふふふ、そしてな、戦闘用の人形もいくつか配備した。理由?簡単だろ。レオナルドが百合に目覚めたら殺さねばならないが、俺がいなければ誰がマユたんを守る?……万丈だ。この万丈という名前はその人形の名前である。

 制作してくれたのは青崎という女だ。人形師と呼ばれていたので人形作るのがとても得意なのだろうと思ってな。会いに行って作ってもらったんだ。

 

 時計塔は役立たずだったが、居場所は自分で見つけ出した。とても有意義な時間を過ごすことが出来た。

 美人な女の人、しかも初対面の女性と長時間話すなど……マユたんへの愛がなければ逃げ出していたと思う。

 

「なに、単なる買い物だ」

「買い物?何を買ったのさ。私少し気になるなぁ」

 

 あざといぞレオナルド。しかしな、よく聞けレオナルド。俺はお前のそのロリボディに重なる様にしてハゲジジイが目に浮かぶんだわ。悪いんだけどな、凄まじい破壊力してんだわ。目が腐りそうだからちょっと離れててな?

 

「なに、来ればわかる」

「はーい!」

 

 ……いややっぱつれぇわ。だってハゲジジイが上目遣いでお目目パチパチしてんだもん。

 いやわかるよ?現実だけを見るならロリだもんな。でもさ、記憶がさ、言うんだわ。俺の童貞(ゴースト)が囁くんだわ。「こいつ、ハゲジジイやぞ」って。4〜5mくらい離れると消える幻影だけども、だけども……!

 

 はーい!と言いながらピシッと腕を上げるレオナルド。腰に来るから辞めとけ?と思わず言いそうだ。

 マユたんは……と言うと、少し離れて着いてくるようだ。何故か距離感を感じる。

 

「……?まほうつかい、そっちはわたしのへやだぞ」

「あぁ、マユの部屋に用があってな。……そこでは少し遠いな。こっちに来い」

「うわっやめろっ」

 

 マユたんの部屋への通路は1本しか無い(とマユたんは思っている)からか、マユたんは素早く目的地を察したようだ。目的までは分からなかったようだが。

 手の届かない位置にマユたんがいたから魔術で浮かせて俺の腕の中にすっぽりとはめる。僕はいつかしっぽりとハメたい。

 

「は、はなせっおろせ!」

「いいなー。魔法使い様っ私も抱っこして欲しいなぁ~、なんて」

「断る」

「「そんな!?」」

 

 え、嫌ですけど。

 離さないし降ろさない。そして、レオナルドは抱っこしない。嫌だぞ、介護士になるつもりは無い。

 そんなこんなで部屋の前に到着。マユたんはずっと抵抗を続けていたが諦めたのかすっかり大人しくなった。かわい過ぎて脳みそが無くなったのでは?と錯覚していたがどうやら問題なかったらしい。

 

「着いたぞ、マユ」

「うむ……」

「へぇ、随分と不思議な構造なんだね?空間の繋がりが意味不明だ。うわっ、足元スケスケじゃないか。下から覗かれてしまうよ」

 

 レオナルド、観光は済んだか。ずっと話してるが、マユたんに気が付かれるんじゃないかね?君がジジイだとバレればマユたんとのお友達計画はご破算。君は解雇だぞ、分かっているのかね。

 

「ぅぅ…………な、なぁショ、ショウ……もぅ、おりていい……?」

 

 ッッ!!!!ハァォァァァァァァァァァァァァァァァァア(瞑想)

 危なかった……!鼻血がギラグレイド並の速度で吹き出すところだった。小声で話すところとか特に良き。

 マユたんは何故か他の人が居ると俺の名前を呼ばないから油断していた。独り占めしたいのかなっ?ふへへへへへへぐへへへへふははははは!

 

 かわいい(語彙損失)

 

「断る」

「な、なんでぇ……」

 

 かわいい(言語野破損)

 

「おりたい。……ダメか?」

「ダメだ」

「ぇぇ……ねぇダメ?」

 

 かわいい(脳停止)

 

「ぐぬぬ、まほうつかいのバカ!死ね!」

 

 はっ(復活)

 

「……私の前でイチャイチャしないで欲しいなぁ?」

「悪いな」

「悪びれもなく!?」

「イチャイチャなんてしてないだろ!」

「そうかい?」

「そうだっ!」

 

 危なかった。思考が完全に停止していた。あのまま死んでいたかもしれない。

 さて!とりあえず扉を開き中に入ろう。なにか気の利いたセリフでも言えればいいのだが……考えすぎても上手いセリフは浮かばなそうだし、シンプルに行こうか。

 

「俺からマユヘ贈り物だ。受け取れ」

 

 俺の言葉にマユたんとレオナルドが固唾を呑んで開かれる扉を見守る。

 扉のその先には──────無数の口を持った触手の大群が蠢いていた。

 

「「「はい?」」」

 

 あるぇ?青崎さん?話しが違くない?






初投稿です。だけ置いておくのが1番初投稿っぽいことに気がついたシフシフ。
決して手抜きではない。

さぁ次回!触手!……か、青崎橙子さんとの勘違いパートのどっちか!書きやすい方を書く!

誤字脱字報告、コメント評価、触手まみれになってお待ちしております。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「興奮すると少しでも沢山出る」

あけましておめでとうございます。

新年なので新しいことに挑戦しようと考えまして……結果小説を書くことにしました!
上手くかけているか不安ですが、呼んでくれると幸いです。

新年らしく爽やかで清楚なタイトルと内容となっております^^


 ◽︎

 

「「「はい?」」」

 

 と困惑の声を上げた俺たち。目の前には触手。マユたんの部屋が荒らされている。よく見れば万丈も破壊されていた。

 人形師との会話を思い返すが、果たしてこんなものを作られるような会話だったか……?

 

 それとも、最高のぬいぐるみを作って欲しいが為に神代の素材や異世界の素材を渡したのが悪かったのだろうか。

 俺が所持している中でもっとも魔力に優れていたのだが……やはりぬいぐるみは布と綿で作るのが1番なのか……

 

「ま、まほうつかい……こ、これは……」

「わ、わぁお。なんて言うか……すごいサプライズだ」

 

 2人の幼女(片方はジジイ)に見上げられ、俺はどう返したら良いのか悩む。

 青崎さんは悪くないのだ。彼女は求められた最高のぬいぐるみを作ったのだから。

 目を凝らせば触手の先……と言うより根元には中々にショッキングな人形がある。腹や口、耳から綿が飛び出しており、同じくそこから大量の触手が湧き出しているようだ。

 

 俺の家に来たことによって結界等の外部的要素により人形内部で複雑に組み込まれていた素材に異変が生じこうなった……ということにしよう。うん。マユたんのこと考えてて検査忘れてたとかそんなんじゃないし。

 

「ふむ……これは──────」

 

 お?何だ触手くん。なぜ最初の獲物に俺を選んだ?

 そこはレオナルドにしとけよ!

 

「「ま、魔法使い(様)ーー!!」」

 

 あ、あひぃ!

 ……なんてことになるはずもない。服はしっかり着てるし魔術等で防備は万全。問題は……ヨダレか体液か分からないがベットベトだと言うことか。

 やっぱり俺じゃなくてレオナルドにやるべきだようん。俺は絵的にダメだがレオナルドなら映えるだろう。マユたんにやったら殺す。

 

「…………あれ?なんともなさそう」

「……いや、違う!あれは……魔術を喰らっている」

 

 え?なんかレオナルドからおそろしい言葉が飛んできたんですけど。

 え?食われてんの?俺の魔術。……呪文は使わない方がいいか。えっと……じゃあとりあえず燃やしてみ……ダメだマユたんの部屋だぞ。なら凍らせてみよう。

 

「『凍えろ』」

「────────ッ!」

 

 凍った……が、すぐさま溶けた……と言うよりも吸収された。口は攻撃用のようだ。吸収自体は全身で行うようだな。

 なるほど、この全身をまさぐるような動きも魔術を吸収するためか。

 

「が、がんばれ!」

「っ!」

 

 ま、マユたん……!!う、嬉しいっ!そんなことを言ってくれるなんて……おじさん頑張っちゃうからねっ!!

 

「そ、そうだね!頑張れ魔法「がんばれしょくしゅ!」……へ?」

 

 ……え?もしかして俺が触手に絡まれて興奮を……?や、やだ、頑張らないと……

 

「やれ!そこだ!そのいきだ!まほうつかいをぶっころせー

 !」

「マユちゃん!?応援する相手が違くないかい!?」

「あんなものをわたしのへやにもってきたまほうつかいがわるいのだ!しね!」

 

 あ、そっちね。そうだよね、ごめんねマユたん!けっこうまともな理由だったね!

 

「後で謝罪する」

 

 聞こえるかは分からないがとりあえず言っておいて……色々と魔術を試すがダメだな。

 それに自身にかけていた魔術の半分ほどが既に食われた。食うだけ強くなってるような気がしなくもない。

 

 ……もし、この触手が魔術の量や込められた魔力の多さで狙う相手を変えているのなら……そろそろマユたんに掛けた魔術の方が多くなる。急がなければ……つっても、ちぎっても生えてくるしなぁ……やはり呪文を使うしかないか……?でもこういうのって使ったらめちゃくちゃ強くなるパターンだよな……

 

「ふむ……」

「冷静に考えてる場合なのかい!?」

 

 ……マホカンタやアタカンタは「テンション」を上げることで無効化できる。

 理由はよくわからないがマホカンタなアタカンタは陰キャ呪文だから陽キャテンションには勝てないのだろう。

 

 そしてこいつは魔術に対して絶対的な防御と耐性、ついでに吸収を持っている。

 並の魔術ではどうしようもないし、中途半端に強力でも強化してしまうだけだ。

 よし、テンション上げて呪文使ってみるか(謎理論)

 

「いけー!しょくしゅー!」

「頑張れ魔法使い様ー!」

 

 問題はどうやってテンションを上げるかだ……やはり、マユたんだな。

 マユたんとの未来に思い馳せ……興奮しよう。

 

 

 

 ◼

 ショウがおぞましい触手に捕まった。

 ずきり、と心が痛むが……もしかしたらショウを倒せるかもしれない。

 

 リザが言うには魔術を食べる触手の様だ。魔法使いに対する切り札としてはお誂え向きだな。どこの誰だか知らないが魔法使いにこれを購入させた功績は素晴らしいぞ。

 

 全力で触手を応援しながら、私は部屋を素早く確認した。ぬいぐるみがそこかしこに転がっている。

 私に対する贈り物……というのはこっちの事だったのだろう。よく見れば触手の核となる部分にも熊のぬいぐるみがある。

 

 騙されたか……或いは時間差でああなるように仕組まれていたのだろう。

 それを見逃すようなショウでは無いと思っていたが……それかもっと外的な要因なのかもしれない。それこそショウが予想できないほどの。

 

「頑張れ魔法使い様ー!」

 

 隣でリザが必死に声を張り上げている。いけ好かないやつだ。嫌いだ。なんでこの家に居るんだ……。

 そんな思いしか出てこない。舌打ちしながらショウを見れば、ショウは目をつぶって抵抗せずに固まっている。

 諦めたのか、なにかするつもりなのか……

 

「───────マユ」

「っ!」

 

 な、なんでいきなり名前呼んだんだ。

 

 っ!?

 

 な、なんだ……?いきなりショウの覇気が増した……?!

 そ、それに変なオーラに包まれてるぞ……???

 

「マユ、頼みがある」

「い、いやだ!きかないぞ!」

 

 誰が助けるものか!ばか!しね!

 私に溜め込まれた魔力は私が使うのだ!!お前なんかに使うかばかめ!

 っ……!う、うるさいぞロビン!正直も正直!心の底から思ってるのだ私は!

 

「────マユ……俺じゃだめか」

「!?」

 

 うっわ!うわっ!なにそれ!なにそれ!?そんな真顔で言われてももも!?

 ま、まてまてまてまてててててて……よよよよ、よく考えろそもそま求められヘマ……!?(混乱)

 

「───マユ、愛してるぞ」

「!?!?」

 

 ひ、ひぃ……や、やめろ、き、気持ち悪ぞショウ!なな、なんなのだ、い、いきなり!?

 ゾワゾワする!鳥肌が立つわ!リザも見てるし聞いてるんだぞしね!しねしねしね!

 誰が聞くか!聞かない!きかないぞ!頼みなんか聞かない!何も話さない!

 

「あー!あー!あー!きーこーえーなーいー!」

 ─────『ならばこうしよう。直接話し掛けることにする。聞こえるな?』

「にょわぁ!?こ、こえがちょくせつ!?」

『かわいい』

「ひょぁ!?」

『マユ、いいか。この触手は不確定要素が多い。下手に呪文……魔法を使ってしまえば何が起こるか分からない』

「よ、ようすをみていればなんとなくはわかる!」

『マユ、俺を“応援”してくれないか』

「お、おうえんならリザがやってるだろ!わたしはやらない!」

『……もう少しで俺とマユに掛けられた魔術量が並ぶ。そうなればマユにも触手が襲い掛かるだろう。そうならない内に倒したい』

「そ、それは……いやだ」

『そうだろう?なら応援してくれ』

「………………」

『マユ?』

 

 魔術か、或いはほかの何かで直接話しかけてくるショウ。逃げられない声が常に耳元で聞こえてくる。

 可愛いとか言われると力が抜ける。最悪だ。

 …………でも、話していてわかった。ショウは案じていた。

 

 強力な魔術や魔法を使えば恐らく出られる。だが、そうなればリザや私は巻き込まれる。

 強力な防御を私達に施した場合は私達が狙われる可能性が出てきて……狙われたそこに一撃を叩き込んだとして……防御を食われてしまっている私達は死んでしまうだろう。

 

 私個人を案じている訳では無いのが気に食わない……いや、リザは不思議そうにこちらを見ている……つまり、この会話は私達しか分からないのか。

 

「わたしのためなのか?」

『あぁ。マユのためだ』

 

 いつの間にか尋常ではないオーラを纏っていたショウが、即答する。

 胸が鳴る。自慢げな感情が溢れてくる。ロビンがニヤけているのが伝わってくる。

 

「わ、かった……」

『ありがとう。マユ』

「とりはだがたつ、やめろ」

 

 仕方ないから言ってやるしかない。応援するだけでいいなら、やってやろうではないか。魔力は絶対に使ってやらないからな!

 私も私の部屋があの触手に占領され続けると考えると……いいものでは無いからな。

 私は言い訳もそこそこに叫ぶ。

 

「ショウ、しっかりしろ!まけるな!」

「────────!!!」

 

 途端に、覇気が吹き荒れた。

 魔力とは違う別の何か。覇気と言う表現以外にどう表すかもわからない不可思議な力。

 触手達はその勢いに耐えられず、引きちぎれ拘束が解ける。すぐさま再生するも……ショウに飛び掛るのを躊躇している様だ。

 

 

「───人は古来より、感情の昂りで奇跡を起こしてきた」

 

 

 ショウが僅かに宙に浮く。液体でドロドロだったはずの衣服はまるで新品のような輝きを失っておらずふわりと広がっている。

 

 

「マユ、見ているといい」

 

 

 そう言ってショウは掌に小さな炎を灯した。

 なんての事の無い単なる火の玉。だが、変化はここからだった。

 ショウが纏う覇気のようなものが火の玉に吸い込まれていく。私の周囲がパチッと音を立てた。防御魔術が作動しているのだ。ショウの掌の小さな炎に対して。

 横で苦悶の声がする。どうやらリザはショウから魔術を掛けてもらっていないようだ。

 

 

「───これは、高名な魔術師が使うような大魔術ではない」

 

 

 赤い火の玉が、オレンジに、黄色に、白に……色を変えていく。

 バチバチと防御魔術が悲鳴を上げている。リザの方からも魔術の気配を感じる。……恐らく、それはもう全力で防御魔術を使用しているのだろう。

 

 

「───気合い、勇気、愛情……それら心が生み出す理解困難な力」

 

 

 白に青が混じり、やがて青にかわる。……そしてそれがさらに小さく凝縮された。

 

 

「───人の感情が巻き起こす異常。唯一、人間が御せる“理不尽”」

 

 

 最早それは炎としての形を保っておらず……青い光の球としてそこにあった。

 防御魔術は反応しておらず、リザも荒い息はしているもののもう魔術を使っていない。

 

 

「───よって、これは最上級火球(メラガイアー)では無い」

 

 

 ぽ、という音と共に、光が触手に向かって飛ぶ。ゆっくりと……なんの敵意すら感じさせない暖かな光として。

 

 

 

 

「───火球(メラ)だ」

 

 

 

 

 光に触れた瞬間に、触手は消え去った。

 

 

 

 

 

 










(久しぶりすぎて辛いンゴ)

誤字脱字報告、コメント、お待ちしております!



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「あれから暫く時間がたった(投稿とか)」


新社会人として働き始めたので初投稿です。


疲れるね!


 □

 

 

 あれからしばらく時間がたった。

 マユたんの部屋は綺麗になり、家具なども一新された。

 気色の悪い触手がこの場にいたなんて事実はすっかり無くなったのだ。

 

「ショウ! いつまでまたせるきだ!」

 

 下の階から愛らしい声が響いてくる。今日は初めて朝ごはんを1からマユたんにおまかせしてみたのだ。

 マズメシでも構わない。ダークマターでもマユたん補正で神代を超える自信が俺にはある。

 

『今行く』

「びゃあ!?」

 

 ……ぶはっ(吐血)

 ホイミホイミ……テレパシー飛ばしたら飛び上がるの可愛すぎるでしょ死ねるわ。

 落ち着いたのを確かめてから階段を降りる。転移を使うとマユたんがビックリするので今はやらないでおこう。たまにやるからいいのだ。

 

「ショウ……きさま……」

 

 ジト目で睨みつけてくるの可愛い(無敵)

 

「まぁいい。みろ、かんぺきだ!」

「ほぅ」

 

 おぉ、凄い。凄いぞマユたん。

 ジャジャーン! と両手でチャーハンを強調した後、俺の目線がチャーハンに向かったのを確認してから腰に手を当てて胸を張る。ドヤ顔可愛い。

 頑張ったのが伝わってくる。うん。チャーハンはいい選択だ。前に教えたし、完璧なのは目でもわかる。水分をしっかりと飛ばせたようだな。バイキルトとかのバフが無いとまだ中華鍋を使えないが、いずれ筋力が付けば1人でも出来るだろう。素晴らしい。本当に素晴らしいぞ(語彙)食べたい(直球)

 

 だが……

 

「……マユ」

「ふふん。どうした、すごいだろう?」

「あぁ。凄いな。よく頑張った」

「とうぜんだっ! わたしにとってこのていどh」

「だがマユは何を食べるんだ?」

 

 だが、マユたんは俺の席にしかチャーハンを置いていない。

 そう、自分の分の用意を忘れてしまったのだ。一気に作れるのにわざわざレシピ通りに一人分で作ったのだろう。可愛い。

 自慢げに胸を張るの可愛い。褒められると嬉しそうにするの可愛い。

 もう全て可愛いな。結論! 可愛い。

 

「……いぁ、その……えと……」

 

 

 ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙(悶)

 

 ──────────その時、俺の脳裏に電流が走る。

 

「マユ、こっちに来い」

「ぇ? ……な、なぜだ!」

「なに、親睦を深めようと思ってな」

「ふぇ?」

 

 ポカン。としたマユたんをサッと掴みシュッと座る。マユたんは俺の膝の上に座らせる。

 マユたん可愛いhshsゲージがMAXの今の俺ならば息子が有頂天になることも無いはず。それにしっかりとズボンは履いているからマユたんの小さなお尻が俺を刺激することもない筈だ。

 とはいえ、乗せれば重さは感じるし体温も感じる。髪の毛サラサラだし、いい香りだし……あれ? 俺自分で死地に飛び込んでね? 

 

「な、な、な……!」

「……どうした、マユ」

 

 だ、だが! 案ずるな俺。こういう時はさもそれが同然であるように動けば何とかなるものだ。

 だから俺がマユたんにあーんしてチャーハンを食べさせてあげても問題は無いのだ!! 

 

 しかし、待てよ。俺の為に作ってくれたなら先ずは俺が食べるべきでは? 

 

「マユ、食べさせてくれないか?」

「へ!? わたし!?」

「あぁ」

 

 よいしょっと、マユたんをこっちに向ける。マユたんが足を開いて俺の太ももの上にの座る。

 ひょいっとチャーハンを浮かばせてマユたんに渡す。

 

「ふぇええ……わ、わかった」

 

 ……あれ? マユたんがなんか挙動不審だぞ。……手が震えている? 

 あぁ、チャーハン零れそう……

 

「ショ、ショウ……ほっほら! はやくくちをあけろ! どうせたべおわるまではなさないきだろ!」

 

 おやぁ? 真っ赤ですよお顔が。……可愛い(脳死)

 じゃあ頂きますかぁ! あー…………ん。

 

 むぐむぐ……もぐもぐ……

 

「ど、どうだ……?」

 

 うむ。旨い。ふざけられない。今俺は幸運と幸福を噛み締めている。マユたんがいなければ両の眼から涙を流し、鼻の穴から鼻水を溢れさせ、全身から力を抜いて死んだスライムのように溶けだしていただろう。

 あるいは行き過ぎた料理漫画の如く全裸になっていたことは間違いないのだ。しかし、マユたんの前でそのような恥ずかしい姿は晒せない。

 

「旨い。教えた事を完璧にやったな……偉いぞ」

 

 気付けば俺はマユたんの頭をなでなでしていた。

 マユたんが暴れるかも、と思ったが意外な事に暴れなかった。それどころかちょっと頬を染めながら嬉しそうに受け入れているではないか!! 

 

 ふふふ……息子にルカニルカニ。

 

 さすがにチャーハンを食べて天元突破グレンマランになるのはやばい。

 今天元突破したら清らかな物まで突破しかねない。それはダメだ。危険すぎる。平穏な日常すら突破して豚箱にinだ。

 

「さて、マユ。口を開けろ」

「へっ!? わわ、わたしはじぶんでたべれる!」

 

 っと、唐突に暴れだしたマユたん。そうですか、俺のアーンは嫌ですか。

 だが俺は諦めない。

 

「口を開けるんだ」

「ううっ……スプーンをちかづけたってダメだ」

「あー…………」

「んー!」

 

 口をきゅっと閉めて顔をそむけて必死にスプーンから逃げるマユ。手を使って俺の胸や顔、手なんかを必死に押している。

 

 うん、必死だ。

 

 そんなに嫌かな……ごめん。でも可愛いから許して? ゆるす。ありがとう(自己完結)

 

「食べないのか?」

「わたしは、ひとりでも、たべれる!」

 

 少し息が荒くなって顔も赤い。可愛い。

 

「遠慮は要らないぞ」

「えんりょではない!」

「ほら、あー」

「んー!」

 

 もうやだー! とマユたんが叫ぶまでこの攻防は続いたのだった。

 

 

 

 

 ■

 

「もぐもぐもぐ…………うまい」

「早急に諦めていれば冷めることもなかったろうに」

「うぅ、うるさい」

 

 おのれぇ……ショウのやつ……何が「あーん」だ。私は赤子か! 

 大体なんでショウの為に作ったのに私が食べるんだ。

 可笑しいだろう。

 ……まぁ一人分しか作らなかった私の落ち度だが……

 

 ん? ちょ、ちょっと待って……

 

 記憶が少し巻きもどる。

 

 私はショウに「あーん」して、ショウも私に「あーん」したよな? 

 …………スプーン変えたっけ……? 

 

 は、はわ、はわわ…………

 

 顔が真っ赤に染っていく。私とした事が、かか、間接キスだとぉ! ……うぐぐ。

 

 ショウの奴は満足げにコーヒー飲んでるし! ふざけるなよ! 変態! ハレンチだ! 死んでしまえ! 

 

「────俺の顔になにか付いているのか?」

「っ…………め、はな、くち。いじょうだ」

「顔が赤いぞ? 風邪でも引いたのか?」

「なわけあるか! ばーか! このへんたい!」

「…………変態?」

 

 はて、何かあったかな。そんな雰囲気でショウが腕を組んで考え込む。

 嘘だ、絶対わかってやってたぞ。だって親睦を深めるとか言ってたし! 

 深まるかばーか! 溝が深まっただけだ! 

 

「……あぁ、間接キスか」

「あぁって……」

「悪かった。気分を害したのなら謝ろう」

「……あやまられてもうれしくない」

「ふむ」

 

 もっと他に、間接キスを忘れられるような何かが欲しい。

 ショウを殺せる呪いの魔法とか。

 

「では、こうしよう。マユにこれからひとつの呪文を教える」

「!?」

 

 えっ!? 

 えぇっ!? 

 

 おし、える? 

 

「………………マユ? どうした、固まっているぞ」

「ばかもの! わたしがまほうなんてつかえるわけないだろ!」

「何故怒るのか」

 

 ま、全く。いくら聖杯である私だからって魔法なんか使えるものか。

 使えないぞ絶対に。

 

 使わないし。ショウの魔法とか使いたくもないし? 

 そもそも、払った対価にみあっていない! 

 料理で起きた原因なんだから料理で返せ! 

 

「うるさい! ゆうはんはショウがつくれ!」

「マユがそれでいいなら。……で、何がいい?」

 

 全く……で、夕飯かぁ。

 

 ぽわぽわ〜とイメージ浮かべる。

 

 オムライス、あれはいいものだ。えびフライもいい。カレーもおいしかったし、グラタンもいいな。シチュー! あれもはずせない……

 デザートにはプリン! いや、アイス! ……は、さむいからやめてぇ……えっと……なににしよう、たべたいのがたくさんある……まようー……うーん」

 

「…………声に出てるぞ」

「はっ!?」

「……今の全部でいいんだな?」

「ななな、なし! いまのなし! きかなかったことにしろ! いっぴんでいい!」

「任せておけ」

「まかせられるかー!」

 

 わー!! まずい! 食い意地張ってると思われる!? 

 というか! そんなに食べれるかー!!

 

 





リアルも小説の中身も時間が経っております。

ちょっとだけ砕けた会話が出来るようになってきた2人。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「聖杯大戦」

7月に入り初投稿。







 □

 

 えっへん!

 と胸を張るマユたんを眺めつつ、カレーライスを頬張る。

 

 カレーライスであれば中華鍋などの重たい料理器具を使わなくても作れる!とマユたんが言い出し、いまに至る。

 

 どうやらバイキルトなどの呪文であろうと俺の手を借りた事になって1人で作れた事にはならないらしい。

 そこで1人で作れるものを探したようだ。

 

 ……まぁ、カレーを作るための鍋をコンロに上げたのは俺なのだが。セーフなのか?

 それにしても美味いな。マユたん補正が凄いのか、本人が上手いのか…………両方だな(確信)

 お?マユたん、おかわりですか。いっぱい食べるのすこだ。

 

「〜♪」

 

 マユたんが鼻歌まで歌ってご飯を食べている時だ、突然、俺は腕に違和感を覚える。そして、魔力を感じた。

 なんだ?と首を傾げた時、甲高い金属音が鳴る。

 

「ショ、ショウ……?」

 

 どうやらマユたんがオタマを落としたらしい。わなわなと震えるような、信じられないものを見るような目だった。

 

 何故だ、俺は既にマユたんのカレーライスを完食したはず。なぜあんな目で見られている?

 まさか福神漬けか?福神漬けを入れたのか不味かったか……?あれは美味いんだ、入れても良いはず。

 

 っ、確か女性の中にはそういった後付けの味付けを嫌う人がいたな。折角自分が作ったのに、自分の味がごちゃ混ぜになってしまうからやだ!みたいな。

 

 かわいいかよ。

 

「ショウ、てをみせてくれ!」

「手?どうかしたのか?……ッ」

「やっぱり……!」

 

 マユたんに言われて手の甲を見ればそこには……赤い、痣……?

 アイエエエエエ↑ッ令呪!?令呪なんで!?

 

 くっ、このくっそ恥ずかしい令呪がまたっ……!!

 

 なぜTENGA柄なのか。これが分からない。

 

 童貞のお前にはこれがお似合いだ、とでも言いたいのか!

 

恥ずかしい!恥ずかしいぞぉ!………そうだ!見た目変えちゃえ!魔力の無駄遣いとは言うまいな。どうせ余ってるんだ。

 

はっ、待てよ……?マユたんは英霊達に会いたがっていたな!これはチャンスか……!?

し、しかし万が一の事があってマユたんが攻撃されるようなことがあれば心に取り返しのつかない傷を残すかも知れない……やはり置いていこうか……?

 

むむむ!悩む。

 

 ■

 

 食事中、突然、ショウの手に令呪が宿った。

 私は聖杯として()()()の戦争の開始を悟った。

 私を生み出した大聖杯が、また使われようとしている。

 

 …………もう()()()なのか?

 

 ショウが私を使う時が来たのか?

 

 予想では『私の身体がある程度成長した時』の筈だったが、それが外れたのだろうか。

 

 思わず、カレーをよそうオタマを落としてしまう。

 身体がこの幸せな時間の終わりを想起して固まってしまった。

 それを振り払うように声を出す。

 

「ショウ、てをみせてくれ!」

「手?どうかしたのか?……ッ」

「やっぱり……!」

 

 やはり、令呪だ。

 ショウがいつも通りの無感情な顔で手を眺め、そして私を見た。

 目には私が映っている、黒い鏡のように。私を()()()()()

 

 ぞくり。

 

 背を冷たい物が走った。

 

 あぁ、終わった。

 何が幸せな時間だ。結局は何も、初めから変わっていなかった。私は手段でしかないのだ。道具でしか無く失った所で大した損失でもないのだ。

 だが何故だ。なぜ、抵抗しないんだ私は。

 

 ロビンが邪魔を?……いや、していない。彼女自身、驚いて思考を止めているように思える。

 

 では、私の意思か。

 

 ショウの事を見つめながら呆然と立ち尽くした。

 

『……マユの心が欲しくなった』

 

 そんな言葉を思い出す。

 もう、完全に奪われていたのだ。抵抗するだけの意思はある、と信じたい。だが抵抗する意義を失いかけている。

 

「マユ?」

「っ」

 

 不思議そうな、私を労るような低い声が耳を打つ。

 ビクリと身体をふるわせてショウを見た。

 

 あぁ、ダメだ。許せない。

 フツフツと黒い感情が湧いてくる。この男が、何を欲し、なんの為に行動しているのかを考えると…………気が狂いそうだ。

 

「……どうやら、令呪のようだな」

 

 再確認するようにショウが言う。

 赤の線が複雑に絡み合い()()()()()。理解不能、意味不明。まさにそんなに言葉が似合う。

 令呪の形が左右対称に近しいほど、その人物は精神的に安定している事を表しているとされる。

 不揃いな令呪の持ち主は精神的に異常者であるのだ。つまり、ショウの精神性は……そういうことなのだろう。

 

 

 ……だから何なのか。それが分かったからといって何になる?人間の精神で永きを生きたのだ。異常が生じない方が可笑しいだろう。

 

「聖杯戦争に選ばれたらしい」

 

 白々しい。分かっていたのだろう?

 

「…………どうしたものか」

 

 それも演技なんだろう?

 

 疑心暗鬼?否。確信を持って心の中で問うに留まる。口に出せば何が起きるかわからない。

 

「…………はぁ」

 

 っ、また、新しい表情を見た。

 諦めたように目を瞑り、ため息と共に疲れたような顔で私の頭に手を置いた。私を連れていくのだろう。

 

「では、行ってくる」

「…………?」

 

 背を向けてショウが玄関へ歩いていく。

 まて、どういうことだ。

 私をなぜ連れて行かない。天の衣を着せ、大聖杯へ連れなければ…………終わらせてから転移で連れていけばいいだけの事か。

 

 ………………ならば。

 

「まて、ショウ。わたしもいく」

 

 ならば止めてやる。邪魔でもなんでもして、長引かせてやる。

 

「……………………危険だぞ?」

「かまうものか。ショウのそばをはなれるほうがこわい」

「マユ……」

 

 ショウの目元が少しだけ動いた。

 どうやら驚いたようだ。

 

「ふんっ、きがえてくる」

 

 私は自分の部屋へもどり、服装を整えようと駆け出した。

 

「………………参ったな」

 

 後ろで小さく呟かれた一言に、少しだけ優越感を感じた。今に見ていろよ魔法使い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場面は変わりルーマニア・トゥリファス。

何処にでもあるような古民家に、無数の人影があった。

 

「……というわけなのです」

 

魔術協会の人間から事のあらましを説明され、頭を下げられているのは黒髪黒目の黒ずくめの男。そして、その隣にちょこんと座る少女。

 

「ほう」

 

男は魔法使い。そして、少女はその嫁だという。

貧相な椅子に腰掛け足を組んでいる様が、魔術師達には王座に御す魔王でも見上げているような気分であった。

 

とにかく、仕事はしたのだ。

ダーニックが何をし、どうして今に至るのかを詳細に説明し協力を扇いだ。

 

男は帰りたい、帰りたい。と願いながらチラリと肘掛に置かれた魔法使いの手を見る。

そこには不規則で時間によって形を変える理解不能な令呪が宿っていた。

 

ハッキリ言って不気味だった。

 

何かの拍子に突然殺されてしまうのではないかと気が気では無かったのだ。教えを乞うならば良い。命を捨てる価値がある。だが、機嫌を損ねるかもしれない要件を伝える…なんて命の無駄遣いだ。

魔法使いの沈黙はどれほどだったのか、1分?数十秒?いや1時間は超えるだろうか。

引き伸ばされたような時間を感じながら、答えが帰ってくるのをひたすらに待った。

そして、ゆっくりとその口が開かれて………

 

「───────断る」

 

魔術師は気絶した。

あぁ、死んだ。そう思ったのだろう。

 

慌てて他の人間が前に出る。

 

「な、何故でしょうか魔法使い様!」

 

顔を青ざめさせ気絶してしまった同僚を庇うように立ち、膝を震わせながら声を出す。

それに気が付いているのだろうか、全く気にしない様子で魔法使いは言う。

 

「組みする必要性を感じないからだ」

 

絶対強者の風格。圧。魔力を極力抑えてくれていると理解していて尚、気をやりそうになる。

そしてその言葉が決してまやかしでも誇張されたものでもないと理解する。

 

「さて、聖杯大戦を終わらせよう」

 





次回は……未定!(いつもの)




見せて!とちらっと令呪が宿っているのを見て絶望したマユ(柄は見てない)。
その後で見てくれ、と改造してカッコよくして見せるショウ。
やっぱり精神異常者じゃないか(確信)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「観光します」

初めまして初投稿です!コメントありがとうございます(先手必勝)

鬼滅の刃面白いね!(二の太刀)


 

 八枚舌のダーニック。

 ダーニック・プレストーン・ユグドミレニアを少しでも知ろうと考え調べられたのなら、この名を知らない訳が無い。彼を表す代表的な2つ名である。

 派閥抗争や権力闘争の場面において抜群の手腕を発揮し、裏切り寝返りは当たり前、信じる者は勿論信じていない者まで利用する超一流の詐欺師として知られているのだ。

 

 そんな“八枚舌”は立派な八枚の舌を噛みちぎらんばかりの激情に駆られていた。

 しかし、そんな愚行に及ばないのは一族の目があったため。理性を総動員して睨みつけるだけに留める。

 彼は自らが召喚したランサーと共に僅かに高い所から広間へと集った面々を見下ろしていた。

 

 そこには5人……いや、7()()の人間がいる。

 そのうちの6人は令呪をその身に宿しているようだった。

 

 ダーニックが睨み付ける先には、黒い髪に黒い瞳。アインツベルンの紋章が刻まれたローブを纏うその男。

 60年も昔、ダーニックは男に対抗すべく叡智の英雄たるフィン・マックールを召喚するもあっさりと敗北していた。

 

 そんな仇敵と言うべき存在は、この場にやってきた時点で攻撃され淘汰されるべきである筈だ。

 だと、言うのに…………!

 

「おのれっ……!魔法使いが……!」

 

 

 

 

 

 

 ■

 

「さて、聖杯大戦を終わらせよう」

 

 ショウがそう言って転移する。当然私もついて行く。

 次に私達が訪れたのはトゥファリス……?だった。多分トゥファリスで合ってる。

 

 ……トゥリファス?

 

 わ、わからん。

 

 まぁとにかく、魔法使いはさっさと終わらせる気満々だ。

 そうは問屋が卸さない。

 邪魔してやるぞ。

 

「マユ、少し観光でもしよう」

 

 …………あれ?

 

「す、すぐにおわらせるんじゃ……」

「……何を言っている?まだ聖杯大戦は始まってすらいないぞ」

「あ、そ、そっか」

 

 じゃ、じゃあ、観光しよう、かな?

 

 いやいやいや…………おかしい。

 そもそもショウも令呪が宿ったならサーヴァント召喚すればいいじゃないか。

 

「ショウは、その、サーヴァントは……しょうかんしないのか?」

 

 あ、こら。ロビン拗ねるな。

 仕方ないだろう聖杯戦争なんだから。

 

「サーヴァントか……必要とは思えないが、マユが言うのなら召喚してみよう」

「う、うむ」

 

 ……もしやロビン。私はいま自分の首を絞めたか?

 もしかして妨害が難しくなるんじゃ……

 

「では適当な場所へ転移する。ルーラ」

 

 やってしまったかもしれない。どうか、ヘンテコなサーヴァントであってくれ!!

 

 

──少女転移中──

 

 

 ショウと共に拠点、旅の祠へとやってきた。

 そこには……なんか可愛いコウモリの模様のローブを着た変な人がいた。

 

 ショウが言うにはハーゴンという神官らしい。

 

 神……官?

 

 まぁともかく、味方のようだし、うん。関わらない方がいいかな。なんかショウを信仰してる変な集団の頂点らしい。

 その妻である私も信仰の対象なのだとか。視線が怖いぞやめろ。

 

 話を戻そう。旅の祠へやってきたのはサーヴァント召喚の為だ。世界中と繋がっている旅の祠は大きな龍脈の上に建っている。

 召喚する環境としては申し分ないし、“世界中と繋がっている”という旅の祠自体があらゆるサーヴァントを呼び寄せる為の呼び水になるのだとか。

 ちなみに、この情報はあの英雄譚*1から得た知識だ。

 ショウはそれを読んだからか、あるいは元から知っていてここにやって来たのだろう。

 

「マユ」

 

 私が考え込んでいるとショウに呼ばれる。なんだ。と応えて振り向けば何やら考え込んでいる様子だ。……多分考え込んでいる。

 

「マユ、君はサーヴァントが見たいのか?」

「なに?」

「……サーヴァントを呼ぶ意義を聞いている」

 

 お、チャンスだ!聞いたかロビン、召喚を止めさせることが出来そうだぞ!喜べ!

 というかお前を召喚すればいいのでは?聞いてみるか。

 

「わたしはべつにサーヴァントとかみたくない」

「ほう」

「でもしょうかんするならあのアーチャーはどうだ?まえのせいはいせんそうでよんだだろう?」

「いや、不可能だな」

「や、やはりそうか」

 

 そ、即答……まぁ確かにアンリマユをこの姿に押し込めるための楔として使われているのだ。ロビンを呼ぶのは無理か。呼んでも他のロビンフッドが来るだけだろうしな。

 

「ではサーヴァントは呼ばなくてもいいのか?」

「うむ、ひつようない」

「…………しかし、もしもという事もある」

「……え?」

 

 もしも?何がもしもなんだ?魔法使いがサーヴァント如きに負けるわけが無いだろう?全盛期の大英雄ならまだしも、劣化した使い魔が勝てるはずが無い。

 魔力だとか色んなものが制限されてしまうのだぞ?

 

「アサシンが危険だな。俺の感知や魔法をくぐり抜けるような輩が出てはマユが危険だ」

「ぇ」

 

 お、おいロビン。これは不味いぞ。絶対に召喚するつもりだ!

 何かと理由をつけて私の護衛にするつもりだ!

 え?護衛ならいいじゃないかって?悪いわ!護衛に止められてショウの邪魔をできない未来が見える!

 

「……ならば先んじて手を打つか」

 

 あー、はい。なるほどな(諦め)

 

「そ、そうだな、うん。それがいいとおもうぞ?うん」

 

 頼む。男であってくれ。魅了持ちとか絶対にやめてくれよ!

 

「マユの護衛を頼む以上、女である事が好ましいな」

 

 おい!ショウ!違うだろ!私よりもお前を優先してくれ!頼む!ロビンの嫉妬心が凄いの!やめて!

 

「……ふむ。ならば凝らずにアレでいいか」

 

 あ、アレ?

 

 もうダメだロビン。私にはショウの考えが読めないというか、読む気にもなれない。

 ショウの中では既に完成しているのだろうが、その設計図を見せてくれないのでは話も出来ない。

 

「マユ」

「っ!な、なんだ」

「召喚は延期だ。予定通りしばらくの間は観光だ」

「そ、そうか!わかった」

 

 もう深く考えなくても良いのでは?その方が楽な気がする。

 いやしかし、ダメだな。考えを放棄してショウから与えられるだけの子供に成り果てるなど、この世全ての悪として譲れない一線なのだ。たぶん!

 

 

 

 

 □

 

 あぁ、天国だ。ここが理想郷なのだ。

 みろ、隣を歩く俺の妻を。

 

 見たことのない街並み、溢れるような人。それをずっと目で追って驚きや喜びを体全体で表している。しかも、それに本人が気が付いていない。

 俺に見られていると言うことも忘れてはしゃいでいるのだ。

 

 全く……可愛すぎるぜ。あまりはしゃぎ過ぎるなよ、と初めに言ったんだぞ俺は。迷子になったら困るからさ。

 マユたんその時なんて言ったと思う?「ふふん。わたしはこどもではない!しんぱいはむようだ!」だぜ?

 

「わぁ……!ショウっショウみろ!あれ!ほら!」

「あぁ、あれはブラン城だ。昔は関所のような役割があった」

 

 遠くに見える城と手元のパンフレットとを行ったり来たり顔を動かして、もう片方の手で握る俺の手を引っ張ったり揺らしたりしてくる。

 ふふふ、鼻血がやべぇ。ホイミ。

 

「むっ、むむむ…………えぇい、ほかのかんこうきゃくがじゃまだ!」

「そうか」

「おおわっ!お、みえる!よくやったぞショウ!」

 

 観光客が多いので見えなくなってしまったようだ。なので、俺は肩車をしてやる。決して、けっっして!太ももを両頬で感じたいとか、首や肩周辺でお尻の感触を楽しみたいとかそんなやましい気持ちが有る訳では無い。全く……重力呪文が忙しいぜ。

 おおっと、ホイミも忘れるな。死ぬぞ。出血か興奮による心臓発作か……魔法使い史上最大の危機だ。

 

 ふふふ、頭をペシペシ叩くなたたくな、萌える。

 

「なぁショウ!あのブランじょうははいれるのか!?」

「あぁ、まだ入る事が出来るはずだ」

「ショウははいったことあるのか?」

「昔な」

「おぉ、すごいなぁ」

 

 うっ(心臓発作)

 リザオラル。

 ふぅ(蘇生)

 

 おいおい……体がもたねぇぜ。会話ができるってこんなに幸せなのね。

 体が軽い……こんな気持ちで観光するの初めて……!!

 

「あー……でもたくさんならびそう」

「……退かすか?」

「っ!だめだめ!かわいそうだろ!」

「天使か?」

「へ?」

「だがそうだな。マユは偉いな」

「ふふん。とうぜんだ。…………てんし?」

「気にするな」

 

 ふぅ、あと1週間と3日でとある魔術師がアサシンの召喚を行う。俺はそこに乗り込んでアサシンを貰うつもりでいる。

 確か記憶ではなんか女の人がマスターにされるんだったか。その人を手厚く保護して記憶とかを消して元の生活に戻し、アサシンの権利を譲ってもらおう。

 

 間違ってもまたアーチャーが出てきてしまうなんて事が無いようにな。

 

「うー……あとどれくらいまつの?」

「さぁ?なんなら俺が話し相手になろう」

「ほほう、あっそうだ!アレだショウ!あの、しりとりというのをやりたい!」

「いいだろう、受けて立つ」

「…………かてそうにない!」

 

 …………あぁ、天国だ。もう戦争始まる前に皆殺しも有りだな。マユたんに怒られそうだからやらないけどさ。

*1
【魔法使い「カルデアの資料が届いたので嫁と見ることにした」】を参照




コメント、誤字脱字報告待ってます(後の先)



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「尊ぃ……無理ぃ………」

病気が治らないので初投稿です。

暇な時間ができたうえでやることが無くなって「せや、小説かこう!」とおもって書きました。

前回の投稿者とかなり間が空いていますが、そこに関しては申し訳ないです。不定期更新だからね!仕方ないね!


 

 人の血で描かれた魔法陣はシンと静まり返っている。

 魔術師、相良豹馬は英霊の召喚が失敗したことを悟った。

 

 仕方ない。そう自分に言い聞かせ、触媒であるナイフを握りしめる。

 呼び寄せるのは、かの殺人鬼。

 霧の夜に現れ娼婦を惨殺する正体不明(アンノウン)

 

 その一連の流れを再現する事で縁を深めれば……召喚は可能なはずだった。

 

 手が、震える。

 

 彼の所業は魔術師らしい魔術師である。しかし、同時に深く羨望していた。

 “魔法使い”の様になりたいと。

 

 魔術師らしからぬ、と語られる彼のように……触媒もなしに大規模な魔術を使い、何食わぬ顔で人を救い、数多の英雄と心を通わせるような男子に成りたい。

 

 だが、それは現実的に無理な話しなのだ。

 おのれはそう優秀な魔術師でもなければ、才能も大して無い。 一般的に魔術が扱えて、平均的な魔力を持っているだけ。

 

「………」

 

 気絶した女性をゆっくりと魔法陣に寝かせ、呼吸を整える。

 

 仕方ない。

 

 呟いて目を瞑り、両手でナイフを握り締める。

 

 

 そんな時だ。

 

 

 ぞわり。と空間が固まった。

 空間が凍り付いたような、そんな感覚。

 いや、実際に凍り付いているのだろう。

 

「───────お前が、アサシンのマスターか」

 

 背筋と脳髄を貫くような感覚に肩を飛び跳ねさせる。

 冷たい声だった。感情の起伏を感じさせない、平坦でありながら何処までも深い恐怖を呼び起こす……そんな声。

 背骨を直に手で撫で回されるような不快感が、身体を絶えず襲っている、魔力が体を突き抜けているのだろうか?

 

 

 恐怖の悲鳴を噛み殺し、ゆっくりと振り返る。

 声の主は、“黒”と言う印象を抱かせる男だった。

 アインツベルンの文様が刻まれたローブ。黒い髪に黒い瞳。やや黄色い同郷の様な肌。

 その身から発する魔力の質、量ともに規格外。

 

 紛れもなく、噂に聞く魔法使いその人だった。

 

「っ!………っ??!」

 

 声を失った。思考は堂々巡りを繰り返し、呼吸すら忘れてしまう。

 いや、忘れているのではなく、出来ないのだ。そう気がついて咄嗟に魔術で肺を強化するも……まるで空気が無いかのように、酸素は取り込めない。

 それどころか、肺の強化も上手く行えて居なかった。

 

「まほうつかい、アイツこきゅうできてないぞ」

「ふむ、では、これでいいか?」

 

 魔法使いが指を鳴らすと、凍りついていたような感覚が、正常に戻ってきた。

 呼吸をしたい。という欲求に任せて大きく呼吸をする。

 

「ッッハァッ!!はぁ、はあっ………!」

 

 何をしに、こんな所まで……………?

 僅かに思考能力が戻り、考えが顔に出ていたのだろうか、魔法使いはいつの間にか用意されていた椅子に腰掛け、言葉を発する。

 

「取引をしよう………その触媒を俺に渡すか、死ぬか、どちらかを選ぶといい」

 

 

 ◼

 

 どうしてだ、どうしてこうなった?

 

「ねー、おかあさん」

「お母さんではない」

「じゃあお父さん?」

「お父さんでも無い」

「そうなの?」

「あぁ」

「……でもおかあさん(マスター)だよね」

「契約は結んだな」

「じゃあおかあさん!!」

「…………」

 

 白髪で顔に傷を持つ少女……彼女はサーヴァントなのだ。アイスブルーの瞳を輝かせながらショウに抱きついている。

 

 

抱き着いている!!

 

 

 彼女はジャックザリッパー。切り裂きジャックの名で知られる殺人鬼である。

 

 ……しかしそんな事はどうでもいい!

 さっさとショウから離れてもわなくては。

 全く、私の為とかなんとか言って幼い子ばかり連れてくるが、私はお前がロリコンなんじゃないかとその度に疑っているんだぞショウ!

 手を出さないとは思うが……今までの、行動的に…たぶん、出さないよね?

 

 ええい、とにかく、あの泥棒猫を引き剥がすのだ。

 

 ふんす、と意気込んで近づいて行くとショウがこちらを見た。

 ぐっっ!見詰められただけなのに、顔が熱くなるっ……くぅ、この間の醜態は忘れてくれ!!仕方ないだろう!観光楽しかったんだから!

 ちくしょうめ。

 

 そもそも、ショウが私を守れば済む話でサーヴァントなんて必要ないのだ。この規格外な魔術礼装だけでも死ぬ気がしないのに、サーヴァントなんて過剰だと思わないか?

 むしろ不意を突かれて私がダメージを負ったら、この魔術礼装の余波でジャック・ザ・リッパーが死にかねないぞ?

 

 ショウの説明だと周囲に「死んだ」という結果を撒き散らすとか言う防衛機能があるそうじゃないか。

 過剰防衛だ。

 

 …………とか、言えたら良いのだが……

 

「マユ?」

 

 うぐぐ、言えない。もう今更言えない!!

 今言ったら「ほう?二人きりの方が良かったか?」とか言われるもん!絶対にだ、ショウは案外意地悪な所があるからな。

 

「……!」キラキラ

 

 なぜ私を見ているんだ泥棒猫!!誰の許可を得て……っ!!

 ま、眩しい………?!期待の眼差し!?な、何を期待してるんだ私に!

 

「おかあさん、この子は誰?」

「ま、まて、だきつくな!」

 

 ひょいっと後ろに回り込んで抱きついてくるジャック。

 ぐぬぬ、身長と身体能力で私を上回るからと言って、好きにさせたりするものかっ!

 

「ええいやめろ!!」

「……嫌だった?」

 

 な、なんだその捨てられた子猫みたいな反応はっ……!!

 だが絆されるなマユ!お前はなんだ、この世全ての悪だろう?さらに言えば聖杯だ!

 

 ……聖杯じゃあ願い叶えちゃうじゃないかっ!!

 

 はっ、つまりこのなんとも言えない感情も聖杯のせいなんだな!?

 おのれショウ!お前、奥さんは「子供好き」とか、そんな願望があったな!?

 変なところで強制力を働かせやがって…!

 

「いや、では、なぃ……」

「やったー!で、お母さん、この子は?」

 

 これが母性本能……!抗えない、強制力っ……!

 負けるな、マユ!!

 

「俺の妻だ(キッパリ)」

 

 うっ(決心)

 ショウの理想の奥さんは子供好き……

 ちなみに、ロビン、お前って……そうだよな子供好きだよな。

 

おかあさん(マスター)の奥さん?てことは、わたし達のおかあさん!」

「おかあさんとおかあさんがかぶってるだろ!」

「おかあさーん」

「っ、やめろっ」

 

 やめてくれ!恥ずかしい!!あと重い!

 

「…………………」

 

 ショウ!なんでお前は見てるだけなんだ!

 引き剥がそうとしたりしろ!!

 

「うむ。ルーラ」

 

 うむじゃないが!?しかもルーラしてどっか行ったぞ!?

 っていうか、ショウが居なくなったら何が起こるかわかったものではないというのに………

 

「ねぇねぇおかあさん」

「な、なんだ……あとわたしはおかあさんじゃ……」

「切っていい?」

 

 ピトっとお腹に触れる硬い何か。

 あぁ、うむ。なるほど?

 冷静になったぞ。

 

「だめ」

「えー」

「えー、ではない。ひとのおなかはきってはいけません」

「はーい……」

 

 ……聞き分けがいい!渋々って感じだけど!

 

「敵ならいいよね?」

「え?てきなら?」

 

 敵?……そんなの居ないんじゃ……?だってショウが全滅させるだろうし……

 

「てきならいいぞ」

「わーい!」

 

 ……なんかスリスリしてくるし抱きついてくるし猫みたいでかわいい。……いくない!かわいくないぞ!かわいくないもん!

 絆されてたまるものか!!

 この頭にのせて左右に動かしている手は“撫でている”のでは無く抵抗しているのだ!抵抗ッ!!

 

「ご、ごはん、たべるか?」

「いいの?!食べたい!おかあさん大好き!」

「あ、あぁもちろん。うでによりをかけてつくろう!」

 

 あぁ、瞳が輝いている……眩しい……(敗北)

 

 

 

 

 

 □

 

 少女×幼女ですか………尊い……

 

 さて、耐えられないので飛び出してきてしまったがどうしようか(無計画)

 

 サクッと両陣営潰してしまいたい所だが、マユたんはサーヴァントに会ってみたいと言っていたからな以前。

 両陣営のサーヴァント全員集めてパーティーでも開くか?

 

 危険だろうか。危険だろうな。マスターは呼ばずにサーヴァントだけ集めれば………いや、令呪で暴れるように命令されてしまうかもしれないしな。

 

 うーむ……なんかこう、ないかなー

 呪文とか魔術とかで強引にってなると、心象が悪いだろうし、マユたんは交流したいんだろうから礼儀正しく行きたいよな。

 なら普通に両陣営に挨拶に行く感じにしよう。

 

 そこで「食事でもどう?」みたいな流れになったらご一緒する感じで。毒とかは問題ないだろう。

 洗脳宝具とか、無いよね?たぶん、いや、知らないけど。

 

 あぁ、そう言えばジャック・ザ・リッパーに服を買ってやらなきゃな。まさか襤褸の中があんな格好だとは思わなかったぜ。

 本人も恥ずかしがってたし。

 

 白いワンピースとか、簡素なので良いよな?

 あぁいやまて、本人に選んでもらうか。店に行くための服だけ見繕う感じにしようか。

 マユたんと一緒に行けば仲も良くなるだろう。なんか睨んでたけど。睨んでるマユたんもやっぱり好き(はーと)

 

 ……レオナルドは……呼ばなくてもいいよな。

 

 あー、でも友達としてあの姿になってもらったわけだから……呼ぶべきか?

 

 でもなぁ……モナリザ(幼女)に重なるようにレオナルド(ジジイ)が見えるんだもんなぁ……尊いはずの光景が途端に……あぁでも孫娘2人を連れてやってきたお爺さんと考えればそれはそれで尊いか。普通にほっこりするパターンのやつだな。

 

 よし、呼ぶか。買い物だけしたら帰ってもらうけど。

 

「ルーラ」

 




あんまり使ったことの無い機能(揺らしたり大きくしたり)を使ってみました。
要らない!とか読み辛い!とかあったら辞めますね
誤字脱字ありましたら報告いただけると幸いです。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

魔法使い「レオナルド絶対に許さねぇ」

話が進まないので初投稿です。


 “方舟”と呼ばれる特異点がある。

 

 肥えた土壌、豊かな水源、萌ゆる森林には果実が無数に生っている。

 なるほど、そこだけを見るのなら確かに楽園だろう。

 

 が、そうではない。

 

 誰一人として人間はおらず、野生の世界が広がっていたのだ。

 文明の痕跡は無く、そも「人」という枠組みがない。

 

 そんな“手付かず”の自然に、彼らは放り出されたのだ。

 

「うーん、すっごい大自然だね!」

 

 腰に手を当て胸を張り、ニカッと笑いながらレオナルド・ダ・ヴィンチ─故あって“導き手のリザ”を名乗っている─は周囲を見渡しそう言った。

 

 彼らは魔法使いにより助け出された。

 そしてその多くは生活の保証のようなもの……今までに見てきた特異点の様に人の生活がある世界へと投げ出されるのだと考えていたのだ。

 

 しかし、そうではなかった。

 

 もとより“命だけを保証する”という約束なのだから、魔法使いを攻める事は出来ない。

 とはいえ、ここからの発展となると……気が遠くなるのもまた事実。

 ここに集うのが魔術師達および技術者であるからこそマシではあるが。

 

「いや、だからこそ、か」

 

 助けたんだから、自分たちで生きていけ。

 魔法使いが英雄としては語られる事は多くない。魔法使いは魔法使いという立場で、役割なのだ。

 

 英雄という個人に大きく肩入れする事があっても、国や団体には深く関わらない。

 最も深く関わったであろう円卓の騎士達ですら、魔法使いの詳細を知るには至っていない。

 

「まったくぅ……なんていうか、不器用だよなぁ魔法使いって」

 

 関わりたいが、関わり過ぎると痛い目を見る。

 そういった思考、経験が伺えるような、そんな動きなのだ。彼は。

 

「さて、皆!この辺りに仮拠点でも作ろうか!バリバリ働いてくれたまえ!」

「「「おーー!」」」

 

 リザが声をあげれば、それに習うように皆が声を上げる。

 救い出された人々の目に絶望は無く、希望に満ちいていた。

 見たことの無い植物や、既に滅んでいるはずの動物……“人が現れなかった”生態系をもつこの特異点で、根を張ってやると意気込んでいる。

 

 再び人理に襲いかかった驚異に、藤丸立香達は立ち向かっている。それを助けたい、サポートしたいという思いは彼らの中にまだ残されている。

 だが、もう手の出しようがない。

 

 信じるしか、祈るしか、ここで我々にできることは無い。

 

 だから

 

「よぉし、私は本拠点の設計図でも考えようかなっ!」

 

 我々はここで、命を繋ぐ。

 

 もう一度「おかえり」と言うために。

 

 我々はここで、生き長らえる。

 

 もう一度「お疲れ様」と言うために。

 

 我々はここで、想いを繋ぐ。

 

 最後に、「ありがとう」と言うために。

 

 それがこの、方舟の意味なのだろう。

 

「………そうだろう?魔法使い」

 

 再開を喜ぶための下準備を、我々は始めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 sideレオナルド

 

 

 

「────って、いい雰囲気で開拓を進めてたのに…!」

 

 レオナルドinトゥリファスっ!!

 

「なんでさ!?」

「友人として、マユの買い物に付き合ってやって欲しい」

 

 うーん、このっ!親バカっっ!!

 

 じゃない!嫁馬鹿!!!!

 

 いいけども、良いんだけども。確かに私は設計図を書き終えたし、役割分担も終えて私にできる事はそう多くなかったから、良いのだけれども……!

 

「拒否権はあるが、どうする?」

「いや、行くよ。行かせてもらうとも。久しぶりの文化的な生活ってやつに飢えているんだ」

「そうか」

 

 むむむ、あんまり興味無いねさては。

 

「ところで、方舟については聞かなくていいのかい?近況報告とか、しようか?」

「……あぁ、頼む」

 

 ……あ、今気を使った?

 

 くくく、世界ひろしと言えど魔法使いに気を使われるのは私くらいのものさ。

 だって友人だからね!

 

「いいとも!今方舟では──────」

 

 

 

 

 ◼

 

 目を覚ますと、リビングから声がする。

 ジャック……だけでは無いようだ。

 

 誰か来ているのか……?

 

 目を擦りながらドアノブをつかみ、捻る。体重を掛けて押し開ければそこには………

 

 

「よぉっし!じゃあショッピングと洒落こもうじゃないか!」

「おー!」

 

 …………?

 

「さて、ジャックちゃん。君はどんなお洋服が欲しいのかな?」

「可愛いのがいいっ!」

「なるほどなるほど……可愛いのだね?うーん、魔法使い様、地図はありますか?」

「あぁ、その引き出しにある」

「ありがとうございます!ふむふむ……ジャックちゃん、ここはどうだい?駅にも近いしきっと若い子の趣向にあった洋服があると思うんだ」

「何処がいいか分かんないし、そこでいいと思う!」

「ふふふ、確かにそうだ。なら早速準備をしよう!」

「うん!」

 

 ……………うん?

 

 

 なんだ、この光景は。

 

 あれ?なんか、1人増えてない?

 

「リザ?」

「おおっ、マユちゃんおはよう!よく眠れたかい?」

「おはよーおかあさん!」

 

 ええっと、なぜ此処にリザが?リザはカルデアの職員を保護するために他の特異点にいるんじゃ……?

 

「ふむふむ、その寝惚け眼、疑問に思ってるんだね?ふっふーん、何を隠そう魔法使い様に頼まれてね!君とジャックちゃんのお買い物の相談役としてやってきたのさ!!」

 

 あー、なるほど、ショウのお節介な訳か……ま、まぁ、嫌ではないので構わないが……

 

「ねー、魔法使い様ー?」

「あぁ」

 

 猫撫で声でショウに近寄るリザ。

 うん、やっぱり嫌だな。

 ジト目で見詰めてやれば「冗談だよ、怒らないでくれたまえー」と私を抱き締める。

 おのれ、身長と身体能力で私を上回るからと言って(ry

 

 なぜ私の身長は120位なんだ………身長順だとリザ、ジャック、私の順に大きい。

 だと言うのに母性本能が擽られるのだが?やかましいのだが!

 

「ん」

「んひゃぃ!?」

「」ガタッ!

おかあさん(マスター)?」

「気にするな」

 

 く、不可抗力…!抱き締めたくなるのは不可抗力!!

 

「ま、魔法使い様、マユちゃんが、可愛すぎる」

「当然だろう」

「ん"っ」

「おかあさん?」

「き、きにするな」

 

 私が可愛いのは、当然だろう、だと。うひひ

 

 ってまてまて浮かれるな戯け!

 買い物に行くらしいし、準備をしなくては…

 

「では、したくをしてくる。ようふくをかうんだったな?」

「そうだね……あと朝ごはんとお昼ご飯も外で食べるらしいよ」

 

 なるほど。ショウは、来るよね?

 

「そうか。その……まほうつかいも、くるのか?」

「勿論!そうですよね、魔法使い様」

「マユが嫌でなければな」

「ぅ……いやでは、ない」

おかあさん(マスター)とおかあさんも一緒!?やったー!!」

 

 ぐ、ロビン、感情を抑えろ。別にショウが来る必要は無いだろう。

 え?抑えてる?

 そ、そうか……そうかぁ……護衛には必要だし仕方ない。

 

 え?ジャックが居るから平気だろって?

 

 ま、まぁ……でもそもそも私はサーヴァント自体反対と言うか……買い物はほら、楽しそうだし……素直になれ?おま、巫山戯るなよ、私は素直だ。

 

「百面相してないで、着替えようよマユちゃん」

「っ!!わ、わかった!」

 

 むむむ、リザがお姉さんぶっててムカつく。

 

 

 

 

 □

 

レオナルド絶対に許さねぇ!

 

 マユたんにギュッされるだと?ギュッだぞ?許さねぇ……

 

 くぅ……何故俺はジジナルドのスタンドが見えてしまうんだ……!!

 それさえ見えなければ、てぇてぇ光景なのに………!!

 

 何が「マユちゃんが可愛い」だ!ジジナルドが惚けた顔で振り向いて来るんじゃない。ホラーか。ホラーなのか。

 

 当たり前だろう!?マユたんが可愛くなかったら何が可愛いんだ。

 

 マユたんの悪戯思いついた時の顔とかやべぇからな(語彙力の低下)

 ほらこんな感じよ

【挿絵表示】

 

 な、ええやろ?ちなみにこの時は俺のカレーを激辛にしようと企んでいたようでね。可愛すぎる。

 しかも間違えて自分に配膳する天然。

 

 食べる前に止めて、入れ替えたら絶望したような表情をしてたから本当に萌えそうだった。

 

「ま、まずい、これはからいほう……!」

 

 ってのが顔にありありと出ていたんだけど、俺も楽しくなっちゃって

 

「ん、どうかしたのか?」

 

 って意地悪してしまった。

 

 いやぁ、あれは本当に萌えたね。うん。人理滅却とかそんなレベルじゃないくらい萌えたわ。

 

「な、なんでもない、ぃ、いただき、ますっ」

 

 若干顔を青くして鼻を摘んで口に運ぶの神かよ。臭いとかで分かりそうな物なのに鼻つまむのか……とデレデレになってた。マユたんは目もギュッと瞑ってたから、俺の顔は見られなかったのでセーフ。

 

 そのあとの「あ、あふぇ?はらくない!」と喜んでたのも可愛かった。

 あぁそれと、辛口のカレーだが、全然辛くなかった。

 そもそも甘口のカレーですらちょっと辛いと言う位マユたんは辛いのが苦手だ。

 

 舌が刺激に対して敏感というか、まだ幼いのだろう。()()()()()()()()()カレーにしたのだろうが、俺からしたら市販の中辛位しかない。辛さを感じない程度にスパイシーと言った所か。

 

 俺の反応を楽しみにしていたのだろう、チラチラと此方を見るのも可愛かったので大袈裟にリアクションしようかとも思ったんだが……

 

「むふふ、うまいか?」

 と笑いが堪えられないと言わんばかりのマユたんの顔を見て思考が完全に萌え尽き、固まってしまう俺氏。

 その様子を辛かったのだと勘違いして誇らしげにネタばらしをするマユたん。

 

 ふぅ、天国。

 

 ここが楽園だよ。

 

 ちなみにお代わりをしたら止められた。無理をするな、との事。かわいいかよ………

 

 

「魔法使い様、準備が出来ました」

 

 げっ、ジジナルド!貴様俺の幸せ空間に突入してきやがって……!!

 しかし、まぁ許そうじゃないか。マユたんにめんじてな……

 

「そうか、何処に向かう」

「ここですね」

 

 はいはい。そこですね。マユたんは俺がルーラをする事が分かったのか、いち早く俺のローブに掴まっている。

 手でも良いのよ?

 

「皆、俺に掴まれ」

「「はーい」」

「ルーラ」

 

 

 

 

 




挿絵のトレース元はToLOVEるの美柑さんです。
ToLOVEるは読んだことないけどエロ漫画だよね?(初心)

次回作ではサーヴァント達と出会えると思う。多分。そうだよね?(不安)


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。