ハイセが生まれて約数ヶ月。私はケンと一緒にあるマンションの一室で生活している。始めは私は地下のままでもいいと言ったけど、ケンやみんなは地上のちゃんとした居住空間に移ったほうがいいと押し切られ、今こうしてここに住んでいる。
ハイセが無事に生まれてきてくれたので私の食生活は元に戻った。といっても私は狩りをしていない。私の食事はケンの血で賄っている。ちなみにケンの食事は私の血で賄っている。ハイセは今のところ私の母乳が食事なので肉しか食べれないのか人間の食べ物も食えるのかは不明。前例が確認されてない分謎だらけだ。
今日は確かアジトの方で喰種側の打ち合わせあるんだったか。じゃあケン遅いのか・・・
「ハイセ」
「きゃ~う」
「ふふ、元気だなおまえ」
「まんま、ま~」
「今ママって言った?」
「?」
「いっか・・・」
抱き上げていたハイセをベビーベッドに寝かせて乾燥機に入れておいた洗濯物を取りに行く。とりあえず料理以外の家事はできるのでやっているのだ。
ベビーベッドの近くで洗濯物を畳みいつでも我が子に駆け寄れるようにしておく。うん、今日も平和に終わりそうでよかった。
―――いいね、今回は君にご登場願うとしよう。
私を楽しませておくれよ―――
「は?」
頭に響く声それと同時に私の足元が光った。見るとそこには魔方陣のようなものがある。
「なんっ!ハイセ!!」
抵抗する間もなく私は魔方陣の光に包まれた。ハイセが伸ばした手に触れることは叶わなかった。
*****
「で」
私が目を覚ますと―――そこは路地裏だった。
「どこだ、ここ」
そのままでいるわけにもいかないのでとりあえず路地を抜けて人間と、よくわからないものの匂いがする明るい通りに出た。
そこは人間と奇妙な生物が行き交う、少なくとも私の知る東京ではあり得ない光景が広がっていた。よく見れば通りに並ぶ店や広告に書かれている文字は日本語ではなく英語と、よくわからない不思議な言語で書かれている。ただ、英語は元々勉強していたので解るのだが初見であるよくわからない方の言語も解るのはどういうことなのだろう?
「ハイセ・・・ケン・・・」
あの魔方陣に呑まれて触れることすら出来なかった我が子の伸ばされた手。今頃お腹を空かせて泣いているのだろうか?それよりもケンがいない以上あの子はあの部屋に一人なのだ。それが一番気にかかる。やっと落ち着いてきて、やっと家族でゆっくりできるようになってきた頃だったのに。台無しである。
とにかく一刻も早く帰らなければ。来た方法があるのだから帰る方法だってあるはずだ。
私は置いてきてしまった二人の事を思いながら情報を求めてこのよく分からない街に繰り出した。
誘拐犯誰かはまだ決めていません。最初はフェムトにしようかな~とか思ってたんですけどちょっと迷いまして・・・
なのでフェムトかオリキャラかは未定です。
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始まりの出会い
ちなみに読んでいれば分かると思いますが、トリップ後のアヤセちゃんの姿は・・・
とりあえず歩いててわかるのはよくわからない奴らと人間が共存している世界であるということである。普通に会話してる奴らもいれば、避けて通る奴らもいる。なるほど、共存といっても受け入れられないやつは受け入れられない。十人十色、千差万別ってところか。
店も英語のやつより見慣れない言語の看板のほうが多い。
「共存という名の強要・・・か?」
歩きで観察できるのはこれくらいだろうか?と思っていると何やらさっきとは別の路地から怒鳴り声が聞こえた。
ほんの少し角度を変えて遠目に路地の中を見てみると弱そうな人間の男をよくわからないやつらが取り囲んでいる。穏やかじゃねーな。と、取り囲んでる奴の中でも特に背の高い奴が腕を上げてその手には財布、のようなものがあり、人間の男はそれを取り返そうとしているらしかった。・・・カツアゲか。
なんかこのパターン前にもあったような気がする。まったく感覚が鋭いと余計なことにも気が付いてしまう、そのうえなんとなくこういうの見つけると放っておけない。我ながら困った性分である。
自分に溜息を吐きながら問題の路地に入った。
「なあ、そんなとこで何してんの」
「ああ?」
「見てわかんねーの?嬢ちゃん、カツアゲだよカツアゲ!!」
「うわ、ついにさらっと認めやがったよこいつら!!」
人間の男は両手を上げつつ的確なツッコミを披露する。必死そうに見えて実は余裕あんじゃねーの?こいつ。
「とりあえず、返してやったら?
「ぶわはははは!何言ってんだこの嬢ちゃん!!」
「こいつは取った時点で俺らのなんだよ!部外者はすっこんでな!!」
「なにもできねえ人間のくせによお!」
「よく見ればいい女じゃねえか・・・まあ相手にすんだったらもうちょい年食ったほうがいいがきっと金持ちの変態どもには大人気だろうぜ!」
カツアゲに人拐いこいつらチンピラとか鉄砲玉とかそういうのか?つーかその図体で人間一人相手にって見かけ倒しかよ・・・
このままにしてても埒があかないので強行手段にでも出るか。そう思った私は上げられた手から財布を奪い着地する。
「取ーった」
「ああ!そいつは俺らのだ返しやがれ!!」
「ばーか、元々はそいつのなんだろ、それに奪った時点で私のもんだ。おまえらがそう言ったんだぜ?それを私がどうしようが私の勝手だ」
「この女ァ!!」
私に盗られたのが嫌だったのか、それとも言い返しが癪に障ったのか私に襲い掛かってきた。単純だな、まあひょっとしたら私も人のこと言えないかもしれないけど。
にしても・・・
「遅い」
今まで人間離れした捜査官たちや喰種の実力者相手に戦ってきたこともあってかこいつらの動きがすこぶる遅く見える。なので人間や喰種ではないこいつらに効くかは分からないが、試しに打ち込んでみた。
「げ」とか「え゛」とか短い悲鳴をあげて全員倒れ伏した。・・・本当に見かけ倒しかよ。ならなんでこういうことするかなこういう奴ら。
とりあえずこの場で唯一無事な男に話しかけることにするか、財布返さないとならないし。
「そこのあんた、無事?」
「はあ、なんとか・・・」
気の抜けた返事をする男に財布を投げ、それを男がキャッチした。
「そら、大切なもんならしっかり持っとけよ。こんな路地うろつくな、またさっきみたいな奴に絡まれるぞ」
「あ、ありがとう!」
「別に、私はたまたま通りかかっただけだから」
「でも本当に助かったよ、給料入ったばっかりでこれから仕送りしようと思ってたとこだったから」
仕送り?しかも給料入ったばっかりって・・・じゃあもう少しでほんとにヤバイとこだったのかこいつ。
「気を付けろよおまえ・・・世の中ってタイミングのいいことばっかりじゃないんだから」
「うう、それは身をもって知ってる・・・」
「じゃ、今度から気を付けろよ」
「あ、ちょっと待ってお礼、お礼させて!」
「いいよそんなの・・・あ、やっぱり待って、それだったら―――」
「この世界のこと、教えてくれる?」
「は?」
これが、私、金木絢世と秘密結社ライブラに所属する青年・レオナルド・ウォッチの出会いである。
文中は濁してアヤセちゃん本人もまだ気が付いてませんが、実はアヤセちゃんカネキくんと出会った頃の15歳くらいの姿になっています。レオが敬語を使わなかったのもそのためです。
次はレオ視点にするか、アヤセちゃんにするか迷ってます。
ちなみにカネキくんとのカップリングが確立しているので友情系になります。
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把握/疑問
レオに聞いたところ。ここは元「紐育」――――――アメリカの都市・ニューヨーク。3年前に起こった「大崩落」の影響で「異界」と混ざって再構築された霧深い街――――――現「ヘルサレムズ・ロット」、というところらしい。私が日本の東京の20区から来たことを話したが、そもそも日本という国と東京はあるが「20区」という土地はないらしい。
というかまず、私の知る限りではニューヨークはニューヨークのままで「大崩落」なんてものは起こっていない。そんなもん起こってたら喰種VS捜査官どころじゃなくなっていただろう。
このちぐはぐ具合から、私は一つの可能性を考察した。
―――もしかしてここ、私のいた世界じゃないんじゃないのか?
考えたくない回答が出てしまった。ちなみにレオはこの話と考察をすんなり信じた。・・・嘘だろとか思っていたが、異界と繋がったココでなら何が起きても不思議ではないらしい。なんだそりゃ。
とりあえず帰るためにもここで生活しつつ地道に情報を集めるしかない。情報整理に付き合ってくれたレオに礼を言うと私はその場を去った。
とりあえず金を稼ぐためにも仕事しないと、拠点はしばらく廃墟だな。
―――まあその前に、この不気味な化け物を倒さないと。
路地に入って目の前に現れた男と対峙する。
「最近、狩りしてなかったし、ちょうどいい」
後にそれが「血界の眷属」と呼ばれるものであることを知るのだが、今の私はただの人の形をした化け物にしか見えなかった。
*****
その次の日。僕はライブラの事務所で深いため息を吐いていた。
「はあ~」
「何ため息吐いてんだ陰毛頭。バカが陰気だと余計にバカになるぜ」
「あんたは人の悩んでる姿を見て悪態しか吐けんのか」
「んだよ、人がせっかく気いつかってやってんのに」
「これを気遣いとは認めねえ」
「何か困りごとかい?レオナルド君」
そんなところを見ていたクラウスさんも会話に混ざってくる。ああ、そうだ!クラウスさんに相談してみればいいかもしれない。
「実はその、昨日の帰りがけに女の子に出会って―――」
そして僕は話した。昨日カツアゲにあったところを助けてもらったこと、聞いたところによると彼女はヘルサレムズ・ロットのない、大崩落がなかった世界の日本からきた存在であること。
「昨日来たばっかりだったみたいで、この街が危険な場所だって知らないみたいだったから。大丈夫かなって」
「なるほど・・・」
「まあ、ここに来た時点で日本みてーな死ぬ危険のない安全地帯なんざねーしな」
やっぱり、そうだよな・・・大丈夫かな、アヤセ。やっぱりあの時無理にでも引き留めて僕がここを紹介すべきだっただろうか。
そんな先にも立たないような後悔をしながら考え込んでいるとなにやら慌ただしい様子のスティーブンさんが入って来た。
「クラウス!話し中のところすまないが緊急の案件だ!少年もいるなら好都合だ、全員そのままで聞いてくれ」
「なにかあったんすか?」
「「血界の眷属」が弱った状態で発見された。原因はわからないが、弱っているといってもまだ活動している。大きい被害が出る前に至急現場に急行してくれ!!」
「はい!」
ライブラの超人たちをも手こずらせる血界の眷属が弱ってる?前に来たザップさんのお師匠様でも来たんだろうか?でも当のザップさんは平気そうにしてるし、じゃあ一体誰が?自分のその疑問が解決するのはもう少し後になる。
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ハイキュー!!
それは雛鳥との出会い
短編形式で投稿していこうと思ってます。
2度目の人生、初めての高校生活。
本当なら元々住んでいる東京の高校に進学する気だったはずが、何故か個人的諸事情によりそこから遠く離れた東北―――宮城の高校に進学することになった。本当は姉さんと一緒に住む家から通えるようなところがよかったのだが自分の問題で姉さんに迷惑をかけるわけにはいかないので蓮示さんと姉さんに無理を言ってこっちに来たのだ。今の生活は辛くはない。好きなだけ勉強に打ち込める環境に、ちょっと引っ込み思案っぽいけど素直で話しやすい友達もできた。前のように食べ物を受け付けない身体ではなくなったことから始めた料理も今度はコーヒーや家庭料理だけでなく、中華も極めてみようと思う。
喰種の時の能力と記憶は何の因果か残ったままで、それは蓮示さんも姉さんもあんていくメンバーも、そして他の一部の奴らも一緒だった。
出会い頭にアイツに思いっ切り抱きしめられたのが今でも忘れられない。そういえば、こっちに来るときアイツに何も言ってこなかったな・・・余裕がなかったのもあるけど、悪いことしたな。
そして6月。
「そろそろ期末テストだな」
「高校に入って初めてのテストかぁ」
「範囲的には問題なさそうだけど問題はひっかけだな」
「うう、普通の問題お願いします・・・」
「大丈夫だって、ヒトカは凡ミスさえしなけりゃいいんだからもっと自信持て」
「・・・うん、ありがとうアヤセちゃん」
「よし、じゃあ私は飲み物買いに行ってくるけど、なんかいる?」
「あ、じゃあ、ぐんぐんバナナ!!」
「わかった」
落ち込むヒトカに声を掛けると教室を出て自販機に向かおうと廊下を歩いていると誰かとぶつかった。
「あ、っと。悪い」
「・・・・・・」
私より背高いなこいつ。そう思って目線を上げると微動だにしない黒髪丸頭の男子がそこにいた。つーか白目向いてねーか、こいつ。
「大丈夫か?」
「・・・・・・」
「おーい」
再度呼び掛けてみるが反応なし。仕方ないので横から通り抜けると今度はオレンジ髪の男子とぶつかった。
「わっ、ごめん大丈夫?」
「大丈夫・・・」
「!・・・お、おれ、ま、前!み、みみっ見てなくてごめんなひゃい!!」
「?、いや別に大丈夫だから。こっちこそごめん。じゃあ私はこれで」
いきなり人のこと見てキョドるとか失礼だな、私はあんたと初対面だぞ。
そしたらそいつもあの白目向いてる奴にぶつかってた。とりあえず私にはもう関わりのないことなので放っておくことにした。
こいつらがバレー部きっての変人コンビで赤点の常習者であり、のちにそれが原因でヒトカと私が巻き込まれることになるとはこの時点では思いもしないことである。
出会った二人はもちろん日向と影山くんです。ちなみにアヤセちゃんは進学クラスでやっちゃんと同じ5組。友達はやっちゃんのことです。
トーカちゃんみたいな喫茶店店長の大人バージョンも書いてみたいです。
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