はいふり~天才な私の物語〜 (風早 海月)
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新しい世界
1、転生しちゃった!


書きたいこといっぱいで、連載作品2つ掛け持ちです!
最後までお楽しみください。


俺は普通の現代日本に住む、少し艦船オタクな平凡な男だ。

 

 

学生時代は「艦隊シュミレーションゲーム」や艦船をボタン操作してCPUを駆逐していくようなゲームなどいろんなゲームをやっていた。

 

 

もちろんちゃんと勉強もした。

 

 

まあ、旧帝大に受かるほどの力は無かったが。

 

しかしながら、ある程度出来たためいわゆる「一流大学」と言われる大学を卒業し、世界で活躍する超一流企業へ就職できた。

 

…まあ就職に関してはまぐれだろうが。

 

 

そんな訳で順風満帆な人生を謳歌した。

 

数年前にサービス開始した「艦これ」を初め、艦船に関するゲームはかなりやっていた。

 

…順風満帆なお給料のほとんどをつぎ込んでいたのだが(笑)

 

 

 

まあ、そういったゲームや艦船オタクな為か彼女が出来ても長続きしなかったのだ。つまり、30を過ぎてもDTなのだ。…いいもん!俺には嫁艦さえいてくれれば!

 

ちなみに嫁艦は「青葉型重巡洋艦 青葉」だ。

 

娘にするならやはり睦月型だけど(笑)

あの姉妹の漫才はやはりかわいい。ずっと見てたい。

 

 

そんなことは置いといて。

俺が34歳の時。中東に新たな支社が作られた。

 

この時。俺は東京にあった本社から人事異動した。その支社に。

俺はなんと「副支社長」に抜擢された。その会社の中では異例の速さだ。

俺は成田空港から中東の地に降り立った。

 

それから5年は順調に業績が伸びていた。

その功績もあり、3年目にして支社長が本社に戻った後釜を任された。

 

しかし支社長に就任してから3年後。その日、俺は現地工場の視察に行く予定だったが急遽入った用事により隣の国へ行くことになった。

 

そこで事は起こった。

 

 

隣の国に入り、仕事を終え、帰る前に市場調査も兼ねて街を歩いていた。

その時…ちょっとした装甲車にハコ乗りした血迷った何者かが商店街に突っ込んできた。どうやらこの国の若者らしい。

…と周りの人々は口にしていたところだった。彼らは車から重機関銃を取り出して周りに向かって撃ちまくったのだ。

 

 

辺りは肉片と血の海になっていた。

 

 

俺はなんとか左腕を吹き飛ばされただけで済んでいた。12.7mm弾を直撃してこれで済んでいるのは奇跡だった。

 

なんとか近くの壁に隠れて見ていた。

 

数分後、武装した警官隊が到着。

 

警察が彼らを包囲、したところまでは俺は見ていた。

 

その次の瞬間、彼らは装甲車に設置していたらしい連装機銃を撃ちまくった。

 

警官隊は壊滅。俺はなんとか壁に隠れてやり過ごしたが、もう足も吹き飛んで逃げられない。

 

 

 

奴らから死角でなくなるのも時間の問題だ。

 

 

 

しかし…

 

 

 

 

次の瞬間空から青い光が降ってきた。

 

 

 

一瞬激痛(四肢が右腕以外吹き飛んでいたのでそもそもだが)が身体中を貫いたが、すぐに痛みが引いた。

 

死んだのか…と思ってたらまだ思考が続く。おや?、

 

次の瞬間俺は直感的に分かった。そこは黄泉の国や冥府などと呼ばれるところなのかと。せっかく順風満帆な人生だったのに…

あ、…艦これのイベント今日で最後で帰ったら完走できそうだったのにな…

 

「少し違います。」

 

―?どういうことだ?

 

「あなたは、いえ、()()()()()()まだ死んでいません。

本来ならあなたはあの銃撃に巻き込まれずに現地工場へ向かう予定だった。のですが、こちらの手違いで空間ごと初期化してあなたを殺してしまったのです。

本来私達が管理していれば感じなかった苦痛でした。

謝罪させて下さい。ごめんなさい。」

 

―つまりあなたは八百万の神々の1人なのか?

 

「そう考えて頂いても構いません。

人間の伝承はそれぞれ希望が含まれズレてしまっていますが日本の神道の神々やギリシャ神話の神々のようないろんな役割の神がいるというのは当たっていますから。

…でもあまり神様って言われるのは嫌いなので『ナモネ』とお呼びください。」

 

―分かった、ナモネ。で?どうして俺が呼ばれたんだ?

 

「先程言った通り、あなたにはこちらの不手際で死んでしまいかつ、感じることのなかった苦痛を与えてしまいました。

ですのでそれに対する謝罪と今後についてお話しようと思いまして。」

 

―今後?三途の川を渡るのではないのか?

 

「いえ、謝罪も込めてもう一度人生をやり直していただきます。もちろん前の世界ではあなたは亡くなっていますので、世界の修正力であなたには厳しい世の中になるでしょう。

しかし、ちょっとした裏技であなたを他の世界に生まれ変わらせます。その世界の名前は『はいふり』。

まあ、私達が勝手に呼んでいるだけなんですが。

最後にあなたにはそう簡単に死んでもらっては困りますし、元の世界での人生も高水準だったので、ものにもよりますが、いくつかあなたの願いを叶えましょう。

ちなみにこの世界はあなたの好みだと思いますよ。」

 

―前提としてどんな世界なんだ?

 

「えーと、私達の集めた情報によると

 

約百年前に、日本はプレートのずれによってその国土の多くを失ってしまっています。しかしながらフロート艦などの建設などにより発展は続きます。しかしながら戦争をするだけの余力もあるわけではなく、第二次世界大戦は怒らず、欧州紛争という形になっています。

そのような経緯もあり海洋国家として発展した日本には、当然ながら海の安全を守る必要があります。

この世界には「海に生き、海を守りて、海を往く」というモットーの元、海の安全を守る為に日々働く「ブルーマーメイド」と呼ばれる女性たちがいます。軍艦の平和的利用を世界に示すために女性が中心となっています。前身は坂本龍馬の作った「女子海援隊」。その後運営を国に移譲された「女子海援隊」は「ブルーマーメイド」になり世界の先駆者となって行きました。

「ブルーマーメイド」であるためには、勉学に優れることはもちろん、礼儀作法や国際文化にも精通している必要があります。そのため「ブルーマーメイド」は「海のエリート」と呼ばれ、女性の花形職業となっているのです。

 

 

ちなみに、その国の教科書には

 

 

今から100年ほど前、日露戦争の後、日本はプレートの歪みやメタンハイドレートの採掘などが原因でその国土の多くを海中に失った結果、海上都市が増え、それらを結ぶ海上交通などの増大に依り海運大国になった。

その過程で軍艦は民間用に転用され、戦争に使わないという象徴として艦長は女性が務めた。これが「ブルーマーメイド」の始まりであり、女子学生の憧れの職業となっていった。

また、かつての軍艦のなかにはブルーマーメイドを育てる教育用の船、教育艦として使用されるものもある。

 

だそうですよ?」

 

―まさかだが特型や睦月型や川内型や妙高型や果ては大和型なんかも見れるの?

 

「だいたいは見れるみたいです。

しかもその世界には航空戦力が気球と飛行船しかないので、空母になって見ることの出来ない、巡洋戦艦 天城型や戦艦 加賀なんかも見れるみたいですね」

 

―なるほど、だいたいは把握した。ところで、俺のパーソナルデータはどんな感じになる予定だ?何も修正をお願いしなければ。

 

「2001年6月6日生まれ。父親は造船会社の設計者。母親はブルーマーメイドの技術士官で昔は超大和型戦艦紀伊の艦長を務めたりした歴戦の船乗り。兄弟姉妹はおらず1人っ子。ちなみに生まれは『越谷住宅街4号船』。」

 

―ほう、海の上で生まれるのか。

 

「はい、まだ変更は可能ですが?」

 

―いや、生まれなどに不満はない。

では願いだが、

1つ目に天才クラスの頭脳。

2つ目に並列思考もしくは分割思考が先天的に可能で人格が乖離しない程度に使用可能なこと。出来たら並列思考より分割思考が好ましい。

3つ目に寿命は普通で構わないけど容姿上での老化は遅らせて欲しい。

これくらいかな。どう?

 

「全部可能です。というかもっと過激かと思ってましたよ?そんなのでいいんですか?」

 

―構わない。というか俺の中ではこれ程恵まれているのはないと思うがな。

 

「わかりました。では、次の人生へ向かいましょう。

楽しんでくださいね!

行ってらっしゃい、“葉月ほのか”ちゃん。」

 

―は?…………

 

 

 

思考が止まっていく…最後の最後によく分からんことを言ってたな…まあ、産まれてくれば分かるか。




転生しちゃいます!でした。

前書きにも書いた通り掛け持ちで学校もあるので更新スピードは遅めになります。楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。


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2、生まれちゃった!

やっぱり書きなれた百合に切り替えることにしました。

TSからの百合って百合って言っていいのかな?


―せまい…暗い…でも、暖かい…安心する感じ。

 

―でもなんか移動させられてるの?

 

 

―ん?いやいや、なんか頭の方が壁っぽいのにぶつかってるのにまだ押されてるんだけど。

 

 

―?いや。壁っぽいけど抜けられた。あっ…

 

 

―明るい。今はそれしか分からないよ。

 

 

 

―てか苦しい。息が苦しい。呼吸ってどうするの!?あれ!?

 

 

 

 

『おぎゃあー!うぎゃーあ!』

 

 

 

―あ、生まれたのね。…あら?言葉が…まさか…

 

 

《えーと、聞こえますか?》

 

―聞こえてるわ。ナモネ、これってどういうことなの?

 

《パーソナルデータを聞かれた時にですね、女の子ってことを伝え忘れてたのです。》

 

―本当なの?今から直せる?

 

《不可能です。魂の書き換えもしてしまいましたし。

言葉遣いがそうなっているのも魂の書き換えの影響と思われます。

しかしながら、いきなり女性として成長するとしても慣れるとはいえ知識が必要かと思いますので、それぞれ年齢と体の成長に伴って魂に封印してある女性としての知識を解放するようにしておきました。

これ以上は不可能なので、我慢してください。

お願いします。ではでは( ・∇・)ノシ♪》

 

―ナモネ…絶対に楽しんでるわね…まあ、楽しんで成長して行きましょうか。青春は早いものですから。

 

 

――――――――――

 

 

1年と半年後つまり2002年12月

 

私は()()()()()()()()

ママは私が本を読んでいたところを初めて見たのは1歳と3ヵ月のころだったわね。

ちなみにその時読んでいたのは六法全書だったわ。

喋るのはまだ口が動きづらくて途切れ途切れでしか喋れないし、書くのなんて握力が足りなくて無理なのだけど、読むことは出来る。

 

でも、天才の代償かな?

私の身体は非常に弱くて虚弱体質。

誕生から1歳半まで入退院を繰り返しているわ。

別に天才だからいいもん!関係ないもん!

 

でも、ママやパパが心配してくれるのは心苦しいな。

 

それはさておき最近、職場復帰したママの資料を見てることもあるのだけど、どうやらこの世界には、噴進誘導弾や噴進直進弾はあっても、噴進誘導魚雷がないみたいね。

 

まずは噴進魚雷の改良から。

私は既存の噴進魚雷を空中時は自律追尾、魚雷投下時は無誘導魚雷の試作型設計図を片手間に書いてみたの。1歳4ヵ月頃だったわ。

ママが凄いって褒めてくれたの。すごく嬉しくて、常時自律追尾型噴進魚雷の設計図を書いたわ。

そしたら大学の教授とブルーマーメイドの技術局長が入院していた私に会いに来たの。そして、なんか簡単な質問を何回か受け答えしたら…

 

「…どうですか?」

 

「間違いない、彼女は天才だ。いや、天災と言ってもいいかもしれないくらいに。しかも思考パターンから考えると恐らく指揮官向きな感じだな。分割思考も持っているようだし。」

 

「そうですか…では彼女はブルーマーメイド士官候補生に認定しておきます。」

 

 

とか言ってたわ。

 

お母さんのお仕事をこれからも手伝ってねと声をかけてから彼らは帰っていった。

 

この後も私は葉月型イ式重油燃焼缶や葉月型イ式超圧タービンなどいろいろな装備を開発したわ。

 

 

 

そんなことも相まって私は知らなかったけど、私は世界で有名になっていったみたい。

 

 

――――――――――

 

 

3歳の頃

 

 

私はもう立派に話すことができるようになっていたわ。でも書きはあまり得意じゃないわね。握力が低くて綺麗に書けないの。

 

3歳でもやっぱり虚弱体質で入退院を繰り返しながら勉強を続けていたわ。

 

 

そうそう、私は横須賀基地所属の軽巡那珂の改修改装を任されたわ。3歳の誕生日にね。

 

那珂の改装前のスペックは

速力36ノット(14ノットで6,000海里)

砲力14cm単装砲6門

雷撃系61cm4連装魚雷発射管2基、爆雷投射機2基

レーダー、ソナーなどその他

 

となっていたものを

速力38ノット(16ノットで7,500海里)

砲力15.5cm連装砲2基4門、艦対艦多目的ミサイル『春椿』12基

雷撃系61cm連装魚雷発射管2基、常時自律追尾型噴進魚雷『霞草』6基、爆雷投射機2基

電装系も軒並み新型へ換装

 

私はこれを区切りに技術屋としての活動に休止符を打つことにしたわ。

 

やっぱり虚弱体質で長期間のドックでも作業はキツいものがあったわね。

 

 

でもどうせ、改装するだけならママでも出来るよ。だってママだって超一流だよ。

なんて言っても私の作った機関を航洋艦に載せられるようにしたり、小型改良化して積載量を増やしたりっていうの十八番ただもん。

 

 

ま、とにかく、私は一旦艤装の世界から離れたわ。

何故って?もちろんブルーマーメイドになって艦の艦長になるのが今の目標だから。

 

 

それに、もう私には働かなくても死ぬまで安泰と言えるくらいのお金があるし。

艤装以外でも便利グッズなんかを作ったりしてね。

虚弱体質のせいで入院費がかなりかかっていても、別に痛くない程には収入があった。

3歳にして年収は億単位だったからね。

 

今日はどんな勉強しようかな?

 

 

――――――――――

 

 

艦船の艤装から離れて3ヵ月。私は幼稚園に入園したの。お金持ちの子女が来るようなところね。

 

入園式にはたくさんの親が来ていたわ。

 

みんな私を見てたわね。面白かったわね。

 

まあ、親は普通に上の下くらいの家庭なのに、上の上の中でも上の方しか来れない幼稚園に来れるほど「自分の収入」がすごいもの。

 

そんな入園式を終わり、幼稚園生活を始めた。

 

 

 

しかしながら

結局、私は幼稚園に入園してからちゃんと登園したのは25%に満たなかった。

 

虚弱って改善方法はないのかしら?

ちなみに、私の頭脳は基本的には周りより上にあるけど特に物理と数学そして、語学が最も出来るの。

つまり、医学系の事ってあまり得意じゃないわね。

他よりは出来るし、医師免許を取ることくらいなら出来るけど。

 

 

――――――――――

 

年長の頃 5歳のとき

 

 

―私は誘拐されてしまった。

 

まあ、当たり前かな?開発者としては休業してるとは言え、年収1億ちょっとの5歳の虚弱か女の子なんて。逆に今まで平気だったのが驚き。

 

でも、これくらいは大丈夫。

 

私の右手の薬指にある指輪にはサファイアが付いているんだけど、これを外すと指輪からGPSビーコンが発信されるようになってるの。

 

 

結局彼らはすぐに逮捕されたわ。

 

 

 

でも悪夢はこれからだったわ。

 

彼らに捕らわれていた時に体調を崩してしまったのね。

しかも長距離移動がたたって1週間寝てたみたい。

ママとパパは血相変えてたね。

 

その後、虚弱体質は若干良くなったみたい。

 

ナモネが早くに死んでもらったら困るって言ってたからちょっとだけ改善させたのか、それともそういった運命だったのかは分からないけどね。

 

 

 

――――――――――

 

6歳の頃 幼稚園の卒園式

 

 

私は幼稚園を卒園した。両親は泣いてたわね。

 

例の事件のあと私にはブルーマーメイドから護衛の方が付いてくれた。ありがたいわね。

 

そして、なんと言っても4人目の家族ができたの。家族と言うより、お母さんが預かった子って言うべきかな?

名前は「宗谷ましろ」。ブルーマーメイドの家系の子で順当に行けば私の同期になる子で、私の副官にする予定なんだって。

 

彼女もサポートというか副指揮官の素質があるみたい。

 

…まあ、不幸で不運なのが玉に瑕なんだけど。

 

でも、なぜか彼女といると手を繋ぎたくて、一緒にいたくて、離れてると胸がせつなくて。

 

 

 

元男だからかな?

やっぱり女の子が好きなのね私…

 

 

 

というか幼稚園を卒園したての女の子が同年代の女の子を恋愛感情で見るのはどうなのよ…

 

でも、このことはしばらく私の胸の中だけにしまっておくの。

だって前世でもDTだったし!そういうのちょっと慣れてないというか…

とにかく恥ずかしいの!




とりあえず生まれ変わりから幼稚園卒園まで駆け足で走り抜けました。

書いてて中身薄い?って思っちゃった。(´>∀<`)ゝ


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3、受験しちゃった!

私、今柄にもなく緊張してるのかしら?

 

そんな柄じゃないのに。

 

前世でも幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、就職。今世でも、幼稚園でそれぞれ入園式や入学式、入社式なんてあったのに。慣れたもんでしょ?

 

なのにこんなに緊張するなんて…

 

どう考えても彼女が原因ね

 

でも、まだ誰も知らない。まだ大丈夫。私さえ気にしてないフリをと押せれば。

 

――――――――――

 

入学式が終わって

 

 

私は両親とましろの4人で家路についたのだけど…

 

ましろはその持ち前の不運さを存分に発揮して、2回植木鉢が落ちてきて、消防用の水栓の点検から狙ったかなように水が吹き出していたわ。なんか本当にかわいそう…不幸を打ち消す何かを開発できないかしら?

 

「ついてない…」

 

小学校1年生の言葉とは思えないわね…

まあ、そんなところも可愛いんだけど。

 

まあそんな感じで家に帰ってきたわ。

 

今まで言わなかったけど、ママの名前は「葉月沙穂」で、パパは「葉月(しげる)」。この世界ではあまり珍しくもないけど、パパが婿養子に来てるの。ブルマー、あ、ブルマーっていうのはブルーマーメイドの略称でよくみんながそう呼んでるのよ。で、ブルマーの家系だとよく婿養子が多いんだってパパが言ってたわね。

 

パパが一緒にいる時に、と思ってね。

 

「2人とも、小学校入学おめでとう。ほのかにとっては退屈かもしれないけど、ましろちゃんをささえてな。ましろちゃんもほのかのこと頼むよ。一応学校の前までは護衛の方が付いてるし、外も見てもらっているから大丈夫だとは思うけど、2人とも気をつけて学校に行きなさい。まあ、ましろちゃんにお願いするのはほのかの体調の事と学校の友達のことだよ。よろしくね。」

 

「はいっ任せてくださいっ」

 

若干幼いそのリアクション…パパぐっじょぶ!

あれ?ロリコンだった?私って。

 

いや、手は出してないからセーフね。

というか、私も容姿上は幼い女の子だし…

問題無いわね。

 

「堅苦しい事はもうおしまいていいわよね。せっかくパパが帰ってきたんだし、ましろもいるし4人で遊びましょ?」

 

「ははっ、やっぱりどんなに天才でも子供は遊ばなきゃなぁ。」

 

「いいのよ、天才でも遊びたいのよ」

 

 

そう、私が1番疑問に思うことの1つ。

精神的年齢は40ちょっと。しかも、超絶天才ときた。なのに年相応に遊びたい。すごく不思議。

 

あれ?今ふと浮かんだ仮説なら辻褄が合うのかもね。

 

 

精神的年齢が高いから幼少でも難しい本が読めた。

肉体的年齢が低いから頭が柔らかかった。

転生特典があったからアタマの柔らかさが保たれてる。

転生特典があったから同時に思考を分けられる。

 

なるほど何もかけても私の天才はなかったわけね。

ちょっと納得したわ。

 

 

――――――――――

 

 

小学校6年生の頃

 

 

 

私は進路に悩んでたわ。

 

 

夢はブルーマーメイド。

 

しかもほぼ決まっているようなもの。

副官も決まってて、私もましろも士官候補生。まず入れないわけがなかったわ。

でも中学校は選ぶところによって将来の配置や発言力、引いては専門科が変わってくる可能性すらある。

 

ママは2人とも技術士官になって欲しいみたいだけど。

 

あ、ちなみに、私のママ「葉月沙穂」はなんと!ブルーマーメイド技術局兵装部部長に昇進しました!やったね!

 

ちなみに、説明文曰く。

技術局は兵装部、船務部、保安部、造船部、機関部、補給部、港湾施設部、特殊第一部、特殊第二部の9つの部、各部長及び技術局長以下委員数名で構成する技術方針決定委員会、組織を内側から監視する監査委員会の三者で構成されている。

 

つまり、ママは技術局の中でも上位の発言力を持っていることになるわ。しかも、代々兵装部部長は技術局副長を兼任することになっているので、事実上の技術局のNo.2になるの。

 

 

 

話がズレたわね。戻すと進路をどうするか、よ。

 

私しだいでましろの方向も決まるって言われちゃったし。どうしようかしら。

 

「ましろはどこに行きたい?」

 

「私はどこでも良い。お前について行くよ。私はお前の副官なんだぞ。」

 

「分かった。ましろがそれでいいなら、決めた。浪江中学校に行こう。」

 

「分かった。では沙穂さんに伝えてくる。」

 

「…お願いね」

 

 

 

sideましろ

 

「………という訳で浪江に行くことになりました。先方への挨拶等お願いします。」

 

「挨拶とかは別にいいけど…そっか、やっぱり海に出て指揮を執るつもりなのね。」

 

「そうなりますね。浪江は年20人しか取らないですし指揮官養成を掲げてる唯一の学校ですから。」

 

「ましろちゃんは大丈夫?進路、本当にほのかに合わせても。それに挨拶しても試験に受からなきゃ話にもならないし。」

 

「進路に関しては私は後悔しません。ほのかの副官ですから。一生ついて行くつもりです。試験に関しても、筆記、及び実技もあの学校は2人1組ですから。」

 

「分かったわ。そこまで意志が固いなら何も言わないわ。全寮制で少し寂しくなっちゃうけど、頑張ってね。」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……言えない。言えるわけない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

副官だからじゃない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……好きだから。

ただあの子を守ってあげたくて。

あんなに弱いのに、めっちゃ頭は良くて。

すごく堂々としようとしてもから回って可愛い。

 

 

ほのか隣にいるだけでぽかぽかした気持ちになる。

もっと隣にいたい。

この立場は絶対譲りたくない。

どんな事があっても、ほのかを守れるのは私。

 

 

好きだよ、ほのか。でも、まだ言えない。

この気持ちはあなたが結婚しても、言えない。

多分、最期まで言えないと思う。

 

それに私が近づき過ぎればほのかも不幸になってしまうかもしれない。そんなの許されない。

 

こんなアブノーマルな女の子なんて受け入れてくれないだろうし、今の立場すら失いたくはない。

 

せめて、私はほのかを守る。

 

 

 

 

だから…………

 

 

こんなこと、誰にも言えない…!

 

 

 

 

 

side out

 

 

――――――――――

 

入学試験への対策講座!

 

 

 

やぁやぁ諸君。私は鬼軍曹の「葉月ほのか」よ。今私は「宗谷ましろ」を鍛えているわ。ビシバシね。

 

穏やかな海は良い船乗りを育てない。

緩い教導は身にならない。

頭に入らないなら体に刻み込め。

 

ブルーマーメイドの教導隊員や教官などがよく言う言葉らしいのだけど…

 

でも、今ほどこれを実感したことはないわね。

 

まさかましろが手こずるような問題があるなんて…

 

頭の良さなら私がいなければ海洋学校でも首席クラスになるだろうし、今でも模試の全国順位は最高8位と非常に良い成績を修めているわ。

 

それなのに…ましろを苦しめる犯人は…

 

 

 

「意味わかんない…」

 

 

 

 

なんと小論文だった。

 

しかも今回のテーマは「運を良くする方法」だそうよ。

 

 

「コレは仕方ないんじゃない?何しても運が良くなったことないでしょ?」

 

「そうなんだけど…」

 

ましろとしては完璧にしたいらしいわ。

とはいえ、ましろは結構抜けてるんだけどね(笑)

 

 

――――――――――

 

受験当日

 

私達は浪江中学校へ来たわ。

 

この学校の受験は泊りがけ。この学校の施設に泊まることになってるわ。

 

1日目は筆記試験。

科目は

基礎学力200点満点(120分)

海上法規100点満点(50分)

小論文 100点満点(45分)

の三科目といいつつ、基礎学力には国語、算数、理科、社会の4教科が含まれるから実質6科目ね。

 

しかも算数に三角関数や放物線など特殊な問題も入っているわ。

ズルいの一言に尽きるけど、ここに来る子は基本的に頭が良いし、邦題の進み方なども教わっているから解けるみたいね。

 

ちなみに、浪江中学校の受験は独特で、2人1組になって試験を受ける。その内1人はブルーマーメイドの士官候補生もしくはブルーマーメイド教導隊員か教官に許可証をもらった子が必要という受験にも必須な条件が多くて大変みたい。

 

基本的にこの年頃の子を士官候補生とすることはないので、ブルーマーメイド教導隊員か教官に許可証を貰っているということになるわね。

 

もちろん、筆記もペアなので楽勝だったわ。

まあめんどくさいから、ましろにやってもらって、回答欄のズレを指摘するだけしかしてないのだけど。

 

2日目以降は実技試験を行うのだけれど、その前に今回受けた68組の中で筆記試験で足切りにあったペアは2日目以降のテストは受けさせてくれないわ。残ったのは56組ね。

 

まず、残った56組は講堂に集めれたわ。今年の受験生56組でくじ引きを引いて出てきた番号順にシミュレーションルームに入って試験を受けるわ。2日目以降は1日に14組づつ行う。少し時間がかかる。

 

残った人と終わった人は食堂で現在試験中の人達の試験を観てるか部屋にいるかのどちらかね。

 

実技試験の内容は艦橋を再現したシュミレーションルームに入り、まずは試験の説明を受けて、ペアの2人が艦長副長としてその船を目標地点へ持っていくこと。海図と海域はランダム生成になっているわ。もちろん、戦闘もあったりなかったり。

それを見ていた採点者が1,000点満点で評価をして、毎日上位10組のランキングにして更新。最終日の56組目が終わった時にランキングに残っていれば入学許可ね。

ちなみに、艦橋要員の砲術長、水雷長、航海長、記録員は浪江中学校の教員よ。操舵以外はシュミレーションルームを見ている管理室で専門の教員がコンピュータに反映してるわ。

使用艦船はカタログの中から受験生が選べるようになっているようね。

 

 

2日目の結果は

 

1位No.3:689

2位No.9:638

3位No.……………………

 

結果は一応見たけど、No.3の人は確かに安定した航海はしてたけど見どころはあまりなかったはずだけど…あ、ちなみに、今回で既に落ちるのが確定してても最後まで見ていく権利はあるみたいね。

 

私たちの順番は最後。ゆっくり待ちましょ?

 

――――――――――

 

6日目

 

やっと私達の順番。

つまり最後。現在の順位は

 

1位No.48:798

2位No.24:778

3位No.22:749

4位No.15:724

5位No.03:689

6位No.31:688

7位No.44:670

8位No.49:640

9位No.09:638

10位No.36:612

 

つまり、最低でも612点以上を取らなければならないわ。

 

ま、どうにかなるわね。

 

 

「No.56、最後の組、入ってください。」

 

「やっぱり、ほとんどの子がモニターで見てるわね」

 

「緊張してきた…」

 

「大丈夫。ギャフンと言わせてやりましょ?」

 

 

 

「それではまず、使用する艦船を決めてください。」

 

「カタログは大丈夫です。もう決まっていますから。重巡洋艦、青葉でお願いします。」

 

「またマニアックですねぇ。旧型艦で基本性能が低いはずですよ?」

 

「大丈夫です。」

 

「分かりました。海域は試験開始30秒前に決定します。クリア条件は目的地点へ到着することです。最後に、艦長と副長を決めてください。」

 

「私が副長で、ほのかが艦長です。」

 

「了解です。それでは試験開始3分前です。」

 

 

「艦橋要員の皆さん、お疲れ様です。最後までよろしくお願いします。」

 

「気にしないでください。この艦の艦長はあなたです。敬語じゃなくて構いません。」

 

「…はい、では皆さん各自配置に!」

 

「配置につけ!」

 

《試験開始30秒前。海域展開します。》

 

(!?これは…)

 

「おいおい、小学生の士官候補生とはいえ、この難易度はやりすぎだろ。岩礁だらけで大和型が2隻と古鷹型2隻が目標地点までの航路に陣取ってやがる」

 

「大丈夫。あの4隻は無視して突破します。」

 

《試験開始!》

 

「抜錨!機関始動!緊急出航!」

 

「艦長、最適な航路は大きく迂回することですが?」

 

「左側の岩礁地帯を抜ける。

水雷長!魚雷発射用意!左雷撃戦!発射雷数1!」

 

「左魚雷戦、発射雷数1」

 

「機関第4戦速!面舵20!」

 

「第4戦速、面舵20!」

 

「魚雷、一番右の岩礁をねらえ。攻撃始め!」

 

「撃て!」

 

「取舵一杯!宜候!破砕した岩礁の上を通る!潮の流れと水深に注意せよ!」

 

《1時の方角、岩礁海域を抜けたあたり、距離40,000、最上型重巡洋艦1、敵性勢力のフラッグを確認。》

 

「右砲戦、反航の最上型重巡洋艦!撃ち方用意!撃て!」

 

「先制砲撃、初弾命中弾なし。」

 

「これ以降の砲雷指揮は副長に一任します。

取舵10!第5戦速!黒20!」

 

「取舵10!第5戦速!黒20増速!」

 

「右砲戦、一番砲敵艦左舷、二番砲敵艦艦首前に照準!」

 

「照準よし!」

 

「攻撃始め!」

 

「それぞれ着弾!敵艦こちらに舵をきる!」

 

「機関、最大戦速!」

 

「右砲雷同時戦!準備!一番砲二番砲三番砲は敵艦艦尾側甲板上の砲塔を照準!右舷魚雷発射管、発射雷数4!攻撃始め!」

 

「面舵10!

12時の方向に暗礁!取舵5!」

 

「右舷魚雷発射管、次弾装填!

三番砲、敵艦中央を照準!撃ち方始め!」

 

「ジグザグ回避運動!機関一杯!」

 

《魚雷命中。最上型重巡洋艦大破現在炎上中。》

 

「目的地点確認!」

 

「減速!両舷前進微速!」

 

「目的地点まで300」

 

「投錨用意!」

 

「機関停止」

 

「機関停止」

 

「目的地点到着。投錨始め!」

 

 

 

ブザーが鳴る。これで終わりね…―

 

「ほのかっ!?」

 

 

私の意識はブラックアウトした。

 

 

 

――――――――――

 

 

ほのかが倒れた。すぐに周りにいた艦橋要員をしていた教員とほのかを保健室へ連れていった。

 

私は後悔していた。いや、後悔はしてない。ただ、情けなかっただけなのだ。もっと精進しないといけないと思う。

 

 

 

 

終わってから1時間後。最終ランキングが発表された。

 

1位No.56:1053

2位No.48:798

3位No.24:778

4位No.22:749

5位No.15:724

6位No.03:689

7位No.31:688

8位No.44:670

9位No.49:640

10位No.09:638

 

なんと満点越えだった。

 

だが試験官曰く、本当ならもっと高くつける予定だったと。指揮官が作戦終了したとはいえ簡単に倒れてはいけない。艦長は乗組員全員からの信頼が必要。それが減点要素らしい。

 

ほのかはまだ起きない。明日には起きると思うが、私はやるせない気持ちでいっぱいだった。

ほのかのために何が出来たか。これから何が出来るか。考えていかないと、ほのかの傍にいる意味がなくなってしまう。

 

 

私は今後どんなことでも努力して、ほのかを支えられるようになると決意した。




いやー長くなっちゃいましたねー

ちなみに、実技試験はローレライの少女を参考に自己解釈しております。


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浪江中学校の日々
4、失敗しちゃった…


おまたせしました。

ストーリー構成を考えていたら長らくおまたせしました。

定期試験は辛いですね。
数Ⅲとか意味わかりません。


小学校の卒業式

 

それは非常に淡々としていた。

 

私は友達は本とましろだけだったし、あとはジャンク屋のお兄さんくらい。

まあ、ジャンク屋のお兄さんは何かを作る人同士結構話が弾んだわ。

結局、友達…居なかったわね。

 

いいのよ!ましろがいればそれで。

 

とはいえ、これ程暇なものは無い。両親への言葉や先生達への言葉とか別にわざわざみんなで合わせることもないと思うし、何より、自分の言葉じゃないと思う。

 

そんなこんなで小学校最後の日。

思い入れもないし、天才の頭脳と前世の記憶にかかれば敵じゃない。

それにしても、一番辛かったのはお遊戯会とかの「見た目」にあった行事。

 

いやー、辛かったわ。

 

前世で見てた無人島生活とか1ヶ月1万円生活とかより過酷ね。精神的に。

 

少なくとも前世の記憶だけなら、「普通の女の子」として楽しめたかもしれないけど。

 

 

卒業式が終わって、つかの間の休暇になる。

 

え?春休み?ほとんどないのよ。

 

うちの小学校は台風で休講した分春休みを削ったのよ。

だから、3月27日に卒業式。休みは28日~31日の4日間。

 

1年は休み無しなのにこれは嫌だわ。

 

 

――――――――――

 

 

 

浪江中学校は全寮制で4月2日から学校が始まる。

 

4月1日は?って聞いちゃう?引越し作業日らしいわ。本当なら1日から始めたいのに、年度の問題で出来ないらしいわ。

 

その代わり、浪江中学校は1発で中型スキッパー免許が取れるっていう利点もあるんだけど、私だと体力的に無理ね。

 

4月2日から中型スキッパー免許の講習で2週間で取得。その後、航海に関する座学が2週間。海での法規を1ヵ月。機関科講習・航海科講習・主計科講習・砲術講習・水雷講習をそれぞれ1ヵ月。海難救助講習を2ヵ月。艦隊運用講習を3ヵ月。そして、最後の2週間で対空迎撃講習が行われる。対空迎撃講習は対航空機戦闘じゃなくて対艦噴進弾つまり対艦ミサイルへの対応ね。この世界には航空機は無いもの。(ちなみに希望者には放課後ダイビング講習も受けることが出来るらしいわ)

 

ちなみに、休暇は1年生の間は無いみたいね。

 

この学校の1年生は規律ある生活を身につけることとブルーマーメイドの士官候補生の基礎の基礎を学ぶことを目的としてる。(この学校に入った時点で元々士官候補生でない人も全員が士官候補生に任命される)

 

それゆえ、1日もハードだ。

(講習が中学生にとっては長いし大変というだけで、将来のエリートのために学費はないし、講習以外はまるでホテルみたいなものなんだけど)

 

上級生の作ってくれた学校生活のしおりによると

 

朝(通常時)

起床(朝食に身だしなみを整えて間に合う時間で・朝風呂可)

0630朝食 0700まで(この間ならいつでも食べて良い)

0730講習開始

1000休憩

1030講習再開

1330昼休み(食堂でブッフェ形式)1530までならいつでも食べられる。

1500放課後ダイビング講習1630まで

1700講習再開

1900講習終了

1930夕食(食堂で定食形式4種類から選択・デザートブッフェ)2130まで

1930大浴場開場(普通のスーパー銭湯よりも広い上に使う人も一学年20人なので広い上、2年生は航海実習でいないこともあるのでさらに広い・部屋にもシャワールームはある)翌0700まで(朝風呂も可)

就寝(翌日に支障がない時間で)

 

 

普通に考えると凄くありがたい対応なのだけど、大抵の人は疲れ果てて存分に使えないらしい。

 

 

 

 

 

 

 

………まあ、私は1,3年生では使わないんだけど。

 

1年生の間に東舞鶴男子海洋学校、通称『東舞校』の教員艦「あおづき」の改修を。

3年生の間に横須賀女子海洋学校の青葉型重巡洋直接教育艦「青葉」の近代化改修を依頼されているわ。

 

「俺」の頃から好きだった青葉をこの手で弄れる聞いて、年相応にはしゃいでしまったのをまだ覚えて………///……記憶から抹殺したわ///

 

まあ、はしゃぎすぎて、テンション上げすぎて次の日倒れたことは覚えてるわ。

(ちなみにその時妄想してたのは“青葉、取材…いえ、出撃しまーす!”の方でした)

 

そんな訳でうちの学校には2日の最初の顔合わせだけ出て艦隊運用講習まで改修で帰ってこないという事をクラスメイトに伝えてそのまま呉へ。

今回使用する艦船ドックは呉のものね。

 

 

 

あおづきは元々対空迎撃で僚艦の援護をするための艦として作られているものの、アスロックや対艦ミサイルなどの誘導兵器によって火力もある汎用艦隊運用艦船。

トマホーク等なら3発もあれば大和型を沈められる力を持つ。

単艦ではトマホークは1発しかないし41cm砲弾ですら当たれば大破、運が悪ければ撃沈。ちょうどよく2発3発と当たると轟沈の可能性もある。

 

私が改修すべき所は速力ではなく、砲力でもなくシステム面においてと水平噴進誘導弾発射管の設置、そして艦のダメコンつまり脆弱性。もちろん公試も仕事のうち。

 

まずは、水平噴進誘導弾発射管の設置箇所の決定。次に改造設計図の作成。

これを1ヶ月で終わらせなければ、今年中に終わらない。

がんばるぞい!

 

 

 

――――――――――

 

sideましろ

 

 

私は決めていた。絶対にほのかを守ってみせる。

 

その為にはさまざまな力が必要。本当なら副官として呉について行くはずだが、お願いして全ての講習を受けることにしている。もちろん、ダイビング講習も。

 

必死に勉強したし、実技もなかなか。成績はクラスで1位だった。

 

睡眠時間すら惜しんで勉強した。

ほのかの隣に立つために。

守るために。

 

私は天才じゃない。

 

そんな私にはたまたまあった才能が、努力を続けることと女子の中では秀でている運動神経。

ならばこの2つを利用して、ほのかの隣に立つしかない。

 

もちろん、努力したところで天才の1流にはなれない。

けど、2流のトップにはなれる。

 

その為にはまずは、勉強と体力作り。

 

多分、この学校ではそのうち成績は置いていかれちゃうと思う。周りの子はみんなほのかの頭脳程ではないけど天才だから。1流になれる素質があるから。

 

だからこそ、私は1流と対等に渡り合える2流になってみせる。

 

…ほのかを支えられる副官になってみせる!

 

 

sideout

 

 

 

――――――――――

 

 

12月某日。私はあおづきで呉から出航して公試に入っていた。

 

「まずは全力公試。機関、最大戦速!」

 

機関はいじってないから34ノットまでしか出ない

 

「両舷前進微速へ。水平噴進誘導弾発射管開け。目標、ターゲットバルーン。攻撃始め。」

 

水平噴進誘導弾発射管は計算通り

 

「各隔壁閉鎖。1分後開放。」

 

脆弱性は「骨」の強度とフレームの補強、隔壁の増設で対応。

 

「対空迎撃、目標ターゲットバルーン郡」

 

対空迎撃も難なく出来た。

 

 

 

 

 

 

…だがそれは起きてしまった。

 

 

「緊急!右舷中央、船体溶接部より浸水!亀裂が入っており内側からの止水作業は困難!」

 

 

ダメコン用のパネルを投影する。右舷のあるブロックの浸水が70cm毎分で進んでいた。

 

 

「!?………うそ」

 

 

 

 

 

 

 

そう、天才が初めてミスをした。

 

ミスをしてこなかった人間がいきなり大きなミスを犯すとどうなるか。無論あたふたするだけで何も出来やしない。

 

 

「設計主任!指示を!」

 

「………あぁ……ぇ………………」

 

(無理もないか。天才とはいえ中学生の女の子にこんな状況。)

「2-4-5から2-4-8と3-6-2、そして8-6-7を放棄して隔壁閉鎖!左舷(ひだりげん)に注水!スタビライザー最大強度!ブルーマーメイドに救難要請!もたもたするなよ!」

 

 

 

そう、これが私の人生の転機となった。




次はなるべく早く出せるように

がんばるぞい!


※感想での指摘より、艦橋での被害確認は専用のパネルではなく汎用のパネルの切り替えで確認という形を取りました。
(艦橋じゃなくてCICでもよかったかな?)


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5、病んじゃった。

「ダメです!右舷亀裂広がります!浸水拡大!―――!?右舷艦首付近にも亀裂!右舷側に傾斜します!現在右12度!」

 

「スタビライザーは!」

 

「既に全力です!」

 

「くっ…仕方ないか。設計主任、艦橋作業員以外の作業員に甲板への避難命令を。全隔壁閉鎖で時間を稼ぎます。」

 

「えっ…あ、指揮権を作業員長に譲渡します…」

 

「……了解」

(今はこの娘をカウンセリングしてる場合じゃない。今は艦を持たせることと作業員を死なせないこと。彼女にトラウマが残ることはほぼ確実と言っていい。でも、艦が沈んだり、死者が出ればそれはもっと深くなってしまう。自分の娘程の子供にそんなものは負わせられない。)

「艦橋作業員以外の作業員は直ちに甲板へ避難せよ。全隔壁を閉鎖する。繰り返す、艦橋作業員以外の作業員は直ちに甲板へ避難せよ。全隔壁を閉鎖する。」

 

「艦首付近隔壁閉鎖!第1区画全閉鎖確認!」

 

「左舷側への注水は?」

 

「完全にいっぱいです。」

 

「分かった。隔壁閉鎖を急げ!」

 

 

 

――――――――――

 

sideましろ

 

 

私達1年生はみんな各専門科の講習を終了して艦隊運用講習をもう少しで始めようとしていた。

 

とはいえ、1年生の間はダイビング講習と中型スキッパー免許講習以外は座学中心であり、今日も今日とて座学の時間。

 

そんな所に―――1本の電話が担任の所にかかってきた。

 

「―はい。―――え!?―――――分かりました。直ちに向かわせます。

宗谷さん、ちょっと話があります。廊下へ出てください。」

 

「了解です」(なんだ?)

 

疑問はすぐにわかる

 

「ましろさん。落ち着いて聞いてください。

今日は葉月ほのかさんの改修した「あおづき」の公試の日だったのですが、その際右舷中央に亀裂が入り浸水。さらに数分後、ブルーマーメイドに救難要請が来てから約2分後に右舷艦首付近にも亀裂が入り、現在、右18度傾斜しています。

そして…ほのかさんは設計ミスだと思いひどく錯乱しています。今こそ彼女の傍にいるべきはあなたでしょう?

行きなさい。学校はほのかさんと同じ扱いにしておくから。もともとあなたも行く予定だったのだから変わりはないわ。」

 

「…ありがとうございます。学校の中型スキッパーをお借りしても?」

 

「許可します。急いでいるからと言って、事故には十分気をつけてください。事故現場は旧伊予灘海域です。さ、行ってきなさい。」

 

「了解。宗谷ましろ、旧伊予灘海域へ急行します!」

 

 

 

――――――――――

 

 

side葉月沙穂

 

 

トゥルルルル、トゥルルルル―――――

 

「はい、技術局兵装部部長、葉月です。―――!?―――――!?

本当ですか!?――はい、すぐに伺います!はい、―――はい、では。」

 

 

作業員長は熟練だし多分大丈夫。

 

でもそれでも心配せずにはいられない。

 

 

 

とりあえず、緊急招集が必要ね。

 

 

 

―――トゥルルル

 

 

『はい。部長、どうかなさいましたか?』

 

「緊急招集を。兵装部及び造船部の各課長クラス以上に。」

 

『了解しました。緊急対策室へ招集します。

特殊第二部はどうしますか?』

 

「事故調査体制で待機させてください。海域の情報は今のうちから収集してください。」

 

「了解しました。失礼します。」

 

―――ガチャ ||.c( ゚ω゚`|

 

 

とりあえず、今回の事故に関して今後どう対応するかを協議しなければならない。

 

さて、あおづきはドックまで曳航して間に合うかしら?

 

しばらくは情報収集をしなければならなそうね。

 

 

sideout

――――――――――

 

 

「ブルーマーメイドの救難隊及び曳航艦が到着した模様です。甲板上の作業員を収容始めました。」

 

「了解、こちらの状態をあちらの艦長に知らせろ。」

 

「了解!」

 

「あ、もう一つ。艦橋にも救難隊員を寄越してほしいと伝えろ。要救助者は1名、酷いショックで自発行動不能だ。」

 

「了解しました。こんな所で天才葉月を失うわけにはいきませんし、ここにいても仕方ないですからね。」

 

 

―――やっぱり私は意味無いのか。それもそうだよね。天才だからこれまでみんな頼ってくれたけど、私はもう使えない子だもんね。私は“天才”じゃなくて“天災”だね。こんなことになるくらいなら、何もしたくない。もう、どうでもいい。疲れた。ちょっと休憩しよ……パタッ

 

 

「―――!?設計主任!?作業員長!主任が…」

 

「……心が失敗を拒絶したか。救難隊がもう来る。そちらに任せよう。

言ってるそばから来たな。」

 

「救難隊です!要救助者は?」

 

「彼女だ」

 

「了解です。」

 

 

救難隊員2人がほのかを担架で救難船に運んでいった。

 

 

「浸水、ほとんどブロック隔壁により止まります。現在傾斜角、右36度。データリンクを曳航艦に繋ぎました。まもなく曳航を始めます。機関は停止、補助電力を全てスタビライザーに回します。」

 

「了解、呉の改装ドックに行くのか?」

 

「いいえ、横須賀に向かいます。技術局がこっちで弄るとの事です。」

 

「外洋を通るのか?」

 

「いえ、浮きドックを防波堤がわりに使うそうですね。あ、ありました。これが資料ですね。」

 

「ほう、最新鋭の自走式メガフロートドックか。どえらいものを持ってきたな。大和型や超大和型すら使えるドックを巡洋艦クラスで使用するとは。確かに防波堤がわりだな。設備が多すぎる。」

 

「近くを航行しているところをそのままこっちに差し向けるようですね。」

 

 

 

 

あおづきは無事に浮きドックに到着し、横須賀へ

 

 

 

――――――――――

 

 

私はあのあとブルーマーメイドの救難隊に船に乗せられて呉の病院へ入院させられた。

 

検査とか色々してから、カウンセラーが話したいって来て別に問題もなく終わったあたりで病室のドアが開いた。

 

 

―――ガラァ!

 

「ほのか!」

 

「ましろ、どうしたの?こんなところまで」

 

「大丈夫か?怪我は?」

 

「入院って言っても検査だけ。問題ないよ。」

 

「そうか…ならよかった。途中で気を失ったって聞いたから驚いたよ。」

 

「少し疲れただけだよ。体力ないから…」

 

「そうか。

ほのか、私は今回の事故に関して、いいや、もっと前。ほのかが昔倒れた時からほのかを守るって決意したんだ。だから、もう絶対に離れないから。」

 

「………ごめん。しばらく放っておいてほしいんだ。今はまだ。」

 

「………………あおづきを気にしてるのか?」

 

「別にそんなわけじゃ…」

 

「だがそうは…」

 

「やめて!もうやめて…」

 

「あれはお前のせいじゃないはずだ。天才のほのかが失敗しているわけが―――」

 

「やめてって言ってるでしょ!」

 

「気にしなくていいんだ!」

 

「そうじゃないの!もう帰って!……かえってよぉ…」

 

 

―――ポタ

 

こんな自分、もう嫌。

自分せいじゃないと言ってくれる人に、よりによって、ましろにあたって。

 

もう、嫌……

 

 

「……………………ごめん。また来るから。」

 

「…もう来ないで」

 

「…………分かった。呼ばれるまで来ない。」

 

 

―――ガラ……

 

ましろが出ていった。

 

 

なんでこんなこと言うの?

やっぱり自分が嫌い。

 

自分が嫌いで嫌いで、努力して自分がを認められるように頑張った。

 

この世界に貢献したり、ましろに好きになって欲しくて自分からじゃしないようなおしゃれをしたり。

 

それでも変わらなかった。

 

女の敵は女とよく言うけど、私の敵は私だった。

 

ましろに嫌われなくない?

 

違う。私が付き合っていることが嫌だった。

 

ましろの事は好き()()()

 

こんな自分には生きてる価値はない。

 

パパとママが悲しむからとりあえず生きるけど、2人がいなければすぐにでも自殺するのに。

 

せめて、天才なら世の中に生きる価値を見出せた。

 

でも、もう、私には――

 

 

――生きる意味も価値も意思もない。




ほのかさんはあおづきの設計ミスをしてしまいました。
ほのかさんは、病んじゃいました。

海月はこの小説を中間考査の前日に書いてます。
私は、詰んじゃいました。


※ほのかさんは表面的にはこの事を引きずりません。


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6、見つけちゃった!?

久々の戦闘シーン。

間違いが無ければええなぁ。


距離が明らかに間違っていたので修正しました。(2017/12/26)


病院での検査入院を終えて、“身体には”異常は無いことから私は退院して浪江中学校に戻っていた。

 

一応はカウンセリングなどで精神的に十分に治ったという事だった。

 

性格の変貌ということが若干あったようだけど私自身じゃわからないし。

 

そんなこんなで少し余裕を持って、2年生から学校へ戻ってきた。

 

 

あおづきはママ達技術局の調査で、施工側のミスであることが確認された。

とはいえ、報告書を読ませてもらったら私の設計が普段と違う設計を強いられていた箇所を施工側が普段通りに施工してしまったらしい。

 

詳しくは知らされてないから分からないけど。

 

 

2年生からは教員と共に航海実習に入る。

 

4月から6月にかけて3日から1週間の練習航海を計8回こなす。(大体は阿賀野型軽巡矢矧を使用)

7月から8月にかけて2週間くらいの遠征を行う。(こちらはクラスを2つに分けて白露型航洋艦時雨、及び涼風を使用)

9月から11月にかけてブルーマーメイドの沿岸警備の手伝い兼訓練。(こちらは手伝いなのでブルマーの艦に乗る)

12月から3月までを世界一周航海を行う。(最後に使うのはクラスを再び分けて最上型重巡三隈及び熊野)

 

役職は基本的にローテーションすることになる。

理由は単純に全てこなせなければ士官候補生として中学から訓練する意味無いやんとのこと。

大体前半(4月から8月)で全てこなせるようにローテする。

 

私は体質的にどないしよって思ってたところ、力仕事が必要なところにはローテしないで済むように作ってくれているらしい。

 

 

 

という訳で4月からの練習航海を終えて、白露型航洋艦時雨で見張り員をやっていた時だった。

 

 

(ん?なにあれ?―――!?)

「9時の方角!距離46,000に海賊艦と思われる艦艇、複数隻を確認!訓練にあらず!繰り返す!9時の方角!距離46,000に海賊艦と思われる艦艇、複数隻を確認!訓練にあらず!」

 

 

そう、いるはずのない海域にいきなり出没した。

 

 

その時は入試成績が2位だった知名もえかと岬明乃が艦橋で指揮を執っていた。

艦長を岬明乃が。副長を知名もえかが。

 

 

「教官!緊急配置!許可をください!」

 

「許可、岬明乃に艦の指揮権を全面的に認めます!」

 

「了解です!

これ以降、9時の方角の艦隊または戦隊をアルファと呼称します!」

 

 

この艦には10人の生徒と4人の教員と6人の機関補助員がいた。

いくらオートメーション化されていても人手が足りない。

 

緊急配置の状態では生徒と教員の関係よりも現在ついている任務が優先となる。

 

現在は

艦長 岬明乃

副長 知名もえか

砲雷長 宗谷ましろ

航海長 教員

砲撃手 生徒

魚雷発射管担当員 生徒

ソナー手 生徒

電探員 教員

電信員兼信号員 教員

機関長 教員

機関助手 生徒

機関員2人 機関補助員

見張り員 葉月ほのか

観測員生徒

応急員3人 機関補助員

主計班 機関補助員

 

となっている。

どれだけオートメーションされていても、それを動かすのは人間。逆に考えなくてはならないことが増えている。

 

そんな状況で航洋艦1隻でどうするのか。

 

もし、敵艦に重巡クラスがあるならこちらは全速で逃げる方が良い。

 

こちらの兵装は12.7cm連装砲つまり5インチ連装砲3基、四連装魚雷発射管2基(酸素魚雷8本、魚雷発射管対応専用SSM8本)、そして対空迎撃用CIWS4基だけである。

 

速力は近代化改修で36ノットまで出るようにはなっているが、最近の海賊艦は余裕で…とは言わないが、航洋艦クラスなら32ノット出してくるので正直相手が小型だけだと厳しい。水雷戦隊ならSSM放って壊滅出来るけど、対空迎撃をしてくる相手ならそうはいかないし。

 

 

「電探、どうですか?」

 

「アルファは4隻!大きさから見て、重巡1航洋2輸送1!」

 

「目視、おそらく電探の報告通りと思われる。但し、敵性対応はなし。補足情報に簡易測距儀での距離は42,000まで詰まる。このままの進路であると数分で距離40,000をきる。」

 

「信号員と観測員はアルファに発光信号、国際フラッグを掲揚!内容は“貴戦隊の所属は如何”!」

 

 

―――――信号を送った。

 

あちらはようやく気がついたと言わんばかりに主砲を向けてくる。

 

「左弦の重巡、こちらに主砲を向ける!」

 

「!?回避運動!魚雷発射管1番管に通常魚雷、2番管にSSMを準備!これ以降、アルファを敵性勢力として対応します!ブルーマーメイドへ通報お願い!無線でこちらの所属と停船し、投降するように呼びかけてください!発光信号は無しで!」

 

「敵艦発砲!―――着弾!」

 

「被害なし!」

 

「ブルマーからの指示は?」

 

「距離を保て、出来れば4隻すべてロストしなければベスト。無理をせずダメそうなら必ず全速で撤退すること。だそうです。」

 

「了解!――面舵!距離を詰めすぎずに!

遠距離水雷戦用意!大雑把でいい!1番管、発射雷数4!攻撃初め!」

 

「左雷撃戦!1番管発射雷数4!方位角左86°に!撃て!」

 

「敵重巡こちらに向かう!航洋2と輸送は西に逃走!

敵重巡、再度発砲!――着弾!ってこれやばいね、挟叉されたわ!」

 

「全速!取舵一杯!内側に入って!」

 

「みけち…艦長、このままではジリ貧です。どうしますか?」

 

「致し方ないかな。2番魚雷発射管、SSM発射準備!諸元入力、目標敵重巡!」

 

「敵重巡、SSM、6基発射!こちらに向かう!」

 

「対空迎撃!2番管のSSMを対空誘導迎撃に設定し直して!1番管もSSM装填!」

 

「副長!SSMの方お願いします!

CIWS起動!自動迎撃モード、レーダー照準!

1番砲、286°仰角43°に備え!…撃て!」

 

「1番管SSM装填!2番管のSSMの諸元を初期化!対空迎撃用誘導システム起動!目標、敵SSM群!迎撃始め!」

 

 

1番砲で1基落として、2番管のSSMで4基落とした。残っていたのはたった1発。しかし、それこそ航洋艦にとっては命とりである。

 

 

「CIWS4番の照準を手動に!砲撃手、頼む!」

 

 

何とか落したものの至近での迎撃で艦全体を揺らす。

 

 

「被害報告は後回しにして、1番管SSM、目標敵重巡!全射線発射!

もかちゃん、被害への対応一任します!」

 

「了解

被害報告を!」

 

「爆風により簡易測距儀破損!修理不可!」

 

「電探使用不可!修理可不可は不明!」

 

「無線通信使用不能!」

 

「CIWS4番使用不能!CIWS2番旋回不能!1番砲給弾機破損!装填済みの1発のみ発射可能!測距儀旋回不能!」

 

「冷蔵庫破損!緊急冷却モードに変更!」

 

「艦体への被害なし!機関は少しぐずった!おそらくどこか接触不良が起きていると思われる!」

 

 

「…まずいぞ!砲の照準がつけられん!」

 

「こちらのSSMは敵重巡に2基落とされたものの残り2基は命中!敵重巡、速力落ちる!

敵艦の命中箇所は右舷中央部艦橋付近と右舷前方甲板上!」

 

「このまま輸送艦及び護衛の航洋艦を追尾します!

機関長!速力どこまで出せますか?」

 

「強速までだな。」

 

「修理にはどれだけかかりますか?」

 

「半日はかかりそうだ。」

 

まるで追いつかないか。

 

「了解しました。追尾を断念。本艦はこのまま敵重巡の監視に入ります。

万一に備えて強行突入隊の編成及び携行用測距儀での2番砲3番砲の照準を!

魚雷発射管1番管と2番管に通常魚雷を装填、目標敵重巡。以降待機!

最優先で機関の修理!火を落とさないで出来ますか?」

 

「可能だ」

 

「次に電信装置。衛星通信と無線通信の復旧をお願いします。

次に電探を。このままだと漂流しちゃいますからね。以上です。」

 

 

「4時の方角……距離48,000に………あ、あれは…」

 

「ほのか、どうした?」

 

「あきづき型あおづき以下同型4隻こちらに向かう。

発光信号、『ワレアオヅキ キュウエンスル』とのこと。」

 

「あおづき!?」

 

ましろ、驚き過ぎ。

 

「ほのかさん、手旗信号を。『キュウエンヲカンシャスル ムセンソンショウニツキツウシンハテバタノミ』と」

 

「了解」

 

 

 

 

その後私達の遠征は取りやめになった。

 

曳航されて学校に帰還した頃にはもうみんなへとへとだった。

そのまま時雨は入渠することになり敵重巡と共に技術局のある横須賀へと回航された。

 

 

 

――――――――――

 

side葉月沙穂

 

 

 

浪江中学と技術局直下で公試中だったあおづき艦隊の拿捕した重巡はなんと無人艦だった。というかなんだか訳の分からない造りをしていた。

 

技術局としても目下調査中であるものの全然分からない。

 

ほのかほどではないにせよ、私だって天才の部類に入る技術者であり指揮官でもある。その私をしてわからないのである。

 

私は技術局に入局する前はブルマーで最前線に立っていた。最初に乗った艦は当時の直教艦の海防艦淡路に始まり、色々な艦に乗ってきた。最初に艦長になったのは江風型航洋艦江風だったな。あの乗組員の面白かった艦は鈴谷だったかな。最後はブルマーとしては退役寸前だった戦艦紀伊の艦長を務めた。

 

とにかく多種多様な艦に乗ってきたのに、こんな造りは知らない。

 

 

「…とりあえず考えるのはやめましょ。それよりも時雨の近代化改修とあおづきの公試結果をまとめて委員会とブルマーに提出して、さっさと東舞校に返しましょうか。」

 

 

――――――――――

 

side明乃

 

 

やっぱりほのかちゃんはすごかったなぁ。

主席なだけあるね。

 

ほのかちゃんが見つけてくれなければ多分こっちは沈んでたと思うし。

 

でも………あの重巡は人間ぽさがなかったような気がするなぁ。

ま、そんな訳ないか。

とりあえず教本に書いてあった想定される敵の戦術にピッタリ合ってたからだと思うんだけど…

 

 

 

sideout

 

――――――――――

 

 

私達はこうして遠征を終えた。

そして、その後ブルマーの手伝いを終えた。

 

2年生も残すは世界一周だけとなった。私にとって浪江中学で過ごす最後の課題。すごく楽しみね。

 

ま、その前に休暇が入るんだけどね。

 

休暇とはいえ、浪江中学の寮に泊まったまま班別行動のみ外出が許されている。

 

私達のグループは私、ましろ、岬明乃、知名もえかの4人。

 

岬さんとは少し話してみたかったし、面白そうな4人になったわね。




ほのかの話し方ですが、基本的に小学校卒業くらいから、だ・である調は任務中、その他では砕けた話し方に変えました。

その辺も原作突入後、心情描写に活用していくつもりです。


なお、色々な艦を出していきたいと思っているので活動報告の方で出して欲しい艦を募っております。
なるべく言われた艦は出していきたいと思います。


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7、日常しちゃった!

だべっているだけの日常回です。

飛ばしても大丈夫なようには作りますが、後半は設定などにも触れていきます。


私達―ほのか、ましろ、明乃、もえかの4人は選んでいた………ケーキを。

 

 

「いやー、どれも美味しそうだよね!」

 

「ミケちゃんはケーキ好きだもんね」

 

 

学校に近いショッピングモール。いわゆる商店街船の大きいバージョン。その中の隅にある、人が少ない穴場なおしゃれなカフェがあった。

 

 

「―?なんでミケちゃん?」

 

「ああ、みさきあけのを省略するとミケなんだよ」

 

「もかちゃんはもえかを省略してるんだよー」

 

「へぇー。」

 

「うーん。」

 

「ミケちゃん、どうしたの?」

 

「2人にもあだ名つけようと思ったんだけど、いいのが思い浮かばなくて。」

 

「やっぱり2人にはあだ名より二つ名(笑)だよね」

 

「今、(笑)って入ってた気がしたのは私だけか?」

 

「あー、ましろにも聞こえたのねー。空耳じゃなかったみたいね。」

 

「というか、ほら!早く注文しちゃわないと迷惑になるぞ。」

 

「じゃあ、みんなケーキセットでいい?」

 

「「「意義なーし」」」

 

「すみませーん、注文お願いします!」

 

「はい、ただ今。」

 

「じゃあ、ケーキセット4つ!

私は、フォンダンショコラとメロンソーダ!」

 

「私はトロピカルフルーツのショートケーキとオレンジジュースをお願いします。」

 

「えーと、チーズスフレにブレンドをホットで。」

 

「モンブランとミルクティをホットで。」

 

「かしこまりました。ご確認します、ケーキセット4つ。ケーキはフォンダンショコラとトロピカルショートケーキ、チーズスフレ、モンブラン。お飲み物はメロンソーダ、オレンジジュース、ブレンドホット、ミルクティホット。以上でよろしいでしょうか?」

 

「はい、お願いします!」

 

「モンブランってほのかちゃんらしいね」

 

「そうかしら?

逆にもえかがブレンドのホットって意外ね」

 

「そんな事ないよ。ましろちゃんのトロピカルフルーツはあまり驚かなかったけど。」

 

「どーいう意味だ…

それにしても、多くないか?この買い物量」

 

そうだよね、絶対多いよね!?とか言いつつ私の分も多いんだけど(笑)

でも、自発的に買ったわけじゃなくて、ましろや明乃やもえかが買った方がいいって言ったものを選んだだけなんだけど。私はオシャレとかよく分からないし。別に今は…。

 

 

「4ヶ月だよ!?4ヶ月も日本のものが買えないなら持っていくしかないよ!」

 

「それに、外国にもそれぞれタブーがあるから、それに合わせた服装に変えなきゃいけないし。」

 

「た、確かに。」

 

「とか言いつつ、ましろもいっぱい買ってるじゃん。ぬいぐるみ。」

 

「は!?な、何のことだ!?」

 

「さっき宅配便で寮に送ってたよね?」

 

「ましろはファンシーグッズ好きだからね」

 

「べ、別にいいだろ!?」

 

「はいはい、ツンデレ乙よ」

 

「限りなくメタに近いメタじゃない発言だね(笑)」

 

「もえかってそんなキャラだったかしら?」

 

「まあまあ落ち着いて、ほのちゃん」

 

「それ、私?」

 

「そうだよ!ほのかちゃんだからほのちゃん。

ちなみにしろちゃんはましろだからしろちゃんだよ!」

 

「はぁ、せめて任務中は宗谷もしくは役職名で呼んでください。」

 

「えー、他人みたいだよー。もかちゃんが言ってたよ?海の仲間は家族だって。」

 

「まあ、例え話だけど、そのくらい背中を預けられないとね。」

 

「まあ、そうなんだけど…」

 

「ところで、明乃、もえか、2人とも私もミケちゃんともかちゃんって呼んでいいかしら?」

 

「「もちろん!」ついでにしろちゃんもね!」

 

「私は確認されずに使われるのか!?」

 

「だってすぐ拒否しちゃうじゃん。聞かずに使った方がお得だよ。」

 

「お得と言えば、3人は何を持ってくの?確か専用のケース3個までしか持っていけなかったよね?ミケちゃんは?」

 

「私は制服の冬・夏・盛夏の3種類を4着づつとパジャマ3着に私服を春夏秋冬それぞれ2着づつでケース1つ埋まってて、2つ目に肌着とかと水着を学校指定のと今日買ったやつを入れてあとは化粧品系かな。3つ目は教科書類とか漫画とか暇つぶし用の娯楽品かな。」

 

「私も1つ目は明乃と同じで、2つ目も同じ。3つ目は教科書とかとその…ぬいぐるみ///」

 

「はいはい、ギャップ乙よ」

 

「やっぱり、2つは確定だよね〜。ほのちゃんは?」

 

私、スルーされた…

 

「私はやっぱり、教科書類と私の場合三隈の艦長になるから艦長帽と寒い時用の外套ね。あ、あとはゲーム!それとパソコン!」

 

「ああ、絵を描くためのやつか」

 

「そうよ」

 

「ほのちゃんって絵描けるの!?」

 

「趣味でやる程度ね」

 

「ま、天才だからな」

 

「いやいや、しろちゃんが誇ることじゃないんじゃ…

ところで、ミケちゃんが三隈の副長なんだよね?私は航海長になったけど。」

 

「うん、そうだよ!もかちゃんの上官なんて…成績はもかちゃんの方がいいのに…なんでかな?」

 

「私達じゃ分からないだろう。元々、なにかあったのかもしれんな。お前には。」

 

「で?しろちゃんの配置はどこなの?」

 

「三隈の砲術長。」

 

「三隈って魚雷発射管って搭載してるんだっけ?」

 

「スペックシートによると四連装魚雷発射管片弦1基搭載で、魚雷は通常魚雷が16本だな。ちなみに艦尾にはESSM用のVLSが30セル搭載してるぞ。12式多目的有人飛行艇も1艇ある。最上型重巡洋艦は技術局によって大改修が行われたばかりだったからな。凄く楽しみだ。」

 

「しろちゃん、HappyTRIGGERなの?」

 

「え?いや、そんな訳では無いが…とはいえ乗る艦が高性能だとワクワクすることはたしかだな。」

 

「対潜装備は確か対潜噴進短魚雷だったよね。まさか重巡洋艦に対潜装備をつけられる日が来るなんてね」

 

とりあえず、私はドヤっとこう。とはいえ…

 

「たった10年ちょっとでこんなに発展するとは私も分からなかったなぁ。けど…いまだに電子戦装備の開発が遅々として進まないのはどうしてだろう。電子戦が強力になればそのうち大艦巨砲主義は無くなると思うんだけど、いまだに戦艦の有用性は健在だからね。対空兵装を増やしたとはいえ。」

 

「ブルマーで現役の戦艦はみんな対空兵装、CIWSのファランクスとESSMを搭載したもんね。」

 

「そういえばついこの間、新造戦艦が公試に入ったってニュースでやってたよ。」

 

「あ、あれかぁ。確かミサイルをメイン装備にしたんだよね?」

 

「そうそれ!基準排水量57,000t主砲は16インチ3連装砲2基艦橋の前に配置してて、艦尾側は甲板の配置可能なところ全てにVLSを配置して、結局128セル搭載してたね。更に艦橋横は副砲じゃなくてミサイル発射台を搭載してて、主にSSMの発射はここからが予定されてた。しかも、余った部分に速射高角砲を多数配置し、更には近接防御用にCIWSが装備。電子戦装備は13式対水上レーダーと06式対空レーダー、戦術データ・リンク・システムを装備してたよ。」

 

「もはやハリネズミ。三隈で勝てる気がしない。でも、魚雷何発もぶちこめばあるいは…って感じね。」

 

「ミサイルが開発されてからずいぶんと艦種の下剋上が少なくなったよね。潜水艦くらいかな。」

 

「まあ、遠洋航海で襲撃はないと思うから大丈夫だと思うけどね。」

 

「確かに。

ところで、そろそろ学校に戻らないとやばいと思うんだけど…」

 

「明乃が…まともなことを言った!?」

 

「明日は嵐かしら?」

 

「それより槍じゃない?」

 

「ちょっ、私ってそんなキャラなの!?」

 

「ネタ要員兼天真爛漫要員よね?」

 

「ほら、会計終わったぞ!。ほら、馬鹿やってないで帰らないと本当にまずい」

 

「はーい、先生♡」

 

「ふざけてないで」

 

なんだかんだで平和でいいわね。イギリスとドイツでは演習の予定もあるし、作戦練っておこうかな。



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8、出発しちゃった!

遠洋航海に出ます。
設定説明回になってますね。

やっと書けた3000字


世界一周へ向かう直前の集会。

三隈側の指導教官から話があった後、すぐに艦に乗り込む。すぐに出航予定である。現在20:00と夜であるが。今回の航海の役職は次の通り。

 

 

艦橋要員(6名)

 

艦長 葉月ほのか

航海長 知名もえか

記録員 彩木真梨

航海員 2名

 

指導教官 中村真耶

 

CIC要員(14名)

 

副長 岬明乃(通常は艦橋)

砲術長 宗谷ましろ

水雷長 中野千歳

砲術要員 2名

対空迎撃要員 2名

水雷員 2名

ソナー手 1名

電探員 2名

電信員兼信号員 2名

 

航海科(5名)

 

見張り員 1名

側舷観測員 4名(砲水雷運用員兼任)

 

主計科(5名)

 

主計長 今井彩

衛生長 1名

給養長 丸山日菜

給養員 2名(砲水雷運用員兼任)

 

機関科16名

 

機関長 浅井楓

機関助手 1名

機関員 6名

応急長 望月梓

応急員 7名

 

※何名と書かれている部分は作業員

 

 

計46名

内生徒10名

教官1名

作業員35名

 

 

 

 

海洋学校の直教艦よりも多い人数で運用する。ここまで大掛かりなのは浪江だけだけど。

 

三隈の艦橋へ私は急ぐ。出航まで時間が無い。

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

はい、足が止まりました〜。燃費の悪い超大和型よりもスタミナ無い。困った…

 

「あの〜、艦長ですよね?記録員の彩木真梨です。艦橋へ行くんですよね?ご一緒してもいいですか?と言うか、おんぶして行きましょうか?」

 

「うーん、艦長としてはどうかと思うけど、艦も自分の足が動かなければ曳航か修理を待つかのどちらかだもんね。お願いします。」

 

「かしこまりー」

 

 

 

彩木さんにおんぶしてもらってなんとか艦橋についた。

 

「彩木さん、ありがとう。

総員、配置に着いた?配置についてない人がいる部署は直ちに報告せよ。」

 

「CIC、全員配置」

 

「見張り、配置」

 

「機関長以下、機関助手、及び機関員配置!」

 

「応急長以下、応急員、全員配置出来てるしぃ。」

 

「給養長以下、給養員配置につきました!」

 

「観測員、配置よし」

 

「主計長、及び衛生長配置です!」

 

「副長より、艦橋へ。全乗員、配置完了です。」

 

「こちら艦橋、了解。

教官、全艦配置につきました。」

 

 

 

「教官はあくまで助言役。いちいち許可なんて取らないでいいよ。」

 

「了解。

全艦、出航準備!錨をあげ!」

 

「抜錨、完了!」

 

「機関始動!」

 

「窯に火を入れるわよ!」

 

「艦体ステータス、出航可能状態になります。」

 

「機関、両舷前進微速!130°よーそろー!」

 

「両舷前進微速!ガスタービン回転確認!」

 

「130°よーそろー。」

 

「右舷側に熊野。発光信号。“キカンノコウカイノブジヲネガウ”」

 

「こちらからも発光信号を。“カンシャスル マタドイツデ”」

 

「了解、発光信号送る。」

 

「航海長操艦。両舷前進原速、赤黒なし。進路130°。規定航路を進め。

乗員全員に通達する。本艦は1度トラックで補給を受けてから赤道を通過後ソロモン諸島で演習をしてオーストラリアのタスマニア島ホバートで補給を受け、その後スエズ運河を通り、ジブラルタルで補給をしてドーバー海峡を抜けてキール運河を抜けてようやく第一目的地キールへ到着する。キールではドイツの士官候補生が我々を待ち構えている。それを打ち破るためのソロモン諸島での演習である。現在の配置によりなじむよう、一層奮励努力せよ。

これ以降、本艦は当直8時間毎の3交代制とする。事前に決まっている当直の者は航海配置につけ。以上。」

 

 

とは言うものの、熊野との艦隊運用訓練すら行えないままキールでの模擬戦ね…これは厳しいわね。特に…アドミラル・シェーアの艦長…テア・クロイツェル…海の妖精ねぇ?勝ち目あるかしら?

 

ともかく、一旦艦橋メンバーで挨拶よね

 

 

「よしっ、じゃあ艦橋メンバーでとりあえず挨拶ね。今回、艦長になりました、葉月ほのかです。よろしくね。」

 

「知名もえかです。航海長に任命されました。よろしくお願いします。」

 

「記録員になりました、彩木真梨です。みんなで無事に航海できるように微力ながら艦長を支えさせていただきます!」

 

「うん、2人ともよろしくね

航海員の2人もよろしくお願いします。」

 

「こちらこそよろしくお願いします。艦長、私達作業員はブルマーの隊員ではありますが、この航海中は部下ですし、同じ艦の仲間ですから敬語じゃなくて結構ですよ?」

 

「わ、分かりま…分かった。よろしくね。」

 

「「はい」」

 

 

そんな時に艦橋に入ってきたのは明乃。

 

「艦長、1班の指揮を執ります、副長の岬明乃です。引き継ぎます。」

 

「はい、ではこの後はよろしくお願いします。

あ、真梨ちゃん、艦内放送出してくれる?」

 

「はい、了解です。」

 

「伝声管使ってもいいんだけど、廊下にいると聞こえないからねぇ。ありがと。

『艦長より、各位。当直は1班が最初であるため、2班3班の者は可能な限り食堂で交流するように。なるべく参加するように。以上です。』はい、ありがとね真梨ちゃん。」

 

「い、いえ!」

 

「じゃあもかちゃん、真梨ちゃん、食堂行こうか?」

 

「了解(だよ)(です)。」

 

 

――――――――――

 

 

食堂にて、私達は少し高いところにある演壇に立っていた。

 

 

「真梨ちゃん、自己紹介の司会進行お願い。」

 

「了解です!

じゃあ、皆さん、自己紹介から行きましょー

まずは私から。はじめましてー!記録員の彩木真梨です。当直班は3班です。皆さんといい航海にするために一生懸命頑張ります。よろしくお願いします!

 

ではみなさん、これから順番に指名していきますので、演壇で自己紹介をお願いします!まずは学生から行きましょー

艦長!お願いします!」

 

「了解です。

このたび、重巡洋艦三隈の艦長に着任しました、葉月ほのかです。私は身体が弱く、体力もなく皆さんにご迷惑をおかけするかもしれません。ですが、それでも皆さんを浪江まで連れて帰るという心構えで指揮を執らせていただきます。時に無茶も言うかもしれませんが、みなさんなら出来ると信じています。

あまり長い話は嫌われるのでこの辺で。以上艦長の葉月ほのかでした。当直班は3班です。よろしくお願いします。」

 

私も真梨ちゃんも3班。

当直班は3個班交代制で、前半当直班が20:00~02:00、後半当直班が02:00~08:00になっているね。今日は前半が1班、後半が2班となっている。一応食堂にはいつでも軽食が用意されていて当直班は当直前や当直開けに食べたりしている。朝昼夜の3食は朝は作り置きで昼夜は普通に調理したものを出してもらえる。人数が多少少ないから仕方はないのだけど。

当直班は引き継ぎもあるから基本的に5分前行動は当たり前なのよね。みんなは去年勉強したらしいわ。

一応長期航行なので交代で1人か2人毎に1日の休養が貰える。(当直も)

 

 

―閑話休題

 

真梨が自己紹介会(?)を続ける。

 

「じゃあ次は航海長!お願いしまーす!」

 

「はい、じゃあ行きます。

航海長の知名もえかです。操舵技術には自信があるんです。当直班は2班です。2班の班長も務めています。よろしくお願いします。」

 

「はい、じゃあ次は水雷長!」

 

「水雷長の中野千歳です。SSMの軌道設定が得意です。3班です。よろしくお願いします。」

 

このセリフから分かる通り、この世界のミサイルは軌道をあらかじめ設定しなければ飛べない。ホーミング?何それ美味しいの?理論的というか設計だけなら私がとっくにやってるけど、そんなことしたらつまらないじゃない? 対空ミサイルなどは直線軌道でコンピュータが瞬時に計算して発射されるけど、対艦ミサイルなんかは基本的に人の手で軌道設定している。

 

時間もないので手短に真梨ちゃんが進める。

 

「じゃあ次―――」

 

 

――――――――――

 

 

こうして遠洋航海初日は終了した。この航海が未来を変えることはまだ誰も知らない。




教えて!ほのかちゃん!

ほのか「ラジオブルマージ、教えて!ほのかちゃん!のコーナーです!お相手は葉月ほのかと」

明乃「アシスタントの岬明乃です。」

ほのか「はい、時間もないので早速、今日のお題はこれ!」

―――じゃん!

ほのか「本作品での三隈の性能諸元。」

明乃「私達としても大事なところですね、艦長。」

ほのか「まさか覚えてないということは…?」

明乃「だいたい覚えてるよ?………多分(小声)」

ほのか「はいはい、聞こえてますよ。ではフリップオープン!」

明乃「あれ?ラジオじゃないの?ラジオってフリップ見えないよね?」

ほのか「細かいことは気にしちゃダメ」

明乃「ア、ハイ」

【フリップ】

全長206m
最大幅20.8m
喫水6.7m(最終改装時)
機関 沙穂式ガスタービン4基4軸
出力168,560馬力
速力36ノット
航続距離18ノットで7,406海里
定員 45名(標準人数)
装甲 側舷120mm 弾薬庫130mm (主砲弾及び副砲弾用) 甲板40mm
武装 20.3cm連装砲(速射二式)5基10門、25mm単装対空機銃8基、13mm単装対空機銃4基、VLS30セル(ESSM)、対艦ミサイル発射管2基(SSM16本)、大型ミサイル用VLS2基(LACM1基ASCM1基)、四連装魚雷発射管2基(一二式酸素魚雷16本)、艦首魚雷発射管4門(一二式酸素魚雷12本)
艦載空挺 五式無人偵察飛行艇2機、三式有人飛行艇1機(装備パッケージ 偵察、爆装、雷装、対空)


明乃「やっぱり、最上型ってすごい……」

ほのか「みけちゃんも副長なんだから、勉強してね
ちなみに、現在使われてる艦艇の武装のうちミサイル以外は私のママが作ってたものが半分使われてるわ。例えば三隈の機関や20.3cm連装砲(速射二式)とかね。」

明乃「ほのちゃんのお母さんってすごいね
……ほのちゃんってまだママなんだ(小声)」

ほのか「何か言ったかしら?(ニッコリ)」

明乃「い、以上、教えて!ほのかちゃん!でした〜」

ほのか「ちょっ、まあいいか。みけちゃん、収録終わったらちょっとO☆HA☆NA☆SHIしようか?もしくは『少し、頭冷やそうか?』って言いながら魔法で砲撃した方がいい?」

明乃「ごめんなさい!」

ほのか「まあ、そういうわけで」

2人「「ばいばーいヾ(*´∀`*)ノ」」




ほのか「明乃、ちょっとこっち来ようか?(ガチ)」

明乃(gkbr)


――――――――――

教えて!ほのかちゃん!のコーナーは、気まぐれでまた書くかもしれません。


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9、会敵しちゃった!?

「15:48、変針点です。」

 

記録員の彩木さんが報告する。

 

「進路120°」

 

続けて私が指示を出す。

 

「了解、120°」

 

航海長の知名さんが転舵する。

 

「彩木さん、本日の予定航路での日没予定時刻を確認してください。」

 

何を思ったのか知名さんが彩木さんに聞く。

 

「17:23です。」

 

「了解、ありがとう。」

 

何気ない航海の1ページ。艦橋で交わされる指示。とはいえ、10代前半の女子中学生が集まれば何かと話すわけで……

 

真梨ちゃんが口火を切った。

 

「艦長、西太平洋の赤道付近の島国には海賊が出るらしいですよ。」

 

若い女の子が集まると起こることと言えば、4割噂話5割恋バナ。

 

10年以上女の子として生きているけど、噂話は得意じゃないわ。と言うより得意になれないわね。とはいえ、そんなこと表面に出すわけもなく…

 

「そうなの。」

 

やっぱり、不得意なままね………

 

そんな時ちょうど良く救ってくれたのは、もかちゃん。

 

「海賊ってどんな感じなんだろうね。」

 

「貨物船をよく襲うと聞きますが、たいてい警備会社の海防艦か護衛艦がついてますからね…」

 

あら、こんな時は私の出番かな?

 

「もちろんミサイルは規模によっても違うけど、だいたいはミサイルに比べて隠密性の高い短魚雷を使っているそうよ。」

 

「短魚雷って、威力が低い気がするんですけど……」

 

「最近の海賊は護衛の艦を短魚雷で足を止めて、スキッパーで貨物船に乗り移って占拠して貨物船ごと持ち逃げするらしいよ。だから商船改装巡洋艦がいっぱいあるんだとか。しかも大きいものなら装甲も厚くして商船改装戦艦として使ってたりするらしいよ。流石に4万トンオーバーの船は改装じゃなくて解体して資源にすることが多いみたいだけど。」

 

ちょっとハナタカだったりして

そんな話をふっかけたのは真梨ちゃんなのにちょっと怖がっていたので

 

「まあ、私達の艦には攻撃してもあまり意味無いけどね。資源運んでる訳じゃないし。」

 

「そ、そうですよね…」

 

ホッと息を吐き安心したらしい真梨ちゃん。かわいい。

いつかハーレムでも作ろうかな。

(この時久しぶりに自分が女の子ではたから見たらただの仲良しにしか見えないことをほのかは忘れていた。)

……なんか最近、ドジっ娘として扱われるのは大変に遺憾です。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

―16:23頃

 

「なんだろ、あれ。カモメかな?」

 

「カモメはあんなに大きくないよー、あれは偵察飛行艇だね。」

 

「偵察飛行艇ってなんでこんなところで…」

 

「そこまでは分からないよ」

 

「距離およそ60,000か。」

 

「ちょっと、あんただって一応ブルマーでしょ?

飛行艇の距離の算出は―――」

 

「いやいや、低空だし60,000であってるでしょ―――」

 

という会話が右舷観測所で起こっていた。

 

 

――――――――――

 

 

―――16:59

 

見張り員が1度夕食を食べに観測所の観測員と見張りを交代してほしいと伝えようとした時、彼女は見つけてしまった。いや、見つけられたが正解か。とにかく、猶予がないことに気づいたのは彼女が最初だった。

 

「右舷、4時の方角、戦闘飛行艇接近!数5!観測所、CIC及び艦橋は確認されたし!」

 

「観測所、飛行艇5確認!国籍不明!所属マーカーもありません!」

 

「CIC、こちらも確認、数5!推測される装備は爆装2、雷装1、空戦1、強襲1!」

 

「艦橋より全艦へ、配置につけ。対空戦闘用意。CICへ、所属の誰何とブルマーへの通報、急げ。

砲術長の宗谷ましろへ命じる、最低人員以外の乗組員を纏め、警備隊を組織し敵の突入に備えよ。なお、砲術指揮は副長が代行せよ。」

 

「CIC、宗谷ましろ、了解。」

 

「応急員は即応体制!」

 

世界で初めての艦VS飛行艇の戦闘が起ころうとしていた。

 

今まで、対空戦闘と言えば対空迎撃が主であり、ミサイルを撃ち落とすためのものであった。それが、飛行艇の発達により対飛行艇という初の戦闘になることを成した。もちろん、今までの飛行艇が対艦戦闘をしていなかったかと言われると否である。何故ならば、基本的に艦VS艦の補助として用いられてきていたからである。しかしながら、以前と比べ装備の能力が上がっており、そこに彼らは目をつけていたのだ。

大型化と重装備化により航続距離が短くかつ運動性能の低下が起こったものの、飛行艇だけで立派な戦力となっていた。そして何より、飛行艇の戦力化はほのかが予見していたことの1つであった。こんな形で見せられるとは思ってもみなかっただろうが。

 

 

―――閑話休題

 

 

「CICより艦橋。飛行艇強襲タイプからと思われる電文を受信。」

 

「読んで」

 

「発ネイターグロード飛行艇部隊隊長、宛航行中の重巡“三隈”。

諸君らに通告する、10分以内にその重巡を明け渡せ、さもなくばそちらに突入し乗組員を射殺する。とのことです。」

 

「返信せよ、

発三隈艦長、宛寝いたーグロー度(笑)飛行艇部隊隊長を自称する三下。バカめ。以上」

 

「は?」

 

「バカめだ。」

 

「いや、そこじゃなくて」

 

「いいから送ってください」(宛先があまりにも酷かったかしら?)

 

「は、はい」(私が言いたいのはタグにないネタをつっこむのかという事なんだけど…)

 

 

――――――――――

 

 

とは言うものの、多分飛行艇5機相手には勝利は難しい…如何せん。

この世界にも三式弾があればまだ………ある、三式弾。対地攻撃用に製造されて、重巡以上と言うより20cm以上の砲に積載していたはず。

 

「艦橋よりCIC。主砲全門、三式弾装填。」

 

「CICより艦橋。お言葉ですが、艦長、三式弾は対地攻撃用です。無意味だと思われますが…」

 

副長から疑問の声が上がる。と言うより普通に分からない。普通の人なら。しかしながら…

 

「三式弾の信管を4秒でセット。」

 

ここで、本職のブルマーが気づく。

 

「艦長、もしかして三式弾の爆風と破片で相手に損害を出させるつもりですか?」

 

そして私は頷きで返す。

 

「副長、主砲全門の照準を4秒後に飛行艇部隊が通る予想点の0.5秒分前上方に。地上に攻撃する要領で。」

 

「副長、了解。」

 

「三式弾斉射後、ESSM発射。発射数は32本。避けられない様に群で撃て。」

 

これで考えていた対空戦闘の一応の構えが完了。

 

「CICより艦橋。主砲発射5秒前。3、2、1、攻撃始め。」

 

「了解。所要の措置をとれ。」

 

「か、観測所より艦橋!敵の飛行艇の損害は軽微!突っ込んでくる!」

 

 

――まさか読んで上面装甲を厚くしていたというの!?

 

 

「続いてESSM、攻撃始め。」

 

水雷長の中野千歳さんがコンピュータに諸元を入力してESSMが発射される。この世界のミサイルは事前誘導。ミサイルの中に“このように飛ぶ”というデータを入力し、入力した通りにすすむ。つまりうまくすればまだまだ避けることは出来る。だが、コンピュータにより30を超える対空迎撃ミサイルが群れとなって襲いかかれば、いかに有人飛行艇と言えど命中するはず。だが……

 

「観測所より艦橋!敵飛行艇部隊は損害なし、敵飛行艇は敵空戦飛行艇の後に一直線上に並び当たるものだけ撃ち落としました!」

 

――まずい、対策されてたか。

 

「対空機銃、主砲通常弾、とにかくばらまけ。」

 

私はとにかく時間稼ぎをして次の案を思案する。

 

――どうする。このままでは侵入される…かと言って有人飛行艇を対空装備で送り出したところでもともと対空装備はミサイル迎撃用。勝ち目はない。なら他の方法を見つけなければ………

 

ある。みつけた。この艦にはスペックシート以外にも兵装が積まれてたのを忘れてたわ。

 

「知名さん。しばらく艦の指揮をお願いします。」

 

と言い残し、何故か今日はCICにいる教官のもとへ向かう。

 

 

 

 

CICに着くと息も絶え絶えに中村真耶教官にあることをお願いする。

 

「教官、Aクラスの緊急事態と判断し、秘匿兵装の使用許可をお願いします。」

 

秘匿兵装。その名の通り、一部の人間しか知りえない兵装である。この艦に搭載されている秘匿兵装もそのひとつである。

 

「許可出来ません。何のために秘匿としているか、あなたなら分かっていますよね?」

 

無論。強すぎる力は争いを生む。だが……

 

「バカとハサミは使いよう。もちろんお分かりですよね?教官。それに……どうしても許可出来ないのであれば製作者権限を用いて起動しますよ?」

 

「はぁ…………

仕方ありませんね、許可しますが、運用には最大限配慮しなさい。姿を敵に見せることは禁止です。」

 

「元からそういう使い方ですよ。」

 

そして、CICの指揮席(副長がいつも座る席だが副長は砲術長席に着席中)に着席し、手元のキーボードに457文字もあるパスワードを入力した後、短くコマンドを打ち込んだ。

 

「CIC艦長より全艦へ。これより秘匿兵装を使用します。水雷長は私と同行、副長はそのまま砲術指揮に加えて水雷指揮を命じます。以上。」

 

「艦長、行きましょう。」

 

「中野さんはどこに行くかわからないでしょう?とりあえず、艦底に向かいます。」

 

「分かりました。」

 

私たちは艦底へと急ぐ。

 

「艦長、秘匿兵装って何を搭載してるんですか?しかも対空戦闘なのに艦底部に向かうっていうのは……」

 

「まあ、見てからのお楽しみだよ。もちろん、クルー全員に守秘義務と言うより秘匿義務が付いてくるから言っても言わなくても変わらないんだけど。」

 

「そんなやばいモノなのですか?」

 

「ふふ、まあね。世界のバランスを崩しかねないくらいにはね。」

 

そう、あの兵器は絶対に戦ってはいけない。いや、表に見せるわけにはいかない平気なのだ。だが―――

 

「これまで相手の技術者は私の戦術を元から考えてその対応をしていた。ならば今度は私の技術力で圧倒する。」

 

これが、世界で初めて地球上で使われる兵器となり、この戦闘記録を見た各国の技術者は首を傾げることとなることは誰もまだ知らなかった。




今日はここまで!

長くなりそうだったので切りました!


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10、初陣しちゃった!

本当に書きたかったのはただほのかママもほのかに劣らず天才だということだったのに…半分戦闘回だったな(笑)

あとがきに教えて!ほのかちゃん!のコーナーがありますのでご覧いただけると幸いです。

バレンタインに番外編を書こうか迷ってます。活動報告にて、ご意見をいただけると嬉しいです。(番外編じゃなくて本編内に入れるという方向性も可能です)


艦首艦底部にて準備をする私と水雷長の中野さん。(体力ものは全部中野さん)

教官に許可をとってから10数分は経っていた。時間がないことはもちろん分かっていた。だが、これを使うのは念入りな計算が必要であった。

 

この艦に搭載されている兵装の中に艦首水中魚雷発射管がある。艦首魚雷発射管は本来戦艦クラスに装備されていたが昨今の技術力の向上と私の設計を持ってすれば強度をそのままに高速つまり戦闘速度での発射も可能になっていたのだ。しかも、一見そこに存在することすら気づかない様に出来ていた。(乾ドックで外から見てもという意味でであるが。)それを私は重巡につけることで多大な戦力となると考えていた。とはいえ、新技術であるものの艦首水中魚雷発射管は新しい技術と言うよりかなり古い発想だった。しかしながら、私の作った秘匿兵装の1つ、魚雷浮上式対空ミサイル“ToFSAM:Torpedo Floating-type Ship-to-Air Missile”は魚雷発射管から魚雷のように射出して水中を酸素魚雷と同じ機関で推進し、離れた場所に浮上して魚雷機関をパージし固体燃料に火をつけ空中へと向かうミサイル。もともとは艦対艦ミサイルとして制作していたものだが、(通常の酸素魚雷と同じ大きさにミサイル機構と魚雷機関を搭載したため)威力が低く一発にかかる金額が高すぎてシャレにならないため、制式採用は見送りとなった装備。その試作品である。虎の子の4発。三隈のESSMで敵を一直線上に並ばせてるところに横から撃つ。無論狙い目は空戦飛行艇。これさえ落とせればESSMで片付けられる。

 

中野さんが発射管に挿入完了したらしくこちらに報告する。

 

「艦長、ToFSAM挿入完了です。現在注水中。あとはタイミングを図るだけです。」

 

「了解。CICに連絡お願い。」

 

「はい!行ってきます。」

 

「そこのインカム中継機を使えば艦内インカムが使用可能だよ。」

 

「そうだったんですか…電源入れますね。

艦長、インカム入りました。」

 

三隈は高速戦闘を可能とするため、通常の伝声管などの古典的な装備での運用を通常としながらも、戦闘時や緊急時、艦長が使用が適当とした場合などのときには各ブロックごとに艦内インカムが使用されている。艦内インカムは各ブロック(例えば艦橋組、CIC組、機関組、応急組など)で統一されているものの、そのブロックのリーダー(この場合そのブロックの最高指揮官)はリーダー間用のインカムチャンネルも併用している。この場合、艦首魚雷発射管ブロックとして私と中野さんが承認されており(中継機起動時に設定済み)艦長たる私が最高指揮官だった。つまり、私でなければCICや艦橋へ連絡出来ないのだ。

 

『艦首魚雷発射管よりCICへ。発射タイミングはこちらで観たい。CCS接続せよ。』

 

『CIC、了解』

 

CCS。CICコントロールシステム。コントロールとは名ばかりの戦況分析を艦内の電算室にあるスーパーコンピュータで処理したものを瞬時に艦内のCICから許可されたパネルに映すシステムのこと。これを応用利用することにより発射タイミングを図ることが出来る。

 

『艦首魚雷発射管より艦橋。ESSMの残弾は幾らか。』

 

『艦橋より艦長。ESSMの残量は88発。』

 

『艦首魚雷発射管より艦橋。ESSM、30本発射後取舵。敵との相対距離本艦から見て右舷4時46分の方角にせよ。その瞬間に本艦はToFSAM発射。ToFSAMにて敵空戦飛行艇を撃墜後残った敵飛行艇に対してESSM28本発射。その後はそちらに任せる。』

 

『艦橋より艦長。了解。でも、多分その後は敵の生存者救出と捕縛となると思いますよ。』

 

『艦首魚雷発射管より艦橋。そうであって欲しいですね。以上。』

 

あとは知名さんの腕にかかっている。私は信じてその時を待てばいい。

 

その時は長く置かずに迎えた。

艦橋の知名さんから発射命令が出た。

 

『艦首魚雷発射管、ToFSAM攻撃始め!』

 

「撃て!」

 

中野さんの操作により瞬時に魚雷発射管が開き射出された。

水中で方向を変え本艦・敵飛行艇部隊・ToFSAM群が一直線上にかつ本艦と敵飛行艇、敵飛行艇とToFSAMの距離が等しくなった時、ToFSAMが浮上した。が、本艦から発射されたESSM30本に晒されている敵飛行艇部隊は気づかない。いくら味方が落としてくれるとは言え、彼らも恐怖は存在した。受けきったと安堵した次の瞬間。空戦飛行艇は横から対空ミサイルとしては威力の高いミサイルが4本直撃した。無論飛行艇の破片防御程度の軽装甲などひとたまりもない。空戦飛行艇が撃墜した。それに驚き、ビビっていた残りの4艇に再度知名さんが降伏勧告を出すものの無視。仕方なく知名さんはESSM28本斉射を命令する。無論仕損じなどありえない。全て撃墜。

敵飛行艇部隊の撃滅に成功した三隈だったが、少し重い雰囲気となっていた。人を殺してしまったという事実。これだけでも彼女たちにとって本職のブルマーにとってもあまり経験することはないことである上に幹部の大半は学生。作業員からすると中学生にそんなことさせたくなかったという事だろう。

 

私はそんなことを気にしていられる立場ではない。

 

『艦長より艦橋。周辺に艦影や飛行艇の姿は?』

 

『艦橋より艦長。周辺に何も認めず。』

 

『艦長より全艦へ。配置解除。

警備隊はそのまま敵飛行艇部隊の生存者救出と捕縛。その他に手の余っている人は副長指揮の下、現場の状態を収めてください。主計長は記録員の代わりに戦闘記録をメインサーバにアップしてください。以上。』

 

あまりにも早すぎた実戦。それに衝撃を受けたのは彼らだけではなかった。

 

 

――――――――――

 

 

 

安全監督室。ブルーマーメイドの組織の一部であり、かつ海上安全委員会の下部組織でもある。そこにはつい先日着任したばかりの室長がいた。三隈砲術長の宗谷ましろの姉である宗谷真霜だ。

彼女は以前はブルーマーメイド第2艦隊旗艦“天照”の艦長を務めていたが、少し前に異動させられていた。

彼女は無線を聞いた時、驚きを感じていた。妹の乗艦していた艦が海賊に襲われてしかも5艇の飛行艇との艦対空戦闘をしたという。先程届いた安全監督室の情報調査隊からの報告によっても被害こそないもののESSMを90本も使用したとあった。現在、安全監督室情報調査隊に所属する艦艇が2隻近くにいたため護衛と事情聴取に入っているものの驚きのあまり思わず「は?」と言ってしまったほどだった。先程届いた戦闘記録と報告書も目を通したものの驚きの連発だった。

飛行艇の運用が変わるかもしれないと彼女は感じていた。

 

 

――――――――――

 

 

 

技術局ではない既にある問題が発生していた。もともとヘリウムを用いた飛行艇(飛行船)の利用は以前から考えられていた。実際に今現在の成層圏には1万を超える飛行船が成層圏プラットフォームで人工衛星の代わりをしていた。(この世界には人工衛星はありません。ついこの間ミサイルが作られたばかりですし、世界の抑止力か浮力以外での空への探求は未だにないのです。おそらくこれからも)

もともと戦闘用にアルミでエンベロープを作り、破片防御を施した試作型は完成していた。が、世界中でヘリウムの生産が追いつかないのである。今でさえヘリウムが高騰しており、無人飛行船においては水素を利用している有様。もはや飛行船に頼れない世界が来ることは目に見えていた。そこで兵装部の会議で葉月沙穂は提唱した。ヘリウムがダメなら水素でええやんと。水素なら海水からいくらでも作れる。しかしながら、戦闘には適さないことはその爆発性から以前から言われていた。

しかしながら、エンベロープの中にエンベロープを複数装備し、その中に水素を封入すれば問題ないということを指摘した。

 

水素の性質として次のことがあげられる。

水素と空気が混ざった物に火をつけると爆発するが、爆発するのは、混ざる空気の量が水素の体積の3分の1から25倍までの範囲。つまり、3分の1以下では水素が燃えるだけで、25倍以上では燃えも爆発もしない。

 

つまり、内部エンベロープに被弾した時、瞬時に船外に放出すれば良いと。また、外部エンベロープを全金属製にすれば内部エンベロープにキールつまり竜骨を入れなくても良い。要するに、破損した内部エンベロープ内の水素を放出し、内部エンベロープを廃棄後予備のエンベロープに予備の水素を注入すれば良いと。

 

二重エンベロープの発明により水素による戦闘飛行艇が作成され翌年には量産化されていた。(現代でいうツェッペリン型と似たものと思ってください。)

 

 

ミサイルと水素戦闘飛行艇。

その発明により葉月沙穂と葉月ほのかは空の母娘と呼ばれることになった。

 

 

世界は飛行機がなくとも航空戦の時代に突入していく。世界の流れは飛行艇(飛行船)の航空戦力が重視されるようになっていった。

 

 

――――――――――

 

 

 

……彼女の精神は緩やかに壊れていく。




教えて!ほのかちゃん!2!

ほのか「ラジオブルマージ、教えて!ほのかちゃん!のコーナーです!本日のお相手は葉月ほのかと」

真梨「彩木真梨がお届けしますねっ」

ほのか「なんと2回目となりました。」

真梨「そうですね!私も同じメディア関係として負けないようにがんばりますねっ」

ほのか「う、うん、がんばってね。ところで真梨ちゃんって話し方変わった?」

真梨「作者さんの意向でこれからは艦これの青葉みたいなキャラでいこうということになりました!」

ほのか「じゃあもしかして…姿も!?」

真梨「あー…実は青葉さんをダークブラウンに近い茶髪にした感じですね。」

ほのか「今度襲っていいですか!?」

真梨「ダメです!」

ほのか「まあ、冗談はこの辺にして、今回の質問は?真梨ちゃん。」

真梨「ズバリ、飛行艇と飛行船の違いです!」

ほのか「そうですね…飛行船の最大速度(無風状態)は120km/h以下で飛行艇は120km/h以上となっています。ちなみに戦闘飛行艇や戦闘飛行船のほとんどはエンベロープが全金属製でありますが、防御よりは先に攻撃することが主眼に置かれていました。しかしながら今回の先頭の後、空対空戦闘が起こるようになり水素の利用も増えていっているため防御もかなり考えられるようになりました。」

真梨「これはスクープですね!?艦内新聞の号外を出さないといけませんね!」

ほのか「艦内新聞を出版するのいいけど、ちゃんと主計長に相談してね?」

真梨「はい!真梨、すぐに行ってきますね!」



ほのか「進行役が減ってしまったので、最後に注意を呼びかけて終わりたいと思います。物理法則的に無理だろとか現実と違うといったことはもう無視して、この世界の世界観なんだなと納得していただけると幸いです。これからも“わたてん”をよろしくお願いします。
というわけで、1人で最後を迎えますが…」

ほのか「ばいばーいヾ(*´∀`*)ノ」



ほのか「真梨ちゃん…行動力があるのはいいんだけど…これはO☆HA☆NA☆SHIが必要かな?」

真梨:(´◦ω◦`):ガクブル



――――――――――

教えて!ほのかちゃん!のコーナーは、気まぐれでまた書くかもしれません。


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11、告白しちゃった!

課題が多いこの頃。てなわけで更新遅くなってましたね。次は3月初頭までに出せればいいなと思っております。




 

 

遠洋航海実習を急遽中断した私達はドイツでの模擬戦という“単位”が未履修に終わってしまった。教官たちは慌てて国内での試合の日程を組んだ。

 

日程は『ブルーマーメイドフェスタ・ウィンター』の最終日。午前中を予定している。最終日を盛り上げるイベントの1つである。

 

相手は金剛型大型直接教育艦比叡、陽炎型航洋直接教育艦天津風・時津風・浦風の4隻。

こちらは最上型重巡洋直接教育艦三隈(私達の艦)・熊野、阿賀野型軽巡洋直接教育艦矢矧、白露型航洋直接教育艦時雨・涼風の5隻。

 

ルールは審判3人により損傷判定を受け、各陣営のどちらか全ての艦が撃沈判定を受けたとき決着となる。もちろん使用する弾は教練弾。とは言え、徹甲弾や三式弾や水中弾なども教練弾として再現されており判定に影響を与える。

海域は横須賀沖特設演習海域。もちろん観客に生中継するためである。

飛行艇の使用は制限されている。この状態ならいくら横須賀女子海洋学校の先輩とはいえ、いい試合が出来ると信じている。

 

 

……と言いたいところなのだが、こちらの三隈乗員の士気が低く旗艦を務める艦としてまずいと言わざるを得ない状況なのである。

 

はて、どうしようかしら。

って一応乗組員のことを考えてる時だから公式な口調にした方がいいかな?まあ、誰も聞いてないし普段通り行きましょ。

あの戦闘のことをどうブレイクスルーするかね。本来なら時間が解決してくれるけど、これじゃ訓練の意味もないわ。気は進まないけど、中村教官にでも相談してみようかな。

 

――――――――――

 

「それは簡単ですよ。気にしてられないくらい訓練に勤しめば良い。訓練終わってシャワー浴びてすぐに寝ちゃうくらい激しくね。」

 

中村教官は優しそうな微笑みを見せながら、なかなか恐ろしい事を口にする。

職員室で私と中村教官は応接セットを挟んで向かい合っていた。

 

「そんなことして、求心力が失われませんか?」

 

私自身、そこまでカリスマがないことは自覚している。天才だろうがカリスマはまた別の才能なのです。

 

「大丈夫。必ず……」

 

「どうすれば良いのでしょうか?」

 

「ふふっ、あなただって分かっているでしょう?」

 

中村教官は優しげな微笑みを黒い笑みに変えながら言う。

 

「訓練後に熊野をフルボッコにすればいい。」

 

 

――――――――――

 

 

私は必要書類を提出した後、三隈の主計長以下主計科メンバーを召集し、こう告げた。

 

「三隈の出港準備にかかってください。航海日程は1週間。途中、学校の足摺型補給直接教育艦塩屋で4日目に洋上給油と砲弾薬の補給を受けます。そちらの手配も主計科に任せます。詳しくはこの資料を見てください。」

 

今井彩主計長は疑問に思ったらしく、

 

「なぜ日帰りでの訓練ではなく1週間も戻らないのでしょう?」

 

と聞く。

無論、本当の理由は伝えられないので、

 

「中村教官から行ってきなさいって言われちゃってね。今の練度なら横須賀女子海洋学校の先輩達には勝てない。だから、かな。」

 

と答える。

 

「そうですか。了解しました。今井彩、ただ今より出港準備及び塩屋との打ち合わせに入ります。」

 

「よろしくね。」

 

私はぞろぞろと出ていく主計科の人達を見送っていた。

 

――――――――――

 

次に呼んだのは機関科。浅井楓機関長以下16名。こちらにもあることを知らさなければならなかった。

 

「では揃いましたね。機関科…特に応急員は各部動力接触部分の修理点検と交換用部品の積み込みをいつもより少し多めにお願いします。機関もぶん回すのでそのつもりでお願いします。」

 

「まあ、最善はいつも尽くしてるけど、自分らも焼き切らないように使ってな。」

 

機関長の浅井楓は似非三重弁(自称)を使うことで三隈の中で有名である。

あなたの出身は長野でしょ!とつっこみたくなる人。腕は確か。と言うより、機関を動かし続けることに関しては恐らく世界一上手い。

 

「常に動き続けて打ち続けるということですね。了解です。準備しますね。」

 

こちらは応急長の望月梓。彼女も一癖あり、オタクなのだ。それも重度な。

この間も即売会でR-18を描いて販売してたとか。ちなみに彼女の守備範囲は百合から純愛系、BL、コメディまで非常に広く深い。そして濃い。メタいお話になるが作者よりも濃いのである。おそらく。

黙っていれば美少女…否、美幼女であるのに。

ちなみに、幼女みたいな外見のくせに力は強い。

 

「そういうことです。よろしくお願いします。」

 

某魔法高校の生徒は魔法科高校に一般人はいないと言ったが、浪江中学校は士官候補生の集まりだけあって変人の集まりだった。

 

――――――――――

 

 

―ドゥン!

 

4番5番主砲が7時の方角の水柱を作る。

続いて三隈の1~3番主砲が右舷前方へ向かって指向した。

 

―ドゥドゥン!

 

『敵艦撤退を確認』

 

かれこれ20時間に及ぶ訓練は乗員の体力も気力も奪い、底がとうに見えていた。が、ほのかにはまだ終わらせる気はない。

 

『追撃戦に移行する。機関、第5戦速。面舵。』

 

未だに終わらない上に時間のかかる追撃戦訓練に移行したことで連続訓練24時間を超えることが確定した。

しかしながら、砲術長の宗谷ましろ以外は分かっていなかった。艦長たる葉月ほのかは精神を削りながら訓練を指揮していることを。ほのかは虚弱体質であることを最近多少改善していたとは言え、それは“多少”。もっとも、元が虚弱過ぎて戦闘訓練など2時間も全力で指揮を執っていれば限界を迎えることはほのかの中でも分かっていた。いつ失神してもおかしくない状態なのである。

いわゆる、とある剣客が「精神が肉体を凌駕している」と言った状態なのである。

否、彼女は精神が肉体の状態に“気がついていない”が正解である。彼女の心は小さなキズから大きなキズまで多種多彩な損傷がある。表面的には気づかせなくても彼女の心は壊れていた。と言うより治る速度が遅すぎる、というのが正しいか。それは転生という非条理な理を通過したせいであった。知らないでは済まされない非条理。そんな爆弾がついに爆発しかけようとしていた。

 

『追撃を断念、以上をもって長時間連続訓練を終了する。このあとは規定航路に戻りつつ当直6時間の3交代制で休息せよ。』

 

ほのかはこの放送を入れた後、記憶がもうなかった。いや、訓練の途中から飛んでいた。

 

 

「艦長!?」

 

「真梨ちゃん!担架持ってきて!」

 

『艦橋航海長より医務長!艦長が倒れた!受入準備頼む!』

 

 

――――――――――

 

 

「――ん……―――」

 

「艦長?」

 

私は艦長の顔をのぞき込む。別に起きたわけではなさそうだ。

 

「大丈夫です。私がいますから。」

 

少し、眠いけど、艦長のためならまだまだ大丈夫です。

 

初めてあったときは約2年前の入試の時。あの時は周りを見ているほど余裕はなかった。実技でダントツのトップってことは分かってたけど、それだけ。

2回目にあったのは入学式の日。入学式の後、自己紹介をした後彼女はいなくなってしまった。この時までは別になんとも思わなかった。ちょっとか細いと思うくらいで。

でも次にあった時から彼女は変わった。なんだか見てられない感じ。

私は昔から感情を読み取ることが得意だった。だから気遣いのできるいい子と言われてきた。でも、汚い感情も読み取ってしまうため自身の心も蝕んでいた。だからこそ気づいたのかもしれない。

 

“彼女も一緒だ”と。

 

私と彼女は似ている。過程は違うにせよ、周りから褒められてすごいすごいと言われ結局すごいと言われていた分野で傷ついてしまった。

いや、私の方がまだいい。徐々に壊れていたことを自覚出来ていなかったのだから。彼女を見て私が壊れていたことを自覚した。

彼女はショックのあまり自覚した記憶を封じてるみたいだけど。

彼女をこれ以上壊れさせたくない。

それが今の私に出来るかもしれないことだから。

曲がった気持ちかもしれないけど、“あなた”に押し付ける気はありません。でも今なら聞いてないよね?だから言わせてね。

 

「ほのかちゃん、真梨はあなたが愛しいです。だからこそ守るよ。この気持ちは多分仲間を失いたくないただの独占欲かもしれない。でも…

真梨はほのかちゃんが大好きです。」





あえてサイドチェンジを書かなかったのですがどうでしたでしょうか。

まさかの真梨→ほのかという図ですね。

ましろと離れてますし、この先どうなるかはキャラがどう動いてくれるかによりますが楽しみです。

また次話もお楽しみに。(*´∇`)ノシ ではでは~


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12、準備しちゃった!

少し短めです。


訓練が終わり、熊野と演習してフルボッコにしてから早くも1週間。私は危機に瀕していた。

 

 

「じゃあ、他に何かやりたい人!てーあげてー!」

 

 

明乃の声に今の戦況を読む。

…どうやら私は不利のようね。なぜこうなったのよ…

 

今しているのは、ブルーマーメイドフェスタ・ウィンターの1日目2日目の浪江中学校のブースだ。もちろん出店しない訳にはいかなかった。伝統的に2年生が出店していたため今年は模擬戦の準備と模擬店の準備が必要だった。模擬店は喫茶店ということは決定している。

 

そして今に至ると。

 

今の戦況は

属性喫茶8人

メイド喫茶5人

コスプレ喫茶7人

 

となっており、うちの学年は半数はオタクだと判明した。

属性喫茶はBL○ND・Sのキャラ喫茶で、

コスプレ喫茶は言わずもがな。

 

そして学年の総指揮を執る私は決心する。

 

「なら、こうしたらどう?

コスプレして、元キャラがいればそのキャラのいなければ服に似合いそうなキャラ属性を演じて、コスプレの中にメイド服を入れてもいいよね。」

 

「「「「「………あ」」」」」

 

「みんな気づいてなかったの……だいぶポンコツね。」

 

だいぶ呆れた今日の出来事。

 

 

――――――――――

 

 

「じゃあこの20人を3つの小隊プラス分隊1つに分けるわね。」

 

「第一小隊:隊長宗谷ましろ、以下5名。任務は会場の内装の整備。

第二小隊:隊長知名もえか、以下5名。任務は厨房の整備。

第三小隊:隊長岬明乃、以下5名。任務は資材運搬。兵站は重要。

主計分隊:隊長今井彩、以下3名。任務は資金の運営。

そして私と彩木真梨は全員分の衣装の調達。衣装の希望は私に提出。

あ、後、調理や掃除など汚れそうな時は衣装でやらないでください。

以上。総員任務につけ!」

 

「「「はいっ!」」」

 

そんな感じにまとまって浪江中学の模擬店計画は快調に進んでいった。

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

20人のうち、熊野側の艦長が自分たちは厨房に立つという話を受けて、シフトを組んだ。

 

熊野側の生徒は1日目に5人、2日目に5人の2班編成。(ただし、厨房に入っていない方の班は何かあったら買い出し組)

三隈側は全員フル出撃だ。とは言え家庭の事情でましろが当日出れないので9人、なのだが。

 

ということで衣装は9人分集めることになった。ちなみに、厨房側の衣装はBL○ND・Sの店員の服をコスプレにした。

 

さて、衣装の確認をしよう。ちなみに、衣装とキャラの最終許可はほのかが出している。

 

葉月ほのか:白ゴス&妹系

岬明乃:猫耳メイド

知名もえか:バニーガール&ツンデレ

彩木真梨:艦これ青葉

中野千歳:魔法少女&ボクっ娘

今井彩:黒ゴス&ドS

丸山日菜:アイドル&ナルシスト

浅井楓:ミニスカメイド

望月梓:清楚系正統派メイド

 

となった。

 

大分濃い物ができそうな感じですね……

 

 

――――――――――

 

 

 

数日後

 

 

「で、衣装の仕入れはどこから行うんですか?」

 

「技術局よ。」

 

なんと技術局に取りに行くらしい。なんであんなところに?という疑問も棚上げして、艦長について行く。

 

私としては艦長の側にいれればどこでもついて行きますよ!

 

技術局につくと、どうやら副局長の方と話していた。けど……もしかして艦長のお母様でしょうか?2人とも葉月で、技術局の副局長と士官候補生なだけの学生が親交があるとすればそこら辺だと思う上に2人とも似ている。というか副局長の方は10代と言われても分からないような容姿をしている。

 

「それで、例の服は?」

 

「もちろん完成させたわ。制服としての申請も通ったわよ。」

 

「それは上々。ありがとう、ママ。」

 

「ふふっ、いつも少しくらい甘えなさいって言ってるでしょ?ただでさえ身体が弱いんだから。」

 

「大丈夫、本当に必要な時にしか頼らないから。」

 

「そういうことじゃないんだけど、まあいいか。それじゃあ“20着”全部横須賀の浪江ブースに送っとくわ。」

 

「お願いします。」

 

微笑んだ副局長の方の顔は10代と言われても分からない顔に母親の顔をしているという色々問題になりそうな顔になっていた。

 

 

――――――――――

 

 

 

「艦長、20着って?宗谷さんは参加出来ないんじゃ?」

 

私は少しにやっとしながら、真梨ちゃんを見る。

 

「もちろん3日目もそれで動くんだよ。」

 

歩みを止める真梨ちゃんに体を振り向かせる。

 

「もちろん模擬戦もね?」

 

「えーー!?」

 

この反応が見たかった。私の目に狂いはなかった。



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13、やらかしちゃった

誠に遅くなってすみません。

そしてほぼ演習回になっちゃいました。


 

 

ブルーマーメイドフェスタは好調かつ好評に進んだ。

名物の艦上競技や各海洋学校やホワイトドルフィンのブース、スキッパーでのパフォーマンスなど素晴らしい演し物がいっぱいある中、私達の喫茶店は成功を収めたどころか、なんと、売上率、入店者数、満足度の3点でMVPをブルマーの総旗艦『雲仙』を筆頭とするブルーマーメイド太平洋主力艦隊司令から受け取った。

 

そして三日目。

ブルーマーメイドフェスタは三日目に公開総合演習を行った。

慣れてる見学者はそろそろ帰るかと思う頃合いでそのアナウンスがかかった。

 

『会場にお越しの皆様。ブルーマーメイドフェスタ三日目の総合演習はどうでしたでしょうか?

このあと午後から、本日最後の対抗演習を公開いたします。横須賀女子海洋学校対浪江中学校です。

ラインナップは横須賀女子海洋学校、チームYは金剛型大型直接教育艦比叡、陽炎型航洋直接教育艦天津風・時津風・浦風の4隻。

そして浪江中学校チームNは最上型重巡洋直接教育艦三隈・熊野、阿賀野型軽巡洋直接教育艦矢矧、白露型航洋直接教育艦時雨・涼風の5隻。

となっております。』

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「今回私はCICで指揮を執ります。ミケちゃん、艦橋はお願いね。」

「任せて!モカちゃんもいるし、モーマンタイだよ!」

 

私達は最終チェックを済ませて来るべき戦いを待っていた。

 

「そろそろかな?」

「艦長!敵艦の比叡から無線電話です!」

「はい。」

『こちらチームYの司令を務めます、浅川ももと申します。今回の演習、いい訓練になるようまた、怪我人のないようにいきましょう。』

『こちらこそ、よろしくお願いします。チームNの司令を務めます、葉月ほのかです。』

 

『審判を務めます、安全監督室情報調査室の宗谷真霜1等保安監督官です。両チームは所定の位置について待機してください。』

 

『『了解。』』

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

チームNは5隻を複縦陣にして待機した。

 

右列に三隈、熊野

左列に矢矧、時雨、涼風

 

航洋艦にはESSM…と言うよりVLSが搭載されてない(ブルーマーメイドの規定により、VLSを搭載可能なのは軽巡、雷巡、重巡、戦艦、のみとされている。)ので、時雨と涼風の第2砲塔(元々単装砲のところ)に発射装置を付けている。

また、今回の相手である陽炎型は艦尾に連想発射装置と次発装填装置で計4発のSSMを搭載する他にミサイルはない。

なので、対空力の高い矢矧に時雨、涼風を守らせつつ敵の航洋艦へSSMを3隻で集中砲火する。そしてその発射と迎撃に集中している間に魚雷発射。これで相手の航洋艦を倒す。

そしてその戦法は三隈と熊野にも使われる。比叡とのミサイル合戦をしつつ砲戦距離に入って砲撃。そこで、矢矧以下3隻と挟み撃ちで雷撃。

というのが大まかなほのかの考えた作戦だ。

まあもちろんそれらがどうズレるかなども考えているが。

 

『演習開始まで20秒。怪我には注意してください。5秒前。2、1、演習開始。』

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

『全艦、所要の行動を取れ!』

 

ほのかの命令と共に2手に分かれるチームN。

対するチームYは半輪形陣を取っていて、比叡の前に浦風、右に天津風、左に時津風。

 

『矢矧以下3隻は天津風から始めてください。なお、魚雷はどれに当ててもいいですけど、外さないでくださいね?』

 

今回、ほのかはインカムのチャンネルを3つ持っている。艦長としての各リーダーチャンネル、CICの一員としてのCIC内のチャンネル、艦隊の各艦長間のチャンネルの3つだ。

 

『三隈、熊野、大型巡航ミサイル発射。目標、比叡。なお、発射後、すぐにSSM4発発射。目標比叡。』

 

対艦巡航ミサイルとSSMはそのまま比叡に突き進む。だが、同時に比叡からSSM48発が発射された。

 

「比叡、SSM多数発射!数は…48!」

「目標は!?」

「えーと、全部本艦です!」

「ESSM!全部叩き落として!」

 

48本のESSMが発射される。元々数が限られているので本当なら1発に2発撃ちたかったが。

 

「38本撃墜!残り10本!」

「熊野がESSM20発、発射。全弾落としました!」

「こちらのミサイルは!」

「大型巡航ミサイルは迎撃され、SSMは2発命中!」

「敵艦の被害を報告!」

「当たった場所は敵艦の第1第2砲塔の間と敵艦の左舷SSM発射装置です!左舷SSM発射装置は恐らく大破判定です!」

 

比叡は両舷の副砲の代わりにSSM発射装置を搭載しているが、それは非装甲なのだ。申し訳程度の爆風よけしかない。

 

「比叡の主砲射程内です!」

「比叡、発砲なし!」

 

だが…

 

「て、敵艦隊からSSM来ます!数は…62!」

『艦隊!全艦対空迎撃!絶対に落として!』

「目標は全て本艦です!」

「また!?」

「私たちって人気者ね。」

「艦長!冗談では済まないですよ!」

 

そこで明乃が面舵を取る。

 

艦体が左に傾く。

 

「!―――」『全艦!ESSMありったけ撃て!』

 

そして、この時間何もできないと思っていたましろが意見を具申する。

 

「艦長!三式弾での迎撃許可を!」

「許可します!」

 

砲塔はすぐに旋回し発射態勢に入る。

 

「攻撃始め!」

「撃て!」

 

三式弾の信管は2.5秒。2キロ先に炎のカーテンを作る。

ESSMによって落とされた次の瞬間に残りが炎に突っ込む。

 

「敵SSMの残存無し!」

『三隈、熊野は砲戦準備!左砲戦!』

 

「砲術長!主砲、徹甲、比叡!」

「了解!主砲、1から3番、全門徹甲弾装填、目標比叡!」

「時津風、全速で接近!相対速度75knot!」

「とりあえず無視!」

「主砲、発射用意よし!」

「1から3番砲、左、攻撃はじめ!」

「撃て!」

 

三隈と熊野の弾は比叡に飛んでいく。が、まだまだ大破判定には至らず。

 

「続けて撃て!夾叉してる、何発かは当たってる!」

 

だが、そこでついに双方に被害が出始めた。

 

『こちら涼風!やられた!機関が停止した!』

『葉月より涼風。涼風は敵艦隊への直進方向への足止めに魚雷の撃てる角度はあります?』

『可能!』

『なら超遠距離魚雷戦で敵の直進を妨げたあと、白旗を掲揚してください。』

『がってん承知。あとはお願いします。』

 

涼風から魚雷が発射される。

 

『涼風、白旗確認。リタイヤ受理しました。その場に留まって演習の終了を応急修理しつつ待機してください。』

 

涼風の魚雷は酸素魚雷。雷跡はほとんど見えない。しかも現在はチームYは全速航行中。聴音機でも聞き取ることは難しい。

 

『天津風、大破判定です。その場に停止してください。』

 

天津風と浦風に当たり、浦風は判定中破。速力が10knotに制限された。

 

私としては避けて欲しかったんだけど…まあいいか。

 

「時津風に砲撃を集中!」

「了解!」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

結局、航洋艦3隻を倒し比叡を砲撃でタコ殴りにして勝利した。比叡の前部主砲が潰せたのは大きかった。

 

『この演習のMVPは航洋艦涼風となりました。おめでとうございます。』

 

あの雷撃が大きく流れを作ったとして涼風はMVPに輝いた。

 

 

 

ちなみに…

 

ヒーローインタビュー(この場合ヒロインインタビュー?)には三隈乗員が仮装して乗っていたということが話題になり、集合写真が世の中に出回ったことはご愛嬌だ。

 

ましろはバニーガール(靴下はクルー丈で折り返しているのでほぼ生足)だった。



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14、無駄になっちゃった…?

今回は短いです。




葉月ほのか。その道に携わる者ならばその名前を知らぬ者はいない。

 

天才。鬼才。奇才。

 

その力はこの世界を狂わせた。いいようにも悪いようにも。

 

ミサイルシステム。CIC指揮の有用性。艦隊指揮の情報リンク。

 

他にもたくさんのものを作ってきた。

 

その集大成が彼女の中学生最後の年に作られた。

 

 

重巡 青葉。青葉型重巡洋艦。

 

元々、艦体に対しての耐衝撃性能が不足していたにもかかわらず、彼女は主砲3基をそのままに、VLSを68セル分散配置した。他にも対艦ミサイル投射装置なども取り付けられている。もはやハリネズミだ。その分、損傷に対してのダメコンが難しくなっている。タフネスが資本の重巡が繊細な船になってしまった。その艦は既に彼女以外には扱えないものとなっていた。重巡の安定した性能に対して青葉はピーキーな仕様にし過ぎてしまったのだ。

 

 

だが、彼女の中学3年の最後の夏。青葉の公試試験の真っ最中。

彼女のこれまでの名声を崩壊させるには十分な上層部の決定がなされてしまったのだ。

 

『対空迎撃は基本的に対空速射砲を優先して開発せよ。対空迎撃ミサイルは費用対効果が悪い。』

 

もともと、熟練の水雷員を必要とする手動プログラム制御の迎撃ミサイルはどうしても命中率と費用そして安定性を考えると対空砲に劣ると言わざるを得ない。SSMも大きな砲弾を多数撃ち込んだ方が攻撃回数も命中率も高い。そして、小型艦船ならわざわざSSMを使うよりも酸素魚雷の方が攻撃力が高いと言わざるを得ない。

 

よって、彼女の1番の開発だったミサイルは対地大型ミサイルを除いて全て撤去されてしまったのだった。

 

誘導装置がまだないこの世界にはミサイルや誘導魚雷は早すぎたのだ。アスロックや単魚雷対潜攻撃も命中率が低すぎると言われていた。

 

さらに、高速化した艦船も燃費が悪すぎて、半分以上は従来の缶に戻されてしまった。

 

そうして、今改装中の青葉もまた、缶以外は全て戻されてしまった。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

だが、残った開発品もあった。それを知ったのは11月になってからだった。

 

それは、対空電探。それも、砲弾すら感知する電探である。

 

結局、CICは撤去され、ミサイルは開発中止、超高圧缶は半分以上が撤去・開発中止。

 

ほのかに残されたのは、結局ダメだったのかという評価、電探、そして海戦での天才的な閃き。ただそれだけであった。

 

士官候補生としては断然トップの実力を持っていても、世間の評価はそんなもの。ほのかはかつての事故はほのかのせいでないのにそれもつつかれ、今回の件でつつかれ。もはや精神的に壊れかけていた。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

2月。浪江中学の三年生はほのかも含めて全員が横須賀女子海洋学校に願書を提出して試験を受けた。

 

試験結果は上位5名だけ公表される。知り合いだけで言うと、

 

筆記

1位、葉月ほのか

2位、知名もえか

3位、今井彩

5位、彩木真梨

 

航海科実技

1位、葉月ほのか

2位、岬明乃

3位、知名もえか

 

砲雷科実技

1位、宗谷ましろ

 

主計科実技

1位、彩木真梨

3位、今井彩

5位、丸山日菜

 

機関科実技

1位、浅井楓

3位、望月梓

 

と、殆どのもと三隈乗員が上位を占めた。

 

だが、この上位に食い込む士官候補生以外の生徒がいた。

 

航海科実技

4位、知床鈴

 

砲雷科実技

3位、立石志摩

5位、西崎芽依

 

主計科実技

2位、藤田優衣

4位、納沙幸子

 

機関科実技

2位、杉本珊瑚

4位、柳原麻侖

 

となっている。

 

 

大いに喜んだ。ほのかもその頃になるとバッシングも殆どなくなり、精神的にも落ち着きを取り戻していた。

 

 

そう。これからが本番だと言わんばかりに。



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原作突入。高校初の海洋実習。
15、晴風出航しちゃった!


小型スキッパーで学園艦へ向かう。

 

その操縦席にはバナナを片手に持つ岬明乃士官候補生。その後ろには同じく士官候補生葉月ほのか。

ちなみに、明乃が寝坊したのをほのかが起こしに来ていた訳ではなく、ほのかが体調を崩していて、ギリギリまで寝ていたから明乃が迎えに来たのだ。大型水上バスで移動するのもいいが、それよりは小型スキッパーの方が速い。

ちなみに、スキッパーは手軽で速い乗り物でありかつ燃費はともかく機体は比較的安い。なのに大量に走っていないのは、免許を取るのが鬼難しいからだ。中型スキッパーなんて、よっぽど勉強しないと取れない。

 

ちなみに、学園艦についた時にたまたまましろともえかが居たが、明乃が落としたバナナの皮に滑ってましろが落ちた。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「すごいよもかちゃん!武蔵だよ!武蔵!」

 

私も驚きね。公開されている入試成績なら私が武蔵の艦長になるはず…だとするならば、恐らく校長の真雪さんがまたバッシングの話で気を回してくれたのね。

 

「うん、ほのちゃんだと思ってたよ。」

「そんなことないわ。もかちゃんも十分歴代の武蔵艦長に匹敵する成績と実力をもってるもの。」

「ありがと。」

「それに、ミケちゃんも艦長よ?晴風の。私の上司なんだからシャキッとして欲しいわ。」

「そうだね…」

 

そう。私の例の事があってから青葉は1度改装し直して、現在は最終チェックでドック入りしていて、結局は青葉がロールアウト出来ないで空いていたこの晴風になったのよね。この艦も私が手を加えてるけど。

 

ん?あの猫…ミケちゃん好きそう。

 

「ミケちゃん、あの猫かわいいよ?」

「かわいい!」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

晴風。陽炎型航洋艦。

全長122m。全幅11m。基準排水量2,137トン。船籍番号Y467。最大速力38.7ノット。航続距離6,400海里/18ノット。武装:16式14cm連装砲3基、4連装魚雷発射管+自発装填装置各2基、12.7mm単装機銃2丁、高性能機関砲「ファランクス」2基、大海掃具1基、小海掃具1基、爆雷投下台2基、爆雷投射機1基、爆雷68個。

 

現代の航洋艦の平均最大速力は33~35ノットと言われている。その中でも私の開発した缶を使っている艦は36ノットが平均。島風型なら42くらいまで出るかしら。

 

とはいえ、安定性にかけるのも事実。超高圧超高温圧縮缶を使っているから。

 

その晴風の中には様々な部屋がある。例えば教室や艦長室、食堂、医務室。もちろん乗員用に幹部乗員は2人部屋、一般乗員は4人部屋となっている。この他に第1士官室、第2士官室がある。幹部クラスの会議には第1、さらに限られた人なら第2を使うわ。

それはさておき、そのうちの教室に入ると、航洋艦とは思えない教室の広さが目に入ってきた。

 

「ミケちゃん、教官が来るまで時間が無いわ。そろそろ着席させて幹部だけでも自己紹介させた方がいいわ。」

「そうだね…とりあえず、私とほのちゃんだけでいいと思うよ。時間もないし。」

「分かったわ。」

 

私の進言にミケちゃんが声を上げる。

 

「みんな!時間前だけど、着席して!」

 

ミケちゃんの言葉にみんなが話をやめて着席する。

 

「はじめましての人が多いよね。まずは艦長の私と副長の自己紹介だけやらしてください。艦長の岬明乃です。浪江中学校出身の士官候補生です。ちなみに、航洋艦クラスでみんな成績が低いと思ってるかもしれないけど、このクラスは元々重巡クラスが間に合わなくて急遽用意した艦なの。その証拠に、副長も士官候補生で、各科には実技で特殊な方向に能力を持つ人が集まっています。この艦なら士官候補生だけで構成されている艦と同等以上に動けると信じています。これから3年間、よろしくね!」

「副長の葉月ほのかよ。半年ほど前に酷いバッシングを受けた艦船開発者。まあ本職は指揮官なのでそちらがバッシングを受けても毛ほどでもないけどね。あと、体力的には虚弱体質なので、そういう点では配慮してもらえると助かるわ。ちなみに、バッシングを受けても、搭載され続けてる高性能機関砲ファランクスも私の設計よ。よろしくお願いするわ。」

 

私の自己紹介が終わると同時に古庄教官が入ってきた。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

(この子達…統率力が高い。特に副長は艦長の補佐が勘弁ね…さすが小学生から士官候補生なだけある。)

 

古庄薫は晴風の教室の前で2人の士官候補生について見ていた。

 

(…!?葉月ほのか…気配を消した私を気づくとは…)

 

古庄は終わったのを見計らって教室に入る。

 

「晴風クラス、全員そろっているな?」

 

古庄は左右を見回して、人数を確認する。

 

「艦長。」

「起立!」

「主任指導教官の古庄です。これからあなた達は2週間の海洋実習に出ます。初めてのことで不安もあるでしょう。ですが、穏やかな海は良い船乗りを育てないという言葉があります。この2週間で皆さんがどれだけ成長できたか…楽しみにしています。それでは各自、艦長の指揮の下、出港準備。」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

艦橋に行くのにミケちゃんに手伝ってもらう。真梨ちゃん―彩木さんだけど、真梨ちゃんが三隈の頃は手伝ってくれて、改装中は長時間のため基本的に車椅子だった。今回は艦橋に私用に設置型折りたたみ椅子を複数取り付けてもらっている。

 

「大丈夫?」

「はぁ…はぁ…虚弱体質は若干治ったと思っても…はぁ…体力は変わらないわ……」

「ほら、この階段で最後だから。」

 

流石にミケちゃんがどれだけ運動神経が良くてもおんぶはできまい。真梨ちゃんと私なら身長差が20cm以上あるから出来るかもしれないけど。

 

艦橋に着くと、既に航海長以外は居た。

 

「艦長に副長!?大丈夫ですか!?」

「私は大丈夫だけど…ほのちゃんはしばらく無理そうだね…」

 

すると、ミケちゃんが艦長の証である艦長帽を脱いでみんなに自己紹介をする。

 

「さっきも自己紹介したけど、改めまして、岬明乃です。よろしくね!こっちが副長の葉月ほのかちゃん。あなたは?」

 

ついた時に安否を聞いてくれた子が答えた。

 

「私は…書記の納沙幸子です。」

 

それに連なるように制服にオレンジのパーカーを着た子が自己紹介する。

 

「水雷委員の西崎芽依よ。」

 

遅れた人が今到着した。

 

「すみません!遅れました!航海長の知床鈴です。あなたは?」

 

どうやら残った1人以外は面識があるようだ。運がいいわね。

 

「わ…う…」

「砲術委員の立石志摩さんだよね?」

「うんっ」

「よし!それじゃ、定位置について!出港用意!」

 

私もそろそろ動かないとね。

 

「前部員、錨鎖詰め方!出航準備!錨をあげ!」

 

西崎さんが驚く。

 

「うおっ!?復活した!?」

「艦長。」

「両舷前進微速、140°、ヨーソロー!晴風出港!

 

出港して艦と艦の間がある程度開くと、ミケちゃん…艦長が命令する。

 

「航海長操艦。」

「「「航海長操艦。」」」

「両舷前進原速、赤黒なし、進路150°!」

「頂きました、航海長。両舷前進原速、赤黒なし、進路150°!」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

案の定、エンジン停止。再始動しないという不具合を起こした。

 

一旦学校に帰ることになった。近くを通る、大湊海洋学校第一学年所属の松型航洋艦 梨 に曳航してもらう予定である。

大湊海洋学校は、ブルーマーメイド養成学校のうち、共学である珍しい学校だ。東舞鶴男子海洋学校からブルーマーメイドに就職することはあるが、ブルーマーメイドのための学校で、男子がいるのは珍しいのだ。(ブルーマーメイドは艦長などの組織のトップには女性を配置することが義務となっており、ホワイトドルフィンの男性のみとは違う。が、もちろん男子のブルーマーメイド就職率は毎回0.1%から0.5%と言われる。)

大湊海洋学校は毎年募集人数が35名で、1クラスしかない。

そして、今年の首席合格者は…

 

「お久しぶりです、葉月艦長!」

 

かつての三隈の水雷長の浪江中学卒業の士官候補生 中野千歳であった。



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16、反乱されちゃった!?

中野千歳は航洋艦 梨 の艦長を務めていた。

 

「お久しぶりです。岬さんも。」

 

曳航索の取り付けはまだ初航海の子たちが多いのでまだまだ時間がかかるものと思う。

 

ちなみに、ほのかと明乃は梨に来ているので、晴風の指揮は航海長の知床さん―艦長があだ名をつけるので全体としてあだ名を使うことが多いので今後はリンちゃんにしておく―に任せている。

 

航洋艦 梨は松型というおよそ『45年前』に造られた艦型である。そう、戦争がない分、技術的にも、予算的にもブルーマーメイドの艦船開発とほのかの前世の艦船には大きく隔たりがある。

主に主砲が主兵装であること。新型艦の改インディペンデンス級などの軽装甲中型艦は前世のミサイルの出現に伴ったものではなく主砲命中率が高く、かつ戦争が起こりづらいので対艦隊戦が起こりづらく哨戒などの任務のために速度と敏捷さと燃費が良い方が優先されるということで中途半端な装甲が廃れてきていること。この間のミサイルの廃止もその一端である。

もちろん、昔ながらの艦も未だに建造されている。この間、横須賀女子海洋学校の学園艦ドックに入渠した艦船に進水したばかりの陽炎型があるはずである。

 

話は戻るが、この松型は世界一『売れている』航洋艦である。建造費の割に性能が悪くないのである。さらに建造時間もたったの4ヶ月で済む。ちなみに、航洋艦のブルーマーメイド及びその養成学校以外への販売はこの松型と神風型のみ(海外でも型落ちの旧型艦のみ)であり、護衛業を営む民間護衛会社は販売されている航洋艦を使用することが義務付けられている。まあなんだかんだいって世界的に見ると松型や神風型も海賊に対して護衛出来るほどの性能はあるのである。(尤も、最近の海賊艦は魔改造された艦が多く民間護衛会社の被撃沈率が高い傾向にあるが。)

 

簡単に言うと、大湊海洋学校は比較的予算に恵まれていないのである。ブルーマーメイド養成学校は基本的に卒業時の成績とそれまでの教育艦としての活動歴でブルーマーメイドでの准士官・下士官に任命される。よって、ブルーマーメイド養成学校やホワイトドルフィン養成学校は予算的にほかの学校よりも特に多い。のだが、准士官以上の割合の多い学校にこそ予算が多く割り振られるため、三大海洋学校以外では予算が厳しめである。

 

 

補足すると、ブルーマーメイド・ホワイトドルフィンの組織はあのかわぐちかいじの沈黙の艦隊にあった『やまと保険』に近い。

 

やまと保険

やまとが存在し続けることが他国の利益になるような政治的構造を作ることを目的とした保険。イギリス大手保険会社を介して日本政府がやまとに保険をかけ、理念に同意した各国政府を保険の引受人、国連を受取人とする。これにより軍産複合体のように戦争が利益を生む構造ではなく、平和が利益を生む構造へシフトさせ、結果的に軍事バランスとも条約とも無関係に平和関係が成立するという、新しい安全保障体制である。国連の沈黙の艦隊実行委員長曰く「平和を金で買う」保険であり、彼は世界市民一人一人に1ドルからの株主を募り、配当として世界の核兵器廃絶と軍備永久放棄を目指す株式会社を設立することを提唱した。(引用・参照:Wikipedia)

 

ブルーマーメイド・ホワイトドルフィンの組織はブルーマーメイド憲章署名国が予算と技術を出し合って運営する、全ての署名国に対する抑止力であり、非署名国に対する防衛力である。上のやまと保険に形は近いものがある。一応、日本をはじめとした各国の海上安全委員会もあるが、それはあくまで港とブルーマーメイド・ホワイトドルフィン及びその養成学校への発言権があるだけである。

 

 

そんな話をしているうちに曳航索は取り付けを終えた。

私たちは晴風に戻った。

 

その空は、先程までの澄み渡ったそら色と言うよりはどんよりとした青色が広がっていた。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「航海長より、艦長へ。指揮権を戻します。」

「はい、了解です。指揮権を受け取ったよ。ありがとね、リンちゃん。」

「は、はい。」

 

晴風に戻ってから各科の中で休息などのローテを組みつつゆったりとした空気が流れる中、指揮権を戻した明乃は機関室へ向かう。

 

「機関室どう?」

「てやんでぃ!どーもこーもなんでぐずってるのかがわからん。」

「ホント、総点検になっちゃってるわよねぇ。」

 

そうボヤくのは機関長の柳原麻侖と機関員の伊勢桜良である。

 

「2人ともボヤいてないで手を動かしてよ。」

「マロンは動かしてるんでぃ!」

「ちょっと瑠奈、それは違う。」

「えー!?このバルブってここじゃないの?」

「瑠奈は分解できても組み立てはダメね。」

 

2人に突っ込む若狭麗緒にその後ろで言い合い(掛け合い?)をするのは駿河留奈と広田空である。

 

明乃が機関室に入ってきたことすら気がついていない。

 

「やれやれ…宗谷さんがいないなんて…」

 

ブツブツ独り言を言いつつ黙々と機関長並みの速さで手を動かすのは機関助手の黒木洋美だ。どうやら試験会場で出会ったましろに一目惚れしたそうだ。

 

乾いた笑みを浮かべつつ機関室を後にする明乃。まったりした空気の流れる晴風の中でこの機関室だけは言葉だけ聞くとホンワカしてそうだが、殺伐とした空気が漂っている。しかも発電機は回し続けているので機関操作室ならともかく機関室は暑い。これには明乃もうへぇという顔を浮かべてしまう。

 

「あれ?美波さん?」

「ん?艦長。どうかしたか?」

「こんなところで美波さんこそ何してるの?」

「ああ。…迷った。」

「迷ったのかぁ…迷った!?」

「ああ。…全ての道はローマに通ず。狭い艦内だ。歩いていればいつか帰れる。」

「そ、そっかあー。」(その泣きそうな目で言われても…)「案内しようか?」

「……不本意だが、頼む。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥だ。」

「ちょっと違うような気がするけど…」

「………そうか?気にするな。医務室に着いたら茶くらいだそう。」

「まさかと思うけど砂糖なしの塩ココアじゃないよね!?」

「意外と美味いぞ?」

「え、遠慮しとくよ…はいここだよ。」

「かたじけない。」

 

塩ココア砂糖なしはどうやら天才に好まれるようである。ほのかといい美波といい。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「猿島が反乱!?」

 

晴風が学校に戻ってから数時間がたって、日本船籍の貨物船が砲撃を受けたとブルーマーメイド西太平洋北方司令部から横須賀女子海洋学校の宗谷真雪に連絡があった。

 

猿島は父島や母島などの離島を結ぶ小型貨物船を砲撃。これを中破させ負傷者を多数出したと。

 

これに対しブルーマーメイド西太平洋北方司令部は非常事態を宣言。日本会場安全委員会は全ての港に出港禁止を発令し、付近の国も同じような反応を示した。

 

「速やかに学内で処理せよ。これ以上の犠牲が出るようであれば強硬手段もやむなしと判断する。ブルーマーメイド西太平洋北方司令部発、横須賀女子海洋学校宛。以上。」

 

養成学校は一応ブルーマーメイド・ホワイトドルフィンの一部隊の教育隊としての扱いである。

 

ブルーマーメイド・ホワイトドルフィンの階級は上から、

 

上級海将(名誉職)

海将

准海将

海将補

総監

1~3監

1~3正

1~3尉

准尉

曹長

1~3曹

士長

1~3士

 

となっており、海将補以上が将官、総監から3正までが士官、1尉から3尉が准士官、准尉と曹長が下士官、1曹から3士が…いわゆる兵卒である。

あくまで准士官・下士官を育成するための学校である、養成学校の生徒は各艦の役職によって仮階級が与えられる。

 

例えば、士官候補生が入っていない場合、

 

艦長→曹長

副長→1曹

航海長・砲術長・水雷長・機関長・主計長→2曹

応急長・機関助手・医務長・記録員・給養長・予備操舵員→3曹

その他→士長

 

と言った具合である。

 

晴風の場合、士官候補生が2人居るので、

 

艦長→3尉

副長→准尉

 

となっている。

 

さらにブルーマーメイドには部隊内で問題が発生した場合、まずその部隊の中での解決が求められることが多い。その方が大事になりづらい。

 

「今動ける艦は?」

「間宮・明石と護衛の浜風・舞風、速吸と護衛の秋風、学校にいる晴風、教員艦として長良・浦風が学校で待機中。他に山城、加賀、伊吹、生駒、青葉、萩風、谷風がドック入りしています。」

「伊吹と生駒所属の空挺団は?」

「あれは現在使われていないため…学生が3年次に選択科目として使うための艦ですから…ただ、青葉だけは最速で前倒しすれば4月の下旬には間に合います。その他はどれだけ急いでも航洋艦クラスで3ヶ月はかかります。」

「そう…通信の取れない艦は?」

「比叡、鳥海、摩耶、五十鈴、名取、天津風、磯風、時津風、照月、涼月、アドミラル・グラーフ・シュペー…そして武蔵です。」



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17、会合しちゃった!

学生艦であるため、晴風を始めとして現在連絡の取れる横須賀女子海洋学校の直教艦は全て連絡の取れない直教艦の捜索に当たり、教員艦の長良・浦風が猿島の捜索・対応を行う。

 

4月8日、機関の回復した晴風は鳥島方面への捜索に出ていた。

 

出港禁止が発令されており、貨物船も護衛艦が付いているため、ビーコンの出ていない艦は基本的に通信途絶艦だ。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

「副長、定時交代です。この4時間に周囲に艦影無しです。」

「はい、確認しました。ゼロヨン当直お疲れ様、納沙さん…じゃなくてココちゃん。」

「副長もあだ名呼びなんですか?」

「郷に入っては郷に従えよ?ココちゃん。艦長がそう呼んでるんだから私もね。」

「なるほど…この後は08:00までのヨンハチ当直ですけど、副長大丈夫ですか?」

「ええ、通常配置の時には各課で融通出来るからその時に休んでいいって言われてるわ。まあ、なるべく休む気は無いけどね。」

「無理はしないでくださいよ?」

 

この艦内でも、もう私の虚弱体質は結構知られてる。

 

「それにしても、なんで通信途絶艦が出たんでしょうか?もしかして…『我々は、ブルーマーメイドの教員艦などというちっぽけな存在ではない!せんげんする!我々は、独立国家、猿島!意見を同じくするものよ、着いてこい!』『きゃー!古庄教官!かっこいー!どこまでも着いてきます!』って言うのはどうでしょう?」

「流石にそれは…そもそも猿島を初めとしてどうなっているかも分からないのよ。どうなってても不思議じゃないわね。」

「ですよね!夢は大きく!」

「いや、それは夢じゃなくて―――」

 

ドーン!

 

『着弾!左舷!』

『至近弾!第2倉庫に浸水!』

 

ドーン!

 

『また着弾!右舷!夾叉されています!』

『烹炊室で茶碗と炊飯器が壊れました!』

 

「総員配置について!」

 

私は握っていた操舵輪を回す。

 

「機関第3戦速!取舵いっぱーい!野間さん、砲撃点は!?」

『10時の方向!距離26,000!』

「なんで気が付かなかったの!?」

『電探に反応ありません!』

『あれは……望遠で確認しました!本校所属の改インディペンデンス級哨戒艦『猿島』です!』

「もしかして…あの時試作した光学迷彩装置まだ積んでたの…しかもあの船に使われている板はステルス…気づかないわけね……」

「「遅れてごめん(ました)!」」

「ごめん…」

「ごめんね!遅くなった!」

 

ミケちゃんとリンちゃんとタマちゃんとメイちゃんが艦橋に来た。

 

「艦長、指揮権を戻します。リンちゃん、操舵よろしくね。」

 

指揮権と操舵輪を開け渡す。

 

「つぐちゃん、学校に打電!対応の確認お願いね。」

『了解です!』

 

「リンちゃん!おもーかーじ!」

「おもーかーじ!面舵いっぱーい!面舵30°!」

 

「い…メイちゃん、右舷魚雷発射用意、弾頭教練弾、発射雷数2、目標猿島。直接当てていいわ。」

「よっし、了解!距離…角度…速度…三角関数が……よし!照準よし!未来位置計算よし!」

「攻撃始め。」

「撃てー!」

 

遠距離雷撃戦を指示する。

ぶっつけ本番ではあるが、航行と攻撃を分担するミケちゃんと私。

お互いに同じ船に乗ってきた仲であり、どんな動きをするか自ずと見えてくるものだ。

 

『学校から連絡です!停船を呼び掛けつつ威嚇射撃、それに応じなければ足を止めて欲しいとの事です!』

「了解、ありがとね!」

「古庄教官…何が目的なのかしら……だいたい、決める気がないように見える…レーダー照準も無いわね。」

「それって、手加減してるってこと?」

「そうですね…改インディペンデンス級なら毎分22発でこの距離を誤差数メートルで撃てるはずです。」

「……誤作動で電波系が使えない?」

「それもありそうですね…もしくは今までに民間護衛艦と戦闘して壊れたとか?」

「それは無いわね。私たちにその情報が無い以上、そんな戦闘があるはずがないわ。」

「ですよね…」

 

『左舷に至近弾!後部甲板に浸水!』

「…傾斜し始めたわね。」

「不味い…」

「に、逃げようよ…」

「………機関いっぱい、取舵20°、右砲戦、左雷撃戦。」

「ミケちゃん?」

「回り込むよ。このままじゃあ逃げるにも逃げられない。」

「確かに、航洋艦と非装甲哨戒艦―巡回艦じゃあ巡回艦の方が速いわね…巡回艦は長距離を速く巡回しつつ抑止力になりうる艦として設計された艦。決戦艦のひとつでもある航洋艦よりも武装こそ少ないけど速度と敏捷さと居住性ではかなわないわ。」

「じゃあどうすりゃいいんだー!!」

「………魚雷を撃とう。」

「当てるのね?」

「確かに装甲が無い巡回艦を沈めずに足を止めることは今の状況では難しい。でも、実弾魚雷を横っ腹に当てれば…」

「速度は殺せる、よね?」

「うん。そもそも巡回艦の対水雷防御は薄いから。1発だけ、機関部に当てれば止められるはず。」

「いいわ。水雷指揮代わって、メイちゃん。」

「りょ、了解。」

「よし、次のタイミングね!」

「了解よ。」

「リンちゃん、おもーかーじ!」

「おもーかーじ!面舵25°!」

「魚雷発射管2番、発射雷数1、弾頭実弾、左115°。」

『了解…二番発射管、旋回完了。』

「とーりかーじ!」

「取舵20°!」

「第2魚雷発射管、攻撃始め!撃て!」

 

発射された魚雷はミケちゃんが反航戦に持ち込んでいたものをすれ違いざまに猿島の艦尾にぶち当てた。

 

「めいちゅう!」

「機関第4戦速!鳥島方面へ!」

「進路30°!」

「つぐちゃん、学校に連絡お願いするわ。緯度経度と戦闘データを送信しといてね。後で艦長が顛末書を提出するから。」

『了解です。』

「あのぉ…」

「顛末書は手伝わないわよ?ミケちゃん。」

「だよねぇ…たはは。」

「ほら、まだ気を引き締めなさい。猿島の砲の死角とはいえ何があるかわからない距離よ。」

「「「了解!」」」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

『それで、猿島は?』

 

艦長室にあるテレビ電話会議システム用のパネルに映る宗谷校長が席に座ってテレビ電話で報告しているミケちゃんに聞く。

 

「先程PDFで送信しました顛末書の通り…ですけど、そんな話が聞きたいわけじゃないんですよね?」

『ええ。あなた達がみて体験した勘を聞きたいのよ。』

「恐らくまた戦いになるでしょうね…」

「付け加えて私からも言わせてください。猿島からは対水上レーダー波及び火器管制レーダー波が探知出来ませんでした。何らかの不具合…もしくは使えない理由があったかと。火器管制システムが正常ならばもっと被害が大きかったと考えます。それほどまでに近かったですから……」

『そう…』

 

宗谷校長は意を決してといった風に顔を上げる。

 

『あなた達の被害は泊地修理でなんとかなるかしら?』

「吃水線より下のダメージは無くはないですけど…まあ何とかはなるでしょう。」

『そう。じゃあ後で明石と間宮に合流して、修理と補給を。何か足りないものは予め連絡した方がいいわね。』

「了解しました。」

 

私とミケちゃんが敬礼すると答礼を返しつつ宗谷校長は通信を切った。



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