魔導剣士~月光煌く御神不破流~ (剣の舞姫)
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魔法一覧

魔法一覧です。
今の所は恭也と、娘のティオが使う魔法ですね。


魔導剣士

~月光煌く御神不破流~

 

魔法一覧

 

 

高町恭也・高町ティオの使用魔法一覧

 

名称:紫電一閃

術式:古代ベルカ式

タイプ:魔力付与型

詳細:斬撃強化魔法の一種であり、主にレーベンシュッツやヴァイスリットシュツルムの刀身に魔力を纏わせて斬る際に使用する。

 

名称:ハンマーシュラーク

術式:古代ベルカ式

タイプ:魔力付与型

詳細:打撃強化魔法の一種であり、主に拳や足に魔力を纏わせて殴る、蹴る際に使用する。

 

名称:シュヴァルツェ・ヴィルクング

術式:古代ベルカ式

タイプ:魔力付与型

詳細:打撃強化+魔法効果付与魔法の一種であり、打撃の際にシールド破壊などの効果を与える。主に拳や脚で使用。

 

名称:シュトゥルムヴィンデ

術式:古代ベルカ式

タイプ:魔力付与型

詳細:斬撃によって衝撃波を飛ばす中距離魔法。

 

名称:月天の嵐

術式:古代ベルカ式

タイプ:広域攻撃型

詳細:魔力の嵐による攻撃を広範囲に行う広域殲滅型魔法。使用者は恭也のみで、ティオは使用不可能。

 

名称:デアボリック・エミッション

術式:古代ベルカ式

タイプ:広域攻撃型

詳細:術者を中心に球状の純粋魔力で広範囲を攻撃する広域殲滅魔法。

 

名称:ゲアボルガ

術式:古代ベルカ式

タイプ:砲撃型

詳細:ベルカ式魔方陣を前面に展開し、陣全体に魔力をチャージして放つ大火力砲撃魔法。

 

名称:フェイルノート・ブレイカー

術式:古代ベルカ式

タイプ:収束砲撃型

詳細:エルフリーデとのユニゾン時、且つレーベンシュッツのセカンドフォルムの時にのみ使用可能な収束砲撃魔法。

使用者は恭也のみで、ティオは使用不可能。

 

名称:ディバインバスター

術式:近代ベルカ式

タイプ:速射砲撃型

詳細:高町なのはから教わったディバインバスターを恭也とエルフリーデがベルカ式にアレンジして開発した速射型の砲撃魔法。

 

名称:パンツァーシルト

術式:古代ベルカ式

タイプ:シールド型

詳細:古代ベルカ式のシールド防御魔法。

 

名称:パンツァーヒンダネス

術式:古代ベルカ式

タイプ:バリア型

詳細:古代ベルカ式のバリア防御魔法。

 

名称:パンツァーガイスト

術式:古代ベルカ式

タイプ:フィールド型

詳細:古代ベルカ式のフィールド防御魔法。

 

名称:鋼の軛

術式:古代ベルカ式

タイプ:ケージ捕縛型

詳細:敵を串刺しにして捕縛する捕縛魔法。

 

名称:フリーレン・フェッセルン

術式:古代ベルカ式

タイプ:ケージ捕縛型

詳細:対象を氷結させ氷の内側に捕える捕縛魔法。

 

名称:シュネルモーメント

術式:古代ベルカ式

タイプ:高速移動型

詳細:古代ベルカ式の高速移動魔法。



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時空管理局特殊警防隊オリジナルキャラ設定

手慰みです。


魔導剣士

~月光煌く御神不破流~

 

時空管理局特殊警防隊オリキャラ設定

 

名前:ヴィッツ・レクサス

年齢:42歳

性別:男

家族構成:妻、娘

魔法式:近代ベルカ式

魔導師ランク:空戦AAA-

デバイス:ハルバート型アームドデバイス「ツェツァーリア」

魔力色:深緑色

レアスキル:無し

流派:聖王教会式格闘術

役職:時空管理局特殊警防隊部隊長

階級:少将

資格:大隊指揮官、ヘリパイロットC級、中隊指揮官、小隊指揮官、捜査官、戦闘時犯人殺害許可

詳細:特殊警防隊の現部隊長であり、恭也と同じ特殊警防隊創設メンバーの一人。前部隊長が退職するまでは副部隊長で准将だったが、前部隊長の退職と同時に少将への昇進と部隊長への繰り上がりが決まった。

恭也とは10年近くの付き合いであり、まだ特殊警防隊を立ち上げる前から恭也とは同じ部隊に所属していた間柄。

聖王教会シスターの妻を持ち、可愛い娘を溺愛する子煩悩で、妻から恭也の息子の婚約者に娘をどうかという話をされた時は本気で恭也を殺そうとした事がある。(勿論、返り討ちにあったが)

 

 

名前:カムリ・プレミオ

年齢:69歳

性別:男

家族構成:妻、息子、娘、孫娘

魔法式:ミッドチルダ式

魔導師ランク:陸戦A

デバイス:杖型ストレージデバイス「A2U」

魔力色:赤茶色

レアスキル:無し

流派:無し

役職:元時空管理局特殊警防隊部隊長

階級:元少将

資格:大隊指揮官、中隊指揮官、小隊指揮官、捜査官、戦技教官、戦闘時犯人殺害許可

詳細:特殊警防隊の前部隊長であり、恭也やヴィッツと同じ特殊警防隊創設メンバーの一人。現在は高齢の為、管理局を退職しており、その後釜としてヴィッツに部隊長の椅子を譲った。

恭也とはヴィッツと同じく10年近くの付き合いであり、特殊警防隊創設前の恭也とヴィッツが所属していた部隊の隊長を務めていた。

 

 

名前:エグゼ・ミラジーノ

年齢:27歳

性別:男

家族構成:妻、息子

魔法式:近代ベルカ式

魔導師ランク:陸戦A+

デバイス:バスターソード型アームドデバイス「シュトーレン」

魔力色:紫

レアスキル:魔力変換資質“炎熱”

流派:無し

役職:時空管理局特殊警防隊1番隊隊長

階級:一等陸尉

資格:小隊指揮官、捜査官、戦闘時犯人殺害許可

詳細:特殊警防隊1番隊隊長であり、恭也が1番隊隊長だった頃は副隊長を勤めていた。特殊警防隊創設2年目に入隊した古株の一人で、魔導師ランクA+ながらもAAAランク魔導師相手に互角以上に戦えるだけの戦闘能力を持つ。

 

 

名前:ライフ・インサイト

年齢:35歳

性別:女

家族構成:娘、息子×2

魔法式:ミッドチルダ式及び近代ベルカ式混合ハイブリッド

魔導師ランク:陸戦AA

デバイス:グローブ型ブーストデバイス「ヘルメス」、レイピア型アームドデバイス「スティングオーダー」

魔力色:水色

レアスキル:魔力変換資質“氷結”

流派:無し

役職:時空管理局特殊警防隊3番隊隊長

階級:三等陸佐

資格:小隊指揮官、中隊指揮官、ヘリパイロットB級、捜査官、戦闘時犯人殺害許可

詳細:特殊警防隊3番隊隊長であり、警防隊創設メンバーの一人。当時は本局所属の捜査官をしていたが、警防隊創設時にメンバー集め中だった恭也やカムリに実力を見出され勧誘を受けた。

夫とは離婚しており、今は三人の子供を育てるシングルマザー。

 

 

名前:シルフィ・ジューク

年齢:30歳

性別:女

家族構成:父、母、弟

魔法式:ミッドチルダ式

魔導師ランク:空戦AAA

デバイス:ライフル型インテリジェントデバイス「オメガ02」

魔力色:若草色

レアスキル:無し

流派:無し

役職:時空管理局特殊警防隊5番隊隊長

階級:一等空尉

資格:小隊指揮官、捜査官、 戦闘時犯人殺害許可

詳細:特殊警防隊5番隊隊長。エグゼとは陸士訓練校での同期で、同じく警防隊2年目に入隊している。

元々は航空武装隊に所属していたのだが、凶悪犯罪者の被害にあった遺族の悲しみ、憎しみ、苦しみを見ている内、本当に逮捕して更正させるだけが正しいのかに悩んでいたとき、特殊警防隊の存在を知り、入隊願いを出した経緯がある。

 




これが特殊警防隊のオリキャラですね。出すかどうかはわかりませんが。


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高町の姓を持つ者の設定

手慰み第2弾
次元世界最凶の名、それは「高町」。


魔導剣士

~月光煌く御神不破流~

 

設定

 

 

名前:高町恭也

年齢:20歳(無印、A’s)→30歳(StrikerS)→35歳(Vivid)→36歳(Vivid Strike)→38歳(Force)

性別:男

家族構成:妻、娘、義娘×2、息子、守護騎士

魔法式:古代ベルカ式

魔導師ランク:総合SSS

魔力値:AAAランク相当

デバイス:小太刀型アームドデバイス「レーベンシュッツ」、魔導書型ストレージデバイス「月天の魔導書」、ユニゾンデバイス「月光の剣精エルフリーデ」

小太刀:不破家伝承刀「八景」

魔力色:黒

レアスキル:蒐集

流派:永全不動八門一派御神真刀流小太刀二刀術、永全不動八門一派御神真刀流小太刀二刀術・裏「御神不破流」

役職:時空管理局特殊警防隊副部隊長

階級:准将

資格:小隊指揮官、中隊指揮官戦技教導官、ヘリパイロットB級、捜査官、戦闘時犯人殺害許可、普通自動車運転免許、大型二輪運転免許

詳細:本作主人公ではあるが、Vivid編では娘にその座を譲っている。御神の剣士として完成された次元世界最強の剣士であり、時空管理局における最高戦力。

管理局特殊警防隊の創設メンバーの一人であり、PT事件、闇の書事件、JS事件等の大きな事件解決に貢献してきた他、警防隊創設以来多くの重犯罪者を逮捕・殺害してきた実績から管理局の英雄として憧れる者も居れば死神と揶揄する者も居る。

現在は准将に昇進して前線に出る機会も減ったが、それでも機会があれば積極的に前線へ出て剣を振るっている。

また、娘のティオに御神の剣を教えており、妹に続く弟子の才能の高さに将来を期待している半面、娘にはもう少し女の子らしい道を歩ませたかったという男親らしいジレンマを抱えている。

 

 

名前:高町ティオ

年齢:7歳(StrikerS)→12歳(Vivid)→13歳(Vivid Strike)→15歳(Force)

性別:女

家族構成:父、母、義姉×2、弟、守護騎士

魔法式:古代ベルカ式

魔導師ランク:総合AA+

魔力値:AAランク相当

デバイス:小太刀二刀型アームドデバイス「ヴァイスリットシュツルム」

小太刀:不破家伝承刀「無禄」

魔力色:パールホワイト

レアスキル:無し

流派:永全不動八門一派御神真刀流小太刀二刀術、永全不動八門一派御神真刀流小太刀二刀術・裏「御神不破流」

役職:私立ブルゲローニ学院初等部6年生、時空管理局嘱託魔導師

階級:無し

資格:無限書庫司書資格、時空管理局嘱託資格

詳細:Vivid編主人公にして高町恭也とフィアッセ・クリステラの娘。御神の剣士見習いで、現在は父の指導の下、修行中。御神の剣は斬を習得済みで、現在は徹の修練を行っている段階だが、既に実力的には同年代とは比べ物にならないほど高く、並の大人ですら下せるほど。

従姉妹のヴィヴィオとは仲が良く、ヴィヴィオの組み手の相手も時々だが行っている。

クラスメートのリンネ・ベルリネッタが格闘技を行っているのに気付いていて、その瞳の奥にある強さへの渇望を見た事で気になっている。

 

 

名前:高町フィアッセ

年齢:22歳(無印、A’s)→32歳(StrikerS)→37歳(Vivid)→38歳(Vivid Strike)→40歳(Force)

性別:女

家族構成:夫、娘、義娘×2、息子、守護騎士

魔法式:無し

魔導師ランク:無し

デバイス:無し

魔力色:無し

レアスキル:無し

流派:無し

役職:喫茶翠屋ミッドチルダ店店長兼パティシエール、元ソプラノ歌手

階級:店長

資格:食品衛生管理士、栄養管理士、簿記、普通自動車運転免許

詳細:旧姓クリステラ、高町恭也の妻でありティオの母。嘗ては地球でソプラノ歌手として活動していて、当時は「光の歌姫」と呼ばれていたが、結婚と妊娠を機に引退、亡き母が校長を務めていたクリステラソングスクール校長の座をイリア・ライソンに任せてからは短大に通いつつ恭也の母である桃子に弟子入り、パティシエールとして修行した後にミッドチルダに喫茶翠屋ミッドチルダ店をオープンした。

リンカーコアを持たないため、魔法は使えないが、HGSという先天性の遺伝子障害病による超能力が使える。

娘が御神の剣士としての道を進んだため、息子に歌の指導をしており、将来は息子のコンサートを見に行くのが夢。

 

 

名前:高町代也

年齢:3歳(StrikerS)→8歳(Vivid)→9歳(Vivid Strike)→11歳(Force)

性別:男

家族構成:父、母、姉、義姉×2、守護騎士

魔法式:無し

魔導師ランク:無し

デバイス:無し

レアスキル:無し

流派:無し

役職:私立ブルゲローニ学院初等部2年生

階級:無し

資格:無し

詳細:高町恭也とフィアッセ・クリステラの息子でティオの弟。姉とは違い御神流を習っておらず、逆に母から歌のレッスンを受けている未来の歌手候補。

本人も将来は母と同じように歌手になりたいと思っており、母から受け継いだ歌の才能を8歳にして発揮、ミッド中央の大手芸能事務所からスカウトを受けて歌手デビューするか両親交えて検討している最中だ。

 

 

名前:高町オットー

年齢:13歳(StrikerS)→18歳(Vivid)→19歳(Vivid Strike)→21歳(Force)

性別:女

家族構成:義父、義母、妹、義妹、義弟

魔法式:ミッドチルダ式

魔導師ランク:空戦AA

デバイス:グローブ型ストレージデバイス「ストーム・レイ」

魔力色:緑

IS:レイストーム

流派:無し

役職:聖王教会シスター

階級:騎士カリム専属秘書

資格:司祭、紅茶ソムリエ1級

詳細:JS事件の後、更正施設に入っていたが、施設を出た後は恭也とフィアッセの高町夫妻の所へ養子入りした。

高町の姓を貰い、家族として迎えてくれた恭也達にはとても感謝しており、恩返しの為にも施設時代に声を掛けてくれた騎士カリムの誘いに乗って教会でカリムの秘書として働き、給料を家に入れている。とは言っても、オットーが稼いで家に入れたお金は全額フィアッセがオットー専用口座に振り込んで貯金しているのだが。

コロナのコーチを務めるようになってからは、誰かを育てるということの楽しみとやり甲斐を感じ、コーチとしてコロナの成長を見守りたいと思うようになった。

 

 

名前:高町ディード

年齢:13歳(StrikerS)→18歳(Vivid)→19歳(Vivid Strike)→21歳(Force)

性別:女

家族構成:義父、義母、姉、義妹、義弟

魔法式:近代ベルカ式

魔導師ランク:空戦AA-

デバイス:双剣型アームドデバイス「デュアルブレイズ」

魔力色:紅色

IS:ツインブレイズ

流派:永全不動八門一派御神真刀流小太刀二刀術

役職:聖王教会シスター

階級:修道騎士見習い

資格:聖王教会騎士(仮)

詳細:JS事件の後、更正施設に入っていたが、施設を出た後は恭也とフィアッセの高町夫妻の所へ姉のオットー同様に養子入りした。

オットーとディードが恭也の遺伝子を使って作られたという事もあり、特にディードには御神流の才能があったため、ティオ同様に恭也から御神流の手解きを受けている。

元犯罪者の自分達を受け入れてくれた恭也とフィアッセには深い恩義を感じており、特に恭也には少しでも早く一人前の騎士となった姿を見せて安心させてあげたいと日夜修練に励んでいるが、最近はリオのコーチにも楽しみを見出した。

 

 

名前:高町フリーデル

年齢:不明

性別:女

家族構成:主、主の妻、守護騎士、妹分×3、弟分

魔法式:古代ベルカ式

魔導師ランク:総合AA

デバイス:杖剣型アームドデバイス「審判の杖シュトラーフェヴァルト」

魔力色:碧

レアスキル:無し

流派:無し

役職:時空管理局特殊警防隊医療班チーフ

階級:一等空尉相当

資格:外科医師、内科医師、薬剤師、リハビリ指導員、臨床心理士

詳細:月天の魔導書の守護騎士レーゲンリッターが参謀役、森の騎士の異名を持つ古代ベルカの騎士。主である恭也に絶対の忠誠を誓っており、次期主候補であるティオに魔法の手解きを行っている。

特殊警防隊においては医務官として在籍しており、怪我が絶えない警防隊の生命線。警防隊創設メンバーの一人でもある。

 

 

名前:高町アリーナ

年齢:不明

性別:女

家族構成:主、主の妻、守護騎士、妹分×3、弟分

魔法式:古代ベルカ式

魔導師ランク:総合S-

デバイス:槍型アームドデバイス「必然の魔槍ガングニル」

魔力色:蒼

レアスキル:魔力変換資質“氷結”

流派:無し

役職:時空管理局特殊警防隊4番隊隊長

階級:二等空佐

資格:小隊指揮官、中隊指揮官、戦技教官、捜査官、戦闘時犯人殺害許可、普通自動車運転免許

詳細:月天の魔導書の守護騎士レーゲンリッターが氷結の将、槍の騎士の異名を持つ古代ベルカの騎士。主である恭也に絶対の忠誠を誓っており、次期主候補であるティオとは時々模擬戦の相手を務めるなどをしている。

特殊警防隊においては4番隊の隊長を務めており、警防隊創設メンバーの一人でもある。

 

 

名前:高町デリア

年齢:不明

性別:女

家族構成:主、主の妻、守護騎士、妹分×3、弟分

魔法式:古代ベルカ式

魔導師ランク:総合AAA

デバイス:斧型アームドデバイス「鋼の女王ケーニギンシュタール」

魔力色:茶色

レアスキル:無し

流派:無し

役職:時空管理局特殊警防隊2番隊隊長

階級:三等空佐

資格:小隊指揮官、中隊指揮官、戦技教導官、捜査官、戦闘時犯人殺害許可

詳細:月天の魔導書の守護騎士レーゲンリッターが突撃隊長、斧の騎士の異名を持つ古代ベルカの騎士。主である恭也に絶対の忠誠を誓っており、次期主候補であるティオとは見た目年齢の近さもあってか友人のような姉妹のような感覚で一緒に遊んだりしている。

特殊警防隊においては2番隊の隊長を務めており、警防隊創設メンバーの一人でもある。

 

 

名前:高町クリームヒルト

年齢:不明

性別:女(雌)

家族構成:主、主の妻、守護騎士、妹分×3、弟分

魔法式:古代ベルカ式

魔導師ランク:A+相当(恭也の使い魔扱いの為、正式なランク付けは無し)

デバイス:鎧型アームドデバイス「守護の鎧トゥテラリィパンツァー」

魔力色:紫

レアスキル:無し

流派:守護の拳

役職:時空管理局特殊警防隊副部隊長専属守護獣

階級:無し

資格:戦闘時犯人殺害許可

詳細:月天の魔導書の守護騎士レーゲンリッターが鉄壁の守り手、鎧の守護獣の異名を持つ古代ベルカの守護獣。主である恭也に絶対の忠誠を誓っており、次期主候補であるティオの事は命懸けで守る対象として見ている。

特殊警防隊においては恭也の使い魔という立ち位置におり、普段は本来の姿である鷹の姿で恭也か、他の守護騎士の肩に乗っている事が多い。

 

 

名前:高町エルフリーデ

年齢:無し

性別:女

家族構成:主、主の妻、守護騎士、妹分×3、弟分

魔法式:古代ベルカ式

魔導師ランク:総合AAA-

デバイス:魔導書型ストレージデバイス「月天の魔導書」、小太刀二刀型アームドデバイス「シュベルトバロン」

魔力色:黒

レアスキル:蒐集

流派:永全不動八門一派御神真刀流小太刀二刀術、永全不動八門一派御神真刀流小太刀二刀術・裏「御神不破流」

役職:時空管理局特殊警防隊副部隊長補佐

階級:准空尉

資格:捜査官、戦闘時犯人殺害許可

詳細:月天の魔導書の管制人格にして融合騎、月光の剣精の異名を持つ古代ベルカのユニゾンデバイス。主である恭也に絶対の忠誠を誓っており、次期主候補であるティオとは時々ユニゾンの練習をしているが、適正はあっても魔力色の違い等があって恭也程の適正の高さが無い事に若干の不安がある。

特殊警防隊においては副部隊長補佐として恭也の補佐官を務めており、警防隊創設メンバーの一人でもある。

単独で戦闘をする事は滅多に無いが長年恭也とユニゾンをしてきた経験から御神流を自然と習得しているので、単独戦闘能力は高い。

 

 

 

名前:高町ヴィヴィオ

年齢:5歳(StrikerS)→10歳(Vivid)→11歳(Vivid Strike)→13歳(Force)

性別:女

家族構成:義母

魔法式:古代ベルカ及びミッドチルダ混合ハイブリッド

魔導師ランク:無し

魔力値:Sランク相当

デバイス:セイクリッドハート

魔力色:虹色

レアスキル:聖王の鎧(JS事件の際に失われた)

流派:ストライクアーツ

役職:St.ヒルデ魔法学院初等部4年生

階級:無し

資格:無限書庫司書

詳細:Vivid編のもう一人の主人公。高町恭也の妹である高町なのはの義娘で、ティオにとっては義理の従姉妹に当たる。

ノーヴェからストライクアーツを習っており、格闘技の道を志す元気いっぱいの小学生だが、実力は同年代を遥かに凌駕する魔法少女見習い。

ベルカ式とミッド式の両方を使える為、母達のディバインバスターやプラズマスマッシャーの他、伯父の使う紫電一閃やハンマーシュラークといった古代ベルカ式魔法も習得している。

また、伯父からは御神流の基礎の一つ、徹のみ教わっており、未だ未完成ではあるが欠点だった打撃における火力不足を補えるようになった。

 

 

名前:高町なのは

年齢:9歳(無印、A’s)→19歳(StrikerS)→24歳(Vivid)→25歳(Vivid Strike)→27歳(Force)

性別:女

家族構成:義娘

魔法式:ミッドチルダ式

魔導師ランク:空戦S+

魔力値:Sランク相当

デバイス:レイジングハート・エクセリオン

魔力色:桜色

レアスキル:無し

流派:無し

役職:時空管理局本局航空戦技教導隊第5班チーフ

階級:一等空尉

資格:戦技教導官、戦技教官、戦技試験官、小隊指揮資格、普通自動車運転免許

詳細:高町恭也の妹であり、ヴィヴィオの義理の母。JS事件終了後から本格的にヴィヴィオと親子となって今は親子二人幸せな生活をしている。

義姉にあたるフィアッセが経営する翠屋には時々だが手伝いに行っていて、魔導師を引退したらフィアッセに弟子入りするのもアリかもと考えていたりする。




高町の姓を持つ者は最凶、よくわかんだね。


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プロローグ

とらいあんぐるハート3とリリカルなのはの設定を合成させてます。家族構成もとらハ家族にリリカル混ぜる感じ…つまり晶やレン、フィアッセも家族としている中に士郎も生存している形。
原作の一年前にとらハの事件があったと思っていただければと思います。


魔導剣士

~月光煌く御神不破流~

 

プロローグ

 

 日本の静岡に、とある大きな武家屋敷がある。古い歴史を持つこの屋敷の中庭では、一人の少年が両手に短い木刀を二本持って素振りをしていた。

 年頃的にはまだ5歳といった年齢の少年が行っているには随分と高い技量で振るわれる木刀は空気を斬るたびに鋭い音を響かせている。

 そして、その木刀を握る少年もまた、5歳ほどとは思えない真剣な表情、鋭い眼光で、この歳で既に剣士という言葉がピッタリな雰囲気を醸し出してるのだ。

 

「あれ~、恭ちゃん?」

「あ…琴絵さん」

「まだ、やってたの?」

「はい」

 

 音も気配も無く、いつの間にか少年の後ろに立っていた女性に、少年は内心驚きつつ、気付けなかった己が未熟を感じながらも問いに答えた。

 

「もう、士郎ちゃんからの課題でしょう? 恭ちゃんに無理させないでっていつも言ってるのに」

「いえ、父さんは別に…これは自主練です」

「う、ぅぅ……頑張ってる恭ちゃんを怒れない…っ!」

 

 少年の名は不破恭也。この武家屋敷、古くから小太刀二刀御神流という剣術を受け継ぐ御神宗家の分家、御神流の裏でもある御神不破流を受け継ぐ不破家の人間であり、不破家当主の叔父から次期当主を期待されている。

 そして、恭也の後ろに立つ長い黒髪が美しい典型的な和風美女は御神琴絵。御神宗家当主の姉であり、御神宗家、不破家の中で最も恭也を溺愛する、恭也にとっては姉のようであり、淡い想いを寄せる女性だ。

 

「恭ちゃんは偉いねぇ。まだ5歳なのに、遊びもしないで鍛錬してるなんて」

「…いつか、父さんに一本入れたいですから」

「あはは、士郎ちゃんにかぁ」

 

 そう言って二人の脳裏に浮かんだのは恭也の父、不破士郎の姿。

 恭也をそのまま大きくしたかの様な見た目なのに、年齢より大人びて見えるほどの落ち着きを持った恭也とは正反対な性格をしていて、にも関わらず不破家最強と呼ばれる男だ。

 

「そっか…でも恭ちゃん、強くなって如何するの? 確かに不破家の、士郎ちゃんの息子として生まれたからには御神流を、御神不破流を受け継ぐっていうのは解るけど、強くなるって…生半可な気持ちじゃ駄目なんだよ?」

「……」

 

 恭也に問いかける琴絵の目は真剣だ。だから恭也も、自分の偽らざる正直な気持ちを話す。

 

「守りたいんです」

「……」

「俺も、父さんの様に、大切な人…友達や家族、そんな大事なものをどんな脅威からだろうと守れる強い剣士になりたい」

「そう…やっぱり恭ちゃんは士郎ちゃんの息子だね」

 

 そう言って、琴絵は幼少期の士郎を思い出していた。一応は幼馴染でもあるので、付き合いは生まれたときから、幼少期の事だって当然だが知っている。

 今の恭也と幼少期の士郎、琴絵からの同じ問いに同じ答えを返してきた。それが堪らなく可笑しくて、堪らなく嬉しい。

 

「恭ちゃんはまだ、斬を?」

「はい。今はまだ…でも父さんはこのまま行けば2年以内に徹を教えても良いかもって」

「わぉ」

 

 それだけ聞いて琴絵は内心だが舌を巻いていた。恭也の年齢で既に御神流の基本である斬の修練を行うのは大変珍しい。あの士郎ですら斬を教わり始めたのは7歳くらいからだというのに…だ。

 それはつまり、恭也は現在御神流最強と呼ばれている父をも上回る才能を秘めている事を意味していて、将来的には御神、不破、両家の頂点に立つことすら可能なほどの御神の剣士になり得るという事だ。

 

「ん~…ねぇ、恭ちゃん、ちょっと待っててね?」

「?」

 

 琴絵が母屋に入っていったのを、不思議そうに首を傾げて見送っていた恭也だったが、しばらくして再び琴絵が庭に来た時、その手に琴絵の小太刀二刀が握られていて驚いた。

 

「琴絵さん?」

「士郎ちゃんには内緒ね? そのうち、教わるとは思うけど、出来ればこの業だけは私が最初に恭ちゃんに見せたいの」

 

 腰に二刀差しで小太刀を差した琴絵が抜刀術の構えを取る。すると、今まで無風だったはずの庭に、琴絵の剣気に中てられたかの様に旋風が吹き、琴絵の髪を揺らしていた。

 

「っ!!」

 

―――小太刀二刀御神流 奥義之陸―――

 

―――薙旋―――

 

 恭也に見えたのは琴絵の抜刀の瞬間と、一瞬で煌いた4つの剣閃の残光、そして業の終わりに旋風が突風となって琴絵の髪を大きく吹き上げた瞬間だった。

 

「今のは…薙旋……」

「そう、奥義之陸、薙旋……私が最も得意としている奥義で、最も信頼している奥義だよ」

 

 琴絵もまた、御神の剣士だ。幼い頃から病弱で、激しい鍛錬こそ出来なかったものの、その類稀なる剣才は本物で、見る者を魅了する剣舞の如き戦いは御神宗家でも当主であり弟である御神静馬には劣るも、それに近い実力を兼ね備えていた。

 

「虎切では士郎ちゃんに勝てない、虎乱では静馬に勝てない、射抜では美沙斗ちゃんに、雷徹では一臣君に、花菱では美影さん……だけど、この薙旋だけは誰にも負けない絶対の自信がある。抜刀術を得意とする士郎ちゃんは虎切と同じ抜刀系の奥義である薙旋は得意だけど、それでもその士郎ちゃんに薙旋だけは絶対に負けない自負が私にはある…そんな薙旋を、恭ちゃんに見せたかったんだ」

 

 抜刀からの四連撃、それが薙旋という奥義だ。その四連撃の剣舞の美しさから、剣姫とまで呼ばれる様になった琴絵の薙旋は、確かに恭也を魅了した。

 抜刀からの流れる様な剣捌き、空を斬る刃が奏でる音は短く鋭く、琴絵もまた、完成された御神の剣士の一人であるという事を実感させる。

 

「まだ、恭ちゃんは真似しちゃ駄目だよ? まだまだ奥義を扱えるレベルじゃないから」

「はい……」

 

 まだ基本の斬の修練中である恭也に、なによりも、まだ幼い恭也に奥義を扱わせる訳にはいかない。

 それは同じ御神の剣士である琴絵にだってよく解っている。だからこそ、琴絵は一人の剣士として恭也に釘を刺した。

 

「そうだ、これから私の部屋に来る? 恭ちゃんにプレゼントがあるの」

「プレゼント…?」

「うん!」

 

 そう言う琴絵に連れられ、彼女の部屋に行くと、琴絵は本棚から一冊の本を持ってきた。

 

「これこれ」

「…これは?」

 

 その本を見て、首を傾げてしまうのも無理は無い。何故なら、その黒い表紙に金色の剣十字の装飾が施された本は鎖が巻きつけられていて開けない様になっているのだから。

 

「吃驚でしょう? この鎖、試しに断ち切ってみようとしたんだけど、切れないんだよねぇ」

「…斬でも、ですか?」

「うん、小太刀も使ったのにね」

「どんな素材の鎖ですか……」

 

 完成された御神の剣士が小太刀を使って放った斬でも切れない鎖、斬は極めれば斬鉄も可能な業だ。

 勿論、そのレベルに達していなくても鎖程度を切るなど容易い筈なのに、それでも切れないなど信じられなかった。

 

「これ…どこで買ったんですか?」

「ん~…判らない。だって倉庫にあった本だからねぇ。お父様にも聞いたけど、いつの頃からか倉庫にあったって話だけど、いつ倉庫に納められたのかは誰も知らないの」

「はぁ…」

 

 しかし、何故それが琴絵の部屋にあり、恭也にプレゼントという事になったのか。

 

「勘…かなぁ。なんか、これは恭ちゃんが持ってなきゃ駄目って思ってね」

「勘、ですか?」

「そう! 御神の剣士としての勘と、女の勘」

「それは……当たりそうで怖いですね」

 

 しかし、この勘は後に当たる。この数年後、御神宗家と不破家は琴絵の結婚式の時に会場ごと爆破され、滅びてしまった。

 生き残ったのは不破恭也と不破士郎、それから士郎の妹で御神宗家当主の御神静馬の妻でもある御神美沙斗と、その娘の御神美由希のみ。

 琴絵が恭也へ贈った黒い本は、御神と不破が滅びた後も、恭也が持ち続け、琴絵の形見になるのであった。




今後の設定
士郎はなのはが産まれる前にアルバート・クリステラの護衛中に爆弾テロに巻き込まれ瀬死の重症。フィアッセはそれが自身の呪われたフィンの所為だと思い込み、この辺りは原作とらハと同じ。
ただし、士郎はその後に生き残ってます。剣士としては再起不能ですので、剣士としての士郎は死んだとも言えますが。
んで、恭也はとらハ同様、無茶な鍛錬と一年の全国武者修行で留年、膝を2回砕いて…この辺も原作通りですね。
なのはの孤独ですが…家族の雰囲気はとらハ寄りなので、晶もレンも居ますし、、リリカルなのはのなのは程ではないかと…。


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無印編
第一話 「高町家の朝」


無印編の始まりです。


魔導剣士

~月光煌く御神不破流~

 

第一話

「高町家の朝」

 

 日本のとある海沿いの街、海鳴市。その住宅街に建つ一軒の少しだけ立派な一軒家の庭に建つ小さな道場で、20歳ほどの青年が両手に二本の真剣…小太刀を握り、幼い頃から修練を積んできた御神流の鍛錬として仮想敵を相手にシャドーを行っていた。

 

「っ! せぇあっ!!」

 

 達人でも目で追うのが困難なほどの初動の速さから繰り出される斬撃が空気を斬り裂き、短く鋭い音を響かせている。

 青年……この家の長男である高町恭也がシャドーの相手として選んでいるのは昨年命懸けの戦いをした叔母、御神美沙斗だ。彼女は今の恭也をも越える実力の剣士であり、完成された御神の剣士。完成することの無い御神の剣士である恭也では未だに勝てる要素が見当たらない人物だ。

 

「っ!」

 

 仮想敵の美沙斗が大きく離れ、弓の様に腕を大きく引き絞り、姿勢を屈め、刺突の構えを取る。美沙斗が得意としている御神流の奥義、裏・奥義之参、射抜の構えだ。

 それに対して恭也は両手の二刀を腰に差している鞘に収め、抜刀術の構えを取る。美沙斗が最も得意としている奥義で来るのなら、恭也もまた、最も得意とし、最も信頼する奥義で相対するだけ。

 

「はぁっ!!」

 

―――小太刀二刀御神流 奥義之陸―――

 

―――薙旋―――

 

 流れる様な抜刀からの四連撃、一撃目が神速から放たれる美沙斗の射抜を弾き、二撃目で派生して放たれる横薙ぎの斬撃を受け止め、三撃目に美沙斗の首目掛けて斬撃を放つも抜刀した美沙斗のもう一本の小太刀に受け止められる。

 最後の一撃で受け止めていた美沙斗の小太刀を受け流す様に突進して心臓を貫こうとするも……受け流した小太刀がいつの間にか恭也の首を落としていた。

 

「……未熟」

 

 決まらなくても良いから受け流さずに腕を切り落としておくべきだった。判断ミスによる敗北、その事に己が未熟を感じつつ小太刀を納刀すると背後に気配を感じ、次いで飛んできた物をキャッチすると、それがタオルであることに気づく。

 

「よう、最後の判断ミスが痛かったな」

「…父さん」

 

 背後に居たのは恭也の父、高町士郎だった。

 嘗て仕事中に爆弾テロに巻き込まれ瀬死の重症を負った士郎は御神の剣士として再起不能となり、今は妻と経営している喫茶・翠屋のマスターとして平穏に暮らしている。

 だが、それでも嘗ては不破家最強と呼ばれていた男だけあって、現役を引退した今でも剣士としての眼は衰えていない。

 

「美沙斗の射抜は怖ぇからなぁ。俺も昔は一回だけあれで負けた事があるんだよ」

「…今の美由希だと、美沙斗さんの射抜に追いつくにはまだまだ掛かりそうだ」

「だな。美沙斗の射抜は完成され過ぎてる。まだ射抜を教えたばかりの美由希だと数年は掛かるだろうぜ」

 

 恭也も射抜は使えるが、その練度は高くない。勿論、歴代の御神の剣士たちと比べて格段に完成度は高いが、美沙斗には遠く及ばないものだ。

 

「それにしても、お前の薙旋は相変わらず馬鹿みたいに他の奥義より練度が高いな」

「一番信頼している奥義だ…当然だが鍛えるのにも力は入る」

「そっか…琴絵さんの奥義だもんな」

 

 今でもはっきりと恭也の脳裏に焼きついている。初めて薙旋を見たときの光景…琴絵が恭也に見せてくれた薙旋を。

 今の恭也を持ってしても琴絵の薙旋は遥か遠く。今尚、完成することの無い御神の剣士であっても、それでも目指している領域だ。

 

「おっと、それより飯だ飯、さっさとシャワー浴びて来い。今日は晶の和食だぜ?」

「む…直ぐに行く。先に食べ尽くすなよ」

「さぁて…どうかな?」

「……引退してるんだ、食べ過ぎるとメタボになるぞ」

 

 グサッという士郎の胸に何かが突き刺さるような幻聴と、その後に聞こえてきた「メタボ…ハハ、そういや最近腹がなぁ……」という声を無視して恭也は一度部屋に戻り風呂場へ向かった。

 

 

 シャワーを浴びて汗を流した恭也はリビングに入ると丁度味噌汁の良い香りがしたのでキッチンに眼を向ける。

 そこには朝食の用意をしている青いショートヘアーの、一見少年にも見えなくは無い少女の姿があり、楽しそうに味噌汁を火にかけていた。

 

「晶」

「ん? あ、師匠! おはようございます!!」

 

 恭也を師匠と呼ぶ彼女の名は城島晶、訳あって高町家に度々厄介になっている恭也の妹分にして家族でもある存在だ。

 

「ああ…かーさん達は?」

「桃子さんとフィアッセさんはもう直ぐ帰ってくるって電話がありました。美由希ちゃんは庭の花に水やりで、亀はなのちゃんを起こしに行きましたよ」

「そうか…レン一人では起こすのも大変だろう。俺も行ってくる」

「あ、はい。じゃあオレは仕上げが残ってるんで」

 

 最後の仕上げに取り掛かった晶のいるキッチンを後にして恭也は二階に上がる。

 二階にはこの家の末娘にして、恭也の実妹である高町なのはの部屋がある。その部屋の前に立つと中になのはの気配と居候であり、もう一人の妹分でもある凰 蓮飛ことレンの気配を感じたので一応ノックをしてから中に入った。

 

「あ、おししょー、おはようさんです」

「ああ、なのはは……まだ寝てるか」

「う~ん、ウチも何度か起こそう思うて揺すっとるんですが、さすがは眠り姫なのちゃん」

「はぁ…後は俺に任せて先に下へ行ってろ」

「そうしますわ~」

 

 レンがなのはの部屋を出て下に行った気配を感じつつ、恭也は未だにベッドの上で眠り続けている妹の、可愛い寝顔を眺めながらどの様にして起こそうかを考える。

 

「……うむ」

 

 数秒後、高町家全体に「にゃあああああああああああっ!!!!!?」という猫みたいななのはの絶叫が響き渡り、だがそれを毎朝の事だと誰も気にせず朝の一時を過ごすのであった。

 

「う~…おにーちゃん!」

「おはよう」

「あ、うん、おはよう……じゃないよ!? もう! 擽って起こさないでって前も言ったのに~!!」

「起きないお前が悪い」

「うっ……むぅ~」

 

 剥れながら恭也の太ももをぺしぺしと叩くなのはの頭を撫でながら、恭也はベッドの枕元のテーブルに置いてあったなのはの制服を彼女に手渡すと抱き上げて床に下ろす。

 

「早く顔を洗って来い。もうすぐかーさんやフィアッセが帰ってくる」

「うん。あ、リボンはっと…」

 

 昨年のなのはの誕生日に恭也がプレゼントした桜色のリボンを忘れずに持ったなのはと共に部屋を出る。一階に下りて洗面所に向かうなのはを見送ると玄関の方を向いた。

 玄関の向こうからは2人分の気配を感じて、丁度恭也が向いたのと同時に玄関が開かれ、翠屋の朝の仕込みに行っていた母の高町桃子と、恭也の幼馴染にして姉的存在、世界に名を轟かせる歌手でもある光の歌姫、フィアッセ・クリステラが帰ってきた。

 

「おかえり、かーさん、フィアッセ」

「あら恭也、ただいま」

「恭也! ただいま~!」

 

 偶然出迎える形になった恭也に少し驚いたものの、桃子もフィアッセも笑顔で挨拶を返し、更にフィアッセなどは恭也の傍に駆け寄ってきてハグまでしてくる始末だ。

 

「フィアッセ…流石に親しき仲にも礼儀ありというものがある。あまり無闇に抱きつかれると……困る」

「嫌?」

「む…」

 

 嫌かと問われれば、普段は家族全員から枯れていると言われる恭也ではあるが、一応は男。フィアッセの様な美人に抱きつかれて嬉しくないとは言わない。

 

「と、兎に角…少し離れてくれ。流石に、俺もこれは…恥ずかしい」

「むぅ~…しょうがないなぁ」

 

 今年で23歳になるとは思えない子供っぽい仕草で頬を膨らませるフィアッセだが、違和感は感じさせず、むしろ可愛いとすら言える。

 ようやく離れてくれたフィアッセに安堵していた恭也だが、ふと視線を感じたので、そちらに目を向けると…母がイイ笑顔で恭也に向けて親指を立てていた。

 

「…何が言いたい、高町母」

「別に~、この分なら30代で孫を抱っこ出来る夢も遠くないかなぁなんて」

「……」

 

 母の妄言はさて置き、顔を真っ赤にしたフィアッセの頭に軽く手を置いてから先にリビングに戻ると、丁度庭から戻ってきたもう一人の妹、高町美由希がソファーに座っているのに気づいた。

 

「あ、恭ちゃん、お疲れ様」

「うむ」

「もう日課になってるね、早朝鍛錬の後の母さん相手のシャドー」

「今の生きる御神流最強の剣士だから、シャドーの相手としては美沙斗さんは理想的だ」

「そうだね」

 

 とは言え。昨年の事件の際、恭也は敵として現れた美沙斗を奥義之極に土壇場で辿り着いて撃破している。にも拘らず未だに美沙斗が最強なのは、恭也が奥義之極を自在に使えないのが一つ、御神の剣士として恭也が完成出来ないのが一つ、地力はまだまだ美沙斗の方が上であることが一つ、それらが理由として挙げられる。

 

「朝食の用出来ましたよ!」

「あ、出来たみたいだね」

「ああ、行くか」

 

 晶の声でリビングに家族が全員集まった。

 大きなテーブルに全員が揃い、それぞれが椅子に座ったのを確認した後、一家の大黒柱たる士郎が手を合わせる。

 

「んじゃあ、いただきます」

『いただきます』

 

 穏やかないつも通りの高町家の朝、この時はまだ、これから始まる大きな事件など誰も予想していなかった。

 高町家の平和の象徴、末娘のなのはが関わり、将来すらも定める切欠の事件、それはもう間もなく始まろうとしていた。




次回から魔法が登場、なのはが暫く主人公みたいになりますが、あくまで恭也が主人公であることはお忘れなく。


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第二話 「はじまり」

なのは視点、いくつか挟んで恭也がメインって路線にしました。


魔導剣士

~月光煌く御神不破流~

 

第二話

「はじまり」

 

 それは唐突だった。いつも通りの日常で、普段は余り我侭を言わないなのはが夕飯の席でフェレットを飼いたいと言い出したのだ。

 

「ふむ、フェレットというと、あの?」

「あれ? 恭ちゃんでも知ってるんだ、フェレット」

「馬鹿にするな、流石に流行のペットだという事くらいは知ってる」

 

 何でも、今日の学校帰りになのはが帰り道でフェレットを見つけたらしい。弱って傷付いていたので槙原動物病院に預けて、もしかしたら野良のフェレットかもしれないと診察されたとの事だ。

 

「それで、駄目かな?」

「ん~…父さんは良いと思うぞ? ただな、なのは…生き物を飼うという事は簡単なことじゃない。それは理解出来るね?」

「うん」

「それからね、なのは…士郎も桃子も何も言わないけど、喫茶店を経営している以上、気をつけないといけない衛生上の問題もあるの。小飛を飼わずに半野良にしてるのは、それも理由の一つ」

 

 フィアッセの言う小飛とは高町家で飼っている訳ではないが、殆ど住み着いていると言っても良い野良猫の事だ。

 

「あ~せやけどフェレットって小動物やろ? 小飛おるんやし、難しいんとちゃうか?」

「だよな、偶にキツネも来るし」

「く、くーちゃんはそんな事しないよ!?」

「なのは…」

 

 くーちゃんこと久遠の事は誰もがそんな事をするキツネではないと知っている。だから恭也はそれに言い返そうとしたなのはを嗜める意味も込めて、普段より低めの声でなのはの名を呼んだ。

 

「おにーちゃん…」

「誰も駄目とは言わんし、久遠がそんな子じゃないのは、此処にいる全員がよく知っている。父さんの言いたい事も理解出来るお前だ、俺達が何を言いたいのか、解るな?」

「うん…」

「なら、ちゃんと誠意を見せろ」

 

 普段無表情でも、なのはへは基本的に優しい恭也だが、こうして厳しいことは言うべきとにちゃんと言ってくれる。なのはにとって兄は、優しいけど厳しい、でも頼りになる大好きな兄なのだ。

 

「うん。お願いします…フェレットを飼わせて下さい。お世話はちゃんとします」

「……だ、そうだ。かーさん」

「そう、ならなのは。おかーさんは許可します。その代わり、みんなも手伝うけど、基本的になのはが確りお世話しなさいね。途中で投げ出すことは絶対にしないこと」

「うん!」

 

 衛生面の方は気をつけて、手洗いなどを徹底すればいい。久遠や小飛の事もあって、高町家もその辺の事は弁えている。

 

「今日は愛さんの所に預けてるんだったか……明日、大学の講義が丁度早く終わる。なのはの帰宅に合わせて引き取りに行くか?」

「おにーちゃんと一緒?」

「ああ、それとも、兄が一緒では嫌か?」

「全然! むしろ嬉しいよ!」

 

 大好きな兄と一緒に帰り道を共に歩く。それだけでもなのはは嬉しかった。

 普段はあまり一緒の時間を過ごせない兄と共に、2人っきりでなんて、親友2人からも ブラコン認定されるなのはにとって、これほど嬉しいことは他に無い。

 

「なら、明日は学校まで迎えに行こう」

「やったぁー!」

「あらあらなのは、良かったわね~。お兄ちゃんと一緒で」

「うん!」

 

 心の底から喜びを見せるなのはを見ていて、普段は無表情の恭也の顔にも、若干の微笑みが混じる。

 母に頭を撫でられて笑っている妹の姿、恭也が愛する平和の光景が、そこにある。それだけで、恭也は幸せだった。人の命を奪う剣と業を担う恭也だが、だからこそ、その力でもってこの光景を、日常を守りたくて、完成することは無い今でも己を鍛え続けるのだ。

 幼き頃に一度は失った光景だからこそ、今度こそ己が命を賭してでも守り抜く。恭也の御神の剣に宿る、魂の誓いだった。

 

 

 夕飯も終わり、家族全員が風呂に入り終わった深夜の時間、なのはは部屋で寛ぎながら明日の事を思い、上機嫌でベッドに座っていたのだが、突如、頭に声が響いた。

 

『お願いします! 誰か、助けてください!!』

「…え?」

 

 耳にではなく、頭の中に直接入ってきた助けを求める声、切羽詰った余裕の無い声に、なのはは慌てて立ち上がった。

 

「誰!? 誰なの!? 誰が私を呼んでるの!?」

『届いた…!? 良かった! すいません! 今直ぐ事情を説明している暇が無いんです! 後で必ず事情を説明しますから、手を貸してください!!』

 

 明らかに尋常じゃない声、顔も知らない誰かだが、危険な目に合っているのは間違いない。それに、届いたという言葉から察するになのは以外にこの声は届かなかったのだろう、だから助けられるのはなのはだけだということになる。

 

「行かなくちゃ…!」

 

 困っている誰かがいるのなら助けたい。兄や姉、父の背中を見て育ったなのはは、自然とそうする事が当たり前になっていた。

 困っている人がいれば助ける。守って欲しいという人がいるのなら守る。御神の剣を習っている訳ではないが、その信念は御神の剣士である兄達と全く同じなのだ。

 

「えっと。服はこのままで…お兄ちゃんやお姉ちゃんは鍛錬に行ってるから…」

 

 買ったばかりで、まだ未使用の靴を箱から出して窓から屋根伝いに庭に下りると外へ走り出した。

 これが転機、なのはの未来を決定付ける出会いが、これから始まるのだ。戦いと悲しみと、出会いと別れ、高町なのはの人生において、本来であれば訪れることの無い日々が。

 

 

 深夜の鍛錬を終えた恭也と美由希は帰宅して順番にシャワーを浴びる。最初は美由希が使っているので、恭也はリビングのソファーに座って起きていたフィアッセが淹れてくれたミルクティーを飲んでいた。

 

「…む?」

「どうしたの?」

「いや…なのはの気配が無い」

「なのはの…?」

「ああ」

 

 何気なく家の中の気配を探っていた恭也は、なのはの部屋が無人である事に気づいた。それならレンか晶の部屋にでも居るのだと思ったが、レンと晶の部屋にも居ない。

 

「お、恭也か、帰ってたのか」

「気づいてた癖に何を……それより、なのはは?」

 

 リビングに入ってきた士郎になのはが部屋に居ない理由を尋ねるが、士郎も首を横に振る。

 

「窓から外に出たのは気づいてる。そのまま外だ」

「とーさん、何故追わない」

「そうだよシロウ! こんな夜中になのは一人で外に行ってるのに!」

「いや、時間的に恭也と美由希に遭遇してるかと思ったんだが…会ってないみたいだな」

 

 ならば一大事だ。恭也はシャワーは後で入ることにして急ぎ玄関に向かった。後ろにはフィアッセも付いてきている。

 靴を履いて外に出た時、恭也は門の外から覚えのある気配を感じ取り、脚を止める。後ろに居たフィアッセはそれに怪訝そうな表情を浮かべるが、恭也が感じた気配がなのはのものである事を伝えると納得した。

 

「とりあえず、なのはにはお説教かな?」

「そうだな」

 

 丁度フィアッセが恭也の隣に来た時、門が開いて外からなのはが入ってきた。すると、玄関の前に立つ恭也とフィアッセの姿に驚愕して、そして後ろめたいことがあるのか、若干だが目線を逸らす。

 

「遅いお帰りだな…なのは」

「お、おにーちゃん…フィアッセさん……」

「なのは、こんな時間に窓から外に出てまで、何をしていたの?」

「う……」

 

 高町家の中では特に厳しい恭也とフィアッセの2人を前にして、悪いことをしたという自覚があるからこそ、なのはは言いよどんでいた。怒られるのは怖いが、なによりも2人を怒らせるようなことをした事自体が凄く悔しいのだ。

 

「まぁまぁ恭ちゃん、フィアッセ、なのはも反省しているだろうし、その辺にしておこうよ」

「美由希…」

「ね~なのは、なのはは良い子だもん、もうこんな事、しないよね?」

「うん…ごめんなさい、おにーちゃん、フィアッセさん、おねーちゃん」

「むぅ…」

「しょうがないなぁ…」

 

 風呂から上がった美由希がバスタオルで髪を拭いながら外に出てきて2人を嗜めた。

 素直に謝ったのだから、これ以上は何も言えない恭也とフィアッセだった。そんな2人の様子を見て、美由希が苦笑を浮かべる。

 

「恭ちゃんもフィアッセも将来は教育熱心な親になりそうだねぇ。2人の子供が大変だよ」

「む」

「み、美由希!!」

 

 フィアッセが顔を真っ赤に染め、恭也も無表情ながら若干だが頬に朱が差す。が、すぐに戻って美由希の額にデコピンを一発…徹込みで。

 

「~~~~~~~っ!?」

 

 ついでに貫も使ったので、美由希は避ける事も出来ずにデコピンの直撃を受けて脳をも揺さぶる強烈な一撃に悶絶する事となった。

 

「師をからかうとは何事か、馬鹿弟子」

 

 そんな恭也と美由希とフィアッセの様子に、なのはは苦笑を浮かべ…その肩に乗っていたフェレットが不思議そうな顔をしているのであった。




次回は一気に時間が飛んでなのはが真剣にジュエルシード集めをする決心をした事件へ行く予定です。
め、面倒になったんじゃないですよ!? ただ、最後にオリジナルキャラが出る予定ですので、お楽しみに。


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第三話 「覚醒」

なのは主人公は諦めた…。


魔導剣士

~月光煌く御神不破流~

 

第三話

「覚醒」

 

 なのはが夜中に外出して帰ってきた時、その腕の中には一匹のフェレットがいた。なのはが夕方に話していたフェレットを心配だからと無断で連れてきたのだと思ったが、槙原動物病院の方で騒ぎがあったという事は先ほどさざなみ寮の管理人である槙原耕介に電話で教えてもらったので、凡その事情は察した。

 

「だが、無断で外出は頂けない。せめて父さんを連れて行くべきではなかったのか?」

「そ、その…そこまで気が回らなかったというか…昔大怪我したおとーさんに無理させたくなかったというか」

「おいおいなのは…流石にお父さんも御神の剣士としては再起不能とは言え、普通に剣を握ることは出来るんだ。そこは頼って欲しいなぁ」

 

 士郎が引退したのは大怪我もそうだが、御神の剣士として再起不能になったからであって、御神流を使わなければ動くことは出来る。

 最も、御神の剣士として長年生きてきたからだろう、剣を握れば自然と御神流の動きをしてしまうのだ。御神の業は身体に多大な負担を強いる、だから引退してから鍛錬をしなくなり、御神の剣士として再起不能になった士郎が御神流を使うと危険なので、普段は剣を握らないようにしているだけなのだ。

 

「もう、恭ちゃん、いい加減にしておきなよ」

「そうですよ師匠、なのちゃんだってもう十分反省してるんですし」

「あんまし強く言い過ぎるとおししょー、嫌われてまうから、そろそろその辺にしといたらええんやないです?」

「む」

 

 美由希、晶、レンにまで言われてしまうと何も言えない。元々、許しているのだし、恭也も説教をそこそこに終わらせるとフェレットに頬ずりしている桃子に視線を向けた。

 

「…あの人が一番可愛がりそうだな」

「そうだねぇ…桃子、可愛いもの大好きだし」

「フィアッセも、な」

「あ、あはは…」

 

 今にも桃子へ突撃してフェレットを可愛がりたそうにウズウズしているフィアッセを見て、恭也はため息を吐いた。

 見ればフィアッセだけではなく、晶もレンも、美由希も、女性陣は全員が同じだったみたいで、フィアッセ同様ウズウズしているのがわかる。

 

「俺は部屋に戻る」

「そう? じゃあ恭也、おやすみ」

「ああ、フィアッセも…みんなに早く寝るよう言っておいて欲しい」

「うん」

 

 フィアッセが頬にキスをしてくれて、若干照れながらも恭也は自分の部屋に戻る。

 部屋に入って布団を用意し、早々に就寝しようとしたのだが、何故かその日だけは部屋にいても違和感を感じていた。否、部屋に入った瞬間から恭也の部屋の本棚の一部がどうしても気になってしまうのだ。

 その本棚の一部、そこには一冊の、他の本とは全く毛色の違う本が納められていた。表紙に金の剣十字の装飾が施された黒い本、その本には開かれない様に鎖が巻きついている。

 

「何故だろうな…この違和感」

 

 幼き日、琴絵がプレゼントしてくれた御神宗家の倉庫にあったという本、今では琴絵の形見となった本が、今まで感じたこの無い違和感を感じて、どうしても意識が向けられてしまう。

 

「何かが…動き出そうとしている、のだろうか……」

 

 だが、何が起ころうとも関係ない。たとえ何が起きても、恭也のやるべき事は一つしか無いのだから。

 

「家族を……大切な人たちを守る、それが御神の剣士である俺の、成すべきことだ」

 

 本から目を逸らし、次いで目を向けた先にあるのは一本の小太刀。

 鞘と柄、鍔が漆黒に染められた恭也の愛刀で、士郎が御神の剣士として引退した時に受け継いだ嘗ての士郎が使っていた小太刀、銘を八景という不破家に伝わる伝承刀だ。

 

「父さんが八景で守ってきたものを、今度は俺が、八景で守る」

 

 恭也の何度も口にしてきた誓いの言葉、それに応えるように月明かりに照らされた八景が一瞬キラリと光り、そして本棚にあった形見の本もまた、小さく、でも確かに、一度だけ鼓動するのだった。

 

 

 フェレット…なのはが名づけたユーノが家に来てから数日が経った。あれからもなのはは何度か夜になって家を抜け出したり、夕方には疲労でフラフラになりながら帰ってきたりを繰り返していた。

 家族は全員、なのはが何をしているのか気になっていたが、士郎がなのはを信じようと言っているので、話してくれるまで待っている。

 そして恭也もまた、士郎と同じようになのはが話してくれるのを待っている。なのはなら、悪いことをしているという心配は無いのも大きな理由だし、何よりなのはを信じているのだから。

 

「…ふぅ」

 

 そして、そんなとある日の昼。士郎は自分が監督を務める少年サッカーチームの試合に出かけていて、桃子もフィアッセも翠屋、美由希は友人である神咲那美の住んでいるさざなみ寮に出かけ、晶は空手へ、レンは病院へ検査、なのはは友人と共に士郎が行っている試合の応援に出かけていて、現在家には恭也一人でいた。

 縁側で庭の盆栽や花壇を眺めながら手に持つ湯飲みに淹れた緑茶を啜り、休みを満喫している。

 

「くぅん」

「にゃあ」

「む?」

 

 ふと、胡坐にしている足の方から声が聞こえた。

 見下ろせばそこには子猫と子狐が恭也の足を昇ろうとしているではないか。

 

「久遠、小飛」

 

 抱き上げて胡坐にしている足の上に置くと、二匹は直ぐに横になって寝ようとする。恭也が縁側にいると大抵、この二匹の内のどちらかがこうして恭也の足の上で寝ているのだが、今日は二匹揃ってらしい。

 

「……」

 

 まだ春の陽気だ。この二匹ものんびりと昼は寝て過ごしているのも頷ける。恭也とて昼寝が趣味なので気持ちはよく解る。

 しかし、こうして久遠と小飛が恭也の足の上で寝ていると恭也は寝ることが出来ない。勿論、座ったまま寝ようと思えば寝れるのだが、出来ることなら昼寝は横になってしたい。

 

「まぁ、構わんか…」

 

 そう呟いて再度湯飲みを傾け茶を飲む。こんあ穏やかな時間は恭也が最も好むものだ。こんな穏やかな時間が毎日続けば良い、それ以上の贅沢など在りはしないだろう。

 

「お、恭也」

「む? 試合は終わったのか?」

「ああ、みんな頑張ってたんでな、勝った!」

「そうか」

「おう! さってと~、風呂入って翠屋行こうかねぇ~」

 

 勝てた事が嬉しいのか、鼻歌歌いながら士郎は風呂へ向かった。恭也もそろそろ部屋に戻るため、未だに寝ている久遠と小飛を抱き上げると自室に戻る。

 何故か置いてある久遠と小飛用のベッドに二匹を寝かせると一撫でする。寝ながら頭を摺り寄せてくるに引きに微笑みを浮かべていた恭也だが、次の瞬間だった。

 

「っ!?」

 

 大きな地震と共に二匹が飛び起きて小飛は一目散に外へ、久遠は恭也の肩に昇って来る。

 

「何が…!」

 

 窓から外を見ると、街が…巨大な植物の蔦で溢れ、建物を壊しながら彼方此方に大きな木が生えていた。

 

「いったい…これは……グッ!?」

「くぅん!?」

 

 急に胸を押さえて蹲った恭也に驚いた久遠が床に下りてポン! という音と煙と共に少女の姿になった。

 

「きょうや…だいじょうぶ?」

「ぐ、…くお、ん…」

「きょうや…! なに…これ?」

 

 苦しむ恭也を抱きしめようとした久遠だったが、突然恭也の前に現れ浮かぶ漆黒の本に疑問を浮かべた。この本は恭也の部屋の本棚にあり、いつも恭也が形見の品だと言っていた本であるのは知っている。

 ならばその本が何故、急に恭也の前に現れて、こうして空中に浮いているのか。

 

「これ、は…」

【Ich bestätigte, daß ein Besitzer eine Anfangsbedingung traf(所有者が起動条件を満たしたのを確認しました)】

 

 本が声を発した。同時に本自体が内側から膨らむように巻きついていた鎖を引き千切り、開くと見たことも無い文字が書かれたページを捲りだす。その数、実に666ページ。

 

【Ich übertrage Schutzritter Systemanfang, Verwaltungsbeamtenrechte auf den bestehenden Besitzer und wird vervollständigt, und Kontrolle programmiert normale Bedienung, ein Einklangssystemruder ist grün(守護騎士システム起動、管理者権限を現所有者へ委譲完了、管制プログラム正常稼動、ユニゾンシステムオールグリーン)】

 

 ページが捲られていたのが止まり、再び剣十字の施された表紙が表になると何度も脈動を始め、恭也の周りに4つの光が、それぞれの頂点に円がある三角形の陣になった。色は蒼、茶、碧、紫の陣で、ゆっくりとだが回転している。

 

【Es gibt kein alle Systeme-Anomalie.... vom Mondhimmel……Anfang(全システム異常無し。月天の魔導書……起動します)】

 

 本から一気に光が溢れ、恭也の部屋を眩い光に包み込んだ。

 目を開けられなくなるほどの光が止み、次第に視界が正常になると、目を開けた恭也の部屋は変わらない。だが、その場には今までに無い光景が広がっている。

 恭也の周囲に展開された陣の上に、まるで恭也に対して跪くようにしている4人の女性がいた。突然現れた女性たちに恭也が一瞬で警戒心を持って構えると、代表らしい蒼い髪を三つ編みにしている女性が口を開く。

 

「月天の魔導書の起動を確認、我ら月天に集いし雨、守護騎士レーゲンリッター」

 

 次に言葉を繋ぐように口を開くのは茶色の髪をセミロングにした少女。

 

「我らが槍、我らが斧、我らが杖、我らが鎧、その全てを我らが主のために」

 

 その次に口を開くのはウェーブの掛かった碧色の髪をロングのまま伸ばしている女性だ。

 

「如何な災厄、如何な敵だろうと、我ら守護騎士一同、主様のために」

 

 最後、紫色のショートカットヘアーで、何故か背中に翼を生やした女性が口を開いた。

 

「我らが月天の王…守護騎士レーゲンリッター、ここに参上いたしました」

 

 恭也を主と呼ぶ女性たち、守護騎士レーゲンリッター、月天の魔導書、月天の王、聞き覚えの無い言葉、見たことの無い彼女たちの存在、一気に事が進む状況に恭也は思わず……。

 

「…はぁ」

 

 厄介事がまた来たと言わんばかりに、溜息を吐くのだった。




次回、恭也が立つ。
月天の魔導書、レーゲンリッター、その存在の説明は次回に!


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第四話 「月天の魔導書」

遅れました…。


魔導剣士

~月光煌く御神不破流~

 

第四話

「月天の魔導書」

 

 今まで、開いたことのない本が、その鎖の封印を引き千切って開かれ、そして現れた4人の女性達、今までも夜の一族や霊能力者、HGSといった存在と出会ってきたが、流石に今回ばかりは超常現象も過ぎる。

 

「お前達は…」

「私は、月天の魔導書の守護騎士、レーゲンリッターが将、槍の騎士アリーナと申します」

「同じく、あたしはレーゲンリッターが斧の騎士デリア」

「同じく、わたくしはレーゲンリッターが参謀役、森の騎士フリーデル」

「最後に…レーゲンリッターが鎧の守護獣クリームヒルト」

 

 月天の魔導書、というのは琴絵の形見であった本の事だろう。だが、守護騎士だとか、レーゲンリッターだとか、そのような言葉は初めて聞く。

 

「主、よろしければ、お名前をお聞かせ願えますか?」

「主…俺の事、か?」

「はい」

「…恭也、高町恭也だ」

 

 恭也を主と呼ぶ、そんな彼女たちだが、勿論恭也は初対面であるのは間違いないし、そもそも主と呼ばれても覚えがない。

 

「主は、俺の事らしいが…何なんだ? 何故俺が主なんだ?」

「主・恭也…もしや魔法を知らないのですか?」

「魔法…?」

「あたしたちは魔法を使って戦う者…ベルカの騎士だ。魔法とか、ベルカとか、ミッドチルダとか、聞き覚えは?」

「…無い」

 

 アリーナとデリアの言葉に首を傾げる。魔法など恭也にとっては御伽噺だし、ベルカの騎士とか、ミッドチルダとか言われても聞き覚えの無い単語でしかない。

 

「では、わたくし達は魔法の事からお話しなければなりませんわね」

「ん…私達の事、魔法の知識無しに、理解不能」

「そう、なのか…?」

「くぅん?」

 

 いつの間にか子狐に戻って恭也の肩に登った久遠と共に疑問の声を漏らすが、そこは何の知識も無い恭也と久遠、取りあえず話を聞くことにして座ろうと思ったのだが、考えてみれば外では巨大植物が街を破壊しているのだった。

 

「それは心配に及ばないかと。どうやら我らの他に魔導師が居た模様で、既にロストロギアの封印を完了させている様子」

「ロストロギア…?」

「それも含めてお話いたします」

 

 曰く、月天の魔導書とは恭也たちが住む世界とは異なる次元世界に太古の昔に存在していたベルカと呼ばれる世界で作られた魔導書である。

 元々は夜天の魔導書と呼ばれる魔導書を基にして作られた魔導書なので、その性質も同じ、珍しい魔法、貴重な魔導を蒐集・蓄積していく巨大集積型ストレージデバイス。

 主と共に旅をして、守護騎士たちは歴代の主が集めた魔法や魔導、それを扱う代々の主を守り、書の管制人格は書に蒐集された魔法を行使する為に主と融合する。

 

「そうして、長い旅の果てに月天の魔導書はこの地球という世界に辿り着き、今こうして今代の主たる恭也様が起動条件を満たした為に、わたくし達は顕現したのですわ」

「なるほど…しかし、その起動条件というのが解らん。何故、このタイミングで…」

「起動条件、4つ…一つ、月天の魔導書を長期間所持している事。一つ、リンカーコアを持っている事。一つ、ベルカ式…現代で言う古代ベルカ式の資質を持つ事。一つ、魔法が関わった事象に触れる事」

 

 クリームヒルトが話した起動条件、一つ目は琴絵から貰ってから10年以上手元にあるので満たしている。

 二つ目と三つ目は自覚は無いが、起動出来たという事は恭也はリンカーコアを持っていて古代ベルカ式の資質を持っているという事だろう。

 ならば、最後の一つ、魔法が関わった事象に触れる事というのは何なのか。

 

「さっきの植物、あれがそうなの」

「あれが…」

「はい、あの植物からは強い魔力を感じました。ロストロギアクラスの強い魔力を」

「ああ、そのロストロギアというのは…?」

「ロストロギア、高度に発達した文明の世界は、発達し過ぎた為に滅ぶもの。ロストロギアの大半はその文明にて造られたされた品物の事…失われた世界の失われた技術で作られた遺産…発達した文明で作られた物は、大抵がその他の劣っている文明にとってオーバーテクノロジーの塊」

 

 月天の魔導書もロストロギアという物の範疇に入るとの事だ。

 

「それから、魔法についてですが、月天の魔導書が創られた古代ベルカと、ミッドチルダが大本になっていますので、系統はミッドチルダ式とベルカ式の二つ。二つには決定的な違いや戦闘方法の違いなどがありますが、共通するのはプログラムによって魔法式を構築し、術者のリンカーコアにて生成された魔力をエネルギーにこの世の理を歪め発動する術であることです」

 

 その魔法を使い、中遠距離から魔法を放出して様々な魔法を用いて戦うのがミッドチルダ式の特徴。逆に魔力を圧縮、爆発させる事で強力な一撃を用いて近距離で戦うのがベルカ式の特徴との事だ。

 

「俺はそのベルカ式というものの適性がある、と…」

「ベルカ式の適正無しに、月天の魔導書は起動できない」

「ふむ」

 

 百聞は一見に如かず、という事で魔法を実際に見せる事になり、恭也たちは転移魔法というものを使い地球とは別の次元世界へ行く事になった。

 行く世界は地球から最も近い無人世界との事だが、その世界にはその世界にしか存在しない凶暴な魔法生物も存在しているとの事なので、魔法を見せるという事においては丁度良いらしい。

 

「本当に、荒野だな」

「くぅん」

 

 転移魔法で連れて来られた世界は一面荒野の世界だった。急ぎだったので手早く武装を整えた恭也だったが、八景と飛針が20本、5番鋼糸が1本に3番鋼糸が2本、8番鋼糸が3本と小刀が4本だけだったので、凶暴な魔法生物がいるというこの世界では些か心もとない。

 

「ああ、それでしたら、主・恭也のデバイスが必要ですね…フリーデル」

「はい。月天の魔導書には歴代の主が使うデバイスが1つだけ収納されていますので、それをお出しします。新しい主の下で初起動する時に初期化されていますので、新しい形を与えてあげてください」

 

 そう言ってフリーデルが月天の魔導書を開くと一瞬だけ書が光り、次の瞬間にはフリーデルの手に黒い宝玉が握られていた。

 

「これがデバイスのコアです。これに主である恭也様が新しい形と名を与える事で、この子は恭也様のデバイスになります」

「これが…」

「新しい名を授け、起動してやって。それだけだから」

「名…ベルカ語という言葉で名を付けるべきか……聞く限りだとベルカ語はドイツ語に似ているから…」

 

 名と形、形ならば恭也にとって武器は一つだけだから直ぐに思い浮かんだ。だが名前となると困る。ドイツ語は大学の講義で履修しているので単語なら問題ないのだが…。

 

「…よし」

 

 いくつか覚えているドイツ語の中から恭也にとって最も身近な名を繋げて、新しいデバイスの名が決まった。

 

「起動しろ…レーベンシュッツ!」

【Anfang】

 

 宝玉が輝き、恭也を光が包む。

 今まで来ていた服が消え、恭也の全身を新しい服…騎士甲冑が包み込んだ。黒いズボンに黒いシャツを同じく黒いジャケットが覆い、腰には黒銀の金具で止められた膝裏まである黒いマントが付いてシャツの胸元は紺色のボディアーマーが動きを阻害しない程度に覆う。

 最後に、両手を黒銀のナックルガードが付いたオープンフィンガーグローブで彩って恭也の腰に八景と、もう一本の新しい小太刀…小太刀型のアームドデバイスとなったレーベンシュッツが二刀差しで差されて完了する。

 

「これは…これが、騎士甲冑なのか」

「ミッドチルダ式ではバリアジャケット、ベルカ式では騎士甲冑と呼ぶ魔導師、騎士の戦闘服。魔法攻撃も、それがあれば威力も若干減少可能、魔法を伴わない攻撃は一切を遮断する」

 

 便利なものである。そう思ってしまうのも無理は無い。だが魔法には若干の威力減少という事なので、魔法相手だと普通の服を着ている時と変わらないと思っておいた方が良さそうだ。

 

「ところで、恭也様? 先ほどから気になってましたが、その狐は…?」

「ん?」

「くぅん?」

 

 久遠の事を説明するのを忘れていた。取りあえず説明する意味も込めて足元で恭也のズボンを興味深そうにペロペロと舐めていた久遠に目を向ける。

 

「久遠」

「くぅ?」

「説明するから変身してくれ」

「くぅん!」

 

 ポンッ! という音と共に久遠がなのは位の歳の少女に変身した。

 それを見た守護騎士たちは驚愕し、更に久遠の頭にある狐耳を見てクリームヒルトの背中の翼に目を向ける。

 

「ああ、久遠は別に守護獣という訳ではない。そもそも久遠は魔法生物ではないからな」

「では、その子は一体…?」

「簡単に言えば俺達の世界の妖怪…長い年月を生きた狐が魔力とは違う妖力という力を得た存在だ」

「くぅん…くおん、長生きした」

 

 まぁ、人間の姿と狐の姿になれるので、イメージとしては守護獣を思い浮かべれた早いと伝えて、早速だが、魔法の実演になった。

 なったのだが、何故か恭也は月天の魔導書を持って魔力を中に通す様にと言われて、魔力というものを実感する練習を込めて行っている。

 

「これは、何の意味があるんだ?」

「これしないと最後の守護騎士が現れないの」

「最後の、守護騎士…?」

「そう、月天の魔導書の管制人格にして主と融合する事で主の魔法行使をサポートする融合騎がね」

 

 斧型のアームドデバイスを肩に担いでいるデリアの説明でもう一人の守護騎士の存在を知った。しかし、主と融合するというのは如何にも想像し難い。

 

「簡単に言えば最後の守護騎士はデバイス。古代ベルカでも、現代でも希少な融合騎…ユニゾンデバイス」

「ユニゾンデバイス…主と融合するデバイスだから、ユニゾンデバイス、なのか?」

「そう」

 

 ならば、呼び出す方が良いだろう。サポートしてくれるというのなら、魔法をまだ何も知らない恭也にとっても有難いし、何よりアリーナ達が居るのにその騎士だけがまだ書の中に居るのは可哀想だった。

 

「魔力か…リンカーコアは自身の中にある。なら、自分の中から力を引き出すイメージを…」

 

 魔力というもののイメージは先ほど騎士甲冑を展開したときの光をイメージするのが良いだろう。あのときの、黒い、何処までも透き通った黒曜石の様な漆黒の光。

 

「さぁ、目覚めてくれ…最後の守護騎士!」

 

 その言葉と共に恭也の足元に漆黒のベルカ式魔法陣が展開され、月天の魔導書が勢いよく開かれてページが何枚も捲られていく。

 そして、中間のページで止まって書自体も恭也と同じ黒い光を放つと恭也の前に新しい、恭也と同色のベルカ式魔法陣が展開され、光が一際強くなり、それが止んだ時には、その魔法陣の上に少女が一人、立っていた。

 

「最後の守護騎士、レーゲンリッターが融合騎、月光の剣精…参上しました」




槍の騎士アリーナはシグナムみたいな性格で、結構口調が固い。
斧の騎士デリアはヴィータとまでは言わないけど、それなりにフランクな口調。
森の騎士フリーデルはお嬢様口調。
鎧の守護獣クリームヒルトは若干機械口調なのが見分け方です。
一応。


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第五話 「魔導剣士誕生」

融合騎のイメージはデモンベインのエセルドレーダをイメージして頂ければわかり易いかと。彼女を参考にしてますので。


魔導剣士

~月光煌く御神不破流~

 

第五話

「魔導剣士誕生」

 

 恭也の前に立つ美しい黒い髪をストレートに伸ばし、白いフリルが付いた黒のワンピースドレスを着た少女が、感情の乏しい表情と透き通ったエメラルド色の瞳で真っ直ぐ恭也を見つめている。

 

「最後の守護騎士、レーゲンリッターが融合騎、月光の剣精…参上しました」

「月光の、剣精……」

 

 何と神秘的な雰囲気を纏った少女なのか、感情に乏しいその表情が相まって尚更強く感じられる少女が纏っている空気、正に月の妖精と言えるだろう。

 

「マスター?」

「っ! あ、ああ…問題ない」

 

 一瞬だが思わず見惚れてしまっていた。それを振り払う様に軽く頭を振った恭也は改めて月光の剣精と名乗った少女と向き合う。

 

「君が、ユニゾンデバイス…最後の守護騎士である融合騎で、間違い無いか?」

「ja、月光の剣精…今、ここに参上仕りました」

「む…そうか、それで…何と呼べば良い?」

 

 月光の剣精と名乗るだけで、少女は自身の名を名乗らない。アリーナ達は名を名乗っているのに、彼女だけ名乗らないのは些か気になる。

 

「私は新たな主が起動する度に名がリセットされます。故に、新たな主に名を付けて頂けなければ名乗る名は月光の剣精以外に持ち合わせていません」

「リセット…レーベンシュッツもそうだったが、主のデバイスは皆そうなのか?」

「ja」

 

 ならば名づけなければならない。しかし、今度は剣に名を付けるのではなく人間に付けても可笑しくない名を考えなければ、彼女が可哀想だ。

 ドイツ語の名前で、女性に付けるのに相応しい名前は無いかと覚えてまだ日が浅いドイツ語の知識を総動員する。

 

「…む」

 

 一つだけ、良い名があった。ドイツ人女性で実際に存在する名前であり、月光の剣精と名乗った彼女に相応しい名が、たった一つだけ。

 

「ならば、エルフリーデ…月光の剣精エルフリーデだ」

「エルフリーデ…登録します。この時より、私は、月光の剣精エルフリーデと名乗りましょう」

「ああ、そうしてくれ」

 

 エルフリーデとはドイツ語で“妖精”を意味する名前で、実際にエルフリーデという名のドイツ人女性も存在している。

 更に月光の剣精の名にも因んでいて、何より、彼女の妖精の如き神秘的な雰囲気にピッタリの名前であろう。

 

「目覚めたか、月光の剣精」

「槍の騎士、氷結の将ですか」

「うむ、目覚めて何よりだ」

「ええ…それと、今回の私の名はエルフリーデとなりました」

「ほう、ベルカ語で神秘の妖精という意味だな…流石は主・恭也、良き名を与えて下さいました」

 

 アリーナの後ろではデリアやフリーデル、クリームヒルトが頷いて同意している所から、恭也のネーミングセンスは悪くはなかったらしい。

 

「さてと、じゃあ管制人格…エルフリーデも出てきた事だし、始める?」

「ですわね、先ずは…ユニゾンかしら?」

 

 月天の魔導書には既に歴代の主が蒐集・蓄積した魔法のデータが保存されている。それを行使する為には魔法が初体験の恭也だとエルフリーデとユニゾンするしか無い。

 

「では、マスター」

「む…」

 

 手を差し出してきたエルフリーデに恭也はその手を取って握り返す。すると2人の足元に二重になった漆黒のベルカ式魔法陣が展開され、エルフリーデの身体が魔力の光に包まれた。

 

「合わせてください」

「わかった」

「「ユニゾン・イン!」」

 

 エルフリーデの姿が恭也と重なり、ゆっくりと溶け込む様に恭也の中に消えていく。すると恭也の姿に変化が現れた。

 日本人独特の黒い瞳はエルフリーデと同じエメラルド色に変わり、黒かったボディアーマーと両手のナックルガードが白銀に変化してユニゾンは完了する。

 

「これが…ユニゾン」

『如何ですか?』

「魔力が身体から溢れる高揚感…とでも言うのか、中々心地よいものだ」

 

 自身の魔力と、ユニゾンしたエルフリーデの魔力、二つが交わり膨大な魔力に膨れ上がり恭也の全身から滲み出る。

 この溢れ出る魔力が何処か暖かく、自分の内に居るエルフリーデの事がハッキリと感じられるこの状態、心地よく、そして安心出来る何かがあった。

 

「では恭也様、早速ですがその状態で戦闘を行っていただきますわ」

「戦闘と言っても…相手は」

「丁度良く出てきたみたいよ?」

 

 デリアが指差した先を見ると、地面が罅割れ盛り上がり、次の瞬間…。

 

「キシャアアアアアア!!!」

 

 巨大な牙を持つワームが現れた。

 

「あれと…?」

「今の主なら、簡単…元々の戦闘能力に、魔法、ユニゾンした力があれば倒せる」

 

 クリームヒルトは簡単と言うが、恭也自身の戦闘能力は対人用、あのような巨大生物との戦闘など想定していないものなので、正直戦えるか如何か不明というより、無謀と言えなくも無い。

 だが、自身の内にいるエルフリーデから微かに伝わる感情…恭也への絶対の信頼と、彼女と交わった自身の魔力が、どこか自信を与えてくれる。

 

「…解った」

 

 仕方が無いと、レーベンシュッツを鞘から抜いた恭也は巨大ワームへ目を向ける。

 相変わらず巨大な牙で恭也たちを威嚇していて、その大きな口は簡単に自分達を飲み込んでしまうのではないかと思えてならないが…。

 

「戦えば勝つ…それが俺達、御神流だ」

 

 御神の業は基本対人用、だがそんなものを言い訳に戦えないなどと言う気は無い。たとえ無茶に思えても、戦うと決めれば最早恭也に敗北は許されないのだ。

 

「小太刀二刀御神流…高町恭也、推して参る!」

 

 駆け出す恭也は右手に握ったレーベンシュッツを構え、恭也目掛けて牙を剥き突撃して来るワームを避けると、すれ違い様に一番の脅威であろう牙へ徹を込めた斬撃を叩き込んだ。

 

「ギィイイイイイイ!!?」

 

 今の一撃で牙に罅が入り、激痛に暴れまわるワームを避けると少し距離を取り、レーベンシュッツを鞘に収めて抜刀術の構えに入る。

 すると、レーベンシュッツから炸裂音がして、一発の弾丸が鍔と柄の間から吐き出された。

 その弾丸が何なのか不思議に思う間もなく、恭也は自身の魔力が急に、爆発的に上昇したのを感じ、足元には黒いベルカ式の魔法陣が展開される。

 

「魔法は、自身のイメージ…だったな」

『その通りです』

「なら、このまま斬り徹す!!」

 

―――小太刀二刀御神流 奥義之壱―――

 

―――虎切―――

 

 最長射程の抜刀術、奥義之壱、虎切。恭也が抜刀した瞬間鞘から、刀身から膨大な魔力が溢れ出て、レーベンシュッツの刃がワームの太い胴体に触れた瞬間、爆発音と共にワームを輪切りにしてしまった。

 

「今のは…」

 

 虎切にも、それに込めた徹にも、此処までの威力は無い。にも関わらず頑丈そうなワームの皮膚を物ともせず胴体を輪切りにした。

 御神の業だけではあり得ない結果、それがつまり魔法による所であるのは、言うまでも無いだろう。しかし、威力が想像していたものより随分と高い。

 

「お見事です、主・恭也」

「アリーナ…」

「最後の業、主の業なんでしょうけど、それにプラスして魔法も使ったわけよ、だからあの威力が出たの」

「魔法…」

 

 聞けば、恭也が最後に虎切と共に使った魔法は古代ベルカ式の魔法で、紫電一閃という斬撃魔法らしい。

 それから、レーベンシュッツから吐き出された弾丸は古代ベルカでは当たり前に使われている技術、カートリッジシステムと言う、儀式で膨大な魔力を凝縮して弾丸に込めた代物。

 それを戦闘中にロードして凝縮されていた魔力を開放する事で使用者の魔力を一時的に爆発的に上昇させて魔法の威力を上げる事が出来る。

 

「勿論、使いすぎや、一回にロードし過ぎるのは良くありませんわ。魔力が爆発的に上昇するという事は、それだけ術者の身体にも、リンカーコアにも負担を強いる訳ですから」

「一種のドーピングという訳か…」

 

 ならば使いすぎは禁物だ。薬物の様に中毒性がある訳ではないが、身体や、リンカーコアに負担を強いて、使い過ぎればその負担が蓄積されていく。

 それはつまり、騎士として、魔導師として、戦闘者としての寿命を縮める事になるのだから。

 

「では主・恭也、いくつか主・恭也が扱うのに丁度良い魔法をお教えしますので、この後もそれを実践していきましょう」

「教えるのは斬撃系、打撃系、捕縛系、移動系、飛行魔法の5種類」

「最初はエルフリーデの補助を受けながらになりますが、後々にはエルフリーデとのユニゾン無しでもある程度は使える様になっていただきます」

「それまでアタシ達もスパルタでやるから、覚悟しなさいね」

「…望むところだ」

 

 この日、恭也は守護騎士達と共に原生生物を相手に魔法の実践に明け暮れた。

 御神の業を振るう上で補助的に使う事が出来る斬撃系と打撃系は重点的に、捕縛と移動の魔法、そして飛行魔法については実践の後は慣らす程度にして、最終的には飛行中にも斬撃の威力を失わない為に手段を模索する事となった。

 飛行中、恭也は踏み込みが出来ないという欠点があり、斬撃の威力が落ちて、何より御神の剣士の象徴とも言うべき神速が使えない状態になってしまう。

 神速を空中でも使える様にする為に、如何したら良いのか、それはまだ決まらずに海鳴へと戻るのであった。




次回は家族に守護騎士たちの説明になります。
魔法のことを話せば、自然となのはの事まで話さなければならないので、魔法のことを話すか如何かで悩み中…如何しましょう?


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第六話 「語れない真実」

ちょっと急ぎで書いてしまいましたが、六話です。


魔導剣士

~月光煌く御神不破流~

 

第六話

「語れない真実」

 

 転移魔法で地球に戻ってきて、クリームヒルトの翼については若干の魔力消費が上がるとは言え、消せる事に安堵していた恭也たちだったが、直ぐに新たな緊急事態に陥っていた。

 アリーナ達守護騎士の存在を、家族達に何と説明するべきなのか、魔法の存在はなるべくなら明かさない方が良いという騎士達の助言から、何か言い訳…というか、架空の過去話をでっち上げる必要がある。

 

「…むぅ」

「マスター?」

「くぅん?」

「…ああ、いや。問題ない」

 

 隣を歩くエルフリーデと肩に乗っている久遠の心配そうな表情を見て出来る限りの柔らからな笑みを返し、2人の頭を撫でると再び考え込んだ。

 

「主・恭也、過去に私達と知り合い、その縁で、とはいきませんか?」

「過去に、か……確かに、俺は昔一人で一年間の全国武者修行の旅をした事があるが…」

「なら丁度良いじゃない、それでアタシ達に出会ってっていう設定にして」

「わたくし達は姉妹という設定で、両親を失った事にしましょう」

「両親を事故で失った話を主にして、それで主が昔の縁もあって力になるからと呼び寄せた。説得力はある」

 

 確かに話としては良いかもしれない。だが、問題は5人の住むところだ。現在の高町家には空き部屋が無い。

 一階には士郎と桃子の寝室に物置部屋、フィアッセが使っている客間と和室、二階には恭也、なのは美由希、レンの部屋と晶が使う客間で全ての部屋が埋まっている。

 唯一使えそうなのは和室だが、あの部屋はどちらかと言うと部屋というより憩いの場、みたいなものなので、部屋として使う訳にはいかないのだ。

 

「…む、そういえば」

 

 そこで恭也は一つ思い出した。

 高町家の家に空き部屋が無い現状で、守護騎士達5人が住むのに問題無い環境が一つだけある。

 元々は士郎が用意していたものだが、ずっと士郎と桃子、恭也の三人で管理してきたので十分人が住める状態が維持されているのだ。

 

「マスター、問題なくなりましたか?」

「ああ、これならエルフリーデ達が住むことも出来るし、直ぐ傍に俺も居るから皆も安心出来るだろう」

 

 家族に話す内容が決まり、5人の今後の生活についても凡そ纏まった所で家へ急ぐ。外は大分暗くなってきて、恭也の帰りが遅いと家族全員が心配するのだ。

 

 

 家に着いて恭也を出迎えた桃子は恭也の後ろに居る守護騎士達の存在に驚きつつ、恭也から大事な話があるという言葉と、その時の真剣な表情に何かあると母親の勘が働いたのか、直ぐに家族全員をリビングに集めてくれた。

 

「それで、恭也…彼女達は何者だ?」

「前に、俺が一年掛けて全国を周っていたのは知っているな?」

「ああ、まだ俺が長いリハビリの最中だったな」

「彼女達はその時に知り合った…旅先で西洋武術を教えている道場があって、彼女達はそこの娘さん達だ」

 

 恭也達が考えたシナリオは、恭也が武者修行の最中、偶然立ち寄った西洋武術の道場に暫く厄介になっていた。その最に、その道場を経営している夫妻の娘達がアリーナ達だというもの。

 

「それで恭也? 何でその道場の娘さん達が来ているのかしら?」

「先日、彼女達のご両親…俺がお世話になった方々だが、その方達が事故で急死されたらしい。それで海外から日本に帰属していた夫妻の娘である彼女達は日本に身寄りが無く、昔の縁もあって俺に連絡をしてきたんだ」

「ある…恭也さんには、大変ご迷惑をお掛けしていると自覚はしていますが、私達も身寄りが無く、道場を経営するだけの余裕も無い状態でしたから、心苦しくも連絡をして…」

「お世話になった方々の娘さん達だ、俺も無碍には出来ない」

 

 実に恭也らしいと、士郎も桃子も、フィアッセや晶、レン、美由希、なのはは思う。恭也はそういう所は本当に確りしていて、少々年齢から見れば堅苦しさはあるだろうが、これこそが恭也なのだと、納得させられた。

 

「それで父さん…裏の家、あそこに住まわせても良いだろうか?」

「…ふむ」

 

 裏の家、その言葉に美由希となのは、レン、晶、フィアッセは首を傾げた。当然だろう、この話を知っているのは実際に関わっている恭也と桃子、士郎の三人しかいないのだから。

 

「恭ちゃん、裏の家って?」

「この家の裏にある家、お前も知ってるな?」

「それは、うん…でもあの家って何年も空き家だよね?」

「ああ、誰も住んでいない…が、空き家とは少し違う」

「空き家やないんですか?」

 

 高町家の裏にある一軒家、ごく普通の一軒家だが、高町家がこの場所に家を建てて住み始めた頃からずっと何年も空き家になっている筈の家は、実は高町士郎名義で購入している立派な高町家の持ち家なのだ。

 

「おにーちゃん、何で裏の家なんて…」

「…なのはには早い、と思って話していなかったな」

「待て、恭也…俺から話そう。なのは、お父さんと恭也、美由希はお母さんとお父さんが結婚する前まで不破だったのは、知っているね?」

「うん、前に聞いたことあるよ」

「お父さんの前のお仕事も、なのはは知っていると思うけど…お父さんと恭也、それに美由希がやっている剣術は少し特殊なだけじゃないんだ…俺達の剣術そのものに恨みを持っている人たちが沢山いてね…、その関係もあっていざという時に逃げ込める様に裏の家を用意してあったんだ」

「恨み…?」

 

 正直、なのはに話すのは早すぎる気がするが、隠していてもいつかは話さなければならない事だ。士郎と恭也、美由希が納める御神流の、その闇を……。

 

「まぁ、なのはは怖い人が襲ってきた時に逃げられる家って覚えておけば良いのよ。おかーさんもこの話はおとーさんから聞いて、それでお兄ちゃんとおとーさんとおかーさんで裏の家を管理していたの」

 

 桃子がしゃがみ込んでなのはと目線を合わせると、その頭を撫でながらざっくりとだが纏めてくれた。

 

「それで、裏の家に彼女達を住まわせて欲しいんだっけ?」

「ああ」

「…まぁ、良いぞ。幸い、いつ逃げ込んでも良い様に電気水道ガスは通してるし、家財道具一式は揃えてあるからな」

 

 言外に、恭也が連れてきたのなら信用はしている。士郎の目がそう言っていた。

 桃子も士郎と同じなのか頷いて返し、リビングにある茶箪笥の中から鍵束を取り出して一つだけ高町家の鍵とは違う鍵を取り外す。

 

「じゃあ、これ…えっと、アリーナさん、だったかしら?」

「これは、ありがとうございます」

「鍵のコピーは明日にでも一緒にお買い物に行って、その時にしましょう?」

「は…?」

「だって、服とかそれしか無いんでしょ?」

 

 改めて見ると、アリーナ達の服は黒いワンピース姿、エルフリーデだけはドレスだが、他の皆は些か春先としては寒すぎる格好だ。

 

「フィアッセ、明日は買い物に行きたいから車、出してもらえるかしら?」

「YES、翠屋の代返は忍に連絡しておくね?」

「お願い~」

「俺も手伝おう、元々は俺が連れてきたのだからな」

「あ、ならオレは翠屋の方を手伝います! 明日は暇ですし!」

「ほなら、うちもおサルと一緒に手伝います~」

 

 翠屋の方は士郎と恭也の友人である月村忍、晶とレン、それから翠屋開業時から居る松戸さんに任せて、恭也、桃子、フィアッセ、なのははアリーナ達の服などを買いに出かける事となった。

 

「む、しかしフィアッセの車だと全員は乗れないか…俺も車を出そう」

「お願いね、恭也」

「ああ」

 

 こんな事もあろうかと、恭也は友人である忍が車の免許を取りに行く際、一緒に取りにって、見事に同時合格を果たして車の免許を取得している。

 ついでに、高校3年の時から始めた護衛の仕事の報酬で溜まった貯金を使って購入した自分用の車も所持しているのでそれを明日は使う事になった。

 

「アリーナ達は俺の車に、かーさんとなのははフィアッセの車に乗って行けば良いな」

「OK、買い物は隣町のデパート?」

「あそこが一番品揃えが良い」

 

 こうして、アリーナ達は高町家に受け入れられた。

 しかし、このとき恭也達は気づいていなかった。なのはの肩に乗っているフェレットのユーノが、若干だが険しい表情で恭也を、そしてその後ろにいる守護騎士達を見つめていた事を。




次回は買い物、そして忍の家へ行く回…出ますぜ、運命を名に持つ閃光の魔導師が。


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第七話 「日常の一コマ」

ごめんなさい、なのはVSフェイトは次回になります。


魔導剣士

~月光煌く御神不破流~

 

第七話

「日常の一コマ」

 

 高町家にレーゲンリッター5人が来てから数日が経った。5人は高町家の裏にある若干だが一般よりも豪華な一軒家に住み、ほぼ毎日恭也やフィアッセが様子見に来て、そして食事は基本的にレーゲンリッターも高町家も皆が揃って食べている。

 完全に高町家の一員に迎えられたアリーナ達も最初こそ戸惑いはあったものの、今では余裕が出来たのか恭也が大学に行っている間、アリーナとフリーデルは翠屋の手伝い、デリアは家事を行って、クリームヒルトは守護獣としての本来の姿である鷹になって上空から恭也の守護、エルフリーデは月天の魔導書の中に入って一日中恭也の傍に居た。

 

「あ、高町く~ん!」

「月村か…」

 

 この日も、大学のキャンパス内で次の講義まで暇を持て余していた恭也はエルフリーデと話でもしようと人目につかない所を探していたのだが、高校時代からの友人…恭也にとっては数少ない女友達(男友達も少ないが)である月村忍が声を掛けてきた。

 

「ねぇ高町君、次の講義は一緒の筈よね?」

「ああ、教室で赤星と待ち合わせている。あいつも同じ講義を取っているからな」

「そっか、なら一緒に行かない?」

「構わん」

 

 恭也と忍、2人が揃ってキャンパス内を歩くと周囲の視線が自然と集まりだす。恭也も忍も、海鳴大学では知る人ぞ知る美形で、ここに2人の共通の友人である赤星勇吾も加わればキャンパス内でもトップクラスの美形が揃って更に視線が寄ってくるのだ。

 

「そういえば桃子さんに聞いたんだけど、高町君の家に高町君の知り合いが来たんだって?」

「ん…ああ、武者修行時代の知り合いだ」

「へぇ…確か西洋剣術道場の娘さん達、だっけ?」

「うむ、彼女達も相当の実力者だ。槍、斧、剣、無手、何度か手合わせはしているが……西洋の武術も中々に面白い」

 

 正確には西洋ではなく、ベルカの技なのだが、恭也からしたら大差ない様に感じるので西洋武術の括りに入れている。

 最も、彼女達の技が西洋武術とは若干だが毛色が違うという事は士郎なら既に気付いているだろう。

 

「でも、強い人が来てくれたからって、そっちに掛かりっきりになったら駄目よ? フィアッセさん、嫉妬しちゃうんだから」

「む……」

「最近、フィアッセさんとデートとかした?」

「いや…」

 

 最後にフィアッセとデートしたのは1ヶ月前だ。つまり、その間は一度もデートをした事が無い。

 

「はぁ…ねぇ高町君、高町君も忙しい、フィアッセさんも忙しいのは理解してるけど、それだとフィアッセさん、寂しいんじゃない?」

「むぅ…」

 

 確かに、最近は美由希との御神流の鍛錬、アリーナ達との魔法の鍛錬に模擬戦、翠屋の手伝いに大学と、フィアッセと2人っきりになって何処かに行くという事は無かった気がする。

 昨年、漸く想いを通わせて恋仲になり、フィアッセのコンサートツアーも終わって帰ってきたというのに、当の恭也がこれでは流石に申し訳ない。

 

「そう、だな……明日、確かなのはと一緒に月村の家に行くんだ、フィアッセも誘うか。明日はフィアッセのシフトは休みになっていた筈だから」

「あ、じゃあ明日はフィアッセさんも追加ね? ノエルに話しとくわ」

「頼む」

 

 翌日はなのはと忍の家に行く事になっていた恭也。

 なのはは忍の妹である月村すずかと、一緒に遊びに行く友人のアリサ・バニングスと最近一緒に遊んでいない為、たまにはという事で恭也と共に忍の家に行く事になっており、恭也はテスト勉強の為に訪れる事になっている。

 

「フィアッセさんが来るなら英語の勉強には丁度良いんじゃない?」

「そう、だな」

「そうそう、高町君は教育学部だし、英語教師課程を専攻してるから普段もフィアッセさんに教わってみたら?」

「いや、英語は昔からそれなりに話せる…日常会話程度だが」

 

 フィアッセがまだ日本語が上手ではなかった子供の頃、恭也はフィアッセと話をする為に必死に英語を勉強した。

 幸い、その頃はまだ御神も不破も滅ぶ前の事だったので、琴絵が恭也に英会話を教えてくれていたのだ。

 

「高町君、外国語で喋れるのってどれくらい?」

「英語、中国語、それから若干だがドイツ語、フランス語、ロシア語にイタリア語だ」

「あれ? ドイツ語も?」

「ノエルとファリンから少しな。欧州言語学も取ってるから教えてもらってる」

 

 フランス語などについては2年次、3年次からの予定なのだが、一応は話せる。全てクリステラソングスクールの卒業生達、つまりはフィアッセの友人達との会話に困らない様に習得している。

 

「そろそろ急ぐか」

「うん」

 

 少し駆け足でキャンパス内を移動し、次の教室へ向かう二人、何も変わらない、いつも通りの日常がそこにあった。何よりも大切な、日常が。

 

 

 翌日、恭也となのは、フィアッセの三人と、なのはの肩に乗ったユーノはフィアッセの車で月村邸へ向かっていた。

 それから、フィアッセの車を追う様に上空には鷹の姿になったクリームヒルトが飛んでいて、いつも通り恭也の荷物の中には月天の魔導書と、その中に入っているエルフリーデが一緒だ。

 

「恭也、本当にワタシも一緒で良かったの? テスト勉強なのに」

「英語関係で色々と教えてもらいたいことがあるから、問題ない。それに、こうして運転も任せられる」

「にゃはは…ごめんなさい、バスにはユーノ君がいるから乗れないんです」

 

 基本的に公共交通機関にペットの持ち込みは禁止だ。盲導犬などの介助犬でなければ基本的に門前払いされてしまう。

 なので、今回ユーノを連れて行く為には恭也かフィアッセの車でなければならない。元々は恭也が運転するつもりだったのだが、フィアッセが自分が運転すると言うので役目を譲ったのだ。

 

「そろそろ着くよ~」

「む、そうか」

 

 見えてきた月村邸の門、その前でフィアッセが車を止めると、恭也は一度降りて門の所の呼び鈴を押した。

 

『はい、月村です』

「ノエル、俺だ」

『恭也様、お待ちしておりました。只今、門を開けますので、そのままお進みください』

 

 車に戻ると、丁度門が開かれたのでフィアッセがゆっくり車を進め、月村邸の敷地内に入り、指定されている駐車場に車を止めてエンジンを切る。

 三人揃って車を降りると月村邸の玄関まで行き、呼び鈴を鳴らすと少ししてから扉が開き、中から一人のメイド、月村家のメイド長でもあるノエル・K・エーアリヒカイトが出てきた。

 

「いらっしゃいませ、恭也様、なのはお嬢様、フィアッセ様」

「ああ、こんにちはノエル」

「こんにちは! ノエルさん」

「ノエル! 久しぶりだね」

「はい」

 

 初めて会った頃の無表情なノエルと比べれば感情表現はまだ些か拙い所もあるが、随分と表情が柔らかくなった。

 微笑を浮かべながら恭也達を招きいれたノエルの後ろには同じくメイドの少女、ノエルの妹であるファリン・K・エーアリヒカイトが立っていて、恭也達に向かって頭を下げる。

 

「いらっしゃいませです、恭也様、なのはお嬢様、フィアッセ様」

「ああ」

「こんにちはファリンさん」

「こんにちはファリン」

 

 ファリンに挨拶をして、三人は忍たちの待つ応接間に向かった。

 応接間に入ると、忍と、忍の妹であるすずか、それから既に到着していたなのはの友人、アリサが椅子に座って紅茶を飲んでいて、入ってきた恭也達に気付くと三人とも笑顔で迎える。

 

「いらっしゃい、高町君、なのはちゃん、フィアッセさん」

「いらっしゃい、なのはちゃん、恭也さん、フィアッセさん」

「遅かったじゃない」

 

 忍が立ち上がって恭也とフィアッセの前まで歩み寄ると早速だが部屋へ行こうと誘ってきた。流石に子供たちの傍で勉強というのは集中出来ないので丁度良いだろう。

 それに、子供達の方にはファリンが付くので心配はいらない…と思いたいが、ファリンは簡単に言えば、ドジなので、その辺が心配である。

 

「それじゃあなのは、悪いがファリンのフォローを頼む」

「おにーちゃん、失礼だよ」

「美由希と那美さん、それにファリン、三大ドジ娘の異名を忘れたか?」

「にゃはは…」

 

 苦笑するなのはの頭を撫でて、恭也はフィアッセと忍、それから後ろに控えるノエルの三人と共に忍の部屋へ向かった。

 途中でノエルが飲み物を用意すると言って離れたので先に忍の部屋には恭也達だけが来ている。

 

「さて、始めるか」

「そうだね、高町君のテストは最初どこ?」

「俺は教育心理学が初日最初のテストだ」

「そっか、私は機械物理学だから別だねぇ」

「ワタシが教えるのはその後?」

「そうなる、俺も月村も初日2番目のテストが英語だ」

 

 正確には忍は一般英語学、恭也は欧州言語学一年次の科目である英語のテストなので勉強をすると言っても内容は別だ。

 

「さてと、話もそこそこにして始めましょうか」

「だな」

「英語始めるまでは本でも読んでるからね」

 

 フィアッセが勝手知ったる他人の家と言わんばかりに忍の本棚から文庫を取り出す傍で、恭也と忍はそれぞれの勉強を始める。

 そして、この時はまだ、知らなかった。恭也の、そしてなのはの秘密が、思いも寄らないタイミングで発覚してしまうことを、このときはまだ……。




次回はなのはとフェイトの戦い、そして発覚する恭也となのはの秘密。


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第八話 「星光と雷光、そして月光」

休みは良いねぇ。休みは社会人の心のオアシスだよ。


魔導剣士

~月光煌く御神不破流~

 

第八話

「星光と雷光、そして月光」

 

 恭也と忍の勉強は黙々と進み、今はフィアッセに英語を教わりながら試験の問題集に取り掛かっている所だった。

 

「ん~っ! 疲れたぁ…ちょっと休憩にしましょう?」

「む…そう、だな、俺も少し目が疲れた」

「じゃあ少しだけ休憩だね」

 

 忍はノエルにすっかり冷めてしまった紅茶を取り替えるよう頼み、ノエルが三人分のティーカップを下げたところで恭也はふと窓から外に目を向けた。

 恭也の視線の先には相変わらず上空を旋回するクリームヒルトが飛んでいて、何処か気持ちよさそうで羨ましいと感じてしまう。

 

『マスター?』

『む、いや…何でもない。ただ、少し疲れただけだ』

 

 どうやら恭也の感情を読んだらしい懐に仕舞われた月天の書に居るエルフリーデが心配そうな声を念話で届けてきた。

 心配ないという意思表示の為に軽く服越しにだが月天の書を撫でると、念話でエルフリーデの照れたような、何処か嬉しそうな感情が伝わってくる。

 

「恭也? 如何したの?」

「ん? ああ…何、これを懐に入れていたな、と」

 

 そう言って恭也は懐から月天の書を取り出してテーブルの上に置いた。

 

「これって、高町君が言ってた親戚の形見だっけ?」

「ああ、御神琴絵さん…美由希の伯母でもある人の形見だ。彼女が生前、俺にプレゼントと言ってな」

 

 月天の書は、今では恭也にとって今まで以上に大切な物、騎士達との絆の証でもあるのだが、だけどそれでも、その絆である前に恭也にとっては忘れられない初恋の人との思い出の品なのだ。

 

「あれ? でもこれ…前は鎖で縛られてなかった?」

「前に鎖が外れた…開くと文字は読めないがな」

「どれどれ? うわぁ…ドイツ語に似てるけど少し違うわね」

 

 ドイツ語に精通している忍ですら読む事が出来ない。当然だろう、そこに書かれているのは古代ベルカ語で書かれた貴重な魔法の術式なのだから。

 

「お飲み物の御代わりです」

「あ、ノエル、これ読める?」

「? …いえ、申し訳ございません忍お嬢様、ドイツ語に似ている様ですが、私でも解読出来そうにありません」

 

 忍がノエルに月天の書を見せるが、流石のノエルもベルカ語は見たことが無い、データにも無い文字なので読めない、というより解読できないようだ。

 

「そろそろ勉強を再開するか…」

「あ、休みすぎたかな」

「いや、だがそろそろ始めないと出来る範囲がな」

「そうだね~、じゃあ英語は終わってるしまたのんびりしてるね?」

「ああ」

 

 フィアッセが席を立って本棚に向かう傍ら、恭也と忍は勉強を再開するため、シャーペンを手に取った。

 だが、その時異変は起きる。恭也は月村邸の敷地内で膨大な魔力が突如膨れ上がったのを感じて思わずシャーペンを落としてしまう。

 

「っ!」

「高町君?」

「恭也?」

 

 シャーペンを落とすなどと、恭也らしからぬ姿にフィアッセと忍が心配するが、恭也はそれどころではない。

 

『クリームヒルト!』

『感じた、ロストロギアが発動した気配』

『場所は?』

『月村邸の庭、屋敷から少し離れた場所で…あれは、猫?』

 

 猫、月村邸では数多くの猫が昨年から飼われている。その内の一匹がロストロギアを発動させたらしい。

 更に、恭也は月村邸からなのはが外に飛び出した気配を感じ取り、その気配がロストロギアに近づいているのに気付いた。

 

「ねぇ高町君、どうしたの?」

「あ、ああ…なのはが外に出たみたいでな…どうしたのかと」

「なのはが?」

「少し、様子を見に行ってくる」

「あ、高町君!?」

 

 立ち上がって駆け足で忍の部屋を出ると中庭へ向かい、外に出た途端に月村家の庭の一角が結界に覆われたのを感じた。

 

「この魔力…ユーノか」

『あのフェレットもどきが結界を張った模様です。マスター、如何いたしますか?』

「結界の外から入れば術者に感知される…結界の外で見守るしかないだろう」

『しかし…良いのですか?』

「何がだ」

『中から、妹様とフェレットもどき、ロストロギア以外の魔力も感じますが』

「っ!?」

 

 恭也の魔力感知能力はまだまだ低い、故に結界なども魔法、発動したロストロギアの魔力は離れた所からでも感知できるが、人の魔力は感知出来ない。

 現在も、なのはやユーノの気配を感じ取る事が出来ないでいるのだから。その精度が明確に解るというものだ。

 

「仕方が無い。突入するぞ」

『了解』

 

 月天の書からエルフリーデが出てきて、恭也は待機形態になっているデバイスをズボンのポケットから取り出す。

 

「起動しろ、レーベンシュッツ!!」

【ja】

 

 レーベンシュッツを起動して騎士甲冑を身に纏うと、鞘に収められたレーベンシュッツを腰に差し、月天の書に収納していた八景を取り出して同じ様に腰に差して二刀差しにする。

 

「マスター」

「ああ」

「「ユニゾン・イン」」

 

 最後に、恭也とエルフリーデがユニゾンして準備が終わり、恭也はレーベンシュッツだけを抜刀して足元に漆黒のベルカ式魔法陣を展開した。

 

「術式、任せる」

『Ja、結界破壊術式起動、レーベンシュッツの刀身へと展開します』

 

 レーベンシュッツの銀色の刀身が恭也の魔力の影響を受けて漆黒に染まる。刀身に結界破壊の魔法が付加された証だ。

 

「っ!」

 

 構えたレーベンシュッツを一閃、それだけで結界が切り裂かれ、斬った部分に穴が開く。中に居るだろう結界の術者であるユーノはこれに気付いた筈だ。

 それから、恭也は結果内を走り、一直線になのはの気配がする場所に向かう。すると、なのはの気配がする場所に到着して目に入ったのは、なのはと戦う黒いバリアジャケットを纏った金髪ツインテールの少女の姿だった。

 

「…っ、なのは」

 

 恭也が見る限り、もう決着の様だ。魔力弾で攻撃するなのはは明らかに中遠距離戦闘タイプ、対して金髪の少女はスピードと魔力段を生かして戦う中近距離タイプ、相性で言えばなのはが不利だ。

 そして、当然と言うべきなのか、なのはは最後の一撃を受けて気絶、そのまま落下してしまうが、恭也が駆け出すよりも早くユーノがシールドで落ちてくるなのはを受け止めるので大怪我には至らなかったらしい。

 

「……」

 

 金髪の少女がなのはに少し悲しそうな表情を向けるが、直ぐに無表情になって飛び立とうする。しかし、そんな彼女に向けて一本の針…飛針が飛来してきた。

 

「っ!? い、今のは」

「妹が世話になった…次は、俺が相手になろう」

 

 ユーノと、飛針をシールドで弾いた少女、2人が同時に恭也の方を向いた。だが、そこには既に恭也の姿は無く、気が付けば少女は背中を斬られて地面に叩きつけられた。

 

「がっ!? カハッ」

「あ、あなたは…なのはのお兄さん」

「……なのはが何をしているのかは知らん、君がなのはを襲った理由も知らん、だが…なのはを傷つける者は何があろうと、どんな理由だろうと、許すつもりはない」

 

 うつ伏せで倒れた少女が起き上がろうとしたのを、恭也は背中を、そこに出来た真新しい切傷を踏みつけて動きを封じる。

 

「うぅ、ぐっ…」

「答えろ、何が目的でなのはを襲った」

「…っ」

「…はぁ」

 

 溜息を吐いた恭也のレーベンシュッツを握っていない左手が一瞬ぶれる。その瞬間、地面に押し付けられた少女の顔の数cm横に飛針が突き刺さった。

 

「ヒッ!?」

「あまり手荒な真似は好まんが、場合によっては可愛い顔に一生消えない傷が残るぞ」

 

 今度はレーベンシュッツの刀身が飛針とは反対側の地面に突き刺さり、少女は二つの刃に顔を挟まれる形となって既に恐怖で泣きそうだ。

 

「む…」

 

 流石にやり過ぎた。泣きそうになっている少女の顔を見て、恭也の良心が痛む。もう良いだろうと足から力を抜こうとしたその時、恭也は頭上から殺気を感じてシールド魔法、パンツァーシルトを展開する。

 

「ベルカ式!?」

 

 ユーノの驚愕の声が聞こえるが、それに構っている暇は無い。何故ならパンツァーシルトがオレンジ色の狼の牙を受け止めているのだから。

 

「ガルルルルル!!!」

「守護獣か…? ふむ」

 

 少女から足を退けて狼を弾きながらその場を離脱すると、狼が少女を背中に乗せて飛び去ってしまう。

 それを見届けた恭也は未だに唖然としているユーノと、その後ろで気絶しているなのをに近づいてなのはを抱き上げる。

 

「ユーノ、お前も俺の肩に乗れ」

「あ、あの…」

「後で話を聞かせてもらう。今はなのはが大事だ」

 

 レーベンシュッツを待機状態に戻し騎士甲冑を解除、同時にエルフリーデとのユニゾンを解除すると、エルフリーデは月天の書の中に戻る。

 

「今の子は、ユニゾンデバイス…貴重な融合騎がこんな所に」

「今は質問は受け付けん」

 

 ユーノの何か言いたげな表情を無視して、恭也は未だに気絶しているなのはを確りとお姫様抱っこで抱え直し、来た道を戻り始める。

 既にユーノが結界を解除していたので、恭也の後を追ってきたフィアッセと忍が、恭也の腕に抱き抱えられたなのはの姿に近づくスピードを上げるのを眺めながら恭也は上空に居るクリームヒルトを見上げた。

 その恭也の視線を受けたクリームヒルトは、静かに月村邸の上空を離れ、狼と少女の後を追うのだった。




でも、二連休じゃないんだぜ?


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第九話 「魔導の兄妹」

最後の投稿から随分と経ちましたが、スランプ回復して、ようやくです。スランプから回復しても仕事で書く時間が無かったんですけどね。


魔導剣士

~月光煌く御神不破流~

 

第九話

「魔導の兄妹」

 

 気を失ったなのはを背負って月村邸に戻ると、心配して様子を見に行こうとしていた忍たちと出くわし、背負われたなのはを見て何があったのかと聞かれた。

 勿論、魔法の事を話す訳にもいかないので、猫のアインを追いかけていたら転んだと説明しておいて、恭也お得意の平然とした顔で嘘を言う話術で納得させている。

 そして、なのはが気絶しているので、今回はお開きとなり、恭也とフィアッセは車の後部座席になのはを寝かせると、忍たちに挨拶をしてから月村邸を出て帰路に着くのだった。

 

「なのは、まだ寝てるんだ」

「明日は平日だから…午前中にでも病院に連れて行く。俺も講義は午後からだから時間はある」

「お願いね?」

 

 車が高町家の駐車場に停まって、恭也は後部座席に寝かせているなのはの肩を揺する。流石にこれだけ寝ているのは頭を打ったとかではなく、ナチュラルにただ寝ているだけの様な気がするのだ。

 

「なのは、起きろ」

「ん…にゃぅ……おにー、ひゃん?」

「本当に寝てたのか…」

 

 随分と図太い妹で、呆れてしまった。いや、ただ打たれ強いのは不破の血なのかもしれないが。

 

「起きろ、もう家に着いたぞ」

「はにゃ…? おうち……」

 

 ようやく目を覚ましたなのはは辺りをキョロキョロと見渡すと、自分がフィアッセの車の後部座席に居て、既に外は夜、自宅に着いている事に気付いた。

 

「あ、あれ? いつの間に……」

「なのは、よく寝てたねー」

「フィアッセさん…あ、そっか、私……」

「ユーノを追い掛けて転んだのか? 気持ちは解るが気を付けなければ駄目だ」

 

 恭也に怒られてしゅんとなるなのはだが、ふと頭に何かが乗せられた感触に下を向いていた顔を上げてみれば、恭也がなのはの頭に手を置き、そっと撫でている姿が目に映った。

 相変わらずの無表情だが、その瞳の色は何処までも優しくて、なのはの事をいつも見守ってくれる、なのはにとって世界で一番大好きな色だ。

 

「怪我が無くて何よりだ…一応、明日は病院に行こう、兄が連れて行ってやろう」

「おにーちゃん…心配掛けてごめんなさい」

「うむ、許す。さぁ、家に入るぞ…そろそろ夕飯の時間だ」

 

 なのはの頭に置いてあった恭也の右手が、頭から離れてなのはの目の前に差し出された。それを見てなのはは笑顔で左手を差し出して手を繋ぐと車から降りて恭也の隣に立つ。

 

「さて、入ろう<なのは、後でユーノを連れて俺の部屋に来てくれ>」

「っ!? <お、おにーちゃん!? な、何でおにーちゃんが念話を!?>」

 

 目を見開いて驚愕し、恭也を見上げてくるなのはの頭を左手で撫でると、それ以降は何も言わなくなり、そのまま三人は家の中に入る。

 その後、夕飯も恙無く終わり、家族全員がそれぞれの時間を過ごす中、なのははユーノを肩に乗せて兄の部屋の前まで来ていた。

 

「おにーちゃん」

「なのはとユーノか、入れ」

 

 部屋の中から兄の声が聞こえ、襖を開けて中に入れば部屋の中央に胡坐で座り込む恭也の姿と、その後ろに控えるアリーナ達の姿があった。

 

「アリーナさん達も…」

「なのは、お前が聞きたいのは俺が念話を使った理由だな?」

「う、うん…もしかしておにーちゃんも、魔法が使えるの?」

「ああ、最近になって使える様になったばかりだ」

 

 なのはとユーノを座らせて、恭也は懐から月天の魔導書を取り出すと、中に入っていたエルフリーデを呼び出し、驚きに目を見開くなのはへと再度向き直る。

 

「俺が魔法と出合ったのはこの前の巨大樹事件の時だ。聞いた話だと、あれはロストロギアの暴走らしいな」

「はい、僕となのはの2人で集めているロストロギア、ジュエルシードの暴走です」

「その辺りは後で聞く。兎に角、その時に俺は起動したこの月天の魔導書の主となり、守護騎士であるアリーナ達と出会った」

 

 月天の魔導書についての説明をするが、なのはは流石に理解し切れず、ユーノは元々が発掘などを手掛けていて考古学についても明るい為か目を輝かせていた。

 

「ええと、とにかくおにーちゃんは、その魔法の本の主さんになって、魔法使いになったって事で良いよね?」

「まぁ、その認識で構わんよ」

「そうですわ、流石に魔法文化の無い世界の住人であるなのはちゃんには理解が難しい事ですし」

 

 フリーデルのフォローもあり、なのはも一先ず納得。次になのはが関わっているジュエルシードの話になった。

 

「元々は僕が発掘したロストロギアでして、管理局への移送途中に移送船が事故に遭ってしまい、発掘したジュエルシード全21個がこの第97管理外世界…つまり地球の海鳴市全域に落ちてしまったんです。それで僕は発掘者としての責任もありますから、最初は一人で集めようとしていたのですが……何分、僕は結界魔導師で、戦闘は得意ではなかったんです。レイジングハートを所持してましたが、僕自身はインテリジェントデバイスとの相性が悪く、ジュエルシードの思念体相手に手も足も出ず……」

「負傷してなのはに保護されたと…それであの夜、なのはは家を飛び出したんだな…助けを求める君の念話をキャッチして」

「はい」

「ふむ、責任の為に一人でというのは関心しないが、ロストロギアの危険性を考えると納得はいきますか…今回の件があったからこそ、私たちは主・恭也と出会えた訳ですから、あまり強い事は言えません」

 

 アリーナとしては結界魔導師でしかないユーノ一人で戦いに来たという事が無謀としか思えなかったが、それに対して口を出す気は無い。

 ジュエルシードの事が無ければ恭也が月天の魔導書の主になる事は無かった。つまりアリーナ達が恭也と出会う事も無かったのだから。

 

「んで? 今まではなのはに協力してもらってたみたいだけど、今回はヤバイんじゃないの? ミッドチルダ出身らしき魔導師がジュエルシード強奪に来てるんでしょ?」

「主の妹の魔力ランクはオーバーSランク、実力と総合するとAA、私が上空から確認した限り相手は総合AAA、主の妹に勝ち目無し。更に守護獣の存在も確認されている」

「急がなければ先にジュエルシードを確保される可能性が出てきた訳だ。向こうは守護獣も居るのだから、なのは一人では 分が悪い」

 

 恭也の言うとおり、相手が守護獣と手分けしてジュエルシード探しをしたら効率良く、なのはより先に確保してしまう可能性が出てくる。

 そうなってしまえば、残るのはなのはのジュエルシードのみ、それすら強奪されればお終いだ。

 

「あの…恭也さん、それから守護騎士の皆さんにもお願いしたいのですが…僕となのはのジュエルシード探し、手伝ってもらえませんか?」

「……手伝うのは構わん。だが、戦闘においてはなのはに任せる」

「にゃ?」

「戦う相手が居る。そして今のなのはの実力では勝ち目が無い。ならば少しでも実戦を経験して実力を上げなければならん」

 

 それと同時に普段も魔法の鍛錬を行い、少しでも地力を上げなければ到底なのはに勝ち目は無いだろう。

 幸いにしてなのはが使うミッド式の魔法の講師はユーノが出来るし、手合わせの相手には恭也の他に守護騎士一同が居るので事欠かない。

 

「そうだな…明日から家に帰ってきたら普段、俺が魔法の鍛錬を行っている世界に行くか? アリーナ達と一緒に次元転移をする事になるが」

「別世界?」

「次元転移も使えるんですね…でも、それなら確かに魔法文化の無い地球で修業するよりはやり易いかもしれません」

 

 恭也が行く世界は原生生物も生息しているので、そういった手合いとの戦いを経験するのもまたなのはの成長にはプラスとなる。

 無人世界なので誰に憚る事無く魔法を使って戦う事が出来る環境があるのはなのはにとっては良いことだ。

 

「じゃあ、明日からよろしくお願いします。おにーちゃん、アリーナさん、デリアさん、フリーデルさん、クリームヒルトさん、エルフリーデちゃん」

 

 そう言って頭を下げたなのはに頷きかえる恭也達。

 こうして、なのはのこれからの予定は決まった。昼間は学校でレイジングハートと共に脳内シュミレーション、放課後はジュエルシード探しをした後に恭也達と共に魔法の鍛錬、その後は再びジュエルシード探しをして夜に帰宅。

 なのはが地球を離れている間のジュエルシード探しについては守護騎士がシフトを組んで交代制でジュエルシード探しを行う事になっているので、なのはも安心して鍛錬を行う事が可能となった。

 

「ところでおにーちゃん」

「なんだ?」

「前々から人間辞めてるなぁとか思ってたけど……ついに魔法にまで手を出すなんて、アレだよね」

「…失礼な妹だな」

 

 デコピン(美由希相手とは違い、徹は無し)をしてツッコミを入れた恭也と、額を押さえて苦笑するなのはだが、恐らく事情を知れば家族全員がなのはと同じ感想を持つだろう事は簡単に想像出来た。

 自覚があるのであろう恭也も、だからなのか微妙な表情になり、しかし何も言うことは無かったのである。




次回はなのはの初魔法鍛錬と、温泉の予定です。


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第十話 「初めて知る事」

最近、まともに2連休がありません。
っていうか、まともに休めません!
温泉に行きたいです。


魔導剣士

~月光煌く御神不破流~

 

第十話

「初めて知る事」

 

 なのはが恭也達と共に魔法の修業をする事になった翌日、朝からなのはは恭也に連れられ病院に行き、午後からは学校、そして放課後はジュエルシード探しをして、そして夕方も近くなった時間、恭也が普段使っている無人世界に来ていた。

 現在、恭也となのは、ユーノ、エルフリーデ、アリーナ、フリーデルが無人世界に、デリアとクリームヒルトが地球でジュエルシード探索を継続している。

 

「さてと、なのは…今の内にデバイスを起動しておけ」

「もう?」

「でなければ死ぬぞ」

「…っ!?」

 

 恭也の声が今までに無いほど真剣だった。なのはは見た事の無い戦闘者としての恭也の姿に改めて兄が元より戦う者であった事を思い出した。

 

「レイジングハート!」

《stand by ready set up》

 

 なのはが自身のインテリジェントデバイス、レイジングハートを起動し、バリアジャケットを纏ったのを確認し、恭也も懐から待機状態にしているレーベンシュッツを取り出して掲げる。

 

「起動しろ、レーベンシュッツ」

《ja》

 

 起動したレーベンシュッツを鞘に収め、格納していた八景と共に二刀差しで腰に差すスタイルの騎士甲冑を纏った恭也は既にアリーナとフリーデルもデバイスを起動しているのを確認した。

 アリーナは動きやすさを重視した紅いミニスカートに腰には軽甲冑を装備し、上半身は肩口で袖が切れている蒼いカッターシャツのような服に豊満な胸が邪魔にならない程度の甲冑が所々に装備され、両手には紅い長槍と白い短槍を握りかまえている。

 フリーデルは白のワンピースドレスに甲冑を所々装備し、先に薙刀の様な刃の付いた長杖を持ち、優雅に微笑んでいた。

 

「なのは、もう既にこの世界に足を踏み入れた瞬間から原生生物に命を狙われていると思え…油断すれば奴らの御馳走になる」

「…う、うん」

 

 先ほどから肌にピリピリと感じる嫌な感覚、ナニカに見られているような、そんな感覚があるのには気付いている。

 もしもそれが原生生物が自分達を獲物として狙っている視線なのであれば、緊張して嫌な汗が背中を流れたとしても不思議ではない。

 

「そ、そういえばおにーちゃん達のデバイスって…私のレイジングハートみたいな杖って感じじゃないんだね」

「ああ、それは主・恭也も私もフリーデルも古代ベルカ式で、使用デバイスがなのはの様なインテリジェントデバイスではなくアームドデバイスだからですよ」

「あーむどでばいす?」

「古代ベルカ式はミッド式と違い近接格闘戦を得意としている魔法なので、デバイスは魔法を使う杖ではなく戦うための武器になる。それで頑丈さを特に重視してい作られたのがアームドデバイスなのですわ」

 

 緊張のあまり何か話をして気を紛らわせようとしたなのはの問いにアリーナとフリーデルが答えた。既にミッド式とベルカ式の違いは教わっていたが、デバイスの違いについてはまだ聞いた事が無かったので実に興味深そうにはのはは話を聞いていた。

 だが、なのはふとエルフリーデだけがデバイスを起動していないのに気付き首を傾げる。聞いた話では彼女も守護騎士の一人であるとの事だが何故彼女だけがデバイスを起動させないのか気になったのだ。

 

「エルフリーデちゃんはデバイス無いの?」

「私はデバイスを持ちません…いいえ、違いますね。私は、私自身がマスターのデバイスなのです」

「エルフリーデちゃんがデバイス…?」

「ええ……マスター」

「ああ」

 

 エルフリーデがデバイスであるという言葉の意味が理解できずなのはが更に首を傾げたので、論より証拠、エルフリーデが恭也に向かって右手を伸ばしたので恭也もその手に己が手を添えて、そっと握り返した。

 

「「ユニゾン・イン」」

 

 恭也の漆黒の魔法陣とエルフリーデの漆黒の魔法陣が重なり合い、光と共に恭也とエルフリーデが一つになった。

 翠色の瞳になった恭也と、所々の甲冑の色が変わった騎士甲冑、そして恭也の中に消えたエルフリーデになのはは遂に己が理解の限界を超えたのか驚愕し、言葉も発せ無くなっている。

 

「エルフリーデは守護騎士であるのと同時に、月天の魔導書の主である俺の融合騎、ユニゾンデバイスでもあるんだ。だから、エルフリーデは自分の事をデバイスだと名乗った」

「え、で、でもデバイスって…え、エルフリーデちゃんって人間じゃないの!?」

「そうだ…まぁ、純粋に人間じゃないのはアリーナ達守護騎士も同じだがな」

 

 アリーナ達、守護騎士は月天の魔導書と主の守護を担う守護騎士プログラムが実態だ。故に、4人とも人間ではなくプログラム、その身体を構成するのは魔力と守護騎士プログラムであるが故にプログラム体なのだ。

 

「まぁ、プログラム体とは言え、食事もする、睡眠もする、感情を持っているから人間と何も変わらない」

 

 事実、恭也はアリーナ達をプログラムだと聞かされて以降も人間として扱っていた。恭也にとって人間と人間でないものの定義は身体がプログラム体であるか純粋な人間の肉体なのかではなく、もっと別にある。

 

「なのは、お前はアリーナ達が人間には見えないか?」

「…ううん、アリーナさん達は人間にしか見えない。プログラム体とか言われても関係ない、高町家の新しい住人達で、新しい家族だよ」

「…なのは」

「…なのはちゃん」

「そうか」

 

 流石は恭也の妹と言うべきか、この辺りの感性は本当に兄と同じだ。

 

「さて、無駄話はここまでにしよう……来たぞ」

「にゃ?」

 

 途端、地面が大きく揺れた。地震かと思ったが違う、何かが地面の下を動いている感覚があるのだ。それは、この世界の原生生物、伝わってくる感覚から異常に大きな生き物がいるのが解る。

 

「飛べ!」

 

 恭也の合図と共に全員が飛行魔法で空に舞い上がり、数瞬後には恭也達が居た場所を地面から巨大ワームが食い破って出てきた。

 

「うぇええええええ!? あ、アレと戦うの!?」

「そうだ」

 

 恭也は問題ないとでも言いたげに言うが、なのはからして見れば無謀もいいところ。魔法が使えるからと言ってファンタジーゲームなんかに出てきそうな怪物としか見えない巨大ワームと戦うなど正気の沙汰ではなかった。

 

「では、なのは…行け」

「にゃああ!? な、なのはが戦うのぉお!?」

「お前の訓練だろうが」

 

 訓練の際の恭也は厳しい、それは姉である美由希からも何度も聞かされてきた事だ。

 だから今の恭也の態度も納得出来るが、普段の無表情でもなのはに対して確かな優しさと愛情を感じさせる態度とは全く違うため、なのはは戸惑ってもいた。

 

「あ、あの・・・恭也さん、いくらなんでもなのはにいきなりアレと戦うのは無理じゃあ」

「ユーノ、口を出すな。少なくとも今まで戦いとは無縁だったなのはが人と戦おうとしているんだ。少しでも、そして早く戦いに慣らし、戦う覚悟を持ってもらうにはこれが一番なんだ」

 

 ユーノの意見を切り捨てた恭也の視線の先では、なのはが意を決してレイジングハートを構えながら周囲に桜色の魔力球…アクセルシューターを展開しながら巨大ワームに向けて射出していた。

 

「アクセルシューター、シュート!」

 

 4つのシューターがワームへ射出され、四方からワームを貫こうと襲い掛かる。だが、シューターはワームの身体に直撃すると傷一つ付ける事無く霧散してしまう。

 ワームの身体は岩よりも固い。故にシューターの威力が低すぎて傷つける事が出来なかったのだ。

 

「な、なら!」

 

 もう少し威力のあるアクセルシューターを、と思ったなのはだが、突然ワームが巨体を更に地面から出してなのはに襲い掛かってきた。

 頑丈な岩をも噛み砕く鋭く強靭な牙がなのはに襲い掛かり、そのまま噛み砕き喰らい尽くそうとしたが、慌ててなのははその場から離れる。

 

「あ、危なかった…あ、潜った」

 

 なのはが離れた事でワームは一度地面に潜りなおし再び地中を移動しながらなのはを狙い続けていた。

 なのはは空に居る為にワームが何処を移動しているのか検討が付かず、辺りを見回す。いつ、何処からワームが出てくるか判らない恐怖の中、必死になっている。

 

「どこ、から…」

 

 兎に角、出てきたら一気に仕留めよう。そう思い、なのははレイジングハートをシューティングモードに変形させ、先端に魔力をチャージして砲撃の用意をする。

 

「……」

《master!》

「っ!」

 

 レイジングハートの声でなのはは真下の地面が盛り上がっている事に気付いた。不味い、と思ってレイジングハートの先端を真下に向けるが、残念な事にまだチャージは終わっていない。

 そして、盛り上がった地面を破って巨大ワームが出てきて一直線になのはに突撃してきた。大きな口はそのままなのはを丸呑みせんと開かれ、牙は抵抗しようとも噛み砕こうと太陽に照らされ輝く。

 

「終わってないけど仕方が無い! ディバインバスター!!」

 

 チャージ途中だったディバインバスターを大きく開かれたワームの口の中目掛けて発射、するとワームは口を閉じて牙を盾としたが、ディバインバスターは牙を突き破って一気に体内を蹂躙した。

 

「ギィイイイイイイイイイ!!!!」

 

 体内へ砲撃が直撃した事で激痛に暴れまわるワームの身体がなのはに直撃しそうになるのだが、なのはがシールドを張るよりも早く黒い影がなのはの前に現れその手に握った小太刀が一瞬だが太陽光に照らされて光る。

 

「虎乱」

 

―――小太刀二刀御神流 奥義ノ弐―――

 

―――虎乱―――

 

 両手の小太刀二刀が縦横無尽に刃を煌かせ巨大ワームの身体を斬り刻む。岩より頑丈なその身体はまるで豆腐でも斬るかの様に斬り裂かれ、あっという間にワームの命を奪い去った。

 

「お、おにーちゃん…」

「見事だ、なのは…やれば出来るじゃないか」

 

 小太刀を鞘に収め、振り返った恭也が先ほどまでの厳しい表情から一変していつもの無表情、なのはのよく知る優しい色のある無表情でなのはの頭を撫でた。

 

「…うん!」

 

 最初は怖かった。だけど、こうして兄に褒めてもらえて、頭を撫でてもらえるのなら、この訓練も悪いものではない。

 この日、なのはは訓練の後に恭也に褒めてもらう事を楽しみに必死に原生生物と戦い続けるのであった。




仕事柄、ストレスが溜まり続ける毎日です。
そして私は趣味らしい趣味が執筆とエロゲー以外に無いのでストレス解消が出来ません。
誰か、ストレス解消になりそうな、新しい趣味になりそうなもの知りませんか?


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第十一話 「温泉」

有給取りましたです。
時間があったので書きました。


魔導剣士

~月光煌く御神不破流~

 

第十一話

「温泉」

 

 恭也達となのはが共同で魔法訓練とジュエルシード探しを行う様になってから少し経ち、まだジュエルシードは見つかっていないもののなのはの戦闘においてのスキルは随分と磨かれた。

 元々、なのはは不破家の直系、御神流の才は無くとも戦闘に関する才能は有していた様で、戦い方を見つけてそれを自分のものにするスピードが異常だった。

 それに加え、なのはは魔法の才能も有していたというのもあり、使用可能になった魔法も随分増えている。

 そして、現在恭也達となのはは…家族揃ってプラス守護騎士、忍、すずか、ノエル、ファリン、アリサ、久遠、神咲那美を加えての温泉旅行に来ていた。

 

「恭也、運転代わる? 家からずっと恭也が運転してたし」

「いや、フィアッセには帰りの運転を任せる、今日は俺に任せてくれ」

「そう?」

 

 人数が人数なので車は3台で移動している。月村忍が運転する車にはノエルとファリン、すずか、しのぶ、なのはが。士郎が運転する車には桃子、晶、レン、那美が。恭也が運転する車にはフィアッセと守護騎士達が乗っている。

 

「アリーナ達は温泉って行った事あるの?」

「温泉ですか…いえ、何分田舎育ちなもので」

 

 事前に恭也から守護騎士達には温泉について説明してあるので、概要は問題ない。

 そのため回答は普通に行えるのだが、逆に楽しみにさせてしまったのかデリア辺りは待ち遠しそうにウズウズしているのが見て判る。

 

「後ろは狭くないか?」

「いえ、小柄なのが3人ですから問題はありませんよ」

 

 アリーナの言うとおり、恭也の車は大きいとは言えない乗用車タイプだが、現在小柄なクリームヒルトとエルフリーデがアリーナとフリーデルの膝の上に座り、二人の間にはデリアが座っている状態だ。故に、窮屈感が多少感じられる程度なので問題は無い。

 

「もう少しで到着だ、暫し我慢してくれ」

「はい」

 

 漸く見えてきた宿を見て、恭也は前方を走る2台と同じ様に若干だがスピードを上げ、一路間もなく着く宿へと急ぐのであった。

 

 

 宿に着いて直ぐにチェックインを済ますと各々の部屋に荷物を置いてその後は自由行動となった。

 部屋割りとしては士郎と桃子が同室、フィアッセと恭也が同室、レンと晶が同室、美由希と那美

と久遠が同室、忍とノエルが同室、守護騎士達が同室、子供達とファリンが同室という形になり、荷物を置いて子供達と那美、忍、フィアッセ、晶、レン、ノエル、ファリン、エルフリーデを除いた守護騎士達は温泉に士郎と桃子は近場の散歩に出かけ、恭也はエルフリーデと共に恭也とフィアッセの部屋でのんびりとお茶を飲んでた。

 

「のどかだ…」

「はい…」

 

 窓の外から見える自然の景色を眺めながら温泉饅頭を茶菓子に茶を啜る。見事に爺様となった恭也と、それに付き合うエルフリーデは、誰が如何見ても枯れていた。

 

「マスター…」

「どうした?」

「あの…その…」

 

 エルフリーデが恭也の膝に目を向け、頬を紅く染めながら何やら言い辛そうにしている。恭也はエルフリーデが何を言いたいのか察し、湯飲みをテーブルに置くと自分の膝を軽く叩く。

 

「あ…」

 

 おずおずと、エルフリーデは立ち上がって移動すると恭也の膝の上に腰を下ろし、背中を恭也の胸に預けると猫の様に甘えてきた。

 

「相変わらず、誰も見ていない所では甘えん坊だ」

「ん…」

 

 エルフリーデは時々、恭也と2人っきりの時はこうして恭也に甘える事が多々あった。元々が甘えん坊の性格なのを、普段は無表情で隠しているが、己がマスターである恭也と2人っきりともなれば途端に甘えだす。

 

「前までのマスターは、甘えさせてくれませんでした…から」

「そうか…」

 

 恭也以前のマスターがどんな人間だったのか、それは判らないが、今は恭也がマスターなのだから、存分に甘えて欲しいと思う。

 特に、エルフリーデはなのはと見た目は同い年くらいなので、恭也としても新しい妹みたいな感覚で接しているし、戦いの時はユニゾンして共に戦う相棒でもあるのだから、エルフリーデに甘えられるのは大歓迎だ。

 

「温泉…」

「ん?」

「マスターと一緒に、入りたいです」

「む、それは…」

 

 流石に不味い。エルフリーデの見た目なら男湯に入るのは問題ないが、流石になのはやすずか、アリサといった子供達がいる手前、エルフリーデだけ恭也と一緒に温泉に入れば体裁が悪い。それを伝えて不満そうにしているエルフリーデの頭を撫でながらもう一度窓の外へ目を向ける。

 

「良い天気だ」

「…です」

 

 天気が良く、お茶の美味しいのどかな一時であった。

 

 

 子供達が温泉から上がった気配を感じ取り、恭也もそろそろ温泉にでも行こうかと準備をしてエルフリーデと共に部屋を出た。

 途中で何やら珍妙な気配を感じ取ったが、敵意はあっても大した障害にはならないと判断、なにかあれば即座になのはの近くに居るアリーナ達が対処する手筈になっているので問題は無い。

 男湯と女湯の暖簾の前で渋るエルフリーデを女湯へ押し込み、自分も男湯の方へ入っていく。

 

「うむ」

 

 貸切にしている為、他の客の姿も無く、士郎も居ないのでのんびりと全身に刻まれた傷跡を気にする事も無く湯に浸かり全身の筋肉を揉み解す。

 貸切にでもしない限り温泉にも銭湯にも行けない身の上のため、偶にはこのように温泉でのんびりというのは良いものだと思いつつ、窓の外から見える景色を楽しんでいた。

 

「…気配は二つ、この前の少女が宿の外、犬が女湯か…<エルフリーデ、居るか?>」

<はい、確かに居ます。今は露天風呂の方に>

「……<そうか、ある程度隠しつつ動向チェックを頼む>」

<ja マスター>

 

 先ほど、犬が人間形態でなのはと接触した事はフリーデルからの念話で聞いている。なのでエルフリーデには女湯で犬の監視を、クリームヒルトには外で鷹の姿に戻ってもらって上空から少女の監視を頼んでいる。

 アリーナにはなのはを含む子供達の、デリアには忍たちの、フリーデルには桃子やフィアッセたち高町家の護衛を頼んでいるので、何があろうとも鉄壁の守りで手出しはさせない状態だ。

 

「あの少女が来ているということはジュエルシードがこの近くにある…か」

 

 厄介な事、この上ない。折角の温泉休暇が台無しになってしまったが、文句を言っても仕方が無いだろう。

 なのはにもそろそろ少女との戦いをもう一度経験させておきたかったのは事実なので、丁度良いと言えば丁度良い。

 

「まぁ、ジュエルシードを渡すつもりは無いが」

 

 前回、取られてしまった分と、今回見つかるであろう分は自分と守護騎士達とで奪い返す。その為になのはとユーノに頼んでジュエルシード一つを預かっているのだから。

 

「さて、前回は容赦しなかったが、今回はどうするか……」

 

 流石に子供相手に全力は不味いだろう。というか、なのはの目の前でそんな事をしたら怒られる。甘いと言えばそれまでだが、なのはには出来れば自分の裏の顔など見せたくはないのだ。

 

「…腕試し程度で良いな」

 

 前回の時に凡その実力は身のこなしから推測しているが、なのはと同い年くらいにしては随分と腕が立つ程度で、恭也や守護騎士達と比べれば雲泥の差だ。

 

「だが、あの歳であれほどだ…将来が楽しみな逸材ではある、か」

 

 早々に潰すのは不味いだろう。あれほどの逸材なら将来、成長して大人になれば相当な実力者になるのは間違いない。

 そんな可能性を摘み取るのも勿体無いと思うので、今後のなのはの教材としては最適であろう少女とどの様に戦うのか、少女のデバイスの形状を思い出しながらシュミレートしつつ、身体を洗うために湯船から上がるのだった。




次回は再びフェイト戦
フェイトには可哀想ですが、ジュエルシード0個になってもうらうかもですね。


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第十二話 「月下の戦い」

なのはが強いです。現時点で既に原作を超えています。


魔導剣士

~月光煌く御神不破流~

 

第十二話

「月下の戦い」

 

 旅館での夜、夕餉も済んで子供達は布団に入り、大人達は子供達が寝ている隣の部屋に集まって飲んでいた。

 恭也も珍しくその飲みの席に参列しているのだが、当人は下戸ではないが酒を美味いと感じられないためか一人ジュースを飲んでいる。

 

「って、恭也お前なぁ、白けるだろうが」

「とーさんと違って俺は酒を好んでは飲まん」

「かぁ~っ! 本当に俺の息子かお前は!」

「少なくとも俺はとーさんと夏織かーさんの息子だ」

 

 日本酒片手に真っ赤になった顔を寄せてくる父をあしらいながら恭也は空になったコップに隣に座るフィアッセがジュースを注いでくれたのでもう一口飲み、ふと部屋の隅に座るクリームヒルトに目を向けた。

 クリームヒルトはそれに気付き頷くと気配を消しながら部屋から出る。それを見送りながら恭也はつまみの裂きイカに手を伸ばすと気付いていた父が神妙そうな表情をしているのに気付く。

 

「なのはに関係する事か?」

「…ああ」

「そうか、無理すんなよ?」

「向こうは2人、こっちは8人だ…どうにか出来るさ」

「ならいいが…」

 

 士郎は既にアリーナ達が居候する事になった理由が嘘だという事に気付いている。いや、士郎だけではない、桃子もフィアッセも、それに気付いている。だが恭也を信頼して何も言わずに居るのだ、なのはの事も含めて。

 

「恭也」

「何だ?」

「頼むぜ」

「…ああ」

 

 丁度その時、ジュエルシードの発動を感知した。だから、恭也は静かに立ち上がり、アリーナとデリアを連れて部屋を出る。

 残ったフリーデルは万が一に備えて旅館全体に結界を張り、被害が出ない様にサポートに徹するのであった。

 

 

 旅館から少し離れた森の中、なのははジュエルシードの発動を感知してユーノ、エルフリーデの2人と共に発動場所に来ていた。

 その場所には既に先の少女と旅館で会った女性の2人が到着しており、ジュエルシードも封印済みになっていた。

 

「おや? おやおやおや? アタシ言ったよねぇ、良い子は大人しくしてないとガブッていくよってさぁ」

「あ、あなたは…」

 

 なのはは女性の頭に生えた犬耳と、腰に見える尻尾を見て彼女が人間ではない事に気付いた。なのはの友人、久遠と同じ様な姿なので驚くほどではないが、久遠以外にそんな存在がいるとは思わなかったのだ。

 

「なのは、彼女は使い魔だ、クリームヒルトさんみたいな存在で、あの子の魔力を原動力として存在する魔導師のパートナーだよ」

「そうさ、アタシはこの子使い魔、誇り高き狼を素体とした使い魔だよ」

「使い魔…」

「それで? 今日はあの黒い男は居ない訳? この前は随分な事をしてくれたからねぇ、存分に痛めつけてやらないと気がすまないんだけど」

「マスターを痛めつける? 雑魚と駄犬風情が、身の程知らずも良い所」

 

 ここに来て初めてエルフリーデが口を開いたが、随分な毒舌だった。流石に敬愛する主を甘くみられている事に腹を立てたらしい。

 

「あ? 誰が雑魚だって?」

「その子とあなた…2人掛りでもマスターの足元にも及ばない程度の実力しか無いのに痛めつけるなんて…無知は罪」

「はっ! アタシとフェイトが負けるわけないね、あんな優男、この前は油断したけど魔法の構成から見ても素人だ、素人相手にフェイトが負けるってのかい?」

「そうね、マスターは素人、魔法に関してだけは…でも、戦いについてはマスターはこの場の誰よりもプロフェッショナル、魔法を使わなくても魔導師に勝てるだけの実力者」

 

 エルフリーデはずっと月天の書の中から見てきた、恭也を、その前の持ち主であった琴絵を、その生き様、鍛錬、戦い、御神と不破の業、全てを見てきたからこそ言える、恭也こそ今を生きる最強の剣士であり、魔導師が相手であろうと関係無く殺せるのだと。

 

「ねぇ、お話を聞かせて欲しいんだ…私は別に戦いに来た訳じゃない、貴女と確りお話がしたい」

「…必要無い、言っても、きっと分かり合えないから」

「そんなの、言ってみないと判らないよ! 言葉にしないと伝わらない、伝えようとする意思があればきっと分かり合える筈だよ!」

「…分かり合う気も無い、だから私はあなたからジュエルシードを奪ってでも集める、だから賭けて、今私が手に入れたジュエルシードと、貴女の持つジュエルシードを」

 

 言うや否や少女が戦斧状の杖を魔力の刃を展開した大鎌の形状にして斬り掛かって来た。そのスピードは凄まじく速い。

 しかし、伊達になのはも恭也相手に模擬戦を繰り返していない。スピードが命の御神流を相手に模擬戦を行っている内になのはの目はスピードに慣れているのだ。

 そして、少女の速さは恭也が使う神速はおろか通常時のスピードにすら劣る。

 

「(……あれ? 魔法も無しに魔法を使うより速く動けるおにーちゃんって、本当に人間?)」

 

 物凄く失礼な事を考えながらも、なのはは周囲に展開したアクセルシューターを牽制に使いながら少女と距離を取る。

 少女もなのはと距離を詰めようと迫ってくるが、シューターの牽制のおかげか中々接近出来ない。しかし、流石になのは以上の実力者というだけあるのか、直ぐにシューターを全てかわしてなのはを十分射程距離に捉えた。

 

「はぁっ!」

 

 魔力の刃で形成された鎌がなのはを切り裂こうと振られるが、なのははレイジングハートを交差させる事で受け止め、空いている右手を拳に少女の腹部に当てるとチャージしていた魔法を発動させた。

 

「フラッシュインパクト!!」

「ガハッ!?」

 

 少女の腹部で小規模の爆発が起きて、そのまま少女は爆発に似合わぬ衝撃と共に近くの木まで吹き飛ばされ、そのまま背中を木に叩きつけられてしまう。

 そして、なのははその隙を逃さず、既にシューティングモードにしているレイジングハートを構え砲撃を加える。

 

「ショートバスター!!」

 

 なのはお得意のディバインバスターのバリエーション、威力と射程を犠牲にして最速で発射出来る砲撃魔法、ショートバスターが少女に直撃する。

 背中を叩きつけられた事で一瞬息が詰まった少女は最速砲撃に対応するのが間に合わず背後の木をへし折りながら更に後方の木へと叩きつけられてしまう。

 

「フェイト!?」

「余所見厳禁です」

「なっ!? ガァ!?」

 

 エルフリーデの相手をしていた使い魔もまた、拳が上手い事決まらず避けられ、流されている中で少女になのはの砲撃が直撃したのを見て意識を反らしてしまい、エルフリーデの右拳が鳩尾に入ってしまった。

 

「ハンマーシュラーク…古代ベルカ式の使い手に、近接戦闘を挑むなど無謀ですよ」

 

 本来であれば鉄槌型などのデバイスを使用して使う打撃魔法だが、エルフリーデはデバイスを所持していないので基本的に拳を使って打撃を行っている。

 また、エルフリーデのロードである恭也もまた、打撃系の魔法は基本的に拳や脚を使って行うのだが、それはエルフリーデを真似て使っているものだ。

 

「つよ、い…前に、会った時より、全然……」

「おにーちゃんに、戦い方を教わったから…フラッシュインパクトもショートバスターも、おにーちゃんと模擬戦を繰り返す中で考案した対近接戦闘魔導師用の魔法なんだ」

 

 射撃、砲撃だけでは近接戦闘魔導師を相手に戦うのは無茶だ。それを恭也が指摘してなのはがレイジングハートとユーノと共に考案したのがフラッシュインパクトとショートバスターだった。

 

「くっ…バルディッシュ!」

【yes sir】

 

 少女が自身のデバイスに命じると、少女はまるで消えたようになのはの視界から移動する。だが、脅威なのは少女のスピードではない、なのはがそれを目で追っている事だ。

 

「レイジングハート!」

【Flash move】

 

 元々、なのはの動体視力は不破家の直系というだけあって高かった。だが、それは魔法と出会い、恭也との模擬戦を繰り返す事で更に高くなっていた。

 今では神速にこそ対応出来なくとも少女の高速移動を目で追う事は容易いだけの動体視力と反射神経を持ち合わせており、恭也にこそ及ばずとも、姉である美由希と同等と言えるだろう。

 高速移動をする両者が互いのデバイスをぶつけ合い、また離れては接近してぶつかる。それを何度も繰り返しながらなのはと少女は互いに牽制用の魔法を展開した。

 

「プラズマランサー・・・ファイア!」

「アクセルシューター…シュート!」

 

 互いのシューターが2人の間でぶつかって軽い衝撃が2人を襲うも既に二人とも動いていて、少女は再び鎌にしたデバイスを振りかぶり、なのははレイジングハートの先端に魔力をチャージする。

 

「サイズスラッシュ!」

「ブレイクインパルス!」

 

 魔力刃の先端がなのはの左肩に突き刺さり痛みの魔力が変換された電流で全身に痺れが襲い掛かるが、同時にレイジングハートの先端部分が少女の胸部に当たり、チャージされていた魔法が発動、強烈な振動と共に少女を吹き飛ばし胸部への強力な振動魔法が呼吸を困難にさせた。

 

「あ、ぐぅ…かはっ」

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

 少女は動けない、だが同時になのはもまた、動けずにいた。全身を流れた電流の影響で体が痺れており、身動きが取れない。

 

「お疲れ様です、なのは」

「お疲れ、なのは」

「エルフリーデちゃん…ユーノ君」

「駄犬はこっちで倒しておきました…ジュエルシードも同時に奪取、もうこの場に用事はありません」

「そっか…」

「なのは、大丈夫?」

「ん、ちょっと痺れて動けないかな…」

 

 にゃはは、と力無く笑うなのはだったが、旅館に戻らなければならない以上動かなければならない、しかしエルフリーデの体格ではなのはを運ぶのは不可能だし、ユーノもまた同様だ。

 

「まったく、無茶をする」

「あれ・・・おにーちゃん?」

 

 兄の声が聞こえた。そちらの方へ顔を向ければ確かに、恭也とアリーナ、デリアの三人が立っていて、三人ともなのはを心配そうに見下ろしていた。

 

「見ていたぞ、なのは」

「うん、頑張ったよ…?」

「ああ、見事だった」

 

 なのはを抱き上げた恭也が、なのはの頑張りを褒める。普段、鍛錬の際に美由希を褒めることが滅多に無い恭也が、なのはを褒めた。それを美由希が見ていれば不公平だと文句を言っていただろう。

 

「流石、主・恭也の妹君です、見事な戦いでしたよ、なのは」

「最後に動けなくなるのはこれからに期待するわ」

「にゃははは…」

 

 そして、話をそこそこに、恭也は倒れている少女の所までなのはを抱き上げたまま歩み寄ると悔しそうに睨んでいる少女にこれ以上まだ戦うかと問う、明らかになのはの勝利であり、恭也達が揃っている現状で少女と使い魔が戦っても意味が無い。

 

「今日は、引きます…でも、次は負けません」

「そうか、なのはは何か伝える事はあるか?」

「その…貴女の御名前、教えてくれるかな?」

「・・・フェイト、フェイト・テスタロッサ」

「フェイトちゃん・・・ねぇ、今日はジュエルシードを賭けての戦いだったから何も聞かないけど、次はきっとお話を聞かせて欲しいんだ、良いかな?」

「…アルフ、帰ろう」

「…あいよ」

 

 使い魔…アルフに抱きかかえられながら、少女…フェイトはこの場から立ち去った。

 なのはは返事をしなかったフェイトに寂しそうな表情を浮かべるも、直ぐに恭也へと視線を向けて力強い言葉を発する。

 

「私、諦めない、きっとフェイトちゃんのお話を聞かせてもらえるように頑張るから」

「ああ、頑張れ」

 

 妹の決意、兄はそれを静かに聞き届け、そして激励の言葉を贈る。いつの間にか強く成長した妹が、恭也にはとても嬉しい。

 だから、そんななのはの決意を恭也は確りと聞き届け、なのはもまた、その決意を胸に今後の鍛錬に励む事にするのだった。




正直、短期間とは言え、御神の剣士である恭也や、古代ベルカ式の騎士である守護騎士達を相手に何度も模擬戦を繰り返してきたなのはが強くならないわけないですよね?
感想をお待ちしてます。


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第十三話 「光の歌姫と御神の剣士」

今回はリリカル要素が一切ありません。
とらハ要素を中心とした話になります。


魔導剣士

~月光煌く御神不破流~

 

第十三話

「光の歌姫と御神の剣士」

 

 ジュエルシード探しが順調に行われている中、とある休日の事だった。高町家の朝食の席で高町家長女的存在であるフィアッセ・クリステラの一言が全ての始まりである。

 

「もう直ぐワタシのソロコンサートを海鳴で開く事になったの」

『……は?』

 

 あまりに唐突で、一瞬だが何を言っているのか理解出来なかったが、フィアッセの言葉の意味を理解した瞬間、高町家全体が歓喜に包まれた。

 

「そうか! 良かったなフィアッセ!」

「おめでとうフィアッセ!」

「シロウ、桃子…ありがとう」

 

 ずっとフィアッセを見守り続け、昨年漸くチャリティーコンサートで復活を遂げたフィアッセの事を誰よりも喜んだ士郎と桃子はフィアッセのソロコンサートを大いに喜んでいた。

 いや、士郎や桃子だけではない、晶も、レンも、美由希もなのはも、そして誰よりも恭也自身が、我が事の様に喜んでいる。

 

「それで、ソロコンサートの期間中なんだけど…」

「ああ、言われるまでも無い…フィアッセのコンサートも、フィアッセ自身も、俺が守る」

 

 フィアッセが何を言いたいのか理解した恭也は彼女が言い終わる前に了解の意を示した。コンサート期間中、恭也が護衛としてフィアッセを守ると、フィアッセの初のソロコンサートを守ってみせると、そう言い切った。

 

「ありがとう、恭也…」

「必ず守る…だから、フィアッセは思う存分、想いを乗せて精一杯歌ってくれ」

「うん!」

 

 CSS(クリステラソングスクール)校長にして世紀の歌姫ことティオレ・クリステラの愛娘にして、世界に名を轟かせる光の歌姫ことフィアッセ・クリステラのソロコンサート、間違いなく大勢の観客が訪れる。

 同時に、裏社会を生きる者にとっては絶好の獲物が表舞台に立とうとしているのだから、必ずフィアッセは狙われる。

 フィアッセはティオレ・クリステラの娘という立場だけではなく、イギリス上院議員アルバート・クリステラの娘でもあるのだから、その政治的価値は計り知れない。

 

「恭ちゃん、私も手伝うよ」

「ああ、頼りにさせてもらうぞ」

「うん」

 

 翌日から早速フィアッセの護衛が始まる。大学は一応だが単位は足りているので少しの間くらいは問題なく休めるので安心して良い。

 

「いや、恭也、昼間はお前はいつも通りに大学に行け」

「父さん?」

「お前が日中の護衛をしなくてもアリーナさん達も居るだろう?」

「む…」

 

 確かに、魔法を使わなくともアリーナ達はそもそもが騎士であるので戦える。ならば日中の護衛はアリーナ達守護騎士に手伝ってもらえば恭也の負担も減るだろう。

 

「私たちは構いません、恭也さんの助けになるのであれば是非も無い」

 

 4人とも問題ないという顔をしているので、任せても構わないだろう。ならば後ほど護衛としての心構えと注意点を教えなければならないので、打ち合わせも込めて美由希と守護騎士達を恭也の部屋に来るよう伝えておく。

 

「……」

 

 話が進む中、恭也はなのはが随分と神妙そうな表情をしている事に気付く。そして、それが何を考えている表情なのかを理解して、後で言って聞かせようと今は夕飯を楽しむのであった。

 

 

 夕飯が終わり、恭也はなのはが部屋に戻っているのを確認すると先に美由希たちには恭也の部屋に行っているよう伝えてからなのはの部屋に向かう。

 なのはの部屋の前で扉をノックすると、中からなのはが入って良いと言う声が聞こえたので、部屋の中に入る。案の定、なのははレイジングハートを片手に何かを相談していたらしい。

 

「なのは、お前が何を考えているのかは理解しているが…護衛の仕事を手伝いたいというのは駄目だ」

「…どうして?」

「お前は魔法を手にしただけで、まだまだ戦闘者として未熟過ぎる…そもそも、俺達の仕事は魔法とは違い銃なども普通に使われる血生臭い世界のものだ、お前では足手まといになる」

「でも、私もフィアッセさんを守りたいよ」

「…お前の気持ちは嬉しいし、尊重したいとも思う。だけど、お前にはお前のやるべき事がある、フィアッセの護衛は、俺達側の仕事だ」

 

 なのはは裏社会というものを知らない。その血生臭さを知らないからこそ、恭也はなのはに手伝ってもらう気は無かった。

 命の危険だって時にはある。それはなのはも昨年恭也が入院した事もあるので知っている筈だ。

 

「そうだよなのは、そもそも管理外世界で基本的に魔法を使う事は禁止されてるし、そもそも相手は魔法を知らない相手なんですよね?」

「ああ」

「なら尚の事、魔法なんて使えないよなのは、アリーナさん達は古代ベルカの騎士だから魔法を使わなくても戦えるだろうけど、なのはは魔法無しじゃ戦えないでしょ?」

「…うん」

 

 ユーノの言葉もあり、渋々納得してくれた所で話は此処まで、恭也はなのはの部屋を出て自室に戻った。

 恭也の部屋では既に美由希やアリーナ達守護騎士達が揃っており、先に話し合いを行っていたらしい。

 

「すまん、遅くなった」

「構いませんわ、それよりも早く決めてしまいましょう」

「そうだね。一先ず、恭ちゃんと私は日中は学校があるから、基本的に日中の護衛はアリーナさん達が交代で行う事にして…」

「俺は大学の講義が無い時は早めに帰宅して護衛に合流するという形が良いだろう、美由希も放課後は」

「うん、真っ直ぐ翠屋?」

「いや、真っ直ぐフィアッセのレッスンスタジオに来てくれ」

 

 駅前の方にあるスタジオなので、風ヶ丘高校からだと少し距離があるが、美由希なら普通の人より早く来れるので問題無い。

 

「それからコンサート当日だが、基本的にフィアッセには美由希とデリア、それからクリームヒルトが付いてくれ」

「わかった」

「了解よ」

「承知」

「アリーナとフリーデルは会場内を回りながら不審物や不審者のチェック」

「了解です」

「畏まりました」

 

 そして、恭也は会場の地下駐車場や人気の無い場所を回って不審者が来た場合の迎撃を行う。御神不破流を習得している恭也にはこの役割が一番効率が良い。

 

「当日までには会場の見取り図を入手しておく」

「そっちはリスティさんに?」

「ああ、話は明日にでもしておくさ」

「うん、任せるね」

 

 守護騎士達は当日、会場入りした後に人気の無い場所でデバイスを起動してもらう事になっているので、後の心配は恭也と美由希の武器だけだ。

 

「恭ちゃん、八景は研ぎに出してる?」

「いや、出していないが、昨日点検して問題無しだ、無銘の方も明日には井関さんに取りに行く予定になっている」

「そっか、私も出してたけど」

「一緒に持っていったから終わっている筈だ、受け取っておく」

「お願い」

 

 鋼糸、飛針、小刀も最近補充したばかりなので特に数に問題は無い。

 

「あ、でも確か私の8番鋼糸がそろそろ駄目かも…」

「7番か9番で代用しろ、今からでは間に合わん」

「あ、そっか」

 

 基本的に捕縛用に使うのが番号後半の鋼糸だが、美由希は恭也と違って戦う際にも使うので少し後半番号の鋼糸の消耗が激しい。

 逆に恭也は前半台を主に使って後半台は本当に捕縛にしか使わないため、前半台の消耗が激しいのだが、定期的に点検を怠らず、補充も計算して使っているので問題は発生しないのだ。

 

「その辺は、まだまだ未熟だな」

「うぅ…気を付けまぁす」

 

 師の厳しい指摘に落ち込む美由希だが、この辺は自分の未熟が原因なので大げさに落ち込みはしなかった。

 そんな二人の様子を、アリーナ達は関心した様な表情で見つめていたのに気付き、恭也は何かあったのかと尋ねるも、4人とも苦笑して首を振る。

 

「別に、恭也も美由希には厳しいのね」

「弟子を甘やかすのは違うからな」

「なるほど、確かに武の道はそういうものでしょうね。我々の騎士道も同じようなものです」

 

 武は洋の東西問わず、同じだ。それが古代ベルカだろうと変わらない。

 

「無駄話はこの辺にして、実際に不審者や、戦闘者が来た場合の事を話し合うぞ」

 

 この日、夜遅くまで恭也の部屋の電気が消える事は無かった。

 様子を見に来た士郎は、息子が確りと自分の跡を継いでいるのだという事を確認すると、満足そうに頷いて自分の部屋ではなく、外にある物置に向かう。

 物置に入って暫く中を物色していた士郎は、やがて一本の刀袋に納められた小太刀を見つけると、中身を取り出して鞘から抜く。

 

「いざとなりゃ、俺ももう一度コイツを抜くとするかねぇ」

 

 嘗て、士郎が八景と一緒に使っていた小太刀、不破家の伝承刀である八景と対なす、不破家に伝わりしもう一つの伝承刀。

 

「もしもの時は、頼むぜ…無禄」




リリカルなのは原作とは言え、大本であるとらハとクロスさせているんですからとらハ要素も無いと、ですよねぇ?


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第十四話 「守護の誓い」

OVA版のとらいあんぐるハート3をご存知の方は知っている名前も出てきます。


魔導剣士

~月光煌く御神不破流~

 

第十四話

「守護の誓い」

 

 フィアッセの護衛が始まって数日が経つ。今の所、直接的な被害は何一つ無く、襲撃は零と言って良い状況が続いているのだが、それはあくまで表向き、恭也は既にリスティと共に動いていたのだ。

 現在、恭也とリスティの二人は翠屋ではない、海鳴市にある別の喫茶店のブース席にて、話し合いをしている。

 

「まさか、本当に脅迫状が来るとはね」

「ええ、フィアッセに見つかる前に回収出来て良かった」

 

 数日前、フィアッセのレッスンスタジオに脅迫状が送られてきた。それをデリアが見つけてフィアッセに見つかる前に恭也の元へと届けられたのだ。

 

「黄色いクローバーのマーク、父さんが大怪我をしたあの時の事件と同じ人物が犯人です」

「クレイジーボマーか…となると、(ロン)も絡んで来そうだ」

 

 クレイジーボマー、その名は裏社会では有名な爆弾魔の異名であり、世界中でテロなどに使われている爆弾の殆どは彼の作品だという噂まである程だ。

 一説には中国を拠点とする国際的犯罪テロ組織、(ロン)とも密接な繋がりがあるとまで噂されているので、裏社会の猛者でも中々手出し出来ないと言われている。

 

「リスティさん、今現在で日本入りした戦闘者は誰ですか?」

「ん? 辛うじて確認出来たのは二人だ。一人はスライサーと呼ばれてる剣士」

「あのスライサーですか…今の美由希では荷が重い、か」

「だろうね、アリーナさんやデリアくらいなら何とかなるかもしれないけど」

 

 スライサー、この名も裏社会では有名な剣士の異名で、海外を主に活動の場としているのだが、大型のバスターソードを軽々と操り、それでいて暗殺にも長けている根っからの戦闘狂、強い剣士と戦う事を目的としている殺人鬼だ。

 

「もう一人は…コイツは本気で危険だよ、確認出来たのですら奇跡と言って良い程さ」

「…誰ですか?」

血の惨劇(ブルート・トラゲーディエ)

「っ! あの、裏社会最悪の殺人魔…」

「Yes、血を求めて戦い、名の通り、血の惨劇としか言えないような猟奇殺人を好む裏社会最凶最悪の殺人魔だ……噂に寄ればコイツ、100年以上を生きる夜の一族って話だけど」

「……」

 

 それが本当なら本気で不味い。夜の一族は基本的に力やスピード、勘など様々な戦闘に必要な要素が人間以上、正に人外の強さを誇る。

 裏社会の恐怖の代名詞とも呼ばれている人物がもしも夜の一族なのであれば、恭也が戦わなければ死人が出る恐れもあるだろう。否、間違い無く死人が出る。

 

「クレイジーボマーにスライサーと来て、血の惨劇(ブルート・トラゲーディエ)まで…裏社会の有名人オンパレードだね、こっちにも双黒剣が居るんだし」

「その名前、止めて貰えますか」

 

 双黒剣、昨年のティオレ・クリステラ最後のチャリティーコンサートにて、鴉と呼ばれていた御神美沙斗を倒した剣士が裏社会で有名となった。

 正体こそ知られていないが、その双黒剣こそ、恭也の裏社会での渾名であり、一年で随分と有名度が上がったものである。

 

「クレイジーボマーの情報は確かマクガーレン社が詳しい筈だから、ボクの方で調べておくよ」

「スライサーもお願いして良いですか? 血の惨劇(ブルート・トラゲーディエ)については月村に聞いておきますので」

「ああ、任せてくれ」

 

 会計を済ませて喫茶店を出た二人はそれぞれ別れて行動する。リスティは職場に戻ってクレイジーボマーとスライサーについての情報集め、恭也は月村邸へと向かう。

 近くのコインパーキングに停めてあった車に戻り、恭也は直ぐに月村邸へ進路を取る。先ほどのリスティとの話の中で出てきた人物、血の惨劇(ブルート・トラゲーディエ)が日本に来ているというのが間違い無い以上、急いで情報を集めてフィアッセの下に戻らなければならない。

 

「だが、100年以上を生きる夜の一族か…力も相当なものだろうな」

 

 果たして、自分に勝てる要素はあるのだろうか。叔母との戦い以降、未だに奥義之極を自在に使えない自分が、御神の剣士として欠陥を抱える自分が、100年以上を生きた化け物と呼ぶに相応しい吸血鬼に。

 

「マスター」

「エルフリーデ…」

「魔法は、使わないのですか?」

 

 助手席に置いた月天の書からエルフリーデが出てきてシートベルトを装着しながら尋ねてきた。魔法を、血の惨劇(ブルート・トラゲーディエ)との戦いで使わないのか、と。

 

「使うつもりは無い。確かに、魔法を使えば勝てる可能性も出てくるだろうが、今の俺は魔導師としてではなく、御神の剣士として戦う護衛だ、魔法を使うのはあくまで魔導師や魔法生物相手の時だけだ」

「ですが、敵は化け物、勝つ為ならば魔法すら道具として使うのがマスターの筈です」

「…確かに、俺にとって魔法は唯の技術、戦う為の一つの術だ。だが……」

「フィアッセさんをお守りするのであれば、使わざるを得ない時がある、違いますか? 貴方様の守護の誓い、それを護るならば、どうぞお使いください」

「……」

 

 愛する家族を、そして愛する恋人を護るためならば、如何な手段を用いてでも戦う。御神の剣士として、不破として、ならばベルカの騎士としても、その誓いをするべきだ。

 

「そう、だろうな……ああ、そうだ。俺はフィアッセを護る、命を賭けてでも護り抜くと誓った…魔法は戦いの手段の一つでしかない、その通りだ」

 

 己が全てを使ってでもフィアッセを護る。フィアッセと結ばれた日、あの日からの恭也の誓いだった筈だ。

 

「いざという時は、力を貸してくれ…エルフリーデ、レーベンシュッツ」

「ja、マイマスター」

【ja】

 

 

 月村邸に着いた恭也は敷地内にある専用駐車場に車を停めるとエルフリーデと共に玄関の呼び鈴を鳴らす。

 呼び鈴を鳴らして少し経つとノエルが扉を開けて恭也とエルフリーデを招き入れてくれた。

 

「お待ちしておりました、恭也様、エルフリーデお嬢様」

「ああ、月村は?」

「応接室で既にお待ちです」

「わかった」

 

 ノエルに案内され、応接室に入ると既に忍がデスクの上に資料を並べて待っていた。

 

「いらっしゃい高町君、待っていたわ」

「すまない、急な頼みになってしまって」

「良いのよ、フィアッセさんの為だもの」

 

 ノエルが紅茶を淹れる為に下がったのを確認すると、恭也とエルフリーデも椅子に座り、その向かいに座る忍と向き合った。

 それを確認すると、忍も机の上に並べる資料を恭也へと差出し、早速だが話を始める。

 

「それで、恭也に頼まれてた血の惨劇(ブルート・トラゲーディエ)だけど、確かに私達の間でも有名よ…本名、ニコラエ・ブラド・ドラクリヤ・ツェペシュ。ルーマニアに住む古い夜の一族の一人で、私やすずかと同じ純潔なの」

「ツェペシュ…ワラキア公の血族か?」

「そう、先祖にはヴラド3世が居るワラキア公の末裔、夜の一族でも決して関わりを持ってはいけないとまで言われる禁断の一族とも呼ばれているわ」

「……」

「生まれは確か…これね、16世紀には既に存在が確認されている」

「100年以上どころではなかったか」

 

 500年は生きていると考えて良い、そんな化け物中の化け物だった。

 

「彼が起こした事件で一番大きいのは…あった、これよ」

「……これは」

「目を覆いたくなるような事件だったらしいから、夜の一族全てに情報が来ていたの」

 

 資料に載っている事件の詳細、確かに常人なら聞くだけで吐き気を催す内容だった。17世紀前半に、ニコラエは貧困に悩まされていた町一つを買い取り、教会を建てて町人を救った…そこまでなら良い話で終わるのだが、問題はその次だ。

 教会が出来た翌日から町の住人が一人、また一人と行方不明になる事件が起きた。最初は狩りに出て行方不明になったのだと思われていたが、狩りも出来ないような女性が行方不明になった段階でその可能性は消える。

 そして、調査の陣頭指揮を執ったのはニコラエだった、だが彼の調査も虚しく町人の半数が行方不明になってしまい、国の調査団が入る事になったのだ。

 

「そして、国の調査団が入ってからは調査団からも行方不明者が出始めて、ついにニコラエすらも行方不明になった」

 

 今まで陣頭指揮を執っていたニコラエが行方不明になった事で国の調査団はニコラエの調査記録を回収するため、彼の住まいになっていた教会を調べたところ、その地下室の存在が明るみになる。

 地下室へ降りた調査団が目にした光景は、正にこの世の地獄と言うべきものだった。行方不明になった町人達が一人残らず張り付けにされていたのだ、そしてその身体には血に染まった槍が刺さっており、心臓を貫いている。

 

「他にも心臓を抉り出されて直接心臓に槍が刺さっている者、女性器から脳天まで貫通している者、生首を地面から突き出た槍に突き刺されている者、様々な死体が真っ赤に染まった部屋に並んでいた…」

 

 そして団員が見つけたのは新しい死体を解体して槍に刺しているニコラエの姿だった。

 

「結果として犯人はニコラエであり、調査団は全滅、町もその後直ぐに人が消えて壊滅した…この調査をしたのは、夜の一族か?」

「そうよ、既にニコラエの姿は無かったけど、死体は直ぐに埋葬されたわ」

「見るからに狂人という印象だが、俺が知る血の惨劇(ブルート・トラゲーディエ)の噂は理性を持って猟奇殺人を犯しているらしいから、完全に化け物だな」

「正しく、ね…先祖みたいな…いいえ、ブラド3世よりも残忍な殺し方を好む殺人魔よ」

 

 これはフィアッセだけが危険とは言えなくなった。クレイジーボマーとニコラエが組んでいるとなると、コンサート会場に来る大勢の観客が危険だ。

 

「恭也、勝てる? 500年以上を生きる化け物に」

「…勝つさ、戦えば勝つ、それが御神の剣士だ」

「そっか」

 

 そう、大切な者を護る為なら、御神の剣士に負けは無い。それを知るからこそ、忍は安心した。恭也なら、大切な者を護るという気持ちが誰よりも強い恭也なら、絶対に負けないと、そう信じている。

 御神の剣士だからではない、恭也だから、そう信じる事が出来るのだ。

 

「お願いね、恭也」

「ああ、必ずな」

 

 こうして、様々な不安要素を抱えながらも、フィアッセ・クリステラの初のソロコンサート当日を、迎えるのであった。




次回は遂に始まるコンサート、そして戦いの幕開けです。


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第十五話 「コンサート開始、始まる戦いの狼煙」

リリカルな内容ではなく、とらハな内容がもう少し続きます。
とらハなんざ知らねぇぜ、リリカル出せ! という方はもう暫しお待ちください。
<>の中は語訳です。


魔導剣士

~月光煌く御神不破流~

 

第十五話

「コンサート開始、始まる戦いの狼煙」

 

 光の歌姫、フィアッセ・クリステラ初のソロコンサート当日、海鳴市にあるコンサート会場は大勢の観客で溢れかえっていた。

 世界に名が知られる世紀の歌姫の娘、それだけでもフィアッセは有名なのに、光の歌姫として昨年から更に有名になったのもあり、来客数は昨年に行われたチャリティーコンサートと同等と言って良いだろう。

 そして、今回のコンサートの主役であるフィアッセはというと、控え室でメイクをして準備を行っている。その傍らには美由希とクリームヒルト、デリアの三人が控えていて、何があっても対処出来る様にしていた。

 

「ミユキ、デリア、クリームヒルト、時間もあるし、紅茶でも飲まない?」

 

 ずっと気を張っていても仕方が無い。そう思い、フィアッセはメイクを終えると備え付けのポットのお湯を使って紅茶を淹れた。

 美由希はフィアッセの真向かいに座って紅茶を飲み、デリアとクリームヒルトは立ったままで飲む事となる。

 

「いよいよだね、フィアッセ緊張してない?」

「うん、大丈夫。それより美由希たちは大丈夫なの?」

「うん、会場の方やロビーはアリーナさんや恭ちゃんが周っているし、リスティさんや警察、警備会社の人も徘徊してるから」

 

 特に、フィアッセには話していないが、危険人物が3人も来ている可能性があるので、警備は一段と入念に行われている。

 

「(それに、もう建物内に侵入している…恭ちゃん、アリーナさん、フリーデルさん、任せたよ)」

 

 数分ほど前に察知した気配、巧妙に隠しているが微かに殺気が洩れ出ていた複数人の気配に美由希は気付いている。

 当然、美由希が気付いたという事は間違いなく恭也も気づいているはずだ。だからこそ、徘徊している三人に侵入者の処理を期待するのであった。

 

 

 コンサートホール地下駐車場、来場者の車が多く停められている薄暗いこの場所に、恭也は一人で来ていた。

 美由希が察知したとおり、恭也もまた複数人の侵入者の気配に気付き、地下駐車場まで来たのだ。

 

「出來,你們的組織……,到說也是不是沒有<出て来い、お前たちの組織は……、言うまでも無い、か>」

 

 恭也が中国語で隠れている者達に話しかける。何故、中国語なのか、それは隠れている者が何処の組織の人間なのか凡そ掴めているからだ。

 すると、20人近い人数の男が暗視ゴーグルで顔を隠した状態のまま銃を恭也に向けながら出て来た。

 

「目的是不聽,明白切的事……,正因為如此<目的は聞かん、判りきっている事だ……だからこそ>」

 

 銃口を向けられているというのに、恭也の表情に恐怖は無い。いつも通りの無表情だが、その瞳にはいつもの温かな光は存在せず、冷たい、何処までも冷酷な光が宿っている。

 

「御神不破流の前に立った事を、不幸と思え」

 

 その瞬間、男達の前で恭也の姿が消えた。と思った時には既に4人の男の手の甲に飛針が突き刺さっており、激痛から銃を落としてしまう。

 

「はぁっ!」

 

 銃を落とした一人の懐に現れた恭也の右手には、これまたいつの間に抜刀したのか八景が握られており、その漆黒の刃が男を袈裟斬りで斬り裂き、すかさず背後に居る銃を落としたもう一人の男に向けて3番鋼糸を投げ放つ。

 鋼糸は一瞬で男の身体を拘束し、恭也がそのまま鋼糸を引くと男の全身がズタズタに切り裂かれた。

 

「っ!」

 

 再び、恭也が消えた瞬間、その場所に銃弾が通過、だが既に恭也は銃を発砲した男の後ろに回り込んでおり、背中から八景で斬りかかる。

 そのまま倒れた男を盾に発砲していたもう一人の男に接近すると、盾にしていた男を投げつけて怯んだ隙を突いて八景を一閃。

 もう一度背後に今度は6番鋼糸を放って最初に飛針で銃を落とした男の残り二人と銃を構えていた男一人を纏めて拘束、そのまま近づいて斬る。

 この間、僅か30秒弱、この僅かな時間で7人を戦闘不能にした恭也に、残る13人の男達は恐怖を覚え、足が竦み、思わず後退りしてしまった。

 

「……」

 

 残る男達を静かに捕捉しながら、恭也は血が滴る刀身を翻して血を払うともう一度、男達へ向けて飛び込んでいく。

 御神不破流の本領、静かなる戦いの火蓋は切って落とされたのだった。

 

 

 コンサートホールロビー、そこではアリーナが見回りを行っていたのだが、ふと時計を確認するとフィアッセが控え室から舞台袖に移動する時間になっていたのに気付き、近くまで行く事にした。

 比較的近い所に居たのもあり、直ぐに移動するフィアッセと美由希、デリア、クリームヒルトに警備会社の者たちを発見して声を掛けようとした時だった。

 

「っ! あれは!!」

 

 後ろから近づく金髪の女性…否、骨格体型から女装しただけの男であるのは間違い無い。その不審者が大きな何かを布で包んだまま近づいているのが見えた。

 

「ガングニル!!」

【ja】

 

 走りながら槍型アームドデバイス、ガングニルを起動、騎士甲冑を身に纏って美由希が振り向くより早く男との間に入ると、男が布を取り払って振り上げたバスターソードを血の如く紅き槍、ガングニルで受け止めた。

 

「アリーナさん!?」

「美由希、デリア、クリームヒルト! フィアッセを連れて行け!!」

「了解」

「行くわよ!」

「う、うん!」

 

 フィアッセ達が急いで走り去ったのを確認するとアリーナはバスターソードの刃を弾き返して距離を取ると構える。

 対する男は金髪…鬘を取ると、その下からは銀色のショートカットヘアーが現れ、感情の見えない視線がアリーナを射抜く。

 

「何故、邪魔をする」

「我が主の命により、フィアッセ・クリステラを害する者を排除するのが我が使命だ」

「ほう、騎士道という奴か…お前、強いのか?」

「これでも槍の騎士の名を持つ守護騎士の将だ」

「なるほど…ならば良い、お前の槍と僕の剣、お互いに殺す為の技術を磨き上げた者同士、どちらが上手に殺せるか、競い合おうじゃないか」

戦闘狂(バトルジャンキー)か…付き合わんぞ」

 

 男がバスターソードを構えたのを見て、アリーナも構えをより一層深くする。神速の一撃、槍使いにとって速度こそが命。故に、いつでも素早い動きが出来る様に構えもそれ相応だ。

 

「スライサーで、合い違いないな?」

「如何にも、それは僕の渾名だ…だが、君が騎士ならこう名乗るべきか、グリフ…スライサー・グリフだ」

「…守護騎士レーゲンリッターが氷結の将、槍の騎士アリーナ、そして我が相棒、必然の魔槍ガングニルだ」

 

 静かな睨みあい、互いの殺気が二人の間でぶつかり、空間が歪んだような錯覚すらしてしまうほど、廊下の空気は重く、殺伐とし始める。

 そして、何が合図になった訳でも無く、二人は同時に動き出し、一瞬でアリーナの刺突がバスターソードの腹にて受け止められた。

 

「チィッ!」

「はっ!」

 

 穂先を受け止めた剣を動かして槍を流すと、そのまま切りかかって来るグリフだが、アリーナは身を捩って回避するとガングニルを回転させて石突ををグリフの側頭部に叩きつけようする。

 ガングニルの石突を左手でキャッチしたグリフは動けなくなったアリーナにバスターソードの切っ先を突き刺そうと刺突を放つが、今度はアリーナがそれを避けながら脇で剣身を挟み込んで抑えた。

 

「やるな、貴様」

「君も、僕がこんなにも早くから心躍らされるなんて」

 

 お互いに相手の武器から手を離してもう一度距離を取る。再び構えた二人の表情は戦いが始まる前とは一転、何処か楽しそうに笑っていた。

 

「付き合わないと言いながら、君も楽しんでいるね」

「外道相手に付き合うつもりは無かったさ…だが、お前の剣は外道の剣でありながら高みを目指そうと修練してきた剣だ、そんな剣の使い手との戦い、騎士としてこれほど心踊るものは無い」

「それは光栄だ、行くぞ槍騎士(ランサー)!」

「来い、剣士(セイバー)!!」

 

 再び、剣と槍がぶつかって火花が散る。

 剣士と槍の騎士、二人の戦いはまだまだ熱く、そして更に激しくなりそうだった。

 

 

 恭也とアリーナが戦っている頃、もう一人ホールを見回っていた騎士、フリーデルは最大のピンチを迎えていた。

 

「グッ…っ」

「弱いな、女」

 

 騎士甲冑を身に纏っているのにも関わらず、全身に無数の傷が出来て血を流すフリーデルは、荒い息を吐きながら目の前の男を睨みつける。

 短い金色の髪をオールバックにしたタキシード姿の男、その瞳は血の様に紅く、その手には古い血がどす黒くなってこびり付いた蒼い槍が握られていた。

 

「シュトラーフェヴァルト!」

【Explosion】

 

 ガシュン! という音と共にフリーデルの持つ薙刀の様な刃が付いた杖からカートリッジが排出された。

 カートリッジ一発分の魔力を全て身体強化に回したフリーデルは自身のデバイス、審判の杖シュトラーフェヴァルトの刃をもう一度男に向けて構える。

 

「ふむ、喋る杖に魔力を込めた弾丸か…夜の一族の資料に無い魔術だ、面白い、女…お前は殺さないでやろう、生け捕りにしてその身体、その技術、徹底的に調べさせてもらう」

「舐めないでください、私も守護騎士の一人、我が主様が来るまで、貴方のお相手、勤めさせていただきますわ…守護騎士レーゲンリッターが参謀、森の騎士フリーデルと、審判の杖シュトラーフェヴァルト…参ります!」

「名乗られたからには名乗り返すのが礼儀か…ワラキア公、 ニコラエ・ブラド・ドラクリヤ・ツェペシュ だ、我が家宝カズィクルベイに塗られる新たな血を、捧げてもらおうか」

 

 森の騎士と、血の惨劇と呼ばれた裏社会最悪の殺人魔の戦いは、森の騎士の劣勢で始まっていた。

 恭也が来るまで、フリーデルは騎士として、主である恭也の命を果たすべく戦う。たとえ参謀役で戦いは苦手であろうと、その手に刃を持つ限り、倒れるわけにはいかない。

 

 

 そして、もう一人、フィアッセを狙う悪意が舞台袖の控え室に居るフィアッセ、美由希、デリア、クリームヒルトに近づいている。

 

「さぁ、迎えに来たよフィアッセ」

 

 悪意は、もう直ぐそこに来ていた。




今回、アリーナとフリーデルのデバイスの名前が判明しました。
ガングニルは紅い槍で、形状はディルムッドのゲイジャルグが近いですね、ただ穂先にはカートリッジがあるので刃との付け根の所はグラーフアイゼンみたいな感じをイメージしていただければわかり易いかと。
シュトラーフェヴァルトは茶色い杖…少し長いデュランダルみたいな形状で、先には薙刀の様な刃が付いているとイメージして頂ければ。


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第十六話 「悪意を潰す斧と白刃、復活の不破」

クレイジーボマーは基本的に戦闘者じゃないので、呆気ない幕切れとなります。


魔導剣士

~月光煌く御神不破流~

 

第十六話

「悪意を潰す斧と白刃、復活の不破」

 

 コンサートホール地下駐車場、そこでは銃声が飛び交い、銃弾が壁や止まっている車に穴を空ける中で、恭也が次々と男達を斬り捨てていた。

 

「ぐぁっ!」

「ひ、ヒィイイイ!」

 

 また一人、斬られて倒れて、近くに居た男が錯乱しながら銃口を恭也に向け、引き金を何度も引く。

 しかし、飛び出した銃弾は恭也に命中する事無く、恭也は男の横を通り過ぎて振り返る事無く後ろに6番鋼糸を放って男を拘束一気に引っ張ると前方に居た男に向けて投げつけると、二人まとめて斬って意識を刈り取った。

 

「…ふぅ」

 

 20人居た男達も残すところ3人、5分も経たずして13人の男達は戦闘不能となり、残った男達には最早恐怖心しか芽生えてこない。

 

「っ!」

 

 恭也が再び消える。同時に残り三人の男達の手の甲に飛針が突き刺さって銃を落としてしまう。そして、恭也は右手に持っていた八景を一閃、また一閃と振り、二人を纏めて斬ると、残り一人の背後に立って首に峰打ちで八景を叩き込んで、最後の一人の意識を奪った。

 

「これで終わりか…っ」

 

 駐車場に居た20人全て拘束すると、漸くフリーデルの魔力が高まったのに気付いた。

 

「まさか…フリーデルっ!」

 

 スライサーかニコラエか、どちらかがフリーデルの方に来たのかもしれない。恭也はリスティに電話で地下駐車場の男達の事を任せる旨を伝えるとフリーデルの魔力を頼りにその場所まで急ぐ。

 

「無事で居ろ…」

 

 

 コンサート開始までもう残り僅かとなり、美由希、デリア、クリームヒルトはフィアッセの周囲を固めた。

 コンサート開始直前の、最も気が緩む時にこそ襲われる可能性が高い。それを恭也から学んでいる三人は誰が来ても対処出来る様、部屋全体を注意する。

 

「デリア」

「判ってるわ。もうセットアップしてるでしょ…アンタはどうするの?」

「守護の拳がある」

「そう」

 

 デリアは既に斧型アームドデバイス、ケーニギンシュタールをセットアップして持っている。

 だがクリームヒルトはまだデバイスを待機状態にしたままだ。だが、クリームヒルトの戦い方は基本的に拳を使った戦法、古代ベルカの格闘技術の一つ、守護の拳を主としているので、特に問題は無い。

 

「二人とも、もう近くに来ているみたいだよ」

「「っ」」

 

 美由希が気配を察知したらしい。この控え室に近づいてくる悪意の気配、ドアの外には警備会社の人間が張り付いているので、誰かが来たら直ぐに判るが、美由希はそれよりも早い段階で気配を察知出来た。

 

「気配は一人…多分、男だね……武器は…駄目、小さいのかな、剣とかではないみたいだけど」

 

 御神流の心と呼ばれる技術を使い、美由希は近づいてくる気配から性別と武器まで探っていた。性別が男であるという所までは判ったみたいだが、武器までは判別出来ない。辛うじて剣などの大きな武器ではないという事までは判ったらしいのだが。

 

『皆さん、聞こえますか?』

 

 すると、ドアの外に居る警備会社の男性から声が掛けられた。

 

「どうしました?」

『通路の向こうから人影が此方に近づいてきてます、これから確認しますが、注意してください』

「判ったわ、気をつけなさい」

『はい』

 

 男性が扉から離れる気配がして少し間が空き、暫くの沈黙が流れた。距離がある為なのか侵入者と男性の声は聞こえないが、何か叫び声みたいなものは聞こえてくる。

 

『ぎゃああっ!!』

「今のは…」

「やられたわね」

 

 通路から聞こえてきた悲鳴、それは先ほど話をした警備会社の男性のものだった。同時に人が倒れる音が聞こえたのを判断するに、気絶させられたか、殺されたか。

 どちらにしても、これで侵入者は真っ直ぐこちらに来る事になる。美由希は小太刀を抜き、デリアはケーニギンシュタールを構え、クリームヒルトはフィアッセの前に立つ。

 

『っ!』

 

 足音が扉の前で止まった。そして次の瞬間、扉が吹き飛ばされた為、飛んできた扉をデリアがケーニギンシュタールで部屋の片隅に弾き飛ばす。

 入ってきたのは白い髪の白人男性、欧米系ではない、欧州系の顔立ち…イギリス辺りの出身か、濁った瞳が特徴的な男だった。

 男の手には血の滴る刃が付いたトンファーが握られており、それが男の武器なのだろう、実に鮮やかな手さばきで刃を上に向ける様に回転させた。

 

「初めましてお嬢さん方、そして…フィアッセ」

「っ!」

「近づかないでください」

「おや…」

「そんな物騒な物を持って淑女に近づくのはマナー違反よ、英国出身かしら? 英国紳士ならその辺を弁えなさい紳士(ジェントルマン)

「いや失敬、しかし物騒なのはお互い様ではないかな?」

 

 御尤もな話だが、生憎と殺気や悪意を振りまくこの男ほど彼女達は物騒ではない。

 

「それで、ふざけた脅迫状(ラブレター)を送ってきたのは貴方で間違いないのかしら? クレイジーボマーさん」

「ああ、そうだよ。私がフィアッセを花嫁に迎えるのに送った手紙さ」

「その為に、大勢を危険に晒すんですか? あなたは」

「…昔からね、欲しいと思ったものは見境無く手に入れないと気に入らない性質でね、その為なら手段は問わないんだ」

 

 ああ、生粋の狂人だった。昔、高町士郎が大怪我をした時もこの男の脅迫状が来ていたのと、その時に士郎が大怪我をした理由がフィアッセを護ろうとした事という点を考えると、この男…随分と昔からフィアッセを狙っていたのだ。

 

「ロリコン、フィアッセ・クリステラの幼少時より狙っていた点を鑑みて、クレイジーボマーはロリコンの疑いアリ」

「侵害だなお嬢さん、私は欲しいと思ったら見境無くと言っただろう? 彼女は幼少の頃から美しかった、美しい彼女を私は欲した、ただそれだけの事だ」

「見境無いわね、本当に」

 

 さて、この男がクレイジーボマーという事は間違いなく会場内には無数の爆弾が仕掛けられていると考えて良いだろう。

 だが、爆弾の対処についてはリスティ率いる警察の特殊部隊と公安部隊が動いている、特殊部隊と公安が動いているのなら爆弾については心配する必要は無い。

 

「フィアッセには、指一本触れさせません…貴方は此処で捕まえます」

「ほう、サムライソードか…昔もお嬢さんと同じ形のサムライソードを使う男が邪魔をしてくれたね、名前を何と言ったか…そう、確かシロウ・タカマチ」

「っ!」

 

 父の名が出た瞬間、美由希が動いた。最初から抜刀してあった二刀が煌き、男を斬り裂こうとするが、白刃は男の両手のトンファーによって防がれる。

 だが、既にその背後にデリアが立っており、ケーニギンシュタールの上段から一気に重量と遠心力を利用した一撃を叩き落す。

 

「むぅっ!」

 

 身を捩って避けたクレイジーボマーだったが、背中を浅く斬られたのか血が若干だが飛ぶ。その隙にフィアッセを舞台袖までクリームヒルトが連れて行った。

 これで心配事が無くなったので、この狭い部屋の中、美由希とデリアはクレイジーボマーと対峙する。

 

「くっ…なるほど、これは不味い状況なのかな…だが、良いのかな? 此処で私を逃がさなければこれを…」

 

 そう言ってクレイジーボマーが懐から取り出したのは小さなリモコン、赤いボタンが一つだけ付いた本当に小さなリモコンだった。

 

「押して会場に仕掛けた全爆弾を爆発させる事になる…特に、ホールと観客席に仕掛けてある爆弾は特別製でね、簡単に観客ごと吹き飛ばせる代物なのさ」

「卑怯なっ!」

「反吐が出るわね」

「何とでも言いたまえ。そうそう、このボタンは軽いからねぇ、斬られたりしただけでも押してしまうだろう」

 

 親指が既にボタンに触れている。これでは動いた瞬間にはボタンを押されてしまうし、美由希が神速を使って近づいても斬れば押されてしまう。

 

「そう、良い子達だ…そのまま動かないでもらおうか」

 

 クレイジーボマーがゆっくりと開けっ放しになっている扉に近づく。このままでは舞台袖に逃げたフィアッセとクリームヒルトを追わせてしまう。どうにかしなければならない、だが爆弾処理が終わったと連絡が来ない現状ではどうする事も出来ない。

 

「では、私はこのまま行かせてもらうよ…なぁに、君達はまだまだ甘かった、それだけの事だ、気にする事は無いよ」

「ああそうだ、気にする必要は無い」

「っ!?」

 

 クレイジーボマーではない、別の男の声が聞こえた瞬間、リモコンを持っていたクレイジーボマーの右手の手首から先が切断されて宙を舞った。

 

「ぎ、があああああああああああっ!!!!!?」

「ようクレイジーボマー、昔はよくもやってくれたな」

「とーさん!」

「士郎さん!」

 

 いつの間に来たのか、クレイジーボマーの後ろに士郎が立っていた。その右手にはクレイジーボマーのであろう血が付いた小太刀が握られており、左手はキャッチしたリモコンがある。

 

「ぎ、ギザマ…シロウ・タカマチ!!」

「引退したのに俺もまだまだ有名だねぇ、まぁ良いけどな」

「とーさん、どうして此処に!?」

「お前達が心配だったんでな、こうして昔の相棒を持ってきていたんだ」

 

 そう言って士郎は右手に持っていた小太刀を見せる。

 八景に似た小太刀…否、八景と同じ黒い刃に黒い柄と、唯一の違いとしてある紫色の鍔の小太刀は、士郎が八景と共に使っていた小太刀であり、不破家に伝わるもう一振りの伝承刀。

 

「無禄…」

「おう…さて、と」

 

 クレイジーボマーが残った左手にトンファーを構え、憎悪に染まった目で士郎を睨んでいる。右手は変わらず手首から先を失っているので流れ出る血が止まっていない。

 

「そろそろお前との因縁も終わらせるか…お前の所為でフィアッセを悲しませちまった、なのはに寂しい幼少時代を過ごさせてしまった、恭也に…過酷な運命を背負わせちまった…だから、俺がこの手で終わらせてやる」

「黙れぇええええええ!!」

 

 トンファーの刃を士郎に向けて突進してきたクレイジーボマーを、士郎は無禄を鞘に収めて抜刀術の構えで迎え撃つ。

 

―――小太刀二刀御神流―――

 

 それは、高町士郎が最も得意とした奥義。

 

―――奥義之壱―――

 

 高町士郎を不破家最強たらしめた高町士郎の絶対奥義であり、絶対の信頼を置く切り札たる業。

 

―――虎切―――

 

「が、あぁ……」

「あばよクレイジーボマー…次にテメェが目覚めたときは、法廷で法の裁きが待ってるぜ」

 

 ゆっくりと無禄を鞘に収めると、クレイジーボマーは意識を失いその場に倒れる。

 士郎は嘗て自分を御神の剣士として再起不能にした男の呆気ない幕切れに、感慨深げな溜息を零すと呆然としている美由希とデリアを見て、ニカッと笑いかけるのだった。




士郎が今回、虎切を使いましたが、これってかなり無理をしてます。
基本的に、今の士郎は御神の業を使うのは相当に無茶な事で、おそらく今は身体が激痛を訴えているでしょう。まぁ、でもパパはそんな事で倒れませんよ。


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Vivid編
プロローグ


え~、スランプ脱出の為に練習で久しぶりの投稿なのですが……続きではなく、更に言えばA'sもStrikerSもサウンドステージXも飛ばして何故かVivid編プロローグです。


魔導剣士

~月光煌く御神不破流~

 

Vivid編

プロローグ

 

 第9管理世界、そこは工業地域が多数存在する世界であり、スラム地区や地下などには犯罪者が数多くアジトを置いている事でも有名な場所だ。

 勿論、主な犯罪者はその世界における犯罪者ばかりだが、中には次元犯罪者として管理局に指名手配されている犯罪者も密かに存在しており、管理局も常にマークしている。

 そんな第9管理世界の一角の地下にある廃棄された下水道にて、一人の男がライフル型デバイスを片手に逃げ回るように走っていた。

 

「クソッ! 何だってこんな所まで……っ!」

 

 男の名はマフィン・レミザ、ミッドチルダ式のAAランク魔導師というエリートクラスの魔導師と呼べるのだが、その前に彼に付けられた肩書きは“広域次元犯罪者”というものだ。

 彼は魔法を使って多くの人を殺害してきた大量殺人者、管理局員も彼を捜査で追って行く中で何人も殺された。

 それほどまでに危険な犯罪者だと管理局は判断し、マフィンの捜査を一般捜査官から別の部署へ担当を移したのだ。

 

「何でこんな所まで来るんだよ! 特殊警防隊が!!」

 

 時空管理局特殊警防隊、通称“時空警防”と呼ばれるその部隊は、マフィンのような大量殺人などを犯した凶悪次元犯罪者を主に担当している管理局最強最悪の部隊だ。

 “法を守る為ならば如何なる法をも打ち砕く、最強の代わりに最悪の法の守護者”、それが時空警防を語る上で必ず出てくる彼らの呼び名だった。

 彼らは一般の管理局員とは違い、犯罪者を非殺傷設定で気絶させて捕えるという方法とは別に、非殺傷設定を解除して犯罪者を殺害するという手段を取る。

 一般の管理局員にとっては犯罪者と何ら変わりない部隊であり、犯罪者とっては自分達を文字通り地獄に落とす死神部隊だ。

 

「で、でも俺だってAAランク魔導師だ……同じ非殺傷設定を解除した高ランク魔導師の俺にだって勝機はある」

 

 例え向こうが殺しに来るのだとしても、こちらとて殺すつもりで相対するのだ。ならば条件は互角、後は頭脳戦で勝利すればマフィンにだって勝機はあると考え、兎に角廃下水道を走る。

 そして、ついにマフィンは万が一の為に用意していた転移ポートのある場所へ抜ける下水道の隠れ出口まで辿り着いた時だった。

 

「っ!! だ、誰だ!!?」

 

 出口の影から一人の人影が出てきて行く手を塞いだ。マフィンは時空警防の人間かと思い、ライフル型デバイスの銃口を人影に向ける。

 そして、人影がゆっくりこちらに歩いてくると、その顔がはっきり見えるようになった。

 

「なっ!? あ、ぁ……き、キョーヤ・タカマチ、だと……!?」

 

 マフィンの前に現れたのは、漆黒の騎士甲冑に身を包み、腰には小太刀型デバイス一振りと、普通の小太刀を一振りが差している30代程の男性だった。

 名を、高町恭也。時空管理局特殊警防隊副部隊長にして次元最強の名を持つ管理局の最高戦力、犯罪者の間で“相対した者は命を諦めろ”とまで言われている正真正銘の死神だ。

 

「A級次元犯罪者、マフィン・レミザだな」

「くっ……!」

「貴様の罪状は50件以上に及ぶ大量殺人及び管理局員に対する公務執行妨害と殺人、殺人未遂、よって管理局は貴様を逮捕ではなく殺害する事を決定した」

「ふ、ふざけんな!! 簡単に死んでたまるかよ!!」

「いや、簡単に死ぬ。お前は、もうその引き金を引く事は無い……何故なら」

 

 次の瞬間、恭也の姿が消えた。そう思った時にはマフィンの視界は宙を舞っており、その視界の片隅には、首の無い己の体があった。

 

「(あれ、なんで、俺のから、だ……が)」

 

 マフィンの首が地面に落ち、残った体が倒れた後、恭也はマフィンの首を落とした小太刀……八景を納刀して通信ウインドウを開いた。

 

「こちらロングアーチ2、高町恭也だ。マフィン・レミザの死亡を確認、遺体の回収を頼む」

『こちらロングアーチ4です。副部隊長、お疲れ様でした』

「いや、問題は無い」

 

 通信を入れて数分でマフィンの遺体が回収された。それを確認した恭也も転移魔法を発動させて特殊警防隊専用の次元航行艦「クライン」へ転移する。

 転移完了後、騎士甲冑を解除して漆黒に銀縁のラインが入った特殊警防隊の制服姿になった恭也はブリッジへ移動した。

 

「ヴィッツ、今戻った」

「よう恭也! 相変わらず歳の割りに強すぎんな」

「歳の割りに、は余計だ。お前だっていい歳の癖に現役騎士だろうが」

 

 ブリッジの艦長席で恭也を出迎えたのは特殊警防隊部隊長のヴィッツ・レクサスだ。恭也とは特殊警防隊創設以前……かれこれ10年近くの付き合いで、特殊警防隊創設メンバーの一人でもある。

 

「明日は休みだろ? 嫁さんの店でも手伝うのか?」

「いや、姪に呼ばれていてな。娘と一緒にミッド中央の区民センターに行く予定だ」

「なんだ、ストライクアーツやってるっていう姪っ子さんだったか?」

「ああ、最近は余り見てやれなかったから、久しぶりに見てやろうと思ってな」

「そっか、なら姪っ子さんによろしくな」

「ああ……それじゃあ、俺は部屋で報告書を作ってくる。後でヴィッツの端末に送信しておく」

「おう、お疲れさん」

 

 ブリッジを出た恭也はクラインの船内にある自室に向かい、部屋に入るとデスクの端末を起動、椅子に座って報告書を作り始めた。

 そうやって暫く報告書作りをしていると、ふと背後に気配を感じて、そしてそれがよく知る人物の気配だと気付くと、手を止めて椅子を回転させて後ろを向く。

 

「エルフリーデ、おはよう」

「おはようございます、マスター」

「もうミッドに向かっている。任務は終わったから、もう少し休んでいても良いぞ?」

「いえ、マスターのお仕事を手伝います」

「そうか」

 

 恭也が所有するユニゾンデバイスにして恭也の補佐官を務める高町エルフリーデ准空尉、先ほどまでベッドで寝ていたようだが、起きてきたらしい。

 初めて出会った時と変わらぬ幼い容姿でありながら理知的な表情が印象的な彼女は恭也の隣にある小さな椅子に座ると、恭也が作成していた報告書に添付する資料の作成を始めた。

 

「明日、ティオと一緒にヴィヴィオに会いに行くが、お前も来るか?」

「良いんですか?」

「ああ、家に居ても暇だろう?」

 

 普段、高町家は妻のフィアッセが翠屋で、義娘のディードとオットーは聖王教会で、恭也とレーゲンリッターの5人は管理局でそれぞれ仕事をしており、娘のティオと息子の代也は学校と、日中基本的に誰も居ないのだ。

 だから、休日にエルフリーデだけ家に居ても話し相手すら居ないので、基本的に暇になってしまう。

 

「さて、本局に着くまでに終わらせよう」

「はい、マスター……こちらの資料をどうぞ」

「ありがとう」

 

 一先ず、休日の事は後で考えるとして、今は船が本局に着くまでに報告書を完成させてヴィッツに提出しようと、恭也とエルフリーデは端末に指を奔らせる。

 結果として、報告書が出来上がったのは本局到着の30分前で、ヴィッツに提出する頃には本局艦船ドッグにクラインが停船するのだった。




まぁ、スランプ脱出までの気まぐれと思ってください。
それと、まだサルベージが終わってません。てか、サルベージするのに必要な機材が無いので買わないといけない、でも金が無い……。


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第一話 「高町ティオ」

高町家の住人ですが。

父親:高町恭也
母親:高町フィアッセ
長女:高町フリーデル
次女:高町アリーナ
三女:高町デリア
四女:高町クリームヒルト
五女:高町エルフリーデ
六女:高町オットー
七女:高町ディード
八女:高町ティオ
長男:高町代也

こんな感じです


魔導剣士

~月光煌く御神不破流~

 

Vivid編

第一話

「高町ティオ」

 

 第1世界ミッドチルダ、中央郊外にある一軒の武家屋敷の一室にあるベッドの上で一人の少女が目を覚ました。

 寝起きではあるものの、意識は確りしており、淀みない動きでパジャマと下着を脱ぐと、箪笥から新しい下着を取り出して履き、クローゼットからジャージを取り出すと着替え始める。

 最後に化粧台の鏡で母譲りのブロンドヘアーをブラシで整えた後、部屋を出て玄関に向かった。

 

「あ……」

 

 少女が玄関に着くと、そこには既に一人の男性が待っており、外履きの靴に履き替えていた。

 

「おはよう、ティオ」

「うん、おはようパパ!」

 

 少女……高町ティオは目の前に立つ男性、彼女の父親である高町恭也に挨拶をすると、自分も外靴を履いて隣に立つ。

 恭也が静かにドアを開けると、二人揃って外に出て、まだ朝方の薄暗い中を走り出した。

 

「今日は5km程度だ」

「? 短くないかな?」

「任務で留守にしていた間、確り鍛錬していたか確かめるのに、打ち合いの時間を多めにするからな」

「あ~、そっか……って! 今日は区民センターに行くのに、その前からヘトヘトになれと!?」

「ヴィヴィオ相手に、疲れたからなどと下らん理由で簡単に負けるようなら、今晩以降の鍛錬内容を5倍にするが?」

「う、うわぁ……」

 

 ティオは情け容赦の無い父兼師匠の言葉に表情を引き攣らせるが、そんな娘兼弟子を見つめる恭也は、涼しい顔でランニングを続ける。

 そして、5kmのランニングを終えた親子は自宅の裏庭……恭也所有地になっている山に入ると、普段から鍛錬に利用している開けた場所へ移動した。

 向かい合う二人はジャージのポケットからそれぞれ待機形態のデバイスを取り出すと、揃って足元に漆黒とパールホワイトのベルカ式魔法陣を展開する。

 

「起動しろ、レーベンシュッツ」

「起きて、ヴァイスリットシュツルム!」

 

 いつもの騎士甲冑姿になった恭也は、同じく白を基調とした騎士甲冑姿になったティオに八景を鞘に収めたまま、抜刀した小太刀型デバイス“レーベンシュッツ”の切っ先を向ける。

 

「先ずは軽く打ち合い、30分だ。好きに打ち込んで来い」

「はい、師範!」

 

 元気良く返事を返したティオは小太刀二刀型デバイス“ヴァイスリットシュツルム”を両方とも抜刀し、恭也に斬り掛かる。

 右の小太刀による横薙ぎの斬撃はレーベンシュッツで受け止められるが、想定通りだとティオは左の小太刀で下から斬り上げた。

 だが、それも恭也のバックステップで簡単に避けられ空を切る。代わりに、ティオは空気を切る音を察知し、慌てて屈むと、頭があった所を恭也の右足が横切った。

 

「よく避けたが、慌て過ぎだ」

「くっ!?」

 

 恭也の予備動作無しで放たれた蹴りをギリギリで察知した為か、避けた後に無防備になってしまったティオの襟首を恭也の左手が掴みそのまま後ろへ投げ飛ばされた。

 空中で恭也が走り出したのを見たティオは飛針を投擲しつつ木の幹を足場に踏み抜き、恭也へ突進する。

 同じく飛針でティオの飛針を迎撃した恭也は突っ込んできたティオを迎え撃つ為に足を止め、左の突刺をレーベンシュッツで弾き、右の小太刀による遠心力を利用した袈裟斬りを柄尻で受け止めた。

 

「嘘!?」

「この程度で驚くな馬鹿者」

「あぐっ!?」

 

 無手だった恭也の左拳がティオの鳩尾に入る。肺の空気を吐き出しながらその場に蹲ったティオに、恭也は容赦無く顔面目掛けて蹴りを入れると強引に起き上がらせて、そのまま膝を突き立てたかと思うと、反転して膝を入れつつティオを地面に叩きつけた。

 

「かはっ」

「御神流……“(ましら)おとし”」

 

 御神流体術の一つ、相手を蹴りつつ膝を突き立てたまま反転して地面に叩き落す内臓破壊の技だが、恭也自身が手加減している事と騎士甲冑の効果、徹を使用していない事の三つの要因で何とかティオの内臓は無事だったものの、暫く息をするのが辛そうだ。

 

「まだ30分経っていないが……まぁ良い。そのまま休憩5分の後に基本の型から再開する、それまでに息を整えておけ」

「ぐ、けほっ……はぁ、はぁ……はい、師範」

 

 その後、鍛錬を再開してから基本の型を一通り行い、再び打ち合いになったティオはひたすらボロボロにされたのは、言うまでもないだろう。

 

 

 鍛錬を終える頃には朝方の薄暗さが嘘のように明るくなっており、山を降りて帰宅した恭也とティオは交代でシャワーを浴び終えた。

 そして、リビングに入ってみれば味噌汁の良い香りが二人の食欲をそそる。

 

「あ、恭也、ティオ、おはよう」

「ああ、おはようフィアッセ」

「おはよう、ママ!」

 

 対面式キッチンにて料理中だったティオの母であり恭也の妻、高町フィアッセは挨拶を返した二人に穏やかな笑みを浮かべると、火を止めてリビングのテーブルに朝食を並べ始めた。

 

「む? オットーとディードはどうした?」

「二人なら朝早くからお仕事だって、教会に行ったよ」

「そうか……エルフリーデと代也は?」

「まだ寝てるかなー、起こしてくるね」

「頼む」

 

 どうやら高町家の住人の内、6人は仕事で朝から居ないようで、今日の朝食は5人で、という事になるようだ。

 

「おはよう、ございます……マスター、ティオ」

「おはよー、パパ、おねえちゃん」

 

 ようやく起きたらしいエルフリーデと、それから高町家の末っ子にして長男の高町代也が目を擦りながらリビングに入ってくる。

 

「ああ、おはようエルフリーデ、代也」

「うん、おはようエルお姉ちゃん、代也」

 

 二人の後ろからはフィアッセも続いており、まだ眠そうな二人を席に座らせると、恭也とティオも自分達の席に座ったのを確認し、自分の席に座る。

 

「では、いただきます」

『いただきます』

 

 高町家の朝食は和食が基本だ。白米ご飯に豆腐の味噌汁、漬物、焼き魚、生卵に焼き海苔と正にミッドチルダでありながら日本の食卓だった。

 ただし、この場に純粋な日本人は恭也のみであり、フィアッセはイギリス人、ティオと代也はハーフ、エルフリーデは古代ベルカ生まれである。

 

「恭也とティオは、今日だったよね? 区民センターに行くの」

「ああ、だからエルフリーデに代也の面倒を任せようと思うのだが」

「私は構いません……代也は、良いですか?」

「うん! エル姉ちゃんとお留守番してる!」

 

 末っ子の代也は比較的エルフリーデによく懐いており、この二人なら留守番していても問題ないとフィアッセも安心したのか頷いている。

 

「ヴィヴィオに会ったらよろしく言っておいてね。またお店においでって」

「うん、伝えておくよ」

 

 話もそこそこに、恭也はいち早く朝食を食べ終えて食器をキッチンにある全自動食器洗浄機に入れると、席に戻って電子新聞を開いた。

 すると、なにやら気になる話題が掲載されていたので、その箇所を選択して開いてみると、随分と物騒な内容が書かれているではないか。

 

「連続通り魔事件……?」

「あ、それ最近ミッドで噂になってる連続通り魔のニュースだよ。お店に来るお客さんからも聞いた事あるよ」

「私も学校で聞いたかな、何でも格闘技をしている人が狙われているみたいで、ストリートファイトを挑んではボコボコにしているって」

「ほう……犯人は自らをハイディ・イングヴァルトと名乗っている、か」

「? ……イングヴァルト」

 

 恭也が犯人の名前を読み上げると、ずっと黙って代也の頭を撫でていたエルフリーデが反応した。

 まるで、その名に聞き覚えがあるとでも言わんばかりに。

 

「マスター、イングヴァルトとは古代ベルカの王、覇王イングヴァルトの系譜です」

「覇王、だと? それは“ゆりかごの聖王オリヴィエ”や“冥府の炎王イクスヴェリア”と同じ……」

「はい、最後のゆりかごの聖王オリヴィエ・ゼーゲブレヒトや冥府の炎王イクスヴェリアなどと同じ時代ですと、覇王クラウス・イングヴァルトが有名です」

 

 まさか、この時代に再び聖王と炎王、そして覇王が揃う事になるとは、何の因果なのか。いや、まだこのイングヴァルトを名乗る者が本当に覇王イングヴァルトの系譜なのか、それとも唯の語りで血縁など全く無い赤の他人なのかは不明だが、また何か……嵐の予感を感じる。

 

「ティオ、暫くヴィヴィオの周りを気に掛けてやってくれ」

「うん、学校が違うから、流石に平日の日中は無理だけど」

「まぁ、流石に平日の日中は無いだろう。通り魔も基本的に夜にしか現れないらしいからな」

「そっか、なら暫くはヴィヴィオの練習に付き添うって形で良いかな?」

「そうしてやってくれ。イクスの方はまぁ、オットーとディードに任せても問題無いな、夜も騎士カリムが警備を厳重にしている」

 

 話をしている間に、良い時間になった。全員、朝食を終えてフィアッセは翠屋へ、代也は部屋に戻って宿題をするらしく、エルフリーデがそれの監督をする為に同じく代也の部屋へ行った。

 

「俺達もそろそろ行くぞ」

「うん!」

 

 家を出た恭也とティオはガレージに停めてあった黒いベンツに乗り込む。このベンツ、恭也が地球で購入してミッドに持ち込んだ物で、今の恭也の愛車だ。

 

「パパ、ヴィヴィオ強くなったよ」

「ほう、それは楽しみだ」

 

 車を走らせながら、親子二人会話を楽しむ。二人を乗せた黒いベンツは、順調に走り続け、30分後には区民センターに到着するのだった。




御神流の継承者は高町ティオ
高町代也はフィアッセから歌を習っております。


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第二話 「高町ヴィヴィオ」

Vivid Strike!も終わりましたねぇ。
リンネたんprpr


魔導剣士

~月光煌く御神不破流~

 

Vivid編

第二話

「高町ヴィヴィオ」

 

 ミッドチルダ中央には様々な施設が存在する。時空管理局のミッド地上本部だけでなく、商業施設として巨大なショッピングモールやオフィスビル、公共交通機関や学校、本当に様々だ。

 その中にはスポーツジムなどの運動施設もあり、区民センターなどは特に格闘技のジムなどがあってインターミドルを目指す子供がよく通っている。

 

「ティオ、着いたぞ」

「うん!」

 

 区民センターの駐車場に車を停めた後、恭也とティオは車から降りてセンター入り口にて入館手続きをする。

 手続きを終えてから上履きに履き替えて向かったのは格技室というべき格闘技のトレーニングルームだ。

 二人が中に入ると、そこには様々な年代の少年少女達が格闘技の練習に打ち込んでおり、二人はその中で良く知った顔ぶれの所へ向かった。

 

「ヴィヴィオ」

「? あ! 恭也伯父さんだ~!!」

 

 金髪の髪に、緑と赤のオッドアイが特徴的な少女、名を高町ヴィヴィオと言い、恭也にとっては義理の姪に当たる。

 彼女はこの区民センターに通ってストライクアーツと呼ばれる総合格闘技の練習を行っていて、恭也とティオもよくスパーリング相手になっているのだ。

 

「あ、あの! お久しぶりです、おじさん」

「ああ、コロナちゃんも、元気そうだな」

「はい!」

 

 ヴィヴィオの次に話しかけてきたのは、ヴィヴィオの友人であるコロナ・ティミルだ。淡い髪色を二つに結った、およそ格闘技には向かない性格をしている彼女だが、彼女には珍しい……それこそレアスキル認定されても不思議ではない魔法があるのだ。

 

「ティオちゃんも久しぶり~! 暫く来てなかったよね?」

「うん、お店の手伝いとかしてたからね。それより、そっちの子は……ヴィヴィオの新しいお友達かな?」

「うん! リオ、おいでー」

 

 リオ、と呼ばれた少女が元気良く走ってきて、ヴィヴィオとコロナの横に並んだ。八重歯が特徴的な活発そうな少女、実力的には、恭也の見立てではコロナ以上、ヴィヴィオと同等か少し下、といった所か。

 

「えっとねリオ、こちらは私のママのお兄さんで、高町恭也さん。それから、その娘さんで私の従姉妹の高町ティオちゃん」

「ヴィヴィオの伯父の高町恭也だ。よろしく、リオちゃん」

「ティオだよ、よろしくね」

「リオ・ヴェズリーです! 最近ヴィヴィオとコロナと友達になって、一緒に此処に通うようになりました!」

「そうか、ヴィヴィオとはこれからも仲良くしてくれると助かる」

「勿論です!」

 

 自己紹介もそこそこに、早速だが恭也とティオは今日来た目的を話し始める。

 

「今日は時間が出来たから、ティオとヴィヴィオに少しスパーをやらせようと思ってな。それと、俺も少しだけ指導のつもりだったが……ノーヴェ、お前がいるなら必要ないか?」

 

 恭也は後ろを振り返ることなく、近づいてきた女性に声を掛けた。

 

「よう恭也、なんだ仕事は休みかよ?」

「ようやくな」

 

 ノーヴェ・ナカジマ、JS事件において管理局に保護された戦闘機人の一人であり、恭也の義娘であるオットーとディードの姉にあたる。

 

「んで、指導だけどよ、徹についてはあたしじゃ無理だし、どの道やってもらうよ」

「そうか、ならスパーの後にでも少しヴィヴィオを借りるぞ」

「おう」

 

 早速だが、中央のリングを使ってヴィヴィオとティオのスパーが行われる事となった。ジャージとTシャツ姿のヴィヴィオに対し、ティオは来た時と同じ白のブラウスにピンクのミニスカートのまま。

 

「あれ? ティオさんって着替えないの?」

「えっとね、ティオさんやおじさんが言うには、普段着だから戦えないなんて事はないように、普段着でも戦えるように鍛えてるんだって」

「へぇ、じゃあティオさんって強いんだ」

「うん、ヴィヴィオってまだ一度もティオさんに勝ったことが無いんだって」

 

 コロナとリオがティオの事について話している後ろで、恭也はリング上の二人を見やる。

 拳を構えて腰を落とすヴィヴィオと、特に構えず自然体で立つティオ、二人とも準備が出来たと判断し、二人の間に立つノーヴェに目で合図を出した。

 

「んじゃ、始め!!」

「っ! せぇえええい!!」

 

 合図と共に、ヴィヴィオが走り出した。左右へステップを踏みながらティオに肉迫し、右拳からのストレートを繰り出すが、ティオは冷静に左腕で弾きつつ右肘をヴィヴィオの顔面目掛けて打ち込む。

 

「わっ!?」

 

 眼前に迫った肘を、ヴィヴィオは驚きながら何とか左手で受け止めたが、それによって視界を奪われた事でティオの次の動きを察知出来なくなった。

 右肘を軸にして回転したティオはヴィヴィオの背後に立ち、足を払ってバランスを崩し背中へ掌を当てる。

 

「っ!」

「かはっ!?」

 

 中国拳法の一つ、寸掌が決まって零距離から衝撃が奔り、ヴィヴィオは肺の空気を吐き出した。だが、それでも反撃しようと崩れたバランスを立て直すのではなく、そのまま前に倒れる際、両手を床に着いて両足を蹴り上げる。

 丁度、逆立ちになるような格好で下から振り上げた足をティオの下顎へ向けた。当然、近距離からのそれはティオでも避けるのが難しく、両手でヴィヴィオの足を受け止める事になったが、そこからがヴィヴィオの反撃だ。

 

「はっ!」

 

 両手で床から跳ね上がり、ティオに掴まれた両足を軸にして一気に立ち上がると、ティオの頭上を飛び越えて背後に降り、がら空きの背中へ左フックを入れた。

 

「うぐっ! っ!」

 

 続け様に右フックも入れようとしたヴィヴィオにティオの右拳による裏拳が襲い掛かり、右フックをキャンセル、そのまま右腕でガードしつつ左アッパーを入れようとした。

 

「甘い!」

 

 左アッパーを右手で受け止め、その腕を取ってヴィヴィオの懐へ背中から入ると、そのまま背負い投げで背中から床へ叩き落した。

 

「っ!? あ……」

「勝負、ありだよ」

 

 痛みを堪えて立ち上がろうとしたヴィヴィオの眼前にティオの手刀が突き付けられ、それで勝負あり。

 諦めたように力を抜いたヴィヴィオに手刀を解いて普通に手を差し出すと、それをヴィヴィオが掴んだのを確認して立ち上がらせた。

 

「う~、また負けたぁ」

「そりゃ、パパに思う存分鍛えられてるし、年季も違うから、まだまだヴィヴィオには負けてあげないよ」

「むぅ」

 

 スパーが終わり、コロナとリオが二人に駆け寄るのを眺める恭也とノーヴェ、二人は今の二人のスパーを見て、特にヴィヴィオの仕上がりについて話し合っていた。

 

「良い感じに仕上がってきたな」

「だろ?」

「ストライクアーツ選手としては中々見られないスタイルを作ろうとしているようだ。あのスタイルはお前が?」

「ああ、つってもまだまだ未完成だけどな。それでも今度のインターミドルまでには仕上げる予定だ」

「なるほど、打撃力不足のヴィヴィオにはピッタリのスタイルだが……その分打たれ弱いあの子には諸刃の剣でもあるぞ」

「まぁ、そこが悩みどころでさぁ」

「ふむ」

 

 大人たちが冷静に話をしている目線の先では、ティオの実力を知らなかったリオが興奮冷めやまぬといった様子で話しかけているようだ。

 

「ティオさん凄ぉい! ヴィヴィオに勝っちゃった!」

「まぁ、3歳の頃からパパにずっと鍛えられてるからねぇ」

「そんなに早くから!? えっと、おじさんってもしかして格闘家さん?」

「ううん、管理局の魔導騎士やってる」

「管理局員!? じゃあ強いんだ!」

「そだよ~、恭也伯父さんは管理局最強って言われてるんだから」

「それも近接戦闘において敵無しって話なんだよね?」

「へぇ~」

 

 何やらリオから恭也へ尊敬の眼差しが向けられた。

 

「おい恭也、リオがお前を尊敬の眼差しで見てるぞ?」

「む……最近は畏怖の眼差しばかりで、慣れてないんだがな」

「そりゃお前、次元最強にして犯罪者の死神、高町恭也を管理局員が畏怖しないわけないっての」

 

 失礼なようで、事実を言われた恭也はため息を零しつつ、この後のヴィヴィオのスパーリングに付き合うためヴィヴィオの下に向かう。

 その背中を笑いながら見ていたノーヴェも、恐らくうずうずしているであろうリオのスパーリングにでも付き合おうかと考えながら、恭也の後を追うのだった。




え~、作者引越しのため、また暫く更新が途絶えます。
次は宮城県塩竃市へ。


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