結城 創真の暗殺教室 (音速のノッブ)
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人物紹介の時間

今更ながら人物紹介します!





結城 創真

 

 

身長 170㎝

 

体重 50㎏

 

誕生日 1月 1日

 

血液型 B型

 

得意教科 全ての科目

 

苦手科目 なし

 

趣味 発明、フレアとメテオと散歩する、など。

 

好きな食べ物 主に洋食系

 

嫌いな食べ物 特になし

 

前の学校の所属部活 1ヶ月毎にころころ変えてたのでほぼ全部

 

宝物 ありすぎて省略

 

選挙ポスター 世界を創り変える

 

 

 

 

作戦行動適切チャート 5段階

 

戦略立案 5

 

指揮・統率 3

 

実行力 5

 

探査・諜報 4

 

政治・交渉 4

 

 

烏間先生の評価

 

 

頭脳明晰に加え、運動神経もトップレベル。

ナイフ術や射撃術のマスターもE組内で一番早く、

この教室にてとても大きな役割を果たしている。

 

 

 

解説

 

 

常にクールで冷静。頭脳明晰で運動神経抜群。そしてイケメン。まさに完璧な人間と言える。口数は少ないが、皆と話すのは好き。

しかし、過去にいじめられてた(でも全部退けていた)ため、人をなかなか信用しないが、一度信じると決めたら何があっても信じると決めている。

彼が作り出す発明品は誰もが思いつかない物ばかりで、

親の会社の技術力も借りつつ、高性能な物を作り出している。マシンシリーズが今のところの最高傑作。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷室 翔

 

 

身長 178㎝

 

体重 60㎏

 

血液型 O型

 

趣味 資格の習得、ドライブ、料理

 

好きな食べ物 寿司

 

嫌いな食べ物 ゴーヤチャンプルー

 

宝物 愛用の特殊警棒

 

選挙ポスター 完璧な仕事ぶり

 

 

解説

 

創真の父親の会社の研修という事で、創真のお目付け役に任命された。常に冷静で、頭も良く、容姿も良い。そして、言葉で表しようがない程強い。創真に危害を加える者を撃退するのが主な仕事。家事仕事が得意。大学では結構モテたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真の飼うペット

 

 

 

フレア(鷹)

 

 

タカ目タカ科ハイタカ属に分類される鳥類。

 

創真との信頼関係は厚い。

 

男子から結構人気。

 

実は隠された力を持っている……?

 

 

メテオ(隼)

 

 

ハヤブサ目ハヤブサ科ハヤブサ属に属する鳥類。

 

スピードが自慢。

 

創真との信頼も厚い。

 

女子から結構人気。

 

フレアと同じく、隠された力を持っている……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月城 隼

 

 

身長168㎝

 

体重 48㎏

 

誕生日 6月9日

 

血液型 O型

 

得意科目 社会

 

苦手科目数学

 

趣味 強さを磨く

 

好きな食べ物 ラーメン

 

嫌いな食べ物 炊き込みご飯

 

現在の所属部活 帰宅部

 

宝物 碧海、創真とお揃いのネックレス

 

選挙ポスター 永遠の2番手

 

 

作戦行動適切チャート

 

 

戦略立案 3

 

 

指揮・統率 3

 

 

実行力 5

 

 

探査・諜報 4

 

 

政治・交渉 3

 

 

烏間先生からの評価

 

 

 

運動神経が優れており、E組内の中でもトップを争うほどのスキルを持っている。しかし、怒りなどで思考能力が低下し、能力が低下し、台無しになってしまう。精神面の克服があれば、創真君も超えれるだろう。

 

 

 

 

解説

 

創真が前に居た学校で学力が2番目だった。

創真によく弄られる。でも、仲は良く、コンビネーションが抜群。別々に育てられている姉がいるが、嫌っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月城 碧海

 

 

身長 170㎝

 

 

体重 48㎏

 

 

誕生日 6月 8日

 

 

血液型 O型

 

 

得意科目 数学

 

 

苦手科目 世界史

 

 

好きな食べ物 和菓子

 

 

嫌いな食べ物 スナック菓子

 

 

現在の所属部活 帰宅部

 

 

宝物 隼と創真とのお揃いのネックレス

 

 

隼を拉致し、薬を植え付けた張本人。しかし、根は優しい女の子で、隼の事が好き。隼が暴力を受けているのを何も手助け出来なかった自分を悔やんでおり、2度と隼を失いたくないと言う気持ちから、シロと結託した。

しかし、創真からの軽い叱責で自分の過ちを認めた。創真の家で居候になっている。




THE NEXT story 12/15 pm9:00分


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人物紹介の時間2

今回はこいつらの紹介です!ではどうぞ!


それと、投稿が少し遅れてすみません!


ホリー

 

 

・生年月日 不明。地球が生れた時から既に生まれていたらしい。

 

 

・得意な事 恋愛ネタを集め、冷やかす。

 

 

・苦手な事 嘘を隠すこと

 

 

・好きな食べ物 北海道産の牛乳を使ったソフトクリーム

 

 

・苦手な食べ物 黒ごまを使った食べ物

 

 

・宝物 愛用の魔道書

 

 

 

常に羽のマフラーを着け、超マイペースな聖霊。

創真の相棒として、常に創真と一緒に行動する。

性格はポジティブ。

大概の魔法を使えるため、創真に迫る敵を余裕で倒す…

事が出来るらしいが、そんなに披露する機会がない。

飛行する時には4枚の羽を生やして飛ぶ。ちなみに創真に憑依すると、創真の背中からも……?詳細は後日、本編でわかる。

戦闘時の使う武器は基本は剣を使う。

夏休みの暗殺まで存在を皆から隠していたが……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デュオ

 

・生年月日 不明。こちらも地球が生れた時から既に生まれていたらしい。

 

 

・得意な事 常に冷静を保つこと

 

 

・苦手な事 恋愛ネタについていくこと

 

 

・好きな食べ物 イカ墨パスタ

 

 

・嫌いな食べ物 マシュマロ

 

 

・宝物 愛用の鎌

 

 

 

 

かつては死神だった。本人は、死を司る聖霊と名乗っている。常に銀色の鎖っぽいネックレスを着けている。

人見知りな性格である。でもユーモアな事を言うことがあるため、性格が暗いと言う訳ではない。創真の相棒として常に行動する。

ホリー見たいに魔法の威力は余りないが、戦闘能力がずば抜けて高く、愛用の鎌を使って戦うのが基本スタイル。

こちらも飛行用の羽を4枚持っている。ホリーの羽の黒いバージョンだが、速度はホリーと変わらない。

夏まではホリーと同じく透明化でクラスの皆を見守っていたが、夏休みの暗殺以降、ついに……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛翔形態

 

 

ホリー又はデュオが憑依し、飛行するときに発動する形態。2対2対のウイングが背中から生える。

1対は自在に開閉や移動が出来る可動式の主翼2枚。前面に移動させれば防御としても使える。もう1対は翼の面積自体が変化する副翼2枚で構成されている。主に推進機能の役割をする。色は、ホリーが白、デュオが黒。

実は、ホリー達はこの羽についてよく分かっておらず、なんで主翼が可動するんだろ……とか色々不思議な点が残る。

創真的にはカッコいいと思っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キバット

 

 

・生年月日 不明。こちらも地球が生れた時から生まれていたと思われている。

 

 

・得意な事 耳を活かして情報収集

 

 

・苦手な事 雑誌のページをめくる(つーか無理)

 

 

・好きな食べ物 トマトジュース

 

 

・嫌いな食べ物 血(まじかよ)

 

 

・キバットの特徴

 

 

キバットマウス(口)

 

 

よく喋る。本気を出せば、噛む力は1トン。

 

 

アクティブファング(牙)

 

 

色は銀色。ホリー達の武器にエネルギーを注入し、会心の一撃などの発動を促す。

 

 

 

キバットペルソナ(顔)

 

 

顔の金色の部分は装甲。マグナム位の弾なら跳ね返す。

 

 

 

キバットウイング(羽)

 

 

時速70㎞で飛ぶ。そこそこ可愛らしい。羽の関節から生えているウイングクローや、翼の金色の骨での切りつけも効果抜群らしい。

 

 

キバットクロー(足)

 

 

握力は500㎏を誇る。普段はそんなに力を出さないが。

 

 

 

性格は明るいが、美女に目がない。一応戦闘能力もある。暇だったら後日もうちょっと書きます。

 

 

 

 

「おい!短すぎだろ!?」

 

 

 

だから、もう皆調べてると思うし、ネット見れば載ってるし。

 

 

「しょうがねぇな、我慢してやるぜ!」

 

 

 

あざっす。

 

 

 

 

 

と言うわけで、大まかな彼等の設定は以上です。

 

 

まぁ、こいつらも温かく見守ってあげてください。

 

 

じゃあ最後の閉め言葉として……これからもキバって行くぜ!

 

 

では、adieu!




THE NEXT story 12/30or31 PM 22:00


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設定・用語集他(最終回までのネタバレ注意)

artisanさんが絶賛連載中の『忍びを知らぬ名も無き暗殺者』のキャラの事もまとめさせてもらいました。
僕が読んでる小説の中では1番楽しく読ませてもらってます!皆も読んでみっちょ!……………またコラボしたいなぁ…………。




オリキャラたちのその後。

 

 

・創真………当然ながら、高校も大学も首席で卒業。大学卒業後直ぐに、父親が経営していた企業『ソウル』のCEOに就任。本拠地を東京から横浜へと戻した。その際に、横浜支部のビルを改装し、それを本拠地とした。横浜ではランドマークタワーに以上の高さを誇っている。ちなみに、窓ガラスは銃弾を受け付けないほどの強固さを持っている。年に何回かは彼を狙って暗殺者が狙撃などで暗殺を試みるも、大体はこのガラスに阻まれ、さらに事前に察知していた創真によって仕向けられた警官によって逮捕されている。現在は医療用の機械、後の『メディキュボイド』を自らの手で設計中。なお、人工知能として生まれ変わらせたクローバーを管理している。

 

 

・隼……ゲーム開発系の会社に就職。神崎との付き合いも続いており、仲は良好。だが、まだ結婚までは踏み込んでない。まぁ、ヘタレだしな。創真とはちょくちょく会っており、仕事の悩み相談に乗ってもらっている。碧海ともお茶会をしたりなど、仲は完全に修復されている。

 

 

・氷室………創真のお目付け役&椚ヶ丘の教師を辞めた跡、いきなり副社長に。彼を妬む者も当初はいたらしいが、人柄も良く実力もあるため、次第に認められていった。創真の父親の右手、と評されていた。創真がCEOに来るのを待ち望んでいた。ちなみに、お目付け役解任後も無論創真らとは接点もあり、創真とはちょくちょくドライブに出掛けたりしていた。

 

 

 

・碧海……創真のCEO就任と同時に彼の専属秘書に。最初は色々やらかしていたが、半年も経つ頃にはすっかり必要不可欠な人材となった。ちなみに、創真への好意もまだあるらしく、よく創真に抱きつくなどスキンシップを図っている(でも、殆どは失敗)

隼と創真の2人とはよく食事に出掛けたりと、仲が良い。

 

 

・ホリー&デュオ&キバット………創真の中学卒業後もずっと相棒として側に居続けた。創真がCEOになるときも、3人で自らSPに立候補した。ちなみに、彼等は烏間先生の配慮で国籍を手に入れており、普通の人間として生活している。彼等が人外と言うことを知っているのは、暗殺教室の関係者と国の役人の一部のみ。国の役人らは、彼等の持つ力の脅威も知っており、敵に回られること等々を恐れているため不問にはしている。

 

 

フレア&メテオ………相変わらず、創真の手によって大切にされている。最近は創真への凶弾を超能力で防いだりした。当然、暗殺しようとした奴は逮捕待ったなし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

用語集

 

 

・ソウル……………創真の父親が創設者の世界ナンバー1の巨大企業。色んな分野にて群を抜いており、その傘下の小会社も数えられないほど存在する。全国の都道府県に支部が1つずつ存在している。創真は父親が色んな支部を転々と視察などの意も込めて転々としていたため、かなりの回数の引っ越しをしていた。ちなみに、各都道府県には大体1、2ヶ月位しかいなかったが、かなりの数の友達を創真は作っていた。

 

 

・マシンシリーズ…………創真が設計から作成まで全部監修した対殺せんせー用の暗殺兵器。ソウル特製のパーツが使われており、異常な程の性能を発揮する。とは言え、最終的に殺せんせーに傷をつけたマシンは対して多くなく、一度見切られてしまうともう通用しないため、最終的には創真やE組の娯楽として使われる事が殆どだった。無念。ちなみに、途中からはホリー達の世界の技術やパーツも使われ、その結果、2度めの完全防御形態を発動させるまでに追い込んだこともある。

 

 

・王の間…………創真が命名した、創真専用の秘密部屋。地球上から切り離された空間に存在し、創真やホリー以外は誰も入れない…………………訳でもなく、許可があれば誰でも入れる。主に武器の保管や創真の実験、マシンシリーズの製作場として使われた。どんな場所にいようと王の間にはテレポートできる。だが、王の間から別の場所に行くことは出来ず、王の間から出ると、テレポートする前の場所に戻る。

 

 

 

・文豪の世界…………創真専用の固有魔術。魔術の世界に興味を持った創真がホリーの指導のもと製作した。

能力としては、『文豪ストレイドッグス』の異能力を発動させるもの。コラボに先駆け、本編の最終決戦で使用した。虎・半人半虎に変身する『月下獣』、ありとあらゆる魔術を無効化する『人間失格』、瀕死の状態時に使用すると一瞬で全快する『君死給勿』、専用の外套を自在に変形させて攻撃する『羅生門』、自身や触れた物の重力やベクトル操り、さらに強化形態として『汚濁』が存在し、周囲の重力子さえも操る『汚れっちまった悲しみに』、5秒以上6秒未満の未来を予知する、創真が最強と評している『天衣無縫』、その名の通り、名探偵の如くあらゆる事象を推理する『超推理』、自身の回りに雪を降らせ、幻影を投影したり、自身や風景を上書きする『細雪』、魔術を持つ自分を分離させる『ドラコニア・ルーム』が存在する。コラボにては明かさなかったが、極めて危険な異能力『罪と罰』も一応所持している。しかし、これは奥の手である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真らが今までに関わった人物達(コラボ編にて)

 

 

・ロークフィル・ノーバディー(通称:ノーネーム)

 

 

アルザーノ帝国にて都市伝説レベルの噂の暗殺者。ルークと皆から呼ばれている。全身真っ黒のコートで身を覆い、視認障害特性を持つフードを被っている。本編にてはスーパー強い系のキャラである。作者的には、負けてるのをあんまり見たことない。

コラボ編にて、彼の知られたくない秘密を創真に見破られ、激昂のまま魔術による攻撃を仕掛けるが、創真にダメージが0だった時は驚愕した。クローバーの元に味方のふりをして潜入し、彼の計画を事前に防ごうとしたが、クローバーによって洗脳され、本気モードで創真と対決。しかし、創真の奥の手『天衣無縫』によって制圧された。その後、クローバーに自身の魔力を利用され、異形の姿と化すも、『汚濁』によって倒される。幸い、大した怪我はなかった。創真とは腐れ縁のような関係ではあるが、仲は良好。最近では、創真らの世界に招かれ、色々腹黒い話など、色々話した。なお、また登場の可能性もアリ?

 

 

・キョウヤ・シノノメ

 

 

ルークの相棒兼鍛治屋。刀の達人。11歳。腕としては、創真と同等(?)しかし、彼の本気モードは創真を一瞬びびらせた程の強さを持つ。詳しくは本編にて。翁のような話し方で、尊敬している者には『~殿』『~様』をつけている。劇中では、細雪によるハイディングを見破り、創真と同等の実力を見せつけた。月下獣に反応し、暴走しかけた。創真曰く、一家に一台あれば、その場が和みそうな気がする、との事。彼といると、創真的には一緒にいると落ち着くようだ。ちなみに、ルークを見ると、創真は無性にいじりたくなる。

 

 

・クローバー…………コラボ編での敵。創真に破れた後は文豪の世界に封印される。後に創真が彼をデータ化してネットワーク上に移植。また面倒事を起こさぬよう、行動を制限するプログラムを掛けられている。詳しい全容は、最新話にて。




クローバーという奴については最新話にて。別にコラボ見てなくても問題はないようにするつもりなので、大丈夫でっせ。


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特別編
特別編 結城 創真の暗殺教室×ロクでなし魔術講師と忍ばない暗殺者 前編


コラボ第二弾お楽しみ下さい!


「…………………旨いねぇ」

 

 

ソファーに座っている少年…………名は結城 創真…………は、コーヒーを飲みながら呟いた。

 

 

「はぁ……………相変わらず苦い…………」

 

 

コーヒーの苦さを嘆いているのは、月城 碧海…………………同居しているが、別に彼女でもなんでもない。そういう関係だ。

 

 

「苦いのが良いんだよ。さて、暇だから何か世間話をしよう。何かネタがある人~?」

 

 

「なら、俺様の出番だな!」

 

 

名乗りをあげたのは、キバット……………しゃべり特殊なこうもりだ。

 

 

「俺様が今日町中で見たんだぜ。何をかって?巨乳で可愛い撫子をな!もっと詳しく言うと………」

 

 

「次行こうか。他は?」

 

 

遮られたキバットはムッとした表情を見せたが、結局口を閉ざした。

 

 

「あ、そーだ!なら、デュオのお話が良いよ!ほら、ルミアちゃんたちとの事!」

 

 

話のネタを紹介したのは、ホリー……………聖霊だ。

 

 

「別に構わんぞ。あれは俺がアルゼーノ帝国と言う場所の担当になった時の事だ………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男は追われていた。

 

 

何にか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『暗殺者』にだ。

 

 

「くそ…………最悪だ!まさか『闇夜』に狙われるとは!」

 

 

男は走り、なんとか逃げようとする。が、しかし。奴はもうすぐそばまで迫っていた。

 

 

男が左に曲がるとそこは

 

 

「!!行き止まりだと!?くそ!!」

 

 

そして、背後から殺気。振り向くとそこには全身黒コートの男が立っていた。

 

 

「逃げ足だけは速いな」

 

 

暗殺者…………………通称ノーネームはゆっくり近づく。

 

 

「く、来るな!!何故俺を狙……………」

 

 

「依頼受けたんだよ。てか、お前孤児を買って奴隷のように扱ってたんだろ?死んだ者もいたそうだな?」

 

 

「ち、違う!俺はそんなこと……」

 

 

「もう喋んな。死んでそいつらに詫びてこい」

 

 

ノーネームは携えていたナイフを男に向けて刺そうとした………………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

ノーネームは何かを感じ、刺そうとしたナイフの手を止めて空を仰いだ。そして、上空から何かが降ってくるのを視認した。ノーネームはバックステップで避ける。

 

 

そして、降ってきた何かに目を向けると

 

 

「…………………………」

 

 

全身黒コーデの少年が立っていた。黒い外套に、首には鎖型のネックレス。手には巨大な鎌。

 

 

(誰だこいつ………………?)

 

 

 

勿論、ノーネームの知り合いではない。取り敢えず話し掛けてみようと思い、口を開こうと思った瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブオン!!

 

 

少年はいきなり鎌をぶん回した。いきなりの攻撃に、ノーネームは反応が遅れたが、間一髪避けた。

 

 

「誰だか知らないが、そっちが殺る気なら容赦はしないぜ」

 

 

「別に殺る気はない。ただ、こいつを殺すのを辞めてもらいたいだけだ」

 

 

「そいつを庇うなら、容赦はしないぜ?」

 

 

「いや、そう言うことじゃなくてな……………そろそろか」

 

 

「ウッ!あ、ぐ、ガァァァァ………………!!」

 

 

急に男が苦しみ出した。

 

 

「お、おい!?」

 

 

「苦しい……………た、助けてくれぇ!!ァァァァァ………ァァ………………ァ…………」

 

 

男は胸を押さえながら後ろに倒れた。そして、ピクリとも動かなくなった。

 

 

「おいおい、まさか」

 

 

ノーネームが男の首元を触り、脈をはかり全てを悟った。

 

 

「お前が殺ったのか?」

 

 

「いや。そいつは毒で死ぬ運命だった。そしてその通り死んだ」

 

 

「何?どういう事だ」

 

 

「悪いが、詳しくは話せん。俺が言えるのはここまでだ…………………確かお前がノーネームだな。この世界の前任から聞いたことがある。死神の予定を何度も狂わしかけたバカと。あと、あんま強くなさそうとも」

 

 

「誰がバカだ!!それに、俺は弱くねぇし、予定を狂わすってどういう意味だ!!」

 

 

「………………………」

 

 

デュオは何も言わずに消えていった。

 

 

「あの野郎……………にしても、何者だ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

町から離れた森の奥で、1人の少年は勾玉に向けて喋っていた。

 

 

「閻魔大王。無事に魂の回収は終わりました」

 

 

『ご苦労だったデュオ。あと、11人だがお前1人で大丈夫か?」

 

 

「問題ありません」

 

 

『ならば良し。頼んだぞ』

 

 

そう言って、勾玉からの声は消えた。デュオと呼ばれた少年は手帳に目をやり、次の標的の確認をする。

 

 

「にしても、やはり前任から聞いてた通り、あいつは厄介だな。あと少し遅ければ、彼は殺されて死んでいた。男の死因を狂わす所だった」

 

 

デュオの手帳には、さっき殺った男の顔や名前の住所が載っていた。死因の所には、『毒死』と綴られている。

 

 

「ノーネーム…………奴は警戒した方が良さそうだな……………」

 

 

デュオは光る満月を見つめながら呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルークside

 

 

翌日

 

 

 

「………………………」

 

 

俺の名はロークフィル。皆からはルークと呼ばれている。しかし、その正体はさっき出てきたノーネームと呼ばれる殺し屋だ。ふぅ……………………さて。

 

 

(あの野郎、あんま強くなさそうとか舐めやがって……………!!)

 

 

確かに俺でも敵わない奴はこの世界にはいるかもしれない。だがな……………初対面の奴に言われたらめっちゃ腹立つんだよ!!

 

 

「どうしたのルーク?今日いつもと様子が変だよ?」

 

 

話し掛けてきた少女はティンジェル。お嬢様だ。

 

 

「そうか?いつも通りだと思うが」

 

 

「でも、いつもと様子が違うような………何か悩みがあるなら私で良ければ聞くよ?」

 

 

「別に大したことじゃないから大丈夫だ」

 

 

「なら良いけど…………あ、そうだ!」

 

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

 

 

「ほら、こっちこっち!」

 

 

ティンジェルの言葉に引きずられるようにして、ルークは足を進める。放課後、ルークはティンジェルに、今日新しく出来た珈琲専門店に(結構強引に)誘われた。

 

 

「そんな開店初日に行ったら激こみだろ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルークの言う通り、席は客で埋まっている。

 

 

「どうしよう…………何処かあいてないかな………」

 

 

ティンジェルが席を探してる間、ルークは珈琲の注文をしている。

 

 

「うーん……………あ!あった!」

 

 

そこは3人席ですでに1人いるが、ティンジェルは近寄って声を掛ける。

 

 

「あのーすみません。席、一緒でも良いですか?」

 

 

新聞を読んでいた少年は顔をあげ、ティンジェルを見た。そして回りを見回して察したのだろう。

 

 

「別に構わないが」

 

 

「良かったー!ありがとうございます!えーっと………」

 

 

「俺の名はデュオだ」

 

 

「デュオさんですね。私の名はティンジェルと申します」

 

 

「そうか。1人だけか?」

 

 

「あ、もう1人いるんですけど………大丈夫ですか?」

 

 

「別に問題ないぞ」

 

 

デュオは珈琲硯ながら答える。

 

 

「おーい、ティンジェル。席見つかったか?」

 

 

そこへルークが。

 

 

「うん。先にデュオさんがいたけど、私たちもここで構わないって」

 

 

「デュオさん?」

 

 

「俺の名だ」

 

 

ルークがデュオを見た瞬間…………脳裏に昨日会った少年の声が過った。

 

 

(こいつ………………まさか…………!?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、ルークは店で自分から話を振ったりすることはなかった。デュオを観察していたのだ。どんな奴なのか…………などなど。振られた話にも、そこまで深く突っ込んだりしなかった。

 

 

「…………ルークどうしたの?さっきから黙りこくって?」

 

 

「わりぃ!ちょっと用事思い出した。ちょっと先帰るな!」

 

 

「え、ちょっと!?」

 

 

ティンジェルが止める時間も与えず、ルークは去っていった………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、思ったら何故か戻ってきた。

 

 

「それと、悩んでた事も解決策が見つかったよ。誘ってくれてありがとな!」

 

 

「え、そうなの?なら良かったわ」

 

 

「そんじゃ、また明日な!」

 

 

今度こそルークは去っていった。

 

 

さて………ルークは何しに行くのか。




THE NEXT special story 3/25 PM9:00


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特別編 結城 創真の暗殺教室×ロクでなし魔術講師と忍ばない暗殺者 中編

中編スタート!


デュオは近くの森で珈琲を飲んでいた。

 

 

「ふぅ………」

 

 

その日の夜、デュオは残りのターゲットの10人の魂を回収し終えた。

 

 

「やることなくて暇なようだな?」

 

 

デュオは声がした方を振り向く。そこには黒コートで、フードを被った男……………………ノーネームが立っていた。

 

 

「あぁ、あの時………珈琲のお店にいた…………………ルークとか呼ばれてたな」

 

 

「あぁ、そうだよ………………………ん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(なんでこいつ正体分かるのォォォォォォ!?)

 

 

ノーネームのフードは視認障害のスキルがある。だからノーネームの正体がルークだなんて分かるなど、有り得ないのだが。

 

 

「言っておくが…………死神に視認障害など通じないからな」

 

 

訊くより先に答えられた。こいつは死神の異名を持つって事か。

 

 

「そうかい………じゃ、本題入るけどよ。俺と闘え」

 

 

「何故?」

 

 

「お前に、あまり強くなさそうとか言われて、闘争心が湧いてな」

 

 

「……………………やれやれ。まぁ、暇だし良いが」

 

 

デュオは珈琲を飲み干し、すっと立ち上がる。

 

 

ノーネームはクリスタルウェポンの1つ、ファントムナイフを手に構える。

 

 

「行くぜ」

 

 

ノーネームは駆け出し、ナイフを振るう。デュオは僅かに体をずらして、軽々と避ける。

 

 

「やるじゃねぇか。お前からも来いよ」

 

 

「良いのか?なら、行くぞ」

 

 

その瞬間、デュオの拳がノーネームの目の前にあった。

 

 

「(速い!)」

 

 

威力のあまり吹き飛んで木に叩きつけられる。

 

 

「ふぅ…………拳を使うのは久しいな」

 

 

デュオが指を鳴らしながら近づく。

 

 

「…………ふい~。流石大口叩くだけの事はある。防御した腕がもげるかと思ったぜ」

 

 

(寸前で腕を上げてガードか…………攻撃を読まれてたか)

 

 

意外と手強いな、とデュオは心の中で呟く。

 

 

「言っとくが、俺はこの稼業を何年もやってる。だから格闘術もそこらの奴と一緒にするなよ?」

 

 

「昨日のは前言撤回だな。君は聞いていた以上に手強い奴だ」

 

 

「そりゃ…………どーも!!《業火よ》」

 

 

詠唱と伴に、追尾式の火球が放たれる。魔術だ。

 

 

「魔術か………俺は基本的に使わないんだよな……」

 

 

独り呟き、デュオは余裕で避ける。そして、鎌を出現させノーネームに襲いかかる………!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

が、

 

 

「くっ!?」

 

 

火球がデュオの背中に命中した。さっき言った通り、『追尾式』だ。予想外の攻撃にガード出来る筈もなく、デュオは膝をついた。その隙を狙って、ノーネームは音もなく近より、デュオ目掛けてナイフを振り下ろした…………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………!?」

 

 

ノーネームは困惑した。何故なら自分のナイフが見えない障壁に阻まれたからだ。

 

 

「……………誇って良い。俺にこの奥の手その1を使わせた奴は久しぶりだ」

 

 

デュオの呟きと伴に、外套から影のような黒獣が飛び出した。ノーネームは何とかナイフで弾く。

 

 

「なんだこの攻撃…………………魔術か?」

 

 

「魔術ではない。敢えて言うなら………………『異能力』。まぁ、この国の異能とは関係ないが。この外套からは布が出てくる。それはどんなものにも姿を変える」

 

 

「なんじゃそりゃ…………」

 

 

「使うつもりはなかったが…………しょうがない」

 

 

「別に構わないぜ。魔術使えないなら、その位のハンデは」

 

 

「ならば……………遠慮は無用!」

 

 

デュオは外套から先端が獣の首である布を飛ばす。

 

 

「《透けろ》」

 

 

そう詠唱した瞬間、ノーネームの姿が消えた。

 

 

「透明化か…………チッ」

 

 

デュオは辺りを見回すが、見つかる筈もない。

 

 

(後ろからか…………?正面からか………?それとも上からか来るか………?)

 

 

その答えは……………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デュオの目の前にナイフが来た。ノーネームの姿も正面に見えた。

 

 

「(この距離では鎌は使えん!)空間断絶!!」

 

 

再び見えない障壁がノーネームを阻む。

 

 

「オラオラオラオラオラ!!」

 

 

何を思ったか、ノーネームはナイフを使って障壁に斬撃を続ける。数秒後、障壁が消え、デュオにナイフが届いた。しかし、デュオは大きく後ろに移動し、鎌の斬撃範囲ギリギリで鎌を振るが、受け止められた。

 

 

「やっぱな。その壁はずっと続くわけではないな」

 

 

「(もう見破ったか……………恐ろしい奴だ)」

 

 

再び彼等は鎌とナイフを交える。

 

 

「本当におもしれぇ!ここまで強い奴とは戦った事はなかった!」

 

 

「確かに、な。お前は俺が出会ってきた強い奴のなかでも4位に入る」

 

 

「1位じゃねぇのかよ…………まぁ、良い。そろそろ終わらせるぜ!」

 

 

ノーネームは新たにファントムソードに持ち替えて、攻撃を続ける。剣と鎌がぶつかり合う度に大きな衝撃波が発生する…………!!

 

 

デュオはあの布を飛ばした。ノーネームはそれを切り刻んでいくが、余りにも数が多すぎる。

 

 

「!!しまった………!!」

 

 

ノーネームの腕に布が巻かれた。デュオはそれを引き寄せ、自分の方へ飛んできた所で、蹴りを喰らわす。

 

 

「うぐ…………」

 

 

ノーネームは呻き声をあげ、倒れる。

 

 

「降伏するか?」

 

 

「そりゃ最悪な選択だ。ところでお前は気づかなかったか?俺がわざとこの至近距離に接近したことに。

 

 

「!?」

 

 

「《白き冬の嵐よ》」

 

 

唱えた瞬間、ノーネームの目の前に冷たい風が吹いた。

 

 

「なっ……………足が地面ごと凍った!?」

 

 

ノーネームは自分を拘束している布を切り、距離をとる。

 

 

「《集え・皆を照らす・希望の光》………アルテマ!!」

 

 

その瞬間………………デュオの目の前が眩い光で染まった………………!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光が収まると、さっきまであった木々が跡形もなく消え去っていた。アルテマ…………全ての事象、物を破壊する……………最強の呪文と言っても過言ではない。

 

 

「殺さない程度に加減はしたが、どうだ………ん?」

 

 

ノーネームはデュオが木にもたれているのを見つけた。

 

 

近寄ってみると……………デュオは静かに目を瞑っていた。

 

 

「……………えっ、まさか殺っちまったのか?」

 

 

「んなわけあるか」

 

 

デュオはふらつきながらも、しっかりと立ち上がった。

 

 

「空間断絶そのものを消し飛ばされた直後、この布を使って丸いドームを作った。だが、力を使い果たしてもう布を使って攻撃出来ん…………」

 

 

デュオはため息をつく。

 

 

「だが…………負けるつもりはないっ!!」

 

 

すると、デュオの全身を赤いエネルギーが走った。そして、赤く発光し始める。

 

 

「なんだ……………!?」

 

 

デュオは足を1歩ずつ進める。その度に…………地面に亀裂が入る。

 

 

「さぁ……………俺のターンだ」

 

 

デュオは大きく足を天に向け………………振り下ろした。大きな衝撃波がノーネームを襲う!

 

 

「くそ…………!!」

 

 

衝撃に耐えながら、ノーネームはファントムアローを構え、遠距離からの攻撃を加える。デュオは走りながら、ポケットの中から珈琲豆を取り出し、軽く投げた。そして、デュオは大きくジャンプした。珈琲豆を土台にして。

 

 

「な!?」

 

 

目の前で起こってるのが現実とは、ノーネームには思えなかった。

 

 

「何か絶対ヤバそうだな気がするぜ。ならこっちは『コンボブレイク』だな」

 

 

コンボブレイク………自分の武器に魔力を込めて放つ連続技。が、途中で中断されると、自身の魔力が大幅に減少すると言う、デメリットも存在する。

 

 

「「これで決める!!」」

 

 

デュオが空中から落ちてくる勢いを利用して、蹴りを放つ!それをノーネームはファントムソードで迎え撃つ!

 

 

「グッ……………なんつー重さ………!!」

 

 

「どうした?来ないならこっちから行こうか」

 

 

そう言うと、デュオは自分の足に赤い光を集中させ、さらに回転し始めた……………………!!そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パキン!

 

 

「な…………ファントムソードが砕けた……………!?」

 

 

「これで終わりだ」

 

 

デュオは側に生えていた花を土台に軽くジャンプし、さっきとは比べ物にならない速さで回し蹴りを放った。防御が間に合わず、ノーネームは吹っ飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそ………指一本動かねぇ…………」

 

 

立ち上がろうとする意志はあるものの、身体が言うことを聞かない。そこへデュオが近づく。

 

 

「おい…………あの赤い光……………ありゃなんだ?」

 

 

「…………俺の奥の手その2、『重力操作』。俺が触れたものの重力とベクトルを操る。ちなみに自分のも操作できる。さっきは珈琲豆や花より自分の体重を低くなるように調整した」

 

 

「そうか…………くそっ俺の負けか…………」

 

 

「じゃあ、俺は帰る。あぁ、それと。俺の幼馴染みがお前を治しにやってくるからよろしくな。それじゃ、また明日」

 

 

そう言い残すとデュオは闇のなかに消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、5分後。

 

 

「おーいたいた。君だよね………………ほい、治った」

 

 

全身真っ白コーデのそいつは、ほんの10秒で俺の怪我を治した。

 

 

「わりぃな、見ず知らずの奴に」

 

 

「いいのいいの。ところで君、デュオと互角の闘いを繰り広げたんだって?凄いな~」

 

 

「んなことねぇよ。奥の手を最初から使ってたら俺は一瞬で負けてた」

 

 

「勝てないのは当然だ。だって人間じゃないもの」

 

 

「そーか。人間じゃないのか。なら当然だよな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってはぁ!?どう見ても人間だろ!?」

 

 

「リアクション遅いね………あいつは死神だよ」

 

 

「ま、マジかよ…………あー、なんか急に疲れてきた…………明日は学校だしもう帰るか……………じゃ、ありがとな」

 

 

「いえいえ。じゃーね~」

 

 

ノーネームは足早に去っていった。

 

 

「ま、どーせ直ぐにデュオと再会することになるよ。だって、君の治療と引き換えにある条件をデュオに出して承諾してくれたしね!明日が楽しみー!!」

 

 

真っ白コーデの少年、ホリーはニヤリと笑った。




THE NEXT spacial story 4/1 PM 19:00


デュオの黒獣のモチーフは、文豪ストレイドックス羅生門と画像で検索すれば出てくるので気になった方はどうぞ!


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特別編 結城 創真の暗殺教室×ロクでなし魔術講師と忍ばない暗殺者 後編その1

楽しんで下さい!


ルークside

 

 

「あー身体がくそ軽い…………」

 

 

おっす、ルークだぜ。

 

 

知っての通り、前回で俺は死神、デュオとの決闘に敗れたけど、身体はピンピン。全身真っ白の奴の手によって、全快したからな。そういや、真っ白の名前聞いてなかったな。

 

 

ともあれ、またいつもの日常が始まる……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

 

 

「じゃ、授業を始める………………って、いけね。今日、このクラスに1日研修生が2人来る。じゃ、入ってくれ」

 

 

コラボ先の原作名で言う、ロクでなし講師ことグレンがドアの先にいる2人に声をかける。ちにみに、前よりはロクでなしではなくなった。……………………………多分。そして、ドアが開いて研修生が入ってくる。

 

 

「おっはよー!皆!」

 

 

「……………………」ペコリ

 

 

(おいおい、真っ白君とデュオかよ!なんでここに来てんの!?)

 

 

「んじゃ、自己紹介してくれ。授業時間の半分位やる」

 

 

※グレンは久しぶりにサボりたいだけ

 

 

「ではでは。僕の名はホリー!この世の誰もが驚く魔法使いさ!だから魔術を使えるんだ!凄いでしょ~?」

 

 

凄いでしょ~?って言われても、皆は反応に困っていた。何故なら

 

 

「…………あ、そっか。皆、使えるんだっけ?」

 

 

ようやくホリーは気づいた。

 

 

「そうか…………唯一の自慢話はここでは通じないって訳か。うん、じゃよろしく………………」

 

 

(((なんか急に冷めた………?)))

 

 

皆の心の声に気付いたのかはさておき、変わってデュオが口を開く。

 

 

「俺の名はデュオと言う。1日よろしく頼む」

 

 

(((簡潔だ!!)))

 

 

「せんせー。終わりましたけどー?」

 

 

やる気を幾らか失ったホリーが爆睡しているグレンを起こす。

 

 

「…………はぁ!?お前ら早すぎだろ!!なんでもっと長く時間を伸ばせないんだよ!!」

 

 

寝てるのを邪魔されたからか、グレンもご機嫌斜め。

 

 

「なんだと!?先生の事は知ってんぞ!ちょっと前まで引きこもりだったんだろ!ちゃんと働いてるアリを見習いやがれ!」

 

 

「あぁ!?引きこもってて何が悪い!!アリが働くのは勝手だろ!?」

 

 

「うっせぇ、ロクでなし野郎!」

 

 

「黙れ、真っ白白助!」

 

 

ギャーギヤー子供みたいに言い合ってる、お二人さんを無常に見つめる生徒たち。

 

 

「あ、あの!」

 

 

皆が声がした方を向く。声の主はルミアだ。

 

 

「し、質問とか良いですか?」

 

 

「「…………………」」

 

 

ホリーとグレンは黙ってルミアを見つめる。やがて我に返ったホリーが咳払いをする。

 

 

「あ、ごめんねお嬢ちゃん。柄もなく馬鹿と言い合って……………まず、お名前教えてもらって良い?」

 

 

「る、ルミアです!」

 

 

「ルミアちゃんね。それで、質問は?」

 

 

「ホリー君は魔法に凄く自信を持ってるんですよね?」

 

 

「勿論!」

 

 

自信満々に宣言する。

 

 

「良かったら何か簡単な魔法を披露してもらえませんか?」

 

 

「!!」

 

 

その言葉に、ホリーは先程とは打って変わって、嬉しそうな表情を浮かべる。

 

 

「うんうん、良いよ!是非とも披露するよ!」

 

 

そして、指をパチんと鳴らすと、何処からともなく辞書並みの分厚い本が落ちてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………グレンの頭に。グレンは何も言わず、がくりと倒れる。

 

 

「あ、今のは事故…………死んでないね、良かった」

 

 

わざとじゃね、と言う雰囲気が漂うなか、ホリーは辞書………否、魔導書を開く。

 

 

「行くよ…………『ファンタジースノー』」

 

 

まぁ、お察しの通り教室にちらり、ちらりと、雪が降りだした。おお、と皆は声をあげる。

 

 

(雪を降らすのか…………中々面白い奴だ)

 

 

ルークも心の中でホリーを褒める。突然、ホリーはルミアの前に近づく。

 

 

「?」

 

 

「……………あった!」

 

 

ホリーは大きくジャンプし、何かを掴む。そしてルミアの前に降り立ち、手を開く。

 

 

「あ!氷の結晶だ!」

 

 

「たまーに混じってるんだ。運が良いね~。さて、こんな感じかな?」

 

 

ホリーはスッと一礼する。皆は賞賛の拍手を送る。

 

 

「…………んぁ?俺、いつの間にか寝ちまったのか?」

 

 

気絶していたグレンが目を覚ました。

 

 

「目覚めなきゃ良かったのに」

 

 

「んだと、テメー!」

 

 

「もういい。ガキかお前ら」

 

 

デュオがだるそうに止める。

 

 

「…………俺も何か披露しよう。ちなみに、俺は基本的に魔法を使わない」

 

 

「「「え!?」」」

 

 

ここ、魔術学校なんですけど、と言いたげな顔をする。

 

 

「ま、その代わり俺だけしか使えない能力………異能を使える」

 

 

デュオは言葉を続ける。

 

 

「まぁ、誰も見たことのない異能だと思うが、それを軽く紹介する」

 

 

デュオの身体が一瞬、赤く光る。すると、外套から黒獣が放たれた。

 

 

「「「!!」」」

 

 

「俺の異能その1は、外套から出る黒獣をあらゆる物に変化させれる…………例えば……」

 

 

デュオの言葉に連動して、黒獣は巨大な拳に変わる。

 

 

「おお!」

 

 

「他にも……………鎌になったり、布になったり…………………まぁ、こんなところか」

 

 

デュオは黒獣を引っ込める。

 

 

「あの………………」

 

 

「質問か?」

 

 

銀髪の少女はスッと立ちあがり、口を開く。

 

 

「私の名はシスティーナ・フィーベルです。今、デュオさんは異能その1を披露してくれましたけど………その1って言い方だと、他にもまだあるって事ですか?」

 

 

その発言に、デュオはフッと笑みを浮かべる。

 

 

「なら、見せよう。ちょうどいいから、前に来てくれるか?」

 

 

「え?あ、はい………」

 

 

言われるがまま、フィーベルは前に出る。

 

 

「おお…………可愛い………」

 

 

ホリーが小声で呟く。デュオは、フィーベルの頭をちょんと触った。すると、システィーナの身体を赤い光が走る。

 

 

「え!?何これ!?」

 

 

「別に怖がらなくていい。そのまま壁に足をかけてみろ」

 

 

フィーベルはデュオの言う通り、壁に片足をかける。

 

 

「…………もう一方のもだ」

 

 

「え!?それだと落ちちゃうんじゃ………」

 

 

「お嬢ちゃん、いいからやってみな。面白いことが起きるよー!」

 

 

「……………はい」

 

 

ホリーに言われ、恐る恐る、もう一方の足も床から上げた。

 

 

「え!?」

 

 

フィーベルは壁に立った。

 

 

「グラビティーコントロールの類いか?」

 

 

「流石は先生。俺の異能その2は、触れた物の重力とベクトルを操る。だから…………」

 

 

デュオは大きくジャンプする。そして天井に上手く着地する。

 

 

「こんな事も出来る」

 

 

おお~、と皆は歓声を上げる。

 

 

「魔法と似てて、でも、魔法じゃない…………それが異能だ。よっと」

 

 

デュオは外套をはためかせて、着地する。

 

 

「まぁ、こんなところだ…………ん?」

 

 

ホリーがデュオをツンツンとつつき、壁に立ってるフィーベルを指す。

 

 

「あ、すまん。忘れてた」

 

 

パチんと指を鳴らすと、フィーベルは重力に従って下に落ちる。デュオは黒獣を布に変えて展開させ、ふんわりとキャッチする。

 

 

そして、同時にチャイムが鳴った。

 

 

「お、終わりか。今日は全部こいつらに使わせちまったが、次は普通にやるからな。ちゃんと準備しとけよ」

 

 

そう言ってグレンは出ていった。だが、心境はこんな感じ。

 

 

(うっひょ~!久しぶりに休憩できた気がするぜ!にしても、あの白野郎…………なかなかウゼェ奴だぜ、まったく!)

 

 

1時間目を休めた事への幸福感と、ホリーへの苛立ちを感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時はめっちゃ進んで放課後。

 

 

「ふふ、僕は幸せ者だな~。まさか女の子にお茶を誘われるとは!」

 

 

メンバーとしては、ルミアとフィーベルとリィエルである。

 

 

「…………………………」

 

 

デュオは無言を貫く。

 

 

「でさでさ、どの娘が1番気に入った?」

 

 

「そう言うのは特にないが」

 

 

「……………つまんねー」

 

 

ホリーはハァ、とため息をつく。

 

 

「ごめんね、待たせちゃって!」

 

 

そこへ3人が到着。

 

 

「別に良いよ!で、注文とかしたの?」

 

 

「まだだよ。今から行くところ」

 

 

「じゃ、僕が買ってくるかね~」

 

 

「じゃあ、私も行くよ。1人で全部持たせちゃ悪いから」

 

 

ルミアも一緒についていく。数分後、ホリー達は買ってきた紅茶やお菓子を広げ、至福の時間を味わう。

 

 

色々世間話で談笑して、そのうち話題は魔術になった。

 

 

「ホリーにとって魔術って何?」

 

 

リィエルが尋ねると、他の皆も興味津々と言いたげな目で見つめる。

 

 

「『希望』さ。魔術は人の心を照らす物。素敵でしょ」

 

 

フィーベルがうんうんと、首肯く。

 

 

「話変わるけどさ、この前僕が訪ねた場所で見た景色が………」

 

 

「やっと見つけたぜ!」

 

 

声のした方を向くと、黒いフードを被った男…………ノーネームがいた。

 

 

「おい、今すぐ逃げろ!すぐにここから………」

 

 

言ってる傍から、丸い物体が投げ込まれる。

 

 

「…………おっと?」

 

 

プシュー!!ガスが噴出された。視界が悪くなったのを境に、火球やら稲妻が飛来してくる。

 

 

「白昼堂々と派手にやるね…………」

 

 

飛んでくる魔法を避けながらホリーが呟く。

 

 

「空間断絶!!」

 

 

デュオの黒獣が空間を喰らい、攻撃を防御する。

 

 

「おい、彼女達の方を守れ!敵はそっちが狙いだ!」

 

 

ノーネームの声がして、ホリー達はさっきまで彼女達がいた方を見る。

 

 

「あ!リィエルちゃん、大丈夫!?」

 

 

ホリーが倒れてるリィエルに気付き、駆け寄る。

 

 

「…………2人は拐われた。連れ戻そうとしたけど……………ごめん」

 

 

「今は良い!デュオ、一旦ずらかるぞ!目立ちすぎて、人が集まってきた!」

 

 

リィエルを抱えたホリーが叫ぶ。

 

 

「分かった」

 

 

デュオは黒獣を布化させ、ノーネームに巻いた。

 

 

「な!?やめろ、離…………」

 

 

「大人しくしろ」

 

 

ノーネームはデュオの手刀で意識を奪われる。そして、ホリーとデュオの背後から純白と漆黒の翼が生え、煙の中から飛び出した…………!!

 

 

to be continue……………




THE NEXT spacial story 4/8 PM 22:00


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特別編 結城 創真の暗殺教室×ロクでなし魔術講師と忍ばない暗殺者 後編 その2

さぁ、披露宴の始まりだ。


取り敢えず近くの森にやって来たデュオら。そこでノーネームがギレていた。

 

 

「なんで止めた!!さっきなら追い付いけ

たかも知れねぇんだぞ!?」

 

 

「落ち着け」

 

 

「落ち着けるか!!」

 

 

デュオの言葉に耳を貸さないノーネームもう暫くほっとけば落ち着くか…………そう思って、デュオはノーネームから離れ、さっきまで寝ていたリィエルに近付く。

 

 

「………………大丈夫か?」

 

 

「ん。今すぐあいつら斬りに……」

 

 

立とうとしたリィエルだが、フラッと倒れる。

 

 

「気が早い。ホリーが今敵の視察にいってる。もう少し休んどけ」

 

 

「ん」

 

 

リィエルは再び目を閉じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから20分後。

 

 

「お待たせ~」

 

 

ホリー、帰還。

 

 

「で、どうだった?」

 

 

「2人が監禁されてた場所は分かったよ。多分目的は身代金。ここから西に行ったところにある廃虚街。ただ、相手は軍レベルの強さに、数は1000人弱……………ぶっちゃけ、非常にだるい相手だ」

 

 

「…………なるほど」

 

 

デュオは木の株に座り込み、少し黙りこ

む。

 

 

「おい、ホリー。場所教えろ。今すぐ行く」

 

 

「ダメだねノーネーム君。ましてや、君が今行ったところで、撃退されて終わりだね」

 

 

「…………俺でも、か?」

 

 

ノーネームの問いにホリーはコクりと首肯く。

 

 

「くそ…………何とかしねぇとな…………ここにいる奴等合わせても4人…………相手は1000人で手練。確かにきついな」

 

 

「違うぜ。5人だ」

 

 

その声に、ノーネームが振り向くとそこには────

 

 

「グレン…………どうしてここに?」

 

 

「真っ白野郎から聞いたんだよ。で、俺も助っ人として来てやったわけ」

 

 

「………………そうか」

 

 

「で、具体的にどうするんだ?作戦あんのか?」

 

 

「ある」

 

 

そう言ったのは、デュオだった。

 

 

「今良い作戦を思い付いた。ホリー、V4使って奇襲するぞ」

 

 

その言葉に、ホリーは少し顔を歪める。

 

 

「…………そうすると、ほぼ100%首になるよ?」

 

 

それを聞いたデュオは苦笑した。

 

 

「まぁ、その時はその時だ。それに、彼女等は俺達に親しく接してくれた友だ。何としても助け出さないとな」

 

 

ルークらにはなんのことか分からないが、取り敢えず何か手があるらしい。

 

 

「じゃ、作戦を教えろよ」

 

 

「まずはな…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待て待て待て!!なんで俺はそう言う役なんだよ!?」

 

 

「いーじゃねーか、それで。たまにはそう言うのもやれっつーの」

 

 

「グレン、テメー…………!!」

 

 

怒りに燃えるノーネーム。

 

 

「よし、それで行こう」

 

 

こうして作戦が開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃

 

 

「………………ん……………あれ?ここは………」

 

 

ルミアが目を覚ますと、そこは何処かの建物の屋上だった。自分は何かの装置に繋がれ、手足は固定され逃げられないようになっていた。

 

 

「目が覚めたようだね」

 

 

白髪の男が近づいてきた。

 

 

「…………ここは?」

 

 

「とある廃虚街だ。さっそくだが、君を研究させてもらう」

 

 

「それより、システィーナは!?」

 

 

「もちろん無事さ。今はね。安心した前。研究が上手くいけば、無事に返すから…………な!」

 

 

そう言ってボタンを押した瞬間

 

 

「ッッ………………頭が……………!!」

 

 

「さぁ…………君の輝きを見せてみたまえ…………」

 

 

機械の効果でルミアは顔を歪め、対して男の目は好奇心で輝く。すると、ルミアの身体が光だし…………胸元から青く透き通ったダイヤモンド型の結晶が出てきた。

 

 

「これだ……………これだよ………」

 

 

男は浮かぶダイヤを掴む。

 

 

「この結晶…………素晴らしい!…………あぁ、これは異能の結晶さ。ちょうど良い。見せてあげよう」

 

 

男が指をならすと、部屋の壁が透けて、何千をもこえるかずの結晶が露になる。

 

 

「!!」

 

 

「驚いたかね?これらは全部異能の結晶さ。10年近く、君と同じ異能者に接触し、手に入れてきた。そして、今日目的の異能は手に入れた。さて…………君はもう用済みだ。どうしたものか…………」

 

 

「首領。怪しい輩を捕らえました」

 

 

部下と思わしき男が連れてきた男は、黒いフードを被った男だった。

 

 

「もしかして……………ノーネームさん!?」

 

 

「なるほど。彼女を奪還しに来たわけか。しかし、こんなあっけなく捕まるとは…………落ちぶれたものだな、君も」

 

 

「………………………フィーベルは何処だ?」

 

 

「近くの牢屋さ。ちょうど良い。君も同じ場所に入れておこう。連れていけ」

 

 

ノーネームは抵抗する様子もなく、連れていかれた。

 

 

「今宵……………私の予想を上回る者は来なかったか。さて、もう君は要らない。死んでもらおう」

 

 

男は短刀を取り出し、ゆっくり近付く。

 

 

「………………………!!」

 

 

「さらばだ」

 

 

ルミアは目を瞑り、その瞬間が…………………………!

 

 

『首領!!』

 

 

突然、通信が入り、男は手を止める。

 

 

「何だ?何かトラブルか?」

 

 

『敵です!!この廃虚街に間もなく入られます!首領、早く逃げ』

 

 

ブツッ、と通信が割り込まれた。そしてこんな声がしてきた。

 

 

『おたついてんじゃねぇ、サンピン!』

 

 

この声は───────

 

 

「ホリー君!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廃虚街を走るバイクが2台あった。赤色のバイク、パニガーレV4を操るデュオがグレンに云う。

 

 

「よし、もっと飛ばすぞ」

 

 

「お、おい!速すぎだろ!!」

 

 

グレンは文明を超越したバイクと言う代物にビビり気味だ。

 

 

「リィエルちゃん、大丈夫?」

 

 

「ん。それより前」

 

 

「前?」

 

 

ホリーが前を見ると、なんと大量の火球が飛んでくるではないか。

 

 

「うおっと!?」

 

 

ホリーは車体をギリギリまで傾けて避ける。

 

 

「チッ、悪徳魔法使いめ」

 

 

建物の上にいる魔術師を見て、ホリーが悪態をつく。初めの攻撃を避けると読んでいたのか、第2群の火球は避けた方向へ飛んできた。

 

 

これも寸前でかわす。

 

 

第3群。

 

 

大量の火球が正確にホリー達を襲い、爆風に包まれた。

 

 

「ホリー君!皆!!」

 

 

ルミアは思わず悲痛な声をあげる。

 

 

「……………やったか?」

 

 

ホリー達に攻撃を仕掛けていた魔術師達は煙がもくもくと上がる路面を見詰める。すると、煙の中から何かが出てきた。

 

 

ホリー達のバイクだ。再びエンジン音を轟かせ、走り始めた…………建物の壁面を。

 

 

ホリーの魔法、デュオの異能による物だ。

 

 

「くっ!攻撃を続けろ!!」

 

 

再び火球やら諸々飛んでくる。

 

 

「まったく調子に乗りやがって」

 

 

デュオが呟きながらスロットルを乱暴に回し、スピードを上げて躱す。ちなみにグレンは目を瞑ってる。そしてそのスピードのまま、ホリー達を乗せたバイクが、男達がいる建物の天井へ躍り出る。

 

 

「今だ!放て!」

 

 

誰かの合図で、空中のバイクに火球が放たれる。後ろに乗っていたリィエルはバイクの座席を土台にジャンプし、持ち前の大剣で火球を弾く。着地した彼等に一息着くまもなく、容赦なく魔術の洗礼が降り注ぐ。

 

 

「デュオ、グレン。お前らは先に行け。ここは僕がまとめて相手しよう」

 

 

ホリーが魔道書を出して云う。

 

 

「私もやる」

 

 

リィエルもホリーの隣に並ぶ。

 

 

「じゃ、頼むぞ」

 

 

デュオはスロットルを回して、建物と建物の間をジャンプする。ちなみにグレンは生きた心地がしなかったそう。

 

 

「足引っ張らないでよ、リィエルちゃん」

 

 

「ん。そっちこそ」

 

 

敵は剣を持っているリィエルを見て、何人か剣士が出てきた。

 

 

「さぁ、パーティーの始まりだ!」

 

 

リィエルとホリーは同時に飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルークside

 

 

「…………さて、システィーナはどこやら………」

 

 

おっす、ノーネームだぜ。ん?さっき捕まってただろ?

 

 

じゃ、簡単に説明すると……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おたついてんじゃねぇ、サンピン!』

 

 

ホリーの声がした途端、ノーネームはピタリと止まった。

 

 

「なにしてる?早く歩」

 

 

回し蹴りのせいで、最後まで喋らさてあげなかったのは少し可哀想だったか?まぁ、良い。

 

「やぁっと来たか。遅かったな、あいつら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

てなわけで、わざと捕まって敵地に入り込んだって訳。

 

 

「お、いたいた」

 

 

フィーベルのいる牢屋を即破壊し、気絶しているフィーベルを担ぐ。

 

 

さて、残りはルミアだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

================

 

 

「くそ、馬鹿な!そう、馬鹿ななのだよ。私が集めた精鋭が押されている…………」

 

 

「あんなのは精鋭の内には入らん」

 

 

声のした方向を振り向くと、デュオとグレンがいた。

 

 

「デュオ君!それに先生も!」

 

 

「よう、ルミア。ちょっと待ってろよ。今すぐこいつをぶっとばしてやるからな!」

 

 

ようやくバイクを降りることができたグレンは気合い十分。

 

 

「フフフ…………動くな先生にデュオとやら。このリモコンのスイッチを入れれば、彼女に死ぬ程苦しい苦痛が与えられるぞ?」

 

 

「チッ…………」

 

 

デュオが構えていた鎌を下ろす。

 

 

「それと先生。持っている愚者の世界のカードを置き給え。あれは厄介だ」

 

 

「何で知ってんだよ…………分かったよ」

 

 

グレンはカードを捨てる。

 

 

「そう。それで良いのだよ。素直でよろし………」

 

 

グサッ!!

 

 

「ぬぁぁぁ!?」

 

 

男の手を何かが攻撃した。リモコンが弾け飛ぶ。

 

 

「やれやれ。油断大敵だぜ、おっさん」

 

 

そう言ったのは、フィーベルを抱えつつ、

ファントムアローを構えてるノーネームだった。

 

 

「ノーネーム!ちっ、やはり手強い。だが、貴様の天下もおしまいだ!」

 

 

男はクリスタルを取り出し、飲み込んだ。すると、男の身体が紫に輝き出す。

 

 

「亜空間展開!!」

 

 

ノーネームやデュオを含めた皆は、紫色のドームに飲まれた。

 

 

「これは異能力だ。空間を操る異能だ。それが故に………」

 

 

「グハ!?」

 

 

グレンが前触れもなく吹き飛んだ。

 

 

「グレン!!ガハ!!」

 

 

グレンに近寄ろうとしたノーネームも吹き飛ぶ。

 

 

「まさか…………空間その物の衝撃波を飛ばしたのか?」

 

 

「然り。亜空間の中ではどんな物理法則も関係ない。この異能力を無効化しなければ勝てん」

 

 

そう言い、デュオにも空間の衝撃波を放つ。

 

 

「『空間断絶』」

 

 

デュオの黒獣が目の前の空間を喰らい、攻撃を遮断する。

 

 

「だが、それもずっとは続くまい」

 

 

「くっ……………………!」

 

 

その言葉の通り、空間断絶は解除され、デュオも吹き飛ぶ。

 

 

「くそ…………」

 

 

「諦めたまえ。君達が勝てる確率は0だ。死ね」

 

 

男は空間の壁をデュオ達に叩きつけまくる。何度も……………何度も………………何度も。

 

 

「うぐ……………ガハッ!」

 

 

ノーネームが倒れ、血を吐く。相当のダメージなのだ。グレンに至っては既に瀕死だ。ピクリとも動かない。

 

 

「もうやめて!これ以上、皆を傷付けないで!」

 

 

ルミアが叫ぶが、男は冷徹な笑みを浮かべるだけで、何も反応しない。

 

 

「クックックッ……………実に愉快だ。さぁ、終わらせようか!」

 

 

「まだ終わるには早いな」

 

 

デュオは諦めない。血を拭い、ふらつく足取りで立つ。

 

 

「愚か者め。なら、君から殺そう」

 

 

男は最大級の空間の壁を形成していく。

 

 

「行くぞ………………………奥の手その3」

 

 

デュオの身体が深紅の赤に染まり、黒獣が右腕に絡まる!

 

 

「死ねぇ!!」

 

 

「《極ノ卑鎚》」

 

 

右腕に絡まってる黒獣をデュオが振り抜く!

 

 

ベクトルを操作した黒獣は、マッハクラスの速さで襲い掛かる。空間の波と黒獣がぶつかり合うが、空間の波にどんどん押されていく……………!!

 

 

「そんなもの……………喰い尽くせ!」

 

 

デュオの叫びに、黒獣は大きな咆哮をあげ、空間の波を喰らった。

 

 

「何!?攻撃そのものを喰っただと!?」

 

 

そのまま黒獣が襲い掛かる!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………なんてな」

 

 

「!?」

 

 

男の姿が消えた。

 

 

「言った筈だ。空間を操る異能だと。乃ち、空間から空間を移動したのだよ!残念だったな!」

 

 

「あぁ、残念だ……………お前の負けで」

 

 

デュオの黒獣が戻ってきた。ルミアを縛っている機械ごと。

 

 

「な!?」

 

 

後ろを見ると、確かにいない。

 

 

「最初から小娘を狙っていたのか!?」

 

 

「ご名答。さぁ、とどめをさせ、ノーネーム」

 

 

「!?」

 

 

ノーネームがデュオの背後から飛び出した。ノーネームの全身に布へと変わった黒獣が巻き付き、光を放つ。

 

 

「《集え・我を照らす・希望の光》………アルテマ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バスタァァァァァァァァァ!!」

 

 

デュオの黒獣のエネルギーも上乗せされ…………空間に赤い光が放たれた。

 

 

「ヌォォォォォォォォォォォ!?」

 

 

男は対抗して空間の波を大量に放つが…………それすらも無と化した。亜空間を赤い光が支配した。そして……………建物がまるごと吹き飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんじゃありゃ!?」

 

 

「行こ」

 

 

リィエルに促され、ホリーは走る。

 

 

彼等の後ろには……………ボコされ、のびた雑魚達がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2人が着くと、グレンとノーネーム、デュオはボロボロ。ルミアとシスティーナはデュオが守ったのか、ほぼ無傷だった。

 

 

「やばっ!全員一斉回復!!」

 

 

瀕死のグレン達を視認したホリーは回復魔法を唱える。

 

 

15秒で全快。

 

 

「で、黒幕は?」

 

 

「死んだろ。流石に」

 

 

元気100倍のノーネームが建物の瓦礫を見て答える。

 

 

「……………ん?あれ?ここは何処…………って何ここ!?なんで瓦礫の上で私寝てる

の!?」

 

 

事情を知らぬフィーベルは大声でギャーギャー叫ぶ。それをルミアが説明していく。

 

 

「終わった………」

 

 

デュオも座り込む。

 

 

「…………………………………」

 

 

ホリーは落ちていたダイヤを拾い上げ、暫く見つめた後、あ、こゆことか?と呟きながら、話しをしているルミアに投げる。ダイヤはルミアの身体の中に戻っていった。これで異能は戻ったのだろう。

 

 

ルミアは横目でホリーを見たが、その時にはホリーはデュオと一緒に水晶に目をやっていた。

 

 

水晶が輝き始め、声が聞こえてきた。閻魔大王様のである。

 

 

『デュオ君?君、死神のガイドラインって知ってる?』

 

 

「自ら積極的にトラブルに向かわない、その世界に無いものを持ち込まない」

 

 

『いや、完璧じゃん……………あの~ルールに基づすと、首なんですけど…………』

 

 

「まぁ、しょうがないですよね」

 

 

『やめさせないで!とか来ると思ってたけど、案外素直すぎじゃね!?そう言うの見てみたかったのに!…………ごほん。ちなみに何で助けたの?』

 

 

「彼女等は親しくしてくれた友です。それ以外に理由はいりますか?」

 

 

『………………ったく。まーこれでお前とは縁が無くなるが、転職先位なら紹介してやるから、また何かあったら連絡しろよ』

 

 

そう言って、通話は切れた。後ろを見ると皆勢揃いだった。

 

 

「どーやら、無職になっちまったみてーだな?」

 

 

「だがまぁ、転職先はすぐ見つかりそうだ」

 

 

デュオはグレンにそう返した。

 

 

「てか、お前死神だったのか?」

 

 

「今では元だがな。主に死人の魂を回収し、あの世に運ぶのが仕事だった………………さて、次はどう言ったのに就くか……………」

 

 

「なら、人助けが出来る所とかどうだ?」

 

 

「人助け?」

 

 

「そんなに凄い力を持ってんだ。そう言うのは、人助けに使うのが向いてると俺は思うぜ。なぁ?」

 

 

「うん。素敵だと思うよ」

 

 

グレンの提案にルミアは賛同した。

 

 

「ふーむ……………まぁ、特にやりたいことも無いし、そう言う系のを探してみるとするか」

 

 

デュオは外套を翻し、パニガーレv4にまたがった。

 

 

「世話になったな。またいつか会おう」

 

 

そう言い残し、爆音を鳴らして去っていった。

 

 

「相変わらずだね~。ま、もうちょっと居たかったが、ここでお別れだ」

 

 

「また遊びに来てくれる?」

 

 

「勿論だよ、フィーベルちゃん!あ、グレンは転勤してると良いなぁ~」

 

 

「ケッ」

 

 

「じゃ、アデュー!」

 

 

なぜかフランス語でさよならを言い、パニガーレv4で去っていった。それを見送ったノーネームは、こっそりその場を離れていく。

 

 

「まったく、面白い連中なことで……………」

 

 

グレンの呟きに同意するかのように、フィーベル、ルミア、リィエルは静かに笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………と、こんな感じで俺は今に至る」

 

 

話終えたデュオは珈琲を飲み干した。

 

 

「へー………ちなみに、死神になった訳は?」

 

 

「俺の家は代々そう言う家系だったからな。まぁ、特にやりたいことも無かったから何となくそれにした感じだ。その後、大王にも手伝ってもらって、募集していたこの、抽選で選ばれた人間を守る的なこの仕事を見つけてそれに就いて、今に至る」

 

 

「ふーん。そう言えば、キバットとはどう出会ったの?」

 

 

「俺様が教えてやろう!」

 

 

コラボでは口数が少なかったキバットが喋り出す。

 

 

「俺様がこの職業の選考委員長だったからだ」

 

 

「嘘だ~。信用ならねー」

 

 

「んだと、創真!?」

 

 

ギャーギャー騒ぐキバットをあしらって、創真はある思い付きを話す。

 

 

「ねー来年の春休みまでに地球があったらさ、そこに遊びに行かない?」

 

 

「いーね!そうしよう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

てなわけで、続編決定?

 

 

作者は相当気に入ったのだ。

 

 

次回やるとしたら、本編完結後にね。

 

 

さぁ、artisanさん…………やりますか?




うん、グレンは特に何もしてなかったね…………ま、いっか!


コラボ編、読んでくれてありがとうございました!


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春休み編
第1話 始まりの時間


初めて書きます。分からない事もあるかと思いますが、よろしくお願いします。




…………………ん?あ、はじめまして、皆さん。僕の名は結城 創真。

 

 

自分で言うのは尺だが……………まぁ、俗に言う天才だ。

 

 

小学生の頃から高校で習う勉強を始め、中学になる頃には大学レベルの勉強をマスターしてしまった。倫理、政治、経済学、機械工学、情報工学などなどの基礎的なことはだいたいは理解している。

 

 

え?なんでそこまで勉強しようと思ったか?

 

 

………やることがなく暇だったからね。だって、中学・高校レベルのなんて簡単すぎだよ。あんなの、小学生でもやろうと思えば全然出来る。

 

 

だが、天才だから良いことは少ない。むしろ悪いことばかりなのだ。僕のクラスの女子はわからない問題をほぼ全部僕に持ってくる。僕の教え方が分かりやすいらしい。すると、男子からは妬みの視線を送られる。少々めんどくさいが、まぁ前に比べたら可愛いものだ。前は普通に暴力やら色々とあったが、僕が色々とやったら直ぐに大人しくなった。まぁ、そんな訳でこの学校ではお友だちと呼べる存在はさほどいなかった。

 

しか─────────し!僕は転校することになったのだ。やったね、イエイ!東京の椚ヶ丘中学校に、親の仕事の都合で転校する。いやー、これでめんどい男子とはおさらばだ。さぁ、と言う訳でホームルームも終わって先生も教室を出て行き、クラスメイトらも帰り出したので僕も帰るとしようか。主に女子がくれた大量のお菓子やらの入った袋を持って教室を出ようとした瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は後ろを振り向くと同時に回し蹴りを放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アァ……………いてぇ………いてぇよ………」

 

 

その回し蹴りを喰らった男が顔を押さえて泣く。

 

 

「君、あの日以降僕に対して大人しくしてたのにまた来たんだ。まぁ、今日で僕は最後だったから1発でもやり返したかったんだろうけどさ………でも結局君は何も僕に対して出来なかった訳だ。もう少し強くなったら、遊んであげるよ。椚ヶ丘って所だからさ。まぁ………………今度は病院送りかもね~?じゃ、ばいばい」

 

 

鼻血出して泣くそいつと、自分に怯える下っ端の顔を見納めにし、僕はとっとと学校から退散していったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえり、創真!お前最後の最後で回し蹴りをお見舞いしたんだって?ハハハ、やるじゃないか!」

 

家に帰ると、この家の大黒柱である父さんが肩をポンポン叩きながら話しかけてきた。どうやら担任からの電話があったようだが、父さんは担任がクズと言うか、役に立たない事を知っている。前にもこう言ういじめの件で相談したが、話にならなかったのだ。まぁ、その主犯の奴がPTA会長だから、ビビって言えないんだとは思うが。なのでお返しとばかりに、父さんも担任からの苦情には適当にあしらっている。

 

 

あ、ちなみに父さんはIT企業の社長だ。

 

 

「お父さん、そんなこと言うんじゃありません。いい、創真?今度から物理的に仕返しするんじゃなくて、社会的に抹殺しなさい。やるなら徹底的にね」

 

 

…………そこそこ物騒な事を言うのが、僕の母さんである。父さんと結婚するまで、システムエンジニアだったのでコンピューター系に超詳しい。その気になれば国のデータベースもハッキングできる、と言っていた………………本当かは知らないが。

 

 

「今日でこの家を去るが、荷物はないよな?」

 

 

「だからお父さん、昨日のうちにトラックで運んでもらったじゃないですか?もう忘れたの?」

 

 

父さんは致命的に記憶力が弱い。否、弱すぎる。こんなんで良く社長が務まると改めて感じる。

 

 

「お、そうだった。あと創真、これ」

 

 

渡されたチケットをよーく見るとそれは新幹線のグリーン車の席だった。

 

 

「2つしか駅ないのにグリーン車にしたの……?」

 

 

言い忘れてたが、僕は神奈川県横浜市に住んでいた。

 

 

つまり新幹線だと、新横浜駅→品川駅→東京駅、の順に停まる。普通の電車だと30分位で着くのに新幹線で、しかもグリーン車を選ぶ心理が良く分からない。解せぬ。

 

 

「まぁ良いじゃないか。グリーン車は乗り心地良いぞ~」

 

 

僕がお金払うわけじゃないから、まぁどうでも良いか。

 

 

「さぁて、椚ヶ丘では何が起こるのやら…………何やら面白くなりそうな予感しかしないねぇ…………」

 

 

前の学校の終業式が終わり、漸くこの地での学校生活は終わりを迎えた。マジで、次の学校には期待してる。噂では、生徒も先生の質もかなり良いらしいからな。

 

 

椚ヶ丘中学校で始まる学校生活の始まりを告げるベルがなるまで…………あと12日。




どうでしたか?
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第2話 出会いの時間

ヒロインを決めました!


創真side

 

 

部屋の整理が終わるまで2日掛かった。

 

 

僕の部屋の整理は簡単に終わったのだが僕の親が、ベットはここが良いだの、ソファーの位置が気に入らないだの、揉めまくって結局2日掛かった。

 

 

さらに親はマンションの管理費などなどの書類に追われている。

 

 

それから3日後、僕としてはやることがなく……………暇なので東京観光することにした。

 

 

というわけでとりあえず今は東京駅にいる。お昼前なので人がたくさんいる。東京は横浜以上に人の数がヤバイな。

 

 

さて、どこに行こうか………東京は意外と観光名所が多いな。

 

 

迷いますねぇ…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「泥棒───!!誰か捕まえて────!!」

 

 

叫び声がした方を見ると、ピンクのバッグを持った男が駅の構内を走り、それを追いかける女の人がいた。

 

 

不運にもその男は僕の方へ駆けてきている。誰も止めれなさそうだ。ほっときたいが、それだと女の人がかわいそうだ。

 

 

「どけどけどけ─────!!」

 

 

それは僕に言っているのかな?なら素直にどくか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────と見せかけて足をスッと出した。

 

 

 

「うぉ!?」

 

 

男はそのまま倒れ込み、床へキッスした。これがファーストキスだったら少々申し訳ない気もしなくはないが、泥棒に掛ける慈悲などいらないか。

 

 

「倒れたぞ!捕まえろ!」

 

 

動きが止まったのを良いことに、男は複数人で拘束された。あとはポリスメンに任せよう。にしても、東京は治安が悪いのかね?

 

 

「あ、あの」

 

 

ん?ああ、カバンを盗られた人か。

 

 

「足を引っ掛けてくれましたよね?ありがとうございます!」

 

 

「いや、そんな大したことしてないですから」

 

 

狙って足を引っ掛けるなど、度胸さえあれば誰でも出来るだろうし。

 

 

「じゃあ、僕はこの辺で…」

 

 

当初の目的は観光だ。早くしないと行きたいところに行けなくなる。

 

 

──────まぁ、目的地すらまだ決まってないのだがな。

 

 

「あの…」

 

 

「………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

 

 

まさかここまで発展するとはな………あの後、お礼にお昼ご飯を奢ると言われた。勿論丁重に断ったんだが……………相手も食い下がり、結局僕が折れた。

 

 

とういうわけで、駅の近くのファミレスにいる。

 

 

「あの本当にありがとうございました」

 

 

「あ、はい……………君は学生?」

 

 

「あ、はい。椚ヶ丘中学に通ってます」

 

 

おっと。これはとんだ偶然だな。

 

 

「実は僕も4月から椚ヶ丘に転校するんですよねー」

 

 

「え!?中学生なんですか?」

 

 

うーん、先に言っとけば良かったな。多分、高校生とか大学生辺りに間違えられたのかな?

 

 

「そう、僕は中学生。言い忘れたけど、僕の名前は結城 創真。3日前に横浜から来たんだ」

 

 

「私の名前は倉橋 陽菜乃!よろしくね、創真君!」

 

 

倉橋さん、か。何となくだが、倉橋さんはふわふわ系な人な気がする。

 

 

「あ、そうだ。倉橋さん、聞きたい事があるんだけどさ」

 

 

「なになに?」

 

 

「東京で有名な観光スポットと言えば、どこ?」

 

 

「んー浅草とか良いと思うよ!」

 

 

なるほど浅草か………テレビで雷門とか見たことがあるな………………行ってみるか。

 

 

「おっとそろそろ時間だ。僕はもう行かないと…………」

 

 

「え、もう行っちゃうの?」

 

 

倉橋さんは残念そうだが…そろそろ行かないと浅草方面の電車に遅れるのでね。確かあと10分後位に到着する。ん?なんで電車の時刻表知ってるのか?答えは単純。東京都心の電車の時刻表はほとんど覚えているからさ。

 

 

「うん。ごめんね、電車に遅れちゃうから…」

 

 

「そっか…しょうがないね。観光楽しんできてね!」

 

 

「えぇ。ごちそうさま」

 

 

余談だが、店を出て走ったらお腹痛くなった。食後の運動はやはり良くないって事だ。あと、浅草は楽しかった。人力車に乗りました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

======================

 

 

「おかえり、創真!どうだった、東京は?」

 

 

「ただいま、父さん。東京は案外悪くないね…………ひったくりいたけど」

 

 

お土産をテーブルに置いて、ソファーに座った。

 

 

「そういえばあと1週間後だぞ、学校。ちゃんと勉強しとけよ……………って言ってもお前はそんなにしなくても大丈夫か。ま、軽くはやっといけよ」

 

 

そーか、あと1週間か…………軽く勉強しておくか…中学校の勉強をするのは久しぶりだし。

 

 

学校の始業式まで…あと1週間。




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第3話 ペットの時間

勉強の日々です。小説も学校も…。


さ──────────て、明日は学校だ!

 

 

とりあえず前の学校の奴ら見たいな野郎がいなければそれで良い。ベストは友達がたくさん作ること!しかし、今に限っては学校より楽しみなことがあるんだなー、これが。今日から新しく家族が加わるのである。

 

 

そして、今。僕は特殊な鳥専門のペットショップにいる。親は今日から仕事再開なので、僕が取りに来た。待つこと10分、店の奥から店員が持ってきてくれた。

 

 

「お待たせしました。この2羽ですね?」

 

 

「ええ、そうです」

 

 

そこから書類にサインし、お会計を済ませて、念願叶ってペットの入った籠を受け取った。新たに家族の一員となる2羽の鳥の種類は、ハヤブサと鷹である。前から飼ってみたかったのだ。実は僕はこの鷹とハヤブサと妙に縁がある。まずは鷹の方だ。前に見に行ったときに、売っている鷹がこいつしかいなかった。他は買われてるか、お掃除中だった。店の店員さん曰く、この鷹は今まで誰とも馴染もうとしなかったそうで、ショーケージの中ではずっと後ろを向いて、お客さんと目を会わせなかったそうで、人気がなくずっと売れ残っているそうだ。

 

 

が、僕が見に行ったときは僕の目をずっと凝視していた。店員さんもびっくりしていた。ハヤブサの場合もそうで、こちらはずっとお客さんの前で鳴く事がなかったそうだが、僕が見たときだけは鳴いていた。僕も気に入ってしまったので、親との交渉の結果、許可が出たのだ。

 

 

彼等は鳥の世界の中で結構強い。

 

 

鷹は鳥の世界の頂点に立ち、ハヤブサは降下時の速度は300㎞を超える。とりあえず見た感想としては2羽ともカッコいい。マジでカッコいい。あと、勇ましい。大切に育てよっと。そしていつか、自由自在に飛ばせるようになりたい。

 

 

 

あ、そう言えば名前考えないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お帰りなさい、創真。ちょっと座って」

 

 

あーこれ絶対なんか重要な話があるパターンだわ。だって、声に真剣味が帯びてる。

 

 

「実はな、今日からお前のお目付け役の人が来るんだ」

 

 

「…………なんで?」

 

 

「父さん、海外出張でしばらく世界を転々とする。母さんも一緒に行くんだ」

 

 

「…………母さん、行く必要あるの?」

 

 

「だってお父さんが一人で海外に行ったら心配じゃない。それに私は観光できるわ!」

 

 

「なるほど……………」

 

 

観光目当てか………………まぁ、悪いとは言わないけどさ。

 

 

「それじゃあ、入ってください」

 

 

ドアを開けて入ってきたのは超絶イケメンな青年だった。

 

 

「始めまして。氷室 翔と申します」

 

 

氷室さん……………名前からしても、やはりクールだな。

 

 

「というわけで、あとよろしく。じゃあ行ってくるわー」

 

 

「あーそう…………って、今日から!?おーい、今日からとは聞いてないぞ!」

 

 

「あ、そうだった。俺って記憶力無いから言い忘れてたわ。ま、頑張れ」

 

 

「創真、学校生活を楽しんでね~」

 

 

無責任な親は荷物を持ってあっという間に家を出ていった。急に部屋が静寂に包まれた。部屋には、我と氷室さんのみ。

 

 

「…………」

 

 

「…………」

 

 

「…………どうします?」

 

 

「……………どうしましょう?」

 

 

 

学校の始業式は明日。

 

 

to be continue …………




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1学期編
第4話 転入の時間


暗殺教室の本編はここの話からです。




創真side

 

 

僕はいつも早寝早起きを心掛けている。理由は至って単純で、健康でなければ何事もできないからだ。朝の習慣としては、ニュースを見ながら親の作る朝食を食べる……………おっと、今日から親は今日から居ないんだった。

 

 

なら僕が作らなくてはならないな──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────と思っていたのだが、僕がリビングに行ったときには既に出来ていた。

 

 

「おはようございます、創真様」

 

 

「もしや、これ氷室さんが…」

 

 

「はい。私が作りました」

 

 

「おぉ、普通に美味しそう……………お目付け役ってここまでやるもんなんだ…………」

 

 

…………ごはんに、焼き鮭、ポテトサラダ、味噌汁、ヨーグルト、か。美味しそうだし、栄養バランスもよく考えられている。

 

 

…………うん、やっぱ普通に美味しい。

 

 

朝食を食べ、暇潰しにテレビを見る………つもりだったのだが、どこの放送局も未だに同じ話題ばかりだった。その話題は2週間前、月が7割蒸発したこと。しかし、月が7割爆発しても僕には特に影響はない。地球が無くならなければそれで良い。

 

 

「創真様、そろそろ出発の時間です」

 

 

「よーし……………じゃ、行きますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

確か氷室さんが車で送ってくれるらしい。親曰く、定期代がもったいないそーで。けち臭いとは思うが、まぁ送ってくれるのだから楽なので良しとしよう。。駐車場に行くと…………ランボルギーニがあった。

 

 

「……これ氷室さんのですか?」

 

 

「いえ、あなたのお父様が創真様の送り迎え用に、と言って昨日車のキーを貰いました。私もこんな高価な車に乗るのは初めてです…………壊したらクビですね、私」

 

 

送り迎えに1000万以上の車を用意する神経がどうかしている。マジでどうかしてる。

 

 

「他の車はないんですか?」

 

 

「私は自分の車を持ってないので…………」

 

 

「父さん、他に安いの持ってなかったっけ………」

 

 

「要らないので、全部売ったらしいです」

 

 

要するに選択肢は一つということかぁ…………。

 

 

「やれやれ………氷室さん、行きますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

車内にて

 

 

「氷室さん、1つ聞きたいんですが、どうして僕のお目付け役の仕事を引き受けたのです?」

 

 

「実はあなたのお父様の会社に入るつもりなのでして」

 

 

「ほうほう。やっぱりか。父さんのに、ね。それで、何故お目付け役に?」

 

 

「前に面接に行った時に、『僕の会社では1年間社会勉強と言う名の研修をさせてるんだよな。だから君には息子のお目付け役をやってもらう』と言われたので」

 

 

父さんの会社では、社会勉強という名の研修がある。簡単に言うと、系列の子会社で1年間働く。そこで得た知識や経験を本社で活かすと言う算段だ。だから理系と文系、どちらの人からも父さんの会社は人気がある。そして、氷室さんの場合は僕のお目付け役になったと言うことか………………かなり異例なケースだな。

 

 

「なるほど、そう言うことかぁ…………あぁ、昨日の内に言っておけば良かったんですが、氷室さん、これからよろしく頼みますね」

 

 

「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします。所で、もうすぐ学校に着きますが、学校の前で停めます?」

 

 

そうしようかな………いや、待て。こんな高級車で学校の前に停まったら目立つわ!目立つのは勘弁願いたい。

 

 

「………学校のちょっと前でいいです…」

 

 

「了解しました」

 

 

氷室さんは学校のちょっと前のコンビニで停めた。

 

 

「それじゃ、行って来ます」

 

 

「はい、行ってらっしゃいませ」

 

 

車を降り、ここから歩きで学校へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

pm12:00

 

 

「予定通りの時間ですね、氷室さん」

 

 

「時間は必ず守れと、親に教えられてますから」

 

 

今日は授業は無いので、午前中で終わりである。

 

 

「しかし、他の人達は15分程早く下校されてましたが、どうして創真様は遅かったのですか?」

 

 

「理事長と会ってたんですよ。しかも、呼び出した理由が、『創真君と話してみたかったから』って、個人的な興味で呼び出されたのも当然ですよ。ほぼ雑談だったし……………話して分かったけど、あの理事長、何を考えてるのか分からないですわ」

 

 

「浅野理事長ですね。結構有名ですよ。教育の世界では」

 

 

「へー……ん?氷室さん、ストップ、ストップ!」

 

 

「どうされました!?」

 

 

「誰かが集団リンチに遭ってましたぞ!何かヤバそう」

 

 

「え!?それは不味いですね」

 

 

氷室さんは車をUターンさせ、路肩に停車させた。

 

 

「氷室さんは残っててください」

 

 

「え?」

 

 

「氷室さんまで行くと車がレッカーされちゃうよ」

 

 

「了解です。ご武運を」

 

 

ご武運を、って…………大袈裟な。えーっと、確かこの路地裏だっけ……いた。

 

 

「お前元E組のくせに生意気なんだよ!!」

 

 

「調子に乗ってんじゃねぇ!!」

 

 

うわぁ、椚ヶ丘の制服じゃん…………しかも複数人でいじめてやがる。ところでE組ってなんだ?理事長に聞けば良かった。まぁ良い。とりあえず助けるか。

 

 

「おい、止めたまえ」

 

 

「あ?なんだお前?」

 

 

なんだお前、だと?じゃあ名前教えてやるか。

 

 

「結城 創真って言う者だ………まぁ、覚えなくて良い」

 

 

「ガキが出しゃばってんじゃねぇ!!邪魔すんじゃねぇよ!!」

 

 

男がパンチしてくるが……遅いな。こいつら喧嘩の経験ほぼなしだろうな。

 

 

「ゴホ!!」

 

 

おっと失礼。避けた勢い余って蹴り飛ばしちゃった……………あ、気絶してる。

 

 

ま、良いか。

 

 

「…………君らもやるかい?」

 

 

僕の言葉に恐れをなしたのか、気絶した奴を担いで逃げていった。

 

 

やれやれ、だ。

 

 

「あ、あの…」

 

 

「あ、お礼とか良いっす。とっとと帰りたいので」

 

 

背を向けて路地裏を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

車に戻ると、氷室さんは笑っていた。

 

 

「あいつら誰か担いで真っ青でした。いやー思わず笑っちゃいましたよ~」

 

 

「そんなに受けました………?そー言えば氷室さん。E組って何か知ってます?」

 

 

「E組………?クラスの事では?」

 

 

あーそうなのかな?校舎にはD組までしかなかったような。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

E組とは何か、それは翌日分かった。何故なら担任から呼び出しを喰らったからである。呼び出されて、最初は何だよめんどくせー的な気分だったのだが……………

 

 

「優秀な高等部の生徒に暴行を加えるとは…………お前はE組送りだ」

 

 

…………要は、お前落第だよ的な感じらしい。だがしかし、それはどうせ保身のためだろう。経歴に傷がつくから。

 

 

「ああ、そーですかそーですか。そんじゃ、失礼しましたー」

 

 

ま、こういう生徒より自分の経歴命な先生がいる校舎など入りたくもない。意外と丁度良かったりもしなくもない。氷室さんに迎えに来て貰わないと…はぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみません、氷室さん。急に迎えを頼んでしまって」

 

 

「いえいえ、私も暇だったのでジグゾーパズルやってましたから。それよりどうしたんですか?」

 

 

「E組送り……………なんか素行不良や成績が悪い人達を集めてるクラス行きだそうです。あーダルいダルい」

 

 

「人助けをしてなんで創真様がこんな目に………」

 

 

「別に良いっすよ。ちなみに、親にLINEで言ったら『そんなんどーでもええわー』だと」

 

 

家に帰宅すると、フレアとメテオが肩に止まってきた。そうそう、鷹の名前をフレア。ハヤブサの方はメテオと名付けました。

 

 

………中二病臭い?

 

 

うるせぇ!意外と真剣に考えたんだよ!笑わないでくれ………いや、笑うな!

 

 

「ねぇ、この後暇だしどっか行く?」

 

 

撫でながら話し掛けてみた。もうすっかり信頼関係を築けている。

 

 

「適度な運動は2羽の健康に良いですよ。それに今日は快晴。まさに運動日和ですね。行くのなら、私もお付き合いしますよ」

 

 

氷室さんもそう言うし、お昼食べたらどこか行く事にしますかね。

 

 

 

 

 

 

 

 

昼食後、出掛ける準備をしていると、インターホンがなった。ドアを開けると強そうな男性とその部下っぽい人が立っていた。

 

 

「防衛省の鳥間と言う者だ。少しお時間よろしいか?」

 

 

立ち話も悪いので、僕の部屋に案内した。

 

 

「ご用件は?」

 

 

「単刀直入に言う。この生物を君に殺してもらいたい」

 

 

そう言って見せた写真には黄色い生物が写っていた。

 

 

「…………ふざけてるなら追い出しますよ?マジで」

 

 

後になって思い起こせば、多分自分の言葉には多生の怒りの要素も入ってたかもしれない。

 

 

「その気持ちも分かるが、本当の事だ。この生物は月を破壊した元凶であり、来年には地球も破壊する」

 

 

「え………………じゃ、それまでに殺さないとヤバイって事じゃ………」

 

 

「そう言うことだ。しかし、その超生物の最高速度はマッハ20。本気で逃げ続ければ手は出せないが、この超生物は椚ヶ丘中学校3年E組で教師をしている」

 

 

意味が分からん。そしてE組って僕が行く所だな……………ってことは、この人達が来た訳は

 

 

「そこで君にも暗殺を依頼したい。引き受けてくれるか?」

 

 

ほらきた。

 

 

「………そうですねぇ。まだやりたいことがあるのでやりましょう」

 

 

「そうか。それでは3日後、教室で会おう。それと奴の暗殺にはこの対先生用BB弾とナイフを使ってもらう。報酬は百億だ」

 

 

「へぇ─100億かぁ…………あと、僕のカスタマイズした武器も他の生徒に危険じゃなきゃ使っても良いですか?」

 

 

「ああ、構わない。それでは失礼する。あと、この事は国家機密だ。他の人に喋ったら記憶消去の措置を取る。君もだぞ」

 

 

「………………君?あぁ、もしや…………」

 

 

自室のドアを開けると氷室さんが立っていた。

 

 

「………………席を外してくれ、って烏間さんに言われませんでしたっけ?」

 

 

「いやぁ、気になっちゃいまして。こっそり聞いてしまいました…………テヘペロ?」

 

 

誤魔化し方が残念ながらへたくそだ。そして、鳥間さんは家を出ていった。

 

 

「よーし、氷室さん」

 

 

「はい」

 

 

「今からモデルガン専門店に行きましょう!ついでにフレアとメテオと遊び、その後で大改造です!」

 

 

「了解です!」

 

 

マッハ20、ねぇ。実に興味深い。ならば殺してやるよ、この僕がね!




どうでしたか?

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第5話 宣言の時間

創真の目の前に、山がそびえ立っていた。その中腹には、ポツンと校舎がある。

 

 

「あそこが、E組ですか…………山の中にあるなんて、珍しいです。しかし、行くまでが少しめんどくさそうですね」

 

 

氷室は、はぁ、とため息をつきながら言った。

 

 

「まぁ、そうですけど、ポジティブに考えれば、毎日運動になりますよ…………そーだ、氷室さん。競争しません?」

 

 

「競争?あの校舎に着くまで、と言うことですか……………面白そうですね」

 

 

「でしょ?僕も面白そうだから言ってみたんですよね」

 

 

かくして、急遽『E組校舎までの競争大会』が開催される事となった。

 

 

「じゃ、行きますよ……………よーい、ドン!」

 

 

創真が合図した瞬間、2人は一斉に走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふいー……………氷室さん。E組校舎までの競争は僕の勝ちのようですね」

 

 

「いえいえ、私の方が0.3秒早かったですよ………多分」

 

 

レースはかなり熾烈を極めた。当初は氷室が先頭だったが、ラスト数メートルで創真が温存しておいた体力をフル解放し、ほぼ同時にゴールした。

 

 

「うーむ…………今回は引分けということにしましょうか………判定のしようがないですし」

 

 

「しゃーない。決着は次回に持ち越しですな」

 

 

「ヌルフフフフ、ここまでご苦労様ですねぇ」

 

 

そんな声が聞こえたと思えば、2人の目の前にアカデミックドレスに身を包んだ黄色い生物がいた。

 

 

「あなたが結城 創真君ですね?そちらの方は…?」

 

 

「私は氷室 翔と申します。まぁ、簡単に言えば創真様の護衛兼お目付けをさせてもらってる者です」

 

 

「そうですか。ヌルフフフフ、それでは行きましょうか」

 

 

2人は先生と共に校舎に入っていった。校舎は見た目も古いが、中も同じく古かった。

 

 

「では、少々お待ちください。射撃が終わったら紹介しますので」

 

 

先生が入って間もなく、射撃をしている音がした。多分、全部よけてるんだろうなぁ、と創真は考えながら終わるのを待つ。

 

 

「さて、今日からE組に仲間が加わるのは鳥間さんから聞いてますね?それでは入ってください」

 

 

創真はドアを音もなく静かに開けて、教室内に入る。氷室は廊下から創真を見守る。

 

 

全員が創真に注目するなか、創真は口を開いた。

 

 

「僕の名は結城 創真。まぁ、まずはよろし…」

 

 

「創真君!?」

 

 

声のした方を見る。そこには、創真が見覚えのある人物がいた。

 

 

「おっと……………倉橋さん、かな?」

 

 

「そうだよ~。名前を覚えていてくれて嬉しいな~」

 

 

「倉橋さんを知ってるのですか、創真君?」

 

 

「ま、いろいろあってね。春休み期間中に会ったんです」

 

 

「ヌルフフフフ、そうですか。ではでは、質問コーナーと行きましょうか!創真君に質問がある人手を挙げてください」

 

 

「何でもカモン!」

 

 

創真も質問が来るのをワクワクしてるなか、最初に手を挙げたのは─────────

 

 

「はい!」

 

 

アホ毛の男子だった。

 

 

「俺の名は磯貝 悠真だ。よろしくな!創真は何でE組に来たんだ?」

 

 

「何故E組に?簡単に言うとね、ちょっとリンチに遭ってる奴を助けたらこうなった。最初は解せぬ、だったが……………逆にラッキーだったかも。おかげで面白そうな事になったから」

 

 

「じゃあ次は僕」

 

 

次に手をあげたのは、中性的な男子だった。

 

 

「僕の名前は潮田 渚。さっきから廊下にいる人は誰なの?さっき一緒に居たけど…………」

 

 

「(あ、男なんだ…………女と間違えられそうな感見た目だなぁ………)廊下にいる人は僕の護衛、的な人。ま、折角なんで紹介してもらいましょうか。氷室さん、入ってきて」

 

 

創真に呼ばれ、氷室も教室に入ってきた。

 

 

「ちょっと自己紹介を…………」

 

 

「了解しました。私の名は氷室 翔と申します。今年、大学を卒業し、創真様の父親の会社の研修の一環として、創真様のお目付け役をしてます。まぁ、よろしくお願いします」

 

 

「ほほう、研修の一環としてお目付け兼護衛に…………確か、創真君のお父様の企業は、採用されたらまず1年は系列の子会社に飛ばされるなり、海外留学をされるなど、社会勉強をさせられると聞いています」

 

 

「中々面白いことをするでしょ、うちの父さん」

 

 

「ええ。しかし、面白いだけでなく素晴らしいとも思います。その人が得た経験は、会社内だけでなく個人的にも必ず役に立ちますから。全ての経験は、人生におけるかけがえのないツールになりますから」

 

 

「何か名言っぽくなってるような…………………………ま、良いんだけど。………さて、先生。僕はあんたの暗殺依頼を受け、色々考作戦を練った。僕のプランでどこまであなたを追い込めるのか……………勝負だ」

 

 

創真の宣言に皆は驚いた表情を見せた。

 

 

「ヌルフフフフ、良いですよ。受けて立ちましょう。先生を殺すのはそう簡単ではない事を教えてあげましょう」

 

 

「なら、今日の放課後に勝負だ」

 

 

果たして創真は先生を殺れるのか…。

 

 

 

to be continue……



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第6話 暗殺の時間

あの二羽も大活躍(?)の回です。

ちょっと長めです。適度に休憩入れても良いと思います。


放課後に向けて、銃の点検をしていると、倉橋が創真に声を掛けた。

 

 

「ねぇ、創真君。お昼ご飯一緒に外で食べない?」

 

 

「うーん……………準備があるからなぁ………」

 

 

「大丈夫ですよ、創真様。残りは私がやっておきましょう。だからランチを楽しんで下さい」

 

 

「本当ですか?すみません。じゃあお言葉に甘えて…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外にいくと、茅野、片岡、渚、磯貝、杉野が居た。

 

 

「へー創真君ってお弁当派なんだ」

 

 

「これ、氷室さんと一緒に作ってるんだよね」

 

 

「じゃあいつも早起きなの?」

 

 

「そうだよ、片岡さん。毎日5時起きかな?」

 

 

ここで磯貝があることに気が付いた。

 

 

「え?もしかして創真はもう名前を覚えたのか?」

 

 

まぁ、驚くのも無理もないだろう。まだ出会って1日も経ってないから。

 

 

「瞬間記憶。自己紹介の時に名簿をちらっと見て全員覚えた」

 

 

「すげーな、創真!は~俺もそんな頭欲しいよ」

 

 

「最初はそう思うだろうが、その頭が元で色々苦労したんだよなぁ…………」

 

 

「所で、放課後の暗殺に自信はあるの?」

 

 

「ま、ダメージ与えられれば上出来。殺せるのが最高だが………」

 

 

「でも、あの先生弱点が分からないんだよね…」

 

 

渚の呟きに、創真がおや?、と言いたげな表情を浮かべた。

 

 

「弱点ではないが、暗殺に使えるかもしれない特徴を掴んだよ。今日の朝」

 

 

「「「え!?」」」

 

 

「それはなんだ?」

 

 

「それはね……あ」

 

 

創真の声に皆が後ろを振り返ると、先生が居た。

 

 

「先生、何しに来たの?」

 

 

「いやぁ~何やら良い匂いがしたので………少し気になって来ちゃいました」

 

 

「あぁ、そう……………だが、これで確定だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後

 

 

「ヌルフフフフ、創真君。準備は良いですか?」

 

 

「ああ。僕が終わりって言うまでが暗殺だからね」

 

 

「はい。分かりました」

 

 

皆は外に出てもらい、教室の中には先生と創真だけしかいない。

 

 

創真はサブマシンガンを構えた。

 

 

「じゃ、行くよ。ゲームの開始だ」

 

 

すぐさま創真はマシンガンの引き金を引く。発射されたBB弾を先生は容易く回避した。

 

 

きっかり3分後、弾切れになった。

 

 

「改造で連射性能を高めてあるのは分かりましたが、先生はマッハ20の怪物。その程度では死にませんよ?」

 

 

「いいや、これで良い」

 

 

「にゅや?」

 

 

「先生の教室での速度がどれくらいか知りたかっただけだから」

 

 

創真は教室に隠しておいた速度計測の機械をちらりとみる。

 

 

「…………マッハ1、2程度か。まぁ、流石に教室でマッハ20では動けないよね。この程度なら問題なしだな」

 

 

「ほう。まだ手があるのですか?」

 

 

「そゆこと」

 

 

喋りながら、創真はポケットの中のスイッチを押す。

 

 

次の瞬間、煙幕が教室に充満した。

 

 

(煙幕ですか。なるほど、視界を悪くするという発想は素晴らしい…………しかし、創真君の匂いがプンプンします。教室の真ん中らへんにいますねぇ)

 

 

煙幕の中からBB弾が飛んできたが、難なく回避した。

やがて視界が晴れて、創真の姿がハッキリと見えてきた。

 

 

「発想は良いですが、まだまだです」

 

 

その言葉に創真はにやっと笑って、手に持っているリモコンのスイッチを押した。

 

 

再び煙幕が充満する。

 

 

(懲りませんねぇ…だから匂いで分か……らない!?これは匂い付きのか!)

 

 

 

「(今日の朝、僕と氷室さんが校舎に続く階段を登り終わった時に来た。教室又は職員室からではギリギリ見えないのにも関わらず。だから、嗅覚か聴覚が鋭いと踏んだ)」

 

 

「(そして、昼休みに開けてもない僕のお菓子を察知したということは……………嗅覚が鋭い。そうだろう、先生?しかし、氷室さんに匂い付き煙幕を用意して、と無茶ぶりをしちゃったな。後で謝っとかないと)」

 

 

創真は後ろのロッカーからあるものを取り出す。その正体は2連装ガトリングガンだ。引き金を引き、先生にBB弾の嵐を浴びさせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、外にいる生徒たちは……

 

 

「なぁ、中どうなってるんだ?」

 

 

誰かが聞くが、誰も答えられない。何せ教室の中は煙が充満していて状況が掴めないのだ。その時、教室の窓から先生が出てきた。目立った外傷もなく、無傷だ。これは暗殺失敗を意味していた。すぐに創真も出てきた。

 

 

「僕の位置は分からなかった筈なのに、避けるとは………………こりゃ、負けだわ」

 

 

「しかし、ここまで良い発想を思いついたのは素晴らしいです。これからもその閃きで先生を暗殺手段を探してください」

 

 

「ああ、そうさせてもらうよ。次で殺ってやる」

 

 

「良い殺意ですねぇ」

 

 

先生はヌルフフフフと笑う。

 

 

「さーて。帰りますか…………あ、そうだ。一つ言い忘れてた」

 

 

創真は皆の方に体を向けた。

 

 

「皆、1年間よろしくねー」

 

 

「「「おうよ!(うん!)」」」

 

 

「枯野加入でこれから楽しくなりそうですねぇ。ヌルフフフフフ……ん?」

 

 

先生はあることに気が付いた。

 

 

「にゅや!?先生の帽子が消えてる!?」

 

 

些細なことでも動揺してしまった先生。それが命取りだった。

 

 

スパッ

 

 

触手が一本地面に落ちた。

 

 

「え、ちょ創真君!?」

 

 

動揺しながらも、創真の追撃を何とかかわした。

 

 

「言ったよね?終わりって言うまでが暗殺だって。僕、まだ言ってないよ?ま、これで完全に終了だけど」

 

 

「ぐぬぬぬ………一本取られましたね。ところで帽子がどこか知りませんか?落としたんですかねぇ………」

 

 

「上だよ」

 

 

皆が上を見ると、(フレア)が持っていた。まぁ、全部創真の計画通りだが。

 

 

その後、先生が自分の帽子を取り返すまでに30分掛かった。(メテオ)にパスしたりしたり、と中々先生に取らせなかった。

 

 

ちなみに、2羽の事を創真は皆に紹介した。

 

 

中々可愛がられてたりしたとさ。




どうでしたか?
次回もおたのしみに。


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第7話 価値の時間

ここから第1話です……原作の。

殺せんせーの台詞を一部変更してるので、展開がちょっと違いますが、ご了承下さい。




創真side

 

 

あの暗殺から10日余り。クラスにも馴染めた。

 

 

 

いや~前の暗殺は惜しかったな~。

 

 

あと、今日からフレアとメテオをE組の森に放しておく事にしたんだ。この自然ならストレスもなく、ちょうど良いかと思う。利口だから笛吹けば戻って来るし。手懐けるの早すぎだろ!って思う方もいるだろうが、それはこっちのセリフだ。ここまで早くなつく事例はないだろうに。二羽ともクラスの中でも人気の存在だ。僕はしばらくは作戦の練り直しだ。先生たちは知らないだろうが、あの暗殺に結構金掛かったんだぞ。ガトリングは売ったよ。もう不要だし。ピカピカに磨いたら高値で売れたわ。

 

 

「創真君?」

 

 

「あ、ごめんごめん。ぼーっとしてたよ」

 

 

今は倉橋さんたちと一緒に教室でお昼ご飯を食べている。

 

 

「そういえば一つ聞きたいんだが、先生の名前ってなんなの?」

 

 

「う~ん、そう言えば聞いてないよね…」

 

 

茅野さんも知らないのか。

 

 

「名前がないと紛らわしいな…」

 

 

聞いてみようかな……5時間目にでも。

 

 

「そーいえばさ、創真君のお父さんって有名なIT企業の社長さんなんだよね?」

 

 

「うん、僕のスマホも親の会社が作った物だよ。他にもいろいろあるよ」

 

 

恐らく一番優秀なスマホだと思う。多分な。

 

 

「じゃあ将来、お父さんの会社を継ぐの?」

 

 

そう。問題はそこ。別の職に就職かそれとも受け継ぐか……未だに結論は出ていない。

 

 

「あ、ごめん。変なこと聞いちゃったかな?」

 

 

「いえ、そんなことないです矢田さん。いずれ決めなければならないからな…そろそろ時間ですね」

 

 

あと5分で授業が始まるな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

 

 

放課後

 

 

創真はある設計図を描いていた。

 

 

「何してるの創真君?」

 

 

「ん?あ、渚君ですか。設計図を作ってるだけですよ」

 

 

「設計図?」

 

 

「そ。ほれ」

 

 

渚に見せると渚は目を丸くした。

 

 

「これ書いてある用語が知らないのばかりだね……」

 

 

「まぁ……こういうの得意だから」

 

 

「これ作ってどうするの?」

 

 

「先生の暗殺に使うよ。殺せるかは知らんが。あ……それとさ……」

 

 

「何?」

 

 

「今日の事なんだけどさ……どうして自爆できたの?」

 

 

そう。五時間目、渚は寺坂から渡されたグレーネードを使い、自爆を試みたのだ。しかし殺せんせーの脱皮した皮で失敗に終わり、寺坂軍団含め怒られたのだ。

 

 

「うーん……なんかどうなっても良いとか思ってたからかな」

 

 

「……僕からも………自分に価値がないと思うな。この世に価値がなく生まれてきた者はいない。僕はそう思ってるんだ…………ま、もう言わんでもわかるとは思うが」

 

 

「うん。もうああいうことは絶対にやらないよ」

 

 

「そうそう。まだ時間はあるから……ゆっくり殺っていこうか」

 

 

「そうだね」

 

 

えっと…………名前は殺せんせーだっけ?茅野さんが名付けたよね。

 

 

殺せんせーの暗殺教室はまだ始まったばかり。




次回もおたのしみに。


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第8話 メカ虫の時間

今回創真の発明品が登場します。




創真side

 

 

さて、この小説のあらすじに、僕の趣味が発明と書いてあったので、そろそろその話をしよう。僕はボツになってるだけで、結構いろんな物を作っている。現在発明成功している品は、このカブト虫型のロボットだ。特徴として、飛べる。このカブトを作るために父さんの会社に協力してもらって、小型で出力の高いジェットを作ってもらった。最近の技術力は凄いものだ。ラジコン用のジェットエンジンすらも存在するのだから。ん?そんなことしてもらったら会社に得はなくね?

 

 

案ずるな。親のワールドツアーが大成功を納めまくり、その影響で世界各地で商品の売れ行きが先月の3倍になってるから痛くも痒くもないそうだ。簡単にこのカブトの解説をしようか。

 

 

本物のカブト虫の後羽に当たる部分にジェットが2つ付いている。これで飛行できるはずだ。それと豆知識(?)だが、カブト虫の羽の数は4枚だ。普通に木とかに止まってる時とかに前羽は見れる。

 

 

ま、要は開閉する部分が前羽だ。後羽は飛んでる時に見れる羽。

 

 

さて、話を戻そう。

 

 

あとは足とかにも飛行姿勢を保つためにもミニジェットがついている。角の部分は対先生物質でコーティングされている。パット見分からないが。基本色は赤。目の部分は青色に光る。LED電球を使い、きれいに光る。結構こだわってるんだぞ。最高速度は60㎞。活動限界時間は15分。オートでも飛ぶし、マニュアルでも飛ぶ。活動時間が短いと思うが、このメカは小型なのでエネルギーの容量が少ないので致し方ない。

 

 

にしても、OSを作るのに夜更しして眠くてしょうがない……。

 

 

「ちょっと創真君?起きてますか?」

 

 

「起きてますよ……殺せんせー」

 

 

只今授業中だ。ま、急に指されてもすぐ答えられるから大丈夫だが。そーいや今日の朝、杉野が対先生用BB弾を埋め込んだ野球ボールで暗殺を決行し、失敗したと聞いた。

 

 

確かに良いアイデアだと思ったんだがな。

 

 

…………あ、ヤバイ………………もう限界。おやすみ(+.+)(-.-)(_ _)..zzZZ。

 

 

結果として二時間程寝てしまった。殺せんせーは何度も起こしたのだが、それでも起きなかったらしい。罰として宿題が多めになったが、大したことないわ~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み

 

 

何故かテスト飛行しようと思ったら披露会をするはめになった。別に披露会するつもりはなかったのにね。なんかそうなった。まぁ、良いけどね。まぁ、予定通り外に飛ばしてテスト飛行したりした。改めて実感する。素晴らしい性能だ。

 

 

「凄いな、創真!よくこんなの作れるな」

 

 

「まー、こういうの得意だし」

 

 

「なぁ、これに名前とかあるのか?」

 

 

「名前は無いな……………あ、なんなら皆で考えて良いよ」

 

 

皆が考えていると、真っ先に倉橋が思い付いた。

 

 

「はい!マシンカブトは?機械のカブト虫だから」

 

 

「あ、それ意外と良いかも。それにしようか……ん?」

 

 

校庭で殺せんせーと杉野が話してるのを見つけた。

 

 

「殺せんせー、杉野と何話してるんだ?」

 

 

「ちょうど良い。このマシンカブトについてるマイクから拾った音をスマホで流す事ができるんだ。近くまで接近しよう」

 

 

窓からこっそり飛ばして、2人の10メートルほど後ろに着地させた。皆がスマホのスピーカーに注目する。

 

 

『昨日の暗殺は良い球でしたね。君は野球部に?」

 

 

『前はね。E組じゃ部活は駄目なんだ。勉強に集中しろってことだから』

 

 

『それはまたひどい差別ですね』

 

 

『でも良いんだ。見たろ?遅いんだ、俺の球。だからボカスカ打たれて、レギュラーはずされて…そこから勉強にも身が入らなくて。今じゃエンドのE組…』

 

 

『杉野君、先生から一つアドバイスです』

 

 

…………杉野が触手に絡まれて始めた。大丈夫なのか?

 

 

『何やってるの、殺せんせー!?生徒に危害は加えない約束でしょ?』

 

 

……………あれ?いつのまに渚は外に行ったんだ?全然気づかなかった。皆はそんなことは気にも留めてないが。

 

 

『杉野君、君はメジャーに行った有田投手を真似ていますが、君の身体では彼のような剛速球は投げれません』

 

 

『な、なんで先生が断言できるんだよ…』

 

 

渚と同じく僕も皆そう思った。皆は先生からの答えを待つ。

 

 

『昨日確かめて来ましたから』

 

 

新聞には英語で、有田投手が触手まみれに!と書いてある。おい、何やってんだあの国家機密は。皆も呆れ気味。

 

 

『しかし、一方でひじや手首の柔らかさは君の方がすばらしい。鍛えれば彼を大きく上回るでしょう。才能の種類は1つじゃない。君の才能にあった暗殺を探してください』

 

 

……………なるほど。やはり、殺せんせーは良い先生だ。昨日ニューヨークに行って野球見てきたのね、アドバイスをするために。まぁ、有田投手は可愛そうだが。

 

 

「創真君、まだ終わってないよ」

 

 

ん?渚と殺せんせーの会話か。

 

 

『もしかして杉野のためにニューヨークに行って野球を見てきたの?』

 

 

『はい、先生ですから』

 

 

『普通の先生はここまでやってくれないよ。しかも地球を破壊しようとする先生が…………?』

 

 

ここで少し間があった。

 

 

『先生はね、ある人との約束を守るために君達の先生になりました。私は地球を破壊しますが、その前に君達の先生です。君達と真剣に向き合うことは地球の終わりより重要なのです』

 

 

ここで、エネルギー切れまで僅かとなったので、マシンカブトは自動で教室に戻ってきた。

 

 

「な、なぁ創真」

 

 

「岡島?」

 

 

「それに録画機能は付いてるか?付いてるなら是非女子のスカートの中を…………」

 

 

無論、岡島は女子たちにボコボコにされたのは言うまでもない。

 

 

「アハハ、ごめんね創真君。うちのゲス野郎がなんか言って」

 

 

「いえいえ、片岡さん。グッジョブです」

 

 

誰が盗撮目的で貸すと思ってるのやら……………。




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それでは次回もおたのしみに。


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第9話 カルマの時間

カルマの話は二話構成です。

それではどうぞ。


創真side

 

 

体育の時間にナイフ術を習う……面白い。

 

 

しかし、僕は依頼を受けて2日でナイフ術の基本は調べ、極めた。というわけで最初は楽でしょうがない。今日から烏間先生が体育を行うらしい。殺せんせーの身体能力では授業にならないのでちょうど良い。

 

 

殺せんせーは少し落ち込んでるが……そんな中、前原君が烏間先生に尋ねた。

 

 

「烏間先生。こんなのやって意味あんスか?当の暗殺対象がいる前で……」

 

 

「勉強も暗殺も同じだ。基礎は身につけるほど役にたつ」

 

 

あぁ、その通りだ烏間先生。まだ皆分かってなさそうだが。

 

 

「例えば……そうだな磯貝君、前原君。そのナイフを俺に当ててみろ」

 

 

「え…いいんですか?」

 

 

「そのナイフなら人間に害はないからな。かすりでもすれば今日の授業は終わりでいい」

 

 

「え……それじゃあ」

 

 

磯貝君が突きを繰り出すが烏間は難なく回避した。

 

 

「!!」

 

 

「さぁ」

 

 

「くっ!」

 

 

前原君もナイフで斬りかかるが、烏間はナイフの持ち手を弾いた。

 

 

「多少の心得があれば…素人のナイフ位は俺でも捌ける」

 

 

喋べりながらも、烏間先生は2人の攻撃を避けていく。

 

 

「くッそ!」

 

 

二人同時に仕掛けたが、烏間先生は手を掴みバランスを崩させた。

 

 

「俺に当たらないようでは、マッハ20の奴に当たる確率の低さがわかるだろう。見ろ!この間に奴は砂場に大阪城を造り、着替えまでして茶まで立てている」

 

 

(((腹立つわぁ~…)))

 

 

「クラス全員が俺に当てれる位になれば、少なくとも暗殺の成功率は格段に上がる。ナイフや狙撃、暗殺に必要な基礎の数々を体育の時間で俺から教えさせてもらう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

 

 

「烏間先生、ちょっと恐そうだけど、かっこよくて良いよね」

 

 

「ね~ナイフ当てたらよしよししてくれるかな?」

 

 

そんな速水と倉橋の会話に嫉妬するタコが1匹いた。

 

 

「烏間先生、私から生徒の人気を奪う気ですね!」

 

 

「ふざけるな。学校が望む場合E組には指定の担任を追加できる。お前の教員契約にそうあったはずだ」

 

 

烏間は殺せんせーにナイフを投げるが回避された。

 

 

「俺の任務は殺し屋達の現場監督だ。お前を殺すためのな」

 

 

「奴やお前ではありませんねぇ。殺せんせーと呼んでください」

 

 

皆が教室に戻ろうと思ったとき、赤毛の男がいた。

 

 

(…………………誰だあいつ?あぁ、もしかして停学中とか聞いていた……………名前は確か………)

 

 

創真が心の中で呟いたその名を、直後に移動してきた殺せんせーが呼んだ。

 

 

「赤羽カルマ君ですね?停学明けから遅刻はいけませんねぇ」

 

 

「アハハ、生活リズムが戻らなくて……下の名前で気安く呼んでよ。よろしくね、先生」

 

 

カルマは握手を求めた。

 

 

「こちらこそ。楽しい一年にしていきましょう」

 

 

殺せんせーは差し出された手に握手した………瞬間、触手が溶けた。殺せんせーが動揺したのを見て、カルマは隠し持っていたナイフで攻撃したが、なんとか避けた。

 

 

「へ~このナイフ本当に効くんだ。細かく切って貼り付けてみたけど。……こんな単純な手に引っ掛かるなんてさ……先生ひょっとしてちょろい人?」

 

 

殺せんせー、挑発に怒りの表情を露にしている。

 

 

「ふーん、やるねぇ」

 

 

そんなカルマに創真は興味を示した様子で、隣の渚に尋ねる。

 

 

「渚君。カルマ君はどんな人?」

 

 

「2年の時に暴力沙汰で停学喰らって……E組にはそういう生徒も落とされるんだ」

 

 

「僕とか?」

 

 

「あ、そうだね。……でも今この場じゃ優等生かもしれない。何故なら………」

 

 

「凶器とか騙し討ちなら群を抜いてる……か。面白そうだねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

今は小テスト中なのだが、ぐにゃぐにゃうっさい……何やってんだ?壁パン?ダメージ0だぞ。柔らかいからな、触手は。

 

 

「ぐにゃぐにゃうるさいよ、殺せんせー!小テスト中だよ!静かにしてよ!」

 

 

岡野さんが怒り気味だ。

 

 

「こ、これは失礼しました!」

 

 

一方で僕がいる後ろの席ではと言うと

 

 

「よぅ、カルマ。あの化けモン怒らせて大丈夫か?」

 

 

「どうなっても知らねーぞ」

 

 

「またお家に籠ってた方が良いんじゃない?」

 

 

寺坂、吉田、村松がカルマ君を挑発していた。

 

 

「殺されかけたら怒るのは当たり前じゃん。しくじってちびった誰かの時とは違ってさ」

 

 

「ちびってねーよ!!てめぇ喧嘩売ってるのか!」

 

 

「そこ、静かに!テスト中ですよ!」

 

 

果たしてそんなこと言えるのか、殺せんせー?先生もさっきまでグニャグニャうるさかったのだが。

 

 

「ごめんごめん。俺もう解き終わったから、ジェラートでも食って静かにしてるよ」

 

 

「だめてすよまったく……ん?ってそれ先生の!」

 

 

(((お前のかよ!)))

 

 

「ごめーん。職員室で冷やしてあったからさ」

 

 

「ごめんじゃすめません!イタリアで買って溶けないように寒い成層圏を飛んできたのに!」

 

 

あーそう…………どうでも良い情報をありがとさん。

 

 

「で、どうするの?殴る?」

 

 

「いいえ!残りを私がなめるだけです!」

 

 

殺せんせーがジェラートを取り上げようと近づいた時、触手が弾ける音がした。

 

 

(対先生用のBB弾。床にばらまいておいたのか)

 

 

カルマ君は次は銃で撃ったが、それは避けられた。

 

 

「何度でもこういう手使うよ?授業の邪魔とか関係ないし。嫌なら俺でも俺の親でも殺せばいい。その瞬間からあんたはただの人殺しのモンスターさ。先生でもなんでもなくなる」

 

 

カルマ君はジェラートを殺せんせーの服に押し付けた。そして、テストを殺せんせーに渡した。

 

 

「はい、テスト。多分満点だよ。じゃ、また明日も遊ぼうね」

 

 

そう言って帰っていった。

 

 

先生であるためには一定の一線があるのを見抜き、ギリギリの駆け引きを仕掛ける……なかなか上手く考えている。彼は暗殺に自信を持ってるようだ。確かにダメージを与えているからな。

 

 

しかし……そんなに上手くいくかな?




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次回もお楽しみに。


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第10話 手入れの時間

創真side

 

 

「おはようございます」

 

 

殺せんせーは皆がどうも落ち着かない表情をしているのに気づいた。

 

 

「ん?どうしました?」

 

 

その原因は、教卓にタコが置いてあって、ナイフがぶっ刺さっているのだ。

 

 

あいつ(・・・)の仕業である。

 

 

「ごめーん。間違って殺しちゃったよ。処分しておくから持ってきて」

 

 

まったく朝からタコとか持ってくるなよ。……………何かたこ焼き食いたくなってきた。殺せんせーはカルマ君の方へ近づく………すると、急に殺せんせーの姿が消えたと思ったら、カルマ君の前に現れた。

 

 

「見せてあげましょう……このドリル触手の威力と、自衛隊から奪っておいたミサイルの火力を」

 

 

そして、殺せんせーは何かを作り始めた。

 

 

「私は暗殺者を無事で帰しません」

 

 

殺せんせーがそう言ったその瞬間

 

 

「熱!!」

 

 

カルマ君の口にたこ焼きが放り込まれた。

 

 

「その顔では朝食を食べてませんね?マッハでたこ焼きを作りました」

 

 

殺せんせーはここで一旦言葉を切って、真剣な口調で云う。

 

 

「カルマ君。今日1日本気で殺しに来なさい。そのたびに先生は手入れします。ヌルフフフフ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から言おう。

 

 

・一時間目(数学) 殺せんせーが黒板に書いてる間に背後から撃とうとしたが失敗し、手にネイルアートを施される。

 

 

・四時間目 (家庭科)殺せんせーが 他の班のスープを味見していたときに、その班のスープをわざとこぼし、その隙にナイフで斬りかかるが、可愛いエプロンを着替えさせられ、恥をかかせられる。ちなみに殺せんせーによって、味は前よりマイルドになった。

 

 

・五時間目(国語) 教科書を読みながら歩いている殺せんせーを背後から奇襲しようとしたが、失敗。髪形を丁寧にされた。

 

 

諦めず、最後まで暗殺を仕掛けたのには称賛に値するかもしれない。

 

 

ガチで警戒している殺せんせーはヤバイな。ちょくちょくどじを踏むし、慌てたら反応速度も極端に落ちるが……これが警戒度MAXの殺せんせーか。凄いねぇ………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、渚君と一緒に裏山の崖にいるカルマ君の元に来た。

 

 

「カルマ君。焦らず皆と殺ろうよ」

 

 

「馬鹿じゃないなら、もう分かっただろ?マークされたらどんな手を使っても殺せない。普通の先生とは違うんだからさ」

 

 

「……………やだね。俺がこの手で殺してやるんだ」

 

 

「やれやれ、頑固だね君は…………」

 

 

そこへ殺せんせーがやって来た。

 

 

「カルマ君。まだまだ殺しに来てくれても良いんですよ?もっとピカピカにしてあげます」

 

 

その言葉にカルマ君は笑みを浮かべた。なんか企んでそーな雰囲気を一瞬感じた。

 

 

「殺せんせー。殺せんせーは先生だよね?」

 

 

「?はい」

 

 

「先生は命を懸けて生徒を守ってくれる………そうだよね?」

 

 

「もちろんです」

 

 

あ、まさかこいつ………………!?

 

 

「なら……殺せるよ」

 

 

銃を突き付け、そのまま後ろの崖へ身を投げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルマside

 

 

(さぁどうする?助けに来れば救出される前に死ぬ!見殺しにすれば先生としてのあんたは死ぬ!…………なんか…走馬灯的なのが見えてきた)

 

 

そうだ、あれはE組の先輩を助けたときだった。いじめられた先輩を助けて何が悪いの?そう思っていたのに…

 

 

「いいや赤羽。どうみてもお前が悪い。頭おかしいのかお前!三年トップの優等生にけがをさせるとは!?」

 

 

やばい…死ぬ

 

 

「俺の方からお前の転級を申し出た。お前は3年からE組だ」

 

 

………そいつに絶望したら……俺にとって死んだも当然だ。

 

 

さぁ、殺せんせー!あんたはどっちの死を選ぶ!

 

 

もうすぐ地面かなと考えていた矢先、急に俺の身体が叩きつけられた。だけど、それは地面じゃなかった。横目で見て、自分がネットに落ちたんだと分かった。

 

 

「カルマ君。見事な考えです。遅くては私が。早くては君が危ない。なので、ちょっとネバネバしてみました」

 

 

「なんでもありかよこの触手!」

 

 

「それと……見捨てるという選択肢は先生にはないので、いつでも信じて飛び降りてください」

 

 

(……………こりゃだめだ。少なくとも先生としては死なないな……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

「カルマ君、よくもこんな無茶な事を…」

 

 

「別にぃ」

 

 

「とんでもないアイデアだな……真似できないよ、これは」

 

 

「これが1番いけると思ったんだけどな。暫く作戦の練り直しだね」

 

 

「ヌルフフフフフ、もうネタ切れですか?ちょろいもんですね」

 

 

煽りを加える殺せんせー。しかし、カルマ君は良い表情だ。

 

 

「殺すよ。明日にでも」

 

 

……………お。爽やかな殺意だ。

 

 

「じゃ帰ろうぜ。二人とも飯食ってこーよ」

 

 

「お、それはカルマ君の奢りだよね?」

 

 

「えー、俺が奢るのー?」

 

 

「冗談だよ」

 

 

「あ、そう?ま、誰かさんの財布があるから別に渚と創真の分も奢っても良いんだけど」

 

 

じゃあ、奢られようかな………………って、うん?カルマ君の持ってる財布って

 

 

「それ先生の財布!返しなさい!」

 

 

いつのまにか先生のが盗られていたようだ。

 

 

「良いよ」

 

 

そして、案外素直に返すんだ。

 

 

「って、中身抜かれてますけど!?」

 

 

「小銭しか無かったから募金しちゃった」

 

 

「にゅやー!不良慈善者!」

 

 

ありゃりゃ……………文無し先生だな、こりゃ。

 

 

「うう……これから先生どうすれば…」

 

 

ピイ────!

 

 

笛を吹くと、フレアとメテオが戻ってきた

 

 

「森に放してもちゃんと帰ってきて偉いね………ん?」

 

 

フレアの羽と羽の間になんか挟まってる?……あ。

 

 

「先生……これいる?」

 

 

1000円札がどういうわけか挟まっていた。

 

 

殺せんせーは泣きながら感謝していた……………2匹の鳥(フレアとメテオ)に。鳥に感謝するタコの図なんて始めて見た。

 

 

なんで挟まってたんだろう?解せぬ。




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第11話 大人の時間

毒の時間は飛ばします!ただ、その話の要素もちょっとあります。


創真side

 

 

「うーむ………」

 

 

突然だが、悩んでます。

 

 

「創真君、どうしたの?」

 

 

「ああ、渚君か。奥田さんが毒殺を試みてただろ?他の種類でも殺せる毒はないかなーって思ってね」

 

 

「なるほど…」

 

 

奥田さんはお得意の化学で毒殺を試みたが、それは殺せんせーの表情を変えるしか、効果がなかった。で、殺せんせーと一緒に新たな毒薬を作ったのだが、それは殺せんせーの細胞を活性化させる物だった。

 

 

殺せんせーが言いたかった事は、毒を渡すためには奥田さんが苦手な国語力も必要。今回のように鵜呑みしては標的に利用されて終わり。創意工夫をする必要がある。君の理科の才能は将来皆の役に立つ。それを多くの人に分かりやすく伝えるために、毒を渡す国語力も鍛えてください……って言ってた。

 

 

しかしその件で思ったのは、他の毒はどうなのかな?って事。

 

 

毒殺も良い選択肢だと思う。とりあえず考えては見るが…………角が映えたり、顔色が変化するだけで終わりそうな気がしなくもないのだが。朝のホームルームのため、教室に殺せんせーと烏間先生と………誰だあの金髪の女の人は?

 

 

「今日からE組の外国語の臨時講師を紹介する」

 

 

「イリーナ・イエラビッチと申します。みんなよろしく!」

 

 

まず、なんで殺せんせーとべたべたしてる………?

 

 

「本格的な外国語に触れさせたい……それが学校の意向だ。英語の半分は受持ちさせるが、いいな?」

 

 

「仕方ないですねぇ」

 

 

………ん?そーいえば、人間じゃない殺せんせーが女の人にべたべたされたら…………どうなるのかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にゅやぁ………………」

 

 

結論。普通にデレデレだった。やはり、先生も男だ。

 

 

「ああ、見れば見るほど素敵ですわ。その正露丸のようなつぶらな瞳。曖昧な関節。私、虜になってしまいそう」

 

 

「いやあ、お恥ずかしい」

 

 

殺せんせー、デレデレしすぎだろ…………しかし、この女は裏がありそうだ。

 

 

だがその前に…………頼むから殺せんせー、そんな見え見えの女に引っ掛からないでくれ。見てるこっちが何か情けなってくる……………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

休み時間、殺せんせーと暗殺サッカーをやってるのだが……………意外と楽しいが、殺すことはできない。今のところ誰もダメージを与えられてない。

 

 

そこにイリーナ先生が来た。

 

 

「殺せんせー!聞きましたわ。足がすごく早いんですって?」

 

 

「いや~それほどでも」

 

 

マッハ20は十分速いとは思うんだが。

 

 

「実は私一度本場のベトナムコーヒーが飲みたくて。私の授業の間に買ってきてくださらない?」

 

 

「もちろんです。良い店を知ってますから」

 

 

そう言うと殺せんせーはマッハで飛び立って行った。それと同時にチャイムが鳴った。

 

 

「…えーと……イリーナ先生?授業だし教室に戻りますか?」

 

 

磯貝君が声を掛けると──────

 

 

「授業?適当に自習でもしてなさい。あと気安くファーストネームで呼ばないでくれる?……そうね、『イエラビッチお姉様』と呼びなさい」

 

 

──────豹変ぶりが凄かった。まぁ、こんなもんかと薄々思ってはいたが。

 

 

「………で、どうすんのビッチ姉さん」

 

 

「略すな!」

 

 

ナイスだ、カルマ。

 

 

「あんた殺し屋なんでしょ?クラス全員で殺せないモンスターをあんた一人で殺せるの?」

 

 

「ガキが。大人には、大人のやり方があるのよ。…潮田 渚ってあんたでしょ?」

 

 

そのまま流れるようにビッチ姉さんは渚にディープキスをした。数秒で渚は骨抜きされ、その場に崩れ落ちる。

 

 

「後で職員室に来なさい。あんたが調べた情報を聞きたいわ。他にも情報を持ってる子は来なさい。プロは技術も人脈もすべてあるのよ。無能なガキは外野で大人しく拝んでなさい。……あと少しでも邪魔したら殺すわよ」

 

 

やって来た屈強な男から銃を受け取って、そう言い放った。

 

 

「ふーん………僕の予想ではあなたの暗殺は失敗に終わる。ま、確率としてはまだ50%だがな」

 

 

「そう。なら決行までに100%にしてやるわ……って聞け!!」

 

 

 

最後まで聞く時間が勿体ないので教室に戻った。

 

 

とりあえずこの先生は……嫌いだ。僕も含め皆はそう思った。




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第12話確率の時間

タイトル変かもしれませんが……お楽しみ下さい!


創真side

 

 

お昼休み

 

 

あのビッチ姉さん……皆がビッチ姉さんと連呼しまくったら、VとBの発音が違うと言うことで、下唇をずっと噛ませるという謎の授業をしやがった。

 

 

当然僕はやるわけがない。

 

 

しかし、この状態が続いては僕は問題ないが、皆には問題ありだ。今年受験あるんだぞ…………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、烏間先生と彼女は校舎裏で話していた。

 

 

「見知らぬ3人を呼び込んだそうだな」

 

 

「私の部下よ。彼等のおかげで準備完了。今日殺るわ」

 

 

そこへ殺せんせーが戻ってきた。

 

 

「イリーナ先生!ご希望していたインドのチャイです」

 

 

「まぁ、ありがとう殺せんせー!……あと殺せんせー。5時間目に体育倉庫に来てくださらない?お話があるの」

 

 

「ええ。いいですとも」

 

 

そうして殺せんせーとビッチ姉さんは去っていった。しかし、誰も気づかなかった。近くの木に僕のマシンカブトが隠れていたことに。

 

 

(特に収穫はなし……氷室さんの報告を待つか)

 

 

氷室さんにあることを調べてもらっている。あのビッチ姉さんがどんなプランをするのかを。お、次ぎは体育か。急いで着替えよっと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今回は射撃の訓練。ま、殆ど的の中心に当たってるが。

 

 

「ねぇ、どうやったらそんなに上手く撃てるの?」

 

 

弾を装填してると速水さんが話しかけてきた。

 

 

「………練習してるからかな?」

 

 

「訓練以外でも?」

 

 

「そ。よく裏山とか家で練習してるんだ」

 

 

「へぇ。今度教えてもらっても良い?」

 

 

「暇なときにいつでもどうぞ………よし当たった」

 

 

喋りながら撃っても的の中心に当たった。

 

 

「おいおいマジか。二人で倉庫に入っていったぜ」

 

 

三村の声に倉庫の方を見ると確かに二人はしけこんでいった。

 

 

「………なーんかガッカリだよな。あんな見え見えの女に引っ掛かって」

 

 

あぁ……………その気持ち分からんでもないぞ、木村君。

 

 

「烏間先生。私達…あの女の事を好きになれません」

 

 

「すまない。プロの彼女に一任しろという指示でな」

 

 

片岡さんが皆の気持ちを代弁し、それに烏間先生が申し訳なさそうに謝った。

 

 

別に烏間先生悪くないと思うのだがな。

 

 

「創真様、暗殺の概要が分かりましたよ」

 

 

あ、氷室さん。

 

 

「それでどうでした?」

 

 

「はい、彼女が用意していた銃は全て実弾でした。銃の数は3つ。昼休みに教えてもらいました。蜂の巣にするそうで」

 

 

てか、喋ったのかい。もしや、氷室さんがイケメンだったからつい喋ったのか……………いや、そんな事はどうでも良い。

 

 

「ねぇ、渚君。今日あのビッチ姉さんに殺せんせーの鼻の事を話した?」

 

 

「え?あ、うん」

 

 

知ってて尚、その作戦か。しばらくすると、体育倉庫から銃の発砲音が聞こえた。

 

 

「まっ、無駄に終わるだろうねあの暗殺は」

 

 

「なんでそう言いきれるの?」

 

 

渚も含め、皆が興味津々のようだ。

 

 

「まず、実弾を使ってる時点でもう無理。殺せんせーに実弾は効かない。それに加えて殺せんせーは鼻が超良い。だから銃の弾の匂いも分かるだろうし、あのビッチ姉さんの部下の加齢臭すらも嗅ぎとるだろう。だから…あの倉庫に入った時点で殺せんせーは気づいてるだろうね」

 

 

───────罠って事に。

 

 

皆が納得していると、ビッチ姉さんの悲鳴とヌルヌル音が聞こえてきた。

 

 

「な、なんだ!?」

 

 

「悲鳴とヌルヌル音がしてくるぞ!」

 

 

何をされてんだかね……………しばらくしてヌルヌルも悲鳴も聞こえなくなったので、皆は倉庫に行ってみた。

 

 

すると殺せんせーが出てきた。

 

 

「殺せんせー!」

 

 

「おっぱいは!?」

 

 

余計な一言だぞ岡島。

 

 

「いやぁ、もっと楽しみたかったですが、みなさんとの授業の方が楽しみですから」

 

 

う、うん。楽しみなのは良いが何故服がボロボロ………?

 

 

遅れてビッチ姉さんも出てきた。まぁ、なんという事でしょう

 

 

(((健康でレトロな服にされてる…)))

 

 

「ま、まさかわずか1分で…肩と腰のこりをほぐされてオイルと小顔のリンパマッサージされて……まさか触手とヌルヌルであんなことをされるなんて……」

 

 

渚が殺せんせーに何をしたか聞くが、大人のやり方があるので、と答えていた。皆が教室に戻るなか、僕はビッチ姉さんに言った。

 

 

「あーあ。自信満々に殺せるとか言ってたくせに、無様に失敗しちゃったよ。恥ずかしいねぇー」

 

 

ビッチ姉さんは悔しそうな表情を見せた。そんなビッチ姉さんを置いて、僕も教室に戻って行った。

 

 

「授業位しやがれよ。まったく」




次でビッチ先生編は終わりです。

感想、評価、お気にいり登録待ってます!


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第13話 両立の時間

またもや長くなってしまいました。

いつも言ってますが、適度に休憩を挟んで読むのをおすすめします。


それではどうぞ!


創真side

 

 

現在ビッチ姉さんは大変ご機嫌ななめだ。ま、失敗してプライドがズタズタだろうな。さて……黒板には自習と書いて授業そっちのけでタブレットを操作してやがる。このままでは皆が困るな。僕はノー問題だが。

 

 

「先生……授業してくれないなら殺せんせーと変わってくれませんか?俺ら一応今年受験あるんで…」

 

 

磯貝が声を掛けたが、ビッチ姉さんはと言うと

 

 

「は!ガキは地球の危機と受験を比べられるなんて楽ね。あんた達…この学校の落ちこぼれでしょ?今さら勉強したって無駄よ」

 

 

───────そこらでやめた方が良いぞ。

 

 

心の中でそう念じてみるが、ビッチ姉さんはお喋りな口を止めない。

 

 

「そうだ!私が暗殺に成功したら500万ずつ分けてあげる。勉強するよりましでしょ?だから黙って私に従い……」

 

 

その瞬間ビッチ姉さんの横を消ゴムが通り、黒板に跳ね返って教卓の上に落ちた。

 

 

「出てけよ」

 

 

ここでビッチ姉さんはこの教室の険悪な雰囲気に気が付いた。

 

 

……………もう手後れだが。

 

 

「出てけ、このくそビッチ!」

 

 

「殺せんせーと代わって!」

 

 

「な!?あんた達、殺すわよ!?」

 

 

「上等だ、殺ってみろコラァ!」

 

 

「巨乳なんていらない!」

 

 

「問題そこですか、茅野さん!?」

 

 

おっと、思わずツッコミを入れてしまった。そんな様子を烏間は頭を抱えて見ていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

 

職員室にて

 

 

「なんなのよ、あのガキ共!こんな良い女と居れるのよ!ありがたいと思わないわけ!?」

 

 

「ありがたくないから軽く学級崩壊してるんだろうが。ここで暗殺を続けたいなら謝ってこい」

 

 

「なんで!?私は殺し屋よ。暗殺だけに集中させてよ!」

 

 

「その考えはいけません、イリーナ先生」

 

 

そう言って職員室に氷室が入ってきた。

 

 

「イリーナ先生、ついてきて下さい。見せたいものかあります。知ってはいると思いますが烏間先生も」

 

 

「ああ」

 

 

烏間は氷室が何処に連れていきたいか分かった様子だった。

 

 

「何処に連れてくのよ?」

 

 

「それは見てのお楽しみで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷室は校舎の裏に連れてきた。そこには殺せんせーが何かを作っている最中だった。

 

 

「何してるのよ、あいつ」

 

 

イリーナの問いに烏間が答えた。

 

 

「テスト問題の作成だ。この時間の恒例らしい」

 

 

その様子をしばらく見ていると、イリーナがあることに気が付いた。

 

 

「………やけに遅いわね。マッハ20ならテスト問題位すぐに作れるでしょうに」

 

 

「あのテスト問題は全て問題が違うのです」

 

 

「え……?」

 

 

氷室に続いて烏間も口を開いた。

 

 

「得意不得意に合わせて問題を作っている。地球を破壊する超生物だが、教師の仕事は完璧に近い」

 

 

そして次に烏間は校庭にイリーナを連れてきた。

 

 

「あれは俺が教えた『暗殺バトミントン』だ。動く標的に正確にナイフを当てるトレーニングだ」

 

 

「イリーナ先生。ここでは『暗殺対象と教師』、『暗殺者と生徒』。ここでは誰もがその二つを両立しています。あなたはプロであることを強調しますがこの両立の出来ない者はここでは一番劣るということです」

 

 

「ここに留まるなら、生徒を見下した目で見るな。対等に接しろ。それが出来ないなら順番待ちの後ろに並び直してもらうだけだ」

 

 

2人はうつむくイリーナを置いて教室へ戻って行った。

 

 

「…………………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

皆が雑談などをしていると、いきなりあのビッチ姉さんが入ってきた。皆が注目するなか、ビッチ姉さんはチョークを手にとって英文を書いた。

 

 

「You're incredible in bed!Repeat!」

 

 

戸惑いながらも皆は英文を読んだ。

 

 

「アメリカでとあるVIPを暗殺するときにまずそいつのボディーガードに色仕掛けで近づいたときに言われた言葉よ。意味は、ベットの上での君はスゴい……!」

 

 

中学生に何て文を読ませてんだか。

 

 

「外国語を上手く且つ手早く取得するならよくその国の恋人を作るのが手っ取り早いって言われるわ。相手の気持ちを知ろうと必死に理解しようとするからね。だから私の授業では外人の口説き方を教えるわ。身につければ外人に実際に会ったときに絶対役に立つわ。受験に必要な知識はあのタコに教わんなさい。私が教えられるのは実践的な英語だけ。………もしそれでもあんた達が私を先生と思えなかったら、その時は暗殺を諦めて出ていくわ。それなら文句ないでしょ?………あと悪かったわよいろいろ」

 

 

最後に小声ではあるが、ちゃんと謝ってくれた。

 

 

皆はポカーンとしていたが、次の瞬間──────

 

 

『アハハハハ!』

 

 

─────────笑いだした。

 

 

「何ビクビクしてんだよ」

 

 

「殺すとか言ってたくせに」

 

 

大分丸くなっちゃったな、先生(・・)

 

 

「もうふつーに先生になっちゃったね」

 

 

「これじゃビッチ姉さんって呼べないね」

 

 

その言葉に先生は涙を浮かべる。

 

 

「あ、あんた達……分かってくれたのね!」

 

 

「先生に向かって失礼だったし」

 

 

「じゃあ…………ビッチ先生、かな?」

 

 

うん、そんなに変わらない な。

 

 

「えっと……き、気安くファーストネームで呼んで良いのよ?」

 

 

「えーでも本当にビッチだし……ビッチ先生で良いわ」

 

 

「創真もこう言ってるし、よろしくなビッチ先生!」

 

 

口々にビッチ先生と呼ばれ、ビッチ先生は体を震わせ…

 

 

「キーッッッッッ!やっぱり嫌いよあんた達!」

 

 

何はともあれ一件落着かな?




次回はオリジナル要素も含んでますのでお楽しみに!


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第14話 サボりの時間

創真side

 

 

ん?タイトルからして僕がサボるんだろ、だと?

 

 

うん、そうです。

 

 

カルマ君から聞くとこによると、行ったってろくなことないらしい。ただ、E組いじりの洗礼を受けるだけだと。そんなわけで今はカルマ君とゲーム中。…………別に僕もゲーム位するんだぞ。

 

 

「んー創真相手だとなんか勝てないなー」

 

 

「当然さ。僕は大抵なんでも出来るからな。ねぇ、集会でのE組いじりってどんなもんなの?」

 

 

「そーだね…………まぁ、校長とかから結構嫌みを言われるんだよね。それに、E組は本校舎の奴等より先に並んどかないといけないから、凄くダルい」

 

 

「うわー、そう言うのやだな………逆に、どんな感じなのか見てみたくなった」

 

 

「まさか今から行くつもり?」

 

 

「そんなわけない。このマシン使うんだよ」

 

 

「あーそれマシンカブトって言うんだっけ?渚君から聞いたよ」

 

 

電源を入れ、コントローラーを操作して本校舎へ向かわせた。3分後、本校舎の体育館に到着した。バレないように開いていた窓からこっそり侵入し、体育館の天井にあるバスケットボールのゴールに着地した。そして音声伝達システムを起動させる。

 

 

『…要するに君達は全国から選ばれたエリートです。この校長が保障します。ですが、油断は大敵です。油断してると……どうしようもない誰かさん達見たいになっちゃいますよ!』

 

 

校長の発言に本校舎の生徒が笑う声が聞こえてきた。ちなみにこのマシンカブトに搭載しているマイクはどんなに小さい音でも聞き取れるヤバイ物だ。だから、この後、烏間先生が本校舎の先生に挨拶してたのとか、渚君がビッチ先生にセクハラ喰らってたのも全部分かる。……渚君のはちょっと可愛そうだ。

 

 

「なるほど。よーく分かった。こんなのに耐えなきゃいけないなんてねぇ…………サボったこっちがなんか申し訳ない」

 

 

ここでカルマ君が興味深そうにコントローラーを見てるのに気付いた。何となく次に何を言うか分かった。

 

 

「ねぇ、創真。それ俺にも操縦させてよ」

 

 

ほら、やっぱり。

 

 

「別に良いが……墜落させると面倒いから気を付けろよ」

 

 

「オッケー。操作方法は見てて分かったから安心してよ」

 

 

どうだかね……ま、体育館は狭いし、飛行するときに音はほとんどないから誰も気づかないだろう。

 

 

「凄いね~このメカ。距離があってもちゃんと命令通り動くね」

 

 

父さんの会社のパーツはチート級にヤバイからな。この程度の距離なら余裕…………なのにはびっくりさせられるよ。確かに分かってはいたが、いざ出来ると驚きだな。

 

 

『はいっ、今皆さんに配ったプリントが生徒会行事の詳細です』

 

 

ん?生徒会の発表か。

 

 

「カルマ君、ちょっとそこでストップ。1回カメラの角度を替える」

 

 

「ん?分かった」

 

 

ここでマシンカブトはホバリングを開始した。そこでちょっとカメラの角度を下にした。

 

 

これで全体が見える。

 

 

『すみませーん。E組の分がまだ来てないんですけど』

 

 

この声は磯貝君だ。

 

 

『え、ない?おかしーな……ごめんなさーい、3ーEの分忘れちゃたみたい。すみませんが全部暗記して帰って下さーい!』

 

 

当然、また本校舎の奴等は笑い出す。今喋ってる奴、絶対ウケを狙ったな……………あの喋ってるメガネ野郎、ぶん殴りたい。

 

 

そう思ったときだった。

 

 

ブワッ!

 

 

「!?」

 

 

画面を見ると、E組の皆は生徒会のプリントを持っていた。

 

 

『問題ないようですねぇ、磯貝君。手書きのコピーが全員分あるので』

 

 

──────────殺せんせーナイスだ。

 

 

『……はい。プリントあるんで続けてくださーい』

 

 

『え?あ……嘘、なんで!?誰だよ笑い所潰した奴!!あ………いやゴホン、では続けます」

 

 

まさかマッハ20の怪物の仕業だとは思うまい。もうちょっと見ていたかったが、エネルギー切れまであと少しだったので、引き上げた。

 

 

「ハハ、やるねぇ殺せんせー」

 

 

「でも国家機密が行っていいのかね?」

 

 

「さーね。後で烏間先生に怒られるんじゃない?変装下手だったし」

 

 

ちなみにこの後怒られたのは僕たちだった。マシンカブトが烏間先生には気付かれてたらしい。無念。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

集会後の本校舎では渚が二人組のモブキャラに絡まれていた。

 

 

「何とか言えよ、E組!殺すぞ!!」

 

 

(殺す……?殺す……殺す…か)

 

 

渚はクスッと笑って言い放った。

 

 

「殺そうとしたことなんてないくせに」

 

 

ゾクッ!!

 

 

怯える二人を置いて渚は去っていった。渚の才能に気付くのは……まだまだ先の話。



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第15話 テストの時間

創真side

 

 

「「「さぁ、始めましょうか」」」

 

 

「とりあえずもっと具体的にどうぞ、殺せんせー。何を始めるん?」

 

 

「学校の中間テストが迫ってきました。なので、この時間は高速強化テスト勉強をおこないます」

 

 

そう言うと殺せんせーの分身がみんなの前に立った。

 

 

「下らね…ご丁寧に教科別にハチマキとか」

 

 

そんな寺坂を教える殺せんせーの分身のハチマキは……ナルトのだった。

 

 

「なんで俺だけNARUTOなんだよ!!」

 

 

「寺坂君は特別コースです。苦手教科が複数ありますからね」

 

 

それでNARUTOなのか……まぁ、良い。それで僕を担当する分身のハチマキは………は?

 

 

「あの……なんですか、そのどこぞの親父みたいな巻き方は?」

 

 

まるで天才バ〇ボンみたいな……

 

 

「創真君は超特別コースです。前の学校のテストや成績を見せてもらいました。基礎はもう完成しているでしょうし、難関高校の過去問や応用の問題集をひたすら教えます」

 

 

う、うん……ただハチマキの巻き方が気になる。

 

 

 

国語6人

 

数学8人

 

社会3人

 

英語4人

 

NARUTO1人

 

バカ〇ン1人

 

 

ていうか分身増えすぎだろ。前まで3人ぐらいが限界じゃなかったっけ?すると前触れもなく、殺せんせーの顔が歪んだ。

 

 

「急に暗殺しないで下さいカルマ君!!避けると残像が全部乱れます!!」

 

 

僕のお隣さんの仕業か。急に来たらびっくりするわ。と言うわけで今日は問題集を解きまくった。

 

 

ちなみに全問正解だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

 

「「「さらに増えてみました。さぁ、授業開始です」」」

 

 

いやはや、分身雑だし、別のキャラ混ざってるし……どうした、殺せんせー。やけに気合入ってるが………………別に悪いことではないけどさ。

 

 

ちなみにこの時間、僕は難関高校の過去問を殺せんせーがアレンジしたものを解かされた。問題文何故か全部英語だが、楽勝だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は~やっと終わった」

 

 

さすがに疲れたので外に出て自然の空気を吸いに来た。殺せんせーはどうやら理事長から挑発を受けたらしい。渚君から聞いた。丁度良いタイミングでフレアとメテオが戻ってきた。賢いから笛吹かなくても外に居れば戻ってくる。気分にもよるだろうが。

 

 

「ちゃんと戻ってくる辺り、2人ともマジで優秀だよ………………ん?」

 

 

何故か教室から皆が出てきた。

 

 

渚君に聞いてみると

 

 

「殺せんせーが外に出ろって言うから……なんか不機嫌になっちゃったんだよね」

 

 

渚君から事の経緯を聞いた。ざっくり言うと、暗殺成功すればこのあとの人生ハッピーだから勉強はそれなりで良いって言ったらしい。

 

 

─────────成る程ね。

 

 

皆が集まると殺せんせーは話し始めた。

 

 

「イリーナ先生、プロの殺し屋として伺いますが…いつも仕事をする時…用意するプランは1つですか?」

 

 

「……いいえ。本命通り行く事の方が少ないわ。不測の事態に備えて予備のプランをより綿密に作っておくのが暗殺の基本よ」

 

 

「次に烏間先生。ナイフ術を生徒に教えるとき、重用なのは第一撃だけですか?」

 

 

「……第1撃はもちろん重要だが、次の動きも大切だ。強敵相手では第一撃は高確率でかわされる。第2撃、第3撃を…いかに高精度で繰り出せるかが勝敗を分ける」

 

 

「最後に創真君。君は今の彼等をどう思いますか?」

 

 

ここで僕に振るか。まぁ、良い。今の彼等を僕はどう思うか?

 

 

「勉強をどうでも良いと思ってるのは、暗殺があるから………………それは劣等感から目を背けてるだけ。逃げてるだけ、って事だ……………情けないね」

 

 

そう言い切ったと同時に殺せんせーは再び喋りだした。

 

 

同時に回転を始める。

 

 

「……先生方が言ってるように、自信を持てる次の手があるから自信に満ちた暗殺者になれる。対して君達は、『俺らには暗殺があるからそれで良いや』……と、勉強の目標を低くしている。それは…創真君が今言ったように劣等感から目を背けているだけです。 もし先生がこの教室から逃げ去ったら?もし他の殺し屋が先に先生を殺したら?暗殺という拠り所を失った君達にはE組の劣等感しか残らない。そんな君達に…先生からの警告です」

 

 

 

『第2の刃持たざる者に暗殺者を名乗る資格なし!!』

 

 

そうして、校庭に竜巻が出現した。砂埃が舞い、視界が遮られる。暫くして殺せんせーは回転を止め、竜巻も消えた。

 

 

「……校庭を手入れしました」

 

 

雑草や凸凹が無くなっていた。

 

 

「先生は地球を消せる超生物。この程度の事は容易いことです。もし君達が自信を持てる第2の刃を示せなければ……校舎を平らにして先生は消えます」

 

 

「第2の刃…いつまでに?」

 

 

渚君の質問に殺せんせーは当然、と言った口調で答えた。

 

 

「決まってます。明日の中間テストでクラス全員50位以内を取りなさい君達の第2の刃は先生が既に育てています。自信を持ってその刃を振るってきなさい。仕事を成功させて、恥じることなく笑顔で胸を張るのです。君達が暗殺者であり、このE組であることに!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

やれやれ問題という名の怪物が襲ってくる……こんな感覚を味わうのは初めてだが、僕のいつも通りをすれば良いだけ。

 

 

「……なぁ、なんで創真はナイフじゃなくて剣なんだ?」

 

 

僕に聞かれても分からないんだが。

 

 

しかしながら皆、順調だ。これが殺せんせーの教えの効果か。問題文の重要な部分、解き方のコツ……殺せんせーがマッハで教えてくれた通りだな。大変解きやすい。

 

 

問4も殺れる!

 

問5も殺れる!

 

問6も殺れる!

 

問7も殺れる!

 

問8殺れる!

 

問9も殺れる!

 

問10殺れる!

 

問11………ん?

 

 

…………皆は問11に殴り殺された。

 

 

「これ………………まぁ、良い。先ずは、終わらせよう」

 

 

剣を投げて、問11を仕留めた。あたりを見回せば、残ってるのはカルマだけだった。

 

 

「………………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全ての教科の一部の問題からテスト範囲外の問題だった。結果はもちろんほぼ全員50位以内に入れなかった。烏間先生は苦情の電話を入れたが、相手にされなかった。

 

 

「先生の責任です。この学校の仕組みを甘く見ていたようだ。君達に顔向け出来ません」

 

 

この結末を描いたのは恐らく理事長だ。この妨害がなければ全員50位以内に入れたかもしれない………E組を底辺に留めさせるためにそこまでやるのか。そんな落ち込む殺せんせーに飛んでくるナイフが1つ。殺せんせーは慌てて避けた。

 

 

「いいの~?顔向け出来なかったら俺が殺しに来るのも見えないよ?」

 

 

「カルマ君、今先生は落ち込んで…」

 

 

カルマはテストを殺せんせーに見せた。

 

 

理科99点

 

国語98点

 

数学100点

 

社会99点

 

英語98点

 

 

186人中4位

 

 

「あんたが余計な範囲まで教えたからだよ。ねぇ、創真も見せてあげなよ」

 

 

僕も前に出てテストを見せた。

 

理科100点

 

国語100点

 

数学100点

 

社会100点

 

英語100点

 

 

186人中1位

 

 

「「「オール100点!?」」」

 

 

ま、こんなの楽でしょうがなかった。暇だったから次の発明品のアイデアが浮かんじゃった。

 

 

「ま、クラスは抜けませんよ僕は。こっちの方が楽しい。で、先生は逃げるのかい?」

 

 

「それって結局さぁ、殺されるのが怖いだけなんじゃないの?」

 

 

カルマ君と僕に合わせて、皆も口々に言い始めた。

 

 

「なーんだ。殺せんせー怖かったんだ」

 

 

「なら正直に言えば良かったのにね」

 

 

「ねー『怖いから逃げたい』って」

 

 

「にゅやーッ!!逃げるわけありません!!期末で倍返しでリベンジです!!」

 

 

ま、次は皆で良い点を取りたいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「早速、1位の座を牛耳ってるじゃねぇか、創真…………ええ?」

 

 

月城 隼 186人中10位



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第16話修学旅行の時間

今回から修学旅行編です!今回の話しは東京を出発する前の話しです!それではどうぞ!


創真side

 

 

修学旅行……ね。まぁ楽しみだ。僕の家族は余り旅行に行かない。親は忙しいからな。行き先は京都か。まぁありがちなパターンだが。しかしながらここは暗殺教室。旅行にも暗殺が付きものだ。

 

 

烏間先生から通達されたが、スナイパーを手配したので2日目の班別自主行動の時に一緒に行動する殺せんせーを狙うらしい。というわけで、狙撃に適したコース選びを頼む、という事だ。

 

 

うーむ……意外と迷うな。狙撃もしやすくて楽しめるスポット、か。

 

 

「お~い創真?」

 

 

「ん?あ、なんでしょうか磯貝君?」

 

 

どうやら、自分の世界に入っていたようだ。それと、僕は1班だ。メンバーは、磯貝君、前原君、木村君、片岡さん、岡野さん、倉橋さん、矢田さんだ。

 

 

「皆で行き先の候補を出したんだが、創真はどこが良いかと思って」

 

 

ふむふむ………お、誰がこのスポットを提案したか知らないが、楽しめて狙撃もしやすいスポットがあるじゃん!

 

 

「ここが良いんじゃない?この嵐山のトロッコ。このトロッコ、途中の保津川の鉄橋でしばらく停車する。そして恐らく保津川の川下りと鉢合わせする時間帯があるはず。それを誰かが川下りしてる~的な事を殺せんせーに言えば顔乗り出して見るだろう。スナイパーには殺せんせーが顔を乗り出す瞬間に撃ってもらう、っていうのはどう?」

 

 

「それ良いと思う!」

 

 

矢田さんが賛成してくれた。他の皆も、良いんじゃない、と口々に云ってくれた。

 

 

「じゃあここで決行にするか?」

 

 

磯貝が確認したが異論を唱える人はいなかった。上手く成功するかは別だが、取り敢えず決行場所は決まった。

 

 

「ふん、皆ガキねぇ。世界中を飛び回った私にとっては旅行なんて今更だわ」

 

 

そんな様子を小馬鹿にするように口を開いたのはビッチ先生だった。

 

 

「じゃあ留守番しとけビッチ先生。そうすれば経費が浮いて学校は喜ぶだろうに。あ、じゃあ花壇に水をやっといてよ」

 

 

僕の言葉にビッチ先生は怒った。

 

 

「なんですって!?留守番なんて冗談じゃないわよ!それに、行かないとは一言も行ってないわよ!」

 

 

「はいはい、分かった分かった」

 

 

そこへ殺せんせーが何かを持ってやって来た。

 

 

「なんです、これ?」

 

 

「修学旅行のしおりです」

 

 

「いや、辞書だろこれ?」

 

 

分厚すぎる。

 

 

「観光名所から旅の護身術入門から応用まで!他にも役立つ知識が全部載ってます!!」

 

 

どうも、ワクワクしすぎな殺せんせーだ。多分、この教室内で修学旅行を1番楽しみにしてるのは殺せんせーだろう。

 

 

「これ置いてくか…」

 

 

「にゅや!?それ作った本人の前で言いますか!?お願いですから持っていって下さい!!ね?ね?」

 

 

……………結局うるさいので持ってくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

「眠い………………」

 

 

目を擦りながらリビングに行くと、既に氷室さんが朝食を作っていた。

 

 

「おはようございます、創真様」

 

 

補足だが今日から氷室さんはお隣に住むことになった。親が手配したそうだ。そっちの方が僕の家に行きやすいということで。元々住んでいた家からそこまで遠くないので問題ないそうだ。引っ越しは昨日のお昼中に済ませたらしい。まぁ、そんなに遠くないなら別に必要ないとは思うがまぁ良い。

 

 

「朝食は既に作っておきました。それでは私は先に行ってます」

 

 

「分かりました……ってうん?どこにです?」

 

 

「京都ですが?」

 

 

あ、そうか。氷室さんは教職員じゃないから団体用の新幹線乗れないんだ。

 

 

「でも速すぎじゃないですか?今から行くと…」

 

 

「車で行きますので」

 

 

いや、普通新幹線だろ。長距離移動するのに、車だと疲れるでしょうが。

 

 

「あなたのお父様からまた車貰いました。修学旅行で移動するときに使えと」

 

 

見せてもらったキーで分かった。これはフェラーリだ。だから何で高級車をいちいち用意するんだ?ていうかそんなのあげるんだったら、新幹線のチケット贈れよ、父さん。

 

 

「氷室さん、まだ間に合います。今からダッシュで東京駅に行って自由席のチケットを買ってきましょうよ?ね?」

 

 

「しかし折角貰ったのに使わないのは勿体無いし、お父様に失礼ですし………」

 

 

多分、言っても聞かなそうだな…………後で父さんに言っとかないと。贈るものをちゃんと考えろって。

 

 

「分かりました……気を付けてくださいね」

 

 

「ご安心を。私ゴールド免許ですから」

 

 

そう言って氷室さんは家を出ていった。

 

 

「なーんで、新幹線のチケットじゃなくて、フェラーリ贈ったんだか…………」




次回はついに京都へ!

果たして何が起きるかな?

宜しければ感想、評価、お気にいり登録お願いします!


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第17話修学旅行の時間2時間目

気づけばお気にいり登録者が30人以上も…ありがとうございます!!
これからもよろしくお願いします!!

上手く書けたかはわかりませんが、本編をどうぞ!


創真side

 

 

東京駅にて

 

 

「うわ、E組以外グリーン車…」

 

 

「うちらだけ普通車。いつもの感じだよね」

 

 

別にグリーン車だからってそんなに良いことあるのか?前にグリーン車乗ったがただ座席の幅が広かった位であとは普通車と同じだったが。

 

 

「学費の用途は成績優秀者に優先される」

 

 

「おやおや、君達からは貧乏の香りがするねぇ」

 

 

モブらしき二人組がわざわざ車両の出入り口から顔を出して言ってきた。

 

 

ったくうるさいなぁ。お前ら僕にテストで負けてんだから、グリーン車譲れよって言いたいとこだが、こいつらと一緒に居るのは大変嫌気がする。

 

 

「……………早く乗ろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

電車の中ではトランプや人生ゲームをしたりして楽しんでいる。僕の班もトランプでババ抜きをしていたが、いつのまにか僕の話しになった。

 

 

「そう言えば創真はこの前にテストで全部100点だったよな?どんな勉強したんだ?」

 

 

磯貝君が聞いてきた……………弱ったな。その質問の答えは、『僕が大学レベルの勉強をしてるからでーす』なんだが。それを言って信じてもらえるかどうか。だが…………嘘をついたところでいずればれてしまうかもしれないし、彼等になら本当の事を言っても良いと思う。

 

 

理由?だって信頼できるから。よーし………………言うか。

 

 

「僕はね、大学レベルの勉強してる」

 

 

「「「え!?」」」

 

 

声が大きかったせいで皆から注目を浴びてしまった。

 

 

「大学レベル……!?」

 

 

「マジかよ……」

 

 

まぁ当然の反応か。

 

 

「先生は中間テストの時、カルマ君みたいに先の範囲までは教えてないのですが……なるほどそういうことですか」

 

 

殺せんせーもオール100点の訳に納得したようだ。

 

 

「じゃあなんで椚ヶ丘に来たの?ここよりレベルの高い中学に入れたんじゃ…………」

 

 

片岡の発言に皆が頷く。

 

 

「え?あぁ、何でここに来たか?それは……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くじ引きで決めた」

 

 

「「くじかよ!!」」

 

 

まぁ、そう思うわな。

 

 

「事前に何個か良さそうなとこを選んどいて、くじで決めたね……………でも、思い返せば僕って超運が良かったね。だって、良い仲間に会えたし、暗殺は面白いし」

 

 

「ヌルフフフフ、私も創真君だけでなく、皆さんの担任を持てて良かったと思ってますよ」

 

 

「1年後には地球を、もっと言えば僕らも消し去るのに?」

 

 

「ええ」

 

 

「ふーん。面白いことを言うねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新幹線はついに新京都駅に到着した。

 

 

「!!!!」

 

 

「どうしたの創真君?」

 

 

「いや、なんでもないよ渚君」

 

 

新幹線のホームから見覚えのあるフェラーリが見えただけだから…………ちゃんと時間計算してたんだな。フェラーリの事は置いといて…………そこからバスで旅館へと向かう。

 

 

まぁ、ぼろい旅館だが。

 

 

ここで氷室さんと合流した。本来近くのホテルにとまるつもりだったらしいが、烏間先生が旅館に交渉した結果、一緒に泊まれる事になった。本来部外者だから泊まれないはずだったので氷室さんは頭を下げてお礼を述べていた。

 

 

それと殺せんせーは瀕死状態である。旅館のソファーでぐったりしている。

 

 

「一日目から既に死にかけ……………今なら殺れる?」

 

 

試しにナイフで斬りかかって見るが、避された。

 

 

「大丈夫?部屋で休んできたら?」

 

 

岡野さんもナイフで斬りかかったが、同じく避けられた。

 

 

「いえ、ご心配なく。先生、枕を忘れたので一度東京に戻りますから」

 

 

おいおい、忘れ物かよ。無駄に荷物を多く持ってくるからだよ、まったく。

 

 

「どう?日程表あった?」

 

 

神崎さんと茅野さんが何か話しているのに気づいた。

 

 

「どうしたの?」

 

 

「あ、創真君。神崎さんが日程表なくしたみたいで…」

 

 

「日程表………新幹線かバスで落としたとか?」

 

 

「そうかも……」

 

 

しかし、神崎さんがうっかり落とすなんてなさそうなんだけどな。

 

 

「神崎さんはまじめですからねぇ。独自に日程をまとめていたとは感心です。ですが、ご安心を。先生のしおりを持てば大丈夫です」

 

 

「「「それを持ち歩きたくないからまとめてんだよ!!」」」

 

 

やれやれ………殺せんせーのしおりを持ってきた僕が恥ずかしいんだが。

 

 

「創真様、宜しければそのしおりを見せてくれませんか?」

 

 

「勿論どうぞ。読み終わった後、燃えるごみに捨ててもらっても全然良いです」

 

 

「にゅや!酷いですよ、創真君!」

 

 

「はいはい、捨てませんから…………そもそもなんで読みたいんです?」

 

 

「どんなことが書いてあるのかと思いまして……もしかしたら役に立つかも知れませんからね」

 

 

「おお、氷室さんは良く分かってます!先生のしおりに書いてあることは全部役に立つ事です!」

 

 

「嘘つけ!7割はどうでも良いことばかりだわ!」

 

 

そんなこんなで、1日目は終了したのだった。

 

 

to be continue………




感想や指摘、お気にいり登録や評価を待ってます!
次回もお楽しみに!


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第18話 修学旅行の時間3時間目

ほぼオリジナルです!
それではどうぞ!


AM9:00

 

 

殺せんせーは9時半に創真らの班に来る事になっている。来るまではただの観光を皆はしていた。

 

 

「嵐山は良いなぁ…喉かだし風景も最高だなぁ…」

 

 

「あれ?創真君なに食べてるの?」

 

 

倉橋が創真が何かを食べているのに気づいた。

 

 

「どらさぁやって言う嵐山のお土産ですよ。良かったら一個あげますよ」

 

 

「え!?良いの?じゃあお言葉に甘えて……ん~甘くておいしい!」

 

 

なお、どらさぁやは実際にあります。皆も嵐山に行く機会あったら探してみてくださいby作者

 

 

ちなみに、創真はどらさぁやは爆買いしました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

「おお!凄く開放的!これなら酔いませんし、時速25㎞とは速いですねぇ」

 

 

マッハ20のあんたが速いとか言うなよ。さーてここからだ。トロッコは鉄橋の上で停まった。

 

 

『ここで暫く停車します。保津峡の眺めをお楽しみください』

 

 

時間通りなら、ここで川下りが来…………た。打合せ通り倉橋が殺せんせーに話しかける。

 

 

「あ、見てみて殺せんせー!川下りしてる」

 

 

「どれどれ…………おお!」

 

 

列車から顔を覗かせた。さぁ、スナイパーさん。殺っちゃって。

 

 

 

 

 

 

ダン!!

 

 

 

 

…………確かに発砲音は聞こえた。完璧に油断してたはずなんだが……弾は殺せんせーがさっきから食っていた八つ橋で受け止められた。

 

 

「おや、八つ橋に小骨が。危ないこともあるもんですね」

 

 

結構良いアイデアだと思ったんだがな…………はぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでは先生は次の班に行きます。君達も楽しんで下さいね」

 

 

殺せんせーは飛び去っていった。

 

 

「やれやれ……失敗か。少しショックだね」

 

 

「良い作戦だったんたけどね」

 

 

「あれが人間相手なら完璧な暗殺計画でした。そう落ち込む必要はないですよ、創真様」

 

 

少しへこんだ僕を片岡さんと氷室さんが慰めた。優しさが身に染みる。

 

 

「まぁ気にしてもしょうがない。ここからは普通に旅行を楽しもうぜ」

 

 

……………まぁ磯貝君の言う通りだな。

 

 

「では私は先に行ってます。次の目的地周辺でパトロールをしているので必要になったらお呼び下さい」

 

 

氷室さんは駐車場の方へ去っていった。間もなくすぐにフェラーリのエンジン音が聞こえた。

 

 

「…………何か氷室さん、警察のするような事をやってないか?」

 

 

「確かに……………磯貝君の言う通りかも」

 

 

「なぁ、前から思ってたんだけど……氷室さんって強いの?」

 

 

木村が質問してきた。

 

 

「強い……?戦ったことないけど体力はあるんじゃない?前も校舎まで競争したことあるし」

 

 

考えた事もなかったが………実際どうなんだろうな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後もいろんな所を巡った。やはり京都は落ち着く。静かで良いな…………また作者の体験談になるが、作者が修学旅行で苦労したのがバスの表示 がややこしかった、らしい。

 

 

僕はちゃんと調べてるから心配ないが。

 

 

「そう言えばもうお昼だよね?お腹空いてきたよ」

 

 

「もう12時だからね。そして、丁度我々が昼飯を食べる店に着いたよ」

 

 

その店は京都そばの専門店だ。

 

 

「そう言えばなんで創真君は絶対ここが良いって言ったの?確かに、ネットでの評価は高かったけど……」

 

 

「それは昔から知ってる味だからね。恐らく皆も気に入る。さぁ、入ろう」

 

 

店のドアを開けて店に入る。皆もそれに続く。

 

 

「いらっしゃい……あら創真。よく来たわね」

 

 

「久しぶり~婆ちゃん」

 

 

「「「婆ちゃん!?」」」




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第19話 修学旅行の時間 4時間目

あと二、三話で修学旅行編は終わりです。
気に入ってくれたら嬉しいです。

それではどうぞ!


創真side

 

 

「そんなに驚いた?」

 

 

「まぁ少しは……」

 

 

そうこの店は僕のお婆ちゃんの店だ。まぁ正確に言えばお婆ちゃんとお爺ちゃんのお店だが、お婆ちゃんが店主なので名目上はお婆ちゃんの店だ。

 

 

「皆は注文何にする?」

 

 

「せっかく京都に来たんだからにしん蕎麦食べてみたい!」

 

 

岡野さんの意見に皆賛成した。

 

 

「と、言うわけでお婆ちゃん、にしん蕎麦8人前頼むわ」

 

 

「はいはい」

 

 

蕎麦ができるまでの間、暫く雑談していた。

 

 

「このお店っていつからやってるの?」

 

 

倉橋さんが質問してきた。

 

 

「15年前からかな?僕結構引っ越しが多くてね……全国を転々としてたから京都にも居たんだけど1ヶ月位だけだからあんまり食べる機会なかったから久しぶりだな」

 

 

「へ~。でも創真君、寂しくなかったの?だってお友だち出来てもすぐ引っ越しちゃったんでしょ?」

 

 

「まぁ、そうだが……でも今でも彼等と交流あるよ。

LI〇Eで繋がってますから。でも改めて見ると全国に友達たくさんいるんだよな……確か兵庫に居たときにクラスメートに言ったら、『創真ネットワーク』って名付けられた」

 

 

まぁ補足するならミニネットワーク的なものだ。

 

 

「はい、お待ちどうさま」

 

 

暫くしてみんなの前ににしん蕎麦が出された。

 

 

「「「いただきます!」」」

 

 

にしん蕎麦について軽く説明しておこう。

 

 

にしん蕎麦とはかけそばの上に身抜きにしんの甘露煮を載せたもの。汁は関西風の薄い色で鰹節、薄口醤油と昆布を使った上品なだし汁だ。僕は脂っこいものよりもこの蕎麦のようにあっさりしているものが好きだ。

 

 

 

「創真君?」

 

 

「あ、またボーッとしてたわ…………美味しい?」

 

 

「これ凄くおいしいね!」

 

 

「この蕎麦今まで食った蕎麦のなかで1番良いかも!」

 

 

良かった、好評のようだ。

 

 

「う~む。この薄くてさっぱりしているだし汁。そしてこの麺のちょうど良い硬さ。そしてこのにしんの美味しさ。これはとんでもなく美味な蕎麦ですね」

 

 

誰だ食レポしてる青年は……………いや、あの人、知っている。

 

 

「…………氷室さん。いつから居たんです?」

 

 

「おや?皆さんが来る前からいましたよ?」

 

 

「え。そうなんですか…………?全然気付かなかった」

 

 

皆も首を縦に降って同意する。

 

 

「すいません、追加で天丼を1つお願いします!」

 

 

「はいはい、ちょっと待ってねー」

 

 

でもって、意外と大食い……………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

 

20分後、一班の班員+氷室は店を出た。

 

 

「いやー、うまかったな!創真の婆ちゃんが作る蕎麦は」

 

 

前原がとても満足そうな表情で云った。

 

 

「でしょ?マジでやみつきになる程美味しいんだよね~。あと、どうでも良いけど氷室さん、意外なほどめっちゃ食べてましたね」

 

 

そう言いながら創真が氷室の方を向く。

 

 

「………………あらら?」

 

 

先程までいた筈の氷室の姿が何処にもなかった。

 

 

「あれ、氷室さんは?」

 

 

「さっきまでいたのに……………」

 

 

その時、創真のスマホがブルッと震えた。見ると、氷室からのメッセージが入っていた。創真はスマホをタップして、内容を見る。

 

 

「氷室さん、何だって?」

 

 

木村が尋ねると、フッと笑みを浮かべた創真は云った。

 

 

「食い過ぎで腹を壊したから、コンビニのトイレに行ってるから、先に行っててくれだとさ」

 

 

読んだ直後、彼等の視界には走り去るフェラーリの姿を捉えた。食い過ぎが仇となったようだ。

 

 

「何やってるんだよ氷室さん……………」

 

 

「あんなに食べるから………………」

 

 

「まー、ドンマイって事でこの話題はおしまい!さぁ、早くしないとバスに乗り遅れるよ?」

 

 

創真に言われ、皆は時計を見る。

 

 

「ヤッベ、確かにあと 3分じゃん!走るぞ!」

 

 

「あーあ、食後に走るのは疲れるなぁ…………」

 

 

「早く行くわよ!」

 

 

1班の皆はバス停へと向けて走り出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待っててくださいよ、茅野さんに神崎さん!」

 

 

氷室はフェラーリのアクセルを大きく踏み込んだ。




次回は氷室さんの視点がメインです。
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それではまた次回お会いしましょう!


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第20話 修学旅行の時間5時間目

「いやー、うまかったな!創真の婆ちゃんが作る蕎麦は」

 

 

前原が満足そうに云うのを、氷室は心の中で賛同していた。

 

 

(いや、ほんとその通りですよ。味付けが絶妙で、しかも使う食材にも拘っていて。これから月に1回は食べに行きましょうかね………それほどの価値があの店にはある!)

 

 

心の中でそんな事を考えている氷室。そんな彼の視界に何処からか走ってきたワンボックスカーが映った。たまたま車内が見えた氷室は、目をハッと見開いた。何故なら、車内に見覚えのある人物がいたからだ。

 

 

それは長い黒髪に、緑のツインテール────────

 

 

(………神崎さんに茅野さん………?)

 

 

彼の目には手を縛られている2人の姿が映った。それも一瞬で、直ぐに通りすぎてしまった。

 

 

(……………行きますか)

 

 

別に氷室には助ける義理も理由もないのだが、流石にこのまま見過ごすことは彼には出来なかった。車へ駆け出そうと思ったその時、彼等にはこの事を言うべきか一瞬迷った。

 

 

───────彼等は修学旅行中。余計な心配はさせたくないですね。

 

 

そう結論付け、氷室は彼等の元をこっそり離れた。不意にいなくなっても彼等を心配させるので、即興で思い付いた適当な理由をメールで創真の元に送り、少し離れた駐車場に停めてあったフェラーリに乗り込み、一気に飛び出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フェラーリの加速力で一気に追い付いた氷室。しかし、追跡してるのがバレぬよう、一定の距離を保って追う。そこへ、氷室のスマホに電話が掛かってきた。氷室は耳元に付けてあるBluetoothを操作して、電話に出る。

 

 

「もしもし、氷室です」

 

 

『氷室さんか。1斑の皆は無事か?』

 

 

「…………何かありましたか?」

 

 

『実は4班の生徒がよその高校生とトラブルがあってな。念のため、他の班の安全も確認している所だ』

 

 

氷室は心の中でやはりですか、と呟き、電話越しに烏間に問い掛ける。

 

 

『……………そのトラブルとは、神崎さんと茅野さんが車で誘拐された、ですか?』

 

 

『!!見かけたのか!?』

 

 

『ええ。今追ってる最中です。誘拐した奴等は何処かに向かっているようなので、行先を特定しだい、また電話します』

 

 

『…………分かった。その時は、奴に掛けてくれ。奴が今しらみつぶしに探していってるからな。くれぐれも、無茶はしないでくれ』

 

 

烏間との通話を終え、氷室はふぅ、とため息をつく。

 

 

「まったく、修学旅行邪魔するなど…………赦しがたいですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷室side

 

 

「……ここですか」

 

 

誘拐班達は車を乗り捨てたあと、神崎さんと茅野さんを連れてこの潰れた店に入っていったのを彼等の死角から確認済みです。なお、今は偵察中です。

 

 

「ふーむ。潰れたボウリング屋さんですか…………確かに隠れるには最適ですね。さて、殺せんせーに電話を…………」

 

 

「……おい、何してんだお前」

 

 

後ろから声がしたので振り向くと……モヒカン頭の不良がいました。多分、誘拐した奴等の仲間でしょう。

 

 

「えー………あなた方の仲間が生徒を拉致したという情報を貰ったので、取り返しに来ました」

 

 

「な!?テメー警察か?とにかく無事に返すわけにはいかな……ゴフ!」

 

 

話してる最中でしたが、気絶させる程度の蹴りを撃ち込ませて頂きました。

 

 

「反応が遅いですよ」

 

 

「調子に乗りやがって……お前、ぼこされたい…ガハ!」

 

 

今度は腹にパンチを。驚くほどに反応が遅く、少し意外でした。喧嘩慣れしてませんね。

 

 

「喋ってる暇があるなら……………来たらどうです?」

 

 

少しビビったのか、私が一歩出ると不良達は一歩下がり始めました。すると、その時でした。不良らが突然ガムテープで簀巻きにされ、同時に意識も刈り取られたのは。

 

 

「ヌルフフフフ、簀巻きのできあがりですねぇ」

 

 

「遅いですよ……………殺せんせー」

 

 

私の文句に、殺せんせーはいやぁ、と切り出して続ける。

 

 

「他の場所からしらみつぶしに探してまして……………ここに神崎さんと茅野さんがいるんですか?」

 

 

「ええ。彼女等を連れて入っていくのをしっかり見ました」

 

 

「ヌルフフフフ…………では、私の生徒に手を出したことを後悔させてやりますかねぇ」

 

 

殺せんせーは触手をポキポキと鳴らしながら入口に向かっていくのを、私も慌てて追いかけました。

 

 

…………て言うか、触手ってポキポキと鳴るものなんですかね?

 

 

to be continue………




次回、突入じゃあ!


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第21話 修学旅行の時間6時間目

出来ばえは微妙……………。


修学旅行編のオリジナルを考えるのは大変でした。

気に入ってもらえるかわかりませんが、楽しんでもらえたら幸いです。


氷室side

 

 

さて、ちゃちゃっと2人を助ける……………その前に一つ気になる事が。

 

 

「あの……なんでその不良達をわざわざ持ってきたんですか?」

 

 

眼鏡を付け、学生服もしっかり着て、さらに頭は丸刈。ついさっきまで見るからに不良だったのが、今では不良の姿を留めていません。

 

 

「外で倒れてたら怪しまれるでしょう?警察に通報されたら私の事がばれるかもしれませんからねぇ。ついでに手入れもしてやりました」

 

 

「な、なるほど……………」

 

 

そんな会話をしながら通路を進んで行くと、ドアがあった。恐らくこの先にいると思われます。

 

 

「じゃ、開けます」

 

 

そして、ドアをゆっくり開けていきます。

 

 

「呼んどいた連れ共だ。これでこっちは10人。お前らみたいな良い子ちゃんには見たことのない不良共だ」

 

 

中からそんな声がしてきました。

 

 

───────勘違いしてますね。

 

 

我々が姿を見せると不良達は驚いた表情を見せました。

 

 

「残念ながら不良はいません。この先生が手入れをされたので」

 

 

「殺せんせー!それに氷室さんまで!」

 

 

「たまたま怪しい車を見かけたので追跡したらここにたどり着きました」

 

 

「遅くなってすみません。ここは君達に任せて、他の場所から虱潰しに探してたものてすから」

 

 

「……で何?その黒子みたいな顔隠しみたいなのは?」

 

 

渚君の疑問はごもっともです。私もツッコミはしませんでしたが、かなり気になってました。

 

 

「暴力沙汰ですので……この顔を覚えられるのが恐いのです」

 

 

………意外と世間体を気にする超生物のようでした。

 

 

「せ、先コウだ!?ふざけんな!なめた格好しやがって!」

 

 

「ふざけるな?それは先生の台詞です」

 

 

襲いかかろうとした不良を殺せんせーはマッハで弾きました。改めて殺せんせーのチート級のスピードを思い知らされます。

 

 

「ハエのようなスピードと汚い手でうちの生徒に触れるなど、ふざけるんじゃない…!!」

 

 

「……け!エリート校は先コウまで特別製かよ。てメェも見下してんだろ?」

 

 

「エリートではありません。確かに彼等は名門校の生徒ですが、学校内では底辺呼ばわりされ、その名前は差別の対象になっています。ですが、彼等はそこでいろんな琴似実に前向きに取り組んでいます。君達のように人の足を引っ張るような真似はしません。学校や肩書きなど関係ない。泥沼だろうが清流だろうが前に泳げば魚は美しく育つのてす」

 

 

「……………………!!」

 

 

「(神崎さんの顔が……………明るくなりましたね)」

 

 

「さて、私の生徒たち。彼等を手入れしてあげましょう。修学旅行の基礎知識を体に教えるのです」

 

 

不良達はいつの間にか背後に回り込んだ渚君達のしおりによる一撃を喰らわせられ、一挙にkoさせられたのでありました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

 

「やれやれ……狙う相手を間違えたのでは?」

 

 

氷室からして、気絶した不良達をみた感想である。

 

 

「…………あ、2人の縄を切らなければ」

 

 

恐らく不良が所有していたと思われるナイフを拾って2人の元に駆け寄った。

 

 

「ちょっとじっとしていてください」

 

 

そう言って、氷室はスパッと縄を切った。

 

 

「助かった……氷室さんも、ありがとう!」

 

 

「礼を言われることはしてませんよ、茅野さん…えーっと……あった」

 

 

気絶している不良の元に落ちていた携帯を拾った。氷室は何となく保存してある画像を見てみると、あぁ、なるほど、と呟き神崎の元に寄った。

 

 

「これは神崎さんですか?随分と今と格好が違いますけど」

 

 

「…………私の父親が厳しくて。良い学歴、良い肩書きばかりを求めてくるんです。だからそういうのから逃げたくて……誰も知らないところで姿を変えてゲームをよくしてたんです。でも、それで得た肩書きはエンドのE組…」

 

 

「……………………………」

 

 

氷室は特に何も言わずに胸元から特殊警棒を取り出した。携帯を天上まで投げ、自分の目の前に落ちてきた瞬間、目にも止まらぬ速さで特殊警棒で突いた。携帯は綺麗に丸く貫かれた。

 

 

「人生を君たちより少し長く生きてる者からのアドバイスです。肩書きなど、そんなことを気にする必要はありません。神崎さんが頑張っているのは創真様から聞いて知っています。親御さんももいつかあなたの事を認めてくれますよ」

 

 

「氷室さん……」

 

 

「氷室さんの言う通りですよ、神崎さん」

 

 

殺せんせーもうんうん、と同意する。とりあえず、トラブルは全て解決した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

僕は帰ってきた氷室にスッと近寄った。

 

 

「氷室さん、大丈夫でした?」

 

 

「……………食い過ぎには注意ですね」

 

 

「ほんと、その通りですよ…………………じゃあ、僕は部屋に先に戻ってますね」

 

 

「では、私はこの旅館にあるお風呂に浸かってきます!」

 

 

氷室さんは疲れたのか、肩を回しながら去っていった。

 

 

───────ほんとは腹下りじゃなくて、別の仕事をしてたんじゃないんですか?

 

 

 

心の中でそう呟き、僕も部屋の方へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「創真、お前好きな女子いるか?」

 

 

部屋に入ったらいきなりそんなことを聞かれた。好きな女子の投票をしていたようだ。

 

 

好きな女子……………か。

 

 

「今のところはいないなー」

 

 

「ちぇ、つまんねー。でもお前は女子と仲が良いじゃん」

 

 

「そうだけど……まぁ、とりあえず今はいない。だが、未来の事は分からないものだ。未来は不確定。もしかしてそのうち現れるかもな」

 

 

「ふーん。じゃあ楽しみにしてるぜ」

 

 

「変な期待されてもなぁ………」

 

 

「皆、この投票結果は女子や先生には内緒な。知られたくない奴がほとんどだろうからな」

 

 

「……………いや。もうバレてる」

 

 

僕が指差した方を皆が向くと、丁度殺せんせーがランキングの詳細をメモしている所だった。書き終わった殺せんせーは、すぐに逃げた。

 

 

「メモって逃げやがった!殺せ!」

 

 

僕を除く男子は一斉に飛び出していった。ワイは追うのめんどいんで、残ったが。

 

 

いやー……修学旅行もあと1日か。早いなぁ。さーて、あいつらが暗殺してる間に布団でも敷いてやって寝るか………疲れて眠い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おい、創真の奴もう寝てやがる」

 

 

「あいつどんたけ早寝なんだよ……」

 

 

30分後、男子が部屋に戻ってきた時にはもう寝ていた。



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第22話 休日の時間

今回は修学旅行の代休の話です。


今回の話は僕が実際に体験したことを色々変えて
書きました。

気に入ってもらえるかは人それぞれだと思いますが、気に入ってくれたら嬉しいな……。


それではどうぞ!


修学旅行の代休日、創真はマシンシリーズ製作に使う工具を買いに来ていた。全ての買い物を終えて、何処かで一息つこうかと思っていた矢先、氷室からメールが来た。

 

 

その内容がこちら。

 

 

『ヘルプミー。5階のゲームセンターにいます』

 

 

何かヤバイことに巻き込まれたんじゃ、と言う不安がよぎり、創真はデパート内を爆走し、たった3分で1階から5階のゲームセンターへとやってきた。

 

 

「氷室さん、どうしたんです!?」

 

 

「大変でございます、創真様。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

UFOキャッチャーが、まったく以て出来ません」

 

 

「………………………へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==============

創真side

 

 

「……………なるほどね。そう言う事ですか」

 

 

事情を聞いて大体納得した。さて、読者の諸君にも訳を説明しようか。今日、氷室さんは、彼の親戚の子─────確か小3の男子──────────と共にデパートに来ていた。遊んだりする約束をしていたとか。

 

 

そして、ゲーセンにてその親戚の子が、クレーンゲームの商品が欲しいと言い出し、氷室さんがチャレンジしたのだが、見事撃沈。しかし、ゲーマー魂を刺激させられたのか、お金を全て注ぎ込んだのだが、全部撃沈と言う結果に終わったらしい。

 

 

「ちなみに、氷室さん。どれくらい注ぎ込んだんです?」

 

 

「そうですね…………確か3000円です。このクレーンゲーム、1回200円なので15回やりましたが、ダメでしたね。ゲームする前にも色々使ったので、財布がすっからかんです………………はぁ」

 

 

「途中で僕も、もういいよーって言ったんだけど、いえ、あと1回位で取れる気がします、とか言って全然聞かなかったんだよねー」

 

 

「そりゃあ、子供の前ではかっこ良いとこ見せたくないですからね……………まぁ、結果的にかっこ悪いとこ見せちゃいましたがねー」

 

 

子供のように拗ねてる氷室さんは、中々レアだ。

 

 

「ちなみに、どれ欲しかったの?」

 

 

「これだよ」

 

 

彼が指差したのは、プラモデルの入っているUFOキャッチャーだった。

 

 

「よーし、なら僕が氷室さんの敵討ちをしよう!」

 

 

「ヘッ、良いとこを取られるのが大人の定めってもんなんですねー」

 

 

………………氷室さん、キャラが。あなた、キャラが変わってますよ。

 

 

「じ、じゃあ………………行きますよ」

 

 

そう断って、200円を入れる。そして操作ボタンをカチカチと押して、アームを動かしていく。

 

 

「その景品、普通に掴んでも無理ですよ。重いので、すぐに落ちますんでー」

 

 

「って、思うでしょ氷室さん?」

 

 

「はい?」

 

 

僕の返しが予想外だったのか、怪訝な表情を浮かべる氷室さん。

 

 

「しかしですねぇ……………こういうのは計算してやるんですよ。景品の重心や、アームの形状等々を、ね!」

 

 

位置を決め、決定ボタンを押す。クレーンはスッと降りていき、アームは景品をがっちり掴んだ。そのまま持ち上げていく。

 

 

「いや、まぁね。ここまでは私も行ったんですよ。ですがね、持ち上げられたのもほんの数秒だけでして。ほら、そろそろ落ち」

 

 

「あ、ゲットしたー!」

 

 

「なんですとぉ!?」

 

 

親戚の子の声に変な声をあげる氷室さん。中々レアだ。

 

 

「ありがとう、創真さん!」

 

 

「別にこの程度、どうってことないよ」

 

 

「………………………………」

 

 

「ひ、氷室さん!そう落ち込むことないですって!今度コツとか教えますから、リベンジしましょ!ね?」

 

 

「………………今日はやけ酒です」

 

 

思っている以上に気にしていたようだ。

 

 

「さ、さて。そろそろ帰りましょ?」

 

 

「そうだねー!よーし、帰ったら組立て始めよっと!」

 

 

「て言うか、このクレーンゲームって悪徳系なんじゃないですかね?何か細工をして取りづらくしてるとか…………」

 

 

「そう言うことは言わなくて良いんです!そんな根拠もない噂を立てたら我々は間違いなく出禁になります!行きますよ!」

 

 

現に店員に睨まれてたし、2人と共に早々と退散するのであった………………このとき、僕らの方を注目している奴等がいたことに気付かずに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

================

帰路を歩く3人の前後には誰もいず、静かだった。

 

 

「フンフン、フンフフーン~♪」

 

 

鼻歌を歌う親戚の子。相当ご機嫌だ。対称的に氷室はムスッとつまらなさそうな表情を浮かべていた。

 

 

「氷室さん、まだ気にしてるんです?」

 

 

「してません」

 

 

「してますよね?」

 

 

「……………してません」

 

 

「やっぱりしてますね。その反応ではバレバレです」

 

 

「ムゥ……………………」

 

 

氷室はそっぽを向く。創真はやれやれ、と苦笑いを浮かべる。

 

 

と、その時だった。

 

 

「はい、ちょっとストーップ!!」

 

 

後ろから大きな声がして、彼等が振り返るとそこにはピアスを付けたチャラい男とその男にピッタリくっつくこれまたチャラい女、多分彼女らしき人物がした。

 

 

「いやーそこの君、さっきは凄かったねー!クレーンゲームで1発でその子供が持ってる景品を取るなんてさー!」

 

 

べらべらと大声で喋る男。創真は、『うわー何か変な奴に絡まれたー』、と内心でため息をつき、氷室は、『んだよ、とっとと要件言えよチャラ男が』と毒づき、親戚の子供は、『ピアス痛くないのかな』と変な心配をした。

 

 

「はぁ、そりゃどーも。じゃ、失礼します」

 

 

「ちょ待てって。要件はこれから言うからさ」

 

 

「………………………?」

 

 

怪訝な表情を浮かべる3人に、男はにこりと笑みを作りながら云った。

 

 

「その景品、俺にくれない?」

 

 

「無理」

 

 

創真が即答で答えた。

 

 

「いや、欲しいなら自分で取れば良いじゃん。何で見知らずの人にあげなきゃいけないわけ?と言うわけで欲しいなら自分で頑張っ」

 

 

創真が言い終わる前に、男の蹴りが飛んできた。しかし、創真は腕でガードした。

 

 

「ったく、ごちゃごちゃうっせーな。黙って渡せば良んだよ。カッコつけてンじゃねーぞ、クソガキ」

 

 

豹変した男。これが本来の性格なのだろう。

 

 

「あーあ、怒らせちゃった。どーなっても知らないよー?ゆーくん、めっちゃ強いからねー?」

 

 

女がニヤニヤ笑いながら創真らに言う。

 

 

「おい、これが最後だ。それ、渡せ」

 

 

男が氷室の陰に隠れている親戚の子が持つ景品を顎で指す。

 

 

「……………はいはい、分かったよ。あげればいんでしょ」

 

 

めんどくさそうに創真は云い、親戚の子に渡すように促す。彼は渋々と言った様子で、創真に渡した。

 

 

「ちなみに聞くけど、これをどうすんの?」

 

 

「あ?んなの、メ〇カリで売るに決まってンだろ。その景品、中々レアだからな。一万は行くぜ」

 

 

「ふーん………………………」

 

 

創真は景品を男の前に差し出し────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、あーげた」

 

 

そう言いながら創真は景品を上にあげて見せた。

 

 

「………………………は?」

 

 

「いや、何を勘違いしてるのかしらないけど、僕はあげるとは言ったけど、君にあげるとは一言も言ってないんですけど?僕は元から上にあげるつもりだったのに、お前が都合の良いように僕がこれをあげるって勘違いしただけだろ。てか、お前転売ヤーだろ。僕、転売反対派なんで、あげませーん」

 

 

「舐めんなよ、ガキが!」

 

 

男はパンチの雨を放つが、創真は余裕で回避する。

 

 

「おやおや、大丈夫かい?全然当たってないけど」

 

 

「うっせぇ!オラァ!」

 

 

「はい、外れ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3分後

 

 

「はぁ……………はぁ…………」

 

 

男は息が絶え絶えになっていた。対して創真は余裕そう。

 

 

「あのー、もう飽きたんで帰って良い?」

 

 

「私も帰ってやけ酒が飲みたいです」

 

 

「調子に………………乗るなァ!!」

 

 

「はぁ。じゃ、正当防衛の時間だ」

 

 

そう宣言した創真は、男の放ったストレートのパンチの勢いを利用して、背負い投げを決める。見事に決まり、男は地面に叩きつけられる。

 

 

「かはっ…………………」

 

 

「残念だったねー。相手が悪かったみたいだよー」

 

 

「ゆーくん、しっかりして!あんた、警察に言うわよ!」

 

 

「あ、良いよ呼んで。こいつが僕に対して暴力振るってるの全部動画取ってあるから、警察の人と一緒に動画の観賞会でもしようじゃないか」

 

 

創真の言葉に、氷室はスマホをちらつかせる。

 

 

「うっ…………………べ、別に良いけど?どうせなにもしてない私には何もないだろうし、何かあるとしたらゆーくんだけだし?」

 

 

「は?お前、俺を見捨てるのかよ!?」

 

 

「弱い男なんて興味ないし」

 

 

「んだと、偏差値30の女が生意気言ってるんじゃねーぞ!」

 

 

「30じゃないし、32だし!てか、あんたも同じようなもんでしょ!」

 

 

2人は創真らを蚊帳の外に喧嘩を始めた。

 

 

「よーし、帰るか」

 

 

「え、良いんですかほっといて」

 

 

「良いんだよ、ほっといて。後は勝手にやってろって感じ。あ、それとこれ返すね」

 

 

創真は景品を親戚の子に渡した。

 

 

「いやー、どうなるかと思ったけど、とりあえず何とかなって良かったわ」

 

 

「てか、あっちが勝手に仲間割れ的なのを始めただけなんですけどね。やれやれ…………」

 

 

氷室が呆れ口調でため息をつく。

 

 

「それにしても、創真さんは強かったですね!」

 

 

「そう?相手が弱すぎただけだよ。何も考えずに来るもんだから、避けやすくてしょうがないね…………にしても、何か無駄な時間を過ごしちゃったなぁ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、風の噂で、路上でギャーギャー騒いでいた男女が近所からの通報で駆けつけた警察官にお灸を据えられたとか据えられてないとか、そんな話を創真は耳にしたのだった。



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第23話 転校生の時間

今回の後書きでちょっと募集の事を説明します!


それではどうぞ!


創真side

 

 

やれやれ今日から通常授業か。それにしても今日はフェラーリで登校か。僕も一応男だ。こういうスポーツカーは嫌いではない。ただ、通学に使うのはどうかと思うだけだ。

 

 

「そう言えば今日は何故こんなに早く登校するのですか?いつもより30分程早いですが」

 

 

運転席の氷室さんが聞いてきた。

 

 

「今日はいつもより早起き出来たから射撃の朝練でもしようかと思って」

 

 

「なるほど。それともうひとつ。この無数の工具箱はなんですか?」

 

 

「第2のマシンの開発に必要な道具です。昼休みに開発を進めるためにね」

 

 

「ついに第二弾ですか。今回はどのようなものを?」

 

 

「マシンカブトは小さい代わりに活動可能時間が短い。だから今回は大型の物を作ろうと思ってます。殺せんせーの暗殺用です」

 

 

「ちなみに他にも考えているマシンはあるんですか?」

 

 

「そうですね、第三弾は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

読者に考えてもらいますか」

 

 

 

「それは良いですね。作者も他の方面に頭を使えますし」

 

 

さーて、メタイ発言はこれくらいにしようか。あ、募集は本気です。活動報告欄で募集します。こんなマシンがあったら良い、とかなんでも良いので宜しくお願いします!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

取り敢えず学校に着いた感想。

 

 

なんだあの黒い箱は?まさかあれが転校生なのか……?いや、そんなはずない!あり得ないね!……………マジであれが転校生?

 

 

それよりも、射撃特訓するか。ちなみに全部的の中心に当たった──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────そして予想も当たった。やはり転校生だったようだ。

 

 

「ノルウェーから転校してきた自律思考固定砲台さんだ。仲良くしてあげてくれ」

 

 

烏間先生、苦労するね……僕だったらつっこみきれずにおかしくなる。

 

 

「言っておくが彼女は思考能力と顔を持ち、れっきとした生徒として登録されている。あの場所からずっとお前に銃口を向けるがお前は彼女に反撃できない。生徒に危害を加えないのがお前の教師としての契約だからな」

 

 

どうも、契約を上手く逆手に取ったようだね。

 

 

「いいでしょう!自律思考固定砲台さん。あなたをE組に歓迎します!」

 

 

こうして機械の生徒が一人加わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業が始まっても、皆は自律思考固定砲台の事が気になっている様子だった。しかしながら固定砲台なのにどこにも銃は付いてないぞ。

 

 

ということは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

案の定、自律思考固定砲台の側面が開き、銃が展開された。射撃を開始するが、殺せんせーは楽々と避けていく。

 

 

「実に濃密な射撃ですが、ここの生徒は当たり前にやってますよ。それと授業中の発砲は禁止ですよ」

 

 

殺せんせーの言う通り、授業の迷惑になるからね。これで分かったら、授業中の発砲は控e

 

 

「気を付けます。続けて攻撃に移ります」

 

 

…………今気を付けます、って言ったよね?何で攻撃に移る?自律思考固定砲台はぶつぶつ呟き始めた。射格修正とか聞こえたから………これは進化か?

 

 

再び自律思考固定砲台は攻撃を開始した。しかし、特に何も変わってないな。所詮は機械。まぁこんなもの…

 

 

バチュッ!!

 

 

「なに………!?」

 

 

「右指先破壊。増設した副砲の効果を確認」

 

 

なるほどね。武装を改良したのか。恐らくブラインドと言ったところか。

 

 

………考えたものだ。

 

 

「次の射撃で殺せる確率、0.001%未満。次の次の射撃で殺せる確率、0.003%未満。卒業までに殺せる確率、90%以上」

 

 

いや~とんでもない機械だね。

 

 

「よろしくお願いします。続けて攻撃に移ります」

 

 

この言葉の通り、1日中ずっと攻撃は続いた。そして弾拾いは何故か僕らがやった。

 

 

………………いや、ふざけんな。

 

 

その不満は皆も同じだった。だから当然……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、固定砲台はガムテープでぐるぐる巻きにされていた。

 

 

「これでは銃を展開できません。拘束を解いてください」

 

 

「う~む。そう言われましても」

 

 

勿論、殺せんせーは了承しなかった。

 

 

「この拘束はあなたによるものですか、殺せんせー?だとすれば私への危害であり、それは契約で禁じられているものですが」

 

 

「違げーよ。俺だよ。どー考えたって邪魔だろうが。常識位身に付けてから殺しに来い」

 

 

たまには良いことするな、寺坂。

 

 

「先生がこういうことしちゃダメだけど、僕ら生徒もダメ………っていうルールはないよね?何か言いたいことあります?」

 

 

僕の指摘になにも言えなくなった固定砲台は画面から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後

 

 

「やれやれ、今日は実に静かだったわ。にしても、これから毎日ガムテープで拘束されるのかね…」

 

 

帰ろうとしたその時だった。殺せんせーが僕の目の前に現れた。

 

 

「待ってください創真君。実は君に頼みたいことがあるのです」

 

 

「頼みごと?」

 

 

「はい。実は………………………をしてほしいのです」

 

 

それはめんどくさい頼み事だ……本来やる義務はないが…………この拘束が続いても固定砲台が可愛そうだし。

 

 

「分かった。やるよ。その代わり請求書は後でちゃんと送るからね」

 

 

「にゅや!?そ、そんな……」

 

 

果たして創真は何を頼まれたのやら




というわけで……創真のマシンシリーズを募集します!


活動報告欄に書き込んでください!


例えばこんな感じで。


例 マシンカブト


能力 小型の為、凄く小回りが効いて、角は対先生物質で出来ていて、突進が主な攻撃方法。




これは例なので、書き方はお任せします。名前だけでも良いです。ただ、どの虫や動物が元なのか分かるようにお願いします。


能力は書いても書かなくても自由です。


ただ、書いてもらった方が、皆さんが描写を想像しやすくなると思います。


期限は無期限です。一人何個でも構いません!


活動報告欄に書かれた時点でそのマシンはかならず近日中に登場させる予定です。



たくさんの案を待ってます!


分からないことがありましたら活動報告欄で聞いてください!


それでは次回でお会いしましょう!


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第24話 改良の時間

ほぼ原作通りです。


ではどうぞ!


殺せんせーは固定砲台の改造に使う、協調に必要なソフトが必要な分の半分を作ってほしいと頼んできた。固定砲台を改良するそうだ。マッハ20なら自分で作れよ……そう思うのだが、僕が作った方が性能が高くなると思って殺せんせーは依頼してきたとでも解釈しておくか。

 

 

ま、あのタコより機械系に詳しい自信があるし。

 

 

「災難ですね、創真様。残業を頼まれてしまうなんて」

 

 

「いや、丁度良いですよ。ちゃんと完璧なソフトを作ってあのタコから報酬金をたっぷり貰ってやる。何円絞り取れるかな~」

 

 

そんなこんなで、自分でも驚くべき早さでどんどん作業を進めていき、開始から3時間。ついに完成した。日はとっくに暮れて、時刻は7時を過ぎていた。

 

 

「さーて、行きますか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………夜の学校って意外と恐いな」

 

 

まぁ不審者なら氷室さんがついてるから大丈夫だが。ただ、幽霊とかお化けとかオカルト系のが出てもらったら困る。そんな事を考えながら教室に入ると既に殺せんせーが居た。

 

 

「創真君、頼んだものは出来てますか?」

 

 

「ええ、頑張りましたよ」

 

 

──────────金のために

 

 

「何を始めるのですか?」

 

 

「協調に必要なソフトやメモリを追加します。改造行為は契約違反ではありませんからねぇ」

 

 

固定砲台の裏側を外して、殺せんせーと伴に作業を開始した。

 

 

「何故このような事をするのですか?あなたの命を縮めるような行為ですよ。創真さんも、昨日はさんざん迷惑を掛けたのに何故……………?」

 

 

「うん?だって、僕も君には協調性を身に付けてもらいたいもん。そして、クラスの皆と仲良くなってほしいしね」

 

 

──────────ついでに金のためにもやってる。

 

 

「標的である前に先生ですから。あなたの学習能力と学習意欲は大変高い。その才能は君を作った保護者のおかげ。その才能を伸ばすのは、生徒を預かる先生の役割です。皆との協調力も身に付けて…どんどん才能を伸ばしてくださいね」

 

 

…………………やはり良い先生だな。良い人…………いや、そもそも人じゃない。良いタコすぎる、だな。

 

 

「…殺せんせー。この世界スイーツ店ナビは協調に必要ですか?」

 

 

「ご安心を。ちゃんと削除しときます。メモリの無駄でしかない」

 

 

「そ、そんな……」

 

 

そんなわけで作業は夜中まで続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

 

翌日

 

 

「烏間先生に苦情言おうぜ。あいつと一緒だとクラスが成り立たないって」

 

 

杉野と渚が話ながら教室に入ると─────

 

 

「……なんか体積増えてる?」

 

 

──────杉野が固定砲台の変化に気付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、おはようございます!杉野さん!渚さん!」

 

 

昨日と違って超明るかった。2人は素直に驚いた。

 

 

「あ、おはよう二人共……」

 

 

そこへ眠そうな創真がやって来た。

 

 

「あ、ちゃんと機能してたか……良かったわ」

 

 

「これ創真君が?」

 

 

「そうだ。まぁ、殺せんせーも一緒にやったけど。と言うわけで僕は超眠い。なので起こすなよ?」

 

 

椅子にすわったとたん、創真は寝始めた。

 

 

「……先生の給料が……先生の給料が……」

 

 

「どうしたの殺せんせー?ぶつぶつ呟いてるけど……」

 

 

渚が聞くと、殺せんせーは泣きながら云う。

 

 

「どうしたもこうしたも!創真君に報酬ということで大金を持ってかれたのです!お陰で先生の財布の中身…………5円!」

 

 

果たして何円持ってかれたのやら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

起きたのは二時間目の休み時間。見れば、皆は固定砲台と仲良く話していた。皆から律と名付けられ、気に入ったそうだ。

 

 

「これ創真も手伝ったの?やるね~」

 

 

「やるね~って、めっちゃ疲れたよ、カルマ君。夜中までやってさ…………まぁ」

 

 

────────得たもの()は大きかったが。

 

 

「ははは……でも上手くやっていけそうだね」

 

 

「渚君、それはわからないよ?」

 

 

「創真の言う通り、今はプログラムで動いてるだけだからね。あいつがどうするかはあいつの保護者が決める事だよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日

 

 

「みなさん、おはようございます」

 

 

元に戻された。ちくそう。

 

 

烏間先生曰く、改造行為も今後は危害とみなすらしい。

後、ガームテープで縛ったりして壊れたら賠償請求するそうだ。あの苦労を全て泡にしやがった………くそ!!

 

 

「攻撃準備をします。どうぞ授業をしてください」

 

 

あーもうまたあの射撃か?頼むから勘弁してよ。それは皆も同じ気持ちだった。

 

 

そして、律の側面が展開された。来るか……と思ったら出たのは弾ではなく、花束だった。

 

 

「もしかして………」

 

 

「矢田さんと花を作る約束をしていました……………殺せんせーと創真さんの設置したソフトやプログラムはマスターにほとんど撤去・削除・初期化されましたが、私個人は『強調』が暗殺に必要要素と判断し、消される前に関連ソフトをメモリの隅に隠しました」

 

 

「素晴らしい!律さん、あなたは!」

 

 

「はい!私の意志でマスターに逆らいました!」

 

 

「ああ…良かった……苦労が無駄にされなくて良かった~!」

 

 

おっと、思わず口に出してしまった。

 

 

「殺せんせー、このような行為を反抗期と言うのですよね?律は悪い子でしょうか?」

 

 

「とんでもない。中学生らしく大いに結構!」

 

 

殺せんせーは顔に丸を浮かべた。こうして律が新たに仲間に加わった。やはりこの教室は面白いな。




宜しければ、感想・評価・お気にいり登録お願いします!

マシンシリーズもどんどん案を活動報告欄に書いてください!


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第25話 再会の時間

創真side

 

 

「もうすっかり梅雨ですね」

 

 

運転席の氷室さんが話し掛けてきた。

 

 

「そうですね……………じめじめするからあんま好きじゃないんですよねー」

 

 

「私も同じくです……………そう言えば創真様はクラスにすっかり溶け込んでますね」

 

 

「ま、あそこは良い連中ばかりですから。前の学校とは大違いだ」

 

 

「前の学校では友達と呼べる人は居なかったのですか?」

 

 

うーん……あ、いたな。

 

 

「いましたよ。月城 隼って言う奴が。しかも今椚ヶ丘にいます。テストのランキングに載ってて驚きましたよ」

 

 

「………………それはとんでもない偶然ですね」

 

 

「偶然にも程がありますよ……………氷室さん、ちょっとそこのコンビニ寄ってくれますか?」

 

 

「お?もしや、噂の隼君がいたのですか?」

 

 

残念ながら──────

 

 

「いや、ここに美味しいケーキがあると倉橋さんから紹介してもらったことがあるので……」

 

 

──────隼じゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ありがとうございました!」

 

 

店員の良い声が店内に響いた。

 

 

「ふむ、美味しそうだな…このケーキは。明日倉橋さんにお礼を言わないと」

 

 

しかし、500円とは意外と高い。

 

 

「お待たせしました氷室さん。行きましょう」

 

 

「創真様、あれは神崎さんでは?あそこの路地裏で誰かに絡まれてませんか?」

 

 

氷室さんが指した方向を見ると……ああ神崎さんだね、うん。

 

 

───────なんて呑気に言ってる場合じゃない!

 

 

「助けるのならお任せあれ。私がボコボコにしてきましょう」

 

 

「いや、流石にボコボコは不味いですって………」

 

 

その時、僕はある人物が路地裏に入っていったのに気付いた………………噂のあいつだ。

 

 

「いや……どうやら僕らが手を下す必要は無さそうですよ」

 

 

「ほう?」

 

 

「噂のあいつの、おでましです…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

 

 

「俺らと遊ぼうぜ~姉ちゃん」

 

 

「いや…あの…」

 

 

神崎は帰ってる途中手を掴まれ、この路地裏で男二人組に口説かれていたのだ。

 

 

「絶対楽しいって!さ、行こ行こ!」

 

 

手を掴み、停めてある車へ入れさせようとする。

神崎も抵抗してるのだが、力が強いため、どんどん引っ張られていく。

 

 

(誰か助けて……!!)

 

 

そんな願いが通じたのか、誰かが近寄ってきた。

 

 

「やめな、お兄さんら。そんな強引じゃ、モテないぜ?」

 

 

「あ?中防は黙ってな。女の前でカッコつけようとすんなよ!」

 

 

「言いたいことはそれだけか?」

 

 

彼はみぞにパンチをお見舞いした。男は声にならない悲鳴をあげ、倒れた。

 

 

「最近の中学生は……いろいろ習ってんだよ。お前もやるか?」

 

 

恐れをなしたのか、もう一方の男はうずくまってる仲間を連れて車で逃げていった。

 

 

彼は神崎に声をかけた。

 

 

「大丈夫?」

 

 

「は、はい。それよりありがとうございました。私は神崎 有紀子と言います」

 

 

「え、あ……………お、俺は月城 隼。あ、お、同じ椚ヶ丘なんだ。また会うかもね。じゃ、き、気を付けてね」

 

 

噂の隼は颯爽と(?)去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほほう。かっこいいですね、彼は」

 

 

「ま、あいつこういうのは得意だからな」

 

 

その時、フェラーリの車の窓がノックされた。創真はけだるそうな様子を見せながら窓を開ける。

 

 

「どちら様ですかー?田中さんですかー?」

 

 

「田中じゃねーよ!そもそも誰だよ田中って?ったく…………久しぶりだな創真」

 

 

「精々3ヶ月位だろ。まぁ、良い。久しぶり、隼」

 

 

「おう。てか、お前見てただろ?」

 

 

隼の追及に創真は笑みを浮かべながら答える。

 

 

「あぁ、見てたとも。うちのクラスメートを助けてくれてどーも、田中さん」

 

 

「なんで田中の名前が出てくるんだよ!ほんと、誰だよ田中って!?……………あーお前と話してると疲れる疲れる。俺はそろそろ帰るわ。じゃ、また今度な」

 

 

弄られて疲れたのか、隼は手をヒラヒラ振りながら去っていった。

 

 

「彼は中々戦闘力が高いですね?」

 

 

氷室の問い掛けに創真はええ、と言って続ける。

 

 

「彼は色んな武術を習ってましたからね。まぁ、いくら強いと言えども、僕には及びませんね」

 

 

相変わらずのNo 1アピールの創真に、氷室は苦笑した。

 

 

「さて…………帰りますか」

 

 

「そうですね。帰ったらケーキを食べよっと♪」

 

 

to be continue……




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第26話 模擬暗殺の時間(前日編)

タイトルが思い付きませんでした。


今回は第2のマシンシリーズの宣伝と原作のミックス……的な感じです。
本番は次回からです。だから今回は内容は薄いです。


ではどうぞ!


創真side

 

 

突然だが、ビッチ先生の授業は面白い。自分の体験談を語ってくれたり、海外のドラマを見せてくれたりと、飽きない授業をしてくれくれる。

 

 

しかし、問題点が一つある。

 

 

何故か問題に正解だろうが不正解だろうが、公開ディープキスしてくるのだ。あの先生は完全に痴女だ。

 

 

え?僕はされたか?

 

 

いや、まだされてない。と言うか、されないと思う。ビッチ先生の授業の時、廊下には氷室さんを待機させてある…………特殊警棒を持たせて。別に『僕にキスしたら、あんたボッコボコやで!?』とか、そんな脅迫はしてないのだが大人の勘又は何となく察したのか、ビッチ先生は僕にディープキスはやってこない。

 

 

ファーストキスの相手がビッチ先生だなんてごめんだ。

 

 

 

「創真様?誰に語っておられるのですか?」

 

 

おっと、危ない危ない………そもそも氷室さん知ってますよね?まぁ、この話は置いといて。さて、僕は放課後、学校に残って第2のマシンシリーズを完成させた。

 

 

「これがマシンシリーズの第2弾ですか……前より大型化しましたね?」

 

 

「そう。今回はガチで対殺せんせー用に作りました。名前は………そうですね、マシンスコーピオンにしますか」

 

 

特徴としては、尻尾に当たる部分からBB弾を発射する。基本的にホバー移動。ジャンプが可能(20㎝程度)で、基本色は紫。大型のため、バッテリー容量も大きいので活動可能時間は最大一時間。

 

 

「早速明日から試しますか?」

 

 

「まだ自動操作用のプログラミングが終わってないから…試運転はお預けです……そろそろ帰りますか」

 

 

今日は外装だけで、肝心のプログラミングは自宅で済ませる予定だ。マシンスコーピオンをケースにしまって、教室のドアを開けると、ばったり謎の男と会った。

 

 

「誰ですか?明かにここの者ではないですね?」

 

 

不審者と判断したのか、氷室さんが特殊警棒を胸元から取り出そうとした。

 

 

「別に怪しい者ではない。私はロヴロ・ブロフスキと言う者だ。殺し屋屋だ」

 

 

なら、ここと関係あるか。ん?殺し屋屋……?

 

 

「要は殺し屋を斡旋するという事ですかね?」

 

 

「そういうことだ」

 

 

なるほど、斡旋人の人か。

 

 

「なんで殺し屋屋がここに来たんですか?」

 

 

「イリーナを撤収させるためにここに来たんだが…………奴の提案で明日模擬暗殺をすることになった」

 

 

奴…………ああ殺せんせーか。上海行ってた筈だけど戻ったんだ。気づかなかったなー……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………ん?撤収させる?

 

 

「なんでビッチ先生を撤収させるんですか?」

 

 

「……あいつはここの仕事に適してない。素性を隠した潜入暗殺ではあいつの才能は比類ない。だが、一度素性が明かされればひと山レベルの殺し屋と一緒だ」

 

 

なるほど。筋が通っている。否定のしようがない。しかし、ロヴロさんの考えを真っ向から否定する者がいた。

 

 

それは──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかしながら、私はイリーナ先生は残ってもらった方が良いと思います」

 

 

────────氷室さんだった。

 

 

「その訳は?」

 

 

「私は4月からこの教室に来てますから、あなたより色々知ってます。恐らく明日の模擬暗殺で私がこのように言う訳分かると思います」

 

 

「ほう……ならばその訳が分かるのを楽しみにしてるよ。その前に私が仕止めなければの話だが」

 

 

ロヴロさんはそう言って去っていった。

 

 

「氷室さん、一体何を見たんです?やけに自信満々でしたけど」

 

 

「創真様。お楽しみは最後まで取っておく物ですよ」

 

 

別に楽しみとかではないんだけど、まぁ良いや。

 

 

「そう言えば明日の模擬暗殺のターゲットは誰がやるのでしょうか?」

 

 

「多分烏間先生だよ。絶対殺せんせーじゃ務まらないわ。煩悩だらけだし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

 

 

職員室からその会話を聞いていた殺せんせーは心に傷を負った。

 

 

「創真君………ひどいですよ……私は煩悩だらけじゃありません!ね?烏間先生?」

 

 

「彼の云う通りだろうが」

 

 

パソコンの画面を見つめながら烏間は答えた。無論、殺せんせーがさらに落ち込んだのは言うまでもない。




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次回から模擬暗殺開幕です!


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第27話 模擬暗殺の時間

創真side

 

 

「……と言うわけだ」

 

 

体育の訓練の終了後、烏間先生は模擬暗殺の事を説明した。ま、やっぱターゲットは烏間先生だよね……殺せんせーだとダメな点か多すぎるから。

 

 

「迷惑なことだが君達には迷惑を掛けない。普段通り過ごしてくれ」

 

 

本当にご苦労様です。

 

 

「今日の体育はここまで!」

 

 

「「「ありがとうございましたー」」」

 

 

「烏間センセー!」

 

 

お、先に仕掛けたのはビッチ先生だ。しかも正面から来るか……………果たしてどんな手を使うのか?

 

 

「お疲れ様でした~喉乾いたでしょ?これ、冷たい飲み物!」

 

 

………………………絶対なんか入ってるよな?おいおい、それくらい誰にでも分かるのだが。

 

 

「……筋弛緩剤と言ったところか。動きを鈍らせ、その隙に刺す。……言っとくがナイフが届く間合いまで近づかせないぞ」

 

 

完全に読まれたビッチ先生は何も出来ず、その間に烏間先生は去っていった。この勝負は圧倒的にビッチ先生は不利だ。

 

 

何故なら、烏間先生には色仕掛けは通用しない。その為、色仕掛け以外の自分の持つ技能で勝負しなければならない。さて、どうするビッチ先生?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

舞台は職員室へ移る。

 

 

烏間はパソコンで作業をしていた。ビッチ先生は隙を伺っているだけで、手は出せない。一方、ロヴロは既に職員室の前に立っていた。

 

 

(……警戒している相手を倒すには…卓越したスピードと技能が必要。それがイリーナ。お前に足りないものだ)

 

 

そして、正面から職員室へ突入した。

 

 

「……っ!」

 

 

烏間は一瞬反応が遅れた。椅子を引こうとしたが動かない。事前にロヴロが床に細工をしたのだ。

 

 

 

(あとはナイフを当てるだけ……!!)

 

 

 

 

 

 

 

が、

 

 

 

 

 

 

 

烏間はロヴロの腕を掴み、机にぶつけ、そこに膝蹴りをロヴロの頬に喰らわせた。寸止めではあるが。

 

 

「先日まで精鋭部隊にいた人間を容易く殺せると思ったものだな……分かってるな?今日殺せなかったなら……」

 

 

((ヒ、ヒィィィィィーー!!))

 

 

ビッチ先生はともかく殺せんせーもビビっている。原作読んでる人は知っているとは思うが、既に殺せんせーと烏間先生はある約束をしている。

 

 

その内容は烏間が暗殺を退けたら……殺せんせーは烏間先生の前で1秒間じっとする。

 

 

「くっ……………どうやら俺はここまでのようだ」

 

 

ここでロヴロはリタイアになった。腕を負傷したのだ。

 

 

あとはビッチ先生だけ。

 

 

(……っ!どうすれば……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼食の時間、創真は珍しく1人で窓の外を見ながら弁当を食べていた。烏間先生は校庭の木のそばでハンバーガーを食べている。

 

 

そこへ近づく女が1人いた。

 

 

「さぁ、ビッチ先生。見せてください……あなたの秘策を」

 

 

恐らくこの暗殺が失敗ならば、もう勝敗は決まったもの。創真はそう予想していた。創真はスマホに繋がっているイヤホンを付ける。烏間先生がもたれている木の側に既にマシンカブトを待機させてあるのだ。

 

 

(さぁ……………どうなる?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

外では

 

 

「ちょっと良いかしら、カラスマ」

 

 

「……なんだ?模擬暗殺でも手加減しないぞ」

 

 

「でもね、私はここに残りたいの…」

 

 

バサッ!と上着を脱ぎ捨てた。

 

 

「ね?だから良いでしょ?一度当たってくれれば良い話よ。そしたらイイコトしてあげるわ」

 

 

2度目だが、烏間には色仕掛けは通用しない。

 

 

「(……この程度か。ナイフを奪っておしまいだな)良いだろう。やれよ、何処からでも」

 

 

「うふ。うれしいわ」

 

 

そんな彼等を他所に、少し離れた所で殺せんせーとロヴロが話していた。

 

 

「ロヴロさん。彼女の授業スタイルは克服です。様々なことに挑戦と克服を繰り返してきたから、彼女はいろんな言語を自由に操れるのです。そんな挑戦と克服のプロがここに来て何もしてないとでも……?」

 

 

バックを見せるとその中には───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、そっちに行くわね」

 

 

烏間の視界からビッチ先生が消えた。その瞬間

 

 

グワン!

 

 

烏間先生は何をされたか気づいた。同じく、創真も気づいた。ワイヤートラップだ。ビッチ先生の服と木を使い、そして色仕掛けでカモフラージュ、といった複合技術。すぐさまビッチ先生は烏間の上に股がり、ナイフを振り下ろした……!!

 

 

「く!危なかった……!」

 

 

しかし、烏間はギリギリでナイフを持った手を受け止めた。

 

 

「力では勝てない。さぁ、どうする?」

 

 

創真が……いや、いつのまにか皆が見守るなかビッチ先生が取った行動は?

 

 

「カラスマ……殺りたいの…ダメ?」

 

 

イヤホンから聞こえてきたビッチ先生の声に創真も流石に呆れてしまった。

 

 

「殺らせろとすがる暗殺者がいるか!………もう良い!諦めの悪い奴に1日も付き合ってられるか!」

 

 

烏間は手を離し、ナイフは当たった。ビッチ先生、残留決定だ。

 

 

「え、模擬暗殺がこの結末?うそーん」

 

 

少々つまらなさそうと言うべきか。創真は複雑そうな表情を浮かべる。

 

 

「創真様、イリーナ先生の勝ちのようですね」

 

 

いつの間にか教室に入ってきた氷室が創真に話しかけてきた。

 

 

「…………最後のはちょっと不満ですがね」

 

 

「ま、勝ちは勝ちですから」

 

 

「まぁ…………………そうですけど」

 

 

いまだ不満そうな創真は、マシンカブトを回収しようと窓を開けると、ビッチ先生とロヴロの会話が聞こえてきた。

 

 

「出来の悪い弟子だ…先生でもやってたほうがましだな。必ず殺れよイリーナ」

 

 

「はい!!」

 

 

「…………………………」

 

 

創真はふぅ、と息をつく。

 

 

(まぁ……………良しとするか)




次回はイトナ襲来……!


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THE NEXT story 12/14 PM9: 00


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第28話 転校生の時間 2時間目

創真side

 

 

「さて、今日から転校生が来るのは聞いてますね?」

 

 

どうせ殺し屋だろう。これで三人目か。一人はスーパー天才─────自分で言うな?事実を言っただけですけど何か?(煽っていくスタイル)

 

 

二人目は進化する固定砲台。

 

 

さて、三人目はどんなやつだ?

 

 

 

「律、何か情報ある?」

 

 

「はい、少しだけ。彼は近距離での暗殺をして、私は射撃で援護する予定でしたが……彼の調整に時間が掛かった事と、私の力が彼をサポートするのに不足しているという理由でキャンセルになりました。そこで重要度の下がった私から送り込まれたのです」

 

 

律がその程度の評価か………てことは今回の転校生はただ者ではないな。その時、教室のドアが不意に開いた。皆が注目すると……全身を真っ白の服で包んだ人が現れた。

 

 

この人が転校生なのだろうか……?

 

 

「あ、私は転校生じゃないよ。転校生の保護者さ……全身真っ白だし……シロとでも呼んでくれ」

 

 

皆の疑問に気づいたのか、説明してくれた。声からして男か。

 

 

「それでシロさん。肝心の転校生は?」

 

 

殺せんせーが聞くと───────

 

 

「彼は何分特殊なものでね。私が直に紹介するよ」

 

 

そう言って殺せんせーに贈り物の羊羮をあげた。

 

 

「…………??」

 

 

ん……………渚の方を見てるのか?

 

 

「なにか?」

 

 

「…………いや、皆良い子そうだなぁ。これなら馴染みやすそうだ。では紹介します。おーいイトナ!入っておいで」

 

 

イトナって名前なのか。どんな人なんだろうな…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドカン!!

 

 

壁が崩れ落ちる音と伴に、転校生が入ってきた。

そして椅子に座った。うん。ちゃんと入り口から入ろうか。

 

 

「俺は勝った。この教室の壁より強いことが証明された」

 

 

そんなものを証明して楽しいか?楽しくないよ、少なくとも僕にとっては。

 

 

「堀部イトナだ。名前で呼んであげてくれ。それと私過保護でね。しばらく彼を見守らせてもらいますよ」

 

 

………………なーんか今のシロさんの発言に引っ掛かる感じがした。気のせいかね?

 

 

「ねぇ、イトナ君。外は雨降ってるのにどうして濡れてないの?傘も持ってなさそうだし」

 

 

ん?あぁ……………確かに。イトナ君は回りを見渡して立ち上がった。

 

 

「お前はこのクラスの中ではかなり強い。だが俺より弱いから俺はお前を殺さない」

 

 

「………」

 

 

……………それ、答えになってます?

 

 

「俺が殺したいと思うのは俺より強い奴だけ。殺せんせー、あんたがそうだ」

 

 

「ヌルフフフフ、先生と力比べですか?私と同じ土俵にはたてませんよ?」

 

 

「いや、立てるさ。俺達兄弟だから」

 

 

 

ふーん。兄弟か。兄弟……兄弟………きょう…だい…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「兄弟!?」」」

 

 

嘘だろ………このタコとイトナ君が兄弟?えぇ……(困惑)

 

 

「お前を殺し、俺の強さを証明する。放課後に勝負だ。兄さん」

 

 

 

言いたいことは全て言ったのか、イトナは壁の穴から出ていった。その後、皆は殺せんせーに質問を浴びせていたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み

 

 

僕は1人廊下で考え事をしていた。

 

 

「どうしたのですか?皆さんとご飯を食べないのですか?」

 

 

氷室さんが不思議そうに聞いてきた。

 

 

「気になる点があるんですよ……」

 

 

「雨に濡れてない、とかですか?」

 

 

「それもそうですけど……殺せんせーとイトナ君を見比べてください」

 

 

イトナと殺せんせーの机の上には大量の甘いおかし、そして二人ともグラビアの本を読んでいた。

 

 

「確かに共通点が多いですね」

 

 

「堂々とマッハ20のタコを殺す宣言をしたんだ。何かしらの隠し兵器を持ってるはずですよ」

 

 

「ふむ……………例えば触手ですかね?」

 

 

「触手……………」

 

 

「触手なら雨も弾くことも出来そうな気がしますし、同じ触手を持つ殺せんせーとの共通点が多いですし。だから触手……いや、それはないですね。あんな子供が触手を持っているようには見えませんし、根拠もない滅茶苦茶な予想ですね。すみません、今のは忘れてください」

 

 

氷室さんはそう言って去っていった。でも……あり得るかもしれない。

 

 

整理してみよう。

 

 

・イトナは壁を壊し、雨に濡れてない。壁を壊すなら何らかの兵器が必要。

 

 

・傘は持ってなかった。

 

 

・そして、殺せんせーと共通点がある。

 

 

「イトナ君が触手を持っている、か………………案外、あり得そうだね」

 

 

触手が水も弾き、破壊力もあると仮定すれば全部当てはまる。殺せんせーと特徴が似てるのも納得がいく。

 

 

「………………………アレ、用意しておくか」

 

 

to be continue……………




THE NEXT story 12/15 PM 9:00(変更の可能性もあります)


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第29話 対決の時間

殺せんせーvsイトナvs例のアレ


マシンスコーピオンが現実ではあり得ないことしますが……ま、僕の理想的な感じで……


創真「は?僕のプログラムならそんぐらい出来るから」

父親「そうだ!俺の会社の作るパーツはお前の理想を実現するなど容易いわ!」



と、二人は主張してます……本編をどうぞ!


久しぶりの文字数3000越えますので……休憩とかして目が疲れないようにしてください。


ついに放課後になった。教室では机を使ってリングが作られている。

 

 

もはや決闘…………少なくとも創真にはそう感じた。

 

 

「ここは一つルールを決めましょう。リングの外に足がついたらその場で死刑。どうかな?」

 

 

シロが変なルールを提案した。

 

 

「なんじゃそりゃ。そんなルール誰が守るんだよ」

 

 

「いや、破れば先生としての信用が落ちる。だから殺せんせーは守ると思うけどね」

 

 

杉野の呟きにカルマが冷静にルールの裏を解説した。

 

 

「いいですよ。ただし、観客に危害を加えても失格ですよ」

 

 

イトナは無言で頷く。

 

 

「では、暗殺……開始」

 

 

その瞬間殺せんせーの触手は切り落とされた。殺せんせーの触手を切り落とした物体の正体は………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「触手!?」」」

 

 

(当たってしまったな……氷室さんの予想が)

 

 

皆は驚くなか、想定していた創真は内心やはりか、と呟くだけに終わった。

 

 

「………どこだ…」

 

 

殺せんせーの声には怒りがこもっていた。思わず皆ビクリとしてしまう。

 

 

「どこで手に入れた!!その触手を!!」

 

 

「さぁね。でもこれで分かっただろ?君達は兄弟だ。しかし、怖い顔するねぇ。何か嫌なことでも思い出したかい?」

 

 

シロは全て知ってるような言い方だった………創真にはそう感じた。

 

 

「どうやらあなたにも話を聞かなくちゃならないようです」

 

 

「無理だよ……死ぬから」

 

 

すると服の裾から光が放たれた。

 

 

「!?」

 

 

「この特殊な光を浴びれば、君の細胞はダイラタンシー現象を引き起こす。君の弱点は全て知ってるんだよ」

 

 

「死ね。兄さん」

 

 

イトナが触手によるラッシュを始めた。殺せんせーは圧倒され床に倒れた。その隙を逃がさず、さらに追撃を加える。

 

 

「殺ったか…!?」

 

 

「……いや、上だ」

 

 

寺坂の言葉に上を見ると……殺せんせーがいた。

 

 

「脱皮か……でもねその脱皮もエネルギーを結構使うんだよ」

 

 

イトナは再び攻撃を開始した。殺せんせーは相変わらず押されている。

 

 

「さらにさっき触手を再生させたね。あれも結構エネルギーを使うんだ。そして、触手によるダメージに動揺して立て直す暇もなく、攻撃は続く。今は互角ってところかな、さらに献身的な保護者のサポート」

 

 

再びシロはあの光を浴びせた。殺せんせーが硬直した隙にイトナがまた一撃を喰らわせた。足の触手が切り落とされた。

 

 

「これでまた再生しなくてはいけないねぇ。スピードが落ちて殺りやすくなる」

 

 

シロがクスクスと笑う。

 

 

「俺はお前より強い……兄さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…………そろそろ時間かな?)

 

 

高速バトルが繰り広げられている中、創真は教室の端にいた氷室に近づいた。

 

 

「氷室さん、例のアレは?」

 

 

「全てダウンロードし終わってます」

 

 

「よし……………悪いけど、殺せんせーは我々が殺したいんでね……………邪魔させて貰うよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

 

 

一方、殺せんせーは足の再生を終えた。

 

 

「再生が終わったね。次のラッシュに耐えれるかな?」

 

 

ドン!

 

 

皆が音のした方向を向くと、創真が机に大きなケースを置いていた。

 

 

「………なんだい?そこにいるとケガをするよ?」

 

 

「さて、ここで突然ですが創真君特製マシンの試作2号機の実戦テストを開始しまーす!」

 

 

「「「は?」」」

 

 

殺せんせーも含め、皆が間抜けな声を出してしまった。

 

 

「……………何を言ってるのかさっぱりだ。取り敢えず、邪魔しないでくれないか?」

 

 

「そりゃ、無理な相談だね」

 

 

創真はケースの持ち手についてるスイッチを押すと、プシューと言う音と伴にケースが開いた。そして、ケースから何かが飛び出す。それは、サソリの形をしていた。通称、マシンスコーピオン。

 

 

「ほう。その機械でイトナを倒すとでも言うのかい?」

 

 

「そゆこと。」

 

 

創真がコントローラーのボタンを押すと、シュッ、とほんの僅かな発砲音と伴に対触手用のBB弾が発射された。イトナは僅かに首を反らして避けた。イトナが避けた弾は壁にぶつかって別方向に反射。方向が変わって飛び、そしてまたも壁にぶつかって方向を変える。2度壁にぶつかって方向を変えた弾はイトナの死角から襲い掛かる。

 

 

パシュッ!

 

 

そんな音と伴に触手が一本弾け飛んだ。これにはイトナも、そしてシロも動揺した。

 

 

「あれ、意外と簡単に当たったよ……もしかしてイトナ君、意外と弱い?」

 

 

「………なんだと?」

 

 

「ムカつくならさ、倒してみなよこのマシンを。まっ、できたらの話だけどね!」

 

 

言い終わる前にイトナは触手でマシンスコーピオンに襲いかかった。

 

 

「イトナ!挑発に乗るな!」

 

 

イトナはシロの言葉を聞かなかった。普通なら当たると思うが、マシンスコーピオンは全部の攻撃をスルスルと避けた。

 

 

「そんだけ?」

 

 

「うるさい!」

 

 

さっきよりも触手の本数を増やして攻撃するが、

触手の間を通ったり、不規則な動きをしているため攻撃は何も当たらなかった。

 

 

「何故だ!何故当たらない!?」

 

 

「何故当たらないか?それは簡単。こいつに搭載されているperfectbrain(完璧な頭脳)はお前の攻撃を先読みしてるからさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=====================

 

 

 

「なぁ、父さんは大学の友達とよくプログラムを作ってそれを戦車に付けて対決させるゲームをやってたんだ。しかも、負けたことがなかった。何故だか分かるか?」

 

 

「知らね」

 

 

「このメモリにあるプログラミングを戦車に埋め込んでたんだ。攻撃の避けかたを思考し、実行する。しかもこれは攻撃してくるもの全てに作動するんだ」

 

 

「ふ~ん。人間でも?」

 

 

「ああ、そうだ。そのプログラムが判断したもの全ての攻撃を分析と回避を可能な限り実行する」

 

 

「100%作用するの?」

 

 

「今まで機能しなかった事はないんだが……常識を超えた未知の物には作用するか分からないな。そしたら設定で名前を入力してプログラムが認識すれば100%作用する」

 

 

「ちなみに名称は?」

 

 

「perfect brainだな」

 

 

「…………どや顔するなっての」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と言うわけで、創真は設定で触手って打っておいた。最初攻撃してきた時はコントローラーを操作しなかったよ。ヒヤヒヤしたが、機能してくれて良かったよ。イトナが単純な避けやすい攻撃しかしてなかったのも原因の1つかもね、と後に創真は分析したのは別の話。

 

 

「ふざけるな!俺がそんな機械に負けるはずがない!」

 

 

怒りが頂点に達したのか、触手が黒くなっている。そして、懲りずに攻撃を仕掛けた。自動で、しかも余裕で回避されたのは言うまでもない。

 

 

「……………………」

 

 

創真はコントローラーを操作し、BB弾を連射した。全ての弾が触手の根本に命中し、イトナの頭から触手が消えた。その瞬間イトナは倒れた。気絶したようだ。

 

 

シロは何も言わずにイトナを担いだ。

 

 

「待ちなさい!その子はここで面倒を見ます!それにあなたにも聞きたいことがある」

 

 

「やだね。計画が全て台無しにされて、もうやることがないからね」

 

 

殺せんせーが服を掴んだが、瞬時に溶けた。

 

 

「対先生繊維だ。君は私には触れないよ。心配しなくてもすぐに復学させますよ。次に会うときは……そのうざったい機械にも、そしてあなたにも負けないように教育しておきますから」

 

 

「別に何度でも突っ掛かってくるのは構わないけど、どーせ結果は同じですけど?」

 

 

創真の挑発にシロは何も言わなかったが、創真に対して殺意丸出しで帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして創真の活躍のおかげで二人を撃退できた。殺せんせーの出番が余り無かったのは置いといて……皆には聞きたいことがある。

 

 

「先生はなんでここに来たのです?そして、なぜ触手を見て怒ったの?」

 

 

創真の質問に殺せんせーは

 

 

「それは今話しても意味がありません。地球がなくなれば君達は塵となりますから」

 

 

「……………知りたいね」

 

 

「なら、殺してみなさい。ターゲットと暗殺者。それがわたしたちの絆です。先生の大切な答えを知るためには君達は暗殺で聞くしかないのです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「烏間先生!」

 

 

「どうした?大勢で」

 

 

「俺達が殺せんせーを殺して、答えを掴みたいんです。そのためにもっと暗殺の技術を教えてくれませんか?」

 

 

良い目をするようになったなぁ、と氷室は木の影からそう思った。

 

 

「分かった。では早速この垂直ロープ昇降を始めよう。ちなみに氷室さんのタイムは25秒だったからそれを上回るつもりでいけ!それでは……始めッ!」

 

 

「「厳しッ!」」

 

 

ちなみに誰もこのタイムは上回れなかった。




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それではまた次回でお会いしましょう!


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第30話 休日の時間 2時間目

創真side

 

 

イトナを退けてから数日後の休日。僕は久しぶりに外出していた。あいつ(・・・)と会うために。

 

 

「今日から梅雨明けでしたね」

 

 

「創真様が嫌いな梅雨も終わりですね」

 

 

しかし、次は夏。ホットな日が続く。

 

 

「しかしながら創真様のお父様もヤバイものを作りますね」

 

 

「…ああ……perfectbrain(完璧な頭脳)ですか。あんなもの作れる人が社長だから会社が繁盛するんだね……」

 

 

「創真様のお目付けが終わったら恐らく採用される……と思うのですが……私、活躍できるんですかね……?」

 

 

「だ、大丈夫ですって(多分………)」

 

 

大丈夫なことを祈りたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、近くの広い公園に来た。氷室さんは陰で待機している。今は1時。遊んでいる子供がたくさん見うけられる。さて……………約束の時間まで…5…4…3…2…1…………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………遅刻かよ」

 

 

─────時間通り来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに10分後。

 

 

「わりぃ、わりぃ。遅れちまった」

 

 

あいつ………いや、隼が漸く来た。

 

 

「10分遅刻だね、隼君?」

 

 

「わりーわりー。電車が遅れてよ」

 

 

「ふーん。で、今日は僕とどこか行くんだっけ?」

 

 

「ああ、俺はまだ東京を観光とかしてないからなしたいと思って……………お前ならもう大体ここら辺のこと分かってるだろうと思ってな。あ、そういやお前に1つお知らせがあってな…………」

 

 

「お知らせ?」

 

 

「俺さ……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

E組に行くことになった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────は?

 

 

 

「んだとゴラァ!?」

 

 

「お、落ち着け、話せば分かる!それに注目されてるぞ!」

 

 

よく見れば遊んでいた子供たちがこっちを凝視している。これはまずい……………動揺しすぎて思わず大声を出してしまった。

 

 

「とりま………移動しながらたっぷり聞かせてもらうよ」

 

 

「あ、ああ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

取り敢えず、回転寿司に来た。

 

 

「……素行不良?」

 

 

「前にさ、えーっと……神崎さん?助けたろ?」

 

 

「あぁ、前にそんな事があったね」

 

 

「そのナンパしてた奴がさ、椚ヶ丘に弟がいたらしくてさ……それで……まぁ……俺が色々やっちまった事がばれて」

 

 

「なるほど。大体事情は理解した。で?いつから来る?」

 

 

「球技大会終わってからすぐだ……それまで謹慎だと」

 

 

「へぇー……………やれやれ、また厄介なのが増えるね」

 

 

「誰が厄介なのだよ!」

 

 

「はいはい。君は冗談と言うものが通じないね」

 

 

「いや、めっちゃ本音っぽく聞こえたんだが…………?」

 

 

まぁ本音を言えば……………………半分冗談で、半分は本音と言ったところか。言うと怒るから言わんけど。

 

 

「よーし、そろそろ次行くか」

 

 

「おう。なぁ、創真?」

 

 

「ん?」

 

 

「これ、もしかしてお前の奢り………」

 

 

「なわけない」

 

 

きっかり割り勘に決まってるだろうが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

 

 

《お二人が行った場所リスト》

 

 

浅草(創真にとっては2度目)

 

 

江戸城の跡地

 

 

スカイツリー(氷室さんが、人がゴミのようだ……とかよくありがちなせりふを言ってた)

 

 

 

午後4時、椚ヶ丘に戻ってきた。

 

 

「いや~今日は楽しかったぜ!悪いな、付き合わせちまって」

 

 

「別に暇だったから構わないよ…………」

 

 

「そーいや、創真」

 

 

隼は回りを気にしながら小声で話す。

 

 

「お前ら、タコの暗殺やってるのか?」

 

 

「もしや、烏間先生から既に説明済みか?」

 

 

「E組行きが決まった翌日に烏間先生が来て知った……………何か面白そうな事やってたんだな、お前ら」

 

 

「まーね。非日常的で面白い事ばかりだよ、あの教室は」

 

 

「そりゃ良いねぇ。E組に落ちて逆にラッキーだったかもな……………そんじゃ、次はあの教室で会おうぜ」

 

 

「へいへい」

 

 

創真はタイミングよく滑り込んできたランボルギーニに乗り帰っていった。

 

 

「3年E組は暗殺教室、か……………ワクワクするな」

 

 

そう呟いて隼も帰路につくのだった。




明日は出来たら投稿します!


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第31話 球技大会の時間

「球技大会……………ねぇ」

 

 

創真がめんどくさそうに云った。そして、置いてあるプログラムを見て口を開く。

 

 

「所でなーんで、E組 がトーナメント表から除名されてる?」

 

 

「先生も同じことを思ってました」

 

 

殺せんせーもうんうん、と首肯く。

 

 

「1チーム余るからさ。その代わり男子は野球部相手、女子はバスケ部相手のエキシビションマッチ…………要は見せ物の試合にでなくちゃならないんだ」

 

 

「いつもの事か………にしても、野球か………………」

 

 

2年程前に、創真が大阪に居たとき、丁度体育の時間は野球をやっていた。その時のあだ名が、『大阪の本塁打王』。又は、『大阪の奪三振王』とも呼ばれた。

 

 

(本塁打は何本打ったかは忘れたが、投球の速さは、最高150㎞位だったかなー…………)

 

 

創真が回想に浸っていると、寺阪グループの3人が立ち上がった。

 

 

「俺ら晒し者とか勘弁だわ。適当にやってくれ」

 

 

「寺坂!…ったく」

 

 

磯貝が止めるも、寺坂、吉田、村松、離脱していった。

 

 

「野球で頼れるのは杉野だけど、何か秘策とかあるのか?」

 

 

「……無理だよ。ほとんどが野球未経験だし……それに強いんだ、うちの野球部。それに今のピッチャーの進藤は俺からエースの座を奪った奴なんだ」

 

 

「……そいつはどれくらいの球速なんだ?」

 

 

創真が尋ねると、杉野は確か…………と呟きながら云った。

 

 

「140㎞位だと思うぜ」

 

 

「はい、勝った。なーんだ、その程度か」

 

 

「「「え」」」

 

 

E組の異端児、創真の声に皆は驚いた。

 

 

「ちなみに、僕は150㎞出せます、多分」

 

 

「150!?おい、それ進藤以上じゃねぇか…………ほんと、何でも出来るな、創真は」

 

 

「まーね。大阪にいたとき、体育の時間で野球やっててさ。そんとき、『本塁打王』とか『奪三振王』とかそんなあだ名だったなー…………あと、野球部の助っ人として、練習試合によく呼ばれた」

 

 

「マジか……………お前、ほんと何でも出来るな」

 

 

前原が感心したように云った。

 

 

「創真。お前からして、野球部に勝てると思うか?ほとんど初心者ばかりのE組に」

 

 

杉野が尋ねると、そうだねー………と云いながら創真は腕を組んだ。皆は次の言葉を待つ。20秒後、創真は口を開いた。

 

 

「勝てなくはない。てか、その前に杉野君!君は勝ちたいか?」

 

 

「…………ああ。俺は勝ちたい。善戦じゃなくて勝ちたい。好きな野球では絶対負けたくない!」

 

 

杉野の言葉に創真はうんうん、と頷いた。

 

 

「よーく分かった。なら、勝っちゃって本校舎の皆さんや野球部をギャフンと言わせてやろう!」

 

 

「「「おー!!」」」

 

 

盛り上がりを見せるE組。男子は完全にやる気スイッチONになった。

 

 

「ヌルフフフフフフ、皆さん気合い十分ですねぇ!では、先生も協力しますよぉ!」

 

 

いつのまにか殺せんせーは野球服に着替えていた。

 

 

「殺せんせー、やる気満々ですね」

 

 

「ヌルフフフフ、一度熱血コーチをやってみたかったので。君達は最近、目的意識を口に出すようになりましたね。そんなみなさんの心意気に答え、殺監督が秘策を伝授しましょう」

 

 

そこへ氷室も入ってきた。

 

 

「では、私も教えましょう……私もスパルタコーチ的なポジションをやってみたいと思っていたに加えて私、野球は超絶得意なので」

 

 

こちらもヤル気満々なのか、何故か竹刀を持っていた。こうして鬼の特訓がスタートした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

7日後

 

 

 

『それでは、最後にE組対野球部の余興試合を行います』

 

 

「やっと、かぁ。にしても、野球部も気合い入ってるね」

 

 

創真の視線の先には素振りをしている野球部員の姿があった。

 

 

「実力を見せつける機会だからな。それに俺ら相手ならゴールド勝ちが義務だからな」

 

 

「なるほど。だが、そうはさせないよ」

 

 

創真はニヤリと笑みを浮かべながら云った。そして、両者は整列した。チームの先頭にいる杉野と進藤が話しているのが創真の耳に入ってきた。

 

 

「進学校での部活と勉強の両立が出来るのが選ばれし者だ。杉野、お前はどちらにも選ばれなかった。選らばざれる人間が表舞台に立ってはならない。そいつら共共2度と表を歩けなくしてやるよ」

 

 

叩きのめす気満々の進藤。そう言い残して自分のベンチの方へ戻っていった。

 

 

「渚君、殺監督は?」

 

 

創真が尋ねると、渚はグラウンドの奥の方を指差す。

 

 

「あそこだよ。目立つなって烏間先生に言われてるから」

 

 

「…………あー、いたいた」

 

 

他の生徒らなどにばれぬよう、隠密に潜んでいる殺監督は顔色を三回変えた。

 

 

「なんて言ってんだ?」

 

 

渚がサイン表見て確認する。しかし、それよりも早く創真が云った。

 

 

「殺す気で勝て。でしょ?ま、あいつ等ぐらいには勝てないと、殺せんせーは殺れないだろうからな…………さぁ、勝ってギャフンと言わせてやるよ!」

 

 

「よっし、殺るか!」

 

 

「「「オー!!」」」




THE NEXT story 12/19 PM 10:30


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第32話 球技大会の時間2時間目

あと少しでお気にいり登録が50人!



頑張ります!



それではどうぞ!


創真side

 

 

さて、1番は木村か。ん?僕はどの役割か、だって?ベンチにいるんだよね……今は。別に打席に立ってどんどん打っても良いんだけど、僕も別に毎度本塁打打ってるわけではないから、見極められて僕専用の守備を敷かれると点はとれなくなる可能性があるので、取り敢えずは様子見。

 

 

そんな感じの説明は皆にしてあり、承諾もしている。ま、事が有利に進めば僕の出番はないかもしれないが。それと一応投手の杉野の代わりでもある。

 

 

………お、木村君がセーフティバントを成功させ、一塁に出た。

 

 

『2番潮田君』

 

 

渚君もまた、バンドを繰り出す。

 

 

『またもバントだ!三塁手が抜かれてしまった!』

 

 

ここの野球部そんなに強くなくね?大阪にいたときの学校の方がバントの処理うまかったけど?これでノーアウト一二塁だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、そろそろ紹介するか。どんな特訓だったのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

殺投手は時速300㎞の球を投げ、殺内野手は鉄壁の布陣を敷き、殺捕手は囁き戦術で集中を乱す。

 

 

「創真君、この前ゲームセンターでいろいろやってましたねぇ。全部見てましたよ」

 

 

「ったく見てるんじゃない……よ!……ファールか」

 

 

時速300㎞の弾をバットに当てれる俺氏って凄くない(自画自賛)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、私の野球に慣れたところで、次の段階に行きましょう」

 

 

偵察に行っていた竹林君が口を開いた。

 

 

「進藤の球速は140㎞が最高だね。練習もほとんどストレートだったよ」

 

 

ま、140㎞もあれば大抵の敵は手が出せないだろうね……………僕は例外だが。ここで氷室さんがグローブを持って現れた。

 

 

「と言うわけで今から練習は私がストレートのみ投げます。きっちり140㎞で。さっきの殺せんせーの球速より遥かに遅いでしょうから………………この球は止まって見える。バンドだけなら、十分なレベルで修得出来ます……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このような特訓を重ねたので皆はバントなら余裕というわけだ。磯貝もバントを決め、ノーアウト満塁になった。

 

 

『や、野球部は調子でも悪いのでしょうか?塁が全て埋まってしまったぞ!?』

 

 

次は杉野だ。進藤とは因縁の対決である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

 

杉野もバントの構えだ。そして進藤は杉野の目を見てゾッとした。

 

 

(な、なんなんだこいつら?こいつらの目はまるで獲物を狙う……そんな目だ。これは……野球なのか?)

 

 

進藤は落ち着きがないまま、ボールを投げた。その瞬間、杉野は打撃の構えに変えた。

 

 

(!!これが狙いか!)

 

 

気づいたときにはもう遅い。

 

 

『打った!ボールは外野へ伸びる!!」

 

 

この間に走者が全て帰った。

 

 

『この一打で先制!E組が3点先制した!(なんだよ……想定外だぞ……)』

 

 

これ勝った。1回で3点は相当大きいな…………と、創真は感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、野球部のベンチに理事長が現れた。

 

 

「どうやら具合が悪いようですね。すぐに休んでください、寺井先生」

 

 

「い、いや私は……」

 

 

「こんな醜態をさらすはずがありませんからね……この学校の先生は」

 

 

恐怖の余り、寺井は泡を吹いて倒れてしまった。

 

 

「彼を担架で保健室へ運んでください。私が代わりに指揮を取ります」

 

 

「い、一体……何を……?」

 

 

「……教育をするだけですよ。軽く……ね」




THE NEXT story 12/20 PM 10:00


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第33話 球技大会の時間 3時間目

祝お気にいり登録者50人!


ありがとうございます!


これからもよろしくお願いします!


それではどうぞ!


創真side

 

 

『ただいま情報が入りました!病気だった顧問の寺井先生を野球部は心配で集中出来なかったそうです!代わりになんと理事長先生が指揮を執るそうです!』

 

 

えー、嫌だー………病気って嘘だろ絶対。そう言う口実で空気をリセットするのが狙いだろうに。

 

 

『さて、理事長先生は指示を出して戻った……おっと、これは前進守備だ!しかしここまで極端な前進守備は見たことがない!』

 

 

あー……これは…………。

 

 

「バンドしかないと見抜かれましたね」

 

 

氷室さんが苦い表情を浮かべる。

 

 

「っても、これはないだろ!バッターが集中できないだろ!」

 

 

岡島の言う通りだな。

 

 

「どうしますか?私がガツンと文句を言ってきましょうか?」

 

 

「…………まず竹刀は置いてください。審判は信用ならないです。あっち側ですからね…」

 

 

結局、このあと点を追加できず、チェンジとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

 

続いて野球部の攻撃だがE組には杉野がいる。カーブやスクリューなどの変化球を駆使し、三振を奪っていった。

 

 

「さすがは杉野君です。このまま逃げ切れれそうですね?」

 

 

「氷室さん、それは分かりません。見てください、野球部のベンチを。進藤を理事長が改造中ですよ」

 

 

「…………なるほど。確かに、勝負は最後まで分かりませんね。それがスポーツの醍醐味でもありますが」

 

 

氷室はこの状況でも楽しんでいるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

『さぁ、2回表のE組の攻撃!やはりこの対バンド守備だ!』

 

次のバッターである、カルマ君が打席に……入らない。

 

 

「?早く打席に入りなさい」

 

 

審判の先生が促すと、カルマ君は口を開いた。

 

 

「ねーこれずるくない?こいつら邪魔な位置で守ってるのに審判の先生はなんで何も言わないのかなー?あ、お前らバカだからか。ごめーん、バカに言ってもしょうがなかったね(笑) 」

 

 

怒った観客たちはカルマ君に一斉にブーイングを浴びせる。まっ、口に出すことが大切だからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

進藤はカルマ君と三村君を三振に仕留めた。

 

 

「創真君。木村君の代打として出てください」

 

 

いきなり殺監督が地面から出てきた。

 

 

「?木村君は怪我とかしてませんけど?」

 

 

「流れを変えるためです。君の1打で皆さんの士気が高まると思いますので。木村君、良いですか?」

 

 

「ああ。創真、でかいの頼むぜ!」

 

 

じゃあ……………やりますかねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『おーっと、ここでE組は代打を起用するようだ。1番木村に代わって結城が打席に立つようだ!しかし、無駄な抵抗と終わるのは目に見えている!』

 

 

おいおい…………誰もバンドするとは言ってないのだが。理事長も僕を警戒しているのか、長打対策用の守備に変更した。だが………………それも無駄にさせてやるよ。

 

 

「創真君!」

 

 

声がした方向を見ると、バスケが終わって野球を見に来たと思われる、倉橋さんが手をメガホン代わりにして声をあげていた。

 

 

「頑張って!」

 

 

─────────あぁ。応援ありがとさん、倉橋さん。

 

 

『さぁ、1球目……投げた!』

 

 

周りからしてみれば速いのだろうが……僕からしてみればこんなの速い内に入らないんだなぁ、これが!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カキーン!!

 

 

 

 

 

 

 

『しょ、初球打ちだ!この当りは大きいぞ!』

 

 

打球はぐんぐん伸び…………………フェンスを超えた。

 

 

『ほ、ホームラン!代打の結城が初球打ちでホームランを放った!E組に追加点を許してしまったァァ!」

 

 

「やったー!」

 

 

ベンチも応援している女子たちも声をあげて喜んだ。ピッチャーの進藤は呆然としている。まさかホームランを打たれるとは思ってなかったのだろう。

 

 

「やったじゃん創真!」

 

 

ベンチに帰ると皆にもみくちゃにされた。

 

 

「お見事なバッティングでしたね、創真様」

 

 

「まぁ、あいつほぼストレートしか投げないし。僕はストレートが1番打ちやすいからね……」

 

 

僕は皆の方に体を向けて口を開いた。

 

 

「皆。これで僕らはリードを広げている。次の回で点を挙げるよりも、守備に力を入れた方が良い。そして、あいつらに最後まで点を取らせないようにする。こういう方針はどうかな?」

 

 

「よし、その作戦で行こう。皆、勝つぞ!」

 

 

「「「おー!!」」」

 

 

さすがリーダー。まとめあげるのがうまいね。次の打者の渚は空振り。チェンジとなったが、この1点は大きいと創真は思う。しかし、ここから野球部の逆襲が始まった。

 

 

『2回の裏、先程のホームランの借りを返さんとばかりに進藤の打撃が火を吹く!E組はまずい守備で長打を許してしまう!』

 

 

しまったな……あいつ、理事長の改造でここまで集中力上がるのか。長打警戒の守備をするべきだったな。

 

 

この回で2点返されてしまった。しかし、まだ2点リードしている。まだ大丈夫………………だよね?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3回の表、進藤の球に手が出ずスリーアウト。だがこれで皆はここからは守備に集中できる。そう思っていたのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「手本を見せてあげなさい、橋爪君」

 

 

理事長はそう指示した。

 

 

その内容は……

 

 

『あーっと、バンド!野球部、バンドの構え!今度はE組が苦しむ番だ!』

 

 

果たして勝てるのか……?




次回、決着!


THE NEXT story 12/21 PM21:30頃


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第34話 球技大会の時間 4時間目

前回、創真はホームランを放ったものの、2点追加され追い詰められた。
果たして勝負の行方は?
気に入ってもらえたら嬉しいです!


創真side

 

 

『同じ小技ならば野球部の方が格段に上!楽々セーフだ!これがバントという物だ!』

 

 

そう来ますか……我々がやったことで、見本を見せてやるということか。普通なら観客たちは納得しないだろうが。あっという間に満塁だ。

 

 

『ここで、バッターは進藤だ!これで決まるか!?』

 

 

大改造され、集中力が増しているのが目に見える。どうすれば…………待てよ。そういえばカルマがアレに文句言ったときに一蹴されたよな……ならば僕が考えていることも……良いよな?僕は殺監督がいると思われる方向へ手招きをした。

 

 

間もなく殺監督が来た。

 

 

「殺監督、僕に作戦があります」

 

 

「にゅ?どのような作戦でしょう?」

 

 

「カルマ君と磯貝君を呼んでください」

 

 

「ヌルフフフ、先生あなたが何を思い付いたか分かりましたよ。先生も言おうと思っていたので。分かりました、二人を呼んできます。あ、それとタイムを審判に伝えておいてくださいね」

 

 

「あ、それは私がやっときます」

 

 

氷室さんが走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんか思い付いた顔をしてるね?」

 

 

呼ばれたカルマ君がにやっと笑いながら来た。

 

 

「カルマ君、さっきの挑発を生かしてやる。もう分かるよね?」

 

 

「………あ~なるほどね。磯貝、行くよ」

 

 

「え?あ、ああ」

 

 

2人は足を前に進めた。もうお分かり頂けただろうが…

 

 

『こ、この前進守備は!?』

 

 

僕は氷室が持ってきたメガホンを口に当てた。

 

 

「先程あなた方がやったときに審判は何も言わなかった!だから僕らも同じことをさせてもらいますよ?

文句ありませんよね、理事長?」

 

 

「ご自由にどうぞ」

 

 

言いましたね……?

 

 

「2人とも……もっとだよ」

 

 

カルマと磯貝君はさらに前へ出た。

 

 

『な!?この距離では確実にバットが当たるぞ!?

 

 

「…………は?」

 

 

この距離では集中力など冷めるに決まっている。

 

 

「進藤君。構わずバットを振りなさい。打撃妨害を取られるのはE組だからね」

 

 

その言葉に進藤は驚いた。下手すれば事故に成りかねないのに、理事長はそれを止めずに振れと言うのだから、当然だろう。

 

 

(くそ!なめやがって!)

 

 

杉野君が第一球を投げた。進藤はひびらすように大きく振ったが、ほとんど動かず2人は余裕で避けた。当然だ。2人の度胸や動体視力はE組内ではトップクラス。下手すればバンドより容易い。

 

 

「ダメだよ~?次はさ、殺す気で振らないと」

 

 

進藤の体が震えているのをベンチからも確認できた。

 

 

────────さぁ、杉野君。これで決めろ。

 

 

杉野君が第2球を投げた。

 

 

「う、うわぁ!?」

 

 

ガン!

 

 

『腰が引けたスイングだ!球は大きく跳ねる!』

 

 

跳ねた球をカルマ君は鮮やかにキャッチした。

 

 

「渚君!」

 

 

カルマ君がパスしたボールは捕手の渚君のグローブに収まった。

 

 

「三塁ランナーアウト!」

 

 

「渚!三塁へ回せ!」

 

 

磯貝君が指示を出す。二塁ランナー、慌てて走り出したが間に合わない。

 

 

「二塁ランナーアウト!」

 

 

「木村、次は一塁へ!焦んなくて良いぞ!」

 

 

投げたボールはバウンドしながらも一塁の菅谷君のグローブに収まった。

 

 

「と、トリプルプレー……スリーアウト……」

 

 

審判が掠れ声でそう告げた。

 

 

『試合終了!E組が勝ってしまったァァ!』

 

 

良いじゃん。別に勝ったって。確率的にはあり得るんだから。観客たちは結果に不服そうに文句を言いながら教室へ戻っていった。

 

 

いやー、何とか逃げ切れた。それにしてもトリプルプレーなんて始めて見たな。

 

 

「おや?ヒーローインタビューはないのですかね?」

 

 

「これはプロ野球の試合じゃないんですよ、氷室さん………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、皆お疲れ~」

 

 

片付けも終わり、帰ろうとすると

 

 

「創真君!今日打ち上げやるんだけど来ない?」

 

 

倉橋さんから打ち上げの誘いを受けた。

 

 

「別に良いけど……どこでやるんです?」

 

 

「う~ん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ!創真の家って広いんだよね?そこならもってこいの場所でしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………………へ?

 

 

「まって、中村さん!僕の家知ってるの!?」

 

 

「ん?前に氷室さんに教えてもらったんだよ。もし君が休んだときに渡すものを届けられるようにね。そのマンション広いの知ってるよ」

 

 

「氷室さん…………悪気はないのだろうけど、余計な事を………」

 

 

「というわけで創真の家で打ち上げやろう!」

 

 

勝手に決められたんだが。

 

 

「まぁ良いや……………じゃあ、17時頃に来て」

 

 

そう伝えて僕は先に帰路に着いた。

 

 

「あ……そう言えばあいつも明日から来るから……紹介もついでにやるか……」

 

 

次回、打ち上げだ!




THE NEXT story 12/22 PM10:00


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第35話 打ち上げの時間

オリジナルです!


出来映えは分かりませんが、どうぞ!


打ち上げには磯貝、前原、岡野、木村、倉橋、矢田、茅野、神崎、渚、千葉、速水、中村、不破。この14人が参加する事になった。寺坂組の連中や、塾や用事がある人達は残念ながら不参加となってしまった。

 

 

「えーっと……ここだね」

 

 

創真の家を知っている中村が案内したところには大きいマンションがあった。

 

 

「すげーでかさだな……!」

 

 

前原が度肝を抜いたような表情で呟いた。

 

 

「じゃ、早く中に入ろう」

 

 

皆はマンションの中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここだよ」

 

 

中村が案内した部屋は最上階にあった。インターホンを押すと、すぐに創真が出た。

 

 

「時間ぴったりだね。ま、入って」

 

 

「「「お邪魔します……」」」

 

 

部屋は実に開放的な家具の配置だった。創真曰く、部屋にスペースがあった方が落ち着くそうだ。

 

 

「へー良い家に住んでんじゃん」

 

 

カルマが部屋を見渡して感想を述べた。

 

 

「僕の親の小会社が経営してる。その恩恵で、僕と氷室さんの部屋は家賃が少し安い」

 

 

「氷室さんも一緒に住んでるの?」

 

 

「お隣にね……ところで皆は何を持ってるんです?スーパーで何か買ったのか?」

 

 

創真の疑問に渚が答えた。

 

 

「あ、すき焼きを作ろうと思って。皆と囲んで食べれるから。ちょっとキッチン借りても良いかな?」

 

 

「お任せあれ。私が調理しましょう」

 

 

いつの間にか部屋にいた氷室が調理を引き受けれくれた。調理は任せて、皆は人生ゲームなどで遊び始めた。ちなみに一番盛り上がったのが、『テレストレーション』というゲームである。興味のある方は調べてみてください。そして、しばらくすると雑談に変わった。

 

 

「創真君、今日のホームラン凄かったね~」

 

 

「大したことないですよ。あ、そうだ。倉橋さん、応援ありがとねー」

 

 

「クラスメイトなんだから当然だよ!」

 

 

そう言って倉橋はニコッと笑う。

 

 

「そう言えば、創真君ってなんでも出来るけど……その…………モテないの?」

 

 

「モテる………?いや……恋とか経験したことないけど……バレンタインチョコとかなら結構もらったことあるよ」

 

 

「くそ!うらやましい!」

 

 

お前(岡島)は当たり前だ!……みんなそう言いたげだった。

 

 

「できましたよ」

 

 

氷室が皆に声掛け、皆は鍋を取り囲む。

 

 

「それでは、皆さん。召し上がれ」

 

 

「「「いただきます!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや~美味しかった。お腹一杯だよ」

 

 

磯貝が満足そうにお腹をさすりながら云った。

 

 

「氷室さん、料理作るの旨いですね」

 

 

矢田は氷室さんの料理の腕に驚いたようだ。

 

 

「私は意外と家事好きなので」

 

 

「本当に旨いですね……味付けが上手すぎですよ」

 

 

ピーンポーン

 

 

「漸くお出ましか…………」

 

 

「「「???」」」

 

 

訳が分からない皆を置いて、創真は玄関の方へ向かった。そして、すぐになかなかイケメンの中学生と一緒に入ってきた。

 

 

「あ………」

 

 

神崎は彼が誰かがすぐわかった。

 

 

「紹介するよ。こいつの名は月城 隼。明日からE組に来る予定」

 

 

「「「え!?」」」

 

 

「暇だったから呼んでみた。ここにいる皆にとっては先行公開だな。と、言うわけで急な展開で悪いですが、明日からこのバカをよろしく頼むよ」

 

 

「おい!誰がバカだ、この野郎!?」

 

 

「……………お前しかいないだろ」

 

 

「真顔で言うな!何かムカつく!」

 

 

「真顔で言って何が悪い」

 

 

ギャーギャー言い争いをし出す2人。それをE組の面々は、『何この茶番』と言いたげな目で見つめる。

 

 

「ったく…………って、あぁ!神崎さん………だよな?」

 

 

隼が神崎に気づいた。

 

 

「うん、そうだよ。隼君、久しぶりだね」

 

 

「え?神崎さんと知り合いなのか?」

 

 

杉野がすぐさま聞いてきた。

 

 

「うん。この前助けてもらったの」

 

 

皆が納得していると、隼が口を開いた。

 

 

「皆と色々話したいんだが……もう時間も時間だよな」

 

 

今は午後7時。そろそろ帰った方が良いだろう。

 

 

「うん。もう時間だし、これ以上は創真君にも悪いから帰ろっか」

 

 

片岡が皆に促し、身支度を始めた。

 

 

「じゃあ創真君、また明日ね。隼君も」

 

 

皆が帰ろうとすると氷室が何かを持ってきた。

 

 

「実は私、今日皆さんが勝つと予想して、ご褒美用のプリンを作ったので良かったらどうぞ」

 

 

「本当ですか!?ありがとうございます!!」

 

 

茅野の食い付きが半端なかった。目がキラキラしている。皆も一言お礼を言ってプリンをもらった。ちなみに磯貝は余ったプリンを全て貰った。

 

 

「「「お邪魔しました!」」」

 

 

こうして打ち上げは終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よーし、隼君。暇そうだし、今から片付け手伝って」

 

 

「はぁ!?何で俺が手伝わなきゃいけねぇんだよ!」

 

 

「え?そりゃ、隼だから」

 

 

「理由になってねぇ!!」

 

 

またもギャーギャー言い争いを開始する創真と隼。

 

 

「やれやれ。仲が良いのか悪いのかどっちなのやら…………」

 

 

氷室は、はぁ、とため息をつくのだった。




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第36話 訓練の時間

「おはようございます。さて……今日は転校生が来るんでしたね」

 

 

「もう一部の生徒は既に知っているけどね」

 

 

「おや、そうなのですか、創真君?」

 

 

「まー、昨日の打ち上げで先行登場したからね」

 

 

「なるほど、そう言うことですか。まぁ、でも改めて自己紹介してもらいましょう。それでは、入ってください」

 

 

教室のドアが開き、前回、先行登場した転校生こと、隼が入ってきた。

 

 

「では、自己紹介からお願いします」

 

 

「はいよ。俺の名は月城 隼。まぁ、とりあえずよろしく。それと殺せんせーも」

 

 

「はい、よろしくお願いします。それでは一時間目の時間を少し使って質問タイムに移りましょう。隼君に聞きたいことがある人は手を挙げて!」

 

 

「はい!」

 

 

最初に手を挙げたのは磯貝だった。

 

 

「俺の名は磯貝 悠馬だ。よろしくな。隼は創真とどんな関係なんだ?」

 

 

「創真との関係?前の学校で一緒だったんだよ。俗に云うダチ、って訳だ。また創真と会うとは思ってなかったがな」

 

 

「ダチはダチでも、バカだけどな」

 

 

「うるせぇ、創真!お前は黙っとけ!」

 

 

「へいへい」

 

 

創真は軽く受け流して、口を閉じる。

 

 

「じゃあ次は私!」

 

 

次に手を挙げたのは茅野だった。

 

 

「私は茅野 カエデ!よろしくね。隼君は趣味とかある?」

 

 

「趣味…………よくゲーセン行くな。結構強いぜ」

 

 

「僕よりは弱いがね」

 

 

「うるせぇ!それは言わんでよろしい!」

 

 

「ヌルフフフフ、創真君と隼君は仲が良いですねぇ。では、皆さん仲良くしてあげてくださいね。それでは残りの時間で授業をしますよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み

 

 

「どうだ隼。この教室の感想は?」

 

 

創真が感想を聞くと───────

 

 

「ん?悪くないな。授業も本校舎よりも分かりやすい。それに、このクラスは人が良い奴が多いな。どっかの誰かさん、1名を除いて」

 

 

隼は満足そうに答えた。

 

 

「その、どっかの誰かさんは誰だかは知らんが、まぁ楽しいようでなりよりだね」

 

 

「けっ…………ところで次の体育って何やるんだ?」

 

 

「訓練」

 

 

「訓練?」

 

 

「そう、訓練。説明するより見た方が早い。早く着替えて外に来い」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

 

 

「今日はペアを組んでもらってナイフ術のテストを行う。ナイフ俺にクリーンヒットさせたら2点、かすりで1点、共同でナイフを当てたら両者1点だ。それと創真君は隼君と組んでくれないか?」

 

 

「別に良いですけど……何故?」

 

 

「皆がテストしてる間に隼君にナイフ術の基礎を教えて欲しいんだ。君ならもう基礎は十分できてるし、君も教えることで技術を向上させれるからな。それに、君達は仲が良さそうだからな」

 

 

「なるほど、ね」

 

 

「ではテストを始めよう。準備の出来たところからこい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と言うわけで創真は隼に少し離れたところナイフ術を教えていた。

 

 

「……ナイフの持ち方はもう良いな。基本は一撃が終わっても間髪入れずにすぐに攻撃に移れるかが勝敗を分ける」

 

 

「なるほど。やっぱお前って何でも出来るな」

 

 

「そう?そりゃどーも」

 

 

隼に言われ、満更でもない表情を創真は浮かべる。

 

 

「どうやら終わったようだな。そろそろ良いか?」

 

 

タイミング良く烏間先生が来た。

 

 

「準備出来てます」

 

 

創真と隼はナイフを構えた。創真に至っては二刀流だ。

 

 

渚がストップウォッチを持って来た。

 

 

「じゃあ行くよ……スタート」

 

 

瞬間、烏間の目にはナイフがあった。

 

 

「!!」

 

 

烏間はギリギリのところで避けた。そのナイフの持ち手は隼だった。そこへ創真のナイフが伸びてくる。際どかったが、避けられた。

 

 

「ふ、なかなかやるようだな」

 

 

「彼は柔道、テコンドー、剣道、空手……などなどあらゆる武術を経験してますから。非常に強いです。ま、僕には及びません」

 

 

「あァ!?いつも余計な一言を付け加えてんじゃねぇぞ、創真!」

 

 

「ゴメンネー」

 

 

「めっちゃ棒読みだな、おい!」

 

 

そんな会話をしつつも、攻撃は続く。

 

 

「すげぇ……あの二人の攻撃……」

 

 

まるで見たこともないような物を見る目で磯貝が呟いた。

 

 

「んーなんか素手の方が良いな……」

 

 

隼はナイフを捨てた。

 

 

「ほう。俺と素手でやるか。面白い……来い!」

 

 

隼は烏間と素手の対決を始めた。

 

 

「勝手にやりやがった……あとは勝手にやれ」

 

 

創真は辞退。ちなみに結果は烏間の勝ち。隼は何をされたか分からなかったそうで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隼すげぇじゃん!」

 

 

「さっきみたいな暗殺見たことないよ~」

 

 

訓練終了後、隼が皆に囲まれているのを見て創真は満足そうにフッと笑った。すると教室に帰ろうとしていた烏間に倉橋が話し掛ける。

 

 

「烏間先生~。今日皆でお茶しません?」

 

 

「……誘いは嬉しいがこのあと防衛省から連絡待ちでな」

 

 

(相変わらず、隙のない先生だな…………)

 

 

きっちり断った烏間を見て、創真は内心苦笑した。

 

 

「……烏間先生は私たちのことを大切にしてくれるけど……やっぱり任務だからに過ぎないのかな……?」

 

 

倉橋の気持ちは皆も同じだった。皆も何処か複雑そうな表情を浮かべる。

 

 

「そんなことはありません。彼にもちゃんと立派な教師の血が流れてますよ」

 

 

殺せんせーは皆の疑問に答えてくれた。だからといって完全に納得がいく訳ではなかったが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

烏間はある人物を待っていた。誰かは知らないが、今日から一人この教室に人を加えるらしい。彼の上司の本部長曰く、適任の男らしい。すると、その人物が烏間の前に現れた。

 

 

「よっ、烏間!」

 

 

「鷹岡……」

 

 

鷹岡と呼ばれたその人物は生徒がいるグラウンドへ向かった。当然現れた謎の男に皆が不思議そうな顔をしていると、鷹岡は口を開いた。

 

 

「俺の名は鷹岡明!今日から烏間の補佐として来た!E組のみんな、よろしくな!」




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第37話 信愛の時間

クリボッチは回避したいな……。



ではどうぞ!



……また消えてた?


修正したはずの6話が何故かまたoutでした。
というわけで、思いきって新しくしました!

これで大丈夫……な事を願いたいです。





鷹岡と名乗った男は、地面にスイーツを並べ始めた。しかもそこそこ高いものを。

 

 

「良いんですか?こんなに高級なものを……」

 

 

磯貝は思わず尋ねた。

 

 

「食え食え!遠慮するなって。俺はお前らと早く仲良くなりたいんだ!」

 

 

その言葉に皆は遠慮せずに、スイーツを手にとって食べ始めた。

 

 

「何か、烏間先生とは全然雰囲気が違いますね」

 

 

「近所の父ちゃんみたいですよ」

 

 

「ハッハッハ!良いじゃないか、父ちゃんで!同じ教室にいるんだから、俺達は家族当然だろ!よし、今日から俺達は家族だ!俺を父親だと思って、どんどん頼ってくれよ!」

 

 

完全に生徒の心を掴んだ鷹岡。皆も遠慮せずにケーキを手に取り、鷹岡に話し掛ける…………しかしその中でスイーツに手をつけようとしない奴が一人。その名は創真である。

 

 

「…………………………」

 

 

険しい顔を浮かべながら、生徒と話す鷹岡をじっと見ていた。

 

 

「どうしたのですか、創真様?」

 

 

「ん?創真は食べないのか?」

 

 

ケーキを手に取らず、険しい顔を浮かべる創真を不思議に思ったのか、氷室とケーキを手に持った隼が話し掛ける。

 

 

「いや…………あ、そうだ!氷室さん、大変だよ!あと30分で映画始まっちゃうじゃん!」

 

 

「は、はい…………?」

 

 

「もー、忘れちゃったの?しょうがないなぁ。今から飛ばせば間に合うかな?ほら、早く行かないと!あ、隼。聞いての通り、僕は今日映画に見に行く予定が入ってたから、お先に失礼するよ?」

 

 

「お、おう?」

 

 

「じゃ、甘いものを楽しめよ!」

 

 

創真はそう言って、氷室の手を付かんでさっさと教室に戻って行った。独り抜けていった創真を、鷹岡はチラリと見たがそれも一瞬で、すぐに皆の方を向いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「創真様今日はどうしたのです?私、色々考えましたが、昨日映画の約束をした覚えなどやはりないのですが……………それに、私意味も分からず新宿まで道路交通法ギリギリの速度でひとっ走りされたあげく、中々怖いホラー映画を観る羽目になったんですが…………」

 

 

家に帰り、早めの夕食を食べていると、氷室は疑問だったことを創真に聞いた。

 

 

「うーん…………理由としては、あの先生が嫌いだから。どーもヤバそうな感じがしたんですよねー」

 

 

「……あの人、とは鷹岡先生がですか?別に私からしたら、皆さんと仲良くなりたいからケーキの類いを持ってきたん太っ腹な方だと思いますが」

 

 

「ほんとにそうですかね……?あの人、自分を父親。我々生徒を家族と言う関係を植え付けようとしていたし、どうも笑顔も上辺だけ、要は作り笑いに見えますし…………兎に角、あの人はかなりヤバそうな奴だと、僕の第六感がそう言ってます」

 

 

「………なるほど。創真様が仰るならもしかしたら、その通りなのかもしれません…………と言うか、創真様はあの先生が嫌だったから先に帰ったんですよね?なら、映画見に行く必要ありました?」

 

 

「え、まぁ観たかったもんで。面白かったでしょう?まぁ、さほど怖くはなかったけど」

 

 

「いや、普通に怖かったんですが………」

 

 

「今日、隣の氷室さんの部屋に出るかもしれないですねー」

 

 

「やめましょう、そう言うオカルト系の話は!!」

 

 

氷室の反応を見た創真はクスクス、と笑う。思わず大きな声を出した氷室は気まずそうに咳払いをして、話を続ける。

 

 

「しかしながら、確実な証拠があるわけではないですから、創真様のただの思い込みと言う可能性もなきにしもあらず、と言うことも考えられますからね」

 

 

「………………まぁ、そうなんですよねー。物的証拠かぁ………………防衛省のコンピューターに侵入します?」

 

 

「捕まりますよ?」

 

 

「かもしんないですねー」

 

 

『それなら私がコンピューターに入り込みましょうか?』

 

 

声がした方を見ると、そこにあったのはスマホ。そのスマホの画面には、律がいた。

 

 

「あーうん。お願いしようかな……その前に何でスマホに?」

 

 

『皆さんとのコミュニケーションを円滑に行うためにスマホに入ってみました!モバイル律とお呼びください!』

 

 

「あ、そう…………じゃあ、鷹岡に関する資料を全部取り寄せて」

 

 

『終わりました』

 

 

「いや、早いですな」

 

 

画面に表示された画像やデータを、創真と氷室は丁寧に目を通していく。そして、彼らはとんでもない1枚の画像を見つけた。

 

 

「……これは……」

 

 

「なんだ、この写真は…………やはり、あの先生はヤバそうだ……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

「よーし皆集まったな!じゃあ新しい体育を始めるぞ!終わったらまた良いもん食わせてやるからな!」

 

 

「どーせ自分が食いたいだけなんじゃないの?」

 

 

「あ、ばれたか」

 

 

中村とのやり取りに皆はクスクス笑う。しかし、隼だけは別だった。

 

 

(昨日から創真の様子がおかしい。しかも今日サボってるし…………あいつが授業をサボることなんてないはずだが……)

 

 

創真はお昼休みが終わったあと、いつの間にか姿を消していた。氷室と一緒に。

 

 

「さて…………訓練の内容の一新に伴いE組のカリキュラムも変わる。これを回してくれ」

 

 

回された時間割を見て驚愕した。なんと夜九時まで訓練までというカリキュラムだったのだ。

 

 

「これくらい当然さ。理事長にもちゃんと許可は貰ってる。では早速…………」

 

 

「ちょ、待ってくれよ!こんなんじゃ成績が落ちるよ!理事長もそれが狙いで許可してるんだ!こんなカリキュラムじゃ遊べないし……出来るわけねーよ!」

 

 

抗議の声をあげた前原に鷹岡は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腹に蹴りを入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

前原は崩れ落ちる。

 

 

「出来ないじゃない。やるんだよ。言ったろ?俺は父親だ。父親の命令を聞かない子供が何処にいる?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『出来ないじゃない。やるんだよ。言ったろ?俺は父親だ。父親の命令を聞かない子供が何処にいる?』

 

 

校舎裏で、上空にいるマシンカブトのカメラで、前原が蹴りを入れられるのを。そして、本性を現した鷹岡の声を創真と氷室は聞いていた。

 

 

「行きますか」

 

 

「勿論です」

 

 

2人は駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前は父ちゃんに着いてきてくれるか?」

 

 

次に鷹岡は神崎を標的にした。神崎さんは恐いのか、震えている。

 

 

「………………私は嫌です。烏間先生の授業を希望します」

 

 

従えば殴られなったのは分かっていたかもしれない。それでも神崎は鷹岡を先生として認めたくなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

バシ!!

 

 

 

 

 

 

 

「え……?」

 

 

殴られたと思ったが、それは神崎ではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「隼君!」」」

 

 

間に入って吹き飛ばされたのは、隼だった。

 

 

「いってー……なんつーパワーだ………」

 

 

「お前らまだ分からないか?『はい』以外は無いんだよ。これでもう父ちゃんに着いてきてくれるよな………倉橋」

 

 

鷹岡は倉橋を標的にした。倉橋は烏間先生が教師として好きだ。だから鷹岡を絶対認めたくなかった。認めたら後悔する……そう思った。

 

 

例え殴られても、だ。

 

 

「嫌です!私も烏間先生が良い!」

 

 

「……お仕置きだな……」

 

 

鷹岡の拳が倉橋の目の前に迫ってきた。倉橋は思わず目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫、倉橋さん?」

 

 

目を開けるとそこには創真がいた。鷹岡の拳を手で受け止めたのだ。

 

 

「創真君!」

 

 

「なんだ?お前も父ちゃんの邪魔をするのか?」

 

 

「そうだね……………この教室に、あんたは不必要な存在だ。この教室の教官は、烏間先生だけで充分だ」

 

 

「このガキ……!!」

 

 

鷹岡は空いている手で創真を殴ろうとした。しかひ、拳が動かなかった。

 

 

「お前……確かこいつのお目付け役とか言う奴だったな……!!」

 

 

「ええ、その通りです。だからわざわざ私の仕事を増やす真似はやめてくれませんかね?私の任務の中には、創真様に危害を加える者の排除も含まれてますから」

 

 

今にも殴りあいが始まる………そんな雰囲気だった。

 

 

「やめろ鷹岡!氷室さんに創真君もだ!」

 

 

ここで烏間が止めにはいった。創真と氷室は素直に手を離した。

 

 

「前原君、大丈夫か?」

 

 

「だ、大丈夫っス」

 

 

「隼君は?」

 

 

「あー、全然大したことないですよ」

 

 

「ちゃんと手加減してるさ。俺の大事な家族なんだから」

 

 

「いいや、違う。私の生徒です」

 

 

いつの間にか殺せんせーがいた。無論、怒っている。

 

 

「ふん、文句があるのかモンスター。体育は俺に一任されてるんだ。今のも立派な教育の範囲内さ。それとも教育論が多少違うだけで危害を加えてない俺にまで攻撃するのか?」

 

 

「ふむ……………良いことを考え付きました。対決をしたらどうでしょうか?教師としてあなたと烏間先生が対決し、白黒はっきりさせたらどうですか?どちらが優秀なのか」

 

 

氷室の提案は都合が良かった……………鷹岡にとって。

 

 

「(……良いタイミングで言ってくれたな。横槍刺される前にアレを使うか……)良いだろう。ならこれで対決しよう!」

 

 

鷹岡は対先生用のナイフを取り出した。

 

 

「烏間、お前が育てたなかで一押しの生徒を選べ。そいつが俺と対決しナイフを俺に一度でも当てたら敗けを認め、出ていこう。男に二言はない!」

 

 

みんなの表情が明るくなった。

 

 

「だか、俺が勝てばこのあと一切口を出さない。それと………使うナイフはこれだ」

 

 

そのナイフは本物だった。

 

 

「そんなの使えないに決まっています!彼等は本物のナイフを使ってないし、人殺しの訓練をしてないんですよ!」

 

 

氷室が抗議するが鷹岡は余裕そうに云う。

 

 

「安心しな寸土目でも良い。俺は素手なんだ。ちょうど良いハンデだろ?さぁ、烏間一人選べ。選ばないなら俺に服従だ!」

 

 

烏間は鷹岡が投げたナイフを拾い……ある生徒の方へ向かった。

 

 

まるで最初から決めていたかのように……

 

 

「渚君、やる気はあるか?」




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第38話 才能の時間

今回、新たに登場するアイツらの一匹の正体が……


「え……」

 

 

周囲だけではなく、選ばれた本人も驚いていた。しかし、創真は何となくその選択は間違ってないと思った。

 

 

「僕も賛成だな。もし、僕が烏間先生と同じ立場なら、同じ選択をする……………渚君、君なら出来る。だから安心してナイフを受け取りな」

 

 

渚は目をつぶり、スッと息を吸った後……目を開け、ナイフを手に持った。

 

 

「やります」

 

 

────────殺ったれ渚。

 

 

創真はそう心の中で激励を飛ばし、自身は皆の所へ戻る。

 

 

「よりによってそんなちびを選ぶとはな……目が曇ったものだな烏間」

 

 

鷹岡はなめた様子だった。烏間は幾つか渚にアドバイスし、離れた。

 

 

「なぁ、当てられると思うか?渚のナイフ」

 

 

「無理だよ……訓練してれば嫌でも分かる」

 

 

「まぁ、みんな見てなって。僕の予想通りなら、面白いことが起きる……………」

 

 

皆が不安そうな中、創真だけは意味深な事を言った。

 

 

「さぁ、来い!公開処刑だ!」

 

 

鷹岡が高らかにバトルの開始を宣言した。

 

 

烏間は渚にこう言っていた。

 

 

(鷹岡はナイフ術を熟知している。本気で振らないと掠りすらしないぞ。それに鷹岡にとっては戦闘、たが君にとっては暗殺だ。一度でも当てれば君の勝ちだ。強さを見せつける必要はない。鷹岡はしばらく君に好きに攻撃させるだろう。つまり反撃の来ない最初の数撃が最大のチャンス。君ならそこを突けると思う)

 

 

 

一方、創真はこの戦いを以下のように読んでいた。

 

 

(……本物のナイフで刺したら人は死んじゃう……それが鷹岡の狙いだろう。だから普段の力を発揮できずに自分が勝つ……なーんて思ってるんだろうな……でもこの勝負は……渚にとっては戦闘じゃない。殺せばいい。そう………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

((殺せば勝ちなんだ))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渚は笑って普通に歩いて近づいた。まるで通学路を歩くみたいに。気づいたときには渚は鷹岡の前にいた。

 

 

そして、渚はナイフを全力で振る。

 

 

鷹岡はぎょっとして体を大きく反らした。ようやく自分が殺されかけていることに気づいたようだ。渚は鷹岡の服を引っ張り、転ばせて、後ろへ回り……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナイフを当てた。刃の方ではないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………お見事」

 

 

創真は満足そうな表情だった。他の皆は驚いていた。

 

 

「勝負ありのようですね」

 

 

殺せんせーはナイフをひょいと取り上げ、ボリボリ食べ始めた。

 

 

「凄げぇな、おい……渚の奴、マジでやりやがった………」

 

 

隼は皆に揉みくちゃにされている渚を見て一人呟いた。

 

 

「創真様。あなたはもしかしてこの結末を描いてましたね?彼に、『暗殺の才能』があることを、あなたは見抜いていた」

 

 

「………………さてさて、どうでしょーね?」

 

 

創真は誤魔化すような口調で、面白そうに言った。すると、漸く我に返った鷹岡が青筋を立てて怒りの表情で口を開く。

 

 

「このガキ……まぐれの勝ちがそんなに嬉しいか!?もう一度だ!今度は油断しねぇ!!」

 

 

「確かに次やったら僕が負けます。でもこれではっきりしました。僕らの担任は殺せんせーで、僕らの教官は烏間先生です。僕はプロに徹する烏間先生の方が温かく感じます。本気で育てようとしてくれたのには感謝してます。でもごめんなさい。出てってください」

 

 

隼も渚の隣に並んだ。

 

 

「おい、出てけよ。男に二言はないんだろ?あんたそう言ってたよな?」

 

 

「うるせぇ……!!」

 

 

鷹岡は目の前の二人を殴ろうとしたが、そこに間に入ったのはあの2羽だった。

 

 

「んな!?何で来た…………」

 

 

創真、氷室は飛び出したが、到底間に合わない距離。2羽に拳が──────────

 

 

 

 

 

 

 

──────当たろうとしたその時、鷹岡の手が止まった。

 

 

(ッッ!何だ、手が……………何故動かない…………誰か止めてるのか?いや、違う…………)

 

 

それだけではなく、もう1つ鷹岡は気付いた。

 

 

(拳が震えてる……………!?な、何で………)

 

 

混乱する鷹岡。ふと、前を見ると鳥が2羽いた。

鷹岡は、その鳥からとてつもなく恐ろしい物を感じた。

 

 

(これは……………殺気?俺は、たかが鳥ごときにびびっているのか…………………!?)

 

 

「良く分かりませんが、隙あり!!」

 

 

氷室が鷹岡の顔面に蹴りを喰らわせた。

 

 

「グハ!!」

 

 

鷹岡はスローモーションで倒れる。

 

 

「な、何だ今の…………?」

 

 

「創真君の鳥から……………殺気?」

 

 

そこへ烏間先生が来て、みんなの方に体を向けた。

 

 

「俺の身内が迷惑を掛けてすまなかった。後の事は任せてくれ。俺が一人で教官を努めれるように上と交渉する」

 

 

「「「烏間先生!」」」

 

 

「させるか…!!俺が先に掛け合って……」

 

 

「あなたもしつこいですね…………」

 

 

顔面に靴の跡がついている諦めの悪い鷹岡に、氷室が呆れたようにため息をつく。

 

 

「その必要はありません」

 

 

その声の主は理事長だった。

 

 

「全て拝見してました。鷹岡先生、結論から言えばあなたは首です。あなたの授業はつまらなかった。教育には恐怖は必要ですが、暴力でしか恐怖を与えられないような三流以下の教師はここに必要ない。ああ、それともうひとつ。ここの教師の任命権はあなた方防衛省にはない。全て私の支配下ということをお忘れなく」

 

 

理事長は鷹岡の口に解雇通知らしき物を詰めて去っていった。鷹岡は解雇通知をおいしく(?)頂きながら走り去っていった。

 

 

「「「よっしゃあ!!」」」

 

 

皆は歓声に湧く。

 

 

「あー、良かった良かった……………だがしかし、だ。鷹岡を怯ませる殺気を放った君達2羽………只者じゃないな…………」

 

 

創真は肩に止まっている2羽に話し掛けるが、何の事、と言いたげに2羽は首をかしげる。

 

 

「おい、創真。今からスイーツタイムだ。町で甘いものを食いまくるぞ!」

 

 

隼は烏間先生が財布を出して甘いものを奢ってくれ事を説明した。

 

 

「おー、烏間先生も太っ腹ですな」

 

 

「ほんとだよ、あんなデブ野郎よりも太っ腹だぜ、まったく……………にしても、俺も1発やり返したかったぜ」

 

 

「ハハッ、まーまた機会があればやれば良いんじゃない?」

 

 

「そんな機会、あんのかよ…………」

 

 

「隼君」

 

 

隼が振り返ると、そこには神崎がいた。

 

 

「さっきはありがとう。守ってくれて」

 

 

「え?あ、い、いやいや、い、良いんだよ別にそれくらい」

 

 

「そーそ。何なら、これからも身代わり役として使っても良いんだよ、神崎さん」

 

 

「うっせぇ!創真、テメーは引っ込んでろ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………彼か」

 

 

隼と創真が話してるのを、こっそり空から見ている存在がいた。

 

 

「みたいだねー。中々面白そうな奴じゃん」

 

 

彼は手にもつ紙をチラッと見る。そこには、結城 創真=護衛対象と書かれていた。

 

 

「さぁ、俺様たちも………キバって行くぜ!!」




コウモリの正体が遂にわかりましたね?
ちなみにこのコウモリ一匹はある方からリクエストのメッセージが来ましたので話に入れることにしました。


……と言うか僕的にもちょうど良かったです。
明るくて面白い系のキャラを入れようと思ってたので。


僕はこのキャラを入れるに当たって、あることを意識して書こうと思っています。


それは、『知らない別のアニメのキャラでも問題なく楽しく読める』


だからこのコウモリの正体が分かった方は、原作の設定は全てないと思ってください。皆さんに分りやすく、そして都合よく新たに自分で設定し、また紹介をします。


いやぁ……懐かしいな……。


おっと、長くなりましたが……メリークリスマス!


次回、急展開です。


ここで……


・SF要素ありのタグが使われるかも?


・急展開注意


・この作品史上、1番現実からかけ離れすぎてます!


ということをご承知下さい。もしかして次の話が気に入らない人もいると思いますが、見守ってもらえたら嬉しいです!


THE NEXT story 12/26 PM 22:00


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第39話 相棒の時間

スイーツパーティーの帰りの車内で創真は今日の出来事を振り返っていた。

 

 

「まったく、あのデブはとんでもない野郎でしたね」

 

 

「ほんとですよ。中学生に暴力を躊躇い無く振るなど、あり得ませんよ、まったく!」

 

 

氷室も少々お怒り気味。

 

 

「それにしても、今日の渚君には驚かされましたね……」

 

 

「まー僕も大丈夫だとは思ってましたけど、やっぱり実際に鷹岡に勝ったときはホッとしましたね………」

 

 

「暗殺の才能……………しかし、これを伸ばしても将来に役立つ物なんですかね?」

 

 

「役立つと思いますよ?全てのツールは、幾多の道を切り開く鍵となりますからね…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はー疲れた疲れた……」

 

 

氷室さんは大学の同級生と飲み会があるそうなので、創真だけ家に戻り、自室を開けると…………

 

 

「やぁ!待ってたよ!」

 

 

「………………」

 

 

「お~こいつが俺様達の相棒か?」

 

 

「…………………………」

 

 

見知らぬ2人+1匹が自室にいた為、創真はほんの一瞬思考がストップした。しかし、流石天才と云うべきか、すぐにスマホを取り出した。

 

 

「えー、不審者2人+コウモリ1匹………もしもしポリスメーン!!」

 

 

「ちょ、待って待って!!通報だけは止めて!!別に泥棒とかそんなんじゃないから!!」

 

 

白い格好をしている少年が、通報しようとしている創真の腕を掴んで止める。

 

 

「じゃあなにしに来たんだよ!?そもそも人の部屋に入ってる時点でoutなんだけど!不法侵入なんだけど!?」

 

 

「あ、そうだ!自己紹介するよ。僕の名はホリー!命の聖霊さ」

 

 

「そして聞いてない!!……………ん?命の聖霊?」

 

 

ホリーと名乗った少年は、全身真っ白コーデでしかも羽のマフラーが一際目立っていた。

 

 

「俺の名はデュオだ。元死神だ」

 

 

デュオはホリーと対照的に全身黒のコーデ。首につけてる無数の鎖似のネックレスが目立つな。

 

 

「俺様の名はキバットバットだぜ!ま、略してキバットとでも呼んでくれ」

 

 

コウモリがそう喋った。

 

 

「うーん。警察に、中二病の2人と喋るコウモリがいる、って信じてもらえるかなー?」

 

 

「だから、通報はやめなさい!!」

 

 

ホリーがお母さん口調で、何故か創真に命じる。

 

 

「いや、別に命令される筋合無いんですけど」

 

 

「え、いや……………そ、そうだ!面白いものを見せてあげるよ!」

 

 

「は?面白いもの、って何?」

 

 

「フッフッフ、魔法だよ!」

 

 

「よーし、警察に」

 

 

「だから、警察は待って!!もう、スマホ没収!」

 

 

半泣きのホリーは、手をスマホの方に向けると、創真の手からスマホが離れ、ホリーの手に渡った。

 

 

「…………今、勝手に手からスマホが離れた?」

 

 

「『サイコキネシス』、ってやつさ。君も漫画とかでそう言うのは聞いたことあるんじゃない?」

 

 

「あ………………うん……………ん────────?」

 

 

創真の目の前で起きた不可解な現象。流石の創真も直ぐには理解し難かったのか、唸り始めてしまった。

 

 

「にわかに信じがたいけどなぁ……………手品の類いじゃないの?」

 

 

「まぁ、直ぐには信じられないよねー。なら、もっと見せてあげるよ!」

 

 

明るく、楽しそうに言いながらホリーは指をパチンと鳴らす。すると、ホリーの隣に魔方陣が出現した。ホリーは魔方陣に手を突っ込む。数秒後、魔方陣から手を出したホリーの手には、肉まんがあった。

 

 

「…………………………………」

 

 

言葉の出ない創真を見たホリーが解説する。

 

 

「これはねー、『コネクト』と言う魔法だよ。空間と空間を繋ぐんだー」

 

 

「は、はぁ……………」

 

 

「ついでに、温めよっと。『スチーム』」

 

 

ホリーがそう呟くと、突然肉まんは蒸気を出し始める。

 

 

「あっつ!ちょっと魔法を強くしすぎたかな~。ま、美味しいけどねー!」

 

 

ホリーは肉まんを頬張りながら笑みを浮かべる。

 

 

「さーて、創真。これで少しは信じてもらえたかな?まだ物足りないなら、この部屋を凍らせたり、竜巻を起こしたりしても良いけど」

 

 

「…………………いや、もう充分だよ。とりあえず、手品の類いでは無さそうだし」

 

 

「いやー良かったよ、信じてくれて」

 

 

ホリーは満足そうにうんうん、と頷きながら肉まんを食べ終えた。

 

 

「で、君達さっき妙なこと言ってたよね?命の聖霊とか、元死神とかさ。あれもほんとなの?」

 

 

「まぁ、そうだね」

 

 

「ふーん……………まぁ、そう言うことにしておくか。ちなみに、デュオ…………君だっけ?君は何か出来るの?」

 

 

「俺か?俺の固有の能力としては、着ている服を不定形の獣に変身させる、だな」

 

 

すると、デュオの外套が揺らめき、外套の後ろからその名の通り、黒い獣が出てきた。そして、先端が針のように尖ったり、布のように変化した。

 

 

「ふーん。なんか、羅生門と同じみたいだね、文ストの異能力の」

 

 

「異能力?まぁ、そうも呼ばれてたりするが……………文スト?」

 

 

「まー、後で自分で調べれば分かるよ。さて、君達。ここからが本題だけど、何でわざわざ僕に接触を図ってきたの?」

 

 

「おーそうだったな。それを説明するのを忘れていたぜ!」

 

 

今まで会話に入ってこなかったキバットが喋りだす。

 

 

「まず、俺達が何処から来たかを教えるぜ。俺達はその、何だ?お前が分かりやすいように言うと、異世界から来たんだぜ」

 

 

「…………………………」

 

 

「俺達には任務、って言うか仕事があってな。それは、俺らの世界で選ばれた人間とパートナー関係、言い換えれば相棒となってその人間が死ぬまで守る、的な」

 

 

「変な仕事だねぇ……………」

 

 

「変な仕事って言うけどよ、実は俺らがいなきゃこの世界の歴史が変わってたかもしれないんだぜ?俺達が今まで守ってきた人物の中には、歴史を大きく動かしたら奴もいるんだぜ。例えば、徳川家康、とかアインシュタインとか」

 

 

「え、マジ?」

 

 

「マジマジ。良く良く考えたら、俺達が今まで守ってきた人物って、大概は後に歴史に名を刻んだりしてるんだよなー。偶然かは知らねぇけど。おっといけねぇ。話が逸れたな。さて、創真。一気に結論を言うぜ。お前は!次の俺達との契約対象に選ばれたってわけよ!」

 

 

「え」

 

 

「ちなみに、断ることも可能だ。別にそれでも良いぜ。そしたら、俺達はつぎの仕事があるまで100年近く暇になるだけだからな……………さー、創真氏!どうする?」

 

 

キバットが問い掛ける。創真は考える人のポーズを取り、黙り込む。2、3分して創真はスッと立ち上がった。3人が見守るなか、創真は口を開いた。

 

 

「じゃ、よろしくー」

 

 

「お…………そうか、分かったぜ。ちなみに、何で契約しようと思ったんだ?」

 

 

「理由?それはね、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何か面白そうだから」

 

 

「「「…………………」」」

 

 

創真の答えを聞いた3人は黙ってしまった。

 

 

「え…………何かいけないことでも言いました?」

 

 

「フフフッ……………アハハハハ!」

 

 

突然ホリーは笑い出した。

 

 

「面白い答えだね、創真!今までそんな理由で承認した奴なんていなかったよ。大体は、この国のため、とか堅苦しいて言うか、真面目なのばっかだった。まぁ、それが悪いとかそういうのじゃないよ。けどね……………面白そうだから、か。良いね、僕は創真の事気に入ったよ。じゃあ、これからよろしく創真!」

 

 

「あぁ、よろしく」

 

 

創真とホリーはハイタッチを交わした。

 

 

「それと、デュオとキバットもよろしく」

 

 

「あぁ」

 

 

「これからよろしくだぜー!」

 

 

デュオは微笑を浮かべながら、キバットは浮遊しながら云った。

 

 

「あ、そうだ。僕はいつも契約成立した時は記念に、貢ぎ物を用意してるんだよねー」

 

 

「要はプレゼントって事?」

 

 

「まぁ、その認識で合ってるよ。じゃあ、ちょっと移動するよ」

 

 

「へ?移動って何処」

 

 

創真が言い終える前に、ホリーは指をパチンと鳴らす。瞬間、彼等の姿は部屋から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………ん?」

 

 

気がつくと、創真は中世を思わせるような巨大な部屋にいた。

 

 

「ここは契約者のみが入れる部屋。と言っても、今までの契約者はほとんど使わなかったけど」

 

 

「ふーん。なんか、玉座の間、って感じがするね」

 

 

「その通りだ。この部屋は中世のとある城の内装をモチーフにして作られたんだぜ!中々良い造りだろ?」

 

 

キバットの問いかけに創真は、嫌いじゃないねと一言答える。そして、いかにも王が座りそうな椅子に腰を下ろす。それを見たキバットが感想を洩らす。

 

 

「おー、何か創真が魔王っぽく見えるぜ」

 

 

「魔王なの?正義の王様とかじゃなくて?」

 

 

「いや、こりゃ魔王にしか見えねぇなー」

 

 

「……………まぁ、何でも良いけど。所でプレゼント的なのは結局何なの?」

 

 

「あ、そうだそれを渡すためにわざわざこの部屋へと案内したんだった」

 

 

本来の目的を思い出したホリーは部屋を飛び出していった。そして数分後、何かを手にして戻ってきた。

 

 

「これだよ」

 

 

ホリーの右手には鞘に納められた剣が。左手にはホルスターに収まっている銃があった。創真はそれらを受け取り、まず剣を鞘から抜いてみる。

 

 

「おー、良い重さの剣だ。だが……………どっかで見たことあるような………………これ、銘とかあるの?」

 

 

「『天空の剣』だよ!」

 

 

「ドラクエのパクりじゃん!」

 

 

創真はホリーにツッコミを入れる。

 

 

「まー何でも良いじゃん、別に。かっこいいんだし」

 

 

「確かにかっこいいけどさぁ……………」

 

 

「ちなみに、それに神器に分類されるから。要は超凄いから」

 

 

「あーそうなの?まぁ、良いや。次は銃の方を見てみるか……………」

 

 

ホルスターから取り出し、創真は銃を握る。

 

 

「うーん……………………」

 

 

「どう?丁度良い重さでしょ?」

 

 

「まぁ、そうだね。でもさぁ…………これもまたどっかで見たことあるんだよなぁ……………この銃の名は?」

 

 

「『ドミネーター』」

 

 

「『Psycho-pass』に出てくるやつじゃん!これもパクりかい!」

 

 

またもやホリーに創真はツッコミを入れる。

 

 

「まったく、創真は文句が多いなぁ」

 

 

「文句って………………てか、これ何を参考にして作ったの?」

 

 

「え?ネットで、かっこいい剣、かっこいい銃、って調べて、僕がその中からかっこいいのを選んで、僕らの世界にある最高級の素材を使って作ったけど?」

 

 

「あぁ、そう……………まぁ、でも、ありがと」

 

 

「どういたしまして!」

 

 

ホリーは笑みを浮かべながら云った。

 

 

「おいおい、ホリー。結局あの剣と銃はネットの拾い物かよ~」

 

 

「うっさい、キバット!最初はオリジナルのを作ろうと思ったんだけど、デザインが思い浮かばなかったんだよ!!」

 

 

「まだまだだな、お前も」

 

 

「んだと、蝙蝠ごときが人間様に生意気言うな!」

 

 

「オメーは人間じゃなぇだろうが。アホか」

 

 

「誰がアホじゃあ!!」

 

 

途方もない言い争いをするホリーとキバット。そして、それを見つめるデュオと創真の構図が出来上がってしまった。

 

 

「やれやれ、また始まった。しょっちゅうあることだが」

 

 

「しょっちゅう喧嘩してるの?」

 

 

創真の問いかけにデュオは首肯く。

 

 

「1週間に5回の頻度でするな」

 

 

「それは多すぎだって……………」

 

 

「全くだ…………………はぁ」

 

 

デュオが大きなため息をつく。それを見て、デュオはこれまで苦労してたんだろうなぁ、と密かに同意するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そういやデュオ。うちの飼ってるペット2匹が頭のイカれたデブを止める程のヤバイ殺気を出したんですが、そう言う事が出来ちゃう事例ってあると思う?」

 

 

「あぁ、あの2匹はうちの世界の鳥だ。あいつらはその中でもトップクラスの戦闘力を誇るから、殺気で怯ませるぐらい余裕だろう。経緯は不明だが、かなり前にお前らの世界に迷いこんでしまったらしい」

 

 

「で、何故かペットショップに売られてたと……………元の世界に帰した 方が良いかな?」

 

 

「いや、その必要はないだろう。お前の事をかなり気に入ってる様子だったしな」

 

 

「そうかー、そりゃ良かった。……………所で、この喧嘩はいつまで続くの?」

 

 

「最長、3時間。最短で1時間だ」

 

 

「いや、ほんと長いな…………………」




めっちゃ改変したなぁ……………。


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第40話 恋の時間

唐突に始まる恋があっても良いよね?うん、全然良いよね(強引)


創真side

 

 

「いや~創真の家は眺めが良いな!」

 

 

キバットが天井に急遽設置した止り木にぶら下がりながら、感想を述べた。相棒となったのは良いのだが、家に同居するとはな…………まぁ、それは百歩譲って良しとしよう。しかし、問題が1つ残っている。これを氷室さんに説明するかどうかだ。

 

 

こんなのを説明してもねぇ………………

 

 

「失礼します」

 

 

キバットは瞬時に机の下へ。あとの2人は透明化した。

 

 

「創真様……………今日のご予定は?」

 

 

「い、いや特にないです」

 

 

「そうですか……………それと、誰か居ますよね?」

 

 

「え」

 

 

「私、霊感あるので……と言うか目に見えてます」

 

 

「はい!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

 

「相棒…………ですか」

 

 

観念したホリーとデュオとキバットは姿を現し、いろいろ説明した。

 

 

「まぁ、特に迷惑にはならなさそうなので、私は追い出したりはしませんよ。ただ、ここはペット禁止なので…………コウモリはちょっと………」

 

 

「俺様をペット扱いするんじゃねぇ!俺様は魔族のコウモリだ!」

 

 

「………………じゃあ、そう言うことにしときますか。まぁ、あんまりどんちゃん騒ぎしないでくださいよ?」

 

 

ホリー達に釘を刺して氷室は創真の部屋を出ていった。

 

 

「いや~追い出されるかと思ったよ…………」

 

 

ホリーは地球の滅亡の危機でも回避したような表情を浮かべていた。

 

 

「あの青年は広い心の持ち主だな。我々の滞在を許可してくれるとは」

 

 

「俺様はペットじゃねぇー!」

 

 

「キバットは落ち着け…………」

 

 

♪♪♪♪♪♪♪♪

 

 

「電話……倉橋さんか。もしもし?」

 

 

『創真君?今日ね、動物園行こうと思ってるんだけど、良かったら一緒に行かない?』

 

 

「え、うーん………………まぁ、どうせやることないし良いですよ」

 

 

「良かった!じゃあ1時に会おうね!」

 

 

通話を終えると、創真はホリー達がにやにやしながら見ているのに気づいた。

 

 

「いや……何です?」

 

 

「いや……なんか良いなぁと思って……同年代の女子とデートとか」

 

 

にやけたホリーにそう言われ、珍しく創真は不思議そうな表情を浮かべた。

 

 

「これデートって言うのか?」

 

 

「え、だって同年代の女の子と2人きりでどっかに行くって、これデートって言って間違いないでしょー?創真って、頭良いのは知ってたけど、そう言うのには疎いんだねー」

 

 

「悪かったな………………」

 

 

創真のふて腐れた表情を見てホリーは笑っていたが、突然真剣な目になって尋ねる。

 

 

「ねぇ、創真。もし告白されたらどうする?」

 

 

「流石にそれは早くない?てか、初めての……………デート?で告白されるってあるの、そんなこと?」

 

 

「意外にあるぜ。俺様、恋関係の事情には誰よりも詳しいからな」

 

 

「どや顔で言うことか…………?」

 

 

創真は小声でキバットにツッコミを入れる。

 

 

「にしても、俺様その可愛娘ちゃんを見たくなってきたぜ。よっし、俺様もその動物園についていくぜ!ついでにお前のボディーガードとしてフレアとメテオも連れていくぞ!」

 

 

「なんであの2羽を?まぁ、別に良いけどキバットってコウモリでしょ?夜行性の昼に活動したら目立つよ?」

 

 

「心配すんなって。目立つような真似はしないって。それに俺様は鳥類と意思疏通できるのさ。俺様が言っておけば心配ないぜ」

 

 

「…………なら良いか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は昨日の夜に遡る。スイーツパーティーの後、矢田は一緒に帰っていた倉橋にある事を質問した。

 

 

「ねぇ、陽菜乃ちゃんって……創真君の事好き?」

 

 

「ふぇ!?なななな、何を言ってるの!?」

 

 

「陽菜乃ちゃん、その反応は分かりやすいよ……」

 

 

矢田は苦笑しながら云う。

 

 

「……うん。実は……」

 

 

「やっぱり!私は応援するよ、陽菜乃ちゃん!」

 

 

「本当?ありがとう桃花ちゃん!」

 

 

「じゃあさ、さっそく明日にでもデートに誘ってみなよ」

 

 

「う、うん。どこにすれば良いかな……?」

 

 

「動物園とかは良いんじゃない?陽菜乃ちゃんは動物詳しいし、創真君もいろいろ知ってると思うし、楽しいと思うよ!」

 

 

「なるほど…………うん、明日誘ってみるね!」

 

 

そんな会話をしていたことは誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

13:00

 

 

「お待たせ、創真君!」

 

 

創真が振り向くと、可愛らしい私服を着た、倉橋がいた。

 

 

「よし、じゃ行こう!」

 

 

「ほいほい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3時間後

 

 

(……………くっそ、疲れた)

 

 

思わず心の中でそう呟いた創真。どうも人が多すぎるに加え、あちこちを倉橋の先導で飛び回り、さしもの創真も疲れ果てた模様。

 

 

「創真君、お土産買う?」

 

 

「…………ちょっと人混みに疲れたので……悪いけど、そこのベンチで休んでて良い?」

 

 

「おっけー!買ってきたらすぐ戻るね」

 

 

倉橋さんはスキップしながら販売店に入っていった。そこへずっと創真をモニタリングしていたホリー達がやって来た。

 

 

「創真~、あの姉ちゃん可愛いな~。俺様も人間だったらなぁ……」

 

 

「この調子じゃ、今日のうちにコクられるかもよ?」

 

 

キバットもホリーもにやけ顔だった。

 

 

「なぁなぁ、創真。お前は彼女が好きか?」

 

 

「好きか、だって?まぁ……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

好きだな」

 

 

 

その反応に奴等(ホリーとキバット)は少しがっかり気味だった。

 

 

「……いや、お前……普通はモジモジしたり言うのを渋るもんじゃないか?」

 

 

「そうなの?」

 

 

「てか、お前はどの辺が好きなん?」

 

 

「そうね…………優しかったり、よく話し掛けてくれるし、あと笑顔が好き」

 

 

「へぇー……………普通の回答だね」

 

 

「いや、逆にダメなの、普通で?」

 

 

ホリーにツッコミを入れた瞬間、電話が鳴った。

 

 

「お、電話だぜ~!倉橋さんだろ?もしかして……愛の告……ムグムグ……!」

 

 

ホリーがキバットの口をふさいだ。

 

 

「静かに!愛の告白かも知れないんだから!」

 

 

愛の告白に期待するホリーに、創真はやれやれ、と思いながら電話に出る。

 

 

「もしもし」

 

 

『結城 創真……だな?』

 

 

「お前、倉橋さんじゃないな?」

 

 

『ご名答。彼女は無事さ。だが、我々の要求を聞かなければ、彼女の身の安全は保証しない』

 

 

「要求、ねぇ。何がお望み?」

 

 

『お前の親父の会社の最重要機密データをよこせ。期限は今日の7時に指定の場所で会おう。詳細はでメールで教える』

 

 

そして電話は一方的に切られた。それとほぼ同時に、指定場所のメールが送られてきた。

 

 

「そ、創真。愛の告白ではないな……」

 

 

「うん。機密データねぇ…………どうしようか」

 

 

「素直に渡しちゃう?」

 

 

ホリーの問い掛けに、創真は首を横に振る。

 

 

「まさか。そのデータを渡したら、会社が死ぬわ」

 

 

「じゃあ、倉橋を見捨てるのか?」

 

 

デュオの問い掛けにも、創真は首を横に振る。

 

 

「そう言う選択は、僕にはない。絶対に、な」

 

 

「なら、どうする?」

 

 

「奴等にデータも渡さずに倉橋さんを助ける」

 

 

「ほほーう。それで、アイデアはあるのか?」

 

 

キバットの問い掛けに、今度は首を縦に振る創真。

 

 

「勿論、既に考えてあるよ………クラスメイトにこんな真似をしてくれたんだ。たっぷりお返しをしてやらなくちゃねぇ」

 

 

「まったくだ。あんな可愛い女の子を誘拐するなんて、許せないな…………」

 

 

「ホリーの言う通りだぜ!俺様達でグチョグチョのギッタンギッタンにしてやるわ!なっ、デュオ!」

 

 

「……………………あぁ。それで、どういう作戦だ」

 

 

「それはね……………」

 

 

to be continue……




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第41話 恋の時間2時間目

「………あれ?ここは……?」

 

 

倉橋は目が覚めると、自分が椅子に縛られているのに気付いた。

 

 

(あれ、私なんで縛られてるの?それにここは………………あ、思い出した!確かお土産を買いに行ったら意識が無くなった気が………)

 

 

「目が覚めたかね、倉橋 陽菜乃さん」

 

 

倉橋が意識を失う前の事を思い出した直後、奥から見知らぬ男が現れた。

 

 

「あなたは誰?」

 

 

「私?名乗るほどの者ではないさ。手荒な真似して悪かったね。ここは郊外の廃工場さ」

 

 

「……………何が目的なの?」

 

 

「君には結城 創真の会社のデータを獲得する餌になってもらうよ」

 

 

その男は説明を始めた。自分は創真の会社のライバル企業であり、だんだん実績が延びてきたが創真の会社には及ばないため、会社の機密データを全て盗み、技術力等を獲得する……その為に創真の近辺を調査し、ターゲットを倉橋にして、今日実行した、と言う趣旨を。

 

 

「そんな……」

 

 

「まぁ、彼の性格上、助けないと言う選択肢は無いだろうねぇ。私の勝ちは決まったものだ。おっと、もうすぐ7時だ。随分と眠ってたねぇ、倉橋さん」

 

 

男が高らかに勝利宣言するのを倉橋は黙って見てるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ここか」

 

 

倉橋救出作戦の参加メンバーの創真、ホリー、デュオ、キバット、氷室は、指定場所の廃工場に来ていた。

 

 

「周りには見張りが数名いるぜ。中に入ったら彼女はすぐそこにいるはずだぜ」

 

 

周りを偵察していたキバットが創真らに報告した。

 

 

「第1目標は、倉橋さんの救出。からの、敵の制圧、ですね?」

 

 

「氷室さんの言う通りです。じゃ、打ち合わせ通りに…………行くよ」

 

 

創真の言葉に皆は頷き、一斉に行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さーてそろそろ来るか……?」

 

 

男がそう呟いた時、ドアが叩かれる音がした。

 

 

「入れ」

 

 

ドアが開き、姿を現したのは

 

 

「創真君!」

 

 

「フハハハハ!やはり私の計画通りだ!さぁて、データを渡してもらおうか」

 

 

創真は無言でケースを男の方に投げ飛ばした。男が中を確認すると、チップが入っていた。男は部下に本物か確認するように言った。

 

 

「ご苦労だった。だが………生きて帰れるとでも?」

 

 

胸元から銃を取りだし、創真の方に向ける。

 

 

「ダメ!創真君、私の事はいいから逃げて!死んでほしくない!」

 

 

「黙れ。安心しなお前もすぐに逝かしてやるからな!」

 

 

バン、と言う乾いた銃声が響いた。倉橋は思わず目を瞑った。銃弾を受けた創真はゆっくり倒れ──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………うーん。流石に、この程度じゃ傷つかないな。せめて機関銃とかじゃないと、かすり傷すら付かない」

 

 

──────────倒れなかった。

 

 

「な、何故だ!なぜ倒れない!?脳に命中したはずだ!なのに何故死なない!?」

 

 

倉橋が目を開けると、そこには驚いている男と余裕そうに立っている創真の姿があった。

 

 

「……何故生きてるか?答えは簡単さ……」

 

 

その瞬間、創真の体が輝き出した。その場にいた全員が目を瞑った。すぐに光は収まった。目を開けると、そこには全身白いファッションで、白い羽のマフラーを巻いている中学生位の男が立っていた。

 

 

「僕は創真じゃない。名前はホリー。『コピー』で化けてただけさ」

 

 

「こ、コピーだと…………?」

 

 

「あー、別に知らなくて良いよ。どうせ忘れるし」

 

 

そう喋りながらホリーはポケットから笛を取りだし、口に加える。

 

 

ピ─────────!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パリン!!

 

 

2人の男が窓ガラスを突き破って入ってきた。それとほぼ同時に男が持っていた銃が弾かれた。銃は転がり、男は手を押さえる。

 

 

「だ、誰だ!?」

 

 

男が銃声のした方を向くと、そこには黒の少年と、もう1人、銃を持っている少年がいた。

 

 

「創真君!」

 

 

「やぁ、倉橋さん。今度は本物だよ」

 

 

創真の手にはドミネーターがあった。

 

 

「えっと……その全身黒い人は?」

 

 

「俺はデュオだ。元死……」

 

 

ここで創真が口をふさいだ。

 

 

(それ、言っちゃダメ!)

 

 

(…………すまん、つい癖で)

 

 

目配せでそんな会話を繰り広げるデュオと創真。

 

 

「くそ!舐めた真似しやがって!結城 創真!」

 

 

「あ?舐めた真似……だって?それはこっちの台詞だよ。よくも大切なクラスメイトを巻き込んでくれましたねぇ?」

 

 

創真から出される殺気に、男は冷や汗をかく。恐怖を払うように、男は大声を出す。

 

 

「ふん!だがこっちには人手が沢山いる。それにまだ人質も……ってあれ?」

 

 

見渡すと、人質(倉橋)は創真にお姫様だっこされていた。

 

 

「返してもらったよ」

 

 

説明すると、話してる間にホリーがスキル『高速移動』で縄を切って救出→そのまま創真にお姫様だっこさせる→倉橋、赤くなる。

 

 

「これで人質もなし。恐くもないねぇ」

 

 

「ちっ!だが逃がすか!お前ら、出てこい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シーン…………………………………………(-_-)

 

 

────────誰も出てこなかった。

 

 

「ちょ!?お前ら!」

 

 

「誰も来ませんよ、もう。全員、私が事前に意識を刈り取っておきましたから」

 

 

粗大ごみを捨てるかのように気絶した男を投げながら来たのは氷室だった。

 

 

「お仕事終わりました。創真様」

 

 

「おー、どうもありがとうございます、氷室さん」

 

 

「くそ!こうなったらお前ら全員私の手で殺してやる!」

 

 

男はナイフを持ち、突進してきた。

 

 

「させるか!」

 

 

その声と伴に現れたのはキバットだ。

 

 

「な、なんだこいつは!?コウモリが喋った!?」

 

 

「ガブッ!」

 

 

キバットはナイフの刃を噛み砕いた。

 

 

「観念しやがれ、こいつ!」

 

 

キバットの渾身の体当たりが命中し、男はそのまま頭を床に打ち付け、昏睡に陥り、寝息をたて始めた。

 

 

「創真君、ありがとう!助けに来てくれて!」

 

 

「いーえ。無事で良かった」

 

 

倉橋が創真に抱き付き、それをにやにや見つめるホリー達。

 

 

「あ、創真君。私言いたいことがあってね………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私、創真君の事が好き。付き合ってください」

 

 

その言葉にキバットが特ににやにやする。

 

 

「喜んで」

 

 

「良かったー………………って、ええ!?」

 

 

倉橋は大声をあげる。まるで驚いたかのように。

 

 

「ど、どうしたんです?急に大声なんか出して………」

 

 

「え、だって…………まさか創真君がOKしてくれるなんて思ってなくて……………デートだって、今日が初めてだったし……………」

 

 

「良いこと教えてやるぜ、お嬢ちゃん。創真は君のこと好きだったみたいだぜ。優しいところとか、あと笑顔が好きとか言ってたぜ?」

 

 

ニヤニヤ顔のキバットがそう教えると、倉橋は顔をパッと明るくして創真の方を見る。

 

 

「え、そうなの!?それ本当、創真君?」

 

 

「え、まぁ…………本当です」

 

 

「そうだったんだ………………あれ、ちょっと待って」

 

 

倉橋はある事に気が付いた。

 

 

「さっき………………て言うか今も…………コウモリが喋ってたよね…………?」

 

 

「………………………ホリー」

 

 

倉橋の質問に創真は答えず、ホリーの名を呼ぶ。

呼ばれたホリーは頷いて、倉橋の後ろに回り込み、首もとをトン、と叩く。気絶した倉橋が倒れるのを創真が受け止める。

 

 

「………………キバット」

 

 

「………………わりぃ。つい、喋っちまった」

 

 

「次から気を付けてくれよ………………ホリー」

 

 

「言われなくても分かるよ。僕らのことを彼女の記憶から消せるか、って言いたいんじゃない?別に出来るよ…………ただ、魔力の消費が激しいんだよねー。1日三回程しか使えない高位魔法だから、疲れるしあんまりやりたくないけど」

 

 

「じゃ、頼む。流石に、君達の事は言えないからね…………」

 

 

「ま、確かに部外者に知られるのはこちらとしても、極力避けたいからな……………だが、もし隠し通せない時が来てしまったら、お前ならどうする、創真?」

 

 

「…………………その時はその時に、だな。それよりも、倉橋さんが無事で良かったよ」

 

 

「ほんとだよー。こんな美女に傷1つでも付いたら、世界の終わりだねー」

 

 

「世界じゃねぇな。宇宙の終わりだぜ!」

 

 

「……………ホリーとキバットは相変わらず大袈裟だな」

 

 

ホリーとキバットにデュオは静かにツッコミを入れるのだった。

 

 

かくして、事件は終息を迎えたのだった。




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第42話 プールの時間

えーお待たせしました。第3のマシンシリーズ登場です!まぁ、本格的な活躍はもうちょっとしてからですが。


それではどうぞ!


果たして年内中にお気にいり登録者数60人いくかな!?


「へー創真の学校って山にあるんだな。これならあの2羽もストレスなくて良いだろうな」

 

 

キバットが創真に話し掛ける。

 

 

「ここは自然が豊かだからね。居心地が凄く良いと思うよ」

 

 

「ほんと、そうだねー!空気が美味しいよ!」

 

 

「…………………悪くないな、ここは」

 

 

創真の後ろにいるホリーとデュオも首肯く。

 

 

当たり前のようにホリー、デュオ、キバットが創真について来てるが、こうなったのも事情がある。今日の朝、ホリーとキバットが『僕達も創真の行ってる学校に行ってみたい!』と言い出したのだ。創真は少し迷っていたが、デュオが2人を常に見ておくと言ってくれたので、絶対に皆に姿を見せない、と言う条件の元、同行を承認した。

 

 

ちなみにキバットはバックの中から僕に話しかけている。あとの2人は透明化だ。

 

 

「創真君、おはよう!」

 

 

「おはよう、倉橋さん」

 

 

「そ、そうだ。創真君……わ、私の事をさ、ひ、陽菜乃って呼ぶようにしてくれない?そっちの方が恋人同士みたいだし」

 

 

「じゃあ改めて…………おはよう、陽菜乃」

 

 

呼ばれた陽菜乃は顔を赤くする。それを見たホリーとキバットも惚れてなのか、顔を赤くする。何だこの連鎖反応は、と創真が思った時、倉橋が口を開く。

 

 

「そ、そう言えばさもう夏だよね。私生き物好きだから夏好きなんだ」

 

 

「例えば?」

 

 

「クワガタとか好きだよ。あとカブト虫とか………」

 

 

「クワガタ、ねぇ……………じゃあ、面白いものを見せてあげよう」

 

 

何を、と倉橋が聞くよりも前に、創真はスマホをタップした。その瞬間、創真の鞄から何かが飛び出す。

 

 

「キャッ!?」

 

 

「ごめんごめん。驚かせちゃった?」

 

 

「う、うん。これって……?」

 

 

倉橋の視線の先には、宙をホバリングする青色の機械のクワガタがいた。

 

 

「マシンクワガタ。昨日仕上げました」

 

 

「やっぱり凄い完成度…………創真君はやっぱりなんでも出来るね~」

 

 

「そう?ありがと」

 

 

称賛を受けた創真は、嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

暑い……………………暑い…………暑いぞォォ!授業中だが、暑くて皆だらけている。

 

 

「おい、創真。暑すぎだろ、ここ」

 

 

どうでもいいが、隼の声聞くの久しぶりな気がした。

 

 

「山の中、さらにエアコンなし。暑いに決まってる」

 

 

「なんとかならないもんかね……」

 

 

────────ならない。

 

 

「まったく創真君に隼君を含め、皆さん情けないですね。まぁ、先生は放課後寒帯に逃げますが」

 

 

「「「ずりぃ!」」」

 

 

「だが、今日はプール開きだよね?涼しくなるからなりよりだね」

 

 

「いや、創真。本校舎まで行くんだぞ?この炎天下の中。プール終わってもまたここに戻らないといけないから俺らにとっては地獄だぜ。通称『E組、死のプール行進』ってやつだ」

 

 

前原の説明を聞いてると、プールの授業なくていいと思えてきてしまった。

 

 

「しょうがないですねぇ。皆さん、水着に着替えて来てください。すこし涼みに行きましょう。小さな沢がありますから」

 

 

水掛け遊びでもするのか?まぁ、多少は涼しくなるだろうし、まぁ良いか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、創真。渚君から聞いたけどさ、創真のペットがとんでもない殺気を出して、あのデブを怯ませたんだって?」

 

 

サボっていたからどこにいたか知らないが、カルマもあの殺気を感じたようだった。

 

 

「そうだよ。奴がビビるほどだったから、相当のだったよ」

 

 

「創真の飼ってるあいつらは凄いね……飼い主もだけど」

 

 

ここで先頭を進んでいた殺せんせーが足を止め、皆の方に体を向けた。

 

 

「さて……先生はマッハ20の超生物ですが、出来ないことも沢山あります。例えば君達をプールに連れていく……それには1日掛かります」

 

 

「1日?本校舎のプールなら20分位で……」

 

 

「おや、先生は本校舎に行くとは行ってませんよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奥から……水の音がするな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆も気付いたのか、早足で行くと…………………そこにはプールがあった。

 

 

「ヌルフフフ、この土日で作りました。水を溜めて塞き止めたりするのに1日。後は1秒あれば……飛び込めますねぇ」

 

 

ほほーう、やるじゃないか、殺せんせー。

 

 

「「「やっほう!」」」

 

 

皆は次々に飛び込んでいく。もちろん僕もだ。それと皆は見えてはいないが、透明化したホリーとデュオとキバットもだ。

 

 

にしても、殺せんせー、あんたは最&高だな!




THE last story in2017 12/31 PM 22:00


出来たら投稿します!



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第43話 水の時間

今年の最後の投稿です!


第4のマシンシリーズも登場です!


それと活動報告欄に新たなマシンシリーズを考えてくれた方が!


ありがとうございます!


恐らく夏休みの島編で登場させます!


それではどうぞ!


創真side

 

 

さて、時は飛んで放課後。我々は片岡さんの召集で集まった。なぜ集まったか?もう原作既読者ならもうお分かりだろうが、念のため説明しよう。

 

 

時は前回の最後から続く……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピピッ!

 

 

「木村くん!プールサイドを走っては行けません!」

 

 

「あ、すんません」

 

 

ピー!

 

 

「中村さんに原さんも水中に長く潜りすぎないように!溺れたかと思って心配します!」

 

 

ピッ!

 

 

「岡島君もカメラ没収!」

 

 

ピッ!

 

 

「狭間さんも気持ちは分かりますが本ばかり読んでないで泳ぎなさい!」

 

 

ピー!

 

 

「菅谷君!ポーディペイントをしていては普通は入場禁止ですよ!」

 

 

………こんな感じでピーピーピーピーうるさいのだ。王様気分の殺せんせー……と言う訳だ。

 

 

「ったく、あの先生うるさくないか、創真?」

 

 

「あんなタコが地球を滅ぼす奴には思えないが」

 

 

ホリーとデュオの気持ちはとても良く分かる。ああ、描写が無かっただけでもうあいつらには殺せんせーの事は説明済みだ。

 

 

しかし、次が重要だ。

 

 

「殺せんせー、固いこと言わないでよ~!それ!」

 

 

陽菜乃が殺せんせーに水をかけたその瞬間…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「キャン!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ん?もう一度リプレイ。

 

 

 

 

 

「キャン!」

 

 

「……え?なんだ今のは?」

 

 

皆が複雑な気持ちになるなか、創真はデュオにある事をお願いした。デュオは構わない、と了承して殺せんせーが座っているプール用の椅子の近くに移動し、何処からともなく鎌を取り出して…………

 

 

 

スパッ!

 

 

 

「にゅや!?いきなり椅子の足が!?ヒィーー、落ちる!」

 

 

バランスが崩れ、殺せんせーがあと少しで水面に落ちる…………寸前で近くの木の枝に捕まり、落下を防いだ。この時点で皆は気づいた。

 

 

「殺せんせー……あんた泳げないのか?」

 

 

「そ、そんなことないですよ、隼君!先生はバリバリ泳げます!濡れると触手がふやけるとかじゃ、ありません!」

 

 

うん、泳げないね。反応でバレバレだな。泳げない……………この弱点、相当使えるんじゃ

 

 

バシャン!

 

 

音のした方を振り向くと、茅野さんが溺れていた。

 

 

「ちょ!茅野!?」

 

 

「茅野さん!このふ菓子に捕まって!」

 

 

殺せんせー、ふ菓子で救助出来ないわ。と言うかそのビートバン、ふ菓子かよ。その間に片岡さんが茅野さんを助けたのだった。

 

 

「ふふ、水の中なら……私の出番かな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなわけで、今に至る。水中のプロ、片岡さんが言うには、どこかのタイミングで殺せんせーをプールに落とし、待ち伏せしてブサッと殺る……と言う提案だ。

 

 

「創真君は、何か意見ある?」

 

 

やれやれ片岡プロ。ここで僕に振るか。しょうがない。まだ見せるつもりはなかったが………………

 

 

「皆、プールに来て」

 

 

「「「???」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

 

皆はプールに到着した。

 

 

「なぁ、創真。何でプールに来たんだ?」

 

 

「岡島、プール覗き込んでみな」

 

 

「え?あ、ああ」

 

 

プールを覗き込むと………岡島は何かが水中で光った気がした。

 

 

「なんかいるぞ!?うわ!?」

 

 

それは水面をジャンプし、姿を現して再び水の中に入っていった。。その姿はサメに似ていた。

 

 

「創真君、これって……」

 

 

「通称『マシンシャーク』です」

 

 

創真は初の大型の水中の動物にチャレンジした。実を言えば、マシンスコーピオンを作ってる辺りから計画は始まっていた。だが、海外から特殊な部品を仕入れたりするので遅くなったり、テスト運転が上手くいかなかったりで表舞台に出るのが遅くなった。この場に居ると言うことは……殺る準備が出来たと言うこと。軽く説明すると、ヒレとかは一緒だが、最大の特徴はウォータージェットで進むこと。これはジエットフォイルを参考にしたのである。あと、牙は対先生物質で出来ている。牙は国に作って貰った。時速80㎞で水上を進む。だが、燃料の消費が半端ないため、活動時間は30分程。

 

 

そんな感じの説明を創真はした。

 

 

「水殺を狙うなら、こいつは恐らく非常に役立つよ。水の中に落としさえすれば、マシンシャークで殺れるかもね。片岡さんは、いつでも準備万端?」

 

 

「大丈夫。私が水中に居るときは任せて。バレッタに仕込んでる対先生ナイフで準備万端よ。夏は長いわ。じっくり狙って行きましょ!」

 

 

「「「おう!」」」

 

 

こうして、夏の1つのテーマ。水殺のプロジェクトが開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜。

 

 

「おい、創真。何で学校のプールに来てるんだ?」

 

 

キバットの疑問を、コントローラーを片手に持つ創真が答える。

 

 

「マシンシャークの操縦の練習。放課後にやりたかったけど片岡さんが泳いでたから邪魔しちゃ悪いと思ってね」

 

 

「なるほど。創真は優しいねぇ。流石のジェントルマンだ」

 

 

ホリーがうんうん、と首肯く。

 

 

「創真様。あと1時間程で補導対象になりますので、ご注意下さい」

 

 

了解です、と創真は返事をしながら作業を続ける。すると、そこへ

 

 

「おや?創真君に氷室さんですか?」

 

 

振り向けば、殺せんせーがいた。その後ろには片岡や渚に茅野もだ。

 

 

「て言うか、何?その魚のコスプレは」

 

 

「ヌルフフフフ、丁度良いですねぇ。ちょっと協力して貰えませんか?」

 

 

「はい?」

 

 

to be continue……




今年はありがとうございました!


来年もよろしくお願いします!


マシンシリーズもまだまだ受け付けてます!


THE fast story in2018 1/1 PM 22:00


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第44話 特訓の時間

明けましておめでとうございます!


プールにサメ……異様やな……。なんか展開早かったりするかも知れませんが…


どうぞ!


創真side

 

 

「……なるほど。そういう事ですか……」

 

 

片岡さんからの説明によると、前のクラスの多川 心菜と言う奴に海に行くから泳ぎを教えてと言われたが、プールで泳げるようになったから満足して練習をそれっきりにした結果、溺れたらしい。さらに片岡さんにその償いとして苦手教科を教えさせている……らしい。ならば彼女が泳げるようになれば良い、と言うわけで殺せんせー達が彼女に泳ぎを教えるそうで。

 

 

「何となく分かってたけど片岡さんって溜め込むタイプなんだね」

 

 

「何となくわかってたって……どうやって?」

 

 

「心理学かじってると分かるんだよね」

 

 

「何か、創真君に何でも見透かされそうな気がしてきた……………」

 

 

そんな会話をしてる間に殺せんせーが寝ている心菜をベットごと連れて戻ってきた。

 

 

「お待たせしました。それでは皆さんやりますよ」

 

 

「じゃあ僕は森の中に潜んでます」

 

 

「にゅや!?創真君の魚のコスプレを作ったのですが……」

 

 

「いらん」

 

 

そもそも僕はマシンシャークのスピーカーから話すだけだから要らないわ。森の中に入ると、氷室さんやホリー達がいた。

 

 

「おいおい創真~。彼女いるのにあの女子と結構話してたじゃないか~?」

 

 

「俺様、二股するのは良くないとは思うぜ」

 

 

あの2人は恋愛の心配をしてくれてるようだ。そんな心配無用だが。

 

 

「さーて、このマイクを使って喋るか」

 

 

「何で喋るの?」

 

 

「そりゃ、泳ぎを教えるなら喋らないと無理でしょ」

 

 

「なるほどな!だったら俺様がやるぜ!」

 

 

キバットがマイクの前に立った。

 

 

『ギャア!何このサメ!?』

 

 

おっと丁度良く他の皆の紹介が終わったらしいな。

 

 

「そーだな……俺様はジョーズ三世だぜ!よろしくな、お姉ちゃん!」

 

 

『喋った!?しかも軽い!』

 

 

ああ……皆に言っとけば良かった。

 

 

『創真君。今のは君が喋ってるのですか?』

 

 

殺せんせーも不思議に思ったのだろう、小声で聞いてきた。僕はキバットにホワイトボードにあることを書いて見せた。台本である。

 

 

『違うよ?えーっと……そのお姉……心菜にばれないように雰囲気を代えてるだけだ……ですので。あと声もスピーカーから出るのは加工してあるやつだから』

 

 

『なるほど、そういう事ですか。流石創真君の作品ですねぇ。そのような機能も備えついてるとは』

 

 

ここで一旦マイクを切った。

 

 

「おい、危なかったぞ今のは!」

 

 

「そんなに怒るなって、創真」

 

 

「いや、怒るわ!だって………」

 

 

「……なんか渦っぽいのに巻き込まれてないか?」

 

 

デュオに言われてカメラを見てみると…………………あらら、まずいな。早く脱出しよっと。と言うか殺せんせー、プールで渦を巻かないでくれ。コントローラを操作し、渦から脱出し、マイクの電源を再びつける。

 

 

『ずるいよ、魚キング!魚の水着で泳ぐなんて!』

 

 

『生身で泳ぐところを見たかったのに!』

 

 

これは渚と茅野の声だ。

 

 

『泳げますよ?生身でも』

 

 

方向転換して見てみると、殺せんせーが着ていたと思われる魚の水着を渚が持っていた。

 

 

「ん?生身で泳いでるのか?」

 

 

潜水させて見てみると

 

 

「いや、水を掻き出してるのかよ!」

 

 

珍しく突っ込んでしまった。

 

 

「おい、創真!あのお姉ちゃんの所に行け!泳ぎってものを教えてやるぜ!」

 

 

「キバット、水泳教えられるの?蝙蝠なのに?」

 

 

「早くしろ!」

 

 

「はいはい」

 

 

とりあえず慌てている心菜の横につけさせた。

 

 

「おい、落ち着け!泳ぐ方向を俺様がいる方向に代えろ!」

 

 

素直に心菜は従ってマシンシャークの方に泳ぐと───

 

 

『あれ!?流れが弱くなった?』

 

 

「そいつは離岸流って言ってな。岸に反射して沖に流れていく流れの事さ。こういう時は岸と平行に泳いで流れから抜けるのが得策なんだぜ!」

 

 

へぇ……キバットやけに詳しいな。

 

 

『あんた……随分と詳しいわね』

 

 

「そうかい?ありがとよ、お姉ちゃん!まぁ、一応サメだしな」

 

 

『ヌルフフフフ、知識だけでは駄目ですよ。朝まで死ぬほど泳いで魚のような泳ぎを身に付けましょう』

 

 

殺せんせーの声通り、特訓は朝まで続いた。よって、我々は徹夜である。くそっ、眠い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そうか。泳げるようになったか」

 

 

翌日、片岡さんの報告によれば、彼女はすごく泳げるようになったらしい。

 

 

「これからは手を取って泳がせるだけではなく……厳しく手を離す時もあると覚えてくださいね」

 

 

「はい、殺せんせー」

 

 

「ところで先生。あなたは泳げるのか?」

 

 

「いいえ。水を含むと身動きがほとんど取れません。しかし、片岡さんや創真君のサメ位ならなんとか対処出来ますよ。ヌルフフフフ……」

 

 

「対処できるのかよ………………チェッ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえずE組のプールがオープン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……で終われば良かったんだがな……このプールが新たな火種を呼び起こすとは誰も思わなかった…………。




THE NEXT story 1/3 PM22:00


勝手ながら冬休みを頂きます!




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第45話 暗雲の時間

では、どうぞ!


「……何故僕がビッチ先生の写真撮影の助手を?」

 

 

学校に早く来ると、待ってましたとばかりに岡島とビッチ先生に創真は連れ出された。

 

 

「創真の持ってる発明品を使えばいろんな角度から鮮明に良い写真が撮れるからな。フフフフフフ……」

 

 

本来なら断っているだろうが、助手をやってくれたら報酬をあげると岡島から頼まれたので、創真はわざわざ付き合ってあげてるのだ。

 

 

「!!おい、創真これ見ろ!」

 

 

先頭を行く岡島が何か発見したみたいな声で創真を呼んだ。創真が岡島に追い付くと、すぐにその訳が分かった。

 

 

「……プールがごみだらけだな」

 

 

「撮影会は中止だ!皆を呼んでくる!」

 

 

岡島は教室へと走っていった。

 

 

「なんなのよもう!私のセクシー水着を疲労する機会がなくなったじゃない!どうしてく」

 

 

ビッチ先生が言い終えるよりも前に、透明化で創真の後ろをついて来ていたホリーが、透明化を解除してビッチ先生の首筋を叩き、一瞬で意識を刈り取った。

 

 

「よーし、これで透明化を暫くしないですむ」

 

 

「どーせ、あと3分もしたら皆が来るよ。そしたら、また透明化するんじゃ?」

 

 

「そんときは、森に隠れるから大丈夫。そんなことより創真、暇だから僕が魔法でこのゴミ片付けちゃって良い?」

 

 

「さっきまでゴミだらけだったプールが、突然何もない綺麗な状態になったら、怪しまれるだろうが」

 

 

デュオに言われ、ホリーは、あ、そっか、と呟く。

 

 

「でもさ、ちょっと位なら良いんじゃない?創真が拾える範囲だけのゴミは回収しておいた、って事にすれば」

 

 

「………………まぁ、それなら良いかもしれないけど」

 

 

「だよねー!なら、折角だから創真、君にも魔法を使わせてあげるよ!じゃ、おじゃましまーす」

 

 

「お邪魔って、何処に」

 

 

創真が訊くよりも早く、ホリーは創真の体の中へと入り込んだ。

 

 

「………………え。何か僕の中に入ったように見えたような………………」

 

 

(えー聞こえる、創真?)

 

 

「はっ!ホリーの声がする!?」

 

 

(君の心に直接話しかけてるんだ。今、君に取り憑いてるからね。要は『憑依状態』だ)

 

 

「憑依、か………………何でもありだな」

 

 

(そう?まぁ、良いや。今、僕が取り憑いてるこの状態なら、君にも魔法が使える。試しに、サイコキネシスをやってみてよ。コツは、想像力だよ!)

 

 

「想像力って……………………言われてもなぁ」

 

 

困惑した様子の創真は何気なくプールに浮いている空き缶を見つめる。

 

 

(ほら、それをどうしたいの?)

 

 

「…………浮かせて、こっちに動かす?あ、そう言うことね!それをイメージしろって事か!」

 

 

要領を掴んだ創真は、手をかざして呟く。

 

 

「『サイコキネシス』」

 

 

すると、空き缶は創真のイメージ通り宙に浮かび創真のいる方に移動してきた。そして、空き缶はいつのまにかデュオが用意したゴミ箱へとインした。

 

 

「ほー、初めてにしては中々上手いな。流石、創真だな」

 

 

木にぶら下がりながらキバットが称賛する。

 

 

「良いね、これが魔法。もう、空想だけの存在じゃないって事……………か!」

 

 

創真はパチンと手を叩く。その瞬間、今度は複数のゴミが浮き、全てゴミ袋の中に入っていった。ホリーは憑依をやめて、創真の中から出た。

 

 

「これくらいなら怪しまれないよね?」

 

 

「多分大丈夫でしょ………………来たよ」

 

 

創真の一言で全てを察した彼等は森の中へと消えていった。その直後、皆が現れた。

 

 

「!滅茶苦茶じゃねぇか!……って創真は何持ってるんだ?」

 

 

「暇だったので近くにあったごみを拾ってました」

 

 

「この短時間でよくそんなに…………流石創真。あと、ビッチ先生は何で気絶しているんだ?」

 

 

「滑って頭ぶつけてたよ。そのうち目を覚ますでしょ」

 

 

ポーカーフェイスで平然と嘘をつく創真。誰も嘘と見抜けず、何やってんだよビッチ先生ー、と言う声があがった。

 

 

「んだよ渚、その目は?俺らが犯人だと疑ってるのか?」

 

 

後ろの方で寺坂の声がしたので振りかえると、寺阪が渚に絡んでいた。

 

 

「寺坂、渚はそんなこと言ってないぞ。取り合えず離せよ、その手を」

 

 

隼が止めにはいる。そこへ、殺せんせーも現れた。

 

 

「まったく……犯人探しなど必要ないですよ。私が3秒で直しますから」

 

 

宣言通り殺せんせーは3秒でごみを拾ったり、ベンチを直したりした。

 

 

「これで元通りです。また楽しく使ってくださいね」

 

 

「「「はーい!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み、創真は屋根の上で寝そべっていた。

 

 

「創真、あのプールを壊したのがあの不良達と考えているんだな?」

 

 

「キバットか……僕も同じ考えだよ。最近、苛立ちめいた物が見えてたし」

 

 

「う~ん。皆と仲良くやれば良いのにね……」

 

 

ホリーの言った事は、創真も同じように考えていた。

 

─────────体格とか良いんだから皆と協力して暗殺をすれば戦力アップは確実なんだがなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真が教室に帰ると、咳き込んでいる人が多かった。

 

 

「どうしたの?」

 

 

「寺阪が殺虫スプレーみたいなのを撒いて……」

 

 

───────やんちゃも程がある。

 

 

内心そう呟いた創真。寺坂は何処に行った、と訊く。

 

 

「さっき出ていったよ。ほんと何なんだよあいつ……」

 

 

「んー……何かいやな予感がするな。まだこれでは終わらなさそうだねぇ……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご苦労様。はい、報酬の十万円。また頼むよ」

 

 

(……こっちのほうが……居心地が良いな)

 

 

再び、奴等が来る……………




THE NEXT story 1/4 or 5 PM 22:00


明日は出来たらの投稿になります!


それではまた次回でお会いしましょう!


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第46話 爆破の時間

急いだのでストーリーが変かも知れません……


楽しんで貰えたら幸いです!


それではどうぞ!


創真side

 

 

どういうわけか、殺せんせーは泣いている。

 

 

「先生……泣いてる訳は?」

 

 

「創真君、これは鼻水です。目はこっち」

 

 

「本当に紛らわしいな……」

 

 

そこへ、1日サボるのかと思われていた寺坂が現れた。

 

 

「おお、寺坂君!今日は来ないかと思って心配してましたよ!昨日の事は皆気にしてませんよ、ねぇ皆さん!」

 

 

「う、うん。汁まみれになっていく寺坂の顔が気になる……」

 

 

あぁ、ほんと気持ち悪いわ……。

 

 

寺坂はネクタイで顔を拭き、思いもよらぬ宣言をした。

 

 

「おい、たこ。俺が今日お前を殺してやるよ。放課後プールに来い。水が弱点なんだろ?テメーらも手伝え!俺がプールに落としてやっからよ!」

 

 

しかし、皆の反応は薄い。

 

 

「寺坂。お前は暗殺に積極的じゃなかったよな。なのに急に言われてもハイと言うと思ってるのか?」

 

 

前原の問い掛けに寺坂は……

 

 

「ケッ、来ないなら来なくて良いぜ。その時は賞金は独り占めだからよ」

 

 

寺坂は再び教室を後にした。

 

 

「なんなんだあいつ……」

 

 

「ついていけねーわ」

 

 

吉田も村松も不信感を募らせた。

 

 

皆が消極的な様子を見た殺せんせーは……

 

 

「行きましょうよ、皆さん~」

 

 

「うわ!?粘液に固められて動けない!」

 

 

残念だが、僕はいち早く気付きロッカーの上に避難した。

 

 

「せっかく寺坂君が殺る気になったんです。皆で暗殺して仲直りしましょうよ」

 

 

「「「取り合えずキモいわ!!早く鼻水止めろ!!」」」

 

 

 

しょうがないので僕も放課後暗殺についていく…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

訳がない。

 

 

 

「あれ?創真も行かないの?」

 

 

声の主は同じくサボりのカルマ氏だ。

 

 

「なんか嫌な予感がするし、あの寺坂が良い計画持ってるとは思えないからな」

 

 

「なるほどね。確かにあのバカが自信満々に殺す宣言してたのは俺も気になっていたよ」

 

 

そこへ氷室さんが教室に入ってきた。大量の四角いケースを持って。

 

 

「創真様、言われた通り全てのマシンシリーズを集めておきましたが………何の為にです?」

 

 

「何かあったときに対処できるようにです。まぁ、必要ないとは思って……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドーン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………やっぱ必要かもしれないですね。氷室さん持ってきてもらって良いですか?」

 

 

「勿論です」

 

 

「俺も行くよ。創真の嫌な予感が当たったのかもね」

 

 

僕含め、3人は教室飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

 

 

「………なにこれ?プールが消えてる?」

 

 

3人が着いたときにはプールの水が無くなっていた。創真は寺坂が一人呆然としながら一人で喋っているのを見つけた。

 

 

「……話が違げーよ……イトナが水に落とすって……」

 

 

「イトナ?……………なるほど、全部シロの思惑通りだったってわけかぁ…………」

 

 

怒り気味の創真は寺坂をジロッと見る。

 

 

「言っとくが俺のせいじゃねーぞ!あいつらが悪いんだ。皆が流されたのも全部……」

 

 

寺坂の言い訳を遮り、カルマは寺坂の頬を殴った。

 

 

「流されたのはお前だよ、寺坂。標的がマッハ20じゃなかったらお前、大量殺人の実行犯だよ?少しは自分の頭で何したいか考えたら?」

 

 

カルマの言葉に、寺坂は何も言わなかった。

 

 

「カルマ君、僕はシロのところへ行く。後は頼むよ」

 

 

「分かった。無茶はするなよ」

 

 

「…………無茶はしちゃうかもな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3分後、創真と氷室はシロとイトナがいる場所へ着いた。既に殺せんせーはイトナと戦っている。

 

 

「おや、来たか。随分と遅かったね」

 

 

「遅くて悪かったね………………まぁ、取り合えずイトナ君を何とかするか……」

 

 

「そうはさせないよ」

 

 

シロは懐から何かのリモコンを取り出し、スイッチを入れる。すると、森からクモ型の巨大なロボットが創真らの前に現れた。

 

 

「……………クモ型のロボット?」

 

 

「なんか…………銃口がこちらに向いてる気がす」

 

 

氷室が言い終えるよりも前に、備え付けられた銃口から弾丸が発射された。驚異の反射神経で、創真と氷室は近くの岩影に身を隠した。

 

 

「国に作らせた自動で動く高性能マシンだ。本物の銃と同じ速度で発射されるに加えて鉄の弾だから当たったら怪我するかもね」

 

 

「マシンにはマシンを、ってことか。確かに僕と言えども全弾の回避は難しい。このまま、のこのこと出ていったら、怪我するだろうね。だが、備えあれば憂いなし、とはまさにこの事。丁度良い、こいつで相手をしてやろう」

 

 

そう言いながら創真は氷室が持っていたケースの1つを手に取り、取っ手にあるスイッチを押して、シロの方に投げる。クモ型のロボットはそれを敵と認識したのか、ケースに向けて弾丸を放つ。弾が当たる 直前に箱がプシューと言う、音と伴に開き、中からクワガタ型のロボットが飛び出す。

 

 

「今度はクワガタ、と言うわけか」

 

 

「そう言うことだ………………さぁ、実験を始めようか?」

 

 

to be continue……




THE NEXT story 1/5 PM22:00


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第47話 クワガタの時間

マシンクワガタにチートみたいな能力を入れました。


気に入って貰えたら幸いです!

ちなみにマシンクワガタに装填されてる弾は対先生コーティングの鉄の弾と言うことでお願いします!



果たして勝つのは……ではどうぞ!


(あー、やばい。正直舐めてたよ。このクモ型ロボット、意外にも隙が無さすぎる)

 

 

付いている砲台から発射させる弾を避けるのは簡単ではある。perfectbrainを入れているからだ。だが、狙いが良すぎてこちらの射程距離内に入れないのだ。

 

 

「不味いな……このままじゃエネルギー切れになるのがオチ。その間に殺せんせーが殺される可能性があるな……鉄の弾だから当たったらマシンクワガタでもやばいし」

 

 

「創真様、どうしますか?」

 

 

「こうなったら……………アレを使います」

 

 

「………アレ、ですか?調整は終えてましたがまだ実戦は愚かテストすらまだの筈ですが……」

 

 

「射程距離内に接近してあれを無力化するにはそれしかないです。こうなったら、歩くより走れ。テストも兼ねて実戦で試します」

 

 

「…………………確かに、それしか無さそうですね。少々の不安も残りますが」

 

 

「えぇ。こうなったら、やってやりますよ。そんで、シロをビックリさせてやります」

 

 

創真はスマホを取り出し、画面を高速でタップする。すると、DANGER《危険》と書かれた文字が出てくるが、創真は躊躇なく実行ボタンを押す。

 

 

『リミッター解除』

 

 

呪文のように唱えた瞬間、マシンクワガタのオレンジ色の目が血のような赤に染まった。

 

 

「何だ……………雰囲気が変わった…………?」

 

 

シロがそう呟くなか、クモ型ロボットはマシンクワガタに機関銃の如く、大量の弾を浴びせる。しかし、弾が飛んでいく先にはマシンクワガタはいなかった。クモ型ロボットは標的見失い、戸惑っているように見えた。

 

 

そして次の瞬間、足元のバランスが崩れた。

 

 

「何!?」

 

 

クモ型ロボットの足が二本無くなっていた。

 

 

「く……だが姿を捉えた」

 

 

何とかバランスを立て直して、ホバリングしているマシンクワガタに向けて射撃を開始する。弾が当たったと思われたが、それは残像だった。瞬く間に、もう二本破壊する。

 

 

「金属剥離現象。そのマシンが射っているのはこいつの残像さ。ま、要は高速移動と言った方が分かりやすいか?」

 

 

「馬鹿な……………たかが中学生にそんな技術力が」

 

 

「シロさん。あなた、勘違いしてませんか?創真様をただの中学生、と。彼は希代の天才中学生ですよ」

 

 

「そゆこと。この場に置いて1番優秀なのは僕のマシンさ」

 

 

マシンクワガタは弾を軽々と避け、目の前に近づき、カメラに向かって弾を撃ち込んだ。カメラのレンズが割れる音がし、クモ型ロボットは弾を撃たなくなった。

 

 

「カメラが無くては標的は見えない。だから撃たなくなったって所だね?これで、僕の勝ちだね」

 

 

「お見事です。創真様」

 

 

障害がいなくなり、岩影から出てくる創真と氷室。流石に分が悪いのか、じりじりと後退していくシロ。その時だった。

 

 

「おい、シロ!」

 

 

シロが声がした方向を振り向くと、寺坂がいた。

 

 

「何のようだい、寺坂君?」

 

 

「よくも俺を騙しやがったな」

 

 

「クラスで浮いてた君には丁度良いだろ?そんなに怒らないでくれ」

 

 

「ふざけんな!テメーらは許さねぇぞ!イトナ!俺と怠慢張れや!」

 

 

寺坂は水溜まりに飛び込んで、イトナと対峙する。

 

 

「ちょ、不味いですって!」

 

 

「いや、氷室さん。ここは寺坂に任せて良いです」

 

 

創真がチラッと上を見ると、カルマがニヤリと笑いながら創真の方を見ていた。それを見た創真は何か案があると直感し、寺坂に任せることにしたのだ。

 

 

「まったく……イトナ、黙らせろ」

 

 

イトナが寺坂の腹目掛けて触手の一撃を喰らわす。しかし、寺坂はなんとか意識を保った。

 

 

「よく耐えたねぇ。イトナ、もう一撃……」

 

 

「ハクション!」

 

 

唐突にイトナはくしゃみを始める。

 

 

「一体、何が…………?」

 

 

「簡単なことですよ、氷室さん。寺坂が触手を受け止めたTシャツ、染みがあることから、昨日着ていたのと同じです。恐らく、殺せんせーをおかしくさせたあのスプレーを至近距離で浴びた、ね」

 

 

「なるほど!殺せんせーが鼻水を出したのもスプレーが原因だとするなら、あのスプレーの効果はイトナ君はも通じる訳ですか!現に、イトナ君もくしゃみを連発してますね」

 

 

その間に殺せんせーは木に掴まっていた原を救助した。木が折れて、落ちるところをナイスタイミグでキャッチした。

 

 

「じゃ、皆よろしく~」

 

 

カルマの合図で皆が飛び込み、イトナに大量の水を浴びせる。言うまでもなく、イトナの触手もふやけてしまった。

 

 

「これで大分ハンデが無くなったね。で、どうするの?まだ殺るようだったら俺らも水遊びさせてもらうけど?」

 

 

「くっ…………ここは退くとしよう。イトナ、帰るよ」

 

 

イトナは悔しそうな表情をしていたが、ホバリングしているマシンクワガタをチラリと見て、次に水をかける準備が出来ている生徒らを見て、流石に形勢不利を悟ったのか帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ。これで一件落着てすね、創真様。それに、新たなマシンも見事でした」

 

 

安心した模様の氷室は創真の方を見て云う。創真はマシンクワガタを右手に持ちながらスマホを見つめていた。

 

 

「出力を大幅に上げたから、想定以上の熱が発生したか。冷却装置をもっと強力なのに改造しないとダメだね。さっきも、あと1分使っていたら熱で回路がやられてたな……………今度、色々と改造しなきゃ」

 

 

「…………………創真様、聞いてました?」

 

 

「え、何です?あぁ、一件落着か、でしたっけ?まぁ、一件落着ですね」

 

 

「聞いてたんなら反応してくださいよ……………」

 

 

氷室はやれやれ、とため息をつく。そんな一方で、寺坂は原に詰め寄られていた。

 

 

「寺坂君、ふとましいとかベビーとか散々言ってたわよね?」

 

 

「い、いやそれはだな………き、客観的に物事を」

 

 

「問答無用!動けるデブの力を見せてやるわ!」

 

 

珍しく狼狽える寺坂を見てカルマは笑う。

 

 

「ほんと、馬鹿だなぁ、寺坂。そんなんだから、人の手で上手いように使われるんだよ」

 

 

「全くだよ。もう少し、賢さと言うものを身に付けてもらいたいもんだね」

 

 

カルマの隣に来た創真もカルマに同調する。

 

 

「うっせぇ!てめぇらも上から見下してんじゃねぇ!」

 

 

そう言うと、寺坂はカルマと創真を掴んで、水溜まりに落とす。

 

 

「何すんだよ、上司に向かって!」

 

 

「シロの撃退に貢献した僕に何してくれんだよ!?」

 

 

「うっせぇ!大体、テメーら当たり前のように良いとこばっか取りに行きやがって!ムカつくんだよ!」

 

 

「あーそれは確かに」

 

 

「よくぞ言った、寺坂」

 

 

「この際、2人に泥水でも飲ませてあげようかしらね~」

 

 

何か不味い雰囲気────────創真らがそう感じた瞬間、カルマと創真に皆が一切に襲い掛かる。

 

 

「許せ、カルマ。後で何か奢ってやる」

 

 

そう言うと創真はカルマを皆の方に押し付けた。

 

 

「へ?って、俺を身代わりにすん」

 

 

言い終えるよりも前に、カルマは水溜まりに顔ごと突っ込まれた。ひと安心する創真。しかし、それが命取りとなった。

 

 

「隙ありだぜ、創真!」

 

 

後ろからこっそり接近したいた隼が創真を水溜まりに押し倒し、創真も顔から水に浸かる。

 

 

「グベ!おのれ隼、やってくれるじゃないか!なら、これでも喰らえ!」

 

 

創真は懐から複数の何かのパーツを取り出し、合体させて組み立てる。一瞬で大型の水鉄砲が完成する。そして、高圧の水が隼に直撃する。

 

 

「た、タンマタンマ!これ、威力がヤバすぎるって!」

 

 

「特製だからね!オラオラ、皆も喰らいやがれ!」

 

 

創真は水鉄砲をカルマと絡んでいる皆にも向ける。

 

 

「うおっ!?おい、水鉄砲なんてズルいぞ!」

 

 

「よーし、こっちもやり返せ!」

 

 

「面白い、なら勝負だ!」

 

 

「てか、俺にもめっちゃ当たってんだけど!?」

 

 

同じ被害者のカルマが居ようと関係なしに、水鉄砲をお見舞いする創真。その表情は晴れ晴れとしていた。

 

 

「寺坂君も皆の輪に入り、楽しそうで何よりですねぇ。ヌルフフフフフ………」

 

 

殺せんせーはニヤリと笑うのだった。




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第48話 フレアとメテオの時間

今回は二羽が活躍する…………かな?


You〇ube見てて思い付きました。

それではどうぞ!



創真side

 

 

初公開情報だが、僕はブログをやっている。内容としては、色々ある。その日の夕日や食事、フレアとメテオの写真。中でもフレアとメテオの写真は大変評判が良い。そのお陰か、ブログの収益もそこそこの額だ。ブログに書かれている感想を見ていると、スマホが震えた。誰かと思えば、氷室さんの親戚の子からメールだ。

 

 

『突然すみません。友達が創真さんにお願いしたいことがあるそうです。よければ明日の朝の10時にフレアとメテオを連れてここに来てくれませんか?』

 

 

メッセージには、地図が同時に添付されていた。

 

 

「………フレアとメテオを連れてきて……?何がしたいんだ?」

 

 

考えてもよく分からなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

取り敢えず、翌日の10時。今は指定された公園で相手を待っている。

 

 

「眠い…………………」

 

 

「夜更しするからです」

 

 

氷室さんの言うことがド正論過ぎて何も言い返せない。

 

 

「だーって、見たいアニメがあったんですから、しょうがないでしょう」

 

 

「録画しておけば良いじゃないですか」

 

 

「リアルタイムで見ることに意義があるんですよ」

 

 

「そうなんですかね……………?」

 

 

氷室さんは首を傾げる。まぁ、この気持ちは分かる人には分かるだろう…………………多分。

 

 

「……あの……創真さん、ですよね?」

 

 

「君が、氷室さんの親戚経由でお願いをしてきた人?」

 

 

「あ、そうです!」

 

 

まさかの女子だった。

 

 

「すみません、創真さん。こんな朝早くに……」

 

 

同伴している親戚の子が頭を下げた。

 

 

「それで……何か頼み事なの?」

 

 

「実は……」

 

 

その女の子の話によると………彼女が住んでいるマンション周辺にカラスがよく訪れて、糞を落として行ったり、巣を作ったりと色々やってるらしい。それで近隣の人が迷惑しているらしい。CDをぶら下げるなどして対策はしているが、最近は効果がないも等しいらしい。何か良い方法がないかと、彼女が色々調べると、動画サイトで、鷹を使ってカラスを撃退する物を見たとか。さらに、彼女は僕のブログの読者で、僕が鷹を飼っている事を知っていたので、友達経由でお願いをしてきたと言う事だ。

 

 

「……大体分かった。よーし、今から行こうか!」

 

 

「え、良いんですか?」

 

 

「別に良いけど。今、いるの?」

 

 

「恐らく、居ると思います……」

 

 

「なら、善は急げ、だ。じゃ、案内して」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

 

 

歩いて10分。目的のマンションに到着した。

 

 

「屋上に来るんですよ、よく」

 

 

創真は屋上のドアを開け…………………………閉めた。

 

 

「やばくない?この数は」

 

 

「30羽位います……」

 

 

「そりゃヤベーイ…………だが、何羽居ようと2羽の敵じゃないから。ドアを開けたらすぐ放つから、せーので開けて」

 

 

「分かりました。せーの……」

 

 

ドアを開けた瞬間、創真はフレアとメテオを同時に放った。カラスを目掛けて一直線だ。カラスは、いきなり鳥類界のトップ達の登場に驚いたのか、カァカァ鳴きながら空へ飛んでいった。しばらく追い回した所で創真は笛を吹き、呼び戻した。さっきまでいたカラス達が居なくなり、屋上がスッキリした。

 

 

「これで大丈夫ですよ」

 

 

「凄い、屋上が綺麗になった………でも、暫くしたらまた戻って来るんじゃ……」

 

 

「ご安心を。カラスは賢いですから、今まで安全だった場所にこの二羽が現れた。その事にカラスは怯えてこの場所を訪れなくなるでしょう」

 

 

側にいた氷室が解説した。

 

 

「氷室さん、カラスの習性をよくご存じですね」

 

 

「まぁ、私は別名『カラスのプロフェッショナル』ですから」

 

 

「なんじゃそりゃ…………」

 

 

創真のツッコミに、側にいた2人もクスクスと笑う。

 

 

「あ、そうだ!」

 

 

女の子が突然何かを思いついた様子で駆けていく。数分して戻ってくると、手にはお菓子の詰め合わせがあった。

 

 

「これ、即席の詰め合わせで悪いんですけど、お礼です」

 

 

「え、でも大した事はしてないけど…………」

 

 

「創真様、そう言うのは素直に受け取っておく物ですって」

 

 

躊躇気味の創真に氷室がアドバイスをする。

 

 

「うーん……………じゃあ、お言葉に甘えて、頂くよ」

 

 

創真はお菓子の詰め合わせを受け取った。

 

 

「ははッ、僕の好きなのばかりじゃん。ラッキー」

 

 

「良かったですね、創真様」

 

 

かくして、カラスの駆除は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜

 

 

「よーし、これでサイトの立ち上げ完了、っと」

 

 

エンターキーをターン、と創真は押した。そこへホリーがやって来る。

 

 

「何やってるの創真ー?………………鷹・隼による鳩やカラス駆除。依頼料金、3000円?」

 

 

「絶対儲かるでしょ、これ」

 

 

「てか、フレアとメテオは納得してるの?嫌々やらせるのもどうかと思うけ」

 

 

「あぁ、キバットの通訳通して聞いてみたら、2人とも『運動にもなるし、暇潰し、ストレス発散にもなるからむしろやらせて』だって」

 

 

「え、あ………納得しちゃってるのね……………まぁ、でも、そこまで依頼は来ないでしょ」

 

 

「そうか?」

 

 

「多分来ても、精々2、3件位っしょー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

 

「ホリー君、昨日の今日で依頼が8件来てたんだけど?」

 

 

「いや、意外と多いな!?」




THE NEXT story 1/7 PM 22:00


評価やお気にいり登録、感想待ってます!


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第49話 期末の時間

さーて、創真のお得意、テスト編です。

気に入って貰えたら幸いです!


それではどうぞ!











創真side

 

 

「ヌルフフフ、皆さん基礎が大分仕上がってきましたね。期末の点数が楽しみですねぇ」

 

 

今日は外で勉強している。

 

 

「そして、この式に代入したら……」

 

 

「あ!出来た!」

 

 

今、僕は不破さんに数学を教えていたところ。今回、僕は先生と同じ立場で皆に教えている。

 

 

「ところで殺せんせー。今回の目標は?」

 

 

「前回、先生は総合しか気にしてませんでした。今回はこの教室にも見あった目標を考えてきました」

 

 

ほう。

 

 

「さて、先生は触手を失うだけで、速度が落ちるのはもう分かってますね?例えば……」

 

 

殺せんせーは自分で触手を一本破壊する。

 

 

「ご覧なさい。子供の分身が混ざってしまった」

 

 

そういう減り方なのか?

 

 

「さらにもう一本減らすと……子供の分身がさらに増え、親分身が家計のやり取りに苦しんでます」

 

 

もはやドラマだが。

 

 

「さらにもう一本で、父親分身が消えました。母親分身が一人で養わなければなりません」

 

 

「「「重いわ!!」」」

 

 

heavyだ。

 

 

「殺せんせー、重すぎだって。で、結局何を言いたいんだよ」

 

 

隼がペンを回しながら聞く。

 

 

「先生は触手一本で、20%程の運動能力の低下が生じます。そこで……今回、五教科+総合で学年1位を取った者に触手を一本破壊する権利をあげます。これが暗殺教室の期末試験です」

 

 

────この先生はやる気にさせるのが上手いねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

================

 

 

放課後、創真は烏間やビッチ先生と理事長室に来ていた。烏間は当然釘を刺しに来たのだ。創真は普通に呼ばれた。

 

 

「E組を底辺に留めさせるために、なんでもする……と思ってますか?」

 

 

「いいえ。でも横の彼が疑ってますもの」

 

 

「釘刺しご苦労ですが、私は何もしませんよ。生徒の自主性を高めるのも私の教育の理想ですから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

烏間とビッチ先生は退出し、理事長室には創真だけになった。

 

 

「待たしてすまなかったね、創真君」

 

 

「いいえ。それで、ご用件は?」

 

 

「今回の期末試験、君には他の皆と違う問題を解いてもらおうと思ってね」

 

 

「違う問題?理由は?」

 

 

「君の学力は大変素晴らしい。E組にいるのが惜しいくらいだ。だから君は中間の時にこう思わなかったかい?『物足りない』と」

 

 

「…………確かにもっと難しい問題を解きたいと思っていました。別に良いですよ。それとそのテスト……あなたが作るんじゃないですか?」

 

 

「察しが良いな。その通り。私が作らせてもらうよ」

 

 

「面白い。あなたからのテスト………いや、挑戦状を受けて立ちます」

 

 

「そうか。用件は以上だ。あと、君のテストは皆が受けるテストのランキングからは外れるが……それで良いかい?」

 

 

「受けるテストが違うから……しゃーないですね。まぁ、良いですよ。ランキング載らなくても1位取りますから」

 

 

「フフ……楽しみにしているよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

翌日の放課後。僕は昨日の事を伝えた。

 

 

「創真だけは理事長の作るテスト?マジかよ……」

 

 

「それだとA組との勝負にちょっと不利だな……」

 

 

………勝負?

 

 

「いや待て。なんの勝負だ?」

 

 

「実は……」

 

 

磯貝の説明によると、昨日磯貝達が本校舎の図書館にて勉強していた所、A組の五英傑の中の四人とちょっとしたトラブルがあり、その四人が勝負を提案して、受けて立った……と言うことらしい。勝負の内容は五教科+総合の点数で争い、負けたら1つ命令を出せるらしい。

 

 

「なるほど。ま、大丈夫でしょ。僕居なくても」

 

 

「創真は気楽だな……」

 

 

隼は苦笑した。

 

 

「だってここにはカルマと隼がいるんだからね」

 

 

二人は前回総合で10以内だったからな。総合で有望だ。国語は神崎さん、数学はカルマ君と隼、英語は中村さん、理科は奥田さん、社会は磯貝君……油断しなければ五英傑など敵ではない。いや、浅野もか。本気でやればあいつなど敵ではない。だから不利なんかじゃない。そう言えば浅野も今回は僕に勝つもりで来てるのかな。残念だが、もう君など敵ではない。そもそも今回、戦わないし。

 

 

「任せとけって。お前が居ないぶん、俺が点を取ってやるからよ」

 

 

「………不安だ」

 

 

「あ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、迎えたテスト当日。受ける教室は一緒だが、テストは違う。いや、違うと言えばもう1つ。隣の律の席が替え玉の人だ。全然似てない。

 

 

さっき、烏間先生が

 

 

「こいつも大変だな、という目で理事長に見られた俺の気持ちが分かるか?」

 

 

って言って、中村と渚が頭を下げてた。本当にご苦労様です。さーて……間もなくテスト開始だ。

 

 

ん?大学入試や高校入試などを控えた皆にアドバイス?

 

 

 

……………………トイレがどこにあるか確認しとけよ。迷ってる間に混むかもしれないぞ。

 

 

「はじめ!」

 

 

おっと。じゃ、現実でも頑張ってな。




入試がある方は頑張って下さい!


THE NEXT story 1/8 PM 22:00


…………学校の宿題とか……終わってます?


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第50話 結果の時間

今回は書き方がちょっと特殊です。


隼が初の語り手をします!




それではどうぞ!


創真side

 

 

英語

 

 

うーむ……とりあえずリスニングが超早かった。けど、分かったけどねー。面白いな~と思ったのが読解の数。長いのが7つもあった。だからなのか、文法や単語の問題数が少なすぎ。まぁ、大して難しくない。

 

 

10分余った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理科

 

 

問題文が…………英語表記だった。そんなことしても無駄なのにね……………にしても、理事長の問題、自由すぎるわ。

 

 

15分余った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

社会

 

 

……………まぁ……これが一番簡単だった。ほとんどの問題が引っかけ問題だった。だが、僕の目の前では引っかけなど目に見えている。残念だったな、フハハハハハ!

 

 

ごほん………………20分余った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

国語

 

 

うーん。問題の感想よりも、読解の問題に使われた小説の話が良かったなぁ……て、感じだ。敵に負けると分かってても立ち向かう青年の話だった。ベタとは言え、まぁ、良かった。図書館で借りて、続きを読んでみたいものだ。

 

 

15分余った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数学

 

 

漸化式………まだ殺せんせーに教えてもらってないが、テストに出題された。ま、中学2年生の時にマスターしてあるから特に苦ではない。だが、問題数が異常な多さだ。裏まであった。

 

 

試験時間、残り1分で全て解き終わった……………危なかったぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふぅ……………………ん?ここまで、もはや僕のテストの感想じゃねぇか?それくらいしか僕は語ることがないからしょうがない。別のテストをやってる隼に語らせたら?いや、あいつに語らせても原作とほぼ一緒だ。再び、非公開になる恐れがあるのでここで一旦切る。

 

 

???「おい!折角なんだから俺にも語らせろよ!」

 

 

分かった分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼side

 

 

3日後

 

 

「ヌルフフフ……それでは、皆さんお待ちかねのテストを返します」

 

 

よし、やっと俺が語れる……!創真の奴は理事長から直々にテストを返してもらうらしいので、今は本校舎だ。

 

 

「それでは、返します。まずは英語。E組での1位………そして学年も1位!中村莉桜!」

 

 

お~さすがだな。俺は97点で3位だ。

 

 

「さて、今ので破壊できる触手はまだ一本。喜べるかは全て返し終わってからですよ」

 

 

まぁ。それもそうだな。ちなみにLA野郎は4位だ。創真がいたら、ざまーwww、とか言うだろうな……………。

 

 

「国語です。E組1位は……隼君!」

 

 

お!!

 

 

「しかし、学年1位は浅野学秀!惜しかったですねぇ、隼君。そして神崎さんも大躍進です。頑張りましたね」

 

 

俺は 98点 学年2位

 

 

神崎さんは 96点 学年3位

 

 

えーっと、あいつ(蓮)のは省略で良いな。俺よりも下って事で。

 

 

「続けて社会です。E組1位は磯貝君の97点。そして、学年でも1位!おめでとう!浅野君を見事に上回りました!」

 

 

俺は94点 学年3位

 

 

「これで2勝1敗!」

 

 

「次は理科……奥田か!」

 

 

「理科のE組1位は奥田さん!そして……………………素晴らしい!学年でも1位は奥田さんです!」

 

 

「よっしゃあ!数学の結果待たずしてE組の勝ち越しだ!」

 

 

「やったな、奥田!触手1本おまえのモンだ!」

 

 

皆が口々に歓喜の声をあげる。そして、賭けの賞品もいただきだ!ちなみに………俺は 96点 学年2位

 

 

そして、数学の結果が返される。

 

 

「E組1位は隼君!しかし、学年1位は浅野学秀!」

 

 

月城 隼 98点 学年2位

 

 

うーむ。あと一歩だったな。

 

 

────────いやいや、僕からしたら、まだまだだよ?

 

 

「(うっせぇ!)」

 

 

何故か脳内に出現した創真を、俺は頭を振って追い出す。気が付けば、もう休み時間になっており、皆はテストの結果について色々話していた。久しぶりにカルマとでもゲームでもしようかなー、と考えてカルマの席の方を見るが、カルマの姿はなかった。

 

 

「カルマの奴、何処に行ったんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

================

「チッ……」

 

 

カルマは校舎裏に居た。カルマの期末は敗北に終わった。総合469点、学年13位。悪くはないのだが、やはり前回と比べてかなり下がっていた。追い討ちを掛けるかのように、殺せんせーに『余裕で勝つ自分はカッコいい』と思っていた事を見透かされ、さらに努力を怠った者がついて行ける訳がない、刃を研ぐことを怠った君は、錆びた刃を自慢気に掲げたただのガキ、とプライドをズタズタにする発言をカルマに残した。

 

 

そして現在、かなりふて腐れている。

 

 

「随分と悔しそうなツラしてるじゃねぇか、少年」

 

 

「……………………?」

 

 

カルマは辺りを見回すが、誰の姿もない。

 

 

「こっちだこっち。お前のすぐ側に生えてる木を見てみろよ」

 

 

声の主に言われ、カルマは木を見上げる。そこには黄色いコウモリが止まっていた。

 

 

「よーやく俺様に気づいたか、少年」

 

 

「…………コウモリが喋った?」

 

 

「おう!喋ったぜー。どーだ、ビックリしただろー?」

 

 

「…………まぁ、ちょっとだけ」

 

 

「何だ、ちょっとかよ。つまんねーなー」

 

 

コウモリは止まっている木から離れ、カルマの目の前で浮遊する。

 

 

「さて、俺様の名はキバット。まぁ、喋れる特殊なコウモリ……って所だ。話は全部聞いてたぜ。お前、あの黄色いタコ先生に色々言われてたなー?」

 

 

「…………………まぁ」

 

 

「まー、良かったじゃねぇか」

 

 

キバットのその言葉に、カルマは眉を潜めた。

 

 

「良かったって……………俺は今回、賭けにおいても勉強においても何の役に立てなかった。完全に俺の負けって事だ」

 

 

「いーんだよ、負けで。それが良いんだよ」

 

 

キバットは真剣な目で言い切った。

 

 

「才能や力がある者は、本当の勝負を知らないのが多い。そう言う奴ほど未熟だ。結局、そう言う奴等を抜かしていくのは、努力をする奴等。努力をする奴等の大体の共通点としては……………『負ける事の悔しさ』を知っているって事だ。大きな才能ってのは、負ける事の悔しさを早めに知った方が伸びるんだぜ。負けを経験せずして、成長できると思うなよ」

 

 

「…………………負ける事の悔しさ、か」

 

 

その言葉を胸に刻むようにカルマは呟いた。そして、方向転換して教室の方へ向かう。

 

 

「おーい、俺様が落ち込んでるお前さんに対して良いこと言ってやったんだから、ちっとはお礼の一言でも言っておけよー」

 

 

「はいはい、ありがとさん」

 

 

適当そうにカルマは返事して、手をひらひらと振って行った。

 

 

「キバット君?」

 

 

「げっ、創真……………」

 

 

カルマの姿が見えなくなったのを見計らってか、創真がぬっと姿を現した。

 

 

「あんた、普通にカルマ君に正体ばらしてたけど、良いの?ホリー君に君の事に関しての記憶を消してもらう?」

 

 

「いんや、その必要はねぇだろ。あいつは俺の事は言わないだろうよ。言っても誰も信じない、って自分でも分かってるだろうしな」

 

 

「なるほどね……………にしても、中々良いこと言ってたね」

 

 

「ま、俺様は人生経験豊富ですからな!所で創真、お前はテストどうだったんだ?」

 

 

キバットの問いに、創真はテストを取り出して見せる。

 

 

「ほほーう……………じゃ、早くそれを見せてこいよ」

 

 

「言われなくても。それじゃ」

 

 

創真も教室の方へ向かった。果たして創真のテストは如何に………………?

 

 

to be continue………




THE NEXT story 1/10 PM 22:00


よかったら評価などなどお願いします!


創真の気になるテスト結果は次回で!


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第51話 終業の時間 一学期

強引な点がありますが……ご了承ください!


気にいって貰えたら嬉しいです!

それではどうぞ!








「お帰りなさい、創真君。それでどうでしたか?」

 

 

「ほれ」

 

 

創真は殺せんせーにテストを見せた。

 

 

国語 100点

 

数学 100点

 

英語 100点

 

理科 100点

 

社会 100点

 

 

計 500点

 

 

「ヌルフフフフフ……さすがは創真君です」

 

 

「ランキングには載ってないけど、総合1位。さてと、……総合の部門の触手を貰うよ?」

 

 

「にゅ?一本でいいんですか?」

 

 

「常識的にお1人様1本までだろ?」

 

 

(((スーパーでよくあるアレと一緒かよ!?良いんだよ、もっと貰って!!)))

 

 

皆は心の中で突っ込んだ。

 

 

「………その代わり色々欲しいものあるから現金を貰う。本来6本なんだから良いよね?金は先生の暗殺に使うし」

 

 

殺せんせーは一気に真っ青になった。

 

 

「にゅ……………まぁ、給料も、もうすぐなので、暗殺目的に使うのなら、よしとしましょう………さて、君達が破壊できる触手は創真君の総合部門を合わせて4本ですね。それでは……」

 

 

「おい、タコ。五教科1位は四人だけじゃねーぞ」

 

 

寺坂や村松達が殺せんせーの前に何かの科目の答案を持ちながら立った。

 

 

「にゅ?いやいや、国、数、英、理、社、と総合で1位は……」

 

 

「はぁ?家庭科が含まれてねぇぞ」

 

 

寺坂、吉田、村松、狭間 家庭科 100点

 

 

「か、家庭科!?いやいや、そんなのついででしょ!?て言うかなんでそんなのだけ100点を取ってるんですか!」

 

 

─────────チャーンス。

 

 

創真は内心ニヤリと笑い、口を開く。

 

 

「おいおい、殺せんせー。家庭科は大事だろ?だって一人暮らしするときに家事とか出来なかったらヤバイよ?」

 

 

「そんなのとか失礼じゃね?最強と言われてる家庭科さんに」

 

 

創真とカルマの発言で決定打となった。

 

 

「学年一位がさらに四人!よって破壊できる触手は8本!」

 

 

「8本!?ヒ、ヒィィー!!」

 

 

「それと先生。今回の暗殺は賭けの戦利品も使わせてもらいます」

 

 

「にゅ……?」

 

 

磯貝の発言に殺せんせーは目を丸くし、磯貝は詳しく説明を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

数日後、テストも終わり、終業式だ。今は皆であいつらを待っている。

 

 

「やぁ、浅野君。お久しぶり」

 

 

「結城 創真……何かようかな?僕は暇じゃないんだが」

 

 

「おいおい、何か忘れてるだろ?」

 

 

寺坂も詰め寄る。

 

 

「忘れてるなら言ってあげるよ。賭けてたよね?五教科を多くとった方が命令1つ、と。そして僕らは勝った。だからさっき磯貝君がメールで送ったものを貰うよ…………何か異論でもあります?」

 

 

「クッ……」

 

 

浅野を除く他の五英傑は悔しそうな表情を浮かべる。

 

 

「不満ならよ、家庭科とか入れても良いんだぜ?それでも俺等が勝つけどな」

 

 

……………果たして寺坂達がどや顔出来る発言なのかは僕にも分からない。去ろうとすると、浅野が声をかけてきた。

 

 

「……お前は今回、理事長の作ったテストを受け、そして、全て満点をとったそうだな」

 

 

「レベルが全然違うね。恐らく君でも点は70位だと思うよ……………次は同じテストで勝負しようかな?いや、やっぱ良いや。だって、君達の受けたテストは簡単すぎて退屈だし」

 

 

「……………………!!」

 

 

浅野は何も言わずに去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

集会後、皆は教室に戻ってきた。要らないデカイ夏のしおりを渡された後、殺せんせーは話始めた。

 

 

「……さて、君達はこの夏休み中にビックイベントがありますね?」

 

 

あ、賭けの戦利品ね。

 

 

「本来はA組の特典ですが、君達ももらう資格がありますねぇ。トップ50をA組とE組で独占してますから」

 

 

そして、その内容は、島でリゾートだ!まぁ……………暗殺も兼ねてるけどね。

 

 

「触手のハンデに満足せず、四方が水の島を使う…………本当に君達は侮れない生徒になりました。これはターゲットとしての私からの成績表です!」

 

 

二重丸の成績表が教室に舞い上がった。

 

 

「これはうれしいねぇ………」

 

 

「夏休みもたくさん学んで、遊んで、たくさん殺しましょう!暗殺教室、基礎の一学期……これにて終業!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

「殺せんせー、これ請求書」

 

 

「じゅ、100000円!?」

 

 

「嫌なら結構。変わりに、教科毎に全部1位取ってるから、その分を破壊する触手を足すだけ。そしたら、破壊する触手は13ほ……」

 

 

「分かりました!……分かりましたよぉ……」

 

 

創真は100000円をゲットした!!ちなみに全てマシンシリーズに使う。そして新たなマシンもcoming soon。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで全部か」

 

 

「創真の奴、驚くかな~?」

 

 

「俺様達からのプレゼントだ。あいつの反応が楽しみだぜ!そして、ガンダムファンの方には………待たせたな、とでも言っておこうか」

 

 

あの2人+コウモリ1匹も何か企んでいるようだ。




THE NEXT story 1/11PM 22:00


裏話ですが、本当は創真のテストの点は、浅野と一緒にする、って言うプランがあったんです。そうすれば今回のように強引な話にはならなかったんです。


だけど創真が、僕なら普通は500点だろ、と言って聞かないもので……


「おい、作者。お前の家に爆竹投げ込むぞ?」


……爆竹は嫌なのでここらで失礼します(笑)


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夏休み編
第52話 男のロマンの時間


ガンダムのタグがやっと使われます……。


そして、タイトル変やな……。


あ、それと使ってほしいガンダムの武器があったら活動報告に書き込んでください!


ガンダムファンの方が出番………かも知れませんね。


マシンシリーズや魔法も随時募集中です!


それと今回、重大かもしれない発表も!?


それではどうぞ!


創真side

 

 

夏休み?………遊ぶしかないだろ?と言うわけで、ガンダムのプラモを作っている。どうせ書いてもつまんねーだろ、と言う作者の陰謀から今まで描写がなかった。その間に僕は30以上のガンプラを作った。

 

 

そしてもう1つ。

 

 

ホリー達がプラモに興味を持ち始めたのだ。この前、テスト勉強の合間に技術を教えた。それで今日、作った物をを見せると言ってたのだが……。

 

 

「待たせたな、創真」

 

 

ホリー達が部屋に入ってきた。

 

 

「それで、作ったのは何処に?」

 

 

「それは王の間にあるぜ」

 

 

それを聞き、指をパチンと鳴らした瞬間、部屋が暗くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すぐに王の間に到着。机の上にガンプラが2体置いてあった。

 

 

「へー……初めてにしては良い出来だな……」

 

 

塗装とかもちゃんと出来ている。まぁ、大した物だ。

 

 

「なー創真」

 

 

「ん?」

 

 

「俺様は思ったのよ。何で、このプラモデルが装備している武器が実際にないんだろう、ってな」

 

 

──────何を言い出すかと思えば…………。

 

 

「いや、ガンダムは空想上の存在だ。だから、ないのは当然だよ」

 

 

「だよなー」

 

 

キバットは納得したように引き下がる。

 

 

──────かと思いきや。

 

 

「だが!こんなカッコいい武器があるのに、実際に無いのはつまらねぇ!なぁ、創真!お前はもし、実際にこういう武器があったら、持ってみたり撃ってみたりしたいだろ?」

 

 

「まぁ……………………そうねー」

 

 

「だよな!てことで、無いものはねだるんじゃなくて、作れば良いって事で、作ったぜー」

 

 

ん?どゆこと?

 

 

「つまりな……人間サイズの本物を作ったの!」

 

 

ほ、本物!?

 

 

「え、ちょっと待って。本物って…………」

 

 

「こちら!」

 

 

ホリーの声で王の間の壁が回転した。現れた専用のショーケスに見たことがある武器が飾ってあった。

 

 

「えぇ………これ、ガチ?」

 

 

「ガチだぜガチ。ほら、試しにこれ」

 

 

キバットが渡したのは、ビームサーベル。試しに両手で持ってみると、自動でビームの刃が形成された。

 

 

「よっしゃあ、行くぜ創真!」

 

 

行くぜって、何がよと聞くよりも前に、ホリーは野球ボールを投げた。そして、反射的に両手に持つビームサーベルを縦に振る。ボールは真っ二つに両断され、後ろへと飛んでいった。

 

 

「おー、流石の反射神経だね~」

 

 

「でしょー……………じゃなくて!危ないわ!僕じゃなかったら危なかったよ!?」

 

 

「まー、良いじゃない。それより、気に入った?」

 

 

「…………………まーね」

 

 

気に入ったのは無論、事実だ。

 

 

「いやー、良いですねぇ、創真様」

 

 

そんな声が聞こえたかと思えば、後ろに巨大なバーズーカを持った氷室さんがいた。

 

 

「あれ?氷室さんってここに入れるんだっけ?」

 

 

「ホリー君かデュオ君かキバット君に許可が貰えれば誰でも入れるそうで」

 

 

「へー……………で、何故にバズーカを持って参上したんです?」

 

 

「あぁ、私は創真様よりも一足早く堪能しておりまして。先程まで、別の部屋で色々と乱射してストレス発散を楽しんでおりました」

 

 

断言して良い。世界一物騒なストレス発散法だ。

 

 

「………………………ん?」

 

 

服のポケットに入っているスマホが振動している事に気付いた。画面を見ると、陽菜乃からの電話だった。

 

 

「てか、ここって電波通るんだな……………」

 

 

「フリーWi-Fiも繋がってるぞー」

 

 

「便利な部屋な事で……………」

 

 

そう呟きながら電話に出る。

 

 

『もしもし、創真君?明日暇かな?』

 

 

「明日?……………まー、予定は入ってないけど、どうしたんです?」

 

 

『明日さ、昆虫採取に行こうかと思ってて。創真君も良かったら一緒に来ない?』

 

 

昆虫採取、か。思えば最後に昆虫採取をやったのは何年前だったっけ。久しぶりに童心にでも帰って、そう言うのもやってみようかな。

 

 

「全然良いよ。そう言うの、久しぶりにやってみたいしね」

 

 

『良かったー!じゃあ、明日の7時に学校に集合!それじゃあ、明日会おうね~!』

 

 

そう言って電話は切れた。

 

 

「ねーねー、創真。明日カブト狩りでもするの?」

 

 

「まー似たようなもん」

 

 

「カブト狩りですか。良いですねぇ、そう言うの。私も小さい頃は良く山に行ってやってましたよ。創真様、私も明日ついて行ってもよろしいですかね?」

 

 

氷室さんが目をキラキラと輝かせながら寄ってきた。

 

 

「ま、まぁ…………良いんじゃないですか?」

 

 

「よっしゃあ!!」

 

 

氷室さん、あなたまたキャラが。キャラが崩壊してるがな。

 

 

「よーし、明日は早いし寝るか」

 

 

「えーまだ早いよー。夜は焼肉っしょ─────!!」

 

 

「唐突に訳の分からない事を言ってんじゃないわ、ホリー!焼肉行くなら1人で行ってこい!」

 

 

「じゃあ、お金くれる?」

 

 

「何で僕の出費になるの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、明日の昆虫採取はどうなることやら…………。

 

 

to be continue……………




自分でも思ったんだが、今回の話は謎のオチだった気がする。


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第53話 生き物の時間

さてさて、今日はミニクイズがあります!


後書きに問題があるので、よろしければ考えてみてください!


AM 7:00

 

 

現在、創真は氷室の運転するフェラーリで、学校に向かっていた。

 

 

「いやー、楽しみですね昆虫採取。昔を思い出しますよ~」

 

 

楽しそうに云う氷室。なお、彼はトランクに昆虫採取に必要な道具一式を積んでいる。実際、今回の昆虫採取に1番ワクワクしているのは、氷室かもしれない。

 

 

「E組の山は自然が豊かですから、結構レアな昆虫もいるかもしれませんね」

 

 

「そう言えばそうですね。ヘラクレスオオカブトとかいたりして………………」

 

 

「いや………………流石にそこまでのはないとは思いますけど………」

 

 

「いたら面白いんですがね…………あぁ、そう言えば」

 

 

氷室は何かを思い出したかのように切り出した。

 

 

「先日、お父様からテストの結果を電話で聞かれたので、オール満点と答えておきました」

 

 

「あぁ、そうですか………」

 

 

「そしたらご褒美と称してまた、車をくれるそうです」

 

 

「いや、もう良いんですけど」

 

 

きっぱりと即答する創真。

 

 

「なーんで車ばかりを送りつけて来るんだ……………今度はどんなのが来るんです?」

 

 

「中東の方から船で送られるそうです。3日後、横浜港に送られてくるそうで、取りに行ってくれとの事で。ちなみに、超高級の品だそうで」

 

 

「中東の超高級な車……………………いや、まさか…………ね」

 

 

創真は何か思い当たる節があるようだ。

 

 

「今回に限っては、もし僕の予想した物なら、それは嬉しいかもしれませんねぇ……」

 

 

「………………ほう。そして、それはどのような?」

 

 

「それは明日までのお楽しみです………フフッ」

 

 

間もなく、学校の近辺の駐車場に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おは~、創真君!」

 

 

「おはよう、陽菜乃」

 

 

「じゃあ、行こう!」

 

 

創真は倉橋の手に引っ張られるようにして、足を進めた。

 

 

「あ、いたいた!」

 

 

トラップ周辺には、クワガタとかカブト虫やらがたくさんいた。

 

 

「おー沢山掛かってるね。この罠は作ったの?」

 

 

「手作りだよ。あと同じのを20個位、昨日の夜に仕掛けておいたんだ~」

 

 

「そうなんだ……………言ってくれれば手伝ったのにぃ」

 

 

「アハハ、じゃあ次からはよろしくね!」

 

 

そんな会話をしながら、倉橋は虫かごに虫を入れていく。

 

 

「……………ムッ。人の気配がしますね」

 

 

氷室が突然そんな事を言い出した。

 

 

「あ、確かに誰かの声がする」

 

 

倉橋も賛同し、気になった一行が声のする方へ行くと……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、渚君達じゃん。みんな昆虫採取?」

 

 

渚、杉野、前原の3名がいた。

 

 

「よう、創真に倉橋に氷室さん!」

 

 

「と言うか、前原君もこういうのに興味あるんですね」

 

 

「ふふーん。大物をゲットしてネットオークションで売って、夏の島リゾートの時にビーチのお姉ちゃんを口説くのに使うぜ!」

 

 

「……精々頑張れ」

 

 

呆れ口調で創真は呟いた。

 

 

「で、どんなのを捕まえたいと思ってるの?」

 

 

「そうだな……オオクワガタとか結構な値段じゃね?」

 

 

「……前原君。オオクワガタは人工繁殖が進み、値段が暴落しました。君達が生まれた頃はそこそこの値段だったんですがね」

 

 

氷室の解説に前原はショックを受けた。

 

 

「そ、そうなんですか……?お姉ちゃん=オオクワガタの値段かと思ってました……」

 

 

「今ではナンパの方が高いですね…………別に私はしませんが」

 

 

(((それは皆分かってますよ、氷室さん……)))

 

 

全員一致で、心の中でツッコミを入れた。

 

 

「ふっふっ。効率の悪いトラップだ。君達は狙う相手を間違っているぞ。俺の狙いは100億だ」

 

 

聞こえてきた声の方を向けば、岡島がいた。

 

 

「100億って……もしかして」

 

 

「そうだ。こっち来て見ろ!」

 

 

岡島に連れられて来ると、殺せんせーがエロ本の山に座りながら、エロ本をカブトムシの擬態をしながら読んでいるではないか。

 

 

「よし、掛かっているな。丁度良い。お前らも手伝えよ。エロの力で覚めない夢を見せてやろうぜ」

 

 

─────パーティが致命的にゲスくなった。

 

 

創真が大きなため息をついたのをいざ知らず、岡島は独り続ける。

 

 

「俺も苦労したんだぜ、買えないからな。あいつはエロ本の好みがあるんだ。まぁ、エロ本は夢が詰まってるからな」

 

 

岡島は色んなタイプのエロ本を使って、殺せんせーの反応を確かめていく実験を記録したスマホの画像を見せた。

 

 

「よくもまぁ、ここまでやったもんだね…………呆れを通り越して逆に凄いわ」

 

 

創真に誉められた(?)岡島はフフン、と得意気に鼻を鳴らす。

 

 

「虫取りと一緒さ。長く食い付くようなトラップを作るだろ?俺を蔑む奴はそれで結構だ。だがな……エロは世界を救えるんだよ」

 

 

「(何故だ。何故こいつがかっこよく見えるのだ?目が疲れてるのだろうか……………?)」

 

 

創真は目をごしごし擦ったりするなか、岡島ははさみを取り出す。

 

 

「誰かこの紐を切ってくれ。すると殺せんせーは下にある対先生用のネットに包まれる。そして、俺が飛び出しトドメをさす!」

 

 

「なるほど。油断してる今なら成功するかもしれませんな」

 

 

何となくなのか、はさみを受け取った氷室が感慨深けに呟いた。しかし、本当に殺れるかもしれない。ここにいる全員がそう思い始めたのは事実だった。

 

 

「では、行きますよ…………」

 

 

氷室が紐を切ろうとしたその時、殺せんせーの目がミョーンと伸びた。

 

 

「なんだあれ?」

 

 

「あんなの情報にないぞ!?あれはどんなエロを見つけたときの目だ!?」

 

 

殺せんせーは目にもとまらぬ速さで触手を伸ばし、何かを捕まえた。

 

 

「ミヤマクワガタ……それにこの目!」

 

 

「もしかして白なの、殺せんせー!」

 

 

倉橋が飛び出していってしまった。

 

 

「おや、倉橋さん。ビンゴですよ」

 

 

「あぁ……あと少しだったのに……」

 

 

岡島が無念そうに呟く。すると突然殺せんせーは何かに気付き、顔を手で覆った。

 

 

「どうしたの、殺せんせー?」

 

 

「本の下に罠があるのは分かってましたが、先生好みの本ばかりでつい釣られてしまったのが恥ずかしいのです………」

 

 

「気付かれてたのか………………おや?」

 

 

倉橋が持っているクワガタを創真が何気なく見ると、あることに気がついた。

 

 

「…………そのミヤマクワガタはアルビノ種だね」

 

 

「なんだよそれ」

 

 

「生物で習っただろ?要は変異種だ」

 

 

「目だけが白い、ホワイトアイ。超レアですね。今はミヤマクワガタもそこそこ高く売れますが、ホワイトアイということを加えると…………数十万円はいきますかね?」

 

 

「「「!!」」」

 

 

氷室の解説に男子諸君は目を輝かせた。

 

 

「一度見てみたくて殺せんせーに頼んだの~。ゲスなみんな~これ欲しい人、手ー上げて!」

 

 

「「「欲しい!!」」」

 

 

そのままゲスなみんなは倉橋を追いかけていった。ちなみに創真はその中には加わっていない。

 

 

「皆ゲスいね~」

 

 

「人の事を言えるのか…………?」

 

 

隠れながら見ていたホリーがのほほんと呟き、そしてツッコミを入れるデュオであった。



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第54話 贈り物の時間

今回は……短めですね。てか、ほんとは需用ないかも。


次からは島リゾート編なので楽しみにしていてください。


それではどうぞ!


横浜港

 

 

「……あと10分ですね、例のアレが届くまで」

 

 

「それにしても今日は良かったのですか?訓練があったはずでは……?」

 

 

「まぁ、僕の方は既に仕上がってますから」

 

 

「さすが……の一言しかありませんね……………あの船ですかね」

 

 

氷室の方が早く見つけた。

 

 

「さて、何となく見当もついてますが……物を拝みに行きますか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほれ、これだよ」

 

 

船員の人に案内され、そこにあったのは、

 

 

「なっ!?これは……ライカンのハイパースポーツ!」

 

 

氷室の声が珍しく大きかった。まぁ、無理もない。ライカンハイパースポーツ………アラブ首長国連邦の車メーカーが生み出した車………野獣、と言っても過言ではない。2.8秒で100㎞に達し、最高速度は395㎞/h値段は日本円で3億4000万。

 

 

詳しい詳細が気になる方は調べてみてください。

 

 

「いやー、この車は良いねぇ。僕の1番好きなのだ」

 

 

「そうなんですか?」

 

 

「だって、カッコいいじゃないですか」

 

 

「確かにカッコいいです。世界に数台しかない車を手にいれるとは……………」

 

 

「いやぁ、大変だったぜ。オークションで確か6億使って手にいれたからな」

 

 

奥から現れたのは────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「父さん!来てたんだ?」

 

 

「よう。いやぁ、アラブでこれがかっこ良かったからよ。衝動的に買っちまった」

 

 

「てか、6億使って手にいれたって言ってたよね?そんなに使って大丈夫なの?」

 

 

「大丈夫大丈夫。また今度カジノでパーッと稼げば、すぐ補填出来るって」

 

 

「………………いや、カジノじゃなくてちゃんと仕事で稼いでくれ………………」

 

 

創真の呟きは聞こえたのかは不明である。

 

 

「じゃ、俺はまた戻るんからな。ま、頑張れよ。氷室も、よろしく頼むぜ」

 

 

「お任せください」

 

 

氷室はスッと礼をする。

 

 

「あ、それとさ。もう車は送ってこなくて良いから………」

 

 

「えー、良いじゃねぇかよ。カッコいいのばっかだろ?あ、金の心配か?大丈夫だって、色々儲けてるんだから」

 

 

「いや、金とかじゃなくて……………これ以上送られても……………ねぇ、って感じなんだが…………」

 

 

「ん───────じゃ、今度は別の物を送るぜ」

 

 

そうそう、それで良い、と創真は心の中で呟いた。

 

 

「じゃ、父さん。体気をつけてね」

 

 

「おう!今年中には帰るぜからな。お前も学校頑張れよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ!今までの車の中で1番座り心地が良い……流石高級シート」

 

 

「それにしても、6億の車ですか……………傷でもつけたら、私は首ですね」

 

 

氷室は真顔でそんな不安を口にした。

 

 

「ま、まぁ大丈夫ですって。氷室さん、ゴールド免許でしょ?なら、ノー問題ですって。とりあえず、試運転としてこの車で色んな所へ行きましょう!」

 

 

「そうですね。道路交通法をしっかり守り、子供の飛び出し、右左の安全確認を怠らず、安全に行きましょう」

 

 

「氷室さん、流石に緊張しすぎですって……………」

 

 

色々気にしている氷室であった。




THE NEXT story 1/15 PM 22:00


次回からは原作に戻ります!


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第55話 島の時間

夏の島って最高ですよね~!


では、どうぞ!


「うう……船ヤバイ……」

 

 

「大丈夫、隼君?」

 

 

「神崎さん………大丈夫……と言いたいところだけど、大丈夫じゃないです……」

 

 

見ての通り、隼は船酔いに陥った。

 

 

「あ!見えてきたよ、隼君」

 

 

「お、おお……アレが殺せんせーを殺す舞台となる普久間島か!ん?……なんか船酔い収まってきたな」

 

 

驚異の回復力である。こうして一行は普久間島に降り立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────そこから遡ること24時間前。彼等よりも一足早くここに降り立った奴等がいた。

 

 

「ほえ~ここが普久間か……」

 

 

「……やはり暑いな」

 

 

「お、綺麗なお姉ちゃんがたくさんいるぜ!」

 

 

ホリー達が感想を述べる中、1日早く上陸した創真と氷室は例の車を預けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────ん?何故ライカンを持ってきたか?なんか心配なんですよね……3億ですよ?3日間、東京に置きっぱなしにして誰かにイタズラでもされたら……相手にも自分にも良いことはない。とりあえず幸運にも車両保管サービスがある店があったので、船にのせ、持ってきたという訳だ。店主の人はおじいさんなのでイタズラはしないだろう。

 

 

「創真様ー?」

 

 

「あ、すみません。ちょっと疑問に答えてました」

 

 

「は、はぁ………………それで、これからどうします?」

 

 

「取り敢えず、色々ここの地形を把握したいですね。色々歩いてみますか。ホリー、デュオ、キバット、行くよ」

 

 

「え~お姉ちゃんが俺様を呼んで……」

 

 

「遊びに来てんじゃないわ!行くぞ!!」

 

 

渋るキバットも仕方なくついてきた。こうして3時間かけて創真達は島をぐるっと一周し、森の中の危険性やら地形やらを色々確認した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ。やーっと終わったぜ。ホテルの中でクーラーでベストな環境で過ごしてるあいつらが羨ましいぜ……」

 

 

※あいつら=メテオとフレア

 

 

「まだ終わりじゃないよ?海中用マシンシリーズの全部のチェックしないと。ホリーとデュオも手伝ってくれる?」

 

 

「良いよー」

 

 

「構わないぞ」

 

 

今回持ってきたのは、マシンシャークに、新機体のマシンオルカ、マシンデンキウナギ、マシンタコである。

 

 

概要は、活動報告をご覧あれ。

 

 

「なー、創真。それ、あのタコを殺すための兵器だろ?」

 

 

「まー、キバットの言う通りだけど」

 

 

「で、今回の暗殺で殺せると思うか?」

 

 

キバットの質問に創真はマシンの手入れを止めて答えた。

 

 

「さー、どうだろうね。でも、僕的には全然可能性としては無くはないと思っているよ。皆さん、すこぶる優秀だからね」

 

 

「そっかー。殺せると良いねー」

 

 

ホリーの言葉に、微笑を創真は浮かべた。

 

 

「そうだね。さ、早く終わらせて遊びに行こうか?流石に南の島に来て遊ばないのは損だろ?」

 

 

「お、分かってるねー創真!早く終わらせて海に行って遊ぼう!」

 

 

「すいか割りだぜ!」

 

 

ホリーは海に。キバットはすいか割りを所望。

 

 

「デュオは?」

 

 

「そうだな………………イカ墨そうめんを食べたいな」

 

 

「そんなのあるのか……………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在

 

 

「相変わらず遅いな、隼」

 

 

「お前が早すぎるだけだろ」

 

 

「…………まぁ、そうかもな。あ、そう言えばホテルでサービスのドリンク貰えるから行ってきたら?」

 

 

「あー……今はやめとくわ」

 

 

「なるほど。君、酔ったね?」

 

 

「げ、何故分かった……………」

 

 

そこへ神崎が来た。

 

 

「隼君。これから修学旅行の班で行動するから皆のところに行こ?」

 

 

隼は4班と行動する。神崎が誘ったのである。

 

 

「お、おう!そうだな。じゃ、また後でな!」

 

 

「へいへい。さーて、僕も行くか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

我々1班は殺せんせーとグライダーで遊んでいた。

 

 

─────殺せんせーと陽菜乃が乗ってるグライダーだけ異常に速い。

 

 

「ったく、やっぱ速すぎだろ」

 

 

「マッハ20ですもんね……」

 

 

ちなみに僕は氷室さんと乗ってる。

 

 

「そして……殺せんせー。そのコスプレはなんです?」

 

 

「これは堀越 二郎ですよ、氷室さん」

 

 

「それ作る方の人だから!」

 

 

ツッコミを入れながら、僕の目はチラッと作業を進めている渚達を目に捉えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遊びの時間も終わり、砂浜で自分専用の銃の最終調整を済ませてると、陽菜乃が来た。

 

 

「創真君。そろそろご飯だよ?」

 

 

「ん?ああ、分かった。にしても……夕陽が綺麗だね」

 

 

「本当だ……いつも見てるのとは全然違うね……」

 

 

陽菜乃は隣に腰を下ろした。

 

 

「ねぇ、創真君」

 

 

「ん?」

 

 

「また帰ったらさ、どこか行かない?」

 

 

「……良いねぇ。またデート……かな?」

 

 

デート、と言う言葉に陽菜乃は頬を赤らめた。

 

 

「そ、そろそろ行かないと!それにしても、船上でご飯ってロマンチックだよね~」

 

 

「そうだね。さて、行こっか」

 

 

「うん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

 

 

船上レストランにて

 

 

「さーて、殺せんせー。ディナーの時間だぜ」

 

 

「なるほど。船に酔わせて戦力を削ごうと……そう言えば、隼君も酔うんでは?」

 

 

「ん?酔い止め貰ったから大丈夫だ」

 

 

けろっとした表情で隼は言った。

 

 

「ヌルフフフフ……実に正しい。ですが、気合の入った先生にとっては船酔いなど……」

 

 

「「「黒いわ!!」」」

 

 

既にお察しの通り殺せんせーは焼けて黒い。いや、焼け過ぎて黒い。

 

 

「そんなに黒いですか……こういうときは脱皮すれば………ほら、元通り」

 

 

「先生……それ……月1の奥の手じゃ……」

 

 

「そうですよ、創真君。本来ヤバイ時の奥の……」

 

 

殺せんせーは今さら自分の失態に気づいた。なぜ今までこのどじタコを殺せないのか。不思議な物だ、と創真は思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕食は終わり、ついに暗殺決行の時が近づいた。ちなみに殺せんせーは結局酔った。

 

 

「さーて、会場はこちらですぜ」

 

 

前原が案内したのは水上パーティールームだった。中で待ち構えていたのは岡島と三村だ。

 

 

「殺せんせー、先ずは映画鑑賞だ」

 

 

「楽しい暗殺の前の余興さ」

 

 

「そして、映画鑑賞の後は……………お命頂戴するよ、殺せんせー?」

 

 

to be continue ……………




THE NEXT story 1/16PM 22:00


次回、暗殺決行!


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第56話 決行の時間

それではどうぞ!


「まずは三村君の作った映像を見てもらって、それが終わったらテストで1位を取った8人が触手を破壊し、暗殺を始める。それで良いですか、殺せんせー」

 

 

「勿論です、磯貝君」

 

 

余裕の表情で答える殺せんせー。

 

 

「殺せんせー、先ずはボディーチエックを。あの水着持たれてたら逃げられちゃうからね」

 

 

「仮に逃げでも……サメとかシャチが先生を待ってるよ?」

 

 

「色々対策しているようですが、そんな事はしませんよ?」

 

 

渚にボディーチエックされながら、殺せんせーは答える。チエックが終わり、殺せんせーは椅子に座る。

 

 

「それでは……楽しみにしていますよ……君達の暗殺の創意・工夫を見るのを」

 

 

「勿論さ。じゃ、上映開始だ」

 

 

岡島が照明を消し、映像が再生される。創真は一旦席を立って外に出た。殺せんせーから見えない場所で静かにマシンタコ、メテオ、フレアを上空に放つ。

 

 

なお、マシンタコはカメラ付きだ。そして、フレアとメテオの脚には小型のカメラを付けているため、上空からパーティールームの状況がスマホで皆や烏間先生やビッチ先生、氷室さんにも色んな角度から分かるようになっている。準備を終え、創真はパーティールームへと戻ってきた。

 

 

(ヌルフフフフ……皆さんしきりに外に出たりしていますね……人数を把握されないためでしょう。しかし、千葉君と速水さんの臭いがありませんねぇ。そして、創真君も先程外に出ましたね……果たして何をしたのか……2人のスナイパーと創真君の警戒を怠らなければ問題なし。…………しかし、この映像作品は良いですねぇ。さすがマスコミ志望の三村君。ついつい取り込まれ……)

 

 

『それではご覧いただこう。我々の担任の恥ずかしい姿を』

 

 

画面にはカブト虫のコスプレをした殺せんせーがエロ本を読んでいる姿があった。

 

 

「にゅやー!?ちょ、アイスあげたじゃないですか?!」

 

 

「殺せんせー……買収は失敗したのです。残念でしたねぇ」

 

 

「し、失敗!?」

 

 

創真の嘲笑うような声に動揺する殺せんせー。他にも女装して女限定のケーキバイキングに参加していた事や、ティッシュ食ってた事がバレた。

 

 

『こんなものでは終わらない。あと1時間、たっぷりこの教師の醜態をご紹介していこう』

 

 

「あと1時間も!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

 

 

1時間後

 

 

「し、死んだ……もう生きていけません……あんなの知られて……先生死にました」

 

 

殺せんせーは精神的なダメージを負った。

 

 

『さて、ここまでおつきあいしてもらいましたが……まだ何か変わったことに気づかないだろうか?』

 

 

殺せんせーは自分の足下でチャプ、チャプと水の音がしているのに気づいた。

 

 

(!?いつのまに床に水が………満潮か!)

 

 

「さぁ、殺せんせー。殺しの時間だ。精神的にも殺られて、水吸って……動きが大分鈍ったね」

 

 

創真の言葉を合図に他の7人も立上がり、狙いを触手に定めた。

 

 

「約束だ。避けんなよ?」

 

 

寺坂の言葉に殺せんせーは僅かに冷や汗をかく。

 

 

(く……やりますね。だが、創真君とスナイパーに注意すれば……)

 

 

創真達は引き金を引き、触手が8本吹き飛ぶ。引き金を引くのと同時に、創真はスマホを取り出してタップした。

 

 

その瞬間、海の中で待機していた、マシンシャーク、マシンオルカが一斉に起動した。2体はウォータージエットのパワーで前へと泳ぎ始める。2体の胴体にはロープが繋がっていた。繋がっている先はパーティールームの壁。ロープが限界まで伸び、ピーンと張る。マシンシャークとマシンオルカの目が赤く光り、さらに出力を上げた。すると、壁がミシミシと音を立て始め───────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────パーティールームの壁が崩れた。

 

 

それと同時に一部の生徒が水中から水圧で空を飛ぶフライボードに乗って飛び出した。

 

 

(これは………水圧の檻………!)

 

 

「さぁ、クライマックスだよ、殺せんせー!」

 

 

創真がそう言った同時に律が水中から出現した。同時に残りの生徒も銃を構える。

 

 

「射撃開始。目標、殺せんせーの周囲」

 

 

殺せんせーの周囲を弾が飛び交い、殺せんせーは明らかに動揺している。

 

 

殺せんせーは自分を狙う弾に敏感。なら、その周りを撃ってやるのが得策と言う訳だ。

 

 

────────そして、トドメは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スナイパーコンビだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺せんせーは2人(千葉と速水)が陸にいると思っていただろうが、本当はずっと水中にいた。

 

 

匂いも発砲音も全て水がかき消す。

 

 

((もらった!))

 

 

速水と千葉は引き金を引き、殺せんせーの死角から弾が襲いかかる!!

 

 

(!!よくぞ……ここまで……!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、殺せんせーの周囲に閃光と大きな爆発音が響き渡った。




THE NEXT story 1/17 PM 22:00




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第57話 結果の時間

殺せんせーは閃光と伴に爆発した。皆は吹き飛ばされ、海に落ちた。

 

 

「これ殺ったんじゃね!?」

 

 

皆、殺った手応えを感じていた。

 

 

「まだ油断するな!奴には再生能力がある。水面の警戒を怠るな!」

 

 

烏間の指示で皆は殺せんせーの残骸やらを捜索する。

 

 

「あ!」

 

 

倉橋の近くの水面で空気の泡がたっている。皆が銃を構える。

 

 

そして、姿を現したのは─────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真だった。

 

 

解説すると、海中に落ちた創真がマシンシャークに乗って海中から浮上しただけと言う、特に何の変哲もない事をしたのだ。

 

 

「なんだよ、創真か……」

 

 

「そうだが」

 

 

「てことは……殺せんせー、殺ったのか!?」

 

 

「いまオルカが超音波を発して反響定位を利用して捜索しているよ」

 

 

超音波はさておき、反響定位とは、自分が発した音が何かにぶつかって返ってきたものを受信し、その方向と遅れによって物の位置を知ること。なので、各方向に超音波を発すれば、周囲に何があるかなど標的の位置関係を知れる。仮に殺せんせーが生きていれば、近くにいるはず。ふやけてるだろうからそう遠くにはいない、と創真は踏んでいる。

 

 

間もなくマシンオルカが浮上してきた。丸い球体を咥えて。

 

 

「ヌルフフフフ……」

 

 

マシンオルカが咥えていたのは、殺せんせーの顔が入った球体だ。

 

 

「これぞ先生の奥の手の完全防御形態です。この周囲のエネルギーの結晶が先生を如何なる攻撃から守ってくれます。24時間だけですが。しかも、この間は先生動けません。1番恐れていたのは宇宙に飛ばされてしまうことですが、それは不可能と、調べ済みです」

 

 

「なるほど。超音波を反射したのはこのバリアか。にしても、無敵のバリアねぇ。どうしたものか……」

 

 

「創真、それ貸して」

 

 

殺せんせー入りの球体を貸すと、カルマはあのカブト虫のコスプレをしながらエロ本を読んでいる殺せんせーの画像を見せた。

 

 

「ちょ、やめて───!先生、今顔を隠せないんですけど!」

 

 

「あ、それとウジ虫も付けとくよ~」

 

 

「ふんにゃアァァァァ!」

 

 

殺せんせーの心の底からの悲鳴が響き渡る。

 

 

「どうしますか、烏間先生?富士山の火口にでも放り込みます?」

 

 

「……………とりあえず、上とこいつの処分方法を検討する。君たちは解散だ」

 

 

「先に言っておきますが、対先生用BB弾のプールに入れても、さっきのように爆発を起こせば問題なしです。残念でしたねぇ。あ、ちなみに富士山の溶岩に入れられても大丈夫な筈です。ですが、ここまで先生を追い込んだのは君達が始めてです。作戦は素晴らしかったですよ」

 

 

殺せんせーはそう言ってくれたものの、皆のショックは大きかった。皆は特に会話はなく、ホテルに戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=====================

 

 

少し遅れて、千葉と速水も陸に上がった。

 

 

「お疲れさん」

 

 

そう声を掛けたのは、創真だった。

 

 

「撮れてたか?今回の暗殺」

 

 

「勿論。ま、律の方がきれいに撮れてたが」

 

 

「……この弾じゃ、殺せない。撃って分かったよ」

 

 

「いや、そうとは限らない。律から聞いたが、千葉の射撃があと0.3秒早いか、速水さんの射撃が30㎝近ければ殺せていたかもしれないそうだ」

 

 

「やっぱり……」

 

 

「終わった事を言ってもしょうがないからね。じゃ、先戻ってるぞ」

 

 

「「………………………」」

 

 

2人が浮かない表情をしていたのに、創真は気付いて──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

ホテルに戻ると…………何故か何人かが苦しそうな様子だった。岡島は鼻血を出している。そして陽菜乃も苦しそうだった………これはただの疲れではない。取り合えずフロントへ行くと、烏間先生と鉢合わせた。

 

 

「烏間先生、これ……」

 

 

「分かっている。フロント!近くの病院はどこだ!」

 

 

「あ、ありますが今の時間帯に先生はいません……」

 

 

チッ………船は明日にならないと無い。そこへ氷室さんがやって来た。

 

 

「創真様。体調を崩した生徒の中には岡島君や三村君も入っています。肝心の症状としては高熱が主です。多人数が同時に体調を崩すなど考えにくい。恐らくウイルスか何かを盛られてた可能性が高いです」

 

 

「なるほど………ウイルスを盛られたとしたら、サービスのドリンク……しかないな。三村君と岡島はディナーを食べてないですから」

 

 

その時、烏間先生の携帯に着信が入った。烏間先生はスピーカーモードにして僕ら2人にも会話が分かるようにして、電話に出た。

 

 

『可愛い生徒が苦しそうだな』

 

 

「これはお前の仕業か?」

 

 

『その通りだ。人工的に作ったウイルスだ。個人差はあるが、1週間以内に死ぬ』

 

 

「死ぬ………そのウイルスに効く解毒薬はあるんですか?」

 

 

氷室が冷静に質問する。

 

 

『あるさ。一種類のみのオリジナルをな』

 

 

「何か目的があるんですよね?」

 

 

『勿論さ。解毒薬が欲しいなら100億の賞金首を……山のホテルの最上階に1時間以内に持って来い。外部と連絡を取ったり、期限を過ぎれば解毒薬は爆破する』

 

 

「なるほど」

 

 

『それと、ひとつ条件がある。背の小さい男女に賞金首を持ってこさせろ』

 

 

「………念入りだな……」

 

 

『当然さ。タコが動けないなら丁度良い。動けるのを想定していたからな。礼を言わせてもらうよ。フロントに話を通せばすぐに交換する。大事な生徒のために懸命な行動を期待しているよ』

 

 

通話は一方的に切られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

烏間先生は元気な人を集めて、事情を話した。

 

 

「どうするんだよ……このままじゃ……」

 

 

「落ち着け、隼。見るからにそこまで即効性はない。すぐには死なないさ。お前は船酔いに感謝するんだな」

 

 

「だな……船酔いになってなきゃ、俺も飲んでた」

 

 

そこへ烏間先生の部下の園川さんが来た。

 

 

「烏間さん!政府として問い合わせても、プライバシーを繰り返すだけでダメでした」

 

 

「あ、思い出しました。あの山頂のホテル、マフィアとか悪人がよく利用してるんです。地形が孤島ですからね……政界との繋がりもあるので警察も手が出せないそうです」

 

 

「……氷室さん……なんで知ってるんです?」

 

 

「私、友達が多いので、色々人脈があります」

 

 

「はぁ…………………」

 

 

「都会の病院に運ぶってのはどうなんだよ?」

 

 

寺坂が意見を申し立てるが、反対したのは竹林だった。

 

 

「賛成しないな。解毒薬は一種類なんだろ?行っても無駄足になるかもしれない。取り合えず応急措置はするから……」

 

 

「頼むよ。さて、こういう時に何か考えついてるのは………………殺せんせー、なんか案あるんじゃないですか?」

 

 

「えぇ、ありますとも。動ける人は来てください。汚れても良い服装で」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は移動し、ホテルが見える崖下に着いた。

 

 

「殺せんせー、作戦は?」

 

 

「律さん、お願いします」

 

 

『はい。ホテルの入り口には警備員がたくさんいるため、見つからずに侵入するのは不可能。ですが、この崖を上った先の通用口には警備がありません。監視カメラは私がハッキングできますのでご安心を』

 

 

「あー、もしや奇襲でもして薬奪えとでも?」

 

 

「正解です」

 

 

ほほーう。

 

 

「無理に決まってるわよ!まずこの崖!たどり着く前に転落死だわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビッチ先生の言葉に反し、既に僕含め皆は崖を登り始めた。

 

 

「崖くらいなら余裕だけど……未知の場所で戦う訓練はしてませんから烏間先生、指揮をお願いします」

 

 

磯貝君がそう言う。

 

 

「取り合えず、黒幕に俺らに喧嘩を売ったことを後悔させてやるよ」

 

 

隼も怒りの様子

 

 

「さぁ、どうしますか?烏間先生」

 

 

「………決まっている。注目!隠密潜入から奇襲への連続ミッション!違うのは標的のみ!3分でマップを叩き込め!その後、すぐに作戦開始だ!」

 

 

「「「おう!」」」

 

 

こうして律や氷室さんを含め18人による作戦が開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……待て、創真。俺らを数え忘れているぞ」

 

 

「忘れるなんて酷いよ、創真!僕ら暗殺に参加できてないから暴れまくるよ~!」

 

 

「よくも……創真の彼女を……!!俺様が許さねぇ……!!」

 

 

 

訂正。20人+コウモリ1匹による作戦が開始された! 皆は知らないが。




THE NEXT story 1/18 PM 22:00


ホリー達の活躍は如何に………!?


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第58話 プロの時間

ちょっとオリジナル要素もあります。


それではどうぞ!


「どうしましたか、創真様?その程度ですか?」

 

 

「そんなわけないっしょ!」

 

 

こんな状況にも関わらず、創真と氷室は崖登りの早さを競っている。

 

 

「やっぱり凄すぎ……」

 

 

そんな様子を見て呟いたのは岡野だ。

 

 

「あの2人もですが、皆さん崖登りが上手いですね」

 

 

「裏山でやらせている。どんな場所でも暗殺できるようにな」

 

 

殺せんせーの疑問に烏間が答えた。

 

 

「ちょっと、早く登りなさいよ!腕が疲れるわ!」

 

 

────────つーかビッチ先生、自分で登れよ。

 

 

隼は心の中で呟き、少し上にいる片岡に話し掛ける。

 

 

「なんでビッチ先生ついてきてんだ?」

 

 

「置き去りものとか嫌なんだって」

 

 

「………重いお荷物だな」

 

 

「なんですって!?隼、後で覚えてなさい!」

 

 

「へいへい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あっという間に皆は崖を登りきり、通用口のドアの前にたどり着いた。

 

 

「ドアの電子ロックは解除しました。監視カメラも加工済です」

 

 

「よし……では律、ルートを再確認だ」

 

 

烏間の指示により、律はマップを表示した。

 

 

「んー……今気づいたけど、このホテル、テレビ局みたいに占拠されにくい構造だね」

 

 

「創真君の言う通りだ。だから、ここのホテルはマフィアらが愛用するわけだ」

 

 

「使う奴等からしたら好都合だろうが、攻め込む側からしたらめんどいお話だね」

 

 

皆の内心を代弁するように、創真はため息混じりで言った。

 

 

「よし、では行くぞ」

 

 

ついに侵入。烏間先生の指示で皆は素早く進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、いきなり難所に差し掛かった。ロビー付近には大量のフロントマンや警備員が配備されていた。

 

 

(人数を絞っては作戦の幅が狭まる。どうするかね……)

 

 

烏間先生の思っているであろう戸惑いを創真も対処法を考えていた。そんな中、異端を付く事を言い出したのはビッチ先生だった。

 

 

「何よ。普通に通ればいいじゃない」

 

 

「……………は?この警備の中どうやって通るんだよ?」

 

 

隼が怪訝そうな表情で聞く。

 

 

「だから……普通によ」

 

 

置いてあったシャンパングラスを手に取り、ビッチ先生は堂々と歩き、一人のフロントマンにぶつかった。

 

 

「あ、すみません。お酒で酔ってしまって」

 

 

「い、いえ。お気になさらず……(うお……超可愛い……)」

 

 

ぶつかられたフロントマンはビッチ先生の美貌により、秒速で虜になった。

 

 

「来週ここでピアノを弾かせてもらう者よ。酔いざましのついでに弾かせてもらっても良いかしら?」

 

 

「え……ではフロントに……」

 

 

ビッチ先生はフロントに行こうとしたフロントマンの腕を掴む。

 

 

「良いじゃない。それと貴方に審査してほしいの。どこかダメな所があったら叱ってちょうだい」

 

 

ビッチ先生はピアノを引き始めた。

 

 

(幻想即興曲………か。腕前もさすがだが、魅せ方も上手い。やるじゃん、ビッチ先生)

 

 

いつもの様子とは似つかないビッチ先生の姿に、創真は少し見直した。色気の魅せ方を熟知したビッチ先生が、全身を使って奏でる『音色』はその場にいる全員の目を奪った。

 

 

「ねぇ、もっと近くに来て聞いて?」

 

 

完全にビッチ先生の虜となった他の警備員達は顔をデレデレさせながら近づく。

 

 

(20分稼いであげる。行きなさい)

 

 

ビッチ先生のハンドサインを見た皆は小走りに走り、非常階段へたどり着いた。

 

 

「うーむ……20歳のお姉ちゃんが引くピアノは目の休養になるねぇ……」

 

 

キバット(今は透明化中)も小声で呟いた。

 

 

「彼女は潜入暗殺に必要な技術は大抵身に付けている。君達に会話術を教えているのは世界でも有数のハニートラップの使い手なのだからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆が廊下を進む中、創真は少し皆と離れて、ホリー達と話していた。

 

 

「ホリー、デュオ。もし、皆が命の危機程度の危険に遭うようなら、憑依を使うよ」

 

 

「…………………バレるぞ?」

 

 

デュオが、それで良いのか?と言いたげな様子だ。

 

 

「いーよ、別に。皆の命に比べればそんなの安いもんだよ」

 

 

「……………創真がそう言うなら、それに従うよ。まぁ、でもなるべく憑依を使わずに対処したいけどね」

 

 

「まぁ、そうだな」

 

 

「おい、待て。俺様は?」

 

 

「キバットは状況に応じて指示する」

 

 

「了解だぜ」

 

 

こそこそ話している創真に、隼が声を掛ける。

 

 

「おい、創真。置いてかれるぞ?」

 

 

「分かってるって。所で異常とかなかった?」

 

 

「ないよ。あったとしたら、前にいる烏間先生と氷室さんが発見してくれる。それとお前、さっき誰かと喋ってたか?」

 

 

「ないけど?」

 

 

「おかしいな………気のせいか………?」

 

 

─────────これはセーフ……だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、前では

 

 

「なんともねーじゃねーか。時間ないんだからとっとと進もうぜ」

 

 

寺坂と吉田が烏間と氷室を抜かして進む。前には帽子を被った男が1人だけしかいなかった。

 

 

その時、不破が何かに気づいた。

 

 

「二人とも!そいつから離れて!」

 

 

そう言った瞬間、男はポケットから何かを取り出した。氷室は吉田を、烏間は寺坂を引き離す。ガスが噴射され、たちまち視界が悪くなる。烏間はすぐにガスから出た。

 

 

しかし──────────

 

 

「「氷室さん!」」

 

 

氷室だけは倒れていた。

 

 

「チッ、1人だけか。何故分かった、おかっぱちゃん」

 

 

「おじさん、ホテルのサービスドリンク配ってた人でしょ?」

 

 

創真は来た日が違うため分からないが、皆からしたら確かにそうだった。

 

 

「断定するには証拠が足りないぜ。ドリンク以外にも盛れる機会はあったかもしれないだろ?」

 

 

「竹林くんは飲食にウイルスが盛られたって言ってた。全員が同じものを飲食したのはドリンクとディナーだけ。でもディナーを食べてない三村くんもウイルスに感染した。したがってあなたが犯人よ!」

 

 

「凄いよ不破さん!」

 

 

「まるで探偵みたい!」

 

 

渚と茅野は不破を誉める。

 

 

「いや、僕もドリンクにウイルスが盛られていたのは分かってましたよ」

 

 

「創真君、そこで張り合うの!?」

 

 

渚が創真に突っ込みを入れていると…………烏間先生が膝をついた。

 

 

「俺が作った室内用の麻酔ガスの効果がやっと効いたか。そこの倒れてる奴には即効だったが」

 

 

「なるほど。ウイルスを開発したのはあなたですね」

 

 

殺せんせーが確認する。

 

 

「さーね。ま、交渉の意志がないのは分かった。ボスに報告するか」

 

 

男はもと来た道を引き帰そうと背を向けるが、既に周囲は囲まれていた。

 

 

「既に指示済み………我々を見た瞬間直ぐに引き返さなかったのが間違いです」

 

 

そう口を開いたのは烏間………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ではなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なに!?貴様、なぜ………グハ!」

 

 

 

最後まで待たず、氷室は男の顔面に回し蹴りを喰らわせた。

 

 

(こいつ……吸ってなかったのか………!?)

 

 

男は倒れ、昏睡に陥った。

 

 

「氷室さん、なんで動けるんです!?」

 

 

「息を止めてました。倒れたふりをして、隙を伺っていたのです」

 

 

「流石氷室さん………………」

 

 

茅野がポツリと呟いた直後、ドサっと言う音が聞こえた。見れば、烏間が倒れていた。

 

 

「「「烏間先生!」」」




今日はここまで!






THE NEXT story 1/19 random


時間は…………ランダムです!



多分…… ??:00分に投稿します!


次回でお会いしましょう!


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第59話 カルマの時間2時間目

え?今回はなんで投稿時間がランダムだったか?



特に理由はありません笑笑








えーふざけすぎました……それではどうぞ!


「……ダメだ。歩くふりをするので精一杯だ。30分で戦闘可能状態に戻るかどうか……」

 

 

「ガスを吸っても尚、意識があり、歩けるとは………烏間先生、恐ろしい限りです……」

 

 

(((氷室さんも十分恐ろしいけどね……)))

 

 

特筆すべきは判断力。息を止めてガスから出るのではなく、やられたふりをして、隙を伺うと言う。

 

 

「でも、烏間先生が戦闘出来ないなら……」

 

 

「私が常時前に出ます。が、私1人で対処できないほど強い殺し屋が来た時は皆さんの手も借りなければなりませんね」

 

 

氷室さんは少し苦々しい表情で云う。

 

 

「勿論です。僕らは3ヵ月近くも訓練してるんです。暗殺者の力を持っているのに氷室さんだけに任せっきりにする訳にはいきませんよ」

 

 

創真はやる気満々だが、他の皆は不安げな表情だった。確かに、氷室がいくら強くても、相手がそれ以上の実力があるという可能性がある。そういう状況を打破するためには……自分達もやるしかない。しかし、この先に待っているのは知識と経験を兼ね備えたプロの殺し屋。

 

 

果たして自分達が敵うのか……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ、これぞ夏休みですねぇ……」

 

 

意味深な事を殺たんせーは云う。

 

 

「………どこら辺が?」

 

 

殺たんせーに創真は尋ねた。

 

 

「夏休みとは自分達で行動します。先生と生徒のふれあいはありません。心配いりません。君達ならこの暗殺夏休みをクリアできますよ」

 

 

「私もそう思います。君達は心も体も非常に強いですから」

 

 

氷室もうんうん、と首肯く。

 

 

「ま……ここまで来たらやるしかないな……だが、その前に殺せんせー」

 

 

「にゅ?何ですか隼君?」

 

 

「1人だけ安全形態でそんなこと言われると腹立つんだよ!渚、振り回せ!」

 

 

「にゅやーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=====================

 

 

 

そこから暫くは順調に進み、5階まで来た。展望通路に差し掛かった時、氷室が止まるようにハンドサインを出した。男が展望通路に寄りかかっていたのだ。

 

 

「……あの雰囲気」

 

 

「確実に殺る側の人間だ」

 

 

そんな会話が聞こえるなか、氷室は頭をフル回転させ、どうするかを考えていた。

 

 

(……さて……ここは見通しが良いため奇襲は意味がない……創真様のマシンシリーズのどれかがあれば他にも作戦は思い付くのですが………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビキビキ

 

 

突然そんな音がしたと思うと、男が寄りかかっていた窓ガラスに亀裂が入った。

 

 

「……つまらぬ。確か精鋭部隊出身の教師がいるはずなのぬだが……スモッグのガスでやられたようだぬ……いや相討ちぬといった所か。出てこい」

 

 

皆は素直に出てくる。

 

 

(毒使いのおっさんはスモッグって名前なのか。それと………多分皆も気になってると思うんだが……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『ぬ』多くねおじさん?」

 

 

創真らの内心をカルマが代表して言ってくれた。

 

 

「ぬ、を入れるとサムライ口調になると聞いたぬ。だから試してみたぬ」

 

 

「な、なるほど……あ、それと『なり』とか入れるともっとかっこよくなると思いますよ」

 

 

そう言ったのは氷室だった。

 

 

「……どういうときに使うぬ?」

 

 

「えーっと……我が名は〇〇なり、とか?」

 

 

(((あの……)))

 

 

「なるほど。確かに良いぬ。貴重な意見をどうもぬ」

 

 

(((なんだよこのやり取り!?)))

 

 

皆は心の中で氷室さんに突っ込んだ。

 

 

「では早速……我が名はグリップなり」

 

 

(((早速使ってる………)))

 

 

「グリップ………もしかして素手があなたの暗殺方法?」

 

 

「大当たりぬ、少年」

 

 

グリップは創真の指摘にすんなりと頷いた。

 

 

「こう見えて意外と需要あるぬ。身体検査に引っ掛からぬ。近づきさま、頸椎を一捻り。頭蓋骨もその気になればやれるが」

 

 

グリップは続ける。

 

 

「人殺しのスキルを極めれば不思議と闘い……即ち強敵との殺し合いをしたくなるもんだぬ。だが、お目当てがこれではつまらぬ。色々教えてくれた彼には悪いが、ボスと仲間を呼んで皆殺しぬ」

 

 

グリップは携帯を取り出して連絡をしようとする。

 

 

「そうはさせませ……」

 

 

氷室さんが止めようと動くが、もっと早く行動に移した奴がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガシャン!

 

 

カルマが造木を使い、携帯をガラスごと破壊した。

 

 

「ねぇ、おじさんぬ。ガラスとか頭蓋骨なら俺でも割れるよ?それと……仲間をすぐ呼んじゃうあたり中坊にボコボコにされるのが怖いの?」

 

 

「待て、危険だ!」

 

 

「烏間先生、よーく見てください。顎が引けてます」

 

 

殺せんせーに言われて見てみると………確かに引けてる。これは油断せず相手を観察していると言うことを意味している。

 

 

「ふむ。ここは任せよう、氷室さん」

 

 

創真の進言を承けた氷室は少し考えてから──────

 

 

「では、カルマ君………任せましたよ」

 

 

─────カルマにこの場を任せた。

 

 

「オッケー。任しといてよ」

 

 

「面白いぬ。すこし付き合ってやるとするぬ」

 

 

次回、グリップVSカルマ!




THE NEXT story 1/20or21 PM 22:00


次回もお楽しみに!


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第60話 戦闘の時間

今回はカルマ君に頑張ってもらいましょう!



それではどうぞ!


カルマは造木をグリップに向かって振るが、手でキャッチされ、握りつぶされた。

 

 

「柔い。こんな武器は握りつぶして終わりぬ」

 

 

「武器なんて必要ないね」

 

 

グリップはカルマを掴もうと右手を伸ばすが、カルマはそれを避ける。次は左手で仕掛けるが、今度は捌いた。避けたり、捌いたり………この2つの動作の繰り返しだ。

 

 

「すごい……避けるか捌いてる……」

 

 

茅野を含め、皆は驚いている。授業で防御テクニックは教わってないから驚くのは当然だ。烏間にはカルマの防御テクニックが上手い理由がすぐに分かった。

 

 

(………俺が生徒のナイフを避ける動きを目で盗んだな。やはり、このE組では戦闘の才能はずば抜けている)

 

 

「どうした?攻撃してこなければここは抜けられぬぞ」

 

 

カルマは今だ攻撃を仕掛けていない。

 

 

「どうかな~。あんたを引き付けてその隙に皆が抜けていくのもアリかなって思って」

 

 

グリップは警戒を強めるが─────

 

 

「……そんなコスい事はしないよ。今度は俺から攻めるよ。あんたに合わせて素手で決着つけるよ」

 

 

───────カルマは正々堂々闘うようだ。

 

 

「フッ……お前とならやれそうぬ。暗殺稼業では味わえない闘いが。さぁ、来いぬ」

 

 

カルマは一気に距離を詰め、飛び蹴りを喰らわすが、腕でガードされた。続いてパンチを連続で繰り出すが、ガードされれるか、避けられた。カルマは狙いを足に定めて、蹴りを入れた。

 

 

そしてそれは見事にヒットした。

 

 

「くっ……」

 

 

グリップは少し表情を歪め、背を向けた。今がチャンスとばかりに、カルマは背後から 襲いかかる!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ブシュッ!

 

 

(!?あのガスは…………)

 

 

ガスを浴びたカルマが倒れ掛けるのを、グリップは顔をわしづかみしてキャッチした。

 

 

「一丁上がりぬ。長引きそうだったんでスモッグの麻酔ガスを試してみたぬ」

 

 

「素手以外にもそんなの隠し持っていたのか……!」

 

 

「当然ぬ。拘り過ぎないのもこの仕事の秘訣だぬ。予期してなければこのガス噴射は防げぬ」

 

 

ブシュッ!さっきと同じガス噴射の音がした。

 

 

「なにぃ………!」

 

 

「ハハ……二人とも同じこと考えてた。奇遇だね~」

 

 

カルマの手にはグリップのと同じガス噴射器があった。

 

 

(何故それを……しかも、何故俺のガスは吸ってないぬ……)

 

 

「ぬぬぬぅぅぅ!!」

 

 

グリップは懐かからナイフを取り出し突撃するが、カルマは冷静にナイフの持ち手を掴み、全身の体重をかけて床に叩きつけた。グリップは麻酔ガスを吸っているため、体が言うことを聞かない。

 

 

「ほら、寺坂。早く拘束してって」

 

 

「へいへい。テメーが一対一でタイマンとか……もっと無いわな」

 

 

寺坂を含め、全員でグリップを拘束し、簀巻きにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?あー、あのガスは毒使いのおっさんから未使用のをすくねといたんだよ」

 

 

カルマは麻酔ガス噴射器を持っていた訳を皆に話した。

 

 

「何故だ……何故俺のガスを吸わなかったぬ……?」

 

 

「素手以外の全部を警戒してたからね。俺らを止めるためならどんな手段でも使うべきだし、俺もそっちの立場ならそうしてる。あんたのプロ意識を信じてたから………かな?」

 

 

キバット(透明化中)は皆から離れたところで口を開いた。

 

 

「あいつは大きな敗北を知らなかったのだろう。んで、今回の期末テストで、敗者も色々考えていると思い知った。それに気づけば、勝負の場でも相手に敬意をもって警戒するようになる。戦場ではそういう人を、『隙がない』とでも言うんだな。はー誰かこの俺様の良い演説聞いてくれてたらな……」

 

 

「(案ずるな。読者の皆が聞いてくれてるさ)」

 

 

創真が心の中で一応のフォローをする。

 

 

「……敗けはしたが楽しい時間を過ごせたぬ。お前は将来大物になれるぬ……」

 

 

敗けたのにグリップは何処か満足そうだった。

 

 

「あ、そう?でもね、おじさんぬ。楽しい時間はこれからなんだ」

 

 

カルマの手にはわさびとからしがあった。

 

 

「そ、それをどうするぬ……?」

 

 

「鼻の穴にねじ込むの。さっきまで警戒してたけど今なら警戒もクソもないね」

 

 

「なにぬ!?」

 

 

カルマは荷物からブート・ジョロキアや鼻を塞ぐ専用クリップを取り出し、準備を進める。

 

 

「さ、おじさんぬ。プロの意地を見せてよ」

 

 

グリップの鼻にからしとわさびが発射された。

 

 

「モガァァァァァァァァァァァァァァァァァ!」

 

 

「地獄絵図や……………こりゃアカン……………」

 

 

口調が何故か関西弁になった創真は目を手で覆って、地獄絵図から目を背けるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんて恐ろしい………俺様、奴の将来が心配だぜ……見てらんねぇぜ……」

 

 

キバットも珍しく青くなっていたのは誰も知らない。




THE NEXT story 1/21 PM 22:00


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第61話 女子の時間

さーて、あいつらにも活躍してもらいますか!


気にいって貰えたら幸いです!



それではどうぞ!


創真side

 

 

さてさて、グリップを倒し、6階のテラスラウンジに着いた。この先の階は店の内側にあるため、店内に侵入し、裏口の鍵を開けなければならない。

 

 

「私たちが侵入して鍵を開けます。だから皆は待ってて」

 

 

片岡ら女子が名乗りをあげ、氷室さんも任せた。

 

 

「しかしながら女子だけでは不安が残ります。しかし、女子複数に男子1人では不自然。どうしたものか……」

 

 

「あ、それなら渚に任せれば良いんだよ、氷室さん。女装させれば問題なしでしょ?」

 

 

「女装なんて嫌だよカルマ君!」

 

 

「渚なら似合うし助かるわ」

 

 

女子も賛同の様子。

 

 

「渚君。後で土下座でもなんでもしますからお願い出来ませんか?」

 

 

「うう………分かりました………あと土下座はしなくて良いですからね……」

 

 

確かに土下座されたら困った反応をするのが目に見える。女子6人と渚も(渋々)、中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼等が入った直後。

 

 

「ホリー、デュオ、キバット。任務を与えるよ」

 

 

「お!何々?」

 

 

ホリーが待ってましたとばかりにストレッチを始める。

 

 

「目的はあいつらの護衛だろ?任せておけ」

 

 

デュオは察しが良い。

 

 

「ホリー、ナンパとかしないでちゃんと守るんたぜ~?」

 

 

「うるせーキバット!お前も人の事言えねーだろうが!」

 

 

「痴話喧嘩は後にしろ。行くぞ」

 

 

デュオ達は透明化のまま、他の客がラウンジに入ろうとドアを開けた瞬間を狙い、中に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

 

その頃、中のテラスでは………

 

 

(なんてカッコ悪い夏休みだ。金目当てで来たクラスの女子共は外人にお持ち帰り。親のコネでこのホテルに来て……結局俺はボッチか。俺は葉っぱと酒でごまかすだけ)

 

 

心の中でそう呟くのは、皆さんご存じユウジ君である。そこへE組の女子達が。

 

 

(俺と同年齢だな………どーせ頭はカラッポなんだろーけどな……ん?もう一人居るな……)

 

 

彼の目に写ったのは渚。

 

 

(あの娘……慣れない感じが良いな……)

 

 

ユウジはE組の女子達に声を掛ける。

 

 

「君達どっから来たの?金は余るほどたくさんあるから俺と一緒に飲まねー?」

 

 

女子達は冷たい目を向けながら、渚を彼の前にすっと押し出す。

 

 

「渚、相手しといて」

 

 

「ええ!?」

 

 

片岡は渚の耳元で囁く。

 

 

「あんたなら1人で対処できるでしょ?必要になったら呼ぶから」

 

 

渚はユウジに連れてかれてしまった。

 

 

「おいどうする?渚は誰が見とく?」

 

 

「俺様が見とくぜ。いざというときに彼女等を守れるのはお前ら2人だろ?」

 

 

キバットはパタパタと飛んでいった。

 

 

「じゃ、僕らは女子の方を見てますか」

 

 

「そうだな……………早速、また絡まれているな…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようお嬢達。今夜俺らとどうだ?」

 

 

(もう……きりがない……)

 

 

片岡がそう思うのはごもっとも。文句を言おうと思ったその時、矢田がスッと男達の前に出た。

 

 

「お兄さんたちカッコいいから遊びたいけど、今日はパパと来てるから………うちのパパ恐いからやめとこ?」

 

 

「ひゃひゃパパが怖くてナンパできっか」

 

 

「じゃ、紹介する?」

 

 

矢田が見せたのはヤクザのエンブレム。

 

 

が………

 

 

「それ偽物だろ?本当だとしたら護衛でもつけてるはずだ」

 

 

「そんなので騙されるほど甘くねーよ。早く遊ぼうぜ~」

 

 

男らが手を掴もうとしたときだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「残念だけど………いるんだよね~」

 

 

声の主は透明化を解除したホリー。横にはデュオが。

 

 

「う、嘘つけ!お前ら明らかにガキだろ!?」

 

 

「嘘だろうが本当だろうがどうでも良い……とっとと失せろ、屋根裏のゴミが」

 

 

デュオの言葉に男達はキレた。

 

 

「うっせーな!女の前だからってカッコつけようとしてんじゃねぇ!オラ!」

 

 

男達はホリー達に殴ろうとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅い遅い」

 

 

スピード命のホリーの制裁により、気付いたときには宙を舞っていた。目の前で見ていた女子達も何が起こったのか分からなかった。

 

 

「まだやるか……?やるなら、こっちも容赦しないが」

 

 

デュオはリンゴを胸元から取り出し、軽々と握りつぶして見せた。男達は真っ青な表情のまま、駆け足で逃げていった。

 

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 

片岡が代表して礼を言う。

 

 

「礼には及ばない……ああ、それと俺の名はデュオだ」

 

 

「僕はホリー!」

 

 

「デュオさんにホリーさん………2人ってなんか対称的ですね」

 

 

岡野の言う通り、ホリーは全身白コーデ。デュオは全身黒コーデ。色の対称である。

 

 

「ふっ、よく言われるな。白黒コンビ、とかな」

 

 

「僕ら超仲が良いんだ!もうちょっと話してたいけど僕らはもう行かないと行けないからここらで失礼するね」

 

 

「助けていただいて本当にありがとうございました」

 

 

「良いの良いの、それくらい。それじゃ!」

 

 

ホリーとデュオは女子達から離れ、人目のつかない所で再び透明化の魔法を使った。

 

 

「ふ~。護衛って意外と疲れるね……」

 

 

「まだ終わってないぞ。お、渚が茅野さんに呼ばれて動き出したぞ。多分……あの店の奥の店員を退かすために呼んだのか?」

 

 

ホリー達も渚の後ろを付いて行く。

 

 

「待て待て彼女等!俺の十八番のダンスを見てけって」

 

 

ユウジがまだアピールするが、すでに彼は邪魔者と化している。

 

 

「いやぁ……こいつの話つまんなくてよ。男はカッコつけなきゃとか、男は生きづらいとか……もはやナンパじゃねーな」

 

 

キバットはつまらなさそうな表情で2人に報告する。そして、ダンスをしていたユウジの手が誰かにぶつかった。しかも相手はグラスの中に飲み物を持っていて、しかも恐そうな男だった。

 

 

「おい、ガキ。良い度胸だ。こっち来いや!」

 

 

「だ、誰か……」

 

 

「「((情けない…………))」」

 

 

もう一度透明化を解除し、助けるか………………ホリーとデュオがそう考えたその時だった。

 

 

「そうだ!ひなたちゃん……」

 

 

矢田が岡野に何かを囁き、岡野は首を縦に振る。岡野はユウジに絡んでいる男の頬にハイキックを喰らわせ、見事に意識を奪った。そして、矢田は立っている店員に声を掛ける。

 

 

「すみません。あの人倒れちゃったみたいなんで看てあげてください」

 

 

「は、はい」

 

 

その隙に通ると言う訳だ。片岡がドアの鍵を解除し、その隙に待機していた男子はVIPフロアへの階段を上る。

 

 

「なんか女子の方がカッコ良かったね。それでも男子はカッコつけなきゃいけないから……辛いよね男子は。また今度あったらカッコつけてよ」

 

 

「渚ちゃん……」

 

 

渚の言葉にユウジは頬がほんのり赤くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして全員6階を突破した。

 

 

「ん?渚、どうした?」

 

 

創真が渚の表情が浮かないのに気づいた。

 

 

「いや、僕行く意味あったのかなって……」

 

 

「さーね。もしかしたら誰かの役に立ってるんじゃね?」

 

 

「創真君の言う通りだと良いけどね…………それとカルマ君、写真撮らないでよ!」

 

 

「アハハ、良いじゃん別に─」

 

 

「良くないよ!」

 

 

渚の悲痛な声に、創真はご苦労様です、と労りを込めて心の中で云うのだった。




THE NEXT story 1/22 PM 22:00


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第62話 銃の時間

雪が降ってますね……交通機関が乱れてたら、再開を待つ間にこの小説を読みましょう!



くしゃみを何度もしながら書きました。


それではどうぞ!



一行は7階のVIPフロアに着いた。

 

 

「………あの見張りが邪魔ですね」

 

 

氷室の言う通り、そこには客が雇ったと思われるボディーガードがいるため、上へと進めない。

 

 

「ここは私の出番ですね」

 

 

「待ってください。ここは寺坂君が持っている武器が有効ですよ」

 

 

氷室が飛び出そうとするのを殺せんせーが止めた。

 

 

「………武器?」

 

 

「透視能力でもあんのか、テメーは。けどあいつらをここまで来させないと使えねーぞ」

 

 

それを聞いた創真は口を開いて云う。

 

 

「木村君。君があいつらに何かムカつくこと言っておびき寄せたら?クラスで1番足が早いから捕まんないでしょ?」

 

 

「え………うーん………何を言えば良いんだ?」

 

 

「木村、こう言えば良いんだよ……」

 

 

何を言うか悩む木村にカルマが悪魔の囁きをした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

木村が男達に近づいて、言った内容がこちら。

 

 

「あっれえ~脳みそ君が見つからないなぁ~。こいつら全身筋肉だらけだから同化して見えなのかな~。……人様の形すんなよ、豚肉の分際で」

 

 

こんなことを言われたら────────

 

 

「おい」

 

 

「待てや、コラ」

 

 

──────────当然怒る。

 

 

しかし、相手は俊足の木村。なかなか追い付けない。そうこうしてる間に創真達がいる曲がり角まで誘導されてきた。

 

 

「よっしゃ、今だ吉田!」

 

 

「おう!」

 

 

2人はタックルを喰らわせ、倒れた男の上に乗り、首元にスタンガンを突きつけ、電気を放電させた。男達は揃って気絶した。

 

 

「タコに試そうと思ってたんだが……こんな形でお披露目とはな」

 

 

「いい武器です。ですが、寺坂君。彼等の胸ポケットを探ってみてくれませんか?」

 

 

「?お、おう」

 

 

そこから出てきたのは……本物の銃だった。

 

 

「氷室さん。それは千葉君と速水さんに持たせてください」

 

 

殺せんせーの指示に指名を受けた2人は驚く。

 

 

「それなら創真の方が良いんじゃ……」

 

 

「ん?2人の方が良いでしょ。丁度2つあるし、それに2人とも僕と射撃の熟練度はさほど変わらないし」

 

 

創真は2人が持つことに賛成のよう。

 

 

「ああ、それと1つ注意ですが、殺すのは許しません。2人なら殺さずとも戦いにうまく使える筈です」

 

 

しかし、2人は不安だった。エアガンですら失敗したのに、実弾入りの本物の銃を持って大丈夫なのか、と。

 

 

「それでは先を急ぎましょう。見たところ敵の殺し屋もせいぜい1人や2人。ですが、油断せずに行きましょう」

 

 

「おう!さっさと行ってぶち殺そうぜ!」

 

 

そう言う寺坂に少し違和感を感じたのは渚だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、最上階。黒幕に雇われた殺し屋の内の1人、ガストロは監視カメラを見つめていた。

 

 

「(どうもおかしい。もうすぐ期限なのに監視カメラに変化が何もない。そんでグリップやスモッグとも連絡が取れねぇ。どう考えてもおかしいだろ……)ボス、ちょっと見回り行ってくるっす」

 

 

「くくく……中学生が苦しむ姿は良いなぁ……100億手に入れたら……毎日ウイルス飲ませよっかな……」

 

 

ボスと呼ばれた男は何も聞いてない模様。それほどモニター上で苦しむ彼等の姿が気に入ってる模様だ。ガストロは何も言わず部屋を出て、8階のコンサートホールに着いた。

 

 

(やっぱうめぇのは銃だけだ…………いるな)

 

 

ガストロは気付いてしまったようだ。

 

 

「16………いや、17か。動ける全員で乗り込んだのか……」

 

 

ガストロは後ろの照明に向けて銃の引き金をひいた。乾いた銃声が響く。

 

 

「ここは完全防音のホール。お前らを撃ち殺すまで誰も助けに来ねぇ。殺されるのが嫌だったら降伏してボスに頭下げな!」

 

 

バァン!

 

 

再び銃声が響き、ガストロが撃った照明の、さらに隣の照明に命中した。

 

 

(ッ!銃を狙ったのに……!)

 

 

外した速水は悔しそうな表情をする。

 

 

「(今の銃声……ボスの手下のM60か!)良いねぇ……そう来なくちゃな!意外とうめぇ仕事じゃねーか!」

 

 

ガストロが付けたホールの照明が戦いの幕開けを宣言した……!!




THE NEXT story 1/23 PM 22:00


明日は路面凍結に注意です!


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第63話 チャンスの時間

もうすぐメインディッシュ………お楽しみに。






それではどうぞ!


ガストロが付けた照明により、逆光が発生。そのせいでステージが見づらくなった。

 

 

「やっぱ今日も………銃がうめぇ!」

 

 

そう言って放った弾丸は、速水の顔すれすれで通過した。

 

 

(嘘!?席との間を通して撃った!?)

 

 

速水は慌てて身を隠すが、隣にいる創真は動揺している様子がない。むしろ余裕そうに笑う。

 

 

「俺は軍人上がりだ。この程度の一対多数戦闘は何度もやってる。ジュニアごときに負けるかよ。さーて、お前らが奪った銃はあと1つあったはずだが……」

 

 

プロはやはり強い。皆がそう感じていると………

 

 

「速水さんは待機!千葉君、今撃たなかったのは賢明です!先生が指示するまで待つんです!」

 

 

「この声………あのタコだな。どこから喋って……」

 

 

ガストロは席の最前列の席に置いてあった殺せんせーと目があった。

 

 

「なにかぶりつきで見てやがんだ!」

 

 

ガストロは殺せんせーの球体に向かって連射するが、全て結晶の壁に阻まれた。

 

 

「中学生がプロに挑むんです。これくらいの視覚ハンデ、別に良いじゃないですか」

 

 

「ふん……どうやって指揮をとるつもりだ」

 

 

「では……木村君は5列左へ!寺坂君と吉田君もそれぞれ右左へダッシュ!」

 

 

(ちっ……シャッフルか。だが、その戦法では俺にも名前を明かしてるのも同然だぜ)

 

 

そんなことは、殺せんせーもとっくに知っている。だから、ある程度シャッフルした後─────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出席番号12番!右に1つで準備!そしてそのまま待機!」

 

 

「え?」

 

 

ガストロは思わず間抜けな声を出してしまった。お分かりの通り、殺せんせーは呼び方を名前から出席番号に変えたのだ。

 

 

「4番、5番はターゲットを律さんを通して撮影!そして千葉君に伝達!」

 

 

「ポニーテールは左前列に前進!バイク好きも左前に2列へ!発明家も右前列に前進!」

 

 

発明家──────呼ばれた本人は悪くない、と言った表情。

 

 

「ムーンキャッスルは右に4つ!」

 

 

「ダサいから英語で呼ぶんじゃねぇ!」

 

 

隼の呼び名がダサいのは否めない。残念。

 

 

「竹林君のメイド喫茶にはまりかけた人!撹乱のため、大きな音を立てて!」

 

 

「なんで知ってやがるんだ、テメー!」

 

 

そんな感じで、色んな呼び方で生徒を呼んでいき、シャッフルを進めていく殺せんせー。もうガストロはついていけない。

 

 

(くそ……もうどこにどいつがいるか分からねぇ。特効覚悟の近接戦に持ち込まれたら不利だ。千葉って奴を早く見つけねーと……)

 

 

ガストロも流石に焦りを感じ始めた頃、殺せんせーが千葉達に声を掛けた。

 

 

「お待たせしました千葉君。先生の合図の後、撃ってください。速水さんは状況に合わせてフォローが役目です」

 

 

2人の緊張感は一気に高まる。

 

 

「待て、殺せんせー。僕が言っておきたい事がある」

 

 

「創真君?……分かりました」

 

 

創真は2人に向かって喋りだした。

 

 

「さて……………君達はいま凄く緊張しているね?君らは殺せんせーの狙撃に失敗したから腕に自信を失ってる。でも君達は今、緊張する必要は元より無いんだよ。何故か?それは、君達には同じ訓練と失敗を経験している仲間がいるから。だから、例え君らが外しても、次は誰が撃つか分からない戦法を選べる。君達はE組で最高、最強のスナイパーコンビだ。それは僕が保証しよう。いつも通り殺れば、あんな奴なんて余裕だよ…………さぁ、あいつをぶっ倒しちゃえ!」

 

 

創真のアドバイスは、2人の緊張感を軽減し、迷いを無くさせた………少なくとも天井から見ていたホリー達にはそう見えた。しかし、ガストロもただこの長いアドバイスを聞いていた訳ではない。

 

 

(よし……この間に目星がついた。出席番号12番って奴が待機の指示からずっと動いてねぇ。しかも何かを企んでるのか呼吸が荒い。他も警戒するが、そいつのマークが最優先だ。絶対外さねぇ……!!)

 

 

「では……出席番号12番!立って狙撃!」

 

 

(やっぱな!ビンゴォ!)

 

 

先に撃ったのはガストロだ。撃った弾は頭に直撃した。

 

 

「………大外れです」

 

 

氷室の呟き通り、ガストロが撃ったのは…………

 

 

(人形!?しまった、罠か!)

 

 

その瞬間、千葉の銃の発砲音が響いた。

 

 

「……外しやがったな。これで2人目も」

 

 

言い終わる前に、ガストロの背中に強い衝撃が走った。ガストロは柱に叩きつけられる。

 

 

(吊り明照の金具を………くそが……!!)

 

 

千葉に銃を向けるが、それは速水の放った弾丸に阻まれた。力尽きたのか、ガストロは床に倒れ込む。当然、すぐに簀巻である。

 

 

「よくこんな危ない戦いをさせたな……あの先生は」

 

 

天井から見ていたホリーはぼそりと呟く。

 

 

「生徒の成長の為、高い壁にぶつからせ、さらに良い仲間を揃える……そう言う教育なのか」

 

 

とんでもない教育だと、デュオ も思ったが、千葉と速水がどこか良い表情だったのを見て、それも悪くないと心の中で呟いた。




THE NEXT story 1/24PM 22:00



創真のスピーチ長かったな…………原作通りだけど。


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第64話 黒幕の時間

やっとここまで来た……!


では、どうぞ!


創真side

 

 

突然ですが、皆さんは『キュッ』と言う音が聞こえたら何を連想しますか?ちなみに作者は、洗い立てのお皿を擦ると、キュッ、キュッ、と鳴る………という連想をした。いや、そこはどうでも良くて。僕らも今、キュッと聞こえたのだ。

 

 

その音は何か?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ……大分体が動くようになってきた。まだ力半分程度だが」

 

 

正解は、烏間先生が見張りの首をキュッ、と締めた音。

 

 

「力半分で俺らの倍強え……」

 

 

「あの人と氷室さんだけで潜入させた方が良かったんじゃ……」

 

 

木村君と片岡さんがそう言うのも分かる気がする。

 

 

「皆さん!最上階のパソコンに侵入出来ました!見る限り、残りは黒幕だけです」

 

 

律がパソコンのカメラの様子を皆のスマホに映した。

 

 

「あいつ……ウイルスに感染した皆を見てやがる……!」

 

 

隼がスマホを握り潰すんじゃないかと思う位、スマホを握りしめている。

 

 

「………この人、殺し屋の使いかた間違ってません?」

 

 

「氷室さんの言う通りです。本来先生を殺すために雇った殺し屋達ですが、先生がこんな形態になったのを見て、見張りと防衛に回したのでしょう。それでは本来の力は発揮できません」

 

 

なるほど。確かにあの軍人上がりの奴も狙った的は1㎝たりとも外してなかった。カルマの時もそう。日常で後ろから近寄られたら……ジ・エンドだ。

 

 

「烏間先生……どうされました?」

 

 

氷室さんが何処か心配そうな表情で、厳しい顔をしている烏間先生に尋ねる。

 

 

「いや……さぁ、行くぞ。交渉期限が迫ってきた今、何も動きがなければさすがに警戒を強めるだろう。個々に役割りを指示する。まずは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

======================

 

 

烏間先生が指示を出す中、渚は寺坂の首に手をピタッと当てた。さっきから寺坂の様子がおかしいのだ。

 

 

「すごい熱………寺坂君、まさかウイルス…んっ!?」

 

 

寺坂は渚の口を押さえた。

 

 

「黙ってろ。俺は体力だけはあるからよ。こんなの平気なんだよ」

 

 

「そんな……」

 

 

「烏間の先公達がガスを浴びちまったのは……俺が前に出すぎたからだ。それに前にもクラスの連中を殺し掛けた事もある。……こんなところで脱落して、足を引っ張るわけにはいかねーんだよ」

 

 

「寺坂君……」

 

 

渚は何も言えなかった。ホリー達もここで初めて寺坂がウイルスに感染していたのを知り、創真にテレパシーで伝えた。創真は自分の後にいる寺坂をチラッと見たが、結局何も言わずに再び前を向くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最上階もガードキーが必要なのだが、それはさっき倒した見張りが持っていた。エレベーターを使うと思って、あまり警戒していなかった証拠だ。烏間がガードキーを使い、ロックを解除した。そして静かにドアを開けた。

 

 

(部屋には遮蔽物が多い。気配を消せば近くまで接近できる。やり方は体育で教えたはずだ)

 

 

烏間のアイコンタクトに、皆は頷く。皆は手と足を同時に出すようにしてゆっくり進み始めた。

 

 

(おお……ナンバ!手と足を一緒に前に出して音を消す歩行法!なるほど。それで最近の暗殺は物音が減っていたのですね。一刻を焦る状況でも、悲観せず、落ち着いて行動する。私の自慢の生徒です。だから、目の前の敵に屈してはなりませんよ)

 

 

殺せんせーが感心しているなか、皆はどんどん部屋の奥に進む。そして、遂にボスの姿がはっきりと見えてきた。

 

 

(男の傍に置いてあるのが起爆のリモコン。そして、あの配線付きのスーツケースの中に治療薬があるのですね……作戦通り、まずは可能な限り近づきますが、もし遠い距離で気づかれたら烏間先生が腕を撃つ予定……)

 

 

流石の氷室も特殊警棒を握る手に力が入る。

 

 

(さーて……絶望の表情を見せて貰おう!)

 

 

創真もいい加減ご立腹の中、皆は襲い掛かろうとする………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かゆい」

 

 

思い出したくもないこの声を全員、聞いたことがあった。

 

 

「思い出すとかゆくなる。そのせいか……傷が空気に触れて感覚が鋭敏になってな……」

 

 

その男は何かを創真達に向かって投げた。その何かは、男の傍に置いてあるリモコンと同形のだった。

 

 

「……なるほど。あんたはマッハ20のタコを殺すために準備していた。だから……腕を撃たれても倒れ込んでボタンを押すくらいの数のリモコンを作っていた……だろ?」

 

 

「ククク……流石は結城 創真だ。正解だ」

 

 

「あんたに言われても嬉しくないね」

 

 

創真に続いて、烏間も口を開く。

 

 

「1ヶ月ほど前、俺の同僚が暗殺に使うはずだった費用をごっそり抜き取り、姿を消した。一体どういうつもりだ………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鷹岡ァァ!!」

 

 

黒幕………いや、鷹岡はゆっくりと振り向き、口を開いた。

 

 

「悪い子達だ。恩師に会うのに裏口から来るとは………仕方ない。夏休みの補修をしてやろう……まずはヘリポートに行こうか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

鷹岡の思うがまま、僕らはヘリポートへと足を運んだ。

 

 

「遂に頭が完全にいかれましたか?こんなことを躊躇なく実行するなど……」

 

 

氷室さんは言葉がこれ以上出てこなかった。

 

 

「俺は至極まともだぜ?素直に従ってれば、地球は救われたのにな」

 

 

鷹岡は自分の計画を語り始めた。

 

 

茅野さんを捕らえ、拘束した後、殺せんせーを抱えて部屋の対先生用BB弾入りのバスタブに入らせ、その上にセメントを入れて生き埋めにする。殺せんせーが生き残るためには爆発を起こさなければならないが、そうすれば茅野さんはただでは済まない。

 

 

「生徒思いの殺せんせーは……生徒を巻き込んでまで生き残ろうと思わないだろ?素直に溶かされてくれると思ってな」

 

 

聞いているだけで気分の悪くなる……悪魔のような計画だった。

 

 

「許されると思いますか………?こんな事が」

 

 

殺せんせーの声には怒りが含まれていた。

 

 

「これでも人道的さ。お前らのせいで……上からの評価も下り、同僚共からは蔑まれ!屈辱の目線と騙し討ちで突きつけられたナイフが頭の中にちらつく度に、夜も眠れなくてよォ!特に潮田渚!全ての元凶であるお前は絶対に許さねぇ!」

 

 

100%逆恨みだ。背の低い生徒を要求した訳は……渚君を狙ってたのか。

 

 

「つまり渚君はあんたの恨みを晴らすためだけに呼ばれたんだ?その体格差で勝って嬉しいの?俺だったらもう少し楽しませてやるけど?」

 

 

カルマ君も相変わらず挑発する。寺坂も喋るのも辛いはずなのに口を開いた。

 

 

「言っとくけどな……テメーがあの時勝とうが負けようが、俺らテメェの事が大嫌いだからよ」

 

 

「ジャリ共の意見なんて聞いてねぇ!俺の指先1つでお仲間の命が消えるのを忘れんな!チビ、お前だけでヘリポートまで上ってこい!」

 

 

鷹岡はスーツケースを持って先にヘリポートに掛けてある階段を上っていく。

 

 

「渚、ダメ。行ったら……」

 

 

「行きたくないけど……皆の薬を渡してもらわないと。なんとか話を合わせてくるよ」

 

 

茅野さんが止めるが、渚君は止まらなかった。殺せんせーを預け、渚君もヘリポートに上っていった。渚君がヘリポートに上ると、鷹岡は掛けてある階段を外し、落とした。

 

 

「これで誰にも邪魔されねぇ。置いてあるナイフの意味が分かるだろ?この前のリターンマッチだ」

 

 

「待ってください、鷹岡先生。戦いに来た訳じゃ……」

 

 

「まぁそうだな。次は俺に一瞬で負けるだろう」

 

 

癪だが、それは否定できない。

 

 

「だが、まずお前がやるべきことはな……土下座しろ。謝罪だ。不意討ちをしたことに加え、ガキが大人に向かって出ていけ、とか生意気な口き聞いたことをな」

 

 

本当に性格が腐っている。しかし渚君は正座し────

 

 

「僕は……」

 

 

「それが謝罪か!?頭擦り付けて謝んだよ!!」

 

 

渚君は頭擦り付けて喋りだした。

 

 

「僕は実力がないから卑怯な手段を使った挙げ句、出ていけとか生意気な口を聞いてすみませんでした。本当に……ごめんなさい」

 

 

「……………よーし。ちゃんと言えたご褒美に良いことを教えてやろう。あのウイルスに感染した奴が最後どうなるのか。まるでブドウのようだぜ。全身腫れ物だらけ。想像もつかないだろ?だから……見せてやるよ」

 

 

「!!」

 

 

鷹岡はケースを上に投げ、スイッチを取り出した。

 

 

「やめろおおお!」

 

 

烏間の叫びも虚しく、ケースは爆破され、無惨な姿と化した。中の薬は言うまでもなく全て破壊された。

 

 

「あ………あぁ………………」

 

 

今の情けなく、絶望に満ちた声が自分の物とは思えなかった。

 

 

「ハハハハハ!その絶望の顔が見たかったんだよ!最初から薬を渡す気なんてあるわけねぇだろ!友達の顔がブドウのような顔になってくのを夏休みの観察にしたらどうだ!」

 

 

「………………黙れよ」

 

 

“ゾクッ“

 

 

殺気が入り交じった声。その声に烏間達は背筋が凍るような感覚に陥った。その声の主は……創真、自分だった。

 

 

「………あんたは絶対許さない!殺す………………殺してやるよ!」

 

 

「くくく……やってみな。お前がヘリポートに来るにはそこの手すりからジャンプしなくちゃならねぇ。ジャンプした瞬間……」

 

 

鷹岡は胸元から銃を取り出した。

 

 

「お前は撃ち殺してやるよ。空中じゃ避けようがないだろ?」

 

 

「やれるもんならやってみろよ!!ガキをなめんなよ!!」

 

 

「創真様、一旦落ち着いて!」

 

 

氷室と烏間が2人がかりで引き留める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

 

 

カチャン

 

 

突然そんな音が皆の耳に入ってきた。鷹岡が音がした方向を振り向くと、渚がナイフを持っていた。そして………

 

 

「ころ………してやる……!!」

 

 

「くくく……そう来るのを楽しみにしていたよ。渚君……」




THE NEXT story 1/25 PM 22:00


『Awakening』


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第65話 覚醒の時間

うーん。長すぎました。


展開も賛否両論ありますかね……。


タイトル?思い付きです(笑)


それと、人物紹介の時間2を一度見てから見るのをおすすめします。ちょびっと更新しました。


取り敢えず……楽しんで下さい!


「よくも皆を……!殺す!」

 

 

「良い意気だ!さぁ、来なさい渚君!」

 

 

現在渚も創真もガチ切れ状態だ。

 

 

「隼君!創真君の頭を冷やして下さい!寺坂君は渚君を!」

 

 

殺せんせーに指名された隼はどうすれば良直ぐにはか分からなかった。声をかけても聞きそうになかった。

 

 

だから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラァ!」

 

 

ゴッ!

 

 

「「「え!?」」」

 

 

創真の頬に隼の拳が飛んできた。そこから遅れて渚の頭にもスタンガンが投げつけられた。

 

 

「おい、創真!らしくねぇぞ。そんな状態で行ったとしても、返り討ちにあって終わりだ。少しは頭を冷やせ!」

 

 

「……………」

 

 

隼の特に特筆する所がない説教を創真は黙って聞いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バキッ!

 

 

「「「ええ!?」」」

 

 

今度は創真の蹴りが隼の腹に飛んできた。

 

 

「…………言われなくても分かってるよ。今のは殴った分の仕返しだ」

 

 

元の調子に戻った創真を見て、隼は腹を押さえながらにやっと笑った。そして今度は寺坂の番である。

 

 

「キレてんじゃねーぞ、渚!薬が爆破されたとき俺を哀れむような目で見やがったな。他人の気遣いしてんじゃねー!ウイルスなんて寝てりゃ治んだよ!」

 

 

「寺坂、お前……」

 

 

皆も寺坂がウイルスに感染しているのに気付いた。

 

 

「そんなくずでも殺せば殺人罪だ!テメーは100億のチャンスを逃すのか?」

 

 

寺坂が渚に問いかける。

 

 

「その通りです。彼に薬の知識はない。下にいた毒使いに聞きましょう。こんな男、気絶で充分です」

 

 

殺せんせーも寺坂に同意し、渚に声を掛ける。

 

 

「余計な水差すなよ。こいつの本気の殺意を砕いて……俺の復讐が完了する」

 

 

「渚君。寺坂君のスタンガンを拾いなさい。この男の命と先生の命。寺坂君の言葉とこの男の言葉。どちらが価値があるか……君なら分かりますよね?」

 

 

その時、寺坂も疲れたのか、地面に倒れこんだ。

 

 

「寺坂!」

 

 

「……見るならあっちだ。渚、死なない範囲でぶち殺せ……」

 

 

渚の目が落ち着きを完全に取り戻し、上着を脱ぎ捨て、スタンガンを腰に提げた。

 

 

「スタンガンは友達の義理ってわけか。ナイフを使う気満々で安心したぜ」

 

 

鷹岡が渚を煽るが、渚はもう冷静だった。頭はもう、標的をどう殺るかを考えていた。

 

 

「烏間先生、もし渚君が危なくなったら……鷹岡先生を撃ってください」

 

 

烏間に殺せんせーが小声で囁く。

 

 

(先を見通せるこいつがここまで言うという事は……いや、俺から見ても……)

 

 

渚はスッと動き出す。暗殺は戦闘に入る前に致命傷を与えるのが基本。

 

 

しかし、今の鷹岡は───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴッ!

 

 

鷹岡の蹴りが、渚の腹に命中した。

 

 

「あぐッ!……ゲホゲホ」

 

 

「どうした?殺すんじゃなかったのか?」

 

 

今の鷹岡は……完全に戦闘モード。渚は一切のダメージをダメージを与えられず、鷹岡に一方的に殴られ、蹴られ……その繰り返しだ。

 

 

「やはり……鷹岡が有利か。体格や経験は奴が上か」

 

 

創真は冷静に分析する。

 

 

「さーて、俺も使うか…」

 

 

鷹岡が持ち出したのは……渚と同じナイフ。

 

 

「(ナイフと一緒に……あの笑顔が悪夢と一緒に出てくる。もう同じ過ちは繰り返さねぇ!)手足切り落として標本にしてやる。ずっと愛でてやる……!!」

 

 

「分が悪いね。僕が行くわ」

 

 

見るに耐えなかったのだろう。創真が飛び出そうとする。

 

 

「待て創真………」

 

 

「まだほっとけって言うの?」

 

 

寺坂はカルマに対してそうだ、と肯定する。

 

 

「あいつ……まだ隠し玉を持ってるぜ。……お前らはあの時いなかったがな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(ロブロさんから教わった必殺技の発動条件は…………1つ、武器を2本持ってること。2つ、敵が手練であること。3つ、相手が殺される恐怖を知っていること。………全部揃ってる。鷹岡先生……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実験台になってください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渚は笑った。これは前と……いや、少し違う渚はかつてロブロに言われた事を思い出す。

 

 

『必殺技と言っても必ず殺す技ではない。戦闘を暗殺へ戻す為の技だ。練習し、極めておけば……近い内に使える日が来るかもな』

 

 

まさに、この日のためにこの技がある……渚にはそう思えた。

 

 

『タイミングはナイフの間合いの少し外!近づくほど、ナイフに意識が集まる。その意識ごと……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(ナイフを捨てる!)」

 

 

鷹岡の目が落ちるナイフを追った。

 

 

その瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パァン!

 

 

(!!相撲で言う……猫だまし!)

 

 

見せつけられた創真らも驚いたが、1番驚いたのは鷹岡。

 

 

「なにが……おこっ……」

 

 

鷹岡がバランスを崩したのを見て、渚は腰に提げたスタンガンを素早く抜き、脇に電流を流した。鷹岡は膝から崩れ落ちる。

 

 

「渚、とどめをさせ。首に流せば気絶するだろうよ……」

 

 

寺坂の言葉通り、渚はスタンガンを首に当てる。

 

 

(殴られる痛みや……抱いてはいけない殺意があると教わった。そこから引き戻してくれる友達の大切さも。酷いことをした人だけど……授業への感謝を伝えないきゃ……そのためには……どういう顔をするべきか……?いや、決まってる)

 

 

渚の思考を読んだのか、鷹岡が震え始める。その顔だけでは終わらせるな………そう言いたそうだ鷹岡へ感謝を伝えるために……渚は『その顔』=笑顔を作った。

 

 

「ありがとうございました、鷹岡先生」

 

 

電流が流れ、鷹岡は倒れる。

 

 

「「「よっしゃあ!ボス撃破!」」」

 

 

皆が歓喜の声をあげた。

 

 

「たいした奴じゃねーか」

 

 

キバット(まだ見えぬ)は渚へ興味を示したようだった。

 

 

「ホリー、デュオ、キバット。これで任務は終了だよ……はぁー、疲れた…………帰って寝たいね」

 

 

「そうだね~!ねーデュオ。ホテルに戻ったら」

 

 

「!!潮田 渚!」

 

 

突然、何を血迷ったかデュオが透明化を解除し、渚の名前を叫ぶ。

 

 

「「「???」」」

 

 

突然現れた謎の黒い男に渚も皆も戸惑っている。

 

 

「あ!あの人……テラスラウンジにいた……」

 

 

「後ろだ!」

 

 

茅野が喋るのをを遮り、デュオが叫ぶ。歓喜に湧いていた僕含め皆も、そして渚もヘリポートの方を見ると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガハ!」

 

 

「残念ダッタナ……クソガキィ……!」

 

 

復活した鷹岡の膝蹴りが渚の腹に食い込み、渚は悶絶する。鷹岡はナイフを拾い、倒れている渚へと近づく。

 

 

「烏間先生!渚君が危ない!」

 

 

「分かっている!」

 

 

殺せんせーに言われる前に、烏間は銃の狙いを鷹岡に定め、引き金を引こうとしたときだった。

 

 

「いや、ストップです烏間先生」

 

 

それを制したのは創真だった。

 

 

「今のあなたの状態で撃てば、あいつを殺しかねない。確かにあいつはクソ野郎ですが、流石に殺す必要はない」

 

 

「だが…………………」

 

 

「僕が………………いえ、僕らが無力化します。デュオ、『憑依』使うよ」

 

 

その宣言に驚いたのはホリー達だった。

 

 

「え、ちょ創真?ほんとに良いの?」

 

 

「他の皆じゃ流石に倒すのは無理だ。この状況で、奴を無力化するには、これ位しかないだろ?いや、ホリー達が無力化するのでも良いんだけど…………散々クラスの皆を苦しめてくれたんだ。奴は僕自身が倒したいんでね」

 

 

「なるほど…………………創真がそうしたいなら、それで良いよ!」

 

 

「俺も構わん」

 

 

「なら、行こうか!」

 

 

創真は手すりを踏み台にして、ヘリポートの方へジャンプする。

 

 

「邪魔をスルなァ!!」

 

 

鷹岡は創真に向けて銃を速射する。弾が創真の胸に当たりそうになったその時、横から何かが割り込んできた。

 

 

「ヘッヘッへ。じゃんねんでした!」

 

 

「「「こ、コウモリ!?しかも喋ったァ!?」」」

 

 

コウモリが弾を口で器用にキャッチしたに加え、喋った事に皆は驚きを隠せなかった。その隙に、ホリーとデュオもヘリポートへと着地した。

 

 

「なンだ貴様ら……!!」

 

 

「まぁ…………通りすがりの元死神だ。覚えておけ」

 

 

風で黒コートが揺れ、月の光に照らされ、デュオは皆の目に刻々と焼き付いた。

 

 

「何気にデュオとやるのは初めてだなぁ……………じゃ、行くよ」

 

 

「あぁ……憑依!」

 

 

デュオは創真の身体の中へ入り込んだ。。他の皆は驚いた表情を見せる。人の中に人が入ったように見えたのだから、当然だろう。創真がくるっと一回転すると、デュオが纏っていたコートを着用していた。鷹岡は間髪入れずに再度引き金を引く。しかし、創真に当たる筈だった弾丸は、全て切り刻まれてた。創真の背中からは布型の黒獣が姿を現していた。

 

 

「おー羅生門そっくり。意外と扱いやすいな」

 

 

(………………別にパクってないぞ)

 

 

「分かってるって」

 

 

そう返事して、創真は恐ろしい程の瞬発力で距離を詰める。流石は軍人と言うべきか、鷹岡は恐るべき速さで足で蹴りあげるが、創真はそれを軽々と受け止めた。

 

 

「それで全力?」

 

 

「ダマレ……………!!」

 

 

「いや、その答えだと質問に答えてないから」

 

 

冷たく言い放ち、創真は鷹岡の足を掴んで、余裕そうに持ち上げる。

 

 

「はい、ドーン!」

 

 

そして、ボロ雑巾のように叩き付けた。

 

 

「クソ…………………が!」

 

 

鷹岡は手に持っていた銃を創真に向けて撃とうとするが、それよりも早く黒獣が真っ二つに切り裂いた。創真は鷹岡の胸に、足を乗せる。

 

 

「さーて、勝負ありだな?」

 

 

「ふざ……………けるナ!俺がこんなガキに…………」

 

 

(……………ったく、往生際の悪い奴だ…………創真、ちょっと身体を借りるぞ)

 

 

デュオはため息をつき、創真の身体の主導権を借りて呟く。

 

 

「『重力操作』」

 

 

そのワードを呟いた瞬間、鷹岡の身体が赤く光出した。そして、苦しみ出す。

 

 

「ガァァァァァァァァァ!!ナニを、した……………?」

 

 

「お前の身体に掛かる重力を重く操作した。今、お前の身体に相撲取りが2人位の重さを味わっている筈だ」

 

 

(おー。中也の能力も使えるのか)

 

 

「……………中也?」

 

 

(フフッ、調べれば分かるよ)

 

 

「た、頼む!やめてくレ!!」

 

 

それを聞いたデュオは主導権を創真にパスした。

 

 

「え、どうしよっかなー………………あ、そうだ。じゃあ…………………」

 

 

創真は遠くに落ちていたナイフを黒獣を使って拾い上げ──────────

 

 

「じゃあ、死ね」

 

 

誰もが畏怖を覚えるような声で呟いた。

 

 

「ダメです創真君!」

 

 

「やめろ創真!!」

 

 

殺せんせーや隼が制止するが、創真の手は止まらない。ナイフを鷹岡の心臓に振り下ろし──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………なんてね」

 

 

─────────ナイフはコンクリートの地面に振り下ろされ、砕け散った。

 

 

「流石に僕はそこまで鬼じゃないし、あんたを殺したって言うレッテルをこれからずっと貼っていくのはごめんだね」

 

 

創真は指をパチンと鳴らす。すると、鷹岡に掛かっていた見えない重荷が消え去る。

 

 

「だが、その代わりに悪夢を見てもらおうか」

 

 

すると、脇に控えていたホリーが鷹岡の目の前に立ち、人差し指を額に押し付けた。

 

 

「『ナイトメア・ゾーン』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

 

 

「………は!ここは何処だ!?」

 

 

鷹岡が気が付くと、そこは何もない……『暗闇の空間』だった。

 

 

すると……コツン……コツン………と誰かの靴の音がしてきた。

 

 

「誰だ!?結城 創真か!?」

 

 

「違いますよ……鷹岡先生」

 

 

「!!」

 

 

姿を見せたのは………潮田渚。手にはナイフが。

 

 

「や、やめろォ!来るなァァァ!」

 

 

鷹岡は逃げようとするが、体が動かない。まるで金縛りにあったように。そうこうしてる間に……渚は鷹岡の目の前に。

 

 

「鷹岡先生………………死んでください」

 

 

渚はナイフを突きだした………あの『笑顔』で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グガァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

 

鷹岡は一際大きな悲鳴を上げた後、泡を吹いて気絶した。

 

 

「しばらく眠れない夜を過ごしたまえ」

 

 

そう吐き捨てる創真。すると、ホリーが不満そうな口調で話しかけてくる。

 

 

「ちょっとちょっと!僕、殆ど何もしてないじゃん!」

 

 

「え、そう?」

 

 

「ちょっと魔法を掛けただけじゃん!次はもっと活躍させてよ!」

 

 

「はいはい、分かった分かった」

 

 

不満をたらたら口にしていくホリーを、創真が適当に宥めるなか、烏間は彼等に声を掛ける。

 

 

「創真君!それに君達も大丈夫か?」

 

 

「あ、大丈夫ですよ」

 

 

創真らはジャンプして皆の所に戻った。ホリーは抱えていた渚を下ろしてあげた。

 

 

「あ、ありがとうございます……」

 

 

戸惑いながらも渚はお礼を言った。

 

 

「創真……色々説明してもらいたい事があるんだけど……」

 

 

磯貝が代表して聞く。

 

 

「でしょうね…………だが、どうもエネルギー切れみたい」

 

 

ドサ

 

 

「「「創真(君)!」」」




THE NEXT story 1/26PM 22:00


それと豆知識。市販のスタンガンには人を気絶させるほどの威力はありません。


筋肉が硬直し、体に激痛が走るだけで、意識はあります。


だから……今回、鷹岡が復活したのも……まぁ、OK?


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第66話 バレる時間

色々バレます。


出来ばえどうですかね?


それでは、どうぞ!


創真side

 

 

目が覚めると……………見えたのはホテルの天井。あーホテルか。お腹すいたな………確かデュオが憑依して、鷹岡をぶっ潰したんだっけ………………………………………ん?待てよ……………ホテル?確かあの後僕は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆は!?」

 

 

「お目覚めになりましたか、創真様。今は夕方です」

 

 

氷室さんが海鮮丼を食べながら近づいてきた。てか、夕方?寝過ぎてしまったな。

 

 

「氷室さん、皆は!?それと僕にも海鮮丼はあったりしません?腹減ったんで…………」

 

 

「ありますよ。創真様が寝てる間に、九州にいる友達と漁に行って、マシンデンキウナギを使って、僅か1時間で大漁という結果を残しました。この海鮮丼がその成果です」

 

 

なんだ、そのマシンデンキウナギの地味な活躍。渡された海鮮丼を頬張りながら、氷室さんに質問をぶつける。

 

 

「それと皆は?あの後どうなりました!?」

 

 

「落ち着いてください、創真様。あの後………」

 

 

氷室さんは事の結末を語り始めた。

 

 

鷹岡を拘束した後、グリップ達が現れ、再び戦闘か…………と思われたが、奴等は戦う気はなく、ウイルスも毒使いがただの食中毒菌を改造したものだったそうだ。皆の命に別状はないらしい。中学生の大量殺人の実行犯になるか、命令違反がバレて評価が下がるか………どっちが今後の仕事のリスクが低いか、冷静に天秤に掛けたそう。彼等は事情聴衆のため、鷹岡と共に去り、で、睡眠状態になった僕を抱えて、ヘリでホテルに戻ってきたそうで。

 

 

「なるほどねぇ……あの殺し屋達もちゃんと仕事への考えがあるんだね……」

 

 

「そうですね……殺し屋達だけではなく、働いている社会人達もちゃんと仕事への考えを持っていると思われますよ」

 

 

そこへホリー達が来た。

 

 

「やっと起きたか。この島に来てからお前働きまくりだったからな。ちゃんと休息はとらないとダメたぜ」

 

 

「はいはい分かってるよ、キバット」

 

 

「ところで……どうする?俺らの事を話すか?」

 

 

「……もう隠せないな……皆は?」

 

 

「外だ」

 

 

ふーむ。果たしてそれを告げ、皆は………どんな反応をするか。

 

 

ドーン!!

 

 

唐突に爆発音が聞こえた。

 

 

「………何?この音」

 

 

「殺せんせーを対先生用BB弾と閉じ込め、爆発する算段なんだが……」

 

 

「どーせ生きてるだろ。さーて色々説明するかね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

================

 

 

殺せんせーを閉じ込めていたコンクリートの塊が爆発した。

 

 

まぁ……結果は薄々分かっていた。

 

 

「先生のふがいなさから苦労させてしまいましたね。ですが、皆さんは本当によく頑張りましたね」

 

 

やはり殺せんせーには触手が似合うものだ。改めて皆はそう思った。

 

 

「さて、旅行の続きを………と言いたいところですが、その前に話したいことがあるんではないですか?創真君」

 

 

「殺せんせー。創真君はまだ来てな……」

 

 

その時、上から音もなく白い羽がひらりひらりと落ちてきた。そして誰かが落ちてきたかと思うと、ナイフによる斬撃を殺せんせーに仕掛けたが、避けられた。

 

 

「おはようございます、殺せんせー」

 

 

「ええ、おはようございます」

 

 

そこには白き翼を纏った創真が居た。

 

 

「えー………磯貝君と約束したので、全て話しますかね。君達の疑問を全て解消すると思う。んじゃ、まずはあいつらを紹介するか……」

 

 

すると、創真の背中から生えていた翼が消え、代わりに白いマフラーを巻いている全身白コーデの男が創真の中から現れた。

 

 

「僕の名はホリー。創真の相棒さ。信じてもらえるか分からないけど、これでも聖霊やっててね」

 

 

「「「聖霊ィ!?」」」

 

 

そしてもう一人、首には鎖型のネックレスを付け、全身黒コーデの男が現れた。

 

 

「俺の名はデュオ……まぁ、一応元死神だ」

 

 

「「「死神ィ!?」」」

 

 

さらに傍に生えている木に止まっていたコウモリが皆の前へと飛んできた。

 

 

「俺様の名はキバット!よろしくな~」

 

 

「「「コウモリが喋った!?」」」

 

 

自己紹介を終え、ホリーが一歩前に出る。

 

 

「それじゃーね。僕、説明役になってるから説明するね。言っておくけど、これから言うことはガチの嘘なしだから…………まぁ、信じがたいとは思うけど。さて、僕らの世界ではね………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………と言うわけで、創真の相棒としていつも隣にいるって事。これで説明はおしまい!」

 

 

「要するに……創真はお前らの世界で抽選で選らばれて……それで行動を共にしてる……のか?」

 

 

「そゆこと!君なかなか理解早いね……えーっと……旅行前日に複数人とデートしてた人」

 

 

「な!?何故それを……!?」

 

 

女子から冷たい目線を浴びるデートしてた人こと、前原君。

 

 

「でも……なんでそれを秘密にしてたの?」

 

 

倉橋が創真に聞く。

 

 

「そりゃあ当然、言ったら何か……もう今までのように接してくれなかったり………嫌われるかなと思って……それがちょいと恐かったから……かな」

 

 

創真の理由に皆は……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「アハハハハ!」」」

 

 

笑いだした。

 

 

「え!?人が真剣に悩んでたと言うのに、何故に皆は笑うの!?」

 

 

「いやだって……お前、いつも悩みとかなさそうに見えてたけど……意外とそんなちっぽけなことで真剣に悩むんだなーって思うと可笑しくて……」

 

 

「いや、前原君。人なら悩みの1つ位はあるから……それにちっぽけっか……?」

 

 

今度は隼が喋りだした。

 

 

「いや~お前は前の学校では周りからの目なんてどうでもいい見たいに言ってたけどさぁ……クラスの皆から嫌われるんじゃないかって……今のお前は皆からの周りの目をめっちゃビクビクしながら気にしてたんだなー!傑作だわ~!」

 

 

「んだと……てか、ビクビクはしてないし!」

 

 

磯貝が前に出て、喋り始めた。

 

 

「創真、お前がどんな力を持っていようと、そんな事でお前の事を嫌いになるわけないだろ?それに創真はこのクラスに必要不可欠な存在なんだから」

 

 

「磯貝君……」

 

 

「そうだよ。そんな事で嫌いになるわけねーし、追い出したりしねーよ。つーか、超能力とか漫画だけの世界だと思ってたから、それを使えるってなるとちよっと羨ましいぜ」

 

 

「前原……」

 

 

2人の言葉に皆は頷く。

 

 

「創真」

 

 

「何、デュオ?」

 

 

「どうやら………最初から話しても問題なかったようだな。彼等は受け入れてくれるそうだ。お前をな」

 

 

「みたいだね……………あーあ、最初から話しとけば良かった」

 

 

創真しては珍しいミスだった。

 

 

「それにさ……他に隠してることとかあるんじゃないの~?」

 

 

中村が勘づいてるのか、ゲスい顔をしながら創真に尋ねる。

 

 

「あー……陽菜乃と恋人関係とか?」

 

 

「そうそう、陽菜乃ちゃんと恋人関係とか…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ってええ!?」」」

 

 

「なんだよ。意外にオーバーリアクションだな」

 

 

(((いや、これは当然のリアクションだよ!)))

 

 

心の中で全員がツッコミをいれる。

 

 

「ちょ、そうなの陽菜乃ちゃん?」

 

 

中村が慌てたかのような様子で聞く。

 

 

「うん!そうだよ?あ、そう言えば言ってなかったね~」

 

 

「くそぉ!創真、やっぱ出てけ!」

 

 

前原の態度がさっきまでとは全然態度が違う。

 

 

「「「あんたは黙ってろ!!」」」

 

 

女子からの威圧に前原はしゅんと萎れた。

 

 

「と、とにかく全て話せて良かったですねぇ、創真君」

 

 

「もやもやが消えてスッキリしました」

 

 

創真の言葉に殺せんせーはにやっと笑った。

 

 

「それでは、旅行の続きを楽しみましょう!折角ですから、ホリー君とデュオ君も一緒に遊ぶのです!」

 

 

「よっしゃあ!遊びまくるぜ!」

 

 

「しょうがない。付き合ってやるとしよう」

 

 

「おい、俺様もだぜ!」

 

 

to be continue………




切りが悪いかもしれませんが、今日はここまで!



THE NEXT story 1/27PM 22:00


投稿できない可能性もなくはないので、ご了承下さい。


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第67話 肝試しの時間

夏休みの島編はあと2話の予定です!


それでは、どうぞ!


「ホリー君!皆で海行かない?」

 

 

「良いね!レッツゴー!」

 

 

女子達は水着を着ていたので、海に向かって行った。

 

 

「あいつは早いな………溶け込むのが」

 

 

デュオが創真と砂で城を作りながら呟いた。

 

 

「いや~どうなるかと思ったけど……意外と溶け込めそうだね」

 

 

「そうだな。これで透明化を常時しなくてすむ。魔力の節約になる」

 

 

「………そこ?」

 

 

そこへ倉橋が来た。

 

 

「創真君!こっちに来て遊ぼうよ!デュオ君も!」

 

 

「良いよ。じゃ、行きますか」

 

 

創真とデュオもホリー達の元へ。

 

 

「3人に水掛けちゃえ!それ!」

 

 

着いた途端に、矢田達が手で水をすくってホリー達にかける。水滴が創真らに掛かろうとした時、ホリーは全ての水を目にも止まらぬ速さで弾いた。

 

 

「ならこっちも……」

 

 

ホリーは水鉄砲を取り出し、お返しとばかりに水をかける。

 

 

「うわ!すごい……早くて全然見えなかった……」

 

 

「掛けれたら、ジュース奢っても良いよ~。創真の財布で」

 

 

「ホリー………わざと当たったりするなよ?」

 

 

創真が事前に釘を刺しておく。それを聞いたホリーは何かつまらなさそうな表情を一瞬浮かべたのに気づいたのは創真だけだった。

 

 

「よーし!なら皆で掛けちゃうよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな女子とのじゃれあいを見つめる男が1人。

 

 

名は岡島。

 

 

「くぅー!これこそ夏だ!俺も行くぞ!」

 

 

着ていた服を脱ぎ、女子に近づく。

 

 

「おーい!俺も混ぜ……」

 

 

最後まで言い切る前に、いつのまに砂浜に作ってあった落とし穴へと落ちていった。

 

 

(悪いな岡島君。君は邪魔なのだよ)

 

 

ホリーのダークな心の声が聞こえたのは、デュオのみだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

「さて、日も暮れた所ですし、先生が考えた企画、暗殺肝試しを開催します!」

 

 

殺せんせーが皆を集めると、そう宣言した。

 

 

「お~!もしかして殺せんせーがお化け役か?」

 

 

「勘が鋭いですねぇ、キバット君。勿論お化けは殺しても構いませんよ~。この洞窟を男女のペアで抜けてもらいます」

 

 

ふむ………意外と面白そうではないか。

 

 

「えー。でも怖いのやだな……」

 

 

陽菜乃はお化け屋敷とかは苦手なのかな?

 

 

「そんなことないと思うよ。殺せんせーのコスプレお化けはどうせ低予算だから大したもの来ないでしょ」

 

 

「言ってくれますねぇ、創真君。びびって腰を抜かさないで下さいね。ヌルフフフ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

 

 

ベタと言えばベタなのだが、抽選により、創真は倉橋とペアとなった。

 

 

そして洞窟に1番最初に入っていく。

 

 

「やっぱり怖いね……」

 

 

「そう?」

 

 

「創真君は怖くないの?」

 

 

「別に~。小一の時に行ったお化け屋敷では……展開がベタで悲鳴上げなかったよ」

 

 

「しょ、小学一年生で……?やっぱ凄いね、創真君は」

 

 

その時、三線の音が聞こえてきた。

 

 

「ここは血塗られた悲劇の洞窟。戦いに敗れた王族達が悲劇の死を遂げた場所です……」

 

 

突然の殺お化け襲来に、倉橋は創真の腕に抱きつく。

 

 

(ふん………ここの島の歴史は調べてある。全部作り話だろ?)

 

 

心の声が伝わったのか……殺せんせーは後ろに回り込む。

 

 

「嘘だと思っていると……霊に取り憑かれますよ?」

 

 

既に僕は聖霊と元死神に取り憑かれてますんで……なんとも思わない。殺お化けは消えていった。

 

 

「こ、怖かった~。早く行こ!」

 

 

「あ、うん……………にしても、次のペアへの同じ語りが聞こえてくるのがリアルだな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ご存じだと思うが

 

 

(君たちは本当に強くなった。それを痛感しました。が、君達には足りないものがある。それは……恋愛!足りないものを埋めるため、先生が恐怖で背中を押してあげます!これぞ担任教師の粋な計らい!!)

 

 

タコの企みは果たしてうまくいくのか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

 

変わって、こちらは2番目に洞窟へ入った隼と神崎のペア。

 

 

「渚君が……怖い?」

 

 

「そ。あいつは鷹岡と言う強敵を倒した。でも、いつものあいつと話してると怖いとか強そうなんて感じない。なんつーか……警戒できない。怖くないのが1番怖い……俺はそう思ったよ」

 

 

「…………」

 

 

「それでも俺が殺す。タコを殺すのは俺さ。渚や特に創真よりも……俺が早くな」

 

 

「うん。創真君に勝てると良いね。応援してるよ」

 

 

「あ、ありがと……(なんかキュンとしちまった……)」

 

 

隼達が洞窟をどんどん進んでいき、ゴールまであと少しと言ったところで………

 

 

「ギャー!ガチの幽霊出たァァ!」

 

 

「「!?」」

 

 

後ろから突然の殺せんせーの悲鳴。

 

 

「な、なんだ……?」

 

 

すると、殺せんせーが隼達の目の前に再来した。

 

 

「ギャー!日本人形!?」

 

 

そう叫び、来た道を引き返す。

 

 

「日本人形?何言ってんだ……?早く行こうぜ、神崎さん」

 

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼side

 

 

全員が洞窟から出ると、何故か1番ビビった殺せんせーは色々白状した。

 

 

「カップル成立?しょうもねー事狙ってんだな、殺せんせー」

 

 

「しようもねーとは何ですか、キバット君!だっていちゃつくカップルとか見たかったもん!」

 

 

いい大人が情けないぜ。

 

 

「殺せんせー。ここは1人の大人として焦らず見守りましょう。恋愛とはつり橋効果で成立するのではなく、時間を掛けて成立するのです」

 

 

「そうそう。うちらの年代じゃ、恋ネタを嗅ぎ回されるの嫌な人も多いよ。皆が全員ゲスな訳じゃないんだから」

 

 

「氷室さんに中村さん……分かりました……」

 

 

やれやれだな。

 

 

「全く徹夜明けにはいいお荷物だ」

 

 

「何よ!エスコート位しなさいよ!こんな美女がいたら」

 

 

声のした方を向くと、そこにはお化けのいない洞窟を抜けてきた烏間先生とビッチ先生がいた。ビッチ先生は視線に気づき、すっと離れていく。

 

 

「氷室さん……」

 

 

創真が氷室さんに話しかけた。

 

 

「ええ……薄々気付いてました……なお、私のスケジュール表によれば、この後は皆さんは特にすることはありません……」

 

 

「じゃあ……皆………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「くっつけちゃいますか……!!」」」

 

 

氷室さんも含め、皆、ゲスかった。




まさかの氷室もゲスかった(ちょっと)……!!


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第68話 告白の時間

寝不足…………です。


そろそろ隼がメインの話をやろうかな………。


では、どうぞ!


創真side

 

 

とりあえずビッチ先生を召集した。

 

 

「あんた……色仕掛けのプロなんだろ?男を自在に操れるのに自分の恋愛には奥手なんだな~」

 

 

そう言うのは最近出番が増えてきた気がするキバットだ。

 

 

「うっさい、コウモリ!私だってプライドがあるわ。男を落とす技術なんて数え切れないほどある。むきになって落とそうとしたら………いつのまにかこっちが……」

 

 

…………ふーん。大体分かった。

 

 

「くそ……可愛いと思っちまった。20歳は賞味期限切れで興味ないのに……」

 

 

「キー!もう一度言ってみなさい、コウモリ!撃ち殺してやるわ!」

 

 

まぁ表情から察するに、キバットだけでなく、他にも何人か可愛いと思ってしまったようだが。

 

 

「俺らに任せとけってビッチ先生!俺らがセッティングしてやるから」

 

 

「あんたたち……」

 

 

「では、始めますか」

 

 

殺せんせーがコンサルタントみたいな格好をし、現れた。

 

 

「先生、何その格好~?」

 

 

ホリーがのほほんと訊ねると、自慢げに殺せんせーは答える。

 

 

「恋愛殺サルタントです。それでは、会議を始めましょう」

 

 

何、恋愛殺サルタントって?ダサいんだが。

 

 

「殺せんせー………ノリノリだな」

 

 

「同僚の恋は応援するのは当然です……甘酸っぱい恋愛小説が書けそうですしね……」

 

 

うん。明らかにエロ小説を想像してるね。

 

 

「では、誰か意見がある人は?」

 

 

スッと手を挙げたのは………………恋愛系が苦手な筈のデュオ。

 

 

「この前、図書館で読んだんだが、烏間先生みたいな堅い人間にビッチ先生のような格好は好まない傾向と聞いた」

 

 

「デュオ。それなんて本?」

 

 

「『これさえ守ればカップル成立!恋愛の極意』………だな。俺が死神やってた時、その本を死に際に読んでた奴がいたのを思い出し、図書館で試しに読んでみた」

 

 

(((その人、最期までモテたかったのか!?)))

 

 

まぁ、経緯はさておき、だ。

 

 

「その本の言う通りかもね。烏間先生見たいな人には清楚系でじゃないと」

 

 

「せ、清楚か……」

 

 

このクラスで清楚と言えば

 

 

「清楚って言ったら、神崎ちゃんかな?昨日着てた服、貸してくれる?」

 

 

確かに神崎さんだな。

 

 

「うん、良いよ」

 

 

中村さんのお願いに神崎さんは快く答える。

 

 

数分後、神崎が服を持ってきた。そして、ビッチ先生に着せる。

 

 

「ホラ、服1つで……」

 

 

いや待て………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(((逆にエロい!)))

 

 

「よくよく考えたら………サイズ合わないだろ」

 

 

ホリーに言われ、皆はサイズの事を考えてなかった事に気付いた。

 

 

「もーエロいのはどうでも良い!エロいや乳が全てではないのだぜ!」

 

 

キバットの意見に首を振り、激しく賛同するのは茅野さん。

 

 

「そう言えば、烏間先生の好みの人ってどんな人?」

 

 

僕の問いに答えたのは矢田さんだった。

 

 

「あ、確か今テレビに映ってるあの人が、理想の女性って言ってた」

 

 

矢田さんが指差したテレビに写ってたのは………………………AL〇OKの人だった。霊長類最強の人が3人揃っていた。

 

 

「うん。これは理想の戦力じゃない…………」

 

 

ホリーはついに頭を抱えてしまった。

 

 

その後出た案は、

 

 

「ホテルのディナーも豪華ですけど、そこをあえて烏間先生の好物に」

 

 

と言う、奥田さんの料理案。一見してみれば良さそうなのだが、しかし。

 

 

「烏間先生、ハンバーガーかカップラーメンしか食ってんの見たことないぞ……」

 

 

─────────ボツだ。

 

 

「なんか……烏間先生の方に原因があるように思えてきたぞ……」

 

 

「でしょでしょ!」

 

 

それは否定はできない。

 

 

「と、とりあえずやれることをやりましょう。男女で仕事を分担して、早くセッティングです!」

 

 

殺せんせーの一声で、皆は動き出した……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=====================

21:00 夕食開始

 

 

「……なんだこれは?」

 

 

烏間先生が来ると、何故か烏間先生の席がなかった。

 

 

「E組名物先生いびりでーす」

 

 

「先生方は外で食べてくださーい」

 

 

烏間は訳が分からないと言いたげな表情だが、とりあえず外の席に行った。かなり強引だったかも知れないが、とりあえず第1段階はクリアした。外の席にはビッチ先生が既にいる。烏間も席につき、食事を始める。柄でもなく緊張してるのが、覗き見している彼等にも分かる。

 

 

「今回の旅行は色々あったが、生徒の能力が向上しているのが証明できた。この調子で2学期中に必ず殺す。イリーナ、頼りにしてるぞ」

 

 

まず、烏間はイリーナにそう話しかけた。

 

 

(さぁ、行け!)

 

 

近くの木に止まっているキバットも見守るなか、イリーナは何故か悲しそうな表情で口を開いた。

 

 

「……ちょっと昔の話だけど………私が初めて人を殺したのは12の時だった。私の家に兵士が来て、親は問答無用で殺された。見つかったら殺られる………だから敵が隠れてた私を見つけたときに、至近距離で撃ったわ」

 

 

「…………!!」

 

 

この時点で、近くで聞いているキバットの顔が曇り始めた。

 

 

「他の兵に見つからないように死体と隠れたときに………ぬるくなっていく死体の温もりは今でも覚えてるわ。カラスマ、『殺すってどういうことか』って本当に分かってる?」

 

 

烏間は黙って考えているようにも見えた。そんな烏間を他所に、ビッチ先生はスッと立ち上がり、烏間のつけているナプキンに唇をつけ、それを烏間へ………。

 

 

「好きよ、カラスマ。おやすみ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キバットside

 

 

うん、まぁ………頑張った。頑張ったとは思うぜ。でも、これで気持ちが伝わるかは別だ。これじゃ告白じゃなくて、殺白だ。

 

 

そう、殺白。うーん………まぁ、どんまい…………なのか?

 

 

「告白って………案外ムズいんだな…………」

 

 

ブーイングを浴びているビッチ先生を見て、1人そう呟いたのだった。告白は案外簡単じゃないことを1つ学んだ俺様であった。




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第69話 ゲームの時間

ゲームピコピコ……………やります。


それでは、どうぞ!


ビッチ先生の告白はとりあえず幕を下し、就寝時間までは自由時間だ。夕食が終わり、隼はすぐにある場所へ行く。

 

 

「ビッチの告白なんかよりも、俺はずっとここに行きたかったんだよ……」

 

 

その場所は、ホテル内のゲームセンター。お忘れだろうか、彼はゲーマーだ。

 

 

「さーて、どれから遊び尽くして行こうか……」

 

 

まず隼の目に入ったのは、格闘ゲーム。すこし昔のタイプだが、面白いとは聞く………とゲーマーの隼は分析。

 

 

「よっし、やってみますかね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………なんとか全ランククリアできたな」

 

 

easyやnormal位のレベルは簡単だったが、hardからいきなり難しくなった。easyやnormalは2分以内にクリアできたが、hardには4分掛かった。

 

 

「でも、このスコアじゃ俺が1番じゃね?」

 

 

スコアランキングを見てみると

 

 

「……………」

 

 

1位の所には………どう見ても、どう考えても異常なスコア。2位との差がヤバイ。ちなみに隼のスコアは3位だ。

 

 

────────1位のスコアは創真だったりしてな。

 

 

「………まぁ、良い。さーて次だ次」

 

 

どうでも良い想像をやめ、さらなる面白ゲームを探していると………誰かが遊んでいるのか、コントローラを操作する音が聞こえた。

 

 

「誰か遊んでんのか……?」

 

 

音がする方へ行くと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「神崎さん?」

 

 

「隼君?」

 

 

そこにいたのは同じくゲーマーの神崎。別の格ゲー(格闘ゲーム)をやっていた。

 

 

「へー……神崎さんもゲーム好きなんだ……」

 

 

「うん。折角だから一緒にやらない?ゲーム好きだよね?」

 

 

それを聞いた隼はニヤリと笑う。

 

 

「良いぜ。先に言っとくけど、俺結構強いよ?」

 

 

「そうなんだ……でも私も負けないよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがゲームセンター?」

 

 

「うん、そうだよ」

 

 

ゲーセン初体験のホリーは渚、杉野、中村と伴に、ゲームセンターにきた。

 

 

「このクラスでゲーマーとかいるの?」

 

 

「えーっと………隼に神崎ちゃんかな?」

 

 

中村が答える。

 

 

「…………その2人、いるんじゃね?なんかコントローラを高速操作している音がする」

 

 

「ほほう……隼と神崎ちゃんが一緒にゲームか~。ちょっと見に行ってみよ!」

 

 

中村を先頭に音がする方へ行くと

 

 

「お~やっぱり」

 

 

そこでは神崎と隼がとんでもない速さで手を動かしている。

 

 

「強い………!!」

 

 

「隼君もね」

 

 

おしとやかにそう言う神崎だが、手の動きは普通じゃない。

 

 

「すげぇ!どっちが勝つんだ?いや、神崎さんに決まってる!神崎さん、頑張れー!」

 

 

「うっせぇ、杉野!引っ込んでろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果 神崎友希子win

 

 

「神崎さんが勝った!隼、神崎さんに喧嘩売るなんて一万年早いぜ!」

 

 

「ギャーギャーうるせぇ、杉野!」

 

 

「でも、楽しかったよ。また東京に帰ったらゲームセンターに行かない?」

 

 

「勿論だ!次は勝つ!」

 

 

(う~ん………隼が勝つのは難しそうだな。何か神崎さんから凄いオーラを感じる………)

 

 

口には出さないが、ホリーは本能的にそう思った。

 

 

「ホリー、何してるの?ゲームか?」

 

 

そこへ創真が来た。

 

 

「あ、そうだ!ねぇ、ゲームセンターが初めての僕でも簡単に遊べるゲームって何?」

 

 

「ん?………あれじゃね?」

 

 

創真が指差した先には………もぐら叩きのゲーム。

 

 

「どういうルール?」

 

 

「出てくるもぐらを叩けば良いんだよ。簡単だろ?」

 

 

隼がルールを説明する。

 

 

「よし、やってみる……」

 

 

ホリーは創真の財布から100円を取り、ゲーム機に投入する。

 

 

「人の財布から取りやがって………1回だけだぞ」

 

 

創真が優しい一面を見せる。間もなく、画面にスタートと出た。

 

 

もぐらが出て─────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────こない。

 

 

「ありゃ?故障してるのか?」

 

 

しかし、ホリーはもぐらが出てくる穴を目にも止まらぬ速さで叩きまくっている。

 

 

「あー……ホリー。それ故障してると思うぞ。もぐらは出てない。だから叩いても疲れるだけだ」

 

 

「?ちゃんともぐら出てるよ?」

 

 

「「「???」」」

 

 

皆はホリーの言ってる意味が分からなかった。

 

 

「早すぎて見えないだけだ」

 

 

ヌッと現れたのはデュオだった。

 

 

「いや、叩くのが早いのは分かるけどさ、まず肝心のもぐらが出てないんだって……」

 

 

「中村さん……と言ったか?あいつはもぐらが君達には見えない位、ほんの少し出てきた瞬間に叩いている」

 

 

「え!?それ普通の人の技じゃないよね……」

 

 

「……………そもそも人じゃないからな。あいつはスピード自慢。今のもぐらを叩いてる時の速度は……マッハ1は超えてるだろう。ちなみに、あいつの最大速度は計測不能らしい。ま、早すぎて自分でもコントロール出来ないと言ってたがな。要は……叩くのが早すぎて、もぐらが出てくるのすらも見えないと言うことだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「終わったー!結果はどうかな?」

 

 

結果は……………180匹。確かこのゲームのもぐらの総出現数は180………即ち。

 

 

「ホリーの奴………全てのもぐらを取り零しなく叩きやがった」

 

 

「マジか!スゲーじゃん!」

 

 

ホリーは口々に褒められ、照れ臭そう。そこへ烏間先生が来た。

 

 

「そろそろ就寝時間だ。部屋に戻った方が良いぞ」

 

 

「「「はーい!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

「なぁ、創真。お前にとって今回の旅行はどうだった?」

 

 

キバットが聞いてきた。

 

 

「ん?楽しかったね。色々ハプニングがあったが」

 

 

「まぁ、そうだな。お前が怒った時はすこしビビったが………しかし、トラブルは付き物。新たなトラブルがすぐにやって来たりしてな……」

 

 

「やめてよデュオ。しばらくトラブルはごめんだね。じゃ、おやすみ」

 

 

 

夏休みの島編 完

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フフ……もうすぐ会えるね………隼」

 

 

薄暗い部屋でパソコンの光りに照らされながら………彼女は……………微笑んでいた。ホリーの言う通り……トラブルはすぐにやって来る。




THE NEXT story 1/31 PM 22:00


最後の人は誰だろー?(棒読み)


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第70話 姉の時間

皆は無事に東京へ帰ってきた。創真は、3億の車が無事だったたので、胸を撫で下ろしたそうで。

 

 

「それでは、気を付けて帰ってくださいね皆さん!」

 

 

殺せんせーが解散の指示を出し、皆は帰路に着く。隼は大きく伸びをしながら、創真に話し掛ける。

 

 

「いやー船はもう乗りたくないね。創真、お前今日このあと予定あるか?」

 

 

「特にないよ」

 

 

「だったら……今日、一緒に飯食べね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へー……お前がこんなおしゃれな店を知ってるんだな……」

 

 

「意外か?」

 

 

「意外」

 

 

隼は近くのデパートの中にある、イタリアンレストランへと創真を案内した。ちなみに氷室は今日友達と予定があるため、今はいない。キバットは外でお姉ちゃん観察。ホリーとデュオはゲーセンで楽しんでるので今は2人だけだ。

 

 

「で、なんで僕を誘った?」

 

 

隼は紙切れをとり出し、見せる。

 

 

「お二人様食事代無料…………ね。店の景気がそんなに良いのかね~」

 

 

「いや、そこか!?俺がこの券をどうやって入手したとか、そう言うのじゃ……」

 

 

「社長からだろ?お前の父親からのじゃないの?」

 

 

そう。隼の父親は会社の社長。IT企業なのだが………その会社も創真の会社には及ばない。要はNo.2の存在。

 

 

「残念。これは俺の叔父がくれた」

 

 

「そう言えば、お前は親と暮らしてないんだったな。どこに住んでんの?お前の親」

 

 

「さーね。横浜から引っ越したらしいけど聞いたことない」

 

 

「ふーん…………やっぱり、まだそういう仲か」

 

 

「お待たせしました~!マルゲリータ2つです!」

 

 

店員がピザを持って現れた。

 

 

「お、きたきた。早く食おうぜ」

 

 

「そーね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食後、創真らは住宅街を歩いていた。隼の家の前で氷室さんと合流するのだ。

 

 

「どうだ?旨かっただろ?」

 

 

「まぁね……そう言えば、凄いどうでも良いんだけど、隼って彼女とかいるの?」

 

 

「はあっ!?いやいや、いねーよ全然。全然いないからな!?」

 

 

「……………なんか、焦ってる?」

 

 

創真がさらに追及しようかと思ったその時だった。突然、隼が足を止めた。

 

 

「………どうした?幽霊でも見たか?」

 

 

「いーや。もっと見たくない奴だ。そこの電柱にいる奴………分かってんだから出てこい」

 

 

すると、柱からスッと誰かが出てきた。

 

 

「久しぶりだね………隼」

 

 

「何のようだ………碧海」

 

 

「へー、いることは聞いてたけど…………彼女が隼の姉さん?」

 

 

「そゆこと。で、お前は何しに来たんだ?」

 

 

碧海は口を開く。

 

 

「ひどい言い方だね~。折角姉に会えたのに」

 

 

「お前の面は2度と見たくもなかったよ……!とっとと用件言え」

 

 

「用件はね、君を迎えに来たんだよ。私、東京に引っ越してたからね。今は椚ヶ丘だっけ?でも転校してもらうよ。これで……やっと一緒に住める」

 

 

碧海はゆっくり足を進める。

 

 

「ふざけんな!悪いがそれは無理だ。叔父に言っとけば、誰が言おうと折れない」

 

 

「確かに、父さんでも頭が上がらない叔父さんがいるんじゃ、言っても無理だね………なら……力強くで……」

 

 

天音はいきなりダッシュし、隼に急接近する……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………実力行使しか考えが思い付かないんですかね」

 

 

「創真………お前……」

 

 

碧海の拳を止めたのはこの場では第3者でもある創真だった。

 

 

「何?あんた邪魔する気?部外者は引っ込んでなよ」

 

 

「悪いが、僕は絶賛反抗期中なんでね。断らせてもらうよ。取り敢えず、僕はレディーには殴りたくないんで、拳納めてくれます?」

 

 

碧海は意外にも素直に引っ込めた。

 

 

「あんた………私の事を女だからって見くびってるようだけど……私の力ならあんたを消せる。自分の手を汚さなくてもね」

 

 

「君の親のブラック(・・・・)な金でも使って暗殺者でも呼ぶかい?」

 

 

「ブラックな金…………?よく分からないけど、そんなことしなくても、私にはあいつ(・・・)から貰った資金があるし。そいつを使えば、暗殺者位雇えるわ」

 

 

「それじゃ、この僕と全面戦争かい?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………やってみたまえよ。やれるもんなら」

 

 

殺気の入り交じった声に、碧海は笑みを浮かべる。

 

 

「フフ………実はさ、もうやったんだ。あんたの側にいる人………氷室さんだっけ?今頃、病院送りされてるんじゃない。これは警告よ。もう、隼に関わらないで」

 

 

「ほう………………これで分かった。君は馬鹿だな」

 

 

「………………は?どういう意味よ」

 

 

「あんたは、氷室さんを甘く見すぎだ。あの人がそんじょそこらの暗殺者に負ける訳がない」

 

 

すると、近くから独特のエンジン音が聞こえてきた。間もなく、後ろの角から赤い野獣、ライカンが出現。そして、ドアが開いて出てきたのは当然──────────

 

 

「お迎えに上がりました、創真様」

 

 

─────────氷室である。

 

 

「……どういうこと?あなたには確か2人送った。なんで………!?」

 

 

「……弱すぎたので、一緒にいた柔道の黒帯を持ってる友人と一緒にボコボコにしてきました。目撃証言もあったので、彼等は暴行の疑いで即逮捕。私にはお咎めはありませんよ」

 

 

「じゃあ場所はどうやって……」

 

 

「あなたには見えないでしょうが、色々いるんですよね………2人+1匹ほど」

 

 

────────ナイス、ホリー達。

 

 

創真は心の中で呟いた。

 

 

「……なるほどね。確かに一筋縄では行かないようね。でも、私は5ヶ月も理不尽と我慢した。絶対に隼は私の所に来させる」

 

 

「そうかい。だが、隼はそれを拒んでいる。何でかは知らないけど、本人の意志を尊重せず、あんたの勝手で隼が不快な目に遭うのは────────まぁ、良くはないか」

 

 

「おい、なんで即答しなかった?」

 

 

隼は創真を睨むが、創真はごほんと咳払いをして続ける。

 

 

「まぁ、そんなわけで、今日のところは帰った方が良いんじゃない?形成的にも、君は不利だろうし」

 

 

「そうね…………今日のところは退くとするわ。早めに手を引くことを勧めるわ」

 

 

「その言葉、そっくりそのまま君に返すよ」

 

 

それを聞いた碧海はニヤリと笑い、消えていった。

 

 

「隼君、君は姉さんから過度な求婚を受けてるねー」

 

 

「求婚はされてねぇがな。………………助けてくれなかった癖に、今更一緒に暮らそう?ふざけんじゃねぇ」

 

 

「何か言った?」

 

 

「いーや……………さて、じゃあここで別れるか」

 

 

「そーね。それじゃ、夜道には気を付けて。また、求婚されるかもよ?」

 

 

「けっ」

 

 

隼は手をヒラヒラと振りながら去っていった。

 

 

「所で氷室さん、大丈夫だったんですか?彼女が言うには、あなたの所に暗殺者を送り込まれたらしいんですけど」

 

 

「えぇ、余裕です。あれは三流ですね」

 

 

「そうですか…………碧海さん、って言ってたっけ」

 

 

「あぁ、私に暗殺者を送り込んだ黒幕ですか」

 

 

「あの人、何か雰囲気ヤバかったな……………何か、精神の自制心と言うかリミッターと言うか……………そう言うのが外されてたように見えたけど………………何か、目が異常だった」

 

 

「そう言う相手は何をしてくるか分かりませんからね………………創真様もトラブルに巻き込まれやすい体質な事で」

 

 

「全くです…………………ま、そんな心配することは無いでしょう。同年代の女子がしてくることなんて、たかが知れてるだろうし」

 

 

この時の創真はさほど気にしていなかった──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────あの事件が起きるまでは。




THE NEXT story 2/1 PM 22:00


実は、今回の小説本文は、弟が書きました。中学生のね。


良かったら、弟の文才はどうだったか、感想お願いします!お気に入りも!


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第71話 それぞれの時間

ややこしい…………かも知れません。


弟の文才は意外に良かったので、また任せようかな。


それと訂正です。


昨日の話の氷室の台詞で、三人+1匹、とありましたが、本当は2人+1匹です!


それでは、楽しんで下さい!どうぞ!


創真が自室で作業をしていると、氷室さんが部屋へと入ってきた。

 

 

「……………何をしているのですか?」

 

 

創真は作成途中のトンボと蜂の設計図を見せながら言う。

 

 

「マシンシリーズの新しい物を…………氷室さん、大丈夫ですか?寝不足そうですね……」

 

 

「まぁ………」

 

 

あの後………氷室は事情聴取のために警察署へ。経緯を話したり、色々書類に書いたりで、解放されたのが夜中の1時だった。

 

 

「お疲れのところ悪いんですが………どうでした?」

 

 

「今だ黙秘を貫いているそうです。取り調べも難航しているとか」

 

 

「へぇー………………まぁ、吐こうが吐くまいがどうでも良いんですけど。恐らく、警察では碧海さんが黒幕だなんて辿り着けないでしょうし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、隼の家。

 

 

「…………碧海が?」

 

 

昨日の事を話すと、叔父は眉を潜めた。

 

 

「昨日来たんだよ。俺の目の前に!」

 

 

「それで、お前の友達の付き添い人が襲われたと?」

 

 

「そう。ま、全部返り討ちだったが。これを仕向けたのは恐らく碧海だ。これ、警察に言ってなんとかなるのか?」

 

 

「にわかに信じがたいが…………まず、質問に答えるとそれは難しいのう………お前からの話では証拠もなかったんじゃろ?言っても相手にされんだろう」

 

 

(やっぱ無理か……)

 

 

隼も先程創真から連絡をもらった。あいつが仕向けたという証拠は今のところゼロ、と。叔父はタバコに火をつけ、一服し始めた。

 

 

「………それで、何をしてもらいたい?」

 

 

「意地でも椚ヶ丘から離れないようにしてもらう。それと碧海を近寄らせない」

 

 

「近寄らせないのは難しいが………椚ヶ丘から離れたくないのはなぜだ?」

 

 

「あそこで……やるべきことがある。皆で一緒にな……」

 

 

「……………」

 

 

叔父は少し黙っていた。そして次の瞬間………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハハハハ!隼、そんなにクラスメイトが好きなのか?それともまさか恋人が……」

 

 

「んなわけねー!でも、クラスメイトが好きなのは否定しないぜ」

 

 

「そうか……なら、椚ヶ丘から転校はさせぬようにしよう。ついでに碧海に釘を刺しとくわい………良いクラスメイトに会えたのだな」

 

 

「最ッ高だ。あいつらはな」

 

 

「そのクラスメイトを大切にする。それが条件だ」

 

 

「ああ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────本当に良いの?

 

 

声。声が彼女の頭の中に響いた。

 

 

「…………………何が?」

 

 

─────────こんな事をして、本当に良いの?

 

 

「……………………………」

 

 

─────────こんなことが隼、さらに言えば私の為になるとは思えない。

 

 

「…………………うるさいよ」

 

 

─────────自分でも分かってる筈。だから、もう

 

 

「うるさいって言ってるでしょ!」

 

 

彼女は大声を上げて、自分の声から耳を塞ぐ。

 

 

「もう、決めたんだから…………………邪魔しないで」

 

 

─────────。

 

 

そして、もう1人の彼女は消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼女の願いなどどうでも良い。私としては最強の肉体が手に入ればね。それにしても、私の思い通りに動いてくれるね、彼女は。自分が狂気に満たされてるとも思わず…………二学期が楽しみだ」

 

 

とある一室で、彼は珈琲を飲みながらそう呟いた。




THE NEXT story 2/2 PM 22:00


トンボも蜂ももうすぐ…………!


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第72話 恋の時間 3時間目

……衝撃の(?)デビューをした音速飛行の弟です。


課題に追われる兄に代り、再びペン………は取らないか。


兄が課した今回の話の課題………それは………


「…………暇だ……」

 

 

珍しく台詞が最初である隼は自室のベットでごろごろしながら漫画を読んでいた。結局、碧海は何も仕掛けてこないまま、日付は過ぎ…………今日は8月31日。ちなみに創真は、遊園地にて倉橋とデート中。何故隼が知っているかと言うと、暇なので創真にゲーセンのお誘いをしたのだが、その際にデートの件を言われたからだ。

 

 

「リア充が……………!」

 

 

すると、隼の脳内に創真が現れた。

 

 

『そんなに僕が羨ましいのか?君も彼女作れば良いじゃないか?ま、おまえは一生……』

 

 

「うるせぇ、うるせぇ!」

 

 

隼は頭を振って、脳内の創真を消し去った。

 

 

「碧海がおとなしいのが怪しすぎだ。叔父がなんか言ってくれたからか……それとも単純に諦めたのか………?」

 

 

考えてみるが、答えは出ない。

 

 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 

 

「ったく誰だ?夏休みの最後位一人の空間を味わいたいんだっつーの!もしもし?」

 

 

『隼君?私だけど……』

 

 

「か、神崎さん!?」

 

 

どうも最近、神崎さんから話し掛けられたりすると、ドキッとする隼。

 

 

「ひ、久しぶり……それで今日はどうしたの?」

 

 

『今日、神社でお祭りがあるんだけど……一緒に行かない?』

 

 

「ま、ままマジ!?え、あの、えっと俺で良いの?」

 

 

隼の心拍数が上がりに上がりまくっている。

 

 

『うん。それじゃあ、後で家に行くね』

 

 

通話が終わると、隼は…………

 

 

「いやぁ……女子に誘われるなんて……良い『友達』持ったなぁ……」

 

 

そう言う隼の口許はとても緩んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方創真は………

 

 

「ねぇ、創真君!あそこのソフトクリーム食べない?」

 

 

「じゃ、買ってくるよ」

 

 

そして、このカップルを展望台から見ている人物………ホリーと氷室がいた。デュオは死神時代の友達と会う約束をしているそうで、夕方までいない。キバットは察して下さい。

 

 

「良いな~。本当に仲良しだね……」

 

 

「モテるのもわかる気がします」

 

 

ホリーと氷室が話していると、

 

 

「すみませーん。写真撮ってもらって良いですか?」

 

 

「あ、はい……」

 

 

ちなみにこの流れは本日7回目。写真を撮り終わり、2人はカップル観察………いや、見張りを再開した。

 

 

倉橋達は碧海の事を知らない。知っているのは、創真、氷室、隼、ホリー達だけだ。氷室は視界に広がる景色を眺めながら、考え事に耽っていた。何故、碧海は隼を狙うのか………あの人の考えが読めない。何を考えてるのかも分からない。彼女は創真に対して、殺意を持ってるようにも感じた。目を見てそう思った。

 

 

────────何故、初対面の筈の創真様に対して殺意を持っているように感じるのか………自分の錯覚なのだろうか…………?

 

 

「どうしたんですか、氷室さん?ぼーっとして」

 

 

ホリーが不思議そうに声をかけてきた。

 

 

「いえ、なんでも」

 

 

氷室は慌てて双眼鏡を取り出し、仕事を続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日はありがとね、創真君!」

 

 

「いーえ。僕も楽しい時間を過ごせました」

 

 

結局、何かしらの危険が迫ることはなかった。ホリーは一緒に遊べば良かったとぼやいてたが。とは言え、無事に楽しんでもらえて良かったと、2人を見て氷室は思う。

 

 

「ヌルフフフ、青春を満喫してますねぇ」

 

 

いきなり殺せんせーが現れた。

 

 

「何しに来たの?」

 

 

「いゃあ、君達をお祭りに誘いに来ました。断る人が多くて傷ついてます………」

 

 

そう言う殺せんせーは泣いている。

 

 

「行く行く!創真君も来る?」

 

 

「とくにやることないし………良いよ」

 

 

「いやぁ、良かった。それでは先生はカルマ君辺りを誘ってくるので………それでは!」

 

 

殺せんせーは飛び去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待たせ、隼君」

 

 

「あ、ああ(浴衣似合ってるな……)」

 

 

約束の時間通り、神崎は来た。

 

 

「んじゃ、行こっか」

 

 

「うん……」

 

 

しかし、このあとだ。このあとが問題だ。…………会話が続かないのだ。ヘタレ隼、頭の中では何を話そうか考えているのだが、全然思い付かない。そのまま無言の時間が続き、ついに祭りの会場となる神社が見えてきた時だった。

 

 

「隼君…………ちょっと……良い?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんだ?急に……」

 

 

祭りの会場から少し離れた所に、神崎は隼を連れていった。

 

 

「は、話したい事があって………」

 

 

「話………………?」

 

 

「わ、私ね…………」

 

 

「う、うん………………?」

 

 

疑問符を浮かべる隼に、神崎は息を大きく吸って──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私、隼君の事が好きなの。初めて会って………助けてくれた時から。だから……………私と付き合ってください」

 

 

──────────言った。

 

 

「…………………え?」

 

 

突然の告白に、隼は驚きを隠せなかった。

 

 

「隼君は………私の事をどう思ってるの?」

 

 

「…………………俺は、その…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────何迷ってんだよ。

 

 

隼の脳裏に声が響いた。

 

──────そんなに迷うことか?好きかそうでないかの2択しかねーだろうが。それに、お前は答えを既に持っている筈だぜ。

 

 

(そうか………………………いや、そうだったな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「好きだ。俺も神崎が好きだった」

 

 

その言葉を聞くと……神崎はとびきりの笑顔を浮かべ、その流れで……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キスをされていた……大人の。

 

 

数秒後、神崎は離れた。

 

 

「ねぇ、隼君」

 

 

「……………」

 

 

「これからは……さ、私の事、有希子って……」

 

 

ドサ

 

 

説明しよう!隼は本心を言えた嬉しさと、大人のキスによる

興奮で、倒れてしまったのだ!

 

 

「………ヘタレだな……」

 

 

全てを見ていた────────そして、後押しをしてあげたキバットはそう呟いた。




※この後、隼は祭りが終わるまで起きませんでした。


兄からの課題は、『隼と神崎をくっつけろ』


中学生の頭で必死に考えました。


………満足出来なかったら……すみません。


またペン……いや、書く機会があったらよろしくお願いします!


あと、展開少し変わったよ2018年9/14追記


THE NEXT story 2/3 PM 22:00


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2学期編
第73話 呪いの時間


トンボ………を英訳すると、ドラゴンフライ。


マシントンボか、マシンドラゴンフライ………どっちが良いですか?


活動報告欄にお願いします。


それではどうぞ!


隼が倒れてる間、花火が次々と上がっていく。創真や氷室を含め、皆はそれらの花が咲いていくのを眺めていた。

 

 

「……早い夏でしたね……」

 

 

「そうですね、氷室さん。ですが……二学期からはさらに面白くなる………そんな気がしてならないのです……」

 

 

「同感ですね。あぁ、それと創真様」

 

 

氷室はとある紙を創真に見せる。それを見た瞬間、創真の目の色が変わった。

 

 

「え、マジですか………………父さんから許可は?」

 

 

「勿論、貰いました」

 

 

「そうですかぁ…………烏間先生からスカウトされるとは、流石氷室さんだ。やはり、二学期は面白くなりそうですねぇ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヌルフフフ……これでしばらくのおやつ代は大丈夫そうですね……」

 

 

殺せんせーは小銭が入った袋を見ながら満足そうに言う。そして、1人の生徒に近づく。

 

 

「君も楽しめましたか?明日からはまた……」

 

 

「先生……僕は………………ます」

 

 

「え……………………?E組を………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

抜ける?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついに終わった夏休み。そして、再び始まる学校生活。

 

 

「よう、創真」

 

 

「おはよう隼。………なんか良いことあった?」

 

 

「!?な、なんもねーよ。……特に」

 

 

「あっそ……」

 

 

そこへ

 

 

「久しぶりだな、E組共!」

 

 

五英傑の4人が登場。

 

 

「お前らも大変だと思うが、めげずに頑張るんだな」

 

 

そう言う瀬尾の肩を叩く男が1人──────創真がいた。

 

 

「それはこっちの台詞だよ、瀬尾くん。君こそ、得意の英語で中村さんや僕に負けないように、めげずに頑張るんだね…………いや、それ言ったら残りのおまけ3人にも同じこと言えるか。残りのおまけ3人も」

 

 

「お、おい。式が始まるから、とっとと行こうぜ」

 

 

創真が言い終えるよりも前に、逃げるように五英傑らは去っていった。

 

 

「創真もなかなか言うね~」

 

 

「でも、皆も油断してると足元救われるよ?」

 

 

「分かってるって!次も俺らがテスト対決を制してやるって!」

 

 

隼はやる気満々だ。

 

 

「さーて、早く並ぶか……」

 

 

創真は隼と一緒に後ろへ。そして、長ったらしい式が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

30分後。

 

 

「隼、起きてるか?」

 

 

「んぁ?寝てないぞ?」

 

 

──────寝息が聞こえたんですがその件についてはどうなんです?。

 

 

そう訊ねようと思ったときだった。

 

 

「それでは最後に、今日からA組に仲間が加わります。彼は昨日までE組でしたが、再びA組に戻れるとになりました!それでは彼に喜びの声を聞きましょう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

竹林 孝太郎君です!」

 

 

 

おっと…………………竹林君?

 

 

檀上に立ち、竹林は話し出す。

 

 

「僕のいたE組は………地獄でした。そんな地獄から本校舎へと戻りたい。その一心で死ぬ気で勉強してきました。こうして戻ってこれたのを心底嬉しく思うと同時に2度とE組に墜ちることのないように頑張ります。以上です」

 

 

生徒達は何も言わず、黙っていた。すると、拍手の音が檀上の脇から聞こえてきた。

 

 

「おかえり、竹林君」

 

 

壇上の浅野がそう言ったの合図に、他の生徒も拍手や褒め称える声があちこちからした。その様子を、皆は何も言わず、ただ見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

「なんだよあいつ!100億のチャンス捨てるなんて信じらんねー!」

 

 

前原が感情を露にし、黒板を拳で殴る。しかし、その中で1人冷静な者がいた。

 

 

「別にそれは本人の勝手だろ?竹林はここを抜ける資格を得たから、抜けた……それだけだよ」

 

 

創真の冷静な声に、前原は食って掛かる。

 

 

「じゃあ、お前は竹林が抜けることになんとも思わねーのかよ!?」

 

 

「何とも思わない訳でもないけどさ……………でも、結局の所、それは本人の勝手でしょ」

 

 

「お前はお前で落ち着きすぎだろ!とにかく放課後、一言言いに行くぞ!」

 

 

「…………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後。

 

 

創真は面倒いと理由をつけ、帰ってしまったが、他の皆は竹林を待っていた。

 

 

そこへ、竹林がやって来た。竹林は皆を目に捉え、足を止める。

 

 

「説明してもらおうか、竹林。なんで相談も……」

 

 

「何か理由があるんですよね?」

 

 

磯貝を遮り、いつもは引っ込み思案の奥田が今回は前に出た。それでも竹林は黙ってる。

 

 

「無欲だね……竹林。賞金欲しくないの~?」

 

 

カルマもいつもの調子で問い掛ける。

 

 

「……10億」

 

竹林は初めて口を開いたが、皆は戸惑いの色を見せる。

 

 

「僕単体での暗殺は不可能。殺せたとして、僕の力で担える役割じゃ………10億が妥当と言ってるだけさ。

僕の親は代々病院を経営している。10億なんて容易く稼げる額なんだよ。だから、出来る家族の中で僕だけは家族としては扱われない。昨日初めて親に成績を報告できたよ。………僕が言いたいのは、地球の終わりよりも100億よりも家族に認められる事が大事なんだ」

 

 

皆は文句を言おうと思っていたのだが、竹林が一旦言葉を切った時には、何も言えなくなっていた。

 

 

「裏切りも恩知らずも分かってる。暗殺がうまくいくのを願ってるよ」

 

 

言いたいことを言い終わったのか、竹林は去ろうとする。

 

 

「待ってよ、竹ば」

 

 

「もうやめとけよ、渚」

 

 

渚の目の前にいきなりキバットが現れた。

 

 

「これ以上は言わない方が良いと思うぜ」

 

 

「でも……」

 

 

「渚君………親の鎖って……すごく痛い場所に巻き付いてるの。だから…キバット君が言う通り、無理に引っ張らないであげて」

 

 

キバットと神崎に言われ、渚達は竹林の背中を見詰めるしかなかった。

 

 

「………ん?」

 

 

「どうしたカルマ?」

 

 

「いや………でかいトンボっぽいのが上を通ったと思ったんだけど……気のせいか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのトンボは、信号待ちしているランボルギーニの上に静かに着地した。助手席に座っていた彼はパソコンをそっと閉じた。

 

 

「………さてと………」




THE NEXT story 2/5PM 22:00




マシンドラゴンフライorマシントンボ?


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第74話 竹林の時間

マシンドラゴンフライ………出動!


それでは、どうぞ!


創真side

 

 

クラスの雰囲気が重い。

 

 

この竹林のE組脱出を打診したのが理事長なのは当然。まぁ……竹林を利用して、僕らはこの学校では二軍ということを改めて認識させるため……って言うのが真の目的かな?

 

 

「皆さん、おはようございます」

 

 

夏休みぶりの真っ黒殺せんせー登場。

 

 

「また日焼けしたのか?」

 

 

「正解です、隼君。ついでにマサイ族とメアド交換してきました」

 

 

─────────何故に?

 

 

僕の心境を察したのか、殺せんせーは言葉を続ける。

 

 

「この日焼けは竹林君のアフターケアのためです。先生には彼が馴染めているのか見守る義務がありますからね。これなら先生は忍者の如く行動できます」

 

 

「殺せんせー……不審者としてポリスメンのお世話になることになるよ。隠れ方に無理がある」

 

 

「にゅや!?そんなことないでしょう!先生は忍者当然!これ以上に上手い隠れ方がこの世にあるわけが無いでしょう!」

 

 

「上手い隠れ方、ね。殺せんせー……僕をよーく見てな」

 

 

そう言いながら、僕はスマホの画面をタップする。

 

 

「「「!?」」」

 

 

皆は突如、僕の頭の上に止まっているマシンドラゴンフライが現れたのに気づき、驚きの表情を見せた。

 

 

「マシンドラゴンフライ……光学迷彩を使えるんだ。生憎武器は付いてない、隠密偵察用だが」

 

 

「よ、良かった………武器付きなら、下手すれば死んでたかもしれません。さて、話が逸れましたがまぁ、そう言うことです。これは先生の仕事なので、皆さんはいつも通り過ごしてください」

 

 

殺せんせーはそう言うが……皆の反応は違った。

 

 

「俺らもちょっと見に行ってやるか。すこし気になるし」

 

 

前原がポツンと言った。それに賛成するように、陽菜乃も口を開く。

 

 

「竹ちゃんが理事長に洗脳されちゃうのはやだな~」

 

 

「何だかんだ同じクラスだった訳だしな」

 

 

「あいつ、ちょっと危なかっしいしな」

 

 

結局、皆行くようだ。

 

 

「殺意が結ぶ絆………ってやつかな。しゃーない、僕も行くか」

 

 

「結局気になってたんだな、創真」

 

 

「さてさて、どうでしょー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

 

 

 

創真のお願いにより、氷室はA組にマシンドラゴンフライを潜入させるために、準備していた。

 

 

「さて、潜入開始と行きますか」

 

 

マシンドラゴンフライは音をほとんど立てず飛び立ち、光学迷彩を発動。氷室は画面を見ながら操作していく。そして、すぐにA組の教室前に着いた。どこから侵入するかを考えていると、タイミング良く、A組に先生が入っていった。ドアが閉まる直前に滑り込みで侵入する。そのまま教室の後方に着陸させ、録画を開始する。

 

 

(後は、授業が終わるまで待つのみ……そう言えば、この学校の特進クラスはどんな授業をするのでしょうかね?)

 

 

氷室は画面を見ながら、A組の授業に耳を傾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間後、マシンドラゴンフライは氷室によって回収され、それを持って氷室はE組の校舎に帰ってきた。

 

 

そこへ創真がやって来る。

 

 

「氷室さん、どうでしたか?」

 

 

「潜入は成功しました。録画も高画質でしっかりと」

 

 

「ご苦労様でした。すみません、変なこと頼んで」

 

 

「いえいえ」

 

 

氷室はE組校舎へ足を進めながら、A組の授業を振りかえる。

 

 

(………A組の授業は………E組では一学期でやったところ。さらには効率も悪く、生徒の都合は一切無視。………これが特進クラスですか。殺せんせーの授業の方が断然良いですね)

 

 

氷室と同じく竹林も同じように考えていたのは、誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後

 

 

(殺せんせーの授業の方が良かったのかもしれないな……僕はE組を抜けて本当に良かったのだろうか……)

 

 

竹林がA組への不信感を抱いていると、窓の外からの視線に気付いた。

 

 

(カモフラージュが下手すぎる……それに創真の手にあるコントローラー……まさかここに何か潜んでるのか?)

 

 

竹林は教室を見回すが、特に何も見受けられない。

 

 

(……何故他人になった僕のことを知ろうとする?そもそも………僕は何を学びにここに来たんだ……?)

 

 

「竹林君?」

 

 

「!!ああ、浅野君か……」

 

 

「突然だけど、理事長がお呼びだ。ちょっといいかい?」

 

 

竹林は浅野と共に理事長室へと移動し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

「おい、創真!早く追いかけろ!」

 

 

「今やってるから静かにしてろ、隼」

 

 

喋りながらもコントローラーを操作する。結果から言えば、理事長室への侵入は簡単に成功。

 

 

「ふーん。色々盾があるんだな……」

 

 

カメラを通して理事長室に飾られている何気なく盾などを見ていると………

 

 

「やぁ。まずは座ってくれ」

 

 

現れた理事長はカーテンを閉め、そう促す。

 

 

「くそ、見えねぇ!創真、頼むぞ!」

 

 

「はいはい、分かってるよ杉野」

 

 

創真達はスピーカーから聞こえてくる音に注目する。

 

 

『明日また集会があるんだ。その時にまたスピーチをしてもらいたい。ご家族も喜ぶだろうね』

 

 

『はぁ………』

 

 

『浅野君、原稿を。………ふむ、まぁ良い。ちょっと見てくれ、竹林君』

 

 

創真はドラゴンフライのカメラをズームさせ、内容を覗き見する。

 

 

「はぁ!?なんだこの内容!?」

 

 

前原が声を上げるのも無理もない。そこには、我々E組を侮辱する内容、そして、E組管理委員会という新しい委員会の設立を問うものだった。

 

 

『これは君を強者としての振る舞いを身につけるための儀式だ。かつての友を支配することで、それらの振る舞いは自然に身に付く』

 

 

「あの理事長………………そこまでするか…………」

 

 

竹林はフラッと立ちあがり、やります、と言った。しかし、その声から明らかに動揺や躊躇いの意が入っているいるのが全員の目に見えた。竹林が理事長室を出ると同時に、マシンドラゴンフライも外に出て、皆がいるところに戻ってきた。

 

 

「どうしよう、殺せんせー。あんな内容のスピーチをさせるなんて、竹林君が可愛そうだよ」

 

 

渚の言葉に皆は首を縦に振る。

 

 

「ああいう奴を狩っとくべきだった」

 

 

「やめろデュオ。物騒なことを言うんじゃないよ。どうする、殺せんせー?」

 

 

「……今日の夜、竹林君に会ってすこしアドバイスをしてきますが………彼が明日、そのスピーチを読まないという確証はありません。あとは彼次第です……」

 

 

皆は心配だったが、とりあえず解散し、帰路に着くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

 

 

翌日。

 

 

竹林は檀上に再び立った。理事長や殺せんせーら全員が見守るなか、彼は喋り出す。

 

 

「……僕のいたE組は、学力という強さがなかった為に、差別待遇を受けています。要するに僕が言いた事は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなE組がメイド喫茶の次くらいに居心地が良いのです」

 

 

「「「!?」」」

 

 

竹林の発言に皆に衝撃が走った。

 

 

「E組の中で役立たずだった僕を、皆は見に来てくれた。彼等は、皆が認めなかった僕と対等に接してくれた」

 

 

この辺りで、隠れて見ているホリーの目には涙が………あったそう。

 

 

「社会が認める強者を目指す皆は正しいです。でも、僕は……強い者の首を狙う弱い立場の方が……楽しい」

 

 

ここで、浅野が乱入する。

 

 

「撤回しろ竹林!さもないと……」

 

 

浅野は竹林の手にある物を見て、驚きの表情を浮かべた。

 

 

「この盾は理事長室からくすねてきました。理事長は強いです。すべてが合理的だ」

 

 

竹林はナイフに鉄をつけたものを振り下ろした。ガラスの盾は粉々に砕け、床に落ちる。

 

 

「さて……合理的に考えれば……E組行きですね。僕も」

 

 

言いたいことを言い終わったのか、ポカーンと間抜けな顔をしている本校舎の生徒たちを置いて、檀上の袖にスタスタ歩いていった。

 

 

「………救えないな、君は。折角強者になれるチャンスをもらったのに」

 

 

「そうかい?強者ではなく、ただ逃げてるようにしか見えなかったどね」

 

 

竹林が静かに返し、去っていくのを浅野はただ睨んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって数日後のE組校舎。

 

 

「さて、今日から爆薬を使った暗殺も取り入れる」

 

 

勿論寺坂達のような使い方は禁止と、烏間先生は釘を指す。

 

 

「さて、この取り扱い書を覚えてくれる人はいるか?」

 

 

──────────誰も手を挙げない。

 

 

(やれやれ、あんな分厚い本達を覚えるなど容易い。じゃ、僕が……)

 

 

「勉強には使えないですが、今後、役立つかもしれませんね」

 

 

僕よりも一歩早く名乗り上げたのは、竹林だった。

 

 

「暗記出きるか?竹林君」

 

 

「二期OPの替え歌にすれば、すぐに出来ますよ」

 

 

竹林は眼鏡をクイッとやって、言うのだった。




THE NEXT story 2/6 PM 22:00


キーワードは『runaway』


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第75話 暴走の時間

今回は短めです。


今までの話の中で、多分1番短いです。


この話は序章に過ぎない…………!


系列的には、竹林がE組に復活したその日の放課後の話です。


短いですが、どうぞ!


とある一室にて、その男は珈琲を飲んでいた。彼の手元のデスクには、おびただしい量の資料があった。その傍らには、怪しい注射器が………。

 

 

「さて、彼を捕獲するか……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、創真はフェラーリの車内で音楽を聴いていた。

 

 

「創真様、随分とご機嫌が良いですね。竹林君が戻ってきたのがそんなに嬉しかったですか?」

 

 

「さーどうですかね~」

 

 

どこか不敵な笑みを浮べながら創真は答える。

 

 

(いや~、やっぱ暗殺教室は楽しいねぇ……平和だし)

 

 

しかし、その平和を塵と化す、巨大なトラブルと言う名の竜巻は迫ってきていた。

 

 

それに、創真は気づくことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても竹林はやるな………盾を豪快にぶっ壊すなんて」

 

 

隼が呟きながら家へと向かっていると──────

 

 

「久しぶりだな。隼君」

 

 

電柱の陰からヌッと出てきたのは……

 

 

「お前………確かシロだったな。何の用だ」

 

 

「別に大したことじゃないんだが……私と組まないか?」

 

 

「はぁ?絶対裏があるだろ」

 

 

シロの提案に隼は警戒を強める。

 

 

「まぁまぁ。それより、これを見てくれないか」

 

 

シロは懐から注射器を取り出す。

 

 

「この中に入っている液体はね、君専用に作らせだ。これを打てば、身体強化が施され、さらには君の理性を崩壊させ、何もかもを殺し、壊す……最強の超人となる。そうなれば、あのタコを殺すなど容易いと私は見ている」

 

 

「そりゃ何とも物騒な代物で……悪いけど、そんな怪しい薬はごめんだね」

 

 

「まぁ、そう言うと思ったよ。しかし、地球を救う為だ。多少強引だが、強制的にでもやるとしよう」

 

 

「……俺を倒せると思ってんのか?」

 

 

隼は色々習ってるため、一筋縄ではいかない相手。しかし、シロはそんなことはとっくに知っている。

 

 

「だから、彼女に協力してもらった」

 

 

「彼女………まさか碧……グワ!」

 

 

隼は首元に電流が走り、その場に倒れる。

 

 

「ダメだね~隼。後もちゃんと見とかないと」

 

 

碧海が笑顔でスタンガンを指で回す。

 

 

「く………そ……が……」

 

 

「まだ話せるんだ。じゃ、次は……」

 

 

ブスッ!

 

 

「ガッ!」

 

 

隼は完全に意識を失わせる。

 

 

「んー最初からこの麻酔針を使えば良かったな~。シロ、とっとと運ぶわよ」

 

 

「分かっている。これで、あの憎き超生物を殺せる……」

 

 

「あーこの前話してた、他の人に話すと記憶消去されるやつのことね。良いわ。ついでに隼にその超生物を殺して、地球を救ってもらおうかな?」

 

 

「最初からその契約だ」

 

 

シロと碧海はあらかじめ用意しておいたワゴン車に隼を押込み、車を出した。隼を無力化して、拉致するまでに掛かった時間は僅か3分。誰も、この現場を見た者は…………いない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まもなく、このE組に厄災が降りかかる………!!

 

 

countdown 3




THE NEXT story 2/7 PM 22:00


え?上のカウントダウンは何のか?


さぁ………察しが付く人もいるかもしれませんが、お楽しみに。



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第76話 暴走の時間 2時間目

色々変かも知れないけど………楽しんで貰えたら幸いです!


それではどうぞ!


創真side

 

 

おかしい。絶対おかしすぎる。これは100%何かしらのトラブルがあったに違いない。

 

 

一体どうしたんだ………

 

 

「創真君。この問題の答えは?」

 

 

「……………」

 

 

「創真君?」

 

 

「あ、2番?」

 

 

「正解です…………創真君どうかしたのですか?今日はいつもと様子が違うように見えますが………」

 

 

殺せんせーが不思議そうに聞いてくる。

 

 

「………隼の事です」

 

 

「隼君………ですか?」

 

 

「どうもおかしい。あいつが3日間も学校に来てないなんて。しかも、怪我や風邪なら報告位あるはず。それに、連絡も着かない」

 

 

竹林復帰から既に3日。どういうわけか、隼は学校に姿を見せてない。

 

 

「け、風邪とかで寝てんじゃねーのか?そんなに心配する必要ねぇだろうが」

 

 

「そうそう」

 

 

寺坂の意見に皆は首を縦に振って同意を示す。

が、しかしだ。

 

 

「いや……これは何かありそうだな。隼が2日以上休んだら何かのサインだ。僕の経験上、それは百発百中だ」

 

 

「「「何だよ、そのサイン……」」」

 

 

皆も流石に呆れ気味だ。いや、でも心配な物は心配だ。

 

 

「確かに、報告位あっても良いとは思うんですがね………恐らく風邪などの軽い病気だと思いますが、放課後、ちょっと確認するついでに皆さんでお見舞いに行きましょう」

 

 

と言うわけで、放課後に皆で隼の家に押し掛ける事が決定。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

 

放課後

 

 

変装した殺せんせーも含め、皆は閑静な住宅街を歩いていた。

 

 

「前に、隼が3日以上休んだ時に何か重い病気になったのか?」

 

 

磯貝が創真に聞いてくる。

 

 

「ある。ちなみに2日以内なら、ただの風邪程度の病気だ」

 

 

「で………3日以上だったときはなんなんだったんだ……?」

 

 

皆が創真の答えに注目する。

 

 

「3日以上休んだ時…………まぁ、僕はそれを1回しか見たことないがな………3日以上休んだときはな………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

インフルエンザだった。11月なのにな」

 

 

「「「…………………………」」」

 

 

「………驚かないのか?」

 

 

なんか相当ヤバイことかと思ったらそんなことかよ…………って感じの顔を皆している。

 

 

「つーか、それだと今回もただのインフルとかじゃね?」

 

 

「もー創真君は心配しすぎなんだよ~」

 

 

倉橋にも言われると、創真も自信が無くなってきてしまった。

 

 

(仮にもインフルとかだとしたら…………何故連絡位しないんだ?)

 

 

そうしている内に、一行は、隼の家についた。殺せんせーがインターホンを押す。しかし、誰も出てこないし、反応すらない。

 

 

「そう言えば、隼の親は?」

 

 

「…………3日前から旅行行ってて居ないと言ってた。いるとしたら隼だけだ」

 

 

その後も何度もインターホンを押すが、反応は何もない。

 

 

「あーもう、いつまで経っても反応ないじゃん!なら力強くで……」

 

 

「ホリー、流石にそれは……」

 

 

ガチャ

 

 

「……………あらら?」

 

 

「………開くじゃん」

 

 

ホリーが何処か誇らしげな表情で呟いた。

 

 

「鍵を開けっぱなしにしてたのか……?」

 

 

一応、お邪魔しまーすと、言って中に入っていく。皆も続いて中に入る。創真は2階にある隼の自室のドアを開ける。

 

 

「……………いないな」

 

 

「どうだった創真君?」

 

 

倉橋が聞いてくる。

 

 

「見ての通り………いない……」

 

 

「隼君、何処にいるんだろう…………?」

 

 

下に降りると、他の皆が待ち構えていた。

 

 

「下にはやはり誰も……ただ、このタブレットとその上にあった紙を持ってきました」

 

 

その紙を見ると、『このタブレットの動画を見よ』と書いてある。

 

 

「(筆跡は隼のじゃなさそうだな……)氷室さん、その動画を」

 

 

「はい」

 

 

氷室はタブレットを操作し、動画を再生する。画面には女が映っている。

 

 

『初めまして、E組の皆。勘の良い人ならもう分かると思うけどさ、隼は誘拐した。これが証拠』

 

 

その女が退くと、そこには鎖で繋がれ、倒れている隼だった。

 

 

「「「!!」」」

 

 

『隼を助けるには?そーだね……じゃ、ゲームをしようよ!今君達がいる家に地図を隠したんだ。合計4枚。それらを組み合わせたら隼のいる場所が分かるよ。だけど、そのうちの1枚は……ここにはない。京都にある。だから、誰かが京都に行って、取ってこないとね~。でも、取りに行くのはそこのタコじゃなくて……結城 創真。あなたが取りに行きなさい』

 

 

「………ほう」

 

 

『地図がある場所はこの動画の最後に示されるよ。全ての地図を集めて、助けに来なよ。まぁ、あんまりにも遅かったら………こっちから来ちゃうかもね!』

 

 

そして、画面は暗くなった。そして、地図が表示される。

 

 

「「「……………」」」

 

 

皆は何も言えず黙っていた。すると、倉橋があることに気付いた。

 

 

「あれ?創真君がいない!?」

 

 

皆も辺りを見回すが、既に姿は見えない。ついでにホリーやデュオ、キバットも。

 

 

「どうやら創真はもう京都に行ったみたいだね……ねぇ、ボーッとしてないで俺らも3枚の地図を探そうよ」

 

 

カルマの一声で、皆は我にかえった。

 

 

「そうですね………では、皆さん。男子は1階を。女子は2階を探しましょう」

 

 

「「「はい!」」」

 

 

殺せんせーの指示で、皆は地図探しを始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁて……」

 

 

奴は隼を眺めながら笑みを浮かべていた。

 

 

countdown 2




THE NEXT story 21:00~22:00


この時間の間に投稿します!


レッツゴー京都!


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第77話 暴走の時間 3時間目

ついに新マシンシリーズが………!


分からないな、って人は活動報告欄見てから話を見てみたほうが良いです!


どうぞ!


創真side

 

 

地図を見た僕はすぐにホリーに憑依させ、マッハで空へと飛び出していった。

 

 

「チッ………なんでわざわざ京都に置くんだよ……」

 

 

全くもって、その意図が分からない。

 

 

「罠………と言う可能性を考えていたはずだろ?創真」

 

 

デュオの言う通り、高確率で罠だ。

 

 

しかし、だ。

 

 

「罠だと知ってても、隼を助けるためだしね……ま、全部避ければ良い話だし」

 

 

「相変わらずポジティブ精神だな、創真」

 

 

懐から覗かせているキバットがニヤリと笑みを浮べる。

 

 

「ところであと何分位で着く?」

 

 

「………あと15分くらいか?」

 

 

往復で大体30分くらいか………ん?人間がマッハクラスで飛んで大丈夫か?まー……大気中を何も装備せず、マッハで飛んだら全身骨折確定だが、ホリーの憑依で体が強化されてる上に、主翼からバリア的な物が発生してるらしいから大丈夫だ。バリアの効果か、意外と静かに飛べる。

 

 

なんてどうでも良い話はしてないで、早く京都へ………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===============

 

 

一方、隼の家では地図の捜索が行われていた。

 

 

「殺せんせー、あったよ!」

 

 

「お手柄です、倉橋さん。それにしても上手く隠している。さて、あと2枚ですか……」

 

 

結構凝った所に隠してあるため、なかなか発見できない。今の1枚目も、見つけるのに20分掛かった。

 

 

(それにしても………あの映像に映ってた女は誰だ?殺せんせーの事も知っている素振りだったし……………)

 

 

カルマはリビングの食器入れを探しながら考える。

 

 

「…………!!あった……」

 

 

2枚目は伏せてあるティーカップの中に畳んであった。

 

 

「殺せんせー、こっちも見つけました!本の間に挟まってました」

 

 

片岡ら女子が1階へと来た。

 

 

「じゃ、これでこの家の中のは全部って訳か」

 

 

カルマも皆に見せる。

 

 

「これ試しに組み合わせてみようぜ!」

 

 

皆は地図を組み合わせてみると、中村があることに気付いた。

 

 

「これさ………どこの日本の県でも無さそうじゃない?」

 

 

確かに日本のどの県の形でもない。

 

 

「全部揃わないと分かんないってことか………後は創真待ちだね」

 

 

カルマもお手上げのようだ。

 

 

「無事だと良いんですがね……」

 

 

殺せんせーは祈るように呟いた………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

「えー……ここか」

 

 

指定されていた場所は何故か廃工場。

 

 

ドアの前に立ち、ドアノブを回すが………

 

 

「………鍵掛かってんじゃん」

 

 

入れないじゃん、おい。

 

 

「しょうがない。創真、これ使え」

 

 

デュオが取り出したのは、ドミネーター。それを受け取り、しっかり構える。

 

 

『執行モード。リーサル・エリミネーター』

 

 

音声が流れたあと、ドミネーターは変形。

 

 

ダァン!

 

 

弾が着弾した数秒後、ドアが内側から吹き飛んだ。

 

 

「これ本当に凄いな…………人間相手なら死んでるぞ、今の」

 

 

そう呟きながら、ホリー達と共に入っていく。工場の中には、今は使われていない機械が置いてある。ほこりを被っていることから、相当前に潰れたのだろう。

 

 

「おい、創真!あれじゃないのか?」

 

 

キバットが羽で指した方向には、紙が置いてある。駆け寄ってみると、確かに地図の切れ端だった。

 

 

「これが4枚目だな。よし……」

 

 

創真は写真を撮り、律を呼び出す。

 

 

「律、これを皆の携帯に送れ。そして残りの地図を組み合わせて場所を特定しろ」

 

 

『了解です!』

 

 

写真を送り、数分の内に律が再び口を開いた。

 

 

「分かりました!この地図全体は横浜市の地図で、指定された場所は横浜港周辺と思われます!」

 

 

赤く丸くしてある所は……………横浜港の周辺を指していた。

 

 

「よし、皆に知らせろ。それと僕も今から戻ると……」

 

 

創真達は気付いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分が銃を複数人から突きつけられていることに。

 

 

(くそ、やらかした!回りを警戒するのを忘れてた)

 

 

ホリーもデュオもキバットも地図に夢中で油断していたため、こんな近距離まで接近を許してしまった。

 

 

「………どうやら、罠だったみたいだね。君達、何者?」

 

 

「なーに、名乗るもんでもないさ。ただ、ここに金持ちの会社の社長の息子が来るって言う情報を貰ってな。三日間、ずっと張り込んでたのさ。かっさらって人質にして、たっぷり金を要求してやるさ」

 

 

「3日もやってたのかよ…………まぁ、良いや。その情報を提供したのは、隼を拐った奴の仕業か。めんどいことをしてくれるよ」

 

 

創真が目配せで、ホリーに何かを伝える。

 

 

「貴様………何か企んでるのか?」

 

 

「さー…………ね!」

 

 

ホリーは閃光弾を取りだし、床に投げる。辺りは眩い光に包まれる。その隙に、機械の影に隠れる。

 

 

「なめやがって!殺しはするな!撃ちまくれ!」

 

 

ボスの指示により、大量の銃弾が飛んでくる。

 

 

「どーするよ、創真?」

 

 

「いやさ、こんなこともあるんじゃないかと思ってさ、あれを持ってきさせといたんだよ?」

 

 

「ああ、これのことか……?」

 

 

デュオが取り出したのは謎の球体、否、新兵器だ。

 

 

「それをあいつらに投げろ。そしたらすぐ解決だ」

 

 

よく分からないと言った表情が、デュオは言われた通り、奴等のいる方向に投げた。

 

 

「待て!撃つのをやめろ!」

 

 

怪しいと感じたのか、ボス的な奴は銃撃を止めさせる。僕の計算通り。

 

 

「なんだ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギロ

 

 

「!?何かいるぞ!撃て!」

 

 

「もう遅い……」

 

 

そう呟いた瞬間、何かが大量に飛び出した。

 

 

「な、なんだあれは!?」

 

 

「皆が恐れるはちさんだよ………刺せ!」

 

 

僕の号令と共に、はちさん…………いや、大量のマシンワスプが襲いかかる……!!

 

 

「ウワァァァァ!?」

 

 

ほとんどの人が嫌いな蜂の出現に、パニックになり、慌てて引き金を引くが、小さい上にすばしっこく動くワスプに翻弄され、全然当たらない。

 

 

ブスッ!

 

 

「ぐわぁ!」

 

 

ドサ

 

 

「おい!しっか………

 

 

ブスッ!

 

 

「ギャア!」

 

 

ドサ

 

 

と、まぁこんな感じで悲鳴をあげてどんどん気絶していく部下達を見たボスは形勢不利を悟ったのか、単身逃げ出そうとした。

 

 

しかし

 

 

「ヒィ!?」

 

 

女王バチ………いや、マシンワスプ(プロトタイプ)に行く手を阻まれた。

 

 

後は、察しの通り♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お片付け完了。おっと、9分も掛かっちまった。急ぐぞ!」

 

 

「「おう!」」

 

 

創真は休まず、横浜港へと向かった。ちなみに奴等は創真が通報しといたので、勿論全員逮捕である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コロシテヤル…………ミナゴロシだ……!」

 

 

彼は鎖を引きちぎり、低い声で呟いた。

 

 

countdown 1




THE NEXT story 2/9 PM 21:00 or 22:00


ワスプから……………アントマンを連想しました 笑


あ、それと隠されてた地図は指定場所以外の地名は書いておらず、きれいに4等分されてるわけではないという設定です!


次回もお楽しみに!


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第78話 暴走の時間 4時間目

きのうのマシンワスプの針は麻酔針と言うことでお願いします!


今回も相変わらずのハチャメチャな話です。


楽しんで貰えたら幸いですby弟


隼side

 

 

「あ………?ここ何処だ……?」

 

 

確かシロと碧海に襲われれたあと、どうなったんだっけ………?

 

 

「!?なんだこの鎖………」

 

 

腕の自由が効かないと思ったら、これが原因か。

 

 

「やぁ、お目覚めのようだね~」

 

 

その声は、1番聞きたくない声だった。

 

 

「碧海…………!」

 

 

「フフ………じゃ、始めよっか」

 

 

碧海は例の注射器を取り出した。

 

 

「やめろ………!やめろって言ってんだろうが!」

 

 

「無駄だよ。彼女にもそれを注射してるからね……」

 

 

後ろにいたシロが小さな声で呟いたのを隼は聞き逃さなかった。

 

 

「おい、シロ!まさかこの薬……碧海にもやってんのか!?」

 

 

「ご名答。しかし、肉体強化の作用はなく、理性の崩壊と心理的なハードルを下げるのさ。今の彼女は君を連れ戻す為に、何だってやるだろうね」

 

 

「………ッ!」

 

 

「もう良いかな~?やって」

 

 

「!!やめろ!さっきからやめろって言って……」

 

 

ブスッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===============

 

 

「ガ!グガァァァァ………!」

 

 

「さぁ、私の弟は強い………それを見せつけなさい!アハハハハハハハ!」

 

 

「ガァァァァァ!コロシテヤル!ミナゴロシだ!」

 

 

隼の表情は一変。理性は崩壊し、肉体は強化された。

 

 

そして……鎖を引きちぎる。

 

 

「おっと。まだ寝ててもらわないとね」

 

 

シロが何かを隼の首に刺し、昏睡に陥らせる。

 

 

「さぁ、来なさい、E組!友達の変わり果てた姿を見せてやるから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真がワスプを使って戦っているとき、殺せんせー達は律から地図を組み合わせてみた結果を聞いていた。

 

 

「………横浜港?」

 

 

「はい。指定場所は横浜港周辺と思われます」

 

 

律が冷静な口調で報告する。

 

 

「………それで創真君は?」

 

 

殺せんせーが律に聞く。

 

 

「謎の敵と交戦中です。それと伝言ですが、とっとと横浜港行け、との事です」

 

 

「しかし、創真君を置いていく訳には……」

 

 

「あいつにはホリーやデュオ達がいるんだからそんな簡単に死なないでしょ。それに本人が早く行け、って行ってるんだから早く行こう」

 

 

カルマが殺せんせーに進言する。

 

 

「………仕方ありません。それでは皆さん、外に出てください。先生が全員運びます」

 

 

皆は外に出て、近くの空き地へ行くと、そこには2つのでかいバックがあった。これで運ぶのだろう。見つからないように、殺せんせーは急いでバックの中に皆を詰め込んでいく。

 

 

「それでは行きますよ。10秒以内につきます」

 

 

殺せんせーはバックを持って、飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

文字通り、ほんの数十秒後。皆は横浜港に着いた。

 

 

「さて………隼君は何処に……?」

 

 

変装した殺せんせーと生徒達はが辺りを散策する。

 

 

すると──────

 

 

「ん?お前達は椚ヶ丘の3年E組の連中か?」

 

 

後ろから黒服の男に話し掛けられた。

 

 

「あなたは……?」

 

 

殺せんせーの質問を男は無視し、言葉を続ける。

 

 

「早くこの船に乗れ。案内する」

 

 

「何処にですか……?」

 

 

「さぁな。行けばお前らが1番会いたい人がいるそうだ。元より、俺も詳しく知らん。乗るのか?乗らないのか?」

 

 

皆は顔を見合わせたが、乗ることに決めた。皆が次々に乗っていくなか、最後尾にいた氷室が乗ろうとすると………

 

 

「待て。お前はここに残れ」

 

 

「「え!?」」

 

 

「でなければ、船は出すなとの命令だ」

 

 

「…………………」

 

 

氷室は何も言わず、船から背を向ける。

 

 

「待ってください!なんで氷室さんだけ残すんですか?」

 

 

殺せんせーが食って掛かる。

 

 

「さぁな。さっきも言ったが、俺は知らん」

 

 

「あなたねぇ………!」

 

 

「お待ちください。殺せんせー、先を急いでください」

 

 

氷室が殺せんせーを諭す。

 

 

「しかし……」

 

 

「こんなところで時間を食ってないで早く先に行ってください。そしてあなたの生徒である隼君を助けてあげてください」

 

 

「氷室さん……………分かりました」

 

 

殺せんせーは船に戻る。男が運転席に乗り込み、エンジンをかけ、間もなく、船は出航。氷室の視界からどんどん遠ざかって行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

約10分後、船が完全に視界から消えると、氷室は眼鏡(伊達)をつけ、後ろを振り返る。

 

 

「………これは何の真似ですかね?」

 

 

「そういう命令だ。奴に深い傷を残せとな」

 

 

別の男から、氷室は銃を突きつけられていた。

 

 

「なるほど。私を殺して、創真様に見せつけようとでも?」

 

 

「………………」

 

 

男は何も答えない。

 

 

「しかしながら、その命令は実行できないでしょう」

 

 

「………何故?」

 

 

ゴン!

 

 

「グハ!」

 

 

男の頭上から蜂の巣が降ってきた。衝撃の余り、男は頭を抑え、地面に膝をつける。後は前回と同じようにブスッと♪

 

 

「随分と遅かったですね。皆さんもう行ってしまいましたよ」

 

 

「それが京都に行って帰ってきた人に掛ける言葉ですか………?」

 

 

創真らが京都から帰還した。

 

 

「それで、皆は?」

 

 

「船で何処か行きました。隼君のいる所かと思われます」

 

 

「場所は?」

 

 

「創真様の作ったこの眼鏡が教えてくれますよ」

 

 

「早速使ったんですか……………やりますねぇ」

 

 

氷室は眼鏡を外してスマホに接続する。氷室が付けたこのメガネ………まぁ、色々機能があるのだが、その内の1つ『追跡』を今回は使った。氷室は船が出航する直前、ポケットから小型の発信器を船の船体に取り付けたのだ。誰もそれに気付いてないが。そして、小型の発信器が出す位置情報をこのメガネだけが拾えると言うわけだ。

 

 

「あぁ、これですね。恐らくまだ移動中かと」

 

 

創真は氷室のスマホを借り、地図の倍率を下げて広範囲を見渡す。

 

 

「恐らく、この島に向かっていますね。そして、黒幕もいる」

 

 

創真がそう指摘した島は、とてつもなく小さいものだった。

 

 

「それでどうします?」

 

 

「そうですね………ちょっと胸騒ぎがするので、武器を取ってから行きますか」

 

 

「武器………………あぁ、ホリー君達が作った」

 

 

「備えあれば憂いなし、ってね。準備が出来次第、ホリーの最強位に入る月1限定の『テレポート』使って奇襲を掛けます………………嫌な予感がする。早く行きましょう」

 

 

創真が指をパチンと鳴らす。瞬時に彼等の姿は港から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、皆はとある島に着いていた。そこには巨大なタワー型のマンションがそびえ立っている。船に乗っていた男がマンションの中のエレベーターへと誘導した。そして、30階のボタンを押す。

 

 

「それじゃ、健闘を祈ってるよ」

 

 

心のこもってない激励の言葉を言ったあと、ドアが閉まり、エレベーターは動き出す。

 

 

「皆さん、心の準備は良いですか?」

 

 

「「「はい……」」」

 

 

みんなの声には不安が入り交じっていた。そして、エレベーターは最上階に。ドアが開き、皆は部屋へ足を踏み込む。

 

 

そこにいたのは───────

 

 

「随分と遅かったねぇ。コンビニでも寄ってたのかい?」

 

 

「シロ…………これ全部あんたがやったの?」

 

 

カルマが殺せんせーよりも前に出て聞く。

 

 

「まぁ、全部ではないが、ね」

 

 

「あと、映像に映ってた女は誰?ここにはいないの?」

 

 

「さぁ?」

 

 

答える気はない様子。

 

 

「それよりも……隼君はどこにいるんですか?答ええなさい、シロさん!」

 

 

「分かった分かった。教師の鑑だね。来なさい、隼」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドーン!

 

 

壁が吹き飛んだ。

 

 

「嘘だろ………?」

 

 

そんな声が聞こえるのも無理もない。何故なら壊れた壁から出てきたのは………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………目がいつもと違う隼だった。




THE NEXT story 2/10 PM 22:00


それと、今回氷室が使った眼鏡の名前を募集するので、活動報告欄に良かったらお願いします!


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第79話 暴走の時間 5時間目

あーヤバイヤバイ。超ヤバイ(棒読み)


ぜひ楽しんで下さい。


では、スタート!


今の隼の姿には驚きしかなかった。肩にはバズーカを2つ背負い、腕や足にはナイフがつけられていた。

 

 

「驚きの余り、声も出ないかい?まぁ、そうだろうね」

 

 

シロが皆の反応に満足気な声を出す。

 

 

「あなた………いったい隼君に何をしたんですか……!?」

 

 

殺せんせーが薄黒い顔色で尋ねる。

 

 

「ちょっとした薬と武器を与えただけさ。それより良いのかい?」

 

 

「(ハッ………いつのまに……!)」

 

 

隼が殺せんせーの目の前に………!!隼は隠し持っていた鞭を振るう。殺せんせーは回避行動を取るが、それでも4本の触手が破壊された。

 

 

「鞭の先端はマッハを超える。流石にすぐにはなれないだろ?」

 

 

「くっ……」

 

 

隼は再び鞭を振るい、さらに二本の触手を破壊し、体力を奪っていく。

 

 

「隼君、正気に戻ってください!」

 

 

「無駄だ。お前の声は届かない……」

 

 

隼は肩にあるバズーカを構え、殺せんせーに向けて発射する。しかし、殺せんせーは触手を使って、軌道を逸らした。

 

 

「良いのかい?それで」

 

 

「しまった!」

 

 

逸れた弾は生徒達の方へ。

 

 

「危ない!」

 

 

殺せんせーが生徒の身代わりになり、爆発を受ける。

 

 

「「「殺せんせー!」」」

 

 

「大丈夫です………皆さん、平気ですか?」

 

 

「なんとか………殺せんせー、前!!」

 

 

またもや殺せんせーは隼に接近を許してしまった。今度は日本刀を取り出し、光の如く振る。

 

 

「追加で2本……これで8本か。やはり彼は使えるな………隼、攻撃を続けなさい」

 

 

「……………」

 

 

隼は何も言わずに刀を振るうが、避けられる。

 

 

「隼君!正気に戻ってください!君はこんなことを望んでないはずです!」

 

 

殺せんせーの訴えも虚しく、隼は攻撃の手を緩めない。

 

 

「さぁ、そろそろ終わらせようか」

 

 

シロの言葉を合図に、服の袖から例の紫の光が放たれる。

 

 

「にゅぐ……!!」

 

 

この隙に隼は懐からワイヤー銃を取り出し、ワイヤーを発射する。ワイヤーは殺せんせーの体に巻き付き、隼は右へ大きくワイヤー銃を振った。殺せんせーの体も一緒に右へ飛び、壁に叩きつけられる。

 

 

「コロス………!」

 

 

「殺せんせー、逃げて!」

 

 

誰かが叫ぶが、隼は倒れている殺せんせーの目の前に立ち、刀を降り降ろし──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………」

 

 

降り下ろされたと思われた刀は殺せんせーの目の前で止まっていた。隼は何故か天井を見上げている。

 

 

「なんだ!?早く止めをさせ!」

 

 

『執行モード。デストロイ・デコンポーザー』

 

 

謎の機械音が聞こえたかと思うと、天井が光だした。そして、天井の一部が消えた。音もなく、綺麗な円を描いて。空いた丸い天井の穴から誰かがスッと静かに降りてきた。

 

 

「………全く……来るのが遅いんだよ…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真!!」

 

 

「ごめんよカルマ。だが、こっちは京都に行って敵を倒して再び戻ってきたんだ。ちょっと位お疲れ様の一言とかないのかね……」

 

 

創真が首を回しながらいつもの調子で言う。

 

 

「来たか、創真君。だが、遅い。もう彼は君が知ってる隼君じゃないよ」

 

 

すると、ホリーが憑依を解除して言い返す。

 

 

「そんなの見なくても分かってるよ、全身白男。僕らはそんなに馬鹿じゃないんだ。白男ってのは大体馬鹿ばっかだよ全く………」

 

 

(((お前も全身白だろうが!!)))

 

 

当のホリーは突っ込みには気付かない。

 

 

「全く……のこのこと操られやがって。本当に迷惑ばかり掛ける親友だ。つーか聞いて………ってあれ?」

 

 

さっきまで創真の目先にいたはずの隼がいない。

 

 

ガキン!

 

 

天井に張り付いていた隼が勢いよく降り下ろした剣を、創真は持っていた実体剣…………通称 ヒートサーベルtype D ⅠⅠⅠで受け止めた。

 

 

「なんつー馬鹿力。流石、馬鹿だね……」

 

 

両者はしばらく、つばぜり合いを続けた。先に動いたのは隼だ。剣を捨て、後ろへ下がると同時にワイヤー銃を発射するが、創真はサーベルで弾いた。その間に、隼はバズーカの引金を連続で引く。創真は余裕で避けるが、またも皆のいる方向へ飛んでいく。

 

 

「おっとまずい。ドミネーター、殺るよ」

 

 

『執行モード。リーサル・エリミネーター』

 

 

ドミネーターは変形し、弾に向かって弾丸を放つ。爆発した弾の破片をホリー達が弾く。

 

 

しかし、だ。

 

 

敵が自分から背を向けている間に何もしないわけがない。隼はポケットから閃光弾を取り出し、爆発させる。デュオが咄嗟に翼を展開し、皆を光から守る。

 

 

「気を付けろ創真!でかいのが来るぞ!」

 

 

そこまで威力はないのだが、1番前にいたホリーが目を隠しながら叫ぶ。

 

 

「!!ヤバ……」

 

 

隼の回し蹴りを創真は顔面に喰らい、怯んだところにさらにアッパーカットやブロー等の技を浴びせ、とどめとばかりに発勁を浴びせる。創真は腕でガードするが、衝撃で壁に大きく打ち付ける。

 

 

「創真君!」

 

 

「くっ………………こりゃ、スーパーヘビー級だね」

 

 

光が収まるまでの僅かの間に一気に形勢逆転されてしまった。

 

 

「行っては駄目です倉橋さん!」

 

 

創真に駆け寄ろうとする倉橋を殺せんせーが止める。

 

 

「でも……創真君が………」

 

 

隼は刀を拾い、創真の目の前に立つ。

 

 

「創真!くそ……」

 

 

光に目をやられたホリーがふらつきながらも創真に駆け寄り、憑依しようとするが、ホリーを追い抜かし、隼の前に立った者がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「神崎さん……!?」

 

 

「ダメだよ隼君………もうこれ以上……誰も傷付けないで………いつもの隼君に戻ってよ………」

 

 

神崎の目からは涙がポツリ……ポツリと落ち、足は震えていたが………決して…………隼の目の前を動こうとしなかった。

 

 

「…………………」




THE NEXT story 2/11or 12 PM 22:00


出来れば明日投稿したいですが…………まぁ、いつもの時間に覗いてみて下さい。


投稿してなかったら、月曜日になります!


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第80話暴走の時間 6時間目

とりあえず…………どうぞ!


「神崎さん………早く逃げた方が良い……今のあいつには…………」

 

 

創真が目の前にいる神崎に言うが、それでも動かない。

 

 

「ホリー………お前の速度なら……」

 

 

「分かってるよ!でも、あの状態じゃ、僕が助ける前に刺される可能性が……」

 

 

距離を縮めて、余り刺激しても大惨事に成りかねないため、ホリーもその場を動けない。

 

 

「思い出して、隼君………夏休みの島で……一緒にゲームしたよね………?」

 

 

「ゲー………ム………?」

 

 

「私は楽しかった。………だからまた一緒に対戦しようって言った………」

 

 

「……………………」

 

 

「………だから………戻って来て………?」

 

 

隼は創真に降り下ろそうとした刀を創真の目の前から遠ざける。

 

 

「くそ………何をしている!早くとどめをさせ!」

 

 

しかし、シロの声にすら隼は反応しない。すると、隼の手から刀が落ちた。乾いた音がその場に響く。

 

 

「…………正気に戻ったか!?」

 

 

デュオが独り呟く。

 

 

「………隼君………戻って来てくれ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「!?」」」

 

 

「ゴチャゴチャ………ウルセェンダヨ!」

 

 

隼が神崎の首を掴み、強く締める。

 

 

「オマエノコエ………キクト………アタマガイタクナル………シャベルンナヨ!」

 

 

「それは……本当の隼君が………抵抗してるから………だよ……」

 

 

首を絞められながらも、神崎は諦めない。

 

 

「ウルセェ………シネ……!!」

 

 

隼がナイフを取り出し、高く構える……!

 

 

「危ない!」

 

 

創真の服の袖口からワイヤーアンカーが発射される。狙いは隼ではなく、床に落ちているサーベルだ。先端のアンカーがサーベルの持ち手を掴み、創真が立ち上がると同時に、サーベルが手に収まり、隼のナイフを斬り上げた。

 

 

「とっとと目を醒ましやがれ、隼!!」

 

 

創真が精一杯の力を込めて、隼を蹴り飛ばす。

 

 

「グハ!!」

 

 

あまりの勢いに、隼が苦痛の声を漏らす。

 

 

「隼の事を考えて、あまりやりたくなかったが………仕方ない。ドミネーター」

 

 

『執行モード。リーサル・エリミネーター』

 

 

ドミネーターの銃口から、天井に向けて弾丸がきっかり12発放たれた。

 

 

「天井でも落とそうとでも言うのかい?そんなもの、今の隼なら避けれる」

 

 

「本当に頭悪いな、シロ。落とすのは天井じゃない。お前、ここに住んでたのか知らないけど、なんもここの事とか分かってないんだな」

 

 

創真が言い終わった途端、天井が爆発した。隼の目に、巨大な物が落ちてくるのが見えた。間一髪で隼は落下物を避ける。

 

 

「これは………貯水槽!」

 

 

屋上から落ちてきた貯水槽に阻まれ、貯水槽の向こうにいる創真の姿が見えない。すると、創真のいる方向から吸着型機雷が飛んできて、貯水槽の側面に張り付いた。

 

 

「……まさか……!!」

 

 

シロは創真が何をしたいか分かったようだ。

 

 

「はい、ドーン」

 

 

文字通り、ドーンと爆発し、貯水槽の水が流れ出す。隼は大量の水に巻き込まれ、足元をすくわれる。創真は貯水槽の上に飛び乗り、ワイヤーアンカーを発射する。

 

 

「隼、避けろ!」

 

 

シロの指示に素早く反応した隼は、ギリギリの所で避けられた。ワイヤーアンカーは水溜まりが出来ている床に突き刺さった。

 

 

「大量の水を流して足元をすくわせ、隙を作ろうとしたのか………良いアイデアだったが、残念な結果に終わったね。もうアイデアはつきたかい?」

 

 

「………僕はね、ガンダムマニアなんですよ。だから、さっきの機雷も、このサーベルも、このワイヤーアンカーも全部ガンダムの作品に出てくる」

 

 

「…………だからなんだと言うんだい?」

 

 

「このワイヤーアンカー………グフカスタムのアレなんですよね……まぁ、簡単に言うと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『放電機能』があるんですよ…………!!」

 

 

「!!不味い!!」

 

 

シロが漸く思惑に気がついたが、もう遅かった。創真は放電を開始する。

 

 

「ガァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

 

床に出来てた水溜まりを通して、隼に電気が流れ、苦痛の声をあげる。シロはと言えば、一人だけ置いてあったテーブルの上に移ったので、ノーダメージ。創真がアンカーを外した瞬間、隼は床に膝をつく。

 

 

「シロさん、勝負ありですね。隼君はもう戦闘不能です」

 

 

デュオが貯水槽を端にどけ、殺せんせー達が創真の横に並ぶ。

 

 

「くそ………!!なら薬をもう一本……」

 

 

「薬なんて必要ないよ」

 

 

奥にある階段から女の声がした。

 

 

「やっぱりあんたか………」

 

 

創真がその女…………碧海を見て呟く。碧海はチラッと皆の方を見たあと、隼に声を掛ける。

 

 

「立ちなさい、隼。そして、彼を殺しなさい」

 

 

「…………殺す………?」

 

 

「そうよ……………殺れ」

 

 

碧海の冷たい声が、隼を再び立ち上がらせた。そして、落ちていたナイフを手に取る。

 

 

「隼君…………目を覚ましてよ……」

 

 

神崎さんが消え入りそうな声で呟く。

 

 

「ーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」

 

 

隼が声にならない雄叫びをあげ───────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ねぇ、隼君。これからは私のことを有希子って……』

 

 

ああ………そうだ………そうだよ…………。夏休み最後の夏、言ってたじゃないか………。一緒にゲームしたり………楽しくやってたじゃないか………。そして彼は脳裏に別の人物を思い浮かべる。いつもクールで………いつも1番で………ムカつくけど、俺の最ッ高の親友。俺の彼女…………親友…………そいつらの名前は……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「神崎……………創真……………!!」

 

 

隼は倒れた。その時の彼は、笑顔だった。

 

 

「隼君…………今度こそ………」

 

 

「そうだよ神崎さん………ただいま……あと、わりぃな、創真………それに皆も迷惑かけて………」

 

 

「ふん…………」

 

 

創真もやっと笑みを浮かべる。

 

 

「クッ…………もういい!!隼が殺らないなら私が……!!」

 

 

碧海がナイフを片手に創真に突進する。それを、創真のサーベルが受け止める。

 

 

「碧海さん………あなたは間違っている!」

 

 

「何でよ!私は……………隼と一緒にいたいだけなのに!」

 

 

「そのためにこんな事を起こしたのか!?いい加減にしろ!お前、自分が何したか分かってんのか!?お前、下手したら隼が……………死んでたかもしれないんだぞ!!デュオ、来い!!」

 

 

呼ばれたデュオは創真に憑依する。姿が変わった瞬間、黒獣が外套から飛び出し、碧海のナイフを砕いた。創真はサーベルを捨てて、通常モードのドミネーターに持ち替え、麻酔針が発射された。

 

 

「……………色々言いたいことは山ほどあるが、とりあえず寝てろ」

 

 

碧海は創真の目の前で床に倒れる。同時に創真もゆっくり倒れる。

 

 

「創真君、大丈夫!?」

 

 

「いや、大丈夫。ただ、疲れただけ………」

 

 

力なく創真は心配している倉橋に笑いかける。

 

 

「うぐっ!……………くそっ、意識が………」

 

 

突然、隼の視界がグニャリと歪んだかと思えば辺りがぼやけて見えていく。

 

 

「あれ…………………俺、どうなっ」

 

 

隼は膝をついてゆっくり前に倒れた。

 

 

「「「隼!?」」」




THE NEXT story 2/12or13PM 22:00



え?隼は死なねぇだろ?


まぁ、そうやな………


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第81話 暴走の時間 7時間目

すこし遅れました。すみません!




とりあえず一段落着くのかな?


前書きはいつも通り僕ですが本文は弟。


弟もなかなかの文才なのかな………?


本編をお楽しみください!


「隼!?しっかりしろ!」

 

 

磯貝が隼を揺するが、隼は目を覚まさない。

 

 

「慌てるな、磯貝君………あーもしもし?氷室さん?全員制圧?キバットもそこそこ働いた?ついでに烏間が連絡した?……ご苦労様です。そこに船があるはずだから、それに皆を乗せて何処か近くの病院へ……………え?横浜にいる友達……優秀な先生に話をつけてある?隼が怪我をするだろうと予想して?にしても、本当に顔が広いですね……それでは皆さんを連れて行くので、船の操縦お願いします」

 

 

創真は電話を切って、皆の方へ体を向ける。

 

 

「と、言うわけで………今から横浜の病院へ直行。この馬鹿姉弟を連れてくよ…………だが、その前に……!」

 

 

今度は、シロの方に向き合う。

 

 

「シロ。あんたは逃がさん………と言いたいところだが、今は隼の方が優先。今回は見逃してやる」

 

 

「はぁ!?法律的に駄目な事もやってるはずだろ!?」

 

 

ホリーが創真に食って掛かるが、創真は否定の言葉を口にする。

 

 

「どうせ、証拠なんて残してまい。捕まえたところで無駄だ。仮にそう言う証拠が有ったとしても、奴は国の人間。揉み消されて終了だろうよ」

 

 

「話が早くて助かるね………ご親切に甘えて私も去るとしよう」

 

 

シロは奥の階段へと消えていった。

 

 

「……次はないぞ」

 

 

創真が誰にも聞こえない声で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホリーが碧海を。デュオが隼を担いで、全員船へと移動した。

 

 

「全員乗ったね。じゃ、出航……」

 

 

「あの………あいつらほっといて良いのですか?」

 

 

氷室が指を指した先には、氷室とキバットがボコボコにして気絶している島の護衛役の人達だった。

 

 

「後で烏間先生にでも言って取りに来てもらえば良いですよ。とっとと行きましょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホリー達が船を押したかいもあり、すぐに横浜港へ戻ってきた。

 

 

「僕がこの姉弟を連れて行く。君らは氷室さんに案内してもらって病院までこい」

 

 

そう言い残すと、創真はデュオと共に飛び去っていった。皆は氷室の案内の下、病院へと走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20分後

 

 

皆が病院へ着くと、創真が待合室の椅子に座っていた。

 

 

「創真、隼はどうだったんだ?」

 

 

「いま検査しててもらってる。もうそろそろ終わるとか言ってたがな……」

 

 

それからさらに10分後、ようやく氷室の友達の医者が出てきた。

 

 

「あの、隼は……?」

 

 

「大丈夫。命に別状はないよ。ただ、肋骨にヒビが入ってたりしたから、しばらくは安静だ。あと1日程度は寝てると思うよ」

 

 

それを聞いて皆はホッとする。

 

 

「それで、どれくらい入院するんだ?」

 

 

氷室が壁に寄っ掛かりながら聞く。

 

 

「そうだな…………まぁ、念のため、1週間程度かな?」

 

 

「1週間か…………意外と早いな………」

 

 

「ま、若いからヒビ程度なら直ぐ治る。でも、暫く運動は控えたほうが良いけどね」

 

 

そこへ、知らせを受けた烏間先生が走ってきた。

 

 

「隼君は!?無事なのか!?」

 

 

「肋骨にヒビ程度の怪我で済んだそうで。死にませんよ」

 

 

「そうか………それはなりよりだ」

 

 

烏間先生はホッとしたのか、深い溜め息をつく。

 

 

「所で、皆そろそろ帰った方が良いんじゃない?もう夜だけど?」

 

 

時計を見ると、もう6時近くだった。

 

 

「うわ、もうこんな時間!急がないと!」

 

 

皆は慌てて身支度を整える。

 

 

「創真君、一緒に帰らない?」

 

 

「うーん…………僕はここに残るよ。隼が心配だしね」

 

 

やはり、隼の事を大切に思っているのだろう。隼が聞いていたら、うれしい表情をするのが目に見える。

 

 

「私も残ります」

 

 

そう言ったのは、神崎だった。

 

 

「大丈夫か?それに親御さんになんて説明するんだ?」

 

 

「大丈夫です。友達の家に泊まりに行ったって言っておきますから」

 

 

烏間が確認するが、神崎の意志は変わらない。

 

 

「じゃ、創真君に有希子ちゃんも気を付けてね!」

 

 

「声でかいよ…………うん、陽菜乃も気を付けてね」

 

 

皆は病院を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて……………僕もブラコンお姉ちゃんに話を聞くとしようか」

 

 

創真はとある病室にノックし、返事も待たずに入る。

 

 

「どーも、こんばんは、碧海さん。良く寝れた?」

 

 

碧海は創真を見て驚いた表情をする。

 

 

「君は………帰ったんじゃ……」

 

 

「隼に付き添うために残ったんだよ………さて、あなたに聞きたいことやら言いたいことが山ほどあるんだが…………ちょっと良いかい?」

 

 

「…………良いよ。この際、なんでも話すから……」

 

 

「そうか。じゃ、質問。碧海さんはさぁ……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コーヒー好き?」

 

 

「………………へ?」




THE NEXT story 2/13 PM 22:00


コーヒー好き?


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第82話 病院の時間

今日は寒いですね…………どうぞ!


「うーん、旨い!隼君との命懸けの喧嘩の後のコーヒーは旨い!」

 

 

不自然なほどテンションがハイな創真。碧海も奢って貰ったコーヒーを一口啜ってみる。

 

 

「……に、苦い……………もっと甘いやつが良かったなぁ……………」

 

 

「ただで飲めてるんだから贅沢言うなんじゃない」

 

 

創真はコーヒーを飲み干し、さて、と呟く。

 

 

「じゃ、本題に入るよ。君さ…………なんかの薬を打たれてなかった?」

 

 

「………なんでそう思うの?」

 

 

「初めて会ったときから何かおかしいと思ってた。何て言うか……………目的のためなら殺しすらも躊躇しないように見えた」

 

 

「………その通りよ。シロって奴に、隼を取り戻したいのなら、飲めと。そしたら、色々とおかしくなっちゃった。自分でも気づかない内に」

 

 

「うちの魔法使いが言うには、その薬の効果としては心理的ハードルを下げる、理性の崩壊、そして隼のみには肉体を異常に活性化させ、身体能力を大幅に上げる作用もあった…………ざっとこんなもんだったっけ。てか、シロから薬の効果とか聞かされなかったの?」

 

 

「何も知らされてない。特に害は無いとしか聞いてない………………にしても、やけに詳しくない?この短時間でよくそんなに………てか、魔法使いって?」

 

 

「さてさて、何でしょうねー」

 

 

創真ははぐらかすように笑う。

 

 

「そう言えば、初めて僕の前に姿を現した時は何だったの?」

 

 

「あぁ、あれは私がシロに内緒でこっそり会いに行ったの。少し強引にでも取り戻せないかなー、って思って。そしたら、もうシロに用は無くなると思って」

 

 

「ふーん…………シロとはどういう経緯で知り合ったの?」

 

 

「あっちからやって来たの。シロから隼が椚ヶ丘のE組に通っている事を教えてもらったの。ついでに君達がやってる暗殺の事も。そして、協力を申し込まれた。『私に協力してくれれば、隼君を取り戻してあげよう』って。今思えば、何で私が隼を取り戻したいって知ってたんだろうね」

 

 

「色々と調べたんでしょうね。それだけでかなりの労力を使っただろうに。それで?」

 

 

「で、私は協力を承諾した。で、さっきも言ったけどシロは1つ条件をつけた。それが、あの薬を服用すること」

 

 

「なるほどね。心理的なハードルを下げて、隼に対して躊躇なく多少過激な事も出来るようにしときたかったのかな。そうしておけば、自分の忠実な駒として使えるから。それで君はシロと協力してた訳だ……………なら、シロが隼を殺せんせー……………あ、僕らの標的ね。殺せんせーを殺すために肉体改造させることも知ってたよね?」

 

 

「うん。シロが絶対に大丈夫って言ってたからそれを信じちゃった。それに………………隼が地球を救った英雄となれば、お父さんも隼を認めてくれるかなって思ってさ」

 

 

「僕も全部は知らないけど、隼から君のお父さんの事は聞いてるよ」

 

 

「…………………そっか。隼は君に話してたんだ。隼がそれを話してたって事は、相当君を信頼してたんだね………………なら、君は良い人だね」

 

 

「随分とすんなり言うね…………ま、それはさておき。碧海さん。君は薬の効果とは言え、あなたは僕のクラスメートを危険にさらした。それは許されないことだし、隼だってあの程度で済んで良かったけどさ……………下手すれば死んでたかもよ?」

 

 

「…………………」

 

 

「それに、シロなんかと取引をして……………下手したら君も危険な目に遭ってたかもしれないんだよ。自分も危ない目に遭うかもしれない……………それを君、考えてなかっただろ?」

 

 

「……………うん……」

 

 

「自分がどうするべきだったのか。どうすれば良かったのか………………それをしっかり考えておけ」

 

 

創真はチラッと時計を見て、椅子から立ち上がった。

 

 

「じゃ、僕は帰るんで………寝不足は体に良くないよ」

 

 

そう告げて創真が部屋のドアに手を掛けた時だった。

 

 

「ねぇ…………創真君………」

 

 

「……………ん?」

 

 

「私………隼に対して酷いことをしちゃった………もう、姉でいる資格なんてないよね…………」

 

 

創真は少し考え込む動作を見せて、碧海の方へ振り返った。

 

 

「…………それを決めるのは僕じゃない。隼自身だ。まー、当たり前だけど、悪いことしたら謝っとかなくちゃ。明日にはあいつも目が覚めるらしいから、その時にでも言っておけば?」

 

 

「そう…………だね。………ありがとう」

 

 

「別に僕は大したことを言ってないよ………じゃ、おやすみなさい」

 

 

「うん、おやすみ…………あ、ちょっと待って!」

 

 

創真は閉め掛けたドアを再び開ける。

 

 

「もーなんです?僕、寝たいんだけど……」

 

 

「これからどうするのかな……と思って」

 

 

「ホテルを予約したからそこに今日は泊まろっかな………って考えてるが………?」

 

 

「あのさ………ここに居てくれない?」

 

 

「…………………………は?」

 

 

衝撃的過ぎて、創真は暫く言葉が出なかった。

 

 

「だって寝れないし、寂しいんだもん……」

 

 

「えぇ………………あんた、僕と同い年じゃないの?」

 

 

「そうだけど?」

 

 

───────精神的には小学生じゃん。

 

 

そうツッコミたくなるのを押さえている間にも、ねだるような目で碧海は創真を見つめる。

 

 

「あー分かった分かった。ただし、寝るまでなら」

 

 

「やった!ありがとう~創真君!」

 

 

「とっとと寝てくれ……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

30分後

 

 

「遅かったですね、創真様。ホリーたちは眠いと言って、さきにホテルに行ってしまいましたよ。そんなに長話だったのですか?」

 

 

「寝かしつけてました…………中3の女子を」

 

 

「はぁ…………ちょっと意味が……」

 

 

「分からないで良いですよ、永遠に」

 

 

「左様ですか。それで、どうだったんです?」

 

 

「まっ、色々と知れたしスッキリしました…………じゃ、早く寝ましょう」

 

 

「そうですね。私も早く寝たいです…………」

 

 

眠そうにあくびをする氷室。2人は静かに夜の街へと消えていった。

 

 

to be continue…………




THE NEXT story 2/14PM 22:00




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第83話 見る目の時間

皆さんは人を見る目が………ありますか?




では、どうぞ!


6時ぴったりに創真は起きた。

 

 

「……………隼、起きてるかな?」

 

 

「行きますか?」

 

 

氷室が着替えながら尋ねる。

 

 

「勿論行くに決まってますよ」

 

 

「なら急いで行きましょう。神崎さんも呼ばなければ。今日も学校はありますからね」

 

 

「じゃ、起きてるかだけ見て、神崎さんと学校に行くか」

 

 

ホテルを出て、受付の人に聞くと、ちょうど今起きたと言う報せを創真らは受け取った。隼の部屋に行くと、ちょうど氷室の友達の医者と鉢合わせた。

 

 

「あれ?創真君、学校は?」

 

 

「ちょっと様子を見てすぐに行くので大丈夫です」

 

 

「そっか。ちょうど今様子を見てきたんだけど、なかなか元気そうだよ。それじゃ、僕は他の人の診察の準備があるから失礼」

 

 

そう言い残して、足早に去っていった。

 

 

「じゃ、失礼します、っと」

 

 

創真が勢いよくドアを開ける。隼は神崎と話している最中だった。

 

 

「………創真?」

 

 

「そうだが。やれやれ、朝から阿呆面をかましてんじゃないよ」

 

 

「俺は阿呆じゃねぇ!」

 

 

「そのツッコミを入れれる辺り、元気そうでなりよりだ」

 

 

「だが、1週間も入院だぜ。暇ったらありゃしねぇ」

 

 

「どーせ暇なら勉強でもして、少しは賢くなれ」

 

 

「へいへい、言われなくてもそうしますよーだ」

 

 

テンポの良い会話をする2人。それを氷室は楽しそうに。神崎は少し妬け気味の表情を浮かべていた。

 

 

「さーて、隼が通常運転通りだった所で、そろそろ家に戻って学校の支度しなきゃ」

 

 

「…………あ!」

 

 

神崎は学校の事をすっかり忘れてたパターンのようだ。

 

 

「ホリーが運ぶので、1分以内に着くよ。氷室さんはデュオが。僕はホリーにもう一度来てもらって行く。ちなみにキバットはさきに学校に行ってる。暇だから、だそうで。神崎さん、準備したりする時間は足りる?」

 

 

神崎に創真は尋ねる。

 

 

「それなら大丈夫………ホリー君、よろしくね」

 

 

「うんうん、任かせといて!」

 

 

なお、ホリーの心は今、幸福に満たされている。神崎と言う美女を運べるからだ。

 

 

「じゃ、僕らは学校に行くんで」

 

 

「そうか。じゃ、また来いよ」

 

 

「暇だったらね」

 

 

その時部屋のドアがノックされた。

 

 

「おはよう…………隼」

 

 

訪ねてきたのは碧海だった。

 

 

「碧海……………!今さらなにしに来た?」

 

 

敵意丸出しの隼に、碧海は少し戸惑ってたが─────

 

 

「ごめん!あんなことしちゃって!」

 

 

頭を下げて謝った。当の隼は謝られるのは意外だったのか、暫く言葉がでなかった。

 

 

「ら…………らしくねぇな。てめぇが謝るなんて………………頭打ったか?」

 

 

「んな!?失礼しちゃうなぁ!べ、別に変じゃないでしょ…………」

 

 

──────────なんだこの微妙な会話?

 

 

不思議な会話を聞いた創真は胸の内でそう思った。

 

 

「じゃ…………失礼するね」

 

 

碧海は出ていった。

 

 

「…………なんだ、あいつ?あ、待てよ。もしや創真、なんか言ったの…………ってもう居ねぇじゃねーか!いつの間に行きやがったんだよ!」

 

 

「月城さん、声が大きいです!」

 

 

「す、すんません……………」

 

 

看護師にも怒られ、独りぼっちになった隼君は、出された朝食を3分で完食したらしい。やけ食いである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

家に帰り、身支度を済ませ、氷室と定刻通りに家を出た。

 

 

「はぁ…………行ったら質問攻めかな?」

 

 

「ありえますね…………それとさっき本人に聞いたのですが、碧海さんは今日退院の方向だそうで」

 

 

「もうこれ以上、ややこしいトラブル持ってこなきゃ、それで良いですけどね……ま、本人も懲りただろうから、無いとは思うけど」

 

 

そう言いながら、座席に大きくもたれかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、創真!隼はどうだった!?」

 

 

「大変元気ですよ」

 

 

「お前、神崎さんと寝たのか!?」

 

 

「寝ねぇよ」

 

 

「創真君、観光してきた~?」

 

 

「あ、いや………そんな時間ないけど……」

 

 

陽菜乃は能天気すぎる。

 

 

「て言うかさ、あの女…………隼のお姉さんなんだよね?」

 

 

「………その通りだよ、カルマ君。彼女は隼のお姉さんだ」

 

 

「あの女、どうなるの?殺せんせーを知ってるっぽいよね?」

 

 

「…………さぁね。ここに来るんじゃない?」

 

 

「はぁ!?冗談じゃねぇよ!なんであんな危険な女をここに来させるんだよ!?逆に俺らが危ねぇよ!」

 

 

前原君の意見に皆が同意する。

 

 

「確かに…………私も信用ならない」

 

 

「実の弟を利用するなんて、酷すぎるよ」

 

 

片岡さんと矢田さんが言うことはごもっとも。しかし、ね。

 

 

「でもさぁ、根はいい人だろ彼女。多分ね」

 

 

「………それは何を根拠に言ってるんだ?」

 

 

「実際、昨日話してそう感じた。彼女はただ、弟が好き過ぎた余り、道を外れた行為に出てしまっただけだよ。ま、本人はかなり反省しただろうし、良いんだけど」

 

 

「ケッ、どーだかな」

 

 

寺坂がアホか、と言いたげな様子。

 

 

「自分で言うのもアレだが、僕の人を見る目はかなり正確だとは思ってる。だから、彼女の本質は優しいと言うのもあながち間違いじゃないだろうし、もしこのクラスに来ることになったとしたら、僕は歓迎するけどね」

 

 

「けどな………」

 

 

前原が反論しようとしているところに、殺せんせーが来た。

 

 

「おはようございます。どうしたのですか、皆さん?何やらピリピリしてますねぇ」

 

 

「人を見る目について話してただけ」

 

 

「…………そうですか。では、出席を取りますかね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

放課後

 

 

「おい、創真。お前、大丈夫なのか?」

 

 

「あ?」

 

 

帰りのフェラーリの中で経済新聞を読んでいると、鞄に入り込んでいるキバットが話し掛けてきた。

 

 

「大丈夫って、何がよ」

 

 

「朝の事だよ。お前が彼女を庇おうとしてたから、皆お前の事を不信がってたぜ」

 

 

「別に庇ったんじゃなくて、事実を言っただけなんだけどねぇ。まぁ、僕の言葉を信じるか否か当人達の勝手だろうし、別に気にしてもないけど………………ん?」

 

 

スマホからメールの着信音が聞こえて来た。確認してみると─────────

 

 

「何?ふーむ……………………氷室さん。横浜駅へ行ってもらっても良いですか?」

 

 

氷室さんはチラッと僕の携帯に表示されているメールを読む。

 

 

「まぁ、このあとは特に予定はありませんし、構いませんよ」

 

 

「ありがとうございます……………一体何の用だ…………?」

 

 

『今日、学校が終わったら横浜駅に来てくれないって、碧海が言ってたぜby 隼』

 

 

果たして、碧海は何故にメールを送ったのか………?




THE NEXT story 2/15 PM 22:00


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第84話 ストレイドックの時間

え、何?


あんた文豪ストレイドックス読んで、見事にはまっただろ?


その通り!


あ、知らなくても何も問題ないのでご安心を。


それでは楽しんでください!


「………ごめんね。呼び出して。ちょっと話したくて」

 

 

すっかり元気になった様子の碧海は笑みを創真に浮かべる。

 

 

「それで、用は?あぁ、そう言えば今日退院なんだっけ?」

 

 

「うん、そうだよ」

 

 

彼女の手には荷物が入っているバックが握られている。

 

 

「じゃ、退院おめでと、とでも言っておくか」

 

 

「じゃ、ありがと、って言っとこうかな?」

 

 

「で、肝心の用は?」

 

 

「うん…………ちょっと来てもらいたい所があるんだけど…………良い?」

 

 

「……………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

碧海がどうしても行きたかった場所は、新港サークルウォーク。横浜ベイブリッジや赤レンガ倉庫がよく見えるスポットだ。

 

 

「……………なんでここに?」

 

 

「ここが………好きだから。ここに良く来てたんだー」

 

 

その言葉に創真はニヤリと笑みを浮かべる。

 

 

「奇遇だね…………実は僕も」

 

 

「………そう言えば、創真君も元は横浜住みだったっけ。確か、隼と一緒の中学にいたんだよね?」

 

 

「あー……うん、まぁ」

 

 

「?どうしたの?なんか急にテンションが………」

 

 

「お嬢ちゃん。創真に前の学校の事は話しちゃダメだぜ」

 

 

「肝に命じとけ」

 

 

名物中華まんとあんまんを食べていたホリーとデュオがさりげなく碧海に呟く。ちなみにキバットは横浜の美女を観察中。どうでも良いが。

 

 

「あ、もしかして嫌な思い出があった?ごめん………」

 

 

「いじめられてた」

 

 

「え…………?」

 

 

碧海が創真の方を見ると、どこか遠くを見つめているように見えた。その視線の先が何処か、碧海には分からない。彼が今見つめているのは、風景ではないのは分かった。そして、憐れみと言うか悲しみが混じっているように碧海には見えた。

 

 

「まぁ、大した事はなかったんだけどさ。多分切っ掛けは、僕が来る前までテストでトップだった奴の座を奪ったからかな。どうも、僕の事が気にくわなかったようだ。そんなわけで、前の学校では、当然友達などいませんでした……………あいつ以外は」

 

 

「……………………………」

 

 

「目の前の人間が自分より優れている時、その時感じる事は主に2つに分かれる。1つは、尊敬の念を抱く……………………2つ目は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そいつが憎い…………と思うか」

 

 

憎い……………その言葉が、碧海の心に深く刺さった。

 

 

「一度そいつに対して憎しみの感情を抱いてしまえば、それを消すのは難しいと思う。僕の場合は、嫉妬が募って憎しみへと変わった奴等が、僕をいじめてきた奴等だ」

 

 

「………………………」

 

 

「僕がこれまで全国を転々としたなかで出来た友達は結構多い。ほとんどは最初に言った前者の人達だけですね。今思えば、僕は単純にラッキーだったと思ってる。だって、嫉妬とかしてもおかしくはなかっただろうに、それが一切無かったんだから。だからまぁ、僕をいじめてきた奴等も別に間違いじゃない。って言ったら、また少し違うんだけどさ」

 

 

創真はため息をついて、続ける。

 

 

「だからね、僕は前の学校で人間の本質を見た気がするよ。社会に出たら、そう言う奴等がたくさんいるんだろうな、って。だからまぁ、ある意味奴等からそう言う教訓を教わった気がするよ」

 

 

そう言って創真は笑う。

 

 

「え、じゃあ……………創真君はそいつらがうざいとか、憎いとか思わないの?君が言うには、何の被害もなかったらしいけどさ、いじめてきたことには変わらないよね?」

 

 

「うーん。何て言うかさ、憎むだけ無駄って言うか何て言うか…………………そんな事気にしてもしょうがないって言うか。憎しみに囚われてたら、自分は何も成長できないだろうしな、って感じ。だから、僕の場合はいじめと言うなの理不尽を楽しんじゃった」

 

 

「た、楽しんだって………………す、凄いなぁ。私にはそれは無理かも……………でも、そっか。憎しみにずっと囚われてたら、前に進めないよね。良いことを学んだ気がするよ。創真君。最後に1つ質問」

 

 

「なに?」

 

 

「人は、どういう風な生き方が正解だと思う?………私はやってはいけないことしてしまった。でも、私はここで止まらず、先へと進みたい。その為には、これからどうしていけば良いのか…………」

 

 

創真は少し考えてから言う。

 

 

「まぁ、僕はまだ人生経験そんなに無いから、参考程度にね。僕的にはその答えはね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ない』」

 

 

碧海の目を真剣に、目を逸らさず創真は言葉を続ける。

 

 

「生き方の正解……………それを知りたくて皆は闘っているんだろうね。当然、僕も。そして、あなたも。色んな道を迷って迷って迷いまくって、たった1つの正解への道を探していく」

 

 

「………………」

 

 

「この世は、醜くも必死にもがく野良犬(ストレイドックス)の集まりだ…………………と思う」

 

 

「即ち、迷い犬って事か……………要は、自分の生き方は自分で探せって事かな?」

 

 

「まぁ、そゆこと」

 

 

「了解しました、創真先生?」

 

 

ふざけたように敬礼する碧海を見て、創真は笑みを浮かべた。

 

 

「じゃあ、迎えがそろそろ来ると思うから……………またね」

 

 

言ってるそばから氷室のフェラーリの隣に車が止まった。

 

 

そこから出てきた人物を、創真は見たことがあった。

 

 

「…………………碧海」

 

 

「………………お父様」

 

 

隼と碧海さんの父親。

 

 

しかし、その本性を…………………創真は知っている。




THE NEXT story 2/16 PM 22:00


そう言えば、3月3日に文豪ストレイドックスdeadapple公開ですね!気になる方は是非劇場へ!


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第85話 まさかの時間

「……お父様。わざわざお迎え、ありがとうございます」

 

 

碧海がそう言うのを創真は背を向けて聞いていた。

 

 

「…………聞いたぞ。お前、何やら隼を使って人体実験に手を出したそうだな」

 

 

「え…………何故それを」

 

 

(やはり知ってたか。流石は、ダークサイドとの繋がりがある奴だね)

 

 

「俺は色んなところに目や耳がある。全部お見通しだ。まったく、期待はずれだ。結果的に、お前は負けたそうだな。優秀かと思っていたが、お前も堕ちたものだな。結論から言うと、お前は月城家追放だ。2度とその面を見せるな」

 

 

────────おいおい、マジかよ。自分の子供を追放だと?マジで言ってるのか!?正気の沙汰じゃないぞ………………。

 

 

「ち、ちょっと待ってください、お父……」

 

 

碧海は後ろへ吹き飛ぶ。何故なら腹に蹴りを入れられたからだ。

 

 

「言ったはずだ。お前のような面汚し…………………乃ち、価値のない人間は…………要らない。負け犬が」

 

 

「………………………おい」

 

 

ここでようやく創真が前を向き、隼と碧海の父親と向き合った。

 

 

「なんだ貴様は?部外者は黙っていろ。それとも痛い目に遭いたいのか?」

 

 

「だめ………創真君に………手を出さないで………」

 

 

「創真君……………?どこかでその名前を…………」

 

 

「流石は、この社会の暗部を取り仕切るだけの事はある。僕の名前も何処かで聞いたのかな?ちなみに、名字は結城。父親は世界ナンバー1の会社を束ねる社長だよ」

 

 

「まさか…………」

 

 

「そ、僕がその息子って訳。多分あんた、僕の親の事、死ぬほど妬ましいだろ?あんたが日本一なら、うちの親は世界一だからな」

 

 

「まぁ、その通りだな。ぶっ殺したくなるほど、妬ましいな」

 

 

隼と碧海の父親は殺気を丸出しにしながらも笑う。

 

 

「ぶっ殺せないのかな?他の会社の奴等には手を掛けてきた癖に」

 

 

「ほう……………何の事かな?」

 

 

「表向きは日本一のIT企業の社長。だが、ただの社長ではなく、正しくは裏社会との繋がりを持つ異色の、だな。これまでも自分の差し金とバレないように暗殺者を雇い、別のライバル企業の社長などの重役の人間を暗殺させたり……………ほかにも産業スパイが何百人もいるそうだね……………だが、父さんの企業相手には殆ど上手く行ってないんじゃないのかな?」

 

 

「さーな。そもそも、それは噂だろ?証拠はあるのかい?」

 

 

「無いね。まぁ、正しくは法的には証拠にならない証拠ならあるらしいけど」

 

 

「あぁ、そんな所だとは思っていたよ」

 

 

「あとは、マスコミを買収しているとかもよく聞くけど。どうせ不祥事やらが表沙汰にならないようにしてるんだろうけど」

 

 

「それも噂だろ?」

 

 

「まーね。まぁ、僕的にはあんたが黒よりのグレーな事をやってるのはどうでも良いんだよ。だが、碧海さんを追放とか、価値のないとかは気に入らないな」

 

 

それを聞いた彼は嘲笑うかのような表情で云う。

 

 

「簡単な事も分からないのかな?俺の家では、常に頂点に立っているのが必然なんだよ」

 

 

「……………………で?」

 

 

「碧海は敗けた。だから、俺の家にはいらない。それだけだ」

 

 

「…………………………」

 

 

「まだ分からないか?なら、もっと簡単に言おう。商品価値のない奴は、不必要ってこ」

 

 

「碧海さんは物じゃない!!人間だ!!」

 

 

怒りを爆発させた創真は、彼の胸元を掴み、柱に叩きつけた。

 

 

「ぐおっ……………てメェ、ガキの癖になんつーバカ力だよ……………!!」

 

 

彼も無抵抗ではなく、創真はの腕を掴んで引き剥がそうとするが、びくともしない。

 

 

「さっきから黙って聞いてれば、何なんだよ!!商品価値だと?人の価値をあんたが決めるな!!」

 

 

滲み出る殺気。それが余りにも膨大すぎて、そばにいる氷室も碧海もホリー、デュオ、そして掴まれてる張本人も何も言葉が出なかった。

 

 

「あんたは、あいつの…………いや、あいつらの親だろ!!自分の子供が間違った道を行ったのに、それも咎めないで!!親なら、自分の子供が道を間違った時は叱って正してやり、正しい方向に導くもんだろうが!!そんな事も中学のガキに言われないと分かんねぇのかよ!!」

 

 

暫くして、創真は胸元を離す。彼は胸元を直し、暫く黙っていた。やがて、背を向けて車の方へ歩きだす。

 

 

「………………碧海。暫く、このガキの元で世話になれ」

 

 

「……………………へっ?今なんて………」

 

 

「だから、結城創真の世話になれって言ったんだよ」

 

 

「待て待て待て!何勝手に話を進めてんだよ、おい!」

 

 

創真の打って変わって焦ったような声には反応せず、彼は続ける。

 

 

「どうせ俺は暫く家を留守にする予定だったんだ。丁度良いだろうが」

 

 

「え、うーん……………………まぁ、良いか」

 

 

「何納得してんの!?良くない良くない!全然良くないから!何勝手に決めて………………って、あ、おい、待っ」

 

 

狼狽える創真を余所に、隼と碧海の父親は車で去っていった。

 

 

「何だよ、あいつ………………ガキに怒鳴られたのがそんなに気に食わないか?腹いせか、くそったれが…………」

 

 

ぶつぶつと恨み言を呟く創真。誰も話し掛ける勇気が出せず、暫く時間だけが過ぎていった。

 

 

「まーまー、落ち着けって創真!」

 

 

そんな空気を破ったのは、何処からともなく現れたキバットだった。

 

 

「落ち着け?僕はいつも落ち着いてるぞ!冷静だし、頭脳明晰だ!」

 

 

「いや、どう見てもそうには見えねぇが…………なぁ、創真。碧海ちゃんをお前の家で居候させてやれよ。彼女が可哀想だろ。何処にも行く場所もないんだから」

 

 

「…………………まぁ、可哀相っちゃ、可哀相だが」

 

 

「だろ?なら、人助けだと思って、な」

 

 

「……………………………………」

 

 

創真は黙りこむ。しかし、直ぐに何かを決めたような表情でスッと立ち上がる。

 

 

「キバット」

 

 

「お、礼なら構わないぜ。これくらい、感謝される事じゃなくて」

 

 

「いや、そうじゃなくて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あんた、姿を見せてるんじゃ………………?」

 

 

その一言が皆に伝わった瞬間───────────

 

「あ」

 

 

「不味い………………」

 

 

「あちゃー…………」

 

 

ホリーとデュオは今更のように、しまった、と反応を見せ、氷室もやってしまいましたねー、との意を込めた苦笑いを浮かべる。創真とキバットは、ぎこちない動作で首を動かし、碧海の方を向く。

 

 

「「………………み、見えてた?」」

 

 

「う…………………………うん」

 

 

「アウト────────────────!!」

 

 

「モガァ!!」

 

 

辺りに創真の叫び声と、キバットの悲鳴が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、碧海は創真の家に住むことが一時間に及ぶ話し合いで決まった。創真はホリーに、記憶消せ、記憶!と目配せで言ったのだが、ホリーは、女の子相手にやるのはやだ!と、謎の矛盾発言(前に倉橋にはやった)で拒否し、そこで揉めている間にキバットが全部話してしまった。あ、じゃあついでに、と軽いノリでホリーも自分の詳細をこと細かく話し、結局デュオも順番的に話した。そして、彼等の事は絶対口外にしないことを碧海に誓わせた。

 

 

そんなこんなで疲れ果てた創真は、ひとっ飛びで帰るのではなく、何となくの気分で電車に揺られていた。隣には碧海も座っている。

 

 

「くそっ、あのコウモリ……………姿をE組以外の奴等には見せるなって言っておいたのに……………余計なアドバイスをするためだけに、姿をばらしやがって……………いや、余計ではないのか?だけど、キバットだけじゃなくホリーとデュオの事もばれちゃったもんなぁ……………………まぁ、他の人に言わないでくれれば良い話だし、まぁいいか…………」

 

 

何処か不機嫌そうにも見えなくはない創真。そのせいか、彼の座っている電車の椅子から半径50㎝以内に碧海以外は誰も近寄ろうとしない。ちなみに、当初はホリーとデュオは、ルームシャアしている友達と言う設定だった。

 

 

「あ、あのー創真さん?」

 

 

緊張気味の碧海が創真に話し掛ける。

 

 

「何で急にさんづけになった………………何です?」

 

 

「あ、いや…………もし迷惑なら、別に良いんですよ………?」

 

 

「それで、どっか行くとこあるの?」

 

 

「うっ……………」

 

 

碧海は黙りこむ。そして、暫く両者の間に無言が続く。

 

 

「碧海さん」

 

 

漸く創真が口を開いた。

 

 

「な、何でしょ…………うわっ、と」

 

 

創真が何かをポイッと投げてきたのを碧海は慌ててキャッチする。それは、鍵だった。

 

 

「それ、僕の家の鍵。予備のをあげる」

 

 

「え、じゃあ……………」

 

 

「そんな意外な事でもないだろ。さっきの話し合いで、君の同居は決まったんだし、鍵をあげとくのは当然だろ……………にしても、疲れて眠いなぁ」

 

 

創真は大きなあくびをする。そんな様子の創真を見た碧海は、フフっと笑って口を開く。

 

 

「あのね、創真君」

 

 

「…………………」

 

 

「さっきは、その、ありがとう。色々言ってくれて。凄い嬉しかった。君は、やっぱり良い人だね……………私も君が…………なーんてね」

 

 

碧海は恥ずかしそうに最後の方をぼかす。

 

 

「まぁ、迷惑を掛けるかも知れないけど、これからよろしくね、創真君!」

 

 

「……………………」

 

 

「ちょっと、何か一言くらい言ってよー」

 

 

碧海が創真の顔を覗くと──────────

 

 

「え…………………………寝てる……………」

 

 

──────────なんと、寝ていた。

 

 

「えぇ……………じゃあ、私の全部聞いてなかったって事………?はぁ………………まぁ、言えただけ良かったのかな……………?」

 

 

「…………………………む。次か」

 

 

予兆もなく、創真は起きた。

 

 

「5分くらいしか寝てないけど、何かスッキリしたなー」

 

 

「ねぇ、創真君。聞いてた?」

 

 

「え、何を?」

 

 

「い、いやいや、何でもないよ!それなら、良いんだよそれで!さぁ、もう着くから行こ?」

 

 

「う、うん」

 

 

未だに不思議そうな表情を浮かべる創真の手を碧海は引っ張って立たせる。

 

 

「改めまして、これからよろしくね創真君」

 

 

「じゃ、こちらこそよろしく、碧海さん」




THE NEXT story 2/17 PM 22:00




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第86話 まさかの時間 2時間目

流石にこれは……………マジか……………ってなるかもしれません。


碧海さんが暴走します笑。


あーヤバイヤバイ……………では、どうぞ!


創真side

 

 

「お邪魔しまーす。まぁ、これからはただいまって言うのかな」

 

 

その通りだ。ご存じだろうが、色々あって、しょうがなく、僕の家に住ませることになった。

 

 

「うわ、凄い広いね!うちより広いかも」

 

 

「そーですか。てかさ、まだ正式に許可出てないよ。うちの親から」

 

 

「もー大丈夫だって!創真君がこんなに優しいんだから、親も優しいって」

 

 

「さぁ………………」

 

 

取り敢えず電話。呼び出し音が数回なったあと、通話開始の画面が表示された。

 

 

『よぉ、創真。お前から電話なんて珍しいな。どうかしたのか?』

 

 

この声は父さんか。それにしても母さんの声もたまには聞きたいんだが。

 

 

「あのー、母さんとかいる?」

 

 

『今はショッピング中でいない。爆買いするんだろうよ………金が飛ぶわ。まっ、めっちゃ稼いでるから良いんだけどねー!!』

 

 

「自慢はええねん。で、本題に入るけどさ……………あのね……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ふーん。人助けで、家に入れたのか。その………碧海さんを」

 

 

父さんは暫く黙っていた。

 

 

「まぁ、別に良いぞ、それくらい」

 

 

「あ、マジ?」

 

 

「そりゃ、女には優しくしとかないとな。創真、覚えておけよ。女に優しくすると、良いことしかないぞ」

 

 

「…………貴重なアドバイスどうも。それとさぁ、あの社長の電話番号とか知らない?」

 

 

『いや、知らねぇな。まー調べりゃ分かるだろうけど。何でだ?』

 

 

「いやね、勝手に話を進められた腹いせに、イタ電でもやってやろうかと思ってね」

 

 

『なんつー、程度の低い嫌がらせだよ……………まぁ、良いけど』

 

 

流石は父さん。やはり、話が分かるじゃないか。

 

 

「じゃ、分かったらメールで送ってくれる?」

 

 

『OKだ。じゃーな』

 

 

通話は終わった。

 

 

「よーし、とりまOKらしい」

 

 

「良かった~。断られたらどうしようかと」

 

 

「後は、電話番号が分かれば………………」

 

 

「そんなにイタ電でもしたいか……………」

 

 

デュオが少々呆れ気味だ。だが、まぁ良い。するとそこへ、独り車で帰っていた氷室さんが漸く帰宅した。

 

 

「いやはや、疲れましたね……………あぁ、それと創真様。メール、見ました?」

 

 

「め、メール?」

 

 

「茅野さんから来てましたよ」

 

 

確認してみると、確かに茅野さんからメールがいつの間にか入っていた。

 

 

『突然だけど、明日の午前10時に学校に来て!その時にエプロンとバンダナを持参で!』

 

 

「エプロンとバンダナ………………料理系?料理系の暗殺か?」

 

 

「恐らく、そうでしょうね。何やら面白そうな予感がします。私も持っていくとしましょうかね」

 

 

「何を試みようとしてるんだかね。料理系のは既に殺ったけど、駄目だったんですよねー」

 

 

「新種の、じゃないですかね?兎に角、明日が楽しみです。それでは、おやすみなさい」

 

 

氷室さんは隣に帰っていった。

 

 

「あ!そう言えば…………」

 

 

「どうしたの碧海ちゃん。急に大声出して」

 

 

ホリーが尋ねると、碧海さんは訳を話した。

 

 

「寝るとき用の服とかないし、どうしようかなって」

 

 

何だ、そんなことか。

 

 

「あぁ、それは心配いらないよ」

 

 

「え、裸で寝ろと?」

 

 

「違いますッ!!ここには、自称魔法使いのホリー君がいるんだから、どうとでもなるよ」

 

 

「自称じゃないんだけど……………まぁ、良いや。サイズに合うのをちゃちゃっと30秒で作って見せようじゃないか!」

 

 

ホリーは『コネクト』を使って、材料を取り出し、目にも留まらぬ速さで手を動かし始める。

 

 

「す、凄い…………」

 

 

「恐らく、マッハ3で作ってる」

 

 

デュオの補足に、碧海さんはさらに驚く。

 

 

「ま、マッハ 3!?人外じゃん…………」

 

 

「まぁ、人じゃないしな」

 

 

「しゃあ、出来たぞ!ほれ」

 

 

ご丁寧にも袋詰めされた箱をホリーは渡す。

 

 

「おーほんとに30秒で出来た!ありがとう、ホリー君!」

 

 

「良いってことよ!そんじゃ、碧海ちゃんは先にお風呂入ってくれば?そしたら、僕が美女の残り湯を堪能できる…………………」

 

 

「セクハラ同然の発言すんな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

30分後

 

 

「あースッキリ。お風呂は気持ちいいね~」

 

 

碧海が髪をかわかして、リビングに戻ると、創真の姿はなかった。

 

 

「あれ?創真君は?」

 

 

「今、暇だからって天体観察してるよ」

 

 

ババ抜きをしているホリーが答える。

 

 

「……………チッ、またジョーカーか………何度目だ……」

 

 

ジョーカーを引いたデュオは舌打ちをする。

 

 

「でさ、私どこで寝ろとか言ってなかった?」

 

 

「親の寝室で寝ろ、と言ってた」

 

 

「えー嫌だな~。あ、そうだ!創真君と一緒に寝ちゃおっかな♪」

 

 

「「「え!?」」」

 

 

「だって独りとか寂しいし~。今のうちからスタンバイしておこうかな~」

 

 

「ま、マジか……………なら隼と一緒に寝た回数とかたくさんありそうだな……」

 

 

キバットは少し動揺気味だ。

 

 

「小6の時まで一緒だったよ~」

 

 

「……良いこと聞いた。今度からかってやろう」

 

 

いじりのネタを知ったホリーがニヤリと笑みを浮かべた。

 

 

「だがな、碧海さん。流石に今は小6じゃなくて、中3だ。それに男女が同じベットで寝るのは色んな面からして、やめといた方が………って」

 

 

デュオの諭しも聞かず、碧海は創真の部屋に入っていった。

 

 

「まーまー、デュオ。ちょっと、このまま放置しておこう」

 

 

「は…………………?」

 

 

ホリーの提案に、デュオは訝しげな表情を浮かべるが、その意図に気づいたキバットはニヤリと笑う。

 

 

「良いねぇ、それ。面白い展開が見れそうだぜ。さーさー、続きをやるぜ!」

 

 

「やれやれ……………どうなっても知らんぞ」

 

 

ちなみに、ババ抜き以外はデュオが一位だったそう。何回やってもババ抜きは最下位のデュオだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから1時間後。天体観察から戻って、お風呂に直行し、それを済ませて、寝間着の創真がリビングにやってきた。

 

 

「いやはや、今日は色々とありすぎて疲れた…………」

 

 

すると、リビングにやって来た創真に、皆は一斉に近づく。

 

 

「………な、何?」

 

 

「創真…………、お前のベットが占拠されてるぞー!」

 

 

「はぁ…………………あと、何でハイテンション?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、マジで……………いや、何でよ………」

 

 

そこでは碧海がベットで幸せそうに寝息を立てている。

 

 

「うーん、デュオ君。詳しく状況を説明してくれたまえ」

 

 

「お前と寝るために、事前にスタンバイしたらしい」

 

 

デュオが無感情に呟く。

 

 

「……………スタンバイしてるとこ悪いけど、一緒に寝ないからな」

 

 

「何でだよ!見ろ!無防備に美女が横たわってるんだぞ!これはチャンスだ!ルパンダイブするしかね」

 

 

「誰がするか!!」

 

 

創真はキバットを蹴飛ばす。キバットは回転しながら吹き飛び、壁に叩きつけられる。

 

 

「まーた、そう言う系の展開を期待してたのか?このコウモリは相変わらずだな、ねぇ、ホリー君?」

 

 

「ソ、ソーデスネー……」

 

 

目力が凄い創真から逃げるように、声で動揺しているホリーは目を逸らしながら答える。

 

 

「あー、疲れるな、ほんと。んじゃ、僕は親の寝室で寝るとす………のわぁ!?」

 

 

「「!?」」

 

 

創真の謎の悲鳴に、ホリーとデュオが一斉に振り向く。

 

 

「もう!創真君、なんで入んないの!」

 

 

「起きてやがったのか………………いや、当然でしょ!?男女が同じベットで寝るのは、色々と不味いって!」

 

 

「だーいじょうぶ。創真君が危惧してるような事はしないよ?ね?」

 

 

最後の一言を耳元で囁かれ、創真は顔を若干赤くした。

 

 

「だとしても、だとしてもだ!流石に不味い!てか、僕は彼女いるし!陽菜乃に色々と申し訳ない!」

 

 

「むー。どーしても?」

 

 

「どーしても!」

 

 

「なら、しょうがないか……………」

 

 

漸く諦めてくれたようで、創真はホッと息をつく。しかし、それは重大な勘違いだった。

 

 

「………………なーんてね!」

 

 

ホッとしている創真を、碧海は力づくで引っ張る。安心の余り、力を抜いていた創真は成す術もなく、ベットに引きずり込まれた。

 

 

「しまったぁ………………おい、離せ! 」

 

 

「絶対離さない────────!!」

 

 

「キタ──────────!!神展開キタ─────!!」

 

 

ホリーは歓喜の声をあげる。そして、わざとらしく時計を見る。

 

 

「あ、もう11時だ。創真、明日は学校に行く予定もあるし、こんな所でいつまでもいたら、迷惑だよねー?じゃ、僕らはあっちに行くんでおやすみー!さぁさぁ、デュオ君、お邪魔になるから早く行きましょ行きましょ」

 

 

「あ、だが………………」

 

 

「いーから、いーから!」

 

 

デュオが何かを言おうとするのをホリーは遮り、デュオの背中を押して追い出す。そして、ドアを閉める直前、ホリーは何かを置く。それを見た創真は叫ぶ。

 

 

「おい、何去り際に8kカメラの撮影を開始してんだよ!」

 

 

「言っておくが創真、このカメラの回りには僕しか解除できない結界が張られてるから、一切触れることは出来ないぜ。ついでに、魔法でお前が朝の7時まで出れないような呪文を掛けておいたからなー!感謝しろよー!!」

 

 

そう言って、ゲスの極みホリーはドアをばたんと閉めるのだった。脱出した創真がドアを開けようとするが、ドアはびくともしなかった。窓も同様にだった。

 

 

「あんのゲスの極みホリー………明日、覚えとけよ…………………はぁ」

 

 

急に疲れが押し寄せ、創真はドアを背に座り込む。

 

 

「くそっ……………結局、碧海さんと寝るしかないのか………………」

 

 

「そう言う事♪……………と言っても、まさかホリー君がここまでするとは流石に考えてなかったけど」

 

 

「あーあ………………てか、明日は学校に用事あるし、早めに寝とかないと疲れも取れないし……………しゃーない、寝よう」

 

 

「じゃ、私も一緒に入らせてもらうねー」

 

 

「もーご勝手にどうぞ」

 

 

半ばやけくそ気味の創真だった。ベットに入ると、碧海が近くに寄ってくる。それすらも追い払う気力もなく、創真は眠りにつくまでぼーっと天井を眺める。

 

 

「ねーねー、ドキドキしてる?」

 

 

「どーでしょーね」

 

 

そう答えると、碧海は創真の胸に頭を乗せる。

 

 

「んなっ!?」

 

 

「うーん、ドキドキしてないかー。残念だなー」

 

 

「今の行動にドキッとしたわ!………………はぁ」

 

 

とっとと寝たい……………………そう考えながら、創真は目を閉じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ねぇ、創真君。1つ言って良い?───────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────君が好き』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んなっ!?……………………あ?」

 

 

思いっきり目を開ける創真。そこは無論、自分の部屋兼寝室だった。

 

 

「…………………あぁ。夢かぁ……………びっくりしたぁ。ったく、夢だからって告白してきてんじゃないよ」

 

 

安心したように大きなため息をつく創真。

 

 

「にしても、何か重い…………………はっ!?」

 

 

何と、碧海が自分の上に覆い被さっていた。さらに、彼女のそこそこある胸が完全に密着しており、今更のように赤くなる創真。

 

 

「………………………………」

 

 

何も言わず、碧海を静かにどける創真。そして、8kカメラが置いてあることを認識した。

 

 

「回収しに来てない、って事はホリーはまだ寝てるな…………………なら」

 

 

時刻が7時を過ぎてる事を確認した創真は、部屋を出てデュオを探す。幸い、直ぐに見つかった。

 

 

「あぁ、起きたか創真」

 

 

「デュオ、あのカメラをぶっ壊す方法知らない?」

 

 

「…………………そう言う事か。あるぞ」

 

 

デュオは創真の耳元で囁く。

 

 

「お前が前にホリーから貰った、天空の剣があるだろ?」

 

 

「あるね」

 

 

「アレには特殊な効果があってな。どんな魔法でも無効化する能力があるんだよ」

 

 

「そうなの?てことは、あの剣で結界の部分に触れれば、結界は解けるって事?でも、それホリーも知ってるんじゃないの?」

 

 

「いや、知らない」

 

 

絶対に、とつけ足してデュオが言い切った。

 

 

「何でそう言えるの?」

 

 

「俺がその効果をこっそり付け足しといたのさ。あったら、便利だろうと思ってな」

 

 

「なるほどねぇ。あぁ、確かに便利だ。例えば今回のようなケースで、な」

 

 

創真はニヤリと笑った。そして─────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「データが取れてない!!何でだよ─────────!!」

 

 

確認したホリーの大声が響き渡った。

 

 

「あ、創真!何故か録画が取れてないんだけど!?」

 

 

「へー、そりゃ良かったわ。録画開始ボタンを押しそびれたんじゃないの?」

 

 

創真が氷室と共に朝食を作りながら答える。

 

 

「そうかも………………あーあ、折角良い機会だったのに」

 

 

「あぁ、それと。次にまた撮影を試みようとしたら、君の大好きなおやつが無くなるから」

 

 

「なっ!?そ、そりゃ………………不味いな………………分かったよ、不本意だけど」

 

 

「素直でよろしい……………フフッ」

 

 

無論、ホリーは知るよしもない。結界を解除し、取れていた録画データを創真が削除した事は。

 

 

「さて、出来た出来た。そして、今日から5人で食べるんだっけ?」

 

 

「お、そう言えばそうだね!そして、丁度来たみたいだね」

 

 

ホリーの言う通り、着替えた碧海がリビングにやって来た。

 

 

「わぁ、凄く美味しそう!これ、創真君が?」

 

 

「氷室さんと一緒にね」

 

 

「凄ーい!さっ、早く食べよ!」

 

 

「そーだね!僕も早く食べたーい!」

 

 

「朝から碧海さんとホリーは元気な事で…………」

 

 

そう言いつつも、創真の顔は何処か楽しそうだった。かくして、新たにこの家に住人が加わったのだった。




THE NEXT story 2/19 PM 22:00


碧海さんって…………創真が…………どうですかね…………?


碧海がE組に来るのはもう少し先です!


波乱な展開になりますね。絶対。


次回はプリン!


それでは、月曜日にまたお会いしましょう!


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第87話 プリンの時間

僕、プリン好きなんですよね。



あ、それではどうぞ!


創真side

 

 

「と言うわけで、廃棄される卵を救済しつつ、暗殺も出来るプランを考えてきました!」

 

 

「私、校庭で見てきて察しがつきましたけど、本当に面白いアイデアですね」」

 

 

「アハハ…………氷室さんに褒められちゃった」

 

 

茅野はどこか照れくさそうだ。

 

 

「どーせメシ作ってBB弾を混ぜるんだろ?そんなのとっくに見破られてるわ」

 

 

確かに寺坂の言う通り、メシ作って混ぜるのは正解だが、規模が違う。僕は集合時間ちょっと前に学校に行ったら、茅野さんに呼び出され、計画書を見せてもらった。茅野さん曰く、僕が確認してOKなら絶対大丈夫!との事。僕に対しての信頼度が高いな。結論は、恐らく大丈夫。まぁ、実際にやってみないと分からないが。

 

 

しかし、国が生産調整に失敗して、国内の鶏の増加で、鶏卵が供給過剰になり、そのため廃棄される卵を使うとは。1週間前にそのニュースは見たが、たった1週間でここまで計算するとは…………脱帽だ。

 

 

「見たら絶対驚くよ。どうぞ皆さん校庭へ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=====================

 

 

「本当にすげぇな、こりゃ」

 

 

キバットがそう呟いたのと同じように、皆も驚きを見せる。何故なら既に多数の機械と、見覚えのある巨大な容器があった。

 

 

「これ……………分かったぞ。プリンだな!」

 

 

「ホリー君正解!その名もプリン爆殺計画!」

 

 

(…………なるほどな。前に殺せんせーが茅野と一緒にプリンを食べてたときに、『自分よりでっかいプリンに飛び込んでみたい』、とか言ってたな)

 

 

キバットが木にぶら下がって聞いていた話を思い出す。ちなみに、この時キバットは彼女等が食べているプリンをひと口貰いたかったのだが、頼んでもくれなかったと言う、プリンの甘さとは正反対に苦い思い出がある。

 

 

「計画だと、プリンの底に対先生弾と爆薬を設置して、底の方まで食べ進んだらドカン!!」

 

 

「単純だな。だがまぁ、あのタコはエロとスイーツには目がないからな。茅野ちゃんが前に出て計画してるのも意外性があって良いんじゃね?」

 

 

キバットが特筆すべき所もない、作戦に対しての普通な感想を述べた。

 

 

「では、始めましょう!!」

 

 

「氷室さん、気合い入ってますね…………」

 

 

いつの間にか着替えていた氷室であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

皆も着替えて作業を始めた。先ずは機械で割って混ぜてもらった大量の卵を容器に入れ、砂糖と牛乳、バニラオイルを入れ、混ぜていく。

 

 

「前にテレビで巨大プリン失敗してたの見たことあるけど、それ以上に大きくて大丈夫なのかな?」

 

 

いい疑問ですね、陽菜乃。

 

 

「その対策として、寒天を入れるんだよ。凝固剤のゼラチンだけでは重さで潰れる。寒天の繊維が強度を増す。しかも、熱で溶けにくいから、この気温でも崩れにくい」

 

 

「へーそうなんだ~」

 

 

「ここまで調べた茅野さんは、本当に凄いね……」

 

 

ホリーが指示を出している茅野に尊敬の意を示す。そうこう、話してる内に、プリン液を容器に注ぎ始めた。下の層は固め上の層はやわらかめ。自重を支えつつ、上はふんわりと仕上げる。

 

 

「ん?ねぇ、茅野ちゃん。それなに?」

 

 

ホリーが指差したのは、片岡さんに渡そうとしていたいろんな色をした直方体の物体。

 

 

「オブラートで包んだ味変り。同じ味じゃ飽きちゃうからね。あちこち味に変化がつく部分が生まれるの」

 

 

「な、なるほどな…………じゃ、あのカップにぶっ刺さってるパイプは?」

 

 

「あのパイプを通して冷却水を流すの。これだけ大きいプリンになると外気だけじゃ冷えないからね」

 

 

「ほえ~。こりゃすげぇな。金も相当な額使ってるんだろうな………」

 

 

請求書を見て頭を掻いている烏間先生の姿が容易に想像できる。こうして容器をプリン液で満ぱんにして、1日目は終了。片付けをしている茅野さんにカルマが近づき、話し掛ける。

 

 

「やるね~茅野ちゃん。卵のニュース聞いてから全部手配したの?」

 

 

「うん。っていうか前からやってみたかったんだ。やると決めたら一直線なんだ………私」

 

 

茅野さんはサポート向きのタイプと思っていたが………好きな物をテーマーにした暗殺ではここまでの実行力があるんだな。

 

 

人は見かけにあらず……………とはまさにこの事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰り、ご飯やお風呂を済ませたあと、明日のプリン計画の再確認をし、就寝の為に部屋にはいると…………………待ち構えてますわ、碧海さんが。

 

 

「創真君……………」

 

 

「えー、マジか………まぁ、良いけど」

 

 

「あれ?何か今日はすんなりだね?」

 

 

「何か、抵抗してもただ疲れるし、しても無駄だと昨日学んだ気がする……………」

 

 

自分、やけくそになってるなぁ、と思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2日目

 

 

恐らく今日で完成するだろう。昨日と同じ時間に集合し、作業に取り掛かる。先ずはパイプを抜き、その穴から空気を吹き込んで型枠を浮かせて外す。そして、ゆるめのゼラチン寒天でなめらかに整え、カラメルソースをかけ、表面をバーナーであぶって………!

 

 

「「「できたぁーーーーーーーーっ!!」」」

 

 

「おお………頑張った甲斐があったぜ………」

 

 

キバットはほとんど見てたたげだが。

 

 

「殺せんせーを呼びました。インドにいるそうなので、直ぐに来ますよ」

 

 

「仕事が本当に早いですね、氷室さん。さて、後は殺れるかどうかだ………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=====================

 

 

「おお………………!!これ全部食べていいんですか?」

 

 

殺せんせーが目を輝かせて聞く。

 

 

「どうぞ。廃棄卵救いたかっただけだし」

 

 

創真がポーカーフェイスの表情で云う。

 

 

「勿体ないから全部食べてね~」

 

 

「もちろん!!いっただきまーす!」

 

 

倉橋に答えて間もなく、殺せんせーはプリンに飛び込んだ。そして皆は教室に戻り、その様子を見守る。

 

 

「タイミングは観察カメラからの映像がうっすら明るくなってきた頃…………竹林、頼むぞ」

 

 

「任せてくれ。今回は自信作だ」

 

 

ちなみに、初めて彼が作った爆弾は不発弾だった。創真の肩に止まっているメテオとフレアも見守る中─────────

 

 

「プリン………爆破…………」

 

 

茅野の呟きがキバット耳に入ってきてしまった。

 

 

(おい………なんか切なそうな表情してるな…………いや、まさかだとは思うが…………)

 

 

茅野の頭に巨大プリンを作るために調べて作って失敗してきた試行錯誤の日々が駆け巡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

愛情のこもったプリンを爆破なんて………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ダメ────────────────っ!!!!」

 

 

突然茅野が叫び出す。

 

 

「愛情のこもったプリンを爆破なんてダメ────!!」

 

 

茅野は爆破スイッチを奪い、逃走しようとする。

 

 

「プリンに感情移入してんじゃねー!!爆破するために作ったんだろうが!!」

 

 

寺坂が茅野を捕まえ、羽交い締めにする。すると、突然創真の肩に乗っていたメテオが飛び出した。寺坂が捕まえたときに落とした床に落ちている起爆スイッチの直ぐ隣に着地する。そして、スイッチの方を凝視する。

 

 

「あ!!ダメー!!ストップ、ストップ────!!」

 

 

茅野の叫びも虚しく、メテオがくちばしでスイッチを押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

「…………………ん?」

 

 

爆発音がしなかった。どゆこと?また不発弾?

 

 

「ヌルフフフ………ちょっと休憩。それと異物混入がありましたよ」

 

 

なんと、起爆装置が外されていた。

 

 

「土を食べて地中に潜って外してきました。竹林君、先生の鼻にかからない成分の研究をしてみてくださいね」

 

 

「……………はぁ。頑張ります」

 

 

「それと、きれいな部分をより分けておきました。皆さんも食べましょう!」

 

 

茅野的には安心したのかな?いやー惜しかったんだけどね……………。

 

 

「惜しかったね、茅野。むしろ安心した?」

 

 

「渚………まぁ、そうかも……」

 

 

「おいおい…………しかし、ここまで徹底してるとはね………意外だったね」

 

 

僕も茅野のアイデアには感心した。

 

 

「本当の刃は親しい友達にも見せないものよ。また殺るよ。ぷるんぷるんの刃なら他にも持ってるから」

 

 

「それはまた面白そうだね。期待してるよ……………うーん、甘くて美味しいー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミニオマケ 1

 

 

 

病院にて

 

 

 

「んー甘いなぁ…………」

 

 

殺せんせーが届けてくれたプリンにご満悦の様子の隼であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ミニオマケ2

 

 

「さて………私の初授業の課題は………」

 

 

氷室が自室の机に置いた紙には、次の体育の授業内容が書かれていた。

 

 

その内容は─────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────フリーランニング




THE NEXT story 2/20or21 PM 22:00


氷室さん、ついに出陣!


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第88話 ケイドロの時間

次から本格的にケイドロです!今回は始まる直前まで。


では、楽しんでください!


「さて………烏間先生から聞いてたかと思いますが、私もついに教鞭を取る事になりましたので、よろしくお願いします」

 

 

挨拶をする氷室さんに緊張しているようには見えず、堂々としている。

 

 

「それで、私が今日教える体育の内容は、『フリーランニング』です」

 

 

その言葉に、教室屋根の上でテストの採点をしていた殺せんせーがにやりと笑う。

 

 

「そうですね…………では、三村君。今からあの一本松まで行くとしたら、君ならどんなルートで行きますか?所要時間も考えてみてください」

 

 

三村は少し考えてから喋り出す。

 

 

「そうですね………まずこの岩を降りて、そこの小川は幅が小さいところを飛び越えて、茂みのない右の方から回り込んで、あの岩をよじ登ってゴール。まぁ、大体1分位ですかね?」

 

 

「なるほど。普通に行けばそんなものでしょう。が……………フリーランニングを使ったらどうか?ちょっと時間を計ってみてください」

 

 

氷室は三村にストップウオッチを渡して、崖に背を向ける。

 

 

「フリーランニングで必要なのは身体能力の把握や、受け身の技術、距離や危険度を正確に計る力…………………それでは見ていてください。スタート」

 

 

氷室は崖を飛び降り、地面に着地すると同時に走り出す。小川の壁を伝って越え、近くの木にジャンプし、岩と岩の間を壁キックで上り、氷室の手は一本松の枝を掴んだ。

 

 

「三村君、タイムは?」

 

 

「じ、10秒です…………」

 

 

皆は氷室の運動能力の凄さを知っているが、ここまでの芸当の技を見せられ、驚いたようだ。

 

 

「これを極めれば、どんな場所でも忍者の如く行動できますが……………同時に危険な物でもあります。かつて私の友達もこれに手を出し………………亡くなりました」

 

 

その言葉に、皆は表情を堅くする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………って言うのは冗談ですが」

 

 

(((冗談かよ!!)))

 

 

氷室は付着した枯れ葉を払い、言葉を続ける。

 

 

「まぁ、それほど危険なんです。幸い私の友達は亡くなってませんが、本当に亡くなった人もいますからね。この裏山なら地面も柔らかいため、訓練に向きます。でも、ここ以外で技を試したり、私や烏間先生が教える技術以上の事はしないように」

 

 

「「「はーい!!」」」

 

 

「では、基礎中の基礎である受け身のおさらいをしましょう」

 

 

皆が受け身の復習をしているのを見ている殺せんせーが何かを思い付いた顔をしたのに気づいた者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

「ジャンプなくて探しちゃった………」

 

 

遅刻して教室に入ってきた不破の手に手錠がかかる。

 

 

「遅刻の容疑で逮捕する」

 

 

「朝っぱらからなにしてんだか…………」

 

 

デュオは呆れ気味で云う。

 

 

「てか、その格好はなんだ殺せんせー?」

 

 

キバットが聞くと、その質問を待ってましたとばかりに殺せんせーが喋り出す。

 

 

「皆さん、フリーランニングを習い始めましたね?それを活かしたゲームを考えてきました」

 

 

「そのゲームとは?」

 

 

「ケイドロに決まってるじゃないですか、氷室さん!もう、それしかないでしょう!!」

 

 

ちなみに創真はドロケーと呼ぶ。氷室はケイドロ。

 

 

「今日の一時間目、この裏山を舞台に、泥棒役を皆さんが。警察は烏間先生と氷室さん………じゃなくて、氷室先生と私がやります。皆さんが勝てば烏間先生の財布でケーキを買ってきます」

 

 

最後の言葉に氷室がホッとしたのは誰も知らない。

 

 

「ただし、警察が勝てば、宿題二倍!」

 

 

「………でもさ、殺せんせーが警察なら一瞬で終わりじゃね?」

 

 

確かにホリーの言う通り。皆もブーイングを浴びせる。

 

 

「先生はラスト一分まで、牢屋に待機します。最初は氷室先生が追いかけ、制限時間の半分を過ぎたら烏間先生にバトンタッチです。私が動くのはラスト一分からです。これなら勝機もありますよ」

 

 

「それならなんとかなるか……」

 

 

皆も納得し、やる気が出てきた。

 

 

「よし、やるか!」

 

 

「「「おー!!」」」

 

 

本当にいい遊びを考える。これなら楽しいし、緊張感もあって良いと、氷室は思う。

 

 

(ただ、烏間先生は殺せんせーと同じ側なのは嫌なんでしょうね………その気持ち、分からなくもないですが)

 

 

嫌そうな感じの烏間を見て、氷室は心の中で苦笑した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ベタな展開だが、創真は倉橋とペアを組んで行動することになった。

 

 

「追ってくる鬼の人数は一人だけで、この広い裏山だし………警戒するのはラスト一分位だよね~」

 

 

「甘いねぇ…………相手は超人。そう簡単に逃げ切れるとは思えない。あ、陽菜乃。足跡と植物の乱れに気を付けて」

 

 

「え?」

 

 

「それを警察が見て、場所を特定するからね。僕が警察側だったらそうするし」

 

 

「なるほど~。流石創真君!」

 

 

間もなく、ゲームが始まった。

 

 

鬼の人数は1人だが、逃〇中のハ〇ターの何倍も手強い事を皆は直ぐに知ることになる……………!!

 

 

to be continue………




THENEXT story 2/21 PM 22:00


次回ハ〇ター………じゃなくて、先ずは氷室さん放出(?)


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第89話 逃走の時間

急いだので、ミスがあるかもしれません。


それではどうぞ!


場面は、団体で行動している岡島、千葉、速水、不破らに変わる。

 

 

「結局追ってくるのは最初は氷室先生で、半分から烏間先生だろ?二人共超人とは言え、こんな広い裏山だ。捕まえられるのは精々2、3人だろ?」

 

 

岡島は余裕そうだ。

 

 

「警戒するのは、殺せんせーが動き出すラスト一分」

 

 

「それまでに隠れるのがベストね」

 

 

不破と速水も少し氷室と烏間を軽視しているようだが────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(やはり甘い………さっそく足跡を発見。恐らくまだ近くに………)

 

 

氷室は木に登り、遠くを見渡す。

 

 

「…………先ずは4人。行きますかね」

 

 

氷室は木から木へと飛び移り、どんどん距離を縮めていく。

 

 

4人はハ〇ター………ではなく、警察の接近に気づかない。

 

 

「「「「!?」」」」

 

 

4人は誰かにタッチされたような気がした刹那、目の前に氷室が現れる。

 

 

「フフ…………アウトです。爪が甘いですよ」

 

 

『岡島君、千葉君、速水さん、不破さん、アウトー!』

 

 

スマホの律からの声で、逮捕されたとようやく実感した。

 

 

「嘘だろ……全然気付かなかった………」

 

 

千葉が呆然と呟く。

 

 

「牢屋にて刑務作業と言う名のドリルの問題が待ってますよ。では私は菅谷君を確保してきますかね。さっき移動してるときに見かけたので」

 

 

そう言い残し、氷室は恐るべき速さで走っていった。

 

 

「次の標的は菅谷!?」

 

 

岡島はスマホを取りだし、菅谷に狙われている趣旨を伝える。

 

 

『俺の確保に向かってる?いや、俺茂みの中にいてさ。外から絶対見えないから大丈夫だろ?つーかお前捕まったのか?』

 

 

「まとめて捕まったんだよ!兎に角すぐそこから離れろ!俺の言う通りに………」

 

 

『ギャァァァァァァァァァ!!』

 

 

突然の悲鳴。

 

 

「菅谷!?菅谷ァ!!こりゃ………殺られたな」

 

 

岡島がスマホをしまい、ため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハハ、もう5人も殺られてる。氷室先生も充分ヤバイね」

 

 

カルマが何処か面白そうに呟く。

 

 

「でも、ケイドロならタッチすれば……」

 

 

奥田が言いかけた言葉で杉野がルールを思い出した。

 

 

「そうだ!タッチすれば牢屋から出せる!よし、振り出しに戻してやる!」

 

 

杉野が牢屋へと向かう。

 

 

「杉野、忘れたのかな~?ラスト一分まで動かないて言ってたよね?」

 

 

確かに杉野はそれを忘れていた。冷静に考えれば、マッハ20のタコに接近するなど、玉砕も当然。

 

 

「くそ…………どうすれば…………」

 

 

牢屋を伺っている間にも、氷室はどんどん確保していって、着々と残りの数を減らしている。

 

 

すると、杉野のスマホに電話がかかってきた。

 

 

創真からだ。

 

 

『やぁ、杉野。いま何処?』

 

 

「いま牢屋の前にいるけど…………」

 

 

『なら、丁度良い。僕の予想なら、もうそろそろ岡島がなんとかすると思うから、タッチをよろしく』

 

 

「え?そりゃどういう意味で………」

 

 

言い終わる前に、切られた。

 

 

「なんだって?」

 

 

渚が杉野に聞く。

 

 

「なんか岡島が隙を作るらしい。それで準備しとけとよ」

 

 

「あいつ何言ってんだ…………ってあれは…………?」

 

 

牢屋の方では、岡島が殺せんせーに何かを渡していた。

 

 

何かの写真のようだ。それを見た殺せんせーは…………囚人たちに背を向けた。

 

 

(今だ、助けにこい──────!!)

 

 

岡島のジェスチャーで、皆は囚人達にタッチし、ゲームを振り出しに戻した…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………これはどういうことですかね?」

 

 

氷室のスマホには、捕まえた泥棒が全員脱走したことが表示されていた。氷室は殺せんせーに連絡を取る。

 

 

「もしもし?泥棒がなんで逃げてるのです?」

 

 

『思いのほか奴らやり手でねぇ………おお!?この乳ヤバイ!!』

 

 

「………………次逃がしたら殺しますよ?」

 

 

いつもと変わらないように見えるが、声には殺気が入り混じっている。

 

 

『次は逃がしませんよ。所で、いまどんな状況で?』

 

 

「もうすぐ5、6人送ります。………ほんとに頼みますよ?」

 

 

『任せてください。ヌルフフフフフ……』

 

 

「……………不安です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷室の不安は的中。10分後、またもや牢屋の囚人が0に。

 

 

『氷室さん…………本官は泥棒なんて見ちゃいないんだ…………』

 

 

「ちょっと意味が分からないです……………はぁ…」

 

 

この後も……………氷室がどんなに頑張って確保しても、どんどん殺警官は囚人を取り逃がしていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷室は交代の時間になったため、牢屋に戻ってきた。

 

 

「烏間先生…………殺警官は?」

 

 

「信州そばを食べに行った。また0だ」

 

 

烏間先生の目線の先には逃げていく泥棒達の姿があった。全くもってチームワーク0の警官側。もし、牢屋の見張りが烏間先生なら、とっくにゲームは警察側の勝利となっているだろうに。

 

 

間もなく殺せんせーが帰ってきた。

 

 

「いいか。一度でも今までのように逃がしたら俺は降りるからな」

 

 

「ええ、絶対逃がしません。ですが、烏間先生。氷室先生の時よりは難易度が上がってますよ…………」

 

 

「なに……………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(妙だな……………生徒の気配を捉えづらい………)

 

 

まぁ、原作読んでればお分かりだと思うが、殺せんせーが皆が牢屋にいるときに、少しアドバイスをした。植物の乱れや足跡。さらロングジャンプなどを使えば追跡を困難に出来る……………と。

 

 

(4人小隊で見張っている。これでは俺1人での全員確保は難しいな。よく短時間で学習したな…………………だが、別に奴と協力するつもりはない。それに、奴1人でも全員を捕らえるのに1分も要らないだろうがな)

 

 

氷室よりは劣るが、烏間もどんどん逮捕していく。茂みを抜けると、そこに待ち構えていたのは………………前原、片岡、岡野、木村の4人。機動力に優れるメンバーだ

 

 

「(俺に挑戦か……………面白い)そこの崖は危ないから立ち入り禁止だ。そこ以外で勝負だ」

 

 

「「「はい!!」」」

 

 

そして、一斉に散る。

 

 

(一学期までの基礎がちゃんと身に付いてるな。良い走りをする……………………が)

 

 

烏間の方が能力も経験も上。先ずは木村。次に岡野。そして片岡と続き、最後に前原も逮捕された。

 

 

「………大分時間が掛かったが、間もなくラスト一分。これで、君達の負けだな」

 

 

「いや………俺らの勝ちッす」

 

 

前原の言葉に烏間は訝しげな表情を浮かべる。

 

 

「烏間先生は殺せんせーに乗って飛ばないですよね?」

 

 

「………そんな暇があれば刺してる」

 

 

「じゃ、あそこのプールまで1分で戻れますか?」

 

 

「!!しまった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渚、カルマ、杉野、そして創真はプールに潜っている。

 

 

殺せんせーは水が苦手。なので、捕まえられない。

 

 

(手の出しようがないだろ………殺せんせー?烏間先生をおびき出せばこっちの勝ちだ………残り30秒………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

『ゲーム終了!!泥棒側の勝ちです!!』

 

 

ケーキだ、イエーイ。

 

 

「それにしても………先生ってのは教えるときは息ぴったりなんだな~?」

 

 

「当然ですよ、キバット君。目の前に生徒がいたら、教えたくなるのが本能ですから」

 

 

「このケイドロで大した働きをしたわけでもないのに良いとこだけとりやがって、汚職警官が………」

 

 

「何を言うんです創真君!!先生は清廉潔白ですよ!?」

 

 

…………嘘つけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後にケーキを味わい、家に帰ってくると碧海さんは週刊誌を読んでいた。

 

 

「あ、創真君おかえり!ねぇ、ちょっとこれ見……」

 

 

「ちょっと待って。隼から電話が………」

 

 

慌てて電話に出る。

 

 

「もしもし?イタ電ならお断りですけど」

 

 

『イタ電じゃねぇわ!ったく…………久しぶりだな、創真。良いニュースだ。俺、明日からE組復帰だ。予定より早く退院できた。まだ運動は控えないといけないがな』

 

 

「そうか。そりゃ良かったね」

 

 

『それと、お前ニュース見たか?どこでもあのニュースはやってるから見といた方が良いぞ。じゃ、また明日』

 

 

一方的に切られた。て言うか、あのニュースって、何だ?

 

 

「創真君、これ見て!これもしかして…………君の担任じゃ………」

 

 

連続下着窃盗事件──────ヌルフフフフフと言う声を現場で聞いた………………まさか…………ね。




THE NEXT story2/22 PM 22:00


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第90話 不信の時間

どうも弟です。


今回は僕が全て担当しました。


ミスとかあったら教えてください。


拙い文かも知れませんが、お楽しみください!


創真side

 

 

「連続下着窃盗事件…………現場にはヌルフフフフフと言う声と、謎の粘液を残す……………か」

 

 

調べてみれば、ネットやテレビでも同様のニュースを創真は見つけた。

 

 

「おい、あのタコ…………こんなことをやってたのか…………?」

 

 

下衆いキバットも流石にこれは引いた。

 

 

「いや…………これ本当か?どーも嘘っぽい…………………絶対違うと思うんだけどね………」

 

 

「じゃ、出来るだけ調べてみよっか?私、暇だし」

 

 

碧海は現在通ってる学校を風邪、と言う嘘で欠席している。

 

 

「…………そうだね、頼むよ。にしても、明日は面倒い事になりそうだね……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

学校に着いてすぐ、皆が近寄ってきた。

 

 

「…………言わなくても分かるよ。例の件でしょ?」

 

 

「殺せんせー、あんなこと本当にやったのかな……?」

 

 

それは分からない。しかし、煩悩満載の殺せんせーがついに犯罪に手を染めた……………とは考えにくいが、可能性的には無くはない。

 

 

「皆さん、おはようございます…………って何ですかその汚物を見る目は!?」

 

 

誰かが持ってきた新聞記事を見せると、殺せんせーは青ざめた。

 

 

「これ殺せんせーだよね、絶対」

 

 

「隠れてこんなことしてたなんて」

 

 

岡野さんと片岡さんが口々に言う。

 

 

「ちょっと待ってください!先生、こんなことしてません!!」

 

 

「じゃあアリバイは?」

 

 

と、速水さんが聞くが───────

 

 

「そんなのあっても意味ねーよ。どーせすぐに戻ってこれるだろうが」

 

 

今日からE組に戻ってきた隼に一蹴され、皆はますます不信の目を強める。

 

 

「失礼な!!先生は清廉潔白と言った筈でしょう!なら、今から机の中のグラビアの本を全部捨て、理性の強さを見せてあげましょう!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺せんせーと皆は職員室に来た。

 

 

「見ていなさい!ほら、どんどん捨てていきます。

明日のごみの日にぜーんぶ捨て……………え?」

 

 

………………女性の下着、発見。

 

 

(なーんてこった…………)

 

 

「皆、見て!!出席簿に皆のカップ数が書かれてる!あと、町中のFカップリストも!」

 

 

これは……………ド・変・態・確定かな?

 

 

「永遠の0ってどういう事よ!?」

 

 

茅野さんはそこに怒るか。

 

 

「そんな………あ、そうだ!!今からバーベキューしましょう!!前から準備してたんですよ、ほら美味しそうな……………」

 

 

出てきたのは肉………………ではなくブラジャー……………。

 

 

皆からは、信じられないとか、不潔、などの声が上がる………………。デュオは見下すような視線。ホリーは異質者を見るような目。キバットは、色んな感情が複雑に混ざった表情を浮かべる。

 

 

「もー良いわ。授業の時間ですけど?」

 

 

「………………………」

 

 

誰も言葉を発する事なく、教室に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「き、今日はここまで……………」

 

 

殺せんせーはとぼとぼと出ていった。

 

 

「針のむしろだったね~。そのうち出てくんじゃない?」

 

 

カルマが椅子にもたれながら笑う。

 

 

「だが、殺せんせーがあんな犯罪をするのかね?」

 

 

「地球爆破よりましだろ」

 

 

隼の質問に創真がスマホをいじりながら答える。

 

 

「でもさ…………あの先生は皆との信頼を失うのは死ぬほど嫌なんじゃない?そんなことするようには思えないんだけどな………」

 

 

ホリーが自信無さげだが、ハッキリと言う。

 

 

「それは同感だな。俺様の勘では恐らくにせ」

 

 

「偽者よ」

 

 

キバットを遮ったのは、不破。

 

 

「ヒーロー物のお約束!!偽殺せんせーの仕業よ!!」

 

 

「あー………うん」

 

 

遮られたキバットは残念そうに同意する。

 

 

「犯人は、殺せんせーの情報を知ってる者と見て間違いないわね。律に頼んで、情報を探ってもらうわ」

 

 

「じゃ、僕もやるとしよう。僕のマシンシリーズはこういうときに役に立つ。あのタコに貸しを作ってやるとしようか…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰り、使えそうなマシンシリーズをチェックしていると、碧海さんが近づいてきた。

 

 

「創真君。氷室さんから聞いたけど、なんか探偵やるんだって?私も混ぜてよ!」

 

 

「え……………んー…………いいよ。僕の補佐して」

 

 

「やった!任せといて」

 

 

その時、スマホに画像が送られてきた。

 

 

「不破さんからだ…………この地図の場所が、真犯人の現れる可能性が高い、か。よし、氷室さん行きましょう」

 

 

「お任せあれ。必ず無罪を証明しましょう」

 

 

気合いが入ってるのか、氷室はあのすごい機能を持つ眼鏡…………通称『PEG』をかけた。

 

 

「さて…………殺るか…………」

 

 

「おい、創真。俺様達も忘れるなよ?あの良い先生がいなくなったら嫌だからな」

 

 

「流石相棒。分かってるじゃないか」

 

 

こうして創真、氷室、碧海、そしてホリー達が動き出した。




THE NEXT story 2/23 PM 22:00


新しいマシンを出すか検討中……………………。


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第91話 犯人の時間

文豪ストレイドックスのアプリゲームのIDを公開!!


954523938455


めっちゃ楽しいよ!!しかも、僕強いよ!?←自分で言うか………。


遊んでる人には分かるけど、この前のキャンペーンで、新登場の中原 中也のSSRがリーダーだよ!!


フレンド登録待ってます!!


創真side

 

 

送られてきた地図から少し離れた場所に、僕と碧海さん、ホリーはいた。

 

 

「わくわくするな~。こういうの」

 

 

碧海さんは能天気と言うか何と言うか。

 

 

「言っとくけど、遊びじゃないからね?」

 

 

「分かってるって。ちゃんと補佐するからね!」

 

 

本当に頼むぞ……………。さて、ここで色々詳しく説明しよう。真犯人が現れる可能性が高い住居の庭には、渚、カルマ、寺坂、茅野さん、不破さんの5人がいる。え?じゃ、お前の役割はなんだよ?

 

 

僕の役割は、周囲の探索と、監視。

 

 

空にはマシンドラゴンフライ。地上にはマシンスコーピオン。この2体が配備されている。

 

 

『創真様、配置に着きました。それと、殺せんせーもいました。我々と同じ目的かと』

 

 

ちなみに氷室さんは、建物の屋根から回りを見てもらう。念を入れすぎだが、死角は100%無い。

 

 

(さぁて…………罠に掛かってこい……………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

 

 

5分後

 

 

「あーヒマヒマ。まだ来ないの~?もーつまんなーい」

 

 

もう飽きたのか、碧海が駄々をこねやがる。そして、さっきから何も喋らないホリーは何をしてるかと思えば、漫画を読んでいた。

 

 

「あのさぁ………補佐してくれるんじゃなかったの?」

 

 

「だってさー………来ないじゃん。いつまで経っても」

 

 

「まだ開始から5分しか立ってないんですけど…………………………………………………ん?」

 

 

創真はマシンドラゴンフライからの映像に何かが写ったように感じた。コントローラを操作し、ズームしてみると、人影が見えた。

 

 

「(来たか…………!?)皆、今黄色いヘルメットを被った人物が塀を上ってきてる…………見えた?」

 

 

『見えたよ。やっぱり真犯人は別にいたか』

 

 

通信機越しにカルマが答える。

 

 

『創真様、どうしますか?私が確保に向かいますか?」

 

 

「勿論確保です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「了解です。じゃあ、デュオ君、頼みますよ」

 

 

「あぁ、任せろ」

 

 

デュオは氷室の肩にトン、と触れる。その刹那、氷室は飛び降りた。そして、壁に立つ。この芸当は勿論、デュオの異能力、『重力操作』によるものだ。そのまま氷室は壁を駆け降り、地面に降り立つ。

 

 

「!?」

 

 

突然氷室が現れ、慌てて真犯人は逃げ出す。

 

 

「逃がすとでも思っているのですか?」

 

 

氷室はワイヤー銃を向け、発射する。真犯人の足に巻き付き、綺麗に転んだ。そこへ、殺せんせーが馬乗りし、拘束する。

 

 

「捕まえました!よくも羨ましい真似しましたね!?手入れしてやります…………!!」

 

 

(羨ましいって………………)

 

 

ドラゴンフライを通して聞いていた創真は苦笑い。

 

 

「さぁ、偽者!正体を見せなさい!」

 

 

隠れていた皆も近くに寄り、その正体を拝もうとする殺せんせーが黄色いヘルメットを取ると……………

 

 

「…………え?」

 

 

「鶴田さん!?」

 

 

氷室が驚愕の声をあげる。

 

 

「な、なんで…………あなたが…………にゅや!?」

 

 

突然、殺せんせーの足下から何かが突き出てきた。間一髪、氷室は避けた。

 

 

「国に掛け合って、烏間先生の部下をお借りした。この対先生用繊維の布の檻へと誘導するために」

 

 

「なるほど。あなたが黒幕ですか、シロさん」

 

 

氷室が皆の前に出る。

 

 

「さぁ、殺せんせー。最後のデスマッチだ」

 

 

シロが指を鳴らすと─────────

 

 

「殺せんせー。あんたは死ぬ」

 

 

お久しぶりのイトナが現れた。そのまま上から殺せんせーに攻撃を仕掛ける。

 

 

「全て繋がりました。殺せんせーが生徒からの信用を失いかければ、慌てて事態の収集に取り掛かる。そこに罠を張るわけですか。多少不自然でも、殺せんせーにとっては生徒の信用の回復が第1ですから、容易に掛かると思った訳ですね」

 

 

「その通りだ。探偵みたいな推理だねぇ、氷室先生」

 

 

「どうも。さて………この檻をぶっ壊しますかね」

 

 

「何をする気か知らないが、そうはさせないよ」

 

 

すると、辺りからシロと同じ格好をした人が複数人現れた。

 

 

「……………10人。たったこれだけですか?」

 

 

氷室の挑発を受け、奴等は銃を取りだし、構えた。

 

 

「安心のために言っておくと、弾はゴム製だから、死にはしないよ」

 

 

「……………全然安心できないですね。銃持ちの10人を相手にするには少し私でも分が悪いですね…………なので、彼にお願いしましょう」

 

 

その瞬間、彼等が持っている銃が真っ二つに割れる。

 

 

「やはりいたか、結城 創真。それに愉快な仲間達も」

 

 

「お久しぶりだね、シロ」

 

 

日本刀……………通称『ガーベラ・ストレート』を持った創真がニヤリと笑う。簡単に解説すると、ホリーが憑依した状態の創真が目にも留まらぬ速さで銃を切ったのだ。

 

 

「まだ手はあるんだよ…………!!」

 

 

1人の男がナイフを取りだし、創真に向けて投擲した。が、しかし。

 

 

「まったく中学生にナイフを投げるなど、どういう神経をしているんだ…………」

 

 

創真の目の前に降り立ったデュオがナイフを上手くキャッチし、そのまま握り潰す。

 

 

「じゃ、寝とけ」

 

 

そう呟いた瞬間、創真の姿が一瞬ぶれたかと思えば、シロの部下達が一斉に気絶した。

 

 

「ふん………まぁ良い。正直、君達に興味はない。私はあのモンスターを殺せれば良いのだから。まぁ、それより中の暗殺の事を詳しく教えよう。イトナの触手には対先生物質のグローブを着けた。そして、この檻。これのお陰で、奴に逃げ場はなく、じわじわとダメージを受けていくと言う寸法さ。そして、常に上から攻撃し、逃がさない。これで殺れないようでは

ね………」

 

 

「本当に馬鹿だな、あんた!殺せんせーがそんな暗殺に殺られる分けないだろうが!!」

 

 

ホリーが憑依を解除し、言い返す。

 

 

「馬鹿な奴だ。私の周到な計算は正しい」

 

 

「へー……………」

 

 

ホリーが含みのある笑みを浮かべながら受け流す。

 

 

「俺の勝ちだ、兄さん。死ね!!」

 

 

触手を振るっているイトナからそんな声が聞こえた。

 

 

触手が殺せんせーに迫る!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「当たりませんねぇ。ヌルフフフフフフ……」

 

 

殺せんせーは打って変わって、余裕と言いたげな表情で避ける。

 

 

「バカな…………何故…………」

 

 

イトナは攻撃を続けるが、何故か掠りもしなくなった。

 

 

「イトナ君。先生も成長するんです。君の攻撃パターンは単純ですから、3度目なら直ぐに見切れます。まぁ、一学期までの先生なら殺られてたかも知れませんが。さて、そろそろ終わらせるとしましょうか」

 

 

殺せんせーは触手の一部を圧縮し始めた。完全防御形態のように、触手全体ではなく、一部だけを圧縮して、エネルギーを集めているのだ。眩い光がその場を支配する。

 

 

「覚えておきなさい、イトナ君。暗殺教室の先生は教える度に強くなるんです!!」

 

 

そして、エネルギー砲が発射された──────────!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

光が収まり皆が目を開けると、殺せんせーが気絶しているイトナを地面に降ろしていた。

 

 

「シロさん、あなたの負けです。イトナ君はこちらで預かります。それと!私が変態ではないと言う情報を広めてください!!」

 

 

……………最後のはいらない。

 

 

「私の胸もB、Bだから!!」

 

 

やはりそれにこだわるか、茅野さん。しかし、それも余り需要がない。

 

 

「それとよ…………やっぱあんたの方が馬鹿だったな!!馬鹿だねぇ、君は?えぇ?ねぇねぇ、今どんな気持ち?どんな気持ち?またまた負けちゃった君はどんな気持ち~?」

 

 

「煽りの天才だね~、ホリーは」

 

 

「いや、それに関しては君も負けてないよ、カルマ君」

 

 

思わずそうツッコミを入れたその時だった。

 

 

「ガァ!?痛い!!頭が…………!!」

 

 

突然イトナが苦しみだす。

 

 

「やれやれ…………ここいらが潮時か。イトナ、戦果無しでは組織も金は出さない。後は1人で殺りなさい」

 

 

「…………………何?」

 

 

「あんた保護者だろ!?何言ってんだお前!?」

 

 

キバットが叫ぶが、シロは冷たく言い放つ。

 

 

「使えないから捨てる。それだけだよコウモリ君。それよりイトナを見てなくて良いのかい?」

 

 

そう言い残し、シロは消えた。

 

 

「ハッ!おい、お前ら………」

 

 

キバットが叫んだ時には、皆に触手が迫っていた────!!

 

 

「危ない!!」

 

 

殺せんせーが寸前で触手を弾き飛ばす。さらに追撃が来るが、それをホリーが障壁を張って弾く。

 

 

「グガァァァァァァァァァァ!!」

 

 

イトナは叫び声をあげて飛びあがり、住宅街の屋根を飛び移って消えていった。




THE NEXT story 2/24or 25 PM 22:00


高確率で、25日です!!


まぁ、22時にチェックしてください。


それでは次回でお会いしましょう!



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第92話 開戦の時間

実はテストがもうすぐです………あーヤバイヤバイ


しばらく忙しいな…………。


あ、それではどうぞ!!


創真side

 

 

「悪かったって殺せんせー!」

 

 

「俺らもシロに騙されちゃって」

 

 

すねている殺せんせーにケーキなどを貢いだり、肩のマッサージをしたりと、お詫びをしている。昨日、全員に真相を話した結果、僕が今日来たらこんな感じだった。

 

 

「まぁ、もともと変態だから疑われるのも無理もないけどね~」

 

 

「何を言ってるんですかホリー君!!先生を異質者でも見るような目をしていたのをまだ覚えてるんですからね!?」

 

 

「あー悪かった悪かったって。まぁ、それよりイトナ君を探さないとね」

 

 

「おっとそうでした。シロさんに梯子を外されてしまった以上、このまま放置するのは危険です。早く保護しなければ………」

 

 

その通りだ。彼を野放しにしておくのは色々と不味い。なんとかしなければ………………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=====================

 

 

事態が動いたのはお昼休みだった。創真に入った一本の電話。

 

 

その主は─────────

 

 

『もしもし、碧海だけど』

 

 

「とうしたの?………もしかして何か発見した?」

 

 

『当ッたり~!丁度さっき、椚ヶ丘の複数の携帯ショップの店が襲撃されたらしいの。ニュースでやってた』

 

 

「……………あぁ、丁度今、ネットニュースで流れてきた。皆に教えなきゃ」

 

 

スマホで確認しながら創真は云う。

 

 

『店内の損害は激しすぎるんだって。これってさ………』

 

 

「イトナの仕業………………かもな」

 

 

『その線が高いね。椚ヶ丘にある携帯ショップの場所をまとめといたから、送るね。もしかしたら、それの何処かにまた来るかもよ』

 

 

「サンキュー。これでイトナを捕獲しやすくなる」

 

 

『ねぇねぇ、役に立つ情報だったんだからさ、ちょっとおねだりしたいんだけど~』

 

 

「お、おねだり?…………どんな?」

 

 

『大したことじゃないんだけどさー、買い物に付き合って欲しいんだよねー』

 

 

「なーんだ、そんなことかい。良いよ。じゃ、切るね」

 

 

『約束は守ってよ~?』

 

 

そう言い残し、通話は終わった。それと同時に送られてきた画像に創真は目を通す。

 

 

(綺麗に出来てるな…………やっぱ優秀だな)

 

 

「創真君、今の人は誰?」

 

 

「えーっと………じ、情報屋的な人だよ」

 

 

「へ~そうなんだ!創真君って色んな人と知り合いなんだね~」

 

 

「まぁね……………それより、ちょっと皆こっち来てくれる?それと律。ニュース映像を検索して。キーワードは携帯ショップ」

 

 

『了解です!』

 

 

数秒後、律は画面に映像を流す。内容は当然、携帯ショップ襲撃事件の事。皆は律の前に群がる。

 

 

「これ…………イトナの仕業か?」

 

 

「多分……………だろ?殺せんせー」

 

 

「ええ。この破壊は触手じゃなければ不可能です」

 

 

「どうします殺せんせー?今日にでも探しに行きます?」

 

 

「勿論です。彼を見つけて保護します」

 

 

その言葉に皆は少し表情を曇らせる。

 

 

「でもさ………商売敵みたいなもんだぜ、あいつ」

 

 

「助ける義理なんてないだろ………」

 

 

皆の反応は間違いではない。しかし、殺せんせーの意思は変わらない。

 

 

「それでも彼は私の生徒です。どんなときでもこの触手を離さない……………先生は先生になるとき、そう誓ったんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(近道なんてないんだぞイトナ。日々勉強の繰り返しさ。こつこつ勉強を重ねていけば、小さな企業でも、大企業と張り合えるんだ)

 

 

「…………嘘つき」

 

 

彼はそう呟いて触手を振るい、携帯ショップを無惨な姿へと変えた。

 

 

「勝ちたい……………俺はただ勝ちたいだけだ。見かけ倒しの強さなんてヘドが出る」

 

 

「人間らしい事も言うじゃないか、イトナ君」

 

 

イトナが顔を上げると、そこには創真や殺せんせーも含め、E組の面々が。

 

 

「ったく拗ねて暴れやがって。テメーには色々されたがよ、無かったことにしてやるから付いてこいや」

 

 

寺坂が上から目線なのだが、一応の説得をする。

 

 

「黙れ…………勝負だ。次は俺が…………」

 

 

「勿論やっても良いのですが、お互い国家機密の身なので、どこかの空き地でやりませんか?それが終わったらバーベキューでもして、先生の殺し方の勉強をしましょう」

 

 

「このタコは地獄の果までついてくるよ。だから、E組来なよ。楽しいよ~」

 

 

ホリーが笑顔で話しかける。

 

 

「ホリー君の言う通り、先生は何処にいても君を迎えに来ます。何故なら君は私の生徒です。目の前に生徒がいれば、教えたくなるのが本能ですから」

 

 

「……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、何かがショップに投げ込まれた。

 

 

「……………おっと?」

 

 

刹那、中からガスと粉末が排出され、視界を悪くする。

 

 

「これは対先生物質のパウダー!?」

 

 

そこへ対先生用BB弾が撃ち込まれる。ホリーは創真に憑依し、ウイングを展開。前面を覆い、創真を守る。

 

 

「イトナを泳がせたのも計画の内。これが第2の刃さ」

 

 

トラックに乗っているシロがリモコンを操作すると、荷台の装置からネットが発射され、イトナを包む。

 

 

「さぁ来なよ、殺せんせー。大事な生徒が待ってるよ?」

 

 

トラックは何処かへと移動を開始した。射撃がなくなった頃を見計らい、創真は羽を使って風を起こし、ガスを吹き飛ばす。

 

 

「皆、大丈夫?」

 

 

「そう言う創真こそ………ゲホッ、ゲホッ」

 

 

「僕は何とも…………殺せんせーは?」

 

 

「大丈夫です。では、イトナ君を助けてきます!!」

 

 

殺せんせーはマッハで追跡を開始した。

 

 

「あの野郎、もう許さん。僕も行ってくるわ!!」

 

 

同じく創真とデュオとキバットが追い掛けていった。飛びながら創真は通信機で氷室に話し掛ける。

 

 

「氷室さん。奴等を使います。調整は終わってますか?」

 

 

『なんとか終わりました。いつでもどうぞ!』

 

 

「上々……………今すぐ発進させて下さい。僕のスマホのGPSを追わすようにお願いします」

 

 

『了解です』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何処かのビルの屋上に待機していた氷室は通信機を切り、パソコンを操作して、彼等を起動させた。1体は空き地の茂みから飛び出し、もう1体は木から飛び上がり、空を舞う。

 

 

「おや?君達も行きたそうですね?」

 

 

肩に止まっていたフレアとメテオが首肯く代わりに鳴いた。

 

 

「じゃあ行きましょうか!!」

 

 

氷室はビルからビルへと飛び移り、2羽は氷室の後を付いて行く──────────!




THE NEXT story ?/? PM 22:00


明日はお休みです!


一言で言うと、来週からテストなので、予告更新が出来ないので、毎日夜の10時に確認をお願いします!!


ちなみにテストは金曜日までです!


それでは次回でお会いしましょう!


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第93話 戦いの時間

お待たせしました!


それではどうぞ!


殺せんせーを追って創真がたどり着いた場所では、硬直させるライトを浴びされつつも殺せんせーがイトナを対先生用のBB弾から守っている最中だった。

 

 

「よし………先ずはあのネットから………」

 

 

その時、創真目掛けて銃弾が飛んできた。なんとか避けて、木の陰に身を潜める。

 

 

銃弾が飛んできた方向を見ると、そこには───────

 

 

「…………ロボット?」

 

 

20体程の人型のロボットが拳銃やらマシンガンやらを携えていた。

 

 

「国に作らせた高性能戦闘用ロボットさ。流石に君でもすぐには倒せない」

 

ロボットは手に携える銃から弾丸をばらまく。創真は近くの木の影に隠れる。

 

 

「銃持ちの相手に近距離戦はめんどいし、ここは遠距離戦だね。ホリー、憑依を解除して」

 

 

創真に言われて、ホリーは創真の中から出る。

 

 

「遠距離戦なら、僕の魔法の出番だよね?」

 

 

「そ。ただし、イトナ君を巻き込まないようにして」

 

 

「了解!」

 

 

「デュオは僕に当たりそうな弾丸を全て打ち落とす事だけに集中して。出来る?」

 

 

「それだけなら、容易いこと」

 

 

「俺様は?」

 

 

「適当に何とかやっといて。よーし、じゃあ……………go!」

 

 

一斉に3人+1匹は飛び出す。その瞬間、銃弾の雨が飛んでくるが、ホリーは自慢の速さで全て避けつつ、氷系の魔法を使って凍らせ、無力化していく。創真はマシンガンを使って、一体ずつヘッドショットで着実に仕留めていき、彼に当たりそうな弾丸をデュオの黒獣が弾き飛ばしていく。キバットは取り敢えず、手当たり次第武器に噛みついて破壊していく。

 

 

「…………思っていたよりもやるようだな。だが、まだ増援はある」

 

 

シロがリモコンを取りだし、ボタンを押す。創真らの背後から、今度はナイフ持ちのロボットがどんどん湧いてくる。

 

 

「後ろから!?それ、汚いぞ!ホリー、前は任せるよ!」

 

 

「任されたよ!」

 

 

創真はマシンガンを捨て、指をパチんと鳴らす。すると、右手には天空の剣。左手にはドミネーターが現れる。創真はドミネーターの最大出力で撃ちまくり、撃ちそびれて襲いかかってくるのを天空の剣で切り捨てる。だが、数が多すぎてきりがない。

 

 

「おいおい、どんだけいるんだよ、こいつら!」

 

 

苛立ちげに呟く創真。

 

 

「危ない、創真!」

 

 

キバットの声がしたかと思えば、創真の死角からナイフを片手に襲い掛かるロボットの姿があった。しかし、前からも襲い掛かるロボットが。どちらか一方を倒していては、もう一方に襲われる───────そんな状況だった。

 

 

(………………こりゃ、絶体絶命か?まぁ、諦めないけど)

 

 

死角から襲いかかってきたロボットを撃ち倒し、目前に迫っているナイフを歯で白羽取りでもしてやろうかと創真が考えたその時、前触れもなく襲い掛かろうとしていたロボットの頭が吹き飛んだ。その隙に、天空の剣剣で両断する。

 

 

「ようやくか!ほんと、危機一髪だったね」

 

 

虎型マシン…………マシンタイガーは背中に付属している機関銃を使ってロボット達を蜂の巣にする。さらに遅れてきた鷹型のマシンホークも付属の機関銃で仕留めていく。

 

 

「創真様、伏せてくださーい!」

 

 

伏せた瞬間、大量の弾が創真の上を通過していき、ロボット達を一網打尽にした。

 

 

「はい、いっちょ上がりです」

 

 

そう呟いたのは、いつの間にか後ろにいた、ガトリングガンを両手で持った氷室だった。

 

 

そして、ホリー達の方にもフレアとメテオが現れる。フレアの回りには赤く光る羽が。メテオの回りには青く光る羽が2人の回りに浮いている。2羽はターゲットを残りのロボット達に定めたと思えば、回りに浮かんでいた羽がロボットに向かって放たれる。羽が刺さった瞬間、ロボット達の体が、砂と化した。

 

 

「ふー………これで全部ですかね、シロさん?援軍が来ない当たり、もう尽きたのでしょう?」

 

 

「いいや、まだ私が残っている」

 

 

なんと、シロ直々に氷室に襲い掛かってきた。

 

 

「私とやるつもりですか?良いでしょう。少しばかり付き合ってやります!」

 

 

氷室はガトリングを捨て、シロと格闘戦を始めた。その時だった。

 

 

「おい、創真!後は俺らに任せな!」

 

 

「この声は……………………隼か!!てことは………」

 

 

創真が目を向けると、丁度カルマと前原、そして隼が木の上でイトナに射撃を続けているシロの部下達を見事な蹴り落とした所だった。落とした部下をす巻きにしていく。

 

 

「おやおや、隼君。まだ、運動は控えてた方が良いんじゃない?」

 

 

「へっ、もう大丈夫だっつーの。いい加減運動したくてうずうずしてたんだ」

 

 

「そーかい。なら、そこのライトをよろしく」

 

 

そう指示をしつつ、創真もドミネーターで、ライトを破壊していく。

 

 

「お前ら…………なんで……?」

 

 

流石にイトナも予想してなかったようで、驚いていた。

 

 

「別にシロにムカついてただけだから。殺せんせーが助けに行かなきゃ私たちも行ってないから」

 

 

「お!凛香ちゃんの生ツンデレは良いもんだね~」

 

 

「う、うっさいキバット!!その頭に銃弾を叩き込むわよ!」

 

 

「こえーこえー」

 

 

キバットは面白そうに笑う。

 

 

「さてさて、マシンホーク!残りのライトを全部破壊しろ!」

 

 

創真は通信機を通してそう命令し、マシンホークは次々とライトに体当たりする。バランスを崩し、ライトは地面に落下。派手な音を立てて壊れた。

 

 

「クッ…………私の計画が……………」

 

 

「隙あり!!」

 

 

氷室が隙をついて蹴りを繰り出すが、シロは何とか避け、氷室と距離を取る。

 

 

「シロさん。見ての通り、ライトは壊され、あなたの部下はす巻きにされ、もう殺せんせーの暗殺は不可能でしょう。よって、あなたの負けです」

 

 

氷室に続いて殺せんせーも喋りだす。

 

 

「イトナ君はこちらで引き取ります。あなたはいつも周到な計画を練りますが、生徒を巻き込めば計画は台無しになる。いい加減気付いた方が良い」

 

 

「………本当にうざったい奴等だ。まぁ、良い。確かに作戦の練り直しは必要だ。ここは素直に退くとしよう」

 

 

シロは忌々しそうな様子を見せながら、去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

「…………チタン製などもろいものだ」

 

 

デュオがネットを楽々と引きちぎる。イトナ君は気絶していた。

 

 

「さーて、こいつから触手を撤去しないと」

 

 

ホリーが黒い触手を見ながら殺せんせーに促す。

 

 

「そうしたいのですが、触手は意思の強さで動かす物。彼に力への執着がある限りは抜けません。そうこうしてる内に、触手ごと蒸発してしまいます」

 

 

「切り離すには?」

 

 

「力への執着をなくせれば良いのですが………」

 

 

そのためには力や勝利に拘る理由を知らなければ。まぁ、話すとは思えないが。

 

 

「その事なんだけどさ…………」

 

 

不破さん?

 

 

「イトナ君が携帯ショップばっかり襲ってた理由を探ってたら分かったんだけどさ、イトナ君って電子部品を作ってる会社の社長の息子だったんだ。でも、負債を抱えて倒産したらしいの。親は雲隠れしたそうよ」

 

 

あー何となく訳が分かってきた。

 

 

「そんだけでグレたって話かよ」

 

 

「やれやれ、そんだけって………簡単に言うじゃないか寺坂」

 

 

「皆、それぞれ悩み持ってんだよ。重さは色々あるけどよ。けどよ、意外とそーゆーのはすぐどうでもよくなったりすんだよ」

 

 

「ほう……………それで?」

 

 

「俺らんとこでこいつの面倒見させろ。それで死んだらそれまでだろうが」

 

 

寺坂プロデュースのコンサルタント、って訳か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………超不安だわ。




THE NEXT story ?/? PM 22:00





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第94話 バカの時間

今日も出来た~!


ではどうぞ!


創真side

 

 

殺せんせーは対触手用のネットをリメイクしたバンダナをイトナに付けて、寺坂に預けた。さて…………寺坂にイトナを任せたのは良いものの、果たして僕より何十倍も知能が低い寺坂はどうやって心を開かせるつもりなのか?自ら名乗り出たと言うことは何か作戦があるのか?

 

 

その答えはすぐに分かった。寺坂の最初の台詞。それがこちら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前ら………………どーすっべこっから?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

正答例としては、『寺坂は結局何も考えてない馬鹿だった』などなど。

 

 

まぁ、なんとなく分かってたが……………。

 

 

もはや不安の2文字しかないのだが、とりあえず、村松君の家のラーメン食べさせたら、と言う狭間さんの提案が採用され、寺坂組はイトナ君を連れて村松のラーメン屋さんに入っていった。

 

 

「そー言えば、村松の家はラーメン屋だったんだな。俺も今度食ってみようかな………」

 

 

ラーメン好きの隼が何やら興味を持った模様。

 

 

「今度行ってみれば。チャーハンがおいしかった」

 

 

「………ん?おい、創真。肝心のラーメンは?」

 

 

「………………………………」

 

 

ノーコメント。

 

 

「おい、何でそこで黙る?勿体ぶってないで教えろよ」

 

 

「……………まぁ、自分の舌で確かめろ」

 

 

「はぁ?ほんと意味わかんねぇ………」

 

 

分からないで良いかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょっとアレなラーメンを食べ終わった後、次にイトナが連れていかれた場所は吉田モーターズだ。

 

 

で、何を考えたのか、吉田がイトナをバイクの後ろに乗せ、敷地内を爆走していた。

 

 

「どーよイトナ!気分上がってきたか?」

 

 

「…………悪くない」

 

 

お?意外と良かったりするのか?

 

 

「よっしゃあ!!なら行くぜ!必殺高速ブレーキターン!!」

 

 

おー。意外と乗り慣れてるね~。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも、イトナ君は茂みに頭から突っ込んでるけど。

 

 

「バカ!これでまだ暴走したらどうすんだよ!?」

 

 

寺坂が慌てて救助する。

 

 

「い、いやぁ大丈夫じゃね?」

 

 

吉田、それは何を根拠に言ってんだか。

 

 

「…………完全に遊んでるだけだよね?」

 

 

ええ、矢田さんの言う通り。

 

 

「まぁ、あいつら馬鹿だからね~」

 

 

カルマ、今のは完璧な答えだ。

 

 

「あ、でも狭間さんなら………」

 

 

「あー意外と頭良いからね~」

 

 

ホリーが奥田さんの意見に賛同を示す。

 

 

さて、最後の切札的なポジションの狭間さんはどうしたかと言うと…………

 

 

「シロの奴に復讐したいでしょ?名作復讐小説『モンテクリスト伯』全7巻2500ページ。これ読んで暗い感情を増幅させなさい。でも結局復讐やめるから、最後の1巻は読まなくても構わないわ」

 

 

まさかの小説紹介。

 

 

んー…………なんかアレや…………。ちなみに小説自体は読んだことある。まーなかなかの出来だったとでも評しておこう。

 

 

「テメーは気難しいんだよ狭間!!」

 

 

「何よ。暗い感情は大切にしなくちゃ」

 

 

まぁ、寺坂がそう言うのも分からなくはないな。

 

 

「ったく、こいつ頭良く見えねぇんだからよ。もっと簡単に上がれるなんかを…………」

 

 

ここまで喋って寺坂達は気付いた。イトナ君が小刻みに震えていることに。

 

 

「あーっとヤバイ。あいつら再び発作を発動させやがった」

 

 

僕の言う通り、イトナの頭から触手が生えてくる。

 

 

「俺は適当にやってるお前らなんかとは違う!!今すぐ奴を殺す…………」

 

 

身の危険を感じて寺坂組は後ろへ下がる。しかし、寺坂は逃げなかった。

 

 

「おう、イトナ。俺だってあのタコなんてすぐにでも殺しちまいてぇよ。けどな、今のテメーには無理なんだよ。無理のあるビジョンなんて捨てちまえよ。楽になるぜ」

 

 

「黙れ!!」

 

 

イトナは触手を振るうが、寺坂はそれを受け止めた。

 

 

「2度目だし弱ってるからやりやすいわ。…………まぁ、はきそうな位痛てぇけどな」

 

 

苦痛に顔を歪ませながらも、寺坂は続ける。

 

 

「吐きそーと言えば村松ん家のラーメンを思い出した。あいつはあのタコに経営の勉強勧められてるんだよ。今は不味いラーメンでも、家を継ぐ時が来たら繁盛させてやれって。吉田も同じこと言われてた」

 

 

1度区切ると、寺坂はイトナ君の頭を殴る。

 

 

「1度や2度、失敗したからってぐれてんじゃねーよ。あのタコを殺すのだって何度失敗しても、3月までに殺せりゃ俺らの勝ちよ。親の会社もその時の賞金で買い戻せば戻ってくんだろ」

 

 

「耐えられない………次の勝利のビジョンが出来るまで俺は何を………」

 

 

「決まってんだろ。今日みてぇにバカやって過ごすんだよ。そのために俺らがいるんだろうが」

 

 

寺坂の当然と言いたげな言葉にイトナは大きく目を見開く。

 

 

「……………適当な事言いやがって、あのバカは。だが…………バカの言うことは力抜いてくれるんだよね………」

 

 

「……………おい、創真。なんで俺を見ながら言う?」

 

 

それはね隼君…………なんとなくだよ。

 

 

そう、な´ん´と´な´く´。

 

 

再びイトナの方へ目をやると、既に触手がだらんと垂れていた。力への執着が消えたようだ。それを見計らって殺せんせーがイトナの前に移動する。

 

 

「さて…………イトナ君。今なら触手を抜く事が出来ます。大きな力を失いますが、君はそれよりも何十倍も価値がある仲間を手に入れます。明日から殺しに来てくれますね?」

 

 

「フン………………勝手にしろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、翌日。

 

 

ちゃんと制服を来て、彼は登校してきた。

 

 

「おはようございますイトナ君。どうですか気分は?」

 

 

「最悪だ。力を失ったからな…………だが、弱くなった気はしない。最後は必ず殺す……………殺せんせー」

 

 

てなわけで、ようやくE組はフルメンバーへ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、村松。金ないからラーメン食わせろ。不味いのは我慢する」

 

 

「あぁ!?」

 

 

(………不味いんだな……………)

 

 

食う前にそれが分かった隼はすこしホッとしたそうで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

 

 

放課後

 

 

「リアルで、文豪ストレイ〇ックスの映画がもうすぐか……………前売り券取ったし…………楽しみだな~」

 

 

創真がメタイ事を言ってると、後ろから肩を叩かれた。

 

 

振り向くとそこには……………

 

 

「あ、イトナ君。どうしたの?」

 

 

「創真。少し相談があるんだが…………」

 

 

「相談……………………………?」

 

 

 




THE NEXT story 3/2PM 22:00


明日は休みです。金曜日にまたお会いしましょう!


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第95話 ラジコンの時間

やぁっとテスト終わった…………。


それでは、どうぞ!


放課後

 

 

渚は帰る準備をしていると、イトナが何かを作っているのを見つけ、近づいて話し掛ける。

 

 

「イトナ君、何してるの?」

 

 

「見ての通りラシゴン戦車の製作だ。昨日テスト漬けでストレスが貯まった。だからこいつで殺してやる」

 

 

皆から見ればすごいハイテクそうだ。創真と同等の技術力に皆は脱帽だ。

 

 

「すごいな………これ全部自分で考えてるのか?」

 

 

「親父の工場で基本的な電子工作は覚えた。寺坂以外は誰でも出来る。だが、俺の力でも創真には及ばない。昨日もこれの設計図を見せたときにも太鼓判を貰えるか微妙だった。でも貰えて安心した」

 

 

そう。昨日イトナが創真の元に来たのはラジコン戦車へのアドバイスと講評を貰うためであったのだ。

 

 

「創真に見せたのか……………創真の太鼓判があれば凄く安心するだろうな。なにせ、我等E組の誇る天才中学生なんだからな」

 

 

「岡島、別に僕は大したことはない。寺坂以外は勉強さえすれば誰でも僕クラスになる」

 

 

「お前ら二人共いちいち俺を底辺扱いするな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、職員室では

 

 

「ほう…………イトナ君、勉強もそこそこ出来るのですね。学校には通ってなかったと聞きますが」

 

 

氷室が昨日受けたイトナのテストを見て感嘆の声を漏らす。

 

 

「ええ。これなら二学期の期末までには追い付けそうです」

 

 

それはなりよりと、氷室は心の中で呟く。

 

 

「しかし、意外だな。そこまで高い知能を持っているようには見えなかったが」

 

 

「それは触手のせいです。ほとんどのエネルギーを触手が奪っていきますから、人間としての知能は著しく低下してたでしょう」

 

 

烏間の疑問に殺せんせーが答える。

 

 

「…………触手って、人間用の兵器っぽいですけど…………その分負担も大きいんですか?」

 

 

氷室が殺せんせーに聞く。

 

 

「ええ。だからイトナ君もシロさんによって肉体改造を施されていたそうです。恐らく通常の人間には使いこなせないでしょう」

 

 

「……………そりゃ、とんでもない兵器を生み出したものですね…………人類は」

 

 

氷室は深いため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イトナはラジコン戦車を完成させ、テスト運転を始めた。皆の間をスルスルと通り、教室の後方へ移動。

 

 

あらかじめセットしていた空き缶に主砲を向け、発射した。発射された3発のBB弾は1ミリのズレもなく命中した。皆から歓声が上がる。

 

 

「こいつは使えるな。走る時も撃つ時も音が全然しなかった」

 

 

千葉がラジコン戦車を褒める。

 

 

「電子制御を多用する事でギアの駆動音を抑えた。ガン・カメラは銃の照準と連動しつつコントローラーに映像を送られる」

 

 

そのままイトナは言葉を続ける。

 

 

「それと、お前らに教えてやる。奴には心臓がある。シロから聞いた急所だ。市はネクタイの真下。当てれれば1発で殺せる」

 

 

その言葉に創真の目が鋭く光った。

 

 

「良いこと聞いた……………これでますます暗殺が面白くなりそうな感じだねぇ…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

「…………殺せんせーいないな。出掛けたあとか」

 

 

菅谷の呟き通り、殺せんせーは職員室にいなかった。

 

 

「じゃあ…………試運転を兼ねて偵察でもしようぜ」

 

 

岡島の提案にイトナは頷き、廊下を進めていく。

 

 

廊下の曲がり道まで差し掛かると…………女子の声と伴に廊下をバタバタ走る音がすると思った瞬間…………男にとっては夢であるものが見え────────?

 

 

「………見えたか」

 

 

「カメラが追い付けなかった。視野が狭すぎるんだ。くそ!!」

 

 

─────────なかったようだ。

 

 

「カメラもっと大きく出来ねぇのか?」

 

 

村松、それは何のためにだ。

 

 

「…………重量が増え、標的への接近が難しくなる」

 

 

「ならば、魚眼レンズだ。送られてきた映像をコンピューターで補正すれば視野は広くなる」

 

 

そう提案したのは竹林。

 

 

「流石は竹林だ!よし、魚眼レンズは俺が調達する。律、魚眼レンズの歪み補正のプログラムを作れるか?」

 

 

「用途は分かりませんが、お任せください!」

 

 

律、岡島らの悪巧みを察しなよ。その後も録画機能の搭載やら、効率的な分析には不可欠だとか…………男子はどんどん計画への道筋を立てていく─────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

================

 

 

(へー………面白そうなことしてんね~)

 

 

皆の輪には加わらず、後で黙って見ていたホリーがニヤニヤしながらそれを眺めてる。

 

 

(でも…………ね。僕はそのままこの計画に加わるような奴じゃないんだ。実行の時に創真に掛け合ってみるか……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし!今日はこれで解散だ。全員明日の6時半に集合するように!吉田と菅谷はタイヤの足回りの開発と、学校迷彩を施しておくように!」

 

 

リーダー気取りの岡島が解散の指示を出し、帰路についた。創真的には、どーでも良いことなのだが…………何やらホリーが悪巧みを企ててる様子なのには少し気になった。

 

 

家に帰ると、創真はホリーに話し掛ける。

 

 

「おいホリー。お前なんか企んでるだろ?」

 

 

「さっすが創真!だが勘違いするなよ。これは女子を盗撮から救う計画なんだからな」

 

 

「女子を救う…………………ね。で、どういう計画?」

 

 

「それはだな……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日AM 6:30

 

 

「おお!全部仕上がっているぞ!これで盗さ………いや、暗殺成功率がぐんと上がる!」

 

 

わいわい盛り上がっている皆の横目に創真はバレぬように準備を進める。

 

 

「おいおい分かってるのか?これは暗殺の為なんだからな?」

 

 

「分かってるって、委員長!よし、早速テスト運転を始めよう!」

 

 

ラジコン戦車は森をぐんぐん駆けていく。

 

 

「やっぱすげえな………おい、創真も遠慮してないでこっちこいよ」

 

 

「あー………その前にトイレ行ってくるわ」

 

 

創真は皆から離れていった。

 

 

「なんだ?何かわざとらしかったな…………まぁいいか」

 

 

岡島は画面に目を戻す。

 

 

(無愛想なイトナ君がクラスに馴染めるか…………なんて心配はいらなかったみたいだ。エロと殺しと物作り。男子のつぼをちゃっかり掴んで、すっかり馴染んでいるみたいだ)

 

 

イトナが馴染めた事に素直に嬉しさを感じる渚。

 

 

「………………?」

 

 

急にイトナがラジコンを停めた。

 

 

「ん?どうしたんだイトナ」

 

 

「何かが前から来てる音がする」

 

 

スピーカーに耳を傾けると、確かに皆も正体不明の音が聞こえてきた。

 

 

「なんだ…………?」

 

 

皆が画面に注目しているなか、そこに現れたのは────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────かつてイトナを苦しめた…………………マシンスコーピオンだった。




THE NEXT story 3/3or4 PM 22:00


次回、それぞれの発明品の対決です。


明日は文豪ストレイドックスの映画が公開だ!


楽しみだァァァァァァァァァ!!


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第96話 ラジコン対決の時間

文ストの映画超良かった~!!


暇だったら活動報告欄に感想とかきます!


では、どうぞ!


「あのサソリマシンは…………創真のじゃないか!!」

 

 

突如として現れた創真の発明品に、皆は驚きの表情を見せる。

 

 

「そもそもアレ使ってるの創真なのか…………つーか創真は?」

 

 

「「「………………あ」」」

 

 

皆は前回の最後の創真の台詞を覚えているだろうか?

 

 

『あー…………その前にトイレ行ってくるわ』

 

 

まさか創真は───────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの野郎、裏切ったな!?」

 

 

別に創真は計画に加わってなだろ、と磯貝が心の中で突っ込む。しかし、男子の怒りは収まらない。

 

 

「おのれ…………さては、ここで我々の努力の結晶を再起不能にさせ、我等の計画を邪魔する気だな……………ならばしょうがない。イトナ、殺るぞ」

 

 

「…………いいのか?あいつのマシンを壊すのは勿体ないぞ(それに当たる気がしない……)」

 

 

岡島の命令にイトナは少し戸惑いを見せた。

 

 

「奴は……………我々の敵だ!撃て!」

 

 

イトナは主砲をマシンスコーピオンに向け、発射した。

 

 

『遅いね~。そんなんじゃ当たんないよ~?』

 

 

「「「!?」」」」

 

 

マシンスコーピオンは余裕で避けた。

 

 

「クッ……………やはり、流石の性能だ。どうすれば………」

 

 

「岡島。今ので1つ分かったことがある」

 

 

口を開いたのは竹林だ。

 

 

「なんだ?弱点が分かったのか!?」

 

 

「違う……………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あのマシンを操作してるのは創真ではないことさ」

 

 

「な…………何!?じゃあ、いったい誰が………」

 

 

「それも検討がついている。さっきの口調から察するに真犯人は……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ホリーだ」

 

 

「「「な……………何ぃ!?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………そろそろ気付いたかな?」

 

 

校舎の天井で、ジャンプを読んでる創真の隣でコントローラーを操作していたホリーがニヤリと微笑みながら呟いた。

 

 

「…………知らんぞ。後でどうなっても」

 

 

「だーいじょうぶ。僕に攻撃を喰らわすなんて不可能だからね。さーて…………対決しようか!僕のマシンとイトナ君のマシン………どちらの方が優れているか!!」

 

 

「うん…………ホリー。それはお前のじゃなくて僕の」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

 

 

森の中で対峙している2体のマシン。先に動いたのはマシンスコーピオンだった。

 

 

「来るぞ!イトナ、避けろ!」

 

 

発射された丸い弾を見事なコントローラー捌きで避ける。それにムカついたのは、弾丸を発射したホリーだった。

 

 

「はぁ!?おい、避けやがったぞ!このマシン、ポンコツかよ!?あーもうムカつく!!」

 

 

半ギレのホリーが銃の発射ボタンを連打しまくる。創真に言わせれば、単純に練習不足なだけなのだが。ポンコツなのは操縦者のお前の方や…………なんて言ったら怒るので賢い創真は言わないが。

 

 

「!!もう弾ギレかよ!?あーもう避けるのは簡単なのに、このポンコツ、当てるのはこんなにムズいのかよ…………くそ!!なら次だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと…………射撃が止んだぞ。弾切れを起こしたんじゃないのか?」

 

 

画面を覗き込む三村がそう呟く。

 

 

「今がチャンスだ!とっととずらかろうぜ!!」

 

 

寺坂の提案でラジコン戦車は後退を始めた。

 

 

しかしその直後、戦車の目の前に何か丸い物体が落ちてきた。

 

 

「うぉ!?危ねぇ……………押し潰される所だった……」

 

 

「この球体……………まるで蜂の巣だね…………」

 

 

竹林の分析通り、見た目は蜂の巣だ。

 

 

ギラリ

 

 

「!?なんかいるぞ!?」

 

 

すると、球体からハチ型マシン…………マシンワスプが飛び出してきた。ただし…………1体だけ。

 

 

皆は画面を通してハチが飛んでいく方向を見つめる………………そしてマシンワスプは収まった──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────マシンスコーピオンの尻尾の銃口の中に。

 

 

「こいつも創真の発明品かよ!?早く逃げろ!!」

 

 

再び逃げ始めた直後、鋭い針がある尻を前にして、マシンワスプが高速で発射される。

 

 

イトナは当たる直前に戦車の主砲からBB弾を発射させた。

 

 

上手く命中するも、マシンワスプの勢いは止まらない。

 

 

「「「ギャァァァァァァァァァァァ!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………ってアレ?まだ生きてる?」

 

 

画面を見ると、まだカメラは生きているようだ。イトナがコントローラーを操作すると、画面の景色も後ろへ動いた。動けるようだ。

 

 

当たったが運良く深く刺さらなかったのか、それともわざと外してくれたのか───────

 

 

「!!見ろ!ハチ型のマシンが地面に刺さってる」

 

 

どうやら、マシンワスプは先程のBB弾のせいで威力が幾分か弱まり、あと少しというところで戦車の目の前の地面に刺さったのだ。

 

 

「「「よっしゃあ!!」」」

 

 

堪らず皆は歓喜の声をあげる。

 

 

「喜ぶのはまだ早い。見ろ、奴が来た」

 

 

画面に映ったマシンスコーピオンの銃口には既に2体目のマシンワスプがセットされている。

 

 

再び戦いが始まろうとしていた……………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………………とおもいきや、マシンスコーピオンは一目散に逃げ出した。

 

 

「……………逃げた?」

 

 

「……………てことは…………俺らの勝ちだ!!」

 

 

教室から湧く歓喜の声を聞いていたホリーはと言うと─────

 

 

(ふん、 逃げた理由も知らず……ま、いいか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さーて、そろそろテストは終わりにしようぜ」

 

 

岡島がイトナに言い、イトナは無言で頷く。

 

 

すると……………急に回りから草をかけ分ける音がしてきた。

 

 

「??なんだ………まさか、創真の別のマシンか!?」

 

 

すると、側の岩に影が現れた。

 

 

正体は───────────

 

 

「「「イタチーーーー!?」」」

 

 

こちらの方がスコーピオンより強敵だ。主砲を打っ放すが、イタチにはノーダメージ。

 

 

「「「ギャアァァァァァァァァ!!」」」

 

 

そして、イタチは戦車に襲い掛かった────────!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそ………最後の最後にやられるとは………」

 

 

回収されたボロボロの戦車を見て前原が呟く。

 

 

「開発にミスはつきもの。だが、ここから紡いで強くなる。それと、よろしくな、お前ら」

 

 

「「「おうよ!」」」

 

 

イトナに皆は明るく応える。

 

 

そこへ────────

 

 

「あー危なかった。僕も殺られる所だったよ~」

 

 

真犯人が創真と一緒に現れた。

 

 

「おいホリー、よくも我々のプロジェクトを邪魔したな!?」

 

 

岡島が詰め寄る。

 

 

「アハハ、ゴメンゴメン。やっぱ創真のマシンは操作が難しかったね………で、結局その戦車って何目的で作ったんだっけ?」

 

 

「そりゃあ、女子のスカートの中を盗撮するために皆で協力したに決まってるだろ!」

 

 

(あ……………岡島、罠にはまりやがった)

 

 

創真の心の中での呟きを皆はいざ知らず、どや顔をする。そして、ホリーはニヤリと笑う。

 

 

「スカートの中を盗撮するためにか~。なるほどね~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

って自らの口から言ってくれましたよ~」

 

 

「「「え?」」」

 

 

ホリーの言葉に、教室の扉が開かれ、そこには女子の面々が揃っていた。

 

 

「な!?ま、ま、まさか全部聞いて………」

 

 

「昨日からあんたらの企みは全部知ってたわよ。ホリー君が電話で教えてくれたからね」

 

 

「「「な!?」」」

 

 

片岡の言葉に皆は固まる。次にホリーが口を開く。

 

 

「それで~片岡さんが、そんな盗撮目的のラジコンは潰して構わないって言ってたから、創真のマシンを借りたんだよね。あ、誤解してるようだけど、途中でイタチが来たのが分かったから逃げただけだよ。別に劣性で逃げたわけじゃないからね~」

 

 

「「「来たの教えろよ!!」」」

 

 

「忘れてた~(嘘)」

 

 

ホリーが笑いながら答える。

 

 

「おのれ………創真、何故貸した!!」

 

 

「………新機能のテストついで。ちなみにマシンワスプとの連動機能の事だ」

 

 

「くそ────!!貸すなよ!!」

 

 

「じゃ、女子の皆さん。後はご自由に~」

 

 

ホリーは透明化を使い、消えていった。

 

 

「さて………覚悟は出来てるかしら………?」

 

 

「「「ヒィィィィィィィ!!」」」

 

 

片岡らが詰め寄るなか、いつのまにか抜け出したイトナが創真に近付く。

 

 

「創真、さっきのサソリとハチのマシンを見せてくれ。どんな仕組みなのか気になる」

 

 

「いいよ。でも、ここはしばらく説教部屋になりそうだから外で話そっか」

 

 

「ああ」

 

 

2人は揃って一緒に教室を出た。

 

 

「あ、おい待……………」

 

 

最後まで待たずに創真はドアを閉めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真はイトナと親睦を深め、下衆な男子はきつい説教を喰らったのは言うまでもない。




THE NEXT story 3/4or5 PM 22:00


さて…………文ストの映画で貰った小説読むか。


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第97話 ショッピングの時間

オリジナルです!


ではどうぞ!


創真side

 

 

イトナ君が加入したその週の土曜日。この日も1秒のずれもなく、6時に起床した。最近、朝起きたらまず碧海さんの抱きしめと言うなの拘束から抜ける所から始まる。

 

 

…………………が、今日は拘束がなかった。僕より早く起きたと言うことか。起きてリビングに行くと、碧海さんは朝食を作っていた。

 

 

「おはよう。僕より早く起きるなんて珍しいね。いつもは僕が起こしてるのにね」

 

 

「そりゃあ、今日は約束した日だしね」

 

 

「や、約束………………?」

 

 

「あれ~?創真君、寝ぼけて約束忘れてる?」

 

 

約束………………………………あ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ…………まだ買う気…………?」

 

 

「勿論だよ~!今日はたっぷり付き合ってね!」

 

 

既に僕の手には大量のお荷物が。しかも、僕だけではない。

 

 

「創真様………女子のお買い物にはこんなこと日常茶飯事です…………この程度で音をあげるようでは……まだまだです…………」

 

 

「そう言う氷室さんも、きつそうに見えるんですけど……?」

 

 

「おい…………僕はスピード専門だぞ………こんなに大量に持てるか…………!!」

 

 

憐れ、ホリーが嘆く。

 

 

「大したことないだろう。これくらい」

 

 

対してデュオは余裕そう。

 

 

「じゃ、次は洋服ね!」

 

 

「えー…………てか、服っている?昨日、父さんが君の親の電話番号を特定して教えてもらったから、着払いで良いから君の服を全部送ってもらうように言おうと思ってたんだけど……………」

 

 

「んー、まぁ心機一転って事で?」

 

 

「はぁ………………そう言えば聞いてなかったけど、お金大丈夫なの?」

 

 

「あぁ、それに関しては心配ご無用。銀行の自分の口座から引き落としてるから。前からかなり貯めてたから、かなりあるよー」

 

 

「左様ですか…………………」

 

 

その後も、洋服やら靴やら枕やら────────驚異的な行動力でショッピングモールを回り、それに男子諸君は振り回されまくった。流石に疲れたので、碧海さんがネックレスを見ている間、近くの椅子で僕らはジュースやらを飲んで、休憩していた。

 

 

「………………ここまで行動力があるとはね………」

 

 

「流石に疲れますね」

 

 

氷室は一気にジュースを飲みほす。

 

 

「でも、楽しそうだけどね~」

 

 

ホリーが飲んだジュースのペットボトルをゴミ箱に向かって投げた。回転しながら見事に中へ入った。

 

 

「まぁ、そうだな」

 

 

「彼女の表情はとても生き生きとしてるよ。すっごく楽しそう!」

 

 

ホリーに言われ、僕もチラリとネックレスを選んでいる碧海さんに目を向けてみる。

 

 

「……………そーだね。こう言うのをずっとしてみたかったんじゃないの?」

 

 

「なぁ、お前にとって碧海ちゃんってどんな存在だ?」

 

 

バックの中に隠れながらキバットが質問してきた。

 

 

「唐突な質問だな。まぁ………………居候だったり、後は……………………友達だったりするのかな?」

 

 

「いや、とっくのとうにお前ら友達だろ?俺的には、妹みたいな存在だと思うけどな」

 

 

「妹ねぇ…………………流石に大袈裟でしょ」

 

 

「何が大袈裟なの?」

 

 

思わずその場にいる全員が肩をビクッと震わせて、声の主を見ると、そこには買い物を済ませたと思われる碧海さんがいた。

 

 

「………………いや、何でも無いよ。それより、結構長かったね」

 

 

「あ、ごめん!良いのばかりで迷っちゃった」

 

 

「それで……………他に行きたい場所とかあったりする?」

 

 

「あ、もう大丈夫。買いたいものを全部買えて満足だよ。あ、そうそう。これあげる!」

 

 

碧海さんが小箱を渡してきた。

 

 

「これは………………?」

 

 

「開けてみて」

 

 

言われるがままに、箱を開ける。その中にあったのは、十字型のネックレスだった。

 

 

「ネックレス…………これは?」

 

 

「お礼だよ。色々お世話になったお礼」

 

 

「いや、どうせこれからもお世話になるでしょーが」

 

 

「ま、まぁ確かにそうなんだけど!その、わざわざ居候させてくれてるし、後は一緒に寝てくれてるし、まぁ、この数週間で色々とお世話になったから、そのお礼、って事で。ちなみに、私も同じの買ったから、お揃いだよ~」

 

 

「へー。何はともあれ、嬉しいなぁ。大切にするね」

 

 

「じゃあさ、早速付けてみてよ!」

 

 

「はいはい」

 

 

要望に答え、ネックレスを付けてみる。

 

 

「いいねぇ、こりゃ。創真のイケメンがさらに磨きが立つな」

 

 

「そう?……………………あー、確かに」

 

 

「いや、自分で認めちゃうのかよ」

 

 

ホリーからツッコミを入れられた。いつもは僕がツッコミ役なのに、これはかなりレアか。

 

 

「そう言えば、思ったんだけどよ、今、彼女は学校をずっと休んでる状態だろ?いつまでもそうしてる訳にはいかないだろ。どうすんだ?」

 

 

デュオの質問に氷室さんはニヤリと笑みを浮かべる。

 

 

「あぁ、その事に関してなんですが。烏間先生の意向もあって、碧海さんをE組に転入させる計画が進んでおりまして。色んな手続きは既に終わらせ、後は学費を負担するお父様からの許可があれはオッケーな状態だったんですが……………先程、昨日創真様のお父様が特定した電話番号に掛け、お父様からの許可を貰いました」

 

 

「へー。てか、よく了承しましたね」

 

 

「ええ。『どうせ学費はそんな変わらねえなら、どーぞ勝手に』と言ってました」

 

 

氷室さんは懐から紙を取り出し、碧海さんに渡す。

 

 

「E組への転級通知です。ようこそ、月城 碧海さん。3年E組、暗殺教室へ」

 

 

「これで、僕らの仲間入りと言う訳だ」

 

 

「おー!じゃあ、よろしくね!」

 

 

「さて、確かあと30分後に烏間先生が説明等の為に創真様の家に来られますので、そろそろ行くとしましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

創真宅にて

 

 

「…………………あのさぁ。なんで殺せんせーも来てるの?」

 

 

碧海に暗殺についての説明をしに来た烏間に加え、どういうわけか呼んでもいない殺せんせーもついてきた。

 

 

「良いじゃないてすか。彼女は月曜日から私の生徒になるんですし。ちょっと顔合わせしておきたかったのでね」

 

 

殺せんせーがピスケットを頬張りながら言う。

 

 

「…………すまないな創真君」

 

 

「別に烏間先生が謝る必要はないですよ。悪いのは訪問にアポを取らなかったこのタコです。死ねばいいのに」

 

 

「にゅや!?悪者扱いですか!!」

 

 

「そもそも地球壊す奴は、悪って言っても過言じゃなくないですかね?てか、そんなことより烏間先生、説明をお願いします」

 

 

「あぁ。さて、手短に言おう、月城 碧海さん。君は来週からE組に来るわけだが、既に聞いているかとは思うがE組の皆はこのタコを殺す任務を受けている。よって、君にも暗殺を依頼する」

 

 

「勿論、受けまーす」

 

 

「そうか。では、月曜日に会おう。それと───────くれぐれも生徒を危険な目に遭わせるような行動はしないように」

 

 

「…………………やーっぱり、まだ警戒はしますよね。別にしませんよ、私に利益がないし」

 

 

「なら良いんだ……………では、長居も迷惑だろうから失礼する」

 

 

烏間はさっさと帰っていった。

 

 

「おい、殺せんせーもとっとと帰れ」

 

 

「まだ10分も経ってませんよ。もう少し位良いじゃないですか。紅茶のおかわりをもら」

 

 

「「「帰れ」」」

 

 

創真とホリーとデュオの殺気の入り交じった声に殺せんせーはたじろぎ、窓を開けた。

 

 

「ああ、それと碧海さん」

 

 

「はい?」

 

 

「来週からよろしくお願いします。よく殺し、よく学びましょう」

 

 

「こちらこそよろしくお願いしま……………す!」

 

 

碧海は貰った銃の引き金を引くが、弾が当たる前には、殺せんせーの姿はなかった。

 

 

「ええ………速すぎだよ……」

 

 

「マッハ20だからな」

 

 

何度考えてもチート級の力だなと、創真はつくづく思う。

 

 

「まぁ、そのうち殺せれば良っか…………ねぇ、パーティやらない?私の暗殺教室加入の記念に」

 

 

「いーねぇ!宴だ!」

 

 

キバットも賛同する。

 

 

「……………しょーがないなぁ。まぁ、そんな事でも言い出すと思ってたんで、今日の買い物ですき焼きの材料を買っておいたんでね!」

 

 

「流ッ石、天才創真!すき焼きを選ぶとは、やりますねぇ!」

 

 

ホリーはガッツポーズを作って喜ぶ。

 

 

「良いですねぇ、すき焼き!なら、私も気合い度マックスで、料理しましょう!」

 

 

「って、氷室さん、いつのまにか料理服着替えてる!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(彼女がE組に入ることが予想通り決まった。しかし、彼女と皆との間には決定的な溝が出来ている。それを埋める第一歩として、姉弟の問題を解決するか…………)




THE NEXT story 3/6 PM 22:00


次回、碧海と隼が……………!!


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第98話 姉弟の時間

それではお楽しみください。


創真side

 

 

日曜日

 

 

「ねぇ……………本当にやるの?」

 

 

「やる」

 

 

「本当に?」

 

 

「やる……………さっきからこの会話何度目だ?」

 

 

「16回目です」

 

 

氷室さんが教えてくれた。なぜ、僕と碧海さんがこの会話を16回もしてるかと言うとね、それは20分前に僕があることを言い出したからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「隼にE組に来ることを伝える!?」

 

 

「うん。どーせ月曜には分かるんだし」

 

 

「え、いや、あの………隼と私がそこまで良い関係じゃないの知ってるよね?」

 

 

「勿論さ。知ってるからこそ、やる」

 

 

「創真様。あなたなら分かる筈ですよね?学校ではなくここで会わせたら、隼君は何をしでかすか分かりませんよ?」

 

 

「当然分かってますよ氷室さん。まー決闘とか申し込んでくるんじゃないすか?」

 

 

「…………ありえますね」

 

 

「そもそも、なんで隼を呼ぶの?」

 

 

それはね────────

 

 

「多分、君がE組に行ってもすぐには歓迎はされないだろう。皆と仲良くなる第一歩として、取り敢えず弟君とのわだかまりを解消してもらおうと思ってね」

 

 

「なるほどな~。創真も意外と考えてんだな」

 

 

キバット、意外ではないだろ?いつも色々考えてるよ。

 

 

「じゃ、早速非通知で電話するぜ!」

 

 

「ねぇ…………創真君、この状況楽しんでない?」

 

 

「…………………………さぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼side

 

 

「あー暇だ暇だ。なーんもやることねぇ…………」

 

 

マジでちょーヒマ。あーやることねー。

 

 

「あ、そーだ!神崎さんと一緒にゲーセン…………は無理か。今日は予定が入ってるとか言ってたっけ………」

 

 

八方塞がりだな。

 

 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 

 

「あ?非通知…………誰だよ…………もしもし?」

 

 

『あ、もしもし?碧海だよ~」

 

 

 

「チッ…………切ってもいい?」

 

 

『え、ちょっと早すぎだよ!そんなに電話代を気にするの?』

 

 

「お前の声を聞くのが嫌なんだよ。用件あるんだったら早く言えよ」

 

 

『じゃあ言うね。私、明日からE組に来るからよろしくー…………的な感じ』

 

 

「あっそ。そんなことかよ………………E組?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

E組……………てことは、俺らの所に……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁ!?テメーがE組に来るだと!?」

 

 

『そ、そうだよ?』

 

 

「今どこにいる?」

 

 

『今ねー、創真君の家』

 

 

「創真の家……………だと?なぜ創真の家に?まぁいい、20分で行く。首洗って待っとけよ!!」

 

 

一方的に通話を終らせ、間もなく全速力で家を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

「……………切られた」

 

 

「なんだって?」

 

 

大方予想はつくが創真は訊いてみた。

 

 

「首洗って待っとけよ、だって」

 

 

「カッコつけてんな…………………まぁ、良いかさて…………どうなるかね………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20分後

 

 

ピーンポーン♪

 

 

「はい、来た~」

 

 

創真がドアを開けると、息を切らした隼がいた。

 

 

「碧海は何処だ?」

 

 

「リビングにいるよ」

 

 

リビングにいくと、碧海はソファーに座って待ってた。

 

 

「ひ、久しぶり、隼」

 

 

「挨拶はいらねぇ。お前、E組に来るって本当か!?」

 

 

「本当だよ」

 

 

「何が目的だ………?」

 

 

目的、と言う言葉に碧海は目を丸くした。

 

 

「目的?んー、まぁ、創真君と隼がいるから、その側にいたい……………あえて言うなら」

 

 

「他に目的があるはずだろ?」

 

 

「いやそれだけだよ」

 

 

「信用ならねぇな。つーか創真。なんでお前の家にこいつがいる?」

 

 

「訳あってうちで厄介になられてます」

 

 

その言葉に、隼は驚き半分不信感半分の表情を浮かべる。

 

 

「お、おい。倉橋には言ってるのか?」

 

 

「………………そのうち言うわ」

 

 

「あー…………そう。って、そんなことよりも碧海!テメーはE組に来るな!!信用ならねぇ!!」

 

 

「そんなに私の事が信用ならないか…………まぁ、でしょうね、だけど。でも、私のE組行きは既に決まっている。でも、確かに隼の言い分も一理ある。そこで、創真君から提案があるみたいだよ」

 

 

碧海の言葉を創真が引き継ぐ。

 

 

「なら、君達2人には拳を使った勝負してもらいましょうか。隼が勝てば碧海さんはE組行きを取り消し。碧海さんが勝てば隼は碧海さんがE組に来るのを認める。口であーだこーだやっても永遠に決まらないでしょーからね。怪我してもホリーが一瞬で直すからご安心を。どーです?」

 

 

創真の中々物騒な提案に2人は────────

 

 

「いいぜ。俺も言おうと思ってたしな」

 

 

「負けないよ、私」

 

 

────────乗った。

 

 

「(ここまでの展開は予想済み。しかし、ここから先は僕にも読めない…………この姉弟の面白い勝負を見れるかな?)じゃ、移動するか…………」

 

 

創真は指をパチンと鳴らし、周りが暗くなった。果たしてこの勝負の行方は………………?




THE NEXT story 3/8 PM 22:00


明日は模試なのでお休みです!


この時間の木曜日にまたお会いしましょう!


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第99話 ぶつかり合いの時間

今回は全部弟が書いたぜ!


あの馬鹿兄、戦闘描写がだるいから逃げたのか………?


ま、いいや。


じゃ、どうぞ!


一行は、王の間へテレポートした。

 

 

「へー……………中世を思わせるような作りだね………」

 

 

碧海が感想を漏らす。

 

 

「つーかあの壁に飾ってある武器…………見たこともないのばかりだな」

 

 

「まぁ、存在しないはずの兵器ですから。さて、ここなら誰にも邪魔されない。あ、それと壁にある武器の使用は禁止だよ。確実に死ぬと思うから」

 

 

「いらねーよ、そんなの。武器なくても俺が勝つ」

 

 

「へぇ…………私に勝てると?」

 

 

創真は碧海の雰囲気が変わったように見えた。

 

 

「じゃ、お好きなタイミングで始めて」

 

 

創真は玉座に座り、ティーカップにコーヒーを注ぐ。この30秒程の時間の間、隼と碧海は………………ただ見つめ合っていた。

 

 

「…………………」

 

 

創真はコーヒーを一口飲んだあと、ソーサー(カップの下に置かれる受け皿)に、カップを置いた。

 

 

カチャン……………と乾いた音がした…………その瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

碧海は風を切り裂くかのような速さで、隼目掛けて走り出した。

 

 

一方の隼はまだ動かない。

 

 

「おりゃ!」

 

 

碧海は隼に向けて回し蹴りを放った。

 

 

「……………今さらそんな蹴りが当たるか!!」

 

 

隼は回し蹴りを、体をわずかに反らして避けた。

 

 

「そして、隙ありだ」

 

 

隼は碧海の手を掴み、自分の目の前に引き寄せる。

 

 

そのまま流れる動作で、隼は碧海の腹部に膝蹴りを入れる……………!!

 

 

「グッ…………!!」

 

 

碧海が表情を歪ませる。続けて隼が軽くフックを放つが、これはガードされ、碧海は距離を取る。

 

 

「まさかこれで終わりじゃねぇよな?バトルは始まったばかりだぜ?」

 

 

「勿論、終わりじゃないよ…………勝つのは私だから」

 

 

腹部を押さえながら碧海は悪態をつく。

 

 

「なら、次はこっちから行ってやるよ!!」

 

 

隼は風の如く走り出す。

 

 

「喰らえェェェェェェェェェェ!!」

 

 

その勢いに乗り、隼は右フックを繰り出す。

 

 

「そう来るか………………なら!」

 

 

碧海の構えを見て、創真は碧海が何をしようとしてるのかに気付いた。

 

 

(クロスカウンター……………最高のタイミングで使ったな)

 

 

「なっ……………」

 

 

隼も遅れて気付いたが…………………時既に遅し。

 

 

ドコッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそ……………………………」

 

 

隼は仰向けになって倒れていた。碧海は隼に近付く。

 

 

「私の勝ちだね隼。もう立てないで…………」

 

 

「それくらいで……………負けるかよ…………」

 

 

ふらつきながらも立ち上がった隼に碧海は目を丸くする。

 

 

「完璧に決まった筈なのに……………流石は私の弟だね……………なら、終わりにしてあげるよ」

 

 

碧海は至近距離で、凄まじい速さで顔面目掛けて回し蹴りを決めた……………………!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………え!?」

 

 

なんと、隼は碧海の足を掴んでいた。顔に当たる寸前で受け止めたのだ。

 

 

「……………これで、終わりだァァァァァァァァ!!」

 

 

隼は柔道の足払いの技を使い、碧海のバランスを崩す。

 

 

「(ヤバイ!!倒れる!!)」

 

 

倒れた碧海の視界に入ってきたのは隼の靴のかかとだった。

 

 

「喰らえ」

 

 

ドガッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………………」

 

 

隼は技を喰らって気絶したのか、目を瞑っている碧海を見下ろした。しかし、直ぐに興味を無くしたかのか、目を逸らし、創真に声を掛ける。

 

 

「おい、創真。もう終わったぞ」

 

 

「………………ん?」

 

 

「俺の勝ちだよ。これで約束通りだよな」

 

 

「ああ、そうだね。確かに約束通り、碧海さんのE組行きは取り消しだ……………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お前が勝ったなら」

 

 

「あ………………?」

 

 

創真の発言に眉をひそめたが………………不意に、後ろから気配を感じ、振り向くと……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な!?」

 

 

碧海が立っていた。

 

 

「アレを喰らって立つのかよ……………?」

 

 

「…………だから…………言ったじゃん……………勝つのは……………私だって……………」

 

 

途切れ途切れではあるものの、碧海は喋る。

 

 

「だが…………お前の方がダメージは大きい。次で今度こそ終らせてやる」

 

 

「………………………来なよ」

 

 

「上等だ」

 

 

隼は走りだし、その勢いでストレートを繰り出す。

 

 

「オリャァァァァァァァァァァァァ!!」

 

 

「勝つのは………………………私だ!!」

 

 

碧海は迫ってきた右手の手首を掴み、その勢いを利用してぶん投げた。

 

 

「なんだと…………!?」

 

 

隼は壁に全身を強く打ち付けた後、床に落ちる。

 

 

「私の…………………勝ちだ!!」

 

 

碧海は隼がやったのと同じように、かかと落としを完璧に決めた。

 

 

「ガハッ!!」

 

 

隼は急速に自分の意識が薄れていくのを感じた。

 

 

「(やっぱ………………敵わねぇな……………)」

 

 

心の中で苦笑しながら素直に負けを認め、隼は昏睡に陥った。

 

 

「……………終わりだね。碧海さんの勝ちだ」

 

 

創真はゆっくりと立ち上がる。

 

 

「つーわけで、碧海さんのE組転入は確定…………て、気絶してんのか」

 

 

創真は隼の顔を覗き込む。

 

 

「へへ………創真君……………勝った……………よ?」

 

 

碧海は創真の方へ近づこうとしたが、力尽きたのか、膝をついて倒れ込む。

 

 

「さて……………………」

 

 

創真はスマホを取り出し、とある人物に電話を掛ける。

 

 

「………………あぁ、もしもし?殺せんせー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………」

 

 

目を覚ました隼が起き上がると、そこは創真の家だった。身体も痛くない。ホリーが治してくれたのだろう。

 

 

「やっと起きたか」

 

 

創真の隣では碧海が幸せそうに眠っている。

 

 

「…………………」

 

 

隼は何も言わず、帰る準備をする。

 

 

「隼、さっきの約束を覚えてる?」

 

 

「あー認めるよ。それで良いだろ。だから帰る」

 

 

面倒くさそうに応えて、隼は玄関のドアを開けて、帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼は何も言わずにマンションの階段を降りて、道に出ようとすると、殺せんせーがいた。

 

 

「………………何です?」

 

 

「創真君から聞きましたが、碧海さんと勝負したそうで?」

 

 

「あの野郎……………だからなんだよ」

 

 

「ストレートに訊きますが、何故実の姉である碧海さんとそこまで関係が悪いんですか?」

 

 

「は?話すわけねーだろ…………………でも、訊いてくるんだろ?」

 

 

「はい」

 

 

「…………………………」

 

 

隼はうつむいて暫く黙っていた。が、暫くすると顔を上げた。

 

 

「俺が碧海を嫌いなのはな………………………………」




THE NEXT story 3/9 PM 22:00


良かった評価とか宜しく(^_^ゞ


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第100話 過去の時間(隼編Ⅰ)

ここから過去編です。


果たして隼は何故創真と仲良くなったのか…………?


この過去編で分かります!


では、どうぞ!!


時は中学2年の春。隼が横浜にいたときの話だ。

 

 

 

「隼、また1番かよ。ほんとに敵わねぇな」

 

 

「別に大したことねぇよ」

 

 

隼は友達とそんな会話をしていた。彼等が見ていたのは、先日受けた定期テストのトップ100のランキング表だ。隼の学校では、テストの上位者は廊下に名前が張り出される。

 

 

で、いつも1番のスペースを占領しているのは、月城 隼、と言う訳だ。

 

 

「別にテストの事なんてどーでも良いんだよ。それより、久しぶりにサッカーでもやろうぜ」

 

 

「いーね!行こうぜ!」

 

 

友達は教室にいる別の友達に声をかけ、直ぐに教室を飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、隼が家に帰ると 待っているのは…………

 

 

「おっ帰り~!!隼、テストどうだった?」

 

 

俺の姉である碧海だ。唐突だが、隼の家は三人暮しだ。父親と隼と碧海の三人暮しだ。母親は隼らが小さい頃に病気で亡くなっていた。

 

 

「普通に学年1位だよ。お前はどーせ満点だろ?」

 

 

「まーね~」

 

 

碧海は女子校に通っているため、隼とは別の学校だ。ちなみに、隼は公立。碧海は私立。どーしても行きたかった所であるそう。

 

 

「そう言えば、もうすぐ夏だね~。夏は何処かに行きたいところあるの?」

 

 

「涼しけりゃ何処でもいいわ」

 

 

「相変わらず大雑把だね…………」

 

 

こんな平和な会話、は間もなく無くなると言う事を知らなかった。この時点では。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、月日はどんどん過ぎ、6月も後半戦に差し掛かったある日。いまは全校集会の最中だ。

 

 

「zzzzzzzzzzzzzzzz」

 

 

隼はうたた寝しながら、立っていた。深夜アニメを見るために夜更ししたので、猛烈に眠いのだ。

 

 

「おい、隼…………寝るなよ………」

 

 

隼の後ろの友達が肩を叩いて起こす。

 

 

「んあ?眠いんだよこっちは。少しは察しろよ………」

 

 

「あのなぁ……………」

 

 

友達が何かを言いかけた所で──────

 

 

「それでは最後に、2年の転校生を紹介します」

 

 

校長の言葉に隼は目を薄く開ける。

 

 

(転校生…………………この時期に来るなんて珍しいな………………)

 

 

ぼんやりとそんな事を考えていると、転校生が壇上に上がって、マイクを手に取る。

 

 

「僕の名は結城 創真。まぁ、取り敢えずよろしくって事で………………」

 

 

短い自己紹介を終え、彼はペコリとお辞儀をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

集会が終わり、隼達は教室で転校生について話していた。

 

 

「なーあの転校生どうよ?」

 

 

「どうよって何がだ?」

 

 

隼が聞き返す。

 

 

「だから、俺らの隣のクラスに来た転校生の事だよ。どんな奴だと思う?」

 

 

「そうだな……………あんまり口数が少ない系のキャラっぽいか?」

 

 

「あー、分からなくもねーな」

 

 

「んなことより、お前らテスト勉強仕上がってる?」

 

 

隼が皆に訊く。

 

 

「あーそう言えば明日か…………」

 

 

「あーやだやだ。俺、社会捨てたわ~」

 

 

ちなみに作者はこの前のテストで物理を捨てた。

 

 

「まぁ、どうせ1位は隼だろ?」

 

 

「さーな。まぁ、死守したいけどな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、1週間後。

 

 

「おい、隼!」

 

 

「なんだ?そんなに慌てて」

 

 

隼は読んでいた漫画を閉じて友達らに目を向ける。

 

 

「この前のテストのランキング張り出されてたんだよ!」

 

 

「…………あーそれか。そういや、今日だったな」

 

 

隼は腰をあげ、ランキングを見に行く。

 

 

「さーて………………俺の名前………………は?」

 

 

彼の名前は確かにあった。但し……………………かつていた順位の1個下に。

 

 

「2位………………じゃあ1位は誰………………が………?」

 

 

かつての隼がいた順位を奪ったのは………結城 創真。転校翌日から始まったテストで、全教科100点を取っていた。

 

 

「へぇ…………この学校は順位が出るんだ。初めて見たなぁ、こう言うの」

 

 

皆が声がした方を見ると、そこには転校生、否。創真がいた。

 

 

「おい………………確か創真、って言ったよな?…………」

 

 

「…………………ん?君は?」

 

 

創真は視線だけを隼に向ける。

 

 

「あ、俺は月城 隼って言う」

 

 

「隼君、か。あぁ、ランキングにもいるね、僕の1個下に」

 

 

まるで隼をバカにするような口振りに、皆は嫌悪の目を一瞬向ける。

 

 

「お前、全教科満点とはやるじねぇか。どれくらい勉強したんだ?」

 

 

「一時間行ったか行かないか位かな」

 

 

「それは一教科辺り、か?」

 

 

「ちがうちがう。全教科の合計、だよ」

 

 

「………………………………………え?じゃあ、たった一時間やっただけで、満点だって言うのか?」

 

 

「別にやんなくても良かったんだけど、まぁ念には念を、って事で。あの程度では、僕の守備範囲だ。僕の前にいた学校の方が3倍は難しかったねぇ………あのテストは難しいには入らない」

 

 

その独り言は、創真より下の者を嘲笑うかのように聞こえた。まぁ、本人はそんなつもりは一歳無かったのだが。

 

 

「おいおい転校生。テメー調子乗ってんのか?」

 

 

その声の主は、大きな体格を持ち、ネックレスやピアスを付け、外見からしてTHE不良の、男子だった。

 

 

「調子乗ってんのか、ねぇ。あんた、誰だか知らんけど、そんな学校にピアスとかネックレスしてるあんたの方が、調子に乗ってると思うけど?」

 

 

THE正論に、隼は心の中で『あ、確かに』と思わず納得してしまう

 

 

「テメェ………………俺に口答えするとどうなるか分かってんのか!?」

 

 

「知らんがな。まだ転校してからさほど経ってないし」

 

 

「こうなるんだよ!」

 

 

予兆もなく、いきなり彼は創真に拳を向けた……………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ……………!?」

 

 

「「「え!?」」」

 

 

殴ろうとした彼の手は創真の手によって受け止められていた。

 

 

「やれやれ、危ないじゃないか。にしても、これで全力?」

 

 

「うるせぇ!」

 

 

彼はさらに力を込めるが、それでもビクともしない。

 

 

「……………………よっ」

 

 

創真は彼の手を捻り上げる。

 

 

「イタタタタタタタタタ!痛い、痛い、痛い!!」

 

 

「どーします?まだやりますか?」

 

 

「わ、分かった分かった!俺が悪かった!だから、止めてくれ!」

 

 

「はい、良く言えました」

 

 

すんなりと創真は彼を解放してあげた。

 

 

「…………………なーんてな!」

 

 

解放された途端、彼は至近距離から再びパンチを放つが、創真は余裕そうに避け、後ろに回り込み、膝カックンで、彼を転ばせた。

 

 

「もーめんどいなぁ」

 

 

「くそったれがァァァァ!!」

 

 

発狂した彼は勢い良く突っ込む。激突する瞬間に、創真は横へスッと避けつつ、足を軽く出す。彼は勢い良く転ぶ。

 

 

「あららら、痛そう」

 

 

「くそっ…………………覚えてろ!」

 

 

「負け惜しみ、お疲れ」

 

 

逃げるように去っていく彼に、創真は嫌みで応酬するのだった。

 

 

「やれやれ、だ。この学校にはめんどくさいやつがいるもんだね……………さて、隼君」

 

 

「な……………なんだ?」

 

 

「次のテスト、頑張ってねー。まぁ、こっちも負けるつもりは一切ないけど」

 

 

「上等だよ、次でリベンジだ!」

 

 

創真は不敵な笑みを隼に残して、何処かに去っていった。

 

 

「何だよあいつ。隼、あんな奴の煽りに乗らない方が良いぞ?」

 

 

「え?そうか?別に俺はそんな気になんなかったけどな。てか、そんな悪い奴には見えなかったけど」

 

 

「何言ってんだよ、お前馬鹿にされてたぞ、完全に」

 

 

「そーそ。てか、あいつ自分が天才だとでも思ってるんじゃないの」

 

 

「くそうぜぇー、あの天才アピール」

 

 

蔑む声や、悪口もあちこちから聞こえてきた。皆は創真に対して敵意剥き出しだった。見下してるように見えたからだろう。あとは嫉妬か─────────。皆がそんな事をぐちぐち言うのを創真は物陰から聞いていた。

 

 

「別に馬鹿にしたつもりも、天才アピールをしたつもりも無いんだけどねぇ。にしても、隼君みたいな秀才と会うのは初めてかもなぁ。そう言う相手がいると、僕も燃えてくるねぇ…………」




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第101話 過去の時間(隼編Ⅱ)

創真のさらなる凄さが明らかに………!!


隼side

 

 

翌日から当然と言えば当然なのだが、創真は完全に孤立した。とは言え、本人は全然涼しい顔をしてたが。

 

 

「隼、顔が暗いな。昨日のまだ引きずってるのか」

 

 

「別にぃ………そんなのじゃねぇよ」

 

 

「そんなのって?」

 

 

「…………………」

 

 

俺は何も答えず、昨日の事を思い出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

 

隼と碧海はテストの結果通知を父親に見せた。

 

 

「碧海は今回も1番の成績だ、な」

 

 

一言褒め、父は隼の結果通知に目をやる。

 

 

父は隼の結果を見るなり、隼に平手打ちをした。碧海は驚きの表情を見せ、何かを言いかけたが、口を閉ざしてしまった。

 

 

「俺は首位を守れない低能は求めてない。で、お前から首位をうばった奴の名前は?」

 

 

「…………結城 創真って奴だよ」

 

 

「チッ、奴の息子か………………忌ま忌ましい。次そいつに負けたら2回殴って5回蹴る。分かったらとっとと出ていけ」

 

 

「……………………」

 

 

隼は何も言わずに出ていった。

 

 

今日ので色々分かった。父は屑人間であったと言うことに。1番じゃなきゃ気にくわないのだ。そして、1位じゃなきゃ暴力で制裁を加える……………暴君ってことに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

 

 

「………………隼?」

 

 

「……………!わりぃわりぃ。ちょっとボーッとしてた」

 

 

「本当にお前大丈夫か?」

 

 

───────大丈夫……………って言ったら嘘になるんだけどな。

 

 

内心でそう苦笑する隼。そして、廊下が騒がしいことに気づいた。

 

 

「なんか廊下うるさくね?」

 

 

「確かに……………なんだ?」

 

 

廊下のざわめきに、彼等はやっと気づいた。

 

 

「おい、今廊下で喧嘩が勃発してるぞ!」

 

 

クラスの誰かが教室にそう叫ぶと、興味津々の野次馬共は廊下に顔を覗かせた。無論、隼もだ。

 

 

廊下で戦っていたのは───────

 

 

「もー暇なんで帰って良いかい?君が殴っては、空振りでの繰り返しで飽きたんだが」

 

 

「今やってんだよ!!」

 

 

察しがつくだろうが、今戦ってるのは、創真と昨日創真に倒された彼だ。言動から察するに、どうやらなんのダメージも与えられてないようだ。

 

 

「で、まだ?僕は早く昨日買った漫画の続きが気になるから、早いとこ終わってもらって続きを読みたいんですけどー。日本語の意味、分かりますかー?」

 

 

「調子に乗りやがって…………!!お前ら、作戦通りにやれ!!」

 

 

すると野次馬の中から2人の男子生徒が飛び出し、創真の手を拘束する。

 

 

彼の下っ端達だ。

 

 

「ほほーう、そう来たか」

 

 

「オラ、何か言うことあるか?」

 

 

「そうだなぁ………………さい」

 

 

「あ?聞こえねーぞ」

 

 

「だから…………………………頭突きにご注意くださいって言ったんだよ」

 

 

「な……………ガハッ!!」

 

 

創真の頭突きを喰らい、鼻血を出してしまった。

 

 

「はい、そして君達も邪魔」

 

 

創真は手を拘束していた下っ端を何ともなかったようにまとめて投げ飛ばした。

 

 

「やれやれ、勝負ありだね。それにしても、君達もしつこいなぁ。はっきり言うけど、君達じゃ弱すぎて僕を倒すには100年は掛かるだろうね。相手にするのも飽きたし、こう言うときは生活指導の先生に言うのが良いのかな?」

 

 

「勝手に言えば良いだろうが。そんなことされても、痛くも痒くもないぜ?」

 

 

「でしょうね。そんなとこだと思ってたよ。なら、こう言うのはどうかな?」

 

 

創真は懐から写真を数枚、彼の元にばらまく。それを見た瞬間、彼の顔が真っ青に染まった。

 

 

「この写真に写ってるの、君だよね。いやー、いけませんねぇ。まさか、浮気してるとはねー?」

 

 

隼も写真を覗き込んでみた。その写真には、そいつともう1人、女の子が手を繋いでるところが写っていた。それだけなら何の変哲もないのだが、それが複数枚もあり、しかも写っている女子は全員異なる。

 

 

「他にも色々とあるけどね。さーて、この写真はどうしよっかなー?学校中にばらまくか。いや、それよりも、この写真に写っている女子に送ってやるか」

 

 

「ま、待て!それだけは止めろ!」

 

 

「止めろ?言い方が違うんじゃないかな?」

 

 

「…………やめ、て下さい」

 

 

悔しそうに顔を歪めながら、彼は消え入るような声で呟いた。

 

 

「……………………そーだねぇ。なら、今後一切僕に何の危害も加えようとしないなら、良いけど?」

 

 

「わ、分かった!もうお前に関わらねぇから、やめてくれ!」

 

 

「はいはい…………………さて」

 

 

創真は視線を彼から外して、皆の方に向ける。

 

 

「言っておくけど、君達もだよ。もし、彼みたく僕に何かしらの危害を加えようとしたら、君達もこうなるかも知れないことを覚悟しておいてね。あまり僕を侮らない方が良いと思うよ。別に仲良くしろとは言わないけど、厄介事を持ってくるのを止めてほしいだけだから。じゃ」

 

 

言いたい事を全て言い終えた創真は、教室へ戻ろうとする。

 

 

「待てよ創真」

 

 

彼の足を止めたのは隼だった。

 

 

「お前、この写真をどうやって見つけた?昨日の今日で早すぎないか?」

 

 

「早すぎないか、だって?僕にとっては、1日あればこんな情報を突き止めるなんて、容易いことさ。どうやって見つけたかは秘密だけど」

 

 

「怪しいな。この写真も合成とかじゃないのか?」

 

 

「合成だとしたら、何故彼がそこまでビビっていたんだい?」

 

 

「それは…………………………………」

 

 

隼が答えに詰まっている間に、創真は別の質問をしてくる。

 

 

「所で隼君。小耳に挟んだんだが、ここの教師の中に、社会の先生で、陰で女子にセクハラをするのがいると聞いたんだが、それは本当かな?」

 

 

「え………………ま、まぁ、俺もそれは聞いたことがある。担任やらに相談する女子もいるそうだが、当の本人は何年も前からいる古株の教師だから、言えないとかそんな事を聞いたことがあるぜ…………けど、何で唐突にその話題を?」

 

 

「…………………………」

 

 

創真は何も言わない。

 

 

「おいおい、まさか次はそいつを潰すとか言うんじゃないだろうな?まさか、揺さぶるネタも既に掴んでるのか?」

 

 

「さぁね。まぁ、取敢えず来週の今日くらいを楽しみにしてたら、とでも言っておこうかな?」

 

 

創真は恐ろしいほどの不敵な笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから1週間後の朝の教室。隼はそんなことも忘れて雑談を友達としていた。そこへ、担任が入ってきたので、皆は席につく。

 

 

「えー、じゃあHRを始める。じゃあ、日直の人…………………」

 

 

そんなこんなで、朝のHRは続いていき、そして最後に先生からの連絡がされて、終わりを迎えようとした時だった。

 

 

「あぁ、そうそう。今日、お前ら社会の授業があると思うけど、それは自習な」

 

 

「自習かよー。あの先生どうしたんだよ、サボりかー?」

 

 

誰かがおどけた様子で大声で言い、皆は笑いを浮かべる。しかし──────────

 

 

「笑い事じゃないぞ。恐らく、今週の社会の授業は全部自習だからな。と言うのも………………あの先生、辞めたんだよ、ここを」

 

 

「「「……………………………」」」

 

 

皆は暫く言葉が出なかった。

 

 

「え、先生。辞めた、ってのは…………」

 

 

「文字通りだよ。あの先生、唐突に退職届を出してな。校長先生もビックリして、理由を聞いたんだが、頑なに答えなくてな。結局、退職届は通って、昨日で先生辞めた、って訳だ」

 

 

(まさか…………………)

 

 

隼は創真の顔が浮かんだ。否、創真だけでなく皆もだった。

 

 

「まっ、よく分からんが俺が知ってるのはここまでだ。そんな訳で、HRを終わるぞー。授業の準備をしとけよー」

 

 

そう言い残して、先生は教室を出ていった。

 

 

「おいおい、マジかよ……………」

 

 

隼は席を立って、隣の教室へ駆け込む。そこでは文字通り創真が皆に囲まれていた。

 

 

「おや、隼君じゃないかー。元気そうだねー」

 

 

「おい、創真。お前があの先生をここから辞めさせたのか…………………?」

 

 

「………………………あぁ。と言っても、正確には彼が自主的に出ていくように仕組んだんだけどね」

 

 

その言葉を聞いて、隼を含め皆は言葉が出てこなかった。

 

 

「まっ、これでこの学校にはびこる悪質な人間は消えたし、皆さんも良かったんじゃないですか?僕としても、恐らく皆さんは僕に対して何かしらの危害を加えようとは完全に思わなくなるでしょうし、一石二鳥って事だ……………」

 

 

創真はスッと立ちあがり、教室を出ていく背中を皆は見つめるしかなかった。




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第102話 過去の時間(隼編Ⅲ)

ついに誕生!


夏休み明けの9月。

 

 

先生が去ってから、創真へのいじめが一切無くなり、陰口すらもなくなった。

 

 

彼等はこう思った。

 

 

創真に目をつけられたら、自分もあの先生のように消されたりするんじゃないかと。乃ち畏怖、だ。創真は皆に恐怖を植え付けたと言うわけだ。

 

 

 

「何者なんだ…………あいつ…………」

 

 

結局、隼は夏休みはほぼ勉強に回したのだった。

 

 

「隼、全然日焼けしてないな」

 

 

「勉強したんだよ。次こそあいつに勝つためにな」

 

 

「燃えてるね~」

 

 

「まー、やっぱ勝ちたいからな」

 

 

隼が何気なく廊下に目をやると、創真が1人、外を見ていた。何となく気になったので、隼は創真の元へ近づく。

 

 

「………………よぉ」

 

 

「……………………ん?あぁ、君か」

 

 

「何してんだ?景色を眺めて楽しいのか?」

 

 

「外、見てみ」

 

 

隼も外に目をやると、そこにいたのは警察官だった。

 

 

「警察?何で来てんだ…………っていねぇし!」

 

 

いつのまにか隣にいた創真が消えていた。隼は教室に戻る。

 

 

「何なんだまったく……………」

 

 

隼が席に戻って再び友達と話していると、先生が慌てた様子で入ってきた。

 

 

「お前らよく聞け。今この学校に包丁を持った不審者が侵入しているそうだ」

 

 

先生の言葉に皆はざわめき出す。

 

 

「その不審者を追って、交番から警察官の人が2名来てくれた。警察が確保するまでの間、我々は体育館に避難せよとの事だ。と言うわけで、お前ら冷静に、静かに廊下に並べ」

 

 

不安ながらも、皆は先生の指示に素直に従い、廊下に並び出す。

 

 

「うわ…………超ヤバイじゃん」

 

 

「ま、授業潰れるからその点ラッキーだな」

 

 

「隼…………………」

 

 

間もなく、皆は体育館へと移動を始めた。

 

 

「(不審者に感謝…………なーんて言ってられないんだけどな………)………ん?」

 

 

その時、隼の視界の端で何かが動いたように感じた。

 

 

「な!?」

 

 

なんと、創真が列を外れ、1人廊下を曲がっていった。

 

 

「あいつ何やってんだ!?くそ、先生は下か…………わりぃ、ちょっと行ってくる!」

 

 

「おい、隼!?」

 

 

制止の声も聞かず、隼は創真を追っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くそ…………見失った……………」

 

 

隼は創真を探すが、姿は何処にも見えなかった。

 

 

「本当に考えてることが分からねぇ奴だ…………」

 

 

その時、後ろから足音が聞こえた。

 

 

(まさか不審者…………?)

 

 

隼は本能的に隠れる場所を探すが、見通しの良い廊下には隠れる場所がない。さらに、最寄りの階段までは遠すぎた。

 

 

「こうなったらしょうがねぇ…………一か八かだ」

 

 

隼が戦闘の構えを取る。

 

 

そして、隼の目の前に現れたのは────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、君!何してるんだ!!」

 

 

────────警察官だった。

 

 

「おい!回りの警戒も怠るな!」

 

 

階級が上と思わしき警察官が叱責する。

 

 

「…………なんだよ。驚かせるな………あ、それより生徒が1人いなくなって…………」

 

 

「それも聞いた。我々に任せて君は戻るんだ。おい、彼を他の生徒達の元へ連れてけ」

 

 

「分かりました。さぁ、行こう」

 

 

隼が警察官と共に体育館へ行こうと踏み出した時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「待ちたまえ、隼君」

 

 

声の方に目をやると、何処から来たのか創真がいつも通りの歩調で近付いてきた。

 

 

「あ、創真!お前、何処に行ってたんだよ!?あ、あいつです、いなくなったの」

 

 

「そうか。君!不審者がいるかもしれない。急いで行こう!」

 

 

警察官が声をかける。

 

 

「まー確かに行った方が良いですよね……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなた方が本物の警察なら」

 

 

「「「!?」」」」

 

 

「何を言ってるんだい?私たちは本物の………」

 

 

「それだとどうも辻褄が合わないんですよね。あなた達は重大なミスに気付いてない。さっき、あなた方が隼君を発見したとき、そこの警察官の人が、『回りの警戒も怠るな!』って言ってたので間違いないですよね?」

 

 

「あ、ああ……」

 

 

その言葉に創真はニヤリと笑みを浮かべる。

 

 

「次に警察バッチです。まず、叱責した方の警察官の階級は巡査。叱られた方の警察官は巡査長。あっれぇ~?普通に考えて、階級上、偉い筈の巡査長を巡査が叱ります?」

 

 

「「!!」」

 

 

「な……………じゃあこいつらは…………?」

 

 

「多分、偽者じゃない?」

 

 

「服は…………………?」

 

 

「今時警察官の服なんてやろうと思えば作れるもの」

 

 

隼は慌てて離れる。

 

 

「さーて。結局の所どうなの?」

 

 

「……………………ククク………ハハハハハハ!!驚いたよ。そこまで目を配るガキがいたのは!!」

 

 

やはりにせ者のようだった。

 

 

「どーせ貴重品とかを盗もうとしたんですかね?職員室や教室はがら空きで荷物も無防備に置いてありますしね…………それにここの学校の人達は校則破ってスマホやらの貴重品を持ってきてる奴等が多いと聞いたし」

 

 

「君には脱帽だよ。さて、知ってしまったからには計画が終わるまでおとなしくしてもらおうか………」

 

 

偽警察官達は持っていた特殊警棒を取りだし、ゆっくり近づく。

 

 

「なーんだ。拳銃じゃないのか。まぁ、そう易々と手に入る代物じゃないしねー」

 

 

「おい、んなこと言ってないで早く逃げるぞ!」

 

 

「いや、多分大丈夫だよ。僕でも倒せるレベルの相手だろうし」

 

 

「おい、ガキ。大人を舐めてんじゃねぇぞ、ゴラァ!!」

 

 

「そっちこそ、ガキを舐めんな」

 

 

創真の挑発に乗った一方の偽警察官が、創真の方に襲い掛かり、警棒を振るう。しかし、創真は容易く避ける。

 

 

「下手くそか。さては、そんなに使いなれてないね?」

 

 

「うっせぇ!」

 

 

「所で隼君。そっちにも行ったよ」

 

 

「え?…………うおっ、危なッ!」

 

 

隼は顔面スレスレで、もう一人の偽警官の振るう警棒を避けた。

 

 

「こんにゃろう、よくもやってくれたな」

 

 

隼は近くにあった掃除用具入れを開け、中から自在箒を取り出し、投げるが避けられる。

 

 

「チッ」

 

 

「当たるかよ!」

 

 

創真と隼は素手。しかし、相手は武器を持っているため、やはり分が悪い。

 

 

「おい、どうするんだよ。このままじゃ、不味いぞ」

 

 

「仕方ない。隼君、これから僕がすることを先生に言わないって、約束してくれる?」

 

 

「それであいつらが倒せるなら、言わねーよ!」

 

 

「話が分かるようで助かるよ。じゃあ、隼君。後は任せろ。それと、絶対僕より前には出るな」

 

 

そう言って、創真は隼よりも前に出ていく。

 

 

「おいおい、1人で相手をするつもりか?」

 

 

「あぁ。実際、君達なんて倒そうと思えばいつでも倒せたし、ね!」

 

 

創真は懐からスマホを取り出し、タップする。すると突然、上から水が降ってきた。

 

 

「な、何だ!?」

 

 

「み、水が…………!!」

 

 

偽警官のいる辺りにのみに水が降り注ぐ。10秒程で、水は止まった。

 

 

「この学校の防災システムを外から乗っ取り、スクリンプラーを一部起動させました。あーあ、水溜まりが出来ちゃったよ」

 

 

「………………チッ、驚かせやがって。たかが水ごときでどうにかなると思ったか?」

 

 

「なるね。だって………………水は電気を良く通すもの」

 

 

さらに創真は懐から何かを取り出す。スイッチを入れると、バチバチと言う音がなる。

 

 

「それは………………スタンガン!!まさか………」

 

 

「そう言う事。お縄につけ、偽者ども」

 

 

そう言い捨てて、創真は水溜まりの中にスタンガンを投げ入れる。その瞬間、辺りに出来た水溜まりを介して、偽警官の身体に電流が走り、声にならない悲鳴をあげた。

 

 

数十秒程でスタンガンは沈黙し、同じく偽警官も倒れて沈黙する。

 

 

「はーい、いっちょ上り」

 

 

「………………何でスタンガンとか持ってんだ?」

 

 

「そりゃ、こう言う時に便利だと思って持ち歩いてるからね」

 

 

「どんな想定してんだよ!?てか、スクリンプラーを発動させたのもお前だよな?てか、外から乗っ取り……………要はハッキングしたってことか?」

 

 

「そゆこと。さて、約束通り倒したんだから、これは秘密でよろしく」

 

 

「あ、あぁ。まぁ、言わねぇけど……………」

 

 

「それよりも、だ。何で君はわざわざ僕を追い掛けてきたんだい?」

 

 

創真は分からなさそうに尋ねる。

 

 

「まずその前にだ。お前はいつからあいつらが偽者だって気付いてた?」

 

 

「確信したのは、君と彼等の会話からだけどまぁ、最初から怪しいと思ってたよ。だって、たった2人で包丁持った不審者を追い掛けてくるなんて不自然だし。たまたま居合わせたからか?だったら、応援を呼ぶはずなのに、一向に来なかった。もっと多人数で対処するのが普通の対処法だから」

 

 

「なるほどな………………で、何でついて来たか、だっけ?そりゃ、お前が何て言うか危ないことをしそうだったから、だな」

 

 

「てことは………………心配してくれたって事?友達でも何でもないのに?」

 

 

「まぁ、間違いではないな」

 

 

「そうか……………君は良い奴だな」

 

 

創真は暫く黙り込んでしまった。暫くして、創真は何かを決めたように口を開く。

 

 

「隼君。1つ頼みがあるんだが」

 

 

「何だ?」

 

 

「僕は君の事が気に入ったよ。なので、ストレートに言うけど、僕と友達になってくんない?知っての通り、僕は今のところ友達として話せる人がいないのだよ。折角この学校に来たんだから、やっぱり1人くらい話せる友人が欲しくてさ」

 

 

「なんだよ、そんな事か。まぁ、お前は悪い奴ではないし、別に構わないぜ」

 

 

「そうか!良かったー!じゃあ、友情の証に…………」

 

 

創真は隼に近寄り、何かを握らせた。

 

 

「何だこれ?」

 

 

「まー、見てみな」

 

 

隼が自分の手が握っているものを見てみると──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────スタンガンだった。

 

 

「あ、電源消し忘れてたわ」

 

 

「オイィィィィィ!!」

 

 

隼は慌ててスタンガンを放り投げる。そして、テメェ何しやがるこの野郎、感電したらどうすんだゴラァ、的な事を言おうと思って創真の顔を見ると──────創真は笑っていた。

 

 

「なーんてね。さっき水溜まりに放り投げたから、壊れたよ。ちなみに、電池も念のため抜いてある」

 

 

「え……………………はぁ?え、じゃあ、何で………」

 

 

「何となく、面白そうだったから(笑) 何か、隼はいじり倒した方が面白そうだね?アハハハ!」

 

 

「くそっ………………最高に最悪な奴と友達になっちまったかもしれないな……………」

 

 

この日である。名(?)コンビが誕生したのは。




THE NEXT story 3/12 or13PM 22:00


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第103話 過去の時間(隼編Ⅳ)

そろそろ過去編も佳境かな……………?


では、どうぞ!


隼side

 

 

あの後、偽警察官らは本物に逮捕された。で、俺らは先生に怒られた。無茶しすぎだ。お前らは生徒なんだから、わざわざ首を突っ込むな。先生や大人に任せなさい、と。

 

 

で、創真の返しが──────────

 

 

僕にとってこんなの無茶にならない。てか、僕が気付いてなかったら色々と盗まれてたかも知れないんだから、その点ちっとは感謝せい。そもそもこの学校の先生は臆病者ばかりで頼りにならない。ちなみに先生は1番弱いし頼りない。

 

 

とまぁ、創真が先生の怒りをさらにヒートアップさせる事になり、結果として俺も巻添え喰らった。まぁ、でも結局最後に一応感謝の言葉は送られたが。そして、2時間後、漸く解放された。

 

 

「まったく言わなくていいものを………成績下げられるぞ」

 

 

「提出物出してテストも満点で授業態度も真面目。私怨で成績下げるなんてあってはならないし、親が学校に押し掛けてきたとしたら、たまったもんじゃないでしょ?」

 

 

「まぁ、そうだけど。なぁ、創真。ちょっと色々聞きたいことがあるんだが」

 

 

「ジュース買ってきてくれたら良いよ。勿論支払いは君で」

 

 

「…………………………」

 

 

俺は近くのコンビニにダッシュし、ジュースを買って創真に渡す。

 

 

「買ってきてやったぞ。じゃ、訊くぞ」

 

 

「はいはい。まぁ、立ち話もあれだし、近くに公園があるからそこで話すとしようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

 

創真と隼は近くの公園に来て、ブランコに座った。

 

 

「で、何を聞きたいの?」

 

 

「まず、夏休み前に退職していった先生の事だ。あれは、どうやった?」

 

 

「あぁ、あれ?ああいうセクハラ野郎がいるのはやだなーって思って、何か揺さぶれるネタがないかなと探ってたら、あいつさぁ、何と不倫してたんだよね。だから、その証拠写真を学校中にばらまいてついでに奥さんにも送るか、自主的に退職するか、どっちかを選んでくださいって言っただけ」

 

 

「そんな事があったのか……………お前の前じゃプライバシーとか無さそうだな」

 

 

隼の呟きに、創真は薄く笑みを浮かべる。

 

 

「まぁそれは良いとして、次。お前、なんでそんなに強いの?」

 

 

「ありとあらゆる格闘術を極めたい欲が出てきたから、中学1年の間に名の知れたやつはマスターした」

 

 

「へー。俺も色々習ってんだよなー。じゃ、次だ。お前はなんで勉強が出来る?転校翌日から始まったテストをオール満点なんて普通は出来ねぇ。ここの先生は癖者揃いでテストも初見殺しのか多いんだが」

 

 

「あー………答えは単純。小学生の間に中学の範囲は全て極めたから。あの程度、小学校の頃から培った詳細な知識を総動員すれば余裕のよっちゃんだ」

 

 

「あーなるほど。小学生の間にね……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って、何!?」

 

 

「そのリアクション…………43点」

 

 

「うるせぇ!!いや、嘘だろ…………小学生の間に国語も数学も英語も理科も社会も…………全部勉強したって言うのか?」

 

 

「勉強した、じゃなくてマスターした、ね。だから今は大学レベルの勉強してる。高校のは中1で終わらせた」

 

 

「マジか……………お前はなんでそこまで勉強したんだよ?」

 

 

「やることなくて暇だったから」

 

 

「あーそうか。あーなんか自慢に聞こえてきてうゼェ………」

 

 

隼は、はぁ、とため息をついた。

 

 

「自慢じゃなくて事実だ」

 

 

「いちいち言わんで良いわ!!」

 

 

「しかし…………ヒヤッとしたよ」

 

 

「あ?何にだよ」

 

 

「君にだよ」

 

 

「俺?」

 

 

「僕は全国各地色んな所に行っててね。だから転校の回数は日本一なんじゃないかね。その中で会った人達の中で、初めてヒヤッとしたよ。君に勉強で僕は負けるんじゃないかって」

 

 

「そんな風に俺を…………」

 

 

隼が少し嬉しく感じていると─────────

 

 

「ま、それも僕の見間違いだったようだけど」

 

 

「うっせぇわ!!見とけよ創真!!次はテメーに勝つ!!てか、勝たないとまた親に殴られるし」

 

 

「そりゃめんどいな……………」

 

 

「ああ。だが、それより腹が立ったのは姉の事だ。あいつは俺が暴力振るわれてたのに見てるだけで何もしなかった。最低だ」

 

 

「ふーん……………で、今姉とはどんな感じなの?」

 

 

「殆ど話さねぇ。でも、俺もあいつの顔はあんまり見たくもないかな」

 

 

「ふ~ん。なら、手加減してあげよっか?」

 

 

甘い言葉に隼の心は少し揺らいだ。

 

 

(確かに……………そうしてくれたら俺は殴られずに済む…………!!)

 

 

隼はちらりと創真の方を見る。創真はニヤニヤ笑っていた────────────馬鹿にするかのように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼の頭の中で何かが弾けた。

 

 

「おい、創真、俺をなめてるのか!?」

 

 

「うん!!」

 

 

「良い返事すんな!馬鹿にすんなよ創真。俺はお前が手加減しなくたって余裕で勝ってやる。だから覚悟しとけよ!!」

 

 

その言葉にニヤリと創真は笑った。

 

 

「そう言う暑苦しい所が隼らしい。なら、次も全力で叩きのめすよ。さて、帰るとしよう」

 

 

創真は立ち上がってペットボトルをゴミ箱に投げ、歩き始めた。隼も一緒に歩き始める。

 

 

「そう言えば、隼はアニメとか見る?」

 

 

「あぁ、俺結構アニメ好きだからよ。しょっちゅう見るぜ」

 

 

「へー。まぁ、隼が見そうなのと言ったら、大体エロ系のだろうね。べつに良いんだけど」

 

 

「何でそうなるんだよ!?」

 

 

to be continue…………




THE NEXT story 3/13or14 PM 22:00


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第104話 過去の時間(隼編Ⅴ)

今回書いたのは弟なんですけど………まさか過去編を終わらせちゃうとは!


まぁ、出来が良かったから良いか………(笑)


じゃあ、どうぞ!


結果から言おう。

 

 

後期中間テスト上位ランキング

 

 

第1位 結城 創真 500点

 

 

第2位 月城 隼 499点

 

 

「はい、お疲れさん」

 

 

「くそがァ……………!!」

 

 

隼はテストの結果通知を握り潰したくなるのを何とか抑える。

 

 

「あーあ。またぶん殴られるわ。ほんと、ダルいわあのおっさん。それを見てるだけのあの姉も」

 

 

「確かに殴られるのは理不尽だね………あ、そうだ」

 

 

創真は何か思い付いた様子だ。

 

 

「なら君が殴られた分の仕返しを僕がしてやろう」

 

 

「お前が…………?どうやって?まさかうちに殴り込みか?」

 

 

「僕ならもうちょっと頭を使う。恐らく、君の父親は明日1日は家に帰ってこないだろうね」

 

 

「はあ?意味が分からねぇ」

 

 

「ま、明日楽しみにしておきたまえ。取り敢えず殴られるのは根性で耐えろとしか、言いようがないが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼side

 

 

バシ!!

 

 

なんの音か?ぶん殴られた音だよ。くそ!

 

 

「まったく使えない奴だな…………2度も負けるとは」

 

 

「………………逆に聞くけどよ。なんで1番に拘る?」

 

 

「そんなの簡単だ。1番じゃなきゃ、価値がない。頂点以外は弱者なんだよ。弱者だったから、あいつ(・・・)は………………」

 

 

あいつって誰だよ………………まぁ、どうでも良いんだけど。今回も碧海は学年1位の成績だったらしい。で、また見てるだけでなにもしてこない。

 

 

「あぁ、そうかよ……………じゃ、あんたは?」

 

 

「何がだ」

 

 

「あんたは学生時代、1位だったのか?」

 

 

「勿論だ」

 

 

「………………そうかい」

 

 

隼はリビングを出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

 

「ったく、だるい親だぜ………」

 

 

悪態をついてゲームをやっていると、部屋のドアがノックされた。

 

 

入ってきたのは碧海だ。

 

 

「……………大丈夫?」

 

 

「何がだよ」

 

 

隼は目も合わせず聞き返す。

 

 

「いや…………その……………さっき殴られた所………」

 

 

「何ともねぇよ。用はそんだけか?なら早く出ていってくんねぇか?ゲーム中だからよ」

 

 

「え…………うん………」

 

 

碧海は静かにドアを閉める。碧海は悲しげな表情をしていたのを、隼は気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

隼が起きたときには、すでに父親はいなかった。珍しく早く出勤したのだろう。ここのところ、隼は父親や碧海よりも早起きして、朝飯を食べて先に学校に行く日課になっていた。

 

 

その時、スマホが震えた。メールだ。

 

 

差出人は創真。

 

 

『もう起きてるだろ?そして、1つ当ててあげようか?』

 

 

隼はこう返した。

 

 

『何を当てるんだ?』

 

 

『君の父親の事だ。君の父親は珍しく早く出勤した。違うか?』

 

 

これには少し隼は驚かされた。

 

 

『何をした?』

 

 

『親に頼んで会社のパソコンのデータやプログラミングを消したんだよ』

 

 

『おい、それヤバイだろ!?』

 

 

『別に復旧は出来るよ。ま、僕の親でも1日は掛かるそうだから、今日は帰ってこれないんじゃないかな?恐らく早く出勤した会社の人が気付いて、あわてて社長に連絡したから、朝ごはんも食べずに出勤していった……………まぁ、こんなところか?』

 

 

『これがお前の言っていた仕返しって訳か………親父を今日1日社畜にさせるって言う。地味だけど、まぁ良いか』

 

 

『贅沢言うな。じゃ、学校で会おう』

 

 

隼はスマホを置いて、少し笑った。

 

 

「ったく…………………やっぱりあいつも案外優しいじゃねぇか……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時はあっという間だった。創真と色んな所に行ったり、食べたり、遊んだり………………後、隼はいじり倒されたりした。いじられる度に隼はムキになり、その反応を見て創真は笑っていた。

 

 

碧海や父は憎いのは変わらなかった。でもその憎しみを、創真が上から塗り潰してくれた。お陰で隼は楽しく過ごせた。

 

 

そして、2年の終業式の日。

 

 

「な…………転校!?」

 

 

「残念だ。まだ色々こきを使いたかったのに」

 

 

「……………………」

 

 

「まったく、そんなに悲しむなって。また会えるよ、近い内に」

 

 

「近い内に…………?それは俺を慰めるために言ってるのか?」

 

 

「いや。僕の頭がそう告げてる。まさか転校先にお前が来るなんて確率は殆どないのにねぇ」

 

 

「フッ…………お前がそう言うなら正しいのかもな」

 

 

「また会えたらこき使ってやるからね~」

 

 

「けっ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日から2ヶ月後。隼は父親に呼び出された。

 

 

「なんだよ急に、こっちは忙しいのに」

 

 

「嘘つけ。まぁ良い、手短に言おう。お前は叔父の家に住むことになった。荷物まとめて出ていけ」

 

 

「…………学校は何処になる?」

 

 

「確か、椚ヶ丘という所だ。分かったら出てけ」

 

 

「椚ヶ丘、だと………………そこって…………」

 

 

「何か文句でもあるか?」

 

 

「いーや、全然。逆に感謝したい位だわ。ありがとよ」

 

 

「はぁ……………………?」

 

 

珍しく困惑している隼の父親を置いて、隼は自室に戻って準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、隼は出ていった。

 

 

叔父の家は数倍きれいだった。

 

 

(あー平和ったらありゃしねぇぜ………)

 

 

それから少ししての事だ。隼が暗殺教室の一員として加わったのは。




THE NEXT story 3/14 PM 22:00


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第105話 真相の時間

タイトル通りです。


では、どうぞ!


「…………ざっとこんな感じてす。俺が碧海を嫌いだった訳は。まぁ、創真との話ばかりしちまったけどな」

 

 

隼はふぅ、と息をついた。

 

 

「それは苦労しましたね」

 

 

「………………ああ」

 

 

しかし、と殺せんせーは続ける。

 

 

「碧海さんは君を見捨てたりするような人なのでしょうか?」

 

 

「見捨ててないんだったら、とっくに俺を助けてただろうが」

 

 

「君が見えてなかっただけで、実は助けてたのでは?」

 

 

「………………?どういう意味だよ?」

 

 

「教えてやろうか?」

 

 

後を振り替えると、創真がいた。

 

 

「…………全部聞いてたのか?」

 

 

「勿論」

 

 

創真は答える。

 

 

「殺せんせーは、俺が知らないだけであいつは助けてた、と言った。てことは、何か知ってんのか……………創真?」

 

 

「俺が説明しよう」

 

 

いつの間にか背後にいたデュオが一歩前に出た。

 

 

「俺の元同僚の友達に頼んで調べてもらった。碧海さんの事をな。俺らの世界の特徴…………いや、死神の特権として、『人間の情報』を閲覧出来る」

 

 

「人間の情報……………?どういうことだ?」

 

 

隼の疑問にデュオは答える。

 

 

「生年月日や身長程度の情報ではなく、その人間が何時何分に何をしたかまで分かる。試しに隼が家を出る前に何を喋ってたか………あ、そーだ!神ざ「言うなァァァァァ!言うんじゃねぇ!!」…………?よく分からんが信じてくれたか?」

 

 

「信じる!信じるから!!」

 

 

ちなみにどの台詞を言おうとしたのかが分からない人は姉弟の時間を見てみてほしい。

 

 

「で、それで碧海の何を見たんだ?」

 

 

「えーっとな…………お前が初めて創真に敗れてぶん殴られたその日の夜中だ。お前は寝ていたと思うが…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お父様。さすがに殴るまでの事ではないと思うのですが」

 

 

「なぜ?」

 

 

「だってそれでも隼は2位ですよ!?悪い成績ではな」

 

 

「1つ教えてやろう。弱者を庇う奴は、そのうち自分まで沈んでいく。それを自分で気づけるようにならないとな……」

 

 

「………………」

 

 

「私は忙しいんだ。とっとと出ていけ」

 

 

次の言葉を拒むかのように、隼の父親はパソコンへと目を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………とまぁ、こんな感じの会話がお前のテストの終わりに毎回あったと、記録されている」

 

 

「…………………」

 

 

隼は特に表情を変えずに黙って聞いていた。

 

 

「碧海さんは殴られているお前を見てるだけではなく、ちゃんとお前のために動いてた…………これは揺るぎない事実だ」

 

 

創真の問い掛けにも隼は反応しない。

 

 

「……………データを見るか?」

 

 

デュオの問い掛けに、隼はやっと反応した。

 

 

「別にいい」

 

 

そう答えて、隼は皆から背を向けて歩きだした。

 

 

「良いのですか?このまま帰して」

 

 

「特に話すことなんてないですしね、殺せんせー。はぁー…………めしにしようかな」

 

 

疲れたのか、首を回しながら創真はポツリと呟く。そして、その呟きにタコは反応した。

 

 

「にゅや!それ先生の分もありますか!?」

 

 

「そんなわけないでしょ」

 

 

「そ、そんな………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼は家に帰って、ゲームをしていた。真相を聞かされ、驚いたか?

 

 

いや、違う─────────────安心した。

 

 

やはり、碧海は自分を見捨てるような姉じゃなかったと。

 

 

さらに言うと、嬉しかった。ほんの少しだけ…………………。

 

 

弟を溺愛していて、意外と自分より幼いそんな姉。隼的にはそう言うところは面倒くさい。そんな姉と、明日から一緒の学校で過ごす。上手くいくのか不安だ。でも、時間を掛けてゆっくり進んでいけば良い。

 

 

「はぁ………にしてま今回もあいつのシナリオ通りなのかね…………気に入らねぇな……………」

 

 

ゲームのコントローラーを手にしながら呟いた隼の独り言は空気に呑まれて消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

翌日

 

 

「緊張するな~。初登校は」

 

 

僕は碧海さんと氷室さん、ホリーらと通学路である山路を歩いていた。

 

 

「ホリー、デュオ、キバット。もし暴力沙汰になったらよろしく」

 

 

「そんな不吉なこと言うなって、創真。流石にそこまでの事態にはならないでしょ」

 

 

「まー、仮になっても創真君が守ってくれるでしょ?」

 

 

碧海さんも日に日に馴れ馴れしくなってきやがった……………。幸いと言うべきなのか、誰とも会わずに学校の教室前の扉まで辿り着いた。

 

 

「………なんか扉の取っ手が重い気がする。これは、僕も緊張してるのか……………?」

 

 

「そ、そんなにですか?」

 

 

氷室さんは意外そうに見つめる。

 

 

「ホリー……………開けてくんない?」

 

 

「しょうがないな。じゃ、開けるよ。3………2………1……………オープーン!!」

 

 

ホリーは扉を思い切り開けた。

 

 

果たして碧海の暗殺教室初日はどうなる?




THE NEXT story 3/15 PM 22:00


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第106話 転校生の時間3時間目

プチ修羅場の始り………………です(?)


創真らが突入した頃、隼は山路を登り終わった直後だった。

 

 

「あー…………あいつ、もう来てんのかな……………最初は歓迎しないだろうな」

 

 

取り敢えず、碧海と皆との仲を縮めていくのが俺の仕事だな、と隼は考える。上履きへと履き替えていると、教室から言い争いの声が聞こえてきた。

 

 

「あぁ…………既に始まってたか」

 

 

隼は教室の扉を開ける。

 

 

「お前バカかよ!?なんでここに来るように手配した!?」

 

 

「だーかーらー。彼女は危険じゃないし、戦力にもなるし、良いことだらけってさっきから言ってるだろうが。さっきから何度も同じこと言わせないでくれます?」

 

 

前原と創真が言い争っていた。

 

 

「あ、隼だ。おっはよ~」

 

 

こんな空気にも関わらず、碧海は能天気に挨拶をする。皆は隼に気付き、一斉に隼に近付く。

 

 

「おい、隼!お前は良いのかよ!?こいつはさんざんお前に酷いことしたんだぞ!?」

 

 

「別に俺はもう気にしてねぇよ。昨日で色々と解決したからな。ま、こうなるのも、誰かさんの描いたシナリオ通りなんだろうけどな」

 

 

「そのシナリオを描いていたのは誰だろうねー」

 

 

お前だろうが…………と隼は小声で呟く。

 

 

「おはようございます。おや、碧海さん。もう居たんですね」

 

 

殺せんせーが教室に入ってきた。

 

 

「そうですよ~。これからよろしくお願いしまーす」

 

 

「殺せんせー!彼女をE組にいれて大丈夫なんですか!?」

 

 

片岡が殺せんせーに訝しげな表情で訊く。

 

 

「だから、さっきから創真が言ってるが、碧海はもう危険じゃないって。だろ?殺せんせー」

 

 

「ええ。キバット君の言う通りです」

 

 

皆はまだ納得がいかないようだが、返す言葉がなく黙り込んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとも微妙な雰囲気でホームルームが始まった。

 

 

「もうご存じかと思いますが、転校生の碧海さんです!」

 

 

「よ、よろしく…………ね?」

 

 

「「「…………………」」」

 

 

皆は反応すらしない。殺せんせーや創真があんなに言うんだから信頼して大丈夫なんじゃないか…………又は、どうせまた何かを企んでるに違いない…………この2パターンに、皆の心は分かれていた。

 

 

(…………まったく。僕の言うことがそんなに信用できないかね………)

 

 

創真が何か言うべきか悩んでいると、拍手が聞こえてきた。皆が音のする方へ向く。

 

 

拍手をしていたのは、カルマだった。

 

 

「別に良いんじゃない?創真や殺せんせーがそこまで大丈夫って言うんだから。俺は歓迎するよ。で、皆は?」

 

 

カルマは皆に問い掛ける。

 

 

「俺も創真を信じるよ。それに殺せんせーを殺すのに、仲間は多い方が良いからな」

 

 

次に賛成したのは千葉だった。つられて皆も拍手した。渋々、という奴もいるかも知れないが。殺せんせーは顔には出さないが、内心ホッとしていた。

 

 

「それでは、余り時間もありませんが、質問タイムに移りましょう!質問ある人、手を挙げてください!」

 

 

すると、倉橋が真っ先に手を挙げた。

 

 

「では、倉橋さん」

 

 

「碧海さんって…………今日、創真君と来たけど………2人は何か関係があるの?」

 

 

「あー………別に一緒に住んでるだけだよ?」

 

 

「「「はぁ!?」」」

 

 

(言いやがったぞ……………あいつ)

 

 

創真はヤベーと言いたげな表情を浮かべる。誰も気付かなかったが。

 

 

「あ、でも別にやましいことはしてないからね?まー、居候みたいなもんだから」

 

 

取り敢えず、何か事情があって創真が住ませてあげてると言うことを皆は理解した。

 

 

「なーんだ。二股かと思っちゃった~」

 

 

倉橋は創真に笑い掛けるが、その目は笑ってるようには見えなかった。

 

 

「さ、さて…………次は体育ですし、これくらいにしておきましょう。仲良くしてあげてくださいね!」

 

 

殺せんせーが創真的には良いタイミングで切り上げてくれてホッとしたのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、体育を始める。皆はペアを組んで模擬暗殺をしてもらうが、まず、碧海さんは創真君に基礎を教わって貰って良いか?」

 

 

「分かりました~」

 

 

皆が烏間先生相手に模擬暗殺をしている間、創真は碧海に基礎を叩き込ませる………………一応。

 

 

「まあ、教えろと言われたものの、昨日結構教えたから特に問題ないよね?」

 

 

予習したのだ。今日の練習メニューは事前に知ってたから、もう昨日のうちに基礎は叩き込んだのだ。

 

 

「勿論。そう言えばさ、烏間先生って結構強そうだよね?」

 

 

「ま、そうだね………初めての挑戦で攻略できたペアはいないかな………ちなみにシングルでもいないんだよね………」

 

 

ちなみに、創真は倉橋と組んで初めてやった時は駄目だった。しかし、2度目はクリーンヒットだったが。

 

 

シングルは、と言うと…………結構良いところまで行ったんだけど駄目だった。でも、2度目はクリーンヒット。

 

 

言っておくが、創真と言えども毎回ヒットしてるわけではない。相手の烏間先生は超人なのだから。

 

 

「じゃあさ、私達が初めての挑戦で攻略できた人達にならない?」

 

 

「お、確かにそりゃ上手くいったら嬉しいね。なら、作戦考えようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、準備はいいか?」

 

 

しばらくして烏間が2人に声を掛ける。

 

 

「私は初めての挑戦ですけど、クリーンヒットさせます」

 

 

碧海の宣言に、皆は少しざわめく。

 

 

「そこまで俺は弱くないぞ?」

 

 

「でしょうね。でも、勝ちます」

 

 

碧海の目は殺る気満々だ。

 

 

「良いだろう…………全力で来い」

 

 

「言われなくても。行くよ、創真君」

 

 

「はいよ」

 

 

このコンビ、烏間を攻略なるか?




THE NEXT story 3/16or17 PM 22:00



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第107話 創真と碧海の時間

途中、書いててにやけました笑笑


お楽しみ下さい!


「創真と碧海がコンビか…………こりゃ、とんでもないタッグだわ」

 

 

隼が苦笑しながら言うのを、近くにいた倉橋はムッとした表情で、創真らを見詰めていた。

 

 

「じゃ、行くよ!」

 

 

創真と碧海はほぼ同時にナイフによる斬撃を繰り出すしかし、烏間は難なく避ける。2人は当たらなかった事を特に気にせずに、斬撃を続けていく。

 

 

「あの2人すごい………息もぴったりだ」

 

 

茅野がポツリと呟く。

 

 

「碧海は前の学校では学力も運動神経も学年一位。まぁ、天才キャラだな。だから、創真とは色々と合うんだろうな」

 

 

「へ~。そりゃ、おっかないコンビだ」

 

 

カルマが笑いながら呟く。隼らが話してる間も、創真と碧海の攻撃は続く。

 

 

「ほら、言ったでしょ?烏間先生に普通の攻撃は通じないって」

 

 

「そうだね………じゃ、作戦通り、次行こうかな!」

 

 

碧海はナイフを、創真にパスした。

 

 

「ほう……………」

 

 

「二刀流こそが、僕の真骨頂。さぁ、覚悟してください」

 

 

「良いだろう。来い!」

 

 

創真は二刀流で襲いかかる。目にも止まらぬ速さでナイフを振るうが……………………当たる気配がない。

 

 

「(日に日にナイフ術が上達していくのが身に染みて分かる…………流石だな。だが……)どうした?その程度では当たらないぞ」

 

 

「…………ですよね。この教室の先生は教える度に強くなりますから……………だから……」

 

 

「!!」

 

 

烏間は離れていた碧海が走ってくるのを捉えた。

 

 

(またナイフを戻して攻撃を続けるつもりか………………それとも、何か企んでいるのか……………?)

 

 

「さぁ、終わりにしますか!」

 

 

創真は少し屈んだ。そして──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────碧海は創真を土台にジャンプした。

 

 

同時に創真はナイフを空中の碧海に投げる。

 

 

「「「!!!」」」

 

 

この行動は誰も予測してなかった。思わず烏間も、ほんの一瞬だけ碧海の方に目を向けてしまった。

 

 

「こっちを見なくて良いんですか?もう1つあるのに」

 

 

「!!」

 

 

烏間の目の前には創真のもう一本のナイフが。

 

 

「くっ………!!」

 

 

烏間は体を後ろに反らし、ギリギリで避けた。その瞬間、創真は勝利を確信した目をした。

 

 

「なに…………!?」

 

 

なんと、創真はナイフを手放し烏間の両足を掴んだ。そのままグイ、と引っ張る。烏間はバランスを崩し、転倒してしまった。

 

 

「私達の勝ちでーす」

 

 

碧海のナイフがちょんと、烏間の首元にちょんと触れた。

 

 

「フッ………………見事だ」

 

 

烏間が自分の負けを認めた。

 

 

「おお!すげぇ!!」

 

 

「あの2人、烏間先生を1発で攻略しやがった!」

 

 

皆は駆け寄り、2人を口々に褒め称える。

 

 

「創真君。もしかして、俺が体を反らすのを利用して転倒させるのを狙っていたのか?」

 

 

「その通りです。そのためには一瞬注意を引く事をすれば行けるかなと思ったので」

 

 

恐ろしい頭脳の持ち主だ。そして、碧海さんの身体能力も称賛すべきものだ、と烏間は思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後になるまでには、碧海はクラスの皆とそこそこ仲が良くなっていた。恐らく1ヶ月もあれば、わかだまりは解けてクラスの一員として見られるだろう、と創真は見ている。

 

 

「さーて。帰りますかね」

 

 

創真が帰ろうとすると、誰かに肩を叩かれた。

 

 

「創真君~。ちょっと良いかな~?」

 

 

「ゲッ、陽菜乃…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真は森に連れてかれ、正座させられた。何故か碧海やホリー達もだ。

 

 

「まずさ~なんで一緒に住んでることを秘密にしてたのかな~?」

 

 

「………二股とか思われるのを防ぐため?」

 

 

「逆に秘密にしてた方が怪しまれると思うけどな~?』

 

 

「………………確かに」

 

 

「それと、やましいことはしてないよね~?」

 

 

「「勿論!!」」

 

 

「ふーん…………一応聞くけどさ、私と碧海さんのどっちが好きなの?」

 

 

「そんなの陽菜乃に決まってるでしょ!!」

 

 

その言葉に倉橋は少し赤くなった。

 

 

「な、ならさ………き、キスとか出来るよね?」

 

 

「……………………出来るよ?」

 

 

創真はスッと立ちあがり……………倉橋の前に立つ。そして、彼等は口づけを交わした。

 

 

「「「!!!!!!!」」」

 

 

碧海は赤くなり、ホリーとキバットはにやけが止まらず、デュオはすっと後ろを向いた。

 

 

数秒後、創真はスッと離れた。倉橋は赤くなったまま、地面に膝をつく。

 

 

「あ、あのー陽菜乃さん。これで、信じてくれます……?」

 

 

「も、勿論だよ!それと………………(キスのテクニックが上手すぎだよ………)」

 

 

「それと?」

 

 

「な、何でもないもん!」

 

 

「えぇ?気になる…………」

 

 

そんな彼等を見つめる外野組。

 

 

「うへへ………当分にやけが止まらねぇ……」

 

 

「生きてて良かったぜ!!」

 

 

ホリーとキバットは下心を丸出しだ。

 

 

「あーあ。人前で見せつけちゃって………妬けるなぁ」

 

 

「青春、か」

 

 

碧海は嫉妬気味で、デュオは何やら感慨深げに呟く。

 

 

「ところで…………後ろになんかたくさんいるよね?」

 

 

すると、近くの木から前原と岡島が落ちてきた。茂みからは殺せんせーは除く他の面々が…。

 

 

「岡島、正直に言え。撮ったろ?」

 

 

「は、はい!」

 

 

「ホリー君、とりあえず全員捕まえてくれる?」

 

 

「了解!鬼ごっこだ~!」

 

 

「「「逃げろーーー!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3秒後、全員確保され、GAME OVERだ。

 

 

スマホやカメラで隠し撮った映像データはバックアップも含めて全部削除され、きつーいお説教を1時間喰らったとさ。ちなみに……………幸運か不運か、殺せんせーはハワイに行ってて、『あのシーン』は見れなかった。




THE NEXT story 3/17or18 PM 22:00



あ、それといきなりですが、創真、隼、碧海、ホリー、デュオ、キバットのコードネームを募集します!


全員分考えなくても良いですよ。


期限は……………明日の16時までです!


活動報告欄にお願いします!


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第108話 名前の時間

コードネーム…………案を書いてくれた方々、ありがとうございました!


それではどうぞ!


創真side

 

 

これまで、僕の中での1番衝撃的だったのは『まさかの自分が碧海さんと共同生活する事になった』だった。

 

 

しかし、今日。それは2番目へ変わった。では、1番衝撃的な事は何になったか?

 

 

それは──────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジャスティス!?まさよし、じゃなくてジャスティス!?」

 

 

「そんなに大きな声で言うなよ創真………」

 

 

木村は大きなため息をつく。

 

 

「てか、皆は知ってたの?」

 

 

「まぁ、入学式の時に聞いたからな…………最初はビビったぜ………」

 

 

聞くと、木村君の両親は警察官で………正義感で舞い上がった結果……………ジャスティスと名付けられたらしい。

 

 

「親は親で人が付けた名前に文句を言うとは何事だ、って言ってくるし………子供が学校でどんな目に遭ってるのか考えたことないのかね………」

 

 

名前……………か。僕は別に変じゃないから名前でいじられることはないな。

 

 

「そんなもんよ。親なんて」

 

 

狭間が木村の前に来た。

 

 

「私なんてこの顔で綺羅々よ?綺羅々つぽく見えるかしら?」

 

 

「い、いやぁ…………どうなんでしょう?」

 

 

「大変だね~。皆へんてこな名前を付けられて」

 

 

何を仰るカルマよ。お前も充分独特の名前だと思うがな。その旨を言ってみると─────

 

 

「え?俺は別に気に入ってるよ。親のへんてこセンスが遺伝したんだろうね~」

 

 

本人が気に入ってるなら良いが。

 

 

「先生も名前には不満がありますねぇ」

 

 

そこへ殺せんせーがやって来た。

 

 

「?気に入ってるんじゃないの?」

 

 

「未だに…………イリーナ先生と烏間先生はその名前で呼んでくれません。烏間先生なんて、おい、とか、お前とか……熟年夫婦じゃないんですから!」

 

 

その言葉に教室にいた烏間先生とビッチ先生は何処か不自然な動きで目を背ける。

 

 

「なら、いっそコードネームで呼び合うのはどう?南の島で会った殺し屋さん達もコードネームで呼びあってたし、殺し屋っぽくて良いと思う!」

 

 

「良いですねぇ。では、皆さんにクラス全員分の名前を考えてもらって、そこから先生が引いた名前で1日呼び合うことにしましょう!」

 

 

矢田の提案に殺せんせーは乗った。

 

 

「良いね~!すごく面白そう!」

 

 

碧海さんもノリノリだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

 

 

1時間目

 

 

今日の体育は紙の的を付けた烏間先生を撃つ、要は射撃の演習だ。

 

 

創真は森の木のてっぺんでトランシーバーアプリからの声を聞いていた。

 

 

『天災、聞こえるか?堅物の姿を確認できるか?』

 

 

「あぁ、女たらしクソ野郎。ばっちり捉えてる。手はず通り行け」

 

 

『了解』

 

 

※創真のコードネーム 『天災』

 

 

「…………あ。貧乏委員と女たらしクソ野郎の間を抜いた………行く先にいるのは……ゆるふわクワガタ、きのこディレクター。そっちに行った」

 

 

『任せといて~!あ、方向を変えた!』

 

 

「ふむ……………あ、木が多すぎて堅物の姿が見えなくなった。なら、貧乏委員。ここからはお前が指揮を取れ」

 

 

『分かった!天災はどうするんだ?』

 

 

「ヤンデレシスコンとヘタレ弟を使って動く」

 

 

そう答えて創真は木から飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、地上では────────

 

 

「へちま!ホームベース!コロコロ上り!」

 

 

「おう!」

 

 

呼ばれた3人が烏間を攻撃するが、烏間は難なく避ける。

 

 

(…………と、地上に注意を向けさせといて…………)

 

 

烏間は背中に着弾したのを感じた。

 

 

「(やるな、鷹岡もどき。さっきのは陽動と言うわけか) だが、俺に1発だけでは到底奴には当たらないぞ!毒メガネ、永遠の0!射線を見せては当たり前のように避けられるぞ!」

 

 

「くっ…………そっちでお願い!凛として説教!」

 

 

すると、永遠のゼロの傍の茂みから凛として説教と性別、ギャル英語が飛び出しだ。そして、烏間に向けて射撃を開始する。

 

 

烏間は傍の岩影に隠れて様子を伺う。

 

 

(射手を特定させない巧な射撃だ。そして、背後から隙を伺う、このマンガが凄い!と、変態終末期もなかなかのものだ)

 

 

そして、堅物から離れたところで指揮を取っている貧乏委員が彼等にトランシーバーアプリで指示を出す。

 

 

「天災、ヘタレ弟、ヤンデレシスコン!堅物に仕掛けろ!」

 

 

『『『了解!』』』

 

 

すると隠れていた堅物に弾が飛んできた。

 

 

(ここで天災、ヘタレ弟、ヤンデレシスコンを投入してきたか…………)

 

 

「さぁ、行きますよ!」

 

 

天災らの的確な射撃を避けながら烏間は走る。

 

 

(流石だな……………この3人は。やはりとんでもない身体能力に射撃能力だ)

 

 

「貧乏委員。作戦通りポイント地点に追い込んだぞ」

 

 

「了解!(よし……………あとは頼んだぞ!ギャルゲーの主人公!)」

 

 

待ち構えていたスナイパー、ギャルゲーの主人公は狙撃銃の引き金を引いた。

 

 

「!!」

 

 

なんと堅物は木の板で弾丸を防いだ。

 

 

「君の射撃は常に警戒されていると思え!ギャルゲーの主人公!」

 

 

(…………そんなの分かってます。だから、とどめは俺じゃない)

 

 

「!!」

 

 

烏間は背後から………………ジャスティスが現れたときづいた時には既に遅かった。

 

 

パンパンパン!!乾いた銃声が森に静かに響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでどうでしたか?コードネームで呼び合った感想は?」

 

 

「「「どっと傷付いた…………」」」

 

 

「考えてみれば変なの多かったよねー」

 

 

「誰だヘタレ弟と名付けたのは!?」

 

 

「ヤンデレシスコン………ヤンデレってどういう事…………」

 

 

創真はのほほんとしているが、隼は怒り、碧海はヤンデレとつけられたのが少々傷付いたのだ。

 

 

「創真はましな方だよな………天災、ってな」

 

 

「まぁ、そうかもな」

 

 

考えてくれた方々、ありがとうございました!by作者

 

 

「真っ白白助…………オバケじゃないんだから………」

 

 

ホリーが大きなため息をつく。

 

 

「ブラックナイト……………悪くない」

 

 

デュオはコードネームにご満足のよう。

 

 

「黄バット…………俺様の考えた奴適当過ぎるだろ!」

 

 

確かにキバットのは適当なのが否めないネーミングだ。

 

 

「ところでなんで俺だけそのままだったんだ?」

 

 

木村が殺せんせーに訊ねる。

 

 

「今日の訓練内容は知ってましたから。さっきみたくかっこよく決めれたらジャスティスも悪くないんじゃないですか?」

 

 

殺せんせーは言葉を続ける。

 

 

「もし君が先生を殺したら世界は、『まさにジャスティス。世界を救った者の名に相応しい』、と思うでしょう。名前は人を造らない。人が歩いた足跡にその名前が残るのです。ですから、その名前……もう少し大切にしてみては?少なくとも暗殺に決着がつくまでは」

 

 

「…………そーしてやっか」

 

 

また1つ手入れをした殺せんせー。すると、ああ、そうでした、と言いながら殺せんせーはチョークを手に取る。

 

 

「先生のコードネームも紹介しますね」

 

 

黒板に、永遠なる風の運命の皇子と書いた。

 

 

そして、どや顔。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何1人だけすかしてやがる!!」

 

 

「どや顔すんな!!」

 

 

当然ブチ切れた。皆は一斉に射撃を開始する。

 

 

「え、ちょ良いじゃないですか!?」

 

 

「一ミリも良くねぇ!!」

 

 

「死ねタコ!!」

 

 

皆から暴言が飛び交う。そんな中、キバットが大きな声を出す。

 

 

「殺せんせー。あんたのコードネームは既に俺様が考えてある。その名も、馬鹿なるエロのチキンのタコ!!最高だろ!?」

 

 

「なんですかそれ!?酷すぎでしょ!?」

 

 

「「「それに決定!!」」」

 

 

「ええ!?そんなぁ…………」

 

 

こうして、1日殺せんせーは上記のコードネームで呼ばれたとさ。




THE NEXT story 3/18 PM 22:00


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第109話 イケメンの時間

では、どうぞ!


創真side

 

 

最近良い喫茶店喫茶店を見つけたのだ。そこの店はロールケーキと珈琲がなかなか美味なのだ。ただ、そこのお店で働いてるある人物がいる。彼は中学生だ。

 

 

その人物の名は──────────

 

 

「やぁ、磯貝君。相変わらず凄い働きぶりだね」

 

 

「お、創真か。注文はいつもので良いか?」

 

 

「うん。頼むわ」

 

 

そう答えて席に座る。

 

 

「おいおい、中学生がバイトしてて良いのか?」

 

 

ホリーの言うことはごもっともだ。中学生がバイトして良いわけがないが。

 

 

「磯貝君の家は貧しいからね………だから皆もバイトの事は黙ってるんだ」

 

 

「へ~。まぁ、僕でも他の人に言わないかな~?彼はとっても親切だしいい人だもの」

 

 

その通りである。カルマや前原みたいな危なっかしさはないし、友達には親切に。先生には敬意を持って接する。

 

 

友達としては最高と言える人物である。

 

 

「磯貝君ってE組でも結構モテるよね~。創真や前原君とかも……………あ、でも前原君は何股もしてるしうざいから除外にしとこっと」

 

 

「おい、それを本人がいる前で言うか?」

 

 

後ろからの声に振り向くと、すぐ後ろの席には前原、片岡さん、渚君、茅野さん、岡島がいた。

 

 

「あれ~?前原君いたんだ?」

 

 

「最初からいるの気付いてただろうが…………」

 

 

ホリーがわるいわるい、と言って言葉を続ける。

 

 

「そう言えば、磯貝君がE組に行く事になった理由って何?勉強出来るよね?」

 

 

「前にバイトがばれちゃったんだよね」

 

 

「あいつの欠点なんて貧乏な事くらいだけどよ、それすら、イケメンにしちゃうんだよね」

 

 

「………………と言うと?」

 

 

デュオが尋ねると、前原がその疑問に答えていく。

 

 

「私服は激安ショップで買った物なんだけどよ……………それすらも着こなすんだぜ」

 

 

───────イケメンだ。

 

 

「前に夏祭りで釣った金魚料理、食ってみたけどめっちゃ美味しかったぜ」

 

 

────────イケメンや。

 

 

「それと、あいつがトイレ使ったあと、紙が三角にたたんであった」

 

 

────────イケメンですな。

 

 

「あ、俺も紙三角にたたんであるぞ!」

 

 

岡島のには────────

 

 

「うぇ………言うなよ………気持ち悪りぃ」

 

 

────────ホリーもこの反応。

 

 

「なんだその酷い反応は!?」

 

 

もはやお約束だね。

 

 

「ほら、見ろよ。マダムにちやほやされてる」

 

 

うん、イケメンだ。

 

 

「あ………僕もよく近所のおばちゃんにおもちゃにされる」

 

 

「渚はしゃんとしろ」

 

 

「はい………………」

 

 

デュオの言葉には重みがあるなぁ。

 

 

「未だに本校舎の女子からラブレターを貰ってるらしい」

 

 

モテモテや。

 

 

「あ………それなら私も貰うな………」

 

 

片岡さんもイケメンだからな………良い恋とは言えるかは微妙だが。

 

 

「イケメンにしか似合わないこともあるんですよ。磯貝君や先生みたいに」

 

 

イケメ………………ん?

 

 

「いや、先生はイケメンに入らないか」

 

 

「にゅや!?それは無いでしょう創真君!ほら、見てください、このスタイリッシュな顔」

 

 

「丸書いてチョン、の顔だろうが。てかさ、先生はバイトの事をどうしてるの?」

 

 

「このハニートーストが絶品でね。これに免じて見ぬふりをしてます」

 

 

じゃあ、ハニートーストが販売中止になったら不味いんじゃね?………いや、中止になっても言わないか。

 

 

「でもさ~皆は磯貝君がイケメンでもさほどムカつかないでしょ?」

 

 

「まぁ………そうだな」

 

 

ホリーの質問に岡島が賛同の声を漏らす。

 

 

「それは何故?」

 

 

殺せんせーが訊ねると、前原は当たり前のように云う。

 

 

「だって、あいつ良い奴だし。それ以外に理由いる?」

 

 

前原が当然のように答え、他の面々も首肯く。その答えに殺せんせーは嬉しそな表情を浮かべ、ハニートーストを頬張った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

 

一方その頃、キバットは喫茶店の近くの木にぶら下がって目を瞑って仮眠を取っていた。

 

 

が、不意に誰かの喋り声が聞こえて目を開けた。

 

 

「な!?あいつらは…………!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

 

僕の耳に店のドアが開けられる音が入ってきた。

 

 

「……………おっと」

 

 

そこに居たのは、五英傑(創真からして雑魚)の面々が。

 

 

「情報通りだ。これで2度目の重大校則違反。見損なったよ、磯貝君」

 

 

浅野君か……………面倒くさい奴に見つかったものだ。

 

 

「店で話すのは迷惑だから、外で話そうか………」

 

 

そう言うあいつの目は何かを企んでいるように感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「浅野、この事は黙っといてくれないか?今月中には必要なお金は稼げるから」

 

 

「そうだな………僕もチャンスをあげようと思っていた」

 

 

僕も含め皆は磯貝と浅野のやり取りを見守る。

 

 

「では、こうしよう。違反を帳消しにするほどの闘志を示せたら見なかった事にする。その闘志を示すには、体育祭の棒倒し…………なんてどうかな?」

 

 

「…………明らかに不利ですね。人数的にまず劣ってる」

 

 

僕の発言に浅野はこう返した。

 

 

「だから、君達が挑戦状を叩きつけた事にすれば良い。それも勇気ある行動として賞賛されるだろうね」

 

 

「なるほど。面白そうだ。良いだろう。その挑戦受けてやる」

 

 

「お、おい創真!」

 

 

磯貝が食って掛かるが、創真は笑って返す。

 

 

「大丈夫だって。何故ならこのE組には磯貝君や僕、隼ら優秀な奴らがいる。僕を信じな」

 

 

「決まりだな。それでは、体育祭まで精精作戦を考えておくんだな」

 

 

浅野達が身を翻して帰ろうとすると、

 

 

「フフフ…………良いのかな~浅野君?」

 

 

そう言ったのはホリーだった。

 

 

「何がだい?」

 

 

「いやだから、負けると決まってるのにわざわざ戦おうとするから」

 

 

「…………君は僕らが負けるとでも言いたいのかい?」

 

 

浅野の言葉に、ホリーはニヤリと笑みを浮かべる。

 

 

「そうだね。だって君、何かスゲー雑魚そうなキャラだし」

 

 

ブオン!

 

 

風を斬る音がしたと思いきや、ホリーの目の前には浅野の拳があった。

 

 

「おー怒った怒った♪にしても、君のパンチは遅いねぇ。僕からしたら、亀の歩行速度のようだ………で、いつまで拳を僕の目の前に置いておく気だい?」

 

 

浅野はホリーを睨んでいたが、やがて拳を引っ込め、帰っていった。五英傑達も慌ててついていく。

 

 

「ありゃりゃ、完全に怒らせちゃったね」

 

 

「ホリー、派手にやってくれたもんだね。ま、勝つから良いけど」

 

 

「創真、浅野は何をするか分からない。やめといた方が………」

 

 

「仲間が窮地。なら、助けねばならぬ。当然だろ?」

 

 

「そうだぜ委員長!」

 

 

「俺らの力を思い知らせてやるか!」

 

 

これが、E組対A組の開戦1週間前の出来事である。




THE NEXT story 3/19 PM 22:00


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第110話 情報戦の時間

皆、睡眠はしっかりしよう!




では、どうぞ!


翌日

 

 

創真は棒倒しの件を他の皆に説明していた。

 

 

「……………と言うわけで、磯貝君のバイトがバレないようにするために、A組と棒倒しすることになった」

 

 

「よっしゃあ!お前ら、A組をあっと言わせてやろうぜ!」

 

 

キバットの掛声に皆は───────

 

 

「そうだな!委員長の為にやってやるぜ!」

 

 

「俺らの力を見せつけてやる!」

 

 

───────やる気満々だ。

 

 

しかし、盛り上がる彼等の中に、1人浮かない表情を浮かべる磯貝。

 

 

「いや、皆やる必要ないよ。浅野の事だから何してくるか分からないし…………退学上等!暗殺なら外からでも狙えるしな」

 

 

と、爽やかな笑顔で言った。

 

 

「「「………………い、い…………………」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「イケてねーわ!!」」」

 

 

そして、ブーイングの嵐が始まった。

 

 

「なに自分に酔ってんだアホ毛貧乏!!」

 

 

「アホ毛貧乏!?」

 

 

「アホ毛引っこ抜くぞ、磯貝!!」

 

 

「難しく考えるなよ、委員長。A組のがり勉共を倒せば良いんだろ?そんなの楽勝じゃねーか!」

 

 

前原に続いて、寺坂も

 

 

「日頃の怨み、晴らすチャンスじゃねぇか」

 

 

「皆……………………」

 

 

創真が磯貝の前に来て告げた。

 

 

「と言うわけで、磯貝君。皆は君のためにやる気満々だ。で、磯貝君はどうする?」

 

 

創真に言われるよりも前に、磯貝の心は決まっていた。

 

 

「よっし!やるか!」

 

 

「「「おー!!」」」

 

 

わいわい盛り上がる彼等を殺せんせー、氷室、烏間が見詰めていた。

 

 

「皆さんやるき十分ですねぇ。どれ、私もイケメン同士、人肌脱ぎますかね」

 

 

殺せんせーも彼等の輪に入っていった。一方残された2人は少し複雑そうな様子だった。

 

 

「棒倒し………………やはり、数の差があるのは痛いですね」

 

 

「ああ。あれは戦争だ。訓練を受けているとは言え、勝てるかどうか微妙だな」

 

 

やはり不安は残るのは当然だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに翌日

 

 

かくして、E組の作戦会議が始まった。

 

 

「じゃあ、作戦を考えよう。何か良い案がある人はいるか?」

 

 

真っ先に手、いや手の代わりに翼をちょこっとあげたのは、まさかのキバット。

 

 

「戦いってのはな、既に始まってる物なんだぜ。そう、情報戦!日本史で有名な、織田信長が今川義元を破った桶狭間の戦いだって、信長が情報を重視していたからこそ、今川の何倍もある兵力を覆して勝ったんだぜ」

 

 

※何か最近諸説あったりするけど、そこんとこはよろしく by作者

 

 

「と言うわけで、創真!お前のマシンを使って情報戦だ!」

 

 

「もう氷室さんがイトナと一緒にやってるよ。その位僕も考えます~」

 

 

「チッ……………先越されてたか………」

 

 

心底残念そうな表情を浮かべるキバットであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

30分後

 

 

「いや~意外と長かったですね。バッテリーぎりぎりでしたよ」

 

 

創真がマシンの操作を頼んでいた氷室が帰ってきて、感想を述べた。

 

 

「じゃ、A組は何を考えてるのか聞いていきましょうかね~。イトナのマシンをスピーカーに繋いで」

 

 

「………そっちの方が、良く録れてるんじゃないのか?創真のは高性能だから」

 

 

イトナが指を指した先には、バッタ型のロボット、通称マシンホッパー。詳しくは活動報告欄を見てほしいが、簡単に説明すると、ビデオカメラや通信機能を持つ他、こちらも録音機能を持つ。ちなみに録音機能は考えてもらった原案に作者が付け足した。似た機能を持つマシンドラゴンフライと比べて何が良いかと言うと、小型ですばしっこいので、色んな所に潜入できるとか、逃走しやすいとか。

 

 

「…………創真?」

 

 

「あ、すまんすまん。いや、対して変わらないし、バッテリーがもう無さそうだし」

 

 

「そうか。なら……………」

 

 

イトナは録音機能搭載のイトナ2号をスピーカーに繋げ、再生する。

 

 

『さて、E組とやることになった棒倒しだけど、僕らの目的は棒を倒すことじゃない』

 

 

棒を倒すのが目的じゃない。それに対して皆は疑問符を浮かべる。そんな中、スピーカーから浅野の声は続く。

 

 

『この助っ人がいれば棒を倒すのなんていつでも出来る。それでね、僕はこの棒倒しを以てE組に反省してもらいたいんだ』

 

 

「まて、ストップ」

 

 

隼に言われて、イトナは再生を止める。

 

 

「いま、助っ人って言ってたよな!?何だよ助っ人って!?」

 

 

「ムッキムッキの奴等でも呼んだんだろうねぇ。まぁ、大丈夫でしょ。続けて」

 

 

「お前は何処からその自信が出てくるんだよ……」

 

 

隼は余裕そうな創真にそうつっこんだ。とりあえず、再び皆は音声に耳を貸す。

 

 

『クラスのほとんどが素行不良。誰かは言わないが、中には今もそれをやっている奴もいる。そういう奴等に態度を改めて貰うためにも、E組を徹底的に潰す』

 

 

それに、と浅野は続ける。

 

 

『前期期末で痛い思いをした人達もいる。少しはがり仕返ししたいと思っても、僕は責めない』

 

 

音声だけでも、A組の奴等にスイッチが入ったような気がした。

 

 

『さて、それじゃあ個々の役割を指示していくよ。まず………………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫くして音声の再生は終わった。

 

 

「ふーん………核心には至らなかったけど、こんだけ情報があれば充分だよ。ほい、磯貝君」

 

 

ホリーは大量の紙束を渡した。

 

 

「お、重い…………これは何だ?」

 

 

「浅野くんが言ってた指示を聞きながら考えた戦略のリスト。全1524パターン」

 

 

「「「あんだけの情報でそんなにパターンあるのかよ!?しかも書くの速すぎだろ!!」」」

 

 

「確かに読むのはダルい。だが、この中から90%の確率でこの通りでる」

 

 

ホリーが自信満々に呟く。

 

 

「アハハ…………じゃ、僕は磯貝君と作戦考えるから、他の皆は…………」

 

 

「特訓です」

 

 

皆が声のした方を振り向くと、気合いの入りすぎか、竹刀を持っている氷室さんがいた。

 

 

「恐らく常識はずれな作戦を創真様や磯貝君は考えるでしょうから、その作戦が実行できるように…………特訓です」

 

 

(((うわぁ…………鬼の特訓だ………)))

 

 

男子諸君は大きなため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして作戦立案に2日、そして残りは氷室さんプロデュースの鬼の特訓。

 

 

汗をかいて、ヘトヘトになって、作戦の見直しなどなど棒倒しの準備を着々と進め……………ついに、本番を迎えた。

 

 

さぁ、闘いの始まりだ




THE NEXT story 3/20 PM 22:00


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第111話 体育祭の時間

今回、一気に終わらせます!


いつもより長いですが、どうぞ!


「きゃーカッコいい!木村君、もっとカメラ目線で!そう、ジャスティス!」

 

 

100m走の最中、親バカ殺せんせーはカメラを連写しながらギャーギャー言っていた。

 

 

「にしても、観客席は競技場から近くて良いですね。保護者達は全員本部の近くからしか見れないと思うと、ちょっと贅沢です」

 

 

「まぁ、そうですね。所で、氷室さんの親戚の子とか来てるんですか?」

 

 

「ええ。友達と一緒に」

 

 

「へー」

 

 

「にしても、皆さん大活躍ですねぇ。100m走だって、陸上部相手に奮闘してます。日頃の訓練の成果が生かされてます」

 

 

少し紹介すると、原さんがパンを飲み込んだり、茅野が身体の特性(?)を生かして網抜けで1位だったり、前原と岡野が二人三脚で見事な走りを披露したりと。

 

 

「さて…………僕の出番か」

 

 

創真が出るのは借り物競争。創真はストレッチをして準備する。

 

 

ピストルの音がなって、選手達は紙へ殺到する。

 

 

「僕のお題は……………『腕相撲が強そうな人』……………ナニコレ?」

 

 

結構変なお題に突っ込むのはさておき、腕相撲が強そうな人。創真はある人に駆け寄る。無論、氷室だ。

 

 

「来ると思ってましたよ創真様。それでお題は……………腕相撲が強そうな人?変なお題ですね」

 

 

「全く、その通りですよ。まぁ、ちゃっちゃと終わらせましょう」

 

 

「了解です」

 

 

氷室を連れてゴールへ行く。係りの人にお題を見せると、本部から本校舎の先生が机を持って出てきた。

 

 

「お題を見て察しが付くと思うが、俺と腕相撲で勝てたらゴールだ。勝てなかったらやり直しだ」

 

 

(よし。勝ったな)

 

 

内心創真は勝利を確信するなか、2人は構える。

 

 

「では………レディー………ゴー!」

 

 

ガン!!

 

 

なんの音か?察しが付くと思うが、氷室が相手の手を机に叩きつけた音である。

 

 

「──────────!!」

 

 

先生は声にならない悲鳴をあげる。相当痛かったんだろう。

 

 

「ちょっと本気を出しすぎましたね………」

 

 

…………何はともあれ、創真は1位でゴールした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、キバットは

 

 

「いや~暇だぜ。どこかに美しい美女はいないものかね~」

 

 

キバットがあまり面白くなさそうに競技を見つめる。

 

 

『続いては、A組対D組の綱引き!レディー………ゴーッ………!?』

 

 

始まった瞬間、D組の生徒が、羽毛のように空へ舞い上がった。

 

 

「な!?」

 

 

流石にキバットも驚きの声を漏らしてしまった。

 

 

『つ………強すぎるー!!A組、瞬殺だァァ!』

 

 

瞬殺の訳は明確。後ろの4人…………浅野が呼び寄せたムッキムッキの外国人助っ人がヤバイのだ。

 

 

「こりゃ手強そうだな。さて………創真はどう感じたのやら………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、創真!大丈夫なのかよ!?あそこまでヤバイ外国人助っ人なんて聞いてないぞ!!」

 

 

「そだねー」

 

 

「お前余裕そうだな…………そんなに良い作戦ってことか?」

 

 

「そだねー」

 

 

「………聞いてるか?」

 

 

「そだねー」

 

 

隼の問い掛けに作戦書を読みながら適当に答える創真。

 

 

「さっきから、そだねー、ばっか言ってんじゃねぇ!本当の所どうなんだよ?」

 

 

創真は作戦書を見るのを止めて、真剣な目で隼の方を向いた。

 

 

「ぶっちゃけ、ここまでヤバイ助っ人とは思ってなかった。それでも、やることは変わらない。ね、磯貝君」

 

 

創真が磯貝の方を向くと、その顔には不安が入り交じっていた。

 

 

「…………どうした?」

 

 

「やっぱり浅野は凄い奴だよ………………到底及ばないんじゃ…………」

 

 

弱気な磯貝に何か言葉を掛けようと模索していると、それより先に殺せんせーが喋りだした。

 

 

「確かにその通りです。彼はまさに傑物。磯貝君がいくら万能でも、社会に出れば君より上はいます」

 

 

「……………もし、俺のせいで皆が………」

 

 

「ですが、君が浅野くんより上回っている所もあるじゃないですか!」

 

 

「…………え?」

 

 

「ほら、創真君。答えて下さい!」

 

 

え、ここで僕に振るの……………、と言いたげな表情を創真は浮かべる。しかし、それも一瞬で、直ぐに創真は答えた。

 

 

「仲間を率いて戦う力…………かな?磯貝君、もし君がピンチに陥ったならば、皆がそれを共有して戦ってくれる。と、言うわけで何も心配しなくていいんですよ」

 

 

「創真君の言う通りです…………兎に角、最後まで諦めず、いつも通り殺る気をもっていけば、必ず勝てますよ」

 

 

「……………はい!」

 

 

返事をした磯貝の顔はいつも通りイケメンスマイルで、殺る気満々だった。

 

 

「よっし…………皆殺るぞ!」

 

 

「「「おー!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

『さぁ、続いては棒倒し!なんとE組がA組に挑戦状を叩きつけてきた!負けるな、A組!!』

 

 

うるせぇ放送だ。とりあえず、陣形を組む。

 

 

『…………なんだE組!?攻める奴が誰もいないぞ!全員守りについている!こんな初期陣形は見たことがない!!』

 

 

本当にいちいちうるさいし、暑苦しい放送だ。間もなく、開始のピストルの音が鳴り響いた。

 

 

すると、外国人助っ人が含まれる攻撃部隊が棒に向かって突撃を開始した。

 

 

「くそが!」

 

 

「無抵抗でやられっかよ!!」

 

 

勇敢にも、村松と吉田が飛び出すが…………タックルで吹き飛ばされた。客席まで飛ぶ大記録だ。

 

 

『カメみたいに守ってないで攻めたらどうだ?…………どうせ通じないか』

 

 

『フフフ、お馬鹿め。怯えたからカメみたいにやってるとでも思ったか?いいから、攻めてこいよ。そしたら、驚きの余り泣くよ』

 

 

僕の英語に、彼は獰猛な笑みを浮かべる。

 

 

『ほう…………なら、見せてみろ!!』

 

 

棒に向かって突っ込んできた奴等を見た磯貝が指示を出す。

 

 

「今だ!全員、『触手』だ!!」

 

 

棒の防御が全員ジャンプし、攻撃をかわしながら押さえ込んだ。そして、棒を半分倒してガッチリ固める。

 

 

『どうだい?涙を拭くテイッシュは欲しいかい?』

 

 

『黙れ!!からかうな!!』

 

 

『からかうの楽しいわ~』

 

 

しかし、ただからかって楽しんでるだけの僕ではない。横目で敵の救援部隊が来てるのを確認した。

 

 

「どうする磯貝君?」

 

 

「真ん中に隙がある………敵戦力が分断されてきた今がチャンス。よし、攻撃部隊出るぞ!作戦は『粘液』だ!」

 

 

磯貝の指示で、僕、磯貝、隼、カルマ、前原、岡島、杉野、木村が真ん中を突破を図る─────────!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

 

 

 

「かかったな…………!!」

 

 

浅野の呟き通り、彼等が真ん中を抜けた瞬間、方向転換してきた。

 

 

「やっぱフェイクだよね~。そんで真ん中にはヤバそうな助っ人達。サンドイッチにでもしようという事か」

 

 

創真が辺りを見回して誰ともなしに呟く。

 

 

「この場合の最適解は…………アレか?」

 

 

「奇遇だね磯貝君。僕もアレを提案しようと思ってたよ。皆、良いね?」

 

 

創真の言葉に皆は頷く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おー囲まれた囲まれた」

 

 

「リンチタイムだな」

 

 

かの有名なD組のモブ二人組みがスナック菓子を摘まみながら呟く。

 

 

そこへ

 

 

「お邪魔するぞ~!!」

 

 

何故か皆さん、観客席に突っ込んできた。

 

 

「え、ちょ、なんで全員こっちに来んの!?」

 

 

2人はお菓子の袋を抱えながら慌てて避難する。

 

 

『ほら、来いよ!この学校全ての場所が競技場だ!!』

 

 

創真の挑発に、助っ人も含めてA組生徒がE組生徒に襲いかかるが、椅子を器用に使ったりするに加えて、すばしっこくて捕まえられない。

 

 

「ほらほら、鬼さんこっちだぞ」

 

 

隼も椅子をピョンピョン跳びながら挑発する。

 

 

(棒倒しの中で1番警戒すべきは、先端に取りつかれること……あいつらは運動神経が優れてる奴等ばかり………なら)

 

 

浅野は少し思考し、口を開く。

 

 

「橋爪、田中、横川!混線の中から飛び出す奴を警戒しろ!」

 

 

確かに正しい選択だ。だがE組の作戦上、それは余り意味を成さない。

 

 

そう分析した創真はニヤリと笑う。

 

 

「ここまでは予定通り。それでは、次の手だ」

 

 

突然、A組の棒が大きく揺れた。誰かに取り付かれたのだ。

 

 

「へへ、あんなタックルで終わるとでも思ったか?」

 

 

「客席に飛ぶ演技だけ苦労したぜ」

 

 

先程吹き飛ばされた吉田と村松だ。

 

 

(そうか!負傷退場のふりをして………!!)

 

 

ようやく、浅野も頭が追い付いた。

 

 

「よし、作戦『音速』だ!創真と隼も頼むぞ!」

 

 

「「了解!!」」

 

 

そして、創真と隼以外の皆は追っ手を振り切り………

 

 

『ああ!懐に入られた!!」

 

 

放送から悲痛の声が流れた。

 

 

「どーよ!人数差があろうと、これなら……」

 

 

しかし浅野は不敵な笑みを浮かべ、身に付けていたヘッドギアを捨てたかと思うと────────

 

 

「うぉ!?」

 

 

吉田の腕を掴み、放り投げた。続けて岡島も蹴り飛ばす。

 

 

「君達ごときが僕と同じステージに立つ………蹴り落とされる覚悟は当然できてるんだろうね?」

 

 

浅野は棒を使って、E組に蹴りを加えて落とそうとする。磯貝も懸命に避けてたが、遂に落とされてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────作戦通り。

 

 

「なっ………!?」

 

 

再び棒が大きく揺れた。浅野は目を見張った。E組にさらに増援が来たからだ。蛇足かも知れないが、磯貝をジャンプ台にして、一気に飛んできたのだ。

 

 

「おい、E組の守りは二人だけだぞ!?」

 

 

「どうやって支えてんだ!?」

 

 

いまさら気付いたようだ。

 

 

竹林が皆の疑問に答えた。テコの原理さ…………と。皆は納得したような、しないような表情を浮かべるが、そこはどうでも良い。

 

 

浅野としては、相手にする人数が増えたため、指示を出す余裕がない。指示がないため、A組の面々は棒からE組の奴等を剥がすのが最優先と考え、E組の連中を引っ張る。

 

 

「「今だ二人とも!!」」

 

 

その声の主達──────磯貝と隼が一緒に叫ぶ。

 

 

その言葉に、奥で待ち構えていたイトナと創真が走りだしたす。2人は磯貝と隼の手前でジャンプし、それぞれの手に乗り、そして、磯貝と隼はその手を思いっきり上へ投げるようにして放り投げた。

 

 

創真、その後ろのイトナがA組の棒に迫り来る!!

 

 

「僕らの勝ちだ、浅野君!」

 

 

創真は棒を強く蹴った。棒は大きく傾き、創真は反動でさらに上へ飛び上がる。その下をイトナが通り、ダメ押しとばかりに棒を摑んで、自分の体重と勢いを乗せて一気に畳み掛ける────────────!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズドン!!

 

 

その音は、E組にとっては勝利を示すもので、A組にとっては敗北を示すものであった。

 

 

『え、A組が…………………』

 

 

放送も狼狽えている中、放送席へといつのまにか来た創真がマイクを取って、宣言する。

 

 

『棒倒し対決は……………E組の勝ちだ!!』

 

 

「「「よっしゃあー!!」」」




THE NEXT story 3/21or22 PM 22:00


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第112話 敗北の時間

最後にちょっとしたアンケート的なのをやります!


では、最後まで楽しんでください!


「創真君と転校生のジャンプは凄かったね~。君もそう思うだろ、浅野君?」

 

 

「………………………」

 

 

浅野と留学生達は理事長室に呼び出された。

 

 

「E組の動きは、君の目的を知っている動きだったね。既に情報戦で負けていた…………単刀直入に、君達の完敗だ。悪いことに、E組への評価も変わりつつある。それが私の目指す教育方針に反している」

 

 

「……………………」

 

 

「リーダー失格だな、君は」

 

 

浅野は何も返せずに黙っていた。理事長の言葉を通訳を通して聞いていた留学生の1人……………ケヴィンが口を開いた。

 

 

「その言葉はないだろ、理事長サンよ。今回浅野は負けたけど、こいつは出来る奴さ。直ぐに結果を出す。『負けから得られる物もある』…………そう言ってやるべきじゃないのか?理事長として………親父として」

 

 

理事長は少し黙っていたが、突然スッと立ち上がった。

 

 

「素晴らしい意見だ、ケヴィン君。では、1つ勝負だ。どんな手を使っても良いから、私の膝を地につかせてみてくれ。負けたら、私も何かを学べるかも知れない」

 

 

「俺にタイマンか?やれやれ………」

 

 

ケヴィンがジャージを脱いで準備しようとしていると、理事長の声が飛んできた。

 

 

「違う違う。4人掛りで、だ。遠慮はいらないよ?」

 

 

理事長は不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悲惨な光景だった。

 

 

あっという間に、理事長室は血で飾られた………………留学生達の血で。

 

 

そして、理事長は無傷だった。

 

 

「私は空手の黒帯の師範を3日で倒した。1日目はこてんぱんにされた。そして2日目…………ただ見ていた。勿論ただ見ていただけじゃない。師範の技を見て、倒す戦略を練っていた。そして、3日目。1発も技を喰らわずに倒した」

 

 

理事長は強張った表情をしている浅野に近づく。

 

 

「敗北から学ぶとはこう言うことだよ。大概の者は口先だけだが。浅野君…………何故君は、死ぬ寸前まで悔しがってないんだ?」

 

 

(この…………化け物が………!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真は氷室の親戚の子供と話していた。

 

 

「ねぇ、創真さん!さっきのライダーキック凄かったね!」

 

 

「ら、ライダーキック?」

 

 

「そうだよ。創真さん将来、仮面ライダーの中の……」

 

 

創真は慌てて彼の口を塞ぐ。

 

 

「中とかじゃなくて………仮面ライダーはいるんだよ」

 

 

「あ、それって平成ジェネレーションズFOREVERで言ってたね!作者が感動したって言ってた!」

 

 

「あの作者、何メタイ事を吹き込んでやがる……………じゃ、僕は行くよ。また後でね」

 

 

創真は彼の元を離れ、皆のいる所に近づく。

 

 

「創真、今まで何してたんだ?」

 

 

「ちびっ子の夢を守ってきた」

 

 

「は?」

 

 

聞いた隼が訝しげな表情を浮かべる。が、すぐに心配そうな表情を浮かべる。

 

 

「それより大丈夫か?」

 

 

「へ?何が?」

 

 

「お前、あんだけのジャンプをして怪我とかなかったのか?」

 

 

「も~創真君があれくらいで怪我なんてしないよ」

 

 

この声は

 

 

「あ………碧海さん」

 

 

「二人共お疲れ様~。隼もよく頑張ったね~。よしよし」

 

 

「頭撫でるな!!」

 

 

隼は碧海の手を払う。

 

 

「うぇ…………嫌な物見ちまった………」

 

 

キバットが珍しく顔が青い。

 

 

「どうかした?」

 

 

「だから、グロテスクな物見ちまったんだよ…………おい、理事長を本気にさせるなよ?」

 

 

「「「?」」」

 

 

創真達はその言葉の意味がよく分からなかった。

 

 

「あ、あれは浅野君?」

 

 

碧海が指を指した方を見ると、確かに浅野がいた。皆にも声を掛けて、浅野の元へ。

 

 

キバットも遠くから見守る。

 

 

「おい浅野!約束だよな?磯貝のバイトの件は黙っとくって」

 

 

前原の声に、浅野は特に悔しそうな表情を浮かべずに答える。

 

 

「…………僕は嘘を言わない。君達と違って姑息な手段を使わないからだ」

 

 

「…………散々姑息な手段を使ってたような気がしたのは気のせいか?」

 

 

「……………………」

 

 

創真の追及に浅野は無言で目を逸らす。

 

 

「でも、お前らとの対決楽しかったよ。また、こういう勝負しような」

 

 

磯貝が握手を求める。が、

 

 

「消えてくれないかな。次は全員破滅に追い込む。覚悟しておけ」

 

 

浅野は去ろうとする。

 

 

「あぁ、見つけた見つけた。おーい、浅野くーん!!」

 

 

やって来たのはホリーだった。

 

 

「考えておいた?言い訳」

 

 

「…………………………」

 

 

ぶちギレ寸前なのか、拳が握られて、震えている。

 

 

「ま、いっか。それとこれあげるよ」

 

 

ホリーが渡したのは写真だった。浅野は渡された写真を見た瞬間、くしゃくしゃにしてホリーに返した。

 

 

「気に入ったかい?良い面だったよ。君のアホ面」

 

 

「………………………!!」

 

 

浅野は拳を強く握りしめたが、何も言わずに立ち去って行った。

 

 

「おい、ホリー。なに見せたんだ?」

 

 

ホリーが創真にその写真を見せると………創真も爆笑した。

 

 

なになに、見せて見せて、と皆も見ると──────

 

 

その写真は棒が倒された直後の、浅野の放心した顔だった。

 

 

「こりゃ傑作だ。しばらくからかうネタに出来るわ!」

 

 

隼が笑いながら言う。そして、突然真顔になった。

 

 

「改めて考えたらさ………俺らって凄いよな」

 

 

「こんだけの劣性を覆したんだから当然だろ!」

 

 

創真はそんなワイワイ盛り上がっている彼等を見詰めていた。

 

 

「さて…………そろそろ帰るか……」

 

 

「え?創真君、打ち上げやろーよ!」

 

 

創真は倉橋に声をかけられた。

 

 

「あー…………よし、やろう!」

 

 

「よっしゃあ!宴だぜ!」

 

 

キバットも盛り上がる。

 

 

さて………………………読者の皆さん。打ち上げで何やる?




THE NEXT story 3/22 PM 22:00


と言うわけで、次のお話の募集としては…………


・何処でやるか?


例えば、カラオケ店………とか。まぁ、カラオケだとお話の趣向が見えるかな?


メッセージでも活動報告欄のどちらでも構いません!


複数来た場合は、こちらで最終的な決定をします!


時間は明日の16:00までです!


沢山の案をお待ちしております!


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第113話 打ち上げの時間

メッセージと感想で、三件きました。


結局何にしたかと言いますと……………


創真side

 

 

さて…………打ち上げか。まぁ、大体次に僕に掛かる言葉は想像できる。

 

 

「ねぇ、創真君?また使わせてもらっても良い?」

 

 

ほら来た。

 

 

「あーはいはい。じゃ、また5時位に来いよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

 

 

「でさ、今日は何する?」

 

 

「そうだな…………鍋とかどう?」

 

 

「おー鍋か!」

 

 

「皆で囲めて食えて楽しいし、良いんじゃね?」

 

 

「じゃ、今から5時まで2時間あるから、それまでに個々で食材を買ってきて、それを鍋の具材にするってのはどうだ?」

 

 

「おー賛成~!」

 

 

「よし、じゃあ5時に創真の家の前に集合な!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PM 17:00

 

 

皆は創真の家に集まった。で、皆揃って創真の家のインターホンを押すと、直ぐに創真は出てきた。

 

 

「鍋ね…………良い案だけど、急に言うから、準備大変だったよ…………ま、とりあえず入って」

 

 

「「「お邪魔しまーす」」」

 

 

中に入ると、既に鍋が2つ用意されていた。

 

 

「じゃ、男子と女子に別れて食うので良い?」

 

 

創真の案に異論を唱えるものはいなかった。

 

 

「じゃ、どっちのタレにするか選んで」

 

 

創真が急ピッチで買ってきたタレは、『甘口醤油』と『麻婆味』の2つだ。

 

 

「じゃ……………女子は希望とかある?」

 

 

「じゃあ…………甘口醤油で」

 

 

と言うわけで、男子は麻婆。女子は甘口醤油に決定。

 

 

「じゃ、僕は皆が買っといた材料をちょうど良い大きさにカットするか……………皆はゆっくりしてな。碧海さん、悪いけどちょっと手伝ってくれる?」

 

 

「オッケ~」

 

 

創真と碧海はキッチンに向い、残りの一同は雑談を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10分後

 

 

「よーし、できた」

 

 

創真はトレイを持っていき、男子の鍋に投入。

 

 

「おお!旨そうだな!早く食おうぜ!」

 

 

「5分位待てよ」

 

 

5分後──────

 

 

「そろそろか?じゃ、一斉に食べようぜ!」

 

 

「いーね!じゃ……………」

 

 

「「「いただきます!!」」」

 

 

皆同時に、口の中に入れた。しかし、カルマと創真はしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倒れた。

 

 

「¢£*℃$%&℃∞§*」

 

 

「隼、バグった?」

 

 

創真は真顔で尋ねた。

 

 

「なんだこの…………この世の終わりみたいな味は………?」

 

 

「…………いや、待てよ?カルマ、お前なんか仕込んだろ?お前が1番怪しい!」

 

 

隼がビシッと、カルマを指差す。

 

 

「酷いな~。別にハバネロとかパイナップルとか売れ残りのスイカとか入れただけだよ~」

 

 

「いや、ふざけんな!……………待てよ。おい、創真!お前知ってたのに入れたな!?」

 

 

「…………………………フフッ。身の保身を考えただけだ。けして、君達の反応が見たかったとかそう言うのじゃ………」

 

 

「絶対、見たかったんだろ!?はぁ………所で、これ誰か食べるか?」

 

 

「「「…………………………」」」

 

 

当然、誰も名乗りでない。

 

 

「よし、廃棄だ廃棄」

 

 

隼が代表して、洗面台に棄てる。そして、異臭が漂う。

 

 

「後で掃除せんとな…………」

 

 

「何かため息をついてるけど、お前も悪いんだからな!?」

 

 

この世の終わりを再現した鍋により、男子は終止無言だった。

 

 

「おい、創真」

 

 

「ん?」

 

 

「なんか余り物でも良いから何かないか?」

 

 

「10分位で出来るインスタントの麻婆茄子が引き出しにある」

 

 

「よし……………俺が一手間加えて、あの悪夢を忘れさせよう」

 

 

「おお!料理の腕前見せてもらうぜ、隼!」

 

 

「任せとけ!」

 

 

隼はキッチンに向い、引き出しから麻婆茄子のインスタント袋を取り出し、大量のお湯を沸かして準備する。

 

 

「そうだな…………お、七味とうがらしとかあんじゃん。よし、出来たらこれとあと…………ペッパーを少し加えると大人の味なんだよな…………」

 

 

隼は調味料を色々見て、取り出していく。

 

 

「皆喜ぶだろうな~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20分後

 

 

「お待たせ~!」

 

 

「お、良い匂い!うまそ~!」

 

 

「サンキューな、隼!よし、食べようぜ!」

 

 

皆は隼特性の麻婆茄子を口に掻き込む。あっという間に完食した。

 

 

「いや~旨かった。隼、ありが…」

 

 

ドサ。

 

 

「磯貝!!どうし……」

 

 

ドサ。前原も倒れる。

 

 

「「「!?」」」

 

 

「…………………あれ?意識が…………」

 

 

ドサ。渚も倒れる。

 

 

不思議に思ったホリーも、まだ手をつけてない隼のを一口頂く。

 

 

「…………………………」

 

 

ホリーは何も言わず、出ていった。続いて、デュオも試食してみる。

 

 

「ウッ……………」

 

 

デュオの外套が蠢いたかと思えば、黒獣が飛び出して、火を吹いた。

 

 

「何だ?」

 

 

隼も一口頂く。

 

 

「…………………んだよ、不通に旨いじゃん。おい、創真も食えよ?」

 

 

「…………………………」

 

 

創真もほんの一口、召し上がる。

 

 

「……………………………」

 

 

創真は何も言わずに、リビングを出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

「あの~隼君。何故男子の数がこんなに少ないのかご存じありませんかね?」

 

 

殺せんせーは、男子で唯一登校時間通り来ていた隼に尋ねる。

 

 

「知らね。昨日のこの世の終わりの鍋を食ったからじゃね?」

 

 

「はぁ……………」

 

 

そして5分後、げっそりした男子が登校してきた。

 

 

「おのれ隼…………お前には2度と作らせん………」

 

 

「俺のは関係ないだろ。鍋が原因だ」

 

 

「兎に角、だ。料理禁止だ!」

 

 

創真の言葉に皆は首肯く。隼は頭を傾げたのであった。




THE NEXT story 3/23 PM 22:00


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第114話 間違いの時間

しばらくは原作通り。


ではどうぞ!


創真side

 

 

「さて、皆さん!体育祭も終わって中間テストです!熱く行きましょう!熱く!!」

 

 

やれやれ、熱苦しいものだ。それと僕は完全に教える側に回った。

 

 

「…………えーっと、ここの文にヒントがあるよ。主人公がどう思ってるのかを思わすような文が。これを踏まえると、答えは何番?」

 

 

「えっと…………に、2番?」

 

 

「正解。よし、では次行こうか」

 

 

ちなみに今は奥田さんに国語を教えていた。それを見つめるホリー達の会話が聞こえてくる。

 

 

「中学生は勉強大変だね~。担任は熱いし。まぁ、体育祭を乗りきったから、集中できるんだろうけど」

 

 

「が………………何処か落ち着かなさそうだ」

 

 

「俺様、嫌な予感がするぜ………」

 

 

言われて、皆の方を見てみるが、確かに落ち着きが無さそうだった。

 

 

(何だろう…………………確かに焦ってる、って感じがするなぁ)

 

 

「創真君、どうかしたんですか?」

 

 

「あ、いや……………さて、次は……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

 

 

「あーあ。にしても、殺せんせーはテストの点を上げようと熱心だな」

 

 

下校してる隼が皆に聞こえるように呟いた。

 

 

「でもさ…………あと5ヶ月だよ?暗殺に集中するべきじゃないのかな?」

 

 

矢田の言葉に皆は賛同の色を見せる。

 

 

「でも、テストも良い点取りたいからな………なんか………こう、良いアイデアないもんかね………」

 

 

「クックック……………任せろよ隼。俺に良い考えがある。皆もちょっとついてこいよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

岡島が皆を連れてきたのは、森だった。

 

 

「ここからフリーランニングで建物の屋根を渡っていけば、隣町の駅まで行けんだよ」

 

 

「確かに面白そうだが…………安全なのか?」

 

 

「心配すんなって。前行ったけど全然危険じゃなかった。今の俺らなら楽勝だって」

 

 

「ふーん。なら良いか」

 

 

隼はストレッチを始めた。気が早いとは、まさにこの事。

 

 

「でも烏間先生は裏山以外でやるなって言ってたじゃん」

 

 

「そうだよ。もし落ちたら………」

 

 

片岡と倉橋は口を揃えて言うが、もう既に皆はヤル気満々だった。

 

 

「なら、今行って安全と言うことを見せてやるよ。着いていきたい奴は来い!先導するぜ!」

 

 

その言葉に、何人かの生徒は岡島に続く。勿論、隼もだ。

 

 

「ちょっと待ってよ!」

 

 

片岡も慌てて着いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、創真は新宿に居た。

 

 

「これが1日100食の有名なクレープ…………!!」

 

 

まさかのクレープ目当てだった。同じくクレープを頬張るホリーがにしても、と呟く。

 

 

「碧海さんもクレープ好きなんだね。ほんと、2人は気が合うよね~」

 

 

「私も結構甘党なんだよね~。所でさ、この前の打ち上げで男子何か苦しそうだったよね?」

 

 

「あ、その事教えて欲しいんだけどさ…………隼の料理……………あれは何だ?生物兵器か?」

 

 

「……………まさか、隼の料理を食べたの?」

 

 

碧海の言い方は、まさかアレを食ったの的な言い方だった。碧海はクレープを食べる手を止めて話し出す。

 

 

「隼の料理はね…………味付けがヤバイんだよ。独特の味覚があるんだろうけどね。他の人には到底食える辛さや甘さじゃないんだよね………」

 

 

「よし…………今後一切、あいつには料理を作らせないようにしよう」

 

 

「それをお薦めするよ…………」

 

 

「碧海さんは上手いのにね…………姉弟なのにここまで違うものなんだねー」

 

 

創真が自分の料理の腕前を上手いと言ってくれたのを、碧海は嬉しく感じた。

 

 

「創真君ってさ…………優しいよね」

 

 

「そう?そりゃどーも」

 

 

創真はクレープを頬張った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやっほーう!こりゃ気持ちいい!」

 

 

天井を蹴りながら隼は感想を漏らす。

 

 

「もう俺らは一般人とは違うんだよ!これを毎日やっていけば、勉強と暗殺の刃を同時に磨ける。最高だろ!」

 

 

「岡島の言う通りだな………これなら暗殺も夢じゃねぇ!」

 

 

皆は楽しそうに、天井を蹴って空を舞う。

 

 

「よっしゃ、1番乗り!!」

 

 

岡島と木村がゴール付近に着いた。そして、道路に飛び降りる。2人は飛び降りてから気づいた。

 

 

……………飛び降りた道路に、ちょうど自転車に乗ったおじいさんがいたことに。

 

 

ガシャン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!」

 

 

透明化していたキバットが椚ヶ丘の方面に顔を向けた。

 

 

「どったの、キバット?」

 

 

「……………自転車が倒れる音がした」

 

 

「あっそ……………………」

 

 

特に誰も興味なさそうだった。しかし、キバットは違った。

 

 

「なぁ、嫌な予感がする。戻らないか?」

 

 

「はぁ?折角創真と碧海さんとデート………あ、いや、何でもない」

 

 

創真からの視線を感じたホリーがゴホンゴホンと、業とらしく咳き込む。

 

 

「そんなに気になるなら戻る?特にやることないし」

 

 

「あぁ、そうしよう!俺様の勘が当たったかもしれねぇ」

 

 

目立たぬように、路地裏に入って、創真は碧海をお姫様だっこで抱え(碧海は凄く赤くなった)、ホリーは憑依してすぐに空へ飛び上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーっと…………確かここら辺………」

 

 

キバットの先導の元、不吉な音がした場所を探す。

 

 

「あれだな」

 

 

創真は音のした場所から少し離れた場所に降りて、双眼鏡を取り出した。

 

 

「おじいさんが救急車で運ばれてる…………別に単なる事故じゃ……………………」

 

 

創真は言葉を失った。何故なら、救急車に運ばれているおじいさんから少し離れた場所に、E組のクラスメイトがいたからだ。

 

 

「……………なるほど。そういうことか…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

E組の皆は病院前で待っていると、烏間と氷室が出てきた。

 

 

「右大腿骨の亀裂骨折。2週間ほどで完治だそうです。ただ、あなた達のことは国家機密。今、烏間先生の部下の人が説得中です」

 

 

氷室が感情を窺わせず、実に事務的に告げた。ここに来て、皆は事の重大さを理解した刹那、背後から殺気。

 

 

殺せんせーだった。

 

 

「だ、だってあんなところにチャリに乗ったじいさんがいるなんて考えねぇよ!」

 

 

「悪いとは思ってるけど…………自分達の力を磨くためにやったんだし………」

 

 

「地球を救う重圧がテメーに分かんのかよ」

 

 

皆の言い訳を全て一蹴するかのように、殺せんせーは皆にビンタをかました。

 

 

「お二人方、危害と報告しますか?」

 

 

「いいえ」

 

 

氷室は即答した。そして身を翻し、病院の中に入っていった。

 

 

「危険を承知で高度な訓練を取り入れたが、君達には早すぎたのかもしれない。俺の責任だ」

 

 

烏間も病院の中に入っていった。

 

「君達は強くなりすぎた。身に付けた力に酔い、弱い者の立場に立つことを忘れてしまった」

 

 

殺せんせーは言葉を続ける。

 

 

「と言うわけで、話しは変り………今日からテストまで、クラス全員のテスト勉強を禁じます」

 

 

「…………どういう意味だよ?」

 

 

「テストよりもやるべき授業をするだけですよ。先ずは被害者を説得してきます」

 

 

殺せんせーは去っていった。

 

 

「「「………………………」」」

 

 

一同は何も発さず、無言の空間が続いた。

 

 

『テデーン!全員、out!!』

 

 

無言の空間を貫いたのは、そんな気の抜けた声だった空から創真が碧海を抱えて音もなく現れる。

 

 

「創真……………………」

 

 

「ちょっと目を離した隙にやってくれたじゃないか」

 

 

創真の冷徹な視線が皆を射ぬいた。

 

 

「…………………悪かった」

 

 

隼がポツリと呟く。

 

 

「それは被害者に言え。……………何はともあれ、骨折で済んだのがせめてもの幸いだ。下手すれば死んでたかも知れないんだぞ…………………分かってんのか!!」

 

 

突然大きな声で創真は罵り、近くにいた碧海はビクッと身体を震わせた。

 

 

「そ、創真。ここ、病院の近くだから…………」

 

 

「………………あぁ、すまん。つい、カッとなった」

 

 

幾分か冷静になった創真は、ふぅと息をつく。

 

 

「で、何か殺せんせー言ってた?」

 

 

「………………クラス全員のテスト勉強を禁止で、テストよりも大切な授業を行うって言ってた」

 

 

それを聞いたデュオは、何か勘づいた様子でなるほどな、と呟く。

 

 

「殺せんせーが何をしようとしてるのか、大体分かった……………………いつまでもずっと突っ立ってたら、何も始まんないぞ。まず、被害者に謝りに行くのが当たり前だろうが」

 

 

デュオに促され、皆は足取りは重いものの病院へ入っていった。

 

 

「にしても、デュオがさっきなるほど、って言ってたけど、何が分かったの?」

 

 

「殺せんせーが教えようとしている事さ。どうせ、創真もその授業を受けるだろうから、すぐ分かるさ」

 

 

「そんなもんかねぇ………………さて、僕らも中に行って、謝ってくるか。一応、連帯責任って事で」

 

 

創真らも病院へ入っていった。

 

 

to be continue ………………




THE NEXT story3/24or25 PM 22:00


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第115話 ビフォーの時間

展開が早いかな…………とにかく楽しんでください!


タイトルは適当です笑。


では、スタート!


創真が空から現れた頃

 

 

「松方さん、そこをなんとか………」

 

 

「ならん!2週間も経営を離れるのだぞ!!」

 

 

説得を続けるが頑固な為、なかなか承諾しない。

 

 

「あのガキ共め…………並大抵の謝罪なら許さんぞ…………なんか、こうわしを仰天させるような謝り方じゃないと…………ん?」

 

 

松方はここで部屋の異変に気づいた。

 

 

「なんだ?この大量のお見舞いの花は…………」

 

 

そして次の瞬間

 

 

「すみませんでしたァァ!!」

 

 

「ギャアァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

 

殺せんせーのダイナミックな土下座の謝罪。

 

 

「この度は私の生徒がご迷惑を御掛けしましたァァ!!」

 

 

「ギャアァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

「みんなー。園長先生がお怪我でしばらく来れなくなっちゃったの。代わりに、このお兄さんお姉さん達がお世話してくれるって!」

 

 

簡単に言うと、交渉の末、松方さんの保育施設、わかばパークのお手伝いをして、その仕事ぶりに満足してもらえば、今回の事件を公表しないでくれるそうで。

 

 

さっそく皆は子供達に絡まれてる。

 

 

「ねーお兄さんなんて名前?」

 

 

「僕の名前は創真って言うよ」

 

 

「じゃあお隣のお兄さんは?」

 

 

「ヘタレ隼、って呼んであげて」

 

 

「誰がヘタレだ!?」

 

 

しかし、ここは低学年の子供が多いな。とは言え、僕は別に子供が嫌いではない。子供にどんな目線で、どんな態度で望めば良いかもしっかり理解している。

 

 

「にしても………テストが心配だよぉ………て言うか、私は無関係だよね…………?」

 

 

まぁ、碧海さんが言うのも分からんでもない。

 

 

「ごめんよ………」

 

 

岡島が皆に謝る。

 

 

「それより…………誰か助けて…………思った以上に絡まれてる………」

 

 

ホリーは何故か子供に人気らしく、めっちゃ人溜まりが出来ている。まぁ、良いじゃないか、人気そうで。

 

 

「で、何やってくれるわけ?大挙して押し掛けてくれたんだからさ…………減った酸素分の仕事してくれるんでしょーねェ?」

 

 

中々尖った子もいる。

 

 

「やべぇ………入所5年の最年長者、さくら姐さんがご機嫌ななめだ…………」

 

 

「殺されるぞ、このお兄さん達…………学校の支配を2年間も拒み続けるエリートニートのさくら姐さんに」

 

 

なんかいきなりスイッチ入った子もいる。

 

 

「先ずは働く根性あるか試してやろうじゃないの!」

 

 

自在箒を持ってエリートニートのさくら姐さんが襲いかかる。

 

 

が、

 

 

「ブゲェッ」

 

 

床が抜けて落下。デュオが後ろで絡まれているホリーに話し掛ける。

 

 

「おい、ホリー。まさかお前、落し穴作ったか?」

 

 

「いや、あれは床が傷んでたからだよ。それに、僕は女の子相手にそんなことしない。するとしたら、岡島だ」

 

 

「俺は良いのかよ!?」

 

 

それにしても─────────。

 

 

「ここ、修繕とかしないんですか?」

 

 

「お金が無いのよ。うちの園長、待機児童や不登校児を格安で片っ端から預かってるの。職員すら満足に雇えず、本人が1番働いてるのよ」

 

 

なるほど。

 

 

「………2週間あれば色々出来るかな?」

 

 

「出来る出来る。やる気があれば何でも出来るって!」

 

 

ホリーが熱苦しくなっている………………。

 

 

「よし、先ずは作戦を立ててあの人の代役を努めよう」

 

 

磯貝君の式の元、皆は動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

皆は色々手分けをして活動を開始した。

 

 

創真と倉橋は、外で子供たちと遊ぶ係りだ。

 

 

「いいな~やんちゃで。私達もこんな無邪気な時があったんだね~」

 

 

「そうだね」

 

 

創真と倉橋が話してる横目で、子供達は創真のマシンシリーズで遊んでいた。

 

 

「うわ、すっごい!このカブトムシかっこいいし早く飛ぶ!」

 

 

「このさそりもかっけー!」

 

 

意外と好評で、創真はホッとしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして隼は

 

 

「ねぇ、ヘタレ隼」

 

 

「ヘタレ言うな!あと、さんをつけろ」

 

 

「このわり算分かんなーい」

 

 

「はぁ?普通に筆算書けば分かんだろ?」

 

 

「説明下手くそ~」

 

 

「くっそ……………あーこれが2週間も続くのか………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてホリーとデュオはと言うと

 

 

「そして、このリンゴをこの帽子に入れたら………」

 

 

帽子を見せると、中にあるはずのリンゴは消えていた。

 

 

「すごーい!」

 

 

「どうやったの?」

 

 

「それは秘密~。じゃ、さっきのりんごをお隣のデュオ君が出して見せよう!はい、皆注目~」

 

 

デュオはふぅ、と息をつき、自分の服の袖を軽く振った。すると、大量のリンゴが袖から落ちてきた。

 

 

皆は拍手を送る。

 

 

それらをホリーは持って、空中に投げたかと思えば、落下してきたときにはうさぎリンゴとなっていたそれらをホリーが皿で受け止める。

 

 

「はい、どうぞ!」

 

 

皆はうさぎリンゴを口へと運ぶ。

 

 

「甘くておいしい!」

 

 

こちらも大変好評。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼はやっとのことで自分の担当の子供達の宿題を終わらせた。

 

 

「ふへー…………もう無理だわ……………」

 

 

すっかり疲弊した隼は少し休もうとする。

 

 

と、そこへ

 

 

「あ、隼君。ちょうど良かった」

 

 

そこに現れたのは茅野だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やめて騎士カルマ!もう誰も傷つけないで!」

 

 

「いやいや姫。この魔物倒さないと平和になりませんって」

 

 

カルマはゴスゴス魔物隼を殴る。

 

 

「殴るって台本に書いてねぇぞ…………カルマ!」

 

 

隼も台本にはない技でカルマと格闘を開始する。ハイレベルな闘いに子供達も驚いた。

 

 

「オラオラ、どうしたカルマ?逃げてばっかじゃ倒せねぇぞ!?教えてやんよ………この世には勇者も倒せない最強の魔物がいるってことをな!」

 

 

大分調子に乗ってきた隼。すると─────

 

 

「おりゃ!」

 

 

隼は蹴りを喰らい、床に倒れる。

 

 

「教えてやろう、魔物。この世は勇者が勝つって言うお約束なんだ」

 

 

「創真…………!何勝手に乱入し……」

 

 

「ね、眠れ魔物!」

 

 

立ち上がった魔物の口を魔女役の奥田がハンカチで塞ぐ。

 

 

「zzzzzzz」

 

 

魔物は眠った。

 

 

子供には大ウケ…………………ってふざけんな!!by隼

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とまぁ、こんな感じでE組の皆は子供達に勉強を教えたり、遊んだりと………自分達も楽しんでいたら、あっという間に2週間が過ぎた。

 

 

「さて、私の生徒はよく働いてくれましたかね」

 

 

「ふん。重みでつぶれてなきゃ上出来だ」

 

 

そして2週間ぶりにわかばパークへ帰ってみると………

 

 

「なんということでしょう!?」

 

 

なんかでかくなっていた。

 

 

「これは凄いです」

 

 

氷室も感嘆の声を漏らす。

 

 

「ようこそ新しいわかばパークへ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

キバットは何してたか?

 

 

「千葉、そこはもっと単純な構造で良いと思うぜ」

 

 

「お、サンキュー」

 

 

「……………………」

 

 

「……………………」

 

 

「………なんか俺様に出来ることあるか?」

 

 

「いや大丈夫だ」

 

 

「そ、そうか……………(ううむ、会話が続かねぇ…………)」




THE NEXT story 3/26 PM 22:00




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第116話 アフターの時間

途中、僕のストレスを解消させる会話があります。


いや~スッキリした。


では、どうぞ!


創真side

 

 

「なんと…………たった2週間で…………」

 

 

めっちゃくちゃでかくなった、と言いたいのだろう。E組の森から木材や廃材を持ってきて、倒れそうな母屋ごと補強したのだ。

 

 

「この子達、ずっと飛び回ってましたよ。本物の職人さんみたいに」

 

 

職員の方が松方さんにそう話してくれた。そして、2階へ。2階は2部屋に別れてる。

 

 

「ここは…………図書室か。広いな」

 

 

「時間と資材が限られてたので、単純な構造にしました」

 

 

設計士の千葉が解説を加える。本は矢田さん達が近所を訪ねて要らない物をもらってきたのだ。そしてもう一方の部屋は室内遊戯場だ。床にはマットを敷いて、安全性抜群。

 

 

「これ全部、2週間でやったのか!?」

 

 

「はい。驚きました?」

 

 

僕の言葉に松方さんはふん、と笑い、

 

 

「この程度、わしがあと10年若ければ余裕で出来るわい。それで、他にもあるのか?」

 

 

「はい、最後は職員室兼ガレージへ」

 

 

「ガレージ…………?」

 

 

磯貝の言葉に松方は少し訝しげな表情を浮かべる。階段を降りて、1階のガレージには、あの事故で壊れた自転車が進化した、3輪自転車があった。

 

 

「大量に搭載出来るようにした。ついでに電動アシストも。さらにこの自転車の魅力は、遊戯場の回転遊具で遊ぶことで、走行分の大半は賄える」

 

 

イトナの解説を松方は半分上の空で聞いていた。そして、みんなの方を振り返ると──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前ら…………上手く出来すぎとる!!」

 

 

────────誉めてくれた。

 

 

「なんか出来すぎて逆に気持ち悪い!それに、このベルについてるの、わしの入れ歯じゃろ!?」

 

 

「再利用しました」

 

 

「そんな気遣いいらんし!」

 

 

そもそも、と松方さんは一端切る。

 

 

「ここで1番重要なのは子供達と心を通わせてるかどうかじゃ。それが出来なかったら、働きぶりは認められん」

 

 

「なるほど。それは確かにごもっとも………」

 

 

ホリーがうんうんと首肯く。

 

 

「ですが、それもちゃんと出来てると思いますよ。多分そろそろ………」

 

 

「渚ー!!」

 

 

さくら姐さん、学校からご帰宅。

 

 

その手にはテスト用紙が。

 

 

「クラスの中で2番だったぞ~!」

 

 

「おーすごい!よくやったね~」

 

 

「えへへ………」

 

 

渚とさくらが楽しそうに話しているのを見て、松方はフッと笑った。

 

 

「どうしました松方さん?」

 

 

「フン…………文句の1つも言えずに悔しいだけじゃ」

 

 

その言葉に氷室も同じく笑みを浮かべる。

 

 

「………元より、お前らの秘密など興味ない。さっさと学校に戻らんか。大事な仕事があるんじゃろ?」

 

 

「「「………はい!」」」

 

 

こうして、2週間の特別授業は幕を閉じた。

 

 

ただ、その日は………………………………定期テスト前日だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

 

 

翌日

 

 

 

「さて…………準備は出来てる?碧海さん」

 

 

「ばっちりだよ~」

 

 

「それは上々」

 

 

そして───────

 

 

「始め!」

 

 

監督の先生の声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果は惨敗。

 

 

2週間も勉強してなかったら、こうなるのは当然。E組の大半はトップ 50から弾き出された。結果が返されたその日の放課後、渚、杉野、岡島はとぼとぼと帰路を歩く。

 

 

「拍子抜けだったなぁ」

 

 

「前回のはまぐれだったようだね~」

 

 

わざわざからかう為に待ち伏せしていた、浅野を除く五栄傑の嫌みの報酬。返す言葉もなく、小山と榊原が追撃を掛ける。

 

 

「返す言葉もねぇか………ギシシシ」

 

 

「この学校は成績が全て。下の者が上の者へ発言する権利はないからね」

 

 

黙りこむ渚達にさらに追撃しようとしたその時だった。

 

 

「下の者が上の者へ発言する権利はない…………ね」

 

 

「じゃあ、俺達にはあんたらはなにも言えないわけだ」

 

 

そこに颯爽と現れたのは、碧海とカルマだった。

 

 

ちなみに

 

 

浅野 学秀 493点 学年1位

 

 

月城 碧海 492点 学年2位

 

 

赤羽 業 492点 学年2位

 

 

学年2位の碧海が口を開く。

 

 

「あんたらまだ気付かないの?今回あんたらの為に皆は手加減したんだよ?これ以上トップとられたら可愛そうだからって」

 

 

「なんだと…………!」

 

 

「それにさ、さっき下の者が上の者へ発言する権利はない、って言ってたよね?じゃ、上の者は下の者へ発言しても良いんだよね?じゃ、創真君、何か言いたいことある?」

 

 

すると、渚達がいる方から足音が聞こえてきた。振り向くと、創真が近づいてきた。そして、テストの答案を見せる。

 

 

国語 100点

 

 

数学 100点

 

 

英語 100点

 

 

理科 100点

 

 

社会 100点

 

 

計 500点 真の第1位

 

 

真の、と言うのは理事長特製の為にランキングに載ってないからなのだ。創真はごほん、と咳き込み口を開いた。さて、五栄傑ファンの人はムカつくいじりタイムだ。

 

 

「いや~2週間も勉強してないのに、あんたら僕に勝てない。あ、そっか。君達の方が馬鹿だからか」

 

 

「なっ…………いい加減にしたまえ!E組の分際で!」

 

 

榊原の発言に、創真はニヤリと笑う。

 

 

「おや?さっき、下の者は上の者へ発言する権利はないんだろ。黙って聞いてろ、下の者が」

 

 

「くっ……………!!」

 

 

「まったく、五栄傑と名乗っておきながら、1度も僕に勝ててない。もう、五栄傑じゃなくて、五栄傑(雑魚)って名乗ったら?ね、浅野君」

 

 

「……………………」

 

 

「無反応か…………ま、いいや。でも、次は皆も容赦しない。確か、同じテストを受けるのは次の2学期期末で最後。そこで決着をつけよう。ちなみに、次は僕も皆と同じテストを受けるよ。恐らく、3度も僕に満点を取られるのは嫌だろうから、理事長はとんでもない問題を作らせるだろうね。恥を掻きたくなきゃ、今からでも勉強しておくんだね」

 

 

「ちっ…………上等だ。お前の天下もこれまでだからな、創真!」

 

 

「頑張って終わらせてね~。あースッキリした」

 

 

そう言って創真は他の皆にも声をかけ、歩き出した。そして、それらの会話を見ていた奴等がいた。

 

 

「ヌルフフフフ………カルマ君もちゃんと失敗を活かせたようですねぇ。失敗も挫折も成長の源。また、今回の出来事は皆を強くする…………所でホリー君。碧海さんまでもが高得点なのは何故ですかねぇ?」

 

 

「どーせ分かってるでしょ?毎日夜遅くまで創真に教わってたんだよ」

 

 

「偉いやつだ」

 

 

デュオも褒める。

 

 

「にしても………創真も相変わらずの毒舌だな。ま、聞いててスッキリしたぜ」

 

 

キバットの言葉に3人は苦笑いした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「迷惑掛けてすみませんでした、烏間先生、氷室先生」

 

 

「いえいえ。それで、何か学べましたか?」

 

 

氷室の質問に渚が答える。

 

 

「今まで身に付けた力は自分達の為に使っていました。けど…………その力は他人の為にも使えるんだって、思いました。暗殺力を身に付ければ、地球を救える。学力を身に付ければ、誰かを助けれる」

 

 

その言葉に、創真と碧海とカルマは照れ臭そうに目を反らす。

 

 

「もう下手な使い方しないっす、多分」

 

 

「これから色々気を付けるよ」

 

 

「なるほどな。よく分かった。だが、今の君達では訓練は再開できないな。何せこの有り様だ」

 

 

烏間は股が破れたジャージを取り出す。結構ボロボロだ。

 

 

「高度な訓練に、学校のジャージでは耐えきれない。それに、君達の安全も守れない」

 

 

烏間の言葉を氷室が引き継ぐ。

 

 

「そこで、皆さんにプレゼントです。今の皆さんなら、この力を上手く使えるでしょう」

 

 

氷室がダンボール箱を開け、未知の衣服を取り出す。

 

 

「その名も、『超体操着』。この地球上で最強の体操服です…………………!!」




THE NEXT story 3/27 PM 22:00


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第117話 プレゼントの時間

後半はオリジナルです!


是非楽しんでくださーい!


創真side

 

 

「この体操服の繊維は軍とある企業が共同開発した物だ。衝撃性、引っ張り耐性、切断耐性、耐火性……………あらゆる要素が最先端だ」

 

 

この体操着の凄さに思わず唸ってしまう。新たな力を手にいれた僕らは、ある作戦を実行することにしたちょうど良い。先生の教えを暗殺で返そうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

 

 

「良い匂いですねぇ。フランスで買ったフォアグラバーベキュー。こればかりは内緒ですね」

 

 

フォアグラに夢中の殺せんせーは、上から降ってくる人影に気付かない。

 

 

ドンッ!!

 

 

「にゅやッー!?」

 

 

落ちてきた人物による斬撃をギリギリで回避した殺せんせー。お陰でフォアグラはほぼ全滅だ。

 

 

「凄い…………痛くも熱くもない」

 

 

中村も驚いたようだ。

 

 

「な、なんて場所から落ちてくるんですか中村さん!あぁ、バーベキュー台も無惨な姿に!?あれ、2万円もしたのに!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく油断も隙もない。さて、不破さんから買ったジャンプを読むとしましょう」

 

 

───────いいや、殺せんせー。まだ終わってないぞ?

 

 

菅谷がスプレーを掛けると、千葉の着ている超体操着の色が変わっていった。特殊な揮発物質のスプレーに服の染料が反応し、一時的に服の色を操れる。千葉は銃を構え、スコープを覗きながら……………銃の引き金を引いた。

 

 

そして見事にジャンプに命中した。

 

 

「にゅや!?今のは千葉君ですか!!じ、ジャンプが読めなくなったじゃないですか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーむ。このロケットおっぱいは中々難しい。やりがいがありますねぇ」

 

 

──────さて、作業中悪いが、お邪魔するとしよう。

 

 

バリンッ!!

 

 

ガラスを突き破り、隼と創真が突入!そしてマシンガンで弾をばらまく。

 

 

「やめてー!!愛情込めたロケットがー!!」

 

 

「ん?」

 

 

殺せんせーに言われて、創真はロケットおっぱいに気づいた。どうするかって言ったら、さらに至近距離でロケットおっぱいを撃つ。

 

 

「いやぁァァァァァァ!!!」

 

 

殺せんせーは慌ててマッハでロケットおっぱいを救出するも、既にボロボロだった。

 

 

「な、なんなんですか!?今日は息一つつけない!!」

 

 

嘆く殺せんせーに暗殺を見ていた烏間が口を開く。

 

 

「せっかくの新装備の手の内をさらすのは不本意だったが……………お前に新しい力の使い方を見せたかったそうだ」

 

 

「殺せんせー、僕らの答えを聞いてくれますか?」

 

 

僕に続き、寺坂と不破が喋り出す。

 

 

「教えの答えは暗殺で返す。それがここの流儀だろ?」

 

 

「怒られた後だしね。真面目に殺して応えないと」

 

 

「だから、約束するよ。この力は誰かを守る為に使うって」

 

 

「……………これが答えです、殺せんせー。どうでしょう?」

 

 

創真が聞くと、殺せんせーは顔に花丸を浮かべる。

 

 

「満点です。では、明日からは通常授業に戻りますからね」

 

 

「「「はーい」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

 

 

その日の夜、殺せんせーは独り夜空を見上ていた。

 

 

(私がここに来たときは、冷たく澱んだ殺意があるだけだった。でも今は、温かい殺意で溢れている………)

 

 

そして、ある人の言葉が頭に浮かんだ。

 

 

『いつかあなたも…………そんな相手に巡り会えますよ』

 

 

「ええ。目の前にたくさんいます」

 

 

かつてその言葉を送ってくれた『彼女』に、殺せんせーは静かに答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりに学校へ早く来た創真は、教室の屋根に登り、朝日に照らされている椚ヶ丘の町を眺めていた。

 

 

「朝日に照らされるこの街もなかなか良い眺めだ」

 

 

「確かにそうかもね~」

 

 

ホリーがくるりと一回転しながら呟く。

 

 

「所でさ、そろそろアレ誘ったらどうだ?」

 

 

「…………デートか?」

 

 

「察しが良いね。テストも終わったんだしさ、こう言うときは、彼氏から誘ってあげるものだよ~」

 

 

この助言は親切心から来てるのか、カップルを見たいと言う下衆い心から来てるのか。

 

 

「ま、そうだね。何処に行くか考えておこう………………さて、朝練の時間だ」

 

 

創真は銃を片手に屋根から飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー眠い。あーまじ眠い」

 

 

眠気と戦いながら通学路を歩くのは隼であった。

 

 

「ったく、朝からだらしねぇな隼!」

 

 

対照に元気に飛んできたのはキバットだ。

 

 

「ったく、お前は朝から元気だよな。コウモリってのは夜活動する生き物じゃねぇのか?」

 

 

「ふん、そこらのコウモリとは違うんだよ。それに俺様はちゃんと早寝早起きを心掛けてんだ。そして隼。お前は昨日ゲームで夜更かししたな?」

 

 

「なっ…………何故そう思う?」

 

 

「勘だぜ」

 

 

「勘かよ!!良い勘だな、ほんと!」

 

 

「所で隼、お前神崎さんといい感じにやってるか?いい彼女を持ったよな~」

 

 

「ああ、ほんとそうだよな。あんな良い彼女持てて俺は幸せ者だ……………………………あ?」

 

 

隼は何かに気づき、キバットを掴む。

 

 

「テメー、その情報どこで仕入れた?」

 

 

隼は目茶苦茶低い声で訊く。

 

 

「見たんだぜ。神崎さんに告白されて、お前がそれを承諾して、アレされるところまでな。てか、俺が後押ししてやったのに」

 

 

「貴様……………!!それを皆にばらしたのか!?」

 

 

「まだだ。だが、俺の気分次第で創真とかにばらしても良いんだぜ~」

 

 

「何がお望みだ?」

 

 

「神崎さんをデートに誘え。自分の口から直接積極誘えよ、隼。電話やメールでしか誘えないのか?」

 

 

そう。今まで隼はメールや電話でしかデートに誘えてない。

 

 

「はぁ?そんなことかよ。じゃ、見とけよ。今日にでも誘ってやるからな」

 

 

「ほーう。楽しみにしてるぜ。じゃ、俺様は先行くぜ」

 

 

キバットはニヤニヤしながら飛んでいった。

 

 

キバットの姿が見えなくなると─────

 

 

「無理無理無理無理無理!!自分の口から誘うってどんだけ勇気いると思ってんだよ、あのコウモリ野郎!」

 

 

───────やはりヘタレだった。




THE NEXT story 3/28or29 PM 22:00


多分29日かな?


では次回でお会いしましょう!


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第118話 プレゼントの時間 2時間目

やぁっとここまでキター。


原作では12巻。


あと9巻か……………頑張ろう!


じゃ、楽しんでくださいな!


「ビッチ先生の誕生日プレゼント………?」

 

 

「4日前、ビッチ先生の誕生日だったんだよ。俺らがトラブル起こしちゃったのも一因だから、また俺らがあと押ししてくっつけようって訳」

 

 

登校してすぐに、隼はそんな説明を受けた。

 

 

「ふーん。別に良いけど、作戦立ててんの?」

 

 

「創真が既に考えてある。昼休みに実行だ」

 

 

まぁ、本人そこまで乗り気じゃなかったが、自分の彼女につぶらな瞳で頼まれたので、腰を上げたのだ。なんか盛り上がる皆を、キバットはニヤニヤしながら見つめていた。

 

 

(おもしれぇ。あの純情ビッチはプレゼント貰ったらどんな反応するのか……………キャーキャー喜ぶか?涙でも流して静かに喜ぶか?こりゃ見物だね………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み

 

 

「さて、ビッチ&烏間くっつけ計画第二弾を始めよう。まず、陽動スタート」

 

 

教室の屋根から通信機で指示を出す。その指示をスマホから聞いた片岡は、職員室へ入る。

 

 

「ビッチ先生!また仏語会話を教えてもらって良いですか?」

 

 

「………ああメグ。そういえば外国で働きたいとか言ってたわね。良いわよ。そこに座んなさい」

 

 

「あ、天気も良いし、外で教えてよ!」

 

 

「え?ちょ………」

 

 

片岡はビッチ先生を外へ引っ張って行った。その様子を片岡のスマホを通して聞いていた創真。また通信機に話し掛ける。

 

 

「…………買い出し班。良いの見つかった?」

 

 

『いや、まだだよ。ねぇ、創真君。大人から大人へのふさわしいプレゼントって何かある?』

 

 

通信機から渚の声が聞こえてくる。

 

 

「そうだな……………ネックレスとか?」

 

 

『クラスのかんぱじゃ買えないよ…………』

 

 

「あ、そっか。予算は5000円以内か。兎に角、良いのを頑張って見つけてね。また何かあったら連絡して」

 

 

『うん、分かった』

 

 

通信を終え、創真は一息つく。

 

 

「よくよく考えたら…………ビッチ先生は大概の物は貰ってるよな…………こりゃ難しいね~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、創真は何だって?」

 

 

「頑張れ、だって」

 

 

「ちっ、役に立たねぇ」

 

 

隼が悪態をつく。

 

 

「でも、難しいよね。ビッチ先生、何だったら喜ぶんだろう?」

 

 

「確かに面倒な問題だな………」

 

 

皆であーでもない、こーでもない、と話し合っていると

 

 

「あれ?もしかして君達って………」

 

 

振り返ると、そこには20代位の青年がいた。

 

 

「ほら、この前のおじいさんの怪我………大丈夫だった?」

 

 

(……………誰だっけ?)

 

 

隼はど忘れ。代わりに渚が思い出した。

 

 

「あ、この前救急車を呼んでくれた花屋さん………この前はありがとうございました。タダ働きして許してもらえました………」

 

 

思い出した渚がお礼を言う。

 

 

「そっか。大事にならなくて良かったね……………所で今、プレゼントとか言ってたけど…………これはどう?」

 

 

花屋の青年は皆にお花を見せた。

 

 

「……………花束か」

 

 

隼が声に出して呟く。

 

 

「今の時代、プレゼントなんて選び放題なのに、花は第一線で通用する。それは何故か?」

 

 

花束を作りながら、渚達に問い掛ける。

 

 

「色や形、香り、そして儚さが人間の本能とピッタリだからさ」

 

 

「なるほどね~。電卓持ってなきゃ最高だけど」

 

 

カルマの指摘に青年は少しギクッとした。

 

 

「んんん………どーする?今ならお安くしとくよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶賛暇な創真がまんじゅうを食べていると、携帯から通信コールが聞こえてきた。

 

 

「買ったか?」

 

 

『花束を買ったよ。もう直ぐ学校に着くよ』

 

 

「了解…………烏間先生に話したら教えて。ビッチ先生の気を引いてる奴等へ撤収の指示を出す」

 

 

『分かった』

 

 

さて、計画も大詰めだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渚達はこっそり職員室へ入り、烏間先生に事情を話す。

 

 

「…………何故俺が?君達が渡せば良いんじゃないのか?」

 

 

やはりこの男は気づいてないのだろうか。

 

 

「同僚の人身掌握も責任者の仕事じゃないの?あのビッチが必要な戦力ならさ」

 

 

カルマがしれっと、それっぽいことを言う。

 

 

「……………分かった。俺が渡そう」

 

 

烏間は花束を受け取った。

 

 

「……………創真、良いぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼の声を聞いた創真は、懐から鳩笛を取りだし、思いっきり吹いた。

 

 

ピアノで演奏をしていたビッチ先生の回りにいた生徒達はその音に気付いた。そして、一斉に立ち上がる。

 

 

「ちょっと!?みんな揃ってどこ行くの!?」

 

 

「用事思い出したから!」

 

 

「また今度な!」

 

 

一気に独りぼっちになってしまったビッチ先生…………。

 

 

「なんなのよ………あーカラスマに愚痴を聞いてもらうわ!」

 

 

大股で歩き、職員室の扉を思いっきり開ける。

 

 

「聞いてよカラスマ!あのガキ共………」

 

 

「ちょうど良かった、イリーナ」

 

 

烏間はスッと花束を渡し、誕生日おめでとう、と言った。

 

 

「え……………?嘘…………超うれしい。ありがとう………」

 

 

ビッチ先生が心底嬉しそうに花束を受け取る。

 

 

「あんたのくせに上手く出来すぎよ。なんか企んでんじゃないの?」

 

 

「バカ言え。最初で最後の誕生祝いだ。本心に決まってる」

 

 

その言葉を廊下から聞いていた、キバットの顔から笑みがスッと消えた。

 

 

「何よ………最初で最後って」

 

 

「任務を終えるか、地球が終わるか。どちらにせよ、半年で終わるんだ。当たり前だろうが」

 

 

その言葉を聞いたビッチ先生は烏間の横を通って、職員室の窓を開けた。

 

 

そこには、隠れて聞いていた生徒達が。

 

 

「……………楽しかったかしら?プロの殺し屋がシナリを通り踊らされて舞い上がった姿を見て」

 

 

「…………………へ?」

 

 

言いたいことを言い終わったのか、ビッチ先生は背を向け、烏間に乱暴に花束を渡す。

 

 

「最高のプレゼントありがと、カラスマ」

 

 

そして、校舎から歩き去っていく。

 

 

「………………やれやれ。折角考えたプロジェクトがこの様か。何より…………」

 

 

創真の言葉をキバットが引き継ぐ。

 

 

「烏間先生。あんた、今のは無いだろ?本人の気持ちに気づいてないのか?」

 

 

「俺がそこまで鈍く見えるか?」

 

 

「………気付いてた上で、あんなこと言ったのか?」

 

 

「色恋で鈍る刃なら………ここで仕事する資格はない。それだけの事だ」

 

 

烏間の一言は、キバットの怒りを静かに爆発させた。

 

 

「…………ああ、そうかよ。あんたも中々の合理的な奴だぜ……………ここまで思いやりのない奴とは思わなかったぜ、烏間先生」

 

 

「…………………………」

 

 

何も答えない烏間先生を置いて、キバットは飛び去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(さて……………時は満ちた。ここからは………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『死神』の時間だ。

 

 

最高級の死の商人がしずかに…………………ゆっくり腰を上げた。




THE NEXT story 3/29or30 PM 22:00


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第119話 死神の時間

本格的にシリアス?



では、どうぞ!


あれからもう3日。

 

 

ビッチ先生の行方は誰も知らない。創真は倉橋に頼まれて、東京中をマシンプテラで飛び回っているが、未だに出掛かり1つ掴めぬ。マシンプテラとは、最近お気に入り登録した人のために説明しとくと、創真が発明したとんでもなくヤバイ兵器………いや、発明品。

 

 

活動報告欄にある通り、超音波を出したり、翼は対殺せんせー用になっている大型のマシン。あまりのジエットの出力に、創真自身がマシンプテラに乗って移動できちゃうと言う、かなり危険な代物。まだフライボードみたく乗れる事は生徒以外には明かしてはいない。創真曰く、ばれたら烏間先生になんか言われるだろうし。

 

 

ちなみに、原理的にはちょっと前に有名になったジェットエンジン搭載のフライボードとほぼ同じである。なお、暗殺に使ったら、全ての攻撃を避けられて、ピカピカに磨かれた。

 

 

「イリーナ先生に動きがあったら電話してくださいね。先生はブラジルにサッカー観戦に行ってくるので」

 

 

そう言い残し、殺せんせーはマッハで飛び行く。

 

 

「じゃ、行ってくるわ」

 

 

「創真君、大丈夫?疲れてるなら良いよ?」

 

 

倉橋が心配そうに云うが、創真は、大丈夫だよと答える。

 

 

「ホリー、デュオ、キバット、行くよ。まったく、あのビッチめ。どこ行ったんだよ………」

 

 

創真もマッハほどではないが、マシンプテラに乗って飛び立った。

 

 

「……………創真君もご苦労様だね~」

 

 

「つーか、あいつ倉橋には結構甘いよな~」

 

 

碧海の呟きに隼がニヤリと笑いながら答えた。

 

 

「にしても、あのビッチどこ行きやがったんだよ。電話も出ないし、烏間先生も気にしてなさそうだし」

 

 

隼の呟き通り、烏間は今日も特に気にすることなく、殺し屋との面談のために先に帰った。ちなみに、氷室も授業が終わって直ぐに飛び出していった。ビッチ先生が訪ねてそうなお店などを訪問して、お店の人に聞いてみるとか。こちらは結構心配してる様子。

 

 

「まさか、こんなことでさよならとか無いよな」

 

 

「そんなこと無いよ。彼女にはまだやってもらうことがあるからね」

 

 

千葉の不安に答えたのは、花屋の青年だった。

 

 

「だよねー。何だかんだ一緒にいたら楽しいもん」

 

 

岡野の言葉に、彼はそう、と続ける。

 

 

「君達と彼女との間には充分な絆が出来ている。僕はそれを利用させてもらうだけ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「!!?」」」

 

 

ここでようやく、皆はおかしいことに気付いた。

 

 

「僕は『死神』と呼ばれている殺し屋です。今から、授業をします」

 

 

皆は驚きのあまり何も発する事ができず、無言で次の言葉を待つ。

 

 

「花はその美しさにより、人の心を開く。でも、花が美しく芳しく進化してきた本来の目的は虫をおびき寄せるため」

 

 

「……………お前がビッチになんかしたのか?」

 

 

隼が問い掛けると同時に、律の画面に手紙が表示された。

 

 

「律さん、画像を表示して。隼君も、皆も見てくれ」

 

 

律は画像を表示する。そこには、拘束されているビッチ先生が写っていた。

 

 

「「「!!!!」」」

 

 

「彼女の命を守りたいなら、ここにいるメンバーだけで、僕が指定する場所に来てください。別に来なくても構わない。その時は、小分けにして全員に届けます。そして、次の花は、君たちのうちの誰かに送るでしょう」

 

 

そう笑顔で語る死神。そひて、碧海は自分が信じられなかった。

 

 

(……………こいつは殺し屋。恐ろしいことを平然と口にしているのに、それが嘘じゃないの位分かってる……………でも、どうして………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなに安心できるの……………?)

 

 

隼も、夏休みに神崎に話していたことを思い出した。警戒できないのが、1番恐い……………確か自分はそう言っていた。まさにその通りだ。

 

 

「…………あんたの言ってることは理解したよ。けどさ、ここから無事に帰れる……………そう思ってるの?」

 

 

本音を言えば、話すだけでもかなりの勇気が必要だったが、それでも碧海は立ち上がり、机から銃を取り出す。

 

 

「…………BB弾で倒せると?」

 

 

「あんたが話してる間に、中身を催眠弾に変えた。いくら死神でも、人間でしょ?そもそも、私達がビッチ先生を助ける義理があると?」

 

 

「どうかな?君達は自分達で思ってる以上に彼女が好きだ。話し合っても見捨てると言う結論は出せない……………違うかい?」

 

 

「…………………………」

 

 

碧海は黙って、銃の引き金に手を掛ける。死神は持っていた花を空中に撒き散らす。

 

 

「畏れるなかれ。死神が人を刈り取るのを」

 

 

碧海の銃から弾丸が飛び出した。が、その弾は空を切り、黒板に催眠液が飛び散った。

 

 

「消えた!?」

 

 

碧海は教室の窓から辺りを見回すが、どこにもその姿はなかった。

 

 

「……………逃がしちゃったか」

 

 

碧海は苦虫を潰したような表情を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、3日前の花束に盗聴機が仕込んであったのが分かった。破壊したものの、無意味だろう。木村が、落としていった紙に書いてある文を読む。

 

 

「今夜18時までに指定の場所へ来てください。今、ここにいる全員以外の人間が知った時点でビッチ先生の命はありません……………か」

 

 

「私達を人質にして殺せんせーを誘きだそうって言う魂胆が見え見えだね。ま、そう分かってても来ざるを得ない………………ってのが狙いか……………ま、確かに戦略的には正しいね」

 

 

壁に寄りかかっている碧海が冷静に分析する。

 

 

「これ使うか?」

 

 

寺坂が取り出したのは、超体操着だった。

 

 

「守るために使うって決めたのに、今着ないでどうすんの」

 

 

「あんなビッチでも世話になってんしな」

 

 

中村と岡島が賛同し、一気にそれが伝染する。

 

 

「あ!創真君達………………」

 

 

「「「あ」」」

 

 

碧海に言われて、ようやく皆は彼等の存在を思い出した。それにしても、創真の留守も死神を狙っていたのだろう。未知の力を持っている事も死神は察知していて、そんな彼を相手にするのを警戒したのか。

 

 

「…………やべ。ここにいる俺ら以外に知られたら…………」

 

 

「あ、多分大丈夫!創真君、今日は夜遅くまで捜索するって言ってた!氷室先生も同じ感じ!」

 

 

倉橋の言う通りなら、問題ないだろう。皆はそう結論付けた。

 

 

「こんなとき、創真君ならなんて言うかな?」

 

 

碧海の疑問に、倉橋が答える。

 

 

「すべきことをしろ…………とかかな?」

 

 

「絶対そう言いそうだね~」

 

 

碧海が笑みを浮かべる。

 

 

「よし、一泡吹かせてやろうぜ!」

 

 

「「「おー!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、氷室は

 

 

「そんな客は来てない?そうですか、ありがとうございました」

 

 

「ねぇーお兄さん、うちとそこのホテルで楽しいことしな………」

 

 

「結構です」

 

 

甘い誘惑をきっぱり断って、氷室はランボルギーニに乗り込み、発進させる。そして、電話を掛ける。

 

 

「創真様がピックアップしたお店などなどを全て訪ねましたが、ビッチ先生らしき客は来てないそうです」

 

 

『そうですか。うーん…………氷室さん、無茶言っていいですか?』

 

 

「結構、いつも無茶なこと言ってません?構いませんが」

 

 

『助かります。範囲を、神奈川まで広げたいのですが』

 

 

氷室は思わずブレーキを強く踏む。

 

 

「なるほど。これは至上最高に無茶な要求ですね…………ですが、私そう言う無茶、嫌いではないですよ」

 

 

『ほんとすみません……………今月はボーナス期待しといて下さい。親に頼んどきます』

 

 

「楽しみにしてますよ」

 

 

氷室は通話を終え、ランボルギーニのハンドルを握り直す。

 

 

「とりあえず、似た系統の店を地道に調べますかね?」

 

 

独り呟き、アクセルを踏み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その会話からさらに1時間半後、創真はと言うと

 

 

「……………さてさて、監視カメラよ。我に真実を教えてっちょ」

 

 

椚ヶ丘周辺のあらゆる監視カメラをハッキンクして、カメラの映像を見ていた。

 

 

「創真、無駄だろ。もう何度もやっただろ?」

 

 

「……………………まーね。あーあ、お手上げだ。どうすればビッチを見つけられる?あ、デュオ。前言ってた人間の色々を見れるアレは?」

 

 

「………直ぐには無理だ」

 

 

「そうなのー?はぁ」

 

 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 

 

唐突に電話が鳴った。

 

 

「電話~?誰だよ……………殺せんせー?もしもし?」

 

 

『あ、やっと繋がりました!創真君、何やら胸騒ぎです』

 

 

「はい?」

 

 

『創真君以外の皆との連絡が取れなかったんです………』

 

 

それを聞いた創真は訝しげな表情を浮かべた。創真はホリーに適当に誰かに電話を掛けるように指示する。数秒後、ホリーは首を横に振った。

 

 

「1度、学校に戻ってみます。1時間以内に殺せんせーも来れますよね?」

 

 

『急いで戻ります!では!』

 

 

通話を終えた創真は険しい顔をしていた。そして、ホリー達の方を振り向く。

 

 

「嫌な予感がする。今すぐ椚ヶ丘に戻るよ。それと、氷室さんと烏間先生に連絡を」




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THE spacial story 4/1 PM 19:00


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第120話 死神の時間 2時間目

久しぶりに弟に書いてもらったら、なーんか複雑なお話になってもうた。


自分なりに解釈して、後書きに解説的なの書いてみたんですけど……………まぁ、ここはこうじゃね?とかあったら是非教えてください。修正しときますので。


では、どうぞ!


創真らがようやく異変に気付いた頃、皆は指定された場所に突入した直後だった。指定された建物の中は意外と広かった。

 

 

なので、皆はあちこちに散る。そうすれば、一気に捕まるはずは無いからだ。

 

 

『ちゃんと来たみたいだね。じゃ、閉めるよ』

 

 

建物の扉が勝手に閉まった。

 

 

「ったく、覗き魔かよ………で、ちゃんと約束は守ったんだが………ビッチは何処だ?」

 

 

『やはり彼女を大切に思っているようだね、隼君。なら、会わせてあげよう』

 

 

ガコッ!!

 

 

「な………………」

 

 

「部屋全体が下に…………!?」

 

 

そして、最下部まで着くと、そこには死神がいた。

 

 

「捕獲完了。予想外だった?」

 

 

「なるほどね。この部屋は昇降式か。これなら皆を一斉に捕獲できるね」

 

 

碧海がしてやられたり、と言いたげな顔を作る。

 

 

「くそ!出しやがれ!」

 

 

寺坂や他の生徒たちは壁をガンガン叩く。

 

 

「君達にはタコを誘きだす人質になってもらう。奴がおとなしくくれば誰も殺らない」

 

 

「…………じゃあ、今は殺さないんだな?」

 

 

岡島が怯え気味で聞く。

 

 

「ああ」

 

 

「俺達が反抗的な態度をとって、頭に来て殺したりは?」

 

 

「しないよ。子供だからってビビりすぎだろ?」

 

 

死神の答えに岡島はにやっと笑った。

 

 

「それは結構な事だぜ」

 

 

その後ろでは、竹林が爆薬を。奥田はカプセル煙幕を持っていた。

 

 

「ここだ、竹林!空間の音ここからした!」

 

 

三村に言われて、竹林は爆弾を手際よくセット。奥田も煙幕を充満させる。

 

 

そして次の瞬間────────────

 

 

ドコォンッ!!

 

 

「む………………」

 

 

爆風で帽子が飛ばぬように、手を頭に添えていた死神。煙幕がいくらか晴れ、檻の方を見てみると、さっきまで捕らえていた生徒は誰1人いなかった。

 

 

「やるね……………ちょうど良い。殺さない程度で、肩慣らしの相手になってもらおう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、創真は

 

 

「いないね…………」

 

 

校舎に戻ってきたは良いものの、誰もいない。氷室は直ぐに連絡がつき、Uターンしてきてるが、問題は烏間先生。面接が終わったのか否かは分からないが、サイレントマナーにでもしてるのか、電話に出ない。

 

 

「さて、皆はどうしたのやら………」

 

 

教卓の上に座って、考え込む創真。

 

 

「創真、ここら辺の監視カメラをハッキングだ。何かしらの手掛かりが見つかるかもしれねぇ」

 

 

「あ、なるほど。キバット、良い名案だ」

 

 

創真はパソコンを開き、直ぐ様周辺のカメラをハッキング。ホリー達もパソコンを覗き込む。皆は画面に流れる複数の録画映像を直視する─────。

 

 

「!!ストップ!創真、ちょっと貸して」

 

 

ホリーが何かに気が付いた様子。ホリーにパソコンを貸すと、高速で操作していく。数秒後、複数の内の1つの映像をを見せる。

 

 

「ほら、見て!ぶれてて顔とかは分からないけど、これ、超体操着じゃない?このズボンの色とか絶対そうだよ!」

 

 

「言われてみれば、確かに…………」

 

 

映像を少しずつ進めると、数え間違えがなければ、クラス全員分の人数が写っていた。

 

 

「このカメラは交差点前のコンビニのカメラ…………………超体操着まで着て何処かにいくって事は、何かあったに違いないな。じゃあ、その何かとは何だろう?」

 

 

「ん?なんだこりゃ?」

 

 

キバットが前原の机に何か落ちているのに気付いた。

 

 

拾ってみると─────

 

 

「……………花の花弁だね、これ」

 

 

「何故ここに花が?放課後に掃除はしたはずだから不自然だな………………………」

 

 

デュオの呟きに眉を潜める創真。

 

 

「カメラの映像に花……………そして、ビッチ先生の失踪…………………これ、全部繋がってるんじゃね?そういや、花と言えば…………ビッチ先生の失踪の原因を何割か作ったものだし。まさか……………」

 

 

「なんか分かったのか?」

 

 

「もしかしてさ…………」

 

 

「創真様!」

 

 

創真が何か言おうとしたとき、教室に来たのは氷室さんだった。

 

 

「創真様、烏間先生は?」

 

 

「電話が繋がりませんね。殺せんせーはもうそろそろ来ると思うんですがね」

 

 

「ええい、こんな時に…………!!」

 

 

氷室は焦燥の余りか、苛立ちを見せる。

 

 

「お待たせしました!」

 

 

漸く殺せんせーが到着した。

 

 

「創真君、皆さんを見かけましたか?」

 

 

「いや。ただ、交差点前のコンビニのカメラに皆と思わしき人影が写ってた。それと、これ」

 

 

殺せんせーに花弁を見せる。

 

 

「所々に花のパーツが落ちてる。掃除はしたのに、ここに花が落ちてるなんて不自然だし、この花はこの辺には生えてない。乃ち、部外者が持ち込んできた可能性が高い」

 

 

「なるほど。そう見て間違いなさそうですね」

 

 

と、そこへ

 

 

「なんだ?創真君におまえも。何してるんだ?」

 

 

烏間先生がようやく来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………なるほど。監視カメラの映像に、教室に落ちていた花。それにイリーナの失踪……………確かに偶然とは考えにくい。何かしらの繋がりがありそうだ」

 

 

「まさかビッチ先生に何かあったんじゃ………」

 

 

「その線が高いな…………………ん?烏間先生、その鞄から見えてる花はなんだ?」

 

 

デュオが訊く。

 

 

「これか?これは、ここに来る途中で花屋から貰ったものだ」

 

 

デュオは引っ手繰るかのようにして、花を取り出す。そして、前原の机にあった花弁と見比べる。

 

 

「一緒だね、種類」

 

 

「ああ」

 

 

「同種の花……………なら、ここに来たのは烏間先生が会ったその花屋の可能性が高そうだな」

 

 

キバットの推理は、創真も同じだった。

 

 

「とにかく、なんとかしねぇとな…………ところで殺せんせーは何してんだ?」

 

 

キバットが先程から犬の格好をして床に這いつくばっている殺せんせーに話しかける。

 

 

「…………ヌルフフフフ。掴みましたよ。生徒と花の匂いを」

 

 

「あ、そっか殺せんせーは地獄鼻。匂い辿れば、皆がいるところに辿り着けるかも、って事か」

 

 

創真はふむふむ、と感心する素振りを見せる。

 

 

「よし、行くぞ。生徒が心配だ」

 

 

「勿論です、烏間先生。あ、それとリードを持ってください」

 

 

「犬のまま行くんだな…………」

 

 

キバットは苦笑いしながら云った。

 

 

7人はうっすらと出てきた三日月に照らされるなか、校舎を飛び出した。




THE NEXT story 4/2 PM 22:00


THE spacial story 4/1 PM 19:00

補足


創真の推理を順を追って解説しよう!


ハッキングで皆が何処かに向かってるのが分かります→E組の校舎近辺にはない花の花弁を見つけます→誰かこのE組に来たんじゃね?→花弁を見て、ビッチを連想→なんかこれらは全て繋がってんじゃね、と仮説を立てます→烏間先生が貰った花と落ちてた花が一致します→ここに来たのその花屋じゃね、と推測します→結局その花屋が1番怪しいんじゃね(つーか推理の中でそいつしか人物出てないし)


……………的な感じです。


ぶっちゃけ、なんか推理に怪しい点とかあるかも知れませんが、僕に言われてもねェ。書いたの弟だし(責任転嫁)


さて、明日はコラボ編!お楽しみに!


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第121話 死神の時間 3時間目

お気にいり登録数、111人!



1が三つ揃ってる……………111人目に登録した人は良いことあるかもしれませんね~。


では、これからもよろしくです!


どうぞ!


『聞こえるかな?E組の皆。ここから外に出るための扉のロックは僕の虹彩でしか開かない。だから、僕を倒さなければ、ここから出られないってこと。だから、どこからでも掛かっておいで。僕も腕試し代わりに少し体を動かしたいからね」

 

 

マイク越しにそう言われ、スピーカーの電源は切れた。

 

 

「よし……………ここで固まってちゃダメだ。グループを3つに分けよう」

 

 

磯貝の提案で、Aグループを戦闘班。Bグループをビッチ先生の救出班。Cグループを脱出への出掛かりを捜す班に別れた。

 

 

ちなみに、隼はA班。碧海はB班だ。

 

 

「よし律、円滑な連絡は任せるぞ」

 

 

『やる気しねぇ…………死神さんに逆らうとかまじありえね~』

 

 

律、あっけなく終了。

 

 

「無力化されたのか……………この短時間で………」

 

 

やはりただ者ではないと、皆は実感する。

 

 

「トランシーバーアプリがあるから、それ使っていこう」

 

 

「よし…………散るぞ!」

 

 

磯貝の指示で、皆は死神のアジトをバラバラに散って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

A班

 

 

「で、どういう方針で行く?」

 

 

隼が皆に尋ねる。

 

 

「死神は必ず不意打ちで襲って来るはず。だから不意打ちをかわしてバトルに持ち込む。それで、一斉にスタンガンで襲い掛かって、気絶に追い込む」

 

 

「確かに、殺し屋は正面戦闘は得意じゃないからな」

 

 

「それなら、行けるかも」

 

 

カツーン

 

 

──────────足音。そして、どんどん近づいてくる。

 

 

「!!」

 

 

まさかの正面から死神は来た。

 

 

だが、姿が見えない。雰囲気さえも自在に操ってるとでも言うのか。

 

 

「バカが!」

 

 

「ノコノコと出てきやがって!」

 

 

吉田と村松がスタンガン片手に、懐に飛び込む。が、その攻撃は空を切った。そのまま肘打ちされ、意識を刈り取られる。

 

 

「殺し屋になって、最初に極めたのは戦闘技術だ」

 

 

そう語りながら死神は木村を吹き飛ばす。

 

 

「殺し屋には99%いらないが、これがないと1%の標的を殺れない…………世界一を志すなら必須さ」

 

 

死神は瞬時に茅野の前に移動する。

 

 

(((な…………!?)))

 

 

皆が驚く暇もなく────────

 

 

ベキィ!!

 

 

「あっ…………が………」

 

 

膝蹴りが茅野を直撃する。メキ、バキ、ベキと骨が折れるような音が響く。

 

 

「…………っと。アバラ折っちゃったか。残りの人質は粗末に扱えないな」

 

 

その言葉に、渚の目の色が変わる。

 

 

「どいて皆。僕が殺る」

 

 

渚はナイフを取り出し、ゆっくりと死神に近付く。怒りに駆られたのだろうか?いや、違う。……………あの技……………猫だましをやる気だ。

 

 

皆は瞬時に、渚の思惑を理解する。渚は突入前にこう言っていた。

 

 

ナイフの方を警戒していたら、猫だましを。ポケットの方を警戒していたら喉元にナイフを。どっちにしても隙は一瞬作るから、その隙に一斉に………………と。

 

 

渚は横目で茅野が大丈夫というサインを確認する。超体操着はゲル状の骨組みで、強い衝撃を受けると硬く固まり、音をたてて崩れるダイラタンシー防御フレーム。その音をアバラ骨の破壊と思い込み、それに渚が激怒したと思っている。

 

 

渚と死神の距離がどんどん縮まっていく。

 

 

ついに目と鼻の先にまで近付き、渚はナイフを手放し、猫だましを…………………………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

渚の目の前に死神の手があった。そして…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バアァン!!

 

 

それは離れている皆の耳にも大きく響く音だった。

 

 

「渚!?」

 

 

思わず隼が叫ぶが、渚は何も答えない。

 

 

「フフフ………」

 

 

死神の姿が消える。

 

 

「どこに行」

 

 

隼は最後まで言い切れなかった。何故なら後ろから強い衝撃が襲ったからだ。5秒足らずで、死神は全員の意識を刈り取った。そして、ふわりと渚の前に戻ってくる。

 

 

「クラップスタナー。人間の意識の波長の山が最も敏感なときに、音波の最も強い山を当てる。当分は神経が麻痺して動けなくなる」

 

 

模範解答を上の空で聞いていた渚は膝をつき、力尽きる。

 

 

「さて……………残りは何人かな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、B班はビッチ先生の捕まってる部屋のドアの前へたどり着いた。三村が爆弾をセットし、起爆の用意をする。そんな彼らから少し離れたら場所で、碧海は耳につけてる通信機に耳を傾けていた。

 

 

(隼の超体操着に通信機をつけといたけど……………全滅しちゃったみたいだね。まだ1分前に散ったばかりなのに……………)

 

 

「碧海ちゃん?どうかした?」

 

 

「あ、ごめん莉桜ちゃん。少し考え事してたよ」

 

 

「ほら、中入るよ」

 

 

中村に促され、碧海も中に入る。中では既にビッチ先生を縛っていた縄を切り、気絶しているビッチ先生を杉野が背負っているところだった。

 

 

「じゃあまずC班と合流しよう。岡島君と三村君が先導して。私は後衛につく。碧海さんは真ん中で直ぐに戦闘が出来るように備えといて」

 

 

「了解、片岡さん」

 

 

皆は出口に向けて歩き出す。

 

 

「良かった~ビッチ先生が無事で」

 

 

「まだ教えてもらいたい事が沢山あるもんね」

 

 

倉橋と矢田が話しているのを感じながら、碧海はスマホで時間を確認する。間もなく7時になろうとしていた。

 

 

(さて…………創真君気付いてるかな?気付いてればそろそろ………)

 

 

ドサッ

 

 

皆が振り向くと、杉野と片岡は倒れ、代わりにビッチ先生が立っていた。

 

 

「ずっと自分の本来の姿を忘れていたわ。彼のお陰で目が覚めた。さて…………逝かせてあげるわボーヤ達」

 

 

「まさか死神につくとは…………でも、私達も訓練を受けてる。この人数差で勝てると?」

 

 

「そう思うのアオミ?なら、最後の授業をしてあげるわ」

 

 

ビッチはゆっくり近付き、襲い掛かかる…………!!

 

 

「あっ、痛うっ!!」

 

 

「へ?」

 

 

「小石踏んだ………………」

 

 

「はぁ………………」

 

 

「大丈夫かよ…………」

 

 

半分呆れ気味で矢田と三村が起こそうと近付く。

 

 

プシュ

 

 

ビッチ先生はいきなり立ちあがり、2人の首に注射器で何かを投与する。そのまま岡島と中村にもたれ、注射。そして、落ちていた布を足で手繰り寄せ、神崎と速水の方に投げ、布越しに注射する。近くにいた倉橋の首にも容赦なく打ち込む。

 

 

(後はアオミだけ………!!)

 

 

突然の攻撃に固まっているのか、動かない碧海にビッチ先生はスッと近付き、首筋に注射─────────!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガシッ!!

 

 

「!?」

 

 

「ざんねーん」

 

 

注射器を持っている手を、しっかり掴む。ビッチ先生はもう一方の注射器で打とうとするが、碧海の蹴りで床に落ちる。

 

 

「私はね、創真君から体術教わってるんですよ。創真君の教えは容赦ないですよ。私が女なのを関係なく、普通に蹴りを入れてきたりしますから。まぁ、でも特殊な空間でやってるんで、痛みはないんですけど、ね!」

 

 

容赦なく、ビッチ先生に蹴りを喰らわす。至近距離からの蹴りを対処できる訳もなく、ビッチ先生は苦痛の表情を見せる。

 

 

「さて、死神が来ると相手が悪い。ここは一旦逃げよ」

 

 

碧海は懐から球体を取りだし、スイッチを入れてビッチ先生に向けて投げる。その球体のライトの部分が赤く点滅する。

 

 

(まさか爆弾!?)

 

 

ビッチ先生は慌てて部屋を出る。

 

 

すると

 

 

プシュー!!

 

 

「(煙幕!?)」

 

 

「流石に殺しはしないよ。先生だし」

 

 

そんな声が聞こえたかと思うと

 

 

ドコーン!!

 

 

爆発音。直ぐに煙幕は晴れ、中の様子がうっすらと見えてくる。部屋のまん中に大きな穴が空いていた。綺麗にあいた穴を覗き込むが、碧海の姿はない。

 

 

『イリーナ。今の音は?』

 

 

「床に穴を開けてさらに下へ逃げたわ。追ったほうが良いかしら?」

 

 

『いや、良いさ。僕は残りの生徒の所に行くとする』

 

 

通信は切れ、ビッチ先生は暫く突っ立っていたが、身を翻し、部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛たた……………流石創真君の秘密兵器。ちゃんと説明通りの威力だね」

 

 

さらに地下へと降りた碧海は歩きながら呟く。さっきの爆弾をどう調達したかと言うと、前に体術の特訓で武器がたくさんある秘密の部屋、王の間に来たときに何個か役立ちそうなのを取ったのだ。

 

 

─────────許可は取ってないが。

 

 

「まぁ、後で怒られるかも…………ま、いっか」

 

 

ポジティブな碧海は階段を降り、重厚そうな扉を開ける。ドアから向かって右側は檻だ。

 

 

「……………ここはあいつのアジトかな?」

 

 

檻は固く、壊すのは難しそうだった。変わって左側は、まだ道が続いてるようだ。

 

 

「ま、行くしかないよね……………」

 

 

ぶっちゃけあんまり行きたくないが、足を1歩ずつ進めていく。だんだん暗くなり、少し怖くなる。ライトを使うと位置がばれそうなので、自分の目を頼りに進んでいく。

 

 

「どこまで続くんだろう……………?」

 

 

そんな碧海の疑問に答えてくれるものは誰もいない。

 

 

ゴン!

 

 

「痛!」

 

 

何かに頭をぶつけた。手を前に出すと、コンクリートの感触が伝わってくる。スマホのライトをつけてみると…………単に壁だった。

 

 

(まさかの行き止り……………?)

 

 

碧海はライトを上に向けて見る。

 

 

「ええ…………天井が見えないよ……………」

 

 

スマホのライト程度では上まで見えない。

 

 

「ほんとここ何処…………?」

 

 

「教えてあげようか?」

 

 

「うん、是非お願………………」

 

 

言いかけた所で後ろを振り向くと、死神がいたのは言うまでもない。碧海は引きった笑顔のまま固まる。

 

 

「ここは国が作った地下放水路。僕のアジトと繋げておいたのさ。……………さて、君以外は全員捕らえた。で、どうする?」

 

 

こりゃ無理だ……………碧海はそう思い、静かに手を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーあ。ビッチ先生から逃げれたと思ったら……………はぁ」

 

 

「彼から逃げれるとでも思ってたのかしら、アオミ」

 

 

「………………ビッチ先生位なら瞬殺だったのにな~」

 

 

「………………………」

 

 

ビッチ先生は碧海を一瞬にらみ、檻の外に出る。

 

 

「さて………お次は烏間先生だ。彼を捕らえておけばメリットがある。これで計画は仕上がる」

 

 

こいつならやりかえない、と皆は直感する。それにしても……………なんて強さだ。今の自分達が100人いても勝てない。桁違いだ。そう結論付けるしかなかった。

 

 

そして、皆のどこか心は沈んでるように見えた。

 

 

「…………………………………あ!!」

 

 

突然、碧海が大きな声を上げた。

 

 

「どうしたの碧海ちゃん?……………あーなるほどね」

 

 

カルマも納得した様子。

 

 

「ねー死神さん。モニター見てみ。あんた計算違いしたみたいだよ」

 

 

カルマに言われて、死神もモニターに目をやる。

 

 

そして表情を曇らせた。

 

 

「やれやれ……………ここで来たか」

 

 

モニターには、烏間先生、殺せんせー、そして創真が映っていた。監視カメラに気付いた創真がニヤリと笑ったかと思うと、映像が途絶えた。




THE NEXT story 4/4 PM 22:00


明日、塾の模試があるのでお休みです。


と言うわけで、水曜日にまたお会いしましょう!


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第122話 死神の時間 4時間目

楽しんでください!


カメラの映像が途絶えた直後、皆のいる檻が僅かに振動した。ちなみに地震ではない。デュオが憑依した状態の創真がドアを蹴り飛ばしたのだ。ちなみに、元から鍵は掛かってなかったのだが…………。

 

 

「やれやれ…………しょうがない。プラン16だ。とりあえず所定の位置まで降りてきてもらおう」

 

 

「私の出番ね」

 

 

(あ…………不味い。創真君はビッチ先生の裏切りを知らない…………)

 

 

碧海だけでなく、皆の頭にも過ったが………ここからではどうしようもなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「部屋が……………下がってるな」

 

 

憑依を解除したデュオが呟く。殺せんせー達のいる部屋は最下部まで下がり終えた。目の前には、ビッチ先生に銃を構えている青年がいた。

 

 

「お前!この前の花屋………!!」

 

 

「そうだよ。聞いたことないかい?『死神』の名を」

 

 

「知らね」

 

 

即答の創真。ちらっと創真を見た死神はビッチ先生を殺せんせー達の方に投げる。ビッチ先生の腕には枷をつけられている。

 

 

「彼女と生徒全員の首に爆弾をつけた。僕の指示1つで直ぐに爆破できる」

 

 

「………人質で脅せば、私がすんなり死んでくれると?」

 

 

殺せんせーの質問にさぁね、と死神は笑顔で答える。

 

 

(さて……………こいつをどうやって倒すか。ホリーのスピードで襲いかかれば、無力化出来るか…………?)

 

 

創真が死神を見据え、対抗策をあれこれ思案する。その時、銃声がした。死神の仕業か?

 

 

─────────いや、違う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビッチ先生だった。

 

 

「な………………!?」

 

 

ビッチ先生が狙ったのは、殺せんせーの触手。そして、殺せんせーの立つ床が開いた。落とし穴だ。

 

 

(直ぐには飛べない……………捕まらないと!)

 

 

突然の事に動揺を隠せない殺せんせーだが、取り敢えず壁に張り付こうとする。

 

 

が、

 

 

ダァン!!

 

 

触手が弾かれた。

 

 

触手の速度を見切っている死神の放つ弾丸が、殺せんせーが壁に張り付こうとするのを許さない。そして、皆がいる牢屋に落ちてしまった。落とし穴から、大丈夫、とか殺せんせーを心配する声が聞こえてくる。

 

 

「さぁ、お別れを言いに行こうか」

 

 

死神に促され、烏間先生と創真、氷室、ホリーらも足を進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「気に入ってくれたかい殺せんせー?ここが君の死ぬ場所だ」

 

 

「……………ここは?」

 

 

「国が作った地下放水路さ。上の操作室から指示を出せば、近くの川から毎秒200tの水が流れ込む。そして、君の体は対先生物質の檻に押し付けられ、ところてんじょうになるって訳さ」

 

 

「………………………ん?待てよ……………その計画、皆も巻き込むよな?」

 

 

「そうさ。今さら待てない」

 

 

創真の問いに、死神は当然と言いたげな表情で答える。

 

 

「……………それを知ってて協力したんてすかね?イリーナ先生」

 

 

「そうよ。プロとして結果優先で動いただけ」

 

 

「………………なるほど。プロとしては感心しますが…………」

 

 

氷室が感情の読めない声で呟く。

 

 

「さて、時間もないし、操作室へ行くとしよう」

 

 

扉へ向かう死神の肩をガシッと掴んだのは………創真だ。

 

 

「……………僕を止める気かい?言っとくけど、君も花束の一部に加わってる筈だったんだ。ましてや子供である君なんて、瞬きしてる間に殺せる」

 

 

死神が警告した瞬間、創真の目の色が変わった。

 

 

「ほほう。なら殺ってみなよ。殺れるものなら」

 

 

ソグッッ!!

 

 

皆の背筋が急速に冷たくなった。ホリー達も思わず冷や汗を掻く程の。思わず死神は反射的に銃を取り出し創真に向けてしまった。

 

 

「…………僕からも警告しとこう。今すぐ皆を解放しろ」

 

 

「…………断ったら?」

 

 

「あんたを止める」

 

 

「へぇ……………」

 

 

死神は面白そうに呟く。

 

 

(今の強大な殺気に思わず反応してしまったが…………彼に構ってるよりも、今は標的の暗殺が優先だ)

 

 

心のなかでそう呟くと、死神は扉の向こうへ消えて行った。

 

 

「さぁて、ボコボコにしてやるよ!」

 

 

「待て、危険だ!ここにいるんだ!俺が行く!」

 

 

烏間が止めるが創真はガン無視して、部屋を出ていった。

 

 

「案ずるな。俺が憑依して一緒に行ってやる。ホリー、お前は水が放出された時の対策でも考えておけ。烏間先生と氷室さんはホリーにテレポートしてもらって操作室のある建物の近くに先回りして水を出させるな。それと…………個人的に、あんなやつに死神の名を名乗らせるのはどうにも嫌なんでね」

 

 

デュオも創真を追って走り始めた。

 

 

「オッケー…………って言ってもやったことないからな………」

 

 

デュオの指示にホリーが頭をポリポリ掻きながら答える。

 

 

「やれやれ、無茶がお好きなことで」

 

 

「呑気に言ってる場合か!今からでも連れ戻して……」

 

 

「そるは最適解ではないです。それに、烏間先生を行かさなかったのは、防衛省の権限を使えば、直ぐに操作室の中に入れ、中にいる人を避難させれて、死神による新たな死亡者を出さなくて済むからだと考えたからではないですか?」

 

 

なるほど。もし、烏間が死神を追っていれば、一般人ある創真らでは、操作室にすんなりと入るのは難しいだろう。しかし、烏間は国の機関の人員。防衛省の名を使えば、すんなりと行けるだろう。それに、先回りしておけば、死神を挟み撃ちに出来る。

 

 

「さて、ホリー君。操作室のある建物の近くに転送は出来ますか?」

 

 

「そんなの余裕だよ。でも、中まで行かなくて良いの?」

 

 

「それだと、不法侵入で捕まりますよ…………」

 

 

「なるほど!じゃ、早速《テレポート》」

 

 

ホリーが唱えた瞬間、2人の体は光に包まれ、消えた。

 

 

創真とデュオ、烏間と氷室。それぞれが今の最適解の行動を求め、行動を開始した。




THE NEXT story 4/5 or6 PM 22:00


デュオとホリー行かせれば一瞬で解決したんじゃね、とか皆、言うなよ?


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第123話 死神の時間 5時間目

新学期!!


イエーーーーーーーーーーーーーイ!!


「フン。ばかね、創真も。確かに創真の実力はE組の中でも突出してるけど、死神はそれ以上よ。例え、デュオが力を貸そうとも」

 

 

「ふん、バカはそっちだビッチ先生。創真とデュオをなめちゃいけないね~」

 

 

いつもの調子でホリーがそう云う。

 

 

「てか、皆仲間だと思ってたんだぜ…………なんで裏切ったんだビッチ先生………」

 

 

皆の気持ちを代弁したキバットの問いに、ビッチ先生は表情を少し曇らせた。

 

 

「なら、俺様が当ててやるよ。あんたはE組で過ごしてきて、殺し屋の感覚を忘れかけてきた。それで、皆を殺して、私は冷酷な殺し屋とアピールしたいだけだろ!?」

 

 

ダァンッッ!!

 

 

銃声が響く。ビッチ先生がキバットに向けて撃ったのだ。

 

 

「………図星か。ちなみに、俺様にそんな銃で殺せると思ったら大間違いだ。大砲でも持ってこなきゃ、俺様は殺せない」

 

 

キバットの額に当たった銃弾は跳ね返り、壁に突き刺さったのだ。

 

 

「……………黙りなさいコウモリ!!考えたことなかったのよ!!私がこんなフツーの世界で過ごせるなんて。…………でも、私の世界はそんなのじゃない……………あんたには分からないだろうけど」

 

 

その時、ビッチ先生の通信機から死神の声がしてきた。

 

 

『イリーナ。所々に罠を仕掛けた。創真君がてこずってる間に撃て』

 

 

「………オッケー」

 

 

ビッチ先生は首輪の爆弾をはずして、駆けて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒い外套を纏った創真(デュオ憑依体)は通路を進んで行く。通路を曲がると、目の前には扉。開けようとする創真の手が止まった。

 

 

(……………何か嫌な予感がする。トラップでも仕掛けてんのかね……………)

 

 

少し思案していた創真だが、時間もないので……………

 

 

開けた。

 

 

 

ドカァン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「!!」」」

 

 

突如、モニータに爆煙が見えた。

 

 

「爆弾トラップ…………創真君は!?」

 

 

皆は注目する………………すると、煙が薄れ、人影が見えてきた。創真は無事のようだ。

 

 

「殺せんせー、どうやって避けたのか分かる?」

 

 

「いや………何もしてないように見えたんですが…………」

 

 

※皆はコラボで披露した『空間断絶』を知らない。

 

 

「なーんだ。この調子なら、僕が止めるまでもないね」

 

 

「ホリー君、もう何か策を考えてあるの?」

 

 

矢田の問いに、ホリーは笑顔でこう答えた。

 

 

「いや、まだ」

 

 

「「「考えとけよ!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ここからダイジェストで、創真がどうやってトラップを回避したか紹介していこう。

 

 

・機関銃を持った犬がいた

 

 

→黒獣出したら大人しくなった。

 

 

・鉄骨で打たれます。

 

 

→空間断絶で威力を殺します

 

 

・自動式ボウガンで射られる

 

 

→命中と同時に質量を消したので、木片が当たったかのように弾いた。

 

 

・鎖でグルグル巻きにされる

 

 

→怪力で破る

 

 

・火炎放射を喰らう

 

 

→空間断絶で切り抜ける

 

 

・ナイフが飛んでくる

 

 

→質量消して、後はさっきと同じ

 

 

 

《結論》

 

 

デュオの異能力が無ければ負けてた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、勢いを止められない創真を見て困ったのは死神だ。

 

 

(……………このペースじゃ、間もなく追い付かれるな。しょうがない、1度止まって迎え撃つか)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、もうそろそろ操作室に着くはず…………っ!!」

 

 

死神の気配を感じ、飛び出そうとするのを踏み留まる。

 

 

「殺気の察知も完璧か。君、殺し屋に向いてるよ」

 

 

「そりゃどーも。にしても、トラップの種類多すぎじゃね?」

 

 

「殺しの技術を身につけたら、片っ端から使いたくなるものさ。お次は………」

 

 

死神が指をパチンと鳴らすと、銃弾が飛んできた。突然の攻撃に異能を展開する間もなく、弾丸は創真の頬をかすった。

 

 

「やれやれ……………ここで、か」

 

 

撃ってきたビッチ先生を創真はチラリと見る。

 

 

「あなたを殺すのは不本意だ、ビッチ先生………………死にますよ?」

 

 

「別に構わないわ。あんたには理解できないだろうけど、彼は理解してくれた。僕とお前は同じだって」

 

 

「……………同じ?」

 

 

「そうだね。イリーナなら、僕の気持ちを分かってくれる」

 

 

そう言って死神はスマホの画面をタップした。

 

 

ドォォン!!

 

 

「…………………捨て石に使おうとね」

 

 

天井が崩れ、2人の姿は見えなくなる。死神は少しの間瓦礫の山を見つめていたが、身を翻して操作室へ向かおうと足を一歩進めた時だった。

 

 

瓦礫が吹き飛ぶ音がした。

 

 

「……………あれで生きてるとは。流石に驚いたよ」

 

 

「ふん。これが狙いだったって訳か。さて、覚悟は出来てるか?」

 

 

「良いのかい?放っておいて」

 

 

誰を…………と聞く前に創真は分かった。後ろを見ると、ビッチ先生が瓦礫に埋まっているのが見えた。

 

 

「君やタコ単体ならこの罠も抜けれたかもしれない。彼女はそんな怪物を惑わすために雇った。さて、最後の仕上げを済ませてこよう」

 

 

死神は今度こそ足を進めた。

 

 

「………は?いやだから、逃がすとでも思ってるのか?」

 

 

進路を塞ぐ瓦礫を退けようと、手を掛けたとき、スマホから声がした。

 

 

『創真君!聞こえますか創真君!』

 

 

殺せんせーの声がした。

 

 

(俺が瓦礫を退けておく)

 

 

デュオが憑依を解除し、瓦礫の排除に取りかかるなか、創真は1人通信機に向かって喋り出す。

 

 

「何です?騒がしいなぁ………」

 

 

『やっと繋がりましたよ!今の爆発音は!?』

 

 

「いや、ふつーに天井落とされただけ。僕は何ともないけど、ビッチ先生は埋まった」

 

 

『え!?』

 

 

「ま、 時間勿体無いし自業自得だから先行きますね。瓦礫どき終えたし』

 

 

『ダメ!!何で助けないの創真君!?」

 

 

「陽菜乃………………」

 

 

すると、瓦礫をどき終えたデュオが近付いてきた。

 

 

「愚者め。奴を助けた所で、時間の無駄に加え、また裏切るかもしれん。それを分かった上で言ってるのか?」

 

 

デュオがくだらないと、吐き捨てる。

 

 

が、

 

 

『そんなの分かってるよ!15の私が言うのもアレなんだけど…………ビッチ先生、まだ20だよ!?』

 

 

倉橋は続ける。

 

 

『多分さ、ビッチ先生は安心のない環境で育ったからさ…………大人の欠片をいくつか拾い忘れたんだよ』

 

 

「「…………………………」」

 

 

『だから助けてあげて。創真君、デュオ君』

 

 

創真とデュオの2人は暫く黙っていた。そして、口の端で軽くフッと笑った。

 

 

「やれやれ。このE組はお人好しばかりのようだな…………分かった分かった。助けてやりますよ」

 

 

「…………だが、時間に余裕が無くなるかもな」

 

 

『それなら大丈夫だぜ!作戦があるからな!だから、追わずにそこで待っていてくれ!死神は戻ってくる筈だから!』

 

 

「……………了解」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……………陽の当たる世界は、私の居場所じゃない。……………裏切られて死ぬくらいがちょうど良かった…………)

 

 

薄れ行く意識の中、ビッチ先生はそう考えてた。間もなく、意識が完全に無くなろうとした時……………自分の上に折り重なっている瓦礫が赤く光始めた。何だろうと思う間もなく……………瓦礫がどんどん自分から離れていく。

 

 

「…………生きてます?」

 

 

そう声をかけたのは創真だった。

 

 

「あんた達……………何で…………」

 

 

「言っておくが、皆から言われたから助けてやっただけだ。言われなかったら、とっくに置いて行った。皆に感謝するんだな」

 

 

異能力を使って瓦礫を持ち上げているデュオがムスッとした顔で云った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、死神は

 

 

「…………参ったね。先回りされてたとは。なら、そこを退かないと今すぐ生徒全員の首輪を爆発させていくとでも言ってみるか」

 

 

操作室のドアの前で気配を察知した死神は、スマホを操作して直ぐに起爆出来るように準備を進めていく。その過程で、死神は気づいてしまった。

 

 

「な……………檻に誰もいない!?」

 

 

檻がすっからかんと言うことに。




THE NEXT story 4/6 PM 22:00


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第124話 死神の時間 6時間目

ついに決着!!


「どういうことだ…………?どうやって檻から…………まぁ良い。なら、2、3人殺してマイクで脅せば出てくるはず!」

 

 

そう確信して、死神は2、3名の起爆ボタンを押す。すると、画面の中央で爆発が見えた。あの首輪型の爆弾が爆発したのだ。

 

 

「外して行っただと!?…………くそ!なら、振り出しに戻すまで!」

 

 

死神はドアの前から引き返して行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………首輪が爆発したよ。全部、計画通りだね」

 

 

ホリーが笑いながら呟く。

 

 

「これを見た死神は引き返す筈。結果が分かるまでこのまま待機だ」

 

 

死神に一泡吹かせようと、三村が考えた作戦はこうだ。

 

 

まず、キバットにビッチ先生が付けてた爆弾を持ってきてもらい、イトナが鑑定。

 

 

イトナ曰く、乱暴に外しても爆発しないとのこと。と、言うわけで爆弾は全部外した。

 

 

そして、次に檻の外にある監視カメラに注目。カメラ……………いや、盗撮のプロフェッショナルの岡島が言うには、強めの魚眼タイプである。そして、このタイプなら、正確に写らない場所があるとのこと。で、超体操着の迷彩を施して、そこに肩車で張りついて完成。ちなみに、殺せんせーは素っ裸で皆の隙間を自然に埋めてる。

 

 

「で、結局僕の出番は無しか」

 

 

透明化しているホリーが幾らか不満そうに呟く。

 

 

「てか、結局思い付いたのか?」

 

 

同じく透明化しているキバットが尋ねる。それに対してホリーは即答する。

 

 

「いや」

 

 

「…………………もういいわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………ん?」

 

 

「どうしたのデュオ?」

 

 

「戻ってきた」

 

 

ビッチ先生の手当てをしていたデュオがスッと立ち上がる。無論創真もだ。

 

 

「あのねービッチ先生。あなたが育った世界とは違うけど…………皆がいる世界にはあなたが必要だと思いますよ」

 

 

「……………!!」

 

 

創真の言葉にビッチ先生は大きく目を見開く。言いたいことを言い終わったのか、創真とデュオは去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真が去って間もなく、死神がビッチ先生の前に現れた。

 

 

「イリーナ。創真君は?」

 

 

「気付いたらもういなかったわ。ひどいじゃない、死神。私ごと爆破するなんて」

 

 

「…………いゃあ、ごめんよ。ああでもしなきゃ目的が達成できなくてね」

 

 

笑顔でさらっと言う死神を醒めた目で見つめるビッチ先生。

 

 

「…………別に良いわ。それと、あんたに1つ言っておきたかったんだけど」

 

 

「なんだい?」

 

 

「後ろの警戒もちゃんとした方が良いわよ」

 

 

「え………………?」

 

 

ガシッ!

 

 

「はい、捕まえた~。鬼ごっこは終わりだよ三流君。君のミスを教えよう。まず、1つ目。信頼できる仲間を作らなかったこと。2つ目。自分の技術を過信しすぎたこと。3つ目。僕を本気にさせたことさ!」

 

 

肩をつかんでる創真から離れようとするのだが

 

 

「あ、足が動かない…………!?」

 

 

「ビビっちゃった?なら、動かしてやるよ!」

 

 

その瞬間、死神の身体が勝手に後ろへ吹っ飛び、立坑へと身を躍らせる!

 

 

「さぁ、けりをつけよう」

 

 

創真も死神を追って、飛び降りる…………………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真が立坑の底へと着地したとたん、コンクリートにヒビが入る。そして、創真は死神と対峙する。

 

 

「受け身は出来るみたいだね。にしても、あんたのスキルは種類は多彩だが、爪も脇も甘い。なんかブランクでもあっ………」

 

 

創真は言い掛けた所で、顔をしかめて言葉を止める。何故なら、水面に顔の皮が浮かんでたからだ。

 

 

「ガキのくせに言ってくれるじゃないか」

 

 

「うぇ…………気持ち悪ッ……………まだ夕飯食ってねぇのに、嫌なもん見せやがって……」

 

 

「変装の技術を身に付けるために顔の皮は剥いで捨てたよ。さぁ、お前を殺して顔の皮を頂こうか!」

 

 

「いや、それは絶対嫌だァァァ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおぉ!!凄い!!凄いぞ、この戦いは!!」

 

 

「タコ!!何言ってんのか分からねぇぞ!!」

 

 

キバットの言葉に皆はうんうんと首肯く。

 

 

「まぁ、心配せずとも、創真君はやられないでしょう。何故なら、通常戦闘のスキルは死神と同等な上、デュオ君の能力で身体機能も強化されている」

 

 

ただ、と殺せんせーは少し顔を曇らせる。

 

 

「心配なのは、こんな状況でも、死神は秘密兵器を隠し持っていると言うこと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(チッ。流石は殺し屋。デュオの力を借りても、決定打を与える隙がない)

 

 

長引く戦闘に、少し苛立ちを感じていると、死神が口を開いた。

 

 

「創真君。なんで僕が殺し屋になったか教えてようか?」

 

 

いやご遠慮します……………と、言う前に死神は語りだす。

 

 

「僕の親は殺し屋に殺された。横暴だったから特に悲しくなかった。その代わり、親を瞬殺した殺し屋を見てこう思った。なんて美しい技術なんだろう………と」

 

 

「…………あっそ」

 

 

「暗殺とは美しい技術の集合体。人を殺せば技術が身に付き、更なる仕事と技術をもたらす」

 

 

そう言い、死神は懐に手を入れる。

 

 

(銃か…………!?最悪異能を使えば良い!)

 

 

死神が取り出したのは薔薇だった。そのまま、上へ投げる。思わず創真はそっちに目が行ってしまった。

 

 

プツン!!

 

 

そんな音がした。次の瞬間……………血が吹き出した。

 

 

(僅か10口径の弾丸を筋肉と骨の隙間に通し、大動脈に裂け目を入れれば、自らの血流圧で裂け目を広げ、大量出血で死に至る!!)

 

 

創真は崩れ落ちる。

 

 

「どうだい?死神にしかできない総合芸術は?」

 

 

そう言いながら近づく死神。そして、皆さんご存じの通りあることに気づいた。

 

 

(なんだ?皮膚と同じ色のチューブが血を噴いてる………………通路にまで続いてるこのチューブ…………まさか!?)

 

 

ズンッ!!

 

 

創真はたまたまをアッパーカットした!!死神は大切な部分を押さえて悶える。

 

 

「同じ男子として、少しは可哀相だが……まぁ、良い。男子の読者なら共感してくれるだろうな」

 

 

チューブ…………いや、触手を取って創真は呟く。

 

 

「ちなみに、殺せんせーは今の技術の正体見抜いた。で、僕にもそれを使ってくると思って、トマトジュース買ってた……………20%割引されてたのをね」

 

 

(最後の言う必要あったか…………?)

 

 

心の中で突っ込みを入れるデュオ。

 

 

「さぁて、お待ちかねの仕返しの時間だ」

 

 

「う、うるさい!死ね!!」

 

 

死神は銃を取り出し、創真に向けて引き金を引く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………無駄だね」

 

 

銃弾は、創真の手の平で全て止まっていた。当たると同時に、勢いを殺されたのだ。

 

 

「な、何なんだお前!?本当に人間なのか!?何者なんだ!?」

 

 

「あぁ、正式な自己紹介がまだだった…………ね!」

 

 

そう言って、フルパワーで拳を振り抜く。死神は2回転し、コンクリートに頭をぶつけて気絶する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕の名は結城 創真。E組の暗殺者さ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、操作室にいた氷室と烏間をビッチ先生が連れてきて、死神を上へ運び、拘束した。死神のスマホを操作して、無事に皆を開放。

 

 

……………殺せんせーだけ閉じ込めれれば良かったのだが。

 

 

「創真君、大丈夫だった!?」

 

 

碧海が創真に近寄ってきた。

 

 

「全然。僕はそこまで弱くないよ」

 

 

「……………本当に良かった…………」

 

 

碧海は涙をこぼし始めた。さすがに創真もたじろいだ。

 

 

「本当に心配したんだから!もうこんな無茶はしなって約束して!!」

 

 

「え、いや、あー……………ごめん」

 

 

────まさか泣くとは…………………。

 

 

創真は自分の胸元で泣く碧海を見てそう思った。

 

 

「うわー泣かせちゃった」

 

 

「創真君が女の子泣かせちゃった」

 

 

「なんか皆酷くない!?(てか、また陽菜乃の目が怖いんてすけど…………)」

 

 

「……………にしても、この顔は気持ち悪いな。顔面兵器かよ」

 

 

ホリーが死神の顔面をdisる。

 

 

「影響を与えたものが愚かだったのです。これほどの才能なら、もっといろんな所で技術を使えた筈なのに」

 

 

その時、小石が転がる音がした。

 

 

「あ」

 

 

こっそり去ろうとしていたビッチ先生を皆は見つけた。

 

 

暫くビッチ先生は固まってたが、また静かに足を進める………………。

 

 

「テメー、なに逃げようとしてんだよ、おい!!」

 

 

ホリーが叫び、デュオは無言で外套から布を出して連れ戻し、完全拘束。

 

 

「ちょっ、デュオ!セクハラで訴えてやるわよ!!」

 

 

「そしたら名誉毀損で訴えてやる」

 

 

「もー良いわよ!裏切ったんだから制裁受けて当然よ!性的な暴力で何でもすれば良いじゃない!!」

 

 

「なんで性的なのに拘る?」

 

 

「おい、ビッチ。普通に学校来れば良いんだよ。ま、俺様からしたら賞味期限切れだけど、皆はあんたのことを必要としてるみたいだしな」

 

 

キバットの言葉に皆も口々に喋りだす。

 

 

「続き気になってたんだよね。アラブの王様たぶらかして戦争寸前まで行った話のさ」

 

 

「花男の仏語版を借りパクしちゃうよ?」

 

 

ビッチ先生からしてみれば、矢田と片岡の言葉が信じられなかった。

 

 

「殺す寸前まで行ったのよ…………今までヤバイこともしてきたのよ。なのに………」

 

 

「何か問題でも?裏切ったりヤバイことしたりする…………それでこそビッチじゃないか」

 

 

竹林が眼鏡をクイッとやりながら云う。

 

 

「イリーナ」

 

 

そこへ烏間先生。

 

 

「今回…………俺はプロの枠に拘りすぎて、思いやりが欠けていた。すまなかった」

 

 

「カラスマ……………ふん、別に良いわよ!最初から誕プレなんて期待してなかったもの!」

 

 

「素直じゃないね…………」

 

 

創真は小声で呟く。

 

 

「あの………………お取り込み中良いですか?」

 

 

割って入ったのは氷室さん。

 

 

「今後、このような危険に皆さんを巻き込むのはよろしくないです。烏間先生に是非、対策を練ってもらいたいですね」

 

 

「同感です。安心して殺し殺される環境作りをあなた方防衛省に要求します」

 

 

殺せんせーが珍しく強い口調で同意する。

 

 

「………ああ。分かっている」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、やぁっと解放された…………外の空気は美味しいね………」

 

 

取り敢えず解散になり、帰路に着く創真が呟く。

 

 

「そ・う・ま・く・ん?」

 

 

「……………おっと?」

 

 

引きつった笑顔で振り返ると………当然そこには陽菜乃。

 

 

「い、いや誤解されては困るよ。僕は陽菜乃一筋…………うん、絶対!」

 

 

「……………………」

 

 

陽菜乃は何も言わずに、創真に抱きつく。

 

 

「……………心配した」

 

 

「……………ごめん。お詫びに何か好きな願いを叶えるよ………………ダイヤモンドくれ、とかは止めてね?」

 

 

「ならさ………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日、創真君の家に一緒に泊まって良い?」

 

 

(な、何だって……………………!?)




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第125話 お泊まりの時間

山あり、谷あり、修羅場あり。


どうぞ!


創真side

 

 

あれから1時間後。

 

 

「創真君の家って、いつ来ても広いよね~」

 

 

……………何故こうなった。

 

 

何故か陽菜乃が泊まることになった。夕飯は食ってきたらしい。

 

 

「お、親に許可貰ってきた?」

 

 

「うん!友達の家に泊まるって言っておいた」

 

 

「あぁ…………そう…………」

 

 

「はぁ…………仲が良いことで……………」

 

 

碧海さんは羨ましそうに嘆く。

 

 

「ついにここまで来たか…………なんか嬉しいぞ……!!」

 

 

何故か嬉しさを感じるホリー。

 

 

「うへへ…………就寝が楽しみだぜ…………」

 

 

何を想像してるのか、にやけが止まらないキバット。

 

 

「……………………………」

 

 

特に興味ないのか、本を読むデュオ。それぞれ、思うところがある夜……………今日はそんな話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「創真君、何してるの~?」

 

 

「暇なのでブログ更新してる」

 

 

「へー…………凄い!たくさんの人からメツセージ貰ってるね!」

 

 

「まぁ………………………ね」

 

 

大半はフレアとメテオを使った害鳥駆除の依頼なのだが。

 

 

「おい、創真。まだ寝ないのか?」

 

 

「まだ8時だけど…………?」

 

 

「あ、そうだったな(チッ、早く寝ろ!お前らが一緒に寝るの見てみたいんだよ!)」

 

 

「いつも以上に下衆い事考えない、キバット?」

 

 

「ナンノコトダカー」

 

 

よし、考えてるな(確信)

 

 

「あ、そう言えばね創真君!この前出された宿題で分からないところ教えてほしいんだけど………」

 

 

「良いよ。じゃ、僕の部屋来て」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

================

 

 

倉橋を連れて部屋にはいる創真を、ホリーとキバットはにやけながら見つめる。

 

 

「おいおい、このままベットに押し倒して………」

 

 

「絶対覗く!!」

 

 

「もう止めとけ…………………」

 

 

デュオが止めに入った。このまま行けば、奴等は暴走して放送禁止用語を連発しそうな気がしたのだ。

 

 

「なんだよデュオ。お前も男ならそういうの興味………」

 

 

「ない」

 

 

「ですよね~」

 

 

苦笑いするホリー。

 

 

「まったく……………そんなに人の恋愛覗くの好きか?」

 

 

「「「うん!!」」」

 

 

デュオはため息をついて、本に目を戻す。

 

 

「ところで碧海ちゃん~………このままだと創真君取られちゃうよ?」

 

 

「ハッ!それは不味い!」

 

 

「いや、元々創真は碧海の彼氏じゃないのだが…………」

 

 

デュオの呟きは、碧海の耳には入らない。

 

 

「よし……………こうなったら、絶対創真君と陽菜乃ちゃんを一緒に寝させない!」

 

 

(もう知らん…………………………)

 

 

デュオは耳栓をつけて、本に集中し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フワァ…………なんか眠くなってきちゃった………」

 

 

「…………僕も。死神との戦いの疲れが出てきたのかも………」

 

 

そんな会話を覗き聞きする碧海。

 

 

「ねぇ、創真君。今日さ、一緒に寝て良い?」

 

 

「あー…………別に良」

 

 

バタン!!

 

 

「碧海ちゃん?どーした?」

 

 

碧海、乱入。

 

 

「何一緒に寝ようとしてんの!?て言うか………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私と一緒に初めて寝た時はめっちゃ嫌がってた癖に、なんで陽菜乃ちゃんの時は何で承諾が早いの!?」

 

 

((…………………………………………あ))

 

 

透明化で見ていたホリーとキバットも、声をあげそうになってしまった。

 

 

「……………そ・う・ま・く・ん?」

 

 

「違う!彼女が無理矢理」

 

 

「私と言う彼女がいるのに、同じベットで碧海ちゃんと一緒に寝たって………」

 

 

「何もやましいことしてないってば!」

 

 

「どう言うこと!?」

 

 

あーっと、修羅場だ修羅場。ギャーギャー言い争ってる創真の部屋からホリーとキバットはスッと離れる。

 

 

「うひゃー、修羅場だ修羅場だ」

 

 

「盛り上がってるなー」

 

 

「あんな修羅場になったの、お前らのせいでもあるんだが」

 

 

デュオが正論を突き付ける。

 

 

「こんな事で別れるとかになったらどうするんだ?」

 

 

「大丈夫だって。何とかなるっしょ」

 

 

「ホリー、お前のその自信は何処から来るんだ……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間後

 

 

「……………何も聞こえなくなったな」

 

 

デュオが話し掛けるが、ホリーとキバットは何故か深刻そうな表情を浮かべている。

 

 

「どうした?」

 

 

「……………これで仲を拗らせて別れるとかになったら、いちゃいちゃしてるの見れなくなるじゃん?そう考えると、少し後悔してる」

 

 

「俺様も」

 

 

「…………………………お前ら、1度死んだ方が良いんじゃないのか?」

 

 

デュオはため息をつく。

 

 

「大丈夫だとは思うが、創真の安否が心配だな。ちょっと見てくるか」

 

 

腰を上げて、デュオは創真の部屋の前へと足を進め、そして扉を開ける。

 

 

「…………………」

 

 

そして直ぐに閉めて、リビングに戻る。

 

 

「創真、死んでたか?」

 

 

「勝手に殺すなキバット。気になるなら見てこい」

 

 

ホリーとキバットも創真の部屋の前に来て、静かに扉を開ける。

 

 

そこでは……………………………

 

 

「………なんか仲良くなってる?」

 

 

3人で寝ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、何があったか聞いてみたが、創真は黙秘を突き通したとか。




THE NEXT story 4/9 PM 22:00


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第126話 進路の時間

暫くは原作通り進めます。


でも、オリジナル要素も入れるので、是非楽しんでくださいな!


創真side

 

 

「進路相談…………ですか?」

 

 

「はい。もし、先生を3月までに殺せたら、君達はその後の事も考えなければなりません。ま…………殺せないから無駄になると思いますがねぇ」

 

 

よし、絶対ぶっ殺す。

 

 

「と言うわけで、進路希望を書けた人から職員室へ来てください。勿論、面談中も暗殺はOKですよ!」

 

 

そう言って、殺せんせーは教室から出ていく。

 

 

「ふむ…………人間は将来のことを考えなくてはならないのか」

 

 

「ご苦労さんだね~」

 

 

人間でないデュオとホリーはお気楽なものだ。

 

 

「進路かぁ…………私は何に向いてるのかな………」

 

 

進路希望用紙を睨んでいる碧海。

 

 

「ねぇ、創真君決まった?でも流石に創真君でもすぐには」

 

 

「決まった」

 

 

「って早ッ!!」

 

 

フフフ………………既に決めてあるのだ。

 

 

「さぁ、面談してくるかね」

 

 

僕は教室を出て、殺せんせーの元へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

 

「早いですねぇ、創真君。それでは君の進路を聞かせてください」

 

 

「ま、とりあえず高校はここで、大学は東大かな?」

 

 

創真は希望用紙を見せる。殺せんせーはそれを見てふむふむと、首肯く。

 

 

「この高校は日本でも最難関ですが、創真君なら余裕でしょう。それで、大学に受かったその後は?」

 

 

「そうだな……………親の会社継ごうかな?」

 

 

「ほう。創真君なら色んな選択肢があると思いますが、会社を継ごうと言うのは何故に?」

 

 

「父さんの企業は既に世界中で有名だ。でも、どうせなら、僕の手腕で父さん以上に企業を広げていきたい。父さんの上を超えたい………って単純な理由かな?」

 

 

「ヌルフフフフ。創真君らしい理由です。超えられるように頑張ってくださいね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

case隼

 

 

「ゲームプログラマー…………ですか?」

 

 

「理由は単純。俺、ゲームで遊ぶのも好きだ。だから次は自分の手で作ってみたい」

 

 

「なるほどなるほど。ですが隼君。君の今志す高校に余裕で行くなら、もう少し勉強しなくてはいけませんねぇ。ゲームも少し制限しましょうね?」

 

 

「…………ふぇーい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

case碧海

 

 

「私は特に決まってないかな~。でもまぁ………理系の仕事につきたいかな」

 

 

「ふむふむ。では、これからも先生と面談して決めていきましょう…………ちなみに、なりたい職業は決まってても、『一緒に働きたい相手』はいるんじゃないですかねぇ?ちなみに、創真君は父親の会社を継ごうとしてるようですよ?」

 

 

「な、なな何を言ってるんです!?そもそも何で創真君の名が!?」

 

 

「ヌルフフフフ…………まぁ、ゆっくり考えてみてくださいね」

 

 

碧海は職員室を出て、大きく深呼吸をする。

 

 

(……………創真君の会社か…………どんな仕事してるのか調べてみようかな………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

「皆、意外と悩むもんだね~」

 

 

「創真は決めるの早すぎだけどな………にしても社長か!社長になったら俺様も良い部署に入れてくれよな!」

 

 

コウモリがどういう思考で働こうと考えてんだか。

 

 

「何よガキ共。進路相談やってるの?」

 

 

ん?ビッチ先生、普通の服だな?

 

 

「あんたらの世界に合わせてやっただけよ。もしかしてソウマ………前みたいに出してた方が良かったかしら?」

 

 

「はっきり言って、どーでも良い」

 

 

「キーッ!!普通は誉めるところでしょ!!」

 

 

えー………………ダルい…………

 

 

「ま、結局…………俺様からしたら賞味期限切れなのは変わらねぇけどな!」

 

 

「このコウモリ、ぶっ殺してやるわ!!」

 

 

室内で発砲するビッチ先生。即座に烏間先生に通報する。烏間先生が教室から連れ出そうとするのをビッチ先生は抵抗して、大変騒がしい。そんなドンチャン騒ぎが、繰り広げられていた中、1人の生徒がこっそり抜けていったのを気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、君で最後ですね渚君。君の進路を聞かせてください」

 

 

渚は無言で進路希望用紙を机に置く。

 

 

「殺せんせー…………僕には人を殺す才能があります……………僕の進むべき進路を教えてください」

 

 

「……………………………………」




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第127話 MPの時間

MPは何の略でしょうね~?


じゃ、どうぞ!


「僕の中で…………人の顔が明るいときは安全。暗いときは危険ってイメージがありました。鷹岡先生とやったときも、暗いときは攻撃を避けるのに徹してました。何となくですけど………」

 

 

 

殺せんせーはまだ無言だ。

 

 

「この前死神に受けた 技で、視界が一気に変わりました。僕が感じていた明暗は、意識の波長だったと分かりました。今なら、死神と同じことができると思う。…………大した長所もない僕には、この先望めない才能だと思います。だから殺せんせー……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕は殺し屋になるべきでしょうか?」

 

 

気になってついて来たキバットも、この言葉には度肝を抜かれた。殺し屋を将来の選択肢に入れてしまうなど………普通はないからだ。

 

 

「…………渚君」

 

 

「………はい」

 

 

「正直に言うと、君に暗殺の才能があることは疑う余地もない。波長を見抜く観察眼に加え、どんな敵にも立ち向かう勇敢さも素晴らしい」

 

 

が、と殺せんせーは言葉を一旦切る。

 

 

「君の勇気には自棄が含まれている。『僕ごときどうなっても良い』、と」

 

 

殺せんせーの指摘に、渚は息を呑む。

 

 

「先ずは何故君がその才能を身に付けたか、よく見直しなさい。そうすることで、何故君がその才能を身に付けたか、誰のために使いたいか見えてくるはずです。もし、それでも君が殺し屋になりたいと思うなら、先生は全力でサポートします」

 

 

目を瞑って聞いていたキバットは廊下から静かに姿を消した。

 

 

(…………………さて……………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………渚が殺し屋?」

 

 

放課後、碧海と一緒に帰っていた創真はキバットの言葉に眉を潜める。

 

 

「そりゃまた危険な仕事を選んじゃってるね~。逆にすごいと思う………」

 

 

碧海は逆に感心している。

 

 

「…………………俺様が思うに、恐らく親が何か絡んでると見た」

 

 

「親?親と渚が殺し屋を希望するのに何の関係があると?」

 

 

「知るか、そんなこと!だが、俺様の勘がそう告げてる。と、言うわけで、今日渚の家にちょっくら行ってくるわ!そんじゃ」

 

 

キバットは創真から離れ、1人飛んでいった。

 

 

「…………意外と過保護だな、あいつ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PM 5:30

 

 

「まだ帰ってこないな。そんなに面白い話が聞けてんのかね?」

 

 

「どうだろうね~。どうせ、美女に目を奪われて何処かほっつき飛んでいるんじゃない?」

 

 

「碧海さんの説が最有力だな……………にしてもさ、僕らも暇だし行かない?誰かに捕まって、動物園にでも送られて面倒くさいし」

 

 

ホリーがケーキを食べながら提案する。

 

 

「えー…………まぁ、確かにトラブってたらやだし………行くか」

 

 

創真が嫌々腰を上げ、支度を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家から15秒で、渚の家付近に到着。

 

 

「んで、キバットは何処?」

 

 

「取り敢えず捜してみるか」

 

 

創真らは辺りを捜索する。が、何処にも姿が見当たらない。

 

 

「やれやれ。結局美女に目を奪われて何処かほっつき歩いてるみたいだな。あーこの時間無駄だったわ。じゃ、帰」

 

 

「お?お前ら何してんだよ」

 

 

聞き覚えのある声に振り向くと、そこには捜索対象のキバットがいた。

 

 

「ったく、何処行ってたんだよ?渋谷にでも行ってたのか?」

 

 

「なわけねぇだろ!それより、ちょっとそこの公園に行こうぜ。話したいことがある。色々分かったんだけどよ……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、おっかねー…………渚の母ちゃん、モンスターペアレンツだったのかよ」

 

 

ホリーが怯えた表情をする。キバットの聞くところによると、渚の家の場所は知ってたが、部屋番号までは分からず途方にくれていると、突然ヒステリックに叫ぶ女の声がしたらしい。

 

 

で、叫び声がする部屋のベランダから覗くと、渚の髪を引っ張って叫ぶとんでもないババ……………いや、渚のお母さんがいたらしい。それで自慢の耳で暫く聞いていたそうだ。

 

 

「渚の観察眼の鋭さは、この母親が原因だな。大方、渚は母親の顔色伺って生きてきたから、観察眼に優れてるんだろうな」

 

 

「で、具体的にどんな話してたのか?」

 

 

「えっとな……………まとめると、どうもあの母ちゃんは渚をE組から抜けさせようとしてるらしくてな。まぁ、それに反対でもしたからキレたんだろうな。んで、明日殺せんせーに会いに行くんだとよ」

 

 

「そうかそうか………………殺せんせーに……………え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい───!!それヤバイだろ!!バレたらとんでもない事になるぞ!!」

 

 

「烏間先生は出張でいないし、あの痴女ビッチではダメだ」

 

 

「なら、氷室さん?いや、名目上の担任は烏間先生だし、ダメか」

 

 

「ぎりアウトだな」

 

 

「ちっ、詰んだわ!」

 

 

5人はあーでもない、こーでもないと議論を続けたが、良い解決策は出なかった。

 

 

「くそ、最低だ!あのバカタコじゃ、何かやらかすに決まってる!!くっそ、烏間先生がこういうときにいれば………………」

 

 

ホリーが殺せんせーをバカ呼ばわりする。

 

 

「はぁ…………………」

 

 

デュオはため息をつく。

 

 

「こりゃヤバイね~」

 

 

碧海さんはいつも通り。

 

 

公園の空気が若干重くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………あれ?創真君?それに碧海さんやホリー君たちも?」

 

 

顔を上げると、渚がいた。

 

 

「渚君………………何故ここに?」

 

 

「ちょっと気分転換したくて」

 

 

渚は創真の隣に座る。

 

 

「あの…………うちのキバットから聞いたんだけどさ………」

 

 

「うん。こっそり最後まで聞いてたの分かってたよ。姿がちらっと見えたんだ」

 

 

「……………バレてたのかよ。渚は苦労してるな」

 

 

「そんなことないよキバット君。普段は大したことないから」

 

 

「で、明日どうするの?面談に来るんでしょ?」

 

 

「うん。さっき殺せんせーに電話で言ったんだけど、任せろって豪語して…………」

 

 

「「「「「不安だ」」」」」

 

 

5人全員、意見一致。渚はアハハ………と、苦笑い。

 

 

「まぁ、1つアドバイスするなら、自分の気持ちは明日にでもしっかり伝えた方が良いかな。難しいかも知れないけど、言わなかったら後悔するかもよ?」

 

 

「……………うん。分かってくれるか分からないけど、やってみるよ」

 

 

「そう、それで良い。じゃ、僕らは帰るよ。おやすみ」

 

 

「うん。おやすみ」

 

 

創真は碧海を抱えて飛び去っていった。明日、上手く殺せんせーが説得してくれますように……………三日月に祈る渚であった。




THE NEXT story 4/11 PM 22:00



蛇足だけど、MPはモンスターペアレンツの略です………。


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第128話 面談の時間

花粉が……………つらい。



ハークション!!


んぁ………………それじゃ、どうぞ。ハークション!!


「三者面談か…………渚の母ちゃん厳しいからな~」

 

 

事情を聞かされた杉野はため息をつく。

 

 

「殺せんせーは頼りないからね~…………不審者同然だし。あーどうしようかね~」

 

 

前回に引き続き、ホリーは殺せんせーをディスりまくる。

 

 

「なら私がやろうか?あんたらのこと結構知ってるけど?」

 

 

皆は、あぁ、その手があったか、と顔を明るくする。

 

 

が、しかし。

 

 

「いやいやダメだろ。こんな賞味期限切れで痴女の担任なんて訴えられて終わりだぜ」

 

 

「「「あぁ、確かに…………」」」

 

 

「何納得してンのよ!?しかもコウモリ!賞味期限切れは言わなくても良いでしょうが!!」

 

 

もう、賞味期限切れ=ビッチ先生みたいなもんだ、このE組だと。

 

 

「ヌルフフフフフ…………なら、私が烏間先生に化ければ良い話でしょう?」

 

 

教室の扉の向こうから殺せんせーの声がした。

 

 

「えー………いつもの変装じゃバレるよ?」

 

 

「ご安心をホリー君!今回は完璧です」

 

 

そう言って、殺せんせーは扉を開ける。

 

 

「おう、ワイや。烏間や」

 

 

────────いつも通りの再現度の低い変装がそこにはあった。

 

 

「くそ…………やはり頼りねぇ。やっぱこのタコはダメボーイだ」

 

 

「失礼な創真君!!それに私はボーイじゃなくてジェントルマンです!」

 

 

「どこがジェントルマンや…………しょうがない。ちょっと手を加えよう。こんなんじゃ、面談中にバレかねない。皆もちょっと手伝って」

 

 

良いぜ、とか了承の声がして、皆はコスプレに手を加え始めた。

 

 

ちなみに、皆結構楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、すぐに渚の母親は来た。

 

 

「なるほど。確かに厳しそうだ」

 

 

隠れて見ているデュオは誰ともなく呟く。そして、昇降口前で待っていた渚と一緒に教室へ入っていく。

 

 

「はい、皆これあげる」

 

 

ホリーが耳栓を配っていく。

 

 

「……………これ、いるか?」

 

 

「あった方が絶対良い。使うときはいずれ来るからな。今は付けないで良いぞ」

 

 

そう、キバットが力説する。そして、職員室からの声に耳を傾ける。

 

 

『本日は山の中までご苦労でした。冷たい飲み物とお菓子をどうぞ』

 

 

色々手入れしてまぁ、ましにはなった烏間先生のコスプレをした殺せんせーが菓子と飲み物を勧める。

 

 

『まぁ!これ私好きなんです!』

 

 

───────なるほど。好きなものを用意しておいたのか。

 

 

創真は内心感心する。

 

 

『渚君を利発に育ててくれたお母さんへのお礼です。そう言えば、体操の内脇選手のファンなんですよね?この前は素晴らしい活躍をしてましたねぇ』

 

 

『あら、先生も見てたのですか?』

 

 

『ええ。彼の頂点を目指す姿勢は見習うべきですね』

 

 

「おぉ………………良いぞ。流石殺せんせー。見事なトーク技術だ」

 

 

キバットが称賛する。

 

 

皆が何とか乗り切れる気がしてきた、その時だった。

 

 

『それにしても、お母さんはお綺麗で。渚君にも似たのでしょうね』

 

 

すると、スイッチが入ったかのように、渚の母は暗くなった。

 

 

『この子ねぇ…………女だったら私の理想だったんですよ』

 

 

『……………?』

 

 

『あら、いけない。用件を忘れるところでした。私の経験から申し上げるに、ここで椚ヶ丘から放り出されたら蛍雪大学への道が怪しくなりますの。ですから、この子がE組を抜けるようにお力添えを…………』

 

 

『…………ご本人はなんと?』

 

 

『勿論E組を抜けたいと申し』

 

 

『渚君』

 

 

勝手に喋ってる渚の母親を遮って、殺せんせーは渚に強い口調で尋ねる。

 

 

『君はどうしたいのですか?』

 

 

『………………僕は………E組を抜けたく』

 

 

『昨日抜けるって言ってたわよね渚?』

 

 

渚は威圧的に言われ、黙ってしまった。

 

 

『……………よく分かりました。何故渚君が今の渚君になったか…………ハッキリしました』

 

 

そう言うと何を血迷ったか、殺せんせーはかつらを取った。

 

 

『『な!?』』

 

 

『実は私………………ヅラなんです!!』

 

 

「あーあーあー……………事後処理が大変だぞ、おい」

 

 

隼の呟きなど知らず、殺せんせーは続ける。

 

 

『聞いていれば、お母さん。渚君にE組を抜けさせたいのは、あなたの理想を叶えるためですよね?渚君の人生はあなたのものじゃない!渚君自身の物だ!あなたのコンプレックスを隠す道具じゃないんですよ。この際キッパリ申し上げましょう!渚君自身が望まぬかぎり…………E組から抜けるのは認めません!!』

 

 

「しゃぁ────────!!」

 

 

「声がでかい!」

 

 

謎の歓喜の声をあげるホリーを創真は黙らせる。

 

 

 

 

 

「………………あ、不味い……………来るな。」

 

 

創真はジェスチャーで耳栓をはめるように指示する。

 

 

そして、皆がはめ終わった次の瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『なんなよアンタ!!教師の癖に保護者に指図するってどういう了見なの!?!?人の教育方針にケチつけれる程あんた偉いわけ!?ふざけんじゃないわ!!だいたい…………(以下略)』

 

 

「耳栓あって良かった」

 

 

デュオがポツリと呟き、それに皆は首を縦に振って同意した。

 

 

『渚!!最近妙に逆らうと思ったら、このハゲ担任に洗脳されてたのね!!見てなさい!あんたの目を直ぐ覚まさせてやるんだから!!』

 

 

お怒りマックスの渚の母は、肩を怒らせながら出ていった。

 

 

「やれやれ……………ほんと、耳栓があって良かったよ。まぁ、それでも結構聞こえたけど」

 

 

菅谷が耳栓はずして呟く。まぁ、創真はD〇ISOで買ったので、そんな大した物ではないのだが。

 

 

「さてさて……………準備するか。んじゃ、僕は帰るよ」

 

 

そう断って荷物持って帰ろうとすると、碧海さんに肩をツンツンとつつかれた。ちょっと来て、と言われて教室の窓付近に連れてこられる。

 

 

「ねぇ……………この足跡誰の?職員室前の窓の下らへんからずっと続いてる……………」

 

 

「んー…………内部の人のじゃ無さそうな気がする」

 

 

「じゃあ、誰?」

 

 

「僕に訊かれてもねぇ。まぁ、それより今から買い物してくるわ。今日の7時に学校に集まっといて、碧海さん」

 

 

「え?いや、良いけど……………なんで夜に学校行くの?」

 

 

「僕の予想通りだと、あのお母さんは今日辺り、何かやると思うからね」

 

 

「あぁ、なるほど…………で、何買うの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「水鉄砲」




THE NEXT story 4/12 or 13 PM 22:00


多分…………………13かな?


と、言うわけで水鉄砲を買ってきます!


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第129話 消火の時間

今日で一段落着きます。


そして遂に………………………!?


創真side

 

 

こんばんはー。

 

 

我々は只今、夜の校舎に来ています。メンバーは、僕、氷室さん、碧海さん、ホリー、デュオ、キバットであります。僕の予想では、渚の母親はまだ何かやらかすと思うので、その防止に来ておるのである。

 

 

「創真様……………水鉄砲って必要でした?」

 

 

「え?だってもし火をつけようとしたら防げますよね?」

 

 

渚君をE組から抜けさすなら、校舎の放火で居場所を奪うのが1番手っ取り早い。しかも、火元もマッチ以外なら見つかりづらいだろうし。

 

 

「……………ホリー君の魔法を使えばよくないです?」

 

 

「ぶっちゃけその通りなんですけど…………まぁ、暇だったし(?)良いじゃないか。」

 

 

「はぁ…………………」

 

 

「さぁて………………張り込みの開始だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2時間後

 

 

「ねぇーまだー?」

 

 

碧海さんは飽きたようだ。まぁ、2時間もすれば無理もないだろう。前は5分で飽きたから、それに比べれば大した進歩だが。

 

 

「本当に来るのか?お前の予想も絶対当たるわけではないだろうし」

 

 

同じくホリーも飽き飽きだ。

 

 

「創真様………………もう帰りません?」

 

 

「よし……………帰るか」

 

 

正直来なそうだし、さっさと寝たいからあっさり引き下がろうとした、その時だった。

 

 

「……………足音がするな。この校舎に向かってきてる」

 

 

キバットの耳が足音を捉えたようだった。

 

 

「ほーら来ただろ?さて、準備準備…………」

 

 

そう呟きながら、創真は水鉄砲の点検をする。ちなみに、今回は10000円弱のなかなかの物。間もなく、渚とタンクを抱えてやって来る渚の母親の姿が視認できた。

 

 

「……………ガソリン入れてるタンクだな、ありゃ」

 

 

「やっぱり放火だな………………………やらせないよ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

 

 

 

「………………ん?あれ………ここは…………学校?」

 

 

渚はあの後、母親が作った夕食を食べたら急に眠くなったのだ。そして、何故か目が覚めたら学校……………?さらに、渚は松明を持っている自分の母親を見つけた。

 

 

「…………こんな場所に墜ちてからあんたは血迷った。私に逆らい始めた……………渚、燃やしなさい。あんたの手で」

 

 

渚は、自分の母親が何を言ってるのか分からなかった。

 

 

「自分の手で火をつければ、罪悪感であんたはここの誰にも顔向けできなくなる。退路をたってから、本校舎の先生にお願いしに行くの。場所がなければ誠心誠意頭下げれるでしょ!?……………さぁ、早く付けるのよ渚!!」

 

 

「…………………………!!」

 

 

渚はどう反応すれば良いのか分からず、完全に狼狽えていた。

 

 

(…………一体どうすれば良いんだ……………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「無論、受け取る必要なんてないよ。渚君」

 

 

「「!?」」

 

 

2人が声のした方を振り向くと、松明に向かって水が飛んできた。松明の炎は文字通り消火された。

 

 

「そ、創真君!!」

 

 

「フフフ…………単純だね、人間は。どーせ何かやらかすと思って待ち伏せてました」

 

 

水鉄砲片手に、颯爽と近づく創真に対して渚の母親は怒りを爆発させる。

 

 

「何なのよあんた!私は渚の将来の為に障害物を取り除こうとしてンのよこっちは!!」

 

 

「へー、その為に放火ですか?あんた、頭大丈夫?あなたのやろうとしていることは、ただの犯罪だ。それと、渚の将来の為にとか言ってるけど、それは違うだろ。あんたは、自分の理想の為にやってるだけだ……………………いい加減にしろ」

 

 

「ヒッ…………」

 

 

創真から放たれる殺気に、渚の母親は思わず一歩後ろへ下がってしまう。

 

 

「……………今なら、何も言わないでやる。証拠も録った。豚箱行きたくないなら去るんだね」

 

 

「………………ッッ!!ガキの癖に調子乗って!!ふざけんじゃないわ!!大人に何命令口調で………」

 

 

スパッ!!

 

 

突然、渚の母親の持つ火の消えた松明の先端が飛んだ。

 

 

「キャーキャーうっせぇんだよ、くそババァ。ドラマの時間が来ちゃうだろうが」

 

 

鞭を持った謎の男が出現。

 

 

(殺し屋だね……………あいつ)

 

 

創真だけでなく、渚にも男の正体は分かった。

 

 

「今夜の夜10時、奴は女同士のドロドロした感情を勉強しに現れる。銃やナイフがダメなら、この鞭さ。俺の鞭の先端はマッハを超える。これで脳天を貫いて殺してやらぁ」

 

 

「な、なに殺すって!?け、警察に………」

 

 

「うっせぇババァだ。ガキは殺しちゃ賞金はパァだが、ババァは殺しても別に構わねぇよな」

 

 

そう言いながら殺し屋は鞭を振るい、渚の母親のスマホを弾く。

 

 

(さてさて…………氷室さんに行って貰えば、一瞬で片が付くのだが……………最適解はそれじゃない)

 

 

創真は渚の方をチラリと見る。渚も既に殺るべき事は分かっているのか、小さく頷き、足をゆっくり進めながら自分の母親に胸の内を語りだす。

 

 

「母さん…………僕は今、この教室で大きな挑戦をしています。成功したら、髪を切ります。育ててくれた分のお金は全部返します…………もし、それでも許してくれないなら……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母さんからも卒業します」

 

 

 

 

パァン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺し屋は倒れる。渚がしたのは、殺し屋の意識の隙間をついて、大きな音の波を当てただけ。クラップスタナーの再現と言うわけだ。

 

 

「はい、お見事~。あ、氷室さんと碧海さん!捕縛お願いして良いですか?」

 

 

創真は軽い拍手を贈り、茂みの中の氷室に声を掛ける。お任せあれ、との声と伴に、ガムテープを持った氷室が現れ、碧海と一緒にグルグル巻きにしていく。

 

 

「さて、この人はどうしましょうか……?」

 

 

「私が最寄りの駅まで送っておきますよ」

 

 

そう言ったのは、烏間先生のコスプレをした殺せんせーだった。

 

 

「あぁ、お母さん。この辺りは夜は変な輩が多いので、近づかないことをおすすめしますよ。それに、創真君達!夜遅くに何してるんですか!!危ないでしょう!!」

 

 

「やれやれ、折角校舎を守ってあげたのに」

 

 

「それとこれは別です!……………さて、お母さん。確かに渚君は未熟です。ですが、温かく見守ってあげてください。彼はただ、巣立ちの準備を始めただけなのですよ」

 

 

「ええ、その通り」

 

 

氷室もうんうん、と同意する。

 

 

「…………………………………」フラッ

 

 

渚の母は気絶した。

 

 

「緊張が解けて気絶したね。どうする殺せんせー?家まで送る?」

 

 

創真が殺せんせーをチラリと見て言う。

 

 

「私が渚君のお母さんの車で送りましょう。それと、創真君と碧海さん。罰として、今週の宿題の増加を覚悟しておいてくださいねぇ」

 

 

「別に良いですよ~?」

 

 

「そんな変わらないっしょ」

 

 

「にゅや………………………」

 

 

碧海と創真相手では、余り大した罰にはならなさそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………何よこれ?」

 

 

渚の母は食卓の上にある朝食を見て、渚に尋ねる。

 

 

「今日から僕が朝御飯作るよ。だからゆっくりしてて。他のこともちゃんとやるから、クラスだけは…………」

 

 

「………………………勝手にしなさい。私は知らないからね」

 

 

その言葉に渚はホッとし、表情を明るくした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心が軽くなった渚は、家を出て通学路を進む。と、そこへお人好しコウモリ、キバットが現れる。

 

 

「よう、渚!トラブルは解決したみてぇだな?」

 

 

「うん。E組に残れて良かったよ………………あれ、そう言えば………」

 

 

渚はとあることに気づく。

 

 

「創真君達はどうしたの?」

 

 

「あぁ、新たなマシンで殺せんせー相手に遊んでる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にゅぐ…………たかが機械となめていた私が間違っていたようですねぇ………」

 

 

息が上がっている殺せんせーは、赤く発光するマシンカブト、金色に発光するマシンクワガタ……………名機体の改造版を静かに見据えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タイマ・エメラルドさん、お待たせしました────!!




THE NEXT story 4/14 PM 19:00


お久しぶりの新マシン登場!!


それとお知らせですが、コラボをした事のある、暗殺教室~絆~が盗作行為を行ったことが発覚した為、作品がロックされたらしいです。


それにともない、コラボの話を削除しました。


ご了承下さい。


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第130話 (超)カブトとクワガタの時間

文豪ストレイドックス dead appleが、アメリカで上映するらしいな!


イエーイ?


まぁ良いか…………では、どうぞ!


あ、活動報告欄で、マシンシリーズがどうのこうの、って言うのがあるのでそれを見ておいた方が良いですよ。


後は、第7話見てない人は先に見た方が良かったりして……。


AM 6:00

 

 

殺せんせーは1人職員室でグラビア本を読んでいた。

 

 

「ニュルフフフフ。この乳はたまりませんねぇ。目の保養になります」

 

 

朝からスケベ全開の殺せんせー。と、言うわけで隙だらけだし、今のところの最高傑作で暗殺してみよう、と言う創真の計画が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パリンッ!!

 

 

「!?」

 

 

ガラスの割れる音に驚く殺せんせーに、赤と青のマシン、マシンカブトとマシンクワガタが現れる。それぞれが攻撃を仕掛けるが、 殺せんせーは余裕で避ける。

 

 

「この機械のカブト虫とクワガタ…………創真君ですね?」

 

 

「チッ、グラビアに夢中かと思ってたが……」

 

 

声と伴にコントローラーを持った創真が現れる。

 

 

「ヌルフフフフフ。このマシンの性能や特性は把握済み。何度殺ろうと無駄なことですよ?」

 

 

殺せんせーは挑発するが、創真は余り表情を変えない。何も言わずに、指をパチンと鳴らす。その瞬間、マシンカブトとマシンクワガタの装甲が全て外れた。

 

 

「勿論、今のままじゃダメなのは分かってる。だから、少し仕掛けを施した」

 

 

不敵な笑みを浮かべる創真はスマホをタップした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森のなかに置いてあったケースのランプが緑色に光り、スッと開いた。すると、輝きを放つ物体が沢山飛んでいく。

 

 

それらの向かう先は勿論────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その表情からして、何かあるんですね?」

 

 

「フフ…………これが答えだ」

 

 

パリン、パリン、パリン!!

 

 

「にゅや!?」

 

 

攻撃かと、殺せんせーは身構えたが、それは違った。輝きを放つ物体は、マシンクワガタとマシンカブトに装着されていく。

 

 

「(これは2体の装甲!?)」

 

 

「ホリー達の世界のテクノロジーも使ってね……………お陰で良い代物が生まれた。その名も、『マシンカブト2 type Hercules』と、『マシンクワガタ2 Mandibu Laris』 さぁ、最高レベルの結晶の実力を特と目に焼き付けてください!!」

 

 

その宣言と伴に、生まれ変わったマシンカブトとマシンクワガタが殺せんせーに襲い掛かる。

 

 

「(ッッ!速い!!さっきとは比べ物にならない!!)」

 

 

殺せんせーは内心冷や汗をかきながら避けていく。

 

 

さて、その間にこのマシン達について説明しよう。マシンカブト2は、初期からの変更点としては、型がヘラクレスオオカブト型になり、突貫用の角も2つに増えた。エンジンもホリー達の技術も借りて作った。

 

 

 

マシンクワガタ2は、マンディブラリスフタマタクワガタの型になり、連射速度や飛行速度も上昇。さらに角による突貫攻撃も可能となった。

 

 

「ヌルフフフフフ。確かに慣れるまでは厄介ですが、慣れれば目を瞑っても避けれますねぇ」

 

 

「ほほう。これでもか?」

 

 

創真はニヤリと笑い、リモコンの赤いボタンをポチッと押した。

 

 

すると、マシンカブトの装甲が展開され、露出部分が赤く発光を始めた。マシンクワガタの装甲も展開され、露出部分が金色に発光し始めた。

 

 

そして───────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────殺せんせーの腕の触手が斬られた。

 

 

「…………………え?」

 

 

殺せんせーは床に落ちた自分の触手を見て、動揺の声を漏らす。

 

 

「『THE BEAST of POSSIBILITY』要はリミッター解除。この時の2体の速度はマッハを超える」

 

 

「な!?そんなの反則級です!!」

 

 

「マッハ20だろ、先生は。殺せんせーのスペックも既に反則級ですけど……………………ま、良いや」

 

 

マッハクラスの攻撃を、流石に直ぐには対処できず、殺せんせーはどんどんダメージを喰らっていく。

 

 

「にゅやー!?」

 

 

たまらず殺せんせーは職員室から逃げる。だが、しかし。劣勢は変わらない。1本、2本、3本……………テンポよくどんどん触手を撃ったり切ったりで、スコアを伸ばしていく。

 

 

「これ、マジで殺れるかも?」

 

 

創真も暗殺成功を見据え始めた。

 

 

「クッ………………!!」

 

 

マシンカブトの突進を何とか避けた殺せんせーだが、マシンクワガタの射撃は避けれず、足の触手を2本失い、バランスを崩す。その隙に、マシンカブトがネクタイの心臓めがけて迫る!

 

 

「貰った!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドコーン!!

 

 

「!?」

 

 

爆風が創真を襲い、辺りが光に包まれる。

 

 

「なんだ………………!?」

 

 

創真の隣にマシンカブトとマシンクワガタが戻ってきた。すると、制限時間が来て、装甲が元に戻っていく。

 

 

「この爆発………………もしかして…………?」

 

 

創真は爆発で出来たクレーター覗く。

 

 

そこに居たのは────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーおはようございます、皆さん」

 

 

朝のホームルーム、殺せんせーは皆に挨拶をする。いつもなら出席の点呼を取るときに、射撃をするのだが、今日はない。何故なら……………!

 

 

「あの……………………………殺せんせー……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんで完全防御形態に?」

 

 

磯貝が皆を代表して尋ねる。

 

 

「あぁ、これですか?創真君のマシンに殺されかけたので、ついやってしまいました。と、言うわけで、今日一日はこのまま授業を行います。ですが、この状態ではチョークを持ったり教科書をめくったり出来ないので、ホリー君やデュオ君、キバット君にもご協力頂きましょう」

 

 

「えーやだー。めんどくさーい」

 

 

あからさまにダルいオーラを出すホリー。

 

 

「んまぁ、この位出してくれるなら良いぜ」

 

 

キバットが電卓を殺せんせーに見せると、顔を青くした。

 

 

「ちょ、これ高すぎません!?先生の給料がパァになるんですけと!?」

 

 

「じゃ、やらねぇぜ」

 

 

「ぐぬぬぬぬぬぬ…………!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局支払った。




THE NEXT story 4/15 PM 22:00


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第131話 学園祭の時間

原作で言う14巻まで到達。


いやー折り返し地点を通過したね~(今さら)


では、どうぞ!


「学園祭?」

 

 

下校中、倉橋からそんな話を聞いた創真。

 

 

「うん!椚ヶ丘の学園祭は凄く盛り上がるの!行事の中では1番って言って良いほど楽しいんだよ」

 

 

「へぇー…………面白そうじゃん………ん?あれは……」

 

 

創真の目先には、本校舎の生徒が作業しているのをこっそり覗いている渚と茅野の姿があった。

 

 

「お二人さん何して」

 

 

「静かに!」

 

 

創真が黙ると、作業をしてる本校舎の生徒同士の会話が聞こえてきた。

 

 

「なぁ、またE組の奴等何かやるのかね?あいつら今年は爆発力あるよな」

 

 

「確かになー。でも、あいつらはE組の山でしか店を出せないんだ。今回は無理だろ。それに、A組の浅野くんが何か凄い出し物でもするだろうし」

 

 

「でも、もしかしたらE組にA組が負けちゃったりしてな」

 

 

「ハハ、まさか」

 

 

(……………ふむ。どうやら本校舎の生徒らはE組が何かすると思ってるんだな……………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………てなわけで、E組対A組って本校舎で盛り上がってるんだけと、どうする殺せんせー?」

 

 

三村が事情を説明すると、殺せんせーは勿論、と言って振り返る。

 

 

「勝ちに行くしかないでしょう。この学園祭は勉強と暗殺以外の集大成になりそうですし」

 

 

「集大成、ね」

 

 

「でも、そんな上手く行くかな………聞いたところによると、浅野の奴」

 

 

「スポンサー契約でもしたんじゃないの?食品会社に無償で食品を提供してくれるように」

 

 

杉野が言う前に、創真がマシンカブトの手入れをしながら答える。

 

 

「お前もどこかで聞いたのか?」

 

 

「いや、聞いたことないよ。てか、適当に言ったけど当たってたの?」

 

 

「そうだけど…………逆にどうして浅野がスポンサー契約してると思ったんだ?」

 

 

僕なら(・・・)そうするからだ」

 

 

作業の手を止めずに、さらっと答える。

 

 

「そんなことより、確か店系は単価は300円、イベント系は600円までなんだろ?A組に勝つならこっちもイベント系で攻めないと無理があるんじゃないのか?」

 

 

食品が無料で提供されるとなると、浅野は単価の高いイベント系で来るだろう。変わって、E組の最大の不利な点はこの立地。イベント系だろうと店系だろうと、こんな山奥まで来たいと思う奴はいるのだろうか?勝ちたいのは山々だが、結論的には、A組に勝つのはほぼ不可能に近い。

 

 

と、創真は結論を出したのだが………………………

 

 

「ちなみに殺せんせーはやるんだったら店系かイベント系どっちだ?」

 

 

「隼君はどっちが良いですか?」

 

 

「俺なら店系だな。俺、料理は得意だし」

 

 

隼の言葉に、男子は一斉に隼の方を殺意の籠った目で向く。

 

 

「ふむふむ。先生も隼君と同じで店系が良いと思いますよ。そっちの方が有利ですし」

 

 

「有利…………………?」

 

 

「何が、と言いたげですね創真君。例えばこれです」

 

 

殺せんせーが見せたのはどんぐり。

 

 

「どんぐりで何するんです?」

 

 

「説明の前に、皆さんで集めてきてください。1時間もあれば結構集まるでしょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間後

 

 

「それでは作業を始めましょう。まずは水につけて浮いたものは捨てます」

 

 

言われた通り、浮いたものは捨てていく。

 

 

「そして、殻を割って渋皮を取り除き、中身を荒めに砕きます。そしたら、それらを布袋に入れて、川に浸してあくを抜きます。天日干しして、さらに細かく砕けばどんぐり粉の完成です」

 

 

「……………それでこれをどうするんです?」

 

 

創真の問いに、ニヤリと笑いながら殺せんせーは云った。

 

 

「客を呼べる物と言えばラーメン。これを使ってラーメンを作りましょう!」

 

 

「「ラーメン………!!」」

 

 

村松と隼が反応する。

 

 

「おお………そりゃ名案だ。なら、俺に任せ」

 

 

言い終わる前に、隼に男子全員が襲い掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、テメーら!!これはどういう真似だ!?」

 

 

隼はデュオの外套の黒獣が変形した布でグルグル巻きにされて、教室の後ろに放置されていた。

 

 

「お前にラーメンは作らせん」

 

 

「なんでだよ創真!!俺は料理が『得意』なんだぞ!?おい、お前らも見てないで助けろや!!」

 

 

「「「…………………………」」」

 

 

誰も動こうとしない。いや、動く気すらない。

 

 

「心配するな。お前にも仕事はある。ビラ配りと言う名の仕事だ」

 

 

「それ雑用じゃねぇか!!」

 

 

「ピンポーン」

 

 

「ピンポーンじゃねぇ!くそ、この布丈夫すぎだろ……………!!」

 

 

布を引地切ろうとするが、破れる気配がない。

 

 

「お前が料理をもっと上手く作れたらな………まぁ、良いか」

 

 

そう言って創真は作戦会議をしている皆の輪に戻っていく。

 

 

(くそったれ……………覚えておけよ創真………!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局隼は料理に関して何も干渉できないまま、物事はどんどん決まっていった。無論、隼は料理を任してくれるよう説得やら実力行使やらをしたのだが、全て創真やホリー達に阻まれた。

 

 

そして、1週間後……………学園祭が開幕した!!




THE NEXT story 4/16 PM 22:00


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第132話 学園祭の時間 2時間目

学園祭、中半に突入!



隼side

 

 

「あーあ。なんで俺はこんな役割なんだか……」

 

 

俺は今本校舎に来ている。何故かって?それは最低最悪の司令官的存在、創真の野郎から

 

 

『お前が料理作ると死人が出るし、ウェイターの役とか似合わないし、偵察して来い』

 

 

と、言われた。勿論抵抗したが…………無駄だった。くそったれ…………なんて地味な活動なんだ。所で、俺は前期期末でそこそこの戦果を上げた。だから名も顔もそこそこ知れてるらしい……………のか?それだからなのか、誰が用意したか知らないが、別の服への着替え、眼鏡の装着を余儀なくされた。

 

 

この眼鏡には小型カメラが付いてるとか。まぁ、そんなことは俺的にはどうでも良いんだが。さて、何処から回るとしようか…………。

 

 

「取り敢えず浅野のいるA組か?」

 

 

1番の敵だし……………行ってみるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うぉ……………すげぇ数の人だな」

 

 

入場料払って中に入ると、お笑い芸人が公演してる最中だった。

 

 

「これ浅野が呼んだのか…………?ほんと、化け物だな」

 

 

果たして俺らは勝てるのか?取り敢えず席につこうとした隼だが、視界の端に捉えた奴等を見て、すっと離れる。

 

 

(おいおい五英傑の奴等が全員居やがるよ………見つかったら不味いよな………)

 

 

慌てて距離を取る。その時、隼のスマホの携帯がブルッと震えた。創真からのメッセージだ。

 

 

『色々分かった。もう大丈夫だ』

 

 

このメッセージを見た隼はこう返す。

 

 

『じゃ、このあとは?』

 

 

『お前はそこそこモテるんだから、適当に女子に声かけて、E組に誘い出せ』

 

 

要はナンパして、売り上げ金を巻き上げろってか……?

 

 

ハッ、そんなの────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………………絶対無理だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

 

 

(うわぁ…………ナンパとか無理だわ。やる身にもなってくれよ…………)

 

 

取り敢えず外に出てうろちょろしてる隼。ヘタレが故に、仕掛けることが出来ない。すると、脳内に創真が現れた。

 

 

『ハッ、ナンパ程度も出来ないのかい?ダメだねぇ。僕なら、何通りかは思い付くけど?』

 

 

(くそ…………脳内創真も、うざってぇ!!て言うかナンパなんてしたことないんだよ!!やったことねぇのに分かるわけ)

 

 

「ねぇ、お兄さん~?」

 

 

「はい!?」

 

 

慌てて振り向くと、高校生だろうか………ギャル系女子が5人いた。

 

 

「暇そうだよね~?なんならうちらとどっか行かない?」

 

 

「あ、いや、はい!是非とも!」

 

 

「じゃ、行きたいところとかある?」

 

 

「え、えっとE組の店とかどうですか?どんぐりつけ麺って言う商品が美味しいと聞いたから」

 

 

「あ、マジ?じゃ、それにしようぜ~」

 

 

他の女子達も異論は無さそうだ。

 

 

(よっしゃあ、5人ゲット!ナンパって意外と簡単だな!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※ナンパじゃなくて逆ナンパ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼side

 

 

「はぁ………はぁ…………こんな山の中にあるなんてマジありえねー」

 

 

「不味かったら拡散させてやるわ~」

 

 

そりゃヤバイ。だが、創真曰く超うまいらしい。

 

 

まだ味見してないからどんなものか知らんが。

 

 

「「「アハハハハハハハハハハハハ!!」」」

 

 

……………なんかヤバそうな奴等の笑い声がしてくる。そう思った直後、鼻を伸ばしたヤンキーの集団が笑いながら駆け下りて行った。

 

 

「………………え?」

 

 

「今の何?」

 

 

……………俺にも分りません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

間もなく、E組の校舎に着いた。

 

 

ギャル達は適当に席に座って貰って、隼はちょっとトイレと称して、E組校舎の屋根上にいる創真の元へ行く。

 

 

創真は伝達の役割やら、偵察やら、まぁ色々の役割を掛け持っている。

 

 

「お、帰ってきた。お疲れ様」

 

 

「何がお疲れ様、だ!?こっちは大変だったんだぞ!」

 

 

「あーはいはい。だからご苦労さん」

 

 

適当にあしらう創真。

 

 

「また何かあったら言う。それより早く戻ったら?」

 

 

創真に言われ、隼はギャル達の元へ戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マジうま!今まで食ったことない味なんだけど~!」

 

 

ギャル達は大絶賛。その反応を聞いた隼はホッと息をつく。

 

 

(でも、これぐらい俺でも作れたと思うんだがな……)

 

 

と、そこへ。

 

 

「お待たせ~。アワビゼリーでーす!」

 

 

ホリーがデザートを持ってきた。その瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタッ!!

 

 

ギャルの1人が急に立ち上がった。

 

 

「何この店員さん!?チョーイケメンじゃん!!」

 

 

「え!?あ、そう?なんならあっちで写真取る?」

 

 

「とるとる!皆で取ろうよ~」

 

 

他のギャル達にも声を掛けて、次々に隼の視界から消えていく。独りポツンと取り残される隼。

 

 

(……………ホリーの方が断然モテるとでも言いたいのか?……………くそぉ…………何か悔しい………ぅぅ)

 

 

静かに謎の悔しさを噛み締める隼。するとそこへキバットがやって来て、すっと缶コーヒーを差し出して言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………元気出せ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その珈琲、めっちゃ旨かったby隼




THE NEXT story 4/17 PM 22:00


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第133話 学園祭の時間 3時間目

今回は弟です。


久しぶりのような感じやな。


皆、新生活慣れた?


まぁ、慣れたよね…………多分?


中学生の文だけど、是非楽しんでくれたら嬉しいです!


「おーい渚!来てやったぞー!」

 

 

何か聞き覚えのある声に隼が振り返ると、桜姐さんや松方園長、若葉パークの面々が団体で来た。

 

 

「あ、ヘタレだ!」

 

 

「あぁ!?誰がヘタレだよ!?」

 

 

まぁまぁ、と渚が隼を宥める。何はともあれ、客数は稼げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお!こりゃ絶品じゃ!」

 

 

松方さんは絶賛する。

 

 

「これだけうまければ結構売れてるんじゃない?」

 

 

桜姐さんの言葉に、渚は少し顔を曇らせる。

 

 

「うーん………それが苦戦してて。良いもの作っても、それが多くの人に伝わらないといけないからね……」

 

 

「ふーん………でも心配いらないでしょ。渚達不思議な力持ってるし」

 

 

「普段の行いが良ければ、必ず成果は出てくるぞい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと…………僕は中の仕事を手伝おうかな」

 

 

若葉パークの面々を見送った後、渚が教室に戻ったその時、スマホがブルッと震えた。何だろう、と思って見てみると、創真からメッセージが届いていた。

 

 

『もうすぐ君の出番だと思うので準備しといてね、渚ちゃん』

 

 

メッセージ内容があまりにも簡潔すぎて、いまいちピンと来ない。

 

 

「準備って何のだろう…………て言うか、なんで渚ちゃんって打ってるの!?」

 

 

「こういうことだよ」

 

 

そういう声がしたかと思うと、ブワッ、と誰かが通り抜けていった気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「渚君、メッセージ読んだ?」

 

 

そう聞いたのは、ホリーである。

 

 

「ホリー君………読んだけど、ちょっと意味が分からないんだけど………」

 

 

「下見てみ」

 

 

「下?」

 

 

ホリーに言われ、渚はスッと下を見てみる。なんと、自分の着ていたズボンがスカートになっていた。

 

 

「え!?ちょ、何でスカートに!?もしかしてホリー君が!?」

 

 

「そうだよ~。早着替えさ!」

 

 

「いや、戻してよ!!」

 

 

「いや、それはちょっと………」

 

 

何でダメなの!?

 

 

渚がそう聞こうと思ったその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい、渚ちゃーん!!」

 

 

「!!」

 

 

軽薄な声。渚には聞き覚えがあった。

 

 

「遊びに来たぜ、渚ちゃーん!!」

 

 

「ホラホラ、早く早く!知り合いとかに渚ちゃーんって、聞かれちゃうよ?」

 

 

ホリーに背中を押され、渚は彼──────ユウジの元へつき出された。

 

 

「ゆ、ユウジ君…………どうしてここが分かったの?」

 

 

「島の宿泊者調べて、ここの生徒だって分かったんだよ!」

 

 

「そ、そうなんだ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どんどん稼いでよ渚ちゃん………この際だから手段は選ばないぜ?」

 

 

「お前、えげつねーわ…………」

 

 

ブラックな創真に、デュオは引き気味。

 

 

「おい創真。俺は次何すれば良い?」

 

 

屋根に登ってきた隼が指示を仰ぐ。

 

 

「丁度片岡さんから連絡があった。料理を運ぶの手伝えとよ。人が足りないそうで」

 

 

創真が通話を終えたばかりと思われるスマホをちらつかせながら云う。

 

 

「ほんとお前と言い、人使い荒いな………人を何だと思ってんだクソ委員長………!!」

 

 

『誰がクソですって、隼君?』

 

 

「……………ふぇ!?創真の携帯から片岡の声が……………?まさか………………創真…………!!」

 

 

「…………………………」ニャッ

 

 

なんと、通話は終わっていなかった。即ちわ、隼の失言も全部筒抜けだった。

 

 

『今の失言を無しにしてもらいたかったら、早く降りてきて働きなさい!!返事は!?』

 

 

「イエッサー!!」

 

 

そう返事して、隼は屋根を下りて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、隼は嫌と言うほど働かされた(笑)料理を運んでは教室に戻って、また運んで………補足しておくが、今回創真は楽をしてるように見えるが、実際そんなことなく、時には材料取りに行ったり、偵察したり、指示出したり、料理を作ったり……………一言で言えば、何でも屋的な感じだ。

 

 

実は結構な量の仕事をしているのだ。創真も隼も立派な働きアリであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

「なんじゃこりゃ?」

 

 

隼と創真が学校に行くと、長蛇の列があった。

 

 

「何だこれ?昨日との差がありすぎる。いったい何があった?」

 

 

流石の創真も驚いたようだ。

 

 

『創真さん、隼さん!これです!』

 

 

律がそれぞれの携帯の画面にとあるブログを表示する。

 

 

「グルメブロガー法田 ユウジ…………グルメブロガーだったのかあいつ!?」

 

 

「そう言うことか。こいつのお陰ってことね」

 

 

隼も創真も納得する。

 

 

「ほら、2人とも準備して!急いで開店の準備するよ!」

 

 

片岡が2人に声を掛ける。行くか、と隼は声を掛けて、創真と共に教室へ走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2日目はさらに忙しくなった。客も増えれば、忙しさも増える。隼は無心で料理を運びまくり、創真は指示出したり、材料を山の中に取りに行ったり、運んだり…………………接客して、料理出して、お金貰って、また接客したり……………こんな感じで時間はどんどん過ぎていった。そしてついに麺の在庫がほとんどなくなった。

 

 

「どうする殺せんせー?山のさらに深部に手を出すか?」

 

 

「いえ、ここらで打ち止めにしましょう。これ以上やれば山の生態系が崩れてしまう。君達も実感したでしょう?色んな縁に恵まれていることに」

 

 

「そうですね……………結局授業が目的だったのですか?」

 

 

創真がそう訊ねると、殺せんせーは、どうでしょうねぇ、と不敵な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果的にE組は3位だった。

 

 

1位のA組には勝てなかったものの、本校舎の生徒もそれなりにE組を賞賛していた。

 

 

だがしかし。この状況を快く思わないラスボスが動き始めた。




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良かったら感想とか評価お願いします!


好評価だったら兄ちゃんが喜ぶ…………かな?


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第134話 学の集大成の時間

まだテスト開始しませんよ。


ちょっとオリジナル入れますので。


では、どうぞ!


「さぁ、遂に学問の決戦ですが………トップを取る気はありますか?カルマ君、隼君、碧海さん?」

 

 

「さぁ?」

 

 

「絶対取る!!」

 

 

「どうでしょうね~?」

 

 

それぞれがそれぞれの反応を見せる。

 

 

「ヌルフフフフフ…………そして、1位の座を防衛できますか、創真君?」

 

 

「出来んじゃね?多分」

 

 

創真は余裕そう。

 

 

「前期中間、先生は成果を焦りすぎていた。この学校のシステムも甘く見ていました」

 

 

ですが、と殺せんせーは続ける。

 

 

「君達は頭脳も心も共に成長した。今ならどんな困難にも太刀打ちできるでしょう。全員堂々とトップ50を取り、堂々とE組として卒業しましょう!」

 

 

最高級に気合い入ってる殺せんせー。

 

 

「そう上手く行くかな………進藤から聞いたけど、A組の担任が、理事長に変わったらしい」

 

 

杉野からもたらされた情報に、皆に緊張が走る。

 

 

「遂にラスボス降臨か…………」

 

 

「まっ、そんなの関係ないけどね。我々は我々のやるべき事をやるだけだし」

 

 

「創真君の言う通りです。テストまでに、皆さんの刃をしっかり仕上げる。その事に変わりはありません。さぁ、授業を始めますよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

授業が終わって皆で下校していると、浅野がいた。

 

 

「…………何してんの?」

 

 

「結城 創真か…………E組に1つ依頼があって来た」

 

 

「E組に依頼?」

 

 

浅野の依頼内容はこうだった。

 

 

「あの怪物を殺してくれ」

 

 

────────────へぇ。なるほどね。

 

 

「何を言いたいのか分かったよ。理事長の教育方針をぶっ壊すために、僕に1位を。E組に上位を占領してほしいと」

 

 

創真の憶測を、浅野は首を縦に振って同意する。

 

 

「ほぼその通りだ。だが、1つ間違っている。1位を取るのはこの僕だ」

 

 

「ほー………………言ってくれるじゃないか。それと、だいだいの察しは付くけど、今のA組、ヤバイんじゃないの?」

 

 

「あぁ。今のA組は地獄だ。E組への憎悪を煽って勉強に集中させてる。もしあの方法で勝ったなら、彼等はこの先、その方法でしか勉強しなくなる。だからどうか…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼等や理事長に教えてやってくれ。正しい敗北を」

 

 

浅野は頭をE組の皆に下げた。創真としては、少し浅野を見直した。浅野はプライドの塊かと思っていたが、仲間を思う心もあるんだな-……………と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、仲間の心配してる場合?1位取るのは俺なんだけど?」

 

 

煽るカルマ。通常運転だ。そして、創真も口を開く。

 

 

「さらに訂正しとくと、1位取るのは僕だよ、2人共。余計なことを考えないで、殺す気で来なよ」

 

 

「……………面白い。なら全力でやらせてもらうとしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真は陽菜乃と碧海と帰っていた。

 

 

「創真君、今回も1位を取れる自信ある?」

 

 

「普通に勉強しておけば問題ないでしょ」

 

 

(まったく、そんな頭が欲しいよ………)

 

 

碧海は内心苦笑いで呟く。

 

 

「じゃあさ、少し分からない問題があるから、私の家で教えて貰って良い?」

 

 

「良いよ。碧海さんはどうする?」

 

 

「んー…………私はちょっと喫茶店行こっかな?最近良いところ見つけたから。中々美味しいんだよね~」

 

 

「へー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、隼は神崎と帰っていた。

 

 

「ねぇ、隼君。テスト終わったらデートしない?」

 

 

「え、あ、いいぜ。俺も誘おうと思ってたんだ」

 

 

流石ヘタレ。何処かの話でデートに誘うとキバットに言ってたが(内心、無理無理を連呼してたが)、結局誘ってなかったようだ。

 

 

「隼君、今回こそ創真君に勝ちたい?」

 

 

「そうだな…………あいつに勝つのは俺の目標でもあるからな。A組の奴等も創真も絶対倒してぇ。今度こそ創真の野郎を倒して、奴の悔しがる顔を見たい」

 

 

「そっか。あ、そうだ!今日、私の家で勉強して行かない?」

 

 

「へ?」

 

 

「隼君、今日時間ある?」

 

 

「ま、まぁ………」

 

 

「じゃあ、今日の5時に来てね!」

 

 

スピード決定するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

 

「はぁ…………美味しいなぁ………」

 

 

ちょうど良い甘さの珈琲に、思わず顔が綻ぶ碧海。

 

 

「ここの珈琲美味しいんだよねぇ………明日でも創真君を誘って…………ん?」

 

 

碧海は外から自分を見てる人影を見つけた。その人物は碧海と目が合ったからか、即座に去っていった。

 

 

「ん…………?ストーカー?まさかねぇ………」




THE NEXT story 4/19 or 20 PM 22:00


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第135話 着火の時間

誰かが創真を怒らす爆弾の導火線に火をつけたそうな。


何が創真を怒らせたのか………………どうぞ!


その日の夜

 

 

「ねー碧海さん。さっき言ってたおすすめのカフェに明日行かない?」

 

 

倉橋の家から帰ってきた創真。彼にいきなりそんなことを言われた。ちなみに、息抜きにとの事。

 

 

「全然良いよー!むしろ、大歓迎!折角だから、ホリー君達も誘ったら?」

 

 

「んー、じゃあそうするか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日

 

 

「こりゃ、良いね。うまい珈琲だな」

 

 

その珈琲は創真も太鼓判を押すうまさだった。

 

 

「うんうん。ちょうど良い」

 

 

「悪くないな」

 

 

ホリーもデュオも思わず表情が緩む。ちなみに残念なのはキバット。

 

 

コウモリ含め動物NGなので、窓から創真らが美味しく珈琲を味わうのをやりきれない気持ちでそばの木にぶら下がって眺めるしかない。

 

 

「ここのマスターはね、珈琲を作り続けて30年なんだよ!だから評判なんだ!」

 

 

「珈琲作りしか能がないんでね」

 

 

カウンターにいるマスターが渋い声で言う。それにしても、固そうなイメージの人だ。

 

 

「お客さん、見た感じ中学生ですな?良いですなぁ、お若くて。一生に一度の中学校生活を楽しんで下さいよ」

 

 

勿論楽しんでいますよ。タコ殺したり、今ならテストに燃えたりと─────とは勿論言えず、絶賛楽しんでます、と創真が答える。

 

 

「ねぇ、僕このケーキ頼んで良い?」

 

 

ホリーがメニューを見せると、創真は滅茶苦茶嫌そうな顔をした。

 

 

……………高いのだ。まったく、ホリーは人の財布でどんだけ食うつもりだよ。

 

 

「少し位なら割り引きしましょう。話してて少し楽しかったですし」

 

 

「わーい!じゃ、1つお願いします!」

 

 

「やれやれ、だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さらに翌日

 

 

「何だ創真?はまったのか、あの喫茶店に」

 

 

「まぁ、確かに気に入ったね。今日は隼を誘ったし、もしかしたらもう着いてるかもな」

 

 

「家から5分の近さにあると、ついつい行きたくなっちゃうものですよね」

 

 

「まさしく氷室さんの言う通り」

 

 

交差点を渡ってすぐに、昨日来た喫茶店へ到着する。

 

 

「こんにちはー。あれ隼、それに神崎さんも、何でそこで突っ立って………………え?」

 

 

彼等は目を疑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

店が荒れ果てていたのだ。

 

 

窓ガラスも一部割れ、カウンターの椅子も散らかされ………………昨日とは想像もつかない、無惨な姿へと変貌していた。

 

 

「これは……………どゆこと?」

 

 

「俺らは今来たばっかだ。既に警察と救急車は呼んだぜ」

 

 

隼の言葉を半分上の空で聞く創真。

 

 

中に入ってカウンターを覗き込むと、頭から血を流しで全身ボロボロのマスターが倒れていた。

 

 

「な!?大丈夫ですか!?」

 

 

「だ、大丈夫です…………それより皆さん、気を付けてください。昨日来た坊っちゃんとお嬢さんは何者からか狙われてます」

 

 

「…………何があったか説明できますか?」

 

 

「謎の男達がこの店に来て、昨日来た中学生達の2人の住所を教えろと、あなた方2人の写真を出されまして。怪しそうな男だったに加え、元々聞いてないから知らないと言ったら、この様です…………」

 

 

マスターは力なく笑う。皆、何も言えず黙り込む。遠くから救急車とパトカーのサイレンが聞こえてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

マスターは病院に搬送され、創真達は警察からの事情聴取を受けて解放された。神崎は用事があるので、先に帰っていった。

 

 

「複数人の犯行と見て間違いないね。あの破壊は1人では出来ない………………さて、行くか」

 

 

「何処にだよ?」

 

 

「犯人の所へ。関係のない人をあそこまで痛みつけたんだ。そんでたっぷりお礼をしなきゃ」

 

 

創真、殺る気満々。

 

 

「ホリー、デュオ、キバット、行くぞ。もう場所の目処は着いてる」

 

 

そう言って創真は、タブレットに写る地図にマークがしてある画像を見せる。

 

 

「てか、特定するの早すぎねぇか?」

 

 

神の目(ゴッドアイ)、って言う追跡・探索プログラムを使った。それに加え、誰かは知らんが犯人と思われる犯罪組織の情報が送られてきたからな」

 

 

「おいおい待てよ創真。まさかホリー達とだけで行く気か?」

 

 

含みのある言葉に、隼をちらっと見る創真。

 

 

「創真君は何でも1人でやりすぎなんだよ。私たちも力を持ってる。少しは手伝わせてよ」

 

 

「……………………………」

 

 

「お前には色々助けてもらったんだ。ちょっとぐらい俺らに助けさせろよ」

 

 

「………………相変わらずお節介な奴等だ」

 

 

皮肉混じりだが、創真は少し嬉しそうな表情を覗かせる。

 

 

「さて…………………礼を言いに行こうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時刻は20分前。

 

 

「まぁざっとこんなものか………………」

 

 

彼の操作するパソコンにはとある犯罪組織のアジトから勢力までの細かいデータが表示されていた。

 

 

マウスを操作し、データをとある人物に転送した。




THE NEXT story 4/20 PM 22:00


創真に情報を提供したのは誰だ?


その正体の人物は、忘れ去られた頃にやって来る。


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第136話 爆発の時間

兄は筋肉痛という理由で、弟の俺に任して寝やがった。
最近お疲れのようだな。


前回からの自然な流れか分かりませんが、楽しんでもらえたら幸いです。アトバイス等あったらよろしくお願いします!


着火したら、最後は爆発。


「……………チッ。ターゲットの情報は分からなかったか。で、店を壊してきて終了ってか?お前ら、良いストレス発散になったろ?」

 

 

頭らしき男の言葉に、部下の男達は笑い出す。

 

 

「んで、どうしやす?また狙いやすか?」

 

 

「そうだな…………ターゲットが何せ、大物だからな。世界を叉にかける男の息子と、裏社会との繋がりも噂されている日本一の男の娘…………奴等を拐って金を要求すれば、たんまり金が入るだろうからな」

 

 

そう言って彼等のボスはタバコをふぅ、と吸う。

 

 

「よし、時間をかけて狙おう。焦らなくても、我々の組織は警備体制が抜群。サツが俺らのアジトを突き止めても、その時にはドンズラ。1週間毎に転々としているからな。さらに、アジト周辺には屈強な見張りが20人。監視カメラもアジトの内部や外にもまんべんなく張り巡らされている。我々の足取りを掴むのは勿論、この

部屋まで来るなど不可能!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なら…………僕、いや僕らがその不可能をやってのけた奴等ってことか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォン!!

 

 

「「「!?」」」

 

 

突然、ドアが吹き飛んだ。

 

 

「失礼。ノックを忘れていたよ」

 

 

そう言うと、黒い外套を着た少年……………創真がスッと入ってきた。続いて氷室、碧海、隼、そしてホリー、キバットも入ってくる。

 

 

「貴様は…………!!バカな!?あの警備体制をどうやって………………アジトの場所は!?」

 

 

「割り出したよ」

 

 

「見張り共は!?」

 

 

「僕の相棒のペットに負けたよ」

 

 

ここまで来る通路には、白目を剥いている見張り達が倒れている。そいつらの頭の上にはお久しぶりの登場のフレアとメテオが止まっていた。

 

 

「監視カメラは!?」

 

 

「ハッキングで録画映像を流してます」

 

 

氷室が冷静な声で言い返す。

 

 

「………………バカな。ありえん!!こんなガキに突き止められ、ここまで辿り着かされただと!?」

 

 

「ふつーの警察ならここまで来るのに結構掛かるだろうね………………だが、相手が悪かった。本気にさせた相手が」

 

 

そう言って創真は1歩ずつ近付く。

 

 

「く、糞が!!こっちの方が数は上!!ぶっ殺せ!!」

 

 

その命令で、部下達が一斉に鉄パイプやら、チェーンソーやら、ナイフやらを持って創真の元に殺到する!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから…………今創真が言ってただろ?相手が悪いって」

 

 

創真の前に出たホリーがそう言い終わる前に、部下の男達は後ろ向きにゆっくり倒れる。ガチモードのホリーが全員の意識を奪うのに掛かった時間は僅か0.5秒。

 

 

「ま、まだだ!増援を呼べば殺し屋らが一斉にここ……………」

 

 

男がスマホを手に取る。するとその瞬間、スマホの画面を氷室の特殊警棒が貫通して、そのまま男の胸に直撃する。

 

 

「が……………は………」

 

 

「残念でしたね」

 

 

倒れた男の側に転がるスマホに刺さってる警棒を抜いて氷室が冷徹な声で云う。

 

 

「テメェには感謝してるよ。お陰で殺る気が出た。ありがとよ」

 

 

隼が指を鳴らしながら近付く。

 

 

「お前らの目的は何だったんだ?」

 

 

「お、お前とそこの女を誘拐して、金を要求する事だったんだ。お前ら、親が色々有名だろ!?」

 

 

「確かにそーね。で、店を襲ったのは私らがここに来たと掴んだからってことね。で、マスターに暴力を振るったのは何で?」

 

 

「ま、まぁ暇潰しで」

 

 

「ふざけんな!!」

 

 

余り感情を露にしない創真がキレて、男の顔面に思いっきり蹴りを喰らわす。男はぶっ飛び、鼻血を出して気絶する。

 

 

「チッ、気絶しやがった。俺も殴りたかったのに」

 

 

隼が残念そうに呟く。

 

 

「取り敢えず、後で匿名で警察に教えておきますか?」

 

 

「それもそうですけど氷室さん………ひとつ疑問がありまして」

 

 

疑問、とは?氷室が尋ねる。

 

 

「奴等の詳細な情報を集めて僕に送ってきたのが誰かと言うことですよ。事件発生から僅か2時間弱で詳細なデータを集めた…………相当の凄腕ですよ。いったい誰が………」

 

 

「どうやら、片付いたみたいだな」

 

 

ドアのあった場所の奥から聞こえたその声。ここにいる全員が聞き覚えがあった。

 

 

「………………あなたが情報提供者?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼と碧海さんのお父さん」

 

 

ドアがあった場所から、隼と碧海の父が現れる。

 

 

「お前に情報を送ったのは俺だ。感謝するんだな」

 

 

「……………………うざっ」

 

 

隼と碧海は警戒している。信用ならないからだ。創真を見ていた隼の父が、碧海と隼をチラッと見る。

 

 

「…………………ふん」

 

 

「んだよ親父。今さら連れ戻しに来たのか?」

 

 

「そんなわけあるか隼。いない方が食費が浮く」

 

 

「いや、食費気にしてんの?」

 

 

創真のツッコミは無視され、暫く無言が続く。

 

 

「なるほど」

 

 

急に口を開いた隼の父がそう言った。

 

 

「何がなるほど、だよ?」

 

 

「簡単だ。2人の目が変わった、思ってな。前の学校よりも楽しそうだな」

 

 

「……………………まぁ、信頼できる親友もいるし、クラスの奴等は良い奴等ばかりだからな」

 

 

隼の言葉に碧海も首を縦に振って賛同する。

 

 

「所で隼、碧海」

 

 

彼は懐から何かが書かれた紙を取り出す。

 

 

「それ、俺らのテスト結果通知!何で持ってんだ!?」

 

 

「これくらい手にいれるのは容易いこと。隼は一学期期末で総合2位。碧海は二学期中間で2位、か。椚ヶ丘レベルで2位は大したもんかも知れないが、結局1位ではないのだな………………」

 

 

またかよ、と隼は内心ため息をつく。どうせまた、出来損ないだの言われるんだろうと思っていたが─────

 

 

「…………………と、前までの俺なら言ってたのかもな」

 

 

「…………………へ?」

 

 

「どうも俺は……………………結果に拘り過ぎていたようだ。本当に大切なのは、それに至る『過程』だ。結果はその次だな」

 

 

「「「……………………」」」

 

 

「やれやれ。そんな事も何年も忘れるとは、な。俺もまたまだと言うことか……………………」

 

 

「ちょ、ちょいタンマ」

 

 

そう言ったのは創真だった。

 

 

「マジでどうしました?何か、そのー全然、何て言うか、雰囲気が全然違うんですけど…………」

 

 

「別に大したことではない。俺が間違った考え方だったのを、とある人物に諭され、その間違いを俺は正しただけだ」

 

 

「はぁ………………」

 

 

「まぁ、今回は良くやったんじゃないのか?結果もそこそこ出てるし、お前らもかなり頑張って勉強したと聞いているからな」

 

 

「うわっ……………何か、親父に誉められのって、めっちゃ久しぶりな気がする……………逆に調子狂うわ………」

 

 

隼が小声で聞こえないように呟いた。

 

 

「だが、この結果に満足せず、さらに上を目指すんだな……………………あぁ、それと2人とも………………色々悪かったな」

 

 

「え?」

 

 

「は?」

 

 

意味が分からなさそうな姉弟に、その父親は頭をぽりぽりかきながら云う。

 

 

「だから、その…………………隼に関しては色々手を出したり?碧海には無価値とか言って悪かったって、言ってんだよ…………………んじゃ、言いたいことは言い終わったんで、俺は帰るとするわ」

 

 

帰ろうとする碧海と隼の父親にたいして、思い出したかのように創真は叫ぶ。

 

 

「おい待て。あんた、いつまで碧海さんを僕の家に居させるつもりだよ!」

 

 

「…………おい、碧海。お前、この際だから3月まで居させて貰えば良いんじゃないのか?」

 

 

「あ、そうするー」

 

 

「勝手に決めやがった!おい、帰るならせめて碧海さんの分の生活費を少しは置いて帰れよ!」

 

 

創真の叫びを無視し、彼は歩き去ろうとする。姿が見えなくなろうとするとき、彼は立ち止まった。

 

 

「良い友に恵まれたみたいだな。隼、碧海

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

善かったな」

 

 

「……………………あぁ」

 

 

隼がそう答えると、彼は何処か満足気に消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

事の結末的には、縛りあげておいて警察署の前に捨てといた奴等は、何を恐れたのか今までやってきた犯罪を全て吐き、逮捕になったらしい。

 

 

マスターは1ヶ月で退院できるそうだ。

 

 

「……………でもよ、結局の所、俺らの親父があんなに変わったのは誰のお陰なんだろうな」

 

 

創真の家で勉強会をしている隼はずっと考えていた疑問を碧海に訊く。

 

 

「うーん……………誰なんだろう?もしかして創真君?」

 

 

「いーや、僕は今回何も関わってないよ」

 

 

「んー、じゃあ誰なんだろう?」

 

 

考える碧海と隼を置いて、創真は席を立ってベランダに出る。そこにはキバットがいた。

 

 

「おい、創真。お前、誰があいつらの親父を変えたのか、検討が付いてるんじゃないのか?」

 

 

「……………あの人、2人のテスト結果通知を持ってたでしょ?よーく見たらあのプリントの端に、タコのマークが小さく書いてあったんだよね」

 

 

「タコのマーク……………………まさか、な」

 

 

 

「そのまさか、だ。あのテスト結果通知は手に入れたんじゃなくて、貰ったんだよ。恐らく、手入れ(・・・)をされたんじゃ無いですかね。隼と碧海さんの為に、もしくは彼自身の為に…………………」

 

 

to be continue………




THE NEXT story 4/21or22 PM 22:00


良かったらお気にいり登録、たくさんの感想、好評価を待ってます!


隼の父親に何があったんだろー(棒読み)


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第137話 決戦開始の時間

さて、そろそろ本編を進めないと……………ではどうぞ!


創真side

 

 

「と、言うわけでここに書いてある出来事覚えておけば、半分以上はテストにでる」

 

 

「って言っても…………30個以上をパッとすぐに覚えるのは…………」

 

 

気合いだ前原。気合いで覚えろ。

 

 

「なら、語呂合わせを教える。そうすれば覚えやすいだろ?」

 

 

「あ、語呂合わせなら俺も得意だぜ!1582年の本能寺の変は、イチゴパンツの本能寺の変…………とかだろ?」

 

 

岡島、お前がそれを言うと何か不潔な感じだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、寺坂。空所に入るのは選択肢の中から答えはどれでしょう?」

 

 

「3番だろ!」

 

 

「外れ」

 

 

ピコ

 

 

「…………いちいち間違えたらハンマーで叩くんじゃねぇぞ創真!!」

 

 

「付け足しとくと、ピコピコハンマーだ。ったく、英単語の意味からお前は押さえとかないとな…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんな感じで、創真は教えまくり、応用から基礎まで徹底的に皆に教えまくった。ちなみに寺坂をピコピコハンマーで叩いた合計の回数は、59回。今回、全員トップ50を入れなければ、暗殺に成功しようが否が、胸を張れないだろう。殺せんせーに、第2の刃をしっかり身に付けたら事を示さなければ。

 

 

時間はどんどん経ち………………ついにテスト当日。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

 

 

皆はテスト会場の本校舎に来ていた。A組の教室前まで来ると、殺気が一斉に浴びせられる。

 

 

「「「E組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺すE組殺す」」」

 

 

────────はっきり言って、何か怖い((((;゜Д゜)))

 

 

「創真、トップ取れる自信ある?」

 

 

「そう言うカルマは?」

 

 

「さぁね。本気で殺しに来る奴がいたら、手強いけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

さぁ、間もなくテスト開始だ。合図あるまで暇だから、何か話そうかな。実は、コラボ第2弾が決定しました!時期的には、7月位と見てます。それと、今とある方から僕を別の作品に出させてくれ、と言われてる。

 

 

にしても、お気にいり登録者も120人突破したし……………何か記念にやろうかな?

 

 

あ、お気にいり登録120人突破しました!ありがとうございます!

 

 

何やるか………………そうだな…………………決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

質問コーナーやろう!………………何?お前はYou○uberか?良いじゃないか。作者もハーメルンユーザーだし(?) と、言うわけで活動報告欄にそう言うのを設置しました。常識の範囲内の質問なら答えるよ。

 

 

Twitterに顔出せ、住所・本名言えや、この野郎!!とかはやめてくれよ?まず、作者はTwitterやってない。登場人物の気になる事とか、作者の事でも出来る範囲で答えます!

 

 

例えば、隼を例に質問を考えると…………………

 

 

『隼と創真って喧嘩しないんですか?』

 

 

とか?

 

 

あとは、『作者、彼女いる?』とか、そんな感じで質問してくれたら良いかな?

 

 

ちなみに、あっちから喧嘩を吹っ掛ける真似はしてこない。それで、作者に彼女はいるのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フフフフ………………もし、質問されたなら答えるそうだよ?ちなみに、1個も来なかったら自然消滅したって事で。

 

 

おっと、そろそろ時間かな?

 

 

では、質問待ってるよ!

 

 

「始め!!」

 

 

 




THE NEXT story 4/22 PM 22:00


You○uberではないけど…………質問待ってます!



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第138話 決戦の時間

どうぞ!


英語

 

 

過去最大級に、手強い問題…………いや、問スター。皆は苦戦しながらも、問スターに立ち向かっていく。

 

 

「くっそ…………問題エグい上に、量が多すぎだろ!?」

 

 

杉野が弱音を吐く。そんな杉野と打って変わって

 

 

「何だ理事長、この問題は!?あんたがテスト仕切ってもこの程度か!?」

 

 

隼が問スターを圧倒していく。

 

 

「やれやれ…………元気なことだあいつは」

 

 

「まぁ、隼は熱くなるとあんな感じになるんだ………」

 

 

呆れる創真と、苦笑いを浮かべる碧海も、問スターを着々とダメージを与えていく。無論、トップ候補のカルマもだ。

 

 

やはり、この4人は秀でている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

社会

 

 

「ったく、動きが遅そすぎんだろ?こんなんなら、目を瞑っても倒せるぜ」

 

 

多分お忘れかと思うが、隼は社会が大得意。創真と同等以上のスピードで、問スターを駆逐していく。

 

 

「うーん…………」

 

 

碧海は社会は得意ではない。創真に猛特訓してもらったとは言え、苦戦を強いられていた。そしてついに、終了の鐘が鳴りった。

 

 

碧海はふう、と息をつく。

 

 

「んー…………どうだろうな…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理科

 

 

「ふむふむ。中々凝った問題なことで………」

 

 

杖を片手に、創真はそう呟く。

 

 

「おい、創真。A組の奴等どんな感じだったか知ってるか?」

 

 

「いや、知らん」

 

 

「めっちゃ激ってたぜ。狂ったように集中してる。殺意って恐ろしいな………」

 

 

「ふーん。ま、その集中力がいつまで続くのやら」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

国語

 

 

「フッ………………」

 

 

「何笑ってやがる創真?簡単だったから笑ってるのか?」

 

 

隼の質問に、創真は意外な答えを返す。

 

 

「いや、小説の話がめっちゃ良くて………ちょっと感動した」

 

 

「あっそ…………てか、お前も感動とかするんだな。てっきり、そういう感情はないかと思ってた」

 

 

「ひどいねぇ………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数学

 

 

「ぐぬぬぬぬ………!!」

 

 

お忘れかと思うが、隼は数学が苦手なのだ。

 

 

「あっれ~?隼、苦戦してんね~。そこは漸化式使って特殊解に持ってくんだよ~?」

 

 

「うっせぇ!今やろうとしてんだよ!」

 

 

「隼、解くの遅くない~?」

 

 

カルマと一緒に碧海も煽る。

 

 

「あーよし、出来た出来た!てか、お前らも早く自分の事やれよ!」

 

 

「はいはい。じゃ、ラスモン行きますか」

 

 

カルマが前にチラッと目を向けると、同じくラスモンに取り掛かろうとしている浅野の姿が見えた。

 

 

「おや、皆お揃いな事で」

 

 

創真が1番最後にやってきた。

 

 

「創真君、意外と遅かったね?」

 

 

「暇だったから見直しをしてきた。さぁ、最後の問スターを倒して、ゲームクリアとしようか」

 

 

最後のラスボス討伐のエントリー者は………浅野、創真、碧海、隼、カルマ………この5人のみだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図のように一辺aの立方体が周期的に並び、その各頂点と中心に位置する結晶構造を体心立方構造と言う。

アルカリ金属の多くは体心立方構造である。

体心立方構造において、ある原子Aoに着目したとき、空間内の全ての点のうち、他のどの原子よりAoに近い点の集合をが作る領域Doの体積を求めよ。

 

 

碧海、隼、カルマは筆記用具を置いて、考え始めた。

 

 

創真は

 

 

(……………………勝ったな)

 

 

内心、ニヤリと笑って解答を書く手を進めた。安定の、創真は天才。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真は解答への道筋を見つけたが、3人は今だ悩んでいた。残り時間はついに5分を切った。その時……………彼等に電流が走った。

 

 

(((これ、もしかして…………難しい計算いらない…………!?)))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

4日後

 

 

「さぁ、皆さんおまちかねのテスト返却と行きましょう!」

 

 

その言葉に、皆は緊張した様子を見せる。さぁ、まずはどの教科から返される…………と、思いきや殺せんせーはマッハで全員に全教科の答案を渡した。

 

 

「細かい点数は四の五の言いません。今回は全員トップ50に入れたどうか!本校舎でも発表されてる頃ですし、E組でも順位を先に発表しましょう!」

 

 

殺せんせーは、順位表を黒板にはり、皆は黒板の前に来て、順位表を目にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第1位 結城 創真 500点

 

第1位 赤羽 業 500点

 

第3位 浅野 学秀 497点

 

第4位 月城 隼 496点

 

第4位 月城 碧海 496点

 

 

中略

 

 

 

第49位 寺坂 竜馬 317点

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこには……………全員の名前が確かにあった!

 

 

「「「やったあ!!全員50位以内達成!!」」」

 

 

ひゃー、嬉しいね!

 

 

「くそ…………創真に勝ちたかったけどな………」

 

 

「あーあ。創真君に勝ちたかったな~」

 

 

隼と碧海さんは少し悔しそうだ。

 

 

「にしても、流石創真だな」

 

 

「全部のテストで1位をキープしやがったぜ」

 

 

「まーね……………………それにしても、今の理事長の心境、めっちゃ複雑だろうなー…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理事長もまた、順位表を見ていた……………が、それをくしゃくしゃにして、ゴミ箱へすっと捨てた。

 

 

「…………………………!!」

 

 

彼の心の内にあるのは怒りか、悔しさか、屈辱か。理事長は理事長室を出て、A組の教室へ向かった。




THE NEXT story 4/23 PM 22:00


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第139話 誤作動の時間

実は、質問コーナーに書かれたのを元に、話を作る予定です!
この際、1人何個でも良いのでどんどん書いてください!


活動報告欄に質問コーナーがあるので書き込み待ってます!

今回は短めですが、ではどうぞ!


A組の教室の雰囲気が重かった。

 

 

「なんでだ……………あそこまでやったのに負けるなんて」

 

 

殺意でドーピングしても、長く続くわけがない。そんな勉強法で順位が上がると思ったら大間違えだ。

 

 

だからこそ、浅野は口を開く。

 

 

「君達の勉強法では勝てなかった。それだけの事。そう言う僕も誇れる点数を取れず…………あいつに1度も勝てなかった」

 

 

浅野は続ける。

 

 

「高校では、僕は絶対負けないように努力しつつ、君達も勝たせる手段を探し続ける。だから、皆も僕を支えてくれ!」

 

 

「浅野君……………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君は命を掛けた後の勝負でも同じことを言えるのかい?」

 

 

「!!」

 

 

いつの間に入ってきたその人物の言葉は、部屋の温度を急激に下げたような気がした。その言葉の主は、当然、浅野理事長。

 

 

「人生は常に分からないものだ…………その勝負が生死を分けるものか。生きるためには、君達は勝ち続けなければならなかったのだ。教育者である私はそれを君達に教えなければならない。卒業までに脳みそを徹底改造しよう」

 

 

もはや、誰の目にも明らかな洗脳教育までやろうとしている。それを聞いたA組の生徒の心は決まった。

 

 

「…………理事長先生」

 

 

理事長がチラッと声のした方を見ると、五英傑の1人、荒木が前に出た。

 

 

「今はっきり分かりました。今のままでは、E組には勝てません」

 

 

その言葉が引き金に、榊原も喋りだす。

 

 

「E組や浅野君は、負けを経て強くなった。僕らはそんな強さには勝てません……………力及ばず申し訳ありません」

 

 

榊原が頭を下げると、浅野以外の他の生徒も頭を下げる。

 

 

「お気に召さなければ、E組に落としてください。その方が、僕らは成長できる気がします」

 

 

A組全体が、理事長の教育方針との決別をハッキリと示した。そして呆然とする理事長を、教室のドアガラスから見つめる人影に誰も気づかなかった。

 

 

浅野も暫く黙っていたが、理事長の方を向く。

 

 

「理事長これが答え」

 

 

バシッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な………………………!?」

 

 

浅野の目の前で、殴ろうとした理事長の手が止まっていた。

 

 

その手を止めていたのは─────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「教育者が生徒を殴って良いんですか、理事長?」

 

 

──────────氷室だった。

 

 

氷室に言われて、理事長は何故か自分が学秀を殴ろうとした事に気づいた様子。そして、何も言わずに氷室の手を振り払って、教室から出ていった。

 

 

「……………あなたは確かE組の教師…………何故ここに?」

 

 

『僕が頼んで行ってもらったんだよ、浅野君』

 

 

氷室のスマホから創真の声がした。

 

 

「まさか……………こうなることを予想してたのか?君は………もはや化け物だ」

 

 

『そりゃどーも。僕に感謝しとけよ。じゃ』

 

 

創真が通話を切る。浅野は氷室にお礼を言い、氷室はいえいえ、とにこやかに返した後、何事もなかったように出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理事長室へ戻った浅野理事長。終始怖い顔で無言だった。幼児だったら泣いてるだろう。そして暫く経った後……………理事長は、棚からとある紙を取り出した。その紙上にはこうハッキリと書いてあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『解雇通知』……………………と。




THE NEXT story 4/24 PM 22:00

質問щ(´Д`щ)カモ-ン


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第140話 理事長の時間

遅れてすみません!


急いだので間違ってるかもしれませんが、どうぞ!


翌日

 

 

「さて、皆さんはE組を抜ける資格を手に入れた訳ですが…………抜けたい人はいますか?」

 

 

「いないでしょ。ここからが本番だからね、この教室は」

 

 

そう言うと創真はマカロフ似のBB弾銃の引き金を引くが、殺せんせーには当たらない。

 

 

「所で先生よ。折角全員トップ50入ったんだし、なんか褒美やっても良いんじゃねぇか?」

 

 

「キバット君に言われずとも、考えてありますよ。では、先生の最大級の弱点を教えるとしましょうか」

 

 

「あっさりそういうヤバそうなの教えるんだな…………その弱点はどんなもので?」

 

 

「それはですね…………」

 

 

殺せんせーが言い掛けたその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドォン!!

 

 

「「「!?」」」

 

 

突然、教室を大きな揺れが襲う。創真が教室の窓から覗くと……………顔が引きつったまま固まった。

 

 

そして、呆然と呟く。

 

 

「校舎が半分消えてる……………」

 

 

皆も窓から覗くと……………確かに、校舎がショベルカーによって半分壊されていた。

 

 

「退出の準備をしてください」

 

 

声がした方を向くと、そこには理事長がいた。

 

 

「今朝の理事会で、この校舎を取り壊すことを決めました。君達は来年開校する新校舎に移って貰います」

 

 

「新校舎?嫌な予感しかしないですね」

 

 

「脱出防止システムを搭載した監獄のような環境………………私の教育の理想です」

 

 

「理事長。ハッキリと言わせて貰いますが、あなたの思考はパンクしてますね。色々ありすぎて」

 

 

「私はいつも通りですよ、氷室先生?……………ああ、それと殺せんせー」

 

 

「にゅ?」

 

 

理事長は懐から紙を取りだし、殺せんせーに見せる。その瞬間……………殺せんせーの表情が青ざめた。

 

 

「もう、私の教育にあなたは不要です」

 

 

その紙には、解雇通知と書いてあった。

 

 

「ですが、勘違いなさらぬように。私は…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたを殺しに来たのです」

 

 

「へー……………………何を企んでるのか知りませんが、すんなり行ける相手じゃないんですよ?」

 

 

創真の言葉に、謎の笑みを浮かべて返す理事長。そして、重機を使う作業員に、一旦解体を中止するように伝え、校舎に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

理事長は机の上に用意した問題集を置いた。

 

 

「殺せんせー。首になりたくない、そして校舎を破壊されたくないなら、私とギャンブルをしてください」

 

 

外に出された生徒達は、この時点で理事長が何をしたいのかまだ分からなかった。

 

 

「ルールはこうです。私が作らせたこの5つのグレネード…………4つは対先生用BB弾入りで、1つは対人用です。レバーが上がると爆発するタイプのこれらを問題集の適当なページに挟みます」

 

 

「………………で、そのページの問題を解けと?」

 

 

「正解だ創真君。ページの右上の問題を1題解いてください。ただし、解けるまでは動いてはいけません。順番は殺せんせーが4つ先に解き、私が最後のを解く………こんなところです」

 

 

(なるほど。なかなか勝算が高い…………ように見える。首をちらつかせて、あからさまに優位な暗殺を仕掛ける…………………か)

 

 

創真が内心でそう分析するなか、理事長は殺せんせーに問い掛ける。

 

 

「殺せんせー、やりますか?」

 

 

「………勿論やりましょう」

 

 

殺せんせーの声が少し震えていた。動揺でもしてるのか、触手も震えてる。

 

 

それをにこやかに見守る理事長。

 

 

緊張している殺せんせーが問題集を開いた。透明化中のホリーも問題集をチラッと見る。数学………………平面図形計算だった。

 

 

(……………ん?おい、殺せんせー!?早く答えろよ!爆発するぞ!!)

 

 

ホリーの心の声もむなしく、殺せんせーは何故か頭を抱えるばかり。

 

 

そしてついに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バァァンッ!!

 

 

教室に煙が立つ。

 

 

「まずは、1ヒット」

 

 

理事長が不敵な笑みを浮かべながら呟く。殺せんせーはかなりのダメージだった。

 

 

「さ、回復する前に次を解いてください」

 

 

理事長が解雇通知をちらつかせながら促す。

 

 

「フフフフ…………やはりあなたは凄い人だ。流石ですよ、理事長」

 

 

「それはありがとう、創真君」

 

 

「ええ、本当に凄いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分の首を締めてることに気づかない所が」

 

 

「「「!?」」」

 

 

理事長すらも挑発する言葉に、皆は少し驚く。

 

 

「……………ほう?どういうことだい?」

 

 

「見てれば良いじゃないですか?」

 

 

創真に言われて殺せんせーに目を戻すと、丁度問題集を開こうとしてるところだった。

 

 

ピシッ

 

 

そんな音が響いたと思うと、問題集の表紙に答えが書いてある紙が貼られた。

 

 

「はい!開いて解いて閉じましたよ。この問題集、どこにどの問題があるか殆ど覚えてます。数学は長く貸していたので、忘れていました」

 

 

「馬鹿な…………たまたま覚えていたとでも………」

 

 

「日本中の問題集を解いて覚えたんだろ。僕も解いたし。僕がやるんだから教師もそれくらいやるだろ?」

 

 

(((いや、創真!!全国の問題集を解こうと思うのはお前ぐらいしかいねぇよ!!)))

 

 

全員は心の中でごもっともなツッコミを入れる。

 

 

「やはり、氷室先生の言う通り、教え子の敗北で心を乱したようですねぇ」

 

 

そう呟きながら、殺せんせーは残りの問題集をちゃっちゃと片付けていく。

 

 

「安易な暗殺であなたは自分の首を絞めた…………残り1冊…………解きますか?浅野理事長」

 

 

理事長は、殺せんせーの言葉をぼんやりと聞いていた。彼の頭の中では、あのときの『後悔』過っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は良い生徒を育てていた。

 

 

この校舎で塾を始めたときの、第一期生…………彼等は本当に『良い』生徒だった。ずっと、こんな『良い』生徒を世に出していこうと思っていた。

 

 

あの時までは。

 

 

とても元気だった、第一期生の1人がいじめで亡くなった。その時私は悟った。強い生徒を育てなければならなかったのだと。だから、教える私は強さを学びつくし、その強さを生徒に教え続けた。

 

 

強い生徒に育てるために、私は何でもしてきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、残ったのは『死』だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………理事長。貴方と言えども、流石に爆弾の挟まった問題集を解けるわけがない。あなたの負けでは?」

 

 

氷室の声に、理事長は現実へ戻された。

 

 

 

「確かに私の負けです……………でもね」

 

 

「…………何をする気ですか?」

 

 

氷室の質問には答えず、理事長は殺せんせーの方を向く。

 

 

「殺せんせー。あなたが地球を滅ぼすなら、それで良いんですよ」

 

 

そう言って、理事長は問題集を開いた。

 

 

バァァンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………!!」

 

 

────────理事長は死ななかった。

 

 

「なるほど。脱皮を理事長用に残しておいたのか、殺せんせー」

 

 

「創真君の言う通りです。私が勝てば自爆を選ぶと思ってたので」

 

 

「何故私の行動が断言できる?」

 

 

「似た者同士だからです。どこまでも教育に意地っ張りで教育バカ……………テストの間に、あなたにあった出来事を調べました。10年前のあなたの教育理想は私の理想とそっくりでした」

 

 

殺せんせーは続ける。

 

 

「あなたと私の違いはE組があったこと。同じ共遇をしてるから、校内いじめに耐えられる。1人で抱え込まなくてすむ…………このE組を作ったのは理事長、あなたですよ……………もしかして、御忘れなっていましたか?」

 

 

理事長は下を向いて、暫く黙っていた。そして、顔を上げたとき、全てを理解したような顔をしていた。

 

 

「どうやら私もあなたに手入れされてしまったようだ……………E組の取り壊しは中止にします。それと、私もたまに殺りに来ても良いですかね?」

 

 

「いつでもお待ちしていますよ。ヌルフフフフフフ」

 

 

理事長は去り、殺せんせーの首と、校舎の取り壊しはなんとか免れたのであった。




THE NEXT story4/25or 26 PM 22:00


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第141話 (特別編)質問コーナーの時間

良い子の皆!!


質問コーナーの時間だよ!!


では、どうぞ!


はい!どうもこんにちは、作者です!早いもので、もう4月も終わろうとしてますね。

 

 

今年は桜が散るのが早かったなぁ…………それが1番印象的ですね。さて、今日は特別編の質問コーナー!

 

 

今日はラジオ風に創真君達と色々話していこうかと思ってます!最後までどうぞお付きあい下さい!さて、今日創真達は劇の発表会があって、その終わりに来ると言うことですが………………お、来たかな?

 

 

「待たせたな作者」

 

 

先頭の創真が声を掛ける。

 

 

「演劇お疲れ様。今日はどんな劇だったの?」

 

 

「(知ってるくせに)……………桃太郎のリメイク版だよ。鬼役の隼がボコボコにされてた(笑)」

 

 

「何が、(笑)だ!?結構痛かったんだからな!?」

 

 

隼、お疲れ様です。

 

 

「碧海ちゃんは何をやったの?」

 

 

「私は裏方の仕事ですよ~」

 

 

へー…………何か意外。

 

 

「ではでは、質問に移って行きましょうか!質問は3件来ました!あと、匿名希望でメッセージでも1件来たんですよ。では、1つ目。artisanからの質問で………『どこに住んでるんですか?県名で良いので教えて欲しいっす!』」

 

 

「県名か……………それなら家凸とかされないとは思うし、別に答えても大丈夫なんじゃないか?」

 

 

創真大先生もそう言うし、答えましょうか。僕は神奈川県に住んでます。神奈川の何処かに。

 

 

「では、2つ目。YD主義者さんから…………『暗殺教室以外の作品は書かないんですか?』」

 

 

良いこと聞いてくれました!

 

 

「まぁ、取り敢えずこれからの予定としては、本編完結後にコラボの話やった後、大学受験に専念するために暫く休業ですが……………大学受験が終わった後に、再開します。ちなみに次作は、デスマーチから始まる異世界狂想曲を原作に文スト要素を入れたものにしようかなとか…………まぁ、他にも色々あります」

 

 

まぁ、最後辺りにアンケートをまた取るので、その時に発表ってことで。

 

 

じゃ、次。

 

 

「タイマ・エメラルドさんからで…………『ガンダムはどの作品が1番好きですか?』」

 

 

そうだなぁ……………ガンダム作品の中だと……。

 

 

「ユニコーンかな…………最近ユニコーンの続編的なのも発表されたし、普通にカッコいいし」

 

 

……………あ、ガンダム興味ない人はごめんね。

 

 

「さて、最後に匿名希望の人からで…………『プロフィールに何か書かないんですか?』」

 

 

逆に………………何か書いた方が良いの?誰か、メッセージでも感想でも良いので教えて!!

 

 

「さて、まだ内容は薄い気がするので、何か別の話題にしようか…………何にするか…………」

 

 

「あ、それならよ……」

 

 

隼君?

 

 

「この作品の主人公は創真だが…………創真、って名前はどう言った経緯でつけられたんだ?」

 

 

あーそれね。

 

 

「創真は発明が得意だろ?色んな物を作り出す。その『作る』って字は同じ読み方で『創る』って言うのもあるでしょ?『創』の後ろに『真』ってつけると、そうまって読むからかっこいいかな………と思って」

 

 

「へー………じゃあ隼と私は?」

 

 

「隼と碧海ちゃんの場合は…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

思いつき。特に意味はない」

 

 

「「無いのかよ!!」」

 

 

うん、無い。

 

 

「アハハ…………でも、私は碧海って名前気に入ってるよ~」

 

 

「俺もまぁ…………悪くはないな」

 

 

それは良かった。

 

 

「じゃ、最後に作者。今さらだが、この小説での目標を決めろ」

 

 

いや、ほんと今さらだな。

 

 

「目標…………まぁ、そうだな…………お気にいり登録者を…………150人にする?」

 

 

「ハードル低めかよ!?現時点で133人だぞ!!ここは200人だろ!!」

 

 

やれやれ。いちいちうるさいなぁ、隼君は。

 

 

「………あ、そうだ。じゃあ、最終回の時点で登録者が200人行ったら、この作品の続編を次作にやるよ」

 

 

「言ったな?読者の皆、今のうちにスクショしておいてくれ!!」

 

 

…………隼をぶっ飛ばしたくなってきた。

 

 

「じゃあ、ちゃんと約束しよう。200人行ったら創真を主人公に続編をやる」

 

 

「え、ちょっと待って。私達も出るよね?」

 

 

「……………………………」

 

 

「おい、出ねぇとか言わせねぇぞゴラァ!!」

 

 

「まだ作者は何も言ってないだろうが…………結局出すのか?」

 

 

創真君、その答えはね……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「出すよ」

 

 

その言葉に、隼と碧海はホッとする。

 

 

「あー良かった。俺らの出番もまだ終わらないと言うことか」

 

 

……………200人行けばね?

 

 

「まぁ、この作品の続編やるとしたら、何を原作にやるか決めてないんだよね。ま、選択肢の1つとして考えておくよ」

 

 

てか、あと67人だろ?ぶっちゃけ、そこまで行くかと言えば微妙なラインだ。今のところは、次作は新しいのかなと、そんなつもりで考えてはいますが…………………まぁ、さっきも言いましたが、可能性の1つとして捉えておいて下さいな。

 

 

「じゃ、今日はこの辺で終わりにしましょう。明日はいよいよアレです!お楽しみに!」

 

 

「アレって何?創真君、知ってる?」

 

 

「いや、知らんな…………」

 

 

まぁ、明日にでも3人は分かる。

 

 

では、また明日!




THE NEXT story 4/26 PM 22:00


さぁ、明日は遂に……………!!


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第142話 正体の時間

やっとここまで来たようだ……………by弟



今月俺、しょっちゅう書いてますな…………。


まぁ、楽しんでください!


「あーまったく。ひどい目にあったぜ昨日は」

 

 

E組が演じた新桃太郎。取り敢えず隼はかなりボコボコにされたとでも言っておこう。

 

 

「それ、昨日の質問コーナーの時にもそれっぽいこと言ってたよね………所で隼、創真君は何処に?」

 

 

「知らねーよ。暇だから散歩してくるって、言って何処か行った」

 

 

「もー………今から皆で一緒に冬休みの暗殺の計画たてようと思ってたのに」

 

 

そう言えば、と隼は思う。

 

 

(碧海もすっかり馴染んだな…………)

 

 

最初はどうなるかと思ったが、碧海は皆とすっかり仲良くなれたみたいだ。

 

 

「ねぇ、隼君。今度ゲームセンターに行かない?」

 

 

そう声をかけてきたのは神崎だった。

 

 

「え?あー………良いぜ。冬休み中にでも行こうか」

 

 

ちなみに……………こいつらできてるんじゃね、と言う噂はとっくに立ってる。神崎はその噂に気づいてるかはいざ知らず、隼はバレてないと思ってる。

 

 

「冬休みが楽しみだな…………………にしても、創真の野郎は何処に行ったんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、渚は茅野に連れられて体育準備室へ来ていた。

 

 

「ありゃりゃ………だいぶ散らかしちゃったね」

 

 

床には昨日の劇で使かったビーズが散らかっていた。

 

 

「片付けてたら手が滑って…………」

 

 

「なら手伝うよ。一緒にやった方が早いし」

 

 

「ありがとー!皆が暗殺の計画立ててるの邪魔したくなくて」

 

 

と、そこへ

 

 

「先生も手伝いましょうか?」

 

 

殺せんせーも準備室へ来た。

 

 

「んー…………じゃあ、お願いしようかな?」

 

 

「ヌルフフフフフフ。任せてください」

 

 

殺せんせーと一緒に、談笑しながら渚と茅野もビーズを拾っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……………そこから10分前。

 

 

創真side

 

 

「あー暇だ暇だ。退屈だなぁ………」

 

 

僕は独り、森の端の崖に来ていた。

 

 

「お…………ここはカルマが飛び降りた所だったな」

 

 

何故か懐かしさを感じる。今、ホリー達は新宿に行って映画を見に行ってる。

 

 

キバットは映画館に入れないので、まぁ、美女観察だろう。あと15分位で帰ってくる筈。あぁ、そう言えばね…………………マシンフロッグをこの前作ったのだが、暗殺用ではなく、完全に遊び道具と化したのだ。

 

 

活動報告欄で、見てれば分かるが、あらかじめポットにサプリングされている人物の音声で再生して遊んでたりする………………意外と面白いそうで。

 

 

他にもマシンアルマジロも、サッカーのボール代わりにされると言う形に落ち着いた。まぁ、この時期になるとさ……………もう偵察用の作ってもあんまり意味がないんだよね。もう殺せんせーの事は色々知れてるから。だから、今度はガチで仕留める、最高にして最強の1体を作る。ホリー達の世界の技術も総動員して。

 

 

……………話すネタがなくなった。

 

 

「あ、いたいた。創真君、何してるの?」

 

 

声の主は茅野ちゃんだった。

 

 

「やることなくて暇なだけ。茅野ちゃんは何しに?」

 

 

「私はちょっと気分転換に…………ここは風が気持ちいいって言ってたからね。そう言えば、ここってカルマ君が飛び降りた場所だよね?」

 

 

「そうだね」

 

 

「どのくらい高さがあるんだろう…………?私だったら怖くて足がすくむかな………」

 

 

「それは僕もだな………」

 

 

スッと立ち上がって、僕は崖を覗き込んでみる。

 

 

「うん………………やっぱ怖い」

 

 

「……………そう言えばホリー君達は?」

 

 

「映画を見に行きに新宿へ。あと15分位で帰ってくる筈」

 

 

「そう……………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なら良かった。それだけあれば充分」

 

 

何が……………と、聞く前に、手ではなく、何かに背中を押され、空中へ身を躍らせていた。

 

 

「な…………………!?」

 

 

空中で身体が1回転したとき、彼女のうなじから生えていた物をを見て全て合点がいった。

 

 

「……………なるほど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

 

 

「じゃあね、創真君」

 

 

落ちていく創真を見つめながら、茅野はそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、現在。

 

 

茅野はビーズ拾いを続けていた。

 

 

「色んな事があったね…………この1年。春には渚が自爆を仕掛けたり、創真君が転校してきたり……………夏は島に行ったり………あと、創真君の学力には驚かされたり」

 

 

「うん…………そうだね。ほんと、濃い1年だったよ。でも、ここでの行事は終わりだね」

 

 

「渚くん。まだ、入試が残ってますよ?」

 

 

「あー……………そうだね………」

 

 

苦笑いする渚。

 

 

(私もこの教室で色んな事やれたなぁ…………)

 

 

手を後ろにくんで思い出に浸る茅野。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのうなじから………徐々に………徐々に………髪とは違うものが生えてきた。

 

 

「気づかなかったね……………最期まで」

 

 

「見つけたぞ、茅野!!」

 

 

茅野がそう言うのと、準備室に黒外套を纏った創真が入って来たのは同時だった。

 

 

ドォンッ!!

 

 

茅野が床にそれ………………触手で攻撃すると、床の一部が崩れ、殺せんせーは落ちていく。そして、茅野も続く。

 

 

「………………渚君、離れておけ」

 

 

「え、創真君何する気!?」

 

 

渚の問に答えず、創真も飛び込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺せんせーは劣勢を強いられていた。動揺してるに加え、茅野に触手の動きを全て読まれている。なすすべがなく、落ちていく殺せんせー。

 

 

(この穴の下は………………対先生用BB弾のプール!)

 

 

殺せんせーは自分の触手を落とし穴の壁にくっつけ、落下を止めた。

 

 

(あと一撃!!)

 

 

茅野がとどめを刺そうと、触手の一撃が殺せんせーを襲う………………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………!?」

 

 

触手が見えない壁に阻まれた。殺せんせーの目の前には龍を思わせるような黒獣が。

 

 

(これ………………まさか……………!?)

 

 

その黒獣を辿ると、茅野の上に、黒獣を壁に突き刺して浮いている創真の姿があった。

 

 

「ホリー達がいないなら、僕は飛べない。だから、崖から落としたら僕を殺せる………………そう思ってた?」

 

 

一体どうやって……………そう訊こうとした茅野は後ろから差す光に気付いた。振り向くと、殺せんせーが触手を一点に合わせていた。

 

 

(エネルギー砲………!?まずい、防御を……)

 

 

だが、殺せんせーは照準を茅野から落とし穴の壁に向け、ビームを発射した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺せんせーは空いた穴から脱出した。

 

 

「殺せんせー…………今のは…………!?」

 

 

渚にでも呼ばれたのか、又は音に気付いたのか、集まった誰かの質問を遮るように、準備室の天井を突き破って2つの人影が現れた。創真と茅野だ。

 

 

「全く、さっきはやってくれたね。お陰で死にかけた」

 

 

「ごめんね。創真君がいたら暗殺を邪魔されてたかも知れないから……………一体どうやって戻ってきたの?」

 

 

「それはね…………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっひょー、危ない危ない……………」

 

 

創真は崖に落とされ、茅野の姿が見えなくなったのを見計らって、ワイヤー銃を取り出し、引き金を引いた。先端のアンカーは崖につきささり、創真の落下は何とか止まった。

 

 

「ワイヤー銃を持ってて良かった……………持ってなかったら死んでたわ」

 

 

ホッとする創真。だが、いつまでもこうしてる訳にもいかず、スマホを取り出してホリーに電話を掛ける。

 

 

『もー、どうしたの創真?折角映画の余韻に浸ってたのに』

 

 

不満そうなホリー。創真はカメラ通話に切り替え、今の自分の現状を見せると、ホリーの声に緊張が走った。

 

 

『ど、どうしたの創真!?』

 

 

「どうしたもこうしたも、崖から落とされて死にかけたのを何とか回避したんだよ。今、E組の崖の所にいるから早く来てくれないか?」

 

 

『わ、分かった!3人で今すぐ行くからね!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………ま、こんな感じ。残念だったね、殺せなくて。爪が甘かったね」

 

 

「ッ!!」

 

 

「それと……………これは勘だけど茅野カエデって、本当の名前か?」

 

 

「違うよ。私の名は雪村 あかり。雪村 あぐりの妹。お姉ちゃんを知ってるでしょ?人殺しの殺せんせー」

 

 

「…………………!!」

 

 

殺せんせーが息を呑むのが創真にも分かった。

 

 

「また殺るよ、殺せんせー。場所は後で指定する。それと…………創真君。今の状態だと私はあなたに負ける気がしない。私の暗殺を邪魔するなら、殺すよ?」

 

 

その言葉に、創真も冷徹な笑みを浮かべて言う。

 

 

「殺ってみろよ。殺れるもんなら、ね」

 

 

その言葉を受けた茅野はフッと笑い、触手を木に巻き付け、跳躍をして去っていった。




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第143話 守る時間

茅野VS殺せんせーor………………?


やはり、この主人公は黙って見てる訳がない。


茅野が跳び去った方向を創真は暫く見ていたが、準備室の屋根から飛び降りて、皆の元へ行った。

 

 

「そ、創真君……………カエデちゃんに殺されかけたって本当?」

 

 

「うん。崖から突き落とされた」

 

 

その言葉に、皆は表情を暗くする。茅野が創真を本気で殺そうとしたことが信じられなかったのだ。デュオが憑依を解除して口を開く。

 

 

「それにしても、彼女は最初から触手を隠し持っていたのだろうな。体に負担が大きすぎたんじゃないのか?」

 

 

「……………メンテもせずに触手を表情も変えずに隠し持てる筈がない。あれは地獄の苦しみだ。脳の中を棘だらけの虫が暴れまわる感じが絶えず続く」

 

 

かつて触手を持っていたイトナが言うのなら、相当の苦しみなのだろう。

 

 

「あのー……………さっき茅野ちゃんが言ってた雪村 あぐりって誰?」

 

 

碧海だけでなく、創真や隼も同じ気持ちだった。

 

 

「俺らの前の担任だよ。碧海さん達は知らないけど、2年の三学期の間だけ、担任をやってたんだ」

 

 

「で、今その先生は何処に?」

 

 

創真は磯貝に訊くが、磯貝は首を横に振る。

 

 

「ちょっと良いか?」

 

 

そう言ったのは三村だった。

 

 

「茅野を何処かで見たことがあるって気がしてたんだ………で、さっき髪を下ろしてたのと、きつめの表情で思い出した」

 

 

三村はスマホを操作して、ある画像を見せる。

 

 

「磨瀬 棒名って天才子役がいたんだ。今は休業してて…………雰囲気も全然違うし、分からなかった」

 

 

「…………………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1時間後

 

 

創真は1人、王の間で玉座に座っていた。あの後、茅野から連絡が来て、7時に椚ヶ丘のすすき野まで来いとのこと。特にすることもないので、一時解散となったのだ。

 

 

当然、ここの空気も重い。

 

 

「………………創真。茅野ちゃんが許せないか?」

 

 

何故そんなことを訊く、と言った目で創真はホリーをチラッと見る。

 

 

「茅野ちゃんは……………今まで楽しいことをしてきたのも、多分全部演技だったんだよ……………だから……………その……………」

 

 

ホリーもこれ以上は言葉が出なかった。

 

 

「……………確かにホリーの言う通りかも」

 

 

そう言って創真は静かに立ち上がる。

 

 

「欺かれてたのは確かに良い気持ちじゃないね」

 

 

「……………創真はどうする?」

 

 

デュオの問いに創真はもちろん、と続ける。

 

 

「茅野ちゃんの暗殺を止める。命に関わるからな。多分殺せんせーには茅野ちゃんが知らない何かしらの事情があるはず。もし、殺せんせーが殺されたら…………茅野ちゃんは真相を知れないし、後々後悔するだろうからね」

 

 

「……………で、どんな作戦で行く?」

 

 

「作戦としては、茅野ちゃんの攻撃を受け止めつつ、触手を抜く方法を探す。これが基本コンセプトだ…………あと、イトナ君にも触手について色々聞いておこう。さて…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、7時。

 

 

「来たみたいだね!じゃ、終わらそっか」

 

 

すすき野に集まった皆の前で、茅野は笑顔でそう言う。

 

 

「茅野ちゃん。メンテもせず持っていたその触手……………すぐ撤去しないと…………死ぬよ?」

 

 

「うるさいな、創真君は!!いちいち首を突っ込まないでよ!!」

 

 

「君は大事なクラスメイトなんでね。そうは行かない」

 

 

「………………ほんと、創真君はうざったい………な!」

 

 

ボウッ!!

 

 

触手が炎を纏い、円を描いた。すると、炎のリングが出現する。皆は驚いているが、創真は無言で茅野を見据える。

 

 

「これで最後にするが…………その状態では、身体に大きな負担が掛かる………………やめるんだ」

 

 

「私はやると決めたら一直線なの!絶対に!!」

 

 

「……………そう。なら、僕もやるとしましょう」

 

 

そう呟き、創真も炎のリングに足を進めた。

 

 

「創真君!!」

 

 

「大丈夫だよ、陽菜乃」

 

 

心配する倉橋に頬笑み、前を向いて茅野を見据える。

 

 

「……………殺されたいの?」

 

 

「どうかな………仮に死にたくても、君じゃ僕は殺せない」

 

 

「言ってくれるね……………!!殺せんせーの前に出るなら、創真君から殺してあげるよ!!」

 

 

「…………デュオ」

 

 

後ろにいたデュオは首肯き、創真に憑依する。纏った黒外套から黒獣が2体出てきて、大きく唸る。

 

 

「殺し合い………と言うのが今の状況にぴったりかな?さぁ、始めようか!!」

 

 

創真の叫びに応えるように、黒獣も吠える。

 

 

茅野VS創真の死闘が………………幕を開けた。




THE NEXT story 4/28 or 29 PM 22:00


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第144話 死闘の時間

GWは遊ぶぞ!


どうぞ!


黒獣と触手が高速でぶつかり合う。皆の目にはとても追える速度ではない。

 

 

「ホラホラ、ドウシタノ、ソウマクン!?タダ守ルだけ!?」

 

 

戦闘開始から僅か10秒。茅野の精神に支障を来した。

 

 

「チッ…………まぁ、なんとか大丈夫か………?」

 

 

創真からは攻めない。あちらの攻撃を全て受け止めるだけに徹している。

 

 

(創真。茅野を助けるなら、5分で終わらせろ。それ以上だと、身体の負担がさらに大きく掛かる)

 

 

「………………了解。さぁ、作戦開始するか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………なんだこのハイレベルな闘い…………」

 

 

「茅野もすごいけど、それを全部受け止める創真も…………次元が違う…………」

 

 

火山弾の如く、攻撃を繰り広げる茅野と、それを黒獣で弾く創真。誰も手の出しようがなかった。

 

 

「フフ。フフフ……………フハハハハハ!!」

 

 

「「「!?」」」

 

 

突然、創真は笑い出す。

 

 

「おいおい、茅野ちゃん………この程度で僕を殺すなんて笑わせてくれるじゃないか、ええ!?」

 

 

「ウルサイ ウルサイ ウルサイ!!」

 

 

「この程度で殺す?調子に乗んな!」

 

 

「ダカラ……………ウルサイ!!」

 

 

完全にぶちギレた茅野。創真を本気で殺そうと、触手による攻撃速度をさらに速める。

 

 

「おいおい、創真の野郎何してんだよ!?茅野を完全に怒らせたじゃねぇか!」

 

 

「いや、村松。これも創真の作戦の内さ。殺意の対象が殺せんせーから完全に創真へ変わったからな。暫く殺せんせーに殺意は向かないな」

 

 

「何言ってんだよキバット!?だったら創真の奴が危ないだろうが!」

 

 

「まぁ、少し黙って見とけ。そのうち分かる。創真の手を見てみろ。余裕がまだあるみたいだぜ」

 

 

皆は創真の手に注目すると……………ある事に気が付いた。

 

 

「ポケットに手を突っ込んでる……………?」

 

 

「こんな状況でもあいつがポケットに手を突っ込んでるって事は、余裕って証。だから、そんな心配しなくて良いんだよ」

 

 

1人気楽なキバットが呟く。

 

 

「でも、このままだと茅野の命が危ない…………」

 

 

「そうなんだよな………だが、俺様の予想なら、そろそろ合図が……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪

 

 

電話の着信音。

 

 

ホリーのスマホからだ。

 

 

「ほい、来た!何々……………スピーカーにして皆に聞こえるようにしろ?了解!!」

 

 

ホリーはスマホを操作する。すると、創真の声が聞こえてきた。

 

 

『聞こえてるな?1回しか言わないから、よーく聞け。今から30秒後に、茅野の動きを封じる』

 

 

でも、どうやって………………そう聞こうとする前に、創真は作戦の概要を語り出す。

 

 

『ホリーが僕に化けてもらって、高速で入れ替わる。そして、触手の一撃を喰らって貰う…………それで殺したと思えば、触手の殺意が一瞬弱まる』

 

 

「でも、それだとホリーが………!!」

 

 

「大丈夫!僕は死なないよ。殺したと勘違いする暗示を掛ければ良い。あとは、威力を殺せばOK」

 

 

『ホリーの方は問題ない。で、茅野の動きを止めたあと、おまえらが何か披露して、彼女の殺意を弱めろ。触手の殺意と、彼女の殺意が弱まれば、最小限のダメージで抜けれる………………でしょ?殺せんせー』

 

 

「えぇ、その通りです」

 

 

「でもどうやって…………」

 

 

『この際何でも良い!殺せんせー、拘束したら一応先生も押さえて』

 

 

「分かりました」

 

 

じゃ、頼んだよと聞えて通話は終わる。

 

 

「殺意をどうやって…………」

 

 

「何をすれば良いんだ…………?」

 

 

今言われても、即興で出来るような物じゃない。

 

 

「さぁ、行くぞ……………」

 

 

ホリーは創真に化け、スタンバイOK。

 

 

「ちょっと乱暴かも知れないが恨むなよ創真!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死んで死んで死んで死んで死んで死んで!!」

 

 

創真は激化する攻撃に耐えながら、チェンジするタイミングを待つ。

 

 

(一瞬でも隙を作れば………………!!)

 

 

創真は黒獣をさらに2体出現させ、茅野の触手を大きく弾いた。そしてその瞬間、創真は吹き飛ばされた。一瞬何されたか分からなかったが……直ぐに分かった。

 

 

(マッハで場外へ突き飛ばしやがったな…………本来なら怒りたいが…………まぁ、入れ替われたからまぁ良い)

 

 

そして、茅野はマッハの入れ替わりに気づかなかった。

 

 

茅野は大きく弾かれた衝撃から立て直し、創真(ホリー)目掛けて大きく触手を突き出した。触手は深く突き刺さった…………ように見えた。

 

 

「殺ッ……………タ……………」

 

 

当たる寸前で掛けた暗示が効いてるようだ。完全に殺したと思い込んでいる。服は貫通してるものの、ホリーの皮膚は貫かれてない。が、茅野がそれに気付く筈も無い。

 

 

(………次は殺せんせー…………………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガシッ。

 

 

「!?」

 

 

「捕まえ………………た!」

 

 

触手を掴み、ニヤリと笑う創真(ホリー)。その瞬間、嵌められたと茅野は気付いた。

 

 

「《重力操作》」

 

 

創真(ホリー)はそう呟くと……………茅野の足が地につき、そこから身体が動かなくなった。そして、殺せんせーも茅野の身体を押さえつける。

 

 

「離シテ!離シテヨ!」

 

 

「絶対離しません………………!!君のお姉さんに誓ったんです。君達からこの触手を離さないと………………!!」

 

 

「さぁ、誰か…………!!」

 

 

変身を解除し、ホリーが後ろを振り向くと………そこには渚がいた。

 

 

「何か思い付いたんだね…………じゃ、頼む!」

 

 

渚はコクりと頷き、触手を潜って茅野の前に立つ。そして…………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

唇と唇を合わせた…………要は大人のキッスだ。

 

 

驚いたり、赤くなったり、スマホを取り出したりと、皆はそれぞれ異なる反応を見せる。ホリーはにやけ、キバットはテンションマックスの上げ上げ状態。

 

 

「────────────────!!」

 

 

茅野は悲鳴にも近い嬌声を上げ、離れようとするが拘束されているため、逃げようにも逃げれない。

 

 

そして10秒程経った後…………………倒れた。

 

 

「キス力もアイデアも満点!今なら行けるかも!殺せんせー!」

 

 

ホリーに言われる前に、殺せんせーは撤去を開始した。そして……………………触手がうなじから離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ……………酷い目に遭った」

 

 

憑依を解除した創真が戻ってきた。

 

 

「創真君大丈夫?」

 

 

「無傷です……………吹き飛ばされた以外は」

 

 

「アハハ……………」

 

 

ホリーは苦笑い。

 

 

「所で、茅野ちゃんは大丈夫?」

 

 

「ええ。暫く安静にしておけば大丈夫です」

 

 

殺せんせーの言葉に、胸を撫で下ろす創真。横を見ると、渚がカルマと中村にいじられている。

 

 

「やれやれ…………やぁっと終わった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パチ、パチ、パチ、パチ。

 

 

何処からか、乾いた拍手が聞こえてきた。

 

 

「いやぁ、凄いね創真君は。見事な闘いだったよ」

 

 

その声の主はシロだった。

 

 

「出たな、真っ白野郎!あんた、全部見てただろ!?」

 

 

「あぁ。まったく、使えない娘だ。もう少し面白い物が見れるかと思ったが……………つまらないね」

 

 

「………………は?」

 

 

「……………地球を破壊する怪物に、頭脳も身体能力も怪物クラスの生徒がいる教室……………まったく以て厄介な事だ………………」

 

 

そう呟きながら、シロはマスク部を外し、ボイスチェンジャーの機械を外す。

 

 

「だが、貴様は我々の手で……………必ず殺す」

 

 

「やはり君か…………柳沢」

 

 

「さぁ、行こうか『2代目』…………3月までには呪われた命に完璧な死を」

 

 

そう言い残し、柳沢と2代目は去っていった。

 

 

「フフ。厄介な連中に目をつけられたね~」

 

 

「何笑ってんだよ…………お前って奴は」

 

 

隼が呆れ気味な声を出す。

 

 

「……………お、お目覚めか?」

 

 

キバットの声に皆が茅野の方を注目する。

 

 

「あれ………………私は…………そうだ、創真君は!?」

 

 

「ご無事ですよ、この通り」

 

 

創真の言葉に、茅野はホッとし、自分の胸の内を語り出す。

 

 

「最初は純粋な殺意だった………でも、殺せんせーと過ごすうちに殺意に確信が持てなくなった。でも、その頃には膨れ上がった触手の殺意が思い止まることを許さなかった」

 

 

「……………………………」

 

 

「馬鹿だよね、私。私だけ復讐に1年費やしちゃった………………」

 

 

「えー。本当にそう思ってるなら大馬鹿だよ?」

 

 

「え………………?」

 

 

創真の言葉に大きく目を見開く茅野。

 

 

「僕が見る限り、君は1年間演技してたとでも思ってるだろうが……………絶対演技じゃないと思うよ。復讐に費やしてただけなんて、絶対ないよ。君は何処か楽しんでたと思うよ」

 

 

「………………………………」

 

 

「茅野。茅野はこのクラスを一緒に作り上げてきた仲間なんだ。どんなに1人で苦しんでたとしても、全部演技だったなんて言わせないよ」

 

 

「渚………………………」

 

 

「殺せんせーだって聖人じゃないのは分かってる。でも、聞こうよ。皆で」

 

 

その言葉が引き金になったのか茅野は涙をポロポロ流し始めた。

 

 

「うん………………ありがと…………」

 

 

創真は茅野から次に殺せんせーの方に目を向ける。

 

 

「さぁ、殺せんせー。次はあなたの番です。あなたの過去のお話を………………聞かせてくれませんか?覚悟は出来てるよ」

 

 

「………………そうですね。でなければ、皆は納得しないですし……………君達との信頼と絆を失いたくないですから」

 

 

そして………………殺せんせーは語り出す。

 

 

「先生は教師をするのは初めてでした…………ですが、ほぼ全部の教科を教えれた。それは何故か?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先生は2年前まで、『死神』と言う呼び名の殺し屋でした」




THE NEXT story 4/30 PM 22:00


よくよく考えたら………今回、原作で殺せんせーが茅野に心臓狙わせて殺意弱める役が、創真……………いや、ホリーだっただけ?


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第145話 迷いの時間

お待たせしました。


それではどうぞ!


殺せんせーの過去は想像以上に悲しすぎた。

 

 

唯一の弟子……………今の2代目に裏切られ、シロ…………いや、柳沢が主任の反物質の研究のモルモットとして囚われることになった。そこの監視役となったのは、茅野の姉であり、元E組の担任だった雪村 あぐり先生だった。死神は当初、興味の欠片もなかったが…………彼女の性格や明るさに惹かれ、打ち解けていった。

 

 

だが、1年後………………月が爆発した。

 

 

柳沢が老朽の早いネズミを使って反物質の研究をしたときの事故だった。哺乳類のマウスが爆発した…………なら、同じ人間にも爆発が起きる。

 

 

時期は3月24日。

 

 

そして、柳沢は死神の息の根を止めることを決断した。だが、それを雪村先生は偶然知ってしまい、それを死神に漏らした。どうせ死ぬなら、実験で手に入れた力を使わなければ勿体ない………………そう思い、死神は研究所を暴れ、破壊し始めた。

 

 

それが、一生悔やむ程の間違いだった。

 

 

破壊を続けようとした死神を止めるために、雪村先生が抱きついた瞬間、触手地雷という兵器により、重傷を負った。そして………………死の間際、彼女はこう言った。

 

 

『もし……………あなたの時間をくれるなら、あの子達を教えて上げて…………』

 

 

死神はその約束を引き受けた。そして、死神………………いや、殺せんせーはE組へやって来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………以上が私の過去です」

 

 

殺せんせーが話終えたとき、皆は軽く青ざめていた。この先生を殺さなくちゃならないなか…………と気付いたからだ。

 

 

創真も…………隼も……………碧海も………氷室も……………ホリー、デュオ、キバットも。

 

 

「もし……………先生が殺されるなら、他でもない…………………君達に殺して欲しいものです………」

 

 

殺せんせーはそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「…………………」」」

 

 

創真、碧海、氷室は終始何も話さず帰宅した。

 

 

ホリーは茅野をおんぶして創真の家に帰ってきた。

 

 

自分の魔法で全快とまではいかないが、治癒を早くする程度までには出来ると、烏間先生と殺せんせーを説得して了承を得た。創真は自宅に着くと、すぐ自室に引っ込んでしまった。

 

 

「創真君………………元気ないね」

 

 

「そう言う碧海ちゃんも…………」

 

 

茅野の指摘に、碧海は力なく笑う。ホリーは茅野をソファに降ろす。

 

 

「……………僕らは明日、ちょっと留守にするよ」

 

 

「何処か行くんですか?」

 

 

氷室の質問にデュオがああ、と答える。

 

 

「ちょっと会ってみたい人がいるんでな」

 

 

「分かりました。後で創真様には伝えておきます」

 

 

「じゃ、俺は少しの間夜風に当たってくる」

 

 

頼む、と言ってデュオは窓を開けて飛び去る。

 

 

「…………ごめんなさい。全部私のせいだ」

 

 

「何言ってやがる?茅野ちゃんは何も悪くねぇだろ」

 

 

「でも、私のせいで皆は殺せんせーの過去を…………」

 

 

「……………………………」

 

 

掛ける言葉が見つからず、キバットも黙ってしまった。

 

 

今度は氷室が口を開いた。

 

 

「私に言えるのは一般論だけですが。やってしまった事はもう取り返しようがありません。だから、その後をどうすれば良いか……………それを考えるのが最優先だとは思います………………私に言えるのはここまでです。後はご自分で……………それでは」

 

 

そう言って氷室は隣に帰っていった。

 

 

「取り敢えず碧海ちゃん。茅野ちゃんをお風呂に入らせておいて。そしたら、後は僕が何とかしておく」

 

 

「オッケー。任せといて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………う…………ん………」

 

 

いつの間にか眠っていたのだろう。茅野はソファーベッド目を覚ました。横を見ると、ホリーとキバットが天井にぶら下がって寝ていた。

 

 

デュオはまだ戻っていなかった。時刻は夜中の1時を回っていた。

 

 

(確かお風呂から出たあと、ホリー君が頭に手を当てた瞬間に眠くなって…………)

 

 

ホリーが何か施してくれたのだろう、身体が大分楽になっていた。隣を見ると、創真がパソコンをいじっていた。

 

 

「……………まだ1時だよ?」

 

 

「…………創真君。私、創真君に言っとかないといけないことが………」

 

 

「攻撃してごめん系なら良いよ、別に」

 

 

「でも私…………創真君に酷いことを………」

 

 

「もー無傷だったから気にしなくて良いんだよ!」

 

 

何故か茅野が怒られた。

 

 

「創真君は優しいね……………」

 

 

「よく言われるよ」

 

 

創真が笑いながら答える。そして、パソコンを閉じた。

 

 

「……………寝よう」

 

 

切り替えが早すぎだよ…………と茅野は心の中で突っ込む。

 

 

「あぁ、それと…………………自分を憐れむな。自分を憐れめば、人生は終わりなき悪夢だよ。じゃ、早く寝ろよ」

 

 

去り際にアドバイスし、茅野の反応を待たず、創真は自室へ入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、創真が起きると茅野の置き手紙があった。

 

 

『病院行ってくるね。昨日はアドバイスありがとう!』

 

 

「………………………………大したことは言ってないけどね。さて、これからどうしたものか…………」

 

 

to be continue……………




THE NEXT story 5/1 PM 22:00


明日はホリーとデュオとキバットしか会えないあの人が登場!


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第146話 前任の時間

え?誰か分かったって?


フムフム……………まだ分からない人は…………早く読んでみてください!


人間その物の容姿のホリーとデュオ。今さらだが、彼等は人間ではない。

 

 

元死神と聖霊である。そんな彼らは……………《あちら側》に行った人間に会う事が可能なのだ。

 

 

わざわざ《あちら側》に行って、誰に会うと言うのか─────────────。

 

「ねぇ、まだぁ~?」

 

 

息をハァハァ、とつくホリー。

 

 

「あと5分位だ…………元より、ここに行こうと誘ったお前がこの様でどうする……………」

 

 

呆れるデュオに、だってだって!とホリーは続ける。

 

 

「いつまでたっても何も見えないじゃん!こんな場所なんて聞いてない!」

 

 

「じゃあ、どんな場所だと思ってた?」

 

 

「え?麗しき美女がたくさんいて……あとは………」

 

 

もうこいつは手術でもしなきゃこの思考は直らない。デュオは何度そう思ったことか。

 

 

「お、着いたんじゃねぇか?」

 

 

キバットの目線の先には、小さな家がポツンと立ってた。

 

 

「やぁっと着いた…………さぁ、行こうか!」

 

 

急に元気になったホリー。一気に駆けていく。

 

 

「いるよな…………目的地に着くまでぶつくさ言ってた奴が、目的地着くとめっちゃはしゃいでるっての……………俺様、そう言うの何人も見てきたぜ」

 

 

そんな様子のホリーを見て、キバットがポツリと呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その家のドアをノックすると、中に入って良いよ、と聞こえたので、お邪魔しますと言って3人は中に入る。玄関を通ってリビングに入ると、そこは余り物が置いてなくて、開放的だった。

 

 

するとそこへ…………………

 

 

「お待たせ~!余り良いものないけど、どうぞ!」

 

 

その人は盆に紅茶をのせて現れた。

 

 

「わざわざありがとうございます。そして、初めまして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪村 あぐり先生」

 

 

その女性、雪村先生はデュオ達に座るように促す。

 

 

「昨日はすみません。いきなり訪問しても良いかなど一報いれて」

 

 

「いやいや、大丈夫だよ!ここにお客さんが来るなんて初めてですから、私もワクワクしてたんだ」

 

 

雪村先生の言葉にホッとした3人。そして、それぞれ自己紹介を済ませた。

 

 

「所で、3人はどうしてここへ?」

 

 

「雪村先生がかつて担任を持ってたE組に僕らは邪魔させて貰ってるんですが………………ちょっとアドバイスを仰ぎたくて。実は…………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………なるほど。死神さんの過去を皆は知っちゃって、クラスの空気が重くなってる…………と」

 

 

雪村先生はフムフム、と首肯く。

 

 

「まぁ、でもずっと秘密を隠し続けてる間、死神さんもモヤモヤしてたと思うからある意味良かったのかも…………」

 

 

「まぁ、それはある意味正しいかもな…………」

 

 

紅茶をストローで飲みながらキバットが静かに呟く。

 

 

「俺らは何千年も生きてるんだけど、こういう事は今までになくて、どんな言葉を掛ければ良いのか分からなくてな………………先生だったらどんな言葉を掛ける?」

 

 

「うーん……………そうだなぁ…………私だったら………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何も言わない。そっと見守る……………かな?」

 

 

この答えは少し意表を付かれたのか、3人は少し驚いた表情を見せた。

 

 

「え、でも生徒が悩んでたら普通は先生が導いてあげるもんじゃ…………」

 

 

「確かに、ホリー君の言う通り、一般的にはそうするかな?でも、あのE組にいる彼等なら自分達で答えを出せると思う。だから、何も言わずそっと見守るかな………」

 

 

「………………話変わりますが、雪村先生はどうして教師になろうと思ったんですか?」

 

 

デュオの問い掛けに、雪村先生は少し照れ臭そうに答える。

 

 

「そうだなぁ……………単純に先生に憧れてたから…………じゃダメかな?」

 

 

「いやいや、全然!にしても何か勿体ないなぁ…………こんないい先生が早く逝っちゃうなんて…………」

 

 

ホリーの嘆きに、雪村先生はクスッと笑った。

 

 

「ありがとう、ホリー君。そう言えば、あかりは元気にしてる?」

 

 

「あかり…………………?あ、茅野の事か。まぁ、色々ありましたが、元気にしてますよ」

 

 

「良かったー!唯一そこが心残りだったの。あかりは私がいなくても上手くやっていけるかなー………って」

 

 

「妹思いだな」

 

 

「当然だよキバット君。姉なんだから、やっぱり気にするよ」

 

 

そう言って、雪村先生はニコッと笑う。

 

 

「俺らはここら辺で失礼します。色々とありがとうございました」

 

 

「え!?もう帰っちゃうの!?滞在時間10分位しかいないよ!?」

 

 

「創真が待ってますから。ああ、E組の生徒ですよ、彼も。全国模試で1位を取り続けてるような、反則級の天才です」

 

 

「………………あ、そう言えば椚ヶ丘にいたとき、全国模試で1位の座をずっとキープし続けている生徒がいるって聞いたことがある!それが創真君かぁ……………これからも頑張ってって伝えといてくれる?」

 

 

「オッケー!任せといてください!」

 

 

「お邪魔しました」

 

 

「うん!また来てね~!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、良い先生だったな」

 

 

帰る途中、ホリーが笑いながら云う。

 

 

「まぁ俺様、本人の前だから言わなかったが………………インナーがとてつもなくダサかったな」

 

 

───────それは否定できないな。

 

 

デュオは心の中で呟く。

 

 

「ま、取り敢えずどうなるか分からないが、あの教室の最後まで見守るか」

 

 

「そうだな。雪村先生の言う通り、俺様達は皆がどうするのかを見守ろうぜ」

 

 

「そうだね。さっ、早く帰ろうよ。創真は今頃何してるんだろうなー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、創真は………………

 

 

 

「延長戦?意味わからん。どんだけ留守にする気だよ…………卒業式までには戻る?頼むよ、ほんと。じゃ」

 

 

電話を切って、創真は大きなため息をつく。

 

 

「一稼ぎ出来そうだから、もうちょっと居るって………………いつまで海外でやる気だよ…………」

 

 

こんな感じでした。




THE NEXT story 5/2 or 3 PM 22:00


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3学期編
第147話 分裂の時間


恐らく、本編は5月、又は6月中には終わるかな?


是非、最後まで見届けて欲しいです!


では、どうぞ!


創真side

 

 

まったく、ここまで重い悩みを抱えたまま、クリスマスケーキや年越しそば、おせちを食ったりするのは初めてだったよ。ホリー達は何やら悩んでた事が解消したらしく、晴れた表情をしていた。

 

 

だが、僕を含めE組の生徒の方はそう上手く行かなかった。だから、この冬休みは誰も暗殺をしに行かなかった……………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

 

 

冬休み明けの登校初日。

 

 

「おはようございます!三学期もよく学び、よく殺しましょう!」

 

 

校舎の前に立っている殺せんせーがいつもの調子で登校してきた生徒に声をかける。

 

 

「………………うん。おはよう」

 

 

が、挨拶に答える矢田の声は対照的に暗かった。そして、それを見つめるホリー達。

 

 

「……………ま、こうはなるよね」

 

 

「これはしょうがない」

 

 

暗い表情で登校してくる生徒を見てそう云うホリーとデュオ。

 

 

「ま、雪村先生も言ってたし、大丈夫だろ………………さて、誰がこの空気の中、真っ先に動き出すのやら…………」

 

 

キバットはニヤリと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、渚は皆を裏山に集めた。

 

 

「君が招集するなんて珍しいねぇ…………何か話したいことあるの?」

 

 

碧海の問いに渚はうん、と頷いて喋り出す。

 

 

「…………殺せんせーを助ける方法を探したいんだ」

 

 

この発言に驚く者もいれば、眉を潜める者もいた。

 

 

「勿論今はアテはないけど…………僕達と同じように失敗して、悔やんで、生まれ変わってここに来た…………………先生は色々教えてくれたし、一緒にいて楽しかった。殺すより助けたいと思うのが自然だと思う」

 

 

渚が自分の気持ちを全て吐き出した…………すると、

 

 

「私さんせー!殺せんせーも生き物をまだまだ探したい!」

 

 

「私も恩返ししたいな…………」

 

 

「もう充分暗殺を通して成長できたしね」

 

 

倉橋、片岡、原が賛同し、渚と同じ思いのメンバーが渚の元に集まる。

 

 

だが────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────全員がその思いとは限らない。

 

 

「私は反対。私達の絆は、暗殺者と標的と言うこと…………だからこそ、殺さなくちゃならないと思う」

 

 

中村の声に、空気が張り詰める。すると、中村に賛同する者=渚の親友的存在の人物が口を開く。

 

 

「渚君、随分調子のってるね?E組の中で暗殺力も1位、2位争うのに、その渚君が暗殺やめちゃうって言うわけ?今まで頑張ってきた奴等の事、考えた?」

 

 

「そ、それは……………」

 

 

「何にも考えずに、よく殺せんせーを助けようなんて言い出せたね?体だけじゃなくて頭まで小学生か!?」

 

 

その言葉に、渚の目の色が変わった。そしてその目を見たカルマの雰囲気も変わった。

 

 

「え、何その目?小動物如きが人間様に逆らう気?」

 

 

カルマは渚に近づき、右手で数発押す。そして、ネクタイを掴もうとしたとき、渚はカルマの右手を抑え、首に足を巻き付かせ、地面に強制的に降ろす。

 

 

「僕だって半端な気持ちで言ってない!」

 

 

「その程度で………………!!」

 

 

カルマは空いてる左手で殴ろうとする───────!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーい、そこまで!」

 

 

「「!?」」

 

 

渚とカルマは気付いたときには地面に転がっていた。見ると、さっきまで自分達がいた場所には創真がいた。首には白い羽のマフラー。目にも留まらぬ速さで2人を引き離したと言うことである。

 

 

「何で邪魔したの創真君!?」

 

 

「横槍入れやがって………!!」

 

 

渚とカルマはまだ興奮してるのか、声を荒らげる。

 

 

「まー、流石にこのまま放っておくと収拾がつかなくなるんでね……………君達のやっていることで何か解決するかって言ったら、それはない。やるだけ無駄なガキの争いを続けたいなら、やれば良いんじゃないんです?」

 

 

その言葉にピキンと来たのか、渚とカルマは創真を睨み付ける。が、当の創真は涼しい顔で笑う。まさに、一触即発の雰囲気…………そんな空気を絶ちきったのは、やはりあのタコだった。

 

 

「中学生の喧嘩、大いに結構!ですが、折角ならこれでけりをつけません?」

 

 

事の張本人こと、殺せんせーは武器が入った、赤、青と書かれた箱を置く。

 

 

「先生を殺すべき出ない方は方は青を。殺すべきと思う方は赤を取ってください。赤と青のインクでつけられた武器でこの裏山を舞台に戦ってもらいます。インクをつけられた人は退場。全滅させるか、相手の旗を取ったらその色のチームの勝ち。そして、そのチームの意見をクラスの総意にするのはどうです?」

 

 

「よし、それにしよう」

 

 

創真は即決した。

 

 

「にしても………自分の命掛かってるのに後気楽なもんで………」

 

 

「ヌルフフフフ………先生は大事な生徒達が全力で決めた意見なら全力で尊重しますが……最も嫌なのはクラスが分裂したまま終わること。先生の事を思ってくれるなら、それはしないと約束してくださいね」

 

 

「……………どうする?」

 

 

改めて磯貝が皆に問い掛けるが、もう皆の心は決まっていた。

 

 

「決まりだね。じゃ、僕から選らばさせて貰おうかな……………僕はこっちだな」

 

 

創真が選んだのはどちらだ……………?




THE NEXT story 5/3 PM 22:00


アンケート!


創真、碧海、隼はどちらに入れて欲しいか、皆さんが決めてください!


活動報告欄に書き込んでください!


締め切りは明日の昼の12時まで!都合上、早くてすみません!


まぁ、今日この作品を見終わった後、ちゃちゃっと考えて書けば………すぐ行けるっしょ!


沢山の投票待ってます!




今更ですが、Twitter始めました!


明日にでも活動報告欄に書いときます!


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第148話 戦争開始の時間

サバイバル………………開始の1話前!



どうぞ!


「僕は…………………こっちだね」

 

 

そう言って創真が取ったのは、青の方だった。

 

 

「意外だな。テメーの事だから、そんなの無理に決まってんだろ、馬鹿か………的な事言いそうだと思ってたのに」

 

 

「まぁ、隼がそう考えるのも分かる。だがね…………僕も賭けてみたくなった。渚君が出してくれた案に、ね。僕も殺せんせーには死んでほしくない。ぶっちゃけ良い先生だし」

 

 

「……………それがお前の答えか。なら、俺は………」

 

 

隼は赤の方の武器を手に取る。

 

 

「俺は殺す。それがなりよりの恩返しだ」

 

 

「私も同じかな……………本音云うと、まだやりたいことたくさんあるしね~」

 

 

碧海も赤を手に取る。

 

 

そして、3人に続いて他の皆もそれぞれ武器を手に取っていく──────────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、チームはこのようになった。

 

 

赤チーム

 

 

カルマ

 

岡島

 

岡野

 

木村

 

菅谷

 

千葉

 

寺坂

 

中村

 

狭間

 

速水

 

三村

 

村松

 

吉田

 

イトナ

 

 

碧海

 

 

青チーム

 

 

創真

 

磯貝

 

奥田

 

片岡

 

茅野

 

神崎

 

倉橋

 

 

杉野

 

竹林

 

 

不破

 

前原

 

矢田

 

 

「ふーむ。中々こっちが有利になったかな?」

 

 

「甘いね~碧海さん」

 

 

「え、だってカルマ君、こっちには狙撃、防御、機動、戦闘のスペシャリストがほとんど擁してるし………」

 

 

「まーね。でも、創真1人いるだけで、結構厄介だよ?」

 

 

「………………だね」

 

 

碧海も表情を引き締める。

 

 

「互いのチームの旗の距離は100m。俺は中間地点で判定やゾンビ行為などを見張る。君達がどこから攻めようが知らないふりをするから安心しろ」

 

 

審判役の烏間先生はここで、小型の通信機を手に取る。

 

 

『それと、超体操着に内臓通信機と目を保護する極薄バイザーが追加されたから、好きに使うと良い』

 

 

そして、双方は作戦タイムに移る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青チーム

 

 

「創真、お前が指揮を執ってくれるか?」

 

 

「オッケー。じゃ、作戦は考えてあるから説明するね」

 

 

そう言いながら創真はスマホをタップする。すると、写真がそれぞれのスマホに送られてきた。そこには、それぞれの初期陣地が示されていた。

 

 

「すげぇな…………これ、今作ったのか?」

 

 

「急ピッチでね。後は始まって、状況に応じて指示を出すから。あと、神崎さんと渚と奥田さんにはスペシャルミッションがある」

 

 

呼ばれたメンバーは創真に手招きされ、前に出る。

 

 

「まず、奥田さんはこれ」

 

 

「こ、これは何ですか?」

 

 

「遠くも見れる眼鏡。敵発見に役立つでしょ?発見したら、通信で全員に教えて」

 

 

「わ、分かりました!頑張ります!」

 

 

「うん、よろしくね。神崎さんは戦いが始まったら、外側から回り込んでここの場所に向かって。恐らく、ここに千葉君か速水さんが配置されるから。目標としては、スナイパーを潰す。後は手当たり次第減らせるだけ減らして。ただ、待ち伏せされる可能性が高いけど……………良いかな?」

 

 

「大丈夫。任せておいて」

 

 

「よし。で、渚君には……………指示ださないよ」

 

 

「え!?」

 

 

「自由に動きまくって下さい。戦闘中も一切指事は出しませんから」

 

 

「う、うん。分かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

赤チーム

 

 

赤チームは、カルマと碧海が作戦を考えていた。

 

 

「最初の陣形はこんな感じかな?開幕したら、片岡さんと竹林を千葉と速水さんに殺ってもらう。竹林は爆弾で何かやるだろうし、片岡さんも指揮を執って小隊作られると厄介だ。それと、出来たら創真もよろしく」

 

 

「「了解」」

 

 

千葉と速水が静かに返事する。

 

 

「で、その後は?」

 

 

「後は始まってから、状況に応じて指示を出す。それと、碧海さんと隼は前に出て…………狩りまくれ」

 

 

「ほいほーい!」

 

 

「分かったよ」

 

 

「よし………………じゃあ皆、配置について」

 

 

こちらは最初の陣形と一部のメンバーへの動きだけ伝えて終わった。創真とカルマの謀略…………天才同士の考える作戦はどちらに軍配が上がるのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし……………両チームスタンバイOKだな。では……………クラス内暗殺サバイバル…………開始!」

 

 

烏間の開始の合図の瞬間

 

 

パァン!!

 

 

この銃声が、幕開けとなった。




THE NEXT story 5/4 or 5 PM 22:00


切りが悪いけど、今日はここまで!


次回をお楽しみに!


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第149話 サバイバルバトルの時間

GW遊んどるか!?


どうぞ!


パァン!

 

 

その銃声の瞬間……………片岡と竹林の超体操着にインクが飛び散った。

 

 

「「な………………!?」」

 

 

驚きを隠せない2人。変わって千葉と速水は殺れた事への余韻に浸ることなく、次の標的……………創真に照準を合わせる。照準に映る創真は通信機に耳を傾けているように見える。

 

 

「……………貰った」

 

 

千葉がボソリと呟き、引金を引く。そのままスコープを覗き、着弾を見守る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………!!」

 

 

一瞬、スコープ越しに見える創真が自分を笑ったように見えた。創真は体操着につけていたナイフ入れからナイフを取りだし……………弾を弾いた。

 

 

「嘘だろ!?そんなのありかよ…………くっ」

 

 

千葉は呆然と呟くが、直ぐに切り替えて再び狙おうとするが、既に創真の姿はなかった。

 

 

『……………千葉君』

 

 

突然、碧海の声がしてきた。

 

 

『今すぐそこから離れた方が良い。恐らく君は創真君にマークされている。すぐに創真君の差し金が来るよ』

 

 

すると、岡島が通信に割り込む。

 

 

『碧海ちゃん、大丈夫だって。俺が回りを見張ってるからさ』

 

 

『いいから早く!さっき言っておいた別の狙撃ポイントに…………』

 

 

パパパパパパパパパ!

 

 

千葉と岡島に弾丸の雨が浴びせられる。

 

 

「「!?」」

 

 

千葉と岡島の目先には、神崎がいた。

 

 

『…………だから言ったのに。殺られたでしょ』

 

 

通信機先の碧海がため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「千葉君と岡島を殺った?ナイス!」

 

 

神崎の報告にそう答え、創真はふぅ、と息をつく。

 

 

「にしても、速水さんも千葉君も流石だね…………速水さんも早めに潰しとかなくちゃ」

 

 

そう言いながら、創真は森を歩く。現在、創真は単独行動中だった。

 

 

「………………ん?」

 

 

何かの気配を感じた途端、創真は反射的にその場から飛び退いた。先程まで創真がいた場所にはナイフが突き刺さっていた。

 

 

「…………やっぱすげぇな、お前」

 

 

刺さったナイフを拾いながら、隼は苦笑いする。

 

 

「ここで、お前に良いお知らせだ。神崎はカルマが殺ったぜ」

 

 

「ま、お前らの方も菅谷君が殺られたらしいじゃん?」

 

 

「まぁ、そうだな。で、次はお前ってわけ」

 

 

隼はナイフと銃を構えて言い放つ。

 

 

「だが、僕相手にお前だけ?フェアプレイ精神は感心するが、お前1人ならちゃっちゃと片付けてやるわ」

 

 

「あぁ、そうかい。だが、1つ走り間違ってるぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺は最初から一対一のバトルをするなんて言ってないぜ?」

 

 

「はい?」

 

 

思わず間の抜けた返事をする創真。すると、奥から碧海、木村、岡野の3人が現れた。

 

 

「フェアプレイ精神が微塵も感じねぇ…………1人相手に4人掛りとか」

 

 

「わりぃな。まぁ、それは全部悪徳司令官のカルマに言ってくれ」

 

 

「あんにゃろう………………」

 

 

「さぁ、どうする?今なら降伏って選択肢も入れてやるぜ?」

 

 

「なめられたもんだ……………だが、この状況で戦っても勝てるか微妙だね………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なのて、逃げまーす」

 

 

そう宣言した瞬間、創真は近くの木に登って、木から木へと渡って逃走を開始した。

 

 

「逃げんなよ!!それでも男か!?」

 

 

そう突っ込んで、隼らも追撃を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『磯貝くーん!ちょっと、暫く指揮任せる~!』

 

 

「まさか追われてるとか!?なら、応援に行く!」

 

 

『まぁ、それは大丈夫。変人4人組は僕で何とかする』

 

 

誰が変人だ!!…………そんな声が磯貝の通信機に飛び込んできた。

 

 

『やっべ、怒らせちゃった。ま、必要になったら呼ぶからよろしく~』

 

 

そう言って通信は切れた。

 

 

「頼むぞ創真…………って、俺もそんなことしてる場合じゃないんだが………」

 

 

そう呟いて、磯貝はBB弾を装填し、茂みの中に銃口を向ける。現在、磯貝達はE組の闇、狭間からの襲撃を受け、不破と杉野を殺られたのである。創真も創真で大変なのだが、こちらも決して楽ではない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー走るのダルい」

 

 

「なら、大人しく殺られやがれ創真!」

 

 

木村が銃2つを連射するが、創真の変則的な動きに翻弄され、当たらない。

 

 

「あ、多分ここら辺に確か……………陽菜乃、聞こえる?」

 

 

『あ、創真君!もしかして助けが必要?』

 

 

「うん。陽菜乃がいるところは大体分かってる。僕が君の上を通る。そしたら敵が4人通るから撃ちまくって」

 

 

『分かった!任せて創真君!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

倉橋は銃のセーフティーを解除し、創真が通るのを待つ。

 

 

(緊張してきた……………!!創真君にいいとこ見せなきゃ!)

 

 

間もなく、創真が倉橋の上を通った。そして4人も来た。

 

 

パァン、パァン、パァン!

 

 

「うぉ、倉橋!?…………そうか、誘導されてたのか…………」

 

 

ギリギリで避けた隼が驚きを含めた声をあげる。

 

 

「よーし、ついでに陽菜乃ちゃんを殺ってやる!」

 

 

岡野が標的を倉橋に切り替える。三対一なった。

 

 

「さぁ、いつまで逃げきれるか、創真!」

 

 

木村が隼よりも前に出て、連射する。勘にも近い感覚でそれらを避ける創真。起死回生を狙って、何か使えるものを探す。

 

 

すると、創真は跳び移るのを止めた。

 

 

(なんだ…………諦めたのか?それとも何か企んでるのか?まぁ、良いか)

 

 

木村は銃の狙いを定めて、引き金を引いたその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「せーの………!」

 

 

創真はその場でジャンプした。

 

 

バキッ!

 

 

その衝撃に耐えられず、木の枝は折れる。そして、落ちてく創真の頭上を弾丸が通過していった。

 

 

「何!?」

 

 

着地した創真は脱兎の如く走り去る。

 

 

「くそ…………逃げられた」

 

 

生憎、隼と碧海は木の枝に跳び移ってた最中、即ち空中にいた。そのため、咄嗟に下を走る創真を狙えなかった。

 

 

「しゃーない。切り換えていこう。で、次はどうする?」

 

 

「そうだね……………隼と私で創真君を追おう。木村君は……………あそこにいるひなたちゃんを助けてあげて」

 

 

碧海が指差した彷徨を見ると、確かに岡野が茅野にナイフで攻撃されている。

 

 

「それにしても、茅野の動きが訓練中とは少し違う。爪を隠していたのか……………」

 

 

「そんな所でしょ。さ、行くよ隼」

 

 

それぞれは別方向に駆け出した。




THE NEXT story 5/5 PM 22:00


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第150話 サバイバルバトルの時間 2時間目

どうぞ!


「やるね、茅野っち!私の動きについてくるなんて!」

 

 

「元々役者業で鍛えてたしね。今なら触手の痛みもないし………………」

 

 

岡野の仕込みナイフの突きをかわしながら、茅野は空中に身を投げ、懐から銃を取り出す。

 

 

(まずい!この距離だと避けようがない!)

 

 

岡野が内心冷や汗をかくなか、茅野は引き金を持つ手に力を込め────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バスバスッ!!

 

 

そんな音がした。茅野が後ろを見ると、銃を構えている木村がいた。そして、撃たれた事を実感した。

 

 

「その本気、もっと早く見せてほしかったな、茅野」

 

 

「茅野っちが1人で頑張ってる間、私たちは皆で頑張ってきた。このバトルの勝敗がどうなっても、次は皆で頑張ろ!」

 

 

じゃ、あとでね、と2人はその場をあとにする。

 

 

「惜しかったね」

 

 

そんな声がしたと思うと、後ろに創真が立っていた。

 

 

「創真君……………追われてたんじゃ…………?」

 

 

「撒いたよ。今頃必死に探しているだろうね、隼と碧海ちゃんは」

 

 

流石創真君………………と、茅野は心の中で呟く。

 

 

「さぁて。じゃ、そろそろ行くよ。今頃木村と岡野が良い餌を見つける頃だと思うし」

 

 

「うん、頑張ってね」

 

 

「勿論!」

 

 

創真は走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい、見ろよ。あれ原じゃね?」

 

 

木村が指差す方を岡野が見ると、そこには武器を置いてる原がいた。

 

 

「後方待機だからって武器を置いてやがる。今なら反撃できない。殺っとこうぜ」

 

 

「え、でも怪しくない?罠かもよ…………」

 

 

「……………確かに。何か怪しいな」

 

 

木村も言われて怪しいと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、掛かってもらわらないと困るわ」

 

 

「え……………?」

 

 

その瞬間、木村は蹴られて空中に身を躍らせていた。すぐに岡野も後ろから誰かに抱えられ、おもいきり投げられた。

 

 

バウッ!!

 

 

2人は網に包まれた。

 

 

「やれやれ。一時はどうなるかと思ったが、ちゃんと掛かってくれたわ」

 

 

「創真!?隼とかはどうしたんだよ!?」

 

 

「撒きました。で、君たちの事だから丸腰の原さんがいたら殺りに来るかな、と思ってたが…………罠と疑うなんて…………僕が来なきゃ、掛かってなかったね。鋭い洞察力だね、岡野さん」

 

 

「今褒められても嬉しくないんだけど…………」

 

 

岡野が大きなため息をつく。

 

 

「ま、悪いね。ここで退場だ」

 

 

創真はナイフの先で2人をツンツンと突いて、何処かへ去っていった。その後、奥田が発見した三村を創真が仕留め、逆に原が速水にスナイプされた。この時点で青6人。赤は9人。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真を追っていた隼と碧海だが、いつの間にか創真を見失った。なので、一度本拠地に戻った。

 

 

「こっちもどんどん殺られてってるけど…………どうするのカルマ君?」

 

 

「ん?副官様が決めに行くんだとさ」

 

 

副官こと、中村が口を開く。

 

 

「私が三馬鹿使って旗を取りに行く。精々旗の防御に残すのは1人くらいだからね。ただ、もしその防御役が創真君だったら雲行き怪しいからね~。だから中々強いお二人さんについてきてもらって良い?」

 

 

「別に構わねぇが………守りの方は大丈夫なのか?速水とイトナだけで。あいつらが勝つには、速水を倒すしかないと考えるだろうから、総攻撃してくるかもしれないぜ?」

 

 

「速水は射程や精度は千葉より劣るけど、動体視力やバランス力は格段に上。イトナも弱くないし、最悪足止めしてくれれば、その頃には旗は取れてる筈」

 

 

「……………ならいいか」

 

 

「よし……………じゃ、そろそろこのバトルに幕を下ろしてやろうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『じゃ礒貝君達、こんな感じで頼むね』

 

 

創真からの作戦は中々ヤバそうだった。創真は旗の近くに残るとの事だ。寺坂らを壁にして中村が旗を取りに来ると予想したからだ。そして恐らく、隼と碧海も来るとのこと。だから、速水とイトナを攻略すればあちらの守備はカルマのみになるはず…………と。

 

 

「てか、ほんとに大丈夫なのか?お前なしで速水攻略しろって………」

 

 

『だいじょぶだって。君達そこそこ優秀だし』

 

 

「……………そこそこかよ。まぁ、良い…………俺らだけで速水とイトナを全力で殺るぞ!………いくぞ!」

 

 

磯貝ら含めた4人は速水とイトナがいる樹木地帯に突撃を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パパパパパパパパ!パーン!パパパーン!

 

 

中村達のいる場所に銃声の音が響いた。

 

 

「今だ!私達も行くよ!」

 

 

中村達も走り出す。隼と碧海は少し後ろを走る。旗までは小川を挟んで約50から60メートル。小川を飛び越えようとしたとき…………そこに奴はいた。

 

 

「「「!!」」」

 

 

創真が銃を構えていた。隼と碧海は茂みに隠れて様子を伺う。

 

 

「どうする、カルマ?噂の創真君がいたけど?」

 

 

『全員で掛かれば、流石に創真でも殺れるでしょ。それと、さっきの銃撃戦で速水とイトナは殺られたけど、敵は前原と創真と渚君だけになったから』

 

 

「………………分かった」

 

 

「おい、創真!いくらお前が凄くてもこの人数を相手にするのは無理だろ!」

 

 

寺坂が創真に向けて大声を出す。

 

 

「どうかな?奇跡起こして倒しちゃうかもよ?」

 

 

「ほほーう。なら、その奇跡を見せてみてよ!」

 

 

中村がそう言うと、寺坂達は照準を創真に合わせる。

 

 

「…………………………勝った」

 

 

創真がそう呟いたその意味を、彼等はすぐに分からなかった。後ろに死神が舞い降りたと気付くまでは。死神……………渚は4人を一気に葬り去った。

 

 

「「!!」」

 

 

隼と碧海の顔が驚愕に染まる。そして、創真は小川を飛び越え、中村達の横を通り過ぎ、茂みに向かって声をかける。

 

 

「2人とも出てきなよ。決着の時間だよ」

 

 

「バレてたのかよ…………まぁ、良い手前を倒してやるよ、創真!行くぜ!」

 

 

隼と碧海は一斉に飛び出し、襲いかかった!




THE NEXT story 5/7 PM 22:00


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第151話 サバイバルバトルの時間 3時間目

弟でーす!


確認しておくけど、創真、碧海、隼の武器は銃1丁、ナイフ1つ…………って聞いたんだけど、昨日の話とかちゃんとこの設定の範囲の話を書けてたのかな?


間違ってたら言ってくれ!俺が兄に何やってんだよ、アンポタン(゜o゜)\(-_-)………って言っておくんで。


じゃ、どうぞ!


隼と碧海が飛び出し、ナイフによる斬撃を喰らわそうとするが、創真は余裕で避ける。

 

 

「渚君、早くカルマ君の所に行きなよ」

 

 

「え、でも………」

 

 

「良いから!君の手で倒せ。てか、そうしないといけない気がする。こっちは大丈夫なので」

 

 

「…………うん、分かった」

 

 

渚は頷くと、カルマのいる方へ駆けていった。

 

 

「…………良かったの?援護してもらわなくて」

 

 

「別に…………僕1人で倒せるし」

 

 

その言葉に碧海はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。

 

 

「そう言われると、私達が勝ちたくなる!」

 

 

碧海が全力でナイフを降り下ろすのを、創真も同じくナイフで受け止める。そこへ狙い済ました隼の放つ弾丸が飛んでくるが、創真は身体を僅かに左にずらして避ける。

 

 

「チッ、弾切れか」

 

 

悪態つきながら、隼は銃を捨てる。創真は銃を取り出し隼に向かって引き金を引くが、隼は俊敏な動きで避ける。そして両者は一旦距離を取る。創真が渚の方を見ると、丁度カルマに頭突きされ、ナイフを手放してしまった所だった。

 

 

(やっぱ体格差もあって、苦戦してるか………)

 

 

「よそ見はいけねぇな、創真さんよ!」

 

 

「………おっと、危ない」

 

 

僅かに体を反らして斬撃をすれすれで避ける創真。間髪いれず、隼は蹴りを入れ、創真の両手にあるナイフと銃を同時に蹴り飛ばす。

 

 

「にしても、お前まだ本気出してねぇだろ?」

 

 

「…………何故そう思う?」

 

 

隼は当たり前だろ、と続ける。

 

 

「俺とお前は付き合いの長い親友だからな…………」

 

 

「…………………フッ」

 

 

ヒュン!!

 

 

(速い!!)

 

 

気づいたときには創真が目の前にいた。

 

 

「これが本気だ!!」

 

 

バゴッ!!

 

 

「あぐ!!」

 

 

「サービスだ。もう1発!!」

 

 

ドゴッ!!

 

 

隼は吹き飛ばされる。創真はナイフを拾ってゆっくり近づく。

 

 

「超体操着があるとは言え、そこそこ痛いだろ?所で、碧海さんは何処に………」

 

 

そう言い掛けた創真は、背後から殺気を感じ、後ろを向くと、碧海の蹴りが創真のナイフを再度吹き飛ばす。

 

 

「これなら!!」

 

 

碧海はナイフで創真を仕留めに掛かる。が、創真はまだ余裕な表情。

 

 

「キックの速度が凄い上昇してたね………やっぱ僕が鍛えてただけの事はある…………………が」

 

 

創真は碧海の斬撃を掻い潜り、零距離でハイキックを放つ。

 

 

ドコォッ!!

 

 

「うぐっ…………ガハッ!」

 

 

碧海は崩れ落ちる。創真は碧海が手に持っていたナイフと銃を取り上げ、遠くに投げる。

 

 

「後でお詫びでもするんで、今は許してね」

 

 

「い、良いよ別に………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達の勝ちだから」

 

 

グイッ!

 

 

「え………………?」

 

 

創真のバランスが崩れる。倒れてる碧海が創真の足を引っ張ったからだ。

 

 

「今だよ隼!」

 

 

「!!」

 

 

「オォォォォォォ!!」

 

 

隼がナイフ片手に迫る。

 

 

「ッッ!!」

 

 

創真は足を掴んでる碧海を引き剥がそうとするが、中々離れない。仰向けに倒れてる創真に向かって、隼はナイフを突き刺──────────!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パァンッ!!

 

 

そんな音が響いた。隼の目の前には、創真の手が合った。この技を………………隼は見たことがあった。

 

 

「ね、猫だまし………」

 

 

「の、進化版。渚君だけの十八番じゃないんだよ………………中々精度高いでしょ?」

 

 

その言葉通り、中々効いてるのだろう。隼はナイフを創真の首の横に落としてしまった。あと、何センチか横なら、首に当たっていただろう。そのまま仰向けに倒れる。完全とは言えないが麻痺をしてるのて、体が言うことを聞かない。そして、創真は自分を抑え込んでいる碧海を無理矢理引き剥がし、立ち上がって直ぐ近くに落ちていたナイフを拾う。

 

 

「中々楽しいバトルだったよ」

 

 

「こっちこそ…………悔しいけど、負けたよ」

 

 

創真を抑えるのに力を使いすぎて、反撃する気力がもうないのか、碧海は力なく笑う。

 

 

そして

 

 

スパッ、スパッ!

 

 

碧海と隼の首筋にインクが飛び散る。その瞬間、創真は2人の間に尻餅をつく。

 

 

「………………あー疲れた」

 

 

もう、この勝負どうなったとかどーでもいいや。いや、計算通りなら恐らく勝つのは……………ここまで考えた所で創真は目を瞑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

「創真君!起きて起きて!」

 

 

「誰…………あ、陽菜乃か」

 

 

「もー創真君尻餅ついたまま、寝てたよ?」

 

 

「あ、そうか…………で、渚君が勝っただろ?」

 

 

「うん。すごかったよ、あの二人の闘い」

 

 

「へー」

 

 

そこへ、近くにやって来た氷室さんが口を開く。

 

 

「私が見てましたよ。それにしても、凄いですね。創真様が押さえ込まれたときは流石に負けると思ってましたが、まさか猫だましを極めていたとは……………恐れ入りました」

 

 

なんと良い解説。そして、褒め方上手!そこへ、碧海さんと隼の2人が。

 

 

「ほんと、恐れ入ったよ。やっぱり、創真君は規格外だなぁ」

 

 

「まーね。で、赤チームは異論とか無かった?」

 

 

「全力で戦って決めたんだ。誰もいなかったよ」

 

 

それなら良い。

 

 

「目が覚めたか、創真君」

 

 

来たのは烏間先生だった。

 

 

「君は寝ていたから聞いてなかったと思うから、皆に伝えたことを言っておこう。奴を救う方法を探すのは今月一杯までだ。2月からは暗殺に専念する。そして…………生かすも殺すも全力で殺ると約束してくれ」

 

 

「…………はい!」

 

 

「では、遅くならないうちに帰るんだぞ」

 

 

烏間先生は背を向けて、校舎に戻っていった。

 

 

「所で創真君?さっきお詫びするとか言ってたよね?」

 

 

おーっと、碧海さん。余計な事を思い出してくれたもんだ。

 

 

「あー…………じゃ、あのマスターのいる喫茶店に行こう!陽菜乃も行く?」

 

 

「行く行く!」

 

 

「じゃ、俺も………」

 

 

「別に良いけど、お前が支払いしろよ」

 

 

「はぁ!?なんでだよ!!」

 

 

かくして、クラスの意向を決めるサバイバルバトルは終わりを告げた。




THE NEXT story 5/8or 9 PM 22:00


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第152話 自由研究の時間

そろそろテストも近いなぁ……………はぁ。


またテスト中は不定期更新になるので、また言いますね。


そんじゃ、スタート!!


翌日

 

 

創真side

 

 

あー金欠金欠!

 

 

昨日、碧海さんと陽菜乃はそこそこ高いパフェやらスイーツを注文してしまったのだ。奢ると言ってしまった以上、約束を破るわけにもいかないので、払いましたよ、ええ!!来月の収入までへそくりで凌ぐしかない。

 

 

「…………創真?」

 

 

「!!はいはい、なんでしょう竹林君!?」

 

 

また自分の世界に入り込んでたみたいだな。だがな、ちゃんと何を話してたかは聞いてるのだよ。え?それだと、自分の世界に入ってるの、ちゃいます?良いんだよ、そんな細かいところ。

 

 

確か竹林は殺せんせーを救う研究を少しはしてるはずだから、それを探ってみないかとの提案の意見を僕に求めてきたんだっけな?

 

 

「そうだね……………まず訊こう。探れんの?」

 

 

「それは無理だ」

 

 

僕の問いに答えたのは烏間先生だった。

 

 

「このタコを作った組織は研究データと主導権を渡して解体された。今は各国のトップの研究機関が分担して国際プロジェクトを進めている。当然、情報は全て機密。研究内容を知るのは至難だろう」

 

 

「フムフム。これが研究項目とスケジュールか」

 

 

『私も侵入しました!』

 

 

「何ィ!?」

 

 

烏間先生が言った矢先、パソコンを持つホリーと律がデータベースに入りやがった。

 

 

「…………にしても、この世界のセキュリティ弱すぎじゃね?烏間先生、もっと強化するように言ったら?」

 

 

ホリーにはここまで言われる始末。律のディスプレイに表示される情報を見ようと皆は殺到する。

 

 

「だが、具体的な情報は守りが厳重すぎだね。これでは僕でも突破するのには5時間以上は掛かるね」

 

 

「「「いや、出来るのかよ!?」」」

 

 

『最重要情報のやり取りに至っては、回線すら使われていません』

 

 

「おいおい、じゃあこいつら手渡しでもやってんのか?」

 

 

「キバット君の言う通りでしょうね。原始的ですが、最も情報を盗まれにくい」

 

 

殺せんせーの言う通り、確かに安全だな。

 

 

「………………あ、あった。ちょっと、そこの画面でも、アメリカ班の『触手細胞の老化分裂に伴う破滅的連鎖発生の抑止に関する検証実検』ってあるでしょ?」

 

 

「……………あ、あるね。えーっと、最終結果サンプルは1月25日にISSより帰還………………」

 

 

ISS………………即ち…………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「国際宇宙ステーション!?」」」

 

 

「そんな驚くことじゃないでしょ?宇宙だと爆発とかしても被害少ないし、宇宙でしか出来ないのだってあるし」

 

 

「で、その結果はすぐ分かるのかよ?」

 

 

「ハッ、甘いな木村!」

 

 

そう一蹴したのはキバット。

 

 

「お前らちっとは頭使えよ。それだけ機密な情報なら外交の材料とかに使うとかは考えなかったか?それに、お偉いさんからしたらお前らは暗殺者の一端でしかない。場合によれば、最後までこないかもな………だろ?烏間先生?」

 

 

「…………………」

 

 

何も言わないと言うことは、キバットの言う通りなのだろう。

 

 

「よぉし…………こうなったら創真。実検データがアメリカにもたらされたら、アメリカ襲撃してデータ奪うか。僕らも協力するぜ」

 

 

ホリー、もっと平和的に行こうぜ?

 

 

「もっと良いアイデアがありますよ。烏間先生、ちょっと席を外してください」

 

 

「……………………?」

 

 

意味が分からん、と言いたげな烏間先生だが、言われるがままに出ていった。そして、殺せんせーは喋りだす。

 

 

「さて、研究スケジュールには研究データを積んだ帰還船は太平洋上に着水した後、帰還船ごと研究施設に搬入と書いてありますね…………5トンの帰還船を金庫代わりにして盗まれないようにしてるわけです」

 

 

「俺なら持てるぞ……………」

 

 

マジかよデュオ。

 

 

「……………まぁ、それは置いといて!もっと良くて安全な作戦がありますから!!皆さんはこれを知ってますか?」

 

 

殺せんせーはタブレットの画像を見せる。これは宇宙船か?

 

 

「これは日本で開発中の有人宇宙往還船の実験機です。センサー付きの人形を乗せ、生命維持に問題がないかを計測し、ISSでドッキングし補給物資を下ろし、荷物を積んで帰還する予定です」

 

 

殺せんせーは続ける。

 

 

「この宇宙船がISSに着くのは、アメリカの実検データが地球へ向かう3日前…………もし、この時………本物の人間が乗っていたら?」

 

 

「………………マジで言ってるんですか?」

 

 

殺せんせーは高らかに宣言する!

 

 

「マジです!暗殺教室の季節外れの自由研究のテーマ!宇宙ステーションをハイジャックして実検データを盗もう!」

 

 

「よっしゃあ!宇宙ステーションを襲撃だ!!」

 

 

「訂正しておくがホリー。襲撃ではないからな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、言うわけで宇宙へ行くための訓練を開始した。宇宙船の構造調べたり、侵入経路から潜入後の動きまで綿密に練った。こりゃ中々大変な仕事でしたよ……………うん。

 

 

ま、楽しかったけどね。

 

 

そして……………………次回、作戦開始!!




THE NEXT story 5/9 PM 22:00


あ、それとTwitterのアカウント?かな?


@WYlncRU37dngmND


何か検索機能とかあるのかな?


それで調べてみてください!そこでは、更新が遅れるとか、風邪でちょっと投稿中止とか………まぁ、連絡的な感じで呟きます!


あれ?投稿してなくね?…………と、思ったらTwitterに何か書いてあるかも知れないのでチェックしてみてください。


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第153話 宇宙旅行の時間

タイトル変かな? ま、いいや。


どうぞ!


種子島宇宙センター…………即ち、ロケット発射場から少し離れた所に、複数のコンピューターを操作する創真の姿があった。コンピューターには、既に潜入したE組のメンバーの座標、そして持たせておいた小型カメラからの映像が表示されていた。

 

 

「さぁ…………ハイジャックゲームを始めようか。あー緊張する」

 

 

『頼りにしてるぜ、創真。いつも通り気楽に行こう!』

 

 

「お気遣いありがとさん、磯貝君。じゃ、陽菜乃と矢田さん。陽動開始して」

 

 

『『了解!!』』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わーすごい!宇宙センターだ!」

 

 

「初めて来た~!」

 

 

職員が声のする方を振り向くと、そこには2人の女子中学生、矢田と倉橋がいた。

 

 

「ちょ、君達!?どうやって入ってきたの!?」

 

 

「なんかおじさんたちの後をついてきたらここに来ちゃって~」

 

 

「ここは関係者以外立ち入り禁止なの!ほら、早くここから出なさい」

 

 

「えー発射ボタン押したーい!」

 

 

そう言って職員をくすぐり始める矢田。

 

 

「アハハ!く、くすぐってもダメなの!ちよ、警備員さん!」

 

 

呼ばれた警備員は慌てて矢田を引き剥がそうとする。そして、その様子を見た創真は通信機に話し掛ける。

 

 

「よし、木村。挿してこい」

 

 

『りょーかい』

 

 

警備員がいなくなり、管制室の中に入る木村。バレないように回りを伺いながら、適当なコンピューターにメモリを挿す。そして、即退散。

 

 

『………………管制室のコンピューターに遠隔ウイルスを入り込ませました。以後は私の命令でロケットも飛ばせます』

 

 

「これで第一段階クリア。じゃ、早速律。発射台の回りには監視カメラが多すぎなので、それらを一時的にオフにして」

 

 

『了解です!回りの警備をオフにしました!今ならすぐ近くまで近づけます!』

 

 

律の報告を受け、皆は一気に発射台の傍まで進む。それに伴い、カメラからの映像も揺れる。そして発射場が目先の所に着いたとき、カメラの揺れが止まった。

 

 

「…………流石に根本には人はいるか」

 

 

事前に予想していたとは言え、創真はため息をつく。

 

 

「気配消して突破できる?」

 

 

『大丈夫。任せておいて』

 

 

片岡からの返事に分かった、と返して画面を見守る。

 

 

ゆぅん──────…………。

 

 

「………………お見事。後は、そっちで任せるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆が発射台に上ると、殺せんせーが点検してる所だった。丁度終わったのか、階段を上ってる皆にマルを作る。

 

 

『管制室には録画映像を流します。今のうち入れ換えてください!』

 

 

律の声を聞き、ダミー人形の着せてる宇宙服を拝借する。

 

 

「この宇宙船には2人のみ乗れますが…………乗りたい人!」

 

 

多くの男子が手をまっすぐ挙げる。

 

 

「まだ一度も成功してない試験機ですが、それでも乗りたい人!」

 

 

一気に男子の手が下がった。

 

 

「それでも俺は乗りたい。メカ好きにとっちゃ垂涎物だ。だが、今回は譲ってやる。渚、カルマ。お前らが乗れ」

 

 

イトナに指名された2人の内、カルマは眉を潜める。

 

 

「えー?寺坂とダミー乗せれば良いじゃん。落ちても損害ゼロだし」

 

 

「あァ!?」

 

 

「おいおい。お前ら2人がガチで戦ったから纏まってんだろうが。責任もって先導切れっつーの」

 

 

「隼に言われるとムカつく~」

 

 

「んだとカルマァァ!?」

 

 

「カルマ」

 

 

カルマは自分を呼んだ渚の方を振り向く。

 

 

「行ってみよ。友達と卒業旅行で宇宙に行けたら最高だな」

 

 

「………分かったよ。言うこと聞く約束だしね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は過ぎて、遂に打ち上げの時間となった。既にカウントダウンが開始されている。

 

 

「いや~大丈夫かな?爆発とかしたらせんせーがヤバイな?」

 

 

「不吉なこと言わないでくださいキバット君!心配せずとも、設計図はたっぷり見直しましたし、点検もしましたから大丈夫ですよ」

 

 

「なら良いんだがな……………お、点火した!」

 

 

ドドドドド……………………!!

 

 

エンジンが点火し、ロケットノズルから火を吹く。爆音と伴に、とてつもない速さで上昇していく……!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ………………!!」

 

 

宇宙服を着てるとはいえ、体にGが多少は掛かる。そんな彼等の耳に────────

 

 

『にゅや!流石に速い!』

 

 

『へっへーん!どうした先生?余裕が無くなってんな!』

 

 

『フム。人間の技術力も進歩したもんだ』

 

 

人間じゃない3人の声がしてきた。

 

 

「ちょ、なんで殺せんせーにホリー君達がついて来てるの!?」

 

 

『心配だったので………データを手に入れる事に拘りすぎず、宇宙の旅を楽しんでくださいね!』

 

 

その言葉を受けた渚とカルマは、自分の担任に伝えておきたいことが出来た。

 

 

「殺せんせー。自分の命を利用して僕らに学習の機会をくれるのは本当にありがたいけどさ…………僕らにとって殺せんせーの命は、教材だけで終わるほど軽くないよ」

 

 

「……………分かってます。嬉しいですよ………にゅや!?」

 

 

ロケットにへばりついていた殺せんせーは遂に剥がれてしまった。

 

 

「じゃ、僕らも宇宙へレッツゴー!!殺せんせー、また後で!」

 

 

「…………楽しみだ」

 

 

ホリーとデュオはそのままへばりつき、ロケットと伴にどんどん上昇し、遂に見えなくなった。

 

 

次回、ライダーファンには聞き覚えのある台詞が……?




THE NEXT story 5/10or 11 PM 22:00


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第154話 宇宙の時間

宇宙………………来………


…………ごほん。どうぞ!


ロケットはぐんぐん高度を上げ、ついに大気圏を突破した。ロケットに張り付いてるホリーが後ろを振り向くと、そこには青くて丸い我らの惑星、地球があった。

 

 

「うわぁ、綺麗だな…………ねぇ、僕宇宙に来たら言ってみたかった事があるんだ」

 

 

「ほう。それは何だ?」

 

 

「それはね……………ごほん」

 

 

ホリーは咳払いして叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「宇宙…………………来た────────────!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ちょっと番外

 

 

ライダーファンの心境(やっぱ来た─────────!!)

 

 

ライダー知らねぇよ、又は興味ない人の心境(知らねぇ──────────!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、クソ茶番はここまでにしておいて…………

 

 

ロケットは遂に国際宇宙ステーションとドッキングした。国際宇宙ステーションで生活している日本人宇宙飛行士、水井さんがハッチを開け、中にある人形を確認する。

 

 

「(……………あれ?中身の人形がないような………)うわぁ!?」

 

 

仲間達には、水井が急にロケット内部に引きずり込まれたように見え、慌ててロケットの内部を覗き込む。

 

 

「は、ハロー………」

 

 

片仮名英語で渚が挨拶する。そして、律は地上との通信を切る。

 

 

『僕らは爆弾を持ってます。話がしたいので、下がってください』

 

 

渚が英語でそう言うと、宇宙船から出る。カルマも水井にナイフを構えたまま、一緒に出る。メンバー達は単純に驚いていた。この2人は無重力空間にパニックに陥ることなく、順応してるからだ。普段からアクロバティックな動きをしている証拠だ。

 

 

この時点で、彼等をただの子供扱いしてはならない事は分かった。

 

 

そして、ホリー達も透明化で見守るなか、渚達はアメリカの研究データと人質の交換をしたいことを伝えた。それらを全て話終えた時、メンバーの表情からは驚きと言うものは抜けていた。

 

 

(マジか……………宇宙飛行士の皆さま方はもう冷静になってる。マニュタルには絶対無さそうな案件なのにね…………こりゃ一苦労するな)

 

 

ホリーの考えることは既に渚達自身も分かっていた。そして、宇宙飛行士達のリーダー的な男が口を開く。

 

 

『先ずは、君達にブラボーと言わせてもらうよ。だが、軍人含む6人とやる気なのかい?言っておくが、我々はいつ死ぬかも分からない危険な実験をやってきたんだ。爆弾など脅しにもならない』

 

 

これは交渉は失敗と言うことか?渚とカルマのナイフを持つ手が汗で滲む。

 

 

ホリーとデュオもいざとなれば透明化を解除し、渚とカルマの安全を守るために動こうと決める───────!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『…………いや、無益な争いはやめよう。取り敢えず、彼を離してやってくれ』

 

 

カルマが拘束を解除する。解放された水井がとある疑問を訊ねる。

 

 

「にしても、データを奪ったら帰りはどうするつもりなんだ?」

 

 

「クラスメイトが完璧に計算を済ませてるので大丈夫です」

 

 

『……………だとしても無謀すぎるぜ。君達、命を軽く考えてないか?』

 

 

別の外人の男からそう言われ、渚は返す言葉に詰まってしまう。

 

 

しかし、カルマは違った。

 

 

「俺だって来たくて来たんじゃないよ。友達が一緒に行こうって言うからね。それに、俺達は先生を殺す教室にいるんだよ。命に対しては命で向き合ってる。あんたらと一緒だろ?」

 

 

成長したな、とデュオが親目線で感心する。

 

 

『……………そうか。いいだろう。要求を呑む。データの準備をしてくれ。それと君達。荷物の運搬を手伝うんだ。早く帰って貰うために、な』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルマと渚はたっぷり荷物運搬を手伝った。ホリーとデュオはその間暇だったので、衛生の外に出て地球の回りを1周してみたりと中々出来ない体験をこっちはこっちでしまくった。

 

 

「宇宙って最高─────────!!」

 

 

と、ホリーは言ってた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、データをコピーさせてもらい、ついに帰る時が来た。ちなみに、爆弾……………いや、羊羮はプレゼント。

 

 

外国の人もいるので、皆で美味しく食べて貰いたいbyホリー

 

 

『君達は大した勇者だ。また遊びに来い』

 

 

「もうごめんだね。その代わり偉くなったら宇宙開発の予算を増やしてやるよ」

 

 

カルマの返しにリーダーがニッ、と笑った。

 

 

『そりゃ楽しみだな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ。早かったね~宇宙。ま、僕はいつでも行けるけど」

 

 

ホリーは宇宙船にあぐらをかいて座りながら云う。

 

 

「アハハ………後は帰れるかだけど………律、大丈夫だよね?」

 

 

『大丈夫です、渚さん!』

 

 

「まぁ、律が計算を間違えるとは思えないしな」

 

 

『…………私は今回、たくさん考えて、動かして、感じて…………知性が進化したのを肌で感じます。私は感覚と言うものを初めて感じました。私はE組に来れて、本当に幸せです』

 

 

律も何か感じる物があったようだ。

 

 

『それと…………計算が間違ってないか不安です』

 

 

「マジか」

 

 

デュオが真顔で呟いた。

 

 

「だ、大丈夫!いざとなれば僕らで何とかするから!ね!だから安心してね」

 

 

ホリーが慌てて声を掛ける。

 

 

「ねーホリー。もし、死んだら親に今までありがと、って………」

 

 

「おい、カルマ君!?それ本気で言ってる!?てか、そんな役割りしたくないんだけど!?」

 

 

「アハハ!冗談に決まってるじゃん。本気にするとか、アホ過ぎだって」

 

 

カルマはホリーをアホ呼ばわりする。それが間違えだと知らずに。

 

 

「こん畜生が……………人をおちょくりやがって!!この宇宙船、撃墜させてやらぁ!!」

 

 

「待て待て!早まるな、おい!」

 

 

デュオが慌てて止めに入る。

 

 

「おい、本気でやるつもりか!?」

 

 

カルマも流石に焦る。

 

 

「死ね、カルマ!!焼き殺してやらぁ!」

 

 

「て言うか、僕まで巻き込まないでよ!!」

 

 

渚の言うことはごもっともだ。

 

 

「悪かった、悪かったから!殺すのはやめろって!」

 

 

カルマがホリーに向かって叫ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、君本気で僕が殺すと思った?本気にするとか、アホ過ぎだって」

 

 

ホリーがしてやったり、と言った口調で同じ台詞を言い返した。

 

 

「じゃあ、デュオもグル?」

 

 

「………………悪いな」

 

 

「……………ちっ」

 

 

舌打ちしたものの、カルマは内心ホッとし、小声でこう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こういうの、控えよ……………」

 

 

結構効いたようだった。




カルマも懲りる………………事もあるらしい。


THE NEXT story 5/11 PM 22:00


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第155話 1%の時間

完璧に忘れてました!すみません!


ロケットは大気圏を突入。そして、空中分解や大爆発を起こすことなく、大気圏を通過した。今は高速で空を落下している。

 

 

そこへ、マッハ20のタコが現れる。

 

 

「2人共、宇宙の旅お疲れ様でした!」

 

 

殺せんせーが中に声を掛けると同時に、パラシュートが開く…………………が、絡まっている。

 

 

「ダメだね~。計算不足だ」

 

 

ホリーが鼻で笑いながら、ほどいていく。ふと殺せんせーを見ると、スマホをホリーの方へ構えていた。

 

 

「何をしての殺せんせー?」

 

 

「いえいえ。良いネタが出来たので、ちゃんと記録しておこうと思っただけです」

 

 

「何のネタかは分からないが、まぁ良いや……………よし、ほどけた」

 

 

パラシュートが機能しだし、宇宙船はゆっくりと落下していく。

 

 

「それにしても、先生が交渉に割り込む必要はなかったようですね。話せば意外と通じたものでしょ?」

 

 

「まーね」

 

 

「さて、後は押していきましょう。デュオ君達も手伝って下さい」

 

 

「しゃーねな。じゃ、やるとしましょうか………って、熱ァ!!」

 

 

ホリーが悲痛な悲鳴を上げる。

 

 

「まだ表面は熱いに決まってるだろ」

 

 

デュオは黒獣を展開し、手の形にして突っ張りのような形で押していく。

 

 

「予想以上に熱かったな……………まったく」

 

 

手がダメなら足、と言う謎理論でホリーは超高速で蹴り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロケットはE組のプールへ着水した。皆は歓声を上げるが、烏間先生は苦い顔をしていた。

 

 

「私も一緒に計画しといて言うのもアレなんですが……………どれだけの省庁に謝るのか検討もつきませんね」

 

 

「まったくだ」

 

 

烏間先生がため息つくのを、苦笑いで見つめる創真。

 

 

「まぁ良いじゃないですか烏間先生。良いデータも取れましたし」

 

 

明るい声の殺せんせーはスマホを見せる。そこには、宇宙への最も最適なルートとパラシュートが絡まる問題があった事についてのレポートがあった。

 

 

「これだけあれば、もう一度飛ばすだけの価値があります。これあげるので、チャラって事で」

 

 

「…………悪人め」

 

 

悪人呼ばわりの殺せんせーはヌルフフフフフ、と笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、皆は持ち帰ったデータの解析を始める。

 

 

「ええ…………全部英語で書かれてる…………」

 

 

「当然だ碧海さん。アメリカが研究したんだから」

 

 

「よし、創真君。翻訳を頼むね!」

 

 

「えー?それなら奥田さんが適任だよ。専門知識豊富だし。奥田さんなら出来るよね。分かりやすく説明するの」

 

 

「は、はい!」

 

 

奥田は律の画面に表示されている英文を見つめていたが、暫くして口を開く。

 

 

「要約すると……………爆発のリスクは大きいほど低確率で、小さいほど高確率だそうです。人間ベースのオリジナル細胞の奴にはほぼ当てはまらず、爆発の可能性は低く………さらに、この化学式の薬品を定期的に投与すれば、さらに爆発の可能性を低くなり、結論的には、爆発の可能性は1%以下……………」

 

 

「……………………おや?」

 

 

創真は何かに気付いた。

 

 

「ねー、この薬は前に作った事なかった?」

 

 

「はい…………あの溶ける………」

 

 

「「「アレかよ!?」」」

 

 

「アレですねぇ」

 

 

創真も懐かしそうに呟く。

 

 

「何にせよ、殺さなくても地球は救われるぞ!」

 

 

全員が喜ぶなか、磯貝はとある事の確認を取る。

 

 

「じゃあ……………暗殺は今日限りで終わりで良いのか?」

 

 

「ふざけるな。娯楽がなくなる」

 

 

即答の創真。

 

 

「…………って、僕はそんな感じなんだけど、言い出しっぺの意見を聞こうか」

 

 

皆の視線が渚に注目する。

 

 

「……………カルマや中村さん、碧海さんや隼君達、殺す派だった、皆の気持ちを大事にしたい………」

 

 

「なら、決まりだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、E組は3月までは全力で暗殺する事にした。創真らにとって暗殺は必修科目且つ、使命、絆であるのだから。最も殺せるかは知らん。




THE NEXT story 5/13 PM 22:00


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第156話 進路の時間

テスト前、最後の投稿。


結構雑なストーリーかも知れませんが、お許しを!!




創真side

 

 

殺せんせーが爆発する可能性が1%以下と分り、E組に明るさが戻った。殺せんせーは、失われた冬のイベントを取り戻すとか言って、クリスマスから年末。お正月から節分まで色々やりまくった。

 

 

いや、ほんと疲れる。だが、それと同時に楽しい。やはり、ここは良い場所だ。

 

 

そして、タコはいきなり現実に引き戻した。

 

 

受験。

 

 

皆さんにとっては、最近あった事かもしれないし、懐かしいなぁと思う者もいれば、ついに来年か……………と思う人もいるだろうな。皆は嫌な顔をしてたが、僕にとっては大した事ではない。僕の志望校は公立なので時期的にはまだ先だが、私立は再来週。ちなみに、僕の滑り止めの高校も、国内最難関の所だ。

 

 

え?お前の自慢話や語りは飽きたから、もういい?あーそうかい…………………はぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

 

 

創真は倉橋と帰っていた。

 

 

「はぁ…………嫌だなぁ、受験」

 

 

「終われば良い思い出になるよ」

 

 

「だと良いんだけど…………」

 

 

「陽菜乃の志望校なら受かると思うよ。この1年、勉強を結構教えてきたけど、凄い伸びてるもんね」

 

 

「ほんと!?創真君に言って貰えるなら何か安心するよ~!よーし、頑張ろう!……………そう言えば、中学校生活も、もう終わりだね」

 

 

「あぁ、そう言えばそうだね………中々早かったなぁ………」

 

 

「だから受験終わったらさ、中学生時代最後のデートしない?」

 

 

「そう言うと思って、何処に行こうか既に考えてあるよ」

 

 

「どこどこ?」

 

 

「横浜だよ。前に隼が暴走したときに陽菜乃は来たけど、観光は出来てなかったから、どうかな…………と思って」

 

 

「うんうん!凄く良い案!受験終わったら行こ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変わってこちらは隼と神崎ペア。

 

 

「なぁ、有希子…………あの、さ………受験終わったら、で、デートとかどう?」

 

 

中々緊張気味の隼のお誘いに、神崎は

 

 

「うん!一緒に行こ!」

 

 

満点の笑顔を見せてくれた。まったく、このヘタレは勇気を振り絞るのにどれだけの時間を掛けるのだろうか?想像もつかない。

 

 

「ねぇ、隼君」

 

 

「うん?」

 

 

「私達の関係ってさ…………高校に行っても続くのかな?」

 

 

隼の受ける高校も、中々ハイレベルだ。その高校は部活も活発で、勉強も熱心に指導するような所だ。恐らく、これまで見たいにデートをするのは難しくなるだろう。

 

 

………………まぁ、これまでと言っても、片手で数えられるレベルの、しかもゲーセンで遊ぶなど、大したレベルのデートではないのだが。だが、ゲーマーの彼等にとっては楽しいのだろう。

 

 

参考までにだが、創真と倉橋のデート数は、両手で数える程で、しかも結構遠くに遊びに行ってる。

 

 

「……………隼君?」

 

 

中々返事が返ってこず、神崎は隼の顔を覗き込む。

 

 

「もし、俺が志望校に受かったら、デートはあまり出来なくなるかも知れないんだけどさ…………………なんつーかその………俺はそれでも有希子と一緒にいたいなー…………って思う」

 

 

「………………良かった。私と同じ気持ちで」

 

 

神崎は隼にギュッと抱きつく。

 

 

「ちょちょ、か、神崎さん!?い、いくら人が回りにいないとは言え、こ、ここでそういうのは………」

 

 

心拍数も急上昇してるのか、ろれつが上手く回っていない隼。

 

 

そんな様子も微笑ましく…………いや、下衆い微笑みを浮かべながら見守るのは毎度お馴染み、ホリーとキバットである。

 

 

「フヘヘヘヘ…………これぞまさにリア充」

 

 

「俺様の目の保養にもなるぜ…………にしても、俺様も人間だったら、今頃彼女は何人もいるだろうに………』

 

 

「それはないな………」

 

 

デュオに断言されるキバットであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの町は…………何やら変化が起きている」

 

 

高層ビルの最上階の部屋にて、彼はタブレット越しの通話相手に向かってそう言った。

 

 

『具体的には?』

 

 

「俺の調べによれば、椚ヶ丘にてマンション建設のラッシュアワーが広がっているが…………アレはカムフラージュだ。タコを殺す兵器だと推測する」

 

 

『ふーん…………で、あともう1つ詳細が完全に不明の兵器があるんだよな?』

 

 

「壊すか?」

 

 

『壊す?まさか。地球が無くなるのはごめんだからね。一般的には殺すのが妥当。それを邪魔しちゃ、ダメだろ?』

 

 

「まぁな…………だが、生徒のガキ共にとってはどう思うか分かるだろ?」

 

 

画面越しの彼は暫く黙っていたが、急にニヤリと笑った。

 

 

『にしても、お前も変わったねぇ。あの冷徹がお似合いのお前が……………何かあったんですか?』

 

 

「あったよ!」

 

 

似たような下りを見たことがあるような気がするが、それは置いておいて。

 

 

『まぁ、良いや。だが問題は、その………………何って言うんだっけ?名前忘れたわ』

 

 

「柳沢」

 

 

『そう!さっき言った2つの兵器があれば、殺せるのは確実。だが、お前の潜入させてる奴の言う通りなら、柳沢は生徒をも巻き込む計画だろう。それは見過ごせねぇなぁ』

 

 

「倒すのか?概要は見たが、アレはもはや怪物だ。どうやって倒す気だ?」

 

 

『そうだな………ま、案はぱっと思い付くだけでも色々あるが…………取り敢えず、お前の子供達に手伝って貰うよ』

 

 

「死なせたらぶっ殺すからな?」

 

 

『おー怖い怖い。だがな…………俺の立案が間違った事あるか?』

 

 

「…………チッ。つーか、テメーのガキ、色々便利な力持ってるそうじゃねーか?』

 

 

『まーな。あいつも戦うだろうからあんたの息子さんたちにはそれを手伝って貰いたい、って感じ』

 

 

「あっそ…………てか、お前は自分の息子の心配しねぇのかよ?」

 

 

『ん?だって、心配する必要ないし。そう信じてるんだよ。てか、お前より優秀だし』

 

 

「テメェ…………来たら覚えとけよ。くそ雑魚片したら、次はテメーだからな?」

 

 

『覚えてないかもな!!』

 

 

そう言って、通話は終わった。

 

 

「あー最悪だ。また、あいつとコンビ組んでやんねーといけねぇのかよ……………」

 

 

彼は大きなため息をついた。




THE NEXT story ?/?? PM 22:00


これからテスト突入!


なので、いつ投稿かはランダム。金曜日までは予告はしませんので、22時に覗きに来てください。


投稿してるかもしれないし、してないかも知れません………。

あ、それと『暗殺者とは忍ばないのが正常である』と言う作品を…………土曜日にちょっと見てみてください。その作品に、天才が舞い降りる…………!!


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第157話 七三の時間

ただいま!!


どーも、お久しぶりでござる。作者である私もテストが色んな意味で終わって、漸く再開である。今回のテストで作者は、この小説が完結したら全力で勉強に取り掛かろうと決意した。ま、もう高2だしね。さて、余談は終わりにしようか…………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

E組の教室は大変重い空気が流れていた。その重い空気を生みだしているのは竹林である。

 

 

「……………竹林の奴、落ち込んでるな」

 

 

「あいつが受けたの国内最難関の一角に入るからな。無理もねぇよ」

 

 

私立の受験は大方終わり、結果もほぼ判明している。何となく様子から分かってはいたが、竹林君は受験に失敗してしまったようだ。

 

 

「フヘヘヘ……………何であそこでマークミスしたんだ…………所詮、E組を離れたらこんなものか………」

 

 

こればかりは皆はどうしようもない。本人が立ち直ってくれれば良い話なのだが、相当難しいだろう。

 

 

「た、竹林君、元気出してください!確率的にこういうこともありますって!」

 

 

殺せんせーは傷口に塩を塗っているのだが、それに気付かない。

 

 

「やれやれ……………そんな気にすることねぇだろ」

 

 

隼がスマホゲームをしながら呟く。彼は残念ながら併願校は受かってしまったので、竹林のショックがよく分かってないようだ。

 

 

所で、皆がさっきから気になっていたのが────

 

 

「うーん……………」

 

 

何故か床を這いつくばっているホリー。ついに頭がいかれたのだろうか。

 

 

「もしもしホリーさん?あなた何やってるの?」

 

 

「ん?何だ創真か!いやさ、この国には自販機の下とかに百円玉がよく落ちて(・・・)るって聞いたからさ、この教室にもないかな~って感じ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『落ちる』とか言っちゃダメ!!」

 

 

その声の主は殺せんせーだった。

 

 

「ホリー君も含め、以後禁止です!それと、この教室にはお金は落ちてません!落ちてたら先生が回収して、へそくりとして蓄えてるんですから!」

 

 

「蓄えてんのかよ」

 

 

「んなことは良いんですよ!それより!決めました。以後、ヘイト発言する者は、七三に手入れします!」

 

 

───────じゃ、何も喋んなきゃ良くない?

 

 

ブーイングをしている皆を横目に、創真はそういう結論に至った。

 

 

「ええい、やかましい!先生の粘液で滑らかに整え……」

 

 

早速、殺せんせーは七三のかつらをかぶる。

 

 

「何か楽しいオ話をしましょう!三村くん、最近見て面白かったテレビ番組は何です!?」

 

 

「そ、そうだな…………大河ドラマにはまってるな。今は真田幸村の話でさ、幸村の『浪人』時代から……あ!」

 

 

アウト

 

 

そして、七三が三村君には意外と似合ってる。

 

 

「次は倉橋さん!天気の話で和ませてください!」

 

 

「え、えっと…………最近雪が降るけど、積もらなくてガッカリだな~…………」

 

 

(これは…………………セーフだな。ふぅ、良かった良かった…………ん?)

 

 

ふと陽菜乃を見ると、何故か七三にされていた。

 

 

「おい、何でだよ!?」

 

 

「雪が積もれば滑るのでアウトです!当然でしょう!!」

 

 

「少々理不尽な!」

 

 

「次、寺坂組!」

 

 

さぁ、流れを止められるか────────?

 

 

「お、おう元気だせや竹林!」

 

 

「勝負はこれからじゃねぇか」

 

 

「そうだぜ!これからどう転ぶ(・・)か分からねぇだろ?」

 

 

七三にされたのは言うまでもない。

 

 

「まったく、何なんですか!創真君、てほんを見せてあげなさい!」

 

 

「えー…………………………?じゃあ、最近見たほっこりする話をしよう。用事で新宿に行ったその帰りにさ、発車している電車に手を振ってる子供がいてさ。そしたら、運転手の人も手を振り返してた。それ見て何か微笑ましく感じた」

 

 

ちなみに、これは今日あった作者の体験談。

 

 

「「「………………………」」」

 

 

「…………終わりだけど?」

 

 

「………………チェッ」

 

 

───────このタコ、今舌打ちしたな?

 

 

「まぁ、良いとしましょう。では、折角ですから先生も滑らない話をします。この前ー、自販機でお茶買ったらー、お釣り取り忘れてー、急いで戻ったらちゃんとあってー、ホッとしたわー…………………以上です」

 

 

「「「オチは!?」」」

 

 

纏めてアウト。これで、ほとんどが七三にされた。

 

 

「さぁさぁ、皆も先生と同じようにどんどん」

 

 

「もう良い」

 

 

その声の主から発せられる殺気の籠った声に、殺せんせーは冷や汗を掻く。

 

 

「もう結構です。ありがとうございます、くどいほどNGワードぶっ込んでくれて………………!」

 

 

ぶちギレた竹林君が銃を構える。

 

 

「お、落ち着いて!ほら、皆も…………ハッ!」

 

 

皆の方を向くと、全員が銃を構えていた。

 

 

「この古典的なゲーム、殺せんせーがしたかっただけでしょ?」

 

 

「俺らの受験で遊びやがって…………!!」

 

 

皆もお怒りだ。

 

 

「イトナ、あれ使え」

 

 

七三状態のホリーの指示に、イトナはコクりと首肯く。

 

 

「受験中は控えていたが……………今が使うときだ」

 

 

「ちょ、待ってくださ……」

 

 

「死ね!!」

 

 

イトナは隠し持っていたリモコンのボタンを押す。すると床が開き、落とし穴が出現する。

 

 

「死ねやこのタコ!!」

 

 

落し穴の最下部に落ちる寸前で触手を使って落下を防いだ殺せんせー。だが、まだ終わらない。そこから全員からの射撃をかつらを使って弾き、七三にされたのが屈辱だったのかホリーが剣で斬りかかるのを、命からがら避ける殺せんせー。それらの攻撃を避けたあと、殺せんせーは声を張り上げて言う。

 

 

「ええ、そうですとも!受験なんてお祭りなんですよ!」

 

 

そう、あっさり認める。そして、殺せんせーは竹林に向かって問い掛ける。

 

 

「竹林君!!君の刃は一本だけじゃないでしょう!?」

 

 

「ええ、そうですよ!!滑り止めの学校だろうが僕の進路には何も影響はない!!」

 

 

「成りたいのは医者ですか!?それとも爆発物取り扱い!?」

 

 

「医者ですよ!!やっぱり成りたい!」

 

 

「それが君に向いてます!ここでの経験を生かして多くの人を救ってください!!」

 

 

「分かってますよ!!よくよく考えれば、NGワードごっこなんて余計なお世話だ!!」

 

 

そう言う竹林の顔はさっきと違って、晴れ晴れとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

 

「結局、創真は引っ掛からなかったな」

 

 

「フフフ。君達が引っ掛かりやすいだけさ」

 

 

「クソ……………引っ掛かかれば良いものを」

 

 

「残念だったな隼」

 

 

そんな2人に、碧海が話し掛けてきた。

 

 

「そう言えばね、昨日私の携帯に電話掛かってきたんだ~。父さんからね」

 

 

「で、どんな内容で?」

 

 

「えっと……………お前らスナイプは得意か、って。まぁ、そこそこ出来るって言ったら、あっそ、って言われて切られたよ」

 

 

「スナイプって…………お前の親父さん、暗殺の事知ってる?」

 

 

「い、色んな所に繋がりがあるからね…………もしかしたら……………」

 

 

「ありえーるな………………てか、何でスナイプ?」

 

 

to be continue…………




THE NEXT story 5/19 or 20 PM 22:00


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第158話 バレタインの時間

作者はバレンタインチョコなど貰った事がない。


残念!!


バレンタイン………………それは、男が女子からのチョコを期待する神聖なる(?)1日。そして、このE組でもチョコは飛び交った。

 

 

今日は、聖なるバレンタインの1日のお話し─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

 

「なー岡野、頼むよ!」

 

 

「うっさい!!」

 

 

朝登校してきて第一声がこれだった。どういう訳か、前原が岡野にチョコを渡そうとし、それを岡野は拒んでいる。

 

 

…………まったく以てどういう訳だ?

 

 

「おい、隼。取り敢えず状況説明頼む」

 

 

「えーっとな。実は昨日な………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………なるほどな。そりゃ怒るがな」

 

 

隼によれば、昨日岡野と前原が一緒に帰っていたら、覗きタコを前原が偶然発見したそう。その状況をチャンスと見た前原は、岡野をカラオケに誘った。

 

 

多分、岡野は相当嬉しかったのだろう。

 

 

だから、女子と仲良くしていれば、殺せんせーが寄ってくるからそのタイミングを狙おうと前原が企んでいたと知ったときは、怒りと悲しみを込めたドロップキックを放ったらしい。

 

 

……………………チョコごと前原の頬を。岡野はバレンタインデーに先駆け、前原にチョコを渡そうとしていたのだ。その女心を前原が踏みにじった訳だ。その状況をマズイと見たのか、殺せんせーは前原に岡野から直接チョコを改めて貰えなければ、内申書の評価をチャラ男にすると言ったそう。公立高校の受験に悪影響出ること間違いなしだろう。

 

 

そして、今に至ると言うわけだ。

 

 

「…………要は自業自得だな」

 

 

僕はそう結論付けた。

 

 

「おい、創真!頼むよ、岡野を説得してくれないか?」

 

 

神頼みならぬ、創真頼みか。

 

 

「えー…………じゃ、今度何か奢って」

 

 

「何でも奢るから!!」

 

 

しゃーないなー。

 

 

「まーまー岡野さん。こいつは女たらしだが、そこそこ良いところもあるじゃないか。今回は許してやっ」

 

 

「うっさい!!」

 

 

声とともに、僕に向かって椅子をぶん投げてきた。それをデュオの黒獣が刃に変形させ、真っ二つ。

 

 

「………………無理か」

 

 

「諦めんの早すぎだろ!?」

 

 

「うっさい!てか、そんぐらいは自分でやれ!!男でしょうが!!」

 

 

「くっ…………分かったよ。絶対貰ってやる!!」

 

 

あんま興味ないが、精々頑張ってちょーだいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2時間目は土下座。

 

 

3時間目は回り込みからの土下座。

 

 

4時間目はパズルだったり、ひたすら追い掛けたり……………。

 

 

流石にちょっと…………と思ったのか、片岡が殺せんせーに声を掛ける。

 

 

「殺せんせー、ひなたは怒らせたら頑固だから、絶対チョコは受け取んないよ。やめてあげたら?」

 

 

「ダメダメ。優れた殺し屋は万に通ず。異性の扱いだって例外じゃねぇよ。無理なら、暗殺教室の卒業資格は与えられねぇな」

 

 

「ちょ、キバット君!?あなた先生でもないのに何言ってるんです!?卒業資格を与えるのは清廉潔白なこの先生です」

 

 

そう言う殺せんせーに、キバットは鼻で笑う。

 

 

「ハッ!何が清廉潔白だ。この前もコンビニでエロ本立ち読みしてたじゃねぇか?コンビニでの立ち読みはいけないのもそうだが、エロ本読んでる時点で清廉潔白じゃねぇだろ!」

 

 

「にゅや!?い、いやあれは誤解です!!あれは私の手が勝手に(以下略)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み

 

 

「岡野、頼むよ……………」

 

 

「ふざけんな!内申書が欲しいだけでしょ!?」

 

 

「…………別に内申書はチャラ男で良いけど………………ごめんな。気持ちに気づいてやれなくて」

 

 

「謝っても無駄よ。折れない性格なの知ってるでしょ?」

 

 

「知ってるよ!お前の事は全部知ってる!!」

 

 

フン。なかなかロマンチックな事言うじゃないか。そのロマンチックな言葉を聞いた岡野が平静を装いながら、例えば?と尋ねる。

 

 

「例えば…………ハイキックの時に見えてるのに見えてないと思ってる事」

 

 

お前、それ言うか?

 

 

「それと、暴力がひでぇ!ちょっと怒れば引っ掻くわ、もっと怒るとミドルキックするわ、さらに怒るとドロップキックを撃つわ、あとは」

 

 

言い終わる前に、岡野は靴元から対先生ナイフを出し、キックを放った。

 

 

(わー痛そうだなー…………………ん?)

 

 

「最高に怒ると、対先生ナイフで喉元を突く……だな」

 

 

「!!」

 

 

岡野は対先生ナイフがチョコになっているのに気付いた。これはまぁ、直接貰った事になるのか…………?

 

 

「な、お前の事よく知ってんだろ?」

 

 

「……………………ん」

 

 

まぁ、1件落着。ちなみに、このあと前原は何か余計な一言を言って、膝蹴りを喰らった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────が、バレンタインはまだ終わらない。

 

 

茅野は、机の中に隠していたチョコをスッとだし、それを複雑な気持ちで見つめていた。そんな彼女に近づく3人+コウモリ1匹がいた。

 

 

to be continue…………




THE NEXT story 5/20 PM 22:00


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第159話 バレンタインの時間 2時間目

物語も終幕に差し掛かってるなぁ…………あ、それと創真が主人公の続編を作るとしたら、時系列とか考えるとソードアートオンラインが自然だし、面白いかな…………って思いました。


登録者200人いかなくても、その話を見たいな…─────って人は感想欄とかで、さりげなーく言ってくれたら考えます……………では、どうぞ!


茅野は、何処か複雑な表情でチョコを見つめていた。

 

 

「はぁ……………」

 

 

「何ため息ついてるの~?」

 

 

「うわぁ!?」

 

 

茅野が後ろを振り向くと、そこにはホリーとキバット、さらにはカルマと中村もいた。

 

 

「び、びっくりさせないでよホリー君!」

 

 

「ごめんごめん。で、茅野ちゃん。そのチョコは誰に渡す気なの?」

 

 

「え!?」

 

 

茅野に興味津々の四人の目線が突き刺さる。

 

 

「ま、まだ決まってないよ!そもそもこれ義理だから…………」

 

 

「へー。てっきり俺はこの男に渡す気かと」

 

 

カルマは問題のキスシーンを見せる。

 

 

「あー渚か。あのキスは見応え抜群だったな」

 

 

キバットにも追い討ちされ、茅野は真っ赤になった顔を手で覆い隠す。

 

 

「フフフ。恋に悩む中学生って訳か。まぁ、茅野ちゃん取り敢えず放課後外にカモン!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、体育倉庫前に集合させられた茅野。既に4人は待ち構えている。

 

 

「にしても、茅野ちゃんは何に悩んでんだ?早く渡せば良いじゃねぇか」

 

 

「わ、渡し方が……………」

 

 

茅野の言葉に、ホリーは目を丸くして聞き返す。

 

 

「え、でもさ。茅野ちゃんは俳優業やってたんでしょ?こういう時何を言えば良いかとか分かるんじゃないの?」

 

 

「お、お芝居とリアルは全然別の話だよ!リアルで同級生好きになるなんて経験ないから…………」

 

 

「ふーん。なら、偵察しようぜ。隠密訓練の活かしどころだ」

 

 

「いいねーカルマ!よし、告白の仕方を勉強だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

case 隼

 

 

「え!?これ俺に!!マジか、やったー!!ありがとう!!」

 

 

「うんん。どうたしまして」

 

 

「いやー超うれしいわ!!食べてみていい?」

 

 

「うん、どうぞ!」

 

 

「ではでは………………うんうん!愛がこもってるわ~!」

 

 

隼は異常に喜んでる。

 

 

「狂喜の隼だ」

 

 

「見てるこっちからしたら怖えーな………」

 

 

中村の言うことも分からなくはない。

 

 

「こんな感じで探していこう。裏山ならチョコをこっそり渡すのに適してるからね。人間と言うものはこっそりチョコを渡す奴が多いからね」

 

 

ホリーに言われると、何故か説得力がある気がするようなしないよう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

case 千葉・速水

 

 

千葉は的に向かって引き金を引く。

 

 

放たれたチョコ弾は全て中心に命中する。

 

 

「相変わらずの腕ね…………約束だから全部あげる。これからもよろしく」

 

 

「サンキュ」

 

 

「………………うーむ。中々独特的と言いますか…………面白いな」

 

 

木にぶら下がりながらキバットは感想を漏らす。

 

 

「でも真似できないよ………」

 

 

「………………よし次!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

case 創真

 

 

「うわぁ…………凄いデコレーションだね」

 

 

渡されたチョコを開けてみると、キバットを再現したチョコがあった。

 

 

「色んな目の色のバージョンを作るのに苦労したんだ~。家に帰ったらキバット君にも見さてあげてね!」

 

 

「多分喜びの余り発狂して死ぬな」

 

 

そう言って2人は笑う。そして、それを見ていた彼等は──────

 

 

「まず、陽菜乃ちゃんの料理の腕に目が行っちゃうね~」

 

 

カルマが苦笑しながら云う。

 

 

「でもすげぇぜありゃ!俺様そっくりだ!」

 

 

「ほんとだね~。あそこまで料理の腕があるとは……………恐れ入ったよ」

 

 

※ちなみに、キバットキャラ弁、と調べるとチョコではないが中々上手く出来てるキバットのキャラ弁があるので是非とも見て下さい!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

case 片岡・磯貝

 

 

「こんなにたくさん良いのか!?」

 

 

「弟さん達と分けて食べてよ。それ買うのにチャリで往復4時間だったんだ」

 

 

「受験中なのに大丈夫なのか?」

 

 

「へーき。私の本命は公立…………磯貝君と同じとこだから」

 

 

「…………そっか。一緒に受かれたら嬉しいな!」

 

 

「…………良い雰囲気だ。見てるこっちも何処か心が温かく感じる」

 

 

微笑を浮かべながらデュオは感想を漏らすのだった。

 

 

「…………ね、渡しかたも目的も人それぞれでしょ?」

 

 

「言いたいこと添えれば、それで充分だぜ!」

 

 

中村とキバットのアトバイスに茅野はコクりと首肯く。

 

 

「ありがとう………4人共」

 

 

「うんん、良いの良いの!……………でも、問題はあの黄色いタコ」

 

 

ホリーの指差す方向には、恋愛ネタに飢える殺せんせーが。

 

 

「あーそれなら大丈夫。茅野ちゃん、例のアレ持ってきてくれた?」

 

 

「あ、うん」

 

 

茅野は何かを取り出し、カルマに渡す。

 

 

「それ使えば殺せんせーは封じれるから、安心して渡しておいで」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺宛のチョコがねぇ!クソォ、何処に行きやがった!?」

 

 

岡島が泣きながら飛び出して行くのを、苦笑いで見送る渚。さて、自分も帰ろうと鞄を持って教室を出ようとすると、自分の服を引っ張られた。

 

 

その引っ張った手の人物は茅野である。

 

 

「茅野?どうかしたの?」

 

 

「あ……………えっと……………」

 

 

ここに来て心拍数が上昇。どんな言葉でとか、もう考える余裕が無くなった。

 

 

取り敢えず何か言わなくては、と思い─────

 

 

「な、渚は進路とか決めた?」

 

 

「うーん………成りたいものは見えてきたけどなれるかどうか………」

 

 

多分先生だ、と茅野は心のなかで呟く。何で分かるか?当たり前だ。殺せんせーに先生としての憧れの目をしていたのを今まで見てきたからだ。

 

 

「…………あれ?木の上に殺せんせーがいる。何か見てる…………」

 

 

渚は銃を取り出し、窓を開けようと手を掛けて………止めた。

 

 

「……………射程外だよね。簡単に狙わせてくれないか」

 

 

この数秒の動作で茅野は全て理解した。自分が好きになったのは、渚のまっすぐな殺意なのだ。家族も復讐も失った心の穴を…………温かな殺意で埋めてくれた。

 

 

(なら、どんな顔で、言葉で渡せば良いか?)

 

 

────────もう決まった。

 

 

「………渚。ありがとう。1年間隣にいてくれて」

 

 

満面の笑顔で渚にチョコを渡した。渡された渚は少しポカンとしていた。自分に渡されると思ってなかったのだろう。

 

 

「あ、ありがとうって………お礼を言うのはこっちじゃ…………」

 

 

「また明日!合格通知来ると良いね!」

 

 

最後まで待たず、茅野は荷物を持って教室を出る。

 

 

そして、覗き見ていた4人に──────苦笑いと取るべきか──────────笑みを浮かべる。

 

 

「自分を殺して他人のために………雪村先生にそういうとこは似てるな」

 

 

「お姉ちゃん譲りだね~」

 

 

キバットとホリーの会話に、カルマと中村は疑問の表情を浮かべる。

 

 

「てか、2人は雪村先生と知り合いだったの?」

 

 

「ま、ちょっとしたね…………所で、カルマ。殺せんせーはなに見てんの?」

 

 

「雪村先生の水着写真。あんなに効くなら暗殺に組み込めば良かったな…………」

 

 

「やれやれ……………水着写真で骨抜きかい。だらしねぇな」

 

 

………美女に鼻の下を伸ばすようなキバットが言っても説得力が皆無なのだが。




THE NEXT story 5/21 PM 22:00


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第160話 ダブルデートの時間

ダブル…………だよ?


では、デートスタート!


創真は受験校を後にした。門を出ると、目の前にはフェラーリが停まっている。静かに乗り込み、座席に座る。

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「受かりました───!!」

 

 

合格通知を見せる。

 

 

「おめでとうございます!!」

 

 

氷室も拍手を送る。

 

 

「しかしながら…………創真様は100%受かると思ってましたよ。自己採点の時点で全教科100点でしたし。実際のところも満点ですよね?」

 

 

「そうですね」

 

 

「さて、帰ったらパーティーの用意をしなければ。あ、ご両親には言いましたか?」

 

 

「言いましたよ。そしたら、『だよね~』って一言が返ってきました」

 

 

「おめでとー、とか凄いねー、とかじゃなくて、だよね~って………………どうなんですかね?」

 

 

「アハハ…………さて…………ん?」

 

 

創真に電話が来た。相手は陽菜乃。

 

 

『もしもし創真君?受かったよね?』

 

 

「もちろん」

 

 

『おめでと~!でさでさ、もう今日は1日暇でしょ?だから、今日横浜に遊びに行かない?』

 

 

「良いよ。じゃ、4時に横浜駅集合で良いかな?」

 

 

『うん、分かった!じゃあ、後でね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

16:00

 

 

「お待たせ、陽菜乃」

 

 

「うんん。今来たばかりだから大丈夫だよ!それで、何処に行く?誘っておいて悪いんだけど、まだ決めてなくて」

 

 

「別に大丈夫。ここは僕にとってホームグラウンド当然。良い場所を知ってるよ」

 

 

「何処なの?」

 

 

「それは着いてからのお楽しみって事で。じゃ、行こっか」

 

 

創真は陽菜乃と共に歩きだした。なお、氷室は別件で用事があるそうで同行はしていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

横浜駅から数分。地下鉄のホームを出て目的地についた。

 

 

「創真君、結局何処に行くの?」

 

 

「何処だと思う?」

 

 

「うーん…………分かんないよ~」

 

 

「じゃ、外に出てみれば分かるかな?」

 

 

陽菜乃を連れて、駅の外に出る創真。

 

 

「後ろを振り返って見て」

 

 

創真に言われて、後ろを振り向くと、そこには巨大なビルがそびえ立っていた。

 

 

「あ、あの建物見たことある!確か、ランドマークタワーだよね!」

 

 

「正解~」

 

 

この前、作者はランドマークタワーを初めて登りに行った。凄かったですよ……………特に夜景。ありゃ、見応えがあったとか。

 

 

「あそこは眺めが良くてね。それに、中にあるアイス屋のジェラートが美味しいのだよ」

 

 

「そうなんだ…………じゃ、早く行こ!」

 

 

倉橋は創真の腕を引っ張ってランドマークタワー入口へ走っていく。

 

 

「ちょ、早いって…………」

 

 

創真は苦笑気味で云った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから約30分前。

 

 

15:30

 

 

「あーあ。有希子にゃ敵わないわ……………」

 

 

隼の嘆きに、神崎はニッコリと笑う。実は、神崎と隼も横浜にデートしに来ていた。と言うか、デートと言うよりゲーセンでのゲーム対決。しかも、負けた方は相手に何か買ってあげると言うルール付き。

 

 

「まさか全敗するとは…………………流石って言うべきか」

 

 

アイスやらストラップやら色々買ってあげて、神崎は上機嫌。そして、隼の財布はすっからかん。

 

 

「あ、ついたよ隼君」

 

 

「あ、ランドマークタワー…………久しぶりだな、ここに来るの。有希子は来たことある?」

 

 

「うんん。名前だけ聞いたことがあるよ」

 

 

「そうか…………なら、結構楽しめるな。よし、行こっか」

 

 

「うん!」

 

 

もう分かっている人がほとんどだと思うが、隼は自分が神崎と付き合ってるって事を皆にばれてないと思っている。無論、創真にもばれてないと思っている。

 

 

と、言うわけで………………ばれまーす(隼にとっては)

 

 

さて、時間を戻そう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高速エレベーターで、一気に展望回路まで上がる。僅か30秒程で到着。エレベーターのドアが開き、倉橋は窓まで近づく。

 

 

「わぁー…………………凄い!」

 

 

「何度見ても飽きないねぇ……………」

 

 

それほど創真にとってもお気に入りの景色なのだ。

 

 

「ねぇねぇ、椚ヶ丘も見えるかな?」

 

 

「うーん……………流石に無理があるっしょ」

 

 

だよね~、と倉橋は苦笑いする。

 

 

「そう言えば、創真君のお父さんって今外国にいるんだよね?」

 

 

「外国で荒稼ぎしてます」

 

 

「創真君は、お父さんの会社継ぐの?」

 

 

「そうだね…………そしたら、この横浜の地に本社を戻そうかな?」

 

 

「何で?」

 

 

「それは、この街が好きだからだよ……………さて…………ジェラート食」

 

 

「シッ!ねぇ、あれ見て。」

 

 

倉橋が指差す方向を見ると、そこには─────

 

 

「おやぁ?隼に神崎さんじゃないですか?奇遇だねぇ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

隼は神崎と展望回路を一周し終え、近くの椅子に腰を降ろしていた。

 

 

「それにしても、凄く高いね…………絶景だけど、覗き込むとちょっと怖いかな……………」

 

 

「まー最初はな。だが、慣れると大したことないぜ」

 

 

隼は椅子から立ちあがり、窓ガラス越しから下を覗き込む。

 

 

「隼、かっこつけんで良いぞ」

 

 

「うっせぇ、創真。別にカッコつけてねぇよ。こんぐら大した事…………………ん?創真?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「って、おわぁ!?」

 

 

隼が振り向くと、後ろに創真と倉橋の2人がいた。

 

 

「そそそそそそそ創真!?何故ここにいる!?」

 

 

「奇遇だねぇ。まさかデート場所が一緒だなんて」

 

 

「………………はぁ、ばれちまったよ」

 

 

「いや、結構前から知ってたぞ?」

 

 

「………………………」

 

 

「………………………」

 

 

謎の沈黙が流れる。

 

 

「………………マジ?」

 

 

「マジ」

 

 

次に隼は神崎の方を向く。

 

 

「あの……………俺らの関係ってバレてたの?」

 

 

「ほとんどの人が知ってるよ?」

 

 

神崎にもそう言われ、俺、鈍感過ぎんだろ…………と、隼は自分で自分にツッコミを入れる。

 

 

「…………ま、良いや。所で聞くまでもねぇけど、受かったのか?」

 

 

「まーね。隼もだろ?」

 

 

「おう!碧海も受かったらしいぜ」

 

 

後でおめでとーって言っとくか、と創真は小声で呟いた。

 

 

「お、ヤベェ。電車の時間がもうすぐだ。わりいが、俺らは先に行くぜ」

 

 

「どっか回るのか?」

 

 

「中華街食べ歩きしてくるわ」

 

 

「そうか…………じゃ、気を付けてエスコートしたまえよ?」

 

 

「けっ、余計なお世話だ」

 

 

隼は手をヒラヒラと降って、神崎とエレベーターのある方へ歩いていった。

 

 

「さて、僕らも景色を堪能するとしようか」

 

 

「うん!」

 

 

倉橋は満面の笑顔を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




THE NEXT story 5/22 PM 22:00


もしかしたら、写真の話とかは飛ばして、最終章に入るかも?


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第161話 最終計画の時間

最終章………………スタート。


E組の皆は教卓に殺到していた。経緯を説明すると、殺せんせーが、E組オリジナルのアルバムを作ろうと言い出したのだ。そこは良いのだが、これまでにこっそり撮られていた写真が、誰かにとっては中々知られたくない物まで写っていた。

 

 

と、言うわけで黒歴史を明かされないうちに、自分の写真はビリビリにして処分しようと言う感じだ。

 

 

「創真は無いのか?そういうスキャンダルネタは」

 

 

「甘いな磯貝君。僕はスキャンダルには敏感なのだ。タコの盗撮も大体回避でき」

 

 

「ねぇ、創真!この写真さ…………」

 

 

ホリーの手に握られている1枚の写真。よくよく見れば、それは昨日の倉橋とのデート時のだった。

 

 

「…………………やられた。警戒心を緩くしすぎたか。とは言え、中々上手く撮れてるのでこれは貰っておこう」

 

 

すると、殺せんさーは難しそうな顔をしながらこんなことを言い出した。

 

 

「うーむ…………撮り溜めていた分では足りません。目標は1万ページのアルバムを作ることなのに!」

 

 

「目標がエグいな」

 

 

「皆さん、外に出てください!衣装を着て、バリエーションを増やすのです!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、生物史とか日本史とか宗教史とか…………色んなお題の写真を撮りまくった。

 

 

「やれやれ…………気合い入りすぎだろ」

 

 

隼がコスプレ衣装を脱ぎながら云う。

 

 

「それにしても、この2月は殺せんせー結構やりたい放題だったね?」

 

 

「うん…………」

 

 

「もはや暴走に近いけどな」

 

 

悪魔のコスプレをしている茅野と渚、そして黒外套を纏っている創真が隅の方で話していると、烏間先生が話に入ってきた。

 

 

「多分、君達に甘えているのだろう。君達は充分に育った。だから、今度は自分が甘えたいと思っているのかもな」

 

 

「ねぇねぇ、烏間先生にとって皆はそういう人になれた?」

 

 

ホリーの問いに、烏間はフッと笑みを浮かべ、

 

 

「そうだな。もし、俺が困ったら迷わず皆を信頼して任せるな」

 

 

「それは嬉しいお言葉で」

 

 

創真も何処か嬉しそうな表情を見せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、烏間先生とビッチ先生の試着が行われた。皆、冷やかしてたのは言うまでもない。

 

 

そして、最後の面談もあった。創真は前に云った通りの進路に変わりは無いことを伝えた。

 

 

そんな彼に殺せんせーは言っていた。

 

 

『君の才能は色んな分野に生かせます。世界一の大物になれることを期待してますよ』…………………と。

 

 

言われずとも世界に名を轟かせてやる、と言うとヌルフフフフフフ、と殺せんせーは笑った。

 

 

「ねー創真君!ちょっと一緒に来てくれない?」

 

 

数時間前の学校の事に思い耽っていると、碧海が創真に話しかけた。

 

 

「ん?何処に行くの?」

 

 

「あのねー、隼にプレゼント渡しに行くんだ」

 

 

「プレゼント?」

 

 

「前に隼を危険な目に遭わせちゃったでしょ?だから、そのお詫びの意味も込めて、ね」

 

 

「なるほど。だいぶ前の事にはなるが、その案は悪くないと思うよ。まぁ、高校の入学手続き関連はほぼ終わってるし、暇だから行こうかなー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真と碧海は歩きながら会話を弾ませる。

 

 

「前にさ、デュオが死神時代だった時の話を聞いたろ?」

 

 

※詳しくはコラボの話をどうぞ。

 

 

「僕は大変興味が湧いてね…………今度行ってみるよ」

 

 

「あー確か魔術があるとか言ってたよね?」

 

 

「そう。ホリーに教えてもらって、僕も自分専用の魔術を作成中でね」

 

 

「へー…………今も制作中とか?」

 

 

「そうだね。今は使えない。調整中でね。あと2週間は欲しいところだ……………」

 

 

「そうなんだ…………あ、創真君。私、中学卒業したら、お父さんの新居に移ることになったの。そこから通うほうが近いからね」

 

 

「あ、そうなの?じゃ、僕の家とはおさらばか。何か寂しくなるねぇ………」

 

 

「あ、でもちょくちょく遊びに行くからね?2日に1回は行くよ!」

 

 

いや、それは多すぎじゃね……………?

 

 

創真がそう言おうと思ったその時だった。

 

 

「おい、何だアレ!?」

 

 

誰かのそんな声が聞こえた。声のした方を2人が向くと、山に赤い光線が降り注いでいた。その光が消えると、山の一部がオレンジのドームに覆われた。

 

 

「E組の山が……………覆われている…………」

 

 

「ねぇ、創真君…………何か嫌な予感がする」

 

 

「同感だね………………」

 

 

その時、2人を呼ぶ声がした。振り向くと、烏間の部下の園川と鶴田、鵜飼がいた。

 

 

「何でここに…………いや、それよりもあのドームは一体何です?」

 

 

「……………創真君。付いて来てください」

 

 

碧海の質問には答えず、園川はそう告げる。

 

 

「……………何で?」

 

 

「国の命令です」

 

 

その言葉を聞いて、創真はなるほど、と呟く。

 

 

「大体判ってきた。あのドームとさっきの光は殺せんせーを殺す何かの兵器だね?」

 

 

「……………………」

 

 

園川は何も言わない。

 

 

「可能性が1%以下でも、地球の末をかけるチップとしては大きすぎる……………やはり、殺すと言うわけか。それで、強大な力を持つ僕を捕獲しておこうと言うわけですか。万が一の事を考えて……………そう言えば、ホリー達はどうしたんです?あいつらも国からしたら不穏分子だろうし」

 

 

「………………ホリー君達の方には、傭兵部隊を送らせました。殺しはしません。確保が目的なので。さぁ、創真君。大人しく来てください」

 

 

「それは聞けない相談だね」

 

 

「……………なら仕方がありません」

 

 

すると、回りからスタンガンを持った男達が現れる。

 

 

(…………強行、って訳か。しっかし、不味いな……………手練れのプロがこんなにいては、碧海さんと2人でどうにか出来るレベルじゃない)

 

 

万事休す…………………?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「目ェ瞑りやがれ2人共!!」

 

 

───────やはりまだ万事休すじゃなさそうだ。

 

 

目を閉じた瞬間、バァァァンという音と伴に強烈な光が放たれた。閃光手榴弾である。

 

 

「行くぞ創真、碧海!!」

 

 

目を開けるとホリーとデュオが赤いバイクに乗っていた。園川達を含め回りの人達は目を押さえている。相当効果があったのだろう。2人がバイクの後ろに乗った瞬間、スロットルを回して急発進させる。

 

 

「いやー、無事でなりよりだぜ創真。こっちは大変だったぜ。傭兵部隊が殺す気かよって感じで襲い掛かって来たんだから。ま、逃げたんだけどな。そんでよーく考えたらお前にも危険が迫ってるかも、と思ってな」

 

 

「いや、本当にナイスタイミングだったよ」

 

 

「自衛隊がぞろぞろ沸いてきてやがる。どうする?」

 

 

ホリーのフードの中のキバットが訊ねる。

 

 

「………………取り敢えず、最寄りの駅に行け。今は帰宅ラッシュ。カメラの映像を解析しても、人混みの多さが幸いして、何処に向かったかは直ぐにバレないだろう」

 

 

「え?このままバイクで行った方が………」

 

 

「バイクでも良いけど、道には監視カメラがたくさんある。ましてや、自衛隊の皆さんがたくさんいるなら、道路の規制も一部で既に行われてる可能性もある。確率的には、電車を使う方が捕まりにくいだろう」

 

 

「あのー私は!?」

 

 

「碧海さんも付いてこい。智恵は多い方が役立つ」

 

 

こうして、『終わりの始まり』が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………始まったな」

 

 

創真の父はE組の山に出現したドームを見て、そう呟く。

 

 

「じゃ、行くぜ氷室」

 

 

「ええ」

 

 

氷室と創真の父親はライカンとランボルギーニにそれぞれ乗り込み、爆音を鳴らしてその場を後にした。




THE NEXT story 5/23 PM 22:00


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第162話 異変の時間

最終章……………戦闘シーンにお悩み中。


ではどうぞ!


他のE組の面々も異変に気付き、集まっていた。

 

 

「殺せんせーとも電話は繋がらない…………な」

 

 

隼は大きなため息をつく。

 

 

『私の本体とも連絡が取れません。妨害電波が発しているようです』

 

 

スマホの中の律も云う。

 

 

「それだけじゃないよ…………創真君と碧海ちゃんとも連絡が取れない!」

 

 

「あいつらこんな時に何処行きやがった…………!?」

 

 

倉橋の報告に、寺坂が苛立ち紛れの口調で呟く。

 

 

と、その時。渚の携帯に見知らぬ番号から着信が入った。

 

 

「も、もしもし?」

 

 

『やぁ、渚君。創真だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真は横浜の郊外の公衆電話から渚に電話を掛けていた。

 

 

『もしもし創真君、何処にいるの!?もしかして碧海さんと一緒!?』

 

 

「落ち着け渚君………………うん、一緒だよ。今、逃走中」

 

 

『え!?誰から!?』

 

 

「国から。ちょっとマズイ事になってね…………どうやら、僕は御尋ねもののような扱いだ」

 

 

「!?」

 

 

「詳しいことはまた後で。所で、今皆と一緒にいたりする?」

 

 

『う、うん。2人以外は全員いるよ』

 

 

「なら、偵察でもして情報を集めておいて貰いたいな。と言うか、やった方が良い。7時頃にまた連絡する」

 

 

『あ、待って創真……………』

 

 

渚の制止にも拘らず、創真は受話器を元の位置に戻す。

 

 

「…………………………」

 

 

そして、何も言わずに歩き出す。暫くして、目の前に大きな建物が見えてきた。それは何年か前に潰れた工場だった。中に入ると、そこには機械の類いは無く、漠然としていた。工場の角に碧海、ホリー、デュオ、キバットの3人が座っていた。

 

 

「どうだった?」

 

 

「皆揃ってるみたい。で、偵察するように指示をしておいた」

 

 

「そうか。にしても、御尋ねもの見たいになるとはな」

 

 

そう言ってデュオがはぁ、とため息をつく。

 

 

「にしても、携帯没収とは………………」

 

 

嘆くホリー。

 

 

なお、彼等のスマホは王の間に保管してある。王の間は別の空間に存在する部屋なので、これでスマホを通して居場所を特定される心配はない。なら、スマホを使いたければ使えば王の間にて使えば良い話なので、ホリーみたく嘆く訳があとの3人には良く分からない。だが、どうでも良いので皆はその訳を尋ねない。

 

 

「にしても、何でこんなことに………………創真君らは何かマークされてるし、殺せんせーの最終暗殺計画が唐突に始まっちゃったし……………こらからどうするの?」

 

 

碧海は創真に尋ねる。

 

 

「これからは、情報が集まらないと何も言えないね。暫くはここに待機だね」

 

 

「そっかー………………それにしても…………」

 

 

「どうしたの碧海ちゃん?」

 

 

ホリーが不思議そうに尋ねる。

 

 

「いや、ずっと床に座ってたから、お尻が痛くて…………椅子の類いも見当たらないし………」

 

 

「なーんだ、そんな事か。なら…………………よっと!」

 

 

ホリーは『コネクト』を使って、大きなソファーを取り出した。

 

 

「お!気が利くねー、ホリー君!おーフカフカだ~」

 

 

碧海はソファーにダイブし、幸せそうに呟く。

 

 

「あ、創真君も座りなよ、ほら」

 

 

「えー、また何かしてきそう…………」

 

 

そう言いつつも、創真も腰掛ける。すると、碧海は創真の膝を枕にして横になる。

 

 

「ほらね」

 

 

「いーじゃん、ちょっと位さー」

 

 

「へいへい…………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最終暗殺計画 作戦本部

 

 

「事前に捕縛予定だった標的らの捕獲は失敗………まぁ良い。いずれ見つかるだろう」

 

 

司令官(モブ)はそう云う。

 

 

「後はあの生徒達への対策だけだが…………ホウジョウ、その対策は出来ているか?」

 

 

「ご心配には及びません。マニュアルは作ってあります」

 

 

ホウジョウと呼ばれた屈強な男は静かに返答する。

 

 

「ならばよし……………あの生徒達は恐らくあのまま大人しくしている筈がない…………余計な動きをされては作戦に支障を来すかも知れん……………」

 

 

司令官は画面に写るオレンジのドームと、その中にある校舎を見つめながら、独り呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

碧海はいつのまにか幸せそうに寝息を立てていた。創真はそっと枕を自分の膝からただの枕にすり替え、ソファーを立って碧海に毛布を被せた後、王の間にワープした。そして、机においてある新たなマシン2台の調整を開始する。暫くして、デュオも入ってきた。

 

 

「……………………あぁ、それの調整か」

 

 

「もしかしたら使うかもしれないからね。それと、アレの開発もホリー達に進めて貰おうかな?」

 

 

「…………………アレ、か。だが、かなり時間が掛かるぞ。最短でも1週間は掛かるだろうな。何せ、お前の作る魔術はかなり強力だがその分複雑だからな」

 

 

「まぁ、兎に角、進めて貰うとするか………………何かお腹すいたな」

 

 

時計を見れば、もう6時を回っていた。

 

 

「うちの家の冷蔵庫に昨日作ったカレーがあった筈。ホリーの『コネクト』で出して貰おうかなぁ。ついでに温めて貰うか」

 

 

勢い良く椅子から立ち上り、戻ってホリーにお願いしようと決めた矢先、ホリーが王の間に入ってきた。

 

 

「あぁ、丁度良かった。ホリー、『コネクト』で」

 

 

「大変だよ創真!氷室さんとあともう一人、誰か来た!」

 

 

「ここを突き止められた、だと?スマホの位置追跡は出来ない筈なのにどうやって……………まぁ、良い」

 

 

創真は発射式のスタンガンを手に持つ。

 

 

「誰かは知らないけど、無力化するまでだ」

 

 

そして、創真は指をパチンと鳴らした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廃工場に戻った創真ら。彼等に碧海が駆け寄る。

 

 

「創真君、工場の入り口前に車が2台来てる。もう一方は誰か知らないけど、もう1人は氷室さんだよ」

 

 

「あぁ、知ってる。とりあえず行くよ」

 

 

碧海にもスタンガンを渡し、創真らは工場の入り口に向かう。入り口を出ると、そこには2台のスポーツカーが停まっていた。そして、その横に立つ男が2人。

 

 

1人は氷室。そしてもう1人は─────────

 

 

「よう、創真!久しぶりだな」

 

 

「げっ、父さん…………………」

 

 

──────────創真の父親であった。




THE NEXT story 5/24or 25 PM 22:00


次回、まさかの親子対決!?


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第163話 親子対決(!?)の時間

タイトル、我ながら変やなぁ………………。


では、どうぞ!


「て言うか、どうしてここに?」

 

 

「おいおい。お前は俺の息子だぞ?息子の行動パターンを予測するなんて容易いものよ」

 

 

「卒業式までに戻ってくるとは確かに聞いてたけど、このタイミングでか……………僕らを捕まえに来たの?」

 

 

「……………………………」

 

 

創真の父親は何も言わない。

 

 

「………………親と言えども容赦はしないよ、邪魔するなら」

 

 

創真の宣言と同時に、ホリーとデュオは剣と鎌を構える。まさに一色即発の雰囲気だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アーハッハッハ!」

 

 

そんな雰囲気を破ったのは、創真の父親の高笑いだった。

 

 

「心配すんな。俺はお前らを捕まえに来た訳じゃねぇよ。協力しに来たんだよ」

 

 

「ほんとかどうかはさておき、何で協力しようと?」

 

 

「そりゃ、国相手に全面対決してんだろ?そんな面白いこと、俺抜きでやるなんて言わせねぇぜ!」

 

 

「………………………」

 

 

それを聞いても創真はその真意を探るような目で父親を見ていたが、やがて、はぁ、とため息をついて、デュオとホリーに武器を下ろすようにハンドサインを出した。

 

 

「………………どーやら、嘘じゃなさそうだ」

 

 

「良いの?そう簡単に信じて」

 

 

「嘘を言ってるようには見えないし。それに、捕らえる気なら待ち伏せなんてしないだろうしよ」

 

 

「そうだな。捕らえる気なら、俺は麻酔銃でも使って、一発で終わらせるな。後ろの2人の人外君も、そう警戒するなよ」

 

 

「!!何でそれを…………」

 

 

デュオが珍しく動揺の声を漏らす。

 

 

「……………話は後だ。取り敢えず、もっと安全な場所に移ろうぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして場所を、横浜にある創真の父親の会社のビルに移る。このビル、高さが他のよりも群を抜いてる。

 

 

「さて、父さん。ホリーとデュオの事を何故知ってる?」

 

 

「フッフッフッ。そんなこと、俺に掛かればすぐ分かることよ。少し侮りすぎたんじゃないのか?」

 

 

「……………まぁ、良い。じゃ、2つ目。殺せんせーの事は初めから知ってたのか?」

 

 

「知ったのは最近さ。それに、俺はとある人物からその事を聞いた」

 

 

────────とある人物、ね。

 

 

「大体そのとある人物が誰か想像はつくけど…………そう言えば、暗殺の事は母さんも知ってる系?」

 

 

「おう、ばっちし」

 

 

「ふぅん………………」

 

 

質問は終わったのか、創真はジュースをストローで啜る。

 

 

「あの…………ここ、安全なんですか?」

 

 

「心配すんなよ、碧海さん。この窓ガラスなんて防弾仕様だからなー!すげーだろー!!な!!」

 

 

「は、はぁ…………」

 

 

創真の父さんのテンションに、若干碧海は引き気味だ。

 

 

「所で創真。お前、他のクラスメイトはどうしてんだ?」

 

 

「今、バリア周辺を探っている筈だよ。夜になったら電話掛けて、色々情報貰ってからこれからの行動を考えようと思ってたよ」

 

 

「……………なるほど、な。にしても、あの声明発表?嘘ばっかだろ。最近の大人は嘘を平気で付くから嫌なんだよな…………」

 

 

創真の父は沈み行く夕日を眺めながら呟く。

 

 

「……………なんだ碧海だけか。隼もいれば、直ぐに渡せていたのだがな………」

 

 

皆が声のする方を振り向く。

 

 

「お父様?」

 

 

そこには隼と碧海の父がいた。

 

 

「おい、父さん。殺せんせーの事、この人から聞いたんじゃないの?」

 

 

「流石創真、察しが良いな。やっぱ、裏社会に精通してるだけの事はあるぜ。にしても、3分遅刻だぞ」

 

 

「こっちは普通に仕事あんだよ。テメー見たいに海外を楽しく回る暇すらねぇ」

 

 

「ったく、酷い言い方だ。俺だってただ遊んでるだけじゃないのだよ」

 

 

「そう言えば……………渡す、って何をだ?」

 

 

デュオが訊ねると、隼と碧海の父親はダルそうに答える。

 

 

「柳沢の最終兵器対策の武器だよ。そこの海外大好き人間から聞いてないのか?」

 

 

「柳沢?何でその名が?」

 

 

「お、そうだった。良いか創真、柳沢って奴が何かヤバイ兵器を導入してくるらしい」

 

 

「ヤバイ兵器…………………………」

 

 

「まぁ、具体的に何なのかまでは分からないが……………取り敢えず怪物レベルだとか。警戒しとけよ?凄い力を持つお前しか対抗手段がない」

 

 

「そこまで知ってんのかよ………………いや、この際どうでも良いや」

 

 

「そーそ、この際どーでもいんだよ。さて、次にすべきことは…………………」

 

 

「すべきことは?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腹減ったから、宅配ピザを注文しよう」

 

 

「「「…………………………」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

PM 7:00

 

 

一通り周辺の調査を終えた皆は、集合場所のコインパーキングに集まっていた。

 

 

「…………創真君達、大丈夫かな?」

 

 

「心配すんなよ渚。あいつらがそんな簡単に捕まんねーよ……………っと、噂をすれば……………」

 

 

隼は渚に着信相手の創真の名前を見せ、電話に出る。

 

 

『やぁ、隼。色々探れた?』

 

 

「それを今から報告しあうんだよ」

 

 

隼はスピーカーモードにして、創真にも皆の声が聞こえるようにする。そして、報告会がスタートする。

 

 

「バリアの回りには武装した大量の兵隊。外部から遮断するためだろう」

 

 

「マスコミや野次馬を防ぐだけでなく、テロの防止も含まれてるだろうね」

 

 

「各地の基地からどんどん人が集まってる。明日になれば、どう足掻いてもバリアの内部には入れなくなる……………」

 

 

『フムフム』

 

 

「なら、今夜のうちに強行突破っしょ。創真、こっちにすぐ来れる?」

 

 

『安心しろカルマ。3分で着く。皆も、装備整えとけよ?』

 

 

「うん!その後、ちゃんと世間に説明しよう!私達がどんな気持ちでやってき……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

 

 

『うん!その後、ちゃんと世間に説明しよう!私達がどんな気持ちでやってき……………』

 

 

この矢田の声の後、唐突に電話が切れた。切れた電話を無言で創真は見つめる。

 

 

「どうしたの創真君?」

 

 

碧海が不思議そうに創真に尋ねる。

 

 

「何か急に切れた」

 

 

「え、何で?」

 

 

「僕に言われても……………」

 

 

困惑気味の創真がそう呟いた所で、再び隼から電話が掛かってきた。すぐに創真は出る。

 

 

「もしもし、隼?まったく、急に切れるもんだからどうしたのかと」

 

 

『こんばんは、創真君』

 

 

突然、知らない男の声が創真の耳に入ってきた。

 

 

「……………あんた誰?隼や他の皆はどうした?」

 

 

『保護しただけさ。彼等の安全は私が保証しよう。ああ、言い忘れていたが、私の名はホウジョウだ。一概の傭兵だ』

 

 

「……………ホウジョウさん。保護って言うより、正しくは拉致じゃないんですかね?」

 

 

『どういう風に受け取って貰っても構わない。彼等は、計画が完了するまで我々の管理下に置かれる』

 

 

「偵察行為によって、計画の支障になると判断された、って所か…………なら、次は僕らを捕まえに来るかい?まぁ、何処にいるか分からないだろうけど」

 

 

『確かにそうだ。実は君達E組のスマホには現在位置を我々に発信するプログラムをこっそり仕掛けておいたのだが、どうも君達2人だけ、位置情報が消えていてね』

 

 

「そりゃドンマイ」

 

 

『どういう手品を使っているのかは知らないが、我々もこのまま黙って君達を野放しにしておくわけにはいかなくてね。不本意だが、少し手荒に行かせて貰うよ』

 

 

「…………………どういう意味?」

 

 

『明日の朝の7時までに、君と碧海さん、そして人外の3人は我々の指定する場所に来て、おとなしく捕まりに来たまえ。これに従わなければ、君達の仲間の安全は保証しない。あと、E組の山に張られているバリアを破壊等をした場合は、同じくしかるべき対処を取らせて貰う』

 

 

「なにぃ…………生徒を人質に、ってことか」

 

 

『そう言うことだ。では、諸君の懸命な判断を期待しているよ。場所は───────────────だ。では、失礼』

 

 

そして通話は終わった。

 

 

「どうでした?」

 

氷室の問い掛けに、創真はポツリと答えた。

 

 

「………………我々が自首しに行かないと、皆が危ない目に遇うかもだとよ」

 

 

「……………………どうするんです?」

 

 

「どうもこうも、行かないと皆が何されるか分からないからねぇ。捕まりに行くしかないか………………でも、奴は朝の7時までに来ないと、と言っていた。裏を返せば、あと10時間程は猶予があるってことになりますねぇ」

 

 

「その10時間で何かするのか?」

 

 

「勿論。幸い、やることは幾らでもある。徹夜で色々とやらなきゃ」

 

 

「よっしゃあ!俺も気合い入れてやるぞ!」

 

 

創真の父親は乗り気だ。

 

 

「だが、具体的には何をするんだ?」

 

 

冷静な隼と碧海の父親の問い掛けに、創真は答える。

 

 

「奴が指定した場所の調査、後は僕の作ってるマシンを出来るだけ進めたり、後は脱出出来たときの後の事も、使えるマシンの調整だったり、その他色々」

 

 

「やること多くね?何か、一気にやる気なくしたわ」

 

 

「さっきまでのやる気はどうした」

 

 

隼と碧海の父親が、一気に意気消沈した創真の父親にツッコミを入れる。

 

 

「兎に角、役割り分担してやれる限りの事をやろう。皆、協力してくれる?」

 

 

「しゃーない。息子のためだ、やってやろうじゃん!」

 

 

「私に出来る事なら、喜んで」

 

 

「よーし、僕は最新のマシンの調整をやろう!」

 

 

「なら、俺は既存のマシンの調整だな」

 

 

「俺様は創真の秘密兵器のアレを調整するぜ。本来なら1週間は掛かるだろうが、俺様の気合いで何とかするぜ!」

 

 

「無論、創真様。この氷室も協力いたします」

 

 

「不本意だが………………………今回は手を貸してやる」

 

 

それぞれの反応を聞いた創真は嬉しそうに笑う。

 

 

「最ッ高だな!よっし、やるぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、拉致された皆は防衛省の施設を借りた作戦本部室に連れて来られていた。そこで司令官から、自分達は暗殺終了まで監視下に置かれること。既に親御さんには連絡済みと伝えられた。

 

 

「ま、待ってください!私たちはそれでもいいから殺せんせーを殺すのは…………!!」

 

 

「子供には分からないだろうが…………1%でも爆発の可能性があれば、大衆は殺せと云うさ。それにね……………1%という数字は地球を掛けるには重すぎるんだよ」

 

 

それは正しいと言わざるを得なかった。

 

 

「それに、奴の前世は恐ろしい殺し屋だったのだろう?殺された人の身にもなったらどうだい?要するに、奴が死ぬのは自業自…………」

 

 

「ごもっともな正論であのタコを語るんじゃねぇぞ!」

 

 

寺坂の蹴りが炸裂する。

 

 

「き、貴様…………この司令官である私に何て事を…………ホウジョウ、連れていけ!!」

 

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

AM 7:00

 

 

その場所に多くの自衛隊員と待機していたのは烏間だった。そこへ音もなく創真と碧海、ホリーらが現れる。待機していた自衛隊員達は、一切に銃を向ける。

 

 

「どうもご無沙汰してますね、烏間先生」

 

 

「………………………創真君、碧海さん。それにホリー君達も、協力に感謝する」

 

 

烏間は実に事務的にそう告げた。それを聞いたホリーは、つまらなさそうに云う。

 

 

「別に協力した覚えはないけどねー。皆が人質に取られてるから、しょうがなく来ただけだし」

 

 

すると、創真も不敵な笑みを浮かべて云う。

 

 

「それに、もしかしてこれ自体が僕の作戦って事もあり得るからねぇ?もしかして、あなた方は全部僕の手で踊らされてるだけかもしれませんよ?」

 

 

それを聞いた自衛隊員らに緊張が走るが、当の烏間は何の反応も見せなかった。

 

 

「…………………では、ついて来てくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何とも頑丈そうな部屋だねぇ…………………」

 

 

創真、ホリー、デュオは、キバットは烏間に連れられて、とある施設にやってきた。そこからさらに地下に降り、連れてこられたのが白い部屋だった。そこには生活に必用最低限の施設しかない、何とも寂しい部屋だった。

 

 

「創真君のがこの部屋だ。では、入ってくれ」

 

 

「はいはい」

 

 

素直に部屋に入る創真。入ったのを確認した後に、烏間はボタンを押す。すると、頑丈そうな扉が閉まる。

 

 

「そして、ホリー君らは隣のだ」

 

 

ホリーらも同じような部屋に入れられる。

 

 

「ちなみに、創真君や君達が何か怪しげな行動を取ると、創真君の部屋に高圧電流が流れることになる。あそこにある監視カメラから全部見られているからな」

 

 

「なるほど。確かにそう言われたら、俺達は何もしないと考えたんだな。確かにそうだが」

 

 

「では、失礼する。あと1週間、すまないが耐えてくれ」

 

 

扉を閉め、烏間が去ろうとするとキバットが口を開いた。

 

 

「待てよ。何で創真含め俺らの私服を没収したんだよ?」

 

 

「服に何か仕込んでるかもしれないと警戒したからだ。さらに、君達は人ならざる者。服にも何か特殊な能力があったら厄介との国の判断だ。現に、デュオ君にはあの黒い外套を変化させる能力があるだろ?」

 

 

「ふーん…………………なら、1週間、ダサいこいつらを見なきゃいけねぇのかよ」

 

 

「誰がダサいじゃ、ゴラァ!?」

 

 

「ダサェだろうが!」

 

 

「また始まった……………うるさくなるから、今のうちに行った方が良いぞ、先生」

 

 

「あ、あぁ。そうさせて貰う」

 

 

烏間はそう言って去っていった。デュオは喧嘩をする2人を放っておいて、ベットに寝転がる。

 

 

(…………………創真。作戦に変更はあるか?)

 

 

デュオはテレパシーでそう話し掛けた─────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(…………………無いね。全部計画通りだ)」

 

 

創真はニヤリと笑った。




THE NEXT story 5/25 PM 22:00



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第164話 脱走の時間

終わりが近づいてきますよ………寂しい。


E組の面々が囚われている部屋の扉がゆっくりと開いた。皆が注目するなか、1人の人物が入ってきた。

 

 

「やっほー、皆」

 

 

「碧海!?」

 

 

隼が驚きの余り立ち上がって問う。

 

 

「碧海ちゃん、私達の為に……………」

 

 

「あ、皆知ってたんだ。それと、創真君も同じく捕まったよ」

 

 

「あいつは何処にいんだよ?」

 

 

「別の所に囚われてる。事情が事情だから、しょうがないよ」

 

 

すると、寺坂は悔しそうにテーブルを叩きつける。

 

 

「俺達があっさりと捕まったりしなきゃ……………創真の野郎が何か一手を撃てたかも知れねぇのに……………クソッ!」

 

 

「「「……………………」」」

 

 

皆が沈黙するなか、新たに部屋に入ってくる人影があった。烏間である。

 

 

「「「烏間先生!」」」

 

 

皆が期待の籠った声をあげる。すると、渚が烏間の前に立つ。

 

 

「お願いです、出してください。学校に行かないと行けないんです」

 

 

「…………………こうなっては、俺にもどうしようもない。聞いた話によれば、山の中には『群狼』と言う傭兵集団が展開されている。彼等はゲリラ戦や破壊工作のエキスパート。特にリーダーの、クレイグ・ホウジョウ……………奴はどう考えても俺の3倍は強い。戦闘で奴を本気にさせては、勝ち目はない………………残念だが、あきらめるんだ」

 

 

「いやです!」

 

 

珍しく渚は大声を出して反発した。

 

 

「殺せんせーと話してないこと、やりたいことがまだ沢山ある!だから、学校に」

 

 

渚の言葉を待たず、烏間は襟首を付かんで自分の方に引き寄せる。

 

 

「出さない。そう言った筈だ。良く聞け渚君、俺を困らせるな(・・・・・) 。良いな!」

 

 

「!!」

 

 

烏間は手を離し、渚は床に尻餅をつく。

 

 

「君らも、3日位頭を冷やして考えるんだな」

 

 

そして、烏間は出ていった。

 

 

「くそッ、やっぱダメか……………所詮、烏間先生も上には逆らえねぇって訳か……………」

 

 

隼は失望気味に呟くが、碧海は違った。

 

 

「でも、烏間先生は良い情報をくれたじゃん?」

 

 

「あ?」

 

 

「気づいてないの、隼?山の中には傭兵集団がいて、リーダーは烏間先生の3倍は強い…………さらに、3日位頭を冷やせ、って云うのは3日待ってもレーザー発射には充分間に合うとも読める。多分、それまでに烏間先生は何とかしてくれると思うよ」

 

 

「……………おぉ。なるほど」

 

 

感心したかのように隼が呟く。すると今度は渚が喋り出す。

 

 

「前に烏間先生、『もし俺が困ったら迷わず君達を信用して任せる』って言ってた。だから、困らせるなって言うのは僕らを信頼して任せるって事だよ。皆で考えて整理しよう。僕らがどうすれば良いのか……………殺せんせーがどうしてほしいのか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、特別な檻の中にいる創真らはと言うと。

 

 

「(さて、そろそろ始めようか)」

 

 

創真はテレビを消して、スッと立ち上がる。そして、テレビリモコンを手が滑ったかのように落とす。

 

 

カーン─────────

 

 

そんな音が響き渡った。

 

 

それを聞いた隣のホリーらは、目配せで会話する。

 

 

「(合図が来たね!)」

 

 

「(よっしゃあ!作戦開始だ!デュオ、頼むぜ)」

 

 

デュオは頷き、壁に寄り掛かる。すると、彼の着ている白い衣服から、白色の獣が少しだけ飛び出す。

 

 

「溶け込め」

 

 

デュオが小声で呟くと、白い獣は自分の身体の色を変化させ、周囲に溶け込む。カメレオンの如く、周囲に溶け込んだ獣はスルスルと進んでいき、ドアの下の隙間からスッと外に出る。

 

 

「(にしても、デュオの能力も進化したな。色を変えて、景色に溶け込ませるなんてな)」

 

 

「(そして、国の人間はデュオの異能力を大雑把にしか知らないから、デュオに服を着せてしまった。それが、唯一のミスだ)」

 

 

ホリーは魔法を使おうとすれば声に出さなければならないから、それをすれば何かしようとしていることがバレて、創真に被害が及ぶ。キバットに関しても同様の事が言える。だから、ホリーらの部屋には音声も拾う監視カメラがつけられていた。確かにこれで、ホリーとキバットの対策は出来ていたが、唯一デュオに対しては1つの彼等の勘違いで、対策が出来ていなかった。

 

 

デュオの能力は自身の着ている黒い外套を不定形の黒獣に変化させる、と烏間も含め皆はそう思っている。だが、それは微妙に違う。デュオの本当の異能力は、『自身の着ている衣服を不定形の獣に変化させる』なのだ。烏間や国の人間は、デュオの黒い外套が無ければ獣は出せないと思っているのだが、実際は何でも服さえ着ていれば発動するのだ。だから、デュオに対してするべき本当の対策は、服を着せない事だったのだ。加えて、デュオの異能力は進化して、色を変えれるようになったので、今も監視カメラを通して見ている監視員の自衛隊員には、デュオが異能力を使用していることは分からなかった。

 

 

デュオは目を瞑って自分達がここまで歩いてきた時に覚えた道取りを思い起こしながら、その通りに見えない黒獣を操作していく。そして数分後、デュオは目を開けて2人にしか聞こえないような小声で喋り出す。

 

 

「今から、この施設への電力供給を止めてやる」

 

 

そそして次の瞬間、部屋の電気が消えた。同じく、設置されていた監視カメラも停止する。その瞬間、デュオの服に獣が戻ってきて、静かに服の中に戻る。

 

 

 

「流石デュオ。作戦通りやってくれたね」

 

 

漸く創真は口を開いた。

 

 

「礼には及ばん。この建物へと繋がる配電線は全て切っておいた」

 

 

「…………………おい、人が来るぞ。数は1人」

 

 

耳の良いキバットが彼等にそう報告する。

 

 

「よーし、次の段階に移るよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

 

 

僅か1秒以内に起こった事だった。懐中電灯を持ち、囚われの身の彼等が停電に便乗して逃げ出して無いかを確認しに来た自衛隊員は、唐突に大きな音がしたと思えば扉が吹き飛び、その0.001秒後に飛び出してきたホリーに銃を奪い取られ、声を出す暇もなく布型のデュオの獣が自衛隊員をぐるぐる巻きに拘束された。ついでとばかりに、装備していたトランシーバー等も奪われた。

 

 

「動くな。声も出すな。少しでも動こうとしたら……………」

 

 

そう言いながらデュオは何もない所から出現させた愛用の鎌を取り出し、首元に突き付ける。

 

 

「………………殺すぞ」

 

 

元死神の殺気の入り交じった言葉は、男がデュオに従う事を直ぐに決めさせる程の迫力があった。

 

 

「さて、死にたくなければ質問に答えてもらおうじゃないか。今、この施設にお前を除いて後何人お前の仲間はいる?」

 

 

「お、俺とあともう1人だけだ。う、嘘じゃないぞ!」

 

 

「そーかい。嘘だったら、承知しないぞ。で、もう1人は何してるんだ?」

 

 

「恐らく、電源の復旧作業を行っている筈だ………」

 

 

「ホリー、もう1人も制圧してこい」

 

 

「りょーかい」

 

 

そう言って、ホリーは一瞬で姿を消す。

 

 

「……………所でデュオ。創真の部屋の扉も開けてやれよ」

 

 

「………………そう言えば、忘れていたな」

 

 

デュオは白獣を刀のような形状に変化させ、斬撃を走らせた。扉は跡形もなく崩れ、創真が出てくる。

 

 

「よーやく出れた。さて、質問はまだ終わりじゃないよ。これから、あんたら2人以外に誰か来る予定とかあるの?」

 

 

「い、いや。暗殺終了までの期間、我々2人だけでこの施設に泊まり込み、交代でお前たちを監視する予定だった。ここにくる者はいない筈だ」

 

 

「ふーん…………(まっ、とある裏社会に精通してる人から聞いてたけどね)」

 

 

すると、ホリーが気絶した男を連れて帰ってきた。

 

 

「いや、危なかったよ。あと少し遅かったら、外部に連絡を取らせる所だったよ」

 

 

「連絡してないよな?」

 

 

「寸前で通信機を奪って、気絶させたよ。それと、デュオ」

 

 

ホリーはデュオに黒い外套等々やスマホを。創真にも服とスマホをパスした。

 

 

「金庫に保管してあったのを取ってきた。無論、僕の服もね!」

 

 

そう言ってホリーはくるっと回転すると、いつもの白い服に戻っていた。デュオも着ていた白い服を脱ぎ捨て、いつもの服装に戻る。それを見たキバットは明るい声を出す。

 

 

「やっぱ、お前らはそれが1番お似合いだぜ!さて、創真。これからどうする?バリア、破壊しに行くか?」

 

 

「そんな事したら、我々が檻から出たのがバレる。そしたら、皆をまた人質にして振り出しに戻される。次はさらに厄介な警備になって、多分脱出は難しくなるね。だから、皆が脱出するまで僕らはここで待機して、捕まってるって言う設定にしとかやきゃいけないね」

 

 

「確かにそうだな………………よし、でこいつらはどうする?」

 

 

キバットは2人の自衛隊員をチラッと見る。

 

 

「念のため身ぐるみ剥がして、ホリーとデュオが着ていた白い服を着せて、檻の中に入れときゃ良いでしょ。あ、そう言えばさ。何か僕やホリー、デュオ、キバットが何か脱獄とかしそうな事したら、僕の部屋に高圧電流が流れるとか言ってたけど、あれって本当だったの?」

 

 

「あ、あぁ。電流は流れるが、スタンガンより少し強い程度の物だ」

 

 

「それ、そこまで高圧じゃなくね………………まぁ、良いや。じゃ、ホリー。僕の部屋に入れておいて。僕も、あんたらが何か不用意な事したら、電流流してやろっと」

 

 

ホリーは白い服を高速で着せ、檻の中に2人を放り込んだ後、細切れになっている扉を修復してつけ直し、自衛隊員の2人を閉じ込めた。

 

 

創真らは階段を上がって監視カメラのモニターがある部屋に来た。部屋の中は勿論、真っ暗だった。

 

 

「うーん。僕らは出れたし…………キバット。配電線を繋ぎ直せる?」

 

 

「んなの、容易いことよ!ちっと待ってな」

 

 

キバットは部屋を飛び出す。数分後、部屋に明かりが灯った。

 

 

「さて、作業でもやろうか……………」

 

 

創真がそう呟いた直後、ホリーが没収した通信機から声がした。

 

 

『こちらは作戦本部。奴等は変な行動を起こしてないか?どうぞ』

 

 

それを聞いたデュオはハンドサインで、それを貸せと云う。ホリーは通信機を渡し、デュオは咳払いをした後に口を開く。

 

 

「問題ありません。彼等は何も妙な行動は起こしていません。どうぞ」

 

 

先程話した自衛隊員そっくりの声で答えた。

 

 

『そうか。それなら構わない。それでは、あと1週間よろしく頼んだ』

 

 

そう言って通信機は沈黙した。

 

 

「上手く誤魔化せたね。見事な声真似だ」

 

 

「デュオは何でも出来るなぁ……………」

 

 

創真とホリーは感心した様子を見せる。デュオは照れ臭そうに話を振る。

 

 

「そんなことより、作業をしなくて良いのか?まだやることは残っているだろ?」

 

 

「あぁ、そうだったね。よし、王の間から色々と運んでこないと……………」

 

 

創真が王の間からワープしようとしたとき、何かを思い出したかのようにあぁ、と思い出す。

 

 

「父さんに電話しておこっと」

 

 

「え、大丈夫なの?電話してるのとかバレたら、不味いんじゃ………………」

 

 

「大丈夫。バレないように特殊な電波を使ってるから…………………もしもし父さん?うん、ジャックしたよ。うん、大丈夫。それで、他の皆が脱出したら、また電話してほしいんだよね。そ、じゃよろしく」

 

 

創真は電話を切る。

 

 

「よーし、作業開始だ!」

 

 

今度こそ創真は消える。

 

 

「あ、僕も創真のアレの作成の続きをしなくちゃ!最低でも、1つは実装しないと!」

 

 

ホリーも消える。そこへキバットが戻ってくる。

 

 

「おい、デュオ。創真とホリーは?」

 

 

「作業に戻った。キバット、俺達も手伝うぞ」

 

 

「そうだな。よし、やるか!」

 

 

レーザー発射まであと7日…………




THE NEXT story 5/27 PM 22:00


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第165話 始動の時間

さぁ、最終兵器を見せつけようか………………。


あれからもう、6日も経過し、ついにレーザー発射日となってしまった。

 

 

「おい、創真。もうレーザー発射日だぞ」

 

 

「分かってるよ。流石に、そろそろ限界か……………僕らの手で無理矢理でも皆を解放させるか?いや、それで皆に何かあったら不味いな………………」

 

 

作業も昨日で全て終わり、皆の脱出の知らせを4人は懸命に待つ。

 

 

「てか、あいつら脱出出来るのか?」

 

 

デュオは創真に訊ねてみた。

 

 

「僕の予想では、烏間先生が何か手を打ってくれると思ってたんだけど…………………」

 

 

創真は時計を見る。時刻は8時を指していた。

 

 

「どうせあと4時間したらレーザーが発射されて、全てが終わる。このままじゃ、殺せんせーに会えずに終わってしまう。きっと、あいつらも殺せんせーに会いたいと思っている筈だ……………」

 

 

「創真…………………」

 

 

珍しく苦悩する創真を、ホリーが心配そうに見つめる。何か言わねば、とデュオが思ったその時だった。

 

 

通信機から声がした。

 

 

『…………………そこにいるんじゃないのか、創真君』

 

 

「「「「!!」」」」

 

 

全員が置いてあった通信機に駆け寄る。

 

 

「その声はもしや…………………烏間先生ですよね!」

 

 

『あぁ、そうだ。それにしても、やはり檻を出ていたか』

 

 

「えぇ、まぁ」

 

 

『今、他の者にはバレないようにこっそりと連絡している。創真君、他の皆がたった今脱出した』

 

 

「え、それほんとですか!?」

 

 

創真が確認しようとしたとき、創真のスマホに着信が入った。自分の父親からだ。創真の代わりにホリーが出る。

 

 

『喜べ創真!他の生徒らが脱出したぞ!1人も欠けずにな!』

 

 

「創真!やっぱり、全員脱出したのは本当みたい!」

 

 

ホリーが創真に向かって叫ぶ。それを聞いた当の創真はニヤリと笑った。

 

 

「烏間先生。皆の脱走を手助けしたのは、あなたですか?」

 

 

『策を考えたのは俺だが、実際に動いてくれたのはイリーナだ』

 

 

「なるほど。ビッチ先生にも感謝しないとね。いや、まずは烏間先生、本当にありがとうございます」

 

 

『礼は良い。それより創真君。君も皆と合流するんだ』

 

 

「分かりました……………あぁ、そうだ烏間先生」

 

 

『何だ?』

 

 

「烏間先生も後で校舎に来てください。大切な先生ですから」

 

 

『………!!あぁ、分かった。君たちの健闘を祈っている』

 

 

そして、通信機は沈黙した。

 

 

「よっし、じゃあ3分で準備して出るぞ!」

 

 

「「「おう!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

きっかり3分後、フル装備の彼等の姿があった。

 

 

「よーし、では今から皆と合流しよう」

 

 

「よっしゃあ!キバって行くぜ!」

 

 

キバットが高らかに宣言する。すると、また通信機から声が聞こえてきた。今度は別の声だった。

 

 

『聞こえるか!E組の生徒が脱走した!君達はそこの奴等に気付かれぬようにそこを出て、包囲の方の応援に付け!』

 

 

すると、創真はニヤリと笑みを浮かべて通信機を手に取る。

 

 

「いえ、残念ですが包囲の応援には行けそうにありませんね。何せ、2人とも檻に入れられてますから」

 

 

『!!まさか、貴様ら……………自力で脱出したのか!?』

 

 

「ええ、知らないとは思いますが、もう捕まった即日に出てました。あなた方は僕がずーっと、大人しく檻にいると思ってたでしょ?僕らの方が1枚上手だったようですね」

 

 

『くそっ……………伝令!至急、特殊警備case004を発動!あの4人を逃が』

 

 

創真は飽きたのか、通信機は思いっきり踏みつけて破壊した。

 

 

「よーし、行こうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真らが外に出ると、既に回りは大量の自衛隊員に囲まれていた。それだけではなく、上空には軍用のヘリコプターが5台ほど飛んでおり、ライトで創真を照らしている。

 

 

『動くな!それ以上、動けば発砲する!我々は、射殺の許可をも貰っている!スナイパーも配置され、見ての通りお前は袋の鼠だ!諦めて、投降しろ!』

 

 

隊長らしき男がそう言うと、回りの自衛隊員らは銃を創真に向ける。

 

 

「おやおや、大した配備じゃないか。だが、この程度はホリー君に頼るまでもない」

 

 

創真は懐からカードを取りだし、何かを唱える。

 

 

「『月下獣、半人半虎』」

 

 

その瞬間、創真の手と足が虎の物になり──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………あれ?」

 

 

──────何も起きなかった。

 

 

「おい、ホリー君?」

 

 

「あれれ、おかしいぞー?」

 

 

ホリーは創真の手からカードを取って裏返したり、ペチペチと叩くが、何も起きない。

 

 

「もーいいや。もう一個のを使おっと」

 

 

創真はパチんと指を鳴らす。その瞬間、創真と自衛隊員らの間に金色の光の柱が立つ。それが収まると───────アクティオンゾウカブト型の形をした金色のカブト虫がいた。

 

 

「最終兵器。名付けて、マシンカブト3『Actaeon』」

 

 

創真がその名を呼ぶと、マシンカブト3は内蔵されている銃口から弾丸を高速で連射し、近くにいた自衛隊員らの銃を弾く。弾かれた銃は地面に転がる。

 

 

「あ、あれを撃て!」

 

 

裏返った声を聞いた隊員らは銃をマシンカブトに向けて撃つ。銃弾が命中する直前、マシンカブトは装甲を展開し、青く発光し始める。そして、周囲に青い衝撃波を飛ばしたかと思えば、当たろうとしていた弾丸を止めた。止められた弾丸は地面にパラパラと落ちる。

 

 

「これで終わりじゃない。『オールデリート』発動」

 

 

創真がそう言うと、今度は羽も展開し、全身は緑色に発光する。そして、機械音声が、創真や自衛隊員らの耳元に響いた。

 

 

「『オールデリート』」

 

 

刹那、緑色の衝撃波が辺りを襲った。その瞬間、異変は起きた。

 

 

「じ、銃が……………砂に…………」

 

 

銃が砂と化し、地面にサーッと落ちていく。それだけではなく、自衛隊員らの服も朽ちて剥がれていく。さらに、創真を照らしていたヘリコプターも動きを止め、砂と化していく。乗っている隊員はデュオが黒獣でキャッチして、簀巻きにする。

 

 

そして、10秒も立つ頃には、素っ裸で何も持っていない自衛隊員らと、服を着ている創真らの図が出来上がっていた。大きな風が吹いたかと思えば、その場にいた自衛隊員らは静かに倒れた。気絶させたホリーはふぅ、と手首をぽきぽき鳴らす。

 

 

「いや、スゲー。改めて見るとスゲー……………おい、創真!お前、すげえよ!」

 

 

「いやー、大したことないよホリー。でもね、これ弱点がございまして」

 

 

「どんな?」

 

 

「今の攻撃の有効範囲が100メートルしか無くてですね。あと、1回しか使えない。エネルギー切れを起こす」

 

 

「なーんだ、そんな事か。でも、問題ないでしょ。全員倒したんだし」

 

 

「………………さっき言ってた自衛隊員の人の言うことがほんとなら、多分スナイパーが僕を狙っている気がし」

 

 

「危ない!」

 

 

言い終わるよりも前に、デュオが前に出て、黒獣が吠える。その瞬間、赤い波紋に銃弾がぶつかった。

 

 

「ほら、言った傍から」

 

 

創真は何処からともなくスナイパーライフルを取り出し、スコープを覗く。

 

 

「いたいた、距離は1.3㎞位か……………」

 

 

創真のスコープには、高層ビルの屋上に屈んで狙撃銃を構えている男の姿があった。銃本体を狙うか、と創真が狙いを定めようとした瞬間だった。突然、後ろから狙撃銃を持つ男に襲いかかる男の姿が、スコープを通して創真に映された。

 

 

「お、何か変な男が襲い掛かったぞ!あ、しかもワンパンチでKOさせたよ!」

 

 

ホリーが興奮気味で話す。

 

 

「てか、創真。あの人って………………」

 

 

「あぁ。うちの父さんだ……………」

 

 

創真の父親はスコープを通して見ている創真にサムズアップをした。その直後、彼等の後ろに2台のスポーツカーが止まった。

 

 

「顔を合わせるのは1週間ぶりですね、創真様」

 

 

赤いライカンから氷室が出てきて云った。

 

 

「ほらよ、お届け物だ」

 

 

ランボルギーニから出てきた隼&碧海の父親が創真に箱を投げつける。創真が慌ててキャッチし、地面に置いて中身を見る。そこには、超体操着等の装備が一式揃っていた。

 

 

「ありがとうございます」

 

 

「礼は言葉じゃなくて、金で良い」

 

 

そう言って彼はニヤリと笑う。

 

 

「創真様。他の皆からの伝言です。隣町のこのビルで待ってる、と」

 

 

氷室はスマホの地図を見せる。それを見た創真は、コクりと首肯く。

 

 

「よし、じゃあ行くか。あぁ、それとお2人共、色々とありがとうございました」

 

 

「いえいえ、それほど大した仕事はしてませんよ。ね?」

 

 

「ね?って、………………俺的には色々と大変だったんだがな。おい、隼と碧海に伝えておけ。思う存分、暴れてこいと」

 

 

「ええ、伝えておきますよ。では!」

 

 

そう言って、創真らは飛び去って行った。

 

 

レーザー発射まで、あと180分。




THE NEXT story 5/28 PM 22:00

オール、って言っても全部は消してない笑


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第166話 登校の時間

どうぞ!!


「創真!無事だったか!」

 

 

指定された場所に着くと、先客の磯貝に声をかけられる。

 

 

「あれ、ホリー達は?」

 

 

「キバットはとある物を治しに。ホリーとデュオは別行動をしたいって言うから、好きにさせた。所で、他の皆は?」

 

 

「今、装備を取りに行ってる。あと20分後に集まる予定だ」

 

 

すると、創真が事前に持っていたトランシーバーから声が聞こえてきた。耳を傾けると、声の主は自分の父親だった。

 

 

『創真、予定通り全部解き放ったぜ。あと5分で全部そっちに着く』

 

 

「あざっす」

 

 

『俺らは対柳沢用の武器をもって行く。ただ、中にいる傭兵部隊を倒してもらわないと辿り着けないからよろしく~』

 

 

「やれやれ。面倒い仕事だよ…………………了解」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

20分後、全員集合した。

 

 

「最後の任務は、全員無事に登校すること!」

 

 

磯貝の言葉に、皆はコクりと首肯く。

 

 

「それと………………創真。後ろにいるアレは何だ?」

 

 

磯貝の指差す方向には、20体程の狼と猿型のマシンがいた。

 

 

「ん?見ての通り狼と猿だよ。夜の森の中で赤く目を光らす狼と猿が大量に追ってきたら、恐怖に陥るかな…………って思いまして」

 

 

「た、確かに………………よし、行くぞ!」

 

 

E組の面々は、校舎に向けて走り出した…………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ………………」

 

 

傭兵部隊の男は走っていた………………いや、逃げていた。後ろからは、木から木へと跳び移る暗殺者達と猿、赤い目を光らす狼が追ってきているからだ。

 

 

「な、何なんだよ……………数が違いすぎんだろ!糞!!」

 

 

男は追ってくる彼等に銃口を向けようと振り向いたら瞬間、前原と磯貝の肘打ちを喰らい、ダウンする。ナイス連携~、と言いながら近づいてくるのはカルマだ。そして、倒れて痙攣している男を見て、ニヤッと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………B隊との連絡が途絶えた。常に回りを警戒しろ」

 

 

小隊長である男が言うが他の者からは返事がない。

 

 

「おい、どうした……………?」

 

 

振り向くと、何と同じ小隊の男が2人倒れていた。

 

 

「な……………………!?」

 

 

男が連絡しようと通信機に手を掛けた時には、既に遅し。創真と碧海のダブルキックが男の意識を奪った。

 

 

そして、創真が一言呟く。

 

 

「こいつら…………………弱くね?」

 

 

その言葉に、碧海は苦笑いを浮かべるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボキボキグシャア!!

 

 

そんな音がして、隼が振り向くと岩を抱えた原が男の背中の上にのし掛かっていた。

 

 

「………………死んだか?そいつ」

 

 

「柔らかく包んだだけ。そんなわけないわよ」

 

 

「柔らかく包んで、さっきの音はなるのか……………………?まぁ、今はそんなことよりも、カルマ。こっちは片付いたが…………そっちの状況は?」

 

 

『ん?今ね………………………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギャアアアアアアア!!辛い、苦い、染みる!!amgpwjpmtamxm5のげ揶(以下略)」

 

 

カルマは先程倒した男に拷問していた。

 

 

「うげぇ………………えげつない……………」

 

 

来たばかりの創真も表情を苦くする。

 

 

「で、悲鳴を餌にさらにおびき寄せる…………いけるよね、律?」

 

 

『はい。尾ねづたいに3人ほど接近していますもみの木の高台に固定機銃が配備されています』

 

 

「そこは狼ロボと猿ロボに襲撃してもらうか…………山葡萄の茂みからマテバシイ密集地に抜けるルートは?」

 

 

『そちらなら大丈夫です!』

 

 

「オッケー。なら………………」

 

 

カルマはスマホを通して、指示を出していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの山はE組のホームグラウンド。今では目をつぶっても動ける。この場所に限れば、例えプロ相手でも遅れを取らない……………と、言うかプロ以上。それに気付かされるのは、群狼の面々がグルグル巻きにされてからだ。敵もどんどん排除していき、校舎まであと僅かとなった………………その時。

 

 

「危ない!!」

 

 

誰かの声が聞こえたかと思うと、木と木の間を飛び交う影が現れた。男の手には、小銃。そして、威圧的な雰囲気。ホウジョウだった。

 

 

「これより………………本当の私を教授しよう」

 

 

そう言うと、眼鏡を取り外

 

 

ピッ、ピッ。

 

 

それを遮るように、麻酔針が飛んできたが難なく手で挟む。

 

 

「………………では、行くぞ」

 

 

そして、眼鏡を取り外………………そうとする彼に、カルマと隼が襲い掛かる。

 

 

「フン……………」

 

 

難なく攻撃を避け、2人を弾きとは増すホウジョウ。すると、今度は石が顔めがけて飛んでくる。飛んできた方向を見ると、神崎の携帯電灯による、眩しい光に照らされ、目を細める。

 

 

その隙に、一斉に襲い掛かる。

 

 

(こいつら………………戦いを始めさせない気か!?)

 

 

(……………そう、その通り)

 

 

創真はニヤリと笑って飛び出す。

 

 

敵の体勢が整う前に、カタをつける作戦だ。創真がホウジョウの持ってる銃を蹴り飛ばし、その隙に律が操るドローンから麻酔針が放たれる。

 

 

「チイッ!!」

 

 

皮ごと麻酔針を抜き、次の攻撃を警戒するが………………。

 

 

パアンッ!!

 

 

渚の、暗殺教室で猛威を振るった猫だましが炸裂。その瞬間、カルマが高く飛び上がり、踵落しを決めた。

 

 

ホウジョウは倒れる。カルマと渚は、嬉しさの余りか、ハイタッチする。

 

 

「2人共…………………まだ動いてるよ?」

 

 

創真が起き上がろうとするホウジョウを再度転倒させながら云う。そして、寺坂からカッコつけてんじゃねー!!と突っ込みを喰らう2人。さらに攻撃を加えた後、ありったけのガムテープで拘束する。

 

 

「おや?まだ意識がある…………何と恐ろしい男」

 

 

創真が呟くと、ホウジョウが口を開いた。

 

 

「……………これが暗殺者集団、3年E組か。我々の完敗だ。最後まで、俺に本気を出させなかったな」

 

 

「ま、これが僕らの殺り方です。では、救助がくるまでそのままで」

 

 

創真も、皆を追い掛けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついにバリア前まで辿り着き、皆はバリアの中へ。茂みを抜けると、1週間ぶりに見る担任の姿があった。

 

 

「ヌルフフフフフフ。成長しましたねぇら皆さん」

 

 

「「「殺せんせー!!」」」

 

 

レーザー発射まであと90分。漸くたどり着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

生徒達がバリアの中に入ったのを確認した烏間は、ビッチ先生と共に校舎へ向かう。

 

 

(もう俺一人ではあの28人に太刀打ち出来ないな。生徒の成長とは嬉しくも悔しくもあるもんだな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………全員、辿り着いたな」

 

 

特製の機械で作戦本部の通信を傍受して聞いていた隼&碧海の父親が呟く。

 

 

「流石だぜ!」

 

 

「では、行きますかね……………」

 

 

氷室達は校舎に向けて歩き出した………………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バリアの中に進入しようとしている奴等が2人居た。バリアの一部を開けるように指示しようとしたその時

 

 

「行かせないよ?」

 

 

「今、奴等は感動の対面をしている。邪魔しないでもらおうか」

 

 

白と黒がトレードカラーのホリーとデュオが現れる。

 

 

「……………………………」

 

 

全身がスーツに囲まれている異様な姿の男は、付いているチャックをすっと開けた。




THE NEXT story 5/29or30 PM 22:00


次回、ラストバトル開始。


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第167話 ハッピーバースデーの時間

今から3分前に書き終わりましたw


「なぁ、殺せんせー。完全防御形態であのビーム防げる?」

 

 

「恐らく無理でしょうねぇ…………所で、ホリー君達は?」

 

 

「別行動してる。何してるかは知らんが」

 

 

創真は、はぁ、とため息をつく。

 

 

「殺せんせー、何とかして逃げよ!!私たちが人質にでも何でもなるから!」

 

 

倉橋の訴えに、殺せんせーは首を振る。

 

 

「ここまで来てしまった以上、もう止めないでしょう。地球の命運が掛かってますから」

 

 

ふと、創真は殺せんせーに聞いてみたい事が出来た。

 

 

「殺せんせー、あなたはこうなることを予期してたんじゃないか?」

 

 

「まぁ………………仮に爆発せずとも、これだけ強大な力を持つ怪物は殺しておきたいと世界が考えるのは当然てすから」

 

 

「…………まぁ、そうだな」

 

 

「それほどまでにこの作戦は完璧でした。世界の技術と英知が先生の能力を上回ったことに敬意を感じ、ターゲットであったことにすら栄誉に感じます」

 

 

しかし、皆は納得できない。出来る筈がなかった。

 

 

「じゃあ…………私達が今までやってきたことは無駄だったの…………?」

 

 

矢田が本音を漏らすが、殺せんせーは否定する。

 

 

「そんな訳ありません。君達のお陰で先生が爆発する確率が1%以下と分かり、そこから沈んでいたE組の明るさが戻り、1ヶ月間短かったですが非常に楽しかった。その過程が、心が大事なのです」

 

 

「……………………この暗殺計画もそうだが、社会の渦とは嫌なものだな、全く」

 

 

「ヌルフフフフフフ。創真君、皆さん。もうひとつ先生からアドバイスをしましょう」

 

 

そう言って殺せんせーは語りだす。

 

 

「この先、社会の壁に阻まれて思うような結果が出せないことがあるでしょう。しかし、社会に原因を求めたり、否定してはいけません。世の中そういうもんだ、と悔しい気持ちをなんとかやり過ごしてください。その後で考えるのです。社会の激流が自分を翻弄するなら、その中で自分はどう泳げばいいのかを」

 

 

殺せんせーは続ける。

 

 

「やり方は学んだはずですよ?色んな戦い方はこの暗殺教室でたっぷり学びました。やる気をもって試行錯誤すれば、必ず素晴らしい結果がついてくるはずです。君達は優秀な暗殺者なのですから」

 

 

「けっ、ここでも授業かよ」

 

 

そんな皆の気持ちを代弁するかの如く、寺坂が呟く。教育者たるもの、チャンスは見逃しませんよ、と殺せんせーはいつもの調子で云う。

 

 

「それに、君達が私を助けようとしてくれたこと、涙を堪えてた位嬉しかったですよ」

 

 

(…………………何でそんなに落ち着いてられるんだよ、殺せんせー)

 

 

渚は心の中で殺せんせーに問い掛ける。

 

 

(E組に来なければ、普通に生きれたかも知れないのに。僕らは──────────────)

 

 

「所で中村さん。何やら甘い匂いがするのですが?」

 

 

甘党日本代表(?)殺せんせーがわくわく、と言った表情で問い掛ける。

 

 

「確か雪村先生は今日を殺せんせーの誕生日にしたんだよね。だから、バースデーケーキを持ってきたんだよ」

 

 

その姿を見せると、殺せんせーは顔を輝かせる。

 

 

「それ、中々高いんだよね。中村さんが崩さないように持ってきたんだから、感謝しな……………聞いてないな」

 

 

創真の言葉にウンともスンとも反応しない。今の殺せんせーの頭はケーキの事しかないようだな。

 

 

「ちょ、よだれが垂れる!皆、早く歌うよ!」

 

 

蝋燭に火をつけ、皆でバースデーソングを歌う。歌う彼等を、烏間らより早く着いた氷室と、創真の、隼と碧海の父親が微笑ましく見つめる。

 

 

「おら、早く消せって殺せんせー!1本しかないから慎重にな!」

 

 

その言葉通り、殺せんせーは息をすうっと吸って、蝋燭の火を─────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッピーバースデー。世界一残酷な死をプレゼントしよう」

 

 

何かがバースデーケーキを撃ち抜いた。

 

 

そして、今の声の主は柳沢だった。そして、飛んでくる3つの影。

 

 

1人は──────────化け物。あとの2人は──────────────ホリーとデュオだった。満身創痍の姿の、だ。

 

 

「……………まさか……………お前ら、先走りやがったな?」

 

 

「悪いね、創真……………止められると思ったが、甘くはなかったよ」

 

 

ホリーが力なく笑う。

 

 

「先生、ボクがダレだかワカルヨネ?」

 

 

「ッッ…………………!!」

 

 

2代目死神の変わり果てた姿に殺せんせーは息を呑む。

 

 

「いやー……………どうやったら、こんな化け物になるんだろうね」

 

 

「そのタコと同じ改造を施しただけさ。想像できるか?人間の時ですら、君達を圧倒した男が、比類なき憎悪と触手を手に入れた…………その破壊力を!」

 

 

そして次の瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………は?」

 

 

創真らの体が宙に浮いていた。何をされたのか、すぐには分からなかった。

 

 

「ホリー!!デュオ!!」

 

 

創真が叫ぶと、ボロボロだが、それでも2人は宙に浮く創真の体に向けて翔ぶ。憑依し……………白と黒の翼を広げ、綺麗に着地する。

 

 

「今のは………………ソニックブームだな?」

 

 

「流石は創真君だ。彼の初速はマッハ2。最高瞬間速度は、マッハ40!!」

 

 

2代目死神は殺せんせーに向けて触手のラッシュを開始する。悔しいが、ホリーの力があろうとそれでは殺せんせーを援護できない。

 

 

「2代目の動体視力と直感力は、触手によって超音速の世界にも容易く順応した。最大の違いは継続的運用を入れない設計!消滅時にも爆発の心配はない。完璧で安全な兵器だ!!」

 

 

「要は、2代目も使い捨てって事か」

 

 

「そうやっていつも………………!!」

 

 

怒りの籠った声とともに、茅野が言い放つ。

 

 

「他人ばっかり傷付けて、自分は安全なところから!!」

 

 

そして、創真も云う。

 

 

「やはり、君には救済が必要だな」

 

 

「……………誰がこの俺を救済できると?」

 

 

「さぁ………………天使か……………それとも悪魔か」

 

 

「クククククク………………面白い」

 

 

そう言って柳沢は注射器を取り出し、首筋に突き刺す。

 

 

「…………………まさか」

 

 

「命などどうでも良い。全てを奪った奴さえ殺せればな!全身ではなく、体の要所に触手を埋め込めば、人間の機能を保ったまま超人になれる!モルモット、お前を可愛い生徒の前で死なせてやる!」

 

 

そして、殺せんせーの背後を取り、攻撃しようとする。

 

 

 

 

ドカアッ!!突如、柳沢は吹き飛ばされる。

 

 

「……………やはり邪魔をするか、結城 創真」

 

 

「まぁね。殺せんせーを殺したければ、僕を倒してから行き給え!」

 

 

「ほう。面白い……………ならば、殺してやろう!!」

 

 

「殺れるもんなら殺ってみろよ!!」

 

 

柳沢VS創真の戦いも始まった。




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第168話 ラストバトルの時間

常識外のバトルが始まった。殺せんせーは化け物と化した2代目と。

 

 

創真は超人となった柳沢と。どちらも、目に捉えられない程の超高速バトルだ。

 

 

「なんだよコレ……………手の出しようがないぜ………」

 

 

誰かがそう呟く。この2人の戦いに、自分達が出来ることはない。皆、そう思っていた───────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────2人を除いて。

 

 

(くそっ…………考えろ俺!何か出来ることがある筈だ……………何か………………何か…………!!)

 

 

(あの化け物は無理だけど…………柳沢ならまだ捉えられる!創真君が身を挺して戦っているんだ………………何か、私にも手伝えることは………)

 

 

隼と碧海は何か自分達に出来ることを模索し続ける。

 

 

と、その時。

 

 

碧海のスマホが震える。反射的にスマホの画面を見る隼。

 

 

「………………………へ?」

 

 

メッセージの内容はこうだった。

 

 

『教室の屋根上にこっそり来い』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チッ……………」

 

 

創真は蹴りや打撃で攻撃を加えていくが、全く手応えがない。

 

 

「その程度の攻撃……………攻撃と呼ぶにはほど遠いな!!」

 

 

そう叫んで、創真の腹に蹴りを撃ち込む柳沢。さらに、吹き飛ぶ創真に追撃を加えていく。

 

 

「フッ………………中々痛いじゃないか」

 

 

直ぐに創真の傷は癒える。戦いは五分五分の状態だった。一方、殺せんせーの方はと言うと、2代目が一方的に有利だった。倍のスペックを持つに加え、攻撃に特化するよう作りである為、旧型──────と言うべきか────────────である殺せんせーはリンチに近い形で、回復の猶予も与えられず、一方的にダメージを受けていった。

 

 

「くっ……………………!!」

 

 

「絶望だろ、モルモット!!分かっただろ!?お前ごとき力など、とうに超えている!!」

 

 

柳沢が創真と戦いながら、殺せんせーに向かって嘲笑うかのように云う。そして、2代目によって地面に叩きつけれる殺せんせー。

 

 

それを見せつけられた渚の脳裏に、再びあることを認識させた。

 

 

(……………僕らは、殺せんせー最大の)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、屋根上にきた碧海と隼。そこには、氷室と創真、隼と碧海の父親の3人がいた。

 

 

「時間がないんで、簡単に説明するぜ」

 

 

創真の父親は、細長い弾丸を見せる。

 

 

「この弾丸には、人間の身体機能を弱体化させる薬物が先端に詰まっている」

 

 

「創真様が合図する手筈なので、この銃を使って撃ち込んでください」

 

 

氷室が指差す方向には、隼の父親の手作りのプラモデルの狙撃銃がスタンバイされていた。

 

 

「反動や発射時の音を抑えるなど、使いやすいように強化されています。恐らく、2人なら扱えます………………必ず」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺せんせーの方も雰囲気が変わった。今まで攻撃を受けてばかりだったのだが…………………躱し始めた。

 

 

「フン…………これならどうだ?」

 

 

創真の攻撃を退けた柳沢が、目につけてる装置から硬直させる紫の光を放つ。しかし、殺せんせーは土を使って光を防き、その間に距離を取る。創真も一旦距離を取り、殺せんせーの隣に並ぶ。

 

 

「……………道を外れた生徒は、先生である私が責任を取ります。だが、柳沢!君は出ていけ。ここは生徒が育つための場所だ。君に立ち入る資格はない!!」

 

 

「………………まだ教師何ぞ気取るか。ならば試してやろう。所で創真君。考えなかったか?何故我々がこのタイミングを選んだか」

 

 

柳沢は指をパチンと鳴らす。すると、2代目は殺せんせーの前から生徒達の前に移動する。そして、腕にエネルギーを溜め始める……………!!

 

 

「いけないっ………!!」

 

 

「守るんだよな?先生って奴は」

 

 

そして辺りは土埃に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆!!」

 

 

碧海が皆のところに行きそうになるのを、隼が止める。

 

 

「やめろ碧海!!今行ってどうすんだよ!?」

 

 

「だって、皆が…………皆が!!」

 

 

碧海が皆の方を凝視していると、だんだん視界が晴れてきた。

 

 

「「!!!!」」

 

 

2人は目を疑った。何故なら………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺せんせーよりも前に、創真が立っていたからだ。翼を全面に出し、防御していたのだが……………………その翼は攻撃により散っていた。

 

 

「……………………ダメだ、こりゃ」

 

 

そして静かに倒れ込む。

 

 

「創真君!!」

 

 

倉橋が悲痛な声を出す。

 

 

「ふははははははは!!本当に面白い奴だ!!身を挺して庇うとは!!…………だが、これで終わりじゃない」

 

 

その声と伴に、2代目死神は再度の攻撃を開始する。今度は殺せんせーが防ぐ他なく、次々とラッシュを受けていく…………………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………今がチャンスだ。柳沢はあっちに夢中。これなら必ず当てれる……………!!」

 

 

「え、でも創真君は合図を出してないよ!?」

 

 

「気絶してるあいつが合図を出せるわけがねぇだろ!兎に角、今なら当てれる…………!!」

 

 

隼が照準を柳沢に合わせ、引き金を─────────!!

 

 

「待て」

 

 

それを止めたのは彼の父親だった。

 

 

「柳沢の奴、こっちに気付いてやがるな……さっき、こっちを一瞬見やがった」

 

 

「なっ…………マジかよ。じゃあ、今撃っても」

 

 

「高確率で避けられるな。野郎、こっちに手を出してこないのはいつでも余裕で避けれるとでも思ってるからか?」

 

 

そう呟いたとき、5人の脳裏に声が響いた。

 

 

(……………える?聞こえる、5人とも)

 

 

「その声は、ホリーか?」

 

 

(そうだよ。今、憑依したまま僕らの力で創真を回復させてるけど、まだ時間が掛かりそう…………キバットがアレを早く調整して持ってきてくれれば…………)

 

 

「アレ、って何?」

 

 

碧海が尋ねる。

 

 

(えーっと、その………説明すると長いから、後で!じゃ、僕は回復に専念させるから黙るよ!)

 

 

そして、ホリーの声は聞こえなくなった。

 

 

「とっとと目を覚ましやがれ、創真………………」

 

 

隼が銃のスコープを通して創真を見ながら呟くのだった。




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第169話 決着の時間

コラボ編に先駆け、文ストの異能力が発動します………!!


知らなくても、大丈夫なので安心してお楽しみください!


なお、コラボ相手の『忍を知らぬ、名もなき暗殺者』にて、一部公開中です!


ちなみに、昨日まで『暗殺者とは、忍ばないのが正常である』でした……………名前変わりすぎではボソッ………あ、やべ。artisanさん、お許しを!!


生徒に向けた攻撃力全開の攻撃を、全て殺せんせーが受け止める……………生徒を守るために。

 

 

「教師の鏡だな!生徒のために身を挺して庇うとは!ターゲットと生徒がいれば、こうなることは当然!不正解だったんだよ…………今夜ここに入ってきたお前らの選択は!!」

 

 

「やめろ柳沢!!」

 

 

いつの間に来たのか、烏間が銃を構えていた。

 

 

「これ以上生徒を巻き込むな!!さもなくば………」

 

 

全て言い終わる前に、柳沢は肘打ちで烏間先生を吹き飛ばす。

 

 

「もうお前は俺にすら勝てない。黙って見ていろ」

 

 

あの烏間ですら敵わない。

 

 

──────────そうだ。

 

 

皆はようやく自覚させられた。いや、気づいていたが、目を逸らしていたと言うのが正しい。見てみぬふりをしていたのだ。

 

 

「どんな気分だ!大好きな先生の足手まといになって絶望する生徒を見るのは!分かっただろ?お前の最大の弱点は………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────僕ら

 

 

「んなわきゃないでしょう!!」

 

 

声。殺せんせーの声がその場に強く、大きく響く。

 

 

「正解か不正解など関係ない!彼等は私を救おうとし、恐ろしい強敵を倒してまでここに来てくれた!その過程が…………心が!!最もうれしい贈り物だ!!彼等は……………生徒です!!全員が私の誇れる生徒です!!弱点でもあしでまといでもない!!」

 

 

「そうか、そうか。だが、お前は間もなく力尽きる。安心しろ。生徒達は全員俺の手で嬲り殺す………!我々の人生を奪ってまで手に入れた1年を全て無駄だったと否定し、ようやく我々の復讐は完成する!さぁ、続けるぞ。生徒をちゃんと守れよ?」

 

 

そして、再びラッシュが開始されようとしたその時

 

 

パアンッ!!

 

 

─────────────銃声。

 

 

「な……………!?」

 

 

「え……………!?」

 

 

隼と碧海も目を疑う。

 

 

「逃げて殺せんせー!どっか隠れて回復を!!」

 

 

─────────茅野だった。

 

 

そんな彼女に2代目は攻撃を仕掛けるが、ギリギリで回避しつつ、対先生用ナイフで攻撃をする。

 

 

「ほう………………動体視力が残っていたか」

 

 

「ダメです茅野さん!!」

 

 

柳沢の声を遮るように、殺せんせーが叫ぶ。しかし、茅野は退かない。

 

 

「ずっと後悔してた…………私のせいでクラスの楽しい時間を奪っちゃったこと。だから、せめて守らせて?先生の生徒として」

 

 

「違います!君は正しかったんです!あのお陰で皆は正しいことを学べ」

 

 

ドカッ!!

 

 

全てを言い終わる前に、殺せんせーは吹き飛ばされる。

 

 

「2代目………………殺れ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………………ハッ!!」

 

 

漸く意識を覚醒させた創真。自分の体を見れば、服は傷だらけだったが、身体は何ともなかった。創真の身体の中からホリーとデュオが憑依を解除して出てくる。

 

 

「良かった創真!意識が戻ったんだね」

 

 

「まぁ、ね。にしても、2人の力を持ってしても、奴に決定打は与えられないとはね」

 

 

「…………………やはり、アレが必要か。キバットはまだな」

 

 

ドッ!!

 

 

鈍い音がした────────────まるで、人間の体を何かが貫いたような。

 

 

「………………茅野、さん?」

 

 

茅野が2代目に殺られたと気付いたのは、血の気が退いた茅野の顔が視界に入った時だった。

 

 

「ハハハハハハハハハハハハ!!姉弟揃って俺の目の前で死にやがった!!ハハハハハハハハハハハ!!姉の代用品として飼ってやっても良かったが、あいにく穴の空いたガキには興味は無くてな!ハハハハハハハハハハハハ!!」

 

 

その言葉に殺せんせーの顔が黒に染まる。

 

 

「それだ!その黒こそが破壊生物の本性だ!その色でなければフルパワーは出せない!だが、お前の本気も2代目のさらなる力でねじ伏せられる!」

 

 

柳沢は新たな薬品を2代目に注射。2代目から強大なエネルギーの気が発生する。

 

 

「…………君は本当に救いようがない程、愚かだな」

 

 

そして、創真はスッと立ち上がる。

 

 

「ようやくお目覚めか、結城 創真!!なぁ、どんな気分だ!?自分が目覚めたら、大好きなクラスメイトが死んでた気分は!?」

 

 

「最悪だ………………柳沢。あんたは許さん」

 

 

その言葉に、柳沢はニヤリと笑う。

 

 

「そうかそうか。なら、あのモルモットよりも先にあの世へ送ってやろう!」

 

 

2代目は高速で創真に近付き、拳による一撃を───!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「させるか!!」

 

 

「グハァ!!」

 

 

第3者の体当たりが割って入る。余りの勢いに、柳沢は大きく吹き飛ばされる。

 

 

「待たせたな創真!!」

 

 

「遅かったなキバット」

 

 

「うるせぇ!大変だったんだよ、色々な!ほれ、受け取れ!」

 

 

キバットは足で持っていたカードをパスし、創真は手でキャッチする。

 

 

「ホリー、デュオ、キバット。ありがとう。後は、僕に任せろ。茅野を連れて下がってくれ」

 

 

創真の言葉に彼等は頷き、茅野を連れて創真の後ろに下がる。

 

 

「ふぅ……………………《昔、僕は自分のしたことについて後悔したことはなかった。ただ、しなかった事についてのみ、いつも後悔を感じていた》」

 

 

「何をごちゃごちゃ言っている!!」

 

 

柳沢は再び襲いかかる。

 

 

「異能力──────『月下獣・半人半虎!!』」

 

 

その瞬間、創真の持つカードが青い文字で月下獣と表示される。そして、カードから白い虎、白虎が出現して柳沢を吹き飛ばした。白虎は大きな咆哮を上げた後、創真の身体の中へと目にも留まらぬ速さで入った。その瞬間、青い文字羅列が創真の身体を包む。すると創真の姿が─────────白の襟付きシャツに、手には黒い手袋、そしてサスペンダー、ネクタイを付け、黒いズボンを履く───────変わった。

 

 

姿が変わった瞬間、創真の目の前には柳沢の拳があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし

 

 

 

 

 

 

 

ガシッ!!

 

 

「な!?」

 

 

柳沢の手を受け止めたその手は…………虎の手と化していた。

 

 

「な、なんだその能力は!?」

 

 

「さーね。君に答える義理は無い!」

 

 

そのまま柳沢を放り投げる。そして、屋根の上に向けて目線を送る。

 

 

「今だよ、2人共!」

 

 

ダァンッ!

 

 

碧海と隼が同時に引き金を引き、放たれた弾丸は空中の柳沢の腹部と胸に突き刺さる。

 

 

「糞が!こんな弾丸でこの俺を…………ち、力が…………!!」

 

 

弾丸の効果が効いて、柳沢は膝をつく。

 

 

「このガキィ……………!!」

 

 

創真を睨み付ける柳沢。その時、白い光が視界に入った。柳沢がそちらの方を見ると、殺せんせーが白い光に包まれていた。

 

 

「な、なんだあの力は!?あんな力、モルモットに出せる筈が無い!」

 

 

「どうかな?うちの先生は、教える度に進化するもんだからね」

 

 

創真がニヤリと笑いながら呟く。

 

 

「教え子よ。安らかな卒業を」

 

 

2代目が白い光のエネルギーに包まれる。まるで、憎悪を浄化させるかのように。

 

 

「さて、こっちも終わらせるか」

 

 

「!!」

 

 

気付いたときには、創真が目の前にいた。その足も虎化しており、驚異の瞬発力で一気に間合いを詰める。

 

 

「くそがぁ!!」

 

 

柳沢も拳を振り抜くが、虎の拳の前では月とすっぽんだった。

 

 

バキッグシャア!!

 

 

右腕の骨や神経が粉々に砕ける。痛みに悶える暇もなく、アッパーカットが柳沢を襲い、空中に吹き飛ばされる。柳沢は空中で態勢を整えようとするが………突然、自分の体の上昇が止まった。そして、金縛りの如く一切動けなくなった。

 

 

「なんだこれは!?」

 

 

辺りを見回すと、鷹と隼───────フレアとメテオが全身を赤、青に光らせながらホバリングしていた。

 

 

「……………終わりだ」

 

 

「!!」

 

 

創真が跳躍し、急上昇。青く光る拳が柳沢に襲い掛かる。

 

 

「やめろ!!やめろぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 

柳沢は冷や汗をかき、そう叫ぶが、止まるわけがない。

 

 

ドゴッ!!

 

 

柳沢の腹部に虎の拳がめり込んだ。そして、くるくる回転しながら吹き飛ぶ。その先には────────対触手用バリア。

 

 

「こんな…………こんな負けかた…………嫌だァァァァァァァァ!!」

 

 

バリアを抜けた瞬間手足が引きちぎれ、そのまま落ちていった。

 

 

そして、落ちていく創真とすれ違い様に殺せんせーが対先生用ナイフを持って、ビームの衝撃で空へと舞った瀕死の2代目の方へ向かい………………ナイフを突き刺した。

 

 

何か喋っていたようだが、創真には聞き取れなかった─────────そして、2代目も粒子となって消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝ったものの、誰も歓喜の声はあげなかった。茅野が死んだから、当然だった。

 

 

「ホリー君、茅野を蘇らせれる?」

 

 

茅野を抱えている渚が尋ねる。

 

 

「無理だよ……………死んじゃったら、僕でもどうしようが無い…………」

 

 

ホリーが力なく首を振る。

 

 

「いいえ……………茅野さんは死なせません」

 

 

茅野の元に来た殺せんせーが云った。

 

 

「皆さん、犯してしまった過ちはもう変えようがありません……………先生自身も色んな過ちを犯してしまった。ですが、過ちを糧に、同じ過ちを繰り返さないことは出来ます」

 

 

すると、赤い球体が皆の前に降りてきた。

 

 

「茅野さんの細胞や血液が落ちる前に、圧縮した無菌の空気で包んでおきました……………今から、全ての細胞を繋げていきます」

 

 

「バトル中にそんなことをしてたのか!?」

 

 

デュオもこれには驚いたようだった。

 

 

「皆を守るための触手だけは温存しておきましたからね。では、始めましょう」

 

 

そして、茅野の細胞や血液を体内に戻していく。精密かつ高速に。途中、血液不足のため同じ型の血液を貰ったり、土まみれのバースデーケーキを美味しく食べたり……………と、手術はテンポよく続いていく。

 

 

そして、傷痕1つ残さず蘇生の手術を終える。

 

 

「後は心臓が動けば蘇生します。今だから言いますが、例え君達の体がばらばらになっても蘇生できるように備えていました。先生がその場にいて…………生徒を見ていさえすれば」

 

 

そして、電気ショックを与える。皆は茅野に注目する。

 

 

「…………カハッ!!」

 

 

蘇生した茅野は辺りを見回して、殺せんせーが助けてくれたと言うことを察する。

 

 

「また…………助けてもらっちゃった」

 

 

「何度でもそうしますよ。ヌルフフフフフ」

 

 

皆は襲い掛かると思えるような勢いで茅野に近付き、歓声を上げる。

 

 

そんな様子を、殺せんせーは嬉しそうに見つめるのだった。




THE NEXT story 6/1 or 2 PM 22:00


今書き終わったばかりなんで、ちょっとしたら次作について語ろうと思うんで、後で覗いてみてくださいな。


よし、決めた!次作の主人公は創真だ!


舞台は仮想世界、乃ちSAOだ!


それで、ユウキってキャラクターいるじゃないですか?


彼女の生存ルートにして、パートナー的な感じで話を進めていこうかなと検討してます。


てか、創真の名字の結城、ってひらがなで『ゆうき』って読むしこれも何かの縁だ!


天才創真君に、ユウキの病気を直してもらおっかなとか、色々考えてます!


次作は2年後を予定してますが、今から楽しみだな~!


では、残りあと2、3話の結城 創真の暗殺教室、最後までよろしくお願いします!


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第170話 恩師の時間

─────────さらば、殺せんせー。


創真side

 

 

「ヘックシ……………って、私なんて格好!?」

 

 

あ、超体操服が破れたのか。

 

 

「可哀相」

 

 

「何が!?」

 

 

「僕に任せて!一瞬で縫うよ!」

 

 

ホリーが何処から持ってきたのか、糸と針を持って云う。そして、文字通り一瞬で服の破れた部分を直す。

 

 

「ありがとうホリー君!」

 

 

「いいのいいの………………ほんと可哀想だ」

 

 

「だから何が!?」

 

 

………………やれやれ。

 

 

「いや、殺せんせーの事だ!少し位巨乳になってるかもしれないぞ?」

 

 

「そうなの、殺せんせー?」

 

 

岡島がそう言い、矢田さんが殺せんせーの方を振り返ると…………………スローモーションで殺せんせーはゆっくり倒れていった。

 

 

「流石に疲れましたねぇ……………」

 

 

何処か満足気で、殺せんせーは嬉しそうに云う。

 

 

「皆さん、暗殺者が瀕死のターゲットを見逃してどうするんですか?」

 

 

「「「!!」」」

 

 

「殺し時ですよ…………楽しい時間には必ず終わりがつきものです…………………」

 

 

空を見上げる。レーザーの光は刻一刻と輝きを増していた。

 

 

もう…………………時間がなかった。

 

 

「皆……………………このまま天に任せるという選択肢もある。手を挙げてくれ……………殺したくないやつ………?」

 

 

僕含め全員挙手する。当然だ。殺したいと思うやつはいない。下ろしてくれ、という磯貝君の言葉に手を下ろす。そして、磯貝君も意を決して…………もう1つの選択肢を云う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………殺したい奴……………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

迷い、葛藤………………僕も思うところはたくさんあった。だが、僕らは殺し屋。ターゲットは先生。

 

 

2度と現れないであろう、恩師を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────全員が手を挙げた。

 

 

 

自分達以外の手で殺されたくなかった。

 

 

殺したくないと同時に、殺したい───────これが、僕らの答え。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

====================

 

 

 

全員が殺せんせーの触手を掴む。

 

 

期末テストで全員が50番以内に入ったときに教えてくれた弱点───────『全員で拘束されれば動けない』

 

 

「ネクタイの下の心臓…………最後は誰がやる?」

 

 

隼が皆に訊ねる。皆は、創真やカルマの方を無意識に見つめる。

 

 

「……………お願い、皆。僕に殺らせて」

 

 

そんな中、渚が名乗り出た。

 

 

「……………文句はねぇよ」

 

 

「渚はここじゃ首席だしね」

 

 

寺坂とカルマが同意する。そして渚は創真の方を見る。創真は少し黙っていたが─────────────

 

 

「…………殺りたいんでしょ?譲るよ」

 

 

「…………ありがとう、創真君」

 

 

渚は殺せんせーの上に股がる。

 

 

「……………ネクタイの上から刺せますよ。穴を開けてしまいましてね……………これも縁だと思い、残しておきました……………さて、皆さんにお別れの言葉を言っていては時間が足りません。長話は無用ですが……最後に出欠を取ります。全員が先生の目を見て返事が出来たら、殺してよし!では、呼びます」

 

 

皆の顔に緊張が走る。そして、殺せんせーは名前を──────

 

 

「その前に、先生方やホリー君達に挨拶しておかなければ」

 

 

────────呼ぶ前に烏間らの方に首を向けた。

 

 

「イリーナ先生、参加しないんですか?」

 

 

「この暗殺はあんたとガキ共の絆よ…………私はもう充分貰ったわ」

 

 

その言葉に、殺せんせーは満足げにうんうん、と頷き、次に烏間と氷室の方に顔を向ける。

 

 

「烏間先生、氷室先生…………あなた達こそが、生徒達をここまで強くしてくれた。これからも彼等の相談に乗ってあげてください」

 

 

「……………この一年、お前には迷惑を掛けられたが、生涯忘れることはないだろう。さよならだ、殺せんせー」

 

 

「ええ……………私もこの1年は絶対に忘れません。あなたの事も忘れませんよ」

 

 

2人の言葉に、殺せんせーは嬉しそうな表情を見せる。

 

 

「そして、ホリー君、デュオ君、キバット君………………君達と過ごせて本当に楽しかった。君達の持つ力を使って、多くの人の助けになってあげてくださいね」

 

 

「…………分かった。約束するよ!」

 

 

「……………あぁ。さらばだ、殺せんせー」

 

 

「寂しくなるぜ………………」

 

 

「ヌルフフフフフ…………そして…………」

 

 

最後に殺せんせーは、いつの間にか来ていた隼と創真の親の方を向く。

 

 

「あのときしたアドバイスを実践できてるようですねぇ……………ヌルフフフフフ」

 

 

「こりゃ、お前さんの事だな」

 

 

「……………何の事だかさっぱりだな、このタコ」

 

 

隼の父親はフン、とそっぽを向く。

 

 

そして

 

 

「お待たせしました。それでは呼びます…………はっ!!早退した人はいませんよね!?」

 

 

「「「はよ呼べ!!」」」

 

 

────────最期まで殺せんせーらしいな。

 

 

創真は改めてそう感じた。

 

 

「では─────────」

 

 

カルマから一人ずつ呼ばれていく。ある者は涙ぐみながら、ある者はハッキリと、ある者は涙を堪えながら………………それでも、一人ずつ確かに呼ばれていく。

 

 

そして────────────

 

 

「結城 創真君」

 

 

「はい」

 

 

「月城 隼君」

 

 

「…………ん」

 

 

「月城 碧海さん」

 

 

「…………はいっ」

 

 

全員の出欠が終わった。

 

 

「君たちに殺されて…………先生は幸せです」

 

 

渚はナイフの狙いを殺せんせーの心臓に合わせる。今までの思い出が走馬灯のように駆け巡る。この教室を修了させる…………自分達の手で。渚の手が震えていた。殺せんせーを尊敬している彼であるからこそ、プレッシャーに似たものを感じていた。感謝、惜別と言った感情ではなく………言葉では言い表せない感情を吐き出すように、声をあげながらナイフを差し出し───────────!

 

 

「そんな気持ちで殺してはいけませんよ。落ち着いて笑顔で」

 

 

触手を首元にすっと置いて、殺せんせーは云う。落ち着いた渚の頬を、すうっと温かいものが流れていく。改めて渚の脳裏に、色んな思いが駆け抜けて行く。

感謝、惜別、尊敬、そして悲しみ。そして…………………渚は殺せんせーに諭され───────いや、教え通りに、笑った。

 

 

そして、云う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さよなら、殺せんせー」

 

 

「はい、さようなら」

 

 

渚は全身で礼をするようにして、ナイフを刺し出した。殺せんせーの全身が優しく、暖かく弾け、僕らの手から消えていった。

 

 

最後に────────卒業おめでとうと聞こえた。

 

 

そして────────殺せんせーの全身は粒子となって────────空へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆は泣いた。泣き叫んだ。ほぼ全員が涙を溢した。ほぼ、と言うことは全員ではなかった。唯一、涙を見せぬ創真が小声で呟いた。

 

 

「こうなるとは覚悟していたが……………やっぱり悲しいです、殺せんせー。あなたには、こるからも僕らの成長を見守ってほしかった。僕らの最高の先生、最高の恩師のあなたに、ね……………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、教室に戻るとそれぞれの机にアドバイスブックとアルバムが置いてあった。超分厚いのだが、それでも皆暫く読んでいたのだが、アドバイスが細かすぎてうんざりしてきて、結果皆ぐっすり寝ていた。皆が寝ているなか、創真は独り屋根上で寝そべり、物思いに耽っていた。

 

 

(ほんと…………………寂しくなるね)

 

 

そこへ

 

 

「そーうーまーくん!」

 

 

碧海が上ってきた。そして、隣に寝そべる。

 

 

「……………創真君」

 

 

「うん?」

 

 

「創真君は、殺せんせーが死んだとき何か1人で呟いてたよね?何を言ってたの?」

 

 

「そりゃ、秘密だね」

 

 

「そう………………あのね、創真君」

 

 

急に真剣な口調になった、碧海はスッと立ち上がる。

 

 

「私、決めたんだ。将来、創真君が社長になったときにさ、君を支える役割を担いたい、と」

 

 

「………………………………」

 

 

「あのね…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は創真君が好きだよ…………君が私を助けてくれた時からずっと………………」

 

 

「………………………………」

 

 

創真は何も言わず、ピョンと立ち上がる。暫く何も創真は言わなかった。その間、碧海はじっと返事を待つ。

 

 

そして遂に、創真は少し口を開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「秘書…………って所かな」

 

 

「…………………へ?」

 

 

創真は振り返って云う。

 

 

「いや、だーから。僕が父さんの会社継いで社長になったら、秘書の席でも作ろうかなーって事」

 

 

「…………!!それって………」

 

 

「まーそゆことだ。それと……………さ」

 

 

創真は少し照れ臭そうに言った。

 

 

「もし、陽菜乃よりも先に、君に会ってたら、君が1番好きになってたかもなー…………って」

 

 

「…………………そっか」

 

 

実質的にフラれたのだが、碧海はさほど落ち込んではいなかった。その時、暖かい光が彼らを照らした。彼らを照らす光の正体は日の出だった。

 

 

「今日でこの学校ともお別れ、か」

 

 

「そうだねー。もう1年くらい、ここで過ごしたい気もするなぁ……………」

 

 

「それは同感」

 

 

「おーい!お前ら!」

 

 

そんな2人の元に、キバットが飛んできた。

 

 

「お前ら、皆もう起きてるぞ?いつまで2人でイチャイチャしてんだ?」

 

 

「イチャイチャはしてないがな……………そろそろ戻りますか」

 

 

「うん!」

 

 

そんな2人を見送ったキバット。すると、音もなくホリーとデュオが現れる。

 

 

「おう、オメーら。お前らはここでの生活は楽しかったか?」

 

 

「まぁ、悪くはなかったな」

 

 

「僕もここでの生活は楽しかったよー。ただ1つ残念なことが……………もっとカップル成立してほしかったよ───────!!」

 

 

「……………そこかよ」

 

 

「まぁ……………確かに、もっとくっついて欲しかったな」

 

 

「お前もか」

 

 

相変わらずゲスイ聖霊と蝙蝠、ホリーとキバットであった。



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第171話 卒業式の時間

2時間ぶりだぜ!


何で投稿したか?暇だっからや!


と、言うわけでどうぞ!


「この1年、本当にご苦労だった。暫くは注目されたり大変だろうが、出来る限りのサポートはする。それでも…………先に俺から謝らせてくれ」

 

 

烏間先生は頭を下げる。しかし、誰1人責めるものはいない。

 

 

「平気っスよ。俺らも穏便にすむようにするからさ」

 

 

代表して前原がいつも通り明るく云う。

 

 

「その代わり、今日の椚ヶ丘の卒業式には出させてほしいんです。本校舎との闘いも大事な思い出だから」

 

 

「ああ。手配しよう」

 

 

烏間がそう言った所で、磯貝が真剣な表情で口を開く。

 

 

「全員、起立!」

 

 

磯貝の号令に皆は立上がり、礼をする。

 

 

「烏間先生、ビッチ先生、氷室先生!本当にいろいろな教えてくださり、ありがとうございました!」

 

 

これには意表を突かれたのか、烏間先生は一瞬驚きの表情で染まったが、すぐに嬉しそうな表情を浮かべる。氷室先生とビッチ先生もだ。

 

 

(さぁて、卒業式だぜ、イエーイ…………だが、しかし。卒業式を無事に行うためには取り敢えず対策を施さなければならない。もう少し協力して貰うように頼むか…………)

 

 

そう考え、創真はとある人物に電話を掛けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

椚ヶ丘市民会館

 

 

「結城 創真!」

 

 

「はい」

 

 

名前を呼ばれた創真は、スッと立上がって理事長の元へ向かう。

 

 

「やはり、君は良い目をしている。将来大物になるような人物の目だ」

 

 

卒業証書を受け取った創真に、理事長はそんな言葉をかけた。

 

 

「まぁ、そうなりたいですね。いや、必ずなります」

 

 

「期待しているよ。卒業おめでとう」

 

 

「期待に答えれるように頑張ります」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほんと、立派になったわね~創真!」

 

 

「流石は自慢の息子…………うぅ」

 

 

べた褒めの母親。なんか泣いてる父親。創真的には恥ずかしいったらありゃしないのだが。

 

 

そして、隼の方も父親から一言貰っていた。

 

 

「取り敢えず、卒業おめでと、とでも言っておいてやる」

 

 

「はいはい、どーも。所で親父よ。あんた殺せんせーと何か接点があったんだって?何かあったのかよ?」

 

 

「さーな。ガキは知らんでよろしい」

 

 

「へーそうかい。大体想像はつくが、言わないでおくわ」

 

 

そりゃ助かるわ……………と、こっそり隼の父親は心の中で呟く。

 

 

「ねぇねぇ、隼!」

 

 

「碧海が呼んでるぞ。行ってきたらどうだ?」

 

 

本当に変わったなぁ、と隼は思う。前までならそんな言葉など掛けないはずなのだが。そして、碧海の方へ向かうと何か箱を渡された。開けてみて、と言うので開けると…………十字型のネックレスが入っていた。

 

 

「これ、プレゼント。創真君と私とお揃いだよ~」

 

 

「へー……………中々良いセンスじゃねぇか。ありがとよ。宝物にするか」

 

 

「フフ、どーいたしまして!あ、そうだ!創真君と写真撮ろうよ!私達3人、卒業しましたよ記念にさ!」

 

 

そして、電光石化の如く創真を連れてくる。ホリーにカメラを渡して、3人で並ぶ。

 

 

「行くよ~はいっ、チーズ!」

 

 

シヤッター音が2、3回鳴る。

 

 

「うんうん!いい感じだね!」

 

 

碧海は満足げ。

 

 

「ま、悪くないね」

 

 

「そーだな」

 

 

創真と隼も何処か満足げだ。

 

 

その時─────────────

 

 

「取材だ取材だ!」

 

 

「あ、いたぞ!」

 

 

マスコミ乱入。

 

 

「どど、どうしよう創真君?」

 

 

「ご安心を。父さん、よろしく!」

 

 

「やれやれ……………卒業式位引っ込んでいてもらいたいね…………」

 

 

創真の父親は指をパチンと鳴らす。

 

 

その瞬間、何処からか湧いて出たのか、黒服の男達がE組の面々とマスコミとの間に体を張って壁を作る。創真の父親の会社の部下の皆さまである。創真の父の召集で集まったのだ。

 

 

「な!?じ、邪魔をするな!」

 

 

「どけよ、くそ!!」

 

 

「「「……………………………」」」

 

 

黒服の男達は無言を突き通す。すると、今度は旗を持った生徒達が現れ、カメラによる撮影からもブロックする。その生徒達の先頭にいたのは浅野だった。

 

 

「おやぁ?わざわざ助けてくれるのかい?」

 

 

「勘違いするな結城 創真。かつて父に殴られそうになったときに助けてくれたE組の教師に頼まれたからやってるだけだ。あの人には借りがあるからな」

 

 

「よく言うよ。氷室さんに頼まれなくても、見捨てたら支配者として恥となるとか言って助けるだろうに」

 

 

「フン………」

 

 

そのまま玄関前にあったバスに乗って、無事に脱出。こうして、椚ヶ丘中学からも無事に卒業したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そっからは早かった。賞金300億円は速やかに支払われた。殺せんせーのアドバイスブックに、大金頼りに生きるようじゃ良い成長はできないぞ、と書かれていたので…………お金に目が眩んでいた前原、中村、岡島の手から札束を没収。学費や一人暮らしの頭金だけ頂いて、返却を決定した。こっそりすくねていたホリーとキバットの手からも没収。さらには、貰わねぇなら俺にくれ、いや俺だ、と乱入してきた創真と隼の父親たちの手からも没収。しかし、全部返金した訳ではなく、ちょこちょこ寄付したり、あとは良い買い物をした。

 

 

そして、三日月が崩壊を始めたそうだ。何年かしたら、爆発する前と似た感じになるらしい。柳沢は生き延びていたらしいが、もう1人では何もできないらしい。こんな感じで、創真らは高校生となった。創真は、この高校時代にとある暗殺者と会うのだが…………それはまた今度話そう。

 

 

そして─────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あれから7年の2021年へと舞台は移動する。




THE final story 6/2 PM 22:00


最終回。創真や碧海、隼に氷室やホリー達はどうなったのかな?


お楽しみに!


それと、次作の準備のために、7年後を2021年とさせてもらいました。多分…………問題はないはずです………………多分。


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未来編
第172話(最終話) 創真の時間


完結!!終わり方には色々迷いましたが、後悔はない!


彼はいつも通り6時に起きた。1分1秒たりとも遅れず。

 

 

「んー、気持ちの良い朝じゃないか」

 

 

彼は静かに起き上り、朝食の準備を始める。簡単な朝食を作って、リビングに座ってテレビをつける。まぁ、特に面白い内容はないかな、と思っていたが…………

 

 

『さて、今日は7年前に起こった三日月の爆発の事件について、残されていた謎について解説しようと思います!』

 

 

それを聞いた彼は盛大にむせた。

 

 

『7年前、三日月を破壊した超生物が中学校に潜伏していました。その生物の暗殺が完了したあとに、奇妙な動きがあったのです』

 

 

『それはどういうことでしょう?』

 

 

別のゲストの人が尋ねる。

 

 

『はい。奇妙な出来事は2つありまして……………………1つは、内閣が突然辞任した。2つ目は、各放送局のマスコミの中で、その超生物の受け持っていた生徒達に関わった殆どの人達が地方に左遷されているんです』

 

 

『はぁ…………1つ目は当然なのでは?その超生物がいたという事実を隠していたのですから』

 

 

『確かにそうかもしれません。しかし、一部の政界の人達はそれを否定しています』

 

 

『彼等はなんと?』

 

 

ここでキャスターの人は一呼吸置いて云う。

 

 

『何やら、強大な力が外部のとある人物から働いたと言っております』

 

 

『強大な力、ですか。その外部の人物は誰なのか目星は付いているんですか?』

 

 

『いいえ。我々も調査しましたが、残念ながら判明しませんでした』

 

 

『それで、2つ目はと言うと…………?』

 

 

『多くの人は理由も曖昧で、半ば強制的に左遷させられたそうです……………私の見解では、恐らくこちらも強大な力が働いたと思われます』

 

 

『もしや、これも先程と同一の人物が…………?』

 

 

『それも不明ですが、同時期に起こっているため、その線も高いでしょう。ですが、手掛りが一切見つかりませんでした。CMの後、さらに詳しく解説していきます』

 

 

彼はテレビを消して、身支度を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高速道路を、世界に数台と呼ばれているライカンが走る。その美しく赤いボディは見るものの目を一瞬盗んでいった。そして、 10分後、横浜の一等地にそびえ立つ黒いビルに到着した。車を停めて、彼はそのビルの中に入っていった。受付の人に挨拶をして、最上階まで直行エレベーターに乗る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最上階の社長室につくと、既に4人の人物と、1匹の蝙蝠が待ち構えていた。

 

 

「遅いよ創真~」

 

 

白いロングコートを着ているホリーがゲームをしながら言い、彼─────────創真は、定刻通りだろうが、と言い返す。

 

 

「しかし、羨ましいですね。大学卒業したらいきなり最高責任者とは。フフ、私も剥奪を狙いましょうかね~」

 

 

「言ってくれるじゃないですか、氷室さん。しかし、あなたも副社長なんだから他の人から見たら中々羨ましがられてますよ」

 

 

「じゃ、私も社長の座を狙うー!」

 

 

「流石に調子乗り過ぎでは……………?」

 

 

碧海も空気を呼んでか名乗り出て、デュオがあきれたように呟く。創真が社長になって既に1ヶ月。首領の創真の元で、企業は世界にどんどん名を轟かせていった。創真が社長、氷室は副社長、ホリー、デュオ、キバット…………………も一応(?) SPに。そして碧海は念願の秘書に。

 

 

「そういや、隼の奴も調子はどうなんだ?」

 

 

キバットの質問に碧海が答える。

 

 

「もうゲーム製作会社で色んな案を出してるらしいよ。何か大手からスカウトも受けてるとか受けてないとか」

 

 

「ふーん。ゲームと言えば、この前面白い人に会ってさ。聞きたい?」

 

 

創真に興味津々の目をみせる一同。

 

 

じゃ、話そうかなと言って、創真は話始める。

 

 

「この前、茅場さんって人に会ってね。その時に、あと1年後に発売予定のゲームをやらせてくれたんだ。中々面白かったよ。ヘルメット的なゲーム機を被って遊ぶんだ。その仕組みは今発達中のフルダイブ技術だとよ。詳しく聞いたら、良い案を思い浮かんでね……………医療用の機械にその技術を転用する案を思い付いた」

 

 

「ほぉ…………その医療用の機械はどんな効果で?」

 

 

「体感覚を完全にキャンセル……………あー詳しく言うとね、例えば激痛を伴う薬を投与されても、実際に体には痛みがあるけど、本人の意識的には感じない……………的な?ちなみに、もう製作段階」

 

 

(((やることが早い!)))

 

 

「作り終わったら、さっそく病院に置いてもらって、難病の治療とかに役立ててもらうよ」

 

 

「流石、創真……………やることが僕のスピード以上に速すぎる……………」

 

 

感嘆の声を漏らすホリー。

 

 

「そういや、倉橋とはどうなのよ?」

 

 

「色々と落ち着いたら結婚かな」

 

 

創真はさらっと云う。

 

 

「絶対、式に呼べ!!」

 

 

「分かった分かった。だから、静かにしたまえホリー。さて、そろそろ仕事の時間だ。今日も仕事が山積みだ」

 

 

「はーやだやだ。そう言えば、創真君。その遊んだゲームってどんな名前?」

 

 

「え?確か……………名前はソードアー」

 

 

「社長!!」

 

 

突然、自分の社員が駆け込んできた。

 

 

「し、社長!どうか御力添えを!」

 

 

「う、うん。何がなんだかよく分からんが………良いよ。じゃ、行こうか」

 

 

創真らは歩き出す。かつての恩師の教え通り、1歩ずつ確実に。

 

 

(………………見とけよ、殺せんせー。僕の進撃を、な)

 

 

最後に、彼の名をもう一度言おう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「結城 創真。E組の暗殺者さ」

 

 

The end───────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Souma will come back




THE New story 2020年 4/1 PM 22:00


スマホのカレンダーに書いておこう!東京オリンピックの年、って覚えるのも良いかも?


そして、


THE special story 6/4 PM 22:00


遂に本編完結!本当にありがとうございました!


はじめての作品にしては評価なども中々の物だったし、色々やりたいことをたくさんできました。


これも、皆さんの応援のお陰です。


これで、物語は一段落つきますが創真の物語は終わりません。むしろ、これからが本番です!


これから受験対策へ入りますので、暫くの間は投稿できません……………が、しかし!予告通り、僕はカムバックします!


必ず………………です!


それでは、最後に……………この作品の主人公達が、あなたの心の中に残り続けてくれる事を願ってます!


今度は『デスゲーム』の中でお会いしましょう!


それと……………言い忘れてたけど、コラボ編も月曜からやるので、暇なら覗いてみてくださいな。


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超コラボ編 死の果実 =Dead apple
#1 文スト好きの天才


お久しぶり!


コラボ、スタート!


ルークside

 

 

「あーあ…………なんで俺まで付き添わなければならないんだか……………」

 

 

「もう、文句言わないの!」

 

 

 

 

おっす、ルークだぜ!又の名をノーネームとも言う暗殺者だ。今俺を叱ったのは、フィーベルだ。

 

 

コラボの話…………見てない方は、『忍を知らぬ、名も無き暗殺者』を見てくれれば良いんだが………………簡単に纏めると、この前出会った謎の魔術を使う少年、創真とか言う奴とあった。

 

 

強そうだったので、戦ってみたが…………やはり強い。強敵だった。

 

 

今度はキョウヤと一対一で戦わせたが、キョウヤが────────になりそうだったので止めた。

 

 

するとそこへ、ホリーとデュオ、そして……………コウモリもどき?が現れた。そして、アルザーノ帝国魔術学院に暫く居させてもらうと言う。既に許可は取ったとか。

 

 

彼曰く、自分の世界の夏休みを利用して遊びに来てるらしい。

 

 

するとシスティーナが、学院の場所を自ら案内すると名乗り出た。創真は秒でよろしく~…………って言ってた。

 

 

で、ルミアとリィエル、そして何故か俺とキョウヤも同行する事になった。

 

 

「良いじゃろ、それくらい。それに、皆で登校するのは楽しいじゃろ?」

 

 

「まぁ、そりゃそうだがよ…………あー暇だなー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わっ!!」

 

 

「おわぁ!?」

 

 

ルークは飛び上がる。

 

 

案の定、後ろには創真がいた。

 

 

「アーッハッハッハ!面白い反応!」

 

 

「て、テメェ創真!何しやがる!?」

 

 

「暇だなーって言ってたから。退屈しのぎになったろ?」

 

 

「ざっけんな!て言うか、俺に気配も感じさせず、この距離までよく来れたな?」

 

 

「フフーン。鬼教官に鍛えてもらったからね。君達と鍛え方が違うのさ。これが僕の本気」

 

 

「……………うぜぇ」

 

 

ルークはボソッと呟くが、創真は不敵な笑みを浮かべるだけで何も言わない。

 

 

「さぁさぁ、お喋りはこれくらいにして…………案内お願いね」

 

 

「任せてください!それと、ホリー君達は?」

 

 

「二度寝」

 

 

「「「……………………」」」

 

 

何とも言えぬ空気が流れる。

 

 

「………………行こうぜ」

 

 

ルークがそっと促した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えば、創真殿」

 

 

「ん?」

 

 

雑談交えながら、学院に向かって歩いていると、キョウヤが創真に話し掛ける。

 

 

「この前披露したあの未知の魔術…………アレは何なのだ?」

 

 

「私も聞きたい」

 

 

リィエルも興味津々。

 

 

「あー…………これ?」

 

 

創真は懐からカードを取り出す。そのカードには発展した都会の写真、そして青い満月が輝いていた。

 

 

「僕専用の魔術、『文豪の世界』。説明終了」

 

 

「ち、ちょっと短すぎだろ?」

 

 

「えー?だって、ルーク君、君はあのノーネームでしょ?危なっかそうだから手の内教えたくないし。あと、ノーネームってネーミングダサくない?」

 

 

グサッ!

 

 

「おい…………今のは中々効いたぞ。ついでに作者にも!」

 

 

「ん?じゃあ、作者には謝っとくが君にはいいか」

 

 

「おい!」

 

 

ノーネームを無視し、サービスだ、と説明を始める。

 

 

「この前披露した魔術を発動させる。簡単に言うとそんな感じ」

 

 

「強い魔術だったね…………他にもまだあるの?」

 

 

「中々良い質問だね、ルミアちゃん。うん、他にもあるよ。ま、それは後のお楽しみ」

 

 

「俺からも質問良いか?」

 

 

ルークは口を開く。

 

 

「お前、最初に放ったファイガを直撃したのに、無傷だったよな?あれはどういうからくりだ?あれも魔術か?」

 

 

「……………だから、それ含めて自己紹介の時に全分教えてあげるよ。で、学院と言うのはあれ?」

 

 

「そうだよ!ようこそ、アルザーノ帝国魔術学院に!」

 

 

「へー……………中々綺麗だな……………お、来たね」

 

 

「…………この音…………何処かで聞き覚えが…………」

 

 

フィーベルの言う通り………………あの爆音が聞こえてくる。

 

 

もうスピードで赤いバイクが迫ってくる。

 

 

「いやっほー!!皆さん、おっはよー!」

 

 

火花を散らしながら停まる赤いバイクには、ホリーが。遅れてデュオもやって来る。

 

 

「いやー二度寝して遅刻するところだった。もう、デュオ君が夜までゲームしてるから…………」

 

 

「お前がやろうと言い出したんだろうが…………」

 

 

よく性格が正反対の彼等がコンビ組めてるな、と改めて皆は思う。

 

 

すると、ホリーのフードの中にいたコウモリが飛び出す。

 

 

「お!この前の可愛いお姉ちゃん達じゃねぇか!改めて自己紹介するぜ!俺様の名はキバット!ウヘヘ、可愛い……………」

 

 

創真はキバットを拘束した!

 

 

「離しやがれ創真!こんな可愛いお姉ちゃん達がいるんだぞ!」

 

 

「何処の世界でも女に弱いな、全く………ま、こんな奴だが根は良い奴なんで仲良くしてやってくれ」

 

 

「う、うん」

 

 

「可愛い………………」

 

 

リィエルはキバットを気に入った模様…………………。

 

 

「んじゃ、僕は学院長に挨拶しに行くんで、さっき行ってて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

「ルークとキョウヤと戦った?よく生きてたな、お前」

 

 

暫く担任となるグレン先生に話し掛けられた。

 

 

「そんなにあの2人強いんですか?」

 

 

「………………ああ」

 

 

「ふーん。そーなのかな………………」

 

 

…………倒そうと思えば、倒せたとは言わないでおこっと。まぁ、倒せてもかなりこっちも深傷は負うな。直ぐ治せるんだがね。

 

 

「待ってよ、グレン!」

 

 

振り向くと、ロングヘアーで白い髪のレディが駆けてきた。

 

 

「なんだセラ?」

 

 

「て、転校生が来たって聞いたから見てみたくて………」

 

 

……………別に転校はしてないのだが、そう言うことにしとこう。

 

 

「君が転校生か~。私はセラ=シルヴァースって言うよ」

 

 

「僕の名は 創真。よろしくです!」

 

 

「創真君………良い名前だね!よろしくね!」

 

 

はーい、よろしく。

 

 

「んじゃ、そろそろ教室に行くぞ。時間が迫ってるからな」

 

 

グレンに促され、僕らは教室へと足を進めた………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

 

 

教室にて

 

 

「てな訳で、自己紹介よろしく~」

 

 

グレンは睡眠開始。

 

 

「やれやれ…………僕の名は創真。多分、魔術使い相手なら最強」

 

 

「「「!?」」」

 

 

いきなり最強宣言。

 

 

「何故か、と思うよね?だから、説明しよう僕の固有魔術『文豪の世界』を」

 

 

すると、手にもつカードが青く輝き始める。

 

 

「では、そうだね…………ノーネーム君!」

 

 

え、こいつそれを知ってんの的な空気が流れる。

 

 

しかし、創真はそんな事を気にせず続ける。

 

 

「何か適当に魔術で僕を攻撃してもらって良いかい?」

 

 

「あーはいはい。分かったよ創真大先生よ」

 

 

ルークはスッと立ちあがり…………

 

 

「《業火よ》」

 

 

火の玉が創真向けて襲い掛かかる…………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『人間失格』」

 

 

そう呟いた創真の指先が火の玉に触れた瞬間………………青い文字羅列が火の玉を包んだかと思うと………………青い粒子となって消えた。

 

 

「「「………………………」」」

 

 

皆は言葉が出ない。

 

 

「見ての通り…………この魔術は『あらやる魔術の効果を無効化』だ」

 

 

「ま、マジかよ………そんなの最強じゃねぇか!」

 

 

流石のグレンもこれには驚かされた。

 

 

「正し、弱点もあるんだよな~」

 

 

ホリーがのほほんと云う。

 

 

「この人間失格を使うとね…………って、ほら!」

 

 

ホリーは創真に飛び掛かる。いつの間にか創真が何かを飲もうとしていた。

 

 

「離せホリー!今、この国で流行なのだよ!ペンキを飲んで自殺する方法が!」

 

 

「んなの流行るか!おい、創真!」

 

 

「………………はっ!あ…………………またか。やれやれ」

 

 

創真は大きなため息をつく。

 

 

「い、一体何が…………?」

 

 

「セラさん、何か不審者をみるような目をするのやめてくれ………この人間失格…………希に副作用的な感じで、人格が自殺マニアになるんですよ」

 

 

「はぁ!?何だよその副作用!?」

 

 

「グレン先生がそう突っ込むのも分からなくないんだけどね………………僕も意図的に発動してる訳じゃないからね…………」

 

 

どうしてこんな変な副作用がつくのやら、と創真はため息をつく。

 

 

「さて、気を取り直して次行こう!次は……………これだね」

 

 

創真は懐から眼鏡を取り出す。よーく見ると、緑色に光っている。

 

 

「これは……………?」

 

 

「ではでは、試しにフィーベルちゃんの趣味を当ててみよう。行くよ………………『超推理』」

 

 

超推理……………それで俺の過去を当てたのか?

 

 

どういう仕組みなんだ………………ルークも注目するなか、暫く経ち、創真は眼鏡を外す。

 

 

「ふむ……………君の趣味は小説を書くことだね?」

 

 

「!!どうしてそれを…………!?」

 

 

「指先を観察して分かった。何かよく文を書いているような手つきをしていたからね。で、後は今まで話してきた会話を踏まえて、そういう結論に至った。ちなみに、この副作用としては、この能力を使った直後、甘い物が食べたくなる」

 

 

(((何か微妙な副作用………………)))

 

 

全員苦笑い。

 

 

「後は、汚れっちまった悲しみに、羅生門……………ま、これ要は重力操作とデュオの黒獣そっくりのだから省くとして……………あとは、『君死給勿』。ま、これ治療系のやつ。ただし、回復するには瀕死状態じゃなきゃダメなんでね…………最後に細雪か。これは実際にやってみた方が早い」

 

 

すると、辺りに緑に発光する雪が降り始める。

 

 

「き、消えた!?」

 

 

……………創真の姿が背景に溶け込んだ。

 

 

「キョウヤ、何処にいるか分かるか?」

 

 

「分からぬ…………今回は気配を完全に消されている。もしや、創真殿は暗殺者なのか……………?」

 

 

「元、ね」

 

 

創真の小声がしたかと思うと、キョウヤの後ろに立っていた。

 

 

「元……………?それは一体どうい」

 

 

「それ以上はダメだねぇ」

 

 

キョウヤは口調は穏やかなものの、創真から発せられる特有の殺意に気付き、思わず口を閉じた。ルークも、やはり只者ではないと、直感的に感じていた。

 

 

他の皆は気付かなかったのか、不思議そうにしていたが。

 

 

「まぁこんなもので。てな訳で、暫くよろしく~」

 

 

(………あの殺意は……………)

 

 

皆が創真に好感を持つなか、キョウヤとルークだけは腑に落ちない表情を浮かべていた。




THE NEXT story 6/5 or 6 PM 22:00


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#2 天才は元暗殺者である

今さらだが、これは創真が高校生の時の話なんでよろしく~。


「いや~中々この世界も悪くないね」

 

 

この世界に訪れて数日。創真は中々気に入った模様。

 

 

「にしても、君は暗殺者なんだね。そうには見えないが」

 

 

最後のはいらねぇよ、とルークは云う。

 

 

ちなみに、今はフィーベル、ルミア、リィエルを待っている。ホリー達は朝御飯だとか。彼等と一緒に登校するのが当たり前な感じになっていた。

 

 

「創真殿、1つ質問よいか?」

 

 

「ん?なんだい、キョウヤ君?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お主、何者じゃ?」

 

 

キョウヤは鋭い目つきで訊ねる。

 

 

「お主が自己紹介の時に見せたあの殺気……………只者ではないのを感じた。まるで、『暗殺者』のような」

 

 

「………………………」

 

 

「創真殿……………お主は……………」

 

 

その言葉は最後まで続かなかった。何故なら首元にナイフが突き付けられていたからだ。殺気も感じさせず、さらに恐るべき速さ。もし、寸土目でなければ殺られていた……………かも知れない。

 

 

「そう、君の言う通り僕は元、暗殺者だ。ターゲットはマッハ20のタコ型超生物……………その超生物………………名は殺せんせーは、学校の担任を持っていた。で、生徒兼暗殺者である僕らはその命を狙っていた」

 

 

なるほど、と2人は納得する。道理で強い訳だ。

 

 

創真はナイフを降ろして続ける。無論、殺す気など最初から微塵もないのは言うまでもない。

 

 

「結局、殺せんせーは僕らの手で殺したんだけどね。殺せんせーは超良い先生でさ。君達にも会わせてあげたいもんだねぇ…………」

 

 

「…………相当良い先生なんだろうな」

 

 

「会ってみたいものじゃな…………殺せんせーとやらに」

 

 

すると、そこへ………………

 

 

「お待たせ~!」

 

 

システィーナ達が漸く来た。

 

 

「ま、他の皆には内緒でよろしく~」

 

 

「りょーかい」

 

 

「御意」

 

 

そう言って、3人はフィーベル達の元へ足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ね、寝坊!?」

 

 

「う、うん…………グレンからさっき連絡が来て……」

 

 

セラがアハハ…………と苦笑いしながら云う。

 

 

「ほんと、ダメ講師だな。まさに、ろくでなし魔術講師って奴だな」

 

 

キバット、原作のタイトル回収。

 

 

「やれやれだ…………暇だから、僕が授業しようか?」

 

 

「え、創真君が!?出来るの?」

 

 

ルミアが驚きの余り訊ね、勿論!と創真は云う。

 

 

「僕は魔術をほぼ完璧に理解した。あっちの世界でも魔術の事ばかり考えてたよ~」

 

 

「ほー。じゃ、創真大先生、やってみろよ」

 

 

「良いだろう。ルーク君にすべての質問を当ててやる」

 

 

「面白れぇ。全部答えてやらァ!」

 

 

ルークの闘争心に火がついたその時…………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バァン!

 

 

銃声。

 

 

「動くなよテメーら」

 

 

扉の方には、10人程の男が立っていた。

 

「ッッ!!お前ら、天の智慧研究会の手先か!?」

 

 

「ご名答。ここに珍しい異能者がいると聞いた……………そいつを差し出せば何もしねぇ」

 

 

異能者………………あぁ、それは私だとルミアは分かる。

 

 

異能者とは、悪魔のように嫌われる存在なのだ。

 

 

知っている者は数少ないが、ルミアは異能者なのだ。

 

 

(私のせいで皆を巻き込むわけには………!!)

 

 

ルミアが名乗り出ようとしたその時………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、君達~」

 

 

それよりも先に口を開いた者がいた。

 

 

創真だ。

 

 

「何だこのガキ?」

 

 

「僕は合理的主義でね。手短に終わらそう。お前がその銃で1発撃って、そしておまえらを僕が隣町までふっ飛ばす。それで良いだろ?」

 

 

「何だと!?」

 

 

挑発するような言動。銃口が創真に向けられる。

 

 

「ダメだよ創真君!君が………!!」

 

 

「ルミアちゃん。君が名乗り出る必要はない。いや、出るな」

 

 

「!!」

 

 

「さぁて、早く撃ってみた前よ。その銃で」

 

 

創真は指先で銃をツンツンと、つつく。

 

 

すると…………………

 

 

「な、何だ…………銃が重い…………!!」

 

 

銃口が意思に反して下がっていく。

 

 

「くそ……………お前ら!こいつを殺せ!」

 

 

「《羅生門…………連門顎》」

 

 

そう唱えた瞬間………創真の姿が、襟付きの黒外套に変わる。

 

 

そして、外套から黒獣が飛び出す。

 

 

「う、うわぁ!?」

 

 

一瞬で5人を吹き飛ばし、気絶させる。

 

 

しかし、後ろにいた残りの4人が引き金を引く。

 

 

が、創真は至って冷静。

 

 

「《空間断絶》」

 

 

すると、赤い波紋が空中に出現し…………弾が床に落ちた。

 

 

「ば、馬鹿な…………何だその技は!?」

 

 

「さぁ、何でしょー?《重力操作》」

 

 

創真の姿が、ショットコートにベスト、そして黒いロングコートに。特徴的なソフト帽子も忘れていない。

 

 

「ち、調子に乗るな!」

 

 

頭的な男自らナイフを持って襲い掛かる………!!

 

 

「やれやれ…………懲りないと言いますか」

 

 

創真はヒョイヒョイと避けて、ため息をつく。

 

 

「チィ!ちょこまかと!」

 

 

「上に参りまーす」

 

 

すると、創真の体が上へ上昇。天井に足をつけた。

 

 

「重力操作か……………!?」

 

 

「さっき言ったやろ?」

 

 

そう言いながら、創真はそこから飛び降りる。

 

 

ドォン!!

 

 

傍にいたボスや、後ろにいたセラも後ろにバックステップをとる。

 

 

「「「!!」」」

 

 

そして、驚愕した。

 

 

床が抉れているのだ。天井から落ちた衝撃で。

 

 

説明すると、重力操作で自分の質量を増やしたのだ。

 

 

「さぁ……………重力と戦いてぇ奴はどいつだ!?」

 

 

「ッッ!!」

 

 

一団は気迫に押され、じりじりと後ろに下がる。

 

 

「逃げちゃうのかい?そんな腰抜けなら、興味ないや。じゃ、御二人さん、よろしく~」

 

 

「「「へ?」」」

 

 

後ろを振り向く暇もなく、男達は意識を奪われた。

 

 

気絶させた帳本人達、ノーネームとキョウヤはため息をつく。

 

 

「ったく…………お前、わざと手加減してただろ?お前なら全員を倒すくらい楽勝だろ?」

 

 

「さてさて、どうでしょう~?」

 

 

「お主………………戦いを楽しんどるのか?」

 

 

「戦い?キョウヤ君、こんなの戦いとは呼ばない。ただの作業さ。邪魔者を取り除く、ね。さーて、邪魔者は消えたから授業する?」

 

 

「「「切り換え早すぎだろ!?」」」

 

 

全員から総突っこみを創真は受けた。

 

 

「ワリィ、ワリィ。遅れちまった」

 

 

そこへグレン先生到着。

 

 

「まったく、先生がいない間大変だったんですからね!?」

 

 

フィーベルがグレンに喰って掛かる。

 

 

「悪かったって。でもまぁ、良く分かんねーけど、無事に解決したなら良いじゃねぇか……………って、何か床抉れてるじゃねぇか!?」

 

 

「ホリー、直せる?」

 

 

「直したよ」

 

 

床はピッカピカの新品に直されていた。

 

 

「ねぇ、先生。折角だから、僕が授業しようか?」

 

 

「そりゃ、願ったり叶ったりだが…………何教えんだ?」

 

 

「折角なんで、この文豪の世界の仕組みを……………これは、魔術と皆は思うでしょ?でもね、僕の世界ではこう呼ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『異能力』……………と」




THENEXT story 6/6 or 7 PM 22:00


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#3 異能力者と異能者

今回は短めかな?


「異能力……………お前、まさか異能者か?」

 

 

「ルーク君、0点。廊下に突っ立とっとけ」

 

 

「ああ!?てめぇ、さっきから聞いてりゃ………」

 

 

ギャーギャー騒ぐノーネームを無視しつつ、創真は解説を続ける。

 

 

「この世界で嫌われているらしい異能者とは少し違うな。例えば、誰か先程の戦闘で気づいたことはないかい?」

 

 

気づいたこと……………皆は頭を回転させる。

 

 

「あ、そういや……………羅生門か?お前、初めて俺の前で使ったときは詠唱が長かったが、今回は羅生門、って言うだけで発動してたな」

 

 

「ほう。中々鋭いじゃないか、ルーク君。褒めて使わそう」

 

 

上から目線が大変うざい。ルークの心境に気づいていて、あえて無視でもしてるのか、創真はルークの睨みを無視して続ける。

 

 

「これが、異能力バージョン、本来の詠唱的なの。魔術として唱えるなら…………『死を畏れよ。殺しを畏れよ。死を望む者、等しく死に。望まるるが故に』」

 

 

すると、創真の外套から黒獣がゆらりと現れる。

 

 

「君達の使う魔術の特性を理解して、何となく作ったんだよね~」

 

 

そう言いながら、創真はチョークを持って何やら難しそうな式やら用語をを黒板に書く。

 

 

「この、文豪の世界…………… 魔術バージョンは、君達でもやろうと思えば再現できる。相当ムズいが。だが、本来の仕様…………異能と呼ばれる状態のは、僕しか使えない……………ま、図に書くとこんな感じ…………………分かる?」

 

 

「「「無理だわ!?」」」

 

 

「いや、俺でも無理だぞ……………何か見たことない用語まで書いてあるじゃねぇか!?」

 

 

ノーネーム=ルークの知識でも書いてある複雑な式は分からなかった。

 

 

「ま、良いや…………所で、そこの気絶してる人達を早く連れてったら?」

 

 

ここで、皆は漸くその存在に気づいた………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み、創真らは中庭にいた。

 

 

「やれやれ。文豪の世界の理解は難しいか」

 

 

「お前の説明が難しいんじゃねぇのか?」

 

 

「これが1番分かりやすい筈だ、キバット」

 

 

そう言いながら創真は文豪の世界のカードをハンカチで拭く。

 

 

「しかし………………今さらだけど、ショックだったよ」

 

 

「何がだホリー?」

 

 

「グレンが転勤してなかったからだよ!!あーもう、何でいるのさ!!ねぇ!?」

 

 

「いや、知らねぇよ。てか、本当に今さらだな…………そもそも何でグレン先生がそんなに嫌なんだ?」

 

 

デュオが理由を訊ねると……………………。

 

 

「だって、性格が不真面目じゃね?」

 

 

まぁ、それは完全に否定は出来ないが……………………お前(ホリー)もそこまで真面目には見えないのだが。

 

 

「あ、いたいた!創真君!」

 

 

誰だ、と後ろを振り向くと声を掛けたのはルミアだった。

 

 

「ん?どうかしたの?」

 

 

「まず、さっき助けてくれたお礼を言おうと思って」

 

 

「何だそんなことか…………別に良いんだよ。で、他にも何か聞きたいことがおありで?」

 

 

まず、って切り出した事からそう推測できる。

 

 

「うん…………………………あのさ……………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何で創真君は私が異能者って知ってるの?知ったような口振りだったし……………私、創真君には話してないからね」

 

 

「………………………………」

 

 

「そういえば……………お前、いつ気付いたんだ?」

 

 

ホリーも訊ねる。

 

 

「…………………別に、簡単なことさ。さっきの襲撃者達が、珍しい異能者を差し出せば何もしない、と言ったとき…………君の表情が曇ったのが見えたからさ」

 

 

「…………………凄い洞察力だね」

 

 

「超推理に頼らなくとも、この程度はね」

 

 

心理学を極めているに加え、暗殺教室でさらに磨かれた観察力に推理力。これらは色んな場面で役立つ。

 

 

「その通りだよ。私は異能者なんだ…………」

 

 

「さらに、深読みしようか?君は自分が珍しい異能者だから狙われる。そのせいで皆に迷惑が掛かると思っている…………………」

 

 

「ほんと…………創真君には驚かされてばっかりだよ…………私はここにいちゃダメなのかな……………」

 

 

「さーね。それは僕でも直ぐに答えは出せない。そもそも、君自身はどうしたいと?」

 

 

「………皆の命が危険にさらされるなら…………迷わず去る覚悟は出来ているつもりです」

 

 

(迷わず去る、ね…………………)

 

 

 

嘘だ、と創真は心の中で呟く。

 

 

恐らく、彼女自身は残りたいと思っている。今、それ言っても全力で否定すると思うがな。

 

 

「そう…………しかし、君は近いうちに知ることになるよ」

 

 

「??」

 

 

「ここがどれだけ良い場所か。いい人達の集まりか、とかね」

 

 

「????」

 

 

どういう意味だろう、とルミアは考える。ここが良い場所。いい人の集まり………………そんなのはずっと前から分かっているのだが。

 

 

「確かに君は僕の言ってることをもう感じている。まぁ、僕の勘では、これから起こる出来事でさらにそれを感じる、って事。その瞬間が来たと思う日を見つけろ。これは宿題だ」

 

 

「…………宿題?」

 

 

「そう。その時を見つけられた時に君は」

 

 

……………自分の本当の願いを心の底から云えるだろうね。

 

 

「さぁて、お腹もすいたし学食でも行こうか?」

 

 

「え、あ、うん。ねぇ、創真君。今なんて言おうとしたの?」

 

 

「さぁ?」

 

 

「勿体ぶらずに教えてよ~?」

 

 

「んー、それはダメだねぇ」

 

 

そんなやり取りを続けながら、彼等は足を進めていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ノーネームとキョウヤ、グレンは秘密裏にアルベルトと言う帝国宮廷魔導師団特務分室所属の執行官と会っていた。

 

 

「何だよアルベルト。わざわざここに来るほどまでの事があったのか?」

 

 

「ああ。ここ最近、妙な事件が起こっていてな……………魔術師が各地で奇妙な死を遂げている」

 

 

「奇妙って……………?」

 

 

ノーネームが訊ねると、アルベルトは一瞬目を伏せたが………………

 

 

「魔術によって殺されている。しかも、全員自分の得意分野の魔術でな」

 

 

「「「……………………」」」

 

 

怪しさ満天だ。

 

 

「既に、死んでいった魔術師は1000人を超えている」

 

 

それはヤバイな。

 

 

「それで、他には何か手がかりはないのかの?」

 

 

キョウヤが訊くと、1つだけあるとアルベルトは云う。

 

 

「その死体が発見される少し前には必ず……………………霧が発生している」

 

 

「霧………………………」

 

 

「これで以上だ。特務分室は、調査に乗り出しているが何の手掛かりも掴めん……………それで、お前らにも意見を聞こうと思ってな」

 

 

「残念だが、さっぱりだ」

 

 

「同じく、儂も……………ルークはどうじゃ?」

 

 

「………………………」

 

 

「ルーク?」

 

 

「!!……………分からねぇな」

 

 

「…………………そうか。また何か分かったら連絡する」

 

 

そう言い残し、アルベルトは去っていった。

 

 

「大量の魔術師の変死…………物騒な世の中だぜ」

 

 

「まったくじゃ……………」

 

 

グレンとキョウヤが大きなため息をつく。

 

 

そして、彼等は気付かなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノーネームが不敵な笑みを浮かべていたことに。

 

 

(さぁて……………そろそろ動くか)




THE NEXT story 6/8 or 9PM 22:00


次回からスーパーシリアス編です!


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#4 動き出した闇夜と正義

「『大量の魔術師が変死』…………ここもここで物騒だね」

 

 

あ、どーもこんにちは、又はこんばんは。

 

 

創真です。

 

 

今日はね、ルミアちゃん、フィーベルちゃん、リィエルちゃんにお茶会に誘われまして、僕はカフェに先に着いて新聞読みながら待ってるって感じ。

 

 

にしても、魔術師の変死……………死体が見つけられる前には必ず霧が発生している……………ふーん。

 

 

まぁ、僕を魔術師とは呼べるのかは曖昧だが、一応魔術師?それとも異能力者?

 

 

しかし、1000人近くとなると、何者かによる他殺と思われるが、誰が何のために?

 

 

これは捜査している人からすれば、大変だろうな。

 

 

「何を見ているんだ創真………………ふむ。魔術師の変死か………………」

 

 

「ま、そんなのどーでもいいっしょ。それより、今はお茶会楽しみ~!」

 

 

やれやれ。デュオとホリーはどうしてここまで違うんだか。

 

 

「しっかし、1000人ってのは規模が大きいな…………」

 

 

キバットもさすがに顔をしかめる。

 

 

「もしかして、この町でも起こるかもよ~?」

 

 

「不謹慎な事は慎めよ、ホリー。仮にここで起きても、ここには優秀な魔術師が何人もいる。危険を犯してまで、そんな所を狙うやつはいないと思うが」

 

 

「ま、そりゃそうか」

 

 

ホリーも適当に相づちをうち、この話は一段落ついた。

 

 

「ごめん、お待たせー!」

 

 

女子の皆さま、漸く登場。

 

 

「別に良いよ。ま、適当に座んなよ…………って、キョウヤもいるのか。チッ」

 

 

小さく舌打ちしやがったぞ、ホリーの奴。

 

 

「ルミア殿に誘われてのう…………儂はこういう場に来るのは初めてだから楽しみじゃ。ルークも用事がなければ来てほしかったのじゃが」

 

 

それはそれは。

 

 

ホリーも一瞬不機嫌になったが直ぐに切り換え、お茶会はスタートした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

 

 

それから色々話していって、話題は創真の住む町の事についてになった。

 

 

「ねぇ、創真君が住んでる町ってどんなところ?」

 

 

「今は椚ヶ丘って所に住んでるんだよね。まぁ、別世界の地名だから知らないよね。前まで横浜って呼ばれる都会に住んでたんだよね。そこの夜景が綺麗でさ。と、言うわけで写真持ってきました」

 

 

創真は懐から写真を取りだし、ルミア達に見せる。

 

 

「凄いきれい…………!」

 

 

リィエルが目を輝かせながら云う。

 

 

「うわぁ……………こんな景色始めてみた…………」

 

 

「うん、ほんとに凄い!」

 

 

ルミアもフィーベルも、その夜景の写真に目を奪われた。

 

 

「創真殿の世界では、都市の発展が異常と呼べるくらい進んでいるのじゃな」

 

 

「まぁ……………………そうかな?僕この世界の景色もすごく好きなんだよね~」

 

 

例えば何処が、とリィエルが訊ねると創真は笑いながら答える。

 

 

「凄いのどかな風景だからね。都会じゃ中々見れない。空気も美味しいしね~」

 

 

「確かに……………ここは空気が美味しい」

 

 

デュオも神妙な様子でうんうんと首肯く。

 

 

「それと、もう1つ良いところがあるぜ」

 

 

「それは何だホリー?」

 

 

創真が尋ねると、誇らしげにホリーは云う。

 

 

「この国には、美少女がすごく多」

 

 

成敗。

 

 

ホリーは拳骨を喰らい、テーブルに顔をめり込ませる。

 

 

「まったく、お主は変わらんの」

 

 

「そういうキョウヤは、誰か好きな人とかいるのか?」

 

 

キバットに訊かれ、キョウヤは一瞬思考が停止した。

 

 

「……………そういうのは考えた事がないのう」

 

 

「ありゃ。まぁ、恋愛を推奨する訳ではないが、青春を楽しんだ方が良いよ」

 

 

「創真殿は恋人が?」

 

 

「いるよ~」

 

 

「こういう奴を、お前らの世界で言うかは知らねぇが、『リア充』と言う」

 

 

「おい、こらキバット。余計なことを吹き込むな」

 

 

しかし、キバットは達者な口を止めない。

 

 

「ちなみに、そいつがラブラブで羨ましいときは、リア充爆発しろ、って言うんだぜ」

 

 

「ん。創真、爆発して」

 

 

「何てこと言いやがる、リィエルちゃん………」

 

 

可愛らしい少女から棘のある言葉を言われたからか、創真も多少はグサッと来たらしい。

 

 

「ちょ、リィエル!ごめん、創真君!」

 

 

ルミアは慌てて創真に謝る。

 

 

「いやいや。全ての元凶はこの蝙蝠だから」

 

 

「え?」

 

 

キバットは猛烈に嫌な予感がしてきた……………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このあと、めっちゃ説教された。

 

 

当然である(?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、その日の夜。

 

 

ノーネームはいつも通り仕事を終わらせていた。

 

 

「この片付け、ほんとめんどくさいんだよな……」

 

 

要は隠蔽である。血痕とか、もろもろ。

 

 

これ以上は言わせんといて。

 

 

「さぁて、そろそろ頃合いか?」

 

 

「何のだ?」

 

 

その声の方をゆっくり振り向くと、そこにはアルベルトやグレン、セラ、そしてキョウヤがいた。

 

 

「何だよ皆揃って。あ、もしかして魔術師の変死に関する事が何か分かったのか?」

 

 

「ああ。首謀者とされている男の名は『クローバー』と言う男らしい。そしてこの町に既に潜伏している………………」

 

 

アルベルトが実に事務的に告げる。

 

 

「そして、もう1つ分かったことがある」

 

 

そう言って、グレンは一瞬間を置いてから云う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その男をここに呼び寄せたのはお前だってな?」

 

 

 

「…………………………………」

 

 

「ノーネーム、いやルーク。お主はこの町で大量の死体を生むつもりか!?」

 

 

「何でこんな事を!?」

 

 

キョウヤとセラも声を荒らげるが、ノーネームは何も言わない。

 

 

「………………………………フッ」

 

 

突然、ノーネームは笑った。

 

 

「俺を止めれると思ってるのか?」

 

 

「「「!!」」」

 

 

殺気。何千人という屍を築きあげてきた殺し屋から発せられる殺気。

 

 

それはとてつもなく冷たく、残酷に感じた。

 

 

「お前………………一体何をする気だ!?」

 

 

「グレン、後ろを見てみろ」

 

 

「あ?」

 

 

後ろを見ると…………………………

 

 

「な!?」

 

 

霧が押し寄せてきていた。

 

 

そして、彼等は呑み込まれる。

 

 

「くそ………………回りが見えない!」

 

 

「それだけじゃないぜ。じゃ、頑張って生き残れよ」

 

 

そして、ノーネームの姿は消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、ついに来ましたか」

 

 

シルクハットを被った男がニヤリと笑う。

 

 

「さて……………果たしてこの町の魔術師はどうなることやら?」

 

 

彼───────────ジャティス・ロウファンはそう云った。




THE NEXT story 6/9 PM 22:00


感想とか、もろもろよろしくです(^_^ゞ


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#5 死の霧が生み出すのは───────

創真side

 

 

王の間という、僕専用の部屋にて、創真は蟹を見つめていた。

 

 

「で、ホリー。僕がちょっと前に作ったマシンクラブにどんな改造をしたの?」

 

 

最終決戦用に導入しようと検討して、結局叶わなかった、幻のマシン。

 

 

特徴としては、ハサミでロープを断ち切れる。

 

 

「いやね、暇だったのよ」

 

 

うん。

 

 

「だからね、ちょっと改造してみたのよ」

 

 

ほう。

 

 

「じゃ、その改造の成果を見せてくれるかい?」

 

 

「いいとも!このボタンを押すと………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プシャー

 

 

そんな音が響いたかと思うと、鋏から水が出てきた。

 

 

「このように、水が出るのさ!凄いだろ!」

 

 

「…………………………………」

 

 

ホリーは、僕が恐らく無の表情を浮かべているのに気付いたのだろう────────

 

 

「す、凄くない?」

 

 

─────────声が若干引き攣っている。

 

 

「………………………………まぁ」

 

 

返す言葉がない。

 

 

「フフフ。創真、この話はもう終わりにしないかい?」

 

 

賛成だ。お互い気不味い。

 

 

ホリーはマシンクラブを格納庫にしまい、僕から背を向けてゲームを始める。

 

 

「やれやれ。すっかり傷付いちまったな?」

 

 

「うるさい、キバット!くそぉ……………創真にゃ敵わん。俺の方が何十万年以上も生きてるのに……………」

 

 

まぁ、それはあくまで人生経験が豊富なだけだ。

 

 

長く生きているからといって、全ての分野で勝てるとは限らないのだよ。

 

 

「……………暇だな。ちょっと、あっちで珈琲でも飲んでくる」

 

 

そして、デュオの姿が消える。

 

 

「そう言えば、ホリー。デュオって珈琲好きだよね?」

 

 

「そうだね。本人曰く、苦いのが落ち着くだとよ。創真、お前はデュオが珈琲に角砂糖とか入れてるの余り見たことないだろ?」

 

 

確かに。

 

 

「僕も珈琲は嫌いじゃないけど、何も入れずに飲むのはちょっと苦すぎかな………………うん」

 

 

すると、デュオが戻ってきた。

 

 

「早いねデュオ。珈琲飲むの」

 

 

「飲んでない」

 

 

何故に?

 

 

「創真、ホリー、デュオ、キバット。今すぐ武器をもって行くぞ」

 

 

「…………………緊急の用件か?」

 

 

「ああ。3分で支度を済ませるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ…………………濃い霧…………」

 

 

数時間前までいた町が、濃い霧に覆われていた。

 

 

「これって、魔術師が死ぬっていう霧だよな………?」

 

 

「恐らくな」

 

 

その場の雰囲気が重くなる。

 

 

「どうする創真?」

 

 

「先ずは状況確認がしたい。だから、これを使う」

 

 

そう言って創真が取り出したのは、イカ型マシン、マシンスクイッド。

 

 

「それは良い選択だ。それに内蔵されているナゲット型偵察機は小型。隠密に探るならもってこいだな」

 

 

当然、それも分かってるさキバット。

 

 

こうして、創真らも行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、フィーベル達も異変に気付いていた。

 

 

「あの霧…………………今、噂になってる魔術師が死ぬ前兆に現れる霧なのかな………………?」

 

 

ルミアが窓越しに外を眺めながら呟く。

 

 

「どうしよう……………ここにいた方が良いのかな?」

 

 

現在、フィーベルのご両親は家を留守にしている。

 

 

そのため、今この場にいるのはルミア、フィーベル、リィエルの3人のみ。

 

 

「2人はここにいて」

 

 

リィエルが2人の意表を突くことを突然言い出した。

 

 

「え、リィエルはどうする気!?」

 

 

「静かに」

 

 

リィエルは傍に立て掛けてあった大剣を取り出す。

 

 

「殺気を感じる……………この家にもういる」

 

 

「「え!?」」

 

 

「2人は逃げて」

 

 

「だ、大丈夫よそれくらい!私達だって戦えるんだから!」

 

 

そう言い張るフィーベルを暫く見つめていたが、やがて退かないと分かったリィエルは、いつでも魔術を発動できるようにしといて、と言った。

 

 

3人は耳をすます……………………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バタン!!

 

 

「「「!!」」」

 

 

ドアが乱暴に開けられ、誰かが部屋に侵入してきた。

 

 

リィエルが剣を振り下ろそうとし……………止まった。

 

 

「……………キョウヤ?」

 

 

その人物はキョウヤだった。

 

 

「3人とも無事だったか…………なりよりじゃ」

 

 

「ん。全員無事」

 

 

「って、キョウヤ、あなたぼろぼろじゃない!?」

 

 

フィーベルに言われて、2人もよくよく見ると身体中傷だらけだった。

 

 

「ちょっと待ってて!すぐ直すから………」

 

 

「いや、ルミア殿。それは不要じゃ」

 

 

「何で!ぼろぼろじゃない!?」

 

 

キョウヤは、ふぅと息をつき……………最悪な状況を告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『魔術』が封じられているからのう………」

 

 

「…………………え?」

 

 

「『雷精の紫電よ』」

 

 

キョウヤが、ショックボルトの詠唱をする…………………が、電撃は発動しない。

 

 

「…………………そんな!もしかして、この霧の影響で?」

 

 

「その通りじゃ。この霧の中では、魔術や錬金術が全て封じられている」

 

 

そして、とキョウヤは続ける。

 

 

「今、各地で起こっている魔術師の変死の訳が分かったのじゃ」

 

 

「「「!!」」」

 

 

キョウヤは苦虫を潰すような表情で言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………『自分』に殺されたのじゃ」

 

 

自分に殺された………………………。

 

 

「それって、どういう」

 

 

パリン!!

 

 

窓ガラスの割れる音がした。

 

 

「………………来たか」

 

 

キョウヤが低い声で呟く。

 

 

その見つめる先には──────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────────もう1人の自分がいた。




THE NEXT story 6/10 PM 22:00


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#6 真の強敵は自分自身

「き、キョウヤが2人!?」

 

 

フィーベルが驚きの声をあげる。

 

 

「いや……………奴は儂の偽者じゃ。リィエル殿、剣を借りるぞ」

 

 

返事も待たずに、キョウヤはリィエルの剣を取り、目の前の自分に斬りかかる。

 

 

それを、手に持つ刀で受け止める偽キョウヤ。

 

 

「3人は逃げるのじゃ!!」

 

 

「え、でもキョウヤが…………」

 

 

「儂の事は良い!!早く行くのじゃ!!」

 

 

キョウヤは声の限り叫ぶ。

 

 

確かに、武器もなし、そして魔術や錬金術が封印されている以上、足手まといになるだけだ。

 

 

「…………行こう」

 

 

リィエルの声に2人は頷き、その場を後にする。

 

 

「……………さて、偽者。消えてもらうぞ!」

 

 

キョウヤは剣を改めて握りしめ、偽者に襲い掛かる。

 

 

「………………………」

 

 

偽キョウヤは何も言わず、同じ動作で襲い掛かる!

 

 

そして、剣が交差した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………流石、儂じゃ」

 

 

本物のキョウヤの持つ剣は根本からパキッと折れていた。

 

 

これで、完全に攻撃手段を失った。

 

 

偽者のキョウヤは本物に近づき、剣を高く構える。

 

 

「………………すまんのう、皆。今の儂では力不足のようじゃ………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いや、君には充分力がある……………奥の手を使わない、素でもね」

 

 

そう答えた者がいた。

 

 

黒獣が何体も飛んでくる………………偽者のキョウヤは剣で弾いていたが、余りの数に危機感でも感じたのか、窓から離脱していった。

 

 

「やぁ、キョウヤ君。随分苦戦していたね」

 

 

「創真殿……………」

 

 

黒い外套を身に纏う創真。その手に持つ、『文豪の世界』のカードには、赤い文字で羅生門と綴られていた。

 

 

「にしても、君の本気があればあんなのすぐ倒せるでしょ?」

 

 

「……………やはり知っておったか」

 

 

「まぁね。知ったときは一瞬焦ったが、今となっては問題ない。どうやら、月下獣が発動のトリガーの1つとなるようだね………………使うかい?」

 

 

「………………いや、アレは危険すぎる。もし、お主かノーネームが止めれなかったら…………」

 

 

「分かった分かった………………あ、そういやノーネーム君は?」

 

 

「……………あいつは………………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィーベル達が家を出て走っていると、そこに複数人の姿が見えた。

 

 

「やぁ、3人とも」

 

 

「ホリー君にデュオ君…………それに、先生にセラさん、アルベルトさんも?」

 

 

「お前ら、怪我はないか?」

 

 

「大丈夫。それより、グレン達の方がひどい」

 

 

リィエルに言われてみれば、所々に怪我が見えた。

 

 

「あの、先生!この霧って……………」

 

 

「ああ。白猫、この霧の正体を聞いたか?」

 

 

「キョウヤが助けに来てくれたとき…………自分にやられたとだけ聞きました」

 

 

「まさにその通りだ。この霧の中では…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔術・錬金術を持つ自分が切り離される」

 

 

アルベルトがそう真実を告げる。

 

 

要は、魔術・錬金術を使える自分と、魔術・錬金術を使えない自分に分かれてしまったと言うことだ。

 

 

「それと、な。言いづらいんだが…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルークが敵側に回った」

 

 

「「「………え?」」」

 

 

ルークが敵側に回った?

 

 

「嘘……………そんな事って……………」

 

 

「残念ながら本当の事なのじゃ」

 

 

後ろを向くと、そこにはキョウヤと創真がいた。

 

 

「あやつは、この霧を発生させる首謀者をここに呼び寄せたのじゃ……………」

 

 

「そんな!」

 

 

「『1番頼りがいのある奴が敵に回る』………やれやれ、厄介だね」

 

 

創真は大きなため息をつく。

 

 

「ホリーやデュオも魔術は使えないが、幸い僕の文豪の世界は機能する。唯一の対抗手段ってわけ。それと、ホリー。頼んどいた事は終わらせた?」

 

 

「うん。残っていた人達を全員安全な場所に避難させたよ。残ってるのは、僕らだけなはず」

 

 

サンキュー、と創真は笑みを浮かべるが、すぐに厳しいものに変わる。

 

 

「さて………………僕は首謀者を捕縛しに行く。場所も見当がついた」

 

 

「創真君1人で!?危険すぎるよそんなの!!」

 

 

セラは優しい。人が危険に飛び込んでいくのを止めずにはいられないのだろう。

 

 

「対抗手段が僕しかいないからね…………少なくとも今は」

 

 

「だからって、お前1人だけを行かせるわけには……」

 

 

「グレン先生らはホリー達とここの防衛をお願いしたい」

 

 

────────ここの防衛?

 

 

疑問符を浮かべる皆に、創真はタブレットを取り出して、映像を見せる。

 

 

「見て。偵察機からの映像だけど、魔物がウジャウジャ湧いてきてる。町のさらなる被害を防ぐために、こいつらの殲滅をお願いしたいんだ。」

 

 

「そういうことか……………だが、魔術を使えない今、俺らには…………」

 

 

「と、言うわけで良い物貸してあげる」

 

 

創真は、グレン、アルベルト、セラに見たこともない武器を渡していく。

 

 

「……………なんじゃこりゃ?」

 

 

グレンは普通のより大きな銃を持ちながら云う。

 

 

「ビームマグナム。反動凄いんで両手で構えてちょーだい。あと、もう一つ。これはレールガン。これも色々ヤバイんで」

 

 

「えっと………これはなに?」

 

 

「グレネードランチャー。反動はほぼないに等しいです。セラさんは後方支援が向いてそうなので撃ちまくってください」

 

 

「…………そして、この2つは?」

 

 

「ビームソードと、ヒートロッド。ほら、ここのスイッチを押せば…………」

 

 

アルベルトが剣の持ち手の部分にあるスイッチを押すと……………緑色のビームの刃が出現した。

 

 

何度か振って、悪くないな、とアルベルトは呟いた。

 

 

ヒートロッドは簡単に言えば鞭です、と、創真は付け足す。

 

 

「よし、それでは行動開始と行こうか」

 

 

「待って創真君!私達も連れてって!」

 

 

フィーベルの申し出に創真は驚きの表情を浮かべるが、

その目が真剣なのが直ぐに分かった。

 

 

「……………行くな、って言っても聞かないだろうね。言うこと聞けよ。良いな?」

 

 

創真の言葉に、フィーベル、ルミア、リィエル、そしてキョウヤはこくりと首肯く。

 

 

「よし……………死ぬなよ、5人とも」

 

 

「そちらこそ」

 

 

互いの健闘を祈りながら、彼等は別れて行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ノーネームはとある砦に来ていた。

 

 

「……………………」

 

 

霧に覆われている町を暫く眺めていたが、身を翻しそびえ立つ塔の中へ入っていった。




THE NEXT story 6/11 PM 22:00


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#7 彼等はいつでも通常運転

「………………来たか」

 

 

デュオの視線の先には、ゴーレムとか骸骨っぽい奴とか、まぁたくさんいる。

 

 

「ざっと……………1000体位か。1人200人がノルマかな?」

 

 

「あーあ。そりゃめんどくさい事で」

 

 

相変わらず面倒くさい宣言をするグレン。

 

 

「ま、この町を傷付けさせるのは見過ごし難いんでね。いっちょやりますか!」

 

 

さっきまでの発言とは正反対に、グレンは意外とやる気満。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!どういう作戦でいくの!?」

 

 

ホリーは一瞬黙考し、直ぐ口を開く。

 

 

「じゃ、僕とデュオで軍団に突っ込むからさ。殺りそびれた奴等を始末してもらって良い?セラさんは掩護射撃よろしく~。あ、こっちで避けるから、乱射で良いよ」

 

 

「任せろ!」

 

 

「分かった」

 

 

「了解!」

 

 

上から、グレン、アルベルト、セラである。

 

 

「さて…………パーティーの始まりだ」

 

 

「ぞくぞくするねぇ」

 

 

デュオは鎌を。ホリーは二刀の剣を持ち、魔物の軍団の中に突っ込んでいった。

 

 

突っ込んで間もなく、魔物の悲鳴やら叫び声が聞こえてくる。

 

 

「ほんと、人外の強さだよな…………あいつら」

 

 

「え、でも人じゃないんでしょ?」

 

 

「まぁ、そうなんだがな。見かけはどう見ても人なんだけどな………………」

 

 

「来たぞ」

 

 

アルベルトが話している2人に構えるように促す。

 

 

「よぉし!なら、この銃の威力を試してやるか!」

 

 

グレンはビームマグナムを構え、引き金を引いた瞬間、一瞬の間の後にビームの塊が放たれた。

 

 

見事に、魔物の胸部に直撃した………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だけでは終わらない。そのビームの塊は止まることなく、貫通。そして、別の魔物の胸部にもヒット。からの貫通…………………それが何度も繰り返される。

 

 

グレン達は分からないが、今ので80体程仕留めた。

 

 

「す、すげぇぜこの銃!!おい、見たかアルベルト!今の俺のかっこいい」

 

 

「自慢は後にしろ」

 

 

そう一蹴して、アルベルトもビームソード、ヒートロッドを振るって倒していく。

 

 

「そうだよグレン!今は戦いに集中して!それにしても、この銃凄く扱いやすい!」

 

 

創真が改造したグレネードランチャー。反動も銃声もほぼ無く、扱いやすい仕様になっている。

 

 

そんなこんなで、この時代にはない近未来兵器を駆使して、どんどん駆逐していく…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんでもって、きっかり15分後。

 

 

一般的なカップラーメンのお湯を入れてからの待ち時間の5倍の時間が経った。

 

 

まさかの、討伐完了。

 

 

「よっしゃー!終わったー!」

 

 

「ホリー君、残りの魔物はいない?」

 

 

「索敵したけど、回りにはもういないね」

 

 

その言葉に、皆は安堵の表情を浮かべる。

 

 

だが、まだ終わった訳ではない。

 

 

「しかし、まだ肝心の魔術が戻った訳ではない…………どうすれば戻るのか……………」

 

 

アルベルトは考えてみるが……………見当がつかない様子。

 

 

「あ!!」

 

 

セラが何か思い付いた様子。

 

 

「どうしたのセラさん?」

 

 

「ねぇ……………キョウヤ君は魔術・錬金術を分離された偽者の自分に襲われただよね?」

 

 

「そう言ってたね…………それがどうかしたんです?」

 

 

ホリーはまだ気づいてない様子。

 

 

「その……………偽者の自分って今何処にいるのかなー───────って」

 

 

「「「………………あ」」」

 

 

その時、足音が聞こえた。

 

 

何か嫌なフラグが立った予感がして、後ろを振り向くと…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「出た────────────!!」」」

 

 

自分達の偽者がいた。

 

 

「くそ、本命を忘れてたぜ!セラ、その武器で倒してくれ!俺のは弾が切れた!」

 

 

確かに、まだ奴等との距離がある。

 

 

ここは中距離から遠距離向きの武器であるグレネードランチャーが有効だろう。

 

 

「わ、分かった!発射!!」

 

 

グレネードランチャーの銃口から炸裂弾が全弾、山なりの軌道に撃ち出される!

 

 

『……………………………!!』

 

 

偽セラが何か呟いたかと思うと…………大きな風が吹き荒れた。

 

 

その瞬間、炸裂弾の勢いが止まった。

 

 

「「「……………え?」」」

 

 

しかし、まだ終わらない。

 

 

何と、その弾丸………………まっすぐ戻ってくるではないか。

 

 

「ギャ─────────!!こっちに戻ってきた!!」

 

 

「ぐ、グレン!今までありがと!!」

 

 

「ざっけんな!!こんな所で人生終わってたまるか!」

 

 

「早く避けろ!」

 

 

「『空間断絶!!』」

 

 

「おお!それは使えるのか……………って、全部防げてねぇじゃねぇか!?」

 

 

「無念」

 

 

ドガーン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃………………………

 

 

「あー……………待ちぶせされてたか?」

 

 

ルーク達がいると思われる場所に急行している最中、あと少しで到着と言うところで、創真を除く4人の偽者が現れた。

 

 

「仕方ない。ここで倒していこう。それに、偽物を倒せば魔力戻るかも」

 

 

「ほんとに!?」

 

 

「まぁ仮説だけど………………」

 

 

そう呟きながら創真はキョウヤとリィエルの方を向く。

 

 

「キョウヤ君、リィエルちゃん。これあげる」

 

 

創真が指をならすと、2つの武器が転送されてきた。

 

 

「キョウヤ君には、この刀…………ガーベラストレートを」

 

 

「……………ふむ。良い刀じゃ」

 

 

「創真、これは?」

 

 

「ソードメイス。切れ味ヤバイ」

 

 

「ん。分かった」

 

 

「えっと創真君、私達のは!?」

 

 

「え………………ルミアちゃん達の?えっと………………じゃあこれ!」

 

 

創真は丸い物体を2人に1つずつ渡す。

 

 

「えっと……………これはどうやって使うの?」

 

 

「あ、それはね……………って、危な!!」

 

 

いきなり大剣が飛んでくる。

 

 

偽リィエルが投げたものだ。

 

 

「創真、ルミア達をお願い。あの偽者は私がやる!」

 

 

「儂も、けりをつけるかのう」

 

 

「じゃ、よろしく~」

 

 

創真はいきなり地面のなかに手を突っ込んだかと思うと、直ぐに創真専用の剣と銃…………天空の剣とドミネーターを取り出す。

 

 

「さぁ、始めよう。2人は下がってて」

 

 

「そ、創真君!死んじゃダメだよ?」

 

 

ルミアが心配そうに云う。心配そうなルミアの表情を見た創真はルミアの方を向いて、頭をポンポンと撫でた。

 

 

「ご安心を。僕が生きてる間は誰一人死なさない。絶対に」

 

 

不思議と、その言葉が虚勢じゃないとルミア達には分かった。心の中に安心感が生れた。

 

 

「よし……………行くか!」

 

 

戦闘開始!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、ノーネームは長い廊下を歩いていた。

 

 

ここは、砦と城のミックスした、そんな場所。

 

 

長い廊下を抜け、大きな扉を開けると……………

 

 

「やぁ、ルーク君。遅かったね」

 

 

宿敵という言葉がお似合いの……………ジャティスがいた。

 

 

「…………軽々しく話し掛けるな。第1、何故ここにいるんだ?」

 

 

「彼がしようとしていることが、僕の正義に合っているからさ。だから、協力するんだよ…………君もだろ?」

 

 

「…………………………」

 

 

ノーネームは何も言わず、近くにあるガラス窓に歩み寄り、外の風景を眺める。

 

 

すると、第3者から新たな声が掛かる。

 

 

「つまらなくないのかね、ノーネーム君」

 

 

そこには、白髪の男……………いや、少年がいた。

 

 

「『クローバー』…………いや、暇じゃないさ。これから、この町を頂くからな」

 

 

「どうかな。彼は君を利用して裏切るだけかもよ?」

 

 

ジャティスが余計な口を挟む。

 

 

「どちらにせよ、私の予測を越えた者は誰一人いない。期待しているよ」

 

 

そして、クローバーは飾ってあった髑髏を手に取る。

 

 

「今回も、結果は見えている。今夜…………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

全ての術が私の物になるだろう」




THE NEXT story 6/12 PM 22:00


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#8 コレクター

文豪の世界に、新たな異能力を追加することにしました!


ファンの方から4件要望が来まして。しかも、同じ異能力を。


次の話で登場します!


クローバーは、2人を隣の部屋にある……………『コレクションルーム』に案内した。

 

 

「!!」

 

 

ノーネームは一目見ただけで驚愕した。

 

 

天井、壁にずらりと赤い結晶が並んでいたのだ。

 

 

「どうかな?これが私のコレクションだ。この霧の中で、分離したもう1人の自分に殺されれば、結晶となってここに転送される。しかし、弱点もある。分離したもう1人の自分は霧の中でのみしか活動できない」

 

 

ノーネームはクローバーが話すのを上の空で聞いていた。

 

 

自分も相当な量の屍を築き上げてきたが、クローバーは同等以上だった。

 

 

「素晴らしいコレクションだ。悪魔も羨ましがるだろうね」

 

 

「ジャティス君にそう言われると妙に説得力があるね」

 

 

「どうだか…………………」

 

 

すると彼等の目の前で、結晶が転送されてきた。

 

 

「どうやら、この霧の中でまた誰か死んだようだね……………だが、私が求めている結晶ではない」

 

 

クローバーは結晶を手に取り、そして直ぐに戻した。

 

 

「つまらないね………………では、私は失礼するよ。魔物の増援を送らないといけない頃合いだろうしね。後は好きにした前」

 

 

「おい、待てよ」

 

 

去ろうとするクローバーの背中にノーネームは声を掛ける。

 

 

「あんた、そう簡単にこの国の魔術師が殺られると思ってんのか?」

 

 

「………………ノーネーム君」

 

 

クローバーは振り向き、不敵な笑みを浮かべながら言った。

 

 

「自分自身に勝てる者など…………いるのかね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー……………強すぎるね」

 

 

珍しく弱音を吐く創真。

 

 

ルミアとシスティーナの偽者を相手しているのだが、超すばしっこい。

 

 

元々運動神経が良いのだろう。

 

 

絶体絶命……………………と、思いきや

 

 

(奥の手使うか?いや、アレはな……………疲れるし、ここで使うのも勿体ない…………なら、別の手を使うか)

 

 

まだ手がある様子。

 

 

そう考え、創真は2人に指示を出す。

 

 

「フィーベルちゃん、ルミアちゃん!10秒稼いで!」

 

 

「「え!?」」

 

 

「さっき渡した球体に押すとこあるでしょ?そこ押して投げて。5秒後にドッカーンってなるから!」

 

 

そして、創真は森の中に姿を消した。

 

 

「わ、分かった!」

 

 

「押して投げれば良いんだよね?任せて!」

 

 

ルミアとフィーベルは、先程渡された球体のスイッチを押した。

 

 

起動した爆弾は、ピッ、ピッ、と電子音を奏でる。

 

 

すぐさま偽者に向かって投げる。

 

 

残り4秒!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パシッ。

 

 

「「え?」」

 

 

まさかのキャッチ。

 

 

残り3秒

 

 

からの、投げ返された!?

 

 

残り2秒

 

 

「させぬ!」

 

 

「やらせない!」

 

 

タイミング良く、キョウヤとリィエルが間に割って入り、剣でバットの如く、打ち返した!

 

 

残り1秒…………………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドコ────────────ン!!

 

 

大爆発。

 

 

リィエルとキョウヤは爆風で吹き飛ばされる。

 

 

「2人共大丈夫!?それと、偽者はどうなったの!?もしかして、あなた達が偽者!?」

 

 

「る、ルミア殿、一旦落ち着くのじゃ…………偽者はさっき漸く倒した。リィエル殿もな。そして、儂達は正真正銘本物じゃよ」

 

 

その言葉に、ホッとした表情を浮かべるルミア。

 

 

「しかし………………………………」

 

 

キョウヤは爆発で出来たクレーターを見つめる。

 

 

すると、偽者の2人が出てきた。

 

 

「………………簡単には殺られぬか」

 

 

キョウヤはガーベラストレートを握りしめ、2人と対峙する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………君達、下がりたまえ」

 

 

そんな声が聞こえたかと思えば、いつの間に現れたのか、創真がいた。

 

 

しかし、その姿は異様だった。

 

 

足は虎化し、さらに布化した黒獣が形成した黒い外套を身に纏い、手も布で覆われ、強大な禍禍しい爪が特徴的だった。

 

 

「これが奥の手。月下獣羅生門…………《黒虎絶爪》」

 

 

そう云うと、虎の足の瞬発力を活かして一気に接近する。

 

 

『───────────────!!』

 

 

偽フィーベルは慌てる素振りを見せず、詠唱をする。

 

 

どうやら、本物より肝が座ってるようだ。

 

 

手の平の魔方陣から高エネルギーの光が放たれる。

 

 

イクスティクション・レイ。光線みたいな物だ。

 

 

破壊力抜群の高度な呪文だ。

 

 

「危ない!!避けて!!」

 

 

その魔術を知っていたフィーベルが声をあげる。

 

 

「避けるまでもないよ、あんなの!」

 

 

そう言って、創真はそのまま突っ込んでいく…………!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………え!?」

 

 

目の前で起こっていることが、誰も信じられなかった。

 

 

なんと、光線を真っ二つに裂いたのだ。

 

 

月下獣の虎の爪には、魔術を切り裂く効果がある。

 

 

さらに羅生門の布化させた黒獣をまきつけ、その効果を拡張させれば……………防御不能の神刃となる。

 

 

「……………創真殿、お主は何者なんじゃ………」

 

 

呆然としたキョウヤがポツリと呟く。

 

 

「ちょっと頭の回転が早い……皆は私を天才と呼ぶ」

 

 

光線を完全に受け流した創真は、腕を大きく振った。

 

 

その瞬間、近くの木も巻き添えに偽者を切り裂く。

 

 

切られた偽者は霧散し、粒子となった。

 

 

そのまま、淡い光を放ちながらフィーベルとルミアの身体の中に入っていった。

 

 

「…………これで魔術が戻ったの?」

 

 

「試してみなよ。ショックボルトとかで。それが手っ取り早い」

 

 

「「『雷精の紫電よ』」」

 

 

フィーベルとルミアは同時に詠唱をする。

 

 

すると、2人の手のひらの魔方陣から電撃が放たれた。

 

 

「や、やった!魔術が戻った!!」

 

 

「よ、良かった……………」

 

 

反応はそれぞれ、2人は喜びの声をあげる。

 

 

「ねぇ、2人とも。前を見て」

 

 

リィエルに促されて2人が前を見ると……………………そこには、禍禍しい雰囲気の城が立っていた。

 

 

「ここが目的地……………?」

 

 

「そう。骸砦、と呼ばれてる廃棄された高層建築物…………ここにルーク君がいるはず…………ねぇ、皆。仮にルーク君がこっちを殺そうとしたらさ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

殺すから」

 

 

「……………ッ!!ダメ!そんな事許さない!!」

 

 

フィーベルが大声をあげる。

 

 

「何より……………お主では殺せぬ。お主に魔術が効かぬとしても、あいつにはまだ切り札がたくさんある……………『神』とかのう」

 

 

「………………ハハッ」

 

 

しかし、創真は余裕そうな笑みを浮かべる。

 

 

「悪いけど、その神を以てしても……………勝てるかな?あの異能力に」

 

 

創真には恐るべき秘密兵器が隠されている。

 

 

最強の異能力……………………『天衣無縫』

 

 

そして……………………あの、『重力の化身』

 

 

「……………兎に角、あいつは殺すな。あいつが敵側につくなどあり得ん」

 

 

「……………それは良いよ。今でもよく分からないんだよね。ルークは敵か?味方か?………もし完全に敵側だと分かったら………………容赦しない」

 

 

そう言って、創真は独り骸砦に向かっていく。

 

 

その創真の後を少し距離を取りながら、キョウヤ達もついていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………どうやら、お客が来たようですね」

 

 

クローバーは紅茶の入ったティーカップを静かに置く。

 

 

そして、通信機に向かって話し掛ける。

 

 

「ノーネーム君、お客さんが来たので手厚く歓迎してあげてください」

 

 

『……………分かった』

 

 

「あと20分程でアレが完成するんですけどねぇ。あぁ、それとですね」

 

 

『なんだよ』

 

 

「皆殺しでお願いします」

 

 

『…………………了解』

 

 

そして、通信は切れた。

 

 

「フフフ…………皆殺しと言ったはものの、彼は本当にするのですかね………………?まぁ、どちらにせよ私の計画通りです……………それにしても、彼は面白い人です。何故なら……………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼が『龍』を目覚めさせる鍵なのですからね」




文ストファンの心境?『織田作──────!!』


artisanさんは恐らく知らないであろう、謎の異能力。調べん方が楽しみは増しますよ?


誰も『未来』は読めませんよね?


THE NEXT story 6/15 PM 22:00


14日は模試なので、すみません!


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#9 prediction

弟だよ!何か知らねーけど、コラボの話を任された。書いてやったんだから、感謝しやがれ兄貴!!


智識無いから相手側の作品の話を全部読んだよ!面白かったよ、うん!!


早く読んで寝なさい!!


(まさか、本当に来ちまうとはな…………)

 

 

ノーネームはそう考えながら廊下を走る。

 

 

(あと10分だっつーのに……………あの兵器は起動した直後じゃなきゃ壊せないのに…………創真は恐らく手加減しちゃ勝てねぇ。だが、殺すのは───────)

 

 

「ノーネーム君」

 

 

振り返ると、そこにはクローバーがいた。

 

 

「なんだよ。今から出るところだが」

 

 

「いえ、私はちょっとしたプレゼントをあげようと思いまし…………………て!」

 

 

「!!くっ……………」

 

 

ノーネームの胸に、紫色に発光するナイフが突き刺さった。

 

 

「てめぇ……………何を…………………」

 

 

「考えたのですが……………君ではこれから来る友達を皆殺しに出来ません。何故なら、意外にも君は情が深い。あの学院でさらに強まった………………なので、君のマインドコントロールに加え、感情を完全に失わせていただきます」

 

 

「何だと!?」

 

 

「ご安心を。解除はします……………あなたが彼等を皆殺しにしてから」

 

 

それが、ノーネームの意識を失う前に聞いた最後の言葉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………改めて見ると、本当に不気味ね」

 

 

フィーベルの言うとおり、近くに来て見ると禍禍しい。ラスボスがいそうな雰囲気だ。

 

 

「ここにルーク君が………………」

 

 

「敵かどうか、は別としてな。本音を言うと、敵じゃないことを祈ってる」

 

 

やはり、創真もルークが敵に回ったと信じたくはないんだろう。

 

 

「よし、中に入ってあやつを探すぞ」

 

 

キョウヤが足を一歩前に出したその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『魔術を持つ自分に勝てる者がいるのか?』、と彼は言ったが……………どうやらいたようだね」

 

 

その声は上から降ってきた。

 

 

その人物を…………………フィーベルとキョウヤは知っていた。

 

 

「ジャティス・ロウファン……………!!お主もいたのか!」

 

 

「そうだよキョウヤ君」

 

 

「あー……あんたが誰だか知らないが、とりまルーク君は何処に?」

 

 

そう聞いた直後、ジャティスの後ろから足音が聞こえる。

 

 

ゆっくりと黒いフードを被った────────ルークが現れる。

 

 

「ルーク、本当にお主がクローバーをここに呼び寄せたのか!?」

 

 

「…………………………」

 

 

「…………………答えてよルーク!」

 

 

「…………………………」

 

 

無言。

 

 

「………………ねぇ、ルーク君………いつもと雰囲気が違う気がするんだが」

 

 

創真に言われ、ジャティスも顔を覗き込む。

 

 

「どうしたんだい、ルーク君。少しは何か喋り」

 

 

その言葉は最後まで続けられなかった。ジャティスが吹き飛ばされたからだ。

 

 

「……………痛いじゃないか。幾ら僕の事が嫌いでも一応仲間だろ?」

 

 

ジャティスが薄い笑みを浮かべながら言うが、ルークは何の反応も示さない。

 

 

「ふむ…………………『超推理』」

 

 

創真は眼鏡を掛けて、ルークをまじまじと観察する。

 

 

「…………マインドコントロールか」

 

 

「え!?」

 

 

「ルミアちゃん、残念だがこいつは操られてる」

 

 

だから様子がいつもと違ったのね。

 

 

「こいつは困ったね。今のあいつなら躊躇なく僕らを殺しに掛かるだろうねぇ」

 

 

「そのわりには余裕そうだが……………」

 

 

「一応まだ奥の手があるからね。通じれば良いんだが。キョウヤ君、3人をよろしく」

 

 

「まさかお主、1人でやる気なのか!?」

 

 

「頼んだよ」

 

 

その声はキョウヤに有無を言わせない迫力があった。

 

 

「了解した……………死ぬでないぞ?」

 

 

「僕、彼女いるから死ぬわけにもいかないんでね~」

 

 

そう言って創真は何か呟く。すると、創真の姿が初めて会ったときの姿に変わる。

 

 

「まったく、やはり君は何処かぬけてるな…………やれやれ。ポンコツか」

 

 

「…………………す」

 

 

「ん?何か言った?」

 

 

「コロ……………ス!!」

 

 

ノーネームはクリスタルウエポンを全て中に浮かせ、総攻撃を開始した!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

一言で言うとなめてた。

 

 

こんな能力まであるとはね。

 

 

汚れちまった悲しみに、を使ってまでしても、こっちが劣勢だ。

 

 

「……………でも、負けないよ!」

 

 

横向きの重力で、一気に突っ込む。

 

 

「『天に登りし暁よ』」

 

 

すると、風の壁が出現し突進を相殺された。

 

 

そして放たれる火の球を顔面すれすれで避ける。

 

 

「創真殿、後ろじゃ!」

 

 

見ると、先程の火球が追ってきた。

 

 

追尾式か!?

 

 

ドォン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

 

「創真殿!?」

 

 

黒煙に包まれ視界が悪くなった中、キョウヤは叫ぶ。

 

 

しばらくすると、視界が晴れてきたが────────

 

 

「!!」

 

 

創真は生き延びていたが、服はボロボロで、怪我をしていた。

 

 

「咄嗟に自分の衣服を高密度化して、攻撃を防いだ。人間失格へと切り替えるには時間が足りなかったからね………………」

 

 

そう言って、創真は再び戦闘を開始する。

 

 

「……………創真、手加減してる?」

 

 

「当然だろうね」

 

 

リィエルの疑問に答えたのはジャティスだった。

 

 

「彼の目的はルーク君を無力化すること。ルーク君の目的は皆殺しにすること。根本的なゴールが違う……………キョウヤ君、助けに行ったらどうだい?」

 

 

「その間に3人に何かあったらいかんからのう」

 

 

ジャティスが敵なのか味方なのか……………ぶっちゃけ、前者の方の可能性が高いが…………まだはっきりしていないからだ。人質にでも取られたら最悪な状況になるに加え、創真から彼女らを託されている。だから、信じて見守るのだ。

 

 

「ガバッ!」

 

 

キョウヤ達の元へ来た──────いや、吹き飛ばされてきた創真。

 

 

「創真君、腕が!!」

 

 

腕にナイフが数本突き刺さっていた。いや、それだけでなく……………全身深手を負って血だらけだ。

 

 

「参ったね。君死給勿は瀕死じゃないと使えない……………まだ死なないねこれじゃ」

 

 

「ならば儂が……………」

 

 

「回復するまでの一瞬を狙ってくるな」

 

 

一瞬だけでも今使っている異能力を解除しなければならなくなるので、その間は殺りたい放題になる。

 

 

君死給勿は瀕死状態でのみ、外傷を完全に治せるが、それでも限度は存在する。

 

 

思考を練っていると、辺りを白い光が包んだ。

 

 

それが収まると、人間にも龍にも見えなくはない………………一言で言えば『神』が降臨していた。

 

 

ノーネームの切札、バハムートだ。

 

 

「不味いね。アレは僕を倒したものだ…………」

 

 

ジャティスが苦い表情を浮かべる。

 

 

「仕方ない。これは強大すぎるし、調整もまだ終わってなからったから封印していたが………………今が使うときだね」

 

 

ボロボロの創真。だが、その眼はいつも通り笑っている。

 

 

「………『メガフレア』」

 

 

ノーネームはそう言うと、バハムートは青い火球を10発以上放った。

 

 

それらは変則的な動きをしつつ、多方向から襲い掛かる!!

 

 

創真は慌てず、天空の剣を取りだし、しっかりと握る。

 

 

そして────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「異能力…………………『天衣無縫』」

 

 

最強の異能力の名前を呟く。

 

 

しかし、キョウヤ達から見れば、火球が勢いが止まる様子はない。

 

 

「くっ……………」

 

 

思わずキョウヤが悪態をついたその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………な!?」

 

 

創真は天空の剣を使って、初弾を破壊した。

 

 

そして、流れるような動作で、キョウヤに当たるはずだった火球を破壊していく。

 

 

次にルミア、そしてフィーベルと……………まるで、『誰にどの順番で火球が当たるか』を把握しているような動きだった。

 

 

この火球、無属性であるため弱点はなく、神に近い存在なため、火球を破壊するなど文豪の世界の威力を以てしても無理だろう。しかし、天空の剣はホリー達の世界の神から信託された剣。神の力には神の力を…………的な発想だ。

 

 

「……………流石だね」

 

 

そう呟くと、創真は急接近する。

 

 

バハムートはもう一度大量の火球を放つ。

 

 

しかし、創真の動きに迷いはない。

 

 

何故なら、どの火球が当たるのかを視てきたからだ。

 

 

「………………彼は未来を読んでいるようだね」

 

 

ジャティスの言う通り、天衣無縫は……………5秒以上6秒未満の未来を視る。

 

 

創真が急接近したことで、バハムートは大剣を振るうが……………もう彼に攻撃は通らなかった。

 

 

『グォォォォ!!』

 

 

そう叫びながら剣を降り下ろすバハムート。

 

 

「もう当たらないよ。当たる所を視てきたからね」

 

 

キョウヤ達から見れば高速で降り下ろされる大剣をすれすれで避ける創真。

 

 

「『オールデリート』」

 

 

天空の剣は赤く輝き、刃がバハムートを貫いた瞬間、霧散していった…………………。

 

 

それと同時に、ルークと創真は地面に倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………やっぱ天衣無縫はきついね」

 

 

創真は何とかだが、意識はある。

 

 

ルークに関しては完全に意識を失っている。

 

 

「そ、創真殿…………ルークは大丈夫なのか?」

 

 

「多分ね。マインドコントロールも解けてる」

 

 

「それはなりよりじゃ…………流石は創真殿」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええ、全くです」

 

 

全員が何処からともなく現れたその言葉の主、クローバーを直視する。

 

 

「ブラボーブラボー。創真君と言ったかね?よくぞ、邪魔者を倒してくれたね」

 

 

「…………邪魔者?」

 

 

「不思議そうな顔をしてるね。全て教えてあげるよ。ルーク君とジャティス君は今回のみ協力体制を取り、私に近づいた。本来なら、ルーク君が何処かのタイミングで私に仕掛け、その間にジャティス君が私の兵器を破壊するはずだった。しかし、君達が来たことにより、本来の作戦は実行できなかった。苦し紛れの足掻きか、いつのまにか爆弾が設置されていたが、外しておいたよ」

 

 

隣を見ると、ジャティスが苦い表情を浮かべている。

 

 

この推理はほぼ正解なのだろう。

 

 

「だが、私がルーク君を操って君達に差し向けてみた結果、私が手を下すまでもなく、ルーク君を無力化出来た………………」

 

 

「人の掌の上で踊らされたというのはなんか嫌だね……隼の気持ちが分かった気がするよ」

 

 

「ククク………では、ルーク君は貰っていくよ」

 

 

「させるか!!」

 

 

キョウヤが目に見えぬ速さで襲い掛かるが、クローバーはそれ以上に速かった。膝蹴りを喰らわせ、一瞬でダウンさせる。

 

 

「君は脆いな」

 

 

そう云うクローバーは指をパチんと鳴らすと、上空に赤いリンゴ型の巨大結晶が出現した。これが、彼の云う兵器なのだろう。そして、その赤い結晶はエネルギーを発生させ……………ルークは一瞬で飲み込まれる。

 

 

「さぁ………………『龍』が目覚める………!!」

 

 

クローバーが歓喜の声をあげる。

 

 

その言葉通り、ルークを飲み込んだエネルギーは形を変え………………龍となった。

 

 

「お主、何が目的じゃ………………!?」

 

 

「この世界の終焉さ…………この世はつまらないからね。今まで集めた結晶のエネルギーを凝縮し、さらに彼の特有の魔力を使ってエネルギーを暴走させ、産み出されるエネルギーが神を作り出す!私はもう神も当然……………手始めに、君達の町を滅ぼしてあげるよ!!」

 

 

クローバーは龍の頭に乗る。龍は一際大きな咆哮をあげ、町の方へ飛び去っていった…………………。

 

 

to be continue…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『汝、陰鬱なる汚濁の許容よ。改めて我を目覚すことなかれ』




THE NEXT story 6/16 PM 22:00


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#10 陰鬱なる汚濁

次で最後かな?


「創真、大丈夫か!?」

 

 

無言の空間がその場を支配していた中、駆けつけたのはホリーだった。

 

 

「まったく、あの異能力の発動を感知して来たら………………使っちゃヤバいって言ったのに!」

 

 

「悪いね。取り敢えず回復頼むわ」

 

 

ホリーは回復の呪文を唱える。これで完全復活的な感じだ。

 

 

「ホリー殿、お主魔術が………………」

 

 

「倒したからね。他の皆も何とかね」

 

 

超時間が掛かったけどね、とホリーは付け加える。

 

 

「ホリー、不味いことになった」

 

 

「龍の事?さっきすれ違ったよ。まぁ、透明化してやり過ごしたけど。町に着くまで10分が良いとこだ」

 

 

「まぁ、気づかれてるかも知れないがな。ジャティス君と言ったっけ?今回あいつの元に潜入してたんなら、あの龍の事教えてくれない?」

 

 

「………………しょうがないね。良いだろう」

 

 

「なんか………………やけに素直ね」

 

 

フィーベルの呟きはごもっとも。逆に怪しく感じる。

 

 

「今回は僕の力ではどうしようもないからね………………あの龍は再生能力、攻撃力が非常に高い。クローバー曰く、普段はリンゴのような形をしてるとか」

 

 

「それで?」

 

 

「普段は結界が張られていてね。その兵器を起動させた一瞬だけ結界が消えるから、それを狙っていたんだがね」

 

 

「いらん情報ばかりやな…………何か弱点は?」

 

 

「無いね。外部から破壊するのは無理に等しい」

 

 

「外部から……………………ね。なら、内部からなら破壊できるわけだ」

 

 

「面白いことを考えるね。そんな馬鹿なことを言うとは思ってなかったよ」

 

 

「馬鹿かどうかはやってみてからのお楽しみさ………さて、ホリー。僕を町までテレポート出来る?」

 

 

「勿論!じゃあ、行」

 

 

「待って!!」

 

 

そう声をあげたのはフィーベルだった。

 

 

「私達を置いていく気?」

 

 

「連れてけとでも?」

 

 

「当たり前よ!」

 

 

創真はため息をつく。

 

 

「悪いが、行っても足手まといになるだけだよ。君達ではね」

 

 

「……………創真、あなた馬鹿じゃないの?」

 

 

「あ?」

 

 

「全部知ったような口聞いてるけど、私達は色んな試練を乗り越えてきたのよ!それに、ルークは私達を助けてくれた。今度は私達が助けるの!!」

 

 

「そうだよ!私達にも何か出来ることはあるよ!」

 

 

「ん。私も力になれる」

 

 

「お主1人にカッコつけさせる訳にはいかないからのう」

 

 

フィーベル、ルミア、リィエル、キョウヤが創真に強く訴える。

 

 

「………………分かった、連れてくよ。だが、1つ言わせてもらう。まず、フィーベル。僕は馬鹿じゃない。そして、ヘタレな君に言われたくはない」

 

 

「な!?」

 

 

「ルーク君から聞いたんだよね~。聞いてて笑ってしまったよ」

 

 

「あいつ、余計なことを……………!!」

 

 

怒りに燃えるフィーベル。

 

 

「……………君達、早く行かなくて良いのかい?」

 

 

「あーそうだね。丁度良い。ジャティス君も手伝って」

 

 

「僕に指図するな。言われなくても、正義の実行の為にあいつを倒す。言っておくが、君達と協力するつもりはない」

 

 

何だかんだで協力してくれるようだ。

 

 

「じゃ行くよ!『テレポート』」

 

 

ホリーが唱えた瞬間、青い光が彼等を包んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目を開けると、そこには見覚えのある町が広がっていた。

 

 

そして目の前にはグレン達が。

 

 

「お前ら!無事だったか…………って、ジャティス!テメーが何で一緒にいるんだよ!?」

 

 

「グレン、悪いが今回は敵対するつもりはないよ。あいつを倒すためにね」

 

 

「絶対信用ならねぇな!て言うか、あいつって誰だよ!!」

 

 

「上を見た前」

 

 

「は?」

 

 

ジャティスに言われ、上を見上げると…………そこには龍がいた。

 

 

予想通りの時間ピッタシ現れた。

 

 

「って、なんじゃありゃ!?」

 

 

「龍………………それに、龍の頭上にいるのはクローバーか?」

 

 

アルベルトの言う通り、首謀者であるクローバーがいた。

 

 

「ん?何故ここにいるんだ…………?まぁ、良い。これが起動した時点で私の勝ちだからね」

 

 

「甘いな。確かに僕を抜けば君の勝ちだろうが、生憎ここには僕がいる!」

 

 

自分アピールを欠かさない創真。

 

 

「テメーの好きなんかにさせるか!!おとなしく捕まりやがれ!」

 

 

「悪いね先生。僕を捕まえる前に君達が死ぬからそれは無理だ」

 

 

そう言ってクローバーは指を鳴らす。

 

 

龍は大きな口を開けたかと思うと、その口から赤い火球を放った。

 

 

アルベルトらが軍用の魔術を使い、それらを相殺していく。

 

 

「流石だね。毎回会うたびに腕が上がっているようだ」

 

 

「世辞は良いからジャティス!テメーも戦いやがれ!!」

 

 

「分かった分かった」

 

 

ジャティスは人工精霊を生み出し、次々と龍に向かって突撃させる。

 

 

「ふん、その程度かジャティス・ロウファン!その程度で神を打ち破れるとでも思ったか!?」

 

 

クローバーはそう嘲り、天使を次々と破壊していく。

 

 

「チッ…………………」

 

 

デュオは舌打ちをし、鎌を持って飛び立つ。

 

 

龍はそれに対抗し、火球を放つがデュオはそれらを切り刻んでいく。

 

 

「オラァ!!」

 

 

遂に龍に一撃を喰らわした。

 

 

「ほう……………だが、無意味だ」

 

 

「!!」

 

 

直ぐ様再生する。

 

 

デュオが動揺した一瞬を狙い、龍の尾で弾き飛ばす。

 

 

「なら、これでどうだ!」

 

 

ホリーの掌から赤い光線が放たれる。

 

 

『ゴガァァァァァァァァァァ!!』

 

 

龍はそう咆哮をあげると、火球ではなく赤い光線を放ち、光線同士がぶつかり合う。

 

 

しかも、ホリーの放つ光線を押し返した。

 

 

「うわっ!?」

 

 

ホリーは何とか避けるが、彼でも間一髪だった。

 

 

『ホリー、準備できた』

 

 

通信機から創真の声が聞こえてきた。

 

 

「準備運動終わった?」

 

 

『ああ。地味に準備運動が重要なんだよね…………全員に離れるように言っといて』

 

 

「了解!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良い感じに場が暖まってきたじゃねぇか」

 

 

高層の建物の頂上で創真は笑う。

 

 

『創真、こっちは良いよ!思う存分暴れな!!』

 

 

「言われなくてもそのつもりだ…………『汝、陰鬱なる汚濁の許容よ。改めて我を目覚すことなかれ』」

 

 

創真の全身に赤い異能痕が走る。『汚濁』が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウラァァァァァァァァァァァ!!」

 

 

そんな龍にも負けない咆哮がグレン達の耳に入ったかと思うと、巨大な爆発音が聞こえた。

 

 

「な、何だ!?」

 

 

グレンの疑問はすぐに分かった。

 

 

宙に浮く人の姿が見えたからだ。彼─────────────創真の回りには巨大なコンクリートの塊が浮いている。

 

 

龍は目標を視認すると、赤い火球を何発も放つ。

 

 

しかし、創真はそれらに浮かせていたコンクリートの塊をぶつけていく。

 

 

さらに、掌から赤い光弾を出現させ、龍に放つ。

 

 

その光弾は腹部に命中し、大きな穴を開けた。

 

 

「流石、汚濁だ」

 

 

「ホリー君、汚濁って……………?」

 

 

「汚濁とは、汚れちまった悲しみに、の本当の仕様さ。自らを重力の化身にし、周囲の重力子を操る。あの重力子弾はブラックホール的な物だ」

 

 

「ブラックホール!?それヤバイんじゃねぇか!?」

 

 

「グレンの言う通り、とてつもない破壊力さ。だが、理性を失い、本人にも制御が効かない。力尽きるま…………いや、死ぬまで暴れ続ける」

 

 

「そんな!!」

 

 

セラが悲痛な声をあげる。

 

 

「しかし、幾ら強くともすぐに再生されちゃ意味がないが」

 

 

ジャティスの言う通り、どんなに削っても直ぐに再生している。

 

 

「まぁ、そうだが…………今手を出すと、僕らもやられかねない。出来るのは見守ることのみ」

 

 

ホリーは感情を押し殺し、静かに云った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………ここまでの強敵は見たことがないですね!ですが、この龍には及ばない!」

 

 

そういうとクローバー自ら創真に突撃し、蹴り飛ばす。

 

 

蹴り飛ばされた創真は骸砦まで吹き飛ばされてしまった。

 

 

「さて……………本格的にこの街を終わらせるとしようか」

 

 

龍は口を開け、収束された赤い光線をチャージし始める!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ゴガァ!!』

 

 

「な!?」

 

 

何と、龍の口に骸砦が叩き込まれた。

 

 

吹き飛ばされた創真が、重力操作で骸砦を地面から抜き、それを高速でぶん投げたのだ。

 

 

龍の内部で行き場を失ったエネルギーが大爆発を引き起こし、大きな悲鳴をあげる。

 

 

しかし、まだ終わらない。

 

 

骸砦の近くにあった、廃棄された高層建築物の上に乗って来た創真がビルを上下させ、物理攻撃を喰らわす。

 

 

「この糞がァァァァァ!!」

 

 

珍しく焦ったクローバーが手をかざすと、龍は再度ビームを発射しようとする。

 

 

「ウオラァァァァァァァァァァァ!!」

 

 

その隙を逃さず、創真は再び龍の口にビルを飲み込ませる。

 

 

クローバーがしまった、と思った時にはもう遅かった。

 

 

創真は特大の重力子弾を口部にお見舞いした。

 

 

重力子弾が龍の口の中に入り、見えなくなった瞬間…………………その身が内部から弾け、大きな爆発が起こる。

 

 

「バカな………………龍が!!」

 

 

爆発に巻き込まれる直前、クローバーはそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっしゃー!!やりやがったぜ創真の奴!」

 

 

「あっぱれじゃ!!」

 

 

グレンやキョウヤは喜びの声をあげる。

 

 

「あ、創真の汚濁を解除しないと!」

 

 

今だ宙に浮いている創真に向かってホリーは飛翔する。

 

 

「……………待って!確かルークがあの龍の中にいたの!!」

 

 

「あやつはどうなったのじゃ…………!?」

 

 

皆は辺りを見回すが、何処にもその姿が見えない。

 

 

「キバット君、辺りを飛んで探してきてくれない!?」

 

 

「ルミアちゃんの頼みなら喜んで!」

 

 

キバットは超高速で捜索を開始する。

 

 

そして僅か1分後、直ぐに戻ってきた。

 

 

付いて来い、と言うキバットに案内されると、そこには俯せに倒れているルークの姿があった。

 

 

「んん………………あ?ここ何処だ?」

 

 

しかも丁度目覚めた。

 

 

「る、ルーク!お主大丈夫か!?」

 

 

「キョウヤ?あー何か体がめっちゃダルいがそれ以外は何ともねぇよ」

 

 

あの爆発があったのに、奇跡的に無事とは…………………皆はホッとした表情を浮かべる。

 

 

「そうだ、言わなきゃいけないことがあったな………皆、俺は今回」

 

 

「ルーク君は街を守ろうとした……………だろ?」

 

 

そう言ったのは、ホリーとデュオに肩を借りている創真だった。

 

 

「言わなきゃいけないのはこっちの方だよ。ルー君、街を守ってくれてありがと!」

 

 

「ルミア………………」

 

 

「皆、ルミアと同じ気持ちだろ?」

 

 

グレンの問い掛けに、皆は肯定の意を込めた笑みを浮かべる。

 

 

「でも創真、悪かった。操られていたとは言え、攻撃しちまって」

 

 

「弱かったから大丈夫です」

 

 

 

「チッ…………あーそうかい。そういや、クローバーは何処だ?一発殴らないと気がすまねぇ」

 

 

「呼んだかい?」

 

 

皆が振り向くと、ジャティスによって拘束されたクローバーの姿があった。

 

 

「やれやれ……………まさか龍を倒されるとは。恐れ入ったよ創真君」

 

 

「そりゃどーも」

 

 

満更でもない、と言った感じの表情を創真は浮かべる。

 

 

「アルベルト、彼の身柄は君に預けよう。後は好きにした前」

 

 

「……………分かった」

 

 

「おや?私は檻に入るつもりはありませんよ?」

 

 

「何言ってやがる?ちゃんと罰を受けやがれ」

 

 

「ほう?この国では死人を罰する事が出来るのかい?」

 

 

「「「え」」」

 

 

「幽霊?え、って事は死んでるって事だよね?」

 

 

キバットも声が裏返っている。幽霊嫌いなのだろうか?

 

 

「あんた、幽霊か?」

 

 

「違うよ創真君。私は3年前に死んだ。私は私の肉体から分離した異能さ」

 

 

「あー……………………そう」

 

 

創真が黙った所で、グレンが口を開く。

 

 

「で、アルベルト。こいつはどうする気だ?」

 

 

「……………当てはまる事例がなくて、判断のしようがない」

 

 

アルベルトが思案をしていると、創真が何か閃いた表情をした。

 

 

そのままクローバーに近寄ると、何か囁いた。

 

 

「ふむ………………牢屋よりはましだな。それに、君に興味が湧いた」

 

 

「なら、やるねー」

 

 

「待て、何を」

 

 

アルベルトの言葉を待たず、創真は文豪の世界のカードをかざすと、クローバーの姿が消えた。

 

 

「お、おい創真?」

 

 

ルークが声をかけると、創真はご安心を、と続けた。

 

 

「彼を文豪の世界の中に閉じ込めました。もう一切出てこれないので安心だろ?」

 

 

「勝手なことを………………」

 

 

「まぁ、死人は裁けないんだからこれが最適解だ」

 

 

デュオも賛同し、アルベルトはやれやれ、と言いたげな表情でため息をついた。

 

 

「さて、停戦もこれでおしまいだ。けりをつけようぜジャティス……………って、あら?」

 

 

さっきまであったジャティスの姿が消えていた。

 

 

ルークは辺りを見回すが、何処にもいない。

 

 

「さっき帰っていったよ?」

 

 

「止めろよホリー!!」

 

 

「いやぁ…………あ、『また近い内にまたお会いしましょう』って伝えといてって言われたんで~」

 

 

ホリーがのほほんと伝言を伝えた。

 

 

「お、朝日だぜ!」

 

 

キバットが日の出に気づく。

 

 

暖かい朝日が、街を、彼等を労うように照らしていたのだった。




THE NEXT story 6/17 PM 22:00


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#11 異世界でも名を残した天才

これで、本当に完結です!最後まで見てくれた方、ありがとうございました!


こうして、事件は終息した。

 

 

幸い、一般人には怪我1つなかった。

 

 

だが、創真の汚濁や龍の攻撃により、町の建造物には被害があったものの、ホリー達が超高速修理を行ったので、問題ない。

 

 

首謀者は死亡した、と表向きではそうなった。

 

 

そして、この事件の解決に大きく貢献した創真は表彰された。

 

 

本人曰く、大したことをした覚えはないんだが、と表彰を辞退しようとしたのだが、ルミア達が是非表彰されて来なさい、と強く言われたので表彰を受けたとの事。

 

 

ルークの体は衰弱していたが、2、3日の安静で回復との事。

 

 

それを聞いた創真は、あと1年引っ込んでれば良いのに、と挑発。

 

 

単純なルークは体に鞭を打ち、突っ掛かったが、10秒後にはこてんぱんにされ、ベットに戻されたとか。

 

 

まぁ、色々あったが人々はまた、平和な日々を過ごしていた。

 

 

ちなみに、今回の事件は《Dead apple事件》と命名された。

 

 

しかも、この名にしてくれと言ったのがクローバーだった。文豪の世界のカードが喋りだしたときは、グレンとフィーベルは幽霊が出た、とか騒いだりめんどうだった。

 

 

クローバー曰く、龍の力で霧の色を赤くして星を覆えば、宇宙から見たら赤いリンゴに見えるだろ、との事。

 

 

まぁ、正直どうでも良いんだが………………結局、歴史の一ページにこの名前で残りそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────Dead apple事件から2週間後。

 

 

「……………今日で最後か」

 

 

「なんだいルーク君。もしかして、寂しいとか?」

 

 

「なわけあるか」

 

 

今日で創真らはここを去るそうだ。ルミア、フィーベル、リィエル、グレン、セラ、キョウヤ、そして、ルークは見送りにきた。

 

 

「しかし、いざとなると少し寂しいのう。のう、ルーク?」

 

 

「だから、なわけねぇよ!」

 

 

───────声を荒らげる時点で何か怪しい。

 

 

皆は心の中でそう突っ込む。

 

 

「ったく、お前らは寂しそうにしてるけどよ、創真がいた1ヶ月、お前ら結構振り回されただろ?うんざりしてないのかよ?」

 

 

「「「……………まぁ」」」

 

 

自由奔放な創真に結構振り回された………結構大変だったとでも言っておこう。

 

 

「でも、魔術の事たくさん教えてくれたよね~」

 

 

と、ルミアは云う。

 

 

「うん!私も執筆の基礎を教えてもらったからね!今度会うときは最高傑作を見せるよ!」

 

 

「楽しみにしてるよ、フィーベルちゃん」

 

 

創真は微笑みながら云う。

 

 

「私も………………これ、大事にする」

 

 

リィエルは………………プレゼントを所望してきた。その物は『ビームサーベル』。リィエルは女に弱いホリーにせがんで、ホリーはあげてしまった。

 

 

まぁ、別に良いかと創真も了承はしてくれたのだが。

 

 

「また遊びに来いよ、創真にホリー達も」

 

 

「うん、君達はここの生徒なんだからね!」

 

 

「嬉しいことを言ってくれるね、グレン先生にセラ先生」

 

 

「うんうん!セラ先生は本当に良い先生だよ~」

 

 

褒めまくるホリー。

 

 

「ホリー、俺は?」

 

 

「グレン?テメェは地獄に落ちろ」

 

 

「んだと!?」

 

 

何なのだろう、この評価の差は。解せぬ。

 

 

 

「ほんと俺には厳しいな。やれやれだ」

 

 

「まぁ、元々ダメ人間だったんだからな」

 

 

「デュオまでそんな事言う!?」

 

 

グレンの突っ込みに、ドッと笑いが起こる。

 

 

「おい、創真。そろそろ行かねぇと………」

 

 

「キバット?あ、もうこんな時間か…………じゃ、名残惜しいがお別れだ。楽しかったよ、この1ヶ月」

 

 

「そうか………………元気でな」

 

 

グレンめ、立派な教師面しやがって、とホリーは悪態を内心つく。しかし、悪い気分ではない。何故か嬉しさも感じる。

 

 

「1つ忠告しておこう。これから色んな厄災が押し寄せる。それらを押し退けるために、強くなれ…………………特にキョウヤとノーネーム。おまえらが鍵…………………かも?まぁ、もしかしたら僕の助けが必要になるかもね」

 

 

『私の、もね』

 

 

誰だ、と思えばクローバーだった。ちなみに、彼の異能力の名前は、『ドラコニアルーム』との事。

 

 

「まぁ、クローバーは要るかは分からんが…………ま、精進しなよ」

 

 

「分かった分かった。次に会うときにはお前に勝つぜ」

 

 

「そんな日が来ると良いがね………………」

 

 

「最後の最後までウゼェ!!」

 

 

ルークが声を荒げて云うのを、創真は不敵な笑みで返す。

 

 

「それでは、See You NEXT illusion」

 

 

洒落た英語で別れを言うと、創真らを青い光が包み、消えて行った。

 

 

「…………じゃあな、創真」

 

 

ルークは笑みを浮かべながら別れの言葉を呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

「お久しぶりでございます、創真様」

 

 

本来の世界に戻ると、自宅にはまさかの氷室さんがいた。本編最終回以来の登場だ。

 

 

「いやはや、夏休みは楽しかったですよ。沖縄でダイビングしてきました」

 

 

へー…………ダイビングはさぞ良いだろうね。

 

 

「所で、魔術の世界はどうでした?」

 

 

「表彰されました。街を救って」

 

 

「ほう。詳しく聞きたいものですね」

 

 

「長いですよ……………まず、ノーネームとキョウヤって言う奴と会ってね……………………」

 

 

暫く、魔術が存在する世界での体験談の語りに花を咲かせたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オマケ

 

 

「おい、今回俺の扱い酷かったよな?」

 

 

何か問題でも、ルーク君?

 

 

「ありありだろ!!何だあの扱いは!?度が過ぎてんだろ!」

 

 

だって、artisanさんもOKしてたよ?

 

 

「………………そうか」

 

 

……………………………うん。

 

 

「ちょっと潰してくる」

 

 

行ってらっしゃーい。

 

 

さて、罪をartisanさんに擦り付け、僕への危害は避けれた。

 

 

 



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genius《天才》とPrincess《王女》
E組のgenius(天才)とA組のgenius(天才)


新たなエクストラストーリー。


知らない人も多いでしょうが、楽しんでもらえたら幸いです。


この話の基は暗殺教室の学習本、殺たんcのです。勉強になるから、学生さんは買ってみると良いですよ。


Are you ready?


準備の出来た人からどうぞ!!


「まぁまぁ、皆さん落ち込まないで!ね?」

 

 

殺せんせーが皆を励ます言葉を掛けるが、相変わらず皆の表情は暗い。

 

 

「そんなこと言われてもさぁ…………私達は王女様に会えないんだよ?」

 

 

碧海の嘆きを詳しく説明すると……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日の一時間目の全校集会。

 

 

壇上には、金髪のイケメン外国人が立っていた。

 

 

「皆さんこんにちは。ノルゴ王国の駐日大使のステルドです」

 

 

見事な日本語だった。

 

 

「今回、浅野理事長のご好意で、レア王女が椚ヶ丘中学のディベート大会に参加させてもらえる事になりました」

 

 

その言葉に、皆はざわつく。

 

 

「今回の議題、『国際平和について』にレア王女は大変強い関心を持っており、皆さんと会えるのを楽しみにしています」

 

 

「ってことは、直接話せる機会もあるってことか!」

 

 

「この中学校で良かったー!」

 

 

あちこちから喜びの声が聞こえてきた。

 

 

「さらに、ディベート大会に先駆け、王女の滞在先に代表の生徒を招いています」

 

 

壇上に上がったのは、A組の生徒会長、浅野学秀だ。

 

 

「王女のエスコート役を仰せつかさせてもらい、大変光栄です。王女の静養をより良きものに出来るよう、頑張ります」

 

 

自信に溢れた声で宣言したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………で、E組は外部受験対策と言うことで、ディベート大会に参加できない……………と言ういつもの理不尽。あーあ……………」

 

 

碧海もそうだが、皆残念そうな表情を浮かべる。

 

 

それを聞いた殺せんせーは、黒板にマッハでノルゴ王国の地図を書いた。

 

 

「ノルゴ王国はヨーロッパの北に位置します。面積はそこまで広くないですが、実に美しい土地です。ノルゴ人は、背が高くて金髪、青い目の人が多いですね」

 

 

「ニュースで王女を見たけどすっごい綺麗だった。憧れちゃう!」

 

 

矢田が王女への憧れを口にする。

 

 

「でも、あの歳で国際平和について発言しているんだぜ。立場的にはっきりした主張は出来ないとは思うけど、勇気があるよなぁ」

 

 

すると、殺せんせーはノルゴ王国を起点に地図を一気に広げ、海に挟まれた地域を指す。

 

 

「ここは大陸の交差点と呼ばれ、紛争が絶えません。レア王女のお母さんは難民としてノルゴ王国にたどり着いた後、大恋愛の末、現在の国王と結ばれました。王女が平和を強く願うのは理解できますねぇ」

 

 

「あーあ。聞けば聞くほど俺らも王女に会いたいぜ。なぁ、創真…………って、あら?」

 

 

席には創真の姿がなかった。

 

 

「あれ、あいついないのか?」

 

 

「そういや、今日いたか?」

 

 

ここで漸く、皆は創真がいないのに気がついた。今日は一時間目が集会だったので、出席確認と朝の暗殺はカットになっていたからである。

 

 

「そーいや、集会の時俺の前は創真なのにな………全然気付かなかったな」

 

 

「寝てたんじゃないの~隼?」

 

 

碧海の問いかけに隼は…………………

 

 

「なわけねぇよ………………多分」

 

 

……………最後の方を濁して答えた。

 

 

「碧海さん、氷室さん。創真君はどうしたんですか?」

 

 

端の方に立っている氷室と、同居人の碧海に殺せんせーは尋ねる。

 

 

氷室は苦笑しながら答える。

 

 

「いやー…………昨日の夜から『暇だし今まで誰も解けてない数学の懸賞金問題でも解くか』と言って、ずっと机に向かっていました…………」

 

 

「「「はぁ!?」」」

 

 

「私も一緒に解いてたんだけどさ、途中で寝ちゃって。気づいたらベットの上で朝まで寝てたよ。優しいことに、毛布まで掛けてくれてた♪」

 

 

最後の碧海の蛇足に、倉橋はムッと不満げな表情をしていたのだが、誰も気が付かなかった。

 

 

「それで、肝心の創真君は?」

 

 

「机の上で突っ伏して寝てます。起こそうとしましたが、起きませんでした。私は先に行くという趣旨のメモを残して来ました」

 

 

「まぁ、流石にもう起きたと思うけどねー」

 

 

氷室と碧海の説明を聞いて、皆は呆れ返っていた。

 

 

「ったく、あいつは何やってんだよ………」

 

 

「誰も解けない問題を解こうとよく思うよね……」

 

 

すると、そこへ

 

 

「おっはよー皆さん」

 

 

創真、到着。

 

 

「創真君!遅刻とは感心しませんねぇ」

 

 

「めんごめんご。まぁ、理由は聞いたかな?」

 

 

「数学の懸賞金問題を解こうとしたんですよね?まったく、何と言いますか…………君が幾ら頭が良くても、流石に……………」

 

 

「いや、出来たかも」

 

 

「「「はぁ!?」」」

 

 

何と言うことだ。今まで世界中の数学学者を阻んできた問題を中学生が解いたというのか?

 

 

「お、おいマジかよ…………もしそれが合ってたらどれくらいもらえるんだ?」

 

 

震えた声で前原が尋ねる。

 

 

「んー………100万ドル?日本円で1億かな?」

 

 

「「「1億!?」」」

 

 

※本当です。

 

 

「まぁ、そんな事はどーでもいいでしょ。それより殺せんせー。1時間目なんかあった?」

 

 

「え、あ…………ごほん。1時間目は授業ではなく集会でしたよ」

 

 

「集会?」

 

 

「ノルゴ王国の王女、レア王女が椚ヶ丘のディベート大会に参加するそうで。E組は除外されてますが…………」

 

 

「へー、レアちゃんか。そういえばニュースで来日とか言ってたねぇ~」

 

 

「「「…………レアちゃん?」」」

 

 

全員が、王女のちゃんづけに違和感を覚えた。

 

 

「あのー創真様。レアちゃん、とは…………?」

 

 

皆の心の内を代弁した氷室の質問に創真はけろっと答えた。

 

 

「あー、皆は知らないかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

僕、レア王女と知り合いなんだよね~」

 

 

「「「知り合いィ!?」」」

 

 

創真に驚かされるのは何度目なのだろうか………皆はそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は変わって放課後。

 

 

浅野学秀はレア王女の泊まる高級ホテルに来ていた。

 

 

(何があっても王女を持て余す事に集中しろ。そのくらい出来なければ、これから上に立っていく者として失格だ)

 

 

王女という立場の人物に会うという緊張を落ち着かせるように、何度も自分にそう言い聞かせた。

 

 

やがて、行われていた身分証の確認が終わり、浅野はエレベーターへ乗り込む。

 

 

中にある鏡を見ながら身だしなみを完璧に整えている間に、エレベーターは最上階に到着した。

 

 

最奥にあるスイートルームの目の前に着いた浅野はノックをする前に一息吐いて…………ノックをした。

 

 

『失礼します』

 

 

英語でそう言い、遂に浅野はスイートルームに入る。

 

 

中にある大きなソファーの上に、レア王女は座っていた。

 

 

『こんにちは、ガクシュー』

 

 

同じくレアも英語でそう挨拶した。

 

 

レアの青い瞳に浅野は見とれていたが、失礼になると思い、目を逸らした。

 

 

《こんにちは、レア王女》

 

 

《あら?ノルゴ語が…………?》

 

 

レアはノルゴ語の挨拶に目を丸くした。

 

 

『いえ、挨拶だけです。このあとは英語でお願いします、レア王女』

 

 

『堅苦しい挨拶は抜きにして、どうぞ座ってください』

 

 

レアに促され、浅野は腰を降ろす。

 

 

『私、あなたに会えるのを待っていたの。同じ年の人と話すことが少ないもの。椚ヶ丘は大きな学校と聞いていますが、全校で何人くらいいるのですか?』

 

 

『全校では600人弱ですね。僕の学年は188人いますね。椚ヶ丘中学は日本でも名高い進学校ですので、海外にもよく知られています』

 

 

『……皆さんとても優秀なのね』

 

 

『それでも英語のディベートをするには拙い所もありますが、しっかり議論を戦わせて貰いたいです。どうぞ、お手柔らかに』

 

 

『私も英語は母国語ではないからお互い様ですよ。それより、そんなに堅苦しいのはよしましょう』

 

 

レアはティーカップの中をスプーンでかき回しながら続ける。

 

 

『ディベートもそうだけど、私は皆さんとお会いすること自体楽しみなのよ。皆さんはどんな遊びをしたりするの?』

 

 

『そうですね、手下……………じゃなくて仲間とCDリリースに向けてバンド活動をしたり、社交パーティーに参加したりして楽しんでますよ』

 

 

浅野の返事にレアは笑顔をひきつらせた。固まったレアに気づいた浅野は声をかける。

 

 

『王女…………何か失礼がありましたでしょうか?だとしたら、おわび申し』

 

 

『いいえ、失礼なんてなかったわ。完璧よ。英語も態度も身だしなみも全部』

 

 

『はぁ……………』

 

 

浅野は王女の言っていることが理解できなくてそんな間の抜けた返事をしてしまった。

 

 

『…………私は普通の中学生と会いたかったの。英語もつたなくて、言うこともどこか幼くて、でも活き活きとしている中学生と』

 

 

『……………僕も普通の中学生ですよ?』

 

 

『なら、何か面白いことを言ってくれる?』

 

 

ここで漸く浅野は返答に詰まった。面白いことを言って、等と言うリクエストなどされたことが無かったからだ。

 

 

『…………もう良いわ。ちょっと外に出ようかしら』

 

 

レアはコートを羽織ってさっさと歩き出した。

 

 

浅野も呆然としていたが、慌てて王女の後を追いかける。

 

 

廊下に出ると、護衛が慌てて王女を追いかけた。そして、浅野と護衛は同時にエレベーターに駆け込んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『やっぱり、日本の庭園は綺麗ね!自然な形を生かしてあって、とても素敵』

 

 

レアは庭園のあちこちを軽やかに歩き回っていく。浅野は内心ため息をつきながら、その後を追う。

 

 

庭の中央に位置する大きな奇岩でレアは左に曲がったが……………その先に彼女の姿はなかった。

 

 

あたりを見回すが、その姿はない。

 

 

『王女さま、王女さま!?』

 

 

護衛は慌てて庭園の出口に向かって王女を探しに行く。

 

 

『ガクシュー、こっちよ』

 

 

後ろから声がした。振り向くと、レアが浅野を手招きしている。そのまま庭園の奥に姿を消してしまい、浅野は仕方なく彼女を追う。

 

 

2人が辿り着いたのは、ホテルの食器や備品を運搬する業者用の駐車場だった。

 

 

『これで、私たちは自由だわ!外に行きましょ!』

 

 

呆然とする浅野を放って、レアはタクシーを止めて乗り込む。

 

 

『王女、一体何処へ…………』

 

 

浅野も放っておく訳にもいかず、乗り込む。

 

 

『何処って、勿論あなたの街よ?』

 

 

『護衛の人間をまいてあなたを連れ出したら、問題になるし、僕も困ります』

 

 

浅野のイライラゲージは順調に貯まっていった。

 

 

『大丈夫よ、そんなこと。私が姿を消すなんてしょっちゅうだから』

 

 

どうやら、脱走の常習犯らしい。

 

 

「クヌギガオカ、お願いします」

 

 

行き先を伝えたのはレアだ。この一言を脱走するために覚えたのだろう。

 

 

(くそっ…………………今日は厄日決定だ。それもとびきりのな…………!!)

 

 

浅野の内心をレアは知るよしもなく、タクシーは走り出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、ホテルは大騒ぎだった。

 

 

『王女が消えたぞ!』

 

 

『すぐに周辺を探せ!警察には連絡せず、穏便にな!』

 

 

ノルゴ王国の関係者がバタバタとするなか、1人の人間は携帯でペコペコ頭を下げていた。

 

 

彼の名は前田 慎二(23)である。『ソウル』の経営するこのホテルのセキュリティー関連の最高責任者を入社1年目にして勤める男性である。

 

 

「申し訳ありません、社長!私がいながら…………」

 

 

『いやーこりゃやばいぜ。もし、王女に何かあったら『ソウル』の信用はガタ落ちだな。いや、脱走しちゃってる時点で既に不味いか……………』

 

 

「すみません!!」

 

 

『…………こうなったらしょうがない。前田、お前は創真の携帯電話の番号を知っているか?』

 

 

「あ、はい。社長が入社時に教えてくれましたよね。なぜかは分かりませんが…………」

 

 

『こーゆときのためにあるんだよ。創真に、神の目(ゴットアイ)を使って王女を探すように頼め。じゃ、もうすぐヤンキースの試合があるから、あとは頑張れ!』

 

 

電話は切れる。まったく、こんな状況において野球を楽しむなど、この社長以外は出来ないだろう。

 

 

前田は急いで創真に電話を掛ける。数コールで電話は出た。

 

 

『こんにちは、前田さん…………だよね?』

 

 

「あ、はい。覚えてるんですか?」

 

 

『父さんが社の人間の電話番号は全部覚えとけと言われてるからね。何故かは知らんが。それで、何かトラブルですか?』

 

 

「実は……………………」

 

 

前田は30秒必要事項の説明を終えた。

 

 

『…………なるほどね。まったく、レアちゃんの脱走癖は相変わらずだね……………神の目(ゴットアイ)で場所割り出して、前田さんの携帯にメールで送信するよ』

 

 

「ありがとうございます!!…………そう言えば、メールアドレスって教えてました?」

 

 

神の目(ゴットアイ)はそう言うのも特定できちゃうのだよ。まったく、父さんはとんでもないものを作ったもんだね。まぁ、僕もちょびっと手伝ったんだが。それじゃ、連絡来たら王女の関係者に教えてあげてください。じゃ、用事があるんで失礼!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真side

 

 

「やれやれ。相変わらずだね……………」

 

 

彼女らしいと言えば彼女らしいのだが。

 

 

「創真、もうすぐ渚達と約束した時間だよ」

 

 

「ホリーに言われなくても、分かってるよ」

 

 

今日、近くの喫茶店で渚達に勉強を教える約束をしたのだ。

 

 

「準備していくか。にしても、もうすぐ受験だなぁ。まぁ、僕はぶっちぎりで受かってやるけどね」

 

 

そうして準備を済ませ、冬の冷たい風が吹く外へ────────あんまり出たくはないけど。寒いし─────────外出をするのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁ、勉強会がすぐに別の任務に変わることを知るのはそう遠くはなかった。




コラボ編は暫く延期です。またどっかで載せます。


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レアは創真の〇〇〇!?

創真はレアの何なのでしょうか?答えは本編にて!


『ここがガクシューの住んでる街!素敵ね!』

 

 

レアと浅野は椚ヶ丘の駅に着いた。

 

 

無論、浅野はタクシーで移動中も説得を続けたのだがレアがそれに応じる訳がなく、今に至る。

 

 

『さぁ、行きましょう!』

 

 

レアは商店街の方へ歩き出す。

 

 

『さっきみたく、一人で行かれても良いんですよ?』

 

 

『そうね。でも、ガクシューはついて来るでしょ?』

 

 

浅野の皮肉を上手くレアは返した。

 

 

結局、浅野もレアについていく。

 

 

『ねぇ、学校帰りはどんなお店に寄るの?ラーメン屋?』

 

 

『ラーメンは食べませんね。客人をもてなすに値する店は、友人がオーナーの隣の店です』

 

 

浅野に言われ、レアはそちらをチラッと見る。そこは椚ヶ丘一の高級カフェだ。

 

 

『うーん。何か違うわね…………』

 

 

その店は素通りした。そこから少し歩いていくと、レアはある店の前で止まった。

 

 

『ここ、良さそう!入りましょう』

 

 

レアが目につけたのは、昔ながらの喫茶店で、壁が蔦に覆われている。

 

 

『……………いえ、やめましょう』

 

 

浅野がここを避けたかったのには理由がある。1つは、どうせ内装はガチャガチャでソファの色もあせていると思ったから。2つ目は、値段設定的に、椚ヶ丘の生徒が来そうな気がしたからだ。

 

 

『どうしてどうして?』

 

 

しかし、レアは食い下がった。

 

 

『庶民的過ぎるからです。お忍びで来ているのに、騒がれてしまうかも』

 

 

『なんだ、そんなことを気にしてたの?別にいいのよ、そんなことは。もしかして、騒がれるのが怖いの?』

 

 

『僕は平気です』

 

 

『私も大丈夫よ』

 

 

『じゃあ、入りましょうか』

 

 

半ばやけくその浅野はレアと伴に喫茶店に入っていった。

 

 

店の中は予想通り、雑然とテーブルが並んでいて、レジの横には熱帯魚の泳ぐ水槽があり、ごちゃっとした雰囲気はレアのスイートルームと比べれば月とすっぽんだ。

 

 

『この店の雰囲気、素敵ね!』

 

 

レアは気に入った模様。

 

 

『素敵?』

 

 

浅野は思わず聞き返してしまった。

 

 

レアは席に座って、メニュー表を開く。

 

 

『んー………何て書いてあるのかしら?ガクシュー、教えてくれる?』

 

 

『(さっきの店なら英語表記があったのに………)………上から順に、これは…………』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?あれ、浅野じゃね?」

 

 

喫茶店のソファーに座っていた前原が、吸っていたストローを放して突然言い出した。

 

 

「あれ~?確かに浅野クンじゃん」

 

 

カルマは観葉植物の間から浅野を見つけた。

 

 

放課後、渚、カルマ、茅野、倉橋、隼、碧海、前原は喫茶店に寄っていた。受験ももうすぐと言う訳で、E組が誇る我らが天才、創真に勉強を教えてもらおうとこの喫茶店に学校から直接ここへ集まったのだ。

ちなみに、創真は教材を取りに行くと言うので、一旦帰っていった。

 

 

「しかも女連れじゃん。てか、外国人っぽいね」

 

 

「まさか、王女様か?」

 

 

「ちょっと近くまで行ってみよう!」

 

 

碧海を先頭に、皆は浅野を観察しやすい席に移動する。

 

 

「邪魔しちゃ悪いんじゃ…………」

 

 

遠慮がちだった渚も仕方なくついていく。

 

 

「いいなー浅野の奴。俺も機会があれば、王女を口説き落とせるのに」

 

 

「そりゃねぇな、E組のナンパ師よ」

 

 

「やめろ、隼!その言い方はすんな!」

 

 

「ちょっと、2人とも静かにして。ばれるよ」

 

 

碧海が仲裁に入り、一行は静かに観察をする。

 

 

1人会話に参加せず、猛烈な早さでスマホを打っている倉橋に渚は気づいた。

 

 

「倉橋さん、何してるの?」

 

 

「皆にメールしてるの。『A組の浅野君が喫茶・丘でデート!相手は王女さまだよ~』ってね!」

 

 

「浅野君のデートが…………気の毒に」

 

 

渚は静かにため息をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、レアはバナナパフェに夢中だった。

 

 

『タワーみたいにクリームが盛っててかわいい!バナナの下にチーズケーキとチョコアイス!崩れ落ちそうだけど、すっごく美味しい!』

 

 

そんなレアの姿に、浅野のイライラゲージは着々と上がっていった。

 

 

『王女、こんなカロリーの塊は体に良くない。少し食べたら早く戻りましょう』

 

 

『今さら急いで帰っても意味ないわよ。もう少しガクシューもリラックスしたら?』

 

 

『こんな状況でリラックス出来る方がおかしいです』

 

 

そんな会話を聞いていた渚達。カルマはニヤリと笑う。

 

 

「あいつ、王女に説教してるねー」

 

 

「何やってんだ浅野の奴。デートなら、女の子はもちあげてなんぼだろ。女心が分かってねー野郎だ」

 

 

ついにE組のナンパ師まで怒り出す始末。

 

 

そこへ、連絡を受けた千葉と速水が到着した。

 

 

「浅野がデートだって?マジかよ」

 

 

「あの人が王女さま……………」

 

 

千葉と速水がそれぞれ反応を見せる。

 

 

さらに、中村も来た。

 

 

「こんないじりがいのあるシチュエーションなんて、滅多にないっしょ!」

 

 

「中村さん、声が大きいって……」

 

 

渚が注意する。幸い、ばれなかったようだが。

 

 

そして、寺坂、吉田、村松の3人も到着。

 

 

「俺らに見せつけてんだな。上等だ、散々からかってやろうぜ」

 

 

こちらも中村と同様、弄ることを楽しみにしている模様。

 

 

気がつけば、竹林、三村、岡島、菅谷、木村…………E組の大半が姿を見せていた。

 

 

そんな多人数の視線に気が付かず、浅野は説得を続ける。

 

 

『護衛をまいてお忍びで外出するのは達成したのだから、もう戻りましょう。何があってからでは責任を持てません』

 

 

『子供じゃないんだから、自分の行動は自分で責任を持ちます。あなたにそんなことを言われたくないです』

 

 

『あなたが重要な立場だからこそ、護衛はその任を果たしているのでしょう。楽しみを犠牲にすると言うことも学ぶべきです』

 

 

浅野の言及にレアは少し黙っていたが、やがて不機嫌そうに口を開いた。

 

 

『あなたも同じね。私の回りにいる人と同様につまらない人だわ』

 

 

その言葉に浅野はカチンときたが、冷静に返す。

 

 

『僕はつまらない人間ではない。勉学は勿論、武道の心得もある。交遊関係も広いし、人を動かすカリスマ性もある。そこらの人間と一緒にしないでもらいたい』

 

 

女心を分かってない、もはや自慢に聞こえる浅野の言葉を聞いたE組が呆れていたその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ。自慢大会でもやっているのかい?2番手君」

 

 

その言葉が聞こえてきた方を浅野が。そして、E組の面々も目を向けると、そこには黒系のシャツの上に白のベスト。さらには、白のロングコートを袖を通さず羽織り着しているイケメンの少年───────結城 創真がいた。さらに、後ろにはデュオにホリーもいる。

 

 

 

「結城 創真…………!!何故お前がここにいる!?」

 

 

「なんだい浅野君、まるで『お前はここにいてはいけない』的な言い方は……………別に、渚君達に勉強を教えるために来たんだが…………って、後ろにいるじゃん」

 

 

浅野が慌てて振り向くと、そこにはE組の生徒がぎゅうぎゅう詰めでソファに座っていた。

 

 

「なっ……………君達、こんなところで何をしているんだ!?」

 

 

「え?ジュース飲んで宿題やってるー」

 

 

そんな事をカルマが言ったため、それにあわせて渚たちは慌ててノートとペンを取り出す。

 

 

「下手な誤魔化し方だな…………中学浪人しても知らないぞ」

 

 

「ご心配どうも。だが、僕の予想ではこのE組から浪人生が出ることはないよ。100%、ね。それは僕が保証しよう。所で浅野君。君こそ1位の座を奪われてないか……………あ、ごめん。既に僕に奪われていたね…………」

 

 

創真の嫌味返しに、浅野は創真を睨むが、対して創真は鼻で笑うような、見るだけでムカつくような表情を作って浮かべる。

 

 

「そ、それにしてもやっぱり王女さまなんだな。羨ましいな」

 

 

磯貝がその場の空気を和ますように、明るい口調で云う。

 

 

それを聞いた浅野の表情が一瞬曇ったのを、カルマは見逃さなかった。

 

 

「やっぱそうかー。さっきからキレそうだったねー」

 

 

「…………最初から聞いていたのか?」

 

 

「まぁね」

 

 

カルマが特に悪びれた様子もなくけろっと言い切る。

 

 

(くそっ…………面倒なことになる前に早くここを出るぞ!)

 

 

浅野はそう考えて、レアを説得するためにレアの方を向く。

 

 

『王女、早く行きましょ…………う?』

 

 

浅野はレアがとある人物を驚きの表情で見つめているのに気がついた。その視線の先には…………………

 

 

『ねぇ…………もしかしてあなた…………ソウマ?』

 

 

それを聞いた創真は…………………ニヤリと笑った。

 

 

『どうやら、覚えていてくれたみたいだね。久しぶり、レアちゃん』

 

 

『やっぱり!!』

 

 

レアは呆然として座っている浅野を押し立たせ、立っている創真に抱きついた。

 

 

謎の展開だが、殆どの男子は羨ましそうな表情を浮かべ、倉橋は敵意ある目でレアを見ていた。誰も気づかなかったが。

 

 

『本当に驚いたわ!まさか椚ヶ丘にソウマがいるなんて!』

 

 

『そーかい?僕もこんな喫茶店にいるとは、盲点を付かれたね…………ところで、キミ…………いつまで抱きついてるんだ……………そろそろ苦しい…………』

 

 

『あ、ごめんなさい!凄く久しぶりだったものだから……』

 

 

レアは慌てて抱擁を解除する。

 

 

『ちょ、ちょっと!2人はどう言った関係なの!?』

 

 

創真の彼女、倉橋は敵意と疑問と驚きを含んだ表情で尋ねてくる。

 

 

『私とソウマの関係性?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は創真の婚約者(・・・)よ?』

 

 

『『『婚約者!?』』』

 

 

全員が驚きのリアクションを見せる。中でも、創真は少し黙って考えていたが、突然「あ、あん時のか………」と独りで納得した。

 

 

そして、倉橋は……………顔を真っ赤にして怒った。

 

 

『なななななななななな何を言ってるの!?創真君は私の彼氏なのよ!?』

 

 

『ねーソウマ!今度あなたをお父様に紹介するわ。私の未来の結婚相手です、って』

 

 

『そして聞いてない!!』

 

 

盛大に無視された倉橋はいよいよヒートアップする。

 

 

『王女さま、悪いんだけど創真君は私の彼氏なの。と言う訳で、すっぱり諦めてくれます?』

 

 

『あら?割り込みはよくありませんよ?私は7年前から約束されてるのです。そちらこそ、すっぱり諦めて貰えます?』

 

 

『んなっ!?』

 

 

至近距離で火花を散らす2人。そして、何故か面白そうにそれを見つめる創真。

 

 

浅野も早く王女を連れて戻りたいところだが、なかなか間に入るタイミングが見つからない…………と言うか、この間に入れない。

 

 

すると、レアは急に倉橋から目を離し、浅野の方を向く。

 

 

『所で、彼等は友達なの?』

 

 

ここぞとばかりに、前原が少し斜めに構えて気取りながらレアに向かって手を振った。

 

 

『椚ヶ丘へようこそ!』

 

 

レアは前原に笑顔で返す。

 

 

「マジか!笑ってくれたぜ!」

 

 

調子に乗った前原は磯貝を肘で突いて云う。

 

 

「女心が分からない浅野に俺達が口説きかたを教えてやろうぜ。ほら磯貝、ここは1発英語でやってみろよ」

 

 

磯貝は勇気を振り絞ってレアに語りかける。

 

 

『あなたはまるで雪の女王みたいに清らかで美しい』

 

 

おおー、と盛り上がるE組。レアはちょっと照れている。

 

 

ここで浅野が割って入った。

 

 

『いい加減にしたまえ、君達!王女の前だぞ!敬語で接するのが常識だろう!?………申し訳ありません。この者達が馴れ馴れしく…………』

 

 

『良いのよ、中学生らしくて。私、あなた達に会えてすっごく嬉しい!』

 

 

『し、しかし………』

 

 

まだ何か言いたげな浅野を気にせず、中村は話し掛ける。

 

 

『ねぇねぇ、私達とお話しようよ!』

 

 

『ぜひぜひ!!』

 

 

茅野と中村が席をつめ、レアの座るスペースを確保する。そこへレアが座る。

 

 

『私は中村莉桜!よろしくね!』

 

 

『こちらこそ!早速だけど、その緑色の飲み物、なあに?』

 

 

『これはクリームソーダー。メロン風味のソーダにアイスクリームが入ってるの。この氷の回りについているアイス、すくって食べてみてよ』

 

 

レアは教えてもらった通り、クリームソーダをすくって食べてみる。

 

 

『なにこれ、すっごく美味しい!』

 

 

次に会話に参加したのはカルマだ。

 

 

『ねぇ、そう言えば王女さまと創真ってどういう経緯で知り合ったの?すっごい興味あるなー』

 

 

『ソウマと?皆も気になる?』

 

 

レアの質問に、殆どのE組生徒が首を縦に振る。

 

 

『じゃあ、話しましょうか。あれは7年前、私がアメリカにお忍びで訪れた時の出来事で……………』

 

 

to be continue…………




次回は創真とレア王女の出会いの話です。しかし、それだけでは終わりません。お楽しみに!


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7年前、少年と少女は唐突に出会った

お久しぶり!今回は7年前、レアと創真の出会いのお話し。そして、急展開も!?


さらに、後書きにミニコラボ第2弾を載せたので、興味のある方は見てってちょーだい。そんじゃ、スタート!


感想等も待ってるぜ


7年前、アメリカ

 

 

『どうしよう…………道に迷っちゃった………』

 

 

赤のスカートに白のコートを羽織っている青い瞳のお姫様………………レアはそう呟いた。

 

 

今から一週間ほど前。レアはアメリカのニューヨークにお忍びで観光に来ていた。社会勉強と言う名目で──────本人はやる気の欠片もないが。

 

 

最初はワクワクしていたが、次第にその高揚とした気持ちは消沈していった。

 

 

何故なら、何処に行くにも護衛がついてくるからだ。レアとしては鬱陶しくてしょうがない。

 

 

だから、滞在最終日に護衛を撒いて外へと飛び出した。スマホの電源は切った。何か自分の位置を伝えるような機械が埋め込まれていると予想したからだ。

 

 

そして、抜け出してほんの20分。地図を見ていながらも───────全て英語表記に加え、中々大雑把だったため───────────道に迷い、今に至る。

 

 

『(うーん、しょうがないわ。誰かに道を訊ねるしかないわね………………)』

 

 

……………と、心の中ではそう思うのだが、レアには中々それが出来なかった。理由は単純だ。やったことがないからだ(・・・・・・・・・・・)

 

 

今まで、お店での注文等は全て護衛に任せてきた。それ故、中々話し掛ける勇気が出ないのだ。それに、アメリカ人はレアにとっては少し怖かった(体格etc.)

 

 

近くの公園のベンチに座って、そんな事を考えていると………………

 

 

『ねぇ、君。お隣良いかい?』

 

 

突然英語で話し掛けられ、ハッと声の主の方を向くとそこには天気は晴天なのに何故か黒い傘を持ち、黒系のジーパンに、黒のロングコートに袖を通している、レアと同じくらいの年の男の子がいた。

 

 

『あ…………えっと…………ど、どうぞ?』

 

 

『ありがとねー』

 

 

たどたどしいレアの英語だったが、ちゃんと通じたようで、少年は隣に座る。

 

 

『ふいー………ついにゲットしたぞ………1日限定60個のアイスクリーム!』

 

 

独りそう呟き、アイスを堪能していく少年。

 

 

『(美味しそう…………私も食べてみたいなぁ……)』

 

 

レアが少年の横顔をさりげなく眺めながらそう考えていると、また新たな声が飛んできた。

 

 

『おーい、創真!フハハハハ!!俺も手にいれたぞぉ!!限定アイス!!』

 

 

30代位の男は大きな声で近づいてくる。

 

 

『…………父さん、声が大きいわ。見ろ。回りの人がこっちを見てヒソヒソ話している………それと、別に日本語でも良いんじゃないの?』

 

 

『おいおい創真。ここはアメリカなんだからよ。ここにいる間は会話は全部英語だろ?そっちの方が雰囲気が出る………………所で、お隣のお嬢さんは誰だ?お前の彼女?』

 

 

『『!?』』

 

 

少年を改め創真、そして今のやり取りを何となく理解していたレアは一瞬思考がフリーズした。

 

 

そして、思考のエンジンが先に再スタートしたのは創真だった。

 

 

『…………何を言うかと思ったら………まったく、呆れさせてくれる。まったく、お隣さんも困って固まってるよ?君、ごめんねー。このアホなおっさんが馬鹿な事言って~』

 

 

『おい………親をアホだの、馬鹿だの、ゴリラだの言うんじゃない…………』

 

 

『ゴリラは言ってないな』

 

 

そのやり取りを聞いていたレアは思わず吹き出し、笑ってしまった。

 

 

声を出して笑っているレアを、創真とその父親はポカーンと見つめていた。

 

 

『アハハ……………こんなに笑ったのは久しぶりね。まるでコメディを見てるみたいだわ…………あなた、ソウマ君だっけ?』

 

 

『そうだよー。僕の名は結城 創真。君の名は?』

 

 

『私はレアよ!ねぇ、ソウマはここら辺に詳しい?』

 

 

『まー僕も観光しに来たからね。そこそこ詳しいよ』

 

 

『なら、案内してくれない?私はここに来るのが初めてなの』

 

 

『別に良いけど…………スマホとか使わないの?』

 

 

『えーっと…………す、スマホの電池が切れちゃって。昨日充電し忘れちゃったのよ………ドジ踏んじゃった』

 

 

まさか、発信器が仕掛けられてるかも知れないから……などと言えるわけもなく、レアは咄嗟にそう言った。

 

 

『なるほど。まー僕は別に良いけど、父さんは?』

 

 

『勿論構わんぞ。お前らのデートが上手くいくよう、協力するぜ!』

 

 

『デートちゃうんだけど…………』

 

 

『ふふーん……………さ、行こうぜ!レアちゃんは何処に行きたいんだ?』

 

 

『えっと…………』

 

 

レアは創真の父親にメモを見せる。

 

 

『ほほーう……自由の女神に………お、ここのハンバーグ屋は美味しいんだよなー。いいチョイスしてるなー………創真、移動は俺の車でするか?』

 

 

『そーね………電車はこの時間帯は混んでるだろうし、それで良い?』

 

 

『良いぞー。じゃ、二人ともこっちだぜ─』

 

 

創真の父親に促され、レアと創真は移動を開始したその時だった。レアの視界に、黒服の男が映った。

 

 

自分達の護衛だった。

 

 

《あ!いたぞ!》

 

 

護衛の一人がそう叫ぶと、他の護衛もレアの方を殺到していく。

 

 

『お?何だ何だー?』

 

 

『誰か来るねぇ………』

 

 

不思議そうな親子達。

 

 

(もー!折角良いところ何だから!こうなったら…………)

 

 

レアはそう考え、2人に向けてとんでもないことを云う。

 

 

『あ、あの人達は私の命を狙ってくる人達なの!は、早く逃げないと!』

 

 

『『………………』』

 

 

創真親子は暫く固まっていた。しかし、次の瞬間………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『逃げよッ!』

 

 

『走るぞォ!』

 

 

次の瞬間、創真とその父は回れ右でダッシュを開始。

 

 

『ちょっと失礼!』

 

 

『キャッ!?』

 

 

レアは創真にお姫様抱っこされた。レア自身の重さも加わっているにも関わらず、創真の走る速度は異常なレベルだった。

 

 

「創真。80メートル先を左に曲がって、まっすぐ走れ。俺は車ですぐ合流する」

 

 

「りょーかい!」

 

 

『???』

 

 

はてなマークを浮かべるレアを他所に、2人は左右に別れる。創真の父親は駐車場に向けて走り出す。代わって、創真は突然後ろを振り向くと、傘を追ってくる護衛達に向けた。

 

 

パアンッ、と言う音と共に、小型の丸弾が傘の先端から発射された。

 

 

発射された弾は空中で爆発し、黄色い粉を振り撒いた。

 

 

《ギャア!!》

 

 

《目が!!目がァァ!!》

 

 

どういうわけか、護衛達は地面に膝をついて悲鳴をあげる。

 

 

『マスタード粉末の味をゆっくり味わってろ、おっさん!』

 

 

英語でそう叫ぶと、創真は再び走り出す。

 

 

『凄いわ!今の傘、どういう仕組み?』

 

 

『後でね………って、もう来てんじゃね?』

 

 

言われてみれば、護衛らしき人物が複数人、後ろから迫ってくる。恐らく、先程のとは別の者だろう。

 

 

『あー…………流石にこれは無理ね』

 

 

『ん?確かに、このままじゃ追い付かれるねぇ。ま、どうせお迎えがそろそろ来るから問題ないけど』

 

 

創真は不敵な笑みを浮かべ、チラリと後ろを見る。

 

 

レアも釣られて見ると、走り来る護衛たちを一瞬で追い抜かし、黒い車が迫ってくる。

 

 

『おーい、創真!あと6秒後に横に跳べ!』

 

 

『へいへい』

 

 

父親の指示に、言われなくても、と言いたげな表情で応える創真。

 

 

そして、レアを抱えたまま、急ブレーキを掛けて止まる。

 

 

『ねぇ、ソウマ君』

 

 

『うん?』

 

 

『私、これからあなたが何をするのか分からないんだけど……………スゴく嫌な予感がする…………』

 

 

『…………なんも知らん方が良いぞ』

 

 

車がどんどん迫ってくる。創真はガードレールの上に立った。

 

 

そして………………車が創真の横を通りすぎようとするその瞬間、創真はレアを抱えたまま、横に跳んだ。

そのまま、開けてあった助手席の窓から車内へダイブした。

 

 

少しでもタイミングが間違えば重傷間違えなしだったのだが……………見事に成功させた。

 

 

『よっしゃあ!飛ばすぜ!』

 

 

創真の父親はアクセルを踏み込む。エンジンを大きく唸らせ、走り去る。護衛を巻いたと言うことは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……………これが、初めてソウマと出会ったときの話ね』

 

 

一段落つき、喋り疲れたのかレアはクリームソーダをストローで吸う。

 

 

すると、倉橋が口を開く。

 

 

『ふーん…………で、その後色んな所を2人で回ったのね?』

 

 

『ええ、そうですよ?色々教えてもらって大変有意義だったわ。今着けてるネックレスも、創真が選んでくれたお土産の1つよ。確か、日本円で30000円位だったかしら?』

 

 

『へぇー………………』

 

 

倉橋は創真の方を面白くなさそうに見つめる。

見つめられた創真は、少し弱った様子。

 

 

「すいませーん…………ブラック珈琲を1つお願いします…………」

 

 

何故か、ブラック珈琲を注文する。

 

 

『でもさぁ、護衛からすれば創真らが王女様を拉致したって思われるんじゃね?』

 

 

皆の疑問をカルマが代表して云った。

 

 

『でも、創真は今ここにいるじゃん?てことは、何ともなかったの?』

 

 

『あぁ、あの時は私が口添えしておいたのよ。あ、そうだ!私が王女と知ったときのソウマの反応、凄く面白かったのよ!それも話すわね……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び7年前。

 

 

 

『あー楽しかった!』

 

 

車の中でレアは満足感に浸っていた。自分の行きたいところを、自由に見聞出来たからだ。

 

 

『本当にありがとう。お陰で良い思い出を作れたわ!』

 

 

『そりゃ、なりよりだぜ。俺もお前らのデート見て青春を思い出したぜ…………』

 

 

『だから、デートちゃう………』

 

 

創真は座席に寄りかかりながら、否定する。

 

 

『いやー、デートだろ?だって、お前ら手を繋いでたろ?』

 

 

『アレははぐれないように、だから…………後は、レアちゃんを狙ってくる奴等から護る役目もあったからね』

 

 

その言葉に、レアは少し顔を赤らめる。

 

 

『創真くーん、正直デートでしょ?護る、とかそれ彼氏の役目…………』

 

 

『彼氏?そんな生ぬるいもんじゃないよ。genius(天才)の名に懸けて、って事さ』

 

 

どや顔の創真。創真の父親は、出たよ金田一 一(きんだいちはじめ)のパクリ決め台詞……と呟いた。

 

 

『父さん、目的地のレアちゃんが泊まるホテルまであとどれくらい?』

 

 

『一時間か?少々道が混んでるからな』

 

 

『………じゃ、寝るわ』

 

 

疲れか、それとも父のいじりから逃れるためか、アイマスクを付けて眠りだした。

 

 

genius(天才)の名に懸けて、ね。誰かの名言かしら?』

 

 

『誰かさんの決め台詞を弄っただけだ。中二病みたいなもんさ。暫くしたらどうでも良くなって言わなくなるだろうよ……………所でレアちゃん。geniusのもう1つの意味って知ってるか?』

 

 

レアは少し考えてから、分からないわ、と答えた。

 

 

『守護者、って意味があるんだよ。geniusの名に懸けて、ってのもプロポーズ…………あなたを一生守りますー、って創真は言いたかったんかもなー』

 

 

お分かりだろうか。この創真(父)のおふざけが後、7年後の今に繋がる。

 

 

『(一生守ってくれる……………それって、結婚してくれって事!?)』

 

 

創真の父親の言葉を真に受けたレアは至上最高に顔を赤く染める。

 

 

『(会ってまだ間もないのに……………でも……………この人になら守られたいかなぁ……………)』

 

 

まだ子供な故、少々楽観的だ。

 

 

…………と言うか、会って1日目なのに何故にここまで発展したのか。解せぬby作者

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………ん………着いた?」

 

 

『お、タイミング良いな、創真。ちょうどご到着だ』

 

 

アイマスクを外し、大きなあくびをする創真。ふと、隣を見ると

 

 

「ふぁ!?」

 

 

レアが創真の方に体を預けながら寝ていた。

 

 

「…………………………」

 

 

─────────寝顔可愛い。

 

 

率直にそう感じた。しかし、これ以上寝顔を眺めていると、父親に何言われるか分からないので、起こすことにした。

 

 

『おーい、起きろー』

 

 

レアの頬をプニプニ押しながら創真は云う。

 

 

『ん…………………んー、よく寝た~』

 

 

『そーかい。じゃ、行こうか』

 

 

『うん!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 

 

ホテルに入ったその瞬間、フロント周辺にいた黒服の男達が一斉に創真らに向けて飛び掛かろうとした。

 

 

しかし、凛とした声が辺りに響いた。

 

 

『やめなさい!』

 

 

レアのピリッとした一声に、黒服の男達は動きを止めた。

 

 

『何故止めるのですか!?彼等はあなた様を………』

 

 

『ノルゴ王国、王女として命じているのです。命令が聞けないなら、私への反逆と見なします!』

 

 

『『『………………………』』』

 

 

黒服の男達は押し黙ってしまった。

 

 

レアはふぅ、と一息ついて後ろを振り返った。

 

 

無論、2人とも驚いていた。

 

 

『いやー……………まさか王女だったとはな………』

 

 

『………………』

 

 

辛うじて、創真の父親はそれだけ云った。創真の方は完全に思考が麻痺していた。

 

 

『黙っていてごめんなさい。驚かすつもりはなかったの』

 

 

『あーいや、そりゃ構わないぜ。言いづらいだろうし………』

 

 

『……………………』

 

 

創真は未だ無言。

 

 

そんなフリーズ状態の創真にレアは近づく。

 

 

『ソウマ、今日はありがとう。守ってくれて、案内してくれて』

 

 

『え、いや、別に、そりゃ、えー?あ、えっと、その、べ、別に、た、大した事は』

 

 

テンパる創真。中々レアな光景だ。

 

 

『ソウマ。ぷ、プロポーズの件だけど………喜んで承諾するわ』

 

 

『…………………ん?』

 

 

『そ、それじゃあ、また今度会いましょうね!』

 

 

顔を赤らめたレアは小走りで去ってしまった。

 

 

『プロポーズ……………?どゆこと?父さん、何か知ってる?』

 

 

『シリマセン』

 

 

そっぽを向きながら、創真の父は云った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『こんな感じね……………まぁ、このあと学校とか色々忙しくてね。7年間、ほとんど国外の何処にも行けなくてほーんとに退屈だったのよねー。ディベートを日本でやることが決まった時は、本当に嬉しかったわ。日本に来たらソウマを探そうと思ってたの。でも、探すまでもなく、ソウマの方から来てくれたけどね』

 

 

 

レアは創真の方を見て、ウインクする。

 

 

『まぁ、久しぶりに会えたのは嬉しいかな~(くそ親父め…………僕が時期早めの厨二病の時の決め台詞を変な意味でレアちゃんに解釈させやがって………)』

 

 

創真は7年前、レアとどんな会話をしたか大方覚えていた。婚約者と言うワードが出てきた時点で当時を振り返ってみると、厨二病創真が口癖だった、『天才の名に懸けて!』…………レアがgeniusを天才の意味でなく、守護者の意味で解釈したから、少々大袈裟なプロポーズを自分がしたとレアに思い込ませたのか?

 

 

そう予想していた。先程までは。

 

 

しかし、実際はgenius=守護者と言うもう1つの意味をレアは知らなかった。即ち、守護者と言う意味を教え(それ自体は構わないが)、さらにそれをプロポーズだとふざけた事を言い、変な勘違いをさせた元凶の存在=自分の父親という事をここで知った。

 

 

「そ、創真君……………何か大丈夫?」

 

 

何かを殺気に近いものでも感知したのか、渚が小声で創真に話し掛けた。

 

 

「フフフフフフ……………あの親父、ミンチにしてやろうか………………」

 

 

大分お怒りの様子。

 

 

そんなこんなで、一部を除き色々と盛り上がっている。

 

 

「創真。今、僕に用事が出来た」

 

 

 

突然、ホリーが何時になく、真剣な表情で話し掛けてきた。

 

 

「……………どうした?」

 

 

何か緊急事態が発生したのか……………そんな事を考えている創真に、ホリーは云った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トイレ行きたい」

 

 

「はよ行け!!」

 

 

ホリーは即座に立ちあがり、トイレへと走り出す。

 

 

「はぁ………一々言う必要無いだろうが…………」

 

 

ため息をつく創真。そこへ新たな来店者が訪れた。黒服に身を包み、サングラスを掛けた男2人は真っ直ぐにレアのいる席に来た。

 

 

『王女様、大使館から参りました護衛の者です。王女が突然いなくなり、国王陛下も大使も心配しておられます。さぁ、ホテルに戻りましょう』

 

 

神の目(ゴッドアイ)が居場所を突き止めたようだ。

 

 

『えー?まだ良いじゃない、場所が分かったんだから』

 

 

『いけません。国王直々に連れ戻すように厳命されていますので』

 

 

護衛が引く様子がないのを分かると、仕方なくレアは立ち上がった。

 

 

『皆と色々話せて楽しかったわ。また、ディベートでも話せると良いな。あ、ソウマ。また今度ホテルに招待するわ。そこで、色々イイコトしましょうね♪』

 

 

その言葉を受けた創真は少々顔を赤らめ、倉橋はそんな様子の創真を睨み、岡島は鼻血を出した。

 

 

レアが浅野と共に出ていくのを見計らって、倉橋は笑顔で創真に話しかける。

 

 

「ねー、創真君。今度ゆっくり色々話そっか?」

 

 

「お説教なら父にお願いしたいね」

 

 

創真はそう返すと、珈琲を飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

================

 

一方、喫茶店の側に停めてある車に着いた途端、護衛は浅野の方を見て

 

 

『お前は来るな』

 

 

そう言った。

 

 

『彼は私の付き人よ。失礼な事を言わないで』

 

 

レアが護衛に喰って掛かる。すると、護衛はレアを強引に車の中に放り込み、浅野を突き飛ばし、車を発進させた。

 

 

『助けて!』

 

 

無論、浅野は発進する車を追い掛け始める。

 

 

そして、その様子を見ていたE組の面々も喫茶店の外に出た。

 

 

「絶対何かおかしい!」

 

 

「追い掛けよう!」

 

 

直ぐに皆は追跡をすることを決めた。

 

 

「やれやれ……………勉強会はお預けだね」

 

 

創真はため息をつくと、白いロングコートを剥ぎ取った。

 

 

その瞬間、一気に服装が変わる。

 

 

黒のピッタリとした長袖の上に、黒のパーカーと言った服装へチェンジした。

 

 

「あれ?創真君、それ東京喰種(グール)の主人公のと一緒じゃん!しかも、オリジナル展開のあったアニメ第二期、√Aの!」

 

 

「あーうん…………(最近、最終章やってるんだよなぁ…………あっち(・・・)側で)………って、んなことは良いんだよ!」

 

 

不破にそう突っ込み、創真はデュオの方を向く。

 

 

「デュオ、憑依を使う」

 

 

「分かった。やるのは久しぶりだな!」

 

 

デュオは、創真の中に入り込む。創真は大きく跳び、喫茶店の隣の小さなビルの屋上に着地する。

 

 

「ほらほら、フリーランニングで追い掛けるよ」

 

 

創真に言われ、皆もビルを登り始める。

 

 

渚は少し迷っていたが、

 

 

「うちらの力、守るために使うって先生と約束したじゃん!今使わないでいつ使うの!?」

 

 

心の内を察した中村にそう諭され、渚もビルを登り始める。

渚が登り終わった時、創真はスマホを暫く操作していたが、直ぐに顔を上げた。

 

 

「……………南に向かってるね。流ッ石『神の目』………………じゃ、行こうか!」

 

 

創真の号令で、E組の面々は南へ向かってビルからビルへと跳び移った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ………………皆何処行った?」

 

 

忘れ去られた存在(ホリー)は独りぽつんと呟く。

 

 

そこへ、店主のおばちゃんがやって来る。

 

 

「あー君、さっき創真って人がお代を払っといてって」

 

 

渡された領収書を無言で受けとるホリー。

 

 

そして次の瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で僕が払うのォォォ────────!?」

 

 

to be continue………




ミニコラボ


創真「漸く来た!!第2弾!!ミニコラボ!!しゃ────────!!」


キョウヤ「ず、随分とテンションが高いのう…………」


創真「企画的には結構前に立ってたけど、漸く実行に移せたんで、嬉しくってつい……………てなわけで、自己紹介よろしく」


キョウヤ「うむ。儂の名はキョウヤ。11歳じゃ。刀の鍛冶をやっておる」


創真「以前、彼が本来いる世界で対決したんだが………強かったんだよね~」


キョウヤ「お主もな…………アレが発動する所だったわい」


創真「今ならアレになっても10秒で倒せるかな~」


キョウヤ「さ、左様ですか…………」


創真「そんなことはさておき、ロクアカの追想日誌の最新刊が発売されましたね」


キョウヤ「うむ!……………うん?いや、その話題を儂が話して良いのか?」


創真「安心しろ。後で記憶消去を行うからな。お前はこのコラボ自体を忘れるので大丈夫」


キョウヤ「そ、そうか………」


創真「今回はグレンの軍属時代のお話です。中々面白かったぜー。是非書店で手に取って見ると良いよ~」


キョウヤ「グレンの軍属時代…………それは中々興味深いのう」


創真「うんうん………………ん?」


キョウヤ「どうかしたのか?」


創真「いやね、ルーク君の場合だと『出版社から案件でも来たのか?』とか何回も言ってきたんだけど、キョウヤ君はそう言うツッコミがなかったから、何か違和感を感じただけ」


キョウヤ「ふむ。儂も言った方が良いか?」


創真「んー……………1回だけ頼む」


キョウヤ「では…………出版社から案件が来たのか?」


創真「来ませんッ!特に有名でもない作者にハーメルン内で宣伝しとけと言う案件なんて来るわけないです!………あースッキリした」


キョウヤ「そ、そうか………」


創真「所でキョウヤ君。君は刀の達人でもあるよね?」


キョウヤ「そうじゃが?」


創真「試しにここで一振りしてもらいたいんだよね~。読者の皆様にその凄さが伝わるように」


キョウヤ「そんな事か。別に構わんぞ?」


創真「じゃ、この刀使って…………で、あと少し周りの物を退かしとかないと…………切れちゃやだし…………………よし、オッケー!」


キョウヤ「では……………参るッ!!」


ブゥン!!


風を切る音がした。そして、キョウヤの気迫も凄まじい。


創真「おー流石だね」


キョウヤ「まだまだじゃよ。さて、これはお主に返そう」


創真「どうもー。てなわけで、今日はこの辺で終わりに」


パリン


創真「……………何すか?今の音?」


キョウヤ「何かが割れたような……………」


創真「………………って、皿が割れてるし!まさか、さっきの一振りで!?」


キョウヤ「そ、そんな馬鹿な。あそこにある皿まではかなりの距離があるから、刀の刃が届かぬ筈……………否、まさかあの時斬撃を飛ばしてしまったから………」


創真「ありゃー………これ、僕の所有物じゃないんだよね。僕の元お目付け役のなんだよなー………」


キョウヤ「す、すまぬ!!弁償は必ず………」


創真「弁償?この皿、こっちの世界で約1億だから………そっちの世界のお金で言うなら…………こんくらい?」


電卓をキョウヤに見せるた瞬間、キョウヤの顔が絶望に染まる。


キョウヤ「こ、こんな額……………儂が払える訳……」


と、そこへ


氷室「ただいま戻りました…………おや、創真様。それに君は…………」


創真「あ、氷室さん」


キョウヤ「氷室!?」


キョウヤは氷室の前で正座をする。


キョウヤ「儂の名はキョウヤ。わざとではないのだが、あなたの所有物を壊してしまった…………そして、とても弁償出来そうにない。なので…………」


氷室「なので?」







キョウヤ「腹を切って、命を以て償いを致す!!」


創真&氷室「「……………え?」」


キョウヤ「さらば!!」


キョウヤはいつの間にか小刀を構えており、腹に突き刺そうと……………


創真「待て待て待て待て待て!!やめろ、やめろ!!切腹すな!!」


キョウヤ「離せ創真殿!!儂にはもうこれしかないのじゃ!!」


創真「ほんと待って!!マジで話を聞いて!!ちょ、氷室さんも押さえて!!」


氷室「分かりました……………だから、やめとけば良いと申したのに……………」







創真「あー疲れた疲れた。拘束するのに5分も掛かるとは…………」


キョウヤ「何故じゃ!もう儂に道は1つしかないと言うのに…………」


氷室「創真様、そろそろネタばらしとすれば?」


キョウヤ「ネタばらし…………?」


創真「あー、そうねー…………」


創真は近くに立て掛けてあった札をキョウヤに見せる。


創真「テッテテ~!ドッキリでした 笑」


キョウヤ「へ……………………?」


創真「嘘。この皿、バザーで買った10円のだから。君の世界のお金で言うなら、0だから。これ、元々割れるような仕掛けになってたんだよ」


キョウヤ「と、と言うことは儂はあの額を払わなくて良いと……………?」


創真「そゆこと♪」


キョウヤ「あ────────もう!ほんと良かったぁー!!もう死ぬしかないかと…………グズッ………」


創真「キャラが多少崩壊してるぞ…………にしても、キョウヤ君。君にはルミアちゃんがいるんだし、切腹なんてダメだよ?」


氷室「いや、何か偉そうな事言ってますが、キョウヤ君が切腹仕掛けたのは、全部あなたのドッキリのせいでしょうが…………」


創真「う……………まさか腹を切ろうとするとは思わなかった。精々泣きながら土下座して許しを乞う姿が見れるかなー、なんて思ってたんだが………逆にこっちが驚かされたわ」


氷室「これに懲りたら、もうそう言うのをキョウヤ君にやってはダメですよ?」


創真「そうですね。これからはルーク君にやるとしよう」


氷室「(いや、全然懲りてませんね…………)」


創真「てなわけで、中々グダクダな回になりましたが、これにて第2回ミニコラボは終了です。で、キョウヤ君。最後にこれ見てる読者に何か言っておきたいことある?」


キョウヤ「そうじゃな……………儂が出ておる『忍を知らぬ、名も無き暗殺者』は好評連載中じゃ!是非、そっちの方も見てみてくれ!」


氷室「最後、宣伝で終わらすんですか!?」


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警護とは、危険に立ち向かうことではなく、遠ざかることである

東京グールre(最終章)のopを聞きながら書いたこの話(だから何だ)


いやー、にしてもタイトルが思い付かねぇなー。


んじゃ、どうぞどうぞ( ゚д゚)ノ!


浅野はレアの乗る車を見失わぬよう、懸命に走っていた。

 

 

『しつこいガキだ』

 

 

王女を拉致した男はミラーを見ながら悪態をつく。

 

 

レアは車の窓を開け、浅野に向かって叫ぶ。

 

 

『ガクシュー、助けて!』

 

 

男は舌打ちし、車のスピードをどんどん上げていく。

そして遂に車は浅野の視界から消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ…………ハァ…………くそっ…………………」

 

 

車に引き離された浅野は息を切らして悔しそうに顔を歪めた。

 

 

すると不意に、スマホがブルッと震えた。

ポケットからスマホを取り出して見ると、画面に地図が表示された。浅野は直ぐに、その地図が椚ヶ丘を指している事に気付いた。

 

 

「椚ヶ丘の地図…………?誰がこれを………」

 

 

すると、地図に青と赤の円形のカーソルが出現した。

 

 

青のカーソルはYou。赤のにはprinces(王女)と表示された。

見れば、赤のカーソルは地図上を動いている。

 

 

(赤のカーソルは、王女の現在地を意味していると言うことか………………?)

 

 

半信半疑だったが、自力で車を見つけ出す手段もなかった為、結局浅野は地図の情報を信じてみることを決め、再び走り始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、男はレアを乗せた車を人目のつかない場所で停めた。

 

 

『降りるんだ』

 

 

レアにそう命令する。が、しかし

 

 

『来ないで!』

 

 

レアは男のつけていたサングラスをはたき落し、手に忍ばせていた香水を噴射した。

 

 

『ギャア!!』

 

 

予想外のレアの不意打ちを見事に喰らい、男は目元を押さえて悶える。

 

 

その隙にレアは車から脱出する。

 

 

辺りを見回すと、古びた様々な家電製品等の不投棄物があちこちに転がっていた。

 

 

辺りを見回すレアの視界に、工場のような建物が映った。レアはそこを目掛けて一直線に走る。

 

 

『逃がすか!』

 

 

銃を取り出した男はレアの体に狙いを定め、引き金を引こうとしたその時だった。

 

 

森の中からE組の面々が現れ、レアを守るように、男の前に立ちはだかる。

 

 

『はーい、そこまで!それにしても、君。女の子相手に銃を使うとかカッコ悪いねぇ』

 

 

1番先頭に立つ創真が挑発をする。

 

 

『お前ら確か、さっきの喫茶店にいた奴らか…………どうやって来たか知らないが、怪我したくなかったら、子供は帰って宿題でもしてろ』

 

 

男は銃をちらつかせて威嚇するが、今さらそんな脅しでビビる程、E組の暗殺者達は甘くない。

 

 

『俺等をただのガキ?テメェの目は節穴かよ、おっさん。馬鹿丸出しだな』

 

 

『んだと、ガキィ…………なんなら、お前から殺してやろうか!?』

 

 

隼の挑発を受けた男は銃の照準を隼に合わせる。

 

 

────────計画通りに。

 

 

男の意識が隼に向いた瞬間に創真は飛び出し、男との距離を詰める。男は飛び出して来た創真に照準を合わせて撃とうとしたが、それよりも早く創真の回し蹴りが男の手の甲に命中し、男の手から銃が飛ぶ。

 

 

『くそっ』

 

 

男はナイフを取り出し、創真に襲い掛かるが難なく創真は避けていく。

 

 

『おいおい、興醒めだな』

 

 

創真は再度の回し蹴りを放ち、ナイフの刃を根本から折った。

 

 

『くっ…………………』

 

 

不利を悟ったのか、男は突然逃げ出した。

 

 

「カルマ君」

 

 

「はいはい。『王女、ちょっと失礼』」

 

 

『え?』

 

 

カルマはレアの目を手で覆う。

 

 

「いいよ創真~」

 

 

「りょーかい」

 

 

創真は親指で人差し指を鳴らす。すると、創真のパーカーの腰部が先端が鉤爪状の赤い触手のような形状に変化する。

 

 

東京グールを知っている人ならお分かりかと思いますが、赫子(かぐね)の一種である、鱗赫(りんかく)の再現である。

 

 

鱗赫は逃走する男の足へと一直線に向い、その足に絡み付いた。

 

 

『おわっ!?』

 

 

男は綺麗に転ぶ。しかし、これで終わらない。男の上から原さん特製の対先生用ネットが落とされ、さらに男子数名が男の上に馬乗りし、完全に拘束した。

 

 

創真は放心状態のレアの元へ駆け寄る。

 

 

『レアちゃん、大丈夫?』

 

 

『え、ええ。ありがとう、ソウマ。でも、さっき何で私は目隠しされたの?』

 

 

『まー、色々あんの』

 

 

アレ(・・)を見られるとめんどいから、とは言わない。

 

 

2人は拘束されている男の元へ向かう。そこではカルマが尋問を行っていた。

 

 

『さて、カルマ君。こいつ、何か吐いた?』

 

 

『ダメだねー。大人をなめんじゃねぇぞ、ゴラァ!…………とか言って全然何も吐かないわ』

 

 

 

カルマが肩をすくめて云う。今度はレアが男を覗き込む。

 

 

『あなた、何故私を殺そうとしたの?答えなさい』

 

 

『……………………』

 

 

男は無視し、王女から視線を外す。

 

 

『こりゃダメだ。意地でも吐かないな……………カルマ君よ、何かアイデアない?』

 

 

創真に話を振られたカルマは暫く考える様子を見せていた。少しして、何かを思い付いたのか、カルマは寺坂を呼ぶ。

 

 

「ねー、寺坂。ちょっと、ダンゴムシを集めてきてよ」

 

 

「はぁ?ダンゴムシ?」

 

 

「そこらへんの岩をひっくり返せばいるからさ。ほら、早く早く」

 

 

何で俺が……………とぶつぶつ文句を言いつつも、寺坂はそこら辺にある岩をひっくり返し始める。

 

 

「カルマの奴、まーたヤバそうなこと思い付いたな……………」

 

 

「うん…………凄く楽しそうだね」

 

 

隼と渚が小声で話していると、そこへ浅野が遅れてやって来た。E組の面々を見て驚きの表情を見せてくれる。

 

 

「君達、いったいどうやって…………」

 

 

「おや、浅野君。遅かったね、僕のナビを受けとったのに」

 

 

「!!アレはお前がやったのか?」

 

 

「そゆこと。少しは感謝したまえよ」

 

 

「………………………」

 

 

創真の上から目線なお言葉を盛大に無視をし、浅野はレアの元へ向かう。

 

 

『お怪我はないですか?』

 

 

『ええ、大丈夫。ありがとう、追い掛けて来てくれて』

 

 

『それは構いません。しかし、これはどういう状況なのでしょうか?』

 

 

『えっとね……………』

 

 

レアが浅野に事情を説明している間、ダンゴムシを拾っていた寺坂が戻ってきた。

 

 

「ほら、拾ってきてやったぞ」

 

 

「サンキュー寺坂。さーて、楽しい尋問の再開だね~」

 

 

悪魔のような笑みを浮かべながら、カルマは男に再度話し掛ける。

 

 

『ねぇ、おっさん。最後のチャンスをあげるよ。何で王女を狙ったの?』

 

 

『…………………………』

 

 

執行決定、とカルマは小声で呟き、ダンゴムシを男の耳の中に入れていく。

 

 

『1匹~2匹~3匹~4匹~。あれー、まだ入るなー』

 

 

『おい!何をしている!?』

 

 

叫ぶ男にカルマは男にダンゴムシを見せながら云う。

 

 

『これ何か分かるかな~?俺等、子供の大好きなダンゴムシだよ。今、これをおっさんの耳の中に入れてるの。さーて、あと何匹入るかな~?』

 

 

自分が何をされているか知った男は髪を逆立て、甲高い悲鳴を出した後、気絶した。

 

 

「あーあ、気絶しちゃったよ。ちょっとカルマ君、これじゃ何も聞けないじゃん」

 

 

碧海に文句を言われたカルマは、えー気絶する方が悪いんだよー、と言い訳をしながら男のポケットを探り、スマホを取り出す。

 

 

「あーロックが掛かってるねー。よし、このおっさんは用済みだな。車のトランクに入れておこっか」

 

 

「ここ、吉田君の工場の近くだが、良いの?」

 

 

創真の云う通り、近くに見える工場のような建物は、吉田の父親が経営する吉田モーターズだ。

 

 

「トランクに積めときゃ大丈夫だって。ほら、寺坂早くやっちゃってよ」

 

 

「はいはい、分かったよ!」

 

 

寺坂は吉田、村松と協力して男をトランクに詰めこみ、しっかりロックした。

 

 

「さてと…………これからどうしようか?」

 

 

寺坂達が作業を終えたタイミングで、磯貝が皆に声を掛ける。

 

 

「王女を狙っている輩は他にもいるはずだ」

 

 

「第2、第3の刃がすぐ来るよ」

 

 

前原、岡野が即座に答える。渚達も首肯く。

 

 

「浅野はどう思う?」

 

 

磯貝に聞かれた浅野は腕組みをしたまま暫く考えていたが、やがて口を開いた。

 

 

「王女の護衛を装って暗殺が仕組まれたとなると、かなり深刻だ。暗殺の可能性がまだあることには同意する。直ぐに救助を要請して、ここで待機しよう」

 

 

「でも、護衛を装って暗殺者が来たんだ。ここだってすぐ別の暗殺者が来るかも知れないだろ」

 

 

「だが、移動したら僕達が王女の安全を保証できない。ここは無闇に動くべきではない」

 

 

磯貝と浅野が意見をバチバチぶつけるなか、創真とカルマがレアの傍にやって来る。

 

 

『ねぇ、レアちゃん。僕ら、とてつもなく良い案を思い付いちゃったよ』

 

 

『?』

 

 

疑問符を浮かべるレア。創真に代わってカルマが提案する。

 

 

『ここから直接大使館に逃げるんだよ。大使館の方がホテルより安全だろうし。皆で一緒に行けば狙われにくいだろうし、それに楽しいと思うよー』

 

 

『それ名案!そうしましょう!』

 

 

レアは2人の悪魔の囁きに乗った…………いや、乗っかってしまったと言うべきなのだろうか?

 

 

磯貝と話し合っていた浅野は今後の行動方針を勝手に決められて慌てた。

 

 

「待った。そんな軽々しく決めて良いのか?」

 

 

「え?別に良くない?」

 

 

創真が満面の笑みで答える。

 

 

「君は事の重大さが分かってるのか?もしここから動いて王女に何かあったら、取り返しのつかない事になるかもしれないんだぞ。もしそうなったら、お前は責任を持てるのか?」

 

 

「何かあった時の対処法は既に考えてある」

 

 

「…………それはどんな方法だ?」

 

 

「君の首でも国王に差し出して、許しでも乞えば良いさ~」

 

 

平気で、しかも満面の笑みで恐ろしい事を提案する創真。浅野は一歩進んで創真を睨み付ける。当の本人は涼しい表情だ。

 

 

『はいはい、2人供喧嘩しないで。もう私は決めたの。皆と一緒に大使館まで行くわ』

 

 

これまでの会話は日本語だったので何を話してるのかは分からないレアだが、険悪は雰囲気を察したのか仲介に入った。

 

 

『いけません。こんな奴の計画に乗るなど』

 

 

『君にこんな奴呼ばわりされる筋合いはないね、2番手君』

 

 

何処まで挑発すれば気が済むのだろう、創真は。まったく、作者からしても呆れたものだ。

 

 

『ほんと強情ね。なら、じゃんけんで決める事にしましょう』

 

 

『へー、じゃんけん知ってるんだ』

 

 

カルマが少し興味ありげな様子を見せる。

 

 

『トナカイが木こりに勝ち、木こりがアリに勝ち、アリがトナカイに勝つのよ』

 

 

握り拳、人差し指を立てる、小指を立てる、と手を動かしていく。

 

 

『それがノルゴのじゃんけんかー…………じゃ、それで決めようか』

 

 

『じゃんけんなんて子供騙しな物で決めるなど………』

 

 

浅野は不満そうだが、王女の意向とあっては無視できなかった。

 

 

創真と浅野は拳を構える。

 

 

「「ジャンケンポン!」」

 

 

淺野が握り拳。創真が小指だ。

 

 

『ソウマの勝ちね!さ、約束通り行きましょうガクシュー』

 

 

『……………分かりました』

 

 

今だ不服そうな浅野だったが、結局ここから大使館を目指すことが決まった。浅野はスマホを取り出して理事長に電話を掛ける。理事長はすぐ出た。

 

 

『やぁ、浅野君。連絡を待っていたよ。大使館でもホテルでも大騒ぎだが、どういうことかな?』

 

 

「詳しいことは後で説明しますが、王女を狙った暗殺者をE組の連中と共に退けた所です」

 

 

『何故外出をしたかは後でゆっくり聞かせてもらおう。それで今何処にいる?迎えをよこそう』

 

 

「その必要はありません。僕達で王女を大使館まで送り届けます」

 

 

『……………ほう。また暗殺者が来たら、君達が守ると?』

 

 

「そういう事です。これは王女自身が下した決定事項です。それを強引に覆せとでも?」

 

 

『それが王女自身の判断なのかも信じがたいものだ。君達が王女をそそのかしたとしか考えられないがね。国際問題に発展しかねない事を理解できる知性を持っていると思っていたが、私の思い違いだったかな?今一度、考え直すことをすすめるよ』

 

 

理事長も容赦のない追及をする。それに対し淺野が言い返そうと思ったその時、突然創真は浅野の手から携帯を引ったくった。

 

 

「もしもし、理事長。創真です」

 

 

『おや、創真君か。ちょうど良い、頼みがある。物分かりの悪い浅野君に君から言ってくれないかな?』

 

 

「ふーむ。理事長、お言葉ですが物分かりの悪いのはあなたです」

 

 

『………………何?』

 

 

理事長の声がさらに険しく、冷たくなった。

 

 

「別に心配はいりません。浅野君が言った通り、僕らが王女を守りますので」

 

 

『……………それで?何かあったら君達はどう責任を取るつもりなんだい?』

 

 

「そんときゃ、浅野君とあなたの首を差し出せば良いんじゃないすか?…………まぁ、そうなる確率は0%なんでご安心を。それじゃ、失礼」

 

 

創真は強引に電話を切った。

そして、スマホを浅野に返す。

 

 

「お前……………父によくあんなことを………」

 

 

「僕って度胸あるだろ?」

 

 

不敵な笑みを浮かべる創真に、改めて浅野は畏怖を感じたのだった。

 

 

「さぁて、どうするかねぇ…………」

 

 

創真はスマホの地図を呼び出し、経路を考え始めた。ちょうどその時、渚のスマホにメールが届いた。

 

 

送信者は…………………………

 

 

「烏間先生だ!」

 

 

茅野が尋ねる。

 

 

「烏間先生、なんだって?怒られるのかな?」

 

 

渚は恐る恐るメールを開いた。

 

 

《理事長から知らせを聞いた。君達が浅野君と共に王女を拉致していると。君達の行動は信じている。だが、無茶はするな。警護の心得を教えておく。警護は危険に立ち向かう事ではなく、危険から遠ざかる事だ。必要なら逃げろ。これを肝に命じて王女も君達自身の身も守れ》

 

 

渚は文面を読むとホッとすると同時に勇気付けられた。

 

 

「烏間先生、僕達の事信じてくれてる。危険に立ち向かうんじゃなくて遠ざかって身を守れってさ」

 

 

「流石、烏間先生!わかってる」

 

 

茅野も烏間の言葉に勇気づけられた。

 

 

「よし………………プランがまとまった」

 

 

渚と茅野がメールを読んでいる間に、どうやら創真が計画を考え付いたやうだ。

 

 

「皆集まって。プランを話すよ…………あ、それと渚君。他の皆にメールをお願いしたいんだけど良いかな?」

 

 

「別に構わないよ。それで、何て送るの?」

 

 

「《王女が暗殺者に狙われてるから、黒幕が誰なのか探ってほしい》…………と」

 

 

渚はその場で言われた通りに打ち、送信を終えた。そして、皆の輪の中に加わる。

 

 

「さぁて……………ミッション開始だ」

 

 

to be continue………




スマブラspecialが欲しい(唐突)


感想とか良かったらよろしくー(^-^ゞ


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レッツ護衛!

先ずは皆さん、あけましておめでとうございます!


そうだなぁ……………では、僕の今年の目標でも言いますか。


・今年の3月までに再編集&王女編&前日譚編を終わらせる。


・出来たらお気に入り登録200人突破したい。


・勉強を頑張る


こんな感じですかね?皆さんはどんな抱負と言うか、目標を立てましたか?良かったら、今回の感想と伴に教えてほしいなー………………出来たら。


それでは、どうぞ!ちなみに、今回ミニコラボつき。読みたい人は後書きもどうぞ。


皆は創真の元に集まって、作戦を聞いていた。

 

 

「さて……………タクシー使って大使館まで行く方が単純で早いけど、見つかったら後を追われやすいし、襲われやすい。なので、わざと人目の多いところを通るようにしよう。暗殺者もそっちの方が殺りにくいだろうし」

 

 

創真の周りを渚達やレア、浅野が囲んで話を聞いている。E組は創真の作戦に頷く。

 

 

「ここからだと、バスで駅まで行って、そこから電車。駅からはなるべく人気の多い道を歩こう。付き添う人間はコロコロ変えていくよ。………………さて、他に何か提案とか意見はある?」

 

 

「はいはーい!超良いアイデア、思い付いついちゃった!」

 

 

そう言って手を挙げたのは中村だった。

 

 

「で、そのアイデアとは?」

 

 

「王女を狙われにくくするために変装させる、ってのはどう?」

 

 

「変装…………………か」

 

 

「そ。例えば王女に椚ヶ丘の制服を着させて、王女の服を誰かが代わりに着るとか」

 

 

「それだと、王女の代わりに危険な目に遭う…………って、言ってもやる?」

 

 

創真は中村がその役を引き付けるつもりだというのにすぐに気づいた。

 

 

「こんな髪の色してんだし、ちょうどいいじゃん。狙われるのは王女も同じだし。その代わりしっかり守ってよ、肉壁!」

 

 

中村に肩を叩かれた寺阪は「あァ!?」と振り向いた。

 

 

「テメー、俺を何回壁代わりに使うんだよ!?」

 

 

早速、中村とレアは林の陰で服を交換する。その時、創真の携帯から着信音が鳴った。掛けてきた人物の名を見て、あ、そういやいないのすっかり忘れてた、と呟いて電話に出る。

 

 

「はーい、もしもし?」

 

 

『もしもし、じゃねぇぜゴラァ!!おい!!僕を置いてくとはどういうことだ!?しかも、お会計も僕の財布から出させるとか!!』

 

 

「良いか、よく聞けホリー。実は………」

 

 

『その前に、後で金の返金を約束しろ!!話はそれからじゃあ!!!!』

 

 

「…………分かった分かった。後できっちり返すから」

 

 

返金の約束をしたホリーは未だに不機嫌そうなのを隠さず、それで何だよ、と訊き、それに創真は答える。

 

 

「レアちゃん…………王女が暗殺者に狙われてる」

 

 

『…………………』

 

 

「今から我々で王女を大使館に送り届ける。お前の力が必要だ。協力してくれるか?」

 

 

『……………あ?ふざけんなよ』

 

 

────────何か断られそうな雰囲気なんだが。

 

 

創真は少々の心配を抱えたなか、ホリーは続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あんな美女を狙うとは許しがたい悪党め!!このホリー様が成敗してくれる!!』

 

 

────────心配は無用だった。

 

 

『で、具体的に何すれば良いの?』

 

 

「詳しいことは後でLINEで連絡する」

 

 

『かしこま!』

 

 

そして、電話は切れた。そのタイミングで、着替えが終わった2人が出てきた。

 

 

『どう、ソウマ?似合ってるかしら?』

 

 

『うん、違和感全然ないし似合ってるよ~』

 

 

無論その会話の間、倉橋がムッとした表情だったのは言うまでもない。創真はそれを見なかったことにし、口を開く。

 

 

「じゃ、行こうか。僕とカルマ君、中村さん、壁の寺坂と……………あとはおまけで浅野君がレアちゃんと同行する。残りの皆は駅に先回りしておいて。皆が駅に着く頃に駅での監視の配置の指示をLINEで出すから。じゃあ、ミッション開始だ」

 

 

創真の一声に皆は頷き、それぞれ別れて行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===================

 

 

創真、カルマ、中村、寺坂、浅野、レアの6人───────まぁ、創真に憑依しているデュオを含めれば7人なんだが──────は、バス停へとやって来た。ちなみに、創真は黒の戦闘服からさっきまで着ていた白の服に戻っている。黒のだと寒い、とのこと。

 

 

バス停までの途中、レアは駐日大使のステルドに連絡した。

 

 

《ええ、やっつけたから大丈夫。今から大使館に向かうわ。……………いいえ、ここには留まってられないの》

 

 

レアは言いたいことを言って、電話を切った。

 

 

『何て言ったの?』

 

 

『私の決めたことに逆らわないで、って言いました』

 

 

『やるねぇ』

 

 

カルマはレアの強気な態度に感心した。バスはほどなくしてやって来た。創真、カルマ、浅野が先に乗り込み、乗客の様子を把握すると、続いてレア、後ろを警戒しながら中村と寺坂が続いた。

 

 

『ねぇ、ソウマ。バスは無料なの?………え、そんな訳ない?お金はどうやって払うのかしら?帰ったら必ずお返ししますね』

 

 

気にするレアに創真が手を振った。

 

 

『別に大丈夫だよ。浅野君が全額負担してくれるそうだから』

 

 

そんな創真を浅野は睨むが、レアの視線に気づくと、柔和な表情を見せた。

 

 

非常用の脱出扉に1番近い2人掛けの席の窓側に創真が座り、その隣にレアが座る。カルマと浅野はその横に立った。

 

 

「あたしらは、前と後ろを固めるか」

 

 

中村と寺坂が前後に座る。会話が途切れると暗殺者を警戒して緊張が走る。

 

 

『もうそろそろ隣駅に近づいてくるから、街らしくなるよ』

 

 

カルマがレアの緊張をほぐすように話し掛け、窓の外を指差す。

 

 

『あれ、僕達の行く近所の神社だよ。去年の夏祭り、屋台クジでゲーム機当てたんだ』

 

 

『クジで?すごい!』

 

 

レアが感心していると、レアの隣の創真がツッコミを入れた。

 

 

『おいおい、カルマ君それちゃうだろ?本当はクジに一等入ってないってクレームつけて、屋台のオヤジをゆすってたじゃないか』

 

 

『あ、そうだっけ?』

 

 

カルマがとぼけると、レアは楽しそうに笑った。

 

 

『にしても、あの屋台のオヤジは中々の悪党だったね。絶対一等のくじ入ってなかったと思うよ……………汚い大人やな!』

 

 

『その台詞、どっかで聞いたことあるような気がするなー………』

 

 

カルマが思考を巡らしていると、浅野が会話に割り込んできた。

 

 

「君達、もう王女警護の任務を忘れたのか?緊張を緩めるな。遠足じゃないんだぞ」

 

 

「へいへい」

 

 

カルマは意外にも素直に従う。しかし、創真は反論する。

 

 

「もー、浅野君は真面目すぎるなぁ。てか、そんなに緊張してると逆に参っちゃうよ」

 

 

「そうやって楽な方に流れるのは、大多数の努力を怠る人間だ」

 

 

「どうだか…………そもそも、完璧なエスコートしたいならレアちゃんの望みを先回りして叶えたりしなきゃ。臨機応変に対応するのも必要だと思うけど?」

 

 

浅野はそのアドバイスに反発した。

 

 

「僕は社交界での経験もある。エスコートについて君のアドバイスなど不要だ」

 

 

創真のお節介を鼻で笑う浅野だったが、内心創真らに会話のペースを持っていかれて焦りを感じていた。その内心……………焦りを見透かしてるかのように無言で笑みを浮かべる創真。

 

 

『ねぇねぇ、さっきから何話してるの?英語で話してよ~』

 

 

レアが不満そうな表情で創真らに話し掛けた。

 

 

『ごめんごめん。そういえば、レアちゃんは学校行ってるの?』

 

 

『勿論行ってるわよ。王女と言えども学生だから。私の行ってる学校は貴族や王族がけっこういるの。だから、ソウマやガクシューのような一般の学生と会うのって凄く珍しいの』

 

 

『へー、貴族や王族が多い学校かぁ。何か羨ましいかも!王女様の得意科目はなーに?』

 

 

中村が興味津々な目で尋ねる。

 

 

『得意科目は、ラテン語と創造的・批判的な思考かな』

 

 

『なにそれ!?なんだか面白そう~』

 

 

『創造的・批判的思考か…………日本だと、大学で習う心理学の勉強に関連して勉強するテーマだね。あれは中々面白い』

 

 

『ソウマは習ったの?』

 

 

『まー、何年か前に心理学関連の本を読んだときにチラッと見た程度だけどね』

 

 

『へー…………そう言えば、話は変わるんだけど』

 

 

そう前置きをし、レアはカルマの方を向く。

 

 

『ずっと思ってたんだけど、カルマって私からしたら珍しい名前だけど、日本ではそんなことないの?』

 

 

どうやらカルマの名前について気になっていたようだ。

 

 

『多分、日本では俺だけだろうね。俺の親、結構変わっててさ、息子を一人置いて色んなとこにしょっちゅう遊びに行ったりしてるんだ。家になんて2ヶ月に1回帰ってきたら良い方だし』

 

 

『寂しくないの?』

 

 

『その分好き勝手させてもらってるけどね~』

 

 

『そう言う親子関係、良いなぁ……………』

 

 

レアは心底羨ましそうに言い、はぁ、とため息をつく。

 

 

『親子関係の話なら、浅野クンが外せないんじゃないかなー。なんたって、父親が理事長だし』

 

 

カルマに話題を振られたが、浅野は黙っていた。

 

 

『ふつーはさ、父親が理事長ならえこひいきされたり、良い思いするけどさ、浅野クンはちっとも得がないんだよねー。ひいきどころか、学園のトップでいることが当たり前だと思われてるし。それにね………』

 

 

『知りもしないで適当なことを言うな』

 

 

浅野はカルマの話を遮った。

 

 

『支配者が如何なる時でも強者であれ、という父の教育方針は僕も正しいと信じている。温情など期待したことないし、赤羽みたいなゴシップ好きの奴等に父との関係をあげつらわれた所で何の気にもならない。全ての人間の上に立って支配者になるのが、僕の宿命だ。その宿命を僕自身楽しんでいる』

 

 

創真が「ヒュウッ」とはやし立てた。

 

 

『中々かっこいいことを言うじゃないか、浅野君。だが、まず1つ訂正するとしたら、全ての人間の上に立つのはまず無理だ。何故なら、僕がいるからね』

 

 

『勝手に言っていろ。そう言ってられるのも今のうちだ、結城 創真。近い未来、お前の上にも僕が立つ』

 

 

『それはどうかなぁ?それにしても、君は中々の傲慢だな』

 

 

『確かにガクシューは傲慢ね。でも、周囲の目をものともしないで自分の信じるところを貫くのは良いことだと思うわ。私はどうしても周囲の目を気にしてしまうの。両親からも、国民からも期待されてるように感じて、プレッシャーに思ってしまう。そして、プレッシャーに負けて良い子を演じてしまう自分が嫌い』

 

 

『確かに、本当はしょっちゅう脱走するくらいやんちゃですしね』

 

 

浅野の切り返しに、レアが目をむいて、浅野の腕を軽く叩いた。

 

 

『言いがかりはやめてちょうだい。ガクシューが完璧で面白くないからこうなったんではありませんか』

 

 

文句を言いつつ、レアの目は笑っている。

 

 

『ん?ちょっと待てよ』

 

 

そう言ったのは創真だった。

 

 

『今気づいたけど……………浅野君が面白くなくてつまらないからこんなことになった、って言ったよね?てことは……………』

 

 

創真の言わんとしている事がカルマは分かったようで、その続きをカルマが言った。

 

 

『……………こうなった一因って、浅野クンにあるって事じゃね?』

 

 

創真、カルマ、中村は疑惑の目で淺野をじーっと見つめる。

 

 

『し、仕方ないだろ!急に面白いことを言えって、言われたことなど今までなかったんだ………』

 

 

『あちゃー。確かに浅野君にはちょっと難しい問題だったかー』

 

 

『あーあ。何なら、エスコート役は創真にやらせれば良かったんじゃね?創真ならそう言う無茶ぶりにも答えれそうだし、7年越しの感動の再会にもなっただらうし』

 

 

『…………君、さっきエスコートについて君のアドバイスなど不要だ、って言ってたけど意外とありそうじゃね?』

 

 

上から、中村、カルマ、創真の順に弄られる淺野。何とも珍しいシュールな光景だ。

 

 

『だ、だが!こうなって逆に正解だったかもしれない』

 

 

『何か開き直りと言うか、言い訳と言うかに聞こえるが、とりあえず何故にそう思った?』

 

 

創真の問いに、浅野は咳払いをして、いつも通りの口調で答えた。

 

 

『答えは単純だ。王女を狙っている暗殺者達の存在が明るみになったからだ。もし、こうもならなければ今頃、何があったか分からないだろ』

 

 

『……………まー、一理あるか』

 

 

創真は少し考えた後、ポツリと呟く。改めて浅野はレアの方を向く。

 

 

『期待されるのは、実力を持っていることの証です。その実力をどう発揮するかは自由。自分の人生は、自分で切り開くものだと思います』

 

 

その言葉は、創真やカルマが冷やかす余裕がないほど真剣味を帯びていた。

 

 

『自分の人生は、自分で切り開くもの……………確かにその通りね。良いことを学んだわ。ありがとう、ガクシュー。私、周囲に何を言われようとも気にせず、信じることを曲げずに伸びていくつもりです。その代わり、あなたもせいぜい私と話が出来るくらい伸びてくださいね』

 

 

『僕の成長に置いてかれぬよう、気を付けることをお勧めしますよ』

 

 

2人の強気な言葉の応酬に、そばで聞いていたカルマは喜んだ。

 

 

『何かさー。2人ともお似合いだわ』

 

 

浅野はカルマを睨む。

 

 

『お似合いとか低俗な言い方はやめるんだ』

 

 

『あれー?何か浅野クン、ムキになってない?あ、もしかして…………』

 

 

『何を考えてるのか知らないが、そういうデマを口にしたら、学校から抹殺するぞ』

 

 

『おー。怖えー怖えー』

 

 

浅野の脅しは、カルマを喜ばせるだけだった。

 

 

「おい、さっきからなに話してんだかわかんねーぞ。もっと簡単な英語で喋れよ」

 

 

「もー寺坂はしょうがないな。折角良い雰囲気だったのに」

 

 

中村はため息をつく。

 

 

そんな会話が繰り広げられてる中、創真はスマホの時計を見る。

 

 

(あと5分で着く……………さて、別動隊の皆さんはちゃんとやってるかな?月城姉弟とか、ホリーとかがサボってたりしそうな気がしなくもないんだよねー………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

=================

一方、駅に先回りしていた別動隊。各自が創真が指示した場所を見張るなか、バス停から少し離れた場所に、周囲の監視をする男女、隼と碧海の姿があった。

 

 

「「ハークション!」」

 

 

姉弟(隼と碧海)は揃って同タイミングでくしゃみをかました。

 

 

「なーんか誰かに噂でもされたような気が………」

 

 

「えーまさか。隼は漫画の読みすぎじゃないの?そんな漫画のような事があるわけないでしょ」

 

 

「そんなもんか…………?まぁ、それは良いとして」

 

 

隼は腕時計をチラッと見て云う。

 

 

「あと2分位でバスが着くな」

 

 

「そうだねー。隼、私に見惚れてないで、ちゃんと周りを見るんだよ?」

 

 

「誰が惚れるか!」

 

 

隼がそうツッコミ、はぁ、とため息をつく。

 

 

「ったく、創真と言いお前と言い、いつも俺をからかいやがって……………」

 

 

「んー、何か隼見てるとついからかいたくなるんだよね」

 

 

「それどういうこ」

 

 

「あ、来たよ!」

 

 

言いかけていた隼を遮り、碧海が声をあげる。見れば、確かにバスが駅のロータリーに入ってきていた。

 

 

『皆、良いか?ここで狙われるとしたら、バスを降りる直後だ。全員、気を緩めるなよ』

 

 

創真から渡されていた耳に嵌める小型の通信機から、磯貝の声が流れる。磯貝からの注意を聞いた皆は気を引き締め、各々のいる場所からバス周辺を注目する。

 

 

そして遂に、バスが到着した。すると、列に並んでいた黒いコートに黒いニット帽を被った男が読んでいた新聞を懐にしまい、バスを降りる乗客の方に向かって歩き出した。

 

 

『黒のコートにニット帽を被った男が動き出したよ!あ、注射器持ってる!』

 

 

いち早く伝えたのは上空から透明化で監視をしていたホリーだった。ホリーからの知らせを受け、1番近い場所にいた碧海と隼が男に殺到する。その間にも近づく男。

 

 

 

すると、

 

 

「あーん、待ってそこのお姉ちゃーん!」

 

 

男の顔面すれすれをコウモリが通過していった。

突然現れた蝙蝠の方に一瞬男は気を取られてしまった。そして、バスの方に目を戻すと、暗殺対象と目があった。

 

 

『あれぇ、王女様に見えた?』

 

 

中村の声に男がしまったと思ったときにはもう遅かった。碧海の蹴りが男の持つ注射器を蹴飛ばし、さらに隼の上段突きが男を吹き飛ばした。

 

 

『おうおう、暗殺者さんよう。あんた、意外と強くないじゃねぇか?』

 

 

『くそっ…………!!』

 

 

不利を悟ったのか、男は一目散に逃げようとする。

 

 

 

 

しかし

 

 

 

 

『逃がすかァァァァァァァァァァァァ!!』

 

 

男を飛び越えてきたホリーが行く手を妨げた。

 

 

『貴様が暗殺者だな!?美しき女性を狙うとは言語道断!!このホリー様が成敗してくれる!!』

 

 

『チィッ!!』

 

 

退路を確保しようとナイフ片手に襲い掛かる暗殺者。

 

 

 

しかし、だ。

 

 

 

「トウ!!」

 

 

ナイフを差し出してきた男の手を掴み、そのまま背負い投げ。地面に思いっきり叩きつけられた男を柔道の固め技の1つ『けさ固め』で抑え込む。

 

 

「ハーッハッハ!暗殺者、確保なりー!!」

 

 

高笑いするホリー。誰かが通報したのか、パトカーのサイレンが聞こえてくる。

 

 

「騒ぎが大きくなったな……………早めに離れようぜ」

 

 

「あぁ。幸い、群衆の注意はあいつに向いている。厄介事に巻き込まれる前にここを離れるのが最善だ」

 

 

「そうだね。よっし、早めに行こう!」

 

 

隼の提案に浅野と碧海が賛同し、浅野はレアの手を引いてその場を離れる。

 

 

『待って、カクシュー。ソウマがいないわ!』

 

 

『なっ!?あいつ、こんなときに一体何処に…………!?』

 

 

浅野は辺りを見回すが、創真の姿は見当たらない。

 

 

『あー、大丈夫だよ。創真君、さっき私に「ちょっと野暮用が出来たから、ちょっと抜ける。後でその後の指示をするからよろしく」って言ってたよ』

 

 

『そうか…………では、先を急ぎましょう、王女』

 

 

『………………分かったわ。ソウマなら、大丈夫よね?』

 

 

『なーに、心配には及ばねぇよ。あいつは色々規格外なチート野郎なんだからよ』

 

 

隼が創真を擁護してるんだか嫌味を言ってんだかよく分からん台詞を述べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃、駅から少し離れた路地裏から暗殺者の仲間2人は双眼鏡を通して駅での一連の騒動を目撃していた。

 

 

『なっ…………嘘だろ。あいつは無敗と呼ばれていた凄腕なのに…………』

 

 

『おい、ずらかるぞ!』

 

 

呆然とする男にもう一人の仲間が声を掛ける。男らが車に乗り込んでエンジンをかけて発進しようとしたその時、唐突に車のタイヤが全部外れた。

 

 

『どうなってんだ!?』

 

 

そう叫んだ次の瞬間、車のフロントガラスを突き破って、黒い小型の球体が車の中に入ってきた。男たちがそれを視認するより前に、球体からプシューと言う音と伴に、煙が噴射された。暫くして路地裏に、白いコートを着た少年が入ってきた。

 

 

「おー、ぐっすり寝込んでおりますな」

 

 

創真は満足そうな表情でニヤリと笑った。

デュオが創真からひょいっと出てきて、男を持参した縄でぐるぐる巻きにする。

 

 

「創真、何故こいつらが暗殺者だって気づいた?」

 

 

「あんな殺気立って黒いカッコして黒い車に乗ってたら、誰でも暗殺者だと気付くがな」

 

 

「誰でも、ではないだろうがな」

 

 

苦笑いを浮かべるデュオ。そーかな、と云いながら創真は近づき、手に黒い手袋をつけてから2人の男の胸元を探る。

 

 

「ほーら、やっぱそうだ」

 

 

創真の手には2人の男の胸元から出てきた黒い拳銃があった。それを創真は男らの手に握らせておく。そして、スマホを取り出してモバイル律に話し掛ける。

 

 

「律、警察に通報だ。拳銃を所持してる怪しい2人の男がここの路地裏に倒れてますー、って」

 

 

『了解です!』

 

 

「それと、皆は計画通りやってる?」

 

 

『はい。創真さんが先程碧海さんに送った計画通りに進行しています。間もなく、電車に乗るはずです』

 

 

「そりゃ何より…………さて、僕も行こうか」

 

 

創真は路地裏を出て駅の方へ歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────が、すぐに止まった。

 

 

『どうしましたか、創真さん?』

 

 

「……………いや、アレ」

 

 

律は創真のスマホのカメラを通して創真の視線の先を見てみると、すぐに分かった。

 

 

先程王女を殺ろうとしていた暗殺者がパトカーに乗せられていた。いや、それだけなら何の不自然もないのだが………………何故か別のパトカーにホリーが乗せられていた。

 

 

『……………ホリーさんが、警察官に連行されていますね』

 

 

「何かしたのか、あいつは……………あぁ、痴漢か」

 

 

何故か真っ先に痴漢と決め付けるデュオ。

 

 

「いや、それは無い筈だよ……………多分。恐らく、事情聴衆って事で連れてかれたんじゃない?あーあ、貴重な戦力がポリスメンに連れてかれて行っちゃったよ…………」

 

 

「だがまぁ、作戦に支障はさほど出ないだろう?」

 

 

「まー恐らくね。ホリーを待ってると時間が掛かりそうだし、先を急ぐとうしようか…………それより、隼や渚君らが巧くやってくれてるといいんだがね………」

 

 

少々の不安を隠せない表情で、ポツリと創真は呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『チッ、作戦は失敗か……………だが、まだ終わりじゃないぞ……………』

 

 

とある部屋にて、男はスマホの画面に映る、移動している赤い光点を見つめながら呟いた。

 

 

to be continue………




創真「えー…………お久しぶりでございます。そして、あけましておめでとうございます。さぁ、やって参りましたartisanさんとの共同企画のミニコラボのお時間でございます……………いやー、長かった。予定は立ってるのに全然ミニコラボが進まん。ついでに本編も。いやまぁ、言い訳としてはね、まず綺麗にまとめるのが難しかったらしくてねー。ほんとに終わんのかよ、コレって僕も思いますねー。いやー、にしても遂に2019ですよ、皆さん。ねー、平成も終わりに近づいて、ね。新年号はどうなるんでしょうねー、未だに発表ないし。そう言えばさっき、作者に2018年の中で1番楽しかった事をさっき聞いてみたんですけどね、これが中々共感できるんですよ。それがですね…………」


ルーク「おい、いつまで喋ってんだよ」


フィーベル「さ、流石に長くない…………?」


創真 「…………横槍が入ってきたので、そろそろ本編を始めますか。作者が2018年で1番楽しかった事を知りたい方は、感想とかで聞いてくださいな。さーて、改めまして本日お呼びしたゲストを紹介しましょうか。ルーク&フィーベルのバカップルでーす」


ルーク&フィーベル「「誰がバカだ(よ)!!」」


創真 「おー息ぴったり。さーそれでは本日のトークテーマなんですが………………ん?」


ルーク「どうした創真?」


創真「トークテーマ、未定になってるわ」


フィーベル「……………え?」


創真 「ほら、これ」


創真の見せた企画書には、トークテーマ未定と書いてあった。


ルーク「ほんとだな…………これはどういう事だ?」


創真「ふーむ。どうやら、作者が考え忘れてたみたいだ……………と言うわけで、こっからはアドリブだな。何話そっかな………………」


フィーベル「あ、じゃあこういうのはどう?私の新作小説の紹介をして、感想を貰う企画とか」


創真「却下」


フィーベル「そ、即答ね…………」


創真「そんなんで尺が続くわけ無いでしょーが。はい、次ルーク君。10秒以内に答えれなかったら、アルテマをお前にお見舞いや」


ルーク「は!?急すぎるだろ!?てか、お前、アルテマ出来るの?!」


創真「残り5秒…………」


ルーク「あーもう、えっと、何だ……………そ、そうだ、俺が最近覚えた魔術を紹介したりするのはどうだ?」


創真「誰得だよ、それ。論外だわ……………もー、しょうがないから僕が何か話しますよ。ま、内容も大体考えてたし」


ルーク「それなら、最初からそれを話せよ!!」


フィーベル「そうよそうよ!!」


創真「一応聞いてみたんですー、さほど期待はしてなかったけど。さて、君達知ってる?」


ルーク「知ってる、って何をだよ?」


創真 「お前らの原作、何かそろそろ終わりそう」


ルーク&フィーベル「「えぇ!?」」


創真 「まー、多分すぐには終わんないよ。でも、何かうちの作者が後書きや展開を総合的に見て、後半戦に突入してるわ、って言ってた。間違ってたら作者に文句言って」


ルーク「そうかぁ…………」


創真 「後はそうだな……………お前らの原作のアニメ第二期来ねえかなー、なんて思ってるんだよね…………可能性薄いとは思うけど」


フィーベル「え、何で何で?」


創真「まー、アレだ。円盤の売り上げ的に、な」


ルーク「二期やれよ、おい」


創真「そうゆうのは、制作会社に言ってくれ…………後は……………あ、そうだ。作者の趣味だけど、文豪ストレイドッグスのアニメ第3期が4月に放送開始ですね、皆さん!!イエーイ!!」


ルーク「第3期だと!?何でそんなに続いてんだよ?!こっちはまだ一期しかやってないのによ!」


創真「フフーン、恐らく劇場版の興行収入が5億5千万だったし、元々人気だったし、アニメ一期と二期の円盤の売り上げもそこそこの結果だったし、まぁ、当然と言えば当然かな?」


フィーベル「何か、バカにされてるようでムカつく…………」


創真「…………ふぅ。まぁ、こんだけ話せばそれなりの尺は取れただろうし、この編にするか?」


ルーク「結局、ほとんどお前の語りで終わったじゃねーか」


創真「うるさいなぁ、元はと言えば作者がしっかり企画を練っとけば良かった話だし、僕のせいではございませーん。まぁ、そんなこんなで、今回のゲストはお間抜けルーク君とフィーベルちゃんの2人でございましたー。それでは皆さん、またお会いしましょう。さいなら~」


フィーベル「原作の方も、『忍を知らぬ、名も無き暗殺者』の方もよろしくね!」


ルーク「そして、誰がお間抜けだ!!」


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電車・自転車でGO!

ましなタイトルが思い付かねぇなぁ…………。


暗殺者を撃退して、無事にレアを駅につれてくる事が出来た渚達。そして、改札前に全員が集合した。

 

 

「ん?あ、創真君からメッセージが………………ふーん、なるほど」

 

 

メッセージを見た碧海は、渚達に口を開く。

 

 

「創真君からの作戦の指示。王女の周りを固める人間を変えて、中村さんを先に電車で行かせて、次に来る電車に王女を乗せろ、だって」

 

 

「その作戦に異論はない。それで、誰を王女の回りに付かせるんだ?」

 

 

浅野が続きを促す。

 

 

「えっとね……………渚君と浅野君と私が王女の回りに。磯貝君、前原君、村松君、吉田君が前後の車両で見張りをして。他のメンバーは………………」

 

 

碧海が指示を出すなか、渚のスマホにメールが入った。片岡からである。情報収集の為に、竹林や不破らと大使館に忍び込んだところ、ビッチ先生と遭遇したと言うのだ。

 

 

「何でビッチ先生、大使館にいるんだろう?」

 

 

渚の声に他の生徒らも驚いた。

 

 

「誰か連絡したか?」

 

 

「にしても、早すぎじゃね?」

 

 

「渚、もっと詳しいことが分かったら連絡するようにメールしてくれ」

 

 

磯貝の指示通り、渚はメールを返信して詳細を待った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中村を中心としたチームが都心に向かう電車に乗り込んだ後、レアと浅野と渚、碧海らは次の電車を待っていた。

 

 

「線路に突き落とされる可能性もある。気を付けよう」

 

 

浅野の声に碧海と渚は頷き、膳ってレアと共にベンチに座る。レアは駅構内を珍しそうに見回す。

 

 

『乗客、多いのね』

 

 

『上り方面はいつも混んでるよ。それに今は帰宅ラッシュの時間帯だからね』

 

 

渚がレアの呟きに答える。

 

 

『それにしても、こんなに多いといくら警戒してもキリがないな』

 

 

浅野が少し苛立ちげに呟く。レアはそんな浅野の顔を心配そうに見つめる。そんなレアの横顔にも緊張が現れていた。

 

 

『大丈夫。僕は近付いてくる非との気配を察知するのが得意だから、任せてリラックスしてよ』

 

 

渚の言葉にレアはホッと息をついた。間もなく、電車がホームに滑り込んできた。渚らは、磯貝や村松らと目配せをして電車に乗り込む。レア達3人は、ドアの端に固まる。レアは窓の外に広がる一面の住宅街を見つめて黙っていた。渚達も黙って、回りの警戒をする。

 

 

『それにしても、ソウマは大丈夫かしら?』

 

 

暫くして、レアがポツリと呟いた。

 

 

『大丈夫だって。創真君は凄いんだから』

 

 

『ソウマって、やっぱり凄いの?』

 

 

『凄いよ、ほんと。自作の発明品も作っちゃうし、頭良くて運動も出来るし、完璧な人間と言っても過言じゃないよ。ね、渚君』

 

 

『うん。あんな頭脳を僕も持ってみたいけどなぁ………』

 

 

『へー……………それしても、発明品って言うのは見てみたいわね。具体的にはどんなの?』

 

 

『そうだね…………例えば、カブト虫型の』

 

 

すると、渚が突然口を閉ざした。そして、後ろを振り向いてある一点を凝視する。

 

 

『どうした?』

 

 

『あの優先席の前に立ってる男、多分暗殺者だよ』

 

 

『あの男が?そうには見えないが……………』

 

 

『いや、暗殺者だよ。そう感じるんだ』

 

 

浅野は渚に何処か不気味なものがあるのに気付いた。

 

 

『………………そうか』

 

 

『応援を呼ぶ?』

 

 

碧海の提案に、浅野は首を振る。

 

 

『ああやって様子を伺っているのは、暗殺のチャンスを探っているんだろう。何か書くものは持っているか?』

 

 

すると渚がポケットを探ると殺せんせー用のメモが。碧海のポケットからはガムが出てきた。

 

 

「このメモじゃ小さいな」

 

 

浅野はレアにも尋ねる。

 

 

『何か書くものは持っていませんか?』

 

 

『書くものは………………』

 

 

レアがショルダーバックを漁ると、白いハンカチと口紅を取り出した。

 

 

『これを使わせてもらっても良いですか?』

 

 

『え?これを?構わないけど、何に?』

 

 

浅野はレアのハンカチを渚の背中に広げ、口紅で文字を書く。それを見た碧海は、なるほどねぇ、と浅野の意図を理解し、渚に出番だよ、と呟く。

 

 

「それ、あの男に張り付けるんだよね?だったら、任せて」

 

 

浅野からハンカチを受け取った渚は、碧海からガムを貰って口に放り込む。そして、男の方へ近付く。男の横を通り過ぎた後、渚はフッと手を挙げて男の背中にガムでハンカチを貼りつけた。男はまったく気付かず、そのまま立っていた。浅野は背中がゾクッとした。渚は笑顔で戻って来た。

 

 

『上手く行ったね?直ぐに効果が現れるよ』

 

 

浅野は渚を不思議そうに見つめた。

 

 

「……………君はいったい…………?」

 

 

そして、効果は直ぐ現れた。座席に座っていた男が吹き出した。連れの若い女が「笑っちゃダメ!」と言いながらも笑いを堪えている。その笑いは直ぐに他の乗客にも伝染する。男も様子がおかしいのに気付き、殺気を消そうと努めるが、それでも注目を浴びてしまい困惑した。男が困れば困るほど、笑いは大きくなり、暗殺どころでは無くなった。

 

 

「上手く行ったね」

 

 

「あぁ。間もなく目的の駅だ」

 

 

電車がホームに滑り込む。ドアが開いて、乗客が乗り込むと、発車ベルが鳴る。渚らはドアが閉まる直前のタイミングで、レア達は電車を降りた。

 

 

『何とか逃げ切れたわね。それにしても、ガクシュー。さっき、何て書いたの?』

 

 

『はじめてのおつかい中、と書きました』

 

 

キャハハハ、とレアは笑う。

 

 

『なーんだ。普通にユーモアのセンスがあるじゃない』

 

 

それを聞いた浅野はホテルでの失態を挽回できて、ホッとした。そのまま渚らが改札を出ると、そこには創真とデュオが待っていた。

 

 

「やっほー。計画通りだね。他の皆は?」

 

 

「先に進んでた中村さんらと、降り損ねた磯貝君らは呼び戻したよ。もうすぐ来ると思う」

 

 

「そう。なら良いや。で、遭遇したかい?」

 

 

「あぁ。だが、撃退した」

 

 

浅野が少し得意気に答えた。創真はふーん、と反応する。

 

 

「中々やるじゃん。しっかし、ここまで来ると妙だな………………」

 

 

「何が妙なの?」

 

 

渚の疑問に対して創真は云う。

 

 

「僕らに撃退される位だから、暗殺者は大したことないのに、足取りだけが完全に読まれている…………」

 

 

「…………………確かにそうだな」

 

 

「発信器かと思って、服も交換したのにダメだった。となると……………」

 

 

創真はレアのバックをチラッと見て云う。

 

 

『レアちゃん、バックの中を見せてくれる?』

 

 

レアは承諾し、バックの中身を見せる。中には口紅と手鏡とスマホしか出てこなかった。

 

 

『怪しいのはスマホだな……………ちょっとスマホ借りても良い?』

 

 

『良いわよ』

 

 

創真はカバンからタブレット型のパソコンとケーブルを取り出した、レアのスマホとタブレットPCを繋ぐ。そして、猛スピードでキーボードを操作する。そこへ磯貝もやって来た。

 

 

「何をしてるんだ創真?」

 

 

「レアちゃんのスマホに何か仕込まれてないかを確認中」

 

 

「お前、ほんと何でも出来るな………………」

 

 

「そりゃどーも………………おっと?」

 

 

創真は手を止めて画面を凝視する。

 

 

『どうしたの、ソウマ?』

 

 

『………………位置情報を発信するアプリが巧妙に隠されているね』

 

 

『え!?』

 

 

それを聞いたレアや浅野らも驚いた。

 

 

『創真。その位置情報を誰か見てるとかは分からないのか?』

 

 

カルマが尋ねると、珍しく険しそうな表情を創真は浮かべる。

 

 

『それが中々厄介でね。位置情報を受信している端末の位置情報を検索したんだけど、ベルリンやら中国やら日本やら、果てには国際宇宙ステーションやら、色々出てきて分からないんだよね。どれが本当のなのかを割り出すには少々時間が掛かりそうだね。まっ、これは律に任せるとして』

 

 

創真はタブレットPCを鞄にしまって立ち上がる。

 

 

『そろそろ、僕らも行こうか』

 

 

『ここからは徒歩だな』

 

 

『と、思っていたんだがね。良いもん見つけたんで、作戦変更。アレを使う』

 

 

創真が指差した方向には、自転車のレンタルサービスを行う店の看板があった。

 

 

「自転車かー。小回りも効いて逃げやすいし、良いんじゃね」

 

 

カルマは創真の意見に賛成する。

 

 

「よし、大使館まで自転車で目指そう」

 

 

浅野らはお金を払って、自転車を借りた。創真はレアの方を向いて云う。

 

 

『僕の後ろに乗る?』

 

 

『えぇ、勿論!』

 

 

そして、その会話を聞いた倉橋はまたムッとつまらさそうな表情を浮かべる。創真は自転車のペダルを漕いで、自転車を前に進める。

 

 

「ひゃー、気持ちいいな!自転車使うの、約3年ぶりだなー!」

 

 

「お前、事故ったら責任重大だからな!」

 

 

「分かってるって隼。そんなに心配することはないよ」

 

 

創真は笑いながら云後ろのレアにも創真は話し掛ける。

 

 

『どう、レアちゃん?』

 

 

『すっごく気持ち良い!ねぇねぇ、もっと飛ばして!』

 

 

『王女様のお頼みとあらば、断るわけにもいきませんなぁ。安全運転で、スピードアップ!』

 

 

創真はギアを上げて、さらにスピードを上げる。レアは創真に掴まりながら楽しそうに笑う。自転車に乗った集団は冬の冷たい路面を駆けて行った───────────。




近いうちにまた投稿するかも。


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黒幕の正体

結局、3月中には終わらず…………王女編はこの次でラストの予定ですが、SAO前日譚編がまだ残ってるんですよねー。もしかしたら、続きは来年になるかも知れませんし、気分次第で最後までやっちゃうかも知れませんが、どちらにせよご了承下さい。


自転車で大使館を目指すE組ら。道中、暗殺者には遭遇せず、坂を上りきればもう大使館だと言うところで、渚の携帯に着信が入った。

 

 

「ちょっと待って!」

 

 

「電話かい?誰からの?」

 

 

「えっと………片岡さんだ」

 

 

渚は電話に出て、片岡の話に耳を傾ける。うんうん、と聞いていた渚だが突然、「えっ!?」と声を上げた。

 

 

「暗殺の黒幕がステルド大使!?」

 

 

渚の言葉に皆は驚きを隠せなかった。レアも浅野に翻訳され、驚きの表情を見せる。

 

 

「どーゆーことだよ。助けてもらおうと思ってた奴が黒幕!?」

 

 

「僕もよく分からないんだけど、片岡さんはそう言ってる。あと、理事長と警察が大使館に来てるみたい」

 

 

皆は黙りこんでしまった。重苦しい雰囲気の中、創真は口を開く。

 

 

「よし、行こうか」

 

 

「行こうって、大使館にか?大使館には黒幕がいんだぞ。王女が狙われるかも知れないぜ?」

 

 

「隼、少しは頭を使いたまえ。大使館には警察もいるんでしょ?大使も迂闊に手は出してこないと思うけど」

 

 

「創真の意見に俺は賛成だねー。行っちゃおうよ、このまま」

 

 

「逃げる必要はない。黒幕がいるなら、化けの皮を剥いでやるだけだ」

 

 

創真の意見にカルマ、浅野が賛同し、皆はこのまま大使館に入ることを決めた。

 

 

『王女、心の準備はよろしいですか?』

 

 

浅野はレアに話し掛ける。レアはコクりと首肯く。

 

 

『えぇ……………本当に黒幕なのかどうか、自分の目で確かめるわ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大使館に入ったE組ら。ステルドは大層安心した様子で、胸を撫で下ろす仕草を見せる。

 

 

『よくぞご無事で、王女!』

 

 

ステルドはレアに近付こうとするが、浅野と創真がレアの前に出る。そんな彼らを見て、理事長が口を開く。

 

 

「君達は何をしようとしているのか分かっているのかな?早く王女を引き渡しなさい」

 

 

「理事長、僕らに後ろめたいことはありません。王女の意向を尊重し、全て自分達で判断して行動しました」

 

 

浅野の堂々とした声が大使館に響く。

 

 

「護衛をまいてホテルから抜け出し、危険な目に遭い、忠告を無視して、さらなる危険に遭わせたのが後ろめたくないと?」

 

 

「王女の意向と安全を最優先した結果、理性に従った行動です」

 

 

「ほう。浅野君、君の行動は本当に全て理性に基づいてのもの、と断言できるのかな?」

 

 

「……………勿論です。あなたは何が言いたいんです?」

 

 

「理性が劣情に負けただけではないかと私は思うのだがね」

 

 

「ッッ!」

 

 

理事長は追及の手を止めない。

 

 

「日本とノルゴ、両国の関係にヒビが入りかねない状況だよ。そんな国家レベルの問題をどうやって納めるつもりなのかを聞かせてもらおうか、浅野君」

 

 

「それは…………………………」

 

 

浅野は答えに詰まってしまった。創真も同じく黙っていた─────────────が。

 

 

「理事長。そう言えば言ってなかったですね。何故、僕らが王女を引き渡たそうとしないのか」

 

 

「………………そう言えば聞いていなかったね。何か理由でもあるのかね、創真君?」

 

 

「なら、聞かせてあげましょう。さぁ、謎解きの時間だ!別動隊の皆さーん!」

 

 

創真の召集に答えるように、奥から不破ら別動隊が現れた。先頭に立つ不破がステルドを指差して宣言する。

 

 

「大使、あなたが王女を出迎えることは出来ない。今回、あなたが王女の暗殺を仕組んだことは全部バレているわ」

 

 

不破の指摘にステルドは心底驚いた様子を見せる。

 

 

「こんな状況で何を言っているのですか?私が王女の暗殺を仕組んだ?」

 

 

「証拠なら見せてあげるわ。この名探偵が、ね!」

 

 

不破は自分のスマホを操作する。すると、全員のスマホから様々な音が奏でられる。

 

 

「何だ………………?」

 

 

不審がるステルドも含め、皆は自分のスマホをチェックする。そこには差出人不明のメールが届いており、メールに添付されていた画像には、レアのスマホの位置情報をステルドのスマホで照会しているデータが残っていた。

 

 

「皆さん。見ての通り、ステルド大使は王女の位置情報を照会していました。それを何十回もね」

 

 

『仕組んでいたのはあなただったのね、ステルド!どういうことなの!?』

 

 

浅野に翻訳されて、レアも怒りでスマホを握りしめる。創真も自分のタブレットを取り出す。

 

 

「さっき調べたレアちゃんの位置情報を受信している端末の位置情報を日本のみに限って調べれみれば……………あぁ、確かに大使館付近から発信されているね」

 

 

「それだけじゃないわ。大使は色んな口座にお金を振り込んでるわ。これって、自分の雇った暗殺者への報酬でしょ?証拠のチップもそろってまーす」

 

 

不破はチップを見せびらかす。このチップはビッチ先生が大使館の人間を落として入手した物である。しかし、証拠を指摘されてもステルドは何も動揺してるようには見えなかった。

 

 

「確かに、位置情報を発信するアプリを仕込んだのは事実です。王女には謝罪しなければなりませんが、それだけでは私が王女の暗殺を仕組んだと言う事実は成り立ちませんね」

 

 

「いいえ、証拠ならまだあるわ!あなたは王様の隠し子で、王女の王位を奪おうと狙っているのよ!」

 

 

「………………そんな証拠、あったっけ?」

 

 

別動隊の面々も不破の発言に疑問符を浮かべるが、不破は勝ったも当然と言う顔で云う。

 

 

「だって、王様に隠し子は少年漫画の定番だもん!フッフッフ、これで言い逃れは出来ないわよ!」

 

 

「いや、私は王の隠し子でもないんですが……………それはあなたの妄言ですね」

 

 

「も、妄言じゃない!これは漫画でのシチュエーションから推測した」

 

 

「なら、具体的に私が王の隠し子と言う物的な証拠は?」

 

 

「うっ………………」

 

 

何故か探偵が逆に追い詰められてしまうと言う、謎の展開。それを見かねた創真はやれやれ、とため息をつきながら不破の前に出る。

 

 

「はいはい、不破さん、もう下がって良いですよ」

 

 

「ま、まだよ!じっちゃんの名に懸けてこの謎は私が」

 

 

「いや、これ以上妄言言われると話がややこしくなるから」

 

 

「も、妄言………………」

 

 

妄言と一蹴され、不破は若干落ち込み気味でとぼとぼと下がる。

 

 

「さて、と言うわけでここからはバトンタッチで真の名探偵がこの謎を解いてやる」

 

 

「だから私は」

 

 

「まーまー、最後まで聞きなさいって。カルマ君、最初の暗殺者が持ってたスマホ貸して」

 

 

「え?ロック掛かってるけど?」

 

 

「良いから」

 

 

カルマは創真にスマホをパスする。それを受け取った創真は咳払いをし、全員に向けて語り出す。

 

 

「皆さん、このスマホは最初に襲ってきた暗殺者が持っていたスマホです。ちょっと、今からこのスマホのロックを解除するんで……………」

 

 

創真はスマホをタブレットに繋げ、指を高速で動かす。30秒後、解除が終わったのかスマホをタブレットから外す。

 

 

「さて…………………じゃあ、このスマホの電話の通話履歴のに残っている電話番号に掛けてみますかね。僕の予想が正しければ…………………」

 

 

そう言いながら創真はスマホをタップして電話を掛ける。数秒後、味気ない着信音が鳴った─────────────────大使が手にしてるスマホから。その場にいる皆が大使の顔をまじまじと見つめる。

 

 

「電話、鳴ってますよー?」

 

 

創真はそう教えるが、大使は冷や汗をかいて強ばった表情のまま固まっていた。やがて、電話が留守番になって着信音が止んだ。

 

 

「これで、チェックメイトだ」

 

 

「ち、違う!これは、その、し、仕事関係の」

 

 

「なら、何で出ないんです?大事な仕事関係のなのに。違うと言うのなら、スマホを見せて下さい。留守番履歴の1番上にこのスマホの番号がなければ、身の潔白を証明できますよ」

 

 

創真はスマホを貸せと言う意味で手を出す。しかし、大使は手を震わせたまま、決してスマホを出そうとしない。

 

 

「……………………渡そうとしない辺り、もう認めたようなもんですね。残念でしたねぇ、つめが甘いんですよ」

 

 

「…………………くそっ!!あぁ、そうだよ俺が暗殺の黒幕だよ!!」

 

 

大使は今までの上品さをかなぐり捨て、憎しみを露にした。

 

 

『ステルド、何故私を狙ったの!?』

 

 

『お前が平和を訴えるからだ。ノルゴは今、紛争へ武力介入するかしないか、世論が別れている。俺が外交官として紛争に介入するように国を動かして利益を誘導してるのに。国民に人気のあるお前が平和を訴えるのはウケが良すぎて邪魔なことこの上ないんだよ!』

 

 

『なっ!?母の国をこれ以上戦火にさらそうとするなんて、許せないわ!』

 

 

『そんなの知ったことか!だが、そこのガキのせいで俺は立場も権力も奪われる!こうなったらしょうがない………………!!』

 

 

ステルドは腰から銃を取り出し、空に向かって引き金を引く。銃声があたりに響き渡った瞬間、ジープが大使館の入り口前に急停車し、武装した男らが20人程入って来る。そして、理事長、創真の近くに何かが転がってきた。

 

 

「手榴弾!?」

 

 

「創真君、離れなさい!」

 

 

両者ともに離れようとした瞬間、手榴弾が爆発し2人供大きく吹き飛ぶ。そして今度はさらに多くの手榴弾が辺りに投げられる。何個か創真の目と鼻の先に転がってきた。

 

 

「デュオ!」

 

 

「『空間断絶!』」

 

 

創真の前にデュオが割り込み、手榴弾の爆発から創真を守ろうとする。しかし、爆発は起こらなかった。代わりに煙がプシュー、と言う音と伴に放たれる。

 

 

「スモークだと!?」

 

 

煙幕が大使館に充満する。暫くして煙幕が晴れると────────

 

 

「!!」

 

 

レアはステルドに捕まっており、頭に銃を突きつけていた。周りの武装集団らはE組や大使館の職員、警察に銃を向けていた。

 

 

「それ以上動くな!少しでも怪しい動きをしたら、王女を殺す!」

 

 

そのまま、ステルドらはじりじりと下がっていく。

 

 

「おい、待て。レアちゃんをどうする気だ!」

 

 

「俺らが国外に脱出するまで、人質にさせてもらう。その後は、裏社会で売りさばいてやる。王女を欲しがる奴なんて、幾らでもいるだろうな!」

 

 

「何処までも外道な…………………!!」

 

 

創真は青筋を浮かべて怒りを露にする。ステルドはノルゴ語で小声で武装集団の1人に話し掛ける。創真は口の動きで何を言ったのかを読んだ。

 

 

(………………全員殺せ、か)

 

 

武装集団は銃の照準をE組らに合わせる。

 

 

『待ちなさい!ソウマらを殺す気!?』

 

 

『お察しの良い。とくとご覧あれ、王女。大切な仲間が死ぬのを!』

 

 

『ダメ─────────────!!』

 

 

レアの叫びも虚しく、武装集団らは銃の引き金を───────────

 

 

「させるか、オラァァァァァァ!!」

 

 

そんな声が聞こえたかと思えば、ジープを飛び越えて、赤いバイク=パニガーレV4が大使館に乱入し、火花を散らしながら創真の目の前に停車する。そのバイクに跨がるのは─────────

 

 

「タイミングばっちり。僕の予想通り、漸く来たかホリー」

 

 

「事情聴衆が長すぎて、警察官を魔法で眠らせて大使館に来たんだけど………………こいつら倒して良いんだよね?皆を殺そうとしてたし」

 

 

「うん、是非倒して」

 

 

『なんなんだお前!?くそっ、おい!あいつを殺せ!』

 

 

ステルドの指示を受けて、武装集団はホリーに向けて弾丸を撃ち放つ。しかし、ホリーはバイクに跨がりながら何処からかフライパンを取り出して弾丸を全て打ち返す。速度を倍増された弾丸は武装集団らの腕や足を撃ち抜き、戦闘不能にした。

 

 

「流石ホリー。相変わらず仕事が速いね」

 

 

「まっ、速さが自慢ですから~。で、あとはあいつだけ?」

 

 

ホリーがチラッと見れば、武装集団を僅か3秒で無力化され、半ば放心気味のステルドがいた。

 

 

「どう見てもあんたが不利だろ。これ以上痛い目に遭いたくなきゃ、王女を返して素直に自首するんだね」

 

 

「ふっ………………ふ、ふざけんな!こっちにはまだ人質の王女がいるんだぞ!」

 

 

「じゃ、返してもらおうか。ホリー」

 

 

「うん、任せて」

 

 

皆の目には、ホリーの姿がほんの一瞬消えたかと思えば、元の位置に戻っていた。その一瞬で変わったことと言えば……………………

 

 

『……………………あれ?ソ、ソウマ!?』

 

 

レアはいつの間にか創真にお姫さま抱っこされていた。

 

 

『レアちゃん、カムバック~』

 

 

『(ソ、ソウマにお姫さま抱っこされてる…………///)』

 

 

『ど、どう言うことだよ!?く、クソが!』

 

 

ステルドは怒りの余り銃を地面に叩き付ける。そして創真らの方を睨み付けると、創真やレア、果てには浅野理事長ら、大使館にいる面々が自分を見てクスクスと笑っていた。

 

 

『なっ、何がおかしい!?』

 

 

創真はステルドを写真に撮って、スマホをステルドの方に滑らせる。ステルドは渡されたスマホを見る。そこには、髪を剃られてちょんまげにされている自分の姿があった。それを見てステルドはさらに怒る。元凶のホリーは、完全に悪人面の笑みを浮かべる。

 

 

『き、貴様ら………………ハッ!』

 

 

ステルドの目の前に創真がいた。

 

 

『お縄につけ、この落武者!』

 

 

そのまま、創真は蹴りをステルドの頬にクリティカルヒットさせる。ステルドは地面を転がり、気絶する。その隙に、警官らが身柄を確保する。

 

 

『自分の国で、しっかりと裁かれるんだね』

 

 

気絶しているステルドに創真はそう言い放った。元凶を撃破し、E組らは「よっしゃあ!」「これでボス撃破だ!」と喜びを見せる。

 

 

そんな中、レアは創真に駆け寄る。

 

 

『ソウマ、大丈夫だった?怪我とかない?』

 

 

『ぜーんぜん!この通り、ぴんぴんしてるよ!』

 

 

創真はニコッと笑ってみせ、レアもそれを見て漸く笑顔を綻ばせる。それを見たホリーやデュオも自然と笑みが浮かぶ。そこへ、浅野親子がやって来る。

 

 

「結城 創真。理事長からお話があるそうだ」

 

 

「お話?」

 

 

「今回ばかりは、君達に助けられたと認めざるを得ないね。礼を言わせてもらうよ。君達がいなければ、王女の身に何があった事やら」

 

 

「いえいえ。レアちゃんは大切な友達ですから」

 

 

「そうか。お詫びとして、何か出来ることがあれば1つくらいは叶えてやりたいと思うのだが」

 

 

「……………………ふむ。あ、そうだ。ホリー、デュオ」

 

 

「ん?」

 

 

「なになに?」

 

 

ホリーとデュオを召集し、創真はとある提案を言ってみた。

 

 

「良いんじゃないか?皆も喜ぶだろう」

 

 

「流石創真!良い案を思い付くね!」

 

 

2人の賛同を得たら創真は、改めて理事長の方を向く。

 

 

「じゃあ、理事長。1つお願いがあります」

 

 

「何かな?」

 

 

「───────────────────────、です」

 

 

「そんなことなら構わないよ。しかし、受験が近いのに大丈夫なのかい?」

 

 

「理事長。E組はそこまで馬鹿じゃないですよ?」

 

 

「………………そう言えばそうだったね。良いだろう、君の要求を承諾しよう」

 

 

「ありがとうございます。さて、早速皆に言おうか」

 

 

創真は何をお願いしたのか?答えは、次回で。

 

 

to be continue…………



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セツナの愛

ちなみに、タイトルに深い意味はありません。ただ、文ストが好きだったからってだけです。てなわけで、王女編ラストをどうぞ!


椚ヶ丘の講堂は熱い熱気に包まれていた。予定されていたディベート大会が開催され、レア王女は熱狂的な歓迎を受けていた。レアがスピーチする番になり、壇上に立つ。レアは横目で1番左の列にいる彼等───────E組の面々に目をやる。無論、本来彼等はこの場にいる筈が無かったのだが、それでもこうして彼等が参加しているのは創真のお陰である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────────────────────

 

 

『じゃあ、理事長。1つお願いがあります』

 

 

『何かな?』

 

 

『僕らE組をディベート大会に参加の許可を貰いたい。これが僕からのお願い、です』

 

 

まぁ、前回のラストでこう言う会話があった訳である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────────────────────

そんな中、レアはE組の中でも最後尾の方にいる創真と目があった。創真はフッと笑みを浮かべ、頑張れの意を込めてサムズアップしてみせる。それを見たレアはニコッと笑い、緊張のほぐれた様子でマイクを使って喋り出す。

 

 

『国際平和は、一国で成し遂げられるべきではありません。まず、平和の重要さを皆で共有することが大事です。戦争はすべてを破壊します。家族も、財産も文化も戦争によって破壊されてしまいます。大切なものを守るために平和が必要なことを、世界で共有しようではありませんか』

 

 

レアの語り口は分かりやすく、それでいて堂々としていた。聞くものの耳を傾けさせるだけでなく、心をとらえた。スピーチが終ると、会場は大きな拍手に包まれた。レアの論戦相手として、浅野が壇上に上がった。浅野はキビキビとした調子で、レアに反論を仕掛ける。

 

 

『確かに戦争はさまざまな破壊をもたらします。いくら広く浅く平和を宣伝したところで、一般人は戦争について意思決定できません。自らが社会の支配者となり、戦争が富を生むシステムを破壊しなければ戦争がなくなることはありません』

 

 

浅野はレアの論を持ち上げることなく、真っ向から否定に掛かった。

 

 

「浅野君、王女に真っ向から勝負に挑んでる………」

 

 

「あいつらしいけどな………」

 

 

碧海と隼は攻撃的な姿勢に呆れ気味。創真は黙って何も言わないが、面白そうな表情を浮かべていた。今度はレアが浅野に反論する。

 

 

『一見、現実的な論も一皮むけばただの逃げてあることは多くあります。社会が一部の支配者だけに動かされるというのは、デモクラシーの根幹を破壊されることを意味し、ただの現状容認に過ぎません。現実には、理想をかかげることで社会は変わってきたのです………』

 

 

レアは浅野に好戦的な視線を送りながら言葉を畳み掛けた。英語につていけない者も、その攻撃姿勢はよく伝わった。そんな中、何処からかすすり泣く声が創真、碧海、隼の耳に入ってきた。振り向けば、ハンカチで顔を覆っている変装した殺せんせーが立っていた。

 

 

「青春ドラマですねぇ。月9ドラマなんて目じゃありません」

 

 

「何言ってんだよ………」

 

 

創真はアホか、と言いたげな目で殺せんせーを見る。

 

 

「とにかく、ここじゃ目立つちゃうよ」

 

 

碧海がそう言い、殺せんせーを講堂の隅に連れていく。創真と隼も何となくついて行く。パチパチと拍手が鳴る。ディベートが終わったところだ。だが、殺せんせーの涙は止まらない。

 

 

「おいおい、いつまで泣いてんだよ。王女、もう席に着いたぜ?」

 

 

隼が呆れ口調で云う。そこへ、矢田と岡島がやって来た。

 

 

「殺せんせーも見てたんだ?」

 

 

「てか、何でそんなに泣いてんだよ?」

 

 

「何か青春ドラマが繰り広げられてるのを見て泣いてるっぽい」

 

 

泣いてる殺せんせーの代わりに創真が答えた。

 

 

「良いですねぇ。あんなの見せつけられたら、先生の妄想小説の執筆に意欲が湧きます」

 

 

「何、その妄想小説って…………」

 

 

「知りたいですか碧海さん?いえ、皆さんも知りたいでしょうし教えましょう。妄想小説と言うのは、先生が君たちがイチャイチャラブラブチュッチュッしてる所を見たいが余り、どんどんカップルが成立してそれを巡る恋の三角関係や駆け引きに奔走するのを妄想して執筆した実録恋愛小説の事です。ちなみに、岡島君と矢田さんはもう新婚で」

 

 

知らない間に小説を書かれていた矢田は悲鳴をあげる。

 

 

「いや、やめてー!それ、実録じゃないし!」

 

 

岡島の方は満更じゃなさそうな表情をしており、垂れてきた鼻血を手で拭った。

 

 

「ったく、いつまで泣いてるのかしら、このタコ」

 

 

講堂の隅でディベートを見守っていたビッチ先生も呆れている。創真は未だに解消していなかった疑問を思いだし、ビッチ先生に尋ねた。

 

 

「そう言えば、ビッチ先生は何で大使館にいたんです?片岡さんよりも早くいたそうだけど」

 

 

「そんなの簡単だよ、創真。どーせ、王族と楽しいことしようとしてたに決まってんじゃん!」

 

 

いつの間にか来ていた中村が断言する。

 

 

「ええい、うるさいわねガキ共!」

 

 

ふやけ顔の殺せんせーもいつも以上にニヤニヤしながら云う。

 

 

「イケメンといやらしい展開に持っていこうとしてたんですよ、ね?」

 

 

「エロダコは黙れ!あんた達が王女に会えなくて落ち込んでたから会えるように手配しようと思っただけじゃない、なによ」

 

 

ウソつけ、どんな色仕掛けであのデータを手にいれたの、と盛り上がるE組。それを少し離れた所で創真は微笑浮かべながら見つめているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────それから1週間後。レアがノルゴへ帰国する日になった。レアを見送りに、浅野や創真らE組の面々が空港を訪れていた。

 

 

『本当に楽しかったわ!お土産もたくさん買えたし、色んな所に観光に行けて良かったわ』

 

 

『なら良かったよ。にひても、お土産に関しては爆買いの域を越えてるね………』

 

 

創真は護衛の人間20人程がが両手に大量のお土産でパンパンの袋を何個も両手に抱えているのを見ながら云う。表情には出さないが、中々重そうだ。

 

 

『今回、皆には本当に助けられたわ。皆がいなければ今頃どんな目に遭ってたのやら……………改めてお礼を言わせて貰うわ』

 

 

『いやぁ、やめてください王女様。美しきレディを守るのは男の役目と云う物ですから』

 

 

『そうそう。役目と云うか、宿命みたいなもんですから』

 

 

相変わらずのかっこつけの前原とホリーに、デュオを筆頭に皆はやれやれ、とため息をつく。

 

 

『また日本に来たいですか?』

 

 

『勿論よガクシュー。必ず皆に会いに来ます』

 

 

『嬉しいことを言ってくれるね~』

 

 

創真は嬉しそうに云った。

 

 

『王女、そろそろお時間です』

 

 

『あ、待って。最後に1つソウマに話しておきたい事があったから』

 

 

『僕?』

 

 

創真はキョトンと首を傾げる。レアは構わず続ける。

 

 

『ソウマ、大使館で私は大切な『友達』って言ってたわよね?』

 

 

『………………』

 

 

『それで、よーく考えてみたら……………7年前にあなたのお父さんが、創真が私にプロポーズしたって言ってたんだけど、アレって嘘って言うか、おふざけで言ったよのよね』

 

 

『(あ、やっと気付いてくれた…………本気で信じてたっぽかったから自発的に気付いてくれて良かったわ………)ほんと、ごめん。うちの父が変なことを言ってしまって。何なら、ノルゴで元大使みたいにちょん髷姿にして見せ物にしても良いよ』

 

 

『別に良いのよ。ジョークとは考えずに真に受けちゃった私にも責任はあるもの。まぁ、ちょん髷にするのはしてみたい気持ちもあるけど』

 

 

そう言ってレアはクスッと笑う。創真も同じく笑う。

 

 

『じゃあ、ソウマはあそこにいる、ヒナノと付き合ってるって事ね?』

 

 

『まぁ、そうだね。……………僕は彼女が好きだよ』

 

 

実質、創真はレアを振った。

 

 

『…………そっか。ソウマにも、大切な人が出来たんだね』

 

 

どうやら、レアは創真から身を引くようだ。

 

 

『じゃあ、私は行くね。皆、またいつか会おうね!』

 

 

レアはそう言って護衛と共に登場待合室に向かおうとす

 

 

『あっ!もう1つソウマに言い忘れてた事があったわ!』

 

 

『まだあったんだ……………』

 

 

慌ててレアは創真の元に駆け寄る。

 

 

『ねぇ、ソウマ』

 

 

『なぁに、レアちゃん』

 

 

『………………』

 

 

レアは─────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真の首に手を回し、その唇に接物(キス)をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「!??!」」」

 

 

突然の展開に、倉橋は顔を赤くし、隼はジュースを吹き出し、碧海はおぉ、と感嘆し、カルマと中村はスマホを取り出して撮影するなどさまざまな反応を見せた。

 

 

接物(キス)は僅か10秒程だった。ちなみに、大人のである。レアは創真に向けて云う。

 

 

『言っておくけど、私はまだソウマの事諦めた訳じゃないから。いつか、あなたが心の奥底から私を好きだって思わせてみせるから覚悟しておいてね♪』

 

 

『……………………』

 

 

創真は無言だったが、その顔は赤くなっていた。

 

 

『ちょ、ちょっと!?レアちゃん、創真君の事諦めたんじゃなかったの!?

 

 

『あら、ヒナノさん。私はソウマを諦めるなんて一言も言ってないわよ』

 

 

『うっ……………』

 

 

『よし、これで言いたいことは全部言えたかな。それじゃあ今度こそ、お別れね。また会おうね!』

 

 

レアは満足気な様子でスキップしながら搭乗待合室に消えていった。未だに呆然としている創真にホリーとデュオが話し掛ける。

 

 

「やれやれ、最後の最後まで自由気ままなお姫様だ」

 

 

「でも良いねぇ。創真を巡る三角関係かぁ…………ねぇ、創真。レアちゃんのキス、どうだった」

 

 

「ノーコメ」

 

 

と言いつつ、実際はと言うと

 

 

(めっちゃキステク凄かった…………)

 

 

やはり創真も男である。まぁ、そんな本音を言うと自分の彼女が怒るだろうと思い、これは墓場に持っていこうと創真は心の中で決めた。

 

 

「おうおう、モテ男はつらいねぇ、創真さんよ」

 

 

「レアちゃんのキスめっちゃ上手かったんでしょ?めっちゃ顔赤いけど~?」

 

 

中村とカルマが創真をいじる。男子は羨ましいぞ!とか、このモテ男が!とか、リア充は死すべし!とか様々な声を上げる。暫くこの件でいじられる事を想像すると、創真は今すぐ逃げたしたくなったが、それ以上にもっと厄介な事が残っていた。

 

 

「そ う ま く ん ?」

 

 

「ヒッ…………お、怒ってますか、陽菜乃さん?」

 

 

「あんなの見せられたら怒るに決まってるでしょ!しかも、骨抜きにされてるし!」

 

 

「だ、誰か…………何とかして…………」

 

 

創真は救いの手をE組らに求めるが、皆は一斉に目を逸らす。ちなみに浅野もだ。

 

 

「ホリー君!後で高級プリン奢る!」

 

 

「任せろ!」

 

 

ホリーは目にも留まらぬ速さで創真に憑依。そして超高速でその場から走り去る。

 

 

「あっ!逃がさないよ、創真君!」

 

 

倉橋も慌てて追い掛け始め、空港の中で追いかけっこが始まった。

 

 

(創真君も苦労するなぁ…………)

 

 

渚は苦笑いしながら心の中で呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────────────────────────

 

 

「もう7年前になるんだねぇ……………懐かしい」

 

 

「ほんとね…………それで、あの後どうなったの?」

 

 

「陽菜乃には死ぬほど謝って、今度デートをするって事で何とか機嫌直してくれたよ。誰かさんがめちゃくちゃ上手いキスしてくれたせいで、大変だったね。と言うか、僕は別に悪いことした覚えは無いんだけどなぁ…………」

 

 

「また、してあげようか?キスじゃなくても別に、もっとイイコトしても良いけど?」

 

 

「やめて…………陽菜乃の耳に入ったら、今度は死ぬ…………」

 

 

「冗談よ、冗談。にしても、結局創真は私じゃなくて陽菜乃を選んだ訳ね」

 

 

「やっぱり、1番好きなのは彼女だったのでね」

 

 

「ふーん……………まぁ、こうしてノルゴで一緒にお茶を飲めてるだけでも私は幸せだけどね。今度は陽菜乃も連れてきてよ」

 

 

「彼女に予定が無かったらね…………にしても、君がこの国を治めるようになるとはね。驚いた」

 

 

「そう?」

 

 

「また何かやらかしそうで、それが僕は心配」

 

 

「むぅ………何か子供扱いされてる気が…………心配は無用よ。この国は、私がこの国を、そして民をしっかり守っていくから」

 

 

「フフッ。その力強い言葉を聞けて安心したよ。僕も、首領(ボス) として頑張りますかね。さーて、そろそろ行かなきゃ」

 

 

「えー、まだいても良いのにー」

 

 

「そんな暇じゃないよ。君もだろ?」

 

 

「そうね…………この後、国の大臣と話さなくちゃならない事があるわ」

 

 

「お互い忙しくて苦労するねぇ。まっ、それでもやることがあるってのも良いもんだけど」

 

 

「それはそうね。じゃ、お互い頑張ろうね、創真!」

 

 

「あぁ。それじゃ、またねレアちゃん」

 

 

~終~




裏設定として。

・レアは日本語がほぼ完璧に話せるようになった。ついでにノルゴを治めるような立場の人物になった。


・定期的に創真はノルゴを訪れて、レアとお茶会をするようになった。


レアの恋って、もう本編最後まで見てれば分かると思うんですけど、最初から叶わないって読者の皆さんは分かってたと思うんですよね。ある意味、切ないと言いますか……………でも、結局そう言う切なさはあまり感じさせない王女編だったと僕は思います。自分が選ばれなくとも、それでも、創真への愛は変わらない……………僕はレアらしくて良いと思います。


それでは、またいつかお会いしましょう。アデュー!







そして!ここで重代発表!何と、またも、とある作品とのコラボが決定しました!え?勉強大丈夫か?します!してますから! 詳しい情報は活動報告欄で順次解禁していきますので、乞うご期待していてください!


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『とある天才』と『とあるマイペースゲーマー』のお話
結城 創真の暗殺教室×暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~ 後編その1


どうも、お久しぶりです。またまたやっちまったよコラボをよぉ……………受験生なんだけどね、一応。マジで頑張ります、受験。浪人なんてしたら次作なんて夢のまた夢になるので、絶対に受かります!


主に僕の作品の読者向けになんですけど、黒ハムさんのを読んだことがないよって人にも分かるようにはしてるつもりなんですが、黒ハムさんのを読んでからこののコラボ編を読むともっと面白くなるよ!


と言うわけで、とりあえずコラボ編読む前に最低限これだけは絶対読んどけって言うのを下に貼っておきます!!かなり面白いぞ~。下に貼ったのを読んでからコラボ後編を見て、どうぞ(義務付け)

転校の時間 https://syosetu.org/novel/175772/7.html

交流の時間 https://syosetu.org/novel/175772/8.html

風人と有希子の時間 暗殺https://syosetu.org/novel/175772/21.html

対話の時間 https://syosetu.org/novel/175772/53.html

過去の時間 序 https://syosetu.org/novel/175772/55.html

過去の時間 中 https://syosetu.org/novel/175772/56.html

過去の時間 結 https://syosetu.org/novel/175772/57.html

キャラ紹介の時間 https://syosetu.org/novel/175772/1.html

コラボ前編その1 https://syosetu.org/novel/175772/5.html

コラボ前編その2 https://syosetu.org/novel/175772/6.html





















ここまでスクロールしてきた人は、上に貼ってあるのは全部読んだ事がある人、で良いんだね?まさか、読まないでここまでスクロールして来た人、おいそこ、目を逸らすな。ちゃんと読まないでワケワカメになっても知らんぞー。戻るなら今の内だからな~。次の余白を通過したらコラボ後編開始です!後書きに黒ハムさんのご挨拶があるので、それも読んでくださいね!それでは、スタート!





























「千影さん。ちょっといいかな?」

 

神崎は千影を手招きして呼ぶ。風人と神崎の(リアル)鬼ごっこは風人が(物理的に)死ぬ前に創真らが神崎を抑えて幕を下ろした。ようやく一心地ついたところで、風人に聞こえないよう少し離れた位置で話を始める二人。

 

「えーっと、有希子さん……で合っていますよね」

「うん」

「その……今、風人君と恋人として付き合ってるんですよね……」

 

あの二人のやりとりを見ればほとんどの者が二人が付き合ってる或いは親しい関係にあるということは明白だろう(おそらく)。故に千影もそのことは察することができた。

 

「そうだよ」

 

だから神崎は誤魔化すことなく堂々と告げた。

 

「もしかして、千影さん。風人君に(彼女)がいるのに、自分が風人君とデートして本当にいいかなとか思ってる?」

「……はい。やっぱり、風人君にも、有希子さんにもそれは悪いのかな……って。私のわがままに付き合ってもらうのは」

「それは違うよ」

 

後ろめたさをどうしても感じてしまっている千影。そんな彼女に神崎は優しく応える。

 

「私ね。風人君から千影さんとの事を聞いてたの」

「……だから私のことを最初から疑問に思わなかったんだ」

「そうだね。貴女がどんな人かは少しは分かる。貴女は風人君が好きなんでしょ?」

「……っ!」

 

頬に熱を感じる千影。

 

「私のお願いは一つ。あなたがこの世界にいる間は、あなたのその気持ち全部風人君にぶつけて。ぶつけなきゃ絶対後悔するよ?」

「……本当に……いいの?」

「うん。さっきも言ったけど、千影さん。あなたの時間が来たら2度と会えないんでしょ?だったら、好きな事は全部やった方が良いと思うよ」

 

(それに、風人君にとってもね。あなたと会える最後の機会なんだから)

 

何やら創真たちと話している風人に目を向けながらそう思う。そして、再び目の前の千影に目を向けて神崎は言葉を発する。

 

「だから私は彼女として、風人君(彼氏)に対し、千影さんのすること全てを許可します。何をしても怒らないし嫉妬しない。本当に何をしてもいいよ」

 

まるで、『風人が自分の所有物だ』みたいな発言をあえてする神崎。

 

「……ねぇ有希子さん。私って負けず嫌いなんだよ」

 

(うん。知ってるよ)

 

「限られた時間であなたから風人君を奪っちゃうかもしれないよ?」

「うん。やってみたら?」

 

挑発としかとれない発言をする神崎。その言葉を聞いてどこか完全に吹っ切れる千影。そして、千影は風人に近づいていく。代わりに創真が神崎に近づいた。

 

「なかなか大胆な挑発をしたね。神崎さん」

「聞こえてたんですか?」

「まーね。風人君は聞いてないと思うよ」

「……慣れない事ってしないほうがいいですね」

「いいんじゃない?お陰で彼女はこの時間を心の底から楽しめそうだ…………さて、僕らも彼らを見守ろうか」

「……ストーキングをすると言うことですか?」

「まさか。千影さんは本来この世界に存在してはいけないんだ。これ以上、この世界で彼女を知っている人物に千影さんを遭遇させないようにしないとね」

 

創真が言ってるのは、この世界で矛盾を起こさないようにするということだ。死んだはずの人間が生きている。少なくとも和泉千影が死んだと知っている人物と彼女を会わせてはいけない。余計な混乱や説明を避け、彼女が彼との時間を過ごせるように。

 

「いいですよ」

「ありがとう」

「気にしなくても大丈夫ですよ。それに前に彼を尾行したことありますし」

「…………………」

 

あまりの発言に創真は絶句するのだった。

 

 

(ほんとやべぇな、この世界の神崎さんは…………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し時を戻し、千影が神崎に呼ばれて話していたとき、風人も創真と話していた。

 

「ねぇね創真~デートするのにどっかいいとこある~?」

「それは自分で考えなよ。と言うか、神崎さんと今までデートとかしてきたんだからそう言うのは君の方が知ってるんじゃないの?」

「今までか~」

 

過去の記憶を遡る風人。しかし、残念なことに

 

「ゲームとゲームセンターと後ゲームショップだね~」

「ゲーム関連の所しか行ってないのかよ!!」

「でも、千影はあんまゲームしなかったからな~あんまりゲーム関係ばっかも悪いし~」

「おぉ………風人君が意外にもまともで少し安心した」

「むぅ。意外にもまともってなんなのさ~」

「そのまんまです」

 

創真もそう思うのも無理はない。見る限りでは風人は超が付くほどのマイペース。だから、他人のことを考える感性を持ち合わせているようには見えなかったのだ。

 

「それに、ここは僕の居る世界とは別世界。僕の世界にある施設が風人君の世界にあるとは限らないし、逆も然りだ。だから、僕よりここの世界の人に聞いた方が良いんじゃない?」

「……なるほど。つまり、こっちの世界のカップルに聞けということだね~」

 

すると、風人は携帯を取り出して電話をかける。

 

『もしもし?お兄ちゃん』

「あ、涼香~ねぇね聞きたいことあるんだけどさー」

『手短にお願いね。私、デート中だから』

「はーい。で、デートするならどこがいいと思う~?」

『デート?あーお姉ちゃんとかぁ』

「そうそう~」

『なら、あのデパートでいいんじゃない?ほら、夏休みの最初に私と行った』

「おぉー」

『そこなら色んな施設が入ってるし、確か、この前リニューアルされたよ。今、私たちもそこでデートしてるからもしかしたら』

「ありがと~ばいばーい」

 

電話をぶった切る風人。それを見た創真は────

 

(電話もマイペースなことで…………彼の周りは苦労人ばかりなんだろうね。でもまぁ、デパートでのデートなら無難かなー。それに一雨来そうだし…………ただ、さっきのアレ(・・)がどーも気になるんだよね……)

 

と、空を見上げながら考えていた。

 

「デパートに行くことにしたよ~」

「これで違うとこ行ったら聞いた意味ないよね?」

 

ただ、彼なら平然とやりそうだな……人の話聞かなさそうだし、と創真は思う。そして、向こうの話も終わったみたいで、千影がこちらにやってきたので創真は神崎の元へ行く。

 

「あ、千影~有鬼子との話は済んだ~?」

「うん。じゃあ、行こっか」

 

そう言って早速の風人の腕に抱きつく千影。風人はそれを受け入れそのまま歩き出していくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でも、風人君とデートかぁ……そう言えばデートしたことないよね。私たち」

「うーん。一緒に遊んだりはしたことあるけど……二人でっていうのはなかったね~」

 

(まぁ、後ろにつけてきている人たちがいるけど気にしない気にしない~)

 

デートはすでに始まっている。デパートに向かう道中で、会話に花を咲かせる二人。そんな中でも風人は後ろと言ってもかなり離れているがそれでも、気配で気付いている。だが、ついて来ようと来まいと何でもいいと思いスルーすることにした風人。

 

「そうだ。デートと言えばさ。私を見てなんか言うことない?」

 

腕から身体を離し、風人の前でくるっと一回転してみせる千影。普段の風人であればこういう時にぶっ飛んだ想定外の発言しかしなかったが、

 

「凄い似合ってるよ。千影の可愛さが凄い引き出されているね」

「風人君……!」

 

(風人にはあまり似合わないような)爽やかな笑顔で話す風人。対して、まさか最初から言ってほしかったことを。しかも(いい意味で)想像以上の言葉に、耳まで紅潮させる千影。

 

「えへへ。ありがと。風人君もかっこいいよ」

「お世辞でも嬉しいよ」

「…………お世辞じゃないんだけどなぁ……」

 

一連のやりとりを見た一般人から「若いっていいわね」だの「爆ぜろ」だの「滅べばいい」だの嫉妬が九割を占める感情を向けられていたが、2人の空間を邪魔することはなかった。既に二人だけの世界に入ってしまった風人と千影。それを後ろから見ていた創真たちは……

 

「ふっふっふっ。さすがの風人君にも彼女の可愛さが分かってくれたかい!」

「千影さんは元から可愛いからねぇ。ホリーが何もしなかったとしても可愛いって言ってた気もしなくはないけど」

「でも、ホリーさんのコーデは凄いですね。千影さんの魅力を最大限に発揮させてる」

 

私なんかじゃあそこまで可愛くはなれないなぁと、少し声のトーンを落として付け加えた神崎。

 

「甘いよ神崎ちゃん!千影ちゃんには千影ちゃんの魅力があるように神崎ちゃんにも神崎ちゃんの魅力があるんだよ!だからそんな事絶対にないよ!」

「ホリーがいつもより熱いな………(社長としてはその熱意を仕事にもぶつけてくれればと思うんだがな……)」

「ホリーの言うとおりだ!千影ちゃん同様胸はさみしいが神崎ちゃんも十分可愛い……ごふっ!?」

 

神崎のバックにぶら下がっているキバットに制裁が。制裁をしたのは創真でもデュオでもない。

 

「ふふっ。ちょっと手が滑っちゃった」

 

神崎である。あまりにもいい笑顔で制裁を下すその様子に、

 

「……すみませんでした」

「うん。許してあげる。ただ…………次余計なこと言ったら天ぷらにするからね」

 

背筋が凍る感覚に襲われるキバット。さすがの彼も風人の時のような挑発はできない。したら、本当に天ぷらにされそうだ。キバットは小声で創真に話し掛ける。

 

(お、おい創真……こっちの神崎さん、もはや別人じゃないか?)

(まぁ、僕らの世界の神崎さんもこれくらい黒い部分がある…………いや、まぁここの世界の神崎さん程ではないだろうけど。まぁ、人間なんだからそう言う部分もあるさ。あったらいろいろ面白いようで面白くないかもだけど。きっと、こっちの世界では風人君のお陰でその面が色濃く出ちゃっているだけだろうね……………多分)

(……で、結論は?)

(全てあのバカ(風人君)のせい)

(それな!あのバカめ…………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(こっちの世界の)神崎の恐ろしさを改めて認識した創真たち。そうこうしているうちに風人と千影がデパートにたどり着いていた。

 

「どこから回る~?」

「うーん。決められないから適当に行こ」

「はーい」

 

風人がデパートの中でどうするかとかを計画しているわけがないので、2人は無計画に散策に出た。

 

「そう言えば創真さんが風人君のこと『暗殺教室のアサシン』って言ってたけど……今、風人君は何しているの?」

「うーん…………千影ならいっか~国家機密ってやつだからそれを踏まえて聞いてね~」

「う、うん……」

「今年の春……だから中学三年生になった春に椚ヶ丘中学に転校したんだ~」

「椚ヶ丘……ってあの進学校の?」

「そそ~で、僕は通称『エンドのE組』と呼ばれるまぁ、『落ちこぼれが集まる問題児クラス』に落とされたんだ~」

「問題児……あーうん。何となく分かる気がする」

「で、そこでは秘密裏に暗殺が行われているんだ~標的(ターゲット)は担任のせんせー」

「え……?」

「普通の授業をしながら担任のせんせーを殺そうと日々暗殺しているんだよ~」

「ちょ、ちょっと待って。暗殺をしているって……標的は一体どんな罪を犯したというの?」

「そうだね~この前の三月に月を七割爆発させ、次の三月に地球を破壊すると宣言したからかな。あ、ちなみに標的はタコだよ~マッハ20のね~」

 

あはは~と笑う風人に対し、何一つ笑えない千影。

 

「そんな感じだよ~僕らは標的(担任)を殺す事が最終目標。担任(標的)は僕ら生徒(アサシン)を育てることが目標。端から見れば奇妙なクラスだよ~」

「……なるほど……おかしな事に巻き込まれてるんだね」

「そうそう~」

「でも、危険じゃないの?その……やっぱり暗殺者という立場は」

「そうだね~基本は防衛省からの先生や担任のせんせーが守ってくれるけど何回かは危険にさらされたね~一番はやっぱ、南の島での殺し屋たちとの戦いかな~」

「戦ったの!?」

「うん~まぁ、勝ったけどね……ギリギリ」

 

(あれは勝ったというか……うん。なんだかなー難しいね。日本語って)

 

明確に勝ったとはいえないが負けたわけでもない。そう考えるとなかなか難しいものだとしみじみ思う風人。対して千影は100%理解することは難しいものの風人の言うことに嘘はないことだけは確信していた。

 

「そう……分かったよ。でも、今の風人君、すごい楽しそうでよかった」

「楽しそう~?」

「その左手首」

「…………やっぱりばれた~?」

「でも、新しい傷はないからきっと、立ち直ったんだよね」

「うーん。多分?」

「ふふっ」

「どうしたの?」

「何でもないよ。あ、これ食べたいな」

「じゃあ、買ってくる~」

 

風人が店の方に注文をしに行く。

 

(あの左手首の傷は私がいたときには無かった。きっとそういう跡なんだろう。でも、新しいものはないからきっと立ち直ったんだね。そして、私がいなくても楽しそうに学園生活が送れている。まずは一つ、懸念事項が消えたよ…………もっとも有希子さんという存在があったから、そこまで懸念はしていなかったけどね)

 

一つ千影の中で気になっていたことが解消された。でも、彼女の中にはまだ解消したいことはいくつかある。

 

(最初の別れは唐突だった。私にとっても風人君にとっても。でも次に来る別れはもう決まっている。風人君も分かってないようで理解している。だったら、今やるべき事はこの時間を楽しみながらお互いの心残りを消していくこと。そうすれば次のお別れはきっと――)

 

「買ってきたよ~」

「じゃあそこで食べよっか」

 

そう言って近くの席に誘導する千影。彼女が食べたいと言ったのはパフェだ。風人も甘いものが好きだが彼女も甘いものは好きである。

 

「はい~」

 

風人が千影に渡したのはストロベリーのパフェ。彼は自分の分としてチョコレートのパフェを買っている。

 

「何も言わなかったはずなんだけどなぁ……よく分かったね」

「ふふん~千影のことだからね~分かるよ~どやぁ」

「いただきます」

「ます~」

 

まずは一口食べる2人。

 

「……!美味しい」

 

(口に入れた瞬間に分かった。久しぶりに食べたけどおいしいなぁ。思わず頬が緩んで締まりがなくなってしまう)

 

頬が緩んでいる千影。風人の方もとてもおいしかったようで、満足しているご様子だ。

 

「はい」

 

そんな中、風人はスプーンの口の部分を千影に向ける。その上には一口分チョコのパフェが乗っている。

 

「あーん」

 

千影は口を開けて差し出されたそれを口に含む。

 

「どう~?チョコパフェもおいしいでしょ?」

「おいしい……」

「でしょ~?」

 

眩しいような笑みを浮かべる風人。それを見ると千影は、

 

「でも、こっちもおいしいよ。はい」

 

何となくやり返してみたくなったそうなので風人と同じように一口分すくって差し出す。

 

「あ~ん……ん~おいしい~」

「でしょ?」

 

そしておいしいと言った風人に微笑みかける千影。

 

「ぷっ……あはははは」

「ふふふ」

 

一連のやりとりを終えて同時に笑い出す2人。

 

「あはは、真似しないでよ~」

「ふふっ。いいでしょ?やられっぱなしはいやだからね」

「相変わらず負けず嫌いなんだから~」

「そうだよ。それが私だもん」

「開き直った~」

「だって、知られてるもん」

「隠す意味ないね~」

「うん。あ、もう一口頂戴」

「はい。じゃあ、僕も~」

 

2人の間に穏やかな時間が流れる。

 

 

一方その頃の創真たちは………

 

(ねぇホリー。なんとかしてくれない?)

(無理無理!僕が死んじゃうよ!)

(頼む。俺様は死にたくないんだ!)

(絶対無理!キバットが死ねばいいんだよ!)

(テメェ、ホリー……!!)

(……お前らなぁ……喧嘩してる場合じゃないだろう)

 

創真、ホリー、キバット、デュオの四人が必死に小声で話し合っていた。なら、話し合う原因は何なのか?お察しの通り有鬼子様なのだが、これまたいつもと違った。

 

「はぁ……」

 

深いため息を一つ。

 

(ヤバい…………でも、嫉妬で暴走しかけるのは想定内だ。だから、キバットを天ぷらにしてその嫉妬を抑えてもらおうよ!)

(おい、ホリー!そんな事考えていたのかよ!俺様を犠牲に安全圏に逃げようたってそうはいかねぇぞ!)

(キバットの天ぷらですめば楽だったが、それで済む問題ではなくなったな)

(いやいや、デュオまでそう言うのかよ!どいつもこいつも、天ぷらで済ませんな!)

(あぁもう!キバットが天ぷらになろうが素揚げされようがキバットフライになろうが何でもいいんだよ!)

(ホリーはマジで揚げることしか脳がねぇのか!)

(創真、何とかしてくれ………)

(えぇ、僕が?めんどくさいなぁ………)

 

と、小声で言いつつも創真はなんとかしてみようと動いた。

 

「あのー、神崎さん?」

「はぁ。あれですよね創真さん。人って絶対勝てないものを目の前にしたときってこんな感じになるんですね。例えるなら最強の装備レベルマックスの主人公がラスボスになすすべもなくボロボロにされてしかも実はありがちな裏のボスがまだ残っているって感じですよね。あ、この例えが分かりにくいならあれですよ。ギャルゲーで必死に主人公の好感度を上げようとしているけど既にカンストの人がいてその人には絶対に勝てないと分かってしまう感じですよ。…………はぁ」

「………………」

 

既に目から光が失せた神崎。呪詛のように流れる言葉を聞いて創真は……

 

(うん、ダメだこりゃ。オワタ)

(諦めるなよ創真!諦めたらそこで試合終了だ!)

(そうだよ!君が諦めたらこの空気は変わることがなくなってしまうんだよ!?)

(頑張ってくれ、創真)

 

神崎一人に完全に空気を支配されている4人(正確には3人と1匹だが)。

 

「はぁ。それにしてもあの二人はすごい信頼関係ですよね。確かに私に対しては風人君自ら『あーん』とかしてくれたことないですし。嫉妬しないって千影ちゃんに上から言ってますけどいや、嫉妬とかいう次元じゃないですよこれ。嫉妬が一周回ったというか……ねぇ分かります?ねぇこの気持ちが分かります?」

 

「………………………とりあえず、一旦黙って落ち着こうか」

 

創真はいい加減めんどくさそうに云う。そしてホリーらに小声で話しかける。

 

(……周知の事実だけど、神崎さんのキャラ崩壊しすぎだね)

(ヤンデレかな?)

(ホリー、ヤンデレならこの瞬間に風人君は死んでるから)

(なら、ボコデレ?)

(いやキバットよ、神崎さんが風人君をボコるのは大概非は彼にあるから)

(……オモデレか)

(「重くてデレる」って、合ってそうだけど造語を作らないでくれデュオ……)

 

既にお手上げ状態の創真たち。風人と千影の流れる時間とは対照的にこちらでは冷たく重く暗い時間が流れていた。外でも神崎の心を映すのか、暗く雨が降っているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゲーセン?」

「そそ~ゲーセンだよ~」

 

あれから色んなとこを当てもなく回った風人と千影。結局というか予想通りというかデパート4階にあるゲームセンターに寄っていた。

 

「ふふん。ゲームセンターにはよく来てるんだ~」

「ゲームか……こういうのはやらないからなぁ……」

「あー確かに。僕もあの時までは非電動ゲームしかやってなかったね~」

「今は創真さんのお陰で色が見えるからいいけどね」

 

そう。千影は色が見えなかった。だから、電動ゲームをやらない。というのは安直な繋がり方だが、彼女自身、多少は面白いかもしれないけどモノクロでは十分楽しめないことが分かっていた。だから興味の有無以前に当時の彼女はやるつもりがなかった。

 

「トランプはよくやったよね~」

「花札は札を覚えれば出来たし」

「ボードゲームも普通に出来たよね~」

「しりとりで1時間以上かかったりしたよね」

「あれは千影がちっとも負けなかったからねぇ~」

「それは風人君もでしょ?」

「あはは~」

「それに涼香ちゃんと3人でよく遊んだね」

 

風人も千影がいた頃は特に電動ゲームに興味を示そうともしなかったが、いろいろあって今はゲームとつくものならなんでもやるように成長?したのだ。

 

「そうだ。せっかくだし勝負しよ~なんかやりたいものある~?」

「いいよ。じゃあさ、これやってみたい」

 

そう言って指差したのは、

 

「リズムゲームか~うん。いいよ~」

 

リズムゲーム。まぁ、音ゲーと言ってもいいがその中でもよくある、太鼓を叩く系のやつだ。そして、丁度2台とも空いているのだ。

 

「曲はどーする?」

「うーん……じゃあ、これ」

「よし。いいよ~」

 

と、風人は慣れた手つきで最高難易度に、千影もおぼつかないながらも僕の一個下の難易度でゲームのスタート画面まで行く。

 

 ♪♪~♪♪~

 

ゲームスタート。千影が選んだのは『青春サツバツ論』って曲だ。

 

(何かこの声聞き覚えあるんだよね~なんでだろ?)

 

それは知らん。と言うか、それ以上考えるな。

 

 ♪~♪♪~♪~

 

風人はふと横目で千影を見てみると必死に叩きながらもどこか楽しそうな感じだった。思わず風人もその様子に笑顔になる。そして、

 

「フルコンボ~千影は~?」

「ぎ、ギリギリクリア……かな」

「おぉーさすが千影だね~」

「むぅ。もう一回勝負だよ!」

 

(ありゃ?何か千影の負けたくないスイッチを入れちゃったかな?)

 

その後も何曲かやった二人。風人は全部フルコンボ。千影は徐々に感覚はつかんでいったが、風人には敵わなかった。

 

「……じゃあ、今度はこれ!」

「ダンスゲーム……うん。分かったよ~」

 

先攻は千影。ゲームがスタートすると、ぎこちないながらもリズムに合わせてステップを踏む。

 

(楽しそうだな~連れて来て正解だったね♪……もしも、僕がゲーマーじゃなかったら千影と互角に張り合えたのかな……)

 

風人はそんな事を一瞬思ったがすぐに否定した。

 

(いや。これはこれでありかな?それに千影は僕が手を抜いて勝っても嬉しくないだろうし)

 

うんうんと納得している間に終了し、風人の番になった。風人はあらゆるゲームをやっており、ダンスゲームも例外にあらずだ。故に、

 

(やっぱりレベルが違うなぁ…………私がいなくなってからどれだけ通っていたのやら)

 

半ばあきれ気味になる千影。一人のゲーマーとして成長している彼を見て、成長の方向性を間違えてないかと疑問に思う。

 

(でも、かっこいいなぁ……ゲームを、一つのことに熱中してる風人君を初めて見たのかも)

 

和光風人は素の能力が高い。だから、大抵のことはそつなくこなせてしまう。それに本人の性格上楽しくない限り本気にもならないし、そもそも熱中する前に飽きがくる。だから、何かに熱中してる風人の姿を今まで千影は見たことがなかったのだ。

 

「ふぅ~」

「お疲れ様……でいいのかな?」

「ありがと~」

「かっこよかったよ」

「千影も慌てたとこもあって可愛かったよ~」

「もう!」

「あはは~。じゃあ次はどうする?」

「んーじゃあ……」

 

と、次はレースゲームに移る二人。そして、レースゲームの次はシューティングゲーム、その次は……と色んなゲームで遊んでいる。一方その様子を陰から見ている二人は、

 

「風人君、ゲーム上手いねぇ……まぁ僕程ではないが」

 

さらっと自慢をいれる創真氏。

 

「はい。私と互角かそれ以下かと」

(ん?そこは互角かそれ以上じゃないの……?)

 

だが、実際。風人のゲームの実力は神崎の足下であって得意なゲームや時折同等になるので何も間違ったことは言っていない。

 

「というか、風人君容赦ないね。普通ここまでしたら相手は引くよ?」

「まぁ、私が相手だとそういうのが一切ないので……」

「なるほどねぇ」

 

と半分関心半分あきれながら現在進行形で格闘ゲームで初心者相手に平然と上級者の使う嵌めコンとかを駆使する風人を見る創真。やれやれ、と思いながら創真は辺りを見回し、そして違和感に眉を潜める。

 

(なーんかさ……………人が少なすぎじゃない?休日だと言うのに流石に人気が少なすぎる気が……)

 

「創真さん」

「…………」

「創真さん」

「……あぁ、ごめん。考え事をしていたよ」

「そうですか。私はちょっと別のところ行ってきますね」

「ん?尾行は続けないの?」

「ちょっと1回気分転換にデパート内を見て回ろうかなって。10分から15分くらいしたらまた合流しましょう」

「そう。分かった。多分彼らもそんな短時間では動かないだろうし、もし動いたら誰かを向かわせるよ」

「ありがとうございます」

 

そう言って去って行く神崎。

 

「……1人にさせてよかったのか?」

「本当はよくないかもしれないけど彼女自身にも整理したい気持ちはあるんだよ」

 

(きっと、僕でも完全には推し量ることは出来ないだろうね。今も楽しそうにゲームをしている風人君と千影さんの楽しげな様子を見守る神崎さんの気持ちを。他人の奥底にある気持ちを推し量れる人間なんていやしない。分かったような気になるだけさ。なら、一人になりたいなら一人にさせておいた方がいいのだろうね………………さて、と)

 

「キバット。ホリー。デュオ。あの2人の見守りを頼んでいい?」

「俺様達はいいが……どうしてだ?」

「さっきからなーんか嫌な予感がするんだよね。ちょっと辺りを見てくる」

「分かった!あの二人の監視は僕らに任せて!」

「……ああ。あの二人の見守りとこいつらの監視は任せろ」

「って!俺様たちも監視される立場なのかよ!」

「そうだよ!キバットと同じように扱わないでよ!」

「……よろしくね」

 

そして創真も単独行動を始めた。

 

「全くー創真は考えすぎなんだよー。そんな別の世界に来て事件とかに巻き込まれるなんてテンプレ起きるわけないじゃないか」

「珍しく意見が合うじゃねぇか。創真と風人のバトルから始まって一心地ついてるんだ。このまま平和に終わるだろ」

 

ホリーとキバットは楽観的に状況を見て、俗に言う『フラグ』という奴を立てまくっていた。

 

「……まぁ、創真の杞憂で終わればそれまで……だがな」

 

デュオが無表情で呟いた。しかし、創真の予感が嫌な形で的中することになる。的中するまで後、5分……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今さっきやっていた格闘ゲームも風人の圧勝で幕を閉じた。尾行組の数が2人ほど減ったことに気付いていない風人と千影。

 

「ふぅ。ちょっと休憩」

「疲れちゃった~?」

「まぁね……ここまでノンストップだし。初めてのゲームばっかで疲れちゃった」

「そー言えばそーだったね~」

 

彼らは今日一日……正確には数時間ほどで色んな事があった。風人はゲームをもっと続けられただろうが千影が休みたいといった以上無理をさせるわけにはいかない。

 

「そうだ。落ち着いたやつならいいんじゃない~」

「落ち着いたやつ?」

「あれとか~」

 

そうして指差すのはクレーンゲームだ。

 

「いいね。じゃあ、あれやろ」

「うん~」

 

 さっきまでと違って、風人はお金を出すだけで自分はやらない。勝負というより純粋に楽しんでもらいたいという風人なりの配慮なのだろう。

 

「あー惜しい!もう1回!」

「はーい」

 

位置がわずかにズレてしまい、うまいこと景品であるぬいぐるみが掴めなかった千影。ぬいぐるみと言っても小さいサイズのやつだ。大きいと持ち運びが不便になると考えた結果だそうだ。と、そんなクレーンゲームに挑戦している千影を見ながら風人はあることに気づく。

 

(千影が可愛い……っていうのはわかりきってることだからスルーしておいて)

 

辺りを見渡す風人。

 

(おかしい……あまりにも人気がなさ過ぎる。今日は休日だし、もっと人はいてもいいはず……人が減った?いや、減ったと言うよりここに増えていない?)

 

ゲームセンターもだが、人が減ったり増えたりすることは当然だ。帰れば人は減るし、来れば人は増える。だが、まだまだ閉館時間は先。なのに、目に見えて人が減っているのは……。

 

(誰もゲームセンターに来ていない。いや、ここだけじゃない。この階自体最初に来たときより静かになり始めている。休日の午後なのに、誰も増えていない……何故?)

 

「やったぁ!見て風人君!取れたよ」

 

千影がとったのは小さいサイズのペンギンのぬいぐるみ。

 

「よかったね~」

 

風人が千影の頭をなでる。

 

「ふふっ。ありがと」

 

当の千影は嬉しさを隠しきれない様子だ。

 

ピンポンパンポーン

 

そんな中アナウンスが聞こえる。

 

「っ!千影!こっち!」

 

その瞬間。風人は千影の手を引き、クレーンゲームの巨体の陰に隠れる。

 

「え?急にどうし……」

 

風人は千影の口を手で抑え、抱きかかえるようにして、その背中を巨体に預ける。

 

(何だ?今、殺気のようなものがいくつか現れて動いた気がした)

 

風人は殺意を感じ取って咄嗟に隠れる。

 

『このデパートは我々が占拠した』

 

聞こえてくるのは男の声。そして訪れる一瞬の暗闇……

 

『外部との連絡は絶ってある』

 

非常電源に切り替えたのであろう。先ほどよりも暗い感じがすると風人は冷静に分析した。

 

『既に1~3階の制圧は完了している。4階以上にいるものは速やかに一階まで降りてこい。1分いないに降りてこない場合……』

 

 

――――パン!パン!パン!

 

 

一斉に響く銃声。スピーカーごしだけでなく至る所に配置された彼の仲間も同時に発砲したのだろう。

 

『カウントダウンを始める。60、59、58…………』

 

銃声の後の一瞬の静寂。そのお陰か、カウントダウンを始めた後の人の走るような音や悲鳴やらがやけに響いた。

 

(ヤバいな……想像の何倍もヤバい。状況を整理すると何者か……おそらくテロ組織辺りがこのデパートを占拠しに来た。1~3階の制圧完了ということは既にその階にいた者は人質に取られたと見て間違いない。犯人グループがこのデパートに潜入したのは、おそらくもっと前。僕らがゲームをやり始めた頃だろう。なるほどね。合点がいった。1階を制圧されればそりゃ、人は増えるわけがない)

 

風人は考える。ここでおとなしく従うのが正しい選択かと。そして即断する。

 

(生憎、僕におとなしく従うなんて選択肢はなくてね……)

 

『5、4、3、2、1、0……では、これより仲間たちがそれぞれの階層を回る。もし、こそこそ隠れて反逆しようものなら…………命はないと思え』

 

そう残して放送は切れる。

 

(クソ。人質の数は?人質はどこに集められた?いや、そもそも奴らは誰だ?構成員の数は?考えることが多過ぎんだよ。クソまずはどうす……)

 

と、ここで風人は気付く。ずっと、千影の口を抑えていたことに。

 

「あ、ごめん」

「はぁ……はぁ……でも、どうするの?私たち逃げなかったんだけど……見つかったら殺されるんじゃあ……」

「そうだね……」

 

(私は実質死人だから大丈夫。でも風人君は……)

 

風人は少し巨体の陰から顔をのぞかせる。すると、全身黒ずくめで銃を携えた男が立っているのが見えた。その男は徐々に風人たちの方へと近づいていく。

 

(……まずい。こんな場所じゃすぐ見つかる。だからといって飛び出すわけにはいかない。クソ……手詰まりかよ)

 

風人たちと黒ずくめの男との距離は5m……4……3……

 

(仕方ねぇ……いざとなりゃ…………殺るしかねぇ)

 

残り2m……1……そして、

 

「2人とも!喋らず動かないで!」

「何者だ!」

 

男の後ろからホリーの声が聞こえる。男は振り返ってみるも何もない。警戒しながら徐々に風人たちから離れていく男。その隙に、

 

「……2人とも声を出さずに聞いてほしい」

 

デュオが小声で二人に声をかける。

 

「今、ホリーの魔法で君たちを透明化している。嘘かもしれないと思うがそこは信じてくれ。だが、この魔法はあくまで透明化。見えなくするだけだから実体はそこにあるし、声を出せば相手にも聞かれてしまう。今は静かにしてくれ」

 

こくり、と小さくうなずく風人と千影。

 

「……何だよ。驚かせやがって」

 

銃を構えた男は呟く。持っているのは、小さな電子スピーカー。ホリーが近くの電化製品のお店から拝借したものだ。その男はそれを踏み潰し、再び風人たちに迫る。風人はデュオの言うことを信じていないわけではないが万が一のこともある。それに備え、右手で千影を自身に引き寄せ、左手を構える。そして、距離はゼロとなる。

 

「……やはり、誰もいないか」

 

すると、男はそのままゲームセンター内を徘徊し、一通り見終えたところで、歩きながら連絡を取る。

 

「4階ゲームセンター付近。人はゼロ。クリアだ」

 

そして、そのままどこかへと行く。

 

「……終わったかと思った~」

 

わずかな時間の攻防。並大抵の人間ならこの時点で神経がすり切れすぎていそうだが、生憎この男はそんな柔な神経じゃない。

 

「というかホリー。何で声を出したのさ~応援が来たらどうするつもり?」

「いやぁ。急に念話を使ったら絶対君たち声出すでしょ?だったら、透明化している僕の方に注意を向けてそのうちにデュオが説明した方が早いし確実かなぁって」

 

創真が居ればもっと賢いやり方があったんだろうけど、と付け加えた。

 

「でもおかげで助かりました。ありがとうございます」

「……いや。まだ助かったとは言い切れない。占拠されたことに変わりはないのだからな」

「だね~どうするの~このままかくれんぼは、僕の性分に合わないよ~」

「君ならそうだろうな」

 

すると、1人の男が現れた。しかも、彼等の頭上にある通気口から。

 

「あのアナウンスを聞いて逃げなかったのかい?風人君」

「そういう創真こそ~逃げなかったんだね~」

 

創真である。

 

「やれやれ。僕の予感は的中してしまったようだ…………屋上にさっき僕が見たヘリが大量に止まっていた。テロリストらのだろうね。そこに人はそれほど居なかったけど、こっちも見つかりそうになったから、通気口を通ってここに来たって感じ」

「既に固められてたわけだね~。それで、奴等の目的とか分かってるんじゃないの~?」

 

すると創真は近くの壁を指差す。そこには、『世界の希少な宝石を3階にて展示中!中には10億をも越える宝石も!』と言うポスターが貼ってあった。

 

「恐らくあれだ。まぁ、それだけではないかも知れないが…………戻って君たちに伝えようとしたんだが、遅かったようだね」

「でも創真たちがストーキングしてくれたおかげで助かったよ~」

「……え?尾行していたんですか……?」

 

驚く千影。だが、今はそんなことを言及も説明もしている暇がないと感じた風人は話を変える。

 

「まぁまぁ~そんなことはいいけどキバットと有鬼子は~?」

 

風人が1人と1匹の行方を聞いていると

 

「創真!」

 

キバットは帰ってきた。

 

「不味いぜこりゃ………俺様たち以外は全員人質に取られたようだ。そしてその中には神崎ちゃんも含まれてるぜ」

「それは本当かい?」

「ああ。他にも大勢いたぜ」

 

と、ここで風人はあることを思い出しキバットに聞いてみる。

 

「ねぇキバット~その人質の中に身長差20cmくらいの中学生のカップルはいた~?」

「いやいやそんなカップルがピンポイントでいるわけ……」

「いや………確かいたぞ」

「居たの!?」

「ああ。女の方が男の方に『雷蔵君……』って言ってたが……知り合いか?」

「なるほどねぇ~…………やってくれたなクソが」

 

一瞬、風人から殺気があふれ出した。だが、それもすぐに収まる。

 

「風人君……」

「ごめんね~落ち着いたから大丈夫だよ~」

「まったく、また無鉄砲に何も考えずに飛び出すかと心配したよ………さて、風人君。これからどうする?このまま警察とかがなんとかしてくれるのを待つかい?」

「ははは~創真は冗談が下手だな~助けに行くに決まってんじゃん。親しい人たちを人質に取られて黙ってるほど僕は甘くないよ」

「だよねー。生憎、僕も何もしないと言う選択肢は無いものでねぇ」

 

創真は肩に掛けていた黒いコートを剥ぐ。その瞬間、服装が風人と最初に会った時と同じ格好に戻る。

 

「大いなる力には大いなる責任が伴う。そして、僕は大いなる力を持つ者として…………奴等を潰す」

 

創真は風人に拳をスッと出す。答えるようにして風人は創真の拳に自身の拳を合わせる。

 

「なら僕は親しい人を助けるために戦うよ~」

 

創真は力を持つ者として。風人は親しい人のために。それぞれの思いで行動を起こす。 

 

「僕らが力を合わせれば…………何か、いける気がする!」

「そうだね。じゃあ、やってやろうか~」

 

彼らはお互いの顔を見合わせて頷く。

 

 

「「さぁ─────」」

 

 

─────反撃開始だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところで俺様たち最後空気じゃね?」

「なっ!そういえば……!」

「そんなこと言ってる場合ではないだろ」

「あはは……」

 

 

────次回、逆襲スタート。




どうも。この度コラボさせていただいた『暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~ 』の作者黒ハムです。今回のコラボ、内容もそうですが、まず文字数がすごいなぁと思います。これ普段の何話分なんだろう……?とまぁ、ここで私の作品のことを今回のコラボで初めて知ったよ、という人たちのために私の作品を一言で表すと『暗殺教室の二次創作の中で一番神崎さんがぶっ壊れている』作品です。少なくとも私はそう思います。風人君(うちの主人公)のせいで神崎さんのキャラ崩壊は止まりません。そもそも、『有鬼子様』なんてタグをちゃっかりつけてるくらいですからね。なら彼女はどういうヒロインかと聞かれると『笑顔で主人公を殴れる系ヒロイン』です。ただ、やられる原因は全部風人君にありますが。とはいえ、ヒロインらしいところもしっかり見せる。そう思うと、神崎さんは何かおかしな方向に進んでいるなぁ……原作からは想像がつきませんね。すべての元凶は風人君ですが。
 そうですね。音速飛行様から今回こうしてコラボしましょうと提案された時、まずどんな作品なんだろう?と思い読んでみました。まず思ったこととしては『創真君ヤバくね?』ですね。風人君は頭の中身がやばいですが創真君は一人だけ次元が違う感じです。ヤバいのベクトルも規模も違いますね。あらすじに天才という言葉が入ってますが、もうただの天才とは次元が違うだろと心底思いました。彼もですが彼以外の面々も(特に人外の皆様)色んな意味で常識外れですので、何しでかすか分からないのが読んでて面白いって印象ですね。
 今回は基本的には前半を音速飛行様が、後半を私が担当という形でしたが、後編その2は私と音速飛行様と二人で書いた感じです。次回は、反撃開始。創真君と風人君。前編で戦った二人は果たしてどんな活躍を見せるのか。楽しみにしてください。では、明日がいよいよ、このコラボ編最終話です。お楽しみに。



THE NEXT story 8/25 18:00




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結城 創真の暗殺教室×暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~ 後編その2

創真「前回までのあらすじ!なんやかんやで復活した千影は風人君とデートを楽しんでいたが、しかし!突如としてデートの邪魔するかのように現れたのはテロリスト軍団だった!」

風人「ほんと、タイミングの悪い時に来たよね~。折角良いところだったのにさ~」


創真「まぁ、良いんですけどね。後でボコボコにして仕返ししてやりますから。ついでに僕らに限っては神崎さんのせいで死ぬほど気まずい雰囲気を味わっていたので、その鬱憤晴らしに派手にやってやりますよ!!」


風人「あ、そうだったんだ~。うちの鬼がすみませんね~。後できつく言っておきま」


神崎「何をきつく言っておくのかな、風人君?」


風人「ゲッ……………」


創真「めんどくさい人が来た………」


神崎「創真さん?今なんて言ったかもう一度言ってくれますか?」


創真「めんどくさい人が来た…………」


風人「って、ほんとに言っちゃった~」


神崎「フフッ、そうですか……………そうですよね、私なんてめんどくさい人ですよね、前回ハイライトのない暗い目であんなにぶつぶつお経みたいに言ってたらめんどくさいですよね、ほんとになんで素直に二人を見守ってあげることのできないような性格になってしまったんでしょうね私って人はほんとうに(以下略)」


風人「あーあ、創真のせいでめんどくさいことになっちゃったよ~。どうすんの~?」


創真「もう後は知らん」


風人「無責任だ~。ちゃんと何とかして~」


創真「さぁ、と言うわけでコラボ最終回!果たしてどのような結末を迎えるのか!それでは、どうぞ!」


風人「スルーされてる~。あ、そうだ。もし今日初めてこのコラボの存在を知った人は前の後編その1に戻って、そこの前書きに貼ってあるURLのお話を読んでからこの話を読むと良いよ~。前編のURLも貼ってあるからね~」











反撃開始……とは言ったものの無策に行こうものなら犠牲者が出てしまう。そこで創真は────

 

「まずは情報収集だ。人質の数と場所。それからテロリストの構成員数。後は、外部の情報だが…………」

「うわぁ~……どうやって調べようね~」

 

作戦を立てるには当然だが相手に関する情報が必要。正確な情報を多く持っていることは戦いにおいて重要な要素の一つだ。

 

「既にもう手は打ってある」

「手……ですか?」

「テロリストが占拠するって分かった時から既に情報を嗅ぎ回らさせていたのさ……帰ってきたね」

 

すると、突然何もないところから青いトンボが姿を現した。同じく紫色のサソリも現れる。

 

「トンボ?」

「サソリ?」

 

それは機械仕掛けのトンボとサソリだった。

 

「これは僕の発明品の一つのマシンドラゴンフライ。こっちがマシンスコーピオン。これで陰からこっそりと様子を探ってもらっていた」

「ほへぇ~……このメカ虫って創真の手作りなの~?」

「まぁね。僕の自慢の発明品たちさ」

「じゃあ、今の状況ってどうなってるんですか?」

 

創真はマシンスコーピオンとマシンドラゴンフライから送られてきた映像を早送りで見ながら答える。

 

「……………1階に集められた人質たちは1階、2階、3階に大きく3つに分けられてるね。2階に神崎さん、1階に風人君の言ってた知り合い2人がいるのが確認できた」

「う~ん。つまり、人質をばらしたってこと~?」

「これは推測でしかないが彼らの思惑は2つ」

 

創真はまず、指を1本立てる。

 

「1つ。人質が多すぎること。人質が多すぎると彼らが人質全員の動きを把握できない。つまり反撃のチャンスを与えてしまうことになる」

 

そして、2本目の指を立てる。

 

「2つ。確実な制圧。例えばだけど、外にいる人たちが乗り込んできたとする。人質が全員固まっていればそこを解放するだけで解決する。でも、1から3階に分散されたら、1つの階を解放しようとすればその動きが他の階にいる仲間に伝わってしまう」

「伝わった仲間が人質を殺す。或いは人質を殺すぞと言って、解放しようとした人たちを無力化するというわけですね」

「そういうこと。で、これは僕らにも言えるわけだ。確実なのは全員でワンフロアずつ解放すること。でもそれは不可能になってしまった。だから、僕らも3つに分かれて一斉に無力化するしかない」

「りょーかい。で、誰がどこに行くの~?」

 

この場には創真、風人、千影、ホリー、キバット、デュオの6人(?)。順当に行けば二人一組で解放に向かうだろう。

 

「僕は3階。ホリー、デュオ、キバットは1階。風人君。君と千影さんは2階を頼むよ」

「嫌だ」

 

創真の提案を風人は即蹴った。

 

「………君、状況分かってる?」

「分かってるよ。僕を2階にしたのは有鬼子が2階にいる人質だから。そこに不満はないよ」

「なら、組み分け?僕にはこれがベストだと思えるんだけどね」

「そうだね。ベストかもしれないけど、僕の力では人質と千影の両方を守れない。だから嫌だ」

「……………なるほどね。なら、千影さん。君はこの荒事と無縁だ。逃げの選択をとっても誰も責めやしないよ。ただ、君は風人君の言う通り、ただ守られるだけの存在でいたいかい?それとも……………」

 

千影は数秒間考えた後、

 

「……ううん。私も戦いたい。確かに怖いし逃げたいという思いもある。でも、嫌なの。風人君に負けるとか風人君たちを危険にさらすとかそんなんじゃない。ここで何もしなかったら、私の大切な人たちを見殺しにしているようで……」

 

千影の思いは強かった。だから、風人は……

 

「分かった~でも、無理しないでね~」

 

折れた。風人が反対したのは千影を巻き込みたくないという思いからだった。だから、彼には彼女のこのまっすぐな思いを否定することは出来ない。揺らぎない覚悟と決意の眼差しにあてられたからだろう。

 

「ふふっ。それは風人君もだよ」

「これで決まりだね。人質の移動も終わったみたいだし、今から5分後に各々の場所で行動開始。目標は人質全員の無事とテロリストの無力化。勿論失敗は許されない」

 

創真は全員の顔を見渡して─────

 

「さぁて………悪党の退治を始めますか」

 

───────作戦開始を宣言した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

 1F

 

それは唐突に現れた。テロリストらが人質が逃げないように見張っていたところ、急に上の天井から穴が開き、人が2人+コウモリ1匹が入ってきたのだ。

 

「おー。まさにジャストタイミング!ばっちり遭遇だ~」

「創真の情報通りだな」

 

白の男はのほほんと。黒の男は緊張を解かない様子で云う。

 

「にしても……………こんな美しいレディがいるにも関わらず、白昼堂々と人質を取ったりするとは……………覚悟は出来てるんだろうね、家畜の豚共」

「んだと、ガキのくせに生意気な!」

 

挑発に乗った男が白の男に銃を向ける。が、それを近くに身長の高い男が止める。

 

「相手は子供だ。どうせ何も出来まい。白いチビの挑発に乗るな」

「……………………チビ、だと?」

 

そう白の男───────ホリーが呟いた瞬間、男2人の身体が盛大に吹き飛び、商品棚を巻き込んで、ガラスの割れる音と伴に昏倒する。

 

「だ─────れがチビじゃゴラァ!!お前の背が高すぎるだけだろうが!言っとくが、僕は平均以上あるんだぞ!!それに、まだ成長期真っ最中なんだよ!!」

「成長期はもう終わってるだろうが」

 

デュオが呆れ気味にツッコミを入れた時、騒ぎを聞き付けたテロリストらの増援が現れ、ホリーらに銃を向ける。

 

「チッ、バレたか」

「そりゃ、あんだけ音を立てたらバレるに決まってんだろ」

「キバットの言う通りだな…………」

「ふんっ。デュオ、1回だけブレイクポイントを作って。そしたら、後は僕がやる。デャオらは流れ弾から皆を守って」

「分かった」

「任せとけ!」

 

デュオとキバットは頷く。

 

「おい貴様ら!両手を手の上に乗せて膝をつけ!」

「やーだね。誰がテロリストなんかの指示を聞くもんか。テメェらくそ雑魚が僕らに指図すんな」

「なっ……………」

 

予想外の言葉に詰まるテロリストら。そんな彼等の事などいざ知らず、ホリーはデュオに声を掛ける。

 

「デュオ」

「あぁ」

 

その瞬間、デュオの身体が赤く光出す。

 

「な、何だあいつは!?」

「通りすがりの元・死神だ…………覚えておけ」

 

次の瞬間、デュオの身体から赤い衝撃波がテロリストらに向けて放たれた瞬間、周囲の商品棚等を巻き込んで、テロリストらが大きく吹き飛ばされた。

 

「うわぁ!!」

「なんだ今のは!?」

「重力操作を応用して生み出した衝撃波だ…………ホリー」

「任せといて。さぁて、君たち。よくも千影ちゃんと風人君とのデートを邪魔してくれたね。いちゃいちゃしてるのをもっと見たかったのに……………許さねぇぞ、テメェら!さぁ!お前らの罪を数えろ!!」

 

お怒りの理由が変なのを通り越して、逆にホリーらしい。ホリーは超高速で走り出し、手当たり次第襲い掛かる。悲鳴やら銃声やら爆発音が辺りに響き渡る。

 

「………………あぁ、そうだ。えー、皆さん。我々が来たのでもう大丈夫ですので、ご安心を」

「て、て言うかあんたら誰なんだよ?警察か?てか、あんた、さっき何をしたんだ?」

 

 人質の一人がデュオに尋ねる。

 

「否、違う。警察ではない。我々は……………………何て言えば良いんだ?」

「あー、正義の味方とでも言っておけば良いんじゃないか?」

「まぁ、そんなもんで良いか。我々は」

「おい、ちょっと待て!!あの喋ったコウモリ、キバットじゃないのか!?」

 

デュオを遮って別の男が驚いた様子で叫ぶ。それに呼応されるかのように──────────ライダーファンが騒ぎ出す。

 

「よーく見たら、確かにそうじゃん!」

「めっちゃそっかくりだ!と言うか、声まで完璧に本物だろ!」

「cv杉田だ!」

「銀さんの声だ!」

「…………………何か、俺様人気だな?」

「良く分からんがそうだな」

 

写真を撮られまくっているキバットが不思議そうに言い、同じくデュオもキバットの人気を不思議そうに言うのだった。まぁ、雰囲気的にデュオの能力の事などどうでも良くなってるので、デュオ的にはありがたかったりする。

 

「デュオ!!そっちに何人か行ったよ!!」

 

ホリーの声に振り向くと、銃を持った男2人がデュオらに射線を合わせながら走ってくる。

 

「俺は左のを」

「なら、俺様は右をやるぜ!」

 

デュオとキバットは同時に飛び出す。男らの銃口から弾丸が発射されるが、それらをデュオの黒獣が切り刻む。そのままデュオは距離をつめて銃をへし折る。男はナイフに武器を持ち替えて襲い掛かるが、デュオは余裕で避け、お返しとばかりに黒獣で吹き飛ばす。

 

「キバって、行くぜ!」

 

その台詞に歓喜するライダーファンの歓声を受けつつ、キバットも男と対峙する。

 

「おら、どうした!ちゃんと狙えや、このヘタクソ!」

 

キバットは迫る弾丸をすばしっこい動きで避けながら挑発する。

 

「くそっ、蝙蝠もどきが!!」

「あ!?ざっけんなよ、こいつ!俺様はれっきとした蝙蝠だ!!」

 

キバットは自身の羽で銃を一刀両断にし、体当たりで吹き飛ばした。

 

「くそが!!」

 

 男はナイフを投擲する。が、そんな攻撃がこの蝙蝠に通用する訳がない。キバットはナイフを口で加えて受け止める。

 

「おぉ!!第1話の戦闘シーンの再現!!」

「生きてて良かったー!」

「ったく、うるしゃい奴りゃだ」

 

キバットがナイフを加えながらため息をつく。そのままナイフを噛み砕き、その破片をペッと飛ばす。

 

「おいおい、もう終わりか~?」

「黙れ─────!!」

 

逆上した男は素手で襲い掛かる。が、その拳がキバットに当たる直前に消える。と言うか、男の姿自体が消えた。

 

「よっしゃあ!!これでラストじゃあ!!」

「ったく…………良いとこだけ持ってくなよ、ホリー」

 

マネキンと抱き合いながら気絶している男を見ながらキバットが悪態をつく。

 

「いーじゃん別に。早い者勝ちだよ?」

「けっ……………にしても、お前。中々派手にやったな」

「え?」

「え?じゃねぇだろ……………お前、どうやったらテロリストらが天井に突き刺さってたり、凍ってたり、ほぼ全裸でぶっ倒れてたりしてんだよ…………」

 

キバットの言う通り、異様な光景が広がっているのは事実である。

 

「うーん…………………まぁ、色々!でも、殺してはないよ!子供に悪いからね!」

「いや、この光景もあまりよろしくはないかと思うが………………」

 

そこへデュオがやってくる。

 

「お前ら。まだ仕事は終わってないぞ。これから怪我人がいないかの確認や、テロリストらを拘束したりするぞ」

「じゃあ、デュオがあいつら拘束しておいて!僕らは怪我人がいないか確認するから」

「さぼるなよ」

「さぼらないよ!どんだけ僕の信用度が低いのさ!」

 

不満そうなホリーに、デュオはさぁな、と答える。

 

「じゃあ、そっちは頼んだぞ………………………本当に異様だな、この光景は………………」

 

若干引き気味でデュオはテロリストらを拘束を始めるのだった。

 

───────────―1Fの制圧完了。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

2F

 

「さてと~」

 

敵の数はそこそこいる。対してこちらは風人と千影の二人のみ。しかも、向こうは人質が沢山いるという一見したら救出はムリゲーな状況にある。

 

「行こうか~」

「うん。私たちなら大丈夫」

 

しかし、2人にはこの状況でも作戦を遂行出来るという絶対の自信がある。

 

(1Fの創真。3Fのホリー、キバット、デュオ。この作戦の成功か失敗かを決めるカギは僕らだろう)

(創真さんやホリー君らと比べたら私達は最弱)

 

2人は同時に向き合って頷く。

 

((でも千影\風人君が一緒なら負ける気がしない!))

 

お互いを信頼しているが故の自信。今の彼、彼女に敗北のビジョンはない。元の黒いワンピースに着替えた千影が幽霊化をし、顔をうつむかせたままゆっくりと飛び出す。

 

「何者だ!」

 

すぐさま近くにいた男が気付き千影に向けて発砲する。だが、

 

「何だと!?」

 

発射された弾丸は千影をすり抜け後ろの壁に当たる。

 

「デテイケ……!」

「あ、ありえない!」

 

わざと怖がらせるような声を出す千影。一方の男はもう2発千影に向け発砲する。だが……

 

「な、なんで当たらないんだ……!」

 

2発ともすり抜け再び壁に当たる。

 

「ココカラデテイケ……!」

「ゆ、幽霊!?」

「何事だ!」

 

と、ここでその男の仲間が6人、銃声を聞きつけやって来る。

 

「ゆ、幽霊が……!」

「ただのトリックだ!幽霊なんているわけがない!」

「相手は人間!数打てば当たる!」

 

やってきた6人の仲間たちも銃を放つ……が、やはりすり抜けてしまう。

 

「畜生が!」

 

しびれを切らせたのかついに一人の男が銃を投げ捨て、咄嗟に懐にあるサバイバルナイフで斬りかかる……が。

 

「何で当たんねぇんだよ!」

 

そのナイフは空を切るのと同じく実体を捕らえることはなかった。

 

「フフフ……」

 

唐突に千影が手を前に差し出す。すると、

 

 ドタッ

 

「おい!どうした!?」

 

手をかざした直線上にいた男が何の前触れもなく倒れる。

 

「き、気絶してやがる……!おいお前!何をした!」

「フフフ……!」

 

再び手をかざす。

 

 ドタッ

 

そしてまた何の前触れもなく、直線上にいた男は地に伏した。

 

「フタリメ……アトゴニン」

 

歯を二カッと見せて数を数える。その光景に、

 

「の、呪いだ!」

 

誰かが恐怖のあまり叫ぶ。こういうとき人の恐怖は伝染する。つまり……

 

「な、何かトリックがあるはずだ!」

「そ、そうだ!幽霊なんているわけが……」

 

冷静な判断能力が男たちから奪われる。もう、冷静に分析するなんて芸当はできない。できるとしたらそいつは心臓が大草原の奴だろう……と、ここで男の1人が急に後ろを振り向いた。

 

「おい!こんな時に冗談はやめろよ!」

「どうしたんだよ!一体……」

「今誰か俺の肩を叩いただろ!」

「はぁ!?そんなことするわけねぇだろ!?バカかお前は!」

「アト……ヨニン」

 

男たちの軽い騒動の中、千影が手をかざした先にいる男が倒れていた。

 

 ――パリン!

 

騒動に追い打ちをかけるように蛍光灯の割れる音が響く。

 

「な、何だよ!怪奇現象かよ!」

「お、怒ってるんだ!怒ってるに違いない!」

「フフフ……ヒトリ……フタリ……サンニン…………ヒトリタリナイ」  

 

ばっと顔を見合わせる3人の男。この場には最初7人居た。3人倒れたから後、4人いるはず…………が。

 

「お、おい……1人足りねぇぞ……!」

「ま、まさか!け、消されたのか!?」

「ひぃぃぃいいいいい!」

 

ありえないと信じたい男。動揺する男。発狂する男。三者三様な反応を見せる中……

 

「コレデ……ゼロニン」

 

その3人の視線は千影のすっと挙げられた手に集中する。そして、それが振り下ろされたとき。一人ずつゆっくりと地に伏せていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁ~ノリノリだったねぇ~」

「もう!女の子に銃を向けて発砲だなんていい根性してるよね!」

「あはは~というか自由すぎでしょ~合わせる身にもなってよ」

「こっちの台詞でもあるよ?急に蛍光灯割ってみたり一人を物陰に隠してみたり……というか着替え剥ぎ取ったんだね」

「まぁね~これから使うし~」

 

この会話で分かる通り男たちは千影ではなく風人によって気絶させられたのだ。まぁ、2人はこの作戦、全てその場のノリに任せてやっているから恐ろしいものだ。ちなみに、最初に呪いだと叫んだのは風人である。

 

「お、あんなとこにも見張り発見~」

 

と、軽い感じで手錠を2個。タイミングをずらしてその男めがけ勢いよく投げる。1つの手錠は後頭部に当たり、その衝撃で振り向いた瞬間2つ目の手錠が男の目に当たる。

 

「はい。しゅーりょー」

 

そして、急接近し、掌底を喰らわし、気絶させる。

 

「おい!大丈夫か!」

 

と、手錠を回収した後にわざとらしい声を上げる風人。すると数人の男たちがこちらにやってくる。

 

「どうした?」

「急にこいつが倒れて……何かあったか?」

 

男たちが倒れた男の周りに集まり確認している。

 

「……気絶している。一体誰……」

「まぁ、犯人は僕だけどね~」

 

次の瞬間。変装していた風人がテロリストの一人を倒す。

 

「貴様!なにも……!?」

 

続けざまに2人目。流れるように3人目と倒す。

 

「遅いよ~あくびが出ちゃう~」

 

挑発する風人に向け残った2人が狙いを定めて発砲しようとする……が、

 

「えい!」

 

かわいらしい声と共に振り下ろされたものが男の一人の後頭部を直撃。残った男がそっちを見るも、

 

「よそ見厳禁~」

 

風人のハイキックが直撃し、ダウンした。

こんな感じの連携で2階の敵をあらかた一掃した2人。

 

「さぁ、後は人質だけかな~」

「じゃあ、私は……」

 

幽霊化したまま綺麗に風人と重なる。お互いの動きがズレれば不自然に感じるだろうが、この2人に限ってそんなことはない。

 

(奴らは人質が全員無傷で生きていることに価値がある。今までの騒動で敵も見えぬまま発砲しようものなら確実に人質が暴動を起こすだろう。そうなれば、奴らは圧倒的に人数で不利だ。まぁ、銃声も悲鳴も聞こえなかったから無傷だろうけど)

(そういえば、風人君大きくなったなぁ……抱きしめられたときにも感じたけど……。あれから成長したんだね……身も心も……)

 

「終わりにするよ~」

「うん。合わせるよ」

 

そして、風人は人質たちの前に出る。そこには5人の見張りが人質を囲うようにして立つ。銃口は全て人質たちに向けられている。

 

「おい。さっきの騒動は何だった」

 

1番近くにいた男が変装した風人に話しかける。

 

「はっ。ネズミが一匹紛れ込んでいたようですが、始末を」

「残りは」

「他にもネズミがいないかの捜索。いたとしても始末して終わりでしょう」

「分かった」

「……すみません。実は他にも報告があります」

「何だ?言ってみろ」

「いえ、あの4人にも一緒に聞いてもらいたいです。少々重要なので……よろしいですか?」

「……分かった。おいお前ら!」

 

そして集まる4人の男。最初に風人に話しかけた男と2人は風人と向き合うが風人の両脇に立つ2人は銃口を人質たちに向けたまま話を聞こうとしている。

 

「で?わざわざ一緒に聞いてほしい重要な報告とは何だ」

「実はですね……」

 

風人はゆっくりと両手を前に出す。正面にいた男たちも左右の男もつい手の動きに視線を誘導される。そして、

 

「アンタらを潰しに来ました♪」

 

そのまま手を水平に持ってきて、左右の男の顎下で急停止し、そのまま顎を打ち上げ、裏拳を顔面に放ち沈める。一方風人の胸あたりから()()()()=手のみ実体化させた千影の手が現れ、その手が正面に居た1人の男を掴む。

 

「なっ……!」

 

目の前の仲間の格好をした者の急な裏切りと、その男から本来あり得ない第三の手が現れたことによる動揺。その2つが合わさった結果掴まれたその男は為す術なく……

 

「これでおしまい♪」

 

風人は正面の掴まれた男を足払いで背中から倒しつつ強烈なボディーブローをお見舞いした。

 

「ば、化け物め!」

「な、何者だ貴様!」

 

銃口を向ける男2人。しかし、銃口を向けられた風人は全く動じていない。

 

「……いつから僕と千影だけだと錯覚した?」

 

マスク越しに余裕の表情を向ける。その言葉にますます動揺を隠せない2人の男。

そして……

 

「「カハッ……!?」」

 

崩れ落ちる2人の男。その後ろには、

 

「やっほー。有鬼子~元気だった~?」

 

マスクを脱ぎ捨てる風人。一方で、2人の男を背後から気絶させた神崎は、

 

「……風人君!」

「おっと……!」

 

咄嗟の事に反応できた千影は風人から離れ実体化し、反応出来なかった風人は背中から倒れ込む。

 

「バカ!捕まってなかったから心配したんだよ?」

 

胸元に飛び込んできた神崎は床ドンをする形で風人の上にまたがる。

 

「あはは……」

「すごく怖かったんだよ……?いつ殺されるか分からなかったから……」

 

ここで風人は気付く。話している神崎の声が、肩が震えていたことに。

 

「……ごめん」

「もう……何で謝ってるの」

 

すると、まだ人質として捕まっていたことによる恐怖が残る中、精一杯の笑顔を向ける。

 

「私はこんな状況でも信じていたんだよ。『前みたいに風人君が助けに来てくれる』って。私は何度も風人君に助けられた。風人君なら、絶対こんな状況で何もしないという選択肢はないと信じてたよ。そして、その信頼に応えてくれた───────」

 

 

 

 

 

──────ありがとう。本当に。また助けられたね。

 

 

 

 

 

 

普段の姿からはあり得ないその素直な感謝に風人は、

 

「……別に……これぐらい普通だし……」

 

素直になりきることができない。自分1人では絶対に助け出せなかった事実と、神崎からのまっすぐで心の底からの感謝する姿を(不覚にも)愛おしいと思い、彼女を直視できないのだ。一方の千影はその様子を見て思っていた。

 

(……有希子さん。貴女も充分風人君の信頼に応えてますよ)

 

あの状況で、動ける人間はいない。ましてや、暗殺の訓練をしているとはいえまだまだ中学生。知り合いの1人もいないこのいつ殺されてもおかしくない状況。精神的にも擦り切れるこんな時でも、神崎は風人の信頼に応えた。

 

(……よかった。2人は確かな信頼関係で繋がってるんだね)

 

双方向の信頼。そして、それに応える姿。無意識だったとしてもその光景に嬉しさと少しの悲しさが込み上げてくる。その場所が既に自分だけのものでなくなったという事実に。

 

「……コホン。2人とも?今の状況分かってます?」

 

わざとらしい咳払いとともに若干の嫉妬の込もった声で2人に話しかける千影。神崎はハッとした様子で周りを見渡して気付く。人質たちがこちらを見ていることに。それに気付くとさっと風人から飛び退いて、顔を真っ赤にして蹲る。風人は、

 

「あ、人質の皆さん~助けに来ましたよ~」

 

パッパッと背中だったりを払って、普通に立ち上がった。あまりの言葉と状況がわずかな間に二転も三転もしたために人質はぽかーんとし、千影は風人の言葉にため息をつく。

 

「さ、全員とっ捕まえよ~」

 

そして、何事もなかったかのように犯人を捕らえていく。

─────────2Fの制圧かn

 

「…………………あれ?」

「どうしたの千影~?」

「ペンダントが急に光出して………」

「どれどれ~?」

 

風人がペンダントを手にとってじっくり見てみる。すると

 

ベシッ!

 

「痛っ!」

 

ペンダントから飛び出したカードが風人の額に強く当たった。そのカードは風人の周りをクルクル飛んでいたかと思えば、天井を貫いて消えていった。

 

「何で急に………………あ!それより風人君、大丈夫!?」

「全然大丈夫~。じゃ、さっさと拘束していこっと」

 

 

改めて─────────2Fの制圧完了

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

==================

3F

 

 

「……………………」

 

涼香は不安そうに辺りを見回す。そして、小さくため息をついた。

 

(まさか、映画とかドラマの世界でしか起こらないような事が現実に起こっちゃうなんて………………無事に帰れるのかな………………もしかして、このまま殺され…………)

 

それ以上考えると気が狂いそうで、涼香は頭をブンブン振って最悪のシナリオを考えるのを止める。すると、小刻みに震えている手をそっと握ってくれる人がいた。

 

「雷蔵君………………」

「大丈夫ですよ。必ず助けは来ます。それまで諦めずに頑張りましょう」

「……………………うん。ありがとう」

 

すぐそばに大切な存在がいることに涼香は素直に感謝した。

 

「雷蔵君は凄いね。こんな状況でも冷静でいられて」

「こう見えてもかなり緊張していますけどね」

 

雷蔵は苦笑する。その時だった。

 

「もういやだよう!早く帰りたいよう!」

 

子供の泣き出す声が聞こえた。傍にいるお母さんらしき人物が必死に大丈夫だよ、等声を掛けるが子供は泣き止まない。

 

「おい、うっせぇぞ!!とっととそのガキを黙らせろ!!」

 

テロリストの1人のイラついた声が聞こえた。周りの人たちもしきりに言葉を掛けるが、泣き止む気配はない。その状況に、怒鳴った男は涼香らの傍に立っている男に声を掛ける。

 

「おい、あのうっせぇガキを殺しても良いか?目障りでしかねぇ」

「あ?………………まぁ、人質が1人くらい減っても良いか。好きにしろ」

 

それを聞いた男は拳銃を取り出し、元来た道を戻っていく。

 

 

 

────────このままでは、あの子供の命が………!!

 

 

 

そして、気付けば雷蔵は立上がり、その男にタックルを仕掛けていた。

 

「雷蔵君!?」

「グォ!?テメェ、何する!!」

「相手はまだ子供です!こんな状況で泣きたくなるのは不自然ではない!むしろ当然のことです!泣き声がそんなに気にくわないなら、別の所に移れば良いじゃないですか!」

「んだと!?人質の分際で俺に命令するな!」

 

男は雷蔵を引き剥がし、軽々と投げ飛ばす。雷蔵は壁に叩きつけられ、地面に突っ伏した所を他のテロリストらに押さえ付けられる。

 

「ちっ……………だが気が変わった。あのガキは殺さないでやる。だが、その換わりにテメェの命を貰うぜ」

 

そう言って男は銃を雷蔵に向ける。

 

「ダメ!!やめて───────!!」

 

涼香も飛び出すが、直ぐに押さえ付けられる。

 

「雷蔵君!!雷蔵君─────────!!」

 

雷蔵は特に何も言わず、目を閉じて最後の時を待っているように見えた。

 

 

 

──────誰か─────────誰でも良いから──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

──────────────助けて…………!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ダァン!!

 

銃声が響き渡る。涼香は思わず目を閉じた。すると、そんな涼香の目の前に何かが落ちて来た。目を開けると、それはさっきまで男が持っていた銃だった。

 

「グッ……………何だ………!?」

 

男が手を押さえながら辺りを見回す。辺りには特に怪しいも人影はない────────今のところは。

 

「ふいー。危機一髪だった」

 

そんな声がしたかと思えば、涼香の目の前にいつの間にか穴が空いていた天井から人が降ってきた。そして、目にも留まらぬ早さで涼香を拘束していた男の意識を刈り取った。

 

「立てるかい?」

「あ………………はい、大丈夫です」

 

 差し出された手を掴んで、涼香は立ち上がる。そして、改めて目の前の男を見る。20代位の男だった。白いコートを羽織っているのが特徴的だ。

 

「お前!そこを動く」

「うるさい、そして遅い」

 

男らが銃を抜いて彼に向けるよりも早く、彼は愛銃『トカレフ』の速射で男らが持っていた銃を撃ち飛ばす。

 

「やれやれ、どんな世界でもトラブルは付き物か…………いやー、めんどくさいね」

「………………警察の人ですか?」

「まさか。警察は未だに外でずっと待機してるだろうよ」

「じゃあ、あなたは………………?」

 

涼香の質問に青年は答えた。

 

「僕の名は結城 創真。何て言うかねぇ……………まぁ、超天才!な正義の味方って所で。以後、お見知りおきを」

「はぁ…………」

 

(何かお兄ちゃんを連想させる感じの人な気がする………………)

 

涼香がそんな事を考えていると、創真はテロリストらに向けて話し掛ける。

 

「さーて君たち。今から選択肢を2つ出そう。1、大人しく警察に捕まる。2、僕にこてんぱんされてから捕まる。どっちにする?」

 

創真の提案にポカーンとしていたテロリストらだったが、次の瞬間笑い出した。

 

「おいおい、お前頭おかしいんじゃねぇのか?どんな馬鹿だって、今のお前は圧倒的に不利だって分かるぜ?」

 

 確かにその通りだ。今、創真は360°全方向から狙われているのだ。

 

「おやおや、テロリストに頭おかしいと言われるとはね。君たちの今までやってきた事の方がよっぽと頭がおかしいと思うが。あぁ、そんな事が分からない低能だからテロなんて愚かな行為をやってるのかい?」

「ちょ、ちょっと!」

 

まさに油に火を注ぐような発言。涼香は流石に不味いと思うのだが、創真はそんな様子を一切見せない。

 

「………………おい。最後の警告だ。大人しくしろ。さもなければ、お前を殺すぞ。ここのフロアには100人近くいる。1対100でどうにか出来ると思ってるのか?」

 

低い声で最終勧告するテロリスト。だがやはり、創真は大したことないように言う。

 

「1対100、か。確かにそれじゃいくら僕といえども流石に無理があるね。あぁ、山ほど応援が欲しいね…………ねぇ、君たち。アレが見える?」

 

創真は近くにあるガラス張りの窓を指差す。呼ばれた涼香と雷蔵は窓の外を見てみる。

 

「何も見えないですが……………おや?」

「あ!何かが近づいてきてます!アレがもしかして……」

「そゆこと。援軍だ」

「何!?」

 

テロリストが雷蔵と涼香を押し飛ばして、窓の外を見る。そして、驚きの表情を浮かべる。

 

「な、何だアレは!?」

「あれはねぇ…………あ、君。そこから退いた方が良いよ」

「は?」

「あ、もう手遅れ」

 

その瞬間、窓ガラスを突き破って入ってきた何かに男は大きく吹き飛ばされた。空中で3回転した後に頭を打ち付けて男はダウンする。唐突に乱入してきたのは、創真の発明品───────動物や昆虫をモチーフとした機械、通称マシンシリーズ全機体だった。マシンシリーズは人質らを守るかのようにテロリストらの前に地に足をつけたり、ホバリングしたりする。

 

「初めての全員集合作戦(ホームパーティープロトコル)、って所かな。さて………律、クローバー。ターゲットは銃を持つテロリスト全員だ。ただし、殺しはしない事。子供がいるしね。その上で、容赦するな。良いね?」

『了解です!』

『分かった』

 

マシンを操る人工知能らがそう答えると、呼応するかのように、マシンシリーズ全機の目が一斉に光る。

 

「どうせこんな機会は滅多にない。兎に角、派手にやりたまえ。テロリストの諸君。ちっこいからって舐めてたら吹き飛ばされた彼の道をそのまま辿るよ?さぁ…………………ショータイムだ」

 

マシンシリーズは一斉にテロリストらに襲い掛かり始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなちっこいので倒せるとでも思ってんのか!!」

 

男は手にもつ銃を、目の前のカブト虫型のマシンに向けて引き金を引く。しかし、そのマシン──────マシンカブトはすばしっこい動きで避ける。すると、マシンカブトの角が赤く光だした。マシンカブトは男に急接近し、角で銃をかちあげる。

その瞬間、銃の半身が綺麗に切れた。

 

『この角からは高熱を発している。通称、ヒートホーンとか創真は言っていたな。何でも切れるそうだ。例えるなら、ザクのヒートホークとか一緒とか』

「は、はぁ!?何だよそれ!」

『自分で考えとけ。檻の中で、な。律』

『はい!』

 

律の操るマシンクワガタから発射された催眠ガス入りの弾が炸裂し、男は気絶した。

テロリストらは着々と無力化されていた。素早い動きで敵を戸惑わせながら催眠弾を撃ち込むマシンスコーピオン。墨を吐いてアシストをするマシンオクトパス。体当たりで敵を沈めるマシンホーク。巨体を持つマシンタイガーは敵から恐れられ、追いかけっこをする構図が出来上がる。マシンウルフ、マシンモンキーは集団で迫り来る弾丸を怖れる素振りも見せずに着々と無力化していく。マシンカブト2、マシンクワガタ2はそれぞれ赤く、青く発光しながら高速スピードで空を飛び回り、彼等の飛んだ後には敵が倒れていた。そんな彼等よりも早く飛ぶのがマシンカブト3。緑色に光りながら飛翔し、2つの銃口からショットガン並の威力の弾を連射する。

 

「もうすぐ全員を無力化出来るね。いやー、流石創真氏。こんな優秀なマシンを作っちゃうなんて、自分の才能が恐ろしいね~」

 

自画自賛している創真に苦笑する涼香と雷蔵。彼等含めて人質の皆は今、蜂形マシンのマシンワスプが大量に集まって作った防護用のドームの中にいた。

 

「あぁ、そう言えば。君たち、名前は?」

「私は岩月涼香と言います」

「僕は篠谷雷蔵と申します」

「涼香ちゃんに雷蔵君、か。にしても、雷蔵君は勇気あるね。かの銃を持つ暴君に立ち向かうとは」

「あのときは無我夢中でした」

「君は素晴らしい彼氏さんを持ったね、涼香さん」

「……はい!!」

 

良い笑顔で言い切る涼香。創真がそれを見てフフッと笑う。すると、創真の通信機に律の声が聞こえてきた。

 

『創真さん、敵の制圧率が90%を超えました!残りの人数は10人もいないかと思われます!』

「残党は何処に?」

『何処かに隠れているみたいだ』

 

そう答えたのは割り込んできたクローバー。

 

「ふぅん………………律、クローバー。マシンシリーズはもう全員撤収させて良い。人質たちの護衛の方に専念してくれ。残りはストレス発散に……………………僕がやろう」

『好きにしろ』

『了解です!』

「じゃ、残りを仕留めに行ってきまーす」

「え!?そ、創真さん!?残りもあの機械に任せた方が」

「良いの良いの、ノー問題だからー」

 

創真は手をヒラヒラと振りながらワスプのドームを出ていった。創真が出ていった瞬間、空いた出口が一瞬で塞がる。

 

「…………………行っちゃった」

「まぁ、恐らくあの方なら大丈夫でしょう。そんな気がします」

「確かに……………何か創真さんが負ける結末なんて想像できない………………何でだろう………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、残りは何処かな……………?」

 

デパート内を捜索する創真。辺りには倒れているテロリストらの姿しか見えない。

 

「あー捜すのめんどいなぁ。これならマシンシリーズに任せた方が良かったかも。はぁー」

 

めんどくさそうな表情でため息をつく創真。だが、次の瞬間後ろを振り向くとそこには、飛来する複数の対戦車用のロケット弾があった。創真は背面跳びの要領で避ける。着地した瞬間、後ろから爆風が襲い創真のコートを大きく揺らめかす。

 

「戦車用のを人間相手に使うなんてね。容赦が無さすぎだろ!」

 

テロリストらはそれには答えず、今度は別の奴が大きな両手持ちの銃、『ガトリングガン』で創真を蜂の巣にしようとする。創真は柱の影に身を潜める。

 

「チッ、銃の射程外だな………なら、一旦返してもらうよ、千影さん。来い、文豪の世界!」

 

そう叫ぶと、床をぶち抜いてカードが現れる。創真はそれをキャッチする。

 

「『汚れっちまった悲しみに』」

 

そう唱えた瞬間、創真の姿が大きく変わる。そして創真は銃弾の嵐の中に身を投じる。ガトリングガンを持つ男は創真に向けて撃つが、創真に当たった弾丸は瞬時に質量を消され、木片のように跳ねて地面に落ちる。

 

「なっ!?銃が効いていない!?」

 

男は赤く光る創真を見て畏怖する。別の男らが創真に向けて対戦車弾を放つが、創真はそれらを2丁のトカレフで撃ち落とし、大きな爆発を起こす。そして、爆煙の中から黒い布が飛び出し、テロリストらの持つ銃を真っ二つにした。

 

「羅生門の切れ味は凄いだろ?」

 

後ろから声がしたと思えば、いつの間にか創真が立っていた。男がナイフを創真に投げるが、そのナイフは創真の体をすり抜けた。すると、創真の姿が消えていく。いつの間にか辺りには緑に光る雪が降っていた。

 

「これは映像!?」

「『細雪』さ」

 

そう解説しながら接近した創真は拳で男を殴り飛ばす。別の男らが総掛かりでナイフを手に襲い掛かってくるが、創真は軽々とそれらを避けながら体術で1人ずつ意識を奪っていく。そして残りがついに1人となった。

 

「君で最後だ」

「馬鹿な………………こんな筈があるか!俺たちがこんな奴らに負けるなど、ふざけるな!!」

 

男は拳を握りしめて創真に襲い掛かるが、創真はその拳を左手で受け止める。その手は─────────

 

「なっ!何だその手は!?」

 

────────その手は『白虎』の手と化していた。男が力を込めてもびくとも動かない。

 

「見れば分かるだろ。虎の手だ、よっ!」

 

同じく白虎の手と化した右手で創真は男の腹部を軽く殴った。それだけで男は創真の前に膝をつく。

 

「ほ、ほんとに貴様は……………何者、なんだ………」

 

男はそう呟いて気絶する。創真はそれに対してこう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪い奴の………………敵さ」

 

 

───────3Fの制圧完了。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

===============

 

「おーい、創真~」

 

 

1階の警備室で作業をしていた創真が振り向くと、風人と千影が駆け寄ってきた。

 

「そっちも終わったみたいだね」

「何とかね~。拘束したテロリストらも1階に集めといたよ~」

 

さらに、ホリーとキバットも現れる。

 

「こっちも全員終わったよ。今、デュオが皆を1階に誘導しているよ。ところで、創真は何をしているの?」

「奴等がこのデパートを停電にしたからね。今、電源を入れ直している所だ。電源が戻れば、閉ざされている入り口のシャッターも開けれるだろうからね」

「そんなことしなくても、創真とかが蹴り飛ばして開ければ良いんじゃないの~?」

「………………あのねぇ、風人君。恐らく外には警察が大量に待機しているんだよ。彼等の前でそんなことしたら、今日は警察署泊まりになるし、しかも僕らは別の世界の人間だ。国籍とかないし、色々と不味いことになるだろ?」

「あ、そっか~」

「……………よーし。先ずは電源が復活、と」

 

創真がエンターキーをターンと叩いた瞬間、デパートに光が戻った。

 

「ふぅ。クローバー、シャッターの方は開けれる?」

『ちょっと待ってろ。あと 5分位掛かる。ったく、システムがボロすぎるだろ』

「まぁ、我々の時代のと比べたら遅いのはしょうがないね。じゃあ、クローバー。出来たら報告よろしく」

『あぁ、分かった』

 

取り敢えず創真らは警備室を出る。そこでは、解放された人々が安心した様子で知り合い等との話に花を咲かせていた。

 

「こんなに大勢を、俺様たちが守ったんだなー」

「まっ、当然の結果だね」

 

キバットとホリーが嬉しそうに云う。風人もうんうん、と満足そうに頷く。

 と、そこへ。

 

「あ、いた!お兄ちゃん!大丈夫だっ………………えぇ!?千影ちゃん!?」

 

涼香は千影をみて大声をあげて驚く。雷蔵も驚きの表情を露にする。

 

「久しぶり、涼香ちゃん。見ない内に大きくなったね」

「え、あ…………う、うん。ちょっとお兄ちゃん、どういうこと!?何で千影ちゃんがいるの!?」

「まぁ後で落ち着いたら詳しく話すよ~。それより、2人とも大丈夫だった~?」

「うん。そこにいる創真さんのお陰でね。私も雷蔵君も無事だよ」

「僕にとっては、創真さんは命の恩人です。後でしっかりお礼をさせてもらいます」

「えーそんな大袈裟な。別にお礼なんていらないよー」

 

謙虚な創真だが、絶対にします、と雷蔵は引きそうにない。

 

「あーそうだ。風人君、良かったら乾杯しない?」

 

創真がいつの間にか買ったのか、缶ジュースを渡しながら風人に提案する。

 

「何に乾杯するの~?」

「テロ事件の解決記念に、と言うのはどうだい?」

「良いね~。じゃあ、テロ事件の解決記念に………」

 

2人は缶ジュースを軽くカチンとぶつけ─────

 

「「乾杯」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─────────とはならなかった。

 

ドゴォン────────!!

 

唐突に、デパート全体が大きく揺れた。

 

「何事!?」

「何だ……………!?」

 

ホリーとデュオが辺りを見回す。

 

「クックック……………」

 

テロリストの1人が笑っているのに気づいた風人は彼に早歩きで近づく。

 

「ねぇ……何がおかしい」

「なぁに、これからパーティーが始まるからさ………………今、外にいる俺たちの仲間が戦闘ヘリでこのデパートへの攻撃を開始した」

 

男の服の襟元には通信機らしき機械が付いていた。

 

「何………………!?」

「この建物を支える主要の柱への攻撃を行っている頃だ。それらの柱を何本か破壊すれば、この建物は崩壊する」

「そしたら君たちも死ぬけど?」

 

いつの間にか近くに来た創真が尋ねるが、男はだからどうしたと言う風に云う。

 

「このまま無様に捕まるなら、貴様等を道連れに死んだ方がましだからな!ハハハハハハッ!!」

「チッ、狂ってやがる……………今から避難させても間に合うかどうか…………」

 

風人が不安そうにしている大勢の人々を見回しながら云う。創真はスマホの中のクローバーに話し掛ける。

 

「クローバー。この建物の崩落までの予想時間は?」

『5分持てば奇跡だろうな』

「5分じゃ避難には足りないな……………なら、やることは1つだね」

 

創真がスマホを操作すると、目の前に創真の愛車、赤いパニガーレv4が出現する。

 

「奴等を妨害するしか道はないね」

 

創真はバイクに跨がり、エンジンを吹かす。その瞬間、創真の姿が変わる。ライダージャケットに袖を通した軽装に変わり、ソフト帽子を被る。

 

「ホリーらは皆の誘導を頼む」

「え?僕かデュオがついていかなくて良いの?」

「こんなに大勢いるんだから、誘導係は1人でも多い方が良いだろ?それに、ホリーなしでも僕には新兵器があるからね。テストはこれが初めてになるけどまぁ、大丈夫でしょ。じゃあ、後は頼むよ」

 

そう言うと創真は愛車と共にデパートの奥へと消えていった。

 

「……………さて。避難誘導を開始するか」

「そうだね!よし、じゃあ皆!僕についてきて!」

 

ホリーが先導し、それに皆付いて行く。デュオたちも声を張って、皆を入り口に向かわせる。

 

「千影と雷蔵は有鬼子と先に行ってて~。僕と千影はホリーたちを手伝うよ~」

「…………………分かった。じゃあ、後でね。行こう、雷蔵君」

 

涼香は雷蔵と共に出口へ向かって行った。

 

「じゃあ、私はここを。風人君はあっちを誘導しよう」

「おっけー」

 

千影と風人はそれぞれ散る。

 

(創真さん、大丈夫だと良いけど…………)

 

そんな事を考えながら誘導を手伝う千影。すると────────再び声が聞こえてきた。

 

『心配ならさー、助けに行けば良いんじゃないのー?』

「この声は…………世界一の探偵さんですか?」

『そうだ。それに、君は力を持っているんだ。創真も言っていただろ?大いなる力には、大いなる責任が伴うと。彼の言うことは正しい。君も力を持つ者として、その責務を果たすべきだと思うけどね』

「…………………………探偵さん」

『うん?』

「創真さんが何処に向かっているか分かりますか?」

『…………そう来なくっちゃね。恐らく、屋上だ』

 

それを聞いた千影は走り出した。千影が抜けたのには誰も気付かなかった───────────1人を除いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっひょー!ヤバすぎだろー!」

 

創真はデパートの駐車場内をバイクで走り抜けていた。現在5F。ただ、中々イレギュラーな状況───────迫り来るミサイルを避けながら。恐らく、敵として認定されたのだろう。仲間から聞いたのか。

 

『今度は追尾式が多数接近!』

「人間相手に使うもんじゃないでしょー!」

 

ミラーでそれを確認した創真。さらにスロットルを回してスピードを上げつつ、5Fから屋上への連絡路を車台スレスレでスピードをほとんど落とさずコーナリングする。そして遂に屋上へと着いた。タイヤを横滑りさせながらスピードを落としていく中、創真は懐から単機関銃UZIを出してミサイルに向けて引き金を引く。それによって放たれた弾丸によって、ミサイル群は全て爆発した。創真が降りると、バイクは消えてなくなった。創真は空となったUZIを捨ててヘリと対峙する。

 

「……………距離がありすぎるな。端まで寄っても銃もアレも射程圏外……………バズーカの類いだと殺しかねないし………………って、来たー!」

 

ヘリに搭載されている機関銃から無数の弾丸が放たれる。創真は近くの車の陰に身を寄せる。

 

「取り敢えず、『ナノテク』使うか」

 

創真がポケットから指輪を出して左手にはめる。すると、付いている赤い宝石から液状体のような物が放出され、創真の服ごと全身を覆っていくと、その姿がまたもや変わる。ショットコート、ベスト、さらにその上から黒のロングコートを袖を通さず羽織ると言った格好に変わる。

 

「起動は成功、と。先ずは、停まってる邪魔な他のヘリを排除するか」

 

 すると、創真の衣服から刺々しい木の枝のような物が全方位に射出され、残りのヘリを全て貫き、爆発する。

 

「さて……………飛んでるあいつにはナノテクの射程圏外だ。端まで行っても届かないから、もっとこっちに来てもらわないと困るんだが、どうしたものか………」

 

創真は困ったように呟く。すると、ヘリから再びミサイルが放たれる。創真はトカレフを構えようとしたその時だった。下から地面に穴を開けて人が飛び出してきた。その人物はコンクリートの破片を、ベクトル操作によってマッハ級のスピードで投げる。コンクリートはミサイルを貫通し、ミサイルは爆発した。

 

「大丈夫ですか?創真さん」

「やれやれ………………先に避難しておけって言わなかったっけ、千影さん?」

「大いなる力には、大いなる責任が伴う」

「………………………」

「創真さんはそう言っていました。 確かにその通りだと思います。そして私にも………………力があります。なら、私もその責務を果たさないといけないと思います。私も、微力ながら創真さんの力になりたいんです!」

「……………………フフッ。それなりの覚悟はあるみたいだね。なら、2人で大いなる責任を果たすとしようか!」

「はい!」

 

話は済んだか、と言わんばかりにヘリの機関銃から大量の弾丸が放たれる。創真は巨大な盾をナノテクで作り出して防ぐ。千影は自身の黒い服から飛び出した黒獣が産み出した赤い波紋────────『空間断絶』に守られる。

 

「千影さん!君、サッカーとか得意だった?」

「え?ま、まぁそれなりには……………」

「なら、跳ね返してくれよ……………ボールじゃなくて弾丸だけどね!」

 

創真はトカレフから弾丸を1発、千影に向けて撃つ。

 

「………………っ!!そう言うことですか!」

 

千影は創真の意図を理解した瞬間、千影の足が赤く光る。そして、タイミングよく千影は小さな弾丸を蹴る。さらに速度が増幅された弾丸は機関銃を撃ち抜き、爆発を起こした。

 

「お見事ー」

「もう…………ちゃんと言ってくださいよ、そう言うのは!」

「それは悪いね。まぁ、君なら分かると思っていたし」

 

2人がそんな会話を繰り広げている間に、体勢を立て直したヘリのドアが開き、男が身を出して、手に持つライフルで2人を狙う。2人もそれに気付き、警戒体勢を取ろうとしたその時、何処からか豪速球で飛んできた()()が男のライフルを弾き飛ばした。

 

「よそ見は禁物だよ~?」

「んなっ……………君もかよ…………」

「ちょ、風人君!?どうしてここに!?」

「いやー、千影が何処かに行くもんだから気になっちゃって~」

「やれやれ、こんな危険な所にわざわざ来る程バカな一般人だとは……………」

「むぅ~。僕は一般人じゃないし、暗殺者だし!て言うか、助けてあげたんだからお礼の一言位あって」

 

言い切るより前に風人は創真と千影に服を捕まれて後ろに飛ぶ。さっきまで彼等がいた所にミサイルが撃ち込まれ、爆発を起こす。3人は柱の陰に隠れ、創真が煙幕弾を使って時間稼ぎをする。

 

「さて、風人君へのお礼は100年後にするとして、あのヘリをどうするか…………僕的には、殺さないで無力化して、ちゃんと罰を受けてもらいたいけどね」

「100年後って死んでるし~。まぁでも、創真の意見には賛成かな~」

「死なせないで無力化……………相手は殺す気満々でしょうから、結構難しいですね」

「そうなんだよねー。何か使えるもんないかなー……………………」

 

創真は服の懐から色々と取り出す。グミやら、銃やら、時計やら………………色々と要らないものも混ざっているが、全部地面に出して置いていく。

 

「…………………あ!それ、僕の手錠だ~。長いひも付きの~」

「ひも付きの手錠…………………閃いた!まず、この手錠をあのヘリの脚に引っかけよう。そしたら、千影さんが能力を使って引っ張ってあのヘリをこの屋上の真上まで手繰り寄せる。あ、計算上このひもが途中で切れることはないから。そしたら僕のナノテクの射程範囲に入るから、ナノテクで操縦してる奴を引きずり下ろして拘束する。完璧だな」

「じゃあ、誰が手錠を引っ掛けるの~?」

「勿論、君。使い慣れてるし」

「うーん……………なら、確実に引っ掛けれるように、もっと近づきたいなー」

「我々で援護するから安心した前。死なせはしないさ………………多分」

「そこは大丈夫って言い切って~」

「…………とにかく!あと5秒位で煙幕がはれるから、そしたら風人君は飛び出して引っ掛ける。それで良いね!!3、2、1…………GO!」

 

風人は手錠を持って飛び出す。ヘリからは風人目掛けてミサイルが飛んでくるが、千影の黒獣が撃墜する。風人は車などの障害物を避けたり飛び越えたりしながらどんどん近づいていく。

 

「よーし、この距離なら行ける!おりゃあー!」

 

風人が手錠を投げるのとヘリからミサイルが放たれたのはほぼ同時だった。手錠とミサイルはお互い触れるか触れないかの距離ですれ違った。手錠はヘリの脚部に上手く掛かった。ミサイルが風人に当たる直前に、風人が走り高跳びの背面跳びの要領で上手く避けた。ミサイルは後ろの車に着弾して爆発する。

 

「良いよー!引っ張っちゃってー!」

 

風人の合図を受けた千影は手に持っていた紐を手で手繰り寄せていく。ひもがピーンと張った瞬間、千影は赤く光だし、能力を使って引き寄せていく。ヘリの方も抵抗しているようだが、その甲斐もなくどんどん引き寄せられ、ついにデパートの屋上の真上にまで来てしまった。

 

「よーし!仕上げだ!」

 

創真の黒いコートから先端が握り拳の形をした布が飛び出し、ヘリのフロントガラスを突き破る音がして、ついでに悲鳴も聞こえてから数秒後、意識を奪われ、布に拘束された2人のテロリストがフロントガラスから出てきた。同時に操縦者を失ったヘリは駐車場に真っ正面から突っこみ、地面を削りながら滑っていたが、やがて動きを止めた。

 

「………………ふいー。これで終わりだ…………」

 

疲れた創真は地面に座り込む。そこへ風人と千影もやってくる。

 

「流石創真だね~。全部作戦通りに行ったよ~」

「これで、終わったんですね…………」

「いやーお疲れさん。もう疲れた…………明日もオフにしよう…………さーて、取り敢えずこのテロリストらを連れて下に戻りますか。風人君、手錠を掛けといて」

「オッケ~。にしてもさー、大分派手にやっちゃったね~」

 

テロリストに手錠を嵌めながら風人は辺りを見回すと、確かにミサイルの爆発によって屋上には大量に穴が空いていた。

 

「まっ、そう言うのも含めて色々と彼等の罪は重いだろうね。取り敢えず、死人が出なかっただけ良いでしょ」

「そうですね。死人が出なかったのは本当に良かったです!」

 

千影は満足そうに笑顔で言う。

 

「さーて、行くか」

 

創真はテロリストの1人を引きずりながら出口に向かう。ちなみに、もう1人を引きずっているのは風人だ。彼等に続いて千影も出口に向かおうとすると、何かに足がつまづいた。

 

「あ!」

 

倒れそうになった千影。近くには穴があり、落ちそうになるが、誰かが千影を支えた。

 

「大丈夫~千影?」

 

支えたのは、咄嗟に反応した風人だった。

 

「あ、ありがとう風人君……………でも…………」

「うん~?」

「そ、その……………胸に手が当たってる………………」

「え?……………う、うわぁ!ご、ごめん!」

「う、うんん。別に大丈夫…………別に風人君が触りたいなら、触らせてあげても…………」

「え」

 

何だかヤバそうな展開になろうとしている2人に創真は咳払いをしてから云う。

 

「…………………あのー、そう言う展開は夜に2人きりでやってくれますー?」

「絶対やらねぇよ!」

 

風人は珍しく顔を赤くしながら叫ぶ。それに対して千影が残念そうに見えるのは気のせいだろうか……………。

 

「まぁ、夜のお楽しみが増えたって事で」

「だからしねぇよ!」

 

風人は落ちていたコンクリートの破片を創真に向けてぶん投げる。創真は余裕で蹴り返し、返ってきたのを風人はスッと避けた。コンクリートの破片は先程千影がつまづいた物に当たり、それに押されてその物体は穴に落ちる。

 

その瞬間─────────爆発が起きた。

 

「うわぁ!?え、何!?」

「あー……………風人君。君が避けたコンクリートの固まりに当たって今、落ちたんだよねー……………ヤバイのが」

「ヤバイのって何……………?」

「ヘリについてたミサイルポッド」

「マジかぁ…………。落ちた衝撃で爆発したって事か…………でも、あんだけ撃ってたんだから弾数はほとんど残ってないだろうし~現に今の爆発もそれほどじゃなかったから良かったね~」

 

いつもの調子に戻って云う風人。だが─────────

 

「それがねー。良くないんだよ」

「…………………………え?」

「今の爆発、この駐車場の大きな支柱のほぼ真横で起きたのよー…………で、元々この建物攻撃されてたのに加えて今の爆発によるダメージ…………」

「…………………………結論は?」

「…………………………僕の計算だと間もなく、この建物の構造上、真ん中らへんからぽっきり折れて崩壊するかと…………」

 

そう呟いた瞬間、建物が僅かに傾き始めた。どうやら、すでに始まっているようだ。

 

「テメェ、創真!何やってんだよ!最後の最後でやらかしやがって!」

「うっせぇ!君が避けたのが悪いんだろうが!て言うか、投げてきたのが1番悪い!!」

「お前が色々とからかったからだ!!」

「もう!!喧嘩している場合じゃないでしょ!!」

 

千影の大声で我に返った2人。確かにそんな事を言っている場合じゃない。3人で作戦会議を始める。

 

「これ、普通に階段で行って間に合う~?」

「下ってる途中に瓦礫で生き埋めになるかも知れないよ」

「だね。でも、千影なら…………」

「それを考えていたんだが、どうも魔力………………もっと簡単に言えば電池不足だ。今は実体化するだけで精一杯………………多分そうだろ?」

「…………確かにそうみたいです。念じても何も起きません」

「なら…………そうだ!創真が持っているワイヤー銃なら何とかなるでしょ!」

「ワイヤー銃、さっき懐から色々出してた時に地面に置きっぱにしちゃったんだよねー………………で、しかもその置いた場所がさぁ………………」

 

創真が視線を向ける先は、崩落で大きな穴が空いていた。

 

「さっき崩壊が始まった途端に大きく崩れたんで、今のところ手持ちの武器は『ナノテク』以外一切ございません。ついでにナノテクはあと10秒位使ったらエネルギー切れになるんで……………」

「何で拾っとくのを忘れたんだよ!」

「………………ぐうの音も出ない。恐らく、探している間に倒れるだろうね」

 

四面楚歌という言葉がここまで相応しい状況もそうはないだろう。そんな中、風人が頑張って知恵を振り絞る。

 

「………………なら、ホリーとかデュオに連絡するって言うのは~?特殊な電波だから僕のスマホだと通じないんでしょ~?あの2人なら何とか出来るんじゃないの~?」

「スマホもさっきの大穴に落ちてますんで、連絡は…………………………ん?待てよ………………」

「今ので何か思い付いたの~?」

「連絡………………別にスマホとかに頼らずとも直接口頭で伝えれば良いんじゃないか!」

「と、言うと?」

「良い考えが思い付いた。今から僕が千影さんをナノテクでホリーたちがいると思われる方向にぶん投げるから、ホリーたちを呼んできてくれない?あいつら飛べるからさ。そうすれば運んでもらって解決だ」

「おぉー頭いい~創真~」

「えぇ!?ちょ、そしたら私が死んじゃいます!……………って、既に死んでましたね、私………………あぁ、もう!時間もないのでそれで行きましょう!」

 

半ばやけくそ気味の千影をナノテクで作った巨大な手が掴む。

 

「じ、じゃあ……………5秒数えたら飛ばしてくだ」

「飛んでけー!!」

「いっけぇー」

 

盛大に無視して創真は千影を投げ飛ばす。悲鳴も何も聞こえず、千影はデパートの陰に姿を消した。

 

「さぁ、これが吉と出るか凶とでるか………」

「大丈夫だよ~千影だもん」

「謎すぎる根拠なことで…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「建物が傾き始めてる……………」

 

ホリーが少し驚き気味の口調で呟く。どうにか来ていた警官を説得してデパートの見える巨大な公園へと避難してきた矢先、デパートが崩れ始めたのだ。

 

『あの近くにいたら危なかったな………』

『助かったー…………』

『ほんと、あの人たちに感謝だね』

 

公園に避難してきた人たちは口々に言う。そんな感じの会話が聞こえる中、ホリーらは創真らの事を心配していた。

 

「創真はともかく、千影ちゃんと風人君の姿が見えなかったのが不安だな…………」

「くそっ、気付くのが遅すぎだぜ」

 

ホリーのフードの中にいるキバットが悔しそうに云う。

 

「まぁ、多分創真を助けに行ったんだろう。それに、先程聞こえていたヘリの音が完全に聞こえなくなった辺りを見るに、敵を倒したのだろう」

「あぁ、俺様の耳から完全に音が消えたからな。創真は異能力を持ってるから脱出なんてとっくのとうにしてるだろ。もうそろ来るんじゃねぇのか?」

「多分そんな所だろうな。恐らくもう来てもおかしくは…………ん?」

 

デュオが何かを感じたのか、空を見上げる。

 

「おい………………人が…………と言うか、あれは千影さんじゃないのか?何故か空から落ちてきてるんだが……」

「何で落ちてきてんだ!?よし、行けっホリー!」

 

キバットが体当たりでホリーを押し飛ばす。

 

「え?どうしたの急に僕を押し出し…………って、人が降ってきたー!そして、ぶつかるー!!」

 

話を聞いてなかったのか、ホリーが千影が落ちてきたのに気付いたときには千影の涙目の顔がすぐそこにあった。ホリーはほぼ結果的に身を挺して千影のクッションとなった。

 

「いたたた…………何だ?何か、手に柔らかい食感が………………何だろうこれ?」

 

ホリーは何かを触ってみる──────そして、無論お約束通り

 

「キ………………キャ─────────!!」

「へっばい!?」

 

ホリーは吹き飛ばされ、近くの木に大激突する。ぶつかった衝撃に驚いた鳥が逃げていく。

 

「ま、マジで何………………って、千影ちゃん!?って事は………………まさか…………さっきのはおっp」

「それ以上言ったら殺しますよ!?」

 

千影が自分の胸を手で覆いながら顔を赤くして叫ぶ。

 

「………………で、どうしたんだ千影ちゃん?ラッキースケベを喰らったのは災難だったが、何で空から降ってきたんだ?」

 

キバットの問い掛けに千影は思い出したかのように早口で喋り出す。

 

「そうでした!実は風人君と創真さんがまだ脱出してなくて…………助けに行ってください!デュオさんたちは飛べ」

 

デュオが千影の口を塞ぐ。千影も人が沢山いることを認識し、口を閉じる。デュオは千影を連れて公園を出て、少し距離が離れた公園からは死角の所に来てから口を開く。遅れてホリーもやって来る。

 

「2人は何処に?」

「屋上の駐車場です!」

「了解」

 

デュオは黒い翼を自身の背中から展開する。ホリーは千影をお姫様だっこして、白い翼を展開する。

 

「………………あの、ホリー君。さっきはすみませんでした。その、動揺してつい…………」

「あ、いや、その…………何かごめん!後で何かお詫びを」

「じゃあ、ホリー君。私の胸を触った罰として…………2人を絶対に助けてください!」

「……………………了解!つかまってなよ~!」

 

間もなく飛び立つと言うときに、キバットが千影に何かを囁く。千影は頷き、ホリーの耳元で、とびっきりの可愛い萌えボイスで囁く。

 

「が・ん・ば・れ♪」

「頑張りま───────────────す!!」

 

ホリーはデュオを置き去りにして、マッハクラスの速さで飛び立った。

 

「キバット、何を言ったんだ?」

「可愛い萌えボイスで、頑張れって言えって言ったんだ。案の定、普通じゃ出せない程の加速力で飛んでいったな。これで余裕で間に合うな」

「………………やれやれ」

 

デュオも負けじとスピードを出してデパートに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃。風人らはと言うと

 

「ねぇ、そろそろ不味いんじゃないの~?」

「不味いね、これは。いつ、一気に折れてもおかしくない。むしろ、こんなにゆっくりと傾いていってるのが奇跡に近いね。さらにラッキーな事に、この屋上には車がほとんどないから、車が大量に滑り落ちてくるなんてことはない。警戒するとしたらヘリだけど、僕らのいる位置には絶対来ないから大丈夫だね」

「だね~………………そう言えば創真には、彼女とかいるの~?」

「唐突だね………………婚約者がいるよ。この世界にもいる、倉橋さんだよ」

「へー…………そのペアは意外~」

「良く言われるよ。それを言ったら君と神崎さん………………ッ!!」

 

創真は突然後ろを向く。風人も何かを感じて振り向くと、何と拘束されていた筈のテロリスト2人が平然と立っていた。

 

「残念だったな。あんな手錠ごときで俺らを拘束できると思ったら大間違いだ。俺らは昔泥棒をやってたんだ、手錠の拘束を抜けるなんて朝めし前なんだよ」

「へぇ、そりゃすごいやー。とは言え、武器の類いは全部抜いてあるから何も出来まい」

「どうかな?」

 

男は嵌めていたダイヤの指輪の宝石を押した。その瞬間、不時着していたヘリから電子音が鳴り響く。

 

「……………………まさか、ね」

「このヘリは自爆機能が装備されている。中には大量の武器を積んであるから、結構な威力になるな」

「道連れにするつもり~?」

 

風人の問い掛けに、テロリストは嘲笑う。

 

「良いや。死ぬのはお前らだけだ」

 

男2人は傾きつつある地面を駆け落りる。そして、大きくジャンプしたと思えば─────ウイングスーツ、別名ムササビスーツを展開して空を滑空する。

 

「じゃあな!精々最後の時間を楽しめよ!」

 

男らはそう言い残して反対方向に消えていった。

 

「くそっやられた……………創真、無駄かもしれないが、端に避難しようぜ」

「……………………よし」

 

風人は端の方へ寄ろうとする。すると突然、創真は風人を抱える。

 

「え?創真?」

「よーし、行くよー!」

 

創真も地面を駆け降り始める。

 

「ちょ、待て!お前と心中なんて嫌なんだけど!」

「それは僕もだけどね!行くよ──────少年、ジャーンプ!」

 

創真は空に飛び出す。その瞬間、大きな爆風が2人をさらに押し出した後に─────落下を始める。

 

「……………あぁ、これは死んだな」

「どうかな?残念ながら、僕らはまだ死なないらしい……………予想通りね」

「はい?」

 

何言ってんだこいつ……と思うと、聞き慣れた声が聞こえた。

 

 

「創真ァ───────────!!」

 

 

「風人君────────────!!」

 

 

風人が後ろに首を向けると、千影を抱えたホリーが高速で迫っていた。少し後ろからデュオの姿も見える。

ホリーは千影を一旦上に投げ、デュオと一緒に創真に憑依する。創真の背中から白と黒の翼が2つずつ生え、緑と赤の粒子が放出され、地面すれすれで落下が止まる。同時に、黒い布が風人と千影をキャッチする。

 

「マジか……………何でもありかよ…………」

 

風人の驚く表情を見た創真は満足そうににやっと笑う。そして、崩れてくるデパートの方に手を向ける。

 

(ノーネーム)の技を借りさせてもらうよ………『アルテマ!』」

 

創真の手の平に出来た魔方陣から高粒子のエネルギーが放たれ、落ちてくる瓦礫は跡形もなく消え去った。

 

「…………………ん?」

 

眩しさのあまり目を瞑っていた風人が目を開けると、創真の隣に誰か─────────全身黒いコートで身を包み、フードを被る男が立っていた。男は創真と共に手を構えていたが、創真が手を下ろすとその動きに連動して手を下ろした。そして、フッと消えていった。

 

 

「ふぅ………………これでよし、と」

「……………何だったんだろう、さっきの」

「うん?」

「まぁ、良いや~。ねぇ、創真。真剣に訊くんだけど、それって僕でも出来る?」

「多分無理。それに、君がさっきみたいなのを覚えたらいたずらに悪用しそうだし、教えるのもお断りだね………………実際、そのつもりだったんじゃないの?」

「ま、まさか~。そ、そんなわけ」

「バレバレだから」

「…………ちえっ」

「…………あぁ、そう言えば。さっき逃がしたあの2人を捕まえなくちゃ。まぁ、そう遠くには逃げてないだろうし、ちゃちゃっと捕まえて終わりにしようか」

「あ、その事なんですが」

 

口を挟んだのは千影だった。

 

「実は、ホリー君とデパートに向けて飛び立った直後にムササビスーツ…………でしたっけ?とにかく、飛んで逃げる残党がいたのを、ホリーさんが『邪魔じゃー!!』って叫びながら蹴り落としたので………落ちていったその2人は皆さんが避難していた公園の木に引っ掛かったのが見えたので、その場にいる警察に拘束されてるかと思います」

「ふーん………じゃ、これで完全にテロ組織は壊滅って事かぁ……あー疲れた。にしても、風人君と千影さんは災難だったね。デートの邪魔されて」

「……………でも、充分良い思い出は作れました。私は満足していますよ!」

「そっか。なら良かったよ。僕も色々と頑張った甲斐があったわー……………………あ」

 

創真は空を見上げて何かに気付いた。他の面々もその訳がすぐ分かった。

 

「虹だ…………」

 

千影が見たがっていた虹が空に掛かっていた。いつの間にか雨は止んでおり、雲の隙間から太陽の光が差していた。

 

「あれが虹……………すっごく綺麗だね、風人君!」

「そうだね~。でも、千影の方が綺麗だよ~」

「フフッ、ありがと風人君」

 

彼等は虹が消えるまでずっと空を眺めていた。やがて虹が消えると、消防車や警察のパトカーのサイレンの音が聞こえてきた。

 

「さーて。面倒ごとに巻き込まれる前に我々は退散しますか」

「そうだね~。じゃあ、また飛んで行こー!」

「はいはい」

 

ホリーとデュオが憑依した創真は風人と千影を抱え、緑と赤の粒子を煌めかせながら飛び立って行った──────────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、時は飛んで翌日。

 

「もう時間か……」

 

テロリストを潰した風人たち。あの後、たまたま親が二人とも出張だった風人の家に創真、ホリー、デュオ、キバット、千影、神崎、涼香、雷蔵と言った面々が集まった。そこで、ささやかながらの事件解決パーティーをした。そして、夜。千影は風人の家……もっと言うなら風人の部屋で泊まった。そこで何があったかはご想像にお任せするとしよう。ムフフな展開があったかもしれないし、なかったかもしれない。

 

「あっという間だったね……」

 

千影のやりたいことはやった。未練が残らないようできることをすべてやった。

 

「ここが、今風人君が学んでいる場所なんだね……」

 

そして、今いるのは3年E組校舎。千影が今の風人の学んでいる場所を見たいと言ったのと創真が最後の別れの場所は人目につかない方がいいという2つの理由でだ。

 

「ここにはね。僕にとっても色んな思い出があるんだよ~」

 

風人と千影が校舎の中に入っている。この場に殺せんせーはいない。さすがに一般人である雷蔵と涼香がいる以上姿を見せることはできないので、風人が事前に電話で頼んで留守にしてもらった。殺せんせーは何かを察したのか、深くは詮索してこなかった。

 

「ま、卒業するまでまだまだ沢山の思い出を作るつもりだけどね~」

「ふふっ。いいなぁ。私もここで風人君と学んでみたかったよ」

「そうだね……」

 

叶うことのない願い。願ってしまうのは仕方のないことだろう。

 

「行こうか」

「もう満足した~?」

「うん」

 

2人でグラウンドに出る。すると、グラウンドにはもう1人増えていた。

 

「あなたが……閻魔大王ですか?」

 

恐る恐るといった感じで千影が増えていた男に尋ねる。

 

「おう!かの偉大な閻魔大王だ。凄いだろ~?」

 

その男────閻魔大王はそう答えた。

 

「へーこの人が、創真たちが言ってた陰口にやたら敏感な閻魔大王か~」

「は!?ちょと待て!お前たち、俺をどんな感じで説明したんだ!?」 

「どんなって、風人君が言ってくれたまんまだよ」

「この野郎……」

「にしても……ぷぷっ。声とイメージが合わない……ぷぷっ」

「ダメだよ風人君……クスッ。笑うのは本人のいないとこじゃないと……」

「お前ら舐めてるだろ!」

 

と、正体を知ってもいつも通りな様子に他の面々はあきれるのだった。一通り笑いも済み、本題に入る。

 

「さーて、結城創真。お前は勝手に別の世界への介入を行ったな?………………これで2度目の」

「前にもこんなことがあったんだ~」

「前に魔術の世界に行った事があってね」

「1度目はデュオのこれまでの働きに免じて見逃したが流石に2度目は見過ごせない……………んだけど、まぁお前には魂の凍結魔術を解除してもらった借りがある。それに免じて今回は目を瞑ってやる。感謝しろよ」

「そりゃどーも。まぁ、こうなることも見通してたけどねー」

「フン…………で、千影と言ったか?お前はどうだった?楽しめたか?」

「はい、とっても!」

「……………それは良かった、な。さーて、もう時間だ。あと何か言いたいことがあるなら手短に済ませてくれよな」

 

先ず、千影は創真らの前に立つ。

 

「創真さん、ホリー君、デュオ君、キバット君。あなたたちのお陰でこんなにも意味のある楽しい時間を過ごせました。本当にありがとうございました」

 

1人1人に向かって丁寧に頭を下げていく千影。

 

「いえいえ。僕らも楽しい時間を過ごさせてもらったよ。ありがとね、千影さん」

 

創真が代表して千影に言う。

 

「雷蔵君。涼香ちゃんはいい子ですよ。優しくて可愛くて、でも、抱え込んじゃった時はしっかり支えてあげてね。頼りにしているから」

「お任せください」

 

続いて雷蔵と、そして、

 

「有希子さん。風人君はよく暴走してよく怒らせてしまってるけど、これからも私の分までよろしくね……貴女でよかったよ。風人君の隣に立っている人が」

「私もあなたのような人が風人君を育ててくれてよかったです。ありがとうございます」

 

風人の扱いはともかく、2人の間で大切な何かがしっかりと共有されたようだ。

 

「涼香ちゃん……」

「ごめんね……千影ちゃん……。まだ泣かないつもりだったんだけど……」

 

見ると既に涙があふれ出てしまっている涼香。

 

「私こそごめんね……。急にいなくなっちゃって。つらい思いをさせちゃったね」

「……ううん。千影ちゃんのせいじゃないよ」

 

すると、お互いに抱き合う涼香と千影。

 

「……またつらい思いをさせちゃうね。でも、もう大丈夫。今の涼香ちゃんには支えてくれる人たちがいるからね。きっと、大丈夫だよ」

「うぅ……そうだね。うん。元気でね」

 

笑顔を向ける2人。そして、千影は風人と向き合う。

 

「言いたいことはいっぱいある」

「僕も言いたいことはいっぱいあるよ」

「でも、言わない」

「僕も言うつもりはないよ」

 

そして2人は無言で近づき、自然な流れで――――キスをした。

 

「ありがとう。愛してるよ」

「ありがとう。大好きだよ」

 

数秒間のキスの後、2人は互いに笑顔を向ける。

 

「……………じゃあ、行くぜ」

 

浮き上がる閻魔大王と千影の身体。

 

「風人君!これ!」

 

投げられたものをキャッチする風人。

 

「……大切にしてね」

 

そして、2人は光に包まれて、消えた……それと同時に最後まで役割りを果たした文豪の世界のカードとペンダントが落ちてきたのを創真がキャッチする。

 

「……さよなら。元気でね」

 

風人が受け取ったもの。それは、クレーンゲームで千影がゲットした小さなペンギンのぬいぐるみだった。

 

「これでよかったのかい?言いたいことを言わなくて」

「そりゃあ、よくはないと思うよ。でもさ、言ったらキリがない。言いたいことは言葉に出さなくても伝わってる。だから、あれでよかったよ」

「そっか……………さて、僕たちもそろそろ帰るとしよう」

 

創真たちが並ぶ。ホリーが呪文を唱えると、彼等の足下に巨大な魔方陣が出現する。

 

「元気でね!皆!また会えたら会おうよ!」

「だな!またいつか会おうぜ!」

「……その時を楽しみにしている」

 

ホリー。キバット、デュオ。未来への再会を誓う三人の姿。そして、

 

「風人君。君の予測不能な思考には僕も手を焼かされたね。神崎さんたちに苦労をかけ過ぎないようにね」

「はは。創真たちも向こうで元気でね~。楽しかったよ。また会えたらよろしくね~」

「あぁ…………それと、君に暗殺教室の先輩として1つ忠告しておこう。この先、君には色んな脅威が襲い掛かる。そして、その中には……………千影さんの死に関連するものある」

「……っ!それって……」

「だが……………どんな脅威にも決して屈するな。茨の道だろうと、決して歩みを止めるな。醜くも足掻く、ストレイドッグスのようにね。それじゃあ………いつか、未来で」

 

魔方陣の光が増した瞬間、彼等の姿は何処にもなかった。

 

「行ちゃったね」

「そうだね。…………ねぇ、風人君」

 

すると、神崎は自身の胸に風人の顔を押しつけた。

 

「ちょ、有鬼子……一体何を……」

「今日だけは。今日だけは涙を流してもと思ういいよ。千影さんを元気で見送ろうとしていたのは分かるし、創真さんたちにも心配かけないようにしていただろうけど、バレバレだよ?」

「あーあ。うまく隠してたつもりなのになぁ……」

「だから今は泣いてもいいよ。隠さなくてもいい。私がずっとそばにいてあげるから……ね」

 

その日風人は泣いた。神崎はなだめることをしなかった。ただ、彼の涙が止まるまで静かに彼に胸を貸し続けた。

 

(千影さん。風人君のことこれからも見守って下さいね。私もあなたに負けないように頑張りますよ)

 

空を見上げる神崎。そこには雲一つない空が広がる。

 

 

 

 

 

─────大丈夫だよ。

 

 

 

 

その空は彼らの明るい未来を指しているようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

創真は自分の会社のビルの屋上にいた。風でコートが揺れるなか、創真はとある新聞を座って読んでいた。

 

「『国際的に有名なテロリストによるデパートジャック。幸いにも、怪我人はおらず、テロリストも詳細不明の者達による活躍で全員拘束された』、か。我々の事もSNS上で色々と話題にされているようだが、まぁこっちには何の影響もありまい。見つけ出される事もないから、そのうち沈静化するだろうね………………にしても」

 

創真は新聞をしまってスッと立ち上がる。

 

「やっぱり、この街は美しいものだねー」

「そうかなー?そんなにいつもと変わらないと思うけど」

 

そう言うのはホリー。彼の後ろにはデュオとキバットがいた。

 

「変わらないのが美しいんじゃない。で、どうかしたの?」

「…………………創真。お前、どこまで知ってるんだ?千影さんの死について」

 

ホリーの問いに創真は真意の読めない笑みを浮かべながら云う。

 

「…………………全部だよ。何から何まで全て調べがついてある」

 

創真は懐からとある紙の束を見せる。『和泉 千影の死の真相について』と言うタイトルが打たれていた。

 

「いつの間にそんなのを…………なら、何でそれを風人に渡さなかったの?」

「………………ほんとは渡そうかと迷ってたんだけどね。でも、千影さんの死の真相については風人君自身の手で明かされるべき、と思ってね。この報告書は封印と言うなの処分をしておくよ」

「創真がそうするなら俺らに異論はない……………………あいつが心配か?」

「なーに、心配はしていないさ。彼なら恐らく大丈夫。何があってもそれら全て乗り越えるさ」

「何故そう自信満々に言えるんだ?」

 

キバットの問いに一呼吸置いて創真は答えた。

 

「何故なら、彼も暗殺教室の暗殺者(アサシン)だからだ」

「「「………………」」」

「あの教室の生徒は例えどんな困難が立ちふさがっても必ずそれを乗り越えてきた。だから、何も心配の必要はないよ」

「……………………そうだね。例え世界は違えど、風人君は暗殺教室の暗殺者(アサシン)。きっと大丈夫だね」

「俺様もそう思うぜ!」

「………………だな」

 

3人の反応を見て創真は微笑を浮かべた。

 

「さて、確か今日は椚ヶ丘で夏祭りがあるんだったね。皆も来るし、僕らも行こうか」

「あ!そうだった!」

「よっしゃあ、キバって行くぜ!」

「なら、行くか」

 

次の瞬間、そこには彼等の姿は無かった。ただ、赤と緑の粒子が綺麗に舞っているだけだった。

 

(さぁて風人君。君がこれから迫る脅威に対してどんな選択をしていくのか…………………楽しみだねぇ)

 

 

創真はニヤリと笑った。




はい、と言うわけで全てのストーリーが終わりました。どうでしたか?面白かったなら嬉しいです。果たして創真のみが知る千影の死の真相とは一体………………?その答えはいずれ本編にて風人自身が知ることになるでしょう。そう言えばなんですが、この話はあちらの本編とリンク出来るように作ったんですよね。僕の勝手な設定としては、あちらの本編での時系列的にはイトナ加入辺りから体育祭までの間と言う設定になっておりまして。……………………あちらの本編で反映されるかは分かりませんが。ちなみに、最後にSNS上で議論されてる、とありましたが、特にいらないかと思って描写は省きましたが裏設定としては『SNSにて話題沸騰なのは主にキバットについて』……………創真ら他の面々も結構目立つような事はしたはず(創真のマシンシリーズ、デュオの黒獣、ホリーの魔法、風人らの活躍や千影の手だけ実体化したの等々)なのに、それらは蚊帳の外で、キバットのみが注目されると言う、何とも言えない感じ…………。


それと、千影の死の真相については僕もかなり気になっています。千影が何故殺されたのか、が1番の伏線になってる気がしますし、殺したのは誰なのかとか、その訳とはとか………………後で創真大先生に聞いてみよっかな。と言うわけで、この辺で失礼します。あっ、黒ハムさん!コラボ承諾してくれてありがとうございました!!また機会があればしたいです!!


よっしゃあ!!キバって、受験勉強だ───────!!


……………あっ、そうだ(唐突)。1つ忘れてた事がありましたわ。最後に、下にあの人その後を綴っておいたので、それを見てみるとしましょうか。























エピローグ


「…………………………ふわぁ~。寝過ぎちゃったなー。それに…………………懐かしい夢を見てた気がする………」

ソファーでの昼寝から目覚めた千影は背伸びをして辺りを見回す。そこはいつもと変わらない光景の自分の部屋があった。

「まさか自分だけの家を貰えるなんて…………天国ってサービスが良い所なんだね……………あ、そうだ。確か創真さんが贈って貰ったおまんじゅうがあったっけ」

千影は冷蔵庫を開けて『いるまんじゅう』を取り出し、お茶とともにいただく。

「うーん、甘くて美味しい!今度お手紙でお礼を言っておかなくちゃ」

千影と創真はたまに文通でやり取りを交わしている。一緒に届く美味しい食べ物や面白い漫画などが千影にとっては結構な楽しみだったりする。

「………………あれ?」

テーブルの上に、いつの間にか大きめな段ボールが置いてあった。千影はその上に置いてあったメモ帳を手に取り、書いてある文を読む。

「『創真が作った誕生日プレゼントを置いておく。誕生日おめでとう デュオより』…………あ!今日は私の誕生日!すっかり忘れてた…………えーっと、中身は………………アルバム?」

千影はソファーに腰を下ろしてアルバムを開く。

「……………………わぁ!これ、風人君とのデートの時の………………いつの間に撮っていたんですね…………」

写真に映る笑顔の千影と風人は笑顔だった。

「あ、ホリー君達と遊んでいた時のも……………ほんとに色んな写真があるんですね…………………」

懐かしそうに眺めていく千影。そして最後の1ページには────────

「なっ!?」

何と風人とのキスシーンも写真になっていた。

「こここここここ、こんな所まで撮らなくて良いんです!もう、創真さんったら!」

創真に向けて軽く文句を言う千影。それが創真に届いたかはさておき千影が後書きに目を通すと────────

「え?『送った小説も見てみてね』………………あ、段ボールの奥に何かまだ残ってる……………」

千影は小説を手に取り、タイトルの部分を読む。

「タイトルは『暗殺教室 ~超マイペースゲーマーの成長(?)譚~』……………もしかしてこれは…………まぁ、読めば分かるよね。じゃあ早速最初から読んでいこっと」

千影はページをめくり、(風人)の物語を読み進めていくのだった──────────。

─終わり─



オリジナル登場人物


結城 創真 和光 風人

ホリー
デュオ
キバット

岩月涼香
篠谷雷蔵

氷室 翔
月城 碧海
月城 隼
クローバー





和泉 千影




ノーネーム(超特別友情出演)







ストーリー構成 音速飛行

前編執筆 音速飛行

前編監修 黒ハム


後編執筆 黒ハム

後編監修 音速飛行

後編 戦闘シーン(創真 ホリー デュオ キバット ラストバトル)執筆・監修 音速飛行


特別協力(special thanks) artisan


制作・執筆 音速飛行 黒ハム


2019年 6/16~8/25


速報 『今日の0時、ノーネームは帰ってくる』


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ぐだくだ雑談?
続編投稿の約1時間前にぐだぐだ色々と話す件について


タイトルそのまんま。お久しぶりです!果たして何人見るのか…………。


創真「……………………ん?あぁ、始まってるのこれ?」

 

作者「あー、もう配信スタートしてますね」

 

創真「んじゃ、ボチボチ始めますか……………やぁ、ハーメルンの諸君!!約半年ぶりだね!!」

 

作者「おっす、オラ作者!何とか続編出せたぜ!」

 

創真「今日はね、続編投稿約1時間前SPって事で続編の情報を少しだけ出したりしてぐだぐだ話してく…………らしい」

 

作者「じゃあ、先ずは何から話そうかな?」

 

創真「んじゃ、僕から質問。書いててどうだった?」

 

作者「まー前作よりははっきり言ってかなり面倒くさかった。内容複雑だしね」

 

創真「文字数は?」

 

作者「まぁ、7千から1万位の間ですかねー…………めっちゃ増えた」

 

創真「前回の作者の文字数の平均2千位だっけ?今回は7千位行くんじゃない?」

 

作者「うん……………だから、前回みたいに毎日連続しての投稿は無理があるかな」

 

創真「別に前回も毎日やってないでしょうが」

 

作者「まぁ………………そうなんですけど」

 

創真「で、新キャラとか出るの?」

 

作者「勿論!第1章は中学生の女の子の新キャラ、しかもヒロインですから!」

 

創真「…………………僕の?」

 

作者「そう、あなたのヒロイン」

 

創真「…………………感想で『創真ロリコン説』とか書かれる未来が視えるわー」

 

作者「まぁ、別に恋愛関係にはならないからね。なったら創真が倉橋さんに殺されるだろうしね」

 

創真「お前もその時は道連れだな…………で、そう言えば他の皆さんは出るの?」

 

作者「えー……………正直に申し上げましょう!氷室さんと碧海さんは最初の話で少し出て暫く出ません!隼に関しては1話から出てません!」

 

創真「あらららららららららら。隼はともかく、氷室さんや碧海さんも出ないのか」

 

作者「隼は良いんだ………まぁ、隼君はフェアリーダンス編で活躍すしますから(多分)。氷室さんと碧海さんはオリジナルの章で活躍しますので!」

 

創真「オリジナルの章とは?」

 

作者「まぁ、一言で言えば創真のいない空白の2年間の話です。ちなみに、その章の主人公はホリーとデュオ、そして原作でも屈指の人気を誇るユウキです!」

 

創真「へー。まぁ、これ以上は訊かないでおくけどさぁ………………あんた、前にユウキ君がヒロインって言ってなかったっけ?」

 

作者「ごめん、あれは嘘」

 

創真「流石、青春豚野郎だね」

 

作者「あ、青ブタはまったんですね?」

 

創真「映画良かった。お前はぼろ泣きだったな、7回見てもなお」

 

作者「えぇい、黙らっしゃい!……………まぁ、そう言う訳です。氷室さんらの活躍はお楽しみに、って事で。最後に……………続編を作るに当たって影響を受けた作品がありましてね」

 

創真「それは?」

 

作者「Fateシリーズなんですよ……今回の続編、Fate要素をそこそこ分かる人には分かるように入れる予定です、多分。ちなみに、もう10話位書いたんですけど、これからまた少し修正を加えてく予定です。で、オリジナルの25層のボス戦の話にけっこうその要素が詰め込まれてますね…………つい最近やってたアニメにも出てたキャラがモチーフのボスが……………」

 

創真「………………あぁ、あいつね」

 

作者「まぁ、それは見てのお楽しみです!」

 

創真「………………まぁ、今日はこんな感じで良いんじゃない?もう投稿1時間切ったし…………てか、予告なしで急に出して見る人いるんですかねぇ」

 

作者「まぁ、多分大丈夫でしょ(楽観)」

 

創真「流石、豚野郎……………」

 

作者「………………双葉推し?」

 

創真「それお前がでしょ」

 

作者「まぁね!春休み中、青ブタはまったんで後書きでも少し話したりするかもね!」

 

創真「本編よりそっちに熱を注ぐなよ………」

 

作者「分かってるって!それじゃ、続編でまた会いましょうね!」

 

創真「隼、序盤出番ゼロ乙~」




NEW STORY 4/1 PM 22:00


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