ハリー・ポッターと隻眼の少女 (シャロン)
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賢者の石
隻眼の少女


イギリスのとある山奥、人里離れたその場所に小さな武家屋敷の前に大きな蝙蝠のような人物、セブルス・スネイプは立っていた。

 

 

武家屋敷の側に立つ立派な門の隣、木彫りの表札には『ホーエンハイム』と書かれている。それを手に持つ一枚の羊皮紙と照らし合わせてスネイプは軽くため息をついた。

 

いくら校長の命とはいえイギリスの、ましてやこんな山奥に住む子供を迎えに行け、というのはかなり面倒だった。『姿あらわし』もできず『移動キー(ポートキー)』も、『煙突飛行ネットワーク』も繋がっておらず、ここまで来るのに電車にバスを乗り継ぎして半日使ってようやくたどり着いたのだ。

 

スネイプは今すぐ帰って眠りたい衝動をなんとか抑え込み、門を三回叩いた。

 

 

「んー、こんな夜更けに一体全体どちら様なのだ?」

 

門が開くとそこには薄いピンク色の髪を束ねてケモ耳をぱたぱたさせた少女が出てきた。というか、今は午前9時だ

 

「お前がここの主か?」

 

「なんだご主人の客人か…うむ、では客間に案内せねばな。ついてくるがいい蝙蝠よ。いやカラスか?」

 

「人間だ」

 

「むむ、狸ではないのか」

 

「……」

 

「とりあえずついてくるがいい。いまご主人は少し忙しい故にな」

 

 

ケモ耳の少女がくるりと回って武家屋敷の中へと入っていく。その後ろにはなんと尻尾まで生えていた。

 

 

客間に通されたスネイプは座布団の上に座り、出されたお茶を一口飲み、懐から一枚の手紙を出して机の上に置くと同時に襖が開いて先ほどのケモ耳の少女に引っ張られながらもう一人少女が入ってくる。

 

キレイな腰の辺りまで伸びた黒髪に薄い緑の和服、ぱっちりとした目にキレイなエメラルドの色をした瞳。その反対の左目には黒い眼帯をしていた。スネイプは僅かに年端もいかぬ少女に見とれてしまった。

 

 

「ご主人だ。可愛いだろ?」

 

「ちょっとタマ!?」

 

「なんだ。可愛いではなくキレイと言った方が良かったか」

 

「そうじゃないから…」

 

「……君がここの主か?」

 

「はい。ミラージュ・ホーエンハイムです。あなたは?」

 

「我輩はセブルス・スネイプ。ホグワーツ魔法学校で教鞭を振るっている」

 

「ホグワーツ……あぁ、アルバス・ダンブルドアが校長をしている」

 

「左様。そして君はそこへの入学が許可されたのだ」

 

「私が、ですか?」

 

「然り。しかし、入学するかどうかは君次第だ」

 

「断ることも出来る、のですね?」

 

「そうだ。どうする?」

 

「………」

 

 

少女、ミラージュは顎に手を添えて考えていた。スネイプはお茶をすべて飲み干してミラージュの返答を待つ。

 

そして、ミラージュの出した結論は

 

 

「行きます。今年入学するって事は例の『生き残った男の子』もいるんですよね?」

 

「左様。では親御さんにも話をーー」

 

「両親はいません。殺されました」

 

「……それは、すまなかった」

 

「大丈夫です。それに私には目標がありますので、悲しんでいる暇なんかないです。」

 

「目標、とな?」

 

「はい。私の目標、それは『闇の帝王』への復讐です」

 

 

スネイプは目を見開いて、目の前に座る少女を見た。少女、ミラージュのエメラルドに輝く瞳には今にも爆発しそうな怒りが露になっていた。

 

 

「それは、両親の復讐か?」

 

「はい。その為に魔法界の事を調べました」

 

「ならば知っている筈だ。『闇の帝王』は滅したと」

 

「私が調べた限りでは生きていますよ。まぁ、生きているかどうかも怪しいかもですけど」

 

「なん…だと…?」

 

「恐らくダンブルドア校長もたどり着いた答えだと思いますよ」

 

「…君の両親が殺されたのは?」

 

「いまから六年前、ですね。ヤツとヤツが取り憑いたヤツにです」

 

「……復讐するために魔法を学ぶと?」

 

「いえ。魔法を学ぶのは純粋に興味があるからです」

 

「そうか…」

 

 

スネイプは考えた。この娘はいずれは復讐の為に魔法界に攻めこんで来るだろう。単独であろうが複数であろうが、間違いなく来るであろう。そして、それを隠すこともなく堂々と言ってくる辺り、余程腕には自信があるのだろう。

 

この娘はこちらで保護しておくのが一番だ。そして誰も殺させてはならんし、殺されもさせん。手元に置いて見張っておくのが一番楽だろう。

 

 

「スネイプ先生。やはり復讐なんて考えていては、入学なんて無理ですよね…」

 

「いや。こうしてこの手紙がホグワーツから君に届いた以上、君は入学することが出来る」

 

「それじゃあーー」

 

「ただし、君が『闇の帝王』に復讐するというのは、隠しておくことだ」

 

「分かりました。約束します」

 

「うむ。では、行くとしよう」

 

 

「行くってどこに?」

 

「ホグワーツの入学式は明後日だからな。いまから入学に必要なモノを買い揃えに行く」

 

「ち、ちょっと待って!せめて着替えさせてください」

 

「……すぐに済ますのだぞ。我輩も忙しいのでな」

 

 

ミラージュは急いで立ち上がるとケモ耳の少女を連れて奥へと消えていった。スネイプは肩をすくめるとローブを翻して、武家屋敷の入り口である門の前に向かった。

 

それから十数分して、先ほどの薄い緑の和服から白に様々な花模様をあしらった和服に自身の三分のニ程の長さの朱色の杖を持って門から出てきた。

 

 

「それは?」

 

「あぁ、これが無いと落ち着かなくて」

 

「そうか。では我輩の腕に捕まるといい」

 

 

ミラージュがスネイプの腕を掴むのを確認すると、スネイプは『姿あらわし』をしてダイアゴン横丁へと跳んだ。

 

 

ミラージュ・ホーエンハイムにとって復讐など正直いってしまえば『どうでも良かったか』のだ。両親が死んだのは自業自得だし、なにより『魔法』という非現実をこれから学ぶことが出来るのが楽しみでしょうがなかった。それに復讐が目的だと思わせておくのがミラージュにとっての、もっとも重要な部分でもあった。

 

ミラージュ、いやホーエンハイム家にとってもっとも優先すべき項目、それは『賢者の石』を手に入れることだった。

 

 

 




どうもはじめまして。他の方々のハリポタ作品読んでたら自分もやってみたくなったので、やっちゃいました(笑)映画を主軸にしていく予定です。

オリ主の設定

ミラージュ・ホーエンハイム

左目に眼帯を着けた隻眼の少女。古くから続く聖28一族に名を連ねることが出来る『ホーエンハイム』家の現当主。
勉強は好き、というか誰かから何かを学ぶのが好き。

最近は使い魔の『タマ』からのセクハラ紛いの行為が悩みの種。


タマ

ピンクの髪を適当に束ねたポニーテールにケモ耳に尻尾の生えたミラージュの使い魔。自由気ままで何を考えているかよくわからないネコのような性格。fateのタマモキャットがモデル。


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『生き残った男の子』

ミラージュside

 

お腹の真ん中辺りを引っ張られる感覚と共に、ゴムの管の中を通る感覚を数秒味わって気がつけば私とスネイプ先生は薄汚れた、なんとも言えないパブの中にいた。

 

ってか気持ち悪い。吐きそうなんですけど。割りとマジで。

 

 

「気分はどうかね、ミス・ホーエンハイム?」

 

「ミラージュでいいです。あと吐きそうなんですけど、吐いていいですか?」

 

「場所を考えたまえ」

 

「気持ち悪い…」

 

「初めて『姿あらわし』を体験した者は有無を言わずに吐くのだが、それだけ言えれば問題なかろう」

 

「……吐きます」

 

「我慢しろ」

 

 

とりあえず吐けば楽になると思ったけど、どうやらこの蝙蝠男…スネイプ先生は吐く事を許してはくれなかった。おまけに私の口を押さえて、無理やり閉じてくれたのだ。

 

 

「んー!んーー!」

 

「我輩とて吐くなと言っているのではない。然るべき場所で吐いてこい、と言っているのだ」

 

「んんーー!?」

 

「まったく。こっちだ」

 

そろそろ限界が訪れて、スネイプ先生の手の中に戻してやろうとしたけど悪あがきをしたけど、スネイプ先生に抱えられてトイレに放り込まれた。

 

 

「もう無理、オロロロロロロロ」

 

 

 

 

 

「気分はどうかね?」

 

「……なんとか」

 

 

出すだけ出してげっそりした顔で杖を突きながらトイレから出てきた私に、スネイプ先生が先程と同じ感じで聞いてくる、

 

ムカつく。すんごいムカつく。なんかわかんないけどとりあえずムカつく。

 

ぶん殴ってやろうとしたけど、フラフラとしてスネイプ先生に支えられる羽目になった。なんか恥ずかしい。

 

水をもらって口の中を濯ぎ、喉の渇きを潤して少し休憩してから、スネイプ先生に連れられてレンガの壁の前に立っていた。そしたらスネイプ先生が「一度しかやらん。よく見ておけ」といって、懐から細長い杖を取り出してレンガの壁を叩いていく。

 

すると、レンガが独りでに動きだし、人一人通れる位の穴が空いた。そこを抜けると、私の目に飛び込んできたのは

 

 

「うわぁー…」

 

 

黒いローブを着て道を行き交う男女に、様々なモノが置いてあるお店に派手な装飾が施されたお店、大小様々な鍋が並ぶ店にフクロウが大量に並ぶ店、箒が飾られてある店等々、様々な多種多様な店が軒並み揃えて並ぶ光景に、私は口を開けてぽかーんとしてしまう。

 

 

「ここがダイアゴン横丁だ」

 

「……って」

 

「どうした?」

 

「………都会って、魔法界ってすげぇえええぇえ!!」

 

「!?」

 

「先生先生!あれ!あれなに!?」

 

「魔法薬を作る際に使う鍋だ」

 

「あれはあれは!?」

 

「箒だ。あれを使って空を飛ぶ」

 

「じゃああのフクロウたちは!?」

 

「あれはペットのようなモノだ。あのフクロウを使って郵便物を届けたりする」

 

「じゃあじゃあ…」

 

「………ミラージュ」

 

「なに!?」

 

「落ち着きたまえ」

 

「あ……」

 

 

スネイプ先生に肩を叩かれてようやく気付いた。周りの視線が痛い。とりわけスネイプ先生の視線が。

 

急に恥ずかしくなって、顔が真っ赤になっていくのがわかる。でもしょうがないじゃん、初めて見る光景に興奮するなと言う方が無理だ。でも流石にはしゃぎすぎたみたい。

 

 

「ごめんなさい」

 

「……はぁ」

 

「ありゃ、スネイプ先生。こんなところでなにを?」

 

 

スネイプ先生がため息をついて歩き出そうとしたときに、でっかい影がぬっと現れて私たちに話しかけてきた。

 

 

「ハグリット、貴様こそ何をしている?」

 

「俺はあれでさぁ。例の男の子とちとダンブルドアからの頼まれ事でさぁ」

 

「なるほど…」

 

「んでその娘さんはどちらさんで?」

 

「校長の言っていたもう一人だ」

 

「あぁ、お前さんが『ホーエンハイム』の娘さんか」

 

「初めて。『ミラージュ・ホーエンハイム』です」

 

「こいつぁご丁寧に。俺はハグリットってんだ、よろしくな」

 

「ハグリット、この娘を頼む。我輩は少しやることが出来たのでな」

 

「そいつは構わねぇんですけど、やることとは?」

 

「それは言えん。ではまたな」

 

 

そう言ってスネイプ先生はマントを翻して、人混みの中に消えていく。残された私は隣に立っているでっかいオッサン…もといハグリットとその隣にいる私と同い年の少年を見た。ってかこの子どっかで…

 

 

「あぁそうだ。とりあえず、グリンゴッツに向かおう。自己紹介はその道中でしてくれや」

 

「はーい。それじゃあ私から。さっきも名乗ったけど『ミラージュ・ホーエンハイム』っていうの。ミラージュでいいわ」

 

「僕はハリー、『ハリー・ポッター』よろしく」

 

「『ハリー・ポッター』…あぁ、あの有名な」

 

「そうらしいね」

 

「他人事みたいだね」

 

「僕はまだ赤ん坊だったからね。実感はないよ」

 

「だろーねー」

 

「それよりもミラージュ、君も魔法使いなの?」

 

「んー、ちょっと違うかな」

 

「違うの?」

 

「うん、まぁ。そのへんはあんまり聞かないでね、説明面倒だから」

 

「じゃあその杖は?」

 

「これ?これはね、見て驚かないでよ?」

 

 

私は手に持つ杖の柄の部分を指先で三度叩くと、ハグリットから見えない位置に移動して柄の部分を持ってほんの少し上に上げる。その瞬間、目に見えて怪しい光を放つ、美しい銀色の刃は現れる。ちらっとハリーを見ると目を見開いて驚いている。

 

それを確認すると、すぐさま刃を納めて、また杖の柄の部分を二度指先で叩いて左手に持ちかえる。

 

 

「いまのはなに?」

 

「秘密♪言えるのは仕込みがある。ってだけ」

 

「それも魔法?」

 

「まさか。これは魔法でも何でもない、普通のモノだよ」

 

「お前さんたち、着いたぞ。ここがグリンゴッツだ」

 

 

グリンゴッツ銀行。盗みに入るのは簡単だが、盗みに入ったが最後、二度と出てこれないと言われるイギリス魔法界の中央銀行。銀行に来るってことは目的は一つ、お金を卸すことだろう。お金を、お金、お金、金、金……あ。

 

 

「ハグリット、私お金無いんですけど」

 

「なんだ、スネイプ先生からなにも聞いちょらんのか?」

 

「一応持ってきてるんですけど使えます?」

 

「換金してくれるから大丈夫だ」

 

「なら良かった…」

 

 

本当に良かった。換金出来なかったら危うくその辺の石ころを金に変えてしまうところだった。見つかったらアウトだけど。

 

 

銀行の中には小さな小鬼(ゴブリン)が忙しなく動いている。小鬼はずる賢いがしっかりと礼節を持って接すれば大丈夫なんだとか。面倒くさいな。

 

それからハリーの金庫からお金を取り出す為にジェットコースターよりも質の悪いトロッコに乗って、右へ左へ上へ後ろへ走った後に急停止のフルコンボ。まって、また吐きそうなんだけど…

 

 

でも、そんな吐き気すらも吹き飛ぶモノが私の目に飛び込んできた。ハグリットが隣の金庫に入って出てきたのだが、手には小さな袋が一つ。それをポケットにしまうが、その時私は間違いなく感じることができた。

 

まさか、まさかまさかまさかまさかまさかこんなに早くお目にかかれるとは思わなかった。あの大きさ、なによりこの肌に感じる凄まじいまでの魔力。あれこそ私たち『ホーエンハイム』家が求めた『賢者の石』だ。

 

けど、あの石をここから持ち出すということはどこか別の場所に隠すということ。ハグリットはホグワーツの人間?だ。ってことはきっとホグワーツのどこかに隠すだろう。それも厳重にだ。でも、それで諦められるほど私は良い人間じゃない。絶対に手に入れてやる。どんな手段を使ってもだ

 

 

 





賢者の石発見。ミラージュテンションマックスです。仕込み刀は『座頭市』の持っているやつ想像してください。姿かたちはあんな感じです。


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杖選び

 

 

ミラージュside

 

 

グリンゴッツ銀行でハリーの使う必要な額をおろし、私は持ってきていたお金を換金したけど、どうやらかなりの大金だったらしく新たに金庫を作らされる羽目になった。

 

それからホグワーツで使う教科書類や鍋、動物ーハグリット曰くフクロウかヒキガエル、ネズミの三択らしいーを買い漁る。当然私はフクロウを買った。カエルとかネズミとかあり得ないし。なにより可愛くない。

 

そしてこれが私の今回の買い出しの本命である『魔法の杖』を買いにいく。ハグリットに案内された店は外観が少し古ぼけていて、看板には『オリバンダーの店 紀元前382年創業高級杖メーカー』と書かれていた。

 

 

店の中は無数の箱が天井高くまで積み重なり、所々で埃を被っている。店の中には誰もいなかったが、ハリーが「すみません」と言うと店の奥から梯子に乗って一人の老人がやって来た。

 

 

「いらっしゃい、坊っちゃん、それにお嬢ちゃん。私が店主のオリバンダーです。」

 

「杖を買いに来たんですけど」

 

「解っていますとも、ではさっそく杖を選びましょう。杖腕はどちらで?」

 

「杖腕?」

 

「利き腕のことですよ」

 

「両方なんですけど、よく使うのは右、いえ左ですね」

 

「ではお手を拝借。失礼しますね」

 

 

そう言ってオリバンダーさん、は私の肩から指先にかけてメジャーで測ったり、しわしわの指先で触りながら採寸を始めた。これが意味もない行為だったらこの爺、あとでぶん殴ってやる。

 

そして採寸を終えたオリバンダーさんは、近くにある箱を引っ張り出して蓋を開ける。

 

 

「ここにある杖は一つ一つが強力な魔力を持った芯を使っております。ユニコーンの鬣、不死鳥の羽根、ドラゴンの心臓の琴線です。しかし、それらは名前が同じでもそれぞれが少し違いを持つのです。故に同じ杖はありません。さらに、杖は持ち主を選び、忠誠を誓います。その杖の持ち主でない者がその杖を使っても、決して十二分な力を出すことなど出来ないのです」

 

 

なるほど。いかに杖が強力な力を持っていても、杖に選ばれなければその真価を発揮できない。杖にも意識があるのかどうかは知らないけど、杖の力を十二分に発揮したければ杖からの忠誠心を得なければならない。逆に杖からの忠誠心がなければ、その魔法使いはいかに優秀であろうと真価を発揮できない、ということか。

 

 

「檜に不死鳥の羽根、24cm、軽くしなやか」

 

 

杖を受け取り軽く振ってみる。なにも起きないし。

 

 

「合わんようですな。では………こちらを。楠にドラゴンの心臓の琴線、頑固」

 

 

杖を受け取って軽く振る。こんどは近くの山積みしてある箱がバタバタと倒れた。

 

 

「いかんですな。ではではこれは?白木にユニコーンの鬣。固くしなやか」

 

 

杖を受け取って軽く振る。白いユリが杖先から咲くが、力なく床に落ちた。

 

 

「うーむ。これも合わんですな。いやはや難しい」

 

 

それから何本か試したけど、どれも合わないらしく私の前で杖をとっかえひっかえする。いい加減早くしてくれと思う反面、やはり私に合う杖など無いのか。と、落胆してしまいそうになる。

 

ハリーは飽きてきたのか、店の外にあるクディッチ専門店の方をチラチラ見ている。

 

 

ウンウンと頭を悩ませているオリバンダーさんが、少し可哀想になってきた。仕方ない。ここまで来たら使うしかないか。

 

 

「あの、オリバンダーさん?」

 

「なんですかな?」

 

「私が杖を選んでもいいですか?」

 

「それは……なにか気になるものがおありで?」

 

「はい」

 

 

そう言って、私は手に持つ朱色の杖を床にコン、と当てて呪文を唱える。出来れば使いたくなかったけど仕方ない。ハグリットは店の外だし、ハリーには適当なこと言っておけば大丈夫だろう。

 

 

「我が呼び声に応えしモノよ、汝の求めしモノが来た。我は光を纏うモノ。我は闇を打ち払うモノ。我が声に応えしモノよ、その姿、我が眼前に顕れたまえ!」

 

 

今度は力強く朱色の杖を床に打ち付ける。すると、店の奥からガタガタと桁ましく音が鳴り響く。ハリーとオリバンダーさんはそれに驚くが、オリバンダーさんは店の奥へと消えていくと、一つの黒い箱を持って帰ってきた。

 

 

「まさか、この杖をあなたを選ぶとは…」

 

「ミラージュ、さっきのは?」

 

「気にしないでハリー。ただのおまじないだから」

 

「お嬢ちゃん、なぜこの杖が気になったので?」

 

「んー、なんとなく?」

 

「この杖に使われているのは、黒檀に不死鳥の羽根、しなやかだがクセが強い。いままでこの杖に選ばれた者は一人もいません」

 

「一人も…」

 

「では、こちらを」

 

 

差し出された真っ黒な杖。見るからに禍々しい雰囲気を持つ杖を、受け取り軽く振ってみる。すると、辺り一面にこれまた真っ黒なクロユリが咲き乱れた。それを見たオリバンダーさんは少しばかり驚いた表情をするけど、すぐさま眉間にしわをよせて頭を悩ませる。

 

 

「なんと…この杖に選ばれてしまうとは…しかし…どうしたものか…」

 

「ダメなんですか?」

 

「いえ。むしろこの杖があなたには一番合うでしょう。ですが…」

 

「ではこれで」

 

「よろしいので?」

 

「はい。私もこの杖が気に入りましたから」

 

「……分かりました」

 

 

杖の代金を支払って、私は手に入れた杖を懐に入れる。次にハリーの杖の選定が始まったけど、私以上にオリバンダーさんは悩んで色んな杖をとっかえひっかえしていたけど、ようやく納得のいく杖が見つかったらしい。

 

杖の選定が終わった私たちは、私が最初に来た場所『漏れ鍋』へとハグリット引率のもと向かい、そこでハリーとは入学式までのお別れとなった。

 

 

うん、あの呪文の事はなんとか誤魔化せた。それにこの左目の事も聞いてこなかったし、いまのところは大丈夫。問題はどうやって『賢者の石』を手に入れるか。ホグワーツで管理するなら、あの『アルバス・ダンブルドア』の目を掻い潜ってやらなければならない。どうしようかな……?

 

 

それにしてもクロユリの花か。なんか嫌な予感しかしないんだよね。確か花言葉は『愛』と『呪い』、だったっけ?個人的にはもっと縁起のいいモノが良かったんだけど。

 

 

 

 






クロユリ綺麗ですよね。自分は好きです。

さて、次はようやく組分けです。ミラージュどこにしようかな?



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キングスクロス駅にて

リアル忙しすぎ…


ミラージュside

 

 

ピンクの着物に紺色の袴に茶色のブーツ。腰まで伸びた黒髪をポニーテールにして、帯の所に朱色の杖を差し込んで、荷物の大量に載ったカートを押して、私は駅の中をうろうろしていた。

 

キングスクロス駅。ここからホグワーツに向かう汽車が出ているらしいけど...

 

 

「9と4分の3番線ってどこよ…」

 

 

そう。ホグワーツ行きの汽車が出る場所が分からない。だいたいなんなのよ、9と4分の3番線って。意味不明なんですけど…

 

それにしても魔法界はなんて面倒な所なんだろう。普通の人たち(魔法界の人たちはマグルって呼んでたけど)から隠れてコソコソ生活している割には、かなり派手な生活してるっぽいし。あと純血主義?みたいなのがよくわからない。スネイプ先生曰く、イギリス魔法界で流行りの思想だとかなんとか。知らんがなそんなもの。その中でも過激派がいるらしくて、それがヴォルデモート卿、俗に言う『闇の帝王』とかなんとか呼ばれてる中二病の変態さん率いる一派らしい。できれば関わりたくない。

 

まぁいまは死んじゃっていないとか、生きてるけど弱ってて隠れてるとかいろんな噂があるらしい。そのままチリのように霧散して消えてくれるとありがたいです。

 

そんなことはどうでもいいか。ひとまずは9と4分の3番線を探そう。でも、さっきから同じ所をぐるぐる回ってるだけだし、いい加減カートを押してる腕が痛い。

 

 

しょうがない。外ではあんまり使いたくなかったけど仕方ない。私は朱色の杖を引っ張りだして床を二回、杖の底で軽く叩く。

 

探知(ανίχνευση)。9と4分の3番線」

 

 

私を中心に目に見えない波紋が広がっていく。それから程なくして一本の柱から反応が返ってきた。

 

探知の魔術。簡易的なソナーみたいなものだし、魔法に反応するか少し不安だったけど無事に反応してくれた。とりあえず、その反応があった柱に向かってみると、そこには赤毛の集団がいた。

 

遠巻きに眺めていると、赤毛の子供が柱に向かって突っ込んでいく。何してるんだろうあの子?気でも狂ったのかな?

 

次の瞬間、その子供は柱の中に消えて行った。

 

はい?なんで?ってかあの子供はどこ行ったの?っていうかどゆこと?もしかしてあの柱が私が探してる9と4分の3番線につながっているとでもいうの?もしそうなら本当に魔法界はどうかしている。隠すにしても他に方法があるだろうに…

 

赤毛の子供たちは次々に柱に突っ込んでいく。その中に黒髪の少年が混じっている。その少年と同い年くらいの少年が柱に突っ込んで行った後、大人の赤毛二人と小さな赤毛がその場を去っていく。

 

とりあえず、私も柱に突っ込んでみようかな。もし本当にあの柱が9と4分の3番線の入り口なら早く行かないとまずい。

 

 

とりあえず、私はカートを押して柱に突っ込む。するとカートは柱にぶつからず通り抜けて、真っ暗な空間を突き抜けていく。それから程なくして、明るい場所に出るとそこには大量の人と一つの列車があった。

 

 

「マジかー。魔法界マジかー」

 

私の知る常識が崩れ落ちる音がする。予想はしてたけど、まさかここまでとは。恐るべしイギリス魔法界。

 

とりあえずカートを預けてトランク片手に、汽車に乗り込み適当に空いていたコンパートメントに入り込むなり、私はどっと椅子に崩れ落ちるように座り込んだ。なんか疲れた。分かんないけどなんか疲れた。

 

 

汽笛の音がして汽車がゆっくりと動き出した。うん、寝よう。少しだけ寝よう。目を瞑ってウトウトした瞬間、コンパートメントの扉が開いて二人の少年が入ってくる。

 

 

「ここ一緒にいいかな?」

 

「……騒がないでよ」

 

「ありがとう、ってミラージュ?」

 

 

私は呼ばれた気がしてふと瞼を開けると、そこにいたのは一昨日一緒にいた『ハリーポッター』だった。

 

 

「あら、有名人じゃない。こんにちは」

 

「それ嫌味?」

 

「まさか。むしろ褒めてるのよ」

 

「ハリー、知り合い?」

 

「うん。ちょっとね」

 

「はじめまして。『ミラージュ・ホーエンハイム』よ」

 

「ぼく『ロナルド・ウィーズリー』もしかしてあの『ホーエンハイム』?」

 

「知ってるの、ロン?」

 

「魔法界じゃかなり有名だよ。『錬金魔術のホーエンハイム』ってね」

 

「錬金?魔術?」

 

「ウィーズリー、それを誰から聞いたのかは知らないけど、あんまりペラペラ喋らないでよ」

 

 

赤毛の少年、ロナルド・ウィーズリーがいらない事を話しそうだったから、思いっきり睨みつけてやる。するとウィーズリーはガタガタ震えて、話すのをやめた。

 

そんなウィーズリーを見てハリーは今度は私に話しかけてくる。

 

 

「ねぇミラージュ。錬金魔術ってなんなの?」

 

「…はぁ」

 

 

最悪だ。でも説明しないと、延々とこの質問が飛んでくるだろう。それは困る。私は今すぐに眠りたいのに…

 

仕方ない。ある程度は話すしかないか。

 

 

「錬金魔術ってのはね。元々は魔法界にあった錬金術に人間…マグルの世界にある魔術というモノを混ぜ合わせた言葉通りの意味。錬金術は例えば石を鉄や金に変えたり、何かを錬成する為のモノで、魔術はそうね……何かを触媒にして自身の魔力を消費して奇跡の真似事をするモノ、かな。といっても奇跡の真似事ってだけで限界はあるから。死者を蘇らせる事なんかも出来ないしね。錬金術も同じ。錬金術は何かを錬成する際に何かを代償にしなければならない。同じ質量からまったく別の質量のモノは作れない。分かりやすく言えば1からは1しか作れないってことね。等価交換ってやつ。で、『ホーエンハイム』の先代たちはこの2つを合わせて使えば自分たちの目的が達成できるんじゃないかって考えたの。んで、この2つには1つの共通点があるわけ。錬金術は行使するために錬成陣が必要。魔術も魔法陣を書いて魔術を行使する。その2つの陣を上手く混ぜ合わせ、組み上げて生まれたのが、錬金魔術ってわけ」

 

「ミラージュもそれが使えるの?」

 

「まぁね。一昨日も見せたでしょ?アレが魔術。触媒はこの杖。陣は…まぁ見ても分からないからいいか。それから『ホーエンハイム』は古くから魔法界にいて、聖28一族に名を連ねることが出来るくらいらしい。もういいかな?私寝たいんだけど」

 

「あ、ごめん。また着きそうになったら起こすよ」

 

「お願いー」

 

 

疲れた。慣れないことはしちゃダメだね。さぁ寝よう寝よう。仮眠仮眠…

 

 




どうも。錬金術の説明はハガレンがベースです。

組み分けは次回で。ミラージュの服装ですがサクラ大戦の神宮寺さくらが参考です。


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組み分け

 

ミラージュside

 

 

騒がしくなってきて、一言注意してやろうと瞼を開けた私は、目の前の状況に戸惑いを隠せないでいた。

 

私が眠る前のコンパートメントは私、ハリー、ウィーズリーとトランクが3つだけだったのに、『ハーマイオニー・グレンジャー』というマグル出身の女の子がプラスされていて、辺り一面には魔法界のお菓子と思われるモノが大量に転がっていて、さらに入り口には金髪のいかにも金持ちのボンボンが偉そうに踏ん反りかえっていた。

 

どういうこと?ってか何が起きてるのコレ?ってか五月蝿い。マジで。

 

金持ちのボンボンとウィーズリーがなにやら言い争っているようなので、私はゆっくりと立ち上がって傍に置いてある朱色の杖を取って、杖の柄の部分を指先で3回叩いていつでも抜ける状態にしておく。そして、ドスを効かせた声で一言。

 

 

「五月蝿い。寝てるんだから静かにしてよ」

 

 

私の一言にウィーズリーは一瞬で小さくなったけど、ボンボンはまだ偉そうに踏ん反りかえっていた。コイツムカつく。

 

 

「誰なんだ君は?」

 

「自分から名乗るのが礼儀でしょ?」

 

「ボクはもう名乗ったんだけどな」

 

「あぁ御免なさい。寝てたからなんにも聞いてないの」

 

「まぁいいさ。ボクは『ドラコ・マルフォイ』純血魔法族の一人さ」

 

「あっそ。それじゃ私寝るからとっとと出て行って」

 

「ボクに名乗らせて、君は名乗らないのかい?」

 

「ミラージュ」

 

「ミラージュか。わかった。君はマグル出身なのかい?」

 

「お生憎様。少なくともマルフォイ家よりは格式あると思ってるよ」

 

「君の家がかい?」

 

「そ。『ホーエンハイム』それが私の家よ」

 

 

ホーエンハイム。その言葉を聞いたマルフォイと後ろの二人(デフが二匹)は少し顔を歪ませる。

 

 

「まさか『裏切り者』の家系だったのかい。君は」

 

「だから?それに私自身、魔法界とは関わり無かったから家がどうとか言われても知らないし」

 

「だとしてもだ。君たち『ホーエンハイム』はイギリス魔法界の恥なんだよ。この『穢れた一族』め!」

 

 

マルフォイのその言葉を聞いた瞬間、私は杖の柄を握って抜くと、怪しい光を放つ刃の切っ先をマルフォイの喉仏に突きつける。ブタ二匹はいまにも逃げ出したい顔をして、マルフォイは顔を真っ青にしてガタガタ震えだした。

 

 

「こ、こんなことして、父上が黙って」

 

「連れて来なよその父上を。細切れにしてあげるからさ」

 

「そ、そんなこと、出来るわけが」

 

「それが出来るのよ金持ち坊や。『ホーエンハイム』はアンタたちに馬鹿にされる程、落ちぶれてない!」

 

 

私が怒鳴った後、3人は蜘蛛の子散らすように逃げて行った。それを確認してから、刃を杖に戻して柄を二回叩く。それから振り返ると、ウィーズリーは涙目になっていて、ハリーは目を丸くして、グレンジャーは何が起きてるのか分かってない顔をしていた。

 

やっちゃったZE★

 

ついカッとなってやってしまった。でも後悔はしてない。私の家族が馬鹿にされたんだ、これくらいは許してくれるだろう。きっと、多分、恐らく。

 

それから制服に着替える為にハリーとウィーズリーに出て行ってもらう。着替えてるときにグレンジャーの質問攻めにあったのは言うまでもない。

 

 

 

 

ローブを着て制服に着替えた私たちが汽車から降りると、巨体が一人大きな声でなにか叫んでいた。五月蝿いなぁ。防音魔術をも少し強めにしとけばよかった。

 

あ、ハリーが話しかけてる、知り合いなのかな?そういえば一昨日にあったような……そうだ『賢者の石』だ!マルフォイの一件で危うく忘れるところだった。おのれマルフォイ。この恨み、忘れはせんぞ。

 

 

とか思ってるウチに小さなボートに乗せられて、川を下る。途中の石橋で頭を打ったのは内緒で。石橋をくぐり抜けると、眼前には巨大な城がその姿を現した。

 

あれがホグワーツかぁ、でっかいなぁ、私の家の何倍なんだろう。ってか、あの城のどこかに石を隠してるんだろうけど、探すの大変そう…とりあえず、落ち着ける場所に着いたら探知でもかけてみよう。うまくいけばそれで場所がわかるし、ダメだったらそん時はそん時で別の方法で探すし。

 

ボートを降りて、石階段の途中で入学式について初老のババ…マグゴナガル先生から説明を受けるけど、寒いし眠いしで全然話が入ってこない。かろうじて『組み分け帽子』なる単語が聞き取れたけど、意味不明。どうでもいいか。そんでもってまたハリーがマルフォイに絡まれてるし。

 

 

「なにしてんのハリー?そのそんな弱っちいのほっときなよ」

 

「お前、ミラージュ!」

 

「五月蝿い。私はいま機嫌が悪いんだ。どっか行ってろ」

 

 

少し睨んでやると、マルフォイはすぐさま踵を返してどこかに消えた。するとハリーが恐る恐る私に小さな声で耳打ちしてきた。

 

 

「ミラージュはさ、どの寮に入りたい?」

 

「別に私機嫌悪くないから大丈夫だよ。ってか寮ってなに?」

 

「聞いてなかったの?」

 

 

ハリーの説明を掻い摘んで聞くと、ホグワーツには4つの寮、グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンが存在していて、ホグワーツで過ごす7年はそのどれかに属さなれけばならないらしい。4つの寮はそれぞれ特徴があるらしく、グリフィンドールは勇気、スリザリンは狡猾、ハッフルパフは勤勉、レイブンクローは知識とかなんとか。この話を聞いて私が思ったのは、心底どうでもいい。4つの寮なんて興味が無いし、どの寮にいても魔法については学べるし、なにより私の目的、『賢者の石』の入手と中二病(ヴォルデモート)への復讐には何一つ関係ないし。どの寮に属そうが私は私だ。むしろ、新しく寮を設立してやるのも悪くない。出来ないだろうけど。

 

ハリーの話を半分程度流して聞いているウチに、私たち新入生たちが大広間に入るよう促される。中に入った新入生たちは、歓喜の声を上げたり、絶句したりと様々な反応をする。私は特になし。

 

大広間には4つの長テーブルにホグワーツ生がずらりと並んで座っている。恐らく寮ごとに分かれて座っているんだろうけど、どこがどの寮なのか全く解らない。さらにその奥にも長テーブルがあって、恐らく教職員の席だろう。その真ん中、白い髭を蓄え、透き通る青い瞳、そしてなにより圧倒的な存在感を放つ老人。あれが『アルバス・ダンブルドア』か。なるほど、確かに『今世紀最大の魔法使い』と言われるだけはある。ま、負ける気はしないけど。

 

そのダンブルドアの前に椅子が1つ、その上に古ぼけた帽子が置いてある。大広間の扉が閉まると同時に帽子が震えて、上下に裂け口のような形になるやなんと、歌を歌い始めた。歌の内容は各寮を要約したような内容だったけど、特に収穫のある歌じゃなかった。拍手が鳴り響く中、私はダンブルドアを見つめていた。あの老人を出し抜いて石を手に入れるにはどうすればいいのか…

 

 

拍手が鳴り止むと、いよいよ組み分けが始まった。どうやらABCの順で呼ばれるらしい。あ、ウィーズリーが呼ばれた。やっぱりグリフィンドールだろうな。

 

 

『グリフィンドール!!』

 

 

ほらやっぱり。それからグレンジャーか。グレンジャーはレイブンクローかハッフルパフかな?

 

 

『……グリフィンドール!!』

 

 

あれ?違った。まぁいいか。別にどうでもいいことだし。あ、ハリーだ。私の予想はスリザリンかグリフィンドールかな。個人的にはグリフィンドールに行って欲しいな。ハリーがスリザリンは似合わない。

 

 

『…………グリフィンドール!!』

 

 

グリフィンドールのテーブルから拍手が鳴り響く。五月蝿い、耳が痛い。でも仕方ないか。なんせあの『生き残った男の子』がきたんだから。

 

 

「ミラージュ・ホーエンハイム!」

 

 

私の番か。ってかなんなのよアンタたち。私の名前が呼ばれた瞬間だんまりとか、ちょっと泣けるわよ流石に。

 

さっきまで騒ついていた大広間が、私の名前が呼ばれると同時に一瞬で静まり返り、全ホグワーツ生の視線が私に集まる。しかもホグワーツ生だけじゃなく、教師たちからの視線も合わさるもんだからなんだか物凄く緊張する。まるで圧迫面接だコレ。あぁ、物凄く帰りたい。

 

ゆっくりと椅子に座り、ババ…マグゴナガル先生が私に帽子を被してくれる。すると頭の中に直接声が響いてきた。

 

 

『ほぅ、ホーエンハイムの子供は久しぶりだな』

 

コイツ、直接脳内に…!

 

『そうだとも。君の頭に直接話しかけている。うむ、君はどこの寮に入りたいかな?』

 

別にどこでも。私にはやるべき事があるし、それが出来るならどこの寮でも構わないし。

 

『ふむ。その目的を達成するための勇気と手段を選ばぬ狡猾さ、学ぶことへの勤勉さ。難しいのぅ』

 

じゃあ帽子さんの直感に任せてみなよ。たまにはそれもアリなんじゃないかな?

 

『直感で選ぶとするなら、君はグリフィンドールになるが?』

 

グリフィンドールか。うーん、騎士道とか正義とか正直クソ喰らえだし、なにより性に合わなそう。

 

『ではハッフルパフは?』

 

んー勤勉なのはいいけど、なんか顔触れがイヤだ。気難しそうなのが多そう。

 

『ではスリザリンは?』

 

他の3つから嫌われてる?んー、ありよりのあり?結束力は他の3つより強そうだし、ある程度は自由にできそうだけど。

 

『偉大な魔法使いを輩出している寮だ。君なら上手くやれると思うが?』

 

でもグリフィンドールも捨てがたい…騎士道は要らないけど、あの正義感溢れる感じは好きかなー。

 

『ではグリフィンドールにするかな?』

 

帽子さんが決めて。スリザリンでもグリフィンドールでも。

 

『わかった。では君が行く寮は…』

 

「スリザリン!!」

 

 

拍手喝采は起こらなかった。それどころか、スリザリン生はなんかイヤそうな顔してるし。よし決めた。とりあえずアイツら全然捻り潰してやろう。

 

新入生の組み分けが終わった後、ダンブルドア校長からの注意事項を聞いて、豪華な料理を食べて、寮へと案内された。

 

 

寮へ向かう道すがら、私は校長の言っていたある場所への立ち入り禁止について考えていた。恐らく石はそこに隠されている。だが当然、侵入者に対する罠も設置してあるだろう。その罠を潜り抜け、石を手に入れる。まずは下見だ。どのような場所で、どのような罠が敷かれているか。それを踏まえて計画を練り、タイミングを計って石を奪取する。

 

石さえ手に入れば、この学校には用済みだ。魔法が学べなくなるのは残念だけど、それよりも優先すべき事があるからしょうがない。とう様とかあ様の仇、そしてホーエンハイムの悲願、私が達成してみせる。

 





スリザリンになりました。ミラージュですが、魔術と錬金術、加えて剣術もある程度使えます。それにも一つ能力も持ってますけどそれはまた後ほどで。


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予言と覚悟

ミラージュside

 

 

スリザリンの寮はなんとまぁ辛気臭い場所にあるんだろう。ってかなんで地下牢なのよ。ふざけんなよマジでよー。しかも合言葉が『純血』とかないわー。マジないわー。

 

地下牢の扉が開いて中に入ると、これまた趣味の悪い場所だった。エメラルド色を基調としたカーテンに絨毯、灯を灯すランプは天井から鎖で吊るされてるだけだし。おまけに寮専属のゴーストが『血みどろ男爵』とかいうなんかよく分かんないヤツだし…入る寮間違えたかな…?しかもデッカい窓の外にデッカいイカがいるし。あ、美味しそう…

 

 

部屋割りは割と良かった。どうやら『ホーエンハイム家』には専用の部屋があるらしい。そこに案内されて入ってみると、部屋の中には畳が敷かれていて、真ん中には囲炉裏、襖や掛け軸なんかも飾ってある。その下には何故か日本刀が飾られていて、その横には大きな黒い箱が置かれている。襖を開けると布団が一式と私の荷物があった。これ絶対とう様の趣味だ。とう様学生の時はやたら権力持ってたとか、かあ様言ってたもんなー。

 

とりあえず、囲炉裏に火をつけて荷物の中から水晶玉を漁り出す。

 

 

「よし。問題はこれが繋がるかどうかよね…『起動(Ενεργοποίηση) 接続(σύνδεση)』」

 

 

水晶玉に魔力を送ってみる。すると水晶玉の中で渦が巻き始めて、見慣れた景色が浮かび上がる。そして、その景色のなか、ピンク髪の女の子が満面の笑みでこちらをみていた。

 

 

「久しぶりタマ」

 

『おーご主人、無事に着いて無事に使えたようだな』

 

「まぁなんとか。それよりそっちはどう?変わりない?」

 

『うむ。特にはないのだな』

 

「そっか。了解。またなにかあったら連絡するね」

 

 

水晶玉に魔力を送るのをやめて、布を被せる。良かった…。どうやら術は問題なく使えるみたい。とりあえず、当初の目的を果たしますか。

 

トランクの中から一枚の紙と筆と本を取り出して、その中心に魔法陣を描く。それをテーブルの上に置いて、探知の魔術を起動させる。とりあえずはホグワーツ全体を把握しておかないと。起動した魔法陣の上に本を置いて準備完了。

 

 

「さぁて、やりますか。久しぶりだから上手くいくかな?『記すはかの地、写すはかの城、描くは書物、この地に記されし、写されし、描かれしもの、細かく、鮮明に、淡々と、この書物に刻み込め』」

 

 

呪文を唱え終えると、魔法陣の真ん中に置いた本が勝手に開き次々とページをめくっていく。そしてパタン、という音と共に本は動かなくなった。その本を手に取って、パラパラとページをめくる。先程まで白紙だったページは全て文字や地図で埋め尽くされていた。

 

 

「うん、成功。よかったー、これ出来なかったら泣いてたよ」

 

 

さて、地図も出来たし明日の準備して寝よう。そう思ってゴソゴソしてたら部屋の扉がノックされた。誰だろう?

 

用心の為に杖をいつでも抜ける状態にして扉を開けるとそこには、トランクを引っさげた可愛らしい女の子が立っていた。ま、私には負けるけど

 

 

「どちら様?」

 

「え、えっと初めまして、『ダフネ・グリーングラス』っていいます」

 

「それで?」

 

「えっと、わたし自分の部屋が無くて、その…」

 

「部屋がない…?」

 

「か、監督生に聞いたら、ここが空いてるって」

 

「残念。でも、私と一緒でいいならここにいる?」

 

「いいの?」

 

「貴女の部屋が見つかるまではね」

 

「あ、ありがとう…」

 

 

可愛らしい女の子、グリーングラスはビクビクしながら部屋に入ってくる。やっぱり『ホーエンハイム家』って魔法界ではいい噂はないみたいだ。この子に詳しく聞いてみようか?いや、やめよ。明日は初めての授業があるし、話が長引きそうだから今度にしよう。とりあえず、布団を敷いてグリーングラスを布団に、私は部屋の隅でローブを布団代わりにして丸くなってその日は眠った。

 

明日は早起きして、軽く鍛錬して、少し城を探索しよう。例の場所に行くのは無理そうだけど、ある程度行き方を把握しておかないと。それと逃げ道も確保しておかないとね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

校長室。夜も更けてきたこの時間に、校長室にはダンブルドア、マクゴナガル、スネイプの三人が揃っていた。話題はもちろん、『ミラージュ・ホーエンハイム』の事だった。

 

 

「あれが『ホーエンハイム』の娘ですか」

 

「左様。してセブルス、ワシに話しておきたいこととはなんじゃ?」

 

「あの娘、『ミラージュ・ホーエンハイム』は『闇の帝王』への復讐を行おうとしております」

 

「なんと、まだ11歳の子供が復讐ですって?」

 

「両親の仇だそうだ。5年前に『闇の帝王』とその配下の者に殺されたそうだ」

 

「5年前ですって?それはあり得ません。その時には『闇の帝王』はその力を失っているはずです」

 

「吾輩にも詳しくはわからん。それが事実なのか虚言なのか。だが『闇の帝王』への敵討ちを行うのは事実だ。その為ならば手段は選ばんだろう」

 

「セブルス、『ホーエンハイム家』については何か分かったのかの?」

 

「恐らくですが、魔法、魔術、錬金術、その3つの『根源』へと至るのが目的かと」

 

「そんな事が可能なのですか、アルバス?」

 

「不可能ではない。じゃが、そこに至るにはかなりの年月を要する。たとえ『賢者の石』を用いたとしてもじゃ」

 

「それをあの娘が目的の一つとしているのかは分かりません。ですが、もし、あの娘が『根源』へと至ったのならば…」

 

「うむ。予言の通りになるやもしれん」

 

 

ダンブルドアは懐から弱々しい青白い光を放つ小さな水晶玉を取り出す。それをテーブルの上に置き、杖で軽く叩いてやると水晶玉から煙が上がり、ヒトの形を成して唄を歌い始めた。

 

 

『闇の帝王去りし時、魔の瞳を持つもの生まれん、瞳を持つもの、闇の帝王を葬り、生き残りし男の子を超え、いずれ根源へと至らん、瞳を持つもの、根源へと至りし時、我らは選択を迫られる、瞳を持つものに滅ぼされるか、瞳を持つものを討滅するか、瞳を持つもの、数えて15の年、月が赤く染まりし時、その力、覚醒せん、覚醒し時、我らは選択を迫られん』

 

 

歌い終えると、ヒトの形をした煙は消えていった。

 

 

「予言にある『瞳を持つもの』これが恐らくあの娘である事は、間違いないじゃろ」

 

「では選択といつのはやはり…」

 

「そうならぬ為にワシらがおるのじゃ、ミネルバ。セブルス、あの子のことを頼むぞ」

 

「承知いたしました」

 

 

スネイプは軽く頭を下げると、ローブを翻し、校長室を後にする。自分の部屋への帰り道、スネイプは予言のことについて、一人考察をしていた。

 

仮に『瞳を持つもの』がミラージュだとして、本当にそのような選択をしなければならないのか。『根源』へと至るのが魔法界にとってそれ程までに危険なのか、ただ『根源』へと至っただけの娘に、なにが出来るのかを。そしてなにより、自分にとって友と呼べる者の娘を、手にかけることができるのかを。

 

 

 

 

 

 

 

ミラージュは夢を見ていた。両親と楽しく過ごした日々の夢。そして、それが唐突に終わりを告げ、一人取り残される夢。両親はきっと復讐なんて望まないだろう。それでもミラージュは復讐の道を行く。それが少女(ミラージュ)にとって唯一の目的なのだから。大切な家族が殺され、楽しかった日々を奪われ、日々襲い来る喪失感に苦しみ、それでも前を向いて進む為に、少女は茨の道を行く。その先にあるのが暗い闇の底であっても。それが少女を支える唯一の拠り所なのだから。その為に、少女は闇の淵に立ち、暗く深い闇の底を覗き込む。強大な力を持つ『闇の帝王』を討つために。その為の力を手に入れる覚悟を。

 

 

 






両親の敵討ちに対するミラージュの覚悟的なものと、ミラージュに関係する予言でした。

ミラージュが唱える呪文は単語の時はギリシャ語と、ミラージュ父は日本大好き設定です。


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鍛錬と授業

ミラージュside

 

 

 

久しぶりに夢を見た気がする。とう様とかあ様と一緒に何気ない日常を過ごした、とても幸せな日々の夢。思い出しただけでも、少し泣きそうになるけど、それを我慢してとりあえず起き上がって時刻を確認する。時刻は午前5時。朝食までにだいぶ時間がある。

 

私はローブを羽織り、とう様の形見である朱色の杖を持ってそっと部屋を出る。その時に物音を立てず、一緒の部屋で眠っているグリーングラスを起こさないように、慎重に。

 

 

ホグワーツの朝はだいぶ冷え込むらしく、ローブに寝間着代わりにの着物だけでは肌寒い。でも、いまから動くし大丈夫だろう。とりあえず鍛錬が出来そうな場所を探して、城の廊下を歩き回る。ようやく、落ち着いて鍛錬が出来そうな場所を見つけることができたのは、寮を出てから30分ほど歩いてからだった。空はまだ薄暗いけど、そのうち明るくなる。でも、まずは準備をしないと。

地面に適当な円を描いて、それを中心に錬成陣を書き上げる。その真ん中に手頃な石を置いて、準備完了。朱色の杖を傍らに置いて、両手を合わせたあと、錬成陣に掌の当てる。すると、パチパチという音と共に石が細長い棒状に姿を変える。やってみたかったんだよねーコレ。日本の漫画でこんな事してたの見て憧れてたんだよねー。

 

棒状になった石を拾い上げて、適当に振ってみる。うん、こんなモノかな。それを空高く放り投げて、傍らに置いてある杖を足でヒョイっと放り上げ左手でキャッチして、逆手で杖の柄を握って目を閉じ意識を集中する。そして、感覚を頼りに石が落ちて来るのを感じ取って間合いに入った瞬間。杖を抜刀して石を斬る。ゆっくりと目を開けると、足元には2つに分かれた棒状の石が落ちてある。うん、この感覚もいつも通り。あとは石を元に戻して、終了っと。

 

朝の鍛錬はいつもこれだけ。残りの時間はこの左眼の扱いに使う。とう様とかあ様曰く、この左眼は『魔眼』で、しかも2つの能力があるらしく、非常に強大な故、いつもは『魔眼封じ』の眼帯(かあ様特製)を付けている。その2つの能力は『狂気』と『歪曲』。日によって効果が変わるけど、大体これだけが出来る。コントロール出来れば、自分の意思で特定の能力を使用出来るらしいけど、私にはまだできない。鍛錬を沢山積んではいるけど、未だに1つの能力を引き出して使用しようとすると、眼に溜まった魔力が暴走してしまう。だから、鍛錬の残りの時間はこの『魔眼』の魔力をコントロールすることにしている。

 

さて、とりあえず眼帯を外して左眼に魔力を回して、うわ。もう気持ち悪くなってきた。魔力の回りが早いの何の。さすが魔法学校、魔力が満ち満ちていてなにより。もう少し抑えよう。うんよし、だいぶ落ち着いた。ゆっくりと左眼を開くと視えるのは普通の景色。試しに近くの樹に視線を向けて魔力を込めると、その樹は簡単に捻じ切れた。今日は『歪曲(παραμόρφωση)』かぁ。とりあえず、もう3本くらいやっとくか。左眼に魔力を込めて、樹を3本捻じ切る。最後の1本は全力で。

 

これでよし。左眼に眼帯をつけて、杖で地面を3回叩いて、捻じ切れた樹を見た目だけ元に戻す。そこまでして、ふと背後に気配を感じて杖の柄を逆手に握って振り向く。そこには、白い髭を蓄え、キラキラ透き通る青い瞳の老人、ダンブルドア校長がニコニコしながら立っていた。

 

 

「おはようございます、校長先生」

 

「おはよう。それにしても見事な魔法じゃ。君の年頃でそれ程の魔法を扱える者はおらんじゃろ」

 

「魔法じゃありません。錬金術の応用です」

 

「ほう。じゃがワシの知る錬金術とは、ちと違うように見えたがの」

 

「校長先生ならご存知の筈ですよね?『ホーエンハイム』の家に伝わるオリジナルの錬金術がある事を」

 

「確かに、しかしこの目で見るのは初めてでの。まさか破壊された樹を元どおりに戻す事ができるとは、思わなんだ」

 

「見た目だけです。あの樹はもう死んでいますよ」

 

「そうか。それはすまなかった」

 

「……校長先生。私に何か用ですか?」

 

「なに、城を散歩しておったら君が一人でいるのを見かけたのでな。何をしておるのか興味が湧いただげじゃ」

 

「日課なんです、コレが」

 

 

何が言いたいんだろうこのジジ…校長先生は。恐らく左眼を使用しているのは見ていないと思う。だが、私が『錬金魔術』を使っているところは確実に見られてるし、この杖が仕込み刀だということもバレてるかもしれない。しかもよりにもよって今日は『歪曲』が発動するから『狂気』に落とすこともできない。どこまでバレてる?

 

 

「日課とな?」

 

「はい。毎朝毎晩欠かさずにやってきましたので、ホグワーツに来ても欠かさずやりたいと思っています」

 

「ほう。それは良い事じゃ。それじゃワシはこれで」

 

 

そう言ってジジ…校長先生はゆっくりと私の前から消えていった。なにがしたかったんだあのジジィ。長生きしすぎてボケたか?ま、いっか。さて、鍛錬はこれくらいにして朝食食べに行こう。お腹空いたなー。

 

 

 

 

 

 

 

 

寮に戻って、制服に着替えて、グリーングラスと一緒に朝食を食べに行き、変身術、歴史の授業を受けたけど、あんまり面白くなかった。変身術は錬金術でも出来そうだし、歴史は興味ない。あとは呪文学と魔法薬学に期待するしかないか。

 

 

魔法薬学の授業は辛気臭い地下牢で行われるらしい。グリフィンドールと一緒に。ハリーやウィーズリーに会うの久しぶりな気がするなー。とか思ってたけど、教室に入るなりハリーとマルフォイがまたなんかやってた。飽きないなー。

 

 

「なにやってんの?」

 

「別になにも」

 

「ホーエンハイム、君には関係ないだろ?」

 

「そだね。でも目の前で友達と同じ寮の人が争ってたら止めない?」

 

「友達?なるほど、ポッター。どうりで強気なわけだ。いざという時はホーエンハイムが助けてくれるんだからな?」

 

「黙れマルフォイ」

 

「いいよなポッターは。とても頼りになる友達がいてさ」

 

「黙れマルーー」

 

「口だけは達者なアンタには言われたくないなね。親が偉いってだけで弱いアンタが、調子にのらないでよ?」

 

「あんまりバカにするなよホーエンハイム。ボクがその気になれば君なんかー」

 

「無理無理。魔法もロクに使えないアンタが、私に敵うわけないじゃん」

 

「試してみるか?」

 

「いいわよ。なんだったら今すぐに始める?すぐにアンタの首が胴とオサラバするとおもうけど」

 

「いいだろう、受けてたーー」

 

「馬鹿騒ぎはその辺にしたまえ。さっさと席につけ、さもなくば減点だぞ?」

 

 

私が逆手に杖を握ると同時に、いつのまにか後ろに立っていたスネイプ先生が私の襟首を掴んで、後ろに引っ張る。ってか痛い痛い、首が締まる。

 

マルフォイとハリーが渋々席に座るが、私はスネイプ先生に引っ張られ、教卓の一番前に座らされる。

 

 

「さて、この授業では魔法薬調剤の絶妙な化学と繊細な芸術を学ぶ。馬鹿の1つ覚えのように杖などは振らん。これを魔法と思うのが疑問に感じる者が多いかもしれん。が、最もそんな事を感じるのは、この授業を理解出来ぬ愚か者だけだ。諸君にこの授業を真に理解することは期待などしてはおらん。私が教えるのは名声を瓶詰にし、栄光を醸造し、地獄の窯にさえ蓋をする方法である。もっとも、吾輩がこれまでに教えてきたウスノロよりマシならの話だがな」

 

 

うわぁ。いきなりぶっ込んできやがったぞこの根暗教師。どんだけ魔法薬学好きなんだよコイツ。まぁ教科書見る限り繊細な作業が求められるってのはわかるけど。

 

 

「そこでだ、ポッター!!アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になるか?」

 

「わかりません」

 

 

ハリーがおずおずと答えると、スネイプ先生は口角を釣り上げ軽く笑うと同時に、軽口を叩く。グレンジャーが精一杯に挙手してアピールするけど知らんぷり。どんだけ捻くれてるんだあの教師…

 

 

「では、ベゾアール石を見つけて来いと言われたら、何処を探すかね?」

 

「わかりません」

 

 

ハリーが答えるとまた口角を釣り上げ軽く笑う。そしてグレンジャーも懲りずに精一杯挙手する。その光景の何が面白いのか、マルフォイたち数人のスリザリン生が笑い始める。純血の一族って、根性ひん曲がってるのかな?

 

 

「有名なだけでは話にならんな。ではホーエンハイム!答えてみろ」

 

「…はい?」

 

「先程の吾輩が出した問題を答えてみろ」

 

 

教室が静寂に包まれる。マジかこの根暗教師。んなもの知るか!私はほんの数日前まで魔法界になんの関わりもなかったんだよ!とか言いたいけどぐっと我慢する。でもベアゾール石だけは分かるんだよなー。前に使ったし。

 

 

「アスフォデルの球根はわかりません。ベアゾール石は恐らく山羊の胃の中から見つける事が出来ます。そしてベアゾール石は主に解毒薬としての効果がある。かと思いますけど…」

 

「ふん、及第点だな。さて、何故先程の回答をメモに取らん?」

 

 

静寂に包まれていた教室が一気に何かを書く音に支配された。

 

もうヤダこの学校。私の事になるとみんな何かに怯えるみたいにだんまりするし。私が何をしたっていうんだ…

 

 

 

 

 




次回、飛行訓練。

ミラージュ空飛べるかな…


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飛行訓練と大抜擢

 

 

 

 

 

ミラージュside

 

お昼時、私はスリザリンのテーブルの端っこの方で一人、教科書片手に昼食を取っていた。側から見れば行儀が悪いけど、魔法薬学の教科書は読み出したら止まらない。だって思ってたより面白いもん。

 

そんな感じで食べながら本読んでると、気が付けば隣に誰か座ってる。教科書から視線を上げてみると、そこには少し怯えた表情のダフネ・グリーングラスが鎮座していた。なんで怯えてるの?初めて部屋に来た時から、この子はずっとビクビクして、何かに怯えるみたいにずっと。多分私なんだろうけど。ほんと、先祖の『ホーエンハイム』は何したんだろ…。ま、私関係ないしいいや。

 

 

「あ、あの…」

 

 

そのまま黙って座ってるだけだと思ってたグリーングラスが話しかけて来た!

 

 

「……なに?」

 

「えっと…何の本読んでるの?」

 

「魔法薬学の教科書。面白いよ?」

 

「そ、そうなんだ…」

 

 

会話終了。マジか…まさか話しかけてくるから何か聞きたい事でもあるのかと思ったのに。とりあえず無視しよう。絶対面倒くさいヤツだコレ。

 

 

「………」

 

「…………」

 

 

ダメだ。本当に会話がない。何か話そうっていう気配は感じるんだけど、何話していいか分かんないみたいな。それでも黙って私の隣に座ってるから、どうしたものか…ってか、私が耐えられない。

 

 

「あのさ」

 

「は、はい!?」

 

「そんなに怯えなくても…」

 

「ご、ごめんなさい…」

 

「うん、もういいよ…なんかこっちがごめん…」

 

 

ダメだ。もう面倒くさい。

 

 

「あ、あの…」

 

「はい?」

 

「ほ、ホーエンハイムさんは、その、どうしてスリザリンに?」

 

「んー、グリフィンドールとハッフルパフにも行けたんだけど、騎士道とか面倒くさいし、ハッフルパフは顔触れがイヤだった」

 

「じ、じゃあ『純血主義』だから、とか?」

 

「ないない、そんなの興味ないし。ただ、他の寮より少しマシな感じがしただけ」

 

「そ、そうなんだ…」

 

「グリーングラスはそうなの?」

 

「わたしは、正直に言うと…どっちでもいい、かな?」

 

「そうなんだ。てっきりそうなのかと」

 

「そ、そんなことないよ。それに、わ、わたしなんか、全然…」

 

「…なんかバカらしくなってきた」

 

「な、なにが?」

 

「ねぇグリーングラス。貴女には私がどんな風に見える?」

 

「え、えっと…」

 

「正直に言って」

 

「…き、気の強い、とても勝ち気な、女の子…」

 

「どうして私の側にくるの?」

 

「め、迷惑だったらごめんなさい…」

 

「迷惑じゃないから。どうして?」

 

「え、えっと…その…」

 

 

視線を伏せて黙り込むグリーングラス。とりあえず返答が返ってくるまで、私はグリーングラスを見つめる。

 

 

「…あ、貴女の側に、い、いたら、だ、誰からも、バカ、にされないし…わ、わたしも、少しは、強くなれるかなって…」

 

 

絞り出すようにグリーングラスが呟く。でも、私の目をしっかり見て。

 

 

「ねぇグリーングラス。もう少し自分に自信持ったら?可愛いんだからさ」

 

「そ、そんなことないよ!ホーエンハイムさんの方が全然可愛いよ…」

 

「そりゃそうよ。むしろ私より可愛い娘を見てみたいくらい」

 

「……スゴイね、ホーエンハイムさん。わたしはそんなこと、絶対言えないよ…」

 

「それくらい自信があるってこと。それからミラージュでいいわよ」

 

「は、はい!だったらわたしの事もダフネ、でお願いします!」

 

「じゃ、改めましてよろしく、ダフネ」

 

 

とう様、かあ様、私、初めて女の子の友達出来たよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼食の後は『飛行訓練』とかいう箒に乗って空飛ぶ授業らしいけど、ぶっちゃけ興味がない。ってか受けるのもイヤになってきた。だってマルフォイが昼食食べてる間ずっと箒自慢してたし。グリーングラス…ダフネが私に気を使ってか、別の話題を振ってくれたお陰でまたケンカせずに済んだけど。

 

 

飛行訓練は外でやるらしく、指定された場所に行ってみるとグリフィンドールとスリザリンが絶妙な距離でにらみ合っていた。なんでこの2つはこんなに仲が悪いのか。ダフネもビクビクしながら私の影に隠れるし…。ダメだ、ため息しか出てこない。

 

それから少しつり目の教師、マダム・フーチが箒を並べていて、その横に立ち、上がれ。と唱えるように言ってきた。

 

とりあえず言われたようにやってみよう。

 

 

 

「上がれ」

 

 

反応なし。もう一度やってみるけど反応なし。なんかムカついてきた。周りはみんな成功してるし、私だけできてない。何度かやっているうちにマルフォイやその取り巻きがクスクスと笑い始めた。うん、我慢の限界だ。こうなったら…

 

 

魔力(μαγική δύναμη) 放出(ελευθέρωση)

 

 

持ってる魔力の一部を放出して、箒に対して威圧をかける。すると、箒はガクガク震えだして、すぐさま私の手の中に収まった。最初からそうしてたら良かったんだ。

 

『魔力放出』を解いて、隣にいるダフネを見るとやっぱりできてない。いや、ビクビクしすぎだから…

 

 

「ダフネ、もう少し強気で言ってみなよ?」

 

「つ、強気で?」

 

「そうそう。私の言うこと聞かないとへし折るぞ!みたいな?」

 

「う、うん。やってみる…上がれ!」

 

 

ダフネが少し強気で呪文を唱えると、箒はスッとダフネの手の中に収まった。

 

 

「やった…やったよミラージュ!」

 

「おめでとうダフネ」

 

 

ダフネが嬉しそうな顔をして、その場でぴょんぴょん跳ねる。うん、可愛いなー。尻尾とか付いてたらぶんぶん振ってるんだろうなー。

 

そんなことを思いながら周りを見てみると、箒が上がっているのは私、ダフネの他にマルフォイとハリーだけだった。酷いのはロングボトムで、箒が上がるどころかピクリとも反応してない。グレンジャーはようやく出来たようで、私と目が合うと嬉しそうに手を振ってくる。それから数分して、フーチ先生の指導の元、ようやくロングボトムも箒を上げる事ができた。

 

 

「それでは箒に跨って、私が合図をしたら地面を強く蹴って飛んでください。ただし高く飛びすぎてはダメですよ。それでは3、2、いーー」

 

「うわぁあー、た、助けてー!」

 

 

フーチ先生の合図の前に、ロングボトムが先に飛んでしまった。しかもコントロール出来てないらしく、フラフラと徐々に高度を上げていく。

 

フーチ先生がロングボトムに戻るよう叫ぶが、コントロール出来ていないのにどうやって戻れというのだろうか。ってかめちゃくちゃ高く飛んでるなー。落ちたら危ないだろうなー。あ、箒が暴れだした。ヤバい落ちる。

 

ロングボトムが箒から落ちるほんの少し前に、私は地面を蹴って空高く飛び上がり、杖をロングボトムの服に引っ掛ける。でも、落下の勢いなのかロングボトムが重いせいなのか、私も一緒にドンドン落ちていく。

 

ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい!!落ちる落ちる落ちる落ちる!?ってかロングボトムが重いだけでしょコレ!?ってかこのままだと私も一緒に落ちるし!こうなったら…

 

 

『魔力放出!!』

 

 

魔力を全力で解放して、ロングボトムを力任せに上に放り投げる。なんか悲鳴上げてたけど知るか。それから箒の上に立って、落ちてきたロングボトムをしっかりキャッチする。『魔力放出』を使ってるから、難なくキャッチできたので、そのままゆっくりと降下していく。

 

それから、ロングボトムと一緒にフーチ先生に連れられ医務室に連れて行かれ、更にスネイプ先生から怒られ、減点を食らって、罰則の書き取りをやらされてから、ようやく解放された。

 

 

とでも思った!残念!罰則の書き取りが終わると、スネイプ先生が紅茶を出してくれた。まだなにか話してがあるんだろうか…

 

 

「さてミラージュ。吾輩はお前に注意しておかねばならん事がまだある」

 

「なんですか?」

 

「お前の扱う『魔術』についてだ。アレは極力人前で使うのはよすのだ」

 

「えー」

 

「吾輩たちの住む世界では『魔術』などと言うものは存在しない。それにマグルの世界においても、『魔術』は秘匿すべき事柄だと聞いたが?」

 

「仰る通りで…」

 

「お前は『魔法』を学びに来たのだろう?ならば、ここでは『魔術』ではなく『魔法』を扱うべきであろう」

 

「はい…」

 

「だが、今回の件は褒めてやろう。よくやった」

 

 

ほ、褒めてくれた…だと…!?あの根暗教師が人を褒めるなんて…

 

 

「そして、お前には明日からスリザリンのクディッチのチームに入ってもらう」

 

「拒否権は?」

 

「無しだ。実は先程、マクゴナガル先生より連絡があってな。『ハリー・ポッター』をクディッチの選抜に入れると、な」

 

「それでなんで私なんですか?」

 

「お前が飛行訓練の授業で飛んでいるのを見たのでな。なかなかスジがいいと思った次第だ」

 

「やったこと無いですけどクディッチ」

 

「安心しろ。吾輩が一から説明してやる」

 

 

その日、私はスネイプ先生からクディッチに関する事を全て聞かされ、有無を言わされずにスリザリンのクディッチ選抜チームに抜擢されてしまった。

 




クディッチ大抜擢だぜ!

さて次回はクディッチの練習と真夜中の決闘です。


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『みぞの鏡』と決闘の話

ミラージュside

 

 

昨日の夜、私がクディッチの選抜に選ばれた事を話すとダフネは自分の事のように喜んでくれた。それからハリーも選ばれた事を話すと、ダフネはやっぱり、と言った顔をしていた。

 

どうやら私とロングボトムがフーチ先生に拉致された後、ハリーとマルフォイの間でまた一悶着あったらしく、しかも真夜中に決闘するとかなんとか。アホだアイツら…。しかもそれが明日あるらしく、ダフネがどうしよう?って言ってきた。

 

 

「知らないわよ。アイツらの好きにさしておけば?」

 

「で、でももし、先生に見つかったりしたら…」

 

「そうなのよねー。ま、いいんじゃない?ハリーには私から話しておくからさ」

 

 

一先ず、明日の朝食のときにでも話してみよ。

 

 

 

 

朝の大広間はやはり大混雑していた。私とダフネはスリザリンのテーブルの端っこ、もはや指定席に座って料理を小皿に取り分けていく。2人で他愛の無い話をしながら朝食を取っていると、私たちの前にいかにも悪そうな顔をしたヤツがデッカい態度で座っていた。

 

 

「お前がホーエンハイムか?」

 

「誰?」

 

「『マーカス・フリント』スリザリンのクディッチチームのキャプテンだ」

 

「あ、そう。で?」

 

「スネイプ先生から今朝聞いてな。お前がウチの代表チームに入るってのを」

 

「うわぉ、それでこんな朝早くから?」

 

「そうだ。と、いうわけでついてこいホーエンハイム」

 

「ヤダ。先にご飯食べたいし」

 

「時間が惜しいんだ。いいからこい!」

 

 

私が無視して朝食に手をつけようとしたのに、フリントは私の襟首を掴んでズルズル引きずっていく。あー、私の朝食がーー。

 

 

「ダフネー!私の朝食、取っといてー!」

 

「わ、わかったー!」

 

 

ズルズルと引きずられ、クディッチ競技場に連れて行かれて、フリントからボールの種類、役割、チームの基本方針を聞いて、授業があるからと言って始業5分前に解放された。5分前とか絶対間に合わないじゃん。ってかチームの基本方針めちゃくちゃだし。『なにをしてでも勝て』とかあり得ないし。でも『闇の魔術に対する防衛術』の授業だし、いっか。サボろっと。そうだ。ついでに例の場所でも見ておこうっと。

 

私は例の場所、四階のある場所へと向かった。そこは組み分けの時に校長先生が立ち入り禁止と言っていた場所。私の予想では恐らく『賢者の石』が隠されている場所だ。動き回る階段に四苦八苦しながら、誰にも見つかる事なく、私はその場所にたどり着いた。一応、いつでも抜ける様に杖の柄を3回叩いて『封』を外しておく。

 

そして、ゆっくりと扉を開けて中を覗くと、そこには巨大な三つの頭を持った犬が鎮座していた。ケルベロス…なのかな?こっちにはまだ気付いてないみたいだし、とりあえず眠らせておこう。私は部屋の中に入って、デッカい見3つ首の犬と目を合わせる。そして。

 

 

眠れ(ύπνος)

 

 

私が呪文を唱えると、3つ首の犬はスヤスヤと眠り出した。よし、これでとりあえずは大丈夫かな。あんまり時間もないし急ごう。

 

部屋を見渡してみるけど、3つ首の犬以外何もない。もしかして、あの犬の下?そう思って犬の足元に視線を移すと、そこに小さな木の扉があった。多分、この扉が奥へと繋がってるんだろうな。進んでみたいけど、準備も何もしてないし、今日はここまでにしておこう。ここがアタリだというのが分かっただけでよしとしておくか。

 

そっと3つ首の犬が眠る部屋を出て、次の授業が行われる教室に向かおうとして、ふと気になる扉があった。なんて事のない普通の扉なのに、何故か気になる。むちゃくちゃ気になる。調べておくか。その何の変哲も無い扉を開けて、ゆっくり中に入る。そこは何もない空き教室らしく、部屋の中央に鏡があるだけで、あとは特に変わった物はない。

 

私は鏡の前に立ってそこに映る自分を見る。うん、やっぱり何も無い。でも微かになにか感じるんだよねー。この鏡なのかな?キョトンとした顔をした自分を見つめていると、鏡の奥から人影が2つゆっくりと近づいてきた。私は咄嗟に後ろを振り向くが、そこには誰もいない。探知をかけても私とこの鏡以外、この部屋には反応がなかった。なんだ見間違いか…。そう思って鏡に視線を戻すと。

 

 

「…嘘……どうして……とう様…かあ様…」

 

 

鏡に映る私の両隣に、黒いコートを着た男性と和服に身を包んだ女性、もういないはずの両親がニコニコと笑って私に寄り添っていた。そんな、あり得ない。だってとう様とかあ様はもう…。あり得ない光景を目の当たりにして、私は自然と涙が零れてきた。もう会えないと思っていたのに…

 

鏡の中の両親が、私に向かって手を振ると、奥へと歩いていく。

 

 

「ま、待って!まだ、まだもう少しだけ…あと少しだけ…少しだけでいいから…一緒に…一緒にいてよ!とう様!かあ様!」

 

 

私の願いが届くことはなく、とう様とかあ様は鏡の奥へと消えていった。

 

鏡の前に崩れ落ちた私は、手を伸ばし、鏡に触れようとする。もし、この鏡の中に入れたら、また、とう様とかあ様に会えるかな…?ゆっくりと伸ばした手が鏡に近づく。そして、もう少しで手が届くというところで、私は急に後ろに引っ張られ、鏡から引き離され、誰かの腕の中にいた。私はゆっくり顔を上げると、そこには白ヒゲとキラキラ輝く青い瞳の校長先生がいた。

 

 

「校長、先生?」

 

「間に合ったようじゃな。気分はどうかな?ミス・ホーエンハイム?」

 

「…大丈夫です」

 

「何が見えたのかは聞かんし、ここにおる理由も問わん。じゃが、この鏡は少々刺激が強くての。あまり近寄らん事じゃ」

 

「…はい」

 

 

手足に力が入らない。校長先生に支えられながら、私はその場に座り込んで、目を擦る。

 

 

「…校長先生、あの鏡はなんなんですか?」

 

「あれは『みぞの鏡』というてな、鏡の前に立った者の願いを映し出す鏡じゃ」

 

「…願いを…映す…」

 

「左様。じゃが、この鏡はタダで願いを映し出してはくれん。かわりにその者の気力を奪う」

 

「だから、身体中がなんかダルいんですね…」

 

 

手足に力が入らないのもそれが原因か…。なんとか立ち上がろうとするけど、全然ダメだった。自分の中に探知をかけてみると、どうやら魔力の半分以上を持っていかれたらしい。結局、この後医務室に連れていかれ、少し眠ってから昼食の時間なので大広間に向かった。

 

 

 

 

大広間にやってきた私を心配してか、ダフネが駆け寄ってきて不安そうな顔で大丈夫か聞いてくるので、私は『大丈夫、食べたら元気になるから』といって、昼食に手を伸ばす。そんな私に安心したのか、ダフネも昼食に手を伸ばし、小皿にわけて食べ始めた。私たちが昼食をある程度食べ終えるてダフネと話し込んでいると、グリフィンドールのテーブルが何やら騒がしい。私とダフネは野次馬するべく、騒ぎを見にいくと、ハリーとマルフォイが直立不動で睨み合っていた。またこの2人か…。とりあえず、近くにいたグレンジャーに話を聞いてみるか。

 

 

「どしたの?」

 

「あ、ミス・ホーエンハイム。またハリーがマルフォイに絡まれちゃって」

 

「決闘のことで?」

 

「なんで知ってるの?」

 

「ダフネに聞いたの。でも、真に受けない方がいいよ?だってあのマルフォイだし」

 

「ワタシは止めたんだけど、ハリーとロンが頭にきてるらしくて…」

 

「バカしかいないの…この学校は…」

 

「ホントよ…」

 

 

私とグレンジャーがため息をついていたその隣で、ハリーがマルフォイの胸ぐらを掴んで今にも殴りかかろうとした。私は手に持っていた朱色の杖でマルフォイの足を払い、払った勢いでハリーの鳩尾を杖の柄で軽く叩く。突然足払いをされたマルフォイはそのまま後頭部を床に打ち付け、後頭部を抑えながら呻いて、ハリーは鳩尾を抑えて呻いていた。

 

 

「喧嘩両成敗ってやつ?そんな下らない事してるヒマがあったら魔法の練習してたら?」

 

「み、ミラージュ。やり過ぎじゃ…」

 

「そう?」

 

 

ダフネの顔が少し青ざめてる。やり過ぎた…かな?でも、殴り合いになるより遥かにマシじゃない?

 

 

「ほ、ホーエンハイム…お前…」

 

「なに?文句ある?」

 

「ぼ、ボクはスリザリン生だぞ…!」

 

「関係ないし。そもそも挑発したアンタが悪いんだし、殴りかかったハリーも悪いけど」

 

「けどアイツはー」

 

「言ったでしょ、関係ないって。そもそもアンタ、なんでハリーに突っかかるのさ?」

 

「それは…」

 

「『気に入らない』とかくだらないこと言わないでよ?」

 

「……」

 

「…まったく。ほんとに下らない事してないで、魔法の勉強でもしてなさいよ」

 

「ホーエンハイムには関係ないだろ?」

 

「規則を破ろうとしてるヤツが目の前にいたら止めるでしょ?」

 

「でもー」

 

「文句ある?」

 

 

私は思いっきり殺意を込めてマルフォイを睨みつける。するとマルフォイはビクビク震え出して、その場で縮こまってしまう。それから何か言いたそうなウィーズリーもついでに睨みつけておく。

 

 

「とりあえず、決闘の話はなし。バカやってないで勉強しろ」

 

「ミ、ミラージュ。先生が来るよ?」

 

「んじゃ、そういうことで。いくよマルフォイ」

 

 

 

私はマルフォイを引きずってスリザリン寮のテーブルに戻る。んで、適当にマルフォイをテーブルの何処かに座らせて、私とダフネはまた指定席のテーブルの端に座って昼食を食べる。

 

これでとりあえず決闘の話は潰せたかな?あんまりチョロチョロ動かれると、私が動きにくくなるからやめてほしい。とりあえず今夜はマルフォイを部屋に監禁するとして、図書室にでもいこうかな。あそこにある『閲覧禁止の棚』の本に興味あるし。今夜にでも侵入してみるか。

 

 

 




ネタが思いつかない…決闘はミラージュが参加すると数秒で終わりそうなのでやめました。とりあえず次回は『閲覧禁止の棚』に本をとりにいきます。


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『閲覧禁止の棚』と『ニコラス・フラメスの料理本』

ミラージュside

 

 

とりあえず、マルフォイに暗示をかけて部屋から出ないようにして、ダフネがぐっすり眠った深夜に私は寮から抜け出した。黒いパーカーとズボンを履いて、フードを深く被って、一応匂いと気配を消す魔術をかけて、朱色の杖は目立つから色を黒に見せかける魔法をかけて、私特性のホグワーツの全体図が描いてあるノートを片手に暗い廊下を進んでいく。

 

目的地は図書室にある『閲覧禁止の棚』。そこで『みぞの鏡』について書いてある本を探す。ついでに『賢者の石』の作り手『ニコラス・フラメル』著作の本があれば良し。的な感じで。

 

 

自分に『身体強化』の魔術をかけて、動き回る階段を無視して飛んでいき、廊下を走り抜ける。途中、ミセス・ノリスが角から飛び出してきたけど、咄嗟に廊下の石を錬金術を使ってドーム状に変形させてミセス・ノリスをその中に閉じ込めて難を逃れる。ごめんねミセス・ノリス。

 

暗いホグワーツを突き進んでようやく図書室についた私は、とりあえず『探知』をかけて周りに人がいないかを確認する。周りに人がいないのを確認して、ようやく『閲覧禁止の棚』に侵入する。

 

 

「うわー。こんなの学校に置いといていいのかな?」

 

 

『閲覧禁止の棚』に侵入した最初の感想はそれだ。棚から溢れる魔力が尋常じゃない。もう『魔道書』といってもいいくらい。本に触れるだけで下手すれば死ぬような代物がズラッと並んでいた。

 

えーっと。『みぞの鏡』についての記述がありそうな本は…あった。『世界の危険な魔法具全集』ってネーミングセンスなさすぎでしょ。とりあえずその本を手に取りパラパラとページをめくっていく。そして目的の『みぞの鏡』が記述してあるページにたどり着いた。

 

『みぞの鏡とは、鏡を覗いた者の心にある願望を映し出す鏡である。しかし、鏡はとても強力な魔法具であり、願望を映し出すかわりに覗いた者の魔力を大量に奪うモノである』

 

ってそれしか書いてない。危険度は中の上となかなか危険な代物らしい。恐らくこれが『賢者の石』を守るための罠の1つだろう。問題はどうやって石をこの鏡を使って隠すのか。『願望を映し出す』ということは、鏡の中に石を隠して、それを心から欲しいと思わなければ取り出せない仕組みにするのか…それか別の方法があるのか…

 

とりあえず鏡がどういったモノなのかわかったから良しとしておこう。本を元の場所に戻して、その場を後にしようとして、ふとある場所が気になった。私のすぐ隣にある一冊の本。この本だけ、何故か魔力を帯びていない、ただの本がそこにあった。

 

私は手を伸ばして、その本を手にとって表紙を見ると、そこには『ニコラス・フラメルの簡単夕食メニュー』と書いてあった。いやもう意味がわかんない。なんなの『簡単夕食メニュー』って。いやでももし本当に『ニコラス・フラメル』が書いていたなら何かあるかもしれない。そう思って適当にページを開いて見る。

 

 

『今日も夕食を作る時間がない?そんなアナタにはこちらーー』

 

パタン。

 

頭痛い…本当に夕食メニューじゃん…何かあるって期待した私がバカだった…

 

本を元の場所に戻そうとして、私は思いとどまった。いや待て、たしかとう様が『錬金術師は自身の研究書は擬装するんだ。例えば料理本とかね。父さんの場合は日記だね』って言ってたような…だとしたらコレも実は立派な研究書?なのかな…いいや持って帰ろ。あとで解読してみようかな。

 

『簡単夕食メニュー』の本を脇に抱えて、図書室を後にする。その後は『探知』をかけながら、ゆっくりと寮へと戻る予定だった。だったけど、『探知』に何かが引っかかった。反応は人間で数は3人。しかも『賢者の石』が隠されているであろう部屋の前からだ。なんか嫌なら予感がするんだけど…

 

私は再び『身体強化』をかけて、石の隠されているであろう部屋へと向かう。

 

 

 

部屋の近くについた私はとりあえず柱の影に隠れて、もう一度『探知』をかけてみる。すると案の定、部屋の中に反応が3つあった。私は部屋に突入するかどうか少し悩んでいると、部屋の扉が勢いよく開かれ、中からハリー、ウィーズリー、グレンジャーの3人が真っ青な顔をして飛び出してきた。

 

あの3首の犬にビビって飛び出したな。ってかなんであの3人がここにいるのよ…?まぁいいや。とりあえず帰ろ。

 

 

 

誰にも見つからず、無事に寮の自室に戻ってこれた私は、さっそく書斎に向かって本の解読を始めた。始めたけど…

 

 

「…どう見てもただの料理本なんだけどなー」

 

 

逆さに向けて読んだり、逆から読んだり、灯に透かして読んだりしたけど、どう読んでもただの料理本でしかなかった。やっぱりただの本だったのかな…?

 

本を閉じて懐から杖を取り出して、今日習った魔法を試しに使ってみる。確か灯を灯す魔法だったよね確か。

 

 

「『ルーモスー光よ』」

 

 

杖を振って呪文を唱えると、杖の先がぼんやりと光り始める。暗いところを探索する時とか使えそうだな…もう少し光を強くしたら目眩しとか出来そう。でもここで試すとダフネを起こしそうだし、それはまたこんど試そうっと。

 

そこでふと思った。魔力を流し込んだら変化するかなこの本。いやでもまさかね。『ニコラス・フラメス』はただの錬金術師だし、そんなことで偽装なんか出来ないだろうし…仮にそれで偽装してたら誰でも簡単に解読できるじゃん。でも可能性もゼロじゃないし…試してみようっと。

 

 

本の表紙に手を乗せて、ほんの少し魔力を本に流し込んでみる。すると、本の表紙に描かれている文字が動き出して、別の単語に切り替わっていく。動き終わった文字を読むと、そこには『研究書』の単語があった。

 

なんか拍子抜けしたな。うん。あれだ、魔法界はバカしかいないんだ。なんでこんな簡単な仕組みの罠しか仕掛けないんだろう…

 

 

落胆しながら、本を開いた私はさっきの考えを撤回した。本を開いた最初のページ、そこにはびっしりと数式と錬成陣、さらに無数の単語が1つのページに所狭しと書かれていた。

 

これ解読するのかなり時間かかりそう…てか、無理じゃないのコレ…

 

とりあえず本を閉じて、カバンの中にしまい込んで、次に帰ったら徹夜で解読かぁ…と考えながら布団にくるまって、眠ることにした。

 




戦闘描写を書きたい…


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箒が欲しい

 

 

ミラージュside

 

 

朝食を食べている時に、ニコラス・フラメスの研究書を手に入れて、その解読に頭を悩ませている私の元にさらに頭を悩ませる問題が飛び込んできた。クディッチの件だ。『賢者の石』を手に入れる方法や研究書の解読をするのにすっかり忘れていたけど、そういえば私もクディッチの選抜に選ばれたんだった。

 

それを思い出したきっかけは、ハリーがふくろう便で『ニンバス2000』を送られてきてはしゃいでいるところを目撃してしまったのだ。しかもそれをグリフィンドール寮の連中が自分の事のように喜んでいる様を目の前で見せつけられて、マルフォイが不機嫌になっているのを横目に、私は鞄から『箒大全集』なる本を取り出して、自分に合った競技用の箒を選ぶことにした。

 

ページをパラパラとめくっていきながら、ぼんやりと眺めていると隣からマルフォイがやれこの箒がいいだの、この箒はダメだとうるさいから殴って黙らせた。相変わらずうるさいなまったく。

 

 

「ミラージュ、なに読んでるの?」

 

「箒選び…」

 

「箒…?あぁ、クディッチのやつ?」

 

 

マルフォイを殴って黙らせたあと、少ししてダフネが隣にから不思議そうに覗き込んできた。

 

 

「そうそう…めちゃめんどくさい」

 

「相変わらずやる気なし?」

 

「ないない。興味もなんにもないし」

 

「そういえばミラージュはどこのポジションにつくの?」

 

「なんだっけ…あのスニッチ?を取る役」

 

「シーカーなの!?ほんとに!?」

 

 

ダフネがとてもびっくりした顔で大声で叫んだ。そしたらスリザリン寮の全員から、一斉に視線を浴びる。そんなに珍しいのかな?

 

 

「ダフネ、そのシーカーってやつってそんなに凄いの?」

 

「凄いよ!シーカーっていったらクディッチのスーパースターだよ!」

 

「そ、そうなんだ…」

 

 

珍しくダフネが興奮してる…クディッチってのは魔法界ではかなりメジャーなものなのかな?その辺に関しては調べてないから、よくわかんない、ってか興味なかったし。隣でダフネがキラキラした顔でクディッチについて色々話してるのを半分くらい流しながら聴きつつ、私は本をパラパラとめくって箒を選ぶことにした。

 

パラパラとページをめくっていく中で、ふと気になる箒を見つけた。

 

『ムーントリマー』1901年製造。細いトネリコの柄を持ち、当時では速度、高度共に最高峰の性能を持つ。現在製造中止。

 

と書かれていた説明文と箒の写真を見て、私は本を持って勢いよく席を立ち、職員テーブルに座って朝食を食べているスネイプ先生の元に走っていく。そして、机に本をバンッと置いて先ほどの箒を指差して、

 

 

「先生!この箒欲しい!!」

 

 

と、叫んだ。突然の事にスネイプ先生は驚きながらも、私の顔と指差された箒を交互に見て軽くため息をついた。

 

 

「なぜ吾輩にそれを言うのだ?」

 

「いや、だってスリザリンの担当だし、顧問だし」

 

「吾輩にそれを買えと?」

 

「ダメですか?」

 

 

上目遣いで目をウルウルさせ、可愛くお願いしてみる。すると、スネイプ先生は額に青筋を立てて、次の瞬間には私の額にチョップを食らわせてきた。

 

 

「あいたっ!?」

 

「自分で買うのだな」

 

「いや、ホグワーツ出れるなら買いに行きますけど…」

 

「業者にでも発注するがいい」

 

「いや、製造中止って書いてますし」

 

「なら諦めろ」

 

「じゃあクディッチ選抜降ります」

 

「それはできん」

 

「じゃあ買ってください」

 

「自分で買え」

 

「ホグワーツから出られるなら買います」

 

「業者に発注しろ」

 

「製造中止って書いてますし」

 

「なら諦めろ」

 

「なら選抜降ります」

 

「それはできん」

 

「なら買ってください」

 

「自分で買え」

 

「……箒くらい買えよケチ」

 

 

私の悪口が聞こえたのか、スネイプ先生がまた額にチョップを食らわせてきた。痛い…

 

 

「…まったく。学校で貸し出ししているヤツでも使え」

 

「可愛くないからヤです」

 

「フリント!!ホーエンハイムが練習に付き合って欲しいそうだ。行ってこい!」

 

「イエスボス!!」

 

「いや待って今から授業があぁぁぁあぁ!!!」

 

「安心しろ、ほかの先生方には吾輩から伝えておいてやる」

 

「ふざけんな根暗教師!!まだ朝食も食べてないのにー!!」

 

「さぁ行くぞホーエンハイム!」

 

「なんでコイツこんなにキラキラ輝いた顔してんのよーー!?」

 

 

フリントに首根っこを掴まれてズルズルと引きずられながら、大広間から連れ出され、お昼まで私はフリントと一緒にひたすらシーカーの練習をさせられる羽目になりました。あの根暗教師絶対許さん…

 

 

ようやく解放された私は、大広間には向かわず自室に向かい、部屋に入って敷かれていた布団にバタンと倒れ込んだ。疲れた…このまま午後の授業まサボって寝ようかな?うんそうしよう。午後の授業にはあのめちゃくちゃ臭いクィレルの授業あるし。よしサボり決定だ。そう思ってローブを脱いで、ハンガーに掛けてふと気付いた。ちゃぶ台の上にとても大きな包みが無造作に置いてあったのだ。

 

なんだこれ?誰かのイタズラ…なわけ無いか。特にこれといった怪しい感じも無いし、なんだろう…

 

恐る恐る包みを開けてみると、そこには私が今朝本で見つけて根暗教師に買えとおねだりした箒『ムーントリマー』が鎮座していた。

 

 

「え?なんで?マジ?もしかしてあの根暗の仕業?」

 

 

箒を手に持ってみると、一枚の羊皮紙がヒラヒラと床に落ちた。それを拾い上げて読んでみると、そこには、

 

『これでもし優勝を逃せば罰則では済まんぞ。byスネイプ』

 

と書いてあった。

 

 

ちょっとやる気出てきたかも。私は箒を持って自室を飛び出し、いつも鍛錬している場所まで走っていった。

 

 

 




箒を手に入れたミラージュはご機嫌です。多少の事なら怒りません。(マルフォイを除く)

次はクディッチの試合です


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試合前の出来事

ダフネside

 

私にとって『ミラージュ・ホーエンハイム』という少女は、まさに私の理想とするような少女だった。周りの意見に流されず、誰よりも自信に満ち溢れていて、でもやっぱり同い年なんだなっと感じる時もあったりする。そんな少女とお近づきになれたのは、私にとってはまさに幸運だったと思う。

 

って事は置いておいて。今日はミラージュのはじめてのクディッチの試合が行われる日だ。対戦相手はグリフィンドール。スリザリンとしては絶対に負けられない戦いらしい。らしいというのも、上級生たちがなぜかみんなグリフィンドールを目の敵にしていて、他の2つの寮ならまだしも、あそこにだけは絶対に負けるな、みたいな感じになっている。まぁ私としてもスリザリンチーム、もといミラージュには負けて欲しく無いんだけど。

 

そのせいか、大広間では朝からとてつもない熱気に満ち溢れていた。スリザリンとグリフィンドールの上級生たちが、互いに睨み合って相手を牽制していて、互いに大きな声でやれここがダメだの、やれウチは最強だなどと言い合いをする始末。そんな中でも、私とミラージュは特に誰にも相手にされず、静かに朝食を食べていた。

 

なぜみんなが『ホーエンハイム家』を毛嫌いするのか。正直私はよく知らない。ただ、噂で『ホーエンハイム家』は過去に魔法界に対して物凄い『裏切り行為』をした。としか知らない。ミラージュ本人も先祖がやった事など、自分には関係ないみたいなこと言ってるけど、少し気になってるみたい。そのうち誰かに聞いてみようかな?

 

 

朝食を食べ終わり、みんながクディッチ競技場の方へ向かう中、私はミラージュと一緒に選手の控え室にいた。その理由はミラージュから『この杖を預かっていて欲しい』と朱色の杖を預かるためだ。

 

 

「ごめんねダフネ。こんなところまで連れてきちゃって」

 

「ううん。全然いいよ。それにミラージュの頼みだし断るわけ無いじゃん」

 

「ありがと。それじゃ、この杖お願いね。大切な物だから無くさないでね」

 

 

スリザリンのユニフォームに着替えたミラージュから、朱色の杖を預かる。この杖はミラージュの両親の形見らしいので、絶対無くさないようにしないと。

 

杖を大事に両手で持って気づいたのだけど、ミラージュの首元に見慣れないものがぶら下がっていた。

 

 

「ミラージュ、その首のやつってなに?」

 

「あぁコレ?お守りよお守り」

 

「お守り?」

 

「そ。キレイでしょ?」

 

 

そう言ってミラージュは首元にぶら下がっている少し歪な形の赤い半透明の石を見せてくれた。たしかにとてもキレイだけど、こんなのどこに売ってるんだろう?

 

 

「あ、これ私の手作りなんだ」

 

「そうなの?こんなのまで作れるんだ。凄いねミラージュ」

 

「まぁね。今度ダフネにも作ってあげようか?」

 

「本当に?いいの?」

 

「もちろん。作るのは簡単だからね」

 

「ありがとうミラー…」

 

 

私がミラージュに感謝の言葉を送る前に、グランドからホイッスルの音が鳴り響いた。どうやら、選手入場の合図らしく、私はミラージュに手を振って応援席に向かった。

 

 

 

さて、応援席に向かったのはいいけど、スリザリンの席は1つも空いてなかった…。私はスリザリンの応援席を離れ、競技場の側で立ち往生していると、後ろからデッカい影が近づいてきた。

 

 

「お前さん、こんなところでなにしちょるんだ?」

 

「あ、えっと、その」

 

「ミス・グリーングラス?どうしたの?」

 

 

デッカい影、ハグリッドの後ろからグレンジャーがひょっこりと出てきた。ミラージュがよく図書館で調べ物をする時に、グレンジャーもたまに一緒にいたことから今では顔を見れば挨拶をする程度の仲になった。そのグレンジャーの後ろからまたひょっこりとウィーズリーが出てきた。

 

 

「えっと、スリザリンの応援席がいっぱいでどうしようかなって…」

 

「そうだったの…」

 

「うん。ミラージュも出てるし、観ないわけにはいかないし…」

 

「あの、もしよかったらわたし達と一緒に観ない?」

 

「え?でも私、スリザリンだよ?」

 

「いいんじゃない?ねハグリッド?」

 

「おぅ。こういうのはみんなでワイワイ観るもんだ」

 

「で、でも…」

 

「大丈夫よ。ほら行きましょう」

 

 

グレンジャーは私の手を掴むなり、ズンズンとグリフィンドールの応援席へと進んでいく(ウィーズリーはものすごい嫌そうな顔してたけど)。私はただただ戸惑うしかできなく、気が付けば完全アウェーなグリフィンドールの応援席の端っこの方にデッカい人、ハグリッドの影に隠れて試合を見ることになった。ウィーズリーがひたすら不機嫌な顔をしていたのを無視して。




お久しぶりです。仕事を辞めて、転職活動をしていたのでなかなか更新できませんでした。
次はミラージュの初試合です。


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クディッチとニセモノ

ミラージュside

 

 

待機室でダフネと別れた後、私はいつも持ち歩いている杖の代わりに箒を握り、首からぶら下げている石を軽く握った。

 

例の棚からパクってきた『研究書』からある程度得た情報で、本物とはいかないけどそれに近いものを生み出せる方法が書いてあった。その方法を使って作り出したのがこの『石』だ。見た目や魔力の纏い方は本物の石となんら変わらないけど、その効力は本物程はない。あくまでも『賢者の石』の盗難防止用のシロモノらしい。

 

私がこの『石』を持っているのにはいくつか理由がある。一つはコレで周囲(主にダンブルドア)を騙せるかどうか。そして、私と同じように『賢者の石』を狙う誰かがこれに引っかかり、手を下してくるか諦めるか(後者はないだろうけど)を確かめたかったから。

 

そしてこの確認を行うのにもっとも適した状況、ダンブルドア含む教師陣が揃い、尚且つ学校の殆どの人間が集まり、私が少しでも目立てる状況が、このホグワーツで行われるクディッチの試合だ。最初はめんどくさくて嫌だったけど、この偽物の石の生成方を知ってからどこかで試せないかとずっと考えてた。

 

 

そして今日、いよいよクディッチの試合が始まる。先頭を歩くマーカス・フリントの後ろを私が歩き、その後ろを先輩選手たちがゾロゾロと歩いていく。そして、グラウンドに入るや否や観客席からものすごい声援や罵声が飛んできた。声援はもちろんスリザリン側からだけど、罵声はグリフィンドール側から。あ、ダメだ。めっちゃムカついてきた。もうやめようかな…。でも、ここで引き返したら後でグリフィンドールの連中に何言われるか分からないし、それはそれでムカつくし。よし、グリフィンドールの代表をコテンパンにしてやろう。

 

「ねぇねぇフリント」

 

「なんだホーエンハイム?」

 

「少し提案したいことがあるんだけど」

 

「ほぅ。言ってみろ」

 

「私もチェイサーに混ざってひたすら攻める。攻めて攻めてグリフィンドールが追いつけない点差をつけてスニッチを取る」

 

「それは構わんが、もしポッターがスニッチを見つけて追い始めたらどうする?」

 

「そうなる前にビーター二人でちょくちょくハリーを狙うの。それでももしハリーがスニッチを追いかけた場合、私が直接妨害する。ただし、ルール上問題ない範囲で」

 

「それが出来るのか?」

 

「やってやりますとも。ただし、チームにもルール上問題ない範囲で動いて欲しいの」

 

「どういうことだホーエンハイム?」

 

「卑怯だなんだと言われて勝つのって面白くないでしょ?」

 

 

私の一言にフリントは少し考えたあと、独りでにクスクスと笑い始めた。

 

 

「良いだろうホーエンハイム。ただし負けたらどうなるかわかっているな?」

 

「もちろん。んじゃ、行きましょう」

 

 

話が終わって私とフリントはグリフィンドール選手の前(私はハリーの前)に並ぶ。マダム・フーチが互いに握手をするよう促すが、互いに無視。その中で、私とハリーだけが握手をしていた。

 

そしてマダム・フーチが箒に乗るよう指示を出して、他の選手が箒に跨る中、私は箒を地面に落とし、細いトネリコの柄に両足を乗せる。ここ数週間でこの乗り方が一番安定して、尚且つ一番はやく飛べる乗り方だとわかった。私のこの乗り方に解説のリー・ジョーダンが何か言ってるけど無視無視。マダム・フーチがホイッスルを鳴らすと同時に私は空中高く飛び上がり、競技場全体を見渡せる位置に着く。それから少しして、下の方で歓声が上がった。どうやらクアッフル、ブラッジャー、スニッチが放たれたらしい。

 

さぁここからが勝負だ。私はまず競技場全体を見渡して、スニッチを探す。それは案外簡単に見つかった。スニッチはグリフィンドール応援席の上をふよふよと飛んでいたのだ。私はスニッチの位置を確認して、真っ逆様に急降下する。その途中、運良くクアッフルが飛んできたのでそのままキャッチして、競技場の地面スレスレで急停止して上を見上げる。

 

上空では、グリフィンドール、スリザリンの両選手が目を丸くしていた。それを無視して私はクアッフルを片手に低空飛行のまま、全速力でグリフィンドールのゴールに向かって飛んだ。それを妨害するようにブラッジャーが飛んでくるけど、私はまた急停止してクアッフルを上に放り投げ、私もそのまま上に飛び上がる。そしてクアッフルに追い付くと同時に一回転してクアッフルをグリフィンドールのゴール目掛けて蹴り飛ばす。あっけに取られたグリフィンドールのキーパーの顔面スレスレを通過して、クアッフルはゴールポストを通過する。

 

クアッフルがゴールポストを通過して数秒たってから、スリザリンから大歓声が上がった。ジョーダンが相変わらず何か言ってるけど、スリザリンからの大歓声にかき消されて聞こえない。私は先生たちが座る席に視線を向けると、ダンブルドアはヒゲを撫でながらも普段通りの装い。スネイプ先生はなぜか頭を抱えていた。その中で気になったのがクィレルだ。クィレルだけが、私を真顔で凝視していたのだ。

 

それからも同じように、私がチェイサーに混ざり次々と得点を得ていく中、すこし奇妙な事が起こり始めた。少しづつだけど、箒が言うことを聞かなくなってきたのだ。私は箒に『探知』の魔術をかけると、箒になんらかの呪いがかけられようとしていた。チラリと先生たちが座る席に視線を向けると、やはりクィレルが私を真顔で凝視していた。仮にクィレルが私に呪いをかけようとしているとしたら、恐らく相手を凝視することで発動する呪いの類なのだろう。だったら私にだって考えがある。今日はなんと都合の良いことに『狂気』が使えるのだから。けど、ここからだと少し遠いなー。

 

クアッフルをパスしながら横目でハリーを見ると、ハリーが何かを見つけたかのように急発進していた。ハリーの視線の先、そこには黄金色に輝く小さな物体がふよふよと飛んでいた。ヤバい、ハリーのヤツもうみつけたの!?

 

私も急発進して、黄金色に輝く小さな物体、スニッチに向かって飛び出した。スニッチの方も私たちに気付いたのか、急発進して逃げ始めた。さすがにスニッチの全速力に私の箒が追い付けるはずもなく、徐々に離されていくが、驚いた事にハリーの乗る『ニンバス2000』は徐々に差を縮めて行っている。流石は最先端の箒だ。でも、箒の性能差が戦力の決定的な差ではない事を教えてあげよう!!

 

私は急旋回して、ハリーとは別方向に飛んでいく。スニッチが飛ぶ方向を予測しての先回り。この賭けに失敗すれば、私はスニッチを取れず、フリントからのお仕置きが待っている。それでも『ニンバス2000』を駆るハリーに勝つにはそれしか方法は思い付かない。

 

横目でスニッチを追いながら、私は飛ぶ方向を少しづつ修正していく。時折ブラッジャーに襲われるけど、それを避けつつ飛び続ける。そして、スニッチが向かう方向が職員席に向かって飛んでいくのを確認して、私はクィレルを見た。まだ見てる。めちゃくちゃ見てる。しかも瞬きしてないんじゃないのアイツ?キモっ。

 

私は職員席の頭上を越える際に、そっと左眼の眼帯を外して、クィレルを左眼で凝視する。そして、

 

 

『堕ちろ』

 

 

と私が唱えると同時に、クィレルは急に笑い始めピクピクと痙攣までし始めたのだ。私は急いで眼帯を付けて、再びクィレルの様子を確認する。職員席は大騒ぎになっていた。なにせクィレルが急に笑い始めた挙句、痙攣まで起こし始めたのだから。そして急にホイッスルが甲高く鳴り響くと同時に、マダム・フーチが試合中止を宣言。先生たちがおかしくなったクィレルを運ぶ様を競技場に集まった全員に見られる事になった。ついでに首からぶら下げていた石はその辺に捨てておいた。

 

その後私は更衣室で着替えたあと、スネイプ先生から呼び出しをくらった。

 

魔法薬学で使われる教室に行くと、スネイプ先生が心配そうな顔をしていた。

 

 

「先生?」

 

「あぁ、ホーエンハイムか。問題はないのか?」

 

「はい。私は大丈夫ですけど」

 

「すまなかった。吾輩がいながら君の安全を確保できなかった」

 

「どういうことですか?」

 

「君に呪いがかけられているのをしっていながら、吾輩はある人物を守るのに精一杯だった…」

 

「あぁ。別に大丈夫ですよ、対処は出来ましたし。それに先生が守る人が無事で良かったじゃないですか」

 

「本当にすまない…」

 

「いいですよ本当に。それに今日はそれ以上に収穫がありましたから」

 

 

その後、私とスネイプ先生は他愛ない会話をして解散した。

 

今日の一番の収穫。それはあの『石』でダンブルドアを騙せた、ということ。職員席の上を通過した際、私の首からぶら下げていたモノを見たダンブルドアのあの表情。自分が見たものを疑うような、目の前にあるものを疑うような目と表情で私を見ていたのだから。

 

恐らく騙せているだろう。けど、あのフェイクの石はまだ未完成。もう少し研究が必要だろう。けど、あまり時間をかけられないのも事実。なんとしても、クリスマスまでには完成させないと。

 




ミラージュの飛び方は桃白白を想像して下さい。アレです。


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ハロウィーンと特別課題と試行錯誤

ミラージュside

 

ハロウィン。それは毎年10月31日に行われる、古代ケルト人が起源と考えられている祭のこと。もともとは秋の収穫を祝い、悪霊などを追い出す宗教的な意味合いのある行事であったが、現代では特にアメリカ合衆国で民間行事として定着し、祝祭本来の宗教的な意味合いはほとんどなくなっている。カボチャの中身をくりぬいて「ジャック・オー・ランタン」を作って飾ったり、子どもたちが魔女やお化けに仮装して近くの家々を訪れてお菓子をもらったりする風習などがある

 

そしてそれは、ここホグワーツでも例外なくやってくる。ってか魔法使いがハロウィン祝うってどういうことよ?正直言って、魔法使いがハロウィンを祝ってもほとんど関係なくない?

 

まぁここはイギリスだし?古代ケルト人がいた土地だし?ブリテン諸島も近いし?ハロウィンを祝っても問題無いと思うよ?

でもさ?ハロウィンって悪霊とかを追い出すとかの意味合いもあるじゃん?魔法使い、それも魔女とかって悪いイメージとかあるじゃん?いやちゃんといい魔法使いや魔女はいるんだけど。

 

ってか、そもそもホグワーツでハロウィンを祝う意味もわかんないんだけど。ホグワーツで収穫なんかしてたっけ?っというか、そもそもハロウィンって何するんだっけ?

 

 

そんなことを考えながら、私はいつものようにテーブルの端に座り1人虚しく目の前に盛り付けられたものを食べる。

 

なぜ1人で食べているのかって?だってダフネったら風邪ひいちゃって、保健室から動けないんだもん。スリザリンで唯一の友達がダフネしかいないから、一緒に食べる人は自然とダフネ1人になる。それに、ほかのヤツらは私のこと毛嫌いしてて近寄ってこないし。

 

おかげでホグワーツに来てから久しぶりの1人でご飯。それも周りには誰もいない(半径5メートル圏内)。唯一話せるグレンジャーは寮が違うので離れ離れ。ってか、グレンジャーがいない。あぁ、そういえば、ウィーズリーになんかすごい嫌味を言われたとか誰かが言ってたなー。ご飯食べたら探しに行こうかな?

 

さらにいつも何かと騒がしいマルフォイも今日は珍しく静か。さらにさらに、スネイプ先生から私にだけ魔法薬学の特別課題(ご飯を食べると一緒に処理中)さらにさらにさらに、その特別課題をテーブル目一杯に広げてるから、余計に誰も来ない。まぁ、来なくていいんだけど。考える事は山ほどあるし。

 

ひとまず、「賢者の石」の模造品については現在2つ目を製作中。クディッチの試合の際に持っていた石はもうただの石ころとなんら変わらない姿になってしまった為、その辺に捨てた。なので、石の模造品に関しては特に問題はない。

 

次にその石を狙う人物について。私の予想では恐らくはあのニンニク臭いハゲ野郎、「クィレル・クイナス」だと思っている。

理由としてはどうにもあのニンニク臭さに混じって、何か別の匂いが混じっている気がする。でも、ニンニクの匂いが強すぎて判別がつかないのだけど。それと、あのクディッチの試合の時のあの表情だ。あのなんの感情も感じられない表情で、私に「呪い」を掛けようとしていたところ。それだけしか判断材料がないけど…

 

そして、1番の悩みは、どうやって『賢者の石』を学校の外に持ち出すか。いまだにこれだけが、手段が確立されてない。

 

ただ適当に隠して持っているだけでは、ダンブルドアにバレるだろうし、かといってあれだけの魔力量を持つ石を秘匿するとなると、大規模な魔術結界を張る必要になる。本来なら、そんな大規模な魔術結界を張らなくてもいいんだけど、私自身がそこまでの技量を持ってないからそんな小さくて強力な魔術結界なんて出来ない。こればかりは仕方がないし、自分がまだまだ未熟者だと実感させられる。

 

でも、一つだけ。思い浮かんでいる方法はある事にはある。

 

それは『賢者の石』が入る小袋に何十層もの魔術結界を張って、そこに『検知不可能拡大呪文』を使って小袋の中身を広げ、その中に石を入れる。更にその中にも魔術結界を何十層も張り巡らせる。更に更に、不可視の魔術を張る。

 

そこまでやっても恐らくは、ダンブルドア辺りには勘付かれそうだけど…

でも、小袋の中に『賢者の石』があるとは分からないだろう。それにもし、ほかにいい方法が思い浮かべば、それを使うし、いまはこれしか思い浮かばないってだけ。

 

とりあえずはこの方法を試してみよう。あと二週間もすれば模造品の石が完成するし、その石を例の小袋に入れて持ち歩いてみよう。それがダメなら別の方法を探すだけだし。

 

ひとまず『賢者の石』に関する事は部屋に戻ってからゆっくり考えよう。明日の一限目はクィレルの授業だし、サボり確定で。

 

そうと決まれば早くこれを片付けて、さっさと部屋に帰ろう。そう思って根暗教師から出された特別課題に手を付けようとした瞬間、大広間の扉が勢いよく開き、あのハゲ野郎、もといクィレルがなんかすごい顔して飛び込んで来て、開口一番に、

 

 

「トロールが!!校舎内に!!お伝え…いたし…」

 

 

とか言ってその場にぶっ倒れやがった。

 

トロール?あぁ、あのウスノロのデカイだけのヤツか。あんなのが地下室にどうやって現れたんだろう?

 

私はふとそんな事を考えた次の瞬間には、大広間には悲鳴が響き渡っていた。うるさい。たかがウスノロ如きでなにをビビる必要があるんだろう?とりあえず、耳が痛いから遮音の魔術を張って、ついでに気配を消す魔術も張っておこう。邪魔されるの嫌だし。目の前の課題に集中しよう。うん、そうしよう。

 

周りの音を遮音して、課題に集中する事約5分。ふと周りを見渡すと誰もいない。あれ?みんなどこ行った?探知を掛けてみると、みんなどうやら寮に戻ったらしい。

 

んー、流石に気配遮断の魔術はマズったなー。まさかそのまま放置されるとは思ってなかった。しかも、ハゲ野郎も一緒に放置されてるし。このままここにいるのもイヤだし、私もこっそり寮に帰ろうかな。そうしよう。コイツと一緒にいるのイヤだし。

 

一応探知をもう一度学校全体にかけてみるか。気配遮断の魔術を張ってるとはいえ、教師陣に見つからないという保証はないし。ちょっとしんどいけど。

 

私は学校全体に探知の魔術をかけてみる。すると、不思議な反応が返ってきた。3階の女子トイレから一つ、その付近からデッカいのが一つ、そして、そこに向かっているであろう反応が二つ。デッカい反応は恐らくあのウスノロ。そして、恐らく女子トイレの反応はグレンジャーかな?ウィーズリーに嫌味言われてどこかに行ったって聞いたし。そして、残り二つの反応はウィーズリーとハリーかな?なんで2人で向かってるのかはわからないけど。あとは他の場所に反応がちらほら。これは教師陣かな。

 

仮に女子トイレにグレンジャーがいて、その前にウスノロがいるとしたらグレンジャーの身が危ない。身体強化を使って、全力疾走したらあの2人より早く女子トイレには着くだろう。

 

私は自身に身体強化を使い、ついでにぶっ倒れて動かないハゲ野郎をその場に固定する魔術で固定して、大広間を出て行った。

 

大広間から3階の女子トイレまで、身体強化した全力疾走ならものの数分で着くだろう。相手はウスノロのデカイだけのヤツとはいえ、馬鹿力だけはあるらしいし、油断は出来ない。でも同時に少し楽しみにしている自分がいる。いまの私の実力がどれ程通じるのか、それを試す絶好の機会なのだ。

 

もしここでやられる様なら、この先もしあの男が私の前に現れてもまともに戦う事もままならないだろうし。

 

十分に気を引き締めて挑もう。油断せず、慢心せず、私のもてる全てを掛けて挑もう。その結果次第で、これからどうするかまた考えよう。

 




ぜんぜんネタが思いつきませんでした。

あと、原作を読み返してみるとなんか時系列が逆になったりしてました…

さて、次はいよいよ戦闘です


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