奈良シカマルが好きなんです! (あるか)
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その1

私、人並ナミには人には言えない秘密がある。

何を隠そうこの私はーーーー・・・

 

 

奈良シカマルが好きなのだ。

 

 

 

私の朝は教室に入りシカマルを見つけるところから始まる。

シカマルは面倒臭がりの割に余裕を持って登校する。

おそらく遅刻して怒られる方が面倒だと判断しているのだろう。

シカマルは普段おおよそ授業が始まる15分前に登校する。

誤差があっても2,3分程度。

これは数週間にわたってアカデミー前の木陰で計測した結果だから間違いない。

だから私はいつも授業開始10分前丁度に教室に入り、シカマルの斜め後ろの席をキープする。

シカマルは人の少ない席を計算しているのか普段から周辺に座る人もほとんど居ない。

だから授業開始10分前でも余裕で座れる。

 

道行くクラスメイトに挨拶しつつ目的の席に着席する。

 

「シカマルおはよー」

 

「…はよ」

 

はい、「…はよ」いただきましたー!

はぁ〜、今日もシカマルはかっこいいなぁ眠たげな目がセクシーだしそんなに眠たくても挨拶返してくれるなんて優しすぎるしほんと他の女の子達がいつシカマルの魅力に気付いてしまうかと毎日そわそわしているよ。

どうにかシカマルを私に惚れさせようとアプローチしてるけど1ミリも響いてないのが悲しいけどね!きっと私のことなんて眼中にも無いんだろうなぁ。

いやでもそこそこ喋る方だと思うし!他の女の子達よりはアドバンテージあるよ私、頑張れ私負けるな私。

 

今日の授業は特に変わったものは無い。

でも!今日は月に一度の消しゴム忘れデーなのだ。

消しゴム忘れデーとは、大体月に一度のペースで(同じ日だとバレるから毎月違う日にしている)消しゴムや鉛筆、教科書等を忘れシカマルに貸してもらおう大作戦の決行日なのだ。

言い忘れていたが、私がシカマルのことを好きなのは誰にも言っていないし態度にも出していない。

万が一バレたら恋バナ好きのクラスメイトにからかわれるのが目に見えているからだ。

そんなことになったらシカマルは嫌がり私を避け、そのままこの恋が敗れてしまうだろう。

そもそもシカマルが嫌がるようなことはしたくない。

だからこの恋はシカマルが私に惚れるまで誰にも悟られてはいけないのだ。

 

「あっやば、消しゴム忘れた。シカマルー、消しゴム貸して」

 

「またかよ、お前案外抜けてるよな」

 

「あはは、今度から気を付けるよ」

 

やっばい!えっこれわざと忘れてるのバレた?わざとらしかった?えっえっやばやばやば

 

「まぁ別にいいけどよ」

 

セーーーーフ!セーフ?セーフでいいよね?お許しもらったし実質セーフだよね?

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

俺のクラスの人並ナミについて話そうと思う。

名は体を表すと言う格言の如く、普通なやつだ。

俺のように面倒臭がりな訳でもなく、かと言って真面目すぎる訳でも無い。

人当たりも良く特別仲のいい友人は居ないが嫌われている訳でも無いそこそこの友人関係を築いている。

好きな食いもんは甘い物って言うところも女としては特に変わってない平均的な好みだな。

朝はいつも始業開始の10分前に来て人が少ない席が好きなのかいつも俺と似たような位置に座る。そんなやつだ。

 

何故俺がここまで人並ナミについて詳しいのか。

それはこの俺、奈良シカマルがーーー・・・

人並ナミのことを好きだからだ。

 

俺があいつの性格や友人関係をこんなに知っているのはいつも観察しているからだし、甘いものが好きだと知っているのはあいつが他のやつと話しているのを聞いたからだ。

俺がこの席に座っているのもあいつがいつも人の少ない席に座っているからであいつよりも先に登校するのは俺の意思であいつの近くの席に座っていると思われないようにしているからだ。

俺の朝は授業開始の15分前に登校するところから始まる。

そこそこ揃った顔触れをざっと見て授業開始時の席の配置を予測し、最終的に最も人が少ないであろう席に座る。

そして顔を伏せ寝た振りをしてあいつを待つ。

この寝た振りはあくまでもあいつの事を意識していないと言外に伝えるための行動だ。

あとあいつが教室に入ってきた時にうっかり見てしまわないための予防策でもある。

そして数分後、あいつが登校する。

あいつは教室に入ったらまずその場にいる奴に挨拶をする。

そして席に座るまでその道中の奴に挨拶をしていく。

その声が近付いてくるのを聞きながら俺の心音がどんどん早まっていくのを感じる。

もうすぐだ、もうすぐ…

 

「シカマルおはよー」

 

「…はよ」

 

これがあいつと毎日交わす数少ない会話の一つだ。

意識していないよう気怠げな顔を作り、しかしあいつの顔をちゃんとこの目で見て挨拶を返す。

あいつはいつも俺の後ろの席に座るから、これは1日の中であいつの顔を見れる数少ない機会なんだ。

絶対逃してたまるか。

 

今日の授業は普段とさして変わることは無かったが一つだけいい事があった。

あいつは基本的にはしっかりしているが、たまに抜けたところがある。

簡単に言うと大体月に一度くらいの頻度で忘れ物をする。

その時周りに人が座っていなければ、俺に助けを求めてくる。

今日がその日だった。

今日は運良く俺とあいつの周りにはチョウジしか座っておらず、しかもそのチョウジはあいつとは反対側の俺の隣だった。

従ってあいつは俺に助けを求めてきた。

 

「あっやば、消しゴム忘れた。シカマルー、消しゴム貸して」

 

「またかよ、お前案外抜けてるよな」

 

「あはは、今度から気を付けるよ」

 

まずい。

気を付けられたら月に一度あるかないかの楽しみが減っちまう。

どうにか問題無い事を伝えねぇと。

 

「まぁ別にいいけどよ」

 

どうにかこれで少しでも気にしなくなってくれ。




ご閲覧ありがとうございました!


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その2

青い空、ぽつりぽつりと浮かぶ白い雲。

それらを一切見ずに屋上で目を瞑る私。

みなさんこんにちは、人並ナミです。

絶賛狸寝入り中です。

 

この場所がシカマルのお気に入りの日向ぼっこスペースだという事を突き止めてから早1週間。

シカマルに偶然会うために毎日ここに来て狸寝入りをする日々。

いやもうびっくりするほどシカマル来ない。

もう1週間だよ?毎日2-3時間日を浴びながら狸寝入りしてるからちょっと日に焼けてきたよ?

とかなんとかダラダラと考えて考えてるうちに今日もまた帰る時間になってきてしまった。

はぁ…今日もまた会えなかったよ…。

と思っていたら、誰かが階段を登ってくる気配を感じる。

なんで気付いたかって?もちろん狸寝入り中はいつシカマルが来てもいいように全力で周囲の気配を探っているからである。

変態?ストーカー?なんとでも言って。

相手にバレなければ合法だから。

 

っていうか、 あれ、え、もしかしてこの気配って…!

 

ガチャ、と扉を開ける音が聞こえる。

いや、まだだ、まだ慌てるような時間じゃない…。

この気配がものすごくシカマルに似た気配だとしても本人とは限らない。

慌てるな、落ち着いて狸寝入りをするんだ私。

この1週間で磨き上げた狸寝入りの技術を見せつけてやるんだ。

 

「…っ!先約が居たのか」

 

ボソリと呟くような声が聞こえる。

脳髄を蕩けさせるような、私の待ち望んだ声だ。

シカマルだーーーーーーー!

し、しかもこの気配的には私に近付いて…え、隣に来た!寝転んだ!

お、落ち着いて。

とにかく自然な寝息を意識しないと、ひっひっふー、ひっひっふー。

あっだめもう無理我慢出来ない。

 

「ん゛んっ…、ふぅ……ん…」

 

我慢出来なかった…。

大好きな人が隣にいるのに呼吸を荒らげない方が無理だったよ…。これでもどうにかまだ自然に身じろぎしたくらいで抑えられた私を褒めたい。

 

………って、隣からめっちゃ視線感じるんだけど。

これ、もしかして起きてるのバレた?い、いや、シカマル、私起きてないよ、大丈夫だよ。

すやすや。

すやぁ。

………。

…………………いや、もうこれ起きた方がいいな。

バレかけてるなら不自然に眠り続けるよりもいっそのことシカマルが隣に寝転んだことで目が覚めたみたいな感じにした方がまだマシな気がしてきた。

私の修行が足りなかったせいでシカマルと数十分一緒の空間で寝転ぶ幸せ計画がパーになってしまった。

 

「ん……、ふわぁ………んー…あれ…?シカマル……?」

 

「……おう」

 

どうしようシカマルすごく反応悪いんだけど。

シカマル頭いいからなぁ、やっぱ狸寝入りバレてたのかな?いやでもバレる訳にはいかない、私がシカマルのことを好きだとバレる時はシカマルが私のことを好きになってくれた時だって心に誓ってるんだ。

ということで今からフォローすればなんかいい感じにまとまらないかな…。

ダメ元でやってみよう。

 

「あはは、いやぁなんかこの場所すごく気持ちよくってさ〜。気付いたら寝ちゃってたよ」

 

あはは、と誤魔化すように笑う。

シカマルがこの場所を気に入ってるからそこを持ち上げつつ、同級生に眠りこけてたところを見られて恥ずかしくて言い訳をしている風の対応!お願い!誤魔化されて!

 

「まぁ…確かにな。俺もよくここで雲見るけど、うるさくねーし風が気持ちいいよな」

 

まさかの会話が続いた。

誤魔化せたかはわからないけどもうそれどころじゃない。

夢じゃない?ほっぺ抓りたいけど今は我慢して会話繋げて仲良くならないと!

 

「雲?」

 

「あぁ、俺、雲好きなんだよな。好きに空を浮かんでて、自由で」

 

「雲を自由だって考えたことなかったなぁ。でも私も雲は好きだよ。いろんな形があって、時間と共に形を変えていって、見ていて飽きないよ」

 

好きって言った、好きって言った、好きって言った。

しかも柔らかい笑顔付きで。

脳みそにそりゃもう深く刻み付けていつでも再生できるようにするしかないよね。

 

「お前もよくここに来るのか?」

 

これ、探られてる?

ここで来るって言ったらもうシカマル来なくなる?

さっきもここ静かだからいいって言ってたしやっぱ雲見るなら一人で見たいよね…。

でも私はシカマルと見たいんだ!いや、シカマルと見たいというかシカマルと居たいんだ!でもやっぱりシカマルが迷惑そうなら邪魔するわけにはいかないし…。

ここはとりあえずそれとなく確認しよう。

 

「ううん、今日は偶然来ただけ。すごく気持ち良くて眠っちゃったけど」

 

あはは、と照れたように笑い一番聞きたかったことを聞く。

 

「さっき言ってたけど、シカマルはこの場所好きなんだよね?もし良かったらなんだけど、私もたまにでいいからここに来てもいいかな?」

 

心の中で拒絶されないように願う。

 

「別に、俺に聞くことじゃねーだろ。ここは俺の場所じゃねぇんだし」

 

そういうシカマルは、ちょっと言いづらそうに、目線を逸らしながら、

 

「でもまぁ、俺もよくここ来るし、お前が来るようになったらまた会うかもしれねぇな」

 

と、照れくさそうにはにかみながら言った。

………好き。シカマルのこういうところが好き。

きっと私がシカマルの場所に横入りしたことを気にしてるんじゃないかって思ってフォローしてくれたんだろう。

こんな優しい言葉をかけるようなキャラでも無いのに、照れくさそうに私のことを気遣ってくれて。

やっぱり私はシカマルのことが好きだ。

 

「ほんと?じゃあお言葉に甘えてまた来ようかな」

 

さーて、家に帰ったらどれくらいペースで来るのが自然かを計算しないと。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

 

俺は雲が好きだ。

特に日当りのいい場所で雲を見ると心が落ち着く。

だから俺は今日も、よく雲を見るために使う場所の一つへ向かった。

 

「…っ!!?」

 

ドアを開け、普段寝転んでいる大きめのベンチへ向かうと、そこには俺の好きな相手、人並ナミが居た。

 

「先約が居たのか」

 

驚きすぎたのを誤魔化すように呟く。

しまった、この声で起きたりしねぇよな。

なんでこんなところで寝てるんだ?つーか寝顔可愛すぎだろ…。

と考えながらナミの隣に寝転ぶ。

距離が近い。実質添い寝だ。

でも仕方ねえよな、ここにはベンチは一つだけで、俺は雲を見に来た。何も不自然なことは無い。

心臓が高鳴り過ぎて痛くなりつつも寝ているこいつに視線を向ける。

 

「んんっ…、ふぅ……ん…」

 

……エッロ。

なんだ今の息遣い、すげぇエロかったぞ。

つーかこいつこんなところで寝てここに来たのが俺以外だったらどうするつもりだったんだ?寝顔かわいいな…。いや違う、そうじゃない、そうじゃないはずだが寝顔に見惚れすぎて頭が回らない。

もう雲どころではない。

にしても何だこの顔、ちょっと微笑んで寝てるなんて反則だろ。

 

「ん……、ふわぁ………んー…あれ…?シカマル……?」

 

!!!!!!!!!!!

しまった、やっぱり起こしちまってたか。

つーか眠気眼を擦ってんの可愛すぎねぇか。

好きなやつの寝起き見れるとか貴重な体験すぎる、今日ここに来てよかった。

 

「……おう」

 

こんな素っ気ない返しをしたいわけじゃ無いんだ。

だが寝起きのこいつがあまりにも破壊力が高すぎて何も考えられなくなる。

くそっ、もっと気の利いたこと言えれば今頃こいつと仲良くなれてるかもしんねーのに。

 

「あはは、いやぁなんかこの場所すごく気持ちよくってさ〜。気付いたら寝ちゃってたよ」

 

と思っていたらまさかあいつから話しかけてきてくれた。

2度目のチャンス、これを逃すともうあとは無い。

どうにか話をしねーと。考えろよ、俺。

 

「まぁ…確かにな。俺もよくここで雲見るけど、うるさくねーし風が気持ちいいよな」

 

「雲?」

 

「あぁ、俺、雲好きなんだよな。好きに空を浮かんでて、自由で」

 

話している最中で気付く。

いや雲の話なんて誰も興味ねーよ。

何話してんだよ俺。

こいつの好み知ってんだからもっとこう、甘いもんの話とかあっただろ。

なんでくそつまんねー雲の話なんて始めたんだ。

なんで俺こんなつまんねーやつなんだ。

 

「雲を自由だって考えたことなかったなぁ。でも私も雲は好きだよ。いろんな形があって、時間と共に形を変えていって、見ていて飽きないよ」

 

楽しそうに笑いながらナミは言う。

だが俺はそんなこいつを見る余裕なんて無かった。

「好きだよ」

こいつの、こんな言葉を、二人きりの状況で聞ける日が来るなんて夢にも思っていなかった。

もちろん俺に向けて言ったわけじゃねぇのは分かってる。

でもそれでも頭の中では無限にリピートしている。

いつかこのセリフが俺に向けて言われる日が来るのだろうか。

 

それにしてもこいつ今日ここで寝てたけど、もしかしてここによく来たりするのか?

俺は普段はここにはそんなに来ねぇが、こいつが来るって言うなら話は別だ。

別に今回は偶然会っただけだから普段来る頻度なんてバレてねーだろうし、こいつがよく来るならもっとこの場所に来る回数を増やして会う確率を上げてぇところだ。

 

「お前もよくここに来るのか?」

 

「ううん、今日は偶然来ただけ。すごく気持ち良くて眠っちゃったけど」

 

やっぱそう上手くは行かねぇか。

会う回数が増えたらその分会話も増えて少しでも仲良くなれんじゃねーかと思ったんだけどな。

 

「さっき言ってたけど、シカマルはこの場所好きなんだよね?もし良かったらなんだけど、私もたまにでいいからここに来てもいいかな?」

 

「別に、俺に聞くことじゃねーだろ。ここは俺の場所じゃねぇんだし」

 

やべぇ……、嬉しすぎてにやけちまう…。

どうやらこいつはこの場所を気に入ったようだ。

これからはここに来るようにするか。

しかしこいつ、もしかしたら俺が邪魔だと思ってると勘違いしてるかもしれねーな。

そんなことはありえねぇがこいつが来るのを遠慮しちまわねーように念の為駄目押ししておこう。

 

「でもまぁ、俺もよくここ来るし、お前が来るようになったらまた会うかもしれねぇな」

 

しまった…。

これだとまるで俺がこいつに会いたいみてぇじゃねーか。

間違ってねぇけど。

下心丸出しできめーんだよ俺。

駄目押しどころか大失敗じゃねーか。

あーくそ、これならなんも言わない方がまだ良かったかもしれねぇな。

頼むから考え変えないでくれ頼む。

 

「ほんと?じゃあお言葉に甘えてまた来ようかな」

 

下心には気付いて無かったみたいだ。

うし、これからはここに来よう。

もし今よりも話せるようになれば、俺の他の気に入ってる穴場にも一緒に行きてぇな。




閲覧ありがとうございました!


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その3

休み時間。

その使い方は人によって違う。

仲の良いグループで会話を楽しむ者。

読書に励む者。

先程の授業で分からなかった部分を先生に聞きに行く者。

 

そして俺はーーー。

 

「ねぇねぇ、ナミって好きな人居ないの?」

 

机に突っ伏し寝た振りをしてナミとイノの会話を聞いていた。

 

「え、好きな人?別に居ないなぁ」

 

間髪入れずナミが答える。

悩む素振りも「…マル!」無かったということは、「…きろ…!」本当に居ないんだろう。

 

「おい!シカマル起きろってばよ!」

「……あ?」

 

めんどくせー…せっかくイノがいい質問してたってのに。

 

「次の時間自習だってイルカ先生が言ってたってばよ!さぼろーぜ!」

 

正直ここから動きたくない。

この会話をの続きを聞いていたい。

しかし普段の俺なら迷わずにサボりに行くだろう。

どうする、考えろ、最善の手は何だ…。

 

「…あぁ、行くか」

 

もしここで行かなかったら、こいつらに何か疑われるかもしれない。

それは最悪だ。

この会話を聞けなくなるのは痛いが、今後のことを考えるなら今はこの場から動くのが得策だろう。

 

そう考え、俺は後ろ髪が引かれる思いでナルト達と教室を後にした。

 

 

ーーーーーーーー

 

 

「え、好きな人?別に居ないなぁ」

 

シカマル、私好きな人居ないよ!チラッチラッ

あ、シカマル寝てる…じゃあこの会話も聞こえてないか…。

 

「じゃあサスケ君のことはどう思ってるのよ、このクラスの女子は大体サスケ君のこと好きよ」

 

あ、シカマル教室から出ていっちゃった…。

って何の話してたっけ?

えっと……あ、そうだそうだ、サスケ君が好きかどうかって話か。

 

「……サスケ君?んー、サスケ君かー…」

 

正直サスケ君よりもシカマルの方が数億倍かっこいいしなぁ。

言わないけど。

 

「サスケ君は実技トップだしすごいとは思うけど、恋愛的な意味では好きではないかなー」

 

あの排他的というか、他者を見下してるような性格もあんまり好きじゃないしな〜。

っと危ない危ない、そんなことよりも。

 

「私、恋愛するよりもしたいことがいっぱいあってさー、今将棋にどハマりしてるんだよね!」

 

もちろんシカマルが将棋が好きだという事を知った日から私は将棋にハマったことになった。

いつでもシカマルの趣味にハマれるように、前々から多趣味キャラでいたから不自然な点は無いはずだ。

さぁ、イノ!今ここでシカマルの名前を出すか、後々シカマルに私が将棋にハマってることをそれとなく伝えてくれ!

 

「はぁーー…あんたはそういうやつだったわよね…」

「いやいや、将棋って案外奥深いんだよ!将棋をすると数手先も考えられるようになるし、軍師としての腕も磨けるようになると思うんだよ!」

 

いやいやほんとほんと、完全に言い訳として考えた後付け設定だけど実際相手の手を読むって将来的にかなり大事だと思うんだよ。

私は10割不純な動機で始めたけどさ!

 

「でも対戦相手が親しかいないし、うちの親将棋あんまり強くないからつまらなくって。だからイノも将棋やろう?」

 

お願い!と迫る。

人の良いイノはこのお願いを無下には出来ないはずだ。

でもイノ自身は将棋に全く興味が無いのは見ていてわかる。

そしてイノの幼馴染には運良く将棋をやっている人がいる。

そう、導かれる答えはーー

 

「そ、そういえば、将棋っていうとシカマルも好きだったわね」

 

ーー計画通り。

悪い顔でニヤッとしたいところを我慢して会話を続ける。

 

「え?シカマルが?なんか意外」

「そう?あー、そっか、知らないわよね。シカマルって結構年寄りみたいな性格してんのよ。将棋好きだったり、日当たりのいいところで寝るのが趣味だったり」

「あ、寝るのが趣味なのはなんか想像できる」

 

ふふっ、と寝ているシカマルを思い出して笑ったかのように小さく笑う。

まぁ、全部知ってたけどさ。

新しい情報はやっぱ自分で手に入れないと駄目かー。

 

「ありがと!じゃあ今度シカマルに対戦挑んでみるよ!」

「ええ、それがいいわよ。私とやってもきっとつまらないだろうし。あ、そういえば前シカマルが言ってたんだけど、あいつのお父さんすっごく強くて1回も勝てたことないらしいわよ。もしシカマルで物足りなかったらシカマルのお父さんに相手してもらえばいいんじゃない?」

 

な ん で す と !

え、シカマルお父さんに勝てたことないの?え、可愛い、なにそれ可愛い!

 

「そうなんだ、いい情報ありがと!あ、そうだ今日の帰り新しく出来た甘味処行かない?」

 

本当にいい情報ありがとう。

本当に、ありがとう。




閲覧ありがとうございました!


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その4

 

私は、シカマルが好きだ。とても好きだ。

好きだからずっと見てきた。

好きだから、ただそれだけの純粋な想いだった。

まさかそれがこんなことになるなんて。

 

お願い!誰か助けて!!!!

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

時は遡ること数分前、忍術の授業だった。

今日はナルトはサボってないからイルカ先生が怒ることも無く、私はいつも通りシカマルの斜め後ろをキープ出来た。

なんて事ない、いつも通りの日のはずだった。

 

「よし、今日は変化の術の応用だ!」

 

イルカ先生が言うには、変化の術は化けて終わりというものでは無いらしい。

見た目が完璧でも性格や素振り等で簡単に見破られてしまうという。演技力が大切なのだ。

 

なるほどな、と思った。

確かに今までは変化後の自分の見た目だけ気にしていたが、振る舞いなどは一切気にしていなかった。

授業でイルカ先生に化けた時も、普通に普段の口調や振る舞いをしていた。

それだと実戦だとすぐにバレてしまう。

変化の術を使ったら振る舞いは勝手についてくる訳じゃないのだ。

 

「ということで、全員変化の術を使って俺になるんだ!もちろん最初から完璧に演技ができるとは思っていない。そこで、変化した状態で近くにいる奴と話し、そこで感じた違和感などを指摘し合うんだ」

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

という所で冒頭に戻る。

これ上手く行けばシカマルと話せるんじゃない?と思った私が馬鹿でしたすみません。

確かにシカマルとは話せた。というか現在進行形で話してる。

 

「ーーーで……どうした?」

「あぁ、いや、なんでもない」

 

この目の前にいるイルカ先生は間違いなくシカマルだ。

席が近かったし、重心のかけ方も、呼吸のペースも、口調のイントネーションだってシカマルそのものだ。

でもそれが本来なら気付かないはずの特徴だってことは分かってる。

というか私なんでこんなこと分かるんだよ!びっくりだよ!正直引くよ!

 

「お前はイルカ先生に比べて、少しぼんやりしてるとこがあるな」

「あ、あぁ、ありがとう。気をつけて振舞ってみるな」

「おう、それで俺はどうだ?」

 

どうって言われてもシカマル本人にしか見えない…。

いや、考えろ、考えるんだ私!何か手はあるはずだ!

 

「とりあえずイルカ先生は、“おう”とは言わないよね」

「おい、口調戻ってんぞ」

「あっほんとだ!って、それを言うならそっちこそ!」

 

なんでシカマルと話せてるのにこんな嫌な緊張してるんだ私は!

あとあとえーとえーと、他には他にはうーーーん。

 

「あと、イルカ先生はそんなに片脚に重心を掛けないな。頭をかく癖も注意だぞ」

「あぁ、確かにな、ありがとう」

 

はーー、よかった。何とか絞り出せた。

きっとそんなに疑われてないよね?

にしてもシカマルがイルカ先生口調かぁ、そう思うとなんか可愛く見えてきた。うふふ。

 

「…ん?どうした?そんなニヤけてるんだ?」

 

やっべバレた。

 

「えっ!いや、なんでもないけど」

「いやなんでもない事無いだろう、俺に話してみろ」

「うぐっ、ふふっ、いや…」

「ん?どうした?何か言えないことでもあるのか?」

「ふふ…、あっははは、だって、シカマルがイルカ先生口調だと思うと面白くって!」

 

よし、どうにか面白がってる方向に持ち込めた。違和感は無いはず。

ナイス私、英断だぞ私。

それにしてもシカマルのちょっと不満げな表情も可愛いなぁ。

 

「……お前、俺って気付いてたのか」

 

あっ………ミスった。死んだわこれ。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 

変化の術してクラスメイトと話し違和感を指摘し合う。それが今日の授業内容だった。

内容を聞いた時、ナミと話せるチャンスだと思った。

全員がイルカ先生に変化してて誰が誰に話しかけているかわからない状況。

俺が下心を持ってナミに話しかけていることはバレないはずだ。

 

 

「ーーーで……どうした?」

「あぁ、いや、なんでもない」

「お前はイルカ先生に比べて、少しぼんやりしてるとこがあるな」

「あ、あぁ、ありがとう。気をつけて振舞ってみるな」

 

今俺はナミと話している。

何故分かるかって?

そりゃ席が近かったからな、変化の術使った後も視界の端で追ってれば見失うことも無い。

 

「おう、それで俺はどうだ?」

「とりあえずイルカ先生は、“おう”とは言わないよね」

「おい、口調戻ってんぞ」

「あっほんとだ!って、それを言うならそっちこそ!」

 

……可愛いな。

見た目がイルカ先生でも、中身がナミって分かってると途端に可愛く見えてくる。

俺も末期だな。

 

「あと、イルカ先生はそんなに片脚に重心を掛けないな。頭をかく癖も注意だぞ」

「あぁ、確かにな、ありがとう」

 

さっきまでぼんやりしてたと思ったら、次は微笑み始めたな。

どうしたんだ?聞いてもいいのかこれ。

まぁ、俺だってバレてねーし、もしかしたらもっとナミのことを知れるかもしれねーな。

聞いてみるか。

 

「…ん?どうした?そんなニヤけてるんだ?」

「えっ!いや、なんでもないけど」

「いやなんでもない事無いだろう、俺に話してみろ」

「うぐっ、ふふっ、いや…」

「ん?どうした?何か言えないことでもあるのか?」

 

ナミとこんな会話ができるなんて。

にしても笑顔可愛いな、見た目はイルカ先生だけど。

 

「ふふ…、あっははは、だって、シカマルがイルカ先生口調だと思うと面白くって!」

 

………は?

ナミ、お前、

 

「……お前、俺って気付いてたのか」

 

一体いつからだ…?

 

「だって席近かったから、消去法でシカマルかなってね。正解?」

 

そういうことか…。

つーことは、俺もこいつがナミってことに気付いていないとおかしくねーか?

だが、最初から気付いていたとバレるとナミだから話しかけたのがバレちまう。

どうする、考えろ俺。

 

「……つーことは、お前はナミか?」

「正解!というか気付いてなかったんだね、結構口調ガバガバだったのに」

 

確かにこいつ、普段の口調結構使ってたよな。

それで俺が気づかなかったっていうのは無理があるか?

最初から気付いててしかもそれを隠そうとしたなんてバレたらダセーなんてもんじゃねぇぞ。

 

「あはは、私の変化の術もなかなか捨てたもんじゃないね!」

 

大丈夫そうだな。

 

 




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