異世界は超戦士とともに。 (フラクト)
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プロローグ 合体戦士喪失 異次元の穴

 「終わりにしようぜ一星龍。これであの世へ送ってやる」
 
 そう言ってゴジータは一星龍に向かって、技を放とうとする。

 「ビッグバン......かめはめ......」

 が、ゴジータは元の二人の悟空とベジータに戻ってしまった。

 「あれ?何でだ?まだ10分ぐれぇしか経ってねえ筈だぞ......?」
 
 「どういうことだ!?フュージョン出来る時間は、30分じゃなかったのか!?」
 
 ベジータの怒り混じりの質問に、悟空は笑って返す。
 
 「え、ハハハハハ。そっかーきっと超サイヤ人4同士でフュージョンすると、パワーを余計に食う分、時間が短ぇんだ。あ、それにまたフュージョンするまで一時間は待たなきゃなんねぇから、フュージョンはもう無理だな」
 
 「なんだと!?」

 そう、超サイヤ人4同士のフュージョンでは大幅にパワーを使う分、30分だった筈のフュージョンは、たった10分まで縮んでしまったのだ。まあ、合体した時のゴジータが調子に乗って遊んでいたから、こう言う結果になってしまったのだが。

 「ほう......お前等もう合体出来ないんだな?」

 それを聞いた一星龍はニヤニヤと2人を見つめる。

 「いや、まだポタラが......あ!ブウの時に、オレら二人とも壊しちまったんだった!」

 「チッ!あの時「合体など必要ない」とか言ってた自分を、ぶっ飛ばしてやりたいぜ」

 二人は折角思い付いた策をダメにしてしまったことに、さらにイライラする。丁度そこに、老界王神が界王神界から、悟空とベジータに話し掛ける。

 「いーや、その心配は要らんぞ。なんたってこのワシが、念のためにもう一セット隠し持っていたもんねー!!」
 
 それを聞いた悟空とベジータは
 
 「マジかよ?やったー!!」
 
 「ほう?ジジイの癖にやるじゃないか」
 
 悟空とベジータの様子に一星龍は唖然とする。勿論、老界王神の声は、一星龍には届いていない。
 
 「お前さん、さっさと行ってやれ!」
 
 老界王神がキビト神にそう言う。
 
 「はい、御先祖様!では、行ってきます......カイカイ!」
 
 瞬間移動により、キビト神は悟空とベジータの目の前に現れる。突然現れた者に一星龍は戸惑う。
 
 「おい!お前は何だ!?」
 
 「悟空さん、ベジータさん、お願いします。では」
 
 「サンキュー!!」
 
 キビト神は悟空とベジータにポタラを渡すと、颯爽と界王神界に戻って行った。突然現れた者が突然消えたことに、一星龍は再び戸惑う。
 
 「な、何だアイツは......?」
 
 その間にポタラを悟空は左耳に、ベジータは右耳に付ける。
 
 「さあ、一星龍。今度こそ終わりだ!!」
 
 「また合体して一瞬で終わらせてやる」
 
 「な、なに!?そうはさせん!!」
 
 だが、もう遅い。一星龍は二人に襲いかかるが、光によって弾き飛ばされる。

 「よっしゃーーーっ!!」

 そして、真の究極の超戦士が生まれたのだった。ベジータの台詞通り、一瞬で終わらせに掛かる。

 「ファイナル......かめはめ波ーーー!!」
 
 物凄いエネルギーの量。ベジットはそれを一星龍に全ての威力をぶつけるため、力をコントロールした。これによって、宇宙や次元が破壊されることはない。このコントロールが出来るのは、希に見る天才と言ったところだ。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 が!

 「なら貴様だけでも、次元の彼方に放り出してやる!!」
 
 一星龍の最後の悪足掻きと言ったところか。だが、ベジットはそれによって異次元に吸収されることになる。
 
 「くっ......こんな姿で吸収されたら、こっちの次元と向こうの次元が破壊されちまう!!今は超サイヤ人4を解いて吸収されるしか......」
 
 ベジットは、自分の力で次元の穴を封じ込めようとしたが、それをやってしまうとこの宇宙ごと封じ込められて、自分だけが異次元に飛ばされる。この世界を守って来たのに、それでは意味がないと思ったベジットは早々に自分だけが吸収されることを選んだ。
 
 こうして、真の究極の超戦士はこの世界を守り、この世界から消し去られたのであった。

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第一章 異世界来訪。 第一話 神様 そして異世界

 初めまして、フラクトと申します。
なぜかこの組み合わせで書こうと思いました。
文才はないに等しいですが、頑張って書き続けていけたらなと思っています。温かく見守っていただければ幸いです。
 では、どうぞ!


 「くっ......此処は?確か一星龍によって生み出された次元の穴に吸い込まれて......」
 
 「本当に申し訳ない。ワシのミスで、お前さんを死なせてしまった」
 
 「......は?」
 
 深々と頭を下げる老人。その背後に広がるのは白く輝く雲海。どこまでも広がっており、果てが見えない。だが、ベジットが座っているのは畳の上。質素な四畳半の部屋が雲の上に浮いている。ちゃぶ台に茶箪笥、レトロ調なテレビに黒電話。古めかしいが、味のある家具類が並んでいた。

 「雷を落とした先に人がいるか確認を怠った。落雷で死ぬ人間も結構いるが、今回のケースは予定外じゃった」
 
 「話を進めているとこ悪いが、オレは死んじゃいないぜ?それに、見たことねぇ神様だな。誰だ?」
 
 ベジットは地球の神、閻魔、界王、界王神を思い浮かべてみるが、そのどれにもこの様な神がいないことに気づく。
 
 「へ?お、お主、望月冬夜と言う名前じゃないのか?それに、ワシを神だと何故......」
 
 「オレはそんな名前じゃねえよ。ベジットだ。後、あんたが神様だって分かったのは、オレの能力みたいなもんだ。気にすんな」
 
 「い、いや......気にしないようにするのは......ゴホン。して、君がワシの思っていた人物と違うことが分かったのじゃが。君は何じゃ?生身のまま、人間が勝手に此処に入って来るのはあり得んのだか」
 
 「そんなこと、オレが知るかよ。まあ、心当たりぐらいならあるがな」
 
 「ほ、本当か!?」
 
 「ああ、話せばちと長くなるが」
 
 17号との戦闘の後処理のため、神龍を呼び出す悟空達。だが、ドラゴンボールからは神龍ではなく、黒煙の龍が現れ、願いを叶える事はなく7人の邪悪龍へと分離し、地球中に散らばっていった。老界王神に邪悪龍はドラゴンボールを使いすぎた為、球の中に蓄積されたマイナスエネルギーから誕生したものだと聞き、地球を元に戻すため、悟空、パン、ギルの3人は邪悪龍を倒しドラゴンボールを元に戻す旅へと出掛ける。
 最初の村では二星龍と闘う悟空達。最初は、メチャクチャ弱い二星龍を圧倒するが、毒霧で徐々に力を奪われ形成大逆転された。しかし偶然発見した湧き水で毒を浄化し、二星龍を倒す。
 次に訪れた町では電気を操る五星龍と闘う。もとはとても小さな邪悪龍だったが、電気スライムを吸収し巨大化、一方的に押され始めるが、突如降り出した雨で五星龍はショートして自滅してしまう。
 今度は海沿いの町を訪れ魚を降らせ『乙姫様』と崇められていた六星龍と闘う。風を操る六星龍に苦戦するが、台風の目のように頭上は無防備ということに気づいたパンが上から攻撃し六星龍を倒す。
 次にあまり闘う気のなさそうな七星龍と出会うが、自身で壊したはずの町を悟空達が元に戻したことによって怒ったが、その戦闘にあっさりと七星龍は負けてしまう。が、倒したのはモグラで七星龍は七星球そのものだった。七星龍はパンに寄生し、それによって攻撃の出来ない悟空は大苦戦。しかし一瞬のスキを見つけパンを助け出し、何にも寄生していない七星龍をあっさりと倒す。
 次に訪れた町では体の表面温度が太陽と同じ四星龍に出会う。四星龍は邪悪龍でありながらがフェアな勝負を望む。その中で、好勝負を繰り広げる悟空と四星龍だが、兄の三星龍が闘いに割り込んでくる。三星龍の卑劣な攻撃で目が見えなくなってしまった悟空だが、三星龍の邪悪な気を感じ、龍拳で倒す。四星龍は悟空の目が治ってからの再戦を誓うが、そこに最後の邪悪龍・一星龍が現れ悟空をかばった四星龍がやられてしまう。一星龍の圧倒的な力でまったく歯が立たなかった悟空だが、悟飯やウーブたちの助けで再びフルパワー以上の気を溜め、超サイヤ人4へ変身。一星龍を倒したかに見えたが、一星龍は全てのドラゴンボールを吸収し、超一星龍へとパワーアップ、形勢は再び逆転する。そこへ、ベジータとブルマが現れ『ブルーツ波発生装置』でベジータはなんと超サイヤ人4へと変身。そして、悟空とフュージョンを果たす。悟空とベジータはフュージョンしゴジータになり圧倒的なパワーで一星龍を追いつめるが、あと一発という所でフュージョンが解けてしまう。そこで思い付いたのは、フュージョンではなくポタラと言うものだった。再び合体を果たした悟空とベジータ。ゴジータの様にならない様、一瞬で終らせに掛かるが、超一星龍によって生み出された次元の穴に吸い込まれ、結果的には相討ちとなって終わる。そして、目を覚ますとこの様な場所にいた。
 
 「......と言うわけだ」
 
 「な、なるほど......。説明通りなら、次元の穴に吸い込まれて此処に来たと言う可能性が高いの。長年生きて来たがこんなことは初めてじゃ。それに、君が来たのは異世界、それも別次元からかもしれん」
 
 「だろうな。地球にいた奴等は疎か、界王様や界王神様の気も感じられねぇ」
 
 ベジットは、どうやって元の世界に戻ろうか。そう思っていると
 
 「これも何かの縁じゃ、ワシに君を元の世界に戻す、手伝いをさせてもらえんかの?」
 
 「本当か!?」
 
 「まあの、その代わりと言っちゃあ何なんじゃが、別の世界に行ってもらいたい。その間にワシも何とかしてみるつもりじゃ」
 
 「それぐらいは構わないが......いいのか?」
 
 「今回は特例だがの。それに、こんな老いぼれに貴重な体験をさせてもらったんじゃ、お礼として受け取ってくれ」
 
 「そうか、助かる」
 
 「送り出すが......ま、お主の力なら、向こうに行っても余裕で大丈夫じゃろ。最後に何か必要な物はあるかの?」
 
 「そうだな......オレが言った通りの、これに似た道着を用意してくれねぇか?」
 
 ベジットは道着の色は紺色に、アンダーシャツは山吹色。グローブとブーツは白色。と注文した。
 
 「じゃあいくぞい......そりゃあ!!」
 
 謎の掛け声と共にベジットの道着は、一瞬で注文した通りのものとなった。
 
 「やっぱり、オレにはこの服が一番合うな」
 
 「準備は良いか?それじゃあ、またの」
 
 そう言った途端、ベジットはこの場から一瞬で消えた。因みに、神様が感知しているベジットの力は、今の状態のベジットの一端でしかない。
 
 ──────────
 
 雲がゆっくりと流れ、どこからか鳥のさえずりが聞こえてくる。周りを見渡すと山々や草原が広がり、どこか懐かしい風景と言った感じだ。
 
 「此処が異世界ってやつか」
 
 そう言ってベジットは、自分の体に異常はないか確認する。
 
 「どうやら異常はないらしい。力もそのまんまだ」
 
 数十分の確認を終えると、ベジットはこれからどうしようかと考える。すると
 
 「ベジットよ、聞こえとるか?」
 
 「界王様!?」
 
 「へ?界王様?ワシは、さっきの神じゃが......」
 
 「すまない。元いた世界に同じ様な能力を持った神様がいたもんでな。そいつと勘違いしちまった」
 
 「お、お主は普通に神とも会っていたのか......って!そんなことより、望月冬夜と言う名を覚えているか?」
 
 「ああ、あんたが手違いで死なせたって言う奴のことか?それがどうした」
 
 「う、うう。痛いとこを突くの。で、その望月冬夜と言う者なんじゃが......お主がいる世界と同じ所に来る。もし良ければ、その子と共に行動してくれんかの?」
 
 「それは良いんだが、そんな何の能力も持たない一般人を、こんな世界に連れて来ても大丈夫なのか?」
 
 「それに就いては心配要らん。ワシからのせめてもの罪滅ぼしに、基礎的な身体能力、その他丸々を底上げさせてもらった。その世界でやっていくのに困ることはないじゃろう」
 
 「なるほど?神様からの粋な計らいってわけか」
 
 「まあ、そんなもんじゃの。もう少ししたら着くはずじゃから、後はよろしく頼んだぞ」
 
 その言葉を最後に、神様の声は聞こえなくなった。神様の言う通り、少しすると、一瞬『キラッ』と光った玉の中から、少年が姿を現した。
 
 「こいつが望月冬夜って奴か」
 
 ベジットは冬夜のもとまで近づき
 
 「おい、いつまで寝てやがる。さっさと起きろ」
 
 「うっ、うう、ん?あなたは?」
 
 「神から、オレに就いては聞いている筈だが?」
 
 「あ、すみません。僕と同じで、この世界に転生したベジットさんですよね?」
 
 「そうだ。で、これからどうするんだ?」
 
 「えっと......とりあえず道なりに進めば......」

 すると、突然内ポケットのスマホが鳴った。取り出して見ると『着信 神様』の文字。

 「もしもし?」

 《おお、繋がった、繋がった。無事着いたようじゃな》

 スピーカー部を耳に当てると神様の声が聞こえてきた。さっき別れたばかりなのに、なぜか懐かしさを感じる。
 
 「神からか?」

 《おお、ベジット君さっきぶりじゃな。後、言い忘れとったが冬夜君のスマホな、マップとか方位とかもそっちの世界仕様に変えてある。良ければ活用してくれ》

 「そうなんですか?いやまあ助かりましたけど。ちょうど道に迷っていたもので」

 《やっぱりか。君たちを町の中に送っても良かったんじゃが、騒ぎになると面倒かと思ってな。それで、人目のないところにしたんじゃが......それはそれでどこに行けばいいか途方に暮れるわな》

 「ええ、まあ」

 苦笑しながら答える。確かに僕には行く当てがない。故郷も知り合いもないのだから。それはベジットさんも同じことだろう。

 《マップで確認しながら進めば問題なく町に着くじゃろう。では頑張ってな》

 「はい。では」

 電話を切るとスマホの画面を操作し、マップのアプリを起動する。自分を中心にして地図が表示された。傍らに道が伸びている。これが足下のこの道だろう。縮尺を変えていくと道の先、西の方に町がある。

 「えっと......リフレット?の町がここから一番近いみたいです」
 
 「なら、そこに向かおうか」
 
 「そうですね......よし、それじゃあ向かうとしますか」
 
 僕たちは、コンパスアプリで方位を確かめ西へ歩き始めた。
 
 ──────────
 
 しばらく歩くとけっこうまずい状況じゃないかと思い始めた。まず、食糧がない。水もない。町に着いたとして、お金は?財布はあるが、こちらの通貨がはたして使えるか?そこでベジットさんからの良いアイデアが出た。
 
 「お前、目立つのは好きか?」
 
 「いえ、僕はあまり目立ちたくない方です」
 
 「ならその服装、この世界ではかなり目立つんじゃないか?」
 
 「あ......そう言えば、この世界は中世時代のレベル。そんな所でこの服装は、流石に目立ちますね......」
 
 「そこでだ。お前のその服は、この世界にとって物凄く珍しい物だろう。それを此処で売れば......後は分かるな?」
 
 「そうか......この服をそこそこの店で売り、僕はこの世界に合った服を買う。そして、余ったお金である程度は遣り繰りして行ける筈......でも、どうやったらそんな店に入れますかね?」
 
 「ああ、それなら後ろを見てみろ」
 
 振り返ると遠くからこちらに向かってくる何かが見えた。あれは......馬車だろうか?馬車なんて初めて見た。おそらく誰かが乗ってはいるのだろうが......そして、馬車が近づくにつれ、その馬車がえらい高級なモノだとわかった。きらびやかな細工と重厚な作り。間違いなくあれは貴族とか金持ちの乗るモノだ。だが、良く見てみるとその馬車には、何やらロゴマークの様なものを彫ってあり、希に見る高級な洋服店の様なものだった。「なるほど」と、ベジットさんの言っていた意味を理解する。なら、真っ先に馬車を止めて僕たちの方に来るだろう。そう思っていると

 「君!そこの君!」

 案の定、バタンと馬車の扉を開けて出て来たのは白髪と立派な髭をたくわえた紳士だった。洒落たスカーフとマントを着込み、胸には薔薇のブローチが輝いている。

 「なんでしょう?」

 興奮した様子でこちらに向かってくる紳士を見ながら「よし!」と心の中でガッツポーズを取る。すると、ガシッと肩を掴まれ、ジロジロと舐め回すように身体を見つめられる。
 
 (やっぱり、この服は相当珍しいのかな?)

 「こっ、この服はどこで手に入れたのかね!?」

 流石に「異世界から持って来ました」何て言えないので、黙っていることにした。そんなことお構いなしに、髭の紳士は後ろに回り、横に回り、矯めつ眇めつ僕の着る学校の制服を眺めている。

 「見たことのないデザインだ。そしてこの縫製......一体どうやって......うむむ......」

 このチャンスを無駄にしないよう、穏便に取り引きをする。

 「......よろしければお譲りしましょうか?」

 「本当かね!?」

 僕の提案に髭の紳士が勢い良く食い付く。

 「この服は旅の商人から売ってもらったものですが、よろしければお譲りいたしますよ。ただ、着る物を全部売ってしまうと困るので、次の町で別な服を用意していただけるとありがたいのですが......」

 咄嗟に思い付いた言い訳を並べ立てる。

 「よかろう! 馬車に乗りたまえ。次の町まで乗せてあげよう。そしてそこで君の新しい服を用意させるから、その後その服を売ってくれればいい」

 「では、取り引き成立ということで」
 
 そう言って、僕たちは馬車に乗り込む。因みに、この髭の紳士はザナックさんと言うらしい。僕の脱いだ制服の上着を受け取り、手触りや縫い目などを興味深く確認していた。ザナックさんは服飾関係の仕事をしているそうで、今日もその会合に出た帰りだそうだ。僕はといえば、馬車の窓から流れる風景を楽しんでいた。ベジットさんは疲れていたのか、その場で寝てしまっていた。



 誤字・脱字等ありましたら、ご指摘お願いします。


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第二話 初依頼 そして大金

 今回は少しだけ、ベジットがベジットします。


 
 揺られ揺られて、馬車はやがてリフレットの町に着いた。町の門番らしき兵士に軽い質問をされ、早々に入ることを許される。兵士たちの態度からザナックさんは結構有名らしい。ガタゴトと馬車が町中を進んで行く。やがて商店が並び、賑わう大通りに入ると一軒の店の前で馬車は止まった。隣を見てみると、いつの間にかベジットさんは起きていた。そして、ザナックさんに言われるがまま馬車を降りて、店に入る。ベジットさんは「少し町を見て回ってくる」と言ってどこかへ行ってしまった。
 
 side out
 
 
 
 
 ベジットside in
 
 「さて、先ずはギルドとやらに登録しに行くか」
 
 これは、神様に教えてもらったものではない。トランクスが子供の頃にやっていたゲームの知識からだ。まさか、こんな所で役に立つとは思ってもみなかった。それから少し探し回っていると、それらしい建物が見えてきた。
 
 「此処がそうか」
 
 そう言ってベジットは、建物の中に入る。トランクスが言っていた、荒くれ者の酒場というような場所だと思っていたベジットだったが、それとは反対で物静かな落ち着いた場所だった。ベジットとしても、面倒事が起こらないのならばそれに越したことはないだろうと思っていた。そして、そのままカウンターへ向かう。
 
 「ギルド登録をしたいのだが」
 
 「はい。かしこまりました。ギルド登録は初めてでしょうか。でしたら簡単に登録の説明をさせていただきますが」

 「ああ、頼む」

 基本的に依頼者の仕事を紹介してその仲介料を取る。それがギルドだ。依頼はその難易度によってランク分けされているので、下級ランクの者が上級ランクの仕事を受けることはできない。しかし、同行者に一人でも上級ランクに達している者がいれば、下級ランクの者でも、上級ランクの依頼を受けることができる。依頼を完了すれば報酬をもらうことができるが、もしも依頼に失敗した場合、違約料が発生することがある。さらに数回依頼に失敗し、悪質だと判断された場合、ギルド登録を抹消というペナルティも課せられる。そうなると、もうどの町のどこのギルドも再登録はしてくれない。
 他に、五年間依頼を一つも受けないと登録失効になる。討伐依頼は依頼書指定の地域以外で狩っても無効。基本ギルドは冒険者同士の個人的な争いには不介入。ただし、ギルドに不利益をもたらすと判断された場合は別......等々、いろいろ説明があった。

 「以上で説明を終わらせていただきます。何か分からないことがあればその都度、係の者にお尋ねください」

 「分かった」

 「ではこちらの用紙に必要事項をご記入下さい」

 ベジットは説明された通り、次々と記入欄を埋めていく。何故か、冬夜には読み書きすることが、できていないのに対し、ベジットには読み書きすることができていた。
 受付員は登録用紙を受け取ると、真っ黒いカードをその上に翳し、なにやら呪文のような言葉を呟く。その後小さなピンを差し出し、自分の血液をカードに染み込ませるように言われる。ベジットは言われるがままにピンで指を刺し、その指でカードに触れると、そこから白い文字が浮かんできた。

 「このギルドカードはご本人以外が触れ続けておりますと、数十秒で灰色になる魔法が付与されております。偽造防止の為ですね。また、紛失された場合は速やかにギルドへ申し出て下さい。料金はかかりますが、再発行させていただきます。......以上で登録は終了です。依頼はあちらのボードに添付されていますので、そちらをご確認の上、依頼受付に申請して下さい」

 ベジットのギルドカードの色は黒。初心者というわけだ。そのため、受けられる依頼も限られてくる。因みに、ギルドランクは黒、紫、緑、青、赤、銀、金と言う順番で上がっていく。
 
 「これにするか」
 
 ベジットが選んだのは、東の森での魔獣討伐。一角狼という魔獣を五匹倒すというものだ。報酬は銅貨18枚。依頼を受ける際に聞いた話によると、一週間分ぐらいの食事代らしい。受付員に場所を聞いて、ベジットは東の森へと向かった。
 
 ──────────
 
 リフレットの町から東の森は、歩いて2時間程の場所だったが、ベジットの場合数秒足らずで到着することができた。
 
 「此処が東の森だな?ということは、あいつらが一角狼ってわけか」
 
 ベジットはこちらに向かって来る殺気を感じ取る。そして、その数秒後。ベジットに向かって一斉に飛び掛かってくる。その数なんと20匹。初心者ならこの数を相手にするなど以ての外。そこそこの実力者でも一人なら危うい状況だ。が、ベジットはその猛攻撃を全て避けきる。
 
 「まあ、流石に初心者の冒険者が相手にする魔物だ。オレが期待する程のものでもないか」
 
 そう言ってベジットは、一角狼の角を壊さないよう、次々と倒していく。
 
 「いやー、大量、大量。......ってこんな量の角、どうやって持ち帰れば......そうだ!久しぶりにアレでもやってみるかな?」
 
 角を持ったベジットは、リフレットの町に向けて次々と角を投げていく。最後の一本を投げ終わると、東の森へ来た時と同じ速さでリフレットの町に戻る。
 また数秒足らずで着くと、同じように角も次々と降ってくる。流石にあの速度で角を移動させるのは無理なので、角に気を纏わせ、耐久力を大幅に上げた。
 
 「同じ速度で、狙った人気のない場所。角に気を纏わせ破損を防ぐ。完璧だな」
 
 勿論、この速度を目視できる者はいないので、見つかる心配はない。それから角20本をギルドまでどうやって運ぼうかと考えていると、そこら辺に丁度良い大きさの袋が落ちていたので、一先ずそれに詰めて行くことにした。
 ギルドの中に入ると、受付員の人が
 
 「どうしました?何か確認することがございますか?」
 
 と、言ってきた。まあ、当たり前の反応だ。普通なら半日ぐらいは掛かる依頼を、数分で戻ってきたのだ。此処で「依頼は終わりましたか?」などと言ってくるのなら、それは異常だ。故にベジットは異常なのだ。
 
 「いや、ちゃんと終わらしてきたぜ?余分も付けてな?」
 
 そう言って、一角狼の角を20本。カウンターに乗せる。
 
 「......は!?」
 
 受付員は思わず、どこから出したのか分からないような声で驚く。
 
 「え、あの、その」
 
 パニック状態になっている受付員は、一旦深呼吸をする。すると、いつもの接客に戻る。
 
 「申し訳ございません。少々お待ちくださいませ」
 
 切り替えが早い。流石はプロといったところか。すると奥から受付員ともう一人、体格の良い40代半ばぐらいの男性が現れた。
 
 「私はこのギルドのギルドマスターをしている者だ。このように騒ぎ立てて申し訳ないが、今の状況がそれだけ異常ということだ」
 
 「そうか、で?オレをどうするつもりなんだ?」
 
 「いや、君をどうこうするつもりはない。先ず、これだけの数の魔物がいる場所へ向かわせてしまったこと。すまなかった。それに、これだけの数の一角狼を討伐してもらったことに感謝する」
 
 「止めろ。オレはただ依頼を完了するため、討伐をしに行っていただけだ。お前たちが謝罪をする必要など何処にもない。現に、オレはこうして生きているしな?」
 
 「そう言ってもらえるだけでも助かる。私たちは、早急に東の森へ捜査に向かう。一角狼は本来、単独で行動するのが当たり前だ。20匹が同時に襲い掛かってくるのは異常ということだ。勿論、これらを早急に対応する準備ができたのは、他でもない君のお陰だ。ギルドカードを呈示してもらえないだろうか。これだけのことを君はしたんだ、お礼を受け取ってもらえなければ、ギルドとして恥ずべきことだろう。どうか受け取ってもらえないだろうか」
 
 「何を言っている?貰える物は貰う。当たり前のことだろ?それに、こっちは畜生一文無しだ。報酬は多い方が助かる」
 
 ベジットはそう言ってギルドカードを渡す。すると、ギルドランクが紫と緑、青を飛ばして一気に赤となった。報酬金は元々の銅貨18枚。追加として金貨3枚を受け取った。それから数十分の手続きを終えると、腹ごしらえをするため、注文をしようとするベジット。そこへ、注文を取りに来たのか酒場の店員がやってきた。
 
 「ベジット様ですね?マスターからの伝言です」
 
 どうやら、ギルドマスターが伝えられなかったことを、魔道具という物を使って、伝言という形で伝えにきたらしい。
 
 《先ほどはすまなかった。東の森のことで頭がいっぱいになってしまい、君に言うことを一つ忘れていた。酒場の料理や飲み物、好きに注文してくれて構わない。勿論、どれだけ食べても料金を払う必要はない。それでは、ゆっくりとしていってくれ》
 
 「ほう、本当にいいんだな?こっちは遠慮なんかしないぞ?」
 
 ギルド員は疎か、ギルドマスターもあんなことになるとは、思ってもみなかった。
 
 ──────────
 
 「いやー、食った、食った。いつもなら腹八分目ってとこだが、今回は満腹だぜー」
 
 「な......ギルドの食料庫が、こんな一瞬で半分を切るなんて、しかも一人で......」
 
 店員がそう言うと、周りの客も同じように
 
 「あの兄ちゃん、マジで胃袋の中どうなってんだよ」
 
 「ああ、それに、ギルド登録をしてまだ一時間も経っていない。なのにランクは赤......俺たちの自信ってもんが無くなっちまいそうだ」
 
 ギルドランクを赤まで上げるためには、確実に年単位は掛かる。むしろ、一生なれない人の方が多いだろう。それを一時間足らずでなど、冗談が過ぎる。
 当の本人は、周りの言葉など気にせず
 
 「また来るかもしんねぇ、そん時はよろしくな。勿論、次はちゃんとお金は払うからよ。んじゃ、ごちそうさん」
 
 そう言ってベジットはギルドを後にした。
 
 ──────────
 
 冬夜のいる場所『ファッションキングザナック』という店の前まで、ベジットは戻ってきた。すると、丁度その店から冬夜が出てくる。
 
 「すみません。まさか、服を売るのに小一時間も掛かってしまうなんて......」
 
 「気にするな。で?あの服、いくらになったんだ?」
 
 「はい。いまいちお金の価値は分からないんですが、金貨10枚になりました」
 
 「へえ、そいつはすげぇや。やっぱり異世界の物ってだけで、相当な値が付くんだな」
 
 ベジットがあれだけのことをして、金貨3枚。冬夜は服を売っただけで金貨10枚。これだけでも、どれだけ珍しい物だったかは分かる。
 
 「......?ベジットさんは、この世界のお金の価値について知っているんですか?」
 
 「ああ、聞いたことなんだが......」
 
 お金の価値は低い順から、青銅貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨、王金貨となっている。価値は約10倍ずつ上がっていき、形状は基本的に丸い。
 銅貨18枚で、一人分の食事が一週間。金貨1枚では約一ヶ月間。10枚では約一年間だ。それだけの期間、食べていける価値ということだ。
 勿論、これは一般的なものであって、どこかの誰かさんみたいに、毎日バカバカ食べていたら直ぐに無くなってしまうだろう。
 
 「......ということは、これって結構な大金ですよね?」
 
 「まあ、一般人からしたら大金だろうな」
 
 「大切に使っていかないといけませんね。......そういえば、この店のオーナーに教えてもらったんですけど、ここを真っ直ぐ行くと『銀月』という宿屋があって、そこをオススメされたんですけど......行きますか?」
 
 「オレは寝れるなら何処でもいいが」
 
 ベジットは、馬車の中でも熟睡できるぐらいだ。寝る場所には困ることはないだろう。
 
 「それじゃあ、行きましょう」
 
 ベジットたちは、宿屋へと歩き始めた。



 戦闘シーンが難しいので、一瞬で終わらせてしまいました。
......ベジットだから、大丈夫ですよね?


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第三話 宿屋 そして一日の幕引き


 少し歩くと宿屋『銀月』の看板が見えてきた。看板には三日月のロゴマークがあり、とても分かりやすい。見た目は三階建ての建物で、煉瓦と木でできた、がっしりとしたものだ。両開きの扉をくぐると、一階は食堂になっており、右側にカウンター、左側に階段が見える。

 「いらっしゃーい。食事ですか。それともお泊まりで?」

 カウンターにいたお姉さんが声を掛けてくる。赤髪のポニーテールで、溌剌とした感じの人だ。

 「えっと、宿泊をお願いしたいんですが、一泊いくらになりますか?」

 「ウチは一泊、銅貨4枚だよ。食事代は別ね。後、同じ部屋なら何人で泊まっても料金は同じよ」
 
 「そうか、ならオレが払おう」
 
 そう言ってベジットは、カウンターに金貨1枚を置く。
 
 「え、いいんですか?それに、なぜベジットさんが金貨を?」
 
 「まあ、町を彷徨いている時にちょっとな」
 
 「そ、そうなんですか......なら、今度僕に食事でも奢らせてくださいね」
 
 「はい。ちょうど20日分ね。最近お客さんが少なかったから助かるわ。ありがとうございます」

 するとお姉さんは、カウンターの奥から宿帳らしきものを取り出して、ベジットの前で開き、インクのついた羽ペンを差し出してきた。

 「じゃあここにサインをお願いしますね」
 
 「ああ」
 
 ベジットは短い返事をして、ペンを持ち、サインを書く。それを見ていた冬夜は
 
 「え?ベジットさん、読み書きできるんですか?僕にはなんて書いてあるのか、さっぱりなんですけど......」
 
 「本当かよ?あの神、肝心なところ忘れてんじゃねえか」
 
 意味不明な会話をしている二人。そんなことは気にせず、お姉さんは部屋の鍵を渡す。

 「これが部屋の鍵ね。無くさないように。場所は三階の一番奥。陽当たりが一番いい部屋よ。トイレと浴場は一階、食事はここでね。あ、どうする? お昼食べる?」

 「あ、お願いします。朝からなにも食べてないので......」
 
 「そういえば、オレも少し小腹が減ってきたな」
 
 この男、どれだけ食べれば気が済むのか。
 
 「じゃあ、なにか軽いものを作るから待ってて。今のうちに部屋を確認して、ひと休みしてきたらいいわ」

 「分かりました」
 
 ベジットはその場に残る。冬夜は鍵を受け取ると階段を上り、三階の一番奥の部屋の扉を開ける。六畳くらいの部屋で、ベッドと机、椅子とクローゼットが置いてあった。正面の窓を開けると、宿の前の通りが見える。それから部屋に鍵をかけ、階段を下りるといい匂いがしてくる。

 「はいよー。お待たせ」

 食堂の席に着くと、サンドイッチらしき物とスープ、そしてサラダが運ばれてきた。それを二人はあっという間に食べきる。冬夜は、服のことで町の様子をじっくり見ることができていなかったので、散歩がてら町を見回ることにした。
 ベジットも、町の様子はよく見てはいなかったということで、同行することになった。

 「散歩に行ってきます」

 「はいよー。行ってらっしゃい」

 宿屋のお姉さんに見送られて町に出る。
 町を歩く人は、武器を携帯している人が多い。剣や斧、ナイフから鞭まで様々だ。冬夜はそれを見て、自分も武器を買うべきか悩んでいた。
 それから少し歩いていると、丁度右側に見える路地の方から
 
 「うわっ」
 
 猛スピードで飛んでくる氷の塊。冬夜はそれをギリギリで避ける。そしてベジットの方に飛んでいくが、それはベジットの体に当たることなく消滅した。
 
 「え、今の何?」
 
 突然の出来事に驚く冬夜。それを見ていたベジットは
 
 (やっぱりあの神が言ってた通り、身体能力も底上げされてんのか。あの動きは、常人が到達できる域じゃねぇしな)
 
 「どうしましょう。行ってみますか?」
 
 「ああ、オレたちが狙われたっていう可能性もあるしな」
 
 そう言って二人は、路地へと足を踏み入れた。
 
 ──────────
 
 路地に入り、狭く細い道を進んでいくと、突き当たりで四人の男女が言い争っていた。片や男が二人、片や少女が二人。少女二人は、冬夜の歳と同じか、歳下ぐらいだろう。

 「約束が違うわ!代金は金貨1枚だったはずよ!」

 ロングヘアの子が男たちに向かって声を荒げた。それに対して男たちはニヤニヤと馬鹿にした薄笑いを浮かべている。男の一人はキラキラと光るガラスでできた、角のようなものを持っていた。

 「なにを言ってやがる。確かにこの水晶鹿の角を金貨1枚で買うと言ったさ。ただし、それは傷物でなければだ。見ろよ、ここに傷があるだろ?だからこの金額なのさ」

 男がそう言うと、チャリンと一枚の銀貨を少女たちの足元に転がす。

 「そんな小さな傷、傷物のうちに入らないわよ!あんたたち初めから......!」

 悔しそうな目で男たちをロングヘアの子が睨む。その後ろに隠れているショートヘアの子も悔しそうに唇を噛んでいた。そこへ

 「フンッ」
 
 ベジットが水晶鹿の角を、掌から放たれた気合いだけで跡形もなく消し飛ばす。それに男は

 「なっ......なんだ今のは!?」
 
 急に起こったことに動揺を見せる。
 
 「おっと、すまねぇな。随分と小さな傷だったもんだから、もうちょっと大きな傷にしようと思ったんだが......どうやら加減を間違えたらしい」
 
 二人の男に向けて、ベジットはそう言った。
 
 「テ、テメェ......急に現れやがって、なにしやがる!!」
 
 「心配するな。お前たちには、これがあれば十分だろ?」
 
 そう言って、ベジットは金貨を取り出す。
 
 「な、なんだ。金は持ってんじゃねえか。なら、それをさっさと寄越して......」
 
 「そらぁ!!取ってこい!!」
 
 ベジットは表通りに向けて金貨を投げる。
 
 「なっ!!」
 
 「あらら。軽く投げたつもりだったが、随分遠くにいっちまった。ほら、どうした?さっさと行かないと誰かに取られちまうぞ?ま、可哀想だから、もう一枚追加しといてやるよ」
 
 そう言ってもう一枚の金貨を投げる。
 
 「クソッ!!なんてことしやがる!......おい!さっさと行くぞ!」
 
 「あ、ああ」
 
 そう言って二人の男は、路地を抜けて表通りを無我夢中で駆けていった。冬夜はそれを見て、色々と察したようで

 「君たちの分は僕が払うよ。はい、金貨1枚」
 
 「え......いいの?あたしたちは助かるけど......」
 
 「あれを壊したのは、間違いなくこっちだしね。構わないから受け取ってよ」
 
 「じゃあ......遠慮なく」

 そう言ってロングヘアの子は、ガントレットを付けた手で金貨を受け取った。

 「助けてくれてありがとう。あたしはエルゼ・シルエスカ。こっちは双子の妹、リンゼ・シルエスカよ」

 「......ありがとうございました」

 「僕は望月冬夜。あ、冬夜が名前ね」
 
 「へえ。名前と家名が逆なんだ。イーシェンの人?」

 「あー......まあ、そんなとこ」
 
 冬夜は、イーシェンがどこかは分からないが、とりあえずそう言うことにしておいた。すると、双子の妹リンゼが

 「あの......あなたは?」
 
 「オレか?オレはベジットだ。後、お前たちに一つ言っておいてやるが、下手な武力行使は止めろ。思わぬ被害が出るだけだ」
 
 「......すみません。まさか、狙いを外して表通りの方までいってしまうなんて......。お怪我は?」
 
 「見ての通り無傷だ。まあ、たまたま通り掛かったのが、オレたちで良かったということだ」
 
 リンゼはそれにほっとする。そして、今後は下手な行動に出ないよう、慎重に行動することを心掛けるリンゼであった。
 
 ──────────
 
 あれからベジットたちは宿屋『銀月』に戻り、そのまま四人で食事を取った。そして、今は食後のお茶を飲んでいるところだ。

 「二人はなんであいつらの依頼を受けたの?」

 冬夜が疑問に思っていたことを、二人に聞いてみる。

 「ちょっとしたツテでね。あたしたち、前に水晶鹿を倒して角を手に入れてたんだけど、欲しいって話が来たからちょうどいいやって。でも、やっぱりトラブルに巻き込まれるのね」

 溜息をつきながらエルゼが目を伏せる。

 「この機会にギルドに登録しよっか、リンゼ」

 「その方がいいと思う......明日にでも登録に行こうよ」

 「あの......もし良かったら明日、ついて行っていいかな。僕もギルドに登録したいんだ。ベジットさんはどうします?」

 「ああ、オレも行こう」
 
 勿論、二人とも快く承諾してくれた。その後、二人と別れ、ベジットと冬夜は部屋に戻った。そして、二人は寝るための身支度を済ませて寝床に入る。ベジットは直ぐに眠りについた。それを見ていた冬夜は、若干羨ましく感じながら、今日の出来事をスマホに書き留める。疲れていたのか、冬夜も直ぐに眠りについた。



 リンゼってこんな性格でしたっけ?


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第四話 赤ランク依頼 そして燃えるベジット


 早朝の4、5時ぐらいだろうか。ベジットは自分の体内時計で目を覚ます。それから身支度を済ませ、冬夜を起こさないように部屋を出る。階段を下りると
 
 「あら。ベジットさんじゃないですか。おはようございます」
 
 宿屋『銀月』の看板娘のお姉さんがいた。因みに、ミカという名前らしい。
 
 「ん?ああ、おはよう。それにしても、随分と早い時間からやってるんだな」
 
 「そりゃあ、皆さんに気持ち良く使ってもらえるよう、心掛けてますから。朝の掃除はこのぐらいの時間からしないとダメですからね」
 
 「そうか。オレは少し外に出てくる」
 
 「分かりました。行ってらっしゃい」
 
 ──────────
 
 ベジットが来たのは、人気のない場所だった。そして、何やら懐から巾着のような物を出して、その中から透明感のある石を取り出した。
 
 「この石ころで、魔法の適正が分かるってわけか」
 
 そう、ベジットが取り出したのは魔石。これで魔法の属性診断ができる。なぜベジットが魔石を持っているのか。それは、昨日のギルドでこの魔石をたまたま見つけ、そこで譲ってもらったのだ。
 
 「早速試すとするか。まずは、この青いやつから。確か......水よ来たれ、だっけか?」
 
 瞬間、魔石は物凄い量の水を放出し、最後には粉々に砕け散ってしまった。
 
 「......やっちまった。まさか、適正があったとは......次は一応加減しとくか」
 
 それから、火、風、土、光、闇も試す。なんと、ベジットには全ての適正があった。
 
 「全てに適正があんのかよ......気と魔法。戦い方も増えて面白くなりそうだが......ん?これは確か、無属性の魔石だったか?」
 
 無属性魔法。それは無属性の者が、何らかの状況、環境にいる時に、頭に魔法名と効果が浮かび上がらせると、使えるようになる魔法だ。無属性魔法はある意味、個人魔法と呼ばれ、同じ魔法を使える者は滅多にいない。
 
 「一応、これもやっておくか。受付員が言ってたのは『ゲート』だったかな?確か、一度行った所なら何処でも行けるっていう」
 
 そう言って、ベジットは昨日の森を思い浮かべる。すると、半透明の穴のようなものが現れた。ベジットはその穴に顔を入れる。
 
 「確かにここは昨日の森だな。なるほど......これは、瞬間移動の欠点を補えそうだ」
 
 適正の確認を終えると、一通りの初級魔法で慣らしながら、日の出を待つことにした。
 
 ──────────
 
 もうすっかり日は昇り、町には多くの人が行き交うようになっていた。ベジットは宿屋に戻り、食堂の席に着く。少しすると、エルゼとリンゼが階段を下りてくる。二人はベジットの前の席に着く。そして、三人で食事をしていると、冬夜が下りてきた。そのまま四人で食事を取り、それを終えると、早速ギルドへ向かう。ギルドは町の中央近くにあり、そこそこの賑わいをみせていた。
 
 「あの、ギルド登録をお願いしたいのですが」
 
 「はい。かしこまりました。そちらの方も含め、四名様で......ベジットさん!?」
 
 「昨日ぶりだな」
 
 「は、はい」
 
 「今日は連れの三人がギルド登録をするんでな。頼んだぞ」
 
 「はい。かしこましました」

 冬夜は、ベジットと受付員が、なぜ知り合いなのかを疑問に思う。
 
 「あ、あの......もしかして、ベジットさん。昨日ここに来てましたか?」
 
 冬夜が受付員に質問する。
 
 「はい。その時はもう凄かったです!一角狼の角をたった数分足らずで20本も!それに、ギルドランクは一気に赤まで上る実績!他にも......あ、すみません」
 
 「い、いえ。聞きだしたのはこっちですから」
 
 冬夜の言葉を受け、受付員は
 
 「では、簡単に登録の説明をさせていただきます」
 
 説明を始めた。
 
 ──────────
 
 「以上で登録は終了です。仕事依頼はあちらのボードに添付されていますので、そちらをご確認の上、依頼受付に申請して下さい」
 
 (『同行者に一人でも上級ランクに達している者がいれば、下級ランクの者でも、上級ランクの依頼を受けることができる』こんなこともできるのか。あれ?これってもしかして......)
 
 「お前たち。登録は終わったか?なら、この依頼を受けに行くぞ」
 
 冬夜が思った通り、ベジットが依頼を持ってくる。
 
 「え、えーと。その依頼内容とは?」
 
 「此処から東に、馬車で3時間の場所にある岩山。そこにいる、ワイバーン一頭の討伐だ」
 
 「「「ワイバーン?」」」
 
 冬夜、エルゼ、リンゼが首を傾げる。
 
 「ああ、こいつは所謂亜竜ってやつだ。通常は普通の竜よりかは弱いが、今回討伐するワイバーンは同等かそれ以上らしい。報酬は白金貨5枚だ」
 
 報酬を聞いた三人は驚きの表情を見せる。そこに
 
 「あたしには、赤ランク依頼の大体の報酬は分からないんだけど、白金貨5枚って結構多いんじゃないの?」
 
 疑問に思ったエルゼが、ベジットに問い掛ける。
 
 「ああ、オレも最初はそう思っていたんだが、どうやら特に重要視されてない依頼で、その強さに対しての報酬が割に合わないってんで、ずっと残ってたんだとよ。まあ、オレたちからすれば十分過ぎる程だが」
 
 「あ、あの......。僕にはワイバーンや竜の強さは分かりませんが、赤ランク依頼の、それもそのランクの人たちが強いと言っている。そんなやつ、倒せるんでしょうか?」
 
 「それに就いては心配いらん。後、この依頼を受ける本来の目的は、お前たちの実力を知るためだ。初心者が狩るような魔物でやっても一端しか観れないからな」
 
 そう言って、四人はギルドを出ようとする。すると冬夜が
 
 「しまった......。大事なこと忘れてた......」
 
 「どうしました?」

 リンゼが呆然としている冬夜に尋ねる。

 「僕、武器まだ持ってない......」
 
 討伐依頼で丸腰では話にならない。そういうわけで、ギルドを出たベジットたちは、武器屋へ向かうことになった。
 通りを北へ歩いていくと、剣と盾の、相変わらず分かりやすいロゴマークの看板が見えてきた。
 入口の扉を開くと、カランカランと扉に取り付けられた小さな鐘が鳴る。その音に反応してか、店の奥から大柄な髭の中年男が現れた。

 「らっしゃい。何をお探しで?」

 「この人に合う武器を買おうと思って。ちょっと店内を見させてもらえる?」

 「どうぞ。手に取ってみてください」

 店主はエルゼの言葉ににこやかに答えた。
 店内を見渡すと、至る所に武器が展示してある。種類も豊富で、剣、槍、弓、斧、鞭、様々な武器が並んでいた。

 「冬夜はなにか得意な武器ってあるの?」

 「特にこれといってないかな。強いて言うなら剣をちょっとだけ教えてもらってたけど」

 冬夜が教えてもらったというのは、学校での剣道の授業だ。まあ、素人ということだ。

 「冬夜さんの場合、力で押す戦い方より、速さで手数を増やす戦い方の方が合ってる気がします。だから......片手剣とか」

 リンゼが片手で扱う剣が並んでいるコーナーを指差す。冬夜はそこまで行くと、壁に掛けてある1本の刀が目に止まった。

 「......どうしました?」

 「あー、これイーシェンの剣ね。やっぱり故郷の剣が気になる?」

 冬夜が刀に魅入っていると、リンゼとエルゼが声を掛けてきた。そして、壁に掛けてあったその刀を手に取り、ゆっくりと鞘から抜いていく。美しい刃文が輝き、それに冬夜は目を奪われる。

 「これ、いくらですか?」

 冬夜の声に、奥でベジットと話していた店主が、ひょこっと首を出す。

 「ああ、そいつですかい。金貨2枚です。けど、そいつは使いこなすのが難しいですよ。初心者にはオススメできない商品なんですがね」

 「金貨2枚!?高くない?」

 「滅多に入荷しないものだし、使い手も限られてます。それぐらいはしますよ」
 
 「材質も中々の物だ。それぐらいはして当然といったところだろう」

 エルゼは不満そうに口を尖らせるが、ベジットと店主は平然とそれを流す。おそらくは適正価格なのだろうと冬夜は思う。

 「これをもらいます。金貨2枚ですね」

 刀を鞘に収め、財布から金貨2枚を取り出してカウンターに置く。

 「毎度あり。で、防具はどうします?」

 「今回は見送っておきます。稼いだらまた買いにきますよ」

 「そうですか。その刀でバンバン稼いでくださいよ」

 そう言って店主は豪快に笑った。
 冬夜の買い物はこれで終わったが、エルゼは足甲であるグリーブを、リンゼは銀のワンドを買っていた。勿論、ベジットには必要ない。それから武器屋を出て、馬車を借り、目的地の岩山へ向かった。
 
 ──────────
 
 そこには、荒涼としているが完全に岩だけではなく、少しだけ潅木が生い茂っている。そんな山が目の前にそびえ立っていた。
 
 「此処が目的の岩山か」
 
 「そうみたいですね」
 
 「......此処からは馬車での移動は無理だ。暫くは歩いて行くぞ」
 
 ベジットの言葉で冬夜たちは馬車を降りる。
 
 「あの......ワイバーンと遭遇した時は、どうやって戦えばいいですか?」
 
 リンゼがベジットに質問する。
 
 「三人で掛かれ。頃合いを見て、オレはお前たちと交代する」
 
 「わ、分かりました」
 
 三人とも、いつ来るか分からないワイバーンとの戦いに緊張している。冬夜に限っていえば、初の戦闘だ。当然といえば当然だろう。それから、足場の悪い所を数十分程歩いていると、今までとは違い、道と呼べるような場所が見えてきた。そこに入る直前、ベジットは何かに気づいたのか
 
 「ちょっと待て。......そこからは奴、ワイバーンの縄張りだ。突然襲い掛かってくるかもしんねぇ。気を引き締めて行け」
 
 冬夜たちはベジットの言葉に頷く。そして三人がワイバーンの縄張りに入ると
 
 「グオォォォォォ!!!」
 
 巨大な咆哮が山に響き渡る。この縄張りの主、ワイバーンのものだ。そして咆哮が聞こえなくなった瞬間、全長およそ10mはあるだろうワイバーンが、冬夜たちの目の前に姿を現した。数秒間の睨み合いの末、最初に仕掛けたのはエルゼだった。
 
 「ブーストォッ!!」

 身体強化を込めたエルゼ渾身の一撃が、ワイバーンの横っ腹に炸裂する。が、
 
 「う、うそ......あたしの本気の攻撃を受けても、微動だにしないなんて......」
 
 確かにワイバーンの腹に、それもなんの防御もしていない状態の時に、エルゼの攻撃は決まった。だが、それをも優に凌ぐ程の硬さをワイバーンは持っていた。
 
 「だぁっ!!」
 
 続いて冬夜の攻撃。それはワイバーンの頭部に直撃する。これも全く効いていない。刀は折れはしなかったものの、多少の刃こぼれはしていた。神から身体能力を底上げしてもらった冬夜だが、それを冬夜自身が扱いきれておらず、このような結果になってしまったのだ。それから、三人の連携プレイで攻撃を繰り返すが、戦況は一向に変わらない。それを受けているワイバーンは、とうとう我慢の限界が来たのか、冬夜たちに攻撃を仕掛けてきた。
 
 「グガァァァ!!!」
 
 ワイバーンから放たれた攻撃は、冬夜、エルゼ、リンゼの誰に当たるでもなく、ベジットがそのまま体で受けていた。
 
 「ベジットさん!?」
 
 「お前ら、良くやった。これでお前たちの実力を知ることができた。てことで、オレの出番だ。お前たちはそこらへんで休んでおけ」
 
 その言葉を最後に、ベジットとワイバーンは、冬夜たちには捉えることのできないスピードで飛んで行った。
 
 ──────────
 
 ベジットがワイバーンを蹴り上げ、その衝撃で飛んで行くワイバーンを、ベジットは一緒になって飛んで行く。
 
 「お前すげぇな。このオレが、なんとか手加減できるレベルの中に入ってんぞ。パオズ山のやつとは比べものにならない程の強さだ。流石は異世界といったところだな」
 
 傍から見れば、どう考えても挑発しているようにしか見えないが、ベジットはワイバーンに本気で感心していた。
 
 「オレが手加減できる相手だ。ちょっとは遊ばせてもらうぜ?」
 
 そう言ってベジットは、空中でワイバーンを叩き落とし、地面に着く前に膝で受け止める。
 
 「ゴガァァァ!!??」
 
 空中を飛ばされていた筈なのに、急に地面に向かって落ちていくと思ったら、腹の部分に激痛が走る。色々なことが一気に起こりすぎて、ワイバーンの感覚がおかしくなる。
 
 「どうしたどうした?お前のさっきまでの威勢は、何処にいった?」
 
 ベジットはワイバーンに向けて、挑発的な発言をする。ワイバーンは起き上がろうとするが、思うように体が動かない。
 
 「最初の一蹴りと、さっきの攻撃でもうダウンか?ちょっとは楽しめると思ったんだがな。......まあいい。これで最後だ」
 
 ベジットの言葉通り、拳がワイバーンの腹部を貫き、死を感じさせることもなく絶命させた。ギルドから指定されている、頭部の角、翼の一部分、尻尾の先端部分を切り落として持ち帰る。売値がそこそこする他の部位も持ち帰る。後処理は、ベジットが放った気弾によって行われた。
 ベジットは、冬夜たちがいる場所へと戻る。そして、ワイバーンの各部位を見せると、エルゼは「あなた、本当に何者?」と、リンゼは「私たちとは、レベルの違う場所にいるんですよ」と言う。冬夜は「無事に依頼も終えることができたし、今はいいんじゃない?まあ、僕たち、なにもできていないんだけど......」と、その場のなんともいえない空気を消しながら、二人に向けて言う。気持ちの整理ができたところで、ベジットたちは馬車を置いてある所まで戻り、リフレットの町まで戻るのだった。



 見るんじゃあなくて観ることだ。......すみません、言ってみたかっただけです。
 因みに、ベジットが魔法を使えるようになっていますが、逆にこれは弱体化しています。元が強すぎるせいですね......。無属性魔法は相変わらずですが。


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